衆議院

メインへスキップ



第2号 平成14年11月1日(金曜日)

会議録本文へ
平成十四年十一月一日(金曜日)
    午前九時三十一分開議
 出席委員
   委員長 池田 元久君
   理事 今村 雅弘君 理事 河野 太郎君
   理事 水野 賢一君 理事 首藤 信彦君
   理事 中川 正春君 理事 上田  勇君
   理事 藤島 正之君
      伊藤 公介君    植竹 繁雄君
      高村 正彦君    下地 幹郎君
      新藤 義孝君    高木  毅君
      武部  勤君    福井  照君
      松宮  勲君    宮澤 洋一君
      森岡 正宏君    山本 明彦君
      吉野 正芳君    伊藤 英成君
      金子善次郎君    桑原  豊君
      前田 雄吉君    吉田 公一君
      丸谷 佳織君    松本 善明君
      東門美津子君    小池百合子君
      松浪健四郎君    鹿野 道彦君
      柿澤 弘治君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   外務副大臣        茂木 敏充君
   外務大臣政務官      新藤 義孝君
   政府参考人
   (内閣官房内閣参事官)  井上  進君
   政府参考人
   (内閣官房内閣参事官)  岡田  隆君
   政府参考人
   (警察庁警備局長)    奥村萬壽雄君
   政府参考人
   (防衛施設庁施設部長)  大古 和雄君
   政府参考人
   (防衛施設庁建設部長)  生澤  守君
   政府参考人
   (法務省入国管理局長)  増田 暢也君
   政府参考人
   (外務省大臣官房参事官) 齋木 昭隆君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            田中  均君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    海老原 紳君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局長
   )            安藤 裕康君
   外務委員会専門員     辻本  甫君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月一日
 辞任         補欠選任
  植竹 繁雄君     福井  照君
  土屋 品子君     吉野 正芳君
  中本 太衛君     森岡 正宏君
  松浪健四郎君     小池百合子君
同日
 辞任         補欠選任
  福井  照君     植竹 繁雄君
  森岡 正宏君     高木  毅君
  吉野 正芳君     山本 明彦君
  小池百合子君     松浪健四郎君
同日
 辞任         補欠選任
  高木  毅君     中本 太衛君
  山本 明彦君     土屋 品子君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 国際情勢に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
池田委員長 これより会議を開きます。
 国際情勢に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房参事官齋木昭隆君、外務省アジア大洋州局長田中均君、外務省北米局長海老原紳君、内閣官房内閣参事官井上進君、内閣官房内閣参事官岡田隆君、警察庁警備局長奥村萬壽雄君、防衛施設庁施設部長大古和雄君、防衛施設庁建設部長生澤守君、法務省入国管理局長増田暢也君、それぞれの出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
池田委員長 御異議なしと認めます。よって、決定いたしました。
    ―――――――――――――
池田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。藤島正之君。
藤島委員 きょうは北朝鮮関係に関する集中審議ということで、私もその点について質疑をさせていただきます。
 まず、私は実は新潟県の柏崎市の生まれで育ったわけでありまして、被害家族のうちの蓮池さんと奥土さん、この実家は、今まだ私の実家があるんですけれども、そこから車で五分もかからないところでありまして、私ももちろん両方訪問はしているんです。また、実は蓮池さんは私と同じ大学のほんのちょっと後輩に当たるものですから、本当に他人事ではない、私自身ももし間違っていたら拉致されていたかもしれぬ、そんなこともありまして、この問題については非常に重大な関心を抱いておりまして、超党派の拉致議連にも入って活動してきたわけでありますが、きょうはそんなことを踏まえて質問させていただきたいと思います。
 今回のクアラルンプールの会議は、第一回目ということで具体的な結論は得られていないわけですけれども、私は、最近にない、外務省らしい、本当にいい意味での外務省の活動を見たような感じがして、実は気持ちは少し、最近ずっと外務省を攻撃する質問ばかりしていたんですけれども、そういう意味で非常にすかっとしたようなところがあるんです。残念ながら、鈴木さんもおっしゃるように、結論は全然得られていない、入り口であるということでやむを得ない面はあると思いますが、報道される内容を見ますと、かなり一生懸命やってもらったな、国民もそういう意味で納得しているんじゃないかなという感じがしております。
 内容についてですけれども、鈴木大使もちょっとおっしゃっているように、波長が何か合わないといいますか、相手の方は原則論といいますか基本姿勢を繰り返すばかりで、当事者能力が欠如していたんじゃないかな、そんなふうにも見られるわけですが、外務大臣はその辺、どのようにごらんになっておりますか。
川口国務大臣 今回の交渉につきましては、これは日本及び世界にとっても重要な問題でございますので、今外務省を挙げて取り組んでいるところでございます。
 今回の交渉については、拉致の被害者のお子さん方あるいは家族の方の帰国についてきちんと日取りを確定できなかったという意味では非常に残念でございますけれども、日本として、日本が主張すべきことについてはきちっと主張していたということだと思います。
 相手の方の能力というお話がございましたけれども、どの交渉も、交渉の前に、それは我が国もそうですけれども、政府の中で対処方針というのがありまして、その範囲の中で交渉するということでございますので、相手の方個人の能力云々という話では全くなくて、これはその政府の方針がそうであったということだと思います。
 いずれにいたしましても、これは交渉の第一回目でございますので、粘り強く交渉は進めていきたいと考えております。
藤島委員 私も、鄭大使が、必ずしも個人の問題だと思っているわけじゃないので、マンデートが非常に狭かったんじゃないかなというふうな感じを持っている、こういうことでありますけれども。
 それにしましても、北朝鮮はこれまで、拉致問題にしても核問題にしてもあるいは不審船問題にしても、全く否定しておったのが急に百八十度変わる、そういった国であるものですから、やはり今回の問題についても、一歩一歩着実にやっていかないとどこに落とし穴があるかわからないということを踏まえてこれからやっていっていただきたい、こう実は思うわけであります。
 次に、実は平壌宣言、今ここにあるんですけれども、パラグラフ二のところに経済関係のことを最初に詳しく書いてありまして、拉致問題については、御承知のように次の三のところに、拉致という言葉もないわけでありまして、非常に抽象的に書いてある。これが今回の交渉に当たって非常に足かせといいますか、順序の点について、北朝鮮側はこの順序が違っているというようなことで、経済問題を先にやるべきじゃないか、こんなふうなことをかなり強調していたようなんですが、その点については外務大臣はどういうふうに考えていますか。
茂木副大臣 委員御案内のとおり、日朝平壌宣言の中でも、経済協力についてはあくまで国交正常化後に実施される、このように明記をされているわけであります。同時に、平壌宣言に書いてあります項目そのものが優先順位をあらわすものではない、こんなふうに私は理解をいたしております。
 また、今回の日朝国交正常化交渉、委員の方からも御評価をいただいたわけでありますが、そこで北朝鮮側が、御指摘のとおり、正常化それ自体、さらに経済協力が中核的な問題だ、このように主張してきたのは事実でありますが、その一方で、日本側の方から、強くこの拉致問題、そして核問題を含んだ安全保障問題、これが優先問題だ、こういう主張をさせていただきまして、実際この二日間の協議の中で、大半の時間がこの拉致そして核を含めた安全保障問題に費やされた、こういう点も御指摘をさせていただきたいと思います。
藤島委員 必ずしも順番が重要性の順番でないこともある、それはもうわかるんですけれども、やはり私が申し上げたいのは、この平壌宣言を書くとき、少し小泉総理の腰が引けている部分がこういう順序になってあらわれている、それが今度の交渉にウエートの置き方でかなり影響が出てきているんじゃないか、こう思うから申し上げているわけであります。
 一般的に言えば、重要なことから順番に書いていくというのが通常なわけですから、そういう意味で、やはりかなり足かせになった部分が交渉の出先としてあったんじゃないか。そういうようなものに対して、私は、鈴木大使以下、齋木さんも一生懸命頑張ったなという感じは実はしておるわけですけれども、やはり基本的な宣言みたいなものはその先のことを考えてきちっとつくっていくべきだ、これを申し上げておきたいところであります。
 それから、今回決裂しているわけですけれども、やはり一般で言われているように、今回の交渉が中断して困るのは北朝鮮の側であって、日本は困ることはないんじゃないかというふうに思うわけですが、その点、外務大臣はどういうふうに認識していますか。
川口国務大臣 この交渉につきましては、私どもは、当然、平壌宣言に従って、誠実に、粘り強く交渉を進めていくということでございます。
 それで、この交渉が中断をするとかしないとか、今後いろいろな展開はあると思いますけれども、それを事前に、そうした方がいいとか、そうでない方がいいとか、そういうことではないと思います。
 この交渉を行っていくということの意義は、もちろん、日本が持っている北朝鮮との間にあるさまざまな懸念に対応するための交渉のチャネルがあるという意味で重要ですけれども、世界全体としても、まさに北朝鮮を国際社会に引っ張り出すということのために大事な対話のチャネルであるということでございます。
 我々は今後、会談において、交渉において、主張すべきは主張し、毅然としてやっていくつもりでございますけれども、中断をすることがどちらにとってメリットであるかという観点からではなくて、これは日本及び世界にとって重要な会談でありますので、その成果を得るために交渉を粘り強くやっていくということでございまして、過程ではいろいろ、山あり谷ありということはあると思っています。
藤島委員 当然、会談が中断してメリットがあるということはないのでありますけれども、どちらが困るかといったらば、北朝鮮であって、我が国ではないんじゃないか。
 これは、なぜこういうことを言うかといいますと、今後の交渉において大変なスタンスの差になって出てくるわけですね。ですから、ここのところをもう一回答弁していただきたいと思うんです。
川口国務大臣 北朝鮮側が国交正常化をするということに非常にメリットを持っている、それが我々のてこであるということは、おっしゃるとおりだと思います。
 ただ、私どもも、平壌宣言に従って、誠実に、粘り強く交渉をやっていくという立場でおりまして、問題の解決を交渉を通じてやっていきたいと思っております。
藤島委員 何回も同じことを言ってもあれなんですけれども、平壌宣言に従って誠実にやる、それはもちろん当然なんですけれども、要するに、これが中断してどちらの方が困るかというのは、認識としてはっきりしておかないと今後の交渉がきちっとできないと私は思うから申し上げているんです。
 そこをもう一度答弁してください。
川口国務大臣 委員のおっしゃるような認識というのは、当然にあると思います。
藤島委員 それで結構なんですけれどもね。
 それから次に、これが大分問題になっているようなんですけれども、ピョンヤンでいろいろ交渉していたときかどうかわかりませんけれども、拉致家族について一時帰国ということになっているんですが、その一時帰国という言葉がいいかどうかわかりませんけれども、五人について必ず北朝鮮に返す、こういう約束があったのかどうか。北朝鮮が、これがはっきりあって、これの約束違反だということをかなりしつこく何回も言っているようなんですけれども、この約束があったのかないのか、これをイエスかノーかではっきりお答えください。
田中政府参考人 事実関係を御説明させていただきます。
 御案内のように、北朝鮮側は、これは金正日国防委員長もそうでございますが、拉致を認め、謝罪をし、家族、本人、生存者の方々の永住帰国あるいは一時帰国ということについて便宜を図ります、こういうことでございました。それが約束だと思います。生存者五名の方の帰国については、政府としてはできるだけ早くこれを実現させたい、こういう気持ちから北朝鮮側に引き続き働きかけを行っていたということでございまして、先方との間では滞在期間を一、二週間とすることで調整をした、こういう経緯はございます。この点は今までも御説明をしておるところでございます。
 しかしながら、今の、生存者の五名の方が帰られて、家族とお会いになって相談をされる、そういう中で、御本人の状況とか御家族の御意向、こういうものを総合的に勘案すれば、これはもともと拉致という話でございますから、五人の拉致被害者の方々が家族を含めて自由な意思決定を行うための環境を設定するべきである、したがって、特に家族全員の日本への帰国が不可欠である、こういう認識になりました。したがって、帰国した当時とは事情が全く変化をしたということでございます。
藤島委員 どうも今のお答えでは、返すという約束があったかないか、ここは必ずしもはっきりしていないようですね。向こう側はそういうふうに約束に受け取った、しかしこちらの方は必ずしもそういう約束ではないということなんですか。
田中政府参考人 北朝鮮側がこれをどういう口実に使って何を言うかというのは別だと思います。
 私どもの認識というのは、まさにこれは日程の調整ということでございまして、一、二週間ということで日程を調整したということは事実でございますが、その後、生存者がお帰りになって、その状況であるとか、それから、まさに二十四年間強制の中で過ごされてきた方々ですから、当然のことながらその状況をおもんぱかる必要もあり、政府として、やはりこれは日本に引き続きいていただいて、そこで家族が日本に来られて、それで自由な環境をつくるというのが適切である、こういう判断をしたわけでございます。それを北朝鮮が約束云々というのは、私は当たらないというふうに思います。
藤島委員 一たん来られて、そのとき帰るか帰らないかは各本人の判断だと最初言っておったところ、だんだんいろいろ事情も変わってきて、これは、そういう自由な意思で決められればいいんですけれども、現実にはそうではないということで、今回政府の意思で返さないというふうに決めたことは、私は非常にいいことだと実は思うのですね。政府も、そういった、政府としての、国家としての意思を毅然として、きちっとやっていくべきであるということで、今回の措置としては非常にいいことだし、今後も、この件については本人の意思、本人の意思といっても現実によく考えてやらないといけないので、国家としてきちっとそこは判断をしていかないかぬ、そういうことだというふうに思います。
 それから、毅然とした態度で交渉されたのはいいんですけれども、このような状態がずっと続いていきますと、一番困るのはやはり被害者の家族の方なんですね。鈴木大使は、帰ってこられてから、次回の国交正常化交渉を待たず、さまざまなチャンネルを通じて、一歩でも二歩でも進めるよう努力する、こういうふうにおっしゃっているわけですが、さまざまなチャンネルというのは、被害家族や国民に対するリップサービスで言ってもらっても困るので、具体的にはどういうチャンネルがあるのか、考えられるのか、これをお答えいただきたいと思います。
茂木副大臣 拉致被害者の御家族の皆さんの帰国につきましては、先ほど大臣の方からも答弁させていただき、また委員の方からも御指摘いただきましたように、何にしても粘り強く、そして毅然とした態度で今後の交渉に臨んでいきたい。
 さまざまなチャネルという話でありますが、例えば中国の北京の大使館であったり、いろいろなものが考えられると思います。何にしても、有効なもの、有用なものはみんな使っていく、こんな思いでおりますが、ではこれから具体的にどのチャネルが有効であるか、そういうことを検討した上で進められるものは早く進める、こういう姿勢で臨んでいきたい、こんなふうに考えております。
藤島委員 具体的にといっても、余り明かしちゃいけないのかわかりませんけれども、北京にある大使館同士だけでやるというんじゃ、さまざまなチャンネルということで、被害者の家族に気を持たせるようなことになりはせぬかという感じがするものですから、そこはこれ以上聞いてもお答えできないのかもわかりませんけれども、ともかくやれるチャンネルは何でも全部使ってやってもらわないと、どんどん長引いて困るのは本当に被害者の家族なわけですから、被害者の家族の気持ちを十分酌んだ上で、単なるリップサービスに終わらないようにしっかりやっていただきたい、こう思うわけでございます。
 この件に関して、第二次調査団については、先方とはどういう話になっておるんですか。
田中政府参考人 クアラルンプールの正常化交渉におきまして、日本側の方から、これまでの第一次の調査団の調査結果に基づくいろいろな不明点、疑問点、これは家族の皆様からもいただいている疑問点あるいは警察当局と御相談をして取りまとめた疑問点、こういうものもございますけれども、これを先方に文書の形で渡しまして、できるだけ早急な回答を得たいという要求をいたしました。これに対して先方は、関係機関に伝えてできるだけ速やかに返事をする、こういうことでございました。
 私どもとしては、そういう彼らの回答、そういうものも含めて、必要な時期に調査団の派遣ということを考えてまいりたいというふうに思います。
藤島委員 ぜひ調査団を派遣してはっきりさせていただきたい、こう思います。
 それから、今回の交渉で北朝鮮側は、家族の安全に心配はない、こう言ったというんですが、この内容といいますかニュアンスといいますか、そういうことは、もし言えるようだったら言っていただきたいと思います。
田中政府参考人 今回の交渉におきまして、日本側から、五名の被害者の方につき、その家族を含めて自由な意思決定を行える環境の設定が不可欠である、そういう基本的な考え方のもとで、当面、その安全の確保及び早期帰国と帰国日程の確定を求めたということでございます。
 これに対して北朝鮮側は、拉致問題については金正日国防委員長がその存在を認め、謝罪をし、再発防止を約束した上できちんと誠実に対応をしてきた、この問題はきれいに解決する意思があるが、約束どおり被害者五名が一たん北朝鮮に戻り、事情を全く知らない子供と話すことが問題のスムーズな解決につながる、帰国は被害者本人及びその家族の意思によるべきものである、この問題を政治的に利用する考えはなく、被害者の家族の安全については心配する必要はない、こういうことを述べたということでございます。
藤島委員 要するに、一種のいわば人質にとられているようなものなんですね。非常に心配なわけです。今のお答えだけでは必ずしもはっきりしないんですけれども、交渉に残された家族の安全を使うことがないということははっきりしておるようでございますが、その点についてはきちっとしておかないと、やはり今日本におられる家族が一番心配しておられるのはそこですから。全くいわば人質そのものになるわけで、だから、そこのところを私も北朝鮮の考え方がちょっとわからないんですけれども、本人が希望するのなら帰してもいいと言っていながら、もう一回蒸し返すように、一たん帰ってきてから話をしろというのは、単に交渉のカードとして、もう少ないカードの中の一つとして使っているにすぎないような感じはするんですけれども、いずれにしても、家族の安全が第一であるということをよく考えて今後交渉に当たっていただきたい、こう思います。
 それから、不明者八人についてはどういうふうな話になっておるんでございましょうか。
田中政府参考人 この点につきましては、先ほども御答弁を申し上げましたけれども、先般の第一次調査団の結果、いろいろ矛盾点であるとか疑問点であるとか、特に生死にかかわる情報、死亡原因とされていること、あるいは生活の経緯等について、非常に不明な点かつ疑問点が多い。これを、御家族の御質問、警察当局との打ち合わせその他も踏まえて、具体的な質問事項、調査事項として先方に提示をしたということでございまして、先方は、関係機関に図った上でできるだけ早く回答ができるように努力をします、こういうことでございました。
藤島委員 元気でおられる方はいいんですけれども、むしろ、生死がはっきりしていない、本当は生きているのかもしれませんけれども、こちらの方も同じように本当は重要なわけですね。今マスコミは、帰ってこられている家族の方に焦点を当てているんですけれども、本当は不明な方がむしろ多いんじゃないかという気がしますので。
 昨日も我が自由党の参議院の平野委員の方から公安調査庁の方に、ほかにこういう関係はないのかというのに対して、公安調査庁の方は、まだかなりあるようだ、しかし、どれぐらいの数あるか等については今の段階ではお答えできない、このような答弁をしているんですが、外務省においては、大臣、どういうふうにこの点を考えておりますか。
川口国務大臣 今回の拉致事件との関係で、今生存していることがはっきりしていない方あるいは拉致をされた可能性が非常に高いと思われる方の、御本人はもとより御家族の方は、一連のこの過程を見ながら、非常に心の中ではつらい思いをしていらっしゃると私も思います。
 この方々について、政府としては、これはこの前官房長官も政府の方針を発表する中でおっしゃっていたと思いますけれども、この方々が一体どうなったのかということについて、相手、北朝鮮に対してこれをきちんと解明を求めていく、これは大変に重要な基本的な政府の持つべき姿勢であると思います。外務省も、この方向で最善の、最大の努力をする考えでおります。
藤島委員 ぜひ、最大の努力をしていただきたいと思います。
 それから、曽我ひとみさんの夫の訴追の件でございますね。これについて、免除してもらうようにという要請が御本人からあったと思うんですけれども、外務省としては、今これをどういうふうに扱って、今後どういうふうにしようと思っておるんでしょうか。
茂木副大臣 曽我ひとみさんの御主人とされますジェンキンス氏の訪日に際しましての取り扱いにつきましては、既に米国側との間で意見交換を行っているところであります。ただ、意見交換の内容につきましては、こういった問題の取り扱い方、私よりも委員の方が専門家ではないかな、こんなふうに思う点もあるわけでありますけれども、本件をめぐります米国との関係、さらに、我が国とまさに交渉を進めております北朝鮮との話し合い、これに及ぼし得る影響、そしてまた御本人、御家族のお立場等々考えまして、この内容については差し控えさせていただきたいな、こんなふうに思っております。
 ただ、いずれにいたしましても、ジェンキンス氏の帰国につきましては、本人及び御家族の皆さんの御意向を踏まえて今後検討していきたいと思っております。
藤島委員 細かい内容については、この性質上オープンにはできないと思いますけれども、今の答弁ではきちっと米国政府と交渉しておるということでございますので、ぜひきちっと解決するようにお願いしたいと思います。
 それから、最後になりますけれども、被害者家族の現在の生活、今後の生計、生活、あるいは精神的ケアの問題、これについては、私は、もともとこの問題は国家としてきちっとやらにゃいかぬ、国民の生命にかかわるものだったわけですから全面的な責任がある、こういうふうに思っております。
 昨日、私の郷里の柏崎の西川市長も上京されて、内閣府の方にこの点を陳情といいますか要請されたようですけれども、この点についての外務大臣のきちっとした意思と内閣府の国家の責任としての今後の考え方について、最後にお伺いしたいと思います。
川口国務大臣 委員がおっしゃいますように、この帰国をされている方々が、これから日本の社会に適応してきちんと生活をしていくことができるような、そういう対応を政府としてやっていくということは非常にこれも重要なことだと思います。であるがゆえに、まさにこの問題は閣僚会議を政府の中でつくり、政府全体の問題として取り扱う、そういうことで考えております。
井上政府参考人 先月二十四日、政府は、拉致被害者の五人の方々については今後とも日本に滞在していただき、また、現地に残っておられる家族については、その安全の確保及び早期帰国等の確定を北朝鮮に対して強く求めるなどの基本方針を策定いたしました。
 このような状況のもとで、被害者の方々とその家族が、我が国の社会に溶け込んで、安んじて生活のできる環境をつくっていくことが急務であり、政府や関係自治体が密接に連携協力しながら一体となって支援を行っていくということが必要であると考えております。
 このような認識に基づきまして、今般、拉致問題に関する専門幹事会におきまして、総合的な支援策を検討し、取りまとめることと決定したところでありまして、今後、関係地方自治体と密接に連携協力しながらきめの細かい支援を行っていきたい、こういうふうに考えております。
藤島委員 強く要請して、質問を終わります。
池田委員長 次に、上田勇君。
上田(勇)委員 おはようございます。
 川口大臣、連日の委員会でまことに御苦労さまでございます。
 きょうは、先日行われました日朝国交正常化交渉の集中審議でございますけれども、本題に入る前に一つだけ、ちょっと防衛施設庁に厚木基地の騒音問題についてお伺いをしたいというふうに思います。
 つい先日、横浜地裁で第三次訴訟の判決が言い渡されまして、国は、その内容に異議があるとして控訴いたしました。司法判断が出るまでには今後相当な期間を要するというふうに考えられる意味では、大変残念なことではありますけれども、この間、周辺住民はやはり騒音の被害を相変わらず受けているわけでありまして、また、これまで第一次、第二次の騒音訴訟においても国の損害賠償責任が認定され、確定しているわけであります。また、訴訟に参加していない大多数の住民の方々もひとしく被害を受けているわけであります。
 こうしたことを考えますと、国として、こうした司法の場での対応とは別に、この騒音対策については万全を期していただきたい。特に、本年七月の飛行場周辺における環境整備の在り方に関する懇談会の報告書も出ているところでございますので、これらの着実な実施を含めまして全力を挙げて取り組んでいただきたいというふうに思いますが、御見解を伺いたいと思います。
大古政府参考人 防衛施設庁の方からお答えいたします。
 厚木飛行場周辺における航空機騒音問題につきましては、周辺住民の方々にとって深刻な問題があるということは十分認識しておりまして、これまで音源対策といたしましては、いわゆるNLPをでき得る限り多く硫黄島で実施するよう米側に要請したところでございます。これにつきましては、本年一月、米側の了解を得たところでございます。
 他方の騒音対策につきましては、厚木飛行場周辺の住宅防音工事に関しまして、従来から当庁の周辺対策の重点施策としてその促進を図ってきておりますけれども、当初から防音工事を希望していた世帯につきましては、平成十三年度においてほぼ完了したという状況でございます。
 また、昨年三月から五月にかけまして、厚木飛行場周辺の住民の方からアンケートをいただきまして、この結果を踏まえまして、一定の住宅につきまして、本年度から、従来の個室単位ではなく住宅全体を対象とする外郭防音工事を実施しているところでございます。今後もその充実に努めてまいりたいと考えております。
 さらに、先ほど先生の方から御指摘がありました有識者の懇談会、本年七月に答申をいただいておりまして、防衛施設庁といたしましては、この懇談会の提言を踏まえまして、飛行場周辺の住民の方々の負担を軽減するための新たな施策といたしまして、住宅防音工事の一環として太陽光発電システムの設置を推進するというふうなことを今後考えてまいりたいというふうに考えております。
上田(勇)委員 ぜひ万全を期していただきたいということを再度お願い申し上げます。
 それでは、日朝問題について質問させていただきますが、二日間にわたる日朝正常化交渉におきまして、我が国としては優先課題と位置づけておりました拉致問題、それから安全保障の問題について我が国の主張を明確に先方に伝えたわけでありますけれども、結果としてはこれといった前進がなく終わったということも言えるんではないかというふうに思います。
 これは、交渉がそう簡単にはいかない、難航するということは当初から予想されていたわけでありますし、我が方としてのスタンスを明確に示したという意味においては、こうした結果になったのは当然のことであるというふうに思いますが、そうしたことを通じて、北朝鮮側は少なくとも日本の、この拉致問題や核開発、ミサイルなどの安全保障問題についてのスタンスということは理解できたというふうに思いますし、交渉をたどっていくとそうしたことがよく理解できるわけでございます。
 また、北朝鮮側の対応を見ても、今月中に安保協議を開催するということに合意したことだとか、先方から十一月末に次回交渉を開催することを提案してきたことなどを見ますと、北朝鮮側としても、交渉を促進させる、そして早く経済協力の糸口を見つけていく必要を感じているという事情も、今回の交渉を通じてよくわかったんじゃないかというふうに思います。
 交渉の評価ということは、これから長く続く交渉の推移を見てみなければ何とも言えないことではありますけれども、私は、再開後一回目の交渉としては相当うまくいったのではないのかなというふうに考えております。
 そこで、外務省として、今回の二日間にわたる交渉をどのように評価をされているのか、大臣の御見解を伺いたいというふうに思います。
川口国務大臣 今回の交渉の評価につきましては、ほぼ今委員がおっしゃられたということではないかと思いますけれども、最初におっしゃいましたように、日本としては、二つの問題、拉致の問題そして核兵器の開発のプログラムの問題を含む安全保障問題を最優先課題として話をしたということでございます。そしてそれを、なおかつかなり多くの時間を使ってはっきりと日本の主張をしたということです。
 拉致問題については、北朝鮮に残っている家族の方の帰国についての日程を確定することができなかった、これは大変に残念なことでございました。
 それから、安全保障問題につきましては、北朝鮮側は、主としてこれはアメリカと話をする話であるということは言いましたけれども、日本の懸念をきちんと理解し、そして日本との間で安全保障協議でこういった問題を扱っていくということを十一月中にやるということで決まったわけでございます。この安全保障問題については、これは日本にとっても大きな脅威ですけれども、国際社会にとっても大きな脅威であります。不拡散の問題もそういうことでございますので、言うべきことはきちんと言ったということでございます。
 両方で確認をできたことというのは、今後の交渉について、日朝平壌宣言に従ってやっていこうということについては、両方これはそう思っているということです。
 委員おっしゃられましたように、これは二年中断の後の再開第一回、十二回目の会合でございますので、この今回の会合をもって全体としての評価をするというのは時期尚早であると思いますけれども、外務省としては、言うべきことはきちんと言っていくというこの態度を大事にしながら、今後とも粘り強く交渉していきたいと考えています。
上田(勇)委員 続いて、拉致問題について何点かお伺いをいたしますが、先ほど藤島委員の方からもこの問題について質問がございましたので、重複しないようにさせていただきます。
 今度の交渉の経緯の中で、北朝鮮側は、今帰国されている五人の方々が一たんは北朝鮮に戻るんだという約束があった、それを日本が守らなかったということを主張しております。そういう約束があったかなかったかというような話は、先ほどの御質問の中で外務省の方から見解を伺ったので、私の方の考え方だけを申し上げさせていただきます。
 これは、もともと日本に住んでいた日本人を犯罪的な行為で拉致していったわけでありまして、それを戻す戻さないというようなことを約束する、また、それを約束を破ったなどと言ってなじること自体がもともとそぐわないわけでありますし、また、先ほどの答弁でよくわかった部分とわからなかった部分もあるんですけれども、ただ、日本としても当然、そんな約束をする、本人や御家族の意思を確認することなくそうした約束するということは、これはとんでもない話でもありますので、今回とられた、この五人の方々を日本にとどめる、そして家族を呼び寄せて、北朝鮮の管理された体制の中ではなく、自由に意思決定のできる状況、環境下において決めていただくという政府の判断は、私も支持をするところでございます。
 ただ、ここで、先ほどもちょっと話が出たんですが、やはり今回の交渉の経緯を見てみても、北朝鮮側が日本のそうした要求に簡単に応じる、そういう気配はないというふうに思いますので、そうなると、やはりこの問題が長期化してくるのではないかというふうに思います。次回の交渉というのも、早くとも十一月というようなことで言われているところでありますし、そうすると、その間の御家族の方々、離れ離れになる一カ月というのは大変な心痛だろうというふうに思うわけでございます。
 そういう意味では、この御家族の方が一日も早く再会できるように、あらゆる外交努力をしていただく必要があるわけでありますし、同時に、やはりこの被害者の五人の方々、家族の方々と密接な連携をとっていただいて、さまざまなケアもしていただく必要があるんだというふうに思いますけれども、この点について政府としてどのようにお考えか、お伺いしたいというふうに思います。
川口国務大臣 拉致の被害者の、日本にいる、あるいは北朝鮮にいる御家族の方のお気持ち、これを尊重して進めていくということは非常に大事なことであると私は考えております。
 我が方として最優先課題として取り上げている拉致の問題について、我々の立場はきちんと北朝鮮に伝えていくということと同時に、今度の本交渉までの間、できるだけいろいろなチャネルを使って北朝鮮に働きかけていきたいと思います。
 また、今日本にいらっしゃる被害者の方々が、きちんと日本の社会の中で溶け込んで生活が成り立つように、政府あるいは地方自治体ともどもこれは取り組んでいくべき課題であると思います。
上田(勇)委員 私としては頑張っていただきたいと言うしかないものですから、ぜひよろしくお願いしたいというふうに思います。
 次に、核開発問題についてお伺いをいたしますが、北朝鮮が核開発を継続しているということは、我が国にとっても重大な脅威でございます。また、これまでの経緯を考えてみますと、核開発を凍結するということが条件となってKEDOに対する支援も行ったわけでありまして、既に四百億円近くを供与しているということを考えれば、重大な背信行為であるというふうにも考えられるわけであります。
 核開発問題について、どうも今回の交渉を見てみますと、北朝鮮は必ずしも日本を交渉の当事者とは認めないような言い方をしているのであります。安全保障協議の場での議題についても、一部の報道では、北朝鮮はその内容、議題の一部を留保することを主張しているというようなことも報道されているんですけれども、これはそうすると核開発問題のことを言っているのかなというふうに思うのですが、私は、この核開発問題というのは我が国にとっても重大な脅威であるし、やはり国交正常化交渉を行っていく上ではこの問題は絶対切り離すことができない問題だろうというふうに思っておりますけれども、この辺についての政府としての御見解をお願いしたいと思います。
茂木副大臣 上田委員御指摘のとおり、北朝鮮の核及びミサイル等安全保障上の問題といいますのは、国際的な平和、安定にかかわる問題であると同時に、我が国自身にとっても、むしろ近隣にあるからこそ我が国にとって重大な懸念である、このように我々も考えております。
 実は、私、先週月曜日にワシントンの方に行ってきたわけでありますが、こういった日本の意向は、アメリカの政府要人の方にもしっかりお伝えをし、理解をしてもらったと思っております。また、川口外務大臣の代理として、APECの外相会談でもそういった日本の立場を主張させていただいた次第であります。
 これに対しまして、今回の交渉での北朝鮮の言いぶりでありますけれども、これらの問題の究極的な解決は米国との協議によってのみ可能である、そうしながらも、いずれにせよ日朝平壌宣言を遵守していくことに変わりない旨、こういった発言があったわけであります。その結果を踏まえて、日朝平壌宣言に従って行う日朝安全保障協議を十一月中に立ち上げることで北朝鮮との間で合意をしたわけであります。
 この安全保障協議の中では、当然我々は、核の問題を取り上げていきたい、このように考えている次第であります。そして、国交正常化交渉本交渉の中でももちろん取り上げながら、この安全保障協議の場で話し合っていく。そしてそれには、日本、アメリカ、韓国初め関係諸国とも緊密な連携をとりながらこの問題の解決を図っていきたいと思っております。
上田(勇)委員 それでは、もう時間も余りないのですが、日朝間のもう一つの懸案事項に、いわゆる北朝鮮帰国事業で北朝鮮に渡りました日本人妻の問題がございます。
 御承知のとおり、一九五九年から八四年にかけて、多くの韓国・朝鮮籍の人々が北朝鮮に渡り、約千八百人と言われている日本国籍の配偶者も同行をいたしました。それらの人々のうち、これまで三回にわたりまして約五十人の方が里帰りはしているものの、大多数はその行方すらわからないという状況になっております。また、ことし予定されていた次回の里帰りについても延期になったということがございます。
 私は、これらの人の中にはやはり日本に帰りたいと思っている方というのもたくさんいらっしゃるんじゃないのかなというふうに思うわけでありまして、これらの人たちの安否もそういう意思も確認できない、これは大変重大な人道上の問題であるというふうに考えております。
 帰国事業によって北朝鮮に渡った在日韓国・朝鮮の方あるいは日本人妻の多くが、当初は北朝鮮側から大変すばらしい約束を受けていたのですけれども、実際に行ってみたら、どうもそれとは随分と異なって、非常に過酷な労働を強いられただとかあるいは虐待を受けているということがいろいろな報道で言われているところであります。当時は、これはあくまで自由意思で帰国したというのが前提ではありますが、その多くの人たちは結果的にはだまされたということになるのじゃないかというふうに思います。日本国内でも当時、主要な新聞を含むマスコミもそうでありましたし、多くの知識人あるいは政治家や政党関係までも、プロパガンダに乗って共産主義体制を誤って賛美する風潮の中でこの帰国事業の後押しを行っていった、この責任は非常に重大だというふうに私も考えております。
 政府として、そういう世論や環境の中にあったとはいえ、やはりこの事業を政府として推進したという意味においては非常に責任があるわけでありますし、そういう意味で、少なくとも日本人妻の人たちの安否の確認、里帰り事業の再開とその拡大、あるいは帰国希望者がいる場合には、その確認をして、帰国希望者の帰国などにあらゆる手を尽くすということが、やはり政府としての責任のとり方ではないのかなというふうに考えるところであります。
 また、これまでもこの問題についてはずっと日朝交渉の中で重要議題として何回も取り上げられたことでありますし、再開後の交渉においても、これは我が国国民の人権にかかわることでもありますので、ぜひとも重要議題として取り組んでいただき、そしてあわせて、先ほど申し上げましたような取り組みも積極的に進めていただきたいというふうに考えますが、政府としての御見解を伺いたいというふうに思います。
田中政府参考人 全体としての問題意識は上田委員御指摘のとおりでございまして、私どもも従来より、北朝鮮におられる日本人の配偶者の問題については、できる限り故郷訪問ということを実現しようということで、これまで三回にわたり実施をさせていただいた。安否調査につきましても、日本赤十字社、朝鮮赤十字社の会談の中でその調査を依頼しているということでございます。
 今度の日朝国交正常化交渉でも、日本側より問題の所在について言及をしております。特段この問題については、時間の関係上、深い議論にはならなかったということでございます。
 北朝鮮との間では、今後、日朝の赤十字間で第四回の故郷訪問の実施について作業が進められることになっているということでございますので、これは実は、予定をされていたのがこの政府交渉との関係で延期になっているということでございますが、私どももできるだけ力を尽くして、こういうことの実施に努めてまいりたいというふうに考えております。
上田(勇)委員 以上で終わります。
池田委員長 次に、小池百合子君。
小池委員 保守党の小池百合子でございます。
 まず、新聞に毎日、小泉日誌とかいろいろな形で総理官邸での動向がよく報道されているのですが、十月三十日の午後四時五分、「首相会議室へ。田中均外務省アジア大洋州局長、溝口善兵衛財務省国際局長、西藤久三農水省総合食料局長ら。」ということで、約一時間にわたって会議室で総理と会議をしておられると。ASEANの打ち合わせだとは伺っているのですが、何かメンツがそろい過ぎているのではないかというふうに思うわけでございますが、北朝鮮への経済協力、食糧支援などについても話し合われたのでありましょうか。局長、よろしく。
田中政府参考人 これは総理のカンボジアでのASEANプラス3、日中韓の会議の出席のためのブリーフィングでございまして、そこに名前が書かれておりますメンバーは代表団として出張することになっているということでございます。ですから、北朝鮮の話は一切ございませんでした。
小池委員 うがち過ぎなのかもしれませんが、局長はこの小泉日誌とか総理官邸欄も巧みに利用されるということを前に伺ったことがございまして、これは一種のメッセージを北の方に伝えておられるのかなというふうに思った次第でございます。特に、食料局長というのはそこだけ、ほかにも経済産業省の方もいらしたと伺っているのですけれども、どうもそういうふうに読んでしまう、こちらの方が考え過ぎでありましょうか。
 国交正常化の後でしか経済支援はないということは、これは日本の政府としても微動だにしていないわけでございまして、ここはぜひとも貫いていかなければ、まさに現在私たちが国内的には大問題と考えておりますこの拉致問題の解決にもつながらないというふうに考えているところでございます。
 今回の交渉、クアラルンプールでの会議でございますけれども、結果は決裂ではございますが、しかしながら、ある種予想の範囲内というふうに考えておりますし、また、これまでにない毅然とした態度をおとりになったことは評価をしたいと思っております。
 何よりも、北朝鮮側が五人を約束どおり帰さないということに対して約束違反だということを強調しているわけでございますけれども、やはりそもそも拉致という国際的な違法行為ということが原点にあるわけでございますので、ここは一歩も譲ってはいけないところだと考えております。
 その中で、この拉致被害者五名を北朝鮮へ戻さないと大変なことになるというふうに田中局長の御発言があったやに伝えられているところでございますけれども、大変なことというのはどういうことを意味しておっしゃったのか、もしくはそんなことはおっしゃっていないのか、改めて伺います。
田中政府参考人 私は、どこの場であれ、そういうことを申し上げたことはございません。ですから、帰さなければ大変になるとか、そういうような趣旨の発言をいかなる場でもしたことはございません。
 私どもの意識といたしましては、これは先ほども御説明を申し上げましたけれども、今回、一、二週間ということで日程調整をしたことは事実でございますが、他方、帰ってこられてからの家族とのお話し合い、客観的な状況であるとか家族の御意向ということを踏まえれば、日本に引き続きいていただくことというのは政府の責任として決めるべきである。こういうことについて政府の中で議論が行われ、それについては全く異論が出されていないということでございますし、私がそういうことを申し上げたということはあり得べくもないことでございます。
小池委員 交渉に至る過程の中でさまざまな下打ち合わせ等々が行われるのは、これはごく自然なことだと思っておりますけれども、そういった中で、基本的に拉致というのは相手がもう既に認めた段階でありまして、それに対して、やはり国家主権を侵されているという一番の原則を考えますと、今回五人が戻ってこられるのは当然でございますし、その上で、お子さん方を戻せというのも、これも当然の主張だ、国際的にもバックアップを受けるものだというふうに考えております。この点でも原則を動かすことのないようにお願いを申し上げたいと思います。
 さて、今回、交渉決裂というような言葉が躍っておりますけれども、私は、今回、第一回ということでは、先ほども申し上げましたように、予想の範囲内ではないかということと、それから、次回の日程でございますけれども、これを回答を日本側が保留して、現在ボールはこちら側にあるというふうに認識をいたしております。
 そしてまた、先ほど来の御答弁の中でも、いろいろなルートを使って今後も話を進める努力をされるということでございますけれども、私は、いろいろと家族の方々との接点を持たせていただいて感じるところは、この御家族の方々、そしてある意味では御本人も含めてだと思いますけれども、基本的に微動だにしていない。そしてまた、時間がかかるということ、これについてももうおなかの中にすとんと落ちているというような状態にありますので、余り日本側から一生懸命努力をして、何月何日にしましょうよというような誘いかけをする必要もないんではないか。むしろ今は、北朝鮮側が日本が要求した回答を寄せてくるという、そういったものを見ないと、日本側から次の交渉を呼びかけることも、その必然性もないのではないか。
 それぐらい腹を据えていただきたいという意味で申し上げているわけでございますが、その交渉にも立ち会われました齋木参事官の方から、今の考え方についてもお考えをお聞かせいただきたいと思います。
齋木政府参考人 今回の交渉の雰囲気でございますけれども、まず、実務的といえば実務的な協議でございました。ただ、先方は、平壌宣言の精神と原則に従って対応する、交渉をするということを繰り返し述べておったわけでありますけれども、実際には、私どもの方からいろいろな問題について立場の主張を行ったことに対する先方の答え、対応は通り一遍のものが多かったという印象を持っております。そういう意味では、予想されたこととはいえ、先ほど先生もおっしゃいましたけれども、今回、先方の対応は建設的なものではなかったというふうに私どもは思っております。
 また、先方は、私どもにとって最大の案件の一つである拉致問題については、これをきれいに片づけたいということをしきりに述べておりました。他方、そう言いつつも、ピョンヤンに残されている五人の方々のお子さんたちをかりそめにも今後の交渉のいわばカードとして使おうということを考えているんだとすれば、それは全くの読み誤りであるということを今回の交渉を通じて先方は十分に認識したんではないかと思っております。
 したがって、次回の交渉については、まだ日程は全く定まっておりませんけれども、私どもとしては、いずれにしましても、先方がぜひとも誠意を持って建設的に私どもに対応するということこそがこの交渉全体の進展に資するゆえんであるということを強く考えております。
小池委員 いずれにいたしましても、こちら側がボールを持っている、しかしながら、向こうの出方をまず見守るということ、それを腹を据えてやっていただきたいし、また、家族会の皆様方もその覚悟はできているということをお伝えしておきたいと思っております。
 また、横田めぐみさんの夫で、またキム・ヘギョンちゃんの父親と言われる人が一切姿をあらわしていないんですけれども、そしてなおかつ、おじいさん、おばあさん、早く北朝鮮に来てください、学生なんだからよその国には行けないんですというふうに、せんだってのインタビューでもキム・ヘギョンちゃん自身が言わされているというか、言っておりましたけれども、そもそも、お母さんである横田めぐみさんは、学校から家に帰る途中に拉致されて、そしてよその国に無理やり連れていかれたわけでございまして、涙、涙の中だけでこの辺の論理に惑わされることが一切ないようにしていきたいし、また、キム・ヘギョンちゃんの父親という人のDNAの入手の要求、これなども強く求めていくべきであると考えております。
 時間がございませんのでこれで終わりますけれども、私は、今の日朝交渉というのは、戦後の日本外交を大きく変える、またそのかじ取りをしっかりと変える大変大きな岐路であり分水嶺であるということを考えておりますので、しっかり外務省も対応をしていただきたいということを申し上げて、終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
池田委員長 次に、伊藤英成君。
伊藤(英)委員 民主党の伊藤英成でございます。
 既に同僚議員がいろいろと議論をしておりますので、重複する部分もあるかもしれませんが、私からも質問させていただきます。
 まず、先般の、九月十七日の日朝首脳会談でありますけれども、私は、金正日総書記が拉致を認め、そして謝罪をするということになったことについては、大きな一つの進歩というか前進だったと思っています。そしてまた同時に、二十九日、三十日のクアラルンプールでの交渉においても、日本の鈴木大使ほか皆さん方が毅然として外交を行ったように報道されておりますけれども、そういうことであるとすれば、それは非常にいい話だ、こう思っております。
 しかし、この首脳会談のときの問題にしても、あるいはその後の状況についても、やはり非常に心配といいましょうか、問題だと思われる部分も多々私にはあるわけでありまして、そんなことも含めて伺いたいと思うんです。
 まず最初に、今、日本に帰国しておられます五名の拉致被害者の問題でありますが、先般、二十九日に安全保障委員会で外務大臣に、あの五名の方々が日本に来られるときに、一週間あるいは二週間といういわゆる一時帰国、私は、一時帰国じゃなくて原状回復、そもそも、家族も含めて一たんは日本に来て、それからどうするかということについて選択をしてもらうのが本来の姿、こう思っておりますけれども、この間の二週間程度の滞在の問題について、日本側も当時そういう約束をしたんではないんでしょうかという話について伺ったりいたしました。そのときに外務大臣は、北朝鮮との間で約束だったとは言われませんでしたよね。
 しかし、この間の二十九日、三十日の交渉のときには、今度は北朝鮮は、日本政府は約束を破ったではないかということでまた言われたりしているんですね。これはどういうことなのか。なぜ北朝鮮は約束を破ったと言うんだろうか。その辺のことについて、改めてもう一度伺います。
川口国務大臣 先般、伊藤委員とそういうお話をさせていただいたときに、そういう打ち合わせがあったということを申し上げたかと思います。今回の生存者五名を帰国させるということについては、できるだけ早期に帰国をさせたいということがございまして、北朝鮮に外務省として働きかけたわけでございますけれども、先方との間では、滞在期間を一、二週間とするということで打ち合わせたといいますか調整をしたという経緯がございます。これは、この前申し上げたとおりでございます。
 その後、生存者の五名が帰国をされまして、そして家族とお会いになった。そして、お話をする中で、御本人の状況ですとかあるいは日本にいる家族の御意向、これらを総合的に勘案をしまして、五人の拉致の被害者の方々が家族を含めて自由な意思決定ができるための環境設定が大事であるということで、特に、そのお子さん方も含めて残されている御家族の方全員の帰国が重要だ、不可欠だという判断をしたわけでございまして、そういう意味で、五人の方が帰国をした当時とは状況が、事情が変わってきたということでございます。
 北朝鮮は約束をしたということを言っておりますけれども、これは両国が、そういう言葉があったかなかったかということではなくて、我々としてはそういうことで調整をしたということだと思います。
 我が国といたしましては、この五人の方々が、まさに自由な意思で今後のことについて決めていただくということが大事ですし、そのためには、北朝鮮に残されたお子さん方、家族の人が日本に帰ってきて、そして意思決定を自由に行う、そういう環境をつくるべく最大限の努力をしていきたいと考えています。
伊藤(英)委員 私は、北朝鮮とのいわゆる交渉ということを考えたときに、これは南北間でも同じ、米朝間でも同じなんですが、いかに北朝鮮が約束したことを守るかということが常に非常に重要な問題であったと思っているんです。それで、よもや日本側が約束したことをどんどんエスカレートするというようなことになってはいけないなというふうにもちろん思っています。そういう意味で、まさに原則をしっかりし、その上で外交は展開するということにぜひしなければならぬ、こういうふうに思っております。
 それで、北朝鮮に残っている家族の帰国の問題について、今回の交渉の席で完全に拒否された、こういうふうに報道されています。五名の方、そしてその家族の問題、これからどういうふうにされる予定でしょうか。
川口国務大臣 政府としては、先般官房長官が発表なさったような方針をこの五人の方については持っているわけでございます。これを政府としては譲ることはできない。したがいまして、それが可能になるように北朝鮮側に対して働きかけを強く行っていく、これを前回の交渉の場で行いましたし、今後、これから次の交渉までの間に、可能なチャネルを動員いたしまして働きかけていく、そういうことでございます。
伊藤(英)委員 今回、死亡されたとされております八名の拉致被害者について、疑問点など百点以上北朝鮮側に質問をされたということなんですが、これはいつごろ回答が出されるというふうに考えておりますか。
田中政府参考人 伊藤委員御指摘のとおり、今回、御家族から出された疑問点のみならず、政府の中でもいろいろな疑問点あるいは整合していない点も含めて、文書の形で質問状、追加的な照会事項を手渡した。それで、速やかに誠意ある回答をしてもらいたいということを求めたわけでございます。これに対して北朝鮮側は、関係機関とも協議をしつつ、可能な限り速やかに回答できるよう努力をするという旨述べた次第でございます。
 いつまでが期限ということにはなっておりませんが、私どもとしては、できるだけ早くこの回答が得られ、その後の必要に応じた調査団の派遣ということにつながっていけるように最大限の努力をいたしたいというふうに考えております。
伊藤(英)委員 今言われたのは、いわゆる第二次調査団のことだと思うんですが、では、第二次調査団はいつごろ派遣する予定ですか。今月中ですか。北朝鮮側が調査団の派遣について拒否したというような報道もあったりしているんですが、実際にはいつごろ派遣することになるのか、する予定なのか。
 それで、そのときの調査対象はどういうことになるのか。これは死亡されたとされる八名なのか、あるいはその他、それは数十名行方不明云々という話もありますね、あるいは拉致されたかもしれないという方もあるんですが、どこまでの対象を考えているんでしょうか。
田中政府参考人 具体的な調査団の派遣時期及びその具体的な内容について、現在固まっているわけではございません。
 私どもは、段取りとして、当然のことながら、先般の調査団の際の疑問点それから不整合な点、そういうことを網羅的にまとめて、まずそれを先方に突きつけてその回答を得る。彼らは、その点については関係機関と協議をしてできるだけ速やかに回答する、こういうふうに言っているわけでございます。
 調査団の問題については、先方から、受け入れる、受け入れないという反応はいまだございません。ですから、これは情勢をよく見きわめ、まさに各種いろいろな問題があると思います、御家族の帰国の問題もありますし、そういうものを踏まえながら総合的に検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
 それから、亡くなられたとされている八人だけなのか、それからほかのいわゆる疑いがある人々というようなお話もございましたけれども、これはまさに警察当局とよく連携を保ちながら考えてまいりたい、かように考えております。
伊藤(英)委員 安倍副長官に伺った方がいいと思うんですが、この間、九月十七日に日朝首脳会談がありました。それで、現在、例えば金正日総書記と小泉総理との間にホットラインあるいはそのようなものはあるんでしょうか。
 これは、何でまたそう申し上げたかと申しますと、いろいろ私なんかが伺うところですと、金正日総書記は、実は結構現実的に判断をされる。しかし、そのときに本当に正しい情報がちゃんと上がっているかどうか、それは非常に疑わしい話も伺ったりするんですよ。もしもそうならば余計に、本当の情報がちゃんと本人に行っているかどうかという話は非常に重要ですね。そういう意味で、そうしたホットラインのようなものはあるんでしょうか、ないんでしょうか。
安倍内閣官房副長官 九月十七日に首脳会談を行いまして、その結果、平壌宣言に両首脳がサインしたわけでございまして、私どもまた先方は、この平壌宣言をしっかりと遵守していかなければいけない、我々は北朝鮮がこの平壌宣言を遵守していくかどうかしっかりと見きわめていかなければいけない、こう考えております。
 今、委員の御質問のホットラインということでございますが、ホットラインは今ございません。
伊藤(英)委員 非常に残念ですね。ホットラインもないんですね。本当に真意がちゃんと伝わっていろいろやれるかどうかというのは、疑わしいような感じです。
 それで、先ほど、五名の方の拉致被害者、今日本に来ていらっしゃる方、そしてその家族の問題について外務大臣も言われました。あるいは百点以上の質問の問題についても言われました。調査団の話もありました。それから、近いうちには安保協議もされることになっているということですね。どういうことが行われたら次回のいわゆる本会議はされることになるんでしょうか。
川口国務大臣 次回の本会議については、委員が御存じのとおり、十一月末までということを向こう側が言いまして、そしてこちら側はその返事を保留して帰ってきているということでございます。
 これは、今後の北朝鮮側のいろいろな対応なり、あるいは私どもの今回の交渉を踏まえての今後のいろいろな考え方の展開なり、そういったことを考える中で我々はいつごろということを考えるということでございまして、何を条件にしてということで、それを守らなければ、北側がそれを満たしてくれなければやりませんというようなことを、今の時点で条件を出しているということではございません。さまざまな物事の展開を見ながら、自然に決まってくるということになると思います。
伊藤(英)委員 相手に条件を出しているかの問題じゃないんです。日本として、何をクリアしたらやっていこうとか、そういうものがあるんでしょう。そうでなかったら、先回でももっと違う答え方をしているんじゃないでしょうか。僕は、外交に原則がないのは本当に困る。それは日本のためにならないと私は思っているんです。
 だから、何も判断基準がなくて、次にいつやるかわからないなんて話はないはずですね。だから、先ほど言われた五名の家族の話やら、あるいは百点以上の質問の話にしても、それは少なくともクリアしないと次回はできませんとか、いろいろあるんじゃないでしょうか。
川口国務大臣 これまでの交渉、あるいはこれまでの展開の評価、あるいは今後のさまざまな物事の展開、いろいろあると思います。私どもは、原則を持たないで交渉をしているわけではございませんで、何が優先課題である、どういうことが最終的に満たされなければ正常化はできない、これはきちんと考えているわけでございます。
 例えば、この場で、こういう条件がなければ日本は再開をしませんということを申し上げて、それを北朝鮮が聞いてくれるであろうというふうに考えて交渉をするというやり方もあるかもしれませんけれども、私は、今の時点では、先方の対応の状況なりあるいはこちら側の展開なり、そういったことを考えて、その中で、次はいつかということは決まってくるというふうに考えるということを申し上げたいと思います。
伊藤(英)委員 では、もう一回あれしますが、先ほど五名の方の家族の話を伺いました。外務大臣は、次回交渉までにそれはやりたいという話をされました。では、その部分について言うと、五名の方の家族の帰国問題について解決をしないと次回はやらないんですね。さっきそう言ったんでしょう、この部分について言うと。では、それも撤回するんですか。
川口国務大臣 申し上げ方が悪かったかもしれませんけれども、私が先ほど申し上げたのは、次の本交渉までの間も、この問題を放置しておくということではなくて、ありとあらゆるツール、チャネルを使って最大限の努力をするということを申し上げたということでございまして、もちろん次の本交渉までの間にこの問題を解決したいんですけれども、解決をしなければ次の本交渉がないというニュアンスで申し上げたということではありません。
 ただ、当然に、我々としては、北朝鮮側が誠意を持って前向きにこの問題に、しかも早期に対応してくれるということを望んでいる、そういうことでございます。
伊藤(英)委員 今の話は、次回交渉までに向こうが誠意を持ってやることを望むということですが、本当はそれが一つの条件だよということを示唆したかったのかもしれませんが、私は、もっと議会を大事にして、ある意味じゃ議会を活用した外交をもっとやればいいという気がするんですよ。だから、例えば交渉はどういうふうにすべきなんだろうかという私の考え方と外務大臣は違うのかもしれませんが、もっとそうした方がいいと私は思います。
 次に、核の問題についてお伺いをいたしますけれども、平壌宣言の中に、「双方は、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。」こうなっています。
 これは外務大臣か副長官かどちらがいいかわかりませんが、この国際的合意といったときに、私の理解では、NPTあるいはIAEAの保障措置協定、そして南北非核化宣言あるいは九四年の合意された枠組み、それが国際的合意を遵守するという中身、それを守るということだと私は思っているんですが、これは、例えば北朝鮮について言うと、この四つの国際的合意を今も遵守しているということを内容としているんでしょうね。
川口国務大臣 平壌宣言というのは交渉のベースであるわけです。したがって、平壌宣言を守るということがなければこの交渉は妥結をしない、そういうことをきちんと言っているということでございます。
 北朝鮮は、平壌宣言の署名に当たっては、あるいは前回の交渉においても、これを守っていくということを言っているわけでございまして、我々としては、北朝鮮がこれをきちんと守って、しかも、ウラン濃縮プログラムについては、この前APECで首脳が合意をしましたように、見える形でこれを守ることが大事だということも言っているわけでございまして、そういうことを慫慂といいますか、強く要求をして、そして北朝鮮側が平壌宣言を守っているということをきちんと我々が認識をする、それまでは交渉は妥結をしない、そういうことでございます。
伊藤(英)委員 いや、簡潔に答えてくださればいいんです。
 このときの北朝鮮側は、あるいは日本側も、十七日の時点で、先ほども申し上げました、例えば合意された枠組み、これを守っている、遵守しているということ、そのときに守っているという認識なんですねと、イエスかノーかだけでいいんですよ。
川口国務大臣 まさにこれを守らせる、そういうことをやっていく、したがって署名をすることによって問題の解決を図っていく、そういうスタンスでございます。
伊藤(英)委員 では、そのとき小泉総理は、北朝鮮は守っているという認識だったんですか、そうでないんですか。イエスかノーでいいんですよ。
川口国務大臣 イエスかノーかでお答えできるといいんですけれども、実は、私どもは、平壌での会談の前に米国側からは、はっきりした詳細な情報ではありませんけれども、情報は受けていたということでございます。したがいまして、これを署名することによって北朝鮮側にこの問題の解決を迫る、そういうスタンスでございます。
伊藤(英)委員 では、伺います。
 これは、先回、私が二十九日の安全保障委員会で聞いたときに、川口外務大臣も九月十七日以前に情報は得ていたという話をされました。いいですね。そうしたら、十七日の首脳会談のときに、小泉総理は、あるいは日本側から、この核開発情報の真偽について問い合わせていますか。
川口国務大臣 日朝首脳会談において小泉総理から、国際合意、特に合意された枠組み、これの遵守を強く求めたということでございます。そして総理から、アメリカは北朝鮮について重大な懸念を核の問題について持っているということを言い、そしてこの合意された枠組みの実施のために査察を受け入れるべきである、この問題は米朝の問題ということだけではなくて、日本と北朝鮮の問題あるいは北東アジア全域の問題だということを言ったということでございます。そして、署名をすることによってこれを守ってもらう、それを確保する、そういうことでございます。
伊藤(英)委員 では、伺います。
 小泉総理は、署名するときに、現在北朝鮮はNPTや九四年の合意された枠組みには違反しているということを、その時点では知っていて署名をしたんですね。
川口国務大臣 九月十七日以前に、米国側から情報の提供を受けていましたけれども、要するに懸念があるということは聞いていましたけれども、詳細な情報を聞いていたということではないということでございます。
伊藤(英)委員 では、その場で、どの程度その中身について確認したんですか。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、総理からは、さまざまな核に関する合意、特に合意された枠組み、これについては、アメリカは核問題について重大な懸念を持っている、そしてこれはアメリカだけの問題じゃなくて、この地域の問題あるいは日本の問題である、そういうことを言ったということでございまして、これに対して金正日国防委員長は、KEDOについては軽水炉の建設が遅延しているということが問題であって、米国が誠実に対応すれば解決をするということを言ったということでございます。
伊藤(英)委員 では、もう一回確認しますが、北朝鮮の方は金正日総書記がそのように言った。それでは、その時点では北朝鮮はその合意された枠組みには違反している、それを認識して署名したんですね。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、アメリカ側から懸念についての情報の提供は受けていたということでございますけれども、詳細な情報の提供はなかった、そういうことでございます。
伊藤(英)委員 いや、だから私は、では、詳細な情報をそこで確認したんですかとさっきは聞いたんです。(川口国務大臣「アメリカに対して」と呼ぶ)いえいえ、北朝鮮に、九月十七日のそのときにと聞いたわけです。
 そうしたら、今度、安全保障協議はどういうふうにやるんですか。
池田委員長 川口外務大臣、的確に答えてください。時間がありません。お願いします。
川口国務大臣 先ほど、総理が金正日国防委員長に何を言ったかということを申し上げたわけでございまして、繰り返しませんけれども、それに対して金正日国防委員長から、KEDOについては軽水炉の建設が遅延していることが問題であって、米国が誠実に対応すれば解決をする、そういう発言があったということです。
伊藤(英)委員 これは、最近出ているニューズウイークに出ているんですよ。ニューズウイークにも報道されていると言った方が正しいかもしれません。いいですか。要するに、小泉総理は、北朝鮮がこの枠組み合意に違反していることを承知の上で、しかし、その上で彼は署名をしているという、実は大問題なんだという趣旨のことが書いてあると私は理解いたします。
 実は、私は非常に心配なのは、拉致問題も本当に大切、しかし、この核をめぐるいわゆる大量破壊兵器等の問題もこれは本当に重大ですよね。私は、この平壌宣言を署名したときに、どこまでその重要性をちゃんと理解してやったんだろうか、どこまで事実をちゃんと把握してやったのか、署名したのかということを心配するんです。
 それから、もう一つ伺います、もう時間もありませんから。
 九月十七日に首脳会談がありましたよね。その直前、九月十三日に国連総会で総理は一般演説をやっていますね。そのときには、これだけ重要問題があるときに、北朝鮮問題について、この北東アジア地域の問題について何も触れていないと私は思います。
 これだけ重大な問題、核の問題を、九四年の枠組み合意に違反している、あるいは違反しているかもしれないという重大問題があるときに、何で一言も触れないんだろうか。日本が、国連外交、国連外交と、世界を相手にして、世界の協力を得ながらこの地域の安全もということを考えなきゃいけませんよね。何でやらないんだろうか。
川口国務大臣 まず、委員がおっしゃるように、この核の問題というのが大変に重大な問題であるということは全く御指摘のとおりで、であるがゆえに、私どももこれを最優先事項として取り上げているわけです。そして、今後とも取り上げていきます。
 それから、国連総会で、総理の演説の中では、イラクですとかテロですとか、平和の定着と国づくり、あるいは環境と開発、核軍縮という、現在国連が直面している大きな課題という観点で総理の演説はつくられているということでございまして、そういう課題に対してアドレスをなさったということでございます。
 具体的な、アメリカの持っていた懸念ということについては、そういった国連の場で取り上げるのにふさわしい議題ではない、課題ではない、テーマではない。といいますのは、これは情報の事柄にかんがみ、アメリカとの間で、こういった細かいことについて外で話すわけにはいかない、そういうことであったということです。
伊藤(英)委員 時間が参りましたので終わりますけれども、私は、国連総会で絶対にやるべきだった。これは物の言い方はあるんですよ、あるんですが、やらなきゃと思っておりました。
 多分、この北朝鮮問題の現在の交渉云々というのは、やはり日本の外交の歴史から見れば、本当に今重大なときだと私は思うんですね。これは、日米韓の話、あるいはまさに世界の中での外交ということを考えてみてもどんなに重要か、こう思ったりしているものですから、ぜひ原則はしっかりと、それに対して毅然とした、しっかりした外交をよろしくお願いして、終わります。
 ありがとうございました。
池田委員長 次に、金子善次郎君。
金子(善)委員 二十九日と三十日に日朝正常化交渉が開催されたわけでございますが、まずもって、冒頭、拉致被害者家族の即時帰国が実現しなかったことはまことに残念でございまして、ここに、北朝鮮の非人道的な行為に対しまして抗議の意思をあらわしたいと思います。
 これからも外務省にぜひともお願い申し上げたいのは、国民世論というものを背景にしまして、拉致被害者及びその家族の永住を目的とする帰国、いわゆる原状回復の原則を貫いて交渉を継続していただきたい、このようにお願い申し上げます。
 そこで、北朝鮮との間には、正常化に至る過程におきましては、核問題、大量破壊兵器の問題、工作船の問題、覚せい剤の問題といったように数多くの課題が山積をしているわけでございます。ただ、この段階で拉致以外の問題について論議を広げていくということは、北朝鮮の意図と申しますか、拉致問題の幕引きを画策と申しますか、ねらっている、そういうような術中に陥ることのないように、これはしていかなきゃならない問題であるというふうにも考えるところでございます。
 そこで、拉致問題について、幾つかの点につきまして質問をさせていただきたいと思います。
 拉致問題の真相解明につきまして、今回の二十九日と三十日の交渉の場で、これは新聞報道がなされているわけでございますけれども、この拉致問題を専門に扱う専門チームを設けるとの報道が実はあるわけでございます。一方、外務省の方で発表されました日朝正常化十二回本会議の評価と概要というペーパーには、この点については記載されておりません。これについて、まずもって御説明をお願いしたいと思います。
茂木副大臣 今回の国交正常化交渉、我が方、日本側は、鈴木大使以下、金子委員と同じブルーのリボンをつけさせていただいて、チーム一丸となって毅然とした態度で臨ませていただいたわけであります。
 そこの中で、御案内のとおり、この拉致問題を最優先課題として扱う、こういうことで、相当の時間を本交渉の中でも使わせていただいたわけでありますが、御指摘いただきました拉致問題のみを扱う専門チームを設ける、こういう方針は決めておりません。
 ただ、今後この問題をさらに進めていく、究極的な解決に向けてさらに進めていくために、さまざまなチャネルを用いて、有効なチャネルはすべて使って解決に向けて努力をしていきたい、こんなふうに考えております。
    〔委員長退席、中川(正)委員長代理着席〕
金子(善)委員 ただいまの御説明ですが、いろいろなチャネルを使って有利に交渉を進めていく、これは当然の、考え方としてはあってしかるべきでございますけれども、私が申し上げたいのは、交渉の中で、拉致問題については専門チームでやっていくんですよ、そのほかの問題はまた専門チームでやっていきますというようなことで、拉致問題を扱う交渉の位置づけが埋没すると申しますか、そういうことのないように気をつけていただきたい、そういう観点から要望を申し上げているわけでございます。
 今回の専門チームというのは、何か特別な意味があったんでしょうか。
田中政府参考人 今茂木副大臣からお答えになったとおりでございますが、最初の日の夜に、集中的な協議をしようということで、少人数で会合の機会を持ち、特に、死亡されたとされる八名の方を中心としたいろいろな質問事項、そういうものを説明し、先方に手交した、そういう経緯がございます。多分、それが専門家会合であるかのような報道がされたのではないかというふうに考えております。
金子(善)委員 私が申し上げた点につきまして御留意されまして交渉を進めていただきたいと、強く要望を申し上げておきたいと思います。
 そこで、北朝鮮は、日本からの経済協力というものをまずもって最大の目的としていることは間違いない、これは明らかなことであるというふうに思います。この拉致問題、どの程度まで解明されれば一応の解決の、解明のめどがついたと言えるかどうかは後ほどまた質問させていただきますけれども、一定のめどと申しますか、そういうものがつかない限りは経済協力、経済援助の問題、これにつきましては突っ込んだ話はしないということはそれでよろしいのかどうか、その点につきまして大臣の所見をお伺いしておきたいと思います。
川口国務大臣 まず、経済協力につきましては、この実施自体は正常化した後でなければしないということは、はっきり平壌宣言に書いているわけでございます。
 それで、御質問のどの段階で取り上げるかということについて、今回、北朝鮮側は、中核的な問題というのは正常化自体の問題であり、経済協力の問題であるということを言っておりました。それに対して私どもは、最優先課題は拉致の問題と核問題を含む安全保障問題であるということを言っておりました。
 次回以降の議題について、具体的に今の時点で合意があるわけではない。これは今後議論をしていくということになりますけれども、政府としては、最重要課題はまさに拉致問題と核を含む安全保障問題であるということについては、立場ははっきりしております。そういったことは相手側に引き続き言っていく、そういうことでございます。
金子(善)委員 まさにそこをお聞きしているわけでございますけれども、確かに、実施そのものは、拉致問題についても一定の解明というものがなされなければ実施をしないということを言われるわけでございますけれども、どの程度までいったか、解明されたかというのは、これは非常に難しい問題がそこにはあると思うのです。
 これからも質問をいたしますけれども、今政府が拉致問題として北朝鮮と話し合っているのは、恐らく十五人の方々の問題を中心にされているんではないか。実はそのほかにもいろいろな、今、拉致されたのではないかと言われているような疑いのあるケースというのは数限りなくあるというのが現状になっているわけなんです。そういうところで経済協力の話に入るというのは、ちょっと危険ではないかなという気さえ私は持っております。
 そういう観点で、大臣の話を聞きますと、その説明はもっともらしく聞こえるんですけれども、現実には、この拉致問題の解明というのは、大変大きな背景もあれば、いろいろな問題がそこには山積している。そういう中で、十五人の問題だけ解明されたらそれでいいですよという問題でもないことは、これは恐らくこれからどんどん広がってくると思います。そういう中で、大臣の物の考え方、そこをまずはっきり言っていただきたいというふうに思って質問をしているわけでございます。
 もう一度お願いします。
川口国務大臣 拉致ということで、今日本で、政府の中で言われていること、正式に言われていることというのはこの十五名の方ということでございますけれども、それ以外にもいろいろな可能性があるということはあり得ると思います。これについて外務省としては、今回の交渉の中でも、この十五名以外の方についても相手に質問はしているということでございます。
 政府全体として、拉致の疑いが非常に濃いということであれば、そういう観点からも引き続き取り上げていくべき問題だと思っています。
    〔中川(正)委員長代理退席、委員長着席〕
金子(善)委員 要は、今の段階では、いろいろな意味で北朝鮮の姿勢というものは、今後どういう展開になるか、それを見きわめないとなかなか判断が難しいところがありますが、現状においては人質外交になっていることは間違いない。こういう状態の中での交渉でございますから、改めて、大臣に申し上げました点を留意の上、交渉を進めていただきたいということを強く要望を申し上げておきたいと思います。
 そこで、次に移らせていただきますけれども、被害者御本人あるいはその家族の方々の永住帰国と申しますか、これから進むことが予想され、また我々としても強く希望するところでございますけれども、この方々が帰国された段階で、政府もサポートチームをつくるというようなことが新聞報道もなされているようでございますけれども、具体的に、このサポートチームはどういうことをやっていく考えがあるのか。
 一部の地方自治体におきましては既に、地方公務員として雇用します、はっきりした地方公務員かどうかわかりませんけれども、地方自治体としても考えますというような表明もなされている。どういうようなサポートチームをつくるかということが第一点。
 もう一つでございますが、曽我ひとみさんの御主人でございますチャールズ・ロバート・ジェンキンスさんについて、アメリカとの折衝が続いているというような、始めておられるというようなこともお伺いしました。
 そこで、このジェンキンスさんでございますけれども、我が国に入国して、そしてまた滞在を続けるというようなことについて、法的な問題は、これはアメリカとの関係とかというのは関係なく、問題はないと思うんですが、この法的な問題があるかどうか。これは、御本人が、曽我さんが心配なさるというようなこともあるかと思いますので、明確なお答えをお願いしたいということがもう一つの点。
 それと、アメリカとの関係で、アメリカ政府もいろいろ考えておられるようなこともテレビ報道等で拝見いたしましたが、これは仮定の話でございますから今後の問題ということになりますが、仮にジェンキンスさんが、曽我ひとみさんの御主人であって、日本に帰化したいというような話になった場合に、これは法的に問題があるのかどうか。
 その三点についてお伺いしたいと思います。
増田政府参考人 御質問の方につきましては詳細な事実関係を承知しておりませんので、一般論としてお答えさせていただきますが、外国人が旅券または渡航証明書を所持して我が国に入国する場合には、入管法所定の手続により、当該旅券または渡航証明書に上陸の許可を行うことになります。また、外国人が日本で永住を希望される場合には、入管法上何らかの在留資格を持って上陸許可を受け、その後、永住許可申請をしていただくことになります。
金子(善)委員 今、拉致問題は国民的な大変な問題になっていることは、政府としても当然御承知だと思います。今我々も、その程度の法律論というのは知っているんですよ。そういうことをお聞きしているんではなくて、政府として最大限の配慮を行っていくかどうか、そういう観点で。
 言ってみれば、曽我さんも心配をなさっているんだろうと思うんです。ですから、今の状態、ジェンキンスさんの例に当てはめて、かなり問題があるのかないのか。あるいは、政府として場合によっては立法措置も考えて、それを救う道をつくるとか、いろいろなそういう答弁の仕方というのはあるんではないかと思うんですね。一般論を聞いているんじゃないんです。ジェンキンスさんの例で考えた場合はどういうふうに考えておられますかということです。
 それと、サポートの点についても質問をいたしておりますので、お答えをお願いします。
池田委員長 まず、増田入国管理局長。
 なお、ちょっと遠いですから、近くに座ってください。
増田政府参考人 ただいまのお尋ねの点につきましては、入管当局だけの問題でもないと思います。政府全体として取り組んでいく問題と思いますので、これから関係省庁などとも打ち合わせをしながら必要な対応を考えてまいりたいと思います。
金子(善)委員 今のような話につきましては、これから関係省庁でという答弁でございましたから、私の方から、曽我さんの御一家の御意思というものを反映した対応をぜひともとっていただきたい、このように強く要望をいたしておきます。
 サポートの点について答弁をお願いします。
井上政府参考人 先月二十四日、政府は、拉致被害者の五人の方々について、今後とも日本に滞在していただくということを決定いたしました。このような状況におきまして、被害者の方々及びその家族が我が国の社会に溶け込んで、安んじて生活のできる環境をつくっていくことは急務でありまして、政府や関係地方自治体が密接に協力しながら、一体となって支援を行っていきたい、こういうふうに考えております。
 かかる認識に基づきまして、今般、拉致問題に関する専門幹事会におきまして、総合的な支援策を検討いたしまして、取りまとめることを決定いたしました。今後、関係地方自治体と密接に連携協力しながら、きめの細かい支援につき検討を行ってまいりたいと考えております。
 委員の方から、どのようなサポートチームかということで御質問がございましたが、こういった支援を行っていくためにはしかるべき体制を整備する必要があると考えておりまして、今どういった体制を整備すべきかについて関係省庁と検討しているところでございます。
金子(善)委員 基本的にはそういう姿勢でということになると思いますが、これは二十数年間にわたって北朝鮮という独裁国家においていろいろな、生活においても大変な苦労をなさってきた方々であるというふうに認識をした上で、例えば一つの参考例として考えていくことができるのは、現在韓国にございますが、いわゆる韓国の帰国者の方々、これはハナ院というような名前でございますが、そういうところで一定期間、帰国した後いろいろな教育を受けて、韓国の生活になれるというか、そういうようなことが韓国でなされているようでございます。そうしたこともひとつ参考にしながら進めていっていただきたい、このように考えますが、外務大臣、どうですか。
川口国務大臣 この方々が日本の社会に溶け込んで、日本の社会で生き生きと生きてくださるということは、大変に大事なことだと思います。今内閣府の方からも話をいたしましたけれども、政府全体として取り上げて考えていく問題であると思います。
金子(善)委員 次に質問を進めさせていただきたいと思いますが、今回、生存が確認されていない拉致被害者の方々について、引き続き事実解明を求めたというようなことを外務省の方で発表をしているわけでございます。それに関連しまして、いわゆる安否情報でございますが、一週間というような期限を切って要求したというようなことも言われておりますが、これはこれまで外務省になかったんではないかというふうに思われるような毅然とした態度で、極めてよかったというふうに私は評価をしているところでございます。
 そこで、百項目ほどの安否情報を北朝鮮側に要求しているというようなことを、これも報道で知ったわけでございますけれども、それに基づきまして外務省の方に問い合わせをいたしましたところ、要求項目は明らかにできないというようなことを言っておられるわけでございますけれども、これは明らかにできない性質のものなのかどうか。これは外務大臣の御意見をお聞きしたい、このように思います。
川口国務大臣 これは、御本人のプライバシーにかかわる部分もあるかと思いますし、そういう意味で、具体的なそれぞれの要求項目を明らかにするということは難しいかもしれませんけれども、どういう種類のことについて向こう側に要求をしたかというカテゴリーといいますか、ジャンル分けにしたところでお話をすることはできるのではないかと私は考えております。
金子(善)委員 これは我々がちょっと個人的に調べてみましても、これまでの、小泉総理が金正日国防委員長とお会いになったという会談の後、いろいろな外務省当局から出てくる情報等々も見まして、余りにも疑問点が多い。私が数えただけでも八十ほど疑問点がさらさらと出てくるほどでございまして、百項目以上外務省としても要求するというのは当然だと思います。
 ただ、こういうことが問題だというようなことは別に発表しても何ら、ジャンルだけではなくて、こういうことがおかしいですよと。我々としても国会議員として非常に関心を持っておりますので、どういうことを北朝鮮が明らかにしてくるのかということも、これは北朝鮮の誠実さというものを見きわめていかなきゃならないと私は思います。そこで、どうして我々に、どういうことを北朝鮮に、いわゆる政策に関するというようなそういう話ではなくて、こういうことが不可解なんですというようなことでございますから、何も発表できない理由は全くないと思います。
 そんなことで、いずれにしても北朝鮮という国は、例えばキム・ヘギョンさんのマスコミへの登場から見られるように、北朝鮮としても、いわゆる情報の操作と申しますか、大変なことをやっている。私は、やはり日本国民のいわゆる世論のサポートというものがあって、そして初めて日朝正常化交渉というのが成功に結びついていくんではないかという気がしてならないわけなんです。
 要は、日本の国内で、日本国民も、どういうことを北朝鮮が隠しているのか、例えば墓が流されたとか、だれも信用できないようなことがどんどん入ってきている。だから、こういう点についてはこういうふうに政府としては北朝鮮に質問をしておりますというようなことをはっきり言っても、何ら正常化交渉に影響を与えるようなことはないと思います。また、先ほどプライバシーということを言われたわけですが、今この問題はプライバシーどころじゃないんですね。
 その辺につきましても、大臣として、どういうことを北朝鮮に情報として要求しているのか、調査を要求しているのか、その辺についてはっきりと我々に示していただきたい、このように思いますけれども、再度答弁を、いかがですか。
川口国務大臣 家族の会の方で御発表なさっていらっしゃることもあるわけでございますけれども、それ以外にも、我が国の警察当局の関心事項として入っていることもあるわけでございます。
 ということで、先ほどジャンルということを申しましたけれども、そのほかに、全部ではないにしてもそれにつけ加えて発表できるということは可能かと思いますけれども、私も、全部の質問を自分で今確認をしているわけではございませんので、警察当局とも相談をした上で、発表できることについてはお出しをしたいと思います。ただし、全部ということは難しいと思います。
金子(善)委員 いわゆる安否情報でございますけれども、現在わかっている十件十五名の拉致被害者の方々ということになるわけでございますけれども、大臣、これは交渉を通じて、いわゆる文書で報告を受けるというふうにぜひしてもらいたいというふうに思います。口頭というようなことではなく、文書ではっきりした回答を求めるようにしてもらいたいというふうに要望しておきます。
 そこで、次の問題について御質問させてもらいます。
 原敕晁さんを拉致したと言われている、現在北朝鮮におります辛光洙、これははっきりと拉致に関与した人物として特定されている人間ですが、この引き渡しと処分について今回の交渉で触れられたでしょうか、触れなかったんでしょうか。きょうは時間の関係もございますのでそのほかのことについてはちょっと触れられないんですが、当面この辛光洙について触れておきたいと思うんです。
 これは、小泉総理が北朝鮮に行かれる十五日前、九月二日でございますが、板門店の帰還二周年記念の集会に参加して、代表して宣言を読み上げております。そこで大変なことを話しているわけですが、北朝鮮の朝鮮中央通信社は、これは統一愛国闘士の非転向長期囚としてその栄誉をたたえていると。わずか二週間前でございます。
 そういうような状況にあるわけですが、それで二週間たって、金正日国防委員長ですか、これが日本に対して謝罪した。一方において、明らかに犯罪者である辛光洙という者が英雄視されている。これについて、まずもって日本政府として、こういう状態をほっておいていいのかということをぜひとも主張すべきだと私は思いますけれども、その点について交渉で触れられたんでしょうか。
田中政府参考人 これは、先ほど来御答弁申し上げておりますように、実行犯が一体どういう身分でどういう人であるのか、こういうことについて具体的な情報の提供も求めているということでございます。同時に、私どもとしては、いろいろな要求をする権利を留保しています。
 したがって、私どもがまずやらなければいけないのは、前回の調査では明らかに不十分です。ですから、実行犯の問題も含めきちんとした事実関係の解明ということを急いでまいりたい、かように考えております。
金子(善)委員 今局長の方から一般論的な話をされるわけですけれども、この拉致問題にこれだけ国民の関心が、何としてでもこの拉致問題解決に、一刻も早くその解決することを望むというような国民感情の流れの中で、少なくとも、これに関係したはっきりした犯罪者である、それが英雄視されているというような状態にある。一方において、小泉総理に対して、そこの国家元首に当たるのかどうかあれですけれども、金正日国防委員長が謝罪をした。一方で英雄視扱いをした。そのことについて、日本政府として何ら、その実行犯――これからいろいろ、本来でございますと、まあ別の機会に質問させていただきますけれども、そういう意識の問題、これについて、外務大臣、どう思われますか。
川口国務大臣 辛光洙につきましては、既に第一回の調査団が行きましたときに、この人間の引き渡しを求めているわけでございます。そこからも、日本政府の態度としては、まさに委員と同じような問題意識を持っているということは明らかであると思います。
金子(善)委員 時間が参りましたのでこれであれをしますが、いずれにいたしましても、北朝鮮、なかなか手ごわい交渉相手だということは容易に想像されます。大変な、今、民主主義というものが全くない国でございますから、そういうことをよく腹に据えてと申しますか、当然おわかりだとは思いますけれども、念には念を入れて厳しい態度で北朝鮮と交渉をお願いしたい、このように思います。
 以上で終わります。
池田委員長 次に、中川正春君。
中川(正)委員 民主党の中川正春でございます。引き続いて質疑を行っていきます。
 質問に入る前に委員長にひとつお願いを申し上げたいんですが、実は、この交渉の当事者で頑張っていただいた鈴木大使にここに出てきていただいて答弁をしていただきたいという要請をしました。いつもの返事なんですけれども、田中局長がいるから鈴木大使はいいんだ、これが外務省当局の話なんですが、事は違うと思うんですね。もう一方で、マスコミに対してはちゃんと記者会見もして発表しているんですよ。国会に対してそれができないということ、これは国会軽視でありますし、それから、もう一つ言えば、この範疇の中でできないということであれば、委員長、参考人として大使を次の質疑の中で、次の機会の中で招致するように改めてお願いを申し上げたいと一つ思います。
 それが一つと、それからもう一つは、先ほども話に出ましたが、拉致家族あるいは拉致問題についての質問事項、百項目以上という話が出ていましたけれども、これも私も要求をしました。川口大臣の答弁の中で出せますよという話だったんですが、事務当局では出せない出せないといって出してこないんですよ。これはこの質疑に間に合わすように私は要求したんですが、こうした形で資料そのものが行ったり来たりするというような状況、これに対して厳重に外務省当局に対して注意をしていただくように、これからまださまざまな資料要求というのを出していきたいというふうに思いますので、よろしくお願いします。さっきの川口大臣の答弁は了としたいと思うんですが、ぜひひとつ大臣自身からも御指導をいただきますようにお願いをしたいというふうに思います。
池田委員長 答弁要りますか。
中川(正)委員 いえ、要りません。最初の件について。
池田委員長 ただいまの中川君の件につきましては、委員会の運営等、大変重要な問題でありますので、理事会で積極的に結論が出るように協議をしていきたいと思います。よろしくお願いします。
中川(正)委員 それでは、質問に入っていきたいというふうに思います。
 さまざまな評価があるわけでありますが、一つ気になる話が出ているんです。これは安倍官房副長官にお答えをいただきたいんですが、ニューヨーク・タイムズが今回の交渉を取り上げて、これは三十一日版ヘラルド・トリビューンなんかに出ているんですけれども、日本にとってこの交渉によって期待される果実、成果というのは、小泉純一郎首相の劇的な人気回復ということであるとか、あるいは、これでアメリカとの同盟関係から自立した外交をするチャンスを日本としては最大限に利用できる、こういうことなんだと。北朝鮮のねらいはもちろん十億ドルの経済支援、これはもう十億ドルというような数字までここに出していますけれども、そういう成果が期待できる、こういう書きぶりなんですね。これに対して反論してください。
安倍内閣官房副長官 それは、マスコミそれぞれの評価はあると思うわけでございますが、私どもとしては、小泉総理の人気回復を図る、そういうような意向は毛頭ないわけでございまして、結果として人気が上がるということはあるかもしれないわけでありますが、そういう考え方は毛頭ございません。
 もとより、日朝の国交正常化を行って、そして北朝鮮を国際社会の中で責任ある立場とする、そして日朝間に横たわる拉致問題、核問題、安全保障上の問題といった、そうした懸念をなくしていく、そしてこの地域を平和な地域にしていくという目的のために総理はピョンヤンに行かれて、首脳会談を行い、そして平壌宣言に署名をした、そういうことでございます。
中川(正)委員 アメリカから出てくる情報というのは、こういう皮肉なコメントを込めて、最近多いんです、出てくるんですね。
 これは何が違うかというと、さっき副長官が答弁をされた問題でいくと、どうも、日朝の正常化、いわゆる国交の正常化というのが我々の目標なんだということ、これが全面的に表に出てくるわけですね。ところが、アメリカを含め、私自身も思うんですけれども、本来は、北東アジア地域がいかに平和な形で、特に安全保障という問題それからこれからの繁栄という形の中で安定をしていくかという、その枠組みとその状態を、北朝鮮を変えていくことによって、北朝鮮のスタンスとそれから政権の体質を変えていくことによって実現をしていくという、そのことにあるんじゃないかというふうに思います。それを、アメリカの方は、この核疑惑、疑惑というよりも核を持っているという確証の中で、どうも、国交正常化だけでは安定した状況はもたらせないよということを日本に迫ってきているというふうに受け取れると思うんですよね。
 そういう意味で、私は、これまで、小泉さんのスタンスも含めて、あるいはコメントも含めて、また皆さんの対応も含めて、どうも国交正常化ということにスタンスを置き過ぎる、強調し過ぎる。そこへ向いて走っていくと、これはどうも人気取りのために、それを何とか自分の任期の間にやりたいという意思が働き過ぎているんじゃないかというふうな、そういう受け取り方になってしまうということ、この事実があると思うんですね。
 そこのところを踏まえてさらに具体的に聞いていきたいんですが、アメリカは、北朝鮮が具体的な行動、具体的な行動ということは、ウランの濃縮設備と核兵器に至るプラン、これを具体的に廃棄する、放棄するという前提なしでは交渉に入らない、こう言っているわけですね。日本は、この安全保障の問題については、この安全保障の問題を解決するということがあって初めて、日朝の正常化交渉の前提、その話に入っていきますよ、そういう表明をしているわけですね。
 これは基本的には、一つ確認をしたいんですが、さっき川口大臣が言われた実際の経済援助という段階と、それから日朝の正常化交渉に入っていく、いわば、こちらのカードである経済支援という問題に具体的に交渉として入っていくタイミングと、これは違うんですね、二つが。段階が違うんです。それは、アメリカとしては交渉にも入るなというメッセージだと思うんですよ、ここがはっきりしないことには。そこのところは日本がどういうふうに受け取っているのか、ここがポイントになると思うんですが、今、日本の政府としては、トータルで、これをどういうふうに解釈してアメリカに説明をし、そして北朝鮮にメッセージを出しているんですか。
川口国務大臣 まず、委員の前提になさっていらっしゃる、正常化かあるいはこの地域の平和と安定かという、問題提起といいますか、意識といいますか、そこについてちょっとお話をさせていただきたいと思います。
 お持ちのような御意見が例えばマスコミなんかで言われているということはあるだろうと思いますけれども、私どもの考え方からいたしますと、これは全く、二つ、どちらかという選択肢の問題ではなくて、二つ両立をする話ということで考えているわけです。初めから、正常化をするに当たって、この地域の平和と安定に資する形でやる必要があるということ、またそういうことでなければ正常化はやっていかないんだということはずうっと言っているわけでございますし、まさにそれが平壌宣言に書かれているということでございますので、あれかこれかという問題提起ではないということをまず申し上げたいと思います。
 その上で、まさに経済協力ということについていえば、これは先ほども申しましたように、正常化が行われなければ経済協力はなされないということでございます。
 そして、この交渉の中では、私たちは、安全保障の問題と拉致の問題が二つの最優先課題である、これが非常に大事であるということは北朝鮮側に言っていますし、この二つの問題も含め、それからそのほかの問題も含め、日朝間のさまざまなほかの懸案がありますけれども、そういった問題について、これが平壌宣言にのっとる形で解決をしていくということでなければこの正常化交渉は妥結をしないということを言っているわけでございます。
中川(正)委員 もう少しわかるように答えていただきたいんですが、そうすると、具体的には、アメリカと北朝鮮の安全保障についての、特に核問題についての交渉が始まる、いわゆる米朝交渉が始まる前であっても、何らかの条件が満たされれば、日本としては、日朝正常化交渉ということは、こちらも経済支援ということを議題にして北朝鮮と交渉に入る可能性がある、日本としてはその意思があるというふうにさっきはお答えになったんですか。
川口国務大臣 どういう議題をどういう順番で扱っていくかということ自体がこれは交渉の一部であるわけです。したがいまして、今の時点で合意をされた扱い方の順番ということはないわけです。
 我が方としては、安全保障の問題そして拉致の問題、この二つが最優先課題であるということを言っているわけでして、それが議題を選んでいくときの我が方のずっと主張である。この前もそういうことでありましたから、最初の日の午前中にはずっとそういうこともやりましたし、かなりの部分がそのことに割かれたということであります。
 最終的に議題がどういう形で決まるかということは、相互に合意をしなければ議題が決まらないということでございます。
中川(正)委員 私の質問の意図にすかっと答えてください。わからないんですよ、大臣の言っていること。わからないようなつもりで、それを意図して答えていられるのかもしれませんが。
 私がもっと聞きたいのは、米朝交渉というのは、米国ははっきりと条件を出しているわけです。北朝鮮が核廃棄、濃縮プラントを廃棄するということをしっかり見せないと交渉に入らない、こう言っているわけです。そうすると、日本は、安全保障の協議の枠組みをつくったわけですね。だから、そこで、アメリカにかわってこの具体的な話を、アメリカと同じ条件を設定せずに始めていくということでありますね。そうなると、その中にこの核問題というのは必ず入っているんですね。この安全保障の協議の中に核問題というのは入っているんですね。それは確認できているんですね。そこのところ、どうですか。
茂木副大臣 私の答弁の方がぴったりかみ合うかどうかわからないんですが、まず、北朝鮮側の主張は、安全保障問題、究極的な解決についてはアメリカとやりたい、こういう主張であります。
 ただ、日朝平壌宣言の中に、御指摘もいただきましたような安全保障の問題は当然盛り込まれておりますし、我々は、今後この安全保障協議の中で、この核問題は当然取り上げられる議題である、そのように理解をいたしております。
 そして、日本、アメリカ、韓国、これが連携しながら安全保障問題については対応していく、そこの中において、日朝の国交正常化交渉そして南北会談、これは極めて重要なチャネルである、このような認識につきましては日米韓が共有している、このように理解いたしております。
中川(正)委員 核問題もこれに入れるということ、これはもう当然だと思うのですよ。そういう意思は、やはりはっきりと今の時点で表明しておくべきだというふうに思うのです。
 それでいいと思うのですが、その上で、日本は、どこまでいったら本交渉の中のいわゆる経済支援というところを交渉をやってもいいよというメッセージを出すのかということ。これは安全保障の分野で言えることですね。それからもう一つ、拉致問題も日本としては条件を出しているわけです。
 この拉致問題も、さっきお話が出たように、五人の北朝鮮における家族が日本に帰される。家族個々人の意思が確認されて、これからの永住地について合意をされるということ。これは、恐らく北朝鮮は、この辺でもう拉致については問題の解決としたい、次の話に移っていってほしいという、このことを何回も何回も向こうはメッセージとして出しているわけですね。
 これに対して、私は、日本の拉致問題、さっきも話が出ましたけれども、際限なくあるんだと思うのですよ。例えば、さっきの、死亡したとされる、向こうが言っている八人の家族から出された矛盾点、これに対しての返事を待つ、それを確かめていく。それから、北朝鮮で拉致に関与した国家機関と個人が明らかにされて、その処分と責任問題が問われ、犯人の日本への引き渡しが実行される。それから、拉致被害者への補償が北朝鮮によって確定をされる。それから、日本の警察当局で今、捜査といいますか、それを一つ一つ確認をしているんだと思うのですが、いわゆる七十人を超えると言われる拉致被害者の広がり、この可能性を明確にして、さらに、もっと言えば、韓国などからは四百九十人以上の拉致被害者というものが話が出ています。韓国と連携をするということであるとすれば、この問題はやはり日本の問題としても取り上げていくんだろう。その拉致被害者の全容解明ができるかどうか、相当な広がりを持ってこの議論というのはなされるべきなんだろうと私は思っているんですね。
 その見きわめ、どの辺で日本としては次の交渉に入っていこうとしているのか。ここのメッセージをしっかりと北朝鮮に出していく必要があるんだろうと思うのです。そうでないと、今の状況というのは、どうも日本は、アメリカに引っ張られて、これは本気でこの日朝の正常化交渉ということに臨んでくるいわゆるガッツを失ってきているんじゃないかという、そんな受け取り方もしているんだろう。だから、両方のメッセージがどこでどう交錯するかということだろうと思うのです。
 それだけに、日本の政府としても、この拉致問題と安全保障の問題、さっき申し上げた、どこの時点で交渉に入っていくのか、安全保障についても拉致問題についても、できるだけ明確にしていく必要があるんだろうというふうに思うのですね。これについてお答えをいただきたいと思うのです。
川口国務大臣 委員がおっしゃいますように、北朝鮮側に対して日本が、拉致問題が最優先課題である、そして核問題を含む安全保障問題が最優先課題であるということについてメッセージをきちんと出していくということは非常に重要だと思いますし、この点については、我々は今回の交渉でも十分にメッセージを出し、そして北朝鮮側はそれをきちんとそのように認識をしていると私は思っています。
 そして、この交渉というのは、我々としては、まさに平壌宣言にのっとって誠実に忍耐強くやっていくという話ですし、向こう側に対しても、同じく平壌宣言を守ってもらうということを求めているということです。
 何をどこの段階になったら議論をするということ自体は、これはまさに交渉の一環でありまして、我が方としては、この拉致の問題そして安全保障の問題というのは限りなく重要であるということを言っている、そういうことでございます。
中川(正)委員 どうして私の質問にストレートに答えられないんですか。答えられないとすれば、なぜ答えられないかということを明確にしてください。そういうふうに改めて質問をさせてもらいます。
川口国務大臣 私としては明確にお答えをしているつもりなんですけれども。
 まさに、何をどこの段階で話をするということは、先ほどから申し上げているように議題をどう決めるかという話の一部でして、これは交渉の中身なんですね。交渉の中身は、まさに相手方といろいろ取引をやりながら話をすることであって、ここでこういうことを、ここまでやったらこれをやってあげますということを言う話ではないということでして、したがって、私が申し上げたのは、日本として、拉致の問題と核問題を含む安全保障の問題、これは限りなく重要な問題であるということを申し上げているということです。
中川(正)委員 その辺は見解の相違だと思うんですね。議題というよりも、日本として早くメッセージを出す方が、向こうとしてもしっかりそれなりの覚悟ができるということだと思うんですよ。それを交渉でということは、両方、私たちの方も不安になるし北朝鮮の方も不安になっていく、その要素をつくり出していくということ。これは見解の相違だと思います。
 そこで、はっきりしたのは、この拉致問題あるいは安全保障問題が解決しないことには今回の交渉に入らない、こう言っていたコメントというのは、そうじゃなくて、この拉致問題、安全保障問題というのはそういう前提にならないと。ただ、実際に援助する、いわゆる経済支援をしていく段階で実際に金を出すか出さないかというときにこの条件を満たすかどうかということであって、交渉自体は、恐らくは次の設定をするときには、中に経済支援の話も含めたものが入ってくる可能性があるということなんだろうというふうに受け取りました。そういうことですね。
川口国務大臣 私どもは、平壌宣言を守るようなことがない場合にはこの正常化の交渉は妥結をしないということは言っているわけですけれども、この二つの優先課題が解決をしなければ交渉に入らないということは言っていない。既に交渉には入っているわけです。国交正常化交渉には入っている、そういうことです。(中川(正)委員「国交正常化交渉じゃないですよ、経済支援なんですよ」と呼ぶ)そして、経済協力の支援について先方は話をしたがっている。私どもは、これについて前回は対応をしておりません。
 したがって、私が先ほどから申し上げていますように、この拉致の問題そして安全保障の問題、これについては日本としては最優先課題であり、これに向こう側が、北朝鮮側が誠実に対応していくということは限りなく重要であるということを申し上げている、そういうことでございます。どの段階でどういうテーマが議論の対象になっていくかというのは、これは非常に長い交渉になると思われますので、それはまさに交渉の過程で決まってくる、それはお互いのまさに交渉、それ自体が交渉である、そういうことでございます。
中川(正)委員 私は、基本的には経済支援の交渉に入るべきでないというふうに思っているのです。そこのところで日本と韓国それからアメリカがしっかり歩調を合わせて、まず北朝鮮がなすべきことをさせるということ。実際にこの拉致家族の問題については、すぐに北朝鮮にいる子供たちあるいは夫を日本に戻す、原状復旧をするということ、それから安全保障については、核について、施設を外から見てわかるように破壊する、査察を受け入れる、この行動がまずあって、次の正常化交渉だというふうに思うんですよ。それでないとアメリカと韓国と日本の足並みはそろえることができないということ、このことが一番大事なんだろうというふうに思うのです。そのメッセージをはっきりと北朝鮮に出したらどうですか。
川口国務大臣 委員がおっしゃっているように、この核のプログラム等々について、北朝鮮側が検証可能な形で廃棄をすることが大事であるということは、既に日本も言っている、これはAPECでの三首脳の合意あるいはステートメントに書かれているわけです。したがって、その点についての委員の認識は政府と全く同じであると思います。
 ただ、申し上げたいのは交渉ということの持つ重要性でして、これは、韓国も、そしてアメリカも、日本が北朝鮮とこういう対話のチャネルを持っているということについては重要だということを考えているわけでして、私どもとしては、話し合いをするということは重要なので、それをするまでは話し合いをしないとか、そういうアプローチではない。これは、アメリカにはアメリカのやり方がありますし、我が方は我が方としてのやり方があるということでして、これを相互に連携しながら、密接に話をしながら、私もきのうパウエル長官と話をしましたけれども、そうやって話をしながら進めていくことが大事だということだと思います。
中川(正)委員 その辺のメッセージの出し方については見解の相違です。これは私は、もっとはっきりと、まずこのことはしろよと、これを発信していくべきだというふうに改めて思いますし、そうすべきだということを強調しておきたいというふうに思います。
 最後に、実は、北朝鮮の国情といいますか、今、経済改革でいろいろ中身が動いてきておるようでありますが、NGO等々の話を聞いていますと、非常に苦しい状態といいますか、この間、日本の瀋陽の総領事館に駆け込みがありましたけれども、あの背景にある、それこそ四十万人、五十万人という北朝鮮難民、経済難民ですが、そういう苦しみがさらに増幅されて非常に危険な状況になっている、あるいはひょっとするとこの冬が耐えられずに相当の人たちが死んでいく可能性がある、あるいはその難民が船を仕立てて日本に来るというふうな状況も出てきている、こういうことが言われております。そういう体制に対して、やはり日本も連携をとって、周辺諸国と歩調を合わせて取り組むという姿勢が大事なんだろうというふうに思うんですね。
 その中で、特に、中国の中にいる、既に中国の中で、いわゆる人権的にも人道的にも非常に苦しい状況にある難民のキャンプ、これの設置をしていくということを、中国自身がこれは納得していない話でありますので、この際、周辺諸国が連携をしながら、中国も含めてそうした対応をひとつここでしようじゃないかということを日本自体が取り組んでいくというのに非常に大事なタイミングだというふうに思うのです。そのことについてどういう考えでおられるか。
 この中には、九万五千人の在日朝鮮人が、帰国したその人たちが入っています、日本人妻も入っています。その一部が既に日本に帰ってきている。二十人から三十人帰ってきていますが、その人たちの証言を聞いても、これは非常に厳しい話でありますし、他人事じゃなくて日本の問題でもあるというふうに思うんですが、大臣、そこのところをどういうふうに考えておられますか。
川口国務大臣 この問題が大きな問題であるということについては、委員と全く認識を同じにしています。
 委員がおっしゃったように、中国はこの人たちを難民と認めていませんので、したがって、難民のキャンプをつくるとか、あるいはUNHCRとの関係で難民として扱うということはしないということでございますけれども、この問題については、引き続き関係の諸国の間で話し合っていくということが重要だと思います。
中川(正)委員 これで終わります。ありがとうございました。
池田委員長 午後二時から委員会を再開することにしまして、この際、休憩いたします。
    午後零時十分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時一分開議
池田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。伊藤公介君。
伊藤(公)委員 きょうは北朝鮮問題の集中審議でありますが、戦後、国際政治の中で、二つのドイツと南北の朝鮮は冷戦下の象徴的な出来事でございました。
 実は私は、一九六一年八月、突然ベルリンの壁ができたわけですが、その翌年からベルリンに生活をすることになりました。ちょうどベルリンの壁ができて、もし世界の次の戦争が起きるならここではないかと言われていた当時でございます。毎日、新聞は一面が、きょうはあのベルリンの壁を乗り越えてきた、マンホールを泳ぎ切ってきた、鉄条網から、ついにひっかかって逃げることができなかった、高いビルから死のダイビングをする、毎日そういうニュースでありました。
 私は、ベルリンを二年生活をして立つときに、このベルリンの壁は多分、私が生きている間はずっとあり続けるだろうと思いました。しかし、私がちょうどベルリンにおりましたときは、ヴィリー・ブラントが当時市長さんでした。ある日突然ベルリンの壁をつくるようなこの東ドイツ、東ベルリンと交流することはならぬ、非常に皆さんの激しいそういう批判もあった中で、ヴィリー・ブラントは執拗に、まず最初は、クリスマスイブだからといって、その東西分断していた家族の交流から始めました。さまざまな交流を粘り強くして、そして、私が想像もしなかった、このベルリンの壁は突如、市民の手によってなくなることになったわけであります。
 私は、北朝鮮を、三十五歳で初当選したしばらく後、訪ねる機会がございました。ピョンヤンに着いてから帰るまでの数日間、大変異常な国だなというのが私の印象でございました。考えてみれば、昨今のこの拉致事件を見るまでもなく、我々の隣に大変異常な国が存在している。しかし、政治がつくった壁は政治家によって取り除かれる。今、小泉総理、そして政府の一体とした応援の中で、我々が予期しないような形で新しい日朝の少なくとも話し合いの機会を持つことになり、現実に拉致をされた五人の人たちが日本に帰ってきたわけであります。
 これからさまざまな壁があると思いますが、私は、今に生きる、そして今この大きな歴史の局面に携わっている政治家の一人として、我々は、どんな国であっても、粘り強く、そして、それぞれの国民あるいは国の強い意思というものを持って交渉に臨む。そして、その最前線のリーダーの人たちが、国民の皆さんが支援をする、理解をする、そういう展開にこれからもしていくべきだし、小泉総理の訪朝によって、少なくともあの異常な北朝鮮に、拉致をした、そして謝罪をさせるということにこぎつけた。これは、これから私たちが、何年たつかわかりませんが、いつかこの時代を検証するとき、日朝だけではなくて、極東アジア、国際政治の大きな歴史の一こまだと検証されると私は思います。
 まず、外務大臣、国民の皆さんも大きな関心を寄せています。そして、それはアメリカを中心とする世界の政治も注目をしています。どのような決意でさらに臨んでいかれるか、まず外務大臣の御決意を伺いたいと思います。
川口国務大臣 今の委員のお話を厳粛な気持ちをもって伺わせていただきました。
 この小泉総理の踏み出された第一歩を大切に、外務省は北朝鮮との国交正常化の交渉、幅広い問題の中の交渉に当たる役割を持つわけでございますけれども、この交渉においては、拉致の問題、そして核の問題を含む安全保障の問題、これを最優先事項に、ひるむことなく、毅然として、そして平壌宣言を誠実に守りながら、忍耐強く交渉をしていきたいと考えております。外務省が一丸となってこの問題には対応しております。
伊藤(公)委員 質問の順序がちょっと違いますが、安倍官房副長官、お見えいただいておりますので、後に一問、具体的な御質問をさせていただきますが、安倍官房副長官は長く、お父様の安倍晋太郎先生の、外務大臣の秘書として、世界じゅうを駆け歩かれました。私は、今、安倍官房副長官にはその経験が十分生かされているのではないか、総理に随行された現地でも、またその後、五人の拉致された皆さんが帰国された後の政府の決断に関しても、安倍官房副長官の大変な活躍があるのではないかというふうに思います。
 長く、きちっとした骨がないと言われ続けてきた日本の外交が、少し見えてきたのではないか。そして、私は、日本のこの国がどういう意思を持っているかということを国際社会に常にメッセージを送れる、そういう外交を展開していただきたいと思います。
 世界の人々が、そして日本じゅうの人たちが注目するこの大きな外交交渉に当たられている安倍官房副長官に、なおこれからどのような決意で臨まれるか、そして、もし日本の国民にメッセージがあるとすれば、官房副長官から決意を込めて、お伺いをしておきたいと思います。
安倍内閣官房副長官 私も、初当選以来、外交部会長を務められた伊藤先生の御指導をいただきながら、今までの外交に果たして反省すべき点はなかったかどうかということも踏まえて今仕事に当たっているつもりでございますが、今まさに交渉中でございまして、川口外務大臣の指揮のもと、何とか私どもの主張を通すべく努力をしているところでございますが、私は、今一番大切なことは、やはり私どもの声を一つにすることではないだろうか、このように思うわけでございます。
 生存者五名の方々の子供たち、そして家族がまだ北朝鮮に残されているわけでございます。その人たちを一日も早く帰すように、私どもは声を一つにする必要があると思います。そして、生存が確認されていない八名の方々に対するさらなる資料、材料、私どもが確認できるようなものの提出をさらに求めているわけでございますが、その私どもの声にこたえるように、私どもの声を一つにすることが今一番大切ではないだろうか、このように私は思うわけでございます。
伊藤(公)委員 それでは、少し具体的なことについてお伺いをしたいと思います。
 まず、横田めぐみさんの御主人とお子さんのことであります。
 御主人は北朝鮮ということでありますから、強制的に日本に連れてくるということは不可能だと思います。横田めぐみさんの御両親は、死亡を伝えられた八名の拉致被害者に対する家族会の追及姿勢をやはり貫きたいという気持ちがよく伝わってきます。キム・ヘギョンさんが父親と一緒に訪日するには、日本政府が強く働きかけていくことが私は不可欠だと思います。お父さんと一緒に日本に来てくださいという手紙を政府に託したとも伝えられています。
 日本政府の働きかけが不可欠でありますけれども、北朝鮮の取引材料とならないように私は努力をすることが必要だと思いますけれども、政府はどのようにこれに対応されていくか、お伺いができればと思います。
川口国務大臣 キム・ヘギョンさんの訪日についてでございますけれども、政府として、この間官房長官が発表いたしました、拉致の被害者の北朝鮮にいる子供たちあるいは家族については早期の日本への帰国を強く求めていくということでございまして、この対象の中にキム・ヘギョンさんは入っているわけでございます。私どもとしては、この人たちが北朝鮮から日本に来て、そして、自由な意思決定ができる環境の中で意思を決めるということが大事だと思っております。
 今回の交渉の中で、残念ながら、この方々の帰国の日程について北朝鮮側と合意をすることにはならなかったわけでございますけれども、北朝鮮はこの点について、この問題を政治的に利用することはしない、そして、家族の安全については心配をすることがないということは言っておりました。
 政府として、この政府の方針に基づいて、この家族の方々の帰国を早期に実現することができるように全力を尽くしていきたいと思っています。
伊藤(公)委員 クアラルンプールで行われました日朝国交正常化の交渉の中で、対立点は浮き彫りになりました。日本は拉致問題と核を中心として主張され、当然のように、北朝鮮は経済問題に入りたいということでございました。しかし、この交渉は決裂をしたといいながら、日本が拉致問題と核について再三にわたって主張する、北朝鮮も席を立つということもなかったわけですから、私は、それなりにこの交渉は意味があったというふうに思います。
 先ほど安倍官房副長官も、国民と一体となったことが大事だという御答弁もございましたが、こういう交渉に、日本の国民の皆さんや、そして日本に帰られた家族の方々、あるいはまた死亡を伝えられている、そういう御関係の皆さんも、本当に一糸乱れず、政府しっかりやってほしいと、そして、あの難しい交渉の中でも日本の主張をきちっとやってくれたという、皆さんが結束をした決意までしていただいていることを、私はすごいなというふうに思います。
 もし私が、自分の家族でこういうことであったらどうなんだろうということを思いますと、やはり日本人も強い、そして、そういう皆さんに対して国民の皆さんが熱いまなざしで応援もしていただいているし、見守っていただいている、やはり日本人というのはそういう強さがあるということを私も非常に感じまして、それだけに、そういう意味では、政府に一層最前線で頑張っていただきたいと思うわけであります。
 そこで、対立点はそういうことで明らかになってきたわけでありますけれども、この北朝鮮は、国家として拉致を認めた後も拉致被害者を完全に解放しない、あるいは、平壌宣言に署名しながら核開発を進めている。北朝鮮がこのような状況にあれば、私たちは、国交正常化についての具体的な交渉も、当然経済協力に関する交渉もあり得ないというふうに思いますが、この点に関して、外務大臣の認識と、国交正常化交渉の優先課題はいかに調整されるのか。
 きょうも午前中の質疑にございました。交渉ですからいろいろな過程があるということは承知していますけれども、我が国は、こういうことでなければできないということのメッセージを常に明確にしていく必要があるというふうに私は思いますけれども、まず、外務大臣の御認識を伺います。
川口国務大臣 交渉に当たって、こちら側が相手に対して何を要求しているかということについては常に明快にメッセージを伝えなければいけないということは、おっしゃるとおりだと思います。
 そういった考え方に従って、我が国は、今回の交渉において、あるいはそれ以前から、拉致の問題、そして安全保障の問題、これは核の問題を含みますが、それが最優先課題であるということを言ってきたということです。これについては、核の問題にせよ、それから拉致の問題にせよ、我が国としては方針がきちんとあるわけでして、これを譲るというわけにはいかないということについても先方にきちんとメッセージを伝えているということでございます。
 今後の協議がどのように進んでいくかということについては、これは午前も申しましたように、進め方自体が綱引きの材料ということでございますから、我々としては、まさにこの二つのテーマが最大限の関心事であるということを十分に伝えながら、これはもう既に伝えているつもりですけれども、協議をしていきたいと思っています。
 経済協力の問題について、我々は、今回の会議では、恐らくその時間の七、八割ぐらいを拉致の問題と安全保障についての我が国の主張を伝えることに使ったのではないかと思いますが、今後とも、こういった姿勢は非常に重要でございますので、それを貫いていきたいと思います。
伊藤(公)委員 しっかりやっていただきたいと思います。
 安倍官房副長官にちょっと具体的なことを伺いたいと思います。
 九月十七日の日朝首脳会談で北朝鮮側から死亡とされた八名については、北朝鮮から提供された情報にさまざまな不審点が見つかり、今般の本交渉で、北朝鮮に不審な点のリストを渡して、北朝鮮側は、可能な限り速やかに回答する努力をすると約束をしたと伝えられています。
 ですから、多分回答されると思いますが、私は、その回答があるなしにかかわらず、その結果を待たずに第二次の政府の調査団の派遣をぜひやってほしい。当初、向こうもこれには難色を示しているようですけれども、私は、第二次の調査団はもう少しじっくりと、その関係の人たちが納得いくような調査をする期間が必要だと思います。一日、二日で調査できるはずはありませんから、これはやはり北朝鮮をしっかり説得して、このことが恐らく次の交渉へのステップのすべてだと私は思いますから、調査団の派遣、そして、その調査団の派遣は例えば一カ月とか期間をちゃんととってやるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
安倍内閣官房副長官 ただいま先生から御指摘されましたように、第一次調査団の際の先方より出された回答、また資料、材料について、私どもとして満足していたわけではないわけでございまして、ですから、今回の正常化交渉におきまして、この生存が確認されていない拉致被害者について、事実解明を引き続き強く求めたわけでございまして、拉致被害者の御家族から出された疑問点等を踏まえた追加照会事項を手交いたしまして、速やかで、かつ誠意のある回答を求めたところでございます。これに対しましては、ただいま委員御指摘のように、北朝鮮側は、関係機関とも協議しつつ可能な限り速やかに回答できるよう努力すると言って持ち帰ったわけでございます。可能な限り速やかに回答するということは先方も言ったわけでございます。
 そこで、第二次調査団のことでございますが、確かに委員御指摘されるような点はあると思います。しかしながら、北朝鮮に行って私どもが自由に調査ができれば、それはそれなりに意味があるんだろうと思うわけでございますが、残念ながら北朝鮮はそういう国ではないわけでございますから、それなりに成果のある調査にするために先方のそれなりの同意を取りつけなければいけないわけでございますし、また、今回提出をいたしましたこの追加的照会事項についての回答をさらに分析する必要もある、こういうふうに考えているところでございます。
伊藤(公)委員 いずれにしても交渉ですからいろいろなことがあると思いますが、私は、第二次の調査団は次へのステップの非常に大きな約束事になるし、調査団の役割というものは大きいというふうに思っておりますので、どうぞしっかり臨んで対応していただきたいと思います。
 そこで、もう時間も限られてまいりましたので、安全保障問題についてちょっと伺っておきたいと思いますが、日朝国交正常化交渉に関して、我が国の外交努力はもちろんのことでありますが、やはり北朝鮮に対する国際的な圧力が私は欠かせないというふうに思います。米韓の間で、また日米の間で、あるいはまた隣の中国あるいはロシア、そういう北朝鮮を取り巻く国々の連携、連帯というものが大変大事だというふうに実は私は思うわけであります。
 小泉首相は、日朝に加えて、今申し上げた四カ国を加えた六者協議の設置を提唱しているわけでありますが、対北朝鮮政策に対する連携のさらなる強化を図るために、私は、現在の日米韓の政策調整グループが既にあるわけですけれども、これに並行して中国、ロシアも加えたいわゆる実務者レベルの政策調整機構を設置してはどうか。例えば安全保障につきましては、特にアメリカは、北朝鮮とはもう今こういう状況では交渉しないというところまで来ているわけでありますから、私は、小泉首相の提案する政策調整機構、六カ国のこの機関はそれなりの大きな役割を果たすのではないかというふうに思いますが、政府の見解を伺いたいと思います。
川口国務大臣 北朝鮮の問題を考えるときに、委員がおっしゃったような近隣の主なプレーヤーの存在というのは非常に重要だと思います。
 まず、TCOGといいますのは、三者、日米韓の会議ですけれども、これは日米韓の三つの国が北朝鮮への政策を調整する場でして、これは大変に密接に連携をしながらやっております。今度の交渉との関係でも、特に安全保障については、この三つの国の間での相当に細かいレベルにおける調整というのが非常に重要になってくると思います。
 それから、おっしゃったような中国ですとかロシアとか、これらの国々もこの地域には非常に大きな影響力と関心を持っていますので、これらの国々とは交渉の前あるいは交渉の後にさまざまなレベルでコンタクトをし、連携をとっているわけです。
 今回、小泉総理が行かれたときに、日本、米国、中国、ロシア、韓国、それに北朝鮮が入りますけれども、六つの国を入れた話し合いの場をつくることを提案いたしています。そして、これについて向こう側からは、少し長い将来を考えたときにそういうこともあるだろうという返事をもらっていますけれども、これは今回の交渉に即してということではなくて、むしろ、より広く北東アジアの地域の安全保障全般について関係の国が集まって話をするという信頼醸成の場、そういう位置づけでございます。
 いずれにしても、特にロシア、中国は非常に重要なこの問題のパートナーだと思っています。
伊藤(公)委員 そうすると、大臣、六者協議は呼びかけるわけですか。
川口国務大臣 六者協議については、先般ロシアに私が行きましたときに、ロシアとの間ではそういう場が必要だろうという話はいたしております。この地域の国際情勢の動きを見ながら、そういった場をつくるための努力をしていきたいと思っています。
伊藤(公)委員 せっかく副大臣おられますから、もしあれでしたら御答弁ください。
 もう一問、核問題について。
 きのうの一部報道、これは日経でありますけれども、北朝鮮が核開発計画の一環として、地下核実験を近い将来強行するおそれがあるということを米政府が判断し、実験を未然に防ぐために対応策の検討に入ったとされておられます。アメリカ政府は、北朝鮮の核開発能力が向上して、プルトニウムを使って核実験を行えるレベルに達したのではないかという疑いを持っているようであります。もし事実とすれば、これはかなり深刻な事態であるというふうに思います。
 我が国政府は、北朝鮮の核開発の現状をどのように把握をしているのか、また、この件に関してアメリカ政府とどのような協議を行っているか、もし行っていれば御説明を願いたいと思います。
茂木副大臣 伊藤委員の方から御質問いただきました、米国政府が北朝鮮による核実験を未然に防ぐための対応策の検討に入ったという報道についてでありますが、政府といたしましては、そのようには現在のところ承知いたしておりません。
 しかし、この核開発問題、安全保障問題の中でも大変重要な問題でありまして、日本はもちろんでありますが、アメリカ、韓国等とも緊密な連携をとりながら、抜本的な解決に向けて進んでいきたい、このように考えております。
 なお、伊藤委員の質問、最初から、ベルリンの壁から一言一言かみしめるように聞かせていただいたわけでありますが、大先輩として本当に、例えばアメリカで公民権運動というあの難しい運動の先頭に立ったロバート・ケネディを見るような思いで聞かせていただきました。
伊藤(公)委員 今のアメリカの報道ですけれども、ちょっとこれは大事な問題なので、今お答えいただきましたが、日本はこのことを承知しているんですか、アメリカとの話し合いがあるんですか、そこだけちょっと教えてください。
川口国務大臣 我が国としても、この核の問題は重要でございますので、米国を初め関係国と情報の交換を行ったり話し合ったりということはやってきております。
 この問題については、米国あるいはその他の国との関係がございますので、我が国としてどこまで情報を持っているかということについては、まことに申しわけないんですが、この場で申し上げることはできないわけでございますけれども、報道されました、核爆発の実験を未然に防止するための対応策を考えるということについては、我が国としてはそういう情報は現在持っていないということでございます。
伊藤(公)委員 今度の日朝交渉の中の拉致問題と核開発の問題は、最も重要なテーマなんですね。アメリカは何といっても最新の情報を持っていると思うんですよ、既にそういうことが報道されているわけですから。私は先ほどから六者協議とかいうことを申し上げてきましたが、やはり外交交渉ですから、攻め方がいろいろあると思います。そして、アメリカは北朝鮮に対して非常に強硬な姿勢をとっていますよね。だから、あの東西のベルリンもそうですし、それから米ソの冷戦もそうでした、時には強硬に、しかし時には柔軟に。まさに最近総理の好きな言葉であると思いますが、柔軟かつ大胆にという。外交は、確かにそういういろいろな要素があると私は思うんですね。
 この核の問題が、最新の情報を持っているであろうと言われるアメリカから既に発せられているわけですから、一体北朝鮮の核開発がどういう状況になっているかということは、私は速やかに情報を得るべきだと思いますので、得ているかどうかわかりませんけれども、得ていないとすれば、大臣はぜひ確認をしていただきたいと思います。
 それはそれとして、もう時間が来てしまいました。今月の十一日には日米韓外相会議が予定をされております。それでは、もう結論だけ申し上げます。
 アメリカ及び韓国との間で意見調整を行って、その結果を北朝鮮との交渉において、安全保障協議、次回の国交正常化交渉に生かしていくべきだというふうに私は思いますが、大臣の御見解を伺って終わりたいと思います。
川口国務大臣 国会の許可をいただいて韓国に行くことができました場合には、日米韓の外相レベルの会合を持つということが私は有益であると思いまして、きのう、パウエル国務長官と電話で話をしたときにも、そういうことで話をいたしております。
 そういうことが現実のものとなりましたときには、ここで密接にこの三カ国の間の連携を行って、その成果を、委員がおっしゃるように今後の交渉に生かしていきたいと思っています。
伊藤(公)委員 逆境は人をつくるといいますが、大臣を中心に、茂木副大臣も、そして安倍官房副長官も、やがて日本のトップリーダーになる人たちだと思いますから、この交渉にどうぞひとつ政治生命をかけるという決意で臨んでいただきたいと思います。
 質問を終わります。
    ―――――――――――――
池田委員長 松本善明君の質問の前に、お諮りすることがございます。
 本件調査のため、本日、政府参考人としてさらに外務省中東アフリカ局長安藤裕康君の出席を求め、説明を聞きたいと存じますが、御異議はございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
池田委員長 御異議なしと認めます。よって、決定いたしました。
    ―――――――――――――
池田委員長 質疑を続行いたします。松本善明君。
松本(善)委員 北朝鮮の問題で、二十九、三十日、日朝国交正常化交渉が行われましたが、それに出席した鈴木大使は、日朝間で波長が合わなかったということを言っておりますが、それはどういうふうに波長が合わなかったんでしょうか。
田中政府参考人 御指摘の報道にある鈴木大使の発言でございますけれども、鈴木大使の意味したところは、日朝間の基本的な立場あるいは主張というものは差異が非常に大きかったということで、北朝鮮側には譲歩をするような訓令を持っていなかった、こういう趣旨を大使の言葉で述べたものだというふうに理解しております。
松本(善)委員 日本政府が、五人の帰国をした拉致被害者を帰国させないで、永住帰国を求めて家族を呼び戻すという方針をとったというのは、きょうの質疑の中でも明らかになりましたが、どういう判断からそういうふうな方針になったのでしょうか。
田中政府参考人 私どもの、政府としての方針を決めるに当たっての判断の基礎といいますのは、まさに、こういう二十四年間も拉致をされて北朝鮮で半ば強制的に暮らしをしてきた方々でございますから、本人の意思というのは自由な環境の中で家族と話をして決めていただく必要がある、そういう自由な環境をつくるのが政府の責務であろうという基本的な考え方に成り立っているわけでございます。
 したがって、日本で引き続き滞在をしていただく、かつ、北朝鮮に残っておられる家族の方々の日本への帰国というものを実現して、日本の自由な環境の中で本人の意思が発揮できるような、そういう結果をつくりたい、これが基本的な考え方でございます。
松本(善)委員 それを実現するというのはなかなか困難ないろいろな交渉が要ろうかと思いますが、今外務省はどのようにして打開をする考えでいるんですか。
田中政府参考人 まさに、さきのクアラルンプールでの正常化交渉でも日本側の代表から強く求めた次第でございますが、大変残念ながらその結果は出せなかったということでございます。
 今後、先方は正常化交渉を十一月の末にやりたいということを言っております。ですから、私どもとしては今回の正常化交渉をきちんと評価した上で、いろいろなチャネルがあり得ると思いますけれども、可能なチャネルを使いつつ、この実現に努めてまいりたい、かように考えております。
松本(善)委員 報道によりますと、吉田康彦大阪経法大学の教授が、互いに信頼関係を築こうという意思がなければ拉致問題の解決は不可能だ、北京など第三国で被害者と子供たちが会う場をつくることも考えられるというふうな報道がありますが、この吉田教授の考えについては、外務省はどう考えていますか。
田中政府参考人 この問題の原点というのは拉致ということがございます。ですから、問題の原点に立ち返ったときに、自由な環境をつくるためには日本に来ていただくのが妥当であるという判断をしたものでございますし、可能な限り日本で会っていただけるというような結果をつくるように努力をしてまいりたいというふうに考えております。
松本(善)委員 吉田教授の考え方はとらないという答弁だったろうと思いますが、先ほどは打開の方法について、いろいろなチャネルを通じて打開をしていきたいということを述べられたわけだけれども、実現の見通しについてどう考えていますか。
田中政府参考人 国交正常化交渉の場においては、先方から前向きな返事がなかったことは事実でございます。ただ、先ほど申し上げましたように、これは拉致ということでございますし、金正日総書記は、少なくとも永住帰国であるとか一時帰国について北朝鮮は万全の協力をする、こういう基本的な考え方が私はあるものだと思いますし、なおかつ具体的な問題、家族に帰国していただいて、日本で自由な意思で物事を判断してもらう、そういうことも含めて、これは交渉でございますから、日本としてはきちんとした主張をして、先方の反応を見きわめてまいりたいというふうに考えております。
松本(善)委員 向こうの反応は、譲歩しないという感じの反応ですか。
田中政府参考人 何回も同じ答弁で恐縮ですけれども、まさに北朝鮮が拉致ということを認めたのは九月の十七日のことでございます。ですから、私どもとしては、その日以降、北朝鮮がこの拉致の問題について大きく変わってほしい、変わるのは当然だという認識を持っておりますし、そういう拉致の問題というのを原点にして、やはり家族の意向、本人の考え方というものが実現されるように努めていくのが政府の責務であるというふうに考えております。
 ただ、まだ一カ月ちょっとでございますから、まさに私どもがやっているのは交渉ということなので、やはり相手の反応、正常化交渉のこの二日間の協議で前向きな返事がなかったから前向きではないんだというようなことを私どもが決めつける必要もない、できるだけ粘り強く求めてまいりたいというのが現在の考え方であろうというふうに思います。
松本(善)委員 ちょっと別の問題に入りますが、日朝安全保障協議について、十一月中の開始で基本合意をしたということでありますが、この安全保障協議で話し合われる内容は何でしょうか。
茂木副大臣 委員御指摘のとおり、日朝安全保障協議につきましては、北朝鮮側と十一月中に立ち上げ、こういうことで合意をしております。詳細につきましては今後調整をしていくということでありますが、御案内のとおり、日朝平壌宣言におきましても、核の問題、ミサイルの問題、工作船の問題を含む安全保障上の諸問題に関し解決を図ることが必要、こういうことを日本と北朝鮮の間で確認をいたしておりますから、この宣言に基づいて行われます日朝の安全保障協議におきましては、当然核の問題を含んだこういった問題が話し合われるべきだ、そのように考えております。
松本(善)委員 ここでは拉致問題はやらない、核問題は入るけれども、そういうことですね。今の御答弁ではそれは入っていませんでしたが、どうなるんでしょう。
茂木副大臣 拉致問題につきましては国交正常化交渉において取り扱っていく、そしてまた、国交正常化交渉と安全保障協議、これは一体のものとして進めていきたい、このように考えております。
松本(善)委員 核問題が安全保障協議の中に入るということですが、九月の十七日の総理の訪朝以前に、アメリカから北朝鮮の重大な核疑惑について伝えられていたということでありますが、だれからだれに伝えられていたんでしょうか。
川口国務大臣 総理の訪朝以前に、この核の疑惑について、あるいはその懸念について米国側から日本に伝えられていたということでございます。ただし、具体的といいますか、詳細に伝えられていたということではないわけでございます。
 これは、伝えてきた国との関係がございまして、いつ、だれが、だれに伝えたかということについては、申しわけございませんけれども、ここではっきり申し上げることができないということでございます。
松本(善)委員 とにかくそういう情報がアメリカから伝えられたということは事実のようですが、政府はそれをどういうふうに受けとめて、この総理の訪朝について、どういう方針でこの点についての交渉は臨んだんでしょうか。
田中政府参考人 今大臣から御答弁がありましたように、米側から伝えられたのは、疑惑の懸念ということでございます。これはもちろん、日朝首脳会談に先立って米国とも十分協議をいたしまして、総理からは日朝首脳会談において強くその懸念、核疑惑、核開発についての懸念というものを表明をされた、国際合意を守らなければいけないということでございます。金正日総書記も国際合意を守るということでございましたので、平壌宣言にその趣旨を盛り込んであったわけでございますが、それに署名をされて、まさに今後問題を解決していくために、この平壌宣言の国際合意を守るという項を使って北朝鮮との交渉をしているということでございます。
 ですから、その結果、今回の正常化交渉においても、安全保障の問題、とりわけ核の問題について日本は強い主張ができたということであろうかというふうに思います。
松本(善)委員 米朝会談では核問題はどういうふうに話し合われたのでしょうか。それが伝わっていれば。
田中政府参考人 米朝会談と申されますと、米国のケリー国務次官補がピョンヤンを訪問した際ということだと思いますけれども、米国がこの疑念をぶつけたのに対し、北朝鮮はウラン濃縮プログラムの存在を認めたというやりとりがあったということが米国から外にも発表されているということでございます。
松本(善)委員 そうすると、北朝鮮がみずから核兵器を持っているという趣旨で認めたというふうに伝えられておりますが、それは事実なのか。それはいつ、だれが、だれに、どのように伝えたのか、伺いたいと思います。
田中政府参考人 ケリー国務次官補の訪朝の際に、明確に北朝鮮は核兵器を有しているということを伝えたわけではない。先ほど申し上げましたように、ウラン濃縮プログラムの存在を認めたということであろうかと思います。
 一方、十月の二十五日付の北朝鮮の、これは外務省の談話であったかと思いますけれども、そこで、そういう能力を持つに至る、この表現は非常に微妙な表現でございますけれども、そういう趣旨のスポークスマンの声明ということがございます。
 ただ、明確に核兵器を保有しているということを認めているわけではないというふうに考えてはいます。
松本(善)委員 今、ある程度お話があったんですが、北朝鮮側はどのような表現でこれを認めたのか、正確に答弁をしていただきたいと思います。
池田委員長 田中アジア大洋州局長。具体的に答弁してください。
田中政府参考人 申しわけございません。
 これは十月の二十五日、北朝鮮の国営朝鮮中央通信並びに平壌放送それから朝鮮中央放送が流したニュースとして、北朝鮮の外務省代弁人談話ということでございます。
 その中で、我々は米国大統領特使に対し、米国の加重された核圧殺脅威に対処し、我々が自主権と生存権を守るために、核兵器はもちろん、それ以上のものを持つようになっていることを明白に言った、こういう表現がございます。
松本(善)委員 そうすると、それは平壌宣言にやはりはっきり反しているのではないかと思います。安全保障協議の中で、平壌宣言の立場から、日本政府はどのようにその履行を迫るつもりですか。
川口国務大臣 先ほど田中局長が申しましたように、この平壌宣言を使って、これによれば遵守をすると北朝鮮は言ったわけでございますので、遵守をさせるべく、この平壌宣言を使って、我が方としては可能な限りのてこを全部使ってやっていくということだと思います。
 この平壌宣言が守られる、遵守されているという状況でなければこの交渉は妥結をしないということは、北朝鮮側に対しても言っているところです。
松本(善)委員 その見通しについてはどう考えているでしょうか。
川口国務大臣 我が方が持てるてこ、これを全部使って交渉をしていくということでございます。
松本(善)委員 若干時間がありますので、イラク問題について伺います。
 イラク問題は、二十一世紀がどういう世紀になるかということを決めるような重大な問題であります。安保理事会でイラク問題が今いろいろ論じられようとしておりますが、主要各国、フランス、ロシア、中国、アメリカの態度とその見通しで、わかっていることがあればお答えいただきたい。
安藤政府参考人 委員御指摘のとおり、ただいま国連の安保理におきまして、イラクに対する査察をいかに効果的に実施し得るかという点についてさまざまな議論が行われ、かつ、新しい決議をつくるべくいろいろな作業が行われている最中でございます。
 今御指摘のように、各国にそれぞれのニュアンスの差があることは事実でございますが、これはあくまでも方法論ということで、イラクに即時、無条件かつ無制限の査察を実施させるためという目的においては一致しているわけでございまして、その決議の成立のタイミングであるとか、あるいはその内容についてはまだ定かではないというふうに理解しております。
松本(善)委員 私も一昨日取り上げましたが、党首討論でも取り上げられて、総理は、戦争によらない外交努力を進める、イラクが大量破壊兵器の査察についての安保理事会決議を無条件、無制限で実行すれば攻撃する必要はなくなるというふうに述べられました。
 イラクがいろいろな注文をつけて査察の実行をおくらせてきたことは事実で、これは私も一昨日、緒方代表団が率直にイラク側に指摘をしたということを述べました。それに対してイラク側は、即時、無条件に、八つの大統領官邸を含めてどこでも査察をしてくれ、こういうふうに言った。そうすると、これはほぼ、日本政府や、今述べられた無条件、無制限の査察を受け入れるということではないかと思います。そうすると、武力行使の必要はないのではないかというふうに思いますが、その点については外務省はどう考えておりますか。
安藤政府参考人 確かにイラクは、サブリ外務大臣が九月十六日の日に、アナン国連事務総長あての書簡を送付いたしまして、無条件で査察を受け入れる、こういうことを言いました。
 しかし、大切なことは、この査察、それからその後の大量破壊兵器の廃棄ということが実際に実現するということでございまして、この書簡でそういう意向を伝達したというだけではまだ不十分であるということだと思います。
 そのために、実際にこの査察を即時、無条件かつ無制限に実施して、大量破壊兵器を廃棄させるということを確保するためにどうしたらいいかということで、今、安保理の決議を通すべく作業が行われている、こういうことだというふうに思います。
松本(善)委員 今は、その査察を行わせるということが問題になっているのではありませんか。その点では条件を満たしているのではないかと思いますが、今の廃棄をさせるというのは、次の段階の問題なのか、同時にやる問題なのか、どう外務省は考えていますか。
安藤政府参考人 確かに、現時点での議論というのは、査察を実際に実施するためにどうしたらいいのか、そして、もし査察に基づいて大量破壊兵器がございますれば、それを廃棄させるにはどうしたらいいのかという議論でございます。
 ただ、まずその査察について、例えばどこを視察するとか、あるいは実際の査察の現場でのやり方、例えば人数を、査察官を何人にするという制限をされるのかされないのかとか、あるいは抜き打ちの査察ができるのかとか、いろいろな問題があろうかと思います。あるいは、先方の査察官がそこに同席できるのかどうかとか、実際に航空機やヘリを使うわけでございますが、それの離発着が認められるのかとか、繰り返しになりますが、そういう査察を無条件かつ無制限に実施させるために、効果的な査察のためにどういうふうにしたらいいのかということで話し合いが行われている。
 それで、過去においては、今申し上げたような幾つかの各論の部分について、イラクがそれを受け入れなかったということが実際に起こったわけでございますので、そういうことが二度と起こらないようにするためにはどうしたらいいかという話し合いが行われているということでございます。
松本(善)委員 私どもの党も、査察についていろいろ口実をつけてやらせなかったということについては、イラク政府に厳しく指摘をしたところであります。しかし、そういう問題があるんですけれども、査察が行われるということになれば、私は、武力攻撃の必要はないのではないかというふうに思います。
 総理が党首討論で、先ほども言いましたが、戦争によらない外交努力を進めるということを言ったことは非常に重要だと思っています。さらに一歩進めて、国連決議なしにアメリカがイラク攻撃を行うことには反対ということを日本政府は言うべきではないか。なぜそれが言えないんだろうというふうに思っているわけですが、国連決議なしにアメリカが単独行動でイラク攻撃を行うということは明白に国連憲章に違反をしているし、イギリス以外のほとんどすべての国がそう言っているわけです。なぜ日本政府がそれを言えないのでしょうか。
川口国務大臣 先ほど安藤局長から申しましたように、現在、国連の場で、イラクが即時、無条件、無制限に査察を受け入れるようにする、あるいはなることのための努力が行われているわけでございます。
 一番大事なことは、この問題の根源は、イラクが過去四年にわたって査察を受け入れず、さまざまな大量破壊兵器に関しての疑惑を国際社会から受けているということでございまして、イラクがこれを解決するということが大事であるわけです。したがいまして、今、国際社会全体が、日本政府もその一員ですけれども、平和裏に問題を解決するための努力をしているということでございます。
 それが総理のおっしゃったことであるわけですけれども、委員が、戦争を例えばアメリカが国連の決議なしにやるというようなことを今おっしゃられた、そのように伺いましたけれども、それはまさに仮定のお話をしていらっしゃるわけでございまして、そうした予断に基づいた議論を現在この時点でするということは適当でないと思います。
松本(善)委員 今の外務大臣の御答弁は、前回も同じことを言われているわけですけれども、前回も言いましたように、アメリカの単独行動主義、これについては、その後のブッシュ大統領の発言なども見まして、申しました。そして、この単独行動主義は、国連の権威を傷つけることは明白なんですね。その批判は全世界的に起こっております。
 私は、日本政府がそれは認めないということをはっきり言うということが世界平和のためには決定的だと思うんです。しかも、日本が自主外交をやっている、平和外交をやっているということを世界に明らかにすることではないか。それを、今はそういう外交努力をやっているんだということで避けるということは、私は、日本の立場、自主的な平和外交をやる、憲法はそれを求めているわけですから、それをこの機会にこそはっきり言うべきではないかと思いますが、その点についてもう一度お答えをいただきたい。
 ほかの国は言っているんですから、仮定の問題と言われますけれども、ほかの国はそう言っているんですから、なぜ日本が、主要国では日本だけ、イギリスは別ですが、日本がまだ言わない主要国の一つなんですね。私は、そういうことをやることこそが自主外交、日本国憲法に基づく平和外交ではないかと思いますが、いかがお考えですか。
川口国務大臣 米国は、まさに今国連の場で、したがって、単独主義でなく、国連の場でこの決議をつくる努力をしている、そういう状況だと思います。
松本(善)委員 もう時間ですからこれで終わりますが、やはり平和外交をさらに強く進めることを求めて、終わります。
池田委員長 次に、東門美津子君。
東門委員 社会民主党の東門美津子でございます。
 まず、拉致問題についてお伺いいたします。
 先月、十月二十九日、三十日の両日にわたって行われました今回の日朝国交正常化交渉では、核の問題と並んで、拉致問題、特に帰国した五人の御家族の日本への早期帰国が最重要課題でした。拉致問題については、我が国が帰国日時の確定を求めたのに対し、北朝鮮側は五人が北朝鮮に戻らなかったことに反発をして、結局合意に至らなかったということは非常に残念なことです。政府は引き続き、御家族の早期帰国を北朝鮮に求めるとともに、そのための国際世論の喚起に向けて行動してほしいと思います。
 拉致問題解決のためには国際社会に訴えることが重要であるということは、これまでにもたびたび指摘されてきたことであり、五人の御家族の帰国に関しても、中国やロシア、EU諸国など既に北朝鮮と国交のある国や、また国際機関に対し協力を求め、国際的な圧力をかけるべく外交努力をすべきであると思いますが、拉致被害者御家族の帰国に関して、政府は既にこれらの働きかけをもう行っているのでしょうか、また、今後行っていくつもりであるのか、まずそのことから確認をしたいと思います。
川口国務大臣 委員がおっしゃられましたように、この拉致の問題というのは、今回の交渉、あるいは交渉全体を通じて最優先課題でございます。
 今までも、この拉致の問題については国際社会への働きかけを行ってきました。今、日本にいる五人の被害者の北朝鮮にいる子供や家族の人たちに、日本に来てもらって、そして意思決定ができる自由な環境のもとで意思決定をしてもらうことが重要であるという考えで、政府は北朝鮮に対して、この点については強く働きかけているわけでございます。これについては、今後引き続きさまざまなチャネルを使って働きかけを行っていきたいと思いますし、交渉においては、我が国のてこを使って交渉していきたいと考えています。
 国際社会への働きかけでございますけれども、もちろん国際社会への働きかけということも視野に入れてこういった交渉をしていくわけでございますけれども、何が一番この成果をもたらす上で効果的かということを考えながら、働きかけあるいは交渉をやっていきたいと考えています。
東門委員 確かに相手があることで、北朝鮮という国との交渉、かなり厳しいことはもちろん予想されておりましたけれども、しかし、やはり帰国された五人の方々が北朝鮮に残してきた家族、子供たち、あるいは夫のことを考えるときに、本当に一日も早くそれが実現することが望まれます。頑張っていただきたいと思います。
 次に、核問題、それから安全保障問題についてお伺いしたいと思います。
 日朝間には、拉致問題はもちろんのことですが、核開発やミサイル等の安全保障の問題、経済協力の問題等、さまざまな懸案事項が山積しています。今回の交渉では、初日から激しい意見の対立があり、いずれも難しい事項ではあるが、日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決することが双方の利益であり、地域の平和と安定に大きく寄与するとの日朝平壌宣言の趣旨にのっとって、政府は今後も真摯にかつ粘り強く交渉していただきたいと思います。
 国交正常化交渉の我が国代表である鈴木勝也大使は、交渉前の先月二十一日、報道各紙のインタビューに答えて、その中で、針の穴に象を通すような厳しいことになる可能性もあるが、話し合わなければ道は開けない、両国民が不幸な過去を克服し、明るい未来を開くことは絶対必要であると述べておられます。この鈴木大使の言葉のとおり、問題の解決は対話を通した平和的手法しかあり得ず、さきのAPEC首脳声明が、平和的解決を確保するとのコミットメントを再確認するとしているように、国際社会も諸問題について対話を通じた平和的解決を望んでいます。
 再開後第一回目の交渉では、ほとんどの問題で双方の主張がかみ合わず、物別れ状態であったようですが、川口大臣は、北朝鮮との交渉における最高責任者として、平和的解決へ向けて、北朝鮮の姿勢に何らかの変化を感じられたのかどうか、まずそのことをお伺いしたいと思います。
川口国務大臣 おっしゃったような非常に厳しい交渉であったわけでして、北朝鮮側については、北朝鮮側の立場をかなり原則的に述べたということでございます。我が方も同様に、我が国の立場をきちんと、毅然として、揺るがず述べたということでございまして、拉致問題については、非常に残念でございましたけれども、進展がなかった。唯一の、一つの、小さなと言っていいかもしれませんが、進展というのは、この家族の人たちに対しては安全を確保するということと、それからこの問題を北朝鮮側が政治的に利用することはしないということを言ったということであったかと思います。
 これは今後とも非常に厳しい交渉であり続けると思いますけれども、我が国としては、やはりこれは政府の決定をした方針でございますので、それに沿った形で問題が解決するように全力を尽くしてまいります。
東門委員 ぜひ本当に全力を尽くしていただきたいと、何度もこれは要望を申し上げたいと思います。
 国交正常化交渉に先立ちまして訪朝したケリー米国務次官補に対して、北朝鮮が核開発を認めていたということが明らかになって、北朝鮮の核開発は疑惑ということから現実の問題に変わりました。北朝鮮の行為は、明らかにNPTや米朝枠組み合意あるいは南北非核化共同宣言に反する行為です。我が国は、隣国として直にその脅威にさらされることになり、また、唯一の被爆国であり、非核三原則を国是とする我が国にとって、断じて許すことのできない行為であります。
 北朝鮮側は、米国との協議によってのみ解決可能だと主張しているようですが、北朝鮮がこのような姿勢をとり続けるのであれば、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため関連するすべての国際的合意を遵守することとした日朝平壌宣言は、ただの紙切れになってしまいます。我が国としては、今後の交渉の中で、さらに核開発の中止を強く求めていくべきであると思います。
 今回の交渉では、唯一、今月中にも安全保障協議を開催することで合意したとのことですが、その中で協議される議題について具体的合意はあったのか、核開発問題も当然に議題となると双方が認識しているのか、確認したいと思います。先ほど別の議員からも質問はございましたけれども、私もぜひそのことはお聞かせいただきたいと思います。
茂木副大臣 委員御指摘のとおり、日朝安全保障協議につきましては十一月中に立ち上げる、こういうことで双方合意したわけであります。
 そして、この安全保障協議は、日朝平壌宣言にのっとって、こういうことでありますから、当然、我々としましては、核問題、ミサイル問題、これが議題に含まれる、こういう前提で今後の議題の調整等々に入ってまいりたいと思っております。
東門委員 会談終了後の鈴木大使の会見によれば、核問題について北朝鮮側は、究極的解決は米国との協議によってのみ可能とする一方で、日本の正当な関心を理解し、日本とも議論すると発言したとされております。また、いずれにせよ平壌宣言は遵守するとも発言したとも言われております。
 この発言は、核問題は米国との問題とし、日本とは議論する問題ではないとしてきたこれまでの北朝鮮の主張とは若干異なるものであると思いますが、政府は北朝鮮のこれらの発言をどのように分析しておられるのか、お伺いしたいと思います。
田中政府参考人 実は、従来、十一回の国交正常化交渉の中で、核問題、核の疑惑の問題というのを日本側が取り上げようとしたことがございますけれども、そこでの北朝鮮側のせりふというのは常に一つでございまして、核の問題は米朝で議論をすべき問題であって日本との間で議論をすべき問題ではないということを一貫して言っていたということでございます。
 したがって、今回の正常化交渉につきましては、日本側から平壌宣言に基づいて国際的な合意の履行を求めるという形で問題提起を行いました。これに対して、東門委員がおっしゃったように、究極的な問題解決は米国との間でやるけれども、日本の正当な懸念というものは理解をするし、日本と議論をしていきます、こういうことでありました。
 したがって、従来とは北朝鮮の立場は変わっていると思いますし、それは平壌宣言に基づく正常化交渉であるということのゆえんであろうというふうに思います。
東門委員 北朝鮮に対して、核開発の放棄、核査察の受け入れ等を要求していくのは当然でありますが、一方で、北朝鮮がそれらの要求を受け入れられる環境をつくり出すことも重要であります。
 現在の北朝鮮には、中国、ロシアの対米接近による孤立感と、悪の枢軸発言に見られる米国の強硬姿勢によって、際限なく譲歩を迫られるのではないかという恐怖感があるとの指摘がございます。核開発を放棄させるには、これらの孤立感と恐怖感を緩和させることも必要であろうかと思います。
 そのためには、まず核開発の中止を具体的合意として明文化した後、それを実行できる環境整備として、北東アジアにおける安全保障問題を率直に協議できる枠組みが不可欠であり、それが我が党が主張している北東アジア総合安全保障機構の設立でもあります。
 小泉首相も、日朝首脳会談の場において、日朝のほかに米国、韓国、中国、ロシアが参加する六者協議について提案したとされておりますが、政府はこの六者協議について、今回の交渉においても議題として取り上げられたのでしょうか。先ほども質問があったのは覚えております、きちんと聞いておりましたから。しかし、やはり今回の交渉において議題として取り上げられたのかどうか、お聞かせいただけたらと思います。
田中政府参考人 今回の会談におきまして日本側は、拉致問題と並んで安全保障上の問題を最優先課題として臨んだということでございます。これらの問題には特に時間をかけて議論をした。その中で、御指摘の六者協議については、あくまで中長期的な信頼醸成のメカニズムとしてこのような対話の場が整備されるのが望ましいという日本側の考え方を北朝鮮側に説明をいたしましたが、北朝鮮側からは特段のコメントがあったわけではございません。
 信頼醸成が必要である、そういう仕組みが必要であるということは平壌宣言にも盛られているところでございますが、あくまでこの六者協議等の問題は、中長期的にこの地域の関係が正常化されるにつれ実際に機能をしていくものであろうというふうに考えております。
東門委員 北朝鮮の核開発が明らかになったことを受けまして、EUはKEDOに対する支援を見直す可能性があることを示唆しています。十月二十一日、外交政策を担当するパッテン欧州委員は、北朝鮮が直ちに核開発停止を決めた米朝枠組み合意に戻らない限り、KEDOを従来どおり維持していくのは難しいと発言し、ツェプター駐日大使も二十三日の会見で、KEDOの有効性について疑念を呈しています。また、米国は、来日したケリー国務次官補が、枠組み合意については慎重に考える、まだ破棄するかどうか判断していないと発言する一方で、米国は合意破棄を内々に決定したとニューヨーク・タイムズ紙は報じています。
 欧米ともKEDOの有効性に対し厳しい見方をしていますが、KEDOの枠組みそのものがなくなることは北朝鮮の行動に対する制限が一つなくなることを意味し、北東アジアの平和と安全にとって大きなマイナスであると思われます。
 今月、十一月前半にもKEDO理事会が開催されると報じられていますが、今回のこの交渉を受けて、どのような姿勢でKEDOの理事会に臨むおつもりであるのか、伺わせてください。
茂木副大臣 まず、米朝の枠組み合意の話でありますが、私も先週ワシントンに行ってまいりまして、この問題も含めて、アメリカの政府の高官と率直な意見交換をしてまいりました。
 米政府高官側の申しますのは、この枠組み合意に対する米側の対応、今後どうしていくかということはまだ決めていない、これが正式な相手側のお話でありました。
 そこの中で、今度はKEDOの話でありますが、北朝鮮の核開発問題が明らかになり、その疑惑が深まり、KEDOが国際社会が北朝鮮の核開発を阻止するための現実的な手段であるとの認識は、そうなっても変わっておりません。
 政府といたしましては、今後とも、日米韓三国が緊密に連携し、KEDOの場も活用しつつ、いろいろなチャネルが必要なわけであります、北朝鮮の核開発問題の解決に取り組んでいきたい、こういうふうに考えておりますが、今後のKEDOのあり方につきましては、米韓両国ともよく相談した上で、また連携した上で判断していきたい、このように考えております。
東門委員 北朝鮮の核開発に関連してですが、濃縮ウランを製造するための遠心分離器の部品や開発技術をパキスタンから入手したと報じられております。ケリー国務次官補が訪朝した際に、部品の領収書などの書類を証拠として提示したことによって北朝鮮が核開発を認めたと言われています。
 パキスタンは、インドとともに、核実験を行っており、NPTにも加盟せず、CTBTにも署名しておりません。先日、我が国が国連第一委員会に提案し、採択されました核軍縮決議「核兵器の全面的廃絶への道程」に対しても棄権をしています。
 核兵器開発に寄与する部品を譲渡することは、核兵器の拡散を防止するというNPTの精神に明らかに反するものであり、NPTへの加盟の有無を問わず許されるものではないと思います。また、核軍縮と核不拡散を目指す我が国の立場とも相入れないものです。
 そこで伺いますが、政府は、北朝鮮がパキスタンから核開発用の部品や技術を入手したとの報道につき、その事実関係をどの程度把握しておられるのか確認をしたいと思います。
田中政府参考人 北朝鮮の核開発、これに対する日本の立場というのは、委員が御指摘されたとおり、国際的な平和と安定、核不拡散体制にかかわる重要な、重大な問題である、かつ、我が国の安全保障にとって重大な懸念であるということでございます。
 私どもは、そういう観点から、情報収集にも当たっておりますし、関係各国とも緊密な連絡をとってきております。ですから、当然のことながら、我が国としても北朝鮮の核開発問題については一定の情報を有していますけれども、今委員が御指摘された機器の輸入にかかわる報道に関するものも含めまして、我が国が有している情報の具体的な内容については、いろいろな国との信頼関係もあり、説明を差し控えさせていただきたい、かように考えるわけでございます。
東門委員 どの国からということじゃなくて、事実関係をどの程度把握しておられるのかという質問なんですが、それもだめなんでしょうか。
 どこの国からどういう情報が入ったという、それを聞いているのではないのですよ。事実関係はどうなんでしょうかということをお聞きしているのですが、それもやはりまずいですか。
田中政府参考人 まさにインテリジェンスの情報と申しますのは、どの程度のものをだれが情報として有しているかということを明らかにすることは、かえって政策に対する極めて大きな問題を生ずるので、情報の内容、その程度について現段階でお話ができる状況ではないということでございます。
東門委員 我が国は、九八年のパキスタンによる核実験の実施に対して、無償資金協力の原則停止、新規円借款の停止等の措置をとりました。その後、昨年九月十一日の米国同時多発テロ事件を受けて、テロに対する国際社会の結束を図るという観点から、十月にこれらの措置を停止しました。その際、核不拡散分野における両国の状況が悪化すれば、本措置の復活を含めしかるべき対応を検討するとしています。
 仮に、北朝鮮がパキスタンから核開発用の部品、技術を入手したことが断定された場合、政府はどのような措置を講ずるつもりであるのか、停止している現在の措置を再開する予定はあるのか、確認をさせてください。
田中政府参考人 委員御指摘のとおり、パキスタン及びインドに対して、昨年、経済措置を停止したということでございます。その際、核不拡散の分野の状況を見きわめつつ物事を考えていくということも事実でございます。
 私どもとしては、今御指摘になりましたその状況というのを、もちろんきちんとした情報に基づいて判断をしなければいけないわけですけれども、当然のことながら、種々の要素を総合的に勘案をしながら施策を検討していくということでございます。
東門委員 少し時間がありますので、先日の基地の問題について質問をさせていただきます。
 私は、前回の委員会において、自衛隊のF15が、米軍の予防着陸と同じような着陸を年間どれくらい行っているかを質問いたしました。そうしたら、平成十三年度は四十件、今年度は現在まで二十件ということで、意外と多いと思ったわけですが、防衛白書で見ると、自衛隊のF15の保有数は二百三機であり、在沖縄米軍のF15は恐らくこれほどの数はないと思います。一機当たりの予防着陸の回数からすれば、やはり米軍機の方が非常に多いことになるのではないかと思うわけですね。
 前回、米軍の年間の予防着陸の回数を伺いましたけれども、米軍に照会中とのことでした。回答が来ていたら、まずお答えいただきたいと思います。
海老原政府参考人 お答え申し上げます。
 おととい、東門委員の御質問に対しまして私の方から、回答があり次第御答弁申し上げるということを申し上げたわけでございますが、昨日米軍の方から私どもの方に回答がありまして、米軍機の予防着陸の回数についての統計はないということでございました。
東門委員 北米局長、その米国からの回答に対して、北米局長は何とお答えになられたでしょうか。お聞かせください。
海老原政府参考人 私が直接聞いたわけではないわけでございまして、私が何か言ったということは事実としてはございません。
 ただ、これは統計の話でございますので、ないものはないというふうに考えております。
東門委員 とても無責任な今の答弁だと思います。
 九月、十月の二月満たない中で十五回もそれがあると私は申し上げました。そうすると、一月からだとどれぐらいか。当然、私はそこに住んでいる者として知りたい。それは、海老原局長がもしそういうところに住んでいたら、きっと同じような思いになると思うのですよ。不安の中で生活をしている。それは、私がここで言っているだけではないんです。知事を初め、関係市町村の首長の皆さんも、あるいはそこの住民の皆さんも同じことを感じているし、ずっと抗議あるいは要請をしているんです。
 そういう中で、私が聞いてはいないからわかりません、ないものはない、それが外務省の態度ですか。米軍基地の問題に対しては、外務省はずっとこれまでも同じような態度できたでしょうし、これからもそのように対応していくということなんでしょうか。そうすると、沖縄県民というのは皆さんにとって何なんですか。お答えください。これは、ぜひ大臣にもお聞きしたいですから、局長、どうぞ。その後、大臣がお答えください。
海老原政府参考人 私が先ほど申し上げましたのは、統計の有無につきまして、ないものはないということを申し上げただけでございまして、私は別に、この予防着陸というものが地元の方々に何らかの不安感というようなことをもし与えているのであれば、それが全く根拠がないというか、それはもうしようがないというようなことを申し上げたものでは全くございません。
 米軍が我が国に駐留をいたしまして、我が国の安全のために、訓練を含みまして軍隊の機能に属する一般的な活動を行うということは必要なことだと思いますけれども、それも、当然のことながら公共の安全に十分な配慮をして行うということでございますし、また、地元の方々に不必要な不安を感じさせない形で行うというのは当然のことでございまして、必要に応じまして、外務省の方から米軍の方には、その旨、これまでもたび重ねて申し入れてきているということだろうと思います。
 ただ、繰り返しになりますけれども、この予防着陸、これはこの前も申し上げましたけれども、米軍の分類ということでございますけれども、それについての統計はあるのかということを照会したのに対して、向こうから、ないという回答があったということを御報告申し上げた次第でございます。
川口国務大臣 沖縄で事故が特に最近多発している中で、沖縄県民の方が、飛行機の事故、あるいは物の落下等も含めましてですけれども、そういったことに非常に神経質になっていらっしゃるということは、私はよく認識をしています。事故等があるときにいつもこれは申し入れているわけですけれども、この件については、予防着陸というアメリカのカテゴリーについても、やはり沖縄の県民の人が非常にこれを心配しているということについては、アメリカに伝えていきたいと思います。
東門委員 今の大臣の御答弁なんですが、伝えていきたいと。では、今までは何も伝えていなかったんでしょうか。予防着陸であれ、緊急着陸であれ、それはいいんです、用語は。言葉はどうでもいいんですよ。要するに、その飛行機が危ない、そのまま飛んでいたら危ないからということで、緊急着陸、あるいは予防着陸というかもしれません。用語はどうであれ、実際にそこに住んでいる人たちが本当に不安感を抱いている、恐怖感を抱いている、その下で暮らしているということなんですね。それに対して、これからも伝えていきたいということでは、私は、何の意味もなさないと思います。
 とにかく、アメリカに対してなぜもっと強く出られないのか、とても不思議に思うんですね。本当に残念です。そこで住んでいる人たちのことをどのように考えておられるのかなと思います。ただ申し入れる、要請します、これだけに終始している外務省、北米局初め大臣も同じなんですけれども、とても残念に思います。
 最後に、もう終わりますけれども、一問だけ質問させてください。日米地位協定の見直しについて、石破防衛庁長官発言について、これは通告してありますから、ちゃんと行っていると思います。
 石破防衛庁長官は、就任なさってから、沖縄タイムスなどのインタビューに答えて、日米地位協定の見直しについて、一義的には外務省の所管と断った上で、県民に運用改善されたという実感を持ってもらわないと、何百回言っても県民の信頼を得るに至らないと述べておられます。
 政府は、これまでも運用の改善によって機敏に対応していくとしていますが、県民から見た現在の状況は、機敏ではなく鈍重であり、地位協定はその実際の運用によりどんどん改悪されているのではないかとさえ思えます。百三十万人余の県民が望むものは、実際に米軍による事件、事故が減少するという結果そのものであり、その実感なんですよ。石破長官が指摘されるように、言葉だけでは県民の信頼を得ることは不可能です。
 大臣は、石破長官のこの指摘について、どのように考えられますか。また、長官のおっしゃる運用改善されたという実感、それを県民が持てるためには何が必要であると考えるのか。これは大臣にお伺いいたします。
川口国務大臣 日米地位協定につきましては、運用の改善で機敏に対応していくということを今まで申し上げているわけですけれども、石破長官がおっしゃったように、この運用の改善を機敏にやることによって、県民の方に物事が変わっていっているという認識を持っていただけるように、私どもも努力を続けたいと思っております。
 なお、石破長官も運用の改善が大事であるということをおっしゃっていらっしゃる、そういうことであると私は理解しています。
東門委員 時間ですので終わります。続きは、またこの次にさせていただきます。ありがとうございました。
池田委員長 これにて本日の質疑は終了いたしました。
 次回は、来る十一月六日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時三十六分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.