衆議院

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第10号 平成14年12月6日(金曜日)

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平成十四年十二月六日(金曜日)
    午前九時一分開議
 出席委員
   委員長 池田 元久君
   理事 今村 雅弘君 理事 嘉数 知賢君
   理事 河野 太郎君 理事 水野 賢一君
   理事 首藤 信彦君 理事 中川 正春君
   理事 上田  勇君
      伊藤 公介君    植竹 繁雄君
      高村 正彦君    下地 幹郎君
      新藤 義孝君    谷田 武彦君
      土屋 品子君    松宮  勲君
      宮澤 洋一君    伊藤 英成君
      金子善次郎君    桑原  豊君
      前田 雄吉君    吉田 公一君
      丸谷 佳織君    土田 龍司君
      松本 善明君    東門美津子君
      小池百合子君    鹿野 道彦君
      柿澤 弘治君
    …………………………………
   外務大臣政務官      新藤 義孝君
   外務大臣政務官      土屋 品子君
   参考人
   (財団法人国際開発センタ
   ーエネルギー・環境室長) 畑中 美樹君
   参考人
   (防衛大学校総合安全保障
   研究科教授)       立山 良司君
   参考人
   (軍事評論家)      江畑 謙介君
   外務委員会専門員     辻本  甫君
    ―――――――――――――
委員の異動
十二月六日
 辞任         補欠選任
  中本 太衛君     谷田 武彦君
  藤島 正之君     土田 龍司君
  松浪健四郎君     小池百合子君
同日
 辞任         補欠選任
  谷田 武彦君     中本 太衛君
  土田 龍司君     藤島 正之君
  小池百合子君     松浪健四郎君
同日
 理事藤島正之君同日委員辞任につき、その補欠として藤島正之君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
十二月六日
 アメリカのイラク攻撃反対に関する請願(大島令子君紹介)(第九六六号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の補欠選任
 国際情勢に関する件(イラク・中東問題)


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     ――――◇―――――
池田委員長 これより会議を開きます。
 国際情勢に関する件、特にイラク・中東問題について調査を進めます。
 本日は、本件調査のため、参考人として、財団法人国際開発センターエネルギー・環境室長畑中美樹氏、防衛大学校総合安全保障研究科教授立山良司氏、軍事評論家江畑謙介氏、以上の三名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにしております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、畑中参考人、立山参考人、江畑参考人の順序で、お一人十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。
 それでは、畑中参考人にお願いをいたします。
畑中参考人 御紹介いただきました畑中でございます。
 本日は、私の方では、イラクの石油の生産、開発の動向を国際石油情勢との関係でお話しさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 私は、主に四点、最近の石油価格の動向、イラクの石油生産停止時の影響、過去十年余りのイラクの石油生産量の推移、イラクの新規石油開発の動きについて御説明をさせていただきまして、最後に若干、我が国への影響あるいはインプリケーションについて述べたいと思います。
 まず、最近の石油価格の動向でございますが、石油輸出国機構、OPECは、指標として、OPECの六カ国とメキシコの合計七カ国の代表的な原油で構成されますOPECバスケット価格というものを目標としてつくっておりまして、これが一バレル当たり二十二ドルから二十八ドルの範囲におさまることを目標としております。
 お手元に配付をさせていただきました資料の一ページをごらんいただきますと、過去数年間のこのOPECバスケット価格の推移が出ております。
 この動向を簡単に振り返ってみますと、一九九七年に十八・六八ドルでありましたものが、九八年には十二・二八ドルに低下し、その後、九九年十七・四七ドル、二〇〇〇年二十七・六〇ドル、二〇〇一年二十三・一二ドル、そして二〇〇二年は、これまでのところおおよそ二十四ドル弱と、年ごとに変動しております。ただし、二〇〇〇年以降は、需要の増加とOPEC自身による生産量の削減の結果、OPECの目標とする範囲におさまっております。
 次に、二ページ目で、この一年のOPECバスケット価格の推移を見てみたいと思います。
 昨年の十一月からことしの二月にかけまして、OPECバスケット価格は、おおよそ十七ドル台から十八ドル台で推移しておりました。それがその後、三月から六月までは、イスラエルとパレスチナ情勢の緊迫化もありまして上昇いたしまして、二十二ドルから二十五ドルの範囲での変動となりました。さらにその後は、イラクをめぐる情勢を背景としまして一段の上昇となりまして、七月、八月の二十五ドル台を経まして、九月、十月は二十七ドル台にまで上がりました。十一月になりますと、御承知のように、国連の安全保障理事会でのイラクに対する大量破壊兵器の査察を求める決議一四四一号が採択されたことを受けまして、若干下がっておりまして、二十四ドル台へとなっております。
 しかし、査察の行方が判然としていないこともありまして、石油価格の先行きにも不透明感が増しているのが現状でございます。
 次に、イラクの石油生産が停止した場合の影響についてお話をさせていただきたいと思います。
 この十月から十二月の世界の石油の需給バランスというものを国際エネルギー機関、IEAの資料をもとに考えてみますと、お手元の資料ですと三ページになりますけれども、仮にOPECが十月と同様の生産を続けることができるとすれば、この第四・四半期、十―十二月にはプラス五十三万バレル・パー・デー、つまり一日当たり五十三万バレルの余剰となります。
 その状況下で、仮にイラクの石油生産が停止した場合ですけれども、石油の需給バランスは、その右にありますように、一日当たり百九十二万バレルの不足となります。ただし、その場合でも、OPECは現在、一日当たり大体三百二十万バレル強ぐらいの余剰生産能力を持っておりますので、その六〇%を稼働させれば需給は均衡いたします。
 同様に考えますと、来年の第一・四半期、一―三月はOPECが余剰生産能力の約四分の一ほどを稼働させれば需給は均衡いたしますし、さらに、来年の四―六月、第二・四半期は不需要期となりますので、イラクの生産が停止した状態でも、一日当たり七十万バレル弱の余剰となるというふうに予想されます。
 したがいまして、仮にイラクの石油の生産が何らかの事情によって停止しましても、OPECが余剰生産能力を稼働させれば石油の不足にはならないということになります。
 ただ、例外がございます。
 資料の三の一番右にございますように、OPECの余剰生産能力のほぼ半分がサウジアラビアという国に集中しております。したがいまして、何らかの理由でサウジアラビアが余剰生産能力を活用できない事態があった場合には、時期にもよりますけれども、サウジアラビア以外の諸国が余剰生産能力を稼働させても不足分を充足できない、そういう事態はあり得るかと思います。
 ただ、もっとも、その場合でも、三ページの下の方に付記してございますけれども、日米欧等のOECD諸国全体でことしの九月末時点で約十二億五千万バレルの政府備蓄がございますので、これを放出すれば、世界全体としては石油不足は回避できることになると思います。
 次に、第三点でございますけれども、過去十年余りのイラクの石油生産量の推移について若干御説明させていただきます。
 お手元の資料四ページになります。
 イラクで現在のサダム・フセイン大統領が政権の座につきましたのが一九七九年でございますけれども、イラクの石油の生産量は、ちょうどその年が大体三百五十万バレル・パー・デー、一日当たり三百五十万バレルということでピークでございました。
 その後は、八〇年九月から八八年八月までのイランとの約八年に及ぶ戦争、その後の九〇年八月の湾岸危機、そして九一年一月から三月までの湾岸戦争、さらにそれ以降今日まで続く国連の経済制裁によりまして、生産量は大きく上下変動してきました。
 ただし、過去三年ほどは一日当たり約二百五十万バレルの生産量となっています。そうはいいましても、この間、石油関連設備の老朽化がありますものですから、生産能力は次第に落ちてきております。なお、ことしにつきましては、これまでのところ一日当たり約二百三十万バレルの生産量にとどまっております。
 第四点として、イラクの新規の石油開発の動きについて御説明をさせていただきたいと思います。
 お手元の資料で五ページ目から七ページ目がその資料になりますけれども、イラクの現在の石油資源の確認埋蔵量ですが、これは約一千百二十億バレルと、サウジアラビアに次ぎまして世界第二位でございます。このほかに、さらに潜在埋蔵量ということで二千二百億バレルがあると言われております。
 このように、イラクにつきましては、石油の資源埋蔵量は大きいのですけれども、これまで外国企業による大規模な開発は行われてまいりませんでした。このため、イラクには現在、約七十四もの発見された油田があるのですけれども、この中で本格的に生産に移行しているのはわずか十五油田にすぎません。
 資料七ページにございますように、一番上でございますが、確認埋蔵量が百八十億バレルと見られる、大変大規模なウエスト・クルナ、さらに、それを上回るような規模があると言われておるマジュヌーンその他、未開発の巨大油田がメジロ押しの状況でございます。
 この中で一番目の、今申し上げましたウエスト・クルナの開発は、ルクオイルというロシアの企業を初めとするロシア勢と契約が既に行われておりますし、その下のマジュヌーンですとか、あるいは、いま少し下に行きますと、ナハル・ウマルというのがございますが、このあたりはフランスのトタール・フィナ・エルフという会社が押さえております。このほか、中国勢ですとかマレーシア勢などもイラクとの交渉を行ってきております。
 これらの諸国の中で最大手は、申すまでもなくロシアとフランスでございます。両国は、イラクに対しまして、石油の利権のみならず、過去の武器輸出に関連した巨額の債権も保有しております。未回収代金は、ロシアが、これは判然としませんが、大体七十から九十億ドルぐらい、フランスが約四十五億ドルぐらいではないかと言われております。
 各国は一様に、こうした石油の権益ですとか債権の今後の行方を懸念しているところでございます。
 最後に、我が国への影響、インプリケーションということでございますけれども、振り返ってみますと、九一年一月に始まりました湾岸戦争のときですが、開戦と同時に石油価格は低下をいたしまして、しかも、その後の数週間では、結局、約五〇%下落いたしました。
 今回についてでございますが、先行きどうなるかわかりませんけれども、中東の経済・石油専門誌は、仮に軍事攻撃に至ったとしても油価については湾岸戦争時と同様の事態が再び起きるというふうに見ております。また、ワシントンにございます石油の専門会社も、来年、二〇〇三年には、石油価格については下方、つまり下がる方への圧力が働くというふうに見ております。
 さらに、このワシントンの石油専門の企業は、今後数年間という期間で見ますと、イラクの輸出量が最低でも今より一日当たり百万バレル増加しますし、仮に安定した親西側の政権がイラクに樹立されるとすれば、イラクの石油生産量は、現在二百三十とか二百五十万バレル・パー・デーなんですけれども、これが約倍増の一日当たり五百万バレル超へと著しく増加するというふうに分析しておりまして、いずれにしましても、今後数年間で見た場合には石油価格は下落する可能性が高いというふうに予測しております。
 なお、第一次石油危機が石油武器の発動によって引き起こされたということで、アラブの産油国が再び石油を武器として使用するのではないかという懸念の声も聞かれますけれども、この秋ロンドンを訪問したベネズエラのチャベス大統領は、石油というのが民生用、特に暖房、発電、運輸等に使われている、そういう戦略的資源であるということにかんがみて、OPECとしてこれを政治的武器として使用すべきではないという考えをはっきりと述べております。
 また、むしろ、サウジアラビアを初めとします湾岸の産油国は、不測の事態に備える意味で、この秋に増産をしまして、ひそかに備蓄を行っているような状況でございます。
 したがいまして、我が国としましては、我が国に石油備蓄が十分にあることを周知徹底することで国民の不安をなくするとともに、不測の事態に備えまして、石油不足の発生を未然に防ぐための備蓄の放出体制の点検を改めて行っていくことが肝要ではないかと思います。
 以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)
池田委員長 ありがとうございました。
 次に、立山参考人にお願いをいたします。
立山参考人 立山でございます。
 私は、中東・イラク情勢をこの限られた時間ですべて概説するというよりは、むしろ、政策的な観点を含めた日本の課題について、四点、お話をいたしたいと思います。
 一つは、イラク問題に対する国際的な協調体制を維持することの重要性、二番目は、もし対イラク攻撃が行われた場合の日本の対応について考えるべき基本的な課題、三番目は中東和平問題への対処、四番目は、やや中長期的な視点を含めたユーラシア大陸における地域的な安全保障体制の構築への取り組みでございます。
 まず最初に、イラク問題に対します国際的な協調体制の維持という点でございますけれども、現在行われているイラクでの査察は、御承知のとおり、十一月八日に成立いたしました国連安全保障理事会決議千四百四十一号に基づいております。この決議は、シリアを含む十五カ国の満場一致で採択されたものであり、大量破壊兵器の保有疑惑に関する明確で一致したメッセージをイラクや世界に伝えるものとなったわけでございます。このような国際的な協調体制の確立は、イラクの大量破壊兵器保有問題に対する脅威認識を国際社会が共有しているということを示すものであり、さらに、査察を含む国際社会の対処が国際的な合意に基づくものであるとの確固とした正当性を与えるものになっております。
 加えて、このイラク問題の本質の一つは、我が国にとっても非常に重要な問題であります大量破壊兵器やミサイル技術の拡散という問題にどう対処するかという点にあり、この問題に対する国際社会の統一的な取り組みを示すものとなっております。
 もちろん、決議に盛り込まれたイラクの「さらなる重大な違反」があった場合にどのように対応するかについては立場が異なっており、米国は、場合によっては新たな決議なしにでもイラクに対する軍事作戦に踏み切るとの立場を明らかにしております。しかし、もし新しい決議がなしにアメリカが軍事行動に踏み切れば、現在形成されている国際的な協調体制に重大な亀裂が生じ、十分な正当性を欠いたまま恣意的に大国が戦争を始めたという議論が起き、戦後の秩序形成は大きく阻害される可能性があります。特に、アラブ・イスラム世界では反米感情がさらに高まり、テロの増加など国際社会の不安定化をむしろ増大する結果になりかねません。
 その意味で、我が国といたしましては、現時点におきましても、米国への働きかけを含め、安保理決議千四百四十一号の成立で示された国際的な協調体制をできるだけ維持するといった外交的な働きかけを最大限に行う必要があると考えております。
 二番目に、では実際にもしイラクに対する攻撃が行われた場合について意見を述べさせていただきます。
 もちろん、イラク攻撃が行われた場合、我が国の対応も、武力行使を容認する新しい安保理決議が成立するか否かによって大きく異なってまいります。
 ただ、いずれの場合におきましても、一たん戦争となれば現在のサダム・フセイン体制が崩壊することはほぼ確実であり、このことは、イラクの将来にはもちろん、ペルシャ湾の安全保障環境や中東和平問題、さらにイスラム世界に大きなインパクトをもたらします。それゆえ、新たな安保理決議があるなしにかかわらず、もしイラクに対する軍事行動ということになれば、我が国としては、これを座視したり、あるいは単に反対を唱えるだけでなく、より積極的な対応が求められると考えます。
 まず、新たな安保理決議に基づいて軍事行動が行われるとなれば、我が国としては法的に可能な最大限の共同行動をとるべきかと考えます。さきにも申し上げましたように、国際協調体制の重要性を強く主張する以上、国際的な合意に基づいた武力による脅威の除去という行動に対し、可能な限りの協力をすることは論理的な帰結であります。その意味で、もし現行法で不十分であるとするならば、特別立法も視野に入れる必要があるかと考えます。
 他方、新たな安保理決議なしで、もし軍事行動が行われた場合、我が国の対応は極めて難しいものになります。申し上げるまでもなく、米国への反発を強める中東・イスラム世界との関係をできるだけ良好に保つ一方で、対米関係も重視しなければなりません。その意味では、中東・イスラム世界との関係維持か対米協調かという二者択一ではなく、そのいずれも一定程度満足させる必要があるわけでございます。
 そのためには、まずできるだけ目立たない形や方法で米国に対する協力を推進する一方で、人道的な観点を軸に、イラクや周辺諸国に戦争がもたらす惨禍を少しでも緩和する取り組みを行うべきかと考えます。特に後者に関しましては、短期的にイラク国民に対するさまざまな救援活動を行う、あるいは周辺諸国における難民問題への対応などが考えられるかと思います。
 より留意しなければならない問題は、決議なしで対イラク攻撃がもし行われた場合であっても、現在形成されている国際的な協調体制をできる限り維持する必要があるということでございます。もちろん、国際社会の中で意見の食い違いや対立がある程度表面化することは回避できませんが、深刻な対立や足並みの乱れが起きれば、イラクを含む中東地域、さらに世界における戦後の秩序形成に大きな悪影響を及ぼします。それゆえ、日本としては、決議なしで戦争になった場合でありましても、国際的な協調体制をできるだけ維持するための外交的な働きかけを主要国や関係国に行う必要があるかと考えます。
 三番目に、中東和平プロセスに関して意見を申し上げます。
 中東和平プロセスは、イラク問題と並行してますます重大な事態となっており、二つの問題が再び結びつくことが強く懸念されております。加えて、中東和平問題の帰趨に関しましてはイスラム世界全体が注目しているところであります。それゆえ、中東和平プロセスへの取り組みが一層大きな意味を持っていることは申し上げるまでもございません。
 我が国は、およそ十年間にわたりパレスチナに対する多くの支援を行い、また、中東和平交渉でも一定の役割を果たしてまいりました。しかし、和平交渉が停滞し、暴力の連鎖が続く中で、我が国の取り組みはすっかり影を潜めております。もちろん、中東和平プロセスの推進に決定的な役割を果たし得るのは米国だけであり、EUや日本の役割は限られています。しかし、それにしても、中東和平プロセスにおける現在の日本の姿はますます目立たないものになっております。
 例えば、現在、イスラエルとパレスチナの双方は、相互の不信感から、非公式な接触すらほとんどできないような状態が続いております。それゆえ、日本といたしましては、双方の対話促進のための枠組みを提供するといった努力、さらに、中東和平問題に関して、現在、各国は特使による外交活動を活発に行っております。その意味でも、我が国は中東和平問題に専門的に取り組む特使を任命し、関係各国との協調を図る、そうしたことで我が国の姿が中東で少しでも目に見えるようなものにすることが必要かと考えます。
 最後に、中東から中央アジアにかけての地域的な安全保障システムのことについて意見を申し上げます。
 従来、中東と中央アジア及びコーカサス地域は別々の地域とされていました。しかし、ソ連の崩壊以降、時に大中東あるいはメガ中東、グレーターミドルイーストといった表現で呼ばれるように、この三つの地域は有機的な一つの広大な地域を形成しつつあります。アフガニスタンの問題は、中央アジアと中東、さらに南アジアが政治的、軍事的に密接に連動していることを示しました。今後のイラク問題の展開も、この大中東、メガ中東地域の一体化をさらに促進すると思われます。
 一方、このメガ中東、大中東において、米国の軍事的プレゼンスがますます増大しております。米国は、一九八〇年代まではペルシャ湾における軍事的なプレゼンスをほとんど有しておりませんでしたが、湾岸戦争を契機に、現在見られるような軍事的プレゼンスを確立いたしました。また、昨年の同時多発テロ事件以降のいわゆるテロとの闘いの中で、米国は中央アジアやコーカサス地域にも米軍を派遣し、軍事的なプレゼンスを確保しつつあります。さらに、イラク情勢の今後の展開の中で、ペルシャ湾から中央アジアにかけての米国の軍事的なプレゼンスはますます増大するものと考えられます。
 こうした米国のユーラシア大陸中央部への進出は、米国とロシア、米国と中国との関係にも極めて深くかかわるものであり、日本にとっても重大な関心を持たざるを得ません。こうした視点を踏まえまして、やや中長期的な課題ではありますが、我が国としては幾つかの視点を設定しておく必要があるかと思います。
 特に、この地域は地域紛争やテロが多発しており、かつ核保有国ないし保有を疑われている国が集中しているにもかかわらず、地域的な安全保障を協議する議論の場はほとんどございません。もちろん、これだけ広大な地域であり、諸問題が錯綜している中で、地域的な安全保障の協議システムを構築するための議論を進めることは容易なことではございません。しかし、ユーラシア大陸の中央部を核とするメガ中東、大中東の安定は我が国にとって非常に重要な課題でございます。イラク問題、中東和平問題への対応と並んで、中長期的な視点からメガ中東地域における地域的な安全保障の協議体制の構築の試みに我が国が先鞭をつける必要があるかと考えます。
 以上で私の意見を終わらせていただきます。(拍手)
池田委員長 ありがとうございました。
 次に、江畑参考人にお願いします。
江畑参考人 江畑でございます。
 お手元にレジュメ及び資料がございますけれども、事務局のお手を煩わせて、なるべく説明を簡単にするために、書いてあることとそれに関する図や何かはみんなお手元につけてあります。例えば、イラクの主要戦力及びイラク軍の戦力評価、それからイラク攻撃に要するだろうと思われる戦力の見積もり及び、このレジュメにはありませんけれども、後ろの真ん中の方の表に所要経費の見積もり、これはアメリカの議会予算局が出したものがありますので、それはそちらで御参考までに見てください。
 私は、限られた時間の中ですので、「日本の選択肢」というレジュメ、二ページ目の最後の四について、個人的な意見も含めた上で簡単に御説明させていただきたいと思います。
 まず、日本の選択肢、どういうものがあり得るかと考える前の前提条件といたしまして、大量破壊兵器拡散防止というのは日本の国是でございます。イラクのサダム・フセイン政権が、少なくとも湾岸戦争までは大量破壊兵器、核、生物、化学兵器の保有に非常に努力してきたということは明確でございますし、その後、九八年十二月以後、国連の調査団が入っておりませんので、どうなっているかわからないという非常に不安定な状況にある。
 明日かと思いますが、国連決議千四百四十一に示されました、イラク側からのこの大量破壊兵器開発及びその運搬手段に関する報告書というものを提出されるという話でございますけれども、現在のところ一切そんなものは持っていないということを言っておりますので、多分この点で非常にもめるだろうと思います。
 二番目の条件といたしまして、日本は石油供給の八七%、実際はもうちょっと今は多くて九割近いかと思いますが、中東に依存しております。したがって、中東が安定してくれるということは、石油資源というと何やらとってくるというような穏やかなるものはありますけれども、いずれにしろ、日本だけではなく世界にとって中東の石油供給は、先ほど畑中参考人もおっしゃっていましたけれども、世界の経済にとって極めて重要なところです。言うまでもないことですけれども、イラクはサウジアラビアに次いで世界第二位の石油埋蔵量がある。ここが安定してくれないと困る、ここというのは中東地域が。
 サダム・フセイン政権が現在のままで存続して、そこが安定し得るという具体的な、つまり軍事力を伴わないで課題が解決できるような方式が日本からあるいはほかの世界から提示できるんだったら構わないんですが、よろしいことなんですが、それができないとなると選択肢は非常に限られるだろうと思います。
 それから三番目として、これはオープンには言っておりませんけれども、フセイン政権が倒れた以後、あるいはポスト・イラクというのはアメリカが中心の世界になる。中心でいいとか悪いとかそういう意味ではなくて、やはり世界の主導権をアメリカがかなり大きな力で握ることは間違いないだろうと思います。それをユニタリズムと称して反発するのは個々の自由なんですが、ただ反発しているだけでは変わらないだろうと思います。アメリカは絶対的に強いですから、軍事力、もちろんその前にある経済力、技術力をもって。
 そうすると、逆にこれにはじき出されますと我々は何の関与もできなくなる。むしろ、英語で言うとアクティブ・エンゲージメントと言いますけれども、積極的にアメリカに、協力という言い方をすると何かおかしいかもしれませんけれども、関与していくことによって、その発言権や行動力をある程度、日本や世界にとって不利にならないように制御できる可能性があるというふうに思います。
 そこで、具体的な日本の現実的選択肢に何があるかということを申し上げますが、私は外交方面の専門家ではございませんので、その点については省略させていただきます。それに、もう既に高村元外相を初めとして日本はイラク周辺諸国に使節を送り、いろいろそういう点では外交的努力をしておりますから、今は申し上げません。軍事的な面での選択肢に関して申し上げます。
 お手元の資料の一番最後に、これは図示したものですけれども、三つの分類に分けたものがございます。
 一番左は現在の延長。既にこれは行われておりますし、また一番下の海上自衛隊輸送艦による物資輸送も、このほど政府の方で、一回限りではありますけれども、アフガニスタンに駐留する施設部隊に対する物資輸送ということで決まりました。
 二番目は、テロに対する闘いを行っている米軍の代替的活動として、インド洋におけるプレゼンス、活動をより強化する。例えば海上自衛隊のP3C洋上哨戒機を派遣するとか、あるいは航空自衛隊が持っているE767という早期警戒管制機を派遣する。これは、恐らく基地としてはディエゴガルシア以外に考えられないだろうと思います。ここへ行くのは、いわゆる兵たん輸送、ロジスティックが大変になりますけれども、それはやってやれないことではない。
 それともう一つは、より一歩進んだ形の、これは象徴的になりますけれども、政府は一応決めましたが、一番下のイージス護衛艦を含めて、より多くの艦艇を派遣するということが、アメリカのテロとの闘いにおけるインド洋のパトロールの負担を軽減するという形で実施できるだろうと思います。
 そして三番目は、新しい形になりますけれども、二つほど考えられるかと思います。
 まず第一番は、ホルムズ海峡封鎖に備えて海上自衛隊の掃海艇部隊を前進配備しておく。配備といっても、これをどこに置くかは難しいところですが、例えばバーレーンに置いたときに、バーレーンというのは軍事攻撃が始まったときに戦闘行動地域に入るのか否かというような問題もありますし、パキスタンあたりですと政情不安で、またパキスタンが受け入れるかというような問題もあります。
 ありますが、お手元の資料の一番最後から二枚目及び三枚目を見ていただければ、三枚目のところは中東に石油を依存しているということですし、二枚目のところはペルシャ湾から日本に至るタンカー航路です。ホルムズ海峡に仮に機雷が敷設されますと、大変な影響が日本だけではなく世界に生じる。
 これはイラクがやるかどうかはわかりません。ただ、イラクに対する軍事攻撃が行われると、いわゆる一種の洋上におけるテロ行動という形で何者かが機雷を敷設する可能性もある。そうなった場合にこれを排除するというのは国際的に非常に重要なことになりまして、日本は既にその実績がある。多分、派遣するためには新しく法律が必要になるかもしれませんが、日本は世界の中でもかなり数多くの掃海艇を持っておりますから、やはりそれを前進配備しておく。
 これは、使わないで済むんだったら、それにこしたことはないんです。ただ、決まってから行くんだったら、片道でも三週間近くかかりますから、この種の船ですと。そういう時間的なあれを考えるなら、一応前方に配備しておくことによってプレゼンス的な、ビジブルな、目に見える形での日本の貢献ということが証明できるのではないか。
 三番目は、これは日本の法的なものになじむかどうかはわかりませんが、もうかなり米軍自身が米本土から湾岸地域に物資を運んでおります。運んでおりますけれども、なおかつ軍事的行動が行われるということが決まり、しかもそれが再び国連の安保理事会で決議されるような場合において、日本は、米軍ないしは米軍だけでなくていいんですけれども、そこに軍事的な参加を行う各国の物資輸送の船をチャーターするという形で貢献できるのではないかと思います。
 つまり、これは単に金を払うというだけではなくて、日本が金を出して、大体今こういうコンテナ船というのは、ほとんどの場合には便宜置籍船ですから、いわゆるどこかの国に属するという特定のあれは、例えばパナマ、リベリアとかそういうところですので、チャーターすることは簡単ですし、ただその料金を支払いするということで、単に現金を払うのではなくて、物資輸送という形で貢献できるのではないかと思います。
 最後に、結局日本は何らかの形で実質的に動いていかない限りは、この後のアメリカの絶対的な力を背景とした一種のユニタリズム的なものに何ら、下手をすると、入れてもらえないと日本の存亡にかかわるというか、日本国民が非常に苦しい思いをすると思います。そういう点では、選択肢として今現実的に考えられるのは、アメリカと日米安保条約をもとにしてやっていくしかないわけですから、そこにおいてむしろ積極的に日本が、もちろんできる範囲で関与すればいい。十一月の末に出ました対外関係タスクフォースでも、似たようなことが結論として書かれておりますが、私も個人的には同意見であります。
 どうもありがとうございました。(拍手)
池田委員長 ありがとうございました。
 これにて参考人の意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
池田委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河野太郎君。
河野(太)委員 自由民主党の河野太郎でございます。
 三人の参考人の皆様、本日はお忙しい中、まことにありがとうございます。
 まず、立山参考人にお伺いをしたいと思うんですが、中東和平へのプロセスの中で日本が全く影を潜めている、日本が全く見えない、まさにそのとおりなんだろうと思います。
 幾つか、例えば中東和平特使の任命、あるいはイスラエル、パレスチナの対話の枠組みをつくったらどうか、いろいろ御提案をいただきましたが、例えばその対話促進の枠組み、日本としてどういうことをやったらいいのか、もう少し具体的にお話を伺わせていたたければまことに幸いでございます。
立山参考人 対話促進の枠組み、今、日本政府、特に外務省の中ではトラック2という枠組み、つまり、政府関係者でもなく、ビジネス界でもない、イスラエル、パレスチナ、双方から学者なんかを呼んでさまざまな問題を議論してもらうということは進めているようでございますけれども、これも随分話が出てからまだ実現していないという状況でございます。
 できる限りそういった対話を、私はビジネス界を含めてでもよろしいのではないかと思うんですけれども、さまざまな層のイスラエル、パレスチナ関係者を日本に呼ぶなり、どこかに集めて議論をしていただくということが大事かと思っております。
河野(太)委員 日本の外務省は、例えばパレスチナの旅券を認めた、世界の中で恐らく最後から何番目という国だったんだろうと思います。あるいは対パレスチナのODAなどを見ておりますと、この十年でかなりの金額の削減があるようでございますが、立山参考人の目から見て、なぜ日本の外務省は中東問題、特にパレスチナ和平の問題について腰が引けているか。立山さんの方からごらんになって、外務省の腰が引けている理由というのが何かあるのでしょうか。
立山参考人 さまざまな理由があるかと思いますけれども、例えばパレスチナ旅券をついせんだってやっと認めたということでございますけれども、これはやはり法的な解釈が日本は極めて厳しい体制をとっているということに起因しているのだろうと思います。それはそれで一つの考え方かと思いますが、ただ他方で、今おっしゃられましたように、対パレスチナのODAがこの二年ほどで大幅に減少していることは事実でございます。
 一つの要因といたしましては、実際に現地が極めて不安定な状況になっており、暴力的な対立が続いているということで、ODAを出しても、例えば学校建設等ができないということがございます。
 しかし、その一方で、危険なところには日本のODA関係者が行けない、行ってはいけないというような形になっておりますゆえに、和平ムードが進んで現地の状況がよければ、日本も姿を見せてさまざまな支援活動を行う、しかし、和平交渉が停滞をし、現地の情勢が極めて緊迫する、あるいは暴力的な対立が続くということになると、日本は日本人の安全ということをまず第一に考えて、すべてとは言わないまでも、多くを引き揚げてしまう。その結果、和平交渉の一番肝心な、対立しているときにこそ深くかかわっていかなければならないにもかかわらず、対立しているときに引き揚げてしまう。そういった姿勢が、中東和平プロセスを推進する場合の、日本の腰が引けた、あるいは影が見えないというような対応の背景にあるかと思います。
河野(太)委員 アフガニスタンのときも、一番最初に逃げたのが外務省とJICAだった、最初に行ったのがNGOだったという話を現地で私も伺ったことがございます。パレスチナの方からも、今が一番大変なときなのになぜ日本は来ないのか、そのようなお話を伺ったこともあります。少し気をつけてこの問題には対処していかなければいけないんだろうと思います。
 中近東の方々と話をすると、日本は別に、イスラエルにもパレスチナにも極端に近いということもなく、宗教的にも日本はそんなに関係がない、あるいは歴史的に見ても、植民地を中近東に持っていたという歴史もない、あるいは、欧米あるいはロシアと違って、中近東に武器を輸出してもうけているわけでもない。そういう意味で、非常に中立的な立場で、日本は中近東に来やすいのではないか、なぜもっと来ないのかというような声をよく聞くのですが、逆に、だからこそ中近東と日本のかかわりが薄くなってしまうのかな。
 中近東の、例えば言葉の問題一つとってみても、まず言葉がわからないというような問題も多々あるんだろうというふうに思いますが、私も、例えば中東和平特使というようなものを常設で任命して、大使がころころかわる中、少し中近東を落ちついて見てくれる、そういう人間が必要なんだろうと思います。
 例えば、立山さんの目から見て、中東和平特使、こういう人がいいのではないか、いらっしゃったら、少し具体的な名前をおっしゃっていただければと思います。
立山参考人 お答えいたします。
 東南アジアと日本とのかかわりを見てみますと、これはちょっと表現があれかと思いますけれども、公的関係から極端な場合には暴力団までが、さまざまな層で関係がある。他方、中近東と日本との関係というのは、公的な関係と一部商社、石油会社の関係に極めて限られているということで、やはりどうしても日本の関心が薄い。今おっしゃられましたような言語の問題を含めて、関心が薄いということがあるかと思います。
 それで、特使の件ですけれども、なぜ特使が必要なのかということ。一つは、やはり中東和平問題は極めてテクニカルな用語を使う。例えば、三十年前の決議にこう書いてあるとか五十年前のイギリスの宣言でこうなっているとかという議論を含めて、場合によっては聖書にこういう言葉が書いてあるがという議論までする中で、どうやって和平を進めていこうかということですから、なかなか日本の普通の外交官の方、かなり知識を持っていらっしゃったとしても、ある種の村社会といいますかグループを形成されている国際的な小さなグループの中にすぐに入っていけないということがあるわけでございますので、長期的な視点から特使を任命するということが必要かと思うんです。
 ただ、私が今ここで、どなたか具体的な名前ということではございませんけれども、今申し上げましたように、やはり中東に対する歴史的、宗教的な見識及び中東和平問題のさまざまな過去の経緯についてかなり把握をしている方が任命されれば、それが最も効果的な方法になるのではないかと考えます。
河野(太)委員 ありがとうございます。
 畑中参考人にお伺いをしたいと思いますが、例えばイラクの生産が停止したときに、OPECに余剰生産力がある、あるいはOECDの政府備蓄を取り崩せばその分はカバーできるというお話でございますが、例えばイラクの生産が停止をしたといってから備蓄が現実に放出されるまで、あるいはサウジアラビアを含めたOPECが余剰生産力を利用して足らない分を埋める、このためのリードタイムというのは物理的にどれぐらいかかるものなのでしょうか。
畑中参考人 備蓄の放出につきましては、国によって差異はあると思いますけれども、恐らく一カ月前後の時間じゃないかと思います。
 それから、産油国における余剰生産能力の増加につきましては、前回の湾岸戦争のときを振り返ってみますと、サウジアラビアが最大生産能力まで引き上げるまでに約九十日かかっております。ただ短期的には、約一カ月あれば一日当たり百万バレルの生産の回復というのは可能でございますので、あと、洋上にフローで流れている分もありますので、それを考えますと、恐らく一カ月ぐらいの間の若干の緊張状態というのはあるかもしれませんけれども、それ以後は過不足はないようになるんじゃないかというふうに思います。
河野(太)委員 そうしますと、一カ月の緊張状態になるということでございますが、この一カ月の緊張状態で、石油価格は最悪のケースでどのようになるとお考えでしょうか。
畑中参考人 イラクの石油が停止するという状況は、恐らくイラクにおける政治的な状況あるいは軍事的な状況が相当緊迫しているということが前提になると思いますので、そうしたことから考えますと、恐らく現在二十四ドルとか二十五ドルぐらいの価格が三十五ドルぐらいまではね上がるということは、短期的にはあり得るんだろうと思います。
 ただ、前回の湾岸戦争のときにも起こりましたように、仮に軍事行動、戦闘行為になった場合に、米軍の圧倒的な優位な軍事展開となりますと、それがわかった時点で、恐らく現在の水準、二十四ドルとか五ドルにすぐ下落するということになろうかと思います。
河野(太)委員 イラクの大きな四つの油田、ウエスト・クルナ、マジュヌーン、これがそれぞれロシア、フランスが権利を持っているということでございますが、今アメリカが言っている政権交代といいますか、政権をすべてそっくりそのままかえてしまおうということが仮に起きたときに、石油界の慣例では、前政権、前体制と結んでいたロシアとフランスの石油利権というんでしょうか、権利はそのまま新政権が引き継ぐと考えていいのか。あるいは、これはもう出たとこ勝負というのが石油界の常識なのか。そのあたりのことをお聞かせいただきたいと思います。
畑中参考人 まさにそこのところが我々もよくわからないところでございますけれども、ロシア、フランスでも、現在の政権が仮にかわった場合のことを想定いたしまして、現在ロンドン等に反政府組織として認定されているものが六つほどございますが、そこの代表等とこの夏以降接触をしているようでございますので、恐らく、政権がかわった場合においても何らかの形で既存の契約が履行、尊重されるような努力はしているんだろうと思います。
 ただ、実際に、仮に政権がかわった場合に現在の契約あるいは約束事がすべて履行されることになるかどうかということについては、疑問が残るのではないかと思います。
河野(太)委員 ロンドンで開かれようとしているイラクの反体制会議の出席者に対して、日本から石油の問題でアプローチがあったかどうか、畑中参考人の御存じの範囲で教えていただきたいと思います。
畑中参考人 今回の会議に関して日本からアプローチがあったかどうかということに関しては、私は具体的なことは存じません。
 ただ、過去において、我が国が今回のロンドンの会合にも出席するイラクの反政府グループと接触をしたことはございます。
河野(太)委員 先ほど、イラクの油田設備はかなり老朽化をしているということでございました。それに対して、フランス、ロシアは多少なりとも投資をこれから、これからはなかなか難しいと思いますが、どれぐらいの技術あるいは金を入れたのか。それに対して、日本がお金を入れて老朽化を何とか新しくしていくということはできると思うんですが、日本の国の中にそういう技術があるのかどうかということを教えていただきたいと思います。
畑中参考人 まず、石油については、現在の既存の油田の維持補修とそれから今後の新規の開発、この二つに分けられるかと思いますが、後者につきましては、現在の国連の制裁下で開発はできないことになっております。
 前者につきましても、国連のオイル・フォー・フードという、食糧と石油の交換の計画の枠組みの中で、石油部品を輸入してもよいということになっておりまして、その契約のもとにおいてロシア、フランス等が部品の供給をしてきております。我が国についても、まず技術的にはそれは可能でありますが、現在のところは、そうしたものの部品の発注は我が国には来ていないというのが現状でございます。
河野(太)委員 ありがとうございます。
 江畑参考人にお伺いをしたいと思いますが、日本政府はイージス艦をインド洋に派遣をするということを決定いたしました。イージス艦と、これまでインド洋に行っていた護衛艦の戦力というんでしょうか能力の違いを少し具体的に、今回のアフガニスタンの後方支援という観点から何が変わってくるのか。例えば冷房がよくきくとかそういうような話もありましたが、そうした話は別として、作戦行動においてイージス艦が行ったということによって何が変わるのか、少し具体的に教えていただきたいと思います。
 それと、仮にイラクに対してアメリカが作戦行動を行ったときに、インド洋上にいる日本のイージス艦が、アメリカの対イラク作戦についてどのようなことができるのか、教えていただければ幸いです。
江畑参考人 まず、イージス艦の能力とどのぐらい変わるかという御質問ですけれども、基本的には、現在行っている在来型といいますか、その護衛艦と変わりません。
 まず第一に、最近この議論はなくなりましたけれども、去年イージス艦派遣の問題が言われたときに、主に政府及び与党の方から強く主張された情報収集能力、これは正確に言うと、レーダーで得た情報処理能力が高いのであって、別に、ほかの護衛艦が持っていない能力を持っているわけじゃありません。
 ただ、あのレーダーは、ちょっと難しい話になりますけれども、普通はレーダーなんというのはぐるぐる回りますが、そういうのでなくて、電子的に四つの、三百六十度の四方向に向いたレーダーを回しますから、普通のレーダーのアンテナですと一分間に十回ぐらい、つまり六秒に一回ぐらいしか全周がわからないのに対して、瞬時に、実際目で見ている限りでは、人間の判断能力でやる限りは、同時に三百六十度を見ているというようなことが可能であります。それから、出力も高いので、大きな、戦闘機ぐらいの大きさのものでしたら四百キロぐらい先、高さにもよりますけれども、探知できる。
 それを同時に、同時にというのは事実上同時にという意味で、全くリアルタイムでという本来の意味ではありませんけれども、人間がやる分には能力的にほとんど差がわからないほど同時に多くの目標を追尾して、大体、追尾能力で四百キロ以上、追尾というのは、つまり今Aの一という目標がどこの高度をどの方向に進んでいるかというのは常に見ている、これが追尾ですね。それに対して、ねらう位置に向けて攻撃をかける、ミサイルを誘導する。これは大体どのくらいできるかというと、その能力にもよりますけれども、普通十から二十個、最大規模で二十四個と言われていますけれども、同時に対応できる能力がある。
 確かに、この迎撃能力だけで見る場合は、今既にインド洋に派遣されている在来型の護衛艦よりもかなり防空能力は高いです。ただ、先ほど申し上げました情報収集能力という意味でいうならば、単にそのイージス艦がいる半径四百キロ程度の空の内容がわかるというだけで、これは今既にインド洋に派遣されている船と何ら変わりはありません。
 それ以上のことをするのであれば、通常、ESM、その中にシギントとかエリントとかという信号情報収集あるいは電波情報収集という特別な装置をつけない限りは、それほど高い能力は得られません。ごく小規模なものは自分の船を守るためには持っていますけれども、それは、ほかの護衛艦と全く同じものです。
 あとは、行動が一体化するというのがありましたけれども、国会の質問でもあったかと思いますが、共同交戦能力、コオペレート・エンゲージメント・ケーパビリティー、CECと訳していますけれども、これは自衛隊のイージス艦にはありません。開発したのはアメリカ海軍ですが、アメリカ海軍でも二〇〇一年からようやっと実用化に達した段階で、ことしの秋の時点でアメリカ海軍で十七隻、それから航空機が八機、これしか搭載されておりませんし、アメリカ以外にこの装置を買った国は、イギリスがテスト用に一つだけです。日本は、欲しいとは思うかもしれませんが、今のところ具体的に導入計画もないし、果たして、それを欲しいと言ってもリリースされるかどうかもわかりません。
 これは、簡単に言いますと、従来のデータリンク、つまりリンク11とか16とか言っているものですが、今の海上自衛隊の護衛艦は基本的にはリンク11、それからイージス艦は、それをアナログ型からデジタル型にしたリンク16というのを持っている。これは文字情報を交換するんですよ。つまり、レーダーで見つける、そうすると高度が幾つ、方向が幾つ、それから、それに対して、敵味方識別信号だったか敵かわからない、こういう情報がありますね、これを文字情報としてお互いに交換して、それに従ってディスプレーに投影するものです。ですから、昔で言うと、映画なんかにありますけれども、ガラスの板に記入していく、あれと同じことをコンピューターの間で文字と数字の情報だけでやるということですね。これがリンク11と16です。
 それに対して、CECというのは、そのレーダーが見ている生の映像、空全体が三百六十度どうなっているか、それをお互いに交換し重ね合わせることができる。ですから、完全にその海域一帯の状況が、それを持っているどの船や飛行機ともすべて共用できます。
 ですから、資料を配付いたしましたけれども、文字で、そこの上のレジュメの二ページに書いてあるのが、これがリンク11の送られるデータです。それに対して、後ろの方の、いろいろな写真や何かありますけれども、これがCECの能力だと思っていただければ結構です。
 ですから、それができますと、自分が見えていない目標でも、はるか向こうにいる船あるいは飛行機が得たレーダー映像がそのまま自分でも見られますし、また、いろいろな船から来た情報を重ね合わせることもできますから、自分で目標が見えていなくても、そこまで、例えば艦対空ミサイルが届くのであるならば発射できます。ただし、発射するのは自分の艦の判断で、あるいは命令によって判断してやるものであって、全然別の、例えば海上自衛隊の船が仮にCECを持っていて、米軍とそれをつないだとしても、米軍から、撃てというように、遠隔操作的に海上自衛隊の船が発射できるものではありません。
 ただ、その画像データの共用及び融合したものが、例えば全然遠くのところにいる早期警戒管制機が得た映像をそのまま重ね合わせることもできますから、それをもって集団的自衛権の乱用になるかどうかというのは議論が分かれるところだ、解釈の分かれるところだと思いますが、少なくとも、現時点においては海上自衛隊の船が持っているのはリンク11ないしは16で、イージス艦は16を持っています。16はどこが違うかというと、先ほど申し上げたようにデジタル型なんで、非常に大量に高速にそのデータの更新ができるというだけで、基本的には11と変わりありません。
 二番目の御質問で、これをインド洋に派遣した場合においてどう変わるかということになりますと、少なくともインド洋の周辺で現在海上自衛隊が活動している範囲、例えば北アラビア海あたりまででしたら、今と状況は変わらない。
 ただ、もし何か、余り状況としては考えにくいんですけれども、テロリストによる航空攻撃、ほとんどこれは航空攻撃しか対応できませんが、あるいは、イラクが間違ってペルシャ湾あるいはサウジアラビアの上を突っ切って北アラビア海まで出てきて、それが非常に多数である、三十機とか四十機とか、あるいは百機とかいうことであるならば、イージス艦を持っていってそれに対応できて、どの飛行機が今どこにいますというのをデータリンクで知らせることができますから、能力的には高まりますけれども、一機や二機が仮に来たところで、それは今の護衛艦とは変わりありません。
 ただし、それだけの能力を持っている、日本が一つの伝家の宝刀的なものを送ってくれたということが政治的に評価されるかどうかということに関しては、これは別物の話です。
 居住性がよい、確かにそのとおりです。新しい船ですし、大きな船にもかかわらず三百人程度の人間で済んでいますから、それは間違いないです。
 あそこは行ってみればわかるように、甲板の上が八十度とか、そんな問題ではなくて、物すごい暑いことは事実です。それから、非常に細かい砂が来ます。これはもう黄砂以上に細かいもので、パウダーというよりも粘土みたいになっちゃうんですね。甲板なんかに出ても、大変な状況になる。完全に密封していても中に入ってくるというようなのを、アメリカ第七艦隊の作戦報告なんかでいろいろ報告されております。
 確かに、あそこに行っている乗員の任務というのは非常に過酷だろうとは思います。それがイージス艦で軽減されるか。ただ、乗員は交代しますから。居住性のいい船であることは間違いありません。
 以上です。
河野(太)委員 ありがとうございます。
 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
池田委員長 次に、丸谷佳織さん。
丸谷委員 公明党の丸谷佳織でございます。
 三名の参考人の方、どうもありがとうございました。
 まず、畑中参考人に質問をさせていただきます。御説明いただいたことから大変多くのことを学ばせていただきましたけれども、現在、アメリカの大手石油会社関係がイラクの反体制派最大組織に接触を開始した旨報じられております。フセイン政権が崩壊後、サウジアラビアに次ぐ世界第二の石油埋蔵量を誇るイラクで本格的な生産というものが開始されるのであれば、世界の原油価格にも大きな影響が出てくるだろうと思われますが、この辺についての参考人の御意見をお伺いします。
畑中参考人 御指摘のとおり、イラクの石油開発が本格化すれば、相当程度の数量の原油が国際石油市場に出てくることになりますので、需給バランスは供給過多ということで、原油は下落する方向に働くことになるんではないかと思います。
 ただ、恐らく当面は、先ほど御説明させていただきましたように、現在、イラクの石油生産量が一日当たり二百三十万バレルなんですけれども、既存の設備を新しい部品等で補強することによりまして、恐らく最大三百五十万バレルぐらいまでは拡大できると思いますので、まずそちらの方が先になるんではないかと思います。
 それから、その後につきましては、恐らくイラクの能力も高まりますけれども、同時に、ロシア等の非OPECの石油も出てきますので、世界全体の石油需給バランスを見ながら、アメリカのメジャーについても、余りたくさん供給がふえても、かえって油価が下落し過ぎれば企業としての収益性にも影響しますので、全体性を見ながら開発ということになると思います。
 ただ、いずれにしましても、イラクの石油の供給がふえるということは、世界の石油需給バランスからいえば、供給がそれだけふえることになりますので、価格については下落の方向への圧力がふえるということになろうかと思います。
丸谷委員 ありがとうございました。
 続いて、先ほどの同僚議員の質問の中でもイージス艦の話題が出ておりました。私自身は、今回のイージス艦の派遣に関しては、結論的に言えば反対でございます。
 というのは、先ほど江畑参考人の方から御説明をいただきました、イージス艦と現在派遣している艦の違いという観点からしましても、では、なぜイージスなのか、逆に、余り違いがないのであれば、では、なぜイージスを派遣することに大きな反対の声が出るのかという国内の世論を見ましても、非常にイージス艦自体が国内議論の中で、例えば集団的自衛権の行使であるとかあるいは武力行使につながるものとして、かなりシンボライズされているような気がします。
 そういう中で、イージス艦を派遣するときの国際社会に対する、特にイラクですとか中東社会に対する、また日本国内に対するメッセージ性を考えて、私はあえて、イージス艦は今派遣する必要がないのではないかという意見を持っているわけでございます。
 今回、インド洋にイージス艦を派遣するということについてまず知らなければいけないと思いますことは、九・一一後、テロに対する武力攻撃が国際社会協調のもとで行われ、日本も最大限の、できる限りの貢献をしてきております。このアフガニスタンにおけるテロリストに対する闘いの、まず評価、どこまで進んだのか、これをした上で、では次に何をしなければいけないのかというような対策をとる必要があり、そこで、必要ならばイージス艦の派遣という考え方に移っていかなければいけないと思うわけです。
 では江畑参考人にお伺いしますが、九・一一後の、テロに対する闘いの成果といいますか評価を現時点でどのように考えていらっしゃるのか、この点についてお伺いをします。
江畑参考人 お答えします。
 確かに、最近出たオサマ・ビンラディンの声明が本物であろうということで、結局アフガニスタン作戦では、捕まることはもちろん、恐らく死ななかったのではないかという判断がなされております。それをもって失敗だと言うかどうかというのは、これは別の話であります。
 基本的に、アルカイダが現時点において、かつて、去年の九月十一日にアメリカで行ったような、非常に大規模な、しかも周到な準備を要する同時多発的なテロ攻撃を行う力は今のところはもうないだろう。もちろん、個々において、世界の各所で起こり得る、その力はあるかもしれませんが。
 それから、何もアルカイダだけではございませんで、世界のテロ組織というのはいろいろあるわけです。しかも、これは釈迦に説法になるかもしれませんが、冷戦後、世界の価値観が大きく変わって、従来の国家という単位も、民族、宗教あるいは経済の共同体が、コミュニティーと英語では言っていますけれども、おのおのの主張をする。その中で、武装闘争をするグループもあり、そしてテロ攻撃と言われる行動をすることもある。ですから、これは単にアルカイダというだけではなくて、冷戦後の一つの特徴であることは事実です。
 それに対して、世界の、これは既存の国家と言っていいかもしれませんけれども、国連を中心として、テロ攻撃というものは社会そのものの破壊を意図する行動ですから、これは容認できないということで、いろいろな努力をしてまいりました。
 特に、ここら辺で大きいのは、やはり資金源を絶つということだろうと思います。人間の行動ですから、まずお金と、それから物資がなければならない。それから人間の移動やなんかが必要です。こういうものを国際的な連携によって、かなり行動を強化していくというところにおいては、九月十一日までには見られなかったような、それまでの世界では見られなかったような、非常にタイトなといいますか強固な世界の連携関係ができた。
 これで一〇〇%テロ攻撃を抑えられるとは私は思いませんが、しかし、アルカイダのような、あれはほとんど、はっきり言えば、世界は九月十一日まで野放しにしてきました。私自身も、それは一応この分野でアルカイダなる組織があることは知っていましたし、アフガニスタンにいろいろ食い込んでいることも知っていましたけれども、それに対して、あれほどのことをやることを意図して、実際にやったということに関しては、確かに世界は非常に放置してきたと言っていいかと思います。
 それに対して、今現在の世界はテロに対する連携をいろいろ強めてきておりますので、私自身、個人的には、すぐ明確な形で、ぱっと明らかな形では出てこないにしても、相当程度、テロ活動に対しての攻撃、特にアルカイダのような組織が動くことは難しくなってきている。
 こういうのを数字的に言うとわかりやすいんだけれども、非常に難しいんですが、九月十一日前の世界の状況がゼロだとするならば、そして完全にテロを抑え込むのは一〇〇%というんだったら、八〇%くらいまで世界は今連携しているのではないかと思います。ただし、一〇〇%を達成するのは不可能です。
 以上です。
丸谷委員 では、続けて江畑参考人にお伺いをします。
 実際に今八〇%ぐらいまで達成されているのではないかという御発言をいただきました。実際にそれを望むものでございますけれども、例えば世界各地を見ていますと、最近では、バリ島のディスコですとか、あるいはモスクワの劇場、それからケニアのリゾート地と、テロ自体は非常にねらいやすいところを、逆に今、小規模であってもねらってきているという状況でございます。
 我が国の日本におきましても、米国関連施設というのは多くございますし、日本自体が攻撃しやすいという点も否めません。日本がテロの被害に遭う可能性、また防御措置について、お考えをお伺いします。
江畑参考人 先ほども申し上げましたけれども、テロの定義は非常に難しいんですが、確定もしておりませんけれども、しかし、一般的には、外見的なテロを武装闘争の手段とするグループというのは世界のあちこちにありますし、これからもふえていくことは間違いないだろうと思います。
 それから、私が先ほど意見陳述で申し上げました、イラクの問題がどう片づくにせよ、片づいた後でも、決していわゆるパクス・アメリカーナ、アメリカの主導による世界の平和というものは訪れないだろうと思います。アメリカが主導的な世界であることは間違いないから、あちこちで、テロ攻撃を含めて紛争が起こるというような時代になりがちであると思います。
 もちろん、それはできるだけ抑制するような形、あるいはテロが起こるような原因というものをなくす努力はしていかなきゃいけないんですが、それは冷戦時代のブロック構造に分かれていた世界とは全く違いまして、あちこちでいろいろな主義主張、価値観を持った人間がいる。日本でも、御存じのように、オウム真理教があれだけのことをやったわけですね。
 では、どうしたらいいかという話になりますけれども、これは結論的に言いますと、いろいろな考えを持っている人がいますし、実際の武力攻撃における手段を描きやすくなりました。まさにオウム真理教がそれを実際実践をしたわけで、サリンというような神経ガスをつくり、炭疽菌の培養まで行った。幸いにして、あの炭疽菌は毒性がないものでしたが、その毒性があるかないかも判別できない程度の知識の人間が培養ができるという、技術の普及というのは非常に怖いんですよ。
 ですから、イラク攻撃が行われれば、同時に、例えば去年の九月十一日の直後にアメリカで炭疽菌テロ事件が起こったように、便乗という言い方は正しくないかもしれませんが、あちこちで似たようなことが起こります。
 特にねらわれるのが経済システム、経済機関です。それは、一つには、現在の国家や社会体制のよって立つところが経済ですから、それを混乱、破壊することによって大きな打撃を与えることができる。二番目に、経済システムそのものは、多くの場合、非常に象徴的なものですね。ニューヨークのワールド・トレード・センタービルがそうですし、あるいはバリ島というものはまさに観光産業の中心ですし、そういうところをねらうことによってアピールもできる。それは、彼らの主張だけではなくて、おれたちはこういうことをやっているというのは、世界に、ほかの仲間へと連携することもできる。
 したがって、日本は、言うまでもなく世界第二位のGDPを誇り、世界に大きな経済的ないろいろな関連を持っているわけですから、日本の関連施設そのものがねらわれると思っても不思議ではないですし、特にサイバーテロというものでありますと、これは国境とかなんか全くありませんから、多分、イラク攻撃が行われれば、同じような、そういうサイバーテロを含めたあらゆるテロ攻撃があちこちで起こるだろうと思います。
 ただ、ここら辺が民主主義の弱いところで、ではそうかといってあらゆる人間をあらゆる形で監視できるか。できません。そうなると警察国家になってしまいますから。だから容認しろというのではなくて、結局、我々のやれることの唯一のものというのは、インテリジェンスなんですよ。情報の収集、交換。これは各国と連携してやっていくしかない。それを強化して、できるだけ早いうちにそういう動きをとめていくのが恐らく唯一の方法であろうと思います。
 ただ、イラク攻撃が行われれば、日本も含めて、国内でも、イスラムとは関係がない人でもテロ攻撃を行う可能性もあるということは覚悟しておいた方がいいだろうと思います。
 以上です。
丸谷委員 ありがとうございました。
 では次に、立山参考人にお伺いをします。
 十一月二十七日から、国連安保理決議に基づくイラクへの査察が四年ぶりに再開をされております。大量破壊兵器計画の申告、十二月の八日が期限となっておりますが、イラク側の誠実な対応というものを期待するところでございます。
 そこで、軍事専門家の目からごらんになって、今回の査察自体が……(立山参考人「私は軍事専門家ではございません」と呼ぶ)失礼いたしました。立山参考人から見られて、どういう状況であれば米国の武力行使を避けることができるというふうにお考えになるのか、この点についてお伺いします。
立山参考人 大変難しい御質問だと思います。難しい御質問という意味は、私にとってということではなくて、今、世界にとって、まさにその問題が問われていることかと思います。
 つまり、イラクが大量破壊兵器及び運搬手段であるミサイルを過去開発してきて、かつ使ってきたことは事実でありますし、かつ、九一年以降の、以前の査察体制の中で、さまざまな形でイラクが虚偽の申告をしたりあるいは査察の妨害をしてきたことも、例えば前の査察機関の報告書に明確に書いてあるわけでございます。
 ですから、今回、八日までに提出される報告書、膨大なものになるという報道がございますけれども、そこにどこまで真実が書かれるのか。恐らく、イラク側の現在までの発言では、我々は一切持っていないということを言っているわけですけれども、九八年末で終わった査察の後でも疑惑は残っているわけで、それに対しての解明がなされない限り答えは出てこないということかと思います。
 ただ、ではどのような形で、イラク側のまさに真摯な対応を求めるしかないわけですけれども、同時に、冒頭での発言で申し上げましたように、やはり国際協調体制を維持するということが絶対的に必要なのではないか。特に、大量破壊兵器の問題というのはイラクの問題だけに限らず、大きな問題としてあるのは、統治能力を失った国家が大量破壊兵器を持っているということでございますし、あるいは国際社会の規範に従わない国家が大量破壊兵器を持っているということでございますから、それをどうするかという一つのモデルケースにこれはなるわけですので、その意味でも、国際協調体制を維持するということが極めて必要なのじゃないかと思います。
丸谷委員 ありがとうございました。
 次に、テロリストとの闘い、テロとの闘いということで、先ほど来お話をお伺いしておりますけれども、残念ながら、アルカイーダのみならず、小さな組織であっても、テロリストというのはふえていく傾向にもあるのではないかというようなお話もございました。
 実際に、国際社会がテロの撲滅に向けて行動するには、当然武力攻撃だけでは足りないわけで、テロの温床とも言われています貧困ですとかあるいは飢餓という面からも、これを克服していかなければいけないと思います。その面においては日本は非常に大きな貢献ができる国だと存じておりますけれども、その点につきまして、日本ができる武力攻撃以外のテロ撲滅に対する貢献をどのように考えていらっしゃるのか、立山参考人にお伺いします。
立山参考人 先ほど江畑参考人も御指摘されましたけれども、テロの背景というのは実にさまざまでございます。宗教的な問題、あるいは文化的な問題、あるいは政治的な問題、民族的な問題、今おっしゃられましたような貧困、飢餓といったような問題、さまざまなことでございます。
 軍事的な手段以外でテロにどう対応していくか、あるいはテロをどうやって少なくしていくかということですけれども、さまざまな形の対応が可能かと思います。
 もちろん一つは、ODA等を使った、貧困や飢餓をできるだけ軽減をしていくということがあるかと思いますし、あるいは、これもODAを一部使うことになるかもしれませんけれども、例えば教育の問題も極めて重要かと思います。相手をののしるような教育を、公然と教科書に書いてあるとか教室で行われているといった現状は事実あるわけでございますので、そういう教育内容についての意見交換を日本から働きかけていくといったようなことがあるかと思います。それからあと、情報の交換あるいは資金源の問題といったような、江畑参考人の御指摘もまさにそのとおりかと思います。
 さらにもう一つ、やはり紛争解決のために、これは紛争がある意味ではテロを生んでいるわけでございまして、チェチェンの問題にしてもそうでございますし、それからパレスチナの問題にしても、あるいはカシミールの問題にしてもそうであるわけです。紛争を完全に解決するというのは全く不可能かとは思うんですけれども、同時に、紛争を解決するために国際社会がさまざまな形で関与しているんだという姿勢を見せ、現実にまた関与していって、第三者である日本が、例えば紛争当事者に対して別の視点を提示する、別の枠組みを提示して、こういう形で考えてみたら紛争の解決に少しでも近づくのではないかといった努力を日本がやっていくというような、今申し上げたようなさまざまな取り組みが考えられるかと思います。
丸谷委員 ありがとうございました。
 では、最後になるかと思いますけれども、今回のイージス艦を派遣したことによって、中東、特にイラクが日本に対してどのような見方をしているのかという点が一点。
 また、今まで非常に重要なスタンスで、アメリカとは違ったスタンスで中東諸国と接してきた日本にとって、今後もその非常によい距離感を保っていくためには、イラクですとかアフガニスタンとはまた別に、中東和平プロセスに今までよりもっと積極的にかかわっていく必要があると思います。例えば、次のリーダーとか若い世代を育てるようなセカンドトラックの場を日本で設けるとか、そういったかかわり方も非常に重要かと思いますが、こういった点についていかがお考えかお伺いして、終わらせていただきます。
立山参考人 イージス艦の派遣そのものをイラクがどう見ているかというのは、私はちょっとまだ把握をしておりませんけれども、日本が軍事的に中東にこれまでほとんど何も関与してこなかった、あるいは何らかの形でプレゼンスを示さなかったということは事実でございますが、これが高く評価されているとは私自身は思っておりません。むしろ日本が見えてきていない。むしろ日本のイメージというのは、テレビであり車でありラジカセでありというようなイメージの方が先行しているわけですので、その幅広い形での日本の対応というのは必要なのではないかと思います。
 それで、さらに中東和平問題に関しまして、先ほど来申し上げておりますとおり、そのトラック2の件、特使の派遣あるいは任命、あるいは、紛争が、対立が激しくなっているからこそ、何らかの形で日本が積極的に発言をしていく。変な言い方かもしれませんけれども、日本が発言をしたからといって、それで和平が大きく展開するとは思いませんけれども、それにもかかわらず繰り返し繰り返し何らかの形のアイデアを出していくということが日本にとっても非常に重要なのではないかと思います。
丸谷委員 ありがとうございました。
池田委員長 次に、小池百合子さん。
小池委員 保守党の小池百合子でございます。
 本日は、お三方、お忙しいところ御出席いただきまして、ありがとうございます。また、日本のとるべき選択、方向性についての御指摘、私は、一つ一つそのとおりだということで、御意見を共有したいということをまず申し上げておきたいと思います。
 その上で、最近の中東情勢を客観的に見てまいりますと、非常にいろいろなまだら模様があるなと思っております。
 例えば、トルコで総選挙が行われまして、かつてのリファイ党、福祉党の流れをくむ宗教色の強い政党が単独で第一党、与党になったということ、これはすなわち、湾岸戦争当時の実際のアクションにおいて非常に大きな貢献をしたトルコの基地提供が今後どうなってくるかということに具体的にかかわってくるわけでございます。
 きょうは資料を大変たくさんいただいておりますが、お時間の方が短くて、多分その辺のところを言い尽くせなかったのではないかというふうに思いますので、まず最初に、万々が一最悪の事態に陥って、このトルコの基地が提供がないということ、今私は、この大前提といたしまして、アメリカがもしくは世界が何らかの形でイラク攻撃を行うという最悪の事態のことを想定いたしまして御質問をさせていただいているわけでございますが、江畑参考人から、今の私の問題点について、どのようなオルタナティブが今進められているのか、ネックは何かといったことについてお教えいただきたいと思っております。
江畑参考人 お答えします。
 個人的には、対イラク攻撃において、トルコがインジルリク空軍基地をアメリカやイギリスに使わせないという状況は考えにくいとは思いますが、万が一ということでございますので、その前提でお話しいたします。
 確かに、トルコの基地が使えませんと、イラクの北部に対しての攻撃ができませんので、専らアメリカの航空攻撃は、もちろん、地上部隊を投入する場合には北からはとても行けませんので、地上部隊はすべてクウェートからの発進ということになるだろうと思います。
 しかし、いずれにしろ、まず、恐らく開戦後最低一週間から二週間はかけて、イラクの空軍、特に防空能力をつぶすという作戦が不可欠でございますから、これを行うに当たって北からの攻撃ができないということは、攻撃が南側、しかも、これはもし仮にサウジアラビアが領空通過すら拒否する、リヤドの南方にプリンス・スルタン空軍基地という非常に大規模な、湾岸戦争後につくられました基地がありますけれども、あそこの使用をなかなか渋っておりますので、使用はおろか領空通過すら拒否するというような事態になると、もうクウェートから入るしかない。
 あとは、イスラエルの上を通って、ヨルダンの上を通ってという話になりますけれども、恐らくこれも不可能である。となると、現実的にそういう状況、つまり、トルコが基地の使用を拒否し、サウジアラビアも基地使用どころか領空通過も拒否するということになると、恐らくアメリカは戦いはできないだろうと思います。
 その場合には、外交的手段に訴えて、少なくともトルコの協力は得るというように動く。そのためには時間が必要になる。最終的には、トルコは、EU加盟なんかもありますから、折れざるを得ないとは思うんですが。
 しかし、もしサウジアラビアが領空通過を許可するのであれば、南からだけでも、奇襲性は失われますけれども、今のアメリカ及びイギリスの軍事力、特に航空戦力を考えるならば、それだけでも戦いは不可能ではないというふうに思います。
 しかし、そうなると、北のクルド族というものが一体どういう動きをするかが予想が非常に難しい。彼らが孤立感を深め、あるいはイラク陸軍及び共和国防衛隊がここを機会にクルド族に対しての攻撃をかけるというようなことになった場合には、世界はそれに対してどういう救援策を講じることができるのか、これは非常に難しくなると思います。
 したがって、トルコが基地を提供するか否かというのは、一つには、もちろん、先ほど申しましたEUや何かの加盟問題というのをちらつかせることも可能なんですが、同時に、クルド族をその後どう処遇するか、これは釈迦に説法で、小池委員の方がはるかに御存じだと思いますが、そういうことにかかってくるだろうというふうに思います。
小池委員 トルコというのは、中東地域において、唯一民主的な選挙という制度でもって政権交代が行われる国であるということが言えると思います、イスラエルを除くということですけれども。
 その意味では、アメリカもこの辺のところ、痛しかゆしだと思うんですね。民主主義のカード、人権のカードという、いつものダブルスタンダードの際に必ず出してくるカードを、トルコは実際にそれを使ってやった結果が宗教政党になった。それも、もちろんイスラム色ということですから、逆に言えば、EUのくくりがむしろクリスチャニズムということであるならば、余計遠ざかる結果にはなっている中で、経済というくくりの中のEUに入ろうとしている。この辺のところが相矛盾するところである。そこのあたりを外交的にどう対応していくのかが、これから総合的に、アメリカのみならず世界の各国が求められる要件であろうというふうに思っております。
 一方で、民主的に選挙が行われていると言われるイスラエルで大連立政権が崩壊をいたしまして、ここで、シャロンさんと競い合うがごとくハードライナーであるネタニヤフさんがまた外務大臣に復活をしてきたということで、これまた中東和平の道険しというふうに見ているわけでございます。
 きょうは立山さんも、日本の対パレスチナ支援そして政策の点につきましていろいろ御指摘がございました。私も大変懸念しているのは、こうやって必要なときに限りまして、日本の国内事情もこれありで、直接の支援も、そしてUNRWA、UNDPを通じての間接的な支援も、総額といたしまして、どんどん日本のパレスチナ支援が減っているという事実があるわけでございます。現実には、テロが頻繁に起こる地域で平和的な学校建設が行われるかというと、それはまた違うというのも事実ではございます。
 また、テロを起こしている、起こることの背景には、ガザ地区においてもいまだにやはり八割の失業率があるということで、これは鶏と卵で、むしろ彼らに職をつくってあげる。日本国内でも今それが必要な政策でもあるんですけれども。ですから、私はむしろ、うんと手間のかかる道路工事を、一枚一枚のれんがをガザの住民一人一人が持ってやりなさいと、それぐらい彼らを前向きな、仕事でビジーにさせるということは一つ大きなやり方であろうというふうに思っております。
 その意味で、これまでの日本の地道な経済支援、社会支援でありますけれども、立山参考人におかれましては、今後この日本の支援がより目に見えるような、そしてなお実効性があるような形で行わなければならないというふうにお訴えにもなっているわけですが、例えばどのような方法が今後さらに求められるとお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。
立山参考人 今小池議員が御指摘になったとおりでございまして、ヨルダン川西岸地区とガザ地区、特にガザ地区においての経済状態というのは極めて悪いわけで、それがまたパレスチナ人の若者の絶望感を深くして、十八歳、十九歳で爆弾を抱えてバスの中で自爆してしまう、あるいはどこかに突っ込んでいくという状況が、これは必ずしも宗教的な動機だけではなく、そういった将来に全く夢を持てないという問題がその基盤に、根底にあるかと思います。
 そうした状況の中で、では、日本が何をできるのか、何をすべきなのかということですけれども、今、一つ一つブロックをつくって舗装をする、まさにそういうことも日本も一部、かつてガザでも支援をしていましたけれども、やはりそういった支援というのを、ただいま現在ではなかなかできないかもしれませんけれども、やっていくんだということで、さまざまな計画を議論する必要があるかと思います。
 それから、あともう一つ重要なことは、外出禁止令がしかれ、経済状態が極めて悪いという中で、例えば国連の報告によりますと、パレスチナ人の子供たちは今栄養失調状態に陥りつつあるというようなことも言われております。ですから、そういった点に対しての人道的な支援というのが必要かと思いますし、それからまた、イスラエル軍の軍事行動によって、例えばことしの四月にも難民キャンプのシェルターと呼ばれる難民の家屋が多数破壊されましたが、それの緊急の再建のための行動をとる、あるいは支援を行うといったような形で対応していくことが必要ではないかと思います。
 いずれにしましても、現在のパレスチナ社会の状況というのは、経済的にも社会的にも非常に苦しいわけですから、国際社会はまだ見捨てていないんだ、あるいは日本はそれを見捨ててはいないんだという意味で、それにさまざまな形で手を差し伸べることが、またパレスチナ人の絶望感を少しでも和らげることにつながるのではないかと思います。
小池委員 ありがとうございました。
 先ほどから、アメリカのカードで、民主主義、そして人権ということをいつも、片手にはアメリカの国益と片手にはそういう大義というか、世界的、普遍的なカードを出すというのが大体の特徴だと思うんですが、これまで一切出さなかったサウジアラビアに対して、最近はそのカードを切るようになっております。
 せんだっても、アメリカのワシントンの駐米サウジアラビア大使というと大変有名な王子でありますし、名家でありますけれども、この王子の妻の預金からテロリストに対しての送金が行われてきたなどということは、これまでのアメリカならば知っていても絶対に出さなかったであろうというふうに思うわけでございますし、また、アメリカから、いろいろな筋から私のもとへ送られてくるメールなどを見ておりますと、もうほとんどサウジはタリバンと何も変わらないことを日常やっているじゃないかというようなことが書かれている。もっとも、宗派の関係上そういうこともある。
 ちょうどきのうラマダンも終わりました。これは直接関係ありませんけれども、いろいろな意味で、宗教的な部分も含めて、アメリカは対サウジ政策を変えたのではないか。また、それがために、アメリカも何かあったとき用の備蓄まで、もともと産油国でありますが、備えをしてきている。この辺のアメリカの対サウジ政策の変化というのは畑中さんはどのように読んでいらっしゃるのか、お教えいただきたい。
畑中参考人 小池先生御指摘のように、昨年の九月十一日事件以降、アメリカのサウジ観というのは若干変わってきているというのは事実であろうかと思います。
 恐らくその背景としては、現在のブッシュ政権の中における思考といいましょうか考え方の中に、民主化を強く前面に出していきたいという人たちが少なくないということがあるのではないかと思います。特に、これはもう皆様の方がよく御承知かと思いますけれども、新保守主義派、ネオコンサーバティブという人たち、もともとは民主党員の人たちであった議員ですとか、あるいは政策の立案者ですとか、あるいはマスコミの方とかですけれども、こういう人たちが相当程度現在のブッシュ政権に影響力を持つようになってきており、また、その中の一部の人が現に政権の中に入ってきているということが影響してきているんだと思います。したがって、相対的にアメリカのサウジ観というのは変化しているということは事実であろうと思います。
 ただ、そうはいいましても、現実に世界の石油資源の約二六%、四分の一強がサウジアラビアにあるということは事実でございますし、また、アメリカにおきましても、現在、原油と石油製品を合わせた合計の石油での輸入という面から見ますと、サウジアラビアは第二位の地位を占めておりますので、したがって、アメリカとしても軽々にあるいは早々にサウジアラビアに対する政策を変更するということはないんではないか。
 ただ、御指摘のように、テロリストグループに関連するようなところに国内のイスラム系の慈善団体を通じた資金が過去において供与されてきたということはどうも事実のようでございますので、こうした点での是正を強く求めていくということはあろうと思います。
 またさらに、民主化ということについては、これはアメリカの考える民主化をどこまで求めていくのかということになるかと思いますけれども、現在の政権の中でも考え方が実は分かれているところでございまして、これがどうなるかということは、恐らく今後、今世界が注目しておるイラクの将来における、仮にアメリカが考えるような形でのポスト・サダム・フセインというような政権ができて、これに対して民主化ということを考えていくようなことがあるかどうか、そうしたことと相当程度かかわってくるのではないかというふうに思います。
小池委員 ありがとうございます。
 私は、ポスト・サッダームはウダイではないかと。瀬戸際外交をやりますし、突如として思わぬことをやりますので、どこかで窮地に陥ったときにはぱっと変わって、何が悪いんだというふうにするのではないか。院政をしくというか、そんなこともあるのかなと。
 悪の枢軸ということでいろいろと指摘をされている三国のうち、二国が今大変注目されている。その意味で、先ほどのイージス艦にかかわるんですが、江畑さんにお伺いしたいと思うんです。
 国内的にも、素人の議論かもしれませんけれども、今回のイージス艦の派遣は私は当然だというふうに思っておりまして、前回のときも、テロ特措法のときも、護衛艦を出して、ミニスカートとミディスカートとロングスカートのどこがどこでどう違うんですかという話もさせていただいたんですが、また、私の結論を言えば、その集団的自衛権の行使については早急にリインタープリテーションをやらなければ、もうしょっちゅうこの話が続いてきてしまうということをいつも思っているところでございます。
 その意味で、今、中東もさることながら、我が国にとっての至近距離にあります北朝鮮問題というのも非常に大きなところであり、また、この瀬戸際作戦をとる北朝鮮は何が怖いかというと、何をするかわからないことが怖いわけでございます。その意味で、我が国はイージス艦は四隻保有しているわけでございまして、イージス艦がすべてではございませんが、そのうちの一隻は常にリペアというか、そういうところに入っている。そのうち、ですから残りの中の一隻を出す。
 これは、我が国の防衛上に今回のイージス艦派遣というのは、特に北朝鮮の状況の変化ということもかんがみて、何ら問題はないのかどうか、そのあたりをお聞かせいただきたいと思っております。
    〔委員長退席、中川(正)委員長代理着席〕
江畑参考人 現時点、恐らくここ半年ぐらいの状況を考えるならば、四隻あるイージス艦のうち一隻をインド洋に派遣しても、朝鮮半島問題に関連して日本の安全保障上大きく懸念が生じることはないだろうと思います。
 それはどういうことかと申しますと、朝鮮民主主義人民共和国、つまり北朝鮮がどういう形に出るかというそのシナリオにもよるわけですけれども、単純に軍事的な面からだけ申し上げれば、今北朝鮮の空軍力には、日本海を渡って日本を攻撃できるだけの能力は皆無と言っていいぐらいありません。飛行機は旧式ですし、航空自衛隊がその気になって洋上に例えば早期警戒管制機を派遣して哨戒状態をとれば、ほとんど一〇〇%捕捉、迎撃、撃墜できるだろうと思います。
 イージス艦は、一隻が修理、訓練、そして残り三隻のうち一隻が行ったとしても、それでもなおかつまだ二隻があるわけで、日本海に二隻これが常時いられるかとなると、それは一隻の船が展開できる時間というのは限られておりますけれども、例えば舞鶴あたりを基地にすれば比較的短時間に反復運用ができますから、それも二隻は確保できる状態になります。
 そうすると、先ほど申し上げましたように、イージス艦というのは、簡単に言えば、従来のミサイル護衛艦、つまり防空用の艦対空ミサイルを搭載した護衛艦の数倍の能力があるものと思ってくだされば結構で、これ自身が特別な、全く違う性質のウエポン、兵器システムであるというものではありません。単に能力が高いというだけでございます。ですから、能力が高いというのは絶対的なものではなくて、つまり今までの護衛艦と比較してということになりますが、同じように相対的に比較するならば、北朝鮮の空軍力に対しては全く懸念する心配はないだろう。
 海軍力に関しては、それはもうほかの護衛艦で対応できる話です。
 残り、弾道ミサイルですが、これは、現時点においては、日本のイージス護衛艦もアメリカのほとんどのイージス艦も、弾道ミサイルを発見することすら難しいです。
 というのは、確かに例の一九九八年八月三十一日の、テポドン1とアメリカが呼んでいるミサイルないしは宇宙開発用ロケットの打ち上げに際して、追尾したのは唯一日本の自衛艦、イージス艦だけだったといいますが、それは、そろそろ来そうだぞということで見ていたんで、たまたま通ったのが、多分これがそうだろうと。こう言っちゃうと海上自衛隊の人間は怒るかもしれませんが、正直申し上げて、私は責任を持って申し上げますが、その程度です。恐らく、その中でただ茫然と、ばあっと行ったらわからなかったろうと思います。
 これをやることは可能なんですが、それのためにはレーダーの出力をアップし、そのための特別なソフトウエアを入れなければなりません。アメリカは、それはいわゆる弾道ミサイル防衛の中の、シーベースド・ミッドターム・ディフェンス・システム、洋上で中期に防衛する、日本が今アメリカと共同研究をやっているものがそのミサイルの方ですけれども、それのための改造を行わない限り、積極的にミサイルそのものの飛来を探知して、追尾してということはできません。ましてや迎撃能力などはゼロです。
 ですから、その弾道ミサイルに関してはもうお手上げであって、はっきり言えば、アメリカの早期警戒衛星が上から見ていて、これがどれだけ短時間に来るか。ただ、北朝鮮から撃ちますと、四分から、よっぽど北の方から撃ったとしても七分かかりませんで到達いたします。発射から探知するまで、早期警戒衛星で一分かかります。
 現在、アメリカから日本への弾道ミサイルの通知の経路をたどりますと、これはテポドンのときがそうでしたが、大体最低でも四十分かかります。これはまだいい方で、一九九三年五月の末に日本海に向けて撃ったときの、ノドンと言われているものですが、このときには三日ぐらいかかりましたから。それは外交ルートでようやっと首相官邸サイドに入る。これが大分改善をされて、米軍系統で、例えば国防総省から太平洋軍司令部を通して横田に入って防衛庁に入るという経路になりましたので、四十分ぐらいになった。でも、四十分といったらもうはるかかなたに行っているか、落ちているか、どっちかの話ですね。
 一九九七年一月一日からイスラエルは、中東地域を監視しているアメリカの早期警戒衛星の情報を、先ほどのCECと同じで、リアルタイムで見られるようになりました。つまり、彼らがこの地域、早期警戒衛星がどういう映像を見ているかをそのままダウンロードしてテルアビブで見られる状況を、契約を結びまして、それで見られるようになって、一分以内に探知できる。彼らは独自に開発したアローという弾道ミサイル防衛のシステムを持っていますから、それで迎撃できる状態なんです。
 つまり、このような状態をつくらない限りは、いかに弾道ミサイル迎撃能力を持った防衛システム、例えばパトリオットの新しいPAC3型というのがそうですが、こういうものは持ったとしてもほとんど意味はない。余計なことになるのかもしれませんが、それが集団的自衛権の云々ということになるんであれば話はまた別のものですが。
 結論的には、今の時点ではまず心配することはなかろう、ただし、弾道ミサイルに関してはどうしようもないということを申し上げます。
小池委員 ありがとうございました。
 このイラク問題、中東問題は、石油の依存度という実質的な数字からいって、決して人ごとではなくて、日本の問題であるということを最後に申し上げて、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
中川(正)委員長代理 次に、桑原豊君。
桑原委員 民主党の桑原豊でございます。
 きょうは、三人の参考人の皆さん、大変貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございます。
 最初に私は、三人の先生にそれぞれお聞きをしたいんですけれども、イラクがこういう形で今査察を受け入れておるわけです。今までのところ、特にこれという大きな問題が指摘されていないようですけれども、これからどういうふうに展開していくか予断を許さないと思います。
 そこで、アメリカが武力行使をしてでもイラク問題について対応していかなければならぬというこのねらいといいましょうか、いろいろ今まで議論されてきておりますから、いろいろなことが浮かび上がってくるわけですけれども、アメリカの本当のねらいというのは一体何なのか。
 当然のことながら、国連の決議に基づいて今査察をやっているわけですから、イラクが大量破壊兵器の疑惑を完全に解明して、それを受け入れて、最終的にはすべてのそういったものを廃棄していくということがまず目的だ、これは国際社会だれもが受け入れるところでございます。
 それともう一つは、アメリカの場合は、たとえそれを受け入れても、非常に小さな違反でもそれを口実にして武力行使に及ぶ、こういう懸念が今まで指摘をされております。アメリカのいろいろな言動でも、一切許さない、とことん、一つの過ちも許さない、こういう厳しい姿勢だと思います。そういうことになると、これはあくまでもフセイン政権そのものを交代させる、転覆させていく、こういうことがねらいなんだ、こういうふうにもなるわけですし、それに限らず、アメリカはこの際アラブ世界全体を親米的な体制、そういうものに再編成していきたいんだ、そういうねらいもあるんだ、こういうふうに言う人も中にはいるわけですね。
 もう一つ、今いろいろと議論になっておりましたけれども、やはり石油が問題だと。石油の開発利権、既にいろいろなメジャーが動きを見せておりますし、まあアメリカは国としてそういうことを言わない。慎重な言い回しですから、そういうことはあからさまには言っていないわけですけれども、そういうことはあると。
 いろいろな指摘をされているんですけれども、それぞれの先生方、アメリカがここまでしてイラク問題に臨むねらいというのは一体何なのか、それぞれどういうふうにお考えか、まずお聞きしたいと思います。
畑中参考人 大変難しい御質問かと思いますけれども、御指摘の点、それぞれねらいとしてあるんだろうと思います。
 一口にアメリカといった場合、あるいはアメリカの政権といった場合においても、例えばホワイトハウスあるいは国務省、国防総省等々で恐らくその考え方に違いがあるんではなかろうかと思います。恐らく、そのたくさんある考え方の中で、国家元首であるブッシュ大統領は、国際社会が受け入れやすい形での大量破壊兵器の破壊ということをまず第一に追求していくんではないかと思います。そこから先になりますと、恐らく政権の内部でも相当意見の食い違いがあるんではないかと思います。
 先ほど小池先生の御質問の中でも若干お答えしましたけれども、現在のブッシュ共和党政権の中にも、新保守主義の人たちから、あるいは共和党の既存のエスタブリッシュメントの考えをする人たちから、さまざまな考えをする人たちがございまして、主に、フセイン政権の転覆ですとか、あるいはさらに一歩進めたアラブ世界全体の親米化といったことを声高に政策として掲げておりますのは、ブッシュ政権の中あるいは共和党の中でも新保守的な考えを持っている人たちでございます。ただ、彼らの考えがそのまま政策として直ちにアメリカの政策になるかどうかということは、今回の八月以降のアメリカの政策を見ておりましても、必ずしもそうはならないんではないかという気がしますので、そこのところははっきりいたしません。
 したがって、御質問の、アメリカの真のねらいはということでございますけれども、最終的には私は、やはり大量破壊兵器の破棄ということでその脅威を除去するということが真のねらいだと思います。
 ただ、そこのところで考え方が大きく二つに分かれてくると思うんですけれども、大量破壊兵器を破壊したとして、現在のサダム・フセイン大統領が残った場合、過去の使用した実績があるということ、これから考えますと、再びその開発あるいは生産をする努力を始めるんではないか、そういう懸念がある限りにおいては、やはり指導者あるいは指導層を含めた交代というのが本来的にはなくてはならないんではないか、そういう考えが政権の中にもあることは事実だと思います。ただ、このあたりについては、私自身、正直言ってよくわかりません。
 それから、御指摘の石油の開発利権については、恐らく付随的なこととして出てきているものであって、これが主たる目的として今回のイラクの問題があるんではないと思います。恐らく、イラクの問題が何らかの形で解決する過程の中で、石油の開発がアメリカを主流とする大手の石油企業の中に入ってくればそれが望ましいというふうに今考えておるんではないかという気がいたします。
 よろしいでしょうか。
立山参考人 アメリカのねらいといいますか、基本的にはアメリカの考え方ということかと思うんですが、私はやはり、九月十一日がアメリカ社会にもたらした大きな変化、アメリカ外交にもたらした大きな変化が根底にあるのではないかと思います。
 これはどういうことかと申しますと、イラク問題に関しましても、ブッシュ政権は発足当初から、部分的には、サダム・フセイン体制を倒さなければならないという話はしておりましたけれども、ではどのように倒すのかという議論の中では、武力ということではなく、むしろ国連制裁の枠組みを変化する、あるいは若干の、従来から続けてきた武力攻撃を変えるというような話であったわけですけれども、九月十一日以降がらっと議論が変わってしまったわけです。
 それはどういうことかと考えますと、恐らく、先ほどもちょっとお答え申し上げましたけれども、統治能力を失った国家あるいは国際的な規範に従わない国家が大量破壊兵器を保有していること、あるいはテロを支援していること、あるいはテロ組織をかくまっていること、こういうことに対する脅威が極めて甚大であるということをアメリカ社会全体が強く認識したということかと思います。
 例えば、十月にアメリカの上下両院で、大統領に、イラクに対する武力行使、必要とあればやむなしという権限を与える法律が通りましたけれども、九一年の場合には、同じような戦争権限を付与する法律が通りましたが、民主党は多く反対をしております。しかし今回は、ごく一部の民主党員と極めて少ない共和党員が反対をしただけで、圧倒的多数は賛成をした。
 こういうことから考えますと、やはり、国家安全保障をどうするかというときの脅威認識が、従来のように、ブッシュ政権の前半、九月十一日以前であれば、むしろどちらかというと、自分たちだけが守って、余り世界にかかわっていかないという孤立主義的な傾向から、単独行動を持ったとしてもその脅威を除去するという認識に変わったのがあると思います。それが一点。
 それからもう一点は、やはりアメリカが今圧倒的に力を持っている、帝国と呼ばれる話がよく出てくるわけですけれども、そういう中でアメリカ主導の秩序を形成したい、この考え方というのは恐らくブッシュ政権そのものがずっと持っていたんだろうと思いますけれども、その考え方がさらに表面化して、かつ具体的な形で九月十一日以降出てきた。
 ですから、先ほどおっしゃられましたように、アラブ世界そのものも親米的なものに変えていくという議論があるということを御指摘ございましたけれども、部分的には、アメリカの中で、アメリカ的な民主体制、アメリカ的な政治体制というのを世界に確立していくのだという、いわゆるアメリカのミッショナリー外交といいますか、使命感に基づいた外交といいますか、そういうのが伝統的にあるわけですけれども、それがさらに表面化してきたということかと思います。
江畑参考人 大体、私の意見も今二人の参考人の方と同じようなものなんですが、まとめて三つあると思います。
 まず第一には、今立山参考人がおっしゃられましたけれども、去年の九月十一日以後、大量破壊兵器を使ったテロ攻撃という可能性が非常にアメリカにとって切迫したように感じられるようになった。逆に言うならば、国際社会は、アメリカも含めてですが、一九九八年十二月以降、イラクのこの問題に対してはほとんど何の手も打ってこなかった。
 その後、確かに、UNSCOMというそれまでの国連特別査察チームにかわって、現在行っているUNMOVICという新しいイラクに受け入れやすいような査察チームをつくりましたけれども、結局それをイラクの方が一方的に排除してしまって、そのまま結局何ら具体的な手を打たずに放置してきた。それが九月十一日になって急に、アメリカにとっては非常にせっぱ詰まった危機となったというふうに考えられます。
 ですから、何で今イラクなんだというより、何で今まで放置していたのか。これはコンドリーザ・ライス・アメリカ大統領の補佐官も言っておりましたけれども、同じようなことであって、とにかくこれは放置していたらどうしようもないことだということが、特にアメリカにおいてはせっぱ詰まったものになった。
 それから、これは後で申し上げる三番目と関連することなんですけれども、現在アメリカが冷戦後一貫して進めてきております新しいタイプのアメリカの軍事力、トランスフォーメーションという言い方をしておりますが、これは情報と情報システムを高度に駆使した非常に効率のよい戦い。それは、湾岸戦争、そしてその後のユーゴスラビア空爆、及びこの前の、現在も進んでおりますが、アフガニスタンにおける軍事作戦で典型的に示されております。これは確かに非常に効率がいいし、非常に高度な能力を持つものであります。
 これは基本的には通常兵器を使っている戦いですので、これに対して大量破壊兵器を逆に使われますと、非常にやりにくくなります。例えば、防護服を着るだけでも大変面倒だ。したがって、何が何でも通常戦で事を済ますためには、大量破壊兵器が世界に拡散され、それが使われるような状況は防ぎたいということもあると思います。
 二番目には、石油の安定供給。これは畑中参考人の方が御専門ではありますけれども、例えば、去年の五月にアメリカのエネルギー政策という報告書を出しましたけれども、その中において、アメリカにおいて今後二十年間に石油の消費量は三三%増大する、したがって石油の供給地を分散しなければならないというような提言がなされております。これも畑中参考人がもう説明してくださいましたが、現在においても、そして恐らく将来においても、中東というものは圧倒的に、石油の埋蔵量、それから質の面で、したがって価格の面でも有利なところです、運搬も含めるなら。
 お手元の資料の後ろから四ページとか五ページ目に、そこら辺のグラフや何かがかいてありますが、そういう点からするならば、やはり中東が安定してもらわなければ困る。このためには、サダム・フセイン政権というものは常に不安定要因であり続けるから、排除せねばならぬと考えるだろうと思います。
 じゃ、どのような政権ができればいいのかということになると、例えば、これは私の単純なといいますか、個人的な推測でありますけれども、現在のオマーンとかカタールというのが、結構親米的な政権なんです。もちろん、イラクと、オマーンとカタールとは、政治体制から民族といいますか、そういうのがもう全然違うものではありますが、表面的に、今のカタールのような、アメリカに対して非常に親米的な政権ができれば、ワシントンにとっては願ったりかなったりではないかと思います。
 三番目、これはもう何度かこれまでも申し上げてきましたけれども、イラク後のアメリカによる世界秩序のリーダーシップということを確立するためには、やはりこれは一つのチャンスである、変な言い方ではありますけれども。
 なぜかというと、アメリカがいわゆるローグステーツ、悪漢国家といいますか、無頼国家と名づけてきたイラン、イラクそして北朝鮮、ここでイラクをまず最初にたたいておくならば、その後、ほかの二つの国は、アメリカにとってみれば、恐らくこの二つの国は、アメリカの軍事力を直接行使しなくてもひざを屈してくるのではないかというふうに考えられているのではないかと思いますし、これも私の個人的な推測ではありますけれども、イラクのサダム・フセイン政権がもしアメリカの軍事的力によって崩壊させられたらば、恐らくピョンヤンは、政権体制の維持のためにも、かなり柔軟な姿勢をとってくるのではないかと思います。
 ということは、今ここで、こういう言い方はよくない言葉かもしれませんが、見せしめのためといいますか、やっておけば、後々アメリカの、世界における戦略的リーダーシップを確立するのには非常に役に立つということも一つの戦略ではないかと思っております。
 以上です。
桑原委員 アメリカのイラク攻撃が始まりますと、アメリカは、イラクに対する攻撃と、それから今まで継続してきたアフガンのテロに対する攻撃、そういう意味では二つの正面を持つわけですね。この作戦というのは、二つの正面を持った、そういう作戦になるのか。今は、テロと大量破壊兵器の問題が結びついて、イラク問題というものが非常に大きな問題になってきている、こういうふうな御指摘もあったわけですけれども、それを一つの作戦として一体化してアメリカが取り組んでいくということになっていくのか。
 日本のイージス艦が今度派遣されるということになって、これはまさにイラク攻撃に対する間接的な支援になる、こういうふうな指摘を我々もして、これは今のテロ特措法を超える話だ、こういうふうに言っているわけですけれども、アメリカ自身はこの両方の作戦を一つのものとして連動させている、こういうふうに考えていいのではないかというふうに私は思うのですが、そこら辺、立山先生、どういうふうに考えておられるのか。
 それと、アーミテージさんは非常に高くこのイージス艦の派遣を評価をしておりますけれども、この時期、考えてみれば、やはりそういったこととの関連で、大いにイラク攻撃の援護射撃になる、こういうふうなことも含めて評価をしたのではないか、こういうふうに思われるのですけれども、その点、立山先生、どういうお考えでしょうか。
立山参考人 私は防衛大学校に勤めておりますから、軍事問題の専門家ではございませんので、その点を最初にお断りして、今の御質問にお答えいたします。
 基本的には、恐らく、アフガニスタンで行われて、現在も行われている軍事行動と、もしイラクに攻撃した場合の軍事行動とでは、規模、質、内容が全く違ってくる。やはり、イラクはそれなりの兵器を持って、数は減ってきているとはいえ、兵力を持っているわけですし、バクダッドを中心とする地域に極めて人口が集中しているといったようなこともありますから、その作戦が連動して進むということではなく、別々の作戦で行われるかと思います。
 ただし、アメリカは世界全体に軍を展開しているわけですし、いわんや、同じようにインド洋、南アジアから中東にかけての地域での二つの作戦ですから、当然、その中では、それぞれの軍の運用その他に関しては連動してくると私自身は想像をいたします。
 それで、イージス艦の問題ですけれども、それが議論がどうであれ、実態とすれば、もしイラク攻撃が行われた場合に、アメリカのインド洋における警戒管制について、これは私自身は専門家ではございませんけれども、耳にしている話では、若干なりとも軽減されるというようなことで、評価はされるのではないかと思います。
    〔中川(正)委員長代理退席、委員長着席〕
桑原委員 江畑参考人にも、この点について簡単にひとつ御見解をお願いして、終わりたいと思います。
江畑参考人 まず最初の御質問ですけれども、これに関しては、アメリカのイラク攻撃、まあやるのはアメリカだけではないと思いますが、それとアフガニスタンにおける作戦とは全く別物です。
 アフガニスタンにおける作戦というのは、地上部隊の投入では、特殊作戦部隊が主でしたが、最大規模でも千五百人を超えたことはありませんでした。それに対して今度は、地上軍だけでも、イラクに対しては数十万の規模で投入されます。
 それから、これはことしの八月だったと思いますが、担当司令部を分けました。アフガニスタン作戦の担当は、これまではフロリダ州のタンパにあるCENTOCOMの司令官が、これは陸軍大将ですけれども、直接指揮をとって行っておりましたけれども、八月からは、その下に特殊作戦軍の司令官、空軍大将ですけれども、その司令官がアフガニスタン作戦を受け持つようになり、中東軍司令部はほとんど対イラク作戦の方向にシフトをいたしました。
 それで、御存じのとおり、九日からだと思いますが、これは指揮所演習ですけれども、カタールに、サウジアラビアのプリンス・スルタン空軍基地にかわる非常に大きな空軍施設、及び、あそこら辺の中東地域全体を指揮できる、CAOC、コンバインド・エア・オペレーションズ・センターといいますが、これの基地施設をつくりましたので、そこでの実戦テスト的な行動を行うという点から考えても、全く二つは別物と考えてよろしかろうと思います。
 それから、じゃ、日本のイージス艦がインド洋に行くと、間接的にせよイラク作戦に貢献するのではないかということになれば、それは、検証面で見れば確かにそうです。
 しかし、これは、アフガニスタン作戦のときにおいても、広い意味では対テロとの戦いでありますけれども、あそこで、例えばアラビア海において、ドイツ、イタリア、フランスあるいはイギリスの艦艇がやはりアメリカに協力をいたして、何をやっていたかというと、パキスタンやインド洋の方からソマリアあるいはイエメンの方に逃げるであろうと思われるアルカイダあるいは一部タリバンの船を捜索し臨検するということをやっていたわけですね。本来ならばアメリカは自分の船をそこに割かなければならなかったのを、イタリアやイギリス、フランスの船がやってくれたために、その部分、別の監視任務や何かにつけることができた。ただでさえ数が足りないところを、数がそうやって実質的にふえたということになります。
 同じことがイージス艦の派遣にも言えるわけで、それはイラク攻撃に投入できるアメリカの艦船がふえるということは間違いないと思いますが、我々は湾岸戦争のときに百三十億ドルの金を払って、だけれどもこれは軍事目的に使っちゃいかぬといっても、現ナマ払っておいてそれをどういう目的で使ってはいかぬかといったって、それはお札に一枚一枚これはこの目的でと書くわけではありませんので、結局玉突き的には軍備経費を軽減したということになるので、同じことだろうと私は思っております。
 以上です。
桑原委員 どうもありがとうございました。
池田委員長 次に、土田龍司君。
土田委員 自由党の土田龍司でございます。
 三人の参考人の皆さんには御苦労さまでございます。
 まず最初に、立山参考人と江畑参考人のお二人に同じ質問をさせていただきます。
 それは、九・一一の事件を契機としまして、アメリカはこれまでの抑止戦略を変更して先制攻撃をやるということにしたわけです。危ない兆候があれば積極的に先に攻撃するということをとったわけでございますけれども、このような国がアメリカだけでなくて次々とあらわれてくるということになれば、これまで伝統的な主権国家の関係をつくってきた基礎の上にある今の国際秩序がむしろ危うくなるのではないか、世界をむしろ不安定にさせるんじゃないかという懸念を私は持つわけでございますが、こういった先制攻撃容認論に対して、どのようにお考えでございましょうか。
立山参考人 まさに今土田先生がおっしゃいましたように、もし次々と、先制攻撃をやっても構わない、あるいはまた現実に先制攻撃をやるという国が出てきた場合には、それは世界の安定を極めて損なうものであり、安全が危機にさらされるということになるかと思います。
 ただ、一つの考え方として、考え方というか現状認識といたしまして、アメリカが先制攻撃をやるという議論の根底にありますのは、やはり今現在の状態においてはアメリカが圧倒的に世界で強いということが根底にあるわけでありまして、アメリカとは別の国が同じような先制攻撃をアメリカと同じような論理展開でやるということは、いい悪いは別の問題として、考えにくいかと思います。
 さらにもう一つ、これは私の一番最初の冒頭の発言でも申し上げましたけれども、もし脅威を除去するために武力攻撃を行うということであるとするならば、今まさに先生がおっしゃいましたような形での先制攻撃ではなく、たとえ先制攻撃であったとしても、国際社会における協調体制を維持してその脅威の除去に当たるということが大事かと思います。
江畑参考人 お答えいたします。
 まず、アメリカの、ことしの初めでしたか、出された国家安全保障戦略というところに、プリエンプティブ・ストライクと原語では書いてありますが、先制攻撃に関しては説明したところが二カ所あったと思います。
 今、ちょっと記憶ではっきり定かではありませんけれども、たしかページは原文における九ページと十五ページだったと思いますが、九ページの場合には、はっきりとテロ攻撃が予想される場合という形での、テロ攻撃との関連において記述されております。それに対して後半の、十五ページだったと思いますが、そのところですと、かなりそこは記述文面があいまいであって、単にテロ攻撃だけではなくて、アメリカの国家、国に対しての脅威が予想される場合には、相手がテロリストであろうがなかろうが、かなり幅広い範囲で先制攻撃ができるというように解釈できるような記述になっております。
 ただ、ここら辺に関して明確に論じた、あるいはディスカッションしたというのはアメリカあたりの資料では見られませんので、私には、それをどういうふうにアメリカ自身、政府及びアメリカの識者あるいは政治家が判断しているかということはよくわかりません。
 ただ、アメリカ政府は、事あるごとに二つの言い方をしております。まず、テロリストに対しては、それは国家でもないし、脅威が予想されるのだったら先制的に攻撃してもおかしくはないではないか。第二番目には、これはテロリストとは直接関係はない言い方ではありますけれども、脅威がある、それが来るのがわかっているにもかかわらず、それに対して軍事的手段を含めた防御をとらないというのはおかしいではないか、明確にわかっていながら。
 これは例としてアメリカが挙げているわけではありませんが、確かにこういう例があります。例えば、一九八一年にイスラエルはイラクのオシラク原子炉というものを、原子炉の燃料が運び込まれる前に爆撃してつぶしました。以後、今に至るもオシラク原子炉は復旧できておりませんが、これは、それがつくられれば、オシラク原子炉が完成すれば、そこからプルトニウムを抽出してイラクが核爆弾をつくる可能性があるからだとイスラエルは考え、まさに勝手に、独断的に攻撃してつぶしたわけですね。もちろん、それ以上のものではなかったわけですけれども。
 そのことを世界はどういうふうに評価するかという問題があるわけで、もちろん、一応世界は、そのときはごうごうと非難はしましたけれども、それ以後ぱたっとおさまってしまって、以後続いておりません。
 確かに、先制攻撃論というのは、十七世紀以来延々と続いている例のウェストファリア条約に基づく国家主権という問題で、ただし今回の場合には、テロリストというものは国家とはもし直接関係がないものであるならば、そのウェストファリア条約的な、国家同士の攻撃を受けた場合にのみ反撃が許されるという概念が適用できるものかということに関して言うならば、私も確かに疑問を持ちます。
 では、逆に言うならば、明確に、ある脅威が日本に向けて起きてくると予想できているにもかかわらず、攻撃されるまで待たねばならぬのか、それが世界の秩序なのかということに対しての回答も用意しておかなければならないというふうに思います。
 現在においても、確かに、この前のオーストラリアの首相が言ったことに対して東南アジア諸国はごうごうと反対をしておりますが、やはりこれは国際的に固まった価値観があるわけではありません。
 しかも、何をもって先制攻撃と言うかという話になりますと、いろいろ解釈の分かれるところで、昔のように一々宣戦布告をしてからやるのが先制攻撃ではないのか。そうすると、宣戦布告なしにやってもいいのか。そういうことでいうと、宣戦布告なしの攻撃であるならば、それは幾らでも例はあるわけで、そうすると、ここら辺の定義を明確にしない限りはなかなか難しいだろう、議論がかみ合わないだろうと思います。では、その定義をできるかというと、これも難しい。
 となると、これは私個人の予測ではありますけれども、今後の世界においては、イラク後であろうが、もう既にこの二十一世紀においては、基本的には必要とあれば、国家同士の戦いというのは国連の問題もありますからなかなか難しいですけれども、国家以外の、ないしは今のイラクのように全世界から非常に孤立的な状態にある国家も含めて、そういう状況が生じるならば、テロリスト及びそういう国家に対しては先制攻撃もあり得る状況が容認されてくる世界になるのではないかという気はいたします。
土田委員 江畑参考人にもう一度お尋ねするんですが、安保理決議に基づいて十二月八日、つまりあさって、いよいよ十分で完全な申告を行う期限が来るわけですね。そこでイラク側がどういった回答をするかというのはわかりませんが、大量破壊兵器は存在しないというような回答になるのではないかという報道を聞いております。事実とすれば八日以降、一気に緊張が高まってくるおそれがあるわけでございますが、また一方で、査察がイラク側の協力において順調に進んでいったということになれば、果たしてアメリカはどういったタイミングでオペレーションを仕掛けていくのかということですね。
 このタイミングについて、あるいは専門家のお立場として、いつごろから、どういった時期に始めるのか、この辺についてはどういうふうに考えておられますか。
江畑参考人 十二月八日が期限で、あすにでも出されると言われていますけれども、これは国連決議を読みますと、まず、原文は英語ですから、ア カレントリー アキュレート フル アンド コンプリート ディクラレーションというふうに言っているんですね。要するに、では、何をもってコンプリートかとか、あるいは何をもってアキュレートか、正しいのかというような定義が一切なされておりませんので、どうにでも難癖はつけられる。どんな報告を出そうとも、持っていましたと言ったところで、これはもうコンプリートじゃない、何か隠しているだろうと難癖がつけられるような内容で、どうして国連がこういう決議を許したというか、通ったのかも私は正直個人的にはよくわかりませんが、いずれにしろ、これの問題で、決してアメリカ及びそのほかの世界は満足することはないだろうと思います。
 では、問題はその後で、確かにそれで、これはおかしい、もうこれだけで決議違反だということになるわけですが、そこで選択肢は幾つも考えられまして、まず第一に、これを安保理事会に再び持っていって協議する。アメリカはそんな必要もないというような言い方をしているんですが、その協議が一体どのような形で行われるのかという点がまず注目されると思います。
 ただし、今の現状の国連査察は、一応一月の二十七日までに報告書を出す、したがって一月の中旬ごろまでは続けられるはずですので、その査察チームがいる間に攻撃するということが、これは現実において難しいんではなかろうかと思います。したがって、何らかの理由で、よほど説得性のある理由をもって査察を途中で中止して引き揚げろ、その後攻撃するというようなことでもない限り、いる間にいきなり攻撃するということはなかろう。
 それから、アメリカの軍事的対応ですけれども、まず、ことしいっぱいはできることならアメリカ自身もやりたくはない。まず第一番に、先ほども言いましたように、アル・ウディード基地につくりました、サウジアラビアのプリンス・スルタンにかわる中東全体を指揮するセンターの実用性が確認できるのは約二週間かかりますので、十二月の中旬以降になります。二十日過ぎごろになる。
 それから、航空母艦が、きのうですか、ハリー・トルーマンがアメリカの西海岸を出発いたしました。これが現場に着くまでに最低二週間、それから準備をかけて三週間かかります。恐らくこれは、もう既に六月からアメリカ本土を離れていますジョージ・ワシントンの航空母艦を中心にして五、六隻の護衛艦をつけた部隊、空母戦闘群、キャリア・バトル・グループといいますけれども、その部隊と交代するのではないかと考えられています。
 ただ、過去の例を見ますと、そのまま六カ月を超えても居座る可能性はある。そういうことであるのならば、この前、十二月の初めに香港にアメリカの空母キティーホークの部隊が休養のため入港して、その後出港して、どこへ行ったのか当然わかりませんけれども、ペルシャ湾方面だろう。これが到着するのがあと一週間ぐらいです。となりますと、十二月の末で五隻の空母部隊が整います。
 それから、十二月いっぱいで、オマーンに建設しています長さ四千六百メーターの飛行場がほぼ完成状態になります。そういうことを考えますと、ことしいっぱいは少なくともアメリカの方もやりたくはない。
 ただ、今でもやれる状態にはあります。アメリカはこの周辺に、恐らく数にして一千機以上の攻撃機、戦闘機だけでも配備しておりますし、それから湾岸戦争のときと違って陸軍部隊を急派する必要がない。というのは、向こうが打って出てくる可能性はまずないわけで、しかも湾岸戦争のときと違って、あそこに陸軍で一個師団以上、それから海兵隊で一個旅団以上の装備が事前備蓄されていますから、アメリカ本土から人間だけ運んでくれば四日から一週間でかなりの地上戦部隊を即実戦投入できる状態になっておりますから、そう急ぐ必要もない。どうせ航空作戦で始まりますから、これが最低でも一週間から二週間はかかります。
 となりますと、今でも始められる状況にはありますけれども、できることならそれは世界の世論を味方につけたいということであるならば、恐らくことしいっぱいはやらずに、その報告書を持ってまず国連に、こういう違反をしている、決議に従っていないということを申し上げ、次に、国連査察チームUNMOVICの活動が正常に必要なだけのことが行われていない、こんなことこれ以上やってもむだだから引き揚げろと言って、そして期限を区切って攻撃という、つまり一月からあるいは二月初めごろかというふうに考えております。
 それから、これは軍事的にはやはりできるだけ寒い方がよろしい。四月からハシムーンという熱砂が吹きますし、大量破壊兵器、特に化学生物兵器の使用という可能性も、非常に少ないとは思いますが、考えられますので、そうすると防護服を着用しなきゃならない。かなり防護服の性能はよくなってきたけれども、これでも二時間以上着用していると非常にきついですから。イラク軍の夜間戦闘能力が低いので、なるべく夜が長くてしかも寒い時期ということで、一月の末から二月ごろが可能性が高いかなと個人的には思っています。
 以上です。
土田委員 時間がなくなってしまいましたけれども、どうしても聞いておきたい内容がございましたので、軍事の専門家である江畑さんにもう一回お尋ねするんですが、過日、アメリカの下院議員と意見交換する機会があったんです。彼らと話してみますと、外交問題に詳しいし、軍事的なこと、軍事行動あるいは兵器の性能とか、この辺の知識が非常に豊富なんですね。
 どうも私たち日本の国会議員というのは、国内的な政治については相当詳しいし、日ごろ有権者とじかに接しているわけでございますけれども、事外交、特に軍事行動あるいは兵器の知識についてはそれほど詳しくないというふうに私自身は感じるんです。江畑先生が我々国会議員に求める、どのくらいの知識を持ってほしいとか、今のままでいいのかとか、この辺について御意見を聞きたいと思っているんですが。
江畑参考人 私のような者の意見を聞いてもらって、ありがとうございます。一国民、一納税者としてお話しさせていただきますと、非常に不満でございます。
 というのは、我々は、例えば防衛費でも、年間五兆円近い防衛費を払って、一人頭四万円、一家族で十六万円払っています。それがどう使われて、しかもそれが我々にとって役に立つものに使われているかということを、皆さん方がどれだけ我々納税者、国民のためにやっていたかというと、私は個人的に非常に不満でございまして、今のイージス艦の派遣論議にしても、正直これはなかなか難しい、データ交換とかそういうデータリンクは難しい話ですから、なかなか理解するのは難しいと思いますけれども、非常に空虚と言っていい、あらぬ方向と言っていい議論を延々国会でやってくださって、一日一億円ですか、二億円ですか、金を浪費されているのは、私は一納税者として非常に耐えられません。
 それから、イージス艦で、皆さん、どのくらいこれはお金がかかっているかわかりますか。一隻一千六百二十六億円。一億国民が、老若男女、子供まで全部含めて、一人頭一隻当たり千円、四隻で四千円以上払っているんですよ。それをどう使うかということはぜひちゃんと本当の意味から、そして、戦後長い間日本は、不幸だと思いますが、軍事というものを拒否、忌避してまいりました、見ないようにしてきた。見ないようでは済まない、現実にあるものですから、それは知った上でちゃんとした議論を、何がいいのかということを理解しないことには議論にならないと思います。
 私は、今一番の卑近な例で言えば、このイージス艦の派遣議論において、全く知識が、ちゃんとした知識を踏まえないでの議論だ、昔の冷戦時代のイデオロギーの議論にしかならぬのではないかというふうに、一国民、一納税者として非常に怒っております。済みません。
土田委員 もう二、三分時間がありますので、もう一度お尋ねしたいのは、これは立山先生にお尋ねしたいと思いますけれども、今回我々が議論している、あるいは国際世論というのは、どうしてもやはりアメリカ側から見た議論だというふうな気がするんですね。イラクから見た気持ちといいますか、感情といいますか、私はどうも、かつての日本を見るような、一部似たようなところがあるような気がするんです、満州事変から日華事変に始まって続いていった、リットン調査団が調査をした、こういったのを見ますと。
 イラクの国民の人たちは、とりわけ知識層はどういうふうに今回の事件を見ているんでしょうか。
立山参考人 イラクの国民が何を考えているかというのは表面には全く出てまいりません。ああいう特殊な体制をしいている国家でございますし、その世論というものは政府そのものが全部コントロールして、例えば反米デモが起きても、そのデモはほとんどは官製デモといいますか、やらせのデモであるわけですから、イラク国民が実際に何を考えているかということはよくわからないわけです。
 しかし、ですから想像でしかあり得ないわけですけれども、これは恐らくどこの国でもああいう状況に置かれたらそうなるんだろうと思いますけれども、二つの矛盾した状況があると思います。一つは、やはりもう早くサダム・フセイン体制は崩壊してほしいという願望、それと同時に、外国がやってきて、武力でもってサダム・フセイン体制を崩壊して、新しい政権を武力で押しつけていくことに対しては極めて強い反発を持つという、非常に矛盾していますけれども、同時にそういう気持ちがある。
 これは、アラブの世界全体にも、あるいはイスラム世界全体にも、あるいはほかの世界でもあるかと思いますが、イラクの場合は特に、この十年間、ずっとアメリカによって攻撃されているという認識を持っていますし、そういう宣伝が国内で行われていますから、アメリカによって政権がかえられるということに対する、ある種の期待と極めて強い反発とがあるかと思います。
土田委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
池田委員長 次に、松本善明君。
松本(善)委員 三人の参考人、御苦労さまでございます。
 アメリカのイラク攻撃が差し迫っているのではないかということとの関連でいろいろ、こういう参考人をお呼びして、伺っておるわけでございます。
 今、同僚委員の質問にもありましたように、先制攻撃論というのが問題になりました。これは国連憲章では、安保理事会で武力行使を決議した場合と自衛の場合以外には武力行使は認められない、これがもう明白になっている。そういう国際秩序が崩れるかもしれない、こういう危惧が全世界的に、今質問された方は私とは立場がかなり違いますけれども、全世界的に広がっている。
 それで、戦争、軍事力を行使するということになりますと、やはり大義があるかどうか、世界の国民がそれに納得するかどうか。これは、その戦争をやった場合にどういう影響と広がり、あるいはどういうふうに展開するかということに大きな関係があります。
 それで、あるいは三人の参考人が専門であるかどうかわかりませんが、この問題の一番焦点になりますのは、たびたび話が出ております国連安保理決議の一四四一であります。この一四四一については、アメリカの代表も隠された引き金も自動性も含まれていないということを、川口外務大臣はこの委員会で答弁をなさいました。それから、きょうお話が出ました一四四一の十三項の、義務違反が続けば重大な結果に直面をする、これは自動的な武力行使を認めたものとは解すことはできないと、本委員会でも西田総合政策局長が答弁をされました。
 この一四四一が全会一致で採択をされたというのは、私は、一つは、全世界の世論が平和解決のために努力をした。アラブ諸国、イスラム諸国、それからヨーロッパ、ロシア、あるいは中国、アメリカやイギリス、日本でも、平和の世論が大きなものになって、デモやその他が行われました。そういう中で、一つは、イラクに対して国連決議の実行を無条件で、そして無制限に受け入れよと。これは、私たちの党も代表団を派遣いたしまして、イラクに直接そういうふうに言って、そういうふうにしますという回答を得たものであります。シリアも最後に賛成をして、武力行使に直結するものでないということを確認してやったわけであります。
 そういうことで、武力行使がどういう形で行われるかによって、政治的な影響も経済的な影響も大きく変わってくるんだと思います。国連を中心にして、一四四一で問題が起これば、これは安保理事会が協議をするんだ、これは外務大臣も再々答弁をしていらっしゃいます。その結果で何かが起こるということであれば、これは国際社会が一致をして、イラクに対していろいろなことをやっていくということになろうかと思います。
 問題は、アメリカが安保理事会の決議なしに武力行使をするという場合のことを全世界の人たちが心配をし、また、この委員会でもいろいろな心配をし、そして与党の中でも、イージス艦の派遣に反対の意見があったり、それからイラク戦争に直結するようなことをやるべきでないということも、本委員会でそういうふうな議論もありました。
 それで、最初に前提としてお聞きをするわけでありますが、三人の参考人は、アメリカが安保理事会決議なしに武力行使をすることに賛成なのか反対なのか、そのことをまずお聞きしたいと思います。
畑中参考人 私の個人的意見でございますけれども、私は、やはり国連の安保理で協議をした上で武力行使をするならば、それを採択するというのが前提になるんではないかというふうに考えております。
立山参考人 私も全く個人的な意見ですけれども、あくまでも、もし武力行使をするということであれば、国連の場で新たな決議があって、国連の授権、マンデートがあってから軍事行動が行われるべきだと思います。
江畑参考人 それはアメリカ及び我々を含め世界にとってみれば、国連の場において再び協議された上で、何らかの具体的な解決策が見出し得るなら、それが一番理想だとは思いますが、現実に国連の場において、イラクのこの問題に関して、武力を行使しないで、具体的にして、また現実的な解決策が提示し得るのかの問題なんですね。
 それをしないままに、もう既に、先ほど申し上げましたように、一九九八年十二月から四年間にわたって世界は何もできなかったんです。だったら、ここで本当にこうすれば完全にイラクの問題は解決できるという明確な、現実的で具体的な方策が提示できればよし、さもなければ、アメリカが武力に訴えても、我々は、それは残念ながら日本を含めて世界の敗北ではありますけれども、アメリカの行動を容認せざるを得ないだろうと思います。
松本(善)委員 いろいろな御意見がありましょうが、やはり国際秩序が破壊をされるということは大問題であります。もし単独で武力行使をするということになりますと、その影響は非常に大きなものになるだろうと思います。
 まず立山参考人に伺いますが、立山参考人の書かれたもので、「イスラエルからみた「パレスチナ問題」」という論文がございます。そこでは、「二〇〇一年九月一一日の米同時多発テロ事件以後の米国主導による「テロとの闘い」が、イスラエルのシャロン政権が推進する力による鎮圧策に正当性を与え、政治的な解決をいっそう困難にしている。」ということを述べておられる部分がございます。
 テロに対する戦争で解決をするという形で、私どもの党は反対をいたしました。アメリカでも、あのときには、バーバラ・リーさんが下院では一人、反対をされた。けれども、バーバラ・リーさんは今度は八〇%の得票を得て当選をされましたし、それからそのときと比べるならば、民主党は三分の一反対をしている。
 アメリカの世論をどういうふうに見るかというのは、いろいろな見方があろうかと思いますけれども、アメリカが安保理決議なしに単独で武力行使をやるということになりますと、確かに圧倒的な軍事力を持っていますけれども、それは立山参考人がお書きになっておられるように、イスラエルとパレスチナ紛争の拡大、あるいは各地でのテロの拡大でありますとか、あるいは世界の世論の中でのアメリカの孤立とか、いろいろな問題が起こり得るだろうと思います。
 そういう場合の世界がどうなるだろうかということについて、立山参考人はどのようにお考えになっておるのでしょうか。
立山参考人 非常に難しい御質問でございますけれども、あくまでも大前提として、国連決議なしでアメリカが全く単独でイラクに対して武力行使を行った場合に世界はどうなるかという御質問というふうに理解してよろしゅうございますか。
 それに対するお答えでございますけれども、まず、恐らく各地で反米感情が高まり、特に中東・イスラム世界で反米感情が高まり、世界が極めて不安定になるということは事実かと思います。
 しかし同時に、イラクに対する武力攻撃が一つの完全な泥沼化現象のような形になって、イラクが全く不安定化し内部分裂を起こし、それが中東世界にさらに拡大をしていく、これは最悪のシナリオとしては考えられますけれども、そのシナリオの可能性というのは極めて薄い。むしろ、軍事作戦そのものはそれほど長期にわたらないと思いますし、イラクが分裂するということに関しては、周辺諸国がイラクの分裂を最も危惧しているわけですから、そのイラクの分裂を食いとめるために周辺諸国もあらゆる努力を行うということかと思いますので、サダム・フセイン体制が倒れて、その後、もちろん極めて良好な政権がすぐに誕生するといったことは私は一切考えておりませんけれども、決定的な世界に対しての不安定要因になる、あるいは世界が非常な困難に直面するということは想像しておりません。
 ただ、今のお答えは最初に申し上げた前提に基づいているわけですけれども、アメリカが全く単独で決議なしに軍事行動をするというケースもまた極めて考えにくいかと思っております。
松本(善)委員 アメリカが単独で安保理事会の決議なしに軍事行動をとらないということであれば、これはもうこんな議論は余り起こらないんです。参考人をお呼びするということもないんです。しかし、そのことをアメリカは、ブッシュ大統領を初め国連のモンテネグロ大使の決議後の発言でも、拘束されないんだ、こういうふうに言っているわけです。ですから、そのことを非常に心配しておる。
 それは、アフガン戦争でさえも、イスラエルとパレスチナの紛争を非常に拡大をいたしました。最悪の場合をやはり考えないでいるわけにはいかない。アメリカも率直に言ってどうなるかわからないでいると私は思います。アメリカの政権の中でもいろいろな意見があるというのはそういうことだと思います。
 最悪の場合はどういうふうになると思いますか、立山参考人。
立山参考人 イラクに対する戦争が始まった場合に、シナリオとしては三つ、通常考えられております。
 まず一つは、安定的な政権ができて、再建に向かってのプロセスを歩み始めるということです。二番目は、イラクでの戦争がある意味で泥沼化して、アメリカ軍に多くの被害が出て、その中でアメリカ軍は完全な収拾がつかないまま撤退せざるを得ず、イラクが混乱のまま放置されるということです。それから三番目は、むしろ、例えばイラクがイスラエルに対してミサイル攻撃を行う等で戦争が極めて拡大をして、中東全体まではいかないにしろ、イラク周辺地域が戦争に、あるいは戦渦に巻き込まれていくという、この三つのケースが考えられております。
 それで、今の御質問でいいますと、最悪のケースというのは第三番目のケースでありまして、イラクがイスラエルに対してミサイル攻撃を行う、それに対してイスラエルが反撃をするといったような形で、イラクでの戦争がある意味で収拾がつかないような形で拡大をしていくというのが一番心配されるケースかと思います。
松本(善)委員 畑中参考人に伺います。
 先ほど、石油の事情について、OECD諸国の政府備蓄でありますとかサウジアラビアの給油がなくなった場合とか、いろいろ述べられました。今言いましたような最悪の事態が起こった場合に、これは言うならばイラク戦争が長期にわたって、今立山参考人がおっしゃったように近隣産油国にまで戦火が及ぶというようなことになった場合に、世界の石油事情はどういうことになるんでしょうか。それからまた、我が国に対する中東からの石油の供給というのは八七%だということでございますが、我が国の経済に対する影響はどういうことになるんでしょうか。
畑中参考人 今の御質問は恐らく、戦火が拡大して、アラビア湾岸のサウジアラビアですとかクウェート等からの石油の出荷がある程度できなくなるという御質問ではなかろうかと思いますけれども、その場合には恐らく、先ほどの資料の三ページにも、下の方にOECDの政府備蓄、あるいは上の方にOPECの余剰生産能力というのを示してございますけれども、この中でアラビア湾岸におけるOPECの余剰生産能力が奪われることになりますので、そこがなくなるということです。
 ただ、一定期間を置けば、アラビア湾岸以外のOPEC諸国の余剰生産能力がございますということに加えて、ここには書いてございませんけれども、OPEC以外のロシアですとか、いわゆる一般的に非OPECと言われている国々の余剰の生産能力もございます。それに加えて、OECD諸国の政府備蓄十二億五千二百万バレルが、これを仮に全部使ってしまおうということで一年間で取り崩せば、これは一日当たり三百四十万バレルぐらいの石油が世の中に出てくることになりますので、最終的には、一年ということであるならば、このOECD諸国の政府の備蓄の取り崩しですとか、あるいはアラビア湾岸以外のOPECが持っている余剰の生産能力の活用、さらにはOPEC以外のロシア等が持っております生産能力の拡大によって、需給については対処は可能だと思います。
 ただ、価格については、数量では足りておりましても、恐らくこれはその心理的な影響が出てまいりますので、現状の二十五ドルからやはり相当高くなりまして、三十ドル台の中ごろから、あるいはそれより高くなるようなことが予想されるんじゃないかと思います。
松本(善)委員 一年以内で終わればそういうことというお話は先ほどもありましたけれども、アフガニスタン戦争ももっと早く終わるというつもりでいたんでしょうけれども、日本のテロ支援体制も延長するということになった、むしろ強化をするということであります。これが一年で終わるという保証もありません。もっと長期化した場合はどういうことになりますか。予測がつきませんか。
畑中参考人 恐らく、一年超ということになりますと、日本を含めた主要先進国における省エネルギーといいましょうか、石油の消費を例えば五%とか一〇%とか削減する、そのような新たな政令をつくりまして、我々が利用できる、供給がある数量に合わせた形で需要を抑えていく、抑制していくという政策をとることになると思います。
松本(善)委員 江畑参考人に伺いますが、先ほどオウム真理教の話をされて、ああいうふうなテロも広がる可能性があるということを言われました。イラク戦争が最悪の場合になるということになりますと、日本でもそういうことが予想されるということになるんでしょうか。
 私は、先ほどの江畑参考人のお話では結論的に、参考人は認められるかどうかわかりませんが、テロを軍事力でなくすことはできない、このことを結果的に認められていることではないだろうかと。イラク戦争が長期化した場合には、テロが全世界に拡大したり、そしていわば報復戦争とテロの悪循環というようなことにならないという保証があるでしょうか。伺いたいと思います。
江畑参考人 まず、イラク戦争が最悪になった場合、日本でもオウム真理教のようなテロが起こるかということは、別にイラク戦争とは関係なく、先ほど申し上げましたけれども、世界が変わっていろいろな価値観を持つ人間がいる、その中に過激な行動に移る人間も多い。
 しかも、かつてはせいぜいそれが刃物を振り回すとかあるいは小さな爆弾だったのが、非常に強力な爆弾に、あるいは大量破壊兵器と呼ばれるものもつくれるような技術の普及というものがあった。それが、あの去年の九月十一日の後の十月に起こりましたアメリカの炭疽菌テロ事件のように、ある一つの混乱に乗じて別の形でのテロ攻撃を行う人間も出てくる。
 したがって、イラク攻撃が行われれば、そこの混乱に乗じて、イラクとは直接関係なくても何らかの行動を起こす人間やグループがあっても不思議ではないだろうと思います。しかし、これは別にイラク攻撃をしたからどうこうというものではなくて、ほかのところでも似たような、何かの混乱が起こったら当然のことに起こるものだと思います。それは、今後の世界の一つの典型なものです。
 それで、二番目の御質問ですが、では、軍事力でテロは壊滅できない。それはそうです。何事でも軍事力ですべては解決はできません。
 というのは、例えば冷戦時代には抑止力という概念が基本的でございました。これは、お互いの国家同士が軍事力を持つことによって、互いに攻撃すればそれ相当の被害をこうむる。したがって、無理難題を押しつけたり軍事的な攻撃に移ることをしないということです。ところが、テロリズムはそれに対して全く対応できなかったわけですね。
 しかし、向こうは、テロリストは、ある意味では軍事力、つまり武力をもって攻撃してくるわけで、では、これに対してまず第一にいかなる方法で防ぐかです。もちろん、その根絶をしなければならないということはありますけれども、目の前にテロリストが武器を持って迫ってきているのに、それに対して何にもしないでただやられるだけかと。つまり、これに対する我々の回答は今のところ軍事力しかないと私は思います。
 以上です。
松本(善)委員 これで終わりますが、私どもは、軍事力ではなくて国際世論で、テロを、国際犯罪を、国際世論の包囲の中でテロ組織が一切存在できないような、そういう状態をつくることが大事だと考えているということを申し上げて、終わります。
池田委員長 次に、東門美津子さん。
東門委員 社会民主党の東門美津子でございます。
 先生方には、きょうは本当に朝早くからありがとうございます。この委員会、委員の数もかなり減っておりますが、あと二十分、私の持ち時間ですので、よろしくお願いいたします。
 テーマが決められて参考人の方々ととなると、最後はもう質問がほとんど出尽くしているという感じで、とても困っております。でも、やはり頑張らなきゃいけないと思っています。
 まず最初に江畑先生にお伺いしたいんですが、実は私、出身地が沖縄でございます。九・一一直後の沖縄、お聞き及びだと思いますが、米軍基地が余りにも大きく、県内、本島じゅうありますので、基地の周辺が本当に厳戒態勢、そういう状況がございました。その中で、県民は本当に不安と恐怖の中でしばらく生活をいたしました。
 ちょうどこの間バリ島でのテロがありましたけれども、観光客が激減をする。それはやはり、沖縄へ行くと危険だということがずっと広まったということ。実際私もそのとき、帰りまして基地の周辺を見て回りました。私は戦争そのものを体験はしていませんが、しかし、先輩の方々からお話を聞き、あるいは追体験の中でこうだったのだろうと思わせるようなひどい状況でした。
 そういう中で、まだ何も起こってはいないんですが、もし米国がイラクへの攻撃をするということになった場合、米軍基地を抱える沖縄から海兵隊あるいは駐留している軍隊がそこに行くということもあるのかどうか。それが一点。
 もう一点は、いわゆる米軍基地があります、本当に四軍全部ありますから、テロのターゲットにもなりかねないというのが前回の九・一一後の県民の不安だったんですが、その件について、まず先生の御見解からお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
江畑参考人 まず最初の御質問ですが、沖縄のアメリカ軍部隊がイラク攻撃に参加するのか。します。
 それは、アメリカ軍というのはそういうものでございまして、在日米軍は日本を守るためだけの傭兵部隊ではございません。既に現時点においても、三沢のF16戦闘機と嘉手納のF15戦闘機は、オペレーションサザンウオッチといいますか、イラクの南部飛行禁止区域の警戒のためにローテーションで配備されております。一九九〇年八月二日の湾岸危機のときには、真っ先にあそこへ飛んでいったのは嘉手納基地のAWACSであった。
 言うまでもないことですが、アメリカというのは全世界を相手にしている国で、その一つの手段として米軍というのがあって、全世界を相手にしている。在韓米軍というのは非常に特異なもので、これは韓国防衛のための、いわゆる人質部隊ですから。人質という言い方は正しいかどうかわかりませんけれども、彼らの言い方、トリップワイヤーという言い方をしていますが、それを除けば、世界のあらゆるところにいる米軍は、基本的にアメリカの世界戦略及び国連に協力する場合には国連の指示において動く部隊であって、そういう国と我々は日米安保条約というものを取り交わしておるということであるならば、アメリカ軍とはそういうものだということを理解した上でつき合うべきものであって、それを、行っちゃいかぬとか、行くのはおかしいとか言うということは、それはアメリカにとってみれば全然不本意なものだろうと思います。それがだめなら、逆に日米安保条約の内容そのものを変えるとか、あるいは解消するとかという方法を考えるべきだ。
 それから二番目に、アメリカ軍基地がターゲットになるのか。なります。
 当然、イラク戦争が始まれば厳戒態勢がとられるだろうと思います。同じことで、先ほども言いましたように、そういう混乱に乗じて、日本でも、イラクとは関係なくても何らかの攻撃をする組織や人間というものが出る可能性というのは必ずありますので、それに対しては、自衛隊ももちろんのことながら、警察、日本全体がやはりある程度警戒するという、世界がそういう動きになっているということからするならば、警戒する必要があると思います。
 例えば、これは非難するつもりはないんですが、きょう私はここへ自分の車で参りましたけれども、国会の敷地内に入るのに、車の中及びあれは全く検査されませんでした。非常に日本は今幸せな国だと思います。私はこれは非難するつもりはないんですよ。今のところ非常に治安がいいということで、それまで非難する必要ないんですが、アメリカは年がら年じゅう、特に九月十一日以後は、どこの施設に入るのでも厳重な、車の下からトランクから全部あけてやる。そうやらねばならない。それは私なんかにとってみれば非常に不幸な国だろうと思いますが、アメリカというのはそういう国です。
 そういう国と我々はつき合っていくということはどういうつき合い方をするかということを、我々は自分の腹で決めて考えていかねばならないものだろうと思います。
 以上です。
東門委員 ありがとうございました。
 やはり江畑参考人に続けてお伺いいたしますが、アメリカが対イラク攻撃も辞さない方針である理由としてよく挙げているのが、イラクがミサイルや核兵器あるいは生物化学兵器などの大量破壊兵器を開発、保有しており、その一部がテロ組織に渡る可能性が高いということですよね。それからまた、フセイン政権とアルカイダとの関係も指摘しているわけです。
 しかし、イラクの脅威については、米国のCIAは、今のところ大量破壊兵器で米国をテロ攻撃する考えはないと見られると、議会に対する報告書で述べておりまして、また、アメリカ国際安全保障科学研究所のデービッド・オルブライト所長も、査察強化でイラクの脅威は封じ込め可能であると主張しておられます。
 現在査察が進行中であり、具体的なことは査察の結果を待たなければならないわけですが、参考人は、イラクがどの程度の大量破壊兵器を保有し、あるいは研究開発していると考えておられるか、お伺いしたいと思います。また、査察強化でイラクの脅威は封じ込め可能であるとする意見についてどのようにお考えかもお聞かせいただきたいと思います。
江畑参考人 二つ御質問をいただきました。
 まず、CIA報告書に見られるように、イラクがどのくらいの大量破壊兵器を持って、ないしは研究開発に努めているかということですが、現在の規模はわかりません。
 それは、一九九八年十二月をもって国連の査察チームが一切入れない、それから四年間は全くわかっておりません。もちろん、アメリカやイギリスなどはいろいろな情報収集手段、外部から例えば偵察衛星とか電子的な情報収集、あるいは内部のスパイとか内部の通告者、そういうものを使って情報を集めるということであろうと思いますが、それは当然のことながら、インテリジェンスの世界に共通の話として一切外には出てきません。どこをどれだけ知っているかということ自体が秘密です。したがって、我々はわかり得ない。
 したがって、我々が推測できるのは、一九九八年十二月までの国連の査察の報告及びそれまでにイラクがどういうことをしてきたかということから推測する以外に、ほかに客観的にそれを推測する手がかりはないわけですね。
 それをしますと、例えば、一九九五年にIAEAが国連に出した報告書によれば、イラクが湾岸戦争のときに核兵器保有まであと半年ぐらいの段階にあったと。現実に映像においても、例えばカルトロンと呼ばれているウラン濃縮施設や何かもありましたから、それを国連チームは破壊しましたけれども、彼らが少なくとも核兵器の開発を目指していろいろやってきたことは事実だろうと思います。
 というのは、特にこのカルトロンというものは、核兵器のための濃縮ウランをつくる以外には何の役にも立ちません。これで民間用の発電用原子炉のためのウラン濃縮をやっていたのでは、それにかかる電力の方がはるかに多くてばかばかしくてやっていられないという代物で、これは核兵器に使うこと以外を考えたとは考えられない。
 それから、化学兵器については今さら言うまでもないと思います。イラン・イラク戦争のときに使いましたし、クルド族の村のハラブジャに対して一九八八年に神経ガスを使って攻撃している。これも映像その他で確認されていますから間違いない。
 そして、生物兵器。これは一九八〇年代の末にやめたとイラクは申告しましたが、その後徐々に出てまいりまして、特に一九九五年でしたか、カメル氏だと思いますが、フセイン大統領の親類の方がヨルダンに亡命して、そこでかなりの、彼は湾岸戦争当時、工業産業省の大臣を務めていてその実態を知る立場にあったものですから、相当詳しいことがわかった。イラクもある程度はそれを認めて、やはり生物兵器に関して相当のことをやってきたということは、客観的に見て、国連の報告書を信用しないなら話は別ですが、間違いないだろう。
 それ以外にも、アメリカあたりからいろいろ情報は流されています。最近では、例えばイギリスの政府の出した報告書によれば、生物兵器を生産する施設をトラックのバンに入れて、それで移動しながらつくっているんだというようなこと。これは映像では、もちろん私なんか客観的には確認できておりません。ですから、そういうのはそのまま信じるわけではなくて、そういう情報もあるなということしか言いようがありません。
 以上のようないろいろな点を考えますと、イラクがいまだに大量破壊兵器を持っていること、国連の査察によっても行方不明のものがかなりありますから、例えばスカッドミサイルでも二十八発分が行方不明とか、培養菌、培養液が五千トン分わからぬとかというようなことがありますので、あっても不思議ではないし、サダム・フセイン政権のこれまでの軍事力の強化政策から見るならば、恐らくやっていて全く不思議ではなかろうというふうな疑惑を持たざるを得ない条件が整っております。
 それから、査察によってWMDが完全に封鎖できるかということになると、これは極めて難しい、結論からいうと不可能です。なぜかというと、生物化学兵器に関しては、多くがいわゆるデュアルユーステクノロジーといいますか、民需製品をつくる技術とほとんど同じものです。
 お手元のお配りした資料の中にも、疑惑とされているタルミヤの化学工場の写真や何かがありますけれども、こういう民間工場なんかというと、どこまで査察が、まあ今回の場合に関しては、一四四一の決議によって、あらゆるところに無条件で査察できるということにはなっていますけれども、これを永久に続けるわけにはいかない。ましてや民間企業ということ。
 それから、今プレジデンシャルパレスの査察が問題になっていますけれども、これはどういう意味で言っているか知りませんが、聖域だと言っておる。これが少なくとも八カ所ある。そういうところに常時監視して査察ができるかというと、能力的にも不可能です。ちなみに、UNSCOMの時代に、国連の査察チームのピークで百五十人を超えませんでした。それで日本よりも二割以上広いところを調べ回るというのは、物理的に無理な話なんです。
 となると、これはある意味では外部からの今のような査察方式だけでは懸念を払拭することはできませんし、もちろん、イラクがテロリストと直接的に結びついているという証拠というのは、我々は世界の中で提示されたのを見たことはございませんが、しかし、このような大量破壊兵器をつくろうとしていた国、そして今でも持っているかもしれないという国から、それが何らかのルートでテロリストに流れるという危険性、可能性そのものは否定できないだろうと思います。
 これに対して、我々は、軍事攻撃によるところの完全な、アメリカの言葉でいうとディスアーマメントですが、武装解除以外にどのような安心できる方法があるかということを具体的に考え出して、これだったらいいではないかということを訴えて、世界がそれを支持するならそうするべきだと思いますが、私が知る限り、今現在、世界はそのような武力行使にかわる具体的にして有効な方法を見出し得ないだろう、得ない状態ではないかと思います。
 以上です。
東門委員 立山参考人にお伺いしたいと思いますが、参考人の「治安フォーラム」二〇〇二年一月号の論文を読みました。
 「同時多発テロ事件が明らかにしたことの一つは、米国だけに限らず、日本を含む非イスラム世界中でいかに「イスラム脅威論」が蔓延しているかという事実であり、テロそのものがイスラムの教えに起因しているといった誤った認識の存在だ。」と指摘されておられます。さらに、「米国にとってこれからの長期的な課題は、イラン革命以降、自縄自縛的な状況を呈している「イスラム脅威論」から自らを解放することだ」と述べておられます。
 参考人のおっしゃるイスラム脅威論とはどのようなものか、国民の誤解を解くという観点から簡単に御説明いただけたらと思うと同時に、イスラム脅威論からの解放には何が必要であるか、お聞かせいただけたらと思います。
立山参考人 イスラム脅威論というのは、つまり、イスラムそのものが、イスラムという宗教そのものがテロを起こす、あるいは国際的な秩序あるいは規範に対して障害を加えるといったような考え方がイスラム脅威論ということかと思いますし、あるいは、そこまでいかないにしても、もうちょっと手前として、イスラムはさまざまな問題を引き起こす、国際的な秩序を不安定化させる要因になり得るといったようなことかと思います。
 しかし、現実に世界にはイスラム教徒というのは十二億人とか十五億人とかいうふうに言われているわけでありまして、その人たち全員がもし脅威であるならば世界はもっと不安定になっているはずでありますので、イスラムそのものが脅威ではなくて、イスラム教徒、それはイスラム教徒だけではございませんけれども、イスラム教徒の中でもやはり過激派がいて、さらにその一部はさらに過激で、テロを起こす。それはまた別の理由、別の思想、イデオロギーがあるかと思います。
 ですから、今アメリカがイスラム脅威論を起こしている、もちろんアメリカの中でもさまざまな見方があるわけでございますけれども、例えば、今アメリカの右派を支えているキリスト教右派のグループの一部には、イスラムそのものが世界に危険をもたらす宗教であるということで、宗教が宗教を批判するといいますか、そのような状態になっているわけですね。
 これが政治の場に持ち込まれていきますと、私自身は文明の衝突論というのはとっておりませんけれども、むしろ、本来政治的な争いであったはずが宗教的な争いになって、さらに解決が不可能になってしまうということを危惧しているわけです。
東門委員 時間がかなり迫ってまいりましたので、畑中参考人にお伺いします。
 「中東研究」、これは二〇〇一年、二〇〇二年の第二巻ですね。そこにおける特集でしたけれども、「二〇一〇年までの中東地域の最悪のシナリオ・最善のシナリオ」を読ませていただきました。
 その中で、今後の日本の中東地域とのかかわりについて述べておられますが、特にテロとの対決ということについて、「我々が今しようとしているのは、短期的、外科的な手術だと思う。米国は外科が得意だが、外科的な手術をすればテロがなくなるかというとそうではなくて、テロの温床、土壌、つまり経済的な不公平感は残っている。テロの土壌、温床を変える、思想的、宗教的な呼びかけに呼応する人が生まれにくい経済的な体質をつくっていくという内科療法が必要だ」と主張しておられるわけです。
 先ほど同僚委員からもちょっとあったと思うんですが、テロを撲滅するためには、まさに参考人が主張される内科療法が必要だと私も共感いたします。では、具体的にどのようなことが必要で、そのために我が国はどのようなことをなし得ると考えておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
畑中参考人 その内科療法についてですけれども、昨年の九月十一日の同時多発テロ事件ですが、十九人の容疑者のうち十五人がサウジ人と言われております。その十五人のサウジ人の出身地域を見ますと、サウジアラビアの中でも一番南の西の方、南西部でございまして、イエメンとの国境地域でございます。サウジアラビアという国は石油収入を使って比較的豊かな国でございますが、その国の中でも比較的辺境地で、開発がおくれている地域でございました。そういうことからも考えまして、やはり、イスラムの過激な思想に共鳴する人たちの多くが、国内における経済的な諸問題に対する憤りというものを持っているということがあると思います。
 どういうことが問題になっているかといいますと、中東のイスラム諸国に限定してお話をいたしますと、今、二十歳未満が大体国民の五〇%ぐらいです。それから国民の七〇%が大体三十歳未満です。つまり、若い人が相当ふえているんですけれども、その若い人がふえているにつれて、経済が拡大していないものですから働くところがないということで、失業者が多いんですね。それと同時に、やはり農村部、地方部になかなか開発の手が届かないということで、若い人が都会に出てきておりまして、都市に住む人がふえてきておる。都市の人口がふえているものですから、日本でいうところのライフライン、つまり電気とか水道とか通信とか、もう少し広げた公共サービスであるところの病院ですとか学校が足りないんですね。
 そういうことから、かなり不満が蔓延しているということでございますので、内科的療法という場合には、これらの国がそのような状態、つまり雇用を拡大できたりとか、あるいは必要とされる社会インフラを再度整備できるような状況に持っていくための資金を供与するですとか、あるいは雇用をするための教育あるいは職業訓練を付与するとか、そうしたことが考えられるんじゃないかと思います。
東門委員 まだまだお聞きしたいことがたくさんございますが、時間が来たようですので終わります。きょうは本当にありがとうございました。
池田委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して、厚く御礼を申し上げます。
     ――――◇―――――
池田委員長 次に、理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員になっております。この際、その補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名することに御異議はございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
池田委員長 御異議はないと認めます。よって、そのように決定いたしました。
 それでは、理事に藤島正之君を指名いたします。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時十四分散会


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