衆議院

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第17号 平成16年5月25日(火曜日)

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平成十六年五月二十五日(火曜日)

    午後三時九分開議

 出席委員

   委員長 米澤  隆君

   理事 岩永 峯一君 理事 谷本 龍哉君

   理事 中谷  元君 理事 末松 義規君

   理事 武正 公一君 理事 増子 輝彦君

   理事 丸谷 佳織君

      遠藤 武彦君    小野寺五典君

      河井 克行君    木村  勉君

      高村 正彦君    鈴木 淳司君

      田中 和徳君    土屋 品子君

      西銘恒三郎君    松宮  勲君

      宮下 一郎君    阿久津幸彦君

      加藤 尚彦君    今野  東君

      田中眞紀子君    中野  譲君

      前原 誠司君    松原  仁君

      漆原 良夫君    赤嶺 政賢君

    …………………………………

   外務大臣         川口 順子君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   外務大臣政務官      田中 和徳君

   外務大臣政務官      松宮  勲君

   政府参考人

   (内閣官房拉致被害者・家族支援室長)       小熊  博君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)            薮中三十二君

   政府参考人

   (外務省中南米局長)   坂場 三男君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    塩田 幸雄君

   外務委員会専門員     原   聰君

    ―――――――――――――

五月二十四日

 社会保障に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一八号)(参議院送付)

 社会保障に関する日本国と大韓民国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一九号)(参議院送付)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

米澤委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省アジア大洋州局長薮中三十二君、外務省中南米局長坂場三男君、内閣官房拉致被害者・家族支援室長小熊博君、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長塩田幸雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

米澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

米澤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷本龍哉君。

谷本委員 自由民主党の谷本龍哉でございます。十五分間ですが、質問をさせていただきたいと思います。

 まず一問目に、先ほど衆議院の本会議でも質疑が行われましたが、答弁は総理でございましたので、外務大臣に、拉致被害者の御家族が帰られたことについて、一問だけ御見解を伺いたいと思います。

 実は、二十二日、ちょうど私は仕事の関係で北海道の方に行っておりまして、そこでテレビで状況を見ました。その直後、私の友人や知人から何人か電話がありました。その電話は、実は少し怒ったような電話でした。

 それは何に対して怒っているかといいますと、なぜテレビではあんなに批判ばかりするんだと。五人しか帰れなかったことは確かに残念だけれども、それでも、今まで長い間何もできなかった、その後、小泉総理になってから拉致被害者が戻り、そしてその家族が今回、五人ですけれども、帰られた。一歩ずつ前進していることに対して、やはりしっかりした評価をなぜみんなしないんだ、こういう怒りの電話が何本か入りました。

 当然、私の支持者であったり友人でありますから、そちら側の立場からの意見になったのかもしれませんが、その後、新聞等の世論調査を見れば、やはり六割を超える国民がこのことについて評価をしている。

 これは完全に解決をしたわけではありませんから、不十分な点があるのは当たり前でありますし、足りないところを非難するあるいは批判する方たちがいることも、これは悪いことではなくて当然であり、それを真摯に受けとめて次にどうつなげるかということは大事ではありますけれども、少なくとも一歩ずつ、あるいは半歩でも進んでいく、これが一番大事であり、特に通常の外交の常識あるいは国際関係の常識がなかなか通用しにくい独裁国家という国を相手にする場合には、予定どおりに進まないことも多々あると思います。

 私は、極端な言い方かもしれませんが、一人でも取り返せるのであれば、何度でも総理は行って交渉してくるべきだ、このように個人的には考えておりますが、外務大臣の御見解をお伺いいたしたいと思います。

川口国務大臣 今回、総理は、北朝鮮に行かれることについて、非常な使命感といいますか、信念を持って行かれたというふうに私は考えております。これは、拉致の問題もそうでございますし、核の問題もそうだというふうに思っています。

 御家族のうち、八人のうち五人の方が戻られた、このことについては私はほっと安堵の感じも持っておりますけれども、同時に、御家族が日本に来ることに希望を持っていたという意味では、曽我ひとみさんもそうですし、それからほかの方々も同じような気持ちを持っていたわけでいらっしゃいますから、その残念な失望感ということは本当に痛いほどよく私としては理解をいたします。

 そういう意味で、残った問題について、政府として引き続き全力で取り組んでいかなければいけないというふうに考えております。

 その内容ということは、すなわち曽我ひとみさん、この第三国における再会について、政府として早速取り組んでおりまして、これをきちんとした形で実現していくということが大事であるというふうに考えております。

 それから、十人の安否がわからない方々、この方々について、金正日総書記・国防委員長が本格的な再調査をできるだけ早くやるということを言われたわけでして、これをやっていくことを我が国としてもプッシュしていくということが大事であるというふうに思っております。

 それから、今後さらに拉致の被害者であるということが警察によって認定をされるということがありましたら、これらの方々についても当然含められていく、含んでいるということは、これは以前から北朝鮮に向けて言っていることでございます。

 今、委員がおっしゃっていただきましたように、まだまだやらなければいけないこと、重要なことが残っているわけですけれども、今までのいろいろな流れの中で、総理の訪朝というのは物事について一定の前進をもたらしたというふうに私は考えております。

 それは、迎えに来なければ帰さないと言っていたのに対して五人の方が帰っていらしたということでもございますし、それから、拉致の問題はもう解決済みだと言って、ずっと言い張っていたのに、総理が粘り強く働きかけたことによって、本格的な早期の再調査を行うということを、金正日総書記がみずから自分の口でそういうことを言われているということでもございます。

 また、核の点について、御質問には入っておりませんでしたけれども、それについても一定の前進と評価できるということがあったというふうに私は思っております。

 そういう意味で、総理は非常な使命感を持ってこのことに当たられたというふうに私は考えております。

谷本委員 ありがとうございました。

 この問題については、やれることは何でも、とにかくあらゆる手段を尽くして少しでも結果を出すという形で、ぜひとも全力で今後とも頑張っていただきたいというふうに思います。

 質問をがらっと変えますが、本来用意していた質問で、時間が少なくなりましたので飛ばすところがあるかもしれませんが、キューバの問題について少し伺いたいと思います。

 大臣、キューバは訪問されたことはございますか。

川口国務大臣 関心を持っている国の一つではございますけれども、今まで残念ながら訪問したことはございません。

谷本委員 実は、いろいろなつながりがありまして、一昨年九月に四日間ほどキューバに、同僚の若い議員ばかり七名で訪問してまいりました。そして、そこで、ポスト・カストロと言われているようないろいろな政治家の方々と四日間を費やしてお話をしてまいりました。以来、交流を保っているんですけれども、このキューバと、当然のことで確認事項ですけれども、キューバは独立国であり、なおかつ日本と国交がある、こういうとらえ方でよろしいでしょうか。

川口国務大臣 結構でございます。

谷本委員 このキューバに対しまして、一九五九年にキューバ革命があり、それ以降、アメリカ合衆国が経済的制裁を四十五年にわたり続けている、これは事実であります。

 それぞれの国の対応でございますので、日本からどうということはないのかもしれませんが、一点、一九九六年に、クリントン大統領の時代にヘルムズ・バートン法というものが制定をされました。これについて、簡単にわかりやすく説明をしてください。

坂場政府参考人 手短にお答え申し上げます。

 ヘルムズ・バートン法、いわゆるキューバ自由・民主的連帯法でございますけれども、米国議会におきまして、キューバにおける自由、公正な選挙の実施、民主的政権への移行を支援するということ、またキューバにより革命後接収された資産に対するアメリカ国民の権利を保護するという目的でございますが、特に第三章、四章におきまして、革命後キューバ政府が接収した米国民資産に対して取引をした者につきましては損害賠償の責任があるということ、あるいはそうした取引をした外国人に対する米国の査証発給あるいは米国への入国を拒否するといったことを定めてございます。

谷本委員 大臣、このヘルムズ・バートン法に対しまして、国際社会あるいは日本の反応というものはどういうふうに御理解をされていますか。

川口国務大臣 これでございますけれども、我が国を初めとして、カナダですとかEUですとか、そういった国々が、このヘルムズ・バートン法に基づく国際制裁の中には、国内法の域外適用であるという部分、そういうふうに当たると考えられるおそれがあるものが含まれているということと、WTOの精神に照らして懸念があるのではないかということがございまして、我が国はそういった考え方を、見方をいたしております。この旨については、米国にも伝えてきているわけでございます。

谷本委員 ある意味では、これは第三国に対する主権侵害にも当たるんではないかというような法律だというふうに理解をしておりますが、それに対し、そういうものはいけないという対応を国際社会も日本もしたということは、私は正しい対応であったというふうに思っております。

 同時に、これに関連をしまして、米国によるキューバに対する経済制裁終了の必要性に関する国連総会決議というものがありましたが、これに対する日本の対応の御説明をお願いします。

坂場政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、米国の対キューバ経済政策といったものは、第一義的には米国とキューバの二国間の問題だというふうに考えておりますけれども、この九六年のヘルムズ・バートン法の適用というものは、国際法上許容されない国内法の域外適用等の問題がある、今大臣がお答えしたとおりでございますが、そういう状況を踏まえまして、我が国は、昨年の十一月の四日でございますけれども、第五十八回国連総会において採択されましたただいま御指摘の決議について、我が国は賛成票を投じてございます。

谷本委員 このことに対しましては、キューバの外務大臣あるいは外務次官からも、日本が賛成をしてくれたということで感謝の意を表されておりました。

 そこで、そういった一連の流れがある中で、ことしの五月六日、ほんの二十日ほど前ですが、米国の自由なキューバを援助する委員会、これはパウエル国務長官が委員長を務められておりますが、この委員会が報告書を、約五百ページに及ぶ報告書ですが、これを提出されたと聞いていますが、これについての簡単な説明をお願いします。

坂場政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまの報告書といいますのは、五月の六日、今月でございますが、パウエル国務長官を委員長とする自由なキューバを援助する委員会というものが、ブッシュ大統領に対しまして、キューバの自由化を支援するための勧告という形で報告を提出したものでございます。

 この報告書の中身でございますが、制裁を強化するという趣旨に立ちまして、キューバの独裁体制の終了を早めるということを目的とし、反体制活動家の支援等のために、今後二年間、最大五千九百万ドルの支出を行うということ。あるいは、米国からキューバへの送金を規制する、これをさらに強化して、キューバ政府機関の構成員には送金ができないようにするということ。あるいは、キューバへの渡航でございます。これは、在米のキューバ人によるキューバへの渡航、いわゆる里帰りでございますが、これについては、従来一年に一回というものを三年に一回とするといった内容でございます。

谷本委員 キューバという国は、先ほど確認させていただいたとおり独立国でありますし、また、最近、テロというものが問題になる中でも国際社会の脅威になっているわけでもありませんし、また、具体的なテロ活動というものがあったわけでもありません。そういう国に対し、いろいろな意味で内政干渉に値するようなことを行うということは、私はやはり国際社会で余り簡単に認めていいことではないと思います。

 このことに対し、日本政府として、大臣としてどのような考えをお持ちか、お聞かせください。

川口国務大臣 これは、先ほど局長から申しましたように、勧告でございますので、その勧告を受けて米国政府としてどのような対応をとるかということはまだわかっていないということでございます。我が国として、今後、それについて事態の進展、推移を注視していきたいというふうに思っております。

 基本的な考え方といたしまして、米国とキューバの間には非常に長くて複雑な関係があるわけでございます。我が国といたしまして、キューバが、人権の状況が改善をし、民主化をし、経済改革を進め、そういった中で、米国、キューバ両方の友人でございますから、両国の関係が改善をしていくという状況になることを期待しているということでございます。

谷本委員 日本はキューバとアメリカ合衆国、両方の友人であるという外務大臣の言葉を信じまして、もし何か国際社会において、日本が、人権侵害という国内の問題もありますけれども、外部からやはり内政干渉するということも、これはある意味では他国から、アメリカからキューバへの人権侵害という問題にもなり得る今回のこの報告書だと私は個人的には思っております。

 大臣の今の言葉を信じまして、そういった実際の事態に陥らないような努力を日本政府としてしていただけることをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

米澤委員長 次に、丸谷佳織君。

丸谷委員 公明党の丸谷佳織でございます。

 私は、平壌で開催されました小泉総理と金総書記との日朝首脳会談に関連して質問をさせていただきます。

 今回の総理の訪朝では、平壌宣言を再確認したこと、また家族五人の帰国が実現をしたこと、そして北側より一方的に死亡あるいは入国なしとされていました十名の拉致被害者の方々の再調査を行うことになったこと、そして曽我さんについては第三国で家族と再会できる見込みとなったこと、また核、ミサイルについては弾道ミサイルの発射実験の凍結が再確認されたことなど、各分野におきまして一定の前進を見たと評価をしております。

 しかしながら、一定の前進以上に期待が多かった分野も非常に多く、総理が帰国後、拉致被害者家族連絡会に対して説明を行いましたが、私もニュースでその場面を拝見いたしましたが、家族会の皆様の厳しい声は、やはりこれは、総理も当然でございますが、政治全体が、政府全体として、また私たち議員一人一人もしっかりと受けとめながら、今後の行動につなげていかなければいけないというふうに考えております。

 今後の問題としまして一番重要となってくる事柄の一つに、再調査のあり方というものがあると思います。十名の方については、北側より解決済みとしていたところを今回白紙に戻して再調査をするわけでありますが、以前と同じ調査の方法では、これは再調査の意味がないであろうと考えております。

 その意味において、日本がこの再調査について大きく関与をしていく必要がありますし、また、日本側から、拉致事件に詳しい警察幹部ですとかあるいは法医学者の参加が求められると考えますけれども、現在のところ、この再調査について、どのようなお考えを持ってどのようにしていきたいと考えていらっしゃるのか、また、期限の設定も大事であるという声も出ておりますが、この点についてもあわせてお伺いをしたいと思います。

川口国務大臣 この再調査のことですけれども、総理と金正日国防委員長との会談の中で、これについて先方から、白紙に戻して、改めて直ちに本格的に、徹底的に調査をするという言質を会談の中で総理が引き出したということでございます。

 それで、どのようなやり方でやっていくかということが、御指摘のとおり非常に重要なポイントであると考えております。日本側の参加の問題について、これは日本側の考え方としては、日本側の関係者が必要に応じて参加をしていくということを検討していくという考えで今おります。どのような形でやるかということについて、できるだけ早く先方、北朝鮮側と打ち合わせに入りたいというふうに考えています。

 期限についてお話がございましたけれども、これは、金正日国防委員長がみずから、できるだけ早くということをおっしゃっていらっしゃるわけでございまして、我が国としてやはり、向こう側が調査をしたことについて反論をする。あるいは、こちらも情報を持ってそれに対応していくということも重要であると思いますので、そういったことについては、家族会の方々の御意向あるいは御協力、御支援もいただきながら、日本としてできるだけのことをやっていく。その中で、いつまでに、できるだけ早くということに変わりはありませんが、具体的な日にちを設定するということについては、今、具体的にこうだというふうに北朝鮮に言っているということではございません。やり方については、これから北朝鮮と協議をしていくということになります。

丸谷委員 大体打ち合わせ等のめどは、もう今の時点でお答えしていただける部分があるんでしょうか。早くやっていきたいという御答弁を今いただいたんですけれども、この点についてはいかがでしょうか。

川口国務大臣 この期限、向こうと協議をするということをいつまでにやるかということですけれども、私は、今週中にも先方とコンタクトをするようにという指示をいたしております。それで、できるだけ早く成果を出していくということが大事であると思っています。

丸谷委員 また、今回、家族に再会することが本当に非常に残念ながらかなわなかった曽我ひとみさんに対しても、曽我さんの様子を報道を通して見ている限りですけれども、気丈になさっていますが、非常に痛々しく、そのお気持ちを察すると胸が痛むわけですが、今後の進展も含めて、曽我さんに対してもできる限りのサポートというものが今まで以上に必要になってくるものと思われます。

 今大臣の方から、今週中に調査についての打ち合わせをするようにと指示を出してありますというお話がありましたけれども、質問の通告はしておりませんが、では、今週中に、曽我さんの第三国で会われる可能性がある御家族の件についても結論が出るということになるんでしょうか。

川口国務大臣 先ほどの再調査の件は、今週中にもコンタクトを開始するということで、今週中に協議が終了するということには必ずしもならないというふうに私は思っています。

 それから、もう一つのお尋ねの、曽我さんの再会、これをどのように進めるかということですけれども、この点については、もう現地で既に先方とこれについて取り組みをできるだけ早くやりましょうということの話は始まったわけでございまして、今外務省としてやっているのは、どこの場所が、これは曽我さんの御意向ということが非常に大事ですし、その他いろいろな考慮しなければいけない要素がありますので、どこの場所がふさわしいかということの整理を今いたしております。いろいろな観点があって、例えばジェンキンスさんが置かれたお立場から、どうしてもだめなところというのもあるわけでございます。

 そういったことを洗い出しをするということをできるだけ早くやる、それで、一日も早く再会が可能になるように。そういった洗い出しが終わった上で、これは、曽我さんの御意向、北朝鮮にお住まいの家族の御意向、北朝鮮政府の意向、そしてその第三国の意向、いろいろございますので、そういった調整をする必要があると考えています。

丸谷委員 ありがとうございます。

 帰国されました五人のお子さん、そして、先ほども申し上げましたけれども、曽我さんの心のケア、また生活面でのサポートというのは、今自治体の方でかなり努力をされて、非常に細かいマニュアル等もつくられておやりになっているようでございますけれども、内閣支援室もやはり、自治体に任せっきりだと言うつもりはないんですけれども、五人のお子さんが帰国されたことに関して、より一層、今後の支援のあり方というのも、国も細やかな視点でかかわっていく必要があると考えておりますけれども、この支援のあり方について今どのようにお考えになっているのか、この点についてお伺いします。

小熊政府参考人 お答えいたします。

 国におきましては、帰国した拉致被害者またその御家族につきまして、我が国で安んじて生活していく上で、精神的ケアないしは生活の身の回り、丁寧に対応していかなければならないというふうに考えております。

 拉致被害者とその御家族に対する日常的な支援につきましては地元自治体が中心になって行うことになっておりますので、例えば生活全般の相談に乗るための相談員の設置、ないしは心のケアを含めました心身の健康管理を行うための専門家チームの設置などにつきまして、国の委託事業として地方自治体に委託しておりまして、その実施に当たりましてはきめ細かい相談に乗っているところでございます。今いろいろ報道されているものも、私どもの委託事業として各自治体にやっていただいておるところでございます。

 今後とも、関係省庁と連携いたしまして、被害者の方々及び御家族の意向を十分に踏まえまして、きめ細やかな対応を自治体ができるように支援してまいりたいと考えております。

丸谷委員 今後、細やかなというか感情のこもったケアをぜひしていただきたいと思います。

 今御答弁いただいたのは、今自治体がやっていらっしゃるサービスに関してはすべて国からの委託事業ですという御答弁があって、確かに形はそうなのかもしれないんですけれども、お子さんも、拉致をされた御両親から北朝鮮でお生まれになって、初めて日本に今回入国をされて、これから生活をしていく上に当たって、行政感覚だけではやはり割り切れない、もっと感情のこもったケアというものが必要になってくるでしょうし、それがないという意味で今御答弁なさったわけではないと思うんですけれども、非常に、言葉一つにも気をつけながら、全体としてきめ細やかな、豊かなサービスをぜひこれからしていただきたいというふうに思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 では、次の質問をさせていただきます。

 今回の訪朝の結果については、世論調査を見てみましても、賛否両論分かれています。北朝鮮に対しまして二十五万トンの食糧支援、あるいは一千万ドルの医療品支援を日本側は約束してきたわけですけれども、このことに関しては、過半数を超える日本の方が評価をしない、反対だということをお答えになっていらっしゃいます。

 しかしながら、人道援助というのは政治目的とは別に考える視点というのも一つ私は日本にとって必要ではないかというふうに考えます。

 昨年、アメリカの例を見てみましても、悪の枢軸の一つの国として批判をしておく一方、WFPを通じまして十万トンの食糧支援をしているということから考えても、今実際に日本にできる人道支援というものがあるのであれば、それはするべきだというふうに私は考えております。

 また、批判を受ける一つの要因としまして、経済制裁法、この経済制裁というカードを日本は放棄したのではないかといった批判もされておりますが、実際には、今、国会の中で特定船舶入港禁止法が提出をされ、また既に改正外為法が成立をしているという中において、対話と圧力の両方のカードを持っていくというのはこれは当然のことでありますし、今回の総理の訪朝の結果がこの圧力というカードを放棄したことになるのかどうか、この点については、私はならないのではないかというふうに思っております。

 というのは、平壌宣言を遵守する限り外為法また入港禁止法の制裁発動はしないということは、宣言を遵守しているか否かは我が国の判断であるというふうに考えられるわけですから、これは判断としては、いつでもこの制裁というカードは当然我が国の手中にある、これは発動しませんよということにすなわちつながるものではないというふうに考えておりますけれども、この点について外務大臣の見解をお伺いします。

川口国務大臣 おっしゃったとおりでございまして、その判断は我が国が主体的に行うということであります。

 総理がおっしゃったことは、従来からの我が国の政府の方針を確認したというものであって、今までずっと申し上げている我が国の対話と圧力という基本的な考え方を何ら変更するものではないということです。

丸谷委員 ありがとうございました。

 外務大臣は、日本にこの期間いらっしゃりながら、各国との連携あるいは外務大臣としての各国との調整、連絡等に、お仕事を一生懸命していただいたというふうに思いますけれども、今後、六者協議に向けて、今回のことを機に、再び、核、ミサイルの問題の解決も含めて、国際社会とぜひ歩調を合わせて、外交の面で努力していただきますようにお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 以上です。

米澤委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 民主党の前原でございます。

 時間が限られておりますので、簡潔に御答弁をいただきたいと思います。

 まず、我々の北朝鮮問題についての考え方を若干申し上げたいと思います。

 そもそも、罪のない日本人を拉致した犯罪者、これが北朝鮮であります。ということは、拉致被害者とその家族を帰すことは当たり前のことでありまして、本来であれば、相手側が連れてきて、そして謝罪をするというのが当然のことではないかと私は思います。

 しかし、総理が会いに行かなければ連れてこられなかったということについては、北朝鮮という国を前提とした場合に、全く否定をするものではありませんけれども、しかし、多くの間違いを今回犯されたというふうに私は思っております。したがいまして、その間違いというものをどのように是正していくのか。

 そしてまた、そもそもこの評価について、私は、マスコミでは評価するということでありますけれども、これは新聞社の人とも話をしていますと、聞き方がまずいんじゃないかと。つまりは、家族五人の方が帰ってこられることはよかったというような評価はかなり多い。つまりは、訪朝自体が私はすべてよしというふうなことにはなっていないというのは、この食糧支援等に対する批判の多さということからもわかるのではないかと思っております。

 しかも、情けないことに、きょうの平壌国営放送では、きのうまでは、偉大な金正日総書記が小泉首相に対面したということでしたけれども、きょうの放送では、偉大な金正日総書記が小泉首相に会ってあげた、こういう言い方をしておりますし、また、食糧支援というものを相手から申し出てきた、こういう評価になっているわけでありまして、まさに国辱ものであるということを私はまず申し上げたいというふうに思っております。

 さて、それを前提にして、四つのことを私は聞きたいと思います。

 まずは、この間の事態特でも話をいたしましたが、拉致問題の完全な解決というのは一体何なのかということであります。

 五人の家族の方の完全な帰国、十人の方の安否、それから特定失踪者というものの完全解決というものが拉致問題の完全解決だというふうに私は思っておりますが、先般、総理は、北朝鮮の納得のいくものが、合意をするものが、この特定失踪者も含めての完全な解決だということをおっしゃいました。これだと全く話にならないと私は思うんですね。

 つまりは、先ほど、十名の安否についても直ちに白紙の状態から本格的な再調査を約束した、これは前進だということをおっしゃいましたけれども、総理も言われましたけれども、これは前回の訪朝でうそを言われていたということを全く認めるものなんですよ。つまりは、十名の安否については向こうから回答があったわけです。それを全く今まで無視されていて、そして今度は直ちに白紙の状態から本格的な再調査を約束したということは、前回うそを言っていたということを金正日そのものが認めたことになるわけでありまして、そういう意味では、これを前進と言うのは噴飯物だというふうに私は思っております。

 そういう前提に立って、もう一度この拉致問題の完全解決の定義。

 特に、特定失踪者の問題については、北朝鮮の納得というのはおかしいんじゃないですか。つまり、北朝鮮が犯罪を犯して、犯罪者みずから納得することで合意したことが完全解決だと言うのであれば、向こうの言い分に乗った形で完全解決ということになってしまいますね。

 しかも、さっきの白紙の問題もそうです。つまりは、前回うそをついていましたと。そして、そもそも金正日というのは初めどう言っていたか。拉致については自分は指示していないと。つまりは、自分は指示していなくて知らなかった、軍の一部の妄動主義、そして軍の一部のいわゆる英雄主義でしたか、そういうものにおいてなされたことであって、自分は知らなかったと。そんなことはあり得ないわけです。

 だから、そういうことも含めて考えると、向こうが納得する形での拉致の問題の完全解決ということは、ましてや日本が望む拉致の問題の完全解決にならないのは火を見るよりも明らかであります。

 どういったことをもって拉致の問題の完全解決とするのか、もう一度答弁してください。

川口国務大臣 前回の総理の御答弁は、私ちょっと今手元に議事録はございませんけれども、私の記憶では、双方の納得をするということを言われて、北朝鮮の納得をするというふうには言われなかったというふうに私は思っております。基本的に、その総理のおっしゃったことというのは、従来の考え方、我が国の政府の考え方、それを述べられたというふうに私はあのときそばにおりまして理解をいたしました。

 それで、我が国の今まで考えていたことといいますか、この拉致問題についての考え方というのは何かということでありますけれども、一つは、五人の方の八人の家族の方の帰国ということが一つございます。これについては今回五人の方の帰国が実現をしたということであります。それから、残りの三人について、これは第三国で再会の機会をつくるということで問題に筋道がつけられたということであるというふうに思っております。

 それからもう一つ、安否不明者、これについてですけれども、これは再調査を本格的に徹底的に白紙に戻して直ちにやるということを金正日総書記が言ったということでございまして、これについては具体的に、先ほど別な委員に御答弁しましたけれども、今後、どのような形でやっていくかということを協議しますが、いずれにしても再調査を行われる。

 それから、いわゆる特定失踪者、これにつきましては、これは前から言っていますが、もし拉致である、拉致の被害者であるという認定がされた場合には、これについて含めていくということは、既に北朝鮮に前々から伝えているということでございます。

 ですから、基本的に、その十人あるいは安否不明者についての調査、そして八人の方の御帰国、曽我さんについて多少異なった筋道にはなりつつありますけれども、そういったことであって、大事なことは問題がそういう形で前に進んでいくということであって、その過程に、いろいろ約束をどうしたとか、いろいろな話が北朝鮮との間でありましたけれども、そういうことはともかくとして、前に進めるということが大事なことであって、それが我が国の拉致の問題についての解決という意味での今の考え方であるということであります。

前原委員 双方の納得ということは、今おっしゃいましたね、大臣が。ということは、日本側が納得しなければ、北朝鮮がこれだと言っても納得しないということもあり得るということなんですね。つまりは、徹底的に日本側が調べて、日本がその点について納得しなければ、それは双方の納得とは言えない。そのことを、イエスかノーかだけで結構ですから。

川口国務大臣 我が国の拉致の解決の考え方というのは、先ほど申し上げたような考え方に基づいて解決が行われるということであります。

前原委員 質問に答えてください、質問だけに答えてもらったらいいんです。

 つまりは、我が国が納得をしなければ双方の納得にはならない、こういうことですねということを言っているんです。

川口国務大臣 総理がおっしゃったことというのは、先ほど申し上げたような二つについての考え方について、それが満たされれば納得をするということであるということを総理はおっしゃっていたんだと思います。

前原委員 ですから、犯罪を犯したのは北朝鮮ですよ。そして、うそをつき続けているのも北朝鮮ですよ。その北朝鮮が情報を提供して、そして北朝鮮はこれだけですと言って、その時点で北朝鮮側の納得が得られなければ双方の納得にならないというトーンダウンになったんですよ、この間の話は。

 したがって、日本側が、例えば、平成十四年の十二月二日に私が予算委員会で質問して、谷垣さん、このときは国家公安委員長でしたけれども、谷垣大臣がおっしゃっているのは、警察が、中は飛ばしますけれども、

 拉致容疑事件だと判断しているのは、十件十五名でございます。これについてももちろんさらに力を尽くして全容を解明しなければならないわけですが、そのほかにも北朝鮮の関与がなしとは言い切れないものがございまして、これには、実は濃淡はさまざまでございます。相当これは北朝鮮の可能性があるなと思われるものもあれば、何とも言えぬなというものもございます

と。しかし、「これはやはりきちっと洗い直しをして、」云々ということをおっしゃっているわけですね。

 平成十四年の段階でこういうことをおっしゃっている。つまりは、特定失踪者で、かなり濃淡の濃、黒に近いものがあるということは言っているわけですよ。それについて、しっかりとただしていく。そしてまた、家族会の方々も含めて、またいろいろな調査会も含めて、あるいはいなくなられたときの状況を含めて、これは北朝鮮に拉致された可能性が高いというものを、やはり納得しないと完全な解決にならないと思うんですよ。そこに日本としての、日本政府としてのハードルは持っていただきたい、そのことを申し上げているんです。御答弁ください。

川口国務大臣 先ほど申し上げたと思いますけれども、いわゆる特定失踪者の方々についていろいろな情報を、我が国は、日本国内だけではなくて、ほかの国との関連でもいろいろお願いをして集めています。そういったことをベースに、警察において拉致の被害者であるということが認定をされるのであれば、これは当然に安否不明者ということで扱っていくということをもう大分前から北朝鮮には既に伝えているということでございます。

前原委員 つまりは、そういったものの解決なくしては双方の納得にならないと。イエスかノーかだけで結構ですから。

川口国務大臣 警察において拉致の被害者であるということであれば、含めていくということを……(前原委員「警察も日本じゃないですか」と呼ぶ)日本の警察です、ということをずっと申し上げております。

前原委員 答弁になってないですよ。私が聞いたことに答弁してないです。答えていません。大事なところですから。

米澤委員長 川口大臣、再答弁できますか。

川口国務大臣 どこの部分でお答えになっていないか、恐縮ですが、もう一度おっしゃっていただければと思います。

前原委員 日朝双方の納得という言い方をされましたよね。ということは、日本側が問題点があるとして納得をしなければ、それは日朝双方の納得とは言えないんですねということを聞いているんですよ。これほどわかりやすい質問はないじゃないですか。イエスかノーかで答えてください。

川口国務大臣 ですから、答えはイエスと申し上げているわけですけれども、その日本の納得の内容は先ほど来申し上げていることである、そういうことでございます。

前原委員 だから、初めからイエスとおっしゃって、その条件は日本の警察がとおっしゃったらいいんですよ。

 それで、薮中さん、評価は別として、御苦労さまでした。その中で、ちょっと薮中局長にお伺いしたいのは、きょう地村さんが記者会見で、自分の知り得る日本人の情報については外務省に対して今までも話していますということをおっしゃっています。その中には横田さん、田口八重子さんについても含まれていますかということについては、はいそうですということをおっしゃっています。

 私は、拉致の全体像の解決には、地村さんは家族が帰ってこられてしゃべりやすくなると思うんですね。特に蓮池さんはかなり中心的な役割を果たしておられたんじゃないかということが、私の調べではそうなっております、相当御存じなんじゃないかと。つまりは、特定失踪者の解決において、御家族が帰ってこられて、やはり御家族が北朝鮮にいる間はしゃべりたくてもしゃべれないことがあったと思いますね。

 その中でお二人が、お二人というか、奥さんも入れると四名ですけれども、四名が御存じのことを今までも話をされたということもありますし、それから、やはり今申し上げたように、この四名、また曽我ひとみさんも含めて、曽我さんはまだ家族がおられるのでなかなか全部は言えない立場にあるかもしれませんが、この方々の証言というのはかなり大きなものになるのではないかというふうに私は思っております。

 今まで聞いたことの内容と、そして今後さらに、蓮池さん御夫妻、地村さん御夫妻から、北朝鮮における拉致された日本人の情報についてお聞きになる必要があると私は思いますけれども、その点について、局長、御答弁ください。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに、蓮池さん、地村さん、当然、向こうで一緒に過ごしておられたときもあるというふうに聞いておりますし、いろいろとその間の事情についてよく御存じなことだというふうに思っております。そしてまた、それは日本の警察の方も大変大きな関心を持っているというふうに承知しております。

 これまでのところは、まだそれほど詳しくお話を伺っていないという状況でございます。他方、全体の話としては、今まで脱北者の人たち等々いろいろな形で、我々も警察と一緒に日本であるいは外国へ行って話を聞いてきている。そうした活動というのはさらに一層強化して、実際に特定失踪者の中で拉致被害者と認定されるケースがあれば、当然その真相究明を求めていく、こういうことでございます。

前原委員 誤解を与えないように改めて申しますが、地村さん御夫妻も、そして蓮池さん御夫妻も、気の毒な被害者であります。しかし、被害に遭われていた間のことについては、私は、よく御存じだと思うんですね。しかし、今までは御家族のことがあってなかなか言えないこともあった。しかし、帰ってこられた。

 それはもちろん、全体が解決していませんから、曽我さんのことも含めて御心配になっている部分もあると思いますけれども、今局長がおっしゃったように、やはりこれからちょっと詳しく聞いてもらわなきゃいけないというふうに思いますので、今御答弁いただいたように、今までは余り詳しく聞いておられなかったということであれば、今後ぜひ、特に蓮池さん、地村さん御夫妻からはしっかりとした日本人の情報について聞いていただきたい。そして、その十名の方の安否、そしてまた特定失踪者について、みずから情報を持つという意思を日本国政府としてしっかり持っていただきたいというふうに改めて要望しておきたいと思います。

 それから次に、食糧、医療品支援という今までの答弁についてでありますが、この間、これも事態特で川口大臣にお伺いしましたところ、私が以前、平成十四年十二月五日の安保委員会で質問したとおり、間違いありません、こういう答弁でありました。

 つまりは、食糧と五人の家族の方の日本への帰国の取引ということは考えておりません、「五人の帰国とそれから食糧支援をバーターにする、取引にするということは考えていない、そういうことでございます。」と。きょうの総理の答弁も、違うんだということをおっしゃっておりましたけれども、人道的な見地で、あるいは国際機関からの要請だということがありましたけれども、だれが考えても、そんなことは額面どおり受け取るわけにいかないでしょう。

 それは、この時期にやるということは、少なくとも、善意で考えて、日本政府が仮にそうだったとしても、そういうふうに見えないわけでしょう。見えないようなときに、わざわざなぜこの時期に、二〇〇〇年からとめていた人道支援をなぜ今の時期にやったのか。その点についてちゃんとした御説明がないと、今までの政府答弁とは全く違うということを言わざるを得ません。その点について御答弁ください。

川口国務大臣 前から申し上げていたとおり、バーターということでは全くないということは、これはきょう総理もおっしゃったとおりでございます。それがそう見えないとおっしゃる方もいらっしゃるのかもしれませんけれども、我々はそのように考えていない。

 人道支援というのは常に、ニーズがあって、それをいろいろな見地から総合的に考えて行う話でありまして、ですから、我が国は既に竜川のケースについて人道支援をやっているわけです。それから、国連関連の機関がいろいろなニーズについてアピールもずっと出してきているということもあるわけでございます。

 人道支援をやるということについて、それがたまたまバーターに見えるかもしれない時期だからやらないというのはおかしいのではないかと私は思っております。

前原委員 全く理由になっていないですね。竜川のものは、あれは物すごく額も小さいんですよ。今回は二十五万トンと一千万ドルでしょう。額が三けたぐらい違うと思いますよ。だから、それは全然比較にならないですし、私が質問したお答えになっていない。

 つまりは、二〇〇〇年からやってこなかったことをこの時期になぜやるんだ、国際人道的観点から。今までやっていなくて今何でこの時期にやるのか、その説明になっていないじゃないですか。

川口国務大臣 まず、ニーズがあるということが一つです。それから、一連の、総理が北朝鮮に行って金正日と話をした、そういった中での向こうの対応について、核にしても拉致にしてもあるいはミサイルにしても、北朝鮮が一定の前向きの動きをしたいと考えている、そういった、肯定的に、一定のですけれども評価ができるということがあったということであります。決してバーターをして五人を連れ帰してきたということではないということです。

前原委員 委員長、今の説明を聞かれて納得できますか。これは国民は納得できないと思いますよ。

 つまりは、話をして一定の進歩があったんであれば、一回目の首脳会談の方がそれは評価される方は多かったんじゃないですか。そのときにはしていないんですよ。していなくて、結果的には、家族の方を帰さずに、あの五名の方を帰さずに、そして今回五名の方を帰したというところの中で、やるという理由には全くなっていない、今のおっしゃっていることは。

 これを今やっても水かけ論だと思いますが、ぜひ、さっき申し上げたように、二〇〇〇年からやってこなかったものを今この時期にやったという明確な理由、政府の統一見解をこの委員会にしっかり出してもらいたい、みんなが納得できる、国民が納得できるものを出してもらいたいということを委員長に要望いたします。

米澤委員長 理事会で相談しましょう。

前原委員 よろしくお願いいたします。

 それでは、三番目の質問に行きます。

 日朝平壌宣言の評価についてということなんですが、薮中局長に技術的なことでお伺いします。

 日朝平壌宣言の中に書かれている「朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守する」という文言がございますね。この「関連するすべての国際的合意」の中にNPTとか米朝の枠組み合意は入るのかどうなのか、その点について御答弁ください。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 ここで言う国際的な、当然のことながら核及びミサイルに関係することでございまして、NPTあるいは米朝の枠組み合意、それから南北の非核化宣言等々が入るという理解でございます。

前原委員 そうすれば、枠組み合意は崩れていますよね。だからKEDOを中止しているわけでしょう。そして、NPTを脱退すると言って、まだそれを撤回していませんね。ということは、北朝鮮はこの国際的合意を遵守していないということになりますね、薮中局長。

薮中政府参考人 まさに、日朝平壌宣言の後に核問題、核疑惑が出ました。そして、それが現在の六者協議に至る核問題、我々が、国際社会が直面する問題になっているわけでございます。

 当然のことながら、その核疑惑というのは、北朝鮮による核開発ということが明らかになってきたということでございます。その中でNPTの脱退表明があった。ただ、ここは国際社会の一つの対応として、当然のことながら、北朝鮮は北朝鮮で、なぜそういう行動をとったかということを言っていて、それは先にアメリカの側からの違反があったからだ、こういう言い方をしている。アメリカ、日本は、そうではないと逆の言い方をしている。

 そこで、それについての結論、あるいはNPT脱退表明についての結論ということについてですけれども、あえて国際社会は、今何が必要かということからいえば、この核問題全体を平和的に話し合って解決する、その道をとろうということでございます。したがって、IAEAでももちろん一定の決議が出ておりますけれども、まだ、国連安保理に持っていってそうしてはっきりとさせるというよりは、六者協議を通じてこの問題を解決していこう、あえて言えば、そこをある意味であいまいにしておこうというのが国際社会の今の考え方であると思います。

前原委員 御答弁はよくわかるんです。意味は非常によくわかるんです。私が質問しているのは、国際的合意を遵守していますかということなんです。だから、政治的な判断、外交的な判断はよくわかります。大変よくわかります。私が質問しているのは、国際的合意を遵守していますかと。先ほど、国際的合意の中に米朝枠組み合意もNPTも入っていると。しかし、脱退もしたし、それが崩れていて、アメリカなんか、けしからぬと言ってKEDOをストップし、日本もストップしているわけですね。遵守していると言えるのかということを私はお答えをいただきたいわけです。

薮中政府参考人 重ねて、若干あいまいな回答になるかと思いますけれども、あえて申し上げますと、双方に言い分がある。当然のことながら、我々から見れば極めて遺憾な事態である。NPTの脱退表明であるとか、そうしたそれ以降の核開発の活動ということについては極めて遺憾な事態が生じていると思いますけれども、北朝鮮からいえば、先ほど申し上げましたような、先方が、アメリカ側が先にそういう違反行為をしたということを言っている。双方が違反行為をしたということを言っているという中で事態が生じている。したがって、我々としては、これを効果的に解決する方法を今、先ほど申し上げましたような形で行っている。

 したがって、そういう意味でいいますと、遺憾な事態は生じているということでございますけれども、それを効果的にどうやって解決するかというのが今の我々の努力だということでございます。

前原委員 外務大臣より薮中局長の方がわかりやすい答弁をされるので、私、薮中さんに聞きますけれども、この九月十七日の後ですよね、アメリカのケリー国務次官補が平壌に行って、そして、あなたたちは米朝枠組み合意を、いわゆる約束を履行していませんねということを言って、そして話をしてきたわけですね。つまりは、その前にこれをやっているわけですよ。

 つまりは、その前に話があった、なかったという議論はございましたけれども、しかし、一応、九月十七日の段階ではNPTも脱退していない、米朝枠組み合意も米朝間では崩れていないということが確認されているわけですけれども、その後にケリーが行き、そして、お互いが、まさに六者協議の前提となっているものに来ているとすれば、この日朝平壌宣言が結ばれたときの状況からは少なくとも変化している。

 では、その状況下で結ばれた国際的な合意を遵守するという意味においては、遵守されていないとは言えるんじゃないですか。

薮中政府参考人 精緻な理論的な解釈をすれば、あるいは委員御指摘の点が正しいのかもしれません。

 ただ問題は、先ほど申し上げましたように、二〇〇二年の十月にケリー特使が行った。そのときには濃縮ウランのことを突きつけて、こういうことをやっているということは米朝枠組み合意に反したことである、あるいは、少なくともその精神に反したことであるということを言い、その後は、若干水かけ論になっております。北朝鮮側は、それは自分たちはやっていないんだということを言う。アメリカ側は、それはやっているに決まっているということを言うということで。若干そこ自身は、我々はアメリカの言うことが正しいと思っておりますけれども、全体として水かけ論になる中で、六者協議の中でも、この濃縮ウランの問題について、一つの大きなイシューとして取り上げているという状況でございます。

前原委員 今局長が、アメリカの言い分が正しいと日本としては思っているということになれば、先ほど申し上げた、九月十七日以降にケリー国務次官補が訪朝されたということからして、つまりは、この九月十七日の平壌宣言という文書自体がその前に結ばれたことから考えるならば、そのとき結ばれた国際的合意を遵守するということは遵守されていないということになるということの答弁になりますよ。

 理屈は結構ですから、イエスかノーでお答えください。

薮中政府参考人 したがって、申し上げましたように、北朝鮮側はそうした活動はしていないと言っている。そういう意味で、そこに意見の違いがあるということでございます。

前原委員 ということは、お互いが、日朝平壌宣言を遵守する限りはということで、北朝鮮側からいえば遵守していると言えるかもしれない。しかし、日本側からすれば、アメリカの言い分が正しいという前提に立てば、その国際的な合意を北朝鮮は守っていないということになるんじゃないですか。ということは、日本側から見れば日朝平壌宣言は遵守されていないという結論になるんじゃないですか。

薮中政府参考人 まさに、私申し上げましたように、理論的にどういう精緻な解釈をするかという問題はあろうかとは思いますけれども、基本的にこれは政治宣言として何が大事かといえば、核問題については核問題の解決を図ることであろうと思います。

 したがって、我々としても、その時点で、二〇〇二年の九月十七日の時点あるいはそれ以前にどういう核開発が行われていたのか、当然これは検証しなければいけません。そして、鋭く追及しなければいけない。その作業を今行っているということでございます。

 そうした中で、果たして北朝鮮の言っていることが正しいのか正しくないのか。我々は、私申し上げましたのは、もちろんいろいろの情報にかんがみればアメリカの言うことが正しいのであろうという解釈でございますけれども、それがまさに、そういう基本を持ちながら、今、六者協議の場で北朝鮮に対して核開発の撤廃ということを求めているわけでございます。

前原委員 外務大臣、今薮中局長がるる御説明されたように、九月十七日時点での平壌宣言というものについては、基本的には状況が変わってきているということは答弁されてきたわけです。変わってきていて、しかし、政治的な考え方の中で、この国際的合意を遵守していないということの判断はまだ留保している、こういうことですよね。

 ということは、堂々と、日朝平壌宣言がいまだに九月十七日に結ばれたような状況で、特にこの核の問題について残っているとは言えないんじゃないんですか。答弁ください。

川口国務大臣 金正日総書記は、今回、総理に対して、日朝平壌宣言を守っていくと言われたわけです。それから、核の問題にしてもミサイルの問題にしても拉致の問題にしても、それに対して一定の前進があった、そういう状況であるということです。

 この日本と北朝鮮の間の国交正常化をしていくということの重要性、そしてそのための政治的な文書である日朝平壌宣言でありますから、それを守っていくという、二日前ですか、三日前ですか、そのときのお話ということは非常に重要な御発言であるというふうに私は考えています。まさにそれが総理が行かれた意味であり、そして今後のことに向けて日朝平壌宣言の持つ意味であるというふうに考えています。

前原委員 外交ですから、一〇〇%白か黒かで割れないのはわかりますよ。しかし、日本の立場として、北朝鮮は遵守すると言っているけれども、実態は遵守していないじゃないですか。枠組み合意にしたってNPTの脱退表明にしたって、結局好き勝手やっているじゃないですか。それで、言葉だけは遵守している、だから制裁はしないということになると、北朝鮮の流れに全く乗った外交をしていると言われても、私は批判を受けざるを得ないと思いますよ。

 ちょっと別の観点から質問します。

 九十分という会談が長いか短いかじゃない、内容なんだとおっしゃいました。核の問題は、まさにさっきから薮中さんがおっしゃっているように、同床異夢なんですよ。

 では、例えば、同床異夢というのはどういうことか。非核化というゴールについてはもう前々から言っているわけですよ。これが進展があったなんというのは笑い物ですよ。前から非核化の話はしていた。だから南北間でそういう合意をしているわけですよ。

 あと、それと同時に大きなポイントとしては、彼らは、要は、核開発にしても、プルトニウムだけで、濃縮ウランはやっていないというふうに言っているわけですよ。しかし、それは違うということを国際社会として言っていて、まさに薮中さんが代表で出ておられる六者協議では、濃縮ウランはどうなんだということを言っているわけでしょう。あとは、向こうは、原子力の平和利用だったらいいんだ、こういうことを言っているわけでしょう。

 まさに、総論は、お互いが確認できるのは政治文書にできるかもしれないけれども、各論に入ったら、まさに薮中局長は当事者だからおわかりだろうけれども、その濃縮ウランについては認めない、あるいは原子力は平和利用だったらいいだろうと向こうは言っている、しかしこっちはノーと言っている。

 では、総理は、しっかりその点をわかって、十分な議論をしたんだということをおっしゃいましたけれども、核の問題について、濃縮ウランのことについてちゃんと言及をされたのか、あるいは平和利用でもだめだよということをしっかりおっしゃったのか。この二点についてちゃんと言及されたんですか、総理は。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 総理の方からは、完全な核廃棄、そしてそれは国際的な検証に基づくものである、このことが基本であるということを非常に強く申されまして、特に、議論の中では、核廃棄をすることがなぜ北朝鮮にとって利益になるのか、核を持つことはもちろん絶対に認められないしまた北朝鮮のためにもならないんだということ、そして具体的に、大きな意味で言うアメリカに対する不信感ということ、これが誤解であるということで、総理は御自身がブッシュ大統領と話し合った内容を伝え、そして金正日国防委員長のアメリカに対する考え方が誤解であるということを随分伝える、そういう非常に中身のあるやりとりがあったということでございます。

 具体的な、今御指摘の濃縮ウランあるいは平和利用ということ、これについては、若干、私が考えても技術的になるという側面もございます。首脳同士の話として、当然のことながら、完全な核廃棄、そしてそれは国際的な検証のもとでのものであるということで、十分と相手はわかっているというふうに判断いたします。

前原委員 いや、私はわかっていないと思いますよ。

 つまりは、総論で言えば、核の問題について、非核化はいい、しかし平和利用についてはその例外だというのが向こうの主張でしょう。そしてまた、核開発についても濃縮ウランはやっていないということを言い続けているわけですから、それは、総理を守られるような言い方だったら、私は局長らしくないと思いますよ。やはり技術的な問題じゃないですよ、それは。だって、今ポイントになっている問題ですから、それは。平和利用の問題と濃縮ウランについてもちゃんと入れろということについては、そこがすれ違っているわけですよ。同床異夢になっているわけですよ。

 だから、私の質問時間が来たので終わりますけれども、先ほど申し上げたように、日朝平壌宣言を遵守するという前提も、まさにもう政治的な玉虫色に変わってきている。つまりは、米朝枠組み合意も壊れているし、そしてNPT脱退も表明している。しかし、向こうは何だかんだと言って、日朝平壌宣言を遵守すると言っているから前進なんだと。そんなもの、私から言わせると全く前進じゃない、お互いの言い分を今まで言い合っただけ。それから、拉致の問題にしたって、また白紙からちゃんと調査しますということは、期限も切っていないし、もともと一回目に行ったときのことがうそだったということを明らかにして、それが前進なんだと言うのも全くお笑いぐさ。

 そして、今話があったように、朝鮮半島の非核化の問題にいたしましても、お互いの考え方は全くすれ違っているわけですよ。それをまさに政治手法として評価するというようなことを言うのは、私は国民の目をだますものにしかならない。そういう言い方をされるということは、私は本当に、長い目で日本の毅然たる外交というものに大きなマイナスになるということを強く申し上げて、私の質問を終わります。

米澤委員長 次に、増子輝彦君。

増子委員 民主党の増子輝彦でございます。

 小泉総理の北朝鮮への再訪問について幾つかの質問をさせていただきますので、よろしくお願いをいたします。時間が余りございませんので、私の質問にも端的にお答えをいただきたいと思います。

 今度の小泉再訪朝についての結果、何かすっきりしない重々しい気持ちと残念だなという気持ちと、本当に複雑な心境であります。確かに、五人の御家族の皆さんが日本に戻ってきたということについては、私も一定の評価をいたします。しかし、北朝鮮への私たちが対する形というのは、やはり五人が帰ってきたからそれですべてよしということではないということはお互い認識をしていると思います。

 実はきょう、拉致議連の会議がございました。その中で、御家族の皆さんが実は今大変な思いをしている。今回のこの小泉訪朝の結果、本当に、横田めぐみさんの御両親初め、十人の安否不明者あるいは多くの特定失踪者の方々の、その気持ちが大変な状況なんです。

 実はここに一枚の文書があります。これは非常に大事なので、この場をおかりしてちょっと読ませていただきたいと思います。家族会・救う会に対する御批判に対してという家族会の皆さんの実は文書なんです。

  五月二十二日小泉首相再訪朝終了後から、家族会・救う会に対する批判の声が多数上がっている。中には、拉致救出運動の古くからの支援者から失望したので支援をやめるという声も届いている。もちろん、支援してくださるかどうかは国民一人一人のご判断であり、これで支援をやめるという方のこれまでの支援に対しても心から感謝の意を表したい。また、批判の声をあげられていること自体、拉致問題に高い関心を持っている表れであり、かつての無関心に比べると有り難いことだと考えている。

  私たちは、ここでご批判の声に対していくつかのことを申し上げたい。

  批判の多くは、家族会と首相の面談で感情的なきつい表現が使われたことを理由と挙げている。

  まず、テレビではほとんど報じられていないが、発言者は首相の努力に対して敬意を示すあいさつと五人の帰国への喜びを述べていた。この点の誤解があるならば、ぜひ真実を知っていただきたい。

  もう一つは、私たちが何に怒っていたのかという点である。私たちは、自分の肉親を二十数年間帰さない金正日と数時間前直接会談しながら、小泉首相が未帰還者の真相解明を強く迫らず「期限なしの再調査開始、制裁発動なし、コメ支援」などという極めて不満足な結果しか出さなかったことに対して、事実上の幕引きと疑い、強い怒りを感じた。小泉首相の後ろに金正日の姿を見て怒りが爆発したのである。今回のご批判の声は、私たちの力不足もあり、その点についてまだ国民のご理解を得ることが不十分だった表れと考えている。

  蓮池さん地村さんのご家族が全員帰国できたこと、曽我さんについても第三国での再会ができる見通しになったことは、本当にうれしいことであり、心からお祝いの言葉を贈るとともに、この点に関する小泉首相をはじめとする関係者のご努力に率直に敬意を表したい。また、曽我さん家族が日本で暮らせるまでより一層の努力をお願いしたい。これで、拉致救出運動は次の段階に進める。政府認定の未帰還者十人とそれ以外の被害者の救出に力を集中できる。

  日本政府は首脳会談で北朝鮮が約束した再調査の早急な結果報告を求めるとともに、その報告が信じるに足るものかを判断するために、未帰還者に関するあらゆる情報を収集分析し、救出に備えていただきたい。また、北朝鮮が提供する調査結果が前回同様でたらめなものであれば、日朝平壌宣言に違反したと位置づけ経済制裁を発動することを宣言していただきたい。

  国会は早急に特定船舶入港禁止法を成立させるとともに、十人の未帰還者の生存を前提とした救出活動は、家族の意思だけでなく、日本国の国家の意思であることを再確認していただきたい。

  すべての拉致された同胞を助けだすまでたたかいは続く。多くの国民の皆様のご支援を心からお願い申し上げます。

という、実は、家族会・救う会に対しての批判に対しての見解の案ということで、きょう、私どもの手元に渡されました。

 五人の御家族の帰国というのは、先ほども申し上げたとおり、私も一定の評価はいたします。しかし、それ以外についても多くの課題を残したことは事実であります。大臣、今のこの家族会に対する批判等についての考え方、見解を簡単にお答えいただければありがたいと思います。

川口国務大臣 私も、今増子先生が読み上げられた文書を非常に重苦しい気持ちを持って聞かせていただきました。

 今回の総理の訪朝について、これはこの委員会の最初に申し上げさせていただきましたけれども、蓮池御夫妻、地村御夫妻、本当にお子さん方がこれで戻るかどうか、何とも言えぬ気持ちで日にちを過ごしていらしたというふうに思います。それは、二組の御夫婦だけではなくて、曽我ひとみさんもそうでいらしたと思いますし、それからほかの安否不明者とされている十名の方の御家族、それからまだほかの拉致されたのではないかと考えている方々の御家族、皆さん、全くその気持ちに差はなかったと私は思っております。

 そういう意味で、今回、一部、一歩前進をしたといいますか一定の前進があったというふうに私は考えておりますけれども、その方々のお立場からすれば、それは本当に足りないことだらけだったというふうに思われるのは当然のこと、そのお気持ちは私は痛いほどよくわかっているつもりでおります。

 そういう意味で、今残されている取り組まなければいけない課題、これは一々申しませんけれども、我々が共通に認識をしている課題というのはあるわけでございまして、それについて政府として最大限の取り組みをするということを先ほど来申し上げているわけでございます。

 それから、世論の方の……(増子委員「短く」と呼ぶ)はい。世論の御批判、これは民主主義社会でございますから、世論がいろいろな考え方をするということは、政府としても、あるいはそのほかのいろいろな、この間のイラクの人質事件というのもございましたけれども、そういうことに遭遇をした皆さんが経験をしていらっしゃることであろうかというふうに思います。

 みんなが思うことをきちんと述べて、そして社会としてまとまりのある課題の解決方法を見出していくということが大事であるというふうに思います。

増子委員 世論というのは私たち政治家とはちょっと違うのかなというのは、今回の小泉訪朝の結果の世論調査を見ても、ちょっと違うんですね。私は、今回の小泉再訪朝の最大の目的は一体何だったんだろうか、改めてこれは検証していかなければならないと思っているんです。

 小泉首相は、出発前の記者会見では、拉致家族被害者の全員の帰国だと実は話しておりました。結果的には全員ということにはなりませんでした。五人でした。と同時に、この拉致被害者家族全員の帰国ということは、少なくとも十名の安否不明者、百名を超えて四百名とも言われている特定失踪者の件についても、しっかりとやはり北朝鮮と、金正日と交渉してこなければならなかった。それが、何となくあやふやな形で、うやむやの形の中で、実は適当な言葉でごまかされてきてしまったのではないだろうかというふうに思っているわけです。

 今回、この十名の安否不明者、百名を超える、四百名とも言われる特定失踪者の件については、最初からこの訪朝の中で頭になかったのではないかと疑わざるを得ませんが、この件についてはいかがでしょうか。

川口国務大臣 この点については全くそういうことではないということは、先ほど前原委員に申し上げたとおりであります。

 政府としてずっと申し上げてきていること、それで、これは国会でも言っていますし、北朝鮮に対しても伝えてきているわけですけれども、いわゆる特定失踪者について、これは日本の警察もそれから外務省もいろいろな情報収集に今努力をいたしておりますけれども、これはずっとしてきておりますが、その中で、拉致の被害者であるということが認定された場合には安否不明者の中に加えて、徹底的な調査をする中に入れてもらうことになっているんですよと。これはもうずっと前から言ってきていることであります。

増子委員 しかし、その割には、今回の結果というのは非常に不満なんですね。これから先、十名の皆さんや百名を超える方々が本当に明らかになっていくかというと、私は、ほぼ絶望的な思いを実は持っているんです。

 そこで、外務省に幾つかの点をお尋ねいたします。簡単で結構でございますから、お答えを願いたいと思います。

 まず最初に、外務省は、小泉再訪朝、今回の再訪朝はいつ知らされたんでしょうか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 これは、一連の準備ということで、ことしの二月以降、具体的に日朝間の政府レベルでの協議を行ってまいりました。そして、五月初旬の北京における日朝政府間の協議、こうした一連のやりとりを経て、最終的に総理が決断されて、訪朝されるということになったわけでございます。それは、その一連のやりとりを経る中での最終的な決断ということを総理が今回の発表の前になされたということでございます。

増子委員 そうすると、総理から直接、具体的に訪朝というものについて知らされて、その準備に入ったということでよろしいんですか。

薮中政府参考人 今申し上げましたとおり、日朝政府間において、さまざまのやりとりを、二月以降、そして最終的には五月初旬には北京において行いました。そうした中で、総理にその協議の内容を御報告し、最終的に総理が訪朝を決断されたということでございます。

増子委員 その際に、具体的に今回の再訪朝の中で指示があったこと、例えば、拉致問題、核、ミサイル問題あるいは人道支援の問題、そういったことについての具体的な指示があり、そのための下交渉をしたんでしょうか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 もちろん、先方とのやりとりというのは、二月以降、そして四月、五月と行ってまいりました。

 その個々の具体的な内容ということにつきますと、話し合いの中身でございまして、先方とのお話もございますから、内容を詳しくお答えすることは控えさせていただきますけれども、その中で、さまざまの意見は、もちろん議論は行ってまいりました。そして、その都度都度、総理の御指示を得ながら協議を行ってきたわけでございますけれども、最終的には、首脳会談において、全体が総理のもとで決断されたということでございます。

増子委員 その過程の中で、実は、山崎自民党前副総裁と平沢勝栄代議士がいろいろと北朝鮮側と接触をしたという事実がございますが、今回の再訪朝について、このお二人がどのような形でかかわっていたのか。外務省は、その件については認識をしながら、また、その事実を報告を受けていたんでしょうか。

薮中政府参考人 事実関係としてお答え申し上げますけれども、山崎前自民党副総裁ほかが北朝鮮側と接触したということにつきましては、外務省として一切関与しておりませんし、伺っておりません。

増子委員 そうしますと、山崎前副総裁が、今度の訪朝結果については、いろいろと実は小泉訪朝後の記者会見等でも話をされているんですが、これは、そうすると、二元外交という形でとらえてよろしいんでしょうか。

薮中政府参考人 我々は、総理の御指示のもと、まさに一元外交ということで、政府間での話し合い、これが基本である、これがすべてであるということでやっておりますので、二元外交ということではございません。

増子委員 しかし、薮中さん、それはおかしいんじゃないでしょうかね。山崎さんは随分この件については深くかかわっていたという事実が明らかになりつつあります。御本人も、今回の結果についての幾つかの問題について、具体的にさらに言及されているということ。

 そうしますと、外務大臣、これは外務大臣を無視されて何かされたということにつながっていくんではないでしょうか。一体外務省は、そういう形について何も抗議もせず、あくまでも、それはそれ、これはこれと割り切って、無視されても、それはそれとしていくことはやぶさかではないということなんでしょうか。

川口国務大臣 これは、総理もおっしゃっていらっしゃいますけれども、北朝鮮政府との交渉というのは政府間協議しかあり得ないということでありまして、外務省としては、官邸と一緒になって、総理の指示、官房長官の指示をいただきながらこの交渉を準備していったということで、それに尽きるわけでございます。

増子委員 しかし、今回、大臣の出番が全くと言っていいほどなかったんですね。訪朝後についても、昨日か一昨日ですか、NHKの番組にちょっと出られたのを夜遅くの再放送で拝見いたしましたけれども、私は、やはり日本の外交という点からいきますと、もう少し外務大臣がしっかりと最重要課題の案件の一つであるこういった問題についてかかわっていくことが必要なのではないかというふうに思っているわけです。

 ましてや、山崎さんのような方々がある意味では二元外交でやっていくということについて、外務省、日本の外交ということについて、もっと強くこれから臨んでいかないと、あらゆるものがこういう形になっていくという心配を実は私はしているわけです。

 と同時に、もう一つお伺いいたしますが、今回、実は、小泉・金正日会談は約九十分であった。先ほども御答弁の中にありましたけれども、時間より中身だという話でありましたけれども、実質的には、通訳も入っていますから、その半分以下の時間しか交渉というものはなかったはずです。

 そういう意味で、今度のこの交渉の中で、日本が要求したことは全部間違いなく相手方に伝えることができたんでしょうか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、実質九十分間の協議でございました。

 往々にして、こういう首脳会談というのは、一方的にお互いが自分の立場を述べ合うということで、とうとうとした、ある意味で演説的なことがないわけでもございません。今回はまさに、恐らくは第二回目ということであったと思いますけれども、相手側の考え方もわかっている、あるいはどういう発言をするんであろうか、あるいは考え方、そうした中でのことであったと思いますが、極めて濃度の濃密な、そして活発なやりとりがあった。単なる一方的な表明、立場の表明ではなくて、非常に活発なやりとりがあった。

 そうした中で、小泉総理からは、まさに日本の言うべきこと、全体的な日朝関係、そして特に拉致問題、そして核、ミサイル問題、これについてきっちりと述べられましたし、熱を込めて述べられましたし、また、非常に活発なやりとりがあったというのが実態でございます。

増子委員 今回のこの小泉再訪朝の中身というのは、そんなに短時間でできるものではないと思うんですね。非常に濃密で、こちら側の要求を全部述べて、要求が受け入れられたということでは全くないと私は思うんですね。

 たまたま二十二日の午後、私は、外務省のある大先輩の、OBで、いわゆる大使をされた方と御一緒いたしました。どうも一時間半弱で終わったようですよとその方にお話を申し上げました。開口一番、その方は、あっ、失敗だったなという言葉を発せられました。外交交渉というのは、短時間は失敗なんだと。やはりできるだけ時間をかけて、自分側の要求を相手にのませる努力をしていかなければいけない。

 これだけの重要な外交交渉を、たった一時間半ですべて満足のいく結果が出たということについては、私は、そんなことはあり得ないと思いますし、そういうことで満足するようであれば、今度のこの小泉再訪朝というのは全くの失敗だったと言わざるを得ない。

 ただ、人間の感情として、五人の家族の皆さんが戻ってきたというあの場面だけが繰り返し繰り返し放映されるテレビというこの時代の中で、いかにも成果があったというような錯覚に国民が陥ってしまうのではないか。今後の経済制裁の問題、十人の安否不明者の問題、あるいは特定失踪者、先ほど私どもの鳩山元代表が質問している。自民党の皆さんのやじは聞くにたえない。十名の安否不明者の方々や特定失踪者の方々の質問なり問いただしをしているときにそれについてやじるということ自体が、私は、不見識だと言わざるを得ないというふうに思っているわけです。

 そういう意味では、今回のこの一時間ちょっとの交渉の中で、すべての段取り、すべての下交渉が既になされていた、この結果は最初からわかっていたということではないんでしょうか。もう一度お伺いいたします。

薮中政府参考人 繰り返しになりますけれども、極めて活発な、極めて濃密な会議であったということは私の実感でございます。

 三十余年、私も外交交渉に随分出ております。その先輩の方がどういうことで言われたのかはわかりませんけれども、その場におった者としては、極めて濃密な、極めて活発なやりとりがあったというのが私の率直な評価でございます。

 もちろん、すべてについて満足のいく結果が得られるかといえば、それはそういうことではございません。しかし、私が申し上げましたのは、日本の主張すべきこと、それはきちんと主張されたということでございますし、そしてまた、この首脳会談において、あそこですべてのことが最終的に決められたということでございます。

増子委員 薮中局長、外交官としてすばらしい才能と実力を持っている方ですけれども、現場におられて、肌で感じて、交渉の場に本当におられたということになれば、今度の結果は、外交官として点数をつければ何点ぐらいですか。

薮中政府参考人 一官僚がそういうおこがましいことをするということは差し控えたいと思いますけれども、私としては、非常によい会談であったと。もちろん、結果について、すべてに満足のいくものではございません。しかし、おのおのについて、一つの、一定の進路が出されましたし、もちろんこれから大事なことは、まさに十名の安否不明の方々の徹底真相究明ということについても、先方が白紙でもう一度きちんと本格的に調査をすると、これをどうやって実現するかということ、これはこれからの我々の努力でもあるというふうに思っております。

増子委員 それでは、拉致問題について質問させていただきたいと思います。

 実は私、前回の質問のときにも薮中さんにおいでいただいたんですが、時間がなくてお尋ねすることができませんでしたけれども、改めてこの場でお聞きをしたいと思います。

 日本の、五人帰ってこられた、蓮池さん、曽我さん、そして地村さん、この方々が日本に帰ってきたときに、一時帰国であったというようなことがずっと言われ続けてまいりました。そして、北朝鮮からすれば、約束違反だ、約束を破った破った、田中さん、と言われていた。しかし、大臣もあるいは薮中さんも、国会の答弁の中で、約束はなかったけれどもそういう交渉はあったというような表現を使って発言なり答弁をされておりました。

 今は話せるんじゃないでしょうか。約束はなかったんでしょうか、帰すという。

薮中政府参考人 そうした意味での約束はなかったというのが私の理解でございますし、今回の首脳会談において、まさに金正日国防委員長からの発言としてあったことは、今までのこととして言って、日本側が改めて逆拉致をしたとか、そういったことを言ってももう仕方がない、きちんと、帰りたい人は帰る、そして離散家族のようなものをつくる必要はないんだという大きな判断をしたんだということを言っていました。まさに大事なことは、問題をどうやって解決していくかということであろうというふうに思います。

増子委員 白紙に戻してという言葉に、ある意味では我が国も救われたのかもしれませんね。

 先ほどもちょっと話がありましたとおり、調整があったとか、あるいは交渉があったとか、そういう表現が今回はすべて白紙に戻ったというようなことを考えれば、日本の政府の方に、のどに刺さったとげもこれで取れたのかなというような気が私もいたしているんです。

 そこで、この拉致問題について調査委員会をつくるということであります。先ほど来もいろいろ質問が出ておりました。しかしこれは、政府内で随分食い違いがあるように報道されております。

 小泉総理は、帰国前の平壌での記者会見で、直ちに改めて本格的な再調査をするように求めて同意を得た、そして帰国後の日本での記者会見では、新しい再調査の委員会とか機構とかいう日本側も参加した中で努力しなければならないというような話をされておる。これに対して安倍自民党幹事長は、二月の政府間交渉で日本側の提起の後、犯人と一緒の調査は茶番だとの批判をしながら、この話は消えたはずだと発言をしている。細田官房長官も、調査委員会という組織をつくって討議する政府の審議会のようなやり方ではなくて、北朝鮮が白紙から調べて結果を知らせてほしいというふうに修正をしている。随分違うんじゃないでしょうか。

 この食い違い、どのように調整をしていく。どちらの意見が、考え方が、発言が正しいんでしょうか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、北朝鮮側が直ちに調査を再開する、白紙に戻って本格的な調査を再開するということでございます。したがって、これはまず北朝鮮側の調査が行われる。その間に日本側からも資料を出す。既にもう百五十項目の質問事項も出しております。そして、またそれ以降も新しい材料も出てきております。そうしたものも相手に突きつける。そういう意味で、日本側も必要に応じて、日本が判断すればその調査にも加われるようにするということが今回の一定の理解でございます。

 そういう意味では、具体的に合同委員会といったものをつくる、そういうことでの申し合わせは全くございません。まずは北朝鮮側がきちんとした調査をしろ、そしてそれについて日本側として納得ができるかどうかでございますけれども、その間にも日本が能動的に自分の判断でその調査にも加わるあるいは質問状を突きつける、こうしたことで我々がより納得のできるような結果を得るように努力をしていく、これが実態でございます。

増子委員 そうしますと、日本側から既に出している百五十項目の質問は白紙に戻らないということの確認でよろしいんですね。

薮中政府参考人 これは当然でございますし、必要があれば、また百五十項目、それの改訂版というか、それ以降の情報もございますので、出していくという考えでございます。

増子委員 この中で、先ほども質問として出ましたけれども、新たな認定者と認知された方がいれば真相究明が必要である旨の伝達を実は相手側にしたということでありますが、改めてお聞きいたしますが、この新たな認定者というのはだれが決定をするんでしょうか。そして、だれがそれをきちっと相手に伝えながらやっていくんでしょうか。

 そして、時間が随分経過しています。これはそんな時間的な猶予はないと思うんですね。ですから、もしするならば、それこそ直ちにこの認定作業に入らなければいけないと思うんですが、この件についてはいかがでしょうか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 特定失踪者の件については、まず当然のことながら警察でございます。いずれにせよ、日本側における拉致被害者としての認定行為でございますから、まずは警察、そしてそれが法律に基づく拉致被害者としての認定が行われる、そういうことでございます。

 それがあれば、当然のことながら、外務省が先方にそのことを伝えて、真相究明の、今までは十名の方についての真相究明を求めておりますけれども、それにさらに、この新しく認定された拉致被害者ということになりますと、その事案については当然それに追加するということでございますし、その作業は、まずは警察でございます。

 そして、我々も、いろいろ警察とも協力しながら、国外でも情報収集をしている、そういう努力をより加速しなければいけないというふうに思っております。

増子委員 大分時間がたっておりますので、これはできるだけ早く、期限をきちっと切る必要があると私は思うんです。ましてや十名の安否不明者についても、直ちにという言葉ではなくて、やはりいつまでという期限を切って調査をしていくことが何よりも肝要だと私は思っております。

 これはやはり、特定失踪者等のような方々を警察に任せるんだとか、認定がそこで決められるんだとか、あるいは十名の安否不明者については北朝鮮の調査を待っているんだとかいうことではなくて、外務省がしっかりと主導権を持って、ある程度のきちっとした期日を決めてやっていく必要があると私は思うんです。大臣、いかがでしょうか。

川口国務大臣 我々は既に、いわゆる特定失踪者について、あるいは十人の安否がわからない人たちについて、できる限りの情報を集めるという努力はいたしております。その上で、警察が認定をするということが大事でございますので、それを行ってもらって、その人たちについて調査をする。

 それで、いい調査をするということは大事でありますけれども、今の時点で、これは北朝鮮側とどのような形でやっていくかという話し合いをこれからするということでございますけれども、いつまでにという期限を具体的につける、何月何日ということは考えていない、できるだけ早くということであろうと思います。

増子委員 期限を考えていないというところが、実は大臣、問題なんです。これは向こうのペースにずるずるずるずる乗せられていくんですね。直ちにとか速やかにとか早急にというのは日本語特有の本当に柔軟性のある言葉でありまして、なかなかそれでは進まないんですね。やはり私は、ある程度のきちっとした期日を切ることが一番大事だと思っているんです。

 ましてや、小泉・金正日トップ会談での結果ですから、これは金正日総書記も明確に約束をしたということであれば、あの国は独裁国家ですから、彼の言うことによって幾らでも、一週間後だとか一カ月後だと言えば間違いなくできるんですね。私は、外務省を初め関係の方には徹底的にこの期日を明確にしてほしいということを再度要望いたしておきたいと思います。

 加えて、国交正常化交渉については、これも再度確認をさせていただきますが、私はやはり、十名の安否不明者や、百名、四百名とも言われる特定失踪者の結果が明らかになり、なおかつ我が国が納得いくような形でなければこの交渉に応じるべきではないと思うんですが、これについてもう一度確認をしていきたいと思います。

薮中政府参考人 これまでの日本政府の基本的なこれについての考え方というのは、拉致被害者家族の方々の帰国を実現して、そして国交正常化交渉を再開して、その交渉を通じて、安否不明の方々の徹底した真相究明を図るということでございました。今回、五名の方々の帰国が実現し、そして、残る三名の方々については、第三国における再会ということでの一つの調整を行っております。

 そうした中で、全体として、国交正常化交渉を再開していくという適当な時期をこれから考えていくということであろうと思いますけれども、同時に、当然のことながら、今委員御指摘のとおり、直ちにという意味での、向こう側も約束しましたこの十名の安否不明の方々の真相究明、これが当然進められなければなりませんし、また、再開した国交正常化交渉においてもその問題が非常に大きな懸案になる。

 いずれにしましても、国交正常化というのは、そうした形で、日本側が納得し得る結果を得るということが国交正常化を唯一実現する道であると考えております。

増子委員 時間が参りましたので、最後に質問をもう一つだけさせていただきたいと思います。

 経済制裁について、先ほど小泉首相は、本会議の答弁の中で、いわゆる経済制裁は特定船舶入港禁止とか外為法ではないという発言を実はされておりました。この場合の経済制裁というものは一体何なんでしょうか。

 と同時に、もう一つは、いわゆる人道支援。米二十五万トンと北朝鮮も認識をしているんでしょう。そういう報道もされておりましたけれども、米二十五万トンということで間違いないのか。

 この二点について、最後に御答弁をいただきたいと思います。

薮中政府参考人 当然のことながら、経済制裁というのは、物あるいは金、これについての流れをとめるという具体的な行動を伴うものだというふうに理解しておりますし、それは当然のことながら、該当する法律に基づく行為ということでございます。

 そして、今お尋ねの食糧支援でございますけれども、これはまさに国際機関を通じてということで、WFP、これが現地にも入っておりまして、毎年国際アピールを出す、その実際のニーズが何なのかということ、そしてまた必要な食糧ということで、それが一番効果的に、どうやって調達し、必要な人に届けられるかということでございますので、米ということで限っているわけではございませんで、むしろ小麦とかトウモロコシなども含めてのことであるというふうに私は理解しておりますけれども、これは国際機関とこれから調整していくことになっております。

増子委員 ありがとうございました。

米澤委員長 次に、松原仁君。

松原委員 民主党の松原仁であります。

 最後に大臣には御質問をするということで、まず薮中局長に質問をしてまいりたいと思います。

 何はともあれ、大変に御苦労さまでございましたと、まず冒頭、ねぎらいの言葉をかけたいと思います。

 五人の御家族の中の五人が戻ってこられた、こういうことでありますから、これ自体は本当に、再会を果たした家族の方々にとっては大変にすばらしいことだろうというふうに思っております。しかし、その一方で、私が申し上げたいことは、今回の日朝交渉はやはりさまざまな問題点を残したと私は率直に思っております。そういったことについて質問をしてまいりたいと思います。

 まず冒頭申し上げたいことは、この日朝交渉、今回、平壌に小泉総理が行くということを薮中さんはいつ御存じになりましたか。

薮中政府参考人 これは委員御承知のとおり、一連の準備をしてまいったわけでございまして、政府間協議、一番最近では五月の初めの政府間協議がございました。そうしたことで、その状況を逐次、総理の御指示を得ながらやってまいったわけでございますけれども、その一連の作業の中で、最終的に総理が発表の前に決断をされたということでございまして、その総理が決断されるときに、直ちに我々が最終決断を伺ったということでございます。

松原委員 つまり、訪朝の発表がありましたが、あの当日に、具体的に北朝鮮に行くぞ、こういうふうな御指示があったんでしょうか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 むしろ、その準備を行ってまいっておったわけでございますけれども、常にいろいろの可能性を考えながら総理も我々に御指示をされておられましたし、その具体的な内容については、ここで詳細を申し上げることは控えさせていただきたいというふうに思います。

松原委員 今のお話を承っておりますと、恐らく、準備というのは従来から行ってきておったと思いますが、訪朝の意思表明というのは極めて、まさにサプライズではありませんが、そういう中で行われたというふうに聞かせていただくわけであります。

 その交渉の中身も、交渉の現場に薮中さんは立ち会っていらっしゃったということでありますから、お答えできる範囲で聞いていきたいと思うわけであります。

 まず、先ほど以来、幾つかのことを個別、総花的に聞くので大変恐縮でありますが、百五十項目の質問書というのは既に出されているわけであります。それぞれの拉致被害者のプライバシーにかかわる問題でありますから、内容は公表されていないわけでありますが、この百五十項目、つまり、松木さんの骨が違うとか、我々から見れば極めて不条理にして不合理にして納得のできないこの百五十項目について、日朝の今回のトップ同士の会談ではそのことの、百五十項目についての議論というのはあったんでしょうか。

薮中政府参考人 首脳会談におきましては、むしろ北朝鮮側は、基本的にはこの拉致問題は解決済みであるという公式論から始まりまして、そうした中で総理の方から、この安否不明の方々の調査、これは日本側で、今北朝鮮側から受けたこれまでの話では全く納得がいかないということで、それをるる説明をさまざまな形でされて、最終的に金正日委員長の方から、日本側の家族の方の気持ちもよくわかる、そして、今の指摘も受けて、白紙に戻して徹底した調査を行いたいということの発言がございました。

 百五十項目そのものについては、これはかなり今までの事務的なレベルの話としては指摘してきておりますし、当然それは日本側の考え方として先方も知っているということと理解しております。

松原委員 金正日委員長、彼は、百五十項目の質問書が日本から上げられていることは熟知していて、その内容について、例えば今言った幾つかの極めておかしな点、これについて我々が大変疑問を感じている、そういうふうな疑問点が既に北朝鮮に対して発せられているということは認識をしておったということですか。

薮中政府参考人 当然のことながら、この日朝首脳会談を準備する際に、先方も今までの事務レベルでの話というのはきちんと上に上げているというふうに思いますし、より重要なことは、まさに基本的なところでこの問題が非常に大きな問題として今現在残っている、非常に大きな課題である、そのことを認識させた、そして徹底した調査を行うということを約束させたということであるというふうに思っております。

松原委員 今、薮中さんのお話だと、冒頭、金正日氏はもう解決済みであるというスタンスで出てきたというわけでありますが、彼は、この百五十項目が、日本から調査、そしてどうなっているんだということが一年以上既に出されているのに対して、それを知っていながらも、会談の冒頭では調査済みであるという見解を表明したということで理解してよろしいですか。

薮中政府参考人 先ほど申し上げましたように、公式論ということで、建前として北朝鮮側は従来からそういう立場をとっておりましたので、当然、私の見るところでは、その公式論をまずは述べたんであろうということでございます。

松原委員 今、百五十項目全体ではありませんが、そうした幾つかの矛盾点を総理が指摘したというふうに私は薮中局長の答弁で承ったわけでありますが、それに対して金総書記、彼は、極めて申しわけないというふうな謝罪の言葉はあったんでしょうか。

薮中政府参考人 謝罪ということでは、第一回の日朝首脳会談の際に拉致問題についての謝罪がございました。そのことについて、まさにあのときに、自分たちのとった行動についての謝罪をしたという表現がございました。

 今回のことについて言えば、家族の気持ちはよくわかると。安否不明の方々のことで総理から、家族の方々、そしてみんながもちろん一人一人の方が生きていると信じているという説明に対して、先方の方から、その家族の気持ちはよくわかるという話がございました。

松原委員 前回も総理が行って、一国の総理が行って話をした中で、率直に言えば、うその報告がなされた、違う人のお骨だったとかを含めて。これについては、前回、拉致をしたことについては謝罪をしたと。文言には入っていませんけれども謝罪をしたということですが、今回は、あのいいかげんな、十人の安否不明者、彼らは死んだと言ったわけでありますが、そのことが極めて拙劣な、いいかげんなデータであったという百五十項目の指摘も含め総理が話し合ったとするならば、そのうそを言ったということについての金正日氏の謝罪はあったんでしょうか。

薮中政府参考人 まさに、本件については調査を命じた、そして調査報告書が上がってきていた、しかし、今の御指摘を受けて、改めて白紙に戻して徹底した調査をするということは、それはそれなりに非常に大きな先方の決断というか考え方であろうというふうに受けとめております。

松原委員 私は、御家族の皆さんが今回大変に怒り心頭だった理由というのは幾つかあると思っております。少なくとも前回を思い起こすならば、日本政府が確認をしないで死亡ということを次々と告げていったわけであります。そして、今回の首脳会談において、そのことについて、つまり、あなたの娘は死んでいますよ、あなたの子供は死んでいますよ、横田めぐみさんは死んでいますよ、こういう報告を全く厚顔無恥にも行っておいて、そのことについて謝罪の言葉がないと。

 私は、小泉総理という日本を代表するリーダーが行って、小泉総理は前回行って、九月十七日に行って戻ってきて、死んだ、死んだ、死んだというのは、実際はとんでもなく平仄の合わないおかしな報告書だった。恥をかかされたんですよ、日本の総理大臣が。そのことに対して申しわけないという言葉が出ないということについて、薮中さんはどう思いますか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 私がどう思うかというよりは、むしろ私の評価でございますけれども、先ほど申し上げましたように、一たん自分の機関に命じて行った調査、それを白紙に戻して、そして改めて徹底した調査をするということを一国の相手の首脳が言うというのは、我々の常識で考えれば相当大きな話であるというふうに私は受け取っております。

松原委員 私は、これは本人が、少なくとも日本の総理が行って、これは政党の立場を超えて、小泉さんは日本のプライムミニスターですよ、総理大臣ですよ、総理大臣が行ってこういう扱いをするということは、私個人は許しがたい。

 それと、前回に総理が飛行機をおりたときに出迎えた人、今回総理が行ったときに出迎えた人、同じ人が見送りもしているわけでありますが、今回、これは明らかに前回に比べて大きくその国家における地位が低い人が対応してきた。前回は、事実上ナンバーツーと言われている。今回の人はナンバー幾つだというのは、言うのはなかなかしづらいだろうけれども、どれぐらいの序列の人ですか。

薮中政府参考人 外務省の次官のうちの一人でございます。

松原委員 恐らく立場が全然違う人が出てきたわけでありまして、私は、前回の、総理が行ってこういうでたらめなデータを出してきたことを反省するならば、当然、極端に言えば前回以上の人間が出て、言葉で申しわけないと言わないならば、態度でそれを示すべきだと。一国の総理が行って、小泉さんが日本の総理として行ってこういうひどい扱いを受けたということは、これは許しがたいということを私は再度申し上げておきたい。

薮中政府参考人 少し実務的なことを申し上げますが、先方からは、空港での歓迎式典あるいはさまざまの行事ということも打診がございました。歓迎式典ということであれば、当然、非常に高い地位の人が出迎えに来ることは間違いございません。しかし、我々日本側が、総理の御判断で、今回は極めて実務的に物事を、極めて内容についての話をするんだということで実務訪問ということにしまして、日本側の方から歓迎式典についてはお断りする、あるいはさまざまな行事についてもお断りをして、まさに首脳会談一本でいくというのが総理の御判断でございました。

松原委員 ここで余り議論をしようと思っておりませんが、だからといって、今回の送迎の立場が前回よりもはるかに、総理にふさわしい人が出てきたのかどうかを考えれば、これはちょっと、前回のあのいいかげんな報告も含めて、私は非常に残念であります。

 その話の中身でありますが、例えば、今百五十項目のことは若干申し上げましたが、行方不明と言われている横田めぐみさんを含む方々、これについては、具体的に総理はどういうふうな話をしたのか。私は、日本の総理大臣として、もし二十年も隔たってこのことが解決しない家族の胸中を察するならば、個名を挙げて話をしたのかどうか、その辺をちょっとお伺いしたい。

薮中政府参考人 首脳会談の発言の余りに詳しい内容そのままを外に出すということは余り国際的にも例のないことでございますが、今非常に重要な点でございます。そういう意味で、総理の言われたことの概要ということで申し上げますと、総理は極めて力強い口調で、この十人の安否不明の方々の今までの情報というのは、全くこちら側、日本側として納得がいくものではないということを強調されましたし、また、日本国内で家族の皆さん一人一人が、今も北朝鮮で当然のことながら生存しておられる、そういうことを背景として非常に強く主張された、それがこの件でございます。

松原委員 個名で言ったか言わないかという議論は、僕は思い入れの部分としては極めて重要だと思いますが、まあ、いいでしょう。

 それで、例えば今回、横田さんに関して言えば、キム・ヘギョンちゃんという、遺伝子を調べる限りにおいて横田めぐみさんの娘にほぼ間違いないと言われている人に関して、横田滋さん、早紀江さんは会いたいわけですよ。特におじいちゃんの方は、ああいう性格ですから、会いたくてしようがないんですよ。しかし、そのキム・ヘギョンちゃんが日本に戻ってきたならば、めぐみさんの件はもうなくなってしまうだろうと。

 本当に私は、そういう家族の方々の思い、確かに、小泉さんも苦労してきたことに対するさまざまな発言というのは議論があるかもしれない。しかし、キム・ヘギョンちゃん、そこにいるわけですよ。あえて、めぐみさんを帰してくれ、生きているという確信の中で帰してくれと言ったその心情を思うときに、こういったいわゆる行方不明者に関して、私は本当に、もっと食い下がって、午後の時間でも使って議論するべきだったと思うんですが、この辺の議論、金総書記はどう答えたのか。やはり、今言ったように、普通は外交交渉の中身は言わないと言うけれども、これだけの二十年の問題であり、しかも期限を切られていない、率直に言って。この状況の中で、もう一回答弁してください。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 先方、金正日委員長の方の発言として、先ほどもお答えいたしましたけれども、そうした家族の気持ちはわかるので、したがってということで、白紙に戻して、きちんとした調査、本格的な調査を直ちに始めるという発言があったわけでございます。

松原委員 家族の気持ちがわかるという話でありますが、それを額面どおり薮中さんが受け取っているとは私は思えません。外務官僚としてそうおっしゃっているんであろうと思います。家族の気持ちがわかるならこんな拉致事件を起こすはずはないし、それをこのまま放置すること自体が許されないわけでありますから、それは私は、本音の部分では、薮中さんも怒りに燃えてやってもらわなきゃいかぬということは申し上げたい。

 この会談の中で、私は今回の拉致問題というのは二つの尺度から考えるべきであって、親子の情愛、これは生き物の中の情愛ですよ、やはり一緒にいたいというその情愛であります。その離れ離れを解決するという点において、まだまだ、山まだ遠しですよ。特定失踪者の問題もあります。

 そして、その一方において、国家の主権が侵された。国家の主権が侵されて、いわゆる国民の生命財産を守るという基本中の基本が侵されたという、国家主権を侵すこれはテロですよ。

 この二つの面があると思うんですが、まず前段の方で、今議論でちょっと積み残しました特定失踪者については、この一時間半という極めて短い議論の中でどういう話がありましたか。

薮中政府参考人 特定失踪者の問題については、先ほど来御説明申し上げましたけれども、この首脳会談において小泉総理の方から、新たに拉致被害者であるというふうに日本側で認定すれば、当然これは今まで言ってきている真相究明、つまり、議論としては安否不明の方々についての議論があった後でございましたけれども、その真相究明の中に当然これが新しく加わって、日本側として徹底した調査を要求する、こういうことの発言があったわけでございます。

松原委員 聞くところによると、金正日政治軍事大学というところで蓮池さんが教官をしていたと言われているわけでありますが、そこに三十人の日本語教師がいるというふうな話であります。恐らくその三十人のほとんどが、すべてがかつて拉致された日本人である、こういうふうにもさまざまな証言があるわけでございますが、そういうふうなことは首脳会談で議論することではないというふうな話もあるかもしれませんが、こういうことについては薮中さん個人としてどういう御認識でしょうか。

薮中政府参考人 外務省におきましても、先ほど来御説明しておりますけれども、まさに特定失踪者の方々の件については、警察庁と協力する、そして外務省みずからも、国外において脱北者あるいはいろいろな関係の機関との話し合いを通じて真相究明に鋭意努力しているというのが状況でございます。

松原委員 どっちにしても、この特定失踪者の数はどんどんふえていく。この間も議論したんですが、北朝鮮側もすべてを明かさないと、両国の信義なんかは進まないわけですよ。私は、そのことを小泉さんはきちっと金正日さんに言って、うそを言うな、この間みたいなああいううその報告をするなと。そして、すべてを明らかにすることが、そのことによって一時的には国民と国民との間に大変な亀裂が走るでしょう、しかし、それをしない限りこの問題はいつまでも引きずっていくんだ、それが拉致の解決なんだということを私はきちっと言うべきだと思うんですが、そういう発言はありましたか。

薮中政府参考人 まさにそれが、日本側として、納得のできる結果を得る必要がある、そして、北朝鮮側において本当に徹底した調査、白紙に戻しての徹底した調査を行うということの約束であると思います。その辺は、まさに委員御指摘の点、そうした思いを込めて我々もこの作業に当たっていくということでございます。

松原委員 そういう中で、実は今回の北朝鮮訪問というのは、それは、小泉さんがやはり行動しようという、小泉さんらしい決断かもしれませんが、私は率直に言うと、やるべきことをやっての行動と言えるだろうかという疑問を持っております。

 前回、三月の予算委員会で、自民党の中山議員も質問しました。私も同じことを言った。漆原さんも言った。つまり、内閣の中に拉致対策室のようなものがいまだにない、専門にこれを二十四時間扱う部署がいまだに存在していないということ。もちろん、国会の権能でありますが、拉致対策の特別委員会も設置をされていない。そういうふうなさまざまな、本来やっておいて、すべての手を尽くして、そして小泉総理の訪朝で勝負をかけるというのが本来の道筋であろうと思うけれども、そういった拉致対策室も内閣に実際はなかったわけであります。

 そういった意味で、これは私の印象として、今回の小泉訪朝というのは、そういう事前の本来やるべきこと、私は経済制裁を発動するべきだと従来から言っておりましたが、一切そういうこともせず、また内閣の中にそういったいわゆる拉致対策特別室を設けることもなくいきなりトップで話をつける、これは、一国の総理としての行動としては余りにも不十分かな、準備不足かなということを私は申し上げておきます。

 そして、今回の会談で一番の問題だと私は思うのは、冒頭言ったように、御家族が対面したことは評価されています。多くの国民が世論調査でもそう言っているのは、その御家族の対面を見て、私だってだれだって、地村さんの子供たちと地村さんが会う。蓮池さん、私も蓮池さんのところに一年半前に行きましたよ、柏崎に。いつになったら子供は帰ってくるんでしょうかと祐木子さんは言っていましたよ。それが戻る。それ自体を否定する人間はだれもいないんですよ、みんな喜んでいるんですよ。

 しかし、問題は、そういう部分と違う部分がある。特に今回、ほかの積み残されたというか、横田めぐみさんとかそういうふうな問題も大きいけれども、私は、二十五万トンの食糧支援、この意味するものというのは極めて問題があると思うんですよ。

 この二十五万トンの食糧支援というのは、これはどういう形の支援になるんですか。さっき小麦とかいろいろとありましたけれども、具体的にどういう方向になるか、ちょっと教えてください。

薮中政府参考人 これはまさに、国際的な支援、その国際的な取り組みに日本も参加するということでございます。

 委員御承知のとおり、北朝鮮においては食糧不足ということ、これはまさに恒常的な、慢性的な食糧不足が続いておりますけれども、そうした中でいろいろな国が実は人道支援の手を差し伸べている。アメリカは年間十万トン、韓国は年間五十万トンのおのおの食糧、さらに韓国はそれに三十万トンの肥料も出しております。中国も相当規模の食糧を出しているというふうに承知しております。

 そうした中でもまだ足りないということで、WFP、世界食糧計画が国際機関の取り組みの一環として実際の需給量を見ております。そして、数十万トン足らないと。これは毎年、その時々によって違いますけれども、去年十一月に出ましたときには、五十万トン近い不足がまだあるということを見込んで国際アピールを出しております。

 そうした取り組みの中で、日本として、今回、そういう国連機関を通じた国際アピール、国際的な社会の取り組みに日本も応分の負担をしよう、こういうことの決断を総理がなされたわけでございます。

松原委員 北朝鮮という国を薮中さんは知った上でそれをおっしゃるんですから、かなり苦渋の発言だと聞いております。例えば安否不明者に関しても、調査をするまでもなく、恐らく金正日氏は知っていますよ、ああいう国ですから、あれだけの警察国家ですから。あえて安否不明者を調査しますというのは、カードとしてそれを使うという意思表示としか私は外交上思えない。

 そして、人道支援ということの食糧でありますが、この間も、外務委員会の、この委員会の小委員会で脱北者が三人来て話したときに、過去二十年、三十年、一回もそういう食糧は見たことがないと、それぞれ別のところにいる脱北者が全部表現している。つまり、北朝鮮の本当に食糧を必要とする一般の国民までほぼ届かないだろうということを私たちは小委員会において議論しているわけですよ。ですから、人道というもの自体がどういうものかということになる。

 それは、そういううそを、うそというかそういう社会であるというのを薮中さんは知った上での苦しい答弁だと私は思っていますから胸中お察ししますけれども、しかし、この二十五万トンというのは非常に問題がある。日本はアメリカや韓国と違いますよ。少なくとも、日本のこの拉致問題、人道問題、これについての我々の怒りも含め、従来からこれについて、いわゆる人道的支援をするならまず人道的に全部を帰してくれという話だと思うんです。

 例えば、私が聞いた話では、曽我さんが、金丸訪朝団が来たときに、私たちのことを話しているのかしらと思っていた、私たち拉致された人間のことを話しているのかしらと彼女は思っていたという話を私はどこかで聞きました。そういう一人一人の思いというものをいたしたときに、その人道をまず解決しろ、これが順番だと私は思うわけであります。

 そういう中で、今回二十五万トンの米支援、米かどうかはわかりませんが、食糧支援をする。これはどう考えても、従来の、竜川に対する支援というのは、これは一千万円とかそういうレベルだったわけですよ。一気にこれでけたが、幾らかというのはいろいろな議論もありますよ。きのうの与党の会議では、ある方が七百億だと言った。六十キロ一万五千円とすればこれは六百億だと。これは古々米を使うのか何を使うのかという議論はあるけれども、大変なそういう数字ですよ。これが、私は、結果として、いわゆる身代金的に、この段階で発表するということも含め、平壌放送はそれを放送しているわけですから、身代金として思われるのはこれはいたし方ないと思うんですよ、どんなに弁明しても。

 その中で、この二十五万トンの話、こういった話、そして経済制裁をこれからしませんというふうな話、どういう文脈の中で今回のトップ首脳会談の中で小泉さんの口から語られたのか、お話しをいただきたい。これは極めて国民が見ていることです。

薮中政府参考人 事実関係でまずお答えさせていただきます。

 食糧の二十五万トンということで、これで六百億、七百億になるのではないかというのは、日本米を使ってのことだと思います。(松原委員「百億という話もある、支援もいろいろある」と呼ぶ)はい。これはそうではございませんで、WFPが、まさに自分たちが国際アピールを出しております。そうした中で、我々、もちろんWFPと相談いたしますけれども、何が本当のニーズであるかということ。それは、より効果的には小麦であり、あるいはトウモロコシである、それは、より安価であるということもございます。そういうのを全体をミックスしての判断になるということであります。(松原委員「会談の中での話を教えてください」と呼ぶ)

 会談の中では、全体として、総理の方から、そして今後、やはり国際社会のいろいろの流れを見ると人道支援というのが行われているという中で、この人道支援の話をされましたし、そして日朝平壌宣言、これを守っていく、そしてそれが今後の国交正常化交渉、国交正常化、すべての問題を包括的に解決する、拉致の問題、核、ミサイルの問題を解決していく、そうした中で日朝平壌宣言をきちんと遵守していく、この話がありまして、そういう限りにおいては経済制裁を発動する考えは自分は今持っていない、こういう話でございました。

松原委員 この二十五万トンのものについては、そういった国際機関からの要請が従来からあって出していなかったわけで、ここで出す、このタイミングで発表する、平壌で発表する、それは、薮中さんのお立場でそれ以上言えないかもしれないけれども、本音はわかっているはずですよ。これは身代金ですよ。身代金ですよ。うなずかなくてもいいです、本当はうなずきたいだろうけれども。

 私は、こういう行動そのものが、ある意味で、拉致がテロだとするならば、テロに屈したということになると思うんですよ。それは、ほかの国はその日本をテロに屈したとは言いませんよ、内心、ああそういう国かというふうに思うだけですよ。私は大変に残念であります。同時に、経済制裁についても、これを放棄したということは極めてカードを失ったことになるというふうに私は思っております。経済制裁しないですと言って法案をつくるということは、全く意味がないわけであります。

 私は、今回、世論調査もさまざまありますが、少なくともこういったいわゆる人道支援については、先ほどテレビを見ておりました、六一%がやるなと批判的である、今後の日朝交渉にも七一%が期待できないというふうなのがテレビの報道であった。

 くどいようでありますけれども、あの地村さんが子供と会う、すばらしい。それは蓮池さんも同じであります。しかしながら、それはそれで評価するけれども、国の主権を考えたときに、こういうふうな行動というのは、全くもって日本の主体性と名誉と誇りとメンツを失うものになると私は思っておりますが、ちょっと御答弁をお願いします。

薮中政府参考人 人道支援についてでございますけれども、今のいろいろの御批判も承っておりますが、きょう入ってきました話としては、昨日でございますか、国連のアナン事務総長が、今回の日朝首脳会談について歓迎声明を出しておりまして、その中で、北朝鮮の核問題を六カ国協議の枠組みの中で解決していく方針を確認したことへの評価とともに、日本の人道援助再開にも謝意を表したいというふうにアナン事務総長が声明を出しております。

 我々としては、もちろん、いろいろ全体の問題はございますけれども、国際社会としてそうした人道支援の取り組みをしているということについての日本の応分の役割を果たすという判断を最終的に総理がなされたということでございます。

松原委員 日本は国連に対しておびただしい運営費を出しているわけですから、日本の政府の意を体して、アナンさんがそれを悪いようには言わないと思うんですよ、率直に言えば。まあいいですよ、それはそれで、国連の評価ですから。

 私は、そういう意味において、日本の国が日本の国を判断するわけであって、今の日本の世論が、さすがにこれだけ、それなりの評価をしながらも、六〇%を超える人間が人道支援というのは実は違うんだと見破っている。これはもうこれ以上ここで議論しても進みませんけれども、私は、そういった意味において、この国の主権を回復するということにおいて、大きな、今回の日朝交渉というのは、もう一回失地回復をしなければいけない努力を求めるものになってしまった、その部分においてはマイナスになってしまっているということを指摘して、私の質問を終わります。

 以上です。ありがとうございました。

米澤委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 日本共産党は、北朝鮮の問題の解決について、かねがね、三つの角度から取り組んでいくというぐあいに申し上げてまいりました。

 一つは、朝鮮半島の軍事的な衝突の危機は絶対に避けなければならないこと。あくまでも平和的、外交的な手段によって解決するという立場であります。二つ目に、拉致問題というのは日本国民の人権と安全を脅かした国際的な犯罪行為として許すことのできないものであり、この問題の全面的究明と被害者家族の帰国の実現、これも強く求めてまいりました。三つ目に、日本と北朝鮮の国交の確立。戦前の植民地支配の歴史を清算することは、戦後の日本が負った重大な歴史的責任に属する問題であること、こういう立場で、北東アジアの平和と安定を築いていくということを繰り返し提言してきたところであります。

 こういう立場から、二〇〇二年の日朝平壌宣言についても、国交正常化交渉の再開が合意されたことは重要な前進の一歩であり、正常化交渉において日朝間の懸案が道理ある形で解決され、日朝両国関係が敵対から協調に転換することを強く願ってやまない、こういう声明を当時、志位委員長の談話として出したところであります。

 今回の会談の中で、改めて、二〇〇二年九月の日朝平壌宣言、これが日朝関係の基礎として再確認された、そして、拉致問題や核、ミサイル問題、人道援助問題などの一定の合意が見られ、国交正常化交渉への前進の方向が確認されたこと、これも評価しているところであります。

 そこで、外務大臣に伺いますが、今回の首脳会談で日朝平壌宣言を再確認した、その直後に、外務大臣は六カ国協議の参加国にいろいろ電話もしておられるわけですけれども、中国やロシア、韓国、アメリカなどは、今回の日朝首脳会談をどのように評価しているのか。そして、今回の会談が六者会合に与える影響というんでしょうか、今後どんなふうに、そういう北東アジアの平和と安定を築いていくという大きな枠組みである六者会合への与える影響、このあたりについて、外務大臣、どのように受けとめておられるか、説明してください。

川口国務大臣 総理の会談が終わりました後、北朝鮮と日本を除く四者の外務大臣と電話で話をいたしまして、それぞれの方、この総理の訪朝、会談の成果について、大変に大きく評価をしていらしたということでございます。お一人お一人のケースについて申し上げませんけれども、基本的に、拉致問題についても進展があった、そして核について、特に北朝鮮というのはああいう体制の国でございますので、金正日国防委員長自身から、例えば、核の凍結は核の廃棄に向けての第一歩であると認識をしていて、それは国際的な査察を伴うんだということを考えているといったような言葉、これを引き出したことについて非常に大きな評価があり、これがこの地域の平和と安定、そして、すなわち世界の平和と安定につながっていくということを評価なさったということでございます。

 それで、これが六者の会談にどのようにつながっていくかということですけれども、六者の会談、会議というのは基本的にさまざまな駆け引きの世界でありますから、では直ちに北朝鮮が態度を変えてくるというほど我々は楽観的には考えておりませんけれども、四者、四者といいますか、日本も含めて五者ですけれども、これはきちんと国際社会として連携をして、そして北朝鮮が、非核の朝鮮半島、この問題の平和的な解決ということについて国際社会と一緒に動くように、これはきちんと向かい合って議論をしていきたい、そのように考えております。

赤嶺委員 そこで、国交正常化交渉の再開という問題について伺っていきたいんですが、この国交正常化交渉、私たちは、拉致の問題も正常化交渉のテーブルの上で解決をすべきだ、核の問題も包括的にこの中で解決をすべきだ、このように主張してまいりました。そして、そのことが、日本の平和と安全にとっても、それから繰り返されております北東アジアの平和と安定にとっても、特に北東アジアというようなのは、本当に私たちの生活環境のすぐ近くで起こるいろいろな問題ですから、大変大事だと思っています。

 当外務委員会では、この間、東南アジアの友好条約について、日本の加盟について採決がされましたけれども、東南アジアで生まれている平和の流れを北東アジアまで広げていく、そういう視野でとらえた場合に、日朝間が国交正常化するというようなのは非常に大きな意味を持っていると思うんです。

 今回の首脳会談で、いわば正常化交渉の再開について、具体的には事務当局でよく打ち合わせをして協議を再開したい、このように述べているわけですが、これはどんな段取りで今後進められていくことになるんですか。

川口国務大臣 委員がおっしゃいますように、我が国がこの地域の平和と安定、安全に資するような形で北朝鮮と国交の正常化、あるいはその前提としての正常化交渉を行っていくということは意義があるというふうに思います。

 それで、その再開でございますけれども、政府はかねてから、拉致問題については拉致問題に関する専門幹事会というのがございますが、これが昨年の七月に確認をした基本方針というのがございます。それに従いまして、拉致被害者五名の御家族の速やかな帰国を実現し、その上で、再開された正常化交渉の中で安否不明者の真相究明も行っていくという方針をとっております。

 今回、日朝の首脳会談によりまして、八名の御家族のうち五名の帰国が実現をしたわけでございます。残りの三名の御家族については、これは御本人たちの御意向もあって帰国は実現をしなかったわけですけれども、今後、第三国における再会、これを実現しようということで調整に今入っております。

 したがいまして、政府として、今回の首脳会談を踏まえて、しかるべき時期に日朝国交正常化交渉の再開に向けて調整を行っていくという考えを持っております。

 それで、今回の総理の訪朝に際しては、北朝鮮が、安否不明者の真相究明について、改めて本格的な、白紙に戻しての徹底的な調査をするということを約束しているわけでございまして、政府としては、その進展も見ながら、必要に応じて国交正常化交渉の中で真相究明を強く求めていくという考えでおります。

 いずれにいたしましても、政府としては、国交正常化が行われるに当たりましては、この真相究明が行われるということが必要であるというふうに考えております。

赤嶺委員 拉致問題というのは、やはり日本国民の人権と安全を脅かした国際的な犯罪行為として、許すことのできない立場、これは繰り返してきたところであります。今回、私たちも、地村さん御夫妻そして蓮池さん御夫妻の家族が帰国したことを心から喜びたいと思いますし、曽我さんについても、御家族が納得のいくような解決を図っていただきたいと思います。

 そこで、曽我さんの問題について、総理は、ジェンキンスさんとの会談の中で、いわば身柄引き渡しについて、私が保証するという発言をなさっております。これはきょうの本会議でも質問したんですが、明確なお答えがありませんでした。どんな見通しがあって、つまり条約上だとか法律上だとか、そういうジェンキンスさんが置かれている立場がどういう立場で、どういう意味で保証するとおっしゃったのか、この点についても説明をお願いしたいと思うんです。

 それから、繰り返されております安否不明者、行方不明者について今後取り組まれていく。報道では、あるいは発表では調査に日本側も参加するということだったんですが、きょうの答弁を聞いていますと、参加するということはどういう趣旨なのか、いまいちよくはっきりしないんですが、共同の調査団は設けるという方向ではないようですけれども。そうすると、参加するというのはどういうことだったのか。少なくとも、百五十項目の疑問については、繰り返されておりますように、期限を切って答えてもらうというようなことも必要ではないかというふうに思いますが、この点、いかがでしょうか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 ジェンキンスさんの件でございますけれども、これは、総理が直接ジェンキンスさんとそして曽我さんの二人のお嬢さんとお会いになりました。その際に、ジェンキンスさんの方から、やはり非常に自分の身柄の安全について不安を持っておられるということがございました。そうしたいろいろの話し合いの中で、総理の方からいろいろと、家族の人たちが日本に来られたら幸せに暮らせるように、そういう形での努力をするということを言われたということでございまして、少し、一部、報道とは実態は異なることでございましたけれども、そういう趣旨でございました。

 調査の件でございますけれども、安否不明の方々の調査でございますけれども、これの取り組み姿勢としては、もちろん徹底した調査を先方に求めるということでございまして、そうした中で、先ほどから申し上げましたように、日本側としても情報を持っております。そうしたものを突きつけ、そしてまた必要に応じ日本側もその調査に自分たちの判断で参加していく、こういう道も開いて、実際に我々が納得できるような調査、しかもこれは、時期のことから言いますと、先ほど来大臣からもお話がありましたように、これを、できるだけ早くその実現をするということでございます。また、それはまさに、委員御指摘のとおり、国交正常化、これについてきちんとした納得のいく結果が得られるということが正常化の大前提でございます。

赤嶺委員 本当に国民が納得できる解決というものについての政府の努力を改めて強く求めておきたいと思います。

 もう時間がありませんので、核問題について一言申し上げたいと思いますが、実は、日朝平壌宣言の直後に核兵器問題が重大化して今日まで来ているわけですが、これをどう解決するかということについて、私たちはかねがね、北朝鮮に対して、核武装路線こそが最も危険であり、核兵器開発の道を放棄して、国際社会との安定した外交関係を打ち立てることこそみずからの安全保障にとって何よりも重要であることを道理をもって説く外交が大切だ、このように言ってまいりました。総理も同じようなことを述べておられるようでありますが。

 私たち、野党外交の中で、例えばほかの諸国、六者会合に参加している国々との話し合いでもかねがね、北朝鮮の安全保障とは核武装することではないということを言ってまいりましたけれども、ぜひ日朝平壌宣言を両国の関係の基礎と確認された立場で、核兵器問題、拉致問題、これらについてもきちんと解決していくという政府の努力を重ねて要望いたしまして、私の質問を終わります。

米澤委員長 次回は、明二十六日水曜日午前八時十分理事会、午前八時二十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四十七分散会


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