衆議院

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第2号 平成13年9月18日(火曜日)

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平成十三年九月十八日(火曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 土肥 隆一君

   理事 河野 太郎君 理事 下村 博文君

   理事 鈴木 宗男君 理事 米田 建三君

   理事 安住  淳君 理事 桑原  豊君

   理事 上田  勇君

      池田 行彦君    大野 松茂君

      小島 敏男君    高村 正彦君

      桜田 義孝君    下地 幹郎君

      中本 太衛君    原田 義昭君

      宮澤 洋一君    望月 義夫君

      伊藤 英成君    木下  厚君

      首藤 信彦君    中野 寛成君

      細野 豪志君    前田 雄吉君

      丸谷 佳織君    藤島 正之君

      山口 富男君    東門美津子君

      柿澤 弘治君

    …………………………………

   外務大臣         田中眞紀子君

   内閣官房副長官      安倍 晋三君

   外務副大臣        植竹 繁雄君

   防衛庁長官政務官     平沢 勝栄君

   外務大臣政務官      丸谷 佳織君

   外務大臣政務官      小島 敏男君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  村田 保史君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    漆間  巌君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    首藤 新悟君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    北原 巖男君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  中尾  巧君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   小町 恭士君

   政府参考人

   (外務省大臣官房領事移住

   部長)          小野 正昭君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長

   )            谷内正太郎君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長

   )            重家 俊範君

   外務委員会専門員     辻本  甫君

    ―――――――――――――

委員の異動

九月十八日

 辞任         補欠選任

  虎島 和夫君     大野 松茂君

  土田 龍司君     藤島 正之君

同日

 辞任         補欠選任

  大野 松茂君     虎島 和夫君

  藤島 正之君     土田 龍司君

同日

 理事土田龍司君同日委員辞任につき、その補欠として土田龍司君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

八月九日

 一、千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定の譲許表第三十八表(日本国の譲許表)の修正及び訂正に関する二千年十一月二十七日に作成された確認書の締結について承認を求めるの件(第百五十一回国会条約第四号)

 二、投資の促進及び保護に関する日本国とモンゴル国との間の協定の締結について承認を求めるの件(第百五十一回国会条約第五号)

 三、投資の促進及び保護に関する日本国とパキスタン・イスラム共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(第百五十一回国会条約第六号)

 四、国際情勢に関する件

の閉会中審査を本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件

 米国における連続テロ事件に関する件




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     ――――◇―――――

土肥委員長 これより会議を開きます。

 議事に入るに先立ち、一言申し上げます。

 このたび、米国において発生した連続テロ事件では、多数の方々のとうとい命が奪われ、今もなお数千名が行方不明のままとなっております。

 ここに、犠牲となられました方々に対し、衷心より哀悼の意を表し、黙祷をささげたいと存じます。

 御起立をお願いいたします。――黙祷をお願いします。

    〔総員起立、黙祷〕

土肥委員長 黙祷を終わります。御着席ください。

     ――――◇―――――

土肥委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として、委員米田建三君の質疑に際し、内閣官房内閣審議官村田保史君、警察庁警備局長漆間巌君、防衛庁防衛局長首藤新悟君、防衛庁運用局長北原巖男君及び法務省入国管理局長中尾巧君の出席を、委員木下厚君及び藤島正之君の質疑に際し、外務省大臣官房長小町恭士君の出席を、また委員山口富男君の質疑に際し、外務省大臣官房領事移住部長小野正昭君、外務省総合外交政策局長谷内正太郎君及び外務省中東アフリカ局長重家俊範君の出席を求め、それぞれ説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土肥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

土肥委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。米田建三君。

米田委員 質疑に入る前に、まずは、今回の米国におけるテロ多発事件で亡くなられた方々に心から哀悼の意を表すると同時に、また、被害に遭われたすべての方々にお見舞いを申し上げたいと思います。

 まず、私は、質疑の冒頭で、今回の事件の本質が一体何であったのかということをしっかり我々は確認をしなければならないだろうというふうに思います。

 私は、この今回の事件の被害者は単に米国だけではない、発生現場は米国でありますが、実は我が日本国民も、また我が日本国の企業も、あるいはさらに世界の諸国の国民も被害者であったわけであります。そして、世界経済にも大変大きな打撃を与えました。いわば、国際社会全体を敵としたテロ攻撃である、そんなふうに理解をすべきだというふうに私は思います。

 一部、ある野党議員の方が、御自分のホームページで、今回のテロだってアメリカの外交政策の失敗なのでは、ざまー見ろって思っている国だってきっとある云々という、そんな非常識な記事を御自分のホームページに掲載された方もおられるようでありますが、しかし、私は、ほとんど大多数の我が国民も、まさにブッシュ米大統領が言われたように、いわば二十一世紀の新しい形の戦争である、そんな認識をお持ちに違いないというふうに思っているわけであります。

 無論、災害対策の次元ではありません。あるいはまた、単に邦人保護対策の次元で考えて済む問題でもありません。二十人以上の邦人が巻き込まれた、みずからに対する攻撃でもあったというふうに認識をすべきだと私は考えるわけであります。

 したがいまして、アメリカが一体何を要請してくるのかとか、あるいはそれに対してどんな協力、支援をするかという他人事ではなく、まず基本的に、そういう次元ではなくて、我が国自身の問題として何をなすべきか考えていかねばならないというふうに思いますが、この基本的な部分についての政府の認識を問いたいと思います。外務大臣、お願いいたします。

田中国務大臣 米田委員のお尋ねに答弁をさせていただきます前に、まず、今回の同時多発テロの犠牲者となられました方々や被害者の皆様に対しまして、改めて哀悼の意とお見舞いを申し上げたく存じます。

 そして、今のお尋ねでございますけれども、総理も再三、るる国会等でもそれから記者会見でも御発言なさっていることでございますけれども、こうした、現在わかっておりますだけでも三十七カ国以上の国の方々が人命を奪われておりまして、これは極めて卑劣で許しがたい暴挙でありまして、私どもが日ごろ信奉しております自由な社会あるいは民主主義の理念に基づく社会というものに対する挑戦でありますから、断固としてこれを許すわけにはいかないというものが基本的な認識でございます。

 そして、日本はアメリカを強く支持し、そして支援と協力を惜しまない決意でありますが、他の国々と一緒に、二度とこうしたことが起きないように努力をしていきたい、かように考えております。

 ただ、できることにつきましては、もう先生御案内のとおり、我が国の憲法の範囲内においてぎりぎりできることをいたしたいということでございます。

米田委員 NATOは、十二日に開いた大使級の理事会で、一九四九年の設立以来初めて第五条の発動、すなわち集団的自衛権を米国からの要請があれば発動するということで合意をしたわけであります。

 西の同盟NATOは、言ってみれば態勢が完了した。では、東の同盟国である我が国として、これからどういう対応をしていくのか。明確かつ十分な対応をとらないと、私は、日米同盟は大きく揺らぐことになるだろう、まさに日米同盟の真価が問われているというふうに考えます。

 湾岸戦争のときを思い返してみますと、多額の財政支援を我が国は行いました。にもかかわらず、余り感謝はされなかった。この轍を踏んではならないと私は思うわけであります。

 また、湾岸戦争と比較した場合に、クウェートに対するイラクの侵攻という、それが事案の基本的な出発点でありましたけれども、今回はまさに同盟国アメリカの中枢部が攻撃をされたわけであります。

 聞くところによりますと、最近の財政事情からしても、米国側が必ずしも財政支援を求めてはいないとも伝えられております。そういう状況の中で、私は、我が国は湾岸戦争のときとは違った対応を、やはり真剣に何ができるのかを考えなければならないというふうに思っておりますが、改めて政府の基本的認識を問いたいと思います。安倍官房副長官。

安倍内閣官房副長官 今回のテロは、ただいま外務大臣が答弁をされましたように、多数の人命、邦人を含むわけでありますが、一瞬にして奪うという許しがたい卑劣な暴挙でございました。

 既に小泉総理が述べておられましたように、我が国は、国際テロリズムと戦う米国を同盟国として強く支持し、必要な支援と協力を惜しまない、そういう決意であるわけでございます。

 今後の対応でございますが、米国政府がいかなる行動をとるか明らかでない現段階におきまして具体的なことを申し上げますのは困難でございますが、政府といたしましては、憲法の範囲内でできる限りのことを行っていきたい、こう考えているところでございます。

 米国を初めとする関係国との協力につきましては、米軍等に対する後方支援活動等につきまして、与党とも協議も十分に行いながら検討をしていきたい、こう考えております。

米田委員 私は、アメリカがこれから何を要請してくるのかということを待つのではなくて、冒頭申し上げたとおり、実はこれは我が国自身への攻撃でもあったというふうに理解をするならば、今こそ内外に向けて、我が国がこういう事案に対して、これからもあり得るかもしれないわけでありますから、どういうスタンスとどういう備えをきちんとするのかということを示すべきときが来ているというふうに思うわけでありまして、その点を重ねて強調しておきたいと思います。

 さて、よく日米同盟、日米同盟と言われるわけでありますが、日米同盟の現状が一体どういうものなのかということをまず振り返ってみたいわけでありますが、私は、これは極めて片務的かつ限定的なものに今日とどまっているのではないかというふうに思っております。日米安保条約自体がしかりでありまして、米国の一方的な対日防衛義務をうたったものでございますし、さらにはまた、その範囲は極東の範囲というふうに限定をされている。

 では、周辺事態安全確保法はどうなのか、こういうことになりますと、周辺事態安全確保法そのものが、日米安保条約の効果的な運用に寄与する、これが目的に掲げられていることからして、やはり極東の範囲ということになるだろうと。

 それからまた、周辺事態安全確保法の内容でございますが、集団的自衛権の行使を容認しないという今日の我が国政府のスタンスからして、後方支援につきましても、武力行使の一体化と解される後方支援はできないことになっているわけであります。「我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」とうたっているにもかかわらず、実はそういう枠がはめられているわけであります。例えば、武器弾薬の輸送はできない、戦闘発進中の航空機に対する燃料補給もできない。すべてが、集団的自衛権を行使できないというこの論理を前提にしているものですから、そういう限定的なものになっているわけであります。

 総理は、報復措置を含めて、米国を支持する姿勢を表明されました。今次のテロにかかわる米軍の行動に対する、では諸外国並みの支援ができるのかといえば、今申し上げたとおり、諸外国並みの支援をするための枠組みが今日我が国にはありません。パウエル国務長官の記者会見の際に、たくさんの米国への支援を表明した国の名前を挙げましたが、残念ながら、私の知る限りでは、その際、我が日本の名前は挙げられませんでした。

 では、我が国がこれから何をなし得るのか、こういうことでありますが、テロリズムの根絶は、実は我が国自身のためでもあるわけでありますから、その点を踏まえて、私は、より具体的な我が国の姿勢を明らかにしなければならないときが来ているというふうに思います。

 恐らく多国籍軍の編成というふうな事態になると思いますけれども、私はその際に、最低限、武力行使との一体化を避けている現行レベルの周辺事態安全確保法、この現行レベルの周辺事態安全確保法並みの後方支援、これだけでも多国籍軍に対して可能にする緊急立法が必要ではないのかというふうに思います。そのためには、臨時国会を前倒ししてでも、今申し上げた緊急立法を考えるべきだというふうに思いますが、外務大臣並びに安倍官房副長官の見解を伺います。

田中国務大臣 米田委員のかねてからの御持論は十二分に承知をいたしておりますが、いずれにいたしましても、現在はまだアメリカ政府がどのような行動をとるかということは明らかじゃございませんので、今コメントすることはできませんけれども、テロ活動に対して自衛権の行使が可能かどうかということについてもいろいろ考えなきゃいけませんし、それから今、立法ということもおっしゃいましたけれども、それらも含めまして、あらゆる意味で、どういうことができるか、憲法の範囲内で何が可能であるかということについて今鋭意検討中でございます。

安倍内閣官房副長官 ただいま外務大臣からお答えをいたしましたように、現段階では、米軍がいかなる手段をとるかということがはっきりしていないわけでございまして、推測で申し上げることは差し控えさせていただきたい、こう思うわけでございます。

 しかし、このたびの事態は、確かに米田委員御指摘のとおり、まさに民主主義と自由に対する挑戦でございまして、私ども自体が当事者意識を持つということは極めて重要であろう、こう考えております。そして、我が国は米国との関係におきまして同盟国であるわけでございますから、同盟国としての責任というのはそれなりに考えていかなければいけない、このように思うわけでございますが、今後、推移を見ながら、いかなる協力が可能かということは既に検討を始めております。

米田委員 同じ質問でありますが、平沢防衛政務官はどうお考えですか。

平沢長官政務官 今米田委員からお話がありましたとおり、今回の事件というのは、私は、これはアメリカに対して行われたものというふうには考えておりません。もうこれは民主主義に対する挑戦というか、全世界、全人類に対する挑戦ということで考えておりまして、そのために、もちろん日本というのは憲法の制約があるわけでございますけれども、その憲法下で、同盟国たるアメリカ、あるいは多国籍軍が編成された場合にそれに対して日本が何ができるか、これについて私たちは真剣に考えていかないと、国際社会の中で取り残されることになるんではないかなということで考えております。

米田委員 私は少なくとも、周辺事態安全確保法で規定をした、武力行使との一体化とみなされない、そのレベルの後方支援はできるという緊急立法を行うべきであるということを強く改めて主張をしておきたいというふうに思います。

 次に、私は本来は、このガイドラインに関連する各法規に盛られた後方支援、これを上回る本格的な後方支援を可能にするためにも、また将来の我が国の安全保障体制強化のためにも、私は実は、集団的自衛権を容認すべきだというふうに考えている一人でございます。

 この集団的自衛権については、我が国は、集団的自衛権は有しているけれども、憲法解釈上、行使はできないんだというスタンスであります。しかし、サンフランシスコ講和条約においても、また我が国が何の留保条件もつけずに加盟をした国連憲章においても、加盟国は個別的自衛権と同時に集団的自衛権を有するということが明記されているわけでありまして、あくまでも政府の解釈、見解として、今日まで、持ってはいるけれども使えないという論理で一貫をしてまいりました。しかしながら、私は今、今日の世界を見て、一国のみでみずからの身を守ることが非常に困難な時代に入ってきているというふうに思います。

 そういう中で、いわばみずからのパートナーとしっかり連携をしながら互いにみずからを防衛する、これはもう当たり前のことでもありますし、実は、今日ある日米安保条約そのものが、片務的ではありますが、あれは集団的自衛権の概念を前提にしている条約でもあるわけであります。

 つまり、自衛の、個別的自衛権と集団的自衛権というものを分離することはできない、これはいわば自衛権の補完的概念として集団的自衛権というものがあるというふうに私は理解をしているわけでありまして、憲法改正が必要だという意見もありますが、これについては政府の解釈でこれまでそう来たわけでありますから、政府解釈の変更で集団的自衛権の容認は十分可能だというふうに私は考えております。

 もちろん、NATOが約半世紀ぶりに初めて発動したように、集団的自衛権を容認したからといって、いつでもどこでも、一一〇番や一一九番じゃありませんし、すっ飛んでいくという話じゃないわけでありまして、いつどこで何をするかということは、あくまでも主権国家の最終的判断というものがあるわけでありますから、集団的自衛権という言葉を述べるだけであたかもまがまがしいものであるような反応を示す方もいまだに大勢おられますが、私は、そんなものではない。集団的自衛権というものは本来今述べたような性格のものでありますから、これを政府の解釈で変更をすれば、今日の一体何をなすべきかというふうな悩ましい議論も必要がなくなるわけでございまして、集団的自衛権の議論というものもこれから大いに議会でも活発化すべきだと私は思います。

 政府の中でもこれはやはり真剣に取り組んでもらいたいと思いますが、安倍官房副長官、いかがですか。

安倍内閣官房副長官 ただいま米田委員御指摘がございました。米田委員は私自身の個人的な従来からの主張はよく御存じだと思いますが、きょうは政府の一員として答えさせていただきたい、こういうふうに思います。

 我が国が固有の権利として集団的自衛権を持っているということは当然でございまして、国際法的にもこれは認められているわけでございます。国連憲章の五十一条においても、また先ほど御指摘がございましたように、日米安全保障条約の前文には、両国が集団的自衛権を保持しているということを確認しているわけでございます。

 しかしながら、憲法第九条のもとにおいて許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため、必要最小限の範囲にとどまるべきものであると解しておりまして、集団的自衛権を行使することはその範囲を超えるものであって、憲法上許されないと考えてきてまいりました。憲法は我が国の法秩序の根幹でございまして、五十年余にわたる国会での議論の積み重ねもございまして、その解釈の変更には十分に慎重でなければならないと考えております。

 しかしながら、他方、憲法に関する問題について、世の中の変化もございます、世界情勢の大きな変化もあるわけでございまして、小泉総理も就任の際、問題意識につきまして記者会見で述べられたわけでございますが、この集団的自衛権の問題について、さまざまな角度から研究をしてもいいのではないか、このように考えております。

米田委員 次に、我が国自身の危機管理体制の充実強化に関連しまして、何点かお尋ねをしたいと思います。

 まず、我が国自体にいわゆるテロリストの潜伏の可能性があるのかどうか、また警戒態勢はどうなっておるのか、さらに入国管理体制の充実強化が必要だと思われますが、以上の諸点につきまして、警察庁また法務省の見解を伺います。

漆間政府参考人 我が国におけるテロの可能性の話でございますが、少なくともイスラム過激派の拠点が我が国にあるという情報はつかんでおりません。ただ、イスラム過激勢力が日本国内に潜入し、どこかにいるかどうか、この辺については今調査を続けているところであります。したがいまして、そういう勢力がもしいれば、日本国内においてもテロが行われる可能性はあるというふうに認識しております。

 それから、全体的なテロ活動に対する警戒でございますけれども、基本的には、警察庁の方から都道府県警察に指示いたしまして、テロの関連情報の入手と、それから今当面、米国関連施設、これに対する警戒が必要だと考えておりますので、その部分についての警戒態勢の強化をしております。現在、警視庁を初め全国警察で、米国大使館、総領事館、その他の米国関連施設等約百五十カ所を含む約三百五十カ所に対する警戒を強化するとともに、基本的に、空港管理者、航空会社と協力して、ハイジャック防止対策を徹底しておるところであります。

 なお、今後情勢の変化がありましたら、それに応じて、我々の方も情報収集の強化と警備の強化をしてまいりたいと思っています。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 入管局といたしましては、今回の事件発生直後から、厳格な入国審査体制あるいは出国審査体制のさらなる徹底を全国に指示したところでございます。特にテロリスト関係につきましては、いわゆる偽変造旅券を所持して入国する可能性も高いわけでございますので、より一層強力な偽変造対策の一環といたしまして、偽造文書の発見に取り組むように、全国にあわせて指示したところでございます。

 先ほどお話しいただきました出入国管理体制につきましても、一層の整備に向けて最大限の努力をしてまいりたいと考えておるところでございます。

米田委員 私は、我が国自身のテロ、ゲリラ対応の法整備が急務だというふうに考えているわけであります。一国において発生した事態が全世界に影響を与える時代でございます。その意味では、我が国における危機管理対応の体制の整備というものは、実はひとえに我が国のためのみではなく、もはや国際責任である、国際社会に対する責任であるというふうに考えるわけであります。

 警察力のみでは対応できないテロ、ゲリラ等の事案の場合、今日の枠組みでは、防衛出動あるいは治安出動という重い規定をクリアしなければ自衛隊は行動を起こせない。しかしながら、そこには当然タイムラグが発生する。ここに重要な問題があるわけでありまして、今日、例えば米軍基地警備の問題というものが議論され始めたようでありますが、ほかにも重要施設はたくさんある。例えば原発はどうなのか、さらには皇居はどうなのか、あるいは総理官邸はどうなのか、こういうことを考えたときに、防衛出動や治安出動を発令するような事態、そういうことで想定をしてまいった事態とは違う、テロやゲリラによる突発的な、しかも瞬時にして大きな被害をもたらすような事案というものが考えられる時代になっているわけであります。

 私はかつて私案を発表させていただいたこともありますが、本来は自衛隊に、特定施設のみではなく、もうちょっと包括的な領域警備の任務と権限を付与するべきだというふうに考えております。現在、領域警備にかかわる自衛隊法改正案の臨時国会提出が検討されていると聞いております。その骨子を、簡単で結構ですから、まず述べていただきたいと思います。

北原政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、防衛庁で考えております三点、いずれも自衛隊法の改正でございます。

 一点目は、十一年の三月に発生いたしました能登半島沖不審船事案のような、不審船を停船させるための武器使用についてでございます。

 現行法上、海上警備行動時に認められております警察官職務執行法によります武器使用によりましては、人に危害を与えた場合に違法性が阻却されません。このため、不審船を停船させるための射撃が事実上困難でございます。したがいまして、一定の要件に該当する船舶を停船させるために行う武器使用につきまして、人に危害を与えたとしても違法性が阻却されるように措置いたしまして、不審船を確実に停船させる、このための射撃ができるようにする、これが一点でございます。(米田委員「治安出動規定の改正を考えているんでしょう」と呼ぶ)それも考えています。(米田委員「それを早く、時間がないから」と呼ぶ)済みません。

 あと二つございまして、もう一つは、武装工作員などに対しまして、自衛隊が、先生御指摘のように、治安出動により対処する場合の武器使用についてでございます。

 現行法上、鎮圧のための武器使用は、いわゆる多衆集合しての暴行、脅迫の鎮圧には適用されますけれども、例えば多衆集合ではなく少数であっても、例えば小銃あるいは機関銃等銃武装して暴行、脅迫を行う者、これに対しても適用するようにしたいと思っております。

 もう一つは、これは今度は治安出動が下令される前の自衛隊の対応でございます。

 現行法では、治安出動が下令されない限りは、情報収集を行う自衛官が不測の事態に遭遇いたしましても自己防護のための権限がございませんけれども、治安出動が下令される前の事態、緊迫時に情報の収集を行う自衛官につきまして、自己防護のための武器使用ができるようにするというものでございます。

 それから、先ほど米田先生御指摘になりましたけれども、今申しましたものとは別に、我が国に所在いたします米軍が使用する施設・区域などの重要施設、これの警備のあり方などにつきましても、これまで想定されることがなかった事態がこうして現実に生起しているわけでございますので、そうしたこと等も踏まえまして、また、アメリカのニーズですとかさらには自衛隊の能力、あるいは警察との役割分担なども考慮いたしまして、法的な措置も含めて検討すべき問題である、そんなように考えております。

 以上であります。

米田委員 治安出動規定の一部改正を考えていると。特に大事なのは、私は、発令される以前の警戒監視活動中にも武器を携行できるという点だろうと思いますが、しかし問題は、あくまでもこれは自己防護のための武器使用なんですね。制圧行動まではとれない。しかし、某国ミサイルは約六分で我が国に到達します。あるいは、某国ミサイルだけではなく、某国戦闘機が今次のアメリカのテロ事件のように我が国重要施設にもし突入せんとするときに、撃墜が直ちにできるのかというと、これはできない。防衛出動命令、治安出動命令も、そんな数分、数十秒で総理が決断できるわけはない、国会の承認なんてとっている時間もない、一体どうするのかという問題が出てくるわけであります。

 したがって、私は、治安出動や防衛出動発令の迅速化を含め、領域警備に係る体制整備の突っ込んだ検討を我が国は急ぐべきだというふうに考えておりますが、安倍官房副長官また平沢防衛政務官、お二人の御意見を伺いたいと思います。

安倍内閣官房副長官 領域警備全般ということについて、まだ私ども検討の途中でございますが、今運用局長から申し上げました最後の点でございますが、米軍の施設を初め重要施設の警備強化を自衛隊が行うことができる、それが可能になる法整備等も考えていきたい、こう考えているところでございます。

 ただいま米田委員がおっしゃった問題意識でございますが、いわゆる治安出動の下令は、まさに警察力で対応ができない、つまり、もう既に相当の損害がある、またはそうなってしまった段階で出ていくのではなくて、それを未然に防ぐ、また防がなければいけないというのが問題意識でございまして、そのための法整備を検討していきたい、このように考えておりますし、先ほど与党三党から三幹事長案が示されたわけでございますので、それも踏まえて政府内におきましても至急検討していきたい、こう考えております。

平沢長官政務官 治安出動とか防衛出動というのは、閣議決定の後、総理大臣が命令を下すわけですけれども、その過程で、一分一秒を争うわけですけれども、時間を食ってしまうわけでございまして、この点については、今後もっと迅速にできないかどうかを私は検討する必要があるだろうと思います。

 そして、治安出動あるいは防衛出動の下令前の段階で、今、例えば重要防護施設等の警備は自衛隊が一切出れないわけでございますけれども、例えば、今米田委員からお話がありましたように、原発とかいろいろな重要施設があるわけですから、今警察は、国内の治安出動とか防衛出動発令前の警備、警戒はすべて警察の責任であるということを言っていますけれども、今、時代が大きく変わったんです。そして、テロの質も中身も変わってきたわけですから、これはもう警察とか何かということじゃなくて、日本トータルとしてこういった問題にどう考えていくかということをこれから私たちは真剣に検討していかなければならぬのじゃないかなということで考えております。

米田委員 以上、時間が参りましたので、質問を終わります。

土肥委員長 次に、下村博文君。

下村委員 私は、ODAの問題について取り上げたいというふうに思います。

 我が国の歳入が五十兆近くの中で、ODAに対しては約一兆円がことし投入をされている、来年は一割削減がされるという状況の中で、このODAのあり方について抜本的に見直しをしていこう、今こういう状況でございます。その中で、国会で、本委員会でも何度か同僚委員が取り上げられておりましたが、ソンドゥ・ミリウ水力発電、全部で九回取り上げられた。また、文書質問も四回取り上げられたということで、マスコミ等でも報じられておりますし、大変に注目をされている。このソンドゥ・ミリウ水力発電が実際今どういう状況になっているのかということを、この委員会として公式に派遣団を出し、視察をしよう、こういう状況の中で、理事五人で今月の二日から四日までケニアに行ってまいりました。

 このソンドゥ・ミリウ水力発電については、改めて我々視察したメンバーが、国会議員の方々あるいはNGO、一般の方々を対象に報告会を今月の二十七日に行うという状況でもございますけれども、改めてこの委員会で、この視察に行った結果をとらえて大臣にお話を伺いたいと思いますが、その前に、我々がケニアのソンドゥ・ミリウに行ってまいりました簡単な視察の概況について御報告を申し上げたいというふうに思います。

 これは、もう既に十六年前から、ケニアの大変に我が国に対する期待、一番大きな期待として、ケニア国内においてまだ電力状況が一〇%もいっていないということで、ぜひ電気開発を最大限ケニアはやりたいということの中で、既に約七十億円の円借款のもとに、これはほかの委員がダムという言い方をされていましたが、実際はダムではありませんで、これは水流式の、山にトンネルを掘ってそこに水を流して、そして山の上から水を落とすことによって水力発電を行う、こういう発電でございますけれども、この工事が第一期が進んでいたわけでありますが、地元のNGOがインターネット等を通じて我が国のNGOの皆さん、そして国会議員の方にもそういう情報が行ったということで、国会で九回にもわたって質問をされた、こういう案件でございます。

 この地元における環境悪化の問題とか、それから、ケニアの債務負担能力があるのかどうか、この事業が適切であるということのほかに、ケニアの債務負担能力があれば、第二次円借款をすることによってさらに百億追加で我が国が出すということに対する問題点、それから、この第二次の、フェーズツーの入札手続が不透明ではないか、あるいは政治家の関与があるのではないか、あるいは地元の大使の政治的な関与もあるのではないか、あるいは工事中におけるNGO関係者における銃撃とか住民への暴力等々、あるいは記者の逮捕も含めまして、人権問題があるのではないかというようなことが我が国の国会で質問されたわけでございます。

 すべてを、全部見ることはできませんでしたが、少なくともこのプロジェクトにおける目的とか意義とか、環境、社会面での問題点、それから、ケニアの債務返済能力があるかどうかということについて、我々は精力的に、反対をしているNGOの代表の方々にもお会いしましたし、またモイ大統領等初め関係閣僚の方々にもお会いをしましたし、また、現地に出向きまして、現地の工事現場の方々あるいは住民の方々と幅広く、大勢の方々から意見を聴取したというのがこの視察の実態であります。

 地元のケニアのデーリー・ネーションという新聞が、我々の視察に対して、当初この日本の議員団は、待機していたケニア代表団を残したまま、日本語のできる事業技術者の同行のもと独自に事業地を訪問することを決めるなど緊張感漂う場面もあった、電力公社職員によると、日本の議員団は最大限独立しての調査を希望し、キスム空港到着時にはプロジェクトの車両に乗ることさえ拒否し、独自でチャーターした車で事業地を視察したというふうに報道されておりますように、かなり我々としては客観的な立場からきちっとソンドゥ・ミリウ水力発電の状況について把握をしてきたつもりでございます。

 この中で、日本において、明らかに間違った情報の中で国会質問をされているという例が実はたくさんあったということを言わざるを得ないことがございます。幾つもそういう例はあるわけでありますけれども、例えば象徴的な例として、金額の問題ですけれども、小学校二つの建設費が四億二千万もかかっているのは異常ではないか、何らかの汚職とかあるいは不正等が行われているのではないか、これについてきちっと調べろ、こういう質問をされた、あるいは質問主意書を出された議員の方もおられました。

 実際、調べてみますと、小学校二校、それから中学校一校、また教会、そしてそれを含めて周辺の土地整備等、合わせて二億五千七百万が使われていたということで、我が国の状況等考えて、また現場の物価から考えて、決して高い額ではなかった。

 その中で、例えば小学校では一つ九百万を超える始業ベルが使われている、これも同じような趣旨で問題ではないかということが委員会で取り上げられていましたが、実は、九百万のベルではなくて、九百ケニア・シリングのベルだった。九百ケニア・シリングというのは、日本円にして千四百円なんです。この千四百円のベルをそこの責任者が寄贈を学校にしたということが、どういうわけか九百万を超える始業ベルとなった。

 事ほどさように、このような間違った形で我が国に対して情報が入っている部分があるのではないかということが現地に行ってわかった。

 それから、これはポイントだと思いますが、河川維持流量です。この発電所ができることによって、今申し上げましたように、ダムではないわけですから、トンネルに水を引いて、そのトンネルから水を流すことによって電気を出す、その導水路の方の水をソンドゥ川から転流すると水が減ってしまう。特に、ケニアにおいては、乾季、雨季がはっきりしております。乾季においてこの発電所の取水堰から水をとることによって、下流における生態系に影響し、それは、例えば下流には滝があるんですが、滝が枯渇するとか、あるいは周辺の森林が影響されるとか、あらゆる生態系への影響があるのではないかということも取り上げられておりましたが、実際は、もちろんその後の地元の方々との協議の上でもあるかというふうに思いますが、一定のソンドゥ川の水については確保するということで、乾季において一定以下になればこの発電所の水はとらないということで、これはちょっと日本においても考えられないぐらいですね。ですから、その期間は発電所が停止するということを前提としてつくられているということで、大変に民主的なシステムで考えられているのではないかということがわかったということであります。

 それから、なぜそのような、ある意味では誤解されあるいは間違った情報が我が国のNGOを通じて来ているのかということは、現地のNGOの方々、特に、反対をしているNGOの方々にお会いしたわけですけれども、その反対をしているNGOの方々、コピヨ元議員、それから気候・ネットワーク・アフリカのアクム女史等々、五、六人の方々にお会いしたわけですけれども、お二人の元国会議員がこのNGO、ソンドゥ・ミリウの代表者になっているんですが、この反対派のNGOの元国会議員というのは、この国も小選挙区制でございまして、落選した議員が、地元のケニアの人たちの言い方をそのまま申し上げれば、来年に選挙があるんですが、来年の選挙のために自分の政治運動としてこのソンドゥ・ミリウの反対運動をNGOをつくって、やっている。事実、そういう方々にお会いしたということでございます。

 ですから、そういう政治的な思惑の中でそのままNGOの方々の意見を聞くと、逆に我々が利用される、誤解される。こういう状況が実はケニアのNGOの中にあって、我が国のNGOとはその辺の性格が異なっているということも、現地で実際にそういう方々に会って感じたことでございます。

 しかし、そういう反対をしているNGOの方々を含めまして、これはモイ大統領から地元の人たちも、我々が行ったときには、これは組織化されたとはとても思えませんが、地元住民の方々が、とにかく日本から国会議員が来たのは初めてだと。そもそも外務委員会としてケニアどころかアフリカ地域に視察に行ったのは初めてのことであったわけでありますけれども、ぜひこの第二次借款、このソンドゥ・ミリウ水力発電が継続できるようにぜひしてくれという住民の方々の熱烈な要請といいますか要望といいますか、それを受けた中での視察であったということについて御報告を申し上げたいと思います。

 しかし、そういう状況があるにもかかわらずストップをして、そして一年半ぐらいたって、そして我が国でも国会で再三取り上げられて問題になっているそのプロジェクトが、ことしの一月の二十四日に住民対話集会というのを開きまして、これは、その事業がストップしているということで、関係の方々に集まってもらう、この事業の現状報告と、それから地元住民、NGO等々の方々から意見、要望、不満を聴取することを目的として開催をし、そしてその結果、この事業のために住民代表、それから有識者、NGOから成る技術委員会というのを設置をしたんですね。この技術委員会を通して、ソンドゥ・ミリウの事業については地元の方々の意見を反映しながら進めていこうということで、この技術委員会には先ほど申し上げました反対派のNGOの方々も入りまして、そして、この技術委員会を雇用と経済活動問題担当小委員会、それから補償と移住問題担当小委員会、環境問題担当小委員会、安全と健康問題担当小委員会という委員会をつくって、住民対話集会を行っているという状況でございます。

 この住民対話集会等の中での技術委員会で、最近、特にこの七月になってから、ぜひこのプロジェクトは進めてほしい、住民はこの事業の完成を必要としている、本事業によってもたらされる便益はこれに派生して生じている問題をはるかに上回るということがこの技術委員会で報告をされ、また、このNGO等を通じた地域の住民の苦情とか懸念、これについても、正しいものもあれば、しかし、的を得ていないものもあるということで、かなり民主的な技術委員会をつくった中で結論を設けて、ぜひこれを進めるべきであるということを提案をしております。

 また、先ほどの反対をしているNGOの人たちも、この事業そのものについては、ぜひこれはケニアにとって必要なものであるから進めてほしいということであります。ちょっと客観的なうがった見方をすれば、これは我が国に対してもそうですし、またケニア政府に対してもそうですが、反対しているNGOの人たちからすれば、ごね得といってはちょっと言葉は語弊があるかもしれませんけれども、もっといろいろなことを要求することによって資金を引き出すということのために反対をしている部分もかなりあるのではないか。それぐらい、日本でも同じようなプロジェクトはいろいろとあると思うんですが、このプロジェクトが中断したことによってこのような技術委員会をつくって、そして地元の人たちの意見を丁寧に継続をして聞くというようなことはちょっと考えられないことではないかと思います。

 ちなみに、道路をつくって、そして建築資材等を運ぶ中でほこりが出る、粉じんの問題があるということで、これは日本ではちょっと考えられませんが、一、二時間ごとに山の中で、民家がそれほどある地域ではないんですけれども、そういうところにいわゆる水まきをすることによって、数時間ごとにほこりを立てないように立てないようにという配慮をしたり、さらには百メートル置きぐらいに土盛りをつくりまして、車がスピードを出せないようにするというような、日本でもしないような大変な配慮を環境対策としては随分気を使ってされている。逆に日本以上にケニアの方が環境問題についてははるかに先進国で、また、住民の人たちの意見を随分聞いているのではないかというのが我々の感想でございます。

 これをしていると話がこれだけで終わってしまいますので、このあとはまた二十七日の報告会で土肥委員長を中心として詳しく行うと思いますので、ちょっと質問をさせていただきたいと思うんですが。

 一つは、今申し上げましたような技術委員会ですね。これはNGOとか学者とか事業機関等の代表が定期的に参加をしてやっているわけですけれども、こういう委員会がケニアとかそのほかの国において設けられている、そういう前例は実際あるのかどうか、日本ではちょっと聞いたことはないんですが、これについてお聞きしたいと思います。

植竹副大臣 ただいま下村委員のお尋ねの技術委員会のことでございますが、その前に、この十五年以上にわたりましたソンドゥ・ミリウ水力発電計画についてのいろいろな問題がございました。しかし、今回は委員長を初め委員の方々がじかに行って、百聞は一見にしかずということで、いろいろなことを調査され、しかもこれが評価されているということは、本当にこの委員会の派遣ということは意義があったものと思います。

 特に、ODAに関してのいろいろなうわさがございますが、こういう問題も一切、ODAが借款を行う場合に、綿密に計算されたものであるということを裏づけた、そういう意味におきまして、非常に高い評価をされるものだと個人的には思っております。

 さて、今お尋ねの技術委員会のことでございますが、近年、世界的にこの環境、社会問題という意識が高まってまいりましたところでございますが、我が国といたしましては、こういった円借款事業の実施に当たりまして、被援助国の事業実施機関が住民やあるいはNGOから意見を聞くという、公聴会を開催するということはありました、このような例はほかにもありました。しかし、この技術委員会のように、住民あるいはNGO、事業実施機関の代表や有識者の方々が事業実施上の問題について定期的に協議し、あるいは解決策を提言するという枠組みが設けられたことは、近年、他に同様の例があるとは聞いておりません。

 したがって、この委員会の取り組みにつきましては、被援助国の側においていろいろな立場の利害関係者を含む幅広い範囲の人々の参加を得まして、社会、環境問題などの事業実施上の問題に対応するような真剣な姿勢を示すものとして評価に値するものと考えております。

下村委員 ありがとうございます。

 今お答えいただいたように、技術委員会等を設置するということから見ても、一〇〇%とは言えないかもしれませんが、かなり地域住民の苦情、懸念については配慮しているということで、環境問題等については非常に対応しているのではないかというのが私の結論でございます。

 また、政治家の関与の問題でありますが、これは直接わからない部分もありますが、現地の関係の方々との話し合いの中で、特定の政治家の関与はあり得ない、これは大臣も既に答弁されていますが、改めて現地へ行ってそういう認識を持ちました。

 それから、債務負担能力の問題でありますが、これについては、ケニアの債務負担能力について外務省の見解をちょっと確認をしていきたいと思いますが、いかがでしょうか。

植竹副大臣 債務返済能力の予測ということは、御承知のように、今の世界的な非常な混乱した経済事情だというときに当たりましては、大変難しい問題ではありますけれども、ケニアの債務返済能力も世界経済の動向全般にかかわるということは今申し上げたとおりでございますが、今後慎重にそのあり方について対応していくということは必要であると思います。

 しかし、ケニアが債務削減を行わない方針を累次にわたり表明していること、あるいは昨年十一月のパリ・クラブでは、債務削減に至らない条件での債務繰り延べが合意されたこと等を踏まえて検討しているところであります。

下村委員 これは田中大臣にお聞きしたいわけでありますけれども、一方、こういう状況の中で、最初に申し上げましたように、ODA予算の一〇%削減、もう予定されているわけですけれども、どのような分野をどのように削減されようとしているのか、基本的な方針についてお聞きしたいと思います。

田中国務大臣 御存じのとおり、今財政状態が大変厳しい中にありますので、ODA予算につきましても、めり張りのついた効率性の、しかもしっかり見えるようなものに組み込まなければいけないという観点に立ちまして、いろいろ検討いたしておりますが、先ほど来下村委員が大変詳しくレポートを言ってくだすって、もっともっと伺っていたかったぐらいでございましたけれども、その御報告を伺って、このケニアの問題についてむしろ具体的に申し上げた方がよろしいかと思いますけれども、ソンドゥ・ミリウにつきましては、第二期分につきましても円借款を供与する方向でやはり検討していきたいというふうに思います。

 それは、私どもの調査もございますし、また、今先生がおっしゃったようなああいうふうなことも踏まえておりますが、いずれにしましても、効率的に私どもの税金が大いに使われるようにトータルで運用していかなければならない、かように考えております。

下村委員 ソンドゥ・ミリウについても今大臣からお答えいただきましたが、我々も現地の視察の中では、これはいろいろな問題があって一年半おくれた。このおくれただけによって水力発電所の損害が日本円にして三十億ぐらいにはなるということでありますが、やはり、ケニアの全体的な状況の中で、これは、ここで中断してストップをさせるということではなくて、改善点等解決をしながら、反対派の人たちも推進をしてほしいというのは、これはケニア全体の声でもありますから、ぜひこの第二期の供与については早目に決定をすることが望ましいのではないかというのが、行った大方のメンバーが恐らく感じたことではないかというふうに思います。

 しかし、今後、これだけ国会で取り上げられたODAの問題もなかったのではないかというふうに思いますし、今申し上げたようなところではクリアをしているというふうに思いますが、その前に質問いたしましたケニアの返済能力の問題については、これはきちっと把握をしていただきながら、本当に発展途上国に対して喜ばれるようなODAをすることによって国際貢献をしていただきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

土肥委員長 次に、上田勇君。

上田(勇)委員 公明党の上田勇でございます。

 きょうは、米国での同時多発テロ事件について質問させていただきますけれども、その前に、今回のテロ事件、数千人に及ぶ民間人を巻き込んだ残虐卑劣な犯罪でありまして、多数の邦人を含みます世界各国の市民が犠牲になった、まさに国際社会に対する挑戦であるというふうに考えております。私も、知り合いの中にも依然として行方のわからないというような者もおりますし、犠牲になられました方々、また御家族、関係者の方々に心から哀悼の念を表するものでございます。

 そして、今回のこの事件、こうした犯罪者は決して許してはならない、そうした厳正な処断をしなければならないというのが今、国際社会の一致した見解であるというふうに私も考えているところでございます。そういう意味で、きょう、このテロ事件に関しまして、幾つか今後の対応も含めての御質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 まず最初に、これはちょっと事前情報ということでの御質問なんですけれども、新聞報道等によりますと、外務省では、米国での事件発生前に、日韓両国の中でイスラム過激派によるテロの危険性に関する外交情報を入手していたというふうに言われております。果たして政府としてその情報が有効に使われたんだろうかというと、私は非常に疑問に思っているんですけれども、少なくとも一般にはこうした事実というのは余り周知はされていませんでしたけれども、なぜそのような判断を行ったのか。

 もう少し警戒心を持ってもよかったんではないかというのが率直な気持ちでございますけれども、この件に関して、事前にそういう情報が入手されていたんではないかというようなことに関しては、どういう経路であったとかいろいろな、たしか報道にも幾分違いがあったり内容が変わったりしているので、その情報の管理や活用といった面について、まずちょっと事実関係を外務省の方から確認をしたいというふうに思います。

田中国務大臣 今上田委員おっしゃっていますのは、例のプレスリリースのことだというふうに思いますけれども、これは時系列的に申しますと、九月七日の夕刻に在京の米国大使館が、日本に居住する米国人を対象として、在日米軍施設ないし米軍人が頻繁に出入りする建造物に対してテロ活動が行われるかもしれないという未確認情報があるということがプレスリリースされたわけでございます。これが発出されたのが九月七日でございます。

 そして、これは同日中に北米局が入手をしております、外務省の。ところが、その後関係省庁とも連絡をとったやに聞いておりますけれども、現実には私は、その日にちょうどサンフランシスコ講和条約の五十周年がありまして、防衛庁長官と二人で同じ飛行機に乗っておりまして、サンフランシスコに向かっている最中のことでございました。

 結論から申しますと、このことは、日本に居住する――結果的には北米局長から私にも何の報告もありませんで、私がこのことを知りましたのは、たしか九月十二日、日本時間で十一日の日にテロが起こったと思いますけれども、十二日であったというふうに記憶しておりますけれども、私ももちろん帰りましてから、防衛庁長官ももちろん知らなかったわけでしたので、なぜこうしたプレスリリースについて、局長はわかっていたならば、一緒に同行していっておりましたので、報告をしなかったのかということを申しましたら、このプレスリリースの中身自体が、米軍の施設ないし米軍人が頻繁に利用する建物、建造物に対するものであるということと、それから未確認情報ということであったので上げなかったということを申しましたけれども、それは大変許しがたいことであるので、そういうことがないようにしっかりと確実に情報は上に上げなきゃいけませんよということを申しました。

 ましてや私は、この中におられる数人の議員さんも一緒に、かつて報告義務、幹部公務員の報告義務という議員立法をやっておりまして、まさしくそれをつくり出そうとしていたやさきでございまして、そういうことが遅滞なく報告されないと大変な事態に陥るではないかということを強く申しました。

 それが今までのところの時系列でのことでございます。

上田(勇)委員 今大臣がおっしゃったように、やはり、こういういろいろな、特にこういうふうに緊迫した状況になってきますと、各省庁それぞれの情報網でいろいろ入手した情報、それをシェアしていく、そしてなおかつ国民にも必要な部分、これは何から何まで知らせてそれがベストだというふうには私も思いませんけれども、十分また心を砕いていただきたい、配っていただきたいというふうに考えているところでございます。

 それで次に、テロリズムについては、これまでも国際社会の中で根絶していかなければいけないという共通の意識はずっと持ち続けてまいりました。これまでのいろいろな国際会議を見てみましても、一九九六年のリヨン・サミットで、テロリズムに関する宣言というのが出ております。以降、サミット等でも再三にわたってテロ対策についての国際協力の強化、これが強調されてきました。沖縄のG8のコミュニケでもこれに触れておりますし、先般の、これは田中大臣も御出席になったというふうに思いますけれども、イタリアでのG8の外相会議でも、このテロリズム、テロリスト対策というのが強調されておるわけであります。

 これまでこのように再三にわたってこういうサミット、いわば世界の首脳が集まったところでこういうように議論が行われてきたわけでありますので、これまでそうした国際社会としてこのテロに対してどういうような取り組みを行ってきたのか、さらに日本としてはその枠組みの中でどういう貢献をしてきたのか、御見解を伺いたいというふうに思います。

田中国務大臣 おっしゃるように、リヨンのサミット以降、つい直近の私が出席しましたあのG8、ローマでの会議でもそうですけれども、国際協力を強化することによってどのようにしてテロを防いでいくか、お互いに情報をシェアしていくかということについての議論もなされました。また、G8は、最近のテロ情勢を的確に把握するための緊密な情報交換を行うとともに、国連におけるテロ防止に関する諸条約の作成ですとか、その締結の促進も一致して取り組んでいこうということになっております。

 いずれにしましても、テロ撲滅のために、今回のことを契機として、さらに緊密な連絡、連携をとっていかねばならないというふうに思っております。

上田(勇)委員 今答弁にもあったように、これまでそういうサミットの場でいろいろな話し合いはしていたけれども、具体的な対策というのはまだちょっとおくれてきたんではないかというふうに思います。残念ながら今回こうした大惨事が起きてしまって、いよいよ、やはりサミットの場でこれの具体化に向けてこれから努力をしていっていただかなければなりませんし、その中で、ぜひ、我が国が主導的な立場、リーダーシップをとっていただいて、国際社会におけるテロ撲滅に向けての先頭を切っていただきたい、このことをお願い申し上げたいというふうに思います。

 それで、今回のテロ事件はアメリカで発生をいたしました。しかし、これは我が国で発生する危険性も十分あることであります。そういう意味では、テロに関する国内対策、これの充実強化というのが今重要、急務になっているというふうに思います。

 これは、現在のところ、先ほどからのいろいろな御質問とかでも触れられましたけれども、自衛隊法の改正や有事法制の整備といったことも話題に上っておりますし、これらが必要であるというのは私も全くそのとおりだというふうに思いますけれども、どうもこのテロ事件については、自衛隊の対応に関する議論だけに集中し過ぎているんではないかなというような気もいたします。

 もちろん、警察とか通常の行政だけでテロに対応するということは極めて困難である、だからこそ自衛隊の活動が必要なんだということはそのとおりだというふうに思いますけれども、これはただそれだけではなくて、今回のテロ事件を見てみましても、そういうような制約を受けていない、軍隊がいろいろな制約のないようなアメリカにおいてすらやはり起きたわけでありまして、これは、警察あるいは一般行政のテロに対する意識をもっと高めていかなければいけないし、対策を強化していかなければいけないということの証左ではないかというふうに思います。

 そういう意味で、これらの対策というのは実に数多くの府省にまたがっていることで、それをすべて田中大臣の方にどうするんだというようなことをお聞きしても、それはもう無理があることだというふうには十分承知しておりますけれども、例えば、空港や港湾の警備だとか、あるいは出入国管理の強化の問題であるとか、税関体制を強化していく、あるいは国際的な情報交換をもっと緊密にしていく、そういうようなさまざまな対策、これはいずれも外務大臣としては関与していく事柄であろうというふうに思いますので、こういうふうにいろいろと府省にまたがるものでありますけれども、これはぜひ大臣に、これから内閣としてどういうふうに取り組んでいかれるのか、その辺のお考えを伺いたいというふうに思います。

田中国務大臣 今回のテロ発生後も、十五日に省庁の連絡会議というものが開かれまして、今先生言われたように、省庁別ではなくて、トータルで連絡を緊密にとって対応していこう、そして外国からの情報も得ながら連携を強化して対応できるようにしようということでやっておりますけれども、やはりこれが有機的に、そして継続的になっていかなければなりませんので、一過性のものではなくて、これが必ずよい効果を生むものになるように、機動的に運用ができるようなものに全力を傾注してまいりたいというふうに考えております。

上田(勇)委員 報道によりますと、EUでは、EUの交通相理事会、いわゆる日本でいうと国土交通大臣、各国の集まりだというふうに思いますし、あるいは司法相理事会、法務大臣の集まりですね、に対して、やはり月内に具体的な対策を取りまとめるように指示をしたというふうにございます。ぜひ我が国の内閣としても、これはテロを受けた国内対策という意味で、これを内閣として急ぎ取り組んでいただきたいというふうに思います。

 今、今度のテロ事件を受けての国内対策のことについて話をさせていただいたんですが、今回のこのテロ事件、米国にとっては非常に大惨事であったわけでありまして、それを受けて、今度米国は、ブッシュ大統領もそれからパウエル国務長官も、初めとする政府首脳が、今回の事件に関して軍事的な報復を行うというようなことを明言しております。

 しかし、軍事行動といってもいろいろなパターンがこれまでもあったというふうに思うんですね。すぐ浮かんでくるのが湾岸戦争、イラクがクウェートに侵攻したときの湾岸戦争に対する軍事行動というのもありましたし、アメリカの行動でいえばパナマ侵攻というのもありました。これはパナマのノリエガ将軍を司法的に逮捕したというような方法であったわけでありますけれども。

 今回のこのテロ事件、これからどういう展開になるかということもありまして、まだ今多分米国ではいろいろなオプションを検討している段階ではないかというふうに思うんですけれども、これに関して、いろいろ米国からも我が国の方にも、大臣もベーカー大使とも会われたというふうな話も聞き及んでおりますけれども、アメリカ側からどういうようなオプションを検討しているのかというような相談であるとか、それに対する我が国への要請とか、そういう具体的なものは今のところあったんでしょうか。

田中国務大臣 このことにつきましては、もちろんアメリカと緊密に連絡をとって協議もいたしておりまして、あらゆる角度から、どういうことができるかということについては現在検討中でございますけれども、詳細については、勝手ですけれども差し控えさせていただきたいと思います。

上田(勇)委員 というのは、具体的にこういうようなことを考えていて、そういう場合には日本としても協力をしてほしい、そういう話はあるんだけれども、ちょっとそれはもちろん機微にかかわることなので答えられないというふうに理解して今の答弁はよろしいんでしょうか。

田中国務大臣 今まで私がパウエル長官と電話でお話をしたり、昨日ベーカー大使がいらっしゃった段階では、そうした具体的なオファー等は、私は今聞いておりませんし、ただ、連絡は緊密に内閣で全体とっておりますので、今すぐ申し上げることはできないということでございます。

上田(勇)委員 やはりまだいろいろな状況だとかオプション、いろいろ検討している段階なんで、アメリカとしてもまだこういう方向なんだというところまで具体的に示せないことはよくわかりますし、そうなんだろうというふうに思います。

 そこで、ただ一つ言えることは、アメリカは今首謀者と思われる人間の引き渡しを求めておりますし、これの交渉がもしかなわないような場合には武力の行使も辞さないというような姿勢で臨んでいるんだろうというふうに思います。ただ、その形態というのは、先ほど申し上げたようにいろいろなオプションをまだ考えているし、それに至る過程というのもまだ見えてこない段階ではないかというふうに思いますけれども。

 小泉総理は、米国の軍事的報復を支持し、憲法の枠内でできる限りの援助と協力を行うというような考え方を述べられております。今回のようなテロ事件はやはり決して許されるべきではなくて、我が国としても各国と協力して毅然とした態度で臨むべきであって、こういったテロリズムは根絶していかなければならないと考えておりますし、そうした中には軍事的な行動も含まざるを得ない部分も出てくるだろうということは理解いたしますので、まして、我が国にとっても最大の同盟国、友好国でありますアメリカがそういうかつてないような困難に際しているわけでありますので、小泉総理のこうした発言というのは私も理解し、支持するものでございますけれども、まだ、今の発言でも、アメリカや関係諸国がどういうような対応を行うかというのが、具体的な内容がわからない、あくまでも仮定の話でこういうふうにおっしゃっていることなんだろうというふうに思います。

 それで、仮定の話とはいっても、例えば後方支援の話だとかいろいろ出てきております。具体的に我が国として米国を支持していく、支援していく、そういった具体的な想定している内容というのはあるのでしょうか、その辺お伺いしたいというふうに思います。

田中国務大臣 まさしくまだ今現在のこの時点では、アメリカがどういうことをしようとしているか全く決まってもおりません。したがいまして、それを見きわめないと発言することはできない段階であるということを御理解いただきたいと思います。

上田(勇)委員 これは仮定の話ですけれども、多分、これまでの総理の御発言を聞いていると、自衛隊による協力を想定されているんだろうというふうに思います。

 そうすると、自衛隊による協力ということになりますと、我が国の憲法の枠内での協力ということだと、いわゆる、先ほどもちょっとお話が出ましたけれども、周辺事態法に定められている後方地域支援あるいは後方地域捜索救助活動、そういった内容が想定されるのではないかというふうに思うのです。しかし、この法律を見てみても、やはり今回の事案が非常に重大な事案であるのは間違いがありませんが、しかしながら同法に定める周辺事態に該当するというのはちょっと考えにくいことだというふうに思います。そうすると、この法律に基づいて対処するというのは困難なのではないか。であれば、こうした協力を行うためには何らかの根拠法が必要になってくるのだろうなというふうに思うのです。

 先ほど安倍副長官の方からはいろいろな御意見もございましたけれども、改めて大臣に、これからそういう根拠法としてこの周辺事態法の改正であるとか新法の制定等、これは今度の国会がもう間もなく始まりますので、そう時間の余裕があることではないというふうに思いますが、今後どういう方向で進められようというふうに考えられているのか、その辺の基本的な考え方、詳しくは結構でございますので、お聞かせいただければというふうに思います。

田中国務大臣 申し上げる前に、小泉総理がアメリカの姿勢を、ブッシュ大統領の声明も含めまして理解を示しているとおっしゃっていることは、結局、アメリカがテロに断固戦う、決してそれに屈することはないんだというアメリカのその姿勢を支持しているということを強く表明なさったのであるということをまず前提として御理解いただきたいというふうに思います。

 その上に立ちまして、日本が現在、ではアメリカに対して支援とか協力がどういうことができるか、いろいろな角度からいろいろなことを検討してみて、そしてその中で、必要な支援と協力のために法的な措置が果たして必要であろうかどうかということも含めて検討中であるということを申し上げさせていただきます。

上田(勇)委員 大臣、あえて私は異論を唱えるつもりではないのですが、小泉総理の御発言というのは、もうこれはやはり軍事的な行動が行われる可能性を視野に入れた上で、自衛隊による協力というのを前提に議論されていることではないのかなと。そうすると、今の外務大臣の発言とは、御理解とは、幾分ちょっと温度差があるのかなというのが、ちょっと今心配だったんですけれども。これはもちろん軍事的な行動が行われないで、平和的に解決できればそれこそベストなことはありませんが、現状は大変厳しいんじゃないかというふうに思います。

 そういう意味で、日本としてそういう事態を想定した上でどういう対応ができるのかというところまで考えなければいけないんで、今の段階でまだちょっと検討中でありますというのでは、ちょっと内閣として心もとないなというのが正直なところなんですが、いかがでしょうか。

田中国務大臣 いかなる事態が次に展開するにせよ、やはり、何度も総理がおっしゃっていますように、我が国の憲法の範囲内で何ができるか、ぎりぎりまで検討するということでございます。

上田(勇)委員 憲法の範囲内で対応するというのは、憲法を改正しない限り当然のことなのでありますけれども、でなくて、今の現行法制でできるのかできないのか、そこが今議論の的になっているのではないのかなというふうに私は理解をしているのですが、その辺をぜひちょっと内閣の中でもう一度議論をしていただければというふうに思います。

 ちょっと話が、視点が変わるのですが、今度の事件で非常に難しい点というのは、どういう事態になればこの事件が解決したのかというのが非常にわかりにくい事案ではないかというふうに思います。つまり、政治的な目的、アメリカが今いろいろな交渉をし、場合によっては軍事的な行動も含めて検討しているのですが、ではどうすればアメリカとしての、また国際社会としての政治目的が達成されたのかということが非常にわかりにくいのだというふうに思います。

 イラクがクウェートに侵攻した場合には、クウェートの領土からイラクを排除する、このことによって一定の政治目的が達成される。しかし今回は、アフガンに潜んでいるであろうと思われるテロリストのビンラディンとその組織を、国際社会、人道に対する犯罪として国際的な場で裁く、そして処断していく、このことが政治的目的を達成するということになるんではないかと私は思っております。そうした政治目的を達成する過程において、その正義を実現できない場合に武力の行使、これも行うということはやむを得ざる部分があるのだろうというふうに思いますが、こうした、何を目的としているのかわからないまま武力を行使していくと、出口のない紛争に陥ってしまうのではないかというふうに思っておりますので、その辺が非常に今回の事件、私は危惧しているところでございます。

 ユーゴの場合には、ミロシェビッチ前大統領が人道に対する罪で今戦犯法廷で裁かれているわけであります。まさに今回のこのテロ事件も人道に対する罪に当たるのだというふうに思うわけでありますので、その意味で、このユーゴの戦犯法廷にはいろいろな問題があるというのも聞いてはおりますけれども、こうした国際法廷による解決を目指す、これを目的とするということも一つの方向ではないかというふうに思っているわけであります。もちろん、数千人の犠牲者が出た米国の市民の皆さんの大変な感情というのがあって、これはもう報復しなきゃいけないんだという感情もあるのですけれども、やはりこれは国際社会としては、しっかりとした司法の場でこれを裁いて、処断していく、そのことによってテロリズムを根絶していくという方向、そういう正義を実現していくんだということが重要なんではないかというふうに思います。

 ぜひそうした、今回の事件についての出口というのでしょうか、解決方法について大臣のお考えも伺いたいというふうに思いますし、ぜひその大臣のお考えを、それはまたアメリカにもまた国際社会の中でも述べていっていただければというふうに思いますけれども、お考えを伺いたいと思います。

田中国務大臣 今上田委員は、ユーゴのミロシェビッチ前大統領のこともお触れになりましたし、関連して国際法廷のこともおっしゃったわけですけれども、現在のテロについては、アメリカ側が犯人の特定に向けた捜査というものを進めているわけですけれども、いろいろな動きがある中で、まずこのアメリカ側の動きを現時点では日本はしっかりと見きわめていくということに尽きると思いますし、もちろんあらゆるオプションについて検討は内部的にいたしておりますけれども、まずアメリカの方の対応を見きわめることになるというふうに思います。

上田(勇)委員 今回の事件についていえば、直接的な攻撃を受けたのは米国でありますので今の言い方もいいのだと思うのですが、やはりテロリズム、こういったことを根絶していくんだ、対策を講じていくんだということになれば、アメリカの動向を見ますというのでは、ちょっと我が国として幾ら何でも外交姿勢としてあいまい過ぎるというふうに私は思います。やはりテロを追放していく、根絶していくという意味で、今回の事件の解決ももちろん最優先の課題でありますけれども、それと同時に、やはり今後こういったテロによって民主主義や自由主義の社会が脅かされることがないようにしていかなければいけない、そうした中長期的な取り組みも必要なのではないかというふうに思っております。

 そういう意味では、サミットの宣言などにも、国連における国際テロ対策の常設機関を設置するというようなことも言われておりますし、また、今国際的な場では、国際刑事裁判所をもっと有効に使って、国際社会に対する犯罪、人道に対する犯罪を厳正に処断していこうというような議論も行われております。

 やはり、今回の事件に限らず、国際社会としての恒久的な取り組みが必要なわけでありまして、我が国としても、関係各国と協力をしながら、ぜひもっとリーダーシップを発揮していただきたいなというふうに念願するものでありますけれども、こうした中長期的というんでしょうか、もっと包括的な国際テロ対策について、大臣の見解を伺いたいというふうに思います。

田中国務大臣 中長期的なことももちろん国際会議でも検討いたしておりますし、現在、国連その他の機関で、テロ防止に関する条約の作成でありますとか、それから締結の促進ということを通じまして、中長期的な、今先生がおっしゃったような取り組みを積極的にやっていくということも、私どもが参加をいたしております。

 そして、その条約のうち国連以外の場で作成されたものには、テロ行為の罰則にとどまらず、その効果的な防止のために、例えばハイジャックの防止につきましての国際民間航空機関の関与のように、既存の常設国際機関が果たすべき役割等も盛り込まれております。

 したがいまして、日本といたしましては、引き続きテロの防止に関する新たな条約の作成に協力をするとか、それから、常設の国際機関との適切な協力のもとに、既存の、今既にでき上がっている条約の実効性を高めるということのためにもっと知恵を出しまして、中長期的な、今先生がおっしゃったような御指摘にこたえるべく努力をしてまいりたく存じます。

上田(勇)委員 私も、冒頭申し上げましたように、今回の事件というのは絶対許されるべき事件ではないし、国際社会が厳しく処断していかなければいけない事件であるというふうに思いますし、また、頻発している国際テロに対しても国際社会がもっと一丸となって取り組んでいかなければいけない、対策を講じていかなければいけないことだろうというふうに思っておりますが、きょうの議論をいろいろと伺っている中で、どうもまだ我が国としての、テロを許すべきではないという気持ちは伝わってくるものの、具体的にどういうふうにこれからこれに対処していくのかというような方針が、また姿勢がよくはっきりしてこなかったんじゃないのかなというような、非常に残念でありまして、これは日本一国でできることではありません、しかし、日本の外交がやはりここで問われていることじゃないかというふうに思いますので、ぜひ田中大臣、アメリカの動向を見る、今回の事件については当然当事者のアメリカの動向というのが最優先でありますけれども、もっと主体的に日本外交を展開していただきたいなというのが率直な気持ちでございます。

 もう質問はこれで終わりでありますが、最後に一言、これは私の意見を述べさせていただきたいんですが、いろいろ報道等を見ますと、アメリカやヨーロッパなどでは、イスラム教徒が、今回の事件に直接関係がなくても大変な迫害を受けたり被害を受けたりしているというような事実がございます。

 今回の事件、これはイスラム教国、アラブ諸国もこぞって糾弾していることでありますし、これは一部のテロリスト集団あるいはそれに関係する国が起こした事件であって、これがイスラム社会全体あるいはアラブ社会全体に対する非難になってはいけないなと。幸い、我が国ではまだそうした事件は起きておりませんけれども、これはまさにテロリストの、イスラムも含んだ国際社会に対する挑戦なんだ、このことをぜひ訴えて、私の発言を終わらせたいというふうに思います。きょうは大変ありがとうございました。

土肥委員長 次に、安住淳君。

安住委員 民主党の安住でございます。

 きょうは私が十分、そして首藤議員、木下議員が三十分ずつ、それぞれこのテロ問題とそれから外務省の不祥事の問題に関して質問をさせていただきます。

 まず私の方からは、今回のこの罪なき多くの人々を巻き込んだテロは、先ほどから何人の方からもお話がありましたが、決して許されるものではないと。

 我が党としても、鳩山代表の名で、ブッシュ大統領に対しまして、翌日、この残忍卑劣きわまりないテロに対して悲しみと怒りを禁じ得ない、テロリズムに対して毅然と立ち向かうべきである、それを表明した大統領を支持するという旨のメッセージを送らせていただきました。

 テロリズムに関する今度の事件、いかなる理由があっても許されるわけではないし、これに対する対応をこれから議論させていただきますけれども、前向きな議論をぜひしていきたいと思っております。

 しかし、こういうことをやって、本当に日本の外交が危機的な状況にあるわけです。私も実はあのニュースを、ウィーンにいて、帰国をする前の便を待ちながら空港で見ておりました。背筋の凍るような思いを本当にしました。それは多分、大臣もそういう感想を持たれたのではないかと思うんですね。それはなぜかというと、日本という国が置かれている現状にこれは直結する問題であるということを直観的に感じるわけであります。

 しかし、残念ながら、連日連日、外務省の不祥事がどんどん出てきて、後で申し上げますけれども、国民の信託を受けた仕事を本当に外務省は省を挙げてやっているのか、いまだに司法当局が機密費の問題、流用問題についてやっている、果たしてこれは一丸となってできるのかと、国民の皆さんは大変不審に思っているんです。

 だからこそ、田中大臣、ここは、外務省、少しは仕事をしっかりやっているというのを見せてもらわなければ、私は本当に、外務省の職員の皆さん、申しわけないですけれども、総入れかえさせてもらいたいと思うぐらいであります。戦後日本が培ってきた日本の外交の集約点というか、最も力を発揮しなければならない現状に今いるんだということをまず我が党として申し上げたいと思いますが、御感想を聞かせてください。

田中国務大臣 不祥事は不祥事として最全力を挙げてやっておりますけれども、今おっしゃることには、テロリズムに対する思いでありますとか危機意識でありますとか、それから外務省が総力を挙げるのは当然のことでありまして、他省庁と連携をとりながら最善を尽くすということは多言をまちませんし、私も同感でございます。

安住委員 そこで、ここは外務委員会ですから、周辺事態等々の問題について詳しくやるのはまたそれぞれの委員会があるでしょうから、私は外交的に今度の問題を考えたいと思うんです。

 その中で私が一番気になったのは、気になったというか、やはり大きな出来事というのは、確かに救援作業も必死でやっています。ですから、一人でも多くの皆さんを助けなければなりません。しかし、それと同時に、今、国際社会の枠組みの中で着々とアメリカは多分しかるべく軍事行動に備えた準備を進めています。そういう中にあって、国連の役割というものをやはり考えざるを得ないと思います。

 十二日の国連安保理のテロ非難決議、全会一致でございました。その内容は一々ここでは申し上げませんが、一三六八号決議が出たわけであります。ここではかなり踏み込んだ話も実はしているんですね。私はこれが一つポイントになると思うんです。

 日本という国が置かれている地理的また政治的この状況というのは、私は国民の皆さんはもうよく御存じだと思う。その中で何ができるかということになったときに、この国連決議、そしてさらに言えばもう一つ踏み込んだ国連決議をしっかりやることで、それを受け皿にして我々がこのテロリズムに対して、緊急にこの事態に対して向かっていく外交努力というのを実はすべきでないかなと私は思っております。

 アメリカがどう思っているかということはいろいろな意見があります。アメリカはもうあの十二日の決議で十分だというメッセージを非公式に伝えているのではないかという意見もあります。しかし、私は、日本の外交は、やはり国連安保理の決議をもう一度このテロリズムに対してしっかりやる。

 それはなぜかというと、今上田議員も話をしておりましたけれども、イスラムの国々の皆さんだって、この事態に対して大変な怒りを持っています。民主主義に対する挑戦だと言う方はたくさんいらっしゃる。だからこそ、テロリズム、今度の問題に関して言うと、犯人の特定をしっかりとやって、それを捕捉、逮捕するためにしかるべく手段をとるのであれば、できればやはり国連がしっかりとしたリーダーシップをとることが私は一番大事なんではないかと思いますが、大臣、いかがでございますか。

田中国務大臣 委員は、国連安保理の決議の一三六八について触れられましたけれども、今おっしゃっている趣旨には賛成でございます。もちろん、国連を中心としてこうした方針で進むべきであるというふうに思います。

安住委員 いや大臣、アメリカにもそういう働きかけを私はやはりすべきではないかと思うんですね。これは多国籍軍でやるとなると、このオプションの中で私たちの国がじゃ国際貢献を本当にできるかというと、私は、またあの中東のときに――実は私もあの委員会をずっと担当している記者で、一年近くつき合ったんですけれども、会議は踊るけれどもなかなか結論が出ない。

 つまり、本当に多国籍軍に我が国が貢献できるなんていう話は、これは大変な話だと私は思うんですよ。そうでなくて、国連の決議をしっかりと踏まえれば、いろいろなオプションも可能なんじゃないかと思うからこそ私は今申し上げているんですよ。そういう働きかけを、外交上努力をなさるおつもりはありますか、ありませんか。大臣、いかがでございますか。

田中国務大臣 今、余りホットになってはいけないと思っておりまして、もちろん、アメリカの今のテロリズム自体に関しましては、アメリカ側の対応というものをしっかりと見きわめるという冷静さも必要なわけでございますけれども、アメリカ等が個別的または集団的な自衛権を行使することを、これは確認したものですけれども、先ほどおっしゃった、ただ、ほかの、他の国連加盟国がこの決議を根拠に自衛権以外の武力の行使を行うということまで容認しているわけではない。もう一回申しましょうか。

安住委員 いや、わかりますよ。そうであるからこそ、私が言っているのは、一三六八をさらに犯人がきちっと特定できた段階でもう一歩進めて、そういう形づくりをするのに日本は外交上努力をすべきでないかと申し上げているんです。いかがでございますか。

田中国務大臣 私も、昨日も佐藤国連大使ともお話ししたんですけれども、これは国連の場も含めまして外交努力をしてまいりたいというふうに考えます。

安住委員 私は、もう時間がありませんので最後に申し上げますが、今度のことであえて言うと、やはり四つの問題を解決しないといけないと思っております。

 一つは、普遍的なテロの防止をどういうふうに世界的にするかという枠組み、そしてこのシステム。実は、大臣、調べていただくとわかると思いますが、国連の第六委員会では、例えば、テロリストが核を持つことに対する、防止しようじゃないかという案をロシアなんかは出しているんです。ところが、こういう事態を想定していなかったから、はっきり言うと、国連ではこういう決議は比較的たなざらしをしているケースが実は多いんです。ですから、こういうことをできるだけ早く日本がリーダーシップをとって、やはり枠組みづくりに頑張っていくということです。これは、普遍的な努力としてテロリストを放置させない、そういう努力を外交的にやること。

 そしてもう一つは、やはりこの緊急事態、着々と進んでいるアメリカの、ノーブルイーグル作戦というふうにアメリカは名づけているようですが、こういう事態に対して我が国はどうするのか、これはまさに近々の問題であります。このことについて、しっかりと政府として見解を出してもらいたい。現行法の枠内でということを何度も言っていますが、それだけではやはりわからない。何を本当にできるんだろうか。我々も真剣に考えますから、ぜひそれも次の国会までにはより具体的にやはり出していただきたいと思います。

 そして、もう一つ大きな問題は、戦後五十六年間、日本はこうやって生きてきたわけです。つまり、日本が国際社会の中でどう生きるべきかという大きな問題が今度のことで皆さんに投げかけられたんだと私は思っているんです。このことについても、やはり外務大臣でいらっしゃいますから、しっかりとした定見を持ってやってもらわないと困ります。このままいくのか、集団的自衛権の問題もまさにそうです。

 最後にもう一つ挙げれば、外務省改革です。国民の皆さんは不信感を持っているんですから。だから、私は一つだけ提案しますと、今度の国会で、大臣どうですか、我々外務委員会で視察に行ったときに、ロシアでこう言われました。ロシアで、大臣、大使の任命それから罷免権は国会の外務委員会が持っているそうです。つまり、各国に派遣されている大使は認証官ではあるけれども、どこかでそういう仕組みをしっかりつくって、国会なら国会が直接大使を任命したり罷免できる権限を有するような、そういう外に見える思い切った内部改革をやはり私はやるべきだと思いますよ。(発言する者あり)アメリカもやっているそうでございます。

 だから、そういうことにぜひリーダーシップを発揮してください。司法当局だけがリーダーシップを発揮して、実際何をやっているのかというふうに私なんかは不信感を持っていますので、そのことを申し上げまして、質疑者をかわらせていただきます。ありがとうございました。

土肥委員長 次に、首藤信彦君。

首藤委員 民主党の首藤信彦です。

 最近起こりましたアメリカにおける同時多発テロ、それについて質問させていただきます。

 まず最初に、このテロによって亡くなられた方、そして今でも行方不明になっておられる方に心からの哀悼の意を表したいと思います。

 私自身テロリズムの問題は二十数年間ずっと研究してまいりましたが、このテロリズムは、その対象が文明や現代社会である、あるいはその規模が非常に大きく、グローバルな展開を見せている、高度な技術も持っている、そしてまた想像を絶する多数の犠牲者と大きな被害を生み出したという点において、まさに新次元テロリズムであるというふうに言ってもおかしくはないと思います。

 そして、こういう事態において、我が国の置かれる立場は極めて厳しく、そしてまた、私たちこの社会がずっと五十数年にわたって維持してきた日本の安全保障システム、これに関しても非常に大きなインパクトがあるということは、最近の議論の中からでも明らかだと思います。

 私は、会期前のこの時期において外務委員会が開かれ、そしてこの問題に関して集中的に討議ができるということを、一議員として、国民を代表する議員として大変うれしく思います。

 先ほど、その中においても、日本の存亡をかけたこの時期において、委員会報告が三十分にわたって行われ、それほどアフリカを愛する人がいるのかと思い、私自身、またそういう方に大変敬意を払うものです。

 しかし今、日本は本当に危機のふちに立っている。この対応を間違えれば、私たちが五十数年間にわたってつくり上げてきた日本の安全保障システム、そして平和の哲学というものが一瞬にして崩れていくかもしれない、そういうような状況において、この問題について質問させていただきます。

 このテロが発生したときにブッシュ大統領はこれを何と表現したか。これをワー、戦争として表現しました。これは新しい戦争である、このように表現しました。

 そこで、お聞きいたします。田中大臣、これは戦争として把握されますか、あるいはまた、ブッシュ大統領のその定義についてどうお考えでしょうか。

田中国務大臣 ブッシュ大統領は、戦争という言葉を法的な意味で用いられたのではないと思いますね。むしろ、テロという卑劣な行為に対して断固として戦うという御自分の強い決意を示したものであって、言ってみれば、米国内すべてのエネルギーを収れんしていくといいますか、駆り立てるといいますか、集約するといいますか、そういうことのために使われたと。

 要するに、断固としてテロは許さないという強い意思を表明されたものであるというふうに私は認識しております、理解しております。

首藤委員 私は、その認識は多少違うのではないかと思うのですね。というのは、アメリカ大統領というのは、一般の議員でもなければ一般市民でもない。要するに、アメリカの最高意思を持って、そしてまた軍の最高司令官でもある、そういう方が簡単に戦争という言葉を口にすることは、日常でもなかなかありません。

 ちなみに、クリントン前大統領は、任期期間の間ほとんどワー、戦争という言葉を使わなかった。ワーという言葉が熟語の中に入っていても、わざわざその言葉を抜いてコンフリクトと言いかえたわけです。

 そういうことを考えますと、ブッシュ大統領が戦争とみずから言ってきていることは、そしてテレビの前で何度も何度も言っていることは、そしてそのみずからの行おうとする行動についてそれをワーと表現している、戦争と表現していることは、単なる自分の思い込みだけではなく、それは当然のことながら戦争としての定義を言っているんだと思いますけれども、それに関してはいかがですか。

田中国務大臣 先ほど申し上げたことにつけ加えますけれども、ブッシュ大統領が述べたとおり、この今の本件ですけれども、これは一つの措置で、一つの措置だけで解決できるものではなくて、長期的な作戦になるというふうにとらえていらっしゃるわけです。そして、その意味では、我々はこれを戦争と称しているわけですけれども、厳密には、先ほど申しましたように、法的な意味での戦争というものではないと思います。

首藤委員 ただいま法的な意味での戦争とおっしゃいましたけれども、どういう法的な意味でしょうか。

田中国務大臣 パウエル長官が十三日の会見で発言なさっておりますけれども、このパウエル長官の言葉は、自分が戦争と言うのは、そしてまたブッシュ大統領が戦争と言うのはというふうに引用しておっしゃっているんですけれども、この種の行為に対して、米国及び国際社会のエネルギーを駆り立てるためにである、戦争は軍事的な措置であることもあるけれども、経済的な措置、政治的な措置、外交上の措置、いや、財政上の措置も伴うこともある、すべての種類の措置が作戦を遂行する、戦争を遂行するために使用することができる、我々は、テロリズムや特定の組織を追及するために、現在行っているような連帯を構築しながら、あらゆる手段、武器を使っていく、かようにおっしゃっておられます。

首藤委員 ただいまのパウエルさんの説明というのは、それはそれなりの意味を持っているわけですけれども、現実にアメリカが、そしてブッシュ大統領がやろうとしていることは、現実に艦艇を派遣し、そして横須賀でも巡航ミサイルを積み込み、そして、期限を切って、もしタリバンがこの犯人と目される人物を受け渡さなければ、一定の期限を切って、それに対して攻撃を行うというようなことを言っております。ということは、単に作戦を考えている、あるいは外交的な圧力をかけていくんじゃなくて、一定の期限を切って実力行使に踏み切るということを言っております。これは戦争以外の何物でもないと思いますが、いかがですか。

田中国務大臣 今現在、アメリカがどのような措置をとられるかということは、まだ何も決まってもおりません。したがって、今の段階では、何ともお答えいたしかねます。

首藤委員 今、アメリカで措置が決まっていないということをお聞きしましたけれども、それはどういう根拠に基づいておっしゃっておられるんでしょうか。

田中国務大臣 先ほど来申し上げましたけれども、パウエル長官の御発言の中で、本件は一つの措置で解決するものではなく、長期的な作戦となる、その意味で、我々はこれを戦争と称している、厳密に法的な意味での戦争ではないとおっしゃっておられます。

首藤委員 現実に武装を使ってそれを実行するということは戦争以外の何物でもない、そういうふうに思うんですけれども。

 私たちは、十年前に湾岸戦争というのを体験しました。この湾岸戦争において、宣戦布告は行われたでしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。

田中国務大臣 宣戦布告というよりも、国連の決議に基づいて行われたというふうに承知しております。

首藤委員 これは仮定の話ですが、もしアメリカが実力行使に踏み切るときに、これは、当然のことながら武力行使を伴います、犠牲も伴います、大規模な軍隊を動かしています、そして、真っ先にアメリカの軍隊が駆けつけています。そうした状況から、アメリカが戦火を交えるというときには、当然宣言を行わなきゃいけない。その場合の戦争の宣言は、一体だれがすることになっていますか、外務大臣。

田中国務大臣 繰り返しになりますけれども、やはり国家間の戦争、まあ戦争の定義とは何かということになると思うのですけれども、やはり前回も国連決議に基づいて行われております。

首藤委員 ということは、国連決議がなければ実力行使はないということですね。

田中国務大臣 この間の国連決議でございますけれども、国連憲章に基づく自衛権が各国固有の権利であるということが改めて言及されております。そして、その意味で、今般の同時多発テロ事件に対応して、米国等が個別的または集団的な自衛権を行使することを確認したものであるというふうに考えられます。

首藤委員 今おっしゃったことは、国連憲章第五十一条に書かれていることですが、五十一条に基づいて戦闘行為を行った場合、当然のことながら、ブッシュ大統領には、今度は戦争権限法の規定がかかわってくることになります。その関係はいかがですか。

田中国務大臣 アメリカの武力行使につきましては、今現在わかっておりませんので、仮定の議論に入るわけにはまいりません。

首藤委員 一体私たちはここへ何しに来ているのですかね。アメリカが何も決めていないということを聞きに来ているのでしょうか。そうではありません。私たちが今まさにがけっ縁に立って、間違えればがけに沈むかもしれない、そういう状況において、私たちの目前に控えているものは一体何なのか、それに対して我々はどう対応しなければいけないのか、法律に問題があれば、どういうふうに変えていかなければいけないのか、守るべき基本的なルールがあれば、どう守らなければいけないのか。それを私たちは考えなければいけない。これは、まさに日本の存亡のときなんです。それをアメリカだとか仮定の話だけでは、これは済まされないことだと思います。

 ですから、あくまでも、この戦争というものは、戦争宣言が行われるかどうか、だれが行うのか、議会が行うのか、大統領が行うのか、そして国連憲章五十一条に基づいて行われるのか、そして、行われたときには、アメリカで七三年に成立した戦争権限法によって大統領の行為が規制されるのか、そのところをきちっとお答え願いたい。

田中国務大臣 繰り返しになって恐縮でございますけれども、あらゆることを憲法の範囲内で検討はいたしておりますけれども、今、仮定の話について、ましてや武力行使についてはお答えすることはできません。

首藤委員 私は、日本の対応を言っているのではないのです。日本の対応を決めるために、まずアメリカはどうしているのか、どういう段階にあるのか、どういう形で本当に武力行使に入っていくのか、そこの状況を、ここは外務省です、外務大臣、あなたに聞いているのです。いかがですか。

田中国務大臣 アメリカがどのような対応をするかについて、私どもは評価等をする立場にはございません。

首藤委員 それはちょっと、私ははっきり言って驚いた。アメリカ、我々は少なくとも同盟国です。アメリカが間違った方向に行くのなら私たちはそれに対して間違っていますよということを言わなきゃいけない。アメリカが全く違うことを言っているならば、私どももそれを批判しなければいけない。アメリカのそうした政策に対してコメントする気持ちがないというのは、同盟国としても全くおかしなことだと言わざるを得ません。残念なことに、これを繰り返していればもう同じ回答しか返ってこないことは明らかなので、次の質問に移りたいと思います。

 今、アメリカが軍事行動を起こすかもしれない、アフガニスタンに軍事行動を起こすかもしれない。それはなぜですか、外務大臣。

土肥委員長 ちょっと、もう一遍言ってください。

首藤委員 簡単に言います。わかりやすいように言います。

 このテロの実行犯はウサマ・ビンラーディンという人だと言われています。この人を、けさのニュースで見ると、ブッシュ大統領は、デッド・オア・アライブ、生きていようが死んでいようがともかくウオンテッドだ、指名手配だ、こういうことで今軍事的な展開をどんどんどんどん積み上げているわけですね。

 そこで、ではこのウサマ・ビンラーディン、この人を、本当に軍事展開をして、これだけのお金をかけて、そして、この人間が生きていようが死んでいようが捕まえる、こういうことを言っている根拠は一体どこにありますか。いかがですか、外務大臣。

田中国務大臣 それは私どもがお答えする立場ではないわけでございまして、アメリカが現在捜査をしている、継続している段階であるということでございます。

首藤委員 これは同盟関係なんですよ。これは日米安保といって、悪い人が攻めてきたら、場合によっては一緒に戦うかもしれない。その人がなぜこんな軍事展開をしているかもわからない、アメリカがやっているからうちは知らない。それでどうして、後方支援しようとか、物資を送ろうとか、何か人道的支援も何とかできるのではないか、そんなことをどうして我々は考えなきゃいけないんですか。何をするかもわからない。それだったら、一体どういうふうに対応すればいいんですか。いかがですか。きちっと言ってください。ここのところが一番重要な点ですから。

田中国務大臣 ブッシュ大統領はホワイトハウスで、十六日だと思いますけれども、記者に対しまして、ウサマ・ビンラーディンが主要な容疑者であるという旨答えている。これは今先生がおっしゃったとおりですけれども、でも、このことについては現在アメリカ側が捜査を継続しているところでございますから、関連情報についてお答えするということは、機微にわたりますので、現在は差し控えさせていただくということを申しておりまして、日米が同盟関係にあるということを否定しているわけでも何でもございません。

首藤委員 それなら結構です。

 それでは、お聞きしたいんですが、結局、そのビンラーディンさん、こういう、さんと言うと、何か犯人をさんで言うというのはおかしいなんと言う人もいますけれども、まだこの人が犯人だという確証はどこにもない。この人が犯人であるかどうかというのは、では、どうやって確定するんですか。逆に言えば、この人が国連において、国際社会において犯人であると特定できないとアメリカは一切行動を起こしていけないということになりますが、いかがですか。

田中国務大臣 その質問は、現在まさしく捜査を行っているアメリカにお聞きいただかねばならないというふうに思います。

首藤委員 ありがとうございます。

 では、アメリカがそれを決定し、それを国際社会で認めたとき初めて私たちの日本社会も対応できるということですね、外務大臣。

田中国務大臣 ですから、先ほど来ほかの方の質問にもお答えしておりますけれども、アメリカとは緊密に連絡をとり合っております。

首藤委員 精神論は結構ですが、時間がだんだんなくなっていくので、次の質問をさせていただきたい。

 そういう、ある意味でまだ明確でない、テレビでは毎日毎日、ウサマ・ビンラーディン、ウサマ・ビンラーディン、タリバン、こういうふうにどんどんどんどん言っていて、さらにその背後にある国家のことまでいろいろなうわさが出ています。それに基づいて、いろいろやらなきゃいけない、日本もいろいろ解釈を変えなきゃいけない、憲法の解釈も変えなきゃいけない、あるいは周辺事態法も変えなきゃいけない、新しい新法をつくらなきゃいけない、自衛隊も体制を変えていかなきゃいけない、そういう議論がどんどんどんどん行われている。大変奇異なことだと言わざるを得ません。まだアメリカが捜査してどうなるかもわからないということに我々は一生懸命、一生懸命対応している、この不思議さを私は指摘して、次の点に移りたいわけです。

 そういう不思議な状況において、ブッシュ大統領は事件後すぐ、復讐する、報復するということを言っております。そして、それに対して小泉総理は、アメリカの立場を理解し、それを支持すると言っておられますが、ということは、アメリカの報復、まさに日本はそれを支持し加担するということを意味しているんでしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。

田中国務大臣 その前に、先ほどの緊密にアメリカと連絡をとり合っているということは、別に精神論だけではありませんということをちょっと申し上げさせていただきます。

 それで、小泉総理でございますけれども、今般のテロが自由とか平和あるいは私たちが信奉している民主主義に対する挑戦であるというブッシュ大統領の危機意識を自分で共有して、私たちがみんなで共有した上で、アメリカが断固としてテロには立ち向かうんだという姿勢に対しまして、私たちも、日米、先ほど来先生がおっしゃっている同盟国としてこれを支持し、そして必要な支援と協力を惜しまないということを言っているわけでございますから、私たちも、このようなテロとかそういう行為について決して認めているわけではなくて、むしろ強い憤りを持っていますし、断じてこうしたことが起こってはならないというふうに思っておりますので、ですから、そういう私たちの意思というものは相互確認してあるということを申し上げさせていただきます。

首藤委員 テロに対して憤りを持っているのは、それは多くの人が持っているわけで、当然であります。そういう精神論を超えた調整が行われているなら、それをぜひこの外務委員会で明らかにしていただきたい。外務大臣、いかがですか。――じゃ、いいです。もう一回説明します。

田中国務大臣 いや、わかります。なかなか哲学的で、精神論を超えたという、精神論ももちろん大事ですけれども、現実に捜索がアメリカで行われておりますので、それをまず尊重しなければならないということはまず基本にあると存じます。

首藤委員 精神論を超えたというところがどういうことかというと、軍事的な活動をするときは細かくいろいろなものを打ち合わせしなければいけないんです。ですから、ブッシュ大統領はこれからイギリスの首相とも会い、それからフランスとも会い、細かいことを決めていかなければいけない、今はそういう段階にあるわけですね。

 そういう段階にあるのに、日本は何か、打ち合わせをしている、アメリカが捜査している。これでは、軍というものは、ディプロイメントといいまして、これは人を動員してそれを配置しなきゃいけないんです。物すごい時間がかかるんです。ですから、今の時点でわかっていることをしっかり把握して、そして対応を考えなければいけない。日本が行動を起こすとしたら、この事件の事実は何ですか、そして犯人はだれですか、そしてそれに対してどういう行動が必要ですか。犯人が例えばニューヨークに住んでいる住人だったら、それは警察でいい。犯人がもしどこかほかの国にいるんだったら、そこへ軍隊を送るかもしれない。

 一体どこまで日本は把握し、それに対して日本に対応を迫っているんですか。いかがですか。

田中国務大臣 とにかく緊密に連絡はとり合っておりますけれども、機微にわたる問題もございますので、ただいま現在申し上げられないということを申しております。

首藤委員 機微に関係するような微妙な問題を聞いているんではないんです。最も基本的な、一体だれにこのテロリズムは責任があるのかという根本的なことを聞いているんです。アメリカの部隊がどれだけあるかとか、軍事機密に関することを聞いているんではないんです。私たちの対応を迫っているこの事件の本質は何か、どういうグループがこの犯行をしたのか、そして、それはどこにいて、だからそこに人を送って、そのためには日本がどういうことをしなければいけないか、これを聞いているんです。いかがですか。

田中国務大臣 ですから、何度も申し上げていますが、このことは現在アメリカが捜査をなさっているわけでございまして、そして私たちも緊密に連絡をとっているということを申し上げております。

首藤委員 先ほどおっしゃっているのは、それはアメリカが捜査するんですけれども、やはり我々は国際社会として対応する、したがって国連が認定するわけですね。ですから、国連ではこの問題はどのように伝えられ、どのように対応が進められていますか。いかがですか。

田中国務大臣 それでは、この間、安保理で決議があったわけでございますけれども、先ほどほかの委員から御説明のあった一三六八号でございますけれども、この決議におきまして、国連加盟国が国連憲章に従って個別的または集団的自衛権の固有の権利を有していることを認識する、そして今回のテロ攻撃を強く非難し、そのような行為は国際の平和及び安全に対する脅威であると認め、テロ行為の実行者及び支援者等の処罰並びにテロ行為の防止、抑圧のための国際社会の努力を認めるとともに、テロと戦うため安保理としてあらゆる必要な手順をとる用意があるということを表明いたしております。

首藤委員 もう時間がないので質問に答えていただくように指導していただきたいんですが、国連ではどの程度犯人を特定し、それに対して行動を起こそうとしていますか。

田中国務大臣 国連というところは犯人を特定するところではございません。

首藤委員 そうすると、アメリカが特定したところに基づいて国連がそれを決議するということだと理解します。

 それでは、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 一方、アメリカは、日本に対していろいろなことを要求しています。いろいろな意見が聞かれてきます。そして、最近いろいろ言われていることには、例えば先ほどおっしゃったベーカー駐日大使という方がおられるわけですが、ベーカーさんは、日本には湾岸戦争のときのような資金提供は要らない、こういうふうに発言されたと聞いておりますが、いかがですか、外務大臣。

田中国務大臣 ベーカーさんとのやりとりの中ではそういうことは話しておりませんで、要するに、冒頭、この委員会のときにも申し上げましたけれども、犠牲者や被害者に対する私どもからの心からのお悔やみ、お見舞いに対して答礼の言葉をおっしゃいまして、そして、私たちが信奉する自由そして民主の社会に対するこうした攻撃、アタックに対して、私たちはやはり難事のときにはともに一緒に協力をし合っていきましょうということを確認いたしましたのであって、今おっしゃるようなことについて具体的には話はいたしておりません。

首藤委員 ベーカー大使は日本に対して資金提供は求めないということがかなり言われているわけですが、では、それは外務大臣に言われなかったら、一体どなたにそれは伝えられているんですか。

田中国務大臣 どこでおっしゃっているか知りませんが、私との話し合いは、今申し上げたことでございます。

首藤委員 結構でございます。

 同じように、では、自衛隊の派遣を依頼したということがニュース報道でなされております。それに関しては何か聞いておられますでしょうか。

田中国務大臣 それもございません。

首藤委員 結構でございます。

 あくまでも仮定の話ですが、犯人が特定される、犯人が特定されるに対して同盟国であるアメリカは行動を起こす。そして、日本に対して、自衛隊の派遣でなくても、いろいろなことを要求してくるかもしれないし、同盟国の義務として我々もいろいろなことをしなければいけない。そういうふうな状況もあるでしょう。そういうものに関して、一体、現行法でどのような対応が可能ですか。例えば周辺事態法ではいかがですか。この問題に関して、例えばアフガニスタンに兵を送るというようなことに関して、現行法ではこの地域は適用されるでしょうか。いかがでしょうか。

田中国務大臣 日本は、アメリカの同盟国といたしまして、アメリカの姿勢を強く支持しておりまして、そして、現行法の範囲内で必要な支援とか協力を行うということでございます。そして、その中身につきましても、あらゆる角度から現在検討中であります。

首藤委員 私が聞いているのは、その現行法の範囲の中身を聞いているんです。それは当たり前じゃないですか。憲法に従って、現行法に従って、当たり前じゃないですか。犯罪を犯してやっているんじゃないんです。

 ですから、現行法はどこを範囲としているのか、どこをスコープとしているのか、それがわからないといけないので、例えば周辺事態法でいえば、どこまでを範囲として考えて、これが適用できるのかどうかはどのように考えられるかはおっしゃっていただきたい。

田中国務大臣 何度も申し上げていますように、まだアメリカがどのような行動をとるかということははっきりしていないわけですけれども、アメリカの政府がどのような行動をとるかが明らかでないことにかんがみまして、基本的には、仮定の議論には立ち入ることはできません。

 しかし、いずれにいたしましても、ある事態が周辺事態に該当するか否かについては、あくまでもその事態の規模でありますとか様態等を総合的に勘案して判断していかねばならないというふうに考えております。

首藤委員 今の外務大臣のお話だと、結局、アメリカがここですよ、ここを攻めますよと言うまでは、何も我々は対応が考えられないということになりますが、それでよろしいんですか、外務大臣。

田中国務大臣 あらゆるケースを想定しながら、自主的に今判断をいたしております。

首藤委員 これはもう一度言いますけれども、外務委員会で、これは我が国の将来の存亡がかかっています。細かいことも含めて、一体どうすべきか。これは、外務省だけではなくて、国民から選ばれている我々一人一人が、議員の一人一人が国民から負託されている問題なんです。それを、今まだ決まっていないとか、まだ打ち合わせ中だとか、仮定の話だというのであれば、我々は国民の代表として何もすることがないじゃないですか。外務委員会の意味がないじゃないですか。外務大臣、いかがですか。

田中国務大臣 繰り返しになって大変恐縮でございますけれども、やはり日本国の憲法の範囲内で必要な支援とか協力は惜しまないという決意でございますし、関係国とも一緒に断固たる決意で立ち向かおうとしております。

 そして今、あらゆる角度から現在検討中でございまして、今お尋ねがあるからといって、即右から左にお答えをするということはいたしかねるということを申し上げております。

首藤委員 それは、憲法の範囲内でやるのは当たり前で、憲法違反を犯してはいけないですよ、政府は。

 重要なことは、周辺事態法といって、周辺というのはどこだと。これは地理的な範囲ではない、概念的なものだ、いろいろな説があります。しかし、実際に、今本当に行動して、我々が準備しなければいけない、準備をするには物すごい時間がかかるんです。ですから、一体この周辺事態法というのはどこまでをその範囲としているのか、それぐらい言えるでしょう。あるいは全然違うか。もう既に官房長官はいろいろおっしゃっているではないですか。どうして外務大臣がみずからの口でそのことが言えないんですか。

田中国務大臣 周辺事態についていろいろとかつて議論があったことも承知いたしておりますけれども、現在は、私たちは、我が国の憲法の範囲内で必要な支援と協力が何ができるかということについて、あらゆる角度から検討をしていると申し上げております。

首藤委員 私は、これが外務委員会の発言であるということを非常に残念に思います。それをよく皆さんも後で考えていただきたいと思います。

 では、例えば国際平和協力法というのがあります。これはやはり、戦争だけではなくて平和をつくるために、一度軍が入ったところにも、その荒れたところをもう一度平和を再建しなきゃいけない、そういう意味でも非常に重要な法律であり、また、我が国もこれにおいてはいろいろな貢献をしてきました。

 しかし、この問題に関しては、例えば停戦の合意であるとか受け入れの合意であるとか、中立性とか国連の認定とか、さまざまなハードルがあります。これは果たして、この今アメリカが主導しているものに適用できるとお思いですか。外務大臣、いかがですか。

田中国務大臣 繰り返しでまことに恐縮でございますけれども、仮定の問題にはお答えできません。

 なぜならば、アメリカがどういうようなアクションをとろうとしているのか、今現在何もわかっておりませんので、仮定の質問にはお答えできないと申し上げざるを得ません。

首藤委員 外務大臣、未来はすべて仮定なんですよ。そして、未来というのはどんどん迫ってくるんですよ。ですから、未来に関して我々は、幾つかのシナリオを考えて、それに対応しなければいけない。

 もし、いろいろな、部隊を送ったり後方支援をしたり、それにだって、もう何カ月も何カ月も準備しなければいけない。あのアメリカでも、即戦力を持っているアメリカでも、陸上兵力を送るには三カ月も四カ月もかかります。半年もかかるかもしれない。そういうふうな状況の中で、私たちも今準備をしなければ、当然そのことを、例えば、例えばの話ですよ、後方支援とか、それ以外のもっと平和貢献とかいろいろなことを、可能でも、何にもできないではないですか。

 それを、仮定の話として議論をしなかったら、外務委員会は全く意味がないし、外務大臣の価値がないじゃないですか。いかがですか、外務大臣。

田中国務大臣 あらゆることを想定して検討はいたしておりますけれども、今はお話を申し上げるわけにはいかないということを申し上げております。

首藤委員 これ以上その問題に関して質問してもむだだと思います。時間は本当に貴重です。日本に残された時間も、また余り多くない。そういうところで、私はできる限りいろいろなテーマについて触れたいと思っています。

 今、集団的自衛権の問題もあり、憲法への問題もあり、さまざまな問題があります。しかし、一方、神奈川県では、横須賀から、例えばイージス艦が、そこに積んであった巡航ミサイルをたくさん積みまして、二日ほど前に出ました。第二隻目もまた出ました。これはどこを向かって目指しているかはわかる。

 同じように、横須賀にはキティーホークという空母があります。そこの搭載機が厚木でNLP、ナイト・ランディング・プラクティスをやっております。御存じのとおり、これは、さまざまな論議を経て、これを実行するときには前もってその関係自治体に連絡が行っています。今回はどうですか。

田中国務大臣 NLPについてどう思うかと最後おっしゃったんですか。最後ちょろっと聞こえなくなるので、はっきり最後まで語尾を。

首藤委員 はっきり言います。よく聞いていてください。

 NLPに関しては、地域の住民から大変な反発があるので、実行するときには事前に通告があります。今回のキティーホーク搭載機に関しては、通告がございましたか。

田中国務大臣 アメリカ側によりますと、先週末以降の厚木飛行場におけます空母からの訓練でございますけれども、これは、NLPではなくて通常の飛行訓練であるというふうに知らされております。

 そして、NLP、ナイト・ランディング・プラクティスですけれども、これは、今般アメリカ側より通報されたように、九月二十日から二十六日まで硫黄島で七日間行われることになっております。

 繰り返しますが、厚木で行われたものは通常の飛行訓練であって、NLPではなかったということがアメリカ側から通告されてきております。

首藤委員 それは理解と違いますね。もう今千件も超える苦情が自治体に寄せられてきて、ともかく音がうるさくてしようがない、要するにタッチ・アンド・ゴーをやっているということなんですね。

 何を言わんとしているか。結局、通報のないままこれを行ったということは、これは、この空母がもしペルシャ湾の方に向かっていけば、それはその軍事作戦の一環であり、もう既に軍事作戦がこの厚木で始まったということを意味しているんですよ。通常のそうした離着陸の訓練ではなく、こういう特殊な訓練をやっているということは、もう既にこの作戦行動が厚木で始まっているということを意味しているんですが、それはいかがですか。

田中国務大臣 キティーホークの出港につきましては、米軍の運用上の問題でありますので、私どもは承知しておりません。

 一般論として申し上げますと、空母の出港前にNLPが行われるときには、通常、NLPの実施について米側、すなわち在日米軍の司令官ですけれども、司令部ですけれども、そちらから政府に、政府とは具体的には防衛施設庁のことですが、に対しまして通知がなされることになっております。それがルールでございます。

首藤委員 もう時間も大体なくなりました。

 私は、非常に残念というか悲しく思います。これが同盟国、日米同盟関係、日米安保の姿だろうか。日本がこれから大きな問題を抱え、場合によっては日本の今までの社会システムも安全保障システムも大きな影響を受けるかもしれない、そうした状況において、ほとんどアメリカとの間で密接な協議も、そしてその実態も明らかにされることもなくこのことがずるずると行われていくということに大変な危惧を持ち、この外務委員会において、大変悲しい思いをしているということをお伝えいたします。

 そして、最後に一つだけお聞きいたします。

 今回のテロで、私たちは本当に心を震撼させたことがあります。それは、今までのような小型機や小型のミサイルではなくてジャンボ機が施設に突入したときの恐ろしさです。これは普通の通常兵器よりもはるかに大きなダメージをその施設に与えることができる。

 何を言わんとしているかというと、今、例えば日本海、日本海側にはずっと原子力施設もたくさんあります。そして、それは日本の主権の向こう側にあるわけですね。ですから、日本だけだったら当然その対策というのは搭乗手続を厳しくしてできるかもしれない。しかし、これはアジア全域と密接な関係を組んで対策を講じなければいけない。

 そのようなアジア全体でのテロ防止策を今始めておられるでしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。

田中国務大臣 おっしゃるテロの防止につきましては、アジアだけではなくて諸外国と緊密に連絡をとってまいりたく存じます。

首藤委員 それでは終わりますが、私は、これはコメントというか意見としてお伝えしますが、こういったアジアにおけるテロの防止策、こういったものにこそ日本はリーダーシップをとって、そして真剣に取り組んでもらいたい、それこそがアジアにおける、そして世界に対する貢献する道の一つである、そういうふうに確信しております。

 以上で終わります。

土肥委員長 次に、木下厚君。

木下委員 民主党の木下でございます。

 時間がございませんので、今回の同時多発テロ事件について一、二点だけお伺いして、その後、違う質問に移らせていただきます。

 今、首藤委員のお話の中でありましたが、今回の事件が本当に一部過激派によるテロなのか、それとも、例えば宗教的な対立あるいはアメリカの中東和平に対する反発なのか、この辺を外務省としてはどのように分析されておられますか。

田中国務大臣 現在いろいろな見方があるということは承知いたしておりますけれども、最終的にはアメリカの捜査の結論を待ちたいというふうに思います。

木下委員 もし宗教対立あるいは中東の和平に対する反発ということであれば、我が国の果たす役割はあるはずです。これはもちろん今回のテロに対して断固たる処置を我々も協力するというのはやぶさかでない。しかし、もしそういった宗教対立あるいは中東和平に対する反発があるとすれば、これはなかなかせん滅できる問題ではない。そういう意味では、我が国の中東政策、これが今後非常に重要になってくると思うのですが、今回の事件を契機に何らかの中東政策を具体的に考えておられますか。

田中国務大臣 委員おっしゃるように、本当に中東和平に対して日本がコミットすべき問題というのは大変多いというふうに思います。

 G8のローマでの会議でも、最初にどこの国も口火を切ったのが中東和平問題をどうするかということでございました。私が着任しましてからも数回ペレス外務大臣から、一番直近はこのテロの何週間前でしたか、ちょっと日にちは失念しましたが、とにかく電話はかかってまいりますので、本当に中東和平のために日本がどれだけのことができるかということは真剣に受けとめておりますし、日本が果たすべき役割は極めて大きいというふうに感じております。

 今回のことが、アメリカにおけるこの事件が、ただでさえ困難に直面している中東和平の解決に悪い影響を与えると困るなということは感じてきております。

 重要外交課題として中東和平も取り組んでおりますので、私も電話がかかってきたときは対応し、こちらからも書簡も発出いたしております。ですから、今後とも積極的に、日本が地政学上遠いとかということではなくて、積極的に役割を果たしていくべき外交課題の一つに私はこの中東和平を挙げております。

木下委員 まだ聞きたいこともありますが、次の問題に移ります。

 小泉首相の靖国神社参拝についてお尋ねしたいんですが、日本国内でも賛否両論があった、あるいは中国、韓国を初め東南アジアからも反発があった中で、八月十三日、小泉さんが靖国神社を参拝された。これについて、実は田中大臣は七月末のハノイでの日中、日韓外相会談で、首相というポストの人がなぜあえて行くのか、行かないでいただきたいと述べたほか、政教分離を定めた憲法二十条の問題もある、私的だ公的だなどと分けるというこそくな手段を使わないでいただきたい、こう述べておられます。

 しかし、実際に小泉さんが靖国神社を参拝した後は、これは憲法に違反していないというようなことを記者会見で発表されておりますが、改めて、小泉さんの靖国参拝についての御見解を、どう判断されているのか、お伺いしたいと思います。

田中国務大臣 ハノイで確かにその取材に応じましたときは、まだその参拝が起こっておりませんで、もし小泉総理が八月十五日ですかに参拝をしたらどうかというふうな問題についてのお尋ねでございました。

 その中で、私は、トウカセンさんに対しましても、こちらの総理の日ごろ国内でおっしゃっていることについて十二分に説明もいたしましたし、また、中国側また韓国側の意見というものも総理には持ち帰って報告をしてございます。

 その結果、もう皆様十二分に御存じのとおり、虚心坦懐に総理が熟慮に熟慮を重ねられた結果、八月の十三日に参拝をなさったわけでございますけれども、私は、その結果、現在日本と韓国、中国等近隣の国家との関係が少しよくなくなってきているということは実感として感じておりますけれども、しかし、総理も、できるだけ早い機会にひざを交えてこういう国々の首脳と話をしたい、自分の真意をわかってほしい、その努力をするとおっしゃっておられますので、そのためにも、あらゆる機会をとらえて私は身を粉にして外交努力もしたいと思っております。

 それから、それをどう思うかとおっしゃいますけれども、公的参拝と私的参拝ということについては、もう御存じだと思いますけれども、玉ぐしを奉奠するとか、それから、二礼二拍手一礼ですか、そういうふうなことをするとか、いわゆる公式参拝のための三つの条件というのがあると思うんですけれども、これを総理はなさっていないわけでございます。したがいまして、今回の総理の参拝というものは公式のものではなかったということになりますので、私がハノイで言ったこととは違ったことが起こったということは申し上げさせていただきます。

木下委員 いや、大臣は、公的か私的かは関係ないと言っているわけですね。参拝がどういう形であろうと、やはり公的であるか私的であるか、そういうこそくな手段を使うなと言っているわけですから、その辺のところの見解をきちんとしていただきたい。

田中国務大臣 あのときは、本当に総理は非常に、何度も御本人のおっしゃっている言葉を引用させていただきますけれども、非常にいろいろな方の意見を聞いておられたと思います。そして、よく熟慮に熟慮を重ねた結果、御本人が、十三日の何時でございましたか、午後四時ごろ、三時でしたかに、さっき言ったような条件を満たさずに行かれたわけでございますから、私は、閣僚の一人として、総理のお気持ちを尊重し、なおかつまた近隣諸国といい関係をさらに持てるようにあらゆる努力をしていくことが、閣僚としての務めであるというふうに考えております。

木下委員 御承知のように、今、日中関係、今大臣がおっしゃったように、李登輝さんの訪日あるいは教科書問題あるいは農産品のセーフガード、それに対する中国側の関税報復、それに次いで靖国参拝という、非常に緊迫した、恐らく日中国交回復以来初めてと言われるほど最悪の関係になっているのではなかろうか。

 実は私、先般、日中友好議員連盟の一員として中国へ参りまして、江沢民国家主席と約一時間議論してまいりました。この中で、江沢民主席がこの問題についてかなり厳しい発言をされております。江沢民さんが何と言ったかといいますと、結ばれた鈴をとるには鈴を結んだ人がとるしかない、こうはっきりおっしゃっています。これは何かというと、歴史認識について、言葉だけ多くてもだめなんだ、要するに実際の行動で示してほしい、そういうことだと思うのです。

 今大臣おっしゃったように、いずれ小泉さんは訪中されると思うのですが、外務大臣として、小泉首相の訪中に対してどのような御見解、アドバイスをされるおつもりでございますか。

田中国務大臣 必ずしも小泉総理の真意が伝わっていない面もあるというふうに思いますので、できるだけそういう機会が、訪中なさるなりあるいは要人とお会いになる機会が、中国だけではなく、早く訪れることを望みますし、そのために、誤解がないように最善の努力を、あらゆるチャンネルを通じて努力をしていきたいというふうに思っております。

木下委員 時間がございませんので、外務省の不祥事についてお伺いします。

 一連の外務省の不祥事は、国民にとっては大変ショックな出来事だと思います。次々と出てくる不祥事はまさに氷山の一角。田中大臣は、就任以来、徹底調査をすると約束してこられました。これまで発覚した不祥事はいずれも、例えばマスコミ報道あるいは捜査当局による摘発、これでしか発覚していないわけですね。実際に外務省によってどの程度徹底調査されているのか、具体的にお示しいただきたいと思います。

小町政府参考人 お答えさせていただきます。

 ただいま委員御指摘の点につきましては、例えば九月六日に逮捕されました浅川元欧州局課長補佐の件につきまして外務省として内部調査を行いました結果、もちろん警察当局に全面的に協力はいたしましたけれども、その中で欧州青年日本研修招聘事業に関します公金横領の疑いがあることが判明いたしましたために、外務省としては、同補佐が逮捕されました六日に本件公金横領について警視庁に被害届を出したりしております。

木下委員 今の、国際会議などのホテル代を水増し請求して、約四億二千三百万円を搾取したとして浅川欧州局課長補佐らが詐欺容疑で警視庁に逮捕されましたが、いわゆるホテル代などの水増し請求で裏金としてプールしている金が各課にわたっている、新聞報道によれば、三十課以上にわたってホテル代だのを水増し請求した金がプールされているという報道があります。

 事実、野上次官もその事実を、金額は何千円から十万円の範囲内でとおっしゃっているようですが、どの程度把握されておるのか、あるいはまたプールしたお金について徹底調査しているのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。

小町政府参考人 お答えいたします。

 外務省の課や室がいわゆるホテル等に預かり金を設けていたとされる問題につきましては、内部で鋭意調査中でございまして、現在までに相当数の課室がいわゆる預かり金を設けていたことが判明しております。

 外務省といたしましては、この問題につきまして引き続き鋭意調査を進めまして、実態を把握した上で誠意ある対応を行っていきたいと思っております。

木下委員 それはいつまでに実態を調査して、もちろん公表していただけるわけですね。

小町政府参考人 今、我々の内部調査に加えまして、ホテル側からの協力も求めながら鋭意調査をやっておりまして、なるべく早く明らかにしたいと思っております。今一生懸命やっているところでございます。

木下委員 これはやはり期日をはっきりしてもらわないと、鋭意だけじゃこれはわかりません。大臣いかがですか。いつまでにきちんと明快な調査結果を発表していただけますか。

田中国務大臣 外務省改革のためにも、会計の面と人の面とありまして、部局会計の一元化ということも私も言っておりますので、早くに解明して、必ず御報告するようにいたします。

木下委員 既にわかっている部分で、例えば金額は、どの程度プールされているわけですか。それは明らかにしていただけませんか。現在わかっているだけで結構です。

小町政府参考人 九月六日に浅川課長補佐及びホテル側の方が逮捕されましたことに伴いまして、我々、今内部で調査をやっておりますけれども、ホテル側との突き合わせもやる必要がございまして、そこの点につきまして、情報入手、資料入手等に若干手間取っておりますので、今一生懸命やっておる段階でございますので、ぜひその点を御理解いただきたいと思います。

木下委員 実は、そのプールした裏金は、いわば逮捕された人たちだけじゃなくて、いわゆるキャリア官僚も、例えば無料で宿泊していたとか、あるいは送別会に使ったとか、あるいはゴルフ代に使ったとか、いろいろ指摘されていますが、なぜノンキャリアの官僚だけが逮捕されて、キャリア官僚の方が事件として発覚しないのか。その点、大臣、おかしいと思いませんか。キャリアにもきちんと調査されているのですか。

田中国務大臣 これはなかなか苦しい、悩ましいところで、事実解明に努めておりますけれども、私が使いましたと名乗り出るキャリアがいるわけもありませんし、大変厳しいところですけれども、もう一回ちょっと原点に返り、もちろん、ただ、プール金についてはホテルとの関係もありますので、今すぐ、向こうの方のことが出てこないとこちらが全部出てこないということもありますけれども、だれがどう使ったかみたいなことにつきましては、この組織、なかなか難しくて、もう少し知恵を出すように私どももいたしますが、また先生方からもアドバイスを……。

小町政府参考人 今御指摘の点につきましては、いろいろな報道がなされていることは十分承知しております。我々としても、報道が具体性を欠くために調査の対象を十分絞り切れておりませんけれども、念のため、当時のアジア太平洋経済協力大阪会議開催準備事務局及び欧州局関係者について調査を行っております。

木下委員 それぞれ各課でプールしている金、これは恐らく習慣でこうやってきたと思うのですが、いつごろからこういった習慣があったのか、それは把握できていますか。

小町政府参考人 今の点につきましては、かなり昔にそういう慣行があったということは認識しておりますけれども、いつごろからどうかということにつきましては、年月もたっておりまして、十分な御説明をできる状況ではございません。

木下委員 それではちょっと納得できないので、もしあれだったら、ホテルからのその資料についてぜひこの委員会に提出してもらいたい、そう要求しますが、大臣いかがですか。

小町政府参考人 先ほど御説明いたしましたように、浅川課長補佐とともにホテル側の方も逮捕されておりまして、その関係の書類も捜査当局によって押収されているところもございますので、その点もぜひ御理解いただきたいと思います。

木下委員 それでは、全部司法当局にお願いして、外務省としては何ら調べることはないんじゃないですか。独自に調べられるはずですけれども、何か対策はないんですか。こんなことで。

小町政府参考人 我々としては、我々内部の調査とあわせながら、ホテル側の協力を今なるべく得る努力をしておりまして、その過程でなるべく明らかにしていきたい、そう思っております。

木下委員 いや、恐らく外務省だけでは無理だと思いますので、ここはやはり第三者を入れて徹底的にうみを出す必要があると思うのですが、大臣、政治主導でやっていただけませんか。

田中国務大臣 第三者機関、第三者が必要であるという御指摘は全く正しいと私は思っておりまして、この査察制度について外部の有識者から意見を聞くということ、これをやっておりますし、それから同時に、この間、園部さんという前の最高裁の判事さんを、監察と査察両方をよくやっていただくために、外務省の参与としてお迎えをしたところでございます。九月一日に発令をしておりまして、それで、まず外部についてですけれども、在外につきましては、九月の末ぐらいから査察をまたモデルケースでやってみるということも考えておりますし、いずれにしましても、専門家、外部の方がこれは目を光らせないと、在外だけではなくて国内も、本省についてもなかなかうまくいかないと思いますので、これを機能させたいというふうに思います。

木下委員 大臣のその言葉、しっかり受けとめますので、ぜひともひとつ、第三者を入れて、徹底的にうみを出していただきたいと思います。

 それからもう一点、在オーストラリア大使館の元館員による公金流用疑惑をめぐり、ことし三月、外務省調査委員会のメンバーである卜部さん、アトランタ総領事が口どめ工作をしたとの報道があり、これに対して、田中外務大臣は再調査を約束されました。しかし、野上事務次官は再調査をする必要はないと述べておられますが、この件はその後どうなったんでしょうか。ぜひとも再調査をしていただきたい。大臣、いかがでしょうか。

田中国務大臣 これは当日のNHKの報道も、私は再調査という言葉は使っていないんですよ。再調査という言葉は使っていないということを、その日に私の抗議に対してNHKも認めていまして、アナウンサーの声でそういうことを言っていますが、私はその場でそういう言葉は使っておりません。ですから野上さんとの違いというものはないんですが、要するに、改めて、荒木副大臣ですか、前の河野大臣のときですね、荒木副大臣を長とする調査団が、何回ですか、三回ぐらいやっていますんでしょうか、これはもう絶対に間違いがないということで、そうでありましても、私はこれはさらに指示をいたしまして、この新しい内閣になりましてから杉浦副大臣にも再調査をお願いしておりまして、合計四回やっております。ですから、これは公表結果のとおりであるというふうに私は思っております。

木下委員 それから、一連の不祥事に対して、厳重注意とかあるいは訓告などの、いわゆる非常に国民から見たら生ぬるい処分、これではもう世論が恐らく納得しないと思うんですね。一連の犯罪で立件された金額、これはプールしたお金も含めて、実際使ったお金、こういったものを、流用した当事者だけが国庫に返還するのではなくて、今の一連のあれを見ますと、私は、個人的な犯罪ではなくてやはり省ぐるみの犯罪である、国民もみんなそう思っていると思うんです。

 そういう意味でいえば、やはり流用されたお金、これは松尾さんの件もそうです、これは場合によっては官房機密費であるかもしれない、向こうの問題と言われるかもしれませんが、やはり、流用した、そして使ったお金については全職員が一致して返す、国庫に返すという形でないと本当の意識改革はできない、そう私自身は思うのでございますが、大臣いかがでございますか。

田中国務大臣 以前も私記者会見等で、この先生のお尋ねについて、こうした質問についてお答えしていますけれども、今司直の手にゆだねられているような詐欺行為については、その本人が当然対応して弁済するべきものと思いますけれども、今おっしゃっているようなプール金については、これはもう長い間の悪弊であるというふうに思いますから、これは当の外務省員が弁済をしていくということはもう当然だというふうに思っています。

 それに付言いたしますと、それは外務省改革の中で、やはり予算の組み立ての中にも入ってくるのですが、やはりこのプール金、では何に使ったのかというと、やはり夜遅くのタクシー代とかお弁当代とか、悲しい話も結構出てきまして、宿泊も、深夜勤務になる、そうすると、やはりだれかが泊まる、だれが泊まったか、これは調べなければいけない、なかなか口を割らないかもしれませんが。

 いずれにしましても、やはり必要経費は前へ出していく。しっかりとやはり国民の皆さんが――こういう委員会があるからとか、何か緊急の今回のテロ事件があったときに、もうみんな寝ずに今働いていますよ、若い人たち。本当に一生懸命やっています。それを、私たちがいつも差し入れなんかしていますけれども、そうでなくても十二分に、寝泊まり、夜食、心配しなくていいような状態の予算をとる、それを計上するということは、国民の皆様からも御理解をいただけると思うのですね。そういうことが今まではなかったということも、私たちはやはり反省しなきゃいけないというふうに思っています。

 ですから、予算立ての中でもそういうことも考えながらやっておりますが、質問に返りますと、プール金については弁済を責任を持ってやる、それから、必要な場合は、これは幹部の方も言っておられますけれども、退官なさった方たちにも寄附を募るとか、当然そういうふうなことがあってしかるべきだというふうに思っております。

木下委員 大臣にもう一度お尋ねしますが、今まで一連の、これだけの事件が続いているわけですが、それぞれ個人的犯罪だと大臣はお考えですか、それとも、ある部分では省ぐるみの犯罪だとお考えですか。国民の皆さん、本当にその点を非常に関心を持って見ておりますが、大臣、お答えいただきたいと思います。

田中国務大臣 やはり、今回のテロが発生いたしました後一番喫緊の状態を見ていても、非常にあらゆる方たちが寝食を忘れてよく働いておられるのですよ。それは、外務省の不祥事があったからではなくて、過去、連綿と、やはり外交官そして皆様方がそういうことのために働いておられた。そういう方たちがいっぱいおられるという方たちを傷つけてはいけないし、今後また外交が萎縮することがあってもならないと思っています。

 しかし、松尾事件でありますとか、あるいはその他続いているものについては、やはり個人の事件であったかもしれないけれども、それを看過していたという外務省の体質には問題がある。それをしっかりと正していかないと、またぞろ同じことが起こると思いますよ。ですから、それを起こさないための制度づくりというものは責任を持ってやっていかなきゃいけない。

 完璧なものはできないかもしれません。皆様からおしかりも受けるかもしれませんけれども、そうした叱責をいただきながらも、やはり改革していく、意識を変えていくということをしなきゃいけない。そして、やはり外務省が再生していくということ、国民の皆様の負託にこたえられるような役所に再生するための最善の努力はしなければいけない。そのためには、情報も開示していかなければならないことはあるというふうに存じます。

木下委員 外務省では、来年度予算に計上する外交報償費について、今年度予算よりも四割削減し約三十三億四千万円とする方針のようですが、何をどのように削っていくのか、その具体的な中身についてちょっと明らかにしていただきたいと思うのですが。

小町政府参考人 委員お尋ねの件でございますけれども、来年度の概算要求におきまして、外務省の報償費は今年度比約四〇%減の三十三・四億円となっております。

 この四〇%減額のうち、おおむね二五%分につきましては、従来、報償費の定義、目的に沿って使用してきたもので、近年ある程度定型化、定例化しているものにつきまして、予算執行の整理の観点から内容を精査し、可能な場合には報償費以外の科目で具体的な事項を立てて予算計上するために活用したものでございます。

 これに加えまして、外務報償費の効率化、節約を図ることにより、さらにおおむね一五%程度の削減を行うこととしたものでございます。

 どんなものをあれしたかということに関しましては、レセプション経費あるいは総理の外国訪問等に要します経費を必要なものとして別途お願いしているというふうなことでございます。

木下委員 そうすると、いわば名目を変えて他に移す、実質的な外交機密費からの削減は一五%ということになるわけですね。

小町政府参考人 今委員お尋ねの件でございますけれども、今申し上げましたその二五%に加えまして、効率化、節約を図ることによって一五%減としております。この一五%という数字は、例えば今年度の概算要求基準、シーリングにおける一般政策経費全体の削減幅一〇%を上回るものとなっております。

木下委員 もう時間が来ましたので、最後に、日本の信頼、これを保つためには、やはり外交がしっかりしていなきゃいけない。そういう意味で、今回の外務省の一連の不祥事、これは大変、国民はもとより諸外国からも信頼を大きく失墜させた。何としても、一刻も早く根本から疑惑を解明して、本当に国民から信頼される外務省になっていただきたい。そのために、田中大臣、蛮勇を振るってやっていただきたい。何を言われようと思い切ってやっていただきたいな。まさに田中大臣の真価が外務省改革にあれされているわけですから、しっかりやっていただきたいとお願いして、終わりにさせていただきます。ありがとうございました。

土肥委員長 次に、藤島正之君。

藤島委員 自由党の藤島正之でございます。もう既にいろいろな質問が出たわけでございますので、一部ダブるかと思いますけれども、まず米国の同時多発テロの問題について質問させていただきたいと思います。

 その前に、小泉総理はよく、外交に弱いとか、極端に言うと外交音痴じゃないか、こういうふうに言われるわけですけれども、それをきちっと補佐するのが田中外務大臣の大きな役割だ、こう思うわけでありますが、外務大臣になられてから既にもう五カ月以上になるわけですけれども、田中外務大臣は、みずからこれを省みて、自分は自信を持って総理を外交問題で補佐してきた、こういうふうに言い切れますでしょうか。

田中国務大臣 若輩ではございますけれども、私なりに日々最善を尽くしているつもりでおります。

藤島委員 ところで、このテロのあった十一日の夜ですね、日本時間で。アメリカでいきますと朝九時ごろなんですけれども、田中外務大臣は、この夜どういうことをやっておられていたんでしょうか。

田中国務大臣 たしか十時ごろ、夜テレビを見ておりまして、十時のニュースだと思うんですけれども、それですぐ気がつきまして、役所からも秘書官から第一報が同時に入ってまいりまして、そして夜十時三十分に外務省で対策本部を立ち上げました。そして、領事移住部長ですとか官房長とか皆様と一緒に連絡をとり合いまして、役所に行き、そして総理公邸で総理等皆様と、対策本部が立ち上がっていましたので、そこで協議をいたしました。翌日の朝の二時半過ぎまで役所におりました。

藤島委員 初動としては、まあまあうまくやられたんだろうと思うんですけれども。

 ところで、私もテレビを見ておったわけですけれども、当日の夜、総理が記者会見をしないで、官房長官がメモのようなものを読むだけであったということなんです。これが、外交評論家の岡本行夫さんも言っておるんですけれども、米国にいる日本の友人が次々に言ってきたのは、日本の顔が見えない、ブレアもプーチンも江沢民もテレビに出てくるのに、日本の対応は全然ないというのでがっかりしたと、あの日はみんな朝三時、四時までテレビを見ていたので、そこで小泉総理が強いメッセージをやるべきではなかったか、こういうふうなことを言っておるわけですね。

 確かに小泉総理は、翌日、安保委員会が終わった後、みずから会見をしましたけれども、やはり私は、このタイミングの差、これは、目には見えないんですけれども大きな意味があるような感じがするんですね。

 その後、福田官房長官は十三日の会見で、別に電話を一刻も早くということではないと思いますよ、早さを競うようなものではない、こういうふうな認識ですね。これは、私はゆゆしき認識じゃないかと思うんですが、外務大臣はこの点について補佐をされたのかどうか、まあこんなものでいいんだというふうに外務大臣も考えていたのかどうか。

田中国務大臣 おっしゃるとおり、対外的なメッセージの発出というものは、フランス、イギリス、ドイツに比べておくれをとっていたというふうに思います。しかし、実態といたしまして、総理、官房長官が陣頭指揮をとられて、関係省庁がすぐに集まって非常に細かくいろいろな情報を集めながら分析をいたしておりましたので、結果の現象だけを見て、遅かったからということは当たらないというふうに思っております。

 ただ、今後、御指摘も踏まえながら心がけなければいけないと思っておりますが、情報分析とかあらゆる努力ということでは最善を尽くしていたというふうに私は思います。

藤島委員 内容として、そういうことをやられたことは非常に私もよかったと思うんですけれども、世界における日本の顔、これはやはり総理なんですね。やはりタイミングというのは非常に大事だと思うんですね。おくれをとると、幾ら中身がいいことがあってそれを公表しても、世界でそう相手にされなくなってしまうということなんで、危機管理上の大きな問題点だろうと私は指摘をしておきたい、こう思います。

 次に、それではアメリカに対する協力という点で何をやるかという点でございますけれども、外務大臣は十四日の閣僚懇談会で、現地では血液や電灯つきのヘルメットが不足しているそうだ、そういうところから協力できないかと。これはなかなか私はいいアイデアだと思うんですけれども、これについて、唐突なアイデアだったため、福田官房長官が、坂口厚生労働大臣と調整してみてはどうかとやんわり牽制した。これに対して小泉総理が、米国からそのような要請はない、小さな親切、大きなお世話にならないようにしてほしいと引き取り、それ以上会話は進まなかった。その後の記者会見で、田中外務大臣は、厚生労働大臣とすぐに連絡をとり合うことになっていると思うと既定路線のように語った。こういうふうに記事に出ているんですけれども、この事のてんまつはどういうふうになっておるんでしょうか。

田中国務大臣 その閣議のあった日にちの後、午後から予算委員会がございまして、それに先立ちまして厚生大臣からも声がかかりまして、自分の方にももちろんそういうふうなオファーが厚生省に来ておるけれども、今の段階では直接必要としてないというふうなアメリカ方の御意見もあるので、今はちょっとしばらくとどまっておきましょうという御意見がございました。それでその日は終わりました。

 その後、昨日、ベーカーさんが来られましたときに、さらに、私のアメリカの友人が言っています、例えばマスクが足りないとかグローブなんかいっぱいあってもいいんじゃないかとか、私が電話をかけましたときに。それから、あとは、瓦れきの処理でいろいろな方が大変疲れているということなので、何かそういうふうなお手伝いができるとか何かないのかというふうなことを私は直接ベーカー大使に伺いましたところ、御厚意は大変ありがたいんだけれども、自分たちはどこからも受け入れてない、自分の国内で、みんなが非常に自分たちを奮い立たせてやっている段階なので、お気持ちはありがたいということをおっしゃっておられました。ですから、それで、また何かがあれば、いつでもできることはいたしますということをお話しして、お別れいたしました。

藤島委員 私はこの件で、外務大臣と官邸の何かちょっとしたすき間というんですか、そんなふうなものを感じるところがあるものですからちょっと申し上げたわけであります。この件については、さっきの外務省の人事の問題も絡んで、どうも官邸と外務大臣の間でいろいろあったようでございますけれども、その辺のころから何となく外務大臣と官邸の間に溝ができつつあるような、そんな感じが感じられるものでありますから。

 次に、もう少し、我が国が何をできるのかという観点からでございますけれども、自民党のそれぞれの幹部の方、いろいろなことをおっしゃっていますね。例えば山崎拓幹事長は、集団的自衛権の問題はもうクリアしていこうじゃないかというようなことをおっしゃっている。野中元幹事長は、米国の行動への支持と支援とは別だというようなこと、あるいは加藤元幹事長も、憲法の範囲内で日本がやり得ることは余りないというようなこと、あるいは外務省の中にも慎重論が多いというようなことで、実はなかなか中身は定まらない、こういうことなんですが、先ほど来質疑を聞いておりまして、米国から何か言ってきているのかという点について、何かまだはっきりしていないんですけれども、全く何も言ってきていない、こういうふうに理解してよろしいんですか。

田中国務大臣 この間のパウエル長官の電話ですとか、それから昨日のベーカーさんにつきましては、その話の中では具体的にそういうふうなオファーはおっしゃってきておりませんけれども、緊密に協議をいたしております。

藤島委員 そういうふうに公式にはないということはわかりますけれども、事務的に何らか連絡があって、大臣のところに報告があったというようなこともないわけでしょうか。

田中国務大臣 あらゆることについて、あらゆる段階で緊密に今お互い連絡をとり合っておりますので、そごというふうなことも全然ございませんし、連絡をよくとり合ってはおります。

藤島委員 ということは、事務的にはいろいろ相談があるけれども、こういう場では明らかにできない、こういうふうに受け取ってよろしいわけですね。

田中国務大臣 大変デリケートな段階でデリケートな質問でございますので、勝手ですが、詳細につきましては答弁を控えさせていただきます。

藤島委員 詳細をということじゃなくて、ここが先ほど来の議論のポイントになっているわけですね。要するに、アメリカが何をするか、何を言ってくるか、まるで全くゼロ、その中で、日本が何をするか考えようにも考えようがないじゃないかという点が非常に議論のポイントだったと思うんです。

 したがって、内容を私はここで明らかにということではなくて、事務的なそういう何らかのいろいろな、仮定のケースでしかないと思うんですけれども、そういう話があったのかどうか、それは答弁できるんじゃないでしょうか。

田中国務大臣 ですから、パウエル長官との電話でも、昨日のベーカーさんも、お互いに今後緊密に連絡をとり合いましょうということをおっしゃっていますし、また、事務的にも、情報の交換といいますか、そういうふうなことはいたしております。

藤島委員 その件は、公式にはそういうことであることはわかるんですけれども、やはり、事務的に何らの事前の調整もなくて、いきなり最後にどんとこうやってくれというような話というのはあり得ない、こう思うものですからね。まあ、これ以上質問してもこの答弁はいただけないようですので、これは打ち切りますけれども、私は、言葉の端の中には、現在米国からいろいろな調整が来ているというふうに理解をしておきたいと思います。

 次に、先ほど国連決議の話がありましたけれども、私は、やはりこの件は、米国一国に向けられたものではなくて、世界に対する挑戦だと思うわけです。この点については外務大臣も同様の認識と考えてよろしゅうございますか。

田中国務大臣 自由と平和とを信奉し、そして民主主義を旨としている国に対する挑戦であるというふうに考えます。

藤島委員 そういうことでありますと、これは、私は、単に日米安保で米国に協力をしていくという観点だけではなくて、やはり国連を動かして、国連の決議をもとに全世界が協力していく、こういうふうに持っていくべきではないか、こう思うわけですが、この点について、先ほど質問もあったわけですけれども、もう一度お答えいただきたいと思います。

田中国務大臣 先ほども答弁したことの繰り返しになりますけれども、国連の場も含めまして、外交努力をあらゆる方法でやってまいります。

藤島委員 私は、今申し上げたように、日米安保よりもむしろ国連の決議に基づいて日本は行動するということが一番いいんじゃないか、こう思うわけですけれども、外務大臣には、米国に対してだけじゃなくて、国連本部の方にどんどん働きかけていただいて、先ほどの国連安保理の決議だけでは、行動の方向みたいなものであって、具体的な行動に対する根拠みたいなものにはならないと思うんですね。したがって、具体的な行動の根拠になるような決議を安保理でするように、これは外務省の方、全力を挙げて運動していただきたい、私はこう思うわけですが、いかがでしょう。

田中国務大臣 テロの防止につきましては、内閣はもちろんですけれども、あらゆる場で検討をしてまいります。

藤島委員 ぜひそういう行動をやっていただきたいと私は思います。

 ところで、ちょっと議論は違いますけれども、アメリカを一緒になって応援するということは一体となってやるということで、テロの報復を我が国も受ける可能性がある、したがって、余りアメリカ援助の一辺倒でいくのはいかがか、こういうような意見も一部にある、私は全く反対なんですけれども。こういう考え方は、まさに自分だけよければいいということと一緒になるわけでありまして、私は賛成できないんですけれども、外務大臣はこういった考え方についてどのように感想をお持ちですか。

田中国務大臣 今おっしゃるような議論があるということも承知しておりますし、また、それに反して藤島委員のようなお考えの方もいらっしゃるというふうに承知しておりますが、今現在、現実問題として、アメリカがどのような行動をとられるか一切わからないわけですので、ですから、この時点においてはコメントはすることができません。

藤島委員 まあ、議論をしても、そこの部分がやはりネックになっておってなかなか先に進まないということでございますけれども。

 もう一つ、この件に関してもそうなんですが、外国で何か事故が起こるといつもそうなんですけれども、邦人はどうだ、邦人はどうだと邦人の安否が優先的にまず政府の方でも議論し、報道の方でもされるわけですけれども、私は、今回のこういう事件に関して言うと、まず邦人の安否、これは大事なことではあります、それはわかるんですけれども、そちらが先に行くんじゃなくて、本当は、世界の中でこのテロ、これは一体どういう位置づけなんだ、そういうところから政府、政治家は考えていく必要があるんだろうと思うんですけれども、外務大臣はどういうふうにお考えですか。

田中国務大臣 ですから、私も、おっしゃるように、もちろん邦人のことが一番大事でございますけれども、やはりそこのところには目配りをしなければならないと思いまして、直接、先ほども申しましたけれども、駐米大使、ニューヨーク総領事、それから、昨日もパキスタンの沼田大使と電話で話をいたしまして、あらゆる面でどういう情勢であるかということを直接とるようにいたしております。

藤島委員 これから外務省も予期しないいろいろなことが起こると思うんですけれども、その際に、その事態が実際どういうふうな意味があるのか、そこをまず考えて行動をとっていただきたいなということを申し入れておきたいと思います。

 ところで、それとの関連なんですけれども、外務省が職員をニューヨークに派遣しておりますけれども、これはどんな目的なんでしょうか。やはり邦人救出が目的なんでしょうか。

田中国務大臣 これは十五日だったと思いますけれども、山口政務官ほか七名をニューヨークに派遣いたしました。その派遣目的は、行方不明者の親族等に対する援護の業務がございますし、片や、現地の関係者との調整などに万全を期するというような任務もございます。

 いずれにいたしましても、やはり現場、事故付近ですとか行方不明者が登録してあるところを視察したり、それから、私もジュリアーニ市長にすぐにメッセージをお出ししてございますけれども、そういうふうな伝達をまた改めてやっていただいたりして、できるだけきめの細かな支援をするようにということが目的で行っていただいております。

藤島委員 現場の方がごたごたしているときに、東京の方からまたそういう方が行って、その接待するのが忙しくなっちゃって、むしろ現場の仕事がはかどらないというようなことのないようにお願いしたい、こう思います。

 最後、時間がなくなってきましたけれども、外務省改革の問題について、ごく一部御質問させていただきたいと思います。

 先日の処分、警察の方の関係で入った問題について、外務大臣は謝罪の会見をしておりますね。その際に、私は余り言いわけを言わないで済むように外務大臣はやっていただきたいなということを、これは前回の安全保障委員会でも何回か申し上げておったのですけれども、最初の記者会見の際には、小町官房長以下事務次官が会見されているわけで、その際には大臣は出席されていない。それで、その言いわけとして、紋切り型に済みませんではなく、一晩置いて考えをまとめ、七日の定例会見で話そうと思っていた、米国でいいスピーチをと資料を一生懸命読んでいたと。こんな言いわけにもならない言いわけはむしろ言わないで、もっと潔くやったらいいのじゃないかな、こう思うわけですね。一晩置いて考えをまとめて記者会見してもしようがないのじゃないか、これはやはり出たときにきちっと責任者である外務大臣が記者会見すべきだ、こう私は思ったわけであります。

 結局、その後、いろいろがたがたした結果、外務大臣が陳謝の会見をやったということになるわけでありまして、やはり外務省のトップとして、自分がやるべきことは何か。これは嫌なこともあるのですけれども、やはり大臣は、いいことばかり、格好いいときだけ外務大臣だといって出るのが外務大臣じゃなくて、やはり本当にきつい、苦しい、嫌な場面、そういうときに外務大臣がそれをしょっていってこそ、外務省が一丸となって外務大臣を支える、こういうものじゃないかと思うのですけれども、外務大臣の感想をお聞かせいただきたいと思います。

田中国務大臣 それはもちろん、即出ていって、責任者でありますから、頭を下げて申しわけありませんでしたと言って、これでもう完全にすべて終わるという確証が持てずに、私は本当にまたかと、まだまだあるのではないかと自分では思っていましただけに、これはただ出ていって、さっと速く走っていって、申しわけありません、ごめんなさいと言って終わるほど軽くないと思ったのですね。

 したがって、本当に責任のある外務省を預かる人間として、あらゆる角度から考えてみて、どういうことが本当に誠意のある言葉なのか、まことに申しわけありませんでしたと頭を下げるだけで済むのかなと。済まないと思ったので、やはり本当に考えることが誠実だと自分で思いました。それは本当に考えた末で、ですけれども、やはり、いや、翌日だなどというわけにはいかないのは当たり前ですし、頭を下げなきゃいけないことぐらい十二分にわかっておりましたので、やはり、ちょっとワンクッションがあったということでございます。

藤島委員 そうおっしゃるのなら、そこまではっきりおっしゃるのなら、その二、三時間置いた後も会見には出なくて、翌日じっくりやった方がよかったのじゃないか、こう思うわけでありますけれども。私が申し上げたいのは、やはり一つの省をまとめていくには、いいところばかりじゃなくて嫌な面も全部大臣がしょっていく、そういう姿勢が非常に大事だろうということを申し上げたかったわけであります。

 あとちょっとですけれども、外務省の昼休み時間の件がちょっと報道されておったのですけれども、これは私は機密費の問題と同類のような気がするのですね。機密費はまさに必要だし、それ自身非常に意味がある。したがって、これを余り大幅にカットするとかゼロにするとか、そんなことは絶対にやってはいかぬ話でありますが、それを機密費の本来の使用じゃない方に使って、まして私用の部分にまでいっている。これが許せないわけでありますが、この昼休みの件も、確かに外交の関係で普通の昼休み以上にとって情報を交換する、この必要性は私は十分認めるわけです。そういう意味では、人事院の規則にあるような昼休み休暇の時間だけでおさまらない、これは十分あるわけでありまして、これはどんどん、きちっととってやったらいいと思うのですが、それが、便乗して、自分ら仲間だけで食事をしに行くときまで二時半まで帰ってこない、これがいけないのです。

 必要なもの、本当に意義あるものと、そうじゃなくて便乗するもの、ここの節度をきちっとやらなければいかぬ。私は、これはそういう意味で機密費の問題と同根の問題だろうということで、きちっと必要なものは必要なものとして、例えば上司にそういう用があるので休み時間は長くなりますよとか、そういうことをきちっとやればだれも文句もないのでありまして、それをそうやらないで、仲間同士で食事をしに行って二時半まで帰ってこない。これがいけないのである、私はこう思いますので、ひとつ御検討をお願いしたいと思います。

 終わります。

土肥委員長 次に、山口富男君。

山口(富)委員 日本共産党の山口富男でございます。

 十一日にアメリカで起きました同時多発テロは、多数の市民のとうとい命を奪った憎むべき犯罪であり、絶対に許すことのできない蛮行だと考えます。この点で、犠牲となられた方々、また負傷された方、御家族や関係者の皆さんに、改めて哀悼の意とお見舞いを申し上げたいと思います。

 今回の事件では邦人も大きな被害を受けたわけですけれども、世界貿易センタービルに働く方々を初めとして、今も安否の確認のできない方がいらっしゃいます。そこで、まず初めに、安否の確認や入院されている方、それから邦人の被害状況、そして政府がどういう対策をとっているのか、最新の報告を求めたいと思います。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 本事件発生と同時に、外務省及び現地米国、ワシントンにおきましては大使館及びニューヨーク総領事館において直ちに対策本部を立ち上げたわけでございますが、この事件発生直後より全在外公館を通じまして積極的に情報収集を行い、情勢を総合的に判断してまいりました。

 それで、実は在留邦人の安全確保という点はもとよりでございますが、今回の事件に際しましては、現在のところ日本人の被害、行方不明者、これは、ワールド・トレード・センター及びハイジャック機二機に搭乗されていたと思われます方二人を合わせまして、二十四名の方が現在行方不明でございます。それと、日本の国民の方から随時さまざまな行方不明の照会がございまして、総計六百人ほど現在までに照会がございます。これを一つ一つ事実を確認していきまして、現在約六十名前後の照会がまだ残っております。

 これは、実はこの六十名の方々は、米国を旅行中、必ずしもニューヨークに限らないのですが、中には一、二年前から消息がとれないという方も含まれておりまして、ですから、必ずしもこの事件に巻き込まれたということではないわけでございますが、依然として五、六十名の方が連絡がとれていないという状況でございます。

 こういう現状におきまして、ニューヨークを中心にいたしまして、現在、行方不明者につきまして鋭意全力を挙げて捜索活動をしているところでございます。

山口(富)委員 引き続き、関係家族の方に必要な便宜を図っていただくとともに、被害者への万全な対策、その強化を強めるように政府に求めたいと思います。

 さて、今回のテロは、規模の大きさや残忍さにおいて類例のないものなんですけれども、その点で全世界に大きな衝撃を与えましたが、これはアメリカ社会への攻撃にとどまらずに、国際社会全体に対する攻撃であり、世界の法と秩序に対する乱暴な攻撃であったというふうに思うのです。それだけに、今、世界が二十一世紀に安全に生きていくために何としてもテロを根絶しなければいけない、そのための国際的な努力を国連を中心にして大いに強めなければいけない、そのことが真剣に問われているというふうに思うのです。

 この問題を考える際に、これまで国際社会はいろいろ貴重な経験を積んできたと思うのです。例えば、邦人の方一人を含めまして二百七十人の犠牲者を出した、一九八八年のパンアメリカン機の爆破墜落事故がございました。これは一般にはロッカビー事件というふうに呼ばれておりますけれども、この事件に対して、国連を中心にして、国際社会はリビア側に犯人の引き渡しを要求しまして、経済制裁を含めていろいろな努力を、粘り強い対応をやってきたわけですね。

 今、この事件はどうなっているのか、このことを報告願いたいと思います。簡潔にお願いします。

重家政府参考人 お答え申し上げます。

 一九八八年十二月に起きましたパンナム航空機爆破事件の被疑者二名の引き渡しについてでございますが、法廷をどこの国に設置するか、あるいは準拠法をどうするかなどをめぐりまして長い間対立が続いておりましたけれども、ようやく九八年に至りまして、オランダにおいてスコットランド法に基づいて審理されることが、イギリス、アメリカ、リビアの間で合意されました。これを受けまして、九九年四月にリビアより被疑者二名の引き渡しがなされたところでございます。

 その後、法廷が開廷いたしまして、本年一月に被疑者二名のうち一名につきまして有罪の判決がなされました。他の一名につきましては無罪の判決がなされたところでございます。現在、有罪判決を受けました被疑者が控訴をいたしておりまして、本年十月に控訴審が開かれる予定でございます。

 被疑者引き渡しの結果、国連の関連安保理決議に基づきます対リビア制裁は一時停止されております。制裁の解除そのものにつきましては、今後、遺族に対する賠償金の支払いなどの問題がございまして、控訴審の結果などを踏まえて、国連安保理決議に従って決定されるものと考えております。

山口(富)委員 今報告がありましたが、いろいろな曲折があったわけですけれども、国連の経済制裁や政治的制裁、こういうものを受けまして、リビア側が容疑者とされた二人の人物の引き渡しに同意して裁判が始まっている、こういう局面だと思うのです。

 それで、九九年に容疑者が引き渡された際に当時の高村外相が談話を発表していますが、どういう内容でしたか。

重家政府参考人 九九年四月六日に高村大臣より、被疑者二人がオランダに到着したことを心から歓迎する、ロッカビー事件の解決に向けて、十年間にわたるすべての関係者の忍耐強い努力を高く評価するということを高村大臣は述べておられます。

山口(富)委員 今紹介がありましたけれども、忍耐強い態度を高く評価したというのが基本的な内容です。

 そこで、田中外務大臣にお尋ねしますが、このようなロッカビー事件をめぐる国連の対応、そして裁判が開かれるという事態になったわけですけれども、あなたはこういう経験についてどう認識し、また評価されているのか、お話し願いたいと思います。

田中国務大臣 そのリビアの件については歓迎したいと思いますけれども、今現在起こっていることと結びつけることはちょっと早急だというふうに思います。

山口(富)委員 外務大臣、それは少し認識がおかしいと思うのです。

 といいますのは、国際社会においてテロ行為が起き、これに対して共同で国連安保理を中心に対処をして、犯人の引き渡しを実現し、裁判という大きな道を切り開いたわけです。その点では、世界のテロ問題に対応する点で非常に重要な経験だと思うのですが、そういう認識は大臣にはないのですか。

田中国務大臣 今回のことについての犯罪性云々ということについてですけれども、現在、アメリカで犯人の特定に向けた捜査が進められている最中でありますよね。そして、そのウサマ・ビンラーディンという人をめぐって種々の動きがありますけれども、これら一連の動きの進展というものをやはりよく見なけりゃいけませんので、それを見きわめた上で発言をしていきたいというふうに思いますが。

山口(富)委員 それでは、重ねてお尋ねしますけれども、私がこのロッカビー事件を取り上げましたのは、ここに示されていますように、国際政治と世論によってテロの犯罪者が包囲、告発されて、そして、国連の政治的、経済的制裁を加えて、彼らを法に基づく裁きの支配下に置くというこの大きな道を切り開いた。

 そして、今度の事件というのは、規模も違いますけれども、やはり国際社会がテロの問題で、これを根絶していくための国際的な努力を強める必要があるわけですね。その際に、このような国際社会の到達についてきちんとした認識を持っていなければ、日本の外交の担当者、担当大臣として仕事ができないではないかという危惧さえ持つのですけれども、いかがですか。

田中国務大臣 委員のおっしゃっている意味はよくわかります。ですけれども、今はやはり本件が起こっての御質問でもございますので、これは捜査中でありますし、犯人が完全に特定できているわけでもございませんので、発言は控えさせていただきます。

山口(富)委員 私の言っている趣旨はわかるというお話でした。

 今、今度のテロ事件に対して、先ほども話がありましたけれども、国連安保理は、事件直後の十二日に決議一三六八を全会一致で採択いたしました。その中では、野蛮なテロを国際の平和と安全に対する脅威と認めた上で、すべての加盟国に対してどういう努力を求めた内容になっていますか。

谷内政府参考人 先生御指摘の安保理決議におきまして、第四パラにおきまして、関連の国際テロ条約及び特に一九九九年十月十九日に採択された安保理決議千二百六十九号を初めとする安保理決議の完全実施によって、テロ行為を防止し抑圧するためのなお一層の努力をするよう国際社会に求めるということを一般的に言っております。

 それから、その前になりますけれども、パラ三におきまして、テロ攻撃の犯人、組織者、支援者を法の裁きに服させるためにすべての国に迅速に協力するよう求めるとともに、これらの人間を援助、支持もしくはかくまった者は、その責めを問われることを強調する、こういう言い方をしております。

山口(富)委員 今お読みになりました最後の部分なんですけれども、この安保理決議が、テロによる攻撃の犯人、組織者及び支援者を法に照らして処罰するためにすべての国に対して迅速にともに取り組むことを求める、この点が非常に重要だというふうに思うんです。

 アナン国連事務総長も、この安保理決議の際の会議に出まして、その中で次のように述べております。一国へのテロ攻撃は人類全体への攻撃である、世界のすべての国々が犯人を特定し法の裁きにかけるために協力すべきである、こう発言しています。

 外相にお尋ねしますけれども、日本はこれらを受けて国連において今どういう働きかけを行っているんでしょうか。

田中国務大臣 国連はもちろんでございますけれども、いろいろな場でテロを撲滅するための外交努力を重ねております。

山口(富)委員 私は、国連の場で具体的にどういう努力をしているのかとお尋ねしましたので、引き続きお聞きしますけれども、今回のテロ事件というのは、大がかりなテロ組織が関与しているとも言われております。そして、こうした組織の全貌を明らかにして、それを根絶するためには、国際的な協力と努力の中で犯罪の容疑者、勢力を立証していくという努力が各国に求められると思うんです。

 私たちは、テロ犯罪の容疑者の特定、その逮捕と処罰、さらにテロ根絶のための一層効果的な国際的な措置をとるために、国連が特別の国際会議を開こうじゃないかという提案もしているんですけれども、実は、国連の安保理の会議の中で、もっと国連として努力を強めようというのが、議事録を読んでみましても、理事国多数の意見になっております。そういう点から見ましても、日本政府の国連への対応というのは極めて弱いんじゃないでしょうか。外相に。

谷内政府参考人 現在、御承知のように、国連が、先般の事件を踏まえまして、まだ正常に十分な機能を果たし得ない状況でございまして、事務的に、正常な機能を果たし得ない、例えば子どもサミットが延期になるというような状況があるわけでございまして、一般演説をちゃんと予定どおり始められるかということも今議論されているところでございます。事務的には、いわゆる外交官のレベルでいろいろな非公式協議をやっておりますけれども、まだ本格的な閣僚レベルその他の協議には至っていない、こういうことでございまして、他方、先生おっしゃいますように、この犯人を特定する努力、あるいはそれを引き渡してもらう努力、こういったことは国際的な圧力もかけながら、今、現に、パキスタンでも、パキスタンの方からタリバン勢力に対して引き渡しを求めていることは御案内のとおりでございます。

 そういう直接的なことも含めまして、外交努力を一般的にさらに、これはアメリカが主導でやっておるわけでございますけれども、日本としては、そういった外交努力をアメリカとともに、またはほかの国々とも協力しながら進めていかなくてはいけない、こういうことでございまして、もちろん国連はその中の非常に重要な場面である、こういうふうに認識しております。

山口(富)委員 今あなたのおっしゃったのは状況説明にはなっていますけれども、ただ、一番最後に、国連が非常に重要な場になっているという認識を持っているというお話がありました。この点は大臣も共通の認識をお持ちなんですね。

田中国務大臣 もちろんそうです。そのために、国連というものはこういうふうなことの紛争解決のために存在もしております。ただ、今局長が申しましたのは、今の状態で、機能ができないような物理的な状態になっているということでございますから、もちろん国連の場において、日本も、今までより以上に発言をして、イニシアチブを持って進めていけるように努力をいたしたいと思います。

山口(富)委員 テロ犯罪を根絶してその勢力を国際的な法の裁きのもとに置いていく、そのために今必要なことは、性急な軍事報復を強行することではないと思うんです。無法者に対しては、国連安保理決議が示しているように、犯罪者を国際的な法の裁きのもとに置く、そのための国際的な努力を強めていくということがやはり大きな太い道になると思うんです。

 軍事報復についていいますと、国際社会はこの点でもさまざまな合意を積み重ねてきたと思うんですが、例えば一九七〇年に国連総会が国際連合憲章に従った諸国家間の友好関係と協力に関する国際法の諸原則についての宣言、これを採択しております。

 この中で、いわゆる武力の行使を伴う復仇、仕返しですね、こういう行為についてどのように定めていますか。

谷内政府参考人 ただいまの先生の御指摘は、復仇の問題についてその宣言がどのように定めているか、こういう御質問かと思いますけれども、一般に、国連憲章は、御承知のように、武力行使は自衛権の行使の場合と憲章七章の集団的安全保障措置の二つでございますので、従来は国際法上合法と認められておりました復仇という一つの暴力行為でございますけれども、これについては、国際法上認められない、こういうふうに、具体的な規定は覚えておりませんけれども、思想はそういうことだというふうに理解しております。

山口(富)委員 今答弁がありましたように、国際法の世界では武力の報復というのは禁じられている、認められていない、この点が非常に大事だと思うんです。

 そして、私が先ほど紹介しましたこの宣言というのは、いろいろな国連の文書の中で、さまざまな問題が取り上げられたときに、必ず、規範とすべき原則だということで強調されてきた観点なんです。

 私は、このような国際法も踏まえまして、やはり、性急な軍事報復の強行の流れではなくて、日本政府が、国際社会が確認してきた法と理性の裁きの方向でテロ根絶のために犯罪者を追い詰める努力を尽くす、そのために、国際的な協力と努力の先頭に立つことを求めたいと思いますが、田中外相の答弁を求めます。

田中国務大臣 委員のおっしゃることは、私はまさしく正しいというふうに思います。

 しかし、今の、現段階におきましては、アメリカがどのような手段をとろうとしているか一切つまびらかでありません。したがいまして、具体的なイシューについて今後どうかということについては、コメントは差し控えさせていただきます。

山口(富)委員 私が示した方向が大きな方向であるということはお認めになった、この点大事だと思うんですが、やはり、テロ犯罪に対して性急に軍事力で報復するようなやり方を行いますと、これまでの事態が示しているように、やはり、テロ根絶に有効でないばかりか、新たな犠牲と巨大な惨害をもたらす結果になる、そして、一層のテロ犯罪と武力報復の悪循環が生まれてくる危険性が極めて高いというふうに思うんです。この点では、今度の凶悪な国際政治に対する犯罪者、犯人の逮捕や、テロ勢力の根絶にもやはりつながる方向じゃないというふうに思うんです。

 私たち日本共産党は、こうしたことを憂慮いたしまして、昨日、アメリカでの同時多発テロ事件に関する不破哲三議長と志位和夫委員長の連名の手紙を各国政府首脳にお届けしました。政府にも既にその控えがお渡しできたと思うんですけれども、私自身も中国とイギリスの大使館を訪ねました。この手紙の大事な提案の内容というのは、テロ根絶のためには軍事力による報復ではなく法に基づく裁きを実際にやり遂げることだ、そのために、国連が中心となり、国連憲章と国際法に基づいて、テロ犯罪の容疑者、犯罪行為を組織、支援した者を逮捕し、裁判にかけ、そして法に照らして厳正に処罰する可能なあらゆる努力を尽くそうじゃないか、そういう提案の中身なんです。これは今日の国際法と国際社会の到達に立った、それに裏づけられた、テロを根絶していく確かな道だというふうに確信しているところです。

 さて、最後になりましたけれども、本日の委員会には、米国における連続テロ事件に関する件が提出されるようでございます。そこには、早急に我が国の危機管理体制の充実強化を図るということが盛り込まれておりますけれども、既に、自衛隊法の改正の問題ですとか有事立法制定を初めとして、その内容について与党側の皆さんから具体的な方向として動き始めている問題です。

 テロは絶対に許されない、このことはもう共通の確認ですし、言うまでもないことですけれども、今述べたような具体的な問題がある、そのことを踏まえまして、この件については賛成することができない、このことを最後に表明いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

土肥委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 九月十一日、米国において、ハイジャックされた旅客機が次々と巨大なビルに激突して崩壊をさせた連続テロ事件、その破壊力の激しさと死傷者の数において前代未聞のテロ事件であり、このような卑劣な行為は、その理由のいかんを問わず、断じて許すことはできません。私たちは、民主主義社会を守るために、このようなテロ行為を実行あるいは直接支援した組織を一刻も早く特定し、それを根絶するために努力しなければならないと考えております。

 しかしながら、米国が急ピッチで準備を進めつつある軍事報復に一抹の不安を抱いているのは私だけではないと思います。つまり、今回の事件の時代背景には、長年にわたるパレスチナとイスラエルという対決構図、それを支援するアラブ諸国と米国、あるいは、グローバル化した市場経済の中で世界の富が集中する米国と貧困化して反発を強める途上国という図式があり、したがって、米軍の軍事報復によって事件に関係のない国あるいは人々に犠牲が発生すると、潜在的に不満を強めている人々全体を敵に回し、結果的にテロ支援者をふやしてしまうことにもなりかねません。

 その意味するところは、暴力的報復の終わりのない連鎖であり、民主主義社会そのものの破壊です。つまり、テロ攻撃から民主主義社会を真に防衛するためには、軍事的報復そのものにもおのずと自制が必要であると考えますが、この点に関する田中外務大臣の見解をお伺いいたします。

田中国務大臣 今現在この時点で、アメリカがどのような措置をとられるか一切明らかになっておりませんので、仮定の問題につきましてはコメントいたしかねます。

東門委員 今の時点でコメントできないというお返事でしたけれども、また、ではそのときにもう一度、改めて別のときに質問をさせていただきます。

 続きまして、今回の事件に乗じて、政党の中には、日本への大規模戦略を想定した有事法制の整備を求める声が上がっていることが連日報じられております。しかし、市民権の制限、特に在日外国人を対象とした治安対策のような措置、それは運用を一歩誤れば民主主義社会そのものの破壊につながり、そして近隣諸国との友好も阻害しかねません。したがって、今有事法制の整備を声高に叫ぶことに不安を感じるのですが、大臣はどう思われるでしょうか、御意見を伺いたいと思います。

田中国務大臣 非常時におきまして、国の危機管理のあり方につきましては、かねてからいろいろな重要な課題になっておりまして、今回のテロ、同時多発テロ事件によってもこの認識は新たになってきているということは現実だというふうに思います。

 有事法制に関しましては、政府として、有事の際にどのような対応やあるいはその法制が必要になるであろうかということについては、内閣官房を中心に関係省庁一丸となって協力して、準備的な検討作業を進められてきております。

 当省といたしましては、外務省ですけれども、積極的に協力をしていきたいというふうに考えているところでございます。

東門委員 検討作業がもう続けられてきているということですか。では、どのあたりまで来ているのでしょうか。いつごろそれを出していくということなのでしょうか。私、まだだと思っていましたので、済みません、お願いします。有事法制についてです。

田中国務大臣 今は、言ってみれば準備的に検討しているわけでございますので、どうこうと明らかにはできません。

東門委員 沖縄のことを少しお話をさせてください。

 沖縄では、テロ発生直後から、在沖米軍基地の厳戒態勢がとられています。九月十五日未明には、嘉手納空軍基地所属のF15戦闘機とKC135空中給油機計十機が、海外での運用派遣のためアラスカのエルメンドーフ空軍基地に向けて出発、十七日午前には、那覇軍港で在沖米海兵隊基地所属のAH1軽攻撃ヘリ二機が輸送船に搭載されるなど、既に通常と違う動きがとられているとの報道がなされております。また、厳戒態勢により、基地のゲート周辺では一般車両を巻き込んで大渋滞が発生、住民生活にも影響が出始めているという報告があります。

 このような米軍の行動について、今私は沖縄県の話をしましたけれども、沖縄県以外の米軍基地の所在地等のそういう状況について政府はどの程度把握をしているのか、お聞かせいただきたいというのが一点。

 もう一点は、十年前の湾岸戦争のときですね、砂漠の盾、嵐作戦では、日米安保六条の極東の範囲を大幅に超えて、沖縄の米軍が湾岸戦争に直接投入されました。そのとき、事前協議の対象にはなりませんでした。今回の米国の報復行動に関し、もしそれがスタートするとすれば、在日米軍の戦闘作戦を事前協議の対象とする考えはあるのでしょうか。

 この二点についてお聞かせいただきたいと思います。

田中国務大臣 まず、アメリカの米軍の運用の問題につきましては、こちらは承知いたしておりませんので、コメントする立場にございません。

 それから、二点目につきましては、今回の多発テロ事件に関して、米軍の対応は、それから沖縄の米軍基地を含む在日の米軍施設ですけれども、そういうところとの関係につきましては、アメリカがどういうふうなことを現在行動をとろうとしているかということは明らかではございませんので、そういう状態でコメントをすることは不可能でございます。

東門委員 先ほどから、ほかの委員の質問に対しまして、緊密な連携をとっておられる、機微に触れるところもあるからというもちろん断りはあったのですが、そういう中で、在日米軍基地の、そこから出ていく運用の面については全然御存じないということは、政府には何にもそういうことについては報告がないということでしょうか。

田中国務大臣 恐れ入りますが、やはり運用上の問題でございますので、今の段階ではコメントができません。

東門委員 済みません。運用上の問題なのでコメントができないのか、あるいは一切ないのでしょうか。先ほど、ないとおっしゃったんです、大臣は。今回、運用上のことなのでコメントできませんということは、どちらが正しいんでしょうか。

田中国務大臣 両方でございます。運用上の問題でもありますし、承知もいたしてもおりません。

東門委員 今回のテロによりまして、在日米軍基地を抱える地域では、当然のことながら緊張がかなり高まっております。基地がテロ攻撃の対象となるかもしれない、あるいは、ひょっとしたら日本も戦争に巻き込まれるかもしれない、そういう不安、あるいは沖縄の米軍基地の重要性が増すという見通し、また、従来の前方展開はテロなど新しい脅威に対応できないなど、いろいろな議論があります。

 ちょっと長くなりますが、私は大事だと思いますので、ちょっと紹介をしたいと思います。

 地元の新聞で出てきたいろいろな意見でございますが、沖縄からは、米国と敵対するイラク上空の監視行動に向け、嘉手納基地のF15戦闘機が継続して出動する状況がある。有事の殴り込み部隊としての海兵隊も駐留し、アラブのパレスチナ勢力のテロ行動の抑止力として、在沖米軍や基地があらためて重要だということになりかねない。これは九月十三日付の新聞ですが、沖縄県幹部の発言として載っております。

 二点目、今後の米国の報復で、在沖海兵隊、横須賀の空母、駆逐艦、佐世保の海軍揚陸艦が動く可能性があり、中東での米国益保持のために在日米軍が使われ、集団的自衛権の行使の論議に進む可能性がある。米軍は北朝鮮から中国に照準を移し、安保適用範囲が台湾海峡に拡大した。南西諸島の軍事能力が今まで以上に重視され、米国の沖縄に対する執着が強まり、基地の整理縮小に逆行するおそれがある。これは、前田哲男東京国際大学教授の発言として地元紙に出ております。

 次は、テロ対策に従来の軍事力は不向きだ。テロ行為に走ったときにのみ、その存在を確認できるテロリストの攻撃から守る態勢は、攻撃力こそが防衛の基本としてきた軍隊にとって、未体験の世界であろう。テロから米国を守る軍事力を求められると、攻める兵士よりも警備の要員の拡充となるだろう。そのとき、沖縄に多数の兵士を配備する軍事戦略は時代おくれになる。我部琉大教授の発言です。

 それから次は、内閣府の仲村副大臣の発言ですけれども、日米安保締結当時とは、国際情勢は大きく変化している。経過した五十年と同じ状態で、今後も継続されるのは自然ではない。日米安保は冷戦構造の最絶頂期に締結された。全国の米軍基地の七五%が存在する沖縄の立場から削減を強く主張する。そういうようなコメントが出ております。

 そういういろいろな意見があるわけですが、政府に対してお伺いしたいのは、今日の国際情勢において、日米安全保障体制そして在日米軍の役割をどう評価しておられるのか、外務大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

田中国務大臣 かねて何度もお聞きになっていらっしゃる言葉かと思いますけれども、日米安保条約に基づく米軍のプレゼンスというものは、これまで、我が国のみならずアジア太平洋全体の地域において、安定と発展のために基本的な枠組みとして有効に機能してきております。その一方で、冷戦構造というものが終了して現在に至るまで、この地域には依然として、今現在もですけれども、不安定性とか不確実性というものが存在していることは事実でございます。

 このような状況のもとで、米国との安保条約を引き続き堅持することで、米軍の前方展開を確保し、その抑止力のもとで日本の安全を確保すると同時に、アジア太平洋の安定と発展に寄与していくということは必要であると感じております。

東門委員 今の御答弁から察すると、今までと全然変わらない、これからもずっと続けていくということになるのでしょうか。もう一度、済みません。

田中国務大臣 それでもちろん結構でございますし、先日、サンフランシスコで講和条約、それから安全保障条約五十周年の機会にも、そうしたことを私は確認も確信もいたしました。

東門委員 そういう中で、これまでもこの外務委員会の席でも私は何度も質問してまいりました。そういう中で、沖縄の米軍基地、SACOの最終報告の着実な実施というお返事が返ってくるだけなんですが、実は、先ほどある議員の方から、沖縄はどうするの、ぶっ飛んでしまうよと、ちょっと冗談めかしてだったと思いますが、私に発言がありました。危ないから、今この状況をどうにかしなければいけないよと言うから、私は、それは国がここまで持ってきたんですとお答えいたしました。

 国として、政府として、沖縄の基地は七五%、SACOで七一%ぐらいになりますでしょうか、こういう緊張状態が出てくる中で、沖縄の県民はすごい不安の中で生活をしているわけです。日常生活にも影響が出てきていると申しました。やはり不安の中で生活をしている。その中で、日米安保体制をそのまま続けていく、いや、それは続けられても結構です。しかし沖縄の米軍基地、それは政府として本当に、私は外務大臣に、就任してから何度もお願いしたのですが、一歩も二歩も大臣は踏み込んでくださいと。決して努力していないとは申し上げません。しかし、やはりはっきりと目に見える形で、私たちに見えるようにしていただきたいと思いますが、済みません、御決意のほどをもう一度お聞かせください。御決意というよりも態勢、沖縄の基地の問題についてです。

田中国務大臣 このお尋ねに対しましては就任以来、再三再四申し上げていることなのですけれども、米軍のあらゆる施設が、七五%もが沖縄に一極集中しているということによって、多大な負担を沖縄県民の皆様におかけしていることが健全であるとは決して私は思っておりません。それは確認いたします。

 ただ、負担を軽減するということが必要であって、前回の国会でもいろいろな議論がございましたし、与野党のいろいろな先生方からの御意見も拳々服膺して、できることはパウエル長官との話でも、例えばトレーニングのローテーションの問題にしろ、あらゆることを検討してきています。

 今、SACOのことをおっしゃいましたけれども、SACOの最終報告の着実な実施を進めるということはしなければならなくて、そして米軍施設・区域の約二一%が返還される、五千ヘクタールぐらいになるのでしょうか、そういうふうなこともいたしておりますので、決して沖縄のみに一極集中してよろしいなどということは考えておりません。

東門委員 こう申し上げると、こちらにいらっしゃる委員の先生方、お怒りになる方もおられるかもしれませんが、沖縄の米軍基地の状況、これまで五十六年間そういう状態で来て、これからも、今SACOの最終報告と、いつもそれが出てきます。しかし、それは何の担保もないのですよ。十五年使用期限だって全然解決されていませんし、使用協定だってどうなっているかわからないじゃないですか。

 そういう中で、沖縄にだけ集中させておいて、いいとはおっしゃらないまでも、本当に考えていただきたい。特に外務委員会であれば、先生方お一人お一人に考えていただきたいなという課題であると私は申し上げたいと思います。大臣おっしゃっています、決してそのままでいいはずはないと思っておられる。そうであれば、やはり政府と一緒になって委員の先生方にもお願いしたいと思います。沖縄にこれだけあるということ、この異常の事態をそのままで置くというのは異常です。それは強く申し上げたいと思います。

 では、日米地位協定について二点ほど質問させていただきます。

 先ほど大臣おっしゃっていました、サンフランシスコでの安保条約調印のあれに出席なさいましたね。その折に開催されました日米外相会談におきまして、懸案となっております日米地位協定について、その運用改善協議と出ておりましたけれども、それを推進することが合意されたようです。しかし、米国は、協議を推進することには同意しておりますが、身柄引き渡し後の米兵の権利保護の保障を重視しており、協議は難航しているとの報道もございます。

 それで、まず、大臣はその件に関してパウエル国務長官との会談の中で話し合われたようですが、現在の運用改善の見直しについての日米間の協議の進捗状況を説明していただきたいと思います。

田中国務大臣 確かに、サンフランシスコでパウエル長官とお話ししましたときに、運用の改善の協議を進めていきたいということははっきり申し上げました。これは小泉総理も、この気持ちは非常に強く持っておられます。

 そして、協議の妥結に向けて努力をしなければならないわけですけれども、その中で、具体的に話をいたしますと、例えば刑事裁判の手続の運用の改善でございますとか、これは八月二十三日に専門家の会合がございましたし、これを踏まえて日米双方が、被疑者の早期引き渡し及び被疑者の権利の保障についていかに妥結を図るかということについて、鋭意検討しております。

 そして、それとは離れて、パウエル長官とお話をするときには常に、私はこのことは申し上げております。

東門委員 パウエル長官とお話し合いをされているということはよくわかりましたけれども、進捗状況というのは、まだ何も進んではいないというところでしょうか。済みません、まだ一歩も、何か回答が見えてくるということではないのでしょうか。

田中国務大臣 これは相手があることでございますから、日本だけではなくてアメリカと両方で、双方で今検討をいたしております。

東門委員 六月の北谷町で発生しました米兵による女性暴力事件以降も、沖縄に限らずだと思います、駐留米兵による車両への放火、あるいは器物損壊、あるいは車両の盗難ですか、そういう事件が結構続いております。

 米軍基地とともに生活をしている住民にとりましては、米軍に特権を認める日米地位協定は日々の生活に直接影響するものであり、日米地位協定の改定は基地を抱える地域住民の切実な願いです。この外務委員会でも、ぜひ日米地位協定の見直しをしていただきたいと決議したのはつい最近でございますが。

 まあ日米地位協定の改定まではまだまだ難しいかもしれません。その願いがまだかなえられない、そういう状況の中で、日米間の協議が運用改善という形で進められている以上、一日も早い実効ある合意成立を期待したいと思いますが、米国との間で、今後、この運用改善の見直しをどのようなタイムスケジュールで進めることになっているのか、また、日米協議の結果をいつごろまでに私たち国民に提示されるおつもりなのか、ぜひお聞かせいただきたいと思います。

田中国務大臣 先ほどのお答えの復唱になりますけれども、相手があることでございますから、もちろんお互いに検討しておりますけれども、時期がいつということは申し上げられませんが、ただ、時々の問題について、しっかりと、運用の改善について、より機敏に現実的に対応できるようにしようではないか、最も効果的な形でやろうということを私どもは申し合わせておりますし、そのようにしたいと思っております。

東門委員 ぜひ大臣に期待したいと思います。私たちが本当に目に見えるようなところで、早目に出てくることを期待したいと思います。

 済みません。先ほどちょっと一つ質問を抜かしちゃいまして、ごめんなさい、戻ります。今回のテロ事件との関連でございます。ちょっと急いで、忘れてしまいました。

 きょうの十二時、私、院内のテレビを見ておりましたら、ニュースで、アメリカ側から在米大使館にですか、自衛隊派遣の要請があったというようなニュースが流れたんですよ。それは、大臣、御存じですか。アメリカ側がアーミテージ国務副長官、画像で見ました、映像が映っていました。それは御存じでしょうか。

田中国務大臣 私はそれは直接は見ておりませんけれども、そういうふうな報道があったやに聞いてはおりますが、それは事実ではないというふうに承知しております。

東門委員 これは、報道があったやに聞いておられる、しかし事実ではないというふうに、これは外務省の皆さんのあれですか。いや、私、本当にテレビを見ております。アーミテージさんが入っていって握手をして、下にちゃんと自衛隊派遣を要請と出ておりました。

 私は、先ほどからいろいろ御質問ありましたけれども、大臣が御存じなら、中身はどうなっているんでしょうかということをお聞きしたかったのですが、中身は聞いていないものですから。

田中国務大臣 今の時点では、ございません。

東門委員 私がテレビで見たのが何だったのか、あと少し時間がたったらわかると思いますが。いや、もしそれが事実であり、外務大臣のお耳に入っていないのだとしたら、これは大きな問題になると思います。というのは、はっきりと、自衛隊の派遣を、日の丸が見たいというテロップまでちゃんと流れましたから、間違いありません、そこまで見ております。私、本人が見ていますので。まあ、そこをチェックしていただきたいと思います。

田中国務大臣 ちょっと私、自分でちゃんと確認しておりませんので、未確認なことについてはちょっと無責任な発言になりますので、今は、勝手ですが、ちょっとお答えできません。

東門委員 時間なので終わりますが、今回のテロ事件、本当に大変な事件で、一刻も早いあれを望みますけれども、その対応、日本政府としての対応には、やはり慎重に判断してやっていただきたいと思いますということを述べまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

土肥委員長 ただいま委員長の手元に、米田建三君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び柿澤弘治君の共同提案による米国における連続テロ事件に関する件について決議されたいとの動議が提出されております。

 この際、本動議を議題とし、提出者から趣旨の説明を聴取いたします。桑原豊君。

桑原委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び無所属柿澤弘治君を代表して、ただいま議題となりました動議について、その趣旨を御説明いたします。

 本件は、今月十一日、米国において許しがたい凶悪なテロが行われたことに対し、本委員会としても、我が国が、国際社会の一員として、このような卑劣な行為を断固として許さず、テロに対して毅然たる態度で立ち向かうという意思を持っていることを世界に表明すべきであると認識し、本決議案を提案する次第であります。

 案文を朗読いたします。

    米国における連続テロ事件に関する件(案)

  九月十一日に米国で発生した連続テロ事件は、卑劣極まりなく許し難い行為であり、国際社会及び自由と民主主義に対する挑戦である。罪なき多くの人々の命を一顧だにしないテロリストたちの残虐な行為は如何なる正義、如何なる思想・信条の名においても決して正当化されるべきものではなく、許すことができない。

  本委員会は、テロの犠牲になられた多数の方々に対し哀悼の意を表するとともに、行方不明者の方々の一刻も早い救出を願いつつ、御家族、関係者の皆様に対して心からお見舞い申し上げる。

  今回の事件は我が国憲法の定める平和主義、基本的人権の尊重の精神を踏みにじるものであり、我々は自ら進んでテロに反対する断固たる決意と行動を示さなければならない。

  よって、我が国は、国際テロに対し、米国をはじめとする関係国と力を合わせて対応するとともに、グローバル化が進展し一国の出来事が瞬時に世界全体に波及する今日の国際社会の一員としての責任を自覚し、早急に我が国の危機管理体制の充実強化を図ることにより、国際社会からテロを根絶すべく努力すべきである。

  右決議する。

以上でございます。

土肥委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 米田建三君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

土肥委員長 起立多数。よって、本件は本委員会の決議とするに決しました。

 この際、ただいまの決議につきまして外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣田中眞紀子君。

田中国務大臣 ただいまの御決議に対しまして、所信を申し上げます。

 米国における連続テロ事件は、多数のとうとい人命を奪う、極めて卑劣な行為であり、断じて許しがたいものであります。邦人についても、安否をまだ確認できない方が多数いらっしゃいます。これは米国のみならず民主主義社会に対する重大な挑戦であり、強い憤りを感じております。

 政府といたしましては、本件に対応するための体制を直ちに整え、邦人の安否確認に最大限の努力を払うとともに、現地の情勢把握等に努めてまいりましたが、今後ともこのような努力を続けてまいります。

 さらに、政府といたしましては、テロと断固として戦うとの米国の姿勢を支持し、そのために必要な援助、協力を行っていく考えであります。このような政府の姿勢については、十三日に小泉総理よりブッシュ大統領に対し、また十四日には私よりパウエル国務長官に対しまして電話で伝達をいたしました。

 政府といたしましては、本委員会の御決議の趣旨を踏まえ、今後とも最善の対応ができるよう鋭意努力をしてまいりたく存じます。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

土肥委員長 お諮りいたします。

 ただいまの決議の議長に対する報告及び関係当局への参考送付の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土肥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

土肥委員長 次に、理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員になっております。この際、その補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名することに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土肥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に土田龍司君を指名いたします。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十分散会




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