衆議院

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第12号 平成15年5月30日(金曜日)

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平成十五年五月三十日(金曜日)
    午前九時三十分開議
 出席委員
   委員長 池田 元久君
   理事 今村 雅弘君 理事 蓮実  進君
   理事 水野 賢一君 理事 森  英介君
   理事 首藤 信彦君 理事 土肥 隆一君
   理事 丸谷 佳織君 理事 藤島 正之君
      伊藤 公介君    植竹 繁雄君
      小池百合子君    高村 正彦君
      新藤 義孝君    武部  勤君
      土屋 品子君    中本 太衛君
      松宮  勲君    宮澤 洋一君
      伊藤 英成君    大出  彰君
      木下  厚君    今野  東君
      中野 寛成君    鳩山由紀夫君
      白保 台一君    松本 善明君
      東門美津子君    鹿野 道彦君
      柿澤 弘治君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   防衛庁副長官       赤城 徳彦君
   外務副大臣        茂木 敏充君
   外務大臣政務官      新藤 義孝君
   外務大臣政務官      土屋 品子君
   政府参考人
   (防衛庁防衛参事官)   安江 正宏君
   政府参考人
   (防衛庁防衛局長)    守屋 武昌君
   政府参考人
   (法務省入国管理局長)  増田 暢也君
   政府参考人
   (外務省大臣官房長)   北島 信一君
   政府参考人
   (外務省大臣官房参事官) 齋木 昭隆君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    海老原 紳君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局長
   )            安藤 裕康君
   政府参考人
   (外務省経済協力局長)  古田  肇君
   政府参考人
   (外務省条約局長)    林  景一君
   政府参考人
   (国土交通省海事局次長) 金子賢太郎君
   外務委員会専門員     辻本  甫君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月三十日
 辞任         補欠選任
  今野  東君     大出  彰君
同日
 辞任         補欠選任
  大出  彰君     今野  東君
    ―――――――――――――
五月二十三日
 沖縄の新米軍基地建設反対に関する請願(松本善明君紹介)(第二二一三号)
 子ども売買、子ども買春及び児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書の批准に関する請願(北川れん子君紹介)(第二二四五号)
 イラクへの武力攻撃・戦争協力反対に関する請願(中西績介君紹介)(第二二四六号)
 アメリカの対イラク戦争・劣化ウラン戦争への支持・協力反対等に関する請願(阿部知子君紹介)(第二二六七号)
 同(今川正美君紹介)(第二二六八号)
 同(山内惠子君紹介)(第二二六九号)
 日本から米軍基地をなくすことに関する請願(土井たか子君紹介)(第二二七〇号)
 アメリカのイラク侵略戦争と日本の支持・協力反対に関する請願(土井たか子君紹介)(第二二七一号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――
池田委員長 これより会議を開きます。
 国際情勢に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長北島信一君、同じく大臣官房参事官齋木昭隆君、同じく北米局長海老原紳君、同じく中東アフリカ局長安藤裕康君、同じく経済協力局長古田肇君、同じく条約局長林景一君、防衛庁防衛参事官安江正宏君、防衛庁防衛局長守屋武昌君、法務省入国管理局長増田暢也君、国土交通省海事局次長金子賢太郎君、それぞれの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
池田委員長 御異議はないと認めます。よって、そのように決定いたしました。
    ―――――――――――――
池田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤公介君。
伊藤(公)委員 皆さん、おはようございます。
 まず、安倍副長官が時間の都合でちょっと後半になるということでございますので、恐縮ですが、少し質問を前後してさせていただくことをお許しいただきたいと思います。
 まず、昨今の新聞紙上で報じられていることから伺いたいと思いますが、米軍が世界規模で進めております海外の駐留軍が再編成をされていくという報道がございます。西欧や北東アジアなどで、いわゆる東西冷戦のもとで最前線に大規模な部隊を置くという、アメリカの、いわゆる米軍の再編成というものが検討され始めたという報道であります。恐らく、二年前のあのテロ事件以来だと思いますが、また、今度のイラク戦争におきましても、米軍が必ずしも最前線でなくても十分その対応ができるという実証がされたなどなどだと思います。
 そこで、沖縄におきます海兵隊が、約二万人が、一万五千人ぐらいはオーストラリアの方に行くのではないか、五千人を残してという報道もございます。我が国の防衛は、少なくとも日米安全保障あっての我が国の防衛であるということをひしひしと昨今感じております中で、米軍のこうした海外におきます駐留軍の見直しということは、我が国にとっても当然のことながら大変大事な問題だというふうに思いますが、我が国の政府はどのようにこの情報を受けているのか、そして、今後どのように我が国の政府としては対応しようとしているのかをまず伺いたいと思います。
川口国務大臣 委員が今おっしゃった、お触れになりましたロサンゼルス・タイムズの報道につきましては、これは報道は承知をいたしております。
 そして、米国が、四年ごとの国防計画の見直し、QDRと言っていますけれども、それに基づいてグローバルな兵力構成ですとか兵力展開の見直し作業を行ってきているわけですが、日米間で安全保障については緊密に対話をずっとしてきておりますけれども、この報道されたような計画について、アメリカの国防省から説明を今まで受けておりません。そして、米国の国防省も、今回の報道については否定をしていると承知をしています。
 それから、日米両国は、今委員おっしゃったように、同盟国として非常に重要な関係があるわけでして、こういった沖縄にある海兵隊の兵力構成を大幅に変更するということを、我が国に相談もなく行うということは考えられないことでございます。
 以上です。
伊藤(公)委員 新聞で報じられていることは、私たちも、そして一般の国民も当然聞いて見ていることでございます。政府は、それだけでは済まないことは当然のことでございます。
 冒頭に申し上げたとおり、我が国とアメリカとの、特に防衛に関しては格別な関係にあることは言うまでもありません。今後、我が国の政府として、こうした米軍の国際戦略における報道に対して、何らかのアメリカとの話し合いをする方針があるのか、伺っておきたいと思います。
 報道は私も承知しておりますが、政府として今後このことについて話し合いをすることがあるのか、情報交換をすることがあるのか、伺っておきます。
川口国務大臣 今申し上げたように、米国はこれを否定しているということでございます。
 それから、一般的に、安全保障の問題については、これは今までも、私も昨年2プラス2でアメリカと話をしましたけれども、いろいろな課題については緊密に協議をしておりますし、それから、ついこの間行われました日米の首脳会談、ここにおきましても、安全保障面での日米の連携をより強化するということで、両政府間の協議をするということは言われているわけでございます。
 委員も御指摘のとおり、日米安保体制というのは我が国の安全保障にとって基軸でございまして、これを円滑に運用していく、そういうことのために、今後とも引き続き、アメリカとの間では緊密に連携をとり、そして協議をしてまいる所存でございます。
伊藤(公)委員 外務省は、日本の政府は、この報道についてアメリカと何らかの話をした、情報交換をしたということはあるんですか。
 つまり、新聞で報じられていることは、ごく普通の国民の皆さんも知っていることです。報じているかということではなくて、今大臣が答弁されたように、日米関係ということが格別に大事だということからすれば、これだけのことが正式に国際的に報じられていたら、そのことに対して何らかの、政府として確かであるのかないのかを確認する必要があるんじゃないですか。
川口国務大臣 米国が否定をしているというふうに申し上げたのは、確認をした結果でございます。確認をいたしました。
伊藤(公)委員 それならわかりました。政府が正式に確認をして、そういうことではないということであれば、私も納得をいたします。
 日米会談で大きなテーマになったようでございますが、具体的なことだけちょっと伺っておきたいと思います。ちょっと順序が前後して恐縮ですが、横田基地の軍民共用化問題についてであります。
 これは、かねてから石原知事が働きかけていたことでございますが、国を代表する総理が、日米の大事な首脳会談でこの問題を正式に取り上げられた、そして、アメリカのブッシュ大統領は、実現可能性について検討をすると答えられたと伺いました。
 首脳会談で持ち出すためには、当然日米合同委員会などの場でも既に協議を前もってされたことと思いますが、その経過について、そして、今後どのようにこの問題に取り組んでいかれるかもあわせて御質問をさせていただきます。
川口国務大臣 委員がおっしゃいましたように、これについては、小泉総理が日米首脳会談の中で取り上げられたわけでございまして、御自身のイニシアチブでこれをおっしゃられたということでございます。
 この飛行場が都心に近いということから、何らかの形で民間との共用化を行い、飛行場を一層有効に活用したい。これについて、米国にとって横田飛行場が中枢の施設・区域であるということは承知をしているけれどもということをおっしゃりながら、今のお話をなさったということです。それに対してブッシュ大統領から、総理の提案をお聞きになられて、そして実現可能性を検討したいという発言がございまして、共同で検討をしていくということになったわけでございます。
 これは、まさに実現可能性についてこれから検討をしていくということになりますので、当然、合意が今の時点でできたと言うことはできないわけでございますけれども、合意ができたわけではないわけですけれども、政府としては、早速関係の省庁間で調整を開始いたしておりまして、そして米国政府とこれについて検討をしていくという考えでいます。
伊藤(公)委員 そうすると、どういうような手順でこれからは、これは、もちろん防衛の問題も大事な問題ですし、それから横田基地、石原知事は返還をするということを前提に、それまでの経過措置としてというのが石原知事の取り組みなんですね。日本の政府としては同じスタンスで軍民共用化問題にこれから取り組んでいくのか。
 これは、そのほかの問題もいろいろございますので、非常に大事な問題だと思いますから、いわゆる返還を前提にしていくのか、あるいは軍民共用ということだけでいくのか、またどういう取り組みを具体的にこれから手順としてやっていくのかももう一度伺います。
川口国務大臣 軍民共用化ということで総理がおっしゃられて、それについての検討が始まるということでございますけれども、これは総理もブッシュ大統領にお話しになられたときにおっしゃったようでございますが、横田というのは在日米軍にとって中枢の施設・区域でございます。したがいまして、安保条約の目的を達成するために重要な役割を果たしているということでございまして、政府としては、返還を考えるということはしておりません。要するに、返還を求めるということは考えていない、そういうことでございます。
伊藤(公)委員 実は、この横田基地の米軍の方々のいわゆるレジャー施設として多摩弾薬庫というのがございます。広さ百九十四万平米といいましたか、かなり広いものですけれども、ここは東京都の知事も返還をしてほしいという要望をかねてからしているわけですが、たまたま私、横田もかつての選挙区でございますし、多摩弾薬庫も私の現在の選挙区でございます。
 地元の方々は、もう三十年来、この問題を常に時の外務大臣や防衛庁長官に要望してきていることでございますが、私は、河野外務大臣のときにこのことを申し上げました。そのときに、できるだけ地域の方々が、要望があれば、ここは地域の方々に活用できるような道を開きたいという外務大臣のはっきりした答弁があったわけでございます。
 私は、米軍の横田基地の方々がこれからも現状と同じように活用していただいていい、そういう前提で、この多摩弾薬庫については返還をした方がいいと思っています。ということは、米軍の方々のレジャー施設という、現実には日本の方たちがルールをいろいろ生活の知恵でやりながら使っているというのが現状なんですね。ですから、私は、せっかくこの横田基地の問題を政府がしっかりと取り上げる機会ですから、この問題にもきちっと対応していただいたらどうかと思います。
 大変時間がないので、ちょっと一言だけ、この問題にどう対応するかだけ伺っておきます。
川口国務大臣 これについて、御案内のように、今地元の方が既に使っているという事実もあるわけでございまして、今後、地元の自治体による限定的な使用、こういうことについてのさらに具体的な要望があれば、それについては日米合同委員会等の場で取り上げていきたいというふうに考えております。
 委員が今おっしゃった所有権、要するに返還をした上で米軍に使ってもらうということについては、これは、アメリカ側からは重要な施設であるということで考えているのでという話がございまして、今の段階では、返還を求めて、その後使ってもらうということは考えておりません。
 いずれにいたしましても、具体的に要望があれば、もっと使えるように、そういうことが可能になるように、これは話し合っていきたいと思っています。
伊藤(公)委員 きょうは、そのほかの問題を私も質問したいので、これ以上申し上げませんが、日本の政府も、もう見直すべきことはきちっと見直す、必要なものは必要、私はそういう対応をしてほしいと思います。
 さて、北朝鮮問題について伺いたいと思います。
 今月の二十三日に、小泉総理とブッシュ大統領が日米首脳会談で、北朝鮮問題の平和的な解決には対話と圧力が必要だということを声明をされました。もちろん私は、交渉ですから、粘り強く対話を続けることは大事なことだと思います。韓国もいろいろな苦労をしてこの問題には取り組んでおられます。
 私もかつて、あのベルリンの壁ができたとき、あのベルリンの壁は私が生きている間には絶対に取り除かれることはないであろうと思いました。私はあそこに二年住んでいたわけですが、しかし、ベルリンの壁さえ今取り除かれました。私は、北朝鮮の問題も必ず片づく、解決ができると思います。
 しかしこれは、今の北朝鮮のこの状況を見ていますと、今度の日米首脳会談で、対話と圧力、はっきり日本が、やるべきことはやる、アメリカと共同して、あるいは韓国や中国やロシアにも協力をしてもらってやる、そういう強い決意が外交の歯車を動かしていくことになるんだろうと私は思います。そういう意味で、この対話と圧力はいろいろな御議論もございましたが、そのことをきょう私はもう議論するつもりはありません。
 我が国の政府の対北朝鮮対処の方針は、確認の意味ですけれども、対話と圧力、明確にこれが方針だと理解してよろしいですか。
川口国務大臣 そのとおりでございます。
伊藤(公)委員 それでは、圧力とは具体的にはどのようなことを指すのでしょうか。もちろんいろいろ指摘をされております、万景峰号の入港を拒否しろという意見もありました。あるいは送金の停止をしろ、あるいは貿易の停止だ、経済制裁をという声も非常に声高になっています。いや、そんなことでは北朝鮮は動かないんじゃないか、本気で日米が圧力をかけるという決意をしなければこの重い扉は開かないのではないかという強い意見もあります。
 我が国の政府は、一体この圧力とは具体的にどういうことを指されるのでしょうか。外務大臣、どちらでも結構ですよ、副大臣の方が政治家として明快に答弁できるかもしれないね。
茂木副大臣 まず、北朝鮮に対します基本的な方針ですが、今大臣の方から答弁を申し上げたように、対話と圧力、それから平和的、外交的な解決、そして関係国の緊密な連携のもとでの多国間協議によるアプローチ、これが日本の基本的な方針だと思っております。
 そこの中でどういう措置をとっていくかということでありますが、委員御指摘のように、現行法でもできることはたくさんございます。麻薬そしてにせ札の取り締まり、さらにはキャッチオール規制によって、北朝鮮にミサイルであったりとか核の部品が日本から一つも出ない、こういう措置もございますし、万景峰号の入港に際しましても、立入検査の問題、手荷物のチェックの問題、現行法でやり得るさまざまな厳正な措置をとっていきたい、このように考えております。
 同時に、北朝鮮が事態を悪化させる、こういうことがありましたら、さらに厳しい措置を検討する、こういうことでも日米間では完全な一致を見ております。
伊藤(公)委員 ブッシュ大統領は、小泉総理に対して、北朝鮮問題の平和的な解決に確信を持っている、絶対的な自信があると述べられたとも伝えられています。
 これは、むしろ安倍副長官、同行されたから一番おわかりかもしれませんので、この会談の中で大統領が自信を裏づける戦略を表明されたのか。これは外交戦略にも当然かかわることですから、私は具体的な中身を今ここで伺おうとは思いませんが、そうした強い意思があったのか、そして小泉総理はそれに納得をしたのかを、これは安倍副長官が一番いいかもしれません、質問はあなたにしているわけじゃなかったんですけれども、もしできれば、どうぞ。
安倍内閣官房副長官 小泉首相とブッシュ大統領の日米首脳会談におきまして、ブッシュ大統領は、平和的な解決には自信があるということをはっきりと述べられたわけでございます。
 この会談の中におきまして、大統領から次のようなことが述べられたわけであります。北朝鮮の脅迫には屈しない。そしてまた、今回、中国が責任ある行動をとり始めたことは意味がある。そしてさらに、日韓の参加を得た多国間協議を開催して、北朝鮮を説得することが重要である。そして、問題を平和的に解決できると確信しており、そのためにも強い行動が必要である。さらには、北朝鮮からの核や麻薬の拡散は絶対に容認できない。そして、拉致は忌むべき行為であり、拉致された日本国民の行方が一人残らずわかるまで日本を完全に支持するという強い決意が表明されたわけであります。
伊藤(公)委員 日米の首脳会談でそうした強い意思が確認できたことは、私は大変いいことだと思います。
 しかし、北朝鮮問題の、もちろん平和的な解決を私たちは全力を注いでいくわけですけれども、対話と圧力の中で我が国が強い姿勢で臨んでいくときには、万一の場合にはこの北朝鮮がどういう行動に出てくるかわからないわけであります。このことに関しては、日本の国民の皆さんも、我が国の防衛という問題で、この北朝鮮拉致問題を含めて非常に、この国は大丈夫なのかという疑念を皆さんが持たれ、防衛問題に対して皆さんが新たな関心、理解を深められていると私は思います。
 そうした中で、北朝鮮がノドンやテポドンという弾道ミサイルで我が国の平和を脅かしているという現実、これは、一九九九年から日米間で技術研究を進めている弾道弾迎撃ミサイルシステム、もう単純に、日本の国民の皆さんも、この北朝鮮問題を焼き鳥屋で議論をしているのを聞いていますと、日本は大丈夫なのか、ちゃんとそれに対しては日本は対応できる力を持つべきでないのかという多くの皆さんの声を聞くのは、私は、率直な皆さんの気持ちだと思います。
 この国を安全に導いていくという政府の立場で、この技術研究を、今、単に研究の域なのか、我が国として具体的な装備の導入を判断し得る段階に今達しつつあるのか、あるいは、我が国として具体的な装備の導入を判断し得る段階に今来ているのか。弾道ミサイル防衛技術研究の現状と、完成そして配備の目途、さらには配備に向けて政府の意欲を伺いたいと私は思います。
 この国の安全、いざとなった有事のときにきちっとこの国を守るという決意が今必要だ。そして、昨今の有事法制などを見ておりますと、ようやく日本の政府も、しっかりとこのことを国民の前に明確に議論ができるようになった。
 今、ちょっと話がなんでございますが、小泉総理は再選するかどうかわかりませんが、されると思いますが、いずれ日本のニューリーダーはだれかという最近の新聞を見ていますと、安倍副長官の名前がどの新聞でも浮上している。私は、個人的な問題ではなくて、国民の皆さんが、我が国の防衛とか我が国の外交がはっきり国民に見えるようになってきた。国際舞台で日本が、単にスポーツや何かだけではなくて、日本の外交、政治というものが国際舞台ではっきりと主張できるようになってきた。主張するということは、日本の国の中が、自分たちがどういうことができるか、いざとなったらどういう決意があるかということをしっかり我々が決意できるか、その準備ができているかということだと思います。
 そういう意味で、安倍副長官が最近テレビなどで、いろいろ報道の中で発言をされていることが、私は多分、次のリーダーにはこういう人がいいと国民の皆さんが考え始めているんじゃないか。私は、このことを副長官はぜひ大事にしてもらいたい。そして今こそ、そういう決意でこの国のあすのリーダーになっていってほしいと私は思います。
 私は、いろいろ質問するに当たって、かねてからのいろいろ資料を見ますと、昭和三十一年に鳩山総理が答弁をされたなどということが今も我々の議論の基準になっているわけですから、安倍副長官がここで、テレビではなくて国会の委員会で答弁をされることは、あなたの政治家としての将来だけではなくて、日本の歴史の一こまになると私は思いますから、あえて、日本の、これからこうした問題に対して、いわゆるミサイル防衛などの問題について、どういう決意でいるのかをお伺いさせていただきたいと思います。
安倍内閣官房副長官 ミサイル防衛につきましては、詳細については、防衛庁の赤城副大臣が来られておりますから、この後御説明されるということになると思いますが、我が国としても、このBMDに関する技術的可能性や、我が国の安全保障環境の変化を踏まえつつ、先般の日米首脳会談で総理が述べたとおり、我が国のBMDについて鋭意検討を加速させていく考えでございます。
 そして、この鋭意検討を加速させるということはどういうことかと申しますと、我が国防衛政策上の極めて重要な課題であるBMDについて、米国とも情報交換、意見交換を行いつつ、BMDシステムの能力、経費、その取得可能性、さらには我が国の防衛のあり方といった観点も含めて、具体的な検討を加速させていく必要があるという意味でございます。
伊藤(公)委員 時間が参りましたので、本当はもっと伺いたかったんですが、せっかく赤城副大臣にお見えいただいていますから、あなたも茂木副大臣とともに、この三人はいずれ日本のリーダーになっていく人たちですから、あなたにも、防衛庁を代表して、一言答弁を。
赤城副長官 先ほどお尋ねの日米弾道ミサイルについての共同技術研究でございますけれども、これは海上配備型の将来システムの共同技術研究でございまして、ミサイル防衛のシステムは多段階で幅広いものでございますから、これだけでもって全体を判断することはできませんけれども、アメリカが、二〇〇四年、五年に配備する、こういうふうに公表していますシステムも含めて、幅広くこの検討を加速してまいりたい。
 その際には、いずれにしても、安保会議の議を経て決定されることになりますけれども、どういうシステムの組み合わせがいいのか、費用面ではどうなのか、技術的可能性はどうなのか、そういったことを具体的に検討を加速していく、こういうことでございますので、防衛庁としてもしっかり対応してまいりたいと考えております。
伊藤(公)委員 しっかり取り組んでください。
 終わります。
池田委員長 次に、土肥隆一君。
土肥委員 民主党の土肥隆一でございます。
 私は、田中前外務大臣のときに外務委員長をしておりまして、大変活気のある、もうわくわくとして委員会に臨んだものでございます。(発言する者あり)御苦労さまじゃなくて、ちょっとまだ問題が残っているんじゃないのという質問をしたいのであります。
 政官要覧をちょっと見ますと、前任の田中真紀子大臣の突然の更迭後、注目の外務省改革に悲観的見方もあるが、強烈な北風の去った後、太陽政策が功を奏することもと外務大臣のことを述べているわけでございまして、なかなかこれは言い得て妙であるというふうに思っておりますが、ここで、強烈な北風というのが外務省に吹き荒れたわけでございます。
 パンドラの箱というのがございますけれども、パンドラというのは人類最初の女性の名前なんですね。ですから、田中真紀子前大臣はパンドラなんです。それで、彼女が箱を開きましたら、災いがどっと出てきたんですね。外務省の災いですよ。私、別に外務省を憎んでいるわけじゃございませんが、本当にいろいろなことが飛び出してきて、外務省というのはこういうものだったんだなということを十分に学習いたしました。
 それで、パンドラの箱は、災いが全部飛び出しましてふたを閉めて中に残るのは希望、希望が残るんですね。私は、外務省はパンドラの箱のふたをしてはならないと思っております、大変厳しい言い方ですけれども。もし、田中前外務大臣が新潟から当選してきたら、これは大変だな、こう人ごとながら心配をしております。まだ解決していないたくさんの問題が残っているのではないでしょうか。
 そうしたときに、川口大臣は、女性の大臣として、官僚の出身として着任なさったわけでございまして、今度ここに、私は党の方から命ぜられて、外務委員会に行け、こう言われて、筆頭理事をやっているわけでありますが、当時のことを思い出すと、ちょっと言葉は悪いんですけれども、お葬式に臨んでいるような感じがいたします。静かで、だれも文句を言わないで、淡々とやっております。私のその感想を率直に今申し上げさせていただいているわけであります。
 やはり、ここは政治家の、委員はみんな政治家ですから、政治家向きの外務大臣になるのは難しいのかなと思っておられますが、今まで外務大臣を続けてこられて、率直な感想をまずお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 田中前大臣が外務大臣でいらしたころの外務委員会の様子については、私は環境大臣をしておりましたので、そばで拝見をしていまして、土肥委員長と田中前大臣との活発なやりとりについては、いろいろ新聞報道等で拝見をしておりまして、そのときこの目でその状況を見られなかったというのは残念でございますけれども、いろいろな報道には接しております。
 外務省の改革については、私が一年四カ月前に就任をして、総理からも、これが第一の取り組むべき課題だと言われ、私自身もそう思い、早速手をつけて、半年、昨年の夏ぐらいの時点で相当にめどがついたと思っております。
 太陽政策というふうにおっしゃられましたけれども、私は、外務省との関係では対話と圧力の基本方針のもとでこれをやってきたつもりでございます。それで、改革について、パンドラの箱を閉じてはいけないということは全くそのとおりで、かなりこれについては進捗があったと思いますけれども、まだ今実行段階、実行が何よりも大事だと思っておりますので、これは、私、茂木副大臣、その他の政務層をリーダーとしまして、外務省職員一丸となって今これに取り組んでおります。
 一大臣ではございますけれども、同時に私は一国民でございますから、一国民の目で見れば、改革を続けてほしいということからいえば、外務省もそうですし、全霞が関もそうですし、そして全永田町もそうだというふうに国民には見えていると思っております。
 外務省の政策という観点からいいますと、私は、外務委員会でその後いろいろ御議論をしていただいて、さまざまな課題について日本の外交政策が、日本の国内だけではなくて世界の中において、日本が世界の課題に関心を持って外交をやっている国である、そういうことがきちんと今や位置づけられているというふうに感じております。それは、昨年G8の外務大臣会合に出まして議論をし、またことし出て議論をいたしましたけれども、そういった中で、G8の外務大臣全員が、日本の世界における存在についてそういう目で見ているということをひしひしと感じております。
 外務大臣の仕事というのは外交と内政とよく言いますけれども、これの両方ありまして、どちらかといえば、外務大臣ですから外交に力がある、ウエートがより大きいということであると思います。
 そういう意味で、私は、なかなか日本の中では見えにくいんですけれども、例えば、平和の定着とか、一連の、あるいはイラクについての取り組み、あるいは中東和平についての取り組み、あるいはスリランカ、アチェ、いろいろございますけれども、そういったところで日本の外交の存在感を十分に世界において発揮をさせる、そういう仕事を、今リーダーシップをとって、そして外務省一丸となってやっているというふうに自負をいたしております。
土肥委員 大変結構な答弁でございましたが、やはり外務委員会のみならず、政治家を納得させるには、もう少し個性のある外務大臣であったらいいな、こう思うんです。小泉さんは丸投げ首相でございますから、別に、川口さんにああせい、こうせいと言っていないはずでございますから、どうも外務省の陰に、あるいは外務省が後ろにぶら下がっていて、もう少し個性的な、個人的な意見も述べられたらどうかと。テロの定義などについてはお困りになったようでありますけれども、もう少し、政治家を納得させるには個性をお出しになったらどうかと思うのであります。
 先ほど、外務省改革は途上にあるということでございました。私が委員長のときの最大のクライマックスは、北方領土の四島の一括返還と二島先行論がぶつかったということでございました。
 かの有名な鈴木宗男自民党筆頭理事が仕掛けた問題でございまして、このときに外務省は大騒ぎになったわけであります。そして、あるロシア課長がイギリスに着くや否やすぐに呼び返されたりというようなことがございました。そのときに、外務省の中に二島論者、四島論者がいるのかなということでございました。ある局長が私のところに来まして、私は何も二島論者ではございませんと言って私に弁明をされた方もおられました。
 こういうことがあったのでありますが、今度もやはり何も外務省の中は問題解決になっていないなと思うのであります。それは、先ほど伊藤議員の方からもお話がございましたように、北朝鮮には対話と圧力が必要だと総理が言った。ところが、その圧力という部分を削除して原稿をつくった。そうしたら、いろいろな議論の結果、先ほど副官房長官は帰られましたけれども、彼が入れたというふうにも報道されておりますけれども、結局今問題になっている万景峰をどうするかとか、拉致犠牲者家族までミスターXを解任しろというふうな言い方をしている。
 これは私は、外務省というのは、いろいろな議論が省内で行われることは十分認めるわけでございますけれども、外に出すときに、やはり外務省として、ああいつもの話だなというふうに思い起こすわけでございます。
 こういうときにこそ外務大臣がきっちりとステートメントを出して、そして、あるいはミスターXがいるかいないのか知りませんけれども、まあ、もう表に出ておりますから知っているんですけれども、その辺をきちっとまとめないと、結局北朝鮮政策は筋の通らない場当たり的な、あるいは状況待ちというか、そういうことにつながっていくわけですね。その辺をやはり外務大臣はきちっと指導しなきゃいけません。だから、私は、まだパンドラの箱はふたを閉めちゃならない、希望だけが残るまでふたをしてはならないと思うのであります。
 今回のこの対話と圧力をめぐっての省内のごたごたはあったんですか、あるいはなかったんですか、そしてそのとき外務大臣はどういう指示をなさったんでしょうか。
川口国務大臣 いつも委員会の議論の中でいろいろ叱咤激励いただきまして、大変にありがたいと思っております。
 それで、対話と圧力のことでございますけれども、歯にきぬを着せず物を言えというふうにおっしゃっていただいていますので、委員がおっしゃっていただいたように、政策の決定過程、ここにおいて十分に議論が行われるということは非常に重要であると私は思っています。それで、その政策というのは、どういうふうに物事を進めるかということも政策のうちですし、それをどのように外に出していくかということも政策のうちであるわけです、外交においてはそういうことであると私は思っております。
 それで、私が外務大臣に就任以来ずっと言ってきたことは、とにかく中で十分に議論をするということで、これを慫慂しております。中の議論が十分にできませんと、先ほどの出し方も含めていい政策はつくれないというふうに思っています。
 それで、もちろん中で、その議論の過程ではさまざまな議論があって、これはあればあるほどいい、極端な言い方をすれば、破天荒な意見というのがあることが私は必要であると思っています、まあ、一般論でございますが。そういうことでいった上で、ただし結論的にそれが外務省の意見として決まった時点では、そういった形はそのままみんなが守っていくべき話であるというふうに考えています。
 ただ、そういった自由な議論を中で確保するために、議論の過程についてそれが外に出るということについては私は残念であるというふうに思います。議論のその自由な発想あるいはディスカッションをどこかで抑えていくということにつながっていく。そういう意味では、議論は十分に行い、決まったことは決まったこととし、そして、それはそのままそれを守っていくということだと思います。
 それで、対話と圧力については、先ほど来申していますように、それは日本政府の方針であり、そういうことを外に出したということで、それの過程についてはそれ以上申し上げるべき話ではないと私は思っております。
 いずれにしても、このことも含め、すべての重要な政策課題、これについては外務省で十分にそういった議論をひねり、その上で官邸と十分に意見の疎通を図り、そして特に首脳会談で御発言をするようなこと、あるいはその出し方については官邸と合意の上でこれを決めているということを申し上げたいと思います。その中で、御心配をいただいておりますけれども、基本の方針の策定あるいは出し方、それについて私が最終的に決定をした上で外務省の外で、そして官邸と相談をし、これについては総理も私も全く同じ意見であるということです。
土肥委員 もう少し具体的におっしゃっていただかないと困るんですが、日米首脳会談の場で出たわけでありますから、ミスターXもそこへ行っているわけでありまして、そのときに安倍官房副長官が会談の指揮を、すべての指揮をなさったのか、だれが指揮をとったのか、ちょっと教えていただけませんか。
川口国務大臣 これは日米首脳会談でございますから、当然に総理でいらっしゃるわけです。それで、総理にどのようなことをおっしゃっていただくのがいいか、それについてどのような形で発表するのが適切か、そういったことについては、先ほど申しましたように、外交問題であれば外務省が十分に検討をし、関係の省庁があればそことも相談をし、その上で官邸と御相談をして、みんなが意見を一致したという形で行動をするということでございます。
土肥委員 ところが、そうならなかったわけですね、そんなすきっとしたものじゃなかったわけであって。
 今後、このミスターXさんのことについて、外務大臣としてはどのような指揮をしようとしておられるのか、お述べいただきたいと思います。
川口国務大臣 ミスターXとおっしゃっていらっしゃる意中の方が、私の考えている人と同じかどうかちょっとよくわかりませんけれども、政府の一員であるということでございましたら、当然そのすべての人間が、ミスターXであれ、ミスターYであれ、ミスターZであれ、あるいはミスZであれ、すべてが政府の一員として政府の方針に基づいて行動をしている、そういうことでございまして、この点については私はいささかの懸念も、疑いも何ら持っておりません。非常に外務省の職員は全員が、私のリーダーシップのもとで一丸となって動いているということについて私は確信を持っております。
土肥委員 また次のパンドラの箱の中身が出てくるかもしれませんので、お気をつけいただきたい、このように思う次第でございます。
 実は、今申し上げているようなことは、一昨年の積み残しを僕は振り返っておるわけでございまして、もう一つ大問題になったのは、ソンドゥ・ミリウというケニアの発電所の問題でございました。
 実は報告書が出ておりまして、外務委員会のソンドゥ・ミリウダムの視察がございました。ここに、自民党からは、鈴木宗男さん、下村博文さん、野党からは、安住淳さん、桑原さん、土田龍司さん、そして私と。このダムを調査するときに、これは鈴木宗男さんの提案だったんです。今度外務委員会で外遊するが、どこがいいかという話で、鈴木宗男さんは、自分は委員会の場で衆参合わせて二回ソンドゥ・ミリウダムの疑惑を追及された、したがって、それを解明するために、明らかにするためにケニアに行こうと。私は、それはおもしろい、いろいろな意味でおもしろいと思いまして、ケニアに行ってまいりました。このソンドゥ・ミリウダムの現場にも行ってまいりました。
 そのときに、私は、報告書を見ていただければわかるんですけれども、きちっと客観的な視察ができるようにということで、いろいろと、現地のNGOの皆さん、日本のNGOの皆さんもこれを批判しておりまして、十分にその人たちの批判を聞きながら、そして、現地に入った、もう早朝、最初の行動の前に、ケニアのNGOの皆さんが七、八人おいでになりまして、その中に日本人もおられましたけれども、そして十分な客観性を持って臨みました。
 このケニアというのは、ああいう乾燥地帯でありますから、電力がもう非常に不足しているわけですね。要するに、草原ばかりでございまして、ライオンやキリンはおりますけれども、水がない。そういうところで、水がなければ発電ができないということでございまして、このソンドゥ・ミリウ発電所はいいのではないかと。珍しく私たちも、しょっちゅうODAのことについては文句を言っておるわけでありますが、やはりこれは完成させるべきだと思い、帰ってきて、あらゆるジャーナリストも呼んで報告会をし、そして結論を出したわけでございます。
 ところが、どうもその後思わしくないんですが、私は内容は存じておりますので、皆さんにもわかるように、簡単でいいですから、今どうなっているのか。第一次借款、第二次借款、これは二期に分けてやるんですが、もう一期工事がほぼ終わりかけているときに私どもは行きました。いよいよこれからという、本体の工事に入るわけでありますけれども、そこで第二次借款がつけられるはずだったんですが、今どうなっているんでしょうか。御説明ください。
古田政府参考人 御答弁申し上げます。
 御指摘のソンドゥ・ミリウの水力発電計画でございますが、施設容量六十メガワットということで、ソンドゥ川から取水の上発電をするという計画でございます。
 円借款につきましては、第一期分で、取水設備でありますとか導水路でありますとか、そういったことの土木工事を行っておりまして、ほぼ完了に近づいているということでございます。二期分につきましては、放水路等残りの土木工事のほかに、発電機の設置、送電線、変電所の設置といったようなことを行うことにしているわけでございます。
 第一期分につきましては、九七年一月に交換公文を締結いたしまして約六十九億円の円借款供与を決定し、その後、工事がほぼ終了に向かっているということでございます。他方、第二期分に対する円借款の供与につきましては、九九年九月に事前通報、約百億円ということで行っておりますが、いまだ交換公文の締結に至っておりません。
 これにつきましては、先ほどお話ございましたように、委員会の調査団で、いろいろと見ていただき、いろいろな意見に耳を傾けていただきまして、報告書も出していただいたわけでございます。それらを踏まえて検討しておるわけでございますし、また、ケニア政府なり現地住民からは、逐次本件事業の推進を要請されておるわけでございます。
 ただ、他方、ケニアの環境、社会面での問題についてきちっとした取り組みをしていかなければいけない、あるいは、ケニアの債務返済能力の問題についてこれもきっちり確認をしていかなきゃいけないということでございますので、これらについて十分確認をしつつ、引き続き慎重に検討を行っていくというのが現状でございます。
土肥委員 今の答弁を聞きますと、第一期はもう終わりかけで、第二期もスムーズに進んでいるというふうに聞こえちゃうんですね。
 私どもが行ったのは平成十三年ですから、もう二年たっている。現地に行ったときに、現地の、これは国際ジョイントベンチャーになっておりますけれども、主に日本企業でやっているわけですね、鴻池組でございます。
 それから、現場のコンサルタントとも話をしましたけれども、要するに、すぐに第二期工事に入ってもらわないと困るという。それは当たり前ですよね。取水の、取水堰というのか何というのか、要するに、水をせきとめるところまで行っているわけですね。それから何キロも流して、そして一番先端で発電をしようというわけでございまして、今、二年間何もしないで寝ているわけですよ。
 この話を申し上げるのは、ある意味で、現地に、つまりケニアのあのソンドゥ・ミリウ周辺の現地の人たちを千五百人か二千人雇っているわけです。それも二年間とまっているわけです。そして、工事は、金が二期工事におりてきませんから、しかも一期工事でちょっと予算が膨れて、二期工事分も早く出してそれで食っていかなきゃいけないというような状況もあったり、何といったって、企業の皆さんは、いろいろな機器類を置いたまま何もできないわけですよね。これはODAの問題を象徴的にあらわしていると思っているんです。そして、そのODAの問題と連結しているJBICの仕事の仕方。こんなことをやっていたら日本の企業はつぶれますよ。
 本当にへんぴなところに入って現地の人と触れ合いながら、休みの日は現地の住民の奥さん方を集めてトンネルの見学だとか、あるいは図書館をつくるとかやって、現地の人たちに貢献している日本人のスタッフがいるわけでありまして、なぜ二年間おくれたか、端的におっしゃっていただきたいと思います、何が問題なのか。
古田政府参考人 御答弁申し上げます。
 端的に申し上げますと、環境、社会面での対応について、幅広い、地元も含めた関係者の意見を尽くしてその対応策を検討するということと、それから、ケニア政府の債務返済能力の問題についてきちっと確認をするということが特に時間がかかっている要素でございます。
 一九九九年の秋に二期分の事前通報をしたわけでございますが、その後、二〇〇〇年に入りまして、ケニア側が、短期の債務延滞ということが起こりましたり、あるいはパリ・クラブにリスケジュールを要請するというようなことになりまして、その点で、債務返済の問題についてはさらに詰める必要があるということであったわけでございます。
 現在、IMFのミッションがケニアを訪問中でございます。そこで、この一月に新政権になったわけでございますので、この新しいキバキ新政権の対外債務に関する政策でありますとか、あるいは債務の持続可能性を含めた経済状況の評価といったようなものが明らかになる見込みでございますので、私どもとしては、このIMFのミッションの結果を注視しながらこの点については検討を進めていきたいというふうに考えております。
 それから、最初の環境、社会面の問題でございますが、これも、二〇〇一年に入りまして技術委員会を現地で開催しまして、具体的な環境、社会面の改善策を取りまとめていただきました。これにつきましては、ケニア側も、その適切な実施ということでやっていくんだということを明らかにしておりますので、この環境、社会面の問題につきましては、かなりそういう意味では対応が見えてきておるんじゃないかというふうに思っております。
土肥委員 一期、二期に分けたら、一期、二期の全体的なトータルプランが出ているはずでありますし、借款の返済の問題やいろいろ、ケニアがそんなに豊かな国じゃないということもわかっているわけでありますし、JBICが初めからきちっと一期、二期分を合わせた工事を提示しているはずでありますね。
 だけれども、今環境面とかおっしゃいましたけれども、そんなに環境面がひどくなるわけではないわけでございまして、かなりうまくやっている。何しろ乾燥地帯なものだから、大きな導入路が、進入路ができているわけですけれども、それに水まきをやるんですね。大変なものです。大変な気配りです。それから、地域の皆さんに水道から出るような水を提供したり、そして、ケニアの現地の皆さんも、よく工事のことも知っている。
 そういう中で、二年間ブランクにしておいて、そうすると、これは契約上は、相手側の企業に弁済金だとか、それからこれは、ケニアは発電会社、送電会社がございまして、発電はKenGenですね、ケニア・エレクトリシティー・ジェネレーティング・カンパニーというんですけれども、そこにも迷惑をかけているし、そこは発電会社、それから今度は送電会社があるんですね、ケニアに。全部迷惑をかけている。これはどういうふうに補償なさるつもりですか。
古田政府参考人 御答弁を申し上げます。
 御指摘のとおり、一期工事と二期工事と、この両者が完結して初めてこの発電計画が完成するわけでございますので、一期工事で終わりというわけにはまいらないわけでございます。
 御指摘のように、一期工事と二期工事の間に空白期間がどんどん続いてまいりますと、それまでに行った工事の保守でありますとか管理でありますとか、そういったことを継続する費用等、いろいろな追加的なコストの問題もございますし、私どもとしては、そういったこともございますので、先ほど申し上げましたような環境、社会面についてはかなり見えてきた。
 それから、債務返済能力については、IMFのミッションの調査結果等を待って、検討を急ぎ進めたいというふうに考えております。
土肥委員 どうですか、補償しなくていいんですか。私は、何も進出企業を、鴻池組から一銭ももらっていませんからね。鈴木さんは幾らかもらっていたというふうに聞いていますけれども。
 ODAがいろいろなところで仕事をしていて、そして予算を初めから決めちゃって、そしてあらゆるリスクを現場に負わせて、そして二年間ブランクを置いて、環境面だ、金払ってもらえないんじゃないかなんというようなことでは済まない。やはりこれは弁済すべきだと思いますよ。補償すべきだと思いますが、どうですか。
古田政府参考人 御答弁申し上げます。
 現在の一期工事の状況を見たところでは、直ちに補償という問題は生じていないのではないかと思います。むしろ、御指摘のような、二期工事をどのようなタイミングで進めるか、もろもろの、先ほど御指摘に申し上げましたような問題点について、急いで詰めていきたいということでございます。
土肥委員 では、補償を求めていないわけですね。やはりこれは我慢しているんだと私は思いますよ。ドナーが日本で、全部、八五%ぐらい金をつけるという話ですから、余りかみついたら、後よくないみたいな配慮があるんでしょう。
 私は、こういう採算ベースというのはどこにもあるわけで、ケニアの当局の発電会社にもあるわけでありまして、そういうものをきちっと評価して、JBICの詳細なリスクも考えた上での予算をつけるべきだと思っていますよ。
 これで、この額で完成させるつもりですか。これで全部やれということですね。答弁してください。
古田政府参考人 第二期につきましては、先ほども申し上げましたように、一九九九年の九月に、約百五億円を上限とするということで事前通報しておるわけでございますが、その後のいろいろな事情の変更もございますので、今後検討していく過程で、金額を含めましてさらに慎重に検討していきたいと思っております。
土肥委員 ちょっと大臣、ODA改革なんて言っていますけれども、こういう非常にアバウトな、予算の関係もあるからこれでやれというふうなところが見えてしようがないんですよ、ODAの報告書を見ておりましても。どんどん日本の企業が出にくくなっていますね。では、現地の企業がきちっと工事ができるかというと、そうでもない。そうすると、もうこの不景気ですから、泣き泣き日本の企業が応札、入札に応じているというふうにも聞いておりますが。
 こういう、まさに役所的と私言うんですが、これしかないよ、これでやるならやりなさい、やれないならほかにやらせますからというような、そういう契約の実態がJBICの中にあるんじゃないかというふうに思うのでありまして、外務省改革というときに、特にODA改革、相当予算が削られておりますから、本当に安全ないいものを贈りたいと思います、しかし、何かそこに合理性の欠けた、何か民間の弱みにつけ込んだような発注はやめてほしいと思うんです。そういうケースを取り上げたら、もう何十と出てくるんじゃないでしょうか。
 ODA改革についての外務大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 ODAの改革は、外務省の改革の中でも重要な柱の一つだと私は考えております。就任直後に、「開かれた外務省のための十の改革」という紙を出させていただきましたけれども、その中でも一項目、ODAの改革については立てさせていただいておりますし、これは、外務省の経済協力局が改革については非常に熱心に取り組んで、そして今まで成果を上げてきていると思います。
 透明性、効率性ということはODAについては非常に大事なことでして、何か問題があれば、これはそれぞれ、そういうことがないように、いろいろな基準にのっとって、十分に透明性を確保して今やっているつもりでございます。
 ただ、その上で、ODAについては、一件一件、やはり委員が現場を見ていただいたというふうに伺っておりますけれども、それぞれのケースについて、具体的にどういうような状況になっているのかということは、やはりきちんと把握をしていかなければいけないと思います。
 それは、そのようなシステムづくりを今かなりやったつもりでございますけれども、一般論として、私も企業におりましたので、企業と政府の関係ということで考えますと、確かに、政府の方が伝統的に、歴史的に非常に強い立場に日本社会においてはあったということは言えますが、現在、企業も必死になって今改革を進め、生存のためにかけて闘っているわけでございまして、非常に政府の方に問題があれば、これは当然に表にまた出てくるというのが日本の社会のあり方であると思います。
 ODAの改革は、システムの透明性ということと同時に、税金を使っていますから、この税金が効率的に使われるということも重要であり、また、現地の人たちのために適切に使われるということも重要である。そういった観点を踏まえて、改革はきちんとやっていきたいと考えています。
土肥委員 民主党は、間もなく東南アジアにODA関連の視察に参ります。私は行きませんけれども、一つ一つ工事を取り上げて、事業を取り上げて、詳細な視察を一週間ぐらいかけて行くと思いますが。
 こういう議会あるいは外務委員会の仕事というのは、やはり現場に行ってしっかりと調査をしてくる、見てくるということはとても大事なことだと思いますね。逆に、現場の気持ち、あるいはそこに携わっている企業などの努力というものを改めて知るわけですよ。
 そういう意味で、私は、持論として、外務委員会は毎年調査費をつけて、ことしはODAのあそこの工事を見に行こうとかそういうふうなことをやるべきであって、三年に一回回ってくるこの委員派遣というのはやめた方がいい。外務省は毎年やる、今度決議をしたいと思っております。
 外務省の予算が削られておるから、どこから予算をとってくるのかわかりませんが、いずれにしても、それくらいのことを外務委員というのはやるべきだというふうに痛感いたしました。ぜひとも丸投げのODAはやめてください。そして、やはり我々はちゃんとした監視の目を持たなければならない、このように思うわけでございます。
 もう一つ積み残しがあるのであります。それは、いわゆる機密費、外務省の機密費の問題であります。
 外務省改革の全文を読んだわけではございませんので、どこかに書かれているのかなと思いますが、私が見る限りは出てまいりませんので、今、外務省機密費の扱いはどういうルールをお決めになったのか。
 そして、これは田中真紀子前大臣も手がつけられなかった代物でございます。特に官邸機密費とのまざりぐあいなども出てまいりまして、私もそのとき、ああ、これはもう田中外務大臣をしても解決できなかった問題というふうに感じておりまして、相当の圧力が彼女の上にかかったのではないかというふうに思っております。何しろ機密費でありますから、全部言えとは申しませんが、大体どういう会計処理やどういう扱いをしておられるのか、お述べいただきたいと思います。
茂木副大臣 機密費というお言葉でありましたが、報償費の改革、こういうことになると思うのですが、大きな方向として、今三つの改革を進めております。
 まず、報償費の適正な使用を確保していきますために、一昨年から、十万以上の案件につきましては副大臣以上の決裁とする、このような形でやりまして、恐らく私も一週間のうち何回か個別の案件につきまして具体的にチェックをさせていただいております。
 また、報償費の予算でありますけれども、この効率的使用のために、平成十四年度の予算におきましては、前年度比約四〇%減の三十三億四千万円を計上しますとともに、平成十五年度につきましては、さらに絞り込みまして、三十億円の計上といたしております。
 さらに三つ目といたしまして、チェック機能を強化していくために、在外公館の報償費使用に関します証拠書類、これを本省に提出させるとともに、監察査察制度の運用の中でさらなるチェック機能の強化を行っております。
 そして、官邸の報償費との関係でありますが、これにつきましても、総理の外国訪問に関連して内閣官房報償費を取り扱っていた、こういう問題点を踏まえまして、平成十四年度の予算から総理の外国訪問に関するロジ業務関連経費を外務省に一元的に予算計上する等の措置を講じまして、外務省の職員が内閣官房報償費を取り扱わない、このような改善を行っております。
 川口大臣のもとで、この報償費の問題、さらには省員の意識改革の問題、これにつきまして、昨年の八月に行動計画を取りまとめまして、順次このフォローアップを行っております。さらに、ことしの三月には、いわゆる機構改革、これも進めてまいりました。
 我々は、川口大臣がまさに今、改革の先頭に立っている、こういう思いでありますし、機構改革についても、大臣として、局の改廃まで絶対やるんだ、こういう明確な方針のもとで、例えば今の領事移住部を、邦人の保護のために一番大切な部門だ、こういうことで領事局に格上げをする、これをお決めになったのも大臣みずからであります。
 私は、大臣は、外務省改革について、対話と圧力、こういうお言葉を使っていましたが、時には圧力と圧力じゃないか、こう思うぐらいな強いリーダーシップで省内の改革に取り組んでいる、このように理解をいたしております。
土肥委員 私は報償費というのを否定しているんじゃないのです。だけれども、今副大臣は平成十四年で四〇%減らしたと。減らしたからといって自慢することでもないと思うんですね。では、それだけ要らなかったのね、それだけむだがあったのねというふうにもとれてしまうわけです。
 外務省の報償費というのは大事な外交上の費用でありまして、それはまさに機密費と言われているようなところもあるでしょう。あってしかるべきだと思います。だけれども、予算を減らして会計処理をいろいろと変えて、ロジ業務は全部外務省でやるというふうな話になれば、ますますこんなに減らしていいのかなと野党ながら心配をしております。
 一体、報償費が、私に言わせれば、どこに使われてほしいかと言えば、やはり在外公館における情報の収集でありますとか、あるいは今では現地NGOが非常に活発に働いておりますし、あるいは地元企業、現地企業などもあるでありましょうけれども、的確な情報を、大切な情報を集めるという機能、私は、それがやはり欠けているんじゃないかなと。何もスパイを養成しろとか、日本にはCIAはないわけでありますから、必要な場合にはCIA的な機能も在外公館は持つんだと思いますよ。
 だから、本当に出先で仕事をしていただく、そのためには何も四〇%も削る必要はないと私は思うのであります。その辺の外務省の本質的な機能、在外公館の本質的な機能を、極端に言えば、余りやらないのじゃないかと、ちょっと意地悪に聞こえますけれども、それくらい思いたい。
 今後、川口大臣はいろいろと、圧力と圧力というふうに副大臣はおっしゃいましたように、やっておられるようでありますから、むしろ報償費はこう使われていますよというふうなことも公開なさって、機密の部分は出す必要はないのでありまして、少なくとも我々国会議員には知らせてほしい、予算書を見るだけではわかりません。そういう希望を申し上げておきます。
 機密に属することですからこれ以上追及するのはやめますが、やはりここは、予算を減らしたからいいんだというふうなことはやめていただきたい。本当の仕事をしてほしい。そのためには人も雇ったらいいんです。いろいろな人を、人づてに情報は集まるわけでありますから、ぜひ御検討をいただきたい、このように思います。
 ちょっと時間もあれですが、いろいろなことをお聞きしたいのですが、イラクの大使館はもう開設されたと思います。イラクの大使館とORHAの関係、あるいは現地でどんな日本人NGOが活躍するようになったのか、それから安全対策などをお聞きしたいのであります。
 日本もイラク措置法みたいなものをつくるんだというわけでございますけれども、私は、余り先走らない方がいいのじゃないか。アフガニスタンもそうでありますが、やはり治安が非常に悪い。治安が一番必要なんですね。そうすると、治安機能を軍人がやるということは非常に危険だというふうに思います。ニュース報道なんかを見ますと、アメリカの兵隊がフル装備で民衆の中に入っていって、いつでも撃てるような銃の構えをして治安的な活動をしているようでございます。
 五月二十二日には安保理決議一四八三が採択されました。それを見ますと、治安維持というところがございまして、外務省が出されたメモを読みますと、安保理は、当局ですね、米英軍、オーソリティーと言うそうでございます、と協力して、国連憲章及び国連関連国際法に合致して、治安状況及び安定の回復を含め、領土の実効的な統治を通じてイラク人の、これは福祉が出てきますね、福祉を増進することを要請と。ここに、当局という、米軍、英軍のもとでというふうにも言っていいんじゃないかと思いますけれども、しかし、国連憲章とか関連国際法を出したって、当局はそんなことを聞かないと思うんであります。
 今一番必要とされている治安維持のための日本の貢献が求められているというふうにも理解されているわけですが、当面、イラクに対してどういう構えでいるのか、簡略にお述べいただきたいと思います。
安藤政府参考人 大変幅広い項目にわたる御質問でございましたので、どの部分を、すべてお答えするのは必ずしもあれでございますけれども、まず、委員御指摘のとおり、イラクにおきましては治安の問題が一番大きな問題だということは、国際社会の一致した認識かと思います。
 その中で、先ほども委員御指摘のように、先般採択されました安保理決議一四八三におきましては、御指摘の、当局が国連憲章及び他の関連国際法に合致して、治安状況及び安定の回復を含め、領土の実効的な統治を通じてイラク人の福祉を増進することを要請というふうになっておりまして、イラクにイラク人による政府ができるまでの間、治安の確保については当局が責任を持つということになっておるわけでございます。現在、ブレマー特使をヘッドとするORHAが現地にございまして、この治安の問題に取り組んでいるということでございます。
 他方、日本は、このORHAに対しましては、イラクへの支援策の一環といたしまして、人的な協力を発表して、現在、三名の日本政府関係者を派遣しておるということでございます。この三名は、ORHAと密接に連携、調整しつつ、幾つかの分野での活動を行っておりますけれども、一つは、我が国のイラクにおける人道、復興支援や行政支援の基礎となる情報収集を効果的に行うということ、それから、国際協調のもとに支援を行うということ、それから三番目に、イラクの将来ができるだけ早くイラク人自身によって決定されるべきことであるといったような我が国の考え方を反映させるように努めているところでございます。
 それから、ちょっとお話のございました日本大使館につきましては、五月の八日からイラク日本大使館の常駐体制を再開しておりまして、現在、二名が常駐をしております。ただ、二名でございますから、まだその任務は限られておるわけでございます。
 他方、日本のNGO、民間人の方々、こういう方々につきましては、現在、御案内のように、邦人の安全確保といった観点から、イラク全土に対しては退避勧告というのを出しているわけでございますので、原則として日本人の方は現地には赴かないというのが私どもの希望でございますが、独自の判断でイラクに入国しておられる方もおられまして、この方々の全貌というのは私どもはわかりませんけれども、現在のところは、NGO関係者が約八名程度、それに加えまして報道関係者、民間企業の関係者も多数入国している。
 ただ、この方々の安全確保ということに関しましては、私どもまだ、先ほど申し上げました大使館員が十分な規模に至っていないということから、極めて限定されざるを得ないということ、それから、イラク自身においても国際的に承認された統治機構がまだ存在しないということから、邦人の安全を確保するための必要な措置ということについてはなかなか限界があるという状況でございます。
土肥委員 間もなく、我が党の首藤さんがイラクに入ります。したがいまして、また詳しい報告はそこでお聞きしたいと思いますが、一番注意しなきゃいけないのは、やはり治安維持ということですね。これに自衛隊を出す出さないのという論議はこれからでございますけれども、やや警戒をすべきではないかというふうに思っております。何しろ、大使館員は二人であるとか、ORHAに三人であるとかというようなことで、言葉もわからない自衛隊員が本当に治安維持に当たれるのか、しかもフル装備で行くわけですから、そんなことができるのかどうかですね。
 そういう実態を含めまして、五月二十二日に川口外務大臣が談話を出されまして、復旧復興には国際協力が必要だ、したがって、一四八三の趣旨に沿って五千万ドル出すんだということでございます。大変気前のいい話でございます。
 ところが、金を出すときにやはり注意しなきゃならないなと私が思ったのは、先日民主党で、アメリカ大使館の公使以下スタッフをお呼びしまして、そして、アメリカのイラクへの援助という講演を聞いたわけでございます。
 もうすっかりでき上がっておりまして、アメリカの政府では、米国国際開発庁というのが、USAIDというのがありまして、そこが中心になりまして、それで、そのもとに連邦買収規定、物を買い取るFAR、それからいわゆる無償供与というようなことも含めて、この講演を聞きますと、もう既に契約を結んだ企業、プライムコントラクターと言うんですね、もう全部決まっているわけですよ。そして、あと、サブコントラクターを募集します、日本なんか進出したらどうですかと。
 外務省に「U.S.Assistance for Iraq Prime Contractors and Grantees」というペーパーをお渡ししております。もう予算も決めている、そして契約をした企業があって、そしてホームページが書いてあって、そしてそこにアクセスして、出てきたい人はどうぞというわけでございます。
 例えば、シーポートといいますから、海岸線の港ですね、の工事、あるいはプライマリー・アンド・セカンダリー・エデュケーションですから、義務教育でしょうか、小中の教育問題、教育の契約、これも全部もうここで出ております。例えば空港をどうするかと。エアポート・アドミニストレーションとなっておりまして、スカイリンク・エア・アンド・ロジスティック・サポートという会社が、もう予算も含めてここに書いてあります。着手金は大体何ミリオンダラーですよ、最高額は何ミリオンダラーまででやってくださいと。
 こういうことがもう既に横行して、横行してと言ったらおかしいですね、始まっているわけですよ。グラントという無償供与もございます。子供を学校に行かせるようなものもありますし、健康政策もあるわけでございます。
 日本は五千万ドルお出しになる。出して、どういうふうに使うんでしょうか。相手方のどういうところに使うんでしょうか。
茂木副大臣 今、委員の方から、在京のアメリカ大使館の公使の発言について御意見があったわけでありますけれども、この発言につきまして、外務省として説明する立場にはないわけでありますけれども、私も先日、イラク・バグダッドの方に行ってまいりました。そこで、実際に、ORHAの関係者であったりとか、国連の機関の代表の方とも会ってまいりました。
 そこで、現実としてありますのは、何か、アメリカの例えば国際開発庁、これがすべての復興支援の取り仕切りを行っているとか、すべての施設についてもう手をつけているとか、こういう状態でないのは確実なところだと私は思っております。電力の分野においても、それから病院においても、学校等におきましても、さまざまなニーズがありまして、それを国際社会が協調してどういった形で復旧していくか、こういうことが極めて重要なんだと思っております。
 例えば、プライマリーエデュケーションとお話をされていましたが、恐らく、イラクで小学校が八千校くらいあるんだと思います。そのうち五千校につきましては何らかの形の修復が必要だ、これは間違いない事実でありまして、例えば、下水のシステムが悪いために学校の庭にまで水が入ってきているとかトイレが使えない問題、それから教室がいろいろな意味で施設的に老朽化している、こういった問題につきまして、これは国際機関も、そして各国の協力も必要だ、こんなふうに考えております。
 そこの中で、先日大臣の方から発表させていただきました五千万ドルでありますけれども、一つ大変重要なニーズというのは、治安と並んで雇用という問題になってくる、こんなふうに考えております。
 失業率が、なかなか現状で統計をとるのは難しいわけでありますが、相当高い中にありまして、UNDPと日本が協力をいたしまして、イラクの復興雇用計画、こういうのも進めてまいりたい、これに約六百万ドルを支出する予定であります。これは、例えば瓦れきの除去であったりとか建物の簡単な修復、こういう工事を現地の人にやっていただく、こういう形でありまして、これにつきまして、一名を一カ月間雇用という計算でいきますと、日本の支援として、約三万五千人の雇用を創出することができる、こんなふうに考えております。
 また、イラクの初等教育につきましても、大体一千万ドルをこれに使わせていただきまして、学校の修復そして文房具の提供等々を行うということによりまして、イラクの子供たち百万人に対しまして、そういった改善の支援の手助けを日本としてさせていただく予定であります。
土肥委員 いや、それはいいんですよ。だけれども、まさか日本人が、直接向こうで、五千万ドルを片手に持って失業者を集めたりなんかするわけじゃないので、このお金はどこに入れるんですか、どこの部署に会計上入れて、そしてそれをだれがどう使うんですか。
茂木副大臣 今も若干申し上げましたように、例えば雇用の関係でいいますとUNDP、国連の開発計画、こちらの方に資金を拠出させていただく。もちろん、日本政府とそしてUNDPで緊密な連携のもとに事業については進めていく、UNDPからの事業、こういうことになるわけであります。
 しかし、日本政府としてきちんとこの事業にコミットしているんだ、そういうことを、例えば瓦れきの除去であっても、その場所に日本の旗を立てるとか、そしてまたその作業をする人に日本のマークの入ったTシャツを着てもらうとか、きちんとわかる形でやっていきたいと思いますし、同時に、NGOを使うということになってきましたら、日本のNGOが優先的に参加できるような形もとっていきたい、こんなふうに今考えております。
 雇用促進に関しましてはUNDP、そしてイラクの初等教育に関しましてはユニセフと協力をさせていただく。恐らく今後、日本がかつて円借案件としてつくりました病院等、これも修復というニーズが出てくる可能性がございます。こういうことになってきますと、UNDP、さらにWHO、こういうところとも協力をしていくことになると思います。また、水、衛生、こういった分野になりますとユニセフとの協力、こういうことが当面主流になってくるのではないかなと考えております。
土肥委員 先ほど御紹介いたしましたアメリカ大使館が出した文書に、非常に興味深いことが書いてあるんです。サブコントラクターに入るには、イラクへの武力行使に賛成した同盟国からの企業を歓迎していると書いてあるんですね。ですから、これから企業も入っていくわけで、政府の援助だけではないわけでありますが、この点の認識は、外務省としてどれくらい持っていらっしゃるんでしょうか。
茂木副大臣 下請の契約につきましては米国以外の国の企業に対して開かれている、このように承知をいたしております。
 ただ、改めてちょっと御説明を申し上げたいのは、すべてUSAIDがやっているわけではなくて、まだUSAIDだけではとてもやれない分野が、電力においても、病院においても、いろいろなところについてあると。それを、例えば国際機関と協力をする、また多国間で協力をしていく、さらには、ヨルダンであったり、エジプトであったり、そういう周辺国とも協力をしながら進めていく、これが基本的な日本の考え方であります。
土肥委員 やはり、民間がこれから入るとすれば、やはり構えをつくって、そして、日本企業の保護でありますとか指導でありますとか、そういうこともしないと、準備をしないといけないんじゃないか。活気ある企業だったら、ぜひやっていただいたらいいわけですよ。
 今ユニセフの話なんかが出ましたけれども、アメリカがやっているグラントと全く別でやるわけだろうと思いますが、全部ではない、もちろん全部ではないと思いますが、こういう手法というのは、いかにもアメリカ的手法だというふうに私は認識しております。ですから、これからの復旧復興事業というのはこういうシステムもあるんだなというふうに思いまして、改めて申し上げた次第でございます。
 やはり、日本の企業が出たいと言ったときに、おまえ、危ないからやめておけとか言うんじゃなくて、きちんとしたガイドラインを示して、それも、何も、保護的だけではなくて、やはりそういう積極性を理解した上でのガイドラインなどもおつくりになっていただきたいというふうに思います。
 次に、やはり、イラク戦争を通じて、一体これは戦争なのかということから始まって、ブッシュは、最後には、個別的自衛権の発動だと言ったわけでありまして、紛争にはいろいろあって、報復とか復讐だとか、私たちは簡単に戦争と言っておりますけれども、これは戦争じゃないんじゃないかというふうに私は思うんです。
 いろいろと戦争論をしてもここでは実りがないと思いますが、もう一つ、国家主権ということです。例えば、アフガニスタンでは、ビンラーディンが九・一一の首謀者だ、そいつを捕まえるんだということが第一義的でございました。ある意味で警察行為みたいなものですね。そして、アフガニスタン攻撃が始まって、いつの間にかタリバーン政権は消滅するわけでございます。あるいは、このイラクでもそうであります。大量破壊兵器をイラクが出してこないので、それを見つけに行くんだというのが初めでございます。
 ちょっと確認したいんですが、日本政府は、イラク問題について、やはりこの戦争の動機はイラクの大量破壊兵器の破棄と査察、これを名目上というか、そのまま理由にしていらっしゃるのかどうか。
 そして、それが、その政府がいいとか悪いとか、国家主権がいいとか悪いとかというのはあるでしょう、そんな、民主主義であるとか市場経済であるとか、法を守るとか、国際法を守るとか、いろいろなことがありましょうけれども、守らない国なんて幾らでもあるわけでございます。そして、そういう国々に対しては主権を侵してもいい、あるいは国家機能を変えてもいい、そういうふうに理解されるわけでございます。
 日本政府は、総理を初め、もうアメリカに早々とメッセージを発して、そして、アメリカ流に言わせれば、武力行使に賛成した同盟国と、小泉さんがビジネスマンとしてこういうところまで考えたかなと思うのでありますけれども、私は、国家主権というのは一体何なのかと。そして、こういう形で主権を変えることがこれからずっと起こるのかどうか。これは非常に大事なことでありまして、政府のみならず、国会議員はよく考えておかなきゃならないことではないのか、そういうふうに思っております。
 さて、こういうやり方、国家を外部の武力でもって変えてしまって、新しい政府を、それは何であれ新しい政府をつくるというやり方について、外務大臣はどういう感想をお持ちですか。
林政府参考人 いささか国際法上の問題でございますので、私の方から御答弁させていただきます。
 ただいま例としてお挙げになりましたアフガニスタン、それからイラクの場合と、それぞれ武力の行使につきましての根拠というものは異なっております。アフガニスタンの場合には、御案内のとおり、九・一一を受けまして、米英等が、国連憲章の五十一条でも確認されております個別的及び集団的自衛権を行使して武力を行使したということでございますし、イラクの場合には、一連の関連の安保理決議に基づいて武力を行使したということで、御説明しておるとおりでございまして、このように、いずれにいたしましても、現在の国際法のもとにおきまして正当と認められております形での武力の行使が行われたというのが政府の認識でございます。
 そのような正当な武力の行使が行われた場合に、その武力の行使の限界といいますか、範囲というものが、それでは他国の領域に及ばないのか及ぶのかということにつきましては、これはそれぞれの必要性の限度におきまして他国の領域に及ぶこともある。自衛権の行使の観点から侵害を排除するために必要であれば他国の領域に及ぶこともあるというのがアフガンの例でございますし、安保理決議の履行のために必要であれば他国の領域に及ぶこともあるということでございます。
 その結果といたしまして、今土肥先生の方は主権が変更ということをおっしゃいましたけれども、必ずしも主権というのは、いろいろな意味がございますけれども、国家の主権というものが今回変更されたというふうに私どもは考えておりませんが、主権という権能を執行する政府が変更を受けたといったことを指しておられるんだろうと思いますが、それはあくまで、イラクの場合におきましては、この決議の目的を履行するために必要な武力行使を行った結果として政権が崩壊したということであるというふうに認識いたしております。
土肥委員 恐ろしい条約局長の話で、じゃ、アメリカは自衛権の発露としてイラクに戦争をしかけた、何を自衛しようとしたのかよくわかりません、この議論を一時間ぐらいしなきゃいけないわけであります。
 それから、安保理決議は、一四四一のことか、その前の二つの、六七八、六八七ですか、だと思いますが、結局、日本政府も言っていた、一四四一を上回る戦争着手の決議を出すべきだと言っておりましたですね。そういうものも十分な議論をしなきゃならない。では、もう自衛権であればどことでも、地球の裏であろうと隅であろうと、何でもやれるというようなことになりかねない今回の二つの事例だと思っております。これはまた後ほど機会をとらえてやりましょう。
 それで、結局、アメリカの経済、そして軍事費の圧倒的な圧力の前にアフガニスタンもイラクもつぶれたわけですね。だから、これは戦争じゃないというんです。私、いろいろ調査室に無理を言いまして、イラク、アフガニスタン、北朝鮮のGDPの差、あるいは軍事費の差などをお聞きしました。
 大変苦労をかけたわけですけれども、イラクに対してはアメリカは三百六十二倍のGDPを持っているわけです。あるいは、例えば、北朝鮮などは、これは統計が非常に不安定ですけれども、北朝鮮のGDPの六百四十二倍のGDPを誇るアメリカ、こういう圧倒的な軍事力を持つ者が、自衛権、そして安全保障理事会の結論で主権をひっくり返すことができるとすれば、私は、これは恐ろしい話だというふうに思うんです。
 日本も、日本には主権があるのかなと思ったりもします、ちょっとこれは皮肉っぽい言い方ですけれども。日本の主権が侵される日のないことを願って、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
池田委員長 次に、藤島正之君。
藤島委員 自由党の藤島正之でございます。
 まず最初に、質問通告はしていなかったんですけれども、沖縄の海兵隊の削減のニュースがあったものですから、これは大事な問題なので、最初にその点についてちょっとお伺いしておきたいと思います。
 今約二万人のところを一万五千人削減していく、五千にしようという話なんですけれども、そうなりますと、沖縄における米軍基地のあり方がまるでがらりと変わってくるんですね。今、普天間の飛行場の移設の問題もあるわけですけれども、そのほかSACOの問題にしてもこれはがらりと変わってくる。
 私は、もし今のこの報道されていることが事実であるとすれば歓迎すべきことだと思っておりますけれども、外務大臣は、立場上、もしこれが事実であるとすれば歓迎すべきと考えるのか、あるいは我が国の安全保障にとって大変困ったことだというふうに考えるのか、あるいはアメリカがやっていることだからこれはアメリカにお任せしておくだけでいいのか、その辺はどういうふうに考えておられますか。
川口国務大臣 これは、先ほど別な委員の御質問がございまして、お答えをさせていただきましたけれども、報道があったわけでございますが、これについて私どもにそういう話が米国政府からあったということではない。これについて照会をしましたところ、これは事実ではないということでございました。いずれにしても、これほど報道されるような大きな兵力構成の変更、こういうことが日本政府と相談もなしに行われるということではない、私はそういうことは考えられないと思います。
 それで、したがいまして、事実だったらどう思うかということでございますが、事実関係はそういうことでございますので、だからどうだということについてはお答えができないということです。
藤島委員 仮定の話に答えられないということなんでしょうけれども、先ほど申し上げたように、これは沖縄における米軍基地のあり方について本当に重大なものになって、御破算になるぐらいなんですよね、今考えている普天間の移設の問題から全部、SACOの問題。
 ですから、アメリカでこれだけの報道がなされるということは、全くその事実がないとも言えないような感じもするものですから、今ここで議論してもしようがないんですけれども、十分本当に連絡をとっていただかないと、沖縄にいろいろな投資をしたのが本当に全くむだになりかねない、税金がむだになりかねないわけですね。我々は一生懸命、移設の問題からSACOから推進してきたわけですけれども、それが全く本当に水の泡のごとくなって、税金のむだ遣いになるということなので、本当に十分連絡をとり合っていただかないといかぬ、こういうふうに思っております。その問題はまずそのままにしておきまして。
 あと、法務省の方にちょっと来ていただいていますけれども、難民認定の問題なんですけれども、青山さんのニュースがこれは随分大々的に出ているんですけれども、この点について、難民の認定は一割認定とか何か言っています。この実態はどういうふうに今までなっておるんでしょうか。
増田政府参考人 難民認定の状況の全般についてでございますか。
 今の難民認定制度は、昭和五十七年に発足いたしましてこれまでにおよそ二十年ぐらいですが、申請者がトータル二千七百八十名余り、それで難民として認定された者は三百名余りでございます。
 これは、単純に認定率として計算しますと、ただいま委員一割とおっしゃいましたが、一三%ぐらいになりますが、我が国では、それとは別に、難民でなくても難民申請された人で特に情状にかんがみ我が国で庇護していいだろうと思われる人に対しては法務大臣が在留特別許可をしております、不認定にした人に対しても。
 そういう意味では、そういうことで庇護された人を含めますと、難民認定申請のおよそ二五%の人が、認定されているか、あるいは不認定でも庇護されているかという状況にございます。
藤島委員 この問題は、法務委員会の方に今改正法が出されているわけですけれども、それはそれとしまして、東京の入国管理局が青山さんについて何か報告書を出したのかどうか、この点についてお伺いします。
増田政府参考人 御質問は、個別の案件についてのお尋ねでございますけれども、個々の難民認定の事案につきましては、その申請の有無を含めまして、申請人あるいはその申請人の家族その他の親族などの生命あるいは身体の安全の確保をしなければいけませんし、あるいはプライバシー保護の必要もございますので、具体的なお答えは差し控えさせていただきたいと思います。
藤島委員 確かに、今おっしゃったような理由があるので具体的な案件について余り公にすることは望ましくないという点はわかるんですけれども、この青山さんについて言えば、実際問題としてもうかなり公になっているんですね。
 ですから、普通の一般のケースの場合の今の理由と、この方の場合、民主党の方でも国会に招聘していろいろな意見を聞いたりしておるわけですね、この外務委員会でも実は参考人で意見聴取しようとした際に与党の反対で結局できなかったというようなこともあるのですけれども、かなりもう公になっているので、一般的に今法務省の方のお話のケースとは違っているんじゃないかなと。
 内部調査なんですかね、調査報告書をまとめたというのが報道されているわけですけれども、内部の中でもこういうことがあったのかどうか、こういうことも、これは別に言ったからといって、今の公表できない理由とはちょっと違うんじゃないかと思うんですけれども、この辺はどうなのでしょうか。
増田政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますけれども、どの人物が難民申請をしている、したがって、それに対してどの事案について入管当局が審査を行っているのかということを公表いたしますと、その人あるいはその親族なりその他関係者なりの生命、安全などに危害が及ぶおそれがございますので、繰り返しで恐縮ではございますけれども、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。
藤島委員 これ以上追及しても同じようなお答えしか出ないのでしょうけれども、私は、もし報道が事実であるとしますと、やはり北朝鮮に対して、迫害している国だ、だから帰せないんだ、そういう国なんだということを我が国としてはっきり認定するというか、北朝鮮に対して、そういう意思を明確にするということになるわけですね。
 そういう意味で、私は、これは外務大臣がいつもおっしゃっているように、いろいろな、あらゆる手段を考えてできるものはやるんだということをおっしゃっているわけですけれども、これもまさに一つの大きなメッセージを送ることになる、そういうふうに考えるのですけれども、外務大臣はどういうふうにお考えになりますか。
川口国務大臣 これは法務省の御所管で、その法務省が、そういった申請があったかどうかということも含めて何も言えないとおっしゃっていらっしゃいますので、それ以上私の立場からこの件について申し上げることはできないと思います。
 ただ、一般論として申し上げれば、難民申請についてどうであったかということについての判断、これは法律に基づいて法務省において適切に、適正になさっていらっしゃると思いますので、要は、特定の案件についてそういう条件があったかどうかということであると思います。
 ただ、さらに一般的に申し上げれば、これはずっと申し上げているように、いろいろな折に北朝鮮に対して我が国が思うことを適切なメッセージということで伝えていくということは大事なことだと考えています。
藤島委員 一般論のまた一般論になるかもしれませんけれども、要するに、それじゃ、青山さんという名前は法務省の方も先ほど言ったようなことでなかなか挙げられないとすれば、一般論として申し上げて、脱北者、これは帰れない、この青山さんのは特に問題が多いのは、いろいろなことを言っちゃっているものですから、帰ったらもうほとんど処刑されるだろうということがあるわけです。
 背景にそういうきつい環境があるというのがあるわけですけれども、要するに、それもおいておいて、脱北者というような方でこういう厳しい状況な方にあるケースとして、仮定といえば仮定なんですけれども、難民を認定するということは大変有効な一つの手段だと私は思うわけですね。それは、先ほど申し上げたように、外務大臣はいつも、いろいろな手段、考えられるのをやっていくという中でも、かなり有効なメッセージを送ることになると思うんです。
 これは本当に一般論ですけれども、一般論化した場合に、こういうケースをやるということは、私は今申し上げたように強烈なメッセージを送ることになると思うんですけれども、外務大臣は、それはどう考えますか。
川口国務大臣 先ほど、一般論のまた一般論というのは本当に広い意味で申し上げたわけでして、難民の問題、これについては、どういう形であれ、先ほど法務省からお話のあったような本人の生命や親族の生命と安全にかかわる問題が出てくるわけですね。そのことは大事にすべき要素であると私は思っています。
藤島委員 委員長、これは答えになっていないんですけれども、どうしますか。もう一度、外務大臣。
 そこを聞いているのじゃないんですよ。要するに、脱北者、帰ったら大変厳しい状況になる。そういう人に対して難民認定をするということは、北朝鮮に対して我が国の態度を厳しくアピールすることになる。それはいろいろな手段に対して、北朝鮮に対してやろうとしていることの一つとして有効な手段である、ここは一般的に言ってですね、私は考えるわけですけれども、それに対して外務大臣はどう考えますかということなんですよ。
 個人名を公表するとどうだとかというような問題は、先ほど法務省に聞いてそれはいいんです、そういう事情もわかりますけれども。ですから、一般論として有効な手段と考えるのか、あるいは、そんなことをやってもしようがないと考えるのか、コメントできないというのか、そこを伺っているわけですよ。
川口国務大臣 先ほど、その個人の生命あるいはその親族の生命、安全、それが重要だということを申し上げた意味は、したがって、そういうことはできないであろうというふうに考えますということでございます。
 一人の難民の方の申請の有無についてもおっしゃらないということの考え方で日本政府はいるわけですから、それがあったかどうかということは言えない、そういうことであると思います。
 したがって、広い意味でいろいろなメッセージを送ることは大事というのは、それ以外の分野で使えるメッセージは全部使うべきだと思いますけれども、ここについてはできないのではないかというふうに思っているということです。
藤島委員 私は、法務省はああいうふうに控え目に言っていますけれども、実際これは事実だろうと思うんですね。この報道は事実だと思うんですよ。
 それはそれとして、個人名でなくして、何回も聞きますけれども、一般論として、脱北者が帰ったら大変厳しくなるであろう、したがって難民認定をすべきである、そうすることによって結果的には非常に強烈なメッセージを、北朝鮮に我が国政府の態度をはっきり送ることになる、そういうことについてどうですかということを伺っているんですから、逃げないで、そこは、大変いいメッセージだと言うのならそうであるし、こんなものはいろいろな手段の中の一つにもなりゃしないと言うのならそれも答えとして一つ。そこを伺っているわけですよ。
川口国務大臣 非常に明快にお答えをしているつもりなんですが、手段として使えない手段は、それは手段ではないということでございます。
藤島委員 何かよくわからないんですけれども、これは手段にはならない、難民を認定しても全然メッセージにも何にもならない、こういう意味なんですか。手段として使えないものは手段にならない、それは当然のことなんです。そこのところの答えは全然理解できないんですけれども。
川口国務大臣 仮に法務省において、個別な名前は挙げないまでも、北朝鮮出身の方が難民の申請を行い、難民として認定をされたということを発表なさるのであればそれは別ですけれども、先ほど来お聞きでいらっしゃるように、法務省、これは所管は法務省でございます、その考え方として、そういうことはできない、申請があったかどうかということも含めて言わないということがお立場であるわけでございますから、したがって、私としては、手段としてこれを使うことはそもそもできないというふうに先ほど来申し上げているわけです。
藤島委員 もう一回法務省に聞きますけれども、これは、現在認定の申請手続中だから公表とかなんかできないのか、あるいは、認定してしまったときにある確認があったときには確認もしないのかどうか、全くできない、こういうことなんですか。
増田政府参考人 まず、お尋ねの、認定申請中だから答えられないのかという問いに対しては、答えはノーでございます。申請しているかいないかを含めて答えないということでございます。
 それから、後段のお尋ねです。申請の結果が出た後にはそれでは答えるのかという御質問であろうかと思うのですが、難民認定の申請が出て答えが出た場合、法律の規定に従って認定した場合には本人に対して難民認定証明書を交付しますし、不認定の場合には、これこれの理由によってあなたは難民とは認めないということを告知いたします。それは本人に対して告知することですが、それ以外に、一般に、だれに対して、難民認定申請に対してどういう処分をしたということを公表することはいたしておりません。
 それは、そのようなことを事後的であれ公表すると、どの人がどの国から自分は迫害を受けたということを訴え出たという事実が明らかになりますから、そうすると、事後的であれ、訴え出た申請人あるいはその家族あるいはその関係者、そういった人の生命、身体の安全を害するおそれがございますし、あるいはプライバシーを侵害するおそれもありますので、それらを考慮しますと、それはやはり対外的にも、一般に公表するのは好ましくないという考えでおります。
藤島委員 よくわかりました。
 要するに、本人は事実として認定されるわけですから、日本政府としてはそういう事実をはっきりするわけですね。本人の了解を得てマスコミがそういう事実を公表することは自由なわけですから、そうすれば北朝鮮に伝わるわけですね。もしこの青山さんであれば、私は、青山さんはマスコミがきちっと言うことに何の異議も唱えない、北朝鮮に伝わると思うんですね。
 要するに、私の言いたいのは、公表するしないじゃなくて、こういう方を日本政府が難民としてきちっと認定したという事実が北朝鮮に伝わることによって強烈な我が国政府の態度を示すことになるんじゃないですかということを申し上げているので、手段として云々という外務大臣の答えはすれ違いであって、私の質問に対する答えになっていないと私は思いますけれども。
川口国務大臣 これは法務省の御所管のことでございますので、法務省としてそういう御判断であれば私としてそれ以上申し上げることはないわけでございまして、仄聞をするところによりますと、森山法務大臣も、そういう形でマスコミの報道があったということについて、どういうお言葉を使われたのかわかりませんけれども、そういうことがあってはならないという趣旨のことを記者会見でおっしゃられたというふうに聞いております。外務省の立場としてこれについて何か申し上げるということではないと思います。
藤島委員 全然私の答えになっていないんですね。そういうことを聞いているわけじゃないんですね。外務大臣は常日ごろから、北朝鮮に対しては、拉致問題を含め、いろいろなことで、きちっと我が国政府の毅然とした態度を明確に伝えないかぬということをおっしゃっているわけですね。難民認定を脱北者に対して初めて、多分初めてになるんでしょう、行うということは、そういう意味でメッセージを、我が国政府の態度をきちっと送ることになるんじゃないですかと、そこを聞いているわけですよ。この事実が、こんなことはあっては困るとか困らないとか、法務大臣が言ったとか言わないとか、そういう問題じゃないです。外務大臣として、対北朝鮮外交をつかさどる者としてどう考えますかということを聞いているわけですよ。
 それに対して、いつも外務大臣はそうなんですけれども、いろいろな理由は述べますけれども、結論の部分は逃げているだけなんですよね。大変いいメッセージになると思うのなら、そう答えればいいんじゃないですか。ならないと思うのなら、ならないんだ、こんなものはメッセージにも何もなりゃせぬ、我が国の意思を伝えることにならない、こう言うのならそれも答えだと思うんですね。私は前者だと思いますけれども大臣はどうですか、そこを伺っているんですよ。
川口国務大臣 これ以上どのようにお答えをしたらいいのか非常に悩みますけれども、法務省が、難民認定があったかどうかも含めて、一切公表しないとおっしゃっているわけですね。公表しない以上は、政府として、そういうことがあったかどうか、これは外務省といえども、総理大臣といえども確認はできないわけです。したがって、それを日本政府として手段として使うということはあり得ないということを申し上げているわけです。
藤島委員 その点は、事実として認定が行われればそれがメッセージになるんじゃないですかということを言っているわけですよね。これ以上言っても答えは出てこないと思います。
 あと二分ぐらいなんですけれども、国土交通省に来ていただいていますので。
 万景峰号の安全検査ですけれども、これについて、やったことがあるのかどうか、今回やるのかどうか。これも、関係省庁、今いろいろやっているようですけれども、これはまた次の機会に聞きますけれども、せっかく来ていただいていますので、その点について、これまでの事実関係と、今回それをやるのかどうか、また、今回に限りやることはどうしてそういうことになったのか、それを伺って、質問を終わります。
金子政府参考人 お尋ねの万景峰号でございますが、ポートステートコントロール、PSCと申しますけれども、これは、新造されましてから一年目の一九九三年に一回やってございます。今回、私どもも入港の情報に接しましたので、その入港に際しまして、再度PSCを実施する予定でございます。
 以上でございます。
藤島委員 ぜひきちっとやっていただきたいと思います。
 質問を終わります。
池田委員長 次に、松本善明君。
松本(善)委員 日米首脳会談後の日朝交渉についてお聞きをします。
 先ほど来、両同僚議員からも、政府部内ではいわゆる対話派と強硬派の対立があるということについて聞かれていました。これは何も最近だけじゃなくて、やはり安倍官房副長官と田中審議官を中心とする間で対立があるということはずっと広く前々から報道されているわけです。
 今回は、川口外務大臣、竹内事務次官、田中審議官、これのグループと、それから安倍副長官、茂木副大臣、海老原北米局長、こんなことまで、名前も挙げてそういうことが言われているわけですよ。これは笑い事じゃないですよ。実際そういうことがあったら大変なことなんですよ。だから実際はどうなのか、川口外務大臣からお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 私は、そもそも対話派と圧力派という違いがあるというふうに全く思っておりません。日本政府の基本方針は、対話と圧力ということが基本方針で、圧力というのは、そもそも対話を進めるための、平和的に、外交的にこの問題を解決するための手段であるわけです。対話、圧力、この二つが対峙する考え方ではない。
 いつ、どのような、圧力という言葉を使っていただいても結構ですし、あるいは働きかけという言葉でもいいですけれども、対話を容易にするためにどのようなほかの手段を使って対話を進めていくかということであるわけですから、圧力派ということで何を意味していらっしゃるかよくわかりませんが、圧力をかけること自体が目的では当然ないわけです。したがって、対話と圧力という意味で、これは一緒の、一つの、ワンセットの考え方であります。
 これは、別に北朝鮮の話に限ったことではなくて、すべて、いろいろな交渉の状況の中で、これはその二つを、ペダルをうまく踏んでいくということでございますし、北朝鮮との関係においても今までもその考え方でやってきているわけです。
 それは例えば、NPT脱退のときにIAEAに持っていき、IAEAから国連に送ったということでもそうであるわけですし、国連の人権の委員会の特別作業部会で議論をしていただいているとか、あるいはG8の外相会談でこれを言っているとか、それはすべてそういうことでございますから、考え方としては、いつ、どのような状況のときにいかなる手段を使うかということの問題でありまして、総理が基本的な考え方を対話と圧力という形で明確におっしゃったということだけでありまして、考え方自体は前からあることでございます。
    〔委員長退席、土肥委員長代理着席〕
松本(善)委員 安倍副長官と茂木副大臣、同じなら同じだと一言でいいです、違うなら答えてください。
 まず、安倍さんから聞きましょうか。
安倍内閣官房副長官 政府においていろいろな政策を決定するに当たりまして、いろいろな議論が起こるのは当然でございます。それは各政党においてもいろいろな議論があると思いますし、共産党でもあるんでしょうけれども、まあ共産党の場合は余り表には出ませんが、政府の中でそんな議論があった上で総理が決定を下される、また外交の責任者が決定を下されれば、その方向に政府一丸となっていくというのは当然でございます。
茂木副大臣 川口外務大臣、安倍官房副長官と全く同じ意見であります。
松本(善)委員 私は、同じならそれでいいんですけれども、やはりこういうふうに報道されているのは何でなのかと。やはりそういうことがないようにすべきだと思うんですよ。私は、そうすると、やはり安倍さんにかなり責任があるんじゃないかなという気がするんですけれども。安倍さんの外交問題にかかわる立場と権限、外務省との関係を聞きたいと思います。
 時間の関係で、私が官房等を調べたところでいえば、安倍副長官は、日朝国交正常化交渉に関する関係閣僚会議専門幹事会の議長と、北朝鮮による日本人拉致容疑事案問題に関するプロジェクトチームの主査と二つの立場をお持ちです。後の方は外交問題に関係しませんが、前の方が外交問題に関係する。このメンバーは、副長官と、谷内副長官補と、それから外務省はアジア大洋州局長と、そのほか関係各省の局長クラスということだということであります。
 そのとおりならそのとおりで結構でお答えをいただきたいのでありますが、もし、しかし、この専門幹事会の議長ということなら、そこで得た議論は、外務省との関係ではどうなるんですか。そこを、二つをお聞きしたいと思います。
安倍内閣官房副長官 私も、対話とそして圧力という立場であることには全く変わりがないわけでございます。私の日ごろ主張していることは共産党の御主張とは大きく隔たりはあるかとは思いますが、私は対話、圧力、一辺倒ではないわけでございます。
 私の立場でございますが、私は内閣官房副長官でございますので、官房長官を補佐しておりまして、北朝鮮外交を含む内閣の重要政策にかかわる企画立案の過程において意見を述べる立場にあるわけであります。
 また、私は、日朝国交正常化交渉の円滑な推進及びこれに関連する諸問題に対処する目的で開催される日朝国交正常化交渉に関する関係閣僚会議を主宰する内閣官房長官から命を受けまして、拉致問題に関する専門幹事会の議長を務めているわけでございまして、かかる立場から私は発言をすることがある、こういうことでございます。
 対北朝鮮外交は、政府全体として取り組むべき重要な課題であります。総理また私も含む官邸と外務大臣との間におきましても、しかるべく情報の共有及び意思統一を図っていきたい、このように思っております。
松本(善)委員 私は、内部で政策論議をするのはもう当然で、意見が違っても当然だと思う。私たちの党の中だって同じです。だけれども、決まったことをだれが言うのか。ばらばらに言うと今回のようなことになるんですよ。私は、率直に言って、官房副長官が発言を控えるべきじゃないだろうか、出た結論はやはり外務大臣が言う、外務省が責任を持っているんではないかと思うんです。
 それならそういうふうにすべきではないかということ、これが一つと、ちょっと聞きますが、それからちょっと先ほども、名前を出さないで聞かれていたようですが、これはもうはっきりした方がいいと思いますので、拉致被害者の家族会と救う会が田中外務審議官と平松北東アジア課長の更迭を要求する声明を発表したと報道されていますが、これについてどう考えるのかということを聞きたいと思います。
安倍内閣官房副長官 私に発言を控えろという御発言でございますが、私は今まで政府方針に反する発言をしたことは一回もないわけでありまして、私は、総理が首脳会談の中でおっしゃったことを政府を代表してブリーフィングしたということでございます。それが総理がおっしゃったことであり、そしてそれが政府の方針であるということでございますから、まずその誤解を解いていただきたいというふうに思います。
 また、今御紹介がございましたことについては、私はまだ詳細を読んでおりませんが、それはその救う会等々のお考え方なんだろう、こう思います。
松本(善)委員 私はやはり、こういう報道がされるということ自体について、外務省と官房の間で反省し、そういうことがないようにすべきだと思います。
 人事の問題についての救う会などの声明について、外務大臣、どうお考えになりますか。
川口国務大臣 人事の問題について、これは私が人事権を持っておりますけれども、今回のことに関して、私は、人事権者として処分をするなりあるいは更迭をするなり、そういうことをしなければいけない理由があるとは全く思っておりません。政府の方針に基づいて関係者はきちんと行動したというふうに考えております。
松本(善)委員 それでは、先ほどの対話と圧力の問題で、圧力は何かと先ほども質問がありましたが、これは内容によってはかなり重大なんですね。
 総理は、報道されているところでは、今までと変わりがないとおっしゃったようです。それから先ほどの外務大臣の御答弁も、今までやってきたことと同じだということでありましたけれども、そうなのか。それから、この言葉を使うなという意見があったのかどうか。この二点について外務大臣に伺いたいと思います。
川口国務大臣 対話と圧力という考え方については先ほど申し上げたようなことでございまして、今までもやってきましたし、今後もどういうことを行っていくかは事態の進展いかんということにもなりますけれども、基本的な考え方としてこれは持っている。これは北朝鮮だけではなくて、ほかの外交の場で、外交の基本的な考え方であると思いますので、そういう考え方を持っているということだと思います。
 それから二番目の、後段の方の質問ですけれども、これについて、委員も先ほど来おっしゃっていますように、政府の中でさまざまな意見があるということは、私は実に健康で実に望ましい姿だと思っております。その議論が、外務省の中で、あるいは官邸の中で、そして外務省と官邸の中で自由に、自由な雰囲気のもとで行われる、これが日本の外交が健全であることのまさに証左にほかならないというふうに考えておりますので、そういったことが表に出ることによってそういった自由な議論が何らかの形で制約をされることがあってはなりませんから、私としては、その点についてお答えをすることは控えさせていただきたいと思います。
松本(善)委員 それでは、次に行きます。
 韓国の盧武鉉大統領が香港の五月二十二日付の英字週刊誌のファー・イースタン・エコノミック・レビューのインタビューで、北朝鮮に対する軍事行動に反対する立場を明らかにされたということでありました。「強硬な手段は、対話による可能なあらゆる努力が尽きるまで待つべきだ」「軍事的選択肢に訴えることは、朝鮮半島に住む人々に非常な危険な状況をもたらす。朝鮮半島で再び戦争が起これば、私たちはすべてを失う」と述べて、軍事行動に反対する立場を明確にされました。
 我が党も、経済制裁は安易にやるべきでないと。なぜなら、経済制裁で片づかなければ、制裁という考えでいけば、軍事しかないということになって、最悪の局面を迎えることになるからであります。
 日米首脳会談で合意をされたことは、外務省の訳では「一層厳しい対応」をする、あるいは「圧力」という文言ですが、これは経済制裁の考えがあるんでしょうか。それから、あるいは送金停止なども経済制裁として考えているんだろうか。その中身について具体的にお答えいただきたいと思います。
川口国務大臣 まず、北朝鮮に対しましてさまざまな、麻薬の問題ですとか、幾つかの違法行為があるわけでして、そういったことについて、我が国として持てる手段を使ってきちんと対応していくということは、当然のことながら重要であると思います。そして、このことは北朝鮮に対してのみということではなくて、いかなる、どの国からの違法な行為についても行われるべきことであると思います。
 それから、北朝鮮に対して我々がずっと言っていますことは、NPT脱退等ということを北朝鮮は言っていますけれども、再処理等のさらにエスカレートするようなことがあった場合には国際社会として非常にこれは問題であるというふうに考えているというメッセージを送ってきているわけでございます。
 国際社会として、そういう状況でどのような議論をし、どのような行動をとることが適切であるかということは、まさに万が一そういうことがあった場合に、その時点で考えるということでございまして、我が国といたしましては、そういうことがあった場合には、それは我が国の現行法の枠内で何ができるかということを関係省庁、政府部内で相談をして、判断をして対応するということになると思います。
 それで、経済制裁について、現在我が国としてはそういうことを具体的に検討していることはないということは今まで再三再四申し上げてきているわけでございまして、今、北朝鮮に対するさまざまな対応が非常に平和的に、外交的に行われつつ現在あるわけでございますから、そういったときに、どの国も経済制裁を具体的に考えている国はないというふうに承知をいたしております。
松本(善)委員 経済制裁も考えていないということであれば、もちろん封鎖だとか軍隊による示威とか、そういう武力攻撃に至らない軍事措置ももちろん考えていないということに、各国とも考えていないというふうにお考えですね。
 といいますのは、それは国連憲章四十二条で、武力攻撃には至らない軍事措置という中に、軍隊による示威や封鎖が入っているわけなんです。アメリカは、より強硬な措置、北朝鮮を悪の枢軸と言っていますから、そんなことは、経済制裁も考えていないとすれば、もちろん考えていないというふうに外務大臣は理解をされていますか。
川口国務大臣 これは、よその国がどのように考えているかということについて、日本政府としてそれを云々することは適切ではないと私は思います。
 ただ、私が承知をしている限り、ブッシュ大統領は、すべてのオプションはテーブルの上にあるとおっしゃっていますが、同時に、平和的、外交的な解決に確信を持っているというふうにおっしゃっていらっしゃると思います。
松本(善)委員 前回も川口外務大臣には、北朝鮮外交についての我が党の基本態度を述べながら質問いたしましたが、改めて聞きます。
 簡単に言えば、北朝鮮の安全保障についての最大の問題は物理的抑止力が不足をしているということではなくて、北朝鮮の数々の国際的無法行為が原因で国際的に孤立をしているということ、国際社会は北朝鮮に対して、物理的抑止力論に立った核兵器開発を放棄し、国際的無法の清算で国際社会への仲間にという理に立った外交努力を行うことが必要だということであります。
 また、北朝鮮の安全保障を言う場合に、これを脅かしているものがブッシュ政権の先制攻撃戦略であることは、これはもう言うまでもない。この戦略の拡大、発動の拡大を許さない、国連憲章の平和ルールを再確立することが国際社会に強く求められていると思います。
 北朝鮮が、こうした米国の戦略に対応する際に、物理的抑止力論と核兵器開発という方向をとるならば、それは真の解決にはならない。これは、軍事的対応の強化と軍事攻撃の口実を与えることにつながりかねない、危険きわまりない核カードをもてあそぶ瀬戸際外交だと思う。こういうことはやめて、国際社会への参加という方向に進んでこそ、戦争の口実を与えず、みずからの平和と安全を確保することができるというふうに私どもは考えていますし、これを北朝鮮に理解させることが重要な外交課題ではないかと思いますが、外務大臣、いかがお考えですか。
川口国務大臣 我が国の北朝鮮問題についての基本的な考え方でございますけれども、これは日朝平壌宣言に従い、交渉により、核問題を含む安保問題、そして拉致問題といった日朝間の諸懸案を包括的に解決し、北東アジアのこの地域の平和と安全に資するような形で日朝国交正常化を実現する、そういう方針でございます。
 それで、これが北朝鮮自身にとって利益であるということを北朝鮮に理解させるということが重要であると思います。そして、このためにも、先ほど対話と圧力と言いましたけれども、一定の圧力が必要であるというふうに考えております。
松本(善)委員 包括的交渉というのは大変大事なことで、核問題で解決をすればあるいは拉致問題へ行くかもしれない、同時並行でやることはないけれども、包括的交渉ということが非常に重要だということは私も全く同意見であります。
 前回も議論をいたしましたが、アメリカのイラク攻撃の正当性は私は全くないと思います。フランスのシラク大統領も、正当性を欠いた戦争はたとえ勝利したとしても正当化することはできないと述べて、さらに、戦争は最後の手段でなければならず、今日世界は私たちが戦争に訴えるとしても、単独でなく合意を得ることを義務づけているというふうに述べている。当然のことであります。ところが、ブッシュ政権は、イランをイラク同様に悪の枢軸として非難をし、ワシントン・ポスト二十五日付は、アメリカ政府はイラン政府と接触を断つことを決定したというふうに伝えております。
 イラク攻撃と同じような先制攻撃は絶対許されないと、私は、日本政府はこのことをはっきりアメリカ政府に言うべきだと思う。これを防止しないと、次はイランだ、次はシリアだ、次は北朝鮮だということになる。このこと自体が北朝鮮外交の妨げになり、破局への道になる、そういうことをはっきりアメリカに言うべきだと私は思いますが、外務大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 イランにつきまして、これはこの間のG8の外務大臣会合の場でも十分に議論をいたしました。そして、その中で、イランの行っている原子力関連の活動について各国から懸念が表明をされまして、イランがもっとその透明性を向上させるということが重要であり、IAEAの追加議定書を締結し、そしてそれを実際に実施していくということが大事だということで合意がございます。
 米国がイランに対してどのような政策を考えているかということについて、日本政府の立場で申し上げることはできませんけれども、先ほど来委員がおっしゃっていらっしゃる先制攻撃、これについては、これも何回も申し上げておりますけれども、米国は、先制的に行動をするという言葉を使っていますが、これは必ずしも武力行使を意味するものではないということを言っておりますし、また、武力行使を、そういう相手国に攻撃をする、何という言葉を使ったかちょっとよく今思い出せませんけれども、相手国に入っていく、そういうことの手段にしてはならないということを言っているわけでございます。
 いずれにしても、アメリカ政府は国際法にのっとって行動をする国であるというふうに我が国は考えておりますので、そのような形で先制的に攻撃をするということをイランに対して行うというふうに考えているわけではございません。
松本(善)委員 先制行動と言っているんですけれども、アメリカの政府高官が、それは先制攻撃を排除しないということを言っているので、結論的には先制攻撃というふうに言っているわけです。
 最後ですが、経済学の巨人と言われているガルブレイス教授が「日本経済への最後の警告」、こういう本を出した。お読みになったことがあるかどうかわかりませんけれども、これは小泉首相に哀れなフーバーになるなと警告している。楽観論だけ振りまいていると、いわゆる昭和恐慌の引き金を引いた、悪名を歴史に残したフーバー大統領と同じようになるぞと。
 彼と同じケンブリッジに居を構えて、親交のある、元駐日大使のライシャワー教授、二人の共通の言葉がこの本の訳者の角間さんによって紹介をされています。それは、世界で初めて恒久平和を国是として掲げ、その誓いを誠実に守り抜いてきた日本及び日本人こそ、唯一無二の二十一世紀のリーダーとなり得る素質を備えた国家であり国民であるという言葉です。
 日本は最近その期待に背き始めていると私は思いますが、憲法は厳然として存在する。やはり憲法の恒久平和、紛争の平和的解決という精神を守り抜くことが日本外交の基本的な哲学でなければならぬというふうに思います。
 私は、日本政府は、昨年九月、日朝平壌宣言という道理ある交渉に足場をつくりながら、北朝鮮外交でしかるべき役割を果たしていないというのが事実ではないだろうかと。盛んに行き詰まりが言われています。逆に私は、北朝鮮の脅威をあおり立てて、有事法制の強行にこの問題を利用することによって軍事的緊張の悪循環をつくり出しているんじゃないだろうかと。
 政府は考えが違うかもしれませんけれども、私は、日本政府は昨年九月以来の対北朝鮮外交の問題点の自己検証を行って、否定されるかもしれぬが、戦略なき外交のお粗末などと社説で書かれないようにする、そういう外交努力が必要なんだと思う。
 私は、このことを申し上げて質問を終わりますけれども、もし御意見があれば伺って終わります。なければ終わります。
    〔土肥委員長代理退席、委員長着席〕
池田委員長 次に、東門美津子さん。
東門委員 社会民主党の東門でございます。
 まず、私は、きょうは日米首脳会談について質問をさせていただきます。
 今月二十三日の日米首脳会談は、テキサス州クロフォードの大統領私邸で行われました。我が国の外交にとって最も重要な日米関係、これはもう政府がかなり強調されておられるわけですが、そういう日米関係において、首脳同士が親密になることは大変結構なことであると思います。しかし、その親密さが、我が国が常に米国の意向に沿わなければならないという関係の反映であり、我が国が米国に忠実に従ってきたことの見返りが今回の小泉総理に対する歓迎であるのなら、それは親密さではなく、単なる支配と従属の関係になります。
 米国には米国の外交方針がありますが、我が国にも憲法を初めとする国としての基本方針があると思います。米国の方針が我が国の方針に常に一致するとは限りませんが、そのような場合も率直に自国の立場を述べ、相手の話も十分に聞き、お互いに理解し合うのが真の友情であり、友好国の姿であるはずですね。
 日米関係は、支配と従属の関係ではなく、お互いに対等の立場から言いたいことを言い合える、真に対等で親密な関係なのでしょうかというところ、まず大臣、その点からお伺いしたいと思います。
川口国務大臣 今委員が、日米関係としてこうあるべきだということをずっとお述べになられたところ、これはまさに小泉総理が思っていらっしゃることであると思います。
 日米首脳会談で小泉総理は、まさにそういった考え方、日本とアメリカとは真の友人であり、ブッシュ大統領と小泉総理は真の友人であるということを基本として、それぞれの国益、これには違いがある部分もあるわけでして、そういったことを同盟国としてどのように調整していったらいいか、どのように考えていったらいいかということをお考えになりながら総理はお話をなさったと私は思っております。
 したがいまして、日米関係ということでいいますと、決して日本がアメリカに従属をする関係ではない、まさに世界の中の日米同盟ということが今度のキャッチフレーズといいますか、それを象徴する言葉であると思いますけれども、日米関係が日本とアメリカの関係だけを議論する場ではなくて、世界のさまざまな問題について日本とアメリカで議論をし、いい国際社会をつくっていくための努力をなさった場だと思っています。
東門委員 かなり長くお答えいただいたんですが、私がお聞きしたかったのはたった一点。要するに、本当に対等な立場で言うべきことは言い、そしてノーはノーと言える立場ですねとお聞きしたかったんですね。それだけでよかったんですが、そういうことだと私は理解したということにしておきます。
 今回の日米会談においては、イラク問題についても話し合われたとのことです。米国は、イラクが大量破壊兵器の廃棄に応じないことを理由として武力行使を行い、我が国も、大量破壊兵器の拡散を防止することが我が国を含む国際社会全体の平和と安全にとって極めて重要であるとの立場からイラクに対する武力行使を支持しました、かなり早い時期に。
 大量破壊兵器の問題がイラク問題の最重要課題であったのであり、我が国としても、復興支援云々の前に、当然この大量破壊兵器の問題について小泉総理からブッシュ大統領に聞かなければならないはずなんですが、ブッシュ大統領からは今回、イラクの大量破壊兵器について何か説明があったのでしょうか。あるいは、ブッシュ大統領からでなければ、小泉総理の方から大量破壊兵器について何かお聞きになったのでしょうか。お聞かせください。
茂木副大臣 今回の小泉総理とブッシュ大統領の首脳会談におきましては、イラク問題、委員御指摘のように、中心的テーマでありました。そこの中では、国際協調の必要性、また復興において日本がどういう役割を果たし得るか、こういうことにつきましても、日本の考えをきちんと説明をさせていただきました。
 大量破壊兵器の問題につきましては、御案内のとおり、今、英米軍を中心にその捜索といいますか、発見に当たっている、こういう状況でありますが、今次の首脳会談におきまして、大量破壊兵器の所在等につきまして、ブッシュ大統領の方から具体的な説明があった、そのようには聞いておりません。
東門委員 説明があったと聞いておりませんですか、聞いておりますですか。――おりません。いや、これは大変なことですね。イラク問題、復興の話はあっても、なぜそういうふうなイラクの問題が起こったかということは、まずそこからやらなきゃいけないことじゃないですか。ブッシュ大統領からなければ、小泉総理の方からでも、それはどうなっているのかとお聞きするべきじゃないかと私は思うんですが、いかがですか。
 だって、日本がアメリカを支持したのは、大義はそれだったんです。大量破壊兵器、もう大臣が嫌というほど、何百回というほどそれを繰り返されたんですよ。そこはどうなんでしょう。短くお答えいただきたい。そのポイントだけ下さい。
茂木副大臣 大量破壊兵器につきましては、現在、捜査の途中であります。当然、それが発見されるとかそういう兆候がありましたら御報告がある、そういうふうに考えております。
東門委員 私は、あの時点でアメリカはかなり確信を持っている、証拠がある、だからそれに踏み切るんだということで、日本もそれを支持したというふうに記憶しております。
 きのうのロイターの配信をちょっと入手しましたので、これは東京新聞では日本語で出ておりまして、ロイターの英文ももらいましたけれども、「「大量破壊兵器」やはり口実だった!?」と昨日の東京新聞の夕刊には報じられております。
 その中で、これはウォルフォウィッツ米国防副長官が述べられた、来月出てくるバニティ・フェアという雑誌の中でインタビューに答えてお話ししているんですが、なぜ踏み切ったかというと、ビューロクラティックリーズンズなんですね。ビューロクラティックな理由で踏み切ったと。その方が納得が得やすかった。ですから、実際に証拠をつかんでいたわけではないと思うんですよ。それを日本は真っ先に支持をした。イギリスに次いで二番目かしれませんが、支持をした。
 そういう中で、私は今、外務大臣は、外務省はしっかりとその事実をつかむべきだと思います。いかがですか。今調査中でとおっしゃっているんですが、本当にどうなのかということは、私は今回の戦争、イラクへの先制攻撃を支持した立場から、早くそれを確認すべきだと思います。
 同じ答えが返ってくると思いますので、次へ移りますが、とにかく早いうちにそれはチェックしていただきたいと思います。同じ答えが返ってくるでしょう、きっと。
 それで、伺いますけれども、小泉総理とブッシュ大統領の会談では、沖縄の負担軽減の重要性について一致したとされています。報道などで見る限りでは、首脳会談で負担軽減について合意とされているだけで、今後具体的にどのような進展が見込まれるのかについては明らかになっていません。先日、外務省に問い合わせました。いや、報道されているだけですという答弁が返ってきましたが、いかがでしょうか、大臣、何か具体的な進展はあったのでしょうか。
川口国務大臣 委員が今おっしゃいましたように、沖縄の負担軽減の重要性、沖縄での負担の軽減を考えていかなければいけないということを総理からおっしゃった。その前提として、総理は、在日の米軍の施設・区域の七五%が沖縄に集中をしているということについてお話しになられて、そういうことを言われたわけですが、それに対してブッシュ大統領からは、協力をしていくという応答が、お答えがあったというふうに承知をしております。
 日米の両首脳がこの沖縄の負担軽減の問題について合意があるということは、これは実に重要なことでございまして、首脳というのは、やはり、それよりもさらにどうやって減らしていくか等々といった具体的な話は、それは外務大臣なりあるいは事務レベルにそういった話はさせるということであると思いますが、基本的な考え方について意見が一致をする、それのために首脳会談というのはあるわけでございます。
東門委員 何も進んでいないということですね。これは小泉さん、初めてじゃないですよね。これまでも何度も、負担の軽減に努めますということをおっしゃってきたんですよ。何も進んでいないということ。
 それに対して、どうですか、横田基地の軍民共用化。これは首脳同士の中で具体的に出てきた話じゃないですか。具体的なことは首脳は話さないと今大臣はおっしゃった。そうなんですか。では、これはどういうことなんですか。行かれる前から、そこのところは海老原局長がアメリカに二度も行ってちゃんと根回しをしてきている、そういう話が具体的に出ているんですよ。
 沖縄の負担の軽減というのは、いつもただ、負担の軽減、負担の軽減。何をもって負担の軽減と言うのかわからないと言えば、必ずSACO合意とおっしゃる。それでは何もなりませんということを申し上げている。どうなんですか。
川口国務大臣 具体的なことについて話をしないと言ったのは、すべてのことについて首脳会談が抽象的な話をするという意味で申し上げたわけではなくて、沖縄の県民の方々の負担の軽減については、まさに今委員がおっしゃったSACOの最終合意もあるわけでして、そういった道筋がついていることのさらに具体的な話というのは、それぞれの場があるわけですから、それはそれぞれ下におろして話をするという考え方であるということを申し上げたわけです。
 横田の話というのは、これは先ほど別な委員の方の御質問に対してお答えをいたしましたけれども、これは総理のイニシアチブでここで新しく出た話ということでございまして、この問題提起を総理の方から、横田が米軍の日本にある施設・区域の中で中枢的な役割を持っている飛行場であるということは承知をしているけれども、東京都にあって東京都民の足の便ということから考えると、共用化ということはどうだろうかという問題提起をなさり、それに対して実現可能性について検討をしましょうということになったということで、新しいお話である、総理のイニシアチブで出たお話である、そういうことでございます。
東門委員 私がお聞きしたのは、横田は具体的な例が出ているじゃないですかと。もうとにかく時間がすごく限られているんです。何か意図的かなと疑いたくなるような答弁で、すごくがっくりきますね。御丁寧にありがとうございますと言う前に、本当にもっと簡潔に、ポイントをついて御答弁いただけたらありがたいと思います。
 常に沖縄県民の負担の軽減とおっしゃる。けさ、もう既にお二人の議員からありました。けさの新聞ですね。オーストラリアへの海兵隊の移動の話がございました。沖縄に駐留する海兵隊のうち、一万五千人をオーストラリアなどへ移転させるということを検討しているとの、これはロサンゼルス・タイムズ紙のスクープなんです。
 先ほどの大臣答弁では、米国に確認したがそのような事実はないということですが、大臣のおっしゃることをそのまま受け取って、まだ具体的な計画にはなっていないにしても、米国の中に何らかの動きがある、だからこのような報道も出てくるわけです。ですから、我が国としては、このような動きが肯定的な方向に進むように外交努力をすべきであると思います。
 外務省としては、今後このような問題にどのように対応していかれるつもりなのか、お聞かせください。――いや、これは大臣にお願いします。
池田委員長 では、質問者の要求に従い、川口外務大臣。
川口国務大臣 事実関係については先ほど申し上げたとおりでございまして、今の時点で米国としてそういったことを検討しているという事実はないということでございます。
 日本とアメリカとの間で、安全保障問題については、これは常に緊密に連携をとりながら協議をしているわけでございまして、まさにアメリカは、今全体としての兵力の構成についていろいろ考えている、四年に一回ということで考えているようでございます。我が国としても、この問題については、兵力構成について米国としてどのような考え方があるのか等々については、当然に今後とも緊密に連絡をとりながら協議をしていくということを考えています。
東門委員 この話は、こういう具体的に数字が一万五千人と出てくるというのは、確かに初めてかもしれません。しかし、沖縄の海兵隊の移転については九〇年あたりからかなり詰められていると思うんです。外務省はずっとその点では話し合っていると思うんですよ。突然出てきたものでないということだけは確かだと思うんです。
 いかがですか、これまでに海兵隊の移転について具体的にアメリカ側と話し合ったことがありますか。
海老原政府参考人 今までというお尋ねでございますけれども、私が承知している限りでは、今まで海兵隊の具体的な数の削減というような形で日米が協議したことはないというふうに承知をいたしております。
東門委員 クリントン政権でしたか、ジョセフ・ナイさんの記者会見のメモがここにあるんですが、ここでは、日本のカウンターパートと話し合っているという証言があるんですよ。それで一度もないというのはどうなんでしょうか。今局長は、一度もないと思う、協議したことはないと言うんですが、間違いありませんか。
海老原政府参考人 恐らく今のは、当時のナイ国防次官補だと思いますけれども、がおっしゃっていたのは、九六年の日米安保共同宣言におきまして、日米の間で兵力構成についての協議を行うということが合意されたわけでございまして、それを受けた形で、一般的な形で、兵力構成、兵力についての協議というのは随時行ってきているわけでございまして、そのことを指していることだと思います。
 私が先ほど申し上げましたのは、私が承知している限りでは、具体的な数を挙げて削減というような形で海兵隊の問題が取り上げられたとは承知していないということを申し上げた次第でございます。
東門委員 私も、これだけの具体的な数というのは確かに初めてかもしれませんが、沖縄県からの海兵隊の移転についてはこれまで何度も協議してきていると思います。アメリカの方では、多くの学者、研究者がやはりそういう提言をどんどんしてきているんですよ。それも多分把握しておられると思う。それに対して、外務省の方が隠しているのか、あるいは動かないのか、動きたくないのか、そこがいつも見えないというんです。その後ろでは県民の負担の軽減に努力しますとおっしゃる。全然合わない、言行不一致そのものです。そこに怒りを感じるということ。
 では、時間がどんどん迫りますので次に移りますけれども、これまでの国会答弁において、政府は、日米安保体制が我が国及びこの地域の平和と安定にとって非常に重要であり、ひいては国際社会にとって重要なものであるという見解を常々示しておられます。
 今回の日米首脳会談でも、今日の日米同盟が真にグローバルな世界の中の日米同盟、先ほど大臣が誇らしげにおっしゃっておられたんですが、同盟であると認識し、この同盟関係を強化することで一致したとされています。このような政府の認識からすれば、米軍基地の負担というデメリットはあっても、日米安保体制を堅持するメリットの方がはるかに大きいということになるわけですね。
 しかし、仮に政府の言うように日本全体としてはメリットが大きいとしても、沖縄に限ってはとてもそのようには思えません。在日米軍基地の七五%、沖縄本島の約五分の一を占める基地が存在することにより、占領時代と同じように、常に事件、事故、その危機にさらされて、環境を破壊され、経済発展は阻害され、人権は踏みにじられています。このような状況でも、沖縄県民にとって、基地負担のデメリットより日米安保体制が存在するメリットの方が大きいというのが政府の認識なのでしょうか。外務大臣の御見解を伺いたいと思います。
川口国務大臣 委員がおっしゃっていることはよくわかります。
 日米安保体制というのは、我が国にとって、我が国の平和と安全、そしてアジア太平洋地域における安定と発展のための基本的な枠組みであって、これは我が国として有効に機能しているというふうに考えております。他方で、そのメリット、委員の言葉を使えばメリットということが、日本において七五%の基地が集中をしている沖縄の県民の方々の負担、これの上に成り立っている、その負担の大部分を沖縄の県民の方が背負っているということも、これも事実であるというふうに思います。
 それで、我が国としては、そういうことですので、まさに安保体制を堅持していくということは国民の安全のために重要であるという方針には変わりはないわけですし、また同時に、沖縄の県民の方の御負担を少しでも減らしていくということが大事であるというふうに考えております。
 そして、その負担の軽減の重要性について今回の首脳会談で一致があったわけでございますし、私からも、沖縄の負担軽減のために、これは外相会談のときですけれども、パウエル長官との間で、沖縄県知事がおっしゃっていらっしゃるさまざまなことも含めてお話をして、パウエル長官は、その問題の重要性については理解をしているということをおっしゃっていらっしゃるわけでして、政府としては、沖縄県民の方の負担を軽減していくために、普天間飛行場の移設、返還、これも含めまして、SACOの最終合意の着実な実施に最大限の努力をしてまいる所存でおります。
東門委員 従来の答弁と何も変わっていない、何もやっていない、それがはっきり見える答弁です。
 では、時間の関係がありますので、二点だけお伺いします。二点しっかりと私は答えていただきたい。長い答弁は結構です、ポイントだけをお答えいただけたらと思います。
 まず、私は、沖縄にあるあれだけの基地の存在、沖縄県民にとってのメリットは何か、そこだけ大臣にお答えいただきたいと思います。
 もう一点。今大臣はおっしゃいました、十五年使用期限問題についてパウエル国務長官とお話しされた。新聞報道で知りました。それを議題にのせていただいたことはとても評価したいと思います。
 しかし、そういうふうに沖縄からありますよとお伝えいただいたのか、あるいはしっかりどうにかしてくれと申し込んだのか、そこはわかりません、新聞の報道ではわかりませんが、どのようにパウエル長官にお話しなさったのか。そのときのパウエル長官のお返事ですね、大臣が十五年問題を話されたとき、パウエルさんからはどのように返事が返ってきたのか。そして、それをできたら日本語、英語で両方でお答えいただけたらありがたい。この二点で終わりたいと思います。
川口国務大臣 まず、そのパウエル長官に私が英語で何と言ったか、英語で話をいたしましたけれども、具体的にどういう言葉を使ったかということは覚えておりませんけれども、これは日本語の記録によって申し上げるしかないわけですけれども、二十三日にパリで会談を非常に短時間いたしました。本当に短い時間でございました。その中で、北朝鮮ですとかイラクですとかそういった話の中で、沖縄の問題については私から申し上げました。
 その言い方ですけれども、日米安全保障関係のさらなる強化ということは必要である、これは総理の首脳会談でもそういうふうにおっしゃっていただいて、合意があるわけですけれども、沖縄の問題に関しては、普天間飛行場の移設、返還については、沖縄県の知事から使用期限の問題が提起をされていますと。それで、沖縄の負担軽減のために今後とも日米協力をしていきたいということを、大ざっぱに申し上げるとそういう趣旨のことを言いました。それで、パウエル国務長官からは、沖縄のその問題の重要性ということについては十分に理解をしている、そういう趣旨のお話がございました。
東門委員 済みません、メリットについて、沖縄県民にとってのメリットは何ですかということを答弁していただきたい。
川口国務大臣 具体的にいかなるメリットを申し上げても、いろいろなデメリットが同時にありますので、非常にこれは申し上げるということが難しいというふうに思っております。
 ただ、全くメリットがないかというと、個別に、全体のコンテクストから離れてそれだけを一つ拾い出させていただければ、例えば雇用効果といったようなものが挙げられると思います。ただこれは、何を申し上げても今委員がそういうお顔をなさっていらっしゃるのを拝見しながら申し上げておりますけれども、メリット、デメリット、全体のコンテクストで申し上げるお話ではないというふうに私は思いながら申し上げています。
東門委員 終わりますが、顔にすぐあらわれるものですから、しっかり読んでいただいたと思います。
 一点だけ。パウエル長官に大臣がおっしゃったということ、沖縄県知事がそのように言っているとお伝えするだけというのが全然変わらない。外務省として、日本政府として、この件についてどう取り組んでほしいというのが一言もないということがとても残念です。外務省はアメリカに対していつも物が言えないんじゃないかと私は言いました。だから冒頭あの質問をしたんです、真に対等な立場で言いたいことは言える仲なんですねと。それが見えない。いつも沖縄県知事がとおっしゃる、これが今も変わらないということですよ。
川口国務大臣 限られた時間の中ですべて話をするわけにはいかないわけでして、我が国の普天間飛行場の移設、返還あるいはその十五年の期限問題、これについての我が国政府の考え方は、繰り返しませんが、委員が全く御存じのとおりの考え方をしておりまして、この考え方については、米国には既に、私が毎回パウエル長官に言わなくても、十分に伝わっております。
東門委員 終わります。
池田委員長 これにて本日の質疑は終了いたしました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時三十三分散会


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