衆議院

メインへスキップ



第11号 平成14年4月19日(金曜日)

会議録本文へ
平成十四年四月十九日(金曜日)
    午前十時十四分開議
 出席委員
   委員長 吉田 公一君
   理事 浅野 勝人君 理事 石破  茂君
   理事 小島 敏男君 理事 坂井 隆憲君
   理事 首藤 信彦君 理事 中川 正春君
   理事 上田  勇君 理事 土田 龍司君
      今村 雅弘君    小坂 憲次君
      高村 正彦君    中本 太衛君
      丹羽 雄哉君    西野あきら君
      原田 義昭君    松島みどり君
      水野 賢一君    宮澤 洋一君
      望月 義夫君    渡辺 博道君
      伊藤 英成君    金子善次郎君
      木下  厚君    桑原  豊君
      前田 雄吉君    丸谷 佳織君
      山名 靖英君    松本 善明君
      東門美津子君    西川太一郎君
      鹿野 道彦君    柿澤 弘治君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   外務副大臣        植竹 繁雄君
   外務大臣政務官      今村 雅弘君
   外務大臣政務官      水野 賢一君
   会計検査院事務総局第一局
   長            石野 秀世君
   政府参考人
   (内閣官房行政改革推進事
   務局公務員制度等改革推進
   室長)          春田  謙君
   政府参考人
   (総務省自治行政局公務員
   部長)          荒木 慶司君
   政府参考人
   (外務省大臣官房長)   北島 信一君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 林  景一君
   政府参考人
   (外務省大臣官房参事官) 長内  敬君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局国
   際社会協力部長)     高橋 恒一君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房総括
   審議官)         中野 秀世君
   外務委員会専門員     辻本  甫君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十九日
 辞任         補欠選任
  小坂 憲次君     渡辺 博道君
  丹羽 雄哉君     西野あきら君
  細田 博之君     松島みどり君
  丸谷 佳織君     山名 靖英君
  松浪健四郎君     西川太一郎君
同日
 辞任         補欠選任
  西野あきら君     丹羽 雄哉君
  松島みどり君     細田 博之君
  渡辺 博道君     小坂 憲次君
  山名 靖英君     丸谷 佳織君
  西川太一郎君     松浪健四郎君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 会計検査院当局者出頭要求に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 国際電気通信衛星機構(インテルサット)に関する協定の改正の受諾について承認を求めるの件(条約第二号)
 国際労働基準の実施を促進するための三者の間の協議に関する条約(第百四十四号)の締結について承認を求めるの件(条約第三号)
 世界保健機関憲章第二十四条及び第二十五条の改正の受諾について承認を求めるの件(条約第四号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
吉田委員長 これより会議を開きます。
 国際電気通信衛星機構(インテルサット)に関する協定の改正の受諾について承認を求めるの件、国際労働基準の実施を促進するための三者の間の協議に関する条約(第百四十四号)の締結について承認を求めるの件及び世界保健機関憲章第二十四条及び第二十五条の改正の受諾について承認を求めるの件の各件を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各件審査のため、本日、会計検査院事務総局第一局長石野秀世君の出席を求め、説明を聴取し、また、政府参考人として外務省大臣官房長北島信一君、大臣官房審議官林景一君、大臣官房参事官長内敬君、総合外交政策局国際社会協力部長高橋恒一君、内閣官房行政改革推進事務局公務員制度等改革推進室長春田謙君、総務省自治行政局公務員部長荒木慶司君、厚生労働省大臣官房総括審議官中野秀世君の出席を求め、それぞれ説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
吉田委員長 これより審議に入るわけでございますが、その前に、先ほど開きました理事会で、外務大臣及び外務省の答弁についてきちっとした答弁をするようにというような理事会での協議が決まりましたので、どうぞ、外務大臣並びに副大臣、外務省各局の皆様方には、きちっと答弁をするように委員長から求めておきたいと思っております。
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金子善次郎君。
金子(善)委員 民主党の金子善次郎でございます。
 きょうは、ILOの百四十四号条約につきまして主に質問をしたい、このように思っておりますけれども、その前に、国政調査と情報の公開、こういう関連につきまして、まず冒頭、質問していきたいと考えております。
 二月でございますが、民主党が、在外公館の会計担当者に対する会議の配付資料並びに会議録ということで資料要求をいたしました。そこで、外務省の答えなんですが、率直な意見交換が損なわれるとか、あるいは会計事務の適正な執行に支障を及ぼすおそれもあるとして、そのときの会議の内容を記録した文書と配付資料の提出には応じなかったわけであります。
 その後、三月の二十七日でございますが、これも民主党のプロジェクトチームでございますが、今後に支障の生じない範囲で提出してもらいたいということで資料を求めたわけであります。これに対しまして、四月の十日でございますけれども、これは事務当局はよく御存じだと思いますけれども、一部公表することも支障を生じかねないため、つまり一部について出すと支障を生ずるというようなことで、だから全部について提出は差し控えたい、こういうような回答があったわけです。
 ところが、その後、一般市民から、情報公開法、これは御存じだと思いますけれども、この開示請求がありまして、このとき、開催時期、場所、出席者については部分的にその文書の公開をしているわけなんですね。公党である民主党の資料要求に対しまして、部分であっても全体に影響があるので一切公開はできないと言いながら、一般の市民からの情報公開に対しましては部分的に出してきているわけなんです。御存じだと思いますけれども、手元にありますけれども、これも我々も努力しまして、こういうものが情報公開法に基づきまして出ております。
 民主党に対しては一切答えられない、こういうことを言っているわけであります。こういうものを我々も二度にわたりまして二月以来要求しているわけですが、そういう一切資料公開できないというのはどういうことなのか、この点につきまして、まず、外務大臣の姿勢と申しますか、そういうことにつきまして質問をしたいと思います。
川口国務大臣 今おっしゃったことの具体的な、情報公開が市民の方からあって一部分をお出ししたということについては今初めて私は聞きましたけれども、基本的に、申し上げた点、それは、内部の人間の率直な意見交換が行われにくくなるということになってはいけないということは変わりはございません。
 それで、情報公開法に基づいてありましたものについて、今委員は場所、回数とおっしゃられたんでしょうか、ちょっと全部きちんと頭に置いていませんけれども、そういう情報が、多分、民主党で御要求になられた資料の部分開示としてそういうものもあり得たということをきちんとそのときの担当者が認識していなかったのではないかなという気はいたしますけれども、当然に、情報公開法に基づいてお出しをしたものと同じものは、民主党の御要求があったときにお出しをしていなければいけなかったと思います。
金子(善)委員 まあ確かに、いろいろな資料要求とかいうものについて、すべてが大臣まで上がる性質のものじゃないかもしれません。ただ、一連のこれまでの外務省の不祥事の問題、これにつきましては、我々民主党を初めとしまして、ずっとこの問題意識を持ちまして、できるだけ全容を解明した上で、我々としてもこの国会の場におきまして主張すべきことは主張していこうかという考え方のもとに、いいかげんにやっていたわけじゃないわけであります。
 今大臣言われました、全部公開すればいろいろな支障を生ずるということも確かにあるかもしれません。ただ、少なくとも情報公開法で民間の、民間のと言うと大変あれですが、一市民からの情報公開の要求と公党である我々民主党からの要求で、一般の人に余計に知らせる、我々については全然じゃ、余りにもこれは外務省として、また民主党に言えば追及されるから嫌だ、その程度の発想でいてもらっては困りますよということを我々は今申し上げているわけです。
 そこでお伺いしますけれども、政党あるいは個々の議員というケースも当然あるわけでございますが、どういうような基準で考えているのか。今だって無原則で、たまたまそのときの担当官がこう思ったからこうだなんということはやっていないと思うんですよね。だから、どういう基準で物を考えているのか。
 我々も一回要求したわけじゃないんですよ。改めて、そこは気を使いまして、先ほど申し上げましたように、支障を生ずるということであれば部分的にだけでも出せませんかと、そこを言っているわけなんですよ。だから、ぜひとも今答えてもらいたいのは、どういう基準で物を考えているのか。今の大臣のお話ですと、いろいろ生じるケースもあるからと、そんなことは当たり前だと思うんです。
 一連の、今私が申し上げているこのことは、この外務委員会とか決算委員会、予算委員会、いろいろな委員会で、外務省に対して、いわゆる余りにも隠ぺい体質というか隠す、これがあり過ぎるのではないかということを何回も指摘されているんですよね。
 現実に、この国会で今まで外務省が質問を受けた中身、ほとんど外部からの情報ですよ。ほとんど外務省から出てきているものというのはありませんよ、全部がないと言っちゃ失礼かもしれませんけれども。そういうことであっては、これは国会と行政府、この関係もおかしくなってくるんじゃないか。我々、これからも、いろいろきょうは質問させてもらいますけれども、余りにもおかしいですよ。
 それで、今現在、政党あるいは議員の資料要求に対しまして、どういう物の基準。一般の各課、それは外務省幾つ課があるか、百二十前後の課があると思うんですけれども、そこへいろいろな資料要求が行くと思うんです。どういう基準で外務省として統一的な物の考え方を持っているのか、そこをまずお聞きしたいと思うんです。
 確かに大臣言われるように、都合の悪いのはあると思うんですよ。でも、すべてが都合悪いといったら、情報公開というのは一切できないわけですよね、資料提出ということは。今現在どういう姿勢でやっているか、それをお聞かせ願いたい。まさか、全く基準はありません、担当官が考えて都合悪かったことは出しません、そんなばかなことは僕はないんじゃないかと思うんですが、その辺についてお聞きしたいと思います。
 これは重要な点ですから、今後の資料要求とかいろいろなことにつきましてもその基準を、その基準を今言っていただいて、その基準が正しければ、なるほどなと我々も納得しますよ。そこをちょっと答えてください。
北島政府参考人 基準についてのお尋ねですが、まず、先ほど委員が御指摘になった南東アジア会計担当官会議記録の情報提供についての考え方でございますけれども、繰り返しで恐縮でございますけれども、こうした会合において、仮に公表することとなる場合には、関係者が公表を意識することによって率直な意見交換が行われにくくなるために、結果的に会計事務の適正な運用に支障を及ぼすおそれもあることから、情報公開法に定める基準に沿って公表を差し控えたということでございます。
 じゃ、その情報公開法に定める基準は何かということでございますけれども、情報公開法五条、行政文書の開示義務、この関係で、「公にすることにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」、これについての言及があるわけですが、この情報公開法の考え方に従ったということでございます。
 さらに、そもそも外務省の資料要求に対する姿勢ということでございますけれども、国会から開示の要望がある文書の問題については、秘の指定文書についても、当該文書の秘密保全の必要性と透明性を高めるために情報開示を積極的に行うとの観点でバランスを図る必要から、それら文書の提出に当たって一件一件慎重な検討を行ってきているということでございますが、その際の基準につきましては、情報公開法に定めてありますいろいろな条項、これを当然参考にしているということでございます。
金子(善)委員 今官房長が答えられた中身ですが、これは余りにも抽象的でちょっとよくわからなかったんですが、私は少なくとも、一般市民に対して出せるものを公党の公党たるところに出さないというのは、だれが考えてもおかしいと思うんですね。
 それで、ぜひ外務省にお願いしたいと思うんですが、基準というものを紙に書いて我々に提出してもらいたい、今答弁されたようなことを。今ちょっと、言葉で言われたんですが、どうもぴんとこないところもありますので、委員長、その取り計らいをぜひお願いしたいと思います。
 それで、これに関連して一つだけお聞きしたいと思うんですが、我々の資料要求に対しまして、作成責任者というのは、たまたまこれは在外公館課長ということになっているんですけれども、物にもよるかもしれませんけれども、一般的には課長段階で判断しているのかどうか、それをちょっとお伺いしたいと思うんです。課長段階で、つまり局長とかその上に上げないで、課長クラスというか、その段階で判断してやっているのかどうか。
 官房長も最近かわられたばかりですから過去のことはわからないかもしれませんけれども、どの程度まで上げて、ただ、私も言いたいのは、一回だけの資料要求じゃないんですよね。差し支えないところ、部分的でもいいから出してくださいと言っているのに出さない、こういうあれなものですから、どの程度までやっているのか。
 これは大事な点だと思いますから、少なくとも民主党として公式に要求したものについては、一課長段階で判断しているのか、まさかそんなことはないと思いますけれども、どうですか、その点。
北島政府参考人 その案件によりますけれども、課長レベルで判断することもございますけれども、通常は、私も決裁いたしますし、それから当然、政治レベル、場合によっては大臣まで上げて御判断していただくということにしております。
 委員、恐縮でございますが、資料要求に関しましては、外務省としては、特に国会議員からいただいた資料請求に対してはできるだけ迅速に対応するように心がけているわけですが、一つ数字を申し上げさせていただきたいんですが、例えば三月にいただいた資料要求、これは資料要求総数が三百五十件ございました。その三百五十件につきまして、その五分の四に当たる二百九十件、これについて回答したということで、残る六十件について、引き続き資料提出に向けて努力しているということでございますけれども、ひとつ御理解いただきたいのは、この資料要求件数が過去と比べて非常にふえている。昨年同時期の一・五倍、一昨年の二倍強ということで、この点、ぜひ御理解いただければと思います。
金子(善)委員 外務省に申し上げたい。
 数がどれだけふえようと、これは国会で審議をするための資料要求ですから、余りにも要求が多いからというようなことで判断されては、我々としては、それは見逃すことができない。少なくとも、官房長、こういう場所で、資料要求が余りにも多かったから対応が難しいなんて、そんなこと答弁しているようでは、まさに姿勢を問われる。そこを問われているわけなんですよ。そこなんですよ、我々が言いたいのは。
 では、この点は、先ほど委員長にお願いしまして……
吉田委員長 金子委員、外務大臣が答弁したいそうですから。
 外務大臣。
川口国務大臣 ちょっと誤解があってはいけないと思いまして、念のために申し上げさせていただきたいのですけれども、案件がふえているということを今官房長が言いましたけれども、だから対応あるいはお断りするという意味で言っているわけでは全くありませんで、人数については全くふえていないわけでございますので、その中で一生懸命やっているということを申し上げただけでして、実は、昨年の一・五倍と言いましたけれども、昨年は、御案内のように、いろいろな事件がございまして非常にふえた年なんですね。それよりもさらに一・五倍になったということを申し上げただけで、だから出さないというふうに判断しているということでは全くありませんで、外務省の基本的な方針は、先ほど官房長が言いましたように、できるだけ迅速に情報公開についてお答えをしたい。それから、物事を透明化するということは、国民に外交について理解いただくために大変に重要なことだと思って仕事をしているわけでございます。
金子(善)委員 今、外務大臣から、大変力強い話だと思います。これは本当に事務当局も大臣の今の言葉をよくわきまえて対応していただきたい、これは強く強く要求をしておきたいと思います。
 次に移らせていただきたいと思います。
 実は、私の手元に、前回と申しますか、決算委員会で外務省の方に申し上げたと思うんですが、こういうものがあるんです。これは「南東・南西アジア会計担当官会議議事録 無期限秘」となっています。これはコピーです。出所は明らかにできませんが、本物を私は持っております。本物です。これはコピーです。
 そこで、お伺いしたいと思いますけれども、この議事録を見ますと、私は、これから質問するのは、あくまでも、いいですか、そのお金が、そういう経費が必要じゃないということを言っているわけじゃないという前提で申し上げたいと思うのです。報償費という予算項目からそういうことに使っていいのかどうかという観点から質問いたしますから、お答え願いたいと思います。要は、報償費だから便利に使われ過ぎてきているということを私は申し上げたいと思うのです。
 やはり、我々と申しますか、常に意識しなきゃならないのは税金の使い道。そのためには、予算というものはこうこうこうだということで、こういうことに使っていいですよというような決め方をしているわけなんです。こっちの方に金がたまたまあるからこっちに使うというようなことはできない。そういう会計法上のシステムになっているということは、外務省のだれでもが常識として御存じだと思うのです。ところが、常識的にそう考えていても、実際の運用というものがどうもそうなされてこなかったという側面がある。
 そこで、具体的に質問していきたいと思っております。
 これは、通告でこういうものがありますねということで申し上げておりますので、恐らく答えていただけると思いますけれども、先ほど委員長の方から、外務省は誠実に答えてほしいというような、特別の、異例のことだと思うのです。委員長が、委員会の冒頭に、ちゃんと答えろというようなことを一つの省に命令されるということは余りないケースだと思うのですね。それは、各党とも、余りにもその答弁がずさんというか誠意がないというか、そういうことでその注意があったと思うのです。そういうことで、それをよく意識しながら答弁をお願いしたいと思います。
 まず、四ページ十一行目に、情報物品費。それから、国会議員、これは日本の国会議員ですよ、国会議員関係工作費から名称が変更されまして要人外交推進工作費、これは四ページの十八行目に書いてあります。それから、国際会議関係工作費より支払っていた出張公務員の会食費、これは五ページの八行目に書いてあるのです。これで、いわゆる国会議員向けの設宴、会食の基準ということを書いてあるのですね。これは報償費を使ってもいいということですよ、これは間違いなく。ほかの経費でするという話じゃなくて、報償費をこれに使ってもいいということを言っているのですよ。一日一回、特段の要請があれば一日何回でもしようがない。
 全世界の在外公館の担当者の方々の会議ですから、これはたまたま南東・南西アジア会議、ほかのところでもやっておられるわけですから、同じようなことで会議に付されていると思うのですけれども、何回でもしようがないと。この理由が、在外の会計担当が板挟みにならないようにした。国会議員に何回もやれと言われて、それで板挟みになると困るから、たまたま大量にある報償費だったらば余裕があるから、それを使ってもいいですよ、こう言っているのですよ。
 私は非常にそこで問題だと思いますのは、この報償費、税金である報償費、在外の会計担当官が国会議員などと板挟みになるからというような理由で、その使い方が決まる。こういういわゆる機密費、報償費をこういうものに支出してよいと考えておられるか、まず会計検査院に聞いてみたいと思います。会計検査院、来ておられますか。
石野会計検査院当局者 今委員お話しの部分は、外務省が実際に報償費を運用するに当たっての目安的なものということでつくられたのかな、詳細を十分承知しているわけじゃございませんけれども、というふうに思っております。(金子(善)委員「今のことについて答えてくれればいい」と呼ぶ)わかりました。
 それで、検査院といたしましては、やはり報償費は当面の任務と状況に応じて機動的に使用するという趣旨がございますので、その趣旨に照らして適切かどうかということを、やはり個々の支払いの場面ということが重要になってくると思いますので、その辺を十分判断しながら検査していきたいというふうに思っております。
 ただ、昨年の検査におきまして、他の費目から支出するよう改善する要があるというものについては指摘をし、改善方を要請したところでございます。
金子(善)委員 会計検査院の局長さんですけれども、あなたはいつも、私は今まで何回も、石野第一局長さんですけれども、あなたは本当に抽象論しか答弁しない方ですね。皆さん、今聞いていてわかりますか。わからないでしょう。わからないですよ。
 いいですか、私はこういうふうに聞いたんです。日本から国会議員が来た、それはある程度の、いろいろな情報交換の場が必要だ、いろいろなことが必要だ、いろいろなことがあるかもしれぬ。私はそれを否定しているんじゃないですよ。報償費で、板挟みになるから報償費を使ってもいいですよというような経費ですかということを聞いているんですよ。その点、答えてください。
石野会計検査院当局者 報償費の使われ方として、外形的には会食等々いろいろあろうかと思います。ただ、そういった外形的なことだけで判断はできなくて、やはりそういう支払いに至ったそのときの状況というものが、外交を遂行するに当たって、それを円滑に遂行するために必要であり、その任務と状況に応じて機動的に使用する必要があるんだということがあるかないかということで決まってくるということを申し上げたところでございますので、そういうことによって判断したいということでございます。
金子(善)委員 とてもとても納得できない、私のこの質問についてですよ。一般論としてはあなたが言うとおりでしょう。わかりますよ、一般論としては。その一般論の中の具体的な個々のケースとして今質問したわけですよね。
 だから、全部今のも使ってもいいということであれば、会計検査院の立場から見て、板挟みになるんだったらば大変だろうから報償費を使ってもいいですよと答えるのならいいですよ。私は、板挟みになるからというふうにこの会議で外務省の、本省の課長が言っているから言っているんですよ。いいですか、一般論を聞いているんじゃないですよ。板挟みになると大変だから、そういう場合は報償費を使ってもいいですよ、こういうふうに指導しているわけですよ、在外公館が。取り違えないでくださいよ。
 では、報償費というのはどういうことで使うか。会計検査院も調べるときは、恐らく財務省の査定がどういう形でなされているかということを十分踏まえて検査もしているんだろうけれども、こう書いているんですよね。外交交渉の有利な展開など外交運営の充実のために必要な経費である、こういうふうに財務省の査定の理由になっているんです。だから金をつけましょう、こういう理由になっているんですよ。
 だから、これだけの問題でずっと引きずるわけにいきませんので、その点は会計検査院には、あなたの答弁いつもそうなんです。だから本当は会計検査院長に来てもらってしたいんですけれども、きょうは外務委員会ですから。恐らく会計検査院長だったらそういう答弁はしないというふうに僕は思います。
 次に、これもいわゆる報償費で、国家公務員としての一般職員、出張公務員や他の公館館員に対する会食については原則できませんよと。確かにできない。例外として、そのようなことにいわゆる機密費を使うことは認められる場合がある、こう書いてある。言っているんです、会議で担当課長さんが。これはまさに機密費によるいわゆる官官接待。今、日本の各省庁、あるいは都道府県、市町村、いろいろなことでこの官官接待のことが問題になっているという中で、報償費を使って官官接待。確かに、これから述べますけれども、そういう経費が必要なケースもある。でも、報償費なのかどうか。ここを外務省、いかがですか。
北島政府参考人 報償費が官官接待に使われるということはございません。
金子(善)委員 今、使われることはないということを言っていますけれども、だから、この会議で、本省からその会議に参加した、いわゆる指導に行かれたわけですよね、その方がこういう発言をしているわけですが、これは間違いだった、こういうことですか。
北島政府参考人 まず、委員がお手元にお持ちの書類につきましては、先ほど私が申し上げた理由から、コメントを差し控えたいと思います。
 他方、お尋ねの点につきまして、在外公館において館員と出張者との会合、これについての公費支弁は原則認めておりませんけれども、業務上真にやむを得ない場合、しかるべき公費から支出すること、これはあり得ると思っています。例えば、去年九月十一日のテロ事件以降、ニューヨーク総領事館でいろいろなことを当然のごとくやったわけですけれども、夜に及んで会議を開く、そのときに、残業弁当といいますか、弁当を食べながらやる、そういったことはあり得るわけです。
 他方、そういう場合の経費の出所が報償費であるか否かを含めて、報償費の具体的な使途にかかわることについては公表することは差し控えたい。これは従来から申し上げている点でございますけれども、この点、御理解をいただきたいと思います。
金子(善)委員 恐らくそういう答弁をするであろうと私は想像していました。
 では、もう一つここで聞きますけれども、その後で、今の答弁に対して反論をしたいと思います。
 一般職の出張公務員や他公館員との会食、これは必要な場合はあると思いますよ、今おっしゃられたように。それは我々も、そんなことを否定しているんじゃないですよ、報償費だから言っているんですよ。
 それで、同じ会議のとき、こういう経費は交際費から出してきたと言っているんです、交際費から出してきていると。これは四ページの四十四行目を見てもらいたいと思います。従来は交際費から支出してきた、こういう経費については。しかし、部外者に対する一方的な、儀礼的な行為のために支払う経費なので、むしろ国の事務を円滑にするために報償費からの支出としたと説明しているわけですけれども、交際費で使うということが、これも問題だというようなことを言っていてあれなんですけれども。
 要は、私は、こういうものが必要経費として、確かに必要な場合はあると思いますが、今答弁できないと言ったわけですけれども、もしそういうことに機密費が使われているとすると、機密費というのは何なんだと。今、そのほかのことでも、官邸のあれでもいろいろ問題になっている面もあるわけですけれども、やはり官房長として、ここは一般論としてでもいいから答えてもらいたいんですけれども、では、こういうことには今後も一切使わない、そういうことでよろしいんでしょうか。
北島政府参考人 報償費が官官接待に使われていることはないということは、先ほど申し上げたとおりです。
 館員と出張者との会合、業務上真にやむを得ない場合はしかるべき公費から支出することはあり得ると思っていますけれども、他方、その経費の出所が報償費であるか否か、これは、申しわけありません、同じ答弁でございますけれども、報償費の具体的な使途にかかわることについては、行政の円滑かつ効果的な遂行に支障が生じるということで、明らかにすることは差し控えたいと思います。
金子(善)委員 報償費について、先ほども言いましたように、そういう答弁をするのではないかということを申し上げました。ただ、私がなぜこういうことまで質問をして言っているかという意味をちょっと申し上げたいと思うんです。
 これは、たしか四月の八日の決算委員会で、外務省に私質問いたしまして、在外公館のプール金についてどうなんだという質問をしたことがあるわけなんです。そのとき、あれは大臣の答弁だったかどうかはちょっと定かではないんですが、実は、具体的な指摘がないと調査も何もできないというような答弁が返ってきたんですね。私もひどい答弁だなとそのとき思ったんですけれども、具体的に言わないと外務省は調査もできない、そこまでの答弁をされているわけです。だから私は、報償費の問題について具体的に指摘をしているんです。
 では、この存在は認めますか、認めませんか。ちょっと官房長、それを答えてください。
北島政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、コメントは差し控えたいと思います。
金子(善)委員 そうすると、答弁拒否ということになりますよね、委員長。それはどうなんでしょう。コメントを差し控えたい、ちょっと理事さん、どうでしょうか。コメントを差し控えたい、これは答弁拒否じゃないでしょうか。それはどうですか。
北島政府参考人 委員が御説明になった、平成十一年十月だったと思います、バンコクにおいて開催された南東アジア会計担当官会議の記録ということだと思いますけれども、情報公開法に定める基準を先ほど申し上げました。そういったことも踏まえて、公表を差し控えるということを申し上げました次第ですけれども、その上で、したがって、当該文書の中身を確認することや、その内容についてコメントすることは差し控えたいということでございます。(発言する者あり)
吉田委員長 官房長、なぜコメントを控えたいかという明確な答弁をしなきゃ。ただコメントを控えますじゃだめだ。なぜコメントを控えざるを得ないか、理由をきちっと答弁しなきゃだめですよ。
北島政府参考人 この担当官会議の記録でございますが、これについて公表を差し控える、その点についての考え方、情報公開法の考え方を申し上げさせていただいたわけです。その論理の延長の上で、今お手元にある文書の中身を確認する立場にもないし、先生が先ほど御説明になった内容についてコメントは差し控えざるを得ないということでございます。
金子(善)委員 ちょっと、どうしてもそのあれがわかりませんので、私は、この存在を認めますか、こういうのがあるんですかと聞いただけなんですよね。それで、官房長はさっきからも言っていました、報償費についてはいろいろなあれがあるので。確かに今までの答弁から、あるということで、私は、それはとんでもないことだというふうに思っています。きちっとした使い方をしていて初めて、一切我々は公表できませんよと言うならば、それはみんなが信頼感があるわけですから、当然そういうことも信頼していいわけですけれども、とにかく、そうじゃないというのがいろいろこういうふうに出ているということを先ほど来から申し上げている。
 これは、報償費のことだけ書いてあるんじゃないんですよ。これからも質問をいっぱいしようかと思っていたんですけれども、時間がどれだけあっても足りないぐらいいろいろ。これだけずさんだというふうに私は思っていますが、今の答弁ではとても理解できないんですよね。この存在は認めますかと聞いて、コメントを差し控えると。
 私も、質問する立場でこれ以上どう言っていいかわかりませんので、ちょっと……
吉田委員長 金子委員、理事会できちっと協議しますから。
金子(善)委員 そうですか。わかりました。では、委員長にお預けいたしますので、そこはよろしくお願い申し上げたいと思います。
 それから、時間の関係もありますので、この機密費、例えばこういうものもあるんですよね。平成十年度より、天皇誕生日の関係経費は、交際費支弁を基本としつつ、一部報償費もできると、会計課長がこの会議で言っております。その不足分を何々で補うんだと。やはり、交際費が足りないんだったら、交際費というものできちっと予算要求してとってくるということが筋であろうということもあります。これは、時間の関係もありますので答弁は結構です。
 それから、書いてあることを、ちょっとこれも問題だなという、あることで申し上げたいと思いますけれども、例えば、さっきも言われた弁当代というようなものは安易に使われているということが非常にこの会議録からうかがわせられる、そういう感じです。
 そこで、本年度の予算から、報償費のうち支出明細を明らかにできるものについては、これは外務省が言っておられることですよ、支出明細を明らかにできるものについては予算項目を振りかえた。去年来いろいろ報償費について問題になったので、渡切費もそうでしたよね、なくなった、だからそれは別の経費に振りかえました、こういう答弁をなさっているわけですね。
 どういうものを振りかえたのか。きょうは時間がありません。ぜひ委員長にお願いしたいと思いますが、どういうものを振りかえたのか、それを一覧表にして出していただけないか、こう強く要求したいと思うんですが、委員長、それはひとつお願いしたいと思います。
吉田委員長 はい。
金子(善)委員 それから、先ほど、この存在について理事会で諮っていただけるということになったんですが、これに書いてあるのは報償費だけじゃないんですよ。諸謝金の問題もあれば、渡切費の問題もこれに書いております。本年度から渡切費というものはなくなったわけですけれども。
 そこで、これは指摘をしておくということになるのかもしれませんけれども、諸謝金、こういう経費があります。これで、考えられないことが会議で話をされているんですよね。官費借り上げ宿舎が十八棟ある、住居手当の計算も違い、手間がかかる、諸謝金などの配慮を希望するというようなことで、これは本省課長の希望として、十一ページの十行目に書いてあります。住居手当の支払いの簡便化にこの諸謝金を使うというようなことが実際行われていたと思うんですよね、こういう会議で話をされていますので。
 それから、渡切費の、本年度からなくなったからいいようなものなんですけれども、これは過去の清算というのはまだ残っているんです。
 こういう表現がなされているんです。これも考えられない。渡切費は、健康管理休暇の執行残など相当繰越額が残っている公館がある、この繰越額が多過ぎることが会計検査院からも不適切と言われている、定期配賦額を活用し、館内の整理をしてもらいたい、また、渡切費の不足をしている公館は稟請してほしい、こう言っているわけですね。健康管理の休暇の執行残というのは、渡切費とどういう関係があるのかなと。これは、詳しく調査していませんから、使い道としてちょっとおかしいなと。
 このことで当時の会計課長は、会計検査院から繰越額が多いことが不適切だと言われているというようなことですけれども、会計検査院に、時間の関係もあるものですから、これについてどういう指導を、渡切費について指摘した経過はありますか、会計検査院。
石野会計検査院当局者 渡切費につきましては、在外公館の会計実地検査等において検査を実施してきております。
 それで、今お話しのように、渡切費の繰越額が多額に上っている、そういう在外公館があるということにつきましては、これまで、平成十年当時把握しておりまして、その事態につきまして、やはり予算の効率的な執行の面で問題ではないのかということで、外務省に対して実地検査等の場で注意を喚起してきたという経緯がございます。
金子(善)委員 きょうはほかのことも質問させてもらいたいと考えていますので、時間の関係上ちょっとあれなんですが。
 今御質問をさせてもらったわけですが、やはり大臣、大臣が就任されて、これからいろいろな問題点は正していく、改革をされるんだということを言われておりますので、スピード、透明性、実効性ある改革をするんだと言われておりますので、税金の使い方というものについてかなり問題点があるということは、我々、常識的に、外務省のこれまでのやり方というのは非常に問題があるというふうに認識をいたしております。そういうことで、今後の、こうした問題点につきまして、大臣のまず決意を、先ほどもちょっと言われましたけれども、今委員長に預かっていただいた件もありますけれども、それらにつきましての決意をちょっとお聞きしておきたいと思います。
川口国務大臣 委員からいろいろなお話をいただきましたけれども、まず、基本的に、国の予算につきましては、これは税金が予算のベースになっているわけですから、これを効率的に、それからむだなく使うことが必要だと私は思っておりまして、今までにも、それからまた今行いつつある外務省改革の一環として、予算の効率的な使用については十分に注意を払って、今までもやってまいりましたし、これからも議論の中でやっていただきたい、「変える会」にやっていただきたいと私は思っております。
 報償費につきましては、これも何回か申し上げておりますけれども、十万円以上の支出については、この観点から、副大臣以上で決裁をするということで今進めておりまして、私もかなりの決裁をみずからいたしております。
 ということで、予算の効率的な使用ということについては引き続き万全の注意を払ってやっていきたいと思いますし、改めるべき点があれば、それは改めるべきだと考えております。
金子(善)委員 そこはしっかり、ただいまの答弁のとおりやっていただきたいと要望しておきたいと思います。
 きょう冒頭申し上げました、ILOの百四十四号条約の承認につきまして質問したいと思いますが、これは、御存じのように、採択からかなりの年月が今まで経過しております。なぜこのように時間が経過したかということが一つ。
 それから、ILOが加盟国に対して強く要求している条約の中で、十二の基本条約と優先条約というものがあるわけでございますけれども、その中で、百十一号条約、雇用と職業についての差別待遇に関する条約、それから百五号条約、強制労働廃止に関する条約など、十二のうち四条約についてまだ批准を行われていない。これは、アジア地域におけるILO活動に対して我が国は主導的な役割を果たすべきじゃないかというふうに考えておりますが、積極的な批准というものが必要なのではないかと思います。
 これらにつきまして大臣の所見をお伺いいたしまして、私の質問は終わらせていただきたいと思います。
川口国務大臣 まず、今回の百四十四号条約について時間がかかったということにつきましては、国内的にどういうような措置をとることが必要であるかということについてはっきりさせるための時間が必要であったということで遅くなったというふうに私は承知をしております。
 それから、百五号、百十一号につきまして、これは国内法制と条約の整合性についてさらに検討をする必要があるので、現在未批准となっているわけでございまして、これらについては引き続き今後検討をする必要があると考えております。
 具体的に、百五号につきましては、国家公務員の争議権が禁止されていることとの関連、それから百十一号につきましては、条約が規定している広範な差別の禁止ということについて、国内法令上十分に担保がされているかどうかということについて問題があるわけでございます。
 ILOの条約につきましては、いろいろな条約がございますけれども、政府として、それぞれの条約の目的、内容、それから我が国にとっての意義を十分に検討の上、その時々のコンセンサスあるいは国際世論等を勘案いたしまして、国内法制との整合性を確保した上で批准をしていくということだと考えておりまして、今後とも、この方針にのっとりまして検討をしていきたいと考えております。
金子(善)委員 ありがとうございました。以上で終わります。
吉田委員長 金子善次郎君の質疑は終局いたしました。
 次に、首藤信彦君。
首藤委員 民主党の首藤信彦です。
 現代社会の最も深刻な問題の一つとして、パレスチナの問題を毎回取り上げさせていただいています。
 ほとんど三週間にわたって、私は日本の外交姿勢を外務大臣にも聞いてまいりました。そして、外務大臣の最初のころは、対応が全然できないというような話、なかなか難しいという話を聞いていたんですが、途中からそれなりに、イランに対して影響力を行使したり、いろいろなことをやっておられるということを聞きました。しかし、最近は、アメリカのパウエル国務長官が入っていまして、それを尊重したい、それを待っている、パウエルさんとは連絡を密にとっている、そういう話を何度も聞かされました。
 なるほど、それはそうかもしれない、パウエルさんの停戦交渉に関して一縷の望みをかけて、やはり日本はアメリカを尊重してやるんだ、それはそうかもしれない、そう思って私もぐっとこらえてまいりました。しかし、ついにパウエルさんは、一週間もあそこに滞在して頑張って、周辺国も回って、結局何にも得られなかった。
 次の日本の外交は、外務大臣、どうされますか。どのような展望を持って、この三週間ほとんど無策だった日本の外交、ほとんど空白だった日本のパレスチナ外交、中東外交、これに対して、これを回復するために、外務大臣、一体どのような手をお考えでしょうか。
川口国務大臣 私は、日本の中東外交が無策であるとは思っておりませんで、それなりの努力を重ねているわけでございます。
 先ほど委員もおっしゃっていただきましたように、パウエル国務長官が献身的な努力をしてアメリカに戻られたわけでございますけれども、これの評価でございますが、結果として今の時点で停戦が実現していないということについて、そこから照らせば成功ではなかったという御判断もあると思いますけれども、交渉というのは、それなりに粘り強く、さまざまな局面を経て成果につながっていくわけでございますし、オスロ合意も相当の期間をかけて成立をしたということでございますので、行っていただいて努力をしていただいて、それなりの成果はあったと私は考えます。
 パウエル長官は、十七日に、アメリカが停戦の実現及び和平プロセスの再開に向けた努力を続けていくという姿勢を明らかにしていらっしゃるわけでございますし、ジニ特使、それからテネットCIA長官、バーンズ国務次官補がこれから努力を継続するということで考えているわけでございますので、我が国としては、これらの努力の支援をしていくというふうに考えております。
 ここの過程で非常に大事なことは、昨日、私はパレスチナの外交大臣に当たるシャースさんとお話をいたしましたけれども、国際的にもさまざまな連携、取り組みが行われているわけでございまして、我が国として、国際社会が協調して取り組んでいる中で、どういうタイミングで何を発言していくのが最も貢献できるかということを考えながら、今、取り組んでいるわけでございます。
首藤委員 委員長、私は、今まで空白だった、無策とは言いませんよ、空白だったのをどうやって取り返すか、次の一手は、それを聞いているんですよ、国民を代表して。みんな国民は、毎日テレビを見て、何で日本は何もしないんだ、何でアメリカに任せているんだ、何で殺されていく人間をとめようとしないんだということを思っているんですよ。
 だから、日本としては何をするかということを聞いているのに、パウエルさんがどこへ行ってジニさんがどこへ行って、そんな話を聞いているんじゃないですよ。次の一手だけですよ。私は十分しか時間がないのに、パウエルさんのどこを訪問した話を聞いて、これで質問終わりというのはとても納得できない。
 このことこそ外務省改革の最大の眼目ですよ。外務大臣、よく覚えておいてください。こういう外務委員会という外務省が国民に対して開かれている窓口を、くだらない話じゃなくて、評論に使わずに、国民の声にこたえるきちっとした対応をお願いしたい。その意味で、一体次の手は何なのか、その点だけ簡潔にお願いいたします。
川口国務大臣 これも、恐縮でございますけれども、私は、日本が今まで空白で何もやっていなかったとは思っておりませんで、回数にしても、会った人、あるいは電話会談、相当のことをやっておりまして、今時間がないとおっしゃられますのでそれは繰り返しませんけれども、決して空白だとは思っておりません。
 それで、お尋ねの次の一手でございますけれども、それについては、先ほど申しましたように、国際社会が協調して、パレスチナ、イスラエルが停戦をし和平の過程が始まるということのために、どの国がどの局面でどういう力を出すかということを協調してやっているわけでございまして、そういった取り組み、協調の中で、我が国としてどのタイミングで何をするかということを今検討しているわけでございます。
首藤委員 私は納得できない。これは十分というのはおかしい。委員会を、十分じゃない、これは三時間でも四時間でもやってほしい。本当に懸案ですよ、こんな問題。
 日本はワン・オブ・ゼムじゃないんだ。ここに六億ドルの国民の税金を使って、パレスチナに貢献している、数少ない、世界の中でパレスチナに対してリーダーシップを発揮できる国なんだ。それが、世界じゅうの、国際社会でみんないろいろやっているから、その後ろについていこうなんて、全然納得できないですよ。外務大臣の職を全うしていないじゃないですか。――いや、いいです。ちょっと待ってください。質問があります。
 私は、この問題に関して、少なくとも電話じゃなくて大使を派遣しなさい、大使を早く決めなさいと三週間にわたって言い続けました。どうなりましたか。私は、日本が援助したガザにおけるUNRWAの視聴覚障害者に対する施設、それが爆撃されている、現状はどうなっているかチェックしてほしいと言いました。何にもやっていないじゃないですか。少なくとも、大使はどうなっているんですか。いかがですか。
川口国務大臣 二つ御質問がありましたので前半の方についてお答えをしたいと思いますが、先ほど申し上げたように、さまざまな電話会談等は現在もやっておりますし、引き続きやっていくわけでございまして、国際社会と協調して、日本がどの段階で何をするのが一番効果的かというのは、会談、電話に加えて何をすることが一番効果的かという意味でお話をしているわけでございます。これについては、これはパレスチナ、イスラエルのためにやっていく話でございますので、引き続き国際社会と協調しながらやっていきたいと考えておりまして、委員がおっしゃられるように、決してほかの国の後をついてやっているわけではございません。
 それから、イスラエルの大使の件でございますけれども、国会開会中でもあり、さまざまな配慮で今日に至りましたけれども、これにつきましては、けさ新聞記者に記者会見で発表させていただきましたけれども、現在国際情報局長の今井を大使で派遣をするということで、来週の火曜日に閣議にかける予定にしております。
首藤委員 それは、本当に遅きに失したと言わざるを得ないですよ。
 それから、その前に茂田さんをこの問題に対して政府は送りました。これも、ああ、なるほど、茂田さんというのはテルアビブで大活躍されたすばらしい人かもしれない。しかし、この方は一体どういう大使か考えたことがありますか。テロ問題特別大使ですよ。アラファトさんにしてみれば、テロを規制しようという大使がのこのこ来て、パレスチナの人にとってみれば、テロを取り締まろうという大使が来て、どうしてこんな人に中立的な交渉が任せられますか。
 ですから、本当にこのパレスチナ問題に関しては、今まで五十年間にわたって積み上げてきた日本の外交というのが、この三週間で全部ゼロに帰した。その反省を持って、これは、国際社会の協調もいいですが、国際社会の中でリーダーシップをとってやらなければ、我々は、憲法の前文に書いてあるように国際社会の中において名誉ある地位を得られないじゃないですか。今の外務省のやっていることは憲法違反の外交じゃないですか。そこのところを真剣に考えて、きちっと対応していただきたい。
 もう一つ、最後に言わせていただきたいんですが、けさから、国連人権委員会でイスラエル非難決議になぜ日本が棄権したかという質問がたくさん来ました。これに対して外務大臣の明確な答えがないということで、テレビを見た方からたくさんの質問が来ているので、これだけ短くお答え願いたいと思います。
川口国務大臣 これにつきまして我が国は棄権票を投じたわけでございますけれども、これは、採択された決議案について、パレスチナの正当な抵抗の権利といった我が方として同意できない概念が含まれていたということ、また、イスラエルのみをほとんど一方的に非難をするという内容になっていたということでございます。
 我が国としては、パレスチナをめぐる現在の情勢については深く憂慮をしているわけでございますけれども、この内容の案では、当事者間の対話の促進あるいは問題の解決に真に資する、国際社会の関与によって問題の解決をしていくという目的にかなうものではないという観点で棄権票を投じたということでございます。
首藤委員 よくぞ言っていただきました。案に不安だったら、案をつくりかえるように努力してください。
 以上で終わります。
吉田委員長 首藤信彦君の質疑は終了いたしました。
 次に、土田龍司君。
土田委員 今パレスチナ問題が出ましたので、ちょっとついでに言わせていただくんですが、大臣は、非常に総合的にやっているというふうにおっしゃいました。私もこの委員会でこの問題は多分三回にわたって質問したと思うんですが、私も、大臣は何もやっていないと思うんですよ。
 例えば、EUが経済封鎖をやろうと決めた、あるいは武器の輸出をやめようとした、物資の輸出をやらないんだと、いろいろな手を打っている。あるいは、日本の国会は国会決議までしてこのパレスチナ問題に対して即時停戦を呼びかけた。ところが、日本政府は、外務省はやはり何もしていないと私は思いますよ。
 電話をしているとおっしゃいますけれども、どこに電話しているのか知りませんけれども、電話だけで済むような話じゃないので、パウエルさんに期待する、その期待外れになったからといって、今民主党の方から質問がありましたように、やはり次の一手を考えて、具体的な行動を起こさなければ、この紛争というのは終わらないと思いますよ。日本がやはり明確な態度をとるとともに、平和を望んでいるんだ、日本という国は進んでそういったことに貢献をするんだという意思を示すことが非常に大事だと思っているんです。
 去年の九月に、この外務委員会でパレスチナに行きました。そのときに、パレスチナの外務大臣と会談をする予定だったのが、交通渋滞によってすっぽかされちゃったんです。実際会えなかったんですが、そのときに、茂田大使はそんなに文句言えなかったんです。私はそのとき茂田大使に非常に怒りまして、おわびの一本ぐらいあってもいいんじゃないの、あるいは、イスラエルの外務大臣には会って、パレスチナに会えなかったので、片手落ちになるから、例えばあしたの朝食会でもいいから、一緒にパレスチナの方と話をする機会はつくれませんかと言ったけれども、とうとう実現しなかったんです。
 私は、茂田大使がそんなに、パレスチナに大きな影響力といいましょうか、太い信頼関係といいましょうか、それがあるようにはどうも思えないんです。だから、何回も、早く大使を決めたらいいんじゃないですかというようなことを言い続けてまいりましたけれども、先ほど答弁がありましたのでそれは結構ですけれども、ぜひ、この中東問題に関してはもっと積極的に行動されることを私から要望したいと思います。
 先に東ティモールの問題についてお尋ねするんですが、四月十四日に選挙が行われて、十七日にその結果が出ました。八二・六九%という高い得票率でグスマンさんが大統領になったわけでございますけれども、五月の二十日に独立の準備がすべて整って、今後我が国としましても、地政学上非常に重要な位置を占める東ティモールが安定することを望んでいるということになると思います。また、我が国としましても、東ティモールへの支援を重視しておって、復興支援と同時に人道支援、こういったことも今後やらなきゃならない、あるいはPKO法に基づく自衛隊の協力も行っているというふうに理解しているわけでございます。
 しかし、今の東ティモールの政治情勢はいろいろな不安定要素があるというふうに聞いております。それは、議会の六割を占める第一党のフレティリンの幹部とグスマン大統領の間は非常に対立をしているんじゃないかということで、今後、個別法の整備においてはさらに対立が進んでいくんじゃないかというふうに言われております。
 先日、十七日の川口大臣の談話の中で、新大統領が東ティモール政府及び国民と一致してさまざまな課題に取り組むことを期待するとともに、引き続き可能な限りの支援をしていくというふうなことをおっしゃっているわけでございますが、この対立の状況、あるいは今後の政府の対応についてお尋ねします。
川口国務大臣 東ティモールにつきましては、今委員がおっしゃられましたように、大変高い投票率の選挙の結果としてシャナナ・グスマン氏が初代の大統領に選出をされて、五月二十日の独立を前に、そのプロセスが最終的な段階に今入っているわけでございます。独立後の東ティモールにつきましては、持続可能な経済社会の実現、難民問題の包括的な解決を初めといたします国民和解などの課題を抱えているわけでございます。
 我が国といたしましては、高い投票率で選ばれた新大統領が、東ティモールの自立に向けました国づくりのために、政府及び国民が一致団結してこれらの課題に取り組んでいくことを期待いたしております。今後とも、国際社会との協力をいたしまして、必要な支援を行っていきたいと考えております。
土田委員 前段の答弁が抜けていると思うんですが、いわゆる国内紛争、グスマンさんと与党内での対立についてはどのように考えていらっしゃいますか。
川口国務大臣 委員おっしゃられましたように、いろいろな対立はあるわけで、したがいまして、先ほど申しましたように、難民問題の包括的な解決を初めとする国民的な和解という課題があるというふうに申し上げているわけでして、そういった問題に一致団結して取り組んで、民主主義的なプロセスをきちんと確立していくということが大事で、我が国としてもそのための支援を行っていきたいということでございます。
土田委員 東ティモールのPKOの活動に参加するために、三月から四月にかけて、我が国の陸上自衛隊施設部隊から、女性隊員七名を含む六百八十名及び司令部要員が十名派遣されております。
 この施設部隊の業務がPKO活動の後方支援であるわけですが、現在どういった活動あるいは展開をされているのでございましょうか。
川口国務大臣 東ティモールのPKOに派遣をされる自衛隊の施設部隊は、既にほぼ全隊員が東ティモールに到着をいたしておりまして、現在、中心都市のディリ、西部地区のスアイ、マリアナ、西ティモールにある飛び地でありますオクシ、この四カ所に分かれて展開中でございます。
 そのうち、スアイ、マリアナにおいては、先般、十三日にパキスタン部隊からの業務引き継ぎを終えまして、ディリ、オクシにおいては、今月の、四月の下旬を目途にバングラデシュ部隊からの業務を引き継ぎまして、五月以降、本格的な業務が開始されることになっております。
土田委員 条約の質問をいたします。
 まず、インテルサットでございますが、二〇〇〇年十一月の第二十五回締約国総会でインテルサットの民営化が決定をしたわけでございます。昨年の七月から、新しい、民営のインテルサットの会社が発足したわけでございますが、国際衛星通信環境が厳しいことには今後も変わりないわけでございます。
 このような状況の中で新しい活動を展開する会社に対して、効率的な経営とか迅速な意思決定、あるいは変化の激しい外部環境に速やかに適応するとともに、通信衛星に関する新しい技術とアプリケーションを開発し、通信業者とそれ以外の利用者を含む顧客の要請を先取りできる体制をつくらなければならないというふうに思うわけですが、民営化によってこれらの要請に十分対応できる体制ができたんでございましょうか。
長内政府参考人 これまでインテルサットは、政府間機関、そういう性質上、ともすれば経営が硬直化しており、柔軟に意思決定ができない、あるいは情勢に迅速に対応できない、そういう問題点が指摘されてまいりました。
 今度の協定改正後は、インテルサットの業務を引き継ぐ会社が情勢に迅速に対応しながら経営を行っていくことが可能となりまして、経営効率は改善されると考えられます。このことから、料金の低廉化とかあるいはサービスの向上が行われ、顧客の要求によりこたえることができるようになると期待されます。
土田委員 この条約の第五条に、今後ITSOは、会社が中核的な原則を履行することを確保するため、公的業務契約を締結し、会社を監督することになるとあります。会社が、サービス業務の確保、特にライフライン接続サービスを怠った場合、ITSOは会社に対してどのような措置を講じることになりますか。
長内政府参考人 国際電気通信衛星機構は、この会社と公的業務契約、これを締結することによりまして、ライフライン接続サービスの提供等の協定に規定されている原則の遵守を確保することになっております。
 どのように確保することになっているかと申しますと、まず、会社は、協定に規定されている原則の遵守等に関する報告を機構に提出することになっております。これにより、機構は、会社がそれらの原則を適切に実施していることを把握する、そういう仕組みになっております。
 また、仮にですが、会社がライフライン接続サービスの提供等の原則、これを遵守していないと認められるような場合には、会社は、機構と誠実に協議することにより、その解決に努めるものとされております。さらに、その協議により解決が行われないような場合には、機構は、法的拘束力を有する仲裁手続に付する、そういうことができることになっております。
土田委員 民営化が行われるわけですが、インテルサット条約が現在のような形で残り、会社を監督するITSOが存続するということは、一〇〇%の民営化とは言えないのじゃないかと思うわけですね。このITSOの存在が、会社の自由な活動を抑えたり、あるいは会社の発展に何らかの影響を及ぼすことが懸念されるわけですが、これらについては何か配慮がされておりますか。
長内政府参考人 本協定改正後、この機構のサービス提供業務を継承する会社、これは、基本的に通常の民間会社、株式会社であります。したがいまして、会社経営者の判断により、自由に意思決定を行うことができるようになる。したがいまして、情勢に迅速に対応し、効率的な経営を行うことができるようになると考えられます。
 一方、委員御指摘のように、完全な自由化ということでありませんで、本協定改正後、会社は、機構との関係で、ライフライン接続サービスの提供等の原則を履行することを義務づけられております。ただし、基本的には、会社は、財務計画あるいはサービスの料金、提供条件の決定等、経営上の判断につきましては機構から承認を得ることは求められておらず、会社の経営上の自主権、これは確保されておりますので、会社の発展が阻害されることはない、そのように考えます。
土田委員 我が国のインテルサットの使用状況ですが、外務省が出している資料によりますと、KDDIにおける使用回線数が毎年減少している。二〇〇一年が千五百二回線、一九九七年の三千十二回線の約半分になっているというわけですね。
 こうした現状については、将来を予測したような感じがするのですが、このインテルサットの今後の状況についてはどのように考えておられますか。
長内政府参考人 ただいま委員御指摘のように、確かに、このインテルサット以外の衛星システムあるいは海底ケーブルシステムの発達、進展、こういうことがありまして、我が国においては、インテルサットのサービスの利用は減少してきております。
 しかしながら、インテルサットが持っております本来の目的、すなわち、世界のすべての地域に対して差別なく国際衛星通信サービスの提供というユニバーサルサービスの提供は引き続き重要である、そのように認識しております。
 また、インテルサットの財務状況につきましては、売り上げは年々着実に増加しておりまして、健全な運営がなされている、そのように認識しております。
土田委員 WHOのことについてお尋ねします。
 このWHOは、加盟国の義務的負担である分担金によって賄われているわけですが、滞納が一番多いのがアメリカなんですね。アメリカの滞納額は四千四百万ドルでございまして、全体の二九・三%を占める。その後に、ウクライナ、アルゼンチンなどが続いているわけでございます。
 このアメリカの分担金滞納については、ほかのところでも滞納があるわけでございますが、去年の九・一一を契機として国連の分担金の一部を払ったが、WHOに対しての支払いはどうなっているのでしょうか。
高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 WHOが発行している資料によりますと、WHOにおきます二〇〇一年の米国の分担金額は約一億八百万ドル、滞納額が約三千三百四十万ドルとなっております。他方、二〇〇一年中に米国が支払いました分担金が約九千七百万ドルとなっておりますので、現在、約四千四百二十三万ドルの分担金を滞納しているというふうに承知いたしております。
土田委員 ということは、アメリカは滞納金をまだ払っていないわけですが、そのほかにもたくさんあるわけですね、アメリカだけでなくて。日本はちゃんと払っている、ほかの国は払っていない。この分担金を払っていないために、WHOの運営に支障を来してきているというふうに言われているのですが、ほかの国への滞納金の催促といいますか、これについてはどのような考えを持っておられますか。
高橋政府参考人 委員御指摘のように、昨年の十二月時点におきまして、WHOの加盟国で分担金を滞納しておる国は七十五カ国、金額は総額で約一億五千万ドルあるというふうに承知いたしております。
 分担金の支払いというのは、もちろん加盟国の義務でございます。一義的には、各国が支払いを行うよう努力すべきであるというふうに考えておりますが、我が国といたしましても、滞納金解消のための方途につきまして世界保健総会等の場で議論するとともに、滞納金を解消するよう、今後とも各国に働きかけていきたいというように考えております。
土田委員 以上で終わります。
吉田委員長 土田龍司君の質疑は終局いたしました。
 次に、松本善明君。
松本(善)委員 条約の質疑に入る前に、パレスチナ問題、中東外交は今非常に、最大の問題と言ってもいいぐらいですが、私も、外務大臣の御答弁を聞いていると、本当に右往左往という言葉が当たるような感じがいたします。
 イスラエルの今やっていることは虐殺でして、テロを批判する資格は全くない。この問題の解決のためには、イスラエルが占領地から全面撤退するということが先決問題でして、我が国の国会決議もそういう趣旨だと思います。実際、あの国会決議をする前に、私どものところへイスラエルの大使が、あのような決議をしてくれるなということを言ってきたことでも明らかです。
 私は、きょうは時間がありませんから、そういう状態になっているんだということを外務大臣はしっかり認識していただきたい、そして外交に当たっていただきたいということを申し上げて、質問に入ろうと思います。
 まず、条約の中身の問題ですが、きょうは時間が十分ありませんので、ILOを中心に質問をいたします。
 本条約は、三者構成の原則を我が国においても促進し、国際的な労働基準を実現していくために重要なものだと考えていますので、賛成であります。条約の趣旨は、政府、使用者代表、労働者代表による効果的な協議が行われるようにするということであります。
 御承知のように、我が国には、一九八九年以降、連合と全労連という二つの労働者のナショナルセンターが存在をしております。そして、こうした複数のナショナルセンターが存在する先進国では、労働者代表を輪番制でやっている国もあります。それは、フランス、イタリア、韓国などであります。また、二年前から、ILO総会の労働者側のメンバーには、オブザーバーとしてではありますが、全労連も入るようになってきております。
 こうした世界の例や我が国の経緯からしても、この条約の趣旨を生かしていくことを目指すときに、労働者の代表について、労働者団体間、日本の場合は連合と全労連でありますけれども、話し合いが持たれて、すべての労働者の意見がILOに反映するようにしていくということが重要だし、そういう動きが当然出てくるだろうと思います。
 そういう場合に、政府としても、ナショナルセンター間の話し合いが十分行われるように必要な役割を果たすべきだと思います。これは条約実施の基本にかかわることであります。この点について、まず伺いたいと思います。
中野政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいま御指摘がありました労働団体間の協議につきましては、何よりもまず、それぞれの団体が自主的に労働問題につきまして意見交換を行っていただくものというふうに考えております。政府といたしましては、こうした労働団体によります自主的な取り組みあるいは意見交換等につきまして、こういった動きを見守っていくべきものと考えておるところでございます。
松本(善)委員 そういう方向が促進されるように政府もやるべきだろうと思います。
 ILO条約に関連して、政府が進めようとしております公務員制度改革の問題について質問をいたします。
 ことしの三月、連合、全労連はそれぞれ、ILO結社の自由委員会に、日本政府が公務員制度をILO八十七号条約と九十八号条約を正しく適用した制度に改めるべきだという提訴を行いました。連合と全労連は、政府の公務員制度改革の進め方についても、公務員制度改革の内容にも重大な問題があるということを指摘して、この提訴の内容は、私は当然のものであると思います。
 お聞きしたいのは、政府は、昨年六月の第八十九回ILO総会・条約勧告適用委員会で八十七号条約の日本への適用状況が審査された際に、職員団体と誠実に交渉、協議することを約束し、それを受けて、総会では、公務部門の関係のある労働組合団体との社会的対話を促進するという議長勧告が採択をされております。
 誠実に社会的対話を促進すると国際舞台で約束してきたにもかかわらず、今回、一方的に、十二月に大綱の閣議決定をやりました。どうして、肝心の労働基本権制約の改善問題を含めて、誠実に社会的対話をしないのか、この点を聞きたいと思います。
春田政府参考人 お答え申し上げます。
 昨年のILOの総会の条約勧告適用委員会におきまして、日本政府代表の方から、先生御指摘のように、職員団体を初めとする関係者と誠実に交渉、協議しつつ検討を行ってまいりたいという旨発言を申し上げたところでございます。
 その後に行われました議長集約におきまして、公務員制度改革につきましては、具体的な言及が必ずしもなされたかどうか明確でない点もございますが、いずれにいたしましても、私ども行政改革推進事務局といたしまして、昨年末の公務員制度改革大綱、これを策定するまでの間におきまして、職員団体の皆さんとは誠実に交渉、協議を行ってきたところでございます。
 今後も、大綱に基づきまして制度の詳細設計を行っていくに当たりましては、職員団体と十分に意見交換を行うというようなことなど、誠実に対応してまいりたいというように考えております。
松本(善)委員 肝心の労働基本権の制約問題について、十分な、誠実な対話をしていないということを問題にしているわけであります。
 大臣、全体をよく聞いておいてください。労働基本権問題、ILO問題というのは、私は世界に対して非常に恥ずかしい状況なんだというふうに思っておりますので、やりとりは政府参考人との間で一応やりますけれども、最後にその問題について聞きますから、よく聞いておいてください。
 肝心の労働基本権の制約、我が国の公務員はストライキ権が一律全面的に禁止されている、世界でも異常な事態が放置をされております。それについて誠実な対話がなされていないんです。だから、連合も全労連も、公務労働に関係するすべての労働団体から声が上がり、提訴も行われているということであります。
 政府の公務員制度改革の内容について聞きますが、昨年十二月に出された大綱では、「公務員の労働基本権の制約については、今後もこれに代わる相応の措置を確保しつつ、現行の制約を維持する」として、公務員労働者の労働基本権の制約を継続する一方で、今まで人事院に付与されてきた人事行政に対する権限を大幅に剥奪し、内閣や各府省など使用者側、政府の人事管理権限を大幅に強める方向を打ち出しております。
 今、三年連続で人事院勧告はマイナス勧告、これは、スト権など労働基本権剥奪の代償措置というふうに言われていますが、その役割を全く果たしていない、むしろ逆になっている。この代償措置を後退させる一方で、労働基本権剥奪は維持する、これはもう到底許されないことであります。
 連合の提訴状では、一九八二年、人事院による公務員の賃金改善勧告を政府が実施しなかったことを理由に、翌八三年に、我が国の公務員労働組合からILOの結社の自由委員会に提訴がされ、ILOの結社の自由委員会は、二百二十二次報告と二百三十六報告の二つの改善勧告を行ったことが紹介をされております。
 二百二十二次報告では、団体交渉及びスト権という労働基本権の制約に対する代償措置が当該公務員に保障されることを強く要望することを表明する、二百三十六報告では、政府は、これら労働者が目下のところ享受していない基本権の適切な代償となるような公務における賃金及び労働条件決定手続を確立し、当該労働者が雇用条件等の決定に参加できるよう強い希望を表明するとしております。
 それで、私は、こういうILOの批判や改善勧告に全く公務員制度改革というのは近づいてもいない、ほとんど無視、こういう状態になっているんじゃないか。行革事務局はどう考えているんですか。
春田政府参考人 お答え申し上げます。
 今回の公務員制度改革でございますが、今まで、各府省におきまして主体的かつ責任ある人事・組織マネジメントというのが十分に行われてこなかった、こういう問題意識のもとにおきまして、今回の公務員制度改革におきましては、まず、各主任の大臣が、適切かつ弾力的に、人事・組織マネジメントを通じまして、所管をするところの行政組織の人的資源というものを公正かつ最大限に活用していくということで、機動的、効率的な行政運営を実現するということが必要であるという考え方のもとに改革を進めていくということでございます。このために、内閣あるいは各主任大臣とそれから人事院の機能につきまして整理をするということにしております。
 ただ、その中で、職員の利益保護あるいは人事行政の中立性、公正性を確保するという観点からの人事院の第三者機関としての役割、これにつきましては、引き続き人事院が重要な役割を担うということになるものと考えております。
 特に、公務員の労働基本権につきましての制約の件でございますけれども、公務員の労働基本権につきましては、公務の安定的、継続的な運営の確保あるいは国民生活に与える影響といった観点から、今後ともこれにかわる相応の措置を確保しつつ現行の制約を維持するということにしたところでございます。
 新しい公務員制度におきましても、その中で、人事院が勤務条件に関する給与水準の設定などにつきまして適切に関与するということにしておりまして、人事院の代償機能が低下するというようなことにはならないものと考えております。
松本(善)委員 今の答弁では全然、やはり国際労働基準にかなった方向に行っているとは決して言えないものです。
 この辺から実情をよく外務大臣聞いていてほしいと思いますが、昨年六月のILO総会の条約勧告適用専門家委員会の第八十七号条約に関する報告では、我が国の公務員のストライキ権禁止について、公務におけるストライキ権の禁止は、国家の名のもとに権限を行使する公務員に限定されるべきだと。
 禁止をされているのは、例えば国立病院の看護婦さんなんかもそうですよ、それから教員もそうですよ。私立の学校ではストライキ権はあります。そうすると、同じ仕事をしているにもかかわらず、公務員は禁止をされている。そこが問題になっているんですよ。国家の権限で仕事をするという公務員に限定されるべきだ。そういう状態です。ストライキ権の行使を理由に制裁を受けないことを保障するためにとった措置を示すように要請しているわけです。
 このILO八十七号条約に関連して、同条約批准国百二十二カ国の中で、何と、外務大臣、よく聞いていてください、唯一日本だけが消防職員に団結権も認めていないんです。これは異常な事態です。政府は、一九九六年に消防職員委員会制度を導入したことで団結権問題を解決したと繰り返しておりますが、ILO基準委員会は、これが日本の消防職員の団結問題の最終決着ではないと明確に指摘をしております。
 現状を我が党の春名議員が総務委員会で聞いたんですが、総務省の報告によりますと、発足後五年を経て、この委員会の開催は年を追って減少していっている。そして、その状態をILOに報告もしていない。実施が適当と決まったものの、実施状況も把握さえしていない。これでは労働基本権を奪った代償措置としての役割を全く果たしていない、こういう状況にあるんですよ。これはもう、こういうことについて全国的なナショナルセンターと誠実な対話をしていないんです。
 この問題については、こういう状態だ、これではだめなんじゃないか、どう考えているか、総務省に伺います。時間が十分ありませんので、簡潔に答えてほしい。
荒木政府参考人 お答えを申し上げます。
 消防職員の労働基本権に対する制約につきましては、それぞれの国におきます消防の置かれた状況など諸般の事情を考慮して決められるべきものであります。
 我が国の消防は、狭隘な国土に木造の家屋が密集し自然災害も多発する、こういった風土の中で、警察と同様、国民の生命、身体及び財産を保護するという目的、任務が与えられていること、また実際の活動に当たっては、厳正な規律と統制のとれた部隊活動が常に要求されていることなどから、団結権を認めていないところでございます。
 消防職員の団結権問題につきましては、これまで大変長い経緯があるわけでございますが、関係者におきまして熱心に議論を積み重ねた結果、平成七年に、国民的なコンセンサスが得られる解決策としまして、団結権は認めないが、消防職員委員会の創設が合意されまして、消防組織法の改正により、この消防職員委員会の制度が創設されたところでございます。
 政府としましては、この委員会の制度が円滑に運用され、定着し、成果を上げていくこと、これが最も重要であると考えているところでございます。
松本(善)委員 それが、百二十二の締約国のうち日本だけが消防職員に団結権を認めないという恥ずかしい事態の説明には何にもなっていないんだよ。そういう認識だからだめなんだということを言っておきましょう。
 それから、もう時間もありませんので、これは大臣にまとめてお聞きをいたします。
 大臣、私は、今の日本の労働者の状況というのは、本当に恥ずかしい事態の一つだと思うわけです。このILOが批准を強く推進すべきものとしている中核的条約については、先ほどもちょっとお話がありましたが、百五号条約、強制労働の廃止、それから百十一号条約、雇用における差別廃止、これは男女差別なんかも含まれています。そういうものを批准しておりません。
 百五号につきましては、先ほどもちょっと実情を看護婦さんのことやなんかお話をしましたけれども、何と先進諸国の中では日本だけがやっていないんですよ。アメリカ、イギリス、デンマーク、スウェーデン、ルクセンブルク、ドイツ、イタリア、フランス、オランダ、ベルギー、みんな批准しているんです。ところが、日本だけが批准をしていないんです。こういう消防の問題や百五号の問題を見ますと、労働基本権の問題について言うならば、日本は本当におくれています。この問題を解決すべきだ。これは憲法も規定しています。
 これはILOの出した本です。その中で、日本がなぜ百五号を批准しないのかということについて、それは国家公務員法九十八条、地方公務員法三十七条に懲役刑をもってストライキ権を制限する規定があるためだ、ストライキ権を制限したいためにやっているということで、ILO自体の書いた本ですよ、日本のILO協会が書いたものにそう書いているんです。どうしても解決しなければならない問題だ。この点について、外務大臣がどのようにお考えになっているかということが一つ。
 それから、まとめて聞きますが、インテルサットについては、開発途上国が通信を受けにくい状態が起こる可能性もあります。そういうことについてどういう配慮をされるかということ。
 それから、WHOについては、先ほど分担金の問題がありましたが、日本の拠出金額は米国に次いで大きい。米国は滞納しているから日本が一番多いかもしれません。ところが、日本のスタッフは三十人前後で、分担金の数でいけば百人から百二十人ぐらいということのようです。少ないし、それから女性のスタッフの採用も少ないです。このWHOの状況についてどう考えるか。
 まとめて外務大臣に伺って、質問を終わります。
川口国務大臣 三つ質問をいただいたわけでございますけれども、まず一番最初のILOの問題につきましては、これは、外務省として何ができるかということを踏まえまして、適切に対応したいと考えています。
 それから、二番目のインテルサットの途上国との関係でございますけれども、途上国のサービスについては、この会社が引き続きサービスを継続するという義務を負っているわけでございまして、機構がその義務の履行について監督をすることになっているということでございます。
 それから、WHOの職員の数につきましては、外務省としては、できるだけ邦人の職員がふえるように努力を今までもしておりますし、今後とも重ねていきたいと思いますけれども、私といたしましては、こういった国際舞台で競争にたえていくことができる人材、国際競争力のある人材が日本にもっとふえるということが基本的な問題だと思っております。
松本(善)委員 終わります。
吉田委員長 松本善明君の質疑は終了いたしました。
 次に、東門美津子君。
東門委員 条約の質疑に入ります前に、一、二点御質問したいと思います。
 一昨日、米軍普天間飛行場を離陸直後のCH53型輸送ヘリから燃料補助タンク二個が外れ、同飛行場滑走路上に落下したということが地元の新聞で報じられております。その滑走路というのは、民間地域のフェンスから短いところで七百メートルの地点にあるということですが、幸いに、けが人はなかったということです。
 しかし、この委員会でも質問いたしましたけれども、これは四月八日ですか、嘉手納基地で訓練用の照明弾が落下するという事故もありました。また、最近、地元紙で主に報じられていますが、米軍基地内外におけるそういう事故、あるいは米軍人軍属の家族等による事件が頻発をしているという情報が大臣のお耳にも入っておられると思いますが、今、沖縄におけるそのような事態をどのように大臣として見ておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
川口国務大臣 今、委員がおっしゃったその普天間飛行場の件等のことにつきましては、特に私は普天間飛行場も実際に見ておりますので、そういった点についての県民の方の御心配、御懸念というのは私は理解をいたします。また、軍人軍属、その家族の人たちによる事故、事件等がふえているということも承知をいたしております。
 この点につきまして、私は先月沖縄に参りましたときに、グレッグソン四軍調整官とお話をいたしました。米軍がよき隣人であることが重要であるということも申しまして、綱紀粛正、再発防止のために徹底的に取り組んでほしいということをその際も申し上げておりまして、グレッグソン四軍調整官からは、そのことについては十分に、いつも綱紀粛正等については注意を払っているという趣旨のお話がございました。
 この事故、事件の防止につきましては、今までもさまざまな取り組みをやっておりまして、委員よく御存じでいらっしゃいますので、その一つ一つについては繰り返しここでは申し上げませんけれども、こういった取り組みを今後とも引き続ききちんと進め、さらに改善すべき点があれば、そういった点も、お互いに知恵を絞りながら、協力をしながら努力をしていくということだと考えます。
東門委員 何かが起こるとすぐ、綱紀粛正に努めます、あるいは再発防止に努めますというのがアメリカから返ってくる答えです。それに対して政府は、抗議しますとかあるいは申し入れを行うだけで、それ以上の手が打てないということなんでしょうか。本当に県民がどのような思いで生活をしているかということをお考えになられることはないのでしょうか。とても私には理解ができないんですよ。
 再発防止に努めます、綱紀粛正を徹底しますという、その言葉の後ろからどんどん事件、事故は起こっている。これに対して、そういうふうに申し入れました、そういうふうに抗議をしましただけで済まされるのかということを私はお伺いしているんです。本当に最近頻発しているんです。正直言いまして、いつでもあることなんです。しかも、最近それがすごく多くなっている。その原因は何でしょうかということもあると思います。
 きょうは時間がないので次回にしますけれども、そういうことも含めて、政府としてどういう手を打てばいいのか。ただ申し入れるだけではいけないと思うんですよ。次の手はどうするかということ、もう一度お聞かせいただきたいと思います。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、この件について、まず米軍に綱紀粛正に取り組んでもらうということが大事ですけれども、もちろんそれで十分であるわけではないわけでございまして、政府といたしましても、国、米軍、地方自治体等の関係者が協力をして取り組むことが大事だと考えています。
 このための仕組みといいますか、これは既にいろいろございまして、例えば三者連絡協議会、三者協でございますけれども、及び事件・事故防止のためのワーキングチームといったこともございます。米軍の方でも、教育プログラムの改善、あるいは生活指導巡回の実施地域の拡大、あるいは基地ゲートにおける飲酒のチェック、これは警報を発しないで突然にやるという抜き打ち検査もやったようでございますけれども、そういった具体的な方策が今あるわけでございまして、先ほど申しましたように、地元関係者あるいは米側と知恵を絞りながら、努力をしながら、緊密に協力をしてこの取り組みにさらに努力をしていくということであると私は考えます。
東門委員 努力をしていかれるということは常に聞いていることなんですが、きょうは条約で時間が限られていますので、今の大臣の御答弁の中のいろいろな、ワーキングチームだとかあるいは三者連絡協のことだとか、次に質問をさせていただきます。
 もう一点だけ、条約に入る前にお伺いします。
 四月十六日、武力攻撃事態法案など有事法制関連三法案の閣議決定がなされました。法案は、有事の際に、首相に、自治体への指示権や国民の私権制限など強い権限を与える内容となっています。
 沖縄県は、全国比では米軍専用施設の約七五%を占め、米軍基地が存在することによって多大な私権が制限されている。その実情は大臣もよく御存じのはずです。基地の過重負担を強いられている沖縄にとって、有事法制の持つ意味は格段に重く、有事法制が発動されたとき、より一層私権等が制限され、地域社会に与える影響の度合いが他地域に比べ格段に大きいことが予想されます。
 そもそも政府は、沖縄県に過重な負担を負わせている地位協定の改定については、運用の改善で臨むとの方針で、何ら抜本的な対策を打ち出していません。沖縄県及び県民の実情を改善していこうとする意思が全く見えません。地位協定の改定等沖縄の実情を改善していこうとする対策すらとらず、県民に多大な負担を強いる有事法制だけ成立させるというのは、余りにも政府の横暴であると考えますが、大臣の御見解を賜りたいと思います。
川口国務大臣 米軍の施設・区域の七五%が沖縄に集中をしているということで、県民の方に多大な御負担をおかけしているということについては、大変な御負担であるということだと思っております。
 それで、政府といたしましては、この負担をできるだけ軽減するということで、SACOの最終報告を着実に実施をしていくという方向で今取り組んでいるわけでございまして、これの取り組みにつきましては、今後とも引き続き鋭意取り組みをしていきたいと考えております。
東門委員 その件に関しましても次の機会に回して、条約に入りたいと思います。
 インテルサットの改正についてでございますが、インテルサットの民営化に関しては、インテルサット締約国総会や理事会等で十分な協議が行われたようですが、その協議の中で、開発途上国、特にアフリカの内陸国にとって、インテルサットのサービスが国の国際通信のほとんど唯一の手段で、ライフラインともいうべきものであり、それが民営会社によって提供されることに非常な不安があり、民営化についての利害が一致しない面があったとも聞いております。
 こうした国々の不安を解消するため、ITSOがライフライン接続等公共サービス義務の確保を監督するとされたわけですが、こうした諸国の不安を解消するため、監督を行う事務局は、十分な体制を整え、的確な監督を実施できねばならない。そういう事務局の体制はどのようなものになるのか。また、具体的にはこの事務局による監督はどのような形で行われるのでしょうか。お伺いしたいと思います。
長内政府参考人 今お尋ねの事務局の件ですが、事務局は、事務局長、次長のほか、政策担当、技術担当、あるいは財務会計担当、こうした事務局員を含め総勢十五名程度で構成されることになっております。
 事務局長の役割といたしましては、会社がライフライン接続サービスの提供等の原則を遵守することを監督する任務を負っておりまして、機構と会社との間で締結される公的業務契約に基づき、会社との関係を処理することになっております。
 具体的に申し上げますと、事務局長は、会社のライフライン接続サービスの提供義務の遵守を監視し、会社とライフライン接続サービスを利用する顧客との間の調停業務の提供等を行います。また、会社によりライフライン接続サービスの提供等の原則が遵守されない場合には、必要に応じまして事務局長は勧告等の措置を実施し、さらに仲裁手続を開始することができるようになっております。
東門委員 次に、WHOの件ですが、WHOにおける地域的機関は、総会が定めるアフリカ、アメリカ、南東アジア、ヨーロッパ、東地中海、西太平洋の六つの地域に配置されており、我が国は、中国や韓国あるいはマレーシア、カンボジアなどとともに西太平洋地域に属しています。ところが、これらの諸国の近隣にある北朝鮮、タイ、インドあるいはインドネシアなどは南東アジア地域に属しています。一般的な感覚からすれば、韓国と北朝鮮は朝鮮半島にあり、マレーシアやインドネシアなどは東南アジアにあるなど、同じ地域に属していると見るのが普通ではないのでしょうか。
 このような近隣諸国同士が同じ地域に属していないことが、WTOの諸施策を推進するに当たって不都合はないのか。また、このような地域分けとなった理由について、それもあわせてお伺いしたいと思います。
高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘のように、WHOの憲章におきましては、第四十四条におきまして、世界保健総会が地域的機関の設置が望ましい地区というものを定めると規定しております。
 ある国の所属地域の判断につきましては、憲章上明文化された規定とかルール、基準というものは現在のところございませんが、今までの慣行は、当事国の要請をもとにいたしまして、地理的な位置それから保健問題の類似性、他の国際機関の地域区分との関係等、さまざまな要因を考慮いたしまして、当該国の加盟が決定する総会、もしくはその後何らかの変更がある、その事態が生じた総会で個別に決定を行ってきております。
 そういうことがございまして、先ほど御指摘のような状況というのが現在存在しておりますが、現在の地域区分がWHOの行っておる活動を阻害する要因になっているというような議論は、特にWHOの中では行われていないというふうに承知いたしております。
東門委員 ILO三者協議条約について伺います。
 本条約を我が国が批准するに伴って、本条約第五条一に規定するILOの活動に関する事項について、政府、使用者、労働者の代表者間で効果的な協議が行われ、それを確保するための手続を運用することが義務づけられています。そのため、我が国においては、政労使三者間の効果的な協議の場として、今後、厚生労働省、国土交通省に懇談会を設置して、年二回懇談会が開催されることになるわけです。
 これまでも随時政労使間で意見交換が行われてきたと伺っていますが、今回、条約の批准に伴って設置される協議の場としての懇談会と、従来の意見交換の機会というのは具体的にどのような差異があるのか、御説明いただきたいと思います。
高橋政府参考人 これまで、我が国におきまして、政労使間におきます意見交換の場といたしましては、厚生労働省に設置されておりますILO小委員会というものがございます。ILO小委員会におきましては、厚生労働省の大臣官房の国際課長が労使のメンバーを選出いたしまして、その選ばれた方たちが集まりまして、ILOの活動について随時意見交換を行っているものであります。
 本条約を御承認いただきました後、私どもの方で予定しておりますその協議につきましては、ILO総会の我が国の政府代表に通常なっております厚生労働省の大臣官房総括審議官を主宰者といたしまして、ILOの総会、理事会の実施時期を考慮いたしまして、これからは春、秋の二回、定期的に協議をいたすという新たな会合を設けることといたしたわけでございます。
 それから、国土交通省におきましても新たな、似たような定期協議の場を設けることにいたしますが、これは現在のところは存在しておりませんので、この点も変わる点でございます。
東門委員 この条約の中核をなす協議に関してですが、この協議とはいかなることを指すのか。例えば、単に三者が本条約で協議の対象とされる事項について協議するにとどまるのか、それとも、その協議の中で示された労使の意見を政府が必ず取り入れなければならないのか。また、協議においては、協議事項に関して最終的に政労使が合意に達しなければならないのか。そういう、条約が求める協議の性格について御説明をお願いします。
高橋政府参考人 本条約におきます協議とは、五条一項に掲げる事項に関しまして、政府の最終的決定の前に、使用者とそれから労働者の代表者に意見を表明する機会を与えるということを意味しておりまして、協議を行う政府は、使用者及び労働者の代表者と何らかの合意に達することを義務づけられてはおりません。それから、政府は、使用者及び労働者の代表者の意見に拘束されず、みずから行った最終決定について全責任を負うということになっております。また、使用者及び労働者の代表者も政府の決定に拘束されることはないということでございます。
東門委員 わかりました。
 終わります。
吉田委員長 東門美津子君の質疑は終局いたしました。
 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
吉田委員長 これより各件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 まず、国際電気通信衛星機構(インテルサット)に関する協定の改正の受諾について承認を求めるの件について採決をいたします。
 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
吉田委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。
 次に、国際労働基準の実施を促進するための三者の間の協議に関する条約(第百四十四号)の締結について承認を求めるの件について採決をいたします。
 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
吉田委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。
 次に、世界保健機関憲章第二十四条及び第二十五条の改正の受諾について承認を求めるの件について採決をいたします。
 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
吉田委員長 起立総員であります。よって、本件は承認すべきものと決しました。
 お諮りをいたします。
 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
吉田委員長 次回は、来る四月二十四日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時二十三分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.