衆議院

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第4号 平成15年4月16日(水曜日)

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平成十五年四月十六日(水曜日)
    午前九時三十三分開議
 出席委員
   委員長 池田 元久君
   理事 今村 雅弘君 理事 蓮実  進君
   理事 水野 賢一君 理事 森  英介君
   理事 首藤 信彦君 理事 土肥 隆一君
   理事 丸谷 佳織君 理事 藤島 正之君
      伊藤 公介君    植竹 繁雄君
      高村 正彦君    坂本 剛二君
      下地 幹郎君    新藤 義孝君
      武部  勤君    土屋 品子君
      中本 太衛君    松宮  勲君
      宮澤 洋一君    大出  彰君
      木下  厚君    今野  東君
      中野 寛成君    鳩山由紀夫君
      白保 台一君    松本 善明君
      東門美津子君    鹿野 道彦君
      柿澤 弘治君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   外務副大臣        茂木 敏充君
   外務大臣政務官      新藤 義孝君
   外務大臣政務官      土屋 品子君
   政府特別補佐人
   (内閣法制局長官)    秋山  收君
   政府参考人
   (防衛庁防衛局長)    守屋 武昌君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            薮中三十二君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    海老原 紳君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局長
   )            安藤 裕康君
   政府参考人
   (外務省条約局長)    林  景一君
   政府参考人
   (水産庁資源管理部長)  海野  洋君
   政府参考人
   (海上保安庁次長)    津野田元直君
   外務委員会専門員     辻本  甫君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十六日
 辞任         補欠選任
  小池百合子君     坂本 剛二君
  伊藤 英成君     大出  彰君
同日
 辞任         補欠選任
  坂本 剛二君     小池百合子君
  大出  彰君     伊藤 英成君

    ―――――――――――――
四月十五日
 児童の権利に関する条約第四十三条2の改正(千九百九十五年十二月十二日に締約国の会議において採択されたもの)の受諾について承認を求めるの件(条約第一号)
 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約第二十条1の改正(千九百九十五年五月二十二日に締約国の第八回会合において採択されたもの)の受諾について承認を求めるの件(条約第二号)
三月二十五日
 国連憲章に反するイラクへの武力攻撃反対に関する請願(児玉健次君紹介)(第一一〇七号)
 同(中林よし子君紹介)(第一一〇八号)
 戦争につながる新決議支持の撤回、平和的解決に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一一〇九号)
 同(大森猛君紹介)(第一一一〇号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第一一一一号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第一一一二号)
 同(中林よし子君紹介)(第一一一三号)
 同(吉井英勝君紹介)(第一一一四号)
 イラクへの武力攻撃反対に関する請願(木島日出夫君紹介)(第一一一五号)
 同(山口富男君紹介)(第一一一六号)
 国際法や国連憲章に反する米国のイラク攻撃反対に関する請願(松本善明君紹介)(第一一一七号)
四月一日
 国際法や国連憲章に反する米国のイラク攻撃反対に関する請願(春名直章君紹介)(第一一八三号)
 イラクへの武力行使反対に関する請願(加藤公一君紹介)(第一二一三号)
 ILO百七十五号条約の批准に関する請願(中村哲治君紹介)(第一二一四号)
 同(今川正美君紹介)(第一二五六号)
 同(山内惠子君紹介)(第一二五七号)
 同(山内惠子君紹介)(第一二八三号)
 同(山井和則君紹介)(第一二八四号)
 同(永田寿康君紹介)(第一三三八号)
 イラク攻撃反対に関する請願(大森猛君紹介)(第一二五八号)
 戦争につながる新決議支持の撤回、平和的解決に関する請願(大森猛君紹介)(第一二五九号)
 同(赤嶺政賢君紹介)(第一三四〇号)
 同(石井郁子君紹介)(第一三四一号)
 同(小沢和秋君紹介)(第一三四二号)
 同(大幡基夫君紹介)(第一三四三号)
 同(木島日出夫君紹介)(第一三四四号)
 同(児玉健次君紹介)(第一三四五号)
 同(穀田恵二君紹介)(第一三四六号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第一三四七号)
 同(志位和夫君紹介)(第一三四八号)
 同(春名直章君紹介)(第一三四九号)
 同(不破哲三君紹介)(第一三五〇号)
 同(藤木洋子君紹介)(第一三五一号)
 同(松本善明君紹介)(第一三五二号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第一三五三号)
 同(山口富男君紹介)(第一三五四号)
 イラクへの武力攻撃反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一三一八号)
 同(石井郁子君紹介)(第一三一九号)
 同(小沢和秋君紹介)(第一三二〇号)
 同(大幡基夫君紹介)(第一三二一号)
 同(大森猛君紹介)(第一三二二号)
 同(木島日出夫君紹介)(第一三二三号)
 同(児玉健次君紹介)(第一三二四号)
 同(穀田恵二君紹介)(第一三二五号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第一三二六号)
 同(志位和夫君紹介)(第一三二七号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第一三二八号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第一三二九号)
 同(中林よし子君紹介)(第一三三〇号)
 同(春名直章君紹介)(第一三三一号)
 同(不破哲三君紹介)(第一三三二号)
 同(藤木洋子君紹介)(第一三三三号)
 同(松本善明君紹介)(第一三三四号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第一三三五号)
 同(山口富男君紹介)(第一三三六号)
 同(吉井英勝君紹介)(第一三三七号)
 国連憲章に反するイラクへの武力攻撃反対に関する請願(松本善明君紹介)(第一三三九号)
同月七日
 戦争支持の撤回に関する請願(藤木洋子君紹介)(第一三九八号)
 同(山口富男君紹介)(第一三九九号)
 同(小沢和秋君紹介)(第一四七六号)
 イラクへの武力攻撃反対に関する請願(穀田恵二君紹介)(第一四〇〇号)
 同(木島日出夫君紹介)(第一四三〇号)
 同(赤嶺政賢君紹介)(第一四七一号)
 同(大森猛君紹介)(第一四七二号)
 同(児玉健次君紹介)(第一四七三号)
 同(春名直章君紹介)(第一四七四号)
 ILO百七十五号条約の批准に関する請願(菅野哲雄君紹介)(第一四〇一号)
 ILOパートタイム労働条約の批准に関する請願(菅野哲雄君紹介)(第一四〇二号)
 同(大畠章宏君紹介)(第一四三一号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第一四三二号)
 国連憲章に反するイラクへの武力攻撃反対に関する請願(大幡基夫君紹介)(第一四〇三号)
 同(小沢和秋君紹介)(第一四七五号)
同月十一日
 イラクへの武力行使反対に関する請願(加藤公一君紹介)(第一五七〇号)
 ILO百七十五号条約の批准に関する請願(阿部知子君紹介)(第一六八一号)
 同(阿部知子君紹介)(第一七〇四号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件 
 児童の権利に関する条約第四十三条2の改正(千九百九十五年十二月十二日に締約国の会議において採択されたもの)の受諾について承認を求めるの件(条約第一号)
 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約第二十条1の改正(千九百九十五年五月二十二日に締約国の第八回会合において採択されたもの)の受諾について承認を求めるの件(条約第二号)
 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――
池田委員長 これより会議を開きます。
 児童の権利に関する条約第四十三条2の改正(千九百九十五年十二月十二日に締約国の会議において採択されたもの)の受諾について承認を求めるの件及び女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約第二十条1の改正(千九百九十五年五月二十二日に締約国の第八回会合において採択されたもの)の受諾について承認を求めるの件の両件を議題といたします。
 政府から順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣川口順子君。
    ―――――――――――――
 児童の権利に関する条約第四十三条2の改正(千九百九十五年十二月十二日に締約国の会議において採択されたもの)の受諾について承認を求めるの件
 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約第二十条1の改正(千九百九十五年五月二十二日に締約国の第八回会合において採択されたもの)の受諾について承認を求めるの件
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
川口国務大臣 ただいま議題となりました児童の権利に関する条約第四十三条2の改正(千九百九十五年十二月十二日に締約国の会議において採択されたもの)の受諾について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
 この改正は、平成七年十二月にジュネーブで開催された児童の権利に関する条約の締約国の会議において採択されたものであります。
 この改正は、児童の権利に関する条約に基づき設置される委員会の委員の数を増加することを目的とするものであります。
 我が国がこの改正を受諾することは、児童の権利を保障し及び促進するための国際的な取り組みを一層推進するとの見地から有意義であると認められます。
 よって、ここに、この改正の受諾について御承認を求める次第であります。
 次に、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約第二十条1の改正(千九百九十五年五月二十二日に締約国の第八回会合において採択されたもの)の受諾について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
 この改正は、平成七年五月にニューヨークで開催された女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の締約国の第八回会合において採択されたものであります。
 この改正は、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約に基づき設置される委員会の会合の期間について、一定の条件のもとに締約国の会合において決定し得るようにすることを目的とするものであります。
 我が国がこの改正を受諾してその早期発効に寄与することは、男女の権利の平等を促進するための国際的な取り組みを一層推進するとの見地から有意義であると認められます。
 よって、ここに、この改正の受諾について御承認を求める次第であります。
 以上二件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。
池田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
     ――――◇―――――
池田委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省アジア大洋州局長薮中三十二君、同じく北米局長海老原紳君、同じく中東アフリカ局長安藤裕康君、同じく条約局長林景一君、防衛庁防衛局長守屋武昌君、水産庁資源管理部長海野洋君、海上保安庁次長津野田元直君、それぞれの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
池田委員長 御異議はないと認めます。よって、そのように決定いたしました。
    ―――――――――――――
池田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤公介君。
伊藤(公)委員 イラク戦争が、私どもが予想したよりも速いテンポで終結に向かっているように伺います。そのことは大変いいことだと思っております。
 しかし、今度のこのイラク戦争は、さまざまなことを我々は学ばせていただきました。また、世界の人々も、このイラク戦争を通じて、まず一つは、国連という組織がまだ未成熟で発展途上の組織だということを改めて認識をしたのではないかと思います。
 同時にまた、私たちのこの国は、戦後一貫して国連中心、日米基軸、そうした外交展開をしてきたわけですけれども、究極のところ日本はどのような選択をするかということが、このイラク戦争で迫られました。そして恐らく、戦後日本は、数少ないというよりも唯一、我々ははっきりした方向を示したのではないかと思います。それは、現実の国際政治の中で、我が国の平和と安全は日米をおいてないという現実であります。我々は、国連という舞台を中心として世界の平和秩序というものを保っていきたい、そういう理想は当然持ち続けなければなりません。しかし、現実は現実として、日本の国の平和、安全を確実なものにしていかなければならないということを改めて我々は認識をさせられたと思います。
 そういう中で、小泉総理が行った今回のアメリカに対する支持表明ということは、これから二十一世紀の日本の外交、我が国の進路を明確にしたこの方針に対しては、私は支持をするものであります。そして恐らく、イラク戦争とともに、いずれの時期に歴史的に検証されるときが来ると私は思いますが、このイラク戦争を通じて、政府が決断をしてきたことなどを含めて、まず外務大臣の見解を伺いたいと思います。
川口国務大臣 イラクの戦争は今まだ終了を最終的にしているわけではございませんけれども、委員がおっしゃられましたように、非常に短い期間である程度の成果を見たということ、また、その過程であるいはその結果、さまざまな、我々として新しい認識を持つように至ったということについては委員がただいまおっしゃられたとおりだと思います。
 そして、今また委員がおっしゃったように、この戦争については、総理が御自分の言葉で、なぜ日本が武力行使に支持をするかということの御説明をなさって、その中に、大量破壊兵器の脅威、これをどのように我が国として認識をするかという点、そして、サダム・フセインが武装解除をしないということが残念ながら明らかになってきた時点で、我が国としては残念ながら武力行使を支持せざるを得なくなった、そして、日米同盟の大事さということについても触れられたと思います。
 こういったことを経て、私は、日米同盟は、いろいろな点において価値を共有している、例えば民主主義ですとか、自由ですとか、それから市場経済に対するコミットの大きさですとか、国でありまして、今後、日米二国間関係のみならず、この地域の平和と安定、そして、イラクも含む世界の平和と安定、イラクの復興等に力を合わせてやっていかなければいけないパートナーであるという認識を新たにいたしております。
伊藤(公)委員 イラク戦争が終結に近づくに従って、既にいろいろな枠組みが提案をされております。今後の進め方について、国連主導でいくのか、あるいはアメリカ中心で進められるのかという議論もございます。しかし、私は、アメリカか国連かという二者択一ではなくて、もっと実践的な観点から考えていくべきだと思います。
 特に、ちょっと時間がありませんのでまとめて御質問をさせていただきたいと思いますが、イラクの復興については、私はかなり積極的に進めるべきだと思いますが、もちろんこれからの展開の中では、財政的な支援をどうするかとか、人的な支援をどうするかということがございますから、我々はそうしたことを総合的に考えていかなければならないことは当然だと思います。
 しかし、イラクの復興のためには、特に単にイラクというだけではなくて、アラブ地域あるいはパレスチナ、日本の経済の根幹でありますエネルギー、石油の九九・七%を外国に依存をし、その七〇%近くを中東に依存している日本でありますから、私たちは中東のもっと幅広い外交を展開する、ある意味ではチャンスではないかと私は思うわけであります。そこで、これからの展開については、むしろ日本がアメリカにもいろいろな意味でサジェスチョンをして外交を展開する、見える外交をするという非常にチャンスではないかというふうに思います。
 特にその中で、人を派遣することについて既にいろいろな議論があるようであります。国連の決議が必要であるとか、あるいはそれは必要でないとか、いろいろな議論も既に行われているようでありますが、少なくとも日本の憲法は、戦争で傷ついたイラクの復興のために、人道主義的な立場から我が国が人的な貢献をするということを私は禁じているものではないと思います。ぜひ、そういう意味で、これからの我が国のこの地域におきます外交を展開する、そういう大枠からも積極的に人の支援もしていくべきだと思いますが、政府の見解をお伺いしたいと思います。
川口国務大臣 今後の復興の道筋について今委員がいろいろおっしゃられましたけれども、基本的な考え方というのはおっしゃるとおりだと思います。国際社会で国連の関与ということが一つの論点になっているわけですが、これも委員のおっしゃいますように、言葉が、中心的だとか、あるいはバイタルだとか、遊ぶということではなくて、現実の展開に応じて柔軟に国際社会としてどういう対応をしていくかということを考えていくべきだろうと思っています。
 それから、アラブ全体、あるいは中東全部を視野に入れて今後の世界、その地域の平和と安定を考えていくということについても、おっしゃられたとおりだと思います。この問題の根幹というのが、中東の、パレスチナ、イスラエルの和平にあるわけでして、この点についても、それから近隣諸国の平和と安定の維持につきましても、日本は石油の多くをこの地域に依存しているわけですから、我が国としても、この地域が平和であって安定をしているということはまさに国益であるというふうに思っています。
 その中で我が国が何をしていくかということでございますけれども、既に幾つかの、医療部隊の派遣等も含めて発表をさせていただきましたけれども、イラクの情勢を見ますと、さまざまな問題、例えば水が足りない、あるいは食糧が足りない、医薬品が足りないといった大きな問題が引き続き存在をしております。我が国としてできることをまず現行法の枠内で十分に、最大限にやっていく、そして、それ以降のさまざまな展開を見ながら、さらにもし新法が必要だということであればまた国会に御相談をさせていただくということでございますし、できることをきちんと、そして最大限にやっていくということが必要だと考えております。
伊藤(公)委員 当然、新しい展開の中で新法ということも考慮に入れなければならないと思いますが、まだ戦争が終結をしているという状況ではありませんので、状況を的確に見ながら、日本外交が、特に人道的な支援という意味では日本が最も働ける部分ではないかと思いますので、積極的な外交をひとつ展開していただきたいと思います。
 次に、北朝鮮問題についてお伺いをしたいと思います。
 実は、私、けさ新聞を読みまして、今度のイラク戦争を契機に、恐らくアメリカの激しいイラク攻撃を見て北朝鮮もやや軟化してきたのかなという気がするわけでございますが、そこで、今までは二国間の協議しか応じないと言っていた北朝鮮が、多国間の協議に応ずるという方向が示されてきた。しかし、その中で、きょうの新聞でありますけれども、北朝鮮は構成メンバーの絞り込みを主張して、拉致事件と絡んで日本の排除をする可能性があるという新聞報道がございました。
 これらの報道について、政府が今どのように承知をしているのか、この報道についての明確なお答えがあれば伺わせていただきたいと思います。
川口国務大臣 北朝鮮との話し合いにつきまして、我が国は今までさまざまな努力をし、働きかけを行ってきております。これは我が国だけではなくて、韓国も中国もみんな努力をしているということでございます。
 最近、北朝鮮が、十二日でございますが、外務省のスポークスマンが、問題の解決のためのかぎはアメリカにかかっているということを言いまして、また、米国が核問題のための政策を大胆に転換するということであれば対話の形式にはこだわらないという趣旨のことを言っております。こういった動き、柔軟に考えていこうという一定の柔軟性を示したものであろうということだと思いますが、こういったことで話し合いが前に進んでいくということであれば、それは非常にいいことだと私どもは考えています。
 それで、三カ国という報道があるがというお話でございますけれども、いろいろな水面下の動きがたくさんございまして、私ども、今この時点で、こういうことで動いていますということを、申しわけないんですが申し上げることが非常に難しい。もう少しお待ちいただきたいと思いますけれども、基本的な考え方としては、これは、まず第一歩を踏み出していくということが大事である。そして、その中身としてどういうことが対象になるかということは、これは話が始まった段階で決まっていくことでございまして、今具体的に、こういうことだということについて申し上げることはできないということでございます。
 これがいい形で始まり、そして、今国際社会で核についての懸念がたくさんありますので、北朝鮮がこれをさらにエスカレートをさせないということが大事だと思いますし、我が国としても、拉致の問題を初めとする二国間の問題がさまざまあるわけでございますから、こういった話がまた対象となるということは非常に重要なことであると思っています。そのための働きかけも行っております。
伊藤(公)委員 大事な問題でありますので、茂木副大臣もお見えになっていますから、これは、報道はどのように外務省として承知しているのか、全くそういう報道を外務省としては把握していないのか。これは既に報道されたことでありますから、日本の外務省としてどのようにこれを、既に承知しているのか、全くそうではないのかだけ、ちょっと伺えれば聞かせてください。
茂木副大臣 報道の事実につきましては承知をいたしております。そして、今大臣の方からも答弁させていただきましたように、本格的な多国間協議に向けましてさまざまな水面下の努力も進んでおります。日米韓での連携を深めていく、このことは重要でありますし、さらにそれに中国等も加えた多国間の枠組み、こういうものをつくっていく努力がまさに行われているところでありまして、その第一ステップとして考えられる形態というのはさまざまあるんではないかなと。
 ただ、重要なことは、今、多国間協議に向けて北の側ももし柔軟な姿勢を見せているんだったら、動かす努力、このことをしていくことが一番重要であると思っておりまして、そういった報道をされていることも含めて、第一ステップ、第二ステップ、こういったアプローチもあるんではないかなと思っております。
伊藤(公)委員 きょうはそれでよろしいんですけれども、少なくとも日本を排除するということがないような努力をしてほしいということを申し上げておきたいと思います。
 そこで、防衛庁に伺いたいと思いますが、イラク戦争が終結に向かっているわけですが、この間も、そして特にイラク戦争が終結することになってきますと、北朝鮮というものの脅威に対して、日本の国民の皆さんも、我々が地域に帰っても、北朝鮮は一体どういう状況なんだ、ノドンやテポドンや、テポドン1、2など完全に日本が射程距離にある、これはイラクの脅威どころではない、日本にとっては切実な脅威だ、こういう認識を非常に国民の皆さんが今持っていられると思います。
 それに対して政府が、特に防衛庁が、この北の脅威というものは現実にどういう脅威なのか、そして、それに対して日本はどういう対応を今しているのかということを、まず国民の皆さんに明確にしていく必要がある。そして、その脅威に対してきちっとした、我が国として、政府としての対応を現実的にしていくべきだと私は思いますが、まず防衛庁の認識をお伺いしたいと思います。
守屋政府参考人 お答えいたします。
 最初に、北朝鮮の軍事情勢でございますけれども、御承知のとおり、極めて閉鎖的な体制をとっておりまして、その行動や状況を断定的に申し上げることは極めて困難でございますが、大変経済が困難な状況にありながらも、軍事面にその資源を重点的に配分し、各種の訓練を現在も継続しております。
 それからまた、核兵器開発問題だけでなく、生物化学兵器などの大量破壊兵器の運搬手段となり得る弾道ミサイルの開発、配備も継続していることも事実でございます。
 さらに、約十万人と言われます大規模な特殊部隊、これは世界でも最大規模と言われておりますけれども、保持しているという状況がございます。
 それと、大きな特色は、北朝鮮と韓国の間に非武装地帯、DMZというところがあるわけでございますが、ここに北朝鮮は地上軍の三分の二を配備しておる。韓国と合わせますと、百五十万人の地上軍がここで対峙しているということでございまして、このような状況は現在も変化していないということでございます。
 それで、我が国としまして、このような状況に対しましてどういうふうに対応するかという御指摘でございますが、これは、日米防衛協力のための指針というアメリカと私たちの日本防衛のためのガイドラインを決めておるわけでございますが、ここに、日本に対する武力攻撃に際しての対処行動ということでございますが、自衛隊及び米軍は、弾道ミサイル攻撃に対応するため密接に協力し調整する、米軍は、日本に対し必要な情報を提供するとともに、必要に応じて、打撃力を有する部隊の使用を考慮するということになっております。
 私どもは、日米安保体制の枠組みに基づきまして、御指摘のような弾道ミサイルの危険に対しましても、我が国の平和と独立、国民の生命財産をしっかり守ることができるよう日米間の話し合いを強めている、継続している、こういうことでございます。
伊藤(公)委員 少し具体的にお伺いしたいと思いますが、外国のミサイル発射基地をピンポイントで攻撃ができるいわゆるトマホークの導入に向けて防衛庁が検討に入ったという一部報道がございました。これは、先月の二十七日の衆議院安全保障委員会で石破長官が、敵基地攻撃能力を持つ必要性について、検討に値すると答弁をされた記事も私も読ませていただきました。私は、憲法の許す範囲内でいろいろな選択肢を議論する必要があると思っているんです。
 一昨年の九月の十一日、あのニューヨーク・テロ事件のとき、私は、たまたまシカゴに滞在をしていました。あの日のアメリカの新聞の一面は全部、新しい戦争と書きました。私たちは、今世界の危機というものは、新しい状況に私たちはいるという認識をしなければならないと思います。
 そういう意味で、私は、もちろん現在は憲法の許す範囲内であらゆる選択というものを検討し、研究する必要があるというふうに思います。特に、今度のイラク戦争を契機に、迎撃ミサイルを持つべきではないかという議論が一般の国民の中にも私はたくさんあったように思います。
 そういうことを含めて、防衛庁は今後、むしろ抑止力になるという意味で、そうしたいろいろな選択肢を考えていく必要があると私は思いますが、御認識を伺いたいと思います。
守屋政府参考人 お答えします。
 最初に、三月二十七日の石破防衛庁長官の衆議院安全保障委員会における答弁について申し上げさせていただきますが、これは、専守防衛や日米の役割分担に係る政府の立場を前提とした上で、敵基地攻撃能力の保有にかかわる国会等におけるさまざまな議論までをも否定することは適切ではなく、我が国の防衛に責任を持つ防衛庁として、これらの議論に必要な情報等の収集を行い、議論の材料を提供することが適切という趣旨を述べたものでございまして、敵基地を攻撃することを目的とした装備体系の保有の検討に入る旨を申し上げたものではないということで御理解いただきたいと思います。
 その上で、我が国の防衛力のあり方については、その時々の状況に応じて不断の見直しを行っていくことは当然でございまして、現在の中期防において、将来の防衛力のあり方について検討を行うこととしているところでございます。
 こうしたことから、防衛力のあり方につきましては、日米同盟、それから防衛力の役割、防衛力整備、運用の構想、さらに自衛隊の統合運用など、多様な観点から幅広く議論を行うべく、現在、防衛庁長官を長とする防衛力の在り方検討会議において所要の検討を進めている段階であるということを御理解いただきたいと思います。
伊藤(公)委員 きょうは時間がありませんのでこれ以上質問はいたしませんけれども、国際情勢が変わっている新しい状況の中で、我が国の国民の平和と安全、防衛についても、私は新たな取り組みが必要だということを申し上げておきたいと思います。
 時間が参りましたので、最後に短く。
 実は、日朝国交正常化交渉に、特に拉致問題についての交渉の再開に向けて、現在どういう認識を持っているかだけお伺いをさせていただきます。
川口国務大臣 拉致をされた御本人が帰られまして、もう半年たってしまって、物事が進展をしていないということについては非常にじくじたる思いがあります。これについてはできるだけのことを全部やるということでございまして、北朝鮮に対する働きかけ、そしてジュネーブ国連人権委員会等の場での働きかけ等々、手を尽くして努力をしております。今後とも最大限の努力をするつもりでおります。
伊藤(公)委員 終わります。
池田委員長 次に、首藤信彦君。
首藤委員 民主党の首藤信彦です。
 川口大臣、今イラクの戦争がまだ続行中でありますけれども、日ごろこの問題に関してはいろいろお聞きしているわけですが、今まではちょっと時間がなかったので、非常に細かいことを直接聞いて、大変失礼な質問もあったと思うんですけれども、きょうは比較的時間に余裕がありますので、より本質的な大きな問題をまず最初にお聞きしたいと思うんですね。
 それは、外交において一番何が重要かというと、やはりこれは世界観、要するに、今起こっていることは世界の流れの中でどういうふうに位置づけられるかということだと思うんですね。
 例えば、今イラクに対してアメリカが攻撃しているわけですが、これを武力行使と言っております。ただ、武力行使はもういろいろな武力行使がございますね。しかし、戦争を武力行使と定義するかどうかというのは、戦争の一つの要素でありますけれども、それはいろいろな定義があると思います。それから、侵略戦争である、こういう考え方もありますね。
 それから、中東ということを考えますと、今までも第一次から第四次まで中東戦争というのを言っています。ナンバーをつけているんですね、第一次、第二次、第三次というふうにしているわけですね。そうした状況において、例えば九一年の湾岸戦争、これは湾岸という地域で、湾岸戦争、湾岸危機と言っているわけですけれども、こういう戦争。特別な一部の地域に対して名前をつけているわけですね。
 では、このイラクに対する戦争というのはどういうものかというのを、その戦争の位置づけというものをまずお聞きしたいわけです。例えば、この地域で何度も戦争が第二次大戦後起こっております。例えば第一次中東戦争から第四次中東戦争まであるわけですね。これをカテゴリー一としましょうか、そうすると、これは中東の諸国が争っている戦争であるというふうに考えられますね。カテゴリー二というのは、例えばそこに国連軍とか多国籍軍が入って、いわゆる先進国の軍隊や各国の軍隊が入ってやる、これは湾岸戦争なんかをカテゴリー二というふうに考えてもいいと思うんですけれども、これはやはり中東の諸国もたくさん参加していますね。
 しかし、今このイラクの今度のアメリカの攻撃というのは、一体世界史的には、この中東という地域に中東以外の国が、しかも先進国がこういう行為をして、国連の承認もなくやっている。一体、これ、戦争をどのように位置づけるか、外務大臣の世界観からどのように位置づけておられるかお聞きしたいと思います。いかがでしょうか。
川口国務大臣 今委員が戦争の分類をなさいました。委員がなさった分類は、だれとだれが戦ったのかということを切り口として分類をなさったということであると思います。さまざまな武力行使が歴史において行われた中で、そういった人と人、相手と相手に分類の切り口を置くということもあるでしょうし、あるいは考え方の相違に切り口を置くのもあると思います。
 いずれにしても、いろいろな戦争の性格づけというのはあると思いますけれども、これについては、私は、将来の歴史家が意見をだんだんに議論のあげくに集約をしてくるだろうというふうに思っております。私としては、この日本が武力行使に支持をした、残念ながら支持をせざるを得なくなったということの理由は、大量破壊兵器の脅威からいかにして二十一世紀の人類を守るか、なかんずく我が国としてこの大量破壊兵器の問題は決して他人の問題ではないわけですから、日本国民をどのように守っていくかということが武力行使を支持するに至った一番の原点であるというふうに考えております。
首藤委員 いや、大臣、私の質問をよく聞いてください。これは一番重要なことなんですよ。
 まだそこまで、日本がどうしてこれに支持をしたか、残念ながらとおっしゃいましたけれども、そのことを聞いているんではないんですね。要するに、この戦争は一体我々にとって何なのかということです。
 中東の諸国に先進国が入り込んでいって、周りの人はもうやめろやめろと言っているのに入り込んでやった戦争というのは一体いつあったのか、そういう戦争は人類の歴史上いつあったのか、この中東で。その例を示していただきたいと思いますが。
茂木副大臣 首藤委員御指摘なのは、戦争の形態、恐らく二十世紀までの戦争というのは、当事者同士が、領土の支配、そして権益の確保、これを目的とした戦闘行為、これが一般的だったと思います。
 それに対して、大臣、今答弁させていただきましたように、まさに今回の武力行使、大量破壊兵器の除去、これは二十一世紀、テロとの闘い、大量破壊兵器の除去、そういうことで、戦争の形態というか、目的が変わっている。委員の場合は、だれとだれが戦っているという話でありますけれども、構図としてはどういう目的のもとでということの違いの方が私は大きいんだと思います。
首藤委員 いやいや、大臣も副大臣も、そんなこと聞いていないでしょう。世界史的にこれはどういうふうに位置づけられるかということを聞いているんですよ。もう時間がないから、では言うと、結局、こんな中東諸国が反対しているところへ入っていくというのは、それは植民地……(発言する者あり)
 委員長、何ですかこれは。質問しているんだから。
池田委員長 御静粛にお願いをします。
 首藤君、続行してください。
首藤委員 はい。雑音が多いようですが。
 結局、よく考えれば、こんな先進国が中東諸国も反対しているところへ入っていったのは、要するに帝国主義時代にまで戻らないとないわけですよ。
 だから、こんな戦争は一体何なのか、この戦争は一体どういうふうに世界史的に位置づけられるのかということを聞いているわけです。ですから、それにきちっと答えていただきたいと思うんですよ。これは外務大臣に答えていただきたい。どうなんですか。この戦争は一体世界史の中でどういうふうに位置づけられるんですか。外務大臣、いかがですか。
川口国務大臣 委員は、中東の地域において、周りの国が望まない中で先進国が入っていった戦争というふうに位置づけられているように私には聞こえましたけれども、これは私どもの理解、私どもの認識はそういうことではございませんで、これは国連の安保理の決議に基づいて、大量破壊兵器の脅威から人類を守り、イラクを武装解除する、それのための戦争である、そういうふうに考えております。(発言する者あり)
池田委員長 御静粛に願います。
首藤委員 これは外務大臣、それは大きなことだと思うんですよね。そういうふうに外務大臣がとらえているというのは大きな間違いですよ。
 周りの諸国でそれだけ反対している。国民が反対している、政府は反対していない、そういう意見もあるかもしれないけれども、そうじゃないですよ。ヨルダンの国でも国王みずから、それからシリアにしても、シリアはもちろん反対をするし、エジプトでももう盛んに政府から、これはやめるべきだ、武力行使はやめるべきだ。それから、中東諸国においても、湾岸諸国においても、これは武力行使は反対の決議を出しているわけでしょう。全然違いますよ。
 そんなことを外務大臣が言うというのがもう本当に信じられない思いなんですが、そうしたところにおいて、また、国連決議があるからといって、アメリカはその国連決議でやっているんじゃないんですよ。自衛権の行使でやっているんですよ。それを幾らごまかしたってだめなんですよ。
 では、こればかりやっているとそれこそ時間かかるんで、ただ、外務大臣、これはしっかり、世界史的に一体この戦争はどう位置づけられるのか、副大臣もそうだけれども、きちっと答えられるようにしておいていただきたい。
 これは別に、私が政府を困らせようとして言っているんじゃないんですよ。本当に、日本としては、これからの海図なき世界の中で日本の外交を展開するに当たって、どういうふうにこの戦争を位置づけて考えているのかというのをやらないと、日本の方針というのはこれから決められていかないんですよ。ここのところをきちっと理解していただきたい。それは政府に強く望みます。
 そして、今のイラクの現状ですけれども、もう復興という話がありますね。しかし、私は今までずっと戦争を見てきて、戦争には起承転結というのがあるんですが、これは、戦争がもうほとんど終わりになったんではなくて、第一幕が終わって、いよいよ第二幕が始まる幕間にあるよ、そういうふうに状況的には私は考えられるんですね。
 今、復興という話がもう多く出てきているわけですが、復興どころか、今、バグダッドの状況を見ればわかるように、新たな破壊が進行しているわけですね。例えば博物館なんかも、世界有数の博物館は破壊されて、かの有名な人類最古の正義を記載したハムラビ法典の石碑もなくなってしまった、こういうふうに言われているわけですね。
 これは外務省にお聞きしたいわけですけれども、現在のバグダッドの状況をお聞きしたい。今のバグダッドの中で、例えば、破壊されていない政府の建物は何がありますか。外務大臣、いかがでしょうか。
茂木副大臣 委員御指摘のように、今、バグダッドの町、治安の状況は極めて悪くなっているのは事実であります。多くの建物に対し破壊行為が行われている、また、略奪行為もあるわけであります。御指摘の博物館にしましても、紀元前の六〇〇〇年のものから、ハムラビ法典は紀元前の一八〇〇年ぐらいでありますけれども、大変、世界的にも重要な文化遺産等が盗難に遭っている、極めて残念だと思っております。
 そういった状況の中で、英米軍と今現地の警察、これが協力をして、治安の維持の計画をつくり、一部実行に入っている、こういう段階だと思っておりまして、我が国としても、ヨルダンの大使館等々通じまして、現地と連絡をとっておりますけれども、通信事情も極めて悪く、そして治安の状況もまだ悪い、こういう状況にあると思っております。
首藤委員 外務大臣、それは結局、バグダッドの状況はわからないということですか。
 私の質問は、政府の中で、あまた残っている政府の中で、大統領宮殿に入ったとかそういうのはありますけれども、要するにそれは、何を聞いているかというと、一体どういう状況で今、バグダッドの復興ができるのか。政府の建物がみんななかったら、何もできないじゃないですか。そうでしょう。だから、どういう状況であるのか。
 例えば、アメリカも破壊しますよね。だから、アメリカは、破壊しても、それを占領するように幾つか残しているわけですね。だから、実際、バグダッドで新政権なり、暫定政権なり、暫定統治機構なりができるときに、どういう形で実際にできるのかということで、バグダッドの中において、公的な施設としてどれが残っておりますかという状況を聞いておるんです。外務大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 戦争において建物が、どれがどれぐらい壊されているかということについては、もし事前に御質問の通告をいただいていましたら航空写真なり等を見て調べさせることができますが、基本的には、そういう御質問をいただいておりませんので、今の段階ではお答えをする用意はございません。
 ただ、基本的に申し上げられることは、今、水とかその他さまざまな現在の状況については、復興のためにこれは非常に必要な資料でございますので、現在、そして今後しばらく時間をかけて調査をする必要があるということが認識であろうかと思います。
首藤委員 質問の意味が恐らくおわかりにならなかったと思うのですけれども、質問の意味は、結局、今、たくさん、ほとんどのサダム・フセインの政権の建物というのは破壊され、あるいはその中が荒らされているわけですが、唯一荒らされていない政府の建物があると言われているのですね。それは何かというと、石油省らしいですよ。ですから、そんな、一体これはどういうことなんだと。
 たくさんの、すべての博物館が襲われ、有名なラシッドホテルまで全部略奪に遭っていて、どうして石油省だけは無傷で残っているのかということをお聞きしたかったわけですが、外務省がそういう段階であれば質問自体が意味がないわけでありまして、次の質問に移ります。
 今、このイラクの新政権が出ると、これの債権、日本の債権というものは当然問題になります。なかなか湾岸戦争以降、日本の債権というのは払ってもらえなかったわけですが、日本の債権は官民合わせて約六千八百億。これはもちろん契約不履行のペナルティーとか延期費用とか金利を除いた費用です。だから、そういうものを入れると一兆円ぐらいになるんでしょうかね。これは果たして担保されるのかどうかということですね。これは要するに、本当に払ってもらえるのか。これは、こういう経済が非常に厳しい段階で、こういうことをやっていた総合商社も大合併あるいは倒産というふうに言われているわけですが、そういうような状況の中で、一体日本の債権というものは、暫定統治機構なり暫定政権なり新政権によって担保されるのかどうか。
 今、もう既に伝えられているところによると、ロシアはイラクの債権を放棄する、そのかわり、旧ソ連が持っていた、ソ連時代の債務の返済条件の緩和と交換する、もう既にそういうふうに動き出しているわけですね。要するに、自分の債権、自分のところの借金を減らすために、持っていた、自分のところの債務を減らすために、借金を減らすために、イラクの債権を放棄するというような動きすらもう始められて、もう既に伝えられているわけですね。
 では、来週にパリ・クラブでこの交渉が行われると思うのですが、日本はどういう方針でそれに対して臨まれますか。例えば、全額保証を求める方針ですか。さらに、この六千八百億だけではなくて、追加的な、金利とかペナルティー等をやった、水増しされたといいますか、膨れ上がった総額を要求されますか。あるいは、それが難しいときにはどのような代替案を用意されているのですか。例えば石油利権とバーターするとか、どのような対策でパリ会議に対応されるんでしょうか。いかがでしょうか。
茂木副大臣 今、議員も御指摘いただいたんですけれども、日本が持っております債権、六千八百億とか、それにしましても、民間で完全に積み上げはできていないわけであります。これはロシアであってもフランスであっても同じ状況というのはありまして、まずそれを確定させていく、こういう努力が必要でありますし、例えば、ではロシアはどうする、フランスはどうすると、そういうそれぞれが違った債権の保全の仕方をするということより、基本的に、日本としても持っております債権の保全を図りたい。
 ただ、相手側の支払い能力の問題も出てくるわけでありまして、まさにそれをG7であったりとかさまざまな国際会議の場で協調しながら、どういう方法を全体の債権国としてとっていくか、そのことがこれから話し合われるものだ、このように理解いたしております。
首藤委員 いや、副大臣、外務大臣もそうなんですけれども、そんな漫談を聞いているんじゃないんですよ。これは日本の、六千八百億、六千八百億なんですよ。これをどうやって取り返せるのか、何か戦略はあるのか、あるいは全額を、本当に最後まで突っぱねて全額要請をしていくのか、そういうことを聞いているわけです。それに対して、そんな漠然としたことを言ったら、これはやはり国民が納得しないですよ。
 外務大臣、どのような戦略でこれに、もう一度詳しく質問しますけれども、一体どういう戦略で、どういう方針で、この日本の持っている債権、こんな日本の企業が苦しんでいる状況の中で少しでも回収したいというのに対して、どういう方針で臨まれるか、お聞かせ願いたい。
川口国務大臣 委員が先見性を常に持たれて御質問をなさる方であるということはよく存じ上げておりますし、そういう意味で御尊敬申し上げておりますけれども、現在イラクの人が必要としていること、これは水であり、医療品であり、病院であり、それから食糧であるわけです。国際社会としてイラクの復興のために今やらなければいけないことは、我が国の債権七千億円をどうやって回収するかということではなくて、まずどうやって人道的な支援をし、そして、それをイラク社会が発展をするということにつなげていけるかどうか、社会の基盤、それをつくることであるわけでございます。
 国際社会がまず関心を持っているのはそういうことであり、そして、そういったイラクの人の手によっていい暫定統治機構ができ、その後イラクがいいガバナンスを持った政府をつくっていけるようにするということでございまして、債権の問題については、我が国としては、我が国が持っている債権を回収したいと思うのは当然であります。問題はその方法、どのようにやっていくか、さまざまなイラクの経済の状況を考えながらやっていくということが、国際社会の考え方であります。
 さっき、ロシアが債権を一部なくしてもいいというお話をなさったと言いましたけれども、今国際社会で議論されているのは、例えばどうやって繰り延べをするかとか、いかにしてイラクに、もともとイラクは石油もあって、いい資源を持っている、潜在的な人の能力も高い国でありますから、そういった国をいかに成長の過程に乗せ、イラク人に自由を取り戻しという過程でイラクを国際社会が一致して助けていくか、それが国際社会の関心であり、日本の関心でございます。
首藤委員 外務大臣、大変すばらしい御説で、きょうは私はさわやかな気分で帰れますけれども、外交というのは、しかしそれは、そういう話と同時に、これは我々は国民の税金で、国会議員というのは国民の税金で活動しているわけですから、だから国民の、これは輸出保険とかいろいろあるわけですよ。当然我々の税金でカバーしているところがあるわけですね。
 ですから、こういうものに対してやはりきちっとした、それは人道的な理想論はもちろん重要ですよ、しかし同時に、フランスを見てください、ドイツを見てください、ロシアを見てください、人道的なものもきちっとやっている、しかしこちらのことだってきちっとやっている。それをやらないで人道的な話だけされると、ちょうど何か主客逆転みたいな気がするわけです。
 そこで、この問題に関してはもう限りなくいろいろあるわけですが、最近、イラクの復興に関して、岡本特別補佐官というんですか、イラク復興問題担当で岡本さんという方がイラク周辺国に派遣されて、さらに特別補佐官を任命とあるわけですけれども、何で外務省から特使を派遣しないんですかね。当然のことだから……(発言する者あり)
池田委員長 御静粛に願います。
首藤委員 まず外務省が、そこに座っておられた安藤局長とか、それに大使もたくさんいるし、片倉元大使とか、アラブ語もできる大使もたくさんいるし、アラブ社会においてたくさんの評価されている人がいる。それをどうして、例えばアメリカの走狗のような人を送って、それを特別補佐官だとやっている。アラブの人々の感情を逆なでするようなことをやっているわけですけれども、それが何で外務省じゃないんですか。これはもうまさに二元外交じゃないですか。外務大臣、いかがでしょうか。――外務大臣、いかがでしょうか。
池田委員長 では、まず茂木外務副大臣、その後、川口大臣。
茂木副大臣 首藤委員もよく御案内の、二元外交というのは、外交当局とそれからそれ以外の部門が何らの調整のないまま異なる方向で外交活動を行う、これが二元外交であると思います。
 今回、イラク問題につきましては、まさに三月の二十日の総理の方針、そして第一回の対策会議の方針を踏まえまして、政府一体で取り組んでいるわけであります。政府一体で取り組む以上、そこの中で最もふさわしいと思われる人間が派遣されるというのは当然でありまして、岡本参与の出張に当たりましては、外務省の担当課長も同行して、事前にも十分な調整の上、進めさせていただいております。
首藤委員 これ以上聞いても、それはしようがないでしょう。外務省の立場として、そこに大臣も不興げに腕を組まれておりますけれども、これはもう聞いてもしようがないので、私は聞きません、あえて。これは武士の情けだと思って評価していただきたいと思うんですが。
 そこで出てきているのがORHA、復興人道支援機構、これへの人材派遣の問題ですね。なぜアメリカの国防省の組織に日本の公務員の人材派遣が可能なのかということですね。
 研修とか連絡要員というのはわかるわけですけれども、これは占領軍なんですよね、占領軍。これはジュネーブ協定上の占領軍ですよ、どう考えたって。占領軍の機構ですよね、ORHAというのは。それに対して軍人を送ることは憲法九条どうのこうのということになっていますけれども、軍人を送るどころじゃなくて文民でも、これは公務員を本当に送れるんですか。しかも、最近のニュースによりますと、情報によりますと、課長クラス以上を送ると。それは単なる研修とかじゃないわけですよ。要するに機能を、中核的な人物を送っていくわけですよ、外務省の。これはもう日本が占領軍に参加するということですよね。これは文民でもおかしい。
 公務員は、第一義的に日本という国家に対して忠誠義務を持っているわけですね。それが条件として違ってくるのは、国際公務員の場合ですよね。国際公務員の場合には国際機構に対して忠誠義務が要求され、各国はその国際性を侵害しないことを要求される。加盟国義務です。ところが、アメリカの国家機関においてアメリカの国家目的に従う、そういう機関に果たして日本の公務員が、主体的に重要な役につくことが許されるのかどうかということですね。
 しかも、では、日本の利害関係、日本との利害が対立したときに、一体この人はどう行動するのか。日本の権益を裏切って、アメリカの権益に従うのか。文民が行くことだってこれは認められないんですよ。外務大臣、いかがですか。これは重要な点ですからね。これは外務省の本当に重要な点ですから、お答え願いたい。
川口国務大臣 再び大変に先見性をお持ちの御質問でございますが、これについて、復興人道支援局、これは米国のNSCのもとにある組織でございます。そして、国防省を初めとして幾つかの官庁がこれにかかわっているという組織でございますけれども、これにどのような具体的な協力を行うということが可能であって、あるいは適当であるかということについては、現在検討中でございます。そして、今の時点で、具体的にこうするという結論を得ているわけではないということです。
 ちなみに、御参考までに申し上げれば、ほかの国、例えば英国ですとかデンマークですとか、そういった国はORHAに人を送り込んで仕事をしているということでございます。
首藤委員 もう一度、それはなかなか答えられない、まあ答えられないというお答えなんでしょうが、このORHAというのは、今お聞きしたら、NSCの下にあると。国防省でもなくて、NSCの下。これは要するにGHQですね、ゼネラルヘッドクオーターなんですね。だから、それはもう国家直属の、アメリカ直属のラインであるということで、僕はそれはちょっと知らなかった、国防省だと僕は思っていましたけれども、NSC、国家直属の機関だということですよ。国家直属の機関に日本の官僚を派遣する、忠誠義務というのはどうなっているのか。
 例えば、私は不明にして知らないんですけれども、やはり誓いをするんじゃないんですか、公務員というのは、アメリカでは。聖書に置いて、そんなものはないんですかね。あるいはアメリカの国旗に対して忠誠を誓うという、アメリカのそういう基本的な考え方があるんじゃないかと思いますけれども、一体このORHAというのは、国際機構、今まで我々が経験したような国際機構として考えられるのか、あるいはアメリカの組織として考えられるのか。その定義はどちらですか、外務大臣。
川口国務大臣 ORHA自体も現在いろいろな、動いているといいますか、今後どういうような形態で人道、復興行政を行っていくかということについてはっきりしているわけではない。今後、イラク全体の人道、復興を行っていくに当たって、事態の変転、変遷、あるいはいろいろな国の考え方に応じてどんどん変わっていく可能性ということはあると思います。
 という、不透明といいますか不確定性が非常に高いということが現状ですけれども、今の時点で申し上げれば、ORHAというのは米国の機関であるということです。政府の機関です。
首藤委員 ですから、ORHAというのは米国の機関なんですよ、明らかに。国際機構ではないんです。ですから、国際公務員ではないんです。アメリカの機関であって、また占領機関なんですね。
 ですから、そこで問題になるのは、今度はまた実に九条との関係があるんですね。九条では、戦争への参加、交戦権の行使でないと。それは、文民だから鉄砲を撃たないということだと思いますよね。
 しかし、私は、問題はそこにあるのではなくて、憲法九条との関係であれば、国権の発動としての戦争を否定している憲法の箇条がむしろ問題になるんじゃないかと。要するに、占領しているということに、他国を占領しているという行為に問題があるので、そこへ参加する、主体的に参加していくということ自体が憲法違反だ、そういうふうに思いますけれども、いかがでしょうか、外務大臣。
茂木副大臣 その解釈は私は違うと思います。日本が交戦国ではないわけでありますから、これが憲法九条に抵触するとか、そういう問題ではありません。
 ただ、そういう法的な解釈の側面と政策判断の側面というのはある。そこの中でORHAの形態が今後どうなっていくのか、また、戦後の復興について日本が積極的に関与していく上でどういう形の派遣が望ましいのか、こういうことは、ORHAの今後の形態と、また今後のイラクの状況等を見ながら判断をしていく問題だと思っております。
首藤委員 外務大臣、先ほどから、ORHAの機構はわからないとか、どうなっていくかわからないといったら、そういうふうなところへ人は派遣できないじゃないですか。それが、文民組織だといったら、急にミリタントな軍事組織にだって変わるかもしれない、そんなところへどうして派遣できるんですか。
 もう一つそこで話題として出てくるのは、自衛隊派遣ということが盛んに言われているわけですけれども、一体どういう条件があれば、日本の自衛隊はどういうことが可能なんでしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 自衛隊をどういう状況で派遣するという、その派遣についての政策自体は私の判断ではございませんで、防衛庁長官の判断でございますので、私がこの場で自衛隊についてはこういうふうにしたいというふうにお答えするということはできないわけでございますけれども、例えば今の時点でもし防衛庁長官がそういうような判断をなされるのであれば、浮遊している機雷を除去するとか、そういうことは現行の法律の枠内で可能でございます。
首藤委員 これは、質問がよくわからないのか、意図的にずらしているのかわかりませんけれども、要するに国連決議のことを聞いているわけですよ。国連決議がなくて自衛隊がふらふら行って、そんな機雷だろうが何だろうが、ほとんど機雷も恐らくないんでしょうが、そういう国連決議なしに、いかなる法的な根拠に基づいて自衛隊は、これは周辺事態ではないですよ、明らかに、それからテロ特措法の範囲でもないですよ、そういうところへ、今の答弁が恐らく全く間違っているわけですけれども、もう一度是正してください。
 要するに、どういう国連決議があれば自衛隊を送れるのか、どういう法律で、例えばPKO法であればどういうことが可能なのか、そういうところを法的にきちっと、自衛隊、防衛庁の話じゃないですよ、外務大臣、外務省の国際法上の問題として聞いているんですよ。
川口国務大臣 先ほど機雷の話をいたしました。これは自衛隊法で規定がございまして、したがいまして、私が自衛隊法について担当大臣ではございませんけれども、これによりますと、遺棄機雷の処理はできる、既にできます。それで、このことについては既に政府としても発表済みでございまして、三月の二十日の時点で「我が国の対応策について」ということを発表した中で、「今後の事態の推移を見守りつつ検討すべき項目」として、このことについては入っております。
 それから、平和協力法、これの発動ができるかどうか、これは、そのよって立つところの五原則というのがあって、それが守られる状況かどうかということによりますので、それは今後の推移を見て、そういうことかもしれないし、そういうことでないかもしれない。その他のことについて自衛隊を派遣することを考えるかどうか、これはまさに外務大臣の所管の範囲ではございませんので、私の立場からお答えをするということについては控えさせていただきます。
 それから、新法を検討するかどうかということについては、これもさまざまな状況を見ながら、これは先ほど別な委員に申し上げたとおりでございまして、必要であるというふうに判断をすることになれば、その時点で国会に御相談をさせていただくというふうに考えております。
首藤委員 いや、外務大臣、それはもう話が支離滅裂ですよ。そんな、遺棄機雷を自衛隊が勝手にどんどん取っていいんなら、世界じゅうどこへだって自衛隊は行って取れちゃいますよ。やはりそれは、湾岸戦争というもののコンテクストで初めて出てきているわけですよ。
 ですから、どういう形で国連決議が出れば、例えば、はい、終わりましたという国連決議になれば、これは戦争状態が終わったとしてPKO法の対象になってくるわけでしょう。しかし、そういう宣言がなくて、戦争の終結宣言がなかったら戦争状態なので、これはPKOだって送れないわけですよ、どんなことだって。だから、戦争地域だったら、ペルシャ湾だったら、そんな、勝手に送れないわけですよ。
 だから、どういう国連決議があれば、国連決議がないというのはもう全然だめだけれども、もしあったとしたら、成立したとしたら、どういう国連決議があればいいか。それは、外務大臣自身がドビルパン・フランス外相とかそれからイギリスのストロー外相に会って、国連決議、国連決議とおっしゃっているじゃないですか。そのためでしょう。いかがですか、外務大臣。
川口国務大臣 まず、先ほど自衛隊法で遺棄機雷の処理ができるというふうに申し上げました。これはまさにそのとおりでございまして、これを行うということを決定する場合には、その前提として国連の決議が必要だということは全くないわけでございます。
 それから、一般的に、国連の決議ですけれども、今、これぞ先ほど来申し上げている委員の先見性のたまものである御質問であるわけですけれども、国際社会で決議についてはいろいろな思いがある、議論がなされているとまでは言えないかもしれませんが、いろいろな考え方があるということが現状でございます。
 まず、恐らく今考えられていることというのは、幾つかのこと、例えばこの前、オイル・フォー・フードについて新しい決議をつくった、一四七二というのができたわけでございます。こういったイラクの人々の人道、復興支援、これを支援するためにいろいろな決議が必要になってくるであろうということは想定がされるわけですけれども、具体的に、例えばその決議がどういうような内容のものであるか、どういう文言のものであるか、どのような範囲のことを含めた決議であるか、そういったことについては、まさにいろいろな議論といいますか考えが飛び交っているということでございまして、こういう決議がなされるというようなことを今の時点で、しかも我が国は安保理理事国ではございませんので、はっきり申し上げる段階にはないということです。
 それから、新法については、先ほど言いましたように、必要だというふうに考えた時点で国会には御相談をさせていただきます。
首藤委員 外務大臣、この質問の趣旨をおわかりになっていないと思いますけれども、質問の趣旨は、だから、日本はそういうことを、どういうのをやっていいかわからないというのじゃなくて、そうじゃない、日本の独自の外交、日本は、このイラクの問題、いろいろなねじれはあったけれども、こういう方向へ行くべきだ、積極的に外交を展開すべきだということで質問しているわけですよ。
 だから、どうなるかわからないから、どういう決議が出るかわからないじゃなくて、こういう決議を出せと。そのためにフランスへ行かれ、イギリスへ行かれているんじゃないですか。国民が期待しているのはそうですよ。非常にみんな心苦しい思いをしている。戦争をとめようと思っても、とめられなかった。しかし、戦後復興というのは、日本も廃墟の中から立ち上がったんだ、こういう復興の枠があるんだということは、やはりみんな思っているわけですよ。
 だから、そんな、どうなるかわからない、どういう決議に賛同するかじゃなくて、まさに、そここそ外務省の総力を挙げて、日本がこうあるべきだという決議を提案で出してください。ああ、日本は安保理の常任理事国じゃないとか、非常任理事国なんて関係ないですよ。国連の二割を出しているんだから。オーナーシップがあるんですよ、日本には。当然、こうあるべきだということを外務省はぜひ積極的にやっていただきたい。そういうところにこそ、やはり国民の負託を受けている外務省の名誉回復があるんだ、そういうふうに私は思います。
 もう一つ、結局、質問を何度もしているように、やはり、これは法律上極めて難しいんですよ。日本は、PKOもしても、戦争直後に入るとか、占領下で入るなんということは全く想像もしていない、対応もできていない、装備もできていない、教育もできていないんです。
 だから、そうすると人道支援というものが当然必要となってくるわけですが、そうした、政府とか、そういう公的なものではなくて、NGOとか市民団体、市民社会のいろいろな活動、こういうものはどういうふうにしてそれを積極的に展開されますか。その点に関してはいかがでしょうか。
川口国務大臣 まず初めに、委員ほどではございませんけれども、外務省もいささかの先見性は持っておりまして、委員が先ほどおっしゃられた決議でございますけれども、これについては、我が国としては、国際協調を、今亀裂が入っておりますので、それを立て直すために、まず、ある形での国連決議をつくるということが先決ではないだろうかということで、国連決議の基本的な要素も含めた形で、先般、私はヨーロッパに参りましたときに、訪問をした国との間では話をしてまいりました。
 それの内容については、いろいろございますけれども、例えば、イラクの領土の一体性ですとか、イラク人の主権ですとか、それから、国連の十分な関与において、国際協調のもとで人道支援、復興支援をやっていくとか、全部挙げませんけれども、そういったような打診はいたしました。
 それで、それについての感覚ということについては、言いましたようにさまざまな考え方があるということでございまして、そういった決議でいいということに今の時点ではっきりなっているわけでも残念ながらありませんし、あるいは、別な形での決議がいいということが表に出て、それが力を持っているということでもない。まさに、今の状態というのはそういうことだという、考え方がいろいろある状況だということを申し上げたわけです。
 それで、NGO、市民のグループにどのように活動をそこでしていただくかということですが、人道支援、復興支援において、NGOの方々が多大な、大きな役割を果たす、あるいは、NGOでなければ果たすことのできない役割があるということは、さまざまな状況でこれは国際社会が既に十分に知っているとおりでございます。
 我が国としては、既にNGOの方、これは、戦争中、武力行使中もずっとイラクの北部、そしてヨルダンに、イラクの支援ということでNGOの方々が入っていらっしゃいました。このNGOの方々に草の根無償ということで、たしか四億円だったと思いますが、既にお金の支援もいたしております。
 今後、その事態の進展を見ながら、さらにさまざまなことを今考えておりますので、その幾つかについては、それほど遠くない将来にまた発表をすることができるかと思っています。
首藤委員 外務大臣、私は、今おっしゃったような、そんなみみっちい話を聞いているんじゃないんですよ。四億円、それは草の根無償で出したと。それはそうですよ。ほかの国に、周辺国に出しているんだ。だから、やはりこれを、日本が表立って支援したり復興に力を出すのは、いろいろ法律的な問題があって時間がかかったりする。だからこそ、オルタナティブとして、全力でここを支援したらどうかということを提言させていただいているんですね。
 というのは、我が国の名誉も失われているんですよ。日章旗がアメリカのスターズ・アンド・ストライプスと、要するに、アメリカの星条旗と一緒に日章旗が燃やされているんですよ、中東の各地で。
 こういうときに、やはり、日本はアラブの民衆の味方だということがわかるようにやっていただきたい。それも、実は日本のNGOだって未発達ですから、なかなかできないんですよ。だから、そこは欧米のNGOをやるのではなく、例えばアラブ社会の、中東社会のNGOがたくさんあるんですよ、ヨルダンでもシリアでも。そういうところを積極的にやって、例えば、その中で、日本の国民、市民が本当に貢献しているということがわかるように、幾らでも知恵を振り絞って積極展開していただきたい。これはぜひ、日本が公的な点でいろいろ問題があるところは、思い切ってここを動員して、さまざまな手で日本の名誉回復に努めてほしいと、もう切に切にお願いしたいと思いますね。
 それから、もう一つ。今度は、今までずっとイラクの問題、イラク側のことを言っていたんですが、日本にはイラク大使館というのがございますね。これは、フセイン政権が崩壊して、暫定政府、暫定統治機構、そのめども残念ながら恐らく立たないだろうというときに、在日イラク大使館の法的なステータスというものは今までと変わりないのかどうかということですね。例えば、前は一時、アメリカからの要請で、追い出せというようなプレッシャーもあったと聞いていますけれども。
 それから、今後のイラク支援との必要性から、これはもう何らかの大使館機能が本当に必要で、日本のNGOが行くためにも、そこを通して、そこから推薦して行ってもらわないと、いろいろな機材を持ち込みますから行けないと思うんですけれども、在日イラク大使館の立場といいますか、そのステータスというか、そういうものはどういうふうにお考えでしょうか。
茂木副大臣 今委員御指摘のように、今後イラクの問題を考えていく上で、イラク政府であったりとか当局と連携をとったり、いろいろな相談をすることは必要だ、今後ともそういうニーズというのはある、このように考えております。
 そこの中で、現在の日本にありますイラクの大使館の位置づけでありますけれども、国際法上は、一方の政府が変更したこと自体によって、直ちに外交関係及び常駐の外交使節団の設置に与えられた同意がなくなるものではありません。
 したがって、在京イラク大使館は、御指摘のような段階におきましても、使節団の公館としての地位を喪失するものではない、このように考えております。
首藤委員 イラク問題の最後に、先ほど、イラク問題、イラク戦争というのは、本当に、第一幕が終わって第二幕への幕間であるというふうに私は判断させていただいたわけですが、第二幕の一つの可能性は、シリアへの攻撃ということが考えられるわけですね。
 アメリカのシリア非難というのがエスカレートしている。もちろん、これに対しては、パウエル国務長官が、いや、そんなことはありません、イランとかシリア、悪の枢軸と言っていたけれども、名指ししていたけれども、それをすぐ攻撃するなんてことは考えていませんということを言っていましたけれども、大体、この流れを見ていると、パウエルさんの発言というのはアメリカのブッシュ政権の主流ではない、そういうふうに思うんですね。ラムズフェルド国防長官は既にシリア攻撃策の策定に入っていると、既にいろいろなところで報道されている。
 また、客観的に言うと、シリアというのは、イスラエルとゴラン高原という、イスラエルがシリアの一部を占領して、何とかそれを取り返したいと。ガリレア湖の東岸だって占領されているわけですね。そういうところをして、シリアは何とかもう一度戦争をして取り返したいというところがある。
 それから、ここにはヒズボラという、レバノンにあるシリア系の過激にテロ活動をやっている団体の事務所もある。
 それから、御存じのとおり、ヒズボラというのはアルカイダと物すごく密接な関係があって、九・一一テロも、欧米の論調は、あれは、九・一一テロが起こったときには三つの機関、アルカイダと、それからアイマン・ザワヒリなんかのエジプト系のグループと、それからヒズボラと、三組織の共同体、共同行為だというふうにヨーロッパの諜報機関なんかは言っているわけですね。
 ですから、これはもうまさにシリアというものがアルカイダとも密接な関係があって、テロ対策の非常に重要なところであるんですが、またさらに、今度はここへイラク指導部が逃亡している。これはもう、だんだん客観情勢から明らかになってきました。そして、シリアへ入ろうとする直前で捕まった高官もおり、客観的情勢はもう真っ黒々になってきているわけですね。
 そういう状況で、シリア攻撃をどういうふうに日本は、慎重にいくべきだとかアメリカへアドバイスしているのか、シリア攻撃をどうやって日本はとめようとしているのか、あるいは、とめないで、そのままこんなことは関係ないからとアメリカに任せているのか。日本のシリア攻撃への積極的な外交活動について御説明いただきたいと思います。
川口国務大臣 シリアの問題ですけれども、いろいろな報道がなされているということは私どもも承知をしております。ただ、委員もおっしゃられましたように、米国の高官、パウエル長官も含めてですけれども、今シリアに対して武力行使をするということを考えているということではないと私どもは認識をいたしております。ただ、シリアの情勢については、もちろん引き続き我々としては注視をしていきたいと考えています。
 シリアとの関係では、我が国は、戦争、武力行使の前においても、総理特使に行っていただきまして話をしたりしております。そういった我が国とシリアの関係というのは、非常に歴史的にも近いものがございます。そういった関係で、今までも、例えばヒズボラに対して影響力をシリア政府が行使をして、武力的な行動をとらないようにということを、とめるというようなことをやったこともございます。
 いずれにしても、シリアの関係については、我々としては、今までの外交関係、また、そこから生み出されたシリアに対する影響力を行使しながら、情勢については注視をしたいと考えております。
首藤委員 私も、外務大臣が中東に行かれたときにヒズボラ問題を話し合った、今も覚えていますよ、本当に重要なことですけれども。これは仮定の話であるというふうには言えない問題なんですよね。もう今そこにある危機なんですよ、はっきり言うと。
 ですから、これは、私、きょうだけではなくて、これから外務委員会、同僚委員も恐らくこの点に関して質問が集中すると思いますけれども、この問題に対しても、アメリカがやって、それに引きずられていくんではなくて、やはり日本は、例えばシリアまでは違いますよ、イラクというのはサダム・フセインという抑圧的な独裁政権があったけれども、それ以外にはこういうことはできますよということを、ぜひ日本の政策、ここで目に見える日本の外交というものをぜひ示していただきたい、そういうふうに思うんですね。
 それでは次に、北朝鮮問題についてお聞きしたいんですが、先ほど私の前に質問された委員からも、この二週間以内に始まるという多国間協議、どうして日本が参加していないのか、参加できないのかという話をしていたわけなんですが、これで例えば日本は、そうするといわゆる蚊帳の外に置かれようとしている。こんな会議は認められないじゃないですか、日本の外交として。
 こんなことで、大量破壊兵器があることはわかっていて、開発もとめられない、一方では、ミサイルが飛んでくるかもしれないから防衛費を増大して迎撃ミサイルをつくろうと言っているときに、外交は協議の場にもひょっとしたら行けないかもしれないというような状況では、日本の外務省なんかない方がいいじゃないですか。こんなお金をかけて何千人も人を雇っている意味がないわけですよね。
 ですから、この多国間協議に関して、日本はもう絶対に参加するのかどうか、その辺、外務大臣の御意見というか声明をお聞きしたい。
川口国務大臣 北朝鮮の問題については、我が国も、そして近隣の諸国、米国も大きな懸念を核の問題について持っているわけで、またさらに、我が国としてはそれとは別に二国間のさまざまな問題も持っているわけでございます。そして、日本を初め韓国も、みんな働きかけをしてきております。
 それで、そういった状況がある中で、北朝鮮としては、米国との関係、米国が態度を変えて政策を変えるのであれば、米国との話し合いも含め、話し合いの枠組みについては柔軟であるということをつい先般言ったということについては、これが一歩先につながる動きであるというふうに我々としては希望をしております。
 先ほど別な委員の方に申しましたように、今水面下でいろいろな動きがございまして、その内容については、まことに申しわけないんですが、もう少し申し上げるのには時間をいただきたいというふうに私どもとしては思っています。
首藤委員 いや、それはそういう立場もわかりますけれども、やはり国民がもう外務省を見限っているのはそういうところなんですよ。だから日本がどんどん防衛費の増大とかミサイルとか、そういう過激な論に走っていっちゃうんですよ。外交できちっとやって、外交に任せておいたら北朝鮮の大量破壊兵器の問題も解決していくんだとなれば、日本はそうした路線に行かないんですよ。しかし、これがもうだめだ、こっちに任せたんじゃ全然だめだというんで、しようがないからもっと強硬な路線にみんなが、社会全体がもう右足をぎゅっと踏み込み始めているわけですよ。
 ですから、こういうところをそんな、もうちょっとすれば言えるというんじゃなくて、日本が入らない多国間協議なんてありませんとどうして言えないんですか。そんなのだったら、もう日本は、こんな状況に置かれたら、そんな多国間会議なんて認めない、そんなのは絶対認めないと言うのは当たり前じゃないですか。日本が一番もう、要するに脅威は日本なんですよ。北朝鮮のミサイルは、中国に、北京に向かって撃とうとかそんな、ノドンとかテポドンとかもう一千キロも飛ぶようなのは、ソウルのような五十キロとか七十キロのところじゃないんですよ、それは。短距離ミサイルの世界なんだから。
 要するに、千キロもあるところといったら、中国か日本なんですよ。中国でないとしたら、日本しかないじゃないですか。その一番脅威を感じている国がどうして、もうちょっと待ってくださいとか、それを少し水面下で交渉していると言うんじゃなくて、日本が入ってこない会談は一切認めない、そんな会談があっちゃいけないと、どうしてそれが言えないんですか。
 ですから、そういうことを、もしそういう行動をとるなら、私は、外務省というのはもう価値がないし、外務大臣も存在、必要はない、そういうふうに思いますよ。
 北朝鮮に関してはいろいろなことをやっているわけですよ、去年の九月から。総理みずからが行って、平壌宣言というのをつくった。平壌宣言というのは、一体何ですか、これは。もう歴史上の、世界の歴史に刻まれるコミカルな宣言ですよ。その条件が、もう結局、福田さんとしては、官房長官にしては、もうこれは廃棄だ、それはNPTの脱退でもってそれでもう最後だ、もうこれで決まりだというふうになっていますけれども、これは日本は、ではこの平壌宣言がもう事実上無効だ、廃棄だということを、何をもって態度を決定されますでしょうか。いかがでしょうか。
川口国務大臣 政府としては、平壌宣言が無効な文書であるというふうには考えていないわけでございまして、我が国としては、この平壌宣言の精神と基本原則にのっとって北朝鮮との間でいろいろな問題を解決し、そして国交正常化につなげていく、そして国交正常化の暁には経済協力をするというステップを踏んでいくということでございます。
 この平壌宣言については、北朝鮮側も非常に重要な文書として考えていて、金正日総書記の誕生日には、金正日総書記の立派な成果であるというふうに考えているわけで、大事にしているわけでございます。これを守らせることによって次のステップに進んでいく、守らせることによって問題を解決していくということが我が国の立場であります。これはてこであります。
 したがいまして、我が国としては、これを無効であるというふうに言うつもりは持っておりません。
首藤委員 それは、その金日成主席の誕生日に、金正日さんが自分の成果だと誇るのは当たり前ですよ、うまく日本をだました宣言ですからね。それは向こうのすごい成果ですよ。我々日本にとっては物すごい失点ですよ。これがあるために次の対策が打てていかない、どう対応していいかわからない。
 だから、何をもってこれは、今、例えば福田官房長官なんかが言っているのと違うんじゃないですか。福田官房長官あるいは総理自身が、もうこれは終わりだと。ただ、最後に終わりだと言うには、NPT脱退というものがもう決まったと。これはなかなか自分ではっきり、書類を目の前でびりびりと破るわけじゃないですから、そこに今資料をごらんになっていますけれども、どういう条件で自動脱退になっていくのか、それがいつなのか。そうなったときには日本は明らかにこの平壌宣言というものを廃棄するというふうに、その時期はいつでしょうか。
川口国務大臣 北朝鮮がNPT脱退するということを言ったわけですけれども、我が国として、この北朝鮮の脱退をしますといったそのアナウンスメントが有効であるかどうかということについては疑義を持っているわけでございます。米国あたりは、これについて議論をする必要は認めないということを言っている、たしかそういう言い方だったと思いますが。ということでございまして、我が国のNPTの考え方についてはそういうことです。
 それから、先ほど福田官房長官あるいは総理がおっしゃっていることと私の言っていることが違うではないかということがございましたけれども、これは全く違っていないわけでございまして、幾つかのことについて、この平壌宣言について、正確にきっちり守られていると言いがたいところもありますねということであります。
 これはそういうことですが、それを守らせることに意味がある。それを行って正常化交渉をした、それをしなければ、北朝鮮は経済協力を得ることはできない、そういうことになっているわけでございまして、我が国としては、この精神と、これを守らせる、そういうことで交渉をしていきたいと考えております。
首藤委員 だから、それは、守らせるのはどうやって守らせるんですか。それをお聞きしているわけですよ。宣言とか国際条約はすべてやはり理念を、ジェントルマンズアグリーメントなんですよね。だから、お互いが本当に信頼関係があって初めて成立するものなんですよ。一方はどんどん信頼性を裏切る行動をみずから宣言しているわけでしょう。では、どうやってそれを守らせるかということですよね。
 日本の歴史を見てください。例えば、私も満州生まれですけれども、私が生まれた直後には、もう不可侵条約を破って、ソ連軍がばっと満州に入ってきたんですよ。私も本当に生きているのが不思議なんです。そのとき死んでいればこういう質問をする機会もなかったと思いますけれども、幸い生きて帰って、こういう質問を川口大臣に言っているわけですけれども。
 だから結局、では守らせるというのはどうやったら守らせるんですか、金正日さんに。やはり小泉さんとの約束は守らなくちゃというふうに、どうやったら守らせるんですか。これは拉致問題でも、きのう、そうでしょう。拉致被害者が外務省に来て、どうやって解決するんですかと、離れ離れになっている家族をどうやって一緒にできるんですかということをお聞きしても、全然答えない。
 だから要するに、もう一回聞きますけれども、では、平壌宣言がまだ生きているなら、どうやったらそれを守らせることができますでしょうか。いかがでしょうか。
川口国務大臣 私が先ほど来これがてこであるということを申し上げている理由は、北朝鮮が、責任のある、国際社会で責任を持つ国家としてやっていくためには、困っている幾つかの問題、これを解決していかなければいけないわけです。
 我が国は、北朝鮮の近くにあって、さまざまな支援を北朝鮮にすることができる国である。国交正常化をした後、経済協力というふうに書いてあるわけですけれども、こういった経済協力、あるいはもっと広い意味でのさまざまな支援、これも北朝鮮が平壌宣言を守って国交正常化をするということでなければここに行かない、たどり着かない。ずっと申し上げていますように、国交正常化の交渉というのは、これが守られるということでない限り妥結をしないということであるわけです。
首藤委員 いや、だから外務大臣、そうおっしゃるけれども、日本には拉致問題が大きなトピックになっているわけですよね。最大のトピックですよ。平壌宣言には、では拉致家族の問題は、経済復興の前に拉致家族の問題、拉致の真相解明、それから拉致家族の日本への復帰、どこに書いてありますか。どうやって守らせるんですか。平壌宣言のどこにこの問題が、日朝間の最大の問題である拉致問題が平壌宣言のどこに書いてありますか。
川口国務大臣 平壌宣言の文言に即して言いますと、「日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題」ということで拉致問題について触れているわけでして、それから、実際に、第一回の会合あるいはそれ以前のコンタクトの段階、またそれ以降のさまざまなコンタクトの段階で、政府として、今日本にいる拉致された人たちの家族、北朝鮮にいる家族の人たちを日本に帰ってきてもらって、自由な意思決定ができる環境の中で意思決定をしてもらうこと、及び、今まで、拉致をされたときの事実関係、あるいは亡くなったとされている人たちの状況、あるいはそれ以外の人たちについての事実解明、こういったことについては引き続きずっと、それから現在も引き続き実態の解明については北朝鮮に対して強く申し入れている、そういう状況に今あります。
首藤委員 いや、何かもう、日本の外務大臣なのか何だかよくわかりませんけれども、そんな、平壌宣言に書いていなかったらだめなんですよ。契約書というのはそういうものでしょう、宣言というのは。文書を残すというのは、だから大事で、だから句読点一つに対して、丸にするのか読点にするのか、もうそれだけですごく、エスが、複数になるのかならないのか、英語でいえばそういうレベルでやるわけですよ。
 契約書だってそうでしょう。例えば車を買うときだって、セールスマンはいいことをたくさん言ってくれる。しかし、実際に契約書に書いてあるのと違ったら、それはだめじゃないですか。その前に、いや、あなた、こんなこと言ったじゃないかなんと言ったって、契約書はこうなっているんだから、だめなわけですよ。
 日朝間の契約書というのは、この平壌宣言なんですよね。相手側は明らかに不履行だ、不履行なことを相手は実証しているわけですよ、声明している。それに対して日本が対応できないというのは、全く理解に苦しむわけですよ。
 何か、向こうに言っていると言うけれども、大体チャンネルがないと言っているわけでしょう。だから、どうやって、どういう形で国民が納得できるような日朝交渉を行っているのか。どういう展望があるのかをお聞きしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
川口国務大臣 二つの国家のトップの約束、これと、セールスマンの自動車の契約と御一緒になさるということについては、私は必ずしも同意はいたしておりませんけれども、いずれにしても、我が国として、拉致については、先ほど申し上げたような形で強く申し入れております。そして、申し入れていると申し上げるからには、当然に、ちゃんとチャンネルがあって申し上げているということで、やっているからこそやっていると申し上げているわけです。
 それで、今後の展望、これは先ほど申しましたように、最大限の努力を傾注していくということを今申し上げるしかないわけでございますけれども、核の問題を初めとして、北朝鮮が柔軟な態度を見せ始めている中で、国際社会が全体として、北朝鮮に国際社会の責任ある一員として国際社会の中で行動をしてもらうということをやる過程においてさまざまな試みをする機会が、これがさらにふえてくるのではないかというふうに考えております。
首藤委員 何か一般論ばかり聞いていて、こちらもテンションが下がってきちゃうんですけれども、それで気を取り直して何とか質問しないといけないんだとは思うんですが、拉致問題に関しても、その経過も全く進展していないわけですよ。だから、本当に家族会の方は怒られて、経済制裁はどうだというふうに言っているんですけれども、要するに、何も答えない、何も答えないことが答えだという形になっているわけですね。ですから、こんなことになって、もう本当に手詰まりになってきて、千日手みたいなことを繰り返す。
 どこに問題があったかというと、やはりそれは、最初に拉致被害者の方が日本に帰られて、それから例えばすぐ帰してまた子供を連れてくるとか、そこの段取りがきちっとできていなかった。恐らくできていたのでしょうが、急に帰さないというふうになったと。
 こうした外交が、ふらふらふらふらした、このことがやはり最大の問題を生んでいるんじゃないですか。ですから、その原点に戻してきちっとやり直さない限りは、実はこの問題というのは解決しないんじゃないですか。外務省としてはどのようにお考えですか。
川口国務大臣 拉致の問題について、本当にその進展がはかばかしくないということについては、私としては非常に残念に思っています。
 ただ、では進展が全くないかというと、そういうことではない。我々として努力をしているということで、例えば、その一例を挙げさせていただきますと、これは、ジュネーブの国連委員会において、EUから北朝鮮の拉致問題を非難する決議案、これが出されるということでございまして、我が国としてもこの決議案の共同提案国となる方向で、現在EUと緊密に協議をしているわけでございます。
 こうした直接のといいますか二国間の試み、あるいは国際的な場での試み、多極間での試み等々を通じて、北朝鮮にこの問題についてさらに一歩前に出るための国際社会としての試みは続いているわけでございまして、いろいろな問題、これは最初から、最初からといいますか、今回北朝鮮が見せている柔軟なアプローチ、拉致の問題についてこういう姿勢を引っ張り出せるということは重要な努力だと思い、我々としては努力をしているということでございます。
 すべて問題が一日にして解決をするわけではない、既に半年たってしまいましたけれども、我々としては努力を続けていくつもりでございますし、また、核問題についての新しい試みが何らかの形で軌道に乗るということがあれば、それは最初のステップとして、その後、次のステップ、さらにそのステップという展開にこれを国際社会が一致協力をして進めていくということが大事であると考えております。
首藤委員 もう何か、質問しても、トラもシカも蛇もみんな生き物ですみたいな話を聞かされていても全然質疑にならないんですけれども、結局、時間もだんだん迫ってきましたから、もう本当に、我々も別に外務省をつぶそうとかそういう気持ちでやっているわけじゃないですし、党派として言っているわけでもないですよ。
 しかし、外務省のやっていることあるいは大臣の言っていることは、何かいろいろなことを各国に呼びかけてとか世界に言ってとかいうような、そんな、野党だってやっていますよ、はっきり言って。政府じゃなくたって、我々だって一生懸命やっていますよ。あるいは、名もなき市民団体だって同じようなことをやっていますよ。
 だから、何でこれだけの資産を持ち人材を抱えた外務省が、どうしてこの程度しかできないのか。例えば日露戦争のあのころの状況を見てください。日本がもうありとあらゆる手段を使って情報を集め、いろいろ人を動かし、そうやって日本の生命を守ったわけでしょう。だから、どうして単なる官僚的な手続だけではなくて、そうしたことができないのかということですよね。
 チャンネルにしても、今、四月十三日に平山郁夫さんがピョンヤン入りしているわけですけれども、恐らく、その辺、メッセージなんかが託されているのかどうかですよね。そういういろいろな形で、実際には北朝鮮に入っているわけですよ。特に我々は正面から入るとなかなか難しいみたいだけれども、裏から、ヨーロッパからはもう日常茶飯事のごとくいろいろな人が来て、いろいろな交渉をしているわけですよね。
 ですから、幾らだって動かせるのに、何でこんな紋切り型のことしかできていないのかということで、これはもう外務省を挙げて、だから外務省は危機感を持ってほしい。こんなことじゃ、日本がここでとどまっていれば、必ず北朝鮮における核の問題というのはエスカレートしてくる。そして、必ずやはり平和裏、外交裏以外の手段が現実化してくるんですよ。ですから、我々が我々の危機を呼び寄せちゃっているわけですよ。だからこそ、これだけ質問させていただいているわけですよ。
 だから、もう何度も何度も言うんだけれども、外務省もそれだけ真剣に取り組んでほしい。そうじゃないですか。どうして笑うんですか、そこで。外交は時間があるんじゃないんですよ。一生懸命やらないと、必死でやっていかないと、時間はできないんですよ。
 最後にもう一つお聞きしたいんですが、一つやはり国際社会との問題で、フジモリ元ペルー大統領の問題というのが出てきています。ICPOで国際手配されている、横領、買収、虐殺ということで告訴されているわけですけれども、どうしてそうした犯罪者をかばうのか。これは、憲法九十八条二項に、日本が締結した条約及び確立された国際法規は、これを確実に遵守するというふうに書いてあります。外務省のとっている態度は、これは憲法違反ですよ。
 ですから、日本はなぜフジモリさんを、フジモリ元大統領を守らなきゃならないなら、そのように戦略的に動かなきゃいけないし、それは訴追される根拠がないということを国際社会にきちっと訴えなきゃいけないし、そうでなくて、このままずるずるいったら、やはり日本の名誉を国際社会で失いますよ。今外務省がやっているようなことは、もうありとあらゆるものが反憲法的ですよ。
 この問題に関しては外務省は今後どういうふうに対応するか、お聞かせ願いたい。
川口国務大臣 フジモリ元ペルー大統領の処遇につきましてですが、平成十二年の十二月にフジモリ元大統領が日本国籍を有しているということを確認いたしております。現在、フジモリ氏は日本国民として我が国に居住をしています。フジモリ元大統領の日本滞在に関しましては、日本政府としては国内法令に従って処理をする、対応するということになります。
 もう一つつけ加えさせていただきますと、ペルー政府から、フジモリ元大統領に関連をして司法捜査共助要請がございました。これに対しましては、国内の法令に従いまして対応をしてまいります。
首藤委員 もう時間も終わりますけれども、こういうのをきっちり対応できないから、日本の名誉は次々と失われていくんですよ。
 フジモリさんは日本国籍を持っている日本人、そうなんですよ。だけれども、国籍は日本人でも、犯罪者と認定されれば、それは当然ICPOに協力していくわけでしょう。ですから、それは答弁になっていないわけですよ。
 だから、それは、一方では週刊誌でいろいろなことを報じられるような大活躍をされている、一方ではこういうことで訴追されている、その中間に入って日本が何もやらなければ、日本がまたローグネーション、ならず者国家になっていってしまうんですよ。国際社会での名誉を守るために、フジモリさんを守るのが大事なら大事なように、そういうのをきちっと対応しないと、こういってずるずるやって、ごまかしの答弁だけやっていて、時間が終わりました、はい終わりますで済まないんですよ。
 今、国民の負託は、国民の目は外務省に対して厳しいんですよ。むしろ、それは厳しいのを通り越して、もうあきらめに近いんですよ。本当に外務省は、外務省としての、何をやる機関なのか、そのアイデンティティーをしっかりさせて、外交をしっかりやっていただきたい。
 以上で終わります。
池田委員長 次に、藤島正之君。
藤島委員 自由党の藤島正之でございます。
 まず、イラク問題についてお尋ねしたいと思いますけれども、今回のイラクの戦争をどういうふうに見ておられるか、その意義づけについて、まずお伺いしたいと思います。
    〔委員長退席、土肥委員長代理着席〕
川口国務大臣 私は、大量破壊兵器の脅威から人類をいかに守るかというのが、冷戦以降の、二十一世紀における世界の、国際社会の最も重要な課題の一つであるというふうに考えております。
 それで、イラクに対して、大量破壊兵器を持っているという懸念がございまして、そしてイラクが、それだけではなくて、決議六八七で規定されているようなことをずっと守ってこなかった。十二年間にわたって守ってこなかったばかりか、一四四一においてイラクがそれを是正する最後の機会を与えられたにもかかわらず、その機会を活用しなかったということがあって、残念ながら武力行使をする以外にイラクの武装解除をする手はない、手段はないということを国際社会として考えるに至った。
 それで、米国、英国がそれをリードをしたということでございますし、我が国も、独自の努力として総理特使を送り、そしてイラクにも茂木副大臣に行っていただいて、アジズ副首相と二時間にわたってその点について議論をしました。その結果として、非常に残念ながら、武力行使に踏み切りがあった際において支持をするということを言ったわけでございます。
 ということで、その戦争の意味というのは、我が国が、二十一世紀において、世界の安全保障面からの脅威をいかに認識をし、それから、国民を守るために何をすべきかということを国として判断をした、そういうことであると思います。
藤島委員 今おっしゃられたことだろうと思うのですけれども、私も、大量破壊兵器の拡散は絶対に阻止しなきゃいかぬ、こうは思っております。そのためには、今回、ある程度やむを得なかったのかな、国際法上の根拠については非常に問題があるとは思いますけれども、それはそれとしても、ある程度やむを得ないという面はあったとは思います。
 今回の内容の中には、やはりイラクに自由をもたらすという面も大きかったのだろうと思うのですけれども、やはり最大の問題は、大量破壊兵器の拡散を防止しようということであったろうと思うのです。
 ところで、今までのところ全然出てきておらないわけですけれども、この点について外務省は、アメリカから何らかの情報を得ておりましょうか。
川口国務大臣 結論から先に申し上げれば、大量破壊兵器が出てきたという情報については、まだ接しておりません。
 それで、今まで武力行使をずっとしてきたわけでして、その段階がある程度最終的な局面に入って、これから本格的な大量破壊兵器の捜査を行うことができるようになった、そのように聞いております。
藤島委員 やはり、もし大量破壊兵器が発見されないとなると、これは世界的な非難が大変なものになって、何のための戦争だったのかということになるのですけれども、仮に本当に出てこなかったとした場合に、我が国は、にもかかわらず米国を応援していたわけですけれども、仮にの話ですけれども、万一出てこなかった、こういう場合に、我が国の立場は一体どうなるんでしょう。
川口国務大臣 十二年間にわたってさまざまな国際社会の圧力があって、そして中には、その過程では武力行使もあって、そして一四四一が十一月に採択された後でも、最後の機会をイラクは生かすことをしなかった。
 イラクは、過去においてまず使っていたという事実があるわけでして、九八年の時点で物理的に量まで挙げてこれの懸念があるということが言われていたわけです。そしてイラクは、もしそれを廃棄したなら廃棄したということで、言うことができたわけですね。自由に言うことができた。しかも、それをしなければ、周りに数多くの軍隊がいて、そして武力行使に至る可能性も十分に認識されたという状況でも、イラクは事実関係を明らかにしようとしなかった。廃棄をしたという説明をしようとしなかったということから、国際社会は、日本も含め、大量破壊兵器はイラクにおいて見つからないであろう、そういう事態を想像することは非常に難しいというふうに考えているわけでございます。
 したがいまして、委員の質問の前提となっている点はそういうことですので、見つからなかったときに日本はどうするのか、どうなるのかということについては、前提をそのように我々としては考えているということでございます。
藤島委員 イラクは持っていないと言っているんじゃないんですか。米国は、にもかかわらず、持っているはずだということでやっているわけですね。だから、そういう意味で、大臣が説明されている前提は必ずしも、一方的な見方なんじゃないんですか。
 今まであれだけ国連の方で査察をやったわけですね。しかし、その片りんも出てこなかった。輸送手段のミサイルが、その大きさがちょっと触れるか触れないかというような話のものはありましたけれども、大量破壊兵器についていえば、全く出てこないわけですね。
 ですから、大臣のおっしゃるような、今まで決議違反だとか、それに対して一切ないとかあるとか言わなかったと言っていますけれども、もともとイラクはそういうのを持っていないと言っているわけですからね。大臣のおっしゃる前提だけで、議論ができないというふうにはいかないんじゃないんでしょうか。もし本当にない場合も、我が国は考えておかなければいけないんじゃないかな、またそのときになってから考えるというのではなくて。その辺をお伺いしているわけです。
川口国務大臣 イラクが過去において大量破壊兵器を全く使ったことがないということであれば、あるいは委員のおっしゃっているような考え方もあるかもしれません。ただ、現にイラクは二回にわたり大量破壊兵器を使用したという実績がありますね。
 その後九八年に、当時の国連の査察団において具体的に数字を挙げて、これがどれぐらいある、これがどれぐらいあるという懸念をずっと指摘をされ、そして、それを廃棄したのであれば、廃棄した証拠、まあ証拠の一つはいろいろな文書であったり、あるいは廃棄に携わった人とのインタビューであったりしたわけですけれども、そういったインタビューにおいてもイラクはなかなか認めず、そしてイラクの政府の立ち会いのもとで、あるいは録音のもとでやるならばということを言い、最後の段階で数人の人のインタビューを認めたということであって、実際には、それに携わったとして国連側が考えた人は百人以上のオーダーに、四百人とかそういう数字が挙がっていますけれども、であったわけですね。
 イラクが、これだけの軍が周りにいて、そして国民を戦争の災禍から守るというふうに考えれば、実際に廃棄をしていたら、使ったわけですから、どこかの時点であったことは明確であって、それを廃棄をしていたらば、廃棄をした証拠というのを見せるのは、これはまず簡単であったわけで、それをイラクはやろうとしなかったということで国際社会は懸念を持っている。
 この懸念は引き続きありますし、これは単にアメリカ、イギリスだけの懸念ではなくて、例えば三月七日の時点でブリクスUNMOVIC委員長は、二十九項目にわたって未解決の武装解除問題についての文書を出しているわけです。
 これだけの状況があって、イラク、もちろん隠しているというようなことが想定されますから、それを探し出すということはなかなか時間のかかる作業である可能性はありますけれども、国際社会としてそれが見つからないということを想定することは難しいだろう、想定しがたいというふうに考えているわけです。
藤島委員 ちょっとすれ違っているような気もするんです。
 イラクも、小出しに少しずつやっているというのはけしからぬとは思いますけれども、全く協力しなかったわけではないので、少しずつ少しずつ時間を稼いでいたというのかもしれませんけれども、いや、私は、もうここまで来た以上は、むしろそういう大量破壊兵器の一部でもきちっと見つかって、やはりアメリカがやったことは正しかったということの方が、今後にとっては秩序的にはすっきりしていいんじゃないかなという気はしているんです。かえって、ないことによってアメリカに対する世界の非難がどんどん出てきたりしまして、日本の立場も悪くなったりすることの方が実は怖いんじゃないかなという感じがしているものですから、今のような質問をしたわけです。
 この件はこれまでにしまして、あと、フセインが生きているか死んでいるかということなんですけれども、この点については、何かアメリカの方からは情報があるんでしょうか。
川口国務大臣 これについては情報はございません。アメリカにおいてもイギリスにおいても、今の時点で確認できる状況ではないと思います。
藤島委員 まあ、日本に情報が来るのは一番最後になっているのかもしれませんけれどもね。
 それから次は、イラクの次はシリアだとかイランだとかあるいは北朝鮮だというような問題がささやかれているわけです。これについては、先ほど首藤委員の方からも質問があったわけですけれども、我が国は、先ほど大臣の答弁でシリアについての働きかけとかのような話がありましたけれども、私は、そうではなくて、アメリカに対して、絶対にこういう国に対しては手を出しちゃいかぬ、武力行使をしちゃいかぬということを、イラクのときもそうだったんですけれども、イラクの方にばかり働きかけて、アメリカにやっちゃいかぬという方をそんなに働きかけていなかったように思うんです。
 シリア、イランについても、むしろアメリカを説得する、そういうのも日本の役割じゃないか、こう思うわけですけれども、大臣のお考えと、今後どういうふうな働きかけをしていこうとしているのか。
川口国務大臣 現在、米国がシリアに対して武力攻撃をするというふうに考えているとは承知をいたしておりません。
 我が国としては、状況については引き続き注視をしておりますけれども、イギリスあるいはアメリカの政府の高官が言っていますように、今、英米がシリアに対して抱いている懸念というのは、イラクの持っている、あるいは持っていた大量破壊兵器、これがシリアを通じて拡散をする懸念、それから、イラク人の大量破壊兵器の開発に携わった科学者がシリアに入って、そこを通じて世界に広がっていく、言うなれば大量破壊兵器の拡散、これに対する懸念であるというふうに承知をいたしております。
 いずれにしても、事態を引き続き注視していきたいと思います。
    〔土肥委員長代理退席、委員長着席〕
藤島委員 事態を引き続き注視するんじゃなくて、シリアの方にそういう働きかけをするなということではない。その働きかけはいいんですけれども、アメリカに対して、もう戦争はやっちゃいかぬということを強く働きかけるべきじゃないかということを申し上げているわけですけれども、その点についてお答えがないんですね。
川口国務大臣 シリアに対して、米国あるいは英国が武力行使を行うことを決めたということについては、私は何も聞いておりません。当然、米国、英国として国際法にのっとって行動するというふうに私は考えております。
藤島委員 全然そんなことを聞いているわけではないので、また下手をすれば、今の答弁のように、米英がシリアを攻撃したら、どうせ無条件でくっついていくようなことになるんじゃないかと思うんです。そうじゃなくて、そんなことは絶対やっちゃいかぬということを米英にきちっと今から働きかけをしておく必要があるんじゃないですか、今何かやっているんですかということを伺っているわけですよ。
川口国務大臣 米国や英国が今の時点でシリアに対して武力行使を用意しているとか準備をしているとか、あるいはそういう意図を持っているとか、そういうことが全くない以上、我が国として米国に対して、そういう前提のない、あるいは根拠のない理由に基づいて、そういうことをすべきであるということを働きかけなければいけないという必要性は感じておりません。
藤島委員 ちまたにいろいろ言われているわけですよね、次はシリアかイランかとか。そういう中にあって、本当に意思決定してから議論したってしようがないわけですよ、米英に。そうじゃなくて、煙が出るか出ないかのうちに、きちっと我が国としては、絶対やっちゃいかぬと思っている、やるべきじゃないということを働きかけておくべきじゃないですかと。
 そうじゃないと、前回のように、もうほとんど決まっているにもかかわらず、日本の政府はあいまいにしておったわけですね。私が質問したとき、外務大臣は、あいまいにしておくことが国益にかなうんだなんて言ったわけで、そのときはもう既に意思を固めていたわけですよね、対米追随の意思は。ですから、決まる前に、あるいは今のようなうちに、そういうことは絶対やっちゃいかぬということを働きかけておくべきではないですか、こう言っているわけですよ。
川口国務大臣 歴史を十二年前に戻していただきますと、イラクに関してはさまざまな問題があったわけですね。シリアに対して今そういう問題があるかといえば、そういうことではない。
 米国が我が国の同盟国であります。国際法を守る国でありまして、今の時点で、突然にシリアに対してそういう行動をとるということを同盟国としては想定しておりません。
藤島委員 その想定をしていないという言葉は、非常に何かわかったようでわからないんですけれども、これ以上何回やっても答えは出てこないようなのでやめます。
 時間がなくなってきましたけれども、先ほどORHAの件があったんですけれども、これは憲法上の問題についてすっきりさせておいた方がいいんじゃないかと思うんです。
 交戦権についての政府答弁というのが、答弁書が八〇年十月二十八日、これは大分古いんですけれども、出ております。この見解については今も変わっていないというふうに理解していいですか。
川口国務大臣 交戦権について我が国が述べた、内閣法制局で述べた見解でしょうか。それについて変更はございません。
藤島委員 交戦権は、「交戦国が国際法上有する種々の権利の総称であつて、相手国兵力の殺傷及び破壊、相手国の領土の占領、そこにおける占領行政、」云々と、こうあるわけですね。その占領行政ということは、ORHAのやる仕事は占領行政になるんでしょうか。
川口国務大臣 我が国の考え方といたしましては、これは少し話が長くなりますけれども……(藤島委員「簡単に。ちょっと時間がないものですから」と呼ぶ)簡単に言うのは非常に難しいんですけれども、簡単に申しますと、要するに、武力行使の後の空白を埋める、その必要が実際にあるわけでして、それを今行っているというのが米軍、英軍の存在であり、そのORHAのやっている仕事はそれの一環であるというふうに考えます。
藤島委員 要するに、それじゃ、もうちょっとわかりやすく言いますと、この解釈は、我が国が占領行政をやるというようなのは、交戦権が憲法上認められていないのでできないということだろうと思うんですね。そこははっきりしていると思うんですが、米国が行う占領行政に我が国が参加するのは憲法上問題がないかどうか、そこをはっきりしておいた方がいいということなんですよ。
川口国務大臣 我が国の交戦権との関係でそれがどうかという御質問でしたら、これは、そもそも伝統的な戦時国際法における交戦権というのは、非交戦国によっては行使し得ないものであるということでございまして、武力の行使を我が国が行わなかったわけでございます。したがいまして、我が国はいかなる意味でも交戦国ではございません。我が国が国際法にのっとった米軍の暫定統治、これに対して協力する場合には、我が国は交戦権を行使することにはなっていない、ならない、そういうことでございます。
藤島委員 川口大臣は大変頭のいい方ですので、すっきりしておいた方がいいと思うんですけれども、要するに、我が国は交戦権を持たない、我が国は持たないのはいいんです。ただ、アメリカなんかいわゆる交戦権を持っている、いわゆる戦う権利だという意味の交戦権じゃないわけですけれども、要するに、占領行政を含む意味の交戦権をアメリカは持っている、アメリカが行使をする、そこに我が国が参加するということは許されるのかどうかですね。
川口国務大臣 基本的には、憲法九条との関係で問題が生ずるということはないというふうに考えております。
藤島委員 では、なぜないかということをもう少し説明してほしいというわけなんです。
川口国務大臣 イラクにおいて、戦争が今まだ続行中ですが、戦争が終わった段階でどのような形で復興が行われるか、戦後復興が行われるかということについては、今まだ明確ではないということでございますけれども、仮に、米軍が軍を引き続き置いて、そしてイラクに対して復興を行うための暫定的な統治を行うという形になったといたしまして、我が国がその活動に参画をして復興の支援を行うということとしたといたしましても、我が国は先ほど申しましたように武力行使の当事者ではない、したがって基本的に憲法九条との関係では全く問題が生じないということを申し上げているわけです。
藤島委員 そこはどうも、そういう筋書きにならないんじゃないかと思うんですよね。要するに、もう一つはっきりしておきたいのは、ORHAの行う行為は占領行政なのかどうか。もし占領行政であれば、そこに日本の、自衛隊でもいいし自衛隊じゃなくてもいいんです、それはもう一つ、実力組織か全然実力組織でないか、二つにもう一度分けた方がいいと思うんですけれども、よしんば単純に実力組織がORHAに参加するということは我が国の憲法に問題は生じない、こう言うんですけれども、そういうふうにならないんじゃないかと。
 我が国が独自に占領行政をやっちゃいかぬというのは、それははっきりしていますけれども、じゃ、よその国がやる占領行政に、そこにはある程度実力行使も入っていると仮定した場合に、そこに我が国の国家権力の一部としての公務員なりが参加するということは果たして本当に憲法上問題がないのかどうか、もう少し筋書きをきちっとしておく必要があるんじゃないか、こう思うんですけれども。
 もう一つ後ろの方で、文民なら武力行使じゃないからこれは問題がないという議論はもう一つおくんですけれども。ですから、文民だけである、だから問題がないんだ、実力行使には一切関係ないんだという仕分けなのか、そこのところなんです。
川口国務大臣 昨日、法制局から同じような趣旨の答弁もございましたけれども、これは、文民である、あるいは文民ではないということとは独立をして、とは関係なく、我が国は憲法九条との関係で、交戦権、これを憲法九条二項で禁止をしているわけですが、我が国はそもそも武力行使をしなかったということですから、先ほど申し上げましたように、交戦権の行使ではないということでございます。
 それで、協力できるということですけれども、この派遣をする人、そのときに派遣をする人が一般職の国家公務員、すなわち文民、いわゆる文民ですが、であれば、我が国が武力の行使をその人が行うという評価を受けるということも想定しがたいということで、そのような意味であれば、文民であれば憲法九条との関係でなお問題を生ずることが少ないと思っていただける、そういうことではあるということですが、いずれにしても、我が国としてこれを手伝うということについては問題はないというのが法制局の見解でございます。
藤島委員 時間が来たからやめますけれども、要するに、文民かどうかのところにどうもすれ違えるような形で、外国がやる占領行政に我が国が実力部隊だろうと文民だろうと参加してもいいということは大変な疑義があるんじゃないかなということを申し上げて、時間なので、質問をやめます。
池田委員長 次に、松本善明君。
松本(善)委員 イラク問題で質問します。
 アメリカ、イギリスのイラク攻撃につきましては、未曾有の反戦平和の世論が全世界に広がりました。フランス、ドイツ、ロシア、中国を初め非同盟諸国、アラブ連盟、イスラム諸国など、圧倒的多数の国の反対を押し切って行われたものであります。アラブ外相会議は、アメリカ、イギリスの侵略と非難をして、即時撤退を要求いたしました。我が党も、この戦争は無法、非人道的な侵略戦争であり、米英軍は撤退をして、国連中心にイラク問題を協議すべきだというふうに考えております。
 そこで質問ですが、イラクでは、原爆に次ぐ大量破壊兵器のデージーカッター、キノコ雲が上がる、それから放射能汚染を生む劣化ウラン弾が使われる、対人地雷にもなるクラスター爆弾が使用される。一般市民の戦火による殺傷、水、医薬品、食糧の不足、ガス、電気、水道がとまる。こういうことによる死亡、病気による被害がどれだけ広がるか、予測もつかない状態であります。それから、博物館、遺跡の略奪など、人類の重要な文化でありますチグリス・ユーフラテス文化の破壊などが起こっております。
 こういうことを引き起こした戦争は、私は人類に対する犯罪的行為だと思いますが、外務大臣、どう考えていますか。
川口国務大臣 戦争が、あるいは武力行使が、その目的を達成する過程で、シビリアン、市民、それから両軍の兵士の死傷を起こしてしまうということは、非常に残念なことでございます。
 今回の戦争に当たっては、できるだけ死傷者の数を減らしてほしいということを私どもは願い、米国にもその話は伝え、そして米国、英国からも、それがまさに自分たちの願っているところである、そのように行動をするんだ、するつもりであるということを聞いております。そのために、米軍は、湾岸戦争、前の戦争のときよりもはるかに多くの精密誘導弾を使用したというふうに聞いております。
 そういった死傷者が出てきてしまうということについては非常に残念なことではありますけれども、大量破壊兵器が拡散をし、いわゆるならず者国家あるいはテロリストグループ、これが持ち、使用するようになれば、場合によってはけたが違う数の死傷者が全く無辜の市民の中に突然に生まれてしまうということになるわけでございまして、細かい国連の決議云々ということは省きますけれども、そういった大量破壊兵器の脅威から人類を守る、それが今回の戦争の、武力行使の意図したところであるというふうに思います。より具体的には、イラクが武装解除をするということが必要であるということであったと思います。
松本(善)委員 大量破壊兵器、大量破壊兵器と言うけれども、大量破壊兵器が使われているんですよ。それで一般市民、罪のない人たちが殺傷されているんですよ。そんなことを言う資格はないですよ、この戦争をやった人あるいは戦争を支持した人に。
 あなたは再々大量破壊兵器ということを言うから言いますが、UNMOVICのブリクス委員長は、スペインのエル・バイス紙上で、大量破壊兵器を見つけ出すということがもはやどこかへ葬られていることは明らかだ、主たる目的が独裁的なフセイン政権を倒すことである、フセイン政権を倒すということが戦争の目的だということが極めて明白になってきています。あなたがいろいろ弁解するけれども、それは通用しないことですよ。
 それから、IAEAのエルバラダイ事務局長は、ドイツのビルト・アム・ゾンターク紙とのインタビューで、大量破壊兵器の有無の判断は国連査察団によってなされるべきだということを強調して、アメリカが仮に発見したといっても、それは国際法的には公認されたものではないと言っております。
 アメリカが証拠の偽造だとか、誤りが指摘をされたことは何遍もあります。ブリクス委員長だとかエルバラダイ事務局長によって何遍もある。今まで大量破壊兵器はイラク側から使われていない。発見もされていない。発見されたとしても、それは公認されるものではない。アメリカが仮に発見したとして、それは公的なものになりますか。それだけ聞きます。
川口国務大臣 米英軍は今、大量破壊兵器の捜査を開始しています。これをどのような形で行っていくかということについては、まだ国際的にはっきり決まっているということではないと考えますけれども、現在のように、パブリックな形で情報がみんなに指摘をされ、詳細に吟味をされ、そういった時代において、委員がおっしゃるような証拠の捏造等については非常に困難であると私は考えております。
松本(善)委員 それはアメリカが幾らやっても、既に証拠を偽造したりなんかをした経過がありますし、何ら世界的には公認されるものではない、もう明白であります。
 それから、今、ORHAとの関係が議論になりました。私もお聞きをしたいと思います。
 まず日本政府の認識として聞くんですが、先ほどは、外務大臣は戦闘中だということを言いましたが、現在はどういう認識ですか。戦闘中なのか占領行政なのか、あるいは両方なのか。これは日本政府の見解として、外務大臣でもいいですが、中東局長でもいいですが、お答えいただきたい。
安藤政府参考人 私どもの認識といたしましては、現在の戦争は最終的な終結局面を迎えているというふうに認識しておりますけれども、まだ最終的に終戦になったというふうには認識しておりません。
松本(善)委員 ORHAについての議論が行われています。これは、アメリカ、イギリスの占領軍の機関である復興援助室のことをORHAと言っていますが、これはアメリカ、イギリスの占領軍の機関であることは間違いありませんね。
安藤政府参考人 ただいま御指摘のございましたORHAでございますけれども、復興人道支援局という訳になろうかと思いますが、まずこれの目的といたしましては、イラクの人々に当初の段階で、電気、基本医療といった基本的なサービスを再開することから始めまして、イラクに新しい政権が移行するまでの間、イラクの人道、復旧復興について、文民部門の活動を総括することを目的としているものでございます。そういうふうに了解しております。
 他方、組織でございますけれども、これはガーナーさんという局長のもとで、アメリカの国務省、国防省、司法省、USAID、そのほか、米国政府外からのアドバイザーによって構成されておりまして、このORHAへの政策的指示は、ブッシュ大統領が国防長官を通じて行うものというふうに了解しております。
 なお、このORHAには、アメリカ以外の、イギリス、豪州等の関係者も既に参画しているというふうに承知しております。
松本(善)委員 ブッシュ大統領のもとで国防長官を通じて指揮をされるということは、これは軍の指揮下に入るものだということではありませんか。
安藤政府参考人 組織的には、米国の国家安全保障会議、NSCと呼んでおりますけれども、これより直接指示を受ける米国政府の実施機関。ただ、この中で国防総省が大きな役割を占めるということはあるというふうに了解しております。
松本(善)委員 今戦闘中だけれども、戦闘が終われば占領行政の機関であることは、これは間違いないでしょう。
安藤政府参考人 ORHAには、大きく分けて三つの部門がございまして、人道支援を行う部門、それから復興を行う部門、それから文民統治を行う部門というふうに三つの部門に分かれておりますけれども、それぞれがこれから具体的にどういう仕事をするのかということについてはまだこれからだというふうに了解しております。
松本(善)委員 質問に答えていない。
 占領行政以外の行政がありますか、戦闘が終わった後に。ないでしょう。今のは、だから全部占領行政でしょう。
安藤政府参考人 占領行政という言葉が、それによって何を意味するかということはいろいろあろうかと思いますけれども、ただいま申し上げましたように、イラクにまだ新しい政権ができていないという段階で、他方、イラクの国内が混乱状況にあるということから、今申し上げましたような人道支援であるとか復興支援であるとか、そういったようなものについて関与していくというふうに承知しておりまして、それ以上の具体的な職務内容についてはまだ私ども聞いておりません。
松本(善)委員 事実上、認めたと思うんですね。中身は別だと。それはまだ決まっていないかもしれぬが、占領行政以外の行政はないんですよ。あれは次の統治機構ができるまでの間、占領行政に参加をすることなんだ、ここへ政府が職員を派遣するということは。
 外務大臣に聞きますが、ORHAへ職員を派遣するということはもう決めたんですか。
川口国務大臣 現在、さまざまな検討を行っているところでございまして、今の時点では、まだ決定をしておりません。
 連絡という意味では、外務省の職員がORHAとの連絡に当たっている、そういう人間はおります。
松本(善)委員 あなたは会見で、一刻も早く何かしなければならない大変なニーズがある、ORHAについては詰めるべき点は詰めて、決定するということだと述べたというふうに報道されています。
 報道は大体、派遣する方向で検討中というのが一般でありますが、そういうことですか。派遣する方向で検討中なんですか。
川口国務大臣 当然に、派遣をしない方向であれば検討をする必要がないわけですから、そういう意味で、派遣をするとしたらどういう問題があるか、派遣をすることが可能かどうかというような、それでどういう形態がいいか、そういうことを検討しているということです。
松本(善)委員 これは、派遣をするということになれば、米英の占領行政に参加をするということではありませんか。
川口国務大臣 先ほど安藤局長も言いましたように、このORHAというのは、今、イラクの国民が人道の問題から支援を必要としている、あるいは復興のための支援を必要としているということにこたえるということで機能をしているわけであります。我が国として、そういったニーズにどのようにこたえていくかということは、日本国としては非常に重要な課題、日本として果たすべき役割であるということを考えているわけです。
 したがいまして、ORHAについて人を派遣するということが、どのような形で行うのがいいか、あるいは問題がないかというようなことを今検討をしている、そういうことを申し上げているわけです。
松本(善)委員 これは、占領行政に参加をするということは明白ですよ、それ以外はないんだから。NGOなんかがやる人道支援とは違うんです。占領行政の中に入っていくという。これは、占領行政に参加するということは、先ほども議論がありましたが、これは法制局長官に聞きますが、参議院でも答弁をしたようですが、これは憲法九条に反するということは、一九八〇年五月十五日の稲葉誠一衆議院議員の質問主意書に対する答弁書、これを引用した一九九七年十一月二十五日の参議院内閣委員会での竹内条約局長、現在の事務次官の答弁で明らかであると私は思います。参議院での答弁もありますから、簡明に法制局長官の答弁をお聞きしたいと思います。
秋山政府特別補佐人 憲法第九条第二項で否認されている交戦権の問題について絞ってとりあえず御答弁いたしますが、この憲法九条二項の交戦権とは、いわゆる占領行政を含む交戦国が国際法上有する種々の権利の総称を意味するものでございます。
 ただ、これは交戦国が国際法上有する権利でございまして、武力行使の当事者でない我が国が交戦権を行使するということは基本的には論理的にあり得ないということは、昨日参議院の外交防衛委員会で法制局が答弁いたしましたし、それから、国際法上のその考え方につきましては、外務省から昨日同様に答弁があったところでございます。
松本(善)委員 交戦権を日本が行使していないんだからこれは憲法違反ではない、こういうふうな答弁なんですけれども、占領行政というのは、戦争の行為ですよ。それに参加をするというのは、参戦なんですよ。だから、私は、憲法九条に明白に違反すると思います。
 高辻法制局長官が七〇年の三月三日に、参議院の予算委員会でこういう答弁をやっているんです。仮に朝鮮で動乱が起こった場合の話ということで、国家の意思で義勇兵が募集をされて派遣をすれば、義勇兵は国家の意思が加わることになる、国家の意思が加われば、憲法九条の精神に反する、少なくとも反する、憲法違反になる可能性は大いにあり得る、こういうふうに答弁をしているんです。
 アメリカの占領行政、戦争に、交戦権の行使です、これは。これに日本国家の意思として参加をするということは、この高辻法制局長官の答弁から見ても、これは明白に参戦じゃないですか。これは憲法違反じゃないですか。これはどう考えますか。国家の意思が、ORHAに参加をするということについては働いているんですよ。それは憲法違反の国家意思ではありませんか。
秋山政府特別補佐人 ただいまの国家意思を介在させて義勇兵を派遣して武力行使を行うということとこの交戦権の問題とは、やや差のある議論ではないかと思います。先ほど申しましたように、交戦権という概念は、交戦国、武力の行使の当事国以外は行使し得ないという論理的な関係があるわけでございます。
 ただいまの御指摘の、いわば憲法の趣旨なり精神に反するのではないかという御質問として受け取らせていただきますけれども、今のORHAの任務、あるいは我が国の関与のあり方等、まだ細部にわたって私ども承知しているわけではございませんけれども、我が国が武力の行使を行わず、あるいは他国の武力の行使と一体化しないということが担保されております限り、戦禍に見舞われましたイラクの復興に我が国が貢献するということまで憲法の趣旨というか精神というか、そういうものに反するということもございませんし、先ほども申しましたように、交戦権を行使するということにもならないというふうに考えております。
松本(善)委員 人道支援の方法は幾らでもあるんですよ。NGOだとか、それから国連中心の機構ができてからやるとか、幾らでもあるんです。ただ、問題は、占領行政というのは戦争行為の一部なんですよ。それに日本が参加をすることが少なくとも憲法の精神に反するということを言っているんですよ。
 これは、憲法制定時に金森国務大臣が、一九四六年九月十三日、貴族院ですけれども、この判断は国家意思が加わるかどうかだということが判断基準だと。これは明白に憲法違反だ、日本が占領行政に参加をするという国家意思を明らかにするということなんだ。これは、憲法違反であることが明白ですよ。答弁はありますか。どうぞ。
秋山政府特別補佐人 昨日の法制局の答弁は、戦闘が終結した後の、戦後の復興について申し述べたものでございます。
 仮に、なお戦闘が継続中における我が国の暫定統治への参画という問題になりますと、これは派遣先の任務の内容、あるいは派遣される職員の職務の内容、身分、当該職員がいわゆる武官であるか文官であるかというようなことも考慮に入れて、憲法上の問題が生じないよう十分に検討する必要があるとは存じます。
 ただ、このような場合にありましても、派遣する者が一般職の公務員等、いわば文民でありますれば、基本的には我が国が武力の行使を行うという評価を受けることも想定することは少ないのではないか。したがいまして、憲法九条との関係で問題を生ずることは少ないものと考えます。
松本(善)委員 戦闘が終わっても、占領行政というのは戦争なんですよ。だから、あなたの答弁は間違いだ。
 それから、さっきあなたの言ったことに関係しているが、外務大臣は文民であるかどうかは関係ないと言ったんだ、さっきこの問題は。そうですか。自衛隊を派遣しても、それから文民を派遣しても、憲法違反でありませんか。
秋山政府特別補佐人 戦闘終結後の派遣でありますれば、基本的には憲法九条との関係で問題が生ずることはないと考えます。
 ただ、戦闘継続中ということになりますと、派遣先の任務の内容、あるいは派遣される職員の職務の内容、あるいは当該職員が自衛官であるかどうかというような点につきまして、我が国が武力の行使をしないよう、あるいは派遣先の武力の行使と一体化することがないよう、十分に検討することが必要であるとは考えます。
松本(善)委員 それは、あなたの言っているのは間違いだということをもう一回言いませんけれども、外務大臣は、文民か自衛官であるかは関係ない、文民であるかどうかは関係ないという答弁をしたんですよ。それは間違いですね。
秋山政府特別補佐人 繰り返しになりますけれども、仮に戦闘がまだ継続中であるということになりますと、一概に自衛官の派遣が憲法上問題があるということにはならないと思いますけれども、先ほど申しましたような派遣先の機関の任務の内容、あるいは派遣される職員の職務の内容等につきまして、十分検討してみる必要があるというふうに考えております。
松本(善)委員 私は、内閣法制局長官の、法制局の役目というものは、政府の決めたことを何でも弁護をしていく、これは何の権威もないですよ。それは、みずからの存在価値を否定することなんだ。今あなたの言ったことはそういうことですよ。外務大臣の言っているのは明白な、とんでもないことですよ、文民であろうと自衛官であろうと派遣をするのは関係ないという答弁をされたということは。
 私は、もう時間もありませんので申し上げますが、イラク問題というのは、これから国連中心の社会ではなくて、アメリカの軍事力が世界を支配していくということを認めるのかどうかという大問題なんですよ。これは世界の将来にかかわる問題なんですよ。だから、今こそ、国連憲章、日本国憲法の基本精神である国際紛争は平和的に解決をする、武力の行使は安保理事会が決めたときだけ、それと自衛の場合だけ、この原則を、平和のルールを断固として守る必要がある。これは、二度の世界大戦を含む人類の戦争の歴史から生み出されたものですよ。これを守り抜くことが今非常に重要になっているということを申し上げて、質問を終わります。
池田委員長 次に、東門美津子さん。
東門委員 社民党の東門でございます。
 いつものとおり最後のバッターでございます。よろしくお願いいたします。
 きょうはほとんどがイラクの問題に集中しているわけですが、私も、まず最初に、二、三質問をさせていただきます。
 今回のイラク攻撃の理由として、アメリカはイラクが大量破壊兵器を廃棄しないということを挙げていました。そして、そのそもそもの発端というのが、一昨年九月十一日の同時多発テロにショックを受けた米国が、大量破壊兵器がテロリストの手に渡ったらどんなことになるかと恐怖感を抱いたことによるものであり、根本的な目的はテロによる被害を未然に防ぐことだったはずですよね。この間、川口大臣もずっと大量破壊兵器が問題だとおっしゃってきました。しかし、今回のイラク攻撃がテロ防止にとって本当に効果があるかどうか、非常に疑問だと思います。
 今回の攻撃に対して、アラブ諸国の民衆の反米感情は非常に高まっています。米国は、今回のイラク攻撃を正当化するため、イラクが過去十年以上国連決議に違反し続けてきたことを挙げています、これは川口大臣も同じですが。イスラエルも国連決議を無視し続けているにもかかわらず、米国は、パレスチナ問題で、パレスチナ住民の訴えを黙殺し続けてきました。民衆はこのようなダブルスタンダードには敏感であり、米国に対し強い反感を抱いています。
 そのような状況において、国連を無視したイラク攻撃が行われ、民衆は国際社会にもはや正義は存在しないという絶望感を抱いていると言っても過言ではありません。このような民衆の反米感情や国際社会への絶望感からテロが誘発されるのであり、それは、国際社会に見捨てられたことによりアフガニスタンがテロリストの温床になったという事実により証明されるのではないでしょうか。
 エジプトのムバラク大統領は、米国はフセイン一人を倒しても、新たに百人のビンラディンを生み出すと言っています。今回のイラク攻撃がテロ防止に効果があると大臣はお考えでしょうか。そこからお聞かせください。
川口国務大臣 テロの防止は、今国際社会にとって課題であり、過去においても課題であり、今後引き続き課題であり続けると思います。テロの防止は、残念ながら一朝一夕あるいは一打でそれができるわけではないということだと考えております。
 したがいまして、国際社会としては、特に九・一一以降さまざまな協調した取り組みを行っている。例えば、入国の管理ですとか、それから資金を押さえるとかいろいろな、全部申し上げませんが、やっているわけですね。そして、より基本的な問題としてある貧困の撲滅といったような大きな問題についても取り組んでいるわけです。
 それで、では、今度の問題、この結果としてテロが全く生じないかどうかということでいえば、今回の武力行使に反発を持つ人はいるわけですから、それがテロの行動に走る可能性というのは、これは否定できないと思います。
 ただ、大事なことは、そういったことはもちろんあるわけですが、国際社会が協調して、テロにつながっていく大量破壊兵器をなくすということをきちんと、非常に厳しい態度としてあらわしたということが重要なことであって、これが、将来の潜在的なテロリストの手に渡るべき大量破壊兵器の拡散、これを抑えた。そして、数多くの国が、国際社会が、大量破壊兵器をもしもてあそんだ国があるとしたら、それを許容しないという厳しいメッセージを受け取ったということであると思います。
 テロへの闘いは息の長い闘いであって、今回のことはその過程にある重要な、しかも大きく一歩前に進めたということではあるけれども、これによってテロが全くなくなるということではないということでございます。
東門委員 とても大事なことだと思うんですね。国際協調でと今おっしゃいましたけれども、でも、今回のイラク攻撃は決してそうではなかったはずなんですよ。アメリカとイギリスが突出してまずやるんだと。もちろん、四十カ国でしょうか、三十カ国でしょうかが支持をする、日本も真っ先に支持の声を上げたわけですが、ほとんど大多数のところはそうじゃなかった。しかも、本当に世界じゅうで多くの市民が立ち上がって、攻撃はするなという運動が随分盛り上がっていたんですね。そういう中での攻撃を国際社会が協調してとおっしゃるのには、すごく納得がいかないという思いがいたします。
 そして、この攻撃によってこれから一歩前進するとおっしゃるんだけれども、私はむしろ逆の方に感じているんですね。先ほど申し上げましたアラブ諸国の民衆の怒り、不安、そういうものから、そして、あるいは私はある意味で大国のエゴだと思います、小国はたたけと。しかも、大量破壊兵器は何も発見されていない。先ほどから議論されていますが、何も出てきてないじゃないですか。これから出てくるかもしれないとおっしゃるでしょうけれども、そんなことでこういう攻撃をする、そしてあれだけの被害を起こすということは、私は絶対に許されないことだと思います。
 テロは出てくるかもしれないがとおっしゃるけれども、一番大きな誤りは、本当に国際社会の協調は全然なかったということ。全然じゃない、少なかったということ。一番大切なことは、おっしゃった飢餓や貧困、そういうものを撲滅する方向に日本は行くべきだったということ。真っ先にアメリカを支持しますという声を上げたということは、私は大きな誤りであったと指摘をしたいと思います。
 この米英両国の攻撃によって確かにフセイン政権は崩壊しましたが、同時にイラクの行政機構も崩壊して、イラク国内は混乱し、無秩序な状態となっております。住民の生活に深刻な影響が出ているということは、連日の報道でだれでも知っていることです。警察がなくなり、略奪が横行し、病院まで略奪の対象となり、多くの病人やけが人が生命の危機にさらされている。一刻も早い治安回復が必要であります。
 報道によりますと、ラミロ・ダシルバ国連イラク人道調整官も、十二日の記者会見で、病院、民家、学校が略奪され、無政府状態になっている、ここ数日、米英軍は国際法上の義務を果たしていないと批判しておられて、バグダッドなど中部の状況を、戦闘状態よりはるかに危険とおっしゃっているようです。
 政府はこの状況をどのように認識しているのか、まず伺いたい。そして、このような状況を放置している米英両国の責任についてどう考えるのか、大臣からお伺いいたします。
川口国務大臣 イラクの社会で、我々みんなテレビで見るわけですけれども、略奪が起こり、治安の問題があり、そして医薬品を配ろうとした赤十字の人が殺され、人道上さまざまな問題が今起こっている。これは、米軍、英軍がそのための手を最近かなり打っていて、相当下火になってきたというふうに聞いておりますけれども、この治安の問題というのは非常に大きな問題であると思いますし、英軍、米軍も引き続きこの点については最善を尽くすつもりであるというふうに承知をしています。
東門委員 米軍、英軍に一〇〇%の信頼を置いているという大臣の御答弁だったと思います。
 報道によりますと、米国は、今後のイラクの復興の問題について、米軍による占領統治のもと、米国防総省の組織であるORHAが民生分野を担いつつ、イラク人による暫定統治機構を発足させる構想のようです。
 しかし、国際秩序を無視して自国だけの論理で戦争を行って、気に入らない政権を排除し、今また国際社会の関与を排除して自国に都合のいいような政権をつくるようなことになれば、アラブ諸国など周辺諸国は不安定化し、国連秩序を重んじる大多数の国々の反発を招くことはもう明らかです。
 戦後復興については国連主導の枠組みで行うべきであると思いますが、大臣にお伺いしますけれども、政府はイラクの戦後復興についてどのような枠組みが必要だと考えておられるのか、米国による占領統治を容認するつもりなのか、お聞かせください。
川口国務大臣 イラクの戦後復興の過程については、今さまざまな議論がなされているわけです。国連の関与の仕方についても、例えば、中心的な役割であるとか、あるいは重要なといいますか、決定的なと訳しますか、いろいろな訳し方がありますけれども、バイタルな役割という言葉も、これはアメリカが使っているわけでございますし、我が国としては十分な関与ということを言っております。いろいろな考え方が今ございますけれども、何らかの形で国際、国連の関与、あるいは国連が何らかの形でかかわっていくということが重要であるということは、みんなの認識になっていると私は考えております。
 具体的にそれをどのような形で持っていくかということは今後の議論の進展によると思いますが、つい昨日の時点で、ナシリヤで、イラク人の人たちの暫定政権を樹立するための会合が開かれたわけです。ここにも国連のオブザーバーが出席をしています。具体的に、今後、こういった会議が地域で開かれていくということになるのではないかというふうに考えますけれども、既に国際社会としては、そこに国連あるいは国際社会の関与、そういうことを考えながらその過程を今進めている、そういうことだと思います。
 今の時点で何かが具体的に決まっているということではなくて、これは事態が非常に流動的といいますか、物事は変化をしていきますので、柔軟に対応をしながらやっていくということが各国の考え方であると思います。
東門委員 これまでアメリカとの密接な関係、緊密な連絡をずっと強調してこられた大臣ですから、もうアメリカからはいろいろな情報は入っていると思うんですね。今の時点でわからないということはないと思うんですよ。しっかりとこういう方向でいく、だから日本もこれだけはというのがあるかと思うんですが、おっしゃれないということだろうと思います。
 ただ、私が懸念しますのは、本当に占領統治、占領行政というかわかりませんけれども、沖縄を思い出します、思い起こしていただきたい。二十七年間、アメリカの支配下、異民族の支配下に私たちはありました。そういうことが中東で行われるのかな、第二の沖縄かなという思いで見ている。それはあってはいけないと私は思うんですよ。
 本当に今回の戦争というものは、大義なき戦争とよく書かれていますが、そういうこと。それを日本は、沖縄を抱えながらこういう戦争を支持するということ。私は、政府の感覚をとても疑います。アメリカが大事だということを常におっしゃっている。わからないでもないけれども、やるべき手はほかにあった。真っ先にアメリカに走っているということに絶対に納得がいかないということを強く申し上げておきたいと思います。
 米軍の水中爆破訓練についてお伺いいたします。米軍基地は、その存在自体が沖縄県民にとってとても大きな負担となっているということは、もう何度も申し上げております。さらに、米軍による事件、事故のみではなくて、米軍の訓練も、県民の生活や経済に大きな影響を及ぼしています。
 最近、沖縄の周辺海域で行われています米軍の水中爆破訓練についてお尋ねしたいと思います。時間がすごく限られていますので、なるべく簡潔なお返事をいただきたいと思います。
 水中爆破訓練については、昨年の十一月、島根県沖や鹿児島県沖で実施されて、大きな問題になりました。島根県では、その時期、ズワイガニ漁の最盛期であり、漁民に大きな不安を与えて、漁業関係者や地元自治体からの抗議が相次いだようです。沖縄においても、昨年十二月とことしの一月に沖縄本島南東海域のマイク・マイク提供水域の周辺で、二月と三月には宮古島東方海域と与那国島南方海域において、水中爆破訓練が実施されました。これらの海域もソデイカやマグロの好漁場であり、地元の漁業に与える影響はかなり大きいと言えます。
 米国側は、訓練は、周囲の状況、安全を十分確認し、実施されるもので、漁業操業は通常どおり行っても影響はないと言っているようですが、これまでのいろいろな事故において、米軍が十分安全対策をとっていると言っていたはずなのに、実際に事故は何件も発生しているというのが事実のところです。漁民に不安になるなと言う方が無理なんですね。また、魚が逃げる可能性など漁場に影響があるかどうかも十分に検証されないままこのような訓練が実施されることに漁民は憤りを感じているのです。
 このような漁民の不安や憤りについて、政府はどのように認識をしているのか、訓練による漁場への影響はないと言い切れるのか、そこからまずお聞かせください。
海野政府参考人 米軍による水中爆破訓練につきましては、水産庁として、訓練が行われる都度、関係県及び業界団体に対しまして、関連の情報を提供するということとともに、当該水域において操業している漁船の被害の報告も依頼しております。しかしながら、現在までのところ、被害があったという報告はございません。
東門委員 水産庁には報告がなかったということですか。影響がないということは、では、報告があるかないかで決めるということなんでしょうか。沖縄側から、漁連側から報告がないから影響がないと見ているということなんでしょうか。
海野政府参考人 私ども水産庁は、直接確認をすることがなかなか難しいこともありまして、各県を通じて、あるいは関係の漁業団体を通じて、どのような状態であったのかということを確認してございますけれども、これまでのところ、先ほど申し上げましたように、具体的にこのような被害があったという報告は上がってきておりません。
東門委員 わかりました。
 そうしたら、外務省に伺います。
 昨年の十一月の島根県沖や鹿児島県沖での訓練実施に際しましては、漁業関係者や地元自治体は水産庁などを通して訓練中止を申し入れています。外務省からも米国に対し中止を申し入れているということですよね。
 今回、沖縄周辺海域での水中爆破訓練に関しましても、ことしの三月、沖縄県漁連などから外務省に対し訓練中止の要請書を提出しています。外務省は、この要請書に対しどのように対応されたのか。米国に対して訓練中止を申し入れたのか。お伺いいたします。
海老原政府参考人 お答え申し上げます。
 今、東門委員おっしゃいましたように、昨年島根沖で米軍が実施いたしましたときに、連絡が必ずしも十分ではなかったというようなこともありまして、漁民の方々に非常な不安を与えたということは非常に遺憾だということで、そのときに、米軍にもそういう話を伝えまして、今後同様な訓練をする場合には十分前広に連絡をするとともに、これは余り詳しく申し上げませんけれども、国際法上、当然そういう訓練を行う場合には漁業を初めとする沿岸国の権利に妥当な考慮を払わなければならないということになっているわけでございますから、そのような考慮を払ってほしいということを申し入れたわけでございます。
 それを受けた形で、先ほど東門委員がおっしゃいましたように、米軍は、今後同様の訓練を行う場合には周辺を確認して安全を確保した上で行う、したがって漁船を含む船舶については全く通常どおりの活動をしていただいて結構であるし、仮に、訓練をしようとしてそこに漁船がいたというようなことであれば、訓練は行わないというようなことを我々にはっきり伝えてきております。
 そのことは、水産庁を初めとして関係省庁の方にもお伝えをしているということでございますので、そのような形で行われる限り、これは、国際法に照らしても、国際法上の権利として米軍が行うということでございますので、それをも中止しろということを我々が言うということはないということでございます。
東門委員 私がひょっとしたら聞き逃したかもしれないんですが、島根県あるいは鹿児島県の場合は中止を申し入れていますよね。沖縄県漁連からの要請に対しては直接米国大使館の方には申し入れたんでしょうか。そこがちょっと聞けなかったんですよ。もう一度。
 国際法上の件は結構ですから。そこは聞きましたので。
海老原政府参考人 島根県のときに、米軍に対しては、とりあえず訓練は待ってくれという話はしました。それは、連絡が不十分だったということで、ちゃんと、どのような措置をとったのか、先ほどの妥当な考慮というようなことが払われているのかどうか、そこが確認できるまで待ってくれというような意味で、それまでいわば中止というか停止というか、それをしてくれということはいたしました。
 それを受けて、そのような形で今後はすべて行うということでございましたので、今度の沖縄の件につきましては、改めて米軍に特に申し入れをしているということはございません。
東門委員 島根県の場合は事前にできなかったということなんですが、では、沖縄の場合は必ずいつも事前にやっていますか。海上に出ていく前にちゃんと漁民にはその通告が行っていますか。過去四回ありますね。十二月から毎月一回行われているようですが、それは必ずその都度事前に十分な時間を持ってやられていますか。
海野政府参考人 お答えいたします。
 私ども、訓練に関する情報を入手しました場合、これを、漁業無線を通じて各漁船に、それから県、団体を通じて、それぞれ二つのルートを通じて事前に連絡ができるように体制をとって実施しております。
東門委員 ここにありますのは、既に設定期間は二月の二十六日午前七時から二十一時までというふうに設定されているんですが、実際に漁連の方に連絡が入ったのは十一時ということで、もう既に海上に出ていたということもあるんですね。ですから、常に事前にやっているということではないんです。ですから、そこのところはしっかり押さえていただきたいし、私は、事前だからいいということではなくて、やはりそこで漁をしている人たち、そこで生計を立てている人たちのことをもっと国は考えていただきたいということなんです。
 それを強く申し上げておきたいと思いますが、では、今後もさらに沖縄周辺海域での水中爆破訓練は続けるのでしょうか。米国側から今後の予定について情報を提供されていますか。今のところ月に一回ずつ行われているようです。
海老原政府参考人 現在のところ、聞いておりません。
東門委員 であれば、これで三月で完了したと。四月は行われていませんか。三月で終わったというふうに理解していいのかどうか。
海老原政府参考人 これは、先ほど申し上げましたように、基本的には米軍側にも権利があることでございまして、特に訓練ということで、これは軍の運用にもかかわるということで、今後の計画については我々は承知いたしておりません。
東門委員 これまでの政府答弁では、排他的経済水域でのこのような訓練については、国際法上、先ほど局長おっしゃいましたけれども、沿岸国の権利と義務について妥当な考慮を払うことが義務づけられているが、基本的には公海であり、公海利用の自由の原則が適用され、沿岸国の同意を得る必要はないというものでした。国際法的には確かにそのとおりかもしれません。
 しかし、現実問題として、先ほども申し上げましたけれども、漁業者が大きな不安を感じているということ、しかも、訓練自体はこれまで実施されたような優良な漁場で行わなければならない必然性はないわけです。漁業が行われていない海域で実施しても何ら問題はないはずです。そうであるなら、日ごろ日米同盟の重要性と緊密さを強調している政府としては、日米合同委員会などのチャンネルを活用して、米国に対し排他的経済水域内では水中爆破訓練を実施しないという取り決めを結ぶことを求めることも可能ではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 先ほど海老原局長から答弁をしましたように、排他的経済水域において、一定の条件はついていますけれども基本的にそこを使うことができるという権利があるわけでございます。したがって、同盟国の関係といえども、そういった条約で認められている権利を使うことをしないという協定を結ぶということは困難であると思います。
 ただ、いずれにしても、委員のお考えの問題意識というのは私どもも共有をいたしておりますし、米国とはその問題意識を共有するように話し合いを既にやっておりますので、問題意識の共有がなされないような状況があれば、引き続きそういった共有をするようにということは言っていきたいと考えます。
東門委員 わかりました。終わります。
池田委員長 これにて本日の質疑は終了いたしました。
 次回は、来る四月十八日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時三十九分散会


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