衆議院

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第13号 平成14年4月26日(金曜日)

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平成十四年四月二十六日(金曜日)
    午前十時五十一分開議
 出席委員
   委員長 吉田 公一君
   理事 浅野 勝人君 理事 石破  茂君
   理事 小島 敏男君 理事 坂井 隆憲君
   理事 首藤 信彦君 理事 中川 正春君
   理事 上田  勇君 理事 土田 龍司君
      小坂 憲次君    高村 正彦君
      中本 太衛君    丹羽 雄哉君
      原田 義昭君    細田 博之君
      三ッ林隆志君    水野 賢一君
      宮澤 洋一君    望月 義夫君
      渡辺 博道君    生方 幸夫君
      金子善次郎君    木下  厚君
      桑原  豊君    前田 雄吉君
      山田 敏雅君    丸谷 佳織君
      松本 善明君    東門美津子君
      西川太一郎君    松浪健四郎君
      鹿野 道彦君    柿澤 弘治君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   内閣府副大臣       村田 吉隆君
   防衛庁副長官       萩山 教嚴君
   外務副大臣        植竹 繁雄君
   外務大臣政務官      松浪健四郎君
   外務大臣政務官      水野 賢一君
   会計検査院事務総局第一局
   長            石野 秀世君
   政府参考人
   (警察庁刑事局長)    吉村 博人君
   政府参考人
   (警察庁警備局長)    漆間  巌君
   政府参考人
   (防衛庁長官官房長)   柳澤 協二君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 林  景一君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            田中  均君
   外務委員会専門員     辻本  甫君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月二十六日
 辞任         補欠選任
  細田 博之君     三ッ林隆志君
  望月 義夫君     渡辺 博道君
  桑原  豊君     山田 敏雅君
  松浪健四郎君     西川太一郎君
同日
 辞任         補欠選任
  三ッ林隆志君     細田 博之君
  渡辺 博道君     望月 義夫君
  山田 敏雅君     生方 幸夫君
  西川太一郎君     松浪健四郎君
同日
 辞任         補欠選任
  生方 幸夫君     桑原  豊君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 会計検査院当局者出頭要求に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一六号)
 犯罪人引渡しに関する日本国と大韓民国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第一七号)


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     ――――◇―――――
吉田委員長 これより会議を開きます。
 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件及び犯罪人引渡しに関する日本国と大韓民国との間の条約の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両件審査のため、本日、会計検査院事務総局第一局長石野秀世君の出席を求め、説明を聴取し、また、政府参考人として外務省大臣官房審議官林景一君、アジア大洋州局長田中均君、警察庁刑事局長吉村博人君、警備局長漆間巌君、防衛庁長官官房長柳澤協二君の出席を求め、それぞれ説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
吉田委員長 きょうは、午後一時から本会議が入っておりまして、質疑者の皆様方には、どうぞ質問時間の厳守をよろしくお願い申し上げます。
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。首藤信彦君。
首藤委員 民主党の首藤信彦です。
 外務大臣、いつも私はここに立つたびに、今世界の中で起こっている最も緊急かつ重要な、かつ深刻な課題であるパレスチナの問題について御質問させていただいています。
 そして、前回でも申し上げましたけれども、こういうような状況の中で日本が沈黙するということは、本当に犯罪的な沈黙なんだ。昨日私は憲法調査会で発言させていただきましたが、憲法の前文に書いてある、国際社会において、国際平和を求め、そしてその平和を維持するために我々は名誉ある地位を占めたいと思うという憲法前文に込められたそうした思いを、やはり具体的に外交の面においても実施していかなければならない、そういうふうに思っているわけであります。そして、それに関しては日本としても、立場上いろいろなことはできるけれども、可能なすべての手段を使って、目に見える形で貢献してほしいということを毎回のように訴えさせていただきました。
 先日、新聞情報によりますと、大臣がパレスチナ和平の会議を日本で開かれるという提言をされているわけですが、その内容について御説明いただければと思います。
川口国務大臣 パレスチナ問題に我が国としてどのように対応していくかということで、私は、実は昨日、ある新聞に試論を出させていただきましたけれども、基本的な考え方といたしまして、停戦後、我が国として幾つかのことをやれる、またはやることが必要であろうと思っております。
 国際社会として重層的な幾つかのプロセスが必要でございまして、まず、停戦の維持とその後の政治的なプロセスを国際的に保証していくということを、国際会議を開いて保証する必要があると思っております。この中で、これについては日本も積極的な役割を果たしていきたい。
 それから、日本として、和平の果実である地域の発展及び安定を後押しする体制をつくっていく必要がある。これについても我が国は、人道支援あるいは経済の復興支援という形でこれに積極的に関与していきたいと思っております。
 三番目に、やはり今回のことというのはパレスチナとイスラエルの間の相互の信頼が非常に壊されたということに問題の一つがあるわけでございまして、その点に対応し、今後の政治的な、あるいは復興の過程を円滑に進めていくために、パレスチナ、イスラエル双方の平和に関心がある人たちの集まりを日本で開いて、平和共存のあり方あるいはパレスチナ国家についての国家のビジョン等を議論する機会を設けたい、日本としてその場を設定する用意がある、そういったことを含めて試論を出させていただきました。
首藤委員 その方向は本当に重要なことなので、ぜひ積極果敢に進めていただきたいと思います。
 ただ、大臣の言われたことで幾つか気になる点がございます。三つほど指摘させていただきたいんですが、停戦後にこういう会議を開かれるということですが、確かにそのことは重要ですが、停戦を待つのではなく、停戦をもたらすように日本の外交もぜひ積極的に行動していただきたい、そういうふうに言っておきます。
 それから第二は、大臣、これから各国をゴールデンウイークの間訪問されて、きょうがその前にメッセージをお伝えする最後の機会だと思って今言うわけですが、停戦がいつ来ようが、これだけ破壊されたパレスチナの都市というのは見たことがないわけです。ですから、今は停戦ということでみんなそこにだけ目が行っておりますけれども、現実には、家が破壊され、生活路は分断され、それからユーティリティー関係が全部破壊されている。それから、日本が供与した水タンクあるいは救急車、こういうものもみんな破壊されていると言われています。
 こういうような状況の中、ぜひ緊急支援、緊急人道支援、もちろんこれに関してはもう既に動き出しておりますけれども、大規模な緊急支援を思い切ってやることによって、日本が本当に国際社会の中で、ああ日本のやっていることはいいことなんだな、なるほどな、日本はいろいろな外交上の縛りがあるかもしれないけれども、日本のやっていることは本当に一番痛んでいるパレスチナの人たちを考えているんだなということが目に見えるように、大規模かつ緊急に人道援助をやっていただきたい。これは今本当に必要なものですから、ぜひお願いしたいと思います。
 これは日本のイニシアチブで絶対にできるはずなんです。このことこそ世界じゅうにメッセージを送っていただきたい。そして、日本がそういうことで動き出したということが、パレスチナの人たちにとって物以上の、我々が供与する物以上の大きな大きな贈り物になるわけですから、ぜひそのことは、連休前のお忙しいときですが、積極的に指示を出していただきたいと思います。
 それから、最後に、その会議でございますが、これも前回のアフガニスタン会議の失敗の轍を踏まないようにお願いしたいのは、まずNGOの参加を何らかの形でしっかりと組み込んでほしいと思います。それも、ただ政府寄りのNGO、はっきり言えばそういうNGOたくさんあるわけですが、そこを呼ぶのではなく、どういうNGOを呼ぶか。例えばパレスチナ側のNGOも、それからイスラエル側のNGOもありますね。今、例えば若者のグループなどで、こうした戦争によって、紛争によって問題を解決しようなんというものには反対する若者も、イスラエルの若者や学者はたくさんいます。ですから、そういう人を呼んだりする。それから、日本のNGOも呼んでいく。
 そして、最後にもう一つ絶対にお願いしたいのは、野党の政治家も呼んでいただきたい。できれば分科会の議長などは、例えば野党の、我が党でいえば民主党のNC大臣というのがいます。あるいは野党の党首の鳩山由紀夫さんというのもいます。こういう野党側にも、例えば一つの分科会のチェアマンを頼むとかそういう形で、オールジャパン、日本全部がこの問題に対して積極的に動ける、そういう形をとっていただきたいと思います。
 これは要望だけ、時間がございませんので回答は結構でございますけれども、ぜひ私のメッセージを本当に真剣に受け取っていただいて、努力していただきたいと思いますが、それはよろしくお願いいたします。
 最後に、ちょっと二分いただいて、この連休後の委員会での討議に関することを聞かせていただきますけれども、それは、八日には前ケニア大使であった青木大使が参考人ということで見えられるわけですが、当然のことながら、前より懸案でありましたケニアのソンドゥ・ミリウ水力発電所計画に対する質疑が中心となるわけです。
 それに関しては、ODAの問題というものが非常に批判を受けているときでもあり、また、このことに関して鈴木宗男議員が関与したのではないかという黒いうわさもあったりして、ともかく、このプロジェクトが本当にいいプロジェクトなのかどうか、そして、これは無償ではございませんで有償ですから、本当に日本の税金、私たちの、国民の税金がちゃんと返ってくるのかどうかというのを確認する必要がございます。
 したがって、我々は外務省に何度も、その実施母体、実施主体であるところのケニアの電力会社に対して、返済計画、本当に返済できるのかということの確証を求めてまいりました。ところが、先般外務省からいただいたのは、たったこの紙一枚でございます、この紙一枚。普通、返済計画といいますと、ほんのちっちゃな車を買ったとしても、ずうっと毎月のブレークダウンが載っているわけですが、外務省からいただいたのは、「円借款の元本の返済については、交換公文等の規定に従い、据置期間の後、償還期間が終了するまでに半年賦で返済される。」こんなことが返済計画として、資料としていただいたわけです。
 こんなことでは、私たちの税金が使われていく使い道を国民に納得させることはできません。ですから、次回の五月八日の参考人質疑の前に、そのときでも結構ですから、ケニアの電力会社のきちっとした返済計画、どれを見ても、貸した金がちゃんと返ってくるなということを我々が理解できるような返済計画の資料をぜひお願いしたいと思います。最後に短くコメントでいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
川口国務大臣 まず、返済計画ですけれども、これは委員会に提出した資料のとおりでして、十年間の据え置きの後、二〇〇七年から二十年間にわたって半年賦ということでございます。これは第一期の借款がまだ全部貸し付けられていませんので、もしそれが全部貸し付けられるといたしますと、一回につき約一・七億円ということになります。
 それで、これは債務返済能力がどれぐらいあるかということについてさまざまなところがさまざまなことを言っているわけでございまして、これについて、持続可能な水準にあるという分析もあるという、短くということでちょっとはしょりますが、ということがございます。
 お渡ししたものより、より詳細な資金返済計画ということにつきましては、これは先ほど申しましたように、第一期の借款が依然としてまだ貸し付け実行中であります。それから、一般的に、これ以上細かく資料をお出しいたしますと、それを公表しますと、さまざまな金融市場でその国が関係をしている部分があるわけでございまして、その国の信用、あるいはその国との信頼関係に影響を及ぼしかねないところがありますので、それ以上、ちょっと公表を申し上げることはできないということでございます。
首藤委員 終わります。
吉田委員長 首藤信彦君の質疑は終了いたしました。
 次に、山田敏雅君。
山田(敏)委員 民主党の山田敏雅でございます。
 きょうは、台湾の国家安全局の秘密基金についてちょっとお伺いしたいと思います。
 三月二十一日以降、日本の各新聞、連日この問題について報道いたしました。李登輝さんの時代に行われました対日工作、対米工作の秘密基金について詳しく述べられた機密文書が漏れたということでございます。
 これは台湾の二誌に掲載されました。一つは、壹週刊という週刊誌に詳しく載りました。これは直ちに公安当局によって十三万部が回収されまして、市場には出回っていないということなんですが、私の手元にございまして、これがその週刊誌の表紙のコピーでございます。ここに三十五億と書いています。約百三十億円のお金が対日・対米工作資金として使われたと。ここに写真のコピーがございますけれども、これが、最高機密という中に李登輝さんのサインが入っておりまして、許可するという意味の「可」という李登輝さんのサインが入っております。これは、お金を出す、それでどういう内容というのが書いてあって、それを許可しますと。
 もう一つは、中国時報という新聞が同じ機密文書を暴露いたしました。日本の政治家の名前がたくさん出てまいりまして、防衛庁関係、それから、日本のそういう関係者の方の具体的なお名前も出てまいります。ここに台湾の新聞の翻訳を、私、自分でやってみたんですけれども、何月何日付の極秘文書によるとこうです、こうですというのが連日出てきたわけです。
 これについて、まず外務省に、この機密文書は本物か本物でないか、もし本物であれば今までどういう情報を外務省は収集したのか、それに対して外務省としての、対日工作の中身について見解をお伺いいたします。
田中政府参考人 私どもも、委員御指摘のような報道が台湾と香港等の新聞で行われているということは承知いたしております。私どもも私どもなりにいろいろな情報の収集は行っていますけれども、この報道の内容が事実であるというような情報には接しておりません。台湾当局にいたしましても、一切コメントはしていないというふうに承知しております。
山田(敏)委員 ちょっと、何か頼りない答弁なんですけれども、台湾当局はこの機密文書に非常にショックを受けまして、慌てたというか、いろいろな手を打っていますね。まず公安当局が、今申しましたマスコミ関係の全部捜査に入りまして、十三万部の週刊誌を全部回収しちゃったと。それから、陳総統はプロジェクトチームをつくると。うそか本当かわからないのに、こんなことをしますか。それが外務省の情報収集、情報分析の能力なんですか。わかりません、知りません、何のために機密費というのがあるんですか。何にもわからないということですか。もう一回言ってください。
田中政府参考人 私どもも、台湾の当局が、機密漏えいとか、そういう形について法的な手当てとか、そういう形でいろいろな動向があるということは承知をしておりますけれども、この報道の内容が真実か否かということについて、これが真実なんだ、そういうような情報には一切接していないということでございます。
山田(敏)委員 外務省に機密費があるわけですから、これは国家の工作が行われたということですので、外交政策上極めて重要で、かつ緊急の問題だと思うんですが、外務大臣、今の答弁聞いて、いかがお考えでしょうか。
川口国務大臣 台湾と我が国との間には外交関係はございませんで、したがいまして、台湾の情報収集につきましては、交流協会を通じまして行っているわけでございます。
 この件についても、その一環として種々の情報を得ているわけですけれども、今局長が申しましたように、この報道が事実であるという情報には接していないということでございます。私どもとして確認ができないということでございます。
山田(敏)委員 この報道が事実でないというのは、そこら辺の素人の方でもだれでも知っているので、まして外交を担う人が、事実じゃないんだったら、どういうふうな方法でこれを事実と確かめるのか、あるいはどういうふうにやっていくのか、このぐらいの方針なり考え方がないと、外交の責任者とは言えないと思うんですけれども。
 この機密文書の中身が詳しく翻訳されております。この中で、一九九九年十二月十五日付の極秘文書、この中身が報道されております。非常に詳しく書いてあります。中身は、日本国の前防衛事務次官秋山昌広氏の米国研修を援助する、この内容で、だれが、いつ、どのようにということが書いてございます。
 そこで、防衛庁の方にちょっとお伺いしたいんですが、このような報道について、事実であるかどうかという確認をされましたでしょうか。
萩山副長官 お答えいたします。
 秋山事務次官は、そういううわさがあるときにはもう防衛庁には在籍いたしておりません。これはどのようなことかと申しますと、本人に直接聞かないと、これはもう調査のしようがございませんが、秋山さんが、防衛庁をやめられた後、いわゆるハーバード大学に客員研究員として就任なさっておられます。その間に同大学の博士からいろいろと相談を受けて、そしてその中で研究費や住宅費を少しもらったようであります。
 ですから、我々は、防衛庁といたしましては、何らこんなことには関与していない、この時点ではもう一私人であるというふうに私たちはとらえております。詳しいことは、官房長が来ておりますので、御説明させたいと思っております。
柳澤政府参考人 御指摘のような報道を私どもも承知しておりまして、この報道を受けまして、今副長官から御答弁申し上げたように、基本的には御本人に確認するのがまず第一でございますので、私から御本人にいろいろ当時の事情をお聞きしたわけであります。
 それによりますと、秋山元次官は、平成十年の十一月に退官されておりますけれども、その翌年の四月一日から、ハーバードの客員研究員として留学をされています。そのいきさつについては、御本人は、昔から交流のございましたハーバード大学のエズラ・ボーゲルあるいはジョセフ・ナイといった方々といろいろ御相談をされたということであります。それで、ハーバードの方から住宅と研究室と、まあ御本人は若干の研究費というふうにおっしゃっておりますが、それをハーバードが負担してくださる、そういう御相談の上でハーバードに留学されたと。
 しかしながら、いずれにしても、秋山元次官御本人は、ハーバードに対するドナーといいましょうか、ハーバードの財源手当てがどのようになされているかということについては、当然ながら一切知らなかったし、知るべき立場にもなかった、こういうお話を伺っているところでございます。
山田(敏)委員 もう一つ質問なんですけれども、防衛庁事務次官経験者がこういうふうに外国の研究機関に留学されるというケースは今までにあったんでしょうか、これが初めてなんでしょうか。
柳澤政府参考人 私の記憶では、防衛庁の高官、リタイアされた方が特に外国で研究活動をされるというケースは、秋山元次官以外にはほとんどなかったであろうというふうに思います。
山田(敏)委員 この機密文書によりますと、秋山さんについて、非常に台湾は恩義があるというか、お礼をしなきゃいけないというような内容が書いてあります。それによりますと、ハーバード大学でのそういう研究費、合計十万ドル、日本円にしまして一千万円ちょっとですけれども、これを支払うということがはっきり書いてあります。これはちゃんと、だれが許可をして、だれが送金をしてというところまで書いてございます。
 ですから、やめたから関係ないということであれば、この文書の中にもありますけれども、前事務次官は影響力はある、日本の防衛問題について影響力のある方だから、やめた人だけれどもこういうふうに援助しましょう、こういうふうに書いてありますので、やはり大変なお金が、だれが支払ったかわからないけれども、私は行きましたと。それでは、ハーバード大学が研究費から旅費から生活費から全部払うというのも、これもちょっと非常に前例のないことで、行くこと自体も前例のないことで、これについて副長官、何かコメントがありましたら。
萩山副長官 お答えいたします。
 防衛庁といたしましては、これまで判明した事実関係から、秋山元次官本人が直接台湾当局から金品を受領したという事実はなかったと承知いたしております。
 そしてまた、いずれにせよ、防衛庁といたしましては、本件は秋山次官の防衛庁退官後の個人的な事柄でありますので、防衛庁はそこまでかかわってはいないということで御了解、御理解を願いたいと思います。
山田(敏)委員 これは台湾の週刊誌と今の新聞が、この報道が出て次の日に本人にインタビューして、その記事が大きな写真つきで載っております。その内容は、今おっしゃったとおり、私は台湾から直接お金は受け取っていません、しかし、多分ハーバードが払ったと思うけれども、すべての費用は私は払っていませんと。要するに、お金を受け取ったということなんですね。費用がかかるわけですから、一千万円以上。これを認めて、それをしゃべって、それが大きく台湾で報道されております。
 本人はそういうことですから、今おっしゃったように事実は認められませんというのは、御本人がそうおっしゃったということですから、事実かどうかはわからないわけですよね。だれからお金が出たかというのはわからないわけですから。これについて調査をさらにお進めになるお考えはございますでしょうか。
柳澤政府参考人 先ほど来御答弁しているような形で、私どもも関心を持って、いろいろ調べられる限りのことはしております。
 ただ、この報道にあるような事実関係を直接に確認する手段もございませんので、基本的には、御本人のお話を伺い、さらにまた何か具体的な事実がありましたら、それは御本人に確認するなどという形の調査はしてまいりたいと思っております。
山田(敏)委員 ちょっと副長官、答弁いただきたいんですけれども、これがもし事実として、この行かれたという事実とそれからこの機密文書に書かれていることの事実が一致するわけですね。お金をどこにどういうふうに渡したかは、こちらは渡したと書いてある、御本人は受け取っていない、ハーバードから受け取ったと思う、こういうことなんですが、こういうことは、前防衛事務次官、そして国の防衛政策に影響を及ぼす人のやることとして好ましいことですか、好ましくないことですか。
萩山副長官 委員おっしゃったとおり、退官したとは申せ、やはり防衛庁に対しての影響力もあったと思いますから、そういうことが事実だとすれば、これは遺憾なことであります。だから、早速これは調査しなければなりませんけれども、私たちは秋山元次官を信じておりますので、こういうことはないであろうというふうに確信を持っております。万が一こういう問題が出ましたら、私が責任をとらせていただきます。
山田(敏)委員 どうもありがとうございます。
 これから台湾の方も国会でプロジェクトチームをつくって、文書は出ているわけですから、その真偽について調査をするということでございますので、もしそれが出た場合は、今のお言葉を重要に受けとめますので、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。どうもありがとうございました。
吉田委員長 山田敏雅君の質疑は終了いたしました。
 次に、金子善次郎君。
金子(善)委員 まず、北朝鮮に対する問題につきまして質問をさせていただきたいと思います。
 北朝鮮によるいわゆる日本人の拉致問題でございますけれども、国民の生命、身体の自由、それから何よりも国家の主権にかかわることであるというふうに思います。そういう意味で国家が、言葉をかえますとそれを代表する政府が、国民に対して最も責任を負わなければならない問題である、日本外交上最も優先されるべき問題である、課題でもある、こういう位置づけをすべきだと思います。
 昨日、超党派による北朝鮮に拉致された日本人を早期に救出するために行動する議員連盟というものが発足をいたしております。事務局長の説明でございますと、約七十名の超党派の議員がこれに現在参画をしている、またどんどんふえてくる見込みであるというような説明が、きのう発会式でございました。
 その席上、有本さんの御両親、それから横田めぐみさんの御両親、それから、この拉致被害者の家族等で構成されます家族連絡会というものがございますが、その事務局次長さん、鹿児島の方でございますけれども増元さん、五人が出席なさっておられました。
 非常に印象深かったことでございますけれども、有本恵子さんの拉致というものが、日本政府によってようやく拉致された方だということを認定を受けたわけでございますけれども、有本さんのお母さんは、自分の娘だけではなくて、この被害に遭った方々全体が一日も早く日本に帰ってくることを願うということを言われておりました。
 お父さんの方は、こういうような発言をされておりました。とにかくこれにかかわった、特に朝鮮総連のこれにかかわった人たちは、北朝鮮に行ってこうした被害者を捜してきてもらいたいというような発言もなさっておりました。
 この拉致問題については非常に国家主権を侵している問題であるということで、私も当選いたしまして最初の予算委員会の質問でもこの問題を取り上げさせてもらった経緯もございますけれども、大臣、この問題は日本外交としてどういうように位置づけられておるのか、まずそこから話をお聞かせ願いたいと思います。
川口国務大臣 先ほどおっしゃった有本さんの御両親の御発言、私も、本当にそういうふうに当然にお思いになるだろうと思います。
 私自身前に、そのときには有本さんの御両親は御一緒ではなかったというか、その前の話でございましたけれども、拉致された方の家族の方とお会いをしたときに、さまざまな言葉とさまざまな気持ちを私も、本当にそういうふうに私自身としても思うだろうと当然に思って伺わせていただいたわけでして、委員おっしゃるように、このお話は我が国の国民の生命にかかわる大変に重大な問題であると私は思っております。
 我が国としても、この問題について、今までさまざまな働きかけも行っているわけでございますけれども、引き続き北朝鮮との国交正常化交渉等の場で働きかけをしていきたいと思いますし、この二十九日、三十日に赤十字で北朝鮮との間で話し合いが行われ、その中で、日本人の現地にいらっしゃる妻の里帰り問題と並んで、この問題についての、行方不明者についての話し合いも行われることになっているわけでございまして、そういった場も通じて物事がだんだんに明快になり、最後無事にお帰りいただくということにつながるように政府としても努力を続けるつもりでおります。
金子(善)委員 ところで、四月の二十一日、これは日曜日でございますが、テレビの番組でございますけれども、石原慎太郎東京都知事が、ブッシュ大統領が来日されたときに流鏑馬のところで一緒になった、そのときにこの北朝鮮による日本人拉致問題についてパウエル国務長官と話をする機会があった、そうしましたら、パウエル長官はこの拉致問題の存在というものについて知らなかったというようなことをテレビで発言をしておりました。
 これは大臣、その話は聞いておられますか、パウエル長官が知らないと言われたということについて。
川口国務大臣 私は、その四月二十一日のテレビというのは見ておりませんので、石原都知事がどのようにおっしゃったかわかりませんけれども、私がパウエル長官とこの件についてはお話をしておりまして、パウエル長官が御存じないということはあり得ないわけでございます。
金子(善)委員 その点につきましてはわかりました。
 これは、やはり日本一国だけではなかなか、現実問題としても過去数十年にわたりまして解決できないわけでございますから、国際的な取り組みで何としてでもやっていただきたい、このように思います。
 ところで、二〇〇一年の一月二十日に公表されました一九九九年度米国国務省テロ年次報告書に、こういうくだりがございます。イラン、イラク、シリア、リビア、北朝鮮、キューバ、スーダンは、アメリカ国務省が国際的なテロリズムを支援する国家と指定した七政府である、しかも、北朝鮮はウサマ・ビンラディンとのネットワークの関係を維持しているというような記載があったわけでございます。これは本物のあれでございますが。
 そこで、外務省として北朝鮮のとらえ方でございますが、アメリカは、ブッシュ大統領になりまして悪の枢軸国というような言葉で表現しているわけでございますけれども、北朝鮮についてテロ支援国家という認識を外務大臣としてはお持ちですか。
川口国務大臣 我が国はテロ支援国家というような概念は持っていないわけでございますので、ブッシュ大統領、アメリカはそのようにおっしゃっていらっしゃるのかもしれませんけれども、我が国としてはそのように考えておりません。
金子(善)委員 そのように考えていないということは、アメリカとの見方とは全く違う考え方を日本外務省は持っている、そういうふうに理解してよろしいでしょうか。
川口国務大臣 ある国家をテロを支援している国家であると定義するという考え方をしていないということです。
金子(善)委員 今、ある国家をテロを支援している国とはみなさないというようなお話ございましたが、アフガニスタンのああした問題から一連のいろいろな問題が出てきているわけでございますけれども、その見ていないということは、アメリカの外交、これとは一線を画しているというふうに受けとめざるを得ない今の大臣のお話でございます。そういうふうに感ずるんですが。
 要は、とらえ方として、アメリカのああしたやり方は、アメリカはアメリカだ、それぞれ独立国ですから、当然、アメリカはアメリカの考え方、日本は日本の考え方があるといえばそれまでですけれども、その整合性という意味では、整合性はとれている外交を展開なさっているのか。その辺については、ひとつ明確にお答え願いたいと思うんですけれども。
川口国務大臣 米国は、ある国家を、ある特定の国を、テロを支援している国であるという形で指定するということをやっているわけでございますね。我が国は、それに対して、ある国をそういう形で指定するということはやっていないということを申し上げているわけです。
金子(善)委員 この報告書が出まして、私もこれを見まして、かなり過激な表現で書かれているなというような印象を実は持ったことがございました。
 それで、アメリカのこの考え方というものはどういうことなんでしょうか、これは確認していただけないでしょうかということを、昨年の九月の段階で、実は外務省の北東アジア課の方に問い合わせをした経過がございます。これは何回か問い合わせをしてきているんですけれども、今もって、そのたびに、アメリカ政府に確認中だからまだ回答がないというようなことでございまして、これはアメリカ政府から何らかの回答というものは得ているんですか。
田中政府参考人 委員御指摘の点は、九九年度のテロの年次報告書の中には、ウサマ・ビンラディン及びそのネットワークとのつながりを依然として維持しているという報告があるということだと思います。
 これは、実は、二〇〇〇年の報告にはそのような記述はない。一部あるのは、北朝鮮がテロリストグループに直接的、間接的に武器を売却したことを示す証拠も存在をする、こういうことでございますけれども、私どもも、日米韓の北朝鮮に関する三カ国の調整グループであるとか、あるいは直接米国にも照会をいたしました。先方は、ウサマ・ビンラディンと北朝鮮との直接な関係は一度も確実に立証されたことはない、しかしながら完全に排除し得るものではない、こういう説明をしております。
金子(善)委員 それでは、先に進ませていただきますけれども、先般、警察庁の方で、有本恵子さん、これは北朝鮮による拉致だということを公式に認めました。ところで、この有本さんと一緒にと申しますか、非常に関連が強いと見られております熊本の松木さん、それから、これは名前を伏せておられるわけでございますが、通常、北海道のIさんということで我々この拉致問題に関心のある者は言い方をしておりますけれども、警察庁の方にお伺いしたいと思います。
 有本さんだけ、いろいろな手紙が来たり、写真が来たり、日本の方に届いたりなんかしているわけでございますが、この熊本の松木さんと北海道のIさんについて、警察の方ではどういうとらえ方をされているのか。少なくとも、拉致された可能性、疑惑、それがあるのではないかと、私はその程度ぐらいまでは警察としても言うべきではないかというふうに思っておりますけれども、その点、いかがでしょうか。
漆間政府参考人 委員御指摘の二人の方でございますけれども、いかなる事情で北朝鮮に渡ることになったかなどにつきまして、今、あらゆるケースを想定して所要の捜査を遂げているところであります。
 委員おっしゃるように、このお二方について拉致の可能性があるかどうかを言ったらどうかということでございますけれども、こういうことについて言及することは、事案の究明に当たって予断を与えるということも考えられますので、これについては答弁を差し控えさせていただきます。
金子(善)委員 今の警察庁の答弁でございますけれども、実際にはかなり、確かに一〇〇%の証拠がないものということになりますと答弁もしにくいという点はわかりますけれども、いろいろな情況的な証拠と申しますかそういうところから見て、このお二人について、拉致された可能性というのは本当に高い、こういう方々だ、このほかにもたくさんいらっしゃるわけですけれども、そういうふうに我々としては思っているところであります。
 これ以上この点について言っても、あれでございますので。
 そこで、現在、北朝鮮の平壌に行っている報道関係者から、近いうちに有本さんがマスコミの前に姿をあらわす、北朝鮮関係者も、有本さんは北朝鮮にいると言っているが、松木さんとIさんについては否定している、こういうようなことが報道関係者の方から我々の方に情報が入っているわけでございます。
 外務省は、この点について把握しておられますか。
田中政府参考人 私どもも、そのような報道関係者のお話があるのは承知しております。だけれども、それが事実かどうかということについては把握をしておりません。
金子(善)委員 そうすると、今申し上げたように、近く有本さんがマスコミの前に姿をあらわすであろうというような情報には接しているという答弁だったというふうに受けとめておきます。
 ただ、北朝鮮が有本さんを表に出すと、拉致した証拠が出たわけですから、証人も出たわけでございまして、これが、第二の寺越事件と申しますか、もう四十年近く前に三人の兄弟が拉致されたというような事件でございますけれども、ある時期に寺越さんの兄弟三人のうちの一番下の方が母親と面会するというような劇的なことがあったわけでございますが、ただ、外務省として本当に、これは北朝鮮が有本さんにどういう扱いを、今後表に出すまでにいろいろなことを考えているんだろうと思いますけれども、あくまでも有本さんについて、外務省が最後まで、これを取り戻すんだ、ただ、わっとテレビに出てきて元気でいるよというような姿を見せるということじゃなくて、あくまでも取り戻すという気概を持って交渉にこれから臨んでいただきたい、このように思いますけれども、外務大臣の決意を聞かせていただきたいと思います。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、この拉致問題は、我が国の国民の生命にかかわる重大な問題であるという認識を持っております。
 我が国と北朝鮮とのさまざまな接触、あるいは、接触といいますか北朝鮮をめぐる最近の情勢を見ますと、新しい局面に入ってきたという認識を持つわけでございまして、これは、杉嶋記者が解放されたということ、それから、行方不明者を捜すということ、赤十字会談といったような動きが最近あるわけでございまして、政府といたしましても、この動きに注目をしながら、北朝鮮に対しては、より建設的に、一層建設的に対応するように働きかけていきたいと考えております。
 拉致問題としては、政府として、日朝間でこの問題を話し合うことができる本格的な協議の場を設定して、北朝鮮側の前向きな対応を求めていくということが、問題の進展の糸口を探求していく上で最も効果的であるというふうに考えておりまして、引き続き、日朝国交正常化交渉等の場で北朝鮮側の真剣な対応を粘り強く求めていきたいと考えております。
金子(善)委員 それでは、次に移らせていただきたいと思います。
 朝銀信組問題でございますが、朝銀と通常言っております。これまで朝鮮信組に対しまして、国民の税金である公的資金五千二百八十五億円が投入されてきておりますけれども、あくまでも公的資金である、五千二百八十五億円という大変な金額が投入されてきている実態がございます。
 会計検査院にお伺いしたいと思いますけれども、公的資金でございますから、金融庁の指導監督と申しますか、こういう権限とはまた別に、投入された公的資金が適正に使われているかどうか検査する義務が、責任が会計検査院にあるのではないかというふうに思われるんですが、その点、権限的なものが、義務があるのか。それと、あるとすれば、実際どういう検査をしているのか。それについて会計検査院から聞きたいと思います。
石野会計検査院当局者 金融システムの安定化のための諸施策の実施につきましては、今お話しのとおり、多額の公的資金が投入をされております。これにつきましては、当然検査対象でございますので、資金援助等の金融システム安定化のための諸施策が預金保険法等の法令の枠組みに沿って実施されているのかといった観点から検査をしてきておりまして、その検査状況につきましては、特定項目として検査報告に掲記しているところでございます。
金子(善)委員 よく聞き取れなかったんですけれども、検査する責任があるということでよろしいんですね。
石野会計検査院当局者 検査対象になるということでございます。
金子(善)委員 検査の対象になるということでございますから、これからしっかり検査をしていってもらいたい、このように思います。強く要望をいたしておきます。
 そこで、金融庁にお伺いしますが、今後、どれぐらいの公的資金、今大変な、朝鮮信組については破綻するところが多く、また再編がなされようとしているわけでございますが、新しいところも、事業認可をしているところが四つもあるようでございますけれども、これについて、朝銀関係としてどれぐらいの公的資金の投入が必要と考えているか、説明してもらいたいと思います。
村田副大臣 破綻信用組合の受け皿となります新設の四信用組合につきまして資金援助の手続が進められておりまして、本年の三月三十一日に、預金保険機構から内閣総理大臣と財務大臣へのペイオフコスト超の報告がなされている、そこまで今手続が進んでいるわけであります。
 そういう手続の途中段階でございますが、そういう意味では、まだ具体的に、その資金援助額が幾らとなるかという具体的な確たる数字は設けられない、そういう段階にございますということを御理解いただきたい。
 その上で、直近の十三年三月期決算におきます公表された債務超過額が一つその判断の材料になるかというふうに思いますが、これを見ますと、十三年三月期決算におきます公表債務超過額というのは四千三百四十七億円ということになっておりますので、その後、まだ破綻後の債務の劣化等がございますので、まだまだ確定した数字でございませんが、そういう数字でもって想像される額、こういうふうにお答えを申し上げさせていただきたいと思います。
金子(善)委員 今、債務超過額が四千三百億程度というお話でございましたが、巷間言われておりますのは、五千億を超えるんじゃないかというようなことをいろいろ、うわさの段階かもしれませんけれども、言われている、こういう状態にあるということでございます。
 そこで、現在破綻している六組合を四組合に統合しまして、継続の組合三組合と合わせまして七組合とする予定になっているという説明をいただいております。
 それで、こういう状態なんですね。まず、継続のものじゃなくて、新たなものについて申し上げますと、これはハナ信組というんでしょうか、これは預金量が、十四年度末見込みです、これは金融庁からいただいておりますが、千四百四十三億円、店舗数が二十三、組合員数が七千三百六。それからミレ、これが預金量が五百六十億、店舗数が七、組合員数が二千八百二十四。それから京滋、これが預金量が四百四十、店舗数が五、組合員数が千八百二十三。兵庫ひまわり、これが預金量が五百六十五、店舗数が六、組合員数が二百五十。こういうようなことを説明を受けておりますが、それで間違いございませんね。
村田副大臣 委員のおっしゃるとおりでございます。
金子(善)委員 私が心配しておりますのは、今、この朝銀信組をめぐる、取り巻く環境というのは大変厳しい状態があるというふうに聞いております。一度離れた預金者、あるいは優良な融資先というんでしょうか、そういうようなところもいろいろ迷惑をこうむったり、ほかの金融機関との取引をするというような流れになっているようでございまして、これらの、今申し上げたような程度の規模の信用組合、こういうものがいわゆる健全な経営というものを維持できるだけの、そうした力を持ち合わせる金融機関と見ることができるかどうか、私は甚だ心配だというふうに思っておりますけれども、金融庁としてその点どうお考えか、くれぐれも慎重にお答え願いたいと思います。
村田副大臣 もちろん、破綻の後、時間がたっておりますけれども、そういう意味で、資産の劣化等、そういう問題点が生ずることはそうでございますし、預金が払い戻されるという事態も進んでいるということは事実だと思いますが、私ども、受け皿として適格性の認定を経ているということは、財務の内容も含めて、そうした受け皿として適格な状態にあるという認定をしたということでございます。
金子(善)委員 私としては、大変心配な状態ではないかなというふうに思います。
 そこで、朝鮮総連の財政局副局長だった韓光熙ですが、「わが朝鮮総連の罪と罰」という本が、たしか文芸春秋社ですけれども、発売になっております。私もきのうこれを入手しまして、詳しくは読んではおりませんが、さらっと読んでみますと、大変なことが書かれております。朝鮮信組が関係するお金が万景峰号で、これは船ですが、北朝鮮へ不正にお金を持ち出したというようなことが赤裸々に書いてあるわけでございます。
 まだ本が出たばかりでございますからあれですが、そうはいうものの、この本に書いてある内容、これまでいろいろなマスコミで報道もなされてきた経過がございますけれども、金融庁はこれは確認されておりますか。
村田副大臣 私どもは、破綻信用組合につきまして、金融整理管財人を中心といたしまして、責任追及、こういうことは徹底的にやるということでございまして、既に告訴されたものもございますし、民事、刑事の責任は追及していきたい、いくべきものと考えておりますが、今委員のおっしゃった事実については、個別の問題として、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
金子(善)委員 そこで、委員長にお願いしたいと思うんですが、ただ、残念ながら今、韓光熙さんは御病気というようなことでございますけれども、病気が回復された段階で、当委員会で参考人招致をしていただければというふうに思いますので、委員長、よろしくお願い申し上げます。
吉田委員長 理事会で協議をさせていただきます。
金子(善)委員 はい。
 では、次に移る前にですけれども、そういういろいろな疑惑の問題、朝銀については、朝鮮総連との関係、いろいろなことが言われているわけでございます。そういう疑惑というものが、やはりきちっとそういうことはないんだというようなことが確認されてから、仮に公的資金というものを入れる場合でもそうしていくべきじゃないか。つまり、そういういろいろなことがはっきり解明されるまで、この公的資金の投入ということは控えるべきである。これが国民感情でもあるだろうし、また、実際の公正な考えからいってもそういうことになるのではないかというふうに私は思いますけれども、金融庁副大臣、いかがでございますか。
村田副大臣 私どもといたしましては、金融機関の経営の健全性を確保する、そして預金者を保護する、それから協同組織金融機関として資金の仲介機能を立派に果たしてもらう、こういうことが最大のねらいでございます。
 過去、私ども、破綻した、例えば朝銀東京などで総連向けの不正な資金の流れなどは把握しておりまして、私どもは、そうした観点から、四月一日からペイオフも解禁されたことでもあり、再びそうした信用組合が破綻することのないように、朝鮮総連等の組織からの独立性を確保する、こういう観点から、定款にわざわざそうした独立を確保するというような規定も設けてもらったわけでありますし、また、日本人の役員も中に入れるべし、あるいは、内部で適当にやられないようなシステムも新たに取り入れてもらうように新設組合に要請したところであります。
 そういうことで、私どもは、もろもろの要請あるいは条件の中で、そうした総連等からの独立性を確保してもらうということが非常に大切だというふうに考えておりまして、ただいまも国会での厳しい御指摘もありましたし、マスコミでの情報もありました。あるいは、政府部内での意見交換もさせてもらいながら、そうした定款に定めた独立性というものがより完全に確保されるように引き続き努力をしている、こういうことでございます。
金子(善)委員 次に、時間も迫ってまいりましたので、朝鮮半島エネルギー開発機構の問題について質問させていただきたいと思います。
 財務省の査定資料によりますと、外務省の十四年度予算で、経済協力国際機関等拠出金、これから、いわゆるKEDOというんでしょうか、朝鮮半島エネルギー開発機構へ十七億四千五百五十五万円が拠出を予定されております。恐らくこれはこれまで何年かにわたりまして拠出をしていると思うんですが、どれぐらいの金額をしているのか。
 それと、時間の関係もありますので、まとめて質問をさせていただきます。これは国際機関でございますね。そうすると会計検査院の対象にはならないと理解してよろしいのか、これは会計検査院です。
 それから、外務省にお伺いしたいと思いますが、アメリカは、国際原子力機関、IAEA、この査察を求めているわけでございますが、日本政府はどういう対応方針を持っておられるのか、これにつきましてお伺いしたいわけであります。
 そこで、私が最終的に申し上げたいのは、結局、いろいろな問題というものが解決されない、その中で、KEDO、原子力発電所をつくるというような構想だということでございますけれども、こうした一連のものを全体の北朝鮮政策のパッケージの中でどういうように位置づけておられるのか、そこをきちっとお話しいただきたいと思います。要は、こういうものも対北朝鮮政策の中で一つの、言葉はあれでございますけれども、武器と申しますか、そういうような位置づけを考えられないのか。
 外務大臣の見解と会計検査院の見解をお伺いしたいと思います。
田中政府参考人 委員御指摘の予算でございますけれども、KEDOに対しては日本は、KEDOの合意に基づきまして、千百六十五億円、十億ドル相当ということでございますけれども、この拠出をコミットしています。その中で、これは実態は無利子の融資ということでございまして、国際協力銀行からKEDOに対して約三百十七億円の融資が行われております。
 ただ、これは無利子ということでございますから、この融資により発生する利子補給及び事務局経費、こういうことで、これまで政府からKEDOに対して総額約六十一億円の拠出金を供与している。この中で、今年度の予算において、利子補給、事務局経費として十七億四千五百五十五万円が計上されているということでございます。
 それから、この位置づけでございますけれども、私どもも米国と同じでございます。まさに北朝鮮の核兵器の開発というものを封じ込める、このためにはKEDOの枠組みというのが有効であると思っていますし、その観点から、米朝の合意に基づいて、北朝鮮が封じ込められた疑惑の施設に対しても完全に査察に応ずる、こういうことが重要であり、これを求めているということでございます。
石野会計検査院当局者 朝鮮半島エネルギー開発機構は多国間の協定に基づいて設置されている国際機関であると承知しておりますので、当該機関は会計検査院の検査対象とはなりません。
金子(善)委員 それでは、どうもありがとうございました。
吉田委員長 金子善次郎君の質疑は終了いたしました。
 次に、中川正春君。
中川(正)委員 民主党の中川正春でございます。
 先ほどの金子さんの質疑時間が途中で切れたというか、予定しているものが切れましたので、私が引き受けて、少しつけ足してやりたいと思うんです。
 前回の金子さんの質問で、在外公館で会計責任者が集って支出の説明会をやった、その資料が、これは無期限の秘扱いのものなんですが、流出をして、その中身が公になったということがありました。これについて、もう一回確認をさせていただきたい。
 このときに委員長預かりで、先ほど理事会でも議論をしたんですけれども、その結果を踏まえて、もう一度確認をさせていただきたいんですが、この資料の存在について、資料というか議事録のメモの存在についてと、それからもう一つは、そういう会議自体が行われているということ、このことについてまず認めていただきたいということですね。
 それからもう一つは、ほかの類似の資料についてもこれはオープンにすべきだということ。もともと秘扱いにするのがこれは間違っているということから、オープンにして、国民的な常識からいったら、こんなものを秘扱いにして議論しているということ自体が間違っているということだと思うので、このことについて改めて質問をしたいというふうに思います。
川口国務大臣 幾つか御質問がありましたけれども、会計担当官の会議が、アジア、北米、中南米、欧州、大洋州、アフリカ、地域ごとに会計の担当官と本省の会計指導の担当者が出席をして意見交換を行うという会議が開かれているということは事実でございます。
 それで、開かれたその会議の議事録を出すということについて、秘にすべきではないというお話がございましたけれども、これはこの前、外務委員会でも御説明をさせていただいたと思いますが、こういった会合では、きちんと会計担当者に会計事務について話をし、意見交換が行われて、その結果として会計事務が適正に行われるということが非常に大事なことでございます。
 仮にこれを公表するということをいたしますと、その会議の場で関係者が公表を意識しますので、その結果として率直に意見交換が行われにくくなるというおそれがございますので、情報公開法で、「国の機関及び地方公共団体の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報であって、公にすることにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」云々云々ということで、この場合は不開示ということでございますので、それに従いまして不開示とさせていただきたい、そういうふうに私どもは考えているわけでございます。
 それから、おっしゃった資料、議事録が存在をするかどうかということにつきましては、そういった意味で、外務省の中には議事録はもちろん存在をいたしております。
 先般御提示のあった、民主党が御入手をなさったという資料につきましては、これは、私どもにいたしますと出所不明の文書でございますので、コメントをすることは差し控えたい、そういうことでございます。
中川(正)委員 一言で言えば納得ができませんということだと思うんです、我々としては。
 さっきの、濶達な議論ができないから不開示だという理由なんですが、これは想定していることが違うんですよ。濶達な議論というのは、政策議論であるとかあるいは外交問題についての政策立案過程での議論を言うのであって、会計責任者がルールに基づいてこんなふうに使いなさいよという話の中でああだこうだということを秘密にしておかなければならないという感覚自体が、全く世間常識と離れているということですよね。ここのところの履き違えが大きく、履き違えというよりも、濶達な議論というのを自分たちに都合よく使ってマル秘基準をつくり上げているという体質、これが問題なんだというふうに私は思います。
 そういう意味で、先ほどの説明では納得ができないということを、金子さんにかわって私が意思表示をしておきたいというふうに思います。委員長、さらにこれは検討をしていただきたいというふうに思います。
 それからもう一つ、金子さんの話で、開示といいますか説明をしていただきたいと申し上げていたのが、報償費の予算について振りかえの中身、これを示していただきたいということで、一応メモをいただきました。本人がいなくなってしまいましたけれども、さっき私に話が来ましたのは、これは我々が意図したメモになってない、不十分だ、こういうことでありますので、後ほど担当者に金子さんのところへ行っていただいて、彼が何を意味していたのかというのを確かめてください。その上で、こういうのは事前にやっていただいたら何回もこんなところで質問をしなくてもいいことなんですが、そういうことでありますのでお伝えを申し上げて、改めてこの開示をお願いしたいということ、このことを申し上げたいと思います。
 次に、私の方の質問に入っていきますが、これも先ほどとの関連もあるわけでありますが、イスラエルの問題ですね。
 大臣、これも残念だなと私つくづく思うんですが、この二十五日の川口大臣の、読売だと思うんですけれども、さっき出ました「論点」のところで、「日本の多角外交 中東貢献」という名でもって「論点」というのが発表をされております。
 この前日、二十四日の日に、ここで議論があったんですね、イスラエルに対して。そのときには、答弁として本当に中身のない、あっちやこっちの関係者の皆さんと電話で話したり議論をしたりしていますよという程度の答弁がありまして、首藤さんからそのときには、あれはうまく言ったね。何とか言ったね。(発言する者あり)そうそう、犯罪的沈黙だ、こう言われたんですよね。その翌日に、これだけ大臣としての意思というのを新聞で発表されている。こんなことなら、やはりここに自分の意思というのを出していただいて議論をする、そういう環境といいますか、そういう委員会あるいは国会との関係というのをやはりつくっていただくべきだというふうにつくづく思います。そのことをまず申し上げたい。
 これまでそういう話が多かったので、私の――これは返事はいいんですよ、まだある。そのことをまず申し上げておきたい。これはお願いですよ。これで腹を立てて審議拒否だとは言いませんから、そういうふうな信頼関係をつくりながら積極的な議論をしていきましょうということを申し上げておきたいと思うんです。
 その上に立って、この中身をもう少し議論したいんですが、ここで見ていると、ちょうどアフガニスタンのときと同じようなスタンスがあって、紛争が起こっていることに対してのコメントというのは、パウエル国務長官の仲介努力を最大限支援するというこのスタンスだけで終わっていますよね。紛争が終わってからのネーションビルディングに対して、日本がさまざまにやるべきことがあるということで、さっきお話しされた三項目というのが挙がってきたということなんですが。
 沈黙がだめだという私たちの意図というのは、今の紛争を解決していくために日本が積極的に意思表示をしていくとしたら何があるんだということを大臣に答えてほしい、こういうことなんですよ。それに対しては、やはりここでもパウエル国務長官の仲介努力を最大限支援するというところだけで終わっているということ、このことをもう少し突き詰めて、私は答弁をいただきたいというふうに思うんです。
 ブッシュ政権がいわゆる仲介を失敗した。その失敗した背景の中には、ブッシュ政権の抱える国内問題、国内での支持基盤というのが大きく影響をしているということだと思うんですね。それは、イスラエルを支えているいわゆるユダヤ人コミュニティーというのが共和党の中に深く根差していて、国会サイド、議員サイドの議論としても、イスラエルに対して強くブッシュが出るということに対して非常に抵抗が大きいというような、そんなこともさまざまに報道もされております。
 そういうような構造に対して、日本が何ができるか。アメリカは、本来なら、例えば経済制裁をその次のステップとしてやっていくんだろうと思うんですが、アメリカがもしこの経済制裁ができない、いわゆる国内の状況の中でできないというふうな背景があるとすれば、日本がその辺を、軍事的でなくても、日本なりの行動にあらわしたコミットとして、経済制裁を含めて、あるいは多国間の協議の場を日本がつくり出していく、アラブのサイドの話も含めてつくり出していくというふうな努力であるとか、もっと具体的な提案ができるということだと思うんですね。
 そこについて、川口大臣の意思、何をパウエルに言ったのか、何をそれぞれアラブ諸国のリーダーあるいはイスラエルのリーダーに言っているのか、そのことをひとつお話をいただきたいというふうに思います。
川口国務大臣 今の段階で一番大事なことは、停戦をするということであると私は考えています。
 それで、停戦に向けてのパウエル長官の努力が失敗したという御認識を委員はお持ちのようでいらっしゃいますけれども、私はそう思っていないわけでございます。今、これは続いている努力であると思っております。
 昨日、私がイスラエルのペレス外務大臣とお話をしましたときに、二つの問題、ベツレヘムの教会及びアラファト議長府、ここのところを除いて、イスラエルとしては自治区から撤退をしているというのがペレス外務大臣の話でございました。今後、今週末、来週にかけて、まだ努力は続く過程にあると私は認識をいたしております。
 その概要については、私としても、うまくいくということを願うということしか今の時点ではできませんけれども、パウエル国務長官と話をした時点で、私はパウエル長官に、長官の努力を多とし、日本としてもパウエル長官の努力を支援し、支持していくということを話をしているわけでございます。
 経済制裁についてのお話がありましたけれども、経済制裁に進むことになるかどうかということにつきましては、一つは、停戦が成功するということがまず第一の重要な注目すべきことでございます。それから二番目に、制裁について言えば、EUであっても、これをするべきかどうかということについては今意見が分かれている状態で、世界の国として、今後制裁をしていこうという動きには、今の段階ではなっていないと私は認識をしております。
 どの国も、それぞれ内政と外交というのは表裏一体ということでして、密接に関係をし合っているということでございますから、世界一のユダヤ人国家である、イスラエルよりもユダヤ系の人が多いアメリカとしては、この要素の影響が内政の一要因として入ってくることは、これは当然そういうことになるだろうと思いますし、その結果としてのアメリカの外交は、もちろんアメリカにもアラブ系の人が大勢いるわけですから、そういったこと、ほかの要素も含みますけれども、国々によって異なった判断が出てくるというのも、これは外交の常であると私は思います。国際政治の常であるということだと思います。
 今後の過程として、それは、この間、試論に述べさせていただいたということでございまして、この間の試論のお話というのは、停戦を実現することが緊急の課題で、その次に重層的な国際的なプロセスをつくる必要があるというのは、その後の段階の話。政治的なプロセスをつくり、我が国として和平の果実をきちんと見えるような形にする、それから、平和共存についてのあり方、パレスチナ国家ビジョンをつくる等というのは、またその停戦の後の段階ということで、ここについては我が国として努力をする用意があるということでございます。
 先ほど委員から、これだけのことをその前の日に言わなかったではないかというお話がございましたけれども、ここで読売新聞に書かせていただいたことのほとんどの部分については、私はこの委員会でもお話をいたしております。
 先ほどの、関係者が集まって平和共存のあり方、パレスチナ国家ビジョン云々ということについては、私は既に、これは三月の段階であったでしょうか、プレスクラブでの話の中でそのアイデアは出させていただいておりますし、それについてこの委員会での議論も、衆議院の外務委員会であったかどうかということははっきり記憶がございませんが、いずれにしても、国会での議論がなされている話でございます。
 また、こういう整理をしてお話をしたということでは、その日の段階で、ある議員の方の御質問に答えて、かなりこれに近いことを私としては申し上げているわけでございまして、委員から、そういうことを言っていないではないか、フランクに議論をしていないではないかというお話がございましたけれども、私としてはそういう認識に全く立っていないということを改めて申し上げさせていただきます。
中川(正)委員 プレスに発表してから、それをもとにここで議論をするというんじゃなくて、こっちで発表したことがプレスで議論される、そんなようなスタンスでぜひひとつやっていただきたいというふうに思います。
 それから、ちょっと時間がなくなってきたので、あと一つ、ロシア関係なんですが、支援委員会をもう廃止していくという方向なんだろうと思うんですが、それを確認したいということと、それから、支援委員会がそうやって変わっていった後、ロシアに対する人道支援というのをどういう見直しをしていくのかということ、そこの二点についてお尋ねをしていきたいというふうに思います。
川口国務大臣 支援委員会を今後どうしていくかということについて、これはまだ最終的に決定をする段階にはないということでございまして、これについてはしばらく、月の単位で時間がかかると思います。
 今の段階で何が起こっているかということで申し上げますと、専門委員会というものをつくらせていただきまして、これについて、どういう方法で今後ロシアの支援をやっていくことがいいのかという御議論をいただいているわけです。
 この委員会は非常に熱心に御議論をいただいていまして、夜中に及ぶということもあったようでございますし、昨夜も会議がありまして、深夜二時まで、けさの二時まで会議が行われたというふうに私は聞いております。
 最終的に、二時まで行われた議論の結論については、私は、二時の段階の話でございますので、今の段階では聞いておりませんけれども、今までの感触でいうと、両方さまざまな意見があって、どちらかといえば、いろいろな条件つきでありますけれども、そのもとで廃止をした方がいいんではないかという意見が多いというふうには聞いておりますが、最終的に二時までの議論の結果がまだちょっとわかりませんので、きょう夕方、国会が終わった後で、これについて話を聞くことになっておりますので、その時点で判明をするというふうに私は思っております。
 それから、人道支援について言いますと、これは、仕事としては非常に重要なことであり、ロシアからも大いに評価をしていただいていると私は思っております。
 支援委員会あるいはこの協定がやった対象は三つございまして、一つは、ロシアの市場化の支援ということです。それからもう一つは、ロシアの、北方四島ではないロシアの人道的な支援。それから、三つ目の要素として北方四島の住民支援があるわけでございまして、国会等で問題になりましたのはこの北方四島の住民支援のことでございまして、ロシアの市場経済化を促進するための試み、それからロシアの緊急人道支援、これについてはロシアからはそれなりの評価をいただいている。もちろん北方四島支援も、ロシアからは評価をいただいて、地元住民から評価をいただいているわけですが。
 ということでございますので、これを今後どういうふうにしていくかということは、北方四島住民支援の枠組みを今後どうしていくかというその専門委員会の御議論を受けての議論の中で決まっていくということでございまして、先ほど月の単位でと申し上げたのはそういうことでございます。
中川(正)委員 時間が来ましたので、以上、終わります。
吉田委員長 中川正春君の質疑は終了いたしました。
 次に、土田龍司君。
土田委員 日韓投資協定についてお尋ねしますが、我が国はこの協定をもって十本目ということで、極めて少ない本数であるわけですが、投資協定について我が国は消極的な立場をとってきたというふうな感じが私はいたします。やはり日本の国益を考えますと、これからも積極的に投資協定を結んでいくべきだというふうに思うんですが、それについて、まず外務大臣の見解をお尋ねします。
    〔委員長退席、中川(正)委員長代理着席〕
植竹副大臣 投資協定は、これは投資家の保護のためにあるものでございまして、従来は、投資協定がなくても既に内国民待遇は日本の企業において認められてまいりました。しかし、投資協定を結ぶことによりましてこれを義務づけるということによりまして、非常にこれを安定した、そういうことになるという観点から投資協定が行われるわけでありまして、今後の日本の対韓投資環境の整備の観点から、今回の投資協定の締結というのは極めて大きな意義があるものと思っております。
土田委員 いや、そういった質問じゃないんです。ふやしていくべきだと私は考えているんですが、その方向ですかということです。
植竹副大臣 方向といたしましては、日本の姿勢としては、その方向で考えております。
土田委員 具体的にふやしていく場合にいろいろな困難があると思うんですが、条約を結ぶ上において、どういった難しさがあるのか、これが第一点。
 それから二つ目は、当面どういった国との投資協定を、水面下でといいましょうか、事務レベルといいましょうか、考えておられるのか。
 その二つについてお尋ねします。
林政府参考人 二点お尋ねがございました。
 我が国の投資協定につきましては、御指摘のとおり、これまで既に締結されておりますのは九本でございますけれども、その中におきまして、基本的な待遇といいますか、まさにその投資協定を結ぶことの意義を確保するために、基本的な規定というものが幾つかございます。
 その最たるものが、投資の許可段階におきます待遇、それから投資を許可した後におきます待遇でございまして、これにつきまして、従来我が国は、前者につきましては最恵国待遇、それから後者、許可後の投資の待遇につきましては内国民待遇及び最恵国待遇を確保するということを基本方針として臨んできておりました。
 そのために、これまで幾つかの国との交渉におきまして、先方がそれだけの待遇を与えることはできないというようなことを申しまして交渉がとんざしたといったケースというのがございました。ただ、相当の行政コスト、立法コストをかけてまさに投資家の投資環境整備を図るというからには、やはり最低限、我が国として確保すべきものは確保していきたいと思っておりますので、今後ともそういう方針でやっていきたいと思います。
 ただ、今回のシンガポールの自由貿易協定の中にございます投資の部分、それからこの日韓の投資協定につきましては、さらに投資の許可段階におきます内国民待遇まで確保しようとしておりまして、これは非常に投資の自由化という観点から望ましいと思っておりますので、今後はそういう方針で臨んでいきたいと思っております。
 こういう方針に基づきまして、二点目のお尋ねでございますけれども、どういう国とやっておるかということでございますが、現在ベトナムとの間でその投資協定の交渉を既に行っております。それから、シンガポールとベトナム以外のASEAN諸国でございますけれども、先般、小泉総理が日・ASEAN包括的経済連携構想というものを打ち出されたわけでございます。これを具体化していく中で、ASEAN諸国との間でも、これはシンガポールの場合も経済連携協定の中に投資部分を含んでおりますけれども、同様の考え方で、投資を含む幅広い分野での経済連携を強化していきたいというふうに考えております。(土田委員「ヨーロッパは」と呼ぶ)今のところ特に、ヨーロッパとの関係については交渉を行っているあるいは交渉を計画しているということはございません。今段階で申しますと、ベトナム、サウジアラビアと交渉し、インドネシアと予備協議を行っているというのが実態でございます。
土田委員 次に、犯罪人引き渡しの件ですが、政治犯の場合は引き渡しに応じる必要はないという規定でございますが、政治犯という定義、どこまで政治犯と見るか、これについて具体的にお答えください。
林政府参考人 御指摘のとおり、政治犯罪については、当然に引き渡さない事由に当たるわけでございますけれども、その認定と申しますのは、請求された国、被請求国が行うというのがその条約上の建前になっております。
 それでは、我が国がその被請求国になった場合どういうふうに判断するかというお尋ねと受けとめますけれども、政治犯罪と申しますのは、一般に、特定国の政治的秩序を侵害する犯罪ということでございますけれども、ただ、こういう行為類型、ああいう行為類型というものを一般的に政治犯罪だとするのは、なかなか包括的に定義を行う困難がございまして、具体的にどう認定するかということについては、個々のケースごとに、その犯罪の内容、目的、社会的影響などを総合的に勘案しながら決めていくということになるというのが基本的な姿勢でございます。
 ただ、従来、この引き渡し請求に関係します犯罪が政治犯罪かどうかということが争われました事案におきまして、高裁レベルの判決がございまして、そのときに、専ら政治的秩序を侵害する行為、例えば、反逆の意図であるとか革命やクーデターの陰謀、禁止された政治結社の結成など、構成要件がそれ自体政治的な意味を持っている、その行為自体が政治的な意味合いを持っているということのゆえに犯罪とされているというもの、これを純粋政治犯罪というふうに講学上区分けしておりまして、こういうものについては一般的に政治犯罪に当たるのであろう。
 他方、そういう政治的秩序の侵害に関連いたしまして、そういう政治思想に基づいた目的を持ってはいるわけですけれども、同時に社会的に非難されるべき普通犯罪、例えば殺傷行為とか爆発物を仕掛けるとかそういった行為、普通犯罪を伴ってそれが行われるという場合には、これは純粋に対しまして相対的政治犯罪というふうに講学上区別しております。
 前者と異なりまして、後者については、やはり個別の事案ごとに多角的に検討しまして、その行為がどの程度政治的性質を帯びているか、普通犯的性質をはるかにしのいでいる政治性があるのかどうかということを明らかにした上で、健全な常識に従って個別的に判断するほかない、そういうふうに判決、判示されているものもございますので、私どもとしても、これは一つの判断基準の参考になるのかなというふうに考えております。
土田委員 次に、KEDOの問題についてお尋ねをいたします。
 端的に聞くんですが、現在、軽水炉の進捗状況、どの辺までいっているんでしょうか。
田中政府参考人 お尋ねの軽水炉のプロジェクトでございますが、二〇〇〇年の二月に請負業者との間で主契約が発効したということでございまして、まだ基礎的な工事が行われている段階でございます。ですから、当初予定していたよりはかなりおくれているという状況であると考えます。
土田委員 かなりおくれているという答弁でございますが、二〇〇三年に完成する予定だったのが五年おくれぐらいじゃないかというふうな、これは外務省の発表でありますけれども、二〇〇八年に、完成予定が五年ぐらいおくれていると。それに対して北朝鮮が、軽水炉の建設のおくれによる電力の損失、これについては補償を求めてきているわけです。アメリカはもちろん応じる気持ちはないというようなことを言っておりますけれども、この工事のおくれ自体が、やはり原因は北朝鮮にあるというふうに私は思います。私は思うんですが、北朝鮮は補償しろと言っているわけですので、具体的な、この五年のおくれが何が原因なのか、それから北朝鮮が補償を求めてきた場合にどう対応するつもりなのか、お尋ねします。
田中政府参考人 おくれの原因でございますが、例えば、この期間に北朝鮮と韓国との間での潜水艦の侵入事件であるとか、あるいは御案内の弾道ミサイルの発射実験、これは九八年の八月でございますけれども、こういう要因による、むしろ北朝鮮側の要因であるというふうに私どもも考えております。
 一方におきまして、遅延が起きたときの補償云々ということでございますけれども、実は、二〇〇三年をもともと完成予定としていたのは、米朝の枠組み合意の中でそうなっていたわけでございまして、基本的には米朝間の問題。したがって、昨年でございましたか一昨年、米朝間の話し合いのときに、委員が御指摘になりましたように、この工事のおくれについての電力の補償を求めるということを北朝鮮側が米国に対して言ってきた。これに対して米国は、そのような根拠はないんだという答え方をしているということでございます。
 したがって、私ども、今断定的に申し上げることは難しいことでございますけれども、一義的には米朝の話し合いというものが優先されるべきではないかというふうに考えております。
土田委員 まあ二〇〇八年でもいいんですが、完成をするのに査察との問題がどうしても絡んでくるわけですね、査察を受け入れないわけですから。そうなりますと、五年おくれですから、二〇〇八年に完成させるためには査察を始めなきゃならない。この時間的な問題を言っているんですが、遅くともいつごろまでには始めて、どのくらいかかるんでしょうか。
田中政府参考人 北朝鮮も通常の査察というのは現在も応じているわけでございますが、委員お尋ねの点は、まさに核開発の疑惑で凍結した施設等に対して査察をしなければいけないという問題でございまして、これは米朝の合意の中で、米朝の枠組みの合意でございますが、この中で、軽水炉の主要な部分、これが北朝鮮側に渡されるときまでには、IAEAのフルスコープと申しますか、完全な保障協定が充足されていなければいけないということになっております。
 IAEAの査察というのは、これは絶対的に何年かかるんだということはございませんけれども、これまでの例からすれば多分二年ぐらいの期間はかかるのではないかということでございますので、多分査察というものの開始時期は、ことしじゅうぐらいにその開始をされているということが必要なことではないかというふうに私たちは考えております。
土田委員 この主要部分を入れる前に査察ということでございますが、なぜ北朝鮮はそんなにかたくなに査察を拒んでいるんでしょうか。
田中政府参考人 これは米朝の枠組み合意というものが基礎になっているわけでございますけれども、米朝合意上も、まさにそういう一定の約束事の中で査察を受け入れていくということになっている。
 ですから、私は推測しますに、今の工事のおくれというものは一つの原因ではないかというふうに思いますけれども、いずれにしても、そういう、北朝鮮がフルスコープ、核疑惑があって凍結された施設に対する査察をやっていかない限り、このKEDOの完成ということは考えられないわけでございますから、まさにその点は、現在の日米韓のTCOGという枠組みがございますが、その中でもこれから慎重かつ緊密に協議をしていかなければいけない、こういうふうに考えております。
土田委員 この工事のおくれによって、建設費がさらにふえてくるんじゃないか、あるいは利子がふえてくるんじゃないか。すると、当然また日本にも追加支援の話が来るかと思うんですが、その場合はどういう対応をされますか。
田中政府参考人 今の段階で確定的なお答えを申し上げることには無理があると思いますけれども、これは私どもとして、北朝鮮の核開発ということはどうしてもとめなければいけないし、核疑惑は解明されなければいけないという意思を有しております。一方において、日米韓の三カ国の話し合いの中で、このKEDOの枠組み、米朝合意に基づくKEDOの枠組みというのが、そういう核の疑惑を解明するのに最も効果的な枠組みであるということで、三カ国で進めてきているということもあります。
 ですから、具体的に、北朝鮮側の態度、それから工事費がどれだけコストがふえていくのか、そういうようなことも十分科学的に検証した上で考えていくということになろうかと思います。
土田委員 次に、拉致問題についてなんですが、二十九、三十と日朝の赤十字による会談が行われる。大変喜ばしいことだと思いますし、一年半も再開をされなかった。この委員会でも何回も、日朝交渉の再開はいつなんだ、どういう条件が必要なんだという議論がたくさんございました。多分、直接的な日朝交渉ができなかった裏にも、例えば国連であったり、あるいは中国であったり、いろいろな場面で北朝鮮の幹部との非公式の交流といいますか、接点といいましょうか、そういうのがあったんじゃないかと思うんですね。そういったことも具体的には実らずに、南北間の話し合いをきっかけとして日朝の赤十字会談が始まった。特に、日本においても、具体的な拉致疑惑に対して国民の世論は、沸騰しているとは言いませんけれども、非常に大きな関心を呼んで、大問題となっているわけです。
 そこで、この日朝の赤十字会談に寄せる期待というのは非常に大きいわけでございますが、この会談で、今後とも行方不明者として捜査をお願いするのか、あるいは人道問題だ、拉致事件なんだという捜査として調査をお願いするのか、どういった態度で臨もうと思っていらっしゃるのでしょうか。どなたでも結構なんですが。
田中政府参考人 まさに拉致疑惑の問題の解明ということは、委員、あるいは国会の決議も含めまして、私どもも全く同じ認識を持っている、できるだけ早く解決をしたいし、しなければいけないということであると思います。ただ、私どもの場合は、北朝鮮という国を相手にしてこの解明をするということは決してたやすいことではない、過去もそうであったということは事実だと思います。
 それで、お尋ねの日朝赤十字会談においてどういう形で調査を求めるのかということでございますが、実は、日本赤十字は、その業務として、行方不明者の安否調査ということは通常の業務の一環でございますので、赤十字会談の場においては、日本赤十字はまさにそういう行方不明になっている人についての安否、その調査をしてくれということで臨むことになるというふうに思います。
 ただ、私ども政府の立場としては、まさに拉致の疑惑があるという事案として今後とも扱っていきたいというふうに考えています。
土田委員 平成十一年十二月の第一回の日朝赤十字会談で、戦前に我が国で行方不明になった朝鮮人について、被害者と位置づけて解決に努力するということで合意がされました。さらに、平成十二年三月の第二回会談では、北朝鮮側の被害者として百八名の名簿を日本側に渡した。日赤と厚生労働省が調査を始め、同年七月の事務折衝で、北朝鮮は新たに百五十一名の被害者名簿を出してきたということですね。
 ここで言う被害者とは、どういう意味なのか、いかなる定義で被害者と位置づけているんでしょうか。
田中政府参考人 私どもの方から日朝の赤十字間で作成された文書について有権的な解釈を申し上げるということはできませんけれども、基本的な考え方として、日本赤十字も、一九四五年以前に行方不明になった朝鮮人の安否調査について、人道的な観点から調査をするということであろうと思います。
 なぜ被害者というような記述があるのかということでございますが、少なくとも、私ども政府といたしましては、一九四五年以前に行方不明になった朝鮮半島の人々が、果たして、どういう経緯でどういう行方不明の仕方をしたのかということの詳細は明らかではないので、これをどういうふうに位置づけるのかということについては、今の段階で私どもがコメントをするべきことではないのではないかというふうに考える次第であります。
土田委員 今、局長おっしゃったように、北朝鮮の被害者の問題というのはこれはもう戦前の話であって、今回、日本人の拉致事件についてはこれはもう人権侵害の問題であって、全く、同列に扱う話ではない。まして、日朝の赤十字会談で出るような話ではなくて、本会談といいますか、日朝交渉の場で扱うのが当然なことだと私も思っております。
 この二十九、三十に予定されている会談でも、合計二百五十九人の被害者の調査をまた言ってくるんじゃないかというふうに私は想像するわけでございますけれども、今後の交渉の中で拉致問題とこの戦前の被害者とを同列に扱われて、いわゆる外交カードとして使われてくるというような心配を私はするわけですけれども、これについてはどういった対応をとろうと思っておられますか。
田中政府参考人 委員が御指摘になりましたとおり、一九四五年以前の朝鮮半島の人々の行方不明者の問題というのは、どういう経緯でどうなったかということは別にしまして、現在は、日本は全く自由な国でございます。ですから、そういう意味の現在の人道問題ということではないと思います。
 他方、この拉致疑惑の問題は、私どもとして、まず最優先でやらなければいけないのは、そういう人々の安否、まさに今ある人道問題でございますから、一刻も早くそういう人々の安否というものを確認して、日本に帰っていただくということについて最優先で取り組まなければいけないというふうに考えております。
 ですから、そういう意味で、この二つの問題をリンクして扱っていくというつもりは少なくとも日本政府に関する限りございません。
土田委員 この赤十字会談で、今後の日朝交渉、いわゆる本会談と言ってもいいんでしょうか、その日程まで決まってくるんでしょうか。
田中政府参考人 赤十字会談で日朝の正常化交渉の日程が決まるということはございません。赤十字会談はあくまで赤十字会談として今回やっていただいて、今回、結論がすぐ出るということでは必ずしもないかもしれない、残念ながら。ですから、赤十字でやっていただくこと、すなわち、人道問題についてのきちんとした解決をする。
 この拉致容疑の問題、拉致疑惑の問題というのは一番大きな問題であることは間違いありませんが、それ以外にも、今北朝鮮にいる日本人妻の里帰りの問題であるとか、場合によっては、将来は在朝被爆者の問題、こういう人道問題も処理をしていっていただきたいというふうに考えているわけで、私どもとしては、赤十字会談は赤十字会談として、今後の日程まで決められるかどうかは別ですけれども、将来引き続きやっていくというような形で終わることを期待しているわけであります。
土田委員 というと、赤十字会談の次回の日程を決めるまでいければいいなということで、日朝間の大使級の話が始まるということは全く今のところは期待できないということですか。そういうことでしょうか。
田中政府参考人 私どもとしては、政府間の交渉、正常化交渉その他については、あくまで政府間でその日程を決めていく問題であるというふうに思っていますし、一年半前に日朝正常化交渉が終わったとき、双方準備ができた段階でやりましょうということでございました。
 私どもとしては、やはりきちんとステップを踏んで、会合のための会合ということをやるつもりもない、できるだけ問題解決につながるような形で、いろいろなことをステップを踏んでやっていきたいというふうに考えている次第でございます。
土田委員 あと一分あるのですが、もう予鈴が鳴っておりますので、これで終わります。ありがとうございました。
中川(正)委員長代理 この際、休憩いたします。
    午後零時五十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時五十三分開議
吉田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。松本善明君。
松本(善)委員 まず、案件ですが、犯罪人引き渡し条約の方は特に問題もないし、時間の関係もあって、日韓投資協定について伺います。
 韓国への日本企業の進出で問題になってきたのが、労働者の権利侵害の問題であります。よく知られておりますが、日本企業が投資をした日系企業の韓国スミダが、本社の方針で一方的な工場閉鎖、全員解雇が行われましたが、労働者の抗議で解雇撤回、和解したという問題があります。
 日韓投資協定締結が、こうした日本企業の態度に見られるような韓国労働者の一方的な人員削減や首切り、あるいは劣悪な労働条件の押しつけを助長するものであれば、日韓の友好関係に水を差すことになると思います。この協定はそういうものでないとはっきり言えるかどうか。これは大臣でも局長でもいいです。
田中政府参考人 日韓投資協定の中に、前文で、投資環境において協調的な労使関係が重要であるという一般的な認識が盛り込まれています。これはまさに労働者及び使用者に中立的な形で盛り込んであることでございまして、前文ですから、具体的な権利義務関係を設定するような効果を有するものではございません。なおかつ、協調的な労使関係が大事だという一般的な認識を述べたものにすぎませんし、こういう規定をもって労働者の権利を害するというようなことはありません。政府としても、そういう韓国における労使紛争に介入する意図は全くありません。
 こういうような政府の立場については、連合であるとかNGOの関係者、韓国の労組の関係者に対して、外務省から累次説明を行っているところでございます。
松本(善)委員 韓国の労働組合の中での反対がありますので聞いておくわけですが、この前文は、今の説明であれば、韓国に進出する日本企業が労働争議の起こるような原因をつくらないということを意味しているのかどうか。あるいは逆に、労働争議を起こさせないように韓国政府に求めるものなのか。それによって全然内容が違ってくると思いますが、今の御説明では、日本の側でそのような労働争議が起こらないようにするということではないかと思いますが、どうでしょうか。
林政府参考人 ただいまもアジア大洋州局長の方から申し上げましたとおり、基本的には、労働関連の規定といいますか言及というのは前文に置かれておるわけでございまして、このこと自体によって新しく権利義務関係というものが発生するというようなたぐいのものではございません。あくまで、協定を結ぶに当たっての基本認識であるとかその精神であるとか、そういったものを規定するのが前文でございますので、そういったところの中に言及されているものであるということが、まず一つございます。
 それから、その趣旨といたしましては、基本的には労使の自治というものを前提にした上で、この投資環境において協調的な労使関係が重要であることを日韓両政府が認識しておるということを言っているわけでございまして、そのあり方をどうするとか、両政府がそれに対して介入するとかしないとか、そういったたぐいのことをうたっているという話では全くございません。
松本(善)委員 大臣に伺いますが、この前文を労働者の争議を抑えるように使ったらば、これは全く逆になると思うのです。それで、韓国に進出する企業に対して、労働者が労働争議に訴えなければならないようなことにならないように、経済産業省などと韓国における企業活動のあり方について協議をして、使用者側が争議の原因をつくらないようにすることが私は大事だと思いますが、外務大臣に、経済産業省とこれらの措置について協議をする考えがありますか。
川口国務大臣 投資環境がいいということは、私は、企業がその国に対して進出をしていく上で重要であると思います。また、進出した企業がその地、その国での労働者の方々と円滑な関係を持てるということは、その企業がその地域で地域の一員として経済活動を行い、発展をしていくという上で重要なことであると思います。
 そういったことは、その企業が企業としての判断に基づいて、その国の法制の範囲内で行うべきものでありまして、既に、私が承知をしているところでは、これは韓国に限りませんけれども、在外の企業にとってどういった活動の姿が望ましいかといったことは、例えば経団連でも憲章という形で出ているわけでございますので、企業としては、まさに自主的にそういったことに従って行動するという性格のものであると私は思っております。
松本(善)委員 政府としても、やはり企業に対する指導をする必要があろうかと思いますが、日本の企業の投資が大きくなりますと、韓国産業への影響は避けられないと思います。この協定では、韓国産業に過度の負担を与えないような措置というものがあるかどうか、伺いたいと思います。
林政府参考人 おっしゃっている御趣旨に一〇〇%お答えするものかどうかあれなのでございますけれども、この投資協定で中核的な規定といたしまして、許可段階あるいは許可後におきます事業活動についての内国民待遇等が定められておるということでございます。あるいは、それ以外にも、いわゆる投資阻害効果を有する特定の措置の要求を禁止するといった規定がございます。
 ただ、こうしたものにつきましては、日韓で種々交渉をいたしまして、現在の状況というものを前提にいたしまして、難しい分野につきましては例外措置を設けるという形で規定しておりますので、過度に負担が強いられるといったことには、お互い、日韓ともならないのではないかというふうに思っております。
松本(善)委員 第九条に規定をされているいわゆるパフォーマンス要求禁止規定、これを盛り込む協定は、今国会で審議をしましたシンガポールの経済連携協定に続いて二本目となるのではないかと思います。
 パフォーマンス要求禁止規定を盛り込んだ協定は今日どのくらい存在するでしょうか。経済力の大きな国と発展途上国の間での締結状況等はどういうふうになっているでしょうか。
林政府参考人 済みません、ちょっと今手元に具体的な数字としてはございませんが、我が国につきましては、シンガポール、御指摘でございますけれども、確かロシアとモンゴルについても、これは限定的なものでございますけれども、主としてWTOの範囲内でございましたけれども、パフォーマンス要求の禁止というものを規定したことがございます。
 それから、諸外国の例におきましては、アメリカが結んでおります投資協定にはこうした規定が多く入っているのではないかというふうに記憶しておりますが、ちょっと具体的な数字は今手元にございませんので、御了承ください。
松本(善)委員 パフォーマンス要求禁止規定は多数国間協定に盛り込まれてきたけれども、この協定は既に、発展途上国だとかフランスなどの反発もあって、つぶれたと思います。パフォーマンス要求禁止規定に発展途上国はどういうふうな態度をとっているか、答えてもらいたい。
林政府参考人 今御指摘ありましたMAIにつきましては、そもそも、まさにフランスが抜けたというようなことによりましてとんざしておりますので、ちょっと、今実態的にその交渉がどうのこうのと言ってもあれかと思います。
 ただ、従来パフォーマンス要求というものがその論点となりましたのは、WTOの交渉の途次でございましたけれども、そういうところにおきましては、余り広範なパフォーマンス要求の禁止ということについては、途上国側において消極的な姿勢をとるものがあったというふうに承知しております。
松本(善)委員 外国投資を自国の産業発展に役立たせようと考えているのに、自国の労働者の雇用や自国産品などを調達させることを禁止されるということになるので、これは反発が起こるのはやむを得ないと思います。この問題は、経済力の高い国が発展途上国の経済主権の確立に貢献するという角度から考えて重要であり、今後議論をしていくべきことだと思います。
 この日韓投資協定にもパフォーマンス要求禁止規定が盛り込まれておりますが、この第九条の二項には、韓国にとって重要な問題である、投資家が持つ技術を初めとした財産的知識を韓国の法人に移転させること、これは(f)号、あるいは一定水準の自国民の雇用、(i)号などについては特別な扱いをしていますが、こういう分野は投資企業に対して事実上要求が可能ということになるのでしょうか。
林政府参考人 御指摘は恐らく、いわゆる利益つきの履行要求を行うことが認められるかどうかということだろうと思います。
 九条一項で一連のパフォーマンス要求の禁止というものがうたわれておるわけでございますけれども、今御指摘ございましたように、九条一項の(f)の技術移転要求から特定地域への物品等の供給要求、(j)までにつきましては、いわゆる利益つきの履行要求を行うことがこの九条二項によって許容されているということでございます。
 これは、例えば韓国政府が日本のメーカーの現地法人の設立に際しまして、一定の期間内にある製造のノウハウを地元の企業に移転する場合には、その会社に対して法人税を減免するといった利益を与えるというような措置をとるということは、ここに列挙されております特定措置にかかわる場合には許容されているということでございます。
松本(善)委員 外務大臣にまとめて伺いますが、やはり今韓国との外交というのは、靖国問題とかあるいは有事立法の問題、なかなか難しい問題があるだけに、この投資協定の実施についても、今申しましたような、韓国の労働者との間の問題、韓国の企業との間の問題、やはり深く配慮をして摩擦が起こらないように日本の企業も気をつけるべきではないかというふうに思います。
 そういうような方向で、いろいろ政府としてやるべきことの限界もあるかもしれませんが、そういうことに配慮した外交をやっていくかどうか、その点についての外務大臣の見解を伺っておきたいと思います。
川口国務大臣 韓国との間では、ことしは日韓国民交流年でもございまして、幅広い、底の深い交流がこれから始まって、さらに深まっていくというふうに私は思っております。
 その中で、投資の役割ですけれども、これは言ってみますと、日本から韓国への投資もこれによって活発化するでしょうし、韓国から日本への投資も活発化するであろうということで、相互に自由な投資の交流による、またそれから付随して起こる技術の移転ですとか、それから雇用の増大ですとか、財政収入の増大ですとか、そういったメリットがたくさんある。さらなる経済交流が深まるための、一つのインフラと申し上げてもいいと思います。
 そういった中で、企業としては相互に、韓国の企業も日本の企業も相手の地で、その地域の、その国のいい市民として活動を行うということが重要ですので、当然にそういった発想を持ってやるということが望ましいと思いますし、またそういう発想を持って企業は投資行動、事業活動をしていると私は考えております。
松本(善)委員 日韓関係の両条約を早く審議に入って成立させようということも、日韓の外交関係が発展をするということを外務委員会の各位も全部お考えになってこういうことになってきたんだと思うのですが、そのときに、やはりとげのように刺さっている、日本について言えば、ロシアとの関係の北方領土、千島というような問題ですが、両国の友好関係にとげを刺しているというのが、やはり総理の靖国神社参拝とか有事立法の提出、そういうことだと思います。詳しくは申しませんけれども、韓国の各新聞の論調、それから政府、国会の与野党、すべて厳しい批判です。それを歓迎するような論調は全くありません。
 それで、日韓外交について伺いたいのでありますが、例えば、一昨日も質問しましたが、有事立法の提出については韓国各紙の批判が厳しいですが、一例として朝鮮日報を挙げますと、日本が戦争放棄の束縛から抜け出す、日本が戦争をできる普通の国家への一歩をまた踏み出したと。
 やはり、きょうも本会議の答弁でありましたけれども、憲法九条、これは国連憲章と同じ精神で、二度の世界大戦で人類が耐えがたいような苦しみを味わったところから戦争のない社会をつくろうということでできたものであり、日本国憲法もそういう性質のものであります。世界の平和運動のいわばシンボル的な存在。日本はこれを、私どもはこれを本当に守り抜いて、世界の平和を確立することが最大の安全保障だと考えておりますけれども、今の態度は、普通の国、いわゆる戦争ができる国になろうとしている。
 これは、韓国でも他のアジアの諸国でも非常な危惧を感ずるのではないか。韓国の外交通商省の声明は、日本軍国主義の象徴である靖国神社参拝、こういうふうに言っていますし、それから最大野党のハンナラ党は、北東アジアの平和を傷つける挑発行為と。
 こういうことに対して、どういうことを日本政府は韓国側に説明し、そして、韓国側は日本政府の説明を恐らく納得しないでいると私は思いますが、韓国側が納得しているかどうか、その辺の事情を外務大臣から伺いたいと思います。
川口国務大臣 まず、我が国が外交努力をもって極東あるいはアジア太平洋地域に平和と安定がもたらされる、あるいは平和と安定が壊されない、そういった努力をし、そういう状態を維持していくということは、当然の前提であると思っています。
 その上で、この武力攻撃事態法制の整備でございますけれども、先般、中谷防衛庁長官が訪韓をなさった折に、長官から韓国の国防部の長官に御説明をしたわけでございまして、理解を深めていただいたと承知をいたしております。
 この法制を含みます我が国の安全保障につきまして、これは引き続き近隣の諸国にずっと説明をし、透明性を確保していくということが大事だと考えております。
松本(善)委員 どういうふうに韓国が理解をしたと言うんですか。外務大臣がそういうふうな趣旨のことを言われましたので、どういうふうに理解をしていると外務大臣は考えていますか。
川口国務大臣 中谷長官から具体的なやりとりについて伺ったわけではございませんけれども、理解を深めていただいた、そういうふうに承知をいたしております。
松本(善)委員 大使が抗議に来るというのはやはり大変なことでありますし、私は、やはり日本の外交を預かる外務大臣としては、今韓国側がどう考えているかということをはっきりつかむ必要がある。今、両方の、サッカーのワールドカップがありますから、それはそれとして進めよう、これは当然だし、私どももそう思いますけれども、しかし、その背景に、じゃ、全部、靖国神社の問題、有事立法の問題をわかりましたというわけにはいかないんだと思うんです。
 それで、中谷さんから聞いたことをそのまま言われるというんでは、私は外務大臣としてはいかがなものかと思いますが、この問題について本会議でも小泉首相は、要するに、いわゆる備えあれば憂いなしということ以外には実質上の答弁はありません。
 それで、私、具体的にお聞きしたいのですが、アメリカのブッシュ大統領は、一般教書演説でテロ戦争の戦線拡大について触れている。イラン、イラク、北朝鮮は悪の枢軸というふうに規定をして、戦線拡大をも辞さないという考えを示されました。これは、イラクについては、一昨日もお話をいたしましたが、各国みんな反対であります、ヨーロッパの諸国ですね。
 それで、悪の枢軸の一つとして挙げられた北朝鮮、アメリカ側がこうした考えで東アジアに今戦線を拡大するということがあれば、周辺事態法も発動し、武力攻撃事態法も発動するということになるのではありませんか。外務大臣はどのように考えていらっしゃいますか。
川口国務大臣 ブッシュ政権は北朝鮮に対して、全く前提なくいつでも話をする用意があるということを言っているわけでございます。そして、米朝会談が始まる動き等ございまして、現実にもその方向に向かっていると私は理解をいたしております。
松本(善)委員 私もそのことは理解をしていますけれども、今この国会でいわゆる武力攻撃事態法が議論をされているという状況なので伺っているわけです。
 今アメリカは、言うまでもありませんが、テロに対する戦争中だと言っている。その戦線の拡大がイラクとかその他に問題になっているわけです。それが、いろいろな情勢の変化によってアメリカがどこへ戦線を拡大するかというのがわからない状態でしょう。だから私は、北朝鮮ということを言いながらも、東アジアで軍事行動をとった場合に、周辺事態の発動だとか武力攻撃事態法の発動だとか、そういう問題が起こってきませんか、こう言っているんですよ。
川口国務大臣 現在、アジア、北朝鮮をめぐる情勢については、先日、新しい局面に入りつつあるという認識を申し上げましたけれども、そういったさまざまな動きがございまして、先ほど申しましたように、アメリカとの間でも話し合いが始まりつつあるという動きがございますので、委員が御懸念なさっているような状況には現在ないと思っております。
松本(善)委員 私も、もちろんそう思っています。そうであればあるほど、この武力攻撃事態法なんというものは、今の情勢からすれば、何もわざわざ外国が危惧するようなことをやる必要はないんじゃないか。
 きょう総理大臣が答弁されたことは、もともとあった方がよかったんだと。これは大変な、今まで憲法の九条を中心とする平和条項を守ってきた日本の国民に対してどう言うんだろうか。今まではいわゆる戦争に備えがなかったんだ、武力攻撃に対する備えがなかったから今までは主権や独立がなかったんだ、戦争をする国になって初めてそれができるんだ、こういうふうにとられることになります。
 北朝鮮も東アジアでも、日本の周辺ではそういう危惧というものは全くない。にもかかわらず、アメリカが行動し、そして、それにつながって周辺事態の発動や武力攻撃事態の国民動員というような問題が起こってくるということが、非常に多くの文化人や各界の人たちの反対運動が急速に盛り上がりつつある原因ではないか。何も、東アジアでそういう心配がないならば、こういう刺激的なことをする必要は全くないと思いますが、その辺は、外務大臣、どう考えていますか。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、まず、我が国が外交努力によってこの地域の平和と安全、我が国の安全が確保されるように努力をするというのは、当然ずっとやってきていることでございますし、前提でございます。
 この武力攻撃事態対処法等でございますけれども、これはまさに、総理が備えあれば憂いなしとおっしゃっていらっしゃいますが、外部の武力攻撃に備えまして、我が国の独立と主権、国民の安全を確保するために整えるものでございまして、主権国家としては当然のことであると私は考えております。したがいまして、周辺諸国に無用な摩擦を起こしたりする性格のものでは全くないと思っております。
松本(善)委員 別の問題を聞きますが、昨日は、メディア規制二法の問題が議論になりました。マスコミは全部反対です。このことについて、武力攻撃事態法の六条の指定公共機関についての質問もありました。これは、法律の中にもありますが、NHKなどが入る。そうすると、やはりメディア規制二法以上に言論の規制につながるんじゃないか、あるいは携帯電話などにも影響が出るんじゃないか、こういうような心配もあります。
 この点、その指定公共機関にテレビ各局が入るのかどうか、あるいは新聞社などが入るのかどうか、あわせて、言論の自由に対する危惧はどう考えているか、伺いたいと思います。
川口国務大臣 武力攻撃事態が生じた場合、そういった場合の対処について、これは日本国の憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されるということは当然のことでございまして、これに制限が加えられる場合であったとしても、その制限は必要最小限なものである、かつ、公正かつ適正な手続のもとで行われなければならないということになっております。
 ということで、必要最小限、手続も公正ということで、御懸念はここで確保されていると思います。
松本(善)委員 こういう戦争事態といいますのは、これは、必要最小限といっても、必要性がうんと高まれば、その最小限がどんどん拡大していくんですよ。
 申し上げるまでもありませんが、戦前の市民の権利の保障は法律の範囲内ということで決められていたために、法律をつくって、治安維持法などが猛威を振るったわけです。
 我が国の今の憲法は、基本的人権は永久に侵すことのできない権利として保障をされています。私は、今度の武力攻撃事態法は、そういう意味では、憲法の平和条項も基本的人権も根底から覆すものだ、ここは絶対憲法を守る点では譲れないものだということを申し上げて、質問を終わります。
吉田委員長 松本善明君の質疑は終了いたしました。
 次に、東門美津子君。
東門委員 まず、日韓投資協定について質問いたします。
 韓国との経済関係強化のためには、経済分野だけではなくて、スポーツ、文化等さまざまな面での人的交流が欠かせないと思います。日韓両国は、本年三月に行われました首脳会談において、サッカーワールドカップ開催期間に合わせて、韓国人が来日する際の査証免除で合意をしております。
 恒久的な免除については継続して協議するということになっていますが、我が国において韓国人等の不法滞在者が多いことから、これには政府内に何か否定的な意見もあると伝えられておりますが、韓国側は、日本人観光者に対して三十日以内の査証免除を実施しているという事情もあります。やはり人的交流を通じた両国関係のより一層の発展という観点から、我が国も積極的に査証免除を導入すべきであると考えます。
 それで、二点お伺いしますが、政府は、ワールドカップ後の韓国人への査証免除について現在どのような方針を持っているのか、まず確認をしたいということが一点。もう一点目は、査証が免除されると、これによって観光客がふえ、我が国への経済波及効果も小さくないと思われますが、この点について政府はどのように評価しておられるのか、お聞きしたいと思います。
田中政府参考人 お尋ねの韓国に対する査証免除の件でございますけれども、実は本年の一月から、韓国の人々の日本への査証というのを大幅に緩和いたしました。五年間有効で、マルチのビザということにいたしました。ワールドカップの期間中におきましては、試行的に査証免除をしようということで、現在その準備に取りかかっているところでございます。
 ワールドカップ以降も恒久的な査証免除に至るか否かというのは、まさに委員御指摘の韓国の不法滞在者の問題もございますし、このワールドカップの期間中のビザ免除というものの状況も見守りながら検討していく、こういうのが今の政府の基本的な立場でございます。
 それから、日韓の間で、まさにこれは毎日一万人の人の往復があるわけでございます。委員が御指摘されるとおり、交流がどんどんふえていけば、それなりの経済効果というのも当然見込まれるということでございますし、基本的には、そういう効果のことも考えますと好ましいものであるというふうに考えている次第でございます。
東門委員 この日韓投資協定においては、協定本文にではありませんが、前文において、「両国間の投資を促進する上で労働者と使用者との間の協調的な関係が有する重要性を認識し、」と規定されています。当然ながら、この協定は両国の投資家による活動を規定したものであって、労働者と使用者との関係を規定したものではないわけですね。ですから、投資が行われる際には、投資家は、当然のことながら現地の慣習あるいは理念を尊重して行動していくものと思われます。
 ですから、この協定において、これら労働者と使用者との関係に特に触れることにどのような意義があるのか、それを伺いたいと思います。
林政府参考人 ただいま御指摘ございましたとおり、これは協定の前文に規定されておるわけでございまして、このこと自体が具体的な権利義務関係を規定する、設定するというものではございませんで、基本的には両国の認識あるいは精神みたいなものを表現しているということでございます。
 その際に、その考え方といたしましては、やはりここで申しておりますのは、具体的な企業のいわゆる行動様式とかいうことではなくて、むしろ労使の自治を前提とした上で、投資環境において協調的な労使関係を保つということが重要だ、そういう日韓両政府の一般的な認識を、労働者側に立ってとか使用者側に立ってとかいうことではなくて、中立的な形で前文に盛り込んだ、こういう協調的な労使関係が両国の投資促進のために重要だという点で意見が一致しているということを対外的に宣明するというところに意義があるということではないかと思います。
東門委員 わかりました。
 次に、日韓の犯罪人引き渡し条約についてですが、米国との犯罪人引き渡し条約と今回の日韓犯罪人引き渡し条約とを比べますと、日米条約で規定されている簡易引き渡し手続の規定が韓国との引き渡し条約には含まれておりませんよね。
 簡易引き渡し手続は、逃亡犯罪人がみずからの引き渡しについて、権限ある当局に対し、必要とされる国内法上の手続を放棄できるとするもので、これによって不必要に長く拘禁されることがなくなることから、犯罪人の人権にも配慮した内容となっています。
 日米条約にあった簡易引き渡し手続が韓国との条約で規定されなかったというのは、なぜでしょうか。その辺をお聞かせください。
林政府参考人 御指摘のとおり、日米条約の十条では、今のお話の簡易手続というものが定められておりますけれども、今回の条約には確かにそれはございません。
 ただ、この簡易引き渡し手続というものが日米条約で定められましたのは、主として、米側におきましてそういう簡易手続というものがございまして、米側の要望によって、米側においてそういう手続が利用できるようにということで導入したということでございまして、この規定は、日米条約では「被請求国の法令の許す範囲内において、」ということになっております。
 我が国の関係法令と申しますと犯罪人引渡法でございますけれども、ここではいわゆる簡易手続というのは想定しておらないわけでございまして、そういう意味におきまして、実は、日米条約の簡易引き渡し手続というのは我が国につきましては必ずしも働いておらない、法令に従って手続をとるときは、きちっとした書類をそろえる等の手続が必要だということになっております。
 今回、日韓間におきましては、日本側がそういうことで簡易手続をとるための国内法令がない、それと同様に、韓国側においてもそういう対応する手続がございませんでしたので、ここは簡易引き渡し手続というものを、いわば空振りになってしまう規定を置く必要はないんではないかということで置かなかったということでございます。
東門委員 私、実はきょうは、協定ともう一つ、朝鮮半島における核問題だけにしようかと思っておりましたが、やはり一問どうしても別の質問をさせていただきます。通告は沖縄の基地問題ということでしておりましたけれども、本当に怒りで涙が出そうな思いを今しております。
 実は、こういうのがさっき入ってきました。今月に入って四回目です。私、毎回この委員会で質問をしております。なぜこのように米軍による事故があるのか、本当に理解ができません。相次いでいます。
 四月八日には、嘉手納基地の上空でF15戦闘機から訓練用の照明弾が落下するという事故がありました。十七日には、米軍普天間基地で燃料補助タンクが落下。そして二十四日、まだこの委員会ではその件は質問しておりませんでしたけれども、嘉手納基地所属のF15戦闘機が、訓練中の洋上ではありますが、風防ガラスを落下させているということでございます。
 きょう新たに入ってきたのが、これは昨日二十五日なんですが、嘉手納で米軍機が離陸直後に燃料漏れで緊急着陸したというニュースが入ってきました。それは、住宅地の上空でも燃料漏れは目撃されていると。安保の丘というのが嘉手納の基地のところにありまして、そこには観光客の皆さん、あるいはベースをウオッチングする人たちも来るんですが、そこで目撃をした人たちの証言によって初めてわかったことですが、燃料漏れが目撃されており、「地元自治体や県議会では、相次ぐ米軍機の事故に「原因究明まで飛行停止が必要」との声が強くなっている。」という報道がございます。
 その油漏れ、いわゆる燃料漏れなんですが、これは専門家の意見によりますと、「燃料が上空で機体から漏れ出したことについては、「燃料が低空でまとまって放出された場合、引火しやすい状況が生まれていた可能性がある。」と、危険性を指摘した。」という報道でございます。
 幸いにして人身に及ぶ事故にはならなかったんですが、ただ、余りにも多過ぎる。こういう航空機からそういうのが落下してくる、これは今月に入って四回目ということですね。ただ民間地でなくてよかった、被害者がなくてよかったで済まされる問題ではないと思います。本当に、ちょっと間違えば大惨事になりかねない、そういう重要な問題であるということですね。そして、そのたびに地元の自治体の町や県が抗議と原因究明、再発防止を申し入れているわけですが、事故は、一向にやみませんどころか、ふえております。それをどのように理解しておられるのかということ、本当に私は答えていただきたいと思います。
 まず第一にお聞きしたいのは、抗議と再発防止を申し入れて、それが真剣に考慮されているという真摯な態度が米軍には見えないと思いますが、この問題について外務省はどのような対応を行っているのか、お聞かせいただきたいと思います。今回のこの燃料漏れだけじゃなくて、これまでの一連の事故についてどのような対応を行っているのか、お聞かせいただきたいと思います。
川口国務大臣 この件について政府参考人がおりませんので、私からお話をさせていただきたいと思います。
 確かに、委員がおっしゃられますように、二十四日、二十五日と二日続いているということでございまして、二十五日の件は、内容については委員がおっしゃったような状況でございます。着陸後、滑走路に漏れた約七十ガロン、これは約二百六十五リットルだそうですが、その燃料が緊急事態対応チームによって除去をされたということを聞いておりまして、現在のところ原因については究明、調査中ということだそうです。
 外務省として何をしたかということですけれども、磯俣沖縄事務所副所長からクラックマン在沖縄米艦隊活動司令部司令官に対して、これも今委員がおっしゃったことですけれども、民間住宅地域の上空でも漏れ出ていたと聞いていて、このようなことが発生したことは非常に遺憾である、原因の徹底的な調査を行うこと、また適切な措置を講じてほしい、そしてこのようなことが再び起こることがないようにしてほしいという旨を申し入れました。
 これに対しまして司令官から、今回の件が住民の方に大きな不安や懸念を与えたということは十分に理解をしていて、このようなことが発生したのは遺憾である、原因について徹底した調査を行うよう指示した、また、今回の事態について海軍としても高い問題意識を持って対応している、再発防止についてできるだけの措置をしたいという回答があったところでございます。
東門委員 沖縄事務所の次長が米軍の方に申し入れたということなんですが、これはもう本当に、これまで何十回、何百回、何千回と起こってきたことだと思います。そのたびに抗議をし、要請をし、同じような回答を得て、同じような事故が何度でも起こる。そういうことに対して外務省は、申し入れましただけではもう済まないんじゃないかと思うんですよね。どうでしょうか。
 そして、本当は、大臣が答弁に立たれたときに、県民に対して一言何かおっしゃるかなという期待感もありました。県民がどのような気持ちでそういう恐怖と向き合っているかということを本当に考えられるかなと思うんですよ。
 では、今回のこの燃料漏れは、外務省に通報が入ったのはいつでしょうか。この新聞報道によりますと、マスコミを通してなんですよ、まず入ってくるのが。米軍から入ってきたんではないんですね。ですから、国と米軍との間にどういう通報体制が確立をされていて、どういうような安全対策が講じられていてというのが本当に押さえられているのかということに、私はすごい疑問を持っているわけです。通報があったのはいつで、いや、私も正直言いまして、その件は先ほど本会議に入る直前に知ったんです。ですから、それを教えていただきたいと思います。どういう対策をこれからとられるのかも教えてください。
川口国務大臣 この件が起こったのが午後四時五十分ごろで、そしてマスコミを通じて外務省が知ったのが五時ごろということのようでございます。
東門委員 そして、すぐ行動をとられたわけですか、五時ごろに外務省に通報が入って。
川口国務大臣 今の御質問の件につきましては、調べます。
東門委員 大臣、私、本当に今ここにすごい怒りを込めて立っています。私は、外務大臣として沖縄県民に、これだけの事故が頻発している中で、一言何かあってもいいと思うんですよ。いかがでしょうか。
川口国務大臣 我が国の中において、在日米軍の施設・区域の七五%が沖縄にあるということでございまして、この件について、日ごろ沖縄の県民の方に非常に負担をおかけしていると私は思っております。
 こういったことが二十四日、二十五日と二日続いたということで、しかも燃料漏れを住宅地の上でもしていたということでございますから、これについて周辺の住民の方は、この事件が起こってそれを耳にして、非常に御不安であったと私は思います。
 したがいまして、外務省としては、これを沖縄の米軍に申し入れ、遺憾の意を表明し、この件についてどのような措置を在沖縄米軍がとったかということについては、引き続きフォローをきちんとしていきたいと考えております。
東門委員 ぜひそうしていただきたいと思います。
 そして、それに対して外務省としてどういう対応をとられるか。もうこれ以上だめですよ、県民を不安に陥れるような、恐怖の中に置いておくようなことはだめですよということをやっていただくために、どういう対応をとられ、どういう要請をし、どういう抗議をしていくのか、それもお聞かせください。
 本当に、こういうことをして再発防止に臨みます、こういうことをすることによってこれができると思う。それは人間ですから、起こることはあるかもしれませんが、余りにも多過ぎる。それに対して外務省の態度は余りにも冷た過ぎるということを私は強く申し上げたいと思います。どういう対応をなさるか、お聞かせください。
川口国務大臣 とりあえず在沖縄米軍に対しては、遺憾の意を表し、再発防止を申し入れということでございまして、原因究明もしてほしいということを言いましたので、これを受けて、在沖縄米軍がどういうことをしたかということについて、まず聞きたいと考えます。
東門委員 今回の燃料漏れの事故は、その付近に住民の人たち、あるいはウオッチャーの方たちがいて、異臭があり、目の痛み等の被害を訴えている人も出ているんです。全然その被害がなかったわけじゃないんですよ。本当にこれからどういうことが出てくるかわからないんですが、そういうことが繰り返されている中で、私は本当に、この場で大臣に、これだけの基地を押しつけている沖縄県民に対して一言あってしかるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
川口国務大臣 先ほど申し上げましたように、在日本の米軍の施設・区域のうちの七五%が沖縄にあるわけでして、この点で、沖縄県民の方には日ごろから大変な負担をおかけしているということであるわけでございます。したがいまして、政府は、今回の件については、先ほど申し上げたような対応をし、今後きちんとフォローをしていくということでございますし、また、SACOの最終報告の速やかな、着実な実施を行っていきたいというふうに考えております。
東門委員 今までの御答弁と何も変わらないと思うんです。トーンも、中身も、何も。これだけの事故を引き起こして、一月の中に四回も、いや、それはあくまでも落下事故です。民間道に入っていった軍の車の話もしました。いろいろ出ているんです。そういう中で、ただ、申しわけない、七五%があるので県民の負担はわかりますといういつものようなトーンの、中身の御答弁ではなくて、私は、やはり大臣として一言あってしかるべきだと思うんですよ。
 私が、今この場で本当にどのような思いで立っているか。大臣と私、私はあそこに座ることはなくても、大臣が同じような立場でここに立ったら、どうだろうというふうに思うんです。そういう立場で、私は、一言お願いをしたいということで立っているんです。私が何度も同じことをお願いしないでも、大臣の方から出てくることを祈っていたんですが、それがないので私の方から、今回の頻発している事故に対して、恒常的にある今の七五%の話ではなくてです。よろしくお願いいたします。
川口国務大臣 先ほど申し上げましたように、沖縄の県民の方には日ごろから、この在日米軍の施設・区域が沖縄に集中しているということで、大変な御負担をおかけしているということでございます。
 特に、この件、先ほど申しましたように、住宅の密集をしているところの上で燃料漏れがあったということでございますので、これについては外務省としては、沖縄にある、在沖縄米軍の司令官に対しては、至急に手を打つ、再発防止をする、あるいは原因を究明する、再発をしないようにどういうことをやったかということもこれから聞くということに今なっているわけでございまして、外務省としてはできるだけのことをしたいと思って、これはきちんとフォローをしていきたいと思います。
 沖縄の住民の方のお気持ちというのは、私は、非常に負担の上にも負担、不安の上にも不安ということであると思いますし、東門議員が今沖縄の状況についてお感じの気持ちも私はよくわかっているつもりでございます。そうして、政府としてこういったことが再発しないようにできるだけのことをして、沖縄県の県民の方が持っていらっしゃる不安を取り除くために、外務省として在日、在沖縄米軍と話し合って何ができるかということについては考えてみたいと思っております。
東門委員 終わります。
吉田委員長 これにて両件に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
吉田委員長 これより両件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 まず、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決をいたします。
 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
吉田委員長 起立総員であります。よって、本件は承認すべきものと決しました。
 次に、犯罪人引渡しに関する日本国と大韓民国との間の条約の締結について承認を求めるの件について採決をいたします。
 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
吉田委員長 起立総員であります。よって、本件は承認すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
吉田委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りをいたします。
 国際情勢に関する件調査のため、来る五月八日水曜日、参考人として元ケニア共和国駐箚特命全権大使青木盛久君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 次回は、来る五月八日水曜日に委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時五十二分散会


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