衆議院

メインへスキップ



第11号 平成14年12月11日(水曜日)

会議録本文へ
平成十四年十二月十一日(水曜日)
    午前九時二分開議
 出席委員
   委員長 池田 元久君
   理事 今村 雅弘君 理事 嘉数 知賢君
   理事 河野 太郎君 理事 水野 賢一君
   理事 首藤 信彦君 理事 中川 正春君
   理事 上田  勇君
      伊藤 公介君    植竹 繁雄君
      高村 正彦君    下地 幹郎君
      新藤 義孝君    武部  勤君
      谷本 龍哉君    土屋 品子君
      松宮  勲君    宮澤 洋一君
      伊藤 英成君    金子善次郎君
      桑原  豊君    前田 雄吉君
      吉田 公一君    丸谷 佳織君
      達増 拓也君    松本 善明君
      東門美津子君    小池百合子君
      鹿野 道彦君    柿澤 弘治君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   外務副大臣        茂木 敏充君
   外務大臣政務官      新藤 義孝君
   外務大臣政務官      土屋 品子君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  村田 保史君
   政府参考人
   (警察庁刑事局長)    栗本 英雄君
   政府参考人
   (警察庁警備局長)    奥村萬壽雄君
   政府参考人
   (防衛庁防衛局長)    守屋 武昌君
   政府参考人
   (防衛庁運用局長)    西川 徹矢君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君
   政府参考人
   (法務省入国管理局長)  増田 暢也君
   政府参考人
   (外務省大臣官房長)   北島 信一君
   政府参考人
   (外務省大臣官房領事移住
   部長)          小野 正昭君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局長
   )            西田 恒夫君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            田中  均君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    海老原 紳君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局長
   )            安藤 裕康君
   政府参考人
   (外務省条約局長)    林  景一君
   政府参考人
   (国土交通省大臣官房技術
   審議官)         白取 健治君
   外務委員会専門員     辻本  甫君
    ―――――――――――――
委員の異動
十二月十一日
 辞任         補欠選任
  中本 太衛君     谷本 龍哉君
  藤島 正之君     達増 拓也君
  松浪健四郎君     小池百合子君
同日
 辞任         補欠選任
  谷本 龍哉君     中本 太衛君
  達増 拓也君     藤島 正之君
  小池百合子君     松浪健四郎君
同日
 理事藤島正之君同日委員辞任につき、その補欠として藤島正之君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
十二月九日
 核兵器廃絶条約の締結に関する請願(粟屋敏信君紹介)(第一〇九七号)
 同(佐藤公治君紹介)(第一二四一号)
 同(金子哲夫君紹介)(第一三六〇号)
 同(斉藤鉄夫君紹介)(第一三六一号)
 同(中林よし子君紹介)(第一三六二号)
 同(山田敏雅君紹介)(第一三六三号)
 アメリカのイラクへの攻撃反対に関する請願(川田悦子君紹介)(第一三五三号)
 女子差別撤廃条約選択議定書の批准に関する請願(石井郁子君紹介)(第一三五四号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第一三五五号)
 同(中林よし子君紹介)(第一三五六号)
 同(藤木洋子君紹介)(第一三五七号)
 日本から米軍基地をなくすことに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一三五八号)
 同(東門美津子君紹介)(第一三五九号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の補欠選任
 政府参考人出頭要求に関する件
 国際情勢に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
池田委員長 これより会議を開きます。
 国際情勢に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長北島信一君、同じく大臣官房領事移住部長小野正昭君、同じく総合外交政策局長西田恒夫君、同じくアジア大洋州局長田中均君、同じく北米局長海老原紳君、同じく中東アフリカ局長安藤裕康君、同じく条約局長林景一君、内閣官房内閣審議官村田保史君、警察庁刑事局長栗本英雄君、同じく警備局長奥村萬壽雄君、防衛庁防衛局長守屋武昌君、同じく運用局長西川徹矢君、法務省刑事局長樋渡利秋君、同じく入国管理局長増田暢也君、国土交通省大臣官房技術審議官白取健治君、それぞれの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議はございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
池田委員長 御異議はないと認めます。よって、そのように決定いたしました。
    ―――――――――――――
池田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。今村雅弘君。
今村委員 おはようございます。
 今国会もいよいよ終盤になってまいりました。やっと質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。また、委員会の運営に皆様方御協力をいただきまして、心より御礼申し上げます。
 さて、本委員会でも、今回は北朝鮮あるいはイラク問題、いろいろあったわけでございます。比較的スムーズに運営できたと思っておりますが、その中で一つだけ、十一月二十日の参考人招致の件でいろいろあったことは御案内のとおりでございます。この件でちょっといろいろ聞きたいことがございます。
 御案内のように、参考人招致でもめたのは幾つかございますが、その中に、青山健熙さんという方をお呼びするということで決めておって、それが、その後いろいろ調べてみると、どうも呼ぶのはまずいのではないかという判断に至って、私たちもこれについていろいろ討議を重ねてきたところでございます。
 それで、私もいろいろ調べてみました。そして、この著書がありまして、「北朝鮮という悪魔」ですね、これは青山健熙さんの作で、値段が千五百円プラス税金、千五百七十五円ということでございますが、これも買ってみたわけでございます。そうしますと、ちょっとどうかなという不審な点が幾つかあったわけでございまして、そういったことも含めて、これは呼ぶのはまずいという判断に至ったわけでございます。
 その中で、お手元に資料を配ってあるかと思いますが、この最後にこういうくだりがございます。米印をしておりますが、「安世明は私に闇ルートでパスポートを作ってくれた。」これは月刊現代十一月号にも同じような記述がございます。
 堂々と本人がこういうことを書かれて、著書にも出ている、こういうことが許されるのかどうか。これについて、警察当局あるいは法務当局はどういうお考えでおられるのか、対応をお聞きしたいと思います。
増田政府参考人 個別案件への対応につきましてはお答えを差し控えさせていただきますが、一般論で申し上げますと、有効な旅券を所持せずに本邦に不法入国した疑いがあれば、所要の調査を行うこととなります。
今村委員 それでは、所要の調査をきちっとやってください。
 それから、この小説をいろいろ見ていますと、幾つかあります。中身的にはいろいろ小説風に書いてありまして、北朝鮮の中で行われてきたことは私たちも検証のしようがございません。しかし、私も知る限りでこれを調べてみた結果、幾つかあるわけでございますが、それをこの資料にまとめてみたわけでございます。
 例えば、百三十四ページに、百八ミリ曲射砲云々というくだりが、第一ページ目にあるわけでございます。これは、二ページにもありますように、自衛隊、もう古い大砲でございますが、これも百五ミリということで、ほぼ百八ミリと同じようなものでございますが、重さが二千三百キログラム、二・三トンですか、とてもこれを人力で動かすとか斜面に持ち上げるとか、日露戦争、二百三高地でもこんな話は聞いたことがありません。こういうことが平然と語られている。
 そしてまた、三百十九ページでございますが、青色レーザー探知機による潜水艦等の探知といったくだりもございます。これも、防衛庁に聞いても、こんな話は聞いたことがないということであります。
 また、きわめつけは、新幹線のレールについて記述がございます。これについて、私も昔鉄道マンでありましたから少しは知っているつもりでございますが、ロングレールは、特に新幹線レールは、コンクリートまくら木にびちっとボルトでもって強力に締結して、そしてこの伸縮を防ぐということになっていたはずであります。
 これについて私の見解が間違いであるのか正しいのか、この本がうそを書いているのか、これについて意見を求めたいと思います。
白取政府参考人 新幹線のロングレールにつきましては、通常在来線で使われているレールと全く同じ成分でございまして、先生おっしゃるとおり、膨張につきましては、締結装置で強く押さえることによってそれをとめておりまして、特に特殊な金属を使っているという事実はございません。
今村委員 要するに、これは明らかにうそを書いてあるということであります。
 そのほかにも、潜水艦のスクリューの加工技術、これは東芝機械がかつてたしかココムの違反ということでしかられたといいますか、問題になった事案がございますが、それについても動力伝達軸ということの間違いがあったり、あるいはウラン濃縮についても、ウラン238と235を勘違い、あるいはそのつくり方についても誤った記述があるわけでございまして、要するに、こういったことが種々うそだということがわかってきますと、北朝鮮での活動歴も、これは本当なのかなという疑問を持たざるを得ないわけでございます。
 なぜこういう人物を天下の公器であるマスコミ、テレビ等で大々的に大きく扱うのか、私は、これについて大変不審でなりません、理解できません。
 また一方で、某政党の集会では、こういった方を呼んで、そして神妙な顔をして聞いておられた、これはまさにこっけい千万と言わざるを得ないわけでございます。
 しかしながら、当委員会では、委員部の周到なる対応と理事懇等による真剣な討議の末に、この招致を中止し、当委員会そして委員長の尊厳と名誉を守ったわけであります。
 しかるに、委員長は委員部に対して、中立性に疑義が生じたということで遺憾の意を表され、関係者を厳しく注意されました。これこそまさに遺憾であって、発言の取り消し、もしくは議事録不掲載、削除を求めるものであります。この件につきましては、引き続き理事会で協議されるようお願いしておきます。
 さて、質問に入ります。
 先般、アーミテージ国務副長官が来日されて、外務大臣初め政府要人と会談を持たれたようでございます。テレビで見ますと、大きな体を揺すって、大変御満悦の様子であったように受け取りました。特に、イージス艦の派遣について極めて高い評価をされていたように思ったわけでございますが、この会談の内容あるいは意義について、要点をお話ししていただきたいと思います。
川口国務大臣 アーミテージ米国務副長官でございますが、十二月の九日、ほぼ丸一日、前の日に来て次の朝立ったということですが、日本にいまして、小泉総理、福田官房長官その他の人に会い、私もお会いいたしました。それで、主に、テロとの闘い、イラク、北朝鮮の問題について意見交換をいたしました。
 テロとの闘いにつきましては、先方から、日本政府がテロとの闘いの一環としてイージス艦の派遣を決めたということについて高い評価がございました。
 それから、イラクでございますが、イラクが大量破壊兵器を廃棄して関連の安保理決議を守っていく、これを確保するためには、国際社会が協調をして、団結をして対応していかなければいけない、そして日米両国が緊密に連携をとらなければいけないということを確認いたしました。
 北朝鮮に対しましては、北朝鮮が濃縮ウランの開発プログラムの即時かつ検証可能な形での廃棄をするということを強く求めていくことが重要であって、この問題の平和的な解決のために日米が緊密に連携をとっていくことが重要であるということ、これにつきましても確認をいたしました。
 日米が連携をしてさまざまな問題に対応していくことの重要性を改めて確認をしたという意味で、極めて有意義な会談であったというふうに考えております。
今村委員 新聞等によると、ニュアンス的には、米国は、日本の要請どおり、国連を中心とした対応をしてくれ、そういうことで今動いている、さあ、今度は日本はどうしてくれるんですかというような感じで、お手並み拝見というようなことで書いてある記事もあったわけでございます。
 その中で、今御答弁にもありましたが、イージス艦の問題、これについては先般来議論になりまして、政府は、それほど大したことありません、通常の護衛艦と余り変わりはないんですという話がございました。中には、冷房等居住性がよいというようなこともあって、私は、昔の海軍の方が、先輩の方がこういうことを聞くと情けないと思われるんじゃないかなというふうにも思うのでございますが、それはともかく、やはりイージス艦の派遣について非常に満足しておられるなということは、これは、何といっても、我が国の米国に対する協力の深度化、そのシンボルとしてやはり非常に評価しているんじゃないかというふうに思うわけでございます。
 これはこれで我が国の路線として一つの方法であるかもしれませんが、しかし一方では、かねてから言われているように、我が国は米国とも、そしてまたイスラム諸国ともある意味ではいい関係を持ってきた。これが今回、イラクと米国との関係がどういうふうになるかにもよりますけれども、もし悪くなったときに、少なくとも今回こういう姿勢を見せることで、イスラム諸国から見ると、日本はどういうふうに見られていくんだろうかということが、やはりこれは危惧されるところでもあるわけでございます。
 こういった点について、いろいろ、副大臣等々イスラム諸国訪問もされているようでございますが、今後、こういった国に対する理解をどういうふうに深めていくか、あるいはどういう関係を持っていくかということについて、再度お聞きしたいと思います。
茂木副大臣 先般、私も総理の特使として中東、私の場合、ヨルダン、シリア、そしてトルコと回ってきましたが、そこで私の方から強調させていただきましたのは、まさに中東の平和と安定、これは我が国の平和と安定に直結する問題なんだ、そういう中で、我が国として、アメリカに対してもそうでありますが、国際社会に対して、このイラクの問題、国際協調の中で問題を解決していくことが大変重要なんだ、こういうことを繰り返し説明をしてきたところであります。このことにつきましては、アラブ諸国から十分な理解を得られたな、こんなふうに思っております。
 逆に、例えばアメリカに対しても、先般アーミテージ副長官がお越しになったときも、日本側がこれまで、八月以降、こういった国際協調の中でこの問題を解決していくこと、そして安保理の俎上にのせていくこと、こういうことが必要なんだ、こういうことを繰り返し申し上げてきましたねと。副長官の方からも、そういう線に沿って今進んでいるんだ、こういうお話がありまして、現段階におきましては、アメリカに対する我が国の働きかけ、そしてアラブ諸国に対する我が国の働きかけ、それは同じ方向を向いている。また、できる限りそういう方向で外交的努力をこれからも続けていきたいと考えております。
今村委員 この辺は、今後の本当に慎重な対応が望まれるところであります。
 ところで、日本はさておき、では、お隣の中国あるいは東南アジアの諸国、特にイスラム系を抱えた国、こういった国は今後どういうふうに対応していくのだろうか。
 特に中国については、極めてこれから石油消費量が伸びる。石油消費量は、二〇〇〇年が大体二億三千六百万トンですね。これが、二〇一〇年には三億三千六百万トン、二〇二〇年には四億五千五百万トンと、十年間で一億トンずつふえていくということがある。こういった石油資源の確保をめぐって、当然、中国は湾岸諸国あるいは中東の諸国とより緊密な関係を構築していこうとするだろう。あるいは、東南アジアの国も、インドネシアとかフィリピン、これについては非常に政治的な不安定要素があるわけです。
 これは特にオイルロードの安全確保、後でちょっと時間があれば質問しますが、そういったことにも関連してくるわけであって、こういったところは今後どういうふうに動くと考えているのか、また、それについて我が国としてはどういうふうに対応していくのか。お考えがあったらお聞かせ願いたいと思います。
茂木副大臣 まず中国でありますけれども、イラク問題をめぐります中国のこれまでの立場、これは、御案内のとおり、イラクによる安保理決議の完全遵守を求めると。また、武力の行使につきましては、もしくは威嚇につきましては、これは地域の緊張を高めるだけである、したがって、政治的、外交的手段によってこの問題を解決することが重要だ、こういうことを繰り返してきていると思っております。
 安保理の常任理事国のメンバーでありますから、中国の今後の動向につきましては、我が国としても注視して、フォローしていきたい、こんなふうに考えております。
 また、東南アジアの国々でありますけれども、インドネシア、フィリピン、現段階におきましては、安保理の決議の一四四一に対する重大な違反があった場合、軍事行動が不可避になったときにどうするか、これは明確にはしておりません。
 一方、御指摘のマレーシアでありますけれども、イラクに対するいかなる攻撃もイスラム教徒の怒りを誘うことになり、マレーシアとしては反対する、こうマハティール首相も述べているところであります。
 確かに、国内にイスラム教徒であったりとかいろいろな不安定要因も抱えている部分もあります。それにつきましても、今後、我が国としても情報収集等々しながら状況を注視していきたい、このように考えております。
今村委員 もうちょっとこの辺のことについてはよく聞きたいんですが、時間がありませんので次に進みます。
 今のでもちょっと御指摘しましたが、今後、石油の確保の問題、あるいはそれを運ぶ輸送の安全の問題ということで、タンカー等の護衛といいますか防護といいますか、そういった課題も考えておかなければいけないということであります。
 そういう中で、新聞等によると、防衛庁長官は、この護衛について、海上自衛隊の、いわゆる自衛隊八十二条の海上警備行動ということでやれるんじゃないかというようなことも言っておるようでございます。この条文は極めて包括的な書き方にしかなっておりません。しかし、果たして一千海里を超えて行くこともできるのか。あるいは、例えば今あの海域では海賊船が出没する。これすらよく取り締まりできないのに、本格的にゲリラが出没するといったときに、本当にこれを守っていけるのか。そういった考え方について、とりあえず御意見を述べていただきたいと思います。
西川政府参考人 お答え申し上げます。
 実は、先般、十二月六日の夜にテレビ放送等で大臣の方からもその旨を申しております。そこで、ちょっと御紹介させていただきますと、当時、イラク攻撃が始まった場合における日本のタンカーの警備についてはどうなんだ、こういう質問が大臣に対して出されまして、当方の長官の方からは、想定し得る各種への対応について、現行法の規定で対応できるか否か、どの程度対応できるのか、これを十二分に検討しておくことは政府の当然の責務である、こういう主張をされております。
 この一例として、ペルシャ湾で航行している我が船舶を自衛隊の艦艇が護衛するとした場合に、海上警備行動の下令が可能であるか、あるいは可能である場合の海上警備行動の命令の内容はどうなんだ、こういう具体的なところについていろいろ検討しておく必要がある、こういうことを非常に強調されておられました。
 それからまた、我が国の船舶を海上保安庁によっては保護し得ない場合には、我が国においてはこの任務に当たり得るのはもう自衛隊しかない、自衛隊のみであるとともに、現行法においても、自衛隊に当該任務を命ずる枠組みとしては海上警備行動しかない、こういうふうな見解を示しておるところでございます。
 先生御指摘のとおり、この八十二条につきましては、海上における人命、財産の保護または治安の維持のため特別の必要がある場合に、防衛庁長官が内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に海上において必要な行動をとることを命ずることができると、非常に包括的な形で規定しております。当方の長官も、このペルシャ湾におきます我が国のタンカー等の護衛につきましては、一つの例として挙げておりますが、いずれにしても、各種事態に対して、現行法制下において自衛隊がどのような対応ができるか、これを検証するということを大変強調されておりまして、我々の中で現在、その強調された部分につきまして、その重要性を指摘するとともに、いろいろ検討を重ねておるところでございます。
今村委員 テロというのは、実は私も国鉄改革のときに自宅を焼かれそうになったり、いろいろありますけれども、とにかく相手は、好きなときに好きな方法で好きな場所でやってくる。これを守るには、その何十倍、何百倍という労力が実は要るんです。ですから、今お話がありましたが、私は、これは言うはやすし、実際やるについては相当な準備、そしてまた国民の決意というものがやはり要ると思います。
 ですから先ほどの、米欧諸国あるいはイスラム諸国とどういう距離をとっていくのか、そういったものはやはりこれから非常に大事な話になってくるんじゃないかということでありまして、これは政府部内でも問題提起は問題提起でしっかりされて、本当に真剣な本格的な議論をぜひやっていただきたいというふうに思う次第でございます。
 ちょっと、感想で結構でございますけれども、これは本当に我が国の自衛隊だけで守れるんですか。感想だけで結構です。
西川政府参考人 先ほどもお答えいたしましたが、もう最後守るのは自衛隊しかないということになっておりまして、我々としては、それに対してできるだけのことを、現行法内でどこまでできるのか、そしてどういう形でできるのかということをこれから重ねてまた検討していきたい、こういうふうに思っております。
今村委員 この問いは局長さんではちょっと重いかもしれませんが、とにかく大事な問題なので、今後しっかり議論していただきたいと思います。
 それから、今の関係で、直接関係があるかどうかでございますが、実は今海外で、先般もバリ島で日本人がテロの被害に遭って、二人亡くなられました。これについては、日本人が殺されている、しかし捜査権は及ばないといいますか、日本の刑法でいくと、いわゆる国外犯については、これは限定的にしか捜査の対象にならないということになっているわけでございます。
 今後、やはりこういった問題がまた出てくるかもしれない。あるいは、非常に今国際化が進んでいる中で、やはり日本人が海外でこういった犯罪に遭うことが非常に多いわけです。先般もまた、パナマ船籍のタンカー、いわゆる便宜置籍船ですけれども、そこで日本の船員が殺された。この問題について、私もちょうど外務大臣政務官という中で、パナマ政府などのところまで行っていろいろお願いして、今何とかその訴追事務は進んでいるわけでございます。
 このことにつきまして、これは昭和二十二年の刑法改正でこれを落とされた、こういうことになったようでございますが、このときの、なぜこういうことになったのかの経緯、そしてまた、こういった今の国際情勢の変化等々を踏まえた中で、法務省としてどういうふうに考えているのか、その説明と回答をお願いします。
樋渡政府参考人 刑法は、制定当時におきましては、日本国外において日本国民に対して一定の犯罪を行った外国人について、その適用を認める規定を有しておりましたが、委員御指摘のとおり、昭和二十二年の改正の際に、当時の諸外国の立法例等にかんがみて削除され、現在に至っております。
 しかしながら、国際的な人の移動が日常化し、日本国外におきまして日本国民が重大な犯罪の被害に遭う機会が増加している今日、このような犯罪に我が国の刑法を適用できないとすることは、国外にいる日本国民の保護の見地からも妥当ではないと思われます。そこで現在では、一定の場合に自国民保護の見地から外国人の国外犯を処罰することは、諸外国の立法例において認められているところとなっております。
 そこで、このような犯罪に我が国として適切に対処できるようにするため、日本国外において日本国民に対して殺人等の重大な犯罪を行った者について刑法を適用できるようにするための同法の一部改正を早急に行う必要があると考えております。そのため、本日、法務大臣から法制審議会に諮問する予定でございまして、必要な調査検討を行った上で、来年の通常国会に所要の法案を提出することができますように作業を進めているところでございます。
今村委員 非常にタイムリーな話にたまたまなったわけでございますが、そうすると、刑法改正という中で、いわゆる国外犯について捜査できるという中に、今現在含まれていない殺人とか傷害とか、そういったものを幾つか加えるというような形でやっていくんですか。簡単で結構です。概要を教えてください。
樋渡政府参考人 日本国外におきまして日本国民に対し、例えば今先生おっしゃいました殺人とか逮捕監禁、それから誘拐、強制わいせつ、強姦、強盗等の罪を犯した者に刑法を適用するということになろうかと思います。
今村委員 わかりました。ぜひこれは早急に進めていただきたいというふうに思います。
 もう時間が余りございません。最後に、やはり政府の責任というのは、何といっても、これは政治の責任でもありますが、国民の貴重な生命財産を守るということ、これが最大の義務であるわけでございます。
 そういう意味で、刑法改正については今、極めて前向きな話をしていただきましたけれども、やはり外交も、これは道を誤ると大変な犠牲と損失をこうむる可能性が大きいわけでありまして、今こそ、戦後五十年、まさに日本の外交というものが、あってなきがごとしから大きく脱却して、本当に日本のかじ取りをしっかりやってもらう時期に来ているというふうに思っております。ぜひ、外務省においてはそういった認識を、もちろん大臣はされておりますけれども、職員一同しっかりこれを認識していただいて、そして、意識を変えてそういうことにしっかり取り組んでいく、そういうことが本当に国民の信頼を得、本当の意味で外務省改革につながっていくというふうに私は思っております。
 そういうことで、現下の、あるいはこれからの厳しい状況をしっかり認識していただいて、ぜひ、日本の進路を誤らないようなことで、外務大臣にもしっかり物を言ってもらって、そして職員の皆さんにも頑張っていただくように心からお願いいたしまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。
池田委員長 次に、河野太郎君。
河野(太)委員 おはようございます。自民党の河野太郎でございます。
 まず、外務大臣に事実の確認をさせていただきたいと思いますが、一九七三年に日本国政府は、日本国政府というよりも外務省はと言った方が正しいんだと思いますが、アメリカと取り決めを結びました。これは極秘の取り決めでありまして、内容は、米軍基地の中の環境問題に関する取り決めでございます。これは日米合同委員会で定められました。
 昨日、まずこの取り決めの内容を確認したいと思いまして、外務省に写しを下さいとお願いをいたしましたところ、これはまだ、残念ながら日米合同委員会で公開をするというふうに合意がとれていないので外には出せません、そういうことでございました。
 そこで、私が外務省のカウンターパートに確認をしたところ、これは、日本の国内にある米軍基地に環境問題が発生をしたときに日本政府がどうやって立ち入りをすることができるかについて取り決めたものである。外務省のカウンターパートの御意見では、日本側がかなり譲られた内容の取り決めになっているということでございます。
 さらに、最近のいろいろな問題の発生により、この取り決めでは対応することができなくなって、今度の十二月十六日の2プラス2で新たな環境問題に関する取り決めを行う、それを公開する、よって、一九七三年の取り決めはなかったことにしよう、どうもそのようなことが議論をされているというふうに伺いましたが、事実の確認を外務大臣にお願いしたいと思います。
川口国務大臣 委員のおっしゃった一九七三年の日米合同委員会で合意された文書というのはございます。環境についてということでございます。
 これは委員もおっしゃられましたけれども、合同委員会で合意をされた文書というのは、日米双方の公表をするという合意がなければ公表しないということになっているわけでございまして、この文書自体については、これは合同委員会といいますか、日米の合意がないということで非公表扱いになっているというのが事実関係でございます。
 この文書について、この中身を私はけさ初めて見ましたけれども、それを見て思いましたのは、これについて、別に公表しても差し支えないんではないだろうかというふうに思いました。ただ、これは日米が合意をしないと公表できませんので、今度アメリカに対して、これを公表するということについて、日本はそう思っているけれどもどうかということを申し入れたらどうかということを言うようにという指示をいたしました。
 ということで、委員のおっしゃっている外務省のカウンターパートが日本にとって都合の悪い云々ということについては、私は事実関係は存じませんけれども、そういう事実は、要するに都合が悪いから公表しないということではないと私は思います。
河野(太)委員 それでは、外務省がこの環境問題に関する日米の取り決めを環境省にお示しになったのはいつでございますか。
川口国務大臣 それについては、私は事実関係は聞いておりませんので、それは別途、把握をして、御連絡をしたいと思います。
河野(太)委員 それでは、ぜひお調べになって、環境省にお示しをしたのはいつか、当委員会に御報告を賜りたいと思います。
 外務大臣は環境大臣もかつてやられていたわけでございますので、そのときにこの問題を御存じなければ、恐らくその当時は環境省は知らなかったんだろう。三十年前に外務省がアメリカと結んだ協定がほかの役所にも知られていなかったということであれば、これはかなり大きな問題なんだろうというふうに思います。
 外務大臣は今、この取り決めについては公開をしてもいいんではないかとおっしゃいましたが、もともと、日米の合同委員会というのは地位協定に基づいてつくられているものでございます。地位協定は米軍の地位に関して取り決めた協定でございますから、それに基づいて議論をされる合同委員会の議事録あるいはその取り決めを非公開にしなければならない理由というのは全くないはずでございます。
 第一回の日米合同委員会で、これの結果は全部非公開にしようというようなお話をされたようでございますが、何でこんなことを我が国政府がやらなければいかぬのか。しかも、我が国にとって不利であるから隠しているんではないとおっしゃるならば、米軍基地の環境問題についてなぜ我が国が、我が国の国民がそれを知ることができないのか。
 しかも、内容を知ることができなかっただけではなく、三十年間、こうした取り決めがあるということを外務省以外の人間が知らなかった。これは、我が国の秘密外交を排するということについて、おかしいのではないかと思います。米軍の軍の運用にかかわる問題であるならばそれは非公開にされてしかるべきだと思いますが、そうでないものまですべて日米合同委員会の内容を非公開にする根拠は一体何なんでしょうか。
 私が総務大臣の政務官を務めておりましたときにも、同じような問題がございました。米軍に割り当てた電波の問題でございます。米軍の軍の運用に関する電波の割り当ては、これは極秘であるべきだと思いますが、米軍の、あるいは軍人軍属、家族の方々の娯楽のために割り当てていた電波が相当量ございました。これについても秘密になっておりました。これは秘密にする必要が全くないものでございます。そういう電波の割り当てがあったことすら秘密でございました。
 外務大臣、日本にとって不利なものではない、読んでみておかしな取り決めでないから公開をするんだと言うならば、第一回目から今までの日米合同委員会の議事録並びにそこでの合意事項、すべて国民に公開をしてしかるべきではないですか。もちろん、軍の運用その他軍事的な機密にかかわるものは、これは問題があるならば非公開でもやむを得ないと思いますが、そうでないものまで非公開にしておく根拠は一体何なんでしょうか。地位協定に基づいて日米合同委員会をやっているのであれば、一体どういう権限で政府はこの合同委員会の議事録、取り決め、合意を国民に対して公開しないのか、御説明を賜りたいと思います。外務大臣にお願いいたします。
川口国務大臣 まず茂木副大臣からお答えをさせていただきます。その後で、必要があれば私からお答えをいたします。
茂木副大臣 今、河野委員の御質問を聞きますと、何か日本側がすべて秘密主義でやっているとか、そういうふうにあれでありますけれども、先ほど大臣の方からお答え申し上げましたように、御指摘のありました文書については、公開する方向で米国の側にも働きかけをしていく、こういうことでありますし、何か昨日の段階で、外務省の方はなかなか出さない、ところが、河野先生のお友達のアメリカ側のカウンターパート、正式な御意見かよくわかりませんけれども、いろいろお話をされていると。何かそういう印象を与えることというのは、必ずしも私は好ましくない、こういうふうに基本的には思っております。
 そして、合同委員会におきます合意事項でありますけれども、これは大体のものは施設とか区域とかそれから返還に関する事項でありまして、大半のものは公開をされている、このように認識をいたしておりますし、SACOの最終報告におきましても、この合同委員会の合意事項を一層公開していきたい、こういう方向でありますので、できることはすべて公開をしていく、こういうことでよろしいんだと思います。
川口国務大臣 今茂木副大臣からお話をしたとおり、私も全く同じ意見、同じことを申し上げたいと思います。
河野(太)委員 外務大臣、すべて公開をしていいんだとおっしゃいますが、この合意事項は、きのう私が外務省に確認をするまで、公開するともしないとも何にも決まっていない、その存在すらよくわからなかったものでございます。過去の一回目からの議事録並びに合意事項をすべて、出せないところは隠していただいて結構でございますが、出していただかなければ、何が隠れているのかわからないというのが今の現実ではないんですか。
 外務大臣が今の茂木副大臣の御答弁どおりであるというならば、第一回目の議事録からすべて、要するに隠す必要があるものは別として全部公開をする、そういう御判断をされた、そういうことでよろしいんですね。
川口国務大臣 隠す必要がないものについては全部公開するというのはトートロジーであるというふうに思いますけれども、これは今茂木副大臣がおっしゃったとおりでして、SACOの最終報告にも書かれているわけでございまして、合同委員会の合意の公表には努力をしてきたということでございます。相手があることでございますけれども、日米双方で相談の上、公表できるという合意ができるものについては公表する方向で引き続き努力をしていきたい、そういうことでございます。
河野(太)委員 これは、我が国にある米軍基地に関する、あるいはその地位について定めた協定に基づいて行われる合同委員会でございますので、米軍が公開を、それは軍の運用に関するものは公開はできないと思いますが、それ以外のものについて米軍が拒否をするというならば、ほかの枠組みをむしろ考えていかなければならないような性質のものだと思います。隠す必要のないものはすべてオープンにする、これが我が国の政府の立場として当然のものだと私は思っておりますので、すべて公開されますようお願いを申し上げまして、質問を終わりにします。
 どうもありがとうございました。
池田委員長 次に、上田勇君。
上田(勇)委員 公明党の上田でございます。
 きょうは実質的に委員会最後の会議になりますし、大変短い会期ではありましたけれども、外務委員会は精力的に開催されまして、先ほどちょっと資料を見たら十一回目だそうでございまして、委員長もまさに本当に御苦労さまでございました。
 きょうはまず、これまでの質疑の中で若干時間の関係等もありまして言及できなかった点、何点かにつきまして、私の方からお伺いをしたいというふうに思っております。
 まず最初に、北朝鮮関係のことで御質問させていただきますが、最近テレビ等で、北朝鮮からの脱出者の証言などがもととなりまして、北朝鮮国内で、いわゆる収容所があって、そこで虐殺が行われている、悲惨な人権侵害が行われているということが報じられております。そうした悲惨な目に遭っている人々の中には、残念ながら我が国から北朝鮮の方に渡った日本人妻の人たちも含まれておりますし、また在日の朝鮮籍、韓国籍の方々の家族、親族というのも含まれているというふうに言われております。
 これらの報道に関して外務省として現状をどのように認識されているのか、また、こうした事態というのは是が非でもなくしていかなければいけないわけでありますけれども、そのことについて政府としてどういう方向で対処されるのか、御見解を伺いたいというふうに思います。
茂木副大臣 北朝鮮におきます人権侵害の問題等々でありますが、まずもって、上田委員が常々この外務委員会の席でもしくは国会の場におきまして人権問題の重要性、これを訴えていらっしゃることに対しまして、私はふだんから大変敬意を持って御意見を聞かせていただいております。
 北朝鮮の国内事情につきまして申し上げますと、御案内のとおり非常に不透明な点が多うございまして、在日朝鮮人の御家族の現状も含めまして北朝鮮の人権状況につきましては、明確な認識を持つことは必ずしも容易ではありませんけれども、政府としては大きな関心を持っている、これはもちろんのことであります。
 北朝鮮におきます人権問題、これは東アジア地域にとっても大変重要な問題でありまして、関係国との間で、二国間で意見交換を行っていくことは極めて重要であると考えております。また、この問題について国際的な場で取り上げることも含めて最も効果的な方法は何なのか、このことにつきましても関係国との間で意見交換を行ってまいりたいと考えております。
 ちなみに、最近の政府の取り組みでありますが、北朝鮮によります拉致問題が重大な人権侵害であるとの観点から、去る十一月十一日の日になりますけれども、国連総会第三委員会におきまして、国連代表部の原口大使が北朝鮮による拉致問題についてステートメントを行い、また、強制的または非自発的失踪の問題と題する決議の共同提案国となりました。この決議でありますけれども、十一月十九日の第三委員会で採択をされたわけであります。
 このように、北朝鮮による人権侵害の問題につきましては、国際世論をこれからも喚起していく、こういうことが大変重要だと考えておりまして、関係国との間で協議をしながら、そういった方向でさらに努力をしてまいりたいと考えております。
上田(勇)委員 北朝鮮内でのそういう人権問題について関心を持っているという答弁でございましたけれども、今本当にテレビがどんどん映像も含めて大変な報道をしている。そのときに、もちろん政府としてはいろいろな外交上の配慮、当事者に対する配慮というようなこともあって言えない部分というのもあるんでしょうけれども、そうしたことが連日報道されている中で、政府が関心を持っていると言うだけでは、こういう公式のところでの発言として、ちょっと国民として大変不安だし、残念な思いがいたします。いろいろな配慮はあるというのはよくわかりますが、これだけ報道されていることについて、政府としてどういうような内容を掌握されているのか、できる限りオープンにしていくということが必要になってきているのではないかというふうに思います。
 それで、この問題について、七月の外務委員会が行われたときに、いわゆる瀋陽事件について審議をしまして、その関連で、私の質問の中で、こうした北朝鮮の中の悲惨な状況に対して我が国としても積極的な関与をしていかなければいけないということを申し上げて、大臣も同じようなお考えであったというふうに記憶をいたしておりますし、またその際に、この瀋陽事件が中国で起きたということもあるんですが、やはり我が国だけではなくて、北朝鮮に対して影響力を持っていると言われている中国とも十分協議をして、協力をして対処していかなければいけないのではないかということをお話しさせていただいたところ、大臣もそのような認識を示していただきました。
 そこで、やはり北朝鮮の国内の問題に対処していくためには、日本だけじゃなくて中国ともそういうような協調、協力体制が必要だろうというふうに思うんですが、具体的に中国政府とはどのような話し合いを行ってきたのか、働きかけを行ってきたのかということをまずお伺いしたい。
 また、いろいろな報道に接すると、どうも中国はこうした北朝鮮の国内の問題、いわゆる人権上の問題に対して無関心というか、ちょっと消極的な姿勢も見られるような感じがいたしますけれども、我が国からの働きかけに対して先方はどういうような反応であったのか、その辺のお考えを伺いたいというふうに思います。
川口国務大臣 この問題については、前にも委員とお話をさせていただいた記憶がございますけれども、中国との間でも話をいたしましたし、それから他の関係の国々とも話をしたことはございます。
 そのときも申し上げたかもしれませんが、中国は北朝鮮からの人たちについては、不法に中国に入ってきた人たちであるという基本的な考え方もあるわけでございまして、そういった中国の立場もございますので、これについて具体的にどういうお話を中国としたかということについては、申しわけありませんけれども、ここでお答えすることについては差し控えさせていただきたいと思います。
上田(勇)委員 もう一点、先方の反応はどうだったんでしょうか。その辺の対応ぶり、差し支えない範囲でお答えいただければと思います。
川口国務大臣 中国の立場というのは、先ほど言いましたように、北朝鮮との間には伝統的に非常に長い関係を持っているという立場でございます。それで、北朝鮮の経済の状況なりあるいはその中における北朝鮮の人たちの暮らしについても関心を持って見ているし、情報もある程度持っているという印象はございます。
 それで、中国に来た人たちに対してどういうことを考えるべきかということについては、この部分については、中国の立場もありますので、具体的に申し上げるということは控えさせていただきたいと思います。
上田(勇)委員 北朝鮮の問題に適切に対処していくためには、もちろん我が国の外交努力ということも重要なんですけれども、やはり国際社会が一致してこの問題に関心を持って取り組んでいかなければなかなか前進は難しいんではないか。これはもうイラクの問題についても同じことが言えるんだというふうに思います。
 特に、アメリカや韓国といった友好国、同盟国とは当然のことといたしまして、北朝鮮の意思決定に影響力が強いと言われている中国やロシア、そうしたところまで巻き込んで、我が国と北朝鮮との間にある問題、あるいは北朝鮮自体が抱えている問題、こういった非人道的、犯罪的な行為というのは国際社会として許さないんだ、そういう一致したメッセージをやはり強力に伝えていかなければ、なかなかこの問題は解決していかないんじゃないかというふうに思います。
 やはり我が国としてもそういう外交努力、まさに最大の当事国の一つでありますので、国際社会が関心を持ってこの問題に取り組んでいく、そうした動きを進めていくための外交努力がこれから非常に重要になってくるというふうに思っております。もちろん二国間の交渉も重要なんですが、関係国まで含んで包囲網をつくっていく、圧力をかけていくということが重要だろうというふうに思っておりますので、今後ともそういう意味では外務省の役割というのは非常に重要だというふうに思っておりますので、ぜひそういう方向での取り組みをお願いしたいと思います。
 それで、話がいろいろ飛んで申しわけないんですけれども、先日、アメリカのアーミテージ国務副長官が来日をいたしまして、政府首脳また外務省の幹部と相次いで会談をいたしました。会談の内容や、それを受けての政府の対応などについて、ここ数日、さまざまな報道が行われております。
 その中で、アーミテージ副長官が、国際的な協調が必要なんだ、そういう日本の側の要請を踏まえて、今回、イラクへの対応にしても安保理を中心に対応するというような、米国としても国際的な協調に配慮するというような考えが示された、そういう報道がたくさんありましたけれども、これは、大変今の現状、国際社会の気持ちをよく理解している慎重な対応であるということで評価できるというふうに思うんです。
 そういう意味で、この会談、まあ今報道で行われたことを紹介させていただいたんですが、アーミテージ副長官からは実際にアメリカとしてどういうような方針が示されたのか、また我が国としては、外務省としてそれをどのように受けとめたのか、御見解を伺いたいというふうに思います。
    〔委員長退席、中川(正)委員長代理着席〕
川口国務大臣 アーミテージ副長官の来日で、私も含め外務省の幹部と話をいたしました。それで、先ほど別な委員の御質問でお答えをいたしましたけれども、日本側がアメリカに対して、この問題は国際社会と大量破壊兵器の問題であって、国際社会としての協調が必要なんだということを今まで再三再四指摘をしてきたということについて、これがブッシュ大統領の国連での演説につながって、結果的には国連での決議の採択につながった、日本として非常に有益な役割を果たしたというお話があったわけでございます。
 米国側が今後について何を考えているかということでございますけれども、安保理の決議の一四四一、これを履行していく、あるいはイラクがこれ及びその関連の決議を履行していくということが非常に大事なので、これを求めていくということでございまして、今イラクが申告をした文書が国連に来ているわけですけれども、それについて関心を持って見ていく、そういうお話はございました。
上田(勇)委員 会談の内容といたしまして、もう一つ報道されているのが、日本側から支援策について政府の考え方を示して話し合ったというふうに言われております。
 一つはイラク周辺国での難民支援などの人道支援をやろう、もう一つはイラクの復興支援ということが言われておりますが、この復興支援、こうした内容が報道されているんですけれども、もう少し、日本としてどういうような提案をしたのか。特に、復興支援ということになりますと、その内容というのは経済支援を意味しているのか、あるいはもうちょっと深い関与を考えているのか。
 また、どうもきょうの新聞などでは、外務省首脳という名前で、イラク対応の新法というようなことも報道はされているところでございますけれども、どこまで言えるかというところが現時点ではあるのかというふうに思いますが、この支援策についてもう少し日本側の考え方、現時点で言っていただけることを御説明いただければというふうに思います。
川口国務大臣 仮に、イラクが国連の決議に関して重大なる違反を行ったということになり、そして軍事行動が不可避になった、そういうときの対応について、具体的に個別なお話をアメリカ側としたということではございません。
 米国側はずっと、これについて日本が主体的に決める話であるということを言ってきているということでございますし、我が国の立場というのは、これは日本を含む国際社会全体の問題であるという認識に立って、国際社会の責任ある一員としてどのような対応をすることが適切か、どのような役割を主体的に果たすべきかということを考えるということでございまして、その観点から、先ほど委員もおっしゃられました難民支援ですとか周辺国支援ですとか、そういった分野を含めて今あらゆる選択肢を念頭に置いてさまざまな検討を行っているということでございますので、その旨を米国に伝えるということはいたしました。
 それで、委員のおっしゃった復興支援についても、考えていることの一つといいますか、話には上がったということでございますけれども、具体的に細かくお話をしたということではございませんので、まさに今、先ほど申しましたように、あらゆる選択肢を念頭に置いて種々検討を行っている、そういうことでございます。
    〔中川(正)委員長代理退席、委員長着席〕
上田(勇)委員 具体的にはこれからということなんだろうと思いますけれども、ただ、そう時間的な余裕があるのかどうかということになりますと、私はそんなに余裕がないんではないかというふうに思います。もう政府内では外務省中心にいろいろなことを考えられているんだというふうには思います。そうしたことも報道では随分、各新聞社ほぼ共通した内容で報道しておりますので、そういうようなことが話し合われたんではないかというふうに考えますけれども、さらに、きょうでこの国会は終わりになってしまいますが、内容等については我々としても関心を持って注視していきたいというふうに考えております。
 最後に、もう時間がなくなってきたんですけれども、ちょっと外務省改革についてお伺いいたします。
 外務省改革「行動計画」、ことしの八月に決定されたものでありますが、この行動計画案を見ておりますと、十二月までに結論を出すというふうに言われている項目が、私が数えたところ約三十件ございます。その中で、結論が現時点で公表されているというのは数件だろうというふうに思います。
 十二月、まだあと二十日間はありますが、これらの十二月末までに結論を出すと言われている中には、例えば、大使の任用のあり方であるとか、予算執行の効率性、透明性の確保のあり方、NGOの活動支援基盤整備のあり方、領事業務の見直し、あるいは外部シンクタンクの活用など政策構想力の強化の問題であるとか、外務省の組織改編や役割の見直しの問題だとか、非常に重要かつ関心の高い分野が多いわけであります。
 伺うところでは、外務省の中では連日、それぞれの細部についてのいろいろな議論も行われているというふうに聞いておりますけれども、現在の進捗状況及びこれから、もう十二月末ということでありますので期間も余りありません、方向性がいろいろ出ているものもあるんじゃないかというふうに思いますが、その点御説明をいただければというふうに思います。
北島政府参考人 お答え申し上げます。
 八月末、外務大臣が発表されました行動計画、これはいろいろなスケジュールが付されているわけで、本年十二月末までに結論を得るというもののうち、できるだけ多くのものについて結論を得たいというふうに思っております。
 一つ、委員の方で御指摘のあった大使任用の際の基準の見直しということですけれども、この点について申し上げますと、外務省改革の議論の中で新たな基準というのをお示ししたわけですけれども、これについては「変える会」の最終報告書において一部合理性を欠くといった指摘もございまして、今設置することを予定しています大使人事選考委員会、ここにおいてこの基準の見直しについての議論を深めていきたいというふうに考えております。
 この大使人事選考委員会につきましては、法令上の根拠、構成、具体的役割等について現在関係省庁と協議、調整を行っているということで、これにつきましても十二月末までに結論を得るというふうになっておりますけれども、現在その検討を鋭意進めている、そういう状況でございます。
上田(勇)委員 ちょっと内容についてお伺いしたいこともあるんですけれども、時間でございますので、これで終わらせていただきます。
池田委員長 次に、首藤信彦君。
首藤委員 民主党の首藤信彦です。
 この臨時国会も恐らく私が質問するのは最後の機会となりますので、包括的な日本外交の課題について、いろいろ質問させていただきたいと思います。
 日本外交だけではなくて、日本経済も非常に大変な問題を抱えておりまして、失業率も五・五%、六百兆を超える国の借金、自殺者も三万人を超える、日経平均株価は一万八千円、こうした問題を抱えて、もう日本の経済は本当に深刻な危機状態にあるというふうに思っています。
 外交も同じように危機状態にあると思うんですね。しかし、外交ではもう絶対にやってならないという幾つかの鉄則があります。例えば、外交を内政のために使ってはいけない。要するに、内政が悪いときに外交でヒットを得ようとして何かをやるということは非常に危険なことだ、そういうふうに私なんかは今までずっと教わってきましたし、まさにそうだと考えております。
 これは、決して現在の小泉政権のことを言っているのではなくて、あくまでも一般論の話なんですが、この臨時国会で起こった最大の問題、最大の一つの外交テーマというのは、言うまでもなく小泉首相がピョンヤンに飛びまして平壌宣言が成立したということだと思うんです。今北朝鮮との問題において、一番の懸案といいますか、まず先にこれを解決しなければ進まないというものが拉致問題だと思うんですね。
 しかし、その北朝鮮との問題では、拉致もそうですが、核開発の問題、ミサイル、工作船、スパイ活動、覚せい剤、不正送金、その他さまざまな問題を抱えている。しかも、その大きな問題のそれぞれがお互いに関係していて、相互矛盾があるといいますか、一つを解決しようとするとその次の先へ進まなくなってしまうというような問題があると思うんですね。
 例えば拉致問題に関しても、五人の方が日本に戻られましたけれども、そうすると、今度は次のステップとして家族の来日がなかなか難しくなってきている。北朝鮮側は、まず本人が北朝鮮に戻ってからでなきゃ家族とは相談できないではないかということを言っている。それからさらに、こうしたことで日朝間がどうも情報がうまく伝わらなくなると、今度は八人の安否の確認も難しくなってくる。
 さらに、今問題となってくるように、七十名ぐらいになるのではないかと言われている潜在的な拉致の方の存在ですね。そうした方の問題は、もう捜査もできないし話し合いもできないというようなことになってくるんですね。さらに、拉致問題がこれほど重要な問題でありますから、我が国の国民に起こった問題ですから、それは例えば七十名の方であれば、さらにその家族の日本への帰還ということも当然やらなければいけないわけですね。
 そうすると、拉致問題というものは一体どのレベルで考えたらいいのか。すなわち、一つの方策をとればほかの対策がとりにくくなってくるということで、一体拉致問題とは何なのか、どこのレベルに焦点を合わせて解決しなきゃいけないのか。拉致問題の全面的な解決となると、拉致が発生した被害者、当然のことですが全員をきちっと日本に戻してきて、当然のことですがその御家族もきちっと日本に定住していただけるような環境をつくるということが重要だと思うんですね。
 ですから、きょうは安倍副長官にも来ていただいて、お忙しいところだということで、三つほど質問させていただきたいと思うんです。
 一体副長官の考えは、拉致問題というのは、漠然とした一般論で拉致問題、拉致問題という、キーワードは結構ですが、一体どこに政策目標を与えてやろうとしているのか。もう明らかに、五人の方だけを考えればその残りの問題というものはすべて取り残されて、情報も断絶していくわけですが、一体どのテーマで拉致問題を把握されているのか。そこをまずお聞きしたいと思います、安倍副長官。
安倍内閣官房副長官 今、私ども政府として、警察庁が認定をしている十件十五名の方々が拉致の被害者として確定されているというふうに考えているところでございます。
 その中で、五名の方々は日本に帰国を果たした。しかし、彼らの家族は北朝鮮に残されたままでございますから、私どもといたしましては、五名の方々が自由な環境で意思を表明できる、その環境をつくっていく、それが国の責任である。ですから、当然この方々の家族は日本に連れてくる、それを北朝鮮側に要求をしているところでございます。
 それ以外に、亡くなられたと言われている八名の方々については、先般調査団がピョンヤンに行って集めてきた情報だけでは、これは私ども政府としてこのまま死んでいるということを認定するわけにはいかない。ですから、我々が認定するに値する資料、情報を出してください、その安否を私どもの政府の責任として確定したい、こういうふうに先方に今要求をしているところであります。
 さらに、先方もわからないと今のところ言っている残りの二件についても、さらに我々は安否について問い合わせをしていきたい、こう考えているところでございます。
 さらには、今委員が御指摘をされました、それ以外に可能性がある方がいるかどうか。この方々については、今捜査当局においてどうなのかということを検討しているということでございます。
 そしてまた、この拉致問題については、拉致を行った人たちが一体どうなったか。当然処罰がなされなければいけないわけでございますから、そのことも我々は要求をしていかなければならない、こう考えているところでございます。
首藤委員 お話を聞くと、結局、警察が認定している十件十五名のことだけを考えておられるようですけれども、私はそれは違うと思うんですよね。認定されなくても、七十名と言われている、恐らく拉致されたんだろうと言われている方は、すぐ対応をしなければ拉致問題の解決なんかは全然進んでいかないわけですよ。
 さらに問題になるのは、例えば、一九六〇年代に行われた帰還運動で帰られた日本人の方、そういう方は日本の国籍で日本人なんですね。さらに、これはある意味では日本側も協力した。我々はそれだけ重荷をしょっているわけですよね。
 ですから、そうした、日朝間の正常化にはもっと大きな問題がどんどん出てくるわけですから、それが今おっしゃったような警察が認定しただけというのでは、政府の対応としては非常におかしいと思うんですね。その問題はまた今後の論議に譲るとして。
 今、きょうのこの場としては、十件十五名ということに限って見れば、安倍副長官は、この問題をともかく日本が一切妥協することなく、ほかの問題は別として、ともかくこれが進まなければ一切交渉は進まないんだというところでおっしゃっているわけですね。特に、こういうことでやっていても、テレビなどでの発言を聞いておりますと、例えば、もう日本がこういう態度でやっても失うものは何もない、それから、拉致に落としどころはない、一切妥協しない、こういう話をされているわけですが、その真意は一体どういうところなんですか。要するに、もうこの五件の御家族の問題が解決しないと日朝の正常化は全然進めない、進ませない、こういうことでしょうか。
安倍内閣官房副長官 今の問題について御答弁する前に、先ほどの十件十五名以外は全然考えていないのかということでございましたが、それは全くそんなことはないわけでございまして、ただ、私どもが非常な確信を持って先方に言う限り、こちら側には瑕疵のないようにしていきたいということで慎重にやっている。
 ただ、それ以外に、もしかしたら私の子供は拉致されたかもしれないという方々については、ちゃんとこれは詳細に我々は検討していきたいというふうに考えております。事実やっておりますし、照会すべき点は先方にも、北朝鮮側にも照会をしているということでございます。
 今、委員のおっしゃった私の発言の真意ということについてなんですが、この真意は、まず最初に私は北朝鮮に考えていただきたい、こういうふうに思いながら私は発言をしているわけでございます。
 この拉致問題について、今、五名の方々の家族の皆さんが北朝鮮に残されたままでございまして、このままでは、我々は正常化交渉をどんどん進めていくわけには当然いかないわけでございます。北朝鮮としては、前回、クアラルンプールにおいて、次の正常化交渉の日程を設定したいということであったわけでございますから、我々はこの問題についてまず検討したいということで引き揚げたわけでございます。その姿勢については我々は変わりがないということでございます。
 ただ、もちろん正常化交渉の場において、また安全保障協議の場において、包括的に他の問題も、当然重要な問題ですから、安全保障上の問題、たくさんあります、今委員が挙げた問題等々を協議していくというのは当然のことである。その中で、拉致問題は当然プライオリティーがトップであるということでございます。
 拉致問題について、これはいわゆる落としどころがない、こういうふうに申し上げましたのは、例えば、では、この五人の人たちは向こうに帰すとか、あるいは、残りの八名の人たちの安否について、もうこれはこれ以上照会しないんだということはしない、そういうことでございます。
首藤委員 意味不明ですけれども、そういうことと真意は違うんじゃないかと思うんですけれどもね。時間も限られていますから、今の最初の部分にちょっともう一度言及いたしますけれども、それは副長官、ちょっと考え方が甘いんじゃないですか。
 例えば、十件十五名と言っていますけれども、曽我さんに関しては警察庁のリストにもなかったのを北朝鮮側が一名追加してきたわけですよ。要するに、向こう側は、外交交渉ですから、これはもう日本が困るように、ある意味で一名追加してきたわけですよ。だから、おっしゃるようなことでやっていれば、例えば十件十五名、十件十五名と言っていたら、向こうが、北朝鮮側が、もし一人そのリストにない人、十一件十六名になったらどうしますか。そういう甘い考えだったら外交はできませんよ。それは猛省していただきたい、そういうふうに思うんです。
 このような状況の中で、拉致の落としどころはないとか、一方では非常に、国内向けなんでしょうが、いろいろなことを言っておられます。それは果たして政府として言っておられるのか、あるいはただ一政治家として言っておられるのか、非常に疑問を持つところなんですね。政府としてこういうことを発言することが本当に外交交渉に私はネガティブな影響を与えるんだと思うんです。
 一方では、新聞紙上その他に出てくるように、食糧支援が急浮上しているというようなことがあります。食糧支援も、百万トンを超えるような支援をしている。もう御存じのとおり、日本は今既に二百万トンの米の備蓄があって非常に困っているんですね。その半分近くを今まで出してきたりしているわけですが、またぞろこういうことになれば、私は、この米支援問題こそが拉致問題の解決にとって最大の障害になっていた、その責任をきちっと明確にしない限り将来の拉致問題の展望も何もないと思うのですよ。
 しかし、このように、一方では拉致問題に落としどころがないと非常に強いことを言いながら、片方では食糧支援が急浮上してきている。この辺に関しては、安倍副長官は言葉を濁して明確に答えられないわけですが、この拉致問題と関係してもそうですが、食糧支援はございませんね。いかがですか、副長官。
安倍内閣官房副長官 私の先ほどの答弁がわからないというふうにおっしゃったんですが、極めて私は明確に答えているつもりでございますし、北朝鮮側もそのとおりに受け取っているから、平壌放送等で私を批判しているんだと思います。
 私がはっきり申し上げましたのは、向こう側が、北朝鮮側が誤解しては困るから、拉致問題についてはそういう落としどころはないと言って、五名の方々を帰すことはない。これはわかりやすいですよね。あと八名の人たちの安否について先方に問い合わせることはしないということもしないということを申し上げた。これは極めてわかりやすいメッセージなんだろうと思ったわけでございますが、首藤委員には通じなかったようでございます。
 今の御質問でございますが、食糧支援についてはWFPのアピールがあったということでございます。既に茂木副大臣が答えておられますが、今現在のところ、そのことについて我々は支援をすることを全く検討はしていないということでございます。
首藤委員 長くありがとうございました。次の予定があるようですから結構ですが、最後に言っておきますが、あなたの頭の中には日本におられる五名の方しかない。しかし、この問題は大きな問題であって、そのことをしっかりやらないと解決できないということを最後につけ加えておきます。
 それでは、外務省にお聞きしたいわけですが、こうした状況というのは今非常に問題を抱えているわけですね。拉致だけではない、いろいろな問題もそれぞれの展開を見せています。それはKEDOの問題もあればIEAの問題もあればいろいろな問題があるのですが、昨夜ですか、非常に大きな問題が飛び込んできたわけですよね。
 これはニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストに載っておりますけれども、北朝鮮の船が十二基ぐらいのスカッドミサイルをイエメンの方に、イエメンだかその先になるかわかりませんが、そちらの方向に輸送しているのがアメリカその他の国によって捕縛されて、臨検によってその事実が明らかになった。それは日本の新聞ではどことは言っておりませんけれども、ニューヨーク・タイムズとかワシントン・ポストには明確に、これは北朝鮮である、こういうふうに書いてあるわけですね。
 さらに、現在この地域にはラムズフェルドさんが行っているわけですけれども、そうしたことを考えると、この問題というのはとてつもなく大きな問題ではないか。例えば、場所はイラクじゃなくてイエメンですけれども、イエメンの東海上六百マイルということですね。もう、インド洋ですね。まさに今、我々がイージス艦を派遣しようというところで、共有した水域になってきている。そういうところで、イラク攻撃がどうなっているのか。
 そういうような状況を考えますと、このイラク攻撃と、それから今度の北朝鮮の問題というのが、ここで接点を持ってきているわけですね。この問題に関して、外務省は今、どのようにお考えか。外務大臣、いかがでしょうか。
茂木副大臣 委員御指摘のスカッドミサイルを積んでいる船の報道、米国のCNNなんかでも流されておりますけれども、そういう報道の事実があるということは承知をいたしております。
 今、事実関係につきまして確認中でありまして、また、事実関係に基づいて、どういう因果関係があるのか、そういう分析を踏まえた上で、我が国としての対応は考えていきたいと思っております。
首藤委員 いや、それは評論家としては結構ですけれども、これはもう目の前に迫ってきているわけですよね。まさに日朝交渉と明確な関係を持ってきているわけですね。
 ですから、こういう展開に基づいて、じゃ次には、平壌宣言に盛られた日朝の正常化交渉に向かって、今、安倍副長官が来て、拉致問題が最優先だ、それをなくしては次のステップへ進まないというような話をされているわけですから、さらにこうした問題があったときに、一体外務省としては、北朝鮮の国交正常化に向けて、あるいは東アジアの平和に向けて、どのような方針を、施策を持たれているのか。外務大臣、いかがですか。
川口国務大臣 このスカッドミサイルの部品とおぼしきものということについての情報の事実関係は、今副大臣がお答えしましたように確認中でございますけれども、もしもこれが事実であるとしたらば、大変に遺憾なことであると思います。
 国際社会は今、大量破壊兵器の開発、拡散、そしてそれの運搬手段、輸送手段の拡散ということについては非常に関心を持って見ているわけでして、それはイラクとの関係では決議にあらわれているわけでございますし、それから北朝鮮に対しても、すべての国がいろいろな場で、そういうことがあってはならないということを言っているわけです。
 我が国も、平壌宣言の中で、こうしたことが問題であるということをきちんと言っていて、また北朝鮮に対しては、北朝鮮が平壌宣言を守るということでなければ正常化交渉は妥結しない、すなわち正常化はできないということも言っているわけです。
 まず事実を確認をした上で、これに対しての具体的な対応については検討したいと思います。
首藤委員 聡明なる川口大臣、もうおわかりだと思うのですけれども、もしこれが、まだ今確認中だとなっていますけれども、後ろから紙が回っていますけれども、これがもし確認されたら、それは平壌宣言の死を意味するということですね。外務大臣、いかがですか。
川口国務大臣 前々から大量破壊兵器の問題についてそういう御質問をいただいていますけれども、そういうことではないということも前々から申し上げてきているわけです。平壌宣言をまさに守ってもらう、正常化をすることをてこにこれを守ってもらうという過程を通じて、この問題を解決していくというのが日本の立場である、そういうことでございます。
首藤委員 それは全然違うんじゃないですか。そんな、相手の善意に期待してゆっくりやりましょうなんというんじゃないですよ。
 お互いにその時点でサインして、今まで拉致とかいろいろなことがあった、悪いことがあった、日本の安全を脅かすようなこともやってきました、もうこれからは――まだ結構です。私、まだ話していますから。もうこれからはやりませんよ、もうこれからはやりませんよというのが平壌宣言なんですよ。
 しかし、今やっているじゃないですか。まさに世界の平和にも我が国に対しても、間接的に直接的に脅威が出てきている。こうしたものに対して、どうして長い目でゆっくり見てあげましょうなんということを言えるのですか。外務大臣、どうぞ。
川口国務大臣 長い目で善意を持ってゆっくり見ましょうということを決して申し上げているわけではない。この平壌宣言を相手に遵守させる、この過程によって、このプロセスを経て問題の解決をしようということでして、どういう方法で相手に遵守を慫慂できるか、遵守をさせることができるかということについて、何も善意で黙って見ているということを申し上げているわけではないわけです。
首藤委員 いや、よくぞおっしゃった。じゃ、どういう手段をもって、例えば、どういう強制手段、あるいはどういう経済的な手段、どういう手段をもってそれが実行可能だとお思いですか。いかがですか、外務大臣。
川口国務大臣 今まで国際社会がやってきている努力、これをきちんと、委員がなさっていらっしゃるように見ていただければ、答えはおのずから明らかであるということだと思います。
 例えば、今、北朝鮮との関係では、国際社会の最大の懸念である大量破壊兵器、特に核の開発問題あるいはその運搬手段の問題等々につきましては、これはいろいろな場で、IAEAの場でもAPECの場でも国際社会が協調をしているわけでございまして、私は昨晩、ロシアのイワノフ外務大臣と電話で話をいたしましたけれども、そういう二国間の話し合いでも相互にこういうことを取り上げている。いろいろな手段をもって国際社会は対応をしようとしているということでございます。
 委員が御期待をなさっていらっしゃるように短い期間でできるかどうか、これはそう簡単な話ではないと思っております。ですけれども、国際社会が知恵を出し合ってこういった問題を解決していくということが重要であると思っております。
首藤委員 何か大学の先生のお話を聞いているようで、そういうこともあろうと思うのですけれども、ともかく、今こうした状態にある政府の立場とはとても考えられないわけです。
 さて、そのイラクの問題ですけれども、先ほどからもいろいろ話が出ていますけれども、アーミテージ副長官が来られて、日本の政府要人と話し、さらに竹内外務事務次官との会談も通じて、米軍がイラクを攻撃した場合の難民への支援、それから周辺国の安定のための支援、あるいは戦争終了後のイラクへの復興支援などというものを明確に話しているという話ですよね。これは否定されるのは結構ですが、そうしたら全部の新聞社の報道を否定するということですよね。常識から考えて、これは恐らく行われているんだろう。
 そうすると、今まで、仮定の話、仮定の話、そんなことはあり得ませんみたいな話をずっとされていて、急に今度は、復興支援をどうするかという話になっているわけですね。じゃ、今まで外務大臣は一体何を答えられてきたのか。私たちの質問に対して何を答えられてきたか。非常に不誠実だと思わざるを得ない。
 それは別として、こうした状況において、本当に目の前まで差し迫っている状態の中で、一体日本はどういう対応をしなければいけないのか。例えば自衛隊新法にするとか、それから、復興支援となれば非常に危険なところへ復興支援していくわけですから、当然PKOも新法にしていかないといけない、ROEも変えていかなければいけない、こういうような状態ですよね。そういう状態に対して、今政府ではどういうふうに対応しようとしているわけですか、外務大臣。
川口国務大臣 この問題についてですけれども、これはまさに今、まず平和的に解決をするということで外交努力を一生懸命に各国が行っている最中でして、イラクに対してはこれを、核の問題等々、国連の決議を守って廃棄をするようにという働きかけを行っているわけです。これについては、先般茂木副大臣も行かれましたし、中山、高村元外務大臣にも行っていただきました。ほかの国も今同じようなことをやっています。
 それで、万が一、そういったことにもかかわらず、イラクが重大なる違反を犯しているということが判明し、その場合は一四四一に従って国連に持っていくということでございますけれども、その先、仮に軍事行動が不可避となるという状況があった場合、この場合の対応については、これは日本は、従来ずっと言ってきていることでございますけれども、大量破壊兵器の問題、この拡散の問題というのは我が国の問題でもある、我が国自身の問題である、そういう認識をいたしまして、国際社会の責任ある一国といたしまして、どのような役割を果たすか、どのような役割を主体的に果たしていくかということについて、これはさまざまな選択肢といいますか、ありとあらゆる選択肢について、例えば難民支援ですとか周辺国の支援ですとか、そういったことを検討している、そういうことでございます。こういった、日本がこの立場を持っているということについては、アメリカ側にも伝えてございます。
 それから、復興支援につきましては、そういったような話については簡単にアーミテージ副長官との話の中では触れましたけれども、これも、いろいろ選択肢についての検討、議論はしていますけれども、具体的に何かこれを決めたということではございませんし、また、邦人の支援についてももちろんいろいろな議論をしている、そういうことでございます。
首藤委員 大臣、御答弁を聞いていると、いろいろさまざま選択肢、いろいろさまざま選択肢、この話ばかりじゃないですか。具体的に日本は何をやるんですか。おっしゃるお話は全部、だれとかさんに電話をしたとかだれとかさんが行ったという話だけで、具体的に日本政府はどういう方針を持ってやるのか。もう国の運命がかかっているときに、どうしてそんな冗漫な態度がとれるんですか。
 私が聞いているのは、幾つかの選択肢を明確に言っていただきたい、日本の国はどういう方向に向かっているのか、我々はどういう覚悟をしなきゃいけないのか。国民だって覚悟しなきゃいけないんですよ、目の前に迫ってくる、もう本当に憲法をどうするかというところに来ているわけですから。そういうことに関していろいろ選択肢をきちっと示してくれないと、いろいろさまざま選択肢、検討しています、電話していますでは、政府としての、外務大臣としての責務を果たせないではないですか。私はもう本当に、国会のこの終盤においてまだこんなことを言って、攻撃が、どんどん既成事実として積み重なっている中で、こんなことを言っているのが本当に許されない、そういうふうに思うんですよ。
 こうした状況の中で、もう一つの問題は、例えば邦人保護に関してもいろいろやっていると言われています。また、茂木副大臣も現地に行かれている。しかし、例えば外務省の中で領事移住部、前から問題になっているように、こんなに世界じゅうに日本人が散らばっていて、例えばこの間起こったように、デンパサール、バリで被害が出てくる、これからはいろいろな日本の、例えば日本人学校や日本料理店や、あるいは日本の企業がこういうことで巻き込まれていく、こういうものに対して昔の領事移住部が対応できると思いますか。外務省は、本当にそういうことに関して必死になって体勢を立て直そうとしているんでしょうか。茂木副大臣、どうですか。
茂木副大臣 久しぶりに答えやすい質問をしていただいて、まず、領事移住部でありますけれども、私も名前は古いと思います。領事移住部という概念でこれからやっていける時代じゃない。国際社会にいろいろなテロの問題がある、そして日本の渡航者もふえている、こういった中で、先日も首藤委員の御質問にお答えを申し上げましたけれども、機能の強化というのはどうしても必要だな、こんなふうに思っております。
 それで、例えば今のイラク周辺の問題につきましても、私も先日周辺国を回ってまいりましたが、そのときに、ではマニュアルはどうなっているんだ、それから今どういう訓練をやっているんだ、いろいろなことにつきまして話をしてきまして、準備等々は進めているところであります。
 それから、先ほど大臣の方からお話のありました、いろいろな日本としての今後の対応策でありますけれども、当然、難民支援それからまた周辺国支援、これはどれだけのニーズが出てくるか、こういうこともありますけれども、日本が国際社会の一員として、また、この大量破壊兵器の廃棄の問題等々は我が国の問題である、こういう立場から取り組まなくてはいけないな。
 それから、ザ・デー・アフターの問題でありますけれども、ザ・デーというのがどういう形で来るのか、これによって当然変わってくるんだと思います。ただ、申し上げられますことは、例えば今のスリランカの和平の問題、それからアフガンの復興の問題、それにつきましては、アメリカ初め国際社会から日本の対応については非常に高い評価を得ているな、こういう思いを持っておりますので、そういったことも参考にしながら今後のデー・アフターについては対応策を検討していく、こういうことになると思います。
首藤委員 今の時点ではそれしか言えないんだろうと思いますけれども、私は、スリランカやアフガニスタンの例というのは参考にならない。イラクのように、メソポタミアという、しかも世界第二位の産油国で、世界の資源の争奪戦になるところは、そういう簡単なシナリオでないと思いますけれども、これは、ともかく今後の課題として、本当に真剣に、すぐ取り組んでいただきたいと思うんですね。
 先ほども自民党の河野議員から質問がありましたように、国民に対する情報公開、また国民の代表である国会に対する情報公開が余りにもおくれている。だから、外務省が何をやっているのかもさっぱりわからないというのが現実なんですね。私たちも新聞を見て、ああ、こんなことがあったのか、アーミテージさんてこんなことまでしているのか、川口大臣はこんなことも言っているのかというふうに初めて知るわけです。
 例えば、最近というか、きのう驚嘆したのは、政府が最貧国向けODA最大九千億円の放棄というのがあります。これは債権放棄ですよね。約一兆円ですよ。一兆円に近い金がどうして簡単に放棄できるのかということですよ。もちろん、これにはいろいろないきさつがあります。今までの累積重債務国に対するいろいろな扱いもわかっています。しかし、こんなことが政府方針でぽんと出てくる。どういうことなんですか。どうしてこれを国民に対して、そして国会に対して説明されていないんですか。
 そして、その債権放棄、それはもうやむを得ないのかもしれない。もうそういう国は、国がなくなってしまったり、政府がなくなってしまったり、もう全くお金が返せなかったりして、結局不良債権なんですよ。それならば、銀行や倒産していくような企業に対して経営責任を問うているのと同じように、ODAの責任をやはり問うべきじゃないですか。外務大臣、いかがですか。
川口国務大臣 委員が、朝新聞を見て、日本政府はこんなことを考えているのかとびっくりすることがあるとおっしゃいましたけれども、私たちも同様、政府の中の人間が新聞を見て、えっとびっくりすることもあるということを申し上げたいと思います。
 九千億円の債務免除でございますけれども、これは私がきのう発表させていただきました。
 なぜこの時期にこれをしたかということで、簡単に申し上げれば、これは「変える会」の報告を得て行動計画をつくった中の一環でございまして、外務省としてはほかの省庁とお話をしながらずっと検討してきたということでございます。
 それで、より細かく申し上げたいと思いますけれども、まず、我が国は今までどういう形で債務救済をやってきたかということですが、これは債務救済無償方式ということでやってまいりました。国際的にこの方式でやっている国というのはほとんどないというのが現状でございました。それで、債務救済無償方式というのは、一回返してもらって、それをさらに無償という形で日本からまた渡すということでございます。
 したがいまして、債務救済方式を今回やりましたのは、やり方を変えたということであって、実態あるいはその中身において何ら変わるものではない。金額が変わったわけでもなければ、その対象となっている国が変わったわけでもないということです。
 それで、この背景としては何かということですけれども、これは委員の方が詳しくていらっしゃるかと思いますが、債務救済無償方式をとると、この結果として、その国に日本に対する債務がずっと残ることになります。四十年ぐらい残るというようなことになるわけでございまして、債務救済方式として非常にわかりにくいということが一つございます。
 それから、一たん返してもらうということになりますので、その返済のために、その途上国は外貨あるいは円を調達をするということが必要となりまして、これが途上国にとってなかなか大変である、その負担が大きいという問題もございます。
 それから、今起こっていることは、債務国が、IMFや世銀やそういったところと相談をして、経済政策運営あるいは貧困削減の政策、社会開発の努力、そういったことをやって、それを国際社会全体としてモニターをして、そして債務救済を行う、そういう取り組みが今行われてきていて、それが成果を上げてきているということもその背景にございます。
 ということで、先ほど申しましたような行動計画で十二月末までに結論を出すというふうになっておりましたので、関係省庁と相談をして実施をしたということでございます。実態においては全く変わりはない、債務救済の方法、やり方、これが変わった、それだけでございます。
首藤委員 もう時間がないので手短にやらせていただきます。
 変わりないとおっしゃいましたけれども、それは技術論ですね。国民の立場からすれば、非常に関係があるんです。債務返済無償でいくか、こういうふうに債権放棄にするかということは、要するに国民の財産が永遠に戻ってこないという決定なんです。ですから、このことに関しては、きちっと国民的な論議が必要だということを申し述べさせていただきます。
 そして、この臨時国会の最終に当たって、この臨時国会で起こった最大の問題というのは、言うまでもなく小泉総理のピョンヤンへ飛んでの平壌宣言でありました。私は、これはもう時期尚早で、十分な準備ができないまま行われた、まさにパンドラの箱をあけてしまった、そういうふうに思います。現在の日朝関係が今また非常に閉塞状態に戻りつつある。今の世界は以前よりももっと危険な状態の中で、こうしたことは非常に好ましくない状態だと私は思っています。
 しかし、今この段階に至って、批判だけしていても、もう先へ進まない。ですから、外務省としては、田中局長もおられますけれども、ここに至っては、もう本当に全力を挙げて、いい外交を展開していただきたい。いい外交というのは何か。それは、もう我々が知っているように、外交にはビッグヒットもなければ、みんなが拍手するような外交はございません。すべての人に不満な外交はいい外交とよく言われるように、外交というのはそうした厳しさを持っているものです。
 外務省は、そのメンツをかけて、あるいは国民の負託を受けて、外務省として全力を挙げて、この問題の解決に取り組んでいただきたい。それを申し述べて、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
池田委員長 次に、中川正春君。
中川(正)委員 民主党の中川正春です。
 この臨時国会も、委員会、きょうで最後の議論になるわけですが、本当に精力的に委員会の開催をしていただきました。特に、今村筆頭理事には、そうした問題意識をしっかり持っていただいて、議論が大事だという認識のもとに御協力をいただいたことを、この場をおかりしまして改めて感謝を申し上げたいというふうに思います。
 それはそれなんですけれども、冒頭、一つ、青山健熙さんの参考人質疑のことについてコメントがありましたので、これは私としても反論をさせていただきたい。
 私たちの意図ということを十分に理解していただいておったと思うんですが、それが何か自分の立場を正当化するために曲げられた議論になってしまって、非常に残念なことに思います。
 なぜ青山健熙という元工作員の参考人質疑を求めたかということなんですが、これは一つの外交戦略だと思うんですね。きのうも安全保障の委員会の方でドイツ人医師のフォラツェンさんが証言されていましたけれども、ああした閉ざされた国にとっては、情報開示をして、何があの国の中で起こっているのかというのを外からしっかり攻め込んでいかないと、例えばドイツが解放されていったときのようなプロセス、あるいは、非常に人権がじゅうりんされて、次々と新しい証言が出てきておりますけれども、そうした国に対する対応ということの中では、やはり、マスコミが日本で果たす役割あるいは世界のマスコミがそれを報道していくということ、このことがいかに大事かということがあると思うんです。
 そういう意味で、普通は、脱北者であるとか、あるいは日本の大使館等々がひそかにこちらへ向けて救出をしてきた、日本の政府もかんでいる、そうした人たちが、人質、いわゆる身内というのを北朝鮮に残したままで公で証言をするというのはよほどのことなんです。方々に当たっても、なかなかこういう人たちの証言が得られない。
 しかし、現実に証言があった場合にはいかに大きなインパクトがあるかということ、それが北朝鮮の国内に対してさらに大きな流れとなって影響をしていくということ、それが日本の求めていく外交に対しても非常に大きな効果があるということ、そんな相乗効果ということを念頭にしながら、私たちはやはり参考人として質疑をすべきだという主張をしました。
 これを理解していただいたんです、一たん。理解していただいて、その合意を得て、正式に委員会で決まるということまでいきまして、その段取りでいたのが、急に前日になってその話がひっくり返されたというのは、これはそれぞれなぜかという問題が起きるわけでありますが、外務省自身が、外務省に対して不利な発言もその中には含まれているんではないかというふうな、もし、そういう矮小化されたといいますか、その見方の小さなもので筆頭理事にお願いをしたとすれば、それは本当に悲しい話でありまして、また、その話に乗って、それをやめましょうという判断をされた、その判断の根拠というのは全く間違っている。国会としての役割を履き違えた形の中で、政府に対して与党がへつらうという形でのみ国会が運営されるとすれば、それは非常に寂しい話であるというふうに思っております。
 さらに言えば、委員長の意思を確認もせずに直接事務局を動かそうとした、事務局もそれに対して動いたということ、こんなばかな話はないんでありまして、そういう意味で、委員長が注意を喚起したということについては、私は心から支持をしたいというふうに思っております。
 以上、反論をさせていただいた上で、質問に入っていきたいというふうに思います。
 まず、先ほどからイラクの問題が出ていましたが、アーミテージさんに具体的な、さっきの副大臣のお話であったザ・デー・アフターの議論までして喜んでいただいたというコメントがございました。
 なぜこのザ・デー・アフターを想定していくかというと、基本的にはアメリカの認識があると思うんですね。テロから始まったというよりも、イラクの体制、サダム・フセインという独裁者に対してこの体制をひっくり返していくということ、いわゆるこれの体制を否定していくというその意思がアメリカの中にある。少なくともブッシュ政権の主軸の中にこの考え方がある。これを世界が察知し、恐らくは川口大臣もそのことを認識されているからこそ、国際社会の中で議論をしていくべきだとはいうものの、どうもこれは最終的にはいわゆる武力行使があるなという想定が出てくるんだと思うんですね。
 私は、一番最初にやはり日本としてはっきりさせなきゃいけない、日本の意思、主体性を言うんであれば、はっきりさせなければならないと思うのは、今のイラクのサダム・フセイン体制に対して日本がどういうスタンスをとるかということだと思うんです。今のアメリカのブッシュ政権と同じように、このサダム・フセインの政権というのを否定していくのか、それとも、そうじゃなくて、あの政権というのはやはり持続をさせていくべきなのだということを前提にした外交政策なのか、ここのところが日本の場合ははっきりと意思表示ができていないということ。そこがなかなか日本の意思が見えてこないんだと思うんですね。
 改めてお尋ねをします。ここは、日本として、日本政府として、どういう見解を持っているんですか。
川口国務大臣 日本政府の基本的な考え方というのは、ある国の国民がどういう政府を持つかということについてはその国民が決めるということであると私は思います。
 もちろん、その結果として生ずる例えば暴力の行使等、これはイスラエルやパレスチナ政府に対して日本がしょっちゅう働きかけていることですけれども、そういうようなことが起こった場合には、それについて問題があるということは言っていくわけですけれども、基本的に、どのような政府をその国民が志向するか、それは、日本政府が好きとか嫌いとかそういうことを言う問題ではなくて、その国の国民が決めるということでございます。
中川(正)委員 もっと具体的に、言い方を変えます。
 サダム・フセインという政権がイラクで持続するということが、中東の安定と平和につながるんだというふうに日本政府は考えているのかどうか、日本の国益に対してそれでいいんだということを日本政府が考えているのかどうか、これについてはどうですか。
川口国務大臣 日本の国益というのは、まず、日本が平和で安定をしているということですけれども、それは、ひいては世界の国々が平和で安定的であるということであると思います。
 特に、中東地域というのは、我が国が石油の八八%ぐらいを、かなり多くを今中東地域から買っているということでございますから、数字自体は間違っているかもしれませんけれども、そういう記憶がございますので、そういう意味で、中東地域が平和であって安定をしているということは我が国にとっては非常に重要であると思います。
 それで、そこの地域についてどういうような政権が望ましいかということは、これは先ほど申しましたように、我が国として判断をするということではなくて、それぞれの国の国民が自分たちで決めるということであると思っております。ただ、我が国にとっては、平和で安定的な状態が好ましいということだと思います。
中川(正)委員 国家としての意思がないということだと思うんです、さっきの答弁は。そこが非常に日本の外交自体が問われるところでありまして、まさに今回もそうしたことが如実に出てきた。あとは、その意思がないままに、アメリカが動いてくる、そのアメリカが動いてくることに対して追随をしていく。追随をしていくということであるものですから、さっきのザ・デー・アフターの議論も、何を言っているかというと、いわゆる復興支援ということを中心にしたオプションを考えていこうということですね。
 ところが、日本の国益から考えると、これはアフガニスタンの場合もそうだったんですが、何が一番大事かといったら、サダム・フセインが消えた後どういう政権がそこにできるかということ、その政権が日本に対してどういうスタンスを持つかということ、この議論に日本が入っていかないと、ただ金を出して終わりですよ、あるいはお手伝いして終わりですよということになるんですね。アフガニスタンのときも、やはりそこへ向いて入り込もうとして、できなかった。結局のところは、日本でやった会議というのは復興支援の会議であったということなんですね。
 言葉をもっと厳密に使わなきゃいけないんでしょうけれども、ネーションビルディング、もう復興支援じゃなくて、政府をつくり上げていく過程の中でどういう意思表示をアーミテージさんにしたのか、ここのところはどうですか。
川口国務大臣 先ほど茂木副大臣が別な委員に対してお答えをしましたように、我が国として、例えばアフガニスタンですと二十三年、スリランカですと十九年という長い間戦乱に巻き込まれて疲弊をした地域あるいは国があるわけです。そういったところ、そういった国に対して、それが国際社会の責任ある一員としていい国になっていく、その支援をするということが我が国にとっては重要であり、かつ、今また、まさにアフガニスタンで育ったケシの花がロンドンの町の中あるいはロンドンの若者に大きく影響を与えるというような、密接に世界がつながっているという状況においては、アフガニスタンが平和である、あるいはその戦乱に巻き込まれた地域が平和で安定的に発展をしていくということがまさに我が国の国益である。そういう観点で、我が国は、その平和の定着、平和の構築といったことに主体的にかかわっていく、そういう考え方で進めているわけでございます。
中川(正)委員 恐らく、どういう枠組みの中で次のイラクの体制を話し合っていこうかということさえも提案をしていないんだというふうに思うのですね、さっきの答弁からいくと。本当に一般的な話でしかないわけでありますから。だから、アフガニスタンのときもそうですが、そこの部分では日本は仲間に入れてもらえなかった。結局、東京会議でやったのは、さっきの、それぞれがNGOをしっかり使いながら復興支援をやりましょう、そういう一番無難なところで終わってしまっているということ。
 これは、さっきもイラクの議論の中で出ましたけれども、イラクというのは第二の産油国なんですね。その中で、石油利権も含めたいろいろな権益が渦巻いている。その中にアメリカの戦略がある。そうした背景の中で今イラクが動いているにもかかわらず、もしさっきの話が政府見解であるとすれば、日本の議論というのは余りにも情けない。日本の国益というのを全然論じていないんですよ。そこのところを指摘しておきたいというふうに思うのです。
 もし具体的にあるのなら、今はっきり言ってください。
茂木副大臣 日本の国益を全く考えていないのではないかな、こういう厳しい御指摘もあるのですが、先ほど大臣の方からもありましたように、例えば、中東地域に対する日本のエネルギーの依存度、非常に高いわけであります。これをどうしていくかという問題はあります。それは現実の問題としてある。
 さらに言いますと、そういった意味も含めて、中東地域の平和と安定というのは我が国の平和と安定に直結する問題だ、これぐらい明確に言っている国はないと私は思うんです。そういった中でどんなことができ得るか、周辺国の支援であったりとか復興支援についても検討していく。
 ただ、デー・アフターの問題については、そのデーというのがどういう形で、どういう形式で来るかによっていろいろな対応が違ってきますねと。そこの中で申し上げましたのは、例えばスリランカの和平についても、それからアフガニスタンの復興につきましても、東京会議をやる前から、ロヤ・ジルガの仕掛けであったりとかいろいろな関与をしていますよ。そういう中で、勝手にアメリカにやられて日本は後からついていく、そういうことではなくて、国際社会の一員としてやるべきことはきちんとやっていく、そういう方針は変わらないと思っております。
 それから、フセイン政権についても、フセイン政権という漠とした話ではなくて、我々としては、やはり大量破壊兵器を保有したりそれを拡散するような国は困る。大臣が先ほど申し上げておりますように、国際社会の一員として、しっかり安心できて、それから責任も役割も果たせるような国になっていく、そういうイラクを望んでいるということは当たり前であります。
中川(正)委員 実際に腹が決まっていないというか、きれいごとを並べて国家の意思が表明できるという時代はもう終わっているんだと思うんですよ。だから、言うべきことはしっかり言う、それで世界観というのをはっきり持つ、そういう意思表示をやはりやるべきだというふうに思っています。
 そこのところを指摘しておきたいと思うんですが、これから具体的な国連の議論を踏んでいく中で、ただ国際的な枠組みの中で話し合いをすればいいんだというんじゃなくて、日本がその中で何を主張するかというのは一言もまだ出ていない。それを言うんですよ。そこのところをしっかりと表明しないと、次のステップの中でネーションビルディングの中にも入り込めないし、その中で中東に対して本当に平和的な影響力を持っていくということもできないんだ、このことが同じ過ちの中で繰り返される可能性があるということを改めて指摘しておきたいと思います。
 次に、北朝鮮の問題でありますが、ここもよく似た構造があるんですけれども、これは今拉致の問題でデッドロックになっていますが、デッドロックというのは、国交正常化ということを前提にしてデッドロックだということだと思うんですね。しかし、国交正常化するしないにかかわらず、日本はこの国とつき合っていかなければならないということであるとすれば、その国交正常化以外のさまざまな外交オプションというのがもっともっと具体的に出てきていいと思うんですね。
 まず、これもまた基本認識なんですが、この金正日という体制、これは日本にとって、この体制を持続していきながら何やかんや言ってつき合っていくということが正しいことなんですか。それとも、いや、もうこの体制はどういうふうにつき合っていっても、いわゆる国交正常化してもしなくても、この体制がある限りアジアの平和は来ないんだというふうな基本認識に立って進めていくという方法。私はどっちかというと、後者の方が正しいと思うんですけれども、これをまずお聞きしたいというふうに思うんです。
川口国務大臣 北朝鮮が我が国の隣国であるという事実、そこの中における政権が、まさに今委員もおっしゃったように、さまざまな不透明性を持ち、必ずしも我が国と基本的な価値、考え方を共有していない国であるという事実はあるわけでございますし、それが国際的に見て、現在この地域で安全保障上の不確定性が高まっている状況にあるという一つの原因であるという認識はあると思います。
中川(正)委員 だから、金正日体制が変わっていくということに対して余り期待せずに、いかにこの体制を弱体化して、最終的には政権を交代させるというふうな流れに持っていくということ、このことが正しいんだろうというふうに思うんですね。
 こういう状況が起きてきたときには、国内からもさまざまな反対運動が起きてきたり、民主化運動が出てくるということは普通だと思うんですよね。ところが、それができないまでも国内の情勢というのは本当に異常な形になっているということ、ここですね。
 それで、食糧支援の話が先ほども出ましたけれども、これとて、ああいう形で民間から入ったものも、いわゆる金正日体制を強化して、それを武器にまた民衆を統治するというふうな形に使われていって、本当の意味で北朝鮮の国民がそれをもって人道的に救われる、そういうことになっていないということ、それにさらに追い打ちをかけるということについては、これは外交的にも間違っているということで、はっきりとそういう意思表示をしていただいた、これは正しいというふうに思うんです。
 さはさりながら、しかしもう一方で、国民に対して直接何らかの形で民主化を促していくようなさまざまな手当てというのはあるはずなんですよ。それを、何も提案もなし、あるいは考え方、あるいは民間の動きへの援助、こういうこともないままに、ただただ話し合いが進まないからそこでとまっていく、そういう筋合いの話ではないんだろうというふうに思うんですね。そういう意味で、ここをどう認識されているか。
 私は、後ほど、私自身で考えているさまざまな具体的な手だてというのを、ぜひやっていただきたいということで提案もさせていただきたいというふうに思うんですが、外務省としてはどうですか、その辺のオプションというのはどんなようなものがあるというふうに考えておられますか。
川口国務大臣 今我が国は、日朝平壌宣言を署名し、それを守り、そして国交正常化交渉を進めていく、そういう立場で行っているわけです。それで、これについて、国交正常化が可能になるまでの過程で、さまざまな二国間の問題あるいは安全保障上の問題といった多国間の問題を解決していかなければいけない、これに解決がなければ国交正常化交渉は妥結しないということでございますから、包括的にこれらの問題を解決していくということが我が国の今考えていることであるわけです。
 それで、国交正常化が行われるということを通じて、北朝鮮が二度とさまざまな問題、拉致の問題ですとか工作船とか麻薬とか、そういったことを起こさない国になり、そして委員のおっしゃる、人々にさまざまな情報が行く、人々が情報を持って判断をすることができる、そういった国に北朝鮮が変わっていくということを期待している、そういうことでございます。
中川(正)委員 期待をしているという答弁をいただくんじゃなくて、具体的にそのオプションを考えるときだというふうに思うんですよ。
 例えば、さっきの情報戦ということから考えたら、今実際に北朝鮮と行き来している人たちがいる。日本の雑誌だとか新聞だとかというふうなものが、その人たちを通じて、あるいはまた北朝鮮と中国の国境地帯、もうこれは今、川が凍り始めておりますが、難民あるいは脱北者という名前で今呼ばれていますけれども、それ以外にもさまざまに商売で行ったり来たりでやっている人たちも現場にはいるんだというふうなこと。
 そんなようなことを踏まえて、さらに戦略的に情報を向こうへ向いて流すような話を、例えば、その中で活動しているNGO等々を含めて、その人たちを支援していくことによって現実のものにできないかというふうなことであるとか、あるいは、先ほども難民の問題が出ましたけれども、普通こういう国が崩壊をしていく過程というのは、中から民主化運動ができなければ、やはり外からの核をつくっていくということなんですね。
 残念なことに、南の方、韓国の方に出てきている人たちというのは、みんな人質を北朝鮮の方にとられていて、そういった意味では、基本的な立ち上がりといいますか、そうした運動に関与をしていくというところまでなかなかいかないという現実もあるかもしれません。
 しかし、中国の中へ向いて出てきている難民、これはさまざまな数字が挙げられていますけれども、少なくとも三十万人ぐらいは今いるんだろうということ、こういうところをいかに助けていくか。そういう人たちに対して、日本が中国をも説得して、韓国やアメリカと連携をしながら、いかにそうした芽をしっかりと育てていくかというようなアプローチ、こんなことがさまざまに考えられるわけなんですね。
 そういうことを前提にして、基本的には中国なんだろうと思うのですが、中国自体も何らかの形で今の情勢の打開というのをしていくような認識に持っていくまで、私は、日本としては、はっきりと中国に何回も何回も具体的な提案をすべきなんだというふうに思うんです。
 先ほど、微妙な話なのでということで、中国の問題については答弁を途中で打ち切られましたけれども、さらに改めて聞きたいんですが、中国を巻き込んでいけるオプションがあるとすれば、北朝鮮に対して政策の具体的なものがあるとすれば、日本としては何だというふうにお考えですか。
川口国務大臣 中国は既に、北朝鮮の状況、問題については多大な関心を持っていて、それをさまざまな折に意見として公表している、また、表には出ていない中で、北朝鮮に恐らくいろいろな伝え方もしているだろうと思います。そういう意味で、中国は既にこの問題には、日本と同じ、協調して考えていこうというポジションにあると私は思います。
中川(正)委員 ぜひ、難民キャンプという名前にしていいのかどうかということも中国の立場としてはあると思うんですが、中国の国境付近で、今の脱出してきている人たちに対してのアサイラムというか、一つの基本的なセンターみたいなもの、こういうものを構築しようと。難民と言ってしまえば中国の立場があるというのも私もよくわかっているので、その辺の芽を出すことによって一つの新しい動きになる。
 日本は結局、武力でもって金正日をおどして、そして何とかそれをひっくり返す、そういうスタンスは、アメリカのような形ではとれないわけですから、そうでないとすれば、やはりポイントは、そうした形で中国と連携しながら、この問題について日本の具体的な貢献というのを提案していくということになっていきます。そこのところを改めて可能性を探っていただきたい。そんな中で、日本がもっと積極的に北朝鮮の問題についてコミットがしていける筋道といいますか、具体的なやり方というのはさまざまにある。それを見せていただきたい。そのことを改めてお願いを申し上げておきます。
 それからもう一つ、FTAなんですが、ASEANについてこれは交渉が始まったというふうにも、この間具体的な説明をいただきました。
 それで、ここで二つ質問をしたいんですけれども、本来は外務省は、このFTAについては否定的な見解を持っていました。日本の場合はWTOでいくんだ、その基本的な見解が百八十度変わりまして、中国がぽっと動き出したら、いや、シンガポールを含めて日本もやりますよというふうな話で方向転換なされた。
 しかし、この方向転換をしたことについて、外務省から全然説明がないんです。前に、FTAはだめなんだ、WTOでないとだめなんだ、こうしっかり言っていたのが、いつの間にか全く逆さまなことをやっているのに、これはどうしてなのかという説明がない。これは正式に、日本の戦略としてこれからこうなんだという話はやはりやっておくべきだというふうに一つは思っています。
 それからもう一つ、これは今からさまざまに話が進みますけれども、具体的にASEANになっていますけれども、基本的には国内問題なんですね。各省庁、どのように外務省が役割を担いながら国内をコントロールしていくのかということ、今の外務省の立場をどう考えているのかということですね。これについて答弁をしてください。
茂木副大臣 まず、FTA戦略について全く説明がないというお話でありますけれども、実は、先日のこの委員会でも、十月の十六日に外務省としてFTAの戦略について発表させていただいた、そこの中に新しい概念として、包括性、機動性、選択性の話、それから、今までの経済的な利益だけではなくて、政治的な側面も含めたトータルのパッケージを出しましたと、そうしたら答弁が非常に長いとおしかりを受けたわけでありますが、幾らでも説明はさせていただきますし、そういったパッケージとしてもお示しはしている、そういうつもりでおります。
 それから、中国が言ってからやったということでありますけれども、御案内のとおり、一月に総理がASEAN訪問の際も包括的経済連携協定について発表もされている。確かに、他国の動き等々も考えながらFTAというのは考えていかなくちゃいけない、さらにはEPAというものを考えていかなくちゃならない、こういう問題でありますけれども、決してどこかの国に追随している、こういう思いはございません。
 そこの中で、WTOでいいますと、参加国がふえている、そして扱う課題も、貿易財だけではなくてサービスであったりとか、いろいろなイシューもふえてきている。そうすると、WTOは重要ですよ、しかし、WTOを動かしていくためにも、二国間であったりとか地域間であったり、そういう中でFTA等々を考えながら車の両輪としてやっていく、こういうことが必要ではないかな、これが今の外務省の見解であります。
 そして、どこの省庁よりも早く、しっかりしたパッケージでこのFTAを提示させていただいた、これはまさに外務省でありまして、こういった政策オプションを提示していく、このことがこれからの外務省の非常に大きな役割だと思っておりますし、それを軸にしまして他省庁間の調整もやっていく、こういう役割も担っていきたい、このように考えております。
 それから、先ほどの関連で、外務大臣は必ずしも難民ということに言及してのお話ではなかった、こういうふうに私は後ろの方で聞いていて感じました。
川口国務大臣 今茂木副大臣がおっしゃってくださったので、念のためですけれども、中川委員の先ほどの質問について私がお答えをしましたのは、北朝鮮問題全般についての中国との関係について申し上げたということで、念のために申し上げたいと思います。
中川(正)委員 時間が来ましたので終わりますが、各省庁、これからすごい抵抗ですから、さっきの話というのはしっかり本物にしなきゃいけないですよ。
池田委員長 次に、達増拓也君。
達増委員 イラク戦争がもうすぐ始まるのではないかという雰囲気の中、日本政府がイージス艦のインド洋派遣を決定しました。今、改めて日米同盟のあり方というのを考え直さなければならないんじゃないかと思います。
 特にこう思ったきっかけは、きのうの朝の毎日新聞を読んだときなんですけれども、「イラク攻撃……対米支援の狙い 同盟重視の政治決定 イージス艦派遣」という見出しでありまして、どうもこういう形で話が進んでいくのはよくないなと思いながら本文を読み始めたところ、「日本はイージス艦を派遣する。イラク攻撃の間接支援になる」、「山崎拓自民党幹事長は東京都内でファイス米国防次官に断言した。」イラク攻撃の間接支援になると断言したのだそうであります。同席していた「額賀福志郎幹事長代理、中谷元前防衛庁長官らは「こんなことを言って大丈夫なのか」と目を白黒させた」とありますが、目を白黒させなくていいような詰めた議論を政府・与党内でもしていただきたいと思います。
 そもそも日米同盟とは何か。その法的根拠は、言うまでもなく日米安全保障条約にあります。日米安全保障条約、そんなに長い条約ではありません。しかも、そのエッセンスは五条と六条のこの二つであります。
 五条は「共同防衛」として、各締約国は、日本とアメリカであります、日米は日本国の施政のもとにある領域におけるいずれか一方に対する武力攻撃があった場合に共同防衛する。つまり、日本の領域内で日米いずれか一方に対する武力攻撃があったときに共同防衛をすると約束しているわけです。つまり、これは日本の領域内における共同防衛の約束。それが第五条。もう一つ約束していることは、第六条「基地許与」でありまして、日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ軍が日本の中にある施設や区域を使用してもいい。そういう極東の平和と安全のために、アメリカ軍が日本の中で基地や区域を使ってもいい。安保条約が約束していることはこの二つであり、いわば日米同盟として日米両国が約束していることはこの二つに尽きるわけです。
 確認しますと、日本の領域内における、自由党としてはここは周辺事態も含めたいと思っております。自由党の解釈では、周辺事態というのは、日本そのものが攻撃を受けるおそれがあるような、そういう脅威が切迫している場合のことですから、日本の領域内における武力攻撃に準じるものという理解で自由党は周辺事態法に賛成しているわけでありまして、周辺事態も含めて、日米同盟というのは日本の領域内と周辺における軍事協力を定めている。したがって、日米間の集団的自衛権の問題というのもその範囲内の問題のはずなんです。
 だから、アメリカがキューバと戦ったとき日本が応援に行く必要があるかという問題は、日米安保条約上出てきっこない。だから、日米安保条約上、集団的自衛権の問題も、日本の領域とその周辺の範囲内でのことなはずであります。アメリカの日本における基地使用の問題まで含めたとしても、せいぜい極東の範囲内。したがって、極東の外における日米の軍事協力というのは日米同盟には含まれていないはずなんですね。
 ですから、日米同盟、同盟国だからということを理由に、インド洋でありますとか中東でありますとか、そこに自衛隊を派遣するということはおかしいはずなんです。日米同盟というのは、日本とその周辺、せいぜい視野を広げても極東の範囲内におけるリージョナルな、地域的な同盟であるということを政府に確認したいんですけれども、よろしいでしょうか。
    〔委員長退席、中川(正)委員長代理着席〕
海老原政府参考人 大臣が御答弁になる前に、私からちょっと同盟関係という言葉の意味につきまして御説明をさせていただきたいと思います。
 今、達増委員の方から日米同盟関係というのは日米安保条約に基づくという御発言がありましたけれども、確かに、日米同盟関係というのは日米安保条約に基づく日米安保体制というものを基盤としているということは、もう間違いないと思います。
 ただ、この同盟関係という意味がどういう意味かということにつきましては、今までも国会でかなり議論がございまして、これにつきまして、政府の方は一貫いたしまして、日米安保条約に基づく日米安保体制を基盤とする、軍事的な意味に限らない政治的、経済的その他あらゆる面における緊密な協調関係、その一般的な日米の協調関係というものを指して日米同盟関係というふうに申し上げてきているわけでございます。
 その同盟関係の一環として、テロにどのように協力して対処していくかということも入るわけでございまして、テロ特措法というものは、これも特措法の審議のときにいろいろと御答弁申し上げましたけれども、これは日米安保条約とは直接の関係がないというものでございまして、そういう意味におきまして、同盟関係の中で、今あの地域において日米が共通してテロの脅威と闘っているということ自体は何の矛盾もないというふうに考えております。
川口国務大臣 基本的に同じことを言おうと思っておりまして、日米関係というのは軍事的な関係だけではない、もっと広いものである、そういうことをちょっと申し上げたかったということです。
達増委員 日米が同盟国だから、貿易摩擦についてもこじらせないようにしようとか、経済関係について、あるいは地球環境問題のようなグローバルな問題にも協力して取り組みましょう、そういう広がりを意識して日米同盟という言葉が使われるケースもありましょう。ただ、事軍を動かす場合に、そういう漠然とした空気のような、ムードのような議論でやってはいけないので、やはり、どういう同盟なのか、どういう軍事協力を今まで約束していて、そしてこれからやろうとしているのかという話は詰めてやっていかなければならないと思うんですね。
 特に、NATO諸国との比較の場合、NATO諸国は、北大西洋条約、NATO条約上の義務として、集団的自衛権の行使としてアフガニスタン戦争に参加する。そういう意味で、既にある、ふだんから明らかにしている国際的な取り決めに基づいて軍事行動を起こしている点、非常にわかりやすいところがある。
 ところが、テロ特措法に基づく自衛隊の派遣、なかんずく護衛艦、これはミサイル駆逐艦であったりするわけですが、そういう護衛艦の派遣については、おっしゃるとおり日米安保条約に基づくものではない、我が国が主体的に行う活動だということでやっているわけです。我が国が主体的に行う活動、何となくそれはいいことのように内外でここ一年ぐらい受けとめられているようですけれども、例えば自主外交というのは何かいい響きがありますよね、ただ、自主軍事行動というのはいかがなものかと思うわけであります。
 我が国は我が国の判断で主体的に自衛隊を派遣しているということであれば、実はそれは国際法的にはアメリカと同じ程度に、ユニラテラルに、単独主義的に軍事行動をしているということになるんですね。日米安保条約に基づくものでもない、また国連の決議に直接基づいてやっているわけでもない、あくまで我が国が主体的に判断して主体的に軍をあの地域に送っているというのは、実はアメリカもそういう理屈でやっているわけです。アメリカも、別に国際法上の取り決めがあってアフガニスタン戦争をやっているわけじゃないし、国連の決議に直接基づいてアフガニスタン戦争をやっているわけではない。これはアメリカのテロとの闘い。ユニラテラルに、単独主義的にやっているわけですけれども、実は理屈は同じなんですね、日本がやっていること。そして今、その延長、同じ理屈でイージス艦を派遣しようとしている。
 これは防衛庁に伺いたいと思うんですけれども、確認しますが、テロ特措法に基づく自衛隊派遣というものは、これは日米安保条約に基づくものではなくて、我が国独自の主体的判断と決断による活動だということでよろしいですか。
守屋政府参考人 お答えいたします。
 今般のイージス艦を含めまして自衛隊の艦艇のインド洋への派遣は、先生御指摘のように、日本の国会で成立されましたテロ対策特措法に基づくものでございまして、安保条約との関係であるものではございません。
 よく御承知のように、この法律は、昨年九月十一日の米国におけるテロ攻撃が国連安保理決議により国際の平和及び安全に対する脅威と認められたことを踏まえまして、さらには累次の安保理決議が国際テロリズムの防止等のために適切な措置をとることを求めていることにかんがみまして、我が国としてそういう国際社会の取り組みに積極的かつ主体的に寄与するためのものである、さらには我が国を含む国際社会の平和及び安全の確保に資するということが法律の目的に書かれているわけでございます。
 このような我が国の自衛隊の活動でございますが、我が国が同法に基づき行う対応措置の対象も、国際の平和と安全の維持といった国連憲章の目的の達成に寄与する諸外国の軍隊等の活動とされている、こういう理解でございます。
達増委員 いろいろ国連決議をたくさん並べていただきましたけれども、同じ理屈で、それだけけしからぬということになっているのでアメリカとしては戦争に訴えるという、ユニラテラルな、単独主義的な行動をアメリカもしていて、日本もやっている。ただ、質的に、日本の場合は武力行使に至らないからいいんだという理屈でやっているんでありましょうが、この武力行使に至らないという話も、日本国憲法解釈の非常に固有な、日本国内固有な議論でありまして、武力行使になるかならないかという詰めた議論は、諸外国ではほとんどこれは関係ない話でありましょう。
 日本の護衛艦というのは、国際的には駆逐艦、デストロイヤー、ぶっ壊すものという意味ですけれども、そういうものでありまして、それをインド洋に出す。しかも、今度は世界最新鋭の、ミサイル駆逐艦と呼んでもいいんじゃないでしょうか、イージス艦を出す。アメリカは多分、同盟国だからやってくれているという感覚なんでありましょう。アーミテージ・アメリカ国務副長官が来日して日本側と調整しているときも、そういうつもりで、ああ、今度はイージス出してくれるんですかという、そんな感じで、同盟国だからやってくれるんだろうという感覚でやっているんだと思います。
 これは他の国々が周りから見ていても、安保条約の中身なんというのは世界の普通の人は知らないですから、日米は同盟国らしいのでそういうことをして当たり前と思って見ているのかもしれませんが、実は日米間の軍事協力をめぐる取り決めというのは安保条約の次元にしかとどまっていない。そういう安保条約でさえ、いざ実行に移そうというときに、日本の有事法制が不整備であるとか、周辺事態法もいまいちだとか、実際には機能しないんじゃないかという議論が九月十一日以前には行われていたわけであります。
 したがって、日米が同盟関係として、同盟国として協力して、中東であるとかインド洋であるとか、そういったグローバルなステージでも軍事協力をやろうというのであれば、きちんと国内でそういう議論を詰めて、そしてアメリカともこれからそうしようと話し合って、日米安保条約を改定して、日米安保条約にグローバルな協力を盛り込んで、きちんと法整備、制度化した上で日米同盟をグローバルな軍事協力に拡大していくのが筋じゃないかと思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。
川口国務大臣 まず申し上げたいのは、テロとの闘いについて、こういったようなグローバルな問題に日本が対応しているというのは、まさに国際社会の責任のある一員として、国際社会が課題だと考えている、問題だと考えていることに対して対応するということが日本の基本的な政策である、そういうことからきているわけです。そして、具体的にそれに対応する、行動をする状況で、これは安保体制を通じて同盟国の関係にあるアメリカと緊密に連携をとっていくということは自然な話であると私は思います。
 いずれにしても、日本がテロに対しての対応等々やっていく場合には、日本は法治国家ですから、国内で法律をきちんとして、その法律に基づいて行動をしているということであるわけです。テロ特措法というのはその一例である、そういう考え方の整理であると私は考えております。
 それで、今そのために安保条約を改正する必要があるかどうかということについては、そういう意味で、例えばテロ特措法と安保条約は、先ほど北米局長が言いましたように、これは別なものであるということでございまして、テロ特措法のもとで活動を、さっき私が申し上げましたような論理で活動をするに当たって安保条約を改正する必要はない、そういうことだと思います。
達増委員 私も、安保条約を改定するというのは時期尚早で、日米安保だけ改定してもグローバルな自衛隊の軍事行動というのは難しいわけでありまして、例えばシンガポールとも取り決めを結んでシンガポールの基地を使わせてもらうとか、あるいはインド洋周辺でも基地を使わせてもらうとか、そういうグローバルに自衛隊の活動が展開し得る基盤があってアメリカとのグローバルな協力もできるのでありましょうから、そういう意味で、今の自衛隊はかなり背伸びをしているんじゃないかなというふうに思います。
 日米の同盟関係については、九月十一日、去年のテロ以前にも、ミサイル防衛構想をめぐって、実は、日本固有の防衛のための防衛協力というところを超えて、北朝鮮からアメリカに向かう大陸弾道ミサイル、これを日本のミサイルで撃ち落とすというような、ややこれはグローバルに近いと思うんですけれども、そういう新しい防衛協力、軍事協力ができないかみたいな議論があって、それで去年五月八日、アーミテージ国務副長官が日本側の意見を聞きに来日されたわけですけれども、小泉内閣は意見をまとめておくことをせず、あまつさえ外務大臣がアーミテージ氏と会うことを拒否するといった、そういう日米同盟関係のあり方についておよそほったらかしのような状況で小泉内閣はスタートしていたわけであります。
 そんな小泉内閣が、去年の九月十一日、突如、ショー・ザ・フラッグというスローガン、これも日本内部のでっち上げという説が今通説になっていると思うんですが、そういうショー・ザ・フラッグというスローガンで突如グローバルな日米軍事協力に踏み出して、今戦火がイラクに及ばんとするに至ってイージス艦を出すという、非常になし崩し的な、原理原則なしの軍事行動拡大ということを日本が主体的にやっている。これは非常に危険なことだと思います。
 そこで防衛庁に確認したいんですけれども、このイージス艦というものの性質なんですが、イージス艦はミサイル防衛構想の一翼を担うものとして、飛んでくるミサイルあるいは発射されつつあるミサイル、そういったものに対する防衛もできるものということで研究や議論が行われ始めたし、今も行われていると思うんですが、それでいいでしょうか。
守屋政府参考人 私どもの現在持っておりますイージス艦が弾道ミサイル防衛対処能力を持っているかということにつきましては、事前に弾道ミサイルが発射されるというような兆候を得ているような場合には、イージス艦のレーダーを一定の方向に指向させたりすることによりまして、弾道ミサイルがどの方向に飛んでいっているかということを探知することは可能でございます。
 ただ、では、今私どものイージス艦が保有しているミサイルでこの弾道ミサイルを撃ち落とすことができるか、こういうことにつきましては、現在のところ、対処能力は有しておりません。アメリカのイージス艦も同じでございます。
 それで、先生御指摘のイージス艦をミサイル防衛に活用することを考えているかということでございますが、これは現在、アメリカでイージス艦の能力アップということで研究が進められているところでございますが、まだ開発試験の途上にありまして、実用化にはまだ時間がかかる、こういうことでございます。
達増委員 冒頭紹介した毎日新聞の記事によりますと、「米政府関係者の中には「北朝鮮への警戒を優先すべきだ。日本が四隻しかないイージス艦を無理して派遣する必要はない」との声も出ていた。」というふうに書かれております。
 私も、北朝鮮が日朝交渉の中で今、ミサイル発射をするかもしれないと言ったりしているわけでありまして、少なくともミサイルをレーダーで捕捉、追尾する能力をイージス艦は持っているわけでありますし、また、不審船、工作船についても、去年、ことし、工作船が出た際にそこにイージス艦が駆けつける、そういう行動が行われたとも聞いております。
 テロとの闘いという地球規模の戦略の中で、我が国自衛隊をどう運用するかという場合に、日本としては、日米安全保障条約もありますし、日本とその周辺をまず固め、そしてアメリカ軍が極東をカバーしていく、そこを支援していく、日本はテロとの闘いの中で悪の枢軸の一つである北朝鮮に対して主に当たるのであって、中東やインド洋方面については諸外国に任せる、そういう役割分担がテロとの闘いにおいてあり得るはずなんですけれども、その点、自衛隊の運用について防衛庁に伺いたいと思います。
守屋政府参考人 先ほども私からお答えしたとおりでございますけれども、このアフガンに対する闘いというのは、国際テロリズムの防止及び根絶のための国際社会の取り組みに積極的かつ主体的に寄与するという観点から、日本国として行っているものでございます。
 アフガンでは、現在、米国以外の二十一カ国の部隊がアフガン国内に展開しておりまして、海上では約五十隻、米国以外に十一カ国の船がこの国際社会の取り組みに取り組んでおるところでございまして、これは現在のところ、取りやめた国は一国もないと承知しているところでございます。
 そういう中で、では日本の自衛隊としてこの問題にどのように取り組んでいくかということでございますが、これにつきましては、自衛隊法附則において、テロ特措法の定める活動につきましては、我が国の防衛の任務遂行に支障を生じない限度において活動するということが規定されております。この観点から、護衛艦を派遣するに当たっては、保有する装備の効率的な配備、運用により、現状における我が国の防衛には支障が生じないように配慮しているところでございまして、御指摘のように、無理に自衛隊の装備を背伸びして派遣している、そういうわけではないということをぜひ御理解いただきたいと思います。
達増委員 テロとの闘いというグローバルな図式の中で、北朝鮮を日本はチェックしますよという戦略については、小泉内閣はその正反対のことをやっているわけですね、むしろ北朝鮮とは融和していく、これから仲よくしていくのだということで。逆に、緊張を高めていくことが国際的な動きの中では必要だったはずですし、今でも必要なんじゃないかと私は思うんですけれども、むしろ融和的に出ている。
 有事法制が今国会に出てこなかったのですけれども、野党が相談に乗らないからだなどというまやかしめいたことがよく言われるんですけれども、政府・与党が本気でやるのであれば、びしっとやればいいだけの話でありますし、むしろ、変に北朝鮮を刺激したくない、あるいは中国、韓国も刺激したくない、靖国神社にかわる施設も建てよう、そういう小泉内閣の融和的な政策が、実は日本の安全保障政策全体、グローバルな戦略全体をゆがめているのではないかという懸念を指摘して、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
中川(正)委員長代理 次に、松本善明君。
松本(善)委員 きょうは、イラク問題と沖縄の強姦未遂事件について伺います。
 まず、沖縄からです。
 沖縄の米軍の少佐の強姦未遂事件は、断じて許すことのできない凶悪犯罪であります。これは県警の刑事部長も記者会見で明言をしております。この凶悪犯罪の容疑者の身柄の拘束ができない、これはまさに我が国の主権の到底耐えがたい制限であります。容疑者は現在でも通常任務の一部につくことが認められている、いかなる制限のもとにもないと、現地の海兵隊報道担当者は平然と述べているのであります。これに怒りを感じない者は日本人じゃないと私は思います。米軍少佐という指導的立場にある軍人の問題であるからこそ重大なんだと思う。
 日本政府は、どうしてあくまで容疑者の引き渡しを求めないのか。当然、求めなければならないのに、なぜ求めないのか。外務大臣に伺いたい。
川口国務大臣 今回の沖縄での事件、これについては、私は非常に遺憾な事件であったと思います。そして、少佐という立場の人によって、未遂ではございますが起こされた事件ということでございますから、こういうことはあってはならないことであると私は思っております。
 それで、事実関係でございますので細かいことは政府参考人からお答えをさせたいと思いますけれども、これについては十二月の四日に日米合同委員会において提起したということでございます。これに対して、細かいことはまた後で御説明をいたしますけれども、我が方からは、これは警察も同席の上、きちんと我が方としてその拘禁の移転の必要性については話をしたということでございます。
 それで、その後の日付でございますけれども、米側からはこれに対しては、拘禁の移転についてはその必要性ということはないというふうに言ったということでございまして、我が方としてこの問題についてはきちんと、なぜ必要かということを説明した。それから、米側からは、この我が方の説明を真摯に検討をして、その上での判断としてはこれは必要がないということであったということでございます。
 そして、米側としては、証拠隠滅等といったことがないように、捜査へ全面的に協力はしていくということでございまして、政府としては今後米側のこういった協力を前提の上で、もちろんこれがあるわけでございますので、捜査を続けていきたいというふうに思います。そして、事実解明を進めて、厳正な処理を実現させたいというふうに考えております。
松本(善)委員 そういう経過はすべて知っての上で、なぜあくまで求めないのかということを言っている。小泉総理大臣は、もう求めないということを言いました。外務大臣が、与党の中からもやめた方がいいのじゃないかと言われているのは、これは皮肉じゃなくて、辞表を懐にして、やはり必要なことは断固として総理大臣に言うという、あなたの閣内でのカードなんですよ、辞表というのは。そういう決意で外務大臣が取り組まなければ、外務大臣としての資格が問われる。
 私は、なぜあくまで求めないのかということを聞いたわけだけれども、求められる意思はないようです。こういう態度について沖縄の地元紙はどう書いているか。「驚きではない、怒りが込み上げてくるだけだ。」こう書いていましたよ。基地の沖縄への過重負担の問題は大きく議論をされていますけれども、これは面積だけの問題じゃないんですよ。アメリカ兵によるこのような犯罪が住民の生活を脅かしている、これが重大なんです。
 昨年の七月、本委員会は地位協定見直しを全会一致で決議いたしました。ことしの七月、全国知事会も日米地位協定の抜本的見直しを決議して政府に要望をしております。沖縄県議会及び県内五十二のすべての市町村議会も決議をしております。稲嶺知事も六日に、外務大臣、防衛庁長官ら沖縄政策協議会に出席した全閣僚に地位協定抜本見直しを訴えたはずです。外務大臣も聞いているでしょう。
 韓国では、女子中学生をはね殺した事件について、今大統領選挙をやっていますけれども、与野党の大統領候補はいずれも地位協定改定を公約しております。日本の、これはもう明らかな不平等条約です。明治の初めに不平等条約改定の要求が大きな世論になりましたが、明白な不平等条約です。
 地位協定の改定をアメリカ政府に要求しましたか、する考えがありますか。
川口国務大臣 日米地位協定の改定についての今委員がおっしゃったような決議等々があるということについては、十分に認識をし、承知をいたしております。
 それで、政府といたしまして、政府の立場でございますけれども、日米地位協定につきましては、その時々の問題について機敏に対応していくという観点から、これを運用の改善によって機敏に対応していく、そういうことが合理的であるということでございまして、運用の改善に努力をいたしております。そして、これが十分に効果的でない場合には、日米地位協定の改正も視野に入れていく。これは我が国だけで決められることではありませんが、改正も視野に入れていく、そういうことが日本政府の立場でございます。私は、この運用の改善が行われ、目に見える形で進歩があるということが非常に大事であると思っております。
 この問題については、十六日にワシントンで2プラス2と言われる会合がございますので、そこでも取り上げていきたいと思っております。
松本(善)委員 それでは解決しないというから、この外務委員会でも全会一致で決議をしたんですよ。全国知事会も要求しているんですよ。全国知事会ですよ。沖縄のすべての議会ですよ。沖縄県知事も、あなたにも、それから防衛庁長官にも言っているんですよ。
 私は、事実関係として聞きたいが、外務大臣でなくてもいいですが、今まで地位協定の改定をアメリカ側に要求したことがあるか、そのことだけ、あるかないかだけ答えてほしい。
海老原政府参考人 日本側が米側に地位協定の改正を要求したことはございません。
松本(善)委員 そうすると、本委員会で決議をした後も日本政府はやっていないんです。これは、本委員会の決議が無視されたということであります。国会を何と考えているのか。私は、絶対許されない。
 委員長にお願いしたいのですが、本委員会の決議を外務省が無視している、日本政府が無視している、これは重大なことであります。今国会はもうあと二日しかありませんけれども、まだもう一回委員会があるわけであります。この再決議をする。これは、委員会として見過ごすわけには絶対にいかない重大なことでありますので、再決議をするようにお取り計らいをいただきたいと思います。
中川(正)委員長代理 理事会で話し合っていきたいというふうに思います。
松本(善)委員 では、イラク問題について伺います。
 国連の安保理事会にイラクから大量破壊兵器開発計画についての申告書が提出されまして、その内容の審査が始まっております。この申告をどういうふうに扱うかということで、二十一世紀が戦争の世紀に逆戻りをするのか、恒久平和に向けてさらに前進できるかが決まると言っても過言ではないと思います。
 私は、この問題については、武力行使がもう目の前に迫って、そうなるんだといういろいろの御意見や観測もありますが、私どもはあくまでやはり平和解決のために最後まで努力をしなければならぬ、あきらめてはならぬ、こういう考えでございます。
 きょうは、その一四四一の決議の解釈について聞きたいと思うのであります。といいますのは、この一四四一の公正な執行です。イラクから大量破壊兵器が全部除去をされるというために、アラブ諸国も努力をしました。我が党も努力をいたしました。そして、イラクは無制限で無条件の査察を受け入れるということで、全会一致の決議ができました。それが一四四一です。これは、世界の人たちの平和の願いが込められている。これを踏みにじって戦争をするということは絶対に許されない。
 カーター元大統領がノーベル平和賞を受賞されました。先制攻撃は破滅を招くということを言われました。国連を支え続けるように訴えられました。アメリカの中でも、数々の良識のある方々が同じような発言をしておられます。私は、その中で、日本の態度は本当に重要で、この一四四一をどう解釈するかということは戦争か平和かのかぎを握っている、こういうふうに思います。
 私は、この一四四一の解釈をきょう聞きたいんですが、やはり最初に外務大臣に、あくまで平和的解決のために努力をしていく、これは総理大臣も、平和的解決のための外交努力をするというところまでは言われました。あらゆる努力をしていくという決意を表明することができますか。
    〔中川(正)委員長代理退席、委員長着席〕
川口国務大臣 国際社会から大量破壊兵器がなくなるということは非常に大事なことだと考えております。それのためには、イラクが決議の一四四一をきちんと守って、そしてその他の決議を遵守して、イラクとして、そのためにきちんとした行動をとり、それを国際社会に見せるということが重要であると思っております。
 我が国としては、イラクがそのような行動をとり、国際社会がこの問題に対して一致団結して対応することができることのために、さまざまな外交努力を重ねてきております。ごく最近も、元外務大臣お二方と茂木副大臣に中近東に行っていただきました。そういうような努力を我が国として重ねていきたい、そういうふうに考えております。
松本(善)委員 イラクに対しては私たちもやりました。問題は、口実を見つけてイラクを攻撃しようということではないかと世界じゅうから疑われている、そういうアメリカの態度を変えさせる。もう既にアメリカは攻撃準備をしているわけですよ。だから、もうしようがないんじゃないかということで、政府もその攻撃があったことの対応をしているでしょう。そういう態度ではなくて、アメリカが戦争をすることを、国連中心で解決をするというなら、これはいいですよ。そうでなくて、単独で武力行使をする、安保理事会の決議なしに国連憲章に反する武力行使をすることをとめるということが非常に大事だと思うんです。
 そうすると、一四四一の解釈問題というのが非常に大事なんだというふうに思います。解釈ですから、総合政策局長に伺いたいと思います。
 第四項で、イラクが提出した申告に虚偽や脱落があった場合やイラクの決議遵守の不履行、決議の全面実施への非協力などはイラクの履行義務のさらなる重大な違反を構成するもので、安保理事会に報告するという趣旨のことが決められております。UNMOVIC及びIAEAはどういう場合に安保理事会に報告することになるのでしょうか。また、重大な違反というのはどこが判断をすることになるのでしょうか。
西田政府参考人 お答えをいたします。
 今委員から御指摘ございましたように、決議一四四一主文第四項及び第十一項でそれぞれ、イラクによる不適切な対応があった場合に、その十二項に基づきまして安保理が再度会合するということで、全体の構成はなっておるわけでございますが、ただいまの御質問のまず第一番目に、第四項の、申告書における虚偽の供述または省略等並びにいかなる時点においてであれイラクが決議一四四一の遵守及びこれの実施のための完全な協力を行わないことは、さらなる重大な違反を構成し、十一項及び十二項に従い、評価のために安保理に報告されるということでございます。
 これにつきまして、十一月の十五日、ブリクスUNMOVIC委員長は記者会見におきまして、UNMOVICが行うことは、何が事実として起きたかを報告することであります、そうした事実が重大な違反を構成するか否かを判断することではなく、その判断は安保理が行う、また、その判断の後に何をするかを決定するのは安保理であるということを発言しております。
松本(善)委員 それでは次へ行きますが、重大な違反というのはどういう違反でありましょうか。
西田政府参考人 お答えをいたします。
 重大な違反というものがどうであるかということについての明示的な規定というものは、決議の中にはございません。しかし、御案内のように、これまで累次にわたり、ほぼ十年でございますが、イラクに対して、大量破壊兵器あるいはテロ等々、重大な侵犯に対して、これをやめるようにということをるる言っておりまして、そのような経緯の中におきまして、そのような世界の平和と安全にかかわるような違反を重大な違反と考えているものというふうに考えられますが、先ほど申し上げましたように、何が重大な違反かということを明示的に書いた規定はございません。
松本(善)委員 湾岸戦争の恒久停戦を定めました安保理事会決議六八七などの違反で、停戦決議への違反によって停戦は無効になって、湾岸戦争での武力行使を容認した安保理事会決議六七八にさかのぼって、すぐにでも攻撃の根拠が与えられるというようなことを言う人もあります。そうであるとすれば、これは一四四一が、ネグロポンテ大使も言っているように、自動性、隠された引き金があるということになると思いますが、そういう解釈にはならないと思いますが、日本政府の見解を聞きたいと思います。
西田政府参考人 繰り返しでございますが、安保理決議一四四一は、重大な違反があったとみなされる場合には、改めて安保理が招集されるというふうに規定をされているところでございます。
 しかし、今後、仮に招集された場合、安保理としていかなる対応をとるかということは、そのときの情勢及び招集された会合における審議ということを踏まえることになると思いますので、決議六七八に基づき武力行使が行われる云々ということについて、現時点でお答えすることは難しいというふうに考えております。
松本(善)委員 今御答弁がありましたように、安保理事会に報告をされて、重大な違反があるかどうかということを安保理事会が協議をするということになるわけでありますが、この規定を、安保理事会が直ちに会合を開くことを決定する、会合を開きさえすれば、協議がまとまらなくても武力行使ができるのだという解釈をするという方もあると聞いております。
 それでは、やはりまたこの自動性、隠された引き金があるということになると思いますが、日本政府はそのような解釈はとらないと思いますが、いかがでしょうか。
西田政府参考人 お答えをいたします。
 自動性という言葉でもって何を理解するかということはあろうかと思いますが、一四四一で明らかなことは、かかる事態になったときには、国際社会を代表します安保理が世界の平和と安全のために集まり審議をするということが決められておるわけでございますから、そういう意味におきまして、いわゆる自動性というものが、もしそのような、国際社会としてのもう一度意思を確認し合うということのなきままに武力行使にいくということを認めているんだということであるとすれば、それはないということだろうと思います。
松本(善)委員 今、申告書がアメリカ政府に渡されて、そしてそれが安保常任理事国だけに配られたということがいろいろな大きな問題になっております。
 それで、私は、そのこと自体は非常に遺憾なアメリカの圧力だというふうに考えますが、質問としては、国連加盟国がイラクの報告と違う証拠を持っている場合は、UNMOVICやIAEAに提出をして、そしてそこで審議をするということになると思いますが、どうでしょうか。
西田政府参考人 決議一四四一主文第十項におきまして、すべての加盟国に対しまして、UNMOVIC及びIAEAに、その権限の執行におきまして、禁止された計画またはその他のUNMOVIC及びIAEAの権限の側面にかかわるすべての情報を提供することを含め、十分な支援を提供するように要請をしております。
松本(善)委員 次は、決議の第五項で、UNMOVIC及びIAEAは、イラクの国内及び国外で自己裁量で面接を行うことができるようになっております。これは、技術者などを面接を行う相手の意思に反して国外に連れ出すことができるでしょうか。
西田政府参考人 決議一四四一主文第五項におきまして、イラクは、UNMOVICまたはIAEAが会見を希望するすべての政府職員及びその他の者に対しアクセスを認めるべき旨を決定し、さらに、UNMOVIC及びIAEAは、その裁量でイラクの内外において会見を行うことができるというふうに規定しておるのは、委員御指摘のとおりでございます。
 他方、UNMOVIC等の行う会見が当該政府職員等の意思に反する場合という御質問でございますが、具体的にどのようなケースになるか必ずしも明らかではございませんが、いずれにしても、この規定というものが、イラクが政府職員等の意思に反することを口実としてUNMOVIC等の行おうとする会見を拒否することは認められないという趣旨だろうと考えます。
松本(善)委員 イラクはそうでしょうが、本人の意思を無視して国外に連れ出すことができるでしょうか。亡命をする意思があるというような場合は別だがというふうに言われておりますが、その点はどうでしょうか。
西田政府参考人 お答えをいたします。
 本人の意思等というものと、例えばイラクが、先ほど申しましたように本人の意思に反しているがゆえに当該のインタビュー等を拒否するというような場合と、これは事態が種々ございますので一概に申し上げることは難しいとは思いますが、当然のことながら、ここで規定されております趣旨が、本人の意思を無理やり無視して強制的に連れ出すというようなものを正当化している、あるいは想定しているということはないと考えております。
松本(善)委員 もう一つ伺います。
 これは全会一致でできた、本当に国際的な意思でできた大変大事な決議だと思います。大量破壊兵器をイラクから撤去さす、これについては全世界が一致をしたということでありますが、この査察を諜報行為を目的として行うということは許されないと思いますが、その点はいかがでしょうか。
西田政府参考人 決議一四四一は、査察に関しまして、これまでの権限に改定または追加をし、査察の結果等を安保理に報告するという手続を定めたものでございます。
 御指摘の諜報活動というものがどのようなことを具体的に想定しておられるか必ずしも明らかではございませんが、決議一四四一を含む関連の安保理決議におきまして、査察をそのような目的のために利用するということを認める明示的な規定はまずございません。
 また、IAEA及びUNMOVICは、あくまでも同決議で与えられた権限の範囲内で査察活動を実施しているというふうに承知をいたしております。
松本(善)委員 査察団のメンバーであったスコット・リッターという人が、アメリカの諜報将校で、自分がそのような活動をしていたということを証明するような発言をいろいろしているということは、本院の安保委員会で酒井啓子参考人が述べたところでありますので、お聞きをしたわけであります。
 最後に伺いたいのは、フセイン政権を倒すということを目的に武力行使をするということは、言うまでもなく国連憲章に反すると思います。国連憲章が認めているのは、安保理事会の決議をした場合の武力行使及び自衛のための武力行使だけでありますから、当然のことでありますが、フセイン政権を倒すことを目的に武力行使をするということは国連憲章に反すると思いますが、いかがでしょうか。
西田政府参考人 今回の決議が、これまでの累次の決議とともに、大量破壊兵器の廃棄等を目的とする査察を遵守するようにということを、イラクに対して国際社会が一致してこれを求めるという趣旨でございます。
 したがいまして、今御議論されております一連のイラクをめぐる話の中におきまして、それ以外のものが目的になっているということはないと考えております。
松本(善)委員 時間が来ましたので、終わります。
池田委員長 次に、東門美津子さん。
東門委員 この臨時国会、またいつものように最後のバッターですが、私は、今期初めて沖縄から国会へ出てきまして、沖縄の抱える諸問題、基地の整理縮小の問題、そして何よりも県知事を初め県民が願っている地位協定の抜本的改正に向けてということで、何度か質問をしてまいりました。
 これまで何も変わらない答弁が返ってきているということを承知の上ですが、やはりきょうもその件について質問をさせていただきたいと思います。
 まず、本当に単純なところからですが、今回の事件、十一月の二日に発生したこの事件について、大臣への報告があったのはいつでしょうか。
川口国務大臣 ちょっと今具体的な日付が頭にないんですけれども、これはごく最近の、十二月の四日に合同委員会が開かれましたけれども、その前の日ぐらいであったか、そういう話があるということを聞いたと思います。
東門委員 こういう大きな事件が発生すると、日ごろから申し上げておりますが、本当に県民は不安なんです。恐らく沖縄県警から警察庁へは翌日には行っていると思います。
 そういう中で、外務省の方へは、もちろん憶測にすぎませんが、即座に行くものだと思うんですよ。それを、十二月四日、私たちと同じときにしか大臣がその報に接していないということについてはとても意外な気持ちで受けとめたんですが、間違いございませんか。十二月四日、合同委員会が開かれると朝刊に出ました、そのときでしょうか。それ以前の報告はなかったんでしょうか。
川口国務大臣 申し上げたのは、四日に合同委員会が開かれたわけですけれども、たしかその前の日だったと思いますというふうに申し上げましたので、三日、そういうことでございます。
東門委員 この通報体制のすごい遅さが、外務省の中でも、政府の中でもこういうふうに行われているのか、これだけ大きな問題が発生して、担当大臣がその報に接するのは私たちとほとんど、まあ一日前ぐらいのことだということに、まずすごく不信感が出てきます、これまで以上に。とても残念なお答えです。しかし、それが事実であるとするならば、本当にこれからどういうふうに通報体制を整えていくか、私はぜひ考えていただきたいと思います。
 私は次に、大臣はその報に接してどういう指示を出されたかということを本当は伺いたかったのですが、今の大臣の御答弁からするとそういうことはないという思いですから、もういたしません。
 この事件は十一月の二日に発生したわけです。県警の方ではすぐ捜査に入っていると思うんですが、この事件は、平成七年十月二十五日に日米合同委員会で合意された刑事裁判手続に基づいて、起訴前の身柄引き渡しが必要な事件であると大臣初め外務省は認識しておられたはずですが、その点についてはいかがでしょうか。
川口国務大臣 あの平成七年の合同委員会の合意に基づいて、強姦事件も含む凶悪な事件についての引き渡しということが規定されているということは承知をいたしております。
 私がこの話を聞いたときには逮捕状が出るという段階でございまして、したがって、そういうことを警察として行いたいという話を聞きましたので、ということであれば、その合同委員会を開くということで進めるということの指示をいたしました。
東門委員 私は、合同委員会が開かれましたその四日の日にも質問はいたしましたけれども、余りよく事情がのみ込めなくて、突っ込めなかったというのは事実なんですが。
 十二月五日、アメリカ側は、日本側の要求に応じずに、米海兵隊少佐の身柄引き渡しを拒否しました。米国が起訴前の引き渡しを拒否したとの知らせを受けて、沖縄県警は、日本の法律との公平性を考えれば、女性暴行は未遂であろうと身柄を渡してもらう罪名だと考えているとの認識を示しています。さらに、自分たちは未遂も凶悪犯罪に含まれていると判断している、かけではなく確信を持って身柄引き渡しを求めたと述べています。
 その平成七年の運用改善の合意にも明記された罪名ですよね、強姦というのは。未遂だからといって引き渡しを拒否する理由にはなり得ないと思いますが、警察庁は、この点についてどのように認識をしておられるのか、沖縄県警と同じ認識なのか、そこをお聞かせいただきたいと思います。
栗本政府参考人 今のお尋ねの件でございますが、警察としては、本件事案の重大性とか、それから悪質性等にかんがみまして、起訴前の拘禁移転の必要があるということで要請を行ったものでありますが、平成七年の合意の解釈に関する問題でございます。その点につきましては、外交当局において答弁すべきものだと考えております。
東門委員 わかりました。
 平成七年、何度も出てくる年度ですけれども、その合同委員会の合意もあって、日本、アメリカ両国で決めたルールにのっとって要求したはずなのに、拒否されたら再度の要求はしないというのでは、主権国家としての態度としていかがなものかと言わざるを得ません。
 米国側は、どのような理由で身柄引き渡し拒否の回答をしてきたのか、なぜ身柄は引き渡せないということを、理由をつけてきたのか、それを伺いたい。今回の事件が凶悪な犯罪に該当しないとの解釈であるのか、あるいは未遂だからなのか、それともほかの理由によるのか。米国側の拒否の理由を私はどうしても知りたいと思います。ぜひ明らかにしていただきたいと思います。
川口国務大臣 在京アメリカ大使館が発出をいたしましたプレスリリースの中で、アメリカ側は、この件をめぐる状況に関する日本政府の説明では、起訴までの間は米側が被疑者の拘禁を行うとの通常の手続から離れた取り扱いを行う必要があることの根拠とはならなかった、そういう発表を行っていると承知をいたしております。
東門委員 アメリカ側の言い分はこうでしたというのは今伺いまして、日本側はそれに対して特に、ああ、そうですか、わかりましたという形で、再要求はしないということなのでしょうか。
川口国務大臣 これについては、その合同委員会の席上でいろいろなやりとりはあったというふうに私は承知をいたしております。再度引き渡しを求めるということをやらない、そういう対応についてでございますけれども、これは、政府部内で関係部局とも相談の上決定をした、そういうことでございます。
東門委員 私は、先週金曜日、十二月の六日、県選出の野党の国会議員四人でアメリカ大使館まで行ってまいりました。そのときに、なぜかという理由を伺いました。そこから理由として挙がってきたものもありますが、そのときにちょっと気になったのが、イナキュリット レファレンス ツー ザ ナインティーファイブ アグリーメントという言葉があったんですが、それはどういうことなのか、お聞かせいただきたいと思います。
川口国務大臣 私の理解では、この席上で、日本側からはきちんと引き渡しが必要な理由を説明したということでございますので、今委員がおっしゃった、米側が言ったとされることについてはよくわかりません。
東門委員 ということは、こういうことは米側からは来ていない、理由としては挙がっていないということですか。大使館は、本人が否認しているということをおっしゃいました。そして、二番目がこれだったんです。そういうことでということだったんですが、じゃ、今の大臣の御発言でしたら、イナキュリット レファレンス ツー ザ ナインティーファイブ アグリーメントという言葉の説明はなかったということと理解してよろしいんでしょうか。
川口国務大臣 申し上げましたのは、委員がおっしゃったことの意味、この状況における意味ということについては私はよくわかりませんと申し上げました。
東門委員 ぜひわかるようにしていただきたい。これは担当を呼べばすぐ済むことだと思います。とても大事なことだと思うんですよ。今回、これがかぎになると思うんです。なぜこういう発言が出てくるのか、担当者として、それは当然知っておかなければいけないことだと思うんですが、とても残念ですね。
 大臣は、就任されてからずっと地位協定のことで私は質問していますから、もう地位協定は精通しておられると思うんですよね。しかも、合意事項も当然ですよ。これは地位協定との関連で出てきている合意事項ですから、そういうのはぜひ私はわかっていていただきたいと思います。当然知らなければいけないことだと思います。
 こういう事件あるいはいろいろな事故が発生したときに私がいつも申し上げるのは、苦しむのは外務省じゃないんですよ、大臣じゃないんですよ、県民なんです、被害者なんです。そういうことをわかっていただくためにも、やはり一つ一つ丁寧にお仕事をしていっていただきたいと私は思うんですよね。
 本当にきちっとした理由がなくて、それで国が、政府が再要求はしないという態度に出れば、政府に対する不信感というのはますます強まるだけで、決して、外務省、いい仕事をしてくれていると思うはずはないんです。納得ができるような説明をしていただきたいと思います。
 次に伺いますが、じゃ、合同委員会合意にある「好意的考慮」、シンパセティック・コンシダレーションというのを払われたと大臣はお思いでしょうか。
川口国務大臣 米国は、日本側の説明を聞き、そしてそれを真摯に検討した結果、そういった結論を出した、そういうふうに理解をしています。
東門委員 そのままのお言葉は何度も新聞等で読みましたけれども、本当に大臣にはハートのある答弁が出てこないのかなと残念ですね。好意的考慮を払われたと、大臣はそういうふうに理解していますかという問いを私はしているんですよ。本当に何も答えられないというのでは進まないじゃないですか。地位協定に対する大臣の認識、あるいはそれをどうにかしていこう、運用の改善ということに対しても全然やっていらっしゃらないということですね。
 運用の改善というのはこれですよ。刑事裁判手続に関する日米合同委員会合意、これもそのうちの一つです。でも、これは全然機能していないじゃないですか。これは去年三回ぐらい専門家委員会を持ったというだけで、大臣として、本当にしっかりこれに取り組んでいるかということをチェックしていただくことも大事だと思います。県知事を初め県民がずっとこれまで要望してきていることなんです。私は、真摯に受けとめる、重く受けとめるとおっしゃる大臣の言葉が本当ならば、これはしっかりとやっていっていただかなければいけないと思うんですよね。
 先ほど、同僚委員からの質問に北米局長が答えておられました。私も、本当に政府として地位協定の改定を求めたことがありますかと聞きたかったんですが、これは北米局長からお答えがありましたので、ここでは私はよします。
 大臣就任後、もう約一年近く、十カ月ですか、たっているわけですが、これまで大臣は、アメリカの多くの要人にお会いするチャンスがありました、パウエル長官とお会いしてあれも言いましたこれも言いました、あるいは別の方等にもこういうお話をしましたということになっていると思うんですが、担当大臣として、地位協定の改定について米国側に、政府の意思として、大臣の意思として求めたかどうかは別として、何らかの形でお話をしたことがありますか。地位協定の改定です。これは大臣に伺いたいと思います。
川口国務大臣 地位協定の改正についての日本政府の立場、これは、今まで何回もこの場で委員にはお答えを申し上げたということでございます。ということでございますので繰り返しませんけれども、そういうことは私の考えでもございます。
 ただ、その運用の改善、これをやっていくということは私は大事であると思っておりまして、しかもこれが目に見える形で進んでいくということは大事だと思っております。今度、十六日に、ワシントンで2プラス2の会合がございますけれども、その場では、こういった観点から幾つかの問題については取り上げたい、例えば環境の問題については取り上げたい、そういうふうに思っております。
東門委員 政府の立場はここでいつも聞いております、運用の改善でと。でも、今申し上げました運用の改善も、実際機能していない。機敏に対応するとおっしゃるが、機敏に対応できないというのがしっかり見えていると私は思います。沖縄県民の怒りもそこにあると思います。ですから、政府は何もしていない、目に見える形で一歩も進めていないというわけですね。
 ですから、私がお聞きしたのは、大臣がここで申し上げていることではなくて、アメリカの要人に対して地位協定の改定、それは本当は県民があるいは全国知事会がそういうふうに求めているんですよという伝達ではいけないと思うんですよ、伝えるだけではなくて、本当に改定してほしいという要望をしてほしいんですが、少なくとも沖縄県民の意思、意向、あるいは知事会での決議のこと、そういうのはお話しなさるチャンスでもありましたかと伺っているので、そこをお聞かせください。
川口国務大臣 これは、私としては機会があるごとに十分に取り上げているつもりでございます。アーミテージ副長官とも、昨日、沖縄の話についてもいたしました。
東門委員 次の質問がちょうどそれでした、アーミテージ副長官とのお話。昨日、今回の事件についてもお話し合いがあったんでしょうか。それから、沖縄県民の今までの動きについても大臣の方からしっかりと伝えられる、本当は沖縄県民の意思を伝えるのではなくて、政府がこうするということを持っていかなきゃいけないと思うんですが、その件に関してはどうでしょうか。そして、アーミテージ副長官は大臣のそういう御発言に対してどういう反応があったのか、それもお知らせいただきたいと思います。
川口国務大臣 アーミテージ副長官といろいろなお話をしたもので、ちょっと一瞬、沖縄について何を私が言ったかということがすぐに頭に戻ってこなかったんですけれども、この事件について、私から取り上げました。
 それで、被疑者である米兵の起訴前の拘禁の移転について米側が同意をしなかったことは残念であるということを言いました。それから、引き続き、米軍の軍人軍属あるいは家族の人たちの犯罪がふえてきているということについても触れまして、これについて遺憾であるということを、遺憾といいますか残念なことなので、再発防止について米側としても努力をしてほしいというふうなことを言ったと思います。
東門委員 アーミテージ副長官の反応はどうでしたかということも伺いました。
川口国務大臣 副長官からは、日本側の立場は理解しているということと、この件については深刻に受けとめている、そういうお話がございました。
東門委員 この事件については深刻に受けとめているけれども、日本のオファーに対してはこたえられないということなんですよね。ですから、日本政府がどれくらい強くアメリカ側に対して発言をしているかということが問われていると私は思います。
 私がいつも感じていること、あるいはこの場で何度か申し上げたこともあるんですが、どこを向いてお仕事をしておられるんですか、国民ですか、県民ですか、それともアメリカですかと申し上げるんですけれども、残念ながら本当にそれが見えない。
 与党の議員とも少しお話をしました。何度言っても変わらない、何も進まない、何もしていない。そこで、何度御質問をしても意味がないからもうやらないよという発言もございました。とても残念だと思います。こういうふうに与党の議員からも言われる外務省というのは、どうなんでしょう。本当にお仕事をしているのかな、やるべき仕事というのをわかって、それに向かって動いているのかなという気がいたします。時にはもうやめたと言いたくなるときもあるんですが、しかし、そういうわけにはいきません。実際に、現実に、事件、事故は起こっているわけです。
 沖縄は今、本当に県民は怒りの中にいるということは、よく御存じだと。私は、むしろ大臣には、こういうときに沖縄においでになって、立場をしっかりとお話しなさるということも大事じゃないかと思います。苦しんでいるのは沖縄県民なんですよ。これだけの基地を押しつけておいて、東京にいて見えないからということではないんじゃないかと思うんですね。そういうようにしか私たちには受け取れない。とても残念な姿勢だと思います。
 韓国の例も先ほど出ました。二人の中学生が殺されて、命を落として、無罪と。沖縄県にも前に多々あったことなんですね。今からだって出てこないとも限らない。そういう地位協定というものを抱えていて、それを改正しようともしない。しかも、今回のこういう事件にぶち当たっても、アメリカ側に言われたらぽんと引き下がってしまう。これが日本の外務省の姿勢なのかと思うと、情けないとしか言えません。
 アメリカ側の拒否という今回の事態を受けて、大臣の御発言なんですが、記者会見で「この合意の解釈を明確にしていくということをする必要があると思っていまして、これについてはアメリカとの間で取り上げたいと思っています。解釈を明確にする、それからより迅速に拘禁の移転をしていくということについて取り上げていきたいと思っています。この合同委員会の合意の運用の改善を図っていきたいということです。」と発言しておられます。
 私としましては、率直に言って、大臣は本当にわかっておられるのかなという思いでこれを読みました。本当に今さら何を言っておられるんだという気持ちもあります。大臣が記者会見でおっしゃったことは、すべて、昨年二月の連続放火事件、同じく昨年六月末の女性暴行事件の際に指摘され、日米間で協議されてきたものであり、二年近くも前から既に行われていることなんですね。
 十二月四日の委員会で質問した際にも、海老原北米局長の答弁では、これらの問題を協議する専門家委員会が昨年三回開かれ、ことしは一回も開かれていないということが明らかになりました。そして、合意のめどについては明確な答弁はなかった。大臣が記者会見で述べられたことは、何もやっていない、やらないというのと実質的には変わらないのではないかという思いを強くしております。
 今回改めて解釈の明確化をアメリカとの間で取り上げたいという川口外務大臣の発言の真意がどこにあるのでしょうか。合意のめども立っていない、一年近くも開かれない今までの専門家委員会での協議を続けるだけなのか、それとも、何か事態の進展が期待できる新たな試みが含まれているのか、そういうことをもってそういう発言になったのか、そこのところをぜひお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 これは無理からぬことであると思いつつ申し上げますけれども、見えなければやっていないというふうに判断をなさるという風潮については、私としては非常に残念であるというふうに思います。外交の世界では、見えないことあるいは見せてはならないこと、それをやっていることというのはもうたくさんあるわけでございまして、そういったことについては御理解をいただきたいと私は思うわけでございます。
 それから、委員の御質問にお答えをさせていただきたいというふうに思うわけですけれども、委員が引用なさった記者会見についてのことでございますけれども、今回の経緯を見まして、十七条について平成七年の合同委員会の合意をめぐる運用の改善、これについて日米の合意を得る必要性というのがますます高まってきたというふうに考えておりまして、特に、この合意で「その他の特定の場合」というふうにございますが、それの明確化、そしてより迅速な拘禁の移転の実現といった点について早急に合意を目指したいと考えております。これについては、2プラス2の場でも取り上げたいと考えております。
東門委員 見えなければ何もやっていないというふうにとられることが残念だというお話がございました。そのお気持ちはわからないでもありません。確かにそれもあるでしょう。しかし、大臣、余りにも長過ぎませんか。その間、いろいろな事件、事故は頻発している。実際、犯罪もふえているんです。それでいて、いや、やっていますと言う。もうずっとそれを聞いているんですよ。でも、見えない。
 では、今回出てきたものも何かというと、運用の改善ではだめだ、やはり地位協定はしっかりと抜本的に改正しなきゃいけないということが出てきた事犯だと私は思うんです。合意事項がちゃんとあっても、それさえ適用できない。好意的な考慮さえ払われていない。大体、犯罪を犯した側からシンパセティック・コンシダレーションというのが払われるということ自体がおかしいとは思うんですけれども。
 それは少し外れるかもしれませんが、私が言いたいのは、見える形でやっていくのが行政だと思うし、外交もある一定の期間が来たら出ていかなきゃいけないと思います。外交だから何十年もそのままでいいということではないんじゃないでしょうか。沖縄の立場から言わせていただけるならば、アメリカとの関係がとても大事ならば、そこのところをしっかりと解決していくということが求められると私は思います。今のままだと、本当に沖縄はそのままでは済まさないと思っています。県民の怒りをわかってほしい。ぜひ解決に向けて一歩でも二歩でも見える形でやっていただきたい。これから何年かかるかわかりません。でも、来年には、再来年にはと、一つずつ見えていかなきゃいけないと思います。
 今回のこの件、本当に私たちは期待していました。政府がしっかりと、拒否されたら再度要求を突きつけていく、それぐらいの思いを私は県民に向けていただきたかった。特に女性の大臣であられるからには、今回の女性に対する暴行事件への思い、それは強いと思います。男性がないとは言いませんけれども、女性であれば一段と強いのではないかという期待もあります。
 ですから、やはり、大臣の今おっしゃった、目に見えないからという形でのものじゃないということ、それには残念だと私も申し上げておきたい。大臣の姿勢がこうでは本当に何も変わらないのではないのかという思いを強くしたということを申し上げて、終わります。
 ありがとうございました。
池田委員長 これにて本日の質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
池田委員長 次に、理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員になっております。この際、その補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名することに御異議はございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
池田委員長 御異議はないと認めます。よって、そのように決定いたしました。
 それでは、理事に藤島正之君を指名いたします。
 次回は、来る十二月十三日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時四十四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.