衆議院

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第15号 平成14年5月17日(金曜日)

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平成十四年五月十七日(金曜日)
    午前九時二分開議
 出席委員
   委員長 吉田 公一君
   理事 浅野 勝人君 理事 石破  茂君
   理事 坂井 隆憲君 理事 西川 公也君
   理事 首藤 信彦君 理事 上田  勇君
   理事 土田 龍司君
      今村 雅弘君    小坂 憲次君
      高村 正彦君    中本 太衛君
      丹羽 雄哉君    原田 義昭君
      福井  照君    細田 博之君
      松島みどり君    水野 賢一君
      宮澤 洋一君    望月 義夫君
      伊藤 英成君    金子善次郎君
      木下  厚君    桑原  豊君
      前田 雄吉君    丸谷 佳織君
      松本 善明君    東門美津子君
      松浪健四郎君    鹿野 道彦君
      柿澤 弘治君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   外務副大臣        杉浦 正健君
   外務大臣政務官      今村 雅弘君
   外務大臣政務官      松浪健四郎君
   外務大臣政務官      水野 賢一君
   政府参考人
   (警察庁警備局長)    漆間  巌君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君
   政府参考人
   (外務省大臣官房長)   北島 信一君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 滑川 雅士君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 林  景一君
   政府参考人
   (外務省大臣官房領事移住
   部長)          小野 正昭君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局国
   際社会協力部長)     高橋 恒一君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            田中  均君
   政府参考人
   (外務省欧州局長)    齋藤 泰雄君
   政府参考人
   (林野庁次長)      米田  実君
   政府参考人
   (経済産業省大臣官房審議
   官)           大井  篤君
   政府参考人
   (環境省大臣官房審議官) 小島 敏郎君
   外務委員会専門員     辻本  甫君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月十七日
 辞任         補欠選任
  丹羽 雄哉君     福井  照君
  宮澤 洋一君     松島みどり君
同日
 辞任         補欠選任
  福井  照君     丹羽 雄哉君
  松島みどり君     宮澤 洋一君
同日
 理事小島敏男君同月八日委員辞任につき、その補欠として西川公也君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
五月十日
 気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一五号)
同月十七日
 核兵器廃絶条約の締結に関する請願(斉藤鉄夫君紹介)(第二九四九号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の補欠選任
 政府参考人出頭要求に関する件
 気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一五号)
 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――
吉田委員長 これより会議を開きます。
 この際、理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴いまして、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 それでは、理事に西川公也君を指名いたします。
     ――――◇―――――
吉田委員長 次に、気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 政府から趣旨の説明を聴取いたします。川口外務大臣。
    ―――――――――――――
 気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書の締結について承認を求めるの件
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
川口国務大臣 ただいま議題となりました気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
 この議定書は、平成九年十二月に京都で開催された気候変動に関する国際連合枠組条約の第三回締約国会合におきまして採択されたものであります。
 この議定書は、先進国等が二〇〇八年から二〇一二年までの五年間において数量化された約束に従って温室効果ガスの排出を抑制しまたは削減すること等を定めるものであります。
 我が国がこの議定書を締結してその早期発効に寄与することは、地球温暖化を防止するための国際的な協力を一層推進するとの見地から有意義であると認められます。
 よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。
吉田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
吉田委員長 この際、お諮りいたします。
 本件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官滑川雅士君、大臣官房審議官林景一君、大臣官房領事移住部長小野正昭君、総合外交政策局国際社会協力部長高橋恒一君、アジア大洋州局長田中均君、警察庁警備局長漆間巌君、林野庁次長米田実君、経済産業省大臣官房審議官大井篤君、環境省大臣官房審議官小島敏郎君の出席を求め、それぞれ説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
吉田委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。最初に、金子善次郎君。
金子(善)委員 民主党の金子善次郎でございます。
 八日午後、中国の瀋陽で発生いたしました日本総領事館への中国武装警察侵入事件について、まず質問をいたします。
 外務大臣にまずお伺いいたしますけれども、中国当局に身柄を拘束されている五人の現在の健康状態ですが、これは確認をされておられますか。
吉田委員長 金子委員、もう一度最後のところ。
金子(善)委員 中国当局に身柄を拘束されております北朝鮮の方の健康状態ですが、これは確認されておりますか。
川口国務大臣 五人の状況については問い合わせをいたしておりますけれども、現在調査中であるとのことで、それ以上のことはわかっておりません。
金子(善)委員 あの五人の中には、二歳ということですが、子供も含まれておりますし、また、妊娠五カ月というような方も含まれているということのようでございますけれども、その辺につきまして、いろいろな背景とか何か調査中だと中国政府は言っているのかもわかりませんけれども、健康だけでも確認するというような、特別そういうことについて中国当局に質問をしているということはないですか。
田中政府参考人 私どもの方から、この五人については極めて強い関心を表明しておりまして、中国側は国際法、国内法、人道上の観点から扱うということでございますし、私どもは現在も人道上の観点から扱っているものというふうに考えております。
金子(善)委員 ただいま答弁ありましたように、なお情報の収集に努めてもらいたい、こういう御要望をいたしておきます。
 それから、私が去る十日の衆議院本会議の際にちょっと触れさせてもらいましたが、瀋陽総領事館及び北京の日本大使館は、北朝鮮の人たちが亡命を求めたであろうという行為でございますが、これを総領事館への不法侵入と外務省はとらえていた節があるのではないかというようなことを本会議で指摘をいたしまして、質問をいたしました。それに対して外務大臣の答弁がございませんでしたので、改めて答弁を求めたいと思います。
 要は、この北朝鮮の方々の五人の行為を、不法侵入として日本政府というか外務省はとらえていたのではないかという疑いがあるわけですが、その点について外務大臣の答弁をお願いします。
田中政府参考人 確かに、関連文書に、北朝鮮人と見られる五名の在瀋陽総領事館への侵入未遂という表記があったことは事実でございます。
 これは確かに不適切であったというふうに思いますし、ここは非常に難しいところでございますけれども、なかなか身元が確認されないという段階において、これが果たして侵入事件なのか北朝鮮の脱北者、明らかにこの段階では北朝鮮からの脱北者ということだったと思いますし、その表現は不適切であったというふうに考えています。
金子(善)委員 ただいまの答弁でございますけれども、私がこれから質問しようと思いました重大なペーパーがあるわけです。
 これは、日本大使館政治部、北京の大使館政治部ですね、責任者が植野さんという名前になっておりまして、「貼り出し」、これはいわゆる報道機関に対するいろいろなメッセージを送る、大使館としてのメッセージを送るということだと思いますが、ここにこう書いてあるわけです。「在瀋陽総領事館への侵入未遂事件に関する中国政府への抗議について」というふうになっているわけです。
 今、いろいろ難しい点があるというようなことを言われたが、あくまでもこれは公文書の一つだと思います。とすれば、今局長が答えられた、いろいろ難しい点、これは極めて断定的に書いてあるわけですよ、難しいなら難しい表現というのがおのずからあると思います。
 そこで、これに関連して、これは中国での「貼り出し」であったわけでございますけれども、日本の外務省での記者クラブへの「貼り出し」、まあ「貼り出し」という表現をこちらでは使っているかどうかわかりませんけれども、記者の方々、報道の各社の方に「貼り出し」を行っていると思いますけれども、この日本国内での「貼り出し」については同じ表現だったのかということと、もう一つは、その責任者はだれなのか、この点について外務大臣からお答えいただきたいと思います。
田中政府参考人 この件に関しまして、私アジア大洋州局長が主管でございます、責任者でございます。
金子(善)委員 その前に、つまり外務省の中でもこういう表現で各報道機関に通知をしたのか、その点についても今質問しているわけですから、答弁してください。
田中政府参考人 総領事館に侵入という言葉が最初のころ使われていたのは、事実であろうと思います。
金子(善)委員 実は、この北朝鮮の方々の行為、それを私がこの間の十日の本会議で外務大臣に質問をいたしましたのは、どうも初めから、侵入、侵入ということで言っているわけですよね。これはあくまでも未遂事件ということで、報道機関への公式文書で表題につけるというようなことを外務省はしているわけであります。侵入ということは、一般的にというか、我々の常識だと、不法に押し入る、要は不法に侵入してしまうと。まあ、侵入というのは不法だということに、暗にその言葉としてなっていると思います。
 そして、反対に、これは驚いたことに、中国の武装警官の総領事館へ入ってくるという行為については、立ち入りということで、違法性を感じさせない表現に実はこの文章が説明としてなっているわけなんです。
 この辺、外務省の認識ですけれども、これは外務大臣にぜひお伺いしたいと思いますが、どういう認識なのか。私が申し上げているのは当初ですよ。当初の段階で、侵入未遂事件、そして中国武装警察の総領事館の敷地内へ入ってくることについては、立ち入りと、こういうような表現で、この文章では非常に明確に外務省の認識が伝えられていると思うんですけれども。
 これはこの文書だけじゃないですよ。外務省のホームページ、服部外務報道官という方がいらっしゃいますよね、この方の説明でも「侵入」という表現を使っている。これは、外務省、外務大臣、どういうことか、明確にちょっと答弁お願いしたいと思います。
川口国務大臣 おっしゃっていらっしゃるのは、一番最初に、五月八日の日に、中国にあります日本大使館で発表した文書に、確かに「侵入未遂事件」と書いてございますし、「侵入を試み、」というふうに書いてございます。これは当時、これを出した時点で、物事のきちんとした把握、これができていなかったということによるものだと思います。
 その後、例えば私が五月十日に衆議院で報告をいたしました段階では、既に、総領事館において発生した連行事件についてというふうに申し上げてございますし、それから、北朝鮮出身者と見られる五名が入館を試みようとしたという言葉に変えさせていただいております。
金子(善)委員 それと、これも外務大臣にお伺いいたしますが、阿南中国大使に対しまして訓令を外務大臣から出されたというふうに聞いております。この段階でもまだ、まあ、最初の段階ではということを今大臣言われましたけれども、この段階でも北朝鮮人のこの行為につきまして、侵入という表現を使われておったんでしょうか。
田中政府参考人 これは抗議電報でございまして、その抗議のときに、北朝鮮と見られる人という表現は使ってあると思いますが、その総領事館への侵入云々というところのくだりについては、ちょっと現在手元に資料がございませんので、お答えすることはできません。
金子(善)委員 先ほど大臣は、当初はそういうとらえ方だった、徐々に認識を改めて、表現の使い方も改めてきたというような説明だったと思うんです、簡単に言えば、流れとしては。
 ただ、今現在、中国政府との間で、大変な見解の相違と申しますか、そういう状態になっているのが現実の姿で、連日、国民に対しても報道がなされている、こういう状態にあるわけですが、いわゆる言葉の持つ正確な意味というものをよく考えて当初から説明というものをしていかなければ、中国の主張に正当性まで与えてしまうおそれがその段階で出てくるのではないかと思うんですが、大臣、どうですか、そういう点について。
川口国務大臣 言葉の持つ重要性というのは、委員おっしゃるとおりでございます。私も、言葉は大事だと思います。
 それで、その後事情がわかった、確認をされた後につきましては、これは全部の文書を確認はいたしておりませんけれども、当然、正しいといいますか適切な言葉遣いに変わっていると私は考えております。
金子(善)委員 それは大臣、とても大変なことだと思うんですよね。もちろん、おかしかったらそれは改めていくというのは当然ですが、こういう問題については、やはり日ごろからきちっとした認識というものを持っておかないと、いろいろな言葉が現実問題として、これまで教科書問題でもありましたように、侵略というものを進出と書きかえたというようなマスコミの報道、間違った報道がありまして、それがずうっと尾を引いて国際間の問題にまで、大問題になるというようなことも経験をしているわけです。そうした意味で、言葉の使い方というのは本当に気をつけてもらいたい。
 先ほど申し上げましたように、侵入未遂事件ですよ。武装警察は立ち入りと言っている。その後で、中国政府のその武装警察官の行動というのは国際法、ウィーン条約違反だというようなことを言っても、最初のスタートが、片や未遂事件で、北朝鮮の方々の行為というものは違法行為である、そして中国の行為というものは単なる立ち入りだというような表現を使っているようではまさに話にならない、私はそう思います。
 そこででございますが、このことを実は私が外務省の方に注意をしたんです。これは大臣の耳に入っていますか。
川口国務大臣 言葉の使い方について金子委員から御注意をいただいたということについては、私のところまでは到達いたしておりません。
金子(善)委員 そういうことで、この問題については、私が、余りにもおかしいな、それまで報道されてきている外務省の認識と新聞とかいろいろなテレビの報道の内容が違い過ぎるなと、改めて、どういうようなことで報道機関に外務省の方がこの説明をしているんですかという説明を求めたところが、先ほども言いましたこのペーパーが手元へ来たわけです。それを見てびっくりしちゃったわけです。北朝鮮人の方々の行為というのは侵入未遂事件だ、武装警官のそれこそ侵入が立ち入りだ、これでは、当初の認識というものが大変間違ったところにあったのではないかというふうに思ったわけであります。そういうことを強く指摘をしておきたいと思います。
 そこで、これも後で訂正といいますか整理をされて文書で流されていることです。ただ、何でも後でやるということは、そのときの本当の状態というものがあらわせていたかどうかというのはわからないことがあるわけです。具体的に言いますと、これも新聞報道でございますが、これは各紙に出ました。各紙に出たということは、いろいろな情報が流れたんだと思うのですが、阿南大使が、不審者が許可なく大使館に侵入した場合追い出せという趣旨の発言をしていたというような報道がされておりました。
 ですから、先ほど申し上げました「貼り出し」、この表現も、これは大使館の政治部の植野さんという方の名前で、責任者として出されているのがあるわけですが、ただいま申し上げましたように、その北朝鮮の方々の行為を違法行為として、中国の警察官の行為を立ち入りだというような表現につながったのではないかというふうに思いますけれども、大臣のコメントをお願いしたいと思います。
川口国務大臣 まず、御案内のように、昨今、特に九月十一日以降のさまざまな国際的なテロ事件というものがございまして、在外にあります公館の警備というものはきちんとしておきませんと、周りの、その国にも御迷惑をおかけすることになりますし、館員の安全にも関係がありますので、そこは警備をきちんとしておかなければいけないということがございます。
 阿南大使の指示というのは、五月八日の午前に大使館の中で定例の会議があったようでございまして、そこで、北京の外国の公館にそのころ脱北者の侵入が相次いでいるということを踏まえて、五月の初めから北京の大使館の警備体制が強化されたようでございまして、日本の大使館におきましても警備の強化の措置をとったということが、警備担当官から報告がその席上であったようです。その報告を受けて、阿南大使から、大使館の警備を一層厳重にすべきだ、することは当然だという考え方を示したということで、追い出せと新聞に出ていましたけれども、そういう指示を行ったということは、これは間違いであるということです。
 阿南大使が言いましたことの概要は、脱北者は中国へ不法入国している者が多いが、一たん館内に入った以上は人道的な見地からこれを保護し、第三国への移動等適切に対処する必要がある、他方、大使館としては、昨年来、テロに対処するという観点からも警戒を一層厳重にすべきことは当然であって、不審者が大使館敷地に許可なく侵入しようとする場合には、規則どおり大使館門外で事情を聴取するようにすべきだということを大使が言ったというふうに承知しています。
金子(善)委員 それは事後的な話とつじつま合わせの面も、私も現場にいたわけじゃないからわかりませんけれども、各紙の報道機関がそういうことをはっきり書いているわけでございますから、恐らくそういうニュアンスの言葉があったんじゃないか、それでこの「貼り出し」のペーパーの表題にいたしましても、何かそういうにおいを感ずるような表題になってしまっているんじゃないかということを申し上げているわけでございます。
 この阿南大使ですが、拉致問題でも大変な発言をなさっているんですよね。
 平成九年の十月の二十九日でございますけれども、阿南大使は当時アジア局長だったんです。ここで、拉致問題について、拉致をされた横田めぐみさんのお父さんに対しまして、恐らく、常に御夫妻で行動されておりますから、お母さんの前でもそうだったと思うんですけれども、拉致疑惑は北朝鮮の亡命者の証言以外に何もない、亡命者は何を言うかわからないというようなことで、両親の前でそういう発言をされているわけなんですね。
 大臣、このことを聞かれたことはございますか。大臣、印象をお願いします。
川口国務大臣 聞いたことはございません。
金子(善)委員 そこで、警察庁の方においでいただいておりますけれども、念のために確認だけをさせていただきたいと思います。
 この拉致問題については、警察庁の方でもいろいろな努力をされまして、それなりの成果を、証拠をつかみながら、現在では八件十一人というようなところまで、はっきりした拉致被害者というものが特定されるようになっております。そこで、お伺いしたいと思うのですが、平成九年の十月二十九日段階でも、警察庁として、拉致された方々というのははっきり公表されているわけでございますけれども、いわゆる亡命者の証言だけでこういう拉致というようなことを断定されておられたのかどうか、そこをお伺いしたいと思います。
漆間政府参考人 ただいまの御質問についてでございますが、平成九年の十月の二十九日の段階におきましては、確かに、もとの北朝鮮の工作員の証言というのもいろいろありましたけれども、横田めぐみさんの事案に関しまして、それだけではなくて、そのほか海外の機関との情報交換もしておりますし、そういうようなこれまでの捜査結果を総合的に判断して、これは北朝鮮による拉致の疑いのある事案であるというふうに認定して、総計が七件十名になったというものでありまして、その七件十名全体についても、単なる亡命者の証言のみならず、そのほかのいろいろな証拠、証言あるいは海外の機関からの情報提供、そういうものを総合的に判断してやっているものでございます。
金子(善)委員 ただいま警察庁の方から答弁ございましたように、そのとおりだと思うんです。
 ところが、この阿南大使は、その段階で、これは本当に、横田めぐみさんの御両親でございますけれども、名前を公表するということが自分の娘、お嬢さんの生死にかかわる問題だというようなことで大変悩まれたということのようです。苦悩の末に実名の公表に踏み切った。そういう段階での阿南当時のアジア局長の発言だったということで、大変な衝撃を受けられたということを、いろいろなところで話をなさっております。私も、事実お聞きいたしたことがございます。
 そこで当時、こういうような感覚の持ち主が、拉致問題と申しますか、そこを担当する局長であることは、大変悲しいというような、怒りを感ずるというような表現をそのときなさっていたわけであります。これは、外務大臣は知らないというようなお話でしたが、極めて有名な話になっております。この拉致問題に関連する外務省の対応、そのことについては大変有名な話になっているわけなんです。それが現在の中国大使の阿南大使です。
 そこで、これは官房副長官、せっかくおいでいただいておりますので、この点について通告は申し上げておりませんが、日ごろ、拉致問題については前向きの対応をなさっていらっしゃる方と存じておりますけれども、この点につきまして、官房副長官とされましてコメントをいただければと思います。
安倍内閣官房副長官 今の案件につきましては、通告外でございましたので、今記憶をたどっているところでございますが、そのときの阿南アジア局長の横田めぐみさんの御両親に対する発言というのは、産経新聞で一面で報じられたことでございます。
 私もよく覚えておりますが、その後、我が党の外交部会でも大変な問題になりまして、私も、私の部屋に局長を呼んで、こういう発言をしたとすれば大変問題ではないかということを申し上げました。そのときに阿南局長は、自分はこういう発言は一切していないということで否定をされたということでございました。発言をされていないということであれば、そういうことなんでしょうということで、私はそのときに話を承ったということでございます。
金子(善)委員 今、官房副長官からちょっと意外な話が出ました。そこで否定された。ただ御両親は、はっきりいろいろなところで言われておりますので、これは事実だということは私は確信をいたしております。
 そこで、次の問題に移らせていただきたいと思いますが、この亡命事件と申しますかが発生いたしましたのが、日本時間のおおむね午後の三時ごろでございます。外務大臣は、この連絡が入ったのが事件発生の二時間後の五時ごろだったというふうに私は聞いております。当時、事務方の説明でございますと、委員会中だったので大臣に報告できなかったというようなことでございました。
 私は思うんですが、もちろん物事によると思います。ただ、国際的に非常に難しい北朝鮮との関係あるいは中国との関係というものを考えた場合に、亡命事件が瀋陽で発生した、その事実だけでも、少なくとも外務本省に連絡が入ったのであれば、外務大臣の方に即メモでも入って、委員会中だからといって、それが全然耳に入っていなかった、おおよそ二時間の空白の時間があるわけでございます。これは、外交の最高責任者たる外務大臣といたしまして、大変問題があることだというふうに私は思うんですが、外務大臣はその点どうですか。
川口国務大臣 当時、委員会中でございまして、五時ごろ耳に入ったということはそのとおりでございます。本省の秘書官室には、その前に、四時ぐらいに情報は入っていたと聞いています。
 報告書あるいはその他でも申し上げたかもしれませんけれども、本件について、初動の連絡体制については、私は、さまざま問題があったと思っておりまして、これは今後改善すべき点であると思いますけれども、中国と東京の連絡をする混乱の中で、大勢の方に御連絡をする必要があって、その過程で秘書官室への連絡が四時になったということであるかと思います。
金子(善)委員 そこで、お伺いしますけれども、まず第一に、大臣が五時に報告を受けたという段階で、武装警察官が総領事館に入った、その点伝えられたかどうか。それから、何人が総領事館に入ったと伝えられたか。この二つ、これをまずちょっと御説明願います。
川口国務大臣 今となりましては、実はその後、いろいろな情報に触れてきたものですから、一番最初に聞いたときに何を聞いたかということを、はっきり再現できる自信は必ずしもございませんけれども、当時たしか、私はその次の日にテレビを見て、あれと思ったわけですので、五人が全部中に入ったということは聞かなかったと思います。多分、二人が中に入ったということを聞いたのではないかと思います。
金子(善)委員 ですから、その段階で、いわゆるその五人の問題ですけれども、要は、これはまた中国側と今大変な問題になっているわけでございますけれども、最初の外務省のとらえ方、これは二人が中に入った、三人は入っていませんよと。ビデオを見たら、五人入っているんですよね。そこは大臣だって、ビデオが撮られているわけで、否定はできないと思うんですね。この事実認識というものは、かなり外務省は最初は違っていたということは指摘をしておきたいと思います。
 それはともかくといたしまして、安倍官房副長官におかれましては、何時にこの問題をお知りになりましたか。
安倍内閣官房副長官 私のところには、外務省から直接口頭で連絡があったということではございませんで、ファクスで紙が参りまして、私がそれを目にいたしましたのが十七時三十分ごろでございます。
金子(善)委員 せっかく杉浦副大臣もおいででございますので、お伺いしたいと思いますが、何時に外務省から。
杉浦副大臣 私が外務省から報告を受けて事実を掌握したのは、夜半と申しますか十時半ごろだったと記憶しております。
金子(善)委員 これは、私は大変おかしいなと思うんですね。もういろいろな報道機関も動いている。この問題がどうなのかというようなことで現実に、実際に国民の目に触れるかどうかはともかくとしまして、各報道機関、いろいろなところでどんどん動き始めている。その中で、まず初動体制から、外務大臣が二時間もたってからそれを知るということが、まず全くおかしいと私は思います。総理大臣は、おおむね三時四十分ごろ連絡を受けているんです。
 それで、甚だしいのは、植竹副大臣、副大臣はお二人いらっしゃいますね、この植竹副大臣は、翌日の朝説明を受けているんです。それから、政務官もいらっしゃいますけれども、今村政務官は、報道で知った、これも翌日の午前中に説明を受けたようでございます。松浪政務官は、モロッコに出張中で資料を送った。水野政務官は、これも報道で知った、外務省からは説明を受けていなかった。
 これは、外務省の組織というものがどうなっているのか。まさにこれからは、政治家主導のそうした外交をやっていかなきゃならない、各省庁でも、いわゆる国会議員が政府の役職について、そして事務方を指導していくというような体制をつくっていくんだということで、国家行政組織法も改正された。そういう中で、現実に、副大臣の方が、翌日ですよ。もう報道はどんどんされているわけです。それに説明一つ行かない。
 副大臣に秘書官というのはついていらっしゃらないんですか。そこは事務方にちょっとお聞きしたい。
田中政府参考人 委員御指摘でございますが、当然、秘書官につきましては連絡が一定の時間に行ったわけでございますが、そこは、私ども、直接お話を申し上げるべきであった、常に秘書官を通じてという話ではなかったんだろうというふうに思っています。
金子(善)委員 外務大臣、こういうことは、いわゆる危機管理体制の問題であります。今、有事法制とかいろいろなことで、この国会でもいろいろ議論をしている。形だけ幾らできても魂が入っていなければ、私は、何のために多額の税金を使って、いろいろなポストを使って、建前だけじゃないですか、危機管理体制というものはどうなっているんだと。私は、こういう問題について、外務省に対しては強く、その改善というものをするように要求をしておきたいと思うわけであります。
 これは、本当に恐ろしいですよ、この連絡体制。もう国民が全部知った後で、副大臣とか政務官が説明も受けていない。こんな役所というものはどこにありますか。恐らく私は外務省だけではないかと思います。ほかの省庁では恐らく考えられない事柄ではないかと私は自信を持って言えます。
 まだまだ申し上げたいことはたくさんございますが、官房副長官もお忙しいようでございますので、どうぞあれしていただきたいと思います。
 それで、時間の関係はありますけれども、一つだけ、今度の調査報告書の内容についてお伺いしたいと思います。
 私も、これも報道でございますから、まだきちっと見ているわけでもありませんし、また中国語も読めませんので、よくわかりませんけれども、少なくとも、日本の報道機関で報道されている中国の報告書の内容は、日本の報告書と比較して、私は非常に綿密に出しているというふうに思います。この点については、また質問する機会もあろうかと思いますので、そこで、一つだけ質問をいたしておきたいと思います。
 民主党の当委員会の中川筆頭理事を初めとしまして、調査団が中国の方に参りました。きょうの新聞にも報道されておりますけれども、宮下副領事、いわゆる査証担当の副領事さんだったと思います、遼寧省の外事弁公室に八日の日本時間午後四時過ぎに電話があったということを中国側が言っているということでございます。これは極めて大きいことだと思うんですよね。中国側はこう言っているわけです。宮下副領事から遼寧省外事弁公室へ八日の日本時間午後四時過ぎ、だから事件発生から一時間ぐらいの段階で電話をされていると。総領事館サイドも、私ども民主党の調査団にそのことを事実として認めているやに聞いております。こういうことを報告書の中に何ら書いてない。
 これは、これからのいろいろな、大臣を中心にして中国といろいろな外交交渉をしなきゃならなくなる。きのうのテレビ報道でもございました。マスコミのOB会の方が、副総理というんでしょうか、センキシン副総理にきのうお会いした。総領事館と中国の遼寧省あるいは瀋陽の公安当局は日ごろ仲よくやっているんですねというような表現でも言っておられました。
 これは、さらに一つありましたね。中国課長が途中で書かなくてもいいというようなことがあったという問題もございましたが、この問題も、外国政府と既に接触しているんですよ。この接触しているということ自体も報告書に書いてないということは、この報告書の内容全体の組み立てが崩れてしまう。大臣、そう思いませんか。
 私は、時間が参りましたので、改めて別の機会にこういう点について質問させていただきますが、きょうはその答弁をいただいて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
川口国務大臣 私も、この件についてどういうことだったのか聞きましたところ、これは、十六日の夜、つまりきのうの夜ですけれども、確認ができたこととして、八日の三時過ぎに瀋陽総領事館の査証担当副領事が遼寧省の外事弁公室に電話をして、本日重大な事件が発生をしたということを言って、現地職員に事件の概要について通報をさせたということが事実関係でございます。
 この点、この間の調査結果に含まれておりませんでしたのは、調査を行った時点で明らかでなかったということでして、したがって、調査結果には含まれなかったというふうに聞いております。
金子(善)委員 終わります。
吉田委員長 次に、首藤信彦君。
首藤委員 民主党の首藤信彦です。
 ただいまの金子議員の質問に引き続き、瀋陽の領事館の件について外務大臣にいろいろお聞きしたいと思っております。
 まず、世間では、この事件が発生して、特にテレビ映像を見まして、ああ、これはもう日本の領土が、主権が侵犯されたと。ちょうど私たちは、国会が今有事法制の問題をやっておりますが、日本の国土が侵害されたと同じように日本の主権が侵害されたんではないかというふうに短絡的に考えたわけであります。
 しかし、ウィーン条約を詳しく見ますと、それは必ずしもそうではなくて、戦前のように本当に大使館とか領事館が治外法権に近いような形を持ったのではなくて、戦後においてはそうした外交公館の不可侵権というのはかなり制限されていて、むしろ接受国の権利というものが認められている。したがって、この場合においても、例えば領事業務をやっているほんの特定の、公館の中の一部のところ以外は、それは必ずしも不可侵とは言えないということがウィーン条約からは読み取れるということは、冷静に考えればわかるわけですね。
 しかし、現実に外務省のおとりになった態度というものは、中国に対して、日本の主権が侵されたという形で、非常に強い抗議をされていたわけであります。これは、一面においては、日本の世論、特にテレビメディアで非常にみんなショックを受けるわけですから、そういうものに対して日本の外務省が強い態度をとっている、そういう気持ちでやられたというふうに解すわけであります。
 しかし、そのことは同時に、非常に難しい時期に差しかかっている日本の日中外交をさらに一歩難しくさせる。特に中国側の方は、我々に見せないような形で、さまざまな形で大使館、領事館を見張っております。ですから、さまざまなデータがあったり、さまざまな映像があったり、いろいろな形でまた映像を手に入れたりする可能性があるわけですね。
 ですから、この勝負というものは、ある意味では、中国が巻き返ししてくることは十分に予想されたわけであります。そして、現実に中国からいろいろな反論があって、我が国の外交の立場も非常に難しい状況に今追い込まれているというふうに解すわけですけれども。
 こういうような状況の中で、日中関係にはさまざまな問題を抱えております。例えば、不審船の問題もあります。それから、靖国神社の問題なんかもあったりするわけですね。そうしたさまざまな問題を抱えている日中関係において、このようにぎくしゃくしてきた外交というものを今後どのように立て直していかれるのか、外務大臣の展望をお聞かせ願いたいと思います。
川口国務大臣 委員が御示唆なさっていらっしゃいますように、私も、日中関係というのは、我が国にとって、あるいはこの地域の安定と発展にとりましても非常に重要な二国間関係だと思っております。特にことしは、日中国交回復三十周年という重要な節目の年でもございますので、そういった年にこういった事件が起きてしまったということは、私としては非常に残念に思っております。この問題をめぐって、日中両国間では、特に事実認識について意見の相違がございますけれども、これが日中間の大局的な関係に悪い影響を与えるということについては、これはぜひ避けなければいけないと考えております。
 この問題につきましては、いつも申し上げておりますように、国際法の観点それから人道の観点から中国と協議をして、冷静に、それからきちんと、はっきりとした形でこちら側の意見を伝えていく、それで、早期にいい解決が見られるように双方で努力をしなければいけないと思います。また、幅広い交流が日中の両国の間では重要だと思っておりますので、ことしは日中国交回復三十年というこの機会に、また交流を幅広く、草の根も含めて広がっていくということが望ましいと思っております。
首藤委員 大変難しい時期に差しかかっていると思いますので、日中外交の大きな展望を持って、きちっと進めていただきたいと思います。
 外交の難しさは、私たちの目と鼻の先で起こっている中国でのこんな深刻な事件、と同時に、私たちから遠い、地球の裏側にあるような事件も、我が国にとっては非常に大きな影響を将来的には与えるわけですが、現在、中東、特にパレスチナで紛争状態が続いております。
 しかし、ここに至りまして、パレスチナにおいては、イスラエル労働党の党首が和平提案をする、あるいはラマラに閉じ込められたアラファト議長が解放されてから各地を回って、私も行きましたけれども、虐殺疑惑のあるジェニンとかナブルスとかガザとか、そういういろいろな地域を回りながら、今、PLOあるいはパレスチナ側の暫定行政の指導部に対する批判というものを改善するためにも選挙を行おう、こういう提案を行っております。
 このような形で、今パレスチナ情勢というのは急速に動きつつあると思うんですが、ついこの間までは日本も、また川口大臣も、パウエル長官との電話とかさまざまな形で、ここに関心を持って取り組まれていたと思うんですが、このパレスチナ問題に関して、川口大臣はこれからはどのような行動をとられて、あるいは現在とられておられるんでしょうか。
川口国務大臣 パレスチナ問題については、委員おっしゃられますように、今非常にいい兆候がたくさん見えてきていると思っております。
 アラファト議長の演説では、これはパレスチナ立法評議会で演説をなさったわけですが、一般市民を標的とするテロ攻撃を拒否するということをおっしゃり、さらに、選挙の実施及び治安、行政機関の改革の意思を示したということで、私は、これを歓迎する談話を昨日出させていただきました。我が国として、パレスチナ人が今のさまざまな困難を乗り越えて、こうした動きを行って、よい将来に向けて前進をしていくということをぜひ支援したいと考えております。
首藤委員 外務大臣、もう私の質問の真意はおわかりだと思うんですが、これが外交というものだと思うんですよね。一方では、もう本当に目の前で、日本に近いところで大きな問題が起こっている。同時に、日本の将来に長期的に大きな影響を与えるかもしれないパレスチナ和平の問題、これが同時並行して起こっている問題だと思うんですよ。
 ですから、今外務大臣は外務省の組織刷新というものを行っておられるというふうに聞いておりますが、外務省に最も欠けているのは危機管理体制だと思うんですね。危機管理というものは、目の前に起こっていることをやるのが危機管理ではないんです。実は、目の前に起こっていることに我々の注意が集中してしまうということが危機の種になっている。ですから、ある意味で、一つのことが起こっていたら、同時に別なところでも危機が起こらないかと目くばせしていなければいけないと思うんですね。
 特に、例えば今の亡命の問題というのがあります。これは今、北朝鮮の問題、中国の問題、瀋陽の問題という形に、私たちはずっとフォーカスを、焦点をそこに当てて注目しています。しかし、御存じのとおり、亡命の問題というのは、世界各地の紛争地であるわけですね。ですから、この問題に関して、例えば亡命という問題に関して、あるいはこうした人道的な在外公館の対応に対して、現在、どのような指令を川口大臣は出されておられますか。
川口国務大臣 亡命あるいは難民といった方々をどういう態度で外務省は扱うか、どういう方針を持っているかということでございますけれども、まず、難民の受け入れということで申し上げますと、難民の認定というのは法務省の所管でございまして、法務省では難民条約にのっとって個別に審査をして、適正に難民の認定を行っているというふうに私は承知をしています。
 いわゆる亡命と言われること、これについては一般国際法上確立された定義があるわけではないということでございますけれども、外国人が在外にある我が国の公館に庇護を求めて入ってきた場合の扱いについて、これは、関係者の人定事項等の事実関係あるいはその入ってきた人の希望等を確認いたしまして、この人の身体の安全といった人道的な観点あるいは関係国との関係、そういったことを総合的に考えまして、個別に、具体的に対応していくという考え方でございます。
 私は、今回の件を契機として、俗に亡命とか言われるようなことについて、日本国全体として幅広い議論が行われるようになるということが望ましいのではないかと考えております。
首藤委員 外務大臣、ちょっと私の質問の真意がおわかりになっておられないと思います。そういう対応は本当にとっていただきたいと思いますが、今私が言っているのは、外務省の危機管理の問題なんですね。
 何を言っているかというと、例えば今外務省の中はどうかと考えますと、これはもう本当に右往左往してやっているんだと思うんですね。しかし、世界の人たちはどうかというと、例えばCNNやBBCやさまざまなメディアでこの映像、瀋陽の領事館の前の捕り物騒ぎというものがもう世界じゅうに、世界の末端まで映像として流れているわけですね。そこで、やはり世界のいろいろな紛争地で、ああ、やはりこういうことをやろう、日本の領事館に押しかけてみよう、日本の大使館にも行ってみよう、あるいはそうでなくても、日本の援助機関や日本の企業にもやってみよう、そういうことを感じる方が世界でたくさんいるわけですよ。
 ですから、こういうときにはまさに外務省の公館の末端に至るまで指令を出して、世界じゅうにアラート、警戒状態という形で在外公館の隅々まで指令を徹底させなければいけないんですけれども、例えばペルーにおいては、この同じ時期に、前に起こった大使公邸の占拠事件における人権侵害、すなわちトゥパク・アマルの降伏した人たちを侵入した治安維持部隊が殺傷したのではないか、殺したのではないかという疑惑もあるわけですね。そうした人権問題も世界でわあっといって、日本に対する非難も強まっている。
 そうすると、こうした事件は実は世界のどこで起こってもおかしくはないと思うんですが、そうした組織的な対応、危機対応について外務省はどのような手を今とっておられますか、それをお聞きしているんですが。
川口国務大臣 危機管理面ということで、改善をしていかなければいけないということはたくさんあると思います。
 まず、今回、対策本部というのを本省に設けておりまして、そこの中で、今の課題として検討していかなければいけないということを挙げておりますけれども、その中に警備面の強化、それからそういった危機管理時における指揮命令系統にあった問題点をどのように改善をするかといった課題が含まれております。既に、そこについては取りかかっているということです。
 それから、具体的にアジアの国々との関係では、アジアの国々にある我が国の在外公館、総領事館等に関しましては、最近北朝鮮から中国に向けての脱北者が非常にふえてきましたので、この三月に第三国の公館へ大勢の脱北者が駆け込んだという事件がございまして、そういったことを踏まえまして、立ち入った場合を念頭に対処ぶりを準備し、関係の公館に伝達をしておりました。また、今回の件がございましたので、さらに今後の対処ぶりについては既に関係の公館に広く指示をいたしております。
首藤委員 外務大臣、恐らく次から次へと起こってくる事件で、もう本当に昔だったら一年に一遍しか起こらないような事件が毎週あるいは毎日起こっているということで、ほとんど忙殺されて、外務省をどういうふうに外交の中心たらしめるかというところまで気配りがいかないんだと思うんですが、もう時間もないので、一つだけ私は外務省全体に対して、あるいは大臣に対して言いたいんですが、こういう時期こそ、瀋陽の事件だけではなくて、世界全体に目配りする人間、あるいはその中枢、組織をつくっておかなければいけない。
 これは、例えば企業でいえばセキュリティーディレクターといって、会社が何をやっていようが、ともかく危機管理だけを見ている人というのが必ずいるわけですね。例えばこの事件も、大連における航空機の墜落事件があった、その危機が実はこの領事館の危機に発展してくるわけですね。今我々はここに外交努力を集中しておりますけれども、そのことが実は世界全体に展開している外務省の領事館、在外公館にさまざまな形で危機となってきているわけです。
 ですから、こういう時期にこそ、外務大臣、ぜひ組織改革の一環として、外務省の中で、要するに危機だけを見ている人をぜひ一人つくって、副大臣を指名してでも結構でございますが、そういう形で、今起こっている目先の危機だけではなく、目先の危機が起こっているときに実は外務省全体でさまざまな危機が起こっているということを考えて、ぜひそうした組織対応を急速に進められることを切に希望します。
 時間なので、これで終わります。
吉田委員長 この際、休憩いたします。
    午前十時五分休憩
     ――――◇―――――
    午前十時四十九分開議
吉田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。前田雄吉君。
前田委員 民主党の前田雄吉でございます。
 地球温暖化の問題は人類の生存にとってゆゆしき問題でありますので、もちろん瀋陽総領事館の問題はやらせていただきますけれども、先にこの地球温暖化対策、京都議定書の関連の質問をさせていただきます。
 先進国と発展途上国、この両者の国益がぶつかり合う、そしてそれによって一つの国際的なコンセンサスをつくる、非常に難しいものがこの京都議定書であったと思いますけれども、まず私は、二つの観点からこの京都議定書の問題を扱わせていただこうかと思っております。一つは途上国の側面から、もう一つはアメリカの主張からという、この二つの側面から質問させていただきます。
 まず第一に、途上国の方の主張でございますけれども、先進国が温暖化防止の責任を負うべきである、途上国への削減義務の付加には断固反対するんだ、こういう主張でございます。これに反発してアメリカは京都議定書の交渉から離脱する、そうした一因をつくったものがこの途上国の主張でございました。
 これに対して我が国は、途上国に対して、温室効果ガスの排出削減義務を受け入れるようにどのように説得されてきたのか、御説明いただきたいと思います。
川口国務大臣 途上国の温室効果ガス削減における役割というのは非常に重要でございまして、なぜかといえば、恐らく二〇一〇年ごろには、途上国全体としての温室効果ガスの排出は先進国のそれを上回ると言われているからでございます。
 この枠組み条約の議論の中で、先進国はさまざまな努力をして途上国の参加を促すことを行ってまいりました。特に我が国におきましては、それぞれ共通に有しているけれども差異のある責任ということに基づきまして、これは枠組み条約自体にも書いてございますけれども、これに基づきまして、開発途上国に対しては、まず、みずからが自主的に取り組んでいる排出抑制、これについての努力を二国間協議等を通じて働きかけ、あるいは本会議の場でそういうことをやっていることをぜひ発言をしたらどうかということも働きかけまして、また、さまざまな支援を通じて、途上国側の能力の向上に取り組んでいるわけでございます。
 ことしの七月も、東京で、途上国も含めた排出削減のあり方について非公式の会合を途上国、先進国両方集まって開催をし、それも途上国が将来参加をするための努力をする一助になればということで考えております。
前田委員 そうした非公式の会議等を通じて強く主張していただき、また、途上国の立場もよく先進国に伝えられるように、これは一つ、最初の議長国であります我が国の役割だと思います。
 それから、次に伺いたいのは、やはり途上国の立場で考えますと、このガスの排出削減と経済成長があたかもトレードオフの関係にあるような、そんな感がいたしておると思うんですけれども、とにかく、排出規制を受け入れても途上国には経済発展の道があるのである、そういうことをまず深く説明することが大切であると思います。
 そうした観点から、COP6におきましても、途上国に対してマルチの資金提供の仕組みが創設されたわけでございます。例えば、特別気候変動基金、最貧国基金、京都議定書適応基金、こうしたものがつくられたわけですけれども、こうしたものについて少し御説明いただきたいと思います。
高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 COP7におきます、マラケシュの会議でございますけれども、マラケシュの合意におきまして、委員御指摘のとおり、気候変動のもたらす影響に適応するための措置、技術移転等に関する事業、エネルギー関連活動等を支援するための特別気候変動基金、それから、後発開発途上国による国別適応行動計画の作成等の支援を行う後発開発途上国基金、それから、京都議定書を締結した開発途上国の気候変動への適応を目的とする事業等を支援するための適応基金の三つの基金の設立が合意されております。
 一方、この基金に関する資金の全体規模等につきましては、まだ議論は行われておりません。今後、気候変動枠組み条約締約国会議等の場において、必要に応じて検討されることになると考えております。
前田委員 全体の規模を早く決定していただきたい。でないと、当然、各国がどのぐらいのそれを受けられるのかということを考えると思いますので、その辺、しっかりお願いいたします。
 そして、アメリカの立場からの質問をさせていただこうと思うんですけれども、アメリカの方は、この京都議定書、とにかく、中国やインドを含む途上国のCO2削減義務を免除してしまっている、そういう主張があります。それから、アメリカに対する七%の削減義務、これはアメリカの経済に非常に悪い影響を及ぼすんではないか、こう懸念していると思われますが、それがブッシュ政権の京都議定書の受け入れ拒否につながったと思うんです。
 一面では、この交渉の過程で、アメリカは既に、ベルリン・マンデート、先進国が先に削減義務を負うべきだというこのマンデートを一たん受け入れておりますので、それから考えますと、ちょっと矛盾したこの離脱の行動であると思います。
 しかし、さはさりながら、こうした主張を理解しながら、日本は、アメリカがもう一度戻るようにどのような方策を考えられているのか、御説明いただきたいと思います。
川口国務大臣 米国は、世界最大の温室効果ガス排出国でございます。したがって、米国がこの世界共通の取り組みの中に入ってくるということは、非常に重要だと考えております。
 我が国としては、米国も含む、途上国も含む、すべての国が参加する共通のルールづくり、これを目指しまして、米国の建設的な対応を引き続き求め、最大限の努力をしていきたいと思います。
前田委員 あと、アメリカの立場としましては、アメリカは、エネルギーの消費国である、輸入国であると同時に、世界最大のエネルギー生産国であります。こうした立場を考えますと、非常に複雑なものがあると思います。国内にエネルギー資源をほとんど持たない日本あるいはEU諸国と違って、米国の京都議定書への復帰を働きかけるについて、エネルギー生産国としての利害をしっかりと考慮する必要があると思いますけれども、我が国政府はこの点についてどのようにお考えなのか、御説明いただきたいと思います。
川口国務大臣 環境問題、地球温暖化問題とそれからエネルギーというのは、非常に関係が強くございます。環境、エネルギー、経済、この三つは非常に密接に関係があるわけでございます。
 委員がおっしゃられましたように、アメリカは、エネルギーの産出国でもございますし、また大きな消費国でもあるということでございます。したがいまして、アメリカの国内でエネルギー産出をする部門については、京都議定書についての反対の意見が特に強いという事情もあると私は認識をしておりますけれども、こういった温暖化排出ガスを削減していくという取り組みは、必ずしも経済面でマイナスの効果を持つだけではない、これは経済的にも機会でございまして、環境と経済は両立をするということをアメリカにも今後ともきちんと言っていくことによって、エネルギー産出産業のマイナスというのをできるだけ少なくしていく努力を我が国としてもしていきたいと思います。
前田委員 今、こうして、途上国の立場あるいはアメリカの立場から起き得る、考え得る問題を質問させていただきました。こうして、外交の舞台というのは、各国が国益をかけて戦う戦場でございます。その中にあって、非常に日本の外務省は緊張感がない。
 私は、次に、瀋陽領事館の問題を取り上げさせていただきます。
 まず、総領事館の職員が泣き叫ぶ母子を前にして傍観し、それから館内にまで武装警官の侵入を許して、亡命希望者を連行されるようなことを許してしまった。私は、まさに主権の侵犯の問題であると考えます。
 私は、外務大臣、まず伺いたい。外務大臣は、一体どこの外務大臣なんですか、どこの国の外務大臣なんですか。
川口国務大臣 日本国の外務大臣でございます。
前田委員 でしたら、先ほど、我が方の、民主党の金子委員の質問の中にもありました、拉致問題についても、本当に日本の国民がどう思っているのか、もっと強く、しっかりと主張していただきたい。
 先ほど、我が方の首藤委員が、主権に関する考え方が戦前、戦後では変わってきているんだ、主権の考え方が変わってきている以上、これに対応することも必要であるというようなことをおっしゃられました。
 この五月十日に衆議院の本会議で外務大臣は報告されましたけれども、入っていない二文字があった。これが主権という文字であります。もし外務省が今回の瀋陽総領事館の問題が主権の問題でないと言われるんだったら、その根拠を伺いたいと思います。
川口国務大臣 瀋陽総領事館事件につきましては、国際法上また人道上の問題があると考えます。国際法上の問題といたしまして、これは我が国の主権の侵害としてではなくて、領事関係に関するウィーン条約において認められた、領事機関の公館の不可侵に対する違反としてとらえるべきものであると考えております。
 つまり、この件は中国国内に存在する我が国の総領事館において発生をしたものでございますけれども、その領域においては中国の領域主権が及んでいるわけでございます。ただし、総領事館は、領事関係に関するウィーン条約三十一条で、専ら領事機関の活動のために使用される部分については不可侵権を持っているということでございます。したがいまして、今回の中国側武装警察による総領事館への立ち入りは、この公館の不可侵への違反であるということでございます。
 主権ということでございますけれども、主権は、国家が自分の、自国の領域、すなわち領土、領空、領海において持っている、他の権力に従属することのない最高の統治権のことでございまして、国家の基本的な地位をあらわす権利でございます。ある国家が、主権国家たる他国の領域内において、その他国の同意なしに公権力の行使と呼ばれるような行為を行うことは認められない。仮にそういうような行為を同意なくして現実に行うということがあれば、これは主権の侵害、そういうことになるわけでございます。
前田委員 では、先般発表されましたこの事件に関しての外務省の報告書を読ませていただきまして、何点か事実関係の確認をさせていただきたいと思います。
 中に入った亡命希望者の二人が、ビザの申請所、ここにいたわけでありますけれども、十五分の時間のずれがあったわけであります。この二人が中国の武装警官に拘束されるまで、十五分のずれがあった。この間に何があったのか、御説明いただきたいと思います。
田中政府参考人 これは、テレビの映像からも明らかでございますが、最初、担当副領事が門扉のところにいて、武装警察官の詰所に行ったというときに、横にいました門衛、これは中国人のスタッフ、ガードマンでございますが、これがその二人の後を追いかけていって、その二人とともに、領事査証の待合室の長いすにお二人は座り、門衛はその前で見張っていたということでございまして、その門衛からもヒアリングをしたわけでございますが、彼は自分の任務は警備であるということで、そこで見張っていたということでございます。
前田委員 ということは、その間に副領事もその場に戻っていなかったということで、何もしなかったわけですか。
田中政府参考人 その査証担当副領事につきましては、門の外の、門のところでございますけれども、そこでのやりとりに追われていたということでございまして、警察の詰所のところで、まだ館内に二人いると、それから、周りから北朝鮮人であるという声が聞こえ、それで彼は慌てて中に入っていった、その際、後ろから武警が同時に入ってきた、こういうのが事実関係でございます。
前田委員 三月に、北京のスペイン大使館へ北朝鮮の二十五人が亡命を達成しました。これを受けて、亡命希望者に対する対処方針マニュアルを外務省は定められたと聞いていますけれども、その内容はどのようなものなんでしょうか。これに対して、福田官房長官ですら記者会見で、あっても使わなければしようがないというようなことをおっしゃっておりますけれども、この内容はどのようなものなのか、御説明いただきたい。
田中政府参考人 スペイン大使館の事例と申しますのは、門が非常に広くあいていて、そこに、二十五名だと思いますが、二十五名の人が駆け込んだ。ほかの例のほとんどは壁を乗り越えて館内に入っていったということでございまして、当時の考え方、基本的な対応ぶりというのは、まさに、館内に入った北朝鮮からの人々、これについてきちんと人定をし、かつ人道上あるいは総合的な配慮をしながら、それについて処理をするということでございました。
 同時に、警備の必要性、これはどこの総領事館でもそうでございますけれども、やはり警備も厳重にしなければいけないということで、警備についてもその基本的な対応ぶりが準備されていた、こういうことでございます。
前田委員 そうした対処のマニュアルが、大使館に勤務する警備の人たちにまでしっかりと伝わっていない。だから、今回入ってきた二名に対しても、そんな、見張っていることしかできなかったんじゃありませんか。
 次に、私は問題として挙げたいのは、門で泣き叫ぶ親子を前にして、領事館の館員が傍観者的に立っていた。これに対して報告書は、この副領事のところなんですけれども、ちょっと読み上げます。「地面に落ちていた武装警察官の帽子、女性用の靴、ボールペン等を拾いつつ女性らに接近し、中国語で落ち着くよう何回も声をかけた。」これはうそじゃありませんか。あの映像で見る限り、何回も丁寧に声なんかかけていませんよ。どうですか。
田中政府参考人 中国の総領事館に過去、門のところでけんかが起こったり、あるいはそこで査証申請人と武警がトラブルになったり、いろいろな事故が、事故と申しますか、いさかいが起こっていたということも事実でございます。ですから、そこの総領事館の館内から出てきた副領事は、これは後から考えてみますと、私たちはそれが北朝鮮の人々、特に非常に緊急的な状況に置かれている人々であるということはわかったわけでございますが、実際に総領事館の館内から出てきた査証担当の副領事にすれば、その認識はなかった。事故であるとか、けんかであるとか、そういう話だという認識を持っていたということでございまして、とっさに、事態を落ちつかせるために落ちつきなさいという形で声をかけたというふうに承知をしております。
前田委員 あの映像で見る限り、そんな何回も声をかけていませんよ。そういうことをしっかりとこうした報告書に書かない。間違ったことはこんなところに書くものじゃありません。
 あと、次に、私は伺いたいんですけれども、総領事は当時、飛行機事故の関係で行ったり来たりされた。首席領事は健康休暇をとられていた、四月の二日から。これは、もししっかりと危機管理の意識があるならば、トップがいなかったら次はとれないでしょう。これは、休暇はだれが認めたんですか。そういう休暇の管理とかはしっかりされているんですか。
田中政府参考人 御指摘のとおり、首席領事につきましては、事件の発生当時、健康管理休暇で帰国中でありました。健康管理休暇というのは当然一つの権利として認められているわけでございますが、外務省の承認のもとで認められているということでございまして、この事件があったときに帰国の日程を切り上げて帰るということでございましたけれども、本人によりますと、切符の手配等で結果的には十二日に帰国をするということになった。これは今から考えてみますと、当然のことながら、もう少し早く瀋陽に帰るべきであったというふうに考えております。
前田委員 私は、首席領事の休暇の管理をどなたがしっかりしていたかというのを聞いているわけですよ。それは、これからの一つの、外務省の中にしっかりとした筋を通していただきたい。トップがいなかったら次の地位にある者は必ずそこにいるとか、そうした危機管理の体制をしっかりとっていただきたい、何が起こるかわからないから。
 次に、不手際がいろいろあったわけですけれども、第一報が官邸に入ったときに、官邸は五人が領事館内に入っていたという感触は持っていなかった、夕方になって初めて入っていたとわかったということですけれども、これは非常に重大なミスがある。そのまま客観的な情報を流していない。
 そして、大使は一体何をしていたんですか、次の日まで。公使は確かに、大臣が言われるように、抗議に行かれた。大使は一日半も何をやっていたんですか。
田中政府参考人 一点、先ほど答弁漏れがございましたので申し上げますと、総領事につきましては、同じ管内、大連というのは瀋陽の総領事館の管内にございますから、あのときも総領事が指揮責任者であったということでございます。
 それから、官邸その他に対する第一報でございますが、私ども、状況というものは、あのときには少なくとも三人の人も館内に入っているということは認識ができていなかったということでございまして、我々として客観的な認識ができたところについて報告をしたということでございます。
 それから、大使がどうなのだということでございますが、私どもはその事実を認識し、二人が総領事館の中に入り、かつ武警がそれに跡を追うように入って連れていったということについては、私ども明らかな事実であるというふうに考えまして、直ちに抗議をするような訓令電を発出したわけでございまして、できるだけ高いレベルで、かつ時間の観点から早くやれという指示でございまして、最もアベイラブルであった館員、先方に見合った形の館員として公使が抗議をしたわけでございます。引き続き、大使は翌日抗議をしているということでございます。
前田委員 いずれにしても、不手際がそろい過ぎている。初動の出おくれ、事実関係の把握の遅さ、これを反対に中国側に指摘されているわけでございます。
 そして、二名が持っていた身上書、その一件が一切報告書から抜け落ちているという間違った、先ほどの、何回も中国語で落ちつくように副領事は言ったとか、抜け落ちたものがあるようなもの、こうしたものを国民に明らかにするということは間違っているんじゃありませんか。
 私は、大使そして総領事、この二名のしっかりとした厳しい処分をお願いしたい。これは国民の声であると思います。
 そして、その責任は最後にだれにあるのか。この外交の舞台というのは、先ほど申し上げました、国益が戦う戦場であります。外交官たちは使命感を持ってこの戦場に臨んでほしい。大臣はもう御自身、辞任されるべきではありませんか。
川口国務大臣 現在一番重要なことは、この問題を人道的、国際的な観点から早期に解決をしていく、そのために冷静にかつ毅然とした態度で中国と協議をしていく、これが第一の責任であると考えております。
前田委員 最後に申し上げますけれども、では、その一件が大体落ちついたところで川口大臣は責任をとられるべきであると思いますが、どうですか。
川口国務大臣 問題が解決をいたしました後で、これはぜひ再発がないようにしないといけないと考えておりますので、これに現在既に取り組んでおりますけれども、そういった問題が二度と生じないように全省挙げて、また公館の警備については、中国側と協力をし、どういうやり方をやるかということについて話し合っていかなければいけませんので、そういった課題に全力を挙げて取り組みたいと考えております。
前田委員 最後に、そうした課題にしっかり取り組んでいただきたい。それにも増して、やはりこの外務省という組織を変え、意識を変えるためには大臣の辞任しかないと思います。これを私は要求しまして、私の質問を終わらせていただきます。
吉田委員長 次に、土田龍司君。
土田委員 外務省の問題、たくさんいろいろな問題があって、質問したいことも多いんですが、まず京都議定書の方の、人類の未来にかかわる問題でございますから、そちらから先に質問させていただきます。
 十四年前にトロントで開催されたサミットにおいて地球環境問題が初めて議題として取り上げられ、翌年のパリ・サミットにおいて、経済宣言の三分の一を地球環境問題が占めたわけです。そして、この地球環境問題への世界的な関心の高まりを受けまして、一九九二年、気候変動枠組み条約が採択をされ、この条約のもとに、一九九七年、温暖化防止の京都会議、先進国に温室効果ガスの排出の規制を強制するという議定書が採択をされたわけです。
 この京都議定書は、二一〇〇年までに世界全体で一人当たりの温室効果ガスの排出量を一トン以下に抑えるということを目標としているわけでございまして、やっとといいましょうか、確かな一歩を踏み出したというふうに私も言えると思います。
 しかし、先進各国の排出削減率を確定したとはいえ、吸収源の扱い、あるいは補完的措置として京都メカニズムの活用、さらには排出削減義務不遵守の場合の対応等については、昨年末のマラケシュにおける気候変動枠組み条約第七回会議での合意まで、困難な交渉が継続をされてきました。
 その過程では、世界最大のCO2排出国であるアメリカが交渉から離脱をしてしまうという出来事があったにせよ、既に我が国は、アメリカ抜きでもこの議定書の発効をやるんだという決意をしたわけです。であるならば、我が国として誠実な、日本としての義務を当然果たしていかなきゃならないと考えるわけでございますが、特に国内問題について私は幾つか素朴な疑問を持っておりますので、それについて質問をさせていただきたいと思います。
 九〇年代を通じまして、CO2の排出量は、産業部門は大体横ばい、民生部門、運輸部門はふえ続けておりました。こうした部門間のアンバランスの意味するところは、環境倫理や自主的な取り組みを個々の消費者あるいは中小企業に求めることがいかに難しいことであるかということが言えるかと思うんです。規制や税がなくても大企業には自主的な取り組みをするだけの余裕はあるわけでございますが、中小企業にはとてもそんな余裕はありません。その結果、全体としてのCO2の排出量は増加せざるを得なくなるという現状にあるんじゃないかと思うんです。
 さらに、中央省庁による業界団体への行政指導という日本独特の仕組み、これが経済の自由化や国際化に従ってだんだん効き目が薄くなってきているんじゃないかというのが実情ではないかと思うんです。そこで、自主的な取り組みだけで事が足りるのか、あるいは効果が上がっていくんだろうかという感じがしております。
 そこで、政府としまして、こういった自主的取り組みだけで実効が上がっていくのか、あるいは、そのために場合によっては規制や新税を導入することも考えているかどうか、この辺についてお尋ねしたいと思います。
大井政府参考人 お答えいたします。
 産業界の件についてお尋ねがありましたので、経済産業省の方からまずお答えさせていただきます。
 先ほど先生からも御指摘がありましたように、産業界におきましては、これまで自主的取り組みというものを積極的に行うことによりまして、二酸化炭素の排出量が、ここ十年来を見ても、また二十五年ぐらいを見ても、ほぼ横ばいというところで推移しているわけであります。そういった中で、民生部門あるいは運輸部門と大変違う動きを示しているというのは御指摘のとおりでございます。
 私ども、産業界の取り組みについてでございますけれども、いかに産業界の創意工夫というものを引き出しながら有効な排出削減を実施していくかということが大変重要であるというふうに考えております。そういった意味におきましても、自主的かつ創意工夫を生かした産業界の取り組みというものを基軸にいたしまして、地球温暖化対策の解決に有効な技術開発あるいは新市場の創造、こういうものにつなげていきたいというふうに考えているところでございます。
 それでは、今後どうなるかということでございますけれども、新大綱を定めております。それによりますと、まず第一ステップの対策というものを進めていくわけでありますけれども、この対策を講じていく中で、平成十六年、それから平成十九年におきまして、我が国における温室効果ガスの排出及び吸収の量の状況、その他の事情というものを勘案いたしまして、京都議定書目標達成計画に定められた目標及び施策について検討を加えるというのが、今、国会で御審議をいただいている国内法の基本的な考え方になっているわけでございます。
 そういった検討の結果に基づきまして、必要があるときは京都議定書目標達成計画というものを変更するというのが政府の基本的な考え方になっているというところでございます。
土田委員 この自由化、国際化の進展ということに対して、新税の導入といった経済措置を講じることは極めて効果的であると私は思っているんです。つまり、規制措置に比べると、より安い費用で同じ効果を期待できるという部分があるかと思うんですね。また、市場経済の効率的な資源配分をゆがめないためにも、経済的な措置を優先させ、規制的措置の適用をなるべく小さくする、やむを得ない場合に限るべきだというふうな感じをしているんです。
 このような意味で、いわゆる炭素税の導入でございますが、炭素含有量の多い石炭や石油から炭素含有量の相対的に少ない天然ガスへの燃料転換を促したり、また、CO2を排出しない再生可能なエネルギーを促して、ガソリンや電力など二次エネルギーの短期的な、あるいは中長期的な節約を促すことが非常に重要であると考えるわけです。
 さらに、化石燃料の九九%を我が国は輸入に頼っているわけでございまして、この化石燃料の消費削減は輸入削減になってしまうわけです。ですから、炭素税の導入は貿易収支を改善する効果もあるというふうに私も考えます。
 そこで、政府としまして、この炭素税の導入についてどのような議論がなされ、どのような考え方を持っておられるんでしょうか。
大井政府参考人 お答えいたします。
 産業との関連もございますので、私の方から答えさせていただきますが、今御指摘になりました炭素税であるとか、あるいは課徴金とか、そういう経済的手法というものがあるわけでございます。
 これを一体どのようにしていくかということにつきましては、先生も先ほど御指摘ありました、いろいろ手法があると思いますけれども、他の手法との比較考量を行いながら、環境保全上の効果であるとか、あるいはマクロ経済、産業競争力等、国民経済に与える影響、また諸外国においてどのような取り組みをしているのか、こういった現状、こういったものについてのさまざまな論点につきまして、地球環境保全上の効果が適切に確保されるよう、国際的な連携にも配慮しながら、さまざまな場で引き続き総合的に検討していく必要があるものというふうに考えております。
土田委員 高度経済成長期に国民の所得水準が向上し、家庭電化製品の急速な普及を誘い、家庭用電力の消費の急増をもたらしたわけでございます。電化製品が急速な普及をした結果、一九六五年から七三年にかけて、八年間で家庭用の電力消費が二・七倍、年平均増加率が一三・四%にもなりました。自動車の急速な普及が始まったのも、ちょうどこの時期であるわけです。
 また、八〇年代後半に日本経済はバブル経済に突入して、人々のライフスタイルがエネルギー多消費型へと急旋回を遂げたわけでございます。このために、九〇年代に入ってからも、エネルギーの消費は、八〇年代後半以来の増加にあるという現状でございます。
 他方、日本経済は、バブル経済の崩壊から今日に至るまで、構造不況の長いトンネルから抜け出すことができない状況にあって、景気回復の確かな見通しがいまだ見えてこない現状にあります。
 今、この温室効果ガスの排出削減を進めようとすれば、少なくとも八〇年代後半以来のエネルギー多消費型のライフスタイルを転換せざるを得ないのではないかというふうに思います。したがって、国民の消費支出を少なくとも短期的には縮小せざるを得ないのではないか。つまり、現時点において温暖化防止対策の国内実行は、経済的な必要と相反することになるのではないか。一方で、約束の期限は二〇〇八年でございますので、残された時間はそれほど多くないというわけでございます。
 政府は、このような二律背反的な問題をどのように采配をしていくつもりなのか、御説明願いたいと思います。
小島政府参考人 お答えいたします。
 国民のライフスタイルが、戦後、三種の神器あるいは三Cというような製品の普及、最近はコンビニあるいはスーパーマーケットというようなことで多消費型に変わってきたということは、先生御指摘のとおりであります。これを省エネ型あるいは温暖化対応型に転換していくのも、また同じようなことではないかと思っております。
 一つは、省エネ性能の非常に高い住宅、あるいは低公害の自動車、あるいはトップランナーの製品、冷蔵庫を初めとする家庭電化製品もかなり省エネ型になっております。そういう省エネ型の製品を企業が開発し、これを国民が積極的に購入していく、そういう買いかえ需要を掘り起こして、それを大々的に行っていく、そういうことを通じて国民のライフスタイルが省エネ型あるいは温暖化対応型に変わっていく、そういうことで環境と経済の両立を図っていくということが一つの基本であります。もう一つは、そういうことを促進するために、学校教育あるいは社会教育を通じて普及啓発を行っていく。この二つの柱で国民のライフスタイルの転換というものを自発的に促していきたいというふうに思っております。
 そのために、税制上の措置あるいは補助金等のインセンティブを与える措置を企業等にあるいは購入する方々に与えることでありますとか、あるいは、今回の京都議定書の国内担保法として御審議いただいております地球温暖化対策推進法の普及啓発の措置、こういうものを新たに講じていくというふうにしてまいりたいと考えております。
土田委員 この個人の生活のライフスタイルを変える、変えさせることですね、普及活動をその重点にやっていきたいということでございますが、政策の進め方によっては、いわゆる個人の自由といいますか、あるいは民主主義の進展に矛盾するんじゃないかということも想定されるわけですが、この点はどう考えられますか。
小島政府参考人 ライフスタイルの転換のための措置は、今申し上げましたが、一つは、製品の購入という経済の流れを通じて自然に変えていくということであります。もう一つは、やはり意識的に、環境に優しい生活をすることが格好いいだとか、あるいはそういうことが望ましいことだというふうに自発的に考えていただくことでございます。
 そういう意味では、転換をどういうふうに促していくかという観点からいろいろな措置を考えておりまして、そういう、しなければいけないとか、規制的あるいは強制的な方法によらないでライフスタイルを変えていただこうというのが基本でございます。
土田委員 次に、吸収源の問題なんですが、我が国の温暖化防止対策では、森林によるCO2吸収分が三・九%と見積もられ、非常に大きな割合を占めているわけですね。しかし、CO2の年間排出量は、化石燃料の年間消費量の統計に基づいて相当高い精度で推計することができるわけですが、森林、海洋あるいは土壌のCO2の吸収源に一年間に何トンのCO2が吸収されたかを正確に測定するのは非常に難しい問題だと私は思います。
 政府は、この点についてどういった解決を考えておられますでしょうか。
小島政府参考人 森林等におきます吸収量は、現在利用可能な木の種類あるいは木の年齢、そういうものに基づきました森林の成長データ、あるいは森林の面積、それから木材伐採量の計画値、こういうようなものに基づきまして、昨年十月に閣議決定をされました森林・林業基本計画の目標どおりに計画が進む、こういう前提で推計をしております。
 しかしながら、吸収量の詳細な計測の方法というものにつきましては、まだ国際的に合意されたものがありません。したがいまして、国際的に合意された指針をつくろうということで、二〇〇三年に開催をされますCOP9、来年の締約国会議になるわけでございますが、そこで国際的な指針を合意しようということで、現在、気候変動に関する政府間パネルで国際的な議論が行われているところでございます。
 我が国といたしましては、そのIPCCの国際的な指針づくりというものに積極的に参加をして、科学的、実用的な指針が策定されるように努めていきたいと考えておりますし、それから、議定書の第五条一項で、第一期の約束期間が始まる一年前、これは二〇〇六年末ということになりますが、そこまでにそれぞれの国は計測のための国内制度を整備しろという規定がございますので、我が国のこれまでの計測の経験、あるいは今後策定されます国際的な指針というものにのっとって、この議定書の五条一項に従いまして、二〇〇六年末までに議定書対応ができる計測の整備をさらに充実させていきたいというふうに考えております。
土田委員 植林などのCO2吸収源対策を進めるに当たって、森林火災などで、蓄積された炭素の予測し得ないような大気への放出等も考えなきゃならないと思うんですね。また、最後には枯れ木になって、結局はCO2が大気中に再放出されるということも計算に入れなければならないわけです。
 つまり、生物系システムによって、炭素固定は本来的に不安定な性格を有しているんじゃないかというふうに思うんですね。したがって、これに温暖化防止対策のかなりの部分を頼るということは極めて危ないんじゃないかという感じがするんですが、政府はこの点はどのように考えておられますか。
小島政府参考人 先生御指摘のような点は確かにございますが、森林というものは、整備保全が適切に行われれば、これは炭素蓄積機能を安定的に発揮できるというものでございまして、温暖化対策として、排出の削減と並ぶ重要な柱であるというふうに考えております。
 御指摘の森林火災等の不測の事態ということでございますが、森林・林業基本計画におきましても、森林の保全の確保ということで、松くい虫等の病虫害の予防でありますとか、あるいは林野火災の予防ということに万全を期すということが定められておりまして、そのような防止措置を確実にとって吸収源を確保していくということが重要であるというふうに考えております。
土田委員 我が国のこの森林の荒廃状況、非常に荒れてきている。あるいは、森林行政をめぐるさまざまな問題点がある。森林経営の基盤に深刻な問題を抱えていると私は思っているんです。
 そこで、CO2吸収を三・九%、これを実現できるかどうか、これについて私はなかなか難しいと思うんですが、どう考えておられますか。
米田政府参考人 林野庁の次長でございます。
 御質問の件でございますが、確かに、六%の中で三・九%を担うわけでございます。この削減目標に算入し得る吸収量、一九九〇年以降に手入れ、管理等の活動が行われた森林の吸収量に限定されるわけでございます。森林の整備保全を積極的に進めることが重要という認識で、昨年、森林・林業基本計画におきましても、その目標が達成された場合、森林経営による吸収量の上限値三・九%程度の吸収量の確保が可能と我々推計しておるところでございますが、先生おっしゃいましたとおり、林業、森林、いろいろな問題を抱えております。
 そういう中で、現状程度の水準で森林整備等が推移した場合には、確保できる吸収量は三・九%を大幅に下回るおそれがあるということを、地球温暖化対策推進大綱においても明示しているところでございます。
土田委員 現状のまま推移していった場合は、三・九%を大幅に下回るだろうということですね。だったらば、どのぐらいの数字になるんでしょうか。
米田政府参考人 地球温暖化大綱の中に明示してありますとおり、現状程度の水準で森林整備、木材供給、利用等が推移した場合の人為活動の行われた森林の吸収量は、約三千五百五十万二酸化炭素トンでございます。したがいまして、目標が四千七百七十万二酸化炭素トンでございますので、かなり大幅に下回るというふうに理解しております。
土田委員 議定書の関係はこの辺で終わりにさせていただきまして、私は、午後からまた十五分持ち時間がございますので、その流れで幾つか質問をさせていただきますが、まず最初に、瀋陽事件のことなんですが、幾つか指摘をされている中で、この八日に起こった事件の初動のまずさということは当然あるかと思うんですね。
 当初、官邸に伝えられたのが、五人が瀋陽総領事館への侵入を試みたが、中国武装警察官に阻止され、連行されたという情報であった。この敷地内に入った北朝鮮人はいなかったことになっていたわけでして、政府は、領事関係に関するウィーン条約に絡む問題までは発展しないというふうに認識をしていた。ところが、二人は敷地内で取り押さえられ、三人は外にいたと訂正したのが八日の午後九時。さらに今度、九日の午後十時になって、敷地の中に五人が実は入っていたということがテレビニュースの映像を見てわかったとされています。
 なぜこういった情報が、この短い時間の中で正確に外務省はつかめないのかなという感じがするんです。総領事館があって、大使館があって、外務省があって、今の時期に、こういった情報が不正確に、あるいは変わっていった、この原因は何だと思いますか。
    〔委員長退席、首藤委員長代理着席〕
田中政府参考人 私ども実は、第一報を受け、それから指示を出す、これは日本時間で三時半以降のことでございますけれども、その段階で、三名の人がこの門の入り口付近で、それから二名の人が総領事館の建物の中で、それぞれ武装警察官に拘束をされたということは把握をしておりました。
 ですから、官邸に対してはその旨の御報告がしてありますし、なおかつ、大使館あるいは総領事館を通じて抗議を申し入れた際も、そういう認識の中で、身柄の引き渡しについては五人全員について要求をしているということでございます。したがって、確かに最初の状況のときに、よく事情が把握できていない部分はあったかと思いますけれども、こういうことというのは、少なくとも相手国政府に申し入れを行うときに、そういう事実関係の認識の中で措置をしたということでございます。
 ただ、私どももわからなかったのは、その三人の女性の方が総領事館の中に入ったということでございますし、武装警察官も、その排除といいますか、そういう、彼らの言葉で言えば排除のために武装警察官も中に入ったというのは、確かにテレビのビデオを見て確認がされたということでございます。
土田委員 余り答えになっていないんですが、情報によって判断し、態度を決めていくわけですね。それが、この短い時間の中で、そういった情報があいまいに伝わってきたということは、非常に私は解せないなという感じがしてならないんです。
 田中局長が理事会において説明をされました。そのときは確かに、入ったのは二人で三人は外にいた、しかし、五人の引き渡しを求めるんだ、これは人道上の問題なんだ、家族だからだという話をされた。それで、翌日テレビを見て初めて五人が入ったとわかったということは、これはやはり、総領事館あるいは大使館からの連絡あるいは情報のことについて、余りできていないのかなという感じがしてならないんです。
 時間が来ましたので、あとは午後やります。以上です。
首藤委員長代理 次に、松本善明君。
松本(善)委員 外務大臣に伺います。
 このいわゆる京都議定書の問題というのは、いうなれば、地球を人類が管理をすることができるかどうかという非常に大きな問題だというふうに思います。大臣は、環境大臣として直接かかわられていましたから、全部大臣にお聞きします。
 本議定書では、森林吸収が認められている。森林吸収については、森林が温暖化ガスをどれほど吸収するかについて不確実な部分が多くて、さらに、その吸収量の計算方法も確立していないなどの問題が指摘をされています。しかし、日本など四カ国、ロシア、オーストラリア、カナダ、いわゆるアンブレラグループと言われていますが、その四カ国が最後まで自国の主張として押し通したために、それ以外の大多数の国が四カ国に譲歩することでけりをつけたというふうに言われています。
 森林吸収を認めさせた結果、九〇年比平均五・二%削減という先進国等全体の削減目標が、一・六%減で済むことになった。こうした日本の抵抗は、議定書の内容を大幅に薄める役割を果たしたということになるのではないでしょうか。大臣、どうお考えになりますか。
川口国務大臣 京都議定書の交渉を必死にやっておりましてから半年ぐらい、それが十一月のことでしたので半年ぐらい経過をいたしまして、内容の細かいことについてすべて私がお答えできるかどうか自信はありませんけれども、まず吸収源のことで申し上げれば、これは、京都議定書自体、したがいまして、九七年に各国が合意をしたということでございまして、それ以降、マラケシュでのCOP7あるいはその前のハーグ、ボンでのCOP6、その場では、具体的に各国にどれぐらいの吸収源を量的に認めるかということの議論をしていたわけでございます。
 それで、日本は吸収源について三・九%という数字を最終的にもらっていますけれども、それは、六%の削減の目標値のうちの三・九%ということではなくて、日本が実際に削減しなければいけないのは、その後、九〇年から今に至るまで、一番最近の数字が何%かよくわかりませんが、一〇%ぐらい伸びてしまった、したがいまして、六%を足しますと、そこから一六%ぐらい減らさなければいけない、その中の三・九%だということでございまして、これは、京都議定書における削減を各国が円滑にやっていくために最初から決められたルールであるということでございます。
松本(善)委員 この問題は、各国のエネルギー政策の根本的な転換など、国内的な政策的措置によって温暖化ガスの削減を進めるというのが根本で、それがやはり京都議定書の精神だと思うんです。
 しかし、経済活動への影響を小さくしたいというアメリカや日本の要求によって、国内措置を補完するものとしてこの措置が認められた。その補完的措置として本議定書で認められたのが、排出量取引、クリーン開発メカニズム、共同実施という、いわゆる京都メカニズムと総称される三つの措置と今の森林吸収だったと思います。これらの京都メカニズムは、国内措置によって温暖化ガスを削減する、いわば本議定書の精神に反する抜け穴として批判をされているものであります。
 京都メカニズム、特に排出量取引制度は、しっかりした遵守制度のもとで行われることによって信頼性を保ち、機能するものであります。日本政府の京都メカニズムは強い遵守制度によるべきではないとする主張、これは今でも与党内になかなか強いものとしてあるようです。これは、京都メカニズムの信頼性を失わせるに等しいものではないかと考えますが、大臣、どう考えますか。
川口国務大臣 京都議定書の中に定められております京都メカニズムというのは、価格メカニズムを活用して、温暖化ガスの削減を費用効果的にいいやり方で行おう、そういう考え方でございまして、これも九七年に京都議定書が京都で合意をされました段階で既に入っている考え方でございます。
 同じ量の温暖化ガスを削減するときに、コストが安く削減できればできるほどいいわけでございますし、また、地球上の温暖化ガスというのは、それぞれその国の上に存在するわけではなくて、地球全体として存在するわけですから、費用対効果がいいやり方でやろう、そういう考え方でございます。
 これについては、今後細かいルールについて議論をして決めていくということになろうかと思いますけれども、これは信頼性のあるメカニズムでないと動かない、働かない、機能しないということは、全くそのとおりだと思います。
 不遵守の結果の法的拘束性、これにつきましてはずうっといろいろな議論がございまして、今度の京都議定書が発効しました後開かれる第一回の会合において、この点については議論をされ、決定をされるというふうに私は記憶をいたしております。
松本(善)委員 これについてのいろいろな世界の世論を見ますと、例えば、日本に譲歩せざるを得なかったことについて、EUは、日本が京都議定書発効に不可欠な国であったために、COP7の最終レポートでそういうふうに述べています。
 また、会議の公式記録を出すアース・ネゴシエーション・ブレティンというニュースにおいても、この取引を行う中で、EUとG77及び中国は、主要なアンブレラグループ、先ほど申しました四国でありますが、それの要求の多くを渋々認めざるを得なかった、議定書の発効には自国の参加が欠かせないという認識から、ロシア連邦、日本、オーストラリア、カナダは、集団的にも個別にも、このことをてこに使って批准の代価を下げようとした、幾つかの場面で批准カードを切ることで、これらの諸国は、遵守システムの弱体化、メカニズムのための有資格要件引き下げ、吸収の参加の機会と透明性の阻害、吸収に関する情報の提供についての要求を最小限にするように動いた、こう批判的に報じております。
 これは、マラケシュでの交渉だけでなく、ボンの交渉でも、ヨーロッパのマスコミ、例えばドイツのベルリナー・ツァイトゥングなどは、EU諸国が、最後まで川口環境大臣の、これはそのとおりなんですが、ずうずうしい値切り要求を前に、つらい譲歩を余儀なくされたと報じ、南ドイツ新聞も、日本が賛成したのは破壊者としての責任をひっかぶるのを恐れたからだと伝えた。イギリスのガーディアン紙は、社説で、ボンでの日本のリーダーシップには誇るべきものはほとんどない、日本は、協定が崩壊するというおそれにつけ込んで、以前には否定されていた譲歩を引き出したという指摘さえしているところであります。
 私は、こういうようなことが言われるような、大臣はどういうふうに否定されるかわかりませんけれども、やはり、日本が地球という環境を守るという先頭に立っているというような評価が全世界から行われるような、そういう外交が必要なのではないかと思いますが、大臣はどのようにお考えですか。
川口国務大臣 委員は幾つかの新聞をお挙げになられましたけれども、私は、自分のことですので余り申し上げたくはないんですけれども、ほかの新聞等ではまた別の評価をしていただいていると思っております。マラケシュの会合が終わった後だったと思いますが、EUの文書には、こういうことはめったにないことだそうですけれども、私個人の名前を挙げていただいて、非常に貢献が大きかったとたしか書いていただいていると思います。
 EUと日本は、この会合で、共通の目的に向かって、すなわち京都議定書について合意に達するということが非常に大事であるということを共通の目標として、一緒に、どうやったらほかの国にも満足いくような合意ができるかということを考えたわけでございます。そういう中で、共通の目的に向かってみんなが譲歩し合って、地球の温暖化ガスを削減するという非常に重要な目標を一緒に獲得した、私はそういうふうに考えております。
松本(善)委員 いろいろな立場からの評価がありましょうけれども、やはりそういう批判的な評価のないように日本は行動すべきであると私は思いますが、この問題の最後に、アメリカの問題であります。
 アメリカが本議定書から離脱したことも非常に重大で、京都議定書の中身はアメリカの主張を大きく反映しているものです。例えば、排出量取引などの市場メカニズム活用措置は、国際的な使用実績がないにもかかわらず、アメリカの参加を確保するために、その主張を受け入れて盛り込まれたものであります。削減目標も、アメリカの主張を反映して決められました。
 世界で最大の約三六%もの排出量を占めるアメリカが本議定書から離脱したことは重大なものです。アメリカの主張で決められたにもかかわらず、最終段階で離脱する、そして合意内容に大きな影響を及ぼし、修正の余地を残している段階で、実行目前の段階になって、致命的欠陥があるから支持できないという、このアメリカの態度。川口外務大臣、離脱すると表明したことをどう考えるのか。
 私は、最近のアメリカの態度につきましては、特に全世界で批判がありますが、一国主義、いわゆる国益を中心にして、世界全体のことを考えていない。人類や地球を守るという立場に、今全体の、全世界の国が立たなければならないときに、アメリカの態度は国益中心主義だ、これはいろいろな面から非常に強い批判があります。
 大臣は、アメリカのこの問題について、どういうふうに考えますか。
川口国務大臣 米国が京都議定書を支持しないということを昨年の三月に言ったということは、私としても非常に残念なことでございましたけれども、他方で米国は、ブッシュ大統領がその後、米国としていかに温暖化問題に取り組むかということを発表いたしまして、科学技術の面、その他の面で取り組みを始めているわけでございます。
 これは、地球温暖化について言いますと、地球は一つでございますので、米国もそれから発展途上国も、みんな共通の枠組みで入って取り組んでいくということが非常に大事なことでして、我が国としては、アメリカの参加ということを目標に、現在、ハイレベルの協議を米国と一緒にやっておりまして、ここの場で、例えば、発展途上国をどう支援していくか、技術の面でどのように開発を進めていくか、技術の開発を進めるか、あるいは市場メカニズムを温暖化ガスの削減のためにどのように使うかといったような点について議論をしているわけでございます。
 こういった議論を通じて、アメリカが、この京都議定書の我々の取り組みと一緒になって、世界一つの、共通の枠組みで温暖化ガス削減問題に取り組めるということが望ましいことだと考えております。
 ちなみに、米国は、京都議定書を支持しないということは言いましたけれども、私が個人的に知っている、あるいは経験をした範囲でいいますと、それぞれの締約国会議におきましては、非常に建設的に議論を、どうやったらいい方向に持っていけるかという観点で参加をしております。議定書自体は支持しないけれども、いい枠組みができるための努力はアメリカも引き続き続けていると私は考えております。
松本(善)委員 やはり、京都議定書にアメリカも参加をさせて、そして地球を守るということについてさらに強く前進することが必要だということを強調して、最近の外務省の本当に大変な事態、根本的に立て直さないといけないような事態になっている諸問題について伺いたいと思います。
 私も本会議で質問し、参議院で小泉議員も質問し、昨日の参議院外交防衛委員会で小泉議員が質問いたしました。
 まず、領事移住部長に聞きたいんですが、この質疑の中で、いわゆる北朝鮮から来た人たちの問題について、こういうふうに答えています。
 例えば、中国側がまず不審者として誰何したときに、この人はどうも北朝鮮から来た人らしいということになったときには、基本的には恐らくその警察は、我が方大使館あるいは総領事館にその旨通報し、照会する、この取り扱いについて照会するということは期待されるんだろうと思っておりますというふうに答弁をしておりますが、それでよろしいですか。
小野政府参考人 そのとおりでございます。
松本(善)委員 瀋陽の状態というのは、実際にはこういうふうに展開するんでしょうか。中国警察が、むしろ北朝鮮から来た人だということがわかれば拘束するということにはならないんでしょうか。必ず日本側に照会するということが確認できますか。
小野政府参考人 お答えいたします。
 私、きのう小泉委員にもお答えした際に、北朝鮮の方等いわゆる不審者が在外公館等に来るときに、さまざまな形というか、ケースがあり得るんだろうと思います。北朝鮮人といっても、いわゆる合法的に滞在している人もいますし、あるいは非合法で、例えば他人に成り済ます、あるいは偽変造旅券等を持って在外公館に来る、そういうケースもあろうかと思います。
 まずチェックするのは、その在外公館を警備している相手国政府の官憲であるわけで、そこでしかるべきチェックが行われて、そこでその人定事項等に疑義があって本人確認ができない、場合によっては北朝鮮、場合によっては脱北者の可能性があるというような場合には、まさに我が方の政府、在外公館、いわゆる大使館、総領事館の方に連絡し、照会してもらえるということが期待されているということでございます。
松本(善)委員 問題は、その確認を日本側がするのかどうかということです。中国の警察官に、北朝鮮から来たんだ、日本の総領事館に話をしたいんだ、こう言えば、必ず日本の総領事館の方に中国警察は入れるんでしょうか、照会するんでしょうか。私は、そのことが確実であれば、今回のような、北朝鮮から脱出してきた人が駆け込むというようなことはないんじゃないかと思うんです。その点は確言することができるかどうか。
小野政府参考人 先生の御指摘のケースにつきましては、さまざまな個別のケースごとの対応というのがあり得るので、かつ、一般的に在外公館の警備というのは相手国政府と在外公館警備担当官との間のいわゆる協力関係の中で適切に行われているということでございますので、個々のケースについて必ずこうだということを今ここで申し上げるというのは、警備上の問題もございますので、差し控えさせていただきたいというふうに思います。
松本(善)委員 ただ問題は、警備上の問題もありますが、その判断を日本がするのか、中国がするのか、その問題は基本的な問題ですよ。それは警備ですからいろいろな相談もあるかもしれないけれども、北朝鮮から来た、そして日本の領事館に相談したい、こういう意思を中国警察に表明した場合には、必ず日本の領事館にその旨照会をして、日本が判断をするということになっているのかどうか。ここは中心問題です。あいまいなことではだめだと思います。もう一度はっきり答弁をしてほしい。
小野政府参考人 その点につきましては、やはり警備上の観点から、回答を差し控えさせていただきたいと思います。
松本(善)委員 そこがあいまいになるのが問題なんですね。
 それでは聞きますが、日本政府の態度としては、北朝鮮から来た人だということならば不審者としては扱わないということですか。その点を聞きたいと思います。
小野政府参考人 まず、北朝鮮の人というのは、また繰り返しになりますけれども、さまざまなケースがあるんだろうと思います。
 先生が言われますように、脱北者なのか、あるいは正規の旅券等を持って滞在できるような形の北朝鮮の方なのか、あるいは他人名義旅券で来ておられる方なのか等、その個々の事案ごとに異なるということは、個別の事例に応じて対処していく必要があるということだろうと思います。
 その上で、あえて一般論を申し上げれば、関係者が公館の外側にいる場合には、警備上の観点からの対応が当然に必要になるわけでございます。しかるべく警備上のチェックを行って、身元が確認されていない不審者につきましては安易に入館させることは行っていないということでございます。
松本(善)委員 そうすると、少なくも中国側だけの判断でそれは行わない、日本もその問題については一緒に相談をするということは確立しているかどうか、伺いたい。
小野政府参考人 先ほど申し上げましたように、個々のケースについてその都度チェックする必要はございますが、基本的には、相手国政府と日本の在外公館との間の協力体制の中で問題は取り扱われていくということだろうと思います。
松本(善)委員 外務大臣、今お聞きになっていたとおりですが、私は、本当に領事移住部長が言うようなことならば、今回のような事件は起こらなかったんではないかと思いますが、いかがですか。
川口国務大臣 まず、公館の外側、これには中国の警察権が及びます。したがいまして、その脱北者、これは、部長が言いましたように、いろいろな人がいますから、例えばその人たちの中に中国への不法入国者がいた場合、これは中国が警察権を使って対応をするということは十分にあり得る話であると思います。
 ということの前提の上で、脱北者が何らかの方法で大使館にアプローチがあって、大使館の中に入った場合には、これは人道的な見地からさまざまな、人定関係を確認するとか、あるいはその国、人道上のどういう問題があるかということを聞くとか、その上で対応をするということでございますし、外にいる場合には、先ほど部長が申しましたように、具体的な個々の対応ぶりはさまざまでありますけれども、外にいる場合にはいろいろな情報あるいは話を聞いて、それで具体的にそれぞれのケースに応じて我が国として対応をする、そういうことでございます。
松本(善)委員 中国が不法入国者と考えれば、結局日本には相談しないということになります、あなたの答弁からすれば。
 外務大臣に伺いますが、副領事が五人の中の一人から英文の手紙を渡された、内容がわからないというので返したと。日本の副領事が英文が読めなかったというのはだれも信用できることではありませんけれども、大臣は昨日の参議院外交防衛委員会で、その場で受け取っていた方が適切であったと思いますということを答えられました。手紙の内容は御存じですか。
川口国務大臣 受け取っていないわけですから、その内容は日本政府にはわからないということです。
松本(善)委員 私は、そういう答弁ではだめだと思うんですよ。やはり、そういうことがあったらいろいろ手を尽くして、私どもも報道機関から手に入れることができているんですよ。外務省がその気になれば、それはできるはずなんです。それは知りませんということでは、私は日本の外務大臣としては何という怠慢なことだろうかというふうに思います。なぜ入手する努力をしないのか。
 報道機関から私が入手した手紙には、中国の警察に逮捕され、北朝鮮に送還されることを恐れている、北朝鮮に戻ることは迫害と拷問と死を意味するということが書かれてあります。この手紙を大臣は受け取った方がよかったというんです。手紙を返さずに内容を理解したら、日本の在外公館はどうすべきだったんです。
川口国務大臣 手紙につきましては、手紙と言われるものが存在をしているということは承知をしておりますけれども、先ほど申し上げましたのは、日本政府として、それが全く同じものであるかどうかということについては確認することができないということでございます。
 それから、在外公館がどうすべきであったかということについて、手紙自体は私は、昨日申し上げましたように、その時点でその五名が北朝鮮から来た人らしいということはわかっていたわけですから、受け取った方がよかったというふうに思いますけれども、また同時に、これはそのときの混乱状況から非常に上がった状態であったであろうということを考えれば、そういうこともあったかなというふうには思います。
 それから、日本側の対応としては、仮に今おっしゃったような手紙をそこの場で読んでいたらどうすべきであったかということでございますけれども、これは本当に仮定の話になってしまいますけれども、実際にその手紙を読んでいようがいまいが、警備担当の副領事につきましては、できるだけ連れていかれるのを阻止しようということで、両手を広げてそれをとめようとする行動をとっていたわけですから、これは読んでいてもいなくても同じことをやっていた、そういうことでございます。
松本(善)委員 手紙の内容は知っているが本物かどうかわからない、そんなものは中国に聞けば一遍にわかるじゃないですか。
 この問題と、それから、阿南発言が調査報告に書かれていないこと、それから、きょう民主党の方が質問された、いわゆる副領事が中国側に電話をした、こういう根本的に大事なことが調査報告書に書かれていない。これは、もう本当に日本の調査というものの信憑性が国内でも疑われている。日本の新聞が、外務省はもう信じられないという表題の社説を書くぐらいですよ。本当に日本の外務省の恥さらしです。
 この調査報告についてこういうふうに言われていることについて、外務大臣はどう考えているか、これを午前中の質問の最後にして、終わりたいと思います。
川口国務大臣 まず、阿南発言につきましては、これの内容は、時間の点もありますので詳しくは申しませんけれども、一言で言ってしまえば、警備の強化をする必要があるということで、館内の定例会議で言われた通常の業務上の発言でありまして、今回の調査との関係でいうと、それを盛り込まなければいけなかったかというと、そういうことではないだろうと私は思っております。
 それから、ほかの二つにつきましてですけれども、英文の手紙については、調査との関係でいうと、同意があったかどうかということが中国側の反論であったということで、そういう観点からこれを作成したということでございまして、これを含めるということは必要ないということで、隠そうという意図はなかったというふうに聞いています。
 それから、けさ新聞に出ました件につきましては、これは、私が聞きましたのは、後でというか、十六日の夜になってこういうことがわかったというふうに聞いておりますので、調査に盛り込むことができなかったということだというふうに思います。
 いずれにいたしましても、調査をやったその結果について、これは信頼を持っていただかなければいけないわけでございますので、外務省として、国民の皆様が信頼を持てないということを調査についてお感じになっていらっしゃるというのは非常に残念でございまして、外交及び外務省に対する信頼を回復するべく、改革その他に一生懸命に取り組んでいきたいと考えております。
松本(善)委員 では、これで終わりますけれども、これはやはり外務省自身の行動で信頼を回復する以外にないということだけ言っておきましょう。
首藤委員長代理 次に、東門美津子君。
東門委員 かなり時間が押しているようで、急いで早口でいきたいと思います。
 まず、京都議定書、特に米国の離脱問題についてお伺いいたします。先ほどもその件についてはありましたので、重複するところもあるかと思いますが、私はそのように通告をしておりますので、そこの点からお伺いさせていただきます。
 米国は、既にクリントン前大統領の時代から、地球温暖化対策について国内の産業界からの強硬な反対に直面をしていました。一九九七年十二月に京都で開催されたCOP3に先立って同年の六月に開かれたデンバー・サミットにおいて、このような反対を意識してか、当時のクリントン大統領は、温室効果ガス排出削減の数値目標の設定に頑強に反対を唱えていました。それでも、米国の反対によって地球温暖化防止交渉が破綻することだけは避けようとする高度の政治判断によって、COP3では何とか数値目標の設定にこぎつけました。しかし、ブッシュ政権が発足すると、このような自制は働かず、米国は交渉から完全に離脱をしてしまいました。
 そこで、米国内の反対理由が一体どのようなものであったのか、まず説明を願いたいということが一点。そしてまた、ブッシュ政権内も離脱したことについて必ずしも賛成の意見だけではないようですが、同政権になってなぜ議定書に対する反対意見の方が重視されるようになったのか、その点をお伺いいたしたいと思います。
高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、昨年三月、ブッシュ政権になりまして、アメリカは、中国やインド等の開発途上国が温室効果ガスの排出削減義務を負うことを免除されていること、それから、京都議定書を締結することは米国経済に深刻な悪影響を与えるということ等を理由といたしまして、京都議定書を支持しないということを表明いたしました。
 これは我が国としては大変残念なことであるというふうに考えておりますが、さかのぼって考えますと、既に米国議会は、京都議定書の作成のための交渉が依然行われておりました九七年の六月の時点におきまして、上院におきまして、開発途上国の温室効果ガス削減を盛り込まず、米国経済に深刻な被害をもたらす議定書には署名すべきでないという決議を行っておりまして、これは九十五対ゼロで採択されたというふうになっております。
 ブッシュ政権になりまして、政権の立場が急激に変わったというのは事実でございますけれども、その判断の根底には、こういう九七年当時からアメリカの議会の方にあった強い慎重論といいますか、反対論があって、そういう状況も影響して最終的に決定をしたんだというふうに考えております。
東門委員 本来、地球的規模の解決が必要とされます地球温暖化防止対策においては、世界の四分の一近くのCO2を排出している世界最大の温室効果ガス排出国である米国が本議定書からの離脱を決定したということは、議定書の発効見通しを難しくしているだけではなく、今後、地球温暖化防止対策に対する京都議定書の実効性にも疑念を生じさせかねません。
 政府は、すべての国が一つのルールのもとで行動することが重要であり、米国の建設的対応を求め、引き続き最大限努力するとして、最近では本年の四月五日、川口外務大臣が、ポーラ・ドブリアンスキー、アメリカの国務次官、環境・社会問題担当と会談をされ、また同日、環境省は地球温暖化対策を話し合う日米閣僚級協議を環境省で開催したと承知をしております。
 しかし、米国の京都議定書への復帰は依然として見通しが立たない、そういう状況が続いていますが、政府はブッシュ政権への説得工作を今後どのように進めようとしておられるのか、その成算の見込みも含め、方針を伺いたいと思います。
高橋政府参考人 日本政府といたしましては、まず京都議定書を発効させまして、京都議定書の排出削減約束を加盟各国が達成していくことが地球温暖化防止に向けた国際的な取り組みを強化する第一歩として極めて重要であり、こういう動きがあること自体が、今後私どもがアメリカに対して働きかけていく非常に重要な国際的な環境をつくっていくのではないかというふうに考えております。
 我が国といたしましては、あくまでも京都議定書の発効及びそれが機能するという国際的な環境をつくりつつ、アメリカが先般、独自の温暖化対策を発表しておるわけでございますので、そういうアメリカの地球温暖化対策、温暖化政策というものが一層強化され、米国それから途上国も参加する、将来の課題でございますが、共通のルールというものができるよう、アメリカがやっていることの中に、京都議定書をこれから進めていく上で共通になるものもあるわけでございますので、私どもといたしましては、アメリカと協議を緊密に行い、これはトップの首脳レベルから大臣レベル、それから高級官僚レベル、ハイレベルまでいろいろと場がございますけれども、日米両国の間で具体的な温暖化対策の措置、例えば排出量の登録簿をどうやってつくるとか、市場メカニズムをどうやって活用していくのが最もうまく機能するだろうかというようなことについてのそれぞれの考え方、それから今考えているいろいろな方法等についての意見交換、相互に学び合う、そういうようなことを行い、米国ができる限り京都議定書と共通の制度を採用するような形で促していくということが今後アメリカの、米国の京都議定書への参加を得る上で重要ではないか、非常に意義があるのではないかというふうに考えております。
東門委員 今の日米関係であれば、やはり日本の説得ということは本当に功を奏するということも考えられます。ぜひ頑張っていただきたいと思いますが、大臣にも、大臣も京都議定書にはかなりかかわっておられたわけですし、今外務大臣という立場でもあられますから、ぜひ頑張っていただきたいと思います。
 もう一点お伺いしますけれども、気候変動枠組み条約の策定交渉は九一年に開始されたわけですね。百数十カ国が膨大な数の会議を重ねて、温暖化防止という共通の目標のために、南北が繁栄と負担を分け合う枠組みづくりに取り組んできました。こうして何とかたどり着いたのが京都議定書です。不完全であっても、米国一国のわがままで台なしにされてはたまらないという思いがあります。
 我が国は、国際社会の合意を尊重して、米国抜きでも議定書の発効を目指すと決意をした以上、米国が当分復帰しないことを計算に入れて、世界的な温暖化対策を進める必要があると思います。政府はそのためにどのような対策をとろうとしているのか、お伺いしたいと思います。
高橋政府参考人 米国以外の多くの先進国におきましても、温室効果ガスの排出は増加傾向にございまして、議定書の発効、実施をこれ以上先送りすると、地球温暖化防止に向けた国際的な機運そのものが失われかねません。
 議定書の発効、実施によりまして、各締約国間の国内取り組みが進むとともに、排出量取引等、温室効果ガスを費用対効果の高い方法で削減できる国際的な仕組みが確立することにより、今後の地球温暖化への取り組み強化に寄与すると考えております。また、先ほど申しましたように、こういう京都議定書のメカニズムが有効に動くことによって、アメリカへの説得というものもより行いやすくなる環境になるのではないかというように考えております。
 いずれにいたしましても、地球温暖化対策の実効性を確保するためには、すべての国が温室効果ガスの削減に努めるということが何よりも大事だと考えております。すべての国が共通のルールのもとで行動することを目標に、米国の建設的な対応を引き続き粘り強く求めるとともに、開発途上国を含めた国際的ルールが構築されるように、今後とも最大限の努力を傾けていきたいと考えております。
東門委員 ぜひ頑張っていただきたいと思います。
 次に、瀋陽総領事館における事件についてお伺いいたします。
 中国・瀋陽の日本総領事館で今月八日に発生した今回の事件は、日本側と中国側との見解が真っ正面から対立しており、事実関係を正確に把握した上で対処する必要があると思います。
 今回の事件で一番考慮しなければならないのは、中国当局に拘束された北朝鮮国籍と見られる五人の生命と安全の確保です。五人の中には幼い少女も含まれており、長期間の拘束や北朝鮮への強制送還などは避けなければならず、人権を最優先とした早期の解決が求められます。
 今回の事件に関しましては、その現場を撮影したビデオそれから写真等が公になっており、国際社会からは、現場での領事館職員の対応のあり方など、日本は人権問題に対しても事なかれ主義の冷たい国であるとの誤解を招きかねず、今後の対応いかんでは国際社会からの非難が日本に向かうことが十分に考えられます。
 大臣にお伺いしたいんですが、今回の事件については、まず五人の人権を最優先するという方針であることを確認したいと思います。
    〔首藤委員長代理退席、委員長着席〕
川口国務大臣 委員がおっしゃられますように、この五人の人権といいますか、人道上の取り扱いというのは非常に大事であると思っています。
 本件につきましては、これは国際法上の立場、人道上の観点、そういったことをきちんと踏まえて、冷静かつ毅然として、早期解決に向けて中国政府と協議をし、問題の解決をすることに全力を尽くしたいと思っております。
東門委員 総領事館へ駆け込んだその五人がいずれも領事館の敷地内に入っているということは、もう映像からも明らかです。また、中国側が総領事館の安全確保のためとしていることも、五人の中に子供が含まれている、また他国の在外公館での亡命事件については立ち入っていないことから、説得力のないものであると思います。
 今回の中国警察の対応が、領事機関の公館の不可侵を定めた領事関係に関するウィーン条約第三十一条に違反することは明らかであり、我が国公館に対する不可侵権の侵害として、中国側へ引き続き強く申し入れるべきであります。また、このような事例を公館への立ち入りを認めるあしき前例としてはならないわけです。
 五人の人権に配慮しつつ、これら不可侵権への侵害に対しては、外務省として毅然とした態度を示すべきであると考えますが、大臣、その御決意を伺いたいと思います。
川口国務大臣 委員のおっしゃるとおりでございまして、冷静かつ毅然とした態度で対応をしたいと考えております。
東門委員 報道によりますと、どの新聞あるいは映像でもそうなんですが、今真っ正面から対立しているわけですよね、中国側の言い分、日本側の言い分が。その問題解決のためには、日本側が中国側の調査結果を受け入れることが先決であると中国側は主張しているというふうに報道されておりますが、外務省としてはそれにどう対応されるおつもりでしょうか。今、毅然とした態度でというふうなお話はありました。私もそれを望みますが、しかし、真っ正面から対立している。中国側は、日本側が中国側の調査結果を受け入れることが先決だと言っている。それにはどのように対応していかれますか。
川口国務大臣 委員がおっしゃられますように、事実関係についての考え方については、我が国と中国側との言っている認識が全く違うといいますか、違う部分がかなりあるわけでございまして、特に、同意があった、なかった、この点をめぐって相違があるわけでございます。
 これを今どのように、早期解決が大事でございますので、早期解決に向けてこれからどのような対応をしていくかということは非常に難しい問題でございますけれども、先ほど申しましたように、冷静かつ毅然とした態度で中国側と話し合いながら早期解決を行っていきたい。その際、国際法、人道の立場、この二つをきちんと踏まえて解決を早くしたいと考えております。
東門委員 在外公館におきまして難民の申請ができないということだけではなくて、国内での難民認定に関しても、その認定基準の不明確さ、厳しさから、内外で非難の声がかなり上がっております。
 実際に難民に認定されたのが、平成十二年二十二人、十三年においては二十六人であり、これは欧米各国の数字と比較すると、けた数が一けたも二けたも違うものです。申請者数が欧米各国と比較して少ないからとの見解もありますが、しかし、これについては、日本は難民を受け入れない国とのイメージがあると言われておりまして、UNHCRからも難民認定基準の厳しさについて問題が指摘されています。
 大臣は、現在の日本の難民認定制度について、どのような見解を持っておられるのでしょうか。
川口国務大臣 我が国におきます難民の受け入れにつきましては、難民の認定は法務省の所管でございまして、法務省で難民条約にのっとって個別に審査をした上で、適切に判断をして認定を行っているというふうに私は承知をしております。
 亡命ということについての考え方でいきますと、亡命ということでは一般国際法上、確立された定義というのはないわけでございますけれども、外国人が在外の我が国の公館に庇護を求めてきた場合、この場合の扱いにつきまして、関係者の人定関係等の事実関係を確認し、本人の希望等を確認しまして、それから、この人の身体の安全等の人道的な観点も考えまして、また、その関係国との関係を考えるといった、総合的にそういった要素を考えて具体的に対応をしていくことが必要だと考えております。
 この問題は、非常に社会全般のあり方にかかわる問題でありまして、我が国として、こういったことを契機にきちんと考えてみるといった作業が行われることがいいと私は考えております。
東門委員 とても大事なことだと思います。ぜひ、なさっていただきたいと思います。
 先ほどから、ほかの委員からも御質問がありましたけれども、阿南大使の発言について私も一、二点お伺いしたいと思います。
 ちょうどその衝撃的な事件が発生したその日の朝ですか、あれは五月の八日、その朝に阿南中国大使が、北朝鮮脱出住民が大使館に入ってきた場合、不審者として追い返すように指示していたという報道がなされました。外務省は、もちろん即座に反論をしまして、一般的な警備体制強化と言ったのみであり、一たん館内に入った者は人道的見地から保護するとも発言していると、報道内容を否定しておられます。
 そうであるのならば、なぜこのような発言が外部に漏れ伝わってくるのでしょうか。一部報道によれば、日本は亡命を受け入れていないとも発言したとされておりますし、一たん入った者を保護するとは聞いていないという出席者の証言もあるやに聞いております。
 発表内容が二転三転する、そして事実関係を隠ぺいする体質の外務省の発表は信用できないという声が大きいわけですが、この大使の発言内容について、大臣、どのように確認をとられたのか、お伺いしたいと思います。指揮命令系統といいますか、私の理解するところでは、総領事だとか大使は直接外務大臣の方になっているというふうに聞いていますが、そういう意味でも、確認はどのようにとられたのか、お伺いしたいと思います。
川口国務大臣 おっしゃった館内の定例会議におきます阿南大使の発言の概要で私が承知をしておりますのは、脱北者は中国へ不法入国をしている者が多いけれども、一たん館内に入った以上は人道的な見地から保護をする、第三国への移動等適切に対処する必要がある、他方で、大使館としては、昨秋来、テロに対処するという観点から警戒を一層厳重にすべきことは当然である、不審者が大使館敷地に許可なく侵入しようとする場合には、規則どおり大使館門外で事情を聴取するようにすべきだという趣旨の発言であったと私は承知をしております。
 委員おっしゃられました、それをどうやって私が確認をしたかということでございますけれども、大使、総領事は、もちろん私の指揮命令の下にあるわけでございますけれども、私がそれらの方々がやること、あるいは言ったこと、言うことに対して、直接に全部指示を出すということではございませんで、そのために外務省の各局、各課があるわけでございまして、この私の確認は事務当局経由でございます。
東門委員 私は、すべてのことに大臣が口を出して、直接コンタクトをとるべきだとは言っておりません。今回の事件は、とても大きな事件なんですよ。世界が本当に今、どういうふうに日本がこれに対応していくのかというのを見ていると思います。あの映像は世界に流れていますね。そういう中で、総領事なりあるいは大使がそこにいる、どのように対応するか、大臣がしっかりと確認をとる、大臣がやはり話をするということは大事なことじゃないかと思います。
 できることならば、距離が近いならば、大臣、呼び寄せてということもあろうかと思いますが、そうでなければ、私は、今は電話なりいろいろな方法があるわけですから、大臣みずからがなさるべきだと思います。これが、やはり総領事あるいは大使の上におられる外務大臣の大きな仕事だと思いますが、もう一度お伺いいたします。
川口国務大臣 こういう非常に重要なときであればこそ、大臣としてやらなければいけないことは非常にたくさんございまして、先ほど申しましたように、この問題を人道的、国際法の立場から、これをきちんと早期解決に向けて、冷静かつ毅然として中国と協議をしながら解決をするというのが、今の一番の私の努めであるというふうに思っておりまして、そのための努力を日夜やっております。
東門委員 ということは、確認も大臣みずからがなさったのではないということは、しっかり承りました。
 私のもう一点の質問は、先ほど大臣がお読み上げになったのは阿南大使のレポート、領事移住部長からの報告かと思いますが、それではなくて、なぜ、その館内の会議の中でお話しなさったことが、こういう報告書で出たものと違う、異なることが出ているか、それがなぜ外部に漏れ伝わってくるとお思いですかと。あるいは、一部報道によりましたら、日本は亡命を受け入れていないんだという発言もあった、そういうことに関してはどうなんでしょうかということを伺いましたけれども、それについては御答弁がなかったので、済みません、もう一度お願いいたします。
川口国務大臣 ちょっと御質問を全部理解したかどうかわかりませんけれども、これは館内の会議での発言でございまして、通常の業務を行っているときの発言ですので、調査の結果を発表した中には入れてございません。
 この会議における阿南大使の発言がどういう形で漏れたかということについては、私はちょっと全くわからないということでございます。
東門委員 私は、そういうのはとても大事なところだと思うんですよ。本当に、報道されているものが外務省のものとかなり違うというところからしても、やはりそれは確認をとるべきだと思うので、そういう意味で大臣みずからがなさるべきじゃないかと申し上げたんですが、時間がありませんので急ぎます。
 もう一点だけお伺いします。
 今回のこの事件及び阿南大使の発言の背景には、外務省職員の中に亡命希望者や難民を厄介者とみなす雰囲気があるのではないかというふうに思います。そう考えると、門にしがみついて泣き叫んでいる女性たちと子供を見ても何もしなかった副領事の対応、最終的に連行されても仕方がないとした中国公使の判断、亡命希望の手紙を見てすぐに返してしまった副領事の対応、そして今回の阿南大使の発言も、すべて説明がつくような気がいたします。
 瀋陽の事件発生前の今月の二日、プラハの日本国大使館員が、日本に亡命できるチャンスは絶対にない、亡命者が日本に来れば投獄もあり得るなどと発言したことも新聞に報道されております。これなども、外務省の亡命、難民に対する意識の低さを示したものと言えます。
 大臣は、外務省職員の難民や人権に対する認識についてどのようにお感じになり、また、どのように改善していくつもりであるか、お聞かせいただいて、質問を終わりたいと思います。
川口国務大臣 この難民、亡命等の問題につきましては、先ほど申しましたように、我が国全体として広く議論をしていくことが必要であると私は考えております。
東門委員 残念です、時間がありませんので、終わります。
吉田委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
吉田委員長 これより本件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書の締結について承認を求めるの件について採決をいたします。
 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
吉田委員長 起立総員であります。よって、本件は承認すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
吉田委員長 この際、休憩いたします。
    午後零時五十二分休憩
     ――――◇―――――
    午後四時五十一分開議
吉田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 国際情勢に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長北島信一君、大臣官房領事移住部長小野正昭君、総合外交政策局国際社会協力部長高橋恒一君、アジア大洋州局長田中均君、欧州局長齋藤泰雄君、法務省刑事局長古田佑紀君の出席を求め、それぞれ説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
吉田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。最初に、東門美津子君。
東門委員 私、国会へ参りまして、きょう初めて、休憩後とはいえ、トップバッターで立たせていただいております。与党の理事の先生方、特に浅野理事、そして原田委員の御配慮をいただきまして、この場にトップバッターでさせていただきますこと、お礼を申し上げて、時間が短いですから、早速質問に入りたいと思います。
 五月十五日、沖縄は復帰三十周年を迎えました。この三十年間で沖縄は何が変わり、何が変わらなかったのか、多くの報道機関が取り上げておりました。多分、大臣も映像なりあるいは新聞等でごらんになったかと思いますが、変わったもの、いろいろあります。随分よくなったという声も確かに聞こえますし、私もそう思います。
 しかし、変わらなかったものもあります。そのトップは、だれに聞いても上がってくるのはあの大きな米軍基地ということなんですが、そのことに対して、大臣、どういうふうにお考えになりますか。お聞かせいただきたいと思います。
川口国務大臣 ここ三十年の間に、沖縄を初めとして日本各地でさまざまなものが変わり、さまざまなものが変わらなかったということだと思います。沖縄において変わらなかったことといいますと、やはり委員がおっしゃったように、基地の存在ということでもありましょうし、また同時に、沖縄の持っている文化ということも私は変わっていないのではないかというふうに思います。
 沖縄の基地ということで言いますと、まさに何度も申し上げていますように、我が国における基地の集中が沖縄にあるということはずっと変わってこなかったということでして、日米安保体制がそれなりにこの地域で根づいて、そして、日本はもちろんのこと、この地域の平和と安定に資しているという認識が深まっている中で、それはそれで非常に重要なことだと私は思いますけれども、その中で、それを担っている米軍の施設・区域というものが沖縄に非常に集中してあるということが、これは変わらなかったことだというふうに思います。
 そういう意味で、沖縄の県民の方が、この三十年間、引き続きその負担の大部分を、多くの部分を担っていらっしゃったということについては、大変ありがたいとも思いますし、大変申しわけないとも思います。
東門委員 ことしの去る四月一日ですが、沖縄県の振興策ということで振興新法がスタートをしまして、今後十年間で、沖縄の経済の自立を目指してさまざまな振興計画、そういうものが沖縄担当大臣のもとで実施されていくという運びになっております。
 これまで三次にわたる振興開発計画、もちろんございました。今度はさらにその次の十年間ということなんですが、それに対して、沖縄の経済状態ですね、自立していないとよく言われます。皆さんも多分よくお聞きだと思いますが、そういう中で、なぜ自立できないのか、いろいろ要因はあろうかと思います。しかし、基地がその大きなファクターであることも間違いないと思います。
 先ほどの沖縄担当大臣のもとで、十年間に自立的発展を目指してこれからいろいろな計画が実施されていくわけですが、外務省として、これから十年間に沖縄の基地問題、いつも大臣が県民の負担等を軽減するためにとおっしゃいますが、申しわけないと思うと言うだけではなくて、十年間、基地をどのように、SACOの最終の合意ということだけではなくて、十年もあれば結構できると思うのです、何をしたい、何をしなければいけないと思われるか、まず大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
川口国務大臣 沖縄の今後の十年間ということですけれども、過去を振り返ってみますと、一九七二年から二〇〇二年までの、ことしまでの三十年の間に、沖縄の基地について言いますと、一六%が返還をされた、四千四百六十ヘクタール返還をされたということでございます。
 今後の十年間ということで言いますと、まず大事なのが、SACOの最終合意をやはりきちんとやっていくということであると私は思っています。SACOの最終報告、平成十九年度末、これが目途だということでございますけれども、五千ヘクタール返還の予定、すなわち、これは二一%ということになるわけでございます。
 外務省として沖縄のために何ができるかということですけれども、私は、このほかにさまざまあると思います。
 多分、これは非常に大きな話のところで申し上げれば、やはり外交努力をきちんとすることによって、この地域の平和と安定を外交努力によって進めていくということが外務省として一番しなければいけないことであろうかと思います。
 それからさらに、日米地位協定の運用の改善ということで言いますと、これもまた、これから話し合いを米側あるいは沖縄県民の方々としながら、できることをやっていくという努力も、また外務省として積み重ねなければいけないことであると思っております。
 このほか、小さいことを挙げれば、例えばできるだけ国際会議を沖縄に誘致するとか、いろいろ申し上げることはありますけれども、それはそのときそのときでできることをやっていきたい、いく必要があろう、そういうことでございます。
東門委員 大臣の御答弁にいろいろ問い返していきたいのはありますが、きょうは時間が短いですから、この次に譲ります。
 次に移りますが、先月、沖縄県では、米軍の飛行機からの落下事故が四件も発生しました。そのたびに私は委員会で随分大臣に質問をしてまいりましたが、五月八日、嘉手納基地第一八航空団司令官のレミントン准将は、嘉手納基地で立て続けに発生した事故に関する地元首長や関係者への説明会を行いました。同説明会では、嘉手納基地で発生した三件の事故のうち、米軍の規定に基づけば、事故は二十四日に発生したF15戦闘機による風防ガラス落下の一件のみであり、その他については事故とは認識していないということでした。
 しかし、照明弾落下は一歩間違えば大惨事になっていた可能性もあり、また、燃料漏れに関しては、実際に異臭や目の痛みを訴えている人がおり、県民から見れば明らかな事故です。事故は一件とする米軍の説明によって、米軍に対する不信感は県民の間にかえって増したと言わなければなりません。
 その説明会には外務省沖縄事務所の職員も同席していましたが、外務省はこの米軍の説明に対してどのように考えておられるのか、あるいは、照明弾落下や燃料漏れは、外務省としては事故と認識をしておられるのか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
川口国務大臣 沖縄で航空機からの落下事故が続きまして、これについて五月八日に、レミントン嘉手納飛行場司令官ほかが説明会を地元の皆さんに行ったという話は私も承知をいたしております。
 何が事故かという、事故の定義の話をしてみても、余りその意味があるかどうか私はわかりませんけれども、私が考えるのは、物が上から落下をしてくれば、それは事故ではないかというふうに思います。
東門委員 そうすると、大臣の私的な見解ではあっても、上から物が落ちてくれば事故だと思われると。それに対して、米軍の方へはどのようなアプローチをしておられますか。
川口国務大臣 これについては、さまざまなアプローチを、働きかけを米軍に行っております。私自身、つい二、三日前に、ちょっといつだったか日にちを忘れましたけれども、アメリカの太平洋軍司令官がいらっしゃいまして、その方とお話をしたときにも、事件、事故の防止というのは非常に重要であると考えているということをお話しいたしましたし、そのほかに数回、局長のレベルで、あるいは現地沖縄で、米軍に対しては再発防止、原因の究明等々のことを申し入れているわけでございます。
東門委員 先ほどの、風防ガラスの落下だけを事故と認めているということを申し上げましたが、米軍は、その唯一事故と認めた風防ガラス落下についても、米国国内法の規定を優先し、調査結果は公表しないと言っているようです。事故を起こしておきながら、事故を起こした側の論理に基づいて具体的な説明もないままでは、再発防止という言葉も信じることはできない。それは当然のことだと思います。
 外務省は、これまでも事故のたびに、今大臣の口からも出ましたけれども、米軍へ原因究明と再発防止を申し入れた、あるいは申し入れるとしておりますけれども、調査結果が公表されないというその米軍の姿勢を、外務省としてそれは是とする方針なのか、県民がその米軍の姿勢で納得すると考えておられるのか、大臣の見解を伺いたいと思います。
川口国務大臣 事故という名前をつけるかどうかという問題はあるのかもしれませんけれども、私は、五月八日に、先ほどおっしゃったレミントン嘉手納基地司令官ほかが地元関係者の方々へ行った説明会、この場において、米空軍が事故の防止のために行っている航空機の運用についての安全対策についての説明をし、四月以降に発生した米軍機による事故について、その時点において判明している原因等についての説明をなさったというふうに聞いております。
 政府としましては、米軍が地元の関係者の懸念を、きちんとそれに配慮をして事故の原因等についてみずから説明をしたということについては、それはいいことであると思っておりますけれども、今後とも引き続き、アメリカ軍側に対しましては、地元関係者の方の御懸念を踏まえた上で、きちんと申し入れを必要に応じしていきたいと考えております。
東門委員 原因の究明を申し入れる、あるいは申し入れた、再発防止を何度もお願いしている、申し入れているとおっしゃる中から、このような大臣の御答弁では納得いきません。
 被害者は、本当にいつも言いますが、恐怖を感じるのは、不安を感じるのは県民なんですよ。事故を起こした側が、いや、これは米国の国内法によって律していきますから、事故の調査結果も公表はしません、県民はそれで、はい、そうですかというふうに言えるものでしょうか。政府は本当にそれでよろしいんでしょうか。
 私がお聞きしたのは、外務省、大臣、それを是とするんですかと。アメリカが、国内法でやります、ですから調査結果も公表しませんということに対して、外務省はそれでいいんですか、それを認めるんですかとお尋ねしているんですよ。もう一度お願いいたします。
川口国務大臣 アメリカ側が、安全性の確保、これをきちんとやるべきことは、これは言うまでもないことでございます。我が国といたしましては、必要な安全措置がとられるように、そして事故が起こらないように、米軍に対しては申し入れを随時、必要に応じてやっていきたいと考えているわけです。
東門委員 本当に相次いでいる米軍機事故、その再発防止策を協議するために、五月十四日、県、在沖米軍、外務省沖縄事務所のトップによる三者会議が行われたようです。
 今大臣の御答弁ありましたが、私は正直言いまして、大臣はもうその情報を手に入れておられるだろうと思ったんですね。ですからそういう質問をしたわけですが、その会議の成果、その会議でどういうことが話し合われて、どういう合意事項が得られたのか。沖縄事務所から報告が入っていると思うんですが、いかがですか。
吉田委員長 東門さん、時間が来ていますから、答弁で。
 外務大臣。
川口国務大臣 電報は入ってきております。
東門委員 終わります。
吉田委員長 次に、丸谷佳織君。
丸谷委員 丸谷佳織でございます。
 時間が短いので、前置きは抜きにしまして、早速質問に入らせていただきます。
 八日に在瀋陽の総領事館で起きました事件についてお伺いをしたいと思うわけなんですけれども、総じまして、総領事館の全体的に及ぶ不備な点が非常に大きな外交問題に至ったというような反省を指摘せざるを得ないというふうに考えております。そのさまざまな不備な点についてきょうはお伺いをしたいというふうに思うんです。
 まず、私がニュースを見て最初に思ったのが、なぜあの亡命のシーンがカメラに撮られているのだろうかと、非常に不思議に思いました。その後の報道によりまして、亡命を支援している団体がカメラでその現場を撮影していたということがわかったわけなんですけれども、彼らのその日の行動の情報というのが流れていた。また、日本総領事館の正面のほぼ上にカメラを構えているような状況からしますと、彼らの行動は、徹底して秘密裏に行ったとは言いがたい。ある程度の国際社会の協力を得るためにインフォメーションを与えながら、何とか亡命を図りたかったというような状況ではなかったのかというふうに想像できるわけなんです。
 この総領事館は、このような亡命希望者が多発している中で、この亡命についての情報を入手していたのかどうか。もし情報を入手していたのだとすれば、総領事館自体の体制が非常に不備であったというふうに指摘ができますし、また、入手していなかったとしましたら、外交機密費という、日ごろ、そこの当地の入手しがたい情報を集めるために使われているお金が、その目的に到達していないという指摘もできるというふうに思うんですけれども、この情報の入手いかんについてお伺いします。
田中政府参考人 私どもも、一般的にはこの北朝鮮の関係のNGOとの間の連絡というのはなくはございません、意見交換を行ってきていますけれども、今回の事案について具体的に、この特定のNGOから事前の情報を得ていたということはございませんでした。
丸谷委員 ほかの公館は、公館に対しまして亡命希望者がふえているという状況を踏まえて体制を強化していたわけです。その点も総領事館の反省点として日本側は持たなければいけないというふうに指摘をしたいと思います。
 では、次に、事件が発生しましてからの連絡体制の不備につきましては、本日午前中の質疑の中でも多くの議員が触れていらっしゃいまして、その答弁を聞いている中では、やはり去年のえひめ丸のときもそうだったんですけれども、事件が発生してから大臣、副大臣あるいは政務官と連絡を上げる体制が、緊急時のときに連絡を上げなければいけない体制が本当になっていないという議論も、この委員会で当時なされたというふうに思うんですけれども、このときの反省が生きていないなというふうに今回も思いました。
 大臣の御答弁の中で、情報収集あるいは緊急時の連絡体制の見直しを図っていきたい旨の御答弁があったというふうに思いますので、ぜひこの点は何としても実行していただきたいというふうに思います。
 続きまして、警備体制について質問をさせていただきたいというふうに思うんです。
 調査報告書の中で外務省側から説明を受けていますが、在瀋陽総領事館の周りには中国側の武装警察官が四名、門のところに二名、そして前方と後方に一名ずつ配置されているというふうに思いますけれども、まず、中国側のこの武装警官の体制というのは、ほぼ恒常的にこういった体制をとられていたのか、あるいは最近の亡命希望者がふえたことによって警備の体制が強化されたものなのかどうか、この点についてお伺いします。
田中政府参考人 警備の点については、最近の事例にかんがみ、徐々に拡充がされていたようでございます。特に、この辺は総領事館が集中をしているところでございまして、そのために、その総領事館を共通に守る武警の人々というのもいたということでございます。
丸谷委員 最近の状況に伴いまして中国側の武装警察官の警備の強化が図られていたという御答弁でしたけれども、それは日本側から警備の強化をお願いしたものなんですか、それとも中国側が最近の状況を見てみずから判断し、強化したものなんでしょうか。
田中政府参考人 中国側による警備の強化でございます。
丸谷委員 では、公館の警備体制自体の質問をさせていただきたいというふうに思うんですけれども、警備担当者の資質向上及び公館自体の機能の両面の改正が望まれるわけですけれども、現在の百八十七ある在外公館の警備体制というのが一体どのようになっているのか、お伺いしたいというふうに思います。
 私も余り警備自体については詳しくはないんですけれども、例えばネズミ返しがついていないような公館があり、直ちに改修したとか、そういったお話も聞くわけなんですけれども、監視カメラがありながら常日ごろ録画をしていないような、そういった警備体制の公館があるのか、あるいは監視カメラさえついていない公館があるのか、これをできるだけ簡単にお答え願います。
北島政府参考人 お答え申し上げます。
 在外公館の警備強化につきましては、特にペルー事件の発生後、その一層の強化を図ってきておるわけでございます。人員の配置、それからいろいろな設備の強化ということでございますけれども、御指摘の監視カメラの問題につきましては、在瀋陽総領事館に五台の監視カメラ、それから監視モニター五台、そういったものを備えつけてあったわけですけれども、その備えつけていた場所がすべて建物の中で、建物の外にはなかったとか、それから録画装置がなかった、そういった不備がございました。この点については反省しております。
丸谷委員 今の御説明の中で、録画をしていなかったというよりは、録画装置がついていないものであったけれども、その監視カメラによって中の状況は当時モニタリングしていたという事実ですか。
北島政府参考人 はい。録画装置がなかったわけですが、同時に、五台のモニターのテレビがあったわけですけれども、問題は、その監視カメラが設置されている場所が、査証の受付の部屋とかそれから正面のゲートのそば、そういったものになかったということがございます。
丸谷委員 そうしますと逆に、どこにそれは向けられていた監視カメラ、何をモニタリングするためのものだったんでしょうか。
北島政府参考人 警備上の理由から詳細についての御説明は差し控えさせていただければと思いますけれども、例えば監視カメラ五台でございますが、これはすべて建物の中で、主に出入り口、一部は二階にあったわけですけれども、そういったところに設置されていまして、人の出入り、それをチェックするという観点から置かれておりました。
丸谷委員 今の御説明で、人の出入りをチェックするためというお答えがあったんですけれども、実際には今回のこの亡命希望者の方、塀を乗り越えてきたわけじゃなくて、正面玄関を突破してきたわけですよね。ですから、そういったところもモニタリングできなかったという事実は、非常に大きな反省点として残るべきものだというふうに私は思いますので、このことも含めて、公館自体の危機管理とまた警備体制の強化というのをぜひ早急に図っていただきたいというふうに思います。
 もう時間がないので最後の質問になるかというふうに思うんですけれども、今回の全体的な問題、また、そもそも論としまして、亡命希望者に今後どのように対応していくのかという問題があるかと思います。外務省は、今回の五名の方、脱北者というふうにおっしゃいますけれども、亡命者、難民として認識しているのかどうか確認したいというふうに思います。
 我が国に対する亡命希望者は、今まで第三国に亡命させたことはありましても、我が国に亡命させたことはないというふうに承知をしています。世界人権宣言第十四条で、すべて人は迫害を免れるために他国に避難することを求め、かつ避難する権利を有するとありますが、この条約自体の拘束力がない点、また、国際人権規約でも庇護権規定は挿入されなかったこと、そして庇護権は亡命者個人に帰属する権利とはとらえられておらず、庇護を与えるかどうかは受け入れ国の主権的判断にゆだねられ、国家の裁量いかんによるところが多いわけなんですけれども、内乱ですとかあるいは紛争ですとか、こういったことが多い中、恒常的に生み出される亡命希望者、難民について、日本政府としてこれからどのように対応していくべきだとお思いなのか、お伺いします。
川口国務大臣 委員がおっしゃいますように、今回の問題の背景といいますか根底のところに、難民あるいは亡命者をどういうふうに日本として考えるかということがあると思います。この点について、さまざまな御意見があると思いますけれども、広く議論をされるということが重要だと思います。
 いずれにしても、今回の件は、人道的な見地から、この五人の方が望むところに行くことができるということが大変に重要だと私は考えております。
丸谷委員 まだ二分ありますので言わせていただきますけれども、本当に大臣がおっしゃいましたように、また、亡命させるべきだというようなことを簡単に言うことも、私は、政府としてあるいは議員として、一つ無責任な面もあるのかなというふうに思います。
 というのは、日本が亡命を受け入れるわけではなく、第三国に出国をさせるというところを考えると、どんどん亡命者は認定しましょう、難民は認定しましょう、そして第三国に送りましょうというのは、ちょっと筋が通らない部分もありますので、本当に今後、国会の裁量として、この難民あるいは亡命者に対してどのように庇護をしていくのか、保護をしていくのか、この点についてはしっかりと国会の中でも議論を重ねてまいりたいというふうに私たちも思っております。
 最後に、大臣に感想だけお伺いしたいというふうに思うんですけれども、今回、五月七日に行われました子ども特総、以前から主張させていただいておりました子どもの権利条約選択議定書、二つの署名がこの子ども特総の中でなされました。大臣も署名に向けて頑張りたいというふうにおっしゃっていただいていまして、大変期待をしていた分、本当にこの署名がなされて、その意義はどれだけ大きいものかというふうに、日本でニュースを見ながら非常に喜ばせていただいたわけなんです。
 実は、ぜひこの選択議定書に署名せよ、署名せよとずっと申し上げてまいりました。署名できるかできないかわからないという状況で、見守るような気持ちでいたわけなんですけれども、実際に署名をしたとか、そういった連絡が外務省の方からいただけなかったんですね。ニュースあるいは新聞報道で結果的には知ったというふうなことになりまして、一生懸命取り組んできたものですから、できれば、署名するのか、あるいはしたのかどうか、教えていただけるぐらいの外務省としての気配りというものがあればいいのになというふうに思いました。
 これがいわゆる政治家の不当な圧力に当たるのかどうかはわかりませんけれども、外交をする上で、ぜひこのような気配りができるような外務省としてまた活躍をしていただきたいというふうに私は思ったわけなんですけれども、いかがでしょうか。
川口国務大臣 この二つについては署名をいたしましたけれども、私もよく記憶をしておりますけれども、委員がぜひその署名をということをおっしゃっていらっしゃったということは非常に記憶に新しいです。
 外務省、瀋陽の事件等でも、情報の伝達についていろいろ問題があるという御指摘はいただいているわけでございまして、この件についても、これについて非常に御心配をいただいていた委員にぜひ御連絡を申し上げることができればよかったと思いますけれども、情報伝達の体制については今後改善をしていきたいと考えております。
丸谷委員 以上です。ありがとうございました。
吉田委員長 次に、木下厚君。
木下委員 民主党の木下厚でございます。
 けさから、中国・瀋陽の亡命者連行事件について質疑が重ねられておりますので、私自身も、まだ通告していなかったんですが、追加質問ということで一、二点させていただきたいと思うんです。
 今回の事件を見ていまして私自身痛切に感じたのは、要するに、外務省を含め、あるいは日本政府もそうです、いわば人権、こういったことに対する配慮が本当にない国だという意識を強くしました。そして、在外公館においてはまさに、邦人の安全あるいは生命を守る、こういった意識に極めて欠けている。
 実は私自身、政治家になる前は、二十数年、ジャーナリストとして海外を飛び回っておりました。何か問題があれば在外公館へ駆け込むわけですが、一民間人に対する在外公館の対応の仕方、これは何回も私は腹を立ててどなったこともあります。本当に邦人をどう思っているのか、本当にそうした外交官としての教育がきちんとなされているのか、いつも疑問に思ってきました。そして、政治家になってあちこちの在外公館へ行きますと、今度は大変なもてなしをしてくれる。
 なぜこれだけ一般の民間人と政治家と違うのか、大臣、答えていただきたいと思うんです。教育をきちんとしていますか。
川口国務大臣 民間人と政治家と違うかというふうにおっしゃられれば、それは当然違うわけでございます。片方は、選挙で選ばれた人たちでございますし、片方は、それぞれ立派な仕事をしているにしても、選挙で選ばれたわけではない。ただ、共通をしているのは、両方とも同じ人間であるということだと思います。
 初めに戻りまして、委員がおっしゃった人権意識ということでございますけれども、私も、今回の問題の根底にあるものは、我が国としてこの難民問題あるいは亡命者の問題をどういうふうに受け入れていくべきか、それをどういうふうに考えるかということであると思います。この点については、さまざまな人がさまざまな御意見をお持ちでいらっしゃって、今、社会の中でかなり幅が広い意見があると思います。こういったことを契機に、日本全体として、国民一人一人が、あるいは国会の場で、あるいは政府の場で、こういった問題をどういうふうに扱っていくかということを考えるべきであるというふうに私は思っております。
 それから、大使館、総領事館の体制についてのことでございますけれども、私は常々、大使館は外務省のためにあるのではない、日本のためにあり、日本人のためにあるのだということを言っています。そういう意味で、海外にある在外の公館、特に総領事館、領事館、それはまさに、日本人の旅行者の方あるいは在住の方のお世話をするということが非常に大事な仕事だと思っております。
 ただ、同時に、これは限られた予算と人員の中でやっているということでございますので、総領事館、領事館として何を、どういうお仕事についてお手伝いをし、どういうことについてはそれぞれの人の御判断にお願いをするかということも、分けてきちんと考えるということも必要だと思っております。
木下委員 大臣は誤解されておられる。私は別に、政治家だから厚遇してくれとか、そんなことを言っているんじゃないです。人権においては、政治家であろうと民間人であろうと同じじゃないですか。なぜ、民間人が本当に困っているときに手を差し伸べてくれないのか。そういう事例は、私は何回も経験しているし、見ています。
 そういう面で、それがもろに今回の事件で出たわけですよ。これは大臣が幾ら弁明しようと、やはり一般の民間人に対しては厄介者、これがまさに出たのが今回の事件なんです。そのことを大臣は把握しなきゃだめですよ。選ばれたから、そういう議論じゃないんです。もう一度答えてください。
川口国務大臣 大使館等の在外公館で、政治家に対する便宜供与と民間人に対する便宜供与のあり方が異なるのはなぜかという御質問でございましたら、それは異なるというルールがございますのでそういうことになっているわけですけれども、先ほど申しましたように、大使館あるいは在外公館は、これは外務省のためにあるのではなくて、あるいは政治家のためにあるのでもなくて、日本全体のため、日本人全体のため、日本のためにあるのだということは、先ほども申しましたように、私は常々、自分でも思っておりますし、そういうふうにも言っています。
 ただ、先ほど申し上げたことをさらに繰り返させていただきますが、それぞれの総領事館、領事館、大使館は、限られた人員と限られた予算で運営をされているわけでございまして、困った方のお手伝いを極力するという精神はもちろん持っておりますし、そういうことも実際にやっていますということですけれども、すべて、一〇〇%のことができるわけではない。何ができて、何はそれぞれの個人でやっていただくかということをきちんと分けて考えるべきであるというふうに思っているということを申し上げたわけでございます。
 それから、いろいろな意味で総領事館あるいは領事館で、行ったけれども非常に問題があったという御意見については、私は、外務省でいろいろメール等もございますので、ぜひそういうところにおっしゃっていただきたいということを申し上げておりますし、これからの改革の一環で、その地域において在外公館がどのような役割を果たしていると評価をするかということをパネルをつくってお願いをするということも考えております。
木下委員 もう一つ、今回の事件の背景には、外務省の現地の人たちの対応の仕方、これは先ほどからるる質問がありました。当然です。こんな対応の仕方はまさに世界の笑い物になる。これは外務省の職員だけ責めてもせんないことで、問題は、日本政府の対応が一貫していない。難民に対して、あるいは亡命に対して一貫していない。だから、現地の人たちは、ややこしい問題になると政治問題になるから排斥しようと。
 阿南さんの言っていることは、私、ある面では理解できる。とんでもない発言ですけれども、今の日本政府の対応を見ているとケース・バイ・ケースで、何かあればすべて政府に相談し、すったもんだして結論を出す。場合によっては現地の大使館、館員が責任をとらされる。これは政治がきちんとしていないからなんです。
 今後のことは問題としても、今後どうするかは今大臣がお話しありましたけれども、じゃ、今までの亡命者に対してあるいは難民に対して、きちんとしたどういう指示を出していましたか。それをはっきり言ってください。
川口国務大臣 一貫していないというお話でございましたけれども、まず難民の受け入れにつきましては、難民認定というのは法務省の所管でございまして、私は、法務省がこの難民条約にのっとって個別審査の上、適切に判断をしていると思っております。
 それから、亡命について、一般的に国際法上で、こういうのが亡命である、こういう方は亡命者であるという定義があるわけではありませんけれども、我が国の考え方といたしましては、外国人が在外公館に庇護を求めてきた場合の扱いにつきましては、その人間がいかなる人間であるかという人定についての事実確認を行い、その人間がどういう希望を持っているか、あるいは身体に対する安全という意味でどういう人道上の問題があるか、それから関係国との関係といったことを総合的に判断をして具体的な対応を検討するということが考え方でございます。
 いずれにいたしましても、先ほど申しましたように、難民、亡命者、こういった問題への考え方というのは広く議論を行っていく必要があると思っております。
木下委員 実は、このゴールデンウイークのさなか、四月二十八日から五月四日まで、私自身、きょういませんが筆頭理事の中川さんと、モスクワ並びにハバロフスクそれからサハリンへ行ってまいりました。これは、鈴木さんがああいう形で、スキャンダルで失脚した、あるいは外務省のロシアンスクールと言われている人たちが失脚した、これに対してロシアの国会議員あるいはサハリン州知事含めてどんな考えを持っているか、それを聞きたいということで、実に十七、八人の国会議員、州議会議員に会ってまいりました。
 その中で指摘されたのは、要するに、日本政府の考えが一貫していない。例えば鈴木さんの問題について言えば、鈴木さんが何か発言すると、政府の方は、鈴木さんはあくまでも個人的な私人の立場で言ったのだという発言をされる。しかし、向こうの人たちは、例えば首相の、当時の総理の親書を持って訪ねているとはっきり言っていました。それで、鈴木さんはプーチンさんにも会っています。もし首相の親書がなかったら、鈴木さんはプーチンさんに会えなかった。政府の特使として来たからプーチンさんに会えたのだと言っているわけですね。
 だから、その場その場で言葉をもてあそぶ。責任をとりたくないものだから、これは私人の立場だ、これは公人の立場だ、同じことですよ。
 例えば、中国の現在の問題にしても、今中国を、大使館を含めて、外務省の中心にいるのはいわゆるチャイナスクールの人たちです。それで、チャイナスクールの人たちは親中派と言われています。私も、阿南さんとは中国で二回ほどお会いしました。人柄の大変いい方です。しかし、彼を大使にした時点、あるいはロシアンスクールの人たちが北方四島を含めた対ロシア政策の中心にいる、これはどういう意味かわかりますか。要するに、日本の方針がそういう方向に行っているわけです。ですから、例えば、昨年ですか、李登輝さんが日本へ病気で来る、阿南さんあるいは当時の槙田さん、アジア局長ですか、強烈に反対をした。これは中国に気兼ねして反対をしたわけですね。
 そういった日本の方針が中国に対してある。だから一部では土下座外交と言われているでしょう。あるいは北朝鮮に対しても同じです。あれだけ日本人が拉致されながら、一方ではせっせ、せっせと米を送っている。北方支援も同じなんです。不当に占拠されていると言いながら、発電施設は送る、病院は送る、せっせとやっている。中国も同じです。これだけのことをされながらODAをせっせと送っている。そして軍事費に使われている。あるいは中国からよその国にODAを出させている。
 こんな国、要するに日本の方針がないのです。だから外務省の現地の人たちも戸惑っている。何か問題があれば責任はとらされる、しかし政治家がだれも責任をとっていない、ここに最大の問題があるわけです。大臣、そう思いませんか。一言お答えいただきたいと思うんです。
川口国務大臣 私は、一般論として申し上げれば、日本の外交政策というのは非常に透明度の高い枠組みの中で、雰囲気の中で決定をされ、実施をされていると考えております。
木下委員 そんな話をしているんじゃないですよ。
 では、もう一つ聞きます。鈴木さんの問題で、公設第一秘書を含む七人が逮捕されました。これについて、大臣、もう一度見解をお話しいただきたいと思います。
川口国務大臣 今捜査中の案件について、私の立場で何か申し上げるということはふさわしくないと思いますけれども、つい先般の外務省の職員二名の逮捕につきましては、今まで外務省の関連の不祥事件で国民の皆様には大分御迷惑をおかけし、外交に対する信頼を失うようなことが続いている中で、また今回こういうことが起こってしまったということは、私は大変に申しわけないと思っております。
 外務省としては、捜査に協力をして、事案の解明が早く行われるということのために協力をしたいと思っております。
木下委員 いや、私はまだ外務省の佐藤さんの方なんか聞いていないのですよ。鈴木さんの問題を聞いているんです。鈴木さんの秘書を含む、ムネオハウスの関連の七人が逮捕されたことについて、それは捜査中だからという発言でしたけれども、これは司法当局は司法当局でやればいいのです。何も我々が司法当局に遠慮して、事実確認、真相究明をなおざりにする必要は全くないんです。
 あれだけの調査結果を出した、しかし、今回このように逮捕された。私は、たまたまモスクワに行っていたときに聞きました。ですから、大臣のお言葉を聞いていないので、この鈴木さんの秘書並びに関連七人の逮捕について、もう一度確認をしておきます。
川口国務大臣 支援委員会の予算の支出の仕方に絡んでこういうことが起こっていたということでございますけれども、まさにこれについて今捜査中の案件でございますので、コメントは差し控えたいというふうに思います。
 支援委員会については、専門家の方の会議の結果、そして外務省でつくりました調査、そして新しい監査法人の調査で指摘をいただいた問題点、そういったことを踏まえて今見直しをやっているところでございまして、専門家会議の方の御意見が、支援委員会は廃止されるべきであるということが多数であったわけでございますので、これを重く受けとめまして、相手があることでございますので交渉が必要になりますけれども、私としては、支援委員会ではない新しい枠組みが必要だと考えています。
木下委員 実は、先ほどゴールデンウイーク中にモスクワに行ったと言いましたが、私が会ったのが、コプチェフ・ロシア連邦国会議員、ミトロファノフ、あるいはジリノフスキー自民党党首、ベールイ・ロシア外務省アジア第二局長、それからサハリン州知事、シドレンコ・ユジノサハリンスク市長ほか、多くの国会議員に会ってきました。
 その中で、彼らが言っているのは、要するに、鈴木さんを初め日本の外務省のいわばロシアとのパイプであった人たちが失脚したことに対して、これは日本の対ロシア政策が変わったんじゃないかという危惧を持っていました。私たちは、これはあくまでも日本の国内問題である、あくまでも鈴木さんを中心としたスキャンダルである、日本の政策は一貫して変わらないよということを強く主張してきましたけれども、大部分の方は、これからの日本の対ロ政策は強硬になるんじゃないか、つまり、四島一括返還あるいは四島一括帰属、そういう形で来るんじゃないかということをロシアの多くの人たちが言っておりました。
 ということは、つまり、鈴木さん、東郷元欧亜局長、あるいは今度逮捕された佐藤さんを含むいわゆるロシア政策をやってきた人たちは、そのたびに行って、ニュアンス的に二島先行返還を、サインを送っていたのではないか。私がそれを聞いたら、言葉を濁していましたけれども。
 その辺をもう一度確認しておきます。絶対これは、鈴木さんは、先般も私質問しました、二島先行返還を言っていた。これに対してもう一度確認をしておきます、大臣。
川口国務大臣 委員がおっしゃってくださった、日ロ関係、これに何ら変更はないというメッセージは、まさに私どもがロシアにきちんと伝えてほしい、伝えたい、理解してほしいと思っているメッセージでございまして、そういう意味で、そのメッセージを伝えていただいたということについては、大変にありがたく思っています。
 繰り返しになりますけれども、私どもの四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するという方針は、これは全く変わりがない、従来からもそうでございますし、これからもそうであるということで変わりはないわけでございまして、この一貫した方針で、我が国としてはこれからも引き続き交渉を継続していきたいと思っております。
 それから、我が国とロシアの関係というのは、これは、ロシアは大きな隣国でございまして、平和条約の締結、経済分野における協力、それから国際舞台、より広い国際的な問題についての協力といったこの三つの課題を同時に進めましょうということでロシアと話をしておりまして、これは非常に重要であると思っております。
 特に、例えば今度のパレスチナ問題というような話、アフガニスタンの問題、地球環境問題である京都議定書の問題等々、こういった国際舞台の問題におけるロシアの役割というのもますます最近大きくなってきておりまして、最後のこの国際舞台における協力というのも大事でございまして、決して日本とロシアの関係を二国間関係としてのみとらえることなく、広く大きな枠組みの中で考えていく必要があるのではないかと私は思っております。
木下委員 それからもう一つ、多くの国会議員から指摘されたのは、森・プーチン会談でいわゆる並行協議という話が出てきた、これに対して、何で外交交渉事を一方的に公にするんだと強く言われました。そして、この並行協議を森さんが公にしたことによって、例えばサハリンの州議会で公聴会が開かれた、あるいはそれをもとにロシアの下院で公聴会が開かれた。ある面では、それは日本に対するやはり相当強いプロパガンダであったということを言っていました。
 交渉事を、まだ十分にロシア側が煮詰めていないのに、一方的に手柄話にして公にする、こういうことが恐らく、あの後の外務次官会議で並行協議が白紙に戻ったその最大の原因ではないかと思うんですが、これについて、大臣、どう思いますか。
川口国務大臣 国際交渉というのはさまざまな紆余曲折があるわけでございまして、特に領土問題の交渉という非常に難しい問題の場合には、そういうことがあっても当然であるというふうに思います。
 特にこの問題については、日ロ双方、交渉を精力的に行ってきてはいますけれども、国内世論を背景に置いての難しい対応を求められることもある交渉でございますので、こういった点をきちんと双方ともわきまえて今後ともやっていかなければいけないというふうに思います。
木下委員 それから、次の問題に移りますが、現在、支援委員会の資金管理、これはどうなっておりますか。
齋藤政府参考人 お答えいたします。
 支援委員会事務局の資金についての管理の仕方でございますけれども、これは、支援委員会事務局長高野保夫という名義のもとに銀行の口座に納められております。
 このゆえんをちょっと御説明させていただきたいと思いますけれども、支援委員会事務局には法人格がございませんで、法的には権利能力なき社団という位置づけでございます。それで、日本の銀行、各銀行共通のようでございますけれども、銀行の規則によりますと、こういった権利能力なき社団につきましては、法人としての口座を持つことはできないということで、肩書のついた個人名義の口座とならざるを得ないということのようでございます。
 このような口座の場合、銀行側の取り扱いは、単なる個人名義の預金とは明確に区別されておりまして、いわゆるみなし法人である支援委員会事務局の口座として取り扱われております。また、口座資金の出し入れにつきましても、事務局長であります高野保夫個人の印鑑で行われるわけではございませんで、支援委員会事務局の公印が必要だ、また、この公印は高野保夫事務局長とは異なる事務局幹部が管理している、こういうことでございまして、純然たる個人名義の口座とは峻別されて取り扱われているということでございます。
木下委員 現在、恐らく普通預金あるいは通知預金、定期預金、この三つの預金があると思うんですが、その残高は総額で幾らありますか、繰越金。
齋藤政府参考人 支援委員会の資金の大半は、御指摘のとおり、普通預金、通知預金、定期預金、外貨普通預金として管理されておりますほか、ごく一部は現金として管理されております。
 二〇〇一年六月の財務報告によりますと、普通預金が千二百万円強、通知預金が二億四千六百万円、それから定期預金が百五十四億、外貨普通預金が一億八百二十万円程度というふうに承知しております。
木下委員 そうすると、総額にすると百五十七億円か八億円あるわけですね。
 このお金はどうするんですか、今後は。支援委員会を廃止するという動きが、もう大臣の方から廃止したいという話がございますが、この百五十七億円の余った金というのはどうする考えでございますか。
齋藤政府参考人 専門家会議の提言を受けまして、支援委員会は廃止される方向で検討することになろうかと思いますけれども、この新しいメカニズムができますまでの間は必要最小限の活動は支援委員会も続けていくわけでございまして、必要な支出もあろうかと思いますけれども、この百五十億円、これは去年の夏の段階でございますけれども、現時点でもう少し少なくなっておると思いますけれども、それをどうするかにつきましては、今後、新しい仕組みへの移行を検討する過程において、財務当局ともよく相談しながら対応してまいりたい、こういうふうに考えております。
木下委員 このお金が高野さんの、事務局長の個人名義になっているということは、これはまさに、あの外務省の報償費で松尾さんが恐らく十一億円前後のお金を個人口座をつくって運用していた、それと全く同じ構図じゃないですか。あのとき私も言いました、ほかに方法がないのか、なぜ個人口座で十一億円と。松尾さんのときは、たしか十一億円前後だったと思います。そして今回の支援委員会は、今聞いただけでも百五十億円を超えるお金が個人口座で動いている。こんなことがあっていいものですか。
齋藤政府参考人 先生、個人口座とおっしゃいましたけれども、先ほど私が御説明申し上げましたように、みなし法人でございます支援委員会事務局の口座として取り扱われているわけでございまして、適正な経理は当然のことでございまして、取引に必要な印鑑の管理や使用、こういった問題、銀行口座管理に係ります職務の所掌につきましては複数の事務局幹部職員の間で厳格に分離されておりますし、支援委員会事務局として、組織としての資金管理を行っているということでございます。
 ちなみに、事務局長が交代しますときには、同じ口座が維持されるわけでございまして、新たな口座を開設するということではございませんで、同じ口座の支援委員会事務局長の部分を残しまして、事務局長の名前だけ変更するという形で行われているわけでございます。
 重ねて申し上げますけれども、純然たる個人の口座とは峻別されて、事務局のお金として管理、運用されているということでございます。
木下委員 事務局の口座として管理されているから適正に行われている、冗談じゃないですよ。適正に行われていないからこれだけの問題が起こっているんじゃないですか。
 例えば、イスラエルのテルアビブ大学への派遣費用、こういったものが不当につけかえされているとか、あるいは私が再三追及しているように、各支援事業の追加費用、これも、きのう、きょう、また新たな追加費用の資料を外務省からいただきました。燃料とか、そんなところまでにいわゆる追加支払いがされている。こうしたずさんなところがやはり適正じゃなかったんじゃないですか。
 ちょっと資料を配っていただけますか。
 それでは、鈴木宗男代議士の公設第一秘書を含む七人が逮捕されたムネオハウスの件につきまして、もう一度ちょっとこれをチェックしてみたいと思うんです。
 今資料をお配りしておりますが、このように下請に流されているわけです。約四億円、随意契約で結ばれた。それが渡辺建設と犬飼工務店。五千万円がコマツハウス、残りの三億五千万円がエンジニアリング会社の日揮へ流れる。そこからさらに工事発注、孫請として一億三千万円がコマツハウスへ流れ、そして日揮から貨物船・宿泊船発注として一億六千万円がこういう形で船舶調達会社に流れているわけです。
 そして、新聞報道によると、実は貨物船、当初三隻予定だったものが、一隻を減らして二隻にして、千五百万円を浮かせたと言われています。そうなると、二隻ということは合計で三千万円です。そして宿泊船についてのC社、これは私も取材をさせていただきました、はっきり言いませんでしたが、約四千万円だそうです。そうすると、四千万円と三千万円を合わせると七千万円。日揮から貨物船・宿泊船発注に一億六千万円が流れている、ところが実際に七千万円ぐらいしか使ってない。あと残りはどこへ消えたんですか。
 外務省は調査をしたと言いました。ここまで、末端までなぜ調査しなかったんですか。末端の例えば孫請会社あるいは船会社、そこまでは外務省さんは調査をしなかったわけですか。お答えください。
齋藤政府参考人 今この資料を拝見したわけでございますけれども、外務省といたしましては、発注者である支援委員会と、受注者でございます、片や日本工営、片や渡辺建設工業、犬飼工務店のジョイントベンチャー、この契約については知る立場にあるわけでございますが、それ以外の下請ですとか孫請ですとか、そういうことについては知る立場にございません。
 また、なぜ調査をしなかったのかということでございますけれども、それは今申し上げましたようなことで、行政機関である外務省の調査のなかなか及びにくいところであろう、こういうことかと思います。
 いずれにいたしましても、この問題、今捜査中の事案でございますので、この点につきまして私の方からコメントをすることは差し控えさせていただきたいと思います。
木下委員 私が調査できるのに何で外務省できないんですか。やる気がなかったんですか。大臣、どうですか。私ができるんですよ、ここまで。なぜ外務省やらないんですか。あとは司法当局にお任せでいいんですか。
川口国務大臣 調査をできなかった理由というのは、今まさに齋藤局長が申しましたように、外務省はこういうところを調査する権限がないわけでございまして、調査をすることができないということが一つでございます。
 それからもう一つは、あの報告書につきましては、これは、外務省の職員がさまざま御指摘いただいた事項に対してどういう対応をしたかということを調査した内容である、しかも強制権のない範囲で調査をしたということであるということでございます。
木下委員 おかしなあれですね。調査する権限がない。権限でやるんじゃないですよ。疑惑があるから調査したんじゃないですか。私だって権限でやっていないですよ。本気になって調べる気になれば、ある程度わかるんです。これは権限で調べるんじゃないですよ。調べる気がなかったんですか。要するに、疑惑にふたをしたかったんですか。もう一度答えてください。
齋藤政府参考人 疑惑にふたをするようなことで調査をしなかったということは断じてございませんので、その点はぜひ御理解賜りたいと思います。
 外務省といたしましては、園部参与によります調査並びに新しい監査法人による調査という二つの調査を行ったところでございまして、先ほど大臣からお話ございましたように、任意の調査という制約のある中で、可能な限りの解明の努力を行ったというふうに考えております。
 いずれにいたしましても、今捜査中の事案でございますし、外務省といたしましては、必要に応じ、検察当局による捜査に積極的に協力してまいりたいと思っております。
木下委員 時間がないので、次の問題に移ります。
 佐藤優分析官ほか一名が逮捕された事件なんですが、二〇〇〇年一月に、外務省欧亜局がテルアビブ大学のロシア研究者二名を日本に招待した。そして三百三十二万円が支援委員会から支払わされた。さらにその年の四月、今度は十七名をテルアビブに派遣した。その決裁書がここにございます。これが決裁書でございます。これは平成十二年二月二十八日に起案され、そして三月八日に決裁されています。
 これを見て驚くのは、この決裁書には、例えば、当時の川島事務次官、加藤良三外務審議官、東郷欧亜局長らが決裁官となっているほか、協議先として、条約局の谷内正太郎局長、あるいは条約課長、大臣官房の会計課長、イスラエル担当の中近東アフリカ局中近東第一課長、ロシア担当の欧亜局ロシア課長、佐藤主任分析官の直接の上司であった国際情報局分析第一課長、こういった人たちがみんな列記してサインしているんです。いわば、これは佐藤分析官、あるいは前島課長補佐、あるいは東郷さんだけの問題ではなく、外務省全部がこれにサインしているんですよ。外務省ぐるみじゃないですか。どうですか、大臣。
川口国務大臣 イスラエルへの出張の件でございますけれども、そのときの外務省の決裁というのは、その支出が、決裁書に載っている事項について支出を行うということが協定上可能かどうかという外務省としての判断をその当時に行ったものであるというふうに私は承知をしております。
 この件につきまして、起案者、あるいは、たしか起案者が今関係をしている人間なのではないかと思いますけれども、それの費用を個人的に使うといったような、個人的な利得を得ていたという事情があるということで、外務省がその支出が協定上可能であるかということを判断した時点では想定をしていなかった疑いが指摘されているわけでございまして、いずれにしても、この支出が協定上違反になるかどうかということは、捜査の進展を見きわめた上で判断をするということになると思います。
木下委員 それから、この金額が総額で二千九百六十九万。これの具体的な内訳、明細書、これを出していただけますか。どうですか。
齋藤政府参考人 御要望におこたえできるかどうか検討させていただきたいと思います。
木下委員 ぜひ出してもらいたいと思いますので、委員長、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
吉田委員長 理事会で協議いたします。
木下委員 それから、もう時間があれですので、最後に、先ほど北海道の根室の方から情報が入りまして、今根室の花咲港のドックに上架されている希望丸の修理の決裁が本日午後六時に完了するという情報を得ましたが、これは事実ですか。
齋藤政府参考人 希望丸の修理に関するお尋ねでございますが、その前に、ちょっと私、先ほどの資料提出に関する御質問に対する答弁に関連いたしまして一言申し上げておきたいと思いますが、これは今捜査が進行している事案に関連する資料ということで、お出しすることが難しいのではないかと存じております。
 それから、希望丸の修理でございますけれども、たしかきょう、修理に関します契約が根室造船との間でできたというふうに聞いております。
 ちょっと敷衍させていただきますと、この修理につきましては、御記憶のとおり、二月に根室の花咲港に修理のために、どの程度の修理が必要かということで回航されてきたわけでございますが、コンサルタントによります修理の必要性の調査等に時間もかかっていたわけでございますけれども、この国会でも御指摘のございましたように、四島交流を控えまして、このはしけがどうしても必要だという事情もございまして、必要最小限の修理で、できるだけ早く返してほしいという先方の意向もございました。
 その上で、いろいろと検討いたしました結果、プロペラの取りかえという最小限の修理、一番緊急な修理にとどめるという判断をいたしまして、このプロペラの製作に関する契約、これはたしか最初のプロペラを希望丸につけたときの……
吉田委員長 局長、もう時間が過ぎていますから、簡潔に。
齋藤政府参考人 はい。
 この見積もり合わせの結果、同じナカシマプロペラという会社に製作してもらうことに契約ができていると思います。
 それから、これを取りつける契約、これは、今、希望丸が上架されております根室造船との間で取りつけのための契約を結ぶ、この取りつけのための契約がきょうできたというふうに私も聞いております。
 以上でございます。
木下委員 もう一点だけ。これは随意契約で、もちろんそうですよね、随意契約でされたということでよろしゅうございますね。
齋藤政府参考人 大変失礼いたしました。今時点でまだ契約できていないようでございますけれども、もうすぐ調うということのようでございます。
 最初のプロペラ製作の方は見積もり合わせによる随意契約でございまして、取りつけの方は随意契約でございます。
木下委員 わかりました。
 質問を終わります。ありがとうございました。
吉田委員長 次に、土田龍司君。
土田委員 午前中に地球温暖化の京都議定書が通りまして、これであと衆議院が通って参議院が通れば、大臣も大手を振ってサミットに行ける、しかも、前環境大臣として大きい顔ができるんじゃないかなと思って私も安心しております。
 瀋陽事件について、事件が発生してから十日たつわけでございますが、私自身はまだここでほとんど質問しておりませんので、十五分間だけでございますから、もうたくさん議論が出ておりますが、その中でも幾つか私が不審に思うところについてお尋ねさせていただきたいと思います。
 まず、日本政府として十一日に中国側に申し入れたわけでございます。毅然たる態度、外務大臣が繰り返し、本会議場でもこの席でも、毅然たる態度をとるんだというふうにおっしゃっている、その内容でございますが、この十一日に申し入れした内容が、まず原状回復すること、それから陳謝をすること、それから再発防止のための保証をするようにということを申し入れしたわけです。
 どんどん話は進展していきまして、きょう現在は、この五人の亡命希望者たちは第三国、アメリカらしいんですが、そこに行くことになると。淡々と話が進んできているわけですが、大臣が言い続けた毅然たる態度、これはどのように今生かされているんでしょうか。
川口国務大臣 毅然たる態度というのは毅然たる態度ということでございまして、それをさらに説明するということは難しいと思いますけれども、日中関係は非常に重要でございますから、それは前提でございますけれども、こちらとして考えることをはっきりきちんと伝えていくということだと思います。
 その上で、今委員がおっしゃられました事実関係について、若干事実と異なる部分というのがあるかと思います。原状回復というふうにおっしゃいましたけれども、私どもがお話をしているのは、引き渡しという言葉を使わせていただいたわけでございます。それから、現在、第三国、アメリカにというふうにおっしゃられましたけれども、そういう事実、そういうことで合意をしたという事実はございませんので、念のためにお話をさせていただきます。
土田委員 いや、合意をしていないのは事実なんです。だって、相談がないんですから。日本に相談がなくてアメリカにやろうというわけですから、合意をしていないわけですね。
 この原状回復と五人の引き渡し、どう違うかわかりませんけれども。あるいは、陳謝を求めたけれども中国側は、そういった事実はない、日本の同意を得て中に入り、感謝をされながら五人を連行していったと言っているわけですから、全然その内容は違うと思うんですが、どうも日本として毅然たる態度がとられていないというふうに私は感じます。
 では、再発防止の保証、これについてはどうですか。
田中政府参考人 まさに私ども、今大臣が申されたように、事実関係においての立場というものが日本と中国の間では違う、日本は、日本が行った独自の調査に基づいて、総領事館の立ち入りについて同意がなかったという立場は毅然と維持をしていきたいということでございます。
 ただ、日中、それは友好国でございますから、きちんと話をする必要はあるというふうに思っていますし、中国は中国側の立場を主張しているというのが今の状況でございます。
 ですから、再発防止ということのためには、双方の立場を、できるだけ議論を積み重ねる必要があるんじゃないかというふうに考えます。
土田委員 ということは、議論を積み重ねた上でないと再発防止の具体策は出てこないということでございますか。再発防止策について、何かまだ話し合いはされていないというふうに理解してよろしいんでしょうか。
田中政府参考人 先ほども申し上げましたように、私どもとしては、調査報告に基づきまして、立ち入りについて同意がなかったということでございますから、当然のことながら、中国側が立ち入りについて今後同意を求めるということが再発防止の保証になるということでございますけれども、中国は同意があったんだという立場を崩していないということでございますから、議論の必要はあると思います。
土田委員 この瀋陽事件が発生した朝、阿南大使が、不審者があった場合は追い返せというふうに指示していたという報道があった。それに対して日本は、そういった事実はないと全面否定をした。この追い返せということを指示していたという報道があったのは十五日ですが、外務省の反論というのはその前の夜、十四日の夜にそういった反論をしている。非常に素早いといいますか、報道がある前に反論をしているわけですけれども、この事実確認というのはどうやってなされていたんでしょうか。
田中政府参考人 最初に報道がされたのが通信社による報道でございまして、直ちにその事実関係を確認して、その事実関係に基づいて措置をしたということでございます。
土田委員 どういった確認をしたかというのが今の答弁には抜けているんですが、話の流れからしますと、阿南大使が追い返せと言った、その四時間後にその事件が発生して、現場にいた副領事は、テレビで見たようなああいった態度をとった。非常に、何といいますか、つじつまが合うような感じが私はしてならないんです。そういった指示があったからそういった態度をとったんじゃないかなと。
 いわゆる外務省の報告というのは、これまでも何回も指摘されておりますように、非常に当てにならないところがあるからこういった質問をせざるを得ないんですけれども、事件が発生した直後から、瀋陽の総領事館と本省の方で多分何回も何回も頻繁に電話でやりとりをされているというふうに私は思うんですが、そういったことがありながら、事実関係が違ってきたり、あいまいな点があるというのはどうも解せないなという感じがしてならないんです。
 先ほどからの質問の中で、日本政府として今後亡命者に対してどういった態度をとるのかという質問に対して、大臣が何回か答えておられますけれども、どうもいまいち僕ははっきりしません。世界各国からは、日本は亡命者を受け入れない国だと。あるいは、先進諸国の中で日本が一番亡命者を受け入れている数も実態として少ないわけでございますが、今後積極的に、積極的にということはないんですが、受け入れてもいい姿勢なのか、なるべく受け入れないという方向なのか、大臣の明確なお話を聞きたいんですが。
川口国務大臣 難民の問題につきまして、確かに委員がおっしゃられますように、はっきりした数字は私は存じませんが、一般的に日本は受け入れが世界の中でも少ない国であるということだろうと思います。その方針をどうするのかというのは、まさにこれは、国を挙げてみんなが考えて議論をして答えを出していく、そういう問題であると私は考えております。
土田委員 いやあ、よくわかりませんね。みんなで相談して答えを出していくというんですか。現在の外務省の姿勢ですよ、あるいは今後でも同じなんですが。ちょっと今の答弁は何かわかりにくい。みんなで話し合って決めようというんですか。もう一回答弁してください。
川口国務大臣 今後の問題ということで申し上げたんですけれども、今の考え方で言いますと、難民認定を、法務省が難民条約にのっとって個別に審査の上、適正に判断をする、そういうことでございます。
 外国に、在外公館に庇護を求めて人が来たときにどうなるかというときの扱いにつきましては、これは、その来た方の人定関係、事実関係、身体の安全にどういう問題があり得るか、それから関係国との関係、その人が何を希望しているか、そういったことを総合的に考えまして、具体的に対応を検討するということでございます。
土田委員 在外公館の、こういった事件が発生したときの基本的な考え方については、川口大臣から公館に伝えてあるという発言がありました。そして、今回の阿南大使の発言は、それを受けて自分の守備範囲のところにそういった指示を出したということなわけですけれども、規則どおりにやるとした場合に、こういった亡命なのかテロなのか不審者なのかとにかくわからない人が大使館もしくは総領事館に来たときの判断ですね、これについては、侵入した不審者に対しては、大使館前で、大使館の門の外で事情聴取を行うということになっているんですが、こういった規則があるのでございましょうか。
田中政府参考人 阿南大使が館内で発言している規則というのは、警備の観点からの館内のマニュアルということだろうと思います。それは、規則と申しましても、一つのマニュアル的なものだろうと思いますし、その中で、不審者ということに対してはきちんとした警備をしなければいけないということを言っているものでございます。
土田委員 田中局長、そうした場合に、不審者の希望がわからないわけですね。それを、インタビューといいますか、聞かなきゃならない。それを門の外で、いわゆる立ち話をするのがいいというそのマニュアルというのは、やはりおかしいという気がするんですけれどもね。この辺、現実味がないような気がするんですが、この辺の具体論はどうでしょうか。
田中政府参考人 これはいろいろなケースがあると思いますし、一律に言えるものではないと思います。
 ただ、原則的に申し上げれば、大使館なり総領事館の中と外というのは全く違う概念であると思いますし、外においては、接受国の主権のもとで、警察権も含めて行使がされるということでございます。ですから、そういう意味では、外で、不審者を中に入らないようにするというのは、現地の警察の安全確保の役目であると思います。
 同時に、大使館あるいは総領事館に、今のケースでいいますと、いわゆる脱北者という人が入ってくる場合がある、この場合については種々の考慮、人道的な考慮、総合的な判断をして取り扱いをするというのが基本的な原則でございます。
 例えば、スペインの大使館のケースとか他の大使館のケースでも、スペインの場合には、門が大きく開いていて、そこにどうっと、いわゆる駆け込みということでございました。館の中に駆け込んだということでございますが、他のケースにおいてはほとんどが、警備の手薄なところをついて、壁を乗り越えて入ってきたということでございます。
 ですから、通常は、そういう正門からということは想定されていないのかもしれません。あるいは、別途コンタクトをとるといったようなこともあり得ることかもしれません。ただ、それを個別的に、この場合にはどうするということを申し上げることはできません。
土田委員 以上で質問を終わります。
吉田委員長 次に、松本善明君。
松本(善)委員 外務大臣に伺います。
 午前中の質疑で瀋陽の事件についてお聞きをいたしました。それで、不審者と北朝鮮から来た人たちと区別しているように言いながら、結局、詰めていくと、警備上答弁を差し控えるということで、同僚の議員が聞かれても、最後、詰めていくと、はっきりしなくなるという状況でございます。私はやはり、きょうの委員会でも、侵入という言葉についての議論もありましたが、結局、受け入れないということじゃないか。
 小泉首相が、北朝鮮から脱出した者の扱いについて、一般論を言えば、関係者の人定事項等の事実関係を確認し、同人の希望等を聴取した上、当該者の生命または身体の安全が適切に確保されるかなどの人道的観点や関係国との関係を考慮し、具体的な対応について検討することになるということを答弁し、それから、北朝鮮から脱出する者の事案が頻発していることを踏まえて、これらの者が在外公館に侵入した場合を念頭に対処を準備する、こういう答弁なんですね。
 やはり侵入と、北朝鮮から来た人たちのことを侵入者、こういうふうに言っている。阿南大使が、不審者が大使館敷地に許可なく侵入をしようという場合には侵入を阻止すると。これは符合をするわけなんですね。
 結局、本会議での私に対する答弁だとか、その後の答弁を聞きますと、北朝鮮から不法入国した者は不審者の中に入る、こういうふうに外務大臣は考えているんじゃないか、外務省はそういうふうに考えているんじゃないかと思いますが、北朝鮮から中国に不法入国した者が総領事館等に入ろうとした場合には、これは不審者の中に入るんですね。外務大臣の答弁をまずお聞きしたいと思います。これは根本方針ですね。――いや、外務大臣からまず伺って、それで満足できなければ聞きます。
川口国務大臣 不審者という日本語は、身元がはっきりしていない、そういう人のことをいうと思います。
松本(善)委員 いや、北朝鮮から来た人も、結局、不法入国した人はそういう中へ入るんじゃないですかと、領事館に入る入らないという問題が中国警察との関係で起こった場合。
川口国務大臣 北朝鮮の方としても、不法に入国をした人も合法的に入国をした人も両方いると思いますので、一概に北朝鮮の人が全部不法入国したというふうに私は思いませんけれども、いずれにしても、不法入国した人は、これはどこの国の人であれ、例えば身元証明の書類を見せられるといったようなときにそれが提出できなければ、それは不審者として扱われるということにはなろうかと思います。
松本(善)委員 結論的に言えば、今の御答弁ではっきりしましたが、いわゆる脱北者とあなたがしょっちゅう言われる人たちは、北朝鮮から不法入国したと中国が考える人たちですよ。それは不審者として扱うというのが結論だということが今の答弁ではっきりしたと私は思います。今まであいまいにしながらきていたけれども、この根本方針がある限りは、私は、日本が人道上の配慮をするとか人権を考えてやっているとかいうことを言っているのは表面だけのことになるというふうに思います。
 言い直す必要がありますか。あれば聞きましょう。
川口国務大臣 言い直す必要があるということで申し上げているわけではなくて、私が申し上げたことについての委員の理解が、私が申し上げたことと違うということを申し上げたいわけです。
松本(善)委員 それは、議事録をきちっと見ればそういうことになりますよ。
 法務省の刑事局長に伺います。
 外務省職員である前島陽、佐藤優両名が背任罪容疑で逮捕されたけれども、その被疑事実が、両名が共謀してロシア支援委員会に不正支出をさせたというものであり、その第一は、二〇〇〇年一月に来日した研究者夫妻の旅費と滞在費三百三十二万千三百四十八円の支出、第二は、二〇〇〇年四月、イスラエルで開催された国際会議への学識経験者、外務省職員計十七人分の参加費用、現金で二百七十万八千六百四十円、銀行振り込みで二千七百四十六万二千三百七十六円の支出に関するものであり、合計損害額は三千三百四十九万二千三百六十四円というものでありましょうか。全体を、被疑事実を読みますと時間がかかりますので、そういうものでありましょうか、伺いたいと思います。
古田政府参考人 ただいま委員が御指摘のありました、金額、ちょっと私、正確に聞き取れなかったかもしれませんが、おおむねその御指摘のとおりでございます。
松本(善)委員 これは、支援委員会の設置に関する協定上支出が許容できない、そういうものですね。被疑事実上はそういうふうに書かれてありますが、それも間違いありませんね。
古田政府参考人 御指摘のとおりでございます。
松本(善)委員 いずれの場合も外務省欧亜局長、これは東郷局長だと思いますが、欧亜局長が決裁したことになっているけれども、そのとおりですね。
古田政府参考人 御指摘のように、欧亜局長をしてその支出を決定させたという被疑事実になっております。
松本(善)委員 一般論として聞きますけれども、政府職員が不正支出を行って背任罪に問われた場合、その決裁をした者も共犯関係になり得ると思いますが、法律関係を説明してください。
古田政府参考人 ある支出を決定するについて複数の者が関与している場合に、一般論として申し上げれば、その支出をするに至った経緯、それからその支出先、具体的な使途、こういうことについて、それぞれの関係した人がどういうふうな認識であったか等のいろいろな証拠関係から判断されることになると思います。
松本(善)委員 事実関係で、共犯になったり、共犯になっても起訴猶予になったり、いろいろの事実関係があると思いますが、地位のいかんによって、罪に問うたり問わなかったりするということはないでしょうね。
古田政府参考人 犯罪の成否は、先ほど申し上げましたとおり、証拠関係に基づいて判断されるべきものでございますので、地位のいかんによってそういう判断が左右されるものではないと考えております。
松本(善)委員 大臣に伺いますが、これは先ほども問題になりましたが、外務省から提出されましたこの決裁文書、これによりますと、やはり事務次官まで決裁をしていますね。これは、私は、刑事事件としてどこまで広がるかはわかりません、捜査の進展いかんですけれども、やはりこういうことが決裁されている、犯罪になる支出が決裁されているということは、外務省としては本当に重く受けとめないといけないんじゃないか。
 この問題について、外務省として、刑事事件は刑事事件として検察庁がやるでしょうけれども、やはり自浄能力を発揮すべき問題ではないかと思いますが、外務大臣はどういうふうに思っていますか。
川口国務大臣 御指摘のありました支出につきましては、これは、決裁書に記載をされている事項に基づきまして支出を行うことが協定上可能かどうかということについての外務省としての判断をその当時行ったものだというふうに私は承知をしています。
 この件につきましては、起案者等が個人的に費消するなどの個人的な利得を得ていた事情がある等の、外務省として支出についての判断を行った時点では想定をしていなかった疑いが指摘をされているわけでございまして、いずれにしても、この支出が協定違反になるかどうかということについては、捜査の進展を見きわめた上で判断をすることになると考えます。
松本(善)委員 私は、それではいけないんじゃないだろうか。当時は想定していなかったと言いますが、支援委員会設置協定第三条1の(b)の(6)によりますと、受益諸国における市場経済への移行の円滑な実現に資する活動のために必要な物品、機材、役務の購入に基づきとあるんです。そうすると、学者などの代表団の派遣が役務の購入というふうに考える、それを決裁する。私は、この支援委員会の協定を見れば、これはもう明らかですよ。そういうことについて反省をしないで、当時は当時としてよかったんだ、あとは捜査機関に任せる、それは外務省としては本当に無責任きわまりないと私は思います。
 報道によれば、鈴木議員がおれのとってきた金だと言って叱責をして、外務省職員にわび状を書かせたりしている。これを捜査機関に任せておいて、外務省は知らぬ、あの当時はあの当時のことだと、これはもうとんでもないことだと思いますよ。このことについて、本当に外務省は何にも反省もしないで任せていくのか、これが一つです。
 それからもう一つ、外務省が盛んに言っている新日本監査法人による報告書でも、支援委員会の意思決定は実質的に外務省で行われている、ロシア支援室の指示に基づいて支援委員会の事務局事業を行っていると。そうすると、これは外務省全体の問題ですよ。私は、そのことについて何の反省も外務大臣から聞かれないということは、本当にびっくりするようなものです。
 この点と、それからロシア支援室ですね。これは、支援委員会を解散する、廃止するという方向で検討するということは言っていますが、この支援委員会の解散、廃止、それからロシア支援室の改組について、今外務大臣はどう考えているか、その二点を伺いたいと思います。
川口国務大臣 二点ございまして、まず、受益諸国における市場経済への移行の円滑な実現に資するための活動のために必要な役務ということに該当をしないというお話、最初の方の御質問ですけれども、純粋に協定の解釈の問題として申し上げますと、外務省としては、第三国のロシア研究者を招聘したり、第三国で国際会議を行ってそこにロシア研究者等を派遣することを、支援委員会の設置に関する協定第三条(b)(6)の受益諸国における市場経済への移行の円滑な実現に資する活動のために必要な役務に該当すると解釈することが可能な場合はあり得ると考えています。
 本件のこの支出につきまして、この項に該当する場合であるかどうかについて、決裁書に記載されている事項に基づいて判断されたものでございます。
 ただ、しかしながら、この件については、起案者等が個人的にお金を費消するなどの個人的な利得を得ていたという事情もあるなどの、外務省として支出を判断した時点では想定していなかった疑いが指摘されているわけでして、いずれにしても、この支出が協定違反になるか否かは捜査の進展を見きわめた上で判断することになると考えます。
 それから、二番目の御質問が、支援委員会の改組とおっしゃったのか支援室の改組とおっしゃったのかちょっと定かでございませんでしたけれども、委員会の改組ということで言いますと、専門家会合で御指摘をいただいているように、これは別なやり方に変えた方がいいというのが御指摘でございますので、私どもはそれを重く受けとめております。
 このやっている事業、ロシアの市場経済化の支援であり、北方四島住民の支援であり、ロシアへの人道上の支援でありといったことは必要なことであるということですので、これは相手があることでございますので、例えばロシアの、あるいはほかの協定の参加国との協議が必要でございまして、そういった協議を経た上で何か新しい枠組みをつくっていくという方向で検討を今しているわけでございます。
松本(善)委員 時間でありますので終わりますけれども、大変大事な問題なので最後に確認しておきたいんですが、捜査に対して今の御答弁は、支援委員会設置に対する協定の違反ではないというような開き直りにも聞こえるんですけれども、そういうつもりで答弁をされたんですか。それは大変大事な、捜査当局が考えていることと外務省が考えていることが違うということ、どうしてもこれは確かめてはっきりしておかなきゃいけないので、大変申しわけありませんが、最後に聞いておきます。
川口国務大臣 非常にニュアンスのある問題でございますので、もう一度答弁を繰り返させていただくことになると思いますけれども、まず、御指摘の支出でございますけれども、これについては、決裁書に記載されている事項に基づいて支出を行うことは協定上可能か否かについての外務省としての判断をその当時行ったというものだと承知をいたしております。
 本件につきましては、起案者等が個人的に費消するなど個人的利得を得ていた事情もある等の、外務省として支出について判断を行った時点では想定していなかった疑いが指摘をされておりまして、いずれにしても、本件支出が協定違反になるか否か、これは捜査の進展を見きわめた上で判断をすることとなりますというふうに申し上げました。
松本(善)委員 では、終わります。大変重大な問題だということだけ言って終わります。
吉田委員長 次に、原田義昭君。
原田(義)委員 自民党の原田義昭でございます。
 大臣におかれては、本当に連日御苦労さまでございます。着任されて百日を超えられるわけでありますけれども、山また山で御苦労でございますけれども、頑張っていただきたい、こう思います。
 きょうも領事館の問題、テーマとして大分議論されました。実は、やや象徴的なんですけれども、今晩の夕刊の一つにこういう記事があった。「なぜ? 事態は混乱するばかり 今後は?」どうなるかという記事でありますね。要するに、何かもう、これは私の頭の中もそうなんですけれども、何が何かわからねえというぐらい本件は複雑になってきているような気がいたします。しかし、物事というのは、大体、複雑なときは何が核心か、何が本質かということをきちっと分析すればそんなに難しくないと思っているんですよ。
 私の理解では、本件は三つに分かれると思っております。一つは主権の侵害。もう一つは、亡命とか難民をどう扱うか。先ほども出ましたよ、日本は少しその辺が温かさが足りないんじゃないか、先進国の中でもその辺がおくれているのではないかと。これはこれで大問題であります。三つ目は、阿南大使の発言の問題が出ましたけれども、領事館のどたばた。そのときに総領事もいなかった。副領事も日本に帰国していた。すぐは帰れなかった。伝達の方法、電話の連絡、ましてや、英語で書いた大事な文書、命をかけた大事な文書を読んだか読まないか、ぽっとけってしまったと。
 私は、これらの問題は非常に大事ですけれども、これは、ある意味では外務省改革、今外務省はどうなっているんだというジャンルの問題ではないかと思っているんですよ。これらをみんなごっちゃにして、あれが悪いから、これが悪いからと言ったって、問題はますます複雑になるだけである。
 私は、中国との関係では、第一点、唯一、これは主権の侵害に対してきちっとした抗議を行い、それを断固として追及するということが大切であって、二番目の亡命、難民の対策は、これはこれでやらなきゃいけない。三番目はしかりで、もう今やっているわけでしょう。ただ、そのとおりいかないというだけだ。
 これについて、よく領事関係に関するウィーン条約のことが出ます。まず、この条文をみんなもう一回読み直さにゃいかぬと思う。三十一条の一項というのは、まず不可侵だということであります。二項は、許される範囲が二つある。それは、同意が得られたときと、ただし書き。これは当然、火災とか災難とか、もう何としてでもその暇がないと。三項というのは、ホスト国は最大限の努力をしてその領事館を守らなきゃいけないと書いている。
 実は、私の知る限り、中国はまず、同意を得たから問題ないと言っているんだ。そして二番目に、三項の、全力を尽くせ、何もかんもちゃんとした措置をとれと言っているから、だから我々の行為は正当化されるんだということをどうも言っているようなんです、僕の知る限り。
 しかし、私は、その一項、絶対不可侵の条文、そして二項、承諾、合意を得たか、これは本当に真剣に考えなきゃいけないと思っている。この条文を読むと、外交使節団の長の同意を得るということですよ。ないしは、それが専らそうしろと権限を与えたその職員だけ同意を与えるという権限を持っている。この同意について、どうも水かけ論になりつつあるような感じがしますね。
 日本は、いろいろ言って同意を与えていないと言うし、向こうの国は、何かもう同意をもらったと言って、我々は合法化されているんだと堂々と言っているでしょう。しかし、これもおかしな話で、水かけ論といったって、同意をする権限は日本にしかないんです。百歩、二百歩譲って、そのときに多少の誤解を与えたとしても、これだけ日本が正式に同意をしていないと言っているんだから、こんなこと、相手国が同意をもらったから合法化されるなんということは、私は頭からおかしな話だと思います。
 いかなる意味から見ても、私はこれはやはり、日本の立場、これは違法であるということはきちっと正当化されるものであって、このことを唯一、中国に対して言い続けるべきではないかな、これが、なぜ混乱をし続けているかということについての私なりの答えなんですよ。あれやこれや、領事館の手続、阿南大使の発言、それをごたごた持ち出しますと、これは幾らたってもらちが明かない、そんな感じがするわけであります。
 これに対して、大変残念ながら、総理も外務大臣も、公の場でこの問題について、国際法上の問題で極めて問題だ、さらには、非常に遺憾であるということを繰り返し言っておられます。私は、そのとおりだと思いますけれども、問題であり、遺憾なのはわかりますけれども、やはりその条文に照らすと違法であり、国際法に違反しているのではないかということを触れることが必要ではないかなというのが私の印象でございます。
 確かに、冒頭申し上げましたように、非常に複雑になっております。また、中国という大事な国との関係もありますから、それはもちろん追及していかなきゃいけませんけれども、私は、こういう問題について、しっかりとした本質をまず求めるということが必要ではないかと思います。
 大臣、いろいろ御意見があろうと思いますが、私のそういう意見に対して、いかなる印象を持っておられるか、どうぞ答えていただきたいな、こう思います。
川口国務大臣 委員がおっしゃられますように、確かに物事が非常に複雑に絡まって見えるときというのは、きちんと問題を整理して、物事の本質が何かということを見きわめるということが非常に重要な作業であると、私もお話を伺いながら思った次第でございます。
 この問題について言いますと、いろいろ委員が御指摘になられたような問題があるわけでございます。委員もおっしゃられましたけれども、日中の友好関係というのも非常に大事な関係であるかと思います。我が国といたしましては、国際法上それから人道上の観点から、冷静かつ毅然として対処をしながら、この問題の早期解決に向けて全力を尽くす考えでおります。特に、関係者五名の処遇をめぐっては、人道上の観点が配慮されることが重要だと考えております。
原田(義)委員 そういう御答弁でありますけれども、私は、やはり違法という位置づけをきちっとした上で、まずは陳謝を求め、かつ原状回復を求めるということが筋論ではないかと思いますが、その問題の解決というものをぜひとも急いでいただきたいな、こう思っております。
 もう時間がほとんどなくなりましたので、もう一点。
 私は、今度の連休を利用してアメリカに行ってきました。そこで、議員外交というと多少口幅ったいわけでありますけれども、議員としていろいろ外交活動をやってきたわけであります。その中で、いろいろな日米関係の将来のこともありましたけれども、あわせて日ロ間の北方領土の問題、さらには日朝間の拉致問題を、ぜひアメリカ人にも理解し、かつ、でき得ればサポートしてほしいということを言ってきたわけでございます。
 それぞれ我が国とかの国とで、バイの難交渉はずっとやっておるわけでありますけれども、なかなか解決の糸口にならないというのも現状であります。それを、アメリカを含む第三国に、やはり国際社会に認識を深めてもらうということも私は極めて大事ではないか、こう思ったわけであります。アメリカで、上院、下院、都合八人ほどの人に会いまして、また国務省の次官補、商務省の次官、これも含めて会って、その都度そのことも申し上げたわけであります。
 特に北方領土については、先ほど民主党の同僚が質問をされましたけれども、私は、鈴木宗男さんの事件の後、やはりいろいろな形でロシアの側に誤ったメッセージを与えているのではないかと心配する一人でございます。そのことをきちっと必要なら修正をして、やはり日本というのは四島一括、きちっとした形でまず主権を定めて、そして返し方については、いろいろ交渉事でしょう。しかし、少なくともその強い意図を、ロシア側にももちろん伝えられておると思いますが、アメリカを含む第三国にも、やはり私は認識してもらう必要があるな、こういうふうに思ったわけであります。
 とりわけ、プーチン・ブッシュ両首脳会談が五月の二十四日から六日にわたって行われるという話も聞いておりましたので、なかなかそれはそうはいかぬでしょうけれども、そういう場でも、ブッシュの口からプーチンさんに、もういいかげんにそういう違法な状態というのは修正しろと。さもなくば、私は、日朝、日ロ、極東の安全とか永続的な平和というのは、この拉致問題、さらには北方領土問題がきちっと解決しなければ、これは達成できないと思っています。
 それは、ひとり日本とかロシア、日本とか朝鮮の問題ではなくて、アメリカにとっても重要な問題であって、それらは、いずれもアメリカ固有の問題なんだというようなことも私は訴えてきたつもりでございます。そのいずれも極めて大きな問題でありますけれども、私は、そういう角度からの努力も必要ではないかなと。
 例えば北朝鮮の拉致問題も、私はこれを全員に向かって詳しく説明しましたよ、自民党のパンフレット、立派なのができましたから。そうすると、全員が全員何も知らない。何も知らない上に、大体今どき、こんなことがあり得るのか、何のために北朝鮮人は日本人を拉致なんてしているんだとびっくりしているわけですね。だから、おれもわからない、なぜ拉致したか、しかし、現実にそういうことをされているんだ、このことを人道の問題から私たちはもう本当に訴えているけれども、やはり今こそアメリカの力というのを私たちはかりたいんだ、こういうことを言ってきたわけでございます。
 北朝鮮問題、例えばKEDOの問題、ミサイルの問題も、結局、ペリーなんかが出てきて、やはり彼らの力を本当に活用することによって一つ一つ解決に近づくんではないかな、私はこう思うわけであります。
 これは私の活動を通じての印象でありますけれども、大臣からもそういうアプローチもぜひ続けていただきたいな、こうこの場をかりてお願いをするところでありますけれども、大臣、今私が申し上げたこと、印象があれば何かお願いしたいと思っています。
川口国務大臣 北方領土の問題にいたしましても、それから拉致問題にいたしましても、原田委員がおっしゃられましたように、この問題の存在を世界に広く知ってもらう努力が必要でございますし、その国々にそれぞれ働きかけてもらうということも大事だと思っております。
 私自身、パウエル国務長官とは二つの問題については話をし、アメリカからは支持をいただいていますし、おっしゃった議会等関係のところに働きかけるという努力をこれからもずっとしていきたいと思っております。
原田(義)委員 これで質問を終わりますけれども、どうぞ、また大臣、しっかり頑張っていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
吉田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後七時一分散会


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