衆議院

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第3号 平成16年3月2日(火曜日)

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平成十六年三月二日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 米澤  隆君

   理事 岩永 峯一君 理事 谷本 龍哉君

   理事 中谷  元君 理事 渡辺 博道君

   理事 末松 義規君 理事 武正 公一君

   理事 増子 輝彦君 理事 丸谷 佳織君

      遠藤 武彦君    小野寺五典君

      木村  勉君    高村 正彦君

      櫻田 義孝君    鈴木 淳司君

      田中 和徳君    土屋 品子君

      西銘恒三郎君    古川 禎久君

      松宮  勲君    宮下 一郎君

      阿久津幸彦君    加藤 尚彦君

      今野  東君    田中眞紀子君

      中野  譲君    前原 誠司君

      松原  仁君    漆原 良夫君

      赤嶺 政賢君    東門美津子君

    …………………………………

   外務大臣         川口 順子君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   外務大臣政務官      田中 和徳君

   外務大臣政務官      松宮  勲君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    瀬川 勝久君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官)            西原 政雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 齋木 昭隆君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 門司健次郎君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    海老原 紳君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 加藤 治彦君

   政府参考人

   (国税庁調査査察部長)  鳥羽  衞君

   外務委員会専門員     原   聰君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二日

 辞任         補欠選任

  河井 克行君     櫻田 義孝君

  中野  譲君     中川 正春君

同日

 辞任         補欠選任

  櫻田 義孝君     古川 禎久君

  中川 正春君     中野  譲君

同日

 辞任         補欠選任

  古川 禎久君     河井 克行君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第一号)


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     ――――◇―――――

米澤委員長 これより会議を開きます。

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 政府から趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣川口順子君。着席のままで結構です。

    ―――――――――――――

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

川口国務大臣 ただいま議題となりました所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、昭和四十七年に締結されたアメリカ合衆国との間の現行の租税条約にかわる新たな租税条約を締結するため、平成十三年以来交渉を行いました。その結果、平成十五年十一月六日にワシントンにおいて、我が方加藤特命全権大使と先方スノー財務長官との間でこの条約の署名が行われた次第であります。

 この条約は、これまでに我が国が諸外国との間で締結してきた租税条約と同様に、OECD条約モデルを基本としつつも、日米両国の緊密な経済関係を反映して、積極的に投資交流の促進を図るために、経済的、人的交流等に伴って発生する国際的な二重課税を可能な限り回避するとともに、二重課税が発生する場合にはこれを排除することを目的として我が国とアメリカ合衆国との間で課税権を調整するものであります。

 この条約を現行条約と比較した場合における特色としては、投資所得に対する源泉地国における税率の上限を全体的に引き下げるとともに、一定の親子関係にある会社間の配当、一定の金融機関が受け取る利子及び使用料については免税とし、また、条約の特典の濫用を防止するための規定等を盛り込んでいることが挙げられます。この条約の締結により、我が国とアメリカ合衆国との間の二重課税回避の制度がさらに整備され、両国間の資本及び人的資源等の交流が一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 何とぞ、御審議の上、本件につき速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

米澤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

米澤委員長 この際、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官齋木昭隆君、外務省大臣官房審議官門司健次郎君、外務省北米局長海老原紳君、警察庁警備局長瀬川勝久君、金融庁総務企画局参事官西原政雄君、財務省大臣官房審議官加藤治彦君、国税庁調査査察部長鳥羽衞君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

米澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

米澤委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮下一郎君。

宮下委員 自由民主党の宮下一郎でございます。

 本日は、質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 このたびの、約三十年ぶりに大幅に内容を改定した上で署名されました日米の新租税条約につきまして、本日は、その経済的な効果を中心に質問をさせていただきたいと考えております。

 我が国の経済発展にとって、貿易を中心とする通商政策が大変重要であるということは、言うまでもございません。内閣府が先月の十八日に発表しました二〇〇三年十―十二月期の我が国の国内総生産、GDPの速報値は、実質で前期比一・七%の増加となっておりますが、これは、年率換算では七%という非常に高い数字でございました。四期連続のプラスということになりますが、年率換算でも、一九九〇年の四―六期以来十三年半ぶりの高い伸びということになります。

 この要因を分析してみますと、第一に、GDP全体の五割を占める個人消費が、薄型テレビなどのデジタル家電の支出が伸びて、実質で前期比〇・八%増加していることが大きいわけですが、第二、第三というところでは、貿易関係の要因が大きくなっております。

 第二の要因、設備投資を見ますと、工場やオフィスなどの建設投資が大幅にふえまして、五・一%の増となっております。内訳を見ますと、輸出関連企業を中心とした産業用ロボットや電子通信機器関連の投資も多くなっておるところでございます。

 この伸びの第三の大きな要因は輸出がやはり大きいわけでございまして、輸出は四・二%ふえております。二〇〇〇年四―六期以来の高い伸びを記録しておりまして、この輸出の増加は、アジアそしてアメリカなどでの景気回復が追い風になっているということがわかってまいります。

 このように見てまいりますと、日本の景気回復を支える最大の要因が、現在では、輸出関連企業を中心とする設備投資と、アジアや米国に対する輸出の増加であるという構造がわかってまいります。

 日米の貿易について考えますと、日本にとりましては、アメリカが最大の輸出国という存在でございますし、輸入相手国としましても、中国に次ぐ輸入相手国という状況が続いております。戦後の高度成長期におきましても、アメリカへの製品輸出を中心として我が国が大きな発展をしてきたことをあわせて考えますと、依然としてアメリカとの通商関係が日米経済活性化の大きなかぎであるということは言うまでもございません。

 日米の政府間におきましても、二〇〇一年六月の日米首脳会談の際の共同声明におきまして、日米経済関係の新たな基礎となります、成長のための日米経済パートナーシップの立ち上げが発表されまして、現在もこの下ではいろいろなチャンネルを通じて対話が続けられておりますが、こうしたさまざまな取り組みを通じて、日米の経済関係の重要性が一層再認識されているところでございます。

 こうしたことを踏まえまして、日米間の通商問題の現状をどう認識しておられるのか、また、今後どのような方針で臨まれるのか、政府としての方針をお聞かせいただきたいと存じます。

川口国務大臣 日米の通商問題につきまして、私も、一九六〇年代の後半から、仕事の過程で日米の通商問題に触れることが非常に多かったわけですけれども、考えてみますと、繊維問題に始まってずっと、テレビですとか鉄鋼ですとか自動車ですとか、およそありとあらゆる日本の主要輸出製品がアメリカとの間で貿易摩擦になったという経緯を思い起こしますと、現在の状態というのは本当に信じられないというのが私の正直な感想でございますけれども。

 アメリカの貿易赤字に占める対日赤字の割合というのが、ピーク時、これは九一年ですけれども、六五%ありました。アメリカの貿易赤字のほとんど、三分の二が日本との貿易によって生じていたということですが、現在、これは二〇〇三年の数字で一二%まで下がった。逆に、中国との関係でいいますと、二三%がアメリカの赤字に占める中国の貿易の比率ということでございます。ということでありまして、今、日米両国間で通商問題で直ちに政治問題化しかねないような、そういう個別の摩擦案件は今はないということでございます。

 それで、先ほど宮下先生がお触れになられましたように、こうした良好な関係の背景の一つに、日米両政府、それから官民挙げての対話の努力というのがあるわけでございまして、成長のための日米経済パートナーシップのもとで、官民の会議、次官級の経済対話、投資イニシアチブ、貿易フォーラム等々、日米の両国の首脳のつながりを、トップにおいてさまざまな対話、協調が行われております。今後とも、こうした各種の政策分野での協調を目指していきたいというふうに思っております。

 日本とアメリカというのは、GDPでも非常に大きな大国ですから、アメリカと日本のGDPを合わせますと、世界の半分近く、四六・六%を占めることになります。その日米両国が良好な経済関係を維持し、さらに発展をさせていくということが世界経済の発展に資するということであると思っております。

 以上です。

宮下委員 次に、対日直接投資のあり方について御質問をさせていただきたいと存じます。

 外国企業が日本国内に投資を行います対日直接投資は、新しい技術や経営ノウハウを日本国内にもたらす点、またさまざまなサービスの供給を通じて新たな雇用を創出する点、さらに、市場に刺激を与え、健全な競争を通じて構造改革推進の原動力となる点など、日本経済の活性化を図るためにさまざまな利点を持つものでございますけれども、残念ながら、現在の対日直接投資の状況は、諸外国との比較において大変に低い水準であるのが現状でございます。

 数字で見ましても、フローベースで見た対内直接投資額の名目GDP比の比率で見ますと、アメリカへ諸外国から直接投資が行われておりますのは、GDPの二・九%あるのに対しまして、日本へはGDP比〇・二%しかないという状況でございます。ストックベースで見ましても、アメリカの場合の二七・七に対して日本は一・一という状況でございまして、日本とアメリカの比較で見た場合でも約二十分の一というような大きな格差が見てとれるところでございます。

 こうした大きな格差の原因としては、さまざまな点が指摘されるところでございます。例えば、各種の法規制や伝統的な商慣行があり、海外からの投資がしにくいですとか、高コストや人材不足などでスムーズに投資が行えない、また、外資という言葉自体、否定的なイメージで受けとめられているというようなことがあると思います。

 しかし、こうしたさまざまな障害を取り除きまして対日直接投資を拡大することは、大変重要な施策であると考えます。対日直接投資拡大につきまして、政府としてどのように取り組んでいかれるのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

川口国務大臣 対日直接投資も、おっしゃったような雇用もございますし、新しい技術あるいは革新的な経営をもたらすという意味で、非常に意味があることであります。

 昨年の一月の施政方針演説におきまして、総理が、五年間で対日直接投資の残高を倍増するという、それを目指す方針を打ち出されたわけでございます。政府といたしまして、そのような総理の方針を受けまして、総理を議長とする対日投資会議の議論、有識者、ビジネス関係者の意見を集約しながら、五つの柱から成る対日投資促進プログラムを策定いたしました。

 それで、その五つといいますのは、まず一番目に行政手続の見直し、二番目に事業環境の整備、三番目に雇用・生活環境の整備、四番目に地方と国の体制整備、五番目に内外への情報発信の五つが重点分野、柱でございます。

 このプログラムのさらに細目がいろいろございますけれども、例えば、行政手続の見直しというところでは、外務省にもありますが、各省庁にインベスト・ジャパンという総合的な窓口を置いております。そういった窓口を通じて、対日投資に関する相談ですとか情報提供を実施するということをやっております。今後とも、着実にこのプログラムの実施を図っていきたい、必要に応じて実施の追加や見直しをやっていきたいと思っております。

 今まで幾つかの発展途上国の国々が、投資をぜひ誘致したいということで、日本の企業に、投資をしてくれないかという話がありました。そのときに私どもが言っていましたのは、投資の誘致も国際競争の中にある、すなわち、その国に対しての投資のいろいろなインセンティブあるいは投資についての優位さというのが近隣の国よりもより魅力的なものでなければ、投資はその国に行かない。

 日本においても、逆に考えて、全く同じことが当てはまると思っております。近隣に、今発展をしつつある中国ですとか、あるいは韓国ですとか、ASEANの国々とか、そういった国々がある中で、日本の投資環境が魅力的なものでなければ、外国から投資を誘致することができないと私は考えております。そういう意味で、魅力的な日本のマーケットに対して投資がふえるように、必要に応じて施策の見直し、追加ということをやることが必要だと思っております。

宮下委員 今回の日米新租税条約は、三十年ぶりに内容を大きく改定し、積極的に投資交流の促進を図るための、二重課税の回避でありますとか投資所得に対する源泉地国における税率の引き下げ、子会社と親会社の間の配当や金融機関が受け取る利子に対する免税、また日米の企業間等でやりとりされます使用料について免税措置を設定するなど、さまざまな施策を盛り込んだものとなっております。したがいまして、さきに質問させていただきました対日直接投資の促進を初めとして、さまざまな経済効果が期待されると考えます。

 そこで、今回の日米新租税条約が我が国の経済社会に与える影響についてどのように考えておられるのか、御所見をお聞かせいただきたいと存じます。

川口国務大臣 この条約でございますが、現行の日米租税条約を全面的に新しくするものでございまして、OECD条約のモデルというのを基本としているということであります。日米両国の緊密な経済関係を反映して、積極的に投資交流の促進を図るということをねらいとしています。

 具体的には、配当利子及び使用料、これは著作権、特許権等の使用の対価でございますが、その支払いにおける源泉地国課税の限度税率を大幅に引き下げることといたしておりまして、特に、一定の親子間の配当、一定の主体の受け取る利子及び使用料については源泉地国免税とすることとしています。また、これとあわせまして、租税回避の防止のための措置をとることといたしております。

 この条約が締結されることによりまして、両国間の投資、文化及び人的交流が一層促進をされ、ひいては我が国においても、ビジネスチャンスの拡大、雇用の創出等を通じた経済の活性化につながるということが期待をされているわけです。

宮下委員 今、概要について、新条約の御説明がございましたけれども、特に今回の内容を見ますと、配当や利子、使用料など、投資所得に関する源泉地国課税が大幅に軽減されたものとなっているのが大きな特徴であると思います。特に親子会社間の配当につきましては、持ち株割合が五〇%を超えた場合には免税となっておりますし、また、金融機関等が受け取る利子や日米間で支払われる使用料についても免税ということになっております。

 これらの取引課税について、日本と他の主要国との租税条約を見ますと、いずれも低くても五%、普通は一〇%から一五%といったような課税となっておりますので、そうした比較で考えましても、今回の日米間の扱いは破格のものと言えると思います。

 そこで、今回、投資所得についての課税をこのように思い切って引き下げた理由についてお伺いをしたいと存じます。

海老原政府参考人 お答えさせていただきます。

 今宮下委員がおっしゃいましたように、今回特に、親子会社間の持ち株割合五〇%超の子会社からの配当、あるいは一定の金融機関等が受け取る利子及び使用料については、源泉地国免税としております。

 これは、先ほども大臣から御答弁申し上げましたように、そもそもこの条約はOECD条約モデルを基礎としておりますけれども、このOECD条約モデルでも例えば会社間の配当については五%の源泉地国課税とされておりますのを、これは免税にしております。このような措置によりまして、投資交流の一層の促進を図りたいということを考えております。

 一例を申し上げますと、この配当の免税という特典は、我が国から米国に進出している我が国企業の九割以上がこれによって特典を受けることができるということからもわかるように、投資の日米間の一層の促進につながるというふうに考えております。

宮下委員 今御説明いただきましたように、日米間の経済取引が他国との取引に比べまして大変有利な条件で可能になりますと、逆に一つ心配になりますのは、日米以外の国の企業また居住者などが、この条約を悪用して課税逃れをする可能性がないのかということでございます。

 例えば、第三国の居住者が米国内にペーパーカンパニーを設立して、この会社を通じて日本に投資を行うことによりまして、本来受けることのできないはずの投資収益についての免税措置を受けるなどの操作が行われますと、日米間の投資活性化ということを目的とした本条約の趣旨を損なうことになると考えます。

 今回の条約におきましては、本条約の特典を受けられる対象を日米の居住者に限るための措置が講じられていると伺っておりますが、具体的にその仕組みについてお伺いしたいと存じます。

門司政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、まさに、新条約のもとでの減税というものが大変魅力的なものになっております。したがって、新条約は、条約を不正に利用することによる課税逃れを防止するための措置をとることとしております。

 具体的には、条約の特典を享受できる者を条約相手国の適格な居住者に限定することにより、第三国居住者による濫用を防ぐことを目的とする、いわゆる特典制限条項というものが盛り込まれております。これによりまして、条約の特典を享受する者が、相手国の個人、政府、一定の公開会社、一定の公益法人、また一定の年金基金など所要の要件を満たした居住者に限定され、第三国の居住者による新条約の濫用が防止されるということになっております。

宮下委員 時間が参りましたので以上で質問を終わらせていただきますが、この条約によって日米経済が大きく発展することをお祈りして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

米澤委員長 次に、小野寺五典君。

小野寺委員 自由民主党の小野寺五典です。

 宮下委員の質問に引き続き、日米租税条約についてお伺いしたいと思います。

 先ほど大臣のお話がありましたが、OECD条約モデルを今回参考にされたといいますが、この租税条約は、それよりもさらに踏み込んだいわゆる最新鋭の租税条約じゃないかということで、私は評価をしております。

 ただ、その中で懸念されますのは、先ほどもお話がありましたが、実は特許、商標、意匠というような使用料について源泉地国では無税になるということになります。

 こうやって考えますと、実は私たちの身の回り、例えばコカコーラとか、ちょっと言っていいのかわかりませんが、ハンバーガーとか、いろいろな私たちの身近なものは、実はこの意匠登録は日本が使用料を払っている。ですから、日本の国内に税金がおりているというものがたくさんあると思います。また、もしこの日米間以外にこれからさらに広がった場合、例えばヨーロッパの諸国に関しましては、恐らく、私たちの身につけているものを含めて、イタリアとかそういうブランド物をかなり使用していて、それが日本の法人ということで、日本にかなりおりている税金も実はあると思うんです。

 ですから、こうやって見ますと、もしかしたら、いわゆる特許とか意匠、商標登録についての免税については、現在の段階では私たちの国に対してはマイナスにむしろなるのではないか、そういう懸念もあります。

 一番これから考えるべきことは、実は、今日本が目指しています知的財産の立国というんでしょうか、そういう国を目指すためにこういうことは必要なんだけれども、ただ、そのための施策というものも大変重要になってくると思います。ぜひ、そのことを踏まえての考え方をお伺いさせていただければと思うんですが。

川口国務大臣 特許について、これは恐らく今の時点と将来の時点と両方考える必要があるだろうと思います。私は今、特許の日米間の収支がどうなっているかという数字をちょっと持っていませんので、後でもし何かあれば補足をしてもらいたいと思いますけれども、それは恐らく現状の姿、どっちにせよ。

 この条約というのは、私は、将来に向かって、我が国も電子産業等で相当な特許収入があるわけですから、今後それをさらにふやしていこうというインセンティブになっていくだろうというふうにお話を伺いながら思いました。そういった産業の活力というのを我が国の企業は持っているというふうに思っています。

 それから、先ほどおっしゃったような源泉地課税の大幅軽減とか条約の濫用防止の措置とか、そういうことが入っていますけれども、これは今後ほかの国と租税条約を締結するに当たっての基本方針であるというのが我が国の考え方でございまして、こういった方針でほかの国に対しても今後やっていきたいというふうに考えております。

小野寺委員 今お話しいただきましたとおり、本当にこの知的財産というのは、これから日本にとっては大変重要な問題になると思います。特に、どちらかといいますと、私どもは今、ヨーロッパのブランド物を身につけ、そしてまたアメリカのいろいろなソフトで育った、そういう世代になりますが、恐らく、アニメソフトあるいはゲームソフトを含めて、これからむしろアメリカあるいはアジアが日本のこういうソフトあるいは知的財産をもっと活用していただける、そういうことにもなると思います。

 今お話がありました、現段階では私も恐らくちょっとマイナスかなと。ですが、近い将来はこれがプラスになる、さらにまたアジアに向けては大変大きな力をこれから持つようになる、そういう大事な条約だと思いますので、今は日米間の二国間ですが、これが次第にアジアを含めたワールドワイドなものになるようにぜひお力添えいただければと思います。

 租税条約については、宮下委員も御質問がありましたので、この辺でやめさせていただきまして、私の以前からの関心事であります大陸棚のことについてちょっとお話をさせていただければと思います。

 実は、御存じの方も多いと思うんですが、国連海洋法条約の中で大陸棚の調査、拡充という問題がありまして、これは、二〇〇九年五月までに国連の大陸棚限界委員会というところに科学データを提出しまして、それで登録をしますと、実は日本の領海、私どもの領海というのは経済水域二百海里というイメージがあるんですが、それを最大三百五十海里まで広げることができるというふうに言われています。

 ある試算によりますと、例えば、現在日本の国土面積というのが三十七万平方キロと言われているんですが、この大陸棚まで広げますと何と六十五万平方キロということで、約一・七倍の面積に我が国の領土が拡充する。

 それから、ここにある資源といいますのは、実は海の底ですので、金、銀、ニッケル、コバルト、こういう希少価値の鉱物もたくさんあるんですが、それ以上に私が注目していますのは、例えばメタンハイドレートというような、ガソリンよりももっと熱効率の高い資源が実はたくさんあると言われています。この資源を活用すると、今後石油資源に頼らなくても百年間は日本のエネルギー問題が解決する、そういう非常に重要な課題だと私は思います。もちろん、すぐに技術開発ができる分野ではないんですが、特に日本はなかなか暗い話題が多いんですが、これからの私どもの子孫に対して大きな財産を残せる大事な問題かと思います。

 この問題で何が一番複雑かといいますと、実は今回初めて内閣の方に大陸棚調査対策室というのができまして、そこが調査を一元化するということでようやくスタートしたんですが、よく考えてみますと、海の調査、大陸棚の調査というのは所管する役所がたくさんあります。それで、各省庁にまたがるということでなかなか今足を踏み込んでいけないような状況にあります。

 そこで、実は終わりが決まっていて、しかもやることが決まっていて、それは相手が対国連だということになります。ですから、当然最終的な責任というのは外務省が持つというふうに私は考えるんですが、その外務省の対応について、この大陸棚対策室にどのぐらい、例えば人員を入れているかとか、あるいは最終的に、この間自民党の部会の中でも、申請がもし却下された場合は大変な国益を損じますが、一体この責任はだれが負うんだという議論になったときに、それは外務省だという声がたくさん上がっておりました。

 こういうことからも、恐らく最終的には外務省が大きな責任を負うという気持ちでぜひ積極的に取り組んでいただきたいんですが、この大陸棚の調査に対しての現在のお取り組みについてお伺いしたいと思います。

川口国務大臣 外務省が内閣にどれぐらい人を出しているかというのはちょっと後で補足をしてもらいたいと思いますけれども、おっしゃったように、これは国連海洋法条約で、沿岸国の領海基線から二百海里までの海底等を大陸棚とするということともに、大陸の縁辺部が領海基線から二百海里を超えて延びている場合には二百海里を超える大陸棚の設定ができるということになっているわけです。

 それで、領海基線から二百海里を超えて大陸棚の設定がある場合には、この条約に基づいて設置をされております大陸棚限界委員会というのがありまして、それによる勧告を受ける。そのために、大陸棚の地形、地質等、大陸棚の限界に関する情報をこの委員会に提出をしなければいけないということでございます。先ほど先生が国連とおっしゃったのは、そういうことをおっしゃっていらっしゃると思いますけれども。

 それで、外務省がそのためにどういう役割を果たしているか、これはおっしゃるように幾つかの省庁が関係をしているわけですが、外務省のしていることは大きく言って三つございます。

 一つは、国連のこの委員会に出す情報、これの作成に取り組んでいくということとともに、他国による申請が我が国の大陸棚の限界の設定に悪影響を及ぼすことがないように、適切な対応をとっていくということが一つでございます。

 それからもう一つですけれども、大陸棚限界委員会というのは、この分野の専門家である二十一人の委員から構成をされております。我が国は、この委員会の活動当初、平成九年ですが、これから二期連続で委員の席を確保してきておりまして、平成十九年に次期の選挙がございますが、そこで三期連続の選出に向けまして、今後、選挙の支援活動を行っていくということも外務省の果たす重要な役割であるというふうに考えております。

 それから三つ目ですが、先ほど先生がおっしゃった内閣府大陸棚調査対策室、ここに要員を派遣するということでして、この要員は十三名のうち二名が外務省ということでございます。この人員については、今後もし必要があれば引き続きさらに努力をしていきたいと思いますけれども、そういった大陸棚調査対策室への要員派遣や、日本の委員の委員会出席のための予算の確保、それから、今後とも国連海洋法条約締約国会議というのがございますが、その会議あるいは関連の会議に対する対策のさらなる強化に向けて、積極的に対応していく考えでございます。

 これは関係省庁が、例えば文科省ですとか経産省ですとか国土交通省もそうかと思いますが、たくさんございます。海上保安庁もそういうことでございます。そういった、これはまず調査というのがありますので、外務省がみずから調査をしているわけではありませんから、そういった各省庁が連携をして、省庁を超えて連携をしてこの活動を国連につなげていくということが大事だと思っております。

小野寺委員 今お話ありましたが、最終的にはこれは、結局、国連の大陸棚限界委員会の中で認めてもらうということですから、この最後の折衝というのは外務省が負うことになります。そうしますと、大変重い役割を持っているんで、言ってみれば現場の調査作業は各省庁がやるけれども、最終的な交渉、あるいはこれがちゃんと登録されるかどうかということの責任というのは外務省が負うという、大変重い役を持つことになります。

 それで、ちょっと危惧しますのは、今十三人の対策室の中でお二人を外務省から出させているというんですが、この方がどういうお立場で、どういう専門の方なのかということをお伺いしたいんです。

 と申しますのは、実はあのロシアがこの間申請しまして、これは却下されています。いわゆる試験に合格しなかった。なぜロシアが合格しなかったか。いろいろな問題あるんですが、少なくともロシアが申請をしたときのロシアの対応をした方というのは、担当の副大臣だというふうに伺っています。しかも、この方は天然資源省の副大臣で、科学者で理学博士の称号を持っている方、こういう専門家が専従でロシアの科学技術をもって一生懸命対応しても、これはハードルで却下されたわけです。

 という中で、日本が、終わりが決まっている中で一体、外務省、責任を持つ立場の省庁が専従なのかどうか、あるいはどういうキャリアをお持ちの方が二名としてこの中に入っているのか、それをちょっとお伺いしたいんですが。

川口国務大臣 内閣に出ている人については、ちょっと後で事務方から補足をしてもらいたいと思いますけれども、その前に、ロシアが申請をして、却下をしたということについては、我が国が実は密接に関係をしていまして、これは北方四島を、ロシアから出した資料について、基線として用いていたということがありますので、これに対して二〇〇二年の二月に我が国から抗議をいたしております。これが先ほど外務省の仕事として申し上げた、ほかの国の活動が我が国に悪い影響を与えないということの一環であるわけですけれども。

 そういったことをやっておりまして、それだけが理由かどうかということはちょっとよくわかりませんが、いずれにしても二〇〇二年の六月に、この委員会が、全般的に科学的データが質、量とも不十分であるということを理由としまして、差し戻しをするという勧告を採択したわけでございます。

 そして、ロシアに対して、日本との間で合意に達する最大限の努力をするようにという勧告をいたしております。それで、我が国との間で、その後、協議をしましょうということで、ことしの一月以降に東京で協議を開催しましょうということでございます。

 いずれにしても我が国としては、ちょっと今政府参考人が呼ばれていないということでございますので、今行っている人は、一人は非常勤で経済局の海洋室長が行っております。それから主査、これも行っているわけですけれども、そういう状況が生じたときには、これは内閣に出ている外務省の人だけがやるわけではなくて、外務省全体としてやるということで、内閣はそういう意味で調整をするところであるということでやりたいと思っております。

 いずれにしても重要であるということで認識をしていますし、内閣府に出る人間、これについて、必要であればどんどん強化をしたいと思っています。

小野寺委員 今、本当に、お話があって、私も寂しく思ったんですが、一人は非常勤である、もう一人は主査が出ている。本当にこれでこの試験、ハードルをクリアできるのかという大変心配をしております。

 特に、ロシアが失敗した理由というのは二つあると思います。一つは科学的な知見が足りなかったこと。予算もあるいは技術的なものも足りなかったかもしれませんが、それでも、ここは天然資源省の副大臣が直接担当をし、理学者がたくさん詰めてもできなかったということがあります。もう一点は、確かに北方四島の問題を含めて領海の問題があると思います。

 そうなりますと、かえって外務省の役割はもっと重要かと思うんです。といいますのは、これから日本が領海画定をするに当たって、恐らく諸外国からそれに対しての何らかの問題が、もしかしたらクレームがつくかもしれない。そうなった段階で、大事な日本の国益というものが損なわれる可能性がある。としますと、ますます外務省の、ロビー活動を含めて非常に慎重な対応が必要かと思います。

 まだ始まったばかりで、ことし初めて対策室ができたという事情もありますので、これからますます拡充されるかと思うんですが、特に、ここにある資源というのは、現段階でも六十兆円から百兆円と言われています。さらにこれから技術開発が進むと、どれぐらいの大事な、私どもの資産になるかもしれません。国益に非常に準ずる大きな資産になるというふうに思っています。ですから、私どもがこれから日本の若い世代に引き継げるものはいろいろなものがあると思うんですが、この資源というものはとても大事なものですから。資源がなくて困っていること、多々あると思います。そういう寂しい思いをさせないためにも、ぜひしっかりと対策、対応をしていただきたい。

 特に、ここにことしも百数十億の予算が新年度予算でつこうとしています。また、これから約一千億の予算をかけて調査しなければいけないという段取りもほぼ決まっているということになります。そして、これだけの調査をして、最終的な試験にクリアするかどうかという回答文を提出するのは、恐らく外務省の役割になると思います。そしてまた、その際には関係国との調整あるいは関係国の理解も必要かと思います。

 そういう意味で、ぜひこの問題は外務省が中心としてやるんだというお気持ちを踏まえて、この大陸棚の問題について積極的にこれからお取り組みいただくよう、最後の御決意を聞かせていただきまして、私の質問を終えさせていただきます。

川口国務大臣 資源は重要な問題でありますので、そういった協議等が始まる段階あるいはそれ以前の段階から、外務省の総力を挙げて対応したいと思います。内閣に出ている人もさることながら、基本的には外務省の本省でこれをやっていくということだと思います。

小野寺委員 ありがとうございました。質問を終わります。

米澤委員長 次に、丸谷佳織君。

丸谷委員 公明党の丸谷佳織でございます。

 私は、いわゆる本日審議になっております日米新租税条約について、賛成の立場から質問をさせていただきます。

 現在の我が国は、アメリカを初めとしまして五十五カ国と租税条約を締結しています。アメリカとは一九七二年に、投資交流の促進を図るために、二重課税の回避あるいは脱税の防止等の内容を盛り込んだ租税条約を締結しました。

 その後約三十年以上たちまして、日米両国の経済関係も大きく変化をする中、日米両国の経済関係者からも強い要望があり、今回、内容を全面的に新しくした条約の締結を目指すものと考えられますが、改めて、本条約の締結の意義と、そして締結することによって予想される経済効果について、政府のお考えをお伺いします。

川口国務大臣 まず、現行の日米租税条約を全面的に新しくするものであるということでして、それは、OECD条約モデルを基本としながら、さらに、日米両国の大変に緊密な経済関係を反映しまして、積極的に投資交流の促進を図るというものであります。

 具体的には、配当、利子及び使用料の支払いにおける源泉地国課税を大幅に引き下げることといたしまして、特に、一定の親子間の配当、一定の主体の受け取る利子及び使用料につきましては、源泉地国免税とするということにしているものであります。それとあわせて、濫用防止のための措置をとることとしているわけです。

 この条約が締結されることによりまして、投資、文化、人的交流が一層促進をされて、我が国においてもビジネスチャンスの拡大、雇用の拡大、経済の活性化につながるということだと考えています。

丸谷委員 報道によりますと、本条約の締結に当たってはアメリカ側からも強い働きかけがあり、経済界のみならず、クリントン前大統領も前森総理にじきじきに協議の開始を申し入れるなど、極めて積極的であったというふうに聞いております。

 現在のアメリカの経済状況を見てみますと、いわゆる双子の赤字問題が非常に深刻であり、二〇〇二年度からの財政赤字も二〇〇三年度では三千七百五十三億ドル、約四十四兆円にもなっております。アメリカ議会予算局の見通しによりますと、今後の財政赤字の累積額は二〇〇九年度までの五年間で約一兆四千億ドル、一四年度までの十年間で一兆九千億ドルに達すると予測もされております。

 本条約締結にアメリカが積極的に働きかけました理由の一つとして、経済関係の強い日本との税率を低減することによって、投資利益ですとか知的財産使用による税収の増大が期待でき、また財政赤字や経済収支赤字の改善に貢献できると考えたからかとも思われます。

 アメリカ経済の行方は、経済関係の強い日本のみならず世界経済の先行きにも暗い影を落とす可能性がある以上、早期にこのアメリカの経済の停滞を脱し、安定に向けた施策をとっていくべきだというふうに考えておりますけれども、米国の双子の赤字問題について、日本政府の見方、現状と見通しをお伺いします。

川口国務大臣 双子の赤字というのは、前にも、一九八〇年代から九〇年代にかけても言われたことがあるわけでございまして、そのときには、それがアメリカの経済の低迷の原因であったわけです。したがいまして、その双子の赤字の再現がある、存在しているということについては、これは米国経済にどのような影響を与えるかという観点から、懸念材料の一つではあると思います。

 それで、どういう見通しかということについて、今後、まだ見きわめるということは難しいわけですけれども、動向によく注意をしていく必要があるだろうと思います。簡単には、赤字の拡大がありますと、これはクラウディングアウトということがありますので、金利の上昇の圧力を招く可能性があるということで、金利が急激に上昇すると経済に悪い影響があるということが一つ。

 それから、経常の赤字拡大、これでいきますと、これはドル安要因でありますけれども、ドルの急落があるかもしれないという投資家の懸念、それが生じる可能性ということもあるわけで、その場合には資金調達が難しくなるということもあり得るわけでございます。

 注視をしていく、慎重に見きわめていくことが大事だと思います。

丸谷委員 これほど日米関係の経済的な結びつきが強くなっている中にありまして、外務省の中にも経済局、また対米、北米の専門家が多いわけですから、注視をしていく以上に、また日本として、外務省としても、また財務省としても、分析をしながら日本経済に与える影響を考えていかれるものというふうに考えております。

 続いての質問、ちょっと聞きづらい問題でもあるんですが、またお答えにくい問題かとも思いますけれども、そもそも、ブッシュ政権の経済政策に対する日本の評価はいかがなのかということをお伺いしたいと思います。

 クリントン前政権の時代にはようやく黒字に転換しました財政赤字でありますけれども、現在のブッシュ政権によります景気刺激策のための減税、またイラク戦費のための政府支出の拡大、さらに今、双子の赤字を懸念しまして海外からの資本流入が細っていく中、さきに大臣が述べていただいたようなアメリカ経済の現状と見通しになっているというふうに思われます。

 また、報道を読んでみましても、アメリカの上院の方では、歳出抑制を求めますブッシュ政権の意向を無視して、新たな道路整備六カ年計画を歳出を拡大した上で可決するなど、なかなかブッシュ政権、現在の状況下で歳出抑制に本気で取り組んでいるのかなという気もしながら見ているわけですけれども、日本政府としまして、ブッシュ政権の経済政策をどのように評価されているのか、お伺いをします。

川口国務大臣 ブッシュ政権は、九月十一日のテロの後、テロとの闘いあるいはイラクでの軍事行動、復興支援の政策の実施のために、一連の歳出関連法案を成立させております。同時に、国内経済への配慮がございまして、今まで二度にわたる大型減税を実施している。

 そして、二〇〇一年には年間十一回の利下げをやっております。それをやって、適切な財政金融政策をとることによって、景気が腰折れすることなく持続的に経済成長が実現をするように対処してきているということでして、財政赤字、これは問題であるわけですけれども、先般の予算教書におきましては、二〇〇九年度に、今後五年間で財政赤字を半減する、それを達成できるという見通しを示したということでございます。

丸谷委員 大統領選も間近になってきておりますので、日本政府としましても、ブッシュ政権の経済政策に対する評価というところまではなかなかおっしゃっていただけない部分もあるのかなというふうに思いますけれども、日本に与える影響、世界に与える影響が大きい以上、ひとつ厳しい見方をしていかなければいけないのかなという気もします。

 続いて、宮下議員の質問と重複してしまう部分があるかもしれませんけれども、米国の通商政策、特にWTOの新ラウンド交渉及びFTAに関します政策の現状について、政府の認識と評価をお伺いしたいと思います。

川口国務大臣 米国政府は、自由貿易の推進、これを主要な政策課題に掲げておりまして、WTOの新ラウンドの交渉とFTA、二カ国間、地域的な貿易自由化のFTA交渉を今並行して進めています。

 WTOの新ラウンドでは、先般、ことしの初めに、ゼーリック通商代表から手紙が各国の閣僚に送られました。そして、二〇〇四年を失われた一年にしてはいけないということで、WTOの交渉でアメリカが主導的な役割を果たしていくということの決意が表明をされましたし、その後、ゼーリック代表は、日本を初めとしていろいろな国を今回っておりまして、私も話をいたしましたけれども、積極的にこれを動かしていかなければいけないというお話をさせていただきました。

 アメリカが自由貿易の拡大という観点から取り組んでいるということについて評価をしていますし、ゼーリック通商代表の手紙、そして各国の歴訪というのは、この問題についてのコミットメントをあらわしたものであるというふうに考えております。

丸谷委員 続きまして、対中政策についてお伺いをしたいと思うんですけれども、大臣のさきの御答弁にもございましたように、かつては米国の貿易赤字といえば最大の相手国は日本でありましたが、現在は中国がアメリカの最大の貿易赤字の相手国でありまして、米国経済が政府の対中経済政策について不満を表明していく中、ブッシュ大統領は中国元の切り上げを求めています。

 今、中国は世界の工場としまして、もはや揺るぎない地位を獲得していますけれども、背景には巨額の直接投資の受け入れが成功していることが考えられます。例えば、二〇〇二年では四百九十三億八百万ドルと、投資所得への優遇の課税、租税に関するさまざまな措置を講じた結果が如実にあらわれているのかもしれません。

 アメリカの双子の赤字問題を解決する際に、対中経済政策は、これも欠かせない要因だと承知しておりますけれども、中国経済に対する認識についてお伺いをします。

川口国務大臣 米国と中国の経済関係は、おっしゃったように、今拡大をしてきているわけです。

 それで、米国にとって中国は今第三番目の貿易相手国、日本は四番目になっていますけれども、中国は第三番目ということでありまして、二〇〇三年の米中間の貿易総額が約千八百八億ドルということでございます。順調に発展をしているということだと思います。

 それで、これに伴って、対中貿易赤字がもう一千二百四十億ドルということで、過去最高になっているということであります。これについて、人民元のレートをめぐる議論というのがございますし、それから、中国経済の成長自体が米国経済内の産業に与える影響ということも議論をされている、懸念をしている人たちもいるわけです。

 米国政府として、これは日本も同じような考え方がありますけれども、知的所有権について、中国がきちんとした制度をつくり、それを実行して、知的財産権の保護をするということが重要だというふうに考えています。それから、中国がWTOに加盟したときに約束をしたさまざまなこと、これを期限どおりにやるということが大事だということで、これは日本も全く同じ考えを持っています。

 そうしたことを米中間が緊密に対話をすることによって解決していきたい、そしてその経済関係を強化していきたいというふうに考えていると承知をいたしています。

丸谷委員 では、最後に、冒頭に私は、この新条約について賛成の立場から質問させていただきますと申し上げましたけれども、一方、アメリカにおける審議状況はいかがなのか、お伺いしたいと思います。

 新条約では、持ち株比率五〇%以上の親子会社間の配当は源泉地国免税となっています。この点につきまして、米国上院での審議の中では、現在、持ち株比率八〇%以上としていますイギリスに比べまして、日本を優遇するものではないかと問題視する意見もあったようでございますけれども、アメリカの委員会また公聴会の議論はいかがだったのでしょうか。また、条約全体の承認の見通しはいかがか、最後にお伺いします。

川口国務大臣 米国が、今この条約については、上院で早期の締結に向けたプロセスを進めているわけです。

 具体的に申しますと、二月の二十五日に上院における公聴会が終了しまして、米国政府の説明によれば、三月の上旬には上院で承認が得られる見込みであるというふうに聞いております。多分、三月の二週目ぐらいには本会議において採決ができるのではないか、その後、大統領が批准のための手続を進めるという段取りになります。

丸谷委員 以上で質問を終わらせていただきますが、新条約の発効が日本経済に資するように期待をして、質問を終わります。ありがとうございました。

米澤委員長 次に、末松義規君。

末松委員 先ほどから、日米租税条約についていろいろと審議されております。私の聞きたいこともある程度はわかってきたんですが、引き続き、私も質問させていただきます。

 まず、私も、この日米租税条約について、投資の促進といいますか、二重課税あるいは社会保障料の二重支払いの防止とか、そういったことも含めて、基本的に望ましいことだなと思っているわけです。これで日米間で投資の交流が進んで経済関係が強化されること、これは非常にすばらしいことだと思っております。

 ただ、条約を締結する際に、どれだけ両国にメリットがあるのかという中で、そのメリットが著しい不均衡が生じているということであれば、それはやや問題にもなり得るのかなということなんです。例えば、使用料とか利子とか配当とか、そういった点について日米間でどういうバランスになっているのか、そこのところについてお伺いをしていきたいと思います。

加藤政府参考人 日米租税条約の税収面への影響のお尋ねでございますが、今回の条約でございますが、この条約によりまして免税とかいろいろな措置をとっておるわけですが、まず、日本を源泉地国とする所得につきましては、免税によって、もちろん減収、我が国の減収となります。一方、米国を源泉地国とする所得は、米国においては減収ですが、逆にその反射効果として、我が国の法人が法人税から控除する外国税額が減少しますので、これは日本においては増収になります。

 これは、経済の相互の交流の状況、それからそれぞれの国の景気動向、いろいろな要素が絡みますが、本条約の締結で、一方的にどちらかが増収、減収という不均衡を生ずるものではないというふうに考えております。

末松委員 そうすると、不均衡を生ずるものではないということは、ある程度バランスがとれているという認識を持っているということですね。

加藤政府参考人 これは、所得の種類によって、例えば配当所得のようなものですと、今の直接投資の交流状況からしますと、日本側の受け取りの方が多い、一方で、使用料のような形態ですと、若干アメリカの方が多いという、その所得間によっての一部アンバランスがございますが、トータルとしての均衡という面では、十分とれているんではないかと考えております。

 ただ、これは非常に、それぞれ、今後の投資交流の進展とか、それから、例えば配当のように法人の所得の変動が大きい所得とかいろいろございますので、これは長い目で見てどうなるか、また、これは今後また変化する可能性はございますが、今の時点で一方的な不均衡というふうには考えておりません。

末松委員 特許等の使用料、これについてもどんな見通しでしたか。

加藤政府参考人 御指摘の使用料につきましては、先ほど申し上げましたように、今の時点では、やはり日本の方が使用料の支払いは多うございます。

 ただ、近年、日本も、無体財産権等の活用により諸外国から受け取る使用料は急激に増加しておりますので、日米間だけで今申し上げれば、日本が若干の支払い超になっておりますが、今後の進展、また、そのトータルでいろんな国との関係から見れば、使用料についても日本の受け取りが多くなっていくであろうということは、想像ができると思います。

末松委員 例えば使用料等で、ヨーロッパの方は非常に日本に対して使用料を取ってきているという話がありますけれども、ヨーロッパの方から、日米のこの条約の締結を見て、うちもさせろというような話は来ておりますでしょうか。

加藤政府参考人 私がお答えするのが適当かどうかあれですが、そういうお話が来ていることは事実でございます。

末松委員 そうしますと、今、ほかの国と、こういったアメリカのような租税条約の改定をしている現状はどうなっているんでしょうか。これは外務省にお伺いします。

川口国務大臣 現在ですけれども、我が国は、今、五十五カ国と租税条約を結んでいる。厳密に言えば、五十五カ国に租税条約の適用があるということであります。

 それで、今回いろいろな措置をとったということでございますし、これは今後の交渉の基本方針にもなるわけでございまして、今後、どのような交渉を行っていくかということについては、これは、いろいろな二国間関係とか経済関係とか、さまざまなことを考えていくということでございます。

 この五十五カ国に適用になっているということで、たしか対外直接投資の八〇%以上がカバーされるということでございます。

末松委員 私が質問する前にその答えも言われたところもあるんですけれども。

 こういった自由化とか、そういった交流の垣根を下げるという中で、政府として、さっき、さまざまな総合的な評価によって、条約の改定あるいは日米租税条約のようなものを締結していくというお話ございましたけれども、基本的にどんなことが前提条件としてなっているのか。

 つまり、原則として、哲学として、要するに、垣根を低くすることがいいんだということで、アメリカと同じような形でほかの国にもそういったことを推し進めていくのか。むしろ、アジアに対しては、そういう投資のリターン、あるいは使用料のリターンは多いので、逆に日本の方から、ぜひ結んでくれという動き方になるでしょうし、ヨーロッパの方は、どちらかというと逆リターンのケースもたくさんあるから、そこら辺はスピードを抑えた方がいいのかとか、そんないろいろな判断ができるかと思うんですけれども、哲学として、きちんとこれを推し進めていくという方針があるのかどうか、そこについてお伺いします。

川口国務大臣 必要でしたら後で財務省から補足をしていただきたいと思いますけれども、アジアについては、今、十五カ国と既に結んでいるわけです。それから、欧州については、ヨーロッパについては、三十一カ国と結んでいるということです。

 それで、今後締結をしていくときの基本方針として、今度の日米の租税条約の方針を基本的な方針としていくということであります。したがって、今申し上げた数の国との改正交渉を行っていくには、そういうことが基本方針、アメリカで使ったようなことが基本方針である、OECD条約モデル、そして、投資所得等についての源泉地課税の大幅な軽減とか条約濫用防止とか、そういったことが基本方針であるということです。

 それで、どういう基準でそれを考えていくかということですけれども、先ほど二国間関係と申しましたけれども、我が国との二国間関係、それから相手国の税制の状況、租税条約の締結状況、それから、もし今既に租税条約を結んでいるとしたらば、実際に課税上の問題が起こっているかどうかといった点、そういったことを総合的に考えていくことで相手国を決めていくという考えでおります。

末松委員 ちょっと、私、この中で一点だけ、これはどうかなという点がございます。利子の支払いにおいて、金融機関とその他の法人を分けて、それで金融機関は免税にして、その他の法人は一〇%の課税をそのまま行っている。これはいかがなものかという気がするわけです。

 これは、G5の間では、その他の法人も免税になっているという話も聞いておりますし、原則からいって、金融機関というものは、さまざまな金融商品を扱って、あるいは、利子等さまざまに扱いながら利益を得ていくという業態、その他の企業はそういったことをせずにやっていく業態、これは区別をしなくても、それぞれの業態の性格が違うだけであって、区別する必要がないと私は思うんですけれども、G5のようにもともとから免税にすればいいというふうに考えますが、そこは財務省はどう考えますか。

加藤政府参考人 御指摘の利子の問題でございますが、基本的に利子につきましては、我が国の法人が仮に支払い者としますと、支払い者の段階の所得計算においてまず利子が損金算入をされるということで、その段階で我が国の法人所得が減る、それに対応して非居住者が逆に受け取る利子を源泉徴収に課税する、こういう基本的な関係でございます。この形は、OECDのモデル条約でも、利子の取り扱いとして損金算入をしている利子については、受け取り段階で居住者から源泉徴収をするということは認められております。

 ただ、金融機関の場合、要するに、借り入れて貸し付ける、そして貸し付けて利子を収入とするという業態の場合は、どうしても、受け取り利子に源泉徴収をかけますと、要するに仕入れを考えないで、売り上げの方、グロスに課税してしまうという結果になって、仕入れである方の金利のことを考慮しない。ですから、グロスにかかってしまうとネットの収益を上回ってしまうという問題がございまして、これについては、今回、新租税条約において金融機関について免税といたしました。これは、国内の法制においても、国内金融機関の源泉徴収免除の制度も同じような趣旨でございます。

 全体として、私ども、租税条約は二重課税の調整という非常に重要な役割を果たしておるわけですが、逆に我が国の租税債権の確保、それから条約の濫用防止という我が国の国益、法益を守る必要もございます。その調整として今回の措置をとらせていただいたということでございます。

末松委員 この租税条約、私も望ましいと思っておりますので、そういった意味で、さらに外務省の方も、ほかの国と投資の交流が進むような形で頑張っていただきたいと思います。

 それでは、私の方でちょっとテーマを変えまして、せっかくの質問の機会でございますので、北朝鮮の問題についてお話をさせていただきたいと思います。

 まず、北朝鮮で、核問題でございますけれども、六者協議が行われて、実際にどんな進展があったのかどうか、必ずしもよくわからないところがございますので、この総括について、どこでも聞かれるでしょうから、外務大臣の評価をまずお伺いします。

川口国務大臣 我々は一歩前進をしたというふうに評価をしています。

 それで、どういう点で評価をしているかということですけれども、まず朝鮮半島の非核化、これが全体としての共通の目標であるということが確認をされたということが一つです。

 次に、日本としても重視をしている、北朝鮮のすべての核計画の完全な、検証可能かつ非可逆的な廃棄の重要性、これにつきまして多くの参加者の間で認識をされたということは一歩前進であったというふうに考えています。

 三番目に、調整された措置という言葉がございますけれども、こういった形で核問題を取り進めていこうということが合意をされたということが挙げられると思います。

 それは内容についての話ですけれども、その次に、プロセスといいますか、それが制度化されたということが次の大きな塊として挙げられると思います。(末松委員「何が制度化された」と呼ぶ)プロセス、過程、進め方の制度化です。それは、ことしの六月の下旬末までに第三回の会合をやろうということが合意されたということと、作業部会を設置しようということが合意をされたということでありまして、そういう意味でプロセスの制度化が行われたということであると思います。これも評価されることだと思います。

 そういった評価の点は、されるべき点というのはありますけれども、まだまだ難しい問題というのがあるわけでして、それは何かといいますと、まさに完全な、いわゆるCVIDという、完全、検証可能、非可逆的な核廃棄ということの内容をどうするかという問題を今後詰めていかなければいけない、これが非常に難しい点であるわけでございまして、道のりはまだまだ厳しいというふうに考えております。

 以上です。

末松委員 今御指摘のあった完全、検証可能、不可逆的な核の撤廃の体制をどう整備していくかというのが確かに一番大きな話だろうと思いますけれども、日本政府としてはこれについてどうあればいいと考えていますか。

齋木政府参考人 私どもが北朝鮮に求めておりますのはすべての核計画であります。すべての核計画を検証可能な形で、かつ後戻りできないような形で撤廃をせよというのが、私どもが一貫して、アメリカともども、韓国ともども要求しておることでありますが、これをどうやって実現するのかというのはなかなか専門的な分野でもございますけれども、まずは北朝鮮が一体何を撤廃しようとしているのか、何を廃棄する約束をする用意があるのか、その点について、まず情報の開示、申告を我々としては求めていかねばならないと思っております。その上で、我々としては与えられた情報をもとに、どういう形で踏み込んでいくかということをやっていく、そういうことでございます。

 いずれにしても、六月の末までに、先ほど大臣からも御答弁ございましたけれども、第三回の六者会合をやるということで申し合わせがございますから、その準備のために作業部会を立ち上げて、その作業部会の中で、一体どういう方法でこの廃棄を求めていくのかということについては、まずは日米韓でよくすり合わせをして、作戦を立てて臨んでいく、こういうことでございます。

末松委員 今、齋木審議官の方から、何を撤廃しようとしているのか、これがわからないという話ですか。六者協議の中で、何を撤廃ということについては全く詰めていないんですか。

齋木政府参考人 六者協議では、私どもは、北朝鮮が進めている、あるいは進めるであろうすべての核に関連する計画でございます、開発計画でございます。

 これに対して北朝鮮の方からは、核兵器の計画についてという言及がございましたけれども、その意味においては、先ほど大臣の御答弁にありましたけれども、双方の立場にはまだ溝がございます。これは今後議論を通じて埋めていくように努力をしていく、そういうことでございます。

末松委員 北朝鮮が言う核兵器の開発の施設というのは何かというのは特定をしているんですか、いないんですか。つまり、平和利用とそれ以外のものについて、その施設が若干違うんですよね。そこも詰めていないんですか。

齋木政府参考人 いろいろな議論はございましたけれども、私どもは、まず、はっきりと明確な形で、北朝鮮当局から一体何をしているのかについてのきちっとした説明を得ておかねばならないと思っておりますが、今回の第二回の六者会合におきましては、総論的なところで意見の対立が埋まらないままに終わったということでございます。

末松委員 その意見の対立というのは、もし可能であれば教えていただけますか。

齋木政府参考人 ですから、先ほど申し上げましたように、私どもが要求しておりますのはすべての核開発計画でございます。これに対して、北朝鮮が申しておりますのは平和利用を除く核兵器の開発計画でございます。

末松委員 では、今おっしゃられたように、すべての核開発に対する施設、これを撤廃せよということと、核兵器にかかわる施設だけを撤廃せよ、この溝が最初から埋まらなかったということでありますけれども、この作業部会でこの施設は特定はされるんですか。

齋木政府参考人 作業部会を立ち上げるということにつきましては申し合わせがございましたし、議長声明におきましてもそのようなことが明示的に書いてございますが、作業部会で果たして何を進めるのか、どういう構成にするのかにつきましてはまだ白紙の状態でございます。

 したがって、なるべく早く関係国が作業部会の立ち上げのために意思疎通を図るということが次に行わなきゃいけないことだというふうに考えております。

末松委員 それは早く当然すべきだと思いますが、日本政府についてお伺いしたいのは、では、すべての核開発を撤廃せよということであれば、原発とか平和利用についても北朝鮮は持ってはならない、そういう立場だということですね。

齋木政府参考人 そのとおりであります。

末松委員 そうなると、例えば、北朝鮮としてエネルギーの不足の問題、これは新聞等でいろいろと言われていますけれども、これについては、アメリカ等の方も含めて、九〇年代ですか、原発を建設するような形で今プロセスが進んできましたけれども、それもすべて中止をして、原発を持ってはならないということが、アメリカ等でも、あるいは中国、ロシアなどもそれに合意をしていたと判断していいですか。

齋木政府参考人 私どもの立場は、北朝鮮が言わんとしている平和利用ということでございますけれども、まさに今末松委員がおっしゃったように、彼らが十年前に認められた平和利用について、その後の彼らの行動を見ていると、果たして平和利用のためにやっているのかどうかということについては、全く我々としてはこれを信用するような根拠を持たないわけでございます。したがって、平和利用というのは何なのかということについてしっかりとこれは説明をやはり求める必要があろうかと思っております。

 彼らが言うところの平和利用というのは一体何なのか。私どもが見ている限り、そういうふうには感じられないということでございますから、まず我々は、身をきれいにして、この十年間やってきたことについてしっかりと彼らは我々に対して説明する責任があるんだ、そういう立場でございます。

 この点につきましては、アメリカ、日本、韓国、いずれも同じ認識、同じ立場でございますし、今度の六者会合でもまさにそういう観点からの発言……(末松委員「中国は」と呼ぶ)中国は、朝鮮半島における核は究極的には全部撤廃することが望ましいという基本的な立場を表明しております。(末松委員「ロシアは」と呼ぶ)ロシアも同じ認識であると理解しております。

末松委員 ちょっと確認したいのですけれども、中国もロシアも、平和的な核利用も北朝鮮には認めるべきではないというふうに明示的に六者協議の中で発言があったのですか。

齋木政府参考人 協議の中におけるやりとりについて、私、今詳細を申し上げる立場にございませんけれども、基本的な認識としては、朝鮮半島の非核化、これが大事であるということ、これは、みんな認識一致しておるわけでございます。

 先ほどおっしゃったエネルギーの話は、これはいろいろな条件が当然ついた上での協力ということを表明した国というのが一部ございました。

末松委員 それ以上は交渉の中なので言えない話というようなお顔をされていましたけれども。

 そうすると、日米韓は、北朝鮮が核兵器の、あるいは平和利用も含めて、核開発施設は一切持っちゃならないという立場ですから、そうすると、そのためのチェック・アンド・フォローといいますか、そういう検証的なものは、信頼を若干失っているIAEAを含めて、要するに施設なるものが若干なりとも核に関係するのであれば、それはすべて廃棄をしていくんだという立場ですね。

齋木政府参考人 基本的には、北朝鮮が一体どういう核の計画を進めているのか、また、いかなるところにいかなる施設があるかにつきましては、国際的に信頼のできる手法によって査察を行うべきであると考えますし、また、そういうことは行った上で、我々としては次にどういうふうに進めるかということを考える、こういうことだと思います。

末松委員 私も、その意味では外務省の考え方と同様の厳しい見方を現時点においてはしているわけでありますから、そこの体制、ただ、中ロがどういうふうに言っているのか必ずしもわからない点がやや懸念はされるのですけれども、そこの点でしっかりそこは頑張っていただきたいと思います。

 次に、拉致の問題についてお伺いしますけれども、六者協議の中で、具体的に正式の議題として拉致問題は上がったんですか。

齋木政府参考人 六者協議の全体会合の場で、特段、拉致ということが議題として上がったということはございません。

末松委員 そうすると、全体会合の中で拉致問題について日本は触れたんですか、触れていないんですか。

齋木政府参考人 六者会合全体会合の初日、各国代表からのいわゆる基調発言、基調演説というのがございました。そのときに、日本代表の薮中アジア大洋州局長の方からは、拉致問題の解決についてきっちりと言及いたしました。

 北東アジアの平和と安定のためには諸問題を包括的に解決し、北朝鮮と関係国との関係改善が図られるべきである、先般、拉致を含む日朝間の諸問題の解決のために日朝間での政府間協議を開始した、この努力が早期に結果を生み出し、また、六者会合を通じ、核ミサイル等の安全保障上の問題に具体的進展が得られ、こういった諸問題が早期にかつ包括的に解決されることを期待する、こういう趣旨の発言をいたしました。

末松委員 これに対して、特段ほかの国から何かのコメントあるいはそれに言及するような言辞はございましたか。

齋木政府参考人 日本代表の発言のほかは、アメリカ代表のケリー・アメリカ国務次官補の発言がございました。ケリー・アメリカ団長の発言の中で、拉致問題に関しては明示的な言及がございました。従来より、これは第一回目の六者会合のときもそうでございましたし、今回もそうでございましたけれども、拉致問題を含む人権問題の解決ということが必要であるという趣旨の発言をケリー代表の方から明確に発言しております。

末松委員 この外務委員会の小委員会でも薮中局長が、前の審議の中で、この拉致問題については六者協議でしっかりと話をしていくという話でしたけれども、その拉致問題が解決されなければ、日朝の国交正常化もあり得ないし、日本の支援もないんだ、そういう強い立場についての言葉は一切なかったわけですね、そんな発言上においては。

齋木政府参考人 いえ、先ほど申し上げたかと思いますけれども、日本代表からは、拉致、核、ミサイル、そういった諸問題を包括的に解決することは極めて重要であるということを述べ、かつ、その早期解決を迫るとともに、こういったことがすべて包括的に解決されて初めて、日朝の国交というのは正常化が行われるんだということを言ったわけでございます。

末松委員 なるほど。

 ちょっと韓国についてお話ししますけれども、韓国は、拉致問題に対して、どうも、なかなか、それほど前向きじゃないという話をさまざまなところから聞くんですけれども、韓国と話しましたか、拉致問題について。そして、韓国に対して、全体会合でもきちんと支持をしてくれという要請はなさいましたか。

齋木政府参考人 韓国との間では、今回の六者協議に限らず、六者協議に先立っても、随時さまざまなレベルで協議、意見交換をやってきております。その中で、日本側が、拉致問題の解決を北朝鮮との関係の正常化の前提としているということについては、繰り返し立場を説明しておりまして、韓国側からは、日本のこうした立場については明確なる理解と支持を得てきております。

末松委員 理解と支持を、明確なる理解と支持を得ているんだったら、どうして全体会合の席で、そういった韓国が日本のこの立場について明確な言辞を行うということがなかったんですか。

齋木政府参考人 韓国政府はどういう発言を全体会合の場で行うかの判断は、韓国政府が一義的に行うものでございます。私どもがいろいろな立場を先方に対し述べ、それを十分に理解し、支持し、そしゃくした上で、先方代表は発言したわけでございます。

末松委員 もう一回聞きます。

 この六者会合の前に、韓国政府に対して、六者会合の席で日本がきちんと全体会合で拉致の問題について述べるから、それについて支持してくれということを日本政府がやったことはなかったんですか、あるいはあったんですか。

齋木政府参考人 六者会合に先立ちまして、ソウルで、日本、アメリカ、韓国の三者の局長級協議がございました。そういった場合も含めまして、私どもの方からは、今度の六者会合で日本としては必ず拉致問題を提起して、その解決を迫るという日本政府の方針についてあらかじめ説明をし、かつ、理解と支持を求めたわけでございます。

末松委員 そうすると、理解と支持を求めたということは、では、韓国政府がみずからの判断で、その支持要請に対して、それはみずからの判断でやらなかった、こういう位置づけですね。もう一回確認します。

齋木政府参考人 韓国政府の判断、これは私どもとしては尊重をしなきゃいけないかと思っております。

末松委員 中国とロシアに対しては、同じように、韓国と同じような形で、六者会合の発言で日本が言うから、そのときはぜひ支持をしてくれということを働きかけたんですか、それとも働きかけなかったんですか。

齋木政府参考人 中国に対しましてもロシアに対しましても、当然、日本の基本的な立場であるところの拉致問題、また核、ミサイル等々の基本的な立場についての発言をこういうことでやるということは事前に通報しておりますし、また、それぞれの国からの理解と支持、これは、拉致問題の早期解決の必要性という意味においては、きっちりと理解と支持を得ております。

末松委員 中国に対しては、我が国として、ODA、非常に巨額のODAをずっとやってきましたよね。中国もロシアも、自分の国の人が人さらいに遭って、そして、いまだに、監禁されているか、あるいはどうなっているかわからない、そして、北朝鮮が拉致を認めたという状況の中で、日本に対して友好国というのであれば、それを言及しても私は全く不思議じゃないし、もうちょっと日本がなぜ言及しないんだと怒るべき立場にあると思いますが、外務省はそう考えないんですか。

齋木政府参考人 六者会合も含めまして、私どもの拉致問題の深刻さ、重大さにつきましては、私ども、さまざまな場で、外交上のいろんな機会に、各国の理解と支持、これまでもずっと求めてきておりますし、また、さればこそ、今まで先進国首脳会議、サミット、あるいはAPEC等々の国々の理解、支持を明確な形で我々としては得てきているわけでございます。

 ロシアや中国につきましても、そういう意味において、日本の立場については非常に理解と支持をしてくれておりますし、また、ロシア、中国なりに、水面下で彼らにできる外交努力を実はやってきてくれておることは事実でございます。

 六者会合の全体会合の場でどういう発言をロシアと中国が行うことがより適切であったか、より望ましかったかということにつきましては、私自身は、今ここで、それぞれの政府の判断の問題としてあったわけでございますから、それについて是とか否ということを申し上げるのは差し控えたい、こう思います。

末松委員 いや、私が申し上げたいのは、中国に対して、ロシアは若干あれとして、中国に対して、非常にキーカントリーであるからこそ、中国に、パフォーマンスという位置づけかな、六者会合の中で日本に対して、別に核の話をしているんじゃなくて、拉致の話についてやっていることに対してはぜひ頼むということで、それを中国が協力してくれないということを私は問題視すべきだと思うんですよね。そういう、それぐらいの気迫で迫っていかないと、いや、齋木さんのおっしゃることは、それはもう各国の判断を尊重しますという話、これで終わらせていいものなんですか。大臣、どう思いますか。

川口国務大臣 私も、その前に、李肇星外務大臣と話をしたことがありますけれども、中国の拉致についての理解と支持、これはきちんとあります。それから、現に、戴秉国さんが前に北朝鮮に行ったときに、これについて日本はメッセージを頼み、そして働きかけてくれるというようなことも中国としてやっているわけです。こういった拉致問題の解決ということに向かって、中国は実質的にいろいろな努力をしてきてくれている。それから、今回の六者会談の際にも、日朝の会談が行われるようないろいろな裏での働きかけもやってくれていると承知をしています。

 そういったことを全体を踏まえて、日本として考えるべきことは、この拉致の問題に対して中国がどのような役割を果たしてくれることが一番この拉致の問題の解決に資するかという観点で考えるということであると思います。

 先ほど来、齋木審議官が申していますように、中国がどの場でどのような発言をするかということについては、中国のこの拉致問題についての解決の必要性についての十分な認識の上に立って、中国として適切な行動をその場その場で考えてやっているということであると思います。

 我が国としても、全体として中国の役割が拉致の問題の解決に資するということが大事だという観点に立って、この問題を考えていきたいというふうに思っています。

末松委員 この点について、日本国民は非常に大きな関心を持っていて、そして、拉致問題が悪いということもみんな認識一致していて、中国も理解と明確な支持を得ているということであるならば、それをシンボリックに象徴してもらわなきゃいけないんですよ。何かお利口さんになって、物わかりいいような形じゃなくて、まさしく六者協議のいろんなおぜん立てをしてくれるのはありがたい。それは中国は、その意味で配慮をしてもらっていますよ。ただ、六者協議の中で言ってもらうことそのものが大きなシンボリックな意味を持っている、それが外交的な意味を持っているんだということを、ぜひそこは政府としてきちんと定めていただきたいと思うんですよね。

 それだけのことを中国に対してもやってきているし、そして、この問題はおかしいということが中国もはっきりわかっているのであれば、まさしく北朝鮮に対してもっと中国から働きかける意味もあって、日本と米国だけじゃなくて、中国もそうなんだということをシンボリックにやっていくのが外交の大きな姿勢になると私は思うんですが、その点を、中国に対して、この前言っていただかなかったのは残念であるというぐらいに迫る気持ちはないですか、大臣。

川口国務大臣 拉致の問題をどのようなやり方でほかの国が対応しようとしているか、あるいは解決をしようとしていくか、これはいろいろな考え方があると思います。

 委員がおっしゃるように、この問題についてのシンボリックな何かということが非常に重要であるということも私はよく理解をしています。中国もいろいろなことを理解している。中国は、我々は包括的な解決ということを言っているわけで、拉致の問題が解決しなければ、中国が望んでいる非核化、この全体の解決というのがないということもよくわかっているわけです。わかった上で中国は、その目的を達成しようとして、中国がこの問題について考えられるベストなやり方でこれに対応しようとしているということであります。

 もちろん、日本としては、できるだけほかの国の賛同の発言ということが、あればあった方がありがたいということは委員のおっしゃるとおりですけれども、全体として、ではそれがその会議の進行にどのように働くかという観点を持って中国は対応しているというふうに考えているわけでして、その中国の判断は、それはそれとして尊重すべき判断であると思います。中国は、日本の立場というのはよくわかっている。

 外交というのは、シンボリックに言うということも重要ですし、静かに働きかけていくという側面もなければ物事が働かない。日本の立場は立場として、中国は中国の考え方によってこれをやっていく、やっているということであると考えています。

末松委員 余りお利口さん的な回答をしないでくださいよ。いいですか、この問題を広げていかなきゃいけないのは日本なんですよ。我が国が騒ぎ立てて、この言い方は不適当な発言ですけれども、大きくしていって、そして、この問題は本当にでかいんだということを認識してもらわなきゃいけない、そのために一歩一歩国際的な認知を受けていかなきゃいけないんですよ。だからそこを、これ以上今あなたに言ってもむだなように聞こえますから言いませんけれども、そこはぜひ心がけていただきたいと思うんですね。

 ちょっと一点お伺いしますけれども、拉致問題を国際社会で認知を受けていくような努力は、どういう努力をやっているんですか。

齋木政府参考人 先ほど、私、お答え申し上げる中で言及させていただいたかと思いますけれども、日本政府としては、これまで、さまざまな外交上の機会、二国間の会談、大臣、副大臣、また総理も含めて、あらゆる外交上の機会、二国間会談あるいは国際会議、サミット、APEC、ASEM、いろいろございますけれども、それからまた、二国間で特に北朝鮮と外交関係を有している国々、親密な関係にある国々の首脳レベルも含めて、この拉致問題については必ずこれを提起して、その理解と支持を得てきておる努力をしてきております。

 現に、そういった私どもからの働きかけを受けて、これらの北朝鮮と友好関係にある国々、今、どこだということを私は申し上げるわけにはいきませんけれども、きっちりと日本の立場を先方に対して伝えてきております。それはそれで、北朝鮮からすれば、自分たちの友好国からもそういう形でのいわば圧力を受けているということは、これはもう明確なことでございます。

 また、国際社会の場におきましても、これは先般来、去年もそうでございますが、おととしも、国連の人権委員会の場で日本政府としてこの拉致問題についてこれを取り上げ、各国の理解と支持を求め、また、そういった理解と支持というのは明確な形で私ども得てきておるという認識でございます。

 こういう形で、我々は、拉致問題、各国の理解と支持、認知という言葉を使うかどうかはともかくとして、それはしっかり受けておるという認識でございます。

    〔委員長退席、増子委員長代理着席〕

末松委員 何カ国ぐらい、北朝鮮と国交のある国が北朝鮮に対して働きかけたんですか。

齋木政府参考人 手元に数字がございませんので、正確な数字をちょっと今申し上げるわけにいきませんけれども、これはもう相当の数でございます。二けたの数でございます。(末松委員「二けたというのは十から百まであるんだよ」と呼ぶ)それは十カ国なんてことはございません。

末松委員 委員長、それは後で理事会にその国の数を言っていただくように、そして国名を言っていただくように、理事会で御協議いただきたいと思います。

増子委員長代理 後ほど理事会で諮ります。

末松委員 時間がなくなりましたので、もう一点お聞きしますけれども、拉致問題の解決というのは一体どこがこの終点になるんですか。それについて、この前のこの委員会で、まず、今、家族の帰国の話、そして十人いる失踪者の真相究明、そしてさらには特定失踪者の特定という話がございました。これで、この拉致問題の解決について、北朝鮮側にどこまでが解決なんだということを示したんですか、今回。そこをお聞きしたい。

    〔増子委員長代理退席、委員長着席〕

齋木政府参考人 これはもう以前からこういう場を通じて御報告、御説明申し上げているとおりでございますけれども、まずは、私どもとしては、既に帰国を果たされた五名の被害者の方々が平壌に残してこざるを得なかった御家族、合計八名でございますが、八名の早期無条件一括の帰国、これを実現すること、これがまず大事でございます。

 第二に、先方が、もう既に亡くなっているということで私どもに資料提供を、おととしの九月の末に調査団に対してよこした、そういう資料は私どもとしては全く信頼できないということで、ぜひともその安否の状況について、より我々として納得できる調査をやって、それでまた生存者の帰国をぜひ求めたいということ。そして、これは、実は日本政府が拉致されたということを明確に認定しておる数は十件十五名でございます。ですから、今このうち五人の方々は日本に帰られているわけでございますから、残り十名についてもきっちりとその調査をして、我々が納得できる形でその結果を我々と共有すべきである、こういうことは当然申し入れしてございます。

 我々は、そういう形で日本側の、特に御家族たちの納得がしっかり得られるような形で拉致問題が解決されない限りは前に進めないということを言っております。

末松委員 六者協議でどうだったかという、それが質問なんですよ。

齋木政府参考人 ですから、六者協議の場、日朝の接触もしっかりありましたけれども、そういった場を通じまして、我々は、拉致問題のきちんとした解決、八人の御家族の帰国、また安否不明の方々の情報の明確化、こういったことを北朝鮮当局に対して求めておるというわけでございます。

末松委員 薮中局長が言っておられた、日朝間で委員会をつくるということについては、提案したんですか、しなかったんですか。

齋木政府参考人 十名の方々の調査をしっかり進めていくためにも、合同調査、合同委員会的なものをつくるということについても、こちらからの提案として投げかけております。(末松委員「特定失踪者は」と呼ぶ)十名でございます。

末松委員 では、十名以外は対象外という位置づけなんですか。

齋木政府参考人 そう申しているわけではございません。

 日本政府として認定しておる拉致の被害者が今十名、まだ安否不明の方々がおられますけれども、その後、追加的に我々としてさまざまな情報収集を警察当局を主体として進めていく中で、追加的な認定というのが当然行われていくだろうと思いますが、それはそれで、北朝鮮当局に対して情報提供を求める、これは当然だと思います。

末松委員 時間が来ましたのでこれで終わりますが、この問題について、もっと外務省として、本当に重大な意識を持って、迫っていく外交をやっていただきたいということをお願いしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

米澤委員長 次に、今野東君。

今野委員 民主党の今野東でございます。

 まず、私も、日米租税条約について、そしてまた、後半では国際刑事裁判所についてお尋ねをしたいと思います。

 まず、日米新租税条約ですけれども、経済界を中心に日米租税条約の改正を要望する声が高まっているし、また、アメリカ側からも同じような要望があって、それぞれお互いがいい環境の中で新日米租税条約の改定作業というのは進んできたのだろうと思いますけれども、正式の会合は四回あったそうですが、この中で、特に問題になった点というのはなかったんでしょうか、お尋ねします。

海老原政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員がおっしゃいましたように、平成十三年の十月から本条約の交渉を開始いたしまして、平成十五年六月の第四回の交渉まで交渉を続けまして、基本合意に達したところでございます。その後、十五年の十一月六日にワシントンにおきまして署名を行った次第でございます。

 そこで、過去四回の交渉におきまして具体的にどのような点が問題になったのかという御質問でございますけれども、これは、申しわけありませんけれども、交渉の中身でございますので、米国政府との信頼関係ということもございますので、お答えを差し控えさせていただきたいと思いますけれども、ただ、両国の方におきまして、日米間の緊密な経済関係を反映いたしまして、積極的に投資交流を図り、あわせて租税回避の防止のための措置をとる、そのために現行の租税条約を全面的に改正するという基本的なところにおきましては意見が一致しておりました。

今野委員 それでは、先ほどもちょっといろいろな審議の間で出ておりましたけれども、具体的に私は数字をお尋ねしたいと思うんですが、この新租税条約を結ぶことによって、日本とアメリカの税収の差というのは、現段階だと、例えば試算でどれぐらいになるんですか。

加藤政府参考人 お答えいたします。

 日米租税条約によってその税収がどういうふうになるかというお尋ねでございますが、これは、実はマクロ的に、先ほど申しましたように、所得の種類によりましていろいろ出入りが異なっております。先ほども申し上げましたように、日本を源泉地国とする所得を免税にすれば減収になりますが、逆に、アメリカの源泉地国の所得は、反射効果として、免税になれば、こちらの増収になる。それがまた、いわゆる直接的に直ちに税収に反映するだけじゃなくて、外国税額控除制度とか、しかも、この外国税額控除制度の適用の関係、それから、母体となる法人の所得状況、本国の所得が赤字かどうかとかいろいろございまして、これはなかなか一概に、数字的にこうだということが申し上げられないことを御理解いただきたいと思います。

今野委員 いや、そういう説明でも、なぜ具体的に数字を出せないのかよくわからない。試算できるじゃないですか。

 大体、物事を進めていくのに、現状態だとこれぐらいのこちら側は収入があって、アメリカはこれくらいあって、現段階だとこれぐらい得だけれども、マクロ的に見たらもっと違いますねという話ならわかります。

加藤政府参考人 まず、この租税条約の機能から申し上げますと、結局、源泉地国における課税と本国の課税の課税権の複合を調整するという機能でございます。したがいまして、どちらで一元的に課税するかということを、それぞれの所得ごとに調整しておるわけです。

 その結果、それでは本国においてどういう税収にそれが反映されるかということは、それぞれの国の税制がどのようになっているか、それから、もともと租税条約がない場合の課税関係、これも実は、それぞれの国なりに二重課税を調整する、企業の税負担を調整する機能もございます。これは大きく分けて、外国税額控除方式と国外所得免除方式、大体二つの方式があるわけですが、それでは、これによって具体的に調整したときに、アメリカから受け取る収入でアメリカで課税されている分が個別に把握されて、個別に調整されるというわけでもございません。これは、全世界の所得を合算している。したがいまして、結果的にこの部分がと。

 ただ、一つだけ申し上げられますのは、大きなマクロ的な資金の流れというのはそれなりにわかります。だから、定性的にどうだということを申し上げれば、先ほど申し上げましたように、一方的に税収の増減が発生する、大きな偏りが生ずるということは私はないと思いますが、ただ、それを具体的に数字に落としていくということは、仮定に仮定を置くというと、その仮定をどうしたらいいかという非常に誤解を生じますので、私どもとしては、それは困難であると申し上げているわけでございます。

今野委員 これは、日米双方が新しく条約改正しましょうということで合意しているからそういう大ざっぱなことでもいいのかもしれないけれども、しかし、物事の進め方というのは、それは計算が面倒くさいとか、これは途中でどうしたらいいかわからない点もあるかもしれないけれども、しかし、大体おおよそこういう数字になるんですよということを出して、そして、国民の皆さんの理解を求め、条約を署名し、批准していくというやり方が正しいんじゃないかと思いますけれども、そこのところをぐずぐずぐずぐず言っていてもしようがないので、次の質問をいたします。

 ちょっとこの中で、私、疑問な点があるんですけれども、第十三条3の(a)の金融機関に関してのところなんですけれども、課税権の行使が、資金援助が最初に行われてから五年以内に行われる譲渡に限るというところがありますけれども、これはなぜ五年なんですか。

加藤政府参考人 まず、先ほど申しましたように、二重課税の国際間の調整という租税条約の機能でございます。

 いわゆる株式の譲渡益については、これはOECDのモデル条約もそうでございますし、これまでの日米租税条約等もそうでございますが、基本的に居住地国において課税する、会社の所在地国ではなくて、投資家の居住地国によって課税するというのが基本原則となっておるわけでございます。

 今般の改定におきまして、そうした基本原則のもとではありますが、やはり破綻金融機関の処理に公的資金が投入された場合には、やはり一部その課税権を当該国に留保することが適当ではないかということで、双方議論した結果、この一定の条件のもとで、従来の原則非課税を一部修正するということでこの条項が入ったわけでございます。

 したがいまして、五年という要件も、日米の両国の交渉において、こういった一定の要件を付す一つとして合意がなされたものでございます。

今野委員 いや、そういう話で何年か設定をして、そしてその中で課税をさせてくださいねという方向でいくというのはわかります。しかし、それがなぜ五年なのですかと聞いているんです。これ、五年と限定されることによって、国があるいは不利益をこうむる場合もある、抜け道をつくることができる、五年で譲渡しないで、五年一カ月であるいは二カ月でやって、そして税金を源泉地国でかからないようにしようというようなことだって、こういう設定をするとできるわけですね。

 しかも、私はどうしても、リップルウッド、新生銀行とリップルウッドの関係を考えるんですけれども、あの場合だと、八兆円も公的資金を投入して、幾ら損を出したのか聞いてもどうもはっきりしないけれども、四兆円とも五兆円とも言われている。その中で、そういう状況をベースにして考えると、五年間というのは、五年を過ぎた場合はかけられないというのは、余りにも大きな不利益じゃないでしょうか。ああやって報道されておりますけれども、上場による譲渡益、あれは今のところ二千三百八十八億円ですね、まだ三五%しか株式譲渡していないようですから。もっと巨額な、一兆円近い利益を、このリップルウッドは、わずか一千二百十億円、まあ一千二百十億円そのものが私にとってはわずかではないんですけれども、一千二百十億円で一兆円近い利益を得ることができる。それについて課税することもできないという状況がここで生まれてくるわけですね。

 また、一方では、この五年という短い期間を設定したことによって、負債を処理し、それから経営を健全化させるということになれば、相当急がなければならない、相当のスピードで経営を健全化させ、不良債権を処理していかなければならない。そうなるとどうなるかというと、中小零細企業への、不良債権処理という名前の貸しはがしが起きる。金融機関とその周辺にいる大手の企業というのは生き残るかもしれないけれども、末端の手足である中小零細企業はばたばたと倒れていくというおそれもあるわけです。

 八兆円も公的資金を投入するのならば、せめてそこから出てくる利益についてはしっかり税金をかけるようにしなきゃいけないというのが、国としてやらなければいけないことなんじゃないでしょうか。

 この新生銀行とリップルウッドについては、予算委員会でもいろいろ審議をされたようですけれども、このわずかな、すばらしい再生の陰には、中小零細企業の方々の血の涙があるわけです。恨みの声もあるわけです。これを五年間と設定したから、それ以上になったら後はいいんですというようなつくり方だと、わざわざこれは抜け道をつくっている。これについてどう考えますか。

加藤政府参考人 ちょっと私どもの考えを説明させていただきますが、まず、今回のこの租税条約の課税権の問題と、それから、公的資金を投入した銀行がどういう資本によって買われる、つまり外資か内資か、それから、どういう手法で再生されるかとは、ちょっと切り離して考えていただく必要があると思います。

 私どもとしては、先ほどちょっと五年以内ということ、五年以内の場合が課税される、課税権を留保しているので、貸しはがしをして早く売る人は課税されるということですから、ちょっとそこは、逆に言えば、時間をかけて再生をしていくという方が課税上は本国課税に移行するということになります。

 それで、もう一つ、私どもがこれを議論するときに、結局、WTO体制のもとで、内外を無差別に、経済交流を盛んにしていこうという基本的なまずポリシーがあり、しかし、この中で、一部、こういう公的資金を導入しかつ短期に利益を上げることについて全く課税権を持たないことが適当かどうか、やはりそのいろいろな議論を踏まえて、しかも相手国のある交渉の中でこういう結論が出た、合意に至ったものだと思っております。

 したがいまして、今後外資が投資する際には、まずこれが一つの条件になります。

 いずれにしても、どういう条件のもとで、予見可能性のもとで、資本が参加するか、これはすべて投資家の判断、これは内資も外資もそうでございますが、その一つのルールとして今回のこういう合意が存在するというふうに御理解いただきたいと思います。

今野委員 とても納得できるような説明ではないんですけれども、基本的なことをお尋ねしますが、リップルウッドと新生銀行のような場合、課税はできますか。

加藤政府参考人 恐縮ですが、今の具体的な例として、今回のリップルウッドの具体的な例がということでございますか。

今野委員 これからも起こり得ることだから、このようなケースの場合ということです。

加藤政府参考人 一般論として申し上げますと、今後、公的資金を導入して破綻処理がされた銀行を取得する場合に、この今回の租税条約の条件に合致すれば課税になるということでございます。

 したがいまして、現時点ではこの新租税条約はまだ発効しておりませんので、従来の条約のもとで株式の譲渡益というのはもう非課税ということは、これは事実でございます。

今野委員 いや、現時点で、このリップルウッド、新生銀行の関係に関して課税できるかどうかということは、課税、残念ながらできないんだろうということは、よくわかります。

 しかし、今後もこのようなことがあるのならば、このリップルウッドと新生銀行の場合ですら、国民の皆さんは、何だこりゃといって怒っているわけです。同じようなことが起きるときに、この新租税条約があっても、ちゃんとそこの網の目を抜けていって、そしてこれは税金をかけられるということを逃れるようなことがあってはならないと思うんだけれども、ちゃんと、しかし課税権、これからはこのようなケースについては課税権があるんですとおっしゃっても、実は抜け道というのはあるわけですね。

 リップルウッドについても、オランダにニュー・LTCB・パートナーズという匿名組合をつくって、ちゃんと課税を逃れている。相手は、専門の弁護士やあるいは専門家の方々をそろえて、どうやったら課税できないようにということを、とにかくさまざまな考えを組み合わせてやっている。新日米租税条約があったとしても、今回のこのリップルウッドあるいはLTCBのようなケースを考えると、このニュー・LTCB・パートナーズというのはオランダにありますよね。したがって、オランダとの間では我が国はかけられるようになっていないから、私は、当然オランダとの租税条約の改定を急ぐべきではないかというふうに思っているんですけれども、そのあたりについてはどうなんでしょうか。

加藤政府参考人 一般論、私がお答えするのが適当かどうかは別にしまして、租税の観点から申しますと、やはり二重課税の調整ということが我が国の経済にとって必要なことである、投資交流の促進という面からして必要ということで、私どもとしては、今回の日米新租税条約は、そうした相互の交流促進に大きく寄与するものと考えておりまして、これを基本原則に世界各国と新たに租税条約を、必要な国から順次結んでいくということだと思っております。

 先ほど大臣がお答えになりましたように、いろいろな、総合的に勘案して、これからの締結に当たっていく必要があるだろうと考えております。

今野委員 いや、私もそう思いますよ。投資環境をこういう形で整えていって、相互の経済交流がもっと活発になったらいいと基本的には思いますよ。

 しかし、こういうことがあっても、この今回のリップルウッドとオランダの匿名組合のような関係があって、せっかく国が多額の公的資金を投入したのに税金さえかけられないという事態は最低限避けなければならないと思うわけですけれども、このあたり、オランダとの租税条約の改定について、外務省はどういうふうに今なっていますか。

川口国務大臣 オランダとの租税条約の改正が必要である、必要性、これにつきましては認識をしています。

 オランダ当局と、国際課税に関する論点について、今まで非公式に議論をしてきております。正式な交渉に向けまして、関係省庁とただいま鋭意検討をいたしているところです。

今野委員 いつごろ条約が締結できるようになるか、見通しをお聞かせください。

門司政府参考人 お答えいたします。

 現時点におきましては、いまだ、非公式の検討でございます。いずれ、正式交渉に向けて関係省庁と早く詰めたいと思っておりますけれども、現時点では、いつの時点ということはまだお答えできないので、御了承願います。

今野委員 これは全然慌ててないんですよね、こんなケースがあったのに。国民の皆さんのお金ですよ、公的資金八兆円というのは。四兆円も五兆円も損をして、しかも、税金もかけられないというケースがあって、まんまとオランダに匿名組合をつくってやられている。それでも、そんなのんびりしたこと言っていていいんですかね。私は、これはもっと急いでほしいと思います。

 それと、もう一つ。こうやって課税逃れができるのであるとすれば、我が国としても、別の考え方を持ってきて、きちっと課税できるようにしなきゃいけないんじゃないかと思うんですけれども、そういう上では、二〇〇二年の十月十五日、第二回の国税審査分科会で国税庁の東調査査察部長がこう発言しております、こうしたケースに基づいてですけれども。

 介在するペーパーカンパニーではなく、外国の投資家が実質的な所得者であると認定して、租税条約に準拠したり、日本の営業者が実際上は外国の海外投資家の設けている恒久的施設または代理人だと認定できれば、課税権行使の可能性がある、このように言っているんですけれども、この考えを取り入れて課税権を行使するということは可能でしょうか。これは国税庁かな。

鳥羽政府参考人 今御指摘のございました、当時の東調査査察部長が国税審議会で御説明した中身は、匿名組合契約を使って、いわゆる租税条約あさりを行っている、そういう事例でございまして、これは、匿名組合の利益分配に関しての課税権について、我が国と他国の間で取り扱いの差があるということに着目して、実体のないペーパーカンパニーを設立した、そのようなケースについて、いわばその裏の実質所得者に課税するという原則にのっとって課税した例を御紹介させていただきました。

 また、その場合の例として挙がっていたのは、事業として日本で上げた所得に関する課税に関する問題でございますけれども、ただいま議論されているような株式の譲渡益については、これは基本的に租税条約の体系の中では、日米租税条約もあるいは日蘭租税条約もそうですけれども、原則として居住地国で課税するということになっております。源泉地国では課税されないという原則になっておりますので、仮に、実質所得化した課税というテクニックを使ったとしても、その裏にいる主所得者が米国に住んでいる場合には日米租税条約、あるいはオランダに住んでいる場合は日蘭租税条約という形で、それぞれの実質所得者に応じて、条約及び国内法の規定に従って課税権を形成することになりますので、この場合、例として挙がっていたものについては事業所得の話でございますので、その辺の差についての御理解は賜りたいと思います。

 ただ、私どもとしましては、いずれにしても、一般論でございますけれども、いろいろな問題におきましては、個々の事実関係を精査した上で、その課税の適否あるいは課税の有無について個別に検討して対応していくことになると思います。

今野委員 ぜひ、こういう考えを、相手もさまざま工夫して課税できないように、相手もと言うと変な言い方ですが、考えてくるわけですから、こちらもきちんとした、そういうものに対する対処というのは法的にも整備をしておかなければならないんじゃないかと思います。

 最後に、これは金融庁にお尋ねすればいいんでしょうか、旧長銀がリップルウッドへ売却された二〇〇〇年三月の直前に、我が党の岩國議員が指摘をしておりました、今私が簡単に指摘をしたようなことについて。これを放置して、結果的に八兆円の公的資金を投入し、四兆円とも五兆円とも言われる損を出し、こうした責任をどう考えているのか、また国民にどのように説明をするのか。ここは外務委員会ですから、余りふさわしい質問ではないかもしれませんけれども、新租税条約が議論になっているところでありますし、お伺いをしておきたいと思います。

西原政府参考人 お答えさせていただきます。

 新生銀行がこのたび上場をされることになったわけですが、その新生銀行の前が旧長銀ということでございます。これが外資系の、先ほど御指摘のあったリップルウッドを中心としたグループに売却をされたということで、その選定経緯はどうだったのかという点について触れさせていただこうと思いますが、当時、金融再生法に基づきまして、金融再生委員会においてその判断を行ったということでございます。

 それで、その判断基準というのがいろいろございまして、その一番重要なポイントというのは、公的負担の極小化ということでございます。さらには、そのほか、金融システムの安定化に資するかというような視点、こういった等々の視点に立ちまして、複数の候補者があったわけですが、そうした候補者が提示したいろいろな条件、これを総合的に検討した結果といたしまして、このリップルウッド社の提示した条件というものが最適であるということで、金融再生委員会が判断したということでございます。

 思い起こしますと、当時、平成十年当時でございますが、大変金融不安が募る中で、与野党で非常に活発な議論が行われた結果として、そこを、合意を踏まえまして、金融再生法というのができたわけですが、その法にのっとりまして特別公的管理に長期信用銀行はなったわけでございますが、この旧長銀の一連の処理につきましては、金融再生法の趣旨にのっとって行われたということでございます。

 その際に、もう一つ加えますと、外国人投資家に対する課税の問題という点について、その当時、先ほど御指摘の岩國先生からも御指摘があったわけですが、この点につきましては、いわゆる税制上の問題であるということで、それとは別に、やはり特別公的管理銀行の受け皿の選定に当たりましては、先ほど触れさせていただきました選定、判定の基準、それに基づいて、やはり公的負担の極小化あるいは金融システムの安定化、そういった視点に立って、いわゆる内外無差別の選定を行ったということでございます。

 当時の枠組みとしては、そういった中で、金融再生委員会としては、定められた枠組みの中で最大限の努力をしたものというふうに考えております。

今野委員 私は、リップルウッドにどうしてなったかというその経緯を聞いているんじゃなくて、八兆円も公的資金をつぎ込んで、四兆円も五兆円も損失を出した、これを国民の皆さんにどう説明するんですかと聞いているんですよ。その答えじゃないじゃないですか、全然。

西原政府参考人 ただいま、八兆円という金額が出てまいりました。

 実際に、今、公的といいますか国民の負担として確定しておりますのは、約三兆二千億でございます。これは、いわゆる金銭贈与という形で資金援助が行われて、ペイオフコストを超えるものについては交付国債で負担がされております。したがって、その分については、現在、確定をいたしております。

 しかし、それ以外の部分につきましては、例えば資産の買い取りですとか、これはたしか七千二百億ぐらいだと思いましたが、例えばそういったものについては国民負担にはなっておりませんで、これは整理回収機構の方で回収することによって、実は、既に八千九百億ぐらい回収ができております。すなわち、実際にはプラスになっているというようなこともございます。

 そのほか、株式で、早期健全化法に基づいて、ここの新生銀行に二千四百億ほど注入しておりますけれども、これも今後の株価次第で、どういうような形で回収できるか等々、実際には、今後とも国民の負担の最小化に向けて努力をしていきたいというふうに考えております。

今野委員 そろそろこの話はやめてほかの質問に移りたいと思ったんですけれども、そうじゃないようなのでお尋ねしますが、それでは、三兆二千億円、まあ私の八兆円というのはまだ先走った数字であるとすれば、三兆二千億円投入して損は出ないという話ですか。

西原政府参考人 いえ、三兆二千億は、これは確定した国民の負担でございます。したがって、これ以上さらに負担がふえないかどうかという点については、今後回収の状況等によるわけですが、できるだけ努力をしてまいりたいというふうに考えております。

今野委員 ですから、それを国民の皆さんにどう説明するんですかと聞いているんです。

西原政府参考人 長期信用銀行が破綻したということで、その破綻したことによって国民負担につながっていったわけですけれども、その長期信用銀行を処理する過程において、金融再生法という枠組みの中で処理するということは、これは与野党合意のもとでそういうような処理に至ったわけですけれども、そうした中で、費用最小化を考えながら当然やっていったわけですが、結果としてこのような負担が出たということについては、大変遺憾なことというふうに思っております。

今野委員 遺憾なことと言われて終わってしまうととてもむなしいんですけれども、これ以上この話は……。

 租税条約を新しく締結して、そしてお互いの経済的な交流が活発になるということは大変いいことですけれども、これをモデルにして、ヨーロッパの国々と、またアジアの国々ともこういう形で結んでいきたいという考えがあるようですが、これは、経済的に成熟した国同士であるのならば、ある程度利益が相殺されてさらに活発になるということがあるかもしれませんけれども、特にアジアの国々とこういう条約を締結していくという場合には、利益があるいは一方的になりはしないかという心配もあります。そのあたりは、ぜひ我が国としても気を配りつつ交渉を進めていかなければならないことなのではないかという意見を申し上げておきたいと思います。

 さて、次に、北朝鮮との問題、六カ国協議の問題についてちょっとお尋ねをしておきたいんですが、先ほども同僚の末松議員がお尋ねをしましたが、二十八日に終わって、共同報道発表文から、これを見送って議長総括という形になったわけですが、この議長総括というのを見ると、「核兵器のない朝鮮半島を実現すること、」という文言があるんですが、これに我が国が同意したとすれば、これはさっきの末松議員の質問の確認になるかもしれませんが、この「核兵器のない朝鮮半島を実現すること、」というのに同意したとすれば、北朝鮮の原子力の平和利用というのは認めていくのかなというふうにどうしても読み取れるんですが、そこのあたりをもう少し丁寧に説明していただけますでしょうか。

川口国務大臣 ここに、「核兵器のない朝鮮半島を実現すること、」というふうに議長声明に書いているわけであります。我が国として、今まで申し上げているように、完全で検証可能で不可逆的な核の廃棄という立場を基本的な立場として持っているわけです。そういった中で、我が国として、細かいことをこれから詰めていかなければいけませんけれども、核計画、これについては、完全に検証可能で不可逆的なということを堅持していくということでございます。

今野委員 査察をきちんとしていくということでここのところを担保するんですよとおっしゃっているというふうに理解していいんでしょうか。

川口国務大臣 北朝鮮が今までやったことについて見ますと、例えば、黒鉛減速炉について、我々がみんな知っているような形で国際社会の信頼を裏切ったわけです。IAEAの査察をしている人を追い返した、さまざまなことをやっているわけでして、北朝鮮が今国際社会のこういった面で信頼を十分に持っているというふうに我々としては考えていないということであります。

 したがいまして、完全な、検証可能な、不可逆的なということを言っているときに、完全なということの内容が、今、今後詰められていくべきであるということは間違いないわけですけれども、我が国としては、そういった北朝鮮の今までのやったこと、国際社会の信頼を持たれていないということ、それにかんがみまして、原子力の平和的な利用、これを北朝鮮が行うということについては、現状ではこれは信用できない、そういう立場で、先ほど申し上げた、完全、非可逆的、検証可能なということを考えている、そういうことであります。

今野委員 なかなかデリケートな表現でわかりにくいなという思いはそのまま残るんですけれども、次の質問に移ります。

 この同じ議長総括文の中で、六カ国は「平和的に共存する意志を表明した。」云々というところがあって、「関連する懸案」という間接的な表現ではあるけれども、解決への努力が盛り込まれたと受けとめたいと思うんですが、今後、国際社会の中で日本の拉致の問題がより認識され広められていくということが、こういう場所で取り上げられるためにも必要なわけですね。

 この六カ国協議のメンバー当事国以外の四カ国、これはもちろんのことですけれども、ヨーロッパの国々へも、日本に対して同調してもらう作業を進めなければならないと思うんです。また、解決のためにあらゆる手段をとらなければならないと思うんですが、外務省として、これから先、そのほかにとり得る手段があるとすれば、どういうことがあるんでしょうか。よく大臣はあらゆるという言葉をお使いになって、いろいろなことをやっているんですとおっしゃいますが、それ以外にどういうことがあるとお考えでしょうか。

川口国務大臣 本当にあらゆるということで申し上げているんですが、今までやってきたことという意味では、例えば、私は、よその国の外務大臣とお話をするときに、拉致の話について取り上げなかったことということはまずないと申し上げて、全部記録を精査したわけではありませんし、時間の制約等もありますけれども、基本的に、言える状況では全部言ってきて、理解、支持、協力、こういったことを求めてきております。私だけではなくて、総理も、副大臣も、皆さんそういうことをやっているわけです。それから、国際、国連の場等々でもこれについてはやってきているということであります。

 今後、拉致の問題を解決するために何をしなければいけないか、それは、そのときの状況、状況で考えていかなければいけないと思いますけれども、国際的な場での働きかけ、二国あるいは多国間での働きかけ、これはますます強化をしていかなければいけないというふうに思っています。

 それから、それ以外の問題、これは今全部必ずしも申し上げるという立場ではないと思いますが、そういった状況に応じて可能なことは全部やっていきたい、そういう意味で、あらゆるということを申し上げているわけです。やっていくことは非常に重要であると思っています。

今野委員 私は、ここで、国際刑事裁判所、ICCについてお尋ねしたいと思うんですが、日本はこのICC、国際刑事裁判所について、この設置についても非常に積極的でした。私は、こういう日本の姿勢は大変すばらしいと思いました。これは、今委員として隣に座っている田中外務大臣の当時から大変積極的に進めてこられました。

 しかし、ここに来て非常に消極的になったという印象があるんですが、これはなぜこういうことになっているんでしょうか。

川口国務大臣 我が国としまして、これは結論から先に申せば、消極的になったということは全くありません。

 今までの取り組み、今委員がおっしゃられましたように、一九九八年の七月にICCの規程が採択をされて以降、いろいろな分野でのルールづくり、このために準備委員会がつくられたわけですけれども、こういった場を通していろいろ建設的に積極的に参画をしてきているのは委員が御指摘いただいたとおりです。

 それで、今後、その締結についてですけれども、これは、今の時点では、この規程の内容、そして各国における法整備、これの状況について精査をする。それとともに、これは担保をする国内法令がないといけませんから、その国内法令との整合性について必要な検討を行っております。二〇〇二年の七月一日にこの規程が発効したということを踏まえまして、政府としてこれを、その検討を進めているということでありまして、前に比べて消極的になったということは全くないということを申し上げたいと思います。

今野委員 一つお尋ねしたいんですが、このICCについてもいろいろなところで、国会で議論がありました。そしてそういうお答えをされていたということも承知をしております。

 それで、よく国内法整備が必要だ、国内法整備が必要だというふうにおっしゃっているんですが、国内法整備をしてからでなければ署名も批准もできないことになっているんですか、これは。

門司政府参考人 お答えいたします。

 署名につきましては、日本としてこの条約を十分担保できるというめどが立った段階で署名することとしております。

 また、批准につきましては、この条約を国内的にきちんと担保できるという段階に達して批准いたしております。

今野委員 そうなんですよ。ですから、これはよく、なぜ早くしないんだという質問に対して国内法整備が必要だから、国内法整備が必要だからというようなことをおっしゃるんですが、これは国内法整備が必要じゃなくとも、我が国としてやる気があれば署名し批准をし、そして北朝鮮の拉致の問題なんかもこういうところに、あらゆる手段をとっていると大臣おっしゃったけれども、こういうことに署名をし批准をして、そしてICCに拉致の問題についても申し立てるというようなことだってこれは方法の一つだと思うんですよ。あらゆる手段とおっしゃりながら、こういう方法をとっていないじゃないですか。しかも、国内法整備が必要だ必要だと言いながら、国内整備しなくたって署名も批准もできるじゃないですか。なぜやらないんですか。

川口国務大臣 今門司審議官から申し上げたことは、国内法令で担保できるというめどが立って署名をする、そして国内法令で担保できるということで批准をするということで、委員のおっしゃったこととは逆なことが日本の考え方である。これは、このICCだけではなくて、条約については一般的にそういうことで今までやってきているということでございます。

今野委員 それでは、めどというのは、どういうふうになったらめどが立ったと考えられるんですか。

門司政府参考人 先ほど国内法との関係について検討しておるという答弁をさせていただきましたけれども、国内法がきちんと担保できるような形で例えば改正できるか、あるいは立法できるかということでございます。

 どういう点で今検討しているかということにつきまして簡単に御説明いたしますと、もちろん具体的な論点についてすべて網羅的に申し上げることはできませんが、例としては、例えば次の点がございます。

 ICCは、集団殺害罪、人道に対する罪、戦争犯罪及び侵略の罪に対して管轄権を行使いたします。(今野委員「余り時間がないから早くして」と呼ぶ)はい。

 そのうち、戦争犯罪につきましては、実はジュネーブ諸条約について重大な違反行為に該当すると規定されております。実はこれは今まで日本では担保できておりませんでした。今国会において、武力攻撃事態対処法制の一環として、ジュネーブ諸条約等の国内実施のための法整備を行うべく政府として今鋭意準備を進めておりますけれども、それができれば一歩前進ではございます。

 しかし、それ以外にも、戦争犯罪以外に集団殺害罪、あるいは人道に対する罪がございまして、それをどういう形で担保するか。例えば集団殺害の扇動の罪をどうするかといった問題もございます。

 また、ICCとの関係では、非常に細かい手続的な規定もございまして、それを国内的に担保するということについても今後検討を進めていくという状況でございます。

今野委員 もう時間もありませんから、私はここで、ICC、国際刑事裁判所について署名をし批准をして、そして北朝鮮拉致被害の問題についてもここにきっちりと申し立てるという方法の一つをとっていただき、国際社会の中から、平和的な解決を望んでいる国だということをひとつアピールするという意味でも急ぐべきだという意見を申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

米澤委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 日米間の新租税条約についてですが、今までもるるお答えがありました。立場を変えて、やはり関心を持っている角度は同じでございますから、伺っていきたいと思います。

 ことしの二月二十五日のアメリカの上院外交委員会で、アメリカの財務省の担当官が、日本が締結した租税条約としては全く新しい条約だと指摘して、次のように言っています。新条約のかぎとなる幾つかの規定は日本にとって初めてのものである、今回の取り決めで具体化される進展は、この地域で、アジアのことですね、この地域で、この関連で、指針として、また指導役として、日本の後を追う多くの国々にとって重要な前例を与えるだろうという、非常にアメリカの政府当局から歓迎されているわけですが、米国政府が歓迎をしている規定、これはこの条約ではどういうものなんでしょうか。

加藤政府参考人 私どもが承っているところによりますと、配当の免税でありますとか、それから、これは特典制限条項、恩典制限条項といいますか、要するに、条約を悪用するというか、本来条約の対象者でないにもかかわらず対象として課税上のメリット、恩典を受けるということを制限する条項等が評価の対象になっていると聞いております。

赤嶺委員 つまり、この新しい条約では、配当について、持ち株比率が五〇%を超える親子会社の場合は免税にしたこと、あるいは特許使用料を免税にしたこと、特にこの二つの点、これがアメリカの目指す租税条約の方向に合致している。だから、この日米の間の企業の進出、今までも議論をされておりますが、お互いに大いに進出しやすくなっていく、そういう点を歓迎しているというぐあいに認識してもよろしいですか。

加藤政府参考人 私どもの今回の租税条約の基本的な考え方は、今先生御指摘のように、相互の投資交流、経済交流をより活性化、活発にできるようなインフラを整備するということでございますので、その点は一致していると思います。

赤嶺委員 そこで、特許使用料を免税にしたということ、これは日本にとって私はやはり重大じゃないかなというぐあいに思います。

 例えば、読売新聞でも、こう書かれておりました。米国企業は世界各国に知的財産権を有しており、日米の知的財産権の使用料は、特許大国米国側の受け取り超となっている。非課税化を日米対等に適用することは、日本企業より米国企業に有利に働く。税収減も、日本の約九百億円に対し、アメリカは六百億円にとどまるとの試算もある。それでも日本が免税に踏み切った背景には、政府が、知的財産戦略本部で大きな課題となっているのは、知的財産権でアメリカに対抗することではなく、中国を初めとするアジア各国に日本の知的財産権をどう浸透させるか。こういう指摘が読売新聞でされているわけです。

 この前段の日米関係でいえば、知的財産権の問題で、減税ということでいえば、アメリカが優位になる。先ほど計算は難しいというお話もありましたが、報道ではそうされているんですが、そういうことですか。

加藤政府参考人 報道については必ずしも承知しておりませんが、私ども、先ほど御説明申し上げましたように、それぞれの、いろいろな種類の所得がございます。今おっしゃいました使用料につきましては、確かに、現状のいわゆるマクロ的な統計、国際収支統計等から参酌すれば、若干、米国が受け取り超になっているということは事実でございます。

 ただ、今回の租税条約は、いろいろな、直接投資も含めた総合的な経済交流ということで、全体を一括して交渉のテーブルにのせ、締結したものでございます。

赤嶺委員 ですから、日米間ではそういうことになると。しかし、いろいろ総合的な経済交流という場合に、いわば知的財産権の問題で日本がアメリカに対抗するということではなくて、今回の条約を締結した趣旨というのは、やはり中国やアジア各国に知的財産権の問題をどう浸透させていくか、そういう面もあるわけですね。

加藤政府参考人 先ほど御説明しましたが、この条約が我が国にとりまして新しい租税条約の基本的な方針であるということは、私どももそう考えております。したがいまして、今後、世界各国といろいろな形で租税条約を交渉していくときにこれがベースになっていくということは事実でございます。

赤嶺委員 こういうぐあいに理解していいわけですね。アメリカの財務省担当者も、いわばこの日米新租税条約を世界に広げていくのだ、このように言っています。日本政府も、今の御答弁にありましたように、既存の租税条約も含めて、この新租税協定を世界に広げていくという方針。これは今後そういう方針なのかどうかという確認と、今後そういうものを広げていくためにどんな取り組みをなさろうとしているのか、それについて答えてください。

加藤政府参考人 私ども、今申しましたように、この日米新租税条約が今後の新たな租税条約の締結及び改定の基本方針であるという認識は持っております。

 それから、今後の方針につきましては、先ほどからも御説明していますが、大臣からもお話のありましたように、各国、いろいろな状況を総合的に勘案して、それぞれ進めていくということになると思います。

赤嶺委員 この点で、先ほどの指摘もありましたけれども、各国間の経済発展は極めて不均等な面もあり、これが世界的なモデルになった場合にどういう問題が起きるか、さまざまな検討を必要としなければいけない分野だと思います。

 そこで、先ほどの質問にもありましたが、条約の第十三条の三項の(b)、これについてお聞きします。

 この第十三条の(b)は、一般の株式譲渡に対する第十三条七項の居住地課税の原則を外してこの特別規定を置いておりますが、なぜあえてそういうものを置いたんでしょうか。

加藤政府参考人 先ほども説明しましたが、基本的に、租税条約は二重課税の調整という機能を果たしておるわけですが、非居住者による株式の譲渡益、これは原則として本国地で課税する、これがまさに原則でございます。OECDのモデル条約もしかり、それに基づいて、日米、日蘭もそうなっておりますが、今般、この十三条の条項を入れた背景は、やはり今回、破綻金融機関の破綻処理の過程で相当額の公的資金が投入されている、こういうことを踏まえた場合に、やはり一定の要件のもとで、限定的ではありますが、源泉地国に課税権を留保することが適当ではないかということを日米双方で合意した結果でございます。

赤嶺委員 つまり、新生銀行やリップルウッドの問題と、公的資金を投入し、なおかつその後莫大な利益を上げた企業について、やはり国民の批判が非常に強く、そして、そういう批判に対する一つの回答として、この源泉地課税、こういう条項を入れた、こう理解してよろしいですね。

加藤政府参考人 経済的な交流を促進するということで、マクロ的には、全体として、今回のように免税措置を拡充するということをやっております。

 ただ、この公的資金の投入による破綻処理というのは極めて個別的なケース、それが相互にほぼ均衡するというようなケースが必ずしも想定されない、そういう非常に特殊な状況もあるかと思います。したがいまして、これについては、やはりそれぞれの国において一部特別な関係を留保するということが適当ではないかという結論に至ったものであります。

赤嶺委員 そのとおりだとすれば、これもさっきの議論ですが、いわばハゲタカファンドと呼ばれているような企業行動に対する国民の厳しい批判、これに配慮して、そして、やはり特殊的な、例外的措置として課税対象に加えたかのようになっているわけですが、では、なぜ五年なのか。つまり、五年を超えて、まあ新生銀行の場合でも、あれは四年と数カ月ですか、それで、数カ月待てば、やはりあのような莫大な利益を得られるし、そしてそれは課税対象から逃れられる。

 いわば五年というのは、置いてはみたけれども、実効性を持つかどうかとなると、かなり疑わしいわけですね。やはり抜け穴だらけじゃないかというような批判が当然起こると思うんですが、いかがですか。

加藤政府参考人 租税条約は、国際的なルールのもとで、交渉の相手国との話し合いの結果、結論を得るものでございます。したがいまして、一定の制約、一定の限界があることは事実でございます。私どもとしては、今回のこの租税条約において、こういう形で一つの例外的な規定を設けたということは、両国間にとって意義のあるものだと考えております。

赤嶺委員 例外的な措置として設けはしてみたけれども、実効性においてはやはり抜け穴だらけというか、非常に国民の批判を免れないようなそういう事態、これは、今後も阻止するにはなかなかこの条約の規定ではうまくいかないなということを指摘しておきたいと思います。

 それで、時間もありませんが、私は、やはり今度の租税条約の中心点というのは、配当については持ち株五〇%以上の親子関係では免税、使用料も免税したことだと思います。これによって、アメリカに多数進出している日本企業は配当課税で恩恵を受け、逆に特許やコンピューターソフトなどの使用料を日本から得ているアメリカ企業は使用料課税で恩恵を受けることになる。配当についても、使用料についても、源泉地国での経済活動がなければ発生しない所得であることは言うまでもないことなんですが、その場合に源泉地国での課税を一切認めない、これはやはり適正とは言えないと思います。

 今度のこの条約は、アメリカの租税戦略に沿って、いわば多国籍企業の利益を保証していく、そういうもので、私たちとしては賛成できないということを申し上げまして質問を終わります。

米澤委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 社会民主党の東門です。

 もう先ほどからいろいろな御質問が出ていますので、重複するかと思いますが、私も質問をいたします。

 まず、国際的脱税の実態について伺いたいと思います。

 二重課税を回避することというのは、国際的な企業活動を円滑化する意味で極めて重要ですが、同時に、国際的な脱税を防止、摘発することも等しく重要です。国際的脱税には、移転価格税制やタックスヘーブンを利用するなど種々の手法があり、これを防止、摘発するために二国間条約による情報交換、徴税共助などを通じた税務当局間の協力、OECDによるタックスヘーブンリスト等の公表や有害な租税競争の是正などの国際的な取り組みが行われていると言われています。

 政府は、国際的な脱税の手口、額等について詳細に把握、分析しているものと考えますが、最近の実態はどのようなものがあるのでしょうか。また、それに対してどのような対策がとられているのか、わかりやすい、典型的な例を用いて説明してください。

鳥羽政府参考人 国際的な脱税ということでございますけれども、近年の経済社会の国際化の進展ということで、海外の投資家あるいは我が国の企業が国際的な展開を図っている中におきまして、例えば、さまざまな多様な事業体、日本でいう法人とか個人とは別の形のパートナーシップ等々の多様な事業体を用いる、あるいはさまざまな金融手法を駆使して複雑な取引形態を用いて、結果として税負担が軽減されている、そういういわゆる租税回避のスキームというのが最近よく見られるわけでございます。

 具体的な例を一つ挙げるとすれば、例えば、先ほども御質問の中にございましたけれども、匿名組合契約を利用いたしまして、我が国で行っております事業所得を海外の特定の国の設立した事業体に移転をする、当該国の税制がそれに対して課税していないということで、我が国の課税あるいは当該国の課税も逃れるといったような事例がございます。そのような事例に対して、私どもとしては、その契約の内容、事業実態等をるる事実関係を解明した上で適切な課税を行ってきているところでございます。

 これに対する対応でございますけれども、先ほど先生からも御紹介がございましたさまざまな取り組みが行われておりますし、また、私どもとしても国税局内にこういう国際的な租税回避スキームに対応するための専門スタッフ、あるいはプロジェクトチーム等を設置して、調査手法の開発等も努めているところでございます。

 なお、昨年、平成十四事務年度、平成十四年七月から十五年六月までの事務年度でございますけれども、調査課所管法人、資本金一億円以上の法人が原則でございますけれども、これに対する税務調査の実績を見ますと、海外取引に関する申告漏れの金額は約三千七百億円余り、そのうち不正、いわゆる仮装、隠ぺいを伴うものが二百六十六億円ございました。

 なお、私どもといたしましては、今後とも、悪質な納税者あるいは国際的な租税回避行為に対しては我々の組織を挙げて厳正な態度で臨むことといたしまして、頑張ってまいりたいと考えております。

東門委員 ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 済みません、時間が余りにも短過ぎまして、これは一問で終わらせていただいて、在沖海兵隊の削減について質問させていただきます。

 二月二十六日の安全保障委員会での、代替施設なしでの普天間飛行場の返還を米側が打診、その関連の質疑の中で、イラクに派遣された在沖米海兵隊の人員補充の有無に関し、外務大臣は、米軍の運用については我々から申し上げる立場にないと述べるとともに、我が国における米軍の抑止力の低下があってはならないので、一時的にいろいろな措置をとると米軍から聞いている、これは一時的な措置であって、恒久的なものではなく、本来の最適な形ではないので、できるだけ早く最適な形に戻したいというのが米軍の意向であると述べておられますが、この答弁は全く承服できません。

 我が国は、米軍の運用改善について何も言うことはできず、あくまで米軍の情報や意向をうのみにしているだけではないでしょうか。政府が米軍の有する抑止力の効果的な維持が必要と認識しているならば、イラクに派遣された海兵隊の抑止力に与える影響を主体的に検討すべきであり、その検討の結果、影響がないと判断すれば、その削減を米国側と協議すべきではないでしょうか。

 そこで伺います。米軍のとるという一時的な措置とはどういうものなのか、また、本来の最適な形とはどのようなものと外務大臣は理解されているのか、お伺いします。これは大臣にお願いしたいと思います。大臣の発言に対する質問でございますので、大臣からお願いします。

川口国務大臣 その際に申し上げましたように、米軍の運用について、我が方として具体的にこちらから申し上げる立場にはないということでございます、ということがお答えだと思います。

東門委員 確かにそれは最初におっしゃっておられます。しかし、その後、抑止力の低下があってはならない、だから一時的ないろいろな措置をとると米軍が言っている、そうおっしゃっているんですね。そして、今回の三千人派遣、それは沖縄からもちろんイラクに行くわけで、その分あくわけですよ。それは一時的な措置であって、恒久的なものではなく、本来の最適な形ではないとおっしゃっておられると。大臣の発言に対しての質問なんです。

 ですから、一時的な措置とはどのようなものか、本来の最適な形とはどのようなものだと大臣が御認識しておられるかということをお伺いしているわけです。

川口国務大臣 一時的にどういう措置をとるかということは、それは米軍の運用の問題であるわけです。我が国として、米国がそういった一時的な、必要な手当てを行うことによって抑止力が低下することはないということを言っているわけでございまして、その米軍の運用の詳細について政府として具体的に申し上げる、一つ一つについて申し上げる立場にはないということを先ほども申し上げたわけです。

東門委員 三千人の海兵隊がイラクへ派遣される、そうすると抑止力にこれは影響がないということになるのでしたら、やはりそこで日本政府がアメリカに対して一歩踏み出せるチャンスではないんでしょうか。沖縄の本当に負担の軽減ということであれば、そこから、政府はチャンスととらえて一歩踏み出せる場ではないかということで私は伺っているんですね。抑止力に影響がないということになるのであれば、いつも大臣がおっしゃる、抑止力、抑止力、その抑止力の効果的な維持だとおっしゃる。三千人抜けても関係ないというのであれば、そこから一歩踏み出せるのではないかということを伺っているんですが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 米軍の兵力構成の今あるさまざまな議論、これについては、先般来申し上げていますように、沖縄県の県民の方々の御負担がございますから、考え方の一つの柱として、沖縄県を含む、施設・区域が存在をする地元の地方公共団体の方々の負担を軽減するということは一つの柱として考えています。

 あわせて申し上げれば、抑止力を維持するということはもう一つ重要なことであるというふうに考えているわけですけれども。

 三千人を、ほぼ三千人になると思いますけれども、それがイラクに派遣をされるということで、そこで生じる抑止力の低下ということがないように、米軍としては、一時的な措置によってその低下をしないようにするということを米軍が言っているわけでございまして、それの詳細については、こちら側が運用について一つ一つ申し上げる立場にはないということでありますけれども、その三千人減る、抑止力が低下をする、それがないように、米軍としては一時的な手当てでそれをカバーするということを言っているわけです。

東門委員 その際に、やはり日本政府として、これまで沖縄県民が本当に悲痛な叫びを上げて政府に訴えてきているわけです。そうであれば、本当に、抑止力との関係で、米軍の運用ですから政府から、日本側から何も言えないというのではなくて、主体的に検討する、その立場でアメリカ側に投げかけてみるということが私は求められているのではないかと思うんです。

 いつでもアメリカの言いなり、アメリカが言ってきたからこうです、アメリカはこう言っているから我々はここから一歩も踏み出せませんという姿勢ではいけないということを申し上げているんですよ。むしろ、そういう場をとらえて一歩踏み出してくださいということを言っているんですが、いかがですか。

川口国務大臣 我が国の抑止力についての考え方ですけれども、これは、アジア太平洋地域には冷戦終了後も、複雑で多様な要因を背景とした地域紛争、WMDやミサイルの拡散、依然として不安定性、不確実性があるということを考えております。そして、日本がみずからの自衛力だけでは自国の安全が脅かされるようなあらゆる事態には対処できないということである以上、日米安保条約を引き続き堅持することで米軍の前方展開を確保して、その抑止力のもとで多様な脅威に対処をして日本の安全を確保するということが必要であるというふうに考えているということでございます。

東門委員 終わります。

米澤委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会します。

    午後零時四分散会


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