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第10号 平成14年4月17日(水曜日)

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平成十四年四月十七日(水曜日)
    午前十一時五分開議
 出席委員
   委員長 吉田 公一君
   理事 浅野 勝人君 理事 石破  茂君
   理事 小島 敏男君 理事 坂井 隆憲君
   理事 首藤 信彦君 理事 中川 正春君
   理事 上田  勇君 理事 土田 龍司君
      今村 雅弘君    北村 誠吾君
      小坂 憲次君    高村 正彦君
      中本 太衛君    原田 義昭君
      細田 博之君    水野 賢一君
      宮澤 洋一君    望月 義夫君
      伊藤 英成君    金子善次郎君
      木下  厚君    桑原  豊君
      前田 雄吉君    丸谷 佳織君
      松本 善明君    今川 正美君
      東門美津子君    西川太一郎君
      鹿野 道彦君    柿澤 弘治君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   外務副大臣        植竹 繁雄君
   外務大臣政務官      今村 雅弘君
   外務大臣政務官      水野 賢一君
   政府参考人
   (防衛庁防衛局長)    守屋 武昌君
   政府参考人
   (金融庁総務企画局長)  原口 恒和君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 林  景一君
   政府参考人
   (外務省大臣官房参事官) 三輪  昭君
   政府参考人
   (外務省大臣官房領事移住
   部長)          小野 正昭君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局長
   )            谷内正太郎君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            田中  均君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    藤崎 一郎君
   政府参考人
   (外務省欧州局長)    齋藤 泰雄君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局長
   )            安藤 裕康君
   政府参考人
   (財務省国際局長)    溝口善兵衛君
   外務委員会専門員     辻本  甫君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十七日
 辞任         補欠選任
  丹羽 雄哉君     北村 誠吾君
  東門美津子君     今川 正美君
  松浪健四郎君     西川太一郎君
同日
 辞任         補欠選任
  北村 誠吾君     丹羽 雄哉君
  今川 正美君     東門美津子君
  西川太一郎君     松浪健四郎君
    ―――――――――――――
四月十五日
 核兵器廃絶条約の締結に関する請願(金子哲夫君紹介)(第一七三五号)
 同(中川秀直君紹介)(第一七八九号)
 同(増原義剛君紹介)(第一七九〇号)
 同(中林よし子君紹介)(第一八五三号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約の締結について承認を求めるの件(条約第九号)
 国際電気通信衛星機構(インテルサット)に関する協定の改正の受諾について承認を求めるの件(条約第二号)
 国際労働基準の実施を促進するための三者の間の協議に関する条約(第百四十四号)の締結について承認を求めるの件(条約第三号)
 世界保健機関憲章第二十四条及び第二十五条の改正の受諾について承認を求めるの件(条約第四号)


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     ――――◇―――――
吉田委員長 これより会議を開きます。
 テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官林景一君、大臣官房参事官三輪昭君、大臣官房領事移住部長小野正昭君、総合外交政策局長谷内正太郎君、アジア大洋州局長田中均君、北米局長藤崎一郎君、欧州局長齋藤泰雄君、中東アフリカ局長安藤裕康君、防衛庁防衛局長守屋武昌君、金融庁総務企画局長原口恒和君、法務省刑事局長古田佑紀君、財務省国際局長溝口善兵衛君の出席を求め、それぞれ説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
吉田委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮澤洋一君。
宮澤(洋)委員 自由民主党の宮澤洋一でございます。
 川口大臣になられまして初めて外務委員会で質問をさせていただきます。大臣は、私の中学、高校、大学と先輩に当たられまして、ともかく、どうも揺らいでいる日本外交、また外務省をぜひとも早く立て直しをしていただきたいなと強く期待をしております。
 外務省の改革について質問をしたかったんですが、条約の審議ということで、条約について少し質問をさせていただきまして、時間が残れば外務省改革についても少し質問をさせていただきます。
 昨年の九月十一日に、本当に思ってもいなかったような、アメリカにおけるテロが発生する。二十一世紀は、国家と国家が名乗りを上げて戦争をするような時代ではないな、やはりテロとの闘いかなと思っておりましたところ、あれだけ大きなテロが発生したということで、まさに我々の時代、テロをどうやって防止するかということが大変重要になっている。そうした意味で、この条約、早く批准をし締結をしていただきたいなと思っております。
 外務委員会に入ってからいろいろ勉強しておりますと、署名はしたものの、たなざらしになっている条約というのがたくさんあって、何で日本の外務省はこんなに遅いのかな、政府は遅いのかなと思っておりましたけれども、この条約は九九年の十二月に国連総会で採択されて、我が国も昨年の十月に署名をした。今国会に提出されるということで、珍しく外務省が素早く動いてくれたな、ここに至るまでは、外務省の方、また法務省、財務省、関係省庁の方はよくやってくれたなと思って、そういった意味で大変感謝をしております。
 一方で、本条約、本年の四月十日には、二十二カ国が締結したということで、発効済みということで、中を見てみますと、G8の国でも、カナダ、フランス、イギリスと、三カ国が既に署名している。小さな国で手続がどうなっているかわからない国はともかくとしましても、それなりの国が既に日本よりも早く締結をしているというのを見ますと、日本ももうちょっと早くてもいいんじゃないか。
 先ほど、大変素早く動いてくださったと申し上げたんですけれども、一方で、もっともっと早い手続というものが、これから、大変動いている時代、また外交関係も大変素早い動きが必要な時代に、もっと手続が早く進められないのかなと思っております。
 カナダ、フランス、イギリスがどういう手続になっているか知りませんけれども、そういう国に学ぶべきところといいますか、さらに批准に向けての国内手続を早くするということをどうしたらいいのかなと思っておりまして、ほかの国がどうなっているかということを事務方に伺いますと同時に、大臣に、これからもっと早く進めるように、心構えをひとつ述べていただきたいなと思っております。
川口国務大臣 まず初めに、宮澤議員のようなすばらしい後輩が国会で御活躍をいただいていることについて、私は、中学校、高等学校、大学の先輩といたしましてと言うのもおこがましいんですけれども、大変にうれしく思っております。物理的な年齢だけは先輩でございます、ほかのことはそうでもございませんけれども。
 今の委員の御指摘は、外務省として条約の締結をもっと早く進めるべきであるというおしかりの言葉と受けとめさせていただきます。
 条約の締結につきましては、国家として、長期にわたる法的な権利を得、義務を負うものでございまして、大変に重い行為でございます。特に、条約を締結するに当たりましては、一般に、条約で約束する内容の国内的な実施が確保されることが重要で、必要でございます。そのために、関連をする国内法令の内容を精査いたしまして、そごが生じていないか、あるいは、生じている場合にはどういう改正あるいは新規立法が必要であるかといったことを検討いたしまして、整合性を確保する必要性があるわけでございます。これが仮に確保されていませんと、国際約束、国際的な約束をしたことについて違反をするおそれがございますので、我が国としては検討を十分に、慎重に行うということにしております。
 多数国間の条約の締結に当たっては、政府部内で一義的に責任を持っているのは外務省でございます。関係省庁がございますので、その目的、意義、内容、締結の必要性等につきまして、それから国内法との整合性につきまして、十分に検討をし議論をしていくという過程を経ます。その上で、政府として締結が適当であると考える場合には、その国内実施の確保を担保することが必要でございますので、法制度上の手当てを含めまして、政府全体として意思統一を図って、国会に御承認をお願いするということでございます。条約によりましては、特に法制度上の手当てに関して、このような政府内での意思統一に時間がかかるものがあるわけでございます。
 このテロ資金供与防止条約につきましては、昨年の九月十一日に米国で発生いたしました同時多発テロの事件の後、政府の中で極めて高い優先順位を付しまして、検討を加速化させてまいりました。
 そのような意味で、外務省といたしまして、何が早期の締結が望ましい条約であるかといった政府の中での意思統一をできるだけ早期に行って、その後の締結準備作業を迅速に進めるということを鋭意行っていきたいと考えております。
小野政府参考人 委員御下問の、本件条約の各国の取り組みの状況でございますが、本件資金供与防止条約につきましては、同時多発テロ事件当時は四カ国のみが締約国であったわけでございますが、本年四月十一日現在、二十八カ国が締結となっております。
 G7では、イギリス、フランス、カナダの三カ国は既に締結済みでございますが、残るアメリカ、ドイツ、イタリアは、いずれも締結に向けて具体的な検討に入っているというふうに承知しております。例えばアメリカでは、同条約の実施法案が下院を既に通過しております。現在上院の審議に付されている状況にあるというふうに承知しております。
 それから、G7以外の国につきましても、ペルーそれからチリ、ボリビア等の中南米諸国、それからアルジェリア等の国の締結によりまして、締約国が飛躍的に増加してきているという状況でございます。韓国を含むその他の非締約国につきましても、安保理決議に基づく要請を踏まえまして、締結に向けて積極的な取り組みが行われているというふうに承知しております。
宮澤(洋)委員 いろいろ国内調整、時間がかかるということはよくわかりますけれども、日本だけどうもおくれているなということがないように、ほかの条約ですけれども、ぜひ努力していただきたいなと思っております。
 今、アメリカ等々の話がありましたけれども、この手のアングラマネーということになりますと、常に、スイスはどうだ、こういう話になりまして、私も、スイスは国連に入っていないな、ですからこの条約とは関係ないのかなと思っておりましたら、きのう聞いておりましたら、加盟国でないけれどもスイスはこの条約に署名しているというので、そういうこともできるのかと思ってびっくりしました。
 少し本題から離れますけれども、三月でございますか、新聞を読んでいましたら、スイスが国連加盟に向けて動き出したというような記事が載っておりましたけれども、その状況、また今後の見通しについてひとつ教えていただきたいと思います。
齋藤政府参考人 お答えいたします。
 スイスの国連加盟に向けての動きでございますが、先生御指摘のとおり、本年三月三日にスイスにおきまして国民投票がございまして、スイスの国連加盟が可決されました。現在、連邦政府部内で正式加盟の手続を開始しておりまして、来月以降、アナン国連事務総長に対しまして、スイス大統領名で正式な加盟申請書が提出される予定というふうに承知しております。その後、国連内での安保理あるいは総会の手続を経まして、九月の国連総会において加盟が承認される運びになるというふうに思っております。
宮澤(洋)委員 近いうちに加盟するということですが、この条約自体は、加盟国でないけれども署名はしている。政府としては条約に賛成だという意思表示をしたということだと思いますけれども、批准をするかどうかということがわかればそれも教えていただきたいと思いますし、その辺がわからないにしても、アメリカや日本が一生懸命やっているけれども、一番の金融国といいますか、そういうマネーが集まるスイスがしり抜けというわけにはいかないと思いますので、いずれにしても、スイスも努力するような外交努力というのをぜひお願いしたいと思っておりますので、スイスの状況等についてひとつ、局長でよろしいですから、お願いいたします。
齋藤政府参考人 スイスが署名しておりますので、我々としては、批准に向けて国内的な努力が払われることを期待したいと思いますけれども、まず、事実関係として一つ申し上げておきたいのは、テロ資金を規制する国内法といたしまして、スイスにおきましては、金融部門におけるマネーロンダリング撲滅のための連邦法というのが九八年に発効してございます。この法律によりまして、金融機関に対しまして、マネーロンダリング行為や犯罪組織との関連が疑われる財産につきましては司法警察省に届け出る義務が課されております。この法律及び関連の政令によりましてテロ資金が規制されているというふうに承知しております。
宮澤(洋)委員 では、次の点に移りまして、この条約は、テロリストに対する資金供与を禁止するという意味で、テロを直接防止するということではなくて、テロの準備行為を規制する、いわば予備罪といったものを設けるという条約だと思います。
 その関連からいいますと、今までテロ防止関連で十一の条約がございますが、そのうち、犯罪化条項、犯罪とするという条項が含まれている条約が九つある。これは附属書に書いてあるわけでございますけれども、この九つの中で、テロ行為自体を含めて、予備罪的なものまで犯罪とするといったようなことを規定する条約はあるのでしょうか。
林政府参考人 お答えいたします。
 この条約は、御指摘のとおり、テロ行為に対する資金提供行為または収集行為を、当該資金が実際にテロ行為に使用されたか否かを問わず、独立に犯罪として処罰するということを義務づけておるわけでございます。そういう意味で、御指摘のとおり、いわば予備的、準備的な行為を処罰することを義務づけているということでございます。
 これまでに、犯罪化条項を含みます既存の九本のいわゆるテロ防止関連条約につきましては、予備的行為の定義にもよりますけれども、この条約のような意味において予備的行為を処罰するということを義務づけているというものはございません。
宮澤(洋)委員 そうしてみると、新しい類型の条約ということになるわけでございますが、大規模なテロには当然、相当な資金が必要で、その資金をどう集めるかということを規制するというのは、予備罪を設けて規制するということは大変重要なことであり、当然なことだと思います。
 ただ、テロをある意味で未然に防止するといった意味では、資金もございますけれども、例えば武器を買い集めるといった行為も規制すればより効果的なのだろうと思います。この条約の交渉の過程でもそうした議論が一部あったやに伺っておりますけれども、その状況について教えていただけますでしょうか。
林政府参考人 このテロ資金供与防止条約の草案が議論された際には、交渉の途次の話ではございますけれども、アメリカがこの条約の対象といたしまして、テロリストのための隠れ家、あるいは虚偽の書類、今御指摘の武器弾薬、致死装置または武器もしくは弾薬に関する訓練等の物質的支援、英語で言いますとマテリアルサポートを対象とすべきだという主張を行ったという経緯がございます。
 ただ、この条約自身は、やはりテロリストに対する資金の供与ということで総会決議を受けて検討を行ってきたということもございまして、関係の諸国からは、アメリカの意図するところはわかるけれども、そこまでこの条約の対象を広げることはいかがなものかという意見が相次ぎまして、結局、アメリカの提案というのは採用されませんで、物質的支援に係る規定は削除されたという経緯がございます。
宮澤(洋)委員 アメリカの提案の中身、今伺っただけでは詳しくはわかりませんけれども、武器については、銃砲等につきましても、我が国はある意味では先進国の中で最も厳しい規制をしているという、いい立場にあるということも考えれば、すぐにできないにしても、我が国としてもそういうものを国際社会の中で、テロリストが武器集めをすることの禁止というようなことを、また、それを助けることの禁止というようなことを少し主張していったらいいのかなという気がしております。
 大臣、お話し中だけれども、聞こえていないな。では、植竹副大臣、ひとつ今の話について、今後どう考えられるか、お答え願いたいと思います。
林政府参考人 申しわけございません。まず、事実関係的にちょっと申し上げます。
 このテロ資金供与防止条約の起草段階の話は今申し上げたとおりでございますけれども、特に昨年の九・一一以降、テロ組織等が資金だけではなくて武器などを入手するということの危険性というものも、やはり国際社会において大分強く認識されてきておるということでございまして、この点につきましては、国連の安保理等も含めまして、大分議論が高まりつつあるということでございます。
 我が国としましては、先生も御指摘のとおり、外為法を通じてのいろいろな武器輸出のこともございますし、それから、テロリスト向けということでは必ずしもございませんけれども、大量破壊兵器であるとか小型武器であるとか、いろいろな形での輸出規制については取り組んできております。
 そういうことで、関係諸国と緊密に協力しながら、こういう取り組みを通じまして、テロ抑圧にも資するような形で取り組んでまいりたいというふうに思っております。
宮澤(洋)委員 金の面は手当てしても、武器等、ともかくテロの予防的な、未然に防止するという観点からぜひとも日本外交を推進していただきたいなと思っております。
 この条約または国内法は、予備的な行為を規制する、まさに未然防止という観点から大変大事だと思っておりますが、一方で、予備的行為を規制するというのは、人権といいますか、乱用といったことになりますと大変怖い面が一方であると思っております。効果的だけれども、その使い方については相当、細心の注意が要るのではないかと思います。
 そうした意味では、法務省が今国会に提出しています公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律案の実施につきましても、これは法務当局において相当慎重にやっていただく必要があるなという気がしております。
 また、この条約の関係でいいますと、それこそ9・11以降いろいろな国が、国内の反政府勢力を弾圧と言ってはいけないのでしょうけれども、攻撃するのに、テロ対策だというようなことを言い出した国が多いというようなことも聞いております。テロリスト対策を口実に、国内の政府に反対する勢力を排除するというような国は結構あるわけで、そのためには、この条約第十五条、なかなかこれはわかりにくい条文でございますけれども、そういう政治的な理由のみで身柄の引き渡しを言ってくるような国については云々といった条文が入っておりまして、これが大変重要なのだろうと思います。
 ただ十五条というのは、私も、法律を何度かつくったことがある身でも、読んでもなかなか意味がわかりにくいところがございまして、それをもう少し具体的に、副大臣、教えていただけますでしょうか。
植竹副大臣 今宮澤委員御質問のとおり、本条約を運用するに当たりまして、テロ行為の防圧という条約の趣旨目的と人権保障とのバランスに留意すべきことは当然であり、テロ行為とは関係のない、反政府勢力を弾圧せしめるための手段としてこれを乱用してはいけない、そういうことは当然であり、また自明の理だと考えるべきであると思います。
 今御指摘のあった十五条というのは、そういう意味ではいろいろな、大変難しい問題を含んでおりますが、条約の中に、犯罪人引き渡しの請求等が、人種あるいは宗教、政治的意見などを理由として行われたものであると信ずるに足りる実質的な根拠がある場合には、引き渡しなどを行う義務を課するものと解釈してはならないと規定するものであります。
 したがいまして、政府といたしましては、右規定の重要性を十分に認識し、そして関係法令を適正に運用していく所存であります。
宮澤(洋)委員 今副大臣からお答えあったわけですが、もう少し具体的に、例えばこういう場合には引き渡しはしないのだというようなことがわかれば、林審議官、ひとつお願いをいたします。
林政府参考人 ちょっと、お答え申し上げる前に、基本的な論点でございますけれども、これはあくまで、この条約そのものは犯罪行為というものが存在するということが前提でございまして、今までのテロ条約で犯罪とされている行為、それから公衆を脅迫するような目的で殺傷行為を行うということ、そういう少なくとも締約国であればもうどこの国でも恐らく犯罪とされている犯罪行為というものを前提にして、それに対して資金を供与するということを犯罪にしましょうということでございまして、その行為そのものについては割合むしろ絞り込まれた形のものになっておるんだと思います。
 ただ、この十五条の規定がございますのは、そのための犯人の引き渡しということに藉口して引き渡しを求めて、むしろそれとは別のところにある何らかの理由によって政治犯として処罰するといったようなことがあってはなりませんということでございまして、もし、犯罪自体は割合軽微あるいはその根拠がいま一つ希薄であるにもかかわらず、どうも前後の動きを見てみると政治的な弾圧のために引き渡しを求めているのではないかといったことが相当確信を持てるような場合ということであれば、これは引き渡しをしないということがあっても差し支えない、引き渡しが義務ではないということでございます。
 ただ、念のために申し上げますけれども、引き渡さないからといって、もし犯罪行為に対する資金供与という犯罪行為があるということが裏づけられるようでありましたら、その国、受け入れ国といいますか滞在国におきまして訴追をするということは必要になるわけでございますが、それに付随する、それとは別の政治的弾圧みたいなものが母国で行われるような可能性がある場合には、それは引き渡す必要はないんですよということを言っているということでございます。
宮澤(洋)委員 今の審議官の御説明、ちょっと一つわかりにくかったのは、附属書に掲げる条約の適用の対象になる行為、犯罪というのはまだ行われていなくていいわけですね。行われていなくていい、行われたらおしまいだと。行われていなくてよくて、その行為を助けるために資金を集める行為がこの条約で犯罪になる。
 したがって、一番わかりやすいのは、例えば東チモールはこういう状況になっていますけれども、インドネシアが、東チモールの反政府ゲリラがテロをやっている、こういうテロをやりそうだ、附属書に掲げる行為をやりそうだということで、その助ける組織が日本にあってお金を集めているじゃないか、こういうことで引き渡しを言ってくる、こういうことですよね。そういう場合にどうだ、引き渡さないのか、こういう質問なんですけれどもね。
林政府参考人 確かに、これは本犯のもとになります犯罪の既遂を前提にしてはおりません。しかしながら、その犯罪というものが起こるか起こらないかわからない、憶測程度ということでそれに対して資金を供与するというようなことでは、これは足りないだろう。相当具体的な意図を持って実行するということを知っていて、あるいはそういうことを意図して資金を供与するということがこの条約上の犯罪ということでございますので、かなり具体性を持った行為ということを前提にしておるということでございます。
 ただ、おっしゃる趣旨は、そこのところの実は具体性がないにもかかわらずあるかのごとくこれを利用して、別の意図を持って引き渡し請求がなされるというようなことであれば、それは引き渡さないということもあるということでございます。
宮澤(洋)委員 いずれにしても、テロ行為を未然に防止するということは大変大事である、一方で乱用になってはならないということになりますと、今のお話を聞いていましても事前の情報の入手がいかに大事かということで、ぜひとも外務省におきましても、いろいろな情報ルートからきっちりした情報を集めて、未然にきっちり防止するように、また乱用にならないように努めていただきたいなと思っております。
 質問時間もあともうほとんどなくなったわけですが、外務省改革ということで、大きな話を切り出しますともう時間がないものですから、一つだけ大臣にお考えだけ聞きたいなと思っております。
 それは、大臣も通産省にいらっしゃいまして、国際関係、外務省といろいろ仕事のつき合いがおありだった。また、アメリカ大使館にも勤務された。私自身も大蔵省におりまして、外務省の方とはいろいろな意味で仕事上のつき合いがたくさんありまして、率直に言いまして、外務省の役所の方というのは大変できる方が結構いらっしゃる。本当にすばらしい、大蔵省の人以上にできる方がいらっしゃる。
 一方で、どうも組織としてなかなか動いているところが見えてこない、組織としてなかなか動けない。そういった意味で、かつての大蔵省、かつての通産省に比べて、ちょっと国内の省庁としては違う役所だなというのが最初の印象だったわけでございます。
 今回いろいろな事件が起こっていますけれども、例えば対ロ政策一つとってみても、外務省が外務省としてきっちりとした意見統一をして、それで組織としてそれをきっちり実行していくということがあれば、このような問題は恐らく起きなかったんだろうなという気がしております。
 そうした意味で、外務大臣に、恐らく外務省に乗り込むという気概で外務大臣になられたと思いますけれども、外務大臣になられる前にどういう印象を外務省に対してお持ちで、それをどう変えていこうと思って乗り込まれたか、それだけ最後の質問で聞かせていただきたいと思います。
川口国務大臣 今、外務省にもう二カ月以上おりまして、その過程でかなり私の考え方も変わってきたところがありますので、外務大臣になる前に外務省のことをどう思っていたかというのは、今ちょっとはっきりもう申し上げられなくなってきてしまっているんですけれども、私は外務省に対しては、基本的に委員がおっしゃったのと同じ印象を持っていたような気がいたします。
 外務省の個人個人、非常に優秀な人間がいると思います。恐らく組織のあり方としては、私がよく知っている組織というのは現在の経済産業省で旧通産省、それから環境省ということでございますけれども、外交という仕事の特性上、やはり優秀な個人がいい情報をとってくるのであって、そういう意味で、その段階では組織というよりは個人プレーである部分が多いというのが仕事の特質ではないかと思います。そういったことが組織のあり方、機能の仕方について若干の影響を与えているのではないかなというのが、私の個人的な感想でございます。
宮澤(洋)委員 どうもありがとうございました。これで質問を終わらせていただきます。
吉田委員長 宮澤洋一君の質疑は終わりました。
 次に、伊藤英成君。
伊藤(英)委員 民主党の伊藤英成でございます。
 今ちょうど、自民党の委員の方から外務省改革に絡んでの外務大臣の所見を求める話がありました。私からも、それにも関連をしてちょっと申し上げたいと思っているんですが、今私なんかが非常に思いますのは、本当に日本の外交が世界に信頼されるといいましょうか、あるいは尊敬というか、あるいは敬意を持って見られるというか、そういう外交に本当にしたいな、そういうふうになるといいなという感じを持っているんですよ。もちろん外務大臣もそういう思いだろう、こう思うんです。
 そんな思いで、それこそ十年あるいは二十年前といいましょうか、そのぐらいのことをちょっと考えますと、日本の官僚というのはよく、まさに世界に冠たる官僚、そしてそれぞれの役人の皆さん方が本当に国益を考え、そしてまさに日本の国をおれたちがあるいは私たちが担っている、こういう思いで取り組んでいた、あるいはそういうイメージを多くの人もまた持っていた、あるいは海外からも持たれていたんではないかと私は思うんですよ。もちろん外務大臣御自身も、官僚の一人としても大変な御努力をそんな感じで払われてきたんではないか、こう思うんです。そういう状況があった。今の状況について外務大臣はどんな感じを持っていらっしゃるかしらん。
 そして、これはたまたまと言っていいかもしれませんが、今ちょうど五月号の文芸春秋、この文芸春秋の目次のところをぱっと開きますと、「大特集 政治四流、経済三流、外交五流」と書いてあるんですね。また、その次の大きな目次みたいなところに、「もう外務省はいらない」と書いてあったりするんですよ。そういう状況を見て、今どんな感じでいらっしゃいますか。もう一度改めて話をお伺いします。
川口国務大臣 御質問を伺いながら、いろいろな思いが心の中を去来したわけでございますけれども、まず、今思っていますのは、外務省改革によって外務省に対する信頼を回復し、それを外交に対する信頼回復につなげなければいけない。その上でというか、実際には同時並行的にということでございますけれども、さまざまな外交課題に対して日本国としていい外交をする必要があるということで、そのために、私といたしましては全力投球をしたいという思いでございます。
伊藤(英)委員 もちろん、十の改革とか、今も「変える会」の人たちにいろいろ検討していただいたりとか、あるいは省内にもいろいろな改革のためのグループといいましょうか、そういうものもできつつある話も伺ったりしているんです。
 私の部屋によく来てくださる、例えば課長クラスの方、あるいはもうちょっと下の人といいましょうか、その人たちなんか、本当に真剣に、今の状況を思いながら、外務省をよくしたい、あるいはみんなから信頼できるようにしたい、どんなに強い思いでいろいろな話をされるかということを思うんですね。
 そういう問題意識を持って、本当に改善なり改革なりしたいというふうに思っている人も、どんなに多いだろうと私は思うんですよ。数はどのくらいか知りません。しかし、そういう方たちは結構いらっしゃる。だから、本当にそういう人たちのいろいろな問題意識が外務省の姿に反映されていくように、ぜひなってほしいものだ、こんな感じがするんですよ。
 今回、中の監査、査察というような意味では、監察査察官もつくられたりいたしましたね。実は私は、では、その人たちは本当にどういうふうに機能するのかな、こう思ったりするんですが、それはちょっとさておきまして、以前外務大臣とお話ししたときに、外務大臣が管理ということについて、プラン・ドゥー・チェック・アクションの話をされましたね。製造業なんかですと、よくこういう話があります。品質は工程でつくる。実は、検査をするとかチェックする人は、本当は本来はなくていい。仕事をするときに、その仕事をする過程で、そのプロセスの中で品質を全部つくっていく、そうでなくちゃいけないわけね。
 私は、今のこうした監察査察官が要らないと言っているつもりは実はないんですよ。そうじゃなくて、一つの組織の中で、組織の中のシステムとしていろいろなものが、それこそプラン・ドゥー・チェック・アクション、そういうものをうまく回るような形にしていかなきゃいけないということですね、そもそも。
 それで、いろいろ伺いますと、今、監察査察官あるいは査察使とか、省内の話、在外公館の問題等についてヒアリングしたり、いろいろしているそうです。私はぜひぜひ、本当にいい結果に結びつくようにお願いしたいと思っているんですが、こういうものは本当はなかなか難しいと私は思うんです。
 それで、いろいろなことをやっていらっしゃるんでしょうが、きょうは時間もないので一つだけ、提案というか、紹介かたがた御提案を、こう思って申し上げたいと思うんですが、それは、アメリカの国務省がやっているやり方ですね。
 アメリカは、国務省に、これは監査官室ホットラインというふうに訳したらいいのか、こう思うんですが、オフィス・オブ・インスペクター・ゼネラル、これは監査官室と言った方がいいと思うんですが、そこのホットライン制度を持っていまして、そこでは、国務省に働く人あるいは外部の人、外部の業者の人あるいは一般の個人等々から、監査官室にホットラインということで、電話でも、あるいはEメールでも、あるいは手紙でも送ることができる。それはもちろん、匿名でも、そして記録されずに不正を直接報告できるシステムをつくっている。
 そして、内容はどういうことかというと、ちゃんとそれに書いてあるんですね。それは、政府の所有物あるいは資金の不正使用、横領だとか盗難とか、あるいは契約とか調達の不正などとか、あるいはパスポートとかビザの不正受給、不正発給とか、あるいは本省あるいは在外公館の運営に関する不正な問題あるいは乱用の問題、権限の乱用とか、その他倫理上のいろいろな問題等々、ずっと、こうちゃんと書いてあるんです。
 そういうのを実際にシステムでやっている。それはホームページをぱっと見ればわかるようになっているというんですが、こういうのは日本も、あるいは外務省もやられたらどうかと思うんですが、いかがですか。
川口国務大臣 結論から先に申し上げますと、何らかの形で、これは各国の制度のあり方も参考にしながら、どういうやり方がいいのかということを検討するということだと思います。
 それで、その前に幾つかちょっと、前提といいますか、考えていることをお話をしたいと思うんですけれども、一つは、組織として一番大事なことは、そういったさまざまな意見がふだんに自由に寄せられるような風通しのいい組織である、そのための努力をする、そういう組織にしていくということだろうと思います。それがまず一番最初にやらなければいけない努力であると思います。
 それから二番目に、現に幾つかそういった御指摘、私は外務省に参りましたときに、改革についての提案を出してほしい、一枚紙で出してほしいということを言いまして、紙をもらいましたけれども、その過程で、幾つかそういった、こういうことが、ここはどうなんだろうかという紙もありました。そういったことが職員から出されるということは大事なことでありまして、現にそういうことは起こっていますし、査察使、これは外務公務員法でも決まっていまして、査察使というのが在外の公館の事務が適正に行われているかどうかということを調査に行って報告するという過程で、そういう問題に対しての対応は事実やっているわけです。
 あとは、なかなか言えない、あるいはそういうことを言った人に対してその人の無記名性を保護するかどうかということが残る問題でして、それについてはほかの国の制度も参考にしながら検討をしていくテーマだというふうに考えております。
伊藤(英)委員 本当に実のある、実効性のあるものをぜひ実行していただきたい、こう思っています。
 幾つかの今日本を取り巻いている外交問題について質問をしたいと思うんですが、時間が余りありませんので、結論的な伺い方をすることになるわけでありますが、まず、中国の排他的経済水域の中で沈んだ例の不審船の問題、この件については、この間李鵬常任委員長が来られたとき、あのとき私自身も、迎賓館でこの問題についても李鵬委員長のお話も聞いたりもいたしました。
 先般、小泉首相がアジアのフォーラムに行かれて、朱鎔基首相ともこの問題について議論をされたんですね。朱鎔基首相のあのときの答え方といいましょうか、彼の言葉について、引き揚げの問題について前向きな発言というふうな受けとめ方やら、あるいは若干少し慎重な言い方だというふうな報道の仕方をしているところもあるような気がいたしたりするんですが、外務大臣としては、この間の朱鎔基首相の発言などについて、引き揚げという問題について、どういうふうに認識をされていらっしゃるんでしょうか。
川口国務大臣 まず、中国の首脳の方が、この間の朱鎔基総理、それから前に李鵬委員長あるいはトウカセン外務大臣、この問題については幾つかコメントをしていらっしゃいますけれども、外務大臣として、それぞれのコメントについて、それを解釈して何か申し上げるということは適切ではないと思っております。
 したがいまして、個別の発言についてということではございませんけれども、全体を通じて言えることは、この不審船問題全般につきまして、日中間ではこれを両国間の政治問題、外交問題にすることなく、冷静に話し合って処理をしていこうということについては、認識が一致をしていると考えております。
 この件につきまして、これが事実上中国の排他的経済水域にあるということでございますので、政府としては、日中両首脳が確認をした共通の認識を踏まえまして、これから中国と、これからといいますか今までも話を、情報の提供はこの件発生以来行っておりますけれども、中国と調整を図りながら適切に対応をしていこうと考えております。
 それから、言うまでもございませんけれども、これは再三再四申し上げていますように、引き揚げにつきましては、ダイバーによる船体調査を実施し、引き揚げが物理的に可能かどうかなど、船の状況をより詳しく調べることを考えているわけでございまして、こうした調査の結果判明する状況を踏まえて、次のステップについて判断をするということで進んでいるわけでございます。
伊藤(英)委員 その船体調査等実施をして、物理的に引き揚げが可能であったという場合には、先ほどの大臣の、政治問題化しないように冷静に云々という話がありましたけれども、物理的に可能な場合は、犯罪捜査ということであるから、事前に中国にも連絡をして、そのまま淡々と引き揚げをするというふうにする方がいいと私は思いますが、いかがですか。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、船体調査等をやって、事実関係を踏まえた上で次のステップに進んでいくということで考えておりまして、これが中国の排他的経済水域にあるということでございまして、天然資源についての主権的な権利を持っていますし、海洋環境についてもその管轄権を持っているということでございますので、こういった中国の立場をきちんと踏まえて、中国と調整をしていくことが必要だと考えております。
伊藤(英)委員 どういう調整をされるんですか。
川口国務大臣 海洋法条約に基づく中国の権利がかかわることになる場合には、これとの調整を図ることが必要だと考えております。
伊藤(英)委員 今回の犯罪捜査ということで引き揚げるということでは、海洋法上の問題、要するに資源の問題等考えたときには、基本的には問題ないことだというふうに私は思いますが、どうですか。
川口国務大臣 これにつきまして、まさにその一つ前の段階を一つずつ経て、そういったことが問題になるかどうかということを考えながら進んでいくということだと思います。
伊藤(英)委員 どういう意思を持って、どういう方針を持ってやっていくかということが重要だと私は思うんです。そういう意味で、本件はきょうはこれ以上伺いませんが、それは日本の国民にとっても、一体日本の外務省はどうするんだ、どういう考え方でやるんだろうかというふうに思われることになるんだろうという気がするんですね。だから、ぜひそういう思いで、よろしくお願いをいたします。
 今、日朝間の問題で、それこそ拉致疑惑問題、この間も国会決議もあったりいたしました。そして、最近の北朝鮮をめぐるいろいろな動きも起こったりしております。これからの日朝交渉の見通しについて、外務大臣はどういうふうに思っておられますか。
川口国務大臣 日朝の国交正常化交渉につきましては、一昨年の十月に北京で行われました会談におきまして、この会談での協議を踏まえて、さらによく検討を行って、双方の準備が整ったところで行うということになっているわけでございます。
 この交渉は非常に難しい交渉だと考えております。したがいまして、今後どういうふうに展開をするかということについては予断を許さないと考えておりますけれども、政府といたしましては、韓国、米国との密接な連携のもとで、この両国の間の隔たり、立場の隔たりを埋めるために、粘り強く交渉をしていきたいと考えております。
伊藤(英)委員 それでは、日朝赤十字会談は近いうちに行われることになりそうですか。
川口国務大臣 現在、日程について調整中でございます。
伊藤(英)委員 それは、日朝間の赤十字会談は近いうちにやろう、その日程について折衝中ということだろうと思うんですが、どのくらいには大体できそうでしょうか。
川口国務大臣 私といたしましては、これができるだけ早く開かれることを期待しているわけでございますけれども、日程につきましては、現在調整中でございます。
伊藤(英)委員 今後の日朝関係の問題を考えたときに、この赤十字会談というのはやはり非常に重要な事項ですね。そういう意味では、今鋭意調整中のようでありますが、早くこれも実行して、それこそ意味のあるものにぜひしていただきたいので、よろしくお願いいたします。
 それから、中東、パレスチナの問題をちょっと伺いますが、今、それこそ一昨日も昨日もと、こんな感じで非常に動いたりしております。そして、パウエル国務長官もそれこそ大変な努力でいろいろと調整作業を進めていると理解しているんですが、まずその前に、日本ですね。茂田さんもそちらの方に今行ってくださったりしているんですが、今日本は、イスラエル、パレスチナとか、あるいはレバノンとか、あるいはシリアとか、あるいは国連などに対して、何をどういうふうにやっているんでしょうか。
川口国務大臣 さまざまなことをやっております。
 今どれぐらいのお時間があって、それを細かく申し上げることが可能かどうか、よくわかりませんけれども、基本的には、非常に簡単に申し上げますと、私から、イスラエル、パレスチナの首脳及びアメリカの首脳、まあ首脳というのはちょっと言葉が間違いですけれども、私のカウンターパート級の方、それからアメリカについても同じレベルで働きかけているということでございますし、日本政府としては、茂田前イスラエル大使をずっと派遣をいたしておりまして、さまざまな、本当に幅広いところに働きかけて、日本側の立場を述べているところです。及び国連についてもそれぞれの活動をいたしております。
 基本的に、日本が言っていることにつきましては、イスラエルについては、即時パレスチナ自治区からの撤退、そして停戦をするということでございますし、パレスチナについては、過激テロをやめるということを言っているわけでございまして、今パウエル国務長官が現地に行って、調停の、仲介の労をとられているわけでございますので、我が国としては、この御努力を支援し、そして注視をしていくということでございます。
伊藤(英)委員 ドイツの外務大臣の提案とか、あるいは中東和平会議の提案なんかも今シャロンからされたりとかしたりしていますね。ああいうのにはどういうふうに評価をされますか、外務大臣は。
川口国務大臣 ドイツの外務大臣の提案、それから、それよりずっと前にさかのぼって、オスロ合意もございましたし、国連におけるさまざまな決議、さまざまな今後の進め方についての考え方が今提示をされているわけでございます。
 今、そのパウエル国務長官の仲介の努力を支援しながら、そして注視をしながら、我が国としてどういうタイミングで何をする、あるいは何を言うということが、この問題の解決に国際的に貢献ができることになるかどうかということで考えているわけでございます。
伊藤(英)委員 実は、この辺の問題も、私もたびたび申し上げたりするんですが、やはり日本はもっとできるんだろうと私は思っております、中東の辺の問題についても。それは、ODAも結構やっているわけですし、そして国際会議というような話についても、日本はもっとそこに参画していろいろできる、あるいはイニシアチブをとることがもっとできるんだろうと私は思うんですよ。
 そんなことで、この辺の問題はこれからまだまだ大変な状況だと思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 時間がもう余りありませんので、最後に、外務大臣はこのゴールデンウイークに、アフガンとイランだったでしょうか、行かれるというふうに聞いていますが、アフガン、イランはそれぞれ、なぜアフガンか、なぜイランか、どういうことを目的として行かれるのか。
 それからもう一つ、再来月、六月になりますと、上旬にはASEMの会議、外相会議もあるんですね。さらに、その後は、同じ六月に、半ばにはG8の外相会談もありますね。
 そういうふうに、これからいろいろな外交日程等もあるわけでありますが、さっきのアフガンやイランになぜ行きたいかという話と、どういう目的かということと、どういう外交を外務大臣としてこれからしようとするのか、さっきのASEMあるいはG8等を見詰めて、その辺のことの考え方について伺います。
川口国務大臣 この前、日本記者クラブで政策全般について話をさせていただきました折に、私の外交のスタイルとして、強い外交、温かい外交、わかりやすい外交ということを申し上げさせていただきました。
 そういう形で進めていきたいと考えておりますが、四月の終わりから五月にかけての連休には、もし国会のお許しをいただけるのであれば、私はアフガニスタン、イラン等を訪問させていただきたいと考えております。
 その目的はさまざまございますけれども、アフガニスタンにつきましては、これは政治的にロヤ・ジルガの前の非常に重要な時期で、我が国がアフガニスタンの復興について持っている考え方あるいはその気持ちをお伝えいたしまして、このロヤ・ジルガが成功するように、ぜひ働きかけたいということでございます。
 イランにつきましては、国際社会が今イランについて強い懸念を持っているわけでございまして、こういったことをお伝えして、懸念を払拭するための措置をイランとしてとるようにということを働きかけたいと考えておりますし、さらに、アフガニスタンの復興について、イランとして、隣国としてそれなりの役割を果たしてもらい得るわけでございますから、そういった協力についても話をしていきたいと考えております。
 再来月になりまして、六月になりまして、さらにまた国会のお許しをいただいて出席をしたいと思う国際的な会議等ございます。
 そこについて申しますと、私は、日本の国益を守っていくためには、国際的な社会における平和と安全及び繁栄ということが重要でございまして、国際的に協調して対応をしなければいけない問題がたくさんあると思います。
 そういった問題に共通した歩調で話し合いながら取り組んでいくということが必要でございますので、ASEMなりあるいはG8なりといった会合は、そういった意味で非常に重要でございまして、グローバルなさまざまな問題、地球環境問題、人権問題もありますし、個人の、人間の安全保障の話もございますし、それから大量破壊兵器の拡散の問題もございます。そういった問題に積極的に取り組んでいきたいと考えております。
伊藤(英)委員 時間が来ました。終わります。ありがとうございました。
吉田委員長 午後一時から委員会を再開いたします。この際、休憩をいたします。
    午後零時九分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議
吉田委員長 休憩前に引き続き委員会を再開いたします。
 質疑を続行いたします。桑原豊君。
桑原委員 民主党の桑原でございます。
 まず、テロ資金供与防止条約に関連をして、何点かお伺いをしたいと思います。
 テロに関係をする団体等に、いわゆる意図して、または知りながら、そういった資金を供与したり、あるいはそのために資金を収集するというような者に対して、資産の凍結あるいは資金の没収、そういったことを含めた厳しい制裁が科されるわけでございますけれども、やはり法律を運用するに当たっては、テロ関係団体等を本当に誤りなく認定をしていくということが大変大切だろうと思いますし、当然のことながら、資金を供与する者等に対しても、その認定については誤りがあってはならないわけでございます。財産権の制限と申しましょうか、そういう憲法上も大変重視をされている権限を制約するわけでございますから、私は、非常に慎重に、そして的確にやる必要があるだろう、こういうふうに思います。
 そこで、そういった認定に当たって、まず、どのような誤りのないような措置というか、的確に認定をしていくに当たっての慎重な措置というか、そういうものについてどのようになされているのかということが一つと、万が一そういったことを誤ったというような際にどのような救済措置というものが考えられているのか、この点についてまずお伺いをしたいと思います。
溝口政府参考人 お答え申し上げます。
 テロリストに対して資金を供与することを防止するために資産凍結を行うケースがあるわけでございます。
 現状、どういう形でそういうリストをつくっているかというところからまずお話し申し上げますと、去年、アフガンの事件がございまして、タリバーンの関係者につきまして資産凍結をするということになったわけです。タリバーンの関係者につきましては国連でそういう決議をいたしておりまして、その決議の中でタリバーンの関係者の資産は凍結しなさいということが決まっておりまして、国連の中に制裁委員会というのができまして、そこに各国が、こういう人はタリバーン関係者でそういう凍結の対象になるという情報を持ってまいります。それを国連の制裁委員会で審査をいたしまして、国連としてのリストをつくるわけでございます。
 我が国は、国連の方でリストが決まりますと、外為法上は、国際約束を守るとき必要な場合には資本取引等を制限することができるという規定がありまして、そういう国際約束を守るためにやるわけでございますから、そういうリストを使うということでございます。
 もう一つは、国連のリストをつくらない場合があります。それは過去にもいろいろあるわけでございますが、タリバーンの場合はそういうことでございましたけれども、そうでない場合は、主要国が、こういう人は問題なので、過去のいろいろな実績からしてそういう措置をとるべきだという話し合いをいたします。その情報の交換が治安当局なり司法当局間で行われます。それに基づいてリストができますので、国際的に認知されたものを私どもも大体使うということでございます。
 それから、仮にそういう国際的に認知されたものであっても間違いが出てくるじゃないかという御指摘でございますが、そのようなときには、資産凍結というのは、それは銀行で凍結しちゃうということじゃなくて、そういう人に資金を送ろうとする場合は政府の許可が要りますということでございますから、許可をとらないといかぬということになります。そのリストの人ではないというようなケースが出ますと、その人とまず銀行、銀行でなかなか判定できない場合には許可を私どもに求めてまいりますから、私どもとその人がお会いして、そこでいろいろな認定をすることになりますので、いきなり凍結してしまうというようなことは余りないと思います。
 しかし、そうなっても問題がある場合には、一般的な国家賠償なりいろいろな行政の手続によって矯正する道はあると考えております。
桑原委員 厳正な認定の手続、そして的確な判断というものをぜひやっていただきたいということを申し上げておきたいと思いますし、誤った場合の救済措置についても、今お話があったわけでございますが、ちゃんと厳正に執行していただきたい、こういうふうに思います。
 それから次に、条約の第十八条に関連をしてお伺いしたいんですが、非常に明白にテロに関連をしているというふうな取引等について金融機関に報告することを求めておりますし、また金融機関が独自に判断をして非常に疑いがあるというものについては報告をするということになるわけですけれども、そういった金融機関の情報開示にかかることについては、そういう場合にはいかなる制限違反であっても刑事上、民事上の責任は問われない、こういうふうに条約は規定をしてあるわけです。
 その際の金融機関の報告する情報、いかなる情報を報告するのかというような基準についての考え方とか、あるいは、金融庁がそういう情報を受けるわけですが、そうした情報の管理、あるいは、その情報の中から本当に的確な情報をつかんで、それを捜査機関に今度は伝達をしていくわけですが、そういった際の金融庁のあり方、そういったものの秘密が漏えいをしないというような法的な担保とか、そういうものについてやはりきちっと厳正を期すということが大変大事であろう、こういうふうに思います。その点についてどのようなことが現実行われているのか、この御説明をしていただきたいと思います。
原口政府参考人 お答えいたします。
 まず、前段のどういう基準で届け出をしているかということでございます。
 これは、疑わしいというかなり主観的な問題でございますので、金融機関は各取引ごとに、取引相手の属性でございますとか、あるいは取引の態様、取引金額、取引方法、取引の頻度等、その他、業務の過程で掌握している各種情報を総合的に判断して、当該取引は疑わしい取引か否かを判断しておりますが、その際、金融庁からも、各金融機関に対しまして、疑わしい取引の判断の参考となる取引類型をまとめました参考事例集等も配付しておりまして、そういうものも参考にしながら、疑わしい取引か否かを判断しているというふうに考えております。
 あと、二番目の御質問の、情報管理、あるいは外部に漏えいしないためにどのようなことを行っているか、あるいはどういう担保があるかということでございます。
 まず、法的な担保といたしましては、金融庁においては疑わしい取引の届け出の受理、分析等を行っておりますが、職員は、当然のことながら国家公務員法上の守秘義務を有しておりますので、それに基づいて、外部に漏えいすることは禁じられております。また、金融機関は、顧客との関係では、取引情報について守秘義務があると同時に、組織的犯罪処罰法におきまして、各金融機関に対して届け出を行ったことを取引を行った者やその他関係者に漏らすことを禁じておりますので、この点からも外部に漏えいすることはないものと考えております。
 また、具体的な情報管理といたしましては、疑わしい取引の届け出を取り扱う部署につきましては、独立した部屋で施錠等にも万全を期する、あるいは情報管理に使用しておりますコンピューターにつきましては、専用の独立したシステムを使うことにより外部からの侵入ができないようにしている、あるいはこのシステムを使用する際にはパスワードの入力を必要とする等、疑わしい取引の情報の機密性ということにかんがみまして、万全を期しているところでございます。
桑原委員 この条約がテロ防止の観点から、そういった資金というものに着眼して、それがいろいろな形でテロにつながっていくことを防止していく、その趣旨そのものは極めて重要なものだというふうに思います。ただ、問題は、それが具体的にそれぞれの国内でどのように適正に、的確に、そして厳正に運用されていくかということに一にかかっているわけでございまして、今お答えいただいたそういったことなどを本当に厳正に執行していただいて、ひとつ的確な運用を期していただきたいということを重ねて申し上げておきたいと思います。
 次に、昨日、武力攻撃事態、いわゆる有事に関する関連三法案が閣議決定をされました。私は、日本の有事というものを考えたときに、この日本を取り囲む北東アジアのさまざまな情勢を考えてまいりますと、日本有事はいわゆるアメリカが国際的な外交の中でどういった活動をしていくかということに大きな影響を受けてくる、こういうふうに思います。具体的に日本有事ということになれば、アメリカ軍のさまざまな活動というものが深いかかわりを持ってくるのではないか、こういうふうに思いますので、きょうは、米軍の活動というものに関連をした幾つかの点についてお伺いをしたいというふうに思います。
 言うまでもございません。日米安保条約の中で、日本有事ということになったときには日米共同対処という形でこれに対応するんだということが宣言をされておるわけでございますけれども、日本有事の際にアメリカに日本を防衛する義務があるんだ、こういうふうに解しておるわけですが、それはそういうふうに解していいのかということと、それから、その根拠は何たるやということをまずお聞きしたいと思います。
藤崎政府参考人 お答え申し上げます。
 今委員御指摘のとおりでございまして、日米安保条約上、米軍には日本の防衛義務があるわけでございますが、これは、根拠は日米安保条約第五条でございまして、この第五条に「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」この「共通の危険に対処するよう」ということで、日米安保条約の第五条に従いまして、武力攻撃がある場合には共通の危険に対処するように行動するという規定があるわけでございます。
桑原委員 そういうことで、そういった武力攻撃の事態にアメリカが日本を防衛する義務がある、こういうことですが、そうなりますと、武力攻撃事態の認定そのものもアメリカ軍にとっては大変切実といいましょうか、まさに我がことになるわけでございます。そのような認定に当たっては、そうなりますと日本が一方的に事態を認定するというわけにはいかなくなるわけでして、その際、米国との関係で、どういった形でこの認定が行われていくのか。
 例えば、安保条約の第四条では、「日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。」こういうふうに脅威に対して協議をするんだというようなことを書いてありますけれども、具体的なこの事態の認定に当たってはどういったことが行われるのか、これは大臣にお伺いしたいと思います。
川口国務大臣 日米の防衛協力の指針というのがございますが、そこに記述されているわけですけれども、我が国に対する武力攻撃が差し迫った場合には、日米両政府は情報交換及び政策協議を強化するとともに、整合のとれた対応を確保するために必要な準備を行うわけでございます。また、我が国に対する武力攻撃に際しましては、日米両政府は、整合性を確保しつつ適切に共同で対処することになります。
 具体的に申しますと、平成十二年の2プラス2の際に発表をされました日米間の調整メカニズムというのがございまして、日米両国の関係機関の間における必要な調整が行われることとなっているわけでございます。
桑原委員 今回のこの武力攻撃事態法案に関連をしてお聞きしますと、今回のようなこの武力攻撃事態を認定するときには、そうすると、具体的にはアメリカと協議をしてそういうことになるんだという理解でよろしいんですか。
藤崎政府参考人 今大臣がお答え申し上げましたとおり、日米間では、随時、日本国の安全または極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生ずるというときには協議をするということでございます。実際に、調整メカニズム等もこの一環であるとは存じます。
 他方、今先生がおっしゃいました武力攻撃の認定ということでございますけれども、武力攻撃につきましては、これは安保条約制定以来御説明しておりますように、一国に対する組織的な、計画的な攻撃、武力の行使ということでございますので、私どもは、この発生の認定ということは、おのずと明らかな問題であるというふうに考えております。
桑原委員 さて、今回の武力攻撃事態には、おそれのある場合を含むと同時に、事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態、こういうふうな定義になっておるわけでございまして、そうすると、米軍というのは、日本の有事で、どの段階から、日本防衛義務と申しましょうか、そういうものが生ずるということになるのですか。
 例えば、私は今、おそれがある、予測されるような事態、こういうようなことも申し上げましたけれども、そういったことなども含めて、どういった事態に至れば米軍の防衛義務というのが発生するのか、それはどういうことでしょうか。
藤崎政府参考人 今委員の方から、どの時点で米国は日本に対して対日防衛義務が発生するのかということでございますが、これは安保条約に書いてあるとおりでございまして、武力攻撃がなされた場合につきましては、米国は日本に対する防衛義務が生ずるということでございます。
桑原委員 そうすると、予測事態といいましょうか、そういうのは含まれないということですか。
藤崎政府参考人 お答えいたします。
 先ほど大臣も御答弁申し上げましたとおり、日米間では、随時、日本の安保あるいは極東の平和と安全につきまして協議をしていくわけでございますけれども、米国の対日防衛義務ということに着目しての御質問ということでございますると、安保条約第五条に規定しておりますとおり、安保条約第五条の義務と申しますのは、武力攻撃が行われたときでございます。
桑原委員 予測されるような段階ではそういうことにならないというようなことなのかと思います。
 さて、自衛隊と米軍の共同対処の役割分担と申しましょうか、このことについては、過ぐるガイドラインでそのたびにいろいろと合意がなされておりますけれども、一九七八年段階の合意では、「日本は、原則として、限定的かつ小規模な侵略を独力で排除する。侵略の規模、態様等により独力で排除することが困難な場合には、米国の協力をまって、これを排除する。」こういうような考え方がありました。
 それが、一九九七年のガイドラインの段階では、それぞれ陸上、海上、航空というようなことで分けまして、それぞれについて、日本の自衛隊はこうする、そして米軍の方はこういうことをやるんだというようなことで、例えば「海上作戦」というのを見ますと、「海上自衛隊は、日本の重要な港湾及び海峡の防備のための作戦並びに周辺海域における対潜作戦、船舶の保護のための作戦その他の作戦を主体となって実施する。 米海軍部隊は、海上自衛隊の行う作戦を支援し、及び機動打撃力を有する任務部隊の使用を伴うような作戦を含め、侵攻兵力を撃退するための作戦を実施する。」こういうふうなことで、それぞれ、日米双方の役割というようなものが書いてあるわけでございますけれども、この有事対処の際の役割分担というのはこういったことで合意をされておる、こういうことでしょうか。
藤崎政府参考人 今委員から、日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドラインについてのお尋ねがございました。
 このガイドラインにつきましては、今委員御指摘のとおり、日米両国の緊急事態における役割ということについての一九七八年の日米間の考え方を一九九六年に改めたわけでございますが、これはあくまで一般的な大枠、方向性を示すものとして行ったわけでございます。
 また、このガイドラインを定めましたときに、日米安全保障条約及びその関連取り決めに基づく権利及び義務、これは変更されないということを規定しておりまして、さらに、「日本のすべての行為は、日本の憲法上の制約の範囲内において、専守防衛、非核三原則等の日本の基本的な方針に従って行われる。」ということをうたっているわけでございます。
 この範囲内におきまして、具体的に、今御指摘の作戦等の面につきましては、外務省の方からお答えするのはいかがかというふうに存じますが、今繰り返して申し上げますように、これまで日本が持っておりました基本的な政策、枠組みは変更がないということを確認しているわけでございます。
桑原委員 そうしますと、このガイドラインで合意を見たという部分については、新たに、武力攻撃事態というこの法案の中で対処していく際の日本とアメリカの役割分担ということでは、具体的には直結するものではない、こういうことなんでしょうか。あるいは、改めてそこら辺はまた考えていくんだ、事態事態に応じてということなんでしょうか。これは防衛局長。
守屋政府参考人 防衛庁の防衛局長でございます。
 御質問の件でございますけれども、日米防衛協力のための指針でございますけれども、これはあくまでも、日本が武力攻撃された際に米軍と自衛隊がどういう役割分担を行うかという一般的な考え方を決めたものでございまして、これで、有事に際しまして自衛隊と米軍が整合性のとれた作戦を行いまして日本に対する侵略を早期に排除する、こういう考えで出ているものでございまして、今回の武力攻撃事態対処法の法的な枠組みにこの考え方が影響を及ぼすものでは全くございません。
桑原委員 それでは、もう一点、安保条約に関連をしてお聞きしたいのですが、岸・ハーター交換公文の事前協議制というのがございます。これは、いわゆる配置における重要な変更、装備における重要な変更、あるいは我が国から行われる戦闘作戦行動のための基地施設の使用等、こういったことが行われるときには事前に協議をしなさい、しなきゃならぬ、こうなっているわけですけれども、例えば、三つ目の我が国から行われる戦闘行動については、いわゆる安保条約の第五条に基づいて行われるものを除くとなっておりますから、これは、具体的な有事対処の行動なんかに至った場合には、一々、その点については事前協議は必要ないよ、こういうふうに受けとめられるんですけれども、それ以外の事前協議の項目、これは有事になった場合にはどういうことになるのかお伺いしたいと思います。
藤崎政府参考人 お答えいたします。
 今、委員御指摘のとおりでございまして、安保条約六条の実施に係る岸・ハーター交換公文では、三つの点について事前協議の主題としているわけでございます。一つは、合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、二番目は、合衆国軍隊の装備における重要な変更、三番目は、日本国から行われる戦闘作戦行動ということでございます。
 この戦闘作戦行動ということにつきましては、この交換公文にございますように、条約五条の規定に基づいて行われるものを除くということに当たりますので、したがいまして、事前協議の主題ではないということになるわけでございますが、安保条約五条が適用される事態におきましても、米軍の我が国への配置における重要な変更及び米軍の装備における重要な変更、この二つについては事前協議の対象となるというのが私どもの考え方でございます。
桑原委員 対象になるということで確認をさせていただきます。
 さて、最後に、有事の事態に至ったときの米軍の対処活動、さまざまなものがあると思うんですけれども、どのような法的な規制を受けるのか。まず最初に、国際法的にはどうなのか。
 これは、外務省から我が党の説明会のときにいただいた資料では、一般国際法上、駐留を認められた外国軍隊には、特段の取り決めがない限り、接受国の法令は適用されない、こうなっておるわけですけれども、国際法上、まずこれは確認をしたいと思います。
藤崎政府参考人 今、委員御指摘のとおり、一般国際法上、駐留を認められました外国軍隊には、特段の取り決めがない限り、接受国の法令は適用されないということでございます。
桑原委員 それでは、国内法との関係なんですけれども、アメリカ軍の活動と国内法との関係はどうなるんですか。適用されないで、それで全部終わりですか。
藤崎政府参考人 お答えいたします。
 一般国際法上、駐留を認められました外国軍隊には、特別の取り決めがない限り、接受国の法令は適用されないということでございまして、このことは我が国に駐留する米軍についても同様でございます。
 他方、米軍が、その活動に際しまして、これは我が国の法令を無視してよいということではございませんで、外国軍隊が接受国の法令を尊重しなくてはならないということは、当該軍隊を派遣している国の一般国際法上の義務であるというふうに考えられる次第でございます。この点につきましては、日米地位協定十六条におきましても法令尊重義務というのを定めているところでございます。
桑原委員 では、ちょっと具体的に聞きますが、地位協定では、幾つかの点で、国内法の適用除外ということを特段に定めているものがあるわけですね。こういうふうに定めてあるものについては、それで当然適用除外になるわけだけれども、そういうものを定めていないものについては、これは今おっしゃられたようないわゆる接受国の国内法が適用されない、こういうふうに考えるのか、後段でおっしゃられた、国際法上、国内法を尊重する義務があるんだ、そういうふうなことになるんですか。これはどっちなんですか。
藤崎政府参考人 今、委員の御質問は、適用除外をしていない法律につきまして一般的にどのように考えるのかということでございますけれども、適用除外をしていない法律につきましては、我が国として、法令の尊重義務は一般国際法上あるということを考えております。これは我が国に駐留いたします米軍についても同様でございまして、これは一般国際法上の義務であるというふうに考えております。
桑原委員 そうしますと、有事関連諸法で自衛隊に適用されるさまざまな規定、国内法、これはアメリカ軍についても、いわゆる国際法上の一般的な義務として適用されるんだ、尊重する義務があるんだ、そんなふうな解釈でよろしいんですか。
藤崎政府参考人 お答えいたします。
 適用除外の対象となっていない法律につきましては、尊重義務があるというふうに考えております。
桑原委員 大変、何か持って回った言い方をするものだから、単刀直入に私は聞いているんです。
 自衛隊に適用されるような諸法令は、米軍の国内法尊重義務からして、当然、尊重する義務があるのか、こう聞いているので、義務があるならある、ないならない、こうおっしゃっていただけばいいので、私の言い方に即して答えていただきたいんですけれども。
藤崎政府参考人 繰り返してお答えいたします。
 ただいま申し上げましたように、一般国際法上、駐留を認められました外国軍隊につきましては、国内法令は適用されないわけでございますが、尊重義務はあるということでございます。
桑原委員 外務省からいただいた適用除外というこの文章では、適用されないということだけが書いてあるわけです。そして、今おっしゃられた、国際法上その接受国の法令というものが尊重されるんだ、そのことは一言も書いていないわけです。私は、これを読むと、どういうことなんだ、米軍はもう何でも自由にできるのか、こういうふうにやはりなっちゃうわけです、これは。
 そのことをぜひ、ある意味では、そうじゃないんだということを明記するために、本来なら地位協定の中になるのか、地位協定の十六条というのはそういうことなんですか。十七条のための前段の協定じゃないんですか。それとも、いわゆる接受国の国内法令を尊重すべきだということを一般原則としてちゃんと述べた協定なんですか、十六条というのは。
藤崎政府参考人 御答弁いたします。
 今、委員御指摘のとおりでございまして、本件は、日米地位協定十六条でございますけれども、日本国の法令の尊重義務ということを確認しているわけでございます。私が繰り返して申し上げますけれども、一般国際法上も尊重義務があるわけでございますが、この趣旨を改めて確認しているわけでございまして、これは特定の条文を指しているものではなくて、一般の我が国法令を対象としているものでございます。
桑原委員 そこら辺の、私自身も大変な誤解をしかねないわけでございまして、明確に、そういった尊重義務があるならあるで、外務省から出されるさまざまなものにはしっかりそこは明記すべきです。
 私は、むしろ法律の中にもそういった尊重義務というのは明らかにすべきだと思うわけですけれども、そのことは、また後日改めていろいろと議論をさせていただくということで、きょうはこれで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
吉田委員長 桑原豊君の質疑は終わりました。
 次に、首藤信彦君。
首藤委員 民主党の首藤信彦です。
 きょうの委員会は、テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約に関する質疑がメーンだとなっております。そこで、まずこの法律に関して幾つか質問させていただき、そして同時に、現在日本を取り巻くさまざまな外交課題について質問させていただきたいと思います。
 まず最初に、このテロ資金供与の防止に関する国際条約なんですが、テロリズムという言葉からこの条約はスタートするわけですね。では、果たしてテロリズムというのは一体何なのかということであります。
 テロリズムに関しては、まさに一七八九年のフランス大革命からその言葉というのは生まれているわけですが、長い長い歴史を持った言葉であります。現代的な解釈によれば、またまたいろいろな解釈もあると思いますが、この法律によって定義されるべきテロリズムというのはどのようなものでしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 テロリズムという言葉でございますが、国際法上確立した定義があるわけではないということでございます。
 これまで国際社会は、テロ防止関連条約の作成に当たりまして、ハイジャックですとか人質行為ですとか爆発物の設置ですとか、典型的ないわゆるテロ行為に該当する一定の行為類型につきまして、これを犯罪とし、処罰のための法的な枠組みを設定するという対応を着実に積み重ねてきているわけでございます。
首藤委員 それでは外務大臣、明確な定義が、我々がざっと見まして、例えば日本の法律は、罪刑法定主義といいますか、私も法律の専門家ではございませんけれども、特に刑法に関しては、実質的な処罰に関する法律に関しては、きちっと法律で定義しないといけない、さもないと、非常にアバウトな形で人を罰することになって、非常に恐ろしいことになるということで、きちっと定義しておく必要があるわけですね。
 要するに、何が犯罪であり、何が処罰の対象であるかということが定義されなければいけないんですが、それでは、その定義が漠然としたものであるとするならば、これが果たしてテロリズムであり、しかもこの法律によって処罰されるべき内容である、処断されるべき内容であるということは、だれがいつ決めるんでしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、テロリズムについて国際法上確立した定義があるわけではございません。
 この条約におきましては、既存の九本のテロ防止関連条約上の犯罪に該当する行為、これは具体的に行為類型として決まっているわけでございますけれども、それにもう一つ、または、これに該当しない行為であったとしても、住民の威嚇または政府等の強要を目的として人の死等を引き起こすことを意図する行為、この両方、またはという形で対象としているわけでございます。
 したがいまして、本条約では対象となる行為の範囲が明確に規定をされていますので、条約の実施につきまして問題はないと考えております。
首藤委員 それは異なことをお聞きいたしました。この条文を見れば、どこに明確に行為が定義されておりますでしょうか。私は定義されていないと思います。
 ですから、どこにどういう形でテロリズムの、ABCDEと、どういう形で定義されておりますでしょうか。定義が明確にということは、列挙主義と申しまして、これはよく御存じだと思いますが、漠然とした、例えば不可抗力条項とかそういうものではなくて、そういうものに関しても最近では列挙主義になっているんですね。ですから、例えばどういうのがテロリズムであるかということが定義されなければいけないわけですが、それは一体この条約の中でどこで明確に定義されておりますでしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 この条約の第二条でございますけれども、ここに、「附属書に掲げるいずれかの条約の適用の対象となり、かつ、当該いずれかの条約に定める犯罪を構成する行為」、例えばそのように書かれているわけでございます。
首藤委員 外務大臣、自分でおっしゃっていても、それは明確でないということはおわかりでしょう。ですから、一体何がテロリズムなのかということですね。
 それから、問題は、テロリズムという行為だけを罰するというんじゃなくて、禁止するというんじゃなくて、テロリズムを行った主体を罰する、主体の行為を排除する、そういうのがこの法律の対象であると思いますけれども、そうなると、当然のことながらテロリズムを行う主体、すなわちテロリストというものが定義されなければいけない。それはどのように定義されますでしょうか。外務大臣、いかがですか。
川口国務大臣 この条約におきましては、いわゆるテロリスト等を認定して、その取り締まりを求めているということではないわけでございます。
 この条約は、既存のテロ防止関連条約に定める犯罪行為等を行うための資金の提供及び収集を犯罪とすること、その犯人が刑事手続を免れることのないよう、自国での訴追ないし関係国への引き渡し等を行うということ等を主な内容としておりまして、いわゆるテロリスト等を認定して、その取り締まりを求めるということではないということでございます。
首藤委員 それはまた異なことをおっしゃられますね。恐らく、原稿を読んでおられて御自分でもおかしいと思われたと思いますけれども、テロリストというものが定義されなければ、では、この法律の対象がだれに及ぶのかということが当然わからないと思うのですね。
 この問題というのは大変重要な問題がありますが、細かい条文を大臣にお聞きするのは何かと思いますので、少なくとも前文で基本的なところを明らかにしたいと思うのですが、前文に、「あらゆる形態のテロリズム」ということが書いてございます。こういうことを参考にしながら恐らく大臣は今まで答弁されていると思うのですが、「あらゆる形態のテロリズム」というのは一体何でしょうか。テロリズム自体が漠然としているのに、「あらゆる形態」といえば一体何がここで定義されますか。いかがですか、外務大臣。
川口国務大臣 前文におきまして、「あらゆる形態のテロリズムの行為が世界的規模で増大していることを深く憂慮し、」というふうに書かれているわけでございます。ここで言っている「あらゆる形態のテロリズム」とは、そのようなテロ行為を行う手段、態様を問わないという趣旨であると考えます。
首藤委員 これも恐らく、説明されている外務大臣自身がこんなのじゃいけないなと思って今お気づきになっていると思いますけれども、これはおかしいです、はっきり言って。こんなものでは法律の前文になりませんよ、はっきり言って。これは何ですか。これは、また私、法務委員会の方でも質問するチャンスがあると思いますが、もう一回聞きますけれども、これは法律じゃないですよ、はっきり言うと。
 また、この法律は世界各国でやらなきゃいけないので、主文というか、各国で同じような法律を持たなければいけません。これは英語で、もう当然のことながらついてありますよね。当たり前ですよね。これは英文ですよね。こう書いてあります。筆記の方に御迷惑をおかけしますが、ちょっと読ませていただきます。「Deeply concerned about the worldwide escalation of acts of terrorism in all its forms」、あらゆる形態のテロリズムと書いてあります。しかし、英文には書いてあるんです、その後、「and manifestations,」と。日本語の中にどこに「and manifestations,」の部分が書いてありますか。いかがですか、外務大臣。
川口国務大臣 英文には、委員おっしゃるように、確かに「forms and manifestations,」と書いてあるわけでございまして、日本語も「形態」と書いてございます。
首藤委員 それは、すべての、「in all its forms」の日本語の訳であります。マニフェステーションというのは、デモンストレーションとか示威行動とか意思の表示とかいうことでございまして、また別なものでございます。
 それは、テロリズムでどういうことかというと、テロリズムというのは、爆弾をやったりすると同時に、そういったものを新聞に載せたり、あるいは新聞に載せることを強要したり、そうしたマニフェステーション行為というものがテロリズムの非常に大きな要件として定義されているわけであります。その件が日本語のこの条文には全く抜けているわけです。これは、明らかにこの英文と日本語が違うと言わざるを得ない。
 委員長、どうですか。これはこんなに違うわけで、私はこれ以上審議はできません、こんなに違うのであれば。
吉田委員長 英文と日本語と訳が違うからといって審議できないと言われても困りますので、理事会でまたその話をやりますよ。
首藤委員 これははっきりさせないと先へ進めませんよ。採決なんかできません、これとこれは違うんだから。国際的に通用しているこれと、それから日本語で我々が見なきゃいけないこれとは違うんだから。どうやって採決できますか。外務省、説明してください。
川口国務大臣 こういう御質問に対しては政府参考人をお許しいただいておいていただきたかったと思うわけでございますけれども、これはまさに、「forms」、形、及び「manifestations,」、あらわれ方ということでございまして、この日本語の文章が英語の文章と整合性があるということについては、これは問題がないところだと私どもは考えております。
 ちなみに、日本語の文章につきまして、まず条約の正文が日本語以外の言語である場合には、これを締結する際には日本語訳を作成することになります。日本語訳は、正文テキストの文言の意味をできるだけ正確に反映するように、また、我が国が既に締結をいたしています他の条約や国内法令における用語との整合性等も勘案しつつ、慎重に検討をいたしました上で、最終的には内閣法制局の審査を経て作成をしているわけでございます。英文テキストと異なるということはございません。
首藤委員 少なくとも、私はテロリズムを二十年間研究していまして、これははっきり違う。もしこれが法制局で同じものだというふうに考えられるならば、それは法制局の解釈の間違いです。
 それは本当に、その「forms」と「manifestations,」が一緒な「形態」としてできるのか。そうじゃないですよ。テロリズムをやることと、テロリズムを「manifestations,」、要するに、マニフェスト・オブ・コミュニズムとかいうのがあるでしょう、共産党宣言だ。宣言ですよ。そういうものとは違うんですよ。だから、当然ここには二つ入っていなければ、これは違うものなんですよ。私は、これによってこの法律が重大な瑕疵があるとは言いません。しかし、こういうふうに違うものがある以上、やはりこれを審査する時間をいただきたい。
 それから、ただいま、通告がなかったと言いましたが、だからこそ、この問題は外務大臣を要求するのであるから、こういう英語とのそごはないようにということをその前に申し述べているはずです。
 これはここで思いついたのではなくて、これをちゃんと精査しまして、この精査の中で、ほとんどすばらしい日本語になっています。しかし、重要なところが抜けているということで今ここで申し上げているんです。この件に関しては、ぜひ第三者を入れて、これは与党の方もお認めになることだと思いますけれども、これはぜひここで認めて、第三者を入れて、本当に訳はこれでいいのかどうかをぜひ確定していただきたいと思います。
川口国務大臣 私は先ほど、通告がなかったと申し上げたわけではございませんで、政府参考人を呼ぶことをいいというふうにおっしゃっていただきたかったと申し上げたわけでございます。
首藤委員 それでしたら、政府参考人を呼んでいただいて、次回、審議したいと思います。
 それでは、次の問題に……(発言する者あり)
吉田委員長 外務大臣。
川口国務大臣 政府といたしましては、先ほど申しましたように、正規の手続を経てこの日本語の文章を決定しているわけでございまして、委員のおっしゃられるような、二つが違うということはございません。
首藤委員 これはそういうことですから、一応やはり確定していただきたい。素人目に見ても、これは大きな差がありますので。これはやはりもう一度精査をして、人には間違いというのもありますから、政府が常に絶対ではないということで、お時間をいただいて、私は別に揚げ足を取っているわけじゃないんです。しかし、このテロリズムの問題は非常に重要で、これからも出てくる問題ですから、きちっと定義をしなければいけないということで、この問題には大して時間もかかりませんので、ぜひそうした第三者を入れまして、そこのところをはっきりさせていただきたい、そういうふうに思います。
吉田委員長 日本訳が適切でないという首藤委員からの提言でございますが、日本語訳が適訳になっているかどうかということを今ここで論議するわけにまいりませんので、理事会で諮りたいと思います。
 外務大臣、どうぞ。
川口国務大臣 今の点につきまして再度申し上げさせていただきますけれども、臨時国会におきまして、テロリストによる爆弾使用の防止に関する国際条約ということを国会の御承認をいただいて締結させていただいておりますけれども、この中にも「あらゆる形態のテロリズムの行為が」というふうに書いてございまして、これの英文は同じように「forms and manifestations,」ということになっておりますので、今回のこの訳につきましては、既に国会で御承認をいただいたものと全く同じ形になっているわけでございます。したがいまして、政府の解釈、日本語の文章につきましては、こういうことでございます。
首藤委員 それはとんでもないことです。間違っていたら直すのが、何遍もチェックするのが当然であります。ですから、それはお認めいただいて、大して時間はかかりませんので、ぜひもう一度チェックしていただきたい。
吉田委員長 いや、日本語訳が適訳かどうかをめぐって首藤委員の発言がありましたけれども、それが適訳かどうかということは今ここで議論してもしようがないことでありますから、理事会を追って開いて、日本語訳が適訳であったかどうかということを検証したい、こう思いますから、ここは質問を続行してください。
首藤委員 それでは、次の質問に移りたいと思いますが、片言隻句において大臣に聞いてはいけない、そういうような御意見もあるようですから……(発言する者あり)
吉田委員長 ちょっと速記をとめておいてください。
    〔速記中止〕
吉田委員長 速記を起こして。
 休憩します。
    午後一時五十九分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時十二分開議
吉田委員長 それでは、再開をいたします。
 先ほど、首藤委員からの、日本語訳について適切ではないという御指摘がございましたが、外務大臣から再度答弁を求めます。外務大臣。
川口国務大臣 今、首藤委員からお話のございました日本語訳の問題でございますけれども、これにつきましては、原文の、英語の正文の「forms and manifestations,」という言葉は、「形態」ということで、内閣の法制局も経まして確定した訳として、政府として確定した訳だと考えております。
 また、このことは、テロリストによる爆弾使用の防止に関する国際条約あるいは女子差別撤廃条約等でも使われておりまして、確定されたものと考えております。
首藤委員 どうもありがとうございました。
 ただ、この言葉に関しては、やはり、英文というか、物事の本質を正しく表現していないという点に関して、私は、その法律上の問題に関しても、また別途法務省に対しても質問させていただきたいと思っております。
 さて、時間もほとんどなくなりましたので、パレスチナ情勢についてお聞きしたいわけですが、国連人権委員会でのイスラエル非難決議に日本は棄権をいたしました。これは非常に問題があると思うんですね。
 なぜかというと、それに対して反対したのは、もちろんアメリカ、イギリスやドイツということになっておりますが、一見、そう見ますと、イギリスもそうだし、またドイツも反対するんだから、まあ日本も棄権ぐらいかなというところがありますが、御存じのとおり、ドイツは、これはある意味でホロコーストの主体であったというところから、こういうときにはそういう立場をとるということになっているんですね。
 ですから、その意味では、日本はこの地域にこれだけの貢献をして、六億ドルと一般的に言われますが、我々が大変な関与したところに対してはっきりとした態度表明をしないということは、やはり世界に対してもこれは疑問を感じられると思うんですが、外務大臣の御意見はいかがですか。
川口国務大臣 国連の人権委員会の日本の棄権のことにつきましては、私はその対象となったことについて十分に承知をしておりませんけれども、日本の立場といたしましては、これは必ずいつも同じことを申し上げているわけでございまして、一つは、イスラエルに対しては、この問題、パレスチナ自治区への侵攻について、即時撤退、停戦ということを言っているわけでございますし、またパレスチナに対しましては、自爆テロにつきまして、これを取り締まるようにということを言っているわけでございまして、この基本的な考え方の流れに立った、そのときの棄権という行動であっただろうと推測をいたします。
首藤委員 ちょっと今信じられないことをお聞きしたわけですが、国連欧州本部で開催中の国連人権委員会は十五日、イスラエルによるパレスチナ自治区での人権侵害を非難する決議案を出したということで、賛成四十、反対五、棄権七という形になっています。日本は棄権ということで、そういう質問をしました。このことは大変大きな問題なので、その外務大臣の御回答がちょっと信じられない思いなんですが、質疑時間がもう終了しましたので、最後に一言だけ。
 中東和平会議へEUも参加させろということをヨーロッパ側がEU外相理事会で決めております。私は、これに関しては日本も参加させろと言うべきだ、そして、川口大臣みずからが行って、押しかけてでも、この中東和平会議に、オブザーバーでもいいからそこへ参加すべきだと思います。もしこの件に関して御意見があれば、最後にお聞きしたいと思います。いかがですか。
川口国務大臣 中東問題につきましては、今、パウエル国務長官が精力的に、献身的に働きかけているわけでございまして、我が国としては、この帰趨を注視し、これにできるだけの支援をしたいと考えております。
 その後どのような展開になるかということにつきましては、まだはっきり決まった話はないわけでございますので、国際情勢を見ながら適切に対応したいと考えております。
首藤委員 質問時間は終わりましたし、また、私も質問をこれ以上続けるつもりはございませんので、終わらせていただきます。
吉田委員長 首藤信彦君の質疑は終了いたしました。
 次に、土田龍司君。
土田委員 テロ資金供与防止条約第六条で、この条約の適用の対象となる犯罪行為が政治的、哲学的、思想的、人種的、民族的、宗教的または同様の考慮によっていかなる場合にも正当化されないことを確保するために、必要な措置をとることになっております。
 我が国は、これらの必要な措置を確保するために、具体的にどのような対策が講じられているんでしょうか。
林政府参考人 御指摘のとおり、この条約の六条は、条約上の犯罪行為等が政治目的などによるものであったとしても、そのことを理由といたしまして正当化する、違法性を阻却するというようなことがあってはならない、行為者に適当な刑罰を科することを確保するために必要な措置をとらないといけないということを規定しておるわけでございますけれども、我が国におきましては、今回問題になっておりますような犯罪行為を含めまして、政治的理由に基づく、あるいは宗教的等々ございますが、そういう理由に基づくものであることを根拠にして犯罪行為の違法性を阻却するというような国内法というものが存在しておりませんので、私どもとしては、この義務を履行するために特段の新たな立法措置というものは必要ない、あるいは、逆にそういう立法をお願いしないというところがございますけれども、特段の措置は必要ないというふうに考えております。
土田委員 次に、第八条三項で、没収した資金を犯罪の被害者またはその家族に対する補償のために使用するという仕組みを確立することを考慮するということになっております。これは義務規定ではないと思うんですが、被害者またはその家族にとってぜひ必要な措置ではないかというふうに私は考えます。
 我が国において、この考慮が行われているのか、行われているとしたらば、具体的にどのような仕組みがつくられているのか、御説明ください。
林政府参考人 八条の四項でございますね。八の三は、他の締約国との間で没収の資金を配分することについて協定を締結することができる、四項で、この条に規定する没収から生じた資金を被害者の家族に対する補償のために使用する仕組みを確立することを考慮するということでございますが、我が国におきましては、没収した資金は一応国庫に帰属するという仕組みになっておるわけでございます。八条の三項の協定の締結にいたしましても、家族に対する補償のためにそれをやりくりするといいますか、そういうことにつきましても検討はいたしましたけれども、やはり我が国の法制上は相当慎重な考慮が必要であるということで、ちょっとそれ以上には今のところ進んでおりません。
土田委員 といいますと、慎重な配慮が必要であるということで、これに対しては我が国は対応しないということでございますか。
林政府参考人 今のところ検討が進んでおらないということでございます。慎重な考慮が必要だというふうに判断しておるということでございます。
土田委員 これまでのテロ防止関連の十二条約ですが、ハイジャックや爆弾テロなど重大な事件が起こるたびに、国際民間航空機関や国際原子力機関などがその都度作成をしてきた条約であるわけです。そのため、新たな形態のテロなどに十分対応できない側面もあるわけでございまして、現在、国連総会第六委員会の作業部会におきまして協議が続けられ、テロの取り締まり、処罰の対象とする包括的テロ防止条約の案が協議されているわけですね。
 その条約案では、手段のいかんを問わず、身体に被害を与え、物的、経済的損失を与える行為をすべて対象とするということで、総論部分は合意できているとされておりますが、民族自決のための武力闘争とテロとの線引き、軍による武力行使の適用除外例などをめぐって、欧米先進諸国とイスラム諸国会議機構との対立が続いている。それがまだ決着がついていないとされているわけでございますが、この包括的なテロ防止条約案の進捗状況についてお尋ねします。
林政府参考人 御指摘のとおり、いわゆる包括テロ防止条約草案につきましては、インドの提案によりまして、二〇〇〇年の九月から、第六委員会のもとに設置されました暫定委員会といいますか、アドホック委員会において交渉してきておりまして、昨年の二月、十月、それからことしの一月に交渉が行われましたけれども、まだ完全な妥結には至っておりません。次回交渉は、本年十月に行われる予定でございます。
 これまでの四回の審議におきまして、御指摘のとおり、相当程度合意が得られておりますけれども、まさに、その条約の適用範囲というものをどうするかというところも、これも非常に重要な側面でございますけれども、ここにおきまして、アラブ諸国等が、外国の占領に対する抵抗運動というものを例外とすべしという主張を強く行っておりまして、必ずしもこれについて合意が、関係諸国、必ずしもアメリカだけということではございません、合意が得られておらないということで、前回については、時間的な制約もございまして合意が得られなかったというところでございます。
土田委員 現在の世界経済が、人や物や資金が自由に移動することを前提として成り立っているわけでございますが、テロ資金の規制を強めるならば、金融取引あるいは投資活動が鈍るのではないかというマイナス面も当然予想されるわけでございますが、テロ資金の規制が世界経済に与える影響について、政府はどのように考えておられますか。
川口国務大臣 委員おっしゃられますように、テロ資金摘発のための規制をうんと強めるということを行うと、確かに自由な経済の動きというのは、反面、影響を受けるという側面があると思います。
 ただ、現実問題として、今、そこまで厳しい、経済の自由な動きを阻害するほどの強い規制を行うことになるだろうかというと、そうでないというふうに思います。九月十一日の同時多発テロで実行犯が用いた資金量というのはそれほど大きなものではなかったわけでございまして、他方で、世界の経済の中で今流れている資金量というのは膨大なものがあるわけでございます。ですから、その二つを比較いたしますと、このテロ資金対策の強化という問題で世界の経済が悪い影響を受ける可能性というのは、それほど高くないというふうに考えております。
土田委員 次に、拉致問題についてお尋ねします。
 小泉総理が中国・海南島でのアジアフォーラムに出席した際に、北朝鮮による日本人拉致疑惑について、拉致問題は日本にとって極めて重要な人道問題であって、おろそかにしないんだという決意を中国の朱鎔基首相に示されましたが、朱鎔基さんは、北朝鮮に対して影響力があるが、それほど大きいものではない、また、北朝鮮をめぐる情勢は緩和されている方向で、よい兆しがあるというふうに答えられたと言われております。その辺までしか答弁をされなかった。
 そこで、この朱鎔基首相が言う影響力は大きいものではないというのは、謙遜でもあるでしょうが、多少腰が引けているという感じも受け取れるわけでございますけれども、情勢は緩和されている、よい兆しが見えるという発言に対しては、どういった意味を言いたいのだと外務省は考えますか。
川口国務大臣 確かに、おっしゃったように、朱鎔基総理から、最近北朝鮮をめぐる情勢は緩和しており、これはよい方向、よい兆しであると思う旨の発言があったというふうに承知をいたしております。
 この発言に基づきまして、憶測に基づいて何か私の方から申し上げるということは差し控えたいと考えておりますけれども、いずれにいたしましても、北朝鮮につきましては、先般、韓国の林東源特使が訪朝をなさいまして、南北間の対話と協力を進めていくということで合意がなされたわけでございます。また、その際に、北朝鮮側からは、米国との対話を再開する意向が表明されるといった動きも生じています。
 日朝関係を見ましても、ことしの二月の杉嶋元日経記者の解放、三月には北朝鮮赤十字会による行方不明者調査事業の再開と日朝赤十字会談開催の提案等、北朝鮮側からの前向きな動きが見られるわけでございます。
 政府といたしましては、こうした動きに注目をする一方で、拉致問題を含む日朝間の諸問題について、北朝鮮側に対しまして一層建設的な姿勢をとるように求めていきたいと考えております。
土田委員 確かに、米朝、南北それから日朝、そういった関係がよい兆しを出しているというふうに朱鎔基さんはおっしゃったんだと思いますけれども、韓国とアメリカの交渉状況は極めて重要であると同時に、中国と北朝鮮の信頼関係を考えますと、中国の支援といいましょうか、北朝鮮への場合によっては圧力といいましょうか、やはり大事だと考えるわけですね。だから、日本が中国に対して、拉致問題の解決に粘り強くお願いをするといいましょうか、中国に期待感を持つといいましょうか、そういったことが必要じゃないかと思うんですが、この対中国に関しては大臣はどのように考えておられますか。
川口国務大臣 中国との間では、これまでも本問題に対する協力を求めてきているところでございます。この考え方につきましては、変わるところはございません。
土田委員 四月十一日に国会で、日本人拉致疑惑の早期解決を求める決議を全会一致で採択をいたしました。
 決議文は、拉致疑惑は、国家主権並びに基本的人権、人道にかかわる極めて重大な問題であって、政府は、国交正常化に向けた話し合いの中で、国民の生命財産を守ることが国家の基本的な義務であるということに思いをいたし、毅然たる態度によって拉致疑惑の早期解決に取り組むべきであるとしております。
 これは我々国会議員の総意でありまして、外務省はこの決議を真摯に受けとめるべきであって、主権者たる国民の生命よりも国交正常化の方が重要であるというような雰囲気が外務省の一部にあったという話も報道されておりました。この決議を機に、省内が一体となって、拉致問題の解決なしには正常化はあり得ないんだという毅然たる立場で交渉へ臨むべきであると私も考えております。強い態度がかえって相手を軟化させるということもあって、いつまでも相手の顔色をうかがっているような、そういった態度はとるべきではない。
 外務省としましても、最愛の子や親、兄弟の消息を求める家族の悲痛な叫びに改めて耳を傾けなきゃならないし、拉致疑惑解決のために真剣に取り組まなきゃならないということは言うまでもないと思うんですが、川口大臣の、この拉致疑惑、一連の経過があったわけでございますが、それを振り返って、そして今後の決意をお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 私もことしの二月に、拉致された方の御家族の方とお会いをさせていただきまして、お話をかなり長い時間伺わせていただきました。お気持ちを考えると、大変に私も心が痛むというか凍るというか、本当に何とも申し上げられない気持ちがいたしました。
 政府といたしまして、拉致問題につきましては、これは国民の生命に関する重大な問題であるという認識のもとで、日朝国交正常化交渉等の場で、北朝鮮に対して、日朝関係を改善していくに当たり、拉致問題は避けて通ることができない問題であるということを繰り返し強く話をしまして、その解決を強く求めてきているわけでございます。
 また、拉致問題に関しまして、先日、衆参両院で、日本人拉致疑惑の早期解決を求める決議が採択をされました。私といたしましても、この御決議の趣旨を踏まえまして、引き続き、日朝国交正常化交渉に粘り強く取り組み、こうした努力を通じて、拉致問題を初めとする人道上の問題や安全保障上の問題の解決に毅然とした態度で対応をしていく考えでおります。
土田委員 次に、対ロシア外交についてお尋ねをしたいと思いますが、四月十一日にモスクワで読売新聞の記者が日ロ交渉のロシア側責任者であるロシアの外務次官アレクサンドル・ロシュコフ氏にインタビューした記事が、四月十二日の朝刊に掲載をされました。
 外務省の方々は、特に外務大臣は、そういったロシア高官の方との外電といいますか公電を常時見ていらっしゃるわけなんで、ロシア側が今どんなことを考えているかというのは大体承知しておられる。ところが、我々国会議員も国民も、公電は出しませんという姿勢でございますし、あるいはロシアからの新聞記事も極めて少ない、あるいはロシア幹部から最近どういった発言が出たかということも少ないわけでございまして、今回のアレクサンドル・ロシュコフさんのインタビュー記事というのは、私にとっては非常に貴重な感じがいたしました。
 当然、外務省の方、ほとんどの人がこの記事を読んでいると思われますけれども、委員各位の中で見落とした方もいるかもしれませんので、ちょっと概略だけ説明をさせていただきたいと思います。
 まず、日ロ関係の現状については、一言で言えば悲観的である。北方領土問題で、日本は一貫して四島返還を主張し、日ロの立場は依然全く隔たっている。橋本内閣以降、日ロ双方で問題解決に向けての真剣な努力がなされてきたが、昨年夏以降、長い休止期間ができてしまったというふうにロシュコフさんは言っておられます。
 この方は、私も会ったことがあるからわかるんですが、物静かな方ですが、非常に明確にはっきり発言をされる方でございます。
 それから、鈴木宗男さんの問題については、鈴木さんは、複雑な交渉相手だったが、さまざまなプロジェクトを進め、日ロ関係を何とか改善したいという気持ちがあらわれた人だった。これまで日本側のチームは、日本の原則的立場を曲げず、建設的な仕事をしてきた。それがいなくなり、日ロ共同のプロジェクトを進めようとしても、日本側では、だれもがかかわりたがらない。小泉首相や政府首脳が関係改善を口にする一方で、日ロ関係の水準を高めてきた人たちが罰せられており、ロシア側から見れば、日本からのシグナルは矛盾しているように映ると発言しております。
 日ロ交渉の展望についてですが、交渉形態ができていないのが現状である。自国の指導者の信頼を受け、その方針を理解する専門家同士で協議する必要がある。最前の妥協は、事務方が入念に準備した妥協である。
 御存じのとおりでございますが、もう少しですから、続けます。
 日ロ経済関係については、橋本内閣時代に政治と経済の分離で合意したのに、依然両者は合体したままで、最近、政治と経済の結びつきが逆に強まった。ロシア経済が改善する中で、日ロ経済関係は悪化している。政経不可分が続くようだと、ロシアは中国、米国やインドとの関係強化を優先せざるを得ないというような、非常に手厳しいといいましょうか、そういった発言をされております。
 そこで、外務大臣にこの件に関連して伺うわけでございますけれども、このロシュコフさん、外務次官のこうした発言を聞いておりますと、現在の外務省の混乱状況そのままであるというふうな印象を私は受けるんですけれども、まず、全体を聞かれて、外務大臣の感想をお尋ねしたいと思います。
川口国務大臣 感想をということでございますけれども、これについてのこの記事は読んでおります。
 鈴木議員の問題につきましては、他方で、イワノフ外務大臣が、三月十二日に、ロシア国家院、政府の時間の際の北方領土問題についての説明の中で、本件は日本の国内問題であると述べていらっしゃいます。また、我々の、というのは日ロ間ですけれども、関係は、平和条約も含めて個々の出来事や状況に影響されるものではないと述べていらっしゃいます。したがいまして、鈴木議員をめぐる問題が、平和条約締結交渉を含めた日ロ関係に影響を与えたというふうには考えておりません。
 いずれにいたしましても、政府といたしましては、ロシアとの関係について、平和条約の締結、経済分野における協力、国際舞台における協力という三つの課題を同時に前進させるべく、幅広い分野での関係の進展に努めていくことが重要であると考えております。
 我が国の基本的な考え方に全く何ら変更がないということは、私も機会があるときにはロシア側に伝えているわけでございまして、例えば、今月一日にイルクーツク州知事が来日をされた際にも、私がお目にかかって、先方にその旨をお伝えしているわけでございます。
土田委員 我が国の外交姿勢は変わらないというふうにおっしゃいますけれども、だって、相手側の外務次官が、十一日ということはまだ六日前ですよ、六日前にそういう発言されているんです。鈴木さんがいなくなったんで交渉相手がいなくなったとおっしゃっているんです。日本が発信しているシグナルは矛盾を感じるとおっしゃっているんです。あるいはまた、政経不可分が続くようならば、ロシアとしては中国やアメリカとの外交問題を優先しなきゃならないと。こんな、とんでもないといいますか、極めて重大なことを言われているわけでございまして、これについて我が国は変わらないというようなことではだめだというふうに私は思っているんですけれどもね。
 やはり鈴木さんが、外務省と一体となってといいましょうか、別々といいますか、そういった外交を展開してきたという事実があったから、外務省の中でも処分をされたり、これからされようとしたりしたわけですよね。鈴木さんがいなくなった、まあ、現実にいなくなったかどうかは別にして、この対ロシア外交についていなくなったことに対して、相手の国の次官がそういった発言をされている。となると、当然我が国の外交方針としましても、あるいはやり方としましても、変わってこなきゃならないというふうに思うんです。一切影響ないんだ、これからも変わらないんだというんだったらば、これは逆に、外交上少し問題が出てくるんじゃないかなという気が私はしているんです。
 ですから、変わっていないんだというふうに大臣は発言するしかないかもしれませんけれども、もうちょっと何か答えようがありませんか。
川口国務大臣 我が国の北方領土問題に関する立場というのは、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するということで、ずっと一貫とした方針で進めておりまして、二島先行返還論ということを今まで政府として提案をしたことはないわけでございます。したがいまして、先般行いました一連の処分につきましても、そのことは処分の理由にはなっていないわけでございます。
 平和条約締結交渉というのは、領土問題という大変に難しい問題、これについての交渉でございます。したがいまして、紆余曲折を伴うというのは当然なことだと考えております。日ロ双方は、これまでも精力的に交渉を重ねてきているわけでございます。また、双方とも、国内世論を背景といたしまして、難しい対応を求められることもあるわけでございます。したがいまして、一回一回で進展あるいは後退という表現で考えるということは必ずしも適切ではなくて、これは、先ほど申しましたような、一貫とした方針に基づいて精力的に今後とも行っていきたいと考えております。
土田委員 そもそもこの二島先行返還論が、この言葉が正しいかどうかわかりませんけれども、まず二島という話が出てきた背景には、五十年間領土交渉やってきて、何も進展しなかったじゃないかという思いがやはりあるかと思うんですね。だから、では今後十年たったらば返してもらえるんだろうか、返還できるんだろうか、二十年たったらどうだろうか、あるいは、また五十年たって、いわゆるこの領土問題が始まってから百年たっても、もしかしたら変わらないんじゃないかという思いがあるから、この二島先行返還論というのは出たんじゃないかと僕は思うんですね。
 日本の外務省としては、一貫してそれはとっていないということは理解しています。歴代外務大臣もそう言ってきましたし、二島先行は外交姿勢じゃないと思うんですが、イロハのイかもしれませんけれども、十年たっても五十年たっても領土は返ってこない、今のまま進展しませんよという意見に対しては、大臣はどのように考えておられますか。
川口国務大臣 領土交渉というのは非常に難しい問題であると思います。この問題につきましては、粘り強く精力的に交渉をしていく我が国の基本的な立場というのは全く変わらないということでございます。
土田委員 いやいや、変わらないのはいいんですよ。変わってほしいと言っているんです。結論出ないじゃないですか。今まで五十七年間やってきたけれども、全く領土問題については進展を見ていない。これから五十年たったらば進展があるんですか、変わるんですかということなんです。
 この議論があるから二島先行返還論が出てきたんじゃないですかと思うんですね。今のままでいいんですかという疑問はだれでも持っていると思うんですよ。それに大臣はどう答えますかということです。
川口国務大臣 今委員が、変わってほしいと思っているとおっしゃられましたけれども、それは、二島先行返還論に変えてほしいということをおっしゃっているわけではないと私は理解をいたしておりますけれども、我が国の基本的な方針というのは、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するということで、この基本方針は全く揺るがないわけでございます。この基本方針のもとで、我が国としては精力的に粘り強く交渉をしていくということでございます。
土田委員 ということは、今後とも国民に対して、我が国の方針は変わりません、基本的に粘り強くやっていきますというメッセージをずっと発信され続けるわけですよね。それで納得するでしょうか、皆さん。それでいいんですかと。なぜかというと、今まで五十年たっても何ら進展はしなかったし、今後五十年たっても進展しませんよ。それに対して国民にどう答えるんですかという意味なんですよ。
 方針が変わっていないのはわかっていますよ。それでもいいんですか、そういった疑問が出たから、二島先行返還論もいいんじゃないかというのが一部に出たわけでございまして、何ら変わらないじゃないか、これに対して国民のいら立ちというのはやはりあると思うんですけれどもね。
 もう一回答えてください。
川口国務大臣 四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するという、この基本の方針は変わらないということを、政府といたしましては、我が国の国民にも発信をいたしておりますし、ロシアに対しても発信をしているわけでございます。
土田委員 大いに発信をしていただいて、頑張っていただきたいと思います。
 これで終わります。ありがとうございました。
吉田委員長 土田龍司君の質疑は終了いたしました。
 次に、松本善明君。
松本(善)委員 きょうは、安倍官房副長官においでいただきました。条約に入る前に若干確かめておきたいと思います。
 安倍副長官は、北方領土について、二島先行返還論を容認した発言をしたということが報道をされております。今も議論があったんですが、この二島先行返還論というのは、鈴木宗男代議士それから東郷元欧亜局長などが主張して、我が国のロシア外交をゆがめたということで広く論じられております。
 安倍副長官は、このことを承知の上で発言をされたんでしょうか。発言の政治的意図はどういうことですか。
安倍内閣官房副長官 今日まで政府は、北方領土問題を含むロシアとの平和条約締結交渉におきましては、四島の帰属が解決して後、平和条約締結をするという一貫した姿勢で交渉を続けてまいったわけでございます。
 先般の、十五日に私が講演で述べたときにも、この四島の帰属の問題がはっきりしなければ平和条約を結ぶことはあり得ない、当然、その方針には変わりがないということも私は述べております。そして、国後、択捉につきましても、しっかりと協議をしていくということを私は述べているわけでございます。
 そして、今、委員がおっしゃった二島先行返還論でございますが、この二島先行返還論自体が非常にひとり歩きして、中身があり、また、かつて政府がそういう論をとったかのごときの、ある種固定した概念で、二島先行返還が二島先行決着とイコールでひとり歩きをしている中にあって、私は、若干説明をしておく必要があるのではないかという中にあってお話を申し上げた。この二島先行決着論につながるような交渉をしたことは一切ない。森内閣において、私、官房副長官を務めておりましたから、そういう誤解は払拭をしなければいけないという意味において私は申し上げたわけでございます。
 御承知のように、イルクーツクにおける総理とプーチン大統領との間において出された文書におきまして、五六年宣言が初めて文書で確認をされたということでございます。その確認の中で、この五六年宣言は、御承知のように、歯舞、色丹島を平和条約締結の後に返還するということに第九条で言及してあるわけでございますが、しかし、もちろん、それと同時に、四島の帰属については議論する、四島の帰属をはっきりさせなければいけないという東京宣言にも、このイルクーツクにおいての文書の中で言及をしているわけでございます。
 ですから、そういう意味で、この四島の帰属をはっきりさせるという政府の一貫した方針は変わっていない。ただ、森政権当時に五六年宣言を文書化することができた。そして、さらには、この四島の帰属がはっきりした中にあって、その返還の時期とか態様や条件については、これは柔軟に対応するということでございますから、そこのところが誤解されてはいけないということもあって私がお話をした、そういうことでございます。
松本(善)委員 私の聞いたのは、この二島先行返還論がロシア外交をゆがめたということで、マスコミもすべて論じているんですよ。今の時期に何でそんなことを言うんだということを聞いたのに、一言も答えられないで、弁解をされただけです。
 外務大臣に伺いますが、今も外務大臣は、我が日本政府が二島先行返還論を提案したことは一度もない、再々その答弁をされています。安倍副長官の発言は、これは個人の発言と考えておられますか、それとも、外務大臣と相談した上での政府の発言ですか。どちらですか。端的にお答えいただきたい。
川口国務大臣 安倍副長官の御発言がどちらの立場でなさったかということについては私は存じませんけれども、いずれにいたしましても、安倍副長官の御発言の内容につきましては、今、副長官から御説明がありましたように、政府の基本方針と何らそごはないと考えております。
松本(善)委員 私は、それならば、そういうことを軽々に発言すべきではないと思うんです。混乱をするだけです。今までの、何度もこの委員会で申し上げましたけれども、ロシア側は、五六年の共同声明は二島決着論だ、こう言っているし、そのことも広くマスコミで論じられている。そういう状況のもとで誤解を招くようなことを官房副長官が軽々に言うことは、私は、慎むべきである、こういうふうに申し上げて、条約の議論に入りたいというふうに思います。
 このテロ資金防止条約ですけれども、二〇〇一年九月十一日に米国で同時多発テロ事件が発生して以来、テロ根絶の国際世論はかつてなく高まっております。
 我が党は、テロ行為は、いかなる宗教的信条、政治的見解によっても絶対に正当化することができない卑劣な犯罪行為であり、その根絶は、二十一世紀に人類がこの地球上で平和に生きていく上で一つの根本条件というべき重大な意義を持つもの、こういうふうに考えております。
 この条約は、国際テロ組織の資金封じ込めを図るものであり、賛成できるものであります。
 ただ、問題は、テロのために、例えば慈善行動のための資金活動をやっているというような、慈善活動を装ってやっているというような場合に、それを知らずに善意で寄附するというような人たちが巻き込まれるというようなことのないように、やはり、捜査機関や政府の恣意的な運用によって、市民の人権や結社の自由が侵害されるということのないようにしなければならないと思いますが、そういう点についてはどのようにお考えでありますか。
林政府参考人 この条約の構成要件と申しますか、テロに関連する犯罪化をするわけでございますけれども、その構成要件と申しますのは、二条に明確に書いてございますが、既存のテロ防止関連条約に定める犯罪行為など、一定のテロ行為に使用されることを意図してまたは知りながら、資金を提供しまたは収集する行為を犯罪とするということでございまして、いわば、国内で犯罪であるということが明確な行為に対して、その犯罪が実行されるということをわかっていて、それをまた意図しながら、その資金を提供する行為ということでございますので、松本先生御懸念の、慈善団体への資金集めに協力しているといった、一般の正当な市民活動がこの条約によって犯罪化されるといったようなことは、およそあり得ないというふうに考えております。
松本(善)委員 この際、テロの根絶の問題について外務大臣に伺いたいと思います。
 米軍がイギリス軍とともにアフガニスタンに対し武力攻撃を開始してから既に半年が過ぎようとしております。日本の自衛隊もそこに参加をしているわけでありますが、ビンラディンの逮捕もされておりません。
 我が党は、二度にわたって、各国政府にあてた書簡で、米国への大規模テロを糾弾するとともに、その解決に当たっては、軍事報復を強行するのではなく、国連が中心になって、国連憲章と国際法に基づいてテロ犯罪の容疑者と支援者を告発し、身柄引き渡しのための必要な制裁を行い、法による裁きを下すことが必要だということを主張してまいりました。
 この立場から、テロ特措法の国会審議で、小泉首相初め政府に質問しましたところが、小泉首相は、国連でウサマ・ビンラディンの身柄引き渡しを要求する決議が採択されているが一向に出てこない、国連が出てこいと言っても出てこないのだから、アメリカの武力攻撃が必要なんだとたびたび答弁をしてまいりました。半年にわたるアメリカの武力攻撃によって、テロの容疑者とされるビンラディンは逮捕されておりません。
 この事態について、外務大臣はどういうふうに考えていらっしゃいますか。
川口国務大臣 テロ根絶のためにはさまざまな努力が、またさまざまな取り組みが必要であると考えております。
 これまで国際社会は、テロ防止の関連条約の作成に当たりまして、ハイジャックですとか、人質行為ですとか、爆発物の設置ですとか、典型的ないわゆるテロ行為に該当する一定の行為類型につきましてこれを犯罪とする、そして、処罰のための法的枠組みを整備するとの対応を着実に積み重ねてまいりました。また、テロ根絶のために国際社会が一致団結をいたしまして、国連等の場を活用いたしまして、今さっき申し上げたような一定のテロの行為を犯罪とする条約の締結を含みます法制面での整備、テロ資金対策、あらゆる手段を講じることをまたやってきたわけでございます。
 我が国として、二国間の枠組みやG8やあるいは国連などの多国間の枠組みにおきまして、テロ防止関連の条約の作成に貢献をしていく、あるいは国連の安保理決議の履行の働きかけ、その他国際的なテロの対策に国際社会の一員として貢献をするための努力を行ってきているわけでございます。
松本(善)委員 質問に端的にはお答えにならなかった。
 九日付のアラブ系紙のアルハヤトは、ビンラディンがいるテロ組織アルカーイダが、ビンラディン氏は無事で健康状態もよく、次の戦闘に備えているという声明を受け取ったということを報道しています。私は、ビンラディンの逮捕ということで、そのために軍事行動が必要なんだと言っていた小泉首相の論理は、やはり崩れているんじゃないか。
 私どもの党は、テロは地球文明と人類社会に対する攻撃という性格を持っていて、国際テロ集団の根絶のためには、国際社会の強固な大同団結をつくり上げて、法と理性を最大の力に、テロリストの逃げ場が世界じゅうのどこにもなくなるという状況をつくることが重要だと考えております。
 ところが、この団結に軍事報復が水を差しているんではないか。三月二十七日付のUSAツデーで報じられましたギャラップの世論調査を見ますと、イスラム諸国九カ国の国民の七七%がアフガニスタンでの米国の軍事行動は道義的に正当化できないと見ている、正当化できるという回答はわずかに九%です。こういう状況でテロを追い詰めることが可能だと、外務大臣、考えますか。
川口国務大臣 テロに対処をする、テロに対応するということの具体的なやり方についてさまざまな考え方は存在するだろうと思います。私は、今まで国際社会が一致団結をしてやってきたこのやり方、今までの取り組みは、それなりの成果を上げていると考えております。
松本(善)委員 一致団結をしていると言われますけれども、事実は私はそうでないと思います。
 イスラム諸国は、事件発生当初は、テロ根絶で団結をしていました。昨年の十月の十日、カタールで開かれたイスラム諸国会議、緊急外相会議の声明は、米国での同時多発テロを厳しく非難をして、そして、イスラム教の教えにも反するというふうに指摘をいたしました。犯人を法に照らして裁くよう提起するとともに、国連のもとでのテロ根絶の国際的な集団的努力に積極的に参加すると述べて、テロ反対の立場を鮮明にし、国連を中心にした問題解決を主張しておりました。しかし、同時に、七日に開始されましたアフガン空爆についてはあえて名指しの言及、非難はせずに、罪のない市民に犠牲者が出ることを憂慮している、こういう立場です。
 現在、正確な民間人の犠牲者の数はわかりませんけれども、ことしの一月六日に発表されたアメリカの研究者の調査によりますと、空爆開始から三カ月弱で、最低でも約四千人の民間人犠牲者が出ているということであります。
 米軍によるアフガン攻撃、これは、私は国際的なテロ防止の団結を逆に弱まらせているんではないかというふうに考えます。民間人の多数の犠牲者、四千人といいますと、米国のテロでの犠牲者に匹敵をするに近い数字です。こういうことで国際的なテロをなくすという団結が弱まるんではないかということを私どもは大変懸念しているんです。外務大臣は、この点についてはどのようにお考えですか。
川口国務大臣 先ほど、今まで国際社会が行ってきたテロに対する取り組みの具体的な例を申し上げさせていただきましたけれども、そういった今までの取り組みはそれぞれ成果を上げてきていると私は考えております。
松本(善)委員 このアメリカのテロ対処の影響が最悪の形であらわれているのが、今深刻になってきているイスラエルの問題ではないかと思います。イスラエルのシャロン政権によるパレスチナに対する全面戦争、これだということをシャロン政権は言っています。パレスチナ自治区はほぼ全面的な占領下に置いていて、これは、半世紀近い対立を経て、共存と平和の実現を目指してつくられた一九九三年のオスロ合意を初め中東和平を目指すさまざまな努力を台なしにする、私は許しがたい暴挙だと思います。
 シャロン首相の蛮行に対して、アラブ諸国はもちろん、EU諸国などほとんど世界じゅうの国が抗議の声を上げています。その結果が三月三十日の国連安保理事会の決議一四〇二号であります。これは、双方の停戦とイスラエルの撤退を厳しく要求している。安保理事会はさらに、四月三日に緊急会合を開いて、同決議の遅滞なき実施をイスラエルに求める新たな決議一四〇三を採択いたしました。その後、十日には、イスラエル軍の即時撤退や即時停戦を呼びかけたアメリカ、ロシア、EU、国連の四者による共同声明が出ました。
 十一日の本院本会決議も、二つの国連決議の全面的支持とイスラエル軍のパレスチナ自治区からの全面撤退と軍事行動の即時停止を求めました。
 イスラエルはもはやテロを批判する資格をなくしたと言っています。イギリスのガーディアン紙は、イスラエルは無法な侵略者と断定をして世界の決起を呼びかけております。イスラエルは、国連の安保理事会決議を全世界の意思として受けとめ、直ちに軍を撤退させるべきであります。
 外務大臣は、十一日にイスラエルのリオール駐日大使と会談したそうでありますが、イスラエルに対してパレスチナ自治区からの即時撤退を要求したのか。また、イスラエルは今でも全面撤退をしないでいます。これに対してどう対処をするつもりなのか、伺いたいと思います。
川口国務大臣 私は、委員がただいまおっしゃられましたように、今月の十一日にリオール在京のイスラエル大使とお会いをいたしまして、イスラエル軍のパレスチナ自治区からの即時撤退を強く申し入れたわけでございます。
 この今の暴力の悪循環については深く憂慮をいたしているわけでございまして、このほかにイスラエルに対しては、ペレス外務大臣に対しての電話あるいは手紙といったことでも働きかけております。また、茂田前イスラエル大使がイスラエルに行っておりましたので、茂田前大使を通じまして、またイスラエルの各方面にも働きかけを行ってきたわけでございます。
 安保理決議の一四〇二の実施、両者間の一日も早い停戦の実現につきまして、私たちは、我が国の政府は働きかけているわけでございまして、現在、パウエル国務長官が現地で仲介を懸命になさっていらっしゃるわけでございまして、この努力を中心といたしました米国の取り組みが成功するかということが最も重要となってきておりまして、国際社会は、これはEUもそういうことでございますけれども、この長官の努力を見守りつつ、支持、支援をしていくということが大事であると考えております。
 我が国として、どういうようなことを行うのが、またどういうタイミングで行うのが、国際社会の努力と協調しながら最もこの状態の解決あるいは改善に資するのかということを考えているわけでございます。
松本(善)委員 そこが一つの問題点というか、パウエル長官に期待をしていると。
 シャロン首相は、我々は、米国がアフガニスタンで攻撃を行ったようにパレスチナを攻撃すべきだと言って、多数の戦車や最新鋭の戦闘機など圧倒的な軍事力による、ほとんど無防備な市民に対する圧殺行為を行っている。シャロン首相は、要するにパレスチナがテロをやっているんだ、アフガニスタンと同じように攻撃をしていいんだ、これは米国もやったじゃないか、こういう立場でやっているんですよ。このシャロン首相の言うこと、理屈について、外務大臣、どう考えていますか。
川口国務大臣 イスラエルのパレスチナ自治区からの即時撤退、停戦、和平への交渉を行うということにつきましての我が国の立場は、全く変更ございません。
松本(善)委員 やはり私どもも、パレスチナの自爆テロについては、一般市民を攻撃目標にして殺害する、こういう行為はどういう理由でも正当化できないし、たび重なる自爆テロがイスラエルの一般市民の不安を拡大して、軍事力ではなく話し合いをとイスラエル内部で訴えてきた人々も声を上げにくい状態にしている、その結果、シャロン政権の軍事力一辺倒に手をかす結果になっていることをこの人たちは理解すべきだと思いますが。
 同時に、明確にすべきことは、パレスチナ領土占領を続けてきたイスラエルを政治的、軍事的に支持してきたアメリカの責任の問題であります。アメリカは、最近になってようやく、国際世論に押された形で、イスラエル軍の撤退を求める言明を行っていますけれども、それまでブッシュ大統領は、シャロン政権の蛮行を自衛だとか理解できるなどとし、支援をし続けてきました。その責任は私どもは極めて重いというふうに考えていますが、外務大臣、どのように考えていますか。
川口国務大臣 現在、パウエル国務長官は、仲介という非常に困難な仕事を献身的に努力をしている過程にあるわけでございまして、我が国としても、ほかの国々とともに、EU等とともに、このパウエル国務長官の努力を支援し、支持し、見守っていきたいと考えております。
松本(善)委員 パウエル長官の仲介が困難だというのは、このブッシュ大統領の発言がシャロン首相を勇気づけているからですよ。それと同じことをやっているんだと言っている。それで今なお全世界の世論に抗して撤退をしないのですよ。この点をきちっと物を言うべきだと思います。
 ブッシュ大統領は、ことしの一般教書演説などで、イラクなどへの戦争拡大発言をしております。各国の反応を見ますと、フランスのベドリヌ外務大臣は、世界の諸問題をすべて対テロ戦争に集約できるわけがない、ドイツのフィッシャー外相は、対テロ戦争の国際協力を理由にすべてが許されるわけではない、我々は米国の衛星国ではなく、軍事的冒険を支持するわけにいかない、中国外務省の孔泉報道官は、こうした論理がまかり通るなら結果は重大である、プーチン・ロシア大統領は、最もよい方法ではないと、イスラム諸国のみならず、各国の外相が戦争拡大に批判的であります。この状況では、とてもテロ根絶のための世界的包囲網はつくれない。
 日本政府は、なぜイラクへの戦争拡大は認めないとはっきり言えないんですか。これを言う考えはありませんか、外務大臣。
川口国務大臣 二月に行われました日米首脳会談におきまして、ブッシュ大統領は、イラクにつきましては、その行動パターンを変えるように国際社会が協力をする必要がある、米国は、全部のオプション、選択肢を排除していないけれども、平和的に物事を解決したいと考えていて、外交努力を続けたいと考えているということをおっしゃっていたわけでございます。
 委員の御質問は、戦争をアメリカがする可能性、軍事行動をとる可能性についてもおっしゃっていらっしゃるわけですけれども、したがいまして、そういった行動をとるということを今予断して物事を申し上げるというのは、私の立場からは適切でないと考えております。
松本(善)委員 アメリカは、武力行使の国際法上の根拠として、国連憲章五十一条を挙げている。日本政府もそれを支持していますが、自衛権の発動については、国連憲章は安保理事会が必要な措置をとるまでというふうに定めております。既に安保理事会は、千三百六十八だとか千三百七十三の決議で必要な措置をとってきました。このテロ資金防止条約の早期批准も、千三百七十三の決議で言われているものであります。
 政府としては、米国による攻撃の中止を要請し、国連中心にテロ防止の国際世論をもう一度再構築すべきではないか、自衛隊も直ちに撤退すべきではないか、私どもはそう考えております。この時点で、やはりテロに対する戦争ということをやめて、国際世論でテロに対する大きな包囲網をつくるという方向に我が国は努力をすべきではないかと思いますが、外務大臣の見解を伺います。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、テロの根絶につきましてはさまざまな取り組みを行っていくことが大事でございまして、その中の一つとして、委員がおっしゃった国際世論というのもあると思います。他方で、我が国を初め、ほかの国々が協調して今まで行ってきたテロ根絶のための取り組みは、それなりの成果を上げていると私は考えております。
松本(善)委員 時間になりましたので終わりますけれども、やはりこのアメリカのやり方の矛盾が今のイスラエルの、非常に世界が憂慮をする事態を生み出している、そこのところを根本的に考えて、平和のための外交を進めるべきであるということを強調して、質問を終わります。
吉田委員長 松本善明君の質疑は終了いたしました。
 次に、今川正美君。
今川委員 社会民主党の今川正美であります。
 今議題となっております国際条約と関連する国内法につきまして、具体的にお伺いをしたいと思います。これまでの審議で多分に重複するところがあるかもしれませんが、改めてお伺いをしたいと思います。
 まず最初に、テロ行為を認定する際の基準の明確化について、これは外務省にお尋ねしますが、本条約の第二条第一項(b)では、規制すべき活動を、「文民又はその他の者であって」以下記されておりまして、ただし書きの規定では、「住民を威嚇し又は何らかの行為を行うこと若しくは行わないことを」というふうにございまして、いわゆる住民、市民に対する威嚇を含む、非常に範囲が広い、極めて広いと思うんですけれども、こうした規定を見ます限り、ほとんど無限定的になるんではないかと思われますが、この点、いかがでしょうか。
林政府参考人 お答えします。
 御指摘のとおり、二条一項(b)は、既存の九本のテロ防止関連条約上の犯罪行為以外の行為であっても、住民の威嚇または政府等に対する強要を目的として、人の死、重大な傷害を引き起こすことを意図する行為について、その行為のために資金を提供することを犯罪とするということを定めております。
 今、住民の威嚇というところが茫漠としているのではないかという御懸念でございますけれども、そもそもここにおきます行為というのは、死または重大な傷害を引き起こすということで、殺傷行為というのがまず前提にあるわけでございます。その殺傷行為の目的が住民を、住民ということは特定の個人ということではございません、幅広く住民を威嚇し、あるいは政府等に強要するということでございますので、ここは、この行為の外延はかなり客観的に明確なのではないかなというふうに思っております。
今川委員 次に、二点目に、同条約の第六条でありますが、「この条約の適用の対象となる犯罪行為が政治的、哲学的、思想的、人種的、民族的、宗教的又は他の同様の考慮によっていかなる場合にも正当化されないことを確保するため、必要な措置をとる。」というふうにございますが、これは、民族的、宗教的な少数者の側が多数の暴力的あるいは抑圧体制にある場合に、これに対抗して行使する力の正義といいますか、これを真っ向から否定してしまうことにつながりはしませんか。
林政府参考人 このテロの考え方でございますけれども、従来のテロ防止関連条約といいますのは、特定の犯罪類型というものが、テロリストとは何だとかテロリズムとは何だという定義はさておいて、こういう行為はみんなで犯罪にしましょうということで積み重ねてきておりまして、その行き着く先として、国際社会が全部犯罪行為だと認識している行為に対して資金を提供する行為を犯罪行為としようということでございます。
 民族的、宗教的な事情等によるものでございましても、いわゆるハイジャック等の条約で国際的な犯罪行為とされておる行為あるいは殺傷行為、今回の住民等に対して威嚇目的での殺傷行為、そういう犯罪行為そのものに対して、それがまずあるわけです、まず犯罪行為というのが前提にある。それに対して資金を提供する行為が犯罪行為であるということを言っておりますので、今の先生の御指摘だと、そのもとの行為、資金の提供の対象となる行為というものが少数者の抵抗運動をやりにくくするのではないかというお話でございますけれども、この条約の基本的な考え方は、やはり民族的、宗教的な事情等あろうとも、目的によってテロを正当化することはできないということを基本的な考え方にしているんだと思います。
 ただ、先ほどもちょっと申し上げましたが、この条約は、そういう犯罪行為を前提にして、その犯罪行為に使用されることを意図して、あるいは知りながら資金の提供、収集を行うことを犯罪化するということでございますので、この条約自体につきましては、一般の正当な市民のいろいろな支援活動とかいったものがこの条約の対象として犯罪化されるということはおよそあり得ないというふうに考えております。
今川委員 私ももちろん、目的によってはテロ行為を正当化してよろしいという意味で言っているわけじゃないのですね。
 それで三点目に、昨年の十月、これももう御存じのように、国連総会のテロ問題作業部会で、いわゆる先進諸国とイスラム諸国との間で激しい意見の対立があった末に事実上決裂をしてしまった、これは新聞各紙でも報道されたとおりであります。
 そこで、特にイスラム諸国から主張されているのは、いわゆる正規軍の行為を国際条約の適用範囲から外すことはできないというふうにしていまして、また、もう一点、民族自決のための闘争はテロ行為ではないというふうに強く訴えて、これに対して米国など先進諸国が譲らずに、事実的に決裂をしたというふうに報道されております。
 そこで問題なのは、実力を伴う民族独立運動とテロ行為というものはやはり区別されるべきじゃないかと思いますし、特にパレスチナにおけるイスラエルの行為を念頭に置いて、正規軍の行為をこの条約の対象から除外すべきでないというふうにイスラム側は言ったと思うんですね。この状況に関して、いわゆる包括的なテロ条約について、外務省の基本的な認識を改めてお伺いをしておきたいと思います。
谷内政府参考人 この包括テロ防止条約草案につきましては、先生御案内のとおり既に四回審議が行われておりまして、特に九・一一テロ攻撃の後の十月のアドホック委員会におきましては、先生御指摘のとおり、大変熱のこもった議論が行われましたけれども、アラブ諸国などが例外とすることを強く主張しております外国の占領に対する抵抗運動をいかに取り扱うか、あるいはまた、国家の軍隊の行為をどのようにするかという点につきましては、時間的な制約もございまして、結局、交渉はまとまらなかったわけでございまして、さらに次回交渉は本年十月に行われる予定でございます。
 それで、我が国の態度はどういうことであるのかということでございますけれども、これは今公式、非公式にいろいろな議論をやっておりますけれども、我が国の基本的な立場は、テロは動機、形態のいかんを問わず断じて許されるべきではないということ、それから、この条約はテロの防止、根絶という観点から実効的なものにならなくてはいけない、こういうふうに考えておりまして、テロとの闘いは、従来から申し上げておりますように、我が国自身の問題でもあるという考えに立って、国際社会が一致団結してテロに対処することの重要性ということを訴えつつ、何とか交渉をまとめる方向で積極的に参画したい、こういうふうに思っております。
今川委員 そこで、やはり一番難しいのは、国際社会の中でテロあるいはテロ行為というものをどのように定義していくのかということが、長年いろいろな意見がありまして、なかなか定まらない。今申し上げた包括テロ条約に関してもそうなんですね。
 そこで、ここは外務大臣にぜひお尋ねしたいと思いますが、今のイスラエル、パレスチナ問題ですね、この中でも、まず最初に、現下の非常に際どいパレスチナ情勢について、大臣としての認識をまずお尋ねしたいと思います。
川口国務大臣 パレスチナとイスラエルとの間で暴力の悪循環がずっと起こっているということについては大変に憂慮いたしております。
 再三再四、イスラエルに対しましては、パレスチナ自治区からの即時撤退、停戦を求めてきているわけでございまして、これはイスラエルの外務大臣に対しても、それから在京のイスラエル大使に対しても、私から直接お話をしたりあるいは手紙を出したりということで行っております。他方で、パレスチナに対しましても、テロ行為、自爆テロをやめるようにということを、これもまたお話をしているわけでございます。
 そういった問題につきまして、今パウエル国務長官が現地で仲介の努力をしていらっしゃるわけでございまして、我が国といたしましては、この仲介の努力を支援し、支持し、そしてその成果を見守るということで、今EUとともに、この成果が実りあるものになるということを期待しているわけでございますけれども、我が国としては今後鋭意働きかけをしていきたいというふうに考えておりますし、同時に、国際情勢の進展を見ながら、また他国とも協調をしながら、我が国として、どういう形で、どういうタイミングで今後新たな動きをしていくことが国際的な貢献になっていくのかということを現在考えているわけでございます。
今川委員 実は、我が党は昨日、このパレスチナ問題に関しまして、この二月の半ば、銃火が交わされている一番厳しいときに、イスラエルとパレスチナの視察団の代表でもありました芝生瑞和さんにおいでいただいて、今の状況についてつぶさに御報告を聞きました。
 やはり非常に厳しい現実がありますし、その部会の勉強会の中には、きょう一部新聞にも出ておりましたが、今回のイスラエル軍の攻撃の中で、あくまでも非暴力で抵抗、抗議をするという平和行進をしている途中、イスラエル軍の威嚇射撃で足を負傷された清末さんという女性も、現実に威嚇射撃を受けた、まだ足には破片を残したまま日本に十四日帰国をされた、その方もおいでになっていました。
 例えば、パレスチナの一部の人が、この間初めて自爆テロと称して女性までが亡くなりましたけれども、自爆テロというふうに報道されているああいう姿というのを、この間党首討論の中でも、自由党の党首も小泉総理に対して、あのような自爆テロといったものをあくまでもテロ行為と見るのか、あるいは、ほかに何も手段がなくてやむにやまれずやっている、いわば民族自立のための行動と見るのかということに関して、残念ながら総理は明確なお答えがなかったようでありますけれども、改めて、外務大臣はこうしたパレスチナの一部の人たちの行動をどのように認識されているのかをお尋ねしたいと思います。
川口国務大臣 先ほど委員もおっしゃっていらっしゃいましたけれども、テロリズムにつきまして厳密な定義が存在するわけではなくて、国際的にも大きな議論があると思います。一般的には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受け入れ等を強要し、または社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等を指す意味で用いられるものと考えられているわけでございます。
 その中で、個人が一般人を無差別に巻き込む自爆行為を行うようなことは、これはテロと呼ばれてもやむを得ない行為と考えます。その意味で、最近のパレスチナ人による行為は自爆テロと呼ばれてきているわけでございまして、日本といたしましては、アメリカもそうですが、この中止をパレスチナに呼びかけているわけでございます。
今川委員 それでは逆に、イスラエル軍が現在も行っているような、パレスチナ自治区の中で、あるときには戦闘機からの攻撃、あるいは戦車でほとんど町を取り囲んで無差別に殺傷している。先ほど申し上げた清末さんという女性の場合も、石ころ一つ投げているわけじゃないんですね。非暴力という形で抗議を示す、そこに対しても戦車の上から銃で射撃を受けているわけですね。
 こうした行為というのは、言ってみれば国家テロだと言わざるを得ないと私は思うんだけれども、その点は、大臣、いかがですか。
川口国務大臣 まず、清末さんとおっしゃいましたでしょうか、その方がけがをなさったということについてはお見舞いを申し上げたいと思いますが、先ほど申し上げましたように、テロリズムについては、一般的に、国際社会で厳密な定義が存在をするわけではないわけでございます。それに加えまして、国家がテロを行うことがあるかどうかにつきましては、これは国際社会における大きな争点の一つであると私は理解をしています。
 今日のイスラエルの行為を国家テロと呼ぶかどうかにつきましては、そういう意味で、明確に申し上げることはできないわけでございます。
 ただ、このことと、イスラエルが現在行っている武力侵攻がとめられるべきであるということとは別な問題でございまして、日本は、我が国といたしましては、イスラエルの行為は不適当であって紛争の解決に資さないということははっきり言っているわけでございまして、したがいまして、イスラエルの即時撤退、停戦を呼びかけて、求めているわけでございます。
今川委員 いずれにしましても、一九四八年にパレスチナの地にイスラエルの国家を創設した、そこまでさかのぼってしまうわけでありますが、やはり、憎しみが憎しみを呼ぶ、報復が報復を呼ぶという状態を、我が国も含めて国際社会が一日でも早く何とか和解に持ち込んで、両方とも共存していけるということが一番望ましいと思います。
 昨日の芝生さんの報告などによりますと、今回のこういう事態の中で、ドイツはかなり独自の積極的な動きを示している。ガザ国際空港が破壊をされて、百メーターほど残して、ほとんど滑走路そのものがいかれてしまった。もちろんイスラエルの攻撃によってですね。あそこはドイツが支援をしたお金でつくった滑走路なわけだから、イスラエル政府に対してきちっと損害賠償を求めたいということも含めて、やはり毅然とした姿勢で臨んでいるというお話を伺いました。
 特に懸念されるのは、今イスラエル軍がやっているのは無差別だと言いましたけれども、いわゆる救急車に対しても、現実に目の前で攻撃をしているんですね。だから、ジュネーブ協定からしても明らかにこれは違反の行為ではないかと思います。だから、だれか特定の人間をねらっているというレベルの話ではなくて、生活基盤、インフラそのものを破壊し尽くすというふうなところにまで来てしまっています。
 日本の場合も、九三年のオスロ合意以降からしましても、報告によると六億二千万ドルといいますから、日本のお金で約八百億円余りの大変なパレスチナに対する援助を行っていると思うんですね。この国際空港のビルなどにしましても、日本のお金で建てているんだと思いますが、実質的に使えなくなっている。
 こういった点に関しては、先ほどドイツの例を挙げましたけれども、日本政府としてやはりイスラエルに対して、イスラエルが破壊したのであれば、それなりの賠償をきちんと求めていくということがあってしかるべきだと思います。この点は大臣としてどうお考えなのかはぜひ聞きたいと思います。
 さらに、昨日の部会の中で芝生さんがおっしゃっていたのは、今回、我が国はこの国会でパレスチナ情勢に関する決議というものを、衆議院は全会一致で採択をされました、参議院は一人だけ何か反対の方がおられたという話も聞きますが、いずれにしても、ほぼ全会一致でこういうパレスチナ問題の解決を国会の場で決議するというのは、お話によると、今の世界各国の中で恐らく日本だけだろう、そういった意味では非常に積極的な意味があるのではないかということをおっしゃっています。
 また、アラファト議長もこの芝生さんに対して、日本は何をすればいいかという質問に対して、日本はG8のメンバーでもあり、国連での地位、アメリカとの関係、EUとの結びつきなどを生かした日本政府の緊急な行動を期待したいということまで表明されているわけですね。
 そうした意味では、懸念の表明だけにとどまらずに、ここはやはり日本の独自の立場を生かしながら、もっと積極的に関与していくことも必要ではないかと思うんですが、大臣、いかがでしょう。
川口国務大臣 二つ御質問がありまして、まず一つは、パレスチナに援助をしたものについての賠償請求をしないかということでございました。これにつきまして、我が国の支援によって建設をされた施設が被害を受けたことにつきましては、我が国としては、イスラエルに対して、今まで遺憾の意の表明を累次にわたり行いまして、また、現状の調査、事実関係についての調査及び再発の防止を要請してきているわけでございます。
 他方で、賠償請求につきましては、我が国は資金は拠出いたしましたけれども、施設、機材の所有権が我が国ではなくてパレスチナ暫定自治政府にあるわけでございまして、したがいまして、賠償請求をする立場には我が国はないということでございます。
 それから、おっしゃいました国会の決議につきましてでございますけれども、政府といたしまして、採択をされた決議の趣旨を体しまして、アメリカを初めとする関係国と協力をしながら、イスラエル、パレスチナに対する働きかけをさらに強化し、停戦が行われ、和平交渉が再開をして、イスラエルとパレスチナ国家の平和共存が行われるように最大限の働きかけをしていきたいと考えております。
今川委員 そこで、パレスチナ問題に関して、あと二点だけ。
 一つは、サウジアラビアのアブドラ調停案というのがございますね。これを日本政府としてどのように評価をされているのかをぜひお伺いしたいと思いますのと、これは事前通告の中にはなかったんですが、四月十六日付の新聞で、国連欧州本部で開かれている国連人権委員会は、今月十五日、イスラエルによるパレスチナ自治区での人権侵害を非難する決議案を、賛成四十、反対五、棄権七で採択をしたという報道がございました。その中で、ドイツやイギリスが反対を表明し、我が国、日本は棄権をしたという報道になってございますが、この棄権をした意味というところを御説明ください。
安藤政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいまのアブダラー調停案でございますが、これは、イスラエルによる占領地からの撤退を条件といたしまして、イスラエルとの関係正常化をアラブ諸国に対して呼びかけるというものでございます。
 この提案につきましては、中東和平プロセス全体に進捗をもたらし得る新たな重要な一歩だということで、私ども日本政府としては歓迎をしております。この提案は、先月ベイルートで開催されましたアラブ首脳会議におきまして、アラブ和平提案として採択されたわけでございますが、我が国といたしましても、これをアラブ諸国全体の和平への意思の表明であるということで歓迎をして、政府として、その旨、正式に表明をしております。
 したがいまして、こうした提案を契機として、中東地域において情勢を鎮静化させ、公正、永続的かつ包括的な和平を一日も早く実現するための具体的な動きが進展することを強く期待している次第でございます。
谷内政府参考人 ただいまの、人権委員会で日本が棄権したのはどういう理由かという御質問でございますけれども、まことに申しわけございませんが、突然の御質問でございましたので、私ども、ちょっと今担当の者を、また準備をしておりませんので、後日、できるだけ早く先生に御報告申し上げたいと思いますので、御了解いただきたいと存じます。
林政府参考人 済みません。ちょっと担当の者がおりませんのであれでございますけれども、仄聞するところでは、決議の内容がかなりイスラエル寄りの一方的なものであるということで、バランスを欠いておるという判断で棄権に回ったということであったようでございます。(今川委員「えっ、イスラエルに偏り過ぎ」と呼ぶ)済みません。イスラエル非難に偏っているということで一方的であったということでございます。
今川委員 さて、もう一度、いわゆるテロ資金供与防止条約について、あと一、二点質問いたしたいと思いますが、肝心のアメリカがまだ批准していませんね。これはどういう理由で批准しないのか、今後、批准する展望というのは果たしてあるのか、これは外務省にお尋ねします。
小野政府参考人 米国の締結の見通しでございますが、米国におきましては、昨年十一月九日に本条約及び爆弾テロ防止条約を実施するための法案が下院の審議に付された後、同年十二月十九日に下院を通過しております。現在、上院司法小委員会に付議されているところでございます。
 同委員会における審議の見通しにつきましては、予断することは差し控えたいと思いますけれども、米国は、先般のテロ発生以来、テロリストに対する資産凍結、それからテロ資金源対策の強化等を含めまして、テロ対策に関する国際協力を積極的に推進してきているというふうに承知しておりまして、本条約につきましても早期の締結を目指しているものと承知しております。
 なお、今月に入りまして、改めて、我が方在米大使館を通じまして国務省に確認しましたところ、国務省といたしましても、国際的なテロ対策の取り組みを積極的に推進してきている米政府としては、一日も早くこの条約を批准することが何よりも重要であると考えておりまして、議会に対しても積極的に働きかけを行ってきているところであるという説明がございました。
 以上でございます。
今川委員 もう時間の関係で最後の質問になるかと思いますが、この条約の中で、第二条三項に、資金が実際にテロに使用されることは不要であるとされておりますし、国内関連法の、公衆等脅迫目的犯罪資金提供処罰法では、第二条第一項で、いわゆる情を知って、犯罪行為の実行を容易にする目的があればよいと規定されております。
 そこで、この犯罪の実行を容易にする、非常にわかりづらい表現なんですが、余りにも漠然としておって処罰範囲が著しく拡大してしまうんじゃないかというふうに受け取る向きもございます。
 例えば、多くの市民団体なり市民は、わかりやすく言うと、事情を知らないでカンパした者までが罰せられるんじゃないかと心配しておりまして、例えば、このようなチラシには、カンパで懲役十年とか、ちょっとこれは極端だと思うんだけれども、そういう心配をする声がたくさん出てきております。
 それと、もう時間がございませんのでついでに申し上げておきますが、例えば南アフリカの元大統領マンデラさん、あるいは、今話題の東チモールで、まだ大統領になったわけではありませんけれども、グスマンさん、大統領予定候補、こういった方は、過去、投獄をされたり、民族の自立を求めて闘った人たちなわけですね。
吉田委員長 今川さん、時間が終局していますから簡潔に。
今川委員 はい。
 そういう諸団体に日本の国内からもいろいろな団体がカンパをしたりしているわけです。そういったものまでこの法でくくられるんじゃないかという多くの市民の懸念する声がありますので、この点、明確に御答弁をお願いしたいと思います。
古田政府参考人 ただいまお尋ねの点につきましては、この処罰法案の二条一項で、「情を知って、公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行を容易にする目的」、こういうふうに規定してございますが、まず、「情を知って」ということは、これまでも法令用語としてしばしば使われていることでございまして、ここに当てはめて申し上げますれば、資金提供の相手方が、公衆等脅迫目的で、法案の一条の各号に具体的に明記しております殺人でありますとかそういう重大な犯罪行為を実行する意図を持っているということを知っているということでございます。また、「実行を容易にする目的」と申しますのは、資金提供の相手方による当該犯罪行為の実行を容易にさせるということを積極的に意図してということでございます。
 したがいまして、今お尋ねの中にありましたように、善意のカンパでありますとか、ただいま申し上げたような、事情を知らず、あるいはこういう重大な犯罪行為を容易にさせようという意図がない、そういうような行為というのは、これは処罰の対象にならないことは明確でございまして、そういう点で、処罰範囲が広過ぎる、あるいはあいまいであるというような御指摘は当たらないと考えております。
今川委員 時間が参りましたので、終わります。
吉田委員長 今川正美君の質疑は終局いたしました。
 これにて本件に対する質疑は終局いたします。
    ―――――――――――――
吉田委員長 これより本件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決をいたします。
 テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約の締結について承認を求めるの件について採決をいたします。
 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
吉田委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
吉田委員長 次に、国際電気通信衛星機構(インテルサット)に関する協定の改正の受諾について承認を求めるの件、国際労働基準の実施を促進するための三者の間の協議に関する条約(第百四十四号)の締結について承認を求めるの件及び世界保健機関憲章第二十四条及び第二十五条の改正の受諾について承認を求めるの件の各件を議題といたします。
 政府から順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣川口順子君。
    ―――――――――――――
 国際電気通信衛星機構(インテルサット)に関する協定の改正の受諾について承認を求めるの件
 国際労働基準の実施を促進するための三者の間の協議に関する条約(第百四十四号)の締結について承認を求めるの件
 世界保健機関憲章第二十四条及び第二十五条の改正の受諾について承認を求めるの件
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
川口国務大臣 ただいま議題となりました国際電気通信衛星機構(インテルサット)に関する協定の改正の受諾について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
 この改正は、平成十二年十一月にワシントンD・Cで開催された国際電気通信衛星機構の締約国総会において採択されたものであります。
 この改正は、国際電気通信衛星機構がその宇宙システムを移転する会社を監督する等のために、機構の目的、構成等を変更することを内容とするものであります。
 我が国が、この改正を受諾してその早期発効に寄与することは、国際衛星通信の発展に資するとの見地から有意義であると認められます。
 よって、ここに、この改正の受諾について御承認を求める次第であります。
 次に、国際労働基準の実施を促進するための三者の間の協議に関する条約(第百四十四号)の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
 この条約は、昭和五十一年六月にジュネーブで開催された国際労働機関の総会において採択されたものであります。
 この条約は、国際労働基準の実施を促進するための政府、使用者及び労働者の三者の間の協議について定めたものであります。
 我が国がこの条約を締結することは、労働条件の改善を目指す国際的な取り組みに寄与するとの見地から有意義であると認められます。
 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。
 次に、世界保健機関憲章第二十四条及び第二十五条の改正の受諾について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
 この改正は、平成十年五月にジュネーブで開催された世界保健機関の世界保健総会において採択されたものであります。
 この改正は、世界保健機関の執行理事会の構成員の数を増加すること等を目的とするものであります。
 我が国が、この改正を受諾してその早期発効に寄与することは、保健衛生の分野における国際協力に一層の貢献を行うとの見地から有意義であると認められます。
 よって、ここに、この改正の受諾について御承認を求める次第であります。
 以上三件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。
吉田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 次回は、来る四月十九日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時五十六分散会


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