衆議院

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第6号 平成15年4月23日(水曜日)

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平成十五年四月二十三日(水曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 池田 元久君
   理事 今村 雅弘君 理事 蓮実  進君
   理事 水野 賢一君 理事 森  英介君
   理事 首藤 信彦君 理事 土肥 隆一君
   理事 丸谷 佳織君 理事 藤島 正之君
      伊藤 公介君    植竹 繁雄君
      小池百合子君    高村 正彦君
      下地 幹郎君    新藤 義孝君
      武部  勤君    谷畑  孝君
      土屋 品子君    中本 太衛君
      松宮  勲君    宮澤 洋一君
      伊藤 英成君    木下  厚君
      今野  東君    中野 寛成君
      鳩山由紀夫君    白保 台一君
      松本 善明君    東門美津子君
      鹿野 道彦君    柿澤 弘治君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   法務副大臣        増田 敏男君
   外務副大臣        茂木 敏充君
   外務大臣政務官      新藤 義孝君
   外務大臣政務官      土屋 品子君
   文部科学大臣政務官    大野 松茂君
   政府参考人
   (内閣府大臣官房審議官) 上杉 道世君
   政府参考人
   (法務省大臣官房審議官) 河村  博君
   政府参考人
   (法務省大臣官房司法法制
   部長)          寺田 逸郎君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 吉川 元偉君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 篠田 研次君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局国
   際社会協力部長)     石川  薫君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            薮中三十二君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房審議
   官)           金森 越哉君
   政府参考人
   (海上保安庁警備救難監) 横山 鐵男君
   政府参考人
   (環境省総合環境政策局長
   )            炭谷  茂君
   外務委員会専門員     辻本  甫君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月二十三日
 辞任         補欠選任
  高村 正彦君     谷畑  孝君
同日
 辞任         補欠選任
  谷畑  孝君     高村 正彦君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 児童の権利に関する条約第四十三条2の改正(千九百九十五年十二月十二日に締約国の会議において採択されたもの)の受諾について承認を求めるの件(条約第一号)
 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約第二十条1の改正(千九百九十五年五月二十二日に締約国の第八回会合において採択されたもの)の受諾について承認を求めるの件(条約第二号)
 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件(条約第六号)


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     ――――◇―――――
池田委員長 これより会議を開きます。
 児童の権利に関する条約第四十三条2の改正(千九百九十五年十二月十二日に締約国の会議において採択されたもの)の受諾について承認を求めるの件、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約第二十条1の改正(千九百九十五年五月二十二日に締約国の第八回会合において採択されたもの)の受諾について承認を求めるの件及び国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官吉川元偉君、同じく大臣官房審議官篠田研次君、同じく総合外交政策局国際社会協力部長石川薫君、同じくアジア大洋州局長薮中三十二君、内閣府大臣官房審議官上杉道世君、法務省大臣官房審議官河村博君、同じく大臣官房司法法制部長寺田逸郎君、文部科学省大臣官房審議官金森越哉君、海上保安庁警備救難監横山鐵男君、環境省総合環境政策局長炭谷茂君、それぞれの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
池田委員長 御異議はないと認めます。よって、そのように決定いたしました。
    ―――――――――――――
池田委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。今野東君。
今野委員 民主党の今野東でございます。おはようございます。連日お疲れさまでございます。
 私は、きょうは、いわゆる児童の権利条約改正、女子差別撤廃条約改正について質問をさせていただくわけですけれども、その前に二、三、大臣にお尋ねしたいことがありまして、お聞きいたします。
 私、今月の八日に本会議で小泉総理に、イラク戦争はどうなったら戦後だと認識されるんでしょうかとお尋ねをいたしました。それに対して総理の答弁は「事態の推移を見守る必要があると考えます。」と、何かもやもやした霧のようなお答えだったんですけれども、しかし、あの時点から、きょう四月二十三日、状況も変わってきていると思います。
 大臣の見解をお尋ねしたいと思います。イラク戦争はどうなったら戦後なんでしょうか。
川口国務大臣 御案内のように、イラク戦争、最終的な段階に入ってきておりまして、散発的な戦闘がまだ続いてはいますけれども、フセイン政権は崩壊をして、組織的な抵抗はもはやないという状況であると思います。
 それで、イラク戦争がどういう段階で終結をするかということについて、これは我が国としては、武力行使をしている当事者ではございませんので判断をするということは難しいわけですけれども、ブッシュ大統領はこれについては、フランクス司令官がこれについては武力行使が終わったという判断をしたときにそれは終結をするのであるということをおっしゃっていらっしゃると承知をしています。
 それから、この前ヨーロッパに行きましたときに、イギリスに対して実は私は同じような質問をしたわけなんですけれども、同じような回答でございました。そういうふうに考えていると思います。
今野委員 ということは、フランクス司令官は、これは戦闘は終わったとまだ言っていないわけですよね。
川口国務大臣 まだおっしゃっていないと思います。
今野委員 ということは、まだイラク戦争は終わっていない、終結していないという大臣の見解なわけですけれども、そういう中でイラクの復興プロセスの中核を担うORHA、復興人道支援局に政府職員を派遣することを決めたということなんですけれども、戦争中の国の復興人道支援局、名前は復興人道支援局ですけれども、人道というのがどういうものかどうかわかりませんが、その戦争中の国の占領政策にいわゆる入っていく。
 このORHAというのは、NSC、アメリカ国家安全保障会議のもとに設立された国防長官の指揮下にある軍政機構ですよね。こういうところにそんなふうに簡単に派遣を決めていいんでしょうか。お尋ねします。
川口国務大臣 先般、ORHAを通じてイラクの復興、人道援助についてのイラク国民への協力を実施する、そのために文民を派遣するということを発表させていただきました。
 それで、それがいいかどうかという御質問ですけれども、例えば武力行使云々ということのコンテクストでの御質問であれば、これについては、先般法制局から、問題がないという見解が示されたと承知をしております。
今野委員 法制局は時の政府の解釈に沿った解釈をしていく傾向があって、法制局が言ったからそれでは本当に正しいのかというと、そうではないのではないかという疑問もあるわけなんですけれども。
 きのう、我が民主党は外交、安保部会を開きまして、中東アフリカ局の審議官奥田さんにおいでいただきました。そしてイラクの支援についてお話を伺ったわけですけれども、ここで各議員からいろいろな質問が出ました。日本としての包括的な復興支援策を持っているのか、あるいは交戦していない国が交戦していた国のつくる復興支援機構にいきなり入っていくことはどうなんだろうか、いろいろな質問が出ましたけれども、どうも納得できるような答えはしていただけませんでした。
 私、ここで改めて大臣に、日本としての包括的な支援策を持っているんでしょうかとお尋ねしたいと思います。
川口国務大臣 四月の二十一日に政府のイラク問題対策本部会議というのを開きました。そこにおきまして、我が国として、国際協調のもとで、イラクの復興のための支援に積極的に取り組んでいくということの基本的な考え方、取り組んでいくときに踏まえる基本的な考え方、これを発表させていただきまして、それから六つの事項につきまして、具体的にどういうことを実施していくかということを発表させていただきました。
 ということで、お答えは、持っておりますということでございまして、もし必要でございましたら、その内容については、また細かく話させていただきたいと思います。
今野委員 それはぜひいただければと思いますが。
 こういうあいまいな状態でORHAの中に入っていく。また、この復興支援局の中で日本に対してのさまざまなオーダーも多分出てくるだろうと思いますけれども、例えば、これについてはできないんだけれども、ここのところは協調してやりたいというようなことはその六つの中に入っているんでしょうか。後でそれをいただければと思いますけれども、そこのところをちょっとお話しいただきたいと思います。
川口国務大臣 先ほど申し上げました政府のイラク問題対策本部で決めましたこと、これはORHAだけに限定をされたことではございませんで、我が国政府としてのイラクの復興、人道支援についての全体としての考え方でございます。
 それで、ORHAにつきましては、これは外務省の職員として出張をしてもらうということになるわけでございます。どのような分野で我が国の人材を送ることがいいのかということについては、今国内においても詰めているところでございまして、これは今後、もうしばらくしたらどのような分野の人をということは決定をされることになると思いますけれども、ORHAから何か発注があってそれを我が国としてやる、そういう考え方ではないということでございます。まさに日本国として、イラクの復興の早い段階から日本の考え方を復興に反映をさせるということのために、ORHAを通ずるイラクの国民への人道、復興支援という考え方でございます。
今野委員 そうすると、ORHAの中には入るんだけれども、ORHAの言うことは聞かないんだ、日本独自のやり方をやっていくんだということですか。
川口国務大臣 聞かないとか聞くとか、別に、聞かないために行くわけでもなく、聞くために行くわけでもないということでございます。まさに、ORHAを通ずるイラク国民の人道、復旧復興の支援のために行くということでございます。ORHAと連携をし、協力をしながらこれをやっていくという考え方でおります。
今野委員 それでは、ORHAがいろいろな、こういうことをやりましょうというのは、これはどこから来るんでしょうか。日本の提案によってさまざまな支援策が決まっていくんですか。
川口国務大臣 これは、ORHA自身が持っている考え方というのもあると思いますし、我が国だけではなくてほかの国も人の協力を行っているわけでございますので、そういったさまざまな考え方が反映をされるという形になるのではないかと思います。
今野委員 特別に日本が一つのきっちりした考え方を持っていって、そしてORHAの中で仕事をするんだ、別にORHAの指揮系統に入るわけではなくて、言うことを聞くというわけでもなく聞かないというわけでもなくという、非常にわけのわからない説明なんです。そうしたら、ここに参加する人はみんなばらばらに支援をやるわけですか。
川口国務大臣 我が国のイラクの復旧復興支援、そして人道支援といったことにつきましては、先ほど申しましたように、政府で決めた、イラク問題対策本部で決めた考え方があるわけですね。それを実施していく中で、我が国のORHAを通ずるイラクの国民への協力というのは、その一つであるわけです。
 ちなみに、何をやろうとしているかということを読み上げさせていただきますと、まず一番目に、国際機関及びNGOを通じたイラクにおける人道、復興支援に対する協力。これは、一部既にもう実施をしております。国連のフラッシュアピールにこたえて一億ドルを限度とする拠出、そしてNGOに対して、既にクルド地域等で働いていますので、その人たちに対して四億円の支援を、草の根の無償の支援を決めております。それから二番目に、ORHAとの連携を通じたイラクにおける人道、復興支援や行政支援に対する協力。そして三番目に、アラブ諸国や周辺国の人々と協力をしたイラクにおける人道、復興支援。四番目に、国際平和協力法に基づく、人道救援物資の自衛隊機等による輸送を含む被災民救援のための協力。五番目に、経済的影響を受けた周辺地域に対する支援。そして六番目に、被害を受けたイラク国立博物館や文化遺産に関し、博物館の整備、文化遺産の保護、保全等について、ユネスコ等と協力をしつつ対応する。その六つを決めておりまして、それが我が国のイラクの人道あるいは復興支援に対する全体としての考え方であるわけです。
 これのうちの幾つかは既に実施をしておりますし、実施をしたものについてはフォローアップをしていきます。そして、今検討中、これから実施に移すというものもございます。
 それから、どのようなことをORHAを通じてやっていくか。これは、まず最初にあるのは、イラクの国民がいかなるニーズを持っているかということがいかなる協力においてもまずベースにあるというふうに考えております。
 ORHAの考え方としては、これは、イラクで新しい政権が発足するまでの間、イラクにおける人道、復旧復興支援の中核を担ってイラク国内の文民部門の活動を総括する、そして、当初はイラクの人々に電気、基礎医療といった基本的なサービスの再開から始めて、コアリションの、連合の活動とNGOや国際機関等の活動と調整をしていく、そういう考え方で動いていくというふうに聞いております。
今野委員 つまり、この六つの事項、四月二十一日の政府の会議で決めた、これをやりますよと入っていって、ORHAの指揮命令系統の中に入るのではないんですよという理解でいいんですね。
川口国務大臣 六つ申し上げたうちの、ORHAというのはそのうちの一つであるわけです。先ほど来申し上げていますように、国連機関を通ずる協力、例えばフラッシュアピールに対しての拠出、あるいはNGOに対しての無償の四億円の供与、あるいはイラクの博物館への協力、こういったことはORHAとは直接には関係がない。博物館への協力はユネスコ等を中心にして行われるということになりますし、国際機関といえば他にも、例えば赤十字ですとか、それからUNDPですとか、さまざまな機関があるわけです。我が国のNGOはまた独自に動いていく。
 したがって、六つ申し上げたうちの、ORHAはそのうちの六分の一、柱のうちの、六つのうちの一つである、そういうことでございまして、我が国全体の復興、人道がORHAとの関連で議論をされるわけではないということを申し上げたわけです。
今野委員 復興について支援をしていかなければならないというのは、私も全くそのとおりだと思います。それならば、わざわざORHAに入らなくてもいいんじゃないですか。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、ORHAというのは、これは、イラクの今のニーズ、今の段階においてニーズにどうやってこたえていくかということから始まって、それは本当にベーシックなニーズがあるわけです、電気とか水とか医療とか、そういったことにこたえることから始まって、そしてさらに、いろいろな段階、例えば行政への支援とか、そしてNGOや国際機関と連携をしながらさらに必要なことをやっていく、広がりを持っているわけですけれども、これが今の段階でイラクの人道、復旧復興支援の中核を担っているということは、これは事実としてそういうことだというふうに思います。
 ORHAに入るというふうに、入るという言葉はいろいろ意味がありますけれども、我が国が考えているのは、ORHAを通ずるイラクの国民の人道、復旧復興支援への協力であります。
今野委員 このあたりの質問についてはきょうもいろいろ出るかと思いますけれども、次に、イラク戦争について、復興支援協力の話がこうやっていろいろ出されて、いろいろな方面から出ております。
 さて、このイラク戦争は歴史の上で将来どのように位置づけられるんだろうなというふうに考えますと、これはやはり侵略戦争と言われるのではないか、そういう意見が大勢を占めるのではないかと思うんですが、大臣はどうお考えでしょうか。
川口国務大臣 イラク戦争についての議論というのは国際社会でもいろいろな立場から今後なされると思いますけれども、政府としての考え方を申しますと、これは、たびたび今までも申し上げていますように、イラクが関連をする安保理の決議の義務にずうっと違反をしてきた、継続的に、十二年間にわたって違反をしてきたということを受けまして、国連憲章の第七章に基づく関連の安保理決議に従ってイラクの武装解除等の義務の実施を担保し、この地域の平和と安全を回復するための措置の一つとして行われたということであります。
 イラクの地域でまだ散発的な戦闘が今続いておりますけれども、できるだけ早くこの地域に平和が回復をしていく、そして、イラクの国民の人たちが自由で繁栄をした生活を送っていくことができることにつながる、一日も早くそうなるということを我が国としては祈念しているということでございます。また、そのための支援をやっていくということでございます。
今野委員 ここに、昭和十四年の二月に衆議院憲法調査会事務局から出ている「国際社会における日本のあり方に関する調査小委員会」関係法規集というのがありまして、この中に「侵略の定義に関する決議」というのがあるんですね。一九七四年の十二月十四日の国連総会決議三三一四なんですけれども、これに「定義」として、侵略戦争の定義です、「侵略とは、この定義に定められているごとく、一国が他国の主権、領土保全若しくは政治的独立に対して武力を行使すること又は国際連合憲章と両立しない他のいずれかの方法により武力を行使することをいう。」というふうにありまして、イラク戦争を見ると全くこれに当てはまるんですね。これとの関係で、大臣は多分侵略戦争じゃないと考えたいんでしょうけれども、これはどうお考えになりますか。
篠田政府参考人 お答えいたします。
 国連憲章のもとにおきましては、武力行使を行うことが可能になりますのは、一つは安保理事会の決定によるもの、あるいは二つ目に自衛権の行使ということでございますけれども、今回のイラクに対する米英の武力行使というのは、あくまでこれは安保理の関連決議に基づいて行われたものだというふうに考えております。
今野委員 大臣も手を挙げていただいているので、大臣にぜひ。
川口国務大臣 私が伺おうと思ったのは、昭和十四年とおっしゃったので、そうでしょうかというのをまず伺いたいと思って手を挙げました。
今野委員 ごめんなさい。平成十四年です。間違えました。
池田委員長 では、もう一度質問をしてください。
今野委員 それでは、もう一度質問をします。
 衆議院憲法調査会事務局から平成十四年の二月に出ておりますこの資料の中に「侵略の定義に関する決議」ということで、国連決議三三一四というのがあります。ここに「侵略とは、この定義に定められているごとく、一国が他国の主権、領土保全若しくは政治的独立に対して武力を行使すること又は国際連合憲章と両立しない他のいずれかの方法により武力を行使することをいう。」とあって、これにイラク戦争はすっかり当てはまって、ここからするとアメリカは侵略戦争なんじゃないですか、大臣はどうお考えになりますかという質問です。
川口国務大臣 先ほど篠田審議官が申し上げましたように、これは、国連の安保理決議に従って行われた武力行使であるわけでして、今委員がお読みになられたその調査会の報告に該当するものではないというふうに考えます。
今野委員 安保理決議に従ってないじゃないですか。どこで従っているんですか。
川口国務大臣 これは何回も申し上げておりますけれども、関連の安保理決議、すなわち一四四一、六八七、六七八、この関係についてはもはや申し上げませんけれども、それによって武力行使が行われたということでございます。
今野委員 そこの議論に入っていくと多分平行線だと思いますから、それはもう、そういうお考えだということをお聞きいたしました。
 さて、それでは続いて、きょうから北朝鮮、中国、アメリカの三カ国協議が始まるわけですけれども、そこについてちょっとお尋ねしておきたいと思います。
 今回の三カ国協議に至った経緯ですけれども、アメリカは、イラク攻撃にとらわれている国防総省をよそに、国務省が水面下の話し合いを進めて今回のこの協議再開の主導権を握ったと言われておりますが、これについては外務省は、もちろん日本としては入るべきだと思いますし、お隣韓国も当事者ですから入るべきだと私も思っておりましたけれども、これはどのように対応していたんですか。
薮中政府参考人 委員御指摘のとおり、まさに多国間協議において北朝鮮の核開発問題について平和的な解決を図る、これは、日本もその考えでございますし、アメリカもその考えでございます。また、韓国もその考えでございます。そして、過去、ここ数カ月にわたりますけれども、まさに日本としては、そうした多国間協議をどうやってスタートさせるかということで、韓国、中国と連絡を緊密にとりながら、もちろんアメリカとの提携というのは当然でございますけれども、そうした中でいろいろな働きかけを行ってきたわけでございます。
 ですから、今回の、先般、十八日に行いました日米韓の会議におきましても、アメリカ側から、そうした日本の努力についても非常に高く評価するということがございました。これはいろいろと、いろいろな形の連絡をとりながら、緊密な連携を図ってきたということでございます。
 そうした中で、北朝鮮としては、やはりこれは米朝直接対話である、こういうことでなかなかにこれに応じてこなかったわけでございますけれども、結果的には、中国とアメリカと北朝鮮でまずは会合を始めるということになったわけでございます。
 これにつきましてアメリカは、日本と韓国、これは絶対的に必要な当事者であるので、できるだけ早い機会にこの二国がこの会合に参加するように、実質的な会談というのはこの二国の参加なくしてはあり得ない、こういう確約もしておりますし、また、今回の会議に先立ってアメリカ、韓国とともに緊密な協議を行い、そうした日本の考えを踏まえてアメリカが今回の会議に対応している、こういうことでございます。
今野委員 ぜひこの協議の中に入りたかった、また入ろうとして努力をしたけれども目標は達成できなかった、つまり失敗したということですね。周辺のさまざまな状況もあってやむを得ないというところも私は理解したいと思いますけれども。
 それでは、この協議の主な争点ですが、恐らく、よく言われているように、北朝鮮の体制をどうやって保証するか、核の問題をどうするか、それから長距離ミサイルの開発の停止の問題などというふうになっていくのだろうなと思いますけれども、私が言ったこの三つの争点ということにやはりなるんでしょうか。それ以外に何かありますか。
薮中政府参考人 この三カ国協議というのは、まさにこれからの北朝鮮による核兵器開発問題の平和的解決に向けての第一歩でございます。
 したがって、今回の協議でどこまでどうした話し合いが進むかということにつきましては、双方の、アメリカもそうでございますし北朝鮮もそうでございますけれども、お互いの思惑というか、相当に今まで不信感もお互いにあったわけでございますから、そこからの基本的な立場の、どうやって解かしていくのかということだと思いますけれども、今委員御指摘のとおり、まさに核の問題、これが第一でございます。
 アメリカとして、そして我々も考えていますのは、北朝鮮の核兵器開発プログラムというのが、これが廃棄されなければいけないというのが第一の問題でございますし、他方、今委員御指摘のとおり、北朝鮮側としては、自分たちの体制の確保、主権の維持、こういったことに非常に大きな関心があるということは十分承知しております。その他ミサイルの問題等々。
 そして、私どもとしましては、先般の会議においても、日朝問題ということで、日本と北朝鮮との関係で、これは平壌宣言に基づいて日本としては引き続き国交正常化に努力していく、そうした中でこの核兵器開発問題も解決されなければいけない、また拉致の問題も解決されなければいけないということで、そうした点を十分踏まえて協議に臨んでほしいということをアメリカ側にも強く指摘しているという経緯もございますので、あわせてお答えさせていただきます。
今野委員 もう一度確認をすることになりますけれども、アメリカ側を通じて日本の問題、最後に拉致の問題なんかもというふうに言われましたけれども、この三つの争点の中で、体制の問題、核の問題、長距離ミサイルの開発の問題の中で拉致の問題が埋没してしまうのではないかという懸念があるわけなのですが、これが埋没しないように、ただアメリカに働きかけるというのではなくて、格段の努力が必要だと思うんです。これはどのようにしていますか。
薮中政府参考人 まさにこの協議というのは、これは第一歩でございまして、これからのなかなかに難しい交渉というか話し合いが行われるということでございます。
 そして、実質的な会談が行われるときには日本も参加する、当然そのときには、日本がみずからこの拉致の問題についても、全体の中でこの問題の解決を迫っていくということがございますし、今委員御指摘のとおり、当面、まず最初の第一歩として始まるこの三者の会議においてはアメリカを通じて行っていく、そしてまた国際的に、ちょうどジュネーブでもございました、いろいろな場での拉致問題の重要性というのを日本が引き続き指摘していく、こういう努力を全体として行い、また北朝鮮に対して直接そういう働きかけも行っていくということの中で、粘り強く対応していくということだと思います。
今野委員 今、実質的な協議に入ったときに日本も入っていきたいとおっしゃいましたけれども、その前に、拉致の問題が議論にならなくとも、これは実質的な協議に入ったと判断したら日本は入っていくんですか。
薮中政府参考人 日本そしてまた韓国の参加というのは、これはできるだけ早い機会に実現するということで、アメリカ側も我々にそういう形でやっていきたいということを言っておりますし、そうした中で、我々としても、それが実現し、日本が、そして韓国が入っていくということをできるだけ早い機会に実現することを期待しております。
今野委員 どうも、この拉致の問題が埋没しないようにこういうことをやっていますというハートも伝わってこないし、それから、そのためにどういう方法を考えているんですということも少しもわからないんですけれども、そのあたりは大臣、どうお考えですか。
川口国務大臣 三者協議とは独立して、我が国としては拉致の問題は独立してと申し上げたのは、三者協議があろうが三者協議がなかろうが、我が国として拉致の問題は解決をしなければいけない問題であるということだと思います。それに尽きるわけでございまして、そのために、我が国としてはできる限りのことをいろいろな場で今までもやってまいりましたし、今後ともやっていく所存です。
 何をやってきたかということについては繰り返しませんけれども、例えば、いろいろな場でこれを取り上げてきたということもございますし、北朝鮮に対して働きかけてきているということもございます。そういった拉致問題を解決するための努力、これは、いかなる状況であれ、この三者会談がどのような展開をしようとも、我々としてはやっていかなければいけないし、いくつもりであります。
 そして、この三者会談、これは我々としては、先ほど薮中局長から核開発の問題を平和的に解決をするための多国間の取り組みの第一歩であるというふうに申し上げたかと思いますけれども、この今回の交渉をその第一歩として、これを今後続けていくということは非常に大事なことであります。
 交渉がそうやすやすと展開をするというふうに楽観をみんながしているわけではないわけでございまして、これを第一歩、第二歩、第三歩と続けていって、我が国の早期のここへの参加、これは米国も、先ほど来お話をしていますように、そういうふうにするべきであるというふうに考えているわけで、そういうことを行い、また、核の問題あるいはミサイルの問題、拉致の問題、そういったことも当面、米国はこの間の会議でこれを踏まえてきちんとやるというふうに言っているわけですから、それをしてもらい、我が国が引き続きその状況について働きかけ、あるいは連携を強化していくということだと思います。
 このアメリカの、三者の会談についてはずっと連携をしておりますし、中国ともこの問題については連携をとっているということでございますので、万全の体制をつくってやっていく、そして、拉致の問題については、いかなる状況であれ、これは解決をしなければいけない、そういう問題であるというふうに認識をしています。
今野委員 薮中局長の説明に、核の問題を第一歩として、この三者協議が第一歩として、大臣は、三者協議と独立して日本もやっていると。この三者協議の中に拉致問題が取り上げられなくともそれは仕方がないんだと、何か逃げの手を打っているようにしか聞こえません。本当にこの問題をきちんと解決をして、三者協議の中でもこの問題について触れてもらうという覚悟をぜひ示していただきたいと思います。
川口国務大臣 ということを今まで申し上げたつもりでおります。
 核の問題、これをやるための多国間の取り組みの第一歩、この話を継続していってもらって、その中で、拉致の問題について、これを取り上げてもらうということが大事だと考えているということでして、先ほど独立をしてと申し上げましたけれども、それはこれの帰趨、それだけに頼るわけではなくて、拉致の問題は、それはそれとして我が国としてずっとやってき、あるいは今後引き続きやっていかなければいけない問題として、解決をしなければいけない問題という認識をしている、そういうことを申し上げたわけです。
今野委員 北朝鮮に対して、もちろん三者協議と並行していろいろな交渉をしなければいけないというのはよくわかっております。例えばNPTへの再参加を呼びかけるとかいうようなこともしていかなければならないことでしょう。
 条約のことにも触れなければいけませんから、このあたりで終わりたいと思いますけれども、北朝鮮の問題についてあらゆる外交努力をして平和的な解決を望みたいと思いますけれども、大臣、この問題については、これは短くで結構ですが、平和的解決を望みたいと思いますが、それはどうお考えでしょうか。
川口国務大臣 委員と全く同じ意見でございます。
今野委員 ぜひそのようにお願いしたいと思います。
 さて、それでは児童の権利条約、女子差別撤廃条約です。
 児童の権利条約の十九条ですが、「締約国は、児童が父母、法定保護者又は児童を監護する他の者による監護を受けている間において、あらゆる形態の身体的若しくは精神的な暴力、傷害若しくは虐待、放置若しくは怠慢な取扱い、不当な取扱い又は搾取からその児童を保護するためすべての適当な立法上、行政上、社会上及び教育上の措置をとる。」とありまして、一九九八年の国連児童の権利委員会の日本政府への懸案事項として「委員会は、家庭内における、性的虐待を含む、児童の虐待及び不当な扱いの増加を懸念する。」と指摘しております。しかし、二〇〇一年に法務総合研究所から公表されている統計によりますと、少年院在院者の全体のうち五〇%は虐待経験を持っていると報告されているんですね。
 また、女子差別撤廃条約ですけれども、これも一九九四年に国連女子差別撤廃委員会から「主要関心事項」として、「日本が全般的な資源開発において世界各国の中で第二位に位置づけられるにもかかわらず、日本女性の社会経済的地位が考慮される場合には、その順位が十四位に下がることを懸念を持って観察した。」とあります。
 これは、平成十五年の四月に出ている衆議院調査局外務調査室からの報告ですけれども、ここに人間開発指数、ジェンダー開発指数及びジェンダー・エンパワーメント指数という調査の結果が載っておりまして、HDI、人間開発指数では日本は上位から九位のところにいるんですね。それからジェンダー開発指数は十一位。それからジェンダー・エンパワーメント指数になりますと、これはどういうものかといいますと、女性が積極的に経済界や政治生活に参加し、意思決定に参加できるかどうかをはかるものでありまして、HDIが人間の能力の拡大に焦点を当てているのに対して、GEMはそのような能力を活用して人生のあらゆる機会を活用できるかどうかに焦点を当てております。
 これは、具体的には、女性の所得とか、あるいは専門職としてどういうふうに活躍しているとか、技術職に占める女性の割合ですとか、あるいは行政職、管理職に占める女性の割合、国会議員に占める女性の割合などを用いて算出しているわけなんです。ここに来ますと、急激に下がって、日本は三十一位になっております。
 こういう条約を批准していても一向に日本の中の状態は改善されていないということが言えると思うんです。児童の権利条約については、国内法及び国内実施と条約の諸規定の調和措置として、一九九九年の五月に児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律、また二〇〇〇年五月には児童虐待の防止等に関する法律が制定されるなど、一定の評価はできるんですけれども、しかし、日弁連などから、虐待を受けている子供の救済と親の支援について、極めて不十分であるという批判も受けております。
 制度だけではなくて内容面での充実の必要があらわれているのが、国連の児童の権利委員会に対する第二回政府報告です。これは、法律、制度、行政措置の羅列という性格が強くて、日本国内の子供の権利保障の実態あるいは今後の展望についての報告とはなっていないという批判を受けております。また、国連女子差別撤廃委員会は、政府報告書を審議する立場にあるものであり、現職または元公務員が委員を務めるのは公平な審査の妨げとなりかねないと言われておりますけれども、これまで日本から選出された委員は、すべて現職あるいは選出直前まで公務員であった人たちなんですね。
 大臣は、児童の権利委員会に対して、国内の子供の権利保障の実態把握また将来の展望などの調査や報告をするなど内容を改善すること、また、委員会へNGO、NPOから委員を派遣することによって、国連、国際条約へのコミットメントをするつもりはあるかどうか、そこのあたりはどうお考えなんでしょうか。
石川政府参考人 お答え申し上げます。
 まず、勧告と報告との関係について御指摘をいただきました。
 委員御指摘のとおり、締約国は、児童の権利委員会や女子差別撤廃委員会にそれぞれ、整理しました報告を出しておるわけでございますけれども、実はその委員会にはガイドラインというものがございまして、このガイドラインに従って、国内法令や政府がとった措置等について詳細かつ客観的な情報を政府報告に記すようにということを求められている次第でございます。
 その報告の作成及び提出の機会は、それぞれの条約の国内的実施について点検する機会だというふうに認識しておりまして、そのような機会を通じて国内における権利保障の一層の促進を図っていきたい、このように考えています。
 また、日本から出ております委員について御指摘がございました。
 委員御指摘のとおり、女子差別撤廃条約十七条の1というところに、「徳望が高く、かつ、この条約が対象とする分野において十分な能力を有する専門家」を女子差別撤廃委員候補として指名するようにということでございますが、政府はその方針にのっとって指名させていただいております。
 なお、女子差別撤廃委員は「個人の資格で職務を遂行する。」とされておりまして、選出された委員が、御指摘のような経歴を持っている、すなわち公務員であったあるいは公務員であるという事例は、フィリピン、エジプト、メキシコそのほかの委員の例にも見られるところでございます。
今野委員 ほかの国に見られるから我が国はそれでいいんだという答えにはならないと思うんですね。
 さて、私、以前に、国連の人種差別撤廃委員会から指摘されているインドシナ難民とそのほかの難民の取り扱いの異なりについて尋ねた際に、外務省の見解は、これについてそういう国連からの指摘については法的拘束力はないという政府答弁が出されたんですね。大臣ではありませんでした、政府参考人からでしたけれども。
 先ほどから触れておりますように、児童の権利委員会と女性差別撤廃委員会からも日本に対して多くの勧告がなされているわけなんですが、やはり法的な拘束力はないというふうに考えるのでしょうか。
 女性差別撤廃条約、国連女性差別撤廃委員会の日本政府に対する勧告、子どもの権利条約や国連子どもの権利委員会の日本政府に対する勧告などを司法判断及び立法や行政に生かすことを進める活動をどのように進めていこうと考えていますか。
篠田政府参考人 児童の権利委員会ですとか女子差別撤廃委員会が各国に対して出します提案でありますとか勧告、これについての法的拘束力についてお尋ねがございましたけれども、まさに先生がおっしゃるとおり、これは締約国を法的に拘束するものではないということで考えられております。
 他方、しかしながら、法的に拘束力がないということが、直ちにではこれに従わなくてもいいのかということではございませんで、やはり提案、勧告の趣旨というものをできるだけ尊重していくということが求められているというふうに考えております。
今野委員 ぜひ、そうした国連の勧告をきちんと国内で生かしていくという方策を考えてほしいものだと思います。
 さて、世界人口の半分にもなる三十億の人々が一日二ドル未満の生活を余儀なくされているというのが現実であります。十二億人の人々が一ドル未満の生活を送っています。そして、これら貧困にあえぐ国々では、児童や女性の人権がじゅうりんされていることが多い。日本は世界第二位の経済大国でありまして、このようなグローバルな規模での貧困撲滅の取り組みにどのように取り組むかが問われております。
 外務省として、この条約締結を通じて、世界じゅうの児童や女性の権利の向上のためにどのような外交アプローチをとろうとしているのかお尋ねして、これを最後の質問にしたいと思います。
石川政府参考人 お答え申し上げます。
 我が国は、児童や女性の権利促進、保護を人権外交の重要課題の一つとしてとらえておりまして、数々の取り組みを行っております。
 例えば、児童分野につきましては、児童の商業的性的搾取に反対する第二回世界会議を二〇〇一年十二月に横浜にて開かせていただきました。また、本年二月には、ユニセフとの共催で児童のトラフィッキング問題に関する国際シンポジウムを開催したところであります。また、医療、教育、保健等の分野において、二国間経済協力援助やユニセフを通じた支援も積極的に行っております。
 女性分野につきましては、国連婦人開発基金や女性に対する暴力撤廃のための国連婦人開発基金信託基金等を通じた支援を行っているほか、委員先ほど御指摘のとおり、八七年以来、女子差別撤廃委員会に四名の委員を送り出してまいりました。
 今後とも我が国としては、これらの分野において、さらなるリーダーシップを発揮してまいりたいと考えております。
今野委員 以上で質問を終わります。ぜひ、この児童の権利条約改正、女子差別撤廃条約改正、国内に生かしていっていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
池田委員長 次に、首藤信彦君。
首藤委員 民主党の首藤信彦です。
 きょうは、まず条約審議、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約について、まず質問を始めたいと思います。
 ちょうど副大臣も来られて、いいタイミングであると思いますけれども、外務大臣、私、こういう条約を見て、いつも不思議だと思うんですよね。やはり条約というのは、日本と国際社会をつなぐ一つの大きなかけ橋のようなものだと思うんですよね。
 この問題、条約というのは国際社会との合意である。国際法に基づいて、我々はそれを遵守するということなんですが、もちろん国内法という視点があります。しかし問題なのは、その国際的な合意というものが果たして国内的なものにきちんと情報が正しく伝達されているかということだと思うんです。
 この問題、国際的な組織犯罪の防止に関する条約でありますけれども、これは世界で今起こっているいわゆる組織犯罪、マフィアとか蛇頭とか、本当に規模が大きくなって、今まで想像もできなかったような大きな力を持っている。軍隊に匹敵するぐらいの力を持っているというところもある。それから、今まで日本の国内で犯罪が起こったら、それは日本の国内で捕まえることができたので、日本では検挙率が非常に高かったんですけれども、日本の検挙率が、もう何と二割ぐらいまで落ちてきているということですね。ですから、さまざまな問題があるということがあるわけですが、ここで、国際的な組織犯罪のこの条約を見ると、いろいろなことを思うわけです。
 もともとこの国際的な組織犯罪の防止に関する国連条約ということですけれども、これを読むと、国際的な組織犯罪というのではないんですね。何と書いてあるかというと、トランスナショナル・オーガナイズド・クライムとなっていますね。これは国際的な組織犯罪というふうに翻訳されているわけですが、これはちょっとスコープが違うんじゃないか、そういうふうに思うんですね。
 すなわち、国際的な組織犯罪というと、それはマフィアであり、何か大きな、世界で広がっているもののようにも思われる。しかし、これをトランスナショナル、すなわち国境を越えている犯罪というふうにとらえると、これは目の前に北朝鮮の問題があり、韓国の問題があり、中国の南部の問題があり、それからあるいはインドネシアやフィリピンやそうした問題もある。にわかにスコープが変わってくると思うのですね。
 なぜこうした問題を、例えば越境的あるいは多国間的な犯罪というふうには訳さずに国際犯罪と定義づける必要があるのか、外務大臣、その哲学的な背景をぜひ外務大臣として説明いただきたいのですが、いかがでしょうか。
川口国務大臣 文言の問題でございますので、事務当局から説明させます。
篠田政府参考人 トランスナショナルということが国際的なということで訳文上訳されておるということについてのお尋ねかと思いますけれども、このトランスナショナル・オーガナイズド・クライムということを言っておりますけれども、この国際組織犯罪というのは、国際社会の複数の国にまたがって組織的に敢行される犯罪だということで、その形態は非常に複雑かつ多岐にわたっております。
 トランスナショナルというのは国際的ということで、ここで訳しておりますけれども、従来このような意味合いにおいては国際的なというふうに訳すということが適当だということで考えてきております。越境的という言葉は、一般的な日本語の用法ということでは適当ということではないので、条約の訳語としては国際的という言葉を使っているわけでございます。
首藤委員 私はこの言葉にある外務省の基本的なスタンスや哲学的な枠組みを聞こうと思ったのですが、事務当局でも結構ですから、じゃ、今までにインターナショナルという表現があったのか。インターナショナルとトランスナショナルという原文があったときに、その差をつけているのかどうか、いかがですか。事務当局で結構です。
篠田政府参考人 この条約について考えますと、トランスナショナルというときには国際的ということで訳すことが適当だということを申し上げましたけれども、インターナショナルということで使われている用例は数多くあるかと思っておりますが、これは一般に国際的というふうに訳しているかと思います。
首藤委員 外務大臣、今お聞きのように、これは大きな問題なんですよ。英語では、国際社会では、トランスナショナルとインターナショナル、きちっと分けているんですよ。これが同じ日本語になっているのはおかしいんですよ。外務省の条約に対する取り組みは根本的に間違っていると言わざるを得ないんですね。これはもう重大な指摘なので、今のこの段階で指摘しておきますけれども、このことが国内での実行法をつくるときに大きな問題となってくる。だから、それを単にトランスナショナルとインターナショナル、この差をきちっと把握しないでこのまま一般的にこの条約を日本語に直しているというのは大変な疑義があると言わざるを得ないんですね。
 かように、私は、こうした犯罪に対する国連条約というものは必要だとは思いますが、内容的に大変疑義の多い条約であるということがわかります。例えば、我が国の法に刑法上なじまない、例えば五条の(a)の(1)、共謀罪、二十三条の証人買収罪、こうしたものは我が国の刑法上なじまない。こういうものに対して、どのような根拠でこれを是認し、この条約に対して署名したのか、外務大臣、いかがでしょうか。
石川政府参考人 お答え申し上げます。
 共謀罪と証人買収罪の五条と二十三条のお話、御質問をちょうだいいたしましたが、国際的な組織犯罪の取り締まり及び防止を一層実効的なものにするためには、単に重大な犯罪の実行行為を処罰するだけではなくて、その犯罪の実行行為を共謀する行為も処罰の対象にすることが、先ほど先生もおっしゃった現在の国際組織犯罪の実態にかんがみて不可欠であるということは、この条約の審議を通じての各国の総意だと認識しております。
 例えば、他国の例を申し上げさせていただきますと、アメリカ、イギリス、カナダなど主要国においては、一定の犯罪の実行行為を共謀する行為を犯罪としております。また、我が国においても既に、一定の犯罪についての実行の着手前の共謀あるいは陰謀を独立して犯罪としております。さらに、この条約は、国内法制上必要な場合には組織性を要件とすることも許容していることから、我が国として、組織的な重大な犯罪に限定して当該犯罪を行うことを合意する行為を犯罪化することは、日本の刑事法体系になじまないということにはならないのではないかというふうに考えています。
 また、証人買収罪についてお尋ねがございましたけれども、これは、刑事事件に関し、虚偽の証言等の報酬として、金銭その他の利益を供与した場合などに成立するものです。
首藤委員 だから、そんなことは知っているんだよ。そんな、内容を教えてもらわなくたっていいんですよ、時間が限られているんだから。
 質問は、例えば日本の刑法になじまないものに対して、なぜこういう形で条約が出てきているのか、そこにはどういうようないきさつがあったのか、それをお聞きしたいんですけれども、手短にお願いします。
石川政府参考人 お答え申し上げます。
 まず、国際組織犯罪の、大変な発展というような言葉は悪うございますが、ばっこと言ったらよろしいんでしょうか、そういう実態があって、彼らの犯罪実態からこの問題意識が出発したことは、委員御承知のとおりかと存じます。
 彼らの犯罪形態と戦っていくためには、その共謀の段階から、あるいはその証人というものを萎縮させる等の司法妨害でございますけれども、そういったことに手当てをしないと実効的な組織犯罪との戦いができない、こういう認識が交渉中に確認されたという経緯でございます。
首藤委員 いやいや、答えていただいていないですよ。
 我が国の国内法における法体系、刑法体系というものがどういう形でこの条約に反映されていますか、あるいは反映されていないのですかということをお聞きしているのですが、いかがですか。
石川政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御承知のとおり、今回の条約で重大犯罪あるいは共謀そのほかの条約創設犯罪が規定されているわけでございますけれども、一部のものについては国内担保法というものの手当てが必要で、今国会に国内担保法のお願いをするというふうに承知しております。
首藤委員 全然違うじゃないですか。
 そういう日本の国内法体系が逆に国際社会にどういう影響を与えたかということを聞いているんですよ。その結果として出てきたのか、あるいは日本は関係なくて、おっしゃるとおり、このとおりやりますよ、国内法も変えますよという形で言っているのか。いかがですか。時間がないから、早く、急いでください。
石川政府参考人 我が国の現行法上、共謀、陰謀が犯罪化されている規定として、幾つか例を挙げさせていただきます。
 刑法七十八条の内乱、陰謀、刑法八十八条の外患誘致、陰謀、外患援助、陰謀、刑法九十三条の私戦陰謀、あるいは競馬法三十二条の六の公正を害すべき方法による競走の共謀、国家公務員法百十条第一項第十七号の違法な争議行為等の共謀でございます。
首藤委員 全く答えていただいていないですよ。
 だから、そうした合意のものがどうやってそうした評価になったのか。日本の刑法体系が、外交官がこの会議に参加しながら全然反映されないとしたら、何で、どうしてサインできたんですか。外務大臣、いかがですか。
茂木副大臣 委員御指摘の、国際的な組織犯罪、これは、御案内のとおり、日本特有の現象から起こって、世界に拡大しているという問題ではないわけですね。それぞれの国においてこういった問題に対応しなきゃならないということでありますから、そのための国際枠組みをつくり、それに沿って国内法をつくっていく、それが順番になってくるんだと思います。
首藤委員 全然質問に答えていないですよ。そんなことはわかっているんですよ。
 条約ができたら国内法を変える。日本の条件に合わせてやる。今は、国際社会は相互方向性の時代なんですよ。日本の法体系、我が国の誇る法体系がどういうふうにこの条約交渉に反映されたか、そこを言っているんですよ。逆のことを言っているんですよ。そんなことができなかったら、サインしちゃいけないじゃないですか、こんな条約に。どうですか。
石川政府参考人 お答え申し上げます。
 初めに、国際組織犯罪のばっこという、グローバル化された世界での事実が残念ながらあったということを私どもは強く認識した次第でございます。例えば、そういう認識を踏まえて、二〇〇〇年の九州・沖縄G8サミットにおきましては、この国際組織犯罪に関する条約を早く締結しましょうということをコミュニケにうたわせていただきましたが、これはまさに日本がホスト国としてリードした分野でございます。
 委員御指摘の国内法との関係につきましては、もとより、関係省庁とも十分協議しながら交渉に臨ませていただきまして、その上で、国内担保法の新たな手当てが必要なところにつきましては改めて国会にお願いをする、こういう手当てになっている次第でございます。
首藤委員 全く答えていただいていないですよ。何を言っているのかわかっているんですか。
 なぜ私が最初に国際化、越境的かと言っているのは、マフィアのように世界のどこかに、片隅にあるんじゃなくて、これは日本の犯罪が関係してくる。日本の犯罪が、例えばアジアの諸国と結びついている。要するに、主体は日本なんですよ。これは、他人の、どこかの人の庭で起こっているんじゃなくて、私たちの庭で起こっていることがどういう問題かということで、こんなに犯罪が蔓延し、今日本で起こっている一般犯罪の検挙率は二割を切っている。ピッキングが起こり、どんなところでもいろいろな問題がある。凶悪犯罪がふえている。しかも、そういうような者が、ファクスや無線で連絡を取り合ってやっている。不審船だって、工作船だって、日本の携帯電話を積んでやっている。日本のこういう状況に我々はどういうふうに反応しているか。
 だから、いかに我々の抱えている問題がこの条約に反映されているんですかということをお聞きしているんですよ。いかがでしょうか。
篠田政府参考人 この条約の仕組みでございますけれども、国際犯罪に国際協力をもって対抗していくということを目的といたしまして、それぞれの国、締約国における刑事司法制度というものを強化していくということ、それをもって、それを前提にいたしまして国際協力を行っていくということでございます。
 基本的な考え方といたしましては、各国の法制度というものを尊重しておりまして、それぞれの犯罪の訴追、それから司法手続、こういったものはそれぞれの締約国の法律に基づいて行われるということになっておりますし、この条約の各所に「自国の国内法の基本原則に従い、」でありますとか「自国の法制の基本的な概念に従うことを条件として、」というような規定がございますとおり、基本的には、各国がそれぞれの制度を維持し強化しながら国際協力により国際犯罪を防止していく、そういう枠組みを定めているということでございます。
首藤委員 委員長、もうおわかりだと思うんですね。皆さんもおわかりだと思うんですけれども、条約というのは、何か世界でつくって、それを我が国の法律に合わせるということじゃないんですよ。抱えているのは私たちの問題であり、各国が抱えている問題を、国際社会で、国際条約という形でつくっていくわけですよ。ですから、私たちの問題がいかにこの条約に反映されているかということを聞いているのに、それが答えられないというのはどういうことなのか。
 外国で何か決まったら、つくった法律に関しては、へえへえとそれを受け取って、それを日本の刑法に合わせるというんじゃなくて、私たちの問題を今同時的に起こっている世界的な問題にどういうふうに対応していくかという問題なんですよ。それが答えられなかったら、これは成立しないじゃないですか。
 これをやっていればもう時間がないので、その次にもう一つお聞きしますけれども、この問題でやはり一番大きいのは、第五条の(a)の(1)の共謀罪のところなんですね。これは重要だから、これを私はしっかり読みました。驚くことを発見したんです。第五条「組織的な犯罪集団への参加の犯罪化」、1の(a)の(1)ですね。「金銭的利益その他の物質的利益を得ることに」ということがあるんですが、ふと考えたんですね、「金銭的利益その他の物質的利益」と。
 今、犯罪というものはいろいろなことが行われている。例えば、ハッカーもある、あるいは所有権、あるいはいわゆるインタンジブルアセット、無形財産権、こんなものもいろいろあって、金銭的利益はわかるけれども、その他の物質的利益、何か置き引きのようなことを言っているのかなと私ふと思ったんですよ。そして、原文を読んでみました。何と書いてあるか。外務大臣、ちょっと原文をお読みになっていただきたいと思いますが、第五条の1の(a)の(1)です。
 それで、これは、その対象となる犯罪行為はファイナンシャル・オア・アザー・マテリアル・ベネフィットとあります。マテリアルベネフィットというのは物質的利益ではなくて、これは例のイラクのUNMOVICで問題になったマテリアルブリーチと同じですよ、インポータントという意味ですよ、物質的じゃなくて。もしそれが物質的だと言いたいなら、それはファイナンシャル・オア・マテリアル・ベネフィットですよ。
 これは誤訳じゃないですか。いかがですか。明らかに誤訳ですよ、これは。
 委員長、そうでしょう。
池田委員長 委員長は発言する権限はありません。(首藤委員「いやいや、見てくださいよ」と呼ぶ)これはよく見ています。
 篠田審議官。
篠田政府参考人 物質的な利益という訳語についてでございますけれども、これは交渉の経緯から申しまして、金銭的その他のいわゆる物質的な利益ということで、重要なというその理解は、この交渉に参加した国の中に特段ございません。したがいまして、「金銭的利益その他の物質的利益」ということでいいかと思っております。
首藤委員 いや、そんなのは納得できない。
 では、聞きますよ。では物質的利益、それ以外の所有権とかそういうインタンジブルなもの、無形なものに対して、あるいはハッカーの行為に対してどうですか。今まさにハッカーが国防省に入っていく、国防省のいろいろなところに入っていく、ホームページを荒らす、もうとてつもない犯罪行為ですよ。それから宗教の問題もあるし、人の心にも入っていく、さまざまな今いわゆる金銭的以外のものがあるわけですよね。それは、例えば心の問題がどうして物質的なんですか。いかがですか。
石川政府参考人 心の問題について御指摘をちょうだいいたしましたが、一般的に宗教団体といったことの活動を念頭に置いての御質問かと理解いたしますけれども、例えば宗教団体が通常の活動を営む限りにおいて、組織的な犯罪集団に当たることはございません。
首藤委員 質問が全然違うじゃないですか。
 委員長、これは私はもう明らかな間違いだと思う。これは英語の間違いだという、英語の違いだというけれども、大変なことですよ。我々の法律がこれに基づいて、日本語に基づいて我々もみんな検討しているわけですよ。原文と違うわけですよ。これはもう一度、専門家を入れて精査してやり直していただきたい。私はもうこれ以上論議できない。いかがでしょうか。
池田委員長 政府側どうですか、的確に答弁してください。篠田審議官。
篠田政府参考人 この訳語の問題につきましては、政府部内で熟慮に熟慮を重ねまして検討しました結果でございまして、この訳語に間違いはないというように考えております。
首藤委員 いや、だからそれを説明してください。だから、どうしてこれは物質的なのか。「金銭的利益その他の物質的利益」になるのか。どうしてハッカーとかそういうような犯罪が含まれないのか。おかしいですよ。
 委員長、もう一回言いますけれども、これはやはり時間をかけてきちっとこの問題をやってください。これは余りにも影響が大き過ぎる。いかがでしょうか。
池田委員長 では、外務大臣から答弁させます。外務大臣。
川口国務大臣 言葉、特に英語については非常に首藤議員が堪能でいらっしゃり、よく知っていらっしゃるということは、私はよく存じ上げております。
 ただ、これは、条約について解釈をする立場あるいはそれをつくる立場、また先ほど篠田審議官が言いましたように、これは国際的にずっと議論をなされた、その上でのこういう内容であるということの議論を踏まえての訳でございます。
 したがって、日本語で書いているような訳が正しいということを申し上げたいと思います。
首藤委員 それは大臣、とんでもないことじゃないですか。私は、英語がうまいからこうやってチェックしているんじゃないんですよ。条約審議だからチェックしているんですよ。今まではそういうことがやられていなかったとしたら、実はすごい大きな問題なんです。
 さっきのトランスナショナルとインターナショナルの差だって本当に大きな問題だ。それを漠然と、外国の、だから国際的と訳したことがすごく大きな間違い。外国では違うんです、トランスナショナルとマルチナショナルとも、全部違うんですよ。テロリズムだって、マルチナショナルテロリズム、トランスナショナルテロリズム、グローバルテロリズム、全部違うんですよ。それが全部日本では「国際的」になっている。
 しかも、こんな、今一番大きな問題に関して、「金銭的利益その他の物質的利益」、おかしいですよ。今問題となっているような犯罪の形態が含まれていないんだから、明らかにこれは誤訳なんですよ。
 ですから、これは時間を置いて。私は納得しない。だから、やはり政府が間違っているのか、間違っていないのか。これは、こういう、含めるのか。このときにそうした話が行われているなら、それを証明する追加資料を出してください。いかがでしょうか。
池田委員長 ちょっと速記をとめてください。
    〔速記中止〕
池田委員長 では、速記を起こしてください。
 では、答弁を求めます。篠田大臣官房審議官。
篠田政府参考人 金銭的その他の物質的な利益ということの意味でございますけれども、これは、金銭その他物質的な欲望とか需要を満たすものということで、純粋の精神的な利益というようなこと、およそ物質的な利益に無関係なものは除外される非常に広い概念であるということでございますので、この中には先生が御指摘のようなことを含めて、非常に幅広い利益というものが含まれるというふうに考えております。
首藤委員 いや、それは全く納得できないですよ。これは法律ですからね。
 では、物質的であれば、それは共謀したというなら、やはりそれは日本の国内法でも訴追される。しかし、精神的なダメージを与えたり、それからハッカー的なことをやったりしたら、これは物質的にはならないですよ、法律用語として。どうしてそれが物質なんですか。それは全く説明になっていないですよ。
 これは幾らやったって同じですよ。だから、もう一回引き取ってください。
池田委員長 石川国際社会協力部長。的確に答弁してくださいよ。
石川政府参考人 お答え申し上げます。
 この条約の交渉経緯から一言申し上げるべきでした。おわび申し上げます。
 本件は、先ほど申しましたように、国際組織犯罪のばっこというところから出発しておりまして、そこにおける金銭的、物質的な利益ということに対する取り組みとしての条約交渉をしようというところから出発したということを冒頭に申し上げるべきでございました。補足させていただきます。
首藤委員 そんなことはわかっているんですよ。だから、この法律が重要で、法律の箇条が重要なんですよ。
 だから、それだったら、どうしてファイナンシャル・アンド・アザー・マテリアル・ベネフィットになっているんですか。ファイナンシャル・アンド・マテリアル・ベネフィットじゃないですか、それだったら。そうじゃないでしょう。だから、ファイナンシャルと言っていてアザーと言っているのはそういうことでしょう。いかがですか。
 もう英語もフランス語も堪能な石川さんが知らないわけないでしょう、こんなこと。英語読んでおかしいと思うでしょう。いかがですか。
池田委員長 質問者に申し上げますが、何度繰り返しても同様な状況でありますので、理事会で正面から取り扱いをいたします。(発言する者あり)いや、委員長が理事会で取り扱います。
 なお、今答弁の申し出がありますから、外務大臣から一言答弁をさせます。川口外務大臣。
川口国務大臣 こういうことは恐らく素人がお話をした方がわかりいいかと思いますので、そういう意味でお話をさせていただきますけれども、先ほどの「金銭的利益その他の物質的利益」ということのアザーの意味ですけれども、これは、金銭的利益も物質的利益の一部であるわけですね。したがって、金銭的というものをその中から特掲をして「金銭的」と言い、それから「その他の」というのは、アザー、物質的、マテリアルということを言っているわけでして、これは通常書かれる書き方であると私は理解をいたしております。
 それから、もう一つ、委員がおっしゃっていらっしゃるように、このマテリアルというのが、マテリアルブリーチの重要なということで解釈をもし仮にしますと、金銭的、ファイナンシャルというのは、すべてマテリアルな目的、利益ということになりまして、それはそういうことではないということですね。
 それから、ハッカー云々というお話がございましたけれども、ここで言っている「金銭的利益その他の物質的利益」云々ということは、これは犯罪そのものの話ではなくて、目的として書かれているわけですね。「金銭的利益その他の物質的利益を得ることに直接又は間接に関連する目的のため」、したがって、これは目的の部分です。
 犯罪そのものというのは、ハッカーが精神的な喜びのためやるかもしれません。あるいはその金銭的利益その他の物質的な利益を得るためにやるかもしれません。それは犯罪の形態が異なるといいますか、目的が異なるわけでして、その場合、要するにここで書かれているような目的のために犯罪を行うこと、ほかに要件はありますけれども、そういうことが一つの、「一方又は双方の行為」というふうに書かれているわけですから、そのような行為は犯罪となる。ですから、ハッカー自体は、目的によって犯罪になる場合もあればならない場合もあるということでございます。
 かいつまんで平板に申し上げると、そういうことでございます。
首藤委員 いや、それはもう全然納得できてないですね。ですから、これに関しては専門家の見解をきちっと出していただきたい。本当にそれは、いずれ国内法でやはりこれは対象になりますから、それは明確にしていただきたいと思うんですね。
 さて、それでは一般問題について……
池田委員長 ちょっといいですか。
 先ほど委員長の言ったような取り扱いをさせていただきます。
 審議を進めたいと思いますので、次に移ってください。首藤君。
首藤委員 さて、それでは一般質問に移らせていただきますけれども、今イラクの問題で、この紛争というのが一体なぜ起こったかというと、それは、イラクが大量破壊兵器を持っているんだということでこれは攻撃が行われたわけですね。これは、まだ要するに攻めなければわからない、それから占領してみなきゃわからない、こう言ってみたんですけれども、もう二、三日中に勝利宣言も出てしまう。
 それで、じゃ、一体大量破壊兵器という、それはどうなったのか。では、そういうことを、もし見つからなかった場合、それを勝手に国連決議を無視して侵攻したアメリカの破壊責任はどうなるのか。それから、そうしたものに関して、今までの国の方針の立場を超えてやっていった日本の、日本がそれを支持したわけですから、その日本政府の責任はいかがでしょうか。外務大臣、いかがですか。
茂木副大臣 今回の軍事行動の目的でありますが、委員御指摘のように、大量破壊兵器の廃棄を進める、こういうことであるわけですけれども、しかし、その大量破壊兵器のイラクにおける廃棄を進めるためにフセイン政権が大きな障害になっている、その障害を取り除かない限りなかなか大量破壊兵器の廃棄は進まない。
 今の段階は、米英軍によりまして本格的に、この政権の形が崩れまして、これからまさに大量破壊兵器の捜索活動が開始される、そういうステップでありまして、今後我が国としてもそういった捜査活動を注視していきたい、こういうふうに考えております。
首藤委員 いや、それはおかしいんじゃないですか。ORHAというのがもうできているわけでしょう。復興局なんですよね、復興しようと言っているんですよ。復興というのは、要するに原因となった行為が実証されて、そしてそれからその次のステップとして復興があるわけですよ。だから、まだ実際に原因となった行為が立証されていないのに復興が始まっている。始まっているのに行っているのはおかしいじゃないですか。あなたの主張は全くおかしいと思いますよね。
 この点に関してはまた追及するとして、一つ今大きな問題となってきたのは、国際経済制裁の解除というものがあります。これは深刻な問題で、大量破壊兵器の問題というのは、実はこの国際経済制裁と対をなしているものなんですね。要するに、大量破壊兵器を完全に廃棄しなさい、それまでは経済制裁を科しますよというのが、御存じのとおり国連決議六八七なんですよね。
 さて、今そういう状況で、だんだんみんなが、経済制裁が苦しくて、余りにもひどい。ある統計によると、湾岸戦争以降、百八十万人が、それによって市民が犠牲となったと言われている。そうすると、実際の戦争よりも我々がイラクに科した経済制裁の方がたくさんの人を殺していたら恐ろしいことになるということで、それを多少緩和しようということで、オイル・フォー・フード、石油を人道支援に使いましょうというプログラムが九六年からスタートしました。
 そして、だんだんとそれが拡大されていって、最近ではオイル・フォー・エブリシングとみんなうわさするように、食糧から医薬品から人道的なものから、結局最終的には何でも買えるようになってきたということで、日本の車なんか大量にイラクに輸入されているという状況が、二〇〇二年ぐらいにはもうあったわけですね。これはこれでいいわけです。ただし、戦争が起こったのでオイル・フォー・フード・プログラムは停止した。しかし、それを再開しようという決議もこの間国連で出ました。それはそれでいいわけですよ。
 ですから、大量破壊兵器が本当になくなったかどうか、UNMOVICはもう一度検証して、そして経済制裁を解除するかどうかを決めるということだと思うんですが、それに対してアメリカは、何か突然、いや、もうこんな、フセイン政権がなくなったから経済制裁は要らないんだ、除去すべきなんだ、こういうことを言い出したんですね。これは全然違うわけですよ。今までの国連決議に基づいてやっていたのに、国連決議がフセイン政権をつぶせとか、何も書いてないわけですよね、大量破壊兵器のことを言っているわけですよ、六八七は。だから、フセイン政権とか全然関係ないのに、フセイン政権がなくなったら経済制裁を除去しよう、そういうアメリカの身勝手な、国際的なルールを無視した主張が出てきました。
 それに対して、外務省の高官、どなたかはわかりませんが、そうした国連の経済制裁を、アメリカの主張に従ってそれを除去する、引き下げるというものに対して賛意を表しているという記事が、ちっちゃな記事でも載りました。
 外務省としての立場はどうなんですか。今までの国連決議を尊重するいろいろな立場から、どうしてこんなことが外務省の高官として出てくるんですか。外務省の正式な立場をお聞きしたいと思います。外務大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 イラクの経済制裁につきまして、これから関係国の間で議論がなされるというふうに思います。そして、委員がおっしゃいましたように、安保理でこの経済制裁が決まっているわけでして、これについて安保理が何らかの結論を出していくということであるかと思います。
 我が国の考え方としては、これはやはりイラクの人たちが、実際に今いろいろ必要なこと、人道的な支援、人道面あるいは復旧復興面で必要なことがあるということですから、早く経済制裁が解除をされるということが望ましいと考えますけれども、これについて安保理の議論がどうなっていくかということについては、これを、直ちに今どうなるかというのはまさに注視をしていかなければいけない。今、どういう状況でそれが行われることになるとか、そういったことについてを申し上げるのは難しいというふうに思います。できるだけ早く結論に到達をするということがいいと思います。
首藤委員 それでは確認させていただきますが、そういうことで、経済制裁をもう解除するというアメリカの主張、それに対して日本政府は安易に賛同したわけではなく、あくまでも国連の安保理における協議を見守りたい、こういう立場でございますでしょうか。もう一度御確認をお願いします。
川口国務大臣 考え方としては、イラクの人たちの必要性、ニーズを考えれば、早期に経済制裁が解除をされるということが望ましいというふうに考えます。そして、そのために必要な国連の安保理での議論、これについて見守っていきたいと考えております。
首藤委員 いつも不明確なんですよね。それは、イラクの人たちにというけれども、そうじゃないんですよ。ここで問題になるのは、オイル・フォー・フードのオイルの部分なんですよ。
 要するに、石油が国連の管轄下からORHAの管轄下、アメリカの管轄下あるいは石油会社の管轄下、あるいはそれを一括して受けているベクテルの管轄下、ハリバートンの管轄下に移っていくのか、あるいは、オイル・フォー・フード・プログラムで、国連の管轄下でこれをイラクの国民のニーズに合わせて最善に国連で決定していこうかという二つの路線があるわけですよ。そのうちのどちらを選ばれるかということですね。
 国連の石油管理というものを前提として進めるのか、あるいはアメリカによる石油管理を是認するのか。いかがでしょうか。
川口国務大臣 経済制裁の解除ということにつきましては、委員が今おっしゃったような二つの相対峙するイシューの間の対立ではないと考えます。
首藤委員 いや、答えていただきたいと言っているんですよ。
 ですから、私は答えていただきたいと言っているのは、要するに、今までの長い歴史があったでしょう、経済制裁。経済制裁というのは過酷なものですよ。大変に苦しんでいた、だれもが除去してほしいと。だからこそイラクは、大量破壊兵器だって一生懸命つぶしていったわけですよね。あるいは、大量破壊兵器と定義されていなくても、その運搬手段であるアルサムード2なんかも、短距離ミサイルだって一生懸命つぶしていったんですよ。結局そんなことをやっても攻められてしまったけれども。そういうことで、それがなぜそういうことになったかというと、やはり経済制裁を早く取ってほしいというのがイラクの立場ですよね。しかし、これに対してアメリカは、有無を言わさずつぶしてしまって、フセイン政権もつぶしてしまったんですね。
 さて、今度は、残っているのは国連が管理しているイラクの石油なんですよ。ですから、これをオイル・フォー・フード・プログラム、すなわち、石油というものを人道的な援助、イラクの人々のために真っ先に使っていきましょう、それから余ったらほかのものに使っていきましょうというシナリオに乗っていくのか、あるいは、アメリカのようにそれを除去してしまって、石油は今度は戦勝国であるアメリカの管理に移して、そしてアメリカの軍費も含めてそれを管理していこうという方法に乗るのか。
 それで、私は当然、日本の立場、国連中心主義の日本の立場だと最初に言った立場だと思っていたら、外務省のある高官が、アメリカの言うような経済制裁をなくす、一見美しくて何か人道的なものですが、真っ赤なうそ偽りですよ、これに対して乗っていくという発言があったので、果たして外務大臣、外務省の代表たる外務大臣はどちらの立場に身を置かれていますかということをお聞きしているんです。いかがでしょうか。
川口国務大臣 委員が二つ対峙させて比較をしていらっしゃることについて、その二つは対峙する概念ではありませんということを申し上げている意味というのは、委員のおっしゃることに多少論理の飛躍があると思いますけれども、経済制裁を解除すること、これについては国連の安保理で議論をしていくということですけれども、それと、石油資源がアメリカの手によって管理をされる、そこに国連の手が全く及ばないという話ということ、これは別物なんですね。
 今後、イラクについての国連の関与、これは我が国としては十分な関与という立場であるわけでして、そして、天然資源、これはイラク人が持っている権利である、イラク人に属するものであるということでありますから、そういった前提を踏まえる形で、国際社会としてイラクの復旧復興のあり方、イラクの今後の体制のあり方、これは別途の議論がある。それは、委員のおっしゃるように、アメリカが管理し、アメリカが好きなように石油資源を左右するということではないということであるわけですね。それは国際社会がこれから決めていくこと。
 ですから、経済制裁を解除することのアンチテーゼが、米国が全部好きにやりますというふうに委員はおっしゃっていらっしゃるんですが、そうではないということを申し上げているわけです。
首藤委員 外務大臣、分析はいいんですよ、学者じゃないんだから。ここは国民を代表している政治の場なんですよ。
 ですから、私の質問は単純です。アメリカの経済制裁解除ということを是認する外務省の高官と同じ立場なのか、あるいは、この問題は国連でもっと慎重に論議することを見守りたいという立場なのか、どちらかを言っていただければ、簡単で結構でございます。
川口国務大臣 私はそういう問題設定をそもそもしていないということです。
首藤委員 だから、外務大臣の問題設定はどうでもいいんです。だから、質問は、経済制裁を除去するということを、アメリカの要求に対してそういう立場を是認していくのか、あるいは、この問題は、経済制裁というのはもともと国連決議六八七に基づいている問題であるから、もう一度安保理に戻して、しかも、大量破壊兵器がなくなったかどうかを確証してやらないと国連決議そのものの権威を失うことになるから、国連の論議を中心にして進めるべきか、そのどちらの立場が日本の立場ですかということをお聞きしているんです。
川口国務大臣 繰り返しになりますけれども、日本の立場というのは、イラクの復興のためには経済制裁はできるだけ早く解除された方がいいという考え方をしています。そのためには必要な議論が安保理でなされる必要があって、それについては注視をしていきたいというふうに考えているわけです。
 したがいまして、委員の先ほどの明快なる問題設定からいえば、両方であるというのが答えかと思います。
首藤委員 本当に水かけ論になってしまいますので、もうちょっと簡単な質問をさせていただきたいと思います。
 バグダッドの現状ですね、日本大使館、もうすぐ再開すると言われていて、茂木副大臣も行かれるということを聞いて、頑張って行っていただきたいとエールを送りたいと思いますけれども、いつ再開されるのか。
 それから、私が非常に危惧しているのは、これは今までの戦争ではなかったことですが、A10という攻撃機があるんですね。これは特殊な攻撃機で、三十ミリの劣化ウラン弾を使用して戦車を破壊するんですけれども、これが画面を見ますと大量に撃っているわけですよね、建物とか戦車に向かって。それは劣化ウラン弾が、物すごくその飛沫があるわけで、今まで確かに劣化ウラン弾の被害ということが問題になりましたけれども、湾岸戦争においてはバスラ近郊の砂漠の中であり、あるいは、コソボとかユーゴスラビアのときにはこれは山の中で使われていました。しかし、今は町中でこれを大量に撃ったということですね。これはもちろん、行かれるときには、放射線の量も測定され、ガイガーカウンターでチェックしていくと思うんですけれども。
 今、ちょっとお聞きしたいのは、これはもう通告してありますけれども、教えていただきたいのは、バグダッドの市内でもこのA10は三十ミリの劣化ウラン弾を使用し、それが大量に残っているかどうか、ここを教えていただきたいと思います。
茂木副大臣 大使館の再開の問題と劣化ウラン弾の問題でありますけれども、まず、大使館の再開につきましては、可能な限り早期に再開を目指したい、そのために近日中に事務レベルの調査団をバグダッドの方に派遣いたしまして、現在の事務所の破損状況であったりとか治安の状況を含め、再開できる状況になっているかどうか、こういうことにつきまして確認をとりたいと思っております。
 それから、劣化ウラン弾につきましては、実際に今回の軍事行動におきまして劣化ウラン弾が使用されたかされていないか、これにつきましては確認ができておりません。
首藤委員 それはぜひ確認していただきたい。バグダッドにおいては大変な数のジャーナリストもいて、さらに、恐らく人道支援で、政府の人道支援プログラム以前に、たくさんの民間団体が恐らくバグダッドに行くと思います。ですから、その意味では、この劣化ウラン弾の使用の有無、それから、残留する放射線の量に関して早急に資料を集めていただきたいということを切にお願いいたします。
 それで、今、イラク問題に関して、果たしてフセイン政権が本当に崩壊したんだろうかということで、いろいろな調査が行われていると思うんですが、アメリカは、五十五人の戦犯容疑者というのがあるんですね。
 ここで外務省にお聞きしたいわけですが、どういう根拠でこの五十五人を選んでいるかということですね。例えば、これは情報としてお聞きしているんですね。これは質問通告してありますけれども。なぜかというと、この中には、ナジ・サブリ外務大臣、それから、毎日テレビに出てきた情報相、抜けているんですね。なぜこの人たちが抜けているのか。それから、私も会ったサドゥーン・ハマディさん、国会議長ですけれども、これはバース党の要職から行っているわけですね。
 ですから、そういう、幾つか、どう考えても重要だという人間がなぜここから抜けているのか。どういう根拠に基づいて、戦犯としてこういう人たちを、五十五人を訴追し、どういう根拠でその人たちは外れているのか、外務省の情報をお聞かせ願えればと思います。
茂木副大臣 四月の十一日に、米軍は、追跡し、法に照らして処罰すべき五十五名のイラクの政権の幹部のリストを公表したわけであります。御指摘のように、その中には、サブリ外相であったりとか、ハマディ国会議長、それからサハフ情報相は含まれておりません。
 ただ、我が国としましては、米軍が五十五名を選出した詳細な基準を承知する立場にはございません。また、米軍からも特段の説明は受けておりません。
首藤委員 外務大臣、質問の内容、意味はおわかりだと思うんですけれども、なぜ私たちは知らないのかということですよ。こういうふうに、私たちともよく知った顔、私も知っている顔がありますよ。それから、日本のために一生懸命やってくれた人もいる。そういう人たちが戦犯として訴追されている。なぜ訴追されているのか。それは、例えば何か虐殺をやったり、そういうのじゃなくて、本当に中立的な科学者であったり、中立的な公務員であったりする、こういう人たちがなぜ訴追されているのか。
 これは、なぜ五十五枚、要するにトランプですよ。トランプにしたいから五十五枚にしたんですよ。十三掛ける四ですよ。それにジョーカーを入れて五十五にしているわけです。どうして、そういう形で卑しめられなきゃいけないのか。どうして、そういうことに関して、日本はイラクに起こっていることにきちっとした情報がないのか。そこをお聞きしたい。どうして、そうした問題に関して、同盟国であり、世界の中で真っ先にアメリカの行為を支持した日本に対してきちっとした情報提供がなされていないのか。外務大臣、御意見いかがでしょうか。
川口国務大臣 米国と日本とは同盟国の関係として、日ごろ密接に情報交換をしております。
 イラクにおいて武力の行使をした米軍が五十五名のリストを発表した経緯については、我々としては説明を受けておりません。それを問い合わせるということも、やる必要は今の時点ではないと思います。
首藤委員 外務大臣、それは私、おかしいと思うんですよ。やはり同盟国、同盟国と同じ船に乗っているんだったら、アメリカにはこういうことは徹底的に聞かなきゃいけないんです。当たり前だと思うんですよ。それをだから聞かない。
 もうこの問題に関しては、政府の説明責任ということが盛んに国民から非難を浴びているはずですね。アメリカに対してだって、アメリカの行為によって私たちも傷ついているんですよ。日本という、アナー・ヤパーニー、おれは日本人だと言えばそれだけで通してくれたアラブ社会において、日本といったら、もう日章旗をデモのときに燃やしちゃう、こういう国に成り下がってしまう。我々だって物すごく影響を受けているわけですよ。ですから、そういうものに対して、どうしてアメリカに説明責任を要求しないのかということを私は問題視したいと思うんですね。
 それでは、時間もなくなりましたから、最後に、同じようにお聞きしたいわけなんです。
 最後にお聞きしたいのは、そうしたイラクの攻撃もそうですが、最近の、例えばラムズフェルド国防長官のメモで、金正日書記を追放しようとか、いろいろな、何かもう本当に表面に出てきてしまえば困るような話ばかりだと思うんですが、そういうものがまことしやかに流れるようになってきているということで、大変危惧をしているわけですけれども、そういうことに関しても、日本はやはりきちっと対応すべきだと思うんですよ。だから、そういう問題に関しては、日本はどう考えているのかというのも、ぜひ外務大臣は、国民に向かって、こんなものはただのメモだとか言ってほしい、そういうふうに私は思うんですね。それが外務大臣としての、国民に開かれた外務省の長としての責任である、そういうふうに思うんです。
 同じようにおかしな話があるわけですが、ただ、そうしたメモではなくて、正式な、非常に我々を驚愕させるようなニュースが入ってきました。それは、小型核の、小型核爆弾の開発許可をブッシュ政権が議会に要請したということであります。一九九三年以来禁じられているはずの爆発力五キロトン以下の核兵器開発に関して、それに乗り出すために、今まで研究開発を禁じたファース・スプラット条項の廃止を盛り込み、なおかつ、開発費用の計上も要請しているということがこの十九日にわかった。
 これはゆゆしきことですよね。世界の中で最初の大量破壊兵器の被害国である日本が、一方では大量破壊兵器、もう今までだってたくさんあって、バンカーバスターとかデージーカッターとかあって、さらにモアブなんというものがあって、さらにさらに、それでもまだ地中深くに潜っている敵をやっつけるのには十分でないということで、小型核の開発まで、議会で現実に予算計上しようとしている。こういうアメリカ政府に対して、外務大臣、それは、日本の政府としていかなる抗議をされる所存でしょうか。その見解を最後にお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 今委員がおっしゃったラムズフェルドのメモ、それから小型核兵器、これについて報道があるということは、私どもは聞いて、報道については知っております。
 それで、前半の方のラムズフェルド・メモ、これは、まさにアメリカ政府の中のいろいろな議論についてのことですから、私の口からそれについて確認をすることは当然できないわけでございます。
 それから、小型核兵器、これについても、米国としてそのような開発を決定したということについては、私どもは承知をいたしておりません。
首藤委員 いや、承知していないじゃなくて、それは、ただニュースでジャーナリストが書いているんじゃなくて、議会にそういう案を出しているわけでしょう。それはぜひ確認してください。確認できなかったら、それはもう同盟国でも何でもないですよ、そういうのは。
 そういう、もう本当に驚愕するようなニュースに驚愕するような答弁をいただいて、失望を持って質問を終わります。
池田委員長 次に、伊藤英成君。
伊藤(英)委員 民主党の伊藤英成でございます。
 まず最初に、国際組織犯罪条約について伺いますが、先ほど同僚議員からいろいろ話のありましたこともちょっと踏まえながらお伺いします。
 まず、共謀罪の犯罪化を規定する条約第五条の規定ぶりに我が国政府が合意した経緯についてちょっと伺いたいんですが、我が国の場合、共謀、予備、陰謀の罪が例外的にしか規定されておりません。そのために政府が、この条約の審議の冒頭に、参加罪の導入は、各国の国内法制の基本原則に密接に関連しており、すべての重大な犯罪の共謀行為を犯罪化することは、我が国の法原則に反するものである、こういう我が国の意見書を提出しているんですね。
 こうした主張をして、そしてなぜ、すべての重大犯罪について共謀を犯罪化する条約第五条の規定に我が国政府代表は賛成したのか。そしてまた、このすべての重大な犯罪の共謀行為を犯罪化することが我が国の法原則に反する、こういう条約の起草当初の我が国の主張と、今国会に提出している、本条約を実施するための法律であります刑法等の一部を改正する法律案において、すべての重大な犯罪の共謀を共謀罪とする規定ぶりとの間にも矛盾があるのではないか、この辺についての説明を。
石川政府参考人 お答え申し上げます。
 条約交渉の初期の段階において、我が国が御指摘の趣旨の発言をしたのは事実でございます。
 交渉の初期段階におきましては、まだ共謀の対象となる重大な犯罪の範囲が定まっていなかったことに加えまして、共謀の犯罪化について、現在の条文のように、「組織的な犯罪集団が関与する」という要件を加えることが認められていませんでした。この我が方代表の発言は、組織性という厳格な要件を付さないであらゆる犯罪の共謀や予備を処罰することとするのは、我が国の刑事法制の原則的なあり方に反するおそれがあることを明らかにしたものでありました。
 しかしながら、その後の交渉において、我が国の主張等も踏まえて、現在の条文の共謀罪でまとまりました。それは、共謀の対象を長期四年以上の重大な犯罪に限定し、かつ組織的な犯罪集団が関与するものという条件を付すことも可能としております。これを踏まえて、我が国としては条約採択に参加したものであり、現在、その締結について御承認をお願いしている次第でございます。
伊藤(英)委員 次に、これはひょっとしたら法務省になるのかもしれませんが、現行刑法の一定の行為を処罰する原則と、それから共謀罪の犯罪化との整合性についてちょっと伺いたいんです。
 我が国の刑法の場合には、犯罪成立には一定の行為と結果を要件としておりまして、単なる思想、意思のみを処罰するということにはなっていないですね。しかし、本条約第五条に規定されております、一定の目的のために重大な犯罪を行うことを合意することだけで、何ら結果が発生していないのにもかかわらず処罰することができるという共謀罪を新設することは、客観的な行為と一定の結果を犯罪成立要件の中心としている我が国の刑法のもとでは、本来、認められないことではないかということ。
 そして、客観的にあらわれた行為とそれにより結果が発生したことを処罰するに値することになるという我が国の刑法体系のもとで、犯罪の実行着手以前の共謀のみで処罰することができるとする犯罪を新設することは、これは人権を不当に侵害する可能性を増大させることにもなるんではないか、こういうふうに思いますが、どうですか。
河村政府参考人 委員御指摘のとおり、我が国の刑事法におきましては共謀罪などは例外的なものではございますけれども、しかしながら、結果が発生した場合だけではなしに、危険性のある行為の未遂犯や危険犯などとして処罰いたしておりますほか、一定の犯罪について、予備罪、共謀罪等を処罰しているところでございます。
 このたび新設することで御提案させていただいております組織的な犯罪の共謀罪と申しますのは、すべての犯罪につき、犯罪の実行の合意という共謀行為がございましただけで無条件処罰しようとするものではなく、条約上の重大な犯罪に限定いたしました上、この条約が許容しております組織的な犯罪集団の関与という追加的な要件を採用いたしまして、重大な犯罪の実行を団体の活動として、犯罪実行のための組織により行うこと、または団体の不正権益の獲得等の目的で行うことを共謀した場合という、結果実現の危険性が高く、悪質重大な組織的な犯罪の共謀に限って処罰することとするものでございまして、このような厳格な要件が付されておりまして、その意味で、処罰範囲が不当に広がるおそれ等はないと考えております。
伊藤(英)委員 ありがとうございました。法務省の方はもういいですから、退席して結構です。
 私にきょう与えられている時間が余り多くないので、今起こっております外交課題について、外務大臣などにちょっとお伺いしたいと思うんです。
 まず最初に外務大臣、最近、いろいろなところで、要するに日本の外交のスタンスが見えない、あるいは外務大臣の考え方がよくわからないということを言われたりするんですよ。だから、これは、私は、常々、日本の外交のスタンスをはっきりとわからせること、あるいはわかってもらうことが非常に重要だと思っていますし、外務大臣もそういう気持ちで全力で取り組んでいるんだ、こう思うんですが、どう思われますか。
川口国務大臣 今委員がおっしゃっていただいたように、全力で取り組んでおります。
 けさ、ある新聞の社説を見ていましたら、小泉内閣の評価について、外交のところは及第というふうに書いてございましたので、外務省としての努力あるいは外務大臣としての努力を認めていただいたのだと思っております。
伊藤(英)委員 その評価が正しいかどうかはわかりませんが、しっかりとスタンスをわかるようにやっていただきたいと私も心からお願いを申し上げます。
 北朝鮮問題に絡んで申し上げます。
 まず最初に、中国という国の役割といいますか、中国についての重要度といいましょうか、外務大臣はどういうふうに考えていらっしゃるかということをお伺いしたいと思うんです。
 実は、私自身は、九八年八月三十一日のテポドンの発射がありました、あのときから、北朝鮮問題のプロジェクトチームを我が党にもつくったりいたしまして、そして、私もその座長でやってまいりました。実は、私はそのときに、まず最初に、本当の状況を調べようと思って、すぐ出かけたのは、中国であります。北京に参りまして、政府外交部関係と中国共産党、そしてまた多くのシンクタンクの専門家たち、それから、北朝鮮にある中国の大使館から帰ったばかりの人たちとか、本当に多くの方々に会ったりいたしました。その後、私は、大体、年に一、二回は、北京で北朝鮮問題についても議論している、こう思っています。
 私は、本当にいろいろな各層の交流も含めて、中国というものの、中国の国の位置づけというか役割といいましょうか、どんなに重要な意味を持っているかということをずっと思いながら、今日まで来ているつもりです。
 外務大臣、どう思われます。
    〔委員長退席、土肥委員長代理着席〕
川口国務大臣 中国の重要性ということについては、私も委員と全く同意見でございます。中国は非常に大きな人口を抱えており、アジアにおいても、それから世界においても、今後、大きな役割を果たしていく国であるというふうに考えます。
 それから、北朝鮮との関係で中国の重要性ということですけれども、これは大変重要な国でございます。密接な関係を持っているということが言えると思います。例えば、原料とか食糧を供給している国でございます。また、伝統的に、これは朝鮮戦争以来、それから、もっと言えば、近接している国であるということからくる密接な関係、これがあるわけでございます。
 今回の三者会談、きょうから行われている会談についても、中国が果たした役割ということは大きく評価をされるべきであると考えます。
伊藤(英)委員 今、三者協議の話が出ました。では、それについてまず伺います。
 三者協議について、我が国の方針はどういうことである、そして、それは今回、どういうふうに反映をさせようとしているのか。そして、今回の三者協議の見通し、あるいはこれだけはぜひ今回確認をしてほしいというものはどういうことでしょうか。
薮中政府参考人 まさにこの三者会議でございますけれども、基本的に、北朝鮮の核開発問題、これについて二つの大きな方針というのがあると思います。
 一つは、核開発は認められない、北朝鮮による核開発は認められないということがございます。もう一つは、そうした中でこの問題を平和的に解決しなければいけないということでございます。
 この二つのことをどうやって実現するのかということでございまして、やはりこれは話し合いで、やはり話し合いのテーブル、外交的な解決を目指すべきであるということで、そして今までやってまいりましたけれども、多国間の協議であるということ、これはどうしてかといいますと、北朝鮮の核開発問題というのは、ひとり北朝鮮とアメリカだけの問題ではなくて、まさに今先生が御指摘のとおり、中国の問題である、韓国の問題である、そしてまた非常に日本の安全保障に直接かかわり合いのある問題でございますから、我々が一致して、北朝鮮の核開発は認められないんだ、そういうきちんとしたメッセージを送るということだと思います。
 この三者協議はまさにその第一歩、我々は初めから五者ないし六者、日本、韓国が入った形であるのが当然だと思っておりますし、そうした努力もしてまいりましたけれども、やはり北朝鮮は米朝直接という立場をなかなか崩しませんでした。
 その中で、第一歩として、まず三者でやると。その中で日本としては、日本の考えをきちんと、中国にも、そして特に、当然アメリカに働きかけて、日本の考えを踏まえてやってもらうということで、そしてその次にはこれが進んでいく。第一歩でございます。これはここで一発で終わってしまってはいけないわけでございます。その次につながる、そういう建設的な話し合いをやってもらう、そしてできるだけ早く実質的な会議に臨む、そこには日本と韓国も入って、そして平和的解決を目指していく、こういうことであろうと思います。
伊藤(英)委員 この三者会議絡みの話はまた後ほどあれするとして、先ほど中国の話について、重要性について外務大臣も言われました。
 そこで、ちょっと伺うんですが、先般、外務大臣も中国に、北京に行かれました。そして外務大臣、向こうの外交部長や首相にも会われました。そしてそのときに、日中の首脳会談の重要性、そのことについても触れられましたね。そして、向こうの温家宝首相からもですが、それこそ適切な雰囲気で行うようにしたいものだという話がありました。
 先週、私も民主党の菅代表と一緒に北京に参りました。そして外務大臣にも会いましたし、それから胡錦濤総書記・国家主席にも会いました。そして胡錦濤総書記との間でも、私どもからも、日中の首脳会談がどんなにか重要かということを申し上げました。そして胡錦濤総書記からも、そしてそれはぜひ私も、私もというのは胡錦濤総書記ですが、ふさわしい雰囲気と条件のもとで両国の首脳が会うことを自分も望んでおりますという話をされました。これは、ふさわしい雰囲気だとか適切な雰囲気でという話は外務大臣がよく御承知のとおりです。
 これは、外務大臣はどういうふうに受けとめますか。これはどういうふうにすることが、ではそのふさわしい雰囲気だと考えますか。
川口国務大臣 委員がおっしゃられましたように、私は、この前行きましたときに、首脳レベルも含むハイレベルの日中の間の交流が大事である、これが我が国と中国との間で共通利益の拡大をしていき、日中関係を強固なものにしていくということが重要であるというお話をいたしました。
 両国の首脳の、温家宝総理にも、私は、日本に早期に来ていただきたいというお話をいたしました。そして、今委員がおっしゃったように、適切な雰囲気の中でというふうにおっしゃられました。これは具体的にどういうことかということについて、中国側のおっしゃったことは、人民の理解されるような形ということでございました。
 何を意味するか。これはいろいろなものを含むんだろうというふうに思いますけれども、我が国としては、日中関係がますます友好的に、今既にもう友好的なベースを昨年一年間つくったわけでして、ことしはまた日中平和友好条約の二十五周年に当たるわけですから、またこの機会に日中関係の強化をさらに図っていくということが大事であると考えています。
 共通の利益を拡大する、これが今後我が国としてやるべきことであるというふうに考えておりますし、そのことについては先方によくお伝えをしてあるというふうに考えます。
伊藤(英)委員 外務大臣に伺います。
 日本は、では、首脳会談を開けるような雰囲気にという話は、外務大臣も同意されるわけですよね。そういう雰囲気がいいねと思いますか。
川口国務大臣 首脳会談ということに限って申し上げますと、これは、両首脳はいろいろな場でお会いになられることになると思います。たくさんの会議や国際会議の場がございます。そういった場でお会いになってお話しになられるということはあるというふうに考えます。
伊藤(英)委員 もう一回聞きます。
 適切な雰囲気で、ふさわしい雰囲気ができたら会いたい、話をしたいと言われる意味について、では、そういうふうにするために、外務大臣としてはどうすることが必要だというふうに思いますかという意味です。
川口国務大臣 共通の利益を拡大していくということが重要であるということが、我が国として中国に申し上げたことでございます。
 何をしたら共通な利益が拡大をできるか。これは、さまざまな分野、さまざまなレベルにおける交流あるいは取り組みをやっていくということが重要であると考えます。
伊藤(英)委員 伺いますが、あれは靖国神社参拝のことでは必ずしもないだろうというふうに思っているという意味ですか。
川口国務大臣 靖国神社についておっしゃられましたけれども、私がお話をした中で、靖国のことについて、靖国という言葉でおっしゃられたのは、李肇星外交部長お一人でいらっしゃいました。ほかの方とは、政治的な基礎をしっかりしていくということが重要であるというお話をさせていただきまして、三つの歴史的な文書、これにのっとって、我が国としては政治的な歴史認識を正しく持っていくということが大事だというお話をいたしました。
 雰囲気をつくってということは、もちろんそういったことも先方としては含んでいると思いますし、それだけに限定をされているということではないと思います。
伊藤(英)委員 この部分についてはもうこれ以上申し上げませんが、私は、二月末にワシントンで講演もいたしました。そのときにも、今私が申し上げたように、中国が、これは北朝鮮の問題のみならずイラクの問題でもそうですが、最近のいろいろなことが起こるときにどんなに重要か。そのときに、日本の外交を展開しようとするときに、日本の総理大臣が中国の首脳に会えない状況だと私は思っています、それがどんなに残念な状況か、日本の外交を展開する意味においても、ということを申し上げたんです。
 そのときは、私の見方を、なぜそうなっているかということについても私は申し上げたりしたんですが、私は、外務大臣として、日本の外交の責任者として、特にこの今いろいろ起こっている問題について判断したときに、これは本当に重大だと思っていると私は思うんです。ぜひ、まさに国益のためによろしくお願いしたい、このように思います。
 それから、三者協議、何時からきょう始まるんでしょうか。きょうやることになっているわけでありますが、それにも関連するんですが、これからの日本の考え方、基本的なスタンスということでちょっとお伺いしたいんです。
 まず、北朝鮮の核問題について聞きますが、日本がこれから先、今いろいろなプロセスがある、日本が国交正常化をしようとする場合には、その前提条件として、核開発の問題について、核開発計画を放棄することだけではなくて、核関連施設あるいは核関連の物資、これを北朝鮮から撤去してしまうこと、これはちゃんと査察を無条件に行って撤去してしまうことが前提条件でしょうね。いかがですか。
薮中政府参考人 その前に、三者協議はまさに、向こうの時間でございますけれども、十時から始まった、ちょうど今の時間でございます。
 今の核の問題でございますけれども、日本としては、そしてアメリカも中国もそうだと思いますけれども、韓国もそうだと思いますけれども、朝鮮半島で核兵器があるという事態というのは絶対認められない。その意味で、核開発計画全体ということでいえば、核開発施設ということについてもそれを廃絶するということが最終的な目標になると思います。
 そこへどうやってたどり着くかということ……(伊藤(英)委員「いや、プロセスはいいです」と呼ぶ)はい、それが全体の基本的な考えであるということだと思います。施設を含めてということでございます。(伊藤(英)委員「ちゃんとそれは査察をしていくということですか」と呼ぶ)はい、査察をしてきちんと検証できるということが非常に大事な点であると思います。
伊藤(英)委員 では、今のお話ですと、正常化のためには、そこのところ、核の問題について今申し上げたのはクリアされていないといけない。いいですね。
 では、次に行きます。さっきの三者協議なんかではちょっと言葉は出なかったんですが、ミサイル並びに生物化学兵器についてもこれは全部撤去をしてもらう、北朝鮮にはすべて廃棄されている状況ということが正常化の前提条件になりますか。
薮中政府参考人 正常化の前提条件ということでいえば、まさに平壌宣言にはっきりと書かれてございますけれども、核及びミサイル問題を含めた安全保障の問題についてきちんとした解決を図ることということになっておりまして、その中で対応していく、その基本的なラインで対応していくということになると思います。それは……(伊藤(英)委員「生物化学兵器」と呼ぶ)生物化学兵器も、その安全保障にかかわる問題という中で、どういう取り組み方をしていくのかということに含まれるということだと思います。
伊藤(英)委員 含まれると思いますというのが何か気になりますね。
 それは、日本としては、正常化をしようという場合には、その部分も、生物化学兵器も撤去する、もしもあれば撤去するということを前提といたしますねという意味です。日本の方針を聞いているんですね。
薮中政府参考人 日本としては、もちろん大量破壊兵器ということでそれは全体は含むわけでございますけれども、そうした問題についてはきちんとした解決を図るということで臨むというのが基本方針でございます。
伊藤(英)委員 北朝鮮問題について、さっき、平和的解決で云々という話をされました。例えば米国は、まずは平和的解決。私が考えますのは、米国としては平和的解決を目指します、しかし、最終手段としては、あらゆる選択肢、いわば武力行使も含んだあらゆる選択肢は、これは留保していますよという考え方だと思うんですが、日本もそれを支持していると考えていいですか。
薮中政府参考人 これは、累次、先般ブッシュ大統領と小泉総理のお話もございました。その中でもはっきりとブッシュ大統領から、これは平和的解決を目指すんだということでございまして、アメリカ政府の基本方針というのは、まさにブッシュ大統領の言葉のとおり、平和的解決を目指す、それに日本も一緒にやっていくということでございます。
伊藤(英)委員 僕が聞いているのは、平和的解決を目指す、目指すはいいんですよ。しかし、これからどういうふうに展開していくかわかりません。最後にはあらゆる選択肢は留保した上で、平和的解決をまずは目指しますという意味と解釈するべきだと私は思っているんです。そういう考え方を日本政府もとっていますかということです。
    〔土肥委員長代理退席、委員長着席〕
薮中政府参考人 この問題はやはり、平和的解決を図るということ、これはやはり、まずは平和的解決という今委員の御指摘がございましたけれども、確かに非常に難しい問題でございます。核兵器の開発を完全に廃棄させるということで、非常に難しい問題でございますけれども、何とか平和的解決を図るしかない、そういうことでやっていくしかない問題であろうと思っております。
伊藤(英)委員 では、聞きます。
 これは外務大臣に聞いた方がいいかな。外務大臣、今回、イラクの戦争がこういう状況になってまいりました。そのときに、北朝鮮は、私の知る限りでは、このイラクの戦争に対する教訓ということで、国の安全保障と国家の主権を守るためには強力な物理的抑止力を持つことだということは非常に重要な教訓なんだ、さらには、帝国主義者への譲歩は国や民族の自主権が侵害されるということになるだけだということ、そういう趣旨のことをいろいろ述べていますね。
 この言葉について、どういうふうに考えて、日本としてはどうしようかと思いますか。あれは国際社会で取り組むというんですね。どういうふうに国際社会はこれから取り組んだらいいと考えますか。この言葉をどう考えて取り組むか。
川口国務大臣 イラクの戦争が北朝鮮の一連の政策判断にどのような影響を与えているか、これは、委員のおっしゃられたような考え方、現に北朝鮮はそういうふうに言っているわけですけれども、という考え方もあるでしょうし、違う考え方というのもあると思います。いろいろな考え方があると思いますけれども、この影響を考える上で大事なことは、基本的に、北朝鮮はイラクの戦争がこういう状況にある中で三者会談に出席をするということを決めたということが大事であるというふうに考えます。
 薮中局長がさっき言いましたように、平和裏に解決をしていくという例は過去において非常に数が少ないわけですけれども、皆無というわけではない。南アの例はございます。何が参考になるということはわかりませんけれども、我が国としては、この問題は平和裏に解決をするしかないと思っているわけでございます。その方向でアメリカにはそういうことを言っておりますし、ブッシュ大統領もそういうふうに述べているということでございます。我が国としては、この問題の解決のためにアメリカ、韓国、日本、また近隣の中国、ロシア等々と提携をし連携をしながら、平和裏に解決をしていくという方針でおります。
伊藤(英)委員 この問題はまた次の機会に取り扱わせていただきます。
 時間が参りましたけれども、最後に一つだけ、これは外務大臣に伺いますというか、考え方をお伺いします。
 先般、国連人権委員会への拉致問題の追加情報回答書問題というのがありました。もうきょう時間もありませんから、その経緯等、私は申し上げません。ここでは申し上げませんが、あの回答書が、国民の目から見ても、外務省は真剣に拉致問題を考えているのかというふうに思われていると私は思うのですね。
 そして、あの回答書を出すに当たって、本当にもっとちゃんと日本として述べるべき、やっていない。しかも、官邸の方との連携も、あるいは警察庁の方との関係も含めて、うその説明をしたりというようなことが言われたりしました。そしてまた、さらに今回、補足といいましょうか、出したような話は伺いましたけれども、この問題について、外務省としてあるいは政府として、いかにもよくないと私は思うのです。
 そのことについて、もう一度つけ加えれば、今私がずっと申し上げたような話も、外務省改革、外務省改革で、最近までいろいろなことをやってきたりした。しかし、本当にそんなことされていますかね、意識として。あるいは仕事に対する態度として、あるいは事に対する責任感として、あるいはその意識としてというようなことを私は非常に思うのです。
 それについて、外務大臣として、今回の一連のことについてはどういうふうに、反省といいましょうか、どういうふうに考えて、どうしようとこれから思うのかということを最後にお伺いします。
川口国務大臣 これについては、委員が今おっしゃられましたように、こういうことが起こってしまったというのは、私としては、それから外務省としては非常に残念に思っております。外務省として反省すべきところというのはあると思います。
 私は、連携、特に拉致の家族の方の窓口といいますか、接点を内閣でやっていてくださっているわけでして、こことの連携というのは非常に大事だということを日ごろから言ってきております。
 ということでしたけれども、それが十分に行き渡っていなかったということについては、私は大変に残念だと思いますし、これについては、今後改めて引き続きやっていくように、連携を密にしていくようにということの指示は出しておりますので、外務省の改革について、全般との関係で、国民の目から見て他の部分の改革もできてないんじゃないかと思っていただくようなことにつながる、これはそういうふうに思われる方もいらっしゃると思いますけれども、そういうふうになってしまうと、これも大変に残念でございます。
 改革については一生懸命やっているつもりでおりますし、全員心を合わせてやっておりますけれども、そういった中で今回のようなことがあったということについては非常に残念であり、反省もしているということでございます。
伊藤(英)委員 終わります。ありがとうございました。
池田委員長 次に、丸谷佳織さん。
丸谷委員 公明党の丸谷です。どうぞよろしくお願いします。
 本日、審議案件になっています三条約のうち、まず国際組織犯罪防止条約から質問をさせていただきます。
 今日、マフィアですとか、あるいは暴力団などが絡む薬物の密輸ですとか、銃器の不正取引など、国際社会が協力して解決しなければならない深刻な課題が山積している中、本条約に賛成の立場から質問をさせていただきます。
 我が国としましても、本条約の草案の作成に積極的に参加してきましたし、また、平成十二年のリヨン・グループの議長国としまして、ハイテク犯罪等の取り組みにリーダーシップを発揮してまいりました。また、本条約を補足します人身取引、密入国及び銃器に関する三議定書についても、G8諸国ですとかアジア諸国との調整作業に積極的に取り組み、また、案文の合意の形成にも貢献をされました。本条約は、こうした活動の集大成と言ってもいいものかと思いますけれども、まず外務大臣に、国際組織犯罪の完全な撲滅に向ける政府の決意をお伺いします。
川口国務大臣 委員がおっしゃっていただきましたように、この条約のできる過程でも、我が国としては積極的にリーダーシップをとってきたわけでございます。この取り組みというのは一つ非常に重要なものでございますし、それから、それを超えて、我が国として国際組織犯罪を壊滅するということに、政府といたしましても並々ならぬ決意を持っております。
丸谷委員 ありがとうございました。
 では大臣、席を外していただいて結構です。
 今までの各審議の内容を聞いてみましても共謀罪に関することが非常に多く議論をされておりまして、私もいろいろなホームページですとか新聞記事等を読んでいく中に気になる部分もございますので、質問をさせていただきます。
 共謀罪は、日本で認められています共謀共同正犯とは全く別の概念であって、共謀共同正犯の場合は少なくとも犯罪に着手したことが必要になるわけですけれども、共謀罪は謀議だけで犯罪が成立します。この法案によりますと、法定刑の上限が四年以上の懲役、禁錮の罪に適用し、最高刑は懲役五年が科せられるということになるわけなんですけれども、例えばこういった懸念の声がインターネット上で見られました。
 居酒屋で同僚同士が気に食わない上司を殴ってやろうと意気投合しただけでも、傷害の共謀罪が成立する可能性がある。同僚の一人が、自首をすれば刑は免除の規定を当て込んで、会話を録音したテープを警察に持ち込み、真剣だったと証言すれば、もう一人が冗談だったと釈明しても通らない可能性もあるという。
 こういうふうな懸念を持っている方もいらっしゃるということで、明快に答弁をしていただきたいのですけれども、このような例があり得るのかどうか。あり得ないという根拠も含めて、改めて法務省の見解を伺います。
池田委員長 河村大臣官房審議官。明快に答えてください。
河村政府参考人 結論から申し上げますと、御指摘のような事例で共謀罪が成立することはあり得ない、こう考えております。
 まず、新設ということで御提案をさせていただいております組織的な犯罪の共謀罪と申しますのは、この犯罪の共謀は、一般的なものではございませんで、まず、条約の要請に従いまして、共謀の対象、その中身自体が長期四年以上の罪ということでございます。その意味で、まず上司を殴るということは暴行罪ということでございますので、これは二年以下となりますので、まずもって対象ではございません。
 それから、その上で、その実行を、団体の活動として、犯罪実行のための組織により行うこと、または団体の不正権益の獲得、維持拡大の目的で行うことを共謀した場合に処罰するとされておりまして、この組織性の要件も厳格なものでございまして、単に意気投合いたしましただけでは、こういった団体の意思決定に基づいて、まさにその団体の活動として、なおかつ犯罪実行のための組織により行うといったような組織性の要件を満たし得ないわけでございます。
 さらに、共謀罪が成立いたしますためには、単に漠然とした相談では足りませんで、特定の犯罪が実行される具体的危険性の認められる合意、そういう行為が行われる必要がございまして、酔余の座興的な発言など、現実的危険性を有する特定の犯罪の合意であるとは、これは認められないと考えられるわけでございます。
丸谷委員 明快な答弁、ありがとうございます。
 国民に対しても、やはり法律ということに関しまして国民の理解を得ていく努力というか、説明責任も果たしていかなければいけないという意味で、要らない懸念を生まないような努力、広報活動も心がけていただけたらなと思います。
 続きまして、共謀罪捜査における証拠収集のあり方についてお伺いしますけれども、条約の第五条によりますと、重大な犯罪を合意することが共謀罪として処罰の対象となっています。我が国の刑事訴訟法は、事実の認定は証拠によると、証拠裁判主義を採用し、証拠については、供述証拠の収集活動にありがちな過度の取り調べの結果、自白を強要して誤審などにつながらないよう、自白のみによる有罪認定は原則としてできない。自白を補強するほかの証拠が必要とされています。また、刑事訴訟における最も重要な価値の一つであります誤判防止の観点からは、我が国では従来から、証拠の収集は物的証拠の収集を中心に行われるべきであるというふうにされてきました。
 しかし、共謀罪の場合においては、犯罪の実行行為に出ていない以上、物理的な法益侵害の結果は発生していません。したがって、共謀罪の成立を立証するということになりますと、自白や供述証拠の収集ばかりが行われる可能性もあるのではないかと思います。
 ついては、共謀罪新設後の捜査当局の共謀に関する証拠収集活動の基本方針を御説明願います。
河村政府参考人 御説明申し上げます。
 なるほど、共謀罪という犯罪の性質上、共謀の段階でその存在が明らかになることは必ずしも多くはないと思われるわけでございますけれども、これは、他の多くの密行的な犯罪の場合と同様に捜査の端緒を求めまして、強制捜査が必要な場合には現行の令状というものを得まして、物的な証拠も含め、さまざまな証拠を集めるべく、可能な捜査を尽くして、現行法のもとで認定していただくということになるわけでございます。
 したがいまして、証拠の収集方法につきましても、これは通常の捜査と変わるところがないのでございまして、例えば、現に行われた別の犯罪の捜査の過程で共謀に関する供述や物証が得られることも予想されるといったこと、あるいは、共謀に参加いたしました者の自首でありますとか、共謀の存在を聞き知りました犯罪組織の構成員の情報提供などを契機として捜査が開始されることもあると考えられるわけでございますが、捜査手法にいたしましても、また、その後の認定等につきましても、現行と変わらず、厳格なことが行われるということでございます。
丸谷委員 では、本条約に関して最後の質問をさせていただきますが、司法通訳制度の充実に関しまして、公明党としましても、ずっと党の政策の中で要望を出してきました。その観点から質問をいたします。
 国際組織犯罪に対処するためのみならず、外国人の増加に比例して犯罪も増加しているという傾向を踏まえ、犯罪者の人権も重視しなければいけない面もありまして、迅速かつ適切に対応していかなければいけない現状にあります。
 そのためには、刑事司法制度に精通した司法通訳の確保が不可欠になってくるわけですけれども、要通訳事件の統計を見てみますと、例えば、地方裁判所の第一審において、平成五年には三千四百七十七人の被告人に通訳人がついたのに対しまして、平成十四年には八千九百七十七人の被告人に通訳がつく。最低十年間で、通訳をつけた被告人は約五千人も増加しています。この現状に反して、裁判所におきます通訳、すなわち法定通訳は約三千人から四千人の登録しかないという現状で、絶対数が不足しているということが、まず一点、指摘できると思います。
 また、アメリカやドイツ、オランダにおきますこういった通訳に関しては認定制度がありますけれども、我が国に関しては認定制度がありませんし、司法手続全般における通訳の位置づけについての原則的な規定に乏しいのではないかと考えるわけです。
 今後、ますます刑事司法面における通訳人のニーズが高まることも予想される中、適正な捜査、公判の確保のためにも、司法通訳の認定制度とともに、刑事司法手続全般にかかわる通訳人について法律上明確にしていく必要性があると考えますが、この点についての見解を伺います。
寺田政府参考人 御指摘のように、世界の国際化に伴いまして、外国人が訴訟の当事者あるいは捜査の対象になるというようなことが非常にふえてきております。
 おっしゃったように、捜査を適正に行う、あるいは当事者、被疑者、被告人の権利を十分に確保するという意味からも、能力のある通訳人の確保は非常に重要な課題だろうというふうに考えているわけでございます。
 現状でございますが、私ども、できるだけ能力のある通訳人を確保しようという観点から、全国の通訳人のデータベースをつくりますとか、あるいは能力担保のためのセミナーを全国規模で展開するとか、あるいは法律用語の対訳集のようなものをつくりまして、できるだけ資料の面でも充実させていこうというようなことを考えておりますが、なお十分かどうか、必ずしも問題がないわけではない、そういう意識でございます。
 御指摘になりました、公的な資格をつくるかどうかでございますが、確かに、諸外国の中には、ヨーロッパ、アメリカ、そういうシステムを持っているところもございますので、現在のところ、私ども、そういった諸外国の調査をさせていただいております。
 実際にそういう制度をつくるということになりますと、果たしてどういうふうな認定で、どういう資格をつくるかという問題がございますし、何と申しましても、言語は、先ほどのデータベースに登録したものだけでも七十以上の言語がございまして、いわゆる少数言語というようなものがたくさんございまして、そういったものの扱いをどうするかというような問題もあるわけでございます。
 いろいろな検討事項があるわけでございますが、議員御指摘のような、能力のある通訳人を多数確保するということは、今後もどんどん要請が強くなっていくという認識ではございますので、さらに検討を進めてまいりたい、このように考えているわけでございます。
丸谷委員 さまざまな現状の問題点も、課題点も挙げながら御説明いただいたわけなんですけれども、検討といっても、かなり前向きな意味での検討をぜひお願い申し上げまして、法務省に関しては、これで下がっていただいて結構です。ありがとうございました。
 続いて、二つの条約に関して質問させていただきます。
 児童の権利条約の改正からお伺いをさせていただきます。
 この条約の改正自体についてお伺いしたいんですけれども、今回、十八人に委員を増加させるということになるわけですが、この十八人という根拠は一体何なのか。また、締約国が百九十一カ国という最大規模を抱えるこの人権条約について、十八人という委員数が妥当で、それが能率よく委員会を運営できるような、また報告書をさばけるような体制であるのかどうか。この点についてお伺いします。
石川政府参考人 お答え申し上げます。
 人権関係条約のほかの委員会を見てみますと、例えば、自由権規約や社会権規約、人種差別撤廃条約の委員会の委員の数は十八名となっております。
 本件の児童の権利条約の改正は、児童の権利委員会が効果的に職務を遂行するためには、こうした委員会と同じ程度まで委員の数を増加する必要があるとの判断に基づくものでございます。
 昨年十一月に本件改正が発効いたしましたが、これを受けて、十八名の委員会の活動が行われることになります。毎年おおむね二十七カ国の報告を審査するため、一人当たりの委員の作業負担が軽減され、委員会全体として効率よく活動できるようになるものと考えております。
丸谷委員 わかりました。
 私は、この児童の権利条約並びにそれに付随します二つの議定書に関しましては、本委員会でも何度も取り上げさせていただいております。
 というのは、私の信念としまして、児童の商業的、性的搾取がなくならない限り、いかに経済的に豊かな国になったとはいえ、決してそれは高度文明を誇る国でもないし、先進国とは言えないのではないかという信念に基づきまして、児童の商業的、性的搾取がなくなるまで頑張っていかなければいけないなというふうに思いまして、何度も質問させていただくわけなんですけれども、今後、児童の権利条約を生きた条約にしていくためには、我が国政府としても一層の努力を図っていかなければいけない課題が残っています。
 二〇〇一年の十二月、横浜で開催をしました第二回児童の商業的性的搾取に反対する世界会議のグローバル・コミットメントの中でも示しましたように、児童の権利条約と関連文書というのは非常に重要であって、児童買春、児童ポルノ、トラフィッキングから児童を守るため、法と法執行を含む対策の効果的な実施を我が国としても約束をしています。
 具体的には、昨年五月の国連子ども特総で署名をしました選択議定書、そして十二月に署名をしました国際組織犯罪防止条約に当たります人身売買議定書を、これを批准していくための国内法の整備を急いでいかなければいけません。ユニセフによりますと、毎年百二十万人の子供たちが人身売買の犠牲となっておりまして、日本にも犠牲となった子供たちは送り込まれております。実際に日本人が逮捕された例なんですが、十六歳の女の子を含む四百人近くのコロンビア女性を全国のストリップ劇場に送り込んでいたということも例としてあります。
 この人身売買を防止するために、国外犯を含めて取り締まる法整備が必要であるとかねて主張しておりますが、現在、この国内法の整備について、進捗状況はいかがでしょうか。
石川政府参考人 結論から申し上げさせていただきますと、現在、関係省庁が連携して国内担保のための具体的措置について検討を進めさせていただいております。政府といたしましては、できるだけ早期にこのような検討を終え、本件議定書を締結したい、御指摘いただいた議定書を締結したい、このように考えております。
丸谷委員 検討をしているのは存じ上げているんですね。その進捗状況がどのぐらいまで進んできたのかなということを非常に気にかけているわけでございまして、私の主張としましては、人身売買、トラフィッキングに関しては、国外犯の適用ということに関して、児童福祉法の第三十四条の見直しが一番迅速に行われ、かつ現実的な対応策だというふうに考えておりますけれども、今の検討状況の中でそのような例えば議論があるのかどうか、またできるだけ早くにという話、今できるだけ早く結果を出したいというお話がありましたが、めどとして、では、いつまでに国内法の整備を目指していかれるのか、この点をお伺いします。
石川政府参考人 委員から具体的な国内法の改正等についても言及をちょうだいいたしました。
 御指摘いただきましたとおりに、昨年十二月に署名をいたしました国際組織犯罪防止条約の人身取引議定書には、児童の人身取引罪の処罰についての規定も含まれておりまして、児童の権利条約選択議定書と同様に、国内法令の整備が必要であると私ども考えております。
 現在、その国内法令整備の方途につきましては、委員から御指摘をいただきました方法を含めまして、厚生労働省、法務省等の関係省庁と検討を進めておりまして、大変急いでおりますが、大変恐縮でございますが、きょう現在いつとなかなか申し上げにくい状況でございます。
丸谷委員 目標、目標というかめどを立てられるぐらいまで、ぜひ一生懸命急いで頑張っていただきたいと思います。またずっと質問をさせていただきたいと思いますので、児童の権利条約、人身売買ともに素早い対応を重ねてお願いしたいと思います。
 では、最後に女子差別撤廃条約について質問をさせていただきます。
 我が国の報告書、五年前に提出しました第四回の報告書がいまだに審議をされていませんし、昨年提出しました報告書、第五回報告書と一緒に第四回報告書はこの夏に審議をされるということになっています。
 締約国がふえればそれに伴いまして報告書の増加が検討作業に遅延を起こしていくということは理解できるんですけれども、今回のこの改正をすることによってどのような効果が見込まれるのか、また、現時点では審議が滞っています報告書は全体でどのぐらいあるのか、この点についてお伺いします。
石川政府参考人 委員御指摘のとおり、女子差別撤廃条約は、委員会の開催期間を原則として二週間と定めておるということで、これまで未審査の報告が数十本にわたって積み残されるといったことや、そのため、やむを得ず、例外として委員会の開催期間を延長するといったことがございました。
 今回の改正によりまして、委員会の会合の期間を一定の条件のもとで締約国の会合において決定できるようになります。これは、その実態を見ながら、未審査報告が積み残されないようにしようということであると認識しておりまして、その積み残し状況というのは基本的には生じなくなると考えております。
 なお、締約国の数、一九八一年発効時十カ国だったものが、九〇年には百一カ国となり、現在百七十二カ国となっておりますが、過去五年間に出された報告の数を念のため申し上げますと、九八年、九九年は二十三本ずつ、二〇〇〇年は二十五本、二〇〇一年が十本、二〇〇二年が十五本となっておりまして、審査の数もそれに見合ってふやしているところでございます。
丸谷委員 我が国におきましては、一九八五年に女子差別撤廃条約を批准して以来、男女共同参画社会の実現に向けて、徐々にではあるが進展をしてきています。
 一九九九年には男女共同参画社会基本法も制定しまして、ジェンダー・エンパワーメント指数は六十四カ国中三十一位とかなり低いものの、さきに行われました道府県議会議員選挙におきましては、女性当選者数は過去最多の百六十四人となり、行政職、管理職、国会議員に占める割合を上げていくことも今後重要な課題だと認識をしております。
 次は、副大臣にぜひお答え願えればと思うんですけれども、民法の改正についてお伺いをします。
 第五回の報告書の中に、民法改正についても触れている部分がございます。二〇〇一年に内閣府が実施をしました選択的夫婦別姓制度に関する世論調査では、導入に賛成する割合が反対を超えまして、国民の理解は進んでいると言える状況になりました。法制審議会で議論が開始されてから十年が経過するわけなんですけれども、この選択的夫婦別姓制度の導入に関して法制化に至っていないのが今の現状です。
 この民法を見直すということ自体が女子差別撤廃条約の目的達成のために意義あることと外務副大臣はお考えになられるでしょうか、この点についてお伺いをします。
茂木副大臣 条約の精神に照らしても大変重要な論点である、こういうふうに認識をいたしております。
 丸谷先生初めこの問題に大変熱心に取り組んでいらっしゃる先生方に、私は敬意を表しております。
丸谷委員 副大臣も、あれ、夫婦別姓制度賛成論者だったんじゃないかなという気がしましたけれども、立場上、政府の見解ということでお伺いしましたので、また議員に戻られた際にはぜひ賛成をしていただきたいと思います。
 本当にこの別姓、民法改正に関しては、私自身、また公明党としましても、女子差別撤廃条約の精神に沿うものだというふうに思っておりまして、また議員立法等も進めてまいりたいと思います。
 最後に、条約に関係ない質問なんですが、一問だけさせていただきたいと思います。
 今、SARSの問題が非常に大きな課題になっておりますけれども、外務省として、在留邦人の方の生命を守っていかなければいけない、いわば在外公館の役割がそこに一つあるわけなんですけれども、実際に私たちの党に寄せられました意見としまして、天津市に留学をしている学生さんだったんですが、現地では情報が全く入ってこないそうなんですね。患者発生者数等、情報が余りにもなさ過ぎて、どのようにしたらいいのかという不安が非常につきまとっているんですけれどもという声も寄せられています。
 きのうは北京の大使館の方でも説明会等があったというニュースを、報道を見ましたけれども、特に中国には邦人の方が多くいらっしゃる観点から、ぜひ、在外公館におきます邦人保護、また医療体制の完備について対策を早急にとるべきだと思うのですが、この点について最後にお伺いします。
茂木副大臣 大変重要な御指摘だと思っております。
 本省においても、それから在外公館におきましても、必要な情報の提供をこれからも進めていきたい。それぞれのホームページでも紹介しておりますし、また、在外におきます邦人に対する説明会等もこれまで実施をいたしております。それから、危険情報の発出等も、北京であったりとか香港であったりとか広東州でやっているわけであります。
 また、在外公館におきましては、例えばプレス担当であったりとか情報把握担当であったり、さらにはそれぞれの説明担当であったり、それぞれの担当者であったりとか統括責任者を設けながら、この丸谷委員御指摘のSARS、大変深刻といいますか、在外邦人にとっても大変関心の高いテーマでありますので、しっかりした対応をこれからもとってまいりたいと思っております。
丸谷委員 お願いをしまして、質問を終わります。ありがとうございました。
池田委員長 次に、藤島正之君。
藤島委員 自由党の藤島正之でございます。
 きょうは、安倍副長官にお忙しい中をおいでいただきましたので、本当は外務省にお伺いしてから副長官にお伺いした方が順序としてはいいんですけれども、時間の関係もありますので、安倍副長官の方に先にお伺いしたいと思います。
 まず、北朝鮮の関係でございますけれども、拉致の問題なんですけれども、まさに主権の侵害ということで、本人の意に逆らって連れていかれて、それこそ袋に入れられたりしてまで連れていかれているわけです。この拉致について、私は明確な国家テロであり、それが継続しているという認識なんですけれども、この点について、外務大臣と官房副長官それぞれに、どういう認識をお持ちかお伺いしたいと思います。
川口国務大臣 委員がおっしゃいましたように、拉致という行為は、人間の生命と安全、人権にかかわる重大な問題でありますし、主権という観点からは、これは領土主権の侵害であるということは明確なわけでございます。そういう意味で、拉致というのは、普通に言えばこれはテロということだと私は考えています。
安倍内閣官房副長官 私も外務大臣と同じ考えでございます。
藤島委員 拉致は国家のテロと。夏までは国家的なテロではないと否定していたわけですけれども、平壌宣言で明らかに、国の行為であったということで、国家のテロということがまさに明らかになったということだと思うんです。
 ちょっと話はずれますけれども、これはマスコミの情報なんですけれども、十五日の記者会見で、曽我ひとみさんが、家族をばらばらにしたのはだれですか、こういう問いかけがあった、これについて外務大臣は、歴史ということじゃないですか、こういうふうに答えたというふうに聞いておるんですが、これは事実でしょうか。
川口国務大臣 曽我ひとみさんには、片方では北朝鮮に家族が残っていて、そしてまた日本には日本のお父様や妹さんや、またその関係の家族の方がいらっしゃってばらばらだというのは本当にお気の毒な、御本人にとっては大変におつらいというふうに、私は心から、そのお気持ちを多分察しても察せられないだろうというぐらい大変なことだろうというふうに思います。
 それで、先ほど委員がおっしゃった御質問ですけれども、曽我さんが家族をばらばらにしたのはだれですかということをおっしゃられた。いつも非常に本質的なことについてずばりとおっしゃられる、文章になさる方だと私は思います。
 これは、記者会見で質問がございまして、質問があってから答えるまで、委員御案内のように、記者会見ですから間髪を入れずということでして、そのとっさの間に私の頭を駆けめぐりましたのは、だれですかという質問であったわけですね。
 具体的に、この拉致問題をめぐる経緯、歴史的な経緯といいますか、それを考えれば、個人の人に限定をしてしまうというのは非常に難しいし、だれがという名前を挙げるということも非常に難しい、そういうことをとっさに思ったわけです。
 そういう意味ではその経緯だということを、だれという個人の名前を特定して、この人とこの人とこの人とこの人とこの人と、全部関係のあった人、大勢いるわけですから難しいという気持ちがとっさの一秒ぐらいの間に頭を駆けめぐったわけでして、それを、そういう歴史的な経緯だ、それが重要なことで、複合的ですねということを申し上げた、いろいろな個人、いろいろな組織が関係していますねということを申し上げたわけでございます。
 それがそういうふうに書かれたということなんですけれども、今落ちついて、その後時間を経て考えれば、いろいろな個人、いろいろな組織が関係をしている、複合的であるということはそういうことなんですけれども、みんな北朝鮮側の組織であり人である、そういうことですから、総合して北朝鮮であるということを言ってもよかったかな、今聞かれたらそういうことを言うだろうというふうに思います。
藤島委員 私は出身が柏崎市なものですから、新潟二区なので曽我さんも範囲なんですけれども、蓮池さんのお宅は私の家から本当に車で五分もないぐらいのところにありまして、この問題についてはずっと最初から重大な関心を持って一生懸命応援をしてきているわけです。
 今、外務大臣の最後の部分の認識を伺えば、まあそれもそうかなという感じはあるんですけれども、その根底に、歴史ということじゃないですかという認識がもしあれば、これはなかなか、この問題が解決の方に進展するとはとても思えない。
 この点について、安倍副長官は、家族を引き離しているのは明らかに北朝鮮だ、こうコメントされているわけで、私はまさにこういうことだろうと思うんですけれども、この点について、官房副長官、もしコメントすることがあればお願いします。
安倍内閣官房副長官 私は、何回か曽我ひとみさんとお目にかかりましたし、先般曽我さんが入院されたときにもお見舞いに参りました。そのたびごとに、早く子供たちや主人と会えるようにしてもらいたいという話を伺いました。
 私自身の責任の重さというのも感じているわけなんですが、そもそも曽我さんを北朝鮮側が拉致しなければ、こんな問題には全くならなかったわけであります。そして、総理が訪朝して、金正日委員長が拉致自体を認めて謝罪をしたわけですから、直ちに曽我さんが望む形に戻す、そもそもその犯罪が起こる以前に戻す。当然、向こうで結婚して家族ができたわけですから、これからどうしようかということは、やはり日本に御主人も子供たちも帰ってきて、自由に物が言える場の中で決められるようにという責任は北朝鮮にあるわけでありますから、私はそのように申し上げたということであります。
藤島委員 では、曽我さんの問題はとりあえずおいておきまして、次に、国連の人権委員会の決議の関係でございますけれども、細かい点は後ほど外務省に伺いますけれども、この手続で官房副長官は事前に相談を受けていたのかどうか、まず、この点について伺います。
安倍内閣官房副長官 大切なことは今後どうしていくかということなんだろうと思いますが、この件については私は承知をしておりませんでした。
藤島委員 よくわからなかったのですが、要するに、出すときまでは聞いていなかったということですか。
安倍内閣官房副長官 二十日の日に、私は、どういう回答を政府がしたかということを秘書官を通じて知りました。
藤島委員 要するに、出す前には聞いていなかったということなんです。
 外務省にいろいろ伺いますけれども、要するに政府の中で、こういうやり方で私はうまくいくのかなという非常に危惧を持っているわけですね。官房副長官が言うのは本当にごもっともなんですよ。
 今後、こんなことはあってはいけないんですけれども、その点について、副長官、もう時間なので、今後、政府内をどうやってちゃんとやっていくのか、やっていける自信があるのか、この点について一言伺って、お帰りいただきたいと思います。
安倍内閣官房副長官 この日朝の問題の中での拉致問題については、日朝国交正常化交渉に関する関係閣僚会議のもとに、私が議長を務めております拉致問題に関する専門幹事会がございまして、ここで各省庁といろいろと連携をとりながらいろいろな物事を決めていくということにもなっております。
 また、支援室が、家族の皆さん、また帰ってこられた被害者の方々のお世話に当たっているわけであって、今後は外務省のアジア局とも十分に連絡をとり合っていくということを確認しておりますし、今後は、意思の疎通を十分にしながら、適宜適切な対応ができるような体制をさらにとっていきたいというふうに思っています。
藤島委員 九月からの当初の動きは、本当に、外務省もかなりよかったし、官邸も非常によかったと思うんですけれども、年が明けてから非常に動きがよくない。ちょっと忘れ去られたのかなと。核問題の方にどうしても重点を置いて、それはイラクの問題もあったわけですけれども、それなので、もう一度原点に戻って、これは国家的なテロなんだというところにもう一回戻ってもらって、しっかり副長官には頑張っていただきたい、こう思います。
 どうもありがとうございました。
 それでは、今の件につきまして外務省にお伺いしていきたいと思いますが、これは外務大臣は決裁はしておるんですか。一つずつ伺いますので、それについて端的にお答えください。
川口国務大臣 しておりません。
藤島委員 茂木副大臣はいかがですか。
茂木副大臣 決裁はいたしておりません。
 こういった回答書の場合、すべてを決裁するルールになっているかというと、そうではありません。ただ、事の重大性から考えれば、事前に報告があってしかるべきだったと思いますし、私は、問題は、この拉致問題につきましても、解決をする、そういう思い入れなんだと思います。そういう思い入れを持ち続ける、そういうことがあればしかるべき連絡等々もできる、こういう反省に立って、これから全省を挙げて問題に取り組んでいきたいと思っています。
藤島委員 これからの問題はこれからとしまして、外務省の、今おっしゃったような思い入れについて、しっかりしていないといかぬということなんだろうと思うんですけれども、これは警察庁とは協議はしたんですか。それは事務方でいいんですけれども。
薮中政府参考人 本件については、全般的に、昨年の十一月からの関係では、十一月に実際、人権委員会の作業部会がございましたけれども、非常にきっちりと連絡をして、そして、その当時は五十ページにわたる我々の調査結果というのを、これは警察庁とも十分御相談して出したものでございます。三月に向こうから一定の照会がございまして、そのときの返事というのは、警察庁とは連絡をとらなかったわけでございます。それは、基本的には新しい所在に関する追加的情報があるかないかということであって、きちんともっととるべきであったと思いますけれども、とっておりません。
藤島委員 それでは、政府の拉致問題専門幹事会がありますね。ここには相談されたんですか。
薮中政府参考人 まさに今申し上げましたように、全般的な人権委員会にかかわる問題についてはずっと緊密な連絡をとってまいりましたけれども、三月の追加的なことがあるかないかというところの返事については御連絡をしなかったということでございます。
藤島委員 それでは、もう一つ。政府の拉致被害者・家族支援室には協議はしておりますか。
薮中政府参考人 同様でございまして、昨年十一月に五十ページのものを出したときは、まさに家族の方の代理となって、我々、五十ページのものを、そして、齋木参事官がジュネーブまで参りまして、十ページにわたる熱弁を振るって、それで、結果として、この委員会も拉致の問題を取り上げるということを決定したわけでございます。
 ただ、申し上げましたように、三月のときに、さらに追加的な情報があるかというそのときには御連絡をしなかったということでございます。
藤島委員 これは一部の報道ですけれども、先ほど伊藤委員も触れたんですけれども、家族支援室に回答書を示したが、警察庁とは事前に協議と、虚偽の説明をしていたというんですけれども、これは事実ですか。もし事実だとすると大変な背信行為になるんですけれども。
薮中政府参考人 そういうことはないというふうに確信しております。
藤島委員 そういうことはないということは、どういうことですか、具体的に言うと。
薮中政府参考人 今の報道の、虚偽の確認をとった等々の点については、そういうことは行っていないということでございます。
藤島委員 要するに、そういう言い方もしていないし、協議も何もしていないということですね。
薮中政府参考人 先ほど申し上げましたけれども、基本的なる五十ページのものは全部やっておりますけれども、三月の追加的なときにおいてはしていないということでございます。
藤島委員 それでは、ちょっと視点を移しますけれども、人権委員会に北朝鮮の報告がかなりの内容で出されているわけですが、その概要を説明してください。
薮中政府参考人 申し上げましたとおり、まず、これは基本になっておりますのは、日本が、昨年十一月に五十ページにわたる非常に詳細な拉致問題についての私どもの疑念と、そして、いろいろな事実関係を出したわけでございます。それに対してのことでございまして、北朝鮮からは、数ページにわたって北朝鮮の考え方を述べてございます。
 それは、そのポイントだけを申し上げるということであれば、基本的に、北朝鮮としては、平壌宣言に、日朝平壌宣言でございますけれども、これにおいて、すべての問題について、両方のことを書いてございますけれども、特に過去、日本が行ったことに対する日本からの謝罪、そしてまた、この宣言は、第三パラにおいてと書いてございますけれども、日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題については、朝鮮民主主義人民共和国側は、日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題が今後再び起こることがないよう適切な措置をとるよう確認したということで、この宣言のことを紹介してございます。
 そうした上で、日本との関係で、歴史的な日本との関係があり、その中で日本が行ってきたことについても書き、その結果として、今回の平壌宣言ができ上がっているということ。そして、歴史的首脳会談と平壌宣言の発出以降、九月十七日に、赤十字会を通じて、行方不明日本人の消息を確認し、将来そのようなことが起こらないことを誓ったということ。
 また、向こう側でございますけれども、拉致された日本人に関する調査委員会をアドホックに設置して、日本側による捜査に全面的に協力することを行ってきた等々が書かれてございまして、そうしたときに、その間の経緯でございますけれども、共和国側としては、日本代表団が五人の日本人生存者と会って、自由な雰囲気のもとで、永住場所について質問できるようあらゆる便宜を図ったというようなことも書かれてございます。
 その結果として、日本側代表団は、しかし、彼らは北朝鮮で生活しているので、みずからの意思を表明することは困難であるということで、一時的に故郷を訪問するよう認める要求をしたというこの間の経緯がずっと書かれてございまして、その経緯を書いた上で、実質的に、日本側の希望するとおりに二国間で解決済みであるという彼らの立場が書いてあるということでございます。
藤島委員 要するに、五人の被害者の帰国はもともと二週間の滞在の約束だったのに、日本は約束を破ったとか、日本により暴力的に誘拐され、半世紀が過ぎ、行方不明の人や、その遺族がいるとか、あるいは、作業部会は、日本に対して、拉致問題を政治的に利用する汚い行動を速やかにやめさすべきだとか、言いたい放題のことを言っているんですね、言ってみれば。いいですか、北朝鮮は、こんな言いたい放題のことを言っているんですよ。
 イギリスも出していますよね、これについてごく簡単に、ちょっと説明してください、長くならないように。
薮中政府参考人 イギリスも、この有本さんの事案ということで、有本さんの事案についてのポイントが書かれてございます。これはイギリス側の回答のポイントでございますけれども、有本恵子さんの失踪というのは北朝鮮当局による拉致の結果であることが東京における公判で明らかとなったということをまず言明いたしました。
藤島委員 要するに、イギリスですら、そういうふうに、本当に真剣に、詳しく触れているんですよ。
 それに対して、我が外務省の対応ですよ。これは本当にけしからぬ、私はとんでもないことだと思う。大臣、副大臣が知らなかったので、今それをとがめてもしようがないんですけれども、この事務方の感覚なんですよ。これは、先ほど外務省改革の問題と絡んでのお話がありましたけれども、そういう問題じゃなくて、その対応に対する感覚というか、考え方ですね。今、北朝鮮や英国から出たようなのもわかっているわけですからね、外務省は。すぐさま自分の方から、事務方としては、これはまずかった、追加して回答するとか何かを、上司である副大臣や大臣に報告して、措置すべきだった。
 何もしないで、マスコミに出てから、しかも私がこの資料を要求したら、最初は、これは非公開の場のものだから、マスコミに出ているにもかかわらず、私には資料を出せない。出せる出せないでさんざんやった末、きのうの夕方遅くなってから、この資料をもらったんですよ。こんな秘密主義というか体質で、本当に外交がうまくいけるのかどうか、私は非常に心配なんですよ。
 特に、今、拉致問題について言えば、外務当局の局長以下、こんなセンスの人がこのまま担当していたんじゃ絶対にうまくいかない、私は、担当官を全部更迭すべきだと思います。外務大臣、どうですか。
川口国務大臣 こういったことが二度と起こらないように、組織として改めて、私からも連絡をきちんとする、それから、先ほど茂木副大臣がおっしゃられましたように、やはりこれをやるんだという思い、これが非常に私も重要だと思います。そういったことを行いながら、二度と起こらないように、組織として全力を挙げたいと考えております。
藤島委員 やはりこういう際には、担当官にかわってもらうということが一番いいと思うんですね。本当にこういう問題に思い入れのある人に担当してもらわないと、これは、たまたま手続上、どこかにやるのを忘れた、そんな次元じゃないんですよ、私にすれば。思い入れが深ければ、もっとちゃんとした対応をとっているはずなんですよ。
 ですから、この次はそういうことのないようにやりますというんじゃ間に合わない。こういうことをやった人たちはほかの部署で有効に活用してもらえばいいので、やはりこういう部署には、こういう思い入れのきちっとある、そういう人に担当してもらわないと、私は、一向に、注意をしたからよくなる、そんな問題じゃないと思うんですよ。副大臣、どうですか。
茂木副大臣 私は、今回の事案の後、担当の部門の人間とも意見交換をしました。考えとして、以前に相当量の資料を出している、彼らとしてみると、一生懸命毎日取り組んでいる中で、そういったものに対する進展が見られない、言ってみると、北朝鮮の側が無回答なんだ、だからなかなか進まない、こういう思いを込めての回答ということであったと思っております。しかし、よく考えれば、関係部署に対する連携であったりとか、そういうことは今後反省すべきでないかな、そんなふうに思っております。
 ただ、一連の活動を見て、外務省の担当者が、決して、この問題を解決しないで済ませるとか、いいかげんにする、そんな思いを持って取り組んでいる人間は一人もいない、私は、それは確信をいたしております。
藤島委員 それは私も、今おっしゃったような、そんな人が担当していたら、とてもこれは話にならないので、私が言いたいのは、その手続だけの問題じゃなくて、内容の問題として、私が言ったように、ああいうものを出した、英国や北朝鮮は、さっき申し上げたようなものを出しておる、それに対して、その後も何も手当てもしなかった、そういう体質でいいのかということを言っているんですよ。
 したがって、私は、それは外務大臣や副大臣の御判断ですけれども、やはり担当の方はかわってもらって、ちゃんと思い入れの多い人になってもらう方が今後スムーズにいくんじゃないかなということを一応申し上げておきたい。
 それから、同じこの拉致問題に関しまして、横田めぐみさんの弟さんで拓也さんという方が、「何の罪もない姉が捕らわれの身になり、二十五年もそのままになっている悲惨さを多くの人に理解してほしい。その上で、国際的な観点から、北朝鮮の姿勢が、異常なのか正常なのか判断してもらいたい。しかし、なぜ被害者側がここまで努力しなければいけないのか。本来、政府がすべきことではないか。」こう言っておるわけですね。これに対して、外務大臣はどういうふうに考えますか。
川口国務大臣 横田めぐみさんの弟さんのおっしゃるお気持ちというのは、私もよく理解をいたします。御家族の方のお立場に自分を置いてみたときに、当然のことをおっしゃっているというふうに思います。
 政府としては、今までいろいろなことをやってまいりましたが、引き続き、この問題は解決されなければならないという強い意思を持って取り組んでいく所存でおります。
藤島委員 この点について、北朝鮮との関係では、核問題が非常にクローズアップされてきたものですから、ついつい、この拉致問題は横にやられがちなんですけれども、私は、これは両方が並行して扱われていくべきもので、核は重くて拉致問題は小さい問題だ、こういうふうになっては困るわけですね。その点について、外務大臣はどういうふうにお考えですか。
川口国務大臣 委員がおっしゃったようなことは毛頭思っておりません。拉致問題は非常に重要な問題であるという認識を持って、先ほど申し上げたようなことで取り組んでおります。
藤島委員 要するに、拉致問題の解決なくして日朝の問題はすべて解決することはないというふうに明言されているということですね。
川口国務大臣 拉致問題への取り組みというのは重要でありまして、我が国としては、北朝鮮の問題については、日朝平壌宣言の精神と原則にのっとって解決をしてまいりますが、この交渉は問題の解決がなければ妥結をしないということであると考えます。
藤島委員 それから、蓮池さんのお兄さんが、去年のうちは外務省も一生懸命やってもらっていたのは非常に感じるけれども、最近は、外務省は全く頼りにならない、本当に自分たちのことを考えてくれているのか、全くそういう責任ある姿勢というんですか、そういうものが感じられないというふうに言っているわけですけれども、この点について、外務大臣はどういうふうに受けとめていますか。
 そう言っているのは御存じですよね。であるとすれば、それについてどういうふうに外務大臣は。
川口国務大臣 政府といたしましては、この拉致の問題については、内閣、外務省及び他の関係府省一体となって取り組んでおります。その中で、外務省はたまたま、たまたまといいますか、いろいろな問題が今指摘をされている状況にございますけれども、外務省としては、外務省の担当することについてベストを尽くしているということでございまして、そのような印象を持たれてしまうということは外務省としては残念でございますけれども、そういうことにならないように引き続きベストを尽くしていきたいと考えております。拉致の問題をないがしろにしているとか、かりそめにもそういうことは全くない、そういうことは考えておりません。
藤島委員 やはり今の状況は、ちょっと閉塞状態に陥っちゃって打つ手がなかなか具体的に見当たらないという点で、被害者の方も外務省も、皆さんいらいらしているんだろうと思うんですね。そこはよくわかるんですけれども、私はあらゆる手だてを尽くしてもらいたい、こう思うわけです。
 その中で、話し合い――話し合いと総理もおっしゃるんですけれども、これはなかなか今の北朝鮮と、先ほどのような答弁書が北朝鮮から出ているのを考えてもそうなんですけれども、話し合いでそんなにすんなり解決するとは思えない、それは核の問題も含めて。
 今、アメリカも一生懸命やってもらっているわけですけれども、その中で、経済制裁の問題があると思うんですよね。せんだって外務大臣にお伺いしたとき、食糧援助はやらないというふうに明言されたんで、それはそれでいいんですけれども、一つの方策として、経済制裁を武器にしてというか使って、強い姿勢で臨んでほしい、こういう意見が非常に今多いんですよね。拉致被害者の家族なんかが、自分の身内が向こうにいるにもかかわらず、そういうことをおっしゃっている人がもう最近は多い。最初は余り言えなかったんですけれども、最近はもうそこまで言っているんですね。
 それに対して外務省の考えというか、外務大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
薮中政府参考人 まさに非常に難しい問題であるということはよく認識しておりまして、とにかく話し合い解決というのはそう簡単な話ではないということ、しかし、これはやはり平和的に解決をしなきゃいけないということで、そのために全力を尽くしていくということだと思います。その中には必ず拉致の問題を含める。
 今入った情報でございますけれども、ジュネーブの強制的失踪作業部会、ここでのあれが終わりました。御家族の方が行かれて、御紹介いたしますけれども、例えば、横田早紀江さんが言っておられます。今、日本政府、議員の皆さん、救う会、家族が一体となり、家族だけで苦しんでいたころに比べると、皆が思いを一つにしていると感じる、来てよかったということ。あるいは、平野フミ子さんが言っておられます。このヒアリングのために日本から来たことに感謝したいと述べていたことを重く受けとめたい、政府、議会、救う会、家族会、日本の世論、さらには微に入り細に入り気を使ってくださった代表部の方々に感謝したいと言っておられます。
 まさに一体となってこれから取り組んでいく必要があるというふうに思っております。
藤島委員 今おっしゃったのはいいけれども、それでいいんだ、こう思ってはとてもじゃないですけれどもね。それはそういうふうに言うでしょう。それは、あそこで、また外務省は全く非協力的だったとなかなか言うわけにいかないから、まあそういうことになるんでしょうけれども、そういうのを取り上げて、外務省は自分で自賛して、一生懸命やっているんだと、こんなふうにはならないんですよ。
 ところで、その経済制裁との関係について、今答弁ないんですが、外務大臣、どうですか。
川口国務大臣 この北朝鮮との問題は、平和的に解決をしなければならない、そして、外交的な手段で解決をしていくということが非常に重要だと考えております。
 今、国際社会で、安保理等の場で、北朝鮮の、これは核の問題を中心にでございますけれども、議論がございますが、経済制裁をすることが必要であるということを現時点で考えている国は一つもないということだと思います。
 我が国としても、全力を尽くしてこの問題を平和的に解決し、また外交的な手段で解決をするということを行いたいと思っておりまして、現時点で経済制裁をやることが適切であるというふうな認識には立っておりません。
藤島委員 経済制裁は何も軍事的手段じゃないですからね。そこはちょっと間違えないようにしてください。経済制裁そのものは平和的手段の中の一つですからね。
 今の時点でそこまで具体的に考えていないということは今おっしゃったとおりなんでしょうけれども、これはやはり私は、一つの手段として、今のような手段がほかにだんだんなくなってきている状態では有力な手段であるわけでして、よその国とももちろんいろいろ協調してやらないと、日本だけでやれるはずはないものですからね、しかしその辺も一つの方策として十分考えていただきたい、こういうふうに思います。
 あと残り時間が少なくなりましたが、条約関係についてお伺いします。
 児童の権利条約について、一九九五年の十二月に採決されているわけですけれども、もう随分時間がたちますけれども、これはどうして今ごろになるんですか。この権利条約に関する外務省の意識が希薄だったせいなのか、あるいは、関係省庁との調整が今まで、こんなに時間がかかったことによるのか。これは大臣じゃなくて事務方でいいですよ。
石川政府参考人 お答え申し上げます。
 この改正に関しまして、実は、私どもは当初、報告書の審査方法を含めた作業のやり方を改善するというところで解決を図るべきだと考えておったというのが実情でございます。
 しかし、その後、報告のある程度の定型化、そのほかの改善にもかかわりませず、締約国の急激な増加により審査業務がさらに遅延しているという現実がございまして、このような状況にかんがみましても、私ども、我が国といたしましても、委員会の任務を円滑に遂行できるようにという観点から、これらの改正を受諾することに立場を変えさせていただいたという次第でございます。
藤島委員 何かおくれた理由が余りよくわかりませんけれども、もっと単純に言うと、どういうことなんですか。
 要するに、今まで考えていたのを、姿勢を変えてやることにしたということですか。
石川政府参考人 未審査の報告の数が実はふえ続けてしまっているという現実を見まして、これはやはり審査する全体の能力というか、物理的なキャパシティーの問題というふうに判断するに至った、こういうことでございます。
藤島委員 では、七、八年前の九五年にはそこを見通していなかったということですか、採決したけれども。それは見通しの間違いだった、こういうことですか。その後やはりどんどんふえてきたのを見て、今回に至った、こういうことですか。
 では、よその国がみんなその九五年の十二月にやっていたときに気がつかなかったのですか、外務省は。
石川政府参考人 私どもの当時の考えは、質的改善というのを量的改善の前にやるべきではないか、こういうことを考えておった次第でございます。しかし、残念ながら、その量が余りにふえてしまって現在積み残しが随分ふえてしまったということが、今回の改正をお願いする理由でございます。
藤島委員 要するに、質の改善で対応できるんじゃないかと思っていたけれども、そうじゃなくて、もう当時予想していた以上に数がふえ過ぎちゃって、これはとても対応できないからしようがない、こういうことですか。ちょっと納得できませんけれども、まあいいです。答弁は要りません、何回言っても同じことでしょうから。
 それで、次は女子差別撤廃条約の関係ですけれども、これも報告数が大分ふえてきているんですね。百七十カ国で、これからどんどん数がふえることが予想されるんですが、今回の措置程度で十分と考えているのかどうか。
石川政府参考人 そのように考えさせていただいております。
 今回の改正は、御案内のとおり、委員会の会合の期間を一定の条件のもとで締約国の会合において決定できるようにするということでございますので、未審査報告ということも見ながら会期の長さというものを決定できる、そうしたことから、今御指摘のような状況が基本的には解決していくんじゃないか、このように思っております。
 なお、一言申し添えさせていただきますけれども、女子差別撤廃委員会は、審査の効率化につきましても幾つかの工夫を凝らしてきているということを申し添えたく存じます。
藤島委員 この程度の改革では、また足らなくなって、また改正しないといけないような事態が来るんじゃないかなという感じはしますけれども。
 それから、法務省に来ていただいていますので、国際的な犯罪防止の件についてお伺いしますけれども、これについては日弁連の方からいろいろな意見が出ているわけですね。それとちょっと方向は反対かもしれませんけれども、国際組織犯罪対策として現在の国内対策では、世界的に見て、何か世界の方はどんどん進んでいて、日本の方が国際組織犯罪に対する対応策がちょっとおくれているんじゃないかなという感じを私は持っているんです、これは日弁連の意見とちょっと反対の方向なんですけれども。
 この点について、法務省は今のでほぼ十分だと考えているのか、あるいはこれからどんどん検討して補充して体系をきちっとしていかないといかぬと考えているのか、その点について、まずお伺いします。
河村政府参考人 国際的な犯罪との対応ということにつきましては、今回の条約で見てまいりますと、例えば、共謀罪あるいは参加罪といった形で組織的な犯罪集団に対処するということにつきましては、先生御指摘のように、例えば英米法でございますとか、ヨーロッパ大陸諸国におきましては、既にこの条約以前に法制を整えているところではございます。ただ、日本の場合にはこういった担保法制がないといったことから、条約で求められる限度におきまして、今回法改正を提案させていただいているというところでございます。
藤島委員 今回の部分はそれはそれでいいんですけれども、そうじゃなくて、全体的に見て、アメリカとかはかなり進んでいますよね、全体的に。我が国は、法務省として、おくれていないと考えているのか、やはり若干おくれているので間に合うように、いろいろ今後も積極的に追いつくように考えていきたいと思っているのか、あるいは、もう十分なのでそんなことを考える必要はないと思っているのか、それを伺っているわけです。
河村政府参考人 我が国の法整備ということを考えました場合でも、社会の状況変化に合わせまして、必要な法整備というものは今後とも検討していくべきものと考えております。
藤島委員 何回言ってもこれ以上答えはないようなので、やめますけれども。
 もう一つ最後に、この日弁連の言っている中で、証人の買収云々の問題とかいろいろありますね。三点ばかりあるんですが、この点について、法務省はどういうふうに考えて今回措置をしようとしたのか、その点について伺います。
河村政府参考人 証人等買収罪という……(藤島委員「それだけじゃなくて全般に、全般に対する、日弁連の意見に対する対応」と呼ぶ)これにつきましては、なるほど、例えば共謀罪新設に反対する御意見でございますとか、あるいは、それに国際性と申しますか越境性を加えるべきであるといったような御意見等もございます。しかしながら、いずれも、この条約におきましては、少なくとも国際性というものは犯罪化に当たっては要件としてはならないとされておりまして、そういったことから、共謀罪におきましては、条約上認められます組織性という限度でやっておるところでございます。
 また、それ以外の証人等買収罪につきましても、条約の要請ということを踏まえまして、適切な法整備を提案させていただいているという状況でございます。
藤島委員 終わります。
池田委員長 次に、松本善明君。
松本(善)委員 子どもの権利条約から始めますが、四十五分で三条約なんで、答弁は簡潔に、問うたことに答えるように努力をしていただきたいと思います。
 権利条約ですが、この条約の改正にかかわりまして、この条約の改正は子どもの権利委員会の定数を十から十八に増加させるもので、定数の増加に伴って、問題点として指摘をされている審査遅延の解消とともに十分な審査が保障されるようになる必要があると思います。そのために、一つは一カ国当たりの審査に十分な時間を保障する、二番目に年間のセッションの数をふやす、三番目に並行審査など、委員をグループに分けて複数の審査を同時に行うなどの措置をとる必要があると思いますが、政府として、子どもの権利委員会に対してこうしたことを働きかける考えはありませんか。
    〔委員長退席、土肥委員長代理着席〕
石川政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘いただきましたとおり、児童の権利委員会における十分な審査が行われることは、締約国による条約上の義務の履行を確保する上で重要であると認識しております。
 我が国といたしましても、委員会には十分な審査が確保されるよう、今後、締約国会合などにおける委員会の新たな作業方法に関する議論に積極的に参加していきたい、かように考えております。
松本(善)委員 私は三つの提案をしたでしょう。それについて。
石川政府参考人 お答え申し上げます。
 それぞれ、具体的な会合の場で申し述べたいと思いますけれども、実は、現時点におきまして、児童の権利委員会、暫定的な国連総会決議によりまして、回数を二回そして三回とふやさせていただいているという経緯がございます。引き続き、今御指摘いただきました点も含めまして、今後、私どもの検討に資させていただきたいと思っております。
松本(善)委員 子どもの権利委員会の最終意見に対する政府の対応をお聞きしたいと思いますが、一九九八年六月に出された子どもの権利委員会の最終所見は、政府の調整機関の設置を求めている。政府がつくっています総務庁及び青少年対策推進会議は権限が限られておって、とられた措置が不十分であるということを懸念するということを最終意見で言っていて、そして、子供に関する包括的な政策を発展させ、本条約の実施の実効的な監視及び評価を確保することを目的として、中央及び地方レベル、双方における子供の権利に対するさまざまな政府機関の間の調整を強化するよう勧告をしておりますが、これをつくるという考えはありませんか。
石川政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘の点について、まず中央における政策調整強化のために、政府は、平成十年七月に、関係省庁の局長クラスで構成する青少年対策推進会議、現在は青少年育成推進会議に、当時の大蔵省、通商産業省などの関係省庁の局長を新たに加えました。また同時に、政府の青少年対策の基本方針などを定めた青少年対策推進要綱を改正しました。その基本方針には、児童の権利に関する条約との関連についても明示されております。
松本(善)委員 政府は、それがこの勧告に言っている政策調整機関だという考えなんですか。
石川政府参考人 委員がおっしゃっている、政策調整機関としてどのような機関を具体的に念頭に置いていらっしゃるのか承知しておりませんけれども、御指摘の、今私が答弁いたしました青少年育成推進会議は、青少年問題に関する我が国政府全体としての取り組みを強化することを目的として随時行っているものということでございまして、青少年の施策に関する施策調整を行っているもの、かように認識させていただいております。
松本(善)委員 NGOの団体などから、この国連勧告に沿った施策の不十分さを指摘し、改善を要求しても、条約の内容が多数の省庁にわたるので、どの省庁も責任を持った対応をしない、たらい回しにされているという声が寄せられています。
 例えば、小学生の子供の家庭で親の単身赴任の問題など、条約の精神に反するから改善すべきだと厚生労働省に要請したら、いや、窓口は外務省だからそっちへ行ってほしいと。外務省に行ったら、各省庁の施策を取りまとめることはするが、外務省が他省庁に上から物を言う立場にない、こう言われていると。
 結局、どこも責任をとっていない。だから、やはり政策調整機関という、対応する窓口を一つにする必要がある。これは女性差別撤廃条約批准後に設置をされた対策本部のようなものをやはり考えるべきだと思うんですが、外務大臣、聞いていていただいたかな。たらい回しにならないような、そういう対策機関を設置するということを検討されますか。
川口国務大臣 まず、この問題に限らず、一般的に、政府の中でたらい回しになるとか縦割りの問題、縦割りの弊害があるとか、そういう議論はいろいろあるわけでして、政府として、そういうことがないように連携をもっと強化しなければいけないと思っております。
 この問題につきましては、先ほど御答弁がありましたように、青少年対策推進会議、今は育成推進会議と言っていますけれども、ここで青少年対策の基本方針などを決めた青少年対策推進要綱を改正したわけでございまして、そういう意味では、政策の調整を行っていく場というのを別途設けるということは今考えておりません。
松本(善)委員 青少年育成推進会議がその役割を果たしているという趣旨にもとれますが、これの所管はどこですか。
石川政府参考人 委員会から指摘をいただきました時点では、総務庁が所管しておりました。
松本(善)委員 これは外務大臣に聞きますからね。最終所見では、条約の原則及び規定の実施及び監視に当たって、非政府組織と緊密に交流し協力するように貴国に求めるとしています。
 政府の第二回政府報告では、NGO等から広く意見を聞き、必要かつ適切と判断される場合にはこれを報告書に適宜反映させることを目的として、外務省の主催によるNGO等との意見交換会を二回にわたり開催したと述べています。
 その後、三回目の意見交換が行われています。しかし、NGOの団体からは、時間が足りないとか意見交換が極めて不十分だというような声が出されております。政府報告書の趣旨の、NGO団体からの意見がほとんど反映されていないという声も聞かれます。
 NGO団体は、第二回政府報告書に対する市民・NGO報告書を作成しつつありますが、この報告書に基づいてNGO団体と交流すべきだというふうに考えるんですが、外務大臣、御意見はいかがでしょう。
石川政府参考人 お答えさせていただきます。
 NGOとの交流は大変重要だと認識させていただいております。
 最近の具体例を一つ御報告させていただきたいと存じますけれども、本年二月に、ユニセフと外務省が共催いたしまして、児童のトラフィッキング問題に関するシンポジウムを実施するといったこともいたしまして、これは現場で活躍する日本及び東南アジアのNGOの方々の御参加もいただきました。
 こういったことにも象徴されておりますように、私どもとしましても、NGOとの交流は今後とも頑張っていきたいと思っております。
松本(善)委員 文部科学省に伺いますが、最終所見では、子供たちが最も困難に直面していると指摘された学校での意見表明権について聞きます。
 政府の第二回報告書では、学級活動、ホームルーム活動や児童会活動、生徒会活動を実施することを定めており、各学校において児童生徒が意思決定に参加していると述べております。
 NGOの一つであります子どもの権利・教育・文化全国センターが、意見表明権に関して、全国の中高校生約三千人からアンケートをとった。それの中で、例えば、校則に対して意見が言えるというのは三七%、言えないが四〇%、その意見は尊重されると答えたのはわずか二三%、これが中高生の実態であります。
 およそ児童生徒が意思決定に参加しているとはとても言えないというふうに思うんですが、今の現状をどう考えておるんでしょう。
金森政府参考人 お答え申し上げます。
 校則は、児童生徒が健全な学校生活を営み、よりよく成長、発展していくための一定の決まりでございまして、学校の責任と判断において決定されるべきものでございますが、その際には、児童生徒等の実態や保護者の考え方、地域の実情などを踏まえることが必要であると考えております。
 こうした校則は、児童生徒に一方的、形式的に守らせればよいというものではございませんで、児童生徒に内面的な自覚を促し、自主的に守るよう指導を行うことが大切でございます。
 このような観点から、校則の制定や見直しに当たりましては、学級や生徒会などで児童生徒がみずからの問題として討議する場を設けたり、児童生徒を対象とするアンケートを実施するなど、指導上の工夫を行うことも一つの方法でございまして、そうした取り組みが各学校の実情に応じて進められているところでございます。
 児童の権利に関する条約第十二条は、児童個人に関するすべての事項についてみずからの意見を述べることが認められるべきであり、その意見は相応に考慮されるべきとの理念を一般的に規定しているものでございますが、今後とも、児童生徒の実情を踏まえて校則の制定や見直しが適切に行われますよう、各学校の主体的な取り組みを促してまいりたいと存じます。
松本(善)委員 例えば、アメリカの学校でイラク戦争について子供に議論させ、賛成と反対と討論をさせてやっていると。なかなかおもしろいやり方だなと思いますが。
 今も言われましたけれども、議論をさせている中で自分たちの意見をまとめていく、校則についても考えていく、こういうふうにやはりやっていくべきだということを申し上げて、女子差別撤廃条約に移りたいと思います。
 女子差別撤廃条約について、この条約の改正は、毎年の委員会の開催期間を弾力的に定められるようにすることで、締約国から提出された報告の審査を円滑に行われるようにするものであって、我が党も賛成であります。
 これは外務大臣に聞きますからね。女子差別撤廃条約を批准してから十八年、しかし一方、女性労働者の賃金は、パートを除くと男性の六割強、パートを含めると四九・八%、半分しかない。あるいは、女性に対する昇進、昇格差別が依然としてあります。男女昇格差別裁判とか既婚の女性の差別裁判等が、これは権利が認められていっているんですけれども、そういう裁判を起こさないとそういう状態が解決しない。
 明らかに女子差別の問題は日本でまだまだ存在をしているわけで、これを改善すべきだというふうに大臣は思っておられるかどうか、最初にちょっと伺いたいと思います。
川口国務大臣 いろいろな要因があると思いますけれども、結果として、現実問題として全く差別がなくなっている状況ではないと私も思っております。なくすための努力を続けることが重要だと考えております。
松本(善)委員 二〇〇一年に発効いたしました女子差別撤廃条約の選択議定書、これは女子差別をなくすために重要な役割を果たすと思いますので、早期に批准すべきではないかと思いますが、外務省はどう考えていますか。
石川政府参考人 お答え申し上げます。
 女子差別撤廃条約の選択議定書、特にその選択議定書が定めております個人通報制度というものは、条約の実施の効果的担保を図るとの趣旨から注目すべき制度であると考えられますが、司法権の独立を含め、我が国の司法制度との関連で問題が生じるおそれがあり、慎重に検討すべきであるとの指摘もあるところでございます。
 したがいまして、現在のところ、当該選択議定書を締結しておりません。締結の是非について、真剣かつ慎重に検討しているところでございます。
松本(善)委員 これは法務省のことを考慮した答弁であろうと思いますが、法務省も、裁判の独立について影響があるということを前にも答弁をしているんですが、私は、これは違うんではないかと。
 法務省、来ていますね。
 裁判官は憲法で、良心と憲法、法律に従って独立して裁判すると。どういう勧告が出てもそれに拘束されないで裁判をするというのが裁判官の立場です。これは最高裁まで、三審制ですから、最後まで行くと。特に、この通報は、最高裁で負けたような場合、国内で救済ができなくなった、救済措置が尽くされた場合、こういうことでありますから、裁判の独立やその他には関係ない。やはり直ちに批准をすべきだというふうに考えるんですが、それらの点も含めて、法務省の考えを聞きます。
増田副大臣 先生は、長年法曹界の雄として御活躍でございます。したがって、法曹の制度について逐一述べることは控えますけれども、裁判官は、制度的にも実態においても独立をして職権を行使しているものと、先生がおっしゃるように、私も考えております。
 しかしながら、国連の権威を背景とした委員会が具体的事件の裁判に関して一定の判断を示した場合、事実上、裁判官の職権行使について重大な影響を与えるおそれは、やはり全く否定はできないと思います。そのようなおそれがある以上、個人通報制度の採否を判断する上での問題点として考慮していかなければならないというような考え方を実は持っております。
松本(善)委員 これは、国内の救済措置が尽くされた場合、裁判でいえば最高裁で負けた場合なんですよ。だから、既に裁判は終わっているわけです。やるとすれば再審とか、そういうようなことになるわけです。むしろ、もし勧告がされたとすれば、日本の司法の中で、一つ一つの個別の裁判ではなくて考えなければならないというのは当然なんじゃないですか。
増田副大臣 発言の趣旨は理解できます。例えば、人権B規約の個人通報制度におきまして、裁判が係属中の事案につきまして、委員会が受理についての許容性を認める判断をした事例があるものと承知をしておりますが、そのような場合、司法権の独立の根幹である裁判官の職権行使の独立に影響を与えるおそれはやはり否定できないものというふうに考えられるところであります。そのような観点から、この制度の運用状況等を見つつ検討を進めている、今こういう状況でございます。
松本(善)委員 今、副大臣がおっしゃったのが、遅延、裁判が不当な引き延ばしがされているような場合、あるいは裁判が終わっていない場合のことをもし言われたんだとするならば、それは、それこそ勧告の趣旨はよく裁判官が理解をして、しかし、それに拘束されるのではなくて、憲法と法律と良心に従って裁判をするんだから、これは、裁判の独立とは何ら関係ないと思いますよ、どうですか。
増田副大臣 裁判官は制度的にも実態においても独立して職権の行使をしているものと、先生がおっしゃいましたように考えております。
 国連の権威を背景とした委員会が具体的事件の裁判に関して一定の判断を示した場合、事実上、裁判官の職権行使について重大な影響を与えるおそれはやはり考えられると思います。そのようなおそれがある以上、個人通報制度の採否を判断する上での問題点として考慮をして対応していかなければならない、このように考えております。
松本(善)委員 その答弁は、裁判官に対する不信なんですよね。私は、そういう勧告があろうとも、裁判官は良心と憲法と法律によって裁判するんだから、これは影響を受けてはならないと。自分で考えて考慮するのは当然ですよ。だから、あなたの答弁は成り立たない。成り立つというのなら、私は、それは最高裁までも含めての不信の念の表明だというふうに言わざるを得ないと思います。
 外務大臣に伺いますが、今法務副大臣とも議論をしたところでございますが、やはりこの問題については早急に批准をするという方向で検討すべきではないかと思いますが、いかがでしょう。
川口国務大臣 締結の是非については慎重かつ真剣に検討をしているところでございます。
松本(善)委員 それを早急に前向きにやることを求めて、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約について質問をいたします。
 これは、マフィア、暴力団とか蛇頭など、麻薬、銃器だとかそういうものの密輸などに代表される国際的な組織的犯罪に効果的に対処するということであります。これに国際的な協力を進めることは当然のことであります。
 ただ、同僚委員も質問をいたしましたが、いろいろ新しいたくさんの新罪の創設というようなことになりますので、参考人であるとか連合審査をするとか、そういうような慎重な審議を尽くすということが必要なものであろうと思います。理事会で提起をいたしましたが、それに合意を得られなかったのは大変遺憾なことだと思いますが、それらの問題点について、ここでただしておこうと思います。
 まず、これは第三条で、国際的な性質があり、組織的な犯罪集団が関与する場合の五条、六条、八条、二十三条の犯罪について規定をしているわけでありますが、一方、三十四条の二項、これが一番問題になるわけなんです。ここの二項では、五条、六条、八条、二十三条の規定に従って定められる犯罪については「各締約国の国内法において、第三条1に定める国際的な性質又は組織的な犯罪集団の関与とは関係なく定める。」と。これはどういう趣旨でしょう。
篠田政府参考人 今御指摘になられました「組織的な犯罪集団の関与とは関係なく定める。」という意味でございますけれども、これは、国内法においてこの四つの犯罪について犯罪化をする際に、国際的な性質または組織的な犯罪集団の関与の存在というのは条件とはしないで犯罪化することを義務づけるという意味と解しております。
松本(善)委員 ということは、国際性、組織性を排除して広く国内法では定める、こういうことですか。
篠田政府参考人 国内法で犯罪化をいたします際に、この二つの要件、国際性及び組織性ということについて、この四つの犯罪については要件としないということを義務づけておるものでございますが、この四つの犯罪のうち、実は第五条の共謀罪……(松本(善)委員「それは後で」と呼ぶ)はい、わかりました。
松本(善)委員 それで、この「関係なく定める。」というのは、定めてもいいか、定めなければならないか、どっちなんでしょう。
篠田政府参考人 これは、「関係なく定める。」というのは、つまり国際性や組織性の存在を条件とすることなく犯罪化することを義務づけた規定と解釈されるわけでございまして、あくまでも国際性及び組織性ということを要件としないで犯罪化することを求められているというふうに考えております。
松本(善)委員 そういうふうに解釈する根拠、定めてもいいというふうな解釈は成り立たないのか、その点についての考え方を聞きたいと思います。
篠田政府参考人 実は、この条約の第三条1は、この条約の適用範囲対象となります犯罪をまず「性質上国際的なものであり、かつ、組織的な犯罪集団が関与するもの」ということに限定をしておりますけれども、同時に「別段の定めがある場合」にはこれは例外であるということを第三条は定めております。
 この「別段の定め」という規定を受けまして、第三十四条二項、これは先生御指摘の条項でございますけれども、ここで、いわゆる条約創設犯罪、四つの犯罪類型に対しましては「各締約国の国内法において、」「国際的な性質又は組織的な犯罪集団の関与とは関係なく定める。」ということを義務づけております。五条については特殊な事情がございますけれども。
松本(善)委員 私の聞いているのは、よく質問を聞いてね。それはそれでわかるんですよ、言っていることは。私の聞いていることは、この「定める。」というのは義務的だと言ったが、それはなぜなのかと。何を根拠にそういうふうに言うのかということなんですよ。これを義務的と考えるかどうかによって大きな違いが出ます。
篠田政府参考人 今先生御指摘の、「関係なく定める。」というところが義務的だというふうに解釈をしておりますけれども、この部分の英語の正文におきましてもシャルという言葉、つまり、しなければならないという趣旨の言葉が使われているわけでございまして、したがいまして、ここは義務であるというふうに考えております。
松本(善)委員 これはフランスが提案したというふうに聞いていますが、各国も同じように解釈しているでしょうか。
篠田政府参考人 私が承知しておるところでは、この条約の交渉過程におきまして、G8を中心に、この条項については義務的にすべしであるという考え方が主流でございまして、それをもとにフランスが提案して、結局それが最終的な規定になっていったというふうに理解しております。
松本(善)委員 主流というから、そうでないところもあるのかもしれませんが、それはそれで聞いておきましょう。
 その後の、「ただし、第五条の規定により組織的な犯罪集団の関与が要求される場合は、この限りでない。」これはどういう意味になるんでしょう。
篠田政府参考人 この四つの犯罪類型につきましては、三十四条の二項によりまして、組織性、国際性というものを要件としないということを義務づけておりますけれども、その例外といたしまして、五条に定める共謀罪については、国内法に求めがある場合には組織性というものを要件としてよいということを定める規定でございます。
松本(善)委員 そうすると、この五条によって共謀罪が約五百生まれると。それから、五条以外のものでも新罪が広範に創設されるということになるのは、この条項からですね。それはなぜそういうことになるのか、なぜそういうふうにすると条約は規定しているのか、そこを説明してほしい。
篠田政府参考人 これは、国際的な犯罪というものを効果的に取り締まっていくために、共謀罪について各国の国内法において犯罪化をすべきだということで定められたわけでございますけれども、この点につきましてのみは、「組織的な犯罪集団の関与」ということが各国の国内法において条件づけることが求められているときにはこれを入れていくということでよいということを定めているということでございます。
松本(善)委員 要するに、この「組織的な犯罪集団の関与」している場合は国際性を排除していい、こういうことでしょう。その場合に、先ほど同僚委員の質問もありましたが、乱用の危険があるのではないかという心配がされているわけですね。日弁連からも意見書が出ています。その乱用の危険がありませんか。
篠田政府参考人 この五条の共謀罪につきましては、すべての犯罪について、犯罪の実行の合意が成立しただけで無条件に処罰をしようということではございませんで、ただいま申し上げましたように、「組織的な犯罪集団の関与」という追加的な要件を採用しておるわけでございますし、この共謀の対象犯罪というのを長期四年以上の自由剥奪の犯罪ということに限定をしております。
 また、我が国国内法の分野にわたりますけれども、我が国におきましては、捜査は、逮捕、勾留、捜索、差し押さえ等、強制捜査を行うに当たりましては原則として裁判官の令状を必要とするという厳格な手続を定めておりまして、新たに組織的な犯罪として共謀罪を新設いたしましても乱用の危険はない、かように考えております。
松本(善)委員 先ほど同僚委員の質問に対して、暴行罪について答えていたけれども、傷害だったら長期四年以上になるんですよ。そうすると、長期四年以上というのは相当広範なんです。これが「組織的な犯罪集団の関与」というのはどういう意味なのか、この条約では決めているんじゃないんですか。
篠田政府参考人 「組織的な犯罪集団の関与」ということで、これを国内的には、団体の活動として犯罪実行のための組織により行うこと、または団体の不正権益の獲得等の目的で行うことを共謀した場合という、結果実現の危険性が高く、悪質重大な組織的な犯罪の共謀に限って処罰することとしております。
松本(善)委員 「組織的な犯罪集団」というのについては、この二条の「用語」のところの(a)、組織的な集団等については(c)で否定しているのではありませんか。
篠田政府参考人 先生御指摘のとおり、「組織的な犯罪集団」というのは第二条で定義規定がございます。この定義規定はある程度緩やかな定義規定になっておりまして、これを国内法に置きかえる、国内法で担保していく場合に、これをどのように定義していくかということは、基本的には各国に任されているということでございます。
    〔土肥委員長代理退席、委員長着席〕
松本(善)委員 そこをちょっとはっきりしておかないかぬのだな。三十四条二項のただし書きは「第五条の規定により組織的な犯罪集団の関与が要求される」。この「組織的な犯罪集団の関与」というのは、二条の「用語」の(a)「「組織的な犯罪集団」とは、三人以上の者から成る組織された集団であって、一定の期間存在し、かつ、金銭的利益その他の物質的利益を直接又は間接に得るため一又は二以上の重大な犯罪又はこの条約に従って定められる犯罪を行うことを目的として一体として行動するものをいう。」それから、(c)は「「組織された集団」とは、犯罪の即時の実行のために偶然に形成されたものではない集団をいい、その構成員について正式に定められた役割、その構成員の継続性又は発達した構造を有しなくてもよい。」これは、三十四条の二項のただし書きの「組織的な犯罪集団」の判断にそのまま適用されるのではないか。その辺のことはあなたの方から言うのが当然なんだ。
篠田政府参考人 五条の(a)では、重大な犯罪を行うことを合意することを犯罪として義務づけておりますけれども、組織的な犯罪集団が関与することを要件とすることが国内法上求められている国については例外的にこれを付与するということが認められておるわけでございます。
 この参加罪及び重大犯罪の教唆、幇助ということにつきましても、この要素の中に「組織的な犯罪集団の関与」というのが含まれているということでございます。
松本(善)委員 これは時間をかけても、ちょっと時間を別にして、きちっと答えさせてほしいと思います。
 要するに、聞いていることは、ただし書きにある五条についての「組織的な犯罪集団の関与」という言葉は、二条の「用語」の(a)、(c)、「組織的な犯罪集団」「組織された集団」ということの用語によって解釈するのかどうか。これはちゃんと答えないとだめだよ。答えるまでは、ちょっと時間を別にしてください。
篠田政府参考人 「組織的な犯罪集団の関与」というのは、先生おっしゃいましたように、二条における定義規定で規定しております「組織的な犯罪集団」というものの関与ということでございます。
松本(善)委員 組織集団もだね。(c)もだね。それは私の言うとおりだということですか。委員長、もう一回。
池田委員長 もう一度、松本君。
松本(善)委員 私の言ったとおりかと。だから、二条の、今言ったのでは(a)は答えた。それから、(c)も係る、「組織された集団」ということになりますから、そうですかと言っている。
篠田政府参考人 二条の(c)の「組織された集団」というのは、二条の(a)の「組織的な犯罪集団」の定義の中に規定されております「組織された集団」というものを受けた定義になっておりますので、全体として組織的な犯罪集団、こういうことでございます。
松本(善)委員 はっきり早くそう答えないと、時間が足りませんからね。
 それから、このウィーン条約の十九条では、条約について留保をすることができるということが決められております。この条約の三十四条の二項であるとか、それから、あるいは問題になっている五条、六条、八条、二十三条などについて、留保をするということはできないんですか。
篠田政府参考人 先生御指摘の五カ条、三十四条の2及び五条、六条、八条、二十三条につきましては、これらが一体になりまして各国に対し一定の行為の犯罪化というのを義務づけているわけでございます。その意味におきまして、これらの規定というのはまさにこの条約の中心的な規定でございまして、我が国としては、これらの条項について留保をするということは適当でもなく、また必要もないというふうに考えております。
松本(善)委員 そうすると、五条についてはかなり縛りが、組織性ということで縛っているわけですが、五条以外の六条、八条、二十三条については全部外されて、国際性も組織性も外されて、一般犯罪に係ってくる、こういうことになります。
 そうすると、先ほども同僚委員から証人買収罪の問題で質問がありましたけれども、乱用の危険というものが起こるのではないかということを思いますけれども、どういうふうに考えていますか。
篠田政府参考人 まず、今回の条約をつくりました際に基本的な考え方になっておりましたのは、国境を越えて深刻化している国際犯罪というものにより効果的に対応していく上で、これらの条約創設犯罪につきましては、国際性とか組織性という条件を基本的にかけないということが、翻って、国際組織犯罪というものに対する有効な対策になる。このような形で、むしろ対象犯罪を狭きに失するという形にしないことがこの国際組織犯罪というものと戦っていく上で重要であろう、こういう問題意識がございました。
 そこで、その交渉の結果、この四つの犯罪類型につきましては、基本的に国際性、組織性というものを条件づけないということにしたわけでございますが、共謀罪のみにつきましては、これはこの犯罪の性格からいたしまして、組織性については最低限かけることが必要であろうということで、各国の総意が得られたということでございます。
松本(善)委員 答弁するときには、もうちょっときちっとあれして勉強してこないと困るので、聞いていることに十分答えていないから。
 乱用の危険の問題については、時間もありませんので、これは国内法のところでやることにして、三十四条三項の意味、何を意味しているか、どういう場合のことを考えているのか。
 それから、五条の1の(a)の(1)の「合意の参加者の一人による当該合意の内容を推進するための行為を伴い又は組織的な犯罪集団が関与するもの」、これは何を意味しているか。両方かける場合があるのか、片方ずつということがあるのか。このことについて聞いて、質問を終わります。
篠田政府参考人 三十四条の3につきましては、国際的な組織犯罪を防止し及びこれと戦うために、各締約国が条約に定める措置よりも厳しい措置等をとることが可能であるということを定めているものでございます。これを受けまして、例えば、今回、国内担保法案におきましては、我が国の公務員の贈賄について、自国民の国外犯規定を新たに設けるということの措置をしております。
 それから、五条1(a)の(1)の「合意の参加者の一人による当該合意の内容を推進するための行為」という御指摘でございますが、これは、米国法のいわゆるオーバートアクトというものを念頭に置いたものだと考えております。すなわち、合意の成立以後に行われて、かつ未遂に至らない何らかの行為を意味するということでございまして、具体的に何がこれに当たるかにつきましては、各国が国内法制を踏まえつつ合理的に解釈するということが認められております。
 組織化された犯罪集団の関与、それから合意の内容を推進するための行為というこの二つの要件については、選択的な関係にあるということではございませんで、双方同時に要件とするということも条約上認められているということでございます。
松本(善)委員 時間が来ましたので終わりますが、今聞きましたようなことは、現場で裁判をする人、検察官、弁護士にとっては実務上非常に重要なことなんですよ。それについての答弁として、多少、十分でない点が幾つかあったかと私は思います。
 このまま、審議としては尽くされていないと思うのですけれども、時間が来ましたので、終わります。
池田委員長 次に、東門美津子さん。
東門委員 社会民主党の東門でございます。
 これまで条約三本、かなり似たような質問が出てきましたので、私もちょっと戸惑っておりますが、しかし、準備をしてきましたので、質問をさせていただきます。
 まず最初に、越境組織犯罪防止条約の方からお伺いいたします。やはりトランスナショナルと出てくると、国際的ではないんじゃないか。先ほど同僚委員からございましたけれども、その訳はおかしいのではないかという思いで、やはり越境と私は使わせていただきます。
 世界貿易機関新多角的貿易交渉、新ラウンドの農業自由化交渉では、関税の大幅引き下げを求める米国と関税引き下げに慎重な日本、欧州連合、EUとの対立により、本年三月末が期限となっていました大枠合意が先送りされました。今後は、国や地域間ごとにブロックをつくり、関税を撤廃させる自由貿易協定の締結がますます加速されると指摘されており、実際米国は、FTAを重視してキューバを除く三十四カ国が参加する米州自由貿易構想を進めています。
 これは最近の多数国間協議で各国の主張が真っ向から対立した例であり、このように、国家は自国の国益を最優先します。本条約が発効し、締約国が増加したとしても、実際に締約国間の協力がなされなければ本条約を締結する意味はないわけですが、各国それぞれが自国の立場を主張する国際社会において、各締約国が確実に条約上の義務を守り、国際組織犯罪の撲滅がやがては実現するであろうと果たして簡単に言うことができるのでしょうか。
 ついては、本条約発効後の国際組織犯罪の減少の見通しを示していただきたいと思います。大臣にお願いします。
川口国務大臣 国際組織犯罪、あるいは国際的でなくても犯罪、これはなかなかなくすのが難しいというのは委員が御案内のとおりでございます。
 これは、撲滅の取り組みのための重要な一歩であります。これで満足をすることなく、撲滅のために政府としては最善を尽くす所存でおります。
 見通しとしては、そういう意味では、そう簡単に、一朝一夕で、これが発効したからといって翌日になくなるということではない、みんなが努力を重ねなければいけない、そういうことだと思います。
東門委員 いや、だれも翌日なんて言っていません。見通しは、どういうような形で見ておられるのかなということをお伺いしたんですが、それはいいでしょう。
 では、条約について伺います。
 この条約の適用範囲ですが、条約三条によって、原則として越境性のある組織犯罪集団の関与する犯罪と決められていると理解してよろしいですか。
篠田政府参考人 条約の第三条に「適用範囲」という規定がございまして、対象となる犯罪として二つのことを挙げております。一つが、長期四年以上の自由剥奪に当たるような重大な犯罪等。もう一つは、先ほどから出ております第五条、六条、八条、二十三条と四つの類型の犯罪がございます。そういうものであって、かつ性質上国際的なもの、かつ組織的な犯罪集団が関与するものというのがこの条約の原則的な対象犯罪でございます。
 ただ、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、「別段の定めがある場合を除くほか、」という規定になっておりまして、この「別段の定めがある場合」という中の一つが三十四条二項ということであって、この規定によりまして、この四つの類型の犯罪につきましては、国際性それから組織性というものの条件を排除した形で国内法上犯罪化すべきであるということが定められているということでございます。
 この一つの例外が五条の共謀罪でございますけれども、共謀罪については、国内法上求められる場合には、組織的な犯罪集団の関与というものを条件づけることができる、こういうことであろうかと思います。
東門委員 よく理解できていないかもしれませんが。
 この条約五条に基づいて、締約国は、共謀罪か、組織犯罪集団への参加罪の制定を義務づけられることになるわけですが、日本政府では共謀罪を選択するとされています。その選択の理由は何か、教えていただきたいと思います。
篠田政府参考人 これは若干国内法の分野にわたるかもしれませんけれども、私の理解しているところでは、共謀罪というのは、既に我が国の刑事法制において一部の共謀罪というのがございます。
 したがって、基本的には我が国の刑事法制になじみがないわけではない犯罪類型ということでございますので、我が国としては、共謀罪の方を選択し、特定の犯罪と結びつけて論じられない参加罪というものについては選択をしなかったということでございます。
東門委員 先ほども質問があったと思うんですが、この条約の審議、第二回セッションに提出しました一九九九年二月八日付ペーパーの中で、すべての重大犯罪の共謀と準備の行為を犯罪化することは我々の法原則と相入れないと日本政府の代表は述べていますが、この見解は今も変わらないのか、まずそれが第一点。もし変わっているとしたらどういう点が変わっているのか、なぜそういうふうに変わったのか。三点についてお願いします。
石川政府参考人 お答え申し上げます。
 条約交渉の当初におきましては、定義、歯どめそのほか一切ないところでそういう議論が行われておりましたものですから、私どもとしては、重大な犯罪の定義そのほかにつきまして、日本の法体系にのっとった意見を申し上げて、現在の条文に交渉の結果合意が成立した、こういう経緯がございます。
東門委員 最初はわからなかった、そういうふうになるとわからなかった。しかし、こういうふうに変わってきたということなんでしょうか。
 この条約は、三十四条の一項によって、国内法の原則に従って立法措置をとればよいことになっていますよね。だとすれば、日本政府は、日本の法原則と相入れない共謀罪の立法化は条約五条を留保することによって回避することができると思いますし、そうするべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
石川政府参考人 先ほど参考人からお答え申し上げました。これは、国内法の問題になるかと存じますが、共謀罪につきましては、我が方刑法体系に親和性があるという判断のもとにコンセンサスに参加したということでございます。
東門委員 要するに、留保はできないということですか。もう一度お願いします。
篠田政府参考人 今御指摘の五条あるいは六条、二十三条、八条と、この四つの犯罪類型につきましては、法の抜け穴を巧みに利用しているという最近の国際犯罪組織のそういう犯罪を防止し戦うためには、こういった四つの類型の犯罪について国際性あるいは組織性というものを条件としない形で規定するということが極めて重要であるということが交渉の過程で総意となったわけでございますけれども、そういう意味合いにおきまして、これはこの条約の趣旨、目的にわたる非常に基本的な規定であろうかと考えておりまして、そのような条項につきまして留保をするということは必要でもなく、適当でもないというふうに私ども考えております。
東門委員 条約六条によるマネーロンダリングの前提犯罪の拡大になりますが、組織的犯罪処罰法の処罰範囲をさらに拡大するということになりますよね。犯罪の重大性を刑期の長期四年以上だけで判断することは実情にそぐわないのではないかと思うんです。そのマネーロンダリングの規制としては、反対の強かった組織犯罪処罰法で十分であると思うんですが、これをさらに拡大することは必要なのでしょうか、どうでしょうか。
池田委員長 篠田審議官。しっかりと答弁してくださいよ。
篠田政府参考人 ちょっと繰り返しになって恐縮でございますけれども、組織的な犯罪集団の手口というのはますます巧妙になってきておりまして、極めて広範囲にわたる犯罪行為というのを通じて犯罪収益というものが得られてきているわけでございます。したがって、この犯罪収益というのは、犯罪組織の維持や拡大にとって非常にいろいろな形で使われるということが大きな問題になっているわけでございます。
 そういう意味で、資金洗浄罪の前提犯罪ということで、すべての重大な犯罪、それから条約に従って定められるこの四つの犯罪、マネーロンダリングの犯罪自体は除きますけれども、これを前提犯罪として含めるということを条約自体が義務づけているわけでございます。それを受けまして国内担保法案を作成されたというふうに承知しております。
東門委員 先ほどから同僚委員の方からも本当に詳しくいろいろと質問ございましたけれども、私もこの条約を勉強していく中で、やはりこれから国内法の整備に入っていくときに、実際できているのかもしれないんですけれども、すごく大きな問題だなという感じがあるんですね。特に五条、六条、二十三条、私はこういうやはり、日弁連の意見書にも強く出てきておりますが、先ほどこれが中心的なところですという審議官の答弁にはあったんですけれども、やはり五条、六条、二十三条は留保するべきではないかという強い思いを持っておりますので、それは申し上げておきたいと思います。
 次に、国連の女性差別撤廃条約について伺います。
 まず、女性差別撤廃委員会の委員についてでございますが、条約十七条の規定によりますと、委員は、徳望が高く、この条約が対象とする分野において十分な能力を有する専門家で構成する、個人の資格で職務を行い、任期は四年とされています。これまで我が国からの推薦で選出されて委員を務められた方々は、公務員というのか、女性外交官の方など政府を代表する方ばかりだったと思いますが、政府はなぜ四人も連続して委員会の委員として外交官の仕事をしている方に兼務の形で委員を推薦してきたのかという質問なんですね。
 女性差別撤廃条約が生きた条約になるためには、やはり日ごろからジェンダーの視点で女性差別の撤廃に向けて研究、活動して、国際的な会議の場でも本当に積極的に発言をしておられる専門家がたくさんおられる中で、やはりそういう専門家の方を選任することが、国連の場で、委員会の場で発言していく中でも重みがあるし、しっかりと日本の状況を持っていけるのではないかと私は思いますが、大臣、いかがでしょうか。委員の件です。
石川政府参考人 お答えさせていただきます。
 委員御指摘のとおり、これまでの日本の女子差別撤廃委員会の委員、お名前を出させていただきますと、赤松良子元文部大臣、佐藤ギン子元証券取引等監視委員長、多谷千賀子旧ユーゴ国際刑事裁判所訴訟判事、現在は国連代表部大使を務めておる齋賀富美子がやらせていただいております。
 念のために、この齋賀のジェンダーにおける経歴、専門性について御報告させていただきますと、条約畑及び国連関係の専門家でございまして、例えば条約局の国際協定課におきましてこの女子差別撤廃条約の準備を担当しておった、これは二十年ぐらい前の話でございましょうか。それ以降、国連代表部勤務時には、婦人の地位委員会における女子差別撤廃条約選択議定書の作成に参加しておる、また九八年から二〇〇〇年まではジェンダー問題について、埼玉県副知事として埼玉県知事のアドバイザーとして、埼玉県女性問題協議会委員及び埼玉県男女共同参画推進条例草案委員会顧問を務める等の専門性があると私ども判断しておるわけでございます。
 なお、国際会議という事柄の性格上もあると存じますけれども、現委員につきまして諸外国の例を申し上げさせていただきますと、フィリピン、エジプト、メキシコ、ドイツ、ルーマニア、クロアチアと、いずれも公務員がしているということを御披露させていただきたいと思います。
東門委員 私は、日本のことをお聞きしたんですよ。よその国はどうでもいいんですよ、ここで聞いているのは。
 先ほどもこれは質問がありましたけれども、やはり私もこれは聞いておきたい、ぜひ伺いたいと思います。
 選択議定書についてですが、議定書は、条約に違反する権利侵害があった場合、調停や裁判など、国内での救済措置を尽くした上でもなお差別が撤廃されないときに、締約国の個人または集団が女性差別撤廃委員会に直接通報できる権限を定めたものであります。二〇〇〇年十二月に発効していますが、我が国はいまだに締結していません。
 この議定書を締結しない理由として、政府は、我が国の司法制度との関連で問題が生じるおそれがあるということを言っています。大臣は、昨年八月八日の参議院の決算委員会において、個人通報制度が、司法権の独立との関係で問題が生じるおそれがある例として、例えば、係争中の案件があるときに、個人が委員会に通報することがあったとき、その結果が司法の場で係争中の案件に影響を与えるおそれがあると答弁されています。しかし、議定書第四条は、「委員会は、利用し得るすべての国内的救済措置が尽くされたことを確認した場合を除き、通報を検討しない。」と規定しています。係争中の案件に対して影響を与えるようなことはないはずです。また、憲法第七十六条三項では、すべての裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法と法律のみに拘束されると規定しています。個人通報制度に基づく通報があったことで影響を受けるようなら、そもそも裁判官として失格です。
 このように考えれば、司法権の独立との関係で問題が生じるおそれがあるという政府の説明には何ら説得力がありません。選択議定書を早期に締結することを求めたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 この選択議定書を締結することの是非について真剣かつ慎重に検討をいたしております。
東門委員 ぜひ早目に、真剣かつ慎重に検討をしていただいて、早目に締結に向けていくように、よろしくお願いいたします。
 次に、国際社会において十分な国際協力を行うには、政府だけではなくて、NGOも常に参加をし、他国の政府やNGOと国際社会の課題に取り組んでいくことが不可欠になってきております。女性差別撤廃条約では、締結国に対して繰り返しNGOとの連携を奨励してきており、委員会でも積極的にNGOの情報を受け入れています。
 そこで伺いますが、我が国では、NGOを政府の補完的な存在と見る向きがいまだに強くて、NGOは政策を実施する段階になって初めて問題について知らされる、参加が求められるというケースが多いのが実態です。政府は、我が国におけるNGOの役割と権限について再考し、今後はより一層NGOと協力していくべきであると考えますが、いかがでしょうか、大臣、NGOの活用について。
石川政府参考人 お答え申し上げます。
 二点申し上げたいと存じます。
 一つは、女子差別撤廃条約との関連におけるNGO、一つはNGOとの関係ということかと存じますが、男女の権利の平等を促進していく上で、NGOが果たす役割は重要であると私どもも認識しております。そういう認識のもと、政府は、さまざまな機会にNGOとの対話を実施するなど、NGOとのパートナーシップの強化に努めてまいりました。
 例えば、女子差別撤廃条約に関する政府報告、最近では昨年の九月に国連に提出いたしましたけれども、その作成に際し、また同報告を提出いたしました後にも、NGOとの情報交換、意見交換を行った経緯がございます。
 また、NGOとの関係についてどうかというお尋ねがございます。
 委員御案内かと存じますけれども、昨年の、ヨハネスブルグで開かれました持続的開発に関する世界首脳会議におきまして、外務省はそのNGO担当の大使を任命し、またその交代の後、現在、NGO担当の大使、五月女と申しますが、任命しておりまして、このような認識にのっとって、外務省はNGOとのパートナーシップ強化に努めておるということを御理解いただきたいと思います。
東門委員 次に、子どもの権利条約について伺います。
 子どもの権利条約に関してですが、子どもの権利委員会には、いまだ日本人の委員が誕生していません。今回、十人から十八人になるということで、可能性があるのかなという気もしないではないのですが、なぜこれまで日本の委員がいなかったのか、そこから教えていただけますか。推薦をしなかったのか、推薦はしたけれども漏れたのか、どうなっているのか、そこからお願いします。
石川政府参考人 お答え申し上げます。
 児童の権利条約は、一九九〇年発効と、人権六条約の中では比較的歴史の浅い条約でございまして、我が国はこの条約を九四年に締結いたしました。このため、政府として、児童の権利委員の候補を指名しておりません。
 他方、この条約の重要性にかんがみ、これまで国内外において、児童の権利の保護及び促進に積極的に取り組んできております。例えば本年二月に、公開で、ユニセフと外務省の共催で、児童のトラフィッキング問題に関する国際シンポジウムを開催し、現場で活躍するアジアのNGOの方たちとも、児童の権利を促進するための具体的方途等について意見交換を行いました。
 我が国といたしましては、御指摘の児童の権利委員会に対する我が国よりの委員候補の指名を含めまして、児童の権利の保護、促進に引き続き積極的に取り組んでいきたいと今検討を進めさせていただいております。
東門委員 私の質問は、なぜこれまでいなかったのか、推薦をしたけれどもだめだったのか、推薦はしなかったのかという質問で、それには全然お答えになっていないんですよね。これまで日本は全然推薦はしてこなかったのですか。
石川政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほどの私の答弁の中で、政府として、児童の権利委員の候補を指名しておらないと申し上げたのは、推薦してこなかったということでございますが、先ほど申しましたように、今回の人数の増加ということも念頭に置いて、先ほど申しましたように、この委員の指名を含め考えていきたい、かように思っております。
東門委員 ということは、これまではしてこなかった、今度はやっていきましょうということにとらえたいと思いますが、子どもの権利条約、これまでの動きを見ていますと、先ほどからもありますけれども、本当に政府の動きが弱いなという感じがします。これは外務省になってくるのか、どこかわからないんですが、私たちが真っ先に取り組まなければいけないのは、私は子供だと思うんです。女性差別撤廃条約、とても大事です。しかし、子どもの権利条約というのは、私はそれが本当に生きて初めて、日本という国は未来が見えてくるんじゃないかと思うぐらい大事なものだと思うので、続けて質問いたします。
 我が国が条約を批准して九年経過しているわけですが、しかし、学校等でのいじめや体罰、不登校生徒や高校中退生徒の増加、人権侵害や買春問題など、子供たちを取り巻くさまざまな状況は極めて深刻です。いや、ますます深刻になってきていると私は言わざるを得ないと思います。
 二十一世紀を担う子供たちのために、子どもの権利条約を生かす施策を早急に実現していくことが求められている。これは大人であればだれでも感じていることだと思いますが、女性差別撤廃条約の場合、所管官庁が内閣府の中にあります。しかし、子どもの権利条約は、これは十一の省庁にまたがるわけですが、子どもの権利条約の施策を着実に進めるためにやはり所管する省庁を定める必要があるのではないでしょうか。これはぜひ大臣の考えを伺いたいと思います。
川口国務大臣 確かに、おっしゃるように、子供の問題についてはいろいろな側面がありますので、またその側面に応じていろいろな官庁が関係をしているということでございます。
 この問題を総合的に対応するために、各関係府省の連携を一層強化して対応していくことが重要だと私は考えております。
東門委員 先ほども確かに同じ御答弁だったのを覚えているんですが、やはり内閣府の中に、そこでちゃんと男女共同参画室というのがあるというのは大きな意味があるんですね。そういう部署がきちんと、子供の件はこの省でやるんだと、本当でしたらば内閣府か、さもなければ文科省かもしれないんですが、そういうのを決めていくというのはとても私は大事なことだと思います。ぜひそれをやっていただきたいと思うんですが、大臣からぜひそのことを提言していただけないでしょうか。
川口国務大臣 日本の行政のやり方として、いろいろな問題が多くの官庁に関係をしているというのは日常茶飯事であるわけですね。それで、それを対応していくために関係の府省の連携をよくしていくということは大変重要なことであって、このために私は努力をさらに続けたいと思っております。
 この件について、今の時点で直ちにそういう組織を設けたら物事が抜本的によくなるかというと、やはり基本的には関係府省の連携の強化、これが土台であると思いますので、私の考えは先ほど申し上げたとおりでございます。
東門委員 それはやはり大臣、そういう中でお仕事をされてこられたからだと思いますが、日本の縦割り行政、横の連携のないのは、その悪いところはぞろぞろ出てきていると思うんですよ、本当に。横の連携がとても大事だということはみんな知っている。ところがそれがない。
 例えば、一例です。防衛施設庁に聞くと、いや、これは外務省ですと言う。外務省に聞くと、いや、これはうちじゃありません、防衛施設庁ですというふうなのが結構返ってくる。ということは連携がうまくいっていないことなんですよ。この二省を挙げたのは、私が日ごろ接しているのがこの防衛施設庁と外務省なのでそう言っているんですが、それがざらにある。これはもう日本の政府の、私は一番悪いところだと思うんです。
 そういう意味で、子供ということを考えたときには、やはり府省が、府であるか省であるかわかりませんが、やるんだということがなければ進められないと思います。今のままただずるずると、口頭ではやっていますということになるのではないかというおそれがございます。
 次に、教育基本法の見直しとの関連で伺います。
 三月二十日に中央教育審議会が発表した教育基本法見直し答申は、二十一世紀を切り開く心豊かでたくましい日本人の育成を目指す観点から教育基本法を改正するとしており、愛国心、ここでは国を愛する心と言っているようですが、公共精神の滋養の重要性を主張しています。しかし、教育のあり方に関し、日本国憲法や子どもの権利条約などの国際準則がとっている立場は、教育はあくまでも一人一人の人間の自己形成を支えはぐくむものとする、いわゆる個人人格本位主義です。中教審の答申はこのような立場に反しているのではないかと思われます。
 児童の権利条約第二十九条は、教育の目的を「児童の人格、才能並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させること。」「自由な社会における責任ある生活のために児童に準備させること。」等と定めております。この中教審答申は、子どもの権利条約が目指す子供中心の教育という理念に反していると思われますが、いかがでしょうか。まず外務大臣にお尋ねして、その後文科省からもお伺いしたいと思います。
 それにあわせて文科省に伺いたいのは、我が国が子どもの権利条約の締約国となって九年たった今も、中教審における議論が、教育とは大人が子供に押しつけるものとの前提のもとで行われる印象はぬぐい切れません。答申の中で、子どもの権利条約に一カ所さえも触れられていないことを見れば明らかだと思います。文部科学省は、文部行政の中で子どもの権利条約をどのように位置づけておられるのか伺います。
川口国務大臣 質問のお答えになっているかどうかわかりませんけれども、私自身、ちょっと、かつて中教審の委員をしていたことが実はありますけれども、最近出た答申については余りよく知らないので、それとの関連で申し上げることはできないんですけれども、この条約自体、これは非常に重要なものでございます。文部省のやっている教育についての行政というのも、考え方として同じ方向に沿ったものであると私は思います。
大野大臣政務官 お答えいたします。
 児童の権利条約におきましては、御指摘のように、締約国の教育が志向すべき事項について、児童の人格、能力等の最大限の発達、人権及び基本的自由等の尊重の育成などの観点を挙げております。これらの事項は、教育基本法に規定されている我が国の教育の目的の趣旨と基本的に合致するものであると考えております。
 また、中央教育審議会の審議に際しまして、資料として、児童の権利に関する条約を初め、教育に関係する国際条約などを提出いたしまして、議論の参考に供してまいりました。それらを踏まえて、何人かの委員からは、教育関係の国際条約等に関する発言も行われたものと承知しております。
 また、答申におきましては、このような議論を踏まえまして、「子どもが自ら学習に取り組む主体的な存在として尊重され、子どもの学習意欲を引き出し、個性に応じて能力を伸ばすことができるよう教育上配慮されなければならない。」このような記述がなされているということを承知しております。
 我が省といたしましては、この答申を踏まえまして、国民的な議論を深めながら、教育基本法の改正に取り組んでまいりたい、こう考えているところであります。
東門委員 もう一点、子どもの権利条約に全然触れられていないということはどうなんですか。子どもの権利条約については一カ所も触れた箇所がない、答申の中に。
大野大臣政務官 答申の議論の中でされたということであります。
東門委員 私の質問は、答申の中にです。議論がどうだったか、それはわかりません、私たちは。答申の中に触れた箇所が一カ所もないということについてはどういうふうにお考えですかという質問です。
大野大臣政務官 ただいま申し上げましたように、答申の議論の過程の中に、そういうことを議論されました。しかし、答申の文章の中には確かに記述はされておりませんが、この議論の経過の中にはそういうことが議論されたということの中で、私どもは、児童権利条約についての議論もされた、このように認識をしているところであります。
東門委員 議論の中で、議論の中でと。そこにいた人だけが知っている、国民は全然知らない。子どもの権利条約というのは本当に大事な国際的な条約であるという観点からして、世界が本当に一緒になって、締約国が一緒になって子供の人格形成、未来のためにという中で、答申書というんでしょうか、文章の中に触れられていないということは、私は大変なことだと思っています。当然あるべきものではないかという思いで伺ったのですが、大臣政務官の中には全然そういうあれはないなという感じ、わかったというだけかもしれません。
 次に、いわゆるアメラジアン問題と子どもの権利条約について伺います。
 沖縄には、米軍人軍属と日本人女性の間に生まれました、いわゆるアメラジアンと呼ばれる子供たちが三千人以上もいます。彼らは、教育面、経済面などで多くの問題を抱えており、子供の人権の尊重及び確保を目的とする子どもの権利条約の観点からも看過できない問題です。
 昨年三月、外務大臣が沖縄を訪問された際に、在沖縄米軍に、アメラジアンの父親の居所確認、親子関係の確認、教育費の請求など相談できる対応窓口の設置が決まり、昨年四月に開設されましたが、これまで余り利用されていないのが実態です。昨年十一月二十二日の本委員会で私がこの問題についてお伺いしたときに、大臣は、窓口の利用件数が少ない理由について調査をし、必要な改善策をとっていくと答弁されましたが、その結果を伺いたいと思います。
川口国務大臣 昨年の十一月に東門委員とこの点についてはこの場で議論をさせていただいたことを私も覚えております。
 その利用度について、沖縄での調査をいたしました。そして、沖縄県によりますと、アメラジアン問題についての相談件数、これに限った統計は存在をしないけれども、各種国際問題については沖縄県の相談窓口に相談があるということは事実であるということでございまして、例えば昨年の、平成十四年の四月から七月の四カ月の間で米軍人に関連する相談は四十件強あった、そういうことでございました。そして、相談窓口と米軍との連携体制を組んでおりますので、この中で何件を在沖縄米軍に連絡をしたかということについては現在調査中でございます。
 それで、連絡を在沖縄米軍の窓口にできないという背景として沖縄県の相談窓口が言っていることは、対象者を特定するための十分なエビデンスといいますか情報がないということで、そもそも現役軍人を対象とする相談なのか、あるいは退役軍人を対象とする相談なのか、そういうことも特定できなくて、沖縄の米軍窓口に連絡ができないケースがあるということでございました。
 それで、アメラジアン問題に対応していくために、社会保障番号、ソーシャル・セキュリティー・ナンバー、この対象者を特定する情報を当事者が持っているということが非常に重要であるということでございます。この点について改めて啓発をしたいと思っておりまして、今沖縄県、そして米軍と協議をしているところです。
東門委員 実際に米国の方の相談窓口に行ったのはゼロということなんですが、それはやはり退役軍人が対象外になっているからだと思うんですね。
 退役軍人についてですが、前にもその件をお伺いしましたが、現時点でもやはり対象外とする方針を変えるというおつもりはないのでしょうか。
川口国務大臣 これにつきまして、今委員がおっしゃったようなことにつきましては、軍籍を離れた人間について米軍として何ができるかということについては限界があるということを言っております。その点については、政府としてもやむを得ないところがあるというふうに考えております。
東門委員 時間がかなり過ぎてしまってうまくできないんですけれども、アメラジアンという言葉が正しいかどうか私も時々迷いながらなんですが、いわゆるアメラジアンの国籍の問題について伺いたいと思います。そのアメラジアンの中には、日本国籍を持つ者、米国籍を持つ者、日本と米国の二重国籍を持つ者の三タイプがあり、まれではありますが、無国籍という者もおります。
 沖縄県の女性総合センターが実施した聞き取り調査でも、国籍に関する相談が最も多くありました。その主なものは、日米地位協定との関係で、子供の日本国籍再取得の手続ができない、離婚した米軍人である夫の協力が得られず、子供の日本国籍再取得の手続ができない、国籍法改正時に日本国籍が取得できなかったため、成人した現在も無国籍のままである、米国籍のみの国際児、成人になっておりますが、国際児だが、日本語能力の条件のため帰化の手続ができないなどです。(発言する者あり)
池田委員長 御静粛に願います。
東門委員 このようなアメラジアンの国籍の問題について、政府は現在どのように取り組んでいるのか、子供の人権の観点から、日本国籍の取得に関してはより柔軟に対応すべきと考えますが、お伺いいたします。
川口国務大臣 これは外務省からお答えするよりは、国籍のことでございますので、法務省にお尋ねいただいた方がいいかと思いますけれども、例えば海外で米軍人と日本人の女性との間で子供が生まれた、そして、これは三カ月以内に日本国籍の維持の届け出をしませんと日本国籍を失うということになるわけでして、例えばそのようなケースがございます。
 外務省としては、個別のケースということは承知をしておりませんけれども、御相談が、具体的に何か明らかになったとき、その個別個別のケースに応じてどういうアドバイスができるかということについては相談をしたいと思います。
 一般的に、いろいろ、時間があれば長く御説明を申し上げますけれども、この辺できょうのところは一応御説明とさせていただきます。
東門委員 確かに法務省が答える部分があるとは思いますが、国籍の問題ですから。しかし、日米地位協定というのがかなり関係しているということも事実なんです。それで私はここでお伺いしたんですよ。
 次回は、同様の質問であればぜひ法務省にも来ていただきますが、私が申し上げたかったのは、日米地位協定を本気で考えていかないと、いろいろなところでいろいろなひずみが出ているということを外務省は本当にわかっておられるのかなということを私は指摘したかったのです。本当に無国籍もいるということをわかっていただきたいと思います。
 時間がありませんので、ちょっと急ぎます。
 私、前回の委員会で沖縄の周辺海域における水中爆破訓練について伺いました。沖縄の漁業に関しては、中国や台湾との関係でもう一つ別の問題があります。問題が多過ぎるというところだと思います。
 北緯二十七度以南の水域、これは尖閣諸島、宮古、八重山周辺水域などが含まれる好漁場でありますが、ここは我が国の排他的経済水域であるにもかかわらず、台湾との間では領海中間線が設定されていないことから、台湾漁船との漁場競合、漁具被害、操業妨害などのトラブルが多発し、また中国との間では日中漁業協定により我が国の法令の適用が除外されていることから、中国漁船の乱獲による資源の枯渇も懸念されています。
 ことし三月二十六日の参議院沖縄北方特別委員会での政府答弁では、台湾との間で九六年以降十一回の協議が行われているとのことですが、領海中間線の設定について台湾側はどのような主張をしているのか、協議が進展する見通しがあるのか、そこから伺いたいと思います。
茂木副大臣 委員の方から十一回の協議ということでありましたが、ことしの三月にもう一度協議をやりまして、全体で十二回の協議、九六年から進めさせていただいておりまして、御案内のとおり、これは民間の相談窓口ということで、日本側の方は交流協会、それから台湾の方は亜東関係協会、そこに政府の関係機関がオブザーバーとして参加する、こういう形で進められておりまして、当然、北緯二十七度以南の水域の問題を含めて協議をしております。
 台湾側の主張がどうかということなんですが、まさにその問題も含めて協議中でありまして、そういった協議の経過の、今後の進め方の問題もありますので、その点につきましてはコメントを差し控えさせていただきたいと思います。
東門委員 十二回も協議を持っているのであれば、ある程度何か出てきているんではないかと思うんですが、いかがですか、副大臣。一、二回ならまだわからないというのでしょうけれども、十二回も重ねてきていまして、やはりこういう問題があるということは御存じなんですから、そこで何らかの道筋が見えて当然だと思うんですが、いかがですか。もう一度お願いします。
茂木副大臣 まず、日本と台湾の間で漁業秩序を維持していく、そしてまた漁業資源の管理等を効果的に進めていくための枠組みをつくっていこう、こういうことで協議をしております。そこの中で、早期にそういった枠組みをつくろうと今まさに鋭意努力をさせていただいているところであります。
東門委員 時間ですので、終わります。
 済みません、政府参考人の方、おいでいただいた方、ちょっと時間できょう質問できませんでした。この次にお願いしたいと思います。ありがとうございました。
池田委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
池田委員長 これより各件に対する討論に入ることになりますが、討論の申し出がありませんので、採決に入ります。
 まず、児童の権利に関する条約第四十三条2の改正(千九百九十五年十二月十二日に締約国の会議において採択されたもの)の受諾について承認を求めるの件について採決いたします。
 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
池田委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決定いたしました。
 次に、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約第二十条1の改正(千九百九十五年五月二十二日に締約国の第八回会合において採択されたもの)の受諾について承認を求めるの件について採決いたします。
 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
池田委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決定いたしました。
 次に、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。
 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
池田委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決定いたしました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
池田委員長 御異議はないと認めます。よって、そのように決定いたしました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
池田委員長 次回は、来る五月七日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後二時十一分散会


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