衆議院

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第17号 平成13年6月27日(水曜日)

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平成十三年六月二十七日(水曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 土肥 隆一君

   理事 河野 太郎君 理事 下村 博文君

   理事 鈴木 宗男君 理事 米田 建三君

   理事 桑原  豊君 理事 上田  勇君

   理事 土田 龍司君

      池田 行彦君    倉田 雅年君

      小島 敏男君    高村 正彦君

      桜田 義孝君    下地 幹郎君

      虎島 和夫君    中本 太衛君

      原田 義昭君    宮澤 洋一君

      望月 義夫君    山口 泰明君

      伊藤 英成君    木下  厚君

      首藤 信彦君    中野 寛成君

      細野 豪志君    前田 雄吉君

      丸谷 佳織君    赤嶺 政賢君

      阿部 知子君    東門美津子君

      柿澤 弘治君

    …………………………………

   外務大臣         田中眞紀子君

   外務副大臣        杉浦 正健君

   外務大臣政務官      丸谷 佳織君

   外務大臣政務官      小島 敏男君

   外務大臣政務官      山口 泰明君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   襲田 正徳君

   政府参考人

   (内閣府沖縄振興局長)  安達 俊雄君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    北原 巖男君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    伊藤 康成君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   飯村  豊君

   政府参考人

   (外務省大臣官房文化交流

   部長)          横田  淳君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長

   )            谷内正太郎君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長

   )            槙田 邦彦君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    藤崎 一郎君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    小町 恭士君

   政府参考人

   (外務省欧州局ロシア課長

   )            小寺 次郎君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  西田 恒夫君

   政府参考人

   (外務省条約局長)    海老原 紳君

   政府参考人

   (特命全権大使オランダ国

   駐箚)          東郷 和彦君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  深谷 憲一君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    縄野 克彦君

   外務委員会専門員     黒川 祐次君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月二十七日

 辞任         補欠選任

  小島 敏男君     倉田 雅年君

  東門美津子君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  倉田 雅年君     小島 敏男君

  阿部 知子君     東門美津子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件






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     ――――◇―――――

土肥委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、衆議院外務委員会理事会協議による総意に基づき、委員長より田中外務大臣に対して一言申し上げます。

 これまでの当委員会における大臣の答弁は、多くの質疑者の趣旨とかみ合っていない部分が多々見受けられ、会議の成果が得られていないという不満が多く出ております。したがって、委員の質問には的確に答弁されるように厳重に注意申し上げます。

 この際、外務委員会を代表して田中外務大臣に対して質問します。

 去る六月六日及び七日の二度にわたる当委員会からの資料提出要求に対し、大臣からいずれも提出できない旨の回答をいただきました。

 そもそも今回の事態は、外務省の文書が何らかの意図から報道されるに至り、当委員会としてはそれを解明する責任を覚えたのに端を発します。この資料要求は、当委員会の質疑に不可欠なものであるという共通認識に立って、与野党全会一致で決定したものであります。

 立法府の国政調査権を顧みない大臣の姿勢は到底容認できるものではありません。委員長として大臣に対し、強く遺憾の意を表するとともに、今後は、情報公開の原則に立ち、仮に資料提出や公開ができない場合でも、包括的説明による、委員各位の納得できるような態度をとるべきと考え、厳重に申し入れ、外務大臣の公式の答弁を求めるものであります。

田中国務大臣 おはようございます。

 今回の件で、土肥委員長を初めといたしまして委員各位に御迷惑をおかけいたしましたことを改めて心よりおわび申し上げます。御注意に関しましては、これを厳粛に受けとめております。そして、質疑者の意図を十分に踏まえて、今後、より的確な答弁を行うよう努力をいたします。

 それから、資料要求の件でございますけれども、外務委員会から提出要求のあった各国との二国間会談の記録を明らかにすることは、相手国、関係国等との信頼関係を損なうおそれがありますし、適切ではないと判断をいたしております。

 しかしながら、国政調査権の重要性を十二分に認識もいたしております。したがって、できる限り包括的な形で委員会等の場で御説明をし、委員各位に納得していただけるよう答弁に努めてまいる所存でおります。

土肥委員長 そうすると、重ねて質問いたしますけれども、今後、この私たちが要求いたしました資料要求はどういう形でおこたえになるのでしょうか。包括的にとおっしゃいましたが、どういう態度をおとりになるのか、教えてください。

田中国務大臣 相手国との関係等もございますので、前例等に照らしながら、関係者の意見も聴取しながら進めてまいりたい、かように考えております。

土肥委員長 それじゃ、今後の課題としてこれを引き続き御認識いただいていると考えてよろしいでしょうか。

田中国務大臣 引き続き検討させていただきます。

土肥委員長 いいですね。

 次に、田中外務大臣の私に対する電話発言問題についてお聞きします。

 大臣は、二十二日の当委員会での私からの質問に対し、大変御迷惑、誤解を招きましたことにつきましておわび申し上げますと答弁されました。その後、昨二十六日の衆議院議院運営委員会に福田官房長官が出席し、内閣を代表してこの問題で陳謝したにもかかわらず、議運の前の閣議後の外務大臣のぶら下がり記者会見では、到底陳謝とは受け取れぬ発言をしている事実が判明いたしました。

 大臣は、今もなお外務委員長への発言は立法府への介入であると思っておられないのではないですか。大臣の真意をお聞かせください。

 一問一答ということになっていますから、まず一番目のパラグラフについてお答えください。

田中国務大臣 ただいま土肥委員長よりお話がありましたことでございますけれども、六月二十一日木曜日の夜、土肥委員長に私が電話をいたしました。そして二十日、すなわちその前の日になりますけれども、に行われました、この……

土肥委員長 ちょっと大臣、済みません。それは後でまた質問いたしますので。

 外務委員長への発言は立法府への介入であると思ってはおられないのではないですか、大臣の真意をお聞かせくださいということでございます。

田中国務大臣 立法府へ介入するという意図はございませんでしたけれども、結果的にそのような疑念を招きましたことにつきましては、改めて陳謝申し上げます。

土肥委員長 お座りください。

 次に、大臣は、「委員は、議題について、自由に質疑し及び意見を述べることができる。」と規定した衆議院規則四十五条を御存じですか。国会での議員の質疑の内容に関し、答弁者である大臣がとやかく言うことは法規上もおかしいと考えます。

 ところが、ぶら下がり会見で大臣は、トータルで外交政策全般にかかわるようなことをもう少し議論していただけないものかと思った、いろいろなグローバルな問題がたくさんこの地球上に存在していて、外務省マターもたくさんあるから、そういうことについて、いろいろな質問がある方がより建設的ではないかと発言しています。

 この発言は、議員の質疑自由の原則を無視し、質疑者に対して大変無礼だと私は思いますが、大臣いかがですか。

田中国務大臣 このぶら下がり発言につきましては、閣議後の本当に短時間でどの大臣もそれをやらなければいけない――その前に、衆議院規則四十五条につきまして、よく存じております。今ここにも持っておりますけれども、「委員は、議題について、自由に質疑し及び意見を述べることができる。」ということで理解はいたしております。それが最初のお答えでございます。

 それから、二つ目のぶら下がり発言は、閣議後、短時間で各大臣がそうした状況でお話をしなければいけないのでございますけれども、私が申しました趣旨は、グローバルないろいろな外交マターについて討論をしたり、それから、まだ三本の外務省関係の条約も残っておりまして、これも審議をしていただきたい、そういうふうなことがございましたので、それを率直に語ったまででございますけれども、それやこれやもすべて、御迷惑をおかけいたしましたので、おわびを申し上げます。

土肥委員長 最後に、二十一日の私との電話の会話で、大臣が鈴木議員の名前を挙げて質問制限などにかかわるさまざまなことを言ったのは間違いありません。その後、この点について、記者からの質問に対し、大臣は明確な答弁をしておられません。これは私の名誉にかかわる問題なので、事実関係につき大臣の明確な答弁を求めます。

田中国務大臣 今土肥委員長がおっしゃったことは事実でございまして、六月二十一日木曜日の夜、私は確かに土肥委員長にお電話をおかけいたしました。それは、その前の日、すなわち二十日でございますけれども、行われた審議を念頭に置きまして、鈴木先生からあすも二時間質問があるのでしょうかという趣旨のことをお尋ね申し上げました。このことが結果として議員の質疑自由の原則に抵触しかねないというふうに受け取られまして、そして、本委員長及び委員会の皆様に多大な御迷惑をおかけいたしましたことを反省をいたしております。

 そしてまた、本件につきましては官房長官からも御注意をいただいておりますので、今後十二分に注意をして職務に精励いたしますので、よろしく御指導方お願いいたしたいと思います。申しわけございませんでした。

土肥委員長 ちょっと私としてはもう一問つけ足させていただきますが、鈴木議員の二時間の質問についてお話しになったのではなくて、鈴木議員のさまざまな発言についての御意見を大臣はおっしゃいまして、これは時間だけの話ではなかったというふうに思いますが、いかがでしょうか。

田中国務大臣 短時間のお電話でございましたし、委員長がすぐにこれは問題になるといけないと言って電話もお切りになりましたけれども、私はやはり二時間というのは異例の長さであるというふうに思いましたので、趣旨としては時間のことを申し上げました。

土肥委員長 私としては、こういう種類の問題は外務委員長には権限がありませんということを申し上げ、もし何かの意見があるならば、自民党の役員の皆さんと相談なさってはどうですかというふうに申し上げたつもりでございます。それについて間違いございませんか。

田中国務大臣 はい。

土肥委員長 いいですね。

 それじゃ、委員長の理事会を代表しての質問を終わります。

    ―――――――――――――

土肥委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として、委員木下厚君の質疑の際に、外務省大臣官房長飯村豊君及び防衛施設庁長官伊藤康成君の出席を、委員赤嶺政賢君の質疑に際し、外務省北米局長藤崎一郎君及び防衛施設庁長官伊藤康成君の出席を、委員阿部知子君の質疑に際し、外務省大臣官房長飯村豊君、外務省北米局長藤崎一郎君及び外務省経済協力局長西田恒夫君の出席を、委員鈴木宗男君の質疑に際し、特命全権大使オランダ国駐箚東郷和彦君、外務省大臣官房長飯村豊君、外務省大臣官房文化交流部長横田淳君、外務省総合外交政策局長谷内正太郎君、外務省欧州局長小町恭士君、外務省経済協力局長西田恒夫君、外務省条約局長海老原紳君及び外務省欧州局ロシア課長小寺次郎君の出席を、委員下地幹郎君の質疑に際し、外務省アジア大洋州局長槙田邦彦君、外務省北米局長藤崎一郎君、内閣府政策統括官襲田正徳君、内閣府沖縄振興局長安達俊雄君、防衛庁運用局長北原巖男君、防衛施設庁長官伊藤康成君、国土交通省航空局長深谷憲一君及び海上保安庁長官縄野克彦君の出席を、また、委員上田勇君の質疑に際し、外務省アジア大洋州局長槙田邦彦君、外務省北米局長藤崎一郎君及び外務省経済協力局長西田恒夫君、防衛施設庁長官伊藤康成君の出席を求め、それぞれ説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土肥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

土肥委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中野寛成君。

中野(寛)委員 何日たちましたか、やっと質問の時間が参りました。アメリカでいうと、さあ仕事を始めよう、こう言うのかもしれませんが、若干のお尋ねをいたしたいと思います。

 イギリスの、もう百年ぐらい前にもなると言われることわざに、腐った卵ではおいしいオムレツはつくれないということわざがあります。サンドイッチ地方における選挙違反や汚職事件などに端を発して、あのイギリスの有名な政治腐敗防止法ができましたが、サンドイッチに挟んだと言われるオムレツに事寄せて、腐った卵ではおいしいオムレツはつくれない、腐った政治ではいい暮らしができないということわざができたと言われております。

 政治改革、行政改革、経済構造改革、外務省改革など、今、時代の変化に取り残された、または長い間の悪弊によって生まれたうみを出さなければいけないという改革の必要性というのは、これはだれしもが一致して思うことであります。外務省の改革もまた、大臣の正しい正義感に基づいて積極果敢に行われることを期待したいと思います。

 しかしながら、これはドイツのカール・シュミットさんがまだ西ドイツ時代におっしゃった言葉でありますが、大胆な改革を唱える人は静かに語りなさい、改革ができない人は激しい言葉でカムフラージュしなさい、こういった言葉があります。大変印象に残っております。

 今、日本は小泉さんを中心にして改革と大声で叫ばれておりますが、私は、最近までの田中外務大臣の言動を拝見いたしますと、決して大胆な改革をする人の注意深さがあるとは思えない。それが先ほど来の一連のことにつながってしまったというふうに思います。大変残念です。

 そういう意味で、ぜひ、これからの改革について本当の熱意を持っておられるとするならば、いわゆる大阪弁で言う、ええ格好しい的なパフォーマンスではなくて、まさに静かにその実を上げる具体的な努力をしてもらいたいものだと思います。

 先般来、いろいろ資料要求などトラブルが続いておりますが、これは、事の真偽は別にいたしまして、北京における各国の外務大臣との会談、また訪米された際のパウエル長官との会談等について、言った、言わないのことがいろいろ問われております。私は、今ここでその真偽を問おうとしているのではありません。

 例えば、それは、だれかが漏らしたのだ、捏造したのだ、だれかがゆがめたのだと後で幾ら言いわけをしても、会談をした相手は一番よく知っております。もし、国民を、または若い議員の皆さん、国会の皆さんを一時的にだます、または取り繕うことができたとしても、それが取り繕いであれば、会談の相手の不信を買い、それが残り、日本の外交に支障を来すことだけは間違いがありません。

 むしろ私は、大変恐縮ですけれども、外務大臣は人の非難と自分の言いわけは実に天才的にうまいと思っています。そうではなくて、私は、要領よくその場をしのぐというのではなくて、日本外交の真髄、あり方、国益ということを真剣に考えて、反省すべきは猛省をして、私は、この重大な時期に日本の外交に向かって対応してもらいたいというふうに思っているのです。

 また、今回の三権分立の問題もありますが、三権分立のもっと前の話だと思います。これは、意図はなかったと大臣はおっしゃるが、しかし、わざわざ外務委員長に電話をし、そして鈴木氏の名前を挙げ、質問時間に触れたということは、これは、意図がなかったけれどもと先ほど言われたけれども、意図がなくてどうして電話をかけるのでしょうか。そういう言葉のごまかしをすっきりとやめて、いや、そういう意図でかけたけれども、あれは間違いであったと、もっと率直にお認めになったらいかがでしょうか。

 あなたのコメントは、常にどこかに逃げがある、言いわけがあるというふうに思えてならないのです。その逃げや言いわけは、その場を取り繕うことができても、必ずその不信感は相手の心に残るのです。そのことを大臣は肝に銘じてやっていただきたいと思うのですが、どうお考えですか。

田中国務大臣 先輩の御指導、大変ありがたく拝聴いたしました。肝に銘じてまた職務を頑張りたいと思います。

中野(寛)委員 きのうもたまたま大橋巨泉さんが言っておりましたが、私の好きな言葉で、これも、フランスのボルテールさんだと思いますが、言った言葉がありました。あなたと私の考え方は全く違う、しかし、あなたが私を批判する権利は命をかけてでも守る。こういった言葉がヨーロッパ民主主義の一つのお手本の言葉として今でも使われております。これは三権分立以前の問題です。民主主義の原点の問題なんです。

 まして、先ほども委員長から言われましたように、この国会における質疑応答、そのできのよしあしや次元の高低は、大臣によって評価される、また判断されるものではなくて、国民が評価をするものであります。国会が次元が低いのか大臣の方が次元が高いのか、それは我々が述べることではなくて、国民が評価することだと思うのです。そういう意味で、私は、ぜひ大臣が民主主義の原点を考えていただきたい。

 あなたが外務省の中であいさつをされたということや、また、大臣が電話をされる前に外務省の中でどういう場面があったかとか、それはいろいろな形で、捏造もあるでしょうし、うわさもあるでしょうし、想像もあるでしょう。しかし、にじみ出ております。そして、それは漏らした人が悪いのではないんです。その場面をつくり、その場面で何らかのことを大臣が言った、そしてそのことが捏造されたとすれば、その原因をつくった大臣の人徳の問題なんです。外務大臣という極めて重要なポストで仕事をされるときに、そのことをぜひ心していただきたいなというふうに思うのであります。

 そこで、先般の訪米について触れたいと思いますが、例えば、大臣が、普天間の問題について頭痛の種だと繰り返しパウエルさんが言ったと。アメリカのバウチャー報道官は、うそをついてはいけない、そんなことは言ってはいないというふうに一部否定をいたしました。そして、きのうでしょうか、日本の外務省は、頭痛の種と言ったことは事実だと、改めて外務省の見解として述べられたと報道されております。

 これは、どっちが本当だったかが問題ではないと私はむしろ思っています。そうではなくて、きのう外務省が外務大臣をかばうかのごとくあの発言はあったと加えたことは、まさに余計なことだったと思っています。むしろ、そのことよりも、彼が言ったか言わなかったか、そしてそのことは外務大臣も、記者会見か何かの、ぶら下がりか知りませんけれども、いや、向こうには向こうの都合があるんでしょうと言って受け流したそうでありますが、しかし、私が想像するに、その場面で恐らく頭痛の種とおっしゃったかもしれない。しかし、それは会話のはずみの中で言われることはよくあることです。しかし、本来は、それは取捨選択をして、話の本筋について述べられるのがコメントだと思います。またブリーフィングだと思います。

 結局、相手は相手の都合があるのでしょうとして受け流したり、改めて外務省があの発言はあったんだと追認したり、余計なことです。むしろ、それらのことについては触れないこと、話の本質とは別と考えるならば、それを触れないこと。それが話の本質をついた的確な言葉だとするならば、それはまさに明確にお答えにならなければいけない。その判断をどうお持ちですか。

田中国務大臣 ラムズフェルド長官との対談、四十五分から五十分ございましたが、その中で、結果としてのバウチャー報道官のコメントについての食い違いが出てきているというお尋ねでございますけれども、これは、細かいニュアンスというものにはやはり違いがあろうと思いますけれども、この会議は、アメリカ側も数人、日本側も数人、かなりの数が、二十人近くだったでしょうか、十何人か、正確にちょっと今カウントできませんが、大勢の人が聞いている前で、ノートテーカー、記録者もおりますし、そういう中で出てきた発言でございます。

 ただ、ヘディックと言っておられることが、頭痛の種とかそういうマイナスの意味ではなくて、これはやはり大事な、頭の痛い問題だけれどもとおっしゃっているのは、私が普天間というものを、今まで、過去にも、先輩もおられますし事務方もおりますけれども、普天間問題をアメリカに対して切り出すということ、それから稲嶺知事もアメリカに行っておられて、そのときの質疑応答、全部紙を取り寄せてまた再確認もしてございますけれども、この問題は非常に機微にわたる問題で、ところが、日本としてはどんなことがあっても沖縄にかけている一極集中を減らさなきゃいけない、そういう視点があります。ですから、どのような言い方をするかということを私は考えました。その結果、私が切り出した結果、こういうヘディックという言葉が出てきたわけですが、その結果、わかった、それほど大変な問題で、普天間が大変なら、このことを自分はラムズフェルド国防長官に伝えるということをおっしゃってくださいましたので、これが結果として外交交渉の中でマイナスになったということではないということを私は思いますし、複数の方が確認している場でございます。

 したがって、細かいニュアンスの違い等はあるかもしれませんけれども、基本的な相違点はないということを申し上げざるを得ません。

中野(寛)委員 外交交渉というのは言葉言葉の一つに大変重大な意味があると思いますし、私は外務大臣のように英語遣いではありませんけれども、しかしながら、例えば先般、ブッシュ大統領が北東アジア問題について触れた演説が発表されましたが、そういうことについても、人によっては、訳文だけ読んだんではだめだ、原文を読めばその原文の言葉遣いのあやの一つ一つに実に重大な意味があると私の友人は解説してくれましたけれども、そういうときにはむしろ言葉遣いの解釈の仕方によってまた日米で違う場合もあります。必ずしもそのことをそのまま伝えることが正確に相手の意図を伝えたことにならないということも十分に認識をしていただきたいと思います。大臣の言われるフェース・ツー・フェースは結構ですけれども、本当はハート・ツー・ハートでないといけないのだろうというふうに思うのです。

 さてそこで、私は幾つかの問題についてお尋ねをいたしますが、訪米の際の会談の中のことについて幾つかお尋ねをしたいと思います。

 ミサイル防衛構想について、理解をするという従来からの政府見解を田中外務大臣が米国に伝えたことが大々的に報道されるような状況がありました。しかし、この程度の、すなわち政府見解を改めてそのまま米国に伝えたことが大々的に報道されるということ自体が、言うならば田中外務大臣の特異性をあらわした現象であったというふうに思うんですね。

 そして、しかもその実効性、でき上がるのがどのくらいかかるかという御質問をされたそうです。そして、相手はお答えにならなかった。むしろ明快にはお答えにならなかった。

 私は、これこそ愚問だと思っています。ミサイル防衛構想というのは、アメリカがブッシュ政権のもとで新しい外交、防衛戦略を立てた中で、それをいろいろな国々と話をする、持ちかける、それぞれの国の反応を見る、そのことが既に抑止力を発揮し始めているわけです。どのくらいかかるかという具体的な、事務的なことではなくて、むしろ、将来にわたってアメリカが一歩踏み出そうとしているその新しい戦略について、日本が理解をするというだけではなくて、日本ならこうしたい、それを受けて日本はこう受けとめていきたい、今回中谷さんが訪米をされて幾らか踏み込んだ発言をされているようでありますが、そういうことがなければならないわけです。

 しかし、残念ながら外務大臣はそこまでまいりませんでした。訪米されたこと自体が一種の首脳会談の前の地ならしだというふうにおっしゃったと思います。これは大臣が直接地ならしとおっしゃったように聞いておりますが、私も地ならしとして行くべきだと六月一日のここでの質問で申し上げました。

 最初は、何だ、こんな、地ならしにもなっていないと思ったのですが、よくよく考えたら地ならしに行ったんですね、やはり。というのは、それまでいろいろな問題を起こして、疑心暗鬼、いわゆる日米関係にいろいろなものを起こしたので、それを払拭しに行ったわけですね。新しい段取りは島田晴雄さんがやるんでしょうか、それともこの前行った与党三党幹事長がやったんでしょうか、岡崎さんがやるんでしょうか。結局、この前行ったあのニュースやあなたの会見を見る限り、あなたは間違いなく、それまでのいろいろなトラブったことや誤解を招いたことの払拭、すなわち地ならしに行ったにすぎなかった。

 たまたま、ライスさんと会談をされているときにブッシュ大統領とかチェイニー副大統領が顔をのぞかせた。日本の新しい外務大臣はどんな人かな、もうすぐ首脳会談をやるんだからそのときはよろしくとやはり言っておこうか。よくホワイトハウスの使う手ですよね。私たちもそういう形で時の大統領にお会いしたことがありますよ、お父さんのときでしたけれども。お父さんというのはブッシュ大統領のお父さんのときでしたけれども、そういうことはよくあります。しかし、私は、大変あなたを厚遇したとなっておりますが、アメリカらしいなと思いましたよ、アメリカというのはそういう外交戦術というのは大変たけている国だと思いますから。

 しかし、例えばパウエルさんが最後に言った言葉、あなた方は日本の最良の友人は米国であるということをいつも忘れずにいるべきだ、そうあなたにくぎを刺した。また、アメリカ国務省のバウチャー報道官が、会談後の記者会見で、会談の最良の要約はこの言葉に尽きると。あなたたちは地ならしに行き、パウエルさんはあなたにくぎを刺した、実はそれだけだったのではないのかと思えてならないのです。

 むしろ、私は、そういう自覚を持たれることが今後の日米関係を再構築していく上においてあなたの自覚として必要なことではないか、そこからすべてが始まるのだ、こういう認識をこそ持つべきだと思いますが、どうお考えですか。

田中国務大臣 いろいろな御指摘をいただきまして、ありがとうございます。

 会談は通訳の複数の方が入って行っておりますということを申し上げておきます。

 それから、いろいろお話しいただきましたけれども、もちろん、私の目的は小泉総理大臣が近々訪米なさることの地ならしでございましたけれども、そのほか細かいことにつきましては、時間の経過とともに、相手もあることでございますし、評価をされていくであろうというふうに感じております。

中野(寛)委員 それでは、今後の問題をお聞きします。

 ブッシュ政権にかわってから、外交、安全保障政策について、明らかにクリントン政権当時の政策を大きく変えようとしております。北東アジア政策もそうであります。そして、ミサイル防衛計画もそうであります。新たなブッシュ政権の外交、安全保障政策をどう読み取り、それにどう対応するかは、最も日本外交の基軸であるという日米関係、日米同盟について大きな影響を与えます。単に、今日までの外交の継続性に基づいて日米同盟は日本外交の基軸だと言葉の上で言っただけでは済まないと思います。

 前回、この委員会における私の同趣旨の質問に、外務大臣は、アメリカはどういうふうに戦略を持っているのか、日本はそれに対してどう考えるか、その答えを頭で考えられる資料もしっかりもらってこようと思っていますとおっしゃっておられます。もうあれから随分たちましたし、日米首脳会談も目前であります。当然、外務大臣としては、総理に、その日米首脳会談のあり方、また日本側のスタンスについては申される義務、使命があると思います。

 ちなみに、質問の趣旨を御理解いただけないと困るので、こちらの方から私なりの見解を申し上げます。

 ブッシュ政権は、国家戦略を構築している。これはアメリカ民主党と共和党の違いですが、共和党というのは、まず戦略、戦術を立てて、それから各論に入っていく、これはアメリカ共和党の伝統だと私は思っています。そして、まず国家戦略を構築し、その枠内において個々の政策を進めるというアプローチをとっていきます。

 今回のブッシュ政権の国家戦略には幾つかの特徴があると思います。

 それは、一つはアメリカ中心主義、アメリカが中心になって世界のいろいろな問題を解決していこうとする、ある意味では覇権主義的傾向が強い。クリントン政権の場合は、どちらかというと対話が中心であったと思います。一つの目標がはっきり打ち出されたと思います。

 もう一つは、ヨーロッパの問題は大体片がついた、または確立された、今後はアジア重視、しかも中国包囲政策をとっているというのが私の見方です。

 次に、グローバルな視点に立ちつつも、アメリカは、特に二国間同盟を重視した同盟関係を再構築しようとしている。そういう意味では、日米関係というのは特に重視をし、そして、それはある意味では中国包囲網の一環もなし、かつ、アメリカのグローバルな戦略の中心にもなっていくであろう。そういう意味では、日本に対する期待は大きい、しかし、日本が負わされる任務は大変これまた大きなものになっていくのではないかというふうに思うのであります。

 また、戦略戦力に関するものと通常戦力に関するものとがありますけれども、いよいよ、例えば北朝鮮に対しても通常兵力の削減などについて触れておりますように、通常戦力についても今度はかなり踏み込んでくるであろうと思います。

 アメリカが今考えている外交戦略というのは壮大なものであり、そして、その中に日本を言うならば最も強いパートナーとして、パートナーといえば聞こえがいいですけれども、協力者として位置づけているということを考えるときに、よほどの覚悟が必要ですが、その分析と覚悟のほどをお聞かせいただきたいと思います。

田中国務大臣 おっしゃるように、前クリントン政権と比べましても、ブッシュ政権は、例えば対中国の戦略も考え方も違っているということは事実であるというふうに考えております。

 しかし、まず最初のころおっしゃった、冒頭のことにお答えいたしますが、日米関係は我が国の外交の基軸でもございます。そして、さまざまな課題に直面しております国際社会において、友情でございますとかあるいは相互主義とか民主主義という共通の価値観に基づいて日本とアメリカとの同盟関係を引き継いでいきたいということは、アメリカの基本にあるというふうに存じますし、幅広い分野において緊密な政策の協調も行って議論をしていきたい、前広に、できるだけよい関係を持ってパートナーシップを続けていこうという考えがアメリカには基本にあると思いますし、そうした同盟関係をしっかり強固にするために緊密な協議をしていきたいというブッシュ政権の意思が、パウエルさんとの会談でも読み取ることができました。

 それと、二つ目におっしゃったことが、ちょっと申しわけございませんが、御趣旨が明確でございませんでしたので、もう一回お願いできますでしょうか。

中野(寛)委員 今の一つ目の質問に対する答弁としておっしゃられたこと、それは、日米同盟関係が今後とも日本外交の基軸であるということのさわりについて、今まで常に歴代外務大臣、外務省の皆さんが、また日本政府が言ってきたことをオーソライズされただけですね。

 私が聞きたかったのは、そんなことを聞いているのではなくて、新しい時代に入りましたよ、新しいブッシュ政権になりましたよ、ブッシュ政権の外交戦略をどう読み取りましたかとお尋ねしたのです。そして、具体的な例として、私は私なりに、覇権主義的傾向が強いこと、アジア重視で中国包囲政策をとっているのではないかと思われること、それから、例えば全体的なグローバルな視点ということもさることながら、二国間同盟というものを具体的にそれぞれの国々と詰めていくという手法をとり始めたのではないのかということについて申し上げたのであります。

 そして、もう一つは、先ほど申しましたが、戦略戦力、すなわち核兵器だとかミサイルだとかという問題についてと同時に、今度は、もう一歩踏み込んで、通常兵力にまで踏み込んで相手に対して要求をするというところまで彼らはやってきた。それは、ある意味では、アメリカから主張される側は、アメリカの覇権主義的傾向が強くなったと受けとめるかもしれませんということをお尋ねしているわけです。

田中国務大臣 先ほど申し上げたのは、ブッシュ政権の外交戦略についてのお尋ねでございましたが、これがストラテジーだとおっしゃったわけでありませんで、四十五分間の間で、通訳が入りながら、こちらが話し、訳し、あちらが話し、訳しという形でございましたので、その中で、今後はっきり出てくると思いますけれども、基本にありますのは、先ほど申し上げたような、アメリカの日本との関係、それから、世界に対する中でのアメリカのスタンスということは基本的ににじみ出ていたということを申し上げざるを得ません。

 それから、二つ目の、アジアの包囲網ということをおっしゃいましたけれども、これは、対アジア政策、北朝鮮問題等を見直しをしていらっしゃる最中であるということは委員も当然御存じでいらっしゃると思いますし、それから、外交政策と経済政策が一体化している、一体であるというふうな主張、これは、ゼーリックさん、USTR、別物、政府そのもの、直接の閣僚とかではありませんけれども、ゼーリックさんと話をしましても、パウエルさんでも、ライスさんと話をしましても、今回お目にかかった方たち皆様から、こうしたものが一体であるという主張は感じ取ることができました。

 それから、アジア地域における平和と安定にコミットするという前提の中での、そうした前提に立った米軍の展開といいますかプレゼンス、そういうものは十二分に感じ取ることができました。

 ですから、二国間につきましては先ほど申し上げたとおりでございます。

中野(寛)委員 二国間について、今までどおり仲よくしましょうという話ではないんですよ。日本に対してこれから大変重大な要求、例えば集団的自衛権の問題は一つの新しい現象でしょう。それで、その目的は何ですか。それをさせることによって新たに日本に対して軍事的な意味での協力を求めようとしているわけでしょう。そういう具体的なブッシュ政権の大転換、そのことについて私は私なりの見解を述べながらお尋ねをしているのですが、残念ながら、外務大臣のお答えは、今までのアメリカの変わらざる日米同盟重視に基づいた御答弁をされているように思えてならないんです。

 また、今回の訪米に先立って、ブッシュ政権は、北朝鮮政策については、検討中でありましたが、明確に三原則を出して発表されました。残念ながら、今回の外相の訪米においてその北朝鮮政策についての話は、総論的な話の中で触れられたかもしれませんが、内容については触れられていないように思います。

 しかし、これはブッシュ政権が北朝鮮政策について発表した直後の訪米だったんです。そして、日本にとってはそれは大変重要な意味を持つんです。隣国なんです。そして、拉致疑惑の問題があるのです。これらの問題については当然一言あってしかるべきだったと思うんです。このブッシュ政権の外交、安保の戦略転換は、一つは北朝鮮政策にも明確にあらわれているのです。その変化をどう読み取りましたかとお尋ねをしているんです。

田中国務大臣 お立場があって、いろいろと想像もしていらっしゃるかと思いますが、私は、四十五分ないし五十分の直接の会話の中で申し上げておりますが、集団的自衛権について先方が触れられることはございませんでした。基本的な日米関係の同盟の強化の重要性ということについて触れておられました。それを申し上げたいと思います。

 それから、朝鮮半島の問題につきましては、朝鮮半島に早く平和と安定をもたらすために、私たちも、韓国ももちろん、ともに協力をしながらやっていかなければいけないということはございましたけれども、そうしたことが具体的に議論としては出てきてはおりませんことを御報告申し上げます。

中野(寛)委員 集団的自衛権については触れられませんでしたとおっしゃいましたね。ミサイル防衛については話題になったんですね。集団的自衛権と不可分の関係ではありませんか。集団的自衛権という言葉を使わなかったからといって集団的自衛権については触れられなかったとあなたがお考えならば、何と外交音痴でしょうか。ミサイル防衛構想は集団的自衛権の話とどう切り離せるんですか。

田中国務大臣 私どもは、BMDについて、これがミサイル防衛構想でございまして、それ全体についての研究をすることに理解を示すということを申しましたんですけれども、そのことが私たちの専守防衛という理念に合致するということでございます。

中野(寛)委員 答弁をすれ違い問答にしないでいただきたいと思います。

 残念ながら御理解をいただけないのは、御理解というのは、私の質問の主意、私は具体的に例示して申し上げているんですよ。何も前提条件をつけて言っているのでもなければ、あなたが想像されているように、私が何かあなたを誘導尋問しようと思って、何か想定をして聞いているというふうに思われては、それはあなたの御勝手だけれども、私に対しては大変不本意です。私は、日本の外交戦略を明確にし、今後の国益をどう守っていくかということについて国民の前で議論をしたいと思って、いろいろ私の考えまで述べて質問しているんです。その私の考えがノーならノーとおっしゃってくださって結構なんです。

 さて、それでは、その集団的自衛権についてちょっと一つお尋ねしましょう、余り時間がないのですが。

 国連憲章に集団的自衛権が明記されています。日米安保条約についても、明記されております。日米安保条約の最初の前文、すべての国が個別的及び集団的自衛の固有の権利を有するとした上で、次の項で、これらの権利の行使として、すなわち、集団的自衛権の行使として、日本国はその防衛のための暫定措置として、日本国に対する武力行使を阻止するため、日本国内及びその付近にアメリカ合衆国がその軍隊を維持することを希望する、すなわち、日米安保条約は集団的自衛権があることを前提とし、その権利の行使として米軍が日本に駐留することを日本側が希望したと書いてある。これは条約を読み上げたんですよ、今。

 明らかに、日米安保条約、そしてそれに基づく在日米軍の駐留というのは、これは集団的自衛権の行使です。すなわち、日本を守っている、日本が、集団的自衛権、守ってくださることという権利を行使しているんです。

 問題は、それが片務的だとかいろいろ言われるが、そのアメリカがいろいろな力を、行動を起こすときに、日本がそれに対してどれだけ協力できるか、サポートできるか。そして、その線引きを、武力行使と一体化しない範囲でなどと今いろいろと理屈をつけてそこを線引きをしているんではないんですか。

 そこで、お尋ねいたしますが、今申し上げた日米安保条約は集団的自衛権の行使だというふうに私は考えておりますし、そして、武力行使と一体化しない集団的自衛権に該当する行為があるかどうかというこの二点についてお尋ねをいたします。

田中国務大臣 委員御案内のとおり、国際法上の集団的自衛権というのは、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利でございます。

 そして、今のお尋ねですけれども、一般にこうした国際法上の集団的自衛権の概念は実力の行使を中核とした概念であると考えられておりますが、私たち、今安保の関係でおっしゃいましたけれども、日米安保条約というものは、その第六条で、米軍への施設も、それからいろいろ提供もいたしております、確かに、安保に基づきまして。ですけれども、それについては規定はしておりますけれども、その施設や区域の提供が実力の行使に該当はしませんし、集団的自衛権の行使には該当しないということがずっと政府が考えていることでございます。

 それから、ミサイル防衛計画につきましても、研究をするというのでありまして、開発やら配備に私どもが加わるというふうなことは一切、まだそこまで進んでもおりません、そこまで検討もしておりません。したがって、それが集団的自衛権に抵触するかどうかということは、そこまで話は進んでおりません。むしろ、この防衛構想自体が、まだこれから時間もかかるし、費用もかかるかもしれませんけれども、そういう状態であるということを申し上げさせていただきます。

中野(寛)委員 当然のことです。まだ、ミサイル防衛計画については、その全容は明確ではありません。検討段階もしくは発案、アイデアの段階でしょう。しかし、その話を具体的にしていく過程の中にあっては、この集団的自衛権の存在と行使の問題は、それをなしで通るわけにはいかない問題です。だから、小泉総理も山崎幹事長もいろいろなことを発案されているのではないのでしょうか。

 外務省としては、その日本政府の見解をリードする意味でも、主体的に、まず外務省の見解をまとめ、日本政府の見解をまとめるリード役を果たさなければいけない役所でしょう。それを、過去の古い、国連ができたときのことや日米安保条約が発足したときの、そのときから、むしろ僕は日米安保条約が最初に締結されたときの方が、今までの経緯を見ると、実態をよく見ているのではないかとさえ思いますが、その後、日本はいろいろなフィクションをつくってきました。それは、五五年体制のもとで野党対策もあったかもしれません。しかし、今改めて、日本は、それらのことについて国民の前に政府の方針を明記し、信を問わなければいけないのではないのでしょうか。アメリカもまた、集団的自衛権の問題は期待していると述べ、そして、憲法に関することかもしれないが、それは日本の主権の問題だと分析をしております。

 せっかく、もと、国防総省にもおられ、かつ今国務長官をされているパウエルさんとお会いになったときに、その肝心かなめの話ができなくてどうして地ならしと言えるのか。だったら、私が最初に申し上げた地ならしと全く同じではなかったのかと申し上げたいのですが、どうお考えですか。

田中国務大臣 ですから、パウエル長官も、この研究が、今委員もおっしゃったように、概念的な問題で、これから研究を進めていかなければならないという段階でございますので、そこのところで欧州の幾つかの国は疑義を呈しておられるけれども、日本は、その研究について私どもは理解ができると申し上げた、本当に入り口の部分でございますから、そのことについて歓迎をしてくださったわけでございますから、それを申し上げたいと思います。

中野(寛)委員 結構です。これ以上質問しても、私の意図に残念ながらお答えいただけません。御存じなのか、わざとすれ違い問答をされるのか、また、私の質問が悪いのか。私は、私なりに具体的に例示をし、事前に御通告も申し上げて質問をしているのです。時間がありませんから、私は、実はセーフガードのことやその他幾つかの質問を用意したのですが、お答えがかみ合いませんので、これ以上は残念ながらお尋ねができません。

 ただ、一つだけ具体的なことで、えひめ丸事件のことについてお尋ねをしておきたいと思います。

 これは、既に私はこのペーパーそのものを外務省にお渡しをいたしております。これは人命、人道上の問題として重視されるべき問題でありますが、同時にまた、先ほど来議論となっております日米同盟、日米安保の問題でもあると思います。そして、このあり方は沖縄の問題にもその心が通じると思います。それほど重要な問題です。

 しかし、被害者の皆さんや多くの皆さんは今日までの経緯を全く納得しておりません。間もなく引き揚げ作業も進められるようでありますけれども、まさに、アメリカに対しては、事件の真相、事故に関するすべての情報を被害者に公表してもらいたい。また、その後、事故の話を聞くと、心的外傷後ストレス障害、PTSDと見られる精神的な変調にも苦しんでおられる。そういうケアを含めて、被害者に正当な補償をしてもらいたい。また、日本政府は、この引き揚げのときには当然立ち会ってもらいたいし、その内容もすべて公表してもらいたい。

 当然、再発防止のことや原因究明のこと等について、要望書が総理大臣、外務大臣、衆議院議長、参議院議長に出されております。これに対して誠意を持ってこたえていかなければなりませんが、どのようにお考えでしょうか。

杉浦副大臣 えひめ丸の事故が極めて遺憾なものであることは申し上げるまでもございません。

 先生御指摘のえひめ丸事件被害者の会の要望書は私どもちょうだいいたしております。事故に関する資料の公開、原因究明に必要な調査の実施、再発防止策の確立、被害実態の把握と回復への努力、損害賠償請求の支援等が内容となっております。

 えひめ丸事故については、これはアメリカの領土、領海内で起こったことでございまして、アメリカの法律、制度のもとで原因究明、審判等の手続がとられたわけでございますが、事故原因等につきましては、審問委員会というアメリカの中でも透明性の高い場において究明が行われまして、報告書が提出されました。これは公表されております。被害者の会の方々の事故に関する資料の公開がそれ以上のものを求めておられるものであるとすれば、よくお承りして、対応したいと思っております。

 法的措置。アメリカがとった法的措置はアメリカの国内法に基づいてなされたものと承知しておりまして、それについては我々日本としては特段の措置をとる立場にはないと承知いたしております。

 再発防止につきましては、もちろん、このような悲劇が二度と繰り返されてはならないわけでございまして、再発防止についても取り組む姿勢が示されておりますが、今後とも、アメリカ政府が十分に取り組まれることを期待しておる次第でございます。

 米側が御家族の気持ちを重く受けとめておられると承知しておりますが、さらにこの被害者の会の要望書にあるようなさまざまな措置について、被害者のお気持ちを十分に受けとめてもらって誠実に取り組むことを、補償等、いろいろございますが、改めて求めてまいりたいと思っておりますし、外務省としてできる限りの御協力はさせていただく所存でございます。

中野(寛)委員 アメリカのとった法的措置はアメリカの法律に基づいて措置されたので問題はない、また物の言いようがないという御答弁でありますが、だからこそ、それ以上のこと、それ以外のことについては、まさに折衝、外交の分野ではありませんか。

 私が聞きたいのは、法的措置に基づいてアメリカが粛々とその法的措置をとられたことについて、法解釈が間違っているなどと言っているわけではない。むしろ、そのこと以外の実際の問題について、外交交渉が必要です。そこがそれこそ外交の仕事ですということを申し上げ、そして、具体的な被害者の皆さんからの要望が提出されているわけですから、それを踏まえてせっかく折衝をしてもらいたい。

 日米関係が日本外交の基軸と言うならば、これができなくして、どうして日米同盟などと言うことができるのでしょうか。人道問題です。そして、その処理は、間違えば日米同盟関係にひびも入るのです。人命を最大に尊重し、まず人間としての交渉、そして次には、日米関係を考えた、当然前向きの積極的な交渉というものがなされなければいけない重大な使命を持っていると思いますが、若干時間がオーバーしておりますが、同僚のお許しをいただいて、再度お尋ねいたします。

杉浦副大臣 おっしゃるとおりであります。アメリカは人道を旗印とする国でございます。被害者の方々の御要望を受けまして、我々も精いっぱいの外交努力を続けてまいることをお誓い申し上げたいと思います。

中野(寛)委員 そろそろ締めくくりたいと思いますが、実は先ほど、日米安保条約は集団的自衛権の行使と解釈されるがどうかということについては、今日までの政府見解を外務大臣は繰り返し述べたにすぎませんでした。それはそれで一つの姿勢でしょう。しかしながら、その上に立って今後はどう解釈があるべきか、どう現実的に対応しようとしているかという議論は、既に改革の政権としてスタートしているはずです。その方向は全く見えませんでした。よって、お答えが残念ながら具体的には得られませんでした。

 そして、武力行使と一体化しない集団的自衛権に該当する行為があるかどうかについてもお答えがありませんでした。アメリカ外交戦略についても、事例を挙げましたが、残念ながら一般論的お答えでありました。すなわち、先般のあなたの訪米におけるパウエル長官との会談に俎上に上ったか上らなかったかということのお答えだけで終わりました。彼の言葉の背景にあるもの、それについてどう読み取ったか、あなたの訪米の目的はいよいよはっきりしなくなりました。

 同窓会に行かれたことは、同窓会かどうか知りませんが、母校に行かれたことについてはとやかく申し上げようとは思いません。しかし今、あなたが本会議でも、次元の低い話とは言わないまでも、本来の外交をやらせてくださいとあなたは常々言っておられますが、本来の外交の基軸について、先ほど来の御答弁では、どんな外交を田中外交はやろうとしているのか、田中外交のその戦略、戦術は影も姿も残念ながら見えませんでした。まだ就任直後と言われても、時々刻々と世界は動いております。それこそあなたのおっしゃるとおりであります。本来の外交にもしっかりと目を向けて今後の対応をされることを心から希望いたします。

 先般の訪米も、言うならば、大成功だったと言う人がいます。あなたの訪米に期待をしなかった人たち、単なるぎくしゃくした関係をもとに戻すという範囲での地ならしということだけを期待した人たちは、百点満点だと評価をいたします。しかし、むしろ、その上に立って新たな日米関係を構築するための少しでも踏み込んだ議論が一つでもなされるべきことを期待した人たちは、すべて落第点をつけております。期待が大きかった人は落第点、期待しなかった人が合格点をつけているというこの皮肉な現象をやはりしっかりと外務大臣は受けとめて、今後の外交戦略を早急に確立をし、国民の目に見える形で提起していただきたいと思います。

 終わります。

土肥委員長 次に、木下厚君。

木下委員 さて、今、中野議員の方からもお話がございましたが、これまでマスコミを通じて田中大臣は、これまでの当委員会における質疑が非常にレベルの低いものであって、自分は外交マターの質疑をしたいんだ、再三そういうことをおっしゃっているんですが、レベルが低いか高いかは、これは先ほど中野委員がおっしゃったように、国民の皆さんが御判断することなんですが、むしろ、レベルの低い話をされているのが、あちこちのマスコミを通じたり街頭演説を通じてレベルの低い話をされているのが田中大臣であるということをきちんと御自覚された方がいいのではなかろうか。

 そういう意味でも、まず、土肥委員長の冒頭での質疑の中で、二十一日夕方に田中大臣から電話をもらい、土肥委員長に対して、鈴木議員の質問権を制限するような依頼や指示などの行動があったとおっしゃっているんですが、ところが、六月二十二日の当委員会における田中大臣の御答弁、これを読み上げてまいりますと、いろいろおとといの状況を心配した議員がいらっしゃったり、電話をくださったり、いろいろアドバイスをしてくださったりしてくださいましたので、そういうものがトータルで伝わったというふうなことがあるかもしれません、このように御答弁されているんですが、これは、事実と違った答弁になっています。いわば虚偽答弁なんですが、当委員会においてこういう虚偽答弁をされたことに対して、田中大臣、どういうふうな御認識でいらっしゃいますか。

田中国務大臣 何をもって虚偽答弁とおっしゃっているかと思いますが、トータルで私は、一時間二十分でしたか、前日ありましたものがまた二時間質問が同じような内容のことが繰り返されるのだろうかということを申し上げたのでございますし、また、そういうことについて心配した方たちからいろいろな電話や連絡があったということも事実です。

 しかし、いずれにしてもトータルには、やはりその時間の二時間という長さを言ったということでございます。

木下委員 これは、土肥委員長に対する働きかけについて質問されて、それに対して答えているんですね。

 だから、いろいろなトータルでじゃなくて、その鈴木議員の質問に、何とかならないか、制限を加えてほしいという、先ほど委員長そうおっしゃいました。それに対してあなたはこう答えているんです。もしこういう答えであったならば、先ほどの陳謝というのはどういう意味を持つんですか。陳謝になっていないじゃないですか。土肥委員長に対してそういう働きかけをしたわけでしょう。鈴木議員の質問を制限するような働きかけをした、それに対する答弁がこういう形になっているわけです。事実と違いませんか。見解の相違だけですか。何を謝ったんですか。言っているんですか、言っていないんですか、土肥委員長に対して。

田中国務大臣 ですから私は、一時間二十分だったと思いますけれども、前の日にあって、そしてまたその後同様なことが二時間あるのかという時間の長さについて伺ったわけでございますけれども、いずれにいたしましても、立法府と行政府の関係からいたしまして、このような電話をおかけしたということについては大変御迷惑をおかけしておりましたので、先ほど来陳謝、おわびを申し上げております。

木下委員 いや、そういうことを聞いているんじゃなくて、土肥委員長に対する働きかけがなかったのかあったのか。それに対する陳謝をされたんでしょう。これは、それに対する答えを、聞いてこう答えているんです。これは事実と違うわけですか。働きかけしていないと答えているんじゃないですか。

 もう一回読みましょうか。いろいろおとといの状況を心配した議員がいらっしゃったり、電話をくださったり、いろいろアドバイスをしてくださったりしてくださいましたので、そういうものがトータルで伝わったというふうなことがあるかもしれません、そう答えています。

 しかし、土肥委員長の先ほどの話だと、直接大臣から土肥委員長に対して鈴木議員の発言に制限を加えるような働きかけがあったと、土肥委員長そう言っているわけでしょう。土肥委員長そう言っているわけです。

土肥委員長 そうですよ。

木下委員 そうでございますね。

 だから、これは重大な虚偽答弁ですよ。委員会において大臣がこういう虚偽答弁をしたとすれば、これは大変な重大な問題なんですが、どうなんですか。何をお謝りになったんですか。

田中国務大臣 先ほど申し上げたことの繰り返しになって恐縮でございますけれども、私が六月二十一日、すなわち木曜日の夜に土肥委員長のところにお電話をしたのは事実でございます。これは先ほども申し上げております。

 そして、その日の前日、すなわち二十日ですけれども、そこで行われた審議を念頭に置きまして、鈴木先生はあすまた二時間質問なさるのでしょうかという趣旨のことを申し上げたんでございますが、この行為自体が立法府と行政府の関係で大変誤解を招きましたので、今後十二分に注意をしていきますと、そして、皆様に御迷惑をおかけしたことを先ほど来おわびを申し上げている次第でございます。

木下委員 そうすると、これは虚偽答弁ではないと言い張るわけでございますね。

 では、それはまた皆さんに御判断していただくとして、実は、二十二日の外務委員会で大臣、陳謝されましたですね。その後、いわゆる一連の発言が批判を浴びている中、田中大臣は都議選の応援のために池袋線ひばりケ丘駅前で、国会議員はこんなにいっぱい要らない、衆院は三百、参院は二百に削減すべきだ、衆院は単純小選挙区にして、比例区のわけのわからないおっさんたちは当選しなくてもいい、こうおっしゃっているんですが、これは、要するに、我々は今、現行の選挙制度に基づいて選ばれてきて、そして国会活動をしているわけですね。それに対して、閣僚が、現行選挙制度を否定するような発言、単純小選挙区にすべきだとか、二百にするべき、三百にすべきと。一般の議員が言うんならいざ知らず、一大臣がこういう発言、現行選挙制度を否定するような発言をすることに対して、これが政府の統一見解ですか。はっきり言ってください。

田中国務大臣 私は、初めて国会議員に当選いたしましたときから、国会議員の定数削減ということは、自分の信念として、当時、新潟県で私はずっと言っておりまして、このことも調べていただければおわかりになると思いますが、やはりいろいろな、財政再建、当時そういう言葉じゃなかったかと思いますけれども、むだ遣いをやめるということ、そのほか幾つかありますが、あえて申しませんが、私が議員になった原因幾つかありますけれども、その中でもって、本当に国会議員やら、地方議員も含めてですけれども、そういう人たちが本当にファンクショナルであるかどうかという疑問を一国民として思っておりましたので、それを私は申しまして、特定の状態を言ったわけではありません。

 それから、選挙制度につきましては、国会で十二分にいろいろ議論もされておりますし、それから、単純小選挙区がいいということは、私は選挙制度改革のときにも自分の持論として党内でも何度も発言をいたしております。そして、この内閣も首相公選もおっしゃっておりますので、いろいろな有権者の方に対して、何千人もの方の前で意見を言うわけでございますけれども、その中に、多様な意見のある中で私の意見があったということが、別に特定なだれかを批判するとか、どういうふうな政党はどうであるとか、そういうことは一切申しておりません。それはもう言論の自由ではないでしょうか。

木下委員 本来ならば、やはり現職閣僚として、少なくとも、今の選挙制度を尊重し守る義務があると思うんです。

 それはそれとして、比例区のわけのわからないおっさん、これはだれのことをいうんですか。一般的には、鈴木議員のことをおっしゃっているように一般の国民は受け取っていますが。

田中国務大臣 どういうことを想定しておっしゃっているのか、逆に私の方が伺いたいほどでございまして、そんなことは全然私は想定なんてことはいたしておりません。(発言する者あり)そうです。定数を削減するということ、地方も含めてですけれども、先ほど申しましたように、私は国会議員として、基本的にずっとそのことは主張し続けてきているわけでございます。

木下委員 少なくとも、比例区で選ばれた立派な国会議員さんたち、たくさんおられるわけです。この委員会だけ見ても、植竹副大臣も比例区選出です。鈴木議員もそうです。それから……(発言する者あり)おっさんじゃない、まだ若いですけれども。あるいは米田建三議員もそうなんです。あるいは野党にもおられます。あるいは公明党の議員さん、かなりの部分が比例区で選出されているんです。

 わけのわからないおっさんたちは、こういう言い方で一般国民に、有権者に、これはそこらの漫才師が言うんならいざ知らず、少なくも現職大臣がそういう形で言うことが、果たして大臣として、私はむしろ大臣の見識を疑います。

 どうですか。だれか、本当に比例区のおっさんたち、そういうあれですか。もしおっしゃるんなら。

田中国務大臣 基本は定数削減のことを申しております。

 それから、漫才師の方が言うならいざ知らずというのも、私は、一生懸命そういうお仕事についている方に対してちょっとお気の毒な表現ではないかなと思います。

木下委員 いや、漫才師は一時、どつく漫才とか、人の揚げ足をとったり人を悪く言えば拍手喝采を浴びたんです。そういう時代があったんです。それと同じことを大臣がやっているから、私はそれを批判しているわけです。

 それから、もうこれ以上やってもあれなんで、もう一つ。これは重要な問題ですので、事実確認だけさせていただきます。

 とりわけ、例の、一連のASEMにおける四外務大臣との発言について、これは一問一答でお答えいただきたい。特に、重要な外交案件にかかわる外相会談のメモというのは、これは今後の日本外交のベースになり、歴史的にも非常に重要な意味を持つものなので、会談内容を正確に記したものでなければならないことは言うまでもないと思うんです。もし、田中大臣が指摘するように、だれかによって捏造される、あるいは改ざんされたものが、つまりこれまでマスコミに報道された会談メモと称するような内容のものが、正式の会談メモとして外務省に保管され、それが歴史的な事実として後世に伝えられるとする、これは日本外交にとって非常に大きなマイナスになり、汚点になるはずですので、そこで、しつこいようですが、事実確認だけさせていただきます。

 まず、この二国間あるいは多国間の会談メモについては、外務省はこれはきちんと保存、保管してございますですか。

飯村政府参考人 お答え申し上げます。

 重要な会談記録を含め、外務省は保管、保存しております。

木下委員 そうしますと、この四人の外務大臣の会談メモ、これは当然保管してございますね。

飯村政府参考人 お答え申し上げます。

 保存しております。

木下委員 その保管してある会談メモは、二国間の外相会談の正確なものを記載したものですか。それとも、例えば、六月八日東京新聞に記載されたこの会談メモと称するものと同じものですか、違うものですか。

飯村政府参考人 報道の内容については、個別具体的に立ち入ることは、相手国との関係もあって差し控えさせていただきたいというふうに従来より御答弁申し上げさせていただいております。

木下委員 いや、報道の内容についてじゃなくて、これを、事実か事実でないか、これと保管されているものが同じなのか違うものなのか、これだけ答えてください。もしあれだったらここにありますので、どうぞじっくり見てください。(発言する者あり)いや、官房長に聞いて、大臣に答えさせます。

飯村政府参考人 繰り返しになりますけれども、報道の内容については具体的に個別に立ち入ることは差し控えさせていただきたいと思います。

土肥委員長 鈴木理事、何か。

鈴木(宗)委員 官房長は同席もしていないし、所管でないから、ちょっとそれは無理でしょう。かわいそうですよ。

土肥委員長 ちょっと筆記とめてください。

    〔速記中止〕

土肥委員長 では、筆記を起こしてください。

 木下君。

木下委員 では、大臣にお伺いします。

 この前、我が同僚の委員からの質問で、いわゆる正確な外相会談のメモ、これはもう既に見ておりますですか。外務省に保管されているとされる正式な会談メモは、これは見ておりますですか。

田中国務大臣 はい、見ております。

木下委員 そうすると、この東京新聞に報道されたものとは明らかに違うわけですね、大臣。

田中国務大臣 基本的には、報道についてはコメントはいたしません。

木下委員 いや、再三申し上げているように、報道され、そして、やはり多くの国民がこれを事実として認めているわけです。そして、私も物書きだったから言いますが、今後こういった問題を書いていく場合、これが基礎になって書かれていくんです。ですから、これは大変重要ですので、もし事実と違うとすれば、きちんと、これは事実と違いますよと言ってくれないと、今まで私も物書きですから、これを参考にして、今後、外交交渉、その他外交問題、記事を書くわけです。

 ですから、違うならば違う、正式のものは別にありますとはっきり御答弁してください。

田中国務大臣 違うところも多々ございます。その理由は、その新聞、何日の新聞をおっしゃっておられるのか……(木下委員「六月八日です」と呼ぶ)八日の東京新聞をおっしゃっておられますよね。

 ですから、それだけに特定いたしませんけれども、もう再三再四申し上げてきておりますけれども、オーストラリアからも、これは完全な捏造、コンプリートファブリケーション、捏造、作り物、うそ、虚構ということも言われていますし、それから同じようなことがイタリアの政府から、それからドイツからも言われております。

 殊に、今度はその新聞、六日の東京新聞に限って申しますと、それについては、私はほかの委員会でも、これはどこの委員会だったか、参議院か衆議院か、日にちもちょっと、調べればわかりますが、そのときには、ドイツのときに通訳をした方がいて、余りこれを問い詰めてはいけないと思っておりましたが、副大臣と一緒に大臣室に呼びまして、話をいたしました。そして、公電として自分がつくって本省に送ったもの、それを官房長に自分は見せるようにと言われて見せたそうでございますけれども、そのものを持ってきてくれました、私と副大臣に。それとその記事が余りに違っていて、自分は愕然としたと言っておりました。そして、早くに言ってくださればよかったのにと私が言いましたんですけれども、それはやはり若い人の立場というのもあると思います。

 それから、そのときに副大臣と一緒に、それでは実際に、ドイツの外務大臣と、これも複数で会談いたしますから、通訳が入るし、向こうも何人かスタッフ、私もスタッフで、いますから、大体十人ぐらい、普通のバイの会議だといってもそのぐらいの人は、どこの場合でも立ち会うわけですが、その中において、話が違っている、違って報道されているということを、この抗議の文書が来ておりますし、彼が、通訳、日本側の、外務省からの通訳の人が持っているメモを、あったら持ってきてくれませんかと申しましたら、別に嫌ならいいですよ、大臣の部屋のドアはあけてありますから、いつでもどうぞと申しましたら、本人、すぐ取って返して持ってきてくれまして、実はあるんですとおっしゃって、それも、その報道とはまるで違うものであったということを確認しましたし、本人からも聞いております。

 ですから、これはほんの一例でございますが、基本点に返りますと、二国間の問題、こうしたことは、先ほど官房長も申しましたように、相手の国との信頼関係もございますので、細かいことについては差し控えさせていただくということでございます。

木下委員 各国の外務大臣もしくは政府関係者から届いた文書、書簡は私も全部持っております。私も、イタリア語、ドイツ語、いろいろなところを訳してもらったりして、よく見たんですが、どうもこの田中大臣の発言、一連の発言について、すべて否定しているわけじゃない。特に、ダウナー・オーストラリア外相のあれによると、これは、田中外相との話し合いについての情報を米国に伝えると私が橋本総理に述べたとの示唆は全くの作り話である、そうは書いてありますが、発言について、これが間違いであった、事実と違うという指摘はされていません。

 それから、これはイタリア、北京において、ディーニ・田中会談の内容について、ディーニ外相と田中外相は、また日本と他のアジア諸国との関係、安全保障や防衛に関する問題についても話し合った、こういうふうに指摘しております。

 ですから、そうした一連の問題になった発言について、オーストラリアの外相は、発言していないとは言っていないんです。事実無根だとは言っていない。ただ、橋本前総理大臣がアメリカに伝えると言ったことに対して、これは言っていないと言っているだけの話で、重大な発言については全く否定していませんが、これはどうなんですか、大臣。

田中国務大臣 確かに、橋本総理との会談につきまして、自分が言っていないことが述べられていて、自分はそういうことは示唆はしていない、作り話であるということも言っておられますが、その後に、これ、全部英語で書いてございまして、日本語訳がありますが、私は、田中外相との非常に建設的で親密な会談が最近のメディアの報道において歪曲され、誤報されていること、誤報されていることをまことに遺憾に思うという発言をしておられます。

 必要でございましたら、次の国も読ませていただきますが、いかがいたしましょうか。

木下委員 いや、みんな持っていますから結構でございます。

 ですから、誤報というのは、要するに橋本元大臣のそれについての誤報というふうにこれは解釈される。

 こういう文書、書簡があちらさんから来た、これは、外務大臣が要請して出してもらったものですか、あるいは外務省なりが要請して出してもらったものなんですか。

田中国務大臣 オーストラリアとイタリアは、日本の報道ぶりを見て、インターネット等で気づかれて、即あちらの方からお返事を、こういうお知らせをいただきました。そして、その後委員会等で、それでは、では次はドイツはどうだというふうな、次はどこはどうだということでしたので、ドイツにつきましては、在京大使館ケストナー大使を通じてお願いをいたしました。

 それから、先ほどの発言、これはちゃんとパラグラフ別になっております、オーストラリアの件でございますけれども。これは、はっきり橋本総理とのこととそれから私のことを分けて書いておられまして、田中外相との話し合いについての情報を米国に伝えると私が橋本元総理に述べたとされる示唆は全くの作り話、そして、私は、田中外相とのと、ここは主語が私との会談に切りかわったパラグラフがございまして、非常に建設的で親密な会談が最近のメディアの報道において歪曲され、誤報されていることをまことに遺憾に思うと、同じペーパーを持っておられるんでしょうか、そのように書いてございますので、私との会談の中身も誤報であるということをはっきり述べられていることを申し添えておきます。

木下委員 いや、誤報と言っていますけれども、田中大臣の発言について、すべて誤報なんて言っていないんですよ。それは見解の相違というか、大臣がそう解釈するならこれはしようがないと思うんですが、これは国民の多くの皆さんがやはり御判断される、あるいは委員会の皆さんが御判断されると思うんですが。

 先ほど言いましたように、これは大変、新聞報道された、もしこれが事実と違うのであれば、これはやはり歴史的事実としてそのたびに引用されてくるわけですから、大臣、できれば、どこが違うのかを明らかにしてくださいよ。そうでないと、これを引用して、また次、これが事実としてひとり歩きしていくんです。ですから、マスコミ報道については一々言えないとおっしゃるんだけれども、これは国の根幹にかかわる、外交の根幹にかかわることですから、事実と違うところがあったら、この報道だけで結構です、言った内容については私もう問いません、ですから、この報道のどこが違いますよ、こんなことは言っていませんよというところだけ指摘していただけませんか。そうでないと、本当にこれがひとり歩きしていくんです。大臣、いかがですか。

田中国務大臣 いろいろなメディアがございますので、逐一についてコメントをしたり修正したりすることはいたしません。

木下委員 いや、いろいろなメディアじゃなくて、みんな同じ出どころなんです。同じ文書から書いているんです。一部をとっているか全文を載せているか、その違いだけなんです。割かし全文が載っているのは東京新聞なんです。これについて、では私が指摘しましょうか。

 例えば、オーストラリアの外相との、米のミサイル防衛計画については、個人的に疑問に思っております、こう発言しているんですが、これは事実ですか、事実でありませんか、発言していませんか。

田中国務大臣 会話でございますから、相手が言ったり、それからほかの場面もございますけれども、いずれにいたしましても、相手国との関係がございますので、個々の問題につきましてはコメントはいたしません。

木下委員 いや、これは相手国の発言じゃなくて、あなた自身が言ったことについて事実ですかと聞いているんです。イエス、ノーで答えてください。

田中国務大臣 個々の報道につきましては、コメントはいたしません。

木下委員 では、大臣、もしこれを否定なさらないとするならば、これが事実として、今後いろいろな形で流布され、そして引用される。むしろ国益を損なう。それについて責任を負えないということになりますか。いかがですか。

杉浦副大臣 大臣は、今触れられましたミサイル防衛問題については、当委員会初め各委員会で再三答弁されておるわけですから、新聞報道と違っているとすれば、新聞報道の方が間違っているんだとしか言いようがないんじゃないでしょうか。

木下委員 いや、大事な問題になると、すぐ新聞が誤報だ、そう言って、一番マスコミを利用してパフォーマンスを示しているのは、田中大臣、あなた自身じゃないですか。あれだけのことを言って……(発言する者あり)ちょっと黙ってなさいよ。マスコミの報道がすべて捏造である、事実に反する、これじゃ国民は何を信じたらいいんですか。

 ですから、これが事実であるかどうか、違うんだったら違うと言ってくださいよ。だから、どこが違うのか、全部違う……(発言する者あり)わからないですよ。

土肥委員長 ちょっとお静かに。

木下委員 そんなことはないですよ。

土肥委員長 静かにしてください。

木下委員 違うことだけわかればいいんですよ。

土肥委員長 質問を聞いてください。どうぞ。

杉浦副大臣 外交交渉あるいは重要会談の中身について公表することは、相手国との関係があってできない部分はできないと再三申し上げているとおりでございます。その言われている文書が仮に万々が一、万々が一、仮に漏えいされた文書だとするならば、なおさら、その一部分たりとも、合っているとも合っていないとも言えないということは御理解いただけると思います。

木下委員 それでは、重ねてお尋ねします。

 もしこの文書がマスコミに流れているとすれば、これは外務省、回収していますか。回収してくださいよ。こういうのがもしマスコミに流れているとすれば、これは重大な問題ですから、少なくとも、マスコミに対して事実と違うと、あるいはそういう形で対抗手段をとってください。これがもし事実として流れているとすれば、これは先ほども私言っていますように、これが基本になっていろいろな今後の、私ども物を書く人間、あるいは発言する人間はこれが基礎になっちゃう。ですから、事実と違うところはやはり大臣並びに外務省の方で対応策をきちんととってください。いかがですか。

飯村政府参考人 繰り返しになりますけれども、報道の個別具体的な内容についてはコメントを差し控えさせていただくというのが一点。それからもう一つは、マスメディアの方々が持っておられるものについて外務省が回収する、そういったことは私ども考えておりませんし、できないことであると思っております。

木下委員 この問題については、当委員会理事会で資料提出、さらに要求しておりますものですから、それと同時に、私は、これは大変重要な問題ですから、当委員会にきちんとした調査委員会を設けてやはり真相を究明すべきだ、そう提案したいので、委員長、御配慮をお願いしたいと思いますが。

土肥委員長 理事会で諮って協議します。

木下委員 それでは次に、外交機密費について質問させていただきますが、田中大臣は、大臣就任直後の記者会見で、外務省の説明は非常に奥歯に物の挟まったような言い方で、納税者と食い違った議論がされていて、前内閣の対応に私個人納得していない、そう批判してきました。

 大臣の言葉として、私の最大の目的は外務省、この外交機密費だ、この真相究明だとずっとおっしゃってきた。今まで、大臣就任から約二カ月たちました。大臣、この問題でどういう成果を上げられましたか。具体的におっしゃっていただきたい。

田中国務大臣 機密費の問題と申しますのは、国民の皆様の、納税者の方の関心、痛みの問題でもありますので、これを中途半端にしてふたをしていいというふうには私は思っておりません。それは、私の政治家として、また個人として、国務大臣としてそのように感じておりますので、それに沿ってやっております。

 その結果、六日の日に外務省の改革要綱というものを発表いたしました。これはまだ完璧なものではもちろんないと思いますし、いろいろ皆様の御指導やらアドバイスも仰ぎながら進めていかなければならないと思っておりますけれども、基本的にはこの改革要綱に沿ってやっていくということでございます。また、そのほかにいろいろといいアドバイスやらお知恵がございましたら、ぜひ具体的に何なりとまたおっしゃっていただきたいというふうに思っております。

木下委員 外務省の資料を事務方が出してくれない、再三にわたってこの委員会でも言っておられたようですが、この前の委員会では、その膨大な資料、田中大臣の御子息さんが見たとか見ないとか、そういう話になったとき、膨大な資料なので、税理士、公認会計士等のチームを組んで解明しないとというような発言がありましたんですが、その後、そういった形での、例えば公認会計士あるいは税理士、あるいはそういった人たちを含めての疑惑解明というのはなされているんでございましょうか。それとも、単なるお言葉だけだったんでしょうか。その点をお伺いします。

田中国務大臣 機密費の資料というのは、私と副大臣やら六人ぐらいで見に行きましたときに、膨大な量が部屋に入っていて、そんなところにだれかが、個人の一人がちょろりと知り合いだからなんて入れるような状態ではないということを申しましたので、それだけの量のものをやはりきちっとやるためには、この改革要綱の中でも書いてございますので、読ませていただきますけれども、ハイレベルの監察査察官を置くということも考えるというふうに書いてございますし、また、在外公館への査察ということも書いてございますので、この監察査察官という制度、これについてもう少し具体的に、今、国会中でございますから、時間が少しとれるようになりましたら早速着手をしていかなければならないというふうに思っております。

木下委員 この前の外務委員会で、私どもの菅幹事長が、外務省報償費の官房費への上納について、いろいろなこれまでの総理並びに官房長官にお話を聞いたら、ないということだからないんだというお話、これに対して菅幹事長が、外務省の決算書を見ればはっきりするじゃないかと言いましたが、大臣、外務省の決算書を見ましたですか。

田中国務大臣 これは、個人の家庭と違いまして大変膨大な決算書でございまして、それは素人がぱっと見てわかるような性質のものでもなくて、えらく膨大なものであるということがまず確認できて、そこまでは踏み込めたわけでございます。したがって、上納につきましては、もう何度も何度も申し上げていることで恐縮でございますけれども、官房長官や外務大臣経験者等に確認をした結果、そういうことはないということでございますので、そのように認識をいたしております。

 ただし、機密費のことにつきましては、特に在外公館につきましては、これからしっかりと調べていかなければならないというふうに思っております。

木下委員 いや、これは、全部の外務省の決算書を見ろと言っているんじゃないです。報償費だけ見れば、これは膨大だといったって、報償費の項目というのはそんなに膨大じゃないはずなんです。見る気がありますか。見て結論を出す気がありますか。それとも、やる気がないんですか。その点だけはっきりさせてください。

田中国務大臣 再三申しますけれども、個人と違ってこれは大変膨大なものでございますので、私もいろいろの関係書類を見ておりまして、そして関係者にも話をして、外務省の報償費が内閣官房に上納されていないということを確認いたしておりますが、これを見るということは本当に、普通のこうした日常的な政治活動をしながら片手間にできるような量とか質のものではないということをはっきり申し上げさせていただきます。

木下委員 いや、上納しているか、していないか。そんなものがそんな膨大じゃないはず。もしあれだったら、本当に信頼できる外務省の人たち三、四人チームを組んで調べろと言えば、指示すれば、きちんと結論を出せと言えば、一週間あれば私はできると思うんですが、やっていただけますか。

土肥委員長 副大臣でいいですか。

木下委員 いや、大臣、お答えください。大臣。大臣がやる気があるかどうかを私は聞いているんです。

杉浦副大臣 外務省の報償費から内閣への上納の問題につきましては、大臣が再三再四お答えになっているとおりでもございますし、あるいは内閣官房長官が本国会においても再三答弁されていると承知いたしております。

 私ども、外務省改革要綱をまとめるに当たりまして、植竹副大臣と私が中心になってずっとまとめてまいり、報償費……(発言する者あり)

土肥委員長 今ちょっと、やじには答えないで、どうぞ質問に答えてください。

杉浦副大臣 杉浦正健でございます。

 要綱を作成するに際しまして、調査もいたしております。大臣にも御報告しておりますが、大臣が再三再四答弁されているとおり、上納という事実はないものと承知しております。

木下委員 今の御答弁ではとても、私自身も納得できませんし、国民も皆さんも納得できません。ですから、本当にやる気があったら、外務省、報償費についてチームを組んで、そこだけとにかく集中してやってください。これだけお願いして、質問を終わりにさせていただきます。ありがとうございました。

土肥委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時四十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三分開議

土肥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行します。赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 けさ、冒頭、外務委員長の方から私たち外務委員会を代表して外務大臣に御指摘があった点、私も、国会は国権の最高機関であり、そこでの論議を離れての外交はあり得ないと常々考えています。したがって、外務大臣におかれても、よく委員会での議論を尊重されて、そして外交問題に臨まれるように要望しておきたいと思います。

 きょうは、私は、ミサイル防衛、集団的自衛権、そして日米関係、これらの問題について最初に論議をしていきたい。そして次に、今射撃訓練場の危険性が問題になっておりますが、沖縄での射撃場の問題、こことかかわって海兵隊削減の問題等について議論してみたいと思います。

 最初にミサイル問題ですが、先日の外務委員会で外務大臣は、TMDとNMDの一体化の問題について日米外相会談で説明を求めたかどうかをお伺いいたしましたら、まだまだTMD、NMDというのは概念上の問題であり、細かい話ではなくてトータルな意見交換をしたと答弁されておりました。そして、この問題では具体的な説明を求めなかったことを明らかにしたわけですが、私、このミサイル問題は、ブッシュ政権で検討段階だからこそ、私たち日本の側にとって憲法上認められない問題についてはしっかり指摘すべきであったと思うのです。

 そういう憲法上認められないという立場の指摘を抜きにして理解するということを発言してこられたわけですが、一方で、中谷防衛庁長官は、さきの防衛首脳会談でもそうですが、訪米前のテレビ番組の中では、アメリカのミサイル防衛構想、防衛網への参加の問題については、現在のところは参加することはない、日本ができるのは個別的自衛権の範囲だ、TMDで我が国を防衛するレベルの研究をやっているので、そこから現時点で逸脱をすることはない、このように述べているわけですね。

 私は、そういうアメリカの、憲法の枠組みを超えた集団的自衛権の行使につながるような危険性には日本は参加しないんだという立場に立つのであれば、アメリカ政府がまだその構想自身が固まっていない段階で理解するという発言は、これは間違っているんじゃないか、やはり憲法に抵触するものはできないということをきちんと伝えておくべきだと思いますけれども、特に首相の訪米も前にしておりますが、外務大臣としてはどのように考えられますか。――いやいや、外務大臣が訪米をして、理解するという発言について聞いているわけですから。

田中国務大臣 ミサイル防衛構想は、御案内のとおり、まだ検討中の段階でございますので、今後とも日米間で緊密に連絡をとり合いながら研究をしていこうという意味でございますので、即集団的自衛権とか憲法問題に抵触するということではないというふうに存じます。

赤嶺委員 ですから、アメリカがまだ検討段階で、しかし、その検討次第によっては日本の武力行使への参加も含む集団的自衛権の危険な道が開かれているわけですね。そこに十分注意をするというのが、憲法を尊重するというのであれば、今の政府のとるべき態度だと思うんですよ。

 実は、「防衛庁長官の訪米中における主な会談の概要」という、防衛庁からペーパーをいただきました。この中で中谷長官は、ミサイル防衛について日本政府の立場ということを発言しておられるんですね。ペーパーの中身で読み上げますと、中谷長官より、アメリカのミサイル防衛計画に対する日本政府の立場を確認しつつ、仮に日本が弾道ミサイル防衛システムを保有する場合、我が国防衛のために日本が主体的に運用するシステムを保有する考えである旨発言したのに対し、つまり、危険な集団的自衛権につながるようなものではなくて、日本独自で保有するんだ、日本独自で武力を保有しないのが憲法で、そこからはもう既に逸脱しているわけですが、そこは百歩譲って、とにかく日本独自にやるんだ、こういう発言をしたのに対して、同席していたマイヤーズ統参副議長からは、在日米軍の防衛にも配慮してもらいたい、指揮の点については、日本が諸々の観点から検討していく中でともに話し合っていきたい旨、発言しておられるわけです。

 つまり、中谷防衛庁長官としては、ミサイル防衛構想へは日本の参加としては限界がある、日本独自の方向でやっていきたいということについて、アメリカは返事をしていないんですね。アメリカはそういう日本独自の体系について返事をしていなくて、いや、そうはいっても在日米軍基地も守ってくれよだとか、指揮についてはこれから検討していきましょうとかということで、いわばアメリカのミサイル防衛構想にずるずる引きずり込むような発言をしているわけです。

 それだからこそ、憲法の立場からはそういうミサイル防衛構想には参加できないんだということをきっぱりと表明しないと、これは、アメリカがそこに答えないで在日米軍基地の問題だとか指揮の問題を持ち出しているわけですから、政府の立場を明確にする必要があると思いますが、もう一度伺いますが、いかがですか。――いや、副大臣、そこは、大臣が手を挙げて答えようとしていますから、大臣、お願いします。――いや、だめですよ、それは。日米外相会談の話をしているわけですから。

田中国務大臣 お答え申し上げます。

 ミサイル防衛は、先ほどから言っておりますように、これは検討中の段階でございますから、ではなぜ検討を理解するかというところから申し上げたいと思います。

 現在、地球上には四十一カ国が弾道ミサイルを有しております。そして、そういう実態を踏まえまして、私たちが、核の拡散とかそういうふうな脅威をなくすためにアメリカがこうした構想を持っているということについては理解をすると言っております。それから、後は、これについて開発ですとかあるいは配備をすることに、私たちがそこまで踏み込んでおりません。なぜならば、まだ研究の段階であっても、まだ先がどのぐらいかかるかというふうなこともはっきり見えていないということがわかっております。したがって、この中谷長官の発言も、アメリカとの共同研究を行っているBMDは純粋に我が国の防衛のためである、そういうことをおっしゃっているというふうに思います。

 それから、憲法の問題に関しましては、この小泉内閣は、もう御案内のとおり、衆参両院で憲法調査会を持っておりまして、その中でいろいろな意見が出ております。その中で、集団的自衛権について踏み込んで議論をするところもありますし、それを反対する政党もおられます。したがって、そういうことを前広に議論をする、それを踏まえて今後考えていきたいというのがこの小泉内閣のスタンスでございます。

赤嶺委員 現憲法のもとでは参加できないことははっきりしておりまして、内閣として憲法の遵守義務もあるわけですから、それで、中谷防衛庁長官が独自の防衛構想、ミサイル防衛構想と言ってみたところで、アメリカはそこに耳を傾けていないんですよ。別の返事をしているんですよ、指揮権の問題とか在日米軍基地の問題とか。

 それで、私は、核の分散を防止するためにアメリカがこれだけ危険なミサイル防衛構想を持っているとは、とても考えられません。

 そもそもアメリカが何のためにこのミサイル防衛構想を進めているかという問題ですが、二〇〇一年の国防報告で、アメリカの二十一世紀の防衛戦略は、アメリカの国益に有利な方向で国際安全保障環境を形成し、あらゆる領域の脅威に対応し、不確実な将来に備えるよう努めることである、つまり、ミサイル防衛はこの戦略の重要な要素であると述べています。アメリカは、世界の平和だとかミサイルの拡散ではなくて、アメリカの国益のためにということを二〇〇一年の国防報告ではっきり書かれているわけですが、外務大臣はお認めになりますか。

田中国務大臣 国防報告、これの中で言われていること、よく理解をいたしておりますけれども、ミサイル防衛というものを含む新たな戦略的枠組み、これはブッシュ大統領がおっしゃっていることですけれども、核兵器の一層の削減ということをおっしゃっているわけです。ですから、方向性は核兵器の一層の、さらなる削減という視点でおっしゃっておりますので、それは歓迎してよろしいのではないでしょうか。

赤嶺委員 それが一層の核兵器の削減につながるかどうかなんですが、私、ここに、アメリカの国防大学の国家戦略研究所が四月に、四年ごとの国防見直し、QDRの策定に向けて出した報告書、「QDR二〇〇一―戦略に導かれたアメリカの安全保障の選択」というこの資料、これは全体として四百ページぐらいあるので、きょうの論議にかかわる部分だけ抜粋して持ってまいりました。

 アメリカの国益ということを認めつつも、核兵器の削減につながるといいますけれども、このQDRに向けての安全保障の選択という本には、もっと露骨に、もっとむき出しに、アメリカが何のためにミサイル防衛構想をつくり上げたかということが書かれているんです。

 それをちょっと読み上げてみたいんですが、従来もアメリカは、自国が武力攻撃を受けていないもとでも、他国に介入して軍事行動を起こすという戦略をとってきました。また、そういう行動も繰り返してきました。国防報告などで、繰り返し、アメリカの国益がかかっている場合には単独でも行動すると明言し、グレナダ、パナマ、イラクなど国際的にも批判を浴びた軍事介入を強行してきています。アメリカの場合は、こうした軍事介入をする際に、アメリカ本土が攻撃を受けることのないよう、その保証としてこのミサイル防衛を進めようとしているということが、この報告書の中に書かれております。

 報告書は、答弁のときにまた、これは民間の研究所の報告書ですからという答弁にならないようにあらかじめ申し上げておきますが、これはアーミテージ国務副長官も名前を連ねております。それから、シェルトン統合参謀本部議長も後援しております。

 この報告書の中には、拡散国家が、つまり先ほど外務大臣が発言された核兵器の拡散、そのミサイルを持っている拡散国家が弾道ミサイルを使用する脅威、つまり遠く離れた事態にアメリカが介入する可能性のために、アメリカ本土の非戦闘員が大量に死亡するという見通しは、アメリカの介入への強力な抑止となる。アメリカがどこかの国に介入しようと思う場合に、本国が攻撃されるという事態があったら、それはアメリカの行動の強力な抑止になる。したがって、アメリカが拡散国家の周辺に戦力を投入したとしても、憤激した拡散国家がシカゴやロサンゼルスを危険に陥れないということをアメリカ国民に保証する、そのために弾道ミサイル防衛の導入を提案している。このように書かれているんです。

 だから、弾道ミサイル防衛構想というのは、実は、アメリカの圧倒的な軍事力で国益を守るために、なお、遠く本国から離れた他国に介入しても、本国が危険に陥れられないようにするための圧倒的なミサイル防衛力、このように考えますけれども、考えるというよりも、これがアメリカのこういう本の中にもちゃんと出ているわけですが、外務大臣、そういう考えをアメリカが持っていることを否定できるでしょうか。

杉浦副大臣 先生のお示しになった論文はまだ私見ておりませんが、今引用されたところにも基本的には出てまいっておりますけれども、私は、アメリカのミサイル防衛構想というのは、そこにも触れておりますが、アメリカの国益、つまりアメリカ人の生命、財産、国土を他国からのミサイルの攻撃からどうやって守るか、そういう国益から出た構想だと思っております。これは、アーミテージさんと、お見えになったとき話したときにもはっきりと申しておられました。

 つまり、ロシアとの間でABM協定を結んだ段階ではアメリカまで届くミサイルを持っているのは二国しかなかったわけですが、その後続々ふえまして、現在は四十一カ国、もっとあるのではないかという説もあるのですが、保有するに至っております。ヨーロッパの主要国は持っておりますし、中国を含めてアジア、中近東などでも持っておる国があるわけでございます。

 そのように、弾道ミサイルが拡散した、拡散しつつある状態のもとでABMだけに頼っていたのでは、どこから、彼らはローグカントリーという言葉を使っていますが、ならず者国家というのでしょうか、正確にどことどこと言っていませんが、ミサイルが飛んでくる可能性が否定できないわけでございまして、この間の大統領選挙でも、ブッシュさんのみならずクリントンさんもミサイル防衛の問題を取り上げて、我が国土、国民をミサイルからどう守るかというホットな論戦が展開されたことは御案内のとおりでございます。

 したがいまして、先ほど来大臣が申し上げておるとおり、アメリカがそういう構想を持つのはアメリカの国益のために必要なことであって、それを理解するのはある意味では当然のことでございます。

 加えまして、アメリカは、日本もそうでありますが、全世界に軍隊をそれぞれの事情に応じて展開し、また、多くのアメリカ人が世界中に散っておるわけでございます。アメリカは、ちょうどハブとスポークみたいに……(赤嶺委員「いいですよ、答弁は簡潔にやってください」と呼ぶ)お答えを申し上げております。ずっと、例えば米韓とか米ASEANとか、それぞれ相互防衛協定を持っておりまして、双務的な協定を持っておって、それらの地域、多くの地域に部隊を展開しておるわけでございます。それらの地域の自国の軍兵、人々が攻撃された場合に対する対応も考えなきゃいけないということで、いろいろな協議を各国と行っております。

 日本のTMDも、テポドンが我が国土上を通過いたしました。我々日本国民は脅威を覚えたわけでありますが、日本の安全保障の見地から、まあ北朝鮮の場合は潜在的脅威と言えるかもしれませんが、飛来する可能性がある、そこから国土を防衛しなきゃいけないという見地から、アメリカと共同して、アメリカに、米軍もおりますし、日本に飛来する可能性のあるミサイルをどう防ぐかということで共同研究を始めておるわけでございます。

 したがいまして、まだ研究の段階で、一体どういうものができ上がるか、どういうような配備になるのか、アーミテージさんも、洋上展開になるのか陸上からにするのか、まだこれから研究するんだということを申しておられましたが、そういう全貌が明らかになった段階で、私どもは、日本の安全保障、防衛の見地からどのようにかかわっていくのかという問題を議論することに相なろうと思います。

赤嶺委員 副大臣、答弁は最小限、質問者を向いてやった方がいいですよ。とても自信がないように見えますよ、質問者に向かって答弁しないと。それで、長々とやらないで簡潔にやってください。私たち、限られた時間の中でやっているんですから。

 ただ、副大臣は、ミサイル防衛構想は、アメリカのやっているのはアメリカの国益のためだということを認められました。そして、アメリカは、国益のためならば、単独ででも世界じゅうに軍事介入をしてきた国であります。国連の決議に基づいて行動しているような国ではありません。そういう国のミサイル防衛構想を理解する、あるいは、沖縄の米軍基地も、アメリカの国益のために置いているということを彼らはいろいろなところで繰り返しているわけですけれども、本当に、そういうところを理解するという政府の態度、これでは、憲法で禁止している武力行使、そういう道に進むのではないかという不安を持つのは当然だと思います。

 私、この問題の最後に、やはり各国からも批判されているわけですね。中国やロシアや欧州諸国、特にNATOからも批判をされている。何で批判されているかというと、アメリカのそういう構想が世界の軍拡競争につながると。軍事拡張競争につながる、核兵器の削減じゃない。核兵器の削減につながると言っているのは日本ぐらいで、世界は全部それを核軍拡競争、新たな軍拡競争ということで危惧しておりますけれども、その軍拡競争につながるという危惧や懸念はお持ちですか。

杉浦副大臣 先生御指摘のように、さまざまな意見が国際社会にあることは承知をいたしております。ただ、そういう懸念が生じるかどうか、まだ判断する段階には立ち至っていないと私どもは思っております。

赤嶺委員 世界はそのように判断をしてアメリカに意見を申し上げております。日本外交の基軸が日米外交であり、日米外交に対して自主性ということが大事だといいながら、個々具体的な問題では世界の国々がとっている当たり前の自主性も発揮できないようなことでは、より大きな不安を国民は持つことになると思います。

 それで、次に、金武町伊芸区の問題。ここは海兵隊の実弾砲撃訓練が行われていた地域であります。そこの伊芸区の実弾砲撃訓練が本土の五カ所に分散、移転をしたので、沖縄県民の苦難を軽減したとか負担が軽減されたとかとよく言われております。その負担が軽減しているはずの金武町伊芸区の問題について、そこの伊芸区の部落の決議が防衛庁に送られたと思います。昨年九月二十六日付で、金武町伊芸区から那覇防衛施設局長あての要請書が出されております。五項目の要求です。早朝による実弾射撃訓練の中止、居住地に近いレンジ4の奥地への移転、レンジ5Fでの実弾射撃訓練の中止、伊芸区地内の不発弾の処理を行うこと、実弾射撃訓練の騒音による防音対策を講じること、この五項目です。

 伊芸区の区長さんは、区民総会の決議を上げただけでは意が通じないということで、那覇防衛施設局長に私信を送りまして、それが私のところにも届けられました。このように書いてあります。

  拝啓、那覇防衛施設局長山崎信之助殿

  私は、金武町伊芸区の区長、上江州徳幸と申します。突然の抗議文を発送いたしましたこと、ご理解いただきたく存じます。九月二十日水曜日午前五時三十分頃、突然レンジ4での実弾射撃訓練がはじまり、その騒音が小銃の音とともに迫撃砲、バズーカ砲とも思える大きな音に区民が安眠から目覚め子供たちが恐怖を感じ泣きさけんでいるとの訴えがあり、施設局に電話による抗議をいたしました。実弾射撃訓練は日常行われており、レンジ4の位置が居住地に約三百メートル、着弾地が約四百メートルの距離にあることが危険であることを示しています。また、いつ起こるかもしれない流弾事故そして射撃訓練の騒音被害を防ぐには実弾射撃訓練の中止と山手へのレンジ4の移転を要求する。

  平成十二年九月二十六日 伊芸区長上江州徳幸

このようになっています。

 今なお、レンジを使っての実弾射撃訓練で、早朝から本当に、安眠が妨害されているというどころじゃないです、もうバズーカ砲を撃ち込む音だというぐあいに言っておりますから。

 それで、北海道での実弾射撃訓練の被害も出ていて、抗議の声も上がっておりますが、この点について防衛施設庁が今どのようにこたえようとされているのか、答弁をお願いします。

伊藤政府参考人 先生御指摘の訓練移転はいわゆる県道越え訓練というものでございまして、県道一〇四号線を遮断して、重砲と言ってよろしいと思いますが、百五十五ミリの大砲を撃つ訓練でございました。これについては、もちろん騒音の問題も上がったと思いますが、特に一〇四の遮断という問題を中心に地元からの御要望がございまして、SACOの過程の中で、平成九年以降、本土の五施設に移転をしていることは御承知のとおりでございます。

 今御指摘の、伊芸区のレンジ4あるいはレンジ5といったものがあるわけでございます。ここでは、重砲ではございませんで、今先生も御指摘のような迫撃砲とか小銃等の射撃に使用しておるわけでございますが、御指摘のとおり、昨年九月二十六日に区長から局長あてに手紙をいただいております。私どもも、かねてから米側とも、いろいろと申し入れをしておりますし、この件につきましても米側にも直ちに申し入れをしているところでございます。

 いずれにいたしましても、騒音そのものは大変御迷惑をおかけしていることでございますので、今後、御要望の移転も含め、できる限りの騒音軽減のための措置をとれないか、なお検討をしているところでございます。

赤嶺委員 伊芸区から上がったものについて、移転を含めて検討なさるわけですね。そのような答弁として受けとめます。

 本当に、バズーカ砲などの砲撃音によって、明け方早く射撃訓練が行われて子供が恐怖心を感じるような、そういう国は独立国ではないはずですよ。それが外国軍隊の演習によって苦しめられている。

 米軍の海兵隊の訓練の海外移転というのがありましたが、訓練の海外移転では沖縄県民の苦難は軽減されないと思います。軽減したと思っている伊芸区でこういう状態ですから、やはり、沖縄本島の二〇%を占めている米軍基地を縮小、撤去してこそ県民の苦難は解決する、今の小泉内閣はその逆の道を歩んでいるということを指摘しまして、私の質問を終わらせていただきます。

土肥委員長 次に、土田龍司君。

土田委員 自由党の土田龍司でございます。

 きょうの質疑の冒頭に中野寛成先生が質問されたわけでございますが、その話の中に、本当に改革をしようとする者は多くを語らず、にせものは大声で話すという話がありまして、私も、これまで大臣に何回か質問してまいりましたけれども、大声で質問したことが何回もありました。田中大臣は、それを上回る大きい声で答弁をいただきました。きょうは少し、真剣でございますので、小さい声で話しながらやっていきたいと思っております。

 それはなぜかといいますと、我が国益にかかわると私は思っておりますし、きょう、あしたの問題だからです。特に、最初に質問申し上げる中国の海洋調査船の問題、これまで、前回も質問いたしましたが、どうも納得がいかないといいましょうか、政府の態度がはっきりしていない点がある。あるいはさらに、外務大臣の認識の甘いところがあるように感じますので、その質問からするんですが、前回の大臣の答弁で、あなたはそう言うけれども、資源探査はやっていいんですよという答弁がありました。私は体が震えてしまいまして、それ以上質問することができませんでしたが、明らかに間違いであります。資源探査はやっちゃいけないんです。

 やっちゃいけないからこの問題が発生しているわけでございまして、たまたまその席にいらっしゃった海上保安庁長官が訂正した答弁を、正確に答弁をされましたからそれでよしとしたわけでございますけれども、翌日の新聞には、日本政府は資源探査をやっていいという見出しが出てしまいました。全部読んでみますと、やっちゃいけないことが書いてあるんですが、見出しだけ読む人は、日本の外務大臣は資源探査を認めたというふうに勘違いするおそれがあります。

 大臣は前回の答弁に対して正確に訂正し、謝罪すべきだと私は思うんですが、どうでしょうか。

田中国務大臣 正確に再度申し上げたいと思いますけれども、本質論と前回の問題とがちょっとごっちゃになっているといけませんので、整理して、お話をもう一回改めてさせていただきたいと思います。

 国連の海洋法の条約によりますと、中国を含む他国が、我が国の排他的経済水域及び大陸棚において、我が国の事前の同意なく海洋の科学的調査を行うことは認められておりません。これが一つです。それからもう一つ、天然資源の探査。これが前回の中国の問題にかかわると思いますけれども、二つ目が、天然資源の探査についても、同条約によりまして、沿岸国が主権的な権利を有するのは当然ですけれども、我が国の明示の同意がなしには、こうした排他的経済水域及び大陸棚において天然資源の探査を行うことは認められておりません。これが基本です。

 しかし、前回委員からお尋ねのありました、さきの中国の海洋調査船の事件につきましては、これは、エアガンの使用、前回委員もおっしゃったと思いますけれども、ボーリングの実施を伴う調査が必ずしも海洋の科学的調査として認められないわけではなく、これらの調査については、中国側に追加的な情報の提供を求め、そして関係省庁、複数の省庁で協議をしつつ慎重に検討を行った結果、海洋の科学的調査として問題がないということを政府全体として確認して同意を与えたということでございます。

 したがって、基本にあるものと前回のものはそういうふうな状態であるということを再度御説明申し上げます。

土田委員 再度話を整理して今答弁したというふうにお思いでしょうが、前回とは答弁が全然違うんです。だから、この話をもう一回持ち出しているんです。

 これは、謝りたくないとか訂正したくないという気持ちがおありでしょうけれども、やはり訂正してもらわないと。大臣を攻め込むつもりでなくて、外国に対して間違ったメッセージを送ってしまったことについてはやはり訂正しなきゃならない。あなたは今、整理して、再度と言っていましたけれども、これは明らかに違います。前回の答弁と違っているから私は言っているんです。

 これはいいです。今の答弁で、大臣が正式に答弁はしたということで構いませんけれども、間違っていないとか謝るつもりないということにはならないというふうに思いますよ。

 そしてその後、今の後段の部分については特に質問したわけじゃないんですが、もう一回、その件については質問します。

 総合的に、日本政府としては許可を出したと言いましたね。前回の答弁の中にも、内閣官房、環境省、経済省、防衛庁、水産庁、海上保安庁、文部科学省等で協議の上、総合的に判断したと。今と同じ答弁でございますが、さて、その中で、エアガンによる調査とボーリング調査を中国は求めてきているわけですが、この調査をやっていいと判断したところはどこですか。

杉浦副大臣 お答え申し上げます。

 今お述べになりましたような各省庁で協議いたしますので、もし、一省庁でも反対だ、だめだということであれば、協議は調わないはずであります。ポジティブな面でどこが言われたのかという点には、一応、全省庁が同意をしたということでございまして、そういうふうに御理解願いたいと思います。

土田委員 一回目の答弁としてはそれでもいいかもしれません。しかし、総合的に判断するのは当然でございますけれども、これを所管しているところがどこかあるわけですよね。文部省なのか防衛庁なのか、それを聞いているのです。それで、いろいろな調査の仕方がある。あるいは期間の問題、区域の問題、やり方についてもあるでしょう。しかし、このエアガンとボーリング調査はこれはいいでしょうとしたその担当セクションを聞いているのです。それはどこですか。

杉浦副大臣 今、事務方に聞いてもはっきりとはわからないというようなことを申していますが、政府全体として検討をして政府として結論を出したということでございますので、しかも、オーケーという前提の議論でございますので、総合的に判断して政府として了承したと言う以外に申し上げようがないと存じますが。

土田委員 この問題は、質問をとりに来られた外務省の方に私聞いたんです、一体どこなんでしょうねと。そうしたら、その人はわからないと言っていましたよ。それで、調べてみますねと。当日、外務委員会で質問しますから、それは調べておいて答えてほしいというお願いをしていたんですが、言いたくないのか本当にわからないのか、ちょっと大事な問題なので、きょうの答弁はなくてもいいですから、調べてほしいと思っているのです。

 なぜこの問題をしつこく言うかというと、大臣も副大臣も御存じでしょうけれども、中国には前科があるからですよ。中国はかつて南沙諸島で、南沙諸島というのは、御存じのとおり、まだ領有権がはっきりしていない島々です。どこの国の所有かはっきりしていないときに、中国は、科学調査と称して資源調査をやったのです。それで、そこでたまたま地下資源が見つかったために、中国は軍艦を出してきてそこを占有してしまったのです。

 こういった前科がある中国が日本の近海で科学調査と称しながら資源調査をやっている疑いがある、だから言っているのです。疑わしきは罰せずじゃないのですよ。疑わしきは拒否しなきゃならない、そういったことをやる可能性があるならば拒否しなきゃならない。その方法論としてエアガンとボーリング調査を認めているというわけでございまして、これについては、ほかの調査を私は全部知っているわけじゃないのですが、この二つの調査だけはやはりやめさせないと、疑わしい状況にあるのですが、どうですか。

杉浦副大臣 おっしゃっている趣旨はそのとおりでございまして、調査すべきところは調査いたしますし、これからの問題として御指摘の点は厳しく受けとめさせていただきまして、これは各省庁合議の上決定することでございますが、御指摘のような点がないように今後努力してまいりたいと思います。

土田委員 今後検討するとおっしゃられますが、もう既に現在進行中でございまして、既に二月十日以降十三件の事前通告があって、そのうちの十一件について日本政府は許可を出されている。二つの件は今検討中でしょうか、まだ回答が出されていないのですが、これからどんどん中国はそういった事前通告をしてまいりますということが予想されるわけですね。

 ですから、今後の問題としてとらえるのではなくて、もうきょう、あしたの問題としてすぐ調査をされて、やらせないとかそういった総合的な判断をしていかないと、これは大変な問題になる可能性が出てくるのです。

 しかも、中国船が違反をやっていたのが発見されたのは、この前の海上保安庁長官の答弁で一件だけでございましたけれども、それも期間をはるかに超えているのですね。一日、二日日にちを間違えたという話じゃないのです。何カ月も超えている、あるいは区域も随分遠いところまで行って日本の近海の調査をしているというわけでございますので、今後の問題として考えるのじゃなくて、今現在の問題としてとらえてこれは真剣にやってもらいたいというふうに思います。別に答弁はいいのですが、では、決意表明でもやってください。

杉浦副大臣 大変言葉が足りなくて申しわけございません。現在を含めて将来へ向かって努力するということで御理解いただきたいと思います。また、御指摘の調査船について明白な証拠が出れば、もちろん、中止を申し入れることは当然のことでございます。

土田委員 この問題は一応これで終わりにするのですが、ちょっと一問だけ確認しておきますけれども、外務省から中国へ抗議を口頭でされたと。口頭でするのじゃなくて、これは条約違反でありますので、明確に文書で抗議をして、文書でやはり回答をとるべきだと思いますけれども、今後、ぜひそういうふうにしていただければと思います。

 続いて、今度は韓国との問題です。韓国のサンマ漁の問題です。

 我が国が、三陸沖で韓国の船がサンマをとることに拒否をいたしました。韓国政府はこの措置に対して撤回を求めてきているわけです。北方四島の周辺における操業の締結は漁業問題であって、日本が言っているような領土問題ではないですと韓国は言っているわけです。

 大臣は、この問題を領土問題ととらえるのか漁業問題ととらえるのか、どっちでしょうか。

杉浦副大臣 そういう御質問にお答えするとすれば、領土問題であると同時に漁業問題である、そういうふうにお答えすべきだと思います。この問題、今私どもは厳しく抗議を申し入れ、話し合いを始めておりまして、経緯を若干、簡単によろしいでしょうか。(土田委員「いや、知っています」と呼ぶ)いいですか。

土田委員 領土問題であって漁業問題という答弁ですか。それはだめです。農林水産大臣は、これは領土問題であるととらえている、発言しています。外務省は、領土問題であって漁業問題というのは非常にあいまいな答弁でございまして、ここは明確に領土問題、領土に関する問題と言ってもいいのですが、この方面でとらえないと話がおかしくなってくるのです。

 まず、韓国の言い分というのは、北方四島の話ですよ、実効支配している国からの許可、受諾が国際慣行であって、国際法にこれは合致しているんだという主張をしております。これに対する日本の反論の法の根拠をお話しください。

杉浦副大臣 今、先生がおっしゃられたような韓国が主張するような法慣行、国際法上の規定はございません。

土田委員 ということは、韓国がそういう主張をするという根拠はない、それが日本の主張ですね。(杉浦副大臣「はい、そうです」と呼ぶ)それで結構だと思います。

 それから、ロシアと韓国に対してそれぞれ抗議をされているわけです。ロシアに対しては、外務大臣からイワノフ外相あてに適切な対処を求める書簡を出されました。それに対してロシア政府は、六月十九日、外相の、日本からの抗議メッセージに対しての回答ですが、南クリル諸島とその周辺水域はロシアの領土、領海である、韓国漁船の操業許可を撤回するつもりはないというふうに報道されました。この報道は正しいでしょうか。

杉浦副大臣 報道についてのコメントは申し上げませんが、正式な回答は一切、公式にも非公式にも参っておりません。

土田委員 来ていないのですね。ロシアに対して六月十九日に撤回をしなさいという抗議をしたのにかかわらず、ロシアからは回答が来ていない。再度要求したのですか、しないのですか、する気はあるのでしょうか。

杉浦副大臣 私どもは、その回答を待っておりまして、非公式には早く発出するように話もいたしておりますが、待っておる段階でございます。

 韓国に対しましては、その後二十五日に、寺田駐韓国日本大使より韓外交通商部長官に対して改めて抗議の申し入れをいたしております。

土田委員 七月一日から操業は始まるのです。だから、きょう、あしたの問題だと言っているのです。(発言する者あり)七月一日じゃないですか。十五日でしたっけ。十五日でもいいです。(発言する者あり)では訂正しましょう。十五日でいいですが、ロシアからの回答がまだ来ないといっても、これは待っているべきじゃないんだと私は思うのですけれども、いつごろまで待ち続けるつもりですか。

杉浦副大臣 日時がまだ正式に決まったとは伺っていませんが、七月の上旬に与党三党の幹事長が韓国を訪ねられるというふうに伺っております。それまでに、その三幹事長の訪韓で実りある結果が出せるように、国内では水産庁と緊密に協議をしながらいろいろと対応策を練っておるところでございます。

土田委員 この韓国とロシアの北方四島付近での操業の合意ですね。昨年の十二月十日に結ばれたということらしいんですが、この協定が締結されたのを外務省が知ったのは何月何日でしたか。

杉浦副大臣 その協定が締結された間もなくの十二月十六日と聞いております。(発言する者あり)二十六日と聞いております。

土肥委員長 二十六日ですか、はっきり言ってください。

杉浦副大臣 十二月末でございます。末ごろでございます。

土田委員 質問のしようがないね。何月何日だったんでしょうか。

杉浦副大臣 大変失礼いたしました。十二月二十六日でございます。

土田委員 先に早く答えればいいんですよ。

 十二月二十六日に日本は知ったわけですね。それで、最初の申し入れが二月二十日に行われたと言われておりますが、なぜ二カ月以上も経過したんでしょうか。

杉浦副大臣 韓ロ双方に対しまして、事実の確認、内容の確認等を行っていた結果でございます。確認をいたしましてすぐ、二月二十日に出したというわけであります。

土田委員 随分日にちがたっているなということを言いたかったんですが、日本政府としては、ハイレベルの交渉をしたと言われておりますけれども、どのようなレベルでの交渉がされたんでしょうか。

杉浦副大臣 日にちを追って申し上げます。

 二月二十日が、申されたとおり、東郷欧州局長からパノフ駐日ロシア大使に対して申し入れをいたしました。

 次は、三月五日、加藤外務審議官からロシュコフ・ロシア外務次官に行っております。

 三月十六日、鹿取在韓国大公使から秋韓国外交通商部太平洋局長に申し入れをしております。

 三月二十五日には、森総理とプーチン大統領とのイルクーツク会談の際に、森総理からプーチン大統領に申し入れをいたしております。

 引き続きまして、六月十四日には、小町欧州局長からパノフ駐日ロシア大使、十五日には鹿取在韓国大使から秋韓国外交通商部太平洋局長に申し入れ、同時に、同日、篠田在ロ大公使からガルージン・ロシア外務省第二アジア局次長に申し入れをしております。

 十九日に田中外務大臣からイワノフ外相に対して書簡を呈したことは申し上げました。

 それから、六月二十二日、武部農林水産大臣から崔駐日韓国大使に対しまして厳しく抗議をされております。

 そして、最後、先ほども申し上げましたように、二十五日に寺田駐韓国日本大使から韓外交通商部長官に対して申し入れをいたしたというのが一番新しいものでございます。

土田委員 昨年の十二月十日に締結されたわけですね。そういった過程がずっとあった。今、記録見ながら答弁されたので間違いないでしょうけれども、それでもロシアは回答をよこさない。それでも待ち続けるんですか。

 と同時に、じゃ何で十二月十日に締結されたのが、我が国が知ったのが十二月二十六日でしたっけ、半年間もそういった経過が続いていくのに公表しなかったんでしょうか。その二つの問題。

杉浦副大臣 だんだん実情がはっきりして、話し合いはずっとやっておりまして、申し入れながら話し合いをしておるわけですが、はっきりしてまいっておるんですが、最初は穏当な話し合いで解決するのかなという感じでスタートしたんですが、だんだんと、これは大変厳しい、協議で打開するというのも難しいという状況がわかってまいりまして、それで、双方の立場が、相当こちらも強く出るというふうになってまいったというのが実情でございます。

 一九九二年に同じ問題が起こりまして、その際には、ロシアと日本で話し合いまして、日本がロシアから獲得しておった漁場を日本の漁船に影響しない形で提供いたしまして、そして解決したという先例がございます。その後十年間何もなかったわけですが、それは、ロシアの方針が今年度から変わったわけなんです。民間が入漁料を取って韓国のサンマ漁船の入漁を認めておった。北方四島沖ということじゃありませんが、それに近いところへ入漁を認めておった。ところが、今年度からロシアが方針を変えまして、入札方式によって漁場を提供するということになった関係上、韓国の方で、それでは、韓ロ漁業協定に基づいて漁場割り当てを受けるというふうに交渉に入ったのがだんだんわかってまいったわけでございます。

 この十年間、韓国がとっておった漁量は一万二千トンだったわけですが、今度は韓ロ間で一万五千トン。しかも、その線引きの仕方が、民間の場合には線がはっきりしていなかったんですが、今度はきちっと北方四島沖の我が国経済水域まで線引きをしたということで、問題は表面化したというのが実情でございます。

土田委員 今の答弁によると、最初はそう大した問題でなくて、早期に解決するだろうと思っていたけれども、だんだん事実関係や認識が高まってくると、非常に難しい問題であるということがわかってきた、だから六カ月間も公表しなかったという答弁ですね。そういう答弁だと思うんですが、これはやはりもう少し早い段階で発表しなきゃならない、事実経過についてもやはり外務省として発表しなきゃならないと私は思いますよ。ちょっと手おくれじゃないかなという感じがするんです。

 一方、韓国との問題ですね。ロシア関係は今わかりました。韓国とは何回かやりとりがあって、抗議も向こうはしてきているわけですね。日本はその対抗措置を出した。これから韓国の態度ですが、さらに韓国は対応措置をとってくると私は思うんですが、その辺についてはどう考えていますか。

杉浦副大臣 最初から甘いと思っていたわけではなくて、最初から重大だと思っておりましたが、最初は穏やかに交渉する方が解決に資する、表ざたになれば、漁業者は当然声を上げられますし、穏やかにやった方がいいという配慮から公表しなかったというのが実情でございます。

 韓国の態度も、硬直一辺倒ではございませんで、九二年当時のように何らかの代替措置が、ともかくサンマを一万五千トン、今まで一万二千トンだったのを一万五千トンとりたいんだというのが漁民の要望としてあるということから出発しておるわけでございまして、九二年のような代替案が提示されるなら話し合いに応じていいという柔軟な姿勢がおありになるようでありますので、それがこちら側としてどういう案が考えられるか、こちらの漁民が、それから基本的には、先生のおっしゃるとおり領土問題でございますので、我々の主張をきちっと通しながら、双方が歩み寄れる案が、向こう側も知恵を絞っておるようでございますから、考え出せるかどうかというのがこれからの、七月十五日に漁業開始、漁期が解禁になるわけですが、それまでに詰めていく内容だと思っております。

土田委員 領土問題と認めていただきまして、ありがとうございました。

 七月十五日まで日にちもないわけですが、やはり今の答弁をじっと聞いておりますと、なかなか解決は難しいなという感じがしてならないんですけれども、やはり韓国としては、今度はサンマにかわってアジとかサバで報復をしてくるんじゃないかなという感じがいたします。韓国との問題は、教科書問題や靖国問題や、これに今度の領土問題が加わってくるわけですから、非常に難しくなってくると思うんですけれども、ちょっと日韓問題について、今の三つの問題、教科書、靖国、領土、これについて大臣の総合的な見解をお話しください。

田中国務大臣 靖国、領土、サンマだそうでございますが、一遍に短い時間で申し上げ切れるかどうかわかりませんが、基本的には、やはり近隣諸国と仲よくするというのはどこの国も基本だろうというふうに思います。それから、朝鮮半島の安定ということ、これが基本にありますから、それはもう先ほど来、午前中からも、それから以前からの議論からいきましても、日本がアメリカと韓国と仲よくしながら安全保障もやっていく、そういうものが一つありますけれども、その中で、やはり国民感情というのがありますから、それは靖国問題にももちろん関連をしてくるということでございます。

 それからもう一つ、サンマにつきましては、私は、基本的には領土問題に、これはもう確実にそれに絞り込めると思います。それがはっきりしないためにこうした漁業権の問題が出てきて韓国も巻き込むことになりますので、日本が確実に、あの四島は日本固有の領土であるという基本原則を決して曲げずに、できるだけ強力な外交を展開していくということに尽きると思います。

 サンマと靖国と、あともう一つは答えましたか。(土田委員「教科書問題。それは結構です」と呼ぶ)ああ、教科書まで行くんですね。

 これもすべて、やはり近隣諸国と仲よくするために、国の指針というものをできるだけ明確にしていくということに尽きるというふうに思っております。

土田委員 もう時間が来たのでやめますけれども、一つだけ、モグラたたきの問題が発生しておりますので、注意を促すためにもひとつ申し上げておきます。

 これは六月二十一日、先週の木曜日、産経新聞の夕刊に出た記事です。在ロシア、モスクワですね、日本大使館員の破格の住宅手当というのが出ております。質問通告しておきましたので御存じだと思いますけれども、内容については、既に御案内のとおりだと思いますけれども、非常に高い、ばか高い。一等書記官で七十三万円、二等、三等書記官の住宅手当が六十六万円と異常に高いという報道がされております。報道については多分、コメントはしないと何回も繰り返しおっしゃっていますけれども、感想だけ言ってください。

杉浦副大臣 報道にはコメント申し上げませんが、誤解を避けるために事実だけ申し上げますと、この問題になったマンション、パーク・プレースには、大使館員の二世帯と、三十三世帯の日本企業駐在員の方も居住されております。そのうち六世帯――失礼しました。二世帯と、日本人学校の方が六世帯、企業が三十三世帯。ロシアの方の住居に比べれば多少デラックスでありますが、報道されているような特権的だとかそういうような趣旨のアパートではない。

 それから、ロシアの大使館の住居手当限度額を平成十二年四月に上げました。報道されているとおりでありますが、これは、G8の他国の家賃や日本の企業の方々が借りておられる家賃等を勘案して決めたものでございます。モスクワはこの種の家賃が急騰しておりまして、累年にわたって住宅手当を増額いたしております。そうしませんと大使館員が大変でございますので、そういう事情がございまして、大使館員だけが特権を満喫してというような状況ではないことは御理解を賜りたいと思います。

土田委員 時間が来ましたのでやめますけれども、今の答弁に一つ違いがあるんですよ。モスクワの不動産はむしろ下がっているんです。急騰しているから値上げしたというふうには僕は聞いていませんけれどもね。それはいいです。これはもう大臣の好きなモグラたたきの一環として、どなたか、副大臣か政務官でも結構ですので、一応調査をして、こういったのが新聞報道された限りはやはりたださなきゃならないという問題がありますので、お願いをいたしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

土肥委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子と申します。きょうは、私どもの党の東門美津子議員からお時間をちょうだいいたしまして、初めて田中眞紀子外務大臣に御質問をさせていただきます。

 田中眞紀子外務大臣には、就任以来二カ月を経過されまして、女性として新しい時代の平和外交を担っていただきたいと私ども女性議員も熱い期待を持っておりました。

 しかしながらと申しますか、この間、大変残念なことに、外務省の官僚の皆さんとのいろいろなあつれき、あるいは今般のこの委員会での外務大臣のいろいろなさったことについて審議も空転するような状況が生じておりまして、まず、このことを最初に二点だけ外務大臣にも御質問させていただいて、本来の私の準備した質問に入らせていただきます。

 一点目は、まず、きょうの冒頭、田中眞紀子大臣からも反省の弁が述べられましたけれども、とりわけ私ども新人議員にとりまして、まして弱小党派の新人議員にとりまして、短い質問時間でどれほどに有効な、本当に国のためになる策を一つでも、大臣から回答を引き出したり前向きに政治を進めていくために、本当に真剣になって質問に立っております。今回、外務大臣が鈴木宗男氏の発言について時間制限あるいは内容制限をなさったということは、個別鈴木委員の質問内容についてということのみならない影響を及ぼしてしまいます。

 この立法府で、一番大事なところは立法府と思いますが、例えば、きょうこの委員会を持ちましても、なぜにこんなに空席があるのでございましょうか。私はまだ議員になって一年、しかし、こんな空席状態で国に大事なことが論議され、あるいはまた、非常に個別的なことで時間が費やされるというのは、やはり非常に悲しい実態と思っておりますし、私ども一人一人の議員の発言権が制約されること等について田中眞紀子大臣が深く反省をしてくださいまして、なおかつ、やはり各委員の皆様も、必ずや委員会の大切さというのを自覚してくださって立法府の本来のお働きをしていただきたいとお願い申し上げるものですが、眞紀子大臣には、前半の、やはり発言権者の、立法府の重要性をしっかり認識したということを再度確認させていただきたい。

田中国務大臣 立法府と行政府の関係につきましていろいろ誤解を招くような発言をいたしましたこと、今後、また肝に銘じまして厳しくおのれを律していきたいと思いまして、謝罪をいたしました。

 また、阿部知子議員におかれましては、ぜひ女性議員として頑張っていただきたいと思います。

阿部委員 もう一点のみお願いいたします。

 昨日の議院運営委員会におきまして、内閣官房長官、福田官房長官に、これ以上外務大臣の言動の問題が出てくると任命権者の責任問題に発展しかねないということで、委員長として、議院運営委員長が、内閣にも厳重に要請して、総理にも伝えていただきたいというふうに福田長官を前にして発言をされたということです。

 さて、では、この件につきましては、田中眞紀子大臣の今般の事態につきましては、小泉総理はどのように御報告を受け、現段階でどのようにお考えをお持ちであるか。やはり大臣の任命権は総理にございますわけです。先ほど来、立法府の軽視ということは議会制民主主義の根幹にかかわりますので、その点に関しまして、小泉総理大臣の御見解やいかに、もし田中眞紀子外務大臣がお伺いであれば教えてくださいませ。

田中国務大臣 内閣としては、官房長官が中心となって代表して議運の委員長のところに行ってくださり、そしてその後に、私にも厳重な御注意が官房長官室でございましたので、それをもって総理の意思であるというふうに体して考えております。

阿部委員 やはり任命権者は総理でございますので、今般の事態もきちんと小泉総理大臣にも自覚をお持ちいただくようにお伝えくださいませ。

 では、引き続いて質問に入らせていただきます。

 そもそも二十一世紀におきます外交の役割ということですが、ミサイル防衛構想とか有事法制化とか、どちらかというと物騒な向きの論議が多いように拝聴いたしますが、実は、二十一世紀にあっては、軍事的ないろいろな力の誇示以上に、予防的外交と申しますか、外交イコール防衛と申してもよいような役割を外交は果たしていると思います。

 まずこの点について、外務大臣、外務大臣になるということを極めて前向きに受けとめられたと思いますが、田中外務大臣が考えられる現代の、二十一世紀初頭の外交の基本について、お考えを一言お願いいたします。

田中国務大臣 一言で申し上げられるかどうかわかりませんが、私が考えておりますのは、やはり安全保障という問題は非常に大きいと思います。なぜかと申しますと、人類の過去の歴史をひもときましても、地球上の地域のどこかで、まことに残念でございますけれども、紛争、戦争というものが続いております。将来にわたって、冷戦構造が崩壊したので完全にもう地球上から戦いがなくなるというような見方をするのは、少し楽観的過ぎる、大変楽観的過ぎるというふうに言いかえた方がいいかと思います。

 したがいまして、安全保障の問題は、これは武力行使といいますか、そういう一種の抑止力といいますか、そういうふうなことを前提とせざるを得ません。しかし、私が思っておりますのは、そこまで行かないように戦争を起こさない努力、これが外交であるというふうに思っております。九九・九%話し合い、いろいろな努力、人的なエネルギーを最大限前向きに使うことによって、お互いの国益を守り、そして世界の平和と安定を導く、これが人間の知恵であろうと思いますし、そうした教訓もたくさん過去にあろうと思います。そしてまた、将来に向かって、私たちがそういうことができるという証左を残す義務がある、かように考えております。

阿部委員 今の外務大臣のお答えに従いませば、まず外交とは、相手国との相互理解と、そして国内的には、国民がそのことをみずからきちんと情報として得て、合意形成のプロセスに参加して結論が出ることだと私は了解いたしました。

 では、今般、中谷防衛庁長官が訪米されまして、ラムズフェルド国防長官とお会いになり、TMD、ミサイル防衛構想の件について、これまでアメリカと我が国は研究段階での合意はできておりますが、配備並びに運用については、我が国はいまだそのことについて国民的合意も国民的審議も得ていない段階と思いますが、この段階にあって、中谷防衛長官が一歩踏み込んだ御発言をなさいました。

 これは直接には防衛庁関連のことというふうには決して考えられませんで、先ほどおっしゃいました、これからの外交とは予防的な外交、相互理解の外交ということでございますので、今後、このミサイル防衛構想について、どの場で、どの方たちが、どういう審議方式をもって事が決定されていくのか、そのことについて、外務省としてのお考えを、申しわけございませんが、田中外務大臣にお願いいたします。

田中国務大臣 中谷長官の御発言は私もメディアを通じて拝見しておりましたし、また、記憶違いでなければ、昨日の参議院の、参外防と申しますが、外務、防衛関係の委員会で中谷長官が御発言なさっておりました。

 それは、ミサイル防衛構想は、検討していく、研究していくということで私たちは賛意を表しているわけでございまして、これは現在検討中の、始まったばかりの段階でございます。ですから、そういうことについて私たちは理解を示しているというわけでございまして、では、いよいよ、これを開発して、そして配備をするということについては、私どもはそこまで踏み込んでおりません。

 中谷先生の、中谷長官の発言につきましても、共同研究を行っているBMDは、純粋に日本の防衛のためのシステムであるのだということをおっしゃっているのであって、開発ですとか配備について踏み込んで発言をなさっているものではありません。

 したがって、二つ目の御質問に対するお答えになりますが、私たちは、外交努力、どのような為政者、どのような総理大臣、外務大臣、あるいは防衛庁長官がお出になりましても、やはり基本的に、話し合いによって世界に平和をもたらすために、むしろ、私たちの持っている科学技術、あらゆる能力を、世の中を、世界を平和にするために利用していくのだということであります。

 したがって、このBMDについて申し上げますと、これは核不拡散、弾道ミサイルを四十一もの国が世界じゅうで持っているという現実に照らしまして、それがもっと大きな世界の脅威にならないように研究していくというところに私たちは賛意を表しております。

阿部委員 私が拝読いたします中谷防衛長官の御認識並びに御発言は、先ほど申しましたように、運用、配備にも言及したものと思いますが、いずれにしろ、それらが国民的審議を経ずしてひとり歩きしていくということを一番案じております。それが逆に、今般のこういう委員会審議の軽視であるとか、あるいは立法府が全く関与しないところでの個々的な発言につながるということを私は危惧いたしますので、くれぐれも外務省としては共同の審議の場を確保していただきますように。

 それからまた、審議官級の審議ということが報道されておりますが、私の伺いたかったのは、例えば立法府にあっては、どの段階で、どのように、どこで、だれが決めていくかということでございます。

田中国務大臣 お答えを一言で申し上げれば、内閣全体としてやっていくということでございます。よろしいでしょうか。

阿部委員 内閣はもちろん行政にかかわる役割を担っておりますから、それは異論はございませんが、その前段階での、例えばこの件に関しましても、米国側の国務長官、国防長官、そして日本の外務省、それから防衛庁という四者でそもそも審議が始まっております。やはり、何度も申しますが、委員会審議の場、問題点は何であるのか、多様にございますので、そういうことを今後も留意されて運んでいただきたいということでございます。

 同じことが有事法制化についても私はあるように思います。六月三十日、小泉総理はアメリカにいらっしゃる。そのときに、有事法制化問題で委員会を立ち上げたこと、ないしは九月に向けて中間報告をなさるということを米国に伝えるやに伺っておりますが、実は、このことについては各委員会審議ももちろんまだでございますし、国民にも公には、首相の所信表明演説でございましたが、それ以上のものは一切委員会審議でも出てきていないと思います。

 私は、本来であれば、一国の首相はまず国民に対して御自身の考えを述べ、それから立法府がそのことについて論議を重ね、そして相手国に伝えていく、これが外交の基本姿勢と思いますが、今般の小泉総理大臣の訪米に当たって、外務省、田中眞紀子外務大臣としては、とりわけこの有事法制化の問題について、どのようなお考え、あるいは審議のあり方、今後の進め方を御進言なさるのか、お聞かせください。

田中国務大臣 これは私が進言するとかという立場ではないというふうに思います。むしろ、内閣官房を中心に関係省庁が協力しながら十二分に検討を行う必要があるというふうなことが基本的な考えでございます。

 それから、御案内と思いますが、衆参両院で憲法調査会が開かれておりまして、その中で、この有事法制とか憲法問題について、長期にわたっていろいろな各種の意見が開陳されておりますということを申し上げます。それを踏まえて、みんなでもってよく議論をしていきましょう、透明性を持って議論をしていきましょうという段階でございます。

阿部委員 私も何回か憲法調査会には発言させていただきましたが、まだまだ踏み込んだ討論でもございませんでした。

 やはり、何度も申しますが、まず、いわゆる外交の前には内交、国民の合意形成のプロセスがございますので、その点について重ねて御留意をお願いしたいということを申し上げます。

 そして、国民がみずからの道を決断していくためにも、国民に向けた情報公開、非常に重要なこととなってまいると思いますが、外務大臣にも御承知おきのように、この間、外務省関連に、四月の情報公開法の施行以降、千二百二件の情報公開請求がございまして、うち、開示四百五十二件、非開示五百十七件と、実は各省庁間で一番非開示が多い省庁ではなかったかと思いますが、その非開示が多くなりました理由の一つに、松尾室長による詐欺事件に関連して、外交機密費の部分で非開示というものが多うございました。そして、例えば非開示の内容も、ロジブックと言われる旅行の細かな計画、それから概算見積もり、あるいは在外公館に対して概算要求をしてもらうためのある種の訓令なども、すべからく全部五条四号を理由として非公開でございます。五条四号とは、捜査に差し支える等々のことでございますが。

 まず、外務大臣にあっては、これら松尾氏関連の疑惑、外交機密費の詐欺事件の関連資料が、国民が情報公開請求に基づいて請求したときにすべて非開示になっている事実を御存じでしょうか。

飯村政府参考人 お答え申し上げます。

 一点、事実関係でございますけれども、外務省には、六月二十六日現在、これまでに千二百四十四件の開示請求が寄せられております。既に九百九十七件につき、開示、不開示の決定を行っております。

 それから、二番目には、決定を行いましたもののうち、五百二十八件につきましては不開示の決定を行いましたが、その多くについては五条三号を適用している次第でございます。五条三号というのは、国の安全等に関する情報ということでございますけれども、これはもう委員御承知の点でございますが、例えば二国間会談の記録等につきましては、他国等との信頼関係が損なわれるおそれがあるということを理由として不開示しております。

 三点目でございますけれども、先ほど申し上げました数字、五百二十八件のうち、六十六件につきましては五条四号を適用している次第でございます。五条四号につきましては、大半は現在捜査中の事件と関連する情報が記載されているため、公にすることによって犯罪の捜査に支障を及ぼすおそれがある、こういう考え方から不開示の決定をしている次第でございます。

阿部委員 私が質問取りの段階でそのお答えいただきませんでしたので、私がそれでは訂正いたします。

 六十六件の外交機密費関連の不開示の中で、特に捜査上差しさわりがあるということで不開示であるという由でございますが、例えば、私はここに森首相の南アフリカ訪問のときのロジブック、旅行行程表を持っております。恐れ入りますが、ちょっと外務大臣にお渡しいただきたいのですが、こうしたものも松尾氏関連のものは非開示になってございます。田中外務大臣がごらんになって、果たしてこういう旅行行程表、ロジブックを非開示にする大きな理由がありや否やというのが一点でございます。

 それから、例えばこれはどういうものかというと、田中外務大臣は、訪中時にホテルが少しお高いということでお部屋をかえられたり、アメリカにあっては大使館にお泊まりになったりした。それは、そのときにまたそのロジブックは変更されるものですが、それ自身が大きな外交機密であるか否かの御判断でございます。

 私どもは、この情報公開請求とともに、私の部屋でもロジブック等々を請求いたしまして、これらをぜひ開示していただきたい。理由は、外交機密費の大半が宿泊差額代だというふうに福田官房長官お答えでございましたから、市民サイドからこれを検証いたしますためには、どういうホテルにお泊まりかということを知りたかったわけです。

 たまたま田中外務大臣は、中国で部屋が高かった、びっくりした、部屋をかえたということがございまして、これまでの首相訪問がやはりそういうところにも泊まってらしたのかなということも一部つまびらかになったわけですが、国民には、当然税金を使って行われる首相訪問について、せめてこの行程表ないしは宿泊ホテル等々について知る権利があると思います。

 特に疑惑の大きい外交機密費でございますから、ぜひとも外務大臣の御判断をもって部分開示をしていただきたく、今の資料をお渡しいたしました。これは外務大臣に伺っておりますので、申しわけありませんが、田中眞紀子外務大臣にお願いします。

田中国務大臣 お答え申し上げます。

 私は、この森総理のアフリカ、ケニア、ナイジェリア及びギリシャ訪問のファイルといいますか、初めて今拝見しましたけれども、これは旅行の前ですと、やはり警備上の問題等もありますので、宿舎がどうかということは事前には申し上げられないと思いますが、委員おっしゃるように、旅行が終わってからどうであったかというふうなことについては、別に納税者が知って何ら差しさわることは私はないというふうに思っております。

 ただし、松尾事件に関しましては、今警察に資料が全部行っているものもあるやに思いますので、それは今いかんともしがたいということです。

 それから、誤解があるようで、申し上げますが、私が中国で部屋をかえたのは、同じホテルの中なんですが、信じられないほど広い部屋で、一つの部屋で二階もついている、私は生まれて初めて見たんですが、怖くてとてもじゃないけれどもあんなところでは一人で泊まれないと思いましたので、金額なんかは全然わかってもおりませんでしたけれども、そういう意味でございまして、もちろん、むだ遣いを前の方がしていらしたとも私思いませんけれども、私はそんな恐ろしいところに一人ではとてもじゃないけれども眠れないと思っただけでございます。

阿部委員 松尾事件に関係いたしますものは、今大臣の御答弁にもございましたように、既に過去のもので、捜査上にありましても直接捜査にかかわりのないものもたくさん非開示になってございます。ぜひとも詳しく御検討いただきまして、部分的開示は、実は大臣が公益上の裁量的開示という項目を用いればできますので、国民の疑惑の多い外交機密費について、大臣としての裁量権を生かしていただきたいと思います。

 最後に、私が本来この委員会で一番質問したかったことを申し述べさせていただきます。

 今、国連でエイズ特別総会が開かれておりますが、二十一世紀の外交の中心、いわゆる人間の安全保障のためにも、多くのエイズで苦しみ亡くなっていく方たちへの先進国としての援助がこれから我が国ODAの中核になってしかるべしと私は考えております。そして、さきの森前首相が、沖縄で行われましたサミットにおきましても、日本が今後五年間で三十億ドル、エイズ感染症も含めた感染症対策に援助を振り向けていくというお話もあったやさきでございます。

 この委員会でも、我が党の保坂展人議員が、例えばケニアにおきますソンドゥ・ミリウの水源開発等々の問題、ダム、箱物の開発の問題を質疑いたしまして、大臣にも、よく考慮しますということではございましたが、その後、継続というお返事はいただきましたが、私は、特にこれから日本が開発途上国に対して行います援助に際しては、エイズ感染症等々についての我が国のやはり地道な、そして継続性のある、人と人の手に結ばれる援助が大切と思っております。

 そして、南アフリカ、私は実はJICAで一度ミッションで行ったことがございますが、今のサハラ以南のアフリカにあって、今後エイズ対策にとって極めて重要な地位を占める国と思っておりますが、特に母子保健対策ということに関しまして、外務省として、あるいは田中眞紀子外務大臣といたしまして、ミッションを送ったり、今後の母子保健行政について、エイズ予防対策の見地から、いま一度日本のいい援助のあり方を考えてみられるようなお考え、きょう初めて御提言いたしますから、お考えで結構ですから、前向きな御答弁をお願いいたします。

田中国務大臣 今、阿部委員から大変いい御指摘をいただいたというふうに思っております。現在、日本はインドネシア、ガーナ、それからタンザニアでもそうした医療の面での援助をしていることは御存じでいらっしゃいますでしょうか。阿部委員はお医者様でいらっしゃるから、そういうことに大変気の細やかに配慮なさっていることは大変ありがたいと思いますし、いろいろなODAとか、あるいは海外との協力関係ございますけれども、私が着任してすぐに、ナイジェリアのオバサンジョという大統領がいらっしゃって、その方からお話を伺いましたときにも、まさしくこのエイズの関係で、もっと注射器とか身近なものを援助してもらえないだろうか、それからお医者様、人ですよね、ソフトの面といいますか、そういう援助が一番自分たちが、国民が求めているものであるというふうなお話もいただきましたので、世界各国を対象として、この間、沖縄感染症対策イニシアチブというものもつくりましたけれども、やはり総合的に、役に立つ、目に見える、そして喜ばれるような援助をすることが納税者である私たち国民も得心がいくものではあると思いますので、そういうものにきめ細かく配慮をして進んでまいります。

阿部委員 大変前向きな御答弁ありがとうございます。特にサハラ以南は乳幼児死亡率が各国にぬきんでて高い地域、そしてエイズの問題がございます。ぜひとも、日本として、そして女性である外務大臣の田中眞紀子さんがこの問題においてリーダーシップを発揮されて、日本の本当の意味の平和外交、人的支援を実現してくださるようにお願い申し上げて、本日の質問を終わらせていただきます。

土肥委員長 次に、鈴木宗男君。

鈴木(宗)委員 田中大臣、連日御苦労さまです。

 ちょうど一週間前ですけれども、この委員会で私と田中大臣との質疑が非常にワイドショー的に、おもしろおかしく取り上げられて、恐らく大臣も迷惑しているんでないかな、私も迷惑千万なんですね。外務委員会は中継じゃありませんから、発言の一部分だけぽっととらえて流されますね。そうすると、質問した真意も伝わらない、また答弁した側の真意も伝わらなくて、かみ合わないようなシーンばかり使われて、それが何回も報道されるものですから、お互い、何やっているんだみたいな感じがあったんですね。そういった意味では、私は、きょう報道の人がたくさん来ていますけれども、やはり一番大事なのは正確でありますから。政治は何も、おもしろいことがいい政治じゃありませんね。そういった意味では、報道の皆さん方、わけてもテレビ、ワイドショー関係はきちっと、一般の奥さん方が見ている比率が高いわけでありますから、私は、ぜひとも正確を期していただきたいな、こんなふうに思っているんです。

 そして、思わぬ方向に転回しまして、大臣がたまたま、先週の水曜日、質疑があった、金曜日が外務委員会の定例日ですから、金曜日にまた私の質問があるということで、大臣は大臣なりの御判断といいますか、あるいは考えがあってアクションを起こされた、こう思うんですけれども、どうぞ大臣、もし鈴木宗男が質問する、こういう何か日程表が出たら、直接私に電話ください。そうすれば何も問題は起きませんから。そこでの調整は何ぼでもつくわけだし、同じ自由民主党という枠の中で話し合うこともできるわけでありますから、何かあればまた遠慮なく、その点はお申しつけをいただきたい、こう思っているんですね。大臣が遠慮されたことがまた逆にきょうの土肥委員長の質問になったかな、こういう感じもしますので。

 何も私と大臣が、よくマスコミが言っているように敵対関係にあるなんということはないわけなんですから。これも逆にマスコミの方があおっている感じもありますので、どうぞ、今田中大臣は大事な立場にあるわけでありますから、遠慮なく、使うときは使ってもらいたいし、声をかけるときは声をかけてもらいたい。私も、できるだけ、協力するものは協力をしていきたい、こんなふうに思っておりますので、まず冒頭に、大臣に敬意を表しながら、私の意のあるところをお伝えしたいな、こう思っております。

 さて、大臣、大臣就任以来、大臣が発言なさっている関係で、外交は積み重ねですから、その積み重ねというのはたくさんの人が、多くの先人、先輩方の汗と涙で築いてきたものですね。そういった中で、私は、戦後の大きな、国家的な悲願の問題として北方四島問題があると思っているんです。

 そこで、大臣、田中大臣はことし三月のイルクーツク首脳会談、この中身について事務方から十分な説明を受けておりますでしょうか。まず、その点お尋ねをいたします。

田中国務大臣 専門的に何度も説明を受けております。

鈴木(宗)委員 専門的に何度も説明を受けているということですから、しっかりと頭に入っているかなと思うんですけれども、田中大臣は、一九五六年日ソ共同宣言、さらには七三年の日ソ共同声明、一九九三年の東京宣言、九八年四月の川奈提案についても説明を受けておりますでしょうか。

田中国務大臣 五六年、七三年及び九三年の東京宣言、三つについて説明を受けております。

鈴木(宗)委員 そこで、田中大臣の対ロ政策、なかんずく平和条約に関する基本的な認識についてお尋ねをしたいんです。

 それは、今田中大臣は、五六年、七三年、九三年、九八年、すべて説明も受けている、そして二〇〇一年三月のイルクーツクの話も説明を受けているということですからお尋ねするんですけれども、大臣は、就任の記者会見で、一九七三年の田中・ブレジネフ会談の成果、すなわち日ソ共同声明が日ロ関係の原点であるとの発言を、これは大臣就任以来、累次繰り返しておりますけれども、このことは田中大臣の対ロ政策の基本認識と考えてよろしゅうございますか。

田中国務大臣 結構です。

鈴木(宗)委員 そこでお尋ねするんですけれども、七三年の日ソ共同声明が基本認識であるとするならば、日本側が、未解決の諸問題という表現に北方四島問題が含まれると主張したのに対しまして、その後ソ連側は、領土問題は解決済みとの立場をとりまして、双方の立場は平行線になっているんですね。これが、きょうは事務方もたくさんおりますから、基本的な、歴史的な事実関係だと思っているんです。

 そこで、なぜ、田中大臣が、この七三年の田中・ブレジネフ会談が日ロ平和条約交渉の原点であると主張される、その意図は何か、教えてほしいんです。

田中国務大臣 これは日ロ交渉の経緯からちょっと申し上げなければ、もちろん委員御存じのことでございますけれども、最初の一九五六年のときの日ソ共同宣言、このときはどういうふうな話であったかといいますと、歯舞及び色丹の日本への引き渡しが同意されました。しかし、残りの二島、すなわち国後、択捉につきましては両国の認識は一致せず、解決には至らなかったというのが現実でございました。これが五六年です。

 ところが、七三年になりまして、これは口頭で確認されたことでありますけれども、中身は、未解決の問題の中には四島の問題が入っているということを確認したいと日本側が述べたのに対しまして、ロシア側が、そのとおりである、要するに四島の問題が入っていると。ここで四島ということが確認されたわけでございますし、北方四島は日本固有の領土でございますから、これが原点であるという認識をしているのはそこに理由がございます。

鈴木(宗)委員 この一九七三年の日ソ共同声明には、双方は一九七四年の適当な時期に両国間で平和条約交渉を継続することに合意した、こう記されているんですね。しからば、この七四年のいつ平和条約交渉が行われたか、教えていただきたい、こう思います。

 大臣、今大臣の言われた日ソ共同声明に、「双方は、第二次大戦の時からの未解決の諸問題を解決して平和条約を締結することが両国間の真の善隣友好関係の確立に寄与することを認識し、平和条約の内容に関する諸問題について交渉した。」そうして、「双方は、一九七四年の適当な時期に両国間で平和条約の締結交渉を継続することに合意した。」こうなっているんですね。

 なぜ私がこの質問をするかといいますと、大臣、平和条約交渉は行われていないんですね。ですから、私が言うのは、七三年が原点だ、基本認識だとするならば、いつ平和条約交渉が行われたかということを教えてほしいんです。

小町政府参考人 お答えいたします。

 今手元に正確な日にちを持っておりませんけれども、七五年の初めだったかと思います。ちょっとこれはチェックする必要がございますけれども、外務大臣が訪ソされまして、この合意を受けて再度話し合いを持たれた、こういうふうに記憶しております。

鈴木(宗)委員 七五年、それは間違いないですか。私の知る範囲では、その後十三年間交渉がなかったんじゃないか、こう思っているんですが。

小町政府参考人 どうも済みません、時間がかかりまして。

 七五年の一月十五日から十七日まで、当時の宮澤外務大臣が訪ソをされまして、平和条約交渉を行っておられます。

鈴木(宗)委員 小町さんも先般聞いていると思いますけれども、例えば、パノフ大使が自由民主党の本部で講演されましたね。あのとき、パノフ大使は、その七三年の田中・ブレジネフ会談で、ブレジネフ書記長はダー、ダーと述べたと。しかし、それは未解決の諸問題がないという認識の中でダー、ダーであったというのがロシア側の判断なんですね。日本側の記録は、日本側はダー、ダーと了解したということになっているのですよ。

 同時にまた、これも確かな情報としてあるのが、田中大臣もパワフルですが、お父さんはもっとパワフルでしたから、この未解決の諸問題に四島問題が入っているなと激しく詰め寄ったら、向こうがウオー、ウオーとうなずいた、それをまたダー、ダーだ、こう言っているという話もあるのです。これはまじめな話として、ロシア側の中には、当時の交渉に参画した人の中には、そう言う人もいるのです。

 なぜ私がこういうことを言うかというと、当時、同席しておったのはグロムイコ外務大臣です。しからば、グロムイコ大臣が、四島問題があると彼が在任中言ったかどうかということ、同時に、当時、ブレジネフさんが書記長でしたけれども、その後のアンドロポフさんにしろ、チェルネンコさんにしろ、ゴルバチョフさんまで、書記長を指名したのはグロムイコさんです。一九九一年まで、私の知る範囲では、四島問題を当時のソ連は認めていないのですよ。認めていないときの議論を、今ここが原点だとすると、私は、相手に間違ったメッセージを与える、あるいは世界にも間違ったメッセージを与える。

 これは今までの、少なくとも、エリツィン・橋本、エリツィン・小渕、そして森・プーチン、そして小泉・プーチンとこれから行く過程において、今までの日本政府の判断してきたことを、これは七三年、冷戦時代の話でありますから、冷戦時代に戻すのかというとられ方をしたならば、皆さん、私はちょっと日ロ関係がおかしくなるのではないかという心配をするものですから、今そういう話を私はしているのです。

 同時に、田中大臣、このときの会談で、その後、例えば日本にいるソ連の東京大使のポリャンスキーさんあたりからも、日本は歪曲な判断をしている、日本は身勝手な判断をしているという、口頭注意といいますか、口頭申し入れも来ているのですよ、その後。それも八一年だと思いますけれども。

 そういった経緯があるものですから、私はこの点はしっかり確認しておかぬといかぬ、こう思っているのです。大臣、どうですか。

 ちょっと待ってください。委員長、済みません。これは、大臣の基本的認識に基づいて私はお話ししておりますから、正確を期してほしいと思います。

田中国務大臣 細かい記録等は外務省に、役所にあると思いますので、後ほど事務方から御説明する時間をぜひいただきたいと思いますが、私が申しておりますのは、七三年の首脳会談の成果のみに立脚しているということを言っているわけではございませんで、日本の政府は一貫して、今後とも、九三年の東京宣言でありますとか、またことしの森総理とプーチンさんのイルクーツク声明を初めとするこれまで達成されてきた諸合意を踏まえて問題の解決に向かいたいということを申しているわけでございます。

鈴木(宗)委員 大臣、七三年が基本認識で原則だとするならば、私は、イルクーツク声明とか、あるいは東京宣言だとか、あるいは川奈提案というのは、全く別のものだと思っているのです。

 なぜかといいますと、日本は、ここはこの委員会でもいろいろな人が質問しておりますからはっきりしておきたいのですが、冷戦時代は、我が国は、四島の一括返還、その一括返還の上に即時をつけたのです。四島即時一括返還です、冷戦時代は。間違いないですね。しかし、ソ連が崩壊してロシアになってからは、日本政府の言いぶりは変わってきたのです。四島一括返還という表現を委員会でも国会でも使った人はいないのです。四島の帰属の問題を解決して平和条約の締結に向けて全力を尽くすという流れになってきているのですよ。

 しからば、七三年の田中・ブレジネフ会談が原点だというならば、日本側も、そしてロシア側も、全く対応が変わってきたということは、これは事実として明らかなんですね。この私の認識は間違っておりますでしょうか。大臣、どうでしょう。

土肥委員長 大臣ですか。小町さんでいいですか。

鈴木(宗)委員 どうぞ。

小町政府参考人 お答えいたします。

 ソ連崩壊後、ロシアが領土問題の存在を認めるようになりましてから、四島一括返還等々の言葉は使っていないというふうに承知しております。

鈴木(宗)委員 小町さん、ここは正確を期した方がいいと思います。九一年の秋以降、日本は、四島への日本の主権が確認されれば、実際の返還の時期、態様及び条件については柔軟に対応する考えであると正式に提案しているのです。この提案は、当時の中山外務大臣であります。ソ連邦ゴルバチョフ大統領、そしてロシア共和国連邦大統領エリツィンさんに明確に言っているのです。より具体的に、この外務委員会等でこの表現そして四島一括という言葉を使わなくなっているのは、九二年の渡辺大臣からだと私は認識しているのですが、いかがでしょうか。

小町政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘のように、渡辺外務大臣が平成四年四月二十二日の衆議院外務委員会におかれまして次のように答弁をしておられます。

 四島返還ですが、手順についてはいろいろ柔軟に対応するということを言っております。どういうふうにして返還をするかという返還のやり方につきましては、主権が認められればそれは御相談に応じますというような考え方なのでございますというふうに答弁しておられます。

鈴木(宗)委員 大臣、今の小町局長の答弁を聞いて、そういう流れなんですよ。

 ですから、私が言いたいのは、冷戦時代のソ連と、そしてソ連が崩壊してロシアになった、そのロシアは自由と民主なんですね。日本と同じ市場原理あるいは政治体制で、価値観を共有しているのです。そこで、今言ったように、領土問題が明確にあると向こうが認めてきたものですから、では日本も若干わきを甘くしてといいますか、お互い外交は話し合いでありますから、そこは同じ土俵に上がろうじゃないかという努力の中で今の日ロ関係は来ているわけですよ。

 だから、私は、大臣にお願いしたいのは、そういった積み重ねの中で、大臣が七三年が原点だと言うと、逆に間違ったシグナルにとられる、これがまた外交の怖さなものですから、この点、ぜひとも正確は期してほしいと私は思っているのです。

 特に大臣、この五月の二十一日、大臣が参議院の予算委員会で答弁した後、ロシア国営のイタル・タス通信は、田中眞紀子大臣は、南クリル問題について、四島問題ですね、について、東京とモスクワでつくられた文書のうち、五六年の共同宣言と七三年の共同声明のみが成果として考えている、九三年の東京宣言、本年三月のイルクーツク声明を成果と呼んでいない、田中外相は父の七三年のモスクワ訪問を原点と考えており、ロシアとの交渉を原点に戻す意向であると報じているのです。

 そこで大臣は、後から、後からというか先ほども、成果の一つに、例えば東京宣言もあるいはイルクーツク声明も認められましたけれども、この五月の国会における、五月二十一日の予算委員会の答弁では、この二つしか言っていないのですよ。ですからイタル・タスはこういった報道にもなっているわけなんです。これ、秘書官、私の言いぶりは間違いないですね。それをきちっと大臣に知らせてください。どうですか。――ですから大臣、今の私のこの話は、大臣もわかってくれますね。

 そこで大臣、もう一つ、この委員会で大臣が言っているのは、過去の成果の一つに六〇年の日ソの覚書も入れているわけですよ、大臣は。日ソの覚書。これは間違いありませんね。

田中国務大臣 過去のどの委員会でも、私は、この六〇年のグロムイコ覚書のことをおっしゃっていると思いますけれども、すなわち日米安保条約の改正を機に、歯舞、色丹の引き渡しは、日本領土からの全外国軍隊の撤退、平和条約の署名を条件とするという声明、これについて直接触れたことはございません。

鈴木(宗)委員 大臣、これは五月の二十一日の参議院の予算委員会で、過去の成果とおっしゃられるけれども、その成果というのは具体的に何ですかということに対して、五六年の日ソ共同宣言から七三年の宣言まででございますと一回答えて、そしてさらに質問者が、では東京宣言だとか川奈の提案だとか、そういう問題は過去の成果に入っていないんですかという質問に対し、そこで大臣は、時系列的に申し上げますけれども、五六年が日ソの共同宣言、そして六〇年が対日覚書というのがございまして、七三年が田中・ブレジネフ、九一年がゴルバチョフ大統領が訪日され、九三年にエリツィン大統領の訪日、それから九七年にクラスノの合意があって、二〇〇一年御指摘のイルクーツクの声明がありますと答えているんですよ。

 それで、私は、ここで大臣にぜひともわかってもらいたいのは、六〇年のこの対日覚書というのは成果じゃないんですよ。日本が安保条約を結んだものですから、この覚書というのは日本に対するクレームなんですよ。全外国の軍隊が撤退せぬ限りあの五六年宣言もだめですよというのが、この対日覚書なんですよ。それを成果に入れてしまったら、これまた間違ったことになるものですから、大臣、わかってほしいというのはそこなんですよ。どうですか。

田中国務大臣 先ほどの読み上げられた文は、あくまでも時系列的に日ソ関係があったものを読み上げたものでございまして、そのことだけにこだわって言ったわけではございません。

鈴木(宗)委員 ですから大臣、その質問者は、過去の成果としてと言って聞いているものですから、そこで大臣が親切に時系列的に言っているんですよ。

 ただ、私は、ここは大臣よりも事務方の認識がちょっと甘いと思いますよ。過去の成果に六〇年のこの覚書というのを入れていいんでしょうか、欧州局長。

小町政府参考人 今委員御指摘のソ連政府の対日覚書、一九六〇年一月二十七日付でございますけれども、これにつきましては、今大臣の方から御紹介がありましたような内容を含んでおります。これに対しまして、当然のことながら日本政府は二月五日付で反論をしております。そういう意味でこの六〇年の覚書というのは、それ以前の日ソ間の合意を一方的に変更するようなものであるという意味で、直ちに対ソ覚書をもって反論したわけでございます。

鈴木(宗)委員 いや、ですから小町さん、反論したのであって、成果ではないでしょう。ここは正確を期そうじゃありませんか。反論したのであって――どうですか、皆さん、話を聞いておって。安保条約を結んだ、その安保条約に反発して当時のソ連は日本に言ってきたわけでありますからね。これは成果でなくて、日本が反論したというのであって、時系列的にいって成果になりますか。外務省がつくった「われらの北方領土」を私は持っていまして、小町さん、私は、ここは正直にいかないと、逆にまた間違ったシグナルになると思いますよ。

小町政府参考人 委員御指摘のように、領土問題の前進という観点からの成果ということを考えますと、そうは言えないと思います。

鈴木(宗)委員 小町さん、時間のむだですから、ちょっとそこにいてください。どうぞそこへ座ってください。

 ここに前欧州局長もおりますけれども、例えばイルクーツクにしろ、さまざまな会談には前欧州局長が立ち会っていますけれども、前欧州局長、先ほどの小町局長の答弁の説明にあなたもそれで同意しますか。私はそういうふうに説明は受けていませんけれども。

東郷政府参考人 今、小町局長からは、六〇年の対日覚書というのは領土交渉における成果ではない、こういう説明を申し上げたと理解しましたが、私もそのように考えております。

鈴木(宗)委員 大臣、今の両局長の答弁を聞いて納得いただけたと思うのですよ。やはり成果は成果、あるいは外交ですから、反論するのは反論する、これは当然ですね。ですから、ただ一つ大事なことは、やはり日本の主張すべきは主張をすることで、言った方がいいですね。しかし、向こうもまた言ってくるわけでありますから、この点、私は、後に不利になるといいますか、やはり外交上これは言わない方がいいなと思えば避けておいた方がいいと思うのですね。そういった意味では、当時のこの対日覚書は、私は外交の成果でないということなんですね。この点はぜひとも大臣にも御理解をいただきたい、こう思っているのです。

田中国務大臣 先ほどの時系列の問題ですけれども、これはもうもちろん委員も持っていらっしゃると思いますけれども、北方領土問題の経緯という中で、これがプラスであるマイナスであるではなくて、その中で一九六〇年の問題もあったということでございます。むしろそれよりも重要なことは、御指導いただきましてありがとうございます、いずれにいたしましても、先ほど申しましたように、七三年の首脳会談の成果だけを言っているのでは決してございませんで、政府としては、九三年の東京宣言ですとか本年のイルクーツクの声明とか、それらすべて、これまでに達成されたすべての合意を踏まえて、そして問題の解決に当たる。それはどういうことかといいますと、北方四島はすべて我が国固有の領土でございますから、まずその帰属の問題をはっきり片づけ、その後に平和条約を築くという基本原則は何ら揺るいでおりません。

鈴木(宗)委員 そこで大臣、私が言っているのは、冷戦時代、ソ連時代の言いぶりと、ロシアになってからの言いぶりは全く違っていますよということは、共通認識でよろしいですね。ちょっと確認します。

田中国務大臣 はい、結構です。

鈴木(宗)委員 ここは各委員も聞いてほしいのですが、ここでも間違った判断で質問されている人が結構おりましたからね。

 私がはっきりしたいのは、冷戦時代は四島一括返還、その一括返還の上に即時をつけておったということ。しかし、九一年以降はその四島一括返還という言葉は日本政府は取っているということ。しかし、四島の主権の問題を解決して平和条約、四島問題は、四島は日本のものですよ、返してもらいますよというこの基本的なものは変わっていないけれども、外交ですから、やはり相手も変わってきますから、体制も変わったならば言いぶりも変わってくるということをお互い認識しておかないと、冷戦構造に戻った、こうなると決して前に進む話じゃないものですから、私はこれを言っているということを大臣、ぜひともおわかりおきをいただきたい。同時に今、大臣もその共通認識は一緒だということでありますから、私はこれはありがたいことだ、こんなふうに思っています。

 そこで、条約局長が来ておりますから、出番をつくらぬといかぬですから質問しますけれども、この五六年の日ソ共同宣言第九項により、歯舞、色丹島の我が国への帰属問題は既に解決済みで、国後、択捉の帰属問題は未解決であると認識しておりますけれども、この認識でよろしいでしょうか。

海老原政府参考人 今のお尋ねでございますけれども、五六年宣言におきましては、歯舞群島それから色丹島については日本国に引き渡す、ただし、実際の引き渡しは平和条約の締結の後に行われるということが当時の日ソ間で合意されたわけでございます。この日ソ共同宣言につきましては両国間で批准も行われておりまして、そういう意味では、今先生がおっしゃったように、歯舞群島と色丹島については、日本国への引き渡しというものがそこで合意されて法的な約束になっているということが言えると思います。

 国後、択捉島につきましては、そこにおきましては何ら言及はございませんので、その後いろいろな経緯を経まして、九三年の東京宣言におきまして、はっきりと四島の島名を列挙した上で、四島の帰属の問題があり、これを解決して平和条約を締結するということが両国の間で合意されて、その後、クラスノヤルスクの合意あるいはイルクーツク声明というようなものにつながってきているということでございまして、基本的には先生の御認識と我々の認識も一致しております。

鈴木(宗)委員 大臣、今条約局長から私の質問に対してその認識は一緒だということで、これは大臣もよろしゅうございますね。

田中国務大臣 はい、結構です。

鈴木(宗)委員 ありがとうございます。

 そこで大臣、今のように、条約論的には、歯舞、色丹のツー、それで国後、択捉のツーが今異なった状態にあるということなんですね。

 そこで、私は、歯舞、色丹のツーと国後、択捉のツーが異なった状況にあるならば、異なったアプローチがあっても当然だし、その方がより問題解決の現実的な取り組みにもなっていくのでないか、こんなふうに考えるんですね。同時に、それが今の日ロの流れで、例えば森・プーチン会談で、昨年十一月十六日のブルネイでの森総理のプーチン大統領に対する交渉、会談、さらにこの三月の二十五日のイルクーツクの会談もその流れだ、私はこういうふうに認識しておりますけれども、田中大臣はどうお考えでしょうか。

田中国務大臣 やはり、日本の政府はあらゆるときに一貫して言っていますのは、四島の帰属、どこに属するか、これはもう日本固有の領土でございます。その四島の帰属の問題をはっきり明確にしてから平和条約を締結するというスタンスには違いありません。

鈴木(宗)委員 大臣、それはもうさっき確認したから当然のことなんですよ。四島の帰属の問題を解決して平和条約、これはもう当然なんです。

 ですから、四島の帰属の問題を解決する具体的なアプローチ、じゃ大臣、どうとったらいいでしょうか。私はツー・プラス・ツーだと思っているんです。しかも、ソ連時代、ロシア時代を通じて初めてプーチン大統領が公式にこの五六年宣言を認め、文書にまでしてくれたわけでありますから。

 しからば、五十六年たっても一つも返ってきていないこの現実を見るときに、私は、四島の帰属の問題を解決する、四島の主権をきちっと取り戻す、これはもう大臣と同じ考えなんですよ、ただ、それを実現するためには、より現実的な方策は何かとなった場合、私は、今進んでいる日ロの、昨年からことしにかけて一年間で六回も最高首脳が会談した、その会談の流れは重いものだ、こう思っているんです。

 同時に、今、専門家である条約局長から聞いてもその認識は正しいというわけでありますから、私は、ぜひとも大臣もそのラインで、この四島の帰属の問題を解決する、そのためにはやはり現実的なアプローチがあってしかるべきでないか、こう考えているんですが、どうでしょう。

田中国務大臣 会談の流れは事実として受けとめなければいけませんし、それぞれのときに双方の国の代表が最大限の努力をなさった結果であると思いますし、そうした事実をしっかりと受けとめて将来どのような交渉の仕方をするかということだと思いますので、将来といいますか、その認識は、やはり四島が日本のものであるというその主権がまず確認されること、まずそれだと思います。

 それがされれば、ではどういう時期に、どういうような形態といいますか、態様といいますか、あるいはどういう条件がつくのだろうか。その辺は、日本国も、交渉事で相手があることですから、しかもそこには現在ロシアの国民の人々が生活もしておられるわけですから、その人権とか利益とか希望とかそうしたものもすべて尊重をしなければならない。ですから、その辺は柔軟に対応できます。しかし、基本は四島の主権、四島の帰属の問題が根本にある、これは曲げるわけにはまいりません。

鈴木(宗)委員 ですから、大臣、四島の帰属の問題の解決をしてからでないと平和条約だって結べないんですよ。いいですね。しかし、間違いなく二島についての言及はあったわけですよ。五六年宣言を公式に去年の九月のプーチン来日のときに記者会見で言ってもらった。それで、十一月の十六日のブルネイでのAPECでの首脳会談でもそれはきちっと、今度の会談では紙に書いてもいいよという約束がとれて、そしてことしの三月の二十五日のイルクーツク声明ではちゃんと紙に入ったんですよ。間違いなく動いているし、前進しているんですね。

 ですから、今まさに大臣のおっしゃったとおり、大臣は今いみじくも、今四島に人が住んでいますね、向こうの住んでいる人のことも考えなければいけませんと言いましたね。もう既に日本政府は、今住んでいる人たちに対しては共生してもいいですよと、これもまた渡辺大臣のとき国会でもう言って、しているんですから、言っていますからね。ですから、今大臣が言ったのは、その流れでずっと来ているんですよ。

 だから、私は、大臣にぜひともおわかりいただきたいのは、今のこの外交の流れが日ロの関係においては間違いなく解決でき得る方向に向けて動いているんだ、その共通認識をお互い持ってやることが大事でないでしょうかと。しかも、条約的に問題ないという話でありますから、この点をぜひとも大臣にわかってほしい、こう思うんです。

田中国務大臣 ですから、改めて、この四島の問題で鈴木先輩を初めいろいろな方たちが、ロシア側も日本側も、それぞれの為政者が大変苦労をなさって今日まで来ているわけでございますから、これを平和的に解決していくということのためにはやはり、繰り返しになりますけれども、四島の帰属の問題を明確にする。それにはやはりこれから、交渉事ですから、プーチンさんとそれからうちの小泉総理の対話とか、それから先方の、この間電話会談いたしましたけれども、外務大臣と私との話し合いですとか、いろいろなやはり諸先輩の知恵をおかりしながらこの四島の帰属をしっかりと、日本のものであるということを決めるということ、まずこれがもう基本であるというふうに思います。

鈴木(宗)委員 大臣、大臣のその言いぶりはわかるんですけれども、もう事務的の専門家もきちっと申していますから。同時に、大臣も今までの流れはこれは尊重しなくてはいけないと。そして、その今までの流れの中でまたどう対応するか、対応といいますか、相手といい交渉をするかということでは変わりない、こう思っているんですよ。

 ですから、私のこの認識について間違いはないし、大臣も共有してくれますね、これは。(発言する者あり)

田中国務大臣 ですから、私は過去の経緯、今までの御努力は評価をいたしますし、要は、結論的には、四島が日本に帰属するということが、主権がしっかりと確認されるように最大限の努力を払うということでございます。

鈴木(宗)委員 ちょっと不規則発言で二島か四島かという、全くこれがばかげた議論なんですよ、あえて私は言わせてもらうならば。二島先行返還論なんて言葉はないんです。これはマスコミの造語なんです。あくまでも四島の帰属の問題を解決して平和条約なんですよ。これは日本の変わらざる姿勢なんです。

 では、その解決するまでにはいろいろなアプローチ、例えば富士山に登るときも、山梨側もあれば静岡もあるでしょう。京都に行くとき、中山道もあれば東海道もあるじゃないですか。今まさにそういった方向で、四島の問題を解決するためにはいろいろな多面的なアプローチも必要ですねというところで来ているわけですから、私はそこは、今その流れであるならば、そこでいく。同時に、ツー・プラス・ツーということも、きちっと条約局も言ってくれたから私の認識に間違いないし、共通認識でやった方がいいし、同時に、日本国の最高首脳である森総理は、そういった交渉をしたということをテレビでも新聞でももう公にしているわけでありますから、私は何ら大臣と変わるものでない、こう思って、たまたま私は細かく説明しているだけなんですよ。

 ですから、大臣、秘書官もはっきり言ってロシアには詳しいと私は思っていませんから、どうもメモが入ってくるのは私は余り、正確でないと困りますからね。

 大臣、今私がこうやって話しておって、私は大臣と差がないと思うんですよ。ですから、四島の帰属の問題を解決しての平和条約、これはもう絶対譲れぬ話なんですから、ただ、そこに行くまでにはやはり今までの積み重ねがありますね、それは大臣、共通認識でよろしいんじゃないですか。

田中国務大臣 先ほど来同じだと申し上げております、そこまでは。

鈴木(宗)委員 ということは、森・プーチン会談があった。その前にさかのぼれば小渕・エリツィンがあった。そしてあと、残念ながら小渕・プーチンはなかったんですけれども、橋本・エリツィンもあった。この流れを十分やはり尊重しながらといいますか、同時に、今あるのは、森・プーチン会談のイルクーツクの首脳会談における声明が直近の日ロ関係の会談でありますから、私は、この線に沿ってやはりしっかりした外交をやってもらいたい、こう思うんですね。特に、大臣の力ならば歴史的な仕事ができる、こんな期待も持っておりますから、私は大臣に今事細かに説明しているということをぜひとも御承知おきいただきたい、こう思っているんですね。

田中国務大臣 大変先輩から貴重な御意見、御指導をいただきまして、ありがとうございます。

鈴木(宗)委員 とにもかくにも、大臣、五十六年たって、本当にこれは民族の悲願と言ってもいいし、元島民の皆さん方は、もう高齢化しております、何とか元気なうちにあの島を見たい、こんな思いでおりますから、ここはしっかりやっていただきたい、こう思っているんです。

 あと、大臣、私は、やはり外交をしっかりやるためには人だと思っているんです。前回の委員会で私がロシア課長にこだわったのもそこなんですよ。なぜかというと、やはり外交をやるのは人ですよ。人が政策でかわった、かわらぬとなると相手側に与える影響も大きいんですね。

 そういった意味で、私は前回、よく事情も知らぬ人が政策の質問していないと言いますけれども、皆さん方御案内のとおり、外交は人がやるわけですから、人が政策でかわったととられたならば、やはりこれは誤解があるわけですから、誤解は解かなくちゃいけませんから、私があえて前回ロシア課長の話を持ち出したというのはそこなんですよ。この点もぜひともおわかりをいただきたい。やはり間違ったメッセージを与えるということは国益を損ないますので、この点はぜひとも大臣にも、もし人の問題等であったら当事者を呼んで両方の意見を聞く、これが公平だ、私はこう思っていますね。そして、大臣がそこで賢明な判断をすればより公平な結果が出る、私はこんなふうに思っているんですよ。

 そこで大臣、大臣が就任以来、外務省との関係でいろいろな雑音が入ってきたり、また国会でもお話があります。私は大臣に一つお願いしたいんです。きょうここにいる人だけでも、谷内さんが一番先輩か、谷内総政局長あるいは前欧州局長の東郷さんにしろ、小町局長、海老原さんも飯村官房長も西田局長もおりますよ。大臣、みんな専門家であり優秀な外交官ですよ。やはりこの経験は生かすべきですね。川島事務次官もいれば、加藤外務審議官もいれば、野上審議官もおりますよ。サミットも……(発言する者あり)官房長はもう言いました。

 ですから、私は、ぜひとも大臣、やはり組織である以上、組織のトップはうまく人の心をつかみながらやることも大事な戦略だと思っているんですよ。そういった意味で、よく大臣がこういう委員会で名指しで批判されますよね。それは大臣は力があるから言えるけれども、私なんかは、気の弱い方から見ると、よくぞ言えるかななんという気もするんですよ。

 そこで、大臣、私が言いたいのは、まずは信頼関係をつくることが一番大事ですよ。信頼関係。例えば二十一日の夜の大臣室でのパニックなんかも、十分私の方に情報は入っています。当事者の下地さんもおられるからよく聞いておりますけれども。ですから、私の聞く限り、大臣のやる気は買います。やる気は買うけれども、ぜひとも持っている専門家の能力、経験、これを生かすことが、また大臣がよりパワフルに、高いレベルで私は外交ができると思っているんですよ。そういった意味では、私は、無用なエネルギーは使わぬで、ぜひとも信頼関係を持ってやっていただきたい、こう思うんです。

田中国務大臣 重ね重ねありがとうございます。

 信頼関係、信頼というのは目に見えないんですよね。本当にここにおられる方々は、あらゆる意味で、私は、前から存じ上げている方、昔から存じ上げている方、そのお子さんとかお友達のパパとか、ほとんど存じ上げておりまして、目には見えないかもしれませんけれども、私は、機密費の問題ですとか、そういう問題で政策の面で得心がいかないことにつきましては、国民の皆様から負託されている国会議員の一人として、しかもこの内閣の重要閣僚の一人にしていただきました、力は及びませんけれども。その中で正すべきは正していくということは政治家の信念としていたします。政策もきちっと話をしなければならないし。

 ですから、今回も、できるだけ、三つの残っている条約がございますから、そういういろいろな討論もしていただきたいということも私はありまして、委員長にも御迷惑をおかけしたわけでございますけれども、あと二日間ありますから、駆け足で一生懸命やっていただければ法案が通るかな、条約が通るとありがたいなと。これは相手の国もありますし、税金を使ってやっているわけです。それは別問題といたしまして。

 いずれにしましても、やはりそういう信頼関係というのはございますので、そういうことに反したことでなければ、本当に、政策のことやら外務省のことについては、古い方も、もっと若い方もおられますし、あらゆる層から御指導いただいて私は幸せ者だと自分では思っております。

鈴木(宗)委員 委員長がここでみんなと信頼関係でやっているというのは、大臣が言っても、また聞く側が腹の中で私はそうでないよと思われては困っちゃいますから、先ほど大臣がいみじくも言いました、信頼という形は目に見えないと言いましたけれども、しかし大臣、やはり人間というのは相身互いといいますか、それなりの思いというものをみんな持って毎日頑張っているんですよ。

 しからば、言いぶりだとか表現よりも、黙っていても、例えば目は口ほどに物を言うというときもありますね。黙っていてもわかるときがありますよ。ですから、そういったことを考えたら、もっとうんと使うべき人は使った方がいい、私はそう思っているんですね。それで、大臣のガバナビリティーというかリーダーシップといいますか、それはたぐいまれなものがあるんですから、このことはここにいる人だれしもが認めると思いますよ。その大臣の特性を生かすためにも、私はやはり組織をしっかり統括するということが大事でないかな、こんなふうに思っているんですね。

 そこで、大臣、少なくとも、大臣はよく国益論を言われますね。国益論を言う場合でも大事なのは、やはり人をいかにうまく使うか。五千人の外務省の職員がいますから、それは何も本省だけではなくて外国でも頑張っておられるわけですから、その人たちをうまく掌握してやっていくことだ、私はこう思うんですね。

 それで、私は、ぜひとも大臣に再度お願いしたいのは、何も私は役所の皆さん方の肩を持つわけじゃないんです。使うべき人は使うといいますか、やはりそのポジションにある人はきちっとコンタクトして信頼関係を持つというのが大事じゃないかと思うんです。

 同時に、大臣が今言いました機密費の問題、こんなのは徹底してやらぬといかぬですよ。あの松尾事件というのはあってはならぬことですよ。

 同時に、私は公の場ではっきりしますけれども、私自身、あの松尾という人を見て分不相応だなという感じを持って、当時の官房長に大丈夫かと親切に話したこともあるんですから。そのときの官房長の答えは、いや鈴木先生、余人をもってかえがたいという答えでした。確かに結果的には余人をもってかえがたい、あれだけ悪いことをしたんですから、あんな人がたくさんいたらたまったものじゃない。今ここにいる人でないですよ。私は非常にそのときは不愉快に思ったものです。

 しかし、私が親切にそう言っても、この霞が関では、鈴木はけしからぬ、役人の批判なんかしてなんという声がほかの省庁からも来たものですよ。同時に、今度は事件が起きて捕まったら、どの省庁の官房長なんかも、さすが鈴木先生です、先見の明がありました、炯眼の至りですとかと言ってきたものですね。私は非常に、大臣以上に不愉快な思いと腹立たしさを感じたものですよ。

 ですから、あってはならぬことは断じてきちっとやるという大臣の姿勢は大事なんです。また、その姿勢に我々は協力しますから。私の知っているノウハウでも生かせるものがあったら何ぼでも私は大臣の御下命があれば言いますし、また協力しますよ。一人では私はできないと思いますから、どうぞ、そういった意味でも、大臣、やるべきことはやるということ、このことを私は大臣にお願いしながら、また役人との信頼関係をつくっていただきたい、こう思っているんですね。

田中国務大臣 大変含蓄のある、臨場感のあるお話を伺いましたが、今おっしゃった中で、松尾を有能とおっしゃいましたか、何とおっしゃったでしょうか。力のあると言われましたか。そういう発言をした官房長がいるとおっしゃったでしょうか。(発言する者あり)余人をもってかえがたいという発言をした官房長がどなたであったか、ぜひ教えていただきたいと思います。

鈴木(宗)委員 はい。今大臣からそういうお話があったから、後でよく説明はしたい、こう思っておりますね。

 これは私は、外務省の人も一生懸命やっておりますけれども、中にはやはり向いていない人もいるかなという感じがしますよ。

 そこで大臣、時間もありませんけれども、せっかくこの外務省の改革要綱が出ましたね。私はやはり、これはちょっと私の先走った考えかもしれませんけれども、二十代前半で一回外交官試験を受けた、その一回の外交官試験で一生が決まってしまうんですね。キャリアは黙っていても最終的には大使になれる。こんなのが今までの流れです。ことしからは、今度、一括公務員試験ですから違いますけれども、去年までは少なくともそういう流れですね。

 私は、ここらなんかも見直した方がいいのでないか、こう思うんですよ。競争原理の導入だとか、やはり能力主義というものを私はきちっとさせた方がいいと思っているんです。ただ、1種の人でも、やはり適性に欠ける、あるいは何か問題を起こしたなんという場合は、私はそれなりの処置がされていいものだと。ただエスカレーター的にいくのはよくないと思いますが、いかがでしょうか。

田中国務大臣 そこの点はもう一〇〇%同感でございます。外務省だけではなくて、ほかの役所を見ていましてもそれは感じますから。殊に外交官は、特権を、海外に出ますので、菊の御紋章を背景にして、天皇陛下からこの間も、今度駐箚オランダ大使東郷さんの、私も陛下の前で内奏をしながら、そして信任状をいただけたわけで、受諾ですね、立ち会いましたけれども、ああいう特別な栄誉を担って海外へ出ますと、やはり本当に、おっしゃったように、一回の外交官試験を数十年前に受けただけのこと、その後もちろん研さんも積んでおられるし、人品もすばらしいと思いますけれども、やはり人間というのは愚かなことも起こり得ると思うのですね、将来的に。

 したがって、私は、公務員の一括採用というもの、これはやはりしばらくやった方がよろしいと思いますよ。人的な他省庁との交流をやることによって現実を知ること、それから、民間にも出ないと、これは官僚全般に言えることですけれども、民間の苦労をわからずして、幾ら税金のこと、機密費のことを言っても、自分の痛みとして感じていないんじゃないでしょうか。自分も、役人も納税者であるのに、それを忘れているということ、これをもとへ戻すには、やはり他省庁との交流とか民間との交流、これを絶対やらないと根本的な解決にならないと思いますので、そこはもう本当に先輩と意見を一致いたしております。御指導いただきたいと思います。

鈴木(宗)委員 大臣、今の話では一致、先ほどまでの話でも一致はしていますよね、日ロ政策も。使い分けされたら困るものですから、大臣、その点はしっかりお願いしたいと思いますね。

 あと大臣、今、外務省職員の1種職員のうち五%、専門職員の約四分の一、あと3種職員の三分の一は女性ですよ、外務省。私は、女性の能力というものをやはりもっともっと生かさせるべきでないかと。そういった意味では、結婚だとか出産があります、女性ですから。やはりその勤務状況だとか、勤務の継続をするための待遇といいますか環境、こういったことを私は考えてやるべきでないかと。男女共同参画という言葉がありますけれども、特に外務省の場合は外へ出ることが多いわけでありますから、こういったことを考えて、私は適切なバックアップ体制をとるべきだ、こう思いますけれども、いかがでしょうか。

田中国務大臣 これも改革要綱に書いてございますけれども、全くおっしゃるとおりでございます。

 女性の社会進出も、私のようにふなれな者がこういう重責を担って、謝罪ばかりしているのも本当にお見苦しい限りで、おわび申し上げなければいけないと思っておりますけれども。やはり古い体制をかえていく、これには、風穴をあけるには力も必要ですし、また、諸先輩や同志の皆様がみんなで協力をしていく、そういう世論も起こっていかないと、小さな失敗とか、私の場合は大きな失敗か、よくわかりません、皆様が判断なさることと思いますけれども、反省はもちろんいたしておりますから。

 ではありますけれども、やはり女性が社会に出ていく、そのためのあらゆるバックアップ体制をみんなで考えていくということですね。これがやはり文化国家になるというふうに思っております。

鈴木(宗)委員 ぜひとも大臣、この改革、杉浦副大臣を中心に政務官、きょうも小島政務官がおられるし、あと山口政務官もおられて、土屋政務官もおられて、一生懸命つくられたものですから、この文言……(発言する者あり)ああ、丸谷、丸谷、失礼しました。土屋さんでなくて丸谷さん。丸谷政務官もおられましてやっていますので、言葉だけでなくて、ぜひともこれは実効の実の上がるようにしてほしいと思いますね。

 あと、私は、発展途上国の大使には若い本省の課長クラスの人を出した方がいいと思うんですね。発展途上国には将来があるわけですよ。しからば、やはりある程度時間が必要ですよね。しからば、大使といえばすぐもうそこで終わりだというのが一つのポストになっていますね。私は、やはり若い課長クラスの人も、発展途上国には大使で送り込んで長いつき合いをさせる、いずれ本省に帰ってくるという人を持っていけば、これまた日本にとっても、その国にとっても悪いことじゃないと思いますけれども、大臣どうでしょう。

田中国務大臣 若い世代、未来のある若い国に対して若い将来性のある外交官を出す、これは大変すばらしいと思いますし、このことも、省内で公募制度をとって希望者が手を挙げていただくということもこの要綱に盛り込んであるかと思いますが、手を挙げなくても、やはりそういうフレッシュな感覚とやる気と体力のある人が、気候、環境も厳しいかもしれませんけれども、逆に言うと、やりがいのあるいろいろなイシュー、事案もあると思いますので、そういうこともまた拳々服膺しながら、実現の方向に向けていきたいというふうに思います。

鈴木(宗)委員 あと、この改革案を読みながらも、私は、やはり外務省が足腰の強い体制をとるためには、専門家集団というものをもっともっと養成した方がいいと思いますね。

 例えば、これから心配されるテロなんかに対するどういった対応をするかとか、具体的に言うならば、こういった専門家集団。あるいはさらには、これは経協があれば経済局もあるわけですから、経済の専門家というものも私はやはり必要だと思いますね。あるいは、語学の専門家だとか、もちろん地域の専門家も必要ですよ。

 そういった専門家集団をつくって、その専門家集団がやはり外務省の一番の働き手になっているわけですよ。同時に、私は、その人たちに対するポストだとかあるいは立場というのも考えてやらなければいけない、こう思うんですね。この改革案にもフレーズはありますけれども、より具体的に私は大臣にそれをやっていただきたい、こう思うんですが、いかがでしょうか。

田中国務大臣 専門家の育成、それから適材適所の配置、それから他省庁やら民間との交流、そのほかやるべきことはたくさんあると思いますが、これはやはり、省内それから省外、あらゆる方の御意見を聞きながら進めてまいりたいと思います。

鈴木(宗)委員 あと大臣、私は日本外交の戦略のカードの一つとしてODAがあると思うんです。それをよくODAはいろいろな、大臣も記者会見等で何かどす黒い疑惑があるとかという表現もありましたけれども、私はやはり不正だとか悪事があってはいけぬと思いますね、これは。しかも、国民の税金を使う以上は、まずもってこれは透明性が一番の確保ですよ。それとやはりきちんと使われているという確認が大事なんですね。しかし、ODAイコール、日本の財政も大変だから、すぐ、ある閣僚なんかは一割カットだなんということを何の手続もなしに言ってしまっていますね。

 私は、日本もつらい、しかし、日本が国際社会の中で名誉ある地位をいただくためには、日本は我慢してでも困った国は面倒見ますよという、心の豊かさといいますか、それなりの誇りだとか勇気を持って立つ者が日本人でなければいけない、こう思っているんですよ。

 そういった意味で、大臣、このODAのレベルは下げるべきでないと私は思っているんです。ただ、むだなものは、やはりそれは切るのは必要ですよ。しかし、全体のパイとして、私はすぐこの削減というのはいかがなものかと思いますけれども、大臣はどんなお考えでしょうか。

田中国務大臣 私のODAに対する認識は、人間の安全保障といいますか、そういうことだろうというふうに思っていますし、地球の裏側なりどこなり、地球上にともに生きている人間、地球市民として、一種の共生と連帯のあかしであろうというふうに思っております。

 そして、これが納税者、国民の、日本の皆様からも、ベストはありませんけれども、最大公約数、御理解をいただき、そして、結果としてそれが花開くものである。そして、長い目で見て、相手の国の方からも喜ばれて、結果的には世界の平和とか安定とかお互いの国益とか幸せにつながる。これが基本の理念だというふうに思っております。

 ただし、今おっしゃった一〇%云々というのは、これは一部で出たそうですが、まだ私どもは正確には一切、今見直しをやっております最中でございますので、やっているベースは第二次ODA改革懇談会というのを設置しておりまして、私も一回出席いたしましたけれども、これは、非常に建設的な、実態に即した議論がなされております。そして、その中で、理念なき援助というのはもう、今は、特に不況になってくると難しいというふうな意見もおっしゃっている方もおられますし、日本が援助疲れをしている、それから世界もODAは減っているとか、そういういろいろな意見もありますけれども、日本の――ですから、これが透明性なんですけれども、開示しながら、将来を見据えて、これは本当にポジティブに、結果的に冒頭申し上げたようなことに落ちつくのだということであれば、政府の責任において、有権者の、国民の皆様に説明をはっきりしながら責任を持って遂行する、これはもうちゃんと政治の責任、リーダーシップであります。

 ただし、長い目で見ても、これはどう見ても厳しいかもしれない、相手の方も御迷惑かもしれないしと、初めよかれと思って始めていますね、でも、そういうことがあった場合には、それを撤退する勇気というものも必要であろうというふうに思います。

鈴木(宗)委員 例えばアフリカなんかでも、お金を借りたらそれを借りたまま、そのままでいいんだみたいな安易な考え方を持つ国もありますね。私は、そういうところは厳しく言っているのです、借りたものは返すというのが、これがやはり最大のルールですよと。その裏づけがあって初めて、また信頼関係のもとに新たな貸し出しもできるのですよと説明するのですけれども、なかなか、困っていると、背に腹はかえられないというか、何か滞納したり、あるいはルーズな扱いをする人もおりますけれども、私は、そこら辺もきちっとチェックしながらも、ただ、日本が今日あるのは、やはり世界のおかげであるという認識を持たぬといけませんね。あの五十六年前、廃墟と化した日本が今日あるのは、やはり世界の国が助けてくれたからでないか、こう思っているのですね。その思いだけは忘れてはいけない、私はいつもそんなふうに思っているのです。

 ただ、私はアフリカをよく面倒を見ます。私自身も、大臣みたく裕福じゃありませんから、限られた浄財の中で、アフリカに学校をつくったり、いろいろなサポートもしているのです。ことしの秋にもタンザニアに鈴木ホールができるから、私は行こうか、こう思っているのですけれども、私は私なりに、できる範囲でやっているのですけれども、やはり、日本の国は、何といったって世界の経済の一五%を占めるのですから、その国力にふさわしいきちっとした協力、私は、援助というのは何となく差がついているようでおこがましいと思っているのです。やはり協力という言葉で統一してやっていった方がいいのでないか、私はこう思うのです。

 私はなぜアフリカをやるかというのは、簡単なんです。私は昭和二十三年生まれです。大臣が十九年ですから、それなりの共通認識もあると思いますけれども、私ら子供のころ、田舎では栄養失調で、佝僂病といって、手足が曲がったり、背骨が曲がった子供が必ずクラスに一人か二人いました。助けてやりたいと思っても、こっちも力がないから助けられぬかったわけですよ。私はそのことがいつも頭にありますから、今こうして話をしておっても、アフリカでは何万人という人が物が食べられなくて死んでいっているのですよ。

 しからば、私は、日本の善意というか、日本国民の優しさといいますか、それを、ちょっとでもふやすことによって、あるいはちょっとでも協力することによって、全く見る目が違ってくるのですね。これがまた将来にも生きていくし、今度、日本がいつの日か困ったときに、あのアフリカなんかは資源のある国ですよ、そして、政治も安定して、市場経済のノウハウもしっかり得たならば、相当な力を持ちますね。そうしたら、日本は資源のない国ですから、日本がいつまでも今の状態であるとは思っていません。何か困ったとき、我々が一番つらいときに、我々が苦しかったときに一番助けてくれたのが、どこの国でもない、日本が一番だ、日本はいい国だと、その発展途上国といいますか、そういった国々が言ってくれたならば、必ず我々の子供や孫たちの時代に裨益するものがあると私は思っているのです。

 私は、それがまたODAであるし、経済協力の一つに考えてもいいと思っているのですよ。私はそんな思いで、アフリカにしろあるいは中南米のペルーだとか、あるいは東南アジアの国だとかモンゴルなんかも、私なりにやっているのですね。

 ただ、私がそういった応援をすると、すぐ何か利権があるのではないかとか余計なことを言われますから迷惑でありますけれども、私は、こうやって平場で言う以上、この委員会でもケニアのソンドゥ・ミリウのダムの問題で、何かあるのでないかなんという質問もした人がおりましたけれども、私は、公電を出しても、オープンにしても何らやましいところはありませんから、問題ないんですね。

 一生懸命やれば批判されるという今の構造は、私はおかしいと思いますから、どうぞ大臣、こういったODAなんかも少し自信を持って、私はぜひとも対応していただきたい、こんなふうに思っているのですが、大臣の考えはいかがでしょうか。

田中国務大臣 全く感動して今の大演説を伺わせていただきまして、また今後も御指導いただきたいと思います。おっしゃるとおりと思います、本当に。

鈴木(宗)委員 大臣と私では美女と野獣みたいなものですから、大臣が必ず私とこういう話し合いをするときは得しますから、いかようにでもまた使ってほしいな、私はこんなふうに思っているのですね。

 最後に、大臣。大臣は、外務省は、正面玄関から入られますね。正面玄関に入って突き当たりに、あのハトと戯れる像がありますね。大臣、あそこに何て書いてあるか、読んだことがありますか。

田中国務大臣 あれは、富永直樹先生が、彫刻家がおつくりになって、平和の像じゃないでしょうか。平和の像でしたか、男の子と女の子とハトがいるのですね、かわいらしい。富永直樹先生だということはわかっておりました。

鈴木(宗)委員 私は、そこに書いてある言葉が大事だ、こう思っているのです。

 あの顕彰碑には「我が国の今日の平和と繁栄は、多くの先人の労苦を礎として築かれたものである。外務省職員とその家族の中には、このために尽くし、とうとい生命を犠牲にした者が少なくない。これらの人々をしのび、その功績を永久にたたえて、ここに顕彰の像を建立する。 昭和五十六年五月 外務省職員一同」こうなっているのです。

 私は、この言葉が極めて重いと思っているのですよ。批判をしたり、あるいは弱腰外交だとよく言われるけれども、外交は相手がある。しからば、一歩引いて二歩前進ということもあるのですね。それが今の外務省が置かれている状況だと思っているのですよ。

 しからば、軽々に外務省を批判するというのは私は甘いと思うのです。やはり本当に命をかけてやっている、ナショナルフラッグを背にして頑張っている、このことだけはしっかり評価をして、しかし、悪かった、その面は正していく、これが私は公正で公平な姿勢でないか、こう思っているのですね。大臣、いかがでしょうか。

田中国務大臣 おっしゃることに何ら異存はございません。ただし、私が、外務省の方たちともめているとかなんとかというのは、これは風評がございますけれども、機密費の問題について、あれでふたをしてしまいたいと思っている方たちもおられるでしょうし、そうでなくて、ここでもって本当に大改革をしてほしいと思っている方たちもおられます。

 したがって、そういう有志の方たちとして、ずっと実名を出してグループでバックアップしてくださった方もおられますし、局長たちやら若いスタッフたちも、一生懸命やっている人の方が多いのです。

 ただし、何でもそれでいいというものではなくて、黙って安直に乗っかっているよりも、抵抗が大きくても、やはりここでもって改革をしていかなければならないときに偶然にもこういう若輩がこういうポストにつかせていただきましたけれども、ここで今まで、この二カ月間、委員会のテーマになったこと、すべてとは申しませんけれども、やはりそういう改革をしてほしくない、できるだけ旧態依然としたものを何とか続けたいというような、人たちかグループかわかりませんけれども、そういう方たちが何らかの形でもって、まあ、いろいろなことをしたのかしないのか、そういうものが霧のようにあって、それが外国にも誤解を与え、またマスコミ批判、私はマスコミをじかに批判しているわけでもありませんけれども、そういうふうないろいろな問題が派生的に起こってきて、そのことだけが前に出てきて、委員会に出てきて、委員会でかなり議論、時間を使ったことは大変もったいないと思っていますが、しかし、もう時間の問題でございまして、これがしっかりと、数字は、少なくとも、改革につきましては、この機密費の問題、これにつきましては、今度の暮れの予算までにしっかりと精査をして、そして見える形でわかりやすく、切り込みをはっきりいたします。

 完璧はありません。しかし、できるだけ、最善を尽くしてなるほどねと思っていただけるものにしたい。ただ、それに対する抵抗勢力が少なくとも、役所の中やらあるいはメディアか財界か、何ですか、国会かわかりませんけれども、そういうものが見えない形でもってやはり迫ってきているというものは非常に感じておりますが、しかし、それを超えてやはりしっかりと頑張っていかなきゃいけないというふうに思っておりますので、応援方よろしくお願いいたします。

鈴木(宗)委員 大臣、その抵抗勢力が中にあるとか外にあるというのは、私は黙ってやった方がいいと思うんです。言ってしまったら、せっかくの大臣の思いも私は逆に誤解されるときがあると思うんですね。

 私はお願いしたいんです。さっきも言ったけれども、内に秘めた話でいいんです、今の。言葉に出してしまったら、大臣、これまた私は信頼関係というのはなくなると思うんですね。ですから、大臣、その思いは我々も感じるんですから、だから協力できることはしますよ。もし役人が大臣に抵抗するなら、私が乗り込んでいきますから、言ってください、何ぼでもそれは。少なくとも、私もそれなりの人を知っていますから、大体どんな考えを持っている、あるいはどんな生き方をしてきたかとかわかりますから。ただ、大臣が急に行った、それでやはり相当肩に力が入っているという中で、ちょっと意思の疎通というのがないかもしれませんから、この点は私どもも協力することは何ぼでもしますから。

 ただ、こういう平場で抵抗勢力があると言ってしまったら、これまた私は実のないことになってしまってだめだ、こう思いますからあえて言わせてもらいますけれども、ぜひとも大臣、心を広くして、やはり人の心をつかむんだと。大臣だけのキャラクターを持った人というのはそういるものじゃないんですから、ぜひとも私はうまく人を使っていただきたいと思うんです。

 最近でも、私もちょっとお葬式に顔を出したんですけれども、ガザフスタンの田中さんという大使さんですね、あの人なんかも早く病院に行けばいいんですよ、早く病院に行けばいい。しかし、まだ大丈夫だ、これが最後の一言ですよ。まだ大丈夫だと言って病院に行かなくて死んでしまっているんですよ。そういう人がいるんですね。あるいは在外公館課長なんかもそうでないでしょうか、高橋さんなんかも。これはやはり病気と言いながらも、それはいろいろな心労やストレスがきてああいうかわいそうな結果になっていますよ。

 やはり外務省はそういう人がたくさんいるんですよ。これはほかの省庁にはない、私は、外務省の日本国に対する責任、あるいは誇りを持ってやっていると思うんですね。ぜひとも大臣にはそのことを絶えず頭に入れて職員と接していただきたい。そうすれば、必ず大臣も評価されるし、逆に外務省も、ここまで立ち上がったか、ここまで改革されたかという結果がついてくるんでないかな、こんなふうに私は思っているんです。

 きょう、大臣と一時間十分ぐらい、いい質問をさせてもらいました。前回もいい質問をさせてもらったんです。前回もいい質問をしたけれども、勉強不足の人たちが、特にテレビを見た人が、ちょっとしたワンシーンですから、そこで誤解を生みますけれども、私は、大臣とはいい政策論争をしたと思っているんです。たまたま大臣は、政策は政策でも一つの政策だったから気に召さなかったと思いますけれども、前回ですよ。きょうだって私は主な時間は一つの政策に絞っていますけれども、私は前回もいろいろな話、ODAから改革の話から、あるいは本当は機密費の話から、いろいろしたかったんですよ。しかし、どうもかみ合わなかったものですからあんな結果になったんですけれども。しかし、こうして話をしてみると、お互い共通の認識でやっていけるわけでありますから、ぜひとも大臣、自信を持って頑張っていただきたい。

 同時に、人の声とか人の話に耳を傾けることも大事でありますから、私なんかは比較的こうやってはっきり物を言っていいですけれども、物を言っていない人の声なき声というのもたくさんありますから、そこは日本のお母さん的な大きな懐で、大きなハートで、これまた若い人たちをあるときは叱咤激励し、またあるときはきちっとやはりよくやっているぞという温かい言葉もかけていくならば、これまた私は、田中名外務大臣として歴史に名を残すことにもなるんでないかな、こんなふうに思っているんですね。

 このことを最後にお願いして、私の質問といたします。ありがとうございました。

土肥委員長 次に、下地幹郎君。

下地委員 日本全体が注目している質問の後に質問をするのはなかなか大変なこと、委員長にも御理解いただきたいなと思っております。

 今の鈴木先生と田中大臣の質問を聞かせていただきまして、共通項もいっぱいあるし、大臣も感動したと言っているし、本当にこの質問はまた新たな外務省のスタートになるんじゃないかな、そんな思いをしておりますから、ぜひ仲よくしてよろしくお願いをしたいというふうに思っております。同じ自民党同士でありますから、きょうは民主党もちょっと肩透かしを食らったような感じでありますけれども、自民党というのはこういう仲のいい政党であることもまた御理解をいただきたいというふうに思っております。

 私は、自民党の青年海外協力隊の小委員長を今度やることになったんです。きのう、広尾の、派遣前の訓練の卒業式といいますか、そこに参加をさせていただきました。七十九日間の研修期間、四十七人の、女性の方が三分の二でありましたけれども、卒業式に行って私もごあいさつをさせていただきましたけれども、その後の謝辞で代表の方が言っていたんですけれども、一生懸命に草の根外交をしていきたい、七十九日間勉強したことを、ボリビアやいろいろな国々に行って日本の外交マンとして自分は頑張っていきたいということをお話ししておりましたけれども、感動的なシーンだったと私は思っております。

 私は、外交をここで多くの皆さんが論じておりますけれども、きょう、委員長も大臣も、そしてきょうお越しの委員も、いない委員も全部、条約を三本残すということは外交、国益に反しているということだけは僕らは頭に入れなければいけないと思うんですね。ここでいかに論議をしても、友好国に対してやろうといっても、今度残した条約が――私どもにとってはこれはよくない。このことは、委員長、いろいろな事情があったにしても、条約は通す、これは私どもの責任でやらずして外交を大きな声でやってもなかなかできない、きのうの広尾の子供たちの話を聞いていてもそういう思いが私はしました。次の臨時国会からはそんなことがないように、ぜひ皆さん一致団結をして、やるべきことはやる、私はこれはぜひお願いをしたいなというふうに思っております。委員長、答弁。――冗談ですけれども。

 それで、鈴木先生が北をやりましたから、私はちょっと南をやりたいと思っております。航空自衛隊の誤射事件がありましたけれども、この航空自衛隊の飛行機は那覇空港から飛び立った飛行機でありまして、那覇空港で駐留をしている航空自衛隊の飛行機が北海道に行って今誤射事件を起こしたわけでありますけれども、今の現状と、早急な対応はどういうふうなものをしたのか、まず防衛庁からお話を伺いたいと思っています。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 まず、事故の概要でございますけれども、六月の二十五日十時五十五分ごろに、北海道千歳市北西の島松射撃場におきまして、航空自衛隊、これは先ほど先生からも御指摘がございましたが、那覇に所属しております第三〇二飛行隊、このF4型ファントム機がロケット弾による訓練を実施いたしておりましたところ、搭載しております二十ミリの機関砲から訓練弾が百八十八発誤発射されまして、その一部が射撃場の外部に落下いたしました。そして、北広島市のリハビリセンターの施設ですとかあるいは民間車両等に被害を与えたところでございまして、本当に、あってはならない事故が起きてしまいました。本当に、不幸中の幸いで、人身には被害はなかったわけでございますが、私ども防衛庁といたしまして深刻にこの問題をとらえておりまして、心から重ねて地元の自治体の皆様そして被害に遭われた方々、地域の皆様方に深くおわびを申し上げる次第でございます。

 そして、先生から、速やかにとった措置についての御質問がございましたが、私ども防衛庁といたしましては、事故当日、二十五日でございますが、直ちに航空自衛隊の航空事故調査チーム、航空事故調査委員会のメンバー、これを現地に派遣いたしまして、原因の徹底的な究明ということで調査を開始いたしまして今日に至っております。

 それから、もう一つとった措置といたしましては、航空自衛隊機のすべてにつきまして、これは戦闘機でございますが、弾薬あるいはミサイルなどを搭載しての射撃訓練、これはすべて中止をする措置をとっております。さらに、各種戦闘機の武器系統の一斉点検といったことにつきましても実施をいたしております。

 そして、事故が発生した直後、関係自治体、また関係の皆様に対しまして、現地の部隊等から関係者が状況の報告、また謝罪にお伺いしたところでございます。

 さらに、私どもの防衛庁長官、今回の事故の重大性を強く指摘されまして、平沢防衛庁長官政務官を、事故当日の夜でございますが、二十五日夜現地に派遣をさせていただきました。平沢政務官は、現地に到着後直ちに、部隊に対しまして改めて原因の徹底究明といった事柄につきまして指示をいたしますとともに、昨日、二十六日でございますが、北海道知事さん、北広島市長さんを初めといたします地元自治体の皆様方、そして被害を受けた方々のもとに赴きまして、直接謝罪等を申し上げたところでございます。

 さらに、防衛庁といたしましては、昨日、防衛庁長官から、事故原因の究明、そして、全自衛隊に対しまして、これは事故を起こしたのは航空自衛隊でございますけれども、陸海自衛隊もこれを自分のものとして強く認識し、改めて安全管理それから綱紀粛正といったことにも万全を期するよう指示をいただいております。

 こうした中で、本日でございますが、先ほど御答弁申しました調査チームが行って調査をしているわけですが、そうした中で、二十ミリ機関砲の発射経路に係るふぐあいというものが発見されました。

 昨日発見されまして、本日公表させていただいたところでありますが、これは、概要を申しますと、正常であれば、通常であれば、武器系統の主電源、マスター・アーモ・スイッチでございますが、これを入れまして、操縦桿に取りつけられた機関砲の引き金を引くことによりまして、機関砲に発射のための電流が流れるわけであります。操縦桿に、トリガーと言っていますが、引き金がついております。これが流れるところですが、事故を起こした機体につきまして調査を行いましたところ、今申しました電気系統の主電源を入れた状態のままでありますと、引き金を引くことなく操縦桿を動かしただけで二十ミリの機関砲の発射のための電流が流れる、そういったふぐあいが発見されました。

 大臣に直ちに報告し、大臣の方からも、国民の皆様に速やかに公表するようにということで、先ほど公表させていただいておりますが、今回のこういった事象は、現在徹底調査中の事故原因の究明につながる可能性が大変大きい重要な事象であると考えております。

 今後も、防衛庁といたしましては、こういった事象も含めましてでございますが、すべての可能性につきまして調査を継続し、原因の徹底究明を図っていくことが、まず何よりも国民の皆様方にこたえる防衛庁としてとるべき道である、そのように考えております。

 長くなりましたが、以上でございます。

下地委員 年間、那覇空港は十一万四千回くらいの離発着があるのですけれども、自衛隊機は二万二千回ぐらい。自衛隊と民間機が一緒に使っている空港、三沢もあるでしょうけれども、那覇空港もこういう状況になっているわけです。

 この五年間で、那覇空港において起こったトラブル、そして滑走路が閉鎖された件数、幾つぐらいあると思いますか。

北原政府参考人 現在、手元に資料がございませんが、ついせんだって、滑走路に着陸した戦闘機が脱輪する等によりまして民航機に御迷惑をかけたこと等、こういった事案が続いておりますことにつきまして、また御迷惑をかけていることにつきまして、本当に申しわけない、そのように考えております。そのようなことが繰り返されることがないように努めていかなければならないと思っております。

下地委員 平成八年が二回、平成九年が十四回、平成十年になったら、エンジントラブルを初め七回、十一年になったら三回、去年は五回、こうやって、自衛隊において滑走路が閉鎖された件数が下がらないという状況になっているのですね。

 私は、民間と自衛隊がこうやって、年間一千六百万席もある那覇空港において、こういうふうなトラブルが多い、今度のような大事には至らないけれども原因不明のこういう状況があるというのを重く受けとめて、民間機と共同使用している空港を管理していかなければいけないんじゃないかなというふうに思っております。そのことをまず一点目に指摘をさせていただきたいなというふうに思っております。

 それで、二点目ですけれども、今尖閣列島が非常に波高しというふうな状況でありますけれども、尖閣における、今、近ごろ起こっている問題、トラブルが数多く起こっていますけれども、その事例を挙げて、どういう状況になっているのかを海上保安庁長官からちょっと御説明ください。

縄野政府参考人 お答え申し上げます。

 尖閣列島につきましては、漁業について申し上げますと、例年、カワハギ漁などのために、中国、台湾漁船が出漁してまいります。平成十年、十一年には、尖閣列島周辺の領海の中に侵入しました中国と台湾の漁船は千八百隻前後確認をされました。平成十二年には三百十二隻と大きく減少いたしまして、平成十三年、ことしでございますが、五月末現在で百八十九隻を確認しております。

 これらの領海侵入の漁船につきましては、私どもの警告を行いますと直ちに、最近の事例では、領海外に退去をしておるところでございます。

 いずれにしましても、私どもとしましては、この周辺海域に大型巡視船を常時配備いたしまして、航空機による定期的な哨戒を行いまして、不法操業への対応に万全を期しておるところでございます。

下地委員 自衛隊機による那覇空港からのスクランブル、年間幾つですか。年度ごとに、この三年間、お願いします。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 若干資料が古くなりますけれども、平成十年度におきましては三十六回、また十一年度につきましては二十一回、これは統計の整理がちょっとまだおくれておりますけれども、十二月末現在でございますが二十一回。ただ、数年のものを見てみますと、若干の差がございますけれども、五十数回から二十数回という形になっております。

下地委員 スクランブルの数も、統計の数字から見ても多くなってきている。先ほど、海上保安庁長官からいっても、海上においても、今、領海侵犯と申しますか、この前も台湾の漁船と海上保安庁の船との激突がありましたね。そういうふうな船でトラブルが数多く出ている。

 この前、中国の調査船の問題がありましたけれども、その経過も非常に、委員会でも多くの先生方が指摘をしておりますけれども、日本の国益を損なうものだという声が出ているわけなんです。

 それで、外務省として、槙田局長の方で、こういうふうなスクランブルや、そして海上におけるいろいろな問題に対して、台湾や中国に対してどのような措置を、日本としてはメッセージを送っているのか、対処しているのかということをちょっとお聞かせをください。

槙田政府参考人 尖閣諸島の領有権と申しましょうか、この問題についての我が国の立場は極めて明確なわけでございまして、したがいまして、これを侵すようなことが行われた場合には、当然のことながら、我が国の立場を強く相手方に伝え、是正を求めるということ、これは当然のことであると思っております。したがいまして、それが基本ラインでございます。

 それで、そういうメッセージといいましょうか、そういう日本の立場は常々中国にも、また台湾にも適切な形で伝えておりますが、さらに具体的に何か事件が起きたときには、その機をとらえて、また我が方の立場を明らかにする、是正を求めるということをやってきております。

下地委員 具体的に、今の漁船の問題が起こったときは、どういうふうな措置をしたのか、相手側に対してですよ。そして、中国の調査船の場合には、何月何日、どこで、どういうふうな措置を中国側に言ったのかということをちょっとはっきり明確に具体的に言ってもらえませんか。

槙田政府参考人 中国の科学調査船の問題ですけれども、これはことしの二月の半ばに、いわゆる事前通報を行って、我が国の排他的経済水域において中国が科学的調査を行う場合には、我が国の事前の同意を求める、そういうシステムが実施されてきておるわけでございますが、それ以来、現在に至るまで、私の記憶では、約十三件ほどそういう申請が、申請と申しましょうか、通報がありまして、そのうち十一件につきましては同意をした、二件については今審査中である、こういうことだと思います。

 その十一件のケースは、これが科学的な調査ということで問題ないというふうに私ども思ったわけですが、一件ほど、これは五月の末だったかと思いますけれども、これは中国側は完全に事務的な通報ミスであったということで言っておりましたけれども、先方の通報なくこの水域でもって科学的調査を行っていたということがございます。これに対しては直ちに申し入れをいたしまして、これが事前通報の事務的なミスであったので御理解願いたいということがあったわけでございます。

 あとは、台湾の船、これは、委員のおっしゃっているのは台湾の船と海上保安庁の巡視船が衝突したというあの件だと思いますが、これについてはちょっと私、今、事実関係をつまびらかにしておりませんけれども、この台湾漁船の行動に対しては、事態の解決のために、台湾当局との間の折衝が行われたというふうに理解しております。

下地委員 海上保安庁、こういうふうな問題に関して、外務省と連携をとって、きちっとその場その場で一つ一つをやはり相手側に対してやっていかないと、固有の領土であるという私どもの認識と、ちょっと対応がおくれると実質的な支配権みたいな感じになっちゃうから、そのことをしっかりと対応してもらいたい。

 与那国とかあの辺の方々に言わせると、やはり弱いと言うんだよね。日本の海上保安庁のあり方も、外務省の問題が起こったときの対応も、明確な対応をしていない、そういうふうなことをよく指摘をされます。

 もう皆さんもおわかりの、平成八年のときに、中国からミサイルが飛んできたときありましたよね。中国の訓練のミサイルが飛んできたときも、与那国なんか、もう沖縄本島に行かれる方、公海に落ちたからいいようなものの、そういうふうな不安感を持って国境の町で生きているということをよく認識をして、その対応だけはきちっとしてもらいたい。

 それと、海上保安庁は、与那国とかあの近辺で漁業をする石垣漁協だとか平良漁協だとか、そういう方々に対する研修だとか、そういうのを今しっかりやっていますから、そういうふうな皆さんに対して、注意を促すだとか、そういうふうな情報を提供するだとか、そういうのもなかなかやっていないと思うんですよね。だから、監視をするだけじゃなくて、その地域に対する情報を漁民の皆さんにも流す、このことも頭に入れていただきたいというふうに思っております。

 大臣、聞いておいてくださいよ、後で質問しますから。

 それで、二つお話をしていますけれども、一つは、今の那覇空港において、自衛隊機の中でスクランブルが多いよ、そして、空港が閉鎖されるような状況も、事故も多発をしていますということ。それで、海上においても空においても、南の国境というのは今波高しなんだというその認識をぜひ持っていただきたいなというふうに思っているんです。

 航空局長、来ていると思うんですけれども、この前、那覇空港の一日当たりの取扱量という数字を航空局からもらってありますけれども、朝の七時から七時五十九分まで、民間機七機、軍用機、自衛隊含めて二機、プラス九機が離発着をやっているわけですね。

 こういうふうにずっと計算をしていくと、一日当たりで、民間機が二百五十一回、そして軍用機が百四十八回、そして全体で三百九十九回、那覇空港で離発着が行われているという現状の認識の数字をいただいておりますけれども、このことは、この数字でよろしいですよね。よろしいですか。

深谷政府参考人 御説明申し上げます。

 先生今御指摘の数字、そういうデータでございます。

 那覇空港につきましては、年間、先ほども先生から御指摘ございましたけれども、離着陸回数は十一万回、それから利用者は一千百万人を超える、こういう状況でございますので、全国の中でも有数な飛行場だと認識しております。

下地委員 私が単純に計算しまして、この前視察に行って、那覇空港の管制塔から自衛隊も一緒に見てまいりました。そうすると、管制官が言うんですけれども、着陸をして、ずっと走っていって、誘導路を曲がるまでに二分かかりますよ、おりてくださいという指示をするまでに大体二分ぐらいのピッチで私どもはやっておりますと。軍民、軍民というか共用ですから、一分半のところも一分四十秒のところもありますけれども、二分間というのをベースにしてやっていますよという話でありました。

 そうなりますと、一時間当たりで三十回、それで計算をして、今、実際に飛行機が飛んでいるのは十七時間ぐらいですから、十七時間ぐらいの計算で、一日当たり那覇空港で飛べる数というのが、今の現状の三十回を超えているのも入れて、足りないものを、二十回のものも加えて、全部やると四百二十七回ぐらいが限界なんですね、四百二十七回ぐらいが。民間と自衛隊、それで四百二十七回ぐらいが限界。一日四百二十七回が限界で、年間十五万五千回ぐらいが限界、十五万五千八百五十五回が最大能力じゃないかなというふうな感じをしているんです。平成十一年には十二万一千百九十九回というふうになっておりますけれども、この二分間に一回、そして四百二十七回、十七時間、十五万五千回、これが大体基準になっていますけれども、これも、航空局、よろしいですか。

深谷政府参考人 御説明申し上げます。

 今御指摘の離着陸回数につきましては、那覇空港、先生御指摘のとおり、平成十二年で十一万三千五百八十回余でございます。さらに、十五万回云々の数字につきましては、一つの計算かな、こういうふうに思っております。

下地委員 この数字を根拠にして、少し沖縄の観光についてお話をしたいんですけれども、今沖縄の観光、この前の沖特委員会で、安達局長、来ていますか、七百万人という数がありましたよね。七百万人という数字がありました。

 私は、これは六月の便数ですけれども、本土からの着便で七十五回なんですね。そして、そのうちの東京、大阪、名古屋、福岡、鹿児島から大体五十二便。八六・二七%ぐらいが東京、大阪、名古屋から来ているんですね。沖縄の観光客は、本土の分だけを添えると、空だけを添えると、四百三十八万人ですよ。それは海を入れないでやっています。

 そうなると、私が申し上げた四百二十七回という数字を考えて、今の現状の三百九十九回をやると、二十八便しか増便ができないことになるんです。この二十八便を増便するとなると、この二十八便というのは、離発着で二十八便になっているわけだから、着陸だけ観光のベースで考えると十四便なんですね。この十四便を観光にどれだけするかということを計算してみますと、三百七十八万五千人から五十二便の計算をして、割って、三百六十五を掛けて、十四便のうちの十便が東京、大阪ですから、それに三百六十五日を掛けると、七十二万九千人ぐらいの観光客がふえるんですね。その他、東京以外のところから考えると、これは少し落ちますから、それも四百三十八万人から三百七十万人を引いて、七十五に五十二を引いて、三百六十五を掛けて、掛けるようになって、三百六十五を掛けると、大体十万人です。大体ふえる数が十四機です。十四着陸を全部ふやしても、大体八十三万人ぐらいが観光のアッパーになるんですね。那覇空港の数からして、十四機をふやしても八十三万人です。だから、それに四百三十万人を足しても五百二十万人になるんですよ。五百二十万人。

 そして今、那覇空港の座席数、本土だけでいったら一千三百万席、座席数がある。利用者は八百八十万人が来ている。それで、観光客が四百三十万人来ているという計算をして、この今の座席数だけをアップする。一〇%アップをする。そして、利用者がふえる。それに伴って観光客の数が五十万人ぐらいふえるんですね。この五十万人と先ほどの五十万人を足しても五百万人を超える数字しか計算できないんです。どんなに沖縄がひっくり返っても、今の那覇空港の体制では六百万人もいくかいかないか、このキャパがそうなっているんですよ、那覇空港のキャパが。

 だから、今の那覇空港のそのままで、まず沖縄県が、当時の二階運輸大臣が来て七百万人の観光客と言っても、今の那覇空港の、自衛隊と民間機が使用して、そして増便できる数を考えて、それに観光客が乗っていって、今の数字をしたら、七百万人という数字は到底出てこない。これは一〇〇%出てこない。出てくるというのは、これはもう手品だ。手品をやる方法は一個だけある。全部大型の五百人乗りの飛行機にかえたら、それは手品は可能になりますよ。しかし、沖縄に来ている五百人乗りの飛行機というのは、東京、大阪のものだけで、そんな大きなものがないんです。

 この七百万人の観光というものに対して、どういう認識論と、どういう数字の定義からして出てくるのか、私が今言ったことはどうなのかということを、安達局長、ちょっとお願いします。

安達政府参考人 お答え申し上げます。

 七百万人と申し上げましたのは、県の専門委員会におきまして六百万人から七百万人という幅のある数字が出されているわけでございまして、最大値として七百万人という数字が専門委員会における議論として出てきたということでございます。

 それから、この那覇空港の現状において、沖縄の観光振興をさらに図っていくという面において大いに限界があるというところは私ども十分に認識しているところでございまして、既に那覇空港のさらなる展開につきまして平成十一年度から検討を始めておるというところでございますし、かなり早急な対応が必要ではないかというふうに考えるわけでございまして、今後、県が行います諸調査におきましても、これを支援を行っていくとか、こういった形で速やかな検討が進められるよう、私どもとしても応援してまいりたいというふうに考えております。

下地委員 明確にしてもらいたいんですけれども、今の七百万人という観光客の数値は、今の那覇空港の現状では無理ですね、物理的に。

安達政府参考人 私よりもさらに専門家が申し上げるべきかもわかりませんが、一般に、空港において、十分、ゆっくりやっておればいいんだということでは全くございませんけれども、大きく見積もって二割ぐらいの、オペレーション上の工夫によって二割ぐらいのアローアンスはあるのではないかというふうに私自身は考えております。

下地委員 二割というのは、できるということ……。七百万人まで達せられると。七百万人という数字と今の現状とを比較して言ってくださいよ。はっきりしてもらえばいいから、その辺だけ。

安達政府参考人 私どもポスト三次振計の議論を今鋭意進めておるところでございまして、政府における整合的な将来プランということにつきましては、次期空整の課題もございます。そういったところも含めて、整合的な見通しというものを出していく必要があるというふうに思っておりますが、この七百万という数字自身が一つの最大値ということで出ておるということもございますし、今の数字でもって、これが可能か不可能かということについては、お答えは控えさせていただきたいというふうに思います。

下地委員 いや、これは大事なんだよ。七百万人という目標は大事なんですよ、それはそれでいいんだから。

 だから、僕が言っている、今の那覇空港の現状や今の自衛隊の現状や全部を総合すると、数字上絶対無理なんだよ、今、那覇空港をそのままでは。那覇空港が、今皆さんが環境アセスをしてどうといって、沖合展開をするといっても、十何年ぐらいかかりますよ、完成までに。そういうふうな中で、はっきりと七百万人を打ち出しているけれども、今の空港の現状では難しいということを言わないと、逆に言わないと、沖合展開する意味もなければ、うやむやにすると逆におかしくなるんですよ、それは。

安達政府参考人 失礼いたしました。

 今の那覇空港が現状のままにおいて可能であるというふうには考えておりません。

下地委員 私はこのことはもう前から指摘をさせていただいておりますけれども、この沖合展開をしなければならない、沖縄が今観光の中でやっていかなければいけないということになってまいりますと、まさにこの空港の改善というのは、私どもが目標とする七百万人の数、そして沖縄が観光地としてやっていくためには、どうしても必要だ。しかし、それには十年間の時間がかかるということになると、そのままというわけにはいかないということを考えなきゃいけないのですね。

 そこで、今論議を呼んでおりますけれども、この下地島パイロット訓練飛行場、今、那覇空港において自衛隊機が一日百四十八回飛んでいるというふうなことを考えると、沖縄の観光を考えると、下地島パイロット訓練飛行場を使わない限り、自衛隊の訓練を向こうに移す、そうすると間違いなく、一番自衛隊が飛んでいる十一時から十一時五十九分、十五時から十五時五十九分、十六回、十六時から十六時五十九分までの十二回、こういうふうな一番民間機が入りたい時間帯に、自衛隊機が訓練を下地島パイロット訓練飛行場でやる。そういうことによって、枠があいて、民間機がもっと入れるような状況になって、沖縄の観光のためにもプラスになるし、自衛隊機も伸び伸びと訓練ができるという現状が生まれてくるんですね。

 そのことを認識して、この下地島パイロット訓練飛行場の問題に関して、大臣は、防衛庁長官は前向きに検討するというふうなことを言っておりますけれども、役所としても、数字的にこの詰めからして、沖縄のことを考えたら、これは必要じゃないですか。

 運用局長、そしてその後安達局長、これは明確にしてくださいよ。必要じゃないなら必要じゃないということを言っていただかないと、それなりにこっちも対応しますし。沖縄の観光のために自衛隊はそのままでいいのか。伸び伸びと訓練するためにいいのか。そのことも全部含めて答弁してください。

北原政府参考人 お答え申し上げます。

 下地先生、沖縄の将来、また沖縄の発展のこと、また沖縄の観光のことを考えての大変貴重な御意見と認識しております。

 この下地島空港の使用の問題につきましては、御承知のように、この島は沖縄県が管理しているわけでございまして、この建設が始まるに当たりまして確認が必要だということで、昭和四十六年に、当時の琉球政府から、同空港を民間航空訓練及び民間空港以外に使用させる意思はないことなどにつきまして日本政府として照会を受けまして、これに異存ない旨回答しているという経緯がございます。

 また、さらに沖縄県議会は、昭和五十四年に、下地島空港は、民間航空機のパイロット訓練及び民間航空機に使用させることとして、自衛隊等軍事目的には絶対に使用させない、そういった旨の決議をしているところでございます。

 そして、そうした決議並びに確認書と申しますか、今日に至っているわけでございますが……(下地委員「できるだけ短く。時間ないから」と呼ぶ)はい。こうした中、五月の二十二日並びに二十三日に、地元の沖縄県伊良部町より、同町議会の議決を受けたという形で、下地島空港への今御指摘の自衛隊機の訓練誘致につきまして御要望があったわけでございます。これにつきましては、防衛庁といたしましても、先ほど申しました下地島空港をめぐる経緯をこれはやはり踏まえていく必要があると考えております。

 また、沖縄県御当局あるいは県議会を含めた地元の議論の今後の動向といったものにつきまして十分注視してまいりたい。先般も議会で、百三十一万県民のリーダーであります稲嶺知事さんも議会答弁等されておられますが、今いろいろな動きがある中で、私ども、先生が御指摘されたこと、また地元の御要望等々、それからこれまでの経緯などにつきまして十分御地元の動きというものにつきまして注視してまいりたい、そのように考えております。

安達政府参考人 沖縄の観光振興という観点、純粋にその観点から申しますと私どもも先生と同感でございますが、今運用局長からありましたようなこれまでの経緯、そして地元におきますコンセンサスの形成の状況といったところを私どもとしても見守ってまいりたいというふうに思っております。

下地委員 下地島空港、まだ見ていない方もいらっしゃるかもしれませんけれども、三千メートルの飛行場、誘導路もしっかりあって、もうすばらしい飛行場があります。羽田空港と何ら変わらないような施設がある。しかし、一日四時間しか使われていない。会計検査院からも今度注意を受けている。これだけの空港がありながら全く使われないというのはどういう意味だという感じのことを言っておられる。

 私は、今の運用局長が言っている当時の、三十年前の屋良朝苗知事と山中当時の総務庁長官が押した印鑑、自衛隊と米軍機には使わせないというふうなことが書かれておりますけれども、三十年間たった今、沖縄の全体の現状を考えたら、それはもう是正をしていかなければならない。

 だから、そういうふうなことを考えると、自衛隊がやるというわけじゃないけれども、自治体から、その空港に関してしっかりとこれからの自衛隊の訓練をやる、その自衛隊の訓練を、本当に島の中にだれもいないわけですから、だれもいない、騒音問題もなければ何もない、そういうような状況の中で伸び伸びと訓練ができるという状況と、沖縄の観光の観点からもそれをやらないと、でき上がるまでの十年間、七百万人の観光なんてできない。この二つの視点ですよ。

 自衛隊のため、沖縄の観光のため、この下地島パイロット訓練飛行場をどうするかということをもっと前向きに真剣に考えていかなければいけないということをぜひ頭に入れてやらなければならない。運輸省もそのことをぜひ頭に入れていただきたい。

 これ、誤解をしてはだめですから、県営空港でありますけれども、パイロット訓練飛行場というのは国策空港ですからね。それをあなた方がどんどん法律を変えて、シミュレーションでもいいわ、アメリカでもいいわと言っていて、もう全く練習をしない。七月なんかゼロだという、練習は。訓練をやる飛行機ができないから、忙しいから全部やめる、こういうふうな国費のむだ、小泉内閣の改革みたいなものですよ、これは徹底的に考えてやっていかないとおかしくなるということを頭に入れておいてください。

 それで、もう一個、槙田局長にも聞きたいんですけれども、この下地島空港に自衛隊の訓練を移すと、まことしやかに言われているのは、中国が反対しますよ、そういうことを言ってくる人がいるんですね。那覇空港から下地島まで行くと、台湾海峡に近くなるから中国が反対しますよというふうなことを言う方々がいますけれども、それは僕はないというふうに思っておりますけれども、訓練をして帰ってくるわけですから。帰ってくる。そういうようなことを考えて、そういうのは聞いたことありますか。

槙田政府参考人 全く聞いたことはございません。

 そういう反応を中国が示すであろうという論拠自体は、ちょっと私は余り理解できないんですけれども。

下地委員 そのことは非常に大きな答弁だと思っていますから、私はこの問題を、沖縄の観光のためにも、そして自衛隊のためにも、ぜひ一体となってやっていかなければいけないと思っていますから、ぜひ頭に入れていただきたいなと思います。

 最後に、田中大臣、全部の話を聞いて、この話についての御感想をいただいて、私の話を終わります。

田中国務大臣 私も、その地域のことはかなりわかっているつもりでありまして、たまたま中谷大臣と、これは中谷大臣ともあの地域も見ましたけれども、別の機会に新聞社に呼ばれて沖縄に行きましたときに、あれは、防衛庁の方、南西基地、何と言うんですか。(発言する者あり)南西航空混成団に行きました。そしてそこで、アラート部隊という、若い人たちが四人、五人でしたかでチームをつくって二十四時間体制で、スクランブルが起こるとすぐに発進するというところを見せてもらいました。

 彼らに聞きましたときに、本当にいろいろな近隣諸国から飛行機が飛来して、とてもじゃないけれども追いつかないのだ、そして、最前線の自分たちは一番最新鋭の装備をさせてほしいという若いパイロットの皆さんの声を聞いて感動しました。

 感動しましたと同時に、これだけ領海も領空も侵されている、ぎりぎりのところで守っている、こういう若い方たちのこと、それから沖縄県にも、下地先生がおっしゃっているいろいろなこと、すべてを勘案しながら、東京とか大都会ももちろん問題があります。しかし、やはり日本の領土は北から南まで、先ほどの鈴木先生がおっしゃった北海道、そして南の波照間まで、私は一番最北端と最南端を見ました。稚内から、それから波照間まで行きました。現実に大変広いと思うし、いろいろな問題を内包していますから、これらをすべてやはり自分たちの問題として、できることはやはり、国内で解決できることはし、省庁の縦割りをやめて、そして外国に対しても率直に物を言っていくということを改めて肝に銘じてやっていきたい、かように考えております。

下地委員 最後になりますけれども、私は、三千メートルの飛行場が、国策でつくった訓練飛行場が全く使われないで本当にそのまま放置されている。もう三十年間だれも、沖縄県も対応しなければ国も対応しない、そういうふうな中で、私は、国策のためにも沖縄県の将来のためにも利用すべきだというふうな認識を持っていますから、ぜひ、一つ一つ今まで取り残されているものを掘り起こしてやっていくことが必要だと思いますから、その中のこれは一つだというふうに思っておりますから、自衛隊の若い職員がやる気を持ってできるためにも、伸び伸びとした訓練ができるような環境づくりをやるのも政治の仕事だと思っていますから、ぜひそのことを申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。

土肥委員長 次に、上田勇君。

上田(勇)委員 今国会も会期末が近づきまして、いろいろなことがございましたけれども、大臣また杉浦副大臣、まことに御苦労さまでございます。

 そして今国会、残念ながら、先ほど話もあったんですが、外務省の方から提出された条約三件、成立しないという状況になりまして、私どももいろいろと理事や委員の皆さんの御協力をいただきながらその成立に向けて努力をさせていただいたんですけれども、継続ということになりましたので、ひとつ来国会におきまして、大臣また外務省において協力的な対応をしていただけますように、心からお願い申し上げる次第でございます。

 それで、早速内容に入らせていただきますが、最初、地球温暖化防止条約、京都議定書のことについてお伺いをしたいというふうに思います。これは前回もちょっと御質問させていただいたんですが、まだ大臣の方でお考えがまとまっていないというような御答弁だったんで、ちょっと改めてお伺いをしたいというふうに思うんです。

 これまで我が国の政府は、アメリカが離脱宣言した後も、やはり米国が参加するということが非常に重要だという立場から、アメリカに対して再考をいろいろな機会、大臣が伺った折にも促していただいたというような形で、促すと同時に、やはりアメリカ抜きでの批准については慎重な姿勢をとってきたわけでございます。

 私は、これで、今後どうするかということを考えたときに、いろいろと報道されている内容、アメリカのブッシュ大統領がヨーロッパでいろいろな発言をされたことだとか、またアメリカの議会でいろいろなことを話されていることだとか、また在京のいろいろ大使館関係者のお話だとかを伺うと、これから説得をしていったとしても、アメリカがこの京都議定書に再び戻ってくる、再考をするということはやはりかなり難しいんではないのかなという認識を持っております。

 とりわけ、アメリカでは、ブッシュ大統領が離脱宣言をする前に、上院で九十七対ゼロで反対の姿勢の議決が行われたということになりますと、やはり上院はアメリカの外交政策に非常に大きな影響力を持っているということを考えれば、これから総理も行かれますし、また日本側からいろいろなときに説得をしていただいても、やはり、戻ってくるというのは、というか再び参加をしてくるというのは難しいんではないのかなというふうに考えております。

 もちろん、私はそういう公表されているような情報量しかございませんので、それに基づいて私の今の考えを述べさせていただいたんですけれども、アメリカが再び参加することは難しい、そうなると、選択肢というのは二つでありまして、一つは、アメリカ抜きでも批准して発効を目指していくという選択肢。もう一つは、アメリカが参加しなければこの条約の意味がないということを重視して、我が国も批准をしないし、場合によっては発効もあきらめるという、これから選択をしなければいけないんだというふうに思うんです。

 そこで、私は、これまでの経緯は、これは日本が議長国として取りまとめた合意でもありますし、またこれまで国会でも早期批准という決議をしている、総理もこれまで二〇〇二年の発効を目指していくということをおっしゃっていることから考えれば、今後アメリカがこの京都議定書を再考するということは非常に難しいということになれば、我が国としては、場合によってはアメリカ抜きでも批准をするというようなことを決断しなければならないんではないかと私は思っているんですけれども。

 今二つの方向性がある、そうした中で、大臣、今後の方針について、そう引き延ばすこともできない、先延ばしをすることができない時期に差しかかっていると思いますので、その辺の方針を伺えればというふうに思います。

田中国務大臣 私も委員と、もう時間がなくなっているという認識におきましては同じでございます。

 そして、ワシントンで過日パウエル長官とお目にかかりましたときにも、この問題について議論をいたしましたけれども、ブッシュ大統領のコメントはいろいろマスコミ等で流れて新聞紙上等出ておりますから繰り返しませんけれども、パウエル長官は、日本の京都議定書でのこの中身についてはノットアクセプタブル、受け入れはできないという言葉を使われました。それに対しまして、私は、アメリカが国内の経済状態を維持しながらということは、これはライスさんも言っておられましたし、パウエルさんもおっしゃっていましたので、そうしますと、時間の問題もある。しかし、アメリカが三六・八%もCO2の排出国であるということを考えた場合に、アメリカの今の状態、現在の状態は頭では理解できるけれども、私個人としては共感できない、京都議定書がノットアクセプタブルだということは、私は共感はできないと申しました。

 ただし、持ち帰って日本の――今現在もハーグで川口大臣が会議をやっておられます、きょうぐらい帰っていらっしゃるかどうかと思いますが、そしてもう、すぐ、総理はいよいよブッシュ大統領とこの件も含めて会談をなさるわけでございますから、最終的に閣内での方針というものは出るというふうに理解しております。

上田(勇)委員 田中大臣も、それからまたこれから総理も、アメリカにぜひ再考をしてほしいということを説得していただく、特に大臣も、そのことをパウエル長官には強く言っていただいたということは、非常に意義のあることだったというふうに思っております。

 ただ、今私も申し上げましたし、大臣もおっしゃったんですが、もう余り時間がない状況になってきております。総理が二〇〇二年までに発効ということをおっしゃっていることを勘案すると、そうすると、おっしゃっていることを前提としたときには、我が国としてやはり早い時期にしっかりとした議論をして方針を決めなければいけない、そういう意味での決断のタイムリミットというのはどのあたりにあるというふうに想定されているのか、その辺をお伺いしたいというふうに思うんですが。

田中国務大臣 来月の十八日に、たしか十八だと思いますが、ボンでCOP6もございますし、そこにアメリカも当然代表を送るというふうにおっしゃっておられましたので、その前後を見ながら総合的な判断を、もう本当に近々日本もやらなければならない段階に来ているというふうに考えております。

上田(勇)委員 私も、最大のCO2の排出国であるアメリカがこの議定書に参加することが望ましいし、参加しない場合にはいろいろと実効性の面で問題があるというふうには考えておりますので、従来、そして現在の政府の方針は否定するものではないんですけれども、ただ、今おっしゃったように、近々に決断をしなければいけないという状況になっている。ヨーロッパからも今いろいろな選択肢も含めた提案もされているというようなことも言われております。そういう意味で、これからこの京都議定書、日本が議長国として取りまとめ、それを発効させていくという意味では、これから日本の外交手腕が非常に問われていることだというふうに思います。

 そういう意味では、いつまでも同じことを言っているわけにもいかない状況でありますので、これは早急にやはり内閣で、今回の総理訪米というのは一つ大きなきっかけになると思いますので、それの論議を踏まえた上で、本当に至急内閣としての方針を取りまとめていただくようにお願いを申し上げ、そして、やはりこれは日本として、京都で取りまとめた議定書でもありますので、ぜひ発効する、そのためには、場合によってはアメリカ抜きでも批准する、そのことがかえって各国に対するメッセージにもなるんではないかというふうに思っておりますので、そのことも含めてぜひ御検討をいただければというふうに思っておりますので、よろしくお願いをいたします。

 次に、いろいろな問題に移って申しわけないんですが、きょう最後なんで、今までのいろいろ積み残しなどもありますので、恐縮でございますが。これもちょっと前回一部触れさせていただいたんですが、いわゆる厚木基地での夜間離着陸訓練、NLPのことについてでございます。

 先日の委員会でこのことについても質問させていただいたんですけれども、大臣は、こういう人口密集地帯での訓練の問題の深刻さはよく理解しているというふうに答弁をいただいたんですけれども、今後のことについてお尋ねしたときに、ちょっと御理解いただけなかったのか、答弁がそこの部分についてはなかったものですから、これは実務的ということもあるので、ぜひ北米局長の方にお伺いしたいというふうに思うんですけれども。

 これからNLPの移転と騒音問題の解消について、大臣もそういうような問題意識としては非常に強く持っておられるので、そういう状況の中ですので、ぜひ外務省として、なるべく早い機会をとらえてこの問題を提起していただいて、解消に向けての話し合いのフレームワークをつくっていただきたいというふうに思っておりますけれども、今後のお考えをぜひお伺いしたいというふうに思います。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 NLPの問題でございますが、これにつきましては、政府といたしまして、飛行場周辺の住民に対する騒音の影響というのは非常に大きな問題であるというふうに認識しておりまして、本件NLPにつきましては、できる限り多くが硫黄島で実施されるよう米側にこれまでも働きかけてまいりました。

 昨年につきましては、大変遺憾ながら、相当部分が厚木基地で行われたわけでございますけれども、この改善方に現在取り組んでおりまして、引き続き、できる限り多くのNLPが硫黄島で実施されるよう働きかけてまいりたいと思っております。

上田(勇)委員 今お話にあったように、去年は相当ひどかったのですね。ことしは若干、こういうことを言うと地元の方にまたあれかもしれませんが、改善されている面もございます。

 ただし、今なるべく硫黄島で行うようにということなんですけれども、これはあくまで暫定的な措置でありますし、やはり気象条件とかでなかなか硫黄島でできないというようなことがあり得る。それが去年、相当な回数が厚木基地で行われたということでありますので、ぜひこれは恒久的な解決策を目指していただかなければいけないのだというふうに思っております。

 そこで、これは外務省、それから、きょうはちょっと防衛施設庁にも来ていただいているので、あわせてお伺いしたいというふうに思うんです。

 先日、これは地元の神奈川新聞に出ていた記事で、これも前回ちょっと質問の中で触れさせていただいたのですが、在日米海軍のチャップリン司令官がワシントンで話したこととして、このNLPの代替施設として超大型浮体式海洋構造物、いわゆるメガフロートはどうなのかという提案をしているということでありまして、これに対して防衛施設庁の方は、この記事によりますと、聞いていないので今のところ何とも言えないということであったので、そのことを問うつもりはないのですけれども、私が申し上げたいのは、アメリカ側もこういうような提案を出すということは、やはりNLPの問題が非常に深刻な問題であるという認識は持っている。なおかつ、やはり今の硫黄島、これでもいろいろな問題があるというふうに考えていて、だから恒久的な解決策についてはいろいろ考えているということが、こういうアイデアが出てくる背景にあるのじゃないかというふうに思います。

 このメガフロートというのは、ある意味で技術的に可能なのか、費用の面はどうなのか、私もよくわかりませんけれども、そういう創造的なアイデアを出してきているというのは事実なので、ぜひ、日本側としても、従来の路線の中にはまった硬直的な考え方じゃなくて、もう少しアイデア、創造力を発揮していただいて、この問題の解決に取り組んでいただきたいというふうに思うんです。従来の路線でいくと、あの何キロの中で、示された地域の中で代替施設を探すというのは本当に難しいというふうに思います。関東平野、どこに行っても、そんな人が住んでいないようなところはありませんし、気象条件とかというようなことになると、いろいろと難しい条件がそろってくると思いますので、このアイデアに限定するわけではありませんけれども、ぜひ、これからこの問題解消のために今最大限の努力をしていただくという話でありましたので、もっと柔軟な、そして創造力のあるアイデアを出していただいて交渉を進めていただきたいというふうに思うんですけれども、これは施設庁、どうですか。

伊藤政府参考人 もう先生十分御存じのことであると思いますので、くどくど申し上げるつもりはございませんが、米側としても、厚木から百海里以内、ですからおよそ百八十キロ以内ということでございますが、そういったところにNLPができる施設が欲しいというのがかねてからの要望でございます。そして、私どもも、かつて三宅島ということでこれを候補地といたしたわけでございますが、その後、地元との調整もつかないうちに現状のように三宅島そのものはなっておるということでございまして、私どもとしてもこれは非常に苦慮しているところでございます。

 メガフロートそのものについては、いろいろ先生も今御指摘のように、直ちにこれでいけるという話にはなっておりませんけれども、そういうことも含めまして、私どもとしても一生懸命いろいろ勉強させていただきたいと思っておりますが、何分まだ若干のというか、かなりの時間がかかると思いますので、これはとにかく現状としては硫黄島を使っていただきたいというお願いを外務省ともども私どもも米側にしておるところでございます。

上田(勇)委員 訓練をなるべく硫黄島の方でやっていただくという働きかけはぜひ続けていっていただくとともに、恒久的な解決に向けて、従来、その条件の中で縛られているのじゃなくて、もっと新しいアイデアを出してこないと多分解決できないことだというふうに思いますので、ひとつよろしくお願いをいたします。

 それで次に、今度は、通告の順番とちょっと違いますけれども、WTOのセーフガードの問題について御質問したいというふうに思います。

 もう御承知のとおりでありますが、政府は、本年の四月から十一月までの間、農産品の三品目について、暫定措置としてTQ制度によります事実上の輸入制限を決定したわけでありまして、この決定について、私自身は、これはもう政府・与党として承認したことではありますけれども、やはり日本はどうしても自由貿易体制で最も利益を受けている国でもありますし、このWTOの協定に定められているような規定であったとしても、その運用に当たっては可能な限り慎重でなければならないというふうに考えておりまして、個人的には、今回の発動、三品目についても疑問が全くないわけではないというふうに考えております。

 これが発動されて、そうすると、先日、中国の方はその報復措置として二十一日に自動車それから携帯・自動車電話、空調機の三品目に一〇〇%の超過関税をかけると発表したわけでありますけれども、このWTOの協定では、セーフガード、これは本則に基づくセーフガードの発動についてですけれども、協定に適合をする場合には対抗措置は認めていないわけでございます。現在、その暫定措置についても、協議中であるにもかかわらずこうした報復措置を講じてくるということは、この協定の趣旨からやはり問題があるのではないかというふうに考えておりますけれども、その辺の認識を伺いたいというふうに思います。

杉浦副大臣 上田先生とは法務委員会で長年苦楽をともにした間柄でございますが、苦労ばかりでしたが、今度は外務の関係で御一緒をすることができることになって、本当にうれしく思っております。

 我が国がいわゆる農産物三品目についてセーフガードを発動したことに対しまして中国はああいう報復措置をとったということは、先生がおっしゃるとおり、WTOの協定上では認められないことでございまして、私どもとしても、中国に対して厳重に抗議をすると同時に、さまざまな方法で中国に対応していくようになっていることは御案内のとおりでございます。中国はWTOに入っておりませんから、そういう意味では、早くWTOに入ってもらって、我々と同じルールのもとでやってもらうようにしなきゃいけない、そうも思うわけでございます。入られればああいうようなことはできないわけでございますので、ぜひとも早く入ってもらいたいと思っておる次第でございます。

 私どもとしては、中国側の今度の措置の撤回を引き続き強く求めていくとともに、三品目に対するセーフガード措置につきまして、関係省庁間で密接に連携、協力しながら、中国側と粘り強い話し合いをしてまいりたい、こう思っております。中国との関係、余り悪くしたくありませんから、何らかのいい解決方法が話し合いの中で見出せればと思っております。

上田(勇)委員 ありがとうございます。

 今まさに副大臣がおっしゃったとおりだというふうに思うのですけれども、今度は、中国は今おっしゃったようにWTOの加盟というのが俎上に上がってきているわけでありまして、やはり加盟の前提としては、このWTOのルール、これはきちんと守っていただかなければならない、このことは我が国の立場として、今こういう貿易問題を抱えておりますので、ぜひ明確に伝えていただかなければいけないというふうに思います。

 ただ、こういう貿易問題というのは、これは一方的に中国が悪い、あるいは日本が悪いというようなことではなくて、もちろん利害が絡んでくることですし、残念ながらどんどんどんどんエスカレートしていってしまうという傾向があります。そういう意味では、このWTOのルールの中で我が国としては、どこの国とも我が国は非常に貿易が盛んな立場でありますので、そういう貿易摩擦を起こすというのは国益に反することだろうというふうに思いますので、今後、こうした問題がきっかけになっているわけでありますが、これからのそういうWTOの――今ほかの品目でもセーフガード発動、暫定措置発動、あるいはセーフガードの調査の請求というような話を幾つか耳にしておりますけれども、その対応に当たっては、その後のいろいろな展開を考えたときに、やはり慎重な立場というのが必要なのではないかというふうに私は思っております。

 それでもう一つ、この中国との貿易の問題で最近話題になっていることが、中国産の鳥肉の輸入問題がございまして、中国産の鳥肉からインフルエンザウイルスが検出されたということから、中国からの家禽肉、いわゆる鳥だとかカモ、そういうような肉でありますけれども、一時輸入停止措置が今月の上旬からとられております。それに対して中国側からは、科学的根拠に欠ける無責任なものであるというような批判がある、これは私は報道で承知しておるのですけれども、そういうような批判があるのですけれども、これについては外務省としてどのように考えられているのか。

 また、いろいろとこういうセーフガードなんかの問題がある中で、またこういう新たな、これはそういう意味では純粋に技術的、科学的な問題でありますけれども、こういうような問題が起きたことがさらに日中間の関係に対して悪影響があるのではないかということも懸念しているのですけれども、その辺の御認識を伺いたいというふうに思います。

槙田政府参考人 鶏肉等の問題でございますけれども、これはやはりそもそも農林水産省が今月の初めに輸入の一時停止をする措置をとりました理由は、香港やマカオにおいて鳥のインフルエンザが発生したであるとか、あるいは中国からの輸入鶏肉から鳥インフルエンザのウイルスが検出されたという情報があったとか、そういうようなことが根拠になっているわけでございますから、やはり我が国国民の健康に大きな関心を持つべき政府といたしましては、とりあえず一時的な輸入制限措置をとるということもやむを得なかったのではないかと思っておるわけでございます。

 ただ、中国側もこれを科学的な根拠に欠けるというふうに言っているわけでございますし、そこでやはり両国の検疫関係の専門家が専門的知見に基づいてよく意見交換をし、解決をするということしか実はないのだろうと思っておりますが、既に日中相互の検疫当局がこのような技術的な観点からの話し合いを始めていると承知しておりまして、外務省としましても、農林水産省とよく密接に協力をしながらこの問題の早期解決を図るように努力をしていきたいと思っております。

上田(勇)委員 私も、今回この事件が起きて初めて知ったのですけれども、日本、我が国で流通している鳥肉の三分の一ぐらいは実は輸入で、そのうちの四割ぐらいが中国から輸入しているということでありますので、今ここで禁止措置がとられますと、価格への影響あるいは流通に対していろいろな影響があるのではないかということが正直言って心配されます。

 もちろん、これは安全性といったことが最優先の課題ではあるのですけれども、そういった市場への影響、またはそれが家庭への影響ということにもつながりますので、そういう安全性の問題の解消に向けて、これは外務省だけの話ではなくて、先ほどあったように、農水省との協力が必要だというふうに思いますけれども、ぜひ早期の解決に向けて全力を挙げていただければというふうに思いますので、よろしくお願いをいたします。

 それで、最後に、先日の質問でちょっと途中になってしまったのですけれども、ODAの中間評価のことについてちょっとお尋ねをいたします。

 これまで、この委員会その他の委員会で、大臣がODAの中間評価、二重丸、丸、三角というような表現を使われておりますけれども、今一生懸命やっているというお話をしていただいているのですけれども、この間御質問したときに、多分意図が御理解いただけなかった部分もあるかというふうに思うのですが、一方で外務省ではODA評価研究会の報告書があって、この中で、事前から中間、事後に至る一貫した評価システムの確立が必要だというようなことを指摘をしております。当然大臣がおっしゃっている評価というのはこれを踏まえたものというふうに理解をしているのですけれども。

 そこで、現在作業中のこの評価を、今行っている事業、それからこれから行う事業、まずこれらのすべての事業について、制度としてそういった中間評価の制度を導入してこれを継続して行っていくべきではないかというふうに私は考えるのですけれども、外務省としてはいかがでしょうか。

西田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおりでございまして、やはり評価を充実していくということが非常に重要だというふうに外務省としては考えております。

 従来、事後が多かったのでございますけれども、先ほどの御趣旨にもありますように、事前それから中間、いわば一気通貫の形で評価をやっていくということが極めて大事であるということで努力をしている最中でございます。

 御案内のように、事前につきましては先般始めまして、初めてJBICあるいはJICAの実施機関によるODA事業事前評価表というものを本年度から公表するということにも踏み切った次第でございます。このような中で、いわゆる中間評価ということにつきましても、その基準でありますとか場合によっては結果の公表ということも含めて、これからさらに努力をしていくことと考えております。

 それから、先ほどの御指摘の、いわゆるマル、バツ、三角という点でございますけれども、これにつきましては、ODA改革を根本的にやっていくという御趣旨で大臣から御指示がありましたものですから、そのような作業を今鋭意やっているということでございます。

上田(勇)委員 せっかく今大臣の指示でそういうような評価の作業をやっていただいていることでありますし、またそれは今後の方針として方向が合致しているものだというふうに思いますので、ぜひ、これはそういう研究会の提言でもあるわけですから、やはり制度としてそういう中間評価のシステム、そういったものを導入し、確立していただければというふうに思います。

 そして、もう時間でありますが、最後に、今お話の中にも若干あったんですけれども、これは当然評価を行うときにはそういう客観的な基準が必要でありますので、その基準というのがどういうようになっているのか。それで、当然ガイドラインのようなそういう文書があって、そこに客観的な基準が書かれて、そこに定められているものに基づいて今評価をしていただいているんだというふうに思うんですけれども、その辺はどうなのか。

 また、これはあわせて、さっきちょっとお話があったので御要望でありますけれども、この評価をした結果というのは、やはりODA事業に対する国民の理解を広めていくためにも、どういうものをやっていてどういう成果が上がっているのか、残念ながら十分な成果が上がっていないものもあったけれどもどういう改善をしていくのかというようなことを国民に明らかにすることによって、ODA事業また国際協力に対しての理解が深まるというふうに思いますので、ぜひそういった資料の可能な限りの公開もしていただくことを要望して、ちょっと今のとあわせてお答えをいただければというふうに思います。

西田政府参考人 お答えいたします。

 先ほど御指摘いただきましたとおりの方向性でもって鋭意努力をしてまいりたいと思います。その意味で、大臣から御指示を得てやっております作業というものも、中間報告というものを充実していく中でもって貴重な経験であるというふうに考えておる次第でございます。ありがとうございました。

上田(勇)委員 以上です。

     ――――◇―――――

土肥委員長 この際、田中外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣田中眞紀子君。

田中国務大臣 朝からまた繰り返しになりますが、本委員会の委員長及び委員の皆様に大変御迷惑をおかけいたしましたこと、また改めましておわびを申し上げます。

 そして、この国会で全部で十一本外務省関係の法案がございますけれども、あと三本が積み残しになっております。パキスタンやらあるいはモンゴルとの投資協定、それから御案内のとおり日本国の譲許表の問題、それらがございまして、あと二日もございますので、ぜひ御審議をいただきたいというふうに思っております。相手国のこともございますので、ぜひよろしくお取り計らいをいただきたいと思います。

 ありがとうございました。

土肥委員長 次回は、来る二十九日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二分散会






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