衆議院

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第6号 平成16年3月12日(金曜日)

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平成十六年三月十二日(金曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 米澤  隆君

   理事 岩永 峯一君 理事 谷本 龍哉君

   理事 中谷  元君 理事 渡辺 博道君

   理事 末松 義規君 理事 武正 公一君

   理事 増子 輝彦君 理事 丸谷 佳織君

      遠藤 武彦君    小野寺五典君

      河井 克行君    木村  勉君

      高村 正彦君    鈴木 淳司君

      土屋 品子君    西銘恒三郎君

      松宮  勲君    宮下 一郎君

      阿久津幸彦君    加藤 尚彦君

      今野  東君    田中眞紀子君

      中野  譲君    前原 誠司君

      松原  仁君    漆原 良夫君

      赤嶺 政賢君    東門美津子君

    …………………………………

   外務大臣         川口 順子君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   外務大臣政務官      松宮  勲君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    瀬川 勝久君

   政府参考人

   (防衛施設庁施設部長)  戸田 量弘君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局国際社会協力部長)     石川  薫君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)            薮中三十二君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    海老原 紳君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    小松 一郎君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  古田  肇君

   政府参考人

   (外務省条約局長)    林  景一君

   政府参考人

   (文部科学省国際統括官) 永野  博君

   外務委員会専門員     原   聰君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

米澤委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省総合外交政策局長西田恒夫君、外務省総合外交政策局国際社会協力部長石川薫君、外務省アジア大洋州局長薮中三十二君、外務省北米局長海老原紳君、外務省欧州局長小松一郎君、外務省経済協力局長古田肇君、警察庁警備局長瀬川勝久君、防衛施設庁施設部長戸田量弘君、文部科学省国際統括官永野博君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

米澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

米澤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩永峯一君。

岩永委員 大臣、副大臣、おはようございます。

 私は、国会議員になりまして七年ですが、本当に外務省には縁が薄うございまして、今回初めて外務委員会の理事ということです。まあ、外交に対する思いには大変強いものがありましたので、きょうはひとつ大臣の率直な御意見をお聞きしたいと思ってやってまいりました。

 それで最初に、昨日ニュースステーションを見ていますと、前の外務省経済局総務参事官室の課長補佐の小林祐武さんという方が出ておられまして、外務省のかつての自分の勤務中の問題を大変露骨にお話をしておられました。そして、そのときに「私とキャリアが外務省を腐らせました」という本を紹介しておりましたので、けさ早速買いに行かせましたら、何か二、三日前に発刊したところでございますが、出ておりました。

 川口大臣は、このニュースステーションにきのうだけではなしにもう二、三回小林祐武さんが出ておられますし、そのテレビを見られたかどうか、それから「私とキャリアが外務省を腐らせました」、この本をお読みになったかどうか、ちょっと最初にお聞きしたいと思います。

川口国務大臣 テレビは、私はできるだけいろいろな番組を見たいと思っているんですが、何分にもいろいろやることがございまして、夜、外交案件なんかで帰りが遅いこともございますし、ニュースステーションは、その方がお出になった一回目か何かのときにちらりとだけ見ましたけれども、それ以降は見ておりませんし、本も読んでおりません。

岩永委員 この「キャリアが外務省を腐らせました」というのは、週刊誌に小林さんが何回か連載していたのをまとめられた、こういうことなんです。だから、この内容についてはかつての小林さんの記事を集約したものでございますので、職員からこういう記事が載っておりますよというので見られたことはございませんか。

川口国務大臣 ちらりちらりとそういうようなことがあるということについては聞いております。

 基本的に外務省についての御批判についてはできるだけ目を自分で通すようにはしておりますけれども、具体的にどういうことをどこで言われていたかということについて、今はっきり全部記憶にあるわけではありません。いろいろ御自分の過去の贖罪をなさっていたという印象でございます。

岩永委員 いいことはだれしも快く聞くわけでございますが、厳しい批判についてはややもすると遠ざけるという人間の習性がございますので。

 ただ、大臣が御就任されて二年ぐらいですか、私は、小泉総理も大変な期待を持って、かつての外務省の多くの問題、本当に国民が糾弾するような問題をやはり修正してほしい、そして改革してほしいというような気持ちで川口大臣を御指名なされた、このように思うわけでございます。やはり少なくとも職員から、大変お忙しいとは存じますが、あの当時の問題の集約でもあるわけでございますので、私はできるだけそういう部分については、大臣の改革の大きな基本になる部分だ、このように思いますので、お読みをいただきたい、このように思います。

 それでは、一連のこれらのニュースステーションだとか、こういう小林さんが出ておられることに対する今何らかの感想はお持ちですか。

川口国務大臣 私が二年ぐらい前に小泉総理に外務大臣になるようにというお話をいただきましたときに、総理が一番最初におっしゃったことは、第一の仕事は外務省改革であるということを言われたわけでございます。それで、私もそれまで環境大臣として外務省の状況を横で見ていたわけですけれども、改革をするに当たって、私は三つの柱をこれはもう直ちにつくりました。それは何かというと、透明性、実効性、そしてスピードということであります。

 透明性ということについては、これはそれまでのプール金の話であれ何であれ、外務省のやっていることについて透明性がないがゆえに国民が何となく理解できていない部分。それから、透明性がないゆえに、いろいろなことが国民の目から見たらおかしいと思うことがまかり通っていたというようなことではないかとそのとき思ったということで透明性。そして、今後の改革もできるだけその透明性を確保していくことが、それが一つのガバナンスにもなるわけで、透明性が大事だということであります。

 それから、実効性というのは、これは実際に成果が上がるようなことでなければいけない。実行でき、いろいろな法律の制約、お金、予算の制約、いろいろございますから、そういう中で実際にやっていって成果の上がることでなければいけない。

 それから、もう一つはスピードでして、外務省改革を何のためにやるかといえば、もちろん、日本にとっていい外交を外務省がしなければ国民が困る、日本が困るわけでして、それをやるためには改革に時間をかけていたのではだめで、早く次のステップに移るということが大事だということでスピードということを言ったわけです。

 それで、その具体的なやり方として、スピードという観点からは、私は、半年で全部見えるような形で改革をし、行動計画というのをつくって、それも単につくるということだけではだめで、何をいつまでにやるということをきちんと行動計画に書いて、やるべきだということを言いました。

 それから、中からだけでやると、中の人がやる気になるのが一番大事ですけれども、外の目ということが大事で、それで私は「変える会」、この名前も私自分でつけましたけれども、オリックスの宮内会長にお願いをして「変える会」というのをつくって実行したということでございます。

 それが行動計画という形になりまして、日にちが、ちゃんといつまでにやるということが書いてありまして、それに従って着々とやっています。「変える会」の提言については、三つぐらいのことを除いて全部やるということで、これを行動計画に盛り込んでいます。それで、それをどんどんやっているということであります。

 それで、そのときのモットーは、これは霞が関を先駆ける改革でなければいけない、ほかの省庁が外務省のやっていることを参考にするということを目標にやるべきだ、そういうようなことを最初に外務省の職員に言いまして、それを進めてきました。

 今挙がっている例示で言いますと、公募、省内で百のポストについて公募をやっております。それを審査し、それについて応募してだめだった人には、なぜだめかということもきちんと説明をするということでやっております。これをやっている省庁というのは霞が関にほかにないと思います。

 それから、幹部の交流、民間からの登用ということをやっておりまして、これは局長を初め何人かの人に幹部に来てもらっています。大使の民間登用というのもやっております。そういうことをいろいろやりまして、これは引き続き続けてやることが大事なものですから、外務省の中にある「変えよう!変わろう!外務省」という会がございまして、その会合には私も時々顔を出して、引き続きやるということをきちんと今進めているということでございます。

岩永委員 私も、頑張っておられると思いますよ。ただ、国民に見えないわけですよね。だから、どうしていったら国民に見えるようになるのか、そして頑張ってくれているなというのを実感として感じるのか、ここらあたりは大変難しいと思うんですが、ひとつこれからは国民向けに本当に伝わるような、そういう部分を大事にお考えいただきたい、このように思います。

 十日の日に参議院の予算委員会がございましたね。そこで、外務省の国会対応について総理が、外務省の対応は他の役所に比べるとなっていないという声をよく聞くということで答弁をなされておったわけでございますが、外務省を名指しで批判されているということなんです。

 大臣は、ずっとそれまでの経緯はあると思うんですが、この部分を見ると、やはり総理がこのような言葉を発せられるというのはよくよくであったと思うのですが、どう思って聞いておられたか、また今どう思っておられるか、このことについて。

 たくさん聞きますので、簡単にばんばんやり合いしましょう。

川口国務大臣 国会に対してきちんと対応をしていく、国会議員の方についてきちんと御説明をしていくということは大変に重要なことでありまして、これは日ごろから外務省の職員の人にその話は、重要性については言ってきております。総理のおっしゃったことは重く受けとめて、引き続きそういったことについて、いい対応、きちんとした対応ができるように注意をしていきたいと思います。

岩永委員 もう少し突っ込んで聞きますが、総理がそうおっしゃられた、重く受けとめられるのはわかりますが、どこが問題だと思いますか。

川口国務大臣 説明をもっと時間を使って申し上げるということが大事なんだと思っています。それが必ずしも十分にできていないのではないかというふうに思います。

 さらに、なぜそれがそうなのかというと、やはり問題というのが固まるんですね、あるところに。例えば北朝鮮、例えばイラク、御関心が同じところに行くものですから、なかなか手が回り切らないというところが一つの問題としてあるのかなということですけれども、よその部局の人がかわってやるということがまたこれはできないものですから、どうしたらいいかなと今悩んでおります。

岩永委員 大臣は通産省にずっとお勤めをいただいていたわけですね。そして、民間へ出られて、環境大臣も経験された。私は、外務省はほかの省庁とやはり違う雰囲気を感じるわけですね。大臣はどうですか。通産省にいたときと、それから大臣に就任されていた環境省と、今この外務省とをずっと比べてみて、どのようにお感じいただいていますか。

川口国務大臣 私が通産省にいたのはもう十年以上前でございますので、大分皮膚感覚としての感覚が薄れておりますけれども、通産省そして民間企業、それから環境省、外務省と来まして、やはり組織の育つ、持つ文化、考え方というのが違うという印象は持っております。

 これは、私が通産省から民間企業に行ったときに強く感じたことですけれども、ある組織にずっと長いこといますと、発想がやはり固定化していくということがあると思います。ですから、本当のところ、もっと交流があるということが大事で、それは各省間でもそう思いますし、思ったからこそ改革の一歩として幹部の登用、交流をやったということでもありますし、また官と民の間の交流、これももっともっとやらなければいけないというのが、私、心から思っていることでございます。

岩永委員 私は、ほかの省庁は公務員試験を受けて採用される、しかし外務省は外交官の試験でございますし、職員の皆さんを見ているとやはりエリート意識が高い。そして、特にそういう部分からくる、君らに何がわかるかというような、やはり国民の下のサイドにおり切れない部分というのがあるのではないかという気がするわけですよね。そういうことは感じられませんか。

川口国務大臣 今は公務員試験で採用しておりまして、ちょっと今二回目になるのか、ことしの今度の採用で三回目になるのか、それぐらいだと思います。

 エリート意識を外務省だけが特に持っているかといえば、それは私はそうでもないのではないだろうかという気がしています。国家公務員であるためには、やはり強烈な使命感、公のために仕えるという強烈な使命感が必要であって、それは私はすべての省庁において国家公務員はそれを持っていると思います。それは必ずしも私はエリート意識ということではない、ある種の責任感と使命感だというふうに思っています。

 外交官試験をやったからそういうことになったのかということでも必ずしもないのではないか。外交官試験、今やもう公務員試験で一緒になっていますから、ほかの省庁と人材を奪い合う関係に今外務省はございまして、いい人材に外務省に来ていただくということで必死になっておりますけれども、前の段階では、外交官試験は試験が別でしたから、早い段階から外務省に来ようと思った人が、末松先生とか、ほかにも議員になられた方が今何人かいらっしゃいますけれども、そういう方がいらっしゃるんだろうと思うんですね。

 それで、やはり外交官の基本的なスキルというのは言葉ですから、試験の段階で言葉の適性ということについてはやはり見ておく必要があるというのは、私は正しいと思っております。今、公務員試験にしましたので、今後逆に、そういう意味で、外交官になってからそのスキルをどうやって上げていくかというのが別な課題に今なっているというふうに思います。

 私は、公僕たる国家公務員にいいエリート意識は持ってほしい。それは、自分が偉いんだ、自分はほかの人より知っているんだということではなくて、やはり使命感、国のために尽くす、国民のために尽くす、そういう使命感が涵養されなければ国家公務員というのは私はだめになるというふうに思っております。

岩永委員 いろいろお聞きしましたけれども、先ほども申し上げましたように、大臣は一生懸命にやっている、このようにお思いでしょうし、また、知る人は知っておられると思うわけでございますが、どうもやはり、我々国会議員が見ておっても、また総理がおっしゃられたように、そこにまどろしさというのを感じるわけでございます。

 二回の組閣があっても川口大臣だけはずっと御就任をいただくという総理の強いあなたに対する期待があるわけでございますので、どんどんもっと大きな声で、そして馬力を持って、そして国民が本当に、優しいほんわかとしたイメージの川口大臣ではなしに、これからはもう二年間の経験の上に立って、本当に日本の国を背負って世界に冠たる日本の姿勢を示すという、やはり外交というのは私は一つは大臣の強さだと思いますし、その大臣の強さが職員の皆さん方にも勇気を持たせる、そして内部についても改革の速度を速める、このように思いますので、ひとつその点についてこれからの大臣に期待をしたいと思います。

 総理は本当に期待しておられると思うんですよ。いろいろ川口大臣に対する批判があっても、やはり総理はきっちり、期待して必ずやってくれるものだ、やってくれていると思うから続けての就任があるんだと思うんですが、そういうような意味合いで、もっと馬力をかけてほしい、このように御要請を申し上げます。

 それから、二年前にシー・オブ・ジャパンの問題が起こった際、外務省が反省の上に立って今後の対応に新たな決意をされたわけでございますが、そのことを覚えておられますか。そして、その後どのような取り組みをなされましたか。大変大事なのはこれからでございますので、ちょっと簡単にお願いします。

川口国務大臣 二〇〇二年の八月のことでございましたけれども、韓国が東海というふうにこれを併記すべきだということを受けまして、国際水路機関が日本海の部分のページを含まないIHOの海図を加盟国に配付した、そしてその賛否を問う回章というのを出したというのが事件の発端でございましたけれども、我が国としては、日本海というのは唯一の確立をした呼称であるということを言いました。

 そして、その韓国の言っていることには全く根拠がなくて受け入れられないということをはっきりと言いまして、働きかけを行ったということでございます。その結果、IHOはこの改訂版を作成するという作業を今当面棚上げをしているという状況にございます。

 これを受けまして、我が国として関係の加盟国への働きかけ、あるいは航空会社への働きかけ、そういうことを随時といいますか、順次といいますか、立て続けにといいますか、どんどんやってきております。これにつきましては、我が国の立場というのはもう全く、強い、変わらないということでございます。この立場をきちんと各国に対して伝えていって支持をしてもらうということが大事である、こういうふうに考えています。

岩永委員 二月の十八日、在韓日本大使館のサイトにおいて表記の誤りを把握された、そして修正した韓国語の記述は五、六件だ、このように聞いておりますが、このことについては間違いございませんか。

川口国務大臣 間違いございません。

岩永委員 私は、大臣、もう残念で残念で残念でならないわけですよ。というのは、大使館というのは日本を代表するその国における存在なんでしょう。そして、そこから発行するインターネットだとか雑誌、これをずっと見ますと、サイトだけではなしに、ワールドカップの開催都市紹介だとか、それから二〇〇一年九月に掲載コラム「漢江の風」だとか、それから二〇〇二年六月掲載の雑誌ジャパンフォーラムだとか、そういうところに全部日本海をトンへ、東海としている、なおかつ併記しているというような状況が全部出ている。

 日本の大使館が出しているサイトだとか雑誌、そういうところからいったら、韓国人はそれを日本がもう認めている、このように思われるんではないんですか。だから私は、日本が発信している、誤解だとか翻訳の違いだとかいうことでは済まない、このように思うんですが、このことについてはどういう自覚をしておられますか。

川口国務大臣 これはもう委員のおっしゃるとおりでございまして、私も本当に、これは何事かということだと思っております。

岩永委員 言葉ではそれだけしかおっしゃらないわけですが、これを発注した責任者はどなたか、そして翻訳をされた業者名はどこなのか、これを答えてください。

川口国務大臣 発注をした人間というのは、これは組織でございますので、いろいろな段階でかかわり合いをみんなが持って発注をしているということなので、だれか個人が、一人がこの責任者ということではないというふうに思っていますが、その事実関係、どういうそれぞれ責任関係になってやっているのかということについては、今、さらにもう少し調べることがあるので、調べさせております。

 それから、これをやった韓国の業者、この会社とはその後取引をやめておりますので、仕事を発注をもういたしておりませんので、これについて名前を出すということは控えたいと思っております。

岩永委員 そんなの出したらいいじゃないですか。これだけ大きな過ちをして、過ちの過程というのは、大使館の中ではどういう形で発注されたか、だれがどの方に何を言われたか、やはりこういう調査が必要ですし、また受けた相手はこれだけ国家の権威にかかわる大きな失敗をしているんですよ。失敗というか間違いを犯しているんですよ。だから、そんなことの名前が公表できないということで済むと思いますか。

川口国務大臣 これは翻訳をした人にももちろん問題があるわけですけれども、やはり基本的な問題は、我が方の大使館においてこれを十分にチェックしていない、すべきところをしなかったということであると思うんですね。納入があったらば、その納入をした人がそのとおりやっているかどうかということはきちんとチェックをすべきであるということを怠ったことが問題であるわけでございます。

 そういう意味で、先ほど申しましたように、いろいろな人が関与していますので、どういう責任関係があるかということについてはいま一つ、もう少しクリアにしたいと思って調べております。

岩永委員 私は、ずっと過去にさかのぼって全部チェックしていないんでしょう。だから、二年前から今までだけではなしに、韓国では日本海のことをトンヘ、トンヘとずっと記述されていたと思いますよ。それほどやはり、韓国は日本海をトンヘだと日本も認めている、私はこのように思います。

 聞くところによると、二年前に、韓国政府から大使館に、東海の呼称を使うようにとの申し入れがあったというような話を聞くんですが、それはありましたか。

川口国務大臣 それについて、私は承知をしておりませんので、調べてみます。

岩永委員 もし大使館への申し入れがあったということでしたら、そのことに気遣ってずっと今回の使用があったと思われないわけでもありませんので、このことについては徹底して調べて、そしてだれがそれを受けて、そしてその過程の中でそれをずっと引きずっていたかどうか、ここらあたりも大きく調査の対象にしていただきたい、このように思います。

 それで、私は、大使館の表記間違いはチェックをしていなかったという過ちで済むものではない、謝って終われるべきものではない、こういうことを思うわけですが、大臣は、これを調査された結果についてはどういうような責任のとり方をしようとされておるのか、お聞きをいたしたいと思います。

川口国務大臣 これについては、先ほど言いましたように、今さらなるチェックを、その責任体制についての事実関係の確認をしておりますが、その確認ができた上で、この問題については私は厳正に対応したいと思っております。

岩永委員 では、最後になりますが、今後どのように対応されていくのかということ、これはもう二度と間違いを起こしてはならないわけでございますので、そのことについてきっちりとあなたの決意をお述べいただきたい、このように思います。

川口国務大臣 既にいろいろな手を打っております。細かくお話をする時間があるかどうかよくわかりませんけれども、まず……(岩永委員「言ってください。細かく言ってください。大事なことですから」と呼ぶ)はい。

 まず一番大事なのは、再発防止という観点でチェック機能を強化するということであります。そのチェック機能を強化するということについて、これは記述が不正確になるおそれがあると思われるところについては、大使館の本館によるチェック、二重のチェックをやるということにいたしました。

 それからもう一つ、インターネット関係、ホームページにつきましては、これは検索機能をかけて、そういうプログラムを導入して、そういう言葉について検索をする。もしそういうことがあれば、それはそこで変えるということを、そういうソフトを入れております。

 それから、ほかの在外公館すべてにおきまして、ホームページその他、これはトンヘの問題だけではありませんで、不適切と思われるいろいろなことにつきましてはそういう有無をチェックするようにということを言ってあります。それで、発見された場合には、修正を直ちに行うということを指示いたしております。

 それから、もちろん、外務本省においても二重のチェックをするということをやっております。それから、今回の関係のことを受けまして、全部の在外公館に対しまして、さらなる、厳重に注意をし、仕事をしていくようにということの注意喚起を行っております。

岩永委員 終わります。

米澤委員長 次に、木村勉君。

木村(勉)委員 私は、日本の戦後の外交を見ておりますと、どうも自主、独立性に欠けているという思いがしてならないわけでございまして、大臣はどういう認識をされているか、その辺をお聞きしたいと思うんです。

 戦後ももう五十九年になりますけれども、あの廃墟の中から今日の平和と繁栄を築いてきたわけでございます。これを世界的に見ていると、しかし日本のしっかりとした背骨がわからない、日本が何を考え、何を主張しようとしているのかわからないという感じを、私は、世界に持たれているという気がしてならないわけであります。

 日本は、世界の方向性についてはお任せをし、その費用の一部を負担するという経済的なおつき合いだけでつき合っている面があるような気がしてならないわけで、日本はこれだけ歴史と文化を持っているわけですから、しっかりとした日本の考え、主張を示して、世界の平和と繁栄に貢献して初めて世界に尊敬される日本になるんだと思っておりますけれども、今までの日本の戦後の外交を見て、自主、独立性というものに対して、大臣はどう認識されているか、お聞きしたいと思います。

川口国務大臣 私は、日本の戦後の外交については、非常に主体的に物事を考えて外交をやってきている、いい成果を国際社会でも上げ、そのように日本は認識をされているというふうに思っております。

 なぜそう思うかということなんですけれども、これはいろいろな場で申し上げておりますけれども、日本にとって大事なことは、国益をいかに守るかということであります。その国益は何かというふうに考えますと、それは日本が平和であって、そして繁栄をする、それをどのように確保するかということであると思います。

 それをどのようにするかということを考えた結果として日本が主体的に選んだ道というのは、一つが日米同盟であるわけです。そしてもう一つが国際的な協調という、その二つの柱を、日本は自分で考えて主体的に選んだわけですね。同盟関係というのは日米同盟、アメリカと同盟関係を持っていますが、これは日本が自分で選んだ、アメリカも日本をそういう意味では選んでいるということであります。

 ですから、日米同盟、これは今、両方ともお互いがいい同盟のパートナーだと思っていますけれども、我が国がこの同盟関係を維持し続けていきたいというふうに考える限り、今は考えているわけですけれども、その同盟関係について、向こう側も日本を選んでいるわけですから、日本が同盟のパートナーとして選ばれるように、いい同盟関係をつくっていく努力を主体的にしていかなければいけないというのが一つの柱だと思います。

 それからもう一つは、日本は世界が平和であって、安全、発展をしているということに日本の国益を持っている国であるわけでございますから、それだけ日本は世界のほかの国々に依存をしているわけでして、世界が平和であって発展をしていくということが重要である。そのために、日本は国際協調ということを非常に重要なこととして考えているわけです。

 それで、国際協調をやる、進めていくということについても、日本は主体的に、積極的にこれについて働きかけてきていると私は思っています。このみずから選んだ日米同盟、そして国際協調、この二つの柱をきちんと外交政策の中に位置づけてこれを実行してきているというふうに思っています。

 もしお時間をいただけるようでしたら、もう少し具体的に申し上げたいと思いますが、とりあえず今はここでとめておきます。

木村(勉)委員 私は、全体として見た場合、やはり日本の自主的な選択といいますか、発言がどうも抑制されているような感じがしてならないわけでございます。

 もちろん、日本はアメリカとの関係が基軸でございまして、アメリカとの同盟を主体的に選んだということも正しかったし、アメリカと同盟を結んで今日の平和と安全を築いてきたわけで、日本はそういう意味で幸せだったなと思うわけです。

 しかし、ここでやはり、もう少しアメリカにはっきりと物を言いながら信頼関係を増幅していく、それが本当のパートナーシップだと思うんですけれども、その辺いかがか、一つお伺いしたいなと思います。

川口国務大臣 これは、委員がおっしゃるとおりであると思います。

 基本的に同盟関係をお互いにどうやって育てていって意味のあるものにするか、これは意味のあるものにするかと申し上げたのは、日本とアメリカ二国間のためだけではなくて、例えば、日本とアメリカのGDPを足し上げますと四六%を超えるわけですね。世界の約半分が日本とアメリカで支えているということであるわけです。

 ですから、そういった大きな二国として、世界が平和であるために力を合わせて、どのように世界をマネージしていくかと言うとちょっと語弊がありますけれども、そういう観点から発想をし、貢献をしていくということが大事でして、それが総理とブッシュ大統領のお話に出た世界の中の日米同盟という考え方であると思います。

 それで、その同盟関係をそういった二国間のコンテクストで、文脈で、あるいは世界の文脈で考えていくときに、おっしゃるように、日本として、日本の立場から見たこと、それをきちんとアメリカに伝えていくということは大事であると思います。

 先ほど、日本とアメリカのGDPを足してほぼ半分だというふうに申しましたけれども、実は、アメリカのGDPは日本の今や二倍以上、三三%ぐらいがアメリカであって、日本は一三%強ですから、その半分以下であるということであるわけですけれども。

 それで、日本の立場から見えたこと、見たこと、それをきちんとアメリカに伝えていくことは大事であります。それは、きちんと私どもはやっていると考えております。見えるか、見えないかということと、やっている、やっていないということは、私は分けて考えるべきであるというふうに思います。

 いい同盟関係というのは、日本の考えていることがアメリカによって聞かれる、アメリカが日本の言うことを聞くということであって、それをやること、その効果、成果、それを第一に考えるということが大事ですから、すべて見える場でそれをやったということでは、かえってその目的に反するようなことになりかねないということもある。多くの場合、そういうことだと私ども思っております。

 例として一つ挙げますと、イラクの武力行使に至る前の段階で、我が国はアメリカといろいろな問題について緊密に話をいたしました。そこで、その一つは、私どもがアメリカに言ったことは、これは国際協調が大事である、決してブッシュ大統領対サダム・フセインではない。大量破壊兵器の問題、拡散の問題、そういったことが世界の脅威であるということに立って考えれば、これはそういった疑惑を持たれているイラク対国際社会の問題であって、決してアメリカとサダム・フセインの関係ではない、ブッシュとサダム・フセインの関係ではないということをきちんと伝えていきました。これは何人もの人が、総理も含めて、もちろん私も含めてきちんと伝え、そしてそれについてアメリカはそのようなことをやっていったということであります。

 もう一つ最近の例を挙げさせていただきますと、マドリッドでイラクの支援のための国際会議がありました。それで、イラクの復興に国際社会が力を合わせていくということは非常に大事なことであるわけですから、そのためにどのように世界の、特にイラクの武力行使をめぐって世界が分かれてきたということの中で、どのように国際社会が協調してこれをやるかということが重要であって、我が国は、これは国際機関を入れて、国際機関が中心になってやるような形にするということが大事なんだということを言いました。その結果としまして、世銀等が、あるいは国連がイラクのニーズのスタディーをしまして、そして国際機関が入る形でマドリッドで会議が行われたということであります。

 それから、さらにもう一つ例を挙げますと、ドイツ、フランス、ロシア、こういった国がイラクの復興支援のために同じ船に乗って力を出していくということが重要である。これは、今までの経緯からいってなかなかうまくいっていなかったわけですけれども、総理特使という形で橋本元総理に行っていただいて、シラク大統領と話をして三カ国協力をしましょうということで、この間、ドビルパン外務大臣との間で、スポーツ、文化等についてイラクで一緒にやりましょうという話をし、ヨルダンでフランス、ドイツ、日本と調整委員会をつくってもう会議を始めているわけでして、そういった具体的に動いて国際社会の協調をつくっていくということもやっているわけです。そのような形で、実質的にアメリカに対して物を言い、そしてその効果を上げていくということが、同盟国としてのやらなければいけないことであるというふうに思っています。

 外交をやる立場の人間にとって、常にこれを見せるようにしたいという誘惑には駆られます。これはしょっちゅう駆られているわけですけれども、やはり、それをやったのでは期待した成果が生まれないということを、外交をやる人間はきちんとそれをわきまえて、水面下でやることは水面下できちんとやり、そしてその中でできるだけ皆さんに、国民の皆様に見えるように、透明性をできるだけ確保する、そのバランスをとっていくということが重要なんだというふうに考えております。

木村(勉)委員 川口大臣は、日本は言うべきことはやっていると言っているし、やっている、実際に動いている、成果も上げているということで、大変心強く思っております。

 アメリカだって、やはり日本がただ追従するだけじゃ喜ばないわけですね。あくまでやはり日本の自主的な判断によってしっかりとした同盟を維持して発展させていくということをアメリカも望んでいるわけでございまして、ぜひ、言うべきこと、やるべきことは日本はやって、それでしっかりとした同盟関係を発展させていただきたい。

 アメリカは圧倒的な軍事力がございます。しかし、日本にもしっかりとした経済力もありますし、またそれを使って、世界との友好関係を使っていますから、いろんな国際社会での貢献は十分できるわけでございますので、ひとつ、ぜひそういう自主、独立性を日本の外交の柱にしながら頑張っていただきたい、こう思っています。

 次に、北朝鮮の問題についてお尋ねします。

 この間も六者協議が行われましたけれども、そこでも日朝の接触もあったようでございますけれども、具体的な進展はなくて、我々としてはちょっと無念、むなしい思いをしているわけでございますけれども、今後の拉致問題の打開に対して外務省はどういう取り組みをしようとしているのか、お聞かせいただきたい。

川口国務大臣 拉致問題について、今、物事が我々がやりたいと思っているスピードで、物事の解決を進めたいと思っているスピードで動いていないということについては、これは大変に残念に思っておりますし、御家族の方を北朝鮮に残していらっしゃる拉致の被害者の方々及びその関係の家族の方々等のお気持ちというのは、非常に毎日つらいものがおありになるというふうに私も思っております。それで、非常に焦りはあるわけでございますけれども、これは方針としては、今までの申し上げていた方針に従って粘り強くやっていくということであると思います。

 その方針が何かということでありますけれども、今、北朝鮮に私どもが言っておりますのは、被害者の方の御家族、この方々の日本への無条件の帰国というのが一つあります。それからもう一つ、残り十名の方々の、安否が不明の方々についての真相究明、これはもちろん、その後もし警察庁によって拉致の被害者であるという認定がなされれば、その人たちもそのリストに加えてやっていくということでございます。

 そういったことを、今までもずっと言ってきておりますし、先般の日朝間の平壌での政府間協議でも伝え、また六者の場でもこれについて伝えてきているわけでございます。北朝鮮側が前向きに責任のある態度をとることが重要だというふうに考えております。

 それで、我が方が北朝鮮に言っているということの一つに、合同調査会、これをやりましょうということも言っております。これは真相究明をするために合同調査会ということで言っているわけでございますけれども、それからあとは、調査項目を日本は北朝鮮に渡しています。それについての回答も求めております。

 それで、今後ということですけれども、我が国は早期にこの政府間の拉致についての協議、これをやりたいというふうに考えています。北朝鮮には働きかけを行っております。また、それだけではなくて、この拉致の問題については、世界のほかの国々、あるいは国際機関等々で、きちんとこの問題について認識をし、理解をし、そして支持をしてもらうということも大事でございます。その取り組みも行ってきております。

 つい二、三日前に、私はケニアの外務大臣と会談をいたしました。その席上でも、この拉致の問題についての理解と支持を求め、先方から、理解をし、日本のいろいろな場での行動については支持をするということもおっしゃっていただいております。こういったことを、対話と圧力という基本方針にのっとって、粘り強い取り組みを行っていくというふうに考えています。

 六者の場でも、我が国としては包括的な解決ということを言っているわけでございます。包括的に、核の問題ももちろんですけれども、その他の日朝間の懸案事項を解決して、そして国交正常化をする。国交正常化をしなければ経済協力はしないということも言っているわけでございまして、そういった基本方針、これは一貫して変えておりません。引き続き強く北朝鮮に働きかけていきたいと思っています。

木村(勉)委員 拉致は国家侵害でございまして、日本は対話と圧力で、こうして日朝協議を進めておるわけですけれども、この立場がアメリカだった場合、アメリカ人が拉致された場合、こういう日本のような外交を中心とした交渉をするとは私は思えないので、アメリカが日本の立場だったらどういう対応をとるか、外務大臣はお考えしたことはございますか。

川口国務大臣 アメリカが日本の立場だったらどうするであろうかということについて、これは他国のことでございますので、外務大臣の立場としては何かコメントをするということは控えたいというふうに思いますけれども、日本もアメリカも、この北朝鮮の問題については、平和的に、外交的に解決をしますということで意見は一致をしているわけでございます。

 それから、拉致の問題については、アメリカに対しては日本はいろいろな形で働きかけをしてきておりまして、米国は、拉致の問題については日本同様の理解を持っているわけで、また日本についての強い支持もしているわけです。

 アメリカ自身、今、北朝鮮との間では、朝鮮戦争当時の亡くなられた兵隊さんの遺骨の収集の問題等について話をしているということでございます。そういったことについては粘り強くアメリカは北朝鮮との間でやっているということだと承知をしております。

木村(勉)委員 韓国の対北朝鮮政策、金大中のときは包容政策、現在は平和繁栄政策ですか、を展開しておりますけれども、これは韓国自身にとってもその目的を達し得ない、私はこの太陽政策というのは失敗だったと考えているんですけれども、外務大臣はどう評価されていますか。

川口国務大臣 盧武鉉大統領が、平和と繁栄政策ということで、朝鮮半島における平和の増進とそれから共同繁栄ということが目標であって、対話を通じた問題解決ですとか相互信頼の増進といったことを追求していらっしゃるというふうに承知をしていますけれども、同時に、盧武鉉大統領は、北朝鮮の核は断固として許さない、それから平和保障、これは韓国にとっては隣の、陸で国境を隔てている国ですから、韓国の平和の保障のために国防政策、国防は確立をしているということについて、それは明確にしているわけでございます。

 それで、我が国としては、これは盧武鉉大統領が昨年の六月においでになられましたときに総理との間で日韓の首脳共同宣言ということを出されたわけでございまして、そこにおいても小泉総理は、朝鮮半島の恒久的な平和定着及び北東アジアの地域の繁栄をなし遂げるための韓国政府の平和と繁栄政策を支持するということを表明していらっしゃいます。

 韓国と日本との関係で、北朝鮮の問題に対応するために連携を、アメリカも入れて連携をきちんとしていくということは重要であるわけでございまして、韓国政府との間で密接に連携を今もうとっております。そういった関係を引き続き続けながら、韓国との関係は、北朝鮮との問題については対応していきたいというふうに思っております。

木村(勉)委員 私は、北朝鮮というのは善意で対応すれば善意でこたえるという国じゃないので、どうも韓国の政策はやはり余りよくない、もう少し日本はアメリカと協力しながら韓国にも強い態度で北に臨むように、私は政策的に働きかけた方がいいんじゃなかろうかなという気がするわけでございます。

 そして、私は、今の対話と圧力という方法で解決しようとしてもなかなか見通しもつかないし、時間がどんどん経過していきます。この時間はどっちに有利とお考えなのか、外務大臣の見解をお聞きしたいと思います。日本にプラスなのか、北朝鮮にプラスなのか。

川口国務大臣 我が国としては、これは日朝平壌宣言にのっとって北朝鮮との関係を律していくということですから、懸案が解決しなければ正常化をしない、正常化しなければ経済協力を行わないということを言っているわけです。したがって、我が国は、問題が解決しない限りまさに正常化もしないし経済協力もしない。時間は、我が国は、そういう意味では北朝鮮は解決をするということを迫られているというふうに考えております。

 核の問題、これについても先般、六者会談で、CVIDということで、完全、検証可能、不可逆的な核の廃棄ということを言っているわけでございまして、これについてはみんな一致をしている、この重要性については一致をしているということであります。そういった国際社会の北朝鮮についての感じということを北朝鮮はきちんと把握をしているというふうに思います。また、リビアあるいはイラン等々で核についての動きというのを見ているわけでありまして、そういったことも北朝鮮はそれなりの読み方をしているというふうに思います。

 したがいまして、時間が北朝鮮にあって、北朝鮮は黙って見ていれば有利であるというふうに考えているということでもないというふうに思っています。

 ただ、外交の問題というのは、そういう思っていることを表にどういうふうに出すかということとはまた分けて考えなければいけないということでありますから、いろいろな事象をきちんと分析しながら、我が国として、できるだけ早くこの問題の解決をほかの国と連携をしながらしていきたいというふうに思っております。

木村(勉)委員 私は、時間を経過して六カ国協議という枠をつくって話し合っている限り、北朝鮮は安泰だと考えて時間稼ぎをして、その裏で核開発をして核弾頭ミサイルまで開発されちゃったら本当に真の脅威が日本にまた北東アジアに迫るわけでございまして、そういう時間的な余裕を与えないという形でもっともっと圧力をかける、むしろ強めていくという政策を展開すべきだと思うんです。

 それともう一つは、金正日との話し合いですけれども、私は、この地域の平和はあの体制を壊すことだと、最終的には。ですから、あの体制との話し合いを今していますけれども、もっと広く、体制崩壊までも考えて日本のとるべき政策を展開していったらどうか。それにはやはり、外国の情報を北朝鮮の国民に知らせるような、そういうことで、世界の中で北朝鮮がどういう立場にあるかということが北朝鮮の国民にわかることによって、そういう状況を必ず打破していく動きが出てくるわけでございまして、そういうところまで日本の外交政策の目を広げたらどうか。いかがでしょうか。

川口国務大臣 私は、北朝鮮のリーダーシップ層は世界の情報について十分に把握をしていると思います。かなりきちんと把握をし、かつ分析もしているということだと思います。例えば、ここにおける北朝鮮についての議論、日本の状況についてもよくフォローをしているという感じを持っております。

 それで、ただ、北朝鮮はああいう不透明さのある国ですから、一般国民がどれぐらい外国のことをわかっているかというと、必ずしもそういうことでもないということだと思います。

 ただ、これはインターネットにしても、新聞にしても、それからラジオにしても、そもそもアクセスを北朝鮮の側で一般国民に対しては制限をしているという状況ですから、基本的に、おっしゃることについては私は全くそのとおりであろうと思いますけれども、なかなか具体的にどうやってやっていくかということについては非常に難しい問題があると思っております。

木村(勉)委員 では、質問は終わります。ありがとうございました。

    ―――――――――――――

米澤委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省条約局長林景一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

米澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

米澤委員長 次に、加藤尚彦君。

加藤(尚)委員 民主党の加藤です。

 冒頭、けさも世界をニュースが駆けめぐりましたマドリードでのテロ事件ですけれども、外国のニュースでは、大統領、首相、そして中には国会も開かれているところでは黙祷をささげておりましたけれども、私も外務委員の一人として心から哀悼の意を表したいし、またこういう外務委員会とか国会の場でもそういうことがあるといいなと希望いたします。

 質問に入るんですけれども、まず川口大臣、就任以来大変な御苦労の中で、次々と国際事件が起きている中で奮闘されているというふうに思います。その中で、私まだお伺いしていませんのであえて聞かせていただきますけれども、外務大臣という職責ですけれども、その心構えというか、やはり各国の首脳、外務大臣も含めて各国の首脳と、たくさんの人たちと会ってきている。それから、世界にはたくさんの大使館がある、そういう大使館の運営の指導者でもあるわけですから、その心構えといいますかスピリットについて、簡潔で結構ですのでお聞かせください。

川口国務大臣 私は、一言で申し上げれば、これは誠心誠意だというふうに思っております。

 先ほど申しましたように、日本の国益を守るということが我が国の外務省に課せられた使命でありまして、それがどういうふうに評価されるかというと、それは実際にそれができるかどうかということで評価をされるということであるわけです。それをやっていくために、我が国がみずからどう考えるかということももちろん大事ですし、国際社会で協調しながら、日本の言っていることについて理解、支持を求めていくということも大事であります。

 また、それをするために、世界の関心がある課題について、我が国のことだけを考えるのではなくて、世界が関心を持っている課題についてリーダーシップをとって世界の枠組みをつくっていくということもやらなければいけない。ですから、三百六十度、三百六十五日、常にそういうことをやっていかなければいけないということであります。

 やっていかなければいけない、そういうことはそうでありますけれども、私は、やるときの心構えとしては、自分自身に常に思っておりますのは、誠心誠意ということであると思っております。

加藤(尚)委員 川口大臣の答弁はもちろん理解します。その上で、国家の命運というのは国際社会の中で重大だと思うんです。さきにも申し上げましたけれども、総理とそれから外務大臣、特に外務大臣は、一体感の中で仕事をしなくちゃいけない。しかも、百三十一の全権大使を抱えている。全権大使といえば天皇陛下の認証を得ている人たちですから、まさに全権大使は総理の役割、外務大臣の役割も担わなくてはならないというふうに考えております。

 その最高指揮官ですから、今のお気持ちと加えて、なお一層の使命感、あるいはナショナルインタレストといいますか、国威の高揚、そういったものをきちっと意識した外相としての御活動を今後ともお願い申し上げたいと思います。

 ところで、ちょっと言いづらいんですけれども、ちまた、あるいはここにフォーカスですか、こんなのを見ると、非常に私は怒っているんです。どこの新聞か雑誌かわからないけれども、要するに、「川口順子外務大臣 外務官僚、福田長官の操り人形!」なんて、福田官房長官の操り人形なんて失礼なことが書かれているし、国会の中でもあるいは国民の中でもそういうことを書かれているから、外務委員として不愉快きわまりないんです。あるいは、僕はきっと福田官房長官も迷惑していると思うんですよ。そんなことがあってはいけないんです。

 写真、ごらんになりましたか。奥様稼業の非常に美しい姿もあるんですけれども。ごらんにならない方がいいです。こんなのを見ると腹が立つから見なくていいんだけれども、でもそう言われちゃっているということに対して、感想というよりも、総理と外務大臣とは国益のための表裏一体だというふうに私は理解していますので、その意味で、いろいろな人が何を言おうと、私の信念で、先ほど言った心構えでやるということをもう一回確認させてください。

川口国務大臣 世の中の方がおっしゃることについては常に謙虚に、これは自分を反省してさらにいい仕事ができるようにという意味で、きちんと受けとめなければいけないというふうに思っておりますけれども、ただ同時に、今先生もおっしゃられましたように、世の中の人全部が自分について支持し、総理だって支持率半分ぐらいのところでいらっしゃるわけですから、世の中の半分ぐらいのところが批判をしている、当たり前だと思うんですね。全く当たり前で、別にそれについてどう思うということは私はございません。

 私は、先ほど申し上げたような、外交としてやるべき、国益をどういうように実現をしていくかということについて、それが自分の仕事であると思っておりますから、官邸と一体になって、総理、官房長官と常にコミュニケーションを図りながらやっていく、私はそういったことについては信念を持っております。

加藤(尚)委員 支持率五〇%前後ですね、小泉内閣は。それは、閣僚が支えて、与党が支えているんですけれども、支持率五〇%の内閣は、私は認められないと思います。やはり、相当努力をしなくてはいけない。国民総意とは言わないまでも、それは何をやってもこれをやっても反対者がいることはよくわかっているんです。でも、少なくとも、今の国民の評価が厳しいとむしろ思った方が私はいいと思っています。

 質問に、また変えて入るんですけれども、敵国条項ですね、国連における。これは、国民の一人としても我慢ならないことだというふうに思います。そして、このことについては、歴代の内閣が努力されている、あるいは特に大使館の人たちが、言葉を使えば血のにじむような努力をして、何とかこの敵国条項をと。

 国連での拠出金もそうですけれども、ユニセフもそうですけれども、世界に対するODAの拠出金、JICA、国際協力銀行、ありとあらゆる努力をしている国に対して、日本だけじゃありませんけれども、ドイツとかその他の国が数カ国敵国条項にあっているんですけれども、この敵国条項は一九九五年、これは相当大勢の協力を得られたわけです。言えるならば、だれが反対しているんだ。日本の敵国条項、国連憲章における削除についてどの国が反対しているか、もし言えたら言ってください。

林政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御指摘のとおり、この旧敵国条項につきましては、日本といたしまして、長年にわたりまして削除というものを強く求めてきておるわけでございます。

 その一つの、これは決してゴールではございませんで、一つの一里塚といたしまして、ただいま御指摘ございました九五年でございますけれども、国連の総会決議におきまして、国連憲章五十三条、七十七条、百七条から成ります敵国条項を削除する形での国連憲章の改正を行うために、憲章に規定します改正手続を将来の最も至近の適当な会期において開始する意図を表明するという内容の決議を採択することにこぎつけたわけでございまして、ここでは……

米澤委員長 ちょっと大きな声で言ってくれませんか。

林政府参考人 済みません。

 この決議の採択に当たりましては、投票は、賛成が百五十五、反対ゼロ、それから棄権が三でございます。棄権は、北朝鮮、キューバ、リビアの三カ国でございました。

加藤(尚)委員 反対はゼロ、棄権が数カ国ということなんだけれども、結論的には、敵国条項が外れなかったわけですね。これは敵扱いというふうに、国民はそう思っているんです、敵国条項があるということは。ですから、このことは、日本として、政府としても外務省としても国民としてもほっておけないことなんです。

 今後の方向ですけれども、例えばドイツもあるし、あとそのほか数カ国あるんですけれども、その連携はされているのかどうか。お答えになれる人、どなたでも結構ですけれども。

林政府参考人 この問題、先ほど申し上げました決議、成功裏に採択いたしました決議の中でも、前文の中で、国連憲章改正の複雑な過程を考慮しなどという言及がございまして、これは憲章の改正ということにつきましては、なかなか簡単にはまいらないところがございます。そういう中で、まさに同様の立場にございます、あるいは考え方を同じくする諸国、まさに旧敵国と考えられておるような諸国との連携といったことが当然必要でございますし、改正を進めるためにも引き続き連携協力をしていかなければならない。

 その際、やはり二つ正面がございまして、一つはやはり国連の話でございまして、国連代表部、ニューヨークの代表部におきますさまざまな連絡調整というものがございます。それから、あとは首都におけます首都ベースでのいろいろな連携、これが両々相まって進めていかなければならない。そのために、したがいまして、それぞれの、例えばドイツならドイツという出先だけではなくて、国連の出先におきましても相当な権限を持っている国も多うございますので、そういうところと緊密に連携をしながらやっていこうということでございます。

加藤(尚)委員 先ほどのお答えで、百五十五カ国が賛成してくれた、数カ国が棄権ということなんですけれども、国連加盟国からすれば全部じゃないんですよね。あとはどうしちゃったのかということがあるんだけれども、そのことが削除にならない原因の一つだというふうに私は理解しているんです。

 乱暴な言い方をすれば、例えば百五十五カ国も賛成したんですから、もう日本、ドイツを初め今さら敵国ではないだろうということで、日本の役割、ドイツの役割から考えても、むしろ今の国連を一たん解散しちゃって、改組しちゃってやり直すというぐらいのことを言っている人もいるんだけれども、私もそう言っているんですけれども、まあ、そこまでは発言が進まないまでも、今後ともども、この敵国条項については、強い意識が政府にも外務省にもそして国民にも強くあるわけですから、今後の努力を期待したいというふうに思います。

 続けて、北朝鮮問題についてやはりちょっと触れておきたいというふうに思います。

 さきに予算分科会で川口大臣と少しだけ議論させてもらいましたけれども、さっきの質問者の中にもありましたけれども、対話と圧力論、これについていま少し議論したいというふうに思います。

 日本は、国会では、改正外為法、それから引き続き、恐らく今国会中にと期待しているんですけれども、特定船舶入港禁止法、さらに国会では、いわゆる外務委員会の小委員会ではなくて、特別委員会に格上げという言葉が当てはまるかどうかは別として、これはさきに小委員会で、横田御夫妻あるいは蓮池さんのお兄さんをお招きして、三人三様に、特別委員会にしてくださいよ、皆さんの努力をということで相当必死な叫びがあった。

 これは国会の問題ですからいいんですけれども、次々と、我が党の北朝鮮問題の本部長の鳩山由紀夫議員もそうですけれども、民主党の全員が特別委員会への格上げを期待しているし、もちろん与党の中にもたくさんの人たちがいるというふうに思います。そういうふうに伺っております。その意味で、そのことは今後の課題としながら、私は、対話と圧力、分科会でもそう言いましたけれども、いわば平和的に話し合おうという一方で、悪い言葉ですけれどもドスを懐に入れて話そうと言ったってこれは無理だ、難しいというふうに思っているんです。

 しかも、ここで質問したいんですけれども、北朝鮮が友好国として、あるいは北朝鮮が在外公館を持っている国数ですね、あるいは北朝鮮内に公館を持っている国、数だけで結構ですから教えてください。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、北朝鮮と外交のある国は百五十三カ国、北朝鮮が在外公館を設置している国が四十二カ国、そして、平壌に在外公館を有する国は二十三カ国と承知しております。

加藤(尚)委員 今北朝鮮の国交がある国が百五十三で、在外公館を持っている国が四十を超えている、あるいは北朝鮮内に公館を持っている国が二十三カ国ということですね。だから、北朝鮮は活発に外交活動をしているということなんです。

 今、薮中局長の御説明の中で、いろいろ調べてみると、日本との友好関係あるいは日本との深いつながり、友情、ほとんどだと思います。特に、北朝鮮内における在外公館を持っている国の二十三カ国のうち、ドイツ、イギリスも入っているということでもありますし、その他については、ASEANの国々を中心に、アジア、アフリカの国々が入っているというふうに伺っているんですけれども、こういう国々に対して、恐らく、もちろん政府、外務省も、外務大臣もそうですけれども、あるいは在外の日本の大使及び大使館も全力を挙げていると思うんですけれども、もうちょっと国民にわかるように説明していただきたいと思います。

川口国務大臣 私自身のことで申し上げれば、会談をしている相手、これは相当に数多くの方々と私はお会いを今までしていますけれども、まず、ほとんどと言っていいと思いますが、北朝鮮のことを取り上げ、拉致のことについてお話をし、理解を求め、支持を求めているということをやっております。それから、在外公館においても、それからもちろん逢沢副大臣も阿部副大臣も、皆さん省を挙げてこれに対して取り組んでいます。それで、その結果として、かなり多くの国が北朝鮮との間で拉致の問題を取り上げているということでございます。

 一例を挙げれば、この前モンゴルの首相がお見えになりましたけれども、そういった方も積極的に動いてくださっていますし、アジアの幾つかの国、例えばベトナムですとかカンボジアですとか、そういうところも北朝鮮とこの問題の話をしている、数多くの国がそういうことをやっている、インドネシアもそうだと思います。

加藤(尚)委員 それらの努力は多とするんですけれども、要は結果だと思うんですね。六カ国協議でもそうだったんですけれども、アメリカは相当強く支持してくれた。でも、外相の説明では、あるいは薮中局長の説明では、中国もロシアもあるいは韓国も支持してくれたし、理解してくれた、そういう説明、報告はあるんですけれども、そして今の外相の御答弁でもモンゴルを初めとしてということがあるんですけれども。

 私は、一つ例を出すと、かつてレバノン国民が数名拉致された、北朝鮮に。そして、自力で二人は脱出した、そのほかは拉致されてしまった。それに対してレバノン政府は執拗に北朝鮮に働きかけをしたという事実があるんですけれども、結果的に、レバノン政府がどういう形で北朝鮮と交渉して、そして自国の国民を戻したかということについては、やはり一番大きな強い姿勢は、北朝鮮、金日成さんよ、言ってみればレバノンを中心として、アラブを全部敵にして、この私たちの国民を帰せないのか、こういう発言が歴史的に残っているんですけれども、この強い意識なんですね。この拉致問題もそうだけれども、核問題もそうだけれども、領土問題もそうですけれども、命がけの姿勢なんです。

 つまり、恐らく、総理も外相も、そして薮中さんも、ほか外務省の方々も、あるいは大使の皆さんも、協力と理解を求めたと思うんです。支持も得ていると思うんです。日本との間でどう理解されて、どう支持されるでは意味がないんです。問題は、それらの力が、レバノンの国が国民を帰させたように、全アラブを敵にするか、こういうやはり国際世論というものが最も重要だと考えているんですけれども、理解と支持では一歩も進まないと私は思っています。

 六カ国協議の先の日程も決まらないし、それを逆に北朝鮮が切り札にしようとしているし、同時に北朝鮮は百五十二カ国と、しかも四十二の外国に公館を持っている、しかも自国に二十三国も在外公館を持っている国がある。これらが一斉にもう北朝鮮から公館を引き払う、二十三国が、もう大変なことなんです、これは。

 だから、日本の政府も外務省も、我々もそうですけれども、核とか拉致の問題について、領土の問題について、命がけの姿勢が必要だと私は思うんです。だから、理解と支持を得られているという言葉の説得力は、余り僕は、頑張っているなという評価はしますけれども、これは結論の出ない評価しかせざるを得ないと思いますけれども、このことについてお聞かせください。

川口国務大臣 北朝鮮に対して、どのような手法あるいは方法をどのような局面においてとっていくかということは、常に、外交当局にとっても、あるいはそれを見ていらっしゃる国民の皆さんにとっても、大きないろいろな意見が出るところであるというふうに思います。

 理解と支持を得るだけでは北朝鮮に対しての力にならないという御指摘は、そういった部分も確かにあると思います。ですが、その理解と支持をベースに、先ほど、具体的な例をもう少し必要ならば挙げますけれども、幾つもの国が働きかけてきているということであり、先生は一例として公館を引き揚げというふうにおっしゃっただけであって、それをやるべしとおっしゃっていらっしゃるんではないと思いますが、北朝鮮が国際社会に触れているということは実は何よりも重要なことであって、北朝鮮をアイソレートしてしまうということからは前向きの動きは出てこないというふうに私は思っております。ということは、詰めて言えば、対話と圧力ということをどういう状況でどのように使っていくかということの問題であるというふうに思います。

 我が国としては、今北京でも対話の場が動いているわけですし、平壌でも日朝の二国間の協議があるということでございますから、これをきちんと実行していく、そして北朝鮮に責任のある態度をとらせるということが重要だというふうに考えていまして、今すぐによその国に対して大使館を全部閉鎖しろと言うつもりはありませんけれども、先生もそうおありにならないわけですが、引き続き、国連の人権委員会とか、そういった国際社会の物を言える場において、北朝鮮に対してそれぞれの国が行動をもって示すようにということも働きかけております。そういった努力を引き続き続けていきたいと思っています。

加藤(尚)委員 いわゆる対話と圧力の圧力部分で、我が国は改正外為法とか、あるいはこれから一つ、二つと次々と切り札として国会では続けていくんですけれども、やはり政府、外務省が使う北朝鮮向けの対話と圧力というその圧力部分をもし認めるとしても、これは国際世論を高めるためのものにぜひしなくちゃいけないというふうに思います。その上で、日本は世界でも有数の、国連に対してもそうですけれども、ユニセフに対してもそうですけれども、ODAも、JICAにしたって国際協力銀行にしたって、世界第一級の国際貢献国ですから、それが武器にならないのが私は非常にもどかしいという思いを強く感じるんですけれども。

 この先さらに一層の、いわば拉致問題の解決も核問題の解決についても一歩も引かないという姿勢が、対北朝鮮だけじゃなくて、対六カ国協議だけじゃなくて、むしろ国連の場もそうですけれども、日本との友好国もそうですけれども、挙げて、そしてそれは例えば国内的には蓮池さんとか横田御夫妻さんとか、あるいは地村さんのお父さんなんというのは福井県で二軒に一軒歩いたというぐらい署名活動をして世論を高めた、それが日本の政府も動かしたというふうに私は理解している一人ですけれども、さらに国内世論をどうしたら高められるのか。

 もっともっと、とまらない、日本の世論はもう全然とまらないという勢いをつけなくちゃいかぬし、これは政府の仕事でもあるし、国会議員の仕事でもあるし、同時にメディアの仕事でもあるし、国民そのものの仕事だというふうに私は思っています。今後、その世論づくりについて、国内、国際的にも世論づくりについて、もうやっていらっしゃることはわかっていますけれども、具体的に結果が出るようにさらなる努力を求めさせていただきます。

 それから次に、ASEANのことについて触れたいんですけれども、もちろん国際世論を高めるための一つの意味としても申し上げますけれども、日本とASEAN関係について、例えば、きょう資料を勝手にお配り申し上げました。

 この一ページ目でありますけれども、これは自他ともにアジア通ナンバーワンと御本人が言っていらっしゃるんですから、金子量重先生がアジアに戦後四百回以上訪問して、この方はそれぞれのアジアの首都を歩くのではなくて、いわゆる田舎を歩いてきたというので貴重な方なんです。そして、アジアというものを考えたらこういう四つの色分けがいいんじゃないかということを盛んにもう十数年来主張いたしております。私は、個人的には全く同感であります。そして、この色分けについては、ミャンマー政府もこれを使い始めているんです、ミャンマー政府も。

 今度の外務省の予算を見ると、例えばアラブ諸国を、中近東という表現が出ていましたけれども、中近東という考え方は、かつての大英帝国、イギリスから見た中近東なんです。アジアにとって迷惑なんです、もう今や。だから、アジアの中での色分けをすると、例えば外務省のいわば組織図の中でも、私まだ理解していないんですが、余り理解している一人じゃないんですけれども、この色分け論について、ぜひ御研究、御検討してもらいたいんですけれども。

 まあ急に見せられて何か言えと言われても困るかもしれませんけれども、外務省では、例えばこういう図面が、こういう絵が、四つに分かれた、四つの分け方について、もし、感想でもいいんですけれども、見方があったら教えてください。

薮中政府参考人 まさに東アジア、その中で東北アジア、東南アジアというのが一つここにございます。我々、今委員御指摘のとおり、ASEANのこともございました。ASEANはまさにこの東南アジアに入っているわけでございますけれども、日本は、色分けはございますけれども、この東アジア、東北アジアそして東南アジアとの関係は非常に緊密なものがあるということで、こういうくくりが一つあろうと思います。

 そしてまた、南アジア、私ども外務省の中では、アジア大洋州局というのはパキスタンまでをまさに担当してございますけれども、これは南アジアということでくくる一つの地域であろうというふうに思います。

 西アジアにつきましても、まさにこういう識者の御指摘ということで、従来の中央アジア、そしてまた中東という地域を別の視点から見るという、これはそういう学問的な指摘であろうというふうに考えます。

加藤(尚)委員 これは単なる金子先生個人の分け方というよりも、やはりアジア全部、つまり、総理の所信表明もそうだけれども、我が党の菅代表もアジア重視ということを強く発言していましたけれども、いずれにしても、アジアということを考えるならば、宇宙から見てアジアが見えると。それで、そのアジアをどう、例えば一遍に考えると大変だから、どういう分け方をするかということについてはやはり傾聴に値するというふうに思いますけれども、今後の課題にしていただきたいと思います。

 引き続き質問ですけれども、ASEANの首脳会議が昨年の十二月に日本で行われた。ASEANプラス日本ということでありますけれども、これはASEANというのは大変な歴史があって、しかも順調にそのエリアをまとめていると思います。そして、その中身についても、この外交フォーラム、これは外務省から出しているのかな、外交フォーラムを見ても非常にASEAN評価があります。

 そして、ASEANという一つの地域とそしてプラス日本、あるいは場合によってASEANプラス3という考え方もあるんですけれども、少なくとも、域外で第一回が日本で行われたということは物すごい評価なんです。まあ、北朝鮮問題、イラク問題といろいろ物すごいときに行われたということから、新聞のスペースも余り多くなかったんです。残念だなと思うんです。歴史的な大きな、やはり外務省の、あるいは外務大臣のお力だし、御努力だというふうに思っています。

 そんなに長くなくていいんです、短い時間で、ASEANプラス日本、十二月、そして二月には次官級会議がクアラルンプール・マレーシアであったんですけれども、その総括をぜひしてください。

川口国務大臣 ASEAN首脳会議、これは、おっしゃられたように、まさに初めての域外での首脳会談であったわけです。ここで日本は、過去三十年間のASEANとの歴史、これについてきちんとそのレビューを一緒にし、それから今後に向けて一緒にどのようなことをやっていくかということを東京宣言そして行動計画という形で確認したということです。未来志向型の日本とASEANの関係を正しい鳥瞰図の上にのっけて、理解を相互にし合ったということの意味が非常に大きいというふうに思います。大事なことは、今後それについてやっていくということであると思います。

 それから、より大きな外側のアジアをめぐる流れとしまして、総理がシンガポールで東アジア・コミュニティーということをおっしゃられた。この東アジア・コミュニティーづくりの大きな柱といいますか、それに向けての実行を行ったというのが今度の首脳会談でもあるというふうに思っています。今後、FTAとEPA等をやりながら、総理の言葉によれば、東アジア・コミュニティーというのはオーケストラと同じで、それぞれが楽器、それぞれがきちんと自分のパートをやりながら全体として非常にきれいなハーモニーになっているという東アジア・コミュニティー、それに向けて動いていく、その一つの大きなメルクマールであったというふうに私は思っています。

加藤(尚)委員 十二月の日本ASEAN行動計画について、これはもう百数十項目というか、膨大なことを議論されました。それぞれ非常にまとまりがいいことだし、一つ一つ見ると、いかにASEAN諸国の重要課題であるということと同時に、日本に対して非常に期待があるなと。私は個人的にアジアに行くことが多いんですけれども、日本を信じたい、信頼して、そしてもっともっと近くなりたいということなんだけれども、余りにもアメリカ一辺倒だというふうに思えてならないということはだれもがそう言うんですよ。だれもがとは言わないけれども、大勢の人がそう言うんです。ですから、残念なことなんです。

 でも、日本はこのアジアの一国として、そしてこのASEANに対する協力度について、ASEAN諸国が願っているわけです。ところが、この行動計画を見ても、一つ一つこれはどういうスピードでやるか、単年度でやらなくちゃいけない仕事ばかりだと思いますけれども、これは日本が本気で約束したことですから、これを忠実に実行していく、そして私も今後の課題としてこれを一つ一つ検証していきたい、そう思っております。

 なお、私は初めて当選させてもらいましたけれども、三回も落選しちゃったんです、三回も。だけれども、その間に常に言い続けてきたことは、やはり二十一世紀はアジアの時代なんだ、むしろ日本はアジアに活路を求めるべきだという持論を選挙期間中もたびたび発言をして、むしろ私の選挙の中心課題にしたんです。国際政治を中心課題にすると選挙に落ちるからやめろと言われたときもあったけれども、私は信念を曲げないで強く主張をしてきたわけです。その意味で、マハティールさんが総理をやめて、最近の近著を見ると、やはり隗より始めろで、やはり大アジアを一遍に何でもくくろうといったって無理だから、身近なところから、特にそれを日本に期待するということを表現されております。

 とはいえ、例えば中国も、ちょっと地図を見てもらいたいんです、さっきお見せした地図でもいいんですけれども。この機会ですから聞いておきたいんですけれども、ASEANの中の中心五カ国、この五カ国の地域について、かつてはインドシナ半島と言われたんです、この国では言っていたんです。中国では中南半島と言っているんですよ。中南半島と言っているんです、本当に中国では。日本では今後どう呼ぶんですか。そういう検討をしたことがあったら教えてください。

薮中政府参考人 まさにASEANの中で一つの大陸部の方でございますけれども、タイを中心に、そしてまた新しくASEANに加入したベトナム、ラオス、カンボジアそしてミャンマー、従来この幾つかの地域というのはインドシナというふうな表現をしていた、これは日本側でそういう表現を使っていたことはございますけれども、今は、もう全体としてASEANということで我々としては非常に強く意識しております。

加藤(尚)委員 この地域の人たちが、タイ国中心ですけれども、グレート・メコン・エリアという表現を使っていらっしゃるし、私は個人的に、今局長がおっしゃったように、ASEAN半島と言っているんですよ。

 このことは、タイ国もベトナムもカンボジアもそうですけれども、個々の私の折衝の範囲内では、みんな、インドシナ半島とは二度と言ってほしくない、こういう強い意思があります。そのことに留意しながら、やはりこの国の地図でも、この表現、今おっしゃられたように東南アジア半島でもいいし、東南アジアエリアということよりも、半島みたいになっているから、何とかそれぞれのASEANの国々が理解できる表現をぜひ御研究、御検討をこれからしていただきたいと思います。

 加えて、質問に入らせてもらいますけれども、このアジアということについて、私は、選挙戦でも、AAUあるいはAAPU、あるいは国連アジア支部の創設ということを前面に打ち出しています。もう十年来、さかのぼれば二十年来主張いたしております。アジアの時代がきっと来るし、アジアの時代でなくちゃいけない、国際平和というものを、国際的な繁栄を考えたならという持論があります。

 特にAAU、AUというとアフリカ連合と間違えられちゃうから、アジアはもっと大きいから、オール・アジア・ユニオンというとらえ方をしているんですけれども、AAUについて、マハティールさんじゃないけれども、小さいところから始めよう、ASEANから始めよう、そして全アジアに呼びかけていこう、こういう考え方なんです。代表質問でも、アジア重視、与野党ともそういう発言をしているし、そういう中で、外務大臣として、このAAUつまりアジア連合について御意見を聞かせてください。

川口国務大臣 私は、アジアというのは、今世界で最もダイナミックに発展をしている地域であると思っております。それから、そういった発展を続ける力を持っている地域であるというふうに思っております。

 それで、アジアの要素として、東南アジア、ASEAN等とそれから北東アジアというのが大きく二つに分けられると思いますけれども、アジアの中で今かなり格差があるという状況にあるわけでして、まずアジアの中の格差をなくしていくための努力というのが我が国がやるべきこととして重要であると思います。これはASEANの中でもそうですし、インドの中でもそうですし、中国の中でもそうですし、あるいは国と国との関係でもそうですし、ということであると思います。

 そういうことをなくした、それが縮小していくという過程で、総理が二年前におっしゃられた東アジア・コミュニティー、これは東アジアということですけれども、それが大変に重要な意味を持っていく。アジアは、同時に大変に多様性がある国であるわけですから、EUのようにより均質的でまとまっていくというところでは直ちにはないと思います。

 ただ、連携をし、その関係を強化することによって東アジア・コミュニティー全体として発展をしていくということが大事で、EPAというのは日本もアジアの国々とやろうとしていますし、中国もやろうとしていますし、お互いの間でもあるわけですけれども、そういう動きをやりながら、全体として制度なり考え方が一つ、より均質になっていくという過程を今後経ていくということがよりアジアの力を増すということにつながっていくというふうに私は思っております。

 日本のそばの地域でありますし、日本としてそういったことに対してのできるだけの支援をしていくことが大事だと考えております。

加藤(尚)委員 かつてEUがドイツとフランスでスタートしたわけですけれども、五十年の歴史を持つわけですけれども、ドイツとフランスというと、戦争の歴史ですよね。もういいかげんにしようということで、テーマを石炭と鉄に絞ったわけですね、御案内のとおり。

 このアジアなんですけれども、今外相の答弁のとおりだと思います、複雑です。宗教もそうですし、民族もそうだし、極めて複雑。ミャンマーだけだって百三十を超える民族がいるとか、タイ国だって五十六の民族がいるとか、もう大変、日本とは比較にならないいろいろな多様な問題がある。その中で共通項を見つけていく。

 この行動計画の中にも例えば教育とかあるいは文化の面を強調していますけれども、私はそれは正しい方向だと思うんです。もうやれるところからやっていく。その意味で、きょうは文科省の方から来ていただいたと思うんですけれども、ちょっとお聞きしたいんです。

 このASEANの行動計画の中で、恐らく外務省を中心に全省庁の協力を得ながらまとめたものだと思います。その中で、今私が発言したように、教育と文化というわかりやすいテーマ、これはひとつ表に出していこう、出したらいいんじゃないかというふうに思うんですけれども、これを文科省としては、今までどういう協力をしてきたか、これからどういう協力をするか、ちょっとお答えをお願いします。

永野政府参考人 お答え申し上げます。

 日本と東南アジア各国とは長年にわたりまして緊密な協力関係を持っておりますので、教育、科学、文化の分野でもいろいろな事業を実施しております。したがいまして、この十二月の行動計画の作成に当たりましては、当然のことながら外務省と緊密な連携をしまして、文部科学省からも留学生交流、科学技術・学術交流などについて具体的な提案を行ったところでございまして、策定されたこの行動計画ではこれらの提案が十分に取り入れられたものと考えております。

 具体的に幾つか御紹介させていただきたいと思うんですけれども、一つは、ユネスコのバンコク事務所を通じて識字教育などの基礎教育普及事業をさらに推進しようということ。二番目として、海外における留学情報の提供、それから日本に留学をしたいという方の負担を軽減したいという観点から、日本に来る前の入学許可を可能とするような日本留学試験の実施を通じて、質の高い留学生を受け入れたいということ。三点目として、文化財の保存に関しまして、ベトナムにおける集落保存についての協力とか、インドネシアにおける候補案件についての現地調査をしよう。それから四番目は、日本学術振興会を通じて若手研究者、学者の交流をしよう。

 今後とも、外務省と密接に連携をとりまして推進したいと思います。ありがとうございます。

加藤(尚)委員 わざわざ来ていただいてありがとうございました。今後とも、教育の分野で外務省と連携をとって、ASEANのこの行動計画が具体的に進むように御努力をお願い申し上げたいと思います。

 その中で一つだけ、外務省の受け入れはいいんです。私の持論ですけれども、日本の青年が国費でアジアにどんどん行く。留学生受け入れ計画十万人を達成したという評価がありますけれども、一方で、もう七万人も八万人も留学しているけれども、ほとんど私費でやっている。国費留学ということがこれから必要なんだ、特にASEANには国費留学で日本の青年が留学する、アジアの大学に。アジアの大学も大変いい大学がたくさんありますから、そういう意味で今後の課題にしていただきたいと思います。

 時間が相当差し迫ってきましたので、アジアというとらえ方については今後の課題に残しますけれども、最後に一つだけ、質問通告してありますので、ロシアとの平和条約でございます。

 これは、資料もたくさんもらっているし、私も個人的に、横浜市会議員に昭和五十年になったときに一番先に取り上げたのは、北方領土返還市会決議というのをやって、呼びかけて、そして根室の市長に来てもらって相当やった。それが全国に広がった。だけれども、それはそれとしながら、ロシアとの平和条約をどう優先させるか。

 私は個人的には、沖縄方式と言っているんです。これは議論しません、きょうは時間がないから。沖縄方式なんだと。アメリカが沖縄を返還した、それは日本の未来をちゃんと見据えて、日本が永久にアメリカに害をなさない、これは沖縄を返すことによって日本との国家同士、国民同士の関係がよくなる、そういう判断をしたと思うんです。だから、ロシアとの平和条約も沖縄方式だということを、突然な言い方で恐縮ですけれども、私はそう思っているんです。

 ですから、もちろん固有の領土ですよ、北方四島は。それはもうどう見ても、どう考えても、どう議論しても固有の領土であることははっきりしている。だけれども、それありきじゃなくて、もっと大きくロシアとの平和条約についてきちっとした方向を持って、つまり、北朝鮮の拉致問題もそうだけれども、どうこの地図を見たって日本の地図の上に覆いかぶさっているわけですから、どおんと。この国と敵対関係ではいけないですよ。

 だから、日米の関係はもちろん大事だ、これからも大事だ、日米安保も大事だ。一方で、ロシア、この日ロの関係がきちっと平和的に解決する、それは平和条約なんですけれども。そういったことを歴代の総理がその都度努力しているんです。歴代の外務大臣も努力している、外務省も挙げて努力している、いろんな人が努力している。でも、結局は、今日まで結果が出ていない。

 だから、これはもう差し迫っているんです。アジアのことを考えるならば、ロシアとの平和条約というのを相当やはり、北朝鮮拉致家族とか北朝鮮の核問題とか、そういうことも含めて、それ以上の意味もあるかもしれない。ロシアとの平和条約に対する決意を聞いて、私の質問を終えたいと思います。

川口国務大臣 この北方四島の問題は、委員もおっしゃられましたように、これは我が国の固有の領土であります。四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するということをずっと言い続けて、かつ交渉をしてきているわけでございます。今、具体的なやり方として考えていますのは、先般、総理の昨年の訪ロの折に日ロ行動計画というものをプーチン大統領との間で署名をなさったわけです。

 それで、六つの柱がありますけれども、平和条約というのはその一つの大きな柱であります。そのほかに、国際舞台における協力ですとか文化交流ですとか防衛協力ですとか経済面の協力ですとか、いろいろなことが書いてありますけれども、日本とロシアの関係というのは、例えば日中関係、日米関係と比較をしますと、まだまだ十分に強いものになっていない。日ロ行動計画、それを実際に実行しながら、日ロの関係をより肯定的でより強いもの、より幅広いもの、より深いものにしながら、そういった肯定的な雰囲気の中でそれが領土問題と相互にいい方向で影響し合うような、そういう関係をつくっていき、交渉をしていくということでございまして、今年の前半にも私はロシアに行きたいというふうに考えております。きちっとしっかりやってまいります。

加藤(尚)委員 どうもありがとうございました。

 今後の御努力を期待して、私の質問を終わります。ありがとうございました。

米澤委員長 次に、松原仁君。

松原委員 民主党の松原仁であります。

 きょうは私の外務委員会の初質問ということで、この正規な外務委員会では今国会が初質問でありますので、基本的なことから幾つか川口大臣に質疑を進めていきたいと思っております。

 まず最初に、川口外務大臣が外交をどのようなものと御認識をしているかという極めて根本的な部分についての御答弁をいただきたいと思います。

川口国務大臣 我が国として外交でやるべきことというのは、国益を確保するということだと思っています。その国益の中身は何かということですけれども、具体的にはいろいろありますが、基本的に大きく申し上げれば、日本が平和であって、繁栄をしていくという状況であるということだと思います。それを確保するというのが外交の役割であると思います。

 それで、どのような形でさらにそういった国益を確保していくのかということでありますけれども、幾つかそのことがあります。一つは、我が国として日米同盟、これは基本に据えていることの一つであると思います。それからもう一つ、国際協調、これも基本として据えていることであると思います。我が国の立場からいって、あるいは置かれた状況からいって、同盟関係がなければ我が国の安全を守っていくことはできない。それからまた、国際社会との協調関係がなければ我が国の国益を確保していくことはできないというふうに考えております。

 それで、それらをやるために日本としてやらなければいけないことというのは、やはり国際社会で自分の国のことだけを考えるということではなくて、世界が課題としていることに対して我が国としてそれに対して積極的に取り組んでいく、そしてそれをやっていくための枠組みを世界でつくっていく、そのためのリーダーシップをとり、そして口先だけではなくて、実際にそれを実行していくということもそのために必要なことであると思います。

 外交と私が考えていることというのはそういうことであります。

松原委員 今大臣から御答弁いただいたわけでありますが、私はもちろん、平和であること、繁栄をすることというのは極めて重要な事柄であるというふうに思っております。ただ、重要なことは、やはり日本の外交は日本の国益を重視してやる、この国益というものはもちろん平和でありまた経済的繁栄であることは大事でありますが、今の大臣御答弁の中で、私は、外交は、そういった、繁栄の概念の部分の議論になるかもしれませんが、物質的な部分の繁栄だけではない、日本人の精神的な部分において、ある種のプライドを持って、自負心を持って日本人が生活をする、そのことを外交をもって検証していくという部分をしていかなければいけないと思っております。そういった日本国民の精神的な意識の盛り上がりといいますか、自負心と、それと日本の国の国家の繁栄というものが、それが外交によって担保されなければいけないというふうに思っております。

 私は、実際、もっと具体的に言えば、例えば、これからの質問で議論をさせていただきますが、今や世界は新しいフロンティアを開拓する時代に入ったというふうに私は思っておりまして、その部分の議論はつまり、資源をいかにして我々が確保するかという部分にも絡んでくる問題であって、そういったことを戦略的に考えるべき時期に来ていると思っております。そして今、川口大臣は、大臣在職二年間ということでありますが、この成果についての御所見をお伺いいたします。

川口国務大臣 成果について申し上げる前に、ただいま委員がおっしゃられたことについて若干コメントをさせていただきたいと思うんですけれども、外交が日本の精神とかかわっていくものであるというのは全くそのとおりだと思います。平和と繁栄の確保が国益であるというふうに申し上げましたけれども、日本人の精神の高揚あるいは日本人の国に対しての誇りといったようなもの、これは一つは外交を支持するもの、サポートするものであると思いますし、同時に、いい外交の結果生まれるものでもあるというふうに思います。

 それからまた、これは外交だけとかかわり合いを持っているわけではない、一人一人の生き方、教育ですとか生活の安定ですとか、あるいは文化に対する誇りですとか、そういったようないろいろなこと全部が合わさって、我が国の要するに日本人の自信あるいは自尊心、そういったことをつくり上げていくということで、それが外交の背景にあって外交をサポートするものであるというふうに私は思います。そしてまた、いい外交の結果、それがさらにはぐくまれる、そういった関係にあるというふうに私は考えております。

 それで、私の二年間の成果は何かということの御質問ですけれども、私なりに整理をしたいというふうに思いますけれども、一番最初に、外務大臣になったときに幾つかのことを言いました。一つは、日本の外交の柱として考えているものとして、これは平和の定着ということが大事であるということを言いました。それから、軍縮関係のこと、この外交をやっていくということが重要であるということも言いました。それから、世界の発展、安定のために日本として貢献をしていくということも申しました。

 そしてこれは、そういう大きな柱で考えたときに、例えば、我が国として今、世界の発展、安定ということで言えば、ミレニアムゴール、ディベロプメントゴールと言われているように、世界の貧困を減らしていかなければいけないということがあるわけでして、それをやっていく一つの大きなツールはODAであるわけでして、そのODAについての改革、実効性、透明性、そういったことをやったというのは一つあります。

 平和の定着ということで申し上げれば、これはアフガニスタンから始まって、スリランカ、東ティモールといった国々についての対応があるわけでございます。これらは引き続き関与をし続けていく。

 それから、世界にとって重要な課題である大量破壊兵器の不拡散ということについて言えば、これは我が国としても、イラン等でも、それからもちろん北朝鮮というのがあるわけですけれども、そういうところに働きかけてきているということでありますし、PSIという世界全体の取り組みがあります。また、国際社会におけるこの面におけるいろいろな枠組みづくりということについて、我が国は非常に積極的に貢献をしてきているということだと思います。

 あといろいろありますけれども、そういった意味で、テロについて言えば、テロ特措法というのを通して、アフガニスタンで貢献しているという部分もあります。テロについては、細かいことは申しませんけれども、国際社会の中でさまざまな仕組みを日本としてもリードしているということであります。

 軍縮、不拡散、これも非常に日本が国際社会で発言権を持ってずっと努力をしているということでして、CTBTの発効の取り組みですとか、それから小型武器の問題についての国際社会における取り組み、それからカットオフ条約等についての日本の積極的な関与、プッシュ、アジアにおける不拡散の取り組み、そういった意味で貢献をしてきているということでございます。

 先ほど忘れましたけれども、アジア外交という意味では、日本ASEAN特別首脳会議が一つのピークであるところの、ずっと二年間を通じてのアジア外交、これは経済面もありますし、それから政治面、安全保障面、そういった面での貢献も、広く言えばあります。それで、その中で非常に大きな柱でずっとあり続けたのが、イラクそれと北朝鮮の問題であるということであります。

 イラクについては、我が国として、大量兵器の不拡散という問題、あるいはテロの脅威、そういった観点から国際社会として取り組まなければいけない、そういう観点でずっと働きかけもしてきているわけですし、今国際社会をリードしてイラクの復興のために力を尽くしているということで、これがなぜ重要かということについてはいろいろの場で申しましたのでここで繰り返しませんが、この取り組みは重要であるというふうに思っております。

 それから、北朝鮮については、これは大量破壊兵器の問題でもありますし、それからもう一つ、我が国にとって非常に重要な懸案である拉致の問題、それからミサイルの問題等もあるわけでして、これについては、国際社会と連携をしながら、六者という場を立ち上げ、そして日朝の国交正常化の交渉を復活させ、そういった話し合いの場をつくっているということで、引き続き取り組みをやっていく必要がある。

 イラクの問題とそれから北朝鮮の問題については、いまだ途上にあって、まだまだやらなければいけないことがあると思いますし、またほかの途上国の問題にせよ、不拡散あるいは軍縮、その他いろいろ、まだ取り組みが続かなければいけないことばかりですけれども、かなりそれぞれの分野において、何歩か前に進めることができたというふうに考えております。

松原委員 今の大臣の御答弁を聞いて、体が幾つあっても足りないというぐらいに大変にさまざまなお仕事をこなしてこられたということはよくわかりました。

 ただ、今の話の中に、例えば北方領土の問題、竹島の問題、そういった領土問題が御発言の中に強くは印象づけられなかったわけでありまして、また同時に、今の議論の中で、日本固有のメリットのために何をしたかというところの観点が、もちろん平和というのも一つのメリットというふうにいえばそれは包括的なメリットだけれども、いろいろな、そういう部分で、より国益を重視したスタンスが、私はもう一歩見えないのではないかという気がしてならないわけであります。

 議論を先に進めてまいりますが、日本の外交が日本の主体性を確立し、メリットをいかにしてつくっていくかという部分でありますが、領土問題についてお伺いをしたいと思っております。

 領土問題については、さまざまな領土問題があります。私が政治の舞台で活動する一番先に、実は、今は亡くなりましたが末次一郎先生という方に大変私淑をしておりまして、その末次さんが北方領土返還運動というのを全力でなさってこられた。そういったところから私の一つのスタートがあるわけでありますけれども、この北方領土の問題、そして竹島。昨今、韓国が切手を出す、日本でも出すかどうかという議論がありますが、この竹島の問題、また尖閣列島の問題、こういった領土問題について、簡潔に現状までのあらあらを御説明いただきたいと思います。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のとおり、まさに領土、これは国家が主権を有する領域ということで、我が国の主権にかかわる大変重要な問題であるということで強く認識しております。そうした中でいろいろの取り組みをしてきておるわけでございますけれども、まず私の方から竹島の問題について御報告させていただきます。

 竹島は、御承知のとおり、歴史的事実に照らしましても、かつ国際法上も、明らかに我が国固有の領土であります。これにつきましては、我が国政府は、韓国政府に対しても一貫してそのことを主張してきております。

 この竹島問題でございますけれども、韓国が昭和二十七年一月に宣言したいわゆる李承晩ライン、韓国側に竹島を含めたということに問題の端を発しておるわけでございまして、韓国は、昭和二十九年以来、竹島に警備隊員を常駐させる、そういった活動をしてきております。この状況自身は極めて遺憾なことでございまして、我が国としては、こうしたことは到底認められるものではないということで、韓国側に対しましても一貫して我が方の立場を申し入れているところでございます。

 今後とも、この問題の解決、両国民間の感情的な対立をあおることはもちろんあってはならないわけでございますけれども、他方において、基本であります領土問題、これについて、我が方の立場を強く進めていきたいというふうに考えてございます。

 そして、尖閣諸島でございますけれども、尖閣諸島は我が国固有の領土であるということと、そしてまた現に我が国はこれを有効に支配しておりまして、したがって解決すべき領有権の問題は存在していないというのが私どもの立場でございます。

小松政府参考人 北方領土問題につきまして、かいつまんでこれまでの経緯を御説明申し上げます。

 択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島の、いわゆる北方四島でございますが、これは御案内のとおり、一八五五年に、これは幕末でございますけれども、日露通好条約が締結をされまして、日本とロシアに国交ができた。当時、自然に成立をしておりました択捉島と得撫島との間の国境、これがこの条約においてそのまま確認されております。

 その後、いろいろな条約で、日露戦争等もございまして、日露間に領土の得喪はあったわけでありますが、この四島につきましては、御案内のとおり、いまだかつて一度も外国の領土となったことがないということで、歴史的にも法的にも、我が国の固有の領土であることは間違いがないということが基本的な立場でございます。

 第二次大戦の末期の一九四五年でございますけれども、これも御案内のとおり、ソ連が、当時まだ有効であった日ソ中立条約に違反をいたしまして対日参戦をして、日本がポツダム宣言を受諾いたしまして終戦となった後の八月二十八日から九月五日までの間に、順次北方四島のすべてをこの折占領した。したがいまして、それ以来、私ども、この北方四島は日本に帰属するということを強く主張してきてまいっている次第でございます。

 基本的には、ロシアとの間で北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を早期に締結すると、一貫した方針を堅持いたしまして、粘り強くソ連及びロシアに働きかけをしてまいりました。

 最近でございますが、昨年一月に小泉総理が訪ロをされまして、プーチン大統領との間に日ロ行動計画を採択したわけでございます。この行動計画の採択に関する共同声明におきまして、両首脳は、平和条約を可能な限り早期に締結するという強い決意を確認しているわけでございます。

 また、昨年、小泉総理とプーチン大統領は三回首脳会談をいたしましたけれども、例えば昨年五月の首脳会談におきまして、プーチン大統領は領土問題を先延ばしする考えは持っていないという旨を明言しており、十月のAPECの際のバンコクにおきます首脳会談では、そのため専門家の協議を加速していくことが両国首脳の間で確認されてございます。

 政府といたしましては、今後とも、日ロ行動計画の着実な実施を通じまして、経済分野を初めとする日ロ協力の大きな潜在力を生かしながら、全体として日ロ関係を発展させる中でこの四島の帰属の問題を解決いたしまして平和条約を締結するという方針に基づきまして、平和条約交渉につきましても前進をさせていきたいと考えております。

松原委員 今三つの領土問題についての話を聞かせていただいたわけでありますが、尖閣については実効性のある支配を日本はやっていると薮中さんが今おっしゃったわけであります。

 竹島については、これはかなり厳しい環境でありまして、何か韓国は、切手を出す前にも、これにあるように、警備隊員を常駐させたのが昭和二十九年、もう今から約五十年近く前であります。今や、宿舎、灯台、監視所、アンテナが設置され、年々強化され、そして平成九年には五百トンの船が利用できる接岸施設まで完成させた。こういった状況を遺憾と思っているというふうにおっしゃるのはいいわけでありますが、これに対して具体的にどういう行動をしてきたのか。

 そして、遺憾であると言いながらも、半世紀たっているわけですよ。この時間軸の中で実質的な実効性のある支配を彼らがやってきていることに対して、この件について、どういう、アクションプログラムというんですか、見通しというかそういったものがあるのか、これを聞かせていただきたいです。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに今委員御指摘のとおり、大変遺憾な状況が続いているということでございます。そして、この問題、我が国の国益を確保していく最善の方法ということで、今までもさまざまの検討は加えてきておるわけでございます。

 最近に至りましても、川口大臣の方から、訪日されました潘基文外交通商部長官との間で、この問題について、双方の立場はあっても、未来志向的な関係を強化するという形で、きちんと、竹島等の問題がその妨げとならないよう、国民感情がエスカレートしない中でどうやってこの問題を抑制的に対応していくかと。

 そして、例えば、先ほどのお話にございました、先方が竹島についての切手を発行する、こうしたときには、直ちにそれについて非常に高いレベルでの抗議を申し込むとともに、国際的な手当てもしてきております。各国に対し、UPUの事務局を通じまして、この問題について、竹島は日本の領土である、したがってこういう措置をとられることは絶対に認められないんだと。

 そうした一つ一つの試みと一つ一つの措置をその時々にとりながら、この問題について、引き続き粘り強く不断に検討を加えていくということでございます。

松原委員 この竹島の問題については、恒常的にこれを、もう半世紀ですからね、扱ってきた、お互いに議論する、そのステージというかそういう舞台というのはあったんですか。

薮中政府参考人 これは、日韓間で常に外交当局間の話し合いの場があります。その中でも、この問題について、双方がおのおのの立場を述べ合うということはございました。そしてまた、委員御承知のとおり、例えば日韓の漁業交渉、漁業協定というのがございました。この中での取り扱いも、委員御承知のとおり、その中に当然のことながら竹島があるということで、これについてさまざまのやりとりがある。そうした中で非常に厳しいやりとりをしてきているというのが現状でございます。

松原委員 五十年の間に、竹島の場合は、韓国側が続々としてこういったさまざまな既成事実化を進めてきていて、ついには接岸施設までつくってしまった。こういう状況というのは、簡単に考えれば、もう実効支配は向こうに移ってしまったというふうに彼らが世界に言ったとき、どれだけ我々がそれをひっくり返せるか。

 我々は、みずからの領土であるということは主張していても、そのことに対して、極めて有効な手段をとっていればもうちょっと違う展開に今日至っていると思うので、私は、有効な手段をとってこなかった、つまり、昭和二十九年以降、竹島問題については外務省は有効な手段をとり得ていなかった、こういうふうになるのではないかと思うんですが、大臣、御所見はいかがですか。

川口国務大臣 韓国が実効支配をする中で、我が国が実効的な方法をとれなかった、実効性のある方法をとれなかったということで今日に至っているということは大変に遺憾だと思っています。過去において、例えば司法裁判所に話を持っていこうという努力とか、さまざまな取り組みはあったわけでございますけれども、いずれにしても結果が出るような形には今の時点ではなっていないということであります。

 私は、領土問題を解決するというときに、三つのことが必要だろうと思っていまして、一つは、これは当然ながら、毅然とした態度ということであります。それから二番目に粘り強さ。そして三番目に、この問題の解決が両国のメリットになるというふうにお互いに思えるようなやり方で解決をしていくという知恵。

 それで、この三番目の点が、これは北方領土の問題についてはいろいろな工夫ができていますけれども、竹島の問題については、正直言って、今まで私が見ていた範囲では、十分に、少なくとも見える形では行われてこなかったということかなと思っております。今後、この知恵の分野についてどういうことができるかということをきちんと考えていかなければいけないというふうに思っております。

松原委員 尖閣列島については、これは韓国が竹島におけるようなことをどこもしていないということを今薮中さんおっしゃったわけですが、そうはいいながら、この領有権についてさまざまな議論がある中で、例えば韓国が竹島に、いわゆる軍隊というんですか、これを常駐させているわけですね。警備隊員ですか、常駐させている。尖閣列島に対しては、今日本がそういった警備隊員を常駐させても国際的な反発は来ないから、そういったものを常駐させるというふうな決断はあり得るんでしょうか、薮中さん。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 尖閣諸島は、先ほども申し上げましたとおり、全くこれは我が国固有の領土であり、そしてまた我が国が現にこれを有効に支配しているということで、そしてまたその尖閣諸島をめぐっては、当然のことながら、これは海上保安庁がきっちりとその水域について日々これをコントロールしているということでございまして、そういう意味で全く何の問題もない状況であるというふうに考えております。

松原委員 竹島の場合も、ここに昭和二十九年に韓国の警備隊員が上陸をした。尖閣列島においては、もしそういう日本以外の国が上陸をするというふうな可能性が、可能性というのは常にゼロではないわけでありますから、そういったことを考えれば、今国際世論的に、仮に、薮中さんがおっしゃったように、これに関してはいろいろと実際は違うんじゃないかという認識もあるんですけれども、おっしゃっているような状況かどうか。ただ、そのことに対して、何ら問題がない状況であるならば、この尖閣列島に対しては、当然、日本固有の領土であるならば、日本の警備隊員なりがそこに常駐することは別段おかしくないし可能である、こういう認識を持っておられますか。

薮中政府参考人 今申し上げましたように、これはもう全く有効に、我々実効的に支配している地域である。そして、その地域について、しかるべく我が日本政府全体として考えて、領土をきちんと支配する、そのために必要なことをおのおの役所でやっているというのが今現状であろうと思います。

松原委員 これ以上、なかなか答弁が薮中局長の御判断でできないのかもしれませんが、やはり客観的にそれが可能である状況ならば、それは日本が、固有の領土であるのだから、日本のそういった警備員が、警備員というか自衛隊が、それがきちっとそこを占有することは何らおかしくないので、ぜひ検討してもらいたいというふうに私は思いますが、大臣、いかがですか。

川口国務大臣 我が国として、この尖閣諸島を実効的に支配しているということをきちんと維持し続けるということは、これは大変に重要なことであると私は思っております。そのために、今、海上保安庁等、いろいろなことが行われているわけですけれども、こういった実効的な支配の継続、こういうことのためにどういうことをし続けなければいけないかということを不断に考える中で、先生の御意見も参考にさせていただきたいと思います。

松原委員 どちらにしても、竹島で韓国がやっているようなことは、当然自立した国であれば私はするべきだと思うし、竹島に関して見通しが全然ないんですよね。それは、先ほど大臣が、私の二年間のさまざまやってきたことということをいろいろとおっしゃいましたが、こういった領土問題がやはり私は、それは平和も大事です、平和は大事ですよ、しかし領土の問題というのは極めて大事だということを、その辺の認識の甘さが、実は今回の拉致問題についても他国からつけ込まれる、他国というのは北朝鮮からつけ込まれるゆえんではないかと私は思っているんです。

 実は、竹島も尖閣諸島もまた北方四島も、北方領土ですね、まあ一つは諸島でありますが、これも同じであって、どれか一つだけを解決してほかの二つを解決しないとか、どれか二つを解決してあとの一つを解決しないとか、そういったことはあり得なくて、全部私は同じ土俵の上の議論だというふうに思っているんですよ。

 つまり、自分自身の、自国の領土を主張できないというのは、これはその国民というのは恐らくわからないですよ。平和で貢献しているというのでそれで尊敬する人もいるかもしれないけれども、そういった固有の領土問題すら戦後半世紀を引きずってなお解決できない、できないだけではなくて解決の見通しがついていないという国に対して、それを誇りある国と思わない人がたくさんいても僕はおかしくないと思っておりまして、外交の要諦の一つは、日本の国民に誇りを与える。

 それは大臣のおっしゃるとおり文部省の議論もありますよ、教科書の問題もありますよ、さまざま。しかし、私が申し上げたいのは、外交において、こういった部分をきちっと、もちろんそれは大臣がおっしゃるとおり、毅然と粘り強く。しかし、毅然と粘り強くで半世紀過ぎてしまって、今でも毅然と粘り強くとずっと言い続けているということでは、その外務省の具体的な企画力というんですか、行動力の問題になってくると思うので、私はそこは、この半世紀の間こういった問題がなかなか解決をしなかったことについて、猛省を促したいというふうに思います。

 それで、私が申し上げたいのは、今国連の方で、この間も外務委員会で自民党の議員の方が質問したと思うんですが、大陸棚について、これがもうすぐ一つの調査が行われ、大陸棚のあり方、承認というんですか、それが一つ決まる方向であるというふうな話を聞いているわけであります。

 大陸棚、これは海岸線から二百海里までの海底という、これは三百七十キロですね、沿岸国に海底資源の採掘権が認められる、ただし二百海里外でも地形的、地質的に地続きであることを期限までに国連大陸棚限界委員会に証明できれば、海岸線から三百五十海里、何と六百五十キロまで延長できると。私は、今の外務省というのは、もちろんたくさんやることがあるけれども、これを一番やるべきだと思っているんですよ。一番とは、それは順番はないとか大臣は言われるかもしれないけれども。

 私は、海洋資源、この間はメタンハイドレートの議論もありましたが、海洋資源も、科学技術の進展と相まって、それを我々は自分のものとして活用し得るようになるだろうと思っています。このいわゆる海洋資源が、大陸棚が続いていれば日本海にもっと行くわけですよ、これは。

 これを議論したときに、日本の場合は、海洋国家日本ですよ、海洋国家日本が、例えばおびただしい石油、尖閣列島だって石油が出るというところから中国とかほかの国々が来たというふうに、いただいた資料に書いてありますよ。こういうふうな大陸棚は、日本というのは資源が、三十七万平方キロメートルだけれども、大陸棚資源まで入れるとこれは大変な可能性を持っている。我々は、まさに国際社会においてしかるべき地位を求める国家としてふさわしいものもあるし、それだけの国益が今かかっているのがこの大陸棚の議論ではないか。二〇〇九年五月までに国連に対して資料を提出し云々と書いてある。もう予算がついたという話がここに載っているわけでありますが。

 私は、こういうものが進んできたときにネックになるのは何かといえば、ネックになるのは今の領土問題ではないかと。今の領土問題がこういった膠着状況のときに、我々がどこまでこの大陸棚の資源、日本にとっての新しいフロンティアとして、日本にとっての新しい資源としてどこまで主張できるのか。十全なるものは主張できないと思うんですよ。

 この大陸棚のことについて、今、外務省はどういう動きをしているか、御説明をお願いします。

薮中政府参考人 委員御承知のとおり、大陸棚は非常に重要な問題でございます。そして、海洋法条約のもとで認められる排他的経済水域をきちんと確保しなければいけない、これは海洋国家日本にとって大変重大な問題であるというふうに考えております。それがまず第一点でございます。

 そして、その上に立って実際に何をすべきか。日本は中間線という立場をとっております。これは、地図をごらんいただければ明白でございますけれども、その理由は、基本的には国際法的にも一番当然のこととして認められているのが中間点の理論でございます。これをとることが日本にとって、我が国のまさに国益にとって最も大事であるというのは委員よく御承知のとおりだと思います。

 そしてまた、非常に広い水域の中で、例えば沖ノ鳥島、これについてきちんと二百海里の排他的経済水域を確保する、こうしたさまざまな努力をしているというのが現状でございます。

松原委員 中間線という話をおっしゃったわけでありますが、本来、固有の領土であれば、それはずばっと言えばいいわけですよ。本来そうあるべきなんですよ、我々の主張というのは。

 だから、ここは極めて我々は理性的に譲歩してしまっているのか、それとも現実的にはこの辺だと思っているのかという議論になるけれども、海の中の海洋資源と大陸棚というのは若干違う要素がありますからね。今度の大陸棚は、とりあえず今、それはメタンハイドレートだって実用化というのはどこまでいけるかわかりませんよ、カナダの方で凍土の中からとったとかそういう話がありますけれどもね。私は、どちらにしても、この部分を踏まえ、いや、こういったことが起こってくるからこそ、固有の領土であるならば本来半世紀もかけないうちに解決をするべきだったと思うんですよ。

 もちろん、やることはたくさんある。それは、世界に対して貢献するんだということで、いろいろとなさってこられた。しかし、例えばODAなんかを出した場合にも、空気のように出すんじゃないですよ。やはり国際世論がそのことによって日本という国の国際的貢献を認知して、日本の主張は一つの国際世論が支えるということになって、こういった領土問題とかを具体的に解決していくならば、私はそれは意味のあるODAだと思うんですよ。でも、そうではない。後でちょっと質問しようと思っていたんですが、時間がどうなるかわかりませんが。

 実は、この間のジュネーブでやった、北朝鮮に対しての人権非難決議、あれは二十八カ国賛成で、反対は十一カ国かな、それで韓国が欠席した、こういうふうなことが行われている。今回また、いわゆる国連人権委員会に我々は北朝鮮の人権非難決議を求めるのかどうかということも問われるし、私は求めるべきだと思っておりますが、その際に、中国やロシアや韓国がこのことに対して我々に対して賛意を示さないということが同じようにあったとするならば、この一年、二年の外務省の努力は何だったのかということにこれもなるわけでありますので、そういう意味で、この人権非難決議、これはどういう見通しだか、ちょっと教えてください、だれか答えられる人。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年の国連人権委員会では、今委員御指摘の北朝鮮絡みの人権問題について二件の決議が採択されております。

 一つは、拉致を非難する強制的失踪決議、これは四月二十三日に全会一致で採択されております。

 他方、北朝鮮という、国別決議と国連で呼んでおりますけれども、北朝鮮の人権状況決議につきましては、四月十六日のことでございますけれども、賛成多数で採択されております。この決議においても拉致の解決を求めていることは御承知のとおりであります。今、念のためでございますけれども、票別幾らかという御質問がございました。賛成二十八カ国、反対十カ国で、韓国は御指摘のとおり欠席しております。

松原委員 ちょっと、時間が大分押してまいりましたので。

 いわゆる反対をした国々に対して、日本というのはODAをどれぐらい今まで出していたんでしょうか。

古田政府参考人 御答弁申し上げます。

 十カ国の国が御指摘のとおり反対しているわけでございますが、このうち、ロシアはODA対象国ではございません。それから、リビアにつきましては、二〇〇二年度をもって援助卒業ということでございますが、ここ数年間、大体一千万ドル強のレベルで推移してきております。それから、ベトナム、中国でございますが、これにつきましては、二〇〇〇年から二〇〇二年の支出純額で見ますと、ベトナムにつきましては九億ドル台、四億ドル台、三億ドル台というふうに推移しております。それから、中国につきましては七億ドル台、六億ドル台、八億ドル台というふうに推移してきております。

 残る六カ国でございますが、アルジェリアは過去の返還分がございますので、支出純額ではマイナスでございます。その他の国につきましても、我が国二国間のODA全体の一%未満ということで、スーダン、キューバ、シリア、ジンバブエ、マレーシアとあるわけでございます。

松原委員 ODA予算を検討して、新しい新年度予算はちょっとまだデータを見ていないんですが、これをする場合に、国益を考えるなら、今回の北朝鮮に対する人権非難決議というものの対応等もODAの金額を決めるときの一つの私は要素にするべきだと思っておりますが、今回それを査定する場合に、それは要素として勘案しているかどうか、お答えいただきたい。

古田政府参考人 御答弁申し上げます。

 拉致問題を初めとするさまざまな二国間、マルチ、諸問題につきまして、我が国の立場に対する国際世論の理解と支持を得る上で、ODAを通ずる良好な二国間関係をつくっていくということは引き続き重要な基盤ではないかというふうに考えております。

 ODAの供与につきましては、ODA大綱を昨年改定いたしましたが、その中で、援助実施の原則というのがございまして、そこに触れてありますように、相手国の援助需要、経済社会状況、二国間関係等を総合的に判断して供与するという方針でございまして、本件決議案への各国の対応も含め、総合的に判断の上、各国に対するODAを実施していくという方針でございます。

松原委員 こういったものを日本は今までは余り勘案していなかったのかもしれませんが、今後はきちっと、勘案するぞというのをわかる形で私は鮮明にしていくべきだということを申し上げたいと思います。

 そして、この問題を含め、次に、アメリカが北朝鮮をテロ支援国家に今入れる、こういうことでやっております。その理由に、核の問題が中心であったわけでありますが、やはり拉致問題というのを、アメリカが北朝鮮をテロ支援国家とする上で明言して、テロ支援国家の理由づけの文書の中に入れるべきである、このように私は思っておりますが、これについての御所見をお伺いいたしたいと思います。薮中さんで結構ですよ。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 もちろん、これは一義的にはアメリカの国内制度に係る問題でございますが、今委員御指摘のとおり、この当該リストの見直しに当たって、米国によって、拉致問題について、従来から示してきたアメリカの我が国に対する理解と協力の姿勢、これが反映されるような形で、すなわち拉致問題についてこれが明記される形ということがあれば、我々としては非常にそれを歓迎するものでございます。

松原委員 歓迎するわけですが、それに向かって、当然、絶対にこれを入れると、向こうは入れる気があるという発言をアーミテージさんとかがしているわけですから、絶対これを入れるんだと。これを入れないと、六者協で、場合によっては、核の問題で北朝鮮がどこかで譲歩して妥結したときに、日本だけはエネルギー支援しませんと言えないわけですよ。いや、言えればいいですよ。言えるかどうかですよ。だから、そこに、やはりハードルの中に、きっちりアメリカ側もそこに入れるべきだということを強く申し上げておきます。

 時間がないので次に移りますが、今までの議論を踏まえて、川口さんに一言だけ、答弁は結構ですから申し上げておきたいのは、やはり国益を重視する外交というのは、もちろん川口さんが日夜忙しい中を全知全能で頑張ってこられたことはわかっているけれども、その方向性の中に、今言った領土の問題、そしてこれからの海の大陸棚の問題、地球社会が新しいステージに入っている、海の中のものが活用できるような技術力を持ってくる、そういった中における新海洋国家日本の一つの大きなステージアップのためのこのチャンスをきっちり生かし切るように、全力で取り組んでいただきたいと思っております。

 続きまして、拉致、特に特定失踪者の問題に話題を移していきたいと思っております。

 御案内のとおり、拉致問題は、これは極めて、今言った日本の主権、そして名誉にかかわる問題であります。我々は、この拉致問題の解決を通して、もちろん被害者の皆様にとっては、自分たちのまさにいとしい肉親を取り戻すという作業をすると同時に、日本の国の名誉、そしてその誇りを取り返す作業になっていくだろうというふうに私は認識をいたしております。

 今拉致で議論されているのは、十件十五人のいわゆる政府、内閣が認証した皆さんでありますが、実際はほかにも多くの方が北朝鮮に拉致されているんではないかというふうに現在言われているわけであります。政府認定の十件十五人以外の失踪者について、警察として拉致による疑いがあるというふうな認識の事案が存在するのかどうか、まず冒頭にお伺いいたしたいと思います。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 この拉致事案でございますけれども、これはまさに北朝鮮による我が国国民の生命身体に危害を及ぼす、こういう事案でございますので、極めて重大なものであるというふうに認識をしております。その解明のために、関係各機関とも十分連携しながら最大限の努力を払っているところでございますが、御指摘の北朝鮮による拉致と認定されている十件十五名以外にも、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案があるというふうに私ども見ておりまして、鋭意、所要の捜査や調査を進めているところであります。

松原委員 そのようないわゆる十件十五人の拉致以外で拉致の疑いが排除できない事案について、例えば、外務省等の関係機関と連絡をしながらその解明に努めておられるかどうか、質問をさせていただきます。

瀬川政府参考人 この一連の北朝鮮による日本人拉致容疑事案につきましては、事案のやはり性質上、外務省等の関係各機関との連携をとるということは、これは捜査上も必要不可欠なものであります。こういった観点から、必要に応じて、外務省を初めとする関係各機関とも情報の交換を行っているところでありまして、こうした情報の中には、先ほど申し上げました拉致の可能性が排除できない事案に関する情報も含まれております。

松原委員 今の局長の御答弁で、拉致の可能性が排除できない事案が含まれ、外務省とさまざまな連携をしている、こういうふうに理解をさせていただく次第であります。

 続きまして、先ごろマスコミでも少し出たわけでありますが、特定失踪者と申しますか、拉致された可能性が極めて高いという認識を持たれていた一人であります山本美保さんの失踪事件というものについての報道がなされたわけでありますが、この山本さんの失踪事件の概要について、お伺いいたしたいと思います。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 この山本美保さんでありますが、昭和五十九年の六月四日、山梨県の甲府市内の自宅から図書館に行くということでバイクで外出をされまして、四日後の六月八日に新潟県柏崎市の海岸でこの方のバッグが拾得をされまして、そのまま行方不明になった、こういう事案でございます。

 警察におきましては、この失踪から十カ月後の昭和六十年四月十五日でございますけれども、山梨県の甲府警察署におきまして、家出人の捜索願を受理いたしました。さらに、平成十四年の十月二十一日になりまして、北朝鮮による拉致ではないかということで、家出人捜索願を再度受理しております。また、ことしの一月二十九日には、山梨県警察に対して、山本美保さんを被害者とする国外移送目的略取誘拐を内容とする告発状が提出をされております。

 山梨県警察におきまして、平成十四年十月の家出人捜索願の実は一カ月前に、御家族から拉致ではないかという相談を受けておりました。この平成十四年九月の相談を受けて以来、失踪当時の状況を知る多くの関係者の方から事情聴取を行うなど、あらゆる可能性を視野に入れて鋭意捜査を進めてまいりました。その一環として、この山本美保さんとの関連性がどうも排除できないという身元不明死体の調査も行ってまいりました。

 その中で浮上してきた遺体のうちの一体につきまして、所要の捜査を行った結果、これは山本美保さんの御遺体であるということが判明をするに至ったところであります。

松原委員 これは、今お話があった昭和五十九年の六月四日、甲府市内の自宅を出て図書館に行く、その四日後の六月八日、柏崎市内で彼女のセカンドバッグが発見された。そして、六月二十一日、この失踪から十七日後に、山形県の遊佐町で一部白骨化した死体が見つかった。そのときの新聞があるわけでありますが、その新聞には、二十一日正午ごろ、遊佐町十里塚海水浴場近くの海岸で両足と右腕のない女性の死体が漂着しているのを近くの人が見つけた、酒田署の調べでは、女性は、こう書いてありまして、首にネックレスをかけ、両足は太ももの部分が切り取られたようになくなっており、右腕もつけ根の部分からなく、死後一、二カ月たっていたと。これが事実であろうと思っております。

 こういうふうな状況の中でこの山本美保さんであるということを特定した判断の決め手は何か、お伺いいたします。

瀬川政府参考人 今御指摘されました昭和五十九年の六月の二十一日ですか、山形県の遊佐町で発見されました御遺体が山本美保さんであるということが判明をしたわけでございますけれども、判明した決め手といいますか、これは二度にわたりますDNA鑑定を、山形県で発見された御遺体と山本美保さんの親族の方とのDNA鑑定を実施いたしまして、その結果、この御遺体が山本美保さんの遺体であるというふうに判明をした次第であります。

松原委員 この山本さんの御家族にしてみれば、二十年間ひたすら自分の娘を捜し求めてこられた経緯もあったわけであります。話によりますと、不明の死体が見つかればそこに出向かれ、歯型等を調べて別人であったことがわかったとか、そういったことも何回かあったように聞いております。できれば、この二十年間の空白がある中で、確かにDNAという議論でありましたが、この御家族の皆様にとっては、よりリアリティーがあるというか、実感を伴う形で何らかの御説明がなされるように心よりお願いをしたいと思っております。

 そうした中で、警察は、山本さんの失踪につき、自殺の可能性があると判断しているようでありますが、実は私は拉致の疑いが濃厚なのではないかと思っておりまして、このことについての御所見をお伺いいたします。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 平成十四年に御家族からの拉致ではないかという届け出をいただいたわけでございますが、その前におきましても、家出人の捜索という観点で、各身元不明の死体等につきまして、いろいろ連絡も差し上げ御確認もいただいたりしてきております。

 また今回、特に、拉致ではないかという届け出をいただいてから、そういう観点を十分に考慮しながら御家族の方にも対処してまいりましたし、今回のDNA鑑定の結果等々につきましても、私どもとしては、十分御説明をさせていただいてきているつもりでございますけれども、なお一層、御家族の方に対しましては、誠意ある対応、御説明に努めてまいりたい、こう思います。

 そこで、お尋ねの、拉致の疑いも濃厚なのではないか、こういうことでございますが、私どもといたしましては、これまでの一連の捜査結果を総合的に判断をいたしまして、いろいろな状況を総合的に判断をいたしまして、この山本美保さんの失踪は自殺によるものである可能性があると考えておりますが、その一方、北朝鮮による拉致の可能性もこれは完全には排除できないというふうに考えておりまして、こういった点も視野に入れながら、今後とも引き続き所要の捜査を進めてまいりたいと考えております。

松原委員 ぜひとも、この件についても捜査をきちっとしていただきたいし、またほかの拉致関係、特定失踪者もさまざま努力をしていただいて、その事実を明らかにしていただきたいと思います。

 今回の山本さんの件については、拉致された人間が抵抗すれば殴打して死亡させ、その中には海中に遺棄された人もいるという証言を北朝鮮の工作員も語っているわけでありまして、そういった可能性も含めると、拉致された可能性が私は依然として高いというふうに思っております。拉致の失敗によってこういった状況になったのではないかということも想定されますので、より詳しく事実解明に頑張っていただきたいと思います。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

米澤委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、沖縄県の金武町のキャンプ・ハンセンでの都市型戦闘訓練施設建設について伺っていきたいと思います。

 場所は、キャンプ・ハンセンのレンジ4という場所です。そもそも、このレンジ4は、これまでも隣接している金武町伊芸区にある海兵隊の実弾射撃訓練場なわけですけれども、迫撃砲あるいはロケット砲、住宅地からわずか三百メートルしか離れていない、そういう場所でこういう実弾射撃訓練が行われて、住民はこれまでも大変な被害を受け、レンジ4の撤去を求めていた場所であります。そういうところに新たに都市型戦闘訓練施設を建設しようというわけですから、これに対しては、県知事初め県民ぐるみの反対の声が大きく広がっております。

 キャンプ・ハンセンというのは、都市型戦闘訓練施設は今回が初めてではなくて、一九八八年にも山の反対側の恩納村に建設され、四年間にわたる県民ぐるみの撤去闘争が実って、その一九八八年につくられた都市型戦闘訓練施設は撤去される、そういう経過もありました。ところが、一九九五年、県民が知らない場所に本当にひそかに都市型戦闘訓練施設がつくられていた。今回つくられるのは、それが老朽化したからレンジ4につくる、こういう経過を持っている問題なんです。

 最初に伺いたいんですが、今度つくられる訓練施設と一九八八年につくられた訓練施設、一九九五年につくられた、これはまさにひそかにつくられた訓練施設、この訓練施設の機能は同じですか。施設の規模も含めて、どういう違いがあるんでしょうか。

海老原政府参考人 お答え申し上げます。

 一番初め、一九八八年に建設をされました訓練施設、これはレンジ21にございまして、都市型訓練施設ということになっております。

 それが、今委員がおっしゃいましたように、その後、九二年になりましてクエール副大統領の声明で撤去されたということでございますが、この施設と今回の施設との直接の関係はございません。

 それから、現在、レンジ16におきまして訓練が行われているわけでございますが、ここには陸軍が使用しております建物、これは海兵隊が使用しているものとはまた別にございますけれども、陸軍が使用しておりますものとして、射撃用の建物、それから突破訓練施設、それから屋外射場、これがございます。この三つにつきましては、今回レンジ4の方にそのまま建てかえられるというふうに承知をいたしております。

 加えまして、今回、レンジ4におきましては、現在、他のキャンプ・ハンセン、キャンプ・シュワブの中で行われております訓練塔における訓練ができるように、その訓練塔、それからこれは管理施設でございますが、その二つもあわせ建設するというふうに承知をいたしております。

赤嶺委員 九五年、ひそかにつくられていた都市型戦闘訓練施設の機能に加えて、キャンプ・ハンセン、シュワブのものも効率的にまとめていくといいますから、これはまたレンジ4の付近の伊芸区の皆さんにとっては基地の機能強化につながると思うんですが、効率的に一緒に使うことによって、どんな機能が強化されるんですか。

海老原政府参考人 これは、機能の強化と申しますか、我々が承知をいたしておりますのは、先ほどちょっと申し上げましたけれども、今回のレンジ4に新たに建設されます、これは陸軍複合射撃訓練施設というふうに呼んでおりますけれども、ここでは、射撃用建物におきましては、建物内の敵に対処するための小型武器、これはピストル、ライフル等でございますが、これによります射撃訓練、それから二番目に、突破訓練施設におきましては、建物内への強行突入訓練、それから三番目に、屋外射場、これは五十メートルの射場でございますが、そこにおきましては小型武器による射撃訓練を行います。これは、いずれも今レンジ16において行われている訓練でございます。

 それに加えまして、現在、キャンプ・ハンセン、シュワブの他の地域で行われております、これは訓練塔において、ロープを使用いたしまして、懸垂下降訓練と呼んでおりますが、塔から下におりる訓練、それから射撃用の建物の中の標的に対する高角度の射撃訓練も実施を、今はほかのところでしているわけでございますが、これは例えば、この射撃用の建物に向けて高角度から射撃を訓練するというようなことから、この射撃用の建物と同じ場所にあった方が訓練の効率が上がるということの説明を受けております。

 また、もちろん、老朽化がレンジ16における施設で進んでいるということから、安全性という観点からも新しい訓練場、訓練施設にした方が安全な訓練ができるというふうにも承知をいたしております。

赤嶺委員 今の説明を聞いて、ますますこれは基地の機能強化じゃないかというぐあいなことを感じます。

 そこで、レンジ4は、海兵隊の射撃訓練場ですよね。都市型戦闘訓練施設というのは、陸軍のどこの部隊が使うんですか。そして、海兵隊も使うことがあるんですか。さらに、海兵隊は、そこで行っていた実弾射撃訓練、これはやめるんですか。これらについて答えてください。

海老原政府参考人 まず、レンジ4の新たな施設におきましては、基本的には陸軍が訓練をいたします。

 主として、トリイ通信施設に所在をいたします陸軍第一特殊部隊群第一大隊が使用をするというふうに承知をいたしております。海兵隊は基本的には使用しないというふうに承知をいたしております。

 それから、現在、さっき委員がおっしゃいました、レンジ4の中で行っている海兵隊の中距離火器によります訓練、これはこの施設が建設された後は行わない、海兵隊はここでは訓練は行わないというふうに承知をいたしております。

赤嶺委員 その中距離砲弾を使っての海兵隊の訓練はどこでやるのか、そしてレンジ4を使っての小火器の海兵隊の訓練は引き続きやるのか、この点いかがですか。

海老原政府参考人 海兵隊の中距離火器を使いました訓練につきましては他のレンジで行うというふうに聞いておりますが、具体的にどのレンジに移ることになるのかということについては承知をいたしておりません。

 レンジ4におきましては、この施設が建設されました後は、先ほど申し上げましたような小型の火器、ピストル、ライフル等を使用いたしました射撃訓練が行われるということになります。

赤嶺委員 中距離火器を使っての訓練というのは、県内のどこかのレンジあるいは金武町のどこかのレンジを使って引き続きやるということでいいんですね。

海老原政府参考人 我々が受けております説明では、海兵隊の中距離火器によります訓練は、キャンプ・ハンセン及びキャンプ・シュワブの中のレンジ4以外のレンジにおいて、それぞれのレンジの用途に応じて実施されるということでありまして、具体的にどのレンジでということは聞いておりません。

 また、もともとレンジ4におきます中距離火器による訓練については騒音の問題というのが指摘されていたわけでございますけれども、この中距離火器の訓練による騒音の影響ということについては、最小限にとどめるということで努力をするというふうに米側より説明を受けております。

赤嶺委員 私は明確にすべきだと思うんです。今後、その中距離火器を使ってどこでやるか、それによって、皆さんが言う安全というのがどうなのかという検証がされると思うんです。

 きょうはもう時間ありませんので、レンジ4につくる問題に限って伺いますが、皆さんの答弁を読んでいますと、一九九五年、ひそかにつくられた都市型戦闘訓練施設が老朽化したので、新しくレンジ4につくると言っています。

 ところが、一九八八年に建設し、一九九二年に撤去した都市型訓練施設は、先ほど北米局長もありましたけれども、当時の宮澤総理大臣とそれからアメリカのクエール副大統領が話し合って、今後つくらない、キャンプ・ハンセンに都市型戦闘訓練施設はつくりませんという約束をしていたわけですね。

 それをひそかに九五年につくった。県民に黙ってつくった施設が老朽化したから、今度はこの演習被害が非常に大きい伊芸区のレンジ4につくる。こんなのは、一九九二年に撤去したときの県民への約束、これに対する背信行為じゃないですか。外務大臣、いかがですか。

川口国務大臣 この件につきまして、北米局長からお答えをさせます。

海老原政府参考人 今委員から御指摘のありましたクエール当時の副大統領の声明でございますけれども、これはレンジ21におきます都市型訓練施設につきまして、沖縄の方々の見解も十分認識をしているとした上で、運用上の理由から、私たちはこの訓練場における都市型訓練施設を直ちに停止し、これら施設を撤去するというふうに述べておりまして、これは特にレンジ21を、これは恩納村の近くでございますけれども、このレンジ21における訓練施設というものが問題が大きかったということを認識して撤去を声明したというふうに理解をいたしております。

 また、老朽化につきましては、最近、我が方の沼田沖縄駐在大使、それから外務省の山田地位協定室長が実際に現地を視察いたしましたけれども、私も報告は写真とともに受けましたけれども、例えば突破訓練施設などにつきましては、木の枠に簡単な扉がついて、それがほとんど破れているという状況でございますし、例えば安全上の問題なども、跳弾の防止なども古タイヤを積み上げているというようなことがございまして、そういう観点からも、新しい施設によって安全な訓練ができるのではないかというふうに考えております。

赤嶺委員 レンジ21のかわりの施設を当時はどこの場所につくるかという検討がされていて、そのかわりの場所にもつくりませんという合意なんですよ、そのときの約束は。レンジ21につくりませんという話じゃないんです。レンジ21は撤去します、同時にかわりの施設もつくりません、これが日米間の合意ですよ。これ、皆さんひそかに九五年に別の場所につくらせて、老朽化したからそのものをつくりましょうというようなのは、絶対に納得がいく話じゃないんです。

 それで、最後に外務大臣にお伺いしたいんですが、レンジ4の伊芸区の場所というのは、実弾演習流弾による人身事故、砲弾の破片落下事故、騒音、振動被害、山火事の多発、山林が焼き尽くされ、水源涵養林に被害を与え、水質の汚染により飲料水に打撃を与えている。これに対して、こういう場所に新しい訓練施設をつくるということは、金武町長は、半世紀を超えて基地被害に耐えた区民らに対し、新たな施設の建設という住民感情を無視した計画は到底受け入れることができない、住民感情を逆なでするようなやり方だ、このように言って、抗議と建設中止の声を上げているんです。外務大臣、こういう声をどんなふうに受けとめますか。

川口国務大臣 地元の方が建設に反対をしていらっしゃるということについては承知をいたしております。これは、日米地位協定上、米軍は、施設・区域内における作業について、公共の安全に妥当な考慮を払う義務というのを負っているわけでございまして、今回の建設計画については、安全、地元の方々の御懸念にも一定の配慮をしているというふうに理解をいたしております。

 具体的に、いろいろな流弾、跳弾対策等々とられているというふうに承知をしておりますし、それから撃つときには、射撃用の建物の外では境界線とは反対の方向に向いて撃つということの措置をとるというふうにも承知をいたしております。

 いずれにしても、そういった地元の方の御反対ということも承知をいたしておりますので、米軍に対して引き続き安全についての配慮、これは求めていきたいと考えています。

赤嶺委員 半世紀にわたって安全に対する妥当な配慮を一度もとってこなかった地域にこういう建設をすることは絶対に許されないということを申し上げて、私の質問を終わります。

米澤委員長 質疑はこれにて終了いたします。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時九分散会


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