衆議院

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第20号 平成14年7月10日(水曜日)

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平成十四年七月十日(水曜日)
    午前十時四分開議
 出席委員
   委員長 吉田 公一君
   理事 浅野 勝人君 理事 石破  茂君
   理事 坂井 隆憲君 理事 西川 公也君
   理事 首藤 信彦君 理事 中川 正春君
   理事 上田  勇君 理事 土田 龍司君
      今村 雅弘君    小坂 憲次君
      中本 太衛君    丹羽 雄哉君
      細田 博之君    水野 賢一君
      宮澤 洋一君    望月 義夫君
      伊藤 英成君    金子善次郎君
      木下  厚君    桑原  豊君
      前田 雄吉君    丸谷 佳織君
      松本 善明君    東門美津子君
      松浪健四郎君    鹿野 道彦君
      柿澤 弘治君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   外務副大臣        植竹 繁雄君
   外務大臣政務官      今村 雅弘君
   外務大臣政務官      松浪健四郎君
   外務大臣政務官      水野 賢一君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    藤崎 一郎君
   政府参考人
   (外務省欧州局長)    齋藤 泰雄君
   外務委員会専門員     辻本  甫君
    ―――――――――――――
六月十三日
 沖縄新米軍基地建設反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第六一一四号)
 女子差別撤廃条約選択議定書の批准に関する請願(東門美津子君紹介)(第六一一五号)
 核兵器完全禁止・核廃絶国際条約の締結に関する請願(斉藤鉄夫君紹介)(第六一一六号)
同月二十八日
 核兵器廃絶の実現に関する請願(児玉健次君紹介)(第六三七八号)
 女子差別撤廃条約選択議定書の批准に関する請願(松本善明君紹介)(第六三七九号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――
吉田委員長 これより会議を開きます。
 国際情勢に関する件について調査を進めます。
 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 本件調査のため、参考人として東郷和彦君の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 引き続き、お諮りをいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省北米局長藤崎一郎君、欧州局長齋藤泰雄君の出席を求め、それぞれ説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
吉田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。最初に、首藤信彦君。
首藤委員 民主党の首藤信彦です。
 きょうは、外交問題において一番重要な問題の一つである首脳間の国際問題に関する会議、すなわちサミットについてお聞きしたいと思います。
 このサミットというのは、やはり非常に歴史的な意義があるわけですね。オイルショックの直後から始まった経済サミット、それがだんだん政治的なサミットになり、そして冷戦構造の崩壊があった。こういう中で、一方ではサミットが形骸化し、巨大化して肥大化しているというところから、カナダにおいて、カナナスキスですか、そこで非常に、首脳間で新しい方向性を打ち出そうというカナダのイニシアチブがあったんだと思っております。確かに、ここで新しいイニシアチブは出てきました。しかしその結果は、我が国にとっては、また我が国の安全保障あるいは外交にとっては非常にショックの強いものであった、そういうふうに私は考えております。
 その一つが、ロシアのサミットへの参加問題であります。もちろんこれは、サミットというのは自由主義圏の国家のリーダーが集まって国際的な問題を討議するというところから始まったわけでありまして、それが、冷戦構造が崩壊した後、ロシアが入ってくるということが全く想定されなかったわけではございません。しかし、この今の状況の中で、ロシアが入ってくるということに関しては、さまざまな問題があると私は考えているのですね。
 例えば、こういうところになりますと、やはり世界の中のパイは限られているわけですから、それの争いになってくるわけですね。サミットというのが席があるわけですが、ロシアというものが入ってきたことによって、ある意味で席取り合戦、席取りゲームのようなことがあって、用意ドンと言っていたときにばっとみんな席に着く、そうすると、どこか席が足りないところがはみ出して立ったままになってしまう、それが日本の立場になってしまうんではないか、そういう立場を非常に恐れるわけであります。
 ですから、この問題に関してはもっと慎重であるべきであり、今のこのタイミング、特に今、北方四島問題を抱えて日本の対ロ戦略というものが明確でない、こういう段階でもう自動的にロシアが入ってくるということは日本の安全保障、日本の外交姿勢にとって大変な脅威であるわけですね。
 この問題に関して、一体日本は今までどういう準備をしてきたのかということをまずお聞きしたいわけであります。どうしてこれに賛同したか。これを言うと、これはあくまでもサミットでありますから、はっきり言えば、首脳間が本当に激しいやりとりをして決めていくわけですね。いろいろ漏れ伝わるところによりますと、まずドイツから、早くロシアを入れて、それもサンクトペテルブルクで会議を開かせて、ロシアにポイントを上げようみたいな動きもあったというふうに聞いています。ということは、そのサミットの場で激しく反対すれば、これは流れたかもしれないわけですね。
 ですから、果たしてその問題に関して日本はどういうふうに考えていたのか。その準備、それから日本はいつロシアの参加というものを是認したのか。そして、こういう厳しい状況の中で、ロシアが入ってくることに、その影響はどういう効果があるのか、プラスの効果があるのかマイナスなのか、それを外務大臣にお聞きしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
川口国務大臣 まず私は、サミットにロシアが入ることが席取りゲームで日本がいすを失うことにつながるとは全く思っておりません。サミットというのは、世界のリーダーである国々が集まって、お互いに知恵を出しながら意見の交換をしながら、どうやって世界のさまざまな課題に対応していくかということを議論する場でございますから、そういう役割を果たすのにふさわしい国があれば、サミットの中に入ってもらって議論をするということは、私は当然の成り行きであろうと考えております。
 ロシアのサミットについてのかかわり合いも何も急に起こった話ではございませんで、九一年に、冷戦後でございますけれども、ゴルバチョフがロンドンのサミットに招待をされてG7首脳との会合が開催されたということが以前もあるわけでございます。その後、ロシア連邦の成立後も、ロシアの市場経済化や民主化の進捗に応じまして、ロシアのサミット参加が進んできているわけでございます。特に、九七年のデンバー・サミット以降は、G8サミットという位置づけのもとで、ロシアは一部の討議を除いて本格的に参加をしてきているわけでございます。
 このような中で、今回のサミットでは、委員が先ほどおっしゃったような、サミットの原点に戻るためのさまざまないい試み、首脳間の率直な議論を促進するような場の設定が行われたという意味でも、この間のサミットは意味があったわけでございますけれども、そのサミットにおいてG8間で、ロシアがグローバルな諸問題への対処に当たって十分かつ意味のある役割を果たす潜在力を示しているということで認識が一致をしまして、今般の合意に至ったというふうに承知をいたしております。
 我が国としては、今般の二〇〇六年にロシアが議長国としてサミットを開催するという合意は、G8の将来について歴史的な決定であると考えておりまして、今後も、ロシアが国際社会において十分かつ意味のある役割を果たしていくということを期待しているわけでございます。
首藤委員 久しぶりに外務大臣とお話しする機会を得ましたけれども、やはり昔と変わっておらないという感じがするわけです。
 一つは、そういうサミットというものは、やはり認識が余りにも甘いと言わざるを得ない。確かにそこでは協調して、トップが仲よくというところはあります。しかし、それ以上に、やはり世界は弱肉強食の世界に今入っているわけですよね。ですから、この中で日本の立場を守るというのは非常に重要なわけで、もう既に決まったことをそのまま認めているんではなくて、ロシアが入ってくるに関しても、ロシアが入ってくることによって我々は何のポイントを得られるのか、アメリカが入れたいならばアメリカから何の妥協を引き出しているのか、そこをお聞きしているわけなんですよね。
 だから、そういうことをしっかりお聞きしたかったんですが、またそのお話はなくて、サミットの経過、歴史的な話をされた。私は、歴史は、はっきり言って外務大臣よりずっと早くこの問題を追っかけていますよ。そういうことは全部わかっているんですよ。
 だから、先ほどの質問に答えていただきたいんですけれども、今こういうような難しい状況の中で、例えば、北方四島に対して二島先行返還論とか、あるいは鈴木宗男さんの事件があったり、それから、委員長から冒頭に話がありましたように、今までのヨーロッパ戦略、ロシア戦略を取り仕切っていた東郷さんを参考人として呼んで、一体どうだったのか。今こんなことを言っているわけですよ。一体どういうつもりでどういう対ロ戦略をやっていたのか、もう我々もわからない。外務委員会でありながら何もわからない。
 こういうような状況の中で、ロシアがずっと入ってくる。今まで我々は、言うなれば、自由主義圏のプレッシャーでロシアに対して圧力をかけていたわけですよ。ところが、その中に、それにロシアがもうお仲間になってしまう。一体どうやって我々はこの北方四島を取り戻していくんですか。そういう戦略をどういうふうに考えておられるかお聞きしたかったわけですが、いかがですか、外務大臣。
川口国務大臣 短い期間に余り変わることができなくて申しわけないと思いますけれども、委員がおっしゃったぐらいの期間は、実は私もサミットとかかわり合いを持っておりまして、私は、第一回の、そもそもサミットがランブイエで始まったときからサミットには関係をいたしておりますし、東京での第一回のサミットには実際に出席をいたしております。したがいまして、私も委員と同じぐらい、少なくとも同じぐらい長い間サミットとはかかわり合いを持っているつもりでございます。
 それで、実際に北方四島等の問題の関係で、我が国がロシアがサミットの議長国になるということを認めることは問題ではないかという御趣旨の御質問であったかと思いますけれども、カナナスキスのG8の首脳会合において、ロシアがグローバルな諸問題に対して十分にかつ意味のある役割を持つ潜在力があるということをほかのG7の国が一致して認識をしたということで、ロシアにおいて二〇〇六年にG8サミットを開催するということが合意されたということでございます。
 政府といたしましては、先ほど申しましたように、ロシアが今後そのような役割を果たしていくということにつきましては、国際社会の平和と繁栄に大きく資するということで、これは我が国の国益にかなうものだと考えております。
 こうした考え方は、もとより我が国の北方領土に対する考え方に何ら影響を与えるものではございません。私ども、日本国、我が国はロシアとの関係では、北方領土の問題につきましては四島の帰属を解決して平和条約を締結するということで、基本的なスタンスは全く変わっておりませんし、ロシアと平和条約の問題、それから経済上の問題、国際舞台上での協力といった三つの分野において議論をし、協力をしていくというそのスタンスにも全く変更はないわけでございます。
首藤委員 もう本当に聞いていてもむなしくなるんですが、それは政府声明なんですよ。これは外務委員会の質疑なんですよね。
 ですから、私の質問は、北方四島を取り戻す戦略に対してどういう影響力があるのかということなんですよ。何も影響もございません、何も影響を与えるところはございません。政府声明としてはそれで結構ですが、ここは外務委員会なんですよね。我々は、国民の負託を得て日本の外交をチェックする、その最後のとりででもあるわけですよ。そこで、政府のやっていることは問題がございません。それから、ロシアが入ってきても影響ございません。影響ないはずないでしょう。おかしいじゃないですか。
 外務大臣、もう一度、ロシアがこのサミットに入ることによって、北方四島に対して日本はどういう政策の変更をしようとしているのか。特に、鈴木宗男さんの問題とか東郷さんの問題とか、今までの外務省が、それも果たして分派行動なのかどうかは知りませんけれども、あるいはもうそれが主流であったのかもしれない、そういうものが今度どういう影響を受けるのか、それについてしっかり、そのことだけで結構です、ほかの歴史のこととかそういうのはもう一切結構ですから、そのことだけお答えください。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、ロシアは既に国際舞台においてかなりの貢献をし、国際社会の平和と安定のために実際に行動をしてきているわけです。サミットにも実質的に相当の部分について参加をしてきているわけでございます。
 そのロシアに対して、そういった役割を果たす国であるとG7の国が認識をして、二〇〇六年にG8の議長国としての役割を果たしてもらうということについて合意をしたということは、まさに、今後ロシアがますます国際社会の強力な一員としてさまざまな問題に積極的に貢献をするということに資するというふうに認識をしているわけでございまして、そういったことによって我が国の北方領土に対する政策、これはずっと一貫として変わってきていないわけですけれども、それが何らかの影響を受けることがあるということは、当然にないわけでございます。
首藤委員 大臣、もう本当にそういうふうな答弁されて恥ずかしくないですか。だれが見たって、もう本当に日本はがけっ縁に追い詰められているんですよ。しかも、東郷さんとか鈴木宗男さんとかそういう部分がぐちゃぐちゃやったことによって、もう本当に日本の立場というのはなくなってきているんですよ。そういう中でロシアが入ってくる。これはもう、影響がないと言うが、どうして影響がないんですか。
 では、質問を変えましょう。どうして影響がないか、もう一度そこの部分だけお答えください。
川口国務大臣 私は、どうして影響があるかということをよく理解できませんので、まさにロシアの参加については影響がない。それは、ますます国際社会にとってプラスであることであって、北方領土問題の我が方のスタンスあるいは対ロ外交の基軸といったこととは、これは別な話でございまして、プラスの影響はあるかもしれませんけれども、どうしてそれがマイナスの影響になるかということが理解できないでいるわけでございます。
首藤委員 いや、私はそれは本当に驚いてしまうんですが、外務大臣、それが影響がないと言うんなら、それは外務大臣の資質が問題になりますよ、本当に。
 日本はなぜ四島かというと、これはアメリカの圧力で四島が請求できたんですよ。これは五六年からずっと、宣言を見てください、サンフランシスコ条約を見てください。その書いてあるものだけを見ると、ひょっとしたら日本はもう四島も放棄したと考えられるようなそんな文面も、アメリカの圧力でここまで押し返してきているんですよ。それを今度、アメリカがロシアと一緒に組んでお互いにテロで対策をやりましょうということになれば、影響が出るのは当然なんですよ。
 ただし、この問題は、これ以上言っているともう本当の水かけ論になってしまって、貴重な時間を浪費すると言わざるを得ないので、次の問題へ行きますが、もう一つ大きな点、大転換があったんです。それは中東政策ですね。
 中東政策に関しては、我々は、いろいろなスタンスがありました。PLOに関しても、ファタハに関しても、アラファトさんに関しても、いろいろ揺れたことがあります。しかし最近は、一貫しているのは、ともかくアラファトさんを中心にして、ここでパレスチナの国家樹立へ向けて、少しずつ少しずつまともな国家として成立するようにやっていこうという方向だったんですが、ブッシュ大統領の演説、これはもうはっきりアラファト排除を明言しているのと同じなんですね。
 これに関して、当然のことながら、ヨーロッパ各国は、それはまずい、それはよくないと。それから今度入ってくるプーチンさんも、それは困ると批判されました。日本の小泉さんはこれをあっさりと評価されているということですが、これはどういう意味ですか。外務大臣、どういうことですか。
川口国務大臣 委員がおっしゃいましたように、ブッシュ大統領が中東の和平会議等についての演説をいたしました。これは、米国が和平に向けた積極的な関与と構想を示したというふうに我が国としては評価をしているわけでございます。中東和平の達成に向けまして、米国及び国際社会がお互いに協力、提携をしながら努力をしていく、かかわっていくということは、非常に明るいサインであると私は考えております。
 アラファトについて御質問がございました。この立場につきましてはいろいろな考え方があり得ると思いますけれども、現在パレスチナ側においては、さまざまな改革への取り組みが行われているわけでございます。アラファト議長も御自身で、来年選挙を行うということを表明しているわけでございます。重要なことは、パレスチナの指導者を選ぶのはパレスチナ人自身であるということでございまして、こうして選ばれた指導者が、引き続きテロの防止あるいは治安組織の改革といったことを含むパレスチナ自治政府の改革を行って、和平に向けた交渉に取り組んでいくということが重要である、このことが重要だと考えています。
 アラファトが今もパレスチナ人によって民主的な手続によって選ばれた指導者であるということについては、これはまさにそういうことでございます。我が国としては、そういうふうに考えているということです。
首藤委員 外務大臣、外務大臣は、みずから中東にも行かれて、アラファト議長にもお会いになった。それから、自民党の山崎幹事長も、ラマラで幽閉状態にあったところまでわざわざ押しかけていって会っているわけですよ。それで、アラファトさんと話しているわけですよ。
 今、大臣、私は聞いて驚いたんですが、あなたは二回、アラファトと呼び捨てにしました。アラファトさん、いろいろございますよ。だけれども、私は、この方はやはり将来の大統領となる人だと思うんですよ。アラファトと、なぜ二回も呼び捨てにされたのか、私は驚いてしまう。あなたも苦労して、みんなも忙しい、銃口を突きつけられているところから、日本の人が来た、日本の外務大臣が来た、日本の政治家が来たといって、命をかけてアラファトさんは会ってくれているんじゃないですか。どういうことでしょうかね。
 それから、もう一つおっしゃいました。選挙をすることになる、そして、選挙の結果選ばれたのを尊重する、そのとおりです。それをアメリカは否定しているわけですよ。それを認めないとアメリカは言っているわけですよね。パレスチナ側は、アメリカが認めなくても、またアラファト議長が大統領を目指すということになればそれを認める、そういうことになっているんですが、では、日本の政府の立場は、来年選挙をやったときに、アラファト議長がもう一度パレスチナの代表として登場していただくときには、民主的な手続である以上、それを認めるという立場ですね。アメリカの立場とは違うということですね。それを明言いただきたい。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、我が国としては、アラファト議長が現在、パレスチナ人によって民主的な手続で選ばれた正当な指導者であると考えているということでございます。一方で、今後さまざまな課題に対応するための改革の動きが出てきているということについては、委員が御案内のとおりでございます。
 そうした中で、アラファト議長も選挙を行うということを言っているわけでございます。我が国はこうした改革を支持する、そして支援していくということでございますので、選挙が公正に行われてパレスチナ人自身が指導者を選んでいくということで、この選ばれた指導者が引き続きテロ防止や政府の改革、治安組織の改革等に努力をして、和平に向けた交渉に取り組んでいくということが非常に重要であると考えております。
首藤委員 やはり肝心なことを答えていただかないんですよ。これは答えていただかないと意味がないわけですよ、外務委員会の。
 よろしいですか。アメリカは、たとえ選挙を行っても、そしてそれがパレスチナ人民の総意であって、アラファト議長がもう一度指導者としてその指導力が確認されても、それは認めないと言っているわけですよね。指導層をかえるということが今回のアメリカの提案なわけですよ。
 ですから、もう一度確認しますが、日本政府の立場は、ずっと今までのパレスチナとの関係のつながりの中から、もしパレスチナの人民が再びアラファト議長を自分たちのリーダーとして選任した場合には、それを日本政府として、パレスチナの正当なリーダーとして認める、すなわちアメリカの立場とは違うということですね。それを御確認をお願いしています。
川口国務大臣 繰り返しになりますけれども、パレスチナ人による公正な選挙によって選ばれた指導者が引き続きテロ防止等の改革に取り組んでいく、指導者として取り組んでいくということが我が国にとっては重要なことであると考えていると申し上げたわけでございます。
首藤委員 その結果が、たまたまヤッサー・アラファトという、あなたがさっきからずっとおっしゃっている、今アラファト議長という職にある方であるとすれば、それはやはり新しいリーダーとして、もちろんアラファト議長はずっとテロ対策に取り組んでおりますから、認めるということですね。それを御確認をお願いします。
川口国務大臣 だれが選挙の結果選ばれることになるかということは先の話でございますので、そういったことを、具体的な人の名前を予見して何か申し上げるということは適切でないと考えておりますが、再三申し上げていますように、公正な選挙によって選ばれた指導者がさまざまな改革に取り組んで、和平に向けた交渉を進めていくということが重要だと我が国としては考えているということでございます。
首藤委員 ということは、要するに、アラファト議長を排除しないということですね。要するに、あくまでも正当な手続によって選ばれた指導者が、その名前が例えばヤッサー・アラファトという名前であり、あるいはナビル・シャースという人であり、そういういろいろな名前であっても、ともかくそういう正当な手続を経て選ばれた人がテロ対策やパレスチナの将来のためにいろいろ努力する限りにおいてはその方を排除しない、それは確認できますね。外務大臣、いかがですか。
川口国務大臣 公正な選挙によって選ばれた指導者が指導者としての役割を果たしていくことが重要であると我が国としては考えているということを申し上げているわけです。
首藤委員 いや、それは質問に答えてないんですよ。
 要するに、例えばアメリカはネガティブリストなんですよ。この方はだめと言っているんですよ。しかし、日本の立場は違うんですね。それはあくまでも総意で選ばれたら、そしてその方がパレスチナの将来のために活動し、テロを封じ込めようと一生懸命努力されるなら、それは認めるということですね。どうしてそのことをお約束できないんですか、そのことが確認できないんですか。特定の人物を排除しない、これははっきり断言できますね。外務大臣、いかがですか。
川口国務大臣 何度も繰り返し申し上げますけれども、公正な選挙によってパレスチナ人によって選ばれた指導者が改革あるいは和平の交渉といった点でリーダーとして活動をしていくということが重要だというのが我が国の立場でございます。
首藤委員 そんなことは当たり前ですよ。世の中のどこに、不公正で、テロをどんどんやれなんという人を認める国がありますか。そういう当たり前のことを何度も言ってもしようがないんですよ。もう結構ですよ。
 ですから、結局、日本の立場としては、アメリカと一線を画して、それはどんな方であれ、次に選ばれた方が一生懸命やる、テロを封じ込め、その国の発展に努力されるという方においては、それは認めるという立場ですね。ごく当たり前の話ですから、それだけ確認を最後にお願いします。
川口国務大臣 公正な選挙で民主的にパレスチナ人の手で選ばれた指導者が指導者としての役割を果たすということが重要だと我が国は考えているということを申し上げています。
首藤委員 大臣、ありがとうございました。これで、中東に行っても、私は、日本は決して、長い友人であったアラファト議長を拒否するようなことはないとはっきり言うことができて大変幸せであります。
 もう一つ、カナダのサミットでありますが、ここで、我々も余り期待してなかった点なんですが、非常に驚いた展開があったんですね。それは、カナダのこのサミットで、アフリカ開発のための新パートナーシッププログラム、NEPADというのが出て、主要国が増額するODAの半分以上をアフリカに充てるということで基本合意しているということですね。
 このカナダのサミットの目玉は、一つはプーチンさんの参加、もう一つはアフリカに対する大規模な一点集中の、先進国の努力でアフリカの問題を解決しようという合意なわけですね。これは、カナダがイニシアチブをとったんです。
 カナダという国は、大変外交にすぐれた国で、人口は非常に少ない国でありますが、例えばPKOに関しては、もう率先してやっていて、世界の人口の〇・五%にすぎないカナダの人口でありますが、それでも世界のPKOの指揮者の約一割ぐらいがカナダ人であるというぐらい取り組んでいるわけですね。ピアソンPKOの訓練センターなんかもあったりする。同じように、最近の事例でいえば、地雷廃絶に関してオタワ・プロセスという新しい国際社会におけるルールづくりをやった。
 そういうことで、カナダの特異外交というものが非常に世界の外交をリードしているという点があるんですね。そういうことを考えますと、このアフリカの開発というのも、まさにカナダがこれからリーダーシップをとってやっていくことになるんですね。
 そこで、外務大臣、私はお聞きしたいんですが、日本の外交においてアフリカ開発というのはどういう位置づけだったかということですね。これに関しては、実は、ごく最近までアフリカの開発ということに関して物すごいイニシアチブをとって、しかも世界的な評価のあったのは、日本、我が国なんですよ。TICAD1、TICAD2、やがてはTICAD3をやろうと言っているんですね。日本は外交は総花的であると言われていても、このアフリカ外交に関しては、日本は世界をリードしていこうということでずっと積み上げてきたわけです。それにもかかわらず、こういう形でふっと出てきてしまう。
 今まで日本が積み上げてきたアフリカ外交の努力、そういうものと今度のNEPADによるカナダのイニシアチブと、どういう整合性を持つんですか。我々が積み上げてきた外交努力というのはどのように評価されて、これがNEPADやカナダのサミットにつながっているんですか。いかがですか。
川口国務大臣 委員が、我が国がTICADというプロセスを通じましてアフリカの支援にずっと世界の中でイニシアチブをとって努力をしてきたということについて御認識をいただいていることを、私としては非常にうれしく思っております。
 このNEPAD、カナナスキス・サミットでG8としてのアフリカ行動計画を採択いたしましたけれども、これはアフリカ開発のための新しいパートナーシップ、NEPADというふうに言われておりますが、これはG8のパートナーシップのあらわれであり、まさに我が国がTICADプロセスを経てずっとやってきた努力あるいは考え方が国際社会によって共有をされたということを意味するものであると考えております。
 我が国としては、来年後半にもTICAD3を開催するということが予定をされておりますし、さらに今回のサミットの過程では、小泉総理から、日本のアフリカとの連帯ということで、具体的な支援策を発表していただきました。人間中心の開発に重点を置く。教育、保健を初めとして、国づくりの基礎である人材、人づくりの分野に対する支援を行う。具体的な行動を話をさせていただいたわけですが、こういった努力を今後も続けていきたいというふうに考えています。
首藤委員 大臣、政府広報は結構なんですよ。原稿をお読みになるのは結構なんですが、私の質問は、今まで積み上げてきたTICAD1、TICAD2のスキームと今度のNEPADはどういう整合性を持っているのか、どう評価され、どういうふうに組み込まれているのか、そこのところを明らかにしてください。
川口国務大臣 TICADとNEPADというのは、そういう意味では補完的に、一緒にやっていこうという考え方でございます。
 TICADは、我が国が今までアフリカの国と一緒にやってきたプロセス、NEPADというのは、これをG8のパートナーシップとしてやっていこうということでございまして、そもそもその考え方としては、アフリカの国がアフリカの開発に自主的に取り組むというオーナーシップの考え方を我が国としては今までずっとTICADのプロセスで話をしてき、かつ、それをほかの国と一緒になってやるパートナーシップという考え方を強調してきたわけですけれども、TICADとNEPADというのは、まさにそのオーナーシップとパートナーシップという二つの考え方の相乗効果をもたらす、そういうことであると思っています。
首藤委員 それは違うんじゃないですか。TICADはTICADの独自のスキームがありますよ。それで同時にやるんだったら、これは日本は二重にやらなきゃいけないということですよ。今のどんどんODAが減っているような現状の中で、どうしてそれができますか。どういう合理的な考えに基づいて今おっしゃったことが実現できるんでしょうか。いかがですか、外務大臣。
川口国務大臣 TICADというのは日本のアフリカ開発問題への取り組みでございまして、その中に基本原則というのがあります。そこの中に、先ほど申し上げたように、アフリカ諸国の自主性、これはオーナーシップという言葉ですけれども、及び開発パートナーとのパートナーシップということで、この二つを言ってきているわけでして、今度のNEPADというプロセスというのは、まさにこのパートナーシップという側面に光を当てた、そういうものでございます。もともとTICADのプロセスで考えが、そのコンセプトとしてあるということです。
首藤委員 委員長、もう時間がなくなりましたけれども、これは日本の歴史の大転換期にあるサミットですよ。ロシアが入ってくることもそうです。これは今までのサミットの三十年の歴史の中で、本当に物すごい大転換期なんですよ。そして、アフリカのこの問題に関してもまさに大転換期なんです。それにもかかわらず、今言われたことはほとんど政府広報と変わらないじゃないですか。わかりますよ。外務大臣はサミットの現場にいなかったから、それがわからないんですよ。
 ですから委員長、やはり私は、この問題に関しては、小泉首相に来ていただいて、実際にその場にいた方にこの問題に関してきちっと答弁していただきたい、そういうふうに思います。このことを強く、参考人として来ていただくことを強く要望して、私の質疑を終わります。
 以上です。
吉田委員長 次に、中川正春君。
中川(正)委員 民主党の中川正春です。
 先ほどの首藤委員の質問に引き続いてさせていただきたいというふうに思います。
 私も最初そのサミットの関係なんですが、中東和平、この問題、先ほど議論を聞いていて、私自身ももう一つ納得がいかないというか、はっきりさせていただきたいところがございます。
 川口大臣は、アラファト議長を訪問していったということは、現在の時点でもアラファトさんがいわゆる統治能力というか、あるいは交渉の当事者としての能力を保持しているという前提の中で会いに行かれたんだろうと思いますし、そういう発言が川口大臣からたびたびありました。それは今も変わっていないんですか、その認識は。
川口国務大臣 アラファト議長がパレスチナの人々によって民主的なプロセスで選挙をされた指導者であるということは、そのとおりだと私は思っております。
 アラファト議長に対しては、まさに指導者として、パレスチナの改革、治安の改革ですとか、さまざまな、司法、立法、行政府の改革が必要ですけれども、そういったことをきちんと進めていくことが必要であるというふうに私は考えておりますし、さらに、治安、自爆テロをとめるといった点についても、再三再四その必要性についてはお話をしてきているわけでございます。
中川(正)委員 ところが、ブッシュ政権の認識は違うんですね。これは、現在においてアラファト議長が統治能力がない、しかも、テロという問題に対して、それを厳しくいさめていく、あるいはそれをコントロールしていくという能力もない、だから排斥をして、新しい指導者をそこで求めていくべきだというスタンスに立って声明があったわけですよね。それに対して、小泉総理だけがもろ手を挙げて賛成だという意思表示をしたということでありますから、そういう点から考えると、総理大臣と外務大臣の間に考え方の不一致がある。これは内閣不一致ですよ。そこのところをどのように説明されますか。
川口国務大臣 私は、全く総理と私の間に考え方の差があるとは思っておりません。先ほど申しましたように、アラファト議長に対しては、自爆テロをとめるあるいはパレスチナの改革を進めるといったことについてやってもらう必要があるということは私も言っているわけでして、それは先ほどお話をしたとおりです。
 総理がサミットで具体的にどういう言い方で御発言をなさったかということは私は存じませんけれども、そういった考え方については全く私と総理の間に差があると思っておりません。
中川(正)委員 いや、大臣がどう思われようと、あるいはどう解釈されようと、今世界の中で認識されていることというのは、欧州を中心にして、先ほどのブッシュ政権のアラファト議長に対する見方を否定する形で、そうじゃないんだ、アラファト議長が今交渉相手としては能力を持っているんだ、そういう主張と、そうではないブッシュ政権の主張というのがあるという、この認識ですよね。それに対して、日本の総理大臣はブッシュ政権を支持するということをはっきり言っているわけでありますから、これは日本政府として統一した考え方を改めて示す必要があるということなんですね。
 ですから、委員長、この問題について、やはり総理大臣に改めてここに出てきていただいて、この不一致というのはこの場でもって、どちらが正しいのか、総理大臣自体の主張が正しいとすれば、川口大臣、間違っているんですよ。これは日本の中東外交に対する基本でありますから、そこのところをはっきりさせていかないことにはこれ以上進まないということだと思うんですね。
 それについて、もう一回改めて川口大臣に認識を聞きたいと思うんですけれども、同じことを言われるということであれば、これはやはり総理大臣をここに呼んでいただくということになるというふうに思います。
川口国務大臣 私が申し上げていることと総理がおっしゃっていることとどこが違うのかということについて、委員がどうお考えか私はよくわかりませんので、思っていらっしゃることに沿うようなお答えになるかどうかわかりませんけれども、私の認識は、まず、総理がおっしゃっていらっしゃることと何も違いがないということです。
 総理は、ブッシュ大統領が演説で、米国が和平に向けて積極的に関与をする、及びその構想を示したということを評価なさっていらっしゃるということでありまして、他方で、アラファト議長が民主的な選挙によって選ばれたパレスチナのリーダーであるということについては全く同じ考えでいるわけでございます。
 それから、ヨーロッパはアラファト議長の指導の能力について全く疑問を持っていないということでおっしゃいましたけれども、私の理解も、我が国と同様にヨーロッパの国々はアラファト議長が選挙によって選ばれたリーダーであるということについては考えているわけでございますけれども、私が先ほど申しましたように、アラファト議長がテロをとめる、自爆テロをやめるといった点、あるいはアラファト議長が自治政府の治安組織あるいは立法、司法、行政といった組織について改革をやっていく、もっとそれをやることが必要であるということを言っているということについては、それは私も同じようなことを申し上げているわけでして、何ら違いがないということでございます。
 それから、ブッシュ大統領は、演説を読んでいただきますと、別にアラファト議長を排除するとはどこにも彼は言っていないわけでございまして、そこは前提としていらっしゃる部分というのが、先ほど委員のお話を伺っていますと、委員が前提としていらっしゃる部分は、必ずしもそういうことでブッシュは言っていないということであるかと思います。
 したがいまして、結論を繰り返しますと、総理がおっしゃっていらっしゃることと私が言っていることとどこが違うかということは、全く違う部分というのは私には見えないということでございます。
中川(正)委員 わけのわからないことをおっしゃいましたけれども、もう一つだけ、後々の議論のために確認をしておきたいんですが、では、川口大臣は、アラファト議長に関してブッシュ政権はどういうことを言っているんだと解釈しているんですか。それだけ聞かせてください。
川口国務大臣 私が思っておりますのは、まさにブッシュ大統領が演説で言われた部分でございます。アラファト議長について個別に排除をすべきだというくだりが演説にあるとは思っていないということです。
中川(正)委員 だから、そういう言い方じゃなくて、ブッシュ政権はアラファト議長をどういう位置づけにしているんだということを、川口大臣、どう解釈しているんですか。それは恐らく日本の外務省の解釈になっていくんだろうというふうに思うんです。一遍公式に聞かせてください。
川口国務大臣 我が国としては、アラファト議長が、九六年の暫定自治政府長官選挙によって、パレスチナ人により民主的な手続で選ばれた正当な指導者であるというふうに考えているわけでございます。
 一方で、今後さまざまな課題に対応していくための改革の動きがパレスチナ指導部及びパレスチナ人自身から出てきているわけでございまして、アラファト議長も長官選挙を明年にも行う旨表明をしているというふうに承知をしています。
 我が国は、こうした改革を支持し、支援する立場であるとともに、公正な選挙によってパレスチナ人自身が指導者を選出することであって、また、こうした選ばれた指導者が引き続きテロ防止、治安組織の改革を含むPA改革と和平に向けた交渉に取り組んでいくことが重要であるというふうに考えております。
 他方で、アメリカがアラファト議長についてどういうふうに考えているかということについては、ブッシュ大統領の演説に出ているとおりだと考えます。
中川(正)委員 議論をしようと思ってもこれは議論にならない。まことに情けないと思うんですが、外交というのはそんなふうにやっていくものじゃないと思うんです。
 ブッシュ政権がアラファトに対して厳しい見方をしているというのは、次のリーダーを探し出していこうというアメリカ自身の意思だと思うんですね。それに対して日本がどういうふうにコミットしていくのか、それが実は中東への日本のコミットなんですよ。ヨーロッパは、アメリカの考え方に必ずしもくみしていかないよという意思表示もはっきりしているわけです。日本だけが、片方は賛成だと言いながらも、もう片方は川口大臣のさっきのわけのわからない話になる。だから、外から見たら、日本は一体何を考えているんだという話になっちゃうわけですよ。外交がないんですよ、これは。
 そういうところを改めて指摘をさせていただいて、これはぜひ総理大臣からも、統一見解というよりも、川口大臣が間違っているんだったら間違っているというふうな話をはっきり出さないと、外に対してしっかりしたメッセージになっていかないということだと思うんです。そういうことを指摘をしながら、委員長、ひとつ総理大臣をここに呼んできていただきたいということを、私たちの意思表示としてもさせていただきたいというふうに思います。
 ほかに、サミットについて幾つかあったんですが、その関連で、ODAもひとつ触れていきたいと思うんです。
 アフリカなんですけれども、さっきも議論が出ていましたが、TICADを日本がやってきた。これは日本としてのコミットでありますが、それがNEPADという形になると、これは多国間でアフリカを支えていこうという枠組みに変わってきたということですね。これに対して並行的にと、こういう話になりましたが、しかし日本としては、ここで本当に並行的にしてやっていけるのかどうか。
 NEPADの中で指導的な立場を維持していくという戦略と、そうではなくて、TICADはTICADですよという形でやっていくのと、これは日本の戦略として、スタンスとして大いに違うんですね。ここのところ、これもさっきの答弁で聞いているとはっきりしない。何を考えているかわからない。これはアフリカ諸国に対してのメッセージとしてもはっきりさせなきゃいけないところだというふうに思うんですね。改めて答えてください。
川口国務大臣 我が国は、TICADのプロセスで、今までさまざまな努力をしてきているわけでございます。
 それで、先ほど申し上げましたように、TICADの中で、基本原則として、アフリカ諸国の自主性、それから開発パートナーとのパートナーシップ、いわゆるオーナーシップとパートナーシップという考え方を打ち出していまして、優先分野として、例えば社会開発、これは医療とか保健とか教育とかそういうことですが、経済開発、開発の基盤づくり、これはガバナンスの問題等ですが、といった三つを優先分野として選んできているということでございます。
 今回のサミットで出ました行動計画、アフリカ行動計画を採択したわけですけれども、これはまさに我が国が言っていたパートナーシップの部分を行っていく、すなわち、アフリカの努力に対して開発のパートナーとしてのG8がどのような行動をとるかということを行動計画としてあらわしたということでございます。
 具体的に、我が国はアフリカにさまざまな支援をやっていくということでございますけれども、それを例えばTICADのプロセスでやるのか、あるいはG8の行動計画の傘の下だと位置づけるかということは、余り意味のある問題ではないというふうに私は考えております。我が国の援助は援助としてあるわけでございまして、TICADのプロセスでこれは考えられていることでもあり、同時に、パートナーシップの一部として、行動計画の一部として考える、そういうことであるわけです。
中川(正)委員 そこのところもはっきりしないんですね。
 私の感覚からいけば、ここまで来たら、これはもうTICADからNEPADに切りかえるべきだというふうに思います。そんなはっきりした意思表示があって、次に受け手の方もプログラムが組めるのだというふうに思っているんですね。そうしためり張りというか、我々の意思というのをはっきり示せるような議論というのをしていきたい。さっきの大臣の答弁もわからないんですよ、聞いていて。何を考えているのかわからないんですよ。そこのところを改めて指摘をしておきたいと思います。また、この問題は引き続きテーマとしては何回も何回も出てくることだろうというふうに思います。
 次に、北朝鮮、あるいはまた瀋陽の問題についてお尋ねをしていきたいというふうに思います。
 北朝鮮の状況というのが、ここに来て大分緊迫してきているというか、特に難民の問題が、NGOを通じてさまざまに情報が流れてきております。いろいろな要因があるんでしょう。資金的に断たれてきているということも含めて、あるいは食糧、あるいはまた政権そのものが非常に追い詰められてきているんじゃないかというふうなこと等々あって、中国への難民も、聞いていただいているとおり十万人、二十万人、あるいは三十万人と言う方もいますが、それぐらいのものに達してきた。
 そんな中で、駆け込み事件等々もこれありということと、中国の政策も相まって、難民自体が、難民といいますか中国で脱北者として生活をしておる人たちが、非常に詰まってきたというか、もうそこで生活を持続できなくなってきているということ、そのことがプレッシャーになって、例えば、さまざまな船を、NGOが中心になってネットワークを組んで、段取りしながら日本に運ぼうじゃないかという話が出てきたり、あるいは駆け込み自体もまだ頻繁に続いてくる、あるいはまた大きな波として混乱を来すような話が出てくるということ、こういう可能性が取りざたをされております。その上に立って、瀋陽の総括といいますか反省が出てきていますね。
 この瀋陽の話に入っていく前に一つ確認をしておきたいことがあるんですが、経済難民といいますか、北朝鮮の中では生活ができなくなって、経済的に新しい地というのを求めて北朝鮮から脱出をする人たち、これはその時点では難民という認定は難しいんでしょう、今の国際条約の中からいけば。しかし、一たんそこで迫害をされて、あるいはさまざまな形で中国当局に捕まって、それから北朝鮮に送り返された人たち、これは次にはやはり収容所が待っておりますし、その中で迫害なりあるいは非常に拷問なりということで命を絶つ人たちもいるということ、この情報もあると思うんですね。
 そういう前提になったときに、日本として、この人たちを、ただ経済難民だと国際条約の中で難民認定ができない、だから日本としてもただそれだけのことなのだというふうに考えるのか。それとも、一たん出てきた中で、北朝鮮の特殊事情といいますか、帰ったら殺される、そういう特殊事情の中でこれを難民と認定する。例えば、ベトナムで混乱があったときにインドシナ難民の枠をその中でつくった、そういう形の中で、日本がひとつ政策として腹をくくっていくということ、そういう選択ももう一つあるわけですね。
 そこのところを日本の国家として意思表示をはっきりしていかないと、次、中国に対してもあるいはさまざまな国際社会に対しても、言うべきことが言えないじゃないかという議論、これは私は正しいというふうに思うんです。
 その上に立って、外務省に改めてお聞きをしたいんですが、外務省としては、ここのところはどういうふうに考えていくのか、どういう議論をこれからしていこうとしているのか、お答えをいただきたいというふうに思います。
川口国務大臣 脱北者なりあるいは難民なり亡命者なりが、具体的な個人についてどういうような扱いになるかというのは、まさに個々のケースによるものでございますので申し上げられないと思いますけれども、一般的な問題といたしまして、外務省の考え方といいますのは、実際にだれかが我が方の在外公館に庇護を求めてくるということがあった場合に、これは以前も申し上げておりますように、申請者の人定事項等の事実関係を確認して、希望等を聴取して、この人の生命あるいは身体の安全が適切に確保されるか等の人道的な観点、あるいは関係国との関係などを総合的に考慮し、具体的な対応について検討するというものでございます。
 それで、より広く、我が国として難民の問題、亡命者の問題について今後どのように対応していくかということで考えますと、これは外務省だけではなくてさまざまな関係の省庁、府省がございます。そういったところで今議論が始まっているわけでございますけれども、外務省としては、この議論に人道的な観点あるいは人権という観点から積極的に関与をしていくという立場でおります。
中川(正)委員 「瀋陽総領事館事件を踏まえた改善策」ということで七月四日付で発表されている。さっきおっしゃったところが、「脱北者への対処方法」、この中で、同じようなことが生じる場合の対処方法を指示していたが、改めて詳細な対応ぶりを指示した、こういう中身で終わっているんですけれども、本当は、改めて詳細な対応ぶりというのは何なのかというのを国民は一番知りたいところなんですよ。それを、指示したと書いてあるだけ。私から言わせれば、こういうところが下手だというんですよね。
 しかし、これは、さっきの話を聞いていると、同じことで、結局、現場の担当者がその時点で、さっき出たようなさまざまな要素を勘案しながら判断しなければならないということじゃないですか。これは同じことが起こりますよ。
 それだけに、私は、ここで大臣としてもあるいは外務省としてもしっかり指摘をしなきゃいけないのは、この難民問題に対して国家としての意思を決めろ、そこのところを外務省からしっかり言わなきゃいけない部分だったと思うんですよ。
 外務省だけで対応ができない、それぞれが集まってというふうな話でありますが、大臣はどう思われているんですか。大臣はどうすべきだと思っているんですか、この問題については。
川口国務大臣 申し上げましたように、一人の外国人が我が国の公館に庇護を求めてくるという事態、この際の判断というのは、まさに個人個人、先ほど申し上げたような、その人がどういう人であるかということで具体的に判断をされるべきことであると思っております。
 したがいまして、我が国の公館に庇護を求めてくる人全部に当てはまるルールをお示しするということはできないと思いますけれども、一般的な、基本的な考え方ということで言いますと、我が国の、まさに来た人については、そういった人定ですとか希望ですとか、あるいは迫害を受けるかどうかとか、そういったことをきちんと聞いて、その上で総合的に判断をするということであると私は思っています。
中川(正)委員 そんなことを大臣が言っているから現場が混乱するんですよ。ちっとも変わっていないじゃないですか、これまでの対応と。基本は、そこのところがしっかりと日本として筋が通っていなかったから、それぞれ関係者が、あるいは責任者が判断できなかった、あるいは判断しなかったということなんですよ。そこのところを指摘しないで、何が総括ですか。そのことを指摘しておきたいというふうに思うんです。
 その上に立って、瀋陽の総領事館に関する処分というのがそれぞれ出てまいりました。一般的に見ると、非常に甘いということ、これが言えるんだろうというふうに思うんですね。この中で、公務員法に基づいた処分というのは岡崎清総領事だけでありまして、あとは外務省の内規で内々でやっていきますよという程度の処分であったということ、このことがまず第一に問題なのでありますが、その中で、時間が限定されていますので、私は、特に阿南在中国大使館大使ですね、この人の問題について取り上げていきたいというふうに思うんです。
 実は、私のところへ向いて、これは外務省の職員だと思うんですが、手紙をいただきまして、もう少しここのところを議論してくれないかということ、これは恐らく内部でもいろいろな話が出ていたんだろうというふうに思うんですけれども、があるんです。
 そこで、改めてちょっと聞きたいんですが、特命全権大使を厳重訓戒、この人はこの程度で終わっているんですけれども、これの根拠、具体的に何をもってこの処分にしたかということ、これは大臣、できるだけ詳細に改めて聞かせていただけますか。
川口国務大臣 阿南大使につきましての御質問ですので、まず、瀋陽で初動に当たっていた副領事等でございますけれども、これは、持っていた携帯電話が国際電話がかけられなかったということでございまして、そういった物理的な制約がありましたので、電話でかけられる在中国大使館の幹部に対して対応ぶりについての照会を行ったということでございます。後ほど建物から本省にもちろん電話をしたということでございますけれども、携帯電話では中国大使館の幹部に電話をした。
 それで、まず大使館というのは総領事館とは指揮命令関係はないということです。総領事館と本省の間にこれがあるということですが、大使館としては、総領事館からの照会に対して、例えば五名の北朝鮮の人の連行に対して異議を唱えなさいというような助言をするとか、あるいはウィーン条約を踏まえまして適切に助言を行うということができたはずだ、するべきであったと考えているわけでございます。
 特に、阿南大使が事件発生の翌日に高橋公使を通じまして、大連に向かってほしいという意向を伝えたということについては、これは、そのときにはそうしなければいけない、中国の副首相が来るとか、そういう事情があったわけですけれども、結果としては適切さを欠いていたと私は考えています。
 こうした点を踏まえまして、阿南大使については、外務省の内規の定める処分事由のうち、責任を持って職務の遂行に当たらなかった場合に該当するということで、厳重訓戒の処分にしたということです。これに対して阿南大使からは、二〇%、一月分を自主返納したいという申し出がありまして、これを受け入れたということです。
中川(正)委員 この手紙によりますと、阿南大使は総領事に対して、瀋陽にいない方がよい、大連に戻るべきであるということを指示したと。それはさっき大臣から話が出ました。そして、その後、実はこれはいろいろな工作がなされていたと。
 北京大使館の公使が阿南大使の命令を受けて岡崎総領事に対して電話をして、阿南大使の指示で大連に戻ったということを決して口外するな、それが総領事の身のためであるというふうなことで口どめをした。さらには、阿南大使自身が、六月の四日、総領事に電話をしてきて、法務省の方がこれの聞き取り調査をしているらしい、大連に戻ったのはどうしてかと聞かれたら、大使と相談した結果、大使の命令ではなく自分、岡崎さん自身の判断で大連に戻ったということにするのがよい、そうすれば総領事にとって悪いことにはならないということを言ったと。岡崎総領事は、このことについて東京にいる同僚、ここでは補佐クラスというふうに書いてありますが、そういう人たちに、どうしたらいいかということを相談している。
 この隠ぺい工作、自分の、一たんは大連に戻れと言ったことを隠そうとした問題、このことについて、外務省の中の、職場の同僚の人たちは、これはどうしても許すことはできぬ、この体質こそが問われるべきだというふうに言っているんですね。このことについて川口大臣が、さっき、大連に戻れということを阿南さんが指示をしたというコメントをされましたから、恐らくこうした話が省内にあったんだということを意識して、改めてその後コメントをされたと思うんですが。
 私もどうも、瀋陽に調査に入ったときに、岡崎総領事というのは自分自身で何も判断できなかったわけです、結果的には。しかし、その過程で、頻繁に北京の大使館と連絡を取り合いながら、阿南大使の指示を得て、結果的には何も、抗議をしろとか、あるいはその場で取り返せとかいうふうな指示をしなかった、そのまま放置をしていった、その結論というのは、どうも最終的にはこの阿南大使からすべてが出ていたんではないか、そういう危惧といいますか、そういうことであったんだろうという気持ちが捨て切れないんですね。
 そんな中で、改めて阿南大使をここに呼んで、そこのところを私たちは確認をしたいということを、再三この委員会の理事会を通じて当局にも申し上げているんですが、どうも外務省の方は阿南大使をここに出したくないという意向もある。
 こういうことをつらつら考えていくと、どうも組織全体として阿南大使をかばっている、それこそ外務省全体が隠ぺいしているのじゃないか、責任は岡崎さん一人にかぶせて、大使級は何とか救っていこう、そういう意思が外務省に働いているということ、これを思わざるを得ないんです、すべて最近の流れを見ていると。
 これについて、川口大臣、改めて調査をするという意思はありませんか。
川口国務大臣 今回の処分を発表する前に、外務省といたしましては、この事件について総括をする過程で、改めて事件の関係者、当時の関係者の対応等について問題点の精査をいたしました。そして、その結果を踏まえまして処分を発表したということでございます。先ほど申し上げた点というのは、そういった、改めての問題点の精査を踏まえて発表させていただいたものでございまして、この点についてさらに調査をするということは考えていないということでございます。
中川(正)委員 では、大臣がしないということですから、我々がせざるを得ないということになりますね。
 では大臣、阿南さんをここに出してくださいよ。我々、ずっとそのことを求め続けてきた。それに対して、何やかんやと抵抗しながら今日に来ているんですよ。これは普通であれば、大使がこの席で自分の所信を述べる、こんな事件物だけじゃなくて一般の外交姿勢の中でも、大使と直接ここで所信を聞いて議論をしていくという、そんな流れをぜひつくっていきたいということもあって私たちも要求しておるわけでありますが、そのことを大臣、改めてお願いを申し上げたい。大臣、大使をここに出してください。
川口国務大臣 まさにこの点については国会のお話でございますので、委員会の中で御議論をいただくということで、私の方から国会に対しましてどうこうという立場にはないと思います。
中川(正)委員 済みません、ちょっと時間延長しているんですけれども、さっきのは聞き捨てならないですよ。国会では与野党そろって出しましょうと言っているんですよ、理事会では。それを拒否しているのは、大臣、あなただと聞いているんですよ。何でうそを言うんですか。
 そのことを改めて指摘しながら、私の質問時間が来ましたので、質問を終わります。
吉田委員長 次に、土田龍司君。
土田委員 今最後の話題になりました阿南大使を呼ぶか呼ばないかという話、また理事会で話があると思いますけれども、私も今中川筆頭理事がおっしゃったように認識しております。外務省の方が出さないということでございますので、理事会でもう一回話を正確にしなきゃなりませんけれども、ちゃんとした対応をお願いしたいと思っております。
 今回のサミットでいろいろな話がもちろん行われたわけでございますが、テロの問題について今後とも闘いを継続していこうと。航空機や船舶によるテロを防ぐために、具体的な行動計画や、あるいはロシアに残る大量破壊兵器、関連物質のテロリストへの拡散防止などについて非常に前向きな合意がなされたということは重要であったと思っております。
 ただ、その中で、テロとの闘いの一環として、アメリカはイラクに対して先制攻撃も辞さないんだということを言っているわけですね。我が国やヨーロッパやロシアなどは、それについては慎重であるべきだ、あるいは反対だというようなことを言っているわけでございますけれども、もしもアメリカから対イラク攻撃への理解を求められた場合に、日本はどういった対応をするつもりでございますか。
川口国務大臣 米国政府は、イラク等につきましては、その行動パターンを変えるように国際社会が協力をする必要がある、すべての選択肢を排除はしていないけれども、平和的に解決をしたいと考えている、外交的な努力を続ける考えであるということをずっと表明してきているわけでございます。
 したがいまして、イラクが軍事行動をとるということを予断した御質問にお答えを申し上げるのは難しいかと思います。
土田委員 次に、大量破壊兵器の拡散防止のためのロシア支援、これについても合意がされたわけですね。核兵器解体に伴う関連物質がテロリストに流れないように、そういった目的で十年間で二百億ドルを上限に資金調達するということになりました。小泉総理は、我が国として当面二億ドルの拠出を表明しているわけでございます。
 しかし、日本ではこれまでにロシアの非核化支援事業に資金を拠出しておりますけれども、ロシアの非協力で多くの額が未執行状態になっているという現実があるわけです。各国の拠出は最小限度にとどめて、ロシアに核管理の自助努力を、ロシアみずからやるということを促すことが非常に重要であって、緊急を要するんじゃないかと思うんですが、大臣はどう考えますか。
川口国務大臣 委員がおっしゃるとおりだと思います。
 今回サミットで合意をされました大量破壊兵器及び物質の拡散に対するG8グローバル・パートナーシップということは、安全保障、テロ対策を含む不拡散、環境保全の三つの点で大きな意義があると考えます。国際社会として取り組むべき課題であると私は思います。
 この点で、まさにG8の首脳が合意した事業を実施していく上で指針というものがあるわけでございますけれども、委員がおっしゃいましたように、まずロシアが第一義的な責任を持って全面的な協力を行うということを明らかにしているわけでございます。
 今まで我が国が対ロ非核化協力事業をやってきている過程で、これは実施上さまざまな困難があったということについては、私もウィスラーでのG8の外相会合でこの点についてははっきり言いましたし、それから、小泉総理もG8の首脳会合でこの点については明らかにされていらっしゃいます。我が国としては、今後この指針に基づいてロシアが第一義的な責任を果たしていくように働きかけていきたいと考えています。
土田委員 今回のサミットでの大きな出来事に、アフリカの行動計画が採択されたということもやはり大きいと思うわけですね。テロの温床となる貧困解消に主要国が力を入れるということは非常に大きな意義があるわけでございますが、ただし、先進諸国の意向に沿うような選別した重点政策、重点的な援助、これと途上国やあるいはNGOが希望することについてのギャップが出てくるんじゃないかというふうなことも考えられるわけです。
 そこで、アフリカ開発、貧困解消に向けて我が国は今後どういった具体的な対策あるいは貢献をしていくのか、これについて答弁をお願いします。
    〔委員長退席、中川(正)委員長代理着席〕
川口国務大臣 アフリカというのがこの間のG8の首脳会談で大きなテーマになったわけでございまして、この点については、我が国がTICADというプロセスでずっと努力をしてきたということが国際的に理解され、パートナーシップとしてシェアをされるということで、非常に大きな意味があると思います。
 援助の選択的な実施ということが言われているわけでございますけれども、これについては我が国は、九二年のODAの大綱の原則にも書いてございまして、途上国の民主化、市場経済化、基本的人権の保障状況に十分に注意を払いながらめり張りをつけていくということは、我が国もみずから言っているわけでございます。
 NGOあるいは途上国の考えることとずれがあるのではないかという御趣旨のお話でございましたけれども、やはりガバナンスであったり民主化であったり市場経済化、援助の結果、具体的にはどのような成果が上がっているかということを踏まえて援助を考えていくということは、援助の効果が十分に発揮されるという意味で重要なことでありますし、我が国の大綱にまさにそういうことがうたわれているということだと思います。
土田委員 ロシアの参加でございますけれども、新聞によって、いつ日本が知ったかというのがどうもはっきりしません。突然小泉総理も知ったとか、あるいは前日に知らされていたとか、報道によっていろいろあるのでございますけれども、ロシアが今回から正式に参加するということは、日本としては、あるいは小泉総理としてはでも結構なんですが、いつ知ったんでしょうか。
川口国務大臣 ロシアが二〇〇六年に議長国として参加をする、議長国を務めるということが今回決まったわけでございます。
 ロシアが完全な形でサミットに参加をする問題につきましては、これまでもサミットのプロセスの中で議論をされてきております。ことしにおきましては、来年のサンクトペテルブルク建都三百周年、その際にG8で会合をするということで、その関連でロシアによる通常のサミットの開催についての協議を行ってきたわけでございます。
 他方で、サミットに先立って行われてきた事前協議、この過程で二〇〇六年にロシアでサミットを開催してもらおうという具体的な話は事前には出ていなかったということでして、今回のサミットの際、首脳のまさにやりとりの場でそういった二〇〇六年のロシア開催が決定をされたというふうに承知をいたしております。
土田委員 さて、ロシアが参加してくるわけでございますが、今、民主党の方の質疑の中で、これによってこれまでの日本の対ロ政策が何ら変わるものではないというような答弁をされておりましたけれども、私は、やはり日ロ平和条約の締結問題やあるいは北方領土問題について影響があるんじゃないか、あるいは、これを機会に話を進めなきゃならないんじゃないかと思うんですが、大臣はどう考えますか。
川口国務大臣 北方領土問題について話を進めていくということは、我が国にとっては非常に重要な問題でございまして、従来から申し上げています、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するというずっととっております方針、そして、ロシアとの間では、経済分野、平和条約の交渉の分野、そしてグローバルな問題、国際的な舞台の上でロシアとどういう協力をしていくかという三つの分野で協力を進めていくという考え方について、全く変わらずそれを持っているわけでして、こういった分野では引き続き進展のための努力をしていくということでございます。
 他方で、G8の首脳会談で決まったロシアの二〇〇六年における議長国としての参加ということにつきましては、これは首脳が、ロシアがグローバルな問題に対して十分かつ効果のある役割を果たす潜在力を持っているんだということを認識したということでございまして、ロシアがこうした役割を果たしていくということは、国際社会の平和と繁栄に資するという観点で我が国の国益にも資するというふうに考えているわけです。
土田委員 領土問題が出たついでに聞くんですが、今回の鈴木問題といいましょうか、北方四島に関するこれまでの五十年間が水泡に帰したというような感じがしているわけです。一九五六年の日ソ共同宣言まで戻ってしまったんじゃないか。
 今後どういった領土問題についての外交を展開していくかというのは大臣から何回か聞いたことがございましたけれども、領土返還に関する将来は明るいと見ておりますか、さらに大変になってくると大臣は見ていらっしゃいますか。
川口国務大臣 日本とロシアの関係については、先般ウィスラーでイワノフ・ロシアの外務大臣とお話をしました際も、両国の間で対話を深めていきましょう、さまざまな分野で、先ほど申し上げたような分野で協力をしていきましょうということで合意をしているわけでございまして、外務大臣の秋の訪ロ、そして総理大臣の冬の訪ロといった過程を経て、どんどんこれを進めていくということを両国とも考えているわけでございます。
 将来の領土問題の交渉の見通しはということでお聞きになられましたけれども、私どもとしては、当然に、四島の帰属の問題を解決して平和条約を結ぶということを達成するということで考えているわけです。
土田委員 外務省は、この四日の日に、瀋陽事件についての処分を発表されました。関係者が大臣も入れて十三人であったわけでございますし、処分は、岡崎総領事が懲戒減給、阿南大使が厳重訓戒などになっているわけですね。
 この処分をもって一連の外交上の不手際についてすべて決着がついたというふうにお考えであれば大間違いでございまして、この問題はまだ決着がついておりません。表面上、関係者が処分されただけであって、責任をとった格好になっているわけですけれども、実際問題として何が変わったかというと、何も変わっていないわけです。
 特に、チャイナスクールの問題については方々から指摘されております。チャイナスクールが弊害があるんだとか、弱腰外交の原点じゃないかとか、そういったことを言われている。
 再発防止策につきましても、危機管理官の新設とか公館の整備増強、ゲートやインターホンの整備、その程度の場当たり的な対応しかされていないというふうに思いますし、特に、総領事などほかから来た方については事実上更迭をしながら、大使や局長について、いわゆる外務省のプロパーについてはほとんど何もしていないというのが実態であるわけですね。
 これを見ますと、やはり人事体制は硬直化しているし、外務省改革をやるのだという外務大臣の姿勢が問われているんじゃないか。大胆な機構改革もできやしないし、たったこの程度の処分しかできないということになって、我々は非常に大きな不満を持っているわけですが、大臣は、この件はどう考えておられますか。
川口国務大臣 瀋陽の総領事館事件について、この処分によって決着がついたとは私は毛頭考えておりません。
 それから、処分についてでございますけれども、これは、処分に当たって改めて問題点を精査した上で、人事院の規則、指針それから外務省の内部の規則にのっとって、また過去の例等を踏まえまして厳正に対応をしたというふうに考えております。
 それから、改革でございますけれども、私は、改革については、できるものからどんどんやっていくというふうに二月に就任をしたときから申し上げておりまして、例えば、昨日はODAの改革十五項目というのを発表させていただいたわけでございますし、今までも、外部からの大使あるいは本省の幹部への登用というのも着実に進めてきているわけでございます。
 さらに、「変える会」の報告が今月の末にいただけると思っておりますし、また、外務省の中の「変えよう!変わろう!外務省」というグループの意見も今月末に出てくると思いますので、そういったことを踏まえて、外務省としてこういうことをいつまでにやりますというプログラムを提示するということで考えております。
土田委員 さて、大臣は、この瀋陽事件が発生した直後から、これまで何百回も、毅然たる処置をとるんだということを言い続けてこられました。何百回というのは多少オーバーかもしれませんけれども、多分何十回も言ってこられました。今回の問題で、中国に対して主権の侵害であるということを引き続き申し入れをされるのかどうか。韓国につきましては、既に中国側は遺憾の意を表明しているわけです。日本に対しては何もしていない。
 まず最初の質問でございますが、中国に対して、日本は今後ともこういった主権の侵害であるというのを言い続けるのかどうか。
川口国務大臣 中国に対しては不可侵の侵害ということを言っているわけでございます。六月の十九日に中国のトウカセン外務大臣と話をしまして、そのときに、中国側によって我が国総領事館の不可侵が侵害されたことについて我が国の措置は全く変わっていないということを申し上げてございます。したがいまして、主権の侵害という言葉は使っておりませんけれども、不可侵の侵害ということについては引き続き言っているわけでございます。
 それから、韓国に対して遺憾の意を表明したというふうにおっしゃいましたけれども、これは中国も韓国も相互に遺憾の意を表明し合ったというふうに理解をしております。
土田委員 不可侵の侵害でも結構なんですが、あるいは中国と韓国が両方とも遺憾の意を表明した、それも結構なんですが、日本がそういったこと、不可侵の侵害を継続的に言い続けているにもかかわらず、中国はどういった態度をとっているんですか。
川口国務大臣 中国側からは、ずっと今まで中国側が言っている立場が改めて示されたということでございます。他方で、両国は、日中関係の大局を踏まえてこの件について冷静に対処をしていくことが重要で、再発を防止するという観点から、領事条約、協定の締結の可能性も含めて、再発防止のために外交当局間で協議をするということについて一致をしたわけでございます。
土田委員 それでは、大臣が言い続けた断固たる処置とか毅然たる処置とか、これとはほど遠い関係じゃないですか。断固たる処置をとるんだ、毅然たる態度を見せるんだということを言い続けたわけでしょう。そのことを今あなたは実行していると思いますか。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、六月十九日のトウカセン外交部長との会談において、この件をめぐる事実関係について、私の方から、中国が我が国総領事館の不可侵を侵害されたということについての我が方の立場には変わりはないということを言っているわけでございまして、この主張を毅然として貫いていくということに全く変わりはございませんし、中国への陳謝要求を取り下げたということも全くございません。
土田委員 何十回話してもこの件はもう意味がないようですので、あきらめます。大臣がいかに毅然たる態度をとらないかということがだんだんわかってくると、その分だけ不愉快になりますので、この件はぜひ大臣が納得のいくようにしてください。
 さて、日本海に沈んでいる不審船の引き揚げの件でございます。
 いろいろ報道されておりまして、近々引き揚げが完了するんだというふうに思いますが、中国から求められている漁業補償、数億円に上るというふうに言われているわけですけれども、まず、漁業補償を要求される根拠はあるんでしょうか、あるいはその金額の最低基準について説明してください。
川口国務大臣 中国側との協議において中国側からは、不審船の事件が発生して以来、日本の巡視船が現場海域に展開をいたしていますので中国の漁船が漁場に近づけない、漁民から強い不満が出ている、そういう指摘がなされてきております。我が方といたしまして、この時点で具体的な対応を決めているわけではないわけですけれども、こうした中国側の主張を受けまして、引き続き真剣に検討をして、できるだけ早く誠意を持って対応をするということといたしておりまして、この点について中国側との協議を継続していくという考えでおります。
 この根拠というお話がございましたけれども、これは、漁業問題について我が国がどういうふうに具体的に対応をするかということを決めているわけではございません。したがって、国際法との関係についての説明は我が国の方から申し上げるというのは非常に難しいわけですけれども、いずれにしても誠意を持って対応していきたいと考えています。
土田委員 以上で終わります。ありがとうございました。
中川(正)委員長代理 次に、松本善明君。
松本(善)委員 外務大臣に伺います。
 我が国の憲法の七十二条には、「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。」とあります。――聞いていましたか。(川口国務大臣「全部は」と呼ぶ)それじゃだめですよ。関係あるところだけ言いましょう。外交関係について国会に報告するということが内閣総理大臣に義務づけられています。質問はちゃんと聞いておってください。
 サミットについて各同僚が聞きました。サミットについては、参議院では報告したけれども、衆議院には報告がないんです。あなたもサミットに行っていない。それで、御存じのように、衆議院は条約について優先権がある。あなたも閣僚の一人として、内閣は連帯して国会に責任を負っているんですよ。サミットの報告を衆議院に総理大臣がしないということは、これは内閣として責任を負っていないと思いませんか。
川口国務大臣 私個人の意見を聞いていただいているというふうに理解をしてお答えをさせて……(松本(善)委員「閣僚の一員として」と呼ぶ)閣僚の一員としてということでございましたら、これはまさに内閣として、総理大臣が出席をしたサミットについては、こういった場も含めさまざまな場で御報告を申し上げていると私は考えております。
松本(善)委員 衆議院では報告していないんですよ。していますか。
川口国務大臣 さまざまな委員会ということがあるわけで、例えば私はきょう外務委員会でサミットについての御報告を実際に申し上げているわけでございますし、総理大臣が具体的にどの委員会、どの本会議でどういうようなことをおっしゃったかということについては個々には承知をしておりませんけれども、内閣としては連帯してこういった点については国会に御報告申し上げていると思います。
松本(善)委員 あなたも総理大臣同様に大変無責任ですよ。サミットについて、衆議院には本会議でもどこでも報告されていない。私は総理大臣の出席のもとにこの問題は聞こうと思います。今、サミットで取り上げられた問題、日本の総理大臣として取り上げなかった問題、それらについて論議することは山のようにあります。それがこの委員会で、衆議院でなされていない。それについて外務大臣が責任も感じていない。私は、今、日本の外交は本当に機能不全に陥っているというふうに思います。この問題は、総理大臣に必ず外務委員会に出席してもらって、その上で全体の質問をしたいと思います。
 きょうは、三井物産の社員三人と別件で逮捕されていた外務官僚二人、計五人が逮捕された、この問題に関係して少し聞こうと思います。
 外務大臣は、この逮捕について、国後島ディーゼル発電施設工事の入札に係る偽計業務妨害事件でありますけれども、その被疑事実を知っていますか。知っていなければ知っていないで結構です。
川口国務大臣 偽計業務妨害であると承知をしています。
松本(善)委員 その程度の認識だと私は大変ぐあい悪いと思うんですよ。これは、外務大臣、外務省に対する疑惑が新たな段階に入ったということだと思います。
 この被疑事実は、この偽計業務妨害は、住友商事と兼松については予定価格を上回る価格で入札をさせる、丸紅には断念させる、こういうふうに商社間で受注を調整して、そして三井物産が落札をしている。三井物産は、御存じのように日本を代表する商事会社ですよ。これを談合といいますが、上回る価格で入札をしたところも、それからあきらめたところも、相談ずくでやっているわけです。ほかでもそういうことがあり得るということなんです。これは一鈴木宗男君だけの問題でないですよ。そういう問題です。
 この落札金額は、発注予定価格に対して、国後の場合は九九・九一%。これは、入札予定価格を知らなければこういう入札はあり得ません。神わざだと言われています。外務大臣は、こういうことを聞いてどう思いますか。
川口国務大臣 この件について、外務省の職員が逮捕されたということについて、私は遺憾だと思っております。そして、外務省として、今、司法の手で問題の解明が進みつつありますので、全面的に協力をして事態の解明に資したいというふうに考えています。
松本(善)委員 発注予定価格に対して九九・九一%ということがどういう意味を持っているかということはわかりますか、外務大臣は。
川口国務大臣 わかりません。
松本(善)委員 それを平然と答えるというのは、自分は外務大臣としての資格がないということを自分で言ったようなものですよ。正直かもしれません。だけれども、これだけの問題が起こってきて、そしてそれは幾つも報道されているんですよ。これは、重大なことが外務省で起こっているという認識に立たなければ、外務省の改革できないですわ。私は大変驚きました。
 それから、そのほか、択捉は九九・五六%ですよ。色丹は九五・一九%です。もう極めて異常なことが起こっている。それ自体を、それを知らなければ、外務省の改革も何もないじゃないですか。
 それでは、まあこれも御存じないでしょうと思いますけれども、改めて聞きます。
 これは、事前にコンサルタント会社の報告で設置の必要がないとされていた、それがわずか数カ月で逆転決定された。これはどうしてそういう経過になったかということ、もちろん調べていないでしょうね。お聞きします。
川口国務大臣 まず、ちょっと、誤解をしていただくといけませんので、もう一度説明をさせていただきたいと思いますけれども、先ほど委員が数字をおっしゃって、それについて私は知らないというふうにお答えをしたのは、そういった数字が報道されているということについて知らないと申し上げたわけではございません。私が知らないと申し上げましたのは、委員の御質問が、その意味は何かというふうに御質問がございましたので、個人の立場でさまざまな憶測をするということはできますけれども、この場で外務大臣として、今司直が調べていただいていることについて、私の憶測、要するに外務大臣としての憶測を申し上げるということは適切ではない、意味については知らないという意味で申し上げたということでございます。
 そして、今の御質問についても、これはまさに、そういったさまざまな報道がなされているということを私は承知はしておりますけれども、そういった点について私がどう思うかということをここで申し上げるということは適切ではないと考えているわけです。
松本(善)委員 九九・九一%の問題について、その意味を知らないということが問題なんですよ。私は、これもまた驚きます。
 かつて外務大臣が、公共事業の入札、偽計業務妨害、そういう問題について余り専門家でないということをおっしゃいました。専門家でなくたって、聞けばわかるんですよ。入札というのは公正にやらなければならぬ、それがゆがめられているということ、重大な問題について気づいていないということをここで表明されているのと同じだと私は思います。本当に驚きました。
 国後島について聞きますが、この落札の最終決裁者はだれですか。――ちょっと待ってください。知らないなら知らないとまず答えてから言ってください。私が政府参考人を求めたのではないんです。外務省の方で、万一のことがあれば私の方が聞くという場合に備えて欧亜局長に来ていただいています。外務大臣にまずお答えいただいて、それから私は必要があれば欧亜局長に聞きます。
川口国務大臣 私は、その決裁書の最終決裁者がだれであるかということは承知をしておりませんので、これについては欧州局長から答えさせます。
松本(善)委員 私は、これもやはり外務大臣が事の重大さを感じていないということだと思います。
 欧亜局長、だれですか。ついでに聞きましょう。事前にコンサルタント会社の報告で設置の必要がないとされていたのに、なぜそれが数カ月で変わったのか。担当の最終決裁者の名前と、なぜ変わったのかを言ってください。
齋藤政府参考人 お答えいたします。
 まず、国後島のディーゼル発電施設建設計画についての外務省の最終決裁者は、当時の東郷欧亜局長でございます。(松本(善)委員「名前は」と呼ぶ)東郷和彦欧亜局長でございます。
 それから、パシフィックコンサルタンツインターナショナルが行いました平成十年十一月の調査報告書で、発電機増強の必要性はないということが指摘されていることは先生御指摘のとおりでございますが、これまでにも御説明申し上げたことの繰り返しになって大変恐縮でございますが、そのほかにも、発電施設の更新が早晩必要不可欠になるといった内容の報告書も、それに先立ってJICAの専門家による調査ということで出ておりまして、こういった一連の技術的な観点からの調査を踏まえまして、政策的判断から、当時、国後島にディーゼル発電施設を設置することが妥当だという判断が行われたというふうに私ども理解しているわけでございます。
 その背景といたしましては、二〇〇〇年までに平和条約を締結するように全力を尽くすといったクラスノヤルスク合意が九七年十一月にできておりまして、こういったことを踏まえまして、交渉のモメンタムを一層高めていこうという中にあって四島住民支援が拡大されていったということでございまして、その一環として、前年の色丹、択捉に対するディーゼル発電施設の供与に続いて国後島のプロジェクトが実現した、こういうことでございます。
 しかしながら、これもこれまでに申し上げておりますけれども、現時点において振り返ってみますと、この国後島に対するディーゼル発電施設が本当に望ましい形で行われたかどうかということについては、反省すべき点もあろうかというふうに思っておるところでございます。
    〔中川(正)委員長代理退席、委員長着席〕
松本(善)委員 一言だけ聞くが、欧亜局長、必要だと思ったら違法なことをやってもいいというのが外務省の考えですか。一言だけ聞くわ。
齋藤政府参考人 私が先ほど申し上げましたのは、当時そのような背景のもとに判断がなされたということでございまして、これは協定上違法であるということではないというふうに理解しております。
松本(善)委員 そうじゃないんだよ。違法なことをやってもいいかと聞いているんです。そういうことは、必要な場合に違法なことをやってもいいか。そんなことはないというんなら、そんなことはないと言いなさいよ。あなたの言ったことは、違法でなかったということでしょう。だから、違法なことをやっていいのかということです。
齋藤政府参考人 一般論として申し上げますと、公務員としては、当然法律を遵守すべき立場であろうというふうに思います。
松本(善)委員 外務大臣、本当に重大なことなんですよ。お読みになっているかどうかわからぬが、きょうの朝刊では、支援委員会は漁業交渉関連の支出も、目的外だけれども押し切った、三井物産が受注した、鈴木議員がそのことを訪ロのときに言っていると。もう山のようにありますからね。私、見出しだけは言います。
 きのうは、「三井物産 社員逮捕後ODA応札」をやったと。もっと前へ行きますと、本当に山のようにあります。「三井物産、ほぼ丸投げ 三島の発電所工事 派遣、子会社の一人」、「三井物産 落札直後に資料廃棄指示 発電施設 違法認識裏付け」、「三井物産不正 丸紅排除 下請けで懐柔か 関連二社 納品だけで利益」、「発電施設 鈴木議員「下請け地元に」 支援委 指示通り入札設定」、「国後施設入札 三井物産に合わせ条件」、「三島発電施設 「建設ありき」四十億円 拠出段階で大枠 政府予算 現地調査を無視」、「発電施設入札公示内容まで事前報告 外務省 鈴木議員に」、「「三島すべて受注したい」 三井物産部長 元分析官は了承」、「北方三島発電施設 「商社入札」上司に提案 前島被告、鈴木議員への根回し求める」、「三井物産 不正工作 「うちと組みたかったら降りろ」 「丸紅外し」日揮に強要」、「三井物産 他二社の入札書類作成 偽計業務妨害事件 応札額も指定」、「三井物産への見積価格漏えい 「これは鈴木案件だ」」、「支援委「予定価格漏れの疑い」 外務省 指摘を無視 国後不正入札調査せず工事急ぐ」、さっきの欧亜局長の話と符合しますよ。「三井物産「ロシアで仕事できないぞ」 鈴木議員の名出し圧力 丸紅提携先に」。
 本当にため息の出るような事態です。これだけ新聞で、外務大臣読んでいるんですかね、新聞。私がこれだけ指摘しただけでも重大問題だと思いませんか。今からでもいいですよ。
川口国務大臣 この問題が非常に重大な問題であって、外務省としては遺憾に思っているということは、ことしの二月以来申し上げているところでございます。
松本(善)委員 これは今までの園部報告にもありません。監査法人がやったのでも、ここまではありません。刑事責任は捜査機関は追及します。刑事責任と行政責任は違うんですね。それで、東郷氏が最終決裁をしたというのが刑事責任を問われることは、これはまた別問題です。私は、問われることもあり、問われないこともあると思います。しかし、行政責任は絶対に免れられません。これは外務省が調べないと。捜査機関は、検察庁はずっといろいろ聴取していると思いますよ。しかし、それは捜査の秘密だから、外務省には言わぬと思います。
 そうすると、刑事責任がなくても行政官としては責任を問われなければならない性質のものが幾つもあるんですよ。それを外務省がもう一回、再調査をする意思があるかどうか、これを聞きたい。
川口国務大臣 この件につきましては、外務省の園部参与にお願いをいたしまして、その時点で国会で問題になっていた事柄について調査をし、任意の調査であるという制約のもとで、それに関して外務省の職員がどういう行動をとったかということをきちんと調べていただいたわけでございまして、これについては報告をさせていただいておりますし、これに基づいた処分もいたしております。それから、その後出てきた問題につきまして、外務省として、やはり任意調査の範囲内でできることを調べたということでございます。
 そういう意味で、任意調査という制約がございますので、外務省としてはできる限りのことを調べた、憶測で結果を申し上げるわけにはいきませんので、具体的な資料等に基づいて調査をしたということでございまして、また、そのうちの一部については、今司直の手で調べていただいているということで、外務省としては、事態の解明が行われるように、これに全面的に協力をしていきたいと考えているわけでございます。
松本(善)委員 外務大臣はまだ問題を理解していない。
 園部報告は過去のことですよ。園部報告にはこれはないんですよ、三井物産の件は。これは調べてないんです。
 捜査に協力するのは当たり前だ。しかし、それは刑事責任の追及にとどまるんです。例えば、東郷さんが最終決裁したでしょう。それは、どこまで知っていたかということによって、刑事責任を問われる場合もあり、問われない場合もあります。しかし、決裁をしたということについては責任はある。
 三井物産がこういう事件を起こしているということについては、ほかはやってないということもないんです。そういう推測もできない。これだけやりましたという推測もできない。三井物産の受注した全ODAのケースについて調査をすべきです。
 それから、利益は得ていないけれども協力をした兼松それから丸紅、住友商事、関係をしたところも含めて調べなければならぬと思うんですよ。それを含めて、ODAを受注している企業を全部、もう一回洗ってみる必要があります。
 そういうことになると、もう一回再調査なんです。再調査の意思が全くないのかどうか。やるのならやる。全部はまだ知らないと思いますから、今の外務大臣の認識ではとても無理ですけれども、これから、その指摘を受けてやるのか、これだけ指摘をされてもやらないのか、お答えいただきたい。
川口国務大臣 三井物産の件につきましては、先ほど申しましたように、これは、ディーゼルの件について園部報告書の段階でも調べさせていただきましたし、その後、もう一つの委託をして、業務全般について調べてもらった中でも対象となっておりまして、外務省が任意調査という範囲の中で調べられることについては調べているわけでございます。したがいまして、この件について再調査をするということは考えていないわけでございます。
松本(善)委員 あきれた答弁だと思います。
 委員長に申し上げますが、外務省がこういうことでありますと、やはり、外務委員会が証人喚問までみんなやって徹底的に調べる必要があると思うんです。先ほどの、東郷氏は参考人として呼ぶということになりましたけれども、私は、それだけにとどまらない、こうなってくると証人喚問も必要になってくると思う。それも御検討いただきたい。
吉田委員長 理事会で検討させていただきます。
松本(善)委員 最後に一言だけ聞きます。
 副大臣、自民党は、国民政治協会への献金は、北方四島・ロシア支援事業受託商社から、八社ぐらいありますが、二十一億一千九百三万円の献金を一九九〇年から二〇〇〇年までに受けております。
 私は、野党四党が提起をしていますけれども、公共事業を受注した企業からの献金は禁止すべきだ。ここまでわかっていても、まだ与党は賛成しませんけれども、あなたはこれを聞かれてどう思いますか、自民党の献金について。このままこういうようなことを続けていっていいと思いますか。
植竹副大臣 今、松本委員お尋ねの件でございますが、献金の問題とこの問題は別個でありますが、しかし、松本委員がおっしゃったことにつきましてはよく承っておきます。
 それから、私自身の感想でございますが、これはやはりいろいろな点について今までのあり方というものを考えなくちゃならないということは、個人としては考えております。
松本(善)委員 終わります。
吉田委員長 次に、東門美津子君。
東門委員 社会民主党の東門美津子です。よろしくお願いいたします。
 私は、外務委員会に立つたびに、沖縄の米軍基地の質問をしております。そういう質問をしないでいいような日が早く来てほしいなという思いを常に持っております。川口外務大臣の本当に強いリーダーシップをもってぜひ対米交渉に当たっていただきたい、沖縄の県民がこの三十年間、いや五十七年間ずっと訴え続けている問題について、アメリカに対してしっかりとおっしゃっていただきたいと思います。沖縄の県民が本当に目に見える形で、あるいは肌で感じる形で、米軍基地の問題が解決に向かって進展していくことをお願いしたいと思いますと同時に、やはりこの委員会の先生方にも御協力いただけたらとてもありがたいと思います。
 なぜ、沖縄県だけにこのような広大な基地が長年にわたって置かれ、そして今、これからどうなるかさえ見えないというこの異常な状態、残念です。日本の外務省、これは北米局の担当かもしれませんが、外務省挙げて、私は、大臣には取り組んでいただきたいと思います。最初にそれを申し上げまして、やはりきょうも沖縄の基地の問題について質問をさせていただきます。
 六月二十三日、沖縄全戦没者追悼式でのごあいさつで、小泉総理大臣は、県民の負担軽減に向けて誠心誠意取り組むと発言いたしました。そして、翌二十四日の武力攻撃事態への対処に関する特別委員会で、私が、この県民の負担とは何かということを質問した際に、総理は、
 基地の存在自体も負担でしょうし、あるいは、米軍の人数の点あるいは飛行機等の騒音の点、いろいろ負担はあると思います。基地のない県にしたいという気持ちもよくわかります。そういう観点と安全保障上の観点、そういうものを御理解いただきながら、沖縄の皆さん方にはいろいろ御負担をおかけしておる、そういう点にも配慮しながら、この米軍基地の整理縮小について政府としても誠心誠意努力の必要があるなと思っております。
と答弁されました。
 また、その追悼式後、普天間代替施設の使用期限問題について、記者団の質問に対しまして、膠着状態とは言いませんね、着実に進んでいますと発言をされたという報道もありました。
 それゆえ、今回のサミットにおける日米首脳会談で、沖縄の基地問題について何らかの進展があるのではという期待を持って見守っていました。
 確かに、二十五日の日米首脳会談では、小泉総理は、ブッシュ大統領に対し、沖縄基地問題で外務大臣レベルでの協議を提案されたようですが、ブッシュ大統領からは何の御返答もなかったとのことであり、総理もそれ以上は踏み込まれなかったようです。
 これでは、首脳会談で基地問題を取り上げたという形を繕っただけではないかとも感じてしまいますし、現に、沖縄の県民世論もそのような受けとめ方をしています。二月の日米首脳会談でも、閣僚レベルで緊密に協議をしていくことは合意されており、今回の提案はそこから少しも前に進んでいません。
 沖縄県の立場からすれば、十五年使用期限問題、基地の整理縮小、地位協定の見直しなど、より具体的な問題について発言していただきたいと思ったのですが、川口外務大臣は、日米首脳会談での基地問題についての総理の提案の意義、それをどのように認識しておられるのか、そこからお聞かせいただきたいと思います。
川口国務大臣 今回のカナナスキスのサミットでの総理とブッシュ大統領のお話は非常に広い分野にわたったわけですけれども、その中で、沖縄につきましては、まさに委員が今おっしゃったような、二月の日米首脳会談で行われたのと同様の、外務大臣同士で話を詳しくしてもらいましょうということであったと私は承知をしております。この、関係の閣僚、外務大臣同士で話をするということにつきましては、私は、両首脳の御指令でございますし、きちんとやっていきたいと考えております。
 また、この問題については、それなりの細かさといいますかディテールにわたって議論することも必要であると思いますので、私は、この問題を私とパウエル国務長官がやっていくということがいいのではないかと思っています。
東門委員 ただいま御答弁ありましたけれども、今回の総理の提案が、二月にも同じようなことが合意されて、今度のカナダでもまた同じようなことだと。それが、決してそれだけではなく、中身があるんですよとおっしゃっているんでしたらすごくいいんですけれども、そこがちょっとわからないということがありますね。二月からこの時点までに、閣僚レベルで協議をされてきたことが進展があったのかなということを申し上げております。それがあればいいんですけれども、全然見えませんし、感じない。そのままのところでとまっている。
 これから具体的にやっていくべきだ、細かくなさりたいとおっしゃっているんですが、ぜひそれはしていただきたいと思うんですが、しかし、今回の提案が本当に形だけではなくて実のあるものとなるためには、この外務大臣レベルでの協議において、県民の負担を軽減するための具体的な成果を示さなければなりません。
 今までこの委員会で川口外務大臣が何度も繰り返してきたSACO合意の着実な実施、これは既に六年前に決まったことなんですね。それをおっしゃるだけではどうしようもないということなんです。これを行うだけでしたら、小泉総理が今回の日米首脳会談でわざわざ外務大臣レベルでの協議を提案したという意味がありません。
 具体的な沖縄県民の負担の軽減について、大臣はこれからどのように取り組んでいかれるか、お聞かせいただきたいと思います。
川口国務大臣 二月の両首脳の、外務大臣同士で話をしてもらおうということを受けまして、パウエル国務長官とは、二月の時点でも、それから今回ウィスラーでG8の外相会談があった際にも、沖縄のことについてお話をいたしております。
 例えば、今回でございますと、SACOの着実な実施が重要であるということを私から申し上げて、特に普天間基地の移設については、使用期限についての日米双方の立場の違いはあるものの、引き続き努力をして早期実現を目指したいということを言いました。また、事件、事故の防止というのも非常に大事でございます。この件についても防止することが重要であるということを私から申し上げまして、パウエル長官は、この点について、事件、事故については自分も関心を持ってフォローしたいということをおっしゃられました。それから、日米の地位協定の運用改善が緊要であるということを私が言いまして、この点についてはできる限り努力をしていきたいというお話があったわけでございます。
 パウエル国務長官と私のレベルにおきましては、こういった機会があるごとにお話をしていきたいと考えておりますし、また、外務当局、事務当局と米国のカウンターパートの間では日ごろにコンタクトがあり、いろいろ話し合いが進んでいるわけでございます。
東門委員 御答弁を伺っていますと、何ら、全然変わらないんですね。私、二年前に初めてこの国会へ参りました。それから今まで何も変わっていないなという感じを受けます。大臣にも本当に、二月の御就任のときから、勇ましい言葉で、ちゃんと言うべきことは言っていく、やっていくとおっしゃるその言葉から、何かが出てくるのではという期待感を常に持っておりますが、全然変わっていない。御答弁もそっくり同じようなのが返ってくる。
 事件、事故の件についてもそうなんですね。米側に話はしています、しかし事件、事故はふえています。十五年使用期限は大変な問題です、協議をしていきましょう、しかしそれは変わりません。そんな話ではどうしようもないじゃないんですか。全然沖縄県民の負担の軽減というところには向かっていない、それを感じます。
 では、大臣に伺います。
 十五年使用期限問題、総理は、膠着状態とは言いませんね、着実に進んでいますとはっきりおっしゃったんですが、それは着実に進んでいますか。お聞かせいただきたいと思います。
川口国務大臣 総理のあのときのお話は、普天間代替基地全体の進捗についてお話をなさったというふうに私は理解しております。
東門委員 記者団は、はっきりと十五年使用期限について質問をしているんです。それに対して、十五年使用期限問題は膠着状態ですがどうですかと聞きましたら、総理は、膠着状態とは言わない、着実に進んでいますとお答えになったんですよ。間違いありません。もう一度御答弁お願いします。
川口国務大臣 私が承知をしておりますところでは、総理のあのお答えというのは普天間基地全体の進捗状況についておっしゃったんだと理解をいたしております。政府全体の方針としては、平成十一年末の閣議決定に従いまして進めていく、そういうことであると思います。
東門委員 大臣、私、手元に六月二十四日付の朝日新聞を持っております。そこにちゃんと出ているんですよ。「米軍普天間飛行場移転に伴い沖縄県などが求めている十五年使用期限問題について、「膠着状態とは言いませんね。着実に進んでます」と述べた。」「式典後、同県糸満市の平和祈念公園で記者団から「十五年問題は膠着している」と指摘されて反論した。」というふうに報道されているんですよ。
 大臣の今の御答弁のニュースソースはどこなんでしょうか。
川口国務大臣 今のお話ですけれども、私が承知をしておりますのは、記者の御質問が、十五年使用期限問題も含めて普天間代替基地について膠着をしているかどうか、そういう質問であったというふうに私は聞いております。
東門委員 とても残念です。もうこれは何度言っても同じような答えしか返ってこないと思いますので、移ります。
 沖縄で、米海兵隊が民間地域で有料バスを運行していた問題について伺いたいと思います。
 ことし三月から、米海兵隊が、兵士や家族を対象として、週末に基地から那覇市内向けの有料バスの運行を始め、六月上旬までは民間の路線バスの停留所を利用していました。地位協定第五条二項は、基地間の移動は認めていますが、民間地域での乗降については規定されておらず、また、福利厚生目的の移動は地位協定の想定外であるとの指摘もあります。米軍側も六月七日からは乗降地を那覇軍港に変更しており、それは、民間地域での乗降は誤りであったということを実質的に認めたのに等しいわけです。
 それなのに、政府は、沖縄総合事務局が当初、道路運送法の特定旅客運送事業者に当たるので国土交通大臣の許可が必要と言っていたのに、六月二十六日になって、道路運送法は適用しないとの国土交通省の見解が沖縄総合事務局に伝えられたと言っております。
 報道によれば、国土交通省と外務省の調整で日米地位協定や合意議事録の解釈を吟味した結果、道路運送法は適用されないとの結論を出したとのことですが、このように米軍のやったことは何でも事後的に追認するようなことでは、どんな取り決めも無意味なものになり、政府に対する国民の信頼もますます失われます。
 なぜ米軍による民間地域での有料バス運行に道路運送法が適用されないのか。また、それならば、なぜ米軍は乗降地を那覇軍港に変更したのか。納得できるような説明をお願いしたいと思います。
藤崎政府参考人 今委員から二つ御質問がございまして、一つは米軍によるバスの運行が道路運送法との関係で問題ではないかということと、もし問題がないということであればなぜ変更したのかという、二つの御質問であったと存じます。
 まず第一点でございますけれども、この道路運送法が米軍の車両に適用されるかどうかという問題でございますけれども、これは累次国会でも御説明しているわけでございますけれども、一般国際法上、駐留を認められました外国の軍隊には、特別の取り決めがない限り接受国の法令は適用されないわけでございます。他方、もちろん国内法を尊重するという義務はあるわけでございます。
 今回問題になりましたこの有料バスの運行というのは、MCCS、これはマリン・コー・コミュニティー・サービスの略でございますが、このMCCSは米軍の機関でございまして、このバスの運行は米軍の機関による公務ということで、バスの運行自体については国内法の適用はございません。したがいまして、今御指摘のございますMCCSによるバスの運行につきまして、運送法による規制が適用されるということはないわけでございます。
 他方、もしそういうことであれば、なぜ仕向け地を変えたのかということでございますけれども、この変えた理由について、私どもは今承知しておりません。
東門委員 では、いつまでにわかりますか、なぜ変えたのか。
 結局は、これはやはり違法だということでしょう。地位協定上、根拠がないということじゃないですか。今おっしゃったんですけれども、確かに五条の二項でと。でも、それは、基地間の移動は可能でも、こういう福利厚生目的に、しかも営業行為のためのそういう移動というのは可能なんでしょうか。そういうことも私はぜひ教えていただきたい。なぜ民間の停留所を那覇軍港に移したのか。もちろん、これはアメリカ側もいけないと思ったと思うんですが、なぜそうしたのか。
 それから、営業行為がそういうふうに行われるということに対して、日本政府は何も言えないのか。いわゆる有料なんですよ、無料じゃないんですね。それは可能なんですか、有料ということは。
藤崎政府参考人 今、二点御指摘がございまして、第一点は、もしこういう機関が有料ということであれば、それは認められるのかということでございますが、そもそも、このMCCSというのは歳出外資金諸機関ということでございまして、独立採算でございますので、十五条で認められておりますように、例えば劇場でございますとか、米軍の福利厚生等を目的とするために設けられている機関でございますので、これを有料とするということに問題はないかと存じます。
 それから、第二点に、この仕向け地の変更の問題あるいは移動との関係の問題でございますけれども、私ども、米軍の政府車両でございますが、この米軍の車両が、米軍の基地を出ましてある目的地に参りまして、また米軍の基地に戻るということは、これは移動の概念に含まれるというふうに考えているところでございます。
 第三点、これは特に御質問ではございませんけれども、不適切な点があっても何もアメリカに申し入れをしないのではないかという点につきましては、これはいつも厳しく大臣からも御指摘がございまして、御指導がございまして、もし何か米軍に不適切な点があるという場合には、私どもは常にこれについては申し入れをするようにしております。
東門委員 時間が短いのがとても残念です。
 十五条に関しても、決して今の解釈は私は当てはまらないと。劇場とおっしゃった。劇場と有料バスとは違いますね。十五条は、施設・区域内です、そこにできるということなんですよ。後でまた、その点は議論したいと思います。
 もう一点はどうしても伺いたいので、進みます。
 米軍基地に出入りをするベースタクシーに対して、米軍側が入域料を徴収している問題についてです。
 基地への入域料については地位協定でも明確な規定はなく、また沖縄県以外の基地ではこのような入域料は徴収していないとのことです。日米地位協定は、在日米軍、米兵にさまざまな特権を与えています。しかし、それはあくまでも安保条約の目的の範囲内のものであるはずであり、地位協定があるから米軍は何でもできるというものではないはずです。安全保障上の目的から我が国の国土を基地として無償で提供しているのに、それを利用して金もうけをしようなどとは、あきれ果てて物が言えません。政府は、この状況をどのように認識しているのか。
 まず、米軍による入域料徴収はどのような根拠に基づくものなのか、それをお伺いいたします。
 二点目、続いて聞いておきます。入域料の額はどうなっているのか、幾ら徴収しているのか。
 三点目、本土の米軍基地で入域料を徴収しているところがあれば教えてください。していなければ、なぜしていないのか。
 以上です。まず、それからお聞かせください。
藤崎政府参考人 今御質問いただきました三点についてお答えさせていただきます。
 まず第一点、民間タクシーが入構するのについて、これは何を根拠に認められるのかということでございますが、これは委員よく御承知のとおり、日米地位協定二条に基づきまして米軍に施設・区域を提供するわけでございますが、その際、三条に基づきまして施設・区域の管理権は米軍に属するということを認めているわけでございます。
 これに伴いまして、日米地位協定十五条に基づく歳出外資金諸機関、先ほどまさにお話の出ました独立採算制のものでございますが、こういう機関、この場合にはエクスチェンジサービス沖縄地域営業本部というところでございますが、これが契約者等からの料金の徴収をしているということでございまして、これは独立採算制を前提としている以上、地位協定上、十五条の上で問題があるというふうには考えていないところでございます。
 第二点、各タクシー会社からあるいはタクシーからどれだけの金額を徴収しているのかということでございますけれども、私どもが沖縄の方を通じて確認いたしましたところ、米側は一台当たり月三千円を徴収しているということでございます。
 第三に、本土の施設・区域との関係でございますけれども、実は、沖縄の基地におきましては、施設・区域内への民間タクシーの入構を、これは伝統的に認めてきているということがございますが、現在、本土の施設・区域、基地におきましては、民間タクシーの入構は認められておりません。したがいまして、今御指摘のような問題が生じていないということでございます。
東門委員 本土の米軍基地では一切タクシーは中に入れないということですね。局長、そういうことですね。
藤崎政府参考人 実は、本土におきましても、かつて横須賀の海軍施設で認められていたということはございます。しかし、現時点におきまして、本土においては、私どももこの御質問を受ける前に、新聞報道等もございましてチェックさせていただいたわけでございますけれども、このベースタクシーと申しますか民間タクシーが入構しているということはないということを調査したわけでございます。さらに引き続き確認させていただきます。
吉田委員長 もう時間が過ぎております。
東門委員 最後の質問になります。済みません。
 先ほど入構料は三千円ということでした。それは個人の場合ですね。個人タクシーの場合が三千円。法人はどうなっているか、そこら付近把握しておられますか。そして、七千円を徴収しているということもあるのを御存じでしょうか。そういうところも把握していない。
 私は、何か地位協定のことも本当にあいまいだなといつも思うんですが、すべて運用の改善でできていますとおっしゃりながら、米軍のそういうことも把握をしていない外務省、とても残念です。負担を、常に被害を受けるのは県民の側であるということ、それは私何度も申し上げておりますが、一向に改善されないどころか、新たな事実がどんどん出てくる。
 それに対して、実は私、この新聞が出てすぐに外務省に問い合わせしたら、今お返事できません、調査中ですという感じで、外務省が何も把握してないんですよ。新聞の報道を見て、こちらが問い合わせして、急いでも、それからいろいろ調整をするものですから時間がかかる。こんなやり方でいいのかなと憤慨さえいたします。
 時間がありませんので終わりますが、この次、この問題も質問を続けていきたいと思います。
吉田委員長 質疑は終了いたしました。
 次回は、来る七月十二日金曜日午後一時五十分理事会、午後二時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時四十一分散会


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