衆議院

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第3号 平成13年11月9日(金曜日)

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平成十三年十一月九日(金曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 吉田 公一君

   理事 河野 太郎君 理事 下村 博文君

   理事 鈴木 宗男君 理事 米田 建三君

   理事 安住  淳君 理事 桑原  豊君

   理事 上田  勇君 理事 土田 龍司君

      池田 行彦君    小島 敏男君

      高村 正彦君    桜田 義孝君

      下地 幹郎君    虎島 和夫君

      中本 太衛君    原田 義昭君

      宮澤 洋一君    望月 義夫君

      山口 泰明君    鹿野 道彦君

      木下  厚君    細野 豪志君

      前田 雄吉君    牧野 聖修君

      山口  壯君    丸谷 佳織君

      山口 富男君    金子 哲夫君

      柿澤 弘治君

    …………………………………

   外務大臣         田中眞紀子君

   外務副大臣        杉浦 正健君

   外務大臣政務官      丸谷 佳織君

   外務大臣政務官      小島 敏男君

   外務大臣政務官      山口 泰明君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    北原 巖男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 塩尻孝二郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 林  景一君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長

   )            田中  均君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    齋藤 泰雄君

   外務委員会専門員     辻本  甫君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月九日

 辞任         補欠選任

  首藤 信彦君     山口  壯君

  東門美津子君     金子 哲夫君

同日

 辞任         補欠選任

  山口  壯君     首藤 信彦君

  金子 哲夫君     東門美津子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定の譲許表第三十八表(日本国の譲許表)の修正及び訂正に関する二千年十一月二十七日に作成された確認書の締結について承認を求めるの件(第百五十一回国会条約第四号)

 投資の促進及び保護に関する日本国とモンゴル国との間の協定の締結について承認を求めるの件(第百五十一回国会条約第五号)

 投資の促進及び保護に関する日本国とパキスタン・イスラム共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(第百五十一回国会条約第六号)




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     ――――◇―――――

吉田委員長 これより会議を開きます。

 第百五十一回国会提出、千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定の譲許表第三十八表(日本国の譲許表)の修正及び訂正に関する二千年十一月二十七日に作成された確認書の締結について承認を求めるの件、投資の促進及び保護に関する日本国とモンゴル国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び投資の促進及び保護に関する日本国とパキスタン・イスラム共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 お諮りいたします。

 各件の提案理由説明につきましては、既に第百五十一回国会において聴取をいたしておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

 千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定の譲許表第三十八表(日本国の譲許表)の修正及び訂正に関する二千年十一月二十七日に作成された確認書の締結について承認を求めるの件

 投資の促進及び保護に関する日本国とモンゴル国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 投資の促進及び保護に関する日本国とパキスタン・イスラム共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

吉田委員長 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として、委員前田雄吉君の質疑に際し、外務省大臣官房審議官塩尻孝二郎君、林景一君、欧州局長齋藤泰雄君の出席を、委員山口富男君の質疑に際し、外務省大臣官房審議官塩尻孝二郎君、林景一君、アジア大洋州局長田中均君、防衛庁運用局長北原巖男君の出席を求め、それぞれ説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

吉田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山口壯君。

山口(壯)委員 民主党・無所属クラブの山口壯です。

 きょうは、パキスタンの投資協定あるいはモンゴルとの投資協定について審議されるということで、先にそれを少しお聞きしてから、あとはまた一般的な質問もさせていただきたいと思います。

 最初に、この日パ投資協定、私もパキスタンにいたし、アフガニスタンに出張に行ったこともよくありますけれども、このパキスタンの投資協定が、いずれ我々日本がアジアの中でどういう役割を果たそうとするのかという観点からいえば、最終的にはアジアの中で大きな共同体を目指すということもあり得ると思うんですけれども、それについて大臣のお考えはいかがでしょう。

田中国務大臣 お答え申し上げます。

 パキスタンとの投資の環境整備についてでございますけれども、本協定は、投資環境を整備するとの観点から、昭和六十二年の三月に交渉が開始されております。その後、平成八年に、当時のブット首相が来日されましたときに、橋本総理との間で首脳会談が行われました。そして、平成十年の三月の十日に東京で、当時の小渕外務大臣とアユブ・カーン外務大臣との間で本協定の署名が行われております。

 そして、百四十二回の通常国会におきまして、平成十年ですけれども、これに本協定が提出されましたけれども、その直後パキスタンが核実験を行ったために、審議する状況でなくなってしまいました。そして、通常国会では本協定が廃案になったという経緯がございます。

 その後いろいろと紆余曲折がございましたけれども、両国のために、今後、お互いの経済関係も改善していくために、こうした協定が結ばれる方向になっているということは歓迎すべきことであるというふうに思います。

山口(壯)委員 大臣、私はきのう質問を事前に通告しているものですから、きちっとお答えいただきたいんです。私が今お聞きしたのは、例えば自由貿易地域とかいうものも含めて、アジアの大きな共同体に結びつくような発想をお持ちかどうかということをお聞きしているんです。経緯は要りません。

田中国務大臣 失礼しました。モンゴルとパキスタンというふうに発言なさったと思ったものですから。AFTAについてお尋ねでいらっしゃるわけですね。

山口(壯)委員 違います。議論がかみ合わないようですけれども、もう一度お聞きします。

 この日パ投資協定あるいは日モンゴル投資協定、こういう個別の投資協定がいろいろ積み重なることによって、ASEANとのいろいろな関係も通じて、いずれはアジアにおける大きな共同体、あるいはその前に自由貿易地域と言ってもいいかもしれない、そういうものに結びつけていくダイナミックな発想というものが我々日本にもあっていいんじゃないか、そういうことをお聞きしているわけです。お願いします。

田中国務大臣 申し上げます。

 申しわけありませんでしたが、広範囲な分野でアジアの国々との、投資でありますとかあるいはそのほか経済的な貿易関係で緊密なパートナーシップを持っていくということの重要性は申し上げるまでもございません。

山口(壯)委員 例えばヨーロッパではEUという大きな固まりに育っていっているわけです。アジアではまだそういう道が必ずしも見えていないわけです。その違いとして、何が一番このアジアでできない要素なのか、これは大臣の政治家としての見解をお聞かせください。

田中国務大臣 やはり、欧州と比べまして、残念ながらアジアでは、地域間とかそれから経済体制がそれぞれ違うところもありますし、政治情勢というものもありますので、目指すものが理想が高くても、今までにもなかなかうまく、ヨーロッパに比べてそれほど機能しなかったということはあり得ると思いますが、しかし、今後、やはりだんだんと、それぞれの国の枠組みといいますか、経済情勢、政治情勢等も変わってくることによって、グローバリゼーションに向けて、欧州型とは違った形でともに協力していく体制は構築できるというふうに思います。

山口(壯)委員 私がお聞きしているのは、なぜアジアで進まないのかということを、大臣の政治家としての見解をお聞きしたいわけです。何がこのアジアでそれを難しくさせているのか。

田中国務大臣 同じことを申し上げているんですけれども、やはりそれぞれの国と国との間の所得でございますとか、すなわち経済的な問題ですけれども、あるいは政治的な格差、そういうものもありますので、欧州のような形では進みづらいということを申し上げております。

山口(壯)委員 ということは、アジアでは進めるつもりがない、こういうお答えですか。

田中国務大臣 もちろんそんなことは申しておりませんで、中長期的な課題として、それぞれの状況を、お互いのことを認識しながら進めていくという立場であることは当然でございます。

山口(壯)委員 私は、これは多分国と国との間でまだ必ずしも理解ができていない。例えば、中国がいろいろな問題について日本に対して不信を持っている。あるいは韓国もいろいろ不信を持っている。ヨーロッパにおいては、ドイツとフランスが、例えばドイツのバイツゼッカー大統領が、自分が変わる、自分が変わることによってそういう大きな進歩をしていった。自分だけが正しい、こういう姿勢ではなかなかほかの国の理解は得られないと思うんです。私はそのことを指摘しているんです。アジアにおいてもそういう状況があると思うんですけれども、いかがですか。

田中国務大臣 ですから、そういうところを、お互いを認識しながら理解も深めて、そしてそれを進めていくのがまさしく外交努力ではないでしょうか。

山口(壯)委員 まずみずからが変わるということが、日本がこれからアジアの中で示していく大きな姿勢だと思うんです。自分だけが正しい、そういう姿勢を改めていくことができるかどうか、これが一つの我々二十一世紀に生きる政治家の大きな役割だと思うんです。それについて、一般的な答弁で結構です。お願いします。

田中国務大臣 例えば、私は先日WTOに出席いたしまして、シンガポールと日本との間で新時代の経済連携協定の実質的な合意を見まして、お互いに、大変よかった、長い道のりであったけれどもということを確認いたしました。

 そしてまた、ほかにもそういうふうなことを志している方もおられると思いますけれども、日本が変わればといっても、日本も随分変わってきてもおりますし、お互いが相互理解を深めるということが大事だと思いますので、そのための外交努力というものを日本もしてきていると思いますよ。そうでないと、今までの外交努力というものを否定することになりますので、そうした相互の努力が大事であるし、今後も中長期的なビジョンに立っていたしましょうということでございます。

山口(壯)委員 今、日本が変わっているというふうにおっしゃいましたけれども、日本の我々の歴史を見てみれば、例えば、吉田茂が日米安保を結んで、そして池田勇人が所得倍増と言っていった。そのことは、自分さえもうかればそれでいい、そういうことが今まであったと思うんです。例えば靖国に行っても、おれが行って何が悪いんだ、こういう議論では中国や韓国の共感は得られないと思うんです。

 そういう意味で、みずからがともに生きていきたいんだ、こういう気持ちを政治家としてアジアに発信していく、そのためには外務大臣ももっともっと、パキスタンに出張するなり、いろいろなところに行くべきだと思いますよ。その発信の努力というものがなされていないんじゃないかということを指摘しているわけです。

田中国務大臣 経済成長は、所得倍増、これは池田内閣でございまして、その立派な女婿の元外務大臣がいらっしゃいますけれども、あの池田内閣の経済に対する努力、あのことによって非常に日本は戦後大きな飛躍をいたしましたし、盤石な経済基盤を築くことができたわけですね。ですから、非常にいい方向へ日本がかじを切った、日本が努力をした証左ではないでしょうか。

 ですから、時代の変遷の中でいろいろな課題がそれぞれの国、日本も含めましてありますけれども、その中でもって、いろいろな情勢を勘案して、そしゃくして、分析しながら、最善の努力をして今日が来ていますし、また将来に向けても、皆さん、その立場でもって、もちはもち屋の分野で、つかさつかさで官も民も努力をしているというのが実情だというふうに私は思っております。いかがでしょうか。

山口(壯)委員 これは大きな理念の問題でもありますし、それを我々政治家として、日本が今まで、例えば富国強兵、自分さえ強ければいい、それでアメリカとの戦争に結びついた、その後は、兵隊を強くするということはアメリカに任そう、我々は所得倍増、経済中心で行こう、ところがそれが、自分さえ強ければいい、自分さえもうかればいい、そういう時代が二十一世紀になって変わっているんじゃないかということを指摘したわけです。それはいいです。

 次に、きょうの質問に移らせていただきたいと思いますけれども、先ほど、対テロ、こういう問題も、我々日本が二十一世紀にどういう役割を果たしていくかという観点から、非常に大事な部分を含んでいると思うんです。その中で日米がどういう関係でありたいのか。

 その中で、この間、調整委員会というものが日本で開かれて、アメリカからも来て、代表団はたしかクリステンソン公使だったと思いますけれども、そういう中でアメリカは一つ気になることを言っているわけですね。

 きのうもうお伝えしていますからお持ちだと思いますけれども、十一月三日の産経新聞に報道されている、例えばクリステンソン公使が言っているのは、日本にも米軍などに頼らない自己完結的な対応を要請していると。自己完結的というのは、セルフサポーティングパティシペーションということだそうです。この報道、まずこれについて、これは事実ですね。

田中国務大臣 今の問いに対してお答えをさせていただく前に、池田内閣での戦後の経済成長路線、これは自分さえよければいいというような観点で行ったものではありませんので、少なくとも、御自分の御意見はそうかもしれませんけれども、それは日本の経済成長を大変歪曲するものでもありますし、私はそれには同意しないということを申し上げます。

 そして、今の質問でございますけれども、十一月三日の新聞に載っていた自己完結的な対応ということについてですけれども、そうしたことを要請したことはあるかないかということですが、ないと承知いたしております。

山口(壯)委員 申しわけない、質問が全然違っていると思うんです。アメリカが自己完結的な対応を日本側にしてくれと要請したと書いてある、それは事実ですかとお尋ねしているんです。日本が要請したかどうかは聞いていません。

田中国務大臣 二日に開催されました第一回調整委員会におきましては、アメリカ側から、多国間でのオペレーションを行う際は参加国が自己完結的能力を持って参加することが重要であり、今回の日本の支援はこれを満たしている旨の発言はありました。

 したがって、アメリカ側より、自衛隊が行う支援活動について自己完結的な対応を要請したという事実はありません。

山口(壯)委員 米側から要請した事実はありませんと今お答えになりましたか。

田中国務大臣 そうです。

山口(壯)委員 ということは、この報道は真実じゃない、こういうことですか。

田中国務大臣 つぶさに今、その記事自体をここには持っておりませんけれども、私どもは今申し上げたとおりでございます。

山口(壯)委員 外務省の発表でも、この自己完結的な対応を要請されたというふうになっているんです。答弁に誤りがあると思いますけれども、事務方と打ち合わせて、きちっとした答弁をしていただけますか。

田中国務大臣 では、ちょっと新聞の方に御確認なさってから御質問なさったらいかがでしょうか。

山口(壯)委員 今の答弁は非常に失礼な答弁だと思いますよ。

 当然、質問は、この新聞社に確認してから言っています。そして、これはきちっとした事実ですねということを外務大臣の方から確認いただきたいと思って質問しているんです。当然、新聞社の方には確認しています。お答えください。

田中国務大臣 それでは、もう一度読ませていただきますので、よくお聞きいただきたいと思います。

 二日に開催された第一回調整委員会においては、アメリカ側から、多国間でオペレーションを行う際は参加国が自己完結的能力を持って参加することが重要であり、今回の日本の支援はこれを満たしている旨の発言があったと申し上げているのでございます。

山口(壯)委員 したがって、アメリカからそういうきちっとしたメッセージが出されたわけですよね。だから、アメリカから要請されていないというのは、私は不正確な言い方だと思うんです。アメリカはきちっとそういうことを言ってあるんです。

 こういうことについては、例えば、自己完結的な能力というものをアメリカが言っているということは、日米同盟のあり方について非常に大きな意味を持っているわけなんです。この自己完結的な対応というのがどういう意味を持っているのか。例えば自衛隊が攻撃をされた場合に、自分たちのことは自分たちで守りなさいということまでを意味しているのか。そのことについてはアメリカ側に確認されましたか。

田中国務大臣 自己完結的な対応とは何を意味するかということを申しますけれども、一般論として申し上げますと、自己完結的対応ということは、ある部隊がみずからの部隊の面倒をみずから見ることができる能力のことでございまして、支援に際して、支援国が被支援国に依存する形をとらないということであると理解いたしております。

山口(壯)委員 一般論としてというふうに今お答えになったわけですけれども、アメリカ側のつもりとして、今大臣の答弁のとおりであれば、これは、例えば自衛隊が攻撃を受けた場合に、自分たちのことは自分たちで守るということにもつながっていくわけです。それでよろしいのでしょうか。

田中国務大臣 それは、その場合によるというふうに思います。

山口(壯)委員 軍隊を動かす、これは防衛力と言おうが、実際には世界からは武力と見られている。実力部隊を動かすわけですから、そのときにケース・バイ・ケースということを我々国会議員が言ってはおしまいだと思うんです。我々はシビリアンコントロールということを大事にしなければいけない。その場合に、どういう場合にはどういうふうにするのか、ケース・バイ・ケースでやっていいということにはならないと思うんです。

 それは、我々が、例えば外務省であれば外交をつかさどっておられる、外交が防衛をきちっとコントロールできるかどうか。一九三〇年代に、幣原協調外交か、あるいは当時は田中義一内閣のもと軍が非常に強くなったわけですけれども、我々が、外交が防衛をきちっとコントロールできているかということも含めて、それはシビリアンコントロールのすべてじゃないと思いますけれども、そういう意味では、ケース・バイ・ケースでやりますということでほうっておく話じゃないと私は思うんです。

 もう一度お答えできますか。

田中国務大臣 もう一回基本的な、自己完結型のことですけれども、先ほどのことをもう一回読んでも結構なんですけれども、これはアメリカ側が言っているんであって、そのことについてこちらを要請したことはないわけです。ですから、多分委員の御議論の中心はそこにあると思うんですけれども、そこのところをまず確認させていただいてよろしいんでしょうか。

山口(壯)委員 これは、日米できちっと気持ちを合わせておかなければいけない大事な話だと思うんです。

 というのは、外交交渉というのは、例えば、一九五一年に安保条約ができたときにも、アメリカ側から、極東の安全のために在日米軍を、メイ・ビー・ユーティライズド、使うことができるということが提案されたわけです。それで日本側は、ああ当然だ、朝鮮戦争も行われているから、日本以外のところにも使うことができて当然だということを勝手に思い込んだ。ところがアメリカは、いわゆる防衛義務、ディフェンスコミットメントを託そうとしていた、そういう努力の中でそれが出てきたんです。

 それで、慌てて当時の外務省の方が、しまった、これはメイ・ビー・ユーティライズド、メイ・ノット・ビー・ユーティライズド、使われないかもしれないということを意味しているんだということを次の日にすぐ気がついて、当時のアメリカのこちらにいた事務所の方に、これは、日本の本土が攻撃されたときには、シャル・ビー・ユーティライズド、必ず使われる、そういう意味ですね、ただし、朝鮮戦争のような場合には、メイ・ビー・ユーティライズドあるいはメイ・ノット・ビー・ユーティライズド、使われるかもしれない、使われないかもしれない、こういうことでいいですねということを確認したけれども、もう遅かったんです。アメリカは、よし、防衛義務が外れたと。これが、十年後の一九六一年の日米安保改定まで、防衛義務を取りつけるまで物すごい苦労を日本はしたわけです。

 したがって、アメリカがどういうことを言って、それに対して、どういう意味かということはきちっと日本側から確認しておかなければいけないと思うんです。そのことについては、これは確認されたんでしょうか。

田中国務大臣 日本の支援内容に関しましては、日本側からの一般的な説明に対しましてアメリカ側から感謝と満足の意が示されておりまして、日本に対する要請というものはございません。ですから、そういう意味におきまして、日本からアメリカに確認をするとかいうことはいたしておりません。

山口(壯)委員 この間の調整委員会で確認されなかった、それはそれでよくわかりました。

 他方、それであればこれから、第二回が行われる際には、あるいはもう既にワシントンとの間でもいろいろな、我々在米大使館も持っている、あるいは在京のアメリカ大使館だってあるわけですから、この自己完結的な対応の趣旨というものをアメリカとの間できちっと詰めておくことが、この日米同盟がきちっと機能するということになるわけです。

 そのことについて、確かめられるということをお考えでしょうか。

田中国務大臣 アメリカ側は日本の支援を、これでもう十二分に満たしているという発言もございますけれども、また状況を勘案して、必要があれば委員のおっしゃるようなことになるかもしれませんし、今の状態では、これでお互いに十二分に理解をし合っているというふうに思います。

山口(壯)委員 このアメリカが言っている自己完結的な対応ということについて、我々は一般論で今議論をしてしまっているわけですね。したがって、本当にアメリカが、例えば日本の自衛隊が攻撃された場合には、同盟国なんだからちゃんと守ってやるよ、そういうような意思疎通があってもいいと私は思うんです。そのことがなければ、勝手にやりなさい、我々は戦争で忙しいんだから、そんな水や油を持ってきた人たちの面倒を見られないというようなことであれば困るわけですね。

 戦争状態というのは、いつ何が起こるかわからない。特にテロというのは、どこに仲間がいて、だれがつながりを持っているかがわからないというところが我々一番大変なわけですから、そういう意味では、これは絶対攻撃されないということは言えないと思うんです。

 したがって、そういう場合には、きちっとアメリカとの間で、自己完結的と言うけれども、大丈夫でしょうということを聞いておくのが日本の外交当局の役割だと思うんです。それはいかがでしょうか。

田中国務大臣 そういう御心配もわかりますけれども、やはりもっと強い信頼関係とか実績によって日米間は結ばれておりますけれども、そういう危惧がある方がおられる、そういう御意見もあるということは認識いたしまして、今後外交に取り組んでまいります。

山口(壯)委員 答弁として前向きにお答えいただいたわけですから、ぜひともそういうふうにしていただきたいと思うんです。

 だけれども、そういう心配があるから、そういう心配を持っている人もいるからということじゃなくて、これは外交当局のみずからの仕事として、自衛隊を送る限りは、防衛庁だけの仕事じゃないんですね。アメリカといろいろな意味で意思疎通をされておられる、それは外務省の仕事なんです。そういう意味では、外交的ないろいろなルートを通じてきちっと確認していただきたいと思うんです。

 アメリカが自己完結的に対応してくれと言った心の底には、これから日米安保関係あるいは日米同盟を進化させたい。よく英語ではエボリューションという言葉をアメリカ人は使い始めていますけれども、その持つ意味というのは、言葉どおりに進化というよりも、むしろ、アメリカはアメリカのことで手いっぱい、日本は自分のことは自分でやってくれ、例えばミサイル防衛構想についても、そういう議論がつい当てはまってしまうわけですね。したがって、我々は、この日米同盟のあり方については、きちっと揺るぎない関係なんだということを確保しておかなければいけない。

 そういう意味では、私は、アメリカが日本を一人前の対等なパートナーとしてこの同盟関係は見ていない可能性もあるんじゃないのか。特に、それは集団的自衛権ということも関係してくると思うんです。それは、アメリカから小泉総理が、集団的自衛権についても、もう日本も大人になったんだからきちっと考えてくれということを言われて、前向きに答えられているわけですね。

 そのことについて、外務大臣としては、この集団的自衛権というものをどういうふうにお考えでしょうか。

田中国務大臣 今委員がおっしゃったように、小泉総理も、要するに、今後幅広い議論が起こってさまざまな角度から検討していくことはいいことであるということはおっしゃっております。

 これはもう全員、日本国民、関心のある方は御存じのことでございますけれども、お経読みみたいになりますから申し上げなくてもいいんですけれども、日本はやはり主権国家でありますし、国際法上集団的自衛権を有していますが、第九条というもののもとにおきましては、自衛権の行使は必要最小限度の範囲であるということでありますので、実態といたしましては、集団的自衛権を行使することはその範囲を超えることになりますので、憲法上許されないということが基本であります。それはもう委員御案内のとおりであります。

 しかし、それを超えて、それを踏まえて、超えてと言うとまたしかられますが、それを踏まえて幅広くやはり国民的な議論をしていくべきであるということは思いますし、現に、衆参両院で憲法調査会というものが設置されていまして、いろいろな意見を集約したり意見の開陳があったりいたしておりますので、そういう議論は大いに結構だというふうに思います。

山口(壯)委員 その集団的自衛権の大前提として、私はシビリアンコントロールということがあると思うんです。

 これは私の個人的見解でもあり、また私の仲間の見解でもありますけれども、いずれ集団的自衛権というのは、ほかの国が持っている、もちろん、ほかの国はそれを使える、これは当たり前のことだと思うんです。国連憲章で初めて出てきた権利の概念ですけれども、そのことをあえて自分から否定しているのは日本ですね。そういう意味では、いずれこれは認められて当たり前ということは、多くの国民の人が今だんだんそういう気持ちになりつつある。だけれども、その大前提としては、シビリアンコントロールがきちっと整っていない限りは、こういう集団的自衛権というのはまだ早いと私は思うんです。

 そういう意味では、大臣、この間横須賀の港から空母キティーホークが出た際に護衛艦が自衛隊からエスコートについた、そういうことの経緯の中で防衛庁は、これは通常の警戒監視だからということで官邸の秘書官に連絡した。これは私はシビリアンコントロールとしては不十分だと思うんです。報告はしたけれども、官房長官も知らないと言い、総理も知らないと言い、したがって、では行っていいよ、やっていいよというコントロールはなされていないわけです。だけれども、これは初めてのことですから、その政治的な大きな意味からいえば、きちっとしたコントロールがされてしかるべき、それがなければ、私は、集団的自衛権あるいは今回の国会の事前承認なしの法案というのはまだ早いんじゃないかという気がするわけです。

 特に、大臣、横須賀のキティーホークが出港した際に海上自衛艦のエスコートがついた、それについてシビリアンコントロールがなされていなかったんじゃないかということに対して、どういうふうな見解をお持ちですか。

田中国務大臣 シビリアンコントロールというものは、政治の軍事に対する優先性といいますか、そういうことを意味するわけですけれども、今、その経緯については、時間もありませんからそんなに繰り返して申し上げるといけないと思います。

 今おっしゃったとおりのことが防衛庁から、あるいは官邸からも出ておりまして、私は、今の法律の中で、ルールの中で、これはそれでよかろうというふうに思っております。

山口(壯)委員 防衛庁から官邸に報告はあった、ところが、報告は一方的にあっただけで、そのことに対して行っていいよというようなコントロールはなされていなかったわけです。そのことに対して、私は、外務大臣の立場として、日米安保条約をつかさどる外交当局の立場として、それはきちっとしたコントロールがされてしかるべきなんじゃないのということを言われてもよかったと思うんです。

 それは、外務大臣、あの当時言われたんでしょうか。

田中国務大臣 それでは、また誤解があるといけませんから読み上げさせていただきます。

 今回の警戒監視活動ですけれども、キティーホークの横須賀からの出港の件ですけれども、日本の安全に影響を与える事態、またはその兆候を発見するとの観点から、防衛庁設置法第五条の第十八号に定める「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究を行うこと。」に基づいて実施されたものでございまして、これは自衛隊が通常行っている警戒監視活動と同様であるというふうに理解をいたしております。

 そして、先ほども申しましたけれども、シビリアンコントロールは、もう委員御案内のとおり、政治の軍事に対する優先性といいますか優位性でありまして、民主主義国家においてはぜひとも確保されなければならないものであるということはわかっております。

 そして、本件の監視活動が防衛庁長官の権限に属する事項でありまして、文民である防衛庁長官の命令に基づいて実施されたものと承知いたしており、そのような意味におきまして、シビリアンコントロールの観点から特段に問題があったというふうには考えておりません。したがって、私からは何も特別そのような発言もいたしませんでした。

 以上です。

山口(壯)委員 今の大臣がお読みになったのは防衛庁の見解です。防衛庁としては、通常の警戒監視活動であったから特にこれは問題ないんだ、そういう立場をとっている。それはそれで防衛庁の立場です。

 他方、外交当局の立場としては、これは通常の警戒監視じゃない、大きな政治的な意味を持っている、特に日米安保条約の中で大きな意味を持っている。そういうことを通常の警戒監視だからということであれば、これは国民に本当のことを説明していることにならないと思うんです。シビリアンコントロールというのは、国民の代表である我々がきちっとコントロールしていく、そのために国民にきちっとしたことを伝えていくということだと思うわけです。

 私の趣旨が必ずしも伝わっていないかもしれないけれども、私は別に、大臣のやったことがいい悪いということを言っているんじゃないんです。こういうことを議論することによって我々がシビリアンコントロールのあり方をもっと完全なものにしていく、そういうことでないと、これから集団的自衛権の話を積極的に詰めていくということも難しいということを指摘しているわけです。

 したがって、外交当局のすべての大ボスとして、これから対テロ特措法に基づいて自衛隊も動いていく、そういう中で、これは防衛庁の言い分だけにとらわれずに、外交的な観点から、その持つ国際的な意味も含めて、防衛庁にもきちっと言うべきことは言っていくということをお願いしたいと思います。

田中国務大臣 防衛庁の見解が間違っているとは私は全然思っておりませんけれども、しかし、委員御指摘のように、内閣の一員、外務大臣として、今後とも防衛庁に関するシビリアンコントロールの確保ということのために、私もまたさらに努力をしたいと思います。

 それから、中谷防衛庁長官も、シビリアンコントロールの重要性につきましては、もう防衛庁長官になる前から、私も防衛庁関係の施設を一緒に視察に行ったりいろいろしておりますけれども、常に口になさっておりますので、大変そうしたことにはアラートでおられるということも申し添えます。

吉田委員長 山口壯君の質疑は終了いたしました。

 次に、前田雄吉君。

前田委員 民主党の前田雄吉でございます。

 本日は、貿易と我が国の海外投資に関する外交政策について伺います。

 論点は三点ございまして、一つは、WTO協定の譲許表に関するもの、そして、モンゴル、パキスタン投資協定に関するもの、そして第三点に、EUの東方拡大に伴う我が国の投資とのあつれき、この三点について伺わせていただきます。

 まず第一に、一九九四年の関税及び貿易に関する一般協定の譲許表第三十八表の修正等に関する確認書についてでございますけれども、これは、WTO協定に含まれます我が国の譲許表に関して、米の関税化に伴う改正について定めるものでありますが、関税化によりまして、外国産の米の輸入の現状というのは、米一キログラムに対して三百四十一円の高関税がかけられております。これに関して、JR東日本の子会社が、弁当として輸入いたしましてこの高関税を回避するという事例もございました。

 この十一月九日から十三日まで、中東のカタールのドーハにおきまして新ラウンドが開催されます。この場において米の高関税に対して日本に大きな矢が向いてくるのではないかと思いますけれども、外務大臣は、各国のこうした日本の高関税に対する批判に対してどのように御対応なされるのか、方針を伺いたいと思います。

田中国務大臣 残念ながら私は、前回の、ついこの間のあのシンガポールでのWTOには出席をいたしましたけれども、今回は、国会審議もございまして国連も行けなくなったことですから、そうした経緯と同じで、ちょうど時期もほぼかち合いますので、植竹副大臣が行っておられます。

 ただ、私がこの間シンガポールへ行きましたときに、やはりADの問題にしろ何にしろたくさんいろいろなことがあって、その中で、お米のことについては具体的には余りマルチの場では議論いたしませんでしたけれども、それぞれの国によって格差もございますし、経済状況が違うということですけれども、そういう中でもって、今後お米の問題はやはりかなりタッチーな問題であるというふうに思っていますし、また、日本は日本の非常に強い希望があるということは申し上げざるを得ません。また、これが実情であるというふうに思います。

前田委員 次に、日本とモンゴル、日本とパキスタン投資協定について伺います。

 この二つの投資協定の今回の条文を比べますと、次の二点の疑問点が発生します。

 まず第一に、モンゴルとの協定では、十四条におきまして、投資家が相手国の法令を速やかに入手できる、そうした保障がなされておりますけれども、パキスタンとの協定ではこれがありません。

 また、第二点ですけれども、同じように、モンゴルとの協定では、第十五条において、投資を阻害する効果を持ち得る措置を禁ずるという条項があります。パキスタンとの協定についてはこれがございません。日本の投資家にとって、こうした投資の阻害要件を禁止することは非常に大事な条項だと思います。

 この二点についてお答えいただきたいと思います。

林政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、日本・モンゴル投資協定におきましては、最近の国際的な投資協定の動きというものを踏まえまして、法令の公表が一点、それから貿易阻害投資措置の禁止というものについて規定をしておるわけでございますけれども、他方、日本・パキスタン投資協定についてはそういう規定がございません。

 これは基本的には、日本・パキスタン投資協定というのは、一九八七年に交渉を開始いたしまして、九八年に署名に至ったものでございますのに対しまして、モンゴルの投資協定は、二〇〇〇年になりましてから交渉を開始いたしまして、二〇〇一年に妥結して署名をしたものでございます。こういう交渉時期のずれがございまして、古いといいますか、従来のパターンの同投資協定には今御指摘の二点の規定がなかったわけでございますけれども、近年の国際的な投資協定の動きを踏まえまして、政府として、これを入れた方が改善であろうということで、最近の投資協定の交渉においてはこれらの規定を盛り込むように交渉方針として変えたということでございます。その結果を反映しているわけでございます。

 他方、それでは、これがないことによって日本の投資家がいろいろ不利をこうむるではないかという御懸念があろうかと思うのでございますが、まず貿易阻害の投資措置につきましては、WTOにおきましてTRIMs協定という貿易関連投資措置に関する協定がございます。これによって基本的に禁止されているわけでございます。日本もパキスタンもその締約国ということでございますので、この措置の禁止自体については、日本、パキスタン間において実態的に問題が生じるということは想定されておらないわけでございます。

 また、法令の公表につきましては、実はモンゴルとの交渉に先立ちまして関係企業の要望を聴取いたしました際に、モンゴルにおいては法令が非常に変わってフォローしづらいということ、これが投資の一つの阻害要因になっているという要望が寄せられたものですからこれを盛り込んだという経緯がございますけれども、他方、パキスタンの際にはそのようなお話がなかったということもあって、こういうことになっております。

 ただ、法令の公表といいますか、そういう情報の公開というのは非常に有用なことだと思いますので、これは日本、パキスタンの協定においても協議する条項というものもございますので、そういう中で法令の公表などをしかるべく求めていきたいというふうに思います。

前田委員 それでは確認させていただきますけれども、相手国の法令、パキスタンについても入手が保障されている、そして投資の阻害要件の禁止もなされているわけでございますね。確認いたします。

林政府参考人 貿易阻害投資措置については、これは日本もパキスタンも基本的に禁止されているという状況でございますので、実態的な問題はないということでございます。

 それから、法令の公表については、協定上の義務として、あるいは法律的な枠組みとして、公表がパキスタン側に義務づけられているということは確かにございませんけれども、実態の問題として法令の公表自体が問題になっているというところはございませんで、そういう問題があるような場合には、協議条項に従って問題を提起してまいりたいというふうに思っております。

前田委員 では次に、EUの東方拡大に伴う我が国の投資とのあつれきについて御質問いたします。

 コソボ紛争が一九九九年三月から六月にあった以降、このEUの東方拡大という方向性はだんだん明らかなものになってきました。特に中東欧におきまして、我が国の投資もどんどん拡大されていきました。そうした中東欧の大国でありますポーランドを一つ取り上げさせていただきます。

 ポーランドにおきまして、ポーランド政府は、経済特区を設けて、いろいろな優遇措置をもって投資のインセンティブを与えて、我が国及び海外の直接投資を集めてきたわけでございます。しかし、EU加盟を目前にいたしまして、EUの方から、こうした優遇措置というのは公正な競争を阻害するものである、そして、出てきた製品がEUの市場で自由に売り買いされる、そういったことは困るんではないかという懸念が生じまして、EUの方からポーランド政府にそうした旨の通告がありました。

 そして、ポーランド政府は、去年の末、十二月の終わりですけれども、日本に対します経済特区における優遇措置を撤廃する、そうした措置に出てきました。そこの中で、投資しました日本の企業から見ますと、そうした優遇措置は約束されたものである、これに対して今さら撤廃されて税金をかけられるというのは非常に困ることだという声が多く上がってまいりました。そこで、この件に関して御質問をさせていただきます。

 ちょうど一カ月前に、トヨタとプジョーが合弁会社をポーランドにつくりまして、自動車のエンジン工場を建設するという報道がなされました。ちょうどポーランドは中東欧の大国であります。地政学的にも非常に重要な国であると思いますけれども、こうした投資の優遇措置の撤廃等ありますと、非常に日本の進出している企業にとりまして大変なことでございます。

 特に、具体的に投資インセンティブがどんなものであるかというお話をさせていただきますと、二〇〇〇年までに十五の経済特区に進出した企業につきましては、投資後十年間は法人税が全面免除される、その後も十年法人税が五〇%免税になる、そうしたインセンティブが与えられておりました。非常にこうしたものは日本の企業にとって死活問題になってくると思います。不公正な競争とのEUの批判を受けまして撤廃されまして、税金がまた課せられることになるんではないかと日本の企業は非常に心配しております。

 現時点で、この現状について外務省本省はどのように把握をなされているのか、お答えいただきたいと思います。

田中国務大臣 委員の御地元の愛知県のことでもありまして、きっと御関心がおありだというふうに思いますけれども、ポーランドの経済特区における免税措置ですけれども、EU代表部におきましても、また在ポーランド大使館もですけれども、EUの拡大が日系企業に与える影響についてやはり注意深くフォローしておられまして、そして、ポーランドを初めとする加盟候補の国というものの税率の動向につきましても、情報収集でありますとかあるいは調査を行うとともに、それ以外の国への透明性の確保、それから日系の企業への非差別的な扱いなどにつきましても、こちらは申し入れをいたしております。

 細部につきましては事務方からお答え申し上げます。

齋藤政府参考人 ポーランドにおきましては、失業率の高い地域の雇用対策等を目的といたしまして、経済特別区法という法律が九四年の十月に施行されております。この法律に基づきまして、経済特別区への進出企業に対しまして、先生御指摘のとおり、初めの十年間は法人税を一〇〇%、次の十年間は法人税を五〇%、それぞれ免除することなどが行われることになってございます。

 ポーランドは現在、EUとの間で加盟交渉を行っておりますが、外国投資に対する優遇措置に変更をもたらし得るいわゆる競争分野につきましては、許容される優遇措置、移行期間の長さ等で意見が対立しておりまして、いまだ交渉を了するに至っていないというふうに承知しております。

 ポーランドに進出している企業の間で、EU加盟プロセスの中で、経済特別区にかかわります法制度の変更等により不利益をこうむる可能性を懸念する向きがあるようでございますが、政府といたしましては、ポーランド政府に対しまして、EU加盟交渉におきまして透明性を確保するとともに、十分な情報提供を随時行うよう求めてきているところでございます。

前田委員 私が調査いたしましたら、トヨタが進出しております経済特区のバウブチェフ、ここの市長が、二〇〇一年については税金は取らない、ただ二〇〇二年についてはまだ不透明であるということなものですから、ここは二〇〇二年、非常に不安なわけでございますね。

 そしてもう一つ、クラコフという京都みたいな町がございますけれども、この古都の近くにティヘという町がございます。ここの方は深刻でございまして、いすゞの工場がございます。ここは二〇〇一年からもう徴税するということを言っております。

 日本の外務省として、こうした海外に進出している企業の不安を払拭すべく、どのようにポーランド政府、もしくはポーランドの各地方自治体に働きかけなさっているのか、伺いたいと思います。

齋藤政府参考人 ポーランドの経済特別区におきましては、九四年十月に施行されました経済特別区法によりまして不動産税が免除されることとなっておりました。しかしながら、本年一月に施行されました地方自治体歳入に関する改正法という法律によりまして、突然、経済特別区も含めましてすべての地域で地方自治体は不動産税を徴収することができるようになったというふうに承知しております。

 政府といたしましては、投資活動が円滑に行われるためには法制度の安定性、予見可能性を確保することが極めて重要である旨、ポーランド政府、自治体政府に対し申し入れを行ってきておりまして、今後とも行ってまいる所存でございます。

 ちなみに、例を挙げますと、本年一月のこの新しい法律の施行以降、二月から九月にかけまして、駐ポーランドの上田大使が累次申し入れを行ってきていることを御紹介させていただきます。

前田委員 今、欧州局長の御説明の中で、情報を収集しておられるとか、それから現地の上田大使が一生懸命やられているという話はよくわかりましたけれども、やはり私は、現地の声をいろいろメール等で伺いますと、とにかく孤軍奮闘。経済産業省から行かれている方もそうです。そして、ジェトロの皆さんもそうです。上田大使も、もちろんそうだと思います。本省として手を打っていただく、何かアプローチをぜひしていただきたいと思います。さもないと、日本の進出した企業は不安でしようがありません。こうしたこともちょっと申し上げまして、さらに進めさせていただきます。

 日本の対EU外交というのは果たしてこのままでいいのかどうか、そんなことを危惧いたしております。この十年間に、アメリカ、韓国等は、ポーランドへ直接投資あるいは企業進出を極めて戦略的に早い時期においてなしている一方で、我が国は、アジアの金融危機あるいは経済破綻した東南アジア、中国に目を奪われて、なかなかEUの東方拡大に注視できなかった。この中東欧の技術力とかインフラとか、そうした潜在能力を十分に見抜けなかったというところがあるような気がしてなりません。

 こうしたポーランドに進出した企業に、何か国家として戦略的なサポートができないかどうか。これは、何も日本の国益だけじゃなくて、何らかの交渉を進めて、現地政府が、ポーランド政府がそうした制度的な予見性が高まれば安心して投資家も投資できるわけですね。そうなれば、ポーランドの方にとっても、またEUにとっても非常に利益につながることだと思いますので、そうした戦略的サポートをぜひとっていただきたい。

 一つ、現地の高速道路等のインフラの話を例として挙げますけれども、トヨタが進出しておりますこのバウブチェフの経済特区においては、高速道路の交通インフラは十分整備されていません。わずかに六十キロ、七十キロ離れた東ドイツの側には高速道路網は完備されているわけですね。そうしたことがございます。

 アメリカは、この点、自国の企業が進出する際に、地域のインフラ整備というのは政府に対して要求しまして、これはきちんと整備完了されております。この日本とアメリカの違いは、やはり数段おくれているような気がしてしようがありません。

 ぜひ日本の外務省も、海外に出た日本の企業に対して何かそうしたサポートができることをお考えいただきたいと思うんですけれども、田中大臣、いかがでございますか。

田中国務大臣 お答えする前に、EUのことをおっしゃっておられますけれども、確かに、私はG8の会合等に出ましても、ヨーロッパはヨーロッパで非常に地理的にも近いし、言葉も近くてしょっちゅうコミュニケーションがあって、日本は意外と安心しているけれども、過去、政権にもよりますけれども、外交的な戦略がなくて、逆に安心しているために少し距離が出てきてしまっているのかなということを思っておりましたけれども、国会がお休みになったら総理も欧州に行かれるかもしれませんので、そういう中でもってまた距離が縮むと思っております。私もソラナさんとかミッチェルさんとか電話をいただいてお話しするたびに、日本はやはりEUの問題にもっと関心を持ってほしいということを指摘されております。

 今委員からお尋ねのことでございますけれども、外務省としましても結構今までも、経済局ですとか地域局とか、省としては緊密に協力をしながら対応もしてきていますし、戦略的にもう少し仕事ができるような環境をつくろうというふうなことで努力もしてきております。これは役所の弁解をしてもしようがないんですが、ことしの四月には、欧州連合の拡大を見据えまして、欧州局の中に欧州国際機関室というものも設置いたしております。

 ただ、それではもちろん、まだまだ十二分ではないということもわかっておりますので、ポーランドのこと、それからトヨタのことだけを考えていらっしゃるわけではもちろんないと思いますが、余りトヨタとおっしゃると大変かと思ってずっと心配しながら聞いておりましたけれども、やはり、ポーランドに関しましても、今後、EUの加盟ということも当然ポーランドは視野に入れているというふうに考えますので、中東欧の大国である同国との関係の強化というものを日本も図っていくべきだというふうに思います。

 そして、日本企業の進出を含む経済環境、先ほど山口委員からの御質問にもありましたけれども、やはり本当に経済環境を具体的に強化していくという努力を、ターゲットを絞ってしっかりストラテジーを持ってやらないと、これは実現しないと思います。ですから、そういう意味でもって環境の整備を具体的にするということを外交努力としてやっていかなければならないというふうに思います。

 それからまた、今の現地の制度でございますけれども、そこで日本の企業だけが他の企業と比べて不当に不利益をこうむっているというふうな場合は、ポーランド政府に対してその是正を働きかけるということもしてきておりますし、また今後もできると思います。

 いずれにしましても、投資の保護を含めまして、日本企業が海外で活発に経済活動が行えるように環境の整備をしていきたいというふうに思っております。そして、新しい政権ができたばかりでございますけれども、やはり政治家同士の交流というものも必要であろうというふうに考えております。

前田委員 田中大臣が、積極的な御意見をいただいて、交流を進めたいということもおっしゃられたので非常に安心できます。

 もう一つ、私は思うんですけれども、今回のような事案が出てきた場合に、なぜEUの日本代表部がこれを扱わないのか。私は驚きましたけれども、中東欧のまとめ役がウィーン大使であられるということを伺って愕然といたしました。冷戦の遺物の構造がまだここにもあるんじゃないかという気がいたしました。田中大臣が機構改革を言われていますので、ぜひこうした点も、今の現状に合った改革でもっと日本のEU代表部を強化するという方向で進められてはいかがかと思います。

 実際、EU拡大のプロセスの中で、トルコ、キプロス、マルタがEUに入っていくときに、アメリカ、カナダは、まずビジネスマンあるいは研究者をそこに送り、そして、加盟した後は現地の実戦部隊として、実務家としてそこに常駐させるといった戦略的な外交政策をとってきました。

 日本は、二〇〇二年一月にスロバキアの大使館が開設されるということですけれども、ここでスロバキア語が堪能にできる専門家はお一人しかいないというお話を伺いました。ここには、ソニー、住友電工、松下電子部品とか、日本企業も進出しております。こうしたつけ焼き刃のものではなくて、やはりこれも戦略性を持って御対応をいただきたいと思います。

 ちょっと整理しますと、こうしたEU代表部の強化はいかに思われるか、そして、こうした事例がもし発生した場合にEU代表部の管轄下に置いてはどうか、それに従った外務省の機構改革をなされてはどうかといったことについて、御意見はどうでしょうか。

田中国務大臣 委員がおっしゃっているのは私は全面的に正しいと思いますし、そういう方向性に向けてやはり努力してこなかったという過去の経緯もあるかというふうに思いますね。悪意ではなくて、やはりそこまで目が届かなくて、目先のことに追われていたということがあると思いますが、今も政治の課題でアフガンの問題がありますけれども、それはそれでございますけれども、やはり今おっしゃったような視点は本当に欠落してはいけないというふうに思います。

 かつて、ポーランドからリプシッツという、かつてというか、前々大使というか、今の大使の前でございますけれども、極めて優秀な大使が来ておられまして、私、親しくお話しする機会が何度もございましたけれども、まさしくあの方が思っていらした熱意を今委員がおっしゃったというふうに思いまして、やはりそうした相互の思いがありますので、できることから確実にできるような外交というものを展開しなければということを今再確認いたしました。

前田委員 最後に、先ほど申し上げたこのポーランドの経済特区における免税措置の撤廃に対して、日本企業は心配しておりますので、ぜひ外務省本省の積極的な御対応をお願いします。

 そして、ミレル新首相と、先進七カ国の要人の中でまだこちらから対応していないのは日本だけでございます。ぜひ田中大臣も、あるいは小泉総理大臣も現地を訪れていただきたいと思いますが、この点、いかがでございますか。

田中国務大臣 国会日程がないときに、いずこにでも、懸案をよく整理して、こちらからも伺いたいというふうに思います。

前田委員 では、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

吉田委員長 前田雄吉君の質疑は終了いたしました。

 次に、土田龍司君。

土田委員 昨年の十二月十日にロシアが韓国に、我が国の北方四島周辺水域でのサンマ漁の漁業を許可したことで、ことしの二月二十日以来さまざまなやりとりがあったわけです。

 このサンマ漁に対して、本委員会でも何回も質問が出ていますし、私も何回か取り上げております。これまでのいきさつは大体承知をしておりますし、特に九月の上旬に本委員会でモスクワを訪問いたしまして、領土問題に絡むサンマ漁の問題ということで、この議題が一番のテーマになりました。その際ロシア側から、正しいせりふを覚えていませんけれども、善処したい、来年からは不愉快な思いをさせたくないというような回答があったわけです。

 先日の新聞で、日ロ間で基本的に合意ができたという報道がなされておりますが、この辺の事実関係を御説明ください。

杉浦副大臣 お答え申し上げます。

 委員、お話をお伺いしておりますと、よく事情を御存じのようでございますが、政府としては、もう御案内のとおり、本件は我が国の領土主権にかかわる重要な問題だという認識のもとでずっと一貫して対応しておりまして、総理からも外務大臣からも累次にわたって抗議を行い、各レベルで協議し、誠意ある対応を求めてきたところでございます。

 委員ちょっとおっしゃいましたように、九月十日、十一日の日ロ協議、これはハイレベル協議でございましたが、この問題について、相互に受け入れ可能な解決策を早急に見出すことで一致いたしました。大筋で見通しが立ったと私は認識しておりますが、十月九日の次官級協議を経まして、先般の上海でのAPECの折の首脳会談においても、双方が解決策を模索するための話し合いを続けるということで合意をいたしております。

 問題は、今残されているのは韓国でございまして、日ロででき上がった話し合いの中で、韓国が現実にあそこからサンマをとっておったわけですから、韓国の立場をどうするかということで並行して日韓でも協議を行っておりまして、先月、二度にわたって日韓首脳会談を行いました。総理が会われるたびにしてまいったわけですが、ハイレベルの実務官協議を継続しておるところでございます。そこできちっとした調整を経た上で最終的に合意に達するということに相なるだろう、それを目指して努力をいたしておるところでございます。

土田委員 済みません、ちょっとわかりにくいんですが。

 日ロ間で話を続けるということを合意したんですか、来年からはもうやらないよということで合意したんですか。ちょっとわかりません。それから、日韓の中でも、ちょっと最後のことがはっきりしないんですが、何を合意したんでしょうか。

杉浦副大臣 日ロ間ではまだ、来年は、四島沖においては日本の主権を尊重して、ほかの国に対して漁区を与えないというところまでの結論は出ておりません。そこのところまでには達していないということでございます。

 韓国との関係においては、韓国が実質上あそこからサンマをとっておったということに対してどう対応するかという点について話し合いをしておるところでございまして、日ロ間の協議と日韓の協議を並行して進めて、最終的に韓国側がある程度納得する結論で話を落着させるという、その話し合いが進んでおるところでございます。非常に微妙な段階でございます。

土田委員 いやいや、微妙なら微妙でいいんですが、はっきりわからない、今副大臣がおっしゃっていることが。

 ということは、日ロ間で来年はサンマをとらせないということについてまだ合意はできていないということですね。申しわけないですが、じっと聞いているんですけれども、最後の言葉じりのところだけはっきりおっしゃってください。

田中国務大臣 日ロ間で基本的合意はできておりません。話し合いを続けていくということでございます。そして、日ロ間は、もう御案内のとおりですけれども、領土問題がございます。そして、派生的にこうした漁業問題があります。

 そして、韓昇洙長官からこの間も、ロシアと日本とハイレベルの会議をしたその夜、ぱっと私に電話がかかってきまして、どういう話があったのかといって、非常に神経過敏になっておられます。きょうも、別件でこれからお昼にまた韓国の韓昇洙長官ともお話もいたしますけれども。

 話をもとへ戻しまして、この間、上海での首脳会談がございましたけれども、そこでも双方が解決策を模索するための話し合いをするのはいいことであるという方向性でございますから、やはりこれから話し合いをしていくということでございまして、今副大臣がおっしゃった合意があるということは、そうおっしゃっていないと思うんですけれども、ちょっと違うのでございますが。

土田委員 合意がされていないということですね。これからも話し合いを続けていこうということですね。

杉浦副大臣 そのとおりでございます。

土田委員 ということは、日ロ間でお互いが納得できるような話し合いを今後とも続けていくということで、基本的に合意されたわけじゃない、話し合いを続けていくと。日韓もそうですね。話し合いを続けていこうと。何ら具体的な進展はしていないというふうに理解してよろしいですね。

 そこで、もう一つは、やはり日韓の問題は、三陸沖のサンマ漁の問題はまだ残るわけですね。これにつきましても、もちろんリンクしてくるのは当然なんですが、外務省の韓国との交渉過程を見ておりますと、少し毅然たる態度がとられていないように私は感じるんです。

 これはもうお互いの国益にかかわる話し合いでございますので、もうちょっと日本側の主張は主張として、それから北方四島周辺のサンマ漁と絡めて、明確な申し入れとともに、やはり断固たる態度をとっていかなきゃならないような気がするんですが、韓国との問題について、どっちでもいいです、お答えください。

杉浦副大臣 毅然たる態度をとっているというふうに受け取っていただけないとすれば大変申しわけない次第でございまして、きちっとそういう態度で韓国と話し合ってまいる所存でございます。

土田委員 私はそう感じましたので、そのように申しました。別にけんかするわけでも何でもないわけでして、国益ということと日本の主権という問題が絡んでいるわけでございますので。副大臣は、五月だったと思うんですが、私の質問に対して、この問題は漁業問題であり領土問題であると冒頭答えられておりましたので、少し弱腰かなという感じがしましたので、そのように申し上げました。

 次に、北朝鮮の米支援問題についても幾つか確認をさせていただきたいと思うんですが、昨年十月に五十万トンの米支援をしたわけです。世界食糧計画の要請は十九万五千トンだったんですが、日本側は、それをはるかに上回る好意的な五十万トンを、寄贈といいましょうか援助をいたしました。

 ところが、あれから一年以上たったわけでございますが、この五十万トン支援に対して、例えば、日朝交渉の再開の見通しも全く立っていない。当然のことながら、拉致問題については全くこの一年間お休み状態になっている。ミサイルの開発問題についても進んでいない。さて、去年支援した米五十万トンの効果というのはどういうのがあったのでございましょうか。

杉浦副大臣 米支援につきましてはさまざまな評価があろうと思いますが、大変に食糧不足である北朝鮮にとっての救いであったことは間違いないだろうと思うわけでございます。

 北朝鮮からは、これまで数次にわたって感謝の表明がなされております。最近では、昨年十月、我が国の決定に対しまして、洪成南総理より当時の森総理に対しまして感謝の表明がございましたし、本年九月には、御存じのとおり、対北朝鮮食糧支援視察団が訪朝いたしたわけでありますが、その際にも北朝鮮側より感謝の表明があったということは申し上げてもよかろうかと思います。

土田委員 感謝の表明があったことはわかりました。先ほど幾つか例を挙げて言いました、我が国にとって極めて関心の高い問題、あるいは、関心だけではございません、極めて重要な問題について、何らかの進展あるいは北朝鮮からのコメントがあったのでございましょうか。

田中国務大臣 基本的に人道的な考慮で支援しておりますけれども、北朝鮮側はちゃんと喜んでおられます。そして、そういうことにつきまして、効果が今すぐ出てくる問題ではないと思います。

 もちろん、日本と北朝鮮の間ではいろいろ問題があります。繰り返しませんが、拉致の問題、テポドン等ありますけれども、やはり、こうしたことについてだんだんと、感謝もしていただきますし、長いプロセスの中でもって評価もされていくものというふうに考えます。

土田委員 これからは何かが出てくるという期待感でございますか。では、この一年間は、感謝の気持ちは表明されたけれども、具体的な進展は何もなかったということですね。

 そして、ことしはまた米支援の要請が来ていますね。さて、ことしの問題について、どういう方針でいかれますか。基本的なお考えをお話しください。

杉浦副大臣 北朝鮮に対する新たな食糧支援についてでございますが、現在、世界食糧計画、WFPより正式な要請はまだ受けておりません。したがって、現在、政府としては、新たな食糧支援について具体的な検討を行っているという事実はございません。

 なお、一般論として申し上げれば、政府としては、北朝鮮に対する食糧支援は、先ほど大臣が申し上げましたように、人道上の考慮に加えまして、種々の要素を総合的に勘案しつつ検討していくべき課題であるというふうに思っております。

土田委員 米支援要請が来ているということですべての新聞に書いてありますし、私も外務省の方からそう聞いているんですが、それは間違いですか。まだ来ていないんですか。各紙同じような文言で、支援要請が来ている、それについて検討が始まっていると書いてあるんです。支援要請が来ていないのに、なぜそういった検討があって、あるいは自民党の中でもそういった意見の交換がされているというふうになっているんですが、本当ですか。

杉浦副大臣 WFPの方でいろいろ検討なされているやに承っておるところですが、正式な要請は、我が国にWFPからまだいただいていないということを申し上げたわけでございます。

土田委員 わかりました。正式というのは、文書か何かで来るんですか。それがまだ来ていない、来ていないけれども既に外務省の中ではそういった検討がなされている、なされているために、出すべきか出さない方がいいかとか、いろいろな議論が外務省の中でもされている、しかしまだ要請は来ていないからコメントできないという意味ですか。

杉浦副大臣 十月二十六日、世界食糧計画、食糧農業機関、FAOとWFPは、北朝鮮の農業・食料事情に関する合同調査特別報告書を発表しております。そこで、北朝鮮は明年約百三十六万トンの穀物が引き続き不足する見込みである、こう指摘されておるわけでございますが、それに基づいて我が国に対しましてどれだけ支援してほしいという要請は来ておりません。通常、要請は文書で参るようでございます。

土田委員 わかりました。来たらどうするかという質問をすると、仮定の問題には答えないと多分言うでしょうから、もうこの辺でやめておきましょう。

 ただ、いずれにしましても、米支援問題、これは人道上の問題ということで、賛否はあるにしましても、先ほど挙げました拉致問題やミサイルの問題等々につきましても、この拉致問題についても、これはもうここで何回も議論された人道問題です。我が国の邦人を日本国政府は守り切っていないわけですから。これについてこの一年間何も進展がなかった、あるいは、一年だけじゃない、その前から進展していないわけです。日朝交渉の再開のめども立っていない。

 これについてはやはり、真剣にお考えいただいていると思いますけれども、ぜひまた引き続き、国民の関心は非常に高いということをお話ししておきたいと思います。

 それから、時間が来ましたので、ちょっと本題といいましょうか、条約についても一つだけお尋ねをさせていただきます。

 平成十年にこのパキスタンの投資協定が国会に出されましたけれども、核実験をやったということで審議未了になっておりました。それがさきの通常国会で出されてきたわけですけれども、その間、状況は少しも変わっていません。パキスタンはこの三年間にわたって核実験を繰り返しておりますし、今後とも続けると言っているんですが、なぜ急にここに来てこの条約案を出してこられたんでしょうか。

田中国務大臣 今までの経緯は、今委員おっしゃったように、やはり審議未了、結局廃案になったという平成十年のころからの経緯がございます。いろいろ経緯はございますけれども、パキスタンも、核実験の問題、この間もCTBTのことが国連でございましたから御案内だと思いますけれども、日本を初めとする国際社会の働きかけを受けまして核実験のモラトリアムを継続いたしておりますし、今後ともこれを継続するというふうに表明をいたしております。そして、核不拡散の分野で一定の進展を見せてきておりますので、そうした点も踏まえまして、本協定をことしの百五十一回の通常国会に提出いたしました。

 それから、もちろん今度の経済措置の停止についても、政府としては、同措置がふさわしい成果を上げてきたということ、それから現在の国際情勢、もう言うまでもございませんけれども、アフガンの問題、九月十一日以降のこともありますので、そうした情勢にかんがみまして、中長期的にパキスタン支援の必要性が高まったことなどからいろいろな措置を停止することとしましたけれども、これは無条件ではございませんで、核不拡散という分野における状況が悪化すれば、またこの措置の復活も視野に入れて、しかるべき対応も検討しております。

 そして、私がこの間パキスタンの外務大臣とお会いしましたときも、あらゆる面で極めて率直な意見開陳がございまして、やはり日本との投資協定というものも大変歓迎をしておられますし、困難な中でもって、やはり歩み寄っていい状態にお互いになろうという大変強い意思表明もございましたということをお伝え申し上げます。

土田委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

吉田委員長 土田龍司君の質疑は終了いたしました。

 次に、山口富男君。

山口(富)委員 日本共産党の山口富男でございます。

 私は、条約等の質問に入る前に、昨日の安全保障会議で、自衛艦のインド洋に至る海域への派遣決定がなされておりますので、これにかかわって幾つかお尋ねしておきたいと思います。

 政府の発表された文書によりますと、今度の派遣について、テロ対策特別措置法に基づく対応措置の円滑な実施等に資する観点から情報収集を行わせるというふうになっておりますが、これはいつまでに何を情報収集しようということなのか、説明願いたいと思います。

北原政府参考人 お答えを申し上げます。

 昨日の安全保障会議で御了承をいただきまして、情報収集目的で艦艇を派遣しておりますけれども、これにつきましては、私ども、去る九月、総理から発表されましたいわゆる七項目の措置、さらにテロ対策措置法の成立、施行を受けまして、今後、自衛隊によります協力支援活動等を円滑に実施するために必要な情報を収集していこうということを考えているものでございます。

 具体的に申し上げますと、一般的な国際情勢にかかわります情報収集ですとか、今後、先ほど述べましたように、テロ対策特措法に基づきまして自衛隊が協力支援活動ですとか被災民救援活動などを実施するに当たりまして、我々として必要なもろもろの調査をしておく必要がある。その場合には、今後その活動が比較的長期間になることも予想されることにかんがみまして、寄港地の補給能力などの港湾等の状況などを調査したい、そのように考えているところでございます。

 さらに、これから基本計画等で決まります活動等を安全に実施する上でも、我が国から協力支援活動等の実施が予定される海域等にわたりまして、気象ですとか海象、あるいは船舶等もろもろの航行状況などについて調査をしていきたい。

 それから、今御指摘のいつごろまでということにつきましては、我々といたしましては、今申し上げたような情報収集を行うことを予定いたしておりまして、派遣期間は往復でおおむね二カ月程度ということを今見込んでいるところでございます。

山口(富)委員 そうしますと、今の説明ですと、国際情勢に関する問題もどうもこの中に含まれるようですが、この安全保障会議が了承した文書では、テロ対策特別法に基づく関連のものというふうに限定されておりますが、この情報収集というのは、テロ対策特措法にかかわる、それに限定された情報収集じゃないんですね。

北原政府参考人 この情報収集は、先ほど申しましたように、テロ特措法の成立、施行を受けまして、そして今後自衛隊による協力支援活動を円滑に実施していく上で必要な情報を収集するというものでございます。

山口(富)委員 そうしますと、昨日確認されたものは、防衛庁設置法の第五条第十八号に基づくというふうになっております。防衛庁設置法というのは、御存じのように、その第四条で、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つことを目的とする、そのために自衛隊を管理運営、これに関する事務を行うというふうに定められておりますが、一体このどこに、テロ対応、そのための調査、情報収集を可能にするような条項があるんでしょうか。

北原政府参考人 お答え申し上げます。

 根拠につきましては、先ほど申しましたが、防衛庁設置法第五条十八号でございますが、御承知のように、今般テロ特措法が成立をいたしました。そして、その受け皿と申しますか、同時に自衛隊法の附則が、十七号、十八号が改正されました。したがいまして、私どもといたしまして、いわゆる防衛庁の所掌事務になったわけでございますので、この所掌事務に必要な調査研究を実施するということで、防衛庁設置法第五条十八号に基づいて派遣をするものでございます。

山口(富)委員 それはあなた方の、やはりかなり防衛庁設置法の拡大解釈につながる物の見方だと思うんです。

 私、大事な問題なので田中外相にお尋ねしたいんですが、けさの新聞に、福田官房長官が昨日の会見で、今回の情報収集の結果がないと基本計画をつくれないというものではないというふうに言ったという報道がありました。

 これはいわば、先ほど二カ月余り行って帰るんだという話がありましたけれども、基本計画がいつつくられるかという問題があるにしても、それに間に合うかどうかというような話まで報道されておりますからこういう発言になったと思うんですが、私、内閣官房の方にこの発言を尋ねましたところ、記録はないけれども、確かにこのような趣旨の発言はあったと確認いたしましたという返事をいただきました。

 となりますと、法的な根拠がかなりあいまいで、しかも先ほどは、テロ特措法にかかわる、自衛隊の派遣にかかわる情報収集だとおっしゃいましたけれども、それがあろうがなかろうが、基本計画がつくれないというものではないというふうに官房長官が会見でお話しになっているということは、結局、法的根拠も目的というものも極めてあいまいなものになる。これでは、差し引き、残るのは自衛隊を出すだけということに、外務大臣、なるんじゃないでしょうか。

田中国務大臣 私は、官房長官がきのう安保会議の後にその会見をなさったと思いますが、どういう御趣旨でなさったか、直接聞いておりませんからわかりませんけれども、私は必要であるというふうに思っておりますし、そのために、基本計画ももちろん急いでおりますけれども、今回は自衛隊法の第五条ですか、それにのっとってやっておりますけれども、やはり特措法というものをアクセレレートするためにもこれは必要な情報収集活動であるというふうに考えております。

山口(富)委員 田中外相は基本計画の上で必要だとおっしゃり、官房長官はいわば、もう一回紹介いたしますと、情報収集の結果がないと基本計画をつくれないというものではないというふうに言っているわけですから、これはなかなかおかしな話になると思うんです。

 それで、その上で私もう一つお尋ねしたいんですが、今出される派遣部隊というものは、一体、その後そのまま対米支援活動に加わるようなことがあるんですか。これは防衛庁にお尋ねします。

田中国務大臣 済みません。

 冒頭申しましたように、官房長官がどういう状況でどういうふうな発言をなさったかということ、正確に承知は今現在しておりませんけれども、情報収集のための護衛艦等の派遣につきましては、国際的なテロリズムの防止及び根絶のために我が国が主体的に取り組むため、今後テロ対策特措法に基づく自衛隊の活動を円滑かつ効果的に実施する上で重要なものである、私が昨日そういうことを発言しておりますけれども、そこでまた官房長官の言葉も具体的にどういう表現であったかわかりませんが、私どもの意見が不一致しているということではございません。

 なお、防衛庁からもう少し正確を期してお願いしたいと思います。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 まず最初の点でございますけれども、繰り返しになりますが、私どもの情報収集のこのたびの艦艇の派遣は、今後自衛隊がテロ特措法に基づきます協力支援活動等を円滑に行う観点から、事前に必要な情報を収集するためのものでございます。

 その基本計画につきましては、先生も御承知のように、現在政府部内において速やかな策定に向けて全力で取り組んでいるところでございます。現時点におきまして……(山口(富)委員「もう少し短くしていただけませんか」と呼ぶ)取り組んでいるところでございます。その派遣されました艦艇が収集する情報がなければこの基本計画が策定できないというものではない、そのように私ども考えておるところでございます。

 それが最初の問題でございますが、次に、その後この船はどうなるかという御指摘でございます。

 先ほど来申し上げておりますが、今回の情報収集のための艦艇の派遣というのは、あくまでも今後自衛隊が特措法に基づいて行います協力支援活動等を円滑に行う観点から実施するものでございまして、今後協力支援活動等を実施する場合の時期ですとか部隊の内容につきまして、確たることを申し上げられる段階には現時点ではございません。

山口(富)委員 なかなか重大な答弁ですね。

 一つは、あなたは、情報収集、それがないと基本計画ができるかできないか、それにかかわりないんだということを認められました。ということは、情報収集を目的にして派遣するという目的そのものが極めてあいまいなものだということを認めた答弁です。

 それからもう一つは、時期の問題で、今出される派遣部隊がその後どうなるかは確たることは言えないという形で、そのまま対米支援に加わる可能性を否定しなかった。これは私は、やはり実質的な先遣隊の派遣につながるという危険性を持つものだと思います。

 この委員会でも繰り返し私は、今のアメリカのアフガンへの攻撃の問題で、やはりアナン国連事務総長が、もう軍事攻撃や空爆は中止した方がいい、それからこの間のASEANの議長声明でも、ASEAN各国から今の軍事攻撃に危惧の念が出たということ、それが盛り込まれるような部分がありました。こういうところを見ても、憲法上も、それから今の戦時の状態ということから考えてみても、派遣部隊というものの派遣をするのじゃなくて、その中止を求める、このことを私きょう質問の冒頭に要求させていただきたいと思います。(田中国務大臣「委員長」と呼ぶ)後で結構です。きょう二十分しかないのです。(田中国務大臣「ちょっと一言だけ」と呼ぶ)では、後で時間のあるときにやりましょう、条約の問題がありますので。

 それで、投資協定の問題なんですが、日本が投資の促進と保護にかかわる二国間協定を初めて結んだのが七〇年代後半で、それから二十年たつわけですけれども、当時は世界でも二百数十の協定という段階でした。八〇年代の末をとってみても、この二国間協定というのは四百にも満たなかったわけですね。それが、九〇年代に入りまして、この九月に発表されましたUNCTAD、国連貿易開発会議の世界投資報告がありますけれども、この最新版を見ますと、九〇年代に入って世界の二国間投資協定というのは一挙に五倍になった。約二千です。国々で見ますと、物によって数字が違うのですが、百五十カ国前後というところもあれば、百七十カ国を超えるという数字もあります。

 いずれにしろ、非常に大きな規模で投資協定の広がりがあるわけですけれども、こういう広がりの現状とその背景についてどういう考えを持っているか、お尋ねしたいと思います。

杉浦副大臣 おっしゃるとおりの状況でございまして、まさに量的にも質的にもさま変わりといった状況でございます。

 その背景には、やはりグローバリゼーションといいましょうか、世界の大きな経済的な広がりが背景にございますが、それと同時に、投資協定が、かつては開発途上国と先進国間で締結されるというのがそもそもスタートだったわけですが、その投資協定の持っている役割、意味が、お互いの投資の促進に役立つということがわかってまいったということもあると思います。最近では、先進国、途上国間のみならず、先進国の間、途上国の間の協定も非常にふえております。比率にすると、半々よりも多いのじゃないでしょうか。そういうのが背景にあるのじゃないかというふうに思っております。

山口(富)委員 今お話に出ましたけれども、二国間の協定の発展というのは、経済的な意味での投資の力がふえたという条件があると同時に、もう一つは、当該国同士の経済主権を侵さないという、そういう世界の政治の上で発展途上国の政治的な力の前進があったということが大きな背景だと思うのです。

 それで、お尋ねしますが、日本の場合、協定を結ぶ際に相互の経済主権を担保するという問題を協定に、具体的には今度の二つの協定ですが、どのような形と内容で盛り込んでいるのか、簡潔にお答え願いたいと思います。

杉浦副大臣 そもそも、二国間条約も投資協定もそうなんですが、二国間が当事者で交渉して、その内容についてそれぞれの国の意思に基づいて合意の上締結するものでございますので、基本的に、その内容がこの締結国の主権と矛盾するということはどの協定、条約についても本来あり得ないというのが原則であることは御承知のとおりでございます。

 今国会でお諮りしている両協定、モンゴル、パキスタン両協定について申し上げれば、投資受け入れ国が相手国からの投資を許可するかどうかにつきましては、最恵国待遇を保障することを条件にいたしまして自国の関係法令に従って判断することが可能となっております。したがって、自国の国益に著しく反するような投資が行われる場合には、国内法に基づいてこれを不許可とすることは可能と相なっております。

山口(富)委員 今答弁にありました、相互の経済主権をきちんと守る、そして国内法上それに問題がある場合は発言権をきちんと持っているというのが協定上は非常に大事だというふうに思います。

 さて、もう一つ、ウルグアイ・ラウンドにかかわる譲許表の問題についてお尋ねしますが、関税化の特例措置の問題なんですけれども、今アジアでこの特例措置をとっている国はどこがありますか。

塩尻政府参考人 お答え申し上げます。

 今アジアで特例措置をとっているところは、韓国とフィリピンでございます。

山口(富)委員 その品目名は何でしょうか。

塩尻政府参考人 韓国、フィリピン、いずれも米についてでございます。

山口(富)委員 WTO体制のもとで、韓国やフィリピン、ここが米の問題で特例措置をとっているというのは極めて当たり前のことだと思うのです。

 といいますのも、米という、日本の場合は主食ですけれども、食糧自給率を適正な規模にきちんと保持しておくという問題があると同時に、今世紀は世界的に大きな食糧危機が訪れるだろうというふうに言われているだけに、この食糧の問題、米の問題に各国が非常に慎重な対応をとるというのは、私やはり、繰り返しになりますが当たり前だと思うのです。

 ところが、日本の場合は、二年前の国内法の改正で、米の関税措置への切りかえというものを図ったわけですけれども、私たち日本共産党は、その際に、これが米の輸入自由化の方向に大きく踏み出すものだ、その点で日本の農業に大きな打撃を与えるし、食糧自給率を低下させるということで、これに反対の立場をとりました。

 今度の確認書というのは、米の関税化の問題を国際的な方面から約束するということで、国際的な歯どめをなくしちゃうという問題を抱えたものだというふうに思います。その点で、九九年の国内法の改正とあわせて、米の輸入の完全自由化に進むことになる。この点では、日本の農業に対して今度の方向というのはやはり非常に大きな問題を持つ。

 そういう点で、私たちは、政府がこのような関税化を中止して日本の米と農業や食糧主権をきちんと守る、WTOの閣僚会議がちょうどきょうから始まったところですけれども、農業協定の改正なども含めて堂々と求めていく、そういう立場で当たるということを強く求めて、私の質問、ちょうど時間が参りましたので、終わりたいと思います。

田中国務大臣 補足をさせていただきます。貴重な時間でございますので、早口で読ませていただきます。

 先ほどの情報収集のための艦隊派遣でございますけれども、これは、事前に必要な情報を収集するためのものであるということから、基本計画の策定前に派遣することといたしました。そして、基本計画につきましては、派遣された艦艇が収集する情報がなければ基本計画が策定できないというものではありません。

 以上です。

吉田委員長 山口富男君の質疑は終了いたしました。

 次に、金子哲夫君。

金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子哲夫でございます。

 日本・パキスタン投資協定にかかわって、日本の核政策の問題について、幾つかお尋ねをしたいと思います。

 まず最初にお尋ねをしますけれども、昨年の五月に行われたNPT再検討会議では、保有核兵器の完全廃絶を達成する明確な約束が決められまして、日本政府も、昨年の国連における決議の前文の中で、このことを、最終文書を成功裏に採択したことを歓迎しと、その重要性を評価されておりますけれども、この評価については今も変わりがないかどうか、お尋ねしたいと思います。

杉浦副大臣 変わっておりません。

 昨年のNPT運用検討会議で合意されました、全面的核廃絶に向けた核保有国による明確な約束を高く評価しておりますし、変更しておりません。

 なお、つい今般、我が国が国連総会第一委員会に提出して、国際社会の圧倒的多数の支持を得て採択された核軍縮決議案でも、明確な約束の重要性を強調いたしております。

金子(哲)委員 私がこれからお尋ねしたいこともお答えをいただきましたけれども。

 今お話に出ましたけれども、明確な約束について、確かにことしの国連決議の中にも書かれております。しかし、昨年の国連決議では、前文で明確にその重要性というものを認識して、そのために前進させるための各項が提案されておりますけれども、今回のこの決議の中では、明確な約束というのは前文から退けられまして、主文の中の一項目になっているという点が、その点でもまず大きな後退があるというふうに考えております。

 そして同時に、今回の国連決議の中身を見てみますと、本来ならば、昨年よりもことし、ことしよりも来年と、目標に向けて、明確な約束があるわけですから、前進をさせていく、そのために国際環境をつくっていくというのが被爆国日本の役割であるはずでありますけれども、今回提出をされた国連決議の中身というのは、率直に申し上げて、昨年の決議から比べると、大幅に後退をしている。

 今申し上げました明確な約束の問題もそうでありますけれども、そのほかにも、例えば昨年の決議では、CTBTの発効に対して二〇〇三年と目標を設けということが明確に、年数までセットをして提案されております。そしてまた、分裂性物質の生産禁止、効果的な実施を求める条約の合意目標を二〇〇五年とするなど、NPT再検討会議での合意を受けて、私も広島で核兵器廃絶のための運動を続けてまいりましたけれども、日本政府のこれまでの究極的という対応の中で非常に歯がゆい思いをしてまいりましたけれども、昨年はかなり日本が積極的に、イニシアチブを発揮したいということで、具体的な中身を提案された。しかし、今回の決議の中には、この年数は全然削除されておる。早期の発効という表現に変わっております。明確に、去年よりもことしの決議の中身は、日本政府の態度として大きく後退しているというふうに考えておりますが、その点どうですか。

杉浦副大臣 昨年の提案内容よりも大きく後退したのではないかという御指摘でございますが、後退という言葉を使えば、確かに後退した面はあるかと思います。ただ、基本は貫いておると。

 例えば、CTBTの加盟、二〇〇三年ということだったんですが、現実的にそれは不可能だろうという、例えばフランス、イギリスなども、現実的に不可能であろうということで……(発言する者あり)英仏は今回は賛成いたしました。フランスは、昨年は棄権したんですが、ことしは賛成に回ったわけですが、アメリカが強硬に反対いたしましたために、紆余曲折したことは御案内のとおりでございます。

 日本としては、アメリカをできるだけ賛成に引き込もう、賛成しなくとも棄権、昨年は賛成だったわけですが、棄権という状態で妥結を図るために日本も国際社会も努力したわけでございますが、そこのところで、際どいところででき上がった文章だ、決議だというふうに御理解いただきたいと思います。

金子(哲)委員 今副大臣、答弁がありましたように、全く後退をしておりますね。先ほど私が申し上げたとおり、決議案の中身。そして、それはなぜか。

 アメリカの賛成、もしくは、少なくとも棄権どまりにさせたい。そのために、今アメリカが一方的に、CTBTの発効に対しても、自国はやらないという態度に変わった。そのアメリカの協力を得たいというのでしょうか。そういうところで大幅に後退をさせて、結果はどうなっていますか。アメリカは反対されたんじゃないですか。

 これでは全く、日本の外交というのは、核政策にかかわる外交というのはアメリカ依存で、しかもせっかく、せっかくというか、言われたとおり後退までさせたのにもアメリカに反対をされるというていたらくでは、日本の外交は何をやっていたんですか。その点を答えてください。

杉浦副大臣 CTBT早期発効を重視する姿勢を我が国政府は打ち出しておりまして、これはいささかも変えておりません。その決議案がアメリカの賛成を得ることができなかったのは、極めて残念でございます。しかし基本は、私どもの姿勢は維持して頑張っておるということでございます。

金子(哲)委員 それでは、唯一の被爆国とよく日本政府は言いますけれども、説得力が全くないじゃないですか。

 しかも、今回の決議では、先ほど私が申し上げました明確な約束というものが前文から主文の中に格下げをされたことに対して、昨年の五月のNPT再検討会議で非常に重要な役割を果たした新アジェンダ連合の諸国は、棄権に回ったんじゃないですか。アメリカには反対をされ、そして我々がこれから核兵器廃絶のためにパートナーとしてもっと協力関係を持たなければならない新アジェンダ連合の皆さんからは棄権に回られるという、全くていたらくの核政策じゃないですか。

杉浦副大臣 我が国としてもさまざま努力してまいったわけですが、例えば、明確な約束を前文から主文に移したのも、昨年決議よりもその意義を強めるためということでそうしたわけでございます。

 お触れになりました新アジェンダの方々が、去年はみずからの決議案を出されたんですが、ことしは決議案を提出しないまま我が国決議案に棄権したことは、極めて残念であります。

 ただ、新アジェンダの方々とは核廃絶の早期実現という共通の目標を持っておりますので、我が国としては、今後とも引き続きアメリカに対しまして、環境問題でもちょっとアメリカは国際社会と不調和になっておりますが、各種の機会を通じてCTBTの早期批准を積極的に働きかけていく考えでございますし、また、新アジェンダとの間でも、核廃絶の早期実現という共通の目標で引き続き協力して核軍縮、不拡散に取り組んでいく所存でございます。

金子(哲)委員 今副大臣は、新アジェンダ連合とも協力をしたい、棄権に回られたと。だけれども、副大臣はなぜ新アジェンダ連合が棄権に回ったかということが全然ないですね。もし本当に強力な、明確な約束も明確にしながら国連決議を出したとしたら、新アジェンダ連合は私は賛成したと思いますよ。なぜ棄権に回ったんですか。それは、日本の政府が余りにもアメリカの顔を見てこの決議を作成した、日本政府は後退したんじゃないかというところに原因があるんじゃないですか。それを一般的に、棄権をしましたと。その原因は何ですか。

杉浦副大臣 正直申して、私には不可解と申しますか、同調していただけてもよかったんじゃないかと思っております。

金子(哲)委員 それは、副大臣の発言としては、私は絶対認めることはできないと思うんです。それは、議案を提案してから採決までの時間があって、この間、国連において日本の代表部も積極的に新アジェンダ連合と接触をして協力を求めたんじゃないですか。その際に、なぜ賛成できないかという意思表示が明確にあったんじゃないですか。それを、棄権になぜ回ったかわからないというようなことを副大臣がここで答弁してもらっては困りますよ。

杉浦副大臣 いや、理由はわかっておりますが、不可解だ、同調していただきたかったと申しております。

金子(哲)委員 では、理由をはっきりしてください。

杉浦副大臣 新アジェンダの具体的主張といたしましては、明確な約束が昨年我が国決議案では前文に置かれていたにもかかわらず、本年決議案では主文に移された結果、明確な約束が既に合意されたものではなくて将来に合意すべきものであるかのごとき印象を与えること。それから、同じパラグラフに置かれている、全面、完全軍縮と明確な約束をリンクさせることになって、この二つを既に行われた措置である前文と今後行われるべき措置である主文に切り離した昨年の新アジェンダ決議の成果を損なうものだということでございますが、私どもは損なわないと考えまして種々話し合いをしたんですが、そこのところは御理解をいただけなかったというふうに私どもは考えているわけでございます。

金子(哲)委員 今回の国連におけるこの決議にかかわっては、新アジェンダ連合からも日本の核政策に対して非常に厳しい批判が起こり、そしてアメリカからは反対という態度で意思表示が行われて、私は、今後の日本の核政策の推進に当たって非常に大きなマイナス点を今回の国連決議の中では行ったということをまず指摘しておきたいと思います。

 次の問題に移りたいと思いますが、今度は大臣にお答えをいただきたいと思います。

 十月の二十六日に官房長官が、インド、パキスタンの核実験に対する我が国の措置停止に関する談話というのを発表されました。私ども社民党の土井党首が十月二日に本会議の代表質問において、パキスタンに対する四千万ドルの援助について、なぜ制裁を解除したのか、日本は核政策を変更したのかという質問に対して、小泉総理は、今回の緊急経済支援は九八年の核実験以来我が国がパキスタンにとってきた経済措置とは別の次元の問題であり、我が国の核政策の方針には変更ありませんと明確に述べられております。にもかかわらず、この十月の二十六日の官房長官談話では、制裁解除とまでは言いませんが、停止という言葉でごまかしてありますけれども、実質的な解除を行った。

 では、この間に両国は核政策に対してどのように変わったんですか。NPTにも加盟をしない、CTBTの採択も行う意思はない、その両国に対してどのような評価をしてこの解除になったんですか。

田中国務大臣 先日の十月の衆議院の本会議場でのことだと思いますけれども、総理が、パキスタンに対する緊急援助の支援というものはアメリカを初めとする国際社会への、今回の、九月十一日以降ですけれども、国際社会への協力を促進するという観点から発言をなさったものでございます。そして、平成十年の核実験以来日本がパキスタンに対してとってきております措置ですけれども、これとはまた別の次元であるということは、これは御理解いただいているというふうに思いますが、よろしゅうございましょうか。

 そして、インドとパキスタンに対する措置の取り扱いにつきましては、核不拡散上の進展や二国間の関係でありますとか国際情勢すべてを勘案いたしまして、種々の要素を勘案した後、総合的に判断をいたしてきたところでございます。

 そして、同措置を停止するに至りましたのは十月の二十六日でございます。これは一つ目の理由がございまして、それは、核不拡散の分野で、インド、パキスタン両国ともこれまで三年間にわたって、先ほどもほかの方に御答弁しましたけれども、核実験のモラトリアムをしっかりと継続してきております。そして、今後ともそれを継続するという旨の表明があることが一つ。そしてまた、そうした中でもって核、ミサイル関連物質でありますとか技術の拡散防止のための諸施策につきましても厳格な実施をするということを表明してきております。

 日本の措置がそれらのふさわしい成果を上げたと考えられておりますし、パキスタンを中長期的に支援する必要性というものがある。それは、今の現状をごらんになっても御理解いただけるというふうに思います。そして、インドに対しましても積極的な関与を深めていく必要性もございますので、そうしたことをすべて総合的に判断をした結果であるということを御理解願えればというふうに存じます。

金子(哲)委員 大臣のお話の中に、私はごまかしが一つあると思うんですよ。核実験のモラトリアムということと核不拡散ということは、全く違う問題ですね。核不拡散というのは新しい核保有国をつくらせないということでしょう。だけれども、現に、インドもパキスタンも核兵器を保有したままでしょう。しかも、核不拡散の一定の前進があるという、一定の前進というのは一体何ですか。核兵器がなくなって核保有国でなくなったときに、初めて前進するんじゃないですか。

 それから、もう時間が余りないかもわからないのであえて申し上げておきますけれども、もう一つ。今大臣答弁でおっしゃいましたけれども、インド。今回の国連決議で、日本の決議案に反対した国が二つあります。日本の強力な同盟国であるアメリカと、そしてインドでしょう。これになぜ、日本の核政策に、核不拡散を求める方針に対して反対をする核保有の国に対して今の時点で制裁解除するということが、全くそれは理解できません。

田中国務大臣 モラトリアムにつきましては継続をしっかりしてきているということについては、これはお認めいただけるというふうに思います。

 それから、この九月十一日のことがありましてから、やはりパキスタンもインドもテロに対する思いというふうなことも感じてきておられるわけでございますから、そういう中でもって、インド、パキスタンともに累次にわたって輸出管理に係る法制度を整備もしてきておりますし、また、厳格な輸出管理を行う旨、種々の機会をとらえて表明もしております。そして、国内の核施設の防護などについても厳格に実施するということを表明してきております。

 それから、インド、パキスタンが我が国の核軍縮決議案に反対あるいは棄権、アメリカとインドは反対だったわけでございますけれども、そうした態度を示したのだから、これを復活するのはおかしいのではないかというふうにお思いになるかもしれませんけれども、インドもパキスタンも同決議案を支持しなかったことを本当に残念だというふうに、私たちのことをですね、そう思っておりますけれども、やはり私どもの考えが、主張が通るように今後もまたさらに努力をいたしてまいります。

金子(哲)委員 残念でしたという問題じゃないでしょう。具体的にパキスタンとインドの核政策にかかわる経済制裁を解除するかどうかという問題だから、インドとパキスタンの核政策を見て、その上で判断するというのが一番当たり前の考え方じゃないですか。その核政策について、日本政府が核不拡散も含めて核兵器廃絶に向けた決議を出した。それに反対するということは、自分は独自の核路線を歩みますよということを表明したんじゃないですか。

 私は、一般的なほかのことの援助の話をしたんじゃなくて、これまで続いてきた核実験にかかわる、核保有にかかわる経済制裁の解除の問題について、解除するのであれば、重要な核政策の両国における変更がなければならないということを指摘しているわけです。

 しかし、今おっしゃったように、例えば私が言ったとき、核不拡散の一定の前進と。国内でコントロールを始めたらもう認めるんですか、これから日本は。結果としては両国の核兵器保有を、解除するということは認めることになるんですよ、この解除というのは。それぐらい重要な意味を持つ。しかも国連決議で、何度も言うようですけれども、日本のそうした核政策に反対を唱える国に対して、今、経済制裁を解除する理由は何もないじゃないですか。むしろ強化をすべきじゃないですか。その点について、最後にもう一回、明確にお答えをいただきたいと思います。

田中国務大臣 これは、日本がCTBTに対してとっている姿勢というものは一貫しておりますし、今回、今起こっているアフガン、その周辺国での事態ということもやはり現状認識をしながら、そしてパキスタン、インド、それらの国のこれからの将来に対する心組みといいますか努力、そういうものを考えながら、政府として、野党ではなくて政府・与党として、このような判断をいたしましたということを申し上げます。

杉浦副大臣 インドは、私どもがとった停止措置の後に、この間、決議案に反対したわけでございまして、我が国としては、インドに対して引き続き、CTBT署名を含めて、核不拡散上のさらなる進展を粘り強く求めていく考えでございます。

 反対した理由も若干聞いておりますけれども、それについてもただしてまいりたい。

 もし将来、核不拡散分野の状況が悪化したと認められれば、本措置の復活を含めまして、しかるべき措置を検討しなければならないと思っております。

金子(哲)委員 答弁が長くなったのであれですけれども、最後に、もう質問ではありません。

 今おっしゃったように、官房長官談話の、核不拡散の状況が大きく変化している、十一月五日の国連決議の採決の際のインドのとった態度というのは重要な判断材料だということを申し上げて、終わります。

吉田委員長 金子哲夫君の質疑は終了いたしました。

 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

吉田委員長 これより各件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定の譲許表第三十八表(日本国の譲許表)の修正及び訂正に関する二千年十一月二十七日に作成された確認書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

吉田委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、投資の促進及び保護に関する日本国とモンゴル国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決をいたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

吉田委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、投資の促進及び保護に関する日本国とパキスタン・イスラム共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決をいたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

吉田委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りをいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

吉田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時六分散会




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