衆議院

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第14号 平成15年7月18日(金曜日)

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平成十五年七月十八日(金曜日)
    午前九時三十分開議
 出席委員
   委員長 池田 元久君
   理事 今村 雅弘君 理事 蓮実  進君
   理事 水野 賢一君 理事 森  英介君
   理事 首藤 信彦君 理事 土肥 隆一君
   理事 丸谷 佳織君 理事 藤島 正之君
      伊藤 公介君    植竹 繁雄君
      小池百合子君    高村 正彦君
      新藤 義孝君    武部  勤君
      林 省之介君    松宮  勲君
      宮澤 洋一君    今野  東君
      中野 寛成君    鳩山由紀夫君
      白保 台一君    赤嶺 政賢君
      山内 惠子君    鹿野 道彦君
      柿澤 弘治君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   外務大臣政務官      新藤 義孝君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    海老原 紳君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局長
   )            安藤 裕康君
   政府参考人
   (外務省経済協力局長)  古田  肇君
   政府参考人
   (国税庁調査査察部長)  鳥羽  衞君
   外務委員会専門員     辻本  甫君
    ―――――――――――――
委員の異動
七月十八日
 辞任         補欠選任
  中本 太衛君     林 省之介君
  松本 善明君     赤嶺 政賢君
  東門美津子君     山内 惠子君
同日
 辞任         補欠選任
  林 省之介君     中本 太衛君
  赤嶺 政賢君     松本 善明君
  山内 惠子君     東門美津子君
    ―――――――――――――
七月十五日
 女子差別撤廃条約選択議定書のすみやかな批准に関する請願(鎌田さゆり君紹介)(第四一八三号)
 ILOパートタイム労働条約の批准に関する請願(中川智子君紹介)(第四二一一号)
同月十八日
 女子差別撤廃条約選択議定書の批准に関する請願(石井郁子君紹介)(第四三三六号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第四三三七号)
 同(中林よし子君紹介)(第四三三八号)
 同(藤木洋子君紹介)(第四三三九号)
 ILO百七十五号条約の批准に関する請願(中林よし子君紹介)(第四三七三号)
 同(藤木洋子君紹介)(第四三七四号)
 女子差別撤廃条約選択議定書のすみやかな批准に関する請願(石井郁子君紹介)(第四三七五号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第四三七六号)
 同(中林よし子君紹介)(第四三七七号)
 同(藤木洋子君紹介)(第四三七八号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――
池田委員長 これより会議を開きます。
 国際情勢に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省北米局長海老原紳君、同じく中東アフリカ局長安藤裕康君、同じく経済協力局長古田肇君、法務省刑事局長樋渡利秋君、国税庁調査査察部長鳥羽衞君、それぞれの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
池田委員長 御異議はないと認めます。よって、そのように決定いたしました。
    ―――――――――――――
池田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。首藤信彦君。
首藤委員 おはようございます。民主党の首藤信彦です。
 会期ももう終わりに近いということで、日本の外交が今直面している幾つかの基本的な課題について、短い時間ではございますが、幾つか外務省にその見解をただしたいと思います。時間が限られておりますので、端的に明快に御回答をお願いしたいと思っております。
 まず最初に、北朝鮮問題ですけれども、北朝鮮の核開発疑惑、これも我が国の安全にとって大変脅威なものだ、そういうふうに思っております。
 ただ、問題なのは、一体それがどのような状況にあるのかということが非常にわかりにくい。北朝鮮が言っていること、それからまたアメリカ政府が時々出していることというものが、一体我々はどの情報に基づいて政策判断をすべきかということに大変迷うわけですが、外務省はこの問題、特に核開発の問題についてどのように把握されているか、基本的な視点をただしたいと思います。
 核の開発の、使用済み燃料棒の再処理の問題でございますが、それに対して、着手したという見解と、それから終了した、もちろん終了したというのは北朝鮮が言っていることですが、それに対してアメリカは着手しただろう、こういう見解をしております。一体日本はどちらの立場に立つのか。
 それからまたさらに、核開発のためには幾つかプロセスがございます。プルトニウムの生成から始まって、起爆装置、そして実際に核実験、それから小型化、こういうプロセスを経て実際に核弾頭として成立していくわけですが、現在どの段階にあるのかということでございます。
 これまた情報として伝えられている点に関しては、起爆装置をつくって、そして起爆実験を何度も成功しているという北朝鮮側の情報があると思いますが、それに対して、一体、それを日本政府はそのとおりだと考えているのか、あるいは、それはまだ単なるブラフであって、まだその段階にまで至っていないのか。北朝鮮の核兵器開発に関して一体どの程度まで進んでいると外務省は考えておられるのか、その見解をお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 北朝鮮の核開発の問題については、委員がおっしゃるように、非常に我が国にとって懸念であります。これについて、米国を初めとする関係国の間でさまざまな情報交換を行っております。意見交換もしてきております。そこで申し上げられることは、今の時点で、北朝鮮の核の開発の現状について我が国としてこうであると確認をしているという形で申し上げることができるものはないということであります。
 再処理について、これは委員も御案内のように、ニューヨークの国連の北朝鮮の関係者がアメリカに対して完了したと言ったという情報がございます。これはアメリカも発表しているわけですけれども、この点についても、アメリカ側からはしかるべく連絡はもらっております。ただ、我が国も含めて、北朝鮮が再処理の完了を行ったということを確認する情報は持っていないということでございます。したがって、確かなことは申し上げられない。
 それから、起爆についてお話がございましたけれども、これは韓国で国家情報院長が国会の秘密会で、情報委員会だそうですが、行った報告に関するものであろうかというふうに思います。これも、先ほど申しましたように、いろいろな情報分析をしていますし交換を行っていますし、それについて我が国としても分析、評価は行っているわけですけれども、今のこの起爆実験、これも含めて確たる結論を出すということには至っていないということでございます。
首藤委員 外務大臣、敵を知りおのれを知れば百戦するも危うからずという孫子の言葉がありますけれども、それでは結局、日本は北朝鮮政策、どのような対応を立てていいかわからないじゃないですかね。一体どのレベルで本当に脅威があるのか。本当に起爆装置までいってしまいますと、これはもうあと実験するだけというところになるわけですが、そうした情報を我が国が知り得ないというのは、例えば外務省挙げていろいろな情報を収集しているわけですが、どうしてこの情報が知り得ないのか、その点。また、どのような対応をとれば、外務省としては、日本が政策判断に生かせるような情報が獲得できるとお考えでしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 情報を知り得ないということではなくて、いろいろな情報入手のための努力を行い、そして情報交換、意見交換を行っているわけでございまして、いろいろな情報は持っておりますけれども、それらに基づいてそういったことを分析、評価するわけですけれども、具体的に、これはこの段階にありますということを確認して申し上げるということは困難だということを言っているわけでございます。
 それで、それでは我が国の政策が立てられないではないかということですけれども、AはAであるということがないと政策が立てられないかというと、そうではないと私は思います。常に政策というのは、外交政策に限らず、いろいろな可能性を考えて政策というのはつくるわけでございますから、我が国として、北朝鮮に対しての基本的な政策の考え方、これは前々から申し上げているとおりでして、何らそれに変更はないわけでございます。
 平和的に、外交的に解決をしたいとか、核は許容できないとか、それから日韓を含めた五者会談による対話ということが重要であるということについては申し上げてきているわけで、そして、日朝平壌宣言を踏まえて、それにのっとっていろいろな問題を解決し、そして外交関係を持ち、そして経済協力につなげていくといったことについては、全く何ら方針に変更はございません。
首藤委員 今、結局、そうした情報がよくわからない段階で、日本はそれなりに決定していかなきゃいけないんですが、今、巷間伝えられるところでは、北朝鮮と中国とアメリカとの三者会談をもう一回始めて、それからまた韓国、日本を含めた五者会談に持っていこう、そういう話を聞いているわけですが、それは当たり前のことですね。それはそれでいいんですが、それ以外のオルタナティブな政策オプションとしては、一体日本は何を持っておられるでしょうか。
 要するに、私の聞いているのは、アメリカさんが一生懸命会議をやってくれる、中国も協力してくれる、それなりに中国やアメリカに対してもこちらも便宜を図ってあげる、こういうような状況の中で三者会談、五者会談をやっていく、それはそれで立派なことだ。しかし、それ以外に、日本独自の外交オプションとしては、どのような形で展開される予定でしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 日本独自のという意味がよくわかりませんけれども、先ほど申し上げた日本の政策の考え方ということは日本の考え方であります。そういう意味では日本独自の考え方であり、それを実施していくに当たって、関係の国々と緊密に連携をし、対応をみんなでしていくということでやっているわけです。いろいろな政策を考えますけれども、日本のみで実施するという政策の実施の形というのは、多くの問題についてはほとんど今、外交問題に関して言えばないわけでして、いろいろな形で各国と連携をとりながらやっていく。北朝鮮についてもそれの一環であるわけです。
 そういう意味で、もちろん、その状況に応じいろいろ柔軟に政府として対応していくことは必要でありますから、いろいろな考え方、もしこういうことでやったらどうかということであれば、それはいつも謙虚に承りながら政策は考えていくという姿勢を持っております。
首藤委員 外務大臣、しかしそんなことを言っていれば、この外務委員会の討議というのは一体何かということですね。この国会でも六カ月にわたって外務委員会を開いてきたわけですが、結局、いろいろ質問しても、それは皆さんといろいろ協力して、皆さんといろいろ協調しながら、皆さんといろいろお話ししながら、考えながらやっていくという回答しか出ない。それならば、国会が始まったその日に外務委員会を開いて、外交問題に関してはアメリカその他の関係国と協調しながらやっていきます、ピリオド、これでおしまいですよ。
 しかし、今は、懸案でいろいろな問題を持っているのに、どうして国民の前にこういう方向性がある、こういう方向性がある、こういうチャンスがあるということを、明確な形ではなくて、あるいは公表できないから言えないではなくて、ある程度の幅を持って、こういう方向性で取り組んでいるということがどうして言えないのかということを、私は大変残念であると同時に、国民の立場としては、これはもう本当に外務省に対して不信感を募らせていくわけであります。
川口国務大臣 非常に明快に提示をさせていただいているわけです。平和的に、外交的に解決をしたい。北朝鮮が核を持つということは許容できない。核について国際的な枠組みに、NPT等ですが、戻るべきである。それから、その五者の会談、対話が重要であるというふうに考えている。これをやっていくに当たっては、日米韓を中心として、中国も含め連携をしていく。非常に具体的に申し上げていると私は思います。
 またいろいろな、より具体的にお聞きいただければ、それぞれについてさらに詳しく申し上げるということはできると思いますが、基本的な考え方ということは、先ほど申し上げたとおりということです。
首藤委員 時間が三十時間ほどあればそういうお話をしていてもよろしいんですが、具体的な課題がたくさんあります。
 例えば、最近私は、国後、択捉へビザなし交流で行ってまいりました。この問題は、日本の国土の問題ですから大変重要で、日本の平和と安全にとってある意味ではトッププライオリティー、そういう位置づけの問題でもあります。
 しかし非常に不幸なことに、この数年、鈴木宗男議員のスキャンダルを含めて、日本の北方領土に関する取り組みというものが大変世間の批判を浴びて、そしてその結果、北方領土への取り組みが事実上停止状態にある、凍結状態にあるという状況にあると私は思っております。
 現実に行ってみますと、これはもう本当に驚くべきことでありまして、支援委員会が廃止されていったその後から、ロシア側としても、それはそれなりに自活していかなければいけないということで、彼らは彼らなりに自衛の方針を考えて、ウクライナとかいろいろなところからどんどん人を呼び寄せて漁業を盛んにしていったり、あるいは、アメリカから資本や人材や技術を入れて漁業産業を盛んにしている。
 さらには、日本に輸出するということは、それは日本としても、同じ国土の中からどうして輸出してくるんだということで問題になるので、まず韓国へ輸出して、そして釜山から日本に輸入している。それにはもう明らかに日本の水産業者が絡んで、日本の水産業者の名前を記したパレットみたいなものがずっと流れているという状況があるんですね。
 そしてまた、日本の人道支援でいろいろなことをやるわけですけれども、それは恒久的なものをつくっちゃいけない、恒久的なものをつくると、そこにロシアの方がだんだん人がふえていってしまって、これは日本に戻ってこなくなってくるかもしれない、こうした問題があって恒久的な施設はつくらないと言われていたんですが、現実には、日本の供与した発電所を含め、だんだんと恒久施設化していっている。
 こういうような状態において、北方領土、この四島が確実に日本に返ってくる取り組みというのは、現在どのように組み立てられておられるでしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 北方四島は、申し上げるまでもなく、歴史的にも法的にも我が国の固有の領土であります。そして、これについて我が国としては、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するということについてはずっと申し上げてきているわけです。
 ロシアとの間で、ことし総理が訪ロをなさったときに、日ロ行動計画というものをプーチン大統領との間で署名をしていただきました。これは、領土問題も含めて、今後の日ロ関係を律していく海図のようなものであります。我が国としては、その海図に沿って、すなわち行動計画に沿って今後の日ロ関係を築いていく、平和条約というのはその中の一つの項目として立っておりまして、それをやっていくということが基本的な考え方です。
首藤委員 いや、外務大臣、またそういう漠然とした話を聞いてもしようがないんですよ。この一年間、実際何も進んでいないということは明らかなんですよ。そしてプーチン大統領と会ったときも、この問題で激しく話しているんではなくて、むしろ、例えば拉致問題を解決するために北朝鮮に口をきいてくれとか、そういう話が主題になっている、こういうふうに聞いております。
 しかし、この四島の問題というのは、私はこの一年間の空白、これはある意味で外務省が責任あるわけですが、この空白によって物すごい影響を受けた、はっきり言えば、これはもう取り返しようのないようなマイナスの影響をこの問題の解決に与えているわけであります。
 現実に、例えば、我々はビザなし交流ということで行けるわけですね。しかも、それも非常に人間が限られている。行こうと思っても、かつての島民の方あるいは島民のお孫さんとかいろいろな方、あるいはその地域に対して非常に関心を持っている方が行こうと思っても、実際には三年も四年も待たなければなかなか乗れないとか、さらにそのリストの中に、この人は好ましくないということで外されてしまって結局は乗れないとか、大変な御苦労をされているんですね。
 そして船も三百トンですよ。三百トンの船で、何と実習船だと言われています。私もその三百トンの船で国後から択捉まで渡るわけですけれども、この十三時間、船が荒れると十三時間吐き続けるというぐらい、小さな船で過酷な状況です。ですから、例えば墓参に行かれる方も、それはもう大変苦しいわけですよ。
 では、大きな船で行けないかというと、私は択捉島で愕然としたのは、アメリカの業者が巨大なクルーザーを寄せてきて、エコツアーをやっているということなんですよ。これは日本の領土ですよね。これはひょっとしたら、アメリカ側は、どうですか、こんなことはあり得ないと思うけれども、もしかしたら、アメリカはロシアのビザをとってエコツアーをやっているんじゃないですか。外務大臣、いかがですか。その事実はどういう形になっておりますか。
川口国務大臣 北方四島が我が国固有の領土であるということについては、米国政府との間では十分に話がしてありまして、米国政府は一貫して我が国の立場を支持しているわけです。
 我が国の立場というのは、北方四島で、我が国または第三国の企業がロシア側の管轄権に属すること、そしてそのロシア側の管轄権を前提とした行為を行うこと、ロシアによる不法占拠を助長してそれを既成事実化すること、またはそういう可能性につながること、そういうことは容認できないという、これが基本的な立場でございます。そして、その第三国との間で何かそれに触れるようなことがあれば、我が国としては、関係団体や関係の国に申し入れるということをずうっとやってきております。
 アメリカの企業の観光については、これは、アメリカにある我が国の大使館及びシアトルの総領事館、これを通じて、国務省とそれからその企業に申し入れております。
 今後も、そういうことがあれば、引き続きこれは申し入れていく、そういうことです。
首藤委員 私は、外務大臣、本当にこの状況は深刻だと思いますよ。この失われた一年間で、この四島が二度と返ってこないリスクだってあるんです。ですから、この失われた一年間を取り返すために、外務省を挙げて、この北方四島の問題、それから領土の問題、国境の問題、早急にこれは進めて、早い時期にこの問題を解決していただきたい。
 というのは、ロシア側も、先ほど申しましたように、自衛のためにどんどんウクライナや西部の辺境地域から人を移しつつある。どんどんロシア人がふえてきて、例えば日本人の墓地だって、もうどんどんロシア人の墓地に侵食されて消えようとしているんですよ。それから、いろいろな形でいろいろな外国が入ろうとしている。私も行きましたけれども、もうかけがえのないすばらしい自然が残っているわけですね。極北のツアーを目指して、恐らく、これからはヨーロッパからも、いろいろな国からもツアーが入ってくるかもしれない。
 今、日本が毅然とした態度をとらなければ、これはもうとんでもないことがあって、いざ日本が回復しようとして努力したときには、もう既成事実として日本の手から離れていくということだって十分にあるんです。ですから、今この瞬間に、外務省、全力を挙げて取り組んでいただきたい、そういうふうに切に切にお願いしたいと思います。
 さて、イラク問題ですが、イラクでは、ついにアメリカ軍が、今までは散発的な戦闘であるとか言っていたんですが、要するに、もう組織立った戦闘が行われてゲリラ戦化しているということは、アメリカ側が認めたわけですね。そして、統治評議会のようなものが出てきました。
 しかし、要するにわかってきたことは、アメリカがおくらせようと思っていた統治評議会を今つくらなきゃいけないというぐらい、そしてまた、アメリカが盛んに、アナン国連事務総長に対して、新たな決議をつくろうとか、あるいはNATOに対して派兵の要請をしているとかいうことを考えると、アメリカ単独の直接占領支配というものがもう本当に破綻しそうになってきているわけですね。
 ですから、今こそこの問題を正しい路線、すなわち国連中心の、国際社会全体がイラクの復興に対して取り組んでいくという形にしていくべきであり、そのことに関しては我が国もやぶさかでないわけですから、こういう今の瞬間こそ、この瞬間をとらえて、ちょうどサーフィンの波頭をとらえると同じように、日本は、今こそ国連へこの問題を戻すことにイニシアチブを発揮して行動すべきだと思いますが、外務大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 イラクの復興を国際協調を組みながらやっていくことが重要であるというのは、我が国の基本的な考え方であります。そのための取り組みをやっていきたいと思っていますし、既にやっている。
 一例を申し上げれば、先般、ニューヨークだったと思いますけれども、イラクの復興支援の国際会議が開かれました。これを立ち上げるために我が国としては相当な努力をしていったわけでございまして、私自身が、国連のフラッシュアピールにこたえて日本の支援を発表するところで、国際機関を中心としたそういう会議があることが望ましいということをそこで言っております。それで、国連がそれでやりましょうということで、また、G8の首脳会談でそれがエンドースされたというようなステップを経て、その間、ずうっと水面下でいろいろな話をし、それが可能になった。今度、十月に会合が開かれますけれども、我が国は共催国としてその準備の中核を担っていくということになります。
 そういった形で、十月の復興支援会合で、イラクの復興のためのニーズあるいは経済の全体像が明らかになって、イラク復興のために国際社会全体としてどのような基礎が必要かということについての絵が描けるということになるだろうと思います。
 そういった形で、今後とも、国際協調のもとでイラク復興支援が早く行われるように、大事なことは、同じことが一カ月後に行われるということではなくて今行われる、一年後に行われるということではなくて半年後に行われるということでありますので、努力を続けていきたいと思います。
首藤委員 いや、恐らくおっしゃっておられることは、御自身の頭の中では非常に明快にちゃんと答えているというおつもりだと思いますけれども、私の質問はそういうことではなくて、外務大臣は外務報道官ではないんですから、外務大臣として、政治家、政治家ではないかもしれませんが、外務大臣として、国の運命をかけてこういうふうに取り組む、国際社会で名誉ある地位を占めたいという我が国をこういう方向に引っ張っていくということをぜひ言っていただきたいと思うんですね。
 イラクの問題に関しても、例えば、もう一つの問題は、パレスチナの問題もありますね。パレスチナではロードマップがあって、こういうことになっていくと。しかし、最近伝えられてくる情報の中では、イスラエル側は、パレスチナ側とイスラエル側の分断壁をつくっていく。分断壁をつくっていくのは、ある意味でロードマップに沿っているわけですが、これはやむを得ないにしても、現実にイスラエル側がやっていることは、水路の分断をやっているらしいんですね。井戸をつぶし、水のパイプを、供給をとめている。そうすると、地理的な分断どころか、水がなくなるということは、とりもなおさず、そこに住んでいるパレスチナの農民が、もう住めなくなって、またそこから追われていくということにつながっていくわけですね。
 こうした状況において、ロードマップの破綻というのは、今ではないかもしれないけれども、もうしばらくすれば破綻することが目に見えているわけですね。この裏切りに対して、パレスチナ側がまたさらに自暴自棄な攻撃をしかけてくることは余計考えられる。
 こうした事実に関してどう考え、どのように日本としてこのロードマップ構想に対して取り組んでいこうとお考えでしょうか。外務大臣。
川口国務大臣 中東和平の問題というのは、我が国にとって非常に重要な中東地域の中で、特に中核の問題であるというふうに私は思っています。
 この前、私は連休に、イスラエルそれからパレスチナ及び周辺国に参りまして、いろいろ話をいたしました。我が国として、そこに関与をし、このロードマップに沿った形でこの問題の解決を前進させていくということが重要であると思っています。その後も電話等で働きかけをやっていますし、副大臣も行かれたということです。
 それで、ロードマップの重要性、あるいはロードマップに従って物事を進めていくことの重要性というのは、言葉で尽くすことができないぐらい重要であって、今、これが何年かぶりに、本当に久しぶりでこれが動いていく、曙光といいますか光が見え始めたということだと思います。
 我が国として、今、パレスチナの改革を進める、暴力を停止するということが重要であるということは前から言ってきていまして、改革の支援のために二千万ドル以上の援助をするということを言いました。
 そして今、その暴力の停止について、期間が限定はされていますけれども、それに合意をした団体というのができてきて、イスラエルに対しては、そのパレスチナの努力、アッバース首相の努力を助けるようなそういう環境をつくって、アッバース首相がパレスチナの中で力を持っていくように働きかけることが大事だということを言っています。それから、もちろんイスラエルに対しては、ロードマップに従って行動するようにということを言ってきているわけです。
 なかなかそう単純に物事が進んでいくわけではないというふうに認識をしていますけれども、こういった問題については、国際社会が全体として働きかけを忍耐強くやっていくことが大事であって、今、過去においてはめったになかった機会がここにあるわけですから、これを最大限活用して物事を進めるということであると思います。そうしょっちゅう……(首藤委員「水の問題」と呼ぶ)
 水の問題については、これは、今重要なことは、暴力を停止し、それから、その入植地から引き下がるということであります。水の問題は、この地域でずうっと歴史的に相当長い問題であるということであります。この問題について、適切な形で両者の理解が進むようなことを国際社会全体として支援をしていくことが必要だと思います。
首藤委員 余りもう聞いていても意味がないと思いますが、もう時間もなくなってきて、いろいろな外交課題に対して、日本の外務省そして外務大臣に対して国民を代表して私はいろいろな質問をしてまいりました。しかし、現実にはもうほとんど、別に私が聞かなくても、そこらでだれかが聞けば答えていただけるような政府広報の話しか聞かせていただけなくて、外交に責任を持つ外務大臣として、こういう取り組みをやっているということが国民の目にやはり明らかでない、そういうふうに私は思います。
 さて、残された時間で、我が国がアジアについて取り組んでいることの重要な問題として、ミャンマーにおける、アウン・サン・スー・チーさんそしてミャンマーの民主化の問題について最後に質問させていただきたい。
 これは、今現状で我々のODAがまとめられているわけですが、これ以上に、アウン・サン・スー・チーさんの解放とそして民主化努力というものに対して、どのように外務大臣は、だれだれが行った、だれだれが行きました、みんな話し合っていますということ以外に、どのような追加的な、目に見える取り組みをされようとしているのか、それを最後にお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 私は、目に見える取り組みだけをやって問題が解決するとは思っていない、目に見えない取り組みというのが外交的な努力のほとんどと言っても過言ではないというふうに思います。
 たって、目に見える努力ということを何をやっているかということの御質問ですから、例えば申し上げますと、私は昨日、インドネシアの外務大臣と話をしました。そこで、ASEANが仲間の国であるミャンマーに対して働きかけるということが非常に重要であるので、ぜひそういったことを前に進めてほしいということを申し上げています。
 目に見えないこと、このほかたくさんやっております。ミャンマーが、アウン・サン・スー・チーさんを解放してNLDに対して政治的な自由を与えて、そして国民和解を進め選挙をし、民主的な国家となっていく、繁栄する国家になっていくということを目指して、さまざまな努力をやっております。
首藤委員 終わります。
池田委員長 次に、今野東君。
今野委員 民主党の今野東でございます。
 外務省がODA大綱の改定に向けて、今その方向で仕事をしていらっしゃると思いますけれども、六月の末、つい先ごろに、ベトナム、カンボジアに私も行ってまいりまして、日本のODA、これが現地で活躍しているNGOの人たちの中でどのように生かされているかという視点で、特に保健医療の観点から調査をしてまいりました。
 きょうはそのODAのことについてお尋ねしたいと思いますが、その前に一つだけ、イラクの現状についてお伺いしておきたいと思います。
 イラクは、十二年前のアメリカ軍による湾岸戦争のときの劣化ウラン弾の影響、それから今回の爆撃等で、多くの子供たちが、劣化ウラン弾の影響では白血病やあるいは先天性異常やまたがんや、そういった病気で苦しんでおります。また、今回の爆撃でも、手や足を失ったり、あるいは命を失ったり、そういう、今十分な医療施設もないところで救いの手を求めている子供たちがたくさんおります。
 外務省は、もちろんCPA等に人を出し、また大使館もあって、さまざまな情報先を得ているんだという、首藤議員のお話にもありましたけれども、そういう部分についてどういう支援を、イラクの人たちが、特にそうした傷ついている子供たち、そういう部分についてどういう情報を持ち、またどういう支援をすべきだとお考えになっていらっしゃるか、お尋ねしたいと思います。
    〔委員長退席、土肥委員長代理着席〕
川口国務大臣 日本のイラクにおける支援の重要分野というのは、かなり子供に関係のある部分です。医療というのもそうですし、それから教育も我が国として重点分野ということでやってきております。
 そういった分野の中で具体的にどのようなプロジェクトをやっていくかということについては、今後、またイラクの状況がより安定化するにつれ、さまざまな調査団等を出しながら、イラクの人たちのニーズがどこにあるかということを把握していく過程でより具体化をしていくということだと思いますけれども、今の段階では、例えば国際機関を通じて、すなわちユニセフを通じてとかそれから国際赤十字を通じて、それから二国間で、エジプト、ヨルダンといったところのNGOの人たちといいますか民の人たちと一緒になって医療の支援をするとか、そういった形で行っています。
 それで、具体的に白血病等々に苦しむ子供たちをどのように助けていくかということですけれども、私は、個人的には子供の支援というのは非常に大事だと思っておりますけれども、先ほど言ったような全体としてのイラクにおけるニーズ、これはたくさんありますので、そういった中で日本として何をやるということが一番いいかということを考える中で、具体的な、イラクの白血病の子供たちに何をするかということは考えていきたいというふうに思います。
 それから、何回も申し上げておりますので、これは繰り返すまでもないと思いますけれども、劣化ウラン弾との関係について申し上げれば、これはUNEPやWHOで今まで調査をしていて、そして今の段階でわかっていることは、劣化ウラン弾の影響というのは、健康への影響あるいは環境への影響というのはほとんどないということであるというふうに承知をいたしております。これはまだ、多分経時的な調査ということも必要でしょうし、国際的に確定的な結論が出たわけではないというふうに承知をしていますので、我が国として、引き続きこれについては注視をしていきたいと思います。
今野委員 随分小さな声で、劣化ウラン弾の影響はないということをつぶやくようにおっしゃったんですけれども、私は、これに関する質問はこれだけで終わっておこうと思いましたけれども、もう一つ、この劣化ウラン弾の影響がないとおっしゃる根拠についてはっきりと教えていただけますか。今ちょっとよくわからなかったので、どういうところがどう言っているからどう影響がないのか。
川口国務大臣 これは先ほど申し上げたように、UNEP、WHOの調査ということであります。
 もう少し具体的に言いますと、UNEPの調査は、一九九九年のコソボ紛争で展開をした欧州各国軍の帰還兵にがんや白血病が発生をしたということによって、アメリカによって使用された劣化ウラン弾との関係が疑われていたわけでして、二〇〇一年の三月のUNDPの現地調査報告によれば、これは環境や健康への害はほとんどなかったということです。UNEPですね、UNEPの間違いだと思いますが、UNEPの現地調査報告によれば、環境や健康への害はほとんどなかった。
 そして、WHOのことで言いますと、これは二〇〇一年の三月の世界保健機構、WHOですが、これの調査報告でして、劣化ウランの放射性は微弱であって、劣化ウランと関係する健康影響を示唆する証拠は得られていない、そういうような報告が出ているわけです。
今野委員 UNEPの調査は、これはその言葉もまた調査の実態も本当にお調べになっているのかどうかわかりませんし、私もわかりませんけれども、しかし、UNEPは証明できなかったと言っているのであって、影響がなかったと言っているのではないんじゃないですかね。それから、なぜわざわざ外務大臣がそれをここで言わなければならないのか、私はよくわからないんですけれども。
 さらに、イラクの劣化ウラン弾の影響や爆撃によって苦しんでいる子供たちの救いの手をどのように考えているかということをお尋ねしても、大臣も個人的には必要だと考えていらして、そして考えていきたいということをおっしゃるわけですけれども、考えていきたいということだけをおっしゃっていても、子供たちはここで言っている言葉だけでは決して救われないわけで、行動しなければならないわけです。
 テレビでも一部報道されましたから、あるいは大臣もごらんになっているかもしれませんが、土井敏邦さんというジャーナリストがイラクに行って五月の末に撮ってきたビデオを私もこれは全編見せてもらいました。この中にムスタファ君という八歳の少年がおりまして、この少年は、国の施設も何もない住宅地域で遊んでいて、米軍による爆撃を受けて、そして負傷し、壊疽が進んでいて、一日も早く救わないと命を失ってしまうというような状態。そういう子供たちがたくさんいて、今ここで考えていきたいとか言っているようなのんびりした状態ではないわけです。
 すぐ救いの手を差し伸べなければならない、時間を争う、そういう状況の中で、自衛隊を派遣するということも国としては必要だけれども、外務省としては、そういう人道的な部分も素早く行動しなければならないというメッセージを出し、そして行動していただきたいというお願いをこの質問の締めくくりとしてしたいと思います。
 さて、ODAのことなんですけれども、ベトナム、カンボジアに行きまして、ベトナムは比較的ODAの歴史が浅い。カンボジアについては、日本を初めとする先進国、それからさまざまな国際機関が協力という点については複雑に入り組んでいるというところでありまして、両地域を見ることによってODAの、特に私たちが今回持っていった視点は医療、保健衛生という部分でございますけれども、いろいろ姿が見えてくるのではないかということで行ってまいりました。
 大臣に大枠のところでお尋ねをしておきたいと思うんですけれども、ODAの資金協力等を受けて実際に現地でさまざまな活動をしているNGOとの関係というのは、どういうふうにお考えでいらっしゃいましょうか。この質問をお尋ねするのには、NGOというのは、やはりどこかボランティアで、あるいはこうした国際協力という上での下請的な存在というふうに見ているのではないかなという思いがありましてこの質問をするんですけれども、そこのところ、どうお考えでしょうか。
川口国務大臣 私は、環境大臣をしていたときから、NGOと政府との関係の強化というのは非常に大事であるというふうに思ってきておりまして、そういった関係の強化をずっと努めてきております。
 それで、ODA等のNGOとの関係でいいますと、これは、きめの細かい、あるいは地に足のついた、あるいは人と人のつながりを重視するという意味で、NGOの方々がやっていらっしゃる途上国の支援活動というのは大変に意味がある、重要であると私は思います。
 日本政府として、日本政府の援助の下請であるということで考えているわけでは全くありませんで、資金的には、例えば、従来からNGO事業補助金、草の根・人間の安全保障無償資金協力といったような補助金の制度を持っていますけれども、これは、別にこちらからこれをやってくださいということで申し上げるわけではなくて、向こう側から、NGOの方からこういうことについての支援ができるかどうかというお話をいただいて、それで考えるということであります。
 なかなか日本の、先ほどボランティアというお話がありましたけれども、日本社会全体の土壌として、NGOというのはボランティアの仕事であるという印象がなかなか抜け切れないという問題があると思います。私は、そういうことではない、NGOが一つの職業として、これは援助の関係もありますし、環境の関係もありますし、あるいは政策についてのNGOということも、いろいろな幅はありますけれども、そのNGOの人たちが、それが職業として自立ができるようなNGOの人たちのための枠組みというのが将来的に日本でできていくことが望ましいと思っております。そうでないと、NGOが自立をし、きちんとした透明性を持って仕事をするという状況になかなかなっていかないと私は考えております。
 NGOの方々にはまだまだ育っていっていただきたいと思いますし、政府として可能な支援をしていきたいというふうに考えています。
今野委員 NGOの方々は下請ではなくて、また、NGOからの要請、さまざまなプレゼンがあって、そしてその上で考え、また資金的にもしっかり出していきたいというお話なんですけれども、その割には、政府全体の十五年度の予算は八千五百七十八億ですけれども、その中で、NGOを通じたODA予算額というのは三%ぐらいじゃないですかね。アメリカを見ますと、これはNGOを通じたODA予算というのは大体四〇%ぐらいで、何でこんなふうになるのかなと思うんですけれども。
 一件当たりの予算額が全体的に低い水準にあるという問題もあります。プロジェクトによっては援助の限度額を柔軟に引き上げることも必要ではないかというふうに思うんですが、アメリカのNGOに占めるODA予算について、こんなに大きな開きがあるというのはどういうことなんでしょうかねというお尋ねをしたいと思います。よろしくお願いします。
川口国務大臣 先ほど申し上げたことの中にそのお答えの一つ、一部が入っていると私は思いますけれども、やはり何といってもNGOの人たちの社会において歴史的にも果たしてきた役割の大きさが違う、社会の仕組みがそういうふうに今日本はなっていないということであると思います。
 我が国としては、平成十五年度予算ベースで二百二十億円、三%ということでありますけれども、伸び率としては実は四割の伸び率を、前年度と比較をして伸びております。
 大事なことは、NGOの人たちがもっと育って、そしてそういった大きな予算を使っていくことができるだけの力を持っていくというふうに政府としてもNGOの人たちを支援していく。これは一朝一夕には非常に難しいところがありまして、時間をかけてそういうふうになっていただくという努力は官の側としても重要であると思います。ということは、やはり、NGOの方にお出しをする補助金というのは税金でありますから、その税金を透明性を持ってきちんと使っていただけるということが必要であるわけです。
 そのためには、またひっくり返って考えると、NGOの人たちがある程度育っていかなければいけない。したがって、そういうNGOの人たちが育って税金を使えるようになるということと、それから政府がさらにそういったNGOを支援して強くなっていくということと、いい循環になるようにしていかなければいけないというふうに思います。
 それからさらに、個人的には、私は日本のNGOの人たちに対して、これはアメリカのNGOで、政府からということもあるでしょうけれども、民の寄附ということによって非常に大きな力を持っているNGOということが多いわけですけれども、日本社会の場合にはいろいろな要因があってそういうふうになっていないということが現状だと思います。そういうことも含めて、社会全体のあり方が違うということがアメリカと日本との違いの原因であるというふうに考えています。
今野委員 先ほどからの大臣のお話によりますと、NGOというのはしっかりパートナーとしていきたいんだ、NGOにもしっかり育ってほしいんだという思いがあふれていたと思うんですけれども。
 例えば、私が行きましたカンボジアですけれども、一歳の誕生日を迎える前に死亡する乳幼児の死亡率、これは九・五%、五歳以下になりますと、一二・四%なんですね。こういう現状を見ると、健康と栄養、あるいは基礎教育の充実、または子供たちの保護、母親へのさまざまな働きかけ、地域への働きかけ、こういうことを複合的に、長期間にわたってやらなければいけないというふうに思うんですが、少なくとも五年やあるいは十年というスパンで考えなければ、なかなかその効果が出てこないのではないかと思うんです。
 NGO支援無償などにおける単年度予算主義ではなかなかこれは効果が上がらないし、私は、実際に行ってみたところでは、今一生懸命やっているんだけれども、次の予算、来年は果たして来るかどうかわからない、仕事としては何年もつなげてやらなければいけない仕事なんだけれども、しかし、資金的に、一年刻みで来てしまうので、どうしても長いスパンで考えられない、地域の人たちの中に溶け込んで一生懸命やっていても、それが途切れてしまうのではないかという不安がある、効果も十分上がらないということで、この単年度予算というのが、NGOの方々がそういった地域で活躍するについて大きな障害になっていると思うんです。
 このNGOの支援の複数年度化へと移行させる予定というのは、そういう思いはありやなしや、そして、移行させるとすればいつなんでしょうかという質問です。お願いします。
古田政府参考人 御答弁申し上げます。
 御案内のように、予算の単年度主義というのは、ODAに限りませんで、我が国予算全体を通ずる憲法上の大原則としてあるわけでございまして、このもとでどのような工夫が可能かというのが、当面、現実的な対応の仕方であろうというふうに思うわけでございます。
 御指摘のNGO支援におきましても、私ども、そういった御趣旨を踏まえていろいろと工夫をしてきておるところでございまして、幾つか御紹介申し上げますと、例えばジャパン・プラットフォームに対する支援でございますが、これも、できるだけ迅速に、かつ効果的な初動活動を行えるようにということで、平成十三年度から、政府のお金をマネープールという格好で拠出しておりまして、その資金を具体的にジャパン・プラットフォームが活用される場合には、年度をまたいだ支援が可能であるということにさせていただいておるわけでございます。
 それから、日本NGO支援無償資金協力、これは平成十四年度からスタートしておりますので、まだ継続的なものというのはこれから議論になるわけでございますが、今後の対応の仕方としまして、複数年に及ぶ案件についても、その持続的効果が高いんだ、次年度も継続することが望ましいというような判断がされる場合におきましては、審査の段階で次年度の申請も優先して検討するということで進めてまいりたいと思っております。
 それから、草の根技術協力、これは御提案をいただいて技術協力事業を進める案件でございますが、これも同様に、複数年度にわたって支援を継続するということはあり得るわけでございまして、これも十四年度からスタートしておりますので、今後の方針としてそういうことを考えておりますが、ただ、この制度の前身となりました開発パートナー事業あるいは開発福祉支援事業というのがございますが、こういった面では、インドネシア、東ティモール、ベトナム、フィリピン等で、現実に複数年度にわたって支援をしたケースがございまして、こういった考え方でやっていきたいというふうに思っております。
今野委員 複数年度にわたってやっている支援事業というのがどれぐらいの規模であるのかわかりませんけれども、恐らく、まだまだ少額なのだろうと思います。この幅を、こうした事業を大きく広げていくということが非常に大事なことだと思いますので、その点はぜひ、大臣も聞いていただいておりますから、これはお願いしたいと思います。
 それから、大臣のお話の中にもありました、NGOの能力を、NGO自身がみずからの能力を強化することが必要であるというお話がたびたびありました。欧米諸国のNGOと比べて、やはり、専門的な知識とか人材の蓄積などの面で、もちろん、本当にプロフェッショナルで、さまざまな勉強をし、また経験も重ねてきて仕事をしている人も大勢いるわけですけれども、まだまだ欧米諸国と比べてそういった面では脆弱であるということが言えると思うんですが、パートナーとしてNGOを育てていくという視点も必要なのではないかと思いますが、この辺についてどうお考えか、また、その施策があるとすればどういうものをお持ちか、お伺いします。
古田政府参考人 御答弁申し上げます。
 御指摘のように、NGOの能力強化ということは、私どもとしても、パートナーの能力強化につながるわけでございまして大変重視しております。
 これまでやっております支援事業について申し上げますと、NGO活動環境整備支援事業というもとに、平成十一年度からスタートしておりまして、具体的には、NGOの相談員を各地に派遣するということでありますとか、あるいは、保健医療あるいは教育、農業といったような分野につきましてNGOの研究会を立ち上げまして、さまざまな調査、ワークショップ、セミナー等を行うというような形で支援をしております。
 また、NGO専門調査員制度というのを設けまして、国際協力活動について専門性、経験を有する方々にNGOのもとに行っていただいて、そしてさまざまな提言、指導をしていただくというようなこともしております。
 また、短期の研修事業ということでNGOの能力向上研修といったようなものも行っておりますが、その際に、日本国内だけではなくて海外においても研修をしておりまして、アメリカのNGOの協力もその過程で得ておるということがございます。
 それからもう一つは、JICAの方でNGO人材育成事業というものを強化してきておりまして、平成十三年度から開始しておりますが、NGOの人材育成研修でありますとか、あるいは本邦のNGOの海外で活動しておられる現場に技術者を派遣する事業でありますとか、さらには、NGOインターンという制度がございまして、大学院生をNGOが行っている現場にインターンとして派遣して、これを将来の人材として育てていくというようなこともやってきておりまして、こういった面の施策について、いろいろ御意見を伺いながらさらに充実させていきたいというふうに思っております。
    〔土肥委員長代理退席、委員長着席〕
今野委員 これについては、NGOの側からも、こういうことを勉強したいんだとか、あるいはこういう経験を重ねたいというような要望が恐らくあるだろうと思うので、そういう声をよく聞いていただいてぜひ取り入れていただきたいと思います。
 ところで、NGOの方々の収入、給料なんですけれども、いろいろお尋ねしますと実に低額でありまして、本当に、日本で大学を出てさまざまな資格を持って、あるいは欧米の大学にまで行って勉強して、ベトナム、カンボジア等そういうところで仕事をしている人たちが大体十万から十五万円ぐらいの給料だということなんですね。
 これではやはり人材はなかなか育たないわけでありまして、多くは若い女性が一生懸命頑張っている。若い女性が、地域の方々の喜びの声を受けとめて、それを生きがいとして頑張っているという姿も、それはそれなりに感動するんですけれども、何で若い女性が多いのかなと思うと、やはり、家族があってはなかなかできない、結婚をしてそしてある一定の収入を得て家族を養っていかなければならないという立場になると、なかなかこういう給料では厳しい、やりたくともできないということになってくるわけであります。
 ODAの予算というのは、ハードの支出には比較的寛容で、必要じゃないところにも行っているところもあるような気がするんですけれども、ハードの支出についてはおおむね寛容だと思うのですが、人件費あるいは運営費といったソフトへの支出についてはなかなか外務省を初めとして理解が得られていないという声も聞くんですね。
 このあたり、ソフトへの支出を一層拡大するというお考えはありましょうか。
新藤大臣政務官 私、多少、この辺担当しておりますから、お答えをさせていただきたいと思います。
 おっしゃるとおり、私も仲間たくさんおりますが、初年度でゼロ、二年目で九万円とか、そういうような、大きな団体でもそんなような実態がございます。ですから、情熱でやっているんです。こういうところに、ぜひNGOの財務体質を強化させなければいけない、そのための税制ですとか、いろいろな、我々政治としてやらなければいけないことがあると思います。
 一方で、ノンガバメントですから、NGOの団体そのものの運営補助が出ていくようなことになると、それは果たしてNGOがそれを喜ぶかどうかということもございます。プロジェクトにかかわる現地での経費だとか、こういったものについては、見られるものはどんどん見ていこうじゃないかということで、実際に制度の中で、現地のそういったソフト面での経費を入れられるように今拡大しておりますし、ジャパン・プラットフォームの方でも、そういったプロジェクトの方のソフト費用は見させていただいているということでございますので、そこはきちっと分けていかなければいけないのではないか、このように思います。
今野委員 それは、ぜひそういう視点で資金協力をお願いしたいと思います。
 それから、あるところに行きまして、これはNGOじゃなくて、障害を持っている方々が地域で暮らしていくためのさまざまな支援体制を障害者の方たちがみずから持っているところに行って、お話を聞いたんですけれども、ここは草の根無償で一千万円受け取り、そして小型のタイプライターとか人体模型図とか、いろいろ買ったところなんです。
 そこに行って、申請から実際にお金を受け取るところまでどういうプロセスがあったか教えてくださいと言いましたら、まず日本の商社がそこにセールスに来た、お金がないから買えませんと言った、そうすると、ちょっと待ってといってその商社がプロジェクトを立ち上げ、そして、お金を受け取るときにはその商社から買いなさいと言われて買ったという話を聞いたんですね。
 これは、実際にこうした障害を持っている方々への資金協力というのは大いに結構だと思うんですけれども、ある面、商社の現地での商売に利用されているという部分があるんじゃないかと思いますけれども、この申請について、そういった、商社が代理、エージェントみたいな形でやるというケースが実際に、まず、あるんでしょうか、ないんでしょうかということと、あるとすればどれぐらいあるんでしょうかということをお尋ねします。
古田政府参考人 御答弁申し上げます。
 まさに、草の根無償の支援の対象というのは、NGOでありますとか地方公共団体でありますとか、一定の団体を指定しておるわけでございまして、商社自身がそういう制度の対象になっておるわけではございません。したがいまして、制度として考えますと、当然、草の根無償を受ける被供与団体の方々がみずから申請をするということでございまして、商社による代理申請というのは制度的に受け付けておらないわけでございます。
 御指摘のお話は、そもそも、こういう草の根無償をNGOがみずから主体的にどう判断してどう活用していくかということでございまして、そういう主体性の中で、必要なものをきちっと申請し、かつ事業をみずからのお考えで遂行していくということが本筋であるわけでございまして、この制度の中で、営利企業等が直接入ってくる制度的な仕組みはないということでございます。
今野委員 時間がありませんから終わりますが、大使館等に行きますと、大体商社の方が出入りしていて、大変仲がいいんですね、大使館と商社の間というのは。もちろん、さまざまな連携をとって仲よくやらなければいけないという部分も大いにあるんでしょうけれども、そうしたふだんの仲のよさが、そういうところをうまく利用してお金を引き出すという商社の商売になっていくというケースも、私はこれは大いに考えられることだなと思うんです。
 では、そうじゃなくて、本当に必要なニーズというのはどこにあるのだろうかということをよく考え、また、それを求めている人たちにきちんと手渡されていく、途中でどこか政府の要人のところに消えていったりなんかしない、そういうシステムを考えなければいけないと思っております。
 ODA大綱も間もなく出されることだと思いますけれども、そこに書かれていることは決して理想だけであってはならないのでありまして、現実にどういうふうにそれがうまく機能していくかということが大事だと思いますし、そういう面でいえば、私たちも大いに協力をし、また発言もしていきたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。
池田委員長 次に、藤島正之君。
藤島委員 自由党の藤島正之でございます。
 まず最初に、法務省においでいただいておりますので、お伺いします。
 沖縄の婦女暴行ですか、強姦未遂事件の関係で裁判が行われているわけですけれども、那覇地裁で公判中の米海兵隊少佐による事件の問題です。
 いろいろもめているようなんですけれども、その背景は、若干、我が国の裁判制度といいますか、その前の捜査の問題とかに絡んで米側に不満があるんじゃないかというふうに感じるんですね。日本ではまともな裁判を受けられないとか、あるいは弁護人から日本の保釈制度は国際的におくれているといったようなこととか、女性の証言について信用できないとか、あるいは供述の任意性について取り調べの透明化という問題等が指摘されているようですけれども、これについて法務省はどのように考えているんでしょうか。
樋渡政府参考人 米側が取り調べの透明化を求めているという趣旨でのお尋ねであろうかと思うのでありますが、当省も参加しております地位協定のもとでの刑事裁判手続に関する日米協議におきまして、我が国の捜査当局が行う米軍人被疑者等の取り調べへの米国政府関係者の立ち会いが議題となっていることは事実でございます。しかし、その交渉につきましては、現在交渉中のことでございますので、議論の具体的な内容については答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
 もっとも、我が国の刑事手続におきましては、取り調べの持つ重要な機能にかんがみまして、これを阻害するおそれのある第三者の立ち会いは認められていないものの、弁護人との接見交通権の保障や任意性を欠く供述調書の証拠からの排除等によりまして被疑者供述の任意性確保が図られておりまして、当省といたしましては、このような点を十分踏まえながら米国との交渉に当たっているところでございます。
藤島委員 やはりこういう問題は、もともと主権国家が主体的に裁判制度、捜査の制度を決められる問題だと思うんですね。ですから、ほかの国もいろいろなレベルがあるわけですけれども、我が国は我が国なりの歴史と社会制度とか国民性とかいろいろなものがあって、そういうのを前提に今の制度があるわけですけれども、近代国家である以上は、やはりそれなりの水準というものが、これは一般論として言えば必要なんじゃないかなと思うんですね。やはり、先進国の中でそういう面でおくれてはならない面があろうかと思うんですね。
 確かに、江戸時代から明治にかけ、戦時中、変わってきているわけですね。国民の生活のあり方も変わってきていますので、本当はこういう制度自体も刻々見直す必要があろうかと思うんです。きょうは法務委員会ではありませんので、その件はあえて細かく触れませんけれども、やはり、米側からこういうことが議題にされているということは、それなりのものでもあるというふうに私は認識しておるものですから、その辺もよく考えていただきたいと思います。
 この点について、今一緒になって交渉をやっておられるようですけれども、もし外務省は何かコメントがあればお伺いしておきたいと思います。
川口国務大臣 日米両国の司法制度というのは確かにいろいろ違っているということは、我々はずっとテレビなどでアメリカの法廷の場面などを見て、ああ、こんなに違うのかということを思った記憶というのはいろいろあると思います。
 それで、現在交渉中の話については先ほど法務省からお話があったとおりで繰り返しませんけれども、我が国としては日本の刑事司法制度について説明を行って、米国側から我が国の制度についての理解をいただいている、米国の理解は深まったというふうに私は認識をしています。
 この交渉については、まだ、なかなか難しい、制度が違いますので、そこからスタートをしてどうまとめていくかというのは非常に難しい問題であるというふうに思っていますけれども、いい結果が出るということが必要でございますので、最善の努力をしたいと考えます。
藤島委員 確かに、おっしゃるように、なかなか難しい問題だと思うんですね。慎重に議論の上、双方納得のいく、また国民から見ても納得のいくような方向で検討して結論を出していただきたいと要望させていただきます。法務省、結構です。
 次に、アメリカの投資会社が四百億円申告漏れ、ローンスターという会社のようですけれども、こういった、要するに、日本の弱みにつけ込んで、不良債権をたたいてたたいて買って、それで、恐らく担保物件を結構いい値で処分をして相当ぼろもうけをする、人の弱みにつけ込んでぼろもうけをして、そこまではある程度やむを得ないのですが、その上税金まで日本に払わないでごまかす、これは国民感情としても絶対に許せない。
 これはこの一件じゃなくて、結構何千億円にもなる、そういうふうな報道もあるんですけれども、この点について、国税庁の方はどういうふうに把握し、どういうふうに考えておりますか、伺います。
鳥羽政府参考人 ただいま御指摘の個別の事案につきましてのコメントは差し控えさせていただきますけれども、先生御指摘のとおり、近年の経済社会の国際化の進展に伴いまして、海外の投資家、あるいは我が国の企業であっても国際的な事業展開を図っているところ、これらの企業が、内外の多様な事業体とか金融手法等を駆使して、複雑な取引形態を用いて租税負担の不当な回避を図る、こういう事例が散見されるようになっております。
 私ども国税庁といたしましては、このような各企業の行う、例えば匿名組合契約等を利用した貸付債権の買い取り、回収事業など、多様かつ複雑な国際取引につきましては、実地調査等を行うことによりその実態把握に努めて、これらに的確に対応することとしているところでございます。
藤島委員 国内の企業が一生懸命まじめに働いてきちっと税金払っているのに、法的な面で、若干アメリカの企業と日本の企業の国際の部分で難しい面があるのかもわかりませんけれども、いずれにしても、荒稼ぎの上、税金を逃れている、これは本当に許せないと思うんですね。
 それでもう一つ聞きたいんですけれども、現在の法制で十分、国税庁は漏れなく対処し切れると思うのか、あるいは、やはり今の法制度ではいろいろな、ぎりぎりのところをやられるとなかなか徴税は難しいんだという部分があるのか、もしあるとすれば、やはり法改正しても、きちっと徴税して、日本国民の納得のいくような形にする必要があると思うんですけれども、その点はどう考えておりますか。
鳥羽政府参考人 御指摘のようなさまざまな外国企業等々のいわゆる国際的な取引につきましては、今後もより一層複雑、巧妙化していくことは想定されているところでございます。
 私ども国税庁、執行官庁といたしましても、これらに対する調査を実施するに当たりましても、例えば組織体制面の整備、あるいは私どもの職員の研修をして調査の能力を高めるという国際課税関係の研修の充実、あるいは新たなそういう取引に対する調査手法の開発等に努めて、あらゆる努力を重ねて、租税回避等につきましては厳正に対処しているところでございまして、今後ともこれらの施策の充実には努めてまいりたいと考えております。
藤島委員 私の質問は、もちろん努力はしてもらわないかぬし、そのための組織もいろいろあるでしょうし研修もあるでしょうけれども、今の制度でやはり限界がある部分がないのかどうか、今の法制度で十分と考えているのかどうか、そこをお聞きしているんです。
鳥羽政府参考人 お答えいたします。
 現在さまざまな国際取引の調査を行っておりますけれども、私どもとしては、与えられた権限及びその法制の中で最大限の努力を図って、かような取引についての問題があれば、それを是正していくということでやっているところでございまして、その過程におきまして例えば制度面の問題等が把握された場合には、税制当局の方においてしかるべき措置がされるものと期待しております。
藤島委員 しかるべき措置がされるものじゃなくて、国民感情として許されない部分があるんですから、今の制度で十分かどうか積極的に部内で検討して、問題があれば、やはり国会に法律として提起して、きちっと対処していただきたいと思います。
 努力は多とするんですよ。今までの努力は多とするし、それはきちっとしていただかないかぬけれども、制度の壁の中で歯ぎしりしている部分があるんじゃないかなとも思われるので、その点を積極的に検討して、問題提起して、頑張っていただきたい、こう思います。
 さて、もう一つ、これは昨日もちょっと議論があったようですけれども、十二日に中国の外務次官がピョンヤンを訪れて、金正日総書記とお会いしていろいろ話をしたようですけれども、これについて外務省はどういうふうに把握しておりますか、伺います。
川口国務大臣 戴秉国、これは中国の外交部の副部長といいますか、日本でいえば次官という方ですけれども、十五日まで北朝鮮を訪問したということでございます。この結果については、十六日に我が国には中国から連絡をいただいています。
 それで、今報道ではいろいろなことが報道されておりますけれども、この内容、あるいはその評価をどのように申し上げるかということについては、これは相手の方、国、関係者の関係がございまして、ここで具体的に申し上げることができないということですけれども、中国側はこれについて有益で有用な会談だったという評価をし、北朝鮮側も、ちょっと具体的な言葉は覚えていませんが、深みのある会談を行ったというようなことを言っていると思います。
 我が国としては、中国のその努力は非常に有益であったと思いますし、それから、努力については多としているということであります。
 基本的な我が国としての考え方としては……(藤島委員「考え方はちょっとまだ」と呼ぶ)まだよろしいですか。
藤島委員 向こうから通知があった内容についてもう少し何か公にできるものがあればしていただきたいと思います。
川口国務大臣 中国が何を言っていたということを申し上げるということはできないということですけれども、我が国がなぜ中国の努力を多としているかということで申し上げますと、中国はこの間の北京の会合以来、対話の継続をどのようにできるかということで非常に努力をし、働きかけを行ってきているということでございます。今度のことについても、そういった側面でいろいろ考えて前に進めようとしている、その努力について多としている、そういうことでございます。
藤島委員 内容について、恐らくもう少し連絡はあったんでしょうけれども、まあ、今ここで話せないということかもわかりません。
 ところで、この北朝鮮問題は、私は、自由党は国連中心主義ということで、国連の場で本来議論するのがいいのかもわかりませんけれども、やはり、今我が国は常任理事国でもないし、非常任理事国でもない。そういう場に持っていっても我が国の出番が非常にないといいますか、発言のチャンスが少ないわけで、国連の場で議論するのはいかがかなと私は思うんですけれども、この点、外務大臣はどういうふうにお考えですか。
川口国務大臣 国連の場というところと、それから、北京で行われたような、あるいは我が国が考えている五者会談というような二つのことがございます。
 それで、我が国は、この間北京で行われたような対話プロセスが、日本、韓国が参加をして継続をするということが重要であるということが基本的な考え方であります。
 それから、国連安保理の場で、これは我が国がおっしゃるように常任理事国ではありませんので、我が国が会合には参加しないという形で議論がされるわけですけれども、これは我が国としては、またほかの国も日本がこの問題については非常な関心及び関係を持っているということはよく認識をしていますので、相談は緊密にしてもらっていると思いますけれども、安保理の場でどのような対応が行われていくかということについては、これは北朝鮮の今後の対応、それからその五者の会談をめぐってどのような進展がこれからあるかといったようなこと、これを見ながら関係国の間で対応をしていくということが重要であるというふうに思います。
藤島委員 その点、最後に質問しようかと思ったんですけれども、先ほど、評価の点との関係ですけれども、やはり北朝鮮も若干多国間協議の方に前向きになってきているのかなという感じがしまして、その意味で今回の会談というかは評価できるのかな、私はそういうふうに評価しているわけですけれども、その点、多国間協議に北朝鮮が参加する方向が出れば非常にいいわけで、その辺をどういうふうに評価しているかというのを最後にお聞きしたかったわけなんですが。
川口国務大臣 これは、まだしばらく、関係者は北朝鮮だけではありませんので、関係国がどのような対応をしていくかということを見ないといけないというふうに思います。
 我が国としては、先ほどちょっと申しましたように、この対話のプロセスが、日本、韓国が参加をして継続をしていくということが重要であるというふうに思っていますし、北朝鮮がその面で前向きな対応をするということを我が国としては強く望み、そして働きかけをいろいろな形で行っているということでございます。
藤島委員 やはり北朝鮮との問題はもちろん我が国が主体的にやらないかぬ問題でありますけれども、アメリカも大事ですけれども、中国がかなり北朝鮮に対して影響力が大きいのじゃないかなという感じがします。そこで、政府としても、中国との連絡は本当に密接に、もちろん表に出てやることだけじゃなく、先ほど答弁がありましたように、水面下のいろいろな調整がやはり外交問題は非常に重要な問題だろうと思いますので、私は、中国との関係を緊密にやっていただきたい、こう申し上げておきたいと思います。
 あと、最後にちょっと時間がありますので、アメリカがイラクを攻撃した理由に、大量破壊兵器があるはずだ、拡散を防止したいということだということで、私も何回かその点について外務大臣に質問しましたけれども、確かに、かつてほんの少しでも使われたことがあったわけですけれども、その後、出てこない。党首討論のときに総理は、フセインだって出てこなかったじゃないか、だからないとは言えないんだというふうな論法だったんですが、外務大臣もそういう論法をおとりになりますか。最後に伺って、終わります。
川口国務大臣 総理は物事の本質を非常にわかりやすくおっしゃろうというふうに思われたんだろうと思います。これは、実際に使った、そして国連の査察団も、持っていることについて、そしてそれが説明されていないということを言っているわけでございますので、我が国としてはその推移を今後注視していきたいと思います。
藤島委員 今後は国連の査察がやはり一番大事じゃないかなというふうに思いますので、意見として申し上げさせていただいて、質問を終わります。
池田委員長 次に、赤嶺政賢君。
赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。
 今、日米地位協定の見直しを求める世論が新たな広がりを見せています。せんだって、参議院の沖北委員会でも決議が上がりました。当委員会では既に以前に決議をされております。東京都議会でも決議されました。地位協定の見直しの運動がなぜ広がるか。これは、近代民主主義国家では説明できないような基地と国民との矛盾、とりわけ沖縄でそれが集中的にあらわれている、そういう国民的な常識が通用しない米軍基地問題という根源が地位協定にある、そこから地位協定の見直しの世論の広がりがあると思うんです。
 同時に、日本の外務省は、地位協定は見直しではなくて運用改善が効率的で即効性で、問題の解決につながるんだ、このように言われて、今、地位協定の見直しとは別個の形で日米間の協議が始まっています。伝えるところによると、四十五日以内の妥結、このように言われているわけです。
 そもそも運用改善の話し合いのテーマは、二年前に私、河野外務大臣に当時質問したんですが、北谷町で米兵による放火事件が起こり、身柄の引き渡しを求めたけれども、それは拒否された。なぜ拒否されたかというと、日米間の合意の凶悪犯罪の中に殺人あるいは強姦は入っているけれども、「その他」という概念の規定があって、その他の事件の中身がいまいちはっきりしない。それで放火事件のときには身柄引き渡しが難航したわけですね。
 当時河野外務大臣は、今後、「その他」について日米間で協議をして、どういう事件がその他の凶悪犯罪に入るのか、これを決めていくんだ、そのことによって県民の暮らしと基地との矛盾は解決できるんだということで、運用改善の一つの大義として掲げていたわけです。
 今行われている日米協議、この中で、当初から問題になっていましたその他の凶悪犯罪、これについても四十五日以内の妥結を目指すテーマとして話し合われているんですか。あるいはそれ以外のことが話し合われているんですか。いかがですか。
海老原政府参考人 現在の交渉の状況でございますので、私の方から御答弁をさせていただきますけれども、まさに今おっしゃいましたように、九五年の合意の、その他特定の場合の明確化ということを日本側としては行いたいということで、平成十三年から米側との間で協議を行っているわけでございます。この問題については依然として交渉中ということでございます。
 ただ、この問題を解決するに当たりまして、両国の刑事裁判手続の相違というものが一つの問題ともなってきているということでございまして、このたびの七月から行っているこの交渉におきましては、いわばこの点に焦点を当てまして日米間で交渉を行っているということでございまして、その中で、その他特定の場合ということについて、それが主要の議題にはなっておりません。
 第一回の会合におきまして、この問題については、引き続き専門家委員会の方で協議は行おうということは米国との間で合意はしておりますが、今回の協議ということであれば、これは両国の刑事裁判手続にかかわる問題というのに焦点を当てて議論を行っているということでございます。
赤嶺委員 非常に信じられない展開になっているわけですね。いわば、放火が出発点になって、凶悪犯罪、「その他」、それに放火が入るかどうか、そこに県民の関心が集まっていた。それを、四十五日以内の決着かと思ったら、いざふたをあけてみると、アメリカの側から司法制度の違いが持ち出されて、日本の司法制度がおくれていると指摘されて、そのことで日本の側がたじたじになっている、こういう絵が見えてくるわけです。
 そして、一部の報道によると、日本の司法制度がアメリカの要求どおりに決着がつかないと、九五年の犯人の身柄引き渡し、好意的配慮に基づいて身柄を引き渡すとしたあの合意もほごにしてしまうぞ、そういう報道も一部に出てきているわけですね。これは何だ、こういう運用改善の交渉があるのかということを思います。
 きょうはほかのテーマもありますのでそれ以上聞きませんが、実に県民としては納得のいかない、皆さんが、運用改善が必要だ、地位協定の見直しよりは運用改善がいいんだと言ったことさえ帳消しになるような事態が、今日米間で交渉されている。
 日本の司法制度がおくれているんであれば、それは日本国民が自分たちの判断で改革していくべき事項で、アメリカからおくれていると言われて日本の外交がたじたじになる必要は全くないというぐあいに思います。
 そこで次に、PCBの問題について伺いたいと思います。
 この一月から在日米軍基地からのPCB含有物資の搬送が始まりました。それで、米軍がことし一月、初めて搬送したときの外務省の配りましたペーパーを読ませていただきましたが、その中に、一月の搬送については、昨年十二月十八日の官報で、搬送のための手続は完了していた、環境に影響なく搬送された旨の連絡があった、こういう文章表現になっているわけです。
 一月に在日米軍基地から米軍製のPCBを搬送するということについては、外務省は事前にそのことを承知していたのでしょうか、いかがですか。
海老原政府参考人 これは、昨年の八月に米国は、在日米軍が保持をしておりますPCBの含有の機材、こん包も含めましてその他すべてを米国に搬出するという決定をしたわけでございます。
 その後、省かせていただきますが、米国の国内の手続に所要の時間を要しまして、それが終了したということで、まず一月、それから三月に米国製のPCB含有物資を搬出したということでございます。
 一月の、例えばどの日にどのような形でというようなことにつきましては、米国は、テロ等の問題もございますし安全上の問題がございますのでこれは明らかにしないということで、我々も事前に詳しくは承知していなかったということでございます。
赤嶺委員 アメリカ国内の手続もありましたのでそれはそれなりの期間を要していますから、外務省は、その点はもちろん知り得る立場にあるけれども、いつどのような形で運ぶのかは事前に知らされていなかったというのが今の御答弁でした。
 私は、PCBという非常に危険な物質が日本の国内から運ばれるときに、いつどういう形で、安全対策はどういう措置がとられて国民に不安がないように運ばれるのか、そういう情報が公開されていないという感じが非常にするわけですね。国民が何も知らないうちに、しかし運んだ後に安全上の注意を払って運び出しましたということになっている。
 今後、夏にかけて、外務大臣のお言葉を引用しますと数カ月の間にということなんですが、いわば、米国の手続がすべて完了して、法的な手続が完了して、在日米軍基地の搬送をすべてやるということになっているようですが、アメリカからはこの点で、いつどういう形で始めるのか、どんな安全措置をとっているのか、そういう連絡は受けておりますか。
海老原政府参考人 今、搬出する際の安全、これは先ほどちょっと私が安全と申し上げたのは、テロとかそういう安全の方を申し上げたんですが、間違っても、汚染、環境に対する影響が出ないというような意味での安全ということであれば、これは平成の十二年に合意をいたしました環境原則に関する共同発表にも書いてございますように、米軍は、自国の環境基準、それから日本の環境基準のいずれか厳しい方をとるといういわゆるJEGSの基準を採用しておりまして、これに基づきまして厳正な形での搬出が行われているというふうに承知をいたしております。
 今後の搬出計画につきましては、さきに大臣が御答弁されましたようにこの夏に搬出を行うということを聞いておりますが、具体的に何月何日に何トンを出すというような計画は承知いたしておりません。
赤嶺委員 非常に危険な物質を運び出すのに、アメリカは、日米間の安全、環境問題についての合意があるので、事前の通知はないけれどもアメリカのことだからきっと守ってくれているだろう、これを信頼する、そういう世界の話、そういう答弁にしか聞こえないわけですね。
 今、在日米軍基地に残っているPCBは三千百十八トン、保管中のものが八百八十トン、使用中のものが二千二百三十八トンということになっています。六月二十四日の沖縄北方特別委員会で外務大臣が答弁なさっておりますが、この数カ月の間に搬出するのは千四百九十七トンという答弁であります。保管中の八百八十トンよりも量が多いんですね。保管中の量がふえたんですか、これは。
海老原政府参考人 三千百十八トンという数字は、二〇〇一年の時点で米側が発表した数字でございます。その中で、既に使用済みのものということで、今委員がおっしゃいました八百八十トンということでございましたが、二〇〇一年から現在に至るまで、使用済みのカテゴリーに新たに入ってきているというものがふえているわけでございまして、それで数字がふえている。総量については、我々は変化はしていないというふうに理解をいたしております。
 それから、一つ訂正をさせていただきますと、この前大臣が御答弁になりましたこの夏の搬出予定、千四百九十七トンということでございますが、昨日の時点でもう一度米側に確認をいたしましたところ、これは今申し上げましたように使用済みのものが、ふえたり減ったりしているというようなこともございますし、搬出計画というようなことのいろいろな変化ということもございまして、現在では千二百七十トンの予定というふうに聞いております。
 ただ、この千二百七十トンすべて搬出が済みますと、少なくとも現時点、正確に申せばきのうの時点ということだと思いますが、きのうの時点で、使用済みとなっているPCB含有物資はすべて搬出が終わるというふうに聞いております。
赤嶺委員 数字がどんどん変化していくわけですが、それで、沖縄の米軍基地に、いわゆる基地ごとに、使用済みのPCBあるいは保管中のPCB、今時間がありませんので基地ごとには、質問後にペーパーでお願いしたいんですが、総量で沖縄にはどれだけ今残っているのか、この点についてお答えしていただけますか。
海老原政府参考人 今まで一月と三月に行われたものは、これは基本的には沖縄以外の基地からのものが搬出されたということで、沖縄のものについてはまだ搬出が、今回予定されている搬出が行われていない現時点においては、二〇〇一年に発表しましたものがそのまま存在しているということだと思います。
 繰り返しになりますけれども、今回、千二百七十トン搬出される。これについては沖縄からの搬出というものが初めて行われるということで、これが済めば、沖縄のものについても使用済みのPCBについてはすべて搬出が終わるということになります。
赤嶺委員 二〇〇一年の資料では、沖縄で使用済みは三百六十トンなんですよ。さっき使用済みのものが大分ふえておりました。その三百六十トン、沖縄もふえるんですか、使用済みのものは。
海老原政府参考人 先ほど申し上げましたように、二〇〇一年からすると、当然のことながら使用済みがふえているということだと思います。沖縄についてそれがふえるのかということであれば、常識的には多分ふえているということだろうと思いますけれども、正確な数字は私は持ち合わせておりません。
赤嶺委員 いわばこれだけ危険な物質を搬送するのに、日本政府の側が、具体的な中身、いつ運ばれるのか、どのぐらい運ばれるのか、このことについて明らかにできない、こういう状態が続いております。
 それであと一つ、このPCBに関して、恩納村の自衛隊の駐屯基地に、在日米軍基地の返還跡地から検出されたPCBの汚泥が、ドラム缶にして千七百本、あるいは二千本近いと思うんですが、保管されています。このPCBは返還された米軍基地から出たものですが、これも今回の搬送予定に当然入っているわけですね。
海老原政府参考人 現在の量でございますけれども、我々が承知いたしておりますのは、ドラム缶の約七百本、約百トンということでございます。
 それから、今委員は、恩納村の旧米軍施設・区域の中に依然として保管されているというお話がありましたけれども、この百トンの汚泥すべては九八年の三月十一日に航空自衛隊の恩納分屯基地の中に移されておりまして、そこで保管をされております。
 この汚泥につきましては、既に施設・区域自体は返還をされておりまして、日本側の責任において処理をするという、これは地位協定上もそういうことになっておりますので、今回の先ほど申し上げました米軍の数字には含まれておりません。
赤嶺委員 外務大臣、今の北米局長の答弁には地位協定の解決しがたい矛盾が含まれているんですよ。
 私が聞いたのは、恩納村で見つかった、米軍基地の返還跡地から出たPCBというのは二種類あるんです。米軍基地を引き続き継続使用した自衛隊の基地の中から見つかりました。それがさっきのドラム缶の本数なんです。これは、自衛隊が基地を使って以来一度もさわっていなかった地域ですから、米軍のものであることは明らか。これはもう政府が認めています。もう一方で、民間の地主さんに返還された米軍用地、ここからもPCBが見つかったんです。その二つを合計すると、二千本近くのドラム缶が、今、恩納村の自衛隊の基地の中に保管されている。
 これを日本政府が責任を持って保管しているといいますけれども、そんなことじゃないですよ。恩納村の人たちは、恩納村の村議会、村長を挙げて、早く恩納村から撤去してほしい、今度PCBを米軍が搬送するというのであれば恩納村のPCBも搬送してほしいと思っておるわけですよ。
 川口外務大臣は、かつて、日米地位協定の運用改善の非常に見本的な具体例として、PCBの搬送を言われました。現在の基地の中にあるPCBを米軍が責任を持って搬送するのは、地位協定上も当たり前のことなんです。返還された米軍基地が、返還したので米軍は知らない、それで、責任は日本側にあるということでいつまでも置かれている、搬送の対象にならない、米軍政府の。
 これこそ、まさに地位協定の運用改善として見直すべきじゃないですか、皆さんが運用改善と言うなら。これもできないなら、地位協定は抜本改定以外にないというぐあいに思いますが、最後にいかがですか。
川口国務大臣 地位協定の四条というのがございますけれども、これで、米国が施設・区域を返還するに当たって原状回復義務や原状回復のかわりに日本国に補償する義務を負わないという規定がございまして、そのことから、日本側においてこの処理は実施をするということになっているわけでございます。ということで、現在、今後、日本側においてこれを行う話ということです。
赤嶺委員 もう時間がありませんので最後ですが、地位協定の現状、米軍の優先使用を認めている、このこと自身に抜本的なメスを入れなければやはり問題は解決しないということを強く申し上げまして、質問を終わります。
池田委員長 次に、山内惠子さん。
山内(惠)委員 社民党の山内惠子です。
 川口大臣には、きょう初めて質問させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 私は、昨年の十二月、戦争前のイラクへ一週間、旅行日程を入れてですけれども、ことしの六月の十七日から一週間、社民党のイラク調査団としてイラクに行ってまいりました。戦後と言われていましたけれども、でも、やはり戦争中だというのが私の実感でした。そして、やはり今戦争中であると思います。イラクでは、UNHCRの方々、難民キャンプの方々、国連、国際赤十字センター、赤新月母子保健病院、それから元サダム・フセインという名前のついていた小児病院、がん病棟を見せていただきました。また、ユニセフの支援の手も届かないという小学校にも行ってまいりました。
 どの方々も、皆さん、治安の状況が悪いとおっしゃるので、それであれば、日本からの自衛隊は歓迎されるのかという質問をしましたが、どの方も、お一人として、自衛隊の派遣を待っていると言った方はいませんでした。日本は憲法を持つ国だから、あくまでも平和のメッセンジャーとして来ていただきたいというのが、イラクの人々の声でした。
 その意味では象徴的な写真、私たちが写してきた写真なんですけれども、これは母子保健病院で写した写真で、先日も、参考人として私が行ったときにお見せしたんです。
 私たちの行った二日前に生まれたベニーンちゃんという赤ちゃん、このお母さんは二十八歳、お父さんは民間人で、お店を経営していたというんですけれども、向かいのスーパーがピンポイント爆弾で爆破されたときに、体に破片がたくさん刺さって、三回手術をしたけれども四十五日前に亡くなったという方です。このベニーンちゃんは、お父さんの顔も本当に知らないままこの世で生きていく、そのことを私は戦争の本当に悲劇の状況だというふうに思ったお会いした方でした。
 それから、こちらは大変見えにくいかと思いますけれども、行きも帰りも車の中から見た風景なんですけれども、これは、イラクの旗を立てていて、米軍出ていけと言っている小さな集会、あちこちで開かれていました。これは私が見た中では大きな集会だったと思います。そういう状況にあったのが現在のイラクです。
 その意味でですが、今回は外務委員会ですので、日本の外交ということを考えたときに、イラクは本当に親日の国でした。それで、憲法のおかげで、アラブ諸国すべてにわたって、基本的に軍事的にシロであるという日本の国がやはり愛されているんだと私は思います。しかし、今回、自衛隊を派遣するということになれば、このきずなが壊されかねないと私は思っています。
 なぜ自衛隊でなければならないかということにつきまして、石破防衛庁長官は、一般の人であれば回避できないような危険を、自衛官が武器を持つ権限を与えられて行けば回避できるとおっしゃっていますが、私の実感は全く逆でした。武器を持った自衛隊が行くことは、むしろ危険を招き寄せると私は思います。
 そもそも自衛隊は安全な非戦闘地域にしか行かないのですから、それであれば、なぜ武力で危険を回避する必要があるのかというのが一つの質問。それから、もう一つ。武装組織でなければ本当に回避できないと多くの皆さんがおっしゃっているようなイラクの危険な地域であっても、戦前、戦中、戦後とも、報道関係者やNGOの方たちだとか一般の人々が大変多く滞在をしていらっしゃいます。武装しないで仕事をしていらっしゃいます。これらの安全を大臣はどうお考えでしょうか。
 この二点、最初にお聞かせいただきたいと思います。
川口国務大臣 まず最初に、その写真のお母さん、赤ちゃん、非常にお気の毒だと思います。そういうケースがほかにもいろいろあるだろうというふうに思いますし、なかなか日本として支援としてやることがたくさんあるというふうにも思っています。
 それで、御質問のことですけれども、武器を持った自衛隊が行くと危険になる、危険を招き寄せるというふうにおっしゃられたわけですけれども、自衛隊は、人道復興支援、そして安全確保の支援をやりに行くわけであって、武力行使をしに行くわけではありません。それから、占領しに行くわけでもありません。まさに支援をしに行くためということであります。
 我が国として、もちろん自衛隊が何をしに行くかということについて十分に説明をしていく必要はあると思いますけれども、危険を招き寄せるわけではない、これを理解してもらいながらやっていくという努力は必要であるというふうに思います。
 それから、安全な地域にしか派遣しないんだから、武力で危険を回避する必要はないじゃないかということでありますけれども……(山内(惠)委員「もう一つの方、武装しない人々の安全」と呼ぶ)その前にもう一つ御質問があったと思いますが、非戦闘地域に自衛隊は行く、これは確かですけれども、非戦闘地域イコール安全であるということではないわけです。安全である地域に非戦闘地域の中でも行こうと思いますけれども、申し上げたいことは、安全性ということと非戦闘地域ということは別物だ、これは重要なポイントですから、これを申し上げておきたいと思います。
 それから、邦人の方の安全、これは非常に重要なことでして、大使館としても、日ごろどういうところにいらっしゃるかとか、安全情報を送るとか、そういう密接な連携をとっていきたいというふうに、今もやっておりますが、引き続き考えております。
 非戦闘地域イコール安全だということとは違うということを認識していただきたいと思います。
山内(惠)委員 きょうの新聞報道で、バグダッド空港ではC130輸送機がミサイルで攻撃を受けました。そのことを御存じと思いますけれども、その空港も危険だということがわかった証拠だと思います。
 きょうの新聞報道はもう一つありました。インドは要員派遣を見送りました。そう考えると、このような危険な状況ですから、今どんなにおっしゃられても、政府はとてもこの十六日のバグダッド空港攻撃に動揺していらっしゃるんじゃないかと思いますが、日本も派遣を見送ってはいかがかというのが私の意見です。
 お返事はちょっと短くお願いしたいと思いますが、寺島実郎さんという方、御存じと思いますけれども、どうしても自衛隊でなければというのなら、迷彩服を脱いで、外務省の職員として医療チームを編成し、イラクの医師団と連携して医療面の貢献をしてはどうかと提案しています。時間の関係もあって、私の次の質問もまだありますので、ぜひここのところを大臣には頭に置いておいていただきたいと思います。
 寺島さんの文章です。今、二十一世紀初頭に立つ日本は、世界潮流をアメリカ主導の力の論理の時代と読み違えているのではないかというのが寺島さんの主張です。世界はゆっくりとだけれどもと前段があり、国際法理と国際協調による全員参加型の秩序形成の時代に向かいつつある。米国の復元力と日本の理性が問われているのであると。このことをぜひ頭に置いておいていただきたいと思います。
 今、バグダッドはどの地域も危険な地域と化していると私は思っていますので、ぜひ迷彩服を脱いでという寺島さんの提言を受けとめておいていただきたいというふうに思います。
 実は私は、十二月に参りましたとき、なぜ行ったかというと、劣化ウラン弾による子供たちの被害が大変大きいという写真展を見たからなんです。
 その前に、今回行きました国際赤十字センターに、日本からお二人の看護師が来ていらっしゃいました。このお二人が言っていらしたんですけれども、日本が湾岸戦争前に有償で建てた病院が十三ある、これは私も知っていましたが、大変老朽化している。この病院を建て直すなりケアをする、その予定はおありでしょうか。そのことについてお願いいたします。
川口国務大臣 医療面での支援というのは、我が国の今後イラクで支援をしていくときの大きな柱の一つです。
 具体的には、幾つかのことをやっておりますし、今後引き続き何をしていくかということについては、状況を見、調査団等を送って、イラク人の需要等をきちんと把握して考えていきたいというふうに思います。
 それで、今いろいろなことを既にやっていますということを言いましたけれども、それは機材の整備計画ということで……(山内(惠)委員「恐れ入ります。中身は今ちょっと、別の方に重く聞きたいので、十三の病院についてどうなのか」と呼ぶ)ですから、その機材の整備計画ということを考えていますということです。
山内(惠)委員 恐れ入ります。十三の病院に関して、本当にケアしていただきたいという強い要望がありましたので申し上げました。
 先ほど申し上げました劣化ウラン弾の影響については、先ほどUNEPとかWHOの調査報告による報告をなさったんですけれども、私が具体的に見た子供たち、がん病棟の子供たちは、白血病であり、末期がんの子供たちでした。あすの命もわからない状況にありました。
 湾岸戦争時に使われた劣化ウラン弾の結果であるとほとんどの人たちは思っています。お医者さんもそう思っていらっしゃいました。しかし、そのとき生まれていなかった三歳から五歳の子たちが本当に苦しんでいます。歯茎から出た血は、ふいてもふいてもとまらない状況。鼻血が出ても、とめることがなかなかできない薬の不足。十二月にお目にかかった子供は、四歳のときには本当に普通の子と変わらなかったんだけれども、頭がはれ、本当に目がはれ、管でしか水は飲めないという状況の子は、今回行ったときは亡くなられていました。
 そういう状況にありましたので、先日、七月二日のイラク特別委員会で金子議員が、人道支援として医者を派遣し、医薬品を送り治療すること、それから、劣化ウラン弾との因果関係について調査をし、結果を出すことを提案しました。そのとき、福田官房長官は、ニーズがあり、対応できる能力があるというのであれば、日本の支援としてやることは可能であり、またそういうものを選択するのは妥当なものだと思っておりますとお答えになっています。
 そうお答えになったのは七月二日です。その後、具体的にこのことは検討されているのでしょうか。
川口国務大臣 いろいろな状況に応じて、調査団を送って把握をしていくというプロセスを経ることになると思います。そういった過程を経て、我が国として何ができるか、何がイラクの人たちにとって重要かというさまざまな観点を考えて、いかなる支援をするか対応をしていくということになると思います。
山内(惠)委員 ぜひ、その調査は、劣化ウラン弾との因果関係ということで、日本政府として力を入れた調査をしていただきたいと思います。
 川口大臣、先ほどUNEPやWHOの報告を言われましたけれども、この劣化ウラン弾に使われているウラン238というのはどういうものか御存じですか。短くお願いいたします。
川口国務大臣 ウラン235の含有率が低いウラン、これが劣化ウランであると理解をしています。
山内(惠)委員 今私が聞いたのは、そこに使われているウラン238のことなんですけれども、この半減期は四十五億年だと、先日私は参考人に来られた藤田先生からお聞きいたしました。四十五億年、地球誕生にまでさかのぼるような年限がたっても半分にしか減らないというのがこのウラン238だそうです。
 先ほどの報告の後だったのかもわからないんですけれども、これは七月九日の報道ですけれども、アメリカの民間シンクタンク、核政策研究所が報告したものによると、この劣化ウラン弾との関係というのは、イラクの南部のバスラで十五歳以下の子供の悪性腫瘍発生率が一九九〇年から二〇〇一年を比べると三倍に広がっている、増加しているという報告があります。吸引で体内に入り込んだ微小粒子はほぼ全量が肺などに蓄積する、経口の場合も一〇%程度が腎臓などの臓器や骨格に残留すると。そういうわけですから、発症した後本当に大変な状況になるという状況を、私はその結果の子供たちに会ってきたわけです。本当に時間が足りないというのが残念でなりません。
 無差別で大量性、これが大量破壊兵器の定義です。とすると、この劣化ウラン弾は無差別で大量に使われている、大量の人たちに影響を及ぼすという意味では、アメリカが使った劣化ウラン弾は大量破壊兵器と私は言えると思います。
 そして、アメリカが使ったことは間違いないということは先日来られた藤田先生がおっしゃっていたんですが、実は私は、ヨルダンでお目にかかった日本大使館の方にも、それからイラクで会った日本大使館の方にもお聞きしたときは、ピンポイント爆弾で破壊された家とは別に、ビルディングの窓から黒い煙が出ているのは略奪に遭った建物で、その略奪を消すために火をつけて逃げたのであの煙があるんだというふうにお聞きしたんですが、何と藤田先生は、あの建物の中に入られて、たくさんの劣化ウラン弾の破片を見つけて集めて、スライド化して私は見せていただきました。
 放射能も物すごく出ているということです。となれば、道路にもその破片は転がっている、大変、そこを通る子供たちにとっても、そこを再建するいろいろなNGOの人にしても、またその近辺に行くであろう自衛隊の人たちにとっても、この放射能の影響は二次被害、三次被害というふうになるというふうに思います。
 その意味で、放射能測定器を持っていけば具体的にどこで放射能があるかが調査できるわけですから、その調査をぜひ日本はしていただきたいと思うんですが、実際に使ったアメリカは、この劣化ウラン弾をどこでどういう形でどれだけ使ったのかを明らかにさせる必要があると思います。その意味で、アメリカの調査待ちではなくて、ぜひ強くそのことを具体化させるように追及していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
川口国務大臣 アメリカが劣化ウラン弾をどこでどれぐらい使ったかということについては、米国政府は公表をしていない。我が国としては、これについては現在問い合わせ中でございますが、返事は今のところ届いておりません。
 それから、安全性については、先ほど委員がおっしゃっていただいたので触れませんが、UNEP、WHOの調査というのはあるわけでして、我が国としては、この調査の結果、これはまだ最終的な、確定的な結論であるというふうには承知をしていませんので、引き続きこれを注視していきたいと思います。
 劣化ウラン弾が大量破壊兵器かどうかということについては、特定通常兵器使用禁止制限条約というのがございまして、これは、過度に障害を与えあるいは無差別に効果を及ぼすことがあると認められている通常兵器の使用を規制する条約ですけれども、この対象に劣化ウラン弾はなっていないということであります。
 いずれにしても、因果関係等の調査については国際機関の結論を見ていきたいと思います。
山内(惠)委員 もう一度強くアメリカに明らかにするように要求をしていただきたいということをお願いいたします。
 この調査をした民間シンクタンクの核政策研究所の方も、アメリカの政府に対して速やかな使用停止を求めています。アメリカの国内でおっしゃっているけれども、日本もイラクへ行くわけですから、そのことを考えると、何としても早急に、その結果、先ほど人体に影響がないようなことをおっしゃっているけれども、もうイラクの人たちは十分知っているからこそ、藤田先生が行かれたときも、ガイガー計数器というんですか、あそこではかってくれという要望が物すごく多かったとおっしゃっています。その意味で、この放射能測定をする場所の特定ということだって必要ですから、ぜひお願いしたいと思います。
 また、日本の支援としては、何としても医療支援は待たれています。もし六カ月ごとに子供たちに薬を投与すれば再発しないという状況の子たちがいっぱいいるんです。その意味で、薬品それから医療機器、これも日本から持っていった電球も、壊れた後は日本の補充がなかなかできない。それから、人材が絶望的に不足していて、治療率が低い。人道支援というなら、バグダッド、バスラに最新の施設を備えた小児がんセンターを建設することを藤田先生はこの間、提案しています。ぜひこのことを検討していただきたいと思います。
 がん専門の最先端の医療施設を整備すること。また、若い医師の教育のためのプログラムを贈ること。これは金子議員もおっしゃっていましたけれども、長崎、広島での体験があるわけですから、若い医師の教育のためのプログラムを贈ること、それが最も望まれる貢献だと思います。
 御検討いただけるでしょうか、こういう要求について。
川口国務大臣 多分時間がないとおっしゃられると思いますので細かいことは申しませんが、医療というのは、今までさまざまな支援を既に行ってきております。今後、医療の分野でどのような支援を行っていくかということについては、引き続きイラク人の需要、あるいは日本の能力、調査団による現地の状況等々を踏まえて、引き続き検討していきたいと思います。
山内(惠)委員 どうもありがとうございました。終わります。
池田委員長 これにて本日の質疑は終了いたしました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時三十九分散会


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