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第23号 平成14年7月19日(金曜日)

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平成十四年七月十九日(金曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 吉田 公一君
   理事 浅野 勝人君 理事 石破  茂君
   理事 坂井 隆憲君 理事 西川 公也君
   理事 首藤 信彦君 理事 中川 正春君
   理事 上田  勇君 理事 土田 龍司君
      今村 雅弘君    小坂 憲次君
      七条  明君    中本 太衛君
      丹羽 雄哉君    原田 義昭君
      平井 卓也君    細田 博之君
      水野 賢一君    宮澤 洋一君
      望月 義夫君    伊藤 英成君
      金子善次郎君    木下  厚君
      桑原  豊君    前田 雄吉君
      丸谷 佳織君    松本 善明君
      東門美津子君    松浪健四郎君
      鹿野 道彦君    柿澤 弘治君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   外務副大臣        植竹 繁雄君
   外務大臣政務官      今村 雅弘君
   外務大臣政務官      松浪健四郎君
   外務大臣政務官      水野 賢一君
   会計検査院事務総局第一局
   長            石野 秀世君
   政府参考人
   (防衛施設庁建設部長)  中矢 信之君
   政府参考人
   (法務省矯正局長)    鶴田 六郎君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 佐藤 重和君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 林  景一君
   政府参考人
   (外務省大臣官房領事移住
   部長)          小野 正昭君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局軍
   備管理・科学審議官)   宮本 雄二君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    藤崎 一郎君
   政府参考人
   (外務省欧州局長)    齋藤 泰雄君
   外務委員会専門員     辻本  甫君
    ―――――――――――――
委員の異動
七月十九日
 辞任         補欠選任
  高村 正彦君     七条  明君
  宮澤 洋一君     平井 卓也君
同日
 辞任         補欠選任
  七条  明君     高村 正彦君
  平井 卓也君     宮澤 洋一君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 会計検査院当局者出頭要求に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 刑を言い渡された者の移送に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第一四号)(参議院送付)
 オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書の改正(締約国の第九回会合において採択されたもの)の受諾について承認を求めるの件(条約第六号)(参議院送付)
 オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書の改正の受諾について承認を求めるの件(条約第七号)(参議院送付)
 残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約の締結について承認を求めるの件(条約第八号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――
吉田委員長 これより会議を開きます。
 刑を言い渡された者の移送に関する条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 この際、お諮りをいたします。
 本件審査のため、本日、会計検査院事務総局第一局長石野秀世君の出席を求め、説明を聴取し、また、政府参考人として外務省大臣官房審議官佐藤重和君、林景一君、領事移住部長小野正昭君、総合外交政策局軍備管理・科学審議官宮本雄二君、北米局長藤崎一郎君、欧州局長齋藤泰雄君、防衛施設庁建設部長中矢信之君、法務省矯正局長鶴田六郎君の出席を求め、それぞれ説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
吉田委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。最初に、中本太衛君。
中本委員 おはようございます。自由民主党の中本太衛でございます。
 本日は、刑を言い渡された者の移送に関する条約について質問させていただきます。
 刑を言い渡された者というのは、つまり犯罪者なわけでございます。国際的な犯罪、また凶暴な犯罪が増加する中で、あえて犯罪者に優遇を与えるような、このような条約を今なぜ締結しなければならないのか、その理由と意義をまず最初に教えてください。
小野政府参考人 お答えいたします。
 先生御案内のように、近年、日本人の海外渡航者数、それから来日する外国人の数が急増しているわけでございますが、こういう背景の中で、海外において刑に服している邦人受刑者及び我が国において刑に服している外国人受刑者が非常に増加してきている傾向にあるわけでございます。
 その中で、この条約を我が国が締結するということでございますが、まず第一に、刑事法の分野における国際協力の発展に貢献するという点がございます。それから第二点目として、そうした受刑者が母国において刑に服する機会を与えるということを通じて、これらの受刑者の改善更生、それから円滑な社会復帰を促進するという観点から、本条約を締結することは極めて有意義であるというふうに考えておる次第でございます。
中本委員 現実的な面から見れば、日本において今服役している外国人の受刑者の多くは、中国人を初めとするアジア人であります。しかしながら、その出身国の多くはこの条約の締約国にはなっておりません。日本にとりまして、せっかくこの条約を締結するのですから、これらの国々の条約への加入が重要だと私は思います。果たして、今後、これらの国の多くの加入が見込めるのか、また加入するように働きかけをしていくことができるのであろうか、これをお聞かせください。
小野政府参考人 先生御指摘のとおり、我が国の外国人受刑者のうち多数を占めるのはアジア人でございます。来日外国人数で見ますと、中国人、イラン人、それからブラジル人の順でございますが、これらの者を母国において服役させるために移送するということは、これらの外国人受刑者の改善更生と円滑な社会復帰を促進するとの観点から大変望ましいことであるというふうに考えております。
 他方、欧州評議会非加盟国によるこの条約への加入に当たりましては、欧州評議会閣僚委員会の決定に基づきまして、欧州評議会が当該国に対する加入の要請を行う必要があるという事情がございます。中国を初めとするアジア諸国の加入につきましては、欧州評議会において具体的な加入の動きは現在ないというふうに承知しております。
 他方、我が国といたしまして、欧州評議会閣僚委員会の決定に直接参加することはできませんけれども、これらの国が加入希望を表明し、我が国としてこれらの国がこの条約に加入することが適当であると判断される場合には、欧州評議会の加盟国に対して、これらの国を加入させるように働きかけていくことも排除されないということでございます。
 いずれにいたしましても、我が国としましては、受刑者移送の実績を積んだ上で、我が国において服役しているアジア人受刑者の扱いにつき検討していくのが適当と考えている次第でございます。
中本委員 少し疑問点をお聞かせ願いたいと思います。
 まず、締約国各国の刑そのものの重さの違いがあると思います。国によりましては、終身刑や懲役百年、二百年だとかの刑がございます。一方、日本では、受入移送を行うに当たりましては二十年が最長でございます。例えば、外国だと重かった刑が日本に移送したら刑が軽くなる、そんなことがあったりしたら裁判国の同意を得ることは難しいと考えられますが、どのように処理していかれるのか。また、特赦、恩赦、そういった制度はどのようにかかわっていくのか。そういった点をお聞かせください。
小野政府参考人 お答えいたします。
 確かに御指摘のとおり、事例によりましては、この条約の締約国間で、同じ犯罪について刑期が大きく異なるという場合があり得るわけでございます。このような場合であっても、我が国として移送を行うことが相当であると判断し、移送を行うこととする場合には、原則として裁判国の刑を継続するということになるわけでございます。
 ただし、条約の第十条二というのは、「刑の性質若しくは期間が自国の法令に適合しない場合又は自国の法令が要求する場合には、」「当該刑による制裁を同一の犯罪行為について自国の法令が規定する刑罰又は措置に合わせることができる。」というふうに規定されているわけでございます。
 この規定を受けまして、本条約の担保法である国際受刑者移送法は、裁判国において二十年を超える有期の拘禁刑の判決を仮に受けましても、我が国においては二十年を限度として執行の共助を行うということになるわけでございます。
 送出移送の場合には、送出移送の実施前に、執行国との間で、執行国における刑の執行共助期間あるいは態様等についても十分協議を重ねまして、また執行国の恩赦、仮出獄等に関する法令を調査するなどした上で、法務大臣におきまして当該送出移送が相当かどうかを慎重に判断し、我が国の裁判所が言い渡した刑罰の執行が実質的に担保されるよう十分留意されるものと理解している次第でございます。
 また、刑の執行につきましては、条約の第九条三でございますが、執行国の法令により規律されると定めているところ、裁判国が執行国に対し刑の増減を申し入れるということは想定されていないということでございます。
 いずれにいたしましても、この条約に基づく移送は受刑者本人の同意がなければ実施されないということとなっておりますので、受刑者の意に反する移送が行われるということはないというふうに承知しております。
 以上でございます。
中本委員 特赦、恩赦の件でちょっと難しかったんですけれども、簡単に説明していただけますでしょうか。
小野政府参考人 先生の御質問の御趣旨が、移送された受刑者について、大赦ですとか特赦ですとかそういうものが行われるのかという御質問だと思うんですが、恩赦につきましては、裁判国及び執行国の双方がこれを認めることができるという規定になっているわけでございます。また、裁判国のみが判決に対する再審の請求について決定する権利を有するということでもございます。
 ただ、実際に、欧州諸国を中心として、締約国の間で恩赦が過去に認められてきたかという点がございますが、これは我が方で調査した結果でございますが、主要国につき、基本的には実例がないとした国が大半でございます。
中本委員 次に、犯罪に対する意識、また犯罪そのものの刑の重さが、各国によって違うと思います。
 私は、今から二十数年前になりますけれども、「ミッドナイト・エクスプレス」という映画を見たことがあります。その映画の内容は、トルコでアメリカの若者が麻薬所持をして逮捕されてしまいました。トルコは麻薬は重罪のため、禁錮刑三年半の実刑を科せられてしまいました。アメリカ国内の感覚で、軽い気持ちで麻薬を所持していたのに、監獄内では看守からひどい仕打ちを受け続けていましたけれども、ひたすら出所を待ち続けておりました。しかしながら、出所が近づいたとき、トルコとアメリカの関係が悪化し、政治的な意図もあり、突如、刑期が三十年に延長される事態になってしまいました。アメリカに残してきた家族や恋人が忘れられないために、ついに脱獄をはかるという映画でしたが、これは、事実をもとにしてつくられた映画だそうでございます。
 例えば、日本であれば、麻薬所持は懲役二年から二十年、執行猶予もつくかもしれないということでございます。このような問題が起きたときは、日本はどのように対処をするのでしょうか。刑の軽減や増大を申し入れたりすることは可能なのか、お教えください。
小野政府参考人 お答えいたします。
 ただいまの、突然刑期が、例えば三十年に延期されるというようなお話でございますが、これは先ほどの答弁の繰り返しになるわけでございますけれども、原則として裁判国の刑を継続するという点はございますけれども、やはり、それぞれの送出移送の場合には、実施前に執行国との間で、執行国における刑の執行共助期間、態様等について十分協議を重ねて、調査した上で、我が国の裁判所が言い渡した刑罰の執行が実質的に担保されるよう十分留意するということでございます。
 それから、裁判国が執行国に対し刑の増減を申し入れるということは想定されていないということでございます。
林政府参考人 法的な部分について補足させていただきます。
 この条約の十一条の一項のdというところに、刑を言い渡された者の制裁の状態をより重いものとしてはならないというのが、基本的な考え方として書いてございます。したがいまして、今先生の御指摘の事例は、我が国から送り出された人間、受刑者の相手国における取り扱いの場合に、突然その刑が延長されてしまうといったようなことは、この受刑者移送の枠組みに関する限り起こり得ないものということでございます。
 それとは別に、受刑者の移送の枠組みとは無関係なところにおいて、あるいはそもそもこの締約国でないようなところにおいて、突然恣意的に、いろいろな形での量刑というものがなされるというような話でございましたら、これは、この条約の枠組みの話とは別に、むしろ、例えば邦人の保護であるとか、そういった観点から取り組むべき問題ではないかというふうに思います。
中本委員 これは大臣にお聞きしたいんですけれども、いろいろ説明がございましたけれども、例えば、この受刑者の移送をするから、ほかの案件で外交的な取引を有利にやってくれないかだとか、私はそういった政治的取引に使われるような気がしてならないんですけれども、御所見をお聞かせください。
川口国務大臣 この条約の目的は、共助ということであるわけです。条約が、刑の執行について、それを目的として作成されているということですから、この条約がその趣旨にのっとって運用されるということが締約国の共通の利益であるわけでございますね。
 ですから、そういうことを考えれば、これを取引の材料に使うということについては共通の利益にならないということですから、そういう方向にはならないんではないかと考えています。
中本委員 次に、この締結に対して、ちょっと不安な点が何点かありますので申し上げたいと思います。
 一点目は、先ほど申し上げましたとおり、国によって犯罪の刑の重さが違うわけでございます。世界の国々が国際化して犯罪も国際化しておりまして、国際的な犯罪組織も横行しているようでございます。
 そこで、例えば、犯罪の刑の重さの違いによりまして、この犯罪はこの国が刑が軽いからこの国でやりましょう、この犯罪は自国ではちょっと刑が重過ぎるからほかの国の方でやった方がいいんじゃないか、そういった犯罪組織が横行するんではないか、そのような心配があります。そのような問題に対してどのようにお考えか、それに対しての対処はどのようになっているのか、お教えください。
小野政府参考人 お答えいたします。
 委員御指摘のように、グローバル化の進展に伴いまして犯罪の国際化が進展しているわけでございますが、委員の御質問は、一般論としてはそのとおり、よくわかるわけでございます。
 確かに、理論的には、犯罪組織が各国ごとの量刑の違いということに着目して、特定の国を選んで犯罪を犯すということも考えられないわけではないわけでございますが、犯罪組織が特定の犯罪を実行するに当たりましては、そういう視点以外にも、収益の大きさ等々、種々の要素を考慮に入れて犯罪を行うということだろうと考えられます。そういう点からいいますと、犯罪が発覚して有罪を言い渡された場合の刑期が長いとか短いということで、これにどの程度影響を与えるのかは一概には申し上げられないというふうに思います。
 いずれにいたしましても、我が国としては、犯罪組織による国際的な犯罪活動を取り締まるために、各国との協力を進めてまいりたいというように考えております。
中本委員 そして、最も危惧いたしますのは、政治犯の移送でございます。
 外国で逮捕されたテロリスト、また赤軍の方々が日本に移送されることになったとしたら、日本において、その犯罪者の奪還を行うために新たなテロ行為が行われる危険性がふえてくるのではないか、この日本でふえてくるのではないか、そういった危惧があります。このことに関して、いかがお考えか。テロと闘う男、闘う政務官、水野政務官、ひとつ御所見をお願いいたします。
水野大臣政務官 我が国は、テロとの闘いをみずからの問題としてとらえて、国際社会と連携をしつつ、この問題に主体的そして積極的に取り組んでいく考えでございます。
 このいわゆる受刑者移送条約に基づいて、海外で服役する日本人受刑者を我が国に受け入れるためには、受刑者及び両国の同意が必要であり、我が国としては、移送が受刑者の改善更生とか社会復帰に資するかなど総合的に考慮の上、個別の事案ごとに、第一義的には法務大臣が判断をいたしますので、テロを惹起するようなおそれがあるんじゃないかとか、そういうことがあるとすれば、それは個別の事案ごとに判断をしていくということになると思います。
中本委員 もっと政務官には長々話していただきたかったんですけれども。
 受刑者移送条約と比較した場合、日米地位協定の改定、これは、不平等な点を平等にするといった点では、より先にやらなければいけないことだと私は思います。地位協定の十七条の被疑者の起訴前の身柄の引き渡し、十八条の請求権に関して言えば、今回の条約よりもより妥当性があると私は考えます。
 もちろんアメリカはこの条約の締約国になっているわけでございますから、もっと容易に地位協定の改定に取り組んでも構わないと私は思います。なぜなかなか進展しないのか、お聞かせください。
水野大臣政務官 地位協定の改定については、この委員会でもたびたび大臣が御答弁されていらっしゃるように、まずは運用の改善に努めていく、そして、それによって機敏に対応していくということこそ合理的であるというふうに考えております。
 ただ、これが運用の改善では十分効果的でないということがあれば、これは相手国のあることですから、我が国のみで決定できることではありませんけれども、日米の協議の中で改正ということも視野には入れていかなきゃいけないのかな、そういうふうには考えております。
中本委員 ぜひとも前向きに考えていただきたいと思います。
 これで、刑を言い渡された者の移送に関する条約の方は質問を終わらせていただきますけれども、最後の方で、外務省改革に関して質問させていただきたいと思います。
 外務省を変える会の最終報告も近々発表されるという話を聞いておるわけでございますが、政務官、外務省の事務方の最終ポストの役職は事務次官だと私は思いますが、実際、次官が最高指揮権を持って機能しているのかどうか、これがちょっと見えにくい状況でありますために、政務官にお聞かせ願いたいと思います。
水野大臣政務官 事務次官は、国家行政組織法の第十八条第二項に基づいて、大臣を助けて省務を整理し、各部局及び機関の事務を監督することになっておりまして、事務方のトップという形になるようになっております。
 ただ、恐らく今御批判とかがいろいろ出ておりますのは、事務次官をやった人間とかが大使とかになるケースが多いものですから、そうすると事務次官が事実上の最終ポストじゃないんじゃないかというような御批判はかなりございます。
 外務省を変える会というところで今外務省改革を検討しておりますけれども、ここも二十二日に最終報告という形のものを出すのですが、この外務省を変える会の中でも、事務次官を事実上の最終ポストにすべきだという意見はかなり強くございます。つまり、事務次官をやった後に大使をやるというような形はおかしいんじゃないか、そういうような議論はいろいろございます。
 いずれにいたしましても、そういうような議論を踏まえて二十二日に最終報告が出ますし、その後、外務省としては、この報告をより具体化していくための行動計画みたいなものを省内的につくっていくわけですから、そういう中でこうした問題も、委員の今の御質問を踏まえながら十分に検討していきたい、そういうふうに考えております。
中本委員 政務官がおっしゃったとおり、次官を終わった方が、まだ外務省の中の組織である大使館の大使をやるというのはちょっとおかしいのかな、また、権限を持たれるのはおかしいのかなと思います。これでは、組織内天下りと言われても仕方のないことだと思います。
 もし大使にさまざまな経験が必要というのであれば、民間から採用してもいいと私は思いますし、本当に外交のできる人事が大切だと思います。
 また、次官の退職年齢を上げろという話も一説には出ているようですけれども、それは余りにも外務省に優遇し過ぎなのかな、そういった感じもいたしておりますが、改革の意思が本当にあるのかどうか、政務官にお聞かせを願いたいと思います。
水野大臣政務官 実を言うと、今も法律上は、事務次官は、先ほど申し上げたように、国家行政組織法の第十八条の第二項に基づいて職務を遂行している、一方、在外公館長は、外務省設置法の第九条第三項に基づいて、大臣の命を受けて在外公館の事務を統括しているというように、両者の持ち場が明確に異なっているわけですから、現在のところも、在外の大使に事務次官より年次の上の者がいるからといって、外務省の士気、体制に悪影響が及ぶというふうには直接的には考えているわけじゃないんですが、しかし、そういう御批判が強いというのもこれまた事実ですし、改めるべき点は改めていかなきゃいけない、そういう改革は具体化していかなきゃいけないというふうに思っております。
 また、委員おっしゃられたように、民間人の登用というようなことも今、川口大臣のもとで積極的に進めておるところでございます。
中本委員 若き政務官、ぜひともよろしくお願いいたします。
 さて、最後に大臣に質問がございます。残り、多分三分ぐらいだと思いますので、そこで終わらせていただきたいと思います。
 大臣は、アフリカへの訪問を希望されているというお話を私は聞きました。現職の外務大臣がアフリカへ行かれることはめったにないわけでございますが、なぜ今アフリカに行かれるのか、アフリカの現状をどのように認識されているのか。さらには、日本はアフリカに支援を行ってきておりますが、それを続ける意義があるのかどうか。今後のアフリカに対する取り組みへの意思をお聞かせください。
川口国務大臣 アフリカを何とかしなければいけないというのは、今世界の各国の思いだと思います。
 なぜかといいますと、アフリカには世界の国の数の約四分の一が集まっている、所得も低く、感染症もかなりありまして、さらに、紛争が多発している地域でもあります。この地域が、開発が進んで、平和的に発展をしていくということがないと、世界全体として二十一世紀不安定に、世界全体の不安定要因であるということが、今アフリカについての考え方であると私は思います。
 我が国は、アフリカについてはかなり前から取り組みを行っています。TICADというプロセスがありますけれども、これは一九九三年に第一回をやりまして、そして来年の後半に第三回を開くということを考えておりまして、相当に取り組みについては長い歴史を持っています。
 小泉総理が先般、G8のサミットの直前に、日本のアフリカとの連帯というアフリカ支援の具体策を出されたわけでございまして、我が国のアフリカ問題に継続的に取り組んでいこうという姿勢は、この連帯という具体策の中で明確になっていると思います。
 我が国以外の国も、G8のサミット、ことしはカナナスキスで一つの大きなテーマがアフリカでございました。そして、そこでは、G8としてアフリカ行動計画を採択したということです。
 これは、アフリカ自身の取り組みであるNEPAD、アフリカの開発のための新パートナーシップというものにこたえる形で、G8としてどういうふうにこれに対応していくかという支援の意思をあらわしたプログラムであるわけでして、我が国が九三年以降TICADというプロセスで訴えてきたことと同じ方向を向いたものであるということだと思います。
 私は、こうしたアフリカの、これからの世界の安定におけるアフリカ問題の重要性、そして日本の長い取り組み、そして、グローバルな問題としてこれに取り組もうという世界の国々の姿勢、こうしたものを背景に、我が国としてアフリカ問題に引き続き取り組んでいくことが重要だと考えている、そういう姿勢をあらわしたいと思います。
 八月の終わりからヨハネスブルクでサミットがございましてアフリカに参りますので、その折に幾つかのアフリカの国を訪問したいと思っています。
中本委員 終わります。ありがとうございました。
吉田委員長 次に、木下厚君。
木下委員 民主党の木下厚でございます。きょうは、受刑者移送条約について二点ほど質問させていただきます。
 欧州評議会における本条約の起草に関しては、犯罪の国際化を背景に、犯罪者の更生、社会復帰のためには、判決を下した国において刑の執行を受けるよりも、その母国において執行されることが望ましい、そういう考え方に基づくものと、それともう一つ、言語等の障壁による外国人受刑者への悪影響を避けるという、いわば人道的配慮に基づき行われたと理解しております。
 しかし、欧州諸国が受刑者移送制度を導入した背景には、外国人受刑者の増大によるいわゆる過剰拘禁の緩和という一面があり、また、アメリカ、イギリスについては、受刑者の処遇問題で、外国で受刑する自国民の保護の必要性が主要な背景であったとも言われています。
 我が国が受刑者移送制度を導入するに当たり、国内の外国人受刑者の過剰拘禁の問題と、海外で受刑する日本国民の保護の問題について、大臣は、あるいは政府はどのように認識しておられるのか、お伺いしたいと思います。
小野政府参考人 お答えいたします。
 委員御指摘のとおり、この条約の趣旨というのは、基本的には、当該受刑者の改善更生と円滑な社会復帰を促進するということで、欧州評議会を中心としてこの条約が成立したわけでございますが、確かに我が国におきましては、受刑者移送制度の導入というのは外国人受刑者の過剰拘禁の緩和という問題とも絡んでいるということではございます。ただ、この受刑者移送条約というそもそもの趣旨というのは、外国人の受刑者の過剰拘禁の緩和を目的とするものではないということでございます。
 現に、法務省によりますと、我が国で受刑している外国人の総数というのは、平成十三年末で三千五百五十七人、そのうち条約締約国の国籍を有する者の数が百五十二人ということでございまして、受刑者移送を実施することによって現在の日本国内における受刑者数が大幅に減るということではないわけでございます。
 しかしながら、今後、条約の加入国がふえていけば、受刑者移送の対象となる外国人受刑者が増加するということも予想されるわけですから、長期的に見れば過剰拘禁の緩和に一定の効果があるというふうに考えているわけでございます。
 それから、第二点目の自国民の保護の問題でございますが、これは極めて重要であるというふうに考えておりまして、例えば、日本人が海外において逮捕、拘禁された場合には、在外公館におきましては、直ちに現地官憲に事実関係を確認して本人への面会を求め、それから、本人から差し入れ等の希望あるいは弁護士の必要の有無等を聴取して、それからまた、関係当局による取り扱いの状況ですとか本人の健康状況を把握して、邦人保護の観点から適切な措置を講じてきているということでございます。
 受刑者移送の制度が今回導入されることになれば、我が国での服役を希望する受刑者の要望にもこたえ得るということになって、意義深いことだというふうに考えている次第でございます。
木下委員 今、平成十三年度末で外国人受刑者三千五百五十七人のうち締結国百五十二人ということですが、アメリカ、カナダ、フランスあるいはトルコなどは、多数国間条約である本受刑者移送条約のほかに多くの二国間条約を締結していると思いますが、我が国においては、多数国間条約である本条約が受刑者移送制度を定める初めての条約になっていると思います。
 今後の国際関係の進展や、あるいは世界的な国際犯罪の増加傾向を見ると、本条約締結国以外の国との間での受刑者の移送についても検討する必要があるのではないかと思われますが、本条約のほかに、いわば二国間での受刑者移送条約を締結する必要についてはどのようにお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。
小野政府参考人 先生御指摘のように、米、加あるいはフランスなどは、多数国間条約以外にも多くの二国間条約を締結しているという事実はございます。
 一般論といたしましては、外国人受刑者をその母国において服役させるために移送するということが、受刑者の改善更生と円滑な社会復帰を促進するという点から大変望ましいというふうに考えております。
 他方で、我が国といたしましては、これまで受刑者の移送に係る実績がないということでございまして、今般この条約の締結に伴いまして、刑の執行の分野における司法共助の体制が整備されていくということでございます。今後の受刑者移送の実績ですとか成果等を見きわめながら、この条約の非締約国出身の外国人受刑者の扱いについても対応を検討することが適当であろうというふうに考えている次第でございます。
 そのような検討において、二国間の受刑者移送条約を締結することも選択肢の一つとしてあり得るということでございますが、司法分野における法体系の異なる国との間でこうした条約を締結することは種々困難が伴うということも予想されるわけでございまして、個別に十分な検討を行っていく必要があるというふうに考えております。
木下委員 それでは次に、外務省のいわゆるODA担当局長の人事について大臣にお伺いします。
 あえて外務省のODA担当局長に経済産業省の古田肇商務流通審議官を起用する、この人事の意図とねらい、これはさきの外務委員会でも恐らくあったと思うんですが、あえて経済産業省からODA担当局長を起用するというその理由を国民の皆さんに明確にわかるように説明していただきたいと思います。
川口国務大臣 まず最初にお断り申し上げたいんですけれども、個別人事につきましては、これはしかるべき手続を経て正式なものになっていくわけでございまして、まさに人事権を持っている人間がそうした手続を経ないである個別の人事について申し上げるということはできないので、これについて、個別のことについては恐縮ですがお答えできないんです。ですから、あえて一般論という形で申し上げたいと思います。
 私は、人事の交流についてはいろいろな考え方があると思いますけれども、同じ政策についていろいろな省庁がかかわっている場合に、省の間の壁というのは非常に大きな問題だと思っています。民間企業におりまして、日本の将来ということを考えたときに、各省の間の壁を超えて、日本の国益という立場からある政策を考えるということは非常に重要なことだと私はずっと思ってまいりました。そういう観点からいいますと、日本にとって非常に重要な政策について、その政策を幾つかの複数の省庁で担当している場合に、その政策の担当をしている担当者を相互に乗り入れてみるというのは非常に意味があることだと私はずっと思っております。
 それから、また別な観点といたしまして、外務省については、これは改革をやる、意識改革を行うということを言ってきているわけでして、その中で、もうこれは既に発表いたしましたけれども、夏くらいまでに十人を目途に、外務省の局長、審議官等の本省の幹部、そして大使に外務省以外の人間を登用する、民間の人もありますし他省の人もいますが、ということを発表いたしておりまして、既にこれで六人登用をいたしました。それも引き続き重要なことだと私は思っています。
 それから、経済協力の改革ということは、これも国民の皆様の期待であり、ぜひやってほしいと思っていることである。そういう改革を新しい目で見て進めるということも大事だと思っています。
 外務省は、先般、十五の改革ということを発表させていただきまして、それを進めてきております。それを進めるに当たって、新しい感覚というのも意味があると私は考えております。
 以上です。
木下委員 これまでのODAといいますと円借款が非常に多かったわけですが、円借款というと、契約先を日本企業に限定した、いわばひもつき発注がほとんどだったわけですね。いわゆる被援助国支援という観点よりも、むしろ日本企業の営利を守るというか優先するというような形でのODAがどちらかというと多かったわけです。
 ところが、今回、経済産業省から局長ということであれば、従来、経済産業省といえば、いわば日本の企業の育成、繁栄、発展ということが中心だったわけですので、下手をすると、これはまた、むしろ今まで以上にODAが企業優先になるおそれがあるのではないかという危惧があるわけなんですが、この辺は、大臣はどのようにお考えでございますか。
川口国務大臣 日本の企業が日本の円借についてこの受益者になるという、タイドであるかアンタイドであるかということについては相当国際的には長い議論がありまして、アンタイドであるべきだという方向に今進んでいるわけでございまして、日本はこの分野ではどちらかといえば優等生でございまして、私の記憶では恐らく七割ぐらいがアンタイドになっていると思います。
 これについては今までいろいろな方から御議論があって、日本の国益に、あるいは日本の産業の利益にもっとつながるべきであるという御意見も一方でございますし、他方で、もっとこの七割の比率を上げるべきであるということをおっしゃっている方もいらっしゃる、これはさまざまな意見があると思います。
 いずれにいたしましても、私は、他省あるいは民間の方から外務省に人材を登用するつもりでおりますけれども、今後ともそのつもりでおりますけれども、これをやるときの前提は、当然、来ていただいた方が外務省の人間として日本の国益にかなった行動をする、そういった発想で政策を企画、立案、実施していくということが大事である。これは国家公務員としての基本的な心がけであると私は思っておりますし、そういうことができない人間を外務省に登用するつもりはございません。
木下委員 今回の人事について川口大臣は、七月十六日の記者会見で、省益とかに矮小化して考える話ではない、ODAに関する非常に構想の大きい話だ、こう述べておられますが、構想の大きい話とは、今マスコミ報道などで伝えられているいわゆる国際援助庁、ODA庁、こういった構想があるということでございますか。
川口国務大臣 これも一般論として申し上げたいと思います。
 その記者会見のときにも私は申し上げさせていただきましたけれども、今、いろいろ言われているような援助庁構想ということに関連しては、これは国会で何回か御答弁させていただきましたけれども、私どもとしては、援助というのは、経済協力というのは、まさに軍事力を持たない国家の外交の重要な手段であるという観点から、外務省で今までのように行われていくというのが適切であると考えております。
 先ほど申しましたように、日本の国にとって非常に重要な政策課題、これを省の壁を超えて考えることができるようにするということが非常に大事なことだと私は思っております。そして、これも一般論として申し上げておりますけれども、そういった観点で、ある一つの政策が幾つかの省にまたがって行われている場合に、異なる省にお互いに乗り入れて、その政策を違う立場から考えてみるということは、大変に国益にかなったことであるというのが私の考えでございます。
木下委員 今大臣が、軍事力を持たない日本の有効な外交政策であるというお話であったんですが、川口大臣は十七日の外務委員会で、ODAについて、改革にのっとった上で金額がふえていくことが大事だと述べて、効率性や透明性の確保を条件にODAを増額すべきだという考えを語っておられます。しかし、ODAは、小泉首相のいわゆる財政緊縮路線のもと、二〇〇二年度予算で前年度比一〇%減、そして二〇〇三年度についても、経済財政諮問会議が六月にまとめた経済財政運営と構造改革に関する基本方針で事実上の減額方針が示されています。
 小泉首相と川口外相の間にODAをめぐって不一致があるんじゃないですか。その点は、小泉さんのお考え、あるいは経済財政諮問会議の提言というのをどうとらえていますか。
川口国務大臣 私は、今、ほかの国が援助疲れを卒業しまして援助をふやそうとしているということは非常に意味のあることだと思っています。例えば、アメリカは今後三年間に五十億ドル援助をふやすということを、この間の三月のモントレーの会議でブッシュ大統領がみずから言っているわけでございまして、これをアメリカが実施し、我が国の援助が変わらない、ずっと一定でいくというふうに仮定をしますと、二〇〇六年には日本の援助はアメリカの半分になるという計算ができるわけでございます。
 他方で、我が国としては、経済あるいは財政が非常に厳しい状況にあるわけでございまして、こうした制約のもとで我が国の経済協力政策というのは考えていかなければならないというのも、これも事実であると思います。
 そのためには、必ず行わなければいけないこととして、ODAを改革し、重点化を進め、透明化を増し、効率的に使っていく、これは非常に大事であると思います。そして、そういったことができたということを前提に、軍事のない国家としての我が国の経済協力は将来ふえていくということは必要であると私は考えているということでございます。
 委員が先ほどおっしゃった来年度の予算についての経済協力の考え方、これは見直すということになっているわけでございまして、当然、政府の一員として、そういった方針に基づいて現在ODAの改革を進めているわけでございますし、トータルの予算というのは、これからの議論の中でそういった方針にのっとって決まっていくということになると思います。
木下委員 私自身もODAについては、発展途上国その他に対しての非常に有効な外交政策だと思います。しかし、再三指摘されているように、対中国ODAを含め、非常に効率的ではない、不透明なものである。
 その上にさらに、これは私も再三指摘してきましたが、例えば北方四島支援委員会のような形で、いわゆる国際機関としてさらにロシアに支援する。あるいは、先般私が指摘しました日露核兵器廃棄協力委員会。九三年に東京で開かれた主要七カ国閣僚会議で、ロシアへの人道支援の一環として、日露核兵器廃棄協力委員会、それから日本とベラルーシ核不拡散協力委員会、日本とウクライナ核兵器廃棄協力委員会、それから日本とカザフスタン核兵器廃棄協力委員会、この四つの国際委員会があるんですが、これも、実にこれまでに約二百五十億円を投入しながら、実質的に未執行のお金が百五十八億円あるということを指摘しました。
 これについて、これは見直す、あるいはその委員会をなくするというような方向でこの前御答弁いただいたんですが、ここへ来てまた新たに、六月末の主要国首脳会議、いわゆるカナナスキス・サミットで、アメリカのブッシュ大統領の主導で、ロシアの大量破壊兵器廃棄に対して最大二百億ドル、そのうち日本に相当額、二億ドル程度ですか、あるいはもっとそれ以上の供与をせよということを要請されているわけなんですが、日本でつくった日露核兵器廃棄協力委員会がうまくいかない、失敗した、しかも百五十八億も未執行である、その上にさらにまた、アメリカに言われるままに二億ドル拠出する、その意図というのを、大臣、どんなふうにお考えでございますか。
宮本政府参考人 今回合意されましたロシアの大量破壊兵器廃棄に関する重要性は、委員も十分御承知のことですので、繰り返しません。そういう大事なものを、さらに国際社会として協力すべきであるということで、G8グローバルパートナーシップが決定されたわけでございます。
 そこで、私どもとしては、当面二億ドルぐらいを貢献しようかなと思っておりますが、その前提がございます。
 一つは、G8の首脳が合意しましたG8グローバルパートナーシップ協力事業に関する指針、ガイドラインというのがございます。そこで、これは基本的にロシアでございますが、ロシアが何を守らなきゃいけないか、すなわち、十分なアクセスを認めるとか、損害賠償はちゃんとやりますとか、それから何よりも、ロシアが義務及び必要な事項の実施に第一義的に責任を有する、こういうことをG8の首脳レベルで、基本的にはロシアの責任で、ロシアが十分協力することが必要でございますということを決めた指針ができました。それが、私どもが貢献しようとすることができるようになった一つの理由でございます。
 それから二つ目に、私どもがこれを貢献しようとしたときには、今後ロシアがどういう協力姿勢を示すのか、すなわち、これまで実施上の諸困難があるわけでございますから、それについて解決することをロシア側が十分我々に納得させるということがない限り、この先は進めないなというふうに思っております。
 したがいまして、二億ドルのうちの一億ドルにつきましては、これは来年もしくはちょっとおくれるかもしれませんが、G8が新しく、余剰プルトニウム処分の問題につきまして国際機関を設立することを今検討中でございます。したがいまして、二億ドルのうちの一億ドルは、この新しい国際機関に直接拠出することを考えておりまして、既存の協力委員会を経由させるつもりはございません。
 残りの一億ドルは、今協力委員会が持っているわけでございますが、今回総理にお約束していただいたのは、これは引き続きサミットで合意したそういう目的に使いましょうということでございまして、それをどういう形で使うか使わないかは、今私ども、この非核化協力委員会のことで本当に真剣に抜本的に見直しをやっておりまして、その見直しをやった結果を踏まえて、いずれ近いうちにロシア側とも、これは日ロでつくった組織でございますので、ロシア側と相談する必要がございますが、そういうことの中で解決していきたいというふうに思っております。
 そういう状況でございます。
木下委員 日露核兵器廃棄協力委員会、この調査のために会計検査院の調査官が六月末にロシアを訪問したという新聞報道がありましたけれども、それは事実でございますか。
石野会計検査院当局者 支援委員会への拠出金を初めとしまして、他の一部の拠出金につきましてもさまざまな問題点が指摘されているところでございまして、本院としても関心を持って検査を進めているというところでございます。
 ただ、核兵器協力委員会に関しましても今お話しのような報道があったということは十分承知しておりますけれども、どのような拠出金を対象にしてどういう検査を行っているかというのは、まさに今検査進行中のことでございますので、具体的には申し上げられないということで御了解いただきたいと思います。
木下委員 しかし、今まで、国際委員会は会計検査院の検査の外にある、及ばない、対象外というはずだったんですが、あえてロシアまで調査に行ったことは事実ですね。この問題で調査に行ったことは事実ですか。
石野会計検査院当局者 今申し上げましたとおり、拠出金につきましては関心を持って検査を進めているというところでございますが、まさに検査の途中ということでございますので、具体的にどこへ行った、あるいは行かなかったということについては答弁を差し控えさせていただきたいというふうに思います。
木下委員 いや、そんな、調査に行ったか行かないかぐらいは言ってくださいよ。ロシアへ調査に行ったんですか、この問題で。行ったか行かなかったかぐらいははっきり答弁してくださいよ。中身は私聞いていませんよ、行ったか行かなかったかだけちょっと言ってください。
石野会計検査院当局者 申しわけございません。どこへ行くかということにつきましても、まさに検査の具体的な中身に直結する問題ということでございますので、検査を十分に行うという観点から、個々具体的な話は申し上げられないということで御了解いただきたいと思います。
木下委員 いや、そんな答弁じゃ納得できないですよ。行ったか行かないか、なぜ答えられないんですか。具体的じゃないじゃないですか。答えてくださいよ、行ったか行かないか。
吉田委員長 行ったか行かないかの話ですから、答弁願います。
木下委員 イエスかノーで答えてください。
石野会計検査院当局者 検査の特殊性ということをぜひとも御理解いただきたいんですが、まさに本年やっている検査の中身でございまして、同様の取り扱いは情報公開等でも、まさに当年度どういうところへ行っているかということについては申し上げられないということで、御理解いただきたいと思います。
木下委員 いや、それはおかしな話で、私は中身を聞いているんじゃないんです。行って何を調査したか、それはいいですよ。ロシアへ行って、この日ロの問題について事実かどうか調査をしています、調査しました、その結果、何もありませんでした、それならそれでいいんです。それは後で報告してもらえばいいんです。行ったか行かなかったぐらいはなぜ答えられないんですか。答えてください。
石野会計検査院当局者 出張箇所ということでございますと、そこを調べたということになるわけでございまして、その点について、じゃ、何を調べているのかということと密接な関連を持つということでございまして、当年度の分については、そういう状況でお話しできないということでございます。ただ、過年度の分については、終わったことでございますので、いろいろ行うということでやってきているところでございます。御了解いただきたいと思います。
木下委員 いや、これだけ、いわゆる未執行のお金が残って、不透明であると指摘しているわけですから、少なくとも、行ったか行かなかったか、疑惑があるんなら、やはりはっきり答えていただきたい。これは、委員長。
吉田委員長 理事会で協議します。
木下委員 よろしくお願いしたいと思います。
 そのほか、日中民間緑化協力委員会、これも問題がありますが、時間がありませんので、これについてはまた改めて質問させていただきます。
 以上で終わります。
吉田委員長 次に、首藤信彦君。
首藤委員 民主党の首藤信彦です。
 きょうは、受刑者移送条約ということでありまして、最初にその問題について幾つか質問させていただきます。
 大臣、これからアフリカへ行かれるということですが、御苦労さまです。アフリカに行かれたら、アフリカの刑務所もぜひ観察していただきたい。私も時々行くことはありますけれども、こんなところへ行くと、三年どころか三日ももたないなと。入り口からもう人間が立っていまして、入り口から奥まで全部人間が立っているというような刑務所がございます。
 何を言おうとしているかというと、この移送条約は、基本的には、同じぐらいのレベルで、生活水準のあるところで拘禁されている受刑者を移送するということだと思うんですが、同時に、今の世界においては、特に経済が非常に悪くなっていますから、極端に悪い、刑務所の非人間的な状況もたくさんございます。そういう状況に関して、やはりこれはある程度人道的なところに、刑務所に移していかなきゃいけないと思うんですが、もちろん、これはこの条約のスコープではありませんが、今後の展望としては、大臣、いかがでしょうか。そういう方向性も考えられるんでしょうか。
川口国務大臣 ちょっと質問の御趣旨がはっきりしなかったんですけれども、ということで、きちんと理解させていただいているかどうかわかりませんが、この条約のポイントというのは、外国で裁判を受けた結果、刑を科せられて、その外国で服役をしている受刑者、この社会復帰を図るために、その受刑者を母国、執行国と呼びますが、に移送して、母国で刑を受けさせるというところにあります。
 そして、これには幾つか条件がありまして、実施をするに当たっては、裁判国と執行国、母国ですね、それと受刑者の三者の同意が必要であるということでございます。したがいまして、そういった条件、その他にも条件はありますけれども、に従って、これが司法執行の共助という形で実施をされるということでございますから、もし私が委員の御質問をきちんと理解しているとしましたら、そういう問題はない、まさにこの条約はそういうことを担保しているということだと思います。
首藤委員 質問は、この条約の中身ではなくて、それはよく知っておりますから、これの次の段階としてどういうことが考えられるのか、この条約で目指したことからいくと、これを発展させていくとどういうことになるかということをお聞きしたわけです。
 時間がないので、また次の質問に移らせていただきますけれども、今は、日本とアフリカのように極端に生活水準が違うところでの状況ということを質問させていただいたんですが、同じぐらいの生活水準といっても、やはり国によって、かなり刑というのは個別具体的で土着性の強いものですね。
 最近非常に危惧しているのは、アメリカのような先進国で特にテロリストという表現になってしまいますと、これは二重、三重に加重されていくという傾向が、この十年ぐらいですか、非常に濃厚になってきているわけなんですね。
 何をお聞きしたいかというと、例えば、アメリカで、菊村憂という人物がおりました。これは日本赤軍の兵士だと言われていたんですね。この兵士が捕まった根拠に関しても、実は、アメリカで、クンスラーのような一流の弁護士が、その事件自体がおかしいということで随分社会問題となったんですが、その人は結局もう、日本赤軍の兵士だ、爆弾を持っていたということで、非常に重い刑罰を受けているわけですね。
 ですから、こういうアメリカのような状況、アメリカのようなところでも、これは確かに法律ではお互いに合意するというんですけれども、それには合意の呼びかけがなければいけないと思うんですね。ですから、このアメリカのように、そうしたテロリストというだけで何重も重加算されていくような国に対しては、日本は外交的にはどういうような形でそれを、大体均等である、したがって日本に移送してほしいというようなことを提言されますか、外務大臣。
川口国務大臣 法体系が国によって異なるということは、当然そういうことになっているわけでございます。
 そして、この条約におきましては、移送を実施するに当たっての幾つかの条件の一つとして、裁判国での犯罪行為が執行国の法令において犯罪になるということがあるわけでございまして、要するに、連れてくるときに犯罪が、ほぼ同じようなことをやったときに、それが自分の国でも犯罪になるとか、そういう条件があるわけでございます。そういった条件をきちんとクリアした上で移送をするということでございます。
首藤委員 外務大臣もお忙しいので、なかなか質問も理解していただけないと思いますけれども。
 それでは、次に、外務省を取り巻く一般的なさまざまな問題について質問をさせていただきます。
 これは私が何度も以前から申しておりますけれども、浅井和子ガーナ新大使の問題でございます。
 これに関しては、既に私は四度にわたって政府に対して質問主意書を出しておりますが、ほとんどまともな回答が返ってこない。要するに、もう全く外務省の秘密のベールに隠れてしまって、答えられません、答えられません、答えられません、答えられません、答えられません、最初から最後まで、答えられませんしか書いていないんですね。だからもう、外務大臣の進められてきた、開かれた外務省とか、国民に納得してもらうアカウンタビリティーの高い外務省と全く違うことしか出てこないんで、きょうは、あえてその問題について質問させていただきます。
 例えば、この浅井和子さんですが、一九八八年に直江浅井法律事務所を開設されたということになっております。ということは、浅井さんは弁護士でございますから、当然、弁護士事務所のパートナーだというふうに解しております。そうすると、これは当然のことながら、ここにそのままおられるとすると兼業義務違反になるんではないかなという気もするんですけれども、この直江浅井事務所はいつおやめになられたんでしょうか。
川口国務大臣 ちょっと今、日付は、手元に資料がありませんのでよくわかりませんが、いずれにしても、この浅井さんは、浅井大使は弁護士はとっくにやめられていらっしゃいますし、事務所のパートナーでもないということでございます。
首藤委員 それはありがとうございます。本当に助かりました。というのは、何度も政府に対して質問主意書を、これは本当に専業義務違反にならないかどうか、職業をおやめになられたのか、給料をもらっているところを全部辞退されたのかということで、幾つか顧問をやめられたという形で出ておりました、しかし、パートナーである直江浅井事務所をやめられたということは一切出てこなかったんですね。今、ともかくおやめになったということを外務大臣が明言されたので、専業義務違反はないんだな、そういうことが理解されたと思います。
 この浅井さんが、いろいろ許永中の関係した例えばコムソンの、仕手株の問題のあった会社に、そこで監査役としておられた。私は、このこと自体が大変な問題だと思うんですね。
 しかし、これはまた別の機会に追及をするとしまして、やはり本質的な問題、すなわち、わざわざ民間から人を、外務省の方も、ずっと大学のときもいい成績で、国際法も憲法もたくさん学ばれた方が、いろいろな経歴を積んで外務省で大使となっていくわけですね。そういう方と同じぐらいの力のある人が入ってこなければ、外務省改革になっていかないと思うんですね。
 そこで、これもしつこいわけですが、一体どういうメリットがあってこの浅井大使が任命されたのか。我々の知っているのは、むしろデメリットなものばかりですよね。ですから、そういうデメリットを超えても必ずこの人じゃなければいけない、例えば、弁護士でいえば中坊さんとかあるいは福祉問題をやっている堀田さんとか、そういう弁護士の方であれば、なるほど、さすがは外務省というふうに思うんですけれども、調査してもほとんど業績がない。データベースで引くと、むしろコムソンの問題とかそういう問題しか出てこない。一体、この方とほかの方とはどういう比較の中で、この方が突出してすばらしいとして選ばれたのか、そこを明らかにしていただきたいんですが、いかがでしょうか。
川口国務大臣 浅井大使は、国際経験が豊富な弁護士として活躍をされてこられただけではなくて、国際問題にも造詣が深い方で、また、外国語能力あるいは海外生活経験、こういったことにも照らしまして、我が国の大使として適任であるというふうに判断をされましたので、外務公務員法第八条に基づきまして、私が内閣に対してその旨を申し出をいたしまして、内閣が大使に任命をいたしたわけでございます。
 そして、浅井大使の駐ガーナ大使への起用につきましては、浅井大使のこれまでのアフリカとの個人的なかかわり合いに加えまして、アフリカ各国駐在大使の在任期間、離任時期なども勘案をいたしまして、総合的に判断をして決定したものでございます。
 浅井駐ガーナ大使任命に至るまでの選考過程や人選の基準につきましては、今まで委員から質問主意書をいただきまして、それに対する答弁書で繰り返し御説明をしていますとおり、いずれも個別の人事に関する事項でございまして、これ以上の詳細を公表することにつきましては、公正かつ円滑な人事の事務の遂行に支障を来すおそれがあることでございますので、答弁を差し控えさせていただきたいと考えております。
首藤委員 またきっちりお読みになったので、それはきれいな朗読で、私も聞きほれておりましたけれども、結局、何も個別的なことは言えないということですよね。
 それは違うんですよ。人事の透明性というのは、その人の余り個人的なことは言えないと言いますけれども、例えばアメリカでいえば、これは有名な例ですけれども、大統領の健康診断なんというのは、みんなが知る権利があるわけですよ。というのは、大統領を選んで、途中でいなくなっちゃうかもしれない。有名な話ですけれども、ルーズベルト大統領が高齢で批判された、もうこの人が大統領で出てくるのはおかしいというときに、大統領はちゃんと診断書を出して、さらに、私はセックスまでできる、こう書いたわけですよ。
 それぐらい、大統領の健康とか個人的なことまで実は公開しないと、公人として、ほかのメリットを押しのけて、外務省の中で育ってきた官僚を押しのけていくんだったら、それだけのメリットがなきゃいけない。そのメリットが何ですかということを何度も言っているんですが、先ほどおっしゃった、海外経験が豊かだ、英語もできます。では、英語はどれぐらいできるのか、TOEFLの成績を見せてください。海外経験がたくさんある。そんな対象だったら、五十万人、百万人いますよ、今の日本人は。その中で、なぜこの方がガーナ大使として選ばれていかなきゃいけないのか。
 これを言わなかったら、外務省改革なんてみんなうそじゃないですか。要するに、なれ合いで、縁故主義で上がってきたのか、そういうのでやったというだけでしかないじゃないですか。そこに、川口さんの改革が欺瞞だと国民が見ている。なぜ国民が、外務省改革、外務省改革とこんなにたくさん改革案が出てきて、だれも信じていないかというと、みんな欺瞞だということを思っているからなんですよね。
 では、先ほど前任者の任期とのことを考えていると言いましたけれども、前任者の新田さんですか、新田大使、普通は大使というと三年ぐらいおられますけれども、新田大使は一体ガーナでどれくらいおられましたか。
川口国務大臣 手元にデータがございませんので、調べたいと思います。
首藤委員 私が公開資料からお教えしますが、新田さんは一年半でおやめになりました。
 どういう理由でこんな重要な国の大使を一年半で、しかもこの浅井さんの任命に合わせて、一年半で何でやめられたんですか。それはどうしてですか。
川口国務大臣 個別の大使の在任の期間、これについては、さまざま幅がございます。それ以上に新田大使についての個人的な人事関連のことについては、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。
首藤委員 外務大臣、それは一〇〇%間違っていますよ。
 今の東郷さん、東郷大使のこととか、それからその前の小寺課長さんのこととか、要するに個別具体的なことがみんな問題なんですよ。個別具体的な問題がないなんといったら、外務省は何一つ問題がないじゃないですか。みんな問題があるのは個別具体的な問題なんですよ。それを国民の前に明らかにしなかったら、国民は、外務省はパッケージで怪しい、パッケージで隠ぺいだと思うしかないじゃないですか。
 ですから、外務大臣、本当に外務省改革を考えるなら、それはオープンにして、こういう問題がありました、こういう病根がありました、こういう病因がありました、ただしこれは除去しましたと言わないと、だれが信じますか。病院に入って、はい、あなたはいろいろ問題がありました、カルテがあるけれども見せません、あなたはいろいろ問題がありましたけれども、あなたは健康になって戻ってきましたよと。だれが信じますか。それはやはり、どこが悪い、どこを切除した、どこを検査して、どこをスキャンしたということがわからないと、できないじゃないですか。
 こんなばかみたいな茶番をやっていて、外務委員会が、国民の負託を受けている我々が外交をチェックする場が全く機能しないということをどういうふうにお考えなんですか。
 この問題に関して、ではもう一つ質問します。時間がだんだんなくなってくるので。
 今、アフリカ、アフリカとみんな主張しています。今まで問題があった、有名なミッテラン大統領のこんな言葉があるんですよ。アフリカはフランスの将来だ。これは、フランスがアフリカみたいになるということじゃないんですよ。要するに、アフリカを失ったら、汚い利権はあってもアフリカの利権を失ったら、フランスの将来はないということをミッテラン大統領は言っているんですよ。
 ですから、ミッテラン大統領はいろいろなことをやりまして、九四年のルワンダ虐殺もフランスではミッテランの犯罪と言われるぐらい、いろいろなことに関係していた。実は、ODAがフランスに還流しているという問題があるんですよ。
 今、多くの問題は、アフリカ利権というものを、アフリカに対する援助が何らかの形で先進国に還流しているという、これは世界じゅうで、今いろいろな機関で調べておりますけれども、そういう問題があるわけですよ。ですから、アフリカへの大使というのは、非常に我々も関心を持っています。
 浅井大使は、平成九年に日本企業の契約のためにガーナに出張をした、平成十二年に鉱物資源の開発及び輸入でナイジェリアを訪問したとあります。この方がそうした特殊な経済利権に関係しているのか、どの会社ですかということを私は質問主意書で何度も聞きました。お答えにならない。結構ですよ。何度も何度も質問しますから。
 だけれども、このことは答えていただきたい。少なくとも、今ここで問題になっているような特別な企業、ODAに絡んでいる問題のある企業、すなわち日本工営、日揮、三井物産、この三社は浅井さんの活動とは関係ございませんね。これだけははっきり答えていただきたいと思いますが、いかがですか。
川口国務大臣 浅井大使は弁護士としてこの仕事を行ったわけでございまして、弁護士としての職務上、対外的に、これは守秘義務が弁護士としてはあるわけでございますので、控えてほしいという本人の御要望もございます。したがいまして、これを尊重したいと考えております。
首藤委員 これは、大臣、公的な場ですよ。それは私的な話でしょう。私たちは公的な場なんですよ。私は別に大臣をいじめようとして質問しているんじゃないんですよ。国民から負託を受けているから、国民の疑問を言っているわけですよ。どうしてそれを個人的な話でごまかせるんですか。この問題に関しては非常に大きな疑義があるわけですね。
 先ほどの、私たちの同僚からも、木下議員からの話もありましたけれども、今度の経済協力局長の人事に関していろいろなことが言われているわけですね。この方は、経済産業省の古田肇さんという商務流通審議官ということになっております。
 先ほど外務大臣は、この問題はまだ決定していないので話せない、一般論なら話せるという話をしてきました。ということは、要するに発令されるまでは秘密のことだから、これは私は何も言えませんと。結構です。そういう立場もございます。
 では、この方の名前がこんなに出てきて、そしてこういう外から出てくるということに関しては、例えば西田経済協力局長は文句を言いに行ったとか、そんな話がどうしてこんなに出てきちゃっているんですか。どうしてこの人間の名前が出ているんですか。外務省からの情報の流出じゃないですか。その責任はいかがお考えでしょうか。
川口国務大臣 個別人事についてのそういった名前等が新聞に書かれているのは私も承知いたしておりますけれども、どういうルートで新聞がそういう情報を入手したのか、私としても知りたいと思っています。
首藤委員 知りたいと思っているというのは、ちょっとそれは私も気勢がそがれてしまうんですけれども、大臣はそれは知り得る立場だし、そういうことがあっちゃいけないわけじゃないですか。こんな人事が漏れていくというのはおかしいじゃないですか。だから、国民はみんな知っているから質問しているんですよ、国民の代表として。しかし、それを、私はそんなものがどうして出たかわからないと言われたら、もう委員会が成立しないじゃないですか。
 この方に関して、前回の同僚議員の民主党の伊藤英成NC大臣からの質問の中で出てきたことは、官邸の閣議人事検討会議で決まるというふうに言われたわけですよね。私は、外務省の人事は外務省で決めていると当然思っていましたけれども、一体この閣議人事検討会議というのは何か、官邸の方から説明を受けたいと思うんですが、いかがでしょうか。
安倍内閣官房副長官 閣議人事検討会議は、行政改革会議からの要望を踏まえまして、行政に対する信頼確保の観点から、政府の重要官職への適切な人材配置について十分配慮を行うため、平成九年六月から内閣官房において開催をいたしております。この開催によりまして、内閣のリーダーシップを確立するということが担保されているのではないか、このように思っております。
首藤委員 ありがとうございました。
 それで、安倍副長官、お聞きしたいんですけれども、そうすると、こういう人事は、外務省から上がってきたものではないと。外務省では、それこそ内部の人からいうと、どうしてこんなところに、しかも、どうして経済産業省から来るんだというのが当然出てくるわけですね。そうすると、それはトップダウンでお決めになったわけでしょうか。いかがですか。
安倍内閣官房副長官 私も閣議人事検討会議のメンバーでございますが、今御指摘の点は経済協力局長の件だと思うわけでございますが、この経済協力局長については、まだ閣議人事検討会議には議題として出されておりません。
首藤委員 これは物すごいことですよね。日本国の政府というのは一体どういうものでしょうか。外務省は、いや、そんなことはうちは言ったことはない、内閣は、いや、うちはそんなことは言っていない、まだそれはかかってこないと。では、一体これは何ですか、こんな、毎日毎日、新聞に出て。一体、これは何なんですか。どういう国なんですか。どういう政府なんですか。一体、だれがこういう問題に対して責任をとるんですか。
 先ほど外務大臣もおっしゃったけれども、戦力なき国家が国際社会に影響を与えるのは、もうそれこそODAだ、我々の持っている最大の資源ではないかとおっしゃったのに、その実務上のヘッドが、だれがやるか私は決めていないのに、そんなの外へ言うのはおかしいと。それから内閣の方では、最終的な決定権者である閣議人事検討会議の場でも、それはまだ上がっていないと。では、一体だれがこんな話を流しているんですか。これによって日本の外交がどんなに傷つくか、おわかりじゃないですか。
 外務大臣、もう一度お聞きしますよ。
 経済協力というものは、そんなのは、もう大臣だってよく御存じでしょう。戦略会議で何度も討議されている。ODAを含め援助というのは、冷戦後はもうがらっと変わりつつあるんですよ。今までの箱物とかそういうものから、むしろ人間の安全保障、あるいはBHN、それから紛争後の平和再建、教育や貧困や差別や民主主義、こういうものに特化してやっていこう、そういう話――失礼しました。BHN、これはベーシック・ヒューマン・ニーズの略ですね。そういうものに特化していこうという形になっているわけです。
 そうであれば、それは学識経験者をこの局長に据える。外務省が得意な、何人も学者はいるじゃないですか。渡辺利夫さんとか草野厚さんとか、外務省の言うことをそのまま言ってくれるような人はたくさんいるでしょう。そういう方を据えてやればいいのに、どうして、そういう流れと全然違う、例えば経済産業省から人が来ることになったか、その合理的な根拠は何でしょうか、外務大臣。
川口国務大臣 個別人事につきましては、先ほど安倍副長官からもお話をいたしましたように、しかるべきプロセスを経て決まっていくということでございます。今、この時点で個別人事について私の立場で御答弁するということは、適切でないと考えております。
 他方で、援助の重点の動きということについては、これは委員がおっしゃったように、私も今から十五年ぐらい前、もう少し前でございますけれども、世界銀行で働いておりまして、そのころ、まさに委員がおっしゃったBHN、ベーシック・ヒューマン・ニーズへのシフトというのがしきりに議論をされておりました。例えば、今、我が国の援助の中で、環境についても約三割ぐらいを占めるということになりまして、私どもの経済協力の形もそういったことでかなり変わってきているというのが現状でございます。
首藤委員 外務大臣、私がなぜこれを言っているかというと、経済協力局長に経済産業省から来るというのは問題なわけですよ。
 例えば、今問題となっている鈴木宗男さんの事件で、これは三井物産が関係したと。三井物産が関係した、これも個別具体的な名前になるのかもしれませんけれども、三井物産が関係したと。こういうところへ旧通産省から天下ったりしているわけでしょう。外務省から行っているかもしれない。それは、決してトップだけ行っているんじゃなくて、実は中間レベルだってたくさん行っているわけですよ。
 そういうところが、まさにこれから変えなきゃいけない、こここそが病根だというところにさらに病根をつぎ込む。それはどういう根拠でなっているんですか。もう一度お答えください。国民が納得するような形でお答えください。
川口国務大臣 繰り返しになりますけれども、個別人事についてお答えをするということは適当でないと考えております。
 それから、一般論として申しまして、私は、十人をめどに、この夏までに、外務省の人以外の人を局長それから審議官そして大使に登用するということを申しまして、今のところ六人登用が行われております。こういった人々に対しては、当然外務省の職員として仕事をするということでありますから、その立場で日本の国益を考えて仕事をしてもらうということでございますし、そういうことができない人材については、私は外務省で登用するつもりはございません。
首藤委員 ODA改革は本当に大きな問題なんですね。最近、改革案、五分野の改革ということで、これからNGOも重要だということで、NGOに対して六億円の資金を出すというような報道がありました。
 確かに、今までアフガニスタン緊急支援などで外務省が出していたわけですね。私は、このNGO、市民社会組織というのは本当に育てていかなきゃいけないと思うのですが、今度の例えば六億円というものは、一つの資金として出すということを言っておられます。そうするとこれは、日本でNGOが発展しない根拠の一つ、理由の一つになっている憲法八十九条との関係があると思うのですけれども、そうしたプール金を組織へ支援するということは、憲法八十九条の視点からいってそれは問題はないんでしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 我が国が経済協力の実施を行うに当たって、NGOの方々が果たしている役割というのは非常に重要だと思っていまして、先般発表いたしました経済協力の改革の十五項目の中で、NGOの方々についてはきちんと取り上げているわけでございます。
首藤委員 委員長、私はここで国民を代表して質問しておりますけれども、私の質問にきちっと答えていただいていない。
 浅井大使の問題に関しても、個別具体的な問題ということで全く答えられていない。それから、今世間であれだけ騒いでおる経済協力局長の名前も、わざわざきょうは安倍副長官にまでお忙しいところを来ていただいたのに、そこは知らないよ、外務大臣も、それはまだそんな関係ないよと。
 要するに、我々は一体何なのかということですよ。これは、私は日本の外交が本当に危機だと思いますので、こういうことも含めて、理事会で外務委員会のあり方を今後討議していただきたいと思います。
 以上で終わります。
吉田委員長 次に、土田龍司君。
土田委員 受刑者移送については、質問通告した内容については大体出てしまったような感じがするんですが、二つだけ質問させていただきます。
 まず一つは、裁判国と執行国のみが移送の申請をできるということに書いてあるわけですが、なぜ本人からの申し出はできないんでしょうか。
林政府参考人 先生御指摘のとおり、この条約上、受刑者の移送につきましては、いわゆる裁判国と執行国につきまして要請を行うことができるということになっておりまして、受刑者本人につきましては、移送されることについて関心を表明できるということになっておりまして、これは移送を請求する権利という形で書かれておりません。
 この条約のそもそもの趣旨でございますけれども、犯罪行為を行った者につきまして、犯罪が行われた領域において処罰するというのが基本的な考え方でございます。その領域国の刑事管轄権の行使の一環として、領域内においてその犯罪者を処罰するというのが今までの国際社会の大原則でございます。しかしながら、まさに外国人による犯罪というものが急増している中で、受刑者については、いわゆる応報といいますか、処罰という効果のみならず、やはり改善更生、円滑な社会復帰というものを促進するため本国に移送するということが望ましいのではないかという考え方が広まってくることに伴いまして、いわばそういう刑事管轄権の執行、刑の執行という分野において国際的な共助、協力ということを行った方が望ましいのではないかということで、この移送の枠組みができたわけでございます。
 そういう意味におきまして、受刑者の移送というのは、国際社会におきます国家の一番本質的な主権の一部でございます刑罰権の行使というもののあり方、それについての国際的な協力、共助ということでございますので、これは国家間のやりとりということで今のような要請の仕組みになっておるわけでございまして、受刑者本人に権利を認めるということにはなっておらないということでございます。
 ただ、この条約の第四条にございますけれども、裁判国と執行国は、移送についての受刑者による関心の表明等の情報を速やかに共有する、受刑者の関心の表明が裁判国になされた場合はすぐ執行国に知らせる、それから執行国の方、つまり本国の方に表明された場合にもこれは裁判国の方に伝達するということになっておりまして、こういう受刑者の関心の表明がすぐ共有されることになっておりますので、この関心が表明されることによりまして、移送手続の開始というものが始まる重要な契機になるということが想定されているということでございます。
土田委員 林審議官、もう一点お尋ねします。
 一方の国から相手国に対して犯人の移送を請求した場合に、拒絶する理由を言う必要はないということになっていますね。これは何ででしょうか。
林政府参考人 ただいま申し上げましたような受刑者移送の枠組みというもの、これは比較的新しい仕組みでございます。新しい考え方、受刑者の社会復帰といったものに重点を置く法的な流れというもので出てきておるわけでございますけれども、先ほど来申しましたように、犯罪者の処罰というのはまさに各国家の一番主権の根幹にかかわるような部分でございまして、移送という新しい制度を導入するに当たりまして、やはり各国の司法制度、刑事制度というものに相当ばらつきがある、これをどう調整するかということはなかなか難しい問題がございます。
 それにもかかわらず、この受刑者移送という制度をなるべく広く普遍的につくっていくということが非常に望ましいことだという考え方がございまして、ではどうしようか、その普遍性というものを確保するためには、なるべく緩やかな、簡潔で柔軟な手続を設けるという形でその枠組みをつくった方がいいのではないかということで、欧州評議会においてはその議論がなされました。その結果として、移送を行うか否かについて義務づけてはおらないわけでございます。
 要するに、要請がその当事国の間になされた場合に、相手国はこれに応じなければならないという義務というものはございません。義務がある場合には、これは例えば犯罪人引き渡しの場合は義務がございますね。犯罪人引き渡し条約の枠組みの中では、拒否事由というものを明示することになっております。これは、そもそも犯罪人を引き渡すということが原則として義務になっている、そういう場合には義務が履行できない理由はこれこれでございますということを示すということになっておるわけでございますけれども、この受刑者移送の枠組みにおきましては、そのこと自体を義務にしておらない。
 義務にしないのは、柔軟性、普遍性を確保するということでございますけれども、そういう経緯といいますか基本的な考え方のもとに、移送の要請に同意しない場合にも理由を明示しないで差し支えない、そのことによって普遍性を確保しようということであろうかと思います。
土田委員 外務大臣にお尋ねいたしますけれども、私は、この委員会でたびたびODAのことについて質問をしてまいりました。もちろん、私だけでなくて多くの委員がODAについて質問してきたわけでございます。
 私は自分の選挙区でよく地元の方々と小さな懇談会を開くことがあるんですが、その際に、私が外務委員だということを言うと、必ずこのODAの問題が出てくるんです。
 その質問の内容もほとんど毎回同じでございまして、まず一つは、日本がこのように深刻な不景気になっているときになぜ外国に対して金銭的な援助をしなきゃならないのかという問題、あるいはこのODAがどのくらい有効に使われているのか、我が国の国益に資しているのかという問題、あるいは年間一兆円近くあったODAの金額が不正に使われているんじゃないかという疑問、そういったことがたびたび、毎回同じ質問が出てくる。
 そこで最近、私も三枚紙ぐらいのプリントをつくりまして、これについて説明をしているわけでございますが、いつの間にか外務省を代弁するような説明になってしまっているのに自分でも気がつくということもございます。
 確かに、ODAが重要だということを国民の皆さんはまだよく理解をされていないわけでございますから、外務省としましてもこれについての理解を深める努力をさらにしなきゃならないのかなという感じがするわけですが、もう一つ同時に、個別的なODAの案件に関して出てくるのは、やはり中国なんです。中国になぜ援助するのかという素朴な疑問が出てくるわけですね。
 中国は、日本と一番近い国でもありますし、非常な大国でもあるわけです。あるいは、これまで日本と中国の関係、これまでといいましょうか、最近の関係を見てみましても、中国は日本に対してそんなに友好的な態度をとっておりません。今回の北朝鮮の船と思われる不審船の引き揚げにつきましても、半年間もイエスの答えを出してこない。あるいはほかの、瀋陽事件に関しましても、決して友好国というような雰囲気を出しておりません。そういった中国に対する国民の不満といいましょうか、怒りがあると私は思うんです。
 さらには、やはり中国がこのところ経済大国としてだんだん経済成長率を上げてきている、あるいはまた軍事的に非常に、中国はこのところ毎年一〇%ぐらいの軍事力を増強するという状況にあるわけです。そういった国になぜ援助するのかという素朴な疑問が国民の皆さんにはありますし、毎回その質問が出てきます。
 そこで、大臣に伺うんですが、政府開発援助大綱、平成四年の閣議決定でございますが、一番から四番まであるわけですね。その二番と三番に違反しているんじゃないかという気が私はするわけです。中国に対するODAが、特に二番の「軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避する。」ということ、三につきましても、大臣御存じのとおりですが、一回読み上げます。「国際平和と安定を維持・強化するとともに、開発途上国はその国内資源を自国の経済社会開発のために適正かつ優先的に配分すべきであるとの観点から、開発途上国の軍事支出、大量破壊兵器・ミサイルの開発・製造、武器の輸出入等の動向に十分注意を払う。」ということを書いてございます。
 つまり、この第三原則に明らかに違反するわけでございますし、あるいはまた、その観点からいえば第二原則にも違反しているというふうに私は思うんですが、大臣、この点についてはどう考えますか。
川口国務大臣 たくさんの御質問を一度におっしゃられたものですから、お答えも長くなってしまうかと思いますけれども、まず、ODAの必要性について国民に理解をいただくということは非常に必要で、私もそう思います。私どもはその努力をしておりまして、例えば、あした大阪で私はODAについてのタウンミーティングを開くということにいたしております。そういった努力は今までもやってきておりますし、今後も続けたいと思っております。
 それから、中国についての考え方でございますけれども、これはかなりはっきりした考え方を持っておりまして、まず、我が国の対外関係というのは、我が国が安全で、繁栄していくということですけれども、そのためには、近隣諸国が安定的に平和的に発展をしていっているということが重要であるわけでございまして、中国は東アジアの大きな国ですから、中国が重要な国際社会の一員として開かれた形で発展をしていくということが重要であると考えておりますし、そのために我が国としては中国の支援を行っているということが中国のODAについての基本的な考え方です。
 もちろん、その中で我が国は、ODAの大綱を踏まえて中国の援助需要、そして経済社会の状況、日中両国間の二国間関係、そういったものを総合的に判断をしまして中国の援助を行っているということでございます。
 特に、中国については、昨年の十月に、我が国の厳しい財政事情、経済事情、あるいは中国への援助についての考え方に関するさまざまな御意見、そういったものを踏まえまして対中国経済協力計画を策定いたしております。中国のODAについての考え方は、これにのっとって一件一件考えていくということでございます。
 そして、委員がおっしゃったODAの大綱の第二原則、第三原則との関係ですけれども、第二原則については、これは「軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避する。」ということですが、我が国のODAはこの原則に従って実施をしていまして、中国に対するODAについても、使用目的、貸し付け、支払い状況についてこの原則に反しているということはございません。
 それから第三原則でございますが、これは私どもとして十分に注意を払っているわけでございます。先ほど申しました対中国経済協力計画にもありますように、政府としては、あらゆる機会をとらえて中国がODAの大綱についての理解を深めて、そして透明性を増していくということを働きかけているわけでございます。
土田委員 今の答弁の中の第三原則についての説明、矛盾しているんじゃないかという私の質問に対する答弁、ちょっと何かよく理解できないんですが、例えば七月十日付の日本経済新聞の夕刊に、東京大学の山内さんという教授が「あすへの話題」というコラムに「ODAは賠償なのか」、ODAは中国に対する賠償金なのかという題で文章を書いておられます。
 ちょっと簡単に読んでみますと、我が国は対中援助大国にもかかわらず、中国は格別に感謝する様子もなく、核ミサイルの照準を日本に合わせたままである。瀋陽総領事館事件で見せた中国の高圧的態度の背後には、我が国のODAを戦争賠償として当然視する風潮があるんだろうと言っているわけですね。支援の名目で賠償を軍事大国たる中国に際限なく支払うのは、日本の義務ではあり得ない。戦後六十年を迎える二〇〇五年までには、対中ODAの内容見直しに限らず、成熟した大人の関係をつくることが必要であると。
 中国が日本から援助をもらっておきながら、中国はさらにほかの国に対してたくさんの、幾らか知りませんけれども、援助を行っている、そういったことも言えるわけでございまして、どうも今大臣が説明された、中国に対する援助、これについてはなかなか理解しにくい。
 特に、今第三原則のところに矛盾するんじゃないかというふうに質問をいたしましたけれども、この政府開発援助大綱の第三項に矛盾していないんだという話をもう一回答弁してください。
川口国務大臣 ODA大綱の第三原則といいますのは、「開発途上国の軍事支出、大量破壊兵器・ミサイルの開発・製造、武器の輸出入等の動向に十分注意を払う。」というものでございます。ちょっと長いものですから前段は略しましたけれども、「十分注意を払う。」ということでございます。
 ということで、政府としても十分に注意を払っているわけでして、今後とも、対中国経済協力計画にございますように、政府としてあらゆる機会をとらえて、中国側がODA大綱に関する理解と認識を深めるとともに、国防政策全般について透明性を向上させるように引き続き働きかけていくということでございます。
 それから、委員が引用なさった論文につきまして、我が国は国交正常化の折に、そういった問題については全部中国との間では解決をしている、整理済みということでございます。
土田委員 しかし、整理済みと言いながらもそういった見方をしている人がいるということですし、あるいはまた、そういった指摘がなされているということについてはやはり考えていただきたいと思いますが、時間がございませんので、ちょっと最後に一問だけ。
 ARF、ASEAN地域フォーラムに大臣がこの三十一日に行かれて参加されるわけでございますけれども、一番の関心事は、やはり何といっても北朝鮮の外務大臣が出席されるのではなかろうか。そういった会議に北朝鮮の代表者が来られて外相同士の会談がなかなか実現しない、日朝交渉も進んでいない、赤十字会談もとうとうできなかった。ここで三十一日にもしも北朝鮮の外務大臣が来るんだったらば、大臣と話し合いができるわけでございますけれども、出席の可能性はどうでしょうか。
川口国務大臣 出席の可能性については、まだ現時点で最終的に決定をしたわけではないというふうに承知しています。
 北朝鮮の金永南最高人民会議常任委員長が七月十日からインドネシアを訪問いたしまして、その折に、白南淳外務大臣がARFに派遣されるという説明があったということは聞いております。
土田委員 同じくこのARFで毎回毎回問題になってくるのが、国防に関する高官級の参加の実現が出てくるわけでございますが、なかなかこれが実現しない。これについて大臣はどのように考えておられますか。
川口国務大臣 アジア太平洋地域における国防あるいは安全保障といった問題について、まず我が国としては、ARFメンバー間の信頼醸成を一層促進させるということが重要で、実務的協力を推進するという観点から、ARFプロセスに国防、軍事当局者の関与を高めていくということの重要性については支持をしている、そういう考え方でございます。
 メンバー間の認識が深まっておりまして、今月末のARFの閣僚会議ではこうした方針が確認されるという見通しになっているということです。
土田委員 以上で終わります。ありがとうございました。
吉田委員長 次に、松本善明君。
松本(善)委員 受刑者移送条約について質問をいたします。
 端的に聞きますが、現在、横須賀刑務所には、一九九五年九月の沖縄少女暴行事件で刑が確定した三名のアメリカ兵受刑者が拘禁されております。これらのアメリカ兵は六年六カ月から七年の拘禁刑に服しており、うち一名の刑期は本年秋十月ごろ、一名は本年末十二月ごろ、もう一名は来年三月から四月ごろ、それぞれ刑期満了になるということであります。
 九五年九月のこの事件は、我が国のいたいけな十二歳の少女に対する野蛮きわまりない行為であり、我が国の主権が重大に問われた問題でありました。だからこそ、沖縄だけでなく我が国全土が怒りに包まれ、また在日米軍基地の見直しにも大きなきっかけとなった重大な事件であります。
 この三人のアメリカ兵についても適用するというようなことがありますか。
小野政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいま委員御指摘の件でございますが、受刑者移送条約の運用に当たりましては、米兵受刑者を特別扱いするということはないということを確認したいと思います。
松本(善)委員 そうすると、これは形の上からいいますと、条約上三条一項cで、刑期が少なくとも六カ月間残っていることが条件ですが、形式的に当たってもアメリカ兵に適用しないということもある、こういうことですね。
林政府参考人 個別具体的な例について、ちょっとどう申し上げるかというところがございますが、まず、法的な仕組みの問題を前提として申し上げたいと思うのでございます。
 この条約につきましては、まず、それは国会の御承認が得られるということが前提でございますけれども、御承認が得られますれば、関係省庁と連携をいたしまして、この条約の実施のために必要な政令等の準備が整い次第、速やかに加入書の寄託に必要な手続を進める所存でございます。
 その加入書の寄託というものがなされました場合には、条約の第十九条二以降の規定によりまして、この寄託の日の後、三カ月の期間が満了する日の属する月の翌月の初日にこの条約は我が国について効力を生ずるということになっておりまして、その時点がいつになるかということは、今申し上げることができないわけでございます。その時点におきまして、どういうタイミングでそれが具体的に、刑期との関係でどういうふうになっているかということを見きわめる必要があろうかと思います。
 それから、もちろん時間的な適用範囲としましては、この二十一条にございますとおり、効力の発生の前後を問わず、その時点において受刑しておる者は理論的には対象になるということでございますが、今先生も御指摘の六カ月未満といった規定との関係におきまして、費用対効果をどう考えるかといった問題もあろうかと思います。
 いずれにせよ、移送を行うことになるのかどうかというのは、その要請がどういうふうになされるのかということを踏まえて、個別の事案ごとに判断するということになろうかと思います。
松本(善)委員 法務省の矯正局長は、これについての運用指針を策定するということであります。国内法はもう既に成立しているわけですが、この審議の中で森山法務大臣は、参議院法務委員会で、受刑者の改善更生や社会復帰の促進と同時に、我が国の裁判所が言い渡した刑罰の持つ応報機能や抑止効果が損なわれることのないようにする、被害者感情や社会感情などさまざまな事情を考慮したものにする必要があると思う、こういうような答弁をされています。
 運用指針にはそういうことも入れるつもりですか、矯正局長。
鶴田政府参考人 お答えいたします。
 外国人受刑者の送出移送の場合につきましては、ただいま委員が御指摘になりました、また法務大臣から答弁したように、やはり、その者の改善更生や社会復帰の促進と同時に、他方で、我が国の裁判所が言い渡した刑罰の持つ応報機能、抑止機能が損なわれることがないよう留意しなければならないというふうに考えておりまして、受刑者移送の目的、あるいは刑罰の機能等がよりよく発揮されるように、関係する諸般の事情を総合的に勘案いたしまして、個々の具体的事案ごとに送出移送が相当かどうかということを判断することが肝要と考えております。
 個々の事案ごとに判断する際に、同様な事情を有するにもかかわらず法務大臣の相当性判断にばらつきがあるということはあってはならないと考えておりますので、相当性に関する具体的な運用指針を策定いたしまして、統一的な運用に努めてまいりたいというふうに考えております。
松本(善)委員 一言確認をしておきますが、本条約の三条二項では、例外的な場合に、一項cに規定する期間より短いときにおいても、移送に同意することができるということになっていますが、アメリカ兵ということで例外的な扱いをするということはないでしょうね。
鶴田政府参考人 先ほどお答えいたしました運用指針、これを作成するに当たりましては、米軍関係者であるという一事をもって特別に扱うということは考えておりません。
松本(善)委員 アメリカ兵の服役者についての問題ですが、五年前に我が党の緒方参議院議員が、アメリカ兵の服役者は毎日ステーキなど肉を食べている、フルーツ、ケーキを食べて、三食ごとにコーヒー、牛乳がつく、日本人の服役者はすべての食事に一滴の牛乳もつかない、ステーキはもちろん出ません、ケーキは祝日だけ、フルーツは十日に一度だけという事実を挙げて質問をいたしました。当時の下稲葉法務大臣は、実態をよく調査して善処をすると答えました。
 ことしの四月十一日、我が党の井上参議院議員が、全く同じ状態であるということを例を挙げてこの質問をいたしました。森山法務大臣は、最終的にはこのやり方は廃止するのが望ましいと述べて、矯正局長は、品目、数量の段階的縮小を図り、最終的には廃止する方向で米国側に申し入れているが、結論を得ていないということでありました。
 この五年間にどのような交渉をやりましたか。これは外務省ですか、矯正局ですか、どこが交渉するんですか。どういう交渉があったか。
鶴田政府参考人 ただいまお尋ねになりました横須賀刑務所の食料補充の問題につきましては、御指摘がありましたとおり、平成九年の九月十八日の参議院の決算委員会でその問題が取り上げられました。当時の法務大臣から善処するよう努力するという答弁をしたわけでございますが、それを受けまして、矯正当局としましては、補充食料の品目、数量の段階的縮小を図りまして、最終的には廃止する方向で米国側に申し入れておるわけですけれども、その間、具体的には横須賀刑務所と米軍当局の間で何回か接触したというふうに聞いておりますが、いまだに結論は見るに至っていない、こういうことでございます。
松本(善)委員 外務大臣、こういう事態というのは、我が国で犯罪を犯して、特に沖縄のようなあの事件を起こして、実際上は特別扱いを受けているんですよ。この問題は直ちに解決をしなければならないんじゃないか。外務大臣、いかがお考えですか。
川口国務大臣 この問題につきましては法務省から話を聞いておりますので、法務省や米軍と相談をして適切に対処したいと考えます。
松本(善)委員 この交渉が長きにわたって解決をしないという障害になっているものは何ですか。
藤崎政府参考人 お答えいたします。
 本件につきましては、日米間の合意で、これは昭和二十八年の合意でございますけれども、米軍人等を拘束いたしました場合には、日米両国間の習慣等の相違に適当な考慮を払うということが合意されている次第でございます。これに基づきまして、従来より食料等の差し入れということについての措置が認められてきたわけでございます。
 本件につきまして、時期を経ておりますことから、さらに見直すべきであるという御議論が一方にあることも承知しておりますし、私どもといたしましては、今大臣が申し上げましたように、法務省や米側とも話し合いながら、いかなる措置あるいは待遇というものが現在において適当であるかということについて引き続きよく協議してまいりたい、かように考えております。
松本(善)委員 この問題についての米側との合意の根拠は何ですか。
藤崎政府参考人 この問題についての根拠ということでございますけれども、日米間におきましては、日米合同委員会という会議を開きまして、これは在日米軍の諸問題について話し合うわけでございますけれども、この合同委員会で日米間の諸問題について合意を作成し、あるいは協議をしていくということでございます。
松本(善)委員 日米合同委員会で受刑者の待遇について特別に行った合意があるんですか。
藤崎政府参考人 私が先ほど御答弁申し上げましたように、日本国の当局は、合衆国の軍人等を拘束いたしました場合には、日米両国間の習慣等の相違に適当な考慮を払うということについては合意しているところでございます。
松本(善)委員 アメリカ兵以外の外国人の受刑者についてはどういう待遇をやっていますか。
鶴田政府参考人 お答えいたします。
 外国人受刑者も、日本で服役している場合は、日本人の受刑者と同様の取り扱いとなっております。
松本(善)委員 アメリカ兵以外の外国人の受刑者は日本人の受刑者と同じ待遇をやっているのに、アメリカ兵の受刑者は、特に沖縄の事件などは絶対許されないことです、刑務所の中で悠々と、日本人の普通に生活をしている人よりも優遇された食事をしているというのはどういうことですか。そういうことを一日でも放置するというわけにいかないと思いますけれども、いかがお考えですか。外務大臣に聞きましょうか。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、法務省や米側と話し合って適切に対処していきたいと考えています。
松本(善)委員 この五年間に、矯正局長、先ほどは具体的には言いませんでしたけれども、どういう交渉をどこでやったか、答えてください。
鶴田政府参考人 お答えいたします。
 先ほどもお答えいたしましたけれども、横須賀刑務所と米軍との間で話し合いをしたというふうに承知しておりますが、その詳しい状況については今の段階ではちょっとわかりませんので、その内容は差し控えさせていただきます。
松本(善)委員 昨日、私は、この問題を聞くということをちゃんとレクをしておるわけです。まともな答弁になっていないんですよね。正式な外交ルートにものっていないみたいです。
 外務大臣、もう一度伺いますが、正式な外交ルートでこの問題を解決していただけますか。
川口国務大臣 正式な外交ルートとおっしゃる意味がよくわからないんですけれども、法務省、米側と話し合っていきたいと思います。
松本(善)委員 それでは、国際刑事裁判所の問題について質問をいたします。
 ICC設立条約が採択をされまして、発効をいたしました。外務大臣の談話が出ておりますが、「心から歓迎する。」「国際社会における最も深刻な犯罪の発生を防止し、もって国際の平和と安全の増進に資するものである。」「こうした犯罪を裁く常設の国際裁判所を設置する初めての国際約束として大きな意義を持つものである。」というのが、七月一日付の外務大臣談話として、外務省のホームページには載っております。
 なぜ今まで調印をしなかったんですか。これだけ高く評価をしていながら、なぜ今まで我が国は調印もせず、もちろん批准もやっていません、何で調印しなかったのか。
林政府参考人 委員御指摘のとおり、政府といたしましては、ICCの設立というものは非常に意義深いことだという認識を持っておるわけでございますけれども、一般に、条約につきまして、批准に先立ちまして署名を行うというプロセスがございますけれども、署名に当たりましては、政府といたしましては、従来から、この条約を実際に批准して締結するための国内法制というものがきちっと担保できるかどうかということを検討いたしまして、この整備のめどが立っているかどうかということを、一つ、署名の是非の判断の基準としております。
 このICCの規程につきましては、二〇〇〇年の十二月三十一日というのが署名の期限でございました。それまでに、この国内法制、さまざまなものがございます、戦争犯罪等、難しい法制がございまして、これを整備して締結するためのめどが立っておらなかったために署名しなかったということでございます。
松本(善)委員 今国会では、調印をしてから三十年も批准をしなかった、そして国内法の整備ができなかったというような条約さえ、この委員会で審議をしました。
 アメリカは、二〇〇〇年の十二月、クリントン時代に一たん署名をしたにもかかわらず、ブッシュ政権になってこの五月に署名を撤回し、各国から大きな批判が巻き起こりました。アメリカの思惑は、自国の将兵が派遣先の国などから訴追されるとの懸念に加えて、アフガニスタンで誤爆として行った民間人への攻撃や一般の居住地の破壊、そして無差別破壊兵器の使用などが戦争犯罪としてICCで裁かれることがあり得る、そういう懸念をしたのではないか。
 もう時間がありませんので質問としてはいたしませんが、私は、この署名をしない、批准もしないというのは、アメリカに対する配慮ではなかったのかということを思います。早急に署名、批准をするということを外務大臣に約束していただきたいと思います。
川口国務大臣 これは、先ほど事務当局から御答弁をいたしましたように、国内法令との整合性について必要な検討を行っているところでございます。七月一日にICCの規程が発効したことを踏まえまして、政府として検討を進めていきたいと考えております。
松本(善)委員 終わります。
吉田委員長 次に、東門美津子君。
東門委員 初めに、受刑者移送条約についてお伺いいたします。
 近年の国際交流の急激な進展に伴いまして国際犯罪が飛躍的に増加していることを背景に、各国における外国人被収容者数も急激な増加を続けているようです。そうした中で、刑事司法の国際化も進展し、諸外国から我が国に対する受刑者移送制度の導入の要請が活発化していると言われています。
 本条約締結に当たり、欧州評議会からの要請を受けていることは理解していますが、そのほかには、具体的にどのような国からどのような内容の要請がなされているのでしょうか、お伺いいたします。
小野政府参考人 お答えいたします。
 我が国がこの条約に加入することにつきましては、幾つかの欧米諸国から種々の機会に打診等があったことは事実でございます。
 先生御指摘のとおり、実際には、欧州評議会閣僚委員会から昨年の二月に我が国の加入について要請がなされたという経緯はございますけれども、具体的な要請といたしましては、例えば、我が国がこの条約に加入することによりまして、我が国において受刑する自国民を母国に移送することが実現できるようにしてほしいという配慮があるわけでございます。
 こういう欧米諸国からの関心が表明されている背景といたしましては、御案内のように、我が国で受刑する締約国国民、昨年末現在で百五十二名でございますが、その内訳数として、米国四十五、英国三十四、ドイツ十四、オランダ、カナダそれぞれ九人という背景がございます。
 そういうことで、米国からも、本条約の締約国でございますが、我が国が本条約に加入することについて関心の表明が過去にございました。
東門委員 第三条の三項において、第九条一項で規定されている移送後の刑の執行方法について、裁判国の刑をそのまま執行する方法あるいは裁判国の刑を転換して執行する方法のどちらをとるか、あらかじめ宣言することができるとなっています。
 この宣言は、執行国の立場からのみ行うのではなくて、裁判国の立場からも有効であると思いますが、裁判国として同意した移送については、裁判国が適用を除外した方法では、執行国は刑の執行を行えないこととなります。
 裁判国、執行国の双方が別々の宣言を行っている場合、受刑者の移送は成り立たないことになるわけですが、締約国各国の宣言の現状はどのようになっているでしょうか。
林政府参考人 継続、転換ということにつきましては、この条約の締約国の多くが刑の執行の継続という手続を採用しておるというふうに承知しておりまして、我が国も刑の執行の継続の手続を採用する所存でございます。
 各国の状況といたしましては、執行の継続ということを表明しております国が米、英、仏、カナダ、イタリア等々でございまして、転換ということを言っておりますのはアルバニア、オーストリア、コスタリカ、クロアチア、デンマーク、グルジア、ポーランド、ルーマニア、トルコでございますが、これは少数派でございます。
 これは、考え方として、継続というのがこの条約の基本的な考え方でございます。ただ、これが国内法制上難しいという国について、転換ということも差し支えないということで、普遍性を確保しようとしたということでございます。
東門委員 わかりました。ありがとうございました。
 では、前回に引き続きまして、いわゆるベースタクシーに対する入構料徴収問題について質問いたします。
 前回の本委員会におきまして、入構料徴収の日米地位協定上の根拠について、藤崎北米局長は、地位協定第三条により米国に施設・区域内の管理権があり、どのようなものに対し入構を認めるかの権利があること、入構料を徴収しているエクスチェンジサービスが地位協定第十五条に定める福利厚生のための歳出外資金による機関として独立採算制をとっており、協定上の問題はないと説明しておられました。
 しかし、地位協定第十五条に言う歳出外資金による機関は、食堂、社交クラブ、劇場などがその例示として挙げられていることからもわかるように、本来基地内にあって、施設内にあって米軍人軍属らのためにサービスを提供していく機関であるはずで、基地の外から来るタクシーから料金を徴収して運営するような機関は想定していないはずです。歳出外資金機関が独立採算制であることは、タクシーから入構料を徴収できるということの理由とはなり得ないはずです。
 北米局長の答弁は、地位協定第三条と第十五条それぞれの説明にはなっていますけれども、第三条と第十五条がどのようにつながるかという説明にはなっていない。それを説明してもらわなければ、なぜエクスチェンジサービスが入構料を徴収する権利を持つのか理解できません。
 改めて、エクスチェンジサービスが入構料を徴収できる根拠を説明していただきたいと思います。
藤崎政府参考人 お答え申し上げます。
 今委員が御指摘のとおりの答弁を前回させていただいたわけでございます。
 地位協定の十五条でございますが、これは、「合衆国の軍当局が公認し、かつ、規制する海軍販売所、ピー・エックス、食堂、社交クラブ、劇場、新聞その他の歳出外資金による諸機関」ということで例示を挙げて、委員御指摘のとおり、その他の歳出外資金ということでPX、食堂、社交クラブ等を例示しているところでございます。
 タクシーの問題でございますが、今回問題となっているエクスチェンジサービスでございますが、私どもは、このエクスチェンジサービスについては日米地位協定十五条に基づくものというふうに認識しておりまして、この十五条に基づいている歳出外資金諸機関が契約者等からの料金の徴収ということで運営することについて、地位協定上問題があるものというふうには考えておりません。
東門委員 済みません、答弁は簡潔にお願いしたいんですが、では、三条の関係はないということですか。私がお願いしたのは、三条と十五条のつながりが明確ではない、根拠にはなっていないということが私の指摘でした。いかがでしょうか。簡潔にお願いします。
藤崎政府参考人 お答え申し上げます。
 私が前回の答弁でも申しましたとおり、第三条で施設・区域につきましては米側に管理権を認めているところでございます。この米軍の管理権を認めている地域内に入構するということで、基地内に設置されておりますところの歳出外資金諸機関が料金を徴収するということについては、地位協定上問題があるということではございません。
東門委員 かなり解釈の仕方が違うとは思いますが、質問を続けていきます。
 協定上、仮に問題がないとしても、ベースタクシーが基地構内に入って運ぶ客は米軍人や軍属、家族などの関係者であり、タクシーはそれら米軍関係者に対しサービスを提供している側です。そのサービスを提供している側から、サービスを提供される側が料金を徴収するという行為は、甚だ常識を超えているものではないのでしょうか。基地内に入るためだけに料金を徴収することは、合理的な理由があるとは考えられません。入構できるタクシーを識別するだけであるのなら、通行許可証の発行などで足りるはずです。
 エクスチェンジサービスは、いかなる名目で、あるいはいかなる対価に対し、入構料を徴収しているのか、確認をしておきたいと思います。
藤崎政府参考人 今委員より、米軍人あるいは軍属、その家族は、かかるタクシーより便益の提供を受けているものである、したがってこれらに対し対価を払うのはおかしいのではないかという御指摘があったわけでございますが、先ほど委員がまさに御指摘のとおり、食堂、社交クラブ、その他の施設につきましても、米軍人軍属の利用に供するために設置されるものでございまして、それにつきまして料金等を徴収するということが、そもそも歳出外機関の考え方でございます。
 このタクシーについて、果たしてそれが適当かどうかということは、御議論がもちろんあるところではあるというふうに先生からも御指摘をいただいているわけでございますが、十五条に照らしてそれが当たらないかというと、十五条の考え方は、そういうまさに利益に供するために歳出外諸機関を設置しているということでございます。
東門委員 局長、答弁のときは簡潔に、質問を繰り返さないでいただきたいとお願いしているはずです。時間がとても短いですから、本当にそういうことはしないでください。
 私が聞いたことには全然答えておられない。再度、質問していきたいと思いますが、藤崎局長の答弁は、前回、地位協定上の根拠を説明した後で、政策論的に何が適当かどうかということについてはいろいろ御議論があろうかと存じますと答弁しておりました。
 沖縄県民からすれば、地位協定上の問題点はまずしばらくわきに置いたとしても、広大な面積の基地を県民から取り上げておきながら、タクシーの入構に対し料金を課すなどという行為は政策論上も許されるべきではないと思うのですが、大臣は、ベースタクシーに対する入構料徴収という行為は政策論的に適切であると考えておられるのかどうか、御見解を伺いたいと思います。
川口国務大臣 これが政策論的に適切かどうかということについては、多分いろいろな考え方はあり得ると思います。
 今、沖縄以外の本土のすべての施設・区域において民間タクシーがどういうふうになっているかという現状については調査をしているということでございますので、全体としてどういうふうになっているかわかりませんけれども、米軍、アメリカの側の考え方としては、それはいろいろな考え方といいますか、こちらから見た場合にいろいろな考え方はあり得るだろうという気はいたします。ただ、これは米軍側が決める話だということです。
東門委員 前回も局長は調査中だと言いました。今大臣もおっしゃいましたが、調査というのはそんなに時間がかかるのですか。まだ調査中なんですか。とても理解ができません。なぜそんなに緩慢な仕事ぶりなんでしょう。外務省はもっと機敏に動くべきだと思います。一応それを申し上げておきます。
 時間がないので次に移りますけれども、キャンプ・ハンセンの赤土流出についてお伺いいたします。
 七月の十六日、米軍楚辺通信所、これは通称象のおりですね、その移設工事が進められているキャンプ・ハンセンにおいて、近くを流れる長浜川へ工事現場から大量の赤土が流出しているのが発見されました。
 移設予定現場は、地元の小中学校から約一キロ、かんがい施設の取水口から数百メートルの位置にあります。また、今回赤土が流出した長浜川は生活用水として利用される水源でもあることから、地元住民や自治体が工事の中止や赤土対策などを再三要求してきていました。
 しかし、防衛施設庁はことし一月、地元への事前の説明も行わないまま工事に着手、五月三十一日の本委員会においてそのことを私が指摘しますと、嶋口防衛施設庁長官は、地元への説明がなかったことを反省しながらも、赤土対策は十分に行っていると説明していました。それにもかかわらずこのような問題が発生したことは、怒りという言葉では表現し尽くせない思いです。
 まず、このような問題が発生した理由と、今後同様の問題が発生しないような具体的対策をどのようにとるつもりであるのか、政府の説明を願いたいと思います。
中矢政府参考人 まず、事実関係から申しますと、七月十六日の午前、楚辺通信所移設工事現場、これは言われましたようにキャンプ・ハンセン内にあるわけでございますけれども、そこから恩納村喜瀬武原区長浜川に赤土が流出いたしました。この原因と申しますのは、今回の台風七号によりまして工事現場で発生した濁水を雨水貯留池に一たんためまして、濁水処理装置で処理した上に放流する作業を行っていたところでございますけれども、作業員が過って雨水貯留池の緊急放流用のバルブを開けたために、直接長浜川に赤土が流出したものでございます。
 同日午後、直ちに那覇局長等が現地に赴きまして、恩納村長あるいは地元住民に対しまして、流出原因を説明し、今回の事態について謝罪を行うとともに、地元調整を行った上で、翌十七日には、本工事の施工業者をして、台風により塩水をかぶった農作物の洗浄を行うための水タンク車、これは四トンタンクでございますけれども、これを二台喜瀬武原区に提供したり、あるいは、赤土が流出した長浜川河床に堆積した赤土の除去及び清掃を開始したところでございます。
 当庁といたしましては、今回の事態を踏まえまして、赤土等流出防止関連装置の操作に従事する作業員への教育の徹底、あるいは、濁水処理装置、配管、バルブ等の赤土流出防止関連装置の操作マニュアルの見直し、あるいは管理体制の強化等改善を行っておりまして、今後は二度とこのようなことが起きないよう万全を期して工事に当たっていきたい、そういうふうに考えております。
東門委員 ちょっと長い答弁でしたけれども、事実経過はわかりました。
 それで、二度とこのようなことが起こらないようにというのはよく政府から聞く言葉なんですが、次に大雨が降ったときもそういうことはあり得ませんと断定したと私は受けとめておきたいと思います。
 ただし、今回の出来事に対して、政府としては、実際に被害に遭った農家に対して政府が誠意と責任を持って補償すべきであると私は考えます。といいますのは、この長浜川というのは周辺の農家が農業用水を取水している川です。赤土がまじったために、塩害を防ぐため、長浜川から取水して散水作業を行うことができない状況となっている。ですから、地元では死活問題になっているわけですよ。農産物への被害を最小限にとどめるためにも、やはりこれは大事なことです。今御答弁にもありましたけれども、それも当然ですが、同時に、農家への補償、私はそれもぜひしていただきたいと思いますが、お願いします。
中矢政府参考人 今回の場合は施工業者の操作ミスということであることから、法的には施工業者がその損害を賠償するということになりますけれども、当庁といたしましても、施工業者と地元の間に立ちまして、地元の皆様がお困りにならないよう誠心誠意対応していきたい、そういうふうに思っております。
東門委員 とても大事なことだと思います。ぜひよろしくお願いします。
 地元への事前の説明もないまま工事を着工したわけですね。そして、万全を尽くすとしてきた赤土対策ですが、その不十分さが露呈されたと言えます。地元住民の不信感はますます高まるばかりとなっております。これは地元紙の報道でよく響いてきます。失墜した政府への信頼感を取り戻すためには、工事自体を一たん完全に中止する、そして移設場所の変更も含めて移設の再検討を行うべきではないかと考えますが、どういう見解かお伺いしたいと思います。
中矢政府参考人 今回の赤土流出は遺憾ではございますけれども、あくまでも作業員の人為的なミスというふうに考えておりまして、我々は今後このようなことがないよう万全を期して工事に当たっていきたい、そういうふうに考えておる次第でございます。
東門委員 時間がないので終わりますけれども、基地を抱えている地域、市町村すべて、とても困っているんですよ。それで、一度着手したらもうできませんと。では、地元の住民の意向はしっかり聞いたのかというと、そうでもない。そういうことでは政府として責任のある態度とは言えないと私は思うんです。
 ですから、地元住民の声をしっかり聞くというところから始めていただきたい。アメリカ側の意見を聞くということが先ではないと思います。それをしっかり申し上げて、終わります。ありがとうございました。
吉田委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
吉田委員長 これより本件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がございませんので、直ちに採決に入ります。
 刑を言い渡された者の移送に関する条約の締結について承認を求めるの件について採決をいたします。
 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
吉田委員長 起立総員であります。よって、本件は承認すべきものと決しました。
 お諮りをいたします。
 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
吉田委員長 次に、オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書の改正(締約国の第九回会合において採択されたもの)の受諾について承認を求めるの件、オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書の改正の受諾について承認を求めるの件及び残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。
 政府から順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣川口順子君。
    ―――――――――――――
 オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書の改正(締約国の第九回会合において採択されたもの)の受諾について承認を求めるの件
 オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書の改正の受諾について承認を求めるの件
 残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約の締結について承認を求めるの件
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
川口国務大臣 ただいま議題となりましたオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書の改正(締約国の第九回会合において採択されたもの)の受諾について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
 この改正は、平成九年九月にモントリオールで開催されたオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書の締約国の第九回会合において採択されたものであります。
 この改正は、オゾン層を保護するための措置を強化するとの観点から、議定書のもとで、非締約国との貿易の禁止の対象となる物質の範囲を拡大すること等を目的とするものであります。
 我が国がこの改正を受諾し、オゾン層の保護に関する国際的な取り組みに一層積極的に参加することは、環境保全の分野における国際協力を推進するとの見地から有意義であると認められます。
 よって、ここに、この改正の受諾について御承認を求める次第であります。
 次に、オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書の改正の受諾について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
 この改正は、平成十一年十二月に北京で開催されたオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書の締約国の第十一回会合において採択されたものであります。
 この改正は、オゾン層を保護するための措置を強化するとの観点から、議定書のもとで、生産、消費等の規制の対象となる物質及び非締約国との貿易の禁止の対象となる物質の範囲を拡大すること等を目的とするものであります。
 我が国がこの改正を受諾し、オゾン層の保護に関する国際的な取り組みに一層積極的に参加することは、環境保全の分野における国際協力を推進するとの見地から有意義であると認められます。
 よって、ここに、この改正の受諾について御承認を求める次第であります。
 次に、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
 この条約は、平成十三年五月にストックホルムで開催された外交会議において採択されたものであります。
 この条約は、残留性有機汚染物質の製造及び使用の規制等について定め、これらの物質から人の健康及び環境を保護することを目的とするものであります。
 我が国がこの条約を締結して早期発効に寄与することは、これらの物質の製造及び使用の規制等についての国際協力を一層推進するとの見地から有意義であると認められます。
 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。
 以上三件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。
吉田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 次回の委員会でありますが、来る七月二十四日水曜日午前十時二十分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会をいたします。
    午後零時四十二分散会


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