衆議院

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第24号 平成14年7月24日(水曜日)

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平成十四年七月二十四日(水曜日)
    午前十時三十五分開議
 出席委員
   委員長 吉田 公一君
   理事 浅野 勝人君 理事 石破  茂君
   理事 坂井 隆憲君 理事 西川 公也君
   理事 首藤 信彦君 理事 中川 正春君
   理事 上田  勇君 理事 土田 龍司君
      大野 松茂君    小西  理君
      高村 正彦君    中本 太衛君
      丹羽 雄哉君    林 省之介君
      原田 義昭君    細田 博之君
      水野 賢一君    宮澤 洋一君
      望月 義夫君    伊藤 英成君
      金子善次郎君    木下  厚君
      桑原  豊君    前田 雄吉君
      丸谷 佳織君    松本 善明君
      東門美津子君    松浪健四郎君
      鹿野 道彦君    柿澤 弘治君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   外務副大臣        植竹 繁雄君
   外務大臣政務官      松浪健四郎君
   外務大臣政務官      水野 賢一君
   会計検査院事務総局第一局
   長            石野 秀世君
   政府参考人
   (外務省大臣官房長)   北島 信一君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 林  景一君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局国
   際社会協力部長)     高橋 恒一君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    藤崎 一郎君
   政府参考人
   (外務省欧州局長)    齋藤 泰雄君
   政府参考人
   (外務省経済協力局長)  西田 恒夫君
   政府参考人
   (環境省地球環境局長)  岡澤 和好君
   外務委員会専門員     辻本  甫君
    ―――――――――――――
委員の異動
七月二十四日
 辞任         補欠選任
  今村 雅弘君     小西  理君
  丹羽 雄哉君     大野 松茂君
  水野 賢一君     林 省之介君
同日
 辞任         補欠選任
  大野 松茂君     丹羽 雄哉君
  小西  理君     今村 雅弘君
  林 省之介君     水野 賢一君
    ―――――――――――――
七月二十三日
 中国で警察に連行された日本人の妻の安否確認に関する請願(牧野聖修君紹介)(第六七六三号)
 同(山村健君紹介)(第六八二六号)
 核兵器廃絶の実現に関する請願(山口富男君紹介)(第六八二五号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 会計検査院当局者出頭要求に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書の改正(締約国の第九回会合において採択されたもの)の受諾について承認を求めるの件(条約第六号)(参議院送付)
 オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書の改正の受諾について承認を求めるの件(条約第七号)(参議院送付)
 残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約の締結について承認を求めるの件(条約第八号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――
吉田委員長 これより会議を開きます。
 オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書の改正(締約国の第九回会合において採択されたもの)の受諾について承認を求めるの件、オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書の改正の受諾について承認を求めるの件及び残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各件審査のため、本日、会計検査院事務総局第一局長石野秀世君の出席を求め、説明を聴取し、また、政府参考人として外務省大臣官房長北島信一君、大臣官房審議官林景一君、総合外交政策局国際社会協力部長高橋恒一君、北米局長藤崎一郎君、欧州局長齋藤泰雄君、経済協力局長西田恒夫君、環境省地球環境局長岡澤和好君の出席を求め、それぞれ説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
吉田委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。最初に、首藤信彦君。
首藤委員 民主党の首藤信彦です。おはようございます、外務大臣。
 きょうは、重要な問題がたくさんあるわけですが、イスラエルが、ガザのハマスの幹部をねらって空爆した。十五人も死亡者が出ているというふうに言われております。
 ガザは、恐らく外務大臣も一度ごらんになったことがあると思いますが、ガザじゃなくても、パレスチナ、どこも行けばわかるように、家々が林立しているところで、それこそロケット弾一発撃ち込めば、これはもうたくさんの人が死ぬということは明らかなわけですね。そこへこうした空撃、空爆による攻撃を行ったわけですが、それは、今までのせっかく進めてきたこの春以来の、大侵攻を何とかおさめてこれから和平へ持っていこうという動きをすべて否定するような動きであります。
 それに対して、直ちにヨーロッパは厳しい批判をいたしました。もちろん、アラファト議長も国際社会の沈黙に対してそれを批判しました。何と、アメリカの大統領もこれに対しては批判をしているんです。
 一体日本は、日本国政府として、例えば総理大臣とかあるいは外務大臣が、この問題に対してどのように第一に反応したか、それをお聞きしたい。
 そして、なぜそんなに、はっきり言えば、要するにきちっと対応できていないわけですよ。どうしてこんな問題、正義が関係する問題、そして我々が長年関係していたパレスチナの平和の問題、我々のその何十年にわたる蓄積を一瞬で放棄するような、そうした沈黙をされるのか、外務大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
川口国務大臣 事件が起こりましたのは七月二十三日の未明のことでございますけれども、これに対しては、本当に多くの市民の方が死亡または負傷をしたわけでございまして、大変に遺憾な事件だったと思います。
 外務省としましては、これにつきましては報道官の談話を出しておりまして、その遺憾の趣旨を伝えて、まさにパレスチナ人のイスラエルに対する憎悪をあおって、事態の改善には全く資さないということを言っております。
 今までずうっと、イスラエル、パレスチナの両当事者に対して、暴力の悪循環を断ち切るように働きかけを行ってきたわけでございまして、そういうことに対して最大限の自制を行うということが重要だということを呼びかけております。
 まさに国際社会で今平和に向かっての努力を開始しているところでございまして、パレスチナも改革を進め始めている、選挙のプログラムも出しているということで、我が国としては緊密に協力をして、この和平に向かっての国際社会の努力を支援し、協力をし、そしてパレスチナの改革が進むように、この会議も国際的な場で行われていますけれども、日本としては人も送っておりますし、そういった努力を支援するということを続けていきたいと思います。
 まさにイスラエルが最大限の自制を行使するということが大事な時期に、そうならなかったということは大変に遺憾だと思います。イスラエル政府に対しては、この旨の伝達を外交ルートを通して行っております。
首藤委員 外務大臣、この事件が二十四日に起こったとか、そんなことは言っていただかなくたって結構ですよ、そんなことは新聞に朝から晩まで載っているんだから。原稿をお読みになるのも結構ですよ。しかし、私は外務大臣としてのコメントを聞いているのですよ、この事件が起こって、どうしたか。
 イギリスのストロー外務大臣は、直ちにこのイスラエルのガザ空爆を非難。EU、欧州連合のソラナ共通外交・安保上級代表は、要するに外交の代表ですか、EUとしても正面切ってこれを批判した。アメリカも大統領が批判しました。なぜ、パレスチナでこんなに関係のある日本が、報道官の談話を出すんですか。
 一体、外務省とは何ですか、外務大臣とは何ですか、総理大臣とは何ですか、パレスチナ和平とは何ですか。私たちの先達が、パレスチナの中で、アラブ社会の中で、中東の中で、私たちが依存している石油を守るためにどんなに苦労して働いてきたか、おわかりになっているのですか。
 こんなことでは、憲法の前文に書いてあるように、私たちは国際社会において名誉ある地位を占めたいと思っている、名誉を失っていることばかりじゃないですか、外務省は。どうして、こういうことに、だれが考えてもおかしいということに対して直ちに手を打てなかったのですか。
 こんなことができなかったら、外務省改革なんかないですよ。外務省を改革するのじゃなくて、今問われているのは、外交を改革することですよ。今問われているのは、機密費とかそういう問題じゃなくて、冷戦後における日本の外交が問われているのですよ。このことを、もう時間もないから言っておきます。
 もう一つ、きょうは本当はたくさんあるのですが、私に与えられた時間は非常に少ない。
 私は、ここで、外務省改革の目玉としての民間人の大使登用に関して、ガイドラインをつくってくれ、公的な基準をつくってくれ、透明性を確保してくれということを再三再四にわたって言い続けました。そして、この外務委員会だけではなくて、外務委員会のあり方を討議する理事会においても、この問題をみんなで討議しようじゃないか、本人を呼んで聞こうじゃないか、そういうことを討議していました。
 しかし、その間に浅井大使はすぐ赴任してしまった。おかしいじゃないか、私はこう質問主意書に書きました。そして、きっとそれはどこかの事務方が、こういう我々が討議している場を外務省の送り出すところは全然知らなくて、ひょっとして全く知らないで送ってしまったのか、こういう間違いもあるかもしれない、こういうこともちょっと考えたわけであります。
 そこで、聞いたら、答弁書が来ました。まさに木で鼻をくくったような質問に対する答弁がずっと続きます。答えられません、答えられません、答えられません、答えられません、答弁を差し控えたい、こういうことがありますが、ここにこう書いてありますよ。「御指摘の参考人招致に関しては、衆議院外務委員会理事会において議論されていたことは承知していたが、外務省としては、浅井大使の赴任日程について、同理事会の理事に対し、情報提供を行う必要があるとは判断しなかった」。
 何ですか、これは。我々は一体何なんですか。外務委員会で、外務委員会の理事会で、この問題をしっかりいろいろ考えよう、いろいろな問題があるじゃないか、民間人登用の最初のケースだから真剣に考えようじゃないかと討議しているときに、外務省としては、主語は外務省ですよ、外務省としては同理事会の理事に対して何も教えなくていいんだ、こんなことをどうして外務省は言えるんですか。外務大臣、いかがですか。
川口国務大臣 浅井大使の任命についてでございますけれども、大使任命の基準の透明性ということについては、私はおっしゃるとおりだと思っていますので、基準については既に公表をさせていただいているわけでございます。
 そして、先般「変える会」の、一昨日ですけれども、報告書をいただいた折に、「変える会」としてこの点についてはさらなる……(首藤委員「質問に答えてください」と呼ぶ)という部分を質問だと思ったんですけれども。ということで、議論をすべきである、改善すべきだということでございましたので、外務省改革の趣旨を踏まえて、さらにこの基準については改革すべき点があるかどうか、これから検討をするということでございます。
 それから、浅井大使が出発をした日にちについて、答弁書で、質問主意書に対する答弁の中で、ちょっと具体的な文言は今記憶にありませんけれども、外務省としてはそれをお知らせする必要がないということであったということがおかしいということでございますけれども、これは、そのとき、この外務委員会の場で浅井大使についての御質問があったという経緯を踏まえれば、事前に首藤委員にはお知らせを申し上げておいた方が適切ではあったかもしれない、理事会で一言申し上げておけば、理事の方にお知らせをしておけば、その方がよかったかなということは思わないでもありませんけれども、ただ、外務省としてお知らせをすべき立場にはないという趣旨で、法的にそういうことではないという趣旨でそれは書かれたというふうに思います。
首藤委員 今外務大臣は、結局、理事会とかそんなのがあっても重要ではないんだ、そこで伝える必要はないと言っているんですよ。
 外務委員会、むだじゃないですか。外務委員会を運営する理事会はむだじゃないですか。外務大臣の国会軽視ですよ、それは。そのことをお聞きしているのですよ。外務大臣、いかがお考えですか。
川口国務大臣 私は、国会軽視を申し上げているわけでは全くございませんで、ですから、先ほど申し上げたのは、お伝えすればよかったということを申し上げているわけですけれども、ただ、だからといって伝えなければいけなかったか、質問主意書の答弁はそういうことで書かれているということを申し上げたということでございます。
 浅井大使が任命をされて、発令をされて、いつ出発をするかということについては、もちろん大使御自身の御都合もありますし、この件については、五月の一日ごろにもう前任の大使はガーナを離れていたということもあるわけでございまして、浅井大使が実際に現地に到着をしたのは六月の半ばであったということでございますから、この時期に出発をしなければいけないということは、浅井大使がお考えになってしたということでございます。
 冒頭申しましたように、私は、これについては、お伝えをした方がよかったのではないか、そういうことは思いますけれども、国会軽視をしているつもりは全くないということでございます。
首藤委員 これは国会軽視も甚だしいですよ。外務大臣は個人的にどう思われるか知らないけれども、ここに、答弁書に書いてあることは、私の質問主意書に書いてある回答は国会軽視以外の何物でもないということをはっきりお伝えしたいと思います。
 残念ながら時間はなくなりましたが、かように外務省は、今もう外交そのものが問われているんですよ。
 経済協力局長の問題に関しても、私は外務省に対してずっと批判的でした、しかしこんな勝手な人事は許されないですよ。日本のODA、世界から批判されているODAに関して、経済協力局長を、問題のある、企業との癒着が今問題となっている、その企業側のところから持ってくるなんということは許されないことですよ。これはまた別な機会で厳しく糾弾しますけれども。
 それに関しても、大臣は、何も知らない、閣議でやっていて、まだ何も決まっていない。冗談じゃないですよ。内定、内定、内定と新聞でみんな書いてあるんですよ。こういう二枚舌でやっていたら日本の外交は成立しない。このことが今回のパレスチナ問題に対する反応の薄さにもつながっているんです。
 以上をもって私の質問を終わります。
吉田委員長 次に、前田雄吉君。
前田委員 民主党の前田雄吉でございます。
 オゾン層を保護するために、一九八五年、オゾン層保護のためのウィーン条約が、また八七年にはオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書が作成されまして、各国の協調した取り組みにより、フロンを初めとするオゾン層破壊物質の生産の削減が進められてきたわけでございます。
 この中にありまして、環境NGOの存在というのは非常に重いものであると私は思います。例えば、脱フロンの家庭用冷蔵庫を開発しまして、これは業界や政府も不可能だとしていた案件でございます。それを開発しまして、国連の環境計画からオゾン層の保護賞を与えられたというのも環境NGOでございました。
 こうした環境NGOとの協力が今現在どのようにあるのか、また、オゾン層保護のために、これを国際的に推進するために環境NGOと今後どのように取り組まれるのか、お答えいただきたいと思います。
高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、環境問題の取り組みにおきましては、NGOや企業、それから地方公共団体など、市民社会の参画というものが極めて重要な意義を持っているというふうに考えております。
 オゾン層の保護の推進に当たりましても、NGO等との協力は非常に重要でありまして、先ほど委員御指摘のとおり、国際環境NGOでございますグリーンピースがドイツの企業に委託をいたしまして、オゾン層を破壊するフロンも使わず、温暖化を起こす代替フロンのHFCも使わない、いわゆる脱フロン冷蔵庫の開発に成功した例があるということは私どもも承知いたしております。また、我が国におきましても、昨年のフロン回収・破壊法の成立に際しまして、多くのNGOの方が活躍されたということも伺っております。
 国際的なオゾン層の保護の取り組みに当たりましては、我が国は、モントリオール議定書の多数国間基金によりまして、我が国の技術も活用しながら、途上国におきますオゾン層破壊物質の代替物質、さらには代替方法の開発等に協力をいたしているところでありますが、今後とも、NGOや企業の方たち、さらには広く市民社会とも連携をして、オゾン層の保護のための国際的な取り組みに積極的に参加していきたい、そういうふうに考えております。
前田委員 日本外交にとりまして、環境外交という言葉が非常に重要なものになってきているのではないか。その中におきまして、国際環境NGOの存在がますます重くなってきているのが現状であると私は思うんです。
 そこの中で、FoE Japanという国際環境NGOの指摘を受けまして、実際に私も調べたものがございます。これからその点について、大きく言いまして二点伺いたいと思っております。
 一つは、国際協力銀行の異議申し立て機関について、もう一つは、中国の紫坪鋪ダムへの円借款についてでございます。特に後段につきましては、私はこれはひどい話であるなというふうな感じをいたしております。
 これは何かと申しますと、ユネスコの世界文化遺産に登録されております四川省の都江堰という堰がございます。これは史記の時代から、史記にも書かれているような時代から二千二百年間、これは今現在も使っておりますかんがい施設でございます。この文化遺産が、ダムを建設することによって非常に危機的な状況にある。このダムは日本のODAによってつくられる、つまりは国民の税金によって世界の文化遺産を破壊してしまうことになるのではないか、私はそんな懸念を持ちまして、本日質問させていただきます。
 まず、JBICの異議申し立て機関についての話でございます。
 本年四月に、環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドラインが策定されております。このガイドラインというのは、意思決定前の案件についての情報公開や相手国での十分なコンサルテーションあるいは環境アセスメントの公開などを義務づけるものでありまして、このJBICが実施します円借款業務の質の改善に大変大きく貢献するものとして、私は期待しているものでございます。
 この新しいガイドラインの流れを受けて、ガイドラインの遵守を確保するために、異議申し立て機関の検討が今現在進められております。今後、さらにODA改革を進めていく上で、先般もODAの改革案を出されました、そして「変える会」でも最終答申が出されましたが、そうした中で、この社会環境問題に関する異議申し立て機関を設置することは非常に望ましいと私は考えますけれども、川口大臣、どのようにお考えでございましょうか。
川口国務大臣 開発と環境の両立、持続的開発の考え方というのは、言うまでもなく、今世界の常識であると私は思います。したがいまして、JBICがことしの四月にこういったガイドラインを考えたということについて非常に高く評価をしていますし、JBICのこの基準が、世界の、世銀やそういった機関の持っている環境の考え方に照らしても非常に進んだものであると私は理解をしています。
 そういった中で、ガイドラインの不遵守に関する異議申し立て、これについて、手続について今JBICの方で具体的な検討を進めていると理解をしていますし、パブリックコンサルテーションもこの過程で行った、あるいは行いつつあるというふうに理解をしています。このガイドラインの遵守を確保するために適切な異議申し立て制度が円滑に運用されるような形でできるということは、私は非常に意味のあることであると考えますし、このJBICの動きを注視したいと考えています。
前田委員 今外務大臣がおっしゃられましたように、この異議申し立て機関の設置に当たりまして、六月七日からコンサルテーションが始まっております。そこには市民、学識経験者、NGO、そして産業界の皆さんが集まっておられます。三回目の会合がきのうありまして、私もそこに出席させていただきました。真摯な議論が展開されまして、私も前回の議事録も読みましたけれども、産業界の方からやはり、中にはこの異議申し立て機関の設置に関して否定的な意見も出されておりました。
 外務大臣は、今回、経済協力局長に経済産業省の古田商務流通審議官の起用を発表されておられますけれども、この人事によってODAそのものが、質の向上や社会環境配慮よりも企業の利益を優先するようなことになりはしないかというような懸念も少しないわけではありません。これについて、どのようにお考えでございましょうか。
川口国務大臣 JBICの異議申し立てのプロセスがどういう形で決まっていくかということは、先ほど申しましたように、私の方としてはこれを注視しているということで、円滑に運用できるような形で決定されるということが大事なことだと思っています。
 それから、経済協力局長の人事について、前回も御質問がありましたけれども、これは新聞にはいろいろ書かれていますけれども、私は人事権者でございますので、人事権者の立場として、きちんとした手続をまだ経ないうちにそういうことになりましたということを申し上げることは、これは人事ですから全くできないということでございまして、したがいまして、これについては、具体的な案件については検討中でありますということを申し上げるしかないわけでございます。
 それを申し上げた上で、より一般的な形で申し上げたいと思いますけれども、私は、委員のおっしゃった、例えば経済産業省から経済協力局長に人が来るということになった場合に、それが決定されるということになった場合に、だからといってそれが、経済協力政策が企業寄りになるとかそういうことでは全くないと思うんですね。
 経済協力局長というのは、その出身がどこであれ、外務省の人間であれ民間の人間であれ、あるいはよその省庁であれ、経済協力局長として日本の国益にふさわしい判断をしていくということでありまして、そうでない人材を私は経済協力局長として任命をするということは全くしないわけでございます。
 何省出身だからどういう行動をとるだろうということでおっしゃられるのであれば、私もかつて、ある省に籍を置いたこともありますし、あるいは民間企業に籍を置いたこともあります。環境省に籍を置いたこともあります。それぞれの場合にそれぞれのポジションにふさわしい、そしてその立場で国益を考えて私は行動をしているつもりでございまして、例えば男だからこうであろう、女だからこうであろうというふうに人は人間を判断しないというのが通例であると私は思っております。
前田委員 では、ぜひその異議申し立て機関の設置に、それが後退することのないようにお願いいたします。
 社会環境ガイドラインの遵守を確保してODAの質を改善していく、この異議申し立て機関におきましては、私は、三つの点が重要であると思います。
 一つ目に、投融資部門や審査機能から独立した総裁直属の機関であること、二つ目には、常勤の外部からの専門委員を備えて、客観的な調査、勧告が行えるようにすること、三つ目に、プロセスにおいて十分な透明性とアカウンタビリティーを確保し得る、これが最低限求められると考えますけれども、ODA改革を進めるに当たって、この点について川口大臣はどのようにお考えになりますか。
川口国務大臣 おっしゃるように、透明性がある、それから説明責任が果たされているということは非常に大事であると考えております。
前田委員 投融資部門からの独立性に関してはいかがでございますか。
川口国務大臣 具体的にどういうポストに位置づけをされるかというのは組織の中の話でございますので、この件について、具体的な形としては何がいいかということを、外務大臣の立場でJBICに対して言うということは差し控えたいと思いますけれども、先ほど委員もおっしゃったように、私としても、透明性があり、独立して物事を判断することができ、そして説明責任を果たすことができるという形が望ましいと思います。
前田委員 では、次に、日本のODAによってユネスコの世界文化遺産が破壊される、この件について伺いたいと思います。中国の紫坪鋪ダムについてでございます。
 この円借款は二〇〇一年の三月に行われたものでありますけれども、中国四川省の紫坪鋪多目的ダム、これは国際的に非常に批判が上がっております。具体的に申しますと、先ほど申し上げたように、このダムのすぐ下流に、二〇〇〇年十二月にユネスコの世界遺産に指定されました都江堰という二千二百年間使われた堰があるわけでございます。
 こうした文化遺産を本当に破壊していいものかどうか。このダムの融資を決定する際に、代替案は考えられたのか。それから、この都江堰を保護、活用していくために、流域の植林あるいは都江堰の機能を補強する、あるいは支流の小規模な堰を建設するとか、そうした代替案が既に土木の専門家から出されていたというふうに私は調べましたけれども、この代替案よりも多目的ダムがよかった、それへ融資した、そうした理由はどこにあるんでしょうか。
西田政府参考人 お答えをいたします。
 委員が御質問の中国に対する円借、四川省の紫坪鋪水資源開発事業計画でありますが、この事業計画は、御案内のとおり、非常に逼迫をしております水の需給バランスを安定化して、河川の水質汚濁を軽減する、そのための環境用水あるいは生活、工業用水などを確保する、さらに洪水対策、発電という極めて多機能な機能を発揮させるために、この紫坪鋪多目的ダムの建設ということを行うものでございます。
 そういう意味で、四川省の岷江上流におきます極めて大規模、多目的な水資源開発というものが本来の目的となっているプロジェクトでございます。御指摘のとおり、総額で三百二十一億九千九百万円を上限とする円借款の供与を決定いたしております。
 本件の計画を選定するに当たりましては、平成十二年度、中国政府の方より円借の要請を受けまして、政府及び国際協力銀行の検討を経まして、平成十三年三月、交換公文及び借款契約を締結しております。
 その検討に当たりまして、JBICによる審査を行いまして、その中で、EIAの中で、この紫坪鋪多目的ダムの建設中及び完成後にあっても都江堰に重大な影響を及ぼすことはないとされていることを確認している次第でございます。
 また、御質問の代替案云々でございますが、中国側におきまして円借を要請してくる前の段階でどのような具体的検討がなされたかにつきましては詳細を承知しておりませんが、周辺の環境等にも配慮しながら、先ほど申し上げましたような水の需給バランスの安定化、河川の水質汚濁の軽減のための環境用水ないし生活、工業用水の確保、さらに洪水対策、発電を行うことで、四川省の岷江上流において水資源開発を行うためには本件計画が最適であるという判断に至ったものというふうに政府としては理解をしているところでございます。
前田委員 本当にユネスコの指定した世界文化遺産が守れるんですか。私は、政府が融資決定の際に、このユネスコの世界遺産が、都江堰がそこにあるという存在をしっかり認識してみえたのかどうか、外務大臣に伺いたいと思います。
川口国務大臣 これはきちんと認識をしておりまして、中国側の環境影響評価調査の結果も確認をしております。
前田委員 大臣、私も内容を伺いましたけれども、中国側の環境調査の結果の中に、リコメンデーションがありました。それは、これからこの堰の、都江堰の保護のために何らかの施策を打っていくことが大事だというような内容が入っていたというふうに伺っております。
 一方で世界遺産を保護するための支援を日本のODAでし、一方でこのような世界の遺産を破壊するようなことをやっていいんですか。私は、今回のこのダムの建設というのは、日本のODA政策のずさんさをあらわしたものであると思います。今後、日本政府としてどのように対応されるのか、伺いたいと思います。
西田政府参考人 お答えをいたします。
 このダムの、いわゆるユネスコの世界遺産であります都江堰に対する影響につきましての中国側の調査及びその結果を踏まえての政府としての判断は先ほど申し上げたとおりでありますが、委員御指摘のとおり、中国側のアセスメントにおきましても、具体的にとるべき種々の改善の措置というものが提言をされているところでございまして、私たちもこのような提言が実際にこれからとられていくということを強く期待をしておりますし、私たちの理解では、既に中国側においてはそのような検討を開始しているというふうに承知をしているところでございます。必要に応じまして、当然のことながら、モニタリング等、これからやっていくと考えております。
前田委員 私は、ぜひこの世界文化遺産を守らなきゃいけない、こうしたことをお願いいたしまして、本日の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
吉田委員長 次に、金子善次郎君。
金子(善)委員 民主党の金子善次郎でございます。
 外務省を変える会、七月二十二日でございますが、最終報告が出されました。昨年の松尾事件発覚以来でございますけれども、外務省の機能改革会議による提言に始まりまして、さまざまな提言がなされてまいりました。
 今回の報告書では、機構改革、人事制度あるいはODAの改革というものが提起されたと言われているわけでございます。私も拝見させていただきましたけれども、いろいろな問題に対する対応というような観点からが主であって、冷戦構造崩壊後の激動する国際情勢の中でいかなる方針を持って外交を進めていくかというような、基本的な認識というものが余り触れられていないように感じたわけであります。これは、一応私の思いをまず冒頭述べさせていただきたいと思います。
 そこで、今回の報告書でも、大使の起用について、三年以内に外務省以外からあるいはノンキャリアの方からそれぞれ二割登用する、つまり、四割の方はいわゆるキャリア以外の方を登用する考えだというようなことが提案なされております。これは一つの見識と申しますか考え方だと思いますが、要は、民間の方であろうが、外務省の出身であろうが、その人物次第であると私は思っているわけであります。
 そこで大臣にお伺いいたしますが、先ほども首藤議員の方から大臣に対して質問がございました浅井ガーナ大使についてでございますが、この浅井大使につきましては、さまざまな疑惑があるというようなことが当委員会でも指摘がなされてきたわけであります。それで、質問主意書という形でもう何回も回答を求めてきたというような経過があったわけであります。そういう中で、私は、少なくとも外務省として誠意ある対応をこの問題についてしてきたとはとても思えない。依然として隠ぺいする体質と申しますか、そういうものがあるのではないか。
 そこで大臣にお伺いしたいのですが、先ほど首藤議員の質問に対しまして、外務委員会の理事会の理事に対して、浅井大使の赴任と申しますか出発について事前に報告するというのが適当だったかもしれないという答弁をなされたわけです。でも、現実には、この質問主意書の回答はどう書いてあるか御存じですか。まずそれをお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 承知しております。
金子(善)委員 どう書いてあるか承知されていますかということをお聞きしているわけです。
川口国務大臣 ちょっと長くなりますけれども……(金子(善)委員「その部分だけで結構です」と呼ぶ)はい。「外務省において、前任の特命全権大使が同年五月一日に離任した後、在ガーナ日本国大使館を長期間にわたり特命全権大使不在の状態に置くことは適当ではないと判断したこと等による。」これは出発をしたことについてですけれども。「また、当時、御指摘の参考人招致については、衆議院外務委員会理事会において議論されていたことは承知していたが、外務省としては、浅井大使の赴任日程について、同理事会の理事に対し、情報提供を行う必要があるとは判断しなかったものである。」と。
金子(善)委員 大臣、今お読みになりまして、大臣がさっき答弁された内容と全く矛盾することを書いてある。日本語を読める人であれば、あるいは日本語を理解できる人であれば、大臣が言っていることとこの答弁書に書いてあることが違うなというふうに思うのは、これは普通の人であればだれだってそうだと思うんです。大臣、これはどう回答されますか。これは、内閣としての正式なものなんです。当然、外務大臣もこれの決裁に入っておられるというものだと思うんです。
 大臣、これはどういうふうに釈明されますか。情報提供を行う必要があると判断しなかったと。でも、先ほど大臣は、情報を提供することが適当だったかもしれない、でもしなかった、こういう答弁をなさったわけです。私は矛盾していると思うんですが、その点、どうなんでしょうか。本当に大臣、これはごらんになった上で、形式的なサインをしただけだったのではないか、そういうふうに恐れるわけですが、大臣、いかがですか。
川口国務大臣 私が今申し上げたのは、今の時点で申し上げているということでございます。この質問主意書の時点で、外務省として、大使がいつ赴任するかというのは、先ほど読みましたように、さまざまな事情、特にこの場合は前任大使が一カ月半前にもう離れていたということがあったわけでございまして、そういうことから、大使がいつ出発をするかという判断をした、浅井大使がしたということでございまして、それについて情報提供を行う必要があるという判断をしなかった、そういうことで、矛盾しているというふうに私は考えておりません。
金子(善)委員 大臣がどう抗弁しようと、私は、これは矛盾している国会答弁だというふうに強く指摘をしておきたいと思います。外務省のどういう力学で判断されたのかわかりませんけれども、少なくとも国会におきまして、外務委員会において、いろいろな形でこういう指摘があったという場合に、いろいろな問題が、その間も質問主意書という形で出ているわけですから、それが解決しない間に何の断りもなく出発させるということについては、私は、外務大臣の行動としては納得するのはなかなか難しいということを申し上げておきたいと思います。
 これだけにかかわっておられませんので、次の問題に入ります。
 昨日の閣議で、原口幸市氏を国連大使に発令されたということでございます。実は、この方が外務省の官房長をなさっているときに、一九九七年当時でございますが、機密費の問題が週刊誌において大きく取り上げられた。そういうときの官房長だったわけであります。十分な調査をしなかったために真相を明らかにできなかったというようなことで、それ以来、松尾元室長の詐取額が膨大な額に上っていったという事実があるわけなんですが、大臣はこのことは御存じですか。
川口国務大臣 原口大使が幾つかの事案について管理監督責任を問われて、過去において処分をされているということは承知しています。
金子(善)委員 こういうような外務省の一連の不祥事の問題、これは一九九七年に指摘をされていた、まさに隠ぺいする体質のもとでそのまま経過してきたという流れがあるわけなんです。外務省の「変える会」の改革にいたしましても、そこから出発しているわけなんです。こういう方を、処分をしました、そんな程度の話じゃないでしょう、大臣。そういう方を国連大使に任命する、本当にそれでよろしいのですか。
川口国務大臣 原口大使は、監督者といたしまして、幾つかのことについて処分をされたということでございます。その処分の後もジュネーブの大使をずっとやってきて、そして、その能力、識見、国際社会の評価等、この国連大使というポストにふさわしいという判断をいたしたわけでございます。
金子(善)委員 これまでも、外務省の処分については極めて甘いのではないかということを我々は指摘をしてまいりました。これは大分前の話でございますが、ただ、そのときも、一九九七年当時ですが、原口元官房長は、この問題について調査をしたという国会答弁を実はしているわけなんです。ところが、調査報告書というのはつくっていない。こういう流れになっているんです。恐らく、調査報告書をつくっていなかったことは大臣は承知していないと思うんです。
 ところが、外務省の文書管理規程というものがあることは御存じだと思いますが、その三条に「文書作成の義務」というものがあるんです。これは、こういういろいろな調査をした場合に報告書もつくらないというようなやり方、まあ、つくってしまえば、またそれが表に出てどうのこうのというようなことを恐れたのではないかと思いますけれども、こういうようなことは文書管理規程違反になるのではないかと私は思うのですが、大臣、いかがですか。
北島政府参考人 当時報告書が作成されたとは記憶しておりませんけれども、文書を作成する、しない、当時いろいろな判断があり得るわけですけれども、公表を目的とする報告書が絶えずつくられるということでは必ずしもないと思います。
金子(善)委員 いいかげんな答弁しないでもらいたい。外務省の問題について私は指摘をしているんです。よろしいですか。
 この間、防衛庁では例の情報公開要求者リスト作成問題で報告書というものをつくりまして、それが、国民に見せようとしなかったというようなことで大きな問題になりました。
 実は昨年の、当時は大臣をされていないわけですが、大臣もたしか御記憶にあると思います、在豪州大使館の元職員による公金横領疑惑。これは、当時の荒木元外務副大臣が調査会というものをつくりまして、調査をしたわけなんです。ところが、これも報告書をつくっていないわけなんです。わざわざ調査会をつくって、これは、つくってしまうといろいろな波及効果があるのではないかというような、そういうおそれ。これは、わざわざ税金を使って調査もしているというのは間違いないんです。しかも、外務省の文書管理規程をよく読みますと、文書をつくらなきゃならない、こういう規定がある。
 今、官房長は適当な答弁をしましたけれども、文書をつくらなくていい場合はどういう場合か知っていますか、あなたは。知っていますか、官房長。
北島政府参考人 私が申し上げたかったのは、いろいろな調査をする、ヒアリングを行う、そのヒアリングを行う際に、任意のヒアリングということで、それを出すことによって十分なヒアリングを行うことができないことがあるということを申し上げたかったわけであります。
金子(善)委員 要は、隠ぺい体質そのものだということを申し上げたいんです。大臣、どうですか、今お聞きになって。わざわざ調査会をつくって、調査に副大臣までが関係されて、それでいろいろなことが問題になったものですから、国会でも答弁をされているんです、調査会というものをつくってやると。でも、報告書をつくらない。こういう隠ぺいする体質みたいなものを我々は感じ取らざるを得ないわけですが、恐らくまた答弁はぼかした答弁になると思いますので。
 官房長、文書管理規程ぐらいよく勉強しておいてくださいよ。本当はおかしいんですよ。あなたたちが内部でつくった規程じゃないですか。自分たちがつくった規程にも従わないなんて、とんでもない話でしょう。
 では、時間の関係もありますので、次に進ませていただきます。
 水谷元デンバー総領事公金不正流用事件について質問をいたします。
 この事件も、早いもので発覚してもう一年になります。全容の解明と被害額の確定はできたんでしょうか。
北島政府参考人 お答え申し上げます。
 まず、国損額の確定ということでございますが、水谷元総領事によって行われた不適正経理の結果、これまでに発生した国損額は約四・一万ドルでございます。
 なお、水谷元総領事は、この国損額及びこれにかかる延滞金約二千ドルの合計約四・三万ドルの全額を既に国庫に返納しております。
 なお、元総領事の不適正経理のうち一番大きな総領事公邸の借り上げに関する不適正経理については、実は今後も国損が生じ得る状況にあるということがございます。すなわち、契約は今後とも七年間継続することとなっておりますけれども、契約変更がなされない限りは、元総領事の不適正経理によって、本来あるべき適正賃借料より毎年約一・一万ドル過大な借料が支払われ、同額の国損が生じるということとなります。その際には、当然のことながら元総領事に対し国損額の返納を求めることとなるということでございます。
 なお、年間賃借料を補正すること、それ自体については、家主側と交渉してきておりますけれども、これまでのところ実現できておりません。
 他方、元総領事は、今後年間賃借料が補正されない場合に発生する国損額についても、その全額約七・六万ドル、これを返済する意思を持っていまして、同額を既に預託しているということでございます。
金子(善)委員 そこでお伺いいたしますけれども、これは内部告発が実はあって、それをほうっておいたというようなことからいろいろ問題になったという経過もございました。言ってみれば内部チェックのミスだと思うんですが、その責任の問題。それと、これは刑事告発についてどうなんだということも再三これまで国会の場で質問等もされてまいったケースでございます。
 実は、植竹副大臣ですが、七月四日の定例記者会見で、この問題について、刑事告発等あるいは処分問題についてということだと思いますけれども、大臣が考えておられることですからコメントできないというような発言がなされました。
 川口大臣はどう考えておられるのかについて質問をしたいと思います。今官房長から、損害額あるいはこれからも水谷氏がその損害にわたる部分は何とかしていこうという流れだというような説明だったと思いますけれども、そもそも一年もかかって全体的な決着もつかないというのはいかがなものか、普通の国民では納得できないのではないかなと私は思うんですが、大臣、いかがですか。
川口国務大臣 これについては、きのう別な委員会で御質問がございましてお答えをしたところでございますけれども、私は、こういった事案について、告発をしないということを前提に検討しているということではないということでございます。
 ただ、するかしないかという判断をするに当たってはそれなりの、例えば、この元総領事の意思や行為が犯罪の構成要件に該当するのか否かといったようなことについて、捜査当局にも相談をしながら検討しているところでございまして、この件が、先ほど官房長が申しましたようなことで、法律関係の整理、確定のために時間がかかるというような要素があるということで時間がかかっているということでございますけれども、慎重に検討をした上で判断したいと私は思っております。
 それから、あわせて申し上げたいと思いますけれども、私は外務大臣になって以来そういうことを中で言っているわけですけれども、何か問題があったときに、できるだけ早くそれを公表して、そして再発をしないような、そういう手だてを講じるということが組織の改革ということの観点からは非常に重要だと私は考えております、という基本的な方針で行動をしているということで外務省の事務当局には話をしている、そういうことでございます。
金子(善)委員 これから早急に結論を出すという大臣の御答弁ですから、どういう形になるか注目をしてまいりたい、このように思います。
 それから、日露青年交流委員会の問題についてお伺いしたいと思います。
 昨日、二十三日に処分が発表されました。内規によります極めて甘い処分というふうに言わざるを得ないわけでございますが、私ども民主党の方から要求してございます、内容のわかる会計資料を提出してもらいたいということを言ってきているわけですが、いつ提出してもらえるんでしょうか。
齋藤政府参考人 お答えいたします。
 先生の方から、交流事業の招聘事業ごとの費用細目に関する資料を提出してほしいという御要請をかねてからいただいているわけでございます。
 それで、作業が大分時間がかかっているということ、大変申しわけなく思いますけれども、平成十三年度の下半期分九件、これは七十九件のうちの九件でございますが、これについては提出させていただいておりますけれども、十三年度の上半期分十四件につきまして、近々作業を終えて提出させていただけるものと思います。
 十一年度、十二年度分につきましては引き続き鋭意作業をしているところでございますが、決算報告書で出している整理の仕方と違った形で、事業ごとに精査するということに意外と時間がかかっているというのが実情でございまして、十一年度、十二年度の分につきましては、作業を終え次第出させていただきますが、いましばらくお時間をちょうだいしたいと思います。
金子(善)委員 だから、その辺の話を聞くと、本当に不思議な外務省の体質ということになってくるわけですよ。よろしいですか。二月から要求して、もう五カ月たっています。先日、処分をした。会計資料がまだはっきりしていないんです。会計資料もはっきりしないうちに処分をする、これは何かちょっとおかしいんじゃないか。今、大変だから調べられないというのが局長の答弁じゃないんですか。調べた上で、それでこういう結果だから処分をしましたというならばわかりますよ。処分はしました、会計の全体像はこれからです、これでは筋が通らないと思うんですが、大臣、いかがですか、その辺は。
川口国務大臣 委員の御要求の資料が、私が理解しておりますところでは、非常に細部まで含んだ資料であるというふうに聞いておりまして、したがいまして、処分に必要な情報は、そこまで細部のことをチェックしてということではございませんので、その細部であるということが時間がかかっているということだと私は理解しています。
金子(善)委員 それは、言葉は適切かどうか知りませんけれども、大臣の言葉にしては私はごまかし的な言葉だと言わざるを得ないと思います。それは指摘をしておきます。
 そこで、会計検査院に来ていただいていると思いますが、三月十三日、大分さきになりますけれども、この問題について調査をしますという会計検査院長の明言がございます。その後どんな調査をなさっておられるのか、お聞きをしたいと思います。
石野会計検査院当局者 外務省の拠出金につきましてはさまざまな問題が指摘されてきているところでございまして、今委員お話しのとおり、検査院としましても、鋭意その事実関係の把握、解明に努めているというところでございます。
 今回、日露青年交流委員会に関しまして外務省から調査結果が公表されたということでございまして、本院としましても、事実関係の確認をさらに行うとともに、外務省がこの委員会に対してどういった対応をとってきたのかというふうなことを検討した上で、外務省における問題点があるのかないのかということで整理いたしまして、検査結果という形で取りまとめていきたいというふうに考えております。
金子(善)委員 とにかく時間がかかるという感じです。それはきちっとしていただきたい、このように思います。
 もう一点お伺いしておきたいと思います。
 これは七月の十二日の外務委員会で大臣の方にも指摘をしたケースでございますが、例の松尾元室長に対する告発文、これは昨晩ですが、情報公開法の対象外だから出せない、これは大臣も了解済みだというような返答をいただきました。それは間違いございませんか。
川口国務大臣 間違いございません。
金子(善)委員 我々は、国会議員として、情報公開法に基づいて要求しているんじゃないんです。情報公開法の対象外だから出せません、そういう整理でよろしいんですか、外務省は。そんなばかなことはないでしょう。――いや、ちょっと待ってください。ばかなことはないということを言っただけの話であって。
 これは大臣、よく考えていただきたいと思いますが、この裁判はもう結審しちゃっているわけなんです。もう確定したわけなんです。それで、実際のところは我々もいずれ全部、本来の手続をとれば見られるようになるんです。これはどういうふうになっているかというと、法務省に確認しますと、判決が確定した後、裁判所から検察庁に訴訟記録が送付された後であれば告発文書についても提出できます、そういうふうに法務省の方から回答をいただいている。今の段階ではまだ裁判所の方から検察庁に訴訟記録が来ておりませんので。間もなく来ると思います。ですから我々は必ず見られるわけなんです。
 前は、裁判中だから出せないと言っていたんですよ。今度は、裁判が終わっちゃっても出せないと。しかも、今度、情報公開法の対象外だからと。情報公開法の対象外だったら国会の方には資料提出はできない、それでいいんですか、官房長。
北島政府参考人 情報公開法上のことを申し上げましたけれども、これは当該訴訟が訴訟中であるか否か、また起訴になったか否かにかかわらず、訴訟に関する書類に該当するということで、この文書は刑事訴訟法第五十三条の二において情報公開の適用除外の対象となると承知しているということなんですが、さらに、私ども思いますのは、当省がこの告発状の写しを保有しているわけですけれども、この告発状の中には、不公表を前提とした任意の事情聴取の結果が種々盛り込まれているということで、その文書の公表によって任意の事情聴取の結果が明らかになれば、今後省内の調査を行う際に対象職員その他の関係者より任意の協力が得ることが著しく困難になるということがございます。そうした観点からも、この文書の提出は差し控えたいということでございます。
金子(善)委員 とても納得できる説明とは思えません。外務省がそういうことでかたくなに拒否するわけですから、これはあれですが、これは本来からいうと、私は考え方が間違っているんじゃないかなと思います。
 最後に、時間がなくなったんですが、一問だけさせていただきたいと思います。
 残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約についてでございますが、発展途上国に対する的確な技術支援というものがこの分野では非常に重要なものになってくるというのがこの条約上の本来の趣旨と申しますか、流れになってくると思います。今後政府として具体的にどんな支援を行っていくかをお聞きしまして、私の質問を終わらせていただきます。
高橋政府参考人 途上国での残留性有機汚染物質対策促進のために、我が国はこれまでも、化学物質のリスク管理、それから環境中の有害微量化学物質の分析、ダイオキシン類の分析技術等に関しまして、開発途上国への専門家の派遣、それから研修生の受け入れといった技術協力を実施してきております。今後とも、この条約に基づきまして、各国の要請に基づきまして、かかる協力を継続していくという考えでございます。
 それからさらに、この条約におきましては、開発途上国に対しまして、この条約の実施に必要な資金等を援助するための資金供与の制度というものができることになっております。その詳細につきましては、この条約の発効後に開催される締約国会議で決定されるということになっておりますが、決定を見た上で、我が国は、この資金の制度を通じまして、途上国へのしかるべき資金協力を行っていく、そういうことでございます。
金子(善)委員 ありがとうございました。終わります。
吉田委員長 次に、土田龍司君。
土田委員 モントリオール議定書について幾つか質問させていただきます。
 まず、臭化メチルについてですが、この議定書は九七年に改正になって、二〇〇四年末には生産が全廃されるということでございます。この臭化メチルは、畑作地等の土壌の消毒や、あるいは穀物等の輸出入時の検疫や薫蒸に使われているわけでございますが、これらの用途の代替化はどうなっておりますか。
高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 野菜類の土壌病虫害の防除等に使用されております臭化メチルでございますが、モントリオール議定書におきまして、その生産量、消費量を段階的に削減いたしまして、二〇〇五年には全廃するということが決定されております。
 この決定に従いまして、我が国におきましては、平成八年以降、農林水産省を中心に、代替性や代替方法の開発を推進して転換を進め、生産量を段階的に削減しているというふうに承知いたしております。それから、在庫の管理につきましても、特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律に基づきまして、モントリオール議定書に沿った製造等の規制を行っております。
 本年におきましては、昨年と同様、基準年、一九九一年の五〇%まで適切に削減が行われているものと承知いたしております。
土田委員 次に、フロンの取引のことなんですが、この議定書は加盟国と非加盟国のフロン取引を禁じているわけでございますが、これは制限なき貿易を原則としているWTOに矛盾するといいますか、摩擦が生じているというふうに感じるわけですね。
 そこで、WTOは九五年の設立と同時に貿易と環境委員会というのを発足させて、国際環境条約をWTO協定に反映させる協議を続けてきているわけです。しかし、先進国と途上国との対立から、条文の改正問題がまだ決着がついておりません。今年度から開始される新ラウンドでも貿易と環境の問題が討議されることになっているわけでございますが、政府としましてはこの問題にどういった対応をしていくのか、これの見通しについて御説明ください。
林政府参考人 先生今御指摘になりました、非締約国との間の輸出入規制の問題につきましては、確かに、表面上、いわゆるガットの差別的な数量制限の禁止との整合性というものが問題になり得るわけでございます。
 ただ、この議定書、相当な普遍性を持って締結されておることでもおわかりのとおり、全世界的な観点から見て意義があるというふうに考えられておるところでございまして、ガットとの関係、法的な観点での整理といたしましては、この条約のそういう目的等にかんがみまして、ガットにおきます二十条に一般的な例外というのがございます。そこで、人、動植物等の生命、健康の保護のために必要な措置等の例外が定められており、そのことによりまして直ちにガット違反になるといったものではないという整理がなされておりまして、これがモントリオール議定書あるいはその改正が普遍的に支持されている文書で参っておるということで、そういう考え方、整理というものがなされているということであろうかと思います。
 それでは、今後のWTOにおける貿易と環境の問題というのは途上国あるいは先進国との関係においてどうするのかということについては、まさに御指摘のとおりでございまして、多数国間環境協定とWTOルールとの関係、あるいは多数国間の環境協定事務局とWTOとの間の情報交換の手続などについて、WTOにおきまして現在交渉が行われているところでございます。
 我が国としましては、貿易の自由化というものと環境保護の両立ということがやはり必要だということ、そのために貿易と環境の法体系の関係の明確化というものが重要であるということで、今後引き続き、WTOでの議論が今なされているところでございますので、この議論に積極的に参加してまいりたいというふうに考えております。
土田委員 残留性の条約の方についてお尋ねします。
 環境問題に関する取り組みということは非常に重要であると思うわけでございますが、環境NGOの件ですね。日本の場合は、会員、スタッフ及び資源が非常に脆弱である、あるいは全国及び都道府県レベルの評議会及び委員会への参加は限られているというような指摘を受けているわけでして、環境NGOの発展は非常に大事なことだというふうに私は思っております。
 そうした中で、社会あるいは政府がこういったNGOに対してサポートする、そういった体制をつくることが重要であると思っているわけですが、環境問題におけるNGOとの関係あるいはそのサポートについて、どういうふうに考えておられますか。
川口国務大臣 私は、環境大臣をしておりましたときから、環境NGOの方々との連携というのは非常に重要であると思って、実際にかなり頻繁に会合を一緒に持ってまいりました。そういう経験からいきましても、環境問題への取り組みについては、これからはまさに市民社会としての取り組み、環境NGOの方あるいは企業の人、地方公共団体といったものを入れて、その市民社会の参画が重要だと思っています。ODAの実施におきましても、そのために、従来からNGOとの連携を強化してきているわけです。
 八月の二十六日から南アフリカで持続可能な開発に関する世界首脳会議が開かれるわけですけれども、この会議に向けまして、外務省としてはNGO大使を任命いたしております。そして、バリでこの前準備会合が開かれましたけれども、その際には、この大使を中心に、NGOと活発な、かつ緊密な意見交換も行ってまいりました。今回、NGOの方に政府代表として参加をしていただくということで、今、関係方面と調整をしているところでございます。
 外務省としては、こうした環境問題への取り組みを一層推進する上での新しい協力の試みに、NGOを初めといたします市民の各層が参加をしていただいて、連携を密にしていくということに御協力をいただければというふうに思っています。
土田委員 次に、外務省改革のことについてお尋ねをします。
 外務省改革は直接の外交ではないわけですが、我が国の外交を遂行する上で極めて重要であるということは間違いありませんし、また、今回さまざまな問題が発生した。これについて、やはり足元をしっかりしなきゃならないということも間違いないわけです。
 これまで外務大臣は、意識改革と人事の問題、これをおっしゃいました。私もこの席で何度も指摘しました。外務省改革については、すぐに完成するわけじゃないわけですから、この外務委員会としましても、常日ごろ、やはり継続的に、こういった質疑を通して、外務大臣の意識や、あるいは進捗状況についても質問を続けていかなきゃならないというふうに私は思っているんです。ですから、この一年間、何回も何回もこの外務省改革について質問をいたしましたし、外務省についても、いろいろな組織を使って、そういったふうに取り組んでおられるわけでございます。
 ただ、大臣が就任されて半年ぐらいたったわけでございますが、その中でも、あるいはこの二、三カ月の中でも、さまざまな事件が発生しているわけですね。まず、瀋陽の副領事の対応。帽子を拾って官憲に渡すというような行為をしたとか、この事件に先立って、阿南大使がなるべく中に入れるなという指示をしたとか、あるいは、今回のロシアの問題でございますね。秘密裏に工事を始めて、プールやサウナ、テニスコートまで備えた新大使館を建設するということ。
 このようなことが、指摘されていなければ何もやらない。指摘されて初めて、それに対して何か答える。あるいは、意識が少し変わってきているんだったらば、このようなことが想定されるならば、設計変更だってできたわけですね。それについても何もやらない。みずからその設計変更をすることもないし、何もしない。あるいは、指摘されても、例えば高級ホテルのプールの名誉会員権をただでもらって、そういうことはどこでもやっているんだという話になってくる。
 つまり、こういった一連の数カ月の流れを見ていましても、意識改革についてはほとんど外務省は変わっていないんじゃないかなという気がしてならないんです。いろいろな事件が発生しても、ただじっとあらしが過ぎ去るのを待っているんじゃないか。大きな変革に対しては反対がたくさん出てくる。何かやろうとすると、前回と同じように、職を賭してまで反対する人が出てくる。いろいろな事件が発生しても、どこでもやっているじゃないかというふうに答弁をする人もいる。
 こういうことを考え合わせますと、大臣がおっしゃっているような意識改革というのはほど遠いんだなという感じがしてならないんですが、大臣は、こういったことについては今どういうふうに考えておられますか。
川口国務大臣 さまざまな改革の中で、意識改革というのは多分一番時間がかかることであろうと思います。さまざまな改革、例えば人事制度で競争をより導入をするとか、そういったことを入れていって、最後に、何年かたったときに、変わった、そういうことになるのが、これは外務省に限らず、組織の改革であると思います。
 私は、今委員が幾つかの例をお挙げになりましたけれども、決して外務省は、外から指摘をされない限りはカメのように首を引っ込めてあらしの過ぎるのを待っているという組織でもなければ、できるだけサボって、しばらくたてばまたもとに戻そうと思っているわけでもないと思います。
 一例を挙げれば、外務省の改革については、中で「変えよう!変わろう!外務省」という会合が自発的にできまして、さまざまな議論をし、報告も出し、この議論には二百人ぐらいの外務省の職員が参加をして、課長とか首席事務官とかそういうことは関係なく、みんな一丸となって改革を考えている。これは一つの例でございます。例は挙げませんけれども、私は、いろいろなところに外務省は変わってきたという手ごたえを今感じつつあるわけです。
 委員がおっしゃったように、この改革については、不断にこれをウオッチしていただくということは、非常に外務省としてもやりがいがありますので、ぜひしていただきたいと思いますけれども、「変える会」あるいは「変えよう!変わろう!外務省」のグループに対しても、私は改革の成り行きを見ていてほしいということを言っているわけでございます。
 外務省が変わってきつつあるという手ごたえを私は持っております。
土田委員 外務省タウンミーティングにおいて、前回、二回目が行われたわけでございますが、中国へのODAについて、あるいはODAの金額の削減について、大臣は、中国が平和で安定することは日本にとって重要である、砂漠緑化は黄砂対策など日本のためでもあるというふうな発言をされております。
 中国の平和と安定が我が国にとって極めて重要であるということはもちろん理解するわけでございますが、では、日本が中国に対するODAの予算を大幅に削減あるいはやめてしまった場合、中国の安定と平和に著しく障害が出てくるんでしょうか。
川口国務大臣 仮定のお話にお答えをするということは非常に難しいわけでございます。
 中国は、今国内でみずからの、WTOにも入りましたし、経済についても改革を進め、そして環境についても国の基本政策として掲げ、さまざまな努力をしているわけでございまして、我が国として中国に支援をしていくということは重要なことだと私は考えております。
土田委員 決して仮定のことでなくて、中国の平和と安定に我が国のODAの支援が資しているというわけですから、それを削減したり、あるいはやめたりすれば不安定になるという理屈になるのは当然のことでございます。
 あるいはまた、中国に対して、前回私はこの場で質問をさせていただきましたが、ODA大綱に矛盾しているじゃないかということについても、大臣は、全体としてはそうじゃないんだ、合っているんだというふうなことを言われております。しかし、やはり国民の中にはさまざまな中国に対しての批判があるのはもう当然のことでございまして、中国がこの十数年間非常に高い経済成長率を誇っている、あるいは、軍事支出も実質的にはアメリカに次いで第二位になるような、非常に軍事大国を目指しているような部分がある、あるいは、援助を受けていながらほかの国にも援助するぐらいの実力を最近持ってきている、そういった国にODAの援助をするということがいいかという疑問が国民の中にあるわけです。
 この議論に関して、もうこの辺のことについてはどっちかというとやめまして、そういうことは十分承知した上で、むしろ中国の方から、もう結構ですと言われるようにならなきゃならないと思うんです。そこは中国のメンツを立てながら、日本からの援助についてはもう結構ですと言われるぐらいの、友好なうちに、ODA予算を削るなりあるいはやめるなりしていくような方法の方が、むしろ外交的にはやりやすいのかな、あるいは自然なのかなという感じがしますけれども、それについてはどうでしょうか。
川口国務大臣 まず、DACの基準で、援助をする基準というのがございますけれども、それでいきますと、無償協力の場合に、国民一人当たりの国民所得千五百ドル以下、そして有償の借款の場合は三千ドル以下という国際的な基準についての考え方があるわけでございますけれども、中国の一人当たりの国民所得は、大体、私の記憶が正しければ六百から七百ドル、そういう状況にある国であるということでございます。
 中国に対するODAについてさまざまな意見が国内にあるということは私も十分に承知をしております。
 まず、中国については、先ほど申しましたように、また委員も御賛同いただきましたように、中国が安定して発展していって、日中間に安定的な友好関係があるということは、これは重要なことであるわけです。そして、我が国としては、ODA大綱を踏まえて、中国の援助需要や経済社会の状況や日中間の関係、こういったことを総合的に考えて経済協力を実施しているということでございます。
 中国については、昨年の十月、いろいろ国内にある意見を踏まえまして、対中国経済協力計画というものをつくっておりまして、今これに基づいて一件一件精査をいたしまして実施をしているという状況でございます。
 大綱との関係ということもおっしゃられているわけでございますけれども、中国のみずからがやっている援助そして軍事力の強化といったようなことについては、中国に対して透明性を上げるようにという働きかけを随時行っておりまして、大綱の四つの柱との関連でいえば、特に問題があるというふうに考えているわけではないということです。
土田委員 以上で終わります。
吉田委員長 次に、松本善明君。
    〔委員長退席、中川(正)委員長代理着席〕
松本(善)委員 条約に入ります前に、大臣に、昨日沖縄で起こった被弾事件について伺いたいと思います。
 わずか二メートル先に銃弾が来た島袋さん、土煙に命の危険を感じて逃げ出したということですが、「次の弾に撃ち抜かれると思い、無我夢中だった。あんな怖い思いは初めてだ。もうあの畑で作業する気になれない」というようなことを語っておられることが報道をされております。
 このキャンプ・シュワブでは、今まで五件のこのような事件が起こっております。数久田というこの地域では三回目です。こういうことで、沖縄の県民全体が怒りに包まれているというような状態になっていると思います。
 こういう事故が起こるたびごとに、米軍は安全性を確認するまで訓練を中止するといって発表して、その後また同じように訓練が再開されて、事故が繰り返される。米軍側の言う安全性というのは空手形となっているということが沖縄県民の常識になっています。
 もうここまでこういうことになってきますと、これは訓練場としてやめる、それ以外にない。私どもは基地全体の撤去も言っていますけれども、少なくもこの事件の対応とすれば、もうこのキャンプ・シュワブで実弾演習はやめる、こういうふうにさせなければならないと思いますが、外務大臣、どのようにおやりになるおつもりですか。
川口国務大臣 今委員がおっしゃった事案が昨日あったということでございまして、この件を受けまして、昨日の午後、橋本沖縄担当大使からラーセン四軍調整官代理に対しまして、この件の事実関係の確認について米軍の全面的な協力を要請するとともに、この件の原因が究明されるまでは近傍での演習を中止してもらいたいという旨の要請を行いました。
 これに対しまして、先方から、この件の事実関係の確認については全面的に協力をする、現在キャンプ・シュワブの司令官及び専門家を名護市に派遣をしていて、事実関係の確認に協力をしているところである、原因が判明するまでは訓練を中止するという旨の応答がございました。
 それから、やはり同じく昨日の午後、藤崎北米局長からクリステンソン在京アメリカ大使館臨時代理大使に対しまして、仮にこの件が米軍によるものであれば大変に遺憾であると言わざるを得ない、事実関係を究明して、これが判明するまでは訓練を中止すること、また、この件が米軍によるものであれば必要な再発防止策をとるように申し入れをしたわけでございます。
 これに対しては、先方から、訓練は既に中止をされていると承知をしている、この件についての事実関係を究明する、仮に本件が米軍によものであれば大変に遺憾であって、必要な再発防止策をとりたい、そういう旨の応答があったわけでございます。
松本(善)委員 当然のことでありますけれども、先ほど申しましたように、いつもそういう対応になるわけです、米軍は、アメリカ政府は。そして、それがしばらくたってほとぼりが冷めてから、また再開される。こういうことがキャンプ・シュワブだけでもう何回も起こっているということになりますと、やはり訓練場としてやめると。もともとこれは日本の土地なんですから、どっちが主人公なんだということになるわけですよ。
 もちろん、調査をして原因を確かめても、これは米軍以外にはないと思います。それはもう今から予測されることで、むしろ、こういう事態が何回も何回も起こっているということについて、外務大臣はそのままでいいのかと。今までと同じ対応ではならぬはずです。空手形ではなくて、やはり訓練をこの地域ではもうやめるということをアメリカと折衝する考えはありませんか。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、本件については早急に原因の究明をするということが大事でありまして、米軍が今それについては協力をしてくれているということでございます。
 外務省としては、できるだけ早くこの原因究明ができるように、この件をきちんとウオッチをしていきたい、そういうふうに考えております。この事態の進展状況については大きな関心を持っております。
松本(善)委員 訓練場を廃止する、やめるということも視野に入れて検討しますか。
川口国務大臣 原因究明をきちんとするということがまず一番大事な事項だと考えております。
松本(善)委員 私は、それだけでは到底、沖縄の県民の怒りを抑えることは絶対できない、また、これは日本の国民全体が取り組まなければならぬ問題になってきていると思います。
 それとのかかわりで、私はお聞きしたいと思いますのは、全国知事会が地位協定を改定するということを決議しました。日米地位協定の改定を決議して、政府に、米軍基地に起因する環境問題や米軍人による事件、事故などから国民の生活と権利を守るために、日米地位協定の抜本的見直しを要望しています。この条約でもPCBの問題がありますし、それから、前回の委員会でもアメリカ兵の受刑者の待遇問題も取り上げました。
 この知事会議では、沖縄の知事が最初に発言をして口火を切ったわけですけれども、その発言の中には、宮城県知事が、独立国という観点から見ると現協定は屈辱的な内容だ、高知県知事は、日本は米国の属国ではない、地位協定に縛られている現状は見直すべきだなどの発言。全国知事会の会長は土屋氏でありまして、党派を超えて、全国民の総意が、このままの基地の現状は許さないというのが知事会にあらわれてきているんだと思う。そういう声をどう受けとめているか。私は、今の外務大臣の御答弁では到底これは全国民の納得を得ることはできないと思います。
 沖縄の問題については、さらに、基地の訓練場の撤去ということを考えるかどうか、考えないというのか。先ほど私は、はっきり、その点を視野に入れて考えるかということをお聞きしましたにもかかわらず、それについてはお答えにならなかった。それは考えないということか。
 それからもう一つ、全国知事会が地位協定の改定を政府に要望しているのに対してどういうふうにこたえるのか、その点お聞きをしたいと思います。
川口国務大臣 全国の知事会が沖縄で開かれて、委員がおっしゃられたような決議があったということについては承知をいたしております。
 日米地位協定についての考え方でございますけれども、従前より申し上げておりますように、地位協定というのは、その時々の問題に効果的に対応するということのためには、運用の改善をやっていくということがより効果的であるというふうに考えておりまして、その効果が十分でないと考えられる場合には、これは相手もございますけれども、地位協定の改正も視野に入れていくということが従前よりの政府の考え方でございます。
松本(善)委員 もし日本が属国でないならば、これらの起こっている沖縄の問題でありますとか、あるいはアメリカ兵の受刑者の待遇の問題でありますとか、あるいは低空飛行の問題でありますとか、そういうような日本側の困っている問題、基地があるために日本国民の生活と権利が脅かされている問題について解決するような要求を地位協定に入れる、そういう対等の立場のものに変えるということが必要だというふうに考えませんか。外務大臣に伺いたい。
川口国務大臣 運用の改善に努力をしてまいりたいと存じます。
松本(善)委員 運用ではだめだということが、今回のキャンプ・シュワブの、頻発する事件ではっきりしているわけです。
 私は、条約についても同じような問題があるので伺おうと思います。
 残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約第三条の一項、「締約国は、次のことを行う。」(a)項は、「次のことを禁止し、又は廃絶するために必要な法的措置及び行政措置をとること。」ということで、あと、いろいろな有害物質の対処を決めております。
 米軍基地内についても、我が国政府は責任を持ってこの条約の、廃絶というような法的措置をとりますか。
林政府参考人 委員御指摘の、本条約の三条におきます物質の製造、使用、輸出入等の禁止、廃絶のために必要な措置につきましては、我が国におきましては化審法、廃掃法、あるいはPCB特措法等の国内法令によりましてこれを実施していくという形になりますけれども、米軍の施設・区域におきましても、これらの法律を含む日本の国内法令が属地的には適用されているということは御案内のとおりでございます。そういう意味におきまして、もとより、米軍施設・区域の存在します区域、これは我が国の領域でございますから、そこにおきましてこれは適用されるということでございます。
 我が国の同意を得て我が国の領域内にございます米軍につきましては、従来から申し上げておりますとおり、一般国際法上、我が国の法令を尊重する義務というものがございますので、米軍がこれらの法律も尊重し、その結果として、施設・区域内においてもこの条約の趣旨が実態上確保される、そういう仕組みになろうかと思います。
松本(善)委員 外務省は、二〇〇〇年七月に、在日米軍基地全体のPCB含有物質の総量が四百四十トンだ、そのうち、バーゼル条約で移動が禁止をされている五〇ppm以上のPCB廃棄物は百五十トンあるということを明らかにしましたが、それから二年間、アメリカ政府はこのPCBの廃棄物の処理のためにどういうことをやりましたか。
藤崎政府参考人 お答え申し上げます。
 今委員御指摘のとおり、二〇〇〇年に、外務省は、在京米大使館とともに、在日米軍施設・区域のPCB廃棄物につきまして発表を行ったわけでございますが、その際に、総量で四百四十トン、相模総合補給廠に百五十トンということを明らかにしたわけでございます。
 これにつきましては、米側からの情報提供を受けて明らかにしたわけでございますが、その後、二〇〇〇年の九月に、日米間で環境原則に関する共同発表というのを、国務長官、国防長官、我が方外務大臣、防衛庁長官の間で作成いたしまして、環境問題についての取り組みを強化するということにいたした次第でございます。この手続に従いまして、日米合同委員会のもとで、PCB廃棄物の保管等につきまして、適正にこれを行うようということを申し入れてきているというところでございます。
松本(善)委員 外務大臣、二年前に、四百四十トン、そして、特に有害な五〇ppm以上のPCB廃棄物百五十トン、これはどうなりましたかということを聞いているのに、今のような答弁なんですよ。
 もう一回確認しましょうか。一言だけでいい。それが減っていますか。一言で、減っていなければ減っていない、わからなければわからないと。
藤崎政府参考人 今数字がどうなっているかということについての御質問でございますけれども、これにつきましては、当該廃棄物に関する情報につき米側に照会を行っているというところでございます。現時点で、今委員がお話しになった以上のことを私の方で御説明できるものは有しておりません。
松本(善)委員 外務大臣、こういう現状なんですよ。七、八年ずっと、アメリカ側の回答は、適切に処理をしているということだけだ。これは、日本の法律を尊重するということでやっているというだけです。やはり日本の法律を基地内にもきちっと適用するというように地位協定を変えなければ、この問題だって解決しないです。運用の改善ということで、答弁はそれに決まっているんですよ。
 それから、PCBの問題でいえば、適切に処理をしているということを米軍が言うだけなんです。基地内で日本政府が条約の履行は義務づけられているんですよ、このストックホルム条約にしても。これは条約上の義務は果たせないじゃないですか。外務大臣、そう思いませんか。
川口国務大臣 米軍には、一般国際法上、日本の法律を尊重する義務がございまして、そのように適切に対応してくれているものと考えております。
松本(善)委員 その答弁では、これは沖縄の県民の怒りも静まりませんし、それから全国知事会で決議をした地位協定の見直しというものにも背を向けるという政府の態度だということをはっきり言うのと同じです。
 先ほど来、地位協定の見直しについての知事会の話をいたしましたけれども、私どもとは全く立場の違う方々が、この地位協定を変えなければだめだ、属国だ、屈辱的だというようなことまで言われる知事さんも出ているのですよ。その事態について、全国知事会の決定したことを国民の総意とは思いませんか。それは無視して今までどおりでいいんだ、こういうふうに思っているのですか。外務大臣の見解を聞きたいと思います。
    〔中川(正)委員長代理退席、委員長着席〕
川口国務大臣 知事会の決議は決議として受けとめさせていただいております。
松本(善)委員 外務大臣のそういう御答弁では、私は、日本の国民は、沖縄県民のみならず、だれも納得しないと思います。
 やはり、厳重な反省、そして政府部内でこの問題についてきちっと真っ正面から受けとめて、態度を変えるように強く要求して、質問を終わります。
吉田委員長 次に、東門美津子君。
東門委員 私も、条約に入ります前に、今共産党の松本委員からもありましたが、昨日のキャンプ・シュワブの近傍での、流れ弾というふうになっていますが、その件についてお伺いしたいと思います。
 自分の畑で安心して作業ができない。事件、事故、いろいろなものが本当に次から次へと起こりますねと先日も自民党の委員の方に言われましたけれども、そのとおりなんですよ、沖縄は。一つの事件が起こる、あるいは事故が起こる、その処理も終わらないうちに次のが起こってくる、そういう状況です。これが沖縄の現実だということをしっかりとわかっていただきたい。本当にわかっておられるのかなという思いで毎回この場に立っております。
 昨日の昼過ぎ、名護市のパイナップル畑で農作業をしていた島袋哲男さんのわずか二メートルの至近距離に、長さ六センチ、直径約一センチの銃弾が着弾した。当日は、現場から約四キロ離れた米軍の射撃練習場で米海兵隊が射撃訓練を実施しており、そこからの流れ弾だと思われます。
 先ほどもありましたけれども、島袋さんは、あんな怖い思いは初めてだ、もうあの畑で作業する気にはなれないと述べ、また、沖縄県の基地対策室長は、現場を見れば米軍の弾であることはほぼ間違いない、地域の住民は戦場の中で生活していると述べたと報道されております。
 政府は、この事態をどのように認識しておられるのか。米軍に対して原因の究明と再発防止、それを申し入れることで県民向けに体面を繕うだけで、何の改善も行わないまま沖縄での米軍の射撃訓練を続けさせるつもりなのかどうか。そこからまずお聞きしたいと思います。
藤崎政府参考人 今委員から御指摘のございました昨日の事件でございますけれども、これは私どもとしても大変重大なことというふうに受けとめているわけでございます。
 したがいまして、先ほど大臣からも御答弁ございましたように、直ちに橋本沖縄担当大使がラーセン四軍調整官代理に申し入れましたし、私の方からも臨時代理大使に申し入れた次第でございます。
 したがいまして、私どもとしては、これは大変重要なことというふうに受けとめているわけでございます。
東門委員 質問には全然答えずに、ただ、重要だと受けとめておると。
 私が聞きましたのは、何の改善も行わないままに沖縄での米軍の射撃訓練を続けさせるつもりですかと伺ったんですよ。経過はいいんです。私は全部知っています。ちゃんと読みました。
藤崎政府参考人 失礼いたしました。
 したがいまして、私、きのう在京米臨時代理大使に申し入れをいたしました際に、仮に本件が米軍によるということが判明するのであれば、大変遺憾であり、再発防止をするということがぜひとも必要である、再発防止策をとるようにということを申し入れまして、先方も同様に、もしこれが米軍によるものであれば遺憾なので、再発防止策をとりたいということでございます。
 ただ、再発防止策の内容について、まだこの時点におきまして日米間で議論は行っておりません。
東門委員 今回は幸いにも人の生命身体に直接の被害はありませんでしたが、一歩間違えれば大惨事になっていた、そういうことはだれの目にも明らかです。看過することはできません。
 那覇防衛施設局と外務省沖縄事務所は、原因が明らかになるまで射撃訓練を中止するよう米軍に要請し、米側もこれを受け入れ、訓練を中止するとのことですが、それだけではほんの一時しのぎにすぎない、根本的な解決にはならないということは、だれの目にも明らかなはずなんですよ。
 問題の本質は、狭い沖縄に余りにも多くの基地があり、余りにも多くの米兵が存在している、そういうことなんです。軍隊に訓練はつきものでしょうが、狭い沖縄であれだけ多くの米軍が訓練を行うことは物理的に不可能であり、ことしの米国会計検査院の報告でも、沖縄の演習場の狭さなど、制約が多いことを認めています。そのような状況でも、なお現状のまま沖縄の米軍基地を存続させようとするから、必然的にこのような事故が起こるわけです。
 被害者が出てからでは手おくれですよ。政府が本当に住民の命の大切さを考えているなら、在沖縄米軍の大幅な整理縮小を米国に申し入れるべきですが、申し入れる気があるのかないのか、そこをぜひお聞かせいただきたいと思います。これは大臣の方にお願いします。
川口国務大臣 私は、これがもし事実、米軍によるものであるということであれば、非常に遺憾なことだと思っております。そして、そういうことであれば、再発防止策をとる必要があると考えております。
東門委員 事件、事故が起こるたびに、外務省の答弁は、原因の徹底究明と再発防止策、もう一つ出てくるのは教育の強化、大体そういうものなんですが、これまで変わっていますか。再発していませんか。原因は全部公表されていますか。何もやられていないじゃないですか。だから、次から次に起こると最初に申し上げたじゃないですか。
 もう、仮にということではないと思います。キャンプ・シュワブの演習場のところで沖縄の県民が、日本人がそういうことをしますでしょうか。まずないはずなんですよ。ただし、これは政府の立場として仮にとおっしゃらなきゃいけないというのはわからないわけではありませんが、余りにも他人事のような対応にしか私には見えません。ですから、沖縄県民の怒り、政府に対する不信感というのはずっと大きく増幅していくわけですよ。そこをわかっていただきたいと思います。
 政府、外務省、大臣が本当に沖縄県民の心、声を受けとめて、米軍に対してしっかりと対応されることを、私は強く強く希望しておきたいと思います。
 条約もどうしてもやらなきゃいけないと思いますので、二点ほど質問させていただきます。石破先生がここできっと怒るでしょうから。
 まず最初に、残留性有機汚染物質条約について、ただし、これは在日米軍のPCBの廃棄物問題について、先ほど松本委員からもありましたけれども、私もその点についてお伺いしたいと思います。
 PCBをめぐっては、九九年の二月、神奈川県相模総合補給廠に大量のPCB廃棄物が保管されていることが判明し、翌二〇〇〇年三月、米軍は同廃棄物をカナダに向けて搬出しましたが、環境保護団体等の抗議もあって日本に引き返し、五月に米領ウェーク島に搬出するという出来事がありました。
 同年六月の発表によれば、在日米軍施設におけるPCB含有物質の総量は四百四十トンに上り、そのうち、平成十二年末までに九十五トンが廃棄物となるとのことでした。
 現在、日米地位協定により米軍に対する我が国の国内法の適用はありませんが、米軍は我が国の国内法を尊重することとなっています。特に環境問題については、日米の関連法令のうちより厳しい基準を選択するとの方針のもとで作成される日本環境管理基準に従って米軍の取り組みがなされると承知しております。
 そこで、現在、在日米軍施設・区域において、どれだけの量のPCB含有物、廃棄物が使用または保管されているのか、そこをお伺いしたいと思います。
藤崎政府参考人 今御質問の件につきましては、今委員が御指摘のとおり、二〇〇〇年の六月に米側より情報提供を受けまして数字を明らかにした次第でございます。
 その後、新しい情報がある場合には、米側に新たな情報提供を行うようにということで照会を行っておりますけれども、現時点におきましては、先ほど御答弁いたしましたように、新たな情報を私どもとして持ち合わせているわけではございません。したがいまして、平成十二年六月の御説明のとおりの状況でございます。
東門委員 平成十二年九月に、日米安全保障協議委員会、いわゆる2プラス2において、環境原則に関する共同発表が出されました。これは先ほど局長の答弁にもありましたが、それは引き続いて米軍等に適切な保管、情報提供を要請するとしておりますが、それ以降、必ずしも状況が進展しているとは見受けられません。
 共同発表が出された平成十二年九月以降、政府は在日米軍の保有するPCB廃棄物の管理、処理のためにどのような対応あるいは要請をしてこられたのか、まず確認をしたいと思います。
藤崎政府参考人 お答え申し上げます。
 二〇〇〇年九月の環境原則の発表後でございますけれども、これまで極めて不定期的に行われておりました環境に関する合同委員会のもとの作業部会というのを定例的にやっていこうということで、これを定期化いたしました。そして、このPCB廃棄物の問題を含めまして、引き続き、日米間で適切な保管等のために話し合いを行っていくということにしているわけでございます。
 逐一、どの会合で今まで何をし、これから何をしていくかということにつきましては御説明できませんけれども、環境問題につきましてこれまで以上に重要な意識を双方で持って、安全かつ適切な環境が図られるよう話し合いを進めていくということで、これは私ども、環境省等も含めまして、政府全体で力を入れて取り組んでいるところでございます。
東門委員 話し合いをしているということは了解したとしましても、では、これは私たち国民がどのようにしてわかるのでしょうか。こういうことが進展していますよという公表もしなければ、報道もなされなければ私たちはわかりませんね。これはぜひ、そういう環境に関する合同委員会の作業部会での中身はしっかりとわかるような形で出していただきたいと思います。
 常に外務省は言われているじゃないですか。何もかもふたを閉めてしまう、隠してしまうからおかしいんだと。それだと思います。環境問題も同じだと思います。
 次に、モントリオール議定書の関連で、新規のオゾン層破壊物質の問題について伺います。
 オゾン層を破壊する可能性があるとして、既に規制対象とされた物質に加えて、さらに新たな物質を規制対象にすることが検討されているとのことです。新規のオゾン層破壊物質がこのように次々に発見されるということは、他方で、これまでのオゾン層回復予測の信頼性を傷つけることにもなりかねないと思いますが、現状においてオゾン層回復予測がどのようになっているのか、御説明をお願いしたいと思います。
岡澤政府参考人 オゾン層破壊の将来予測につきましては、世界気象機関、WMOと国連環境計画、UNEPが共同で見積もったものがございます。
 それによりますと、オゾン層破壊物質の濃度としては、多分、既に頭を打ったというふうに言われていますが、今後徐々に減少いたしまして、二〇五〇年ごろには一九八〇年レベルに戻るだろう。それによりますオゾン層破壊の影響でございますが、これはまだタイムラグがございまして、二〇二〇年ぐらいまではピークを打つ可能性があるというふうに言われております。それから先は徐々に減少して、回復するだろうということでございます。
東門委員 わかりました。ありがとうございました。
 次に、米軍基地のタクシーの件について、通告してありますので、お伺いいたします。
 ベースタクシーの問題に関しまして、十九日の本委員会において北米局長は、食堂、社交クラブ、その他の施設についても、米軍人、軍属、家族の利用に供するため設置されるものであり、それにより料金を徴収するのがそもそも歳出外諸機関の考え方であるという旨の答弁をされましたが、地位協定第十五条の食堂、社交クラブなどが行っていることと、エクスチェンジサービスが行っていることとは全然違います。これらの食堂、社交クラブが料金を徴収する相手は米軍人、軍属、家族です。
 そして、例えば食堂において食材を仕入れる場合、十五条機関である食堂が食材の納入業者に対し食材の代金を支払うはずであり、食材を納入させてやるから納入料を支払えなどとは言わないはずです。エクスチェンジサービスにとってタクシー会社は、食堂にとっての食材の納入業者と同じ位置づけであり、エクスチェンジサービスが料金を徴収すべき相手は、タクシーを利用したい米軍人、軍属、家族のはずなんですよ。
 それなのにタクシー会社から入構料を徴収するなどというのは、これは常識で考えておかしいとは思わないのか、とても不思議です。理解に苦しんでおります。もう一度、北米局長、答弁をお願いします。
藤崎政府参考人 このベースタクシーの問題でございますけれども、これは大変調査がおくれておりまして、申しわけございません。実は、私どもの方からも沖縄に参りまして、エクスチェンジサービスと昨日も協議をいたしまして、実態関係を明らかにしようとしているところでございます。同時に、各軍における実情につきましても再度確認をしているところでございます。
 現時点で私どもが得ている情報では、これはあくまで現時点ということでお聞き願いたいのでございますが、入構するだけでお金を取るということではございませんで、基地の中で営業する、今まさに言われましたベースタクシーという形になりますと、個別契約を結んでいるということのようでございます。
 これにつきましても、各基地においてどういう実態になっているのか、嘉手納と嘉手納以外の区域等につきまして今調べているところでございまして、具体的に今一体何が行われているのかということについて、もうしばらく時間をいただいて、きちんと御説明できるようにしたいと思っておりますが、この地位協定十五条ということでございますると、これは、今委員がまさに前回の答弁を御引用いただきましたとおり、私どもは考えているところでございます。
東門委員 私は全然解釈が間違っていると思います。北米局、専門の方にそういうのを申し上げるのは本当はおかしいかもしれませんが、全然納得がいかないんですよ、サービスを受ける側、提供する側の関係からしても。私はもう一度、そこのところをしっかりと次の機会に伺いたいと思います。
 今、嘉手納基地あるいはほかの基地は調査中だというお話でしたけれども、沖縄県以外での米軍基地での入構料徴収の有無はどうなんでしょうか。本土の基地はどうなんでしょうか。これはもう済みましたか、調査は。イエスかノーだけで。
藤崎政府参考人 ノーということです。
東門委員 それもまだですか。わかりました。
 大臣、私はこの委員会で三回くらい同じような質問を、やりとりをしてきたわけですが、この時点で、いかがでしょうか。
 今回のベースタクシー、これは調査はまだ終わっていない。あきれるばかりのスローさなんですが、何でこんなにスローなのか、わかりません。たとえ調査の結果はまだ出ていなくても、私、前回も申し上げました。本土の三カ所の基地はチェックいたしました。入構料は徴収してはいないというお返事をしっかりいただいております。
 そういう中で、本当にこういう事態、地位協定の十五条あるいは三条がつながっていると言うんですが、それも理解できないんですが、それは百歩譲って北米局長の意見に従うとしても、いかがなんでしょうか。沖縄だけでベースタクシーが入構料を支払わなければならない、支払っているという現実があります。事実なんです。それに対して、大臣、どのようにお考えか。
川口国務大臣 現在調査を行っておりますので、その調査の結果を見て考えたいと思います。
東門委員 時間なので終わりますが、ただ、外務省、北米局長、もっとてきぱきとお仕事をしていただいて、本当に県民の目に見える形で、わかる形で公表していただきたいと思います。
 ありがとうございました。
吉田委員長 御苦労さまでした。
 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
吉田委員長 これより各件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 まず、オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書の改正(締約国の第九回会合において採択されたもの)の受諾について承認を求めるの件について採決をいたします。
 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
吉田委員長 起立総員であります。よって、本件は承認すべきものと決しました。
 次に、オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書の改正の受諾について承認を求めるの件について採決をいたします。
 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
吉田委員長 起立総員であります。よって、本件は承認すべきものと決しました。
 次に、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。
 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
吉田委員長 起立総員であります。よって、本件は承認すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決をいたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
吉田委員長 次回は、来る七月二十六日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時四十四分散会


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