衆議院

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第3号 平成16年11月2日(火曜日)

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平成十六年十一月二日(火曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 赤松 広隆君

   理事 谷本 龍哉君 理事 中谷  元君

   理事 原田 義昭君 理事 渡辺 博道君

   理事 大谷 信盛君 理事 首藤 信彦君

   理事 増子 輝彦君 理事 丸谷 佳織君

      宇野  治君    植竹 繁雄君

      小野寺五典君    河井 克行君

      高村 正彦君    鈴木 淳司君

      土屋 品子君    西銘恒三郎君

      平沢 勝栄君    三ッ矢憲生君

      宮下 一郎君    今野  東君

      篠原  孝君    田中眞紀子君

      武正 公一君    鳩山由紀夫君

      藤村  修君    古本伸一郎君

      三日月大造君    赤羽 一嘉君

      赤嶺 政賢君    東門美津子君

    …………………………………

   外務大臣         町村 信孝君

   防衛庁副長官       今津  寛君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   外務大臣政務官      小野寺五典君

   外務大臣政務官      河井 克行君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 長嶺 安政君

   政府参考人

   (外務省中南米局長)   坂場 三男君

   政府参考人

   (外務省経済局長)   佐々江賢一郎君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    鹿取 克章君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房参事官)           松本 義幸君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       外口  崇君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           吉村  馨君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           高橋 直人君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           皆川 芳嗣君

   外務委員会専門員     原   聰君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二日

 辞任         補欠選任

  古本伸一郎君     三日月大造君

  松原  仁君     篠原  孝君

同日

 辞任         補欠選任

  篠原  孝君     松原  仁君

  三日月大造君     古本伸一郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一号)


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     ――――◇―――――

赤松委員長 これより会議を開きます。

 経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官長嶺安政君、外務省中南米局長坂場三男君、外務省経済局長佐々江賢一郎君、外務省領事局長鹿取克章君、厚生労働省大臣官房参事官松本義幸君、厚生労働省医薬食品局食品安全部長外口崇君、農林水産省大臣官房審議官吉村馨君、農林水産省大臣官房審議官高橋直人君、農林水産省大臣官房審議官皆川芳嗣君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。藤村修君。

藤村委員 おはようございます。民主党の藤村修でございます。

 冒頭、イラクでお亡くなりになりました香田証生さんの御遺族の皆様に心からお悔やみを申し上げます。

 さて、ただいま議題になりました承認を求めるの件、長い名前ですので、日本とメキシコのいわゆるEPAというふうに言わせていただきますが、この締結に関しての承認を求めるの件、質問をさせていただきたいと存じます。

 私、外務委員会での質問、実は初めてでございまして、条約等の中身というのは大変膨大なもので、本当にこれを全部読めと言われても、多分、大臣、副大臣ともどもにもちょっと読み切れないとは思うんですが、国会で議論をするというのは、余り中身の重箱の隅をつつくようなことではなしに、やはり基本的な話ということになろうと思っておりますので、そういう質疑にさせていただきたいと思います。

 それで、そもそも論でございますが、条約等の締結の手順あるいは手続ということについて、きょうまで長年ずっとやってこられたやり方というのが当然あるものと思いますし、しかし今ここで、特にこの外交という問題が、本当に日本の国益を大きく左右し、あるいは日本の国内の経済の構造にも大きく影響をする、そういう新たな私は展開をしている日本に今あると思います。

 そういう意味で、一度ここで、海外との外交、特に条約の締結などについては、少しそのやり方を一遍見直し、考え直してみたらどうか。こんな基本的な考え方から、そもそも論でございますが、外務省が、私がお聞きしたところ、条約というのは過去ずっと基本的に行政府限りで署名まで至るという御認識をお持ちなのですが、そのままで本当にいいのかどうかということについて、少し議論をさせていただきたいと思います。

 今回の日本とメキシコのいわゆるEPA協定については、ちょっとさかのぼっていいますと、平成十三年六月、今から三年前の六月に、東京における日墨首脳会談、日本とメキシコの首脳会談で、小泉首相そしてメキシコのフォックス大統領が両国経済関係の強化の方策に関して話し合って、自由貿易協定の可能性も含め包括的に検討することを目的として、日墨、日本とメキシコの産学官から成る共同研究会の設置を決めた。そして、その共同研究会が七回にわたって会合があった。そこからのスタートであると思います、三年前の六月。

 それを第一期、第一段階と申しますと、その次に、この七回の共同研究の報告書の提言を受けて、平成十四年十月、ですから二年前のちょうどこの時期に、日墨首脳会談において、二国間の経済連携強化に関する協定締結のための交渉を開始することで意見が一致した。同年十一月、二年前の十一月から両国間で交渉がスタートをした。

 そして、結果として、協定案文について最終合意、これはことしの三月に、テレビ電話会議などもあったようでございますが、ほぼ合意をし、先般、今からいうと先々月でありますが、ことしの九月十七日に小泉首相がメキシコに訪問をして署名が行われた。ここまでが第二段階ではないか。二つの時期に分かれてこの協定が署名にまで至ったわけであります。

 そこで、私は、結論的に申しますと、二年前の十一月から交渉に入ったというあたりで、本来、内閣として、これはそれなりの意思決定といいますか、いわゆる閣議決定が行われていたのかなというふうに聞きましたら、どうもそうではなさそうで、きょうまでのやり方からいえば、条約などは基本的に行政府限りで署名まではいく、こういうことを外務省の方からは聞いておりますので、では、そうしていい法的根拠というのは一体どういうことか。これはやや手続的なことでございますので大臣でなくて結構なんですが、つまり、外務省がおっしゃる、条約は基本的に行政府限りで署名まで至るという考え方の法的根拠を示していただきたいと思います。

長嶺政府参考人 法的な根拠についてのお尋ねでございますので、私の方から答弁させていただきたいと思います。

 委員御案内のように、憲法第七十三条、これは内閣の職務を規定してございますが、その二号におきまして、内閣が行う事務として外交関係の処理が規定されております。また、同条第三号におきまして、条約の締結を内閣が行う事務として規定されております。したがいまして、外国との間でどのような交渉を行い、いかなる内容の条約を締結することとすべきか、これは行政府が決定する事項ということになっております。

 ちなみに、憲法第七十三条三号ただし書きに言う国会の承認、これは、このような行政府が決定した内容の条約を締結すること、すなわち当該条約に拘束されることについての日本国としての意思を最終的に確定することについて、国会の御承認を求めるものでございます。

 したがいまして、本協定のような条約につきまして、その締結に先立って署名を行政府として行うことは、ただいま申し述べました内閣の事務の一環というふうに位置づけられております。

藤村委員 憲法七十三条から引いてこられたわけです。憲法七十三条は、主語は「内閣は、」であります。ですから、「内閣は、」という主語のもとに外交関係を処理するわけで、まさに内閣一体として処理をすると。私は、外務省はということではここではないし、今答弁は外務省ということは言わずに行政府はというふうにおっしゃったので、つまり「内閣は、」ということだと思います。

 冒頭申しましたように、外交関係において大きな案件、いろいろな事務的な協定等はそれはやや外交関係の処理ということで外務省、そして事後の承認は国会ということ、締結の手前の承認は国会、こういうことだと思うんですが、非常に大きく国内の産業あるいは経済の構造全体に影響するようなこういう案件については、やはり内閣が、協定を結ぼうかどうしようか、まさに交渉に入るというその段階で、私は閣議できちっと内閣としての意思を決定される。当然だと思っていたんですが、どうもそうではなかったということで、今回、事実関係だけもう一点お伺いしたいのは、このメキシコとのEPAの署名まで、先般の九月の署名に至るまでに、閣議決定というのはどのようになされていたのかお知らせをください。

長嶺政府参考人 お答え申し上げます。

 この日本とメキシコとの経済連携協定の今日までの流れにつきましては、先ほど委員の方からも御紹介がありましたので割愛させていただきますけれども、この約一年半にわたる日本とメキシコ両国との間の精力的な交渉が行われまして、本年三月に大筋について合意を形成したということでございます。その後、双方による条文の確定作業等を経まして、去る九月十七日に本協定の署名に関する閣議決定を行いまして、同日メキシコ市において小泉総理大臣と先方フォックス大統領との間で署名が行われた次第でございます。

藤村委員 つまり、閣議、内閣がきちっとした手続をとるというのは、九月、多分十七日だったですかね。つまり、署名をするその日です。首相は向こうへもう行っていたんでしょうが、署名をするその日に内閣はいわゆる閣議決定をすると。

 だから、国のまさに意思、意図というのは、内閣での手続を経ないで、外務省を中心に、今回はもちろん経産省であったり農水省であったり財務省であったり、それぞれ事務方で寄り合って、チームを組んでずっと、まさにおぜん立てをずっとしてきて、最後、首相が署名をするときにやっと内閣はこれに署名をしてよろしいという閣議決定がなされる。

 それからもう一回、今回は、十月十二日に、国会にこれを提出するということで、これはまた、まさに閣議決定をされているわけで、一般的に過去すべてこういうことで多分行われてきたのだと思います。

 つまり、我々国会で審議する前提としては、署名のときの閣議決定とそれから案件を国会に提出するときの閣議決定の二回ですね。ということは、その閣議の決定というのは、単に事務的な決定にすぎないのではないか。でも、内閣が、先ほどの憲法七十三条のとおりであります、内閣がという主語のもとに、まさに外交の交渉が行われ、あるいはまさに協定に署名をするところまで運んでいかれる。

 となれば、私は、これほどの大きな問題について、やはり内閣の意思というのが相当早い段階でまさに整理されていなければならないのではないか、そのように考えているわけでございまして、その点について、今までの前提をもって、町村大臣にその件についての御感想をまずお伺いしたいと思います。

町村国務大臣 委員御指摘のように、この経済連携協定というのは、国の内外に大変大きな影響を与える重要な政策課題であると、委員の御指摘のとおりの認識で私どももおります。それだけ重要なんだから、もっと早い段階で閣議決定あるいは閣議了解というものが必要ではなかろうかという御指摘、趣旨において私どもも全く変わっておりません。

 ただ、その手続としての閣議決定という形がいいのか、あるいは、現実に私どもが今やっておりますのは、経済連携促進関係閣僚会議というものを随時開いておりまして、そこで関係閣僚が集まって議論をし、方針を了解する。総理が早い段階、二年前あるいは三年前に先方大統領との首脳会議でそういう発言をするという場合には、当然のこととして、関係者が集まり関係閣僚が集まって、そういう総理大臣の発言が、本当にそういう方向に進んでいいかどうかということについて議論をした上で、前進、あるところでまた前へ進んでいくという手順を踏んでいるわけでございます。

 もちろん、事務方の関係省庁連絡会議というものも設置され、官邸を含めて、そういう意味では関係する省庁が緊密に協議しながら、これは政府一体で取り組んでいる作業であるというふうに御理解をいただければありがたい、かように考えております。

藤村委員 趣旨は理解していただいたというふうに思います。ですから、きょうまでそうしてきたということと、それから今後どうするかということ。私は、むしろ今後の話を今申し上げているわけであります。

 例えば、この件、国会で今議題となりました。先週、町村大臣は本会議において趣旨説明をされた。条約案件が本会議で単独で趣旨説明、質疑を行うというケースは割に珍しいんですね。

 さきのことしの通常国会にも条約案件はありましたが、これは国民保護法制七法案と一緒に行った幾つかの条約関係、関連するものという形で、単独ではありませんでした。単独でというので調べてみますと、第百五十四回国会の二年前、五月、平成十四年に、気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書の締結について承認を求めるの件、いわゆる京都議定書の例の大きな話ですね。

 その前はといいますと、これはもう平成十二年、さらに二年前、十月に、第百五十回国会の日米の地位協定に関する特措法的協定ということで、これは単独ですよね。だから、国会の本会議に単独で条約案件がかかるというのは割に珍しいケースであります。今回そのケースでございます。

 ということは、それなりにやはり相当日本国にとって、そして日本の国内経済構造にとって大きな影響を与えるからこそ、今回、本会議においても趣旨説明がされた上でのこの委員会質疑になったものと思います。

 そういう意味で、やはり案件を分けて、条約や協定、いろいろ本当にたくさんあると思います。前国会、ことしの通常会でも二十数本ありました。全部が全部そうだということでなしに、やはりその中で、本当にこれは内閣にとってというよりは国にとって大変な大きな影響のある、まさに国益に関する問題であったり、あるいは、日本の、今回の場合は特に農水関係、農産品の問題がございましたし、大変大きな影響を与える。もちろん賛否いろいろな声がある。

 そういう中でやるものは、署名をする最終日に内閣でこれを署名して、いいと決めるのではなしに、私先ほど、冒頭申しましたように、二段階の時間があったと思うんですね。まず、研究会をつくって一年ぐらいやりました。そこから提言の来たもので、ではいよいよこれで交渉に入ろうかというそのあたりで、こういうケースは内閣としてやはり一致して決定すべきではなかったかな。

 といいますのも、先日、本会議においては、私ども、首藤委員が質問をしてそういう関係のことをちょっと聞きましたら、これは内閣官房長官細田博之君からのお答えの中には、今大臣お答えになった経済連携促進関係閣僚会議や関係省庁連絡会議を設置するなど関係するすべての官庁が緊密に連携しつつ政府一体となって積極的に取り組んできたという答弁でしたから、もうそのとおりなんですが、いやしかし、やはり閣議でばしっと決めるということとは大分意味が違うと思うのですね。

 これは新聞報道ではございますが、例えば、ことし三月ごろの朝日新聞報道では、経産省であったり外務省であったり農水省であったり、やはりそれぞれ縦割りで考え方が進んでいくとなかなかうまくいかないので、それで首相官邸は、経済産業、農水、外務の縦割り交渉が足元を見られた要因の一つとの反省から、昨年十一月下旬、官邸ミッションというのを出したそうです。つまり、なかなか内閣でそれぞれがばらばらにいっていたら、うまくいっていなかったという一つの例を報道されております。

 あるいは、経産省は交渉情報を外務省や農水省に伝えないまま最終局面の話し合いを進めたとされる、これは報道であります。などという報道がされるごとく、やはり内閣一体で、政府一体でやっていますと言いながらも、それは閣議決定みたいな非常に重いものをきちっと据えてやるやらないでは大きな違いがあるのではないかな、そのように思います。そういう意味で、今後のこととして、これは十分配慮していただけるのかどうか。

 外務大臣が一元的には外交関係の長でございますが、やはり重要な外交案件、協定、条約等を結ぶ場合には、いよいよその交渉に入る段階で閣議できちっと一遍話をして了解を求める、そういうようなことをされる気持ちがないかどうか。

町村国務大臣 案件の性格にもよるかとは思いますけれども、特にこの経済連携協定、非常に影響が大きいだけに、今委員の御指摘されたその趣旨について、私も同感でございます。

 ただ、なかなか、閣議に決定をする、了解をとる、中身がある程度詰まっていないと、そういう場に漠とした方針だけをかけるというのは、今までの慣例でいくと少々なじまないといったような感覚もあるのでありますが、しかし考えてみると、大変大きな作業を始める段階で、決定とはいかないまでも、閣議了解ぐらいあってもいいのではないかという御指摘はよくわかるところでありますので、今後のこととして考えさせていただきたいと思います。

 なお、対外関係につきましては、必ず日本交渉団というものをつくりまして、多いときになると百名を超える関係省庁の方々がその席に同席をして相手側と交渉するというような形にもなるようでございます。そういう際に、私どもの団長というのは、今、藤崎という外務審議官がやっておりまして、彼が団長という形で全体を取りまとめるという形をとっておりますことは申し添えさせていただきます。

藤村委員 ぜひ検討いただきたいと思います。

 もう一点、ですから提案は、閣議決定というのはやや儀式でございますので、実際的に今後まだ、今から韓国、タイ、フィリピン、マレーシアなどとの経済連携協定を考えていくわけですから、これは経済界の要請もあるようですが、内閣に首相を本部長とする経済連携戦略本部のような、もうそういう戦略的取り組みが必要ではないかなと思うのであります。

 これについても先ほどの細田官房長官の答弁で、いや既にやっているんですよというふうにおっしゃるのかもしれませんが、やはり今後の話としては、これは町村大臣、先週の所信表明的あいさつの中で「経済連携協定の締結を戦略的に進めてまいります。」という表明もされておりますので、ぜひともやはり、今実際的にはそういうチームでやっているということでございますから、まさにそのチームを、本当に首相を本部長とした組織にして、まさにオーソライズしてやったらどうか、こんな提案でございますけれども、いかがでしょうか。

町村国務大臣 正確には私承知をしておりませんが、今内閣に何々本部、何々対策何とか会というのが何か物すごい数になっているようでございまして、いささかこれは、もう何でも官邸中心のということで、少々、内閣に置く本部が多過ぎるのではあるまいか。

 何か内閣の方でも数本部を解散するということを、先般閣議で、たしか官房長官から報告があり、了解したところでございまして、官邸主導はいいのでありますけれども、余りそれをやりますと、今度は各省の責任といいましょうか、外務省の責任というものがぼやけてしまうという面もございまして、私は、何でもかんでも官邸に本部をつくるという方式がいいんだろうかと、個人的にはちょっとそんな思いもしております。

 そういう意味で、これはしかし、事の重大性あるいは関係省庁の広がりといったようなこと、いろいろな面からやはり判断をしなきゃいけないと思いますが、今直ちにその本部が必要かなと言われると、一応、今の関係閣僚会議という方式で私はそれなりの機能は果たしているのではないか、こう思っておりますが、藤村委員のお話でございますから、こうしたことも含めて今後よく考えていきたいと思っております。

藤村委員 一般的に、何でもかんでも本部じゃなしに、これはなかなか大変な、日本のまさに戦略的な取り組みが必要な案件であり、日本とメキシコという一つの案件ではなしに、今からまだ韓国、タイ、フィリピン、マレーシアなど、割に、特にアジア地域で重要なことが重なってくるわけですから、私は、ある時期、本当に期限を決めて対策本部的な戦略本部をやはり立ち上げて、それでまさにチームになってやっていく方が、さっきの新聞報道ではありませんが、各省それぞれの利害がある中でやはり調整が難しいわけですから、そこはやはり首相、内閣を割に重要視してやられたらどうかなという提案でございました。

 話はちょっと、メキシコに若干関係がありますが、別な観点から質問をしたいと思います。

 メキシコも移民の国の一つでありますが、先週、海外の日系人による大会が開かれました。そして、先週の十月二十八日にその大会において決議が行われて、四項目の要望事項が採択されたと聞いています。内容は、第一にブラジル移住百年祭についてということ、第二に海外日系人訪日団受け入れ事業についてということ、第三に日本語教育について、第四に在外被爆者への支援についてということが決められたようであります。

 南米の各国、これは南米だけではありません、北米もそうですし、その他の国も一部ありますが、多分十八カ国ぐらいの、海外に移民をして、そしてそれぞれ頑張っている人たちが、一年に一回日本に集まってこの大会を開かれて、日本、母国との連携を深める、そういう大会でございます。

 私、この中で特に外務省の方からの考え方をお伺いしたいのが、ブラジル移住百年祭、これは今から四年後の二〇〇八年であります。ブラジルに移民が出たのが一九〇八年、笠戸丸移民。それからもう百年がたつ四年後に向けて、今海外日系の人たちも、このブラジル移民の百年祭というのは大変重要だという意識を持っておられるので、このことについての見解と、それからもう一つ、毎年のように、海外に移住した人たちが、外務省も補助をして、いわゆる母国を、行ってから五十年ぐらい一回も帰ってきたことのない人をお呼びする制度があったんですが、これはことしで打ち切りになっちゃいました。このことについて、何らかの形で新たな展開が考えられないか。

 この二点について、外務省のお考えを伺いたいと思います。

逢沢副大臣 藤村先生御指摘のように、先般、第四十五回海外日系人大会が開催をされ、先ほど先生が御指摘をされました四項目が要望事項として採択をされたということを承知いたしております。

 二〇〇八年にブラジル移住百周年という大変大きな節目を迎えるわけでございまして、政府として、その節目に当たってしっかりとした取り組みをしていかなくてはならない、基本的にそのような認識を持っているところであります。

 御承知のように、去る九月に小泉総理大臣が、総理としては久方ぶりということでございましたけれども、ブラジルを訪問いたしました。その際に、ルラ・ブラジル大統領との間で首脳会談を行い、両国で、この二〇〇八年のブラジル移住百周年について、両国政府としてもしっかり取り組む必要がある、また日本ブラジル交流年として祝うことが大切であるという認識について、お互いの意思が、また意見が、考えが一致をしたというふうに承知をいたしているところでございます。

 したがいまして、ブラジルにおきます日系社会の方々ともよく相談をさせていただきながら、当然のことでありますけれども、ブラジル政府の協力も得ながら、さまざまな交流事業の実施に向けて積極的に取り組んでまいりたい、そのように考えております。

 なお、御指摘の海外日系人訪日団受け入れ事業でございますけれども、長らくこの事業を続けていたわけでございますが、委員御指摘のように、結論といたしまして、平成十六年度をもって一応終了するという決定をいたしているところであります。

 では、これからどうすべきかということになるわけでありますが、実施団体でございます海外日系人協会とも協議をし、また若干実務的になりますけれどもJICA等とも協議をする必要があるというふうに承知をいたしておりますが、今後どのような形でこの事業を、あるいはまた事業の趣旨を引き継いでいったらいいか、よく検討をさせていただきたいというふうに思います。

藤村委員 どうぞよろしく検討のほどをお願いします。

 昨年、例えばブラジルでいえば、戦後に移住した人たちが五十周年の記念の式典をやったんですね。あるいはさらに来年、これも戦後の農業関係の移住者でコチア青年移住というのを十二年間まさに日本の国策でやった、その人たちが来年やはり移民、移住五十周年を迎える。だから、二十で行けば七十になられるわけで、その間一度も日本に帰ったことのないそういう人たちをお呼びしようというのがその制度であったわけですから、まだまだ必要性がなくなったということではない、このように申し上げたいと思います。

 もう一点、ブラジルにかかわりますが、町村外務大臣のこの先週のあいさつの中で「外務省は、八月の機構改革により、領事局の新設を含め、」云々。そして、「引き続き、領事サービスの向上、海外の日本人の安全確保、」等々ということに万全を期していくと。今まで領事移住部という部であったのが局に格上げしたということは、これは海外の、いわゆる邦人へのいろんな支援、あるいは邦人の安全の問題、今非常に高まっているわけですね、需要が。そういう意味では必要なことだと思います。

 にもかかわらず、しかし、三年前からの一連の外務省改革の中で、非常に消極的だとは思うんですが、海外、外国の日本のいわゆる公館、大使館、総領事館など、これを七増、七つふやす、それはいいことだと思うんですね。ところが、七増だったら七減だというので、結局、何か数は同じままにするところで非常に無理があって、私、一つだけ具体的に伺いたいのは、ブラジルの一番南の州にありますリオグランデドスル州という州なんですが、そこの州都に、ポルトアレグレというところですが、ここに総領事館がずっと働いてきた。この地域は、日本のリンゴ移民、青森からのリンゴの移民だとか、あるいはブドウの移民だとか、結構日本の移民もたくさんいて、まさに領事業務というのは非常に必要である。

 にもかかわらず、この総領事館を廃止するというのが今の七増七減案で出てきているようでございますので、この点について、今からの、まだ総務省とか財務省とかの根回しもあることだとは思いますが、現時点での現状だけを御報告願いたいと思います。事務方でも結構です。

坂場政府参考人 お答えを申し上げます。

 平成十四年八月に策定されました外務省改革に関する行動計画の中で、今委員御指摘のとおり、七公館を廃止、七公館を新設する、新しい外交ニーズに対応した体制をつくっていくという方針が出たわけですけれども、ブラジルにはブラジリアにあります大使館のほか七つの総領事館がございまして、これについても現在見直しを行っているという状況でございます。

藤村委員 時間が参りましたが、二〇〇八年、先ほど逢沢副大臣の方から答弁いただいた移民百年がまだ四年先でございますし、まだまだブラジルというのは海外で最大の日系人社会を擁する、百五十万人ぐらいと言われております国の中のまさに邦人保護。領事局に格上げして頑張ろうというときにそこの公館をなくすというのは大変消極的な話ではないかと思いますので、ぜひこれは何らかの形で存続できるような、外務省のこれは頑張るような働きを今後お願いして、質問を終わります。

 以上です。

赤松委員長 次に、首藤信彦君。

首藤委員 民主党の首藤信彦です。

 きょうは、メキシコの、まずメキシコのEPAの問題について、外務大臣に基本的なところ、特に今後のEPAの展開や日本のグランドデザインについて、まずお聞きしていきたいと思っています。

 本会議でも質問させていただきましたが、どうもこの経済連携というものに理解が、私たちも十分でないと思うんですね。いまだにまだFTA、FTAというふうに言っておられる方が多いんですが、これはもうEPAなんですね。

 EPAというのは、FTAと似て非なるところもたくさんあるんですね。ちょうどオタマジャクシとカエルぐらい違う。オタマジャクシからカエルになっているんですけれども、それはやっぱりカエルになれば陸上でぴょんぴょんと跳んでいったりする。もちろん、蛇に襲われるかもしれない。そのリスクというのもまたすごく違うわけですね。

 しかし、そこに踏み込んでいったというのはやっぱり非常に評価されるべきことだと思うんですが、この問題に関しては、決してこれが最初ではなくて、実は二年前に、二〇〇二年の十一月ですか、シンガポールとのEPA、名称は多少違っておりますけれども、内容的にはシンガポールとのEPAがスタートしたわけです。

 これは、日本にとっても非常に犠牲の少ない分野といいますか、お互いに補完できる、非常に経済ベースで話を進めやすい分野であったから、ほとんどの方が疑義を投ずることなくそれが進んでいった、それは確かだと思うんですね。しかし、果たしてそうであったのかどうか。

 まず、この二〇〇二年のシンガポールEPAというものに関して、今までの成果、そしてその二年のならし運転期間で発見された問題点、それをまずお聞きしたいと思います。

逢沢副大臣 首藤先生御指摘のように、最初のEPAとしてはシンガポールとEPA、経済連携協定を結んだわけでございます。

 二〇〇二年十一月に発効いたしまして、ちょうど二年ということでございますけれども、我が国にとって最初の経済協定、EPA。これは、二国間の貿易や投資の自由化、また円滑化のみならず、幅広い分野において日本とシンガポールの経済連携を強化する、そういった成果が上がりつつあるというふうに承知をいたしております。

 若干具体的なことを御報告させていただきますと、例えばビールでございますが、関税を撤廃した品目の一品目でございますけれども、日本からシンガポールへの輸出が増加をいたしております。二〇〇二年度は対前年度比プラス四七%、二〇〇三年はプラス七%、そしてことしの前半、一月―六月でございますけれども、二〇〇四年につきましては、半年でございますけれどもプラス三一%、そんな数字が上がってきております。

 逆に、シンガポールから日本に対して貿易、輸出が増加をした例を一つだけ御報告いたしますと、医薬品、プラスチック、これも関税を撤廃した品目でございますけれども、ふえてまいりました。二〇〇二年度はシンガポールから日本への輸出が対前年度比プラス六%、二〇〇三年は実にプラス四二%、そして二〇〇四年の前半、一月から六月におきましてはプラス三五%といったようなことであります。

 もちろん、このほかにも幾つか大きく貿易がふえているといった品目があるわけでありますが、確かに目に見える形で、お互いがいわゆるウイン・ウインの関係を構築しつつある、そのように評価ができようかと思います。

 なお、税関手続あるいは貿易取引文書の電子化、相互承認等々、十二の分野で実は合同委員会を設けまして、さらに円滑な貿易や投資が進むように協議をするという趣旨の合同委員会が開催され、それぞれ意味のある会議が開催されておるというふうに承知をいたしております。

首藤委員 逢沢副大臣で結構ですけれども、そういうお話を聞くと、では結局もう満点だ、百点満点、もうすばらしいことばかりで、伸びて伸びて伸びて、いいことばかりだった、ほら見てごらんなさいという気持ちはないわけではないんですけれども、質問の内容はそういうものじゃなくて、やっぱり常にバランスシートですよね。バランス、コスト・アンド・ベネフィットで。

 コスト・アンド・ベネフィットなんですけれども、コストの方を、どれだけ影響が出てきて、あるいは思わぬ訴訟とか、思わぬ意思疎通の不十分さから大きな問題が出てきたとか、そういう事例もまた解明していただきたいと思うんですが、いかがですか。

逢沢副大臣 先ほど御報告の中で、いわゆるよりスムーズなEPAの促進、関係強化のために十二の協力分野で合同委員会が開催をされておるということを報告させていただきました。

 今のところ、このEPAを結び、その後の経済の動きの中で、両国間に大きなデメリット、あるいは大きな問題といいますか、課題が特に障害となる形で上がってきているという報告には接していないわけでございますが、確かに首藤先生御指摘のように、プラス面もあれば、場合によりましては今後克服をしなくてはならない問題が発生する可能性は否定できないというふうに承知をいたしております。

 よくそのあたりは注意深くウオッチをしてまいりたい。仮に問題が生ずれば、この十二の委員会を生かすなり、必要な手続をとりたいというふうに思います。

首藤委員 外務大臣、今お聞きになったように、このEPA、二年間やってみて、ならし運転期間、日本としては非常にいいスタートを切った、そういうふうに私も思いますよね。

 実は私、このEPA問題というのはかなり古くからやっておりまして、実は十数年前はこの問題の研究者だったんですね。これでアメリカに研究にも行って、ちょうどガットが崩壊するときに、WTOはうまくいかない、昔のITOをまねしてつくるんですけれども、それはうまくいかないから、ぜひこのFTAのネットワークで第二チャンネルのネットワークをつくっていけということをずっと主張してきたわけなんですが、驚くことに政府は全く耳をかさなかった。そして、政府はただひたすらWTO、WTOと言って、私の声も全然聞いてくれなかったわけですが、そのために、日本はこのEPA論議、FTA論議もそうですが、実は三周おくれになっている。

 NAFTAが本当に、こんなことできっこないよ、NAFTAなんというのは、そんなものは無理だよと言っていたら、ぱっとできてしまった。一方ではEUというのができて、どんどん自由化を進めていく。そして今、その残ったところでどうやって、碁の劫立てみたいな形で石を置いていく段階に入って、ようやくやっている。要するに、三周おくれの論議であるということが言われているんですよ。

 ですから、今シンガポールであれば、ほとんど最初から問題ないわけですよ、実は十年前でも。では、なぜ日本の産業界を間違った方向にリードしていったのか、その外務省の責任はどのようにおとりになるのか、そこを説明していただきたいと思います。

町村国務大臣 私もかつて、昔の話をして恐縮ですが、今の経済産業省に勤務をしておりまして、このWTO、あるいは昔のガット・ウルグアイ・ラウンド体制というんでしょうか、これがやはり頭の中にがっちりでき上がっちゃっているんですね。ある種の固定観念と言ってもいいかもしれません。率直に言うとそういう感じがありました。ですから、私は国会議員になりまして、今お話しのような一連の動きを見ながら、本当かなと、正直言うと思い続けてきたんです。

 したがって、頭の切りかえがまことに首藤先生のごとく柔軟にできなかったという意味では大変反省もあるわけでございますが、今や、なるほどこれでは確かに世界の動きにおくれてしまっているという認識もありますし、WTOを基本的にやはり補完をする仕組みとしてこれは非常に有効であるという認識に立って、今、必要なところから積極的にこれをやっていこう、十年以上おくれて首藤先生のレベルにやっと外務省も近づいてきた、こういうことではなかろうかと思っています。

首藤委員 今回のメキシコのEPAで、大変やはり一番最大の問題はアメリカの存在だと思うんですよ。メキシコというよりも、その後ろについているアメリカという巨大な貿易力、政治力、そして軍事力を持った国の影というものが私は本当にちらつくわけですが、やはりNAFTAの主要国と日本がEPAを結んだ、FTAじゃなくてEPAを結んだということは、もう大変なコミットメントといいますか、コミットしていっているということなんです。

 そこで問題になるのが、ではアメリカがどう動いているかということですね。アメリカがそのまま動いていなければ、それは日本はメキシコとの間で距離感を詰めていくということが考えられる。ところが、おっとどっこい、アメリカは猛烈な勢いでこのFTA、EPAに動いているんですよ。

 例えば、最近では、ことしの二〇〇四年の五月にはオーストラリアとFTAを結びました。これは太平洋におけるかなりメジャーな工業国ですよ、農業国でもある、水産国でもある。こういうところとアメリカがFTAを組んでくるわけですね。これは、今の段階では、どういう影響、関係が出てくるのかが、実はそれは私もわかりません。

 しかし、アメリカが、こういう形でFTAを、NAFTAをどんどん強化しつつある。FTAの、何といいますか、まあNAFTAというのがカナダ、アメリカ、メキシコというものがメーンブランチとすると、さらに食指を伸ばし始めてきているわけですね。

 御存じのとおり、日本とアメリカというのは、今、小泉政権になってから、軍事的にはえらく同盟関係が、二歩も三歩もというよりは、もう壁も乗り越えちゃっていっているという感じがするんですけれども、経済的には、やはり私たちが見ていた七〇年代、八〇年代、ベンツェン・レポートが出たり、日米自動車貿易が問題になったり、さまざまな問題になってからの構造というのはある意味で残っているわけですよ。

 ですから、そういうところにおいて、このNAFTAの主要国であるメキシコとEPAを日本が結ぶということで、アメリカとの距離感はどうしていくのか。貿易上、産業上、貿易交流上の、あるいは経済の産業構造調整上、アメリカとの距離感はどうしていくのか。

 例えば、アメリカがこういうふうにオーストラリアまでFTAを組み込んでくると、太平洋はほとんど埋まってくるわけですよ。もちろんアジアにも手を出してくる。そういう中において、例えば日本はNAFTAに入っていくとか、あるいはアメリカとEPAを結んでいくとか、そうしたグランドデザインをお持ちなのか。あるいは、そういう道を拒否して日本独自の経済圏構想をお持ちなのか。そのグランドデザインを町村大臣にお聞きしたいと思います。

町村国務大臣 やはり頭をやわらかくしてこれも考えなきゃならない問題だろうと思いますし、将来にわたって、日米間のそういうEPA連携というようなものがあるかないか、今私にわかに断定することができないものがあり得るのかもしれないとさえ思っております。

 ただ、現状で、アメリカが世界のGNPの大体三割、日本が一五%、二つ合わせると約半分のものになるわけですね。仮にこれとこれとでそういうものができるということになると、これはやはり日本、オーストラリアは確かに大国ではありますけれども、米豪との比率、シェアとはやはり大分違うものがあるという感じがいたします。

 ですから、例えばアメリカとEU総体がそういうものを結ぶようになるかどうか。既にそういうスタディーが一部には始まっているという話も聞いておりますけれども、そうなってくると、今度逆に、ではWTOとは一体何なんだろうかというようなことにも翻ってなってまいります。

 また、日米関係だけでいいますと、現状まだ、特に農産物の関係で、なかなかこれは難しい問題、もちろんそれはメキシコでもあったし、これから結ぶであろうタイでもありますけれども、ちょっとスケールがまた変わってくるといったような問題もあるので、今、私どもとして、直ちに日米間でこれに取り組むということにはなかなかちょっと進めないのかなという感じは持っておりますが、しかし一つの大きな宿題ではあるな、こういう思いがいたしております。

首藤委員 町村大臣はさすがやはり経済産業に身を置いていたことから、こちらも落ちついて安心して質問できますけれども。答えも的確に戻ってくると私も思うんですけれども。やはり今、アメリカという非常に大きな巨大なリスクについて御質問したんですが、同様に、アジアへのアプローチ、これをどうするか。

 御存じのとおり、日本はASEANとの間で非常に微妙な交渉をしておりまして、そこへ中国が急に乗り込んできたというか、ASEAN側で引き込んだという面もあると思うんですが、そこで中国は今、あれだけの巨大な国家が、非常に機敏に、果敢に、小手先の技術までも駆使してすごい動きを見せているわけですね。

 例えばアーリーハーベストとか、そういう本当にアジアの諸国が魅力を感じるような提言をしながら、非常に速い勢いでASEANとの距離感を縮めてきたわけですが、ここへ至って、もちろんその問題に対してはいろいろなそごも出ています。

 こういう状況において、今回のメキシコEPAを踏み台としまして、アジアにはどういうアプローチをとられるおつもりか、その辺をただしたいと思います。

町村国務大臣 日本も東アジア共同体といったような構想を持ち、また今、それぞれのASEANの国、特にタイ、マレーシア、それからフィリピンですか、さらには今度は韓国というのもやっております。そして、来年からはASEAN総体ともそういうことを、さらに協定の話を進めていこうということで、確かに中国の方が先行いたしました。

 しかし、よく見てみると、中国とASEANの、まさにFTAだと思いますが、貿易面で非常に進んできておりますが、他の分野の話というのはほとんど進んでおりません。その点、私どもが今シンガポールあるいはメキシコと結んでおりますのは、もちろん貿易、関税も含まれますけれども、それ以外に、知的財産権の問題でありますとか、中小企業の振興でありますとか、観光の問題でありますとか、あるいは投資、相当幅広い分野での協定、いわば大変質が高いと言うとちょっと自画自賛が過ぎるかもしれませんが、そういうものを結ぼうではないかということで努力をしているところでありまして、その分、多少時間がかかることはありますけれども、私どものは大体、時間が入り口でかかるけれども、でき上がると非常に後はスムーズに動くという特色があろうかと思いますので、そういう形で、中国とは多少違いますけれども、日本は日本なりのやり方で、今アジアとの関係をより密接、深いものにしていきたい、こういう努力を一生懸命やっているところであります。

首藤委員 そうした外務大臣の将来展望についてお聞きしたわけですが、そこで問題になるのは、世界じゅうがやたらとFTA、EPAが出てきて交通整理ができなくなってきているというところで、このたび外務大臣がチリに行かれて、そこでAPECの会議があるわけですが、そこでFTAをある意味で整理しようというか、モデルケースをつくって、余りめちゃくちゃにやってWTOそのものと矛盾するようなことはやめようという動きが出てきていると思っています。

 これは、ある意味で国際経済システムの再構築なんですね。ですから私は、この件に関しては、ただチリへ行ってそういう話をへえと聞いてくるんじゃなくて、日本がイニシアチブをとって、こういうFTAのネットワークにしてWTOを補完すべきだとか、こういうWTOとの位置関係にすべきだとか、それから地域の発展にはこういった自由貿易体制をどのように使うべきだということを積極的に発言し、あるいは町村構想でもいいですけれども日本の構想として打ち出すべきだと思うんですが、一つは、この会議でどういう形でフォーマットが決められていくと今聞いているのか。第二は、日本独自の国際経済システムの再構築に向けてのイニシアチブをお持ちなのかどうか。この二点についてお聞きしたいと思います。

町村国務大臣 十一月中旬ですか、チリで開かれますAPECの場におきまして、委員御指摘のような議論が行われるわけでございます。

 現在のところ、やはりそれぞれの国がどういうことをやっているのかということについての十分な情報公開、透明性の確保ということを議論の主題として、それぞれ、こうやって大変うまくいったよという、何かベストプラクティスというそうでありますけれども、よい事例を集めて、なるほど、こうやると両国間のみならず他の地域にも広がりを持ってうまくいった、そういうようなものをお互いに紹介し、かつそれを一定のフォーマットに従って整理してみる、そういうことを議論しようというのが次回のAPECの議題になるというふうに私は理解をしております。

 これをさらにもっと大構想でまとめろという御指摘でございますが、なかなかそこまでの取り組みが十分できておりませんが、貴重な御提言をいただきましたので、真剣に考えてみたいと思います。

首藤委員 次に、もう一つ外務大臣に、外務省としての大きな取り組みについてお聞きしたいわけです。

 最近、アメリカのシアトルにある歩兵第一師団が司令部を座間に移すという話がありました。これは、ここに中谷さんがおられますけれども、いわゆるブラック構想の中の一部で、大きくリアラインメントといいますか、基地の縮小と再統合、再編成というのをやっているわけですが、その中でなぜこの司令部がこんなところへ出てくるのかという疑問は多くの識者から挙げられているわけですね。

 これは話は、今回の、七月ぐらい、夏ぐらいの討議で決まった、出てきたというんですが、実際に情報をモニターしますと、ことし三月ぐらいにはかなり話が進んでいるんですよ。驚いたことに、古いデータを見ますと、実は昨年の十二月ぐらいから座間、座間というのが、これは個人が持っている、ミリタリーウオッチャーみたいな人のサイトには盛んに出てくるんですよ。おったまげて、こんな古い構想だったのかと思って驚いたんです。

 一体いかなるデザインに基づいて、グランドデザインとか、あるいはいかなる論文、昔はアーミテージ論文とかたくさんありましたね。そうしたものに、一体どのような根拠に基づいてそもそもこんな奇想天外な話が出てきたのか、その原点は一体何であったのかをお聞きしたい。

町村国務大臣 私も外務大臣を拝命して一カ月余でございまして、これまでの詳細な日米間のやりとり、今一生懸命資料を見ながら勉強している段階でございまして、なかなか頭の回転が遅いものですから追っつかないんでありますけれども、日米間で、総論に行ったり各論に行ったりまた総論に戻ったり、かなりいろいろな議論を積み重ねてきているということであります。

 その議論の過程で、あえて座間という特定地名を申し上げるつもりはございませんが、いろいろな考え方が行ったり来たりしているのは事実だろうと思います。ただ、いずれも正式にこれがアメリカの提案です、これが回答ですというような形にはまだ至っておりません。

 それで、そろそろ議論もやはり集約させなければならない、こう思ったものですから、先週の日曜日ですか、パウエル国務長官が来られたときに、そろそろどうやってこの議論をまとめていくのかということを考えなきゃいけませんねと。

 向こうさんも、実は大統領選挙があって、どういう陣容になるのか、だれが大統領になるのか、必ずしも判然としないという状態の中ですから、余り今この時点でどんどん前に進みがたいという政治環境もあるのは委員御承知のとおりでございますが、いつまでも、何年も議論ばかりしているというわけにもまいらぬ、こう思いまして、まず少なくとも頭の総論的な部分ぐらいは先行してお互いきっちり合意をしよう、その総論に基づいて、では各論をこれからどう合意をしていくのかというような順序で議論をまとめていこうじゃありませんか、そんな状況でございます。

 したがって、今特定の地名を挙げられたことについて、私が現段階で政府としての見解を申し述べるには、いささか時期尚早といいましょうか、まだそこまで成熟していないというふうに御理解をいただければと思います。

首藤委員 私は神奈川出身で、神奈川県民、横浜市民を代表しているわけですが、私は、こんな話がそもそも出てきたことが大変不快である、そういうふうに思っています。

 やはりまず第一に、冷戦後世界、もう冷戦構造が崩壊してから十年以上たちましたが、その世界観をどうするのか。急に、不安定な弧と言って、昔は不安定な三日月地帯なんと言っていたり、勝手な、どこの論文にも、まともな論文には出てこないような話の中で具体的な基地名が挙がるということに関しては、大変な不快感を持っています。

 今大臣が説明されたように、まずグランドデザインの討議を始めているということですから、また、アーミテージさんも言っていることですけれども、ともかくどういう構想で、今までの例えば早期展開する一〇―三〇―三〇とか、それからブラック二〇〇五とか、そうしたアメリカがやっていることと、今回の日本の基地の再編成、それから日米の地位協定あるいは日米の安保のあり方はどうするのか。それをきっちり討議することなしに具体的な名前が出ることすら非常に不謹慎だと思っているので、政府の対応をしっかりやっていただきたいということを望みます。

 最後に、イラク情勢ですが、私が本当に危惧しているのは、イラクのサマワの自衛隊の基地に、ついに基地内に、建物に被弾したということであります。今までは基地の外であった、それから基地のそば、基地の中の敷地内、しかし人には当たらない、施設には当たらないと言っていたのが、ついにロケット弾が飛んできたということであります。しかも、それも北方から、同じ角度で、恐らく同じ距離感で飛んでくるわけですよ、同じ百七ミリのロケット弾と言われていますから。

 となりますと、これはもう大変、私たちの若者の命も、というのは、自衛隊は別に物すごい地下ごうを、フセイン政権みたいに何百メートルと地下に地下ごうをつくっているわけじゃないんですね。ですから、ただのコンテナボックスにいるわけで、こんなのは、もう当たったら即座に中にいる人は全滅ですよ。

 ですから、そういう状況において、当然防衛庁長官が国民に向かってちゃんと説明すべきだと私は主張しましたけれども、何か国会手法の都合から出られないようですが、では、今津防衛庁副長官に、今こんなことにまでなっている、ついに分水嶺に達したわけですよ。ついに敷地内の設備にまで当たったという段階に、防衛庁はどう対応しようとしているのか、御説明をお願いします。

今津副長官 今のイラクには、第一陣、第二陣そして第三陣の自衛隊が派遣されているわけであります。私は、いずれの隊旗授与式にも出席をして、そして若い自衛隊の皆さんの並々ならぬ決意、そして見送る家族の方の涙、そういうものをずっと見てまいりました。何としても、我が国のために、あるいは国際人道復興支援に努力をしている自衛隊の皆さん方に全員無事で元気に帰ってきてもらう、そのために防衛庁は万全を尽くしていかなきゃならない、それは私たちの最大の責務だというふうに思っております。

 大変残念ながら、詳細については、情報の管理上いろいろな問題があってすべてをお話しするわけにいきませんが、今のところなし得る努力というものは最大限にして、自衛隊の安全を守るように努力をいたしております。

首藤委員 そういうことが国民に対して軍というものの信用を失わせているんですよ。

 アメリカを見てみなさい。全部公開していますよ。第二次大戦だって、アメリカが隠した情報は二つしかない。マンハッタン計画と山本五十六の撃墜ですよ。あとはみんな公開しているんですよ。アメリカの船舶の造船というのは全部産業統計にあって、日本だって分析していたんですよ。だから、戦争する前からアメリカがどう打って出るかわかった。だから戦争は十二月七日に実は敗戦という、そういう本だってあるわけですよ。

 情報というのは、それは軍は軍の機密はあります。その瞬間に守らなきゃいけない機密はあります。しかし、国民とともにある軍なんですよ、この軍は。ですから、そういうふうに何でも軍事機密ですからできませんというんじゃ、しようがないじゃないですか。もう実際にどんどん危険が迫ってきている。では、あなたは、ここで戦闘が行われる可能性は全くない、一〇〇%ないということを言えるんですか。どうですか。

今津副長官 一〇〇%ないとは言えませんけれども、限りなく一〇〇%ないように努力をしていきたいと思っております。

首藤委員 そういう無責任な、一体何の根拠があってそういう可能性が全くない、一〇〇%ないと言えるんですか。その根拠を示してください。

今津副長官 議員、私どもが秘密というかそういうものを持っているというものではなくて、何といっても自衛隊の皆さんが目的を達成するために、せめて安全を国家として守っていく、こういう前提で、やはり守るべきものは守るという姿勢に立っていることをぜひ御理解いただきたいと思います。

首藤委員 全く理解できませんね。国民とともにある自衛隊ですよ。サマワだって、やっているのは軍事行動じゃない。これは支援活動なんですよ、経済活動なんですよ。経済支援活動のために行っているんですよ。国民が理解できなかったら、この自衛隊の派遣だってとまるんですよ。

 ですから、国民に対して、少なくとも新聞に公開されているように、北側から飛んできた、何度も来ているということはどういうことか。あなたは一〇〇%全くないわけじゃないと言ったけれども、まさにそうですよ。可能性があるんですよ。戦闘となる可能性がもうどんどん迫ってきているんですよ。そうでしょう。

 ですから、私は少なくとも、民主党はこの自衛隊の早期撤退を主張しておりますが、それ以前に、このイラク特措法第八条第五項、当該活動を実施している場所の近辺において、戦闘行為が行われるに至ったあるいはその近辺の状況に照らして戦闘行為が行われると予測される場合には、行動を中止、中断すべきだ。私は、この条項に基づいて、自衛隊は一時活動を停止して安全な地域に退避されることを強く求めます。

 以上で質問を終わります。

赤松委員長 次に、篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原孝でございます。

 まず、冒頭でございますけれども、イラクにおきます不幸な事件。日夜、多分夜も寝られないで対応されておられるだろうと思います町村外務大臣以下、外務省の皆さんに敬意を表しておきます。

 しかしながら、BSEという、ささやかな問題かもしれません、イラクの問題と比べたら。しかし、この点については、私は甚だおかしい対応をしているのじゃないかと思いますので、この一点に絞りまして質問させていただきたいと思います。

 質問に入る前に、通告してありますけれども、全大臣、副大臣、政務官等に共通の質問をすることになっております。手短にお答えいただきたいと思います。

 一つは、自民党の郵政懇話会に入っているかどうか、イエスかノーでお答えください。次に、政治と金の問題に関しまして、迂回献金とか、それから旧橋本派からの献金というのがあるかどうか、この二点について大臣から順次手短にお答えいただきたいと思います。

町村国務大臣 郵政懇話会とおっしゃったが、自民党には郵政関係のいろいろな議員連盟がありまして、ちょっとどれを指しておられるのかよくわかりませんが、私が加盟をしておりますのは、郵政事業懇話会というものには加盟をいたしております。その他迂回献金等々については一切ございません。

逢沢副大臣 私は、郵政懇話会には所属をいたしておりません。迂回献金その他はございません。政治資金規正法にのっとり、適正に処理をさせていただいております。

河井大臣政務官 御質問をいただきまして、ありがとうございます。

 郵政懇話会なんですが、今大臣もおっしゃいましたとおり、自由民主党の党内にはいろいろな郵政の勉強会、議員連盟がございます。せっかくの篠原委員の御質問でございますので答弁に正確を期したいと存じますので、代表者がだれか、いつごろ創立されたかということについて教えていただければお答えできるかと思います。

 それから、迂回献金はありません。橋本派、私は平成研究会に所属をしておりますので、当然、献金、寄附をいただいております。平成研からの寄附については、政治資金規正法にのっとって適切に処理をいたしております。

小野寺大臣政務官 郵政懇話会等には入っておりません。迂回献金、それから橋本派からの献金等もございません。

篠原委員 ありがとうございます。

 それでは、本題に入ります。

 BSE問題、日本では非常に、言ってみればヒーテッドディスカッションというか、国民の関心が強いわけですけれども、アメリカも同じです。アメリカ人も割とマニアックなところがありまして、皆さん御存じかと思いますけれども、フードコレスポンデントというプロがおりまして、よくニュースに出てきて、食べ物の安全性とかというのについてコメントをしています。BSEの事件が発生したのが去年の十二月下旬ですけれども、それから一週間、テレビを見ていましたら、BSEのニュースは引きも切らなかったわけです。

 今回、日本のこの交渉の結果、いろいろ言われておるわけですけれども、アメリカでは一体どのように発表され、報じられているのか。

 時間がなくなりましたので二つ一緒にお伺いしますけれども、私が承知している限りでは、ちょっと日本側と違うような報道がなされている。例えば、NCBAという食肉関係の団体があるわけですけれども、そのライオンズ会長というのは、世界の牛肉を輸出するゲートウエーになるというようなことを言っております。それから、ア・マター・オブ・ウイークスという、こういったわずか数週間で輸入が再開できるといったような甘い見通しが述べられておるんですが、この点について、どんなぐあいになっておるんでしょうか。

 では、質問していただいてありがとうという温かいお言葉をいただきました政務官からお答えいただきたいと思います。

河井大臣政務官 お答えをさせていただきたいと存じます。

 今委員が御指摘になりましたことは、米国のベネマン農務長官が協議終了後の二十三日に声明を発出した中でおっしゃった一部分じゃないかと思いますが、その点で、合ってよろしいでしょうか。(篠原委員「はい、いろいろなところに」と呼ぶ)それ以外にも、米国農務省のホームページなどにもいろいろな会見記録がありますけれども、本件につきまして、米国時間の一日、ワシントン・日本大使館を通じて確認をいたしましたところ、まず、数週間の問題、これはア・マター・オブ・ウイークスですけれども、との表現については、ペンさんという農務次官がいらっしゃいまして、農務次官に直接御認識を確認いたしましたところ、早く再開していただきたいという期待を込めて用いた次第であるが、専門家等の協議を経た上で、日米双方が必要な国内手続があり、そのために一定の時間を要することは既に日本側からも説明を受けており、当然理解している。いずれにしても早く貿易を再開してほしいなと強く期待していることを理解してほしいという趣旨の回答でありますので、別に日米間でそごがあるというふうには認識いたしておりません。

篠原委員 交渉結果とかいろいろなのを、日米双方、あるいは日米だけじゃありません、両国が違うように解釈してやることはよくあるわけですね。

 皆さんよく覚えておられるのでは、日米構造協議。あれはアメリカではストラクチュラル・インペディメンツ・イニシアチブと呼んで、構造障害イニシアチブというのは日本語でどうやって訳すのかどうか知りませんけれども、余り障害とか何か言われるといけないので、日本は穏やかに日米構造協議と訳し、アメリカでは日本の障害をぶち破るんだというふうに言われているわけですね。

 交渉の結果を日米双方で相当いかがわしく勝手に使うというのは、私は非常によくないんじゃないかと思っております。こういったことについて、交渉をするだけじゃなくて、後もきちんとフォローして、いいかげんなことを言っている場合はきちんと問いただすということを絶対していただきたいと思います。

 今回の、十月の二十一、二十二、二十三ですか、この交渉、私は非常に問題ある交渉だと思っております。厚生労働省、農林水産省、食品安全委員会には同情を禁じ得ない。

 なぜかというと、普通の常識ある人たちだったら、こんなときにこんな交渉をするべきではないというふうに思っているはずです。答申をしてほしいというので諮問をしました、農林水産省や厚生労働省は。それで、答申が出ていません。それにもかかわらず、それを予見して交渉をし出す。

 そもそも食品安全委員会は、厚生労働省や農林水産省に任せておくとよくない、それぞれの業界の立場や何かを重んじ過ぎるんだ、だから中立的な立場からといって判断しようとしているときに、とんでもないところで中立性を阻害するようなことが行われている。

 常識的に見ても、最低限、答申が出てから交渉するのが外交上のルールじゃないんでしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。

町村国務大臣 これは委員御承知のとおり、随分長い間の議論が行われてきているわけであります。前回は四月、半年ぐらい前のことですね。そして、その間いろいろな会議が積み重ねられてきたわけでございますけれども、厚生労働省それから農水省が先月十五日に食品安全委員会にBSE対策の見直しを諮問した。その時点で両省としての考え方が明らかになったわけでございますから、今度はそれをもとに米国産及び日本産牛肉の貿易再開についてアメリカ側と協議を再開した。

 そして、その基本的な視点は、これは日米間で、両国首脳がニューヨークでこの九月ですか話し合ったときも、小泉総理は、これは科学的知見に基づいた話し合いでなければならない、食品の安全というのは重要なことなんだということをはっきり言われております。

 その考え方に基づいて今回私どもはこのBSEの交渉に臨んでおりますし、アメリカもまたそういうことで、科学的な知見に基づく審査、そしてそれに基づいてでき上がる手続にのっとってやろうということでございますから、私は、何ゆえにこれが非常に非常識なタイミングで云々という、今ちょっと言われましたけれども、別にそんなことは全くない、私はこう考えております。

篠原委員 それは、だんだん町村外務大臣も小泉総理大臣に似てきたですね。一般の常識からいって、それはおかしいですよ。本当にそう思っておられますかね。一般の国民はそうは思いませんよ。

 しかし、正直に答えてください、それは。正直に、一般の国民が本当にそうだと、科学的な根拠を食品安全委員会で議論しようとしているときに、する前に、結果が出る前に交渉しようというのは、私は、安全性にどういうふうに問題があるか、二十カ月以下がどうか、三十カ月は、それは議論してしかるべきだと思います。そして、交渉もしてしかるべきだと思います。

 しかし、日本国の食品安全委員会が今これから議論しようとするときに、それを先取りして、結果を先取りして交渉するなんというのは、やっぱり非常識じゃないでしょうか。もうこの一点なんです、問題は。私はあとは科学者に任せればいいと思うんです。このやり方がまずいんじゃないでしょうか。

町村国務大臣 失礼ですが、委員、やっぱり委員会の場とはいえ公式の場でありますから、人を誹謗中傷するような、そういうまず御発言は今後控えていただきたい。

篠原委員 それは失礼いたしました。それでは、正直にお答えください。

町村国務大臣 はい、わかりました。

 では、その上で、今の非常識云々というお尋ねがありました。

 私ども、食品安全委員会の結論をすべて先取りして、もう答えを出してそれに基づいてどんどんやるなんて、合意をごらんになればおわかりのとおり、全くそんなことはないわけですね。当然、安全委員会の結論というものを尊重しながら、また両国間の専門家が国際的な標準、国際的な機関の話し合い、そういうものにのっとって、すべて科学的な知見に基づいてやっていこうということをお互い合意したわけであります。

 別に、例えばもう一切食品安全委員会の結論が出ないうちに来年の一月一日からこれこれの量の輸入を再開すると言えば、それは御指摘のとおり、めちゃくちゃだ、どこに科学的知見があるんだという御指摘になろうかと思いますけれども、そういう結論を出しているわけではないわけでありますから、私は、そういう意味で、今回の合意というものは非常に自然な形で行われている、こう考えております。

篠原委員 外務大臣のお答えですけれども、私は極めて不自然だと思います。

 なぜこの時期にこういうことをするのか。きょうは大統領選挙の日です。すべてが十一月二日を見越して進んでいたんではないでしょうか。これは予算委員会でも総理に対して質問してあります。私は、そういう点では、こういうことを言うのはなにかと思いますけれども、外務省の皆さんもこれはちょっとまずいんじゃないかという気持ちがあるんだろうと思います。しかし、日米間のことを考えていろいろ進んでいる。

 どうしてかというと、皆さん余り認識ないかもしれませんけれども、選挙はアメリカも日本も同じです。農家の方がきちんと投票に行くわけですね。そして、畜産業というのは非常に重要な地位を占めている。そういったことから、いろんなことが動いていたんじゃないかと思います。

 特に、今回、日本と違いましてアメリカの場合はそれぞれの団体がどちらの候補を支持するというその旗幟を鮮明にしないんですけれども、今シーズンは違っていまして、初めて、ブッシュ候補を支援すると牛肉関係の団体がそれを表明したんです。非常に異例のことです。

 それに対してブッシュ大統領はこたえるべく、これは皆さんおわかりだろうと思いますけれども、九月十日、オハイオでブッシュ大統領はこの問題に触れておられます。アメリカの大統領選挙、真っ先に、何かよくは知りませんが一番中心から遊説をスタートするというので、中西部の田舎から遊説をスタートします。ですから、農業問題から入るわけです。

 ですから、私は、この交渉、何も関係ないんだというふうに外務大臣はおっしゃいますけれども、まず、間違った時期だと。それから、食品安全委員会の結果を明らかに先取りしています。間違った予見に基づいて、そして間違った結論を出しているんじゃないかと思います。今回の交渉結果は、常識的に見て、きょう行われますアメリカの大統領選挙を意識して、そして日本の制度をゆがめてまでそれを味方しようという、前代未聞の屈辱的合意じゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

町村国務大臣 どこが屈辱的であるのか私にはわかりませんし、先ほど申し上げましたように、きちんとした手順を踏んで、そういったものが全部満たされた暁にはそれは再開されることもあるだろうということを、将来のことを述べているだけであって、別に、先ほど申し上げたように、いついつからどれだけの量を輸入するということを言っているわけでも何でもないわけでありますので、すべて両国首脳が合意した、科学的知見に基づいて今後の作業を進める、そういう基本精神に何らもとるところはない、こう考えます。

篠原委員 これは繰り返しになりますけれども、国民はちゃんと見ています。そして、国民だけじゃなくて私は国際社会も見ていると思います。

 どういうことかといいますと、日本が軟弱な態度をとった。ですから、この後、BSEの清浄国で、日本よりずっと少ないんですけれども、輸入国の韓国や台湾にもペン次官や牛肉協会の会長が行って圧力をかけている。あの日本も輸入再開というシグナルを送ったんだから、あんたたちの国も、四十カ国ほど輸入を禁止しているわけですけれども、次から次に圧力をかけようとしている。これでは国際社会からも私は信用されないんじゃないかと思います。

 私は、選挙のこともちょっと触れますと、いろんな交渉事で、交渉事というのは、こういうのは各国間であるんです。

 最近読んだ本に、春名幹男さんの名著「秘密のファイル」というのがあります、「CIAの対日工作」というので、その中に、日本の安保条約の改定とかというのをいろいろバックアップするために岸政権にCIAが資金を提供したりしたということを、アメリカの膨大な資料に基づき、やったりしているのはあります。僕は、そういうのは当然あるんだろうと思います。しかし、今回の日本の反対のバックアップというのはおかしいんじゃないかと思います。

 ところで、皆さん、二〇〇四年度の日本記者クラブ賞を受けられたそうですけれども、この本をお読みになった方はおられますか、外務大臣、副大臣。それだったら、ぜひお読みいただくことをお勧めいたします。日米関係のいろいろなことを書いてあります。裏面史です。

 次に、いろいろな対応の仕方があるんです、こういったものには。日本は非常にでかい国なんです、経済的に、じゃないというのはありますけれども。日本は世界一の牛肉の輸入国なんです。この立場を利用して、もっともっと主体的な立場をとれるんですね。どういうことかというと、日本がこういう安全な牛肉でなければ輸入しないぞということを明確に言えば、世界の農業全体を安全な方に向けられるんです。EUなんかちょっとしか輸入していません。しかし、日本はうんと輸入しているんです。

 例えば、日本がGMO、遺伝子組み換えはだめだと言えば、ある州は電話をかけてくるんです、我が州は全部遺伝子組み換えじゃない大豆をつくる、そういうふうにする、だから日本は安定的に輸入することを約束してくれといったようなことを言ってきたりするんですね。それで、今回、BSEについてだって、全頭検査だと言っていたら、アメリカの三社ほどが全頭検査していいんだということを言い出しているんです。

 大お客様である日本のこの立場を活用して主体的な交渉をするという、私は日本は絶好のポジションにあると思うんですが、外務大臣、いかがでしょうか、こういう交渉をしていただきたいんですが。

逢沢副大臣 問題意識は、先生と全く共有ができるというふうに思っております。という意味は、食の安心、安全の確保、これは、消費者に対して、国民に対して、絶対に確保していかなくてはならない、守っていかなくてはならない、そういうことでございます。

 したがって、このBSEの国内対策の見直しにつきましては、まさに先ほどから累次大臣が答弁をいたしましたように、科学的知見に基づいてその結論を出す、その一点をしっかり守ろう、こういうことではなかろうかというふうに思います。まさに現在食品安全委員会において、科学的、中立的な立場から審議が行われている、それをしっかり見守りたいというふうに思っております。

 同時に、日米間でも、今後両国の専門家の間で継続される科学的知見に基づく協議や、また貿易再開のための暫定的措置の検証におきましては、国際獣疫事務局や世界保健機関、WHOでありますが、等々の専門家の知見を活用していく、そういう姿勢で臨みたいというふうに承知をいたしております。

 確かに、大きな貿易量を有する日米間で新たなスタンダードをつくれ、またつくれる立場ではないか、そんな御指摘もございました。日本国内での議論とともに、こうしたグローバルな科学的知見もしっかり踏まえるという姿勢で、国際的な基準についての議論が深まるということを私どもは期待いたしております。

篠原委員 アメリカの牛肉産業、先ほど申し上げましたように超巨大な産業です。日本の米のシェアよりも大きいんですね、農業生産額に占める割合が、アメリカの場合。ですから、アメリカの農業といったら畜産であり、その中でも牛肉産業なんです。

 しかし、結構だめなところがあるわけですね。これもまた日本ではもう翻訳されていましたけれども、エリック・シュローサーが「ファストフードネーション」というのを書いた。日本語では「ファストフードが世界を食いつくす」というので、そこでマクドナルドや大きな食肉会社のいろいろな衛生管理がいかにでたらめかということを書いてあります。

 今回BSEで露呈してきました、飼料の規制が日本よりも緩い、それから食肉工場、余り資格もない、低賃金労働者あるいは不法滞在者、メキシコ人の不法滞在者等がやっている、SRMという危険部位の除去も不徹底だ、こういったものではとても輸入しにくいんですよね。

 今、イラク問題もそうですけれども、安全保障というのに非常に国民が関心を持ってきています。私は、安全について、日本は日本人の手で守ろうという意識、大事なことだと思います。昔と比べれば大分違ってきたんです。これはエネルギーについてもそうですよ。今、石油の価格が上がってきている。食糧についても安全保障をうんと考えなくちゃいけない。しかし、食糧の安全保障というときに、食の安全というのを相当考えなくちゃいけないんです。

 二十カ月というのが基準になっています。しかし、二十カ月で若い牛だけが日本にどんどん入っていくと、これは恐ろしいことが起こるんです。どういうことかというと、アメリカは成長ホルモンを使っているわけです。日本は使っていません。EUは禁止されています。成長ホルモンをやると三、四カ月早く育つんです。

 ですから、二十カ月未満というのをクリアするために、日本向けの牛肉は全部成長ホルモンを投与して、三、四カ月早くして、そして輸出するということになる。EUは禁止しているんです、成長ホルモンの牛肉を食べたら我々人間の体にも悪影響が出てくるということで。これは我が国の国民の安全を非常に損なうことになるんじゃないかと思います。

 これは国を挙げてこういったのは阻止すべきじゃないかと思いますけれども。それで、その先頭に立つのは、やはり、防衛問題でもそうです、外務省です。外務大臣、この点についていかがでしょうか。

逢沢副大臣 米国産の牛肉の輸入再開の問題は、単なる貿易の問題だけではない、今委員が御指摘をいただきましたホルモンの話も含めた、消費者の食の安全、安心を確保するということが一番大切な問題であるというふうに承知をいたしております。

 したがいまして、繰り返すことになりますけれども、文字どおり科学的、中立的知見に基づいて解決が図られなくてはなりませんし、まさにそういった趣旨で食品安全委員会において議論が進んでいるというふうに承知をいたしております。

篠原委員 外務大臣にお尋ねしていたはずなので、外務大臣、一言お願いします。

町村国務大臣 今、逢沢副大臣お答えしたとおりでございまして、食品の安全というものがすべての出発点であり基本である、そういう視点に立って、今後、国内的にはもとよりでありますが、海外との関係においても考えていくべきだろうと思っております。

 なお、ホルモンの問題について今お触れになりましたが、この問題はパネルでクロ判定になったんですね。したがって、報復関税をかけられているというような国際的な状況もあるということは私どもしっかり見据えなければならないと思います。

篠原委員 外務大臣、さすがに御存じでした。パネルでクロになりましたけれども、EUはそれにもめげず、報復関税を受けつつ、絶対成長ホルモン入りの牛肉は輸入しないという毅然たる態度をとっているわけです。私はそういう態度を見習っていただきたいということを申し上げておるわけです。

 それで、この、私からすると拙速な交渉です。一体どういう結末をもたらすかというと、私はよくないんじゃないかと思っております。皆さん、よかれと思っているかもしれませんけれども、どういうことになるかというと、二重基準というのになります、日本。日本だけじゃないんです。

 アメリカも、アメリカ国民の方が、緩い基準でへんちくりんな肉が広まるというのは、アメリカの消費者が必ず怒り出すだろうと思います。日本にアメリカの牛肉がまた入ってきたとします。ちょっと信用できないということで、店頭に並んでも多分手を出さないだろうと思います。こういうのは、きちんとしたりしたらまた今までのシェアを復活することができますけれども、拙速な結果というのは、アメリカの牛肉の輸入シェアの回復にはつながらず、逆になって、いつまでたってもアメリカの牛肉はちょっと不安な牛肉だということになってしまうんじゃないかと私は思います。そういうのは、日米両国の消費者にとっても生産者にとっても不幸なことじゃないかと思います。

 ですから、私は、この件について、外務省の皆さんにぜひ頑張っていただきたい。どういうことかといいますと、こういうのをトータルに見たりするのは外務省しかないんですよ。交渉の態度を、きちんとポジションをとって、例えば、政治的な理由がないないというふうにおっしゃっています。そう言わざるを得ないというお立場にあることはわかります。しかし、それはやはりおかしいんです。

 小泉さんがもしそういうことをやっておられるんだったら、その超腹心である町村外務大臣が、そこはおかしいよということを言っていさめて、本当の王道というか正しい交渉を導くのが町村外務大臣の役割じゃないかと思っておりますので、今後の外務省の毅然たる態度を期待いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

赤松委員長 次に、大谷信盛君。

大谷委員 民主党、大谷信盛でございます。

 協定に集中をして、これまでの質疑者の皆さん方を取りまとめるような形で町村外務大臣に質問したいというふうに思っております。

 メキシコとの今回の協定について、私自身は、交渉が始まってから二年間で締結に結びついたということは一定の評価をしつつも、先ほど、さきの首藤委員とのやりとりの中でもございましたけれども、遅かったんじゃないかとか、いろいろな言い方はあるというふうに思いますが、まずもって、最後でございますのではっきりさせておきたいことは、この協定の我が国に対してのメリット・デメリットというものをしっかりともう一度確認しておきたいというふうに思います。大臣、お願いします。

町村国務大臣 メキシコというのは大変大きな国でございます。私も今回のこの協定を少し勉強したときに、メキシコの経済規模がASEAN全体とほとんど同じぐらいということで、私は、最初、先入観でメキシコとタイと同じぐらいかななんと、大変間違った先入観を持っていたことを大変恥ずかしく思ったほどでありますけれども、大変大きな規模の国である。

 しかも、アメリカと隣国であるという地理的な特色があるというところでございます。しかも、メキシコは大変な成長を遂げている。そういう意味で、貿易対象国としても投資対象国としても、日本にとっても大変重要な国、またメキシコにとっても日本は重要な国、そういう関係だろう、こう思います。

 したがいまして、どういうメリットがあるかというお尋ねでございますが、まずやはり米州という大きな市場への一つの大きな橋頭堡になるということが言えようかと思います。また、メキシコは、自由貿易協定を結んでいる国と結んでいない国を非常に差別的に扱っております。

 したがって、逆に、今まで進出した日本の企業等々を含めてかなり不利益をこうむっていたわけでございますけれども、今回、そうした協定を結んでいる国と同じように日本の企業が扱われるというような意味では、競争上の不利益が解消されるという大変大きなメリットがあるのではないか、かように考えております。

大谷委員 ありがとうございます。

 デメリットは言ってもらわなかったので、もし大臣がデメリットがあるというふうに感じておるのであるならば、後でお答えいただきたいというふうに思います。

 推計ですけれども、日本企業にとって四千億円近い実害が生じている。この協定を結ばれることによって、そこの部分が、ヨーロッパやアメリカの企業と同等の条件でビジネスを展開できるということでは大きな大きなメリットがあるんだというふうに私は思っております。

 それと同等に大きなのは、これからアジアに向けて自由ビジネス圏というようなものをつくっていく流れのある中、グローバル化した経済の中で、日本がバイの交渉、二国間の交渉であるFTAやEPAというものを使ってやりとりをしていくんですけれども、そこで、やはりメキシコというのは、一九九四年、このときにもうNAFTAができていますから、向こうの方が経験があるわけなんですよね。

 日本の方が、これは二つ目で経験が少ないというか、さっきもやりとりでありましたけれども、マルチの交渉を重視してきてバイは余り重視してきていなかった。そんな状況にある中、私は、ある意味我が国が、担当者が、そして国民全体の意識の中で、メキシコと協定を結ぶ過程において、いい練習になったな、啓蒙になったなというふうに考えています。

 そこで、私の質問なんですけれども、これはどうしてシンガポールが一番で、二番目がメキシコだったんですか。一番やりたい議論は、経済外交戦略とかというようなものがあっての行動ができているのかできていないのかということなんですが、どうしてメキシコとの協定が、シンガポールの次で二番目になったんでしょうか。

逢沢副大臣 シンガポールと最初にEPAを結び、そして二番目がメキシコという順番になったわけであります。そして、膨大な交渉の過程、そして条約をつくり上げていくという作業そのものが、大変な我が国政府の、言ってみれば政治上の、また通商外交上の大きな蓄積、資産ということにつながっているということは、まさしく委員御指摘のとおりであります。

 二番目になぜメキシコであったのかということでございますが、先ほど大臣が答弁をされましたように、メキシコは、実に世界第十位のGDP、GNIを持つ国でありまして、ASEANとその規模がほぼ匹敵をするということでございます。いわゆる政治外交的関係強化をしていく必要性、当然私どもは強く感じているわけでありますし、またいわゆる経済連携を強化することによってウイン・ウインの共通の利益を拡大することができる、そのことをしっかり認識するに至りました。まさに総合的に、戦略的に判断をした結果であるということを率直に御報告申し上げておきたいというふうに思います。

大谷委員 副大臣のおっしゃるとおりですねというふうに思うんですが、総合的に判断してメキシコが二番目だというふうになるんですけれども、何か私、腑に落ちませんで、できるところからやっていく、その裏側には戦略的思考というのが乏しいんじゃないかなというふうに思ってしまうんです。

 今見ていますと、僕が間違っているなら、いや間違っている、しっかりこんな戦略があるというふうに述べてほしいんですけれども、マスコミ報道もそうなんですけれども、何か、早くしないとどこかの国と国とのFTAが先に締結されてしまって置いてきぼりにされてしまう、日本の交渉はおくれているとかというような言われ方をされる、すなわちスピードを非常に重要視されているようなところがあったりするんです。

 そうじゃなくて、結ぶ相手がだれで、その結ぶFTA、EPAの質はどれぐらい重要度が高いのかというようなことが重要視されるわけであって、そこにはまず、では、どこと、どんな中身のものをしよう、人、金、物、情報、知的財産とかというようなものをどんなふうにしてこのアジア、全世界の市場の中で上手に移動させていくのか、それが日本国の経済にとってどんなふうにいいのかというような発想があるはずだと思うんですが、そこの部分はどうですか。何か、後づけではないと思うんですけれども、できるところからやっていくような懸念が私にはあるんですが、どうですか。

逢沢副大臣 いわゆる質的に高いEPAを結ぶ、しかもスピード感を持って交渉を進めていくという両方が私どもは大変重要であるという認識を持つわけでございます。

 メキシコについては、先ほど申し上げましたように、世界第十位の非常に経済の大きな国でありNAFTAの一員である、いわゆる米州市場への橋頭堡を築くというまさしく戦略的意図、目的があったことを重ねて申し上げておきたいというふうに思います。

 そして同時に、タイでありますとかマレーシア、あるいはフィリピン、そして韓国、そういった国々と既にFTAと申し上げるよりはEPAについての締結に向けてのさまざまな交渉、協議を同時並行的に進めさせていただいております。

 恐らく、世界全体を見渡してみますと、約二百ぐらいあるんじゃないでしょうか、FTA、EPA。その中身はさまざまでございますけれども、WTOを緩和する、そういう意味では実態がかなりさまざまな種類のFTA、EPAが進んでいる。当然、そのことも通商国家日本としては念頭に置きながら、より戦略性を高めながら、質の高いEPAを同時にスピード感を持って取り組んでいくということが大切であると承知をしております。

大谷委員 戦略がある、それを踏まえてメキシコと二番目に結んだということでございますが、その戦略の中身というのがどういうものか、ぜひとも教えていただきたいというふうに思いますから、少し質問の手法を変えたいというふうに思うんです。

 このバイの交渉、二国間の交渉、EPA、FTAというものを使って、日本国はどんな国益というか、どんなメリットを享受しようとしているのかということについてはどのようにお考えですか。

逢沢副大臣 メキシコとEPAを締結することになるわけでございますけれども、例えば、日本からメキシコにどんなものが輸出をされているか。電気機械、一般機械、輸送機械、金属製品、いわゆる工業製品が多いわけでございます。基本的に輸出品目の八割以上が現在まではいわゆる課税対象品目になっていたわけでありますが、基本的に時期をそう置かずして関税がゼロになる、非常に大きなメリットを享受ができるというふうに理解をいたしております。

 先ほど委員が、メキシコとの間でEPA、FTAがないということで、試算によれば約四千億の本来得ることができる経済をロスしているのではないか、そんな試算の御紹介をいただきましたが、まさにそのことの問題解決が大きく図られるということを私どもは期待をいたしております。

大谷委員 もうメキシコから離れていただいて、一般的にこの二国間の交渉、WTOから、一九九〇年代というのは、日本の通商政策、戦略というようなものは多分マルチだったというふうに思うんです、多国間協定だったというふうに思うんです。

 しかしながら、ヨーロッパやアメリカの方は、九〇年代の初頭というのは、ゾーンというか地域統合というか面積で、どんどんFTA、EPAという二国間の交渉を使って自由なビジネス圏というのを広げてきたわけですよね。

 それを見つつも、日本はWTOでずっとやってきたわけなんですけれども、この数年は明らかに、シンガポール、メキシコ、今やっているのがフィリピン、マレーシア、韓国、ASEANというような東南アジア、そしてアジアの国々と二国間交渉を始めてきたわけなんですよね。

 この二国間通商交渉というものを通じて一体どんな経済圏をつくろうとしているのか、何をなし得ようとしているのかというビジョン、それに向かっての達成のための戦略というのがどういうものなのかというのを、あるというふうに今までの議論の中でなりましたので、ではどんなものを想定しているのかというのをぜひ教えていただきたいというふうに思います。

町村国務大臣 いろいろなレベルの必要性といいましょうか意義といいましょうかがあろうかと思います。やはり世界大で見たときには、私どもは確かにWTOという世界レベルのそういったメカニズムというのを大切にしよう、これはこれで今一生懸命交渉し、来年の年末までに一定の成果を得ていきたい、これはこれであります。

 それはもう釈迦に説法でございますけれども、それによって世界経済を全体として活性化させる、物、人、お金、それぞれの流れをよくしていって、経済全体の経済的な厚生を高めていこうということはあろうかと思います。それに役立つということが一つあります。それからもう一つは、今度は日本という国にとってみても、先ほどるる申し上げておりますように、具体的なメリットがある、日本経済の活性化にも意味がある。

 あと問題は、その中間にある地域的な感覚であります。これはあくまでも排他的な、特に戦前にあったような排他的な関税同盟的な色彩を持った、その中だけでやれ、あとはむしろ排除していくということであるならば、これはまさにWTO、ガット違反ということになるわけであります。そういうことではない。

 ただ、さはさりながら、その地域地域でのつながりを、世界にもそれはメリットはあるけれども、一義的にはまずその域内でということになると、やはり日本はアジアというものが伝統的に、地理的にも、当然のことながらアジアということが意識にあります。そうすると、シンガポールから始めて、次にアジアに行かないで何でメキシコに飛ぶんだという御疑問が出てくるわけであります。

 シンガポールという国は、ある意味では大変経済的にも進んだ国で、日本と似たような部分があります。ですから、そういう言い方をするとあれですけれども、一つのモデルとしては非常に勉強、第一歩を踏み出すにはとてもいい勉強相手であったというような言い方ができるかもしれません。

 メキシコになりますと、多少今度は農業というものが絡んでまいります。シンガポールの場合は、農業問題というのはほとんどなかったわけであります。この農業問題が今度アジアの方に行くとますます大きくなるというのはわかっておりますから、まずその農業問題にどう対応するのかという、一つの、これもモデルケースとしての位置づけというものもあって、メキシコとやってみました。

 もちろん、それだけではなくて、先ほど申し上げたさまざまなメリットもあるわけですけれども、今後のEPA交渉の展開を考えたときに、私は、メキシコというのは、そういう意味ではまたもう一ついい勉強材料と言うとメキシコに失礼かもしれませんが、そういうような部分もあった、こう思います。

 いよいよこれからアジアに向けて本格的な広がりを持ったEPA交渉を展開していく、来年四月からはASEAN全体との包括的なそういうEPA交渉もやっていくということで、ここまで明示的に政府で統一見解をつくったわけじゃないと思いますが、私の少なくとも問題意識の中では、やはりアジアというものを相当強く念頭に置いてこれから取り組んでいくということであろうと思います。

 現に、実はチリで今度はAPECが開かれますけれども、チリを初め中南米諸国からもそういう要求があります。あるいは、インドとか幾つかのそういう国々からもあります。その際に、どこをこれから重点に考えていくかというと、私はやはりアジアというものに、もちろん南米がどうでもいいとかそういうことを言うつもりもありませんけれども、やはりアジアというものの中でのより密接な経済関係を強化していくという意識を持って今後のEPA交渉を取り組んでいく必要があるのではないか、私はそのように考えております。

    〔委員長退席、首藤委員長代理着席〕

大谷委員 ですから、このアジアの地域の中で、昔の、ブロック化なんて言われましたけれども、ああいうイメージのものではなくして、本当の意味での経済地域統合のような、自由に人、金、物、情報、そして知的財産権もしっかり守られてビジネスができる環境をつくっていくというのが大きなビジョンとして大臣の中におありになるというふうに認識をさせていただきました。

 私も、絶対にそれがなくして、これから二十一世紀の初頭の経済の中で、世界の中で一番躍動感のあるアジア、インドまでも含めて、伸びていく地域でございますので、そこの中でしっかりと日本が一員として経済活動を営み、豊かな生活をしていくためには必要だというふうに思います。遅過ぎる、早過ぎるではなく、しっかりと中身のあるものをつくっていくような戦略をもっともっと議論をしていくべきだというふうに思います。

 そのときに必要なのが、シンガポールでは余り出てきませんでしたが、メキシコでは出てきました。そして、これから東南アジアの国々とバイで交渉するときにも出てくるというふうに思いますが、国内産業の競争力を高めなかったら、質のいいFTA、EPAというのは結局は達成できないんじゃないかなというふうに思っています。

 農産物のこれはなしよ、工業製品のこれとこれとこれはなしよというようなことになりますと、結局はFTA、EPAというものは、締結をたくさんしたけれども、中身はそんな人、金、物が自由に動けるようなものじゃないよねということになってしまったら、ビジョンには到達できません。

 僕は、このFTA、EPAという通商の仕事を素人ながらに見ていて思うのは、いわゆる外に対しては二割ぐらいで、中の国内調整というものが八割ぐらいの仕事ではないのかなというふうに思っています。いろいろな新しい機関をつくれと、窓口が農林、厚生、外務、経産とかといっぱいあってばらばらで、どことどう交渉していいかわからないみたいなことが報道でなされていましたけれども、それは外に向けてで、二割の部分でございます。本当に重要なことは、国内企業であったり国内産業、国内経済構造というものを、農業も含めて、しっかりとそのビジョンを達成するために調整、改革ができるかどうかが問題だというふうに思います。

 そんな中で、何か新しい機関というようなものが私は必要だというふうに思うんですね。町村外務大臣は昔の通商産業省の御出身でもありますし、その経験から察するに、経済外交という視点は非常に造詣が深いというふうに思いますので、どうやったらさっき言ったようなアジアにおけるビジョンを達成するために外の交渉と中の国内構造改革を進められるのか、新しい機関が要るのか要らないのか、どんなビジョンというか見解をお持ちなのか、お教えいただけますでしょうか。

町村国務大臣 新しい機関とおっしゃると、例えばあれでしょうか、アメリカのUSTRといったようなことなんでしょうか。(大谷委員「中の」と呼ぶ)国内調整機関ですか。

 国内の調整、確かに委員御指摘のとおり、外に向かっての交渉のしんどさもありますけれども、国内調整もこれまた大変難しい問題でございます。それらをどこかの機関に、一元的でやるような機関が、そういうスーパー権力を持ったような機関ができるだろうか。これはなかなか私は難しいのではないのかなと思います。

 結局、そういう機関をつくっても、現実に例えば農林水産省がある、厚生労働省があるということになりますと、結局それらの役所を通して仕事をすることになると、結果屋上屋のようなものになってしまうのではないだろうか。むしろ、そうした既にあります省庁をいかにしっかりと束ねて、リーダーシップを持ってそれを引っ張っていくのか。

 それがある意味では官邸機能というふうに言われるのかもしれませんけれども、要は、一つの方向に向かって、各大臣、関係省庁が同じ方向に向かって努力をするということなんだろうと思います。

 例えば、今、厚生労働省の関係で、フィリピンとでは介護士あるいは看護師の話が出ております。今までこういう話はほとんどなかったことでございますけれども、私は、フィリピンのそういう、介護、看護をなさる方々というのは、非常に世界でも優秀な、評価の高い、そしてある意味では大変なハードワークですから、日本でこれから高齢化が進んでいくと、そういう介護、看護をなさる方が現実に減っていく、減っていくというよりは十分確保できないという懸念すらある。

 そういうときに、今はそれは確かに抵抗が大きい分野ですからいろいろ今話し合っている最中でありますけれども、将来、長い目で見たときに、私は、そういう特殊な技能を持っている方々がこれから日本に来て日本の健全な高齢化社会というものを支えてくれるとしたらこれはむしろありがたい存在だとさえ思っておりまして、要は、そういう長期的なビジョンを持ちながら、各省庁が、今できること、それから将来やれることということを仕分けしながら取り組んでいくということが必要で、新しい国内調整的な機関をつくるといっても、なかなかそれは難しいんじゃないのかなという気がいたします。

大谷委員 私も全く同じ考えでございます。屋上屋をつくったって、全然、何の意味もないというふうに思っています。

 私がここで一番言いたいのは、このFTA、EPAというか、バイの交渉を使ってアジアにおいて自由ビジネス圏をつくっていかなければもう日本の経済の再生はないんだぐらいの意識を、行政も含めてまずは意思決定者の一人一人が持つということが先にあって、そのためにではどうしようかという、機関ではないですけれども連絡協議会というようなものがもっともっと機能的に動くんだというふうに思っています。

 すなわちは、国内におけるリーダーシップというものをしっかりと出していくことが私は必要だというふうに思うんですが、今言ったようなアジアをつくっていくために、今後どのような活動をこの国内において町村外務大臣は考えられておられますか。もっと連絡協議会をしっかりやるんだとか、もっと自分の提案でこんな審議会をつくるんだとか。

 例えば、二〇〇二年、平沼経済産業大臣時代には、東アジア自由ビジネス圏構想みたいなものが、大臣として出したのか一議員として出したのかはちょっと私も忘れましたけれども、なるべくリーダーシップをとろうじゃないかということで、メッセージを国内にもたくさん発信しておられました。そんなようなことも含めて、何か町村大臣が、啓蒙するというか、重要性を知らしめるというようなことで考え、また考えていこうというようなことはありますか。

町村国務大臣 平沼大臣ほどの経験も力もないものですから、まだ私は現実にそういうものを全く考えていないわけでございます。

 基本は、小泉総理が東アジア共同体ということをASEANとの会合で言われました。いかにそれを具現化していくのかということだろうと思っております。その有力な手段がまさにこの経済連携協定だろう、こう思っておりまして、しかしそれは経済にとどまる話ではないだろう、こう思います。教育あるいは文化といった側面での連携というものはあっていいだろうし、あるいは観光とか、いろんな幅広い分野でのアジア圏というものをどうやってつくっていくのかということだろうと思います。

 それはそれぞれでまた具体化していかなきゃいけないだろうと思いますが、何かそういったものを一つにまとめた包括的なコンセプトを打ち出したらどうかという御提言でございますので、少しく時間をいただいて、よく考えて、宿題をいただいた、こう思って受けとめさせていただきます。

大谷委員 ぜひにお願いいたします。

 それと、外向きには、僕のアイデアなんですけれども、小泉総理もおっしゃっているということですけれども、東アジア共同体だとか、言い方は何でもありますけれども、そういうようなものをこれからつくっていきましょうよという声がけをアジアの国々にして、ラウンドテーブルのようなものを開いて一つの意見交換をしていくとか、そんなリーダーシップもぜひともとっていただきたいというふうに思います。

 条約の中身の中身、少し時間がないんですけれども、触れさせていただきます。

 私、今同僚議員が質問したように、食の安全というのはすごい危惧をしているところがございます。メキシコからの牛肉の輸入というのが、去年が〇・二トンだったのが今年に入りますと六百トンというような数にふえているわけです。これはアメリカのBSEでなかなかアメリカ産の肉が入ってこないからということでございますけれども、この協定が締結された後施行されますと、これからますますふえてくるようなことになるというふうに思うんですが、BSEの検査でいいますと、全頭検査ではないんですよね。

 ランダムに牛を検査して、まあ大丈夫だろうというような、一言で言うならば日本より甘い検査なんですけれども、こういうような状況で食の安全はしっかり守れるのかどうなのか。これは国民の皆さん見ていることでございますし、一番心配していることでございますので、再度確認をしたいというふうに思います。

高橋政府参考人 メキシコにおけるBSEの検査体制につきましてでございますが、BSEの検査につきましては、国際的にはこれは動物の衛生に関する国際機関でございます国際獣疫事務局、これは略してOIEと呼ばれておりますが、このOIEが、各国の牛の頭数に合わせましてサーベイランスのための頭数の基準を定めております。

 メキシコの場合には、今のところこれまでBSE感染牛は発見されておりませんけれども、これまでに、このOIEの定める基準に基づきまして、メキシコ国内にBSEが存在するかどうかのサーベイランスのための検査をこれまで実施している。それで、先ほど申し上げましたようにこれまでのところBSE感染牛は確認されていない、こういった現状でございます。

大谷委員 食の安全の中で、このBSE、牛肉だけじゃないんですけれども、万全性を保つために、この協定ですとメキシコの基準で安全ということになっているんですけれども、日本と同じぐらいの基準を向こうに求める。そして、協定に織り込めなかったとしても、織り込んでいないんですけれども、こちらから検査員を派遣するとかして、もっともっとちゃんと、メキシコだけじゃなく、日本独自の検査システムというのを持っていて、これからこのFTA、EPAを結んだ国々からの輸入品に関しては食の安全をきっちりと固めていくというようなことをぜひとも考えていただけたらというふうに思います。

 あと一つだけ、紛争処理について質問をさせていただきたいというふうに思うんですけれども、ビジネス環境の改善に向けて双方の国が努力をするとあるんですけれども、これはどっちかの国がビジネス環境改善を怠ったらどうなるんですか。おたくのところ、全然一生懸命いいビジネス環境をつくろうと努力してくれてないじゃないですかという異議申し立て、それで異議を申し立てた後に反省して、こうこう頑張りますとかというような手続があるのかないのか、少しそこのところ、僕ちょっとイメージができないんですけれども、その辺はどうなっているんですか。

    〔首藤委員長代理退席、委員長着席〕

佐々江政府参考人 ただいまのビジネス環境整備に関するお尋ねでございますが、委員御承知のとおり、今回の協定では、協定を通じてビジネス環境を改善するための委員会というものの設置に合意しているわけでございます。そこでは、これは主として日本の産業界の代表の方も含めて、あるいは政府の者、これはメキシコ政府も含みますけれども、どういうことがビジネスの環境上改善されるべきか、あるいは問題があるかということを日本側から当然提起できるわけでございます。それに対して委員会として勧告をするということが想定されているわけでございます。

 したがいまして、その勧告をする過程で、当然その中にはメキシコ政府も入っておるということでございますので、したがいまして、我々としては、メキシコ政府が入った委員会で勧告されたものは当然メキシコ政府もそのビジネス環境の改善に向けて着実に実施するであろう、こういう前提に基づいてあるわけでございます。

 当然のことながら、物によっては難しいものがあるかもしれませんが、そういう問題につきましては、この委員会の中で協議の機会がたくさんございますので、メキシコ政府に対して改善を求めていく、そういう協議を通じて改善を求めていく、それが基本的な考え方であるということでございます。

大谷委員 これは、メキシコだけにかかわらず、これから日本がアジアの国々と協定をまた結んでいくときに必ず出てくる問題だというふうに思いますので、ある意味、このメキシコ、シンガポールとの間で紛争処理というようなものの前例をしっかりと厳しい形でつくっていただくように心がけていただきたいというふうに思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

赤松委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 我が党の自由貿易協定についての基本的な立場ですが、二国間交渉による自由貿易協定、FTAは、お互いの条件をよく考慮して進めるなら経済関係を深めることができる、このように考えています。

 しかし、現在、日本の財界が求め、そして小泉内閣が進めているFTAやあるいはEPA、この交渉では、財界に都合のよい貿易や投資の自由化の見返りに、農産物の輸入を一層拡大し、日本の農業を犠牲にしようとしている。どこの国であれ、国内の農業の維持発展を考慮するのは当然、こういう立場であります。

 そこで、今回のFTA、EPAは、農業分野を含む初の協定になっています。農産品に関する協定内容をきちんと吟味する必要があると思います。そこで聞きますけれども、この協定は、農産品全体のうち約何%、何品目の数が段階的な撤廃措置あるいは即時的撤廃措置になったか、これをちょっと具体的に説明をしていただけますか。

佐々江政府参考人 お答え申し上げます。

 農林水産品目でございますが、約二千三百四十品目でございますが、このうち約半分、千百七十品目について、関税の撤廃または削減等を約束しております。これは、メキシコからの農林水産品輸入額約五百四十億円の九七%をカバーしております。

赤嶺委員 かなりの分野にわたる農水産品目の関税撤廃措置ということになっていくわけですね。

 今度の協定で、メキシコに譲許する関税撤廃の半数以上は、日本が現時点で他国に許していない有税品目です。結局、今度の協定というのは、これらを自由化したことを意味すると思います。

 二〇〇二年に、経済関係強化のための日墨共同研究会、いわゆる研究会の報告書の中では、国内で生産のない熱帯果実でさえも、輸入量が増加すれば他の国産果実の消費に影響を生じる可能性が高く、熱帯果実といえども国産果実と競合関係にある。また、野菜、牛肉、豚肉、飲料等に関しては、まさに国産品に対し競合関係にある。このように指摘して、農家への影響を認めていたことがあります。

 そうであったにもかかわらず、最終的には主要な農産五品目を含むこれだけの大規模な譲許をして決着したのか。この点について、その理由はどういうことでしょうか。

佐々江政府参考人 委員御承知のとおり、自由貿易・経済連携協定と申しますのは、その中核的な部分において、双方の市場の開放を図るということが前提にされているわけでございます。我が方は、メキシコに対しまして、特に工業製品の分野において高い関税がございまして、これが非常に他国に比べて不利な地位に置かれているということでございますので、当然のことながら、これをできるだけたくさんゼロにする、あるいは下げてもらうということがあるわけでございます。

 それから、もちろん、メキシコ側からしますと、御承知のとおり、農産品の輸出国でございますし、対日市場に対する関心は高いものがあるということでございます。すべてが現在多くの輸出があるというわけでございませんが、特に先ほど委員が御指摘になりましたような農産品五品目につきましても、実績のないようなものもあります。そういう問題も含めまして、メキシコ側の関心にある程度こたえないと利益の均衡というものは図られない。自由貿易協定でございますから、双方に利益がないと協定というのは成立しないわけでございます。

 しかしながら、その過程で我が方が、農産品におきまして関税の引き下げあるいはその撤廃を図るにおきましては、いろいろな手だてを講じております。特に二国間セーフガード、あるいはその関税の引き下げにつきましても、これを長い期間とる、あるいは除外品目もあるということで、全体としては国内の農業に大きな影響が及ばないような形でメキシコ側と交渉の結果を取りまとめることができたというふうに考えているわけでございます。

赤嶺委員 それでも、当初の研究会で農業に与える影響を懸念していた、その懸念していた以上の農産物の自由化が今度のメキシコとの協定で行われている。これは、交渉である以上やむを得ないんだということなんでしょうけれども、新たな自由化であることには間違いありません。農産物への影響は極力少なくしたいといいましても、五品目にかかわらず、かなりの大規模な自由化になっていきます。

 そこで、では具体的に聞きますが、今回の協定について、農業分野の損益について計量的な試算はありますか、影響は少ないと言っていましたが。

佐々江政府参考人 先ほど委員が、スタディーと申しますか、交渉に先立ちまして日墨間で共同の研究が行われましたけれども、そのとき、私の理解するところでは、定量的な計算というものは、農産品についてそもそもどの程度、交渉の結果、市場開放の展望があるかということについては、御承知のとおり農産品分野は非常にセンシティブな分野でございますから、あらかじめ特定してこの分野この産品についてこの程度の関税が下げて、それはどういう効果があるというような効果は、私の承知する限り、ないというふうに思っております。

赤嶺委員 そうすると、工業製品の関税をゼロにした場合のいろいろな試算というのは当然皆さんやっていらっしゃるだろうと思うんですが、農産品は、そこの自由化が与える影響というのは計算できない。しかし、それぞれの品目については、国内には産地を抱えております。やはり、そこの産地にとっては、今度の自由化、いろいろ心配な点が多々あるだろうと思います。

 その辺で皆さんの認識を聞いておきたいんですが、まず豚肉ですが、豚肉は今回の協定で今までの実行税率どのように変わるんですか。そして、特恵枠の設定が国内生産者へ与える影響、これは避けざるを得ないと思います。その点について、農林水産省、どう認識しておりますか、答えてください。

皆川政府参考人 お答えいたします。

 まず、メキシコとの交渉に当たりましては、農林水産業の多面的機能の発揮ですとか、食糧安保の確保、また農業の構造改革へ悪影響を与えないようにという姿勢で臨んだわけでございまして、このような中で、豚肉につきましては、現行の従価税率が四・三%ございますが、それを二・二%にするなど、メキシコの専用枠を設定する。

 その枠の数量でございますけれども、現行の輸入量が大体約四万トンございますが、それを五年目にかけて八万トンにするということになってございますけれども、国内の養豚生産を保護しております差額関税制度というものの根幹は維持できておるものでございますから、国内養豚経営への大きな悪影響というものは避けられたんではないかというように認識をしております。

 いずれにいたしましても、現行の養豚対策を的確に講ずることによりまして、国内養豚経営の合理化と生産の安定ということに引き続き努力してまいりたいというふうに考えてございます。

赤嶺委員 豚肉と、その次にタマネギについてはどうですか、産地に与える影響も含めて。

皆川政府参考人 実は、タマネギでございますが、ここ五年間ではメキシコからの実行上の輸入がございませんので、その意味では、影響という意味では、ないのかなと思っております。

 ただ、いずれにしましても、野菜につきまして、今回も、一定の交渉結果、関税の撤廃等を行っております。ただ、それも限定的な範囲で、かなり低関税のものを五年かけて撤廃するといったようなことで、大きな影響は避けられるような形で交渉結果がまとまったのではないかというふうに認識をしております。

赤嶺委員 だから、実行税率は幾らなんですか、タマネギは。それが無税になるということでしょう。

皆川政府参考人 野菜につきましては、基本的には三%とか、それから六%といったような形で、タマネギにつきましては、現行、従量税でございますが、七十三円でございます。キログラム当たりでございますが。

赤嶺委員 それで、実行税率は同じということですか。

皆川政府参考人 これを五カ年で削減するということでございます。

 恐縮でございます。タマネギにつきましては、八・五%を五カ年で撤廃するということでございます。

赤嶺委員 高いんですよ。三%とかそんなものじゃないんですよ。八・五%がゼロになるんです。ですから、非常にメキシコは、いわゆるこれから輸入を拡大していこうという一つの目標になっていくと思うんですね。

 もう一つ、冷凍野菜やメロンはどうなんですか。

皆川政府参考人 まず、冷凍野菜でございます。

 これはブロッコリーが多いわけでございますが、現行関税率六%ということでございまして、これを五年で撤廃するということでございます。また、同じくメロンでございますけれども、メロンも六%の関税でございまして、これをやはり五カ年でということでございますけれども、ブロッコリーにつきましては最近輸入金額が減ってございます。さらには、メロンにつきましては、それなりに国内産地とのすみ分けができるんではないかというように認識しておりまして、関税撤廃の大きな影響というものは避け得るものというふうに認識しております。

 ただ、いずれにしましても、野菜につきましては、国内の構造改革というものも進めまして、要するに、国内野菜生産の安定を図っていくということで引き続き取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

赤嶺委員 冷凍野菜等について、メロン等についても、私たちは、今度の協定の実行に当たって、いろいろ細かく調査をしてみました。やはり、いろいろな農産品目に、産地に対する影響は今後与えることは避けられないという調査結果を持っています。

 皆さんは、先ほど、いや、枠があるんだ、それからセーフガードもあります、いわゆる農業の構造改革も進めて競争も強めていきますと言うけれども、大筋そういうことで影響は全く出ないという答弁できますか。これは外務省ですか。

佐々江政府参考人 関税を下げたりゼロにするものもあるわけでございますから、一切影響がないなどということはあり得ないと思います。

 そういう意味で、値段は下がってくるわけですし、より安く入るということで、競争上の影響はあると思いますけれども、私どもそれが、先ほどの農水省の当局の方が申し上げたかったことは、今回の交渉の結果として大変大きな影響を与えるような、そのような結果にはなっていない、これは耐え得る、我々として十分措置をとって適応し得る範囲のものである、そういう認識であるということでございます。

赤嶺委員 今、措置をとるとおっしゃられましたけれども、受ける影響について、メキシコは今度の自由化で、いろいろな農産品目で価格競争の能力を、力をつけたわけですから、いろいろな競争が始まっていく、影響を受ける。そこで、その協定の後に、それらの影響を受けるであろう品目についての新たな補償措置、あるいはそういう保護措置、補償対策、それは、新たにつくったものというのはありますか。

吉村政府参考人 先ほど来御答弁申し上げていますとおり、今回のメキシコとの交渉におきまして、農林水産物について関税の撤廃、削減を約束すると同時に、個別品目の事情に応じて例外品目、経過期間を設定するなど、品目別の柔軟性に配慮して、国内農林水産業への影響を極力回避したところであります。このため、直ちに国内対策を講じることが必要な状況になるとは考えておりません。

 今後、この協定の効果や影響に留意しながら、我が国の農林水産業における構造改革の努力を通じて、国際競争力の強化を図ってまいりたいというふうに考えております。

赤嶺委員 そうすると、農産品目については影響を受けるが、新たな補償対策は考えていない。

 一方で、工業製品についてはどういう影響を受けるんでしょうか、今度の協定で。それについていかがですか。

佐々江政府参考人 お答えします。

 まず、基本的に、今回の協定の結果、大幅に工業製品分野において関税が下がる、あるいは撤廃されるということについては、メキシコ側が、先ほど御説明しましたように大きな引き下げを行うということでございます。我が国は基本的には既に先進工業国として低い関税をグローバルにとっておりますので、相対的に言いますと、我が国の工業製品分野における関税の引き下げはメキシコに比べて低いということが言えると思います。

 特に、我が国がメキシコに対して要求しておりました関税引き下げにつきましては、自動車とかあるいは鉄鋼分野において我が国として非常に重要な分野が含まれておりますので、この面について我が国として大きなメリットのある協定であるというふうに考えております。

 他方で、日本の国内の方の影響でございますが、基本的には、先ほども申しましたような常に低関税のレベルにあるということでございますので、一部の例外を除いては大きな影響はないというふうに考えております。

赤嶺委員 それで、最後にちょっと外務大臣にお伺いしたいんですが、今伺ったように、今度のメキシコ協定、農業分野に与える影響、工業分野に与える影響、それぞれ出てきております。今後、東南アジアとのFTA交渉あるいはEPA交渉、これを進めていくときに、たとえ二国間であっても、これを積み上げていくとやはり国内のとりわけ農業などに大きな影響を与えるんじゃないかと思うんですが、そういう問題が出てくるということについての外務大臣の認識や御見解を伺います。

町村国務大臣 ただいま累次お答えをしたとおり、農業問題、大変センシティブでございますから、いろいろな配慮をしながら、影響が最小限にとどまるように、一切影響なしというわけにはそれはいかないだろうと私は思います。

 しかし、できるだけ影響が少なくて済むような配慮をしながら、やはり守るべきものは守る、しかし譲れるものはまた譲れるという姿勢で、相手にもメリットがなければ協定というものがそもそも成り立たないわけでありますから、そういう意味で、私どもとしてはそういった配慮をしつつも、全体としては、これによって日本も得るところが大きいし、相手国も得るところが大きい、そういう形で進めていくべきものであろう。しかし、その際に、委員御指摘のように、農業分野への配慮というものは、当然行うべき点はしっかりやはりやっていかなければいけないだろう、こう思っております。

赤嶺委員 終わります。

赤松委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 条約に入ります前に、一点だけ大臣にお伺いしたいと思います。

 昨日、本委員会で、私は、多発する米軍基地に派生する事件、事故、それから県民を守るのはだれかという御質問をしました。それに対しまして大臣は、一義的には国だ、しかし県、市町村、個人いわゆる市民、そういう一人一人が守らなければいけない責任があるというような御答弁でしたけれども、なぜ県、市町村、個人がそれぞれ守るということなのか、その理由、大臣がそういうふうにお答えになった理由をお聞かせいただきたいと思います。理由をお伺いしなかったものですから。

町村国務大臣 日米間の交渉というのは、これは国の責任において行う、そういう意味で国が一義的に責任がある、こう申し上げました。

 ただ、いろいろな安全対策でありますとか、あるいは緊急の際のいろいろな、警察の出動でありますとか、実際に自治体が絡んでくるという面もあるわけでありまして、そういう際にはやはり国と綿密な連携をとっていくということに相なるわけでございまして、そういう意味で自治体ということを申し上げました。

 個人という言い方は、ちょっと確かに、どういうふうにこれが絡んでくるか。個人が何か、自衛策というのは変ですけれども、とり得る部分があるのかどうかということできっと御疑問を持たれたんだろう、こう思います。確かに、個人という意味で何かあるかなと私もその後考えてみたけれども、やはり国と自治体ということで、個人と言った部分はこの際撤回をさせていただきます。

東門委員 時間がたっぷりあればその件についてもっと質問したいんですが、なくて、条約をやらなきゃいけないということですから、条約に移ります。この件については、また後でぜひ質問をさせていただきたいと思います。

 食の安全をめぐるさまざまな問題が続発していまして、国民の間で食の安全がかなり注目をされています。今回、本協定を結ぶことで、メキシコ側は対日輸出のうち豚肉やオレンジ果汁など農産品の年平均一〇%の輸出増を見込んでいるとされることから、輸入増加が見込まれる農産品の食の安全、貿易について懸念をしています。

 特に、メキシコには豚コレラの発生地があり、誤って、感染した豚肉が輸入されるのではないかという声も聞こえます。また、我が国ではBSE問題により米国産牛肉の輸入禁止措置がとられていますが、この米国産牛肉が何らかの形でメキシコを経由して輸入されることもあるのではないかと考えられます。

 今回の協定締結に当たり、食の安全、貿易の面でどのような協議がなされたのでしょうか。また、今後安全対策はどのように講じられるのか、お伺いします。

松本政府参考人 輸入食品の安全性についてのお尋ねでございますが、輸入食品の安全性確保につきましては、従来から、検疫所における輸入時の検査体制の整備、輸出国政府の発行する衛生証明書の確認、問題発生時の二国間協議などを通じた輸出国政府における安全確保対策の強化などにより推進してきているところであります。

 今般のメキシコとのEPA交渉におきましても、食品衛生を含みます衛生植物検疫措置につきまして小委員会を設置し、規制の導入などに関する情報交換、技術協力に関する討議などを行い、かかる協力関係を推進することで合意したところでございます。

 輸入食品の安全性確保に当たりましては、このような枠組みも活用しながら、また先ほど述べましたような既存の対策を着実に実施することを基本に万全を期してまいりたいというぐあいに考えております。

東門委員 本当に、実効性のある検疫体制が必要だと思います。

 次に、日本の農業保護について伺いますが、メキシコとの協定は、豚肉やオレンジ果汁などの農業分野において日本側が輸入枠等で譲歩した形で締結されています。現在、ASEAN諸国との間でFTA交渉が進捗していますが、今後もFTAが農業国との間で締結されるということになりますと、日本の農業経営は行き詰まってしまうのではないかと懸念している関係者の声があります。

 まず、食糧自給率の向上、安全な食の確保等、安心して農業を続けられる環境づくりを行ってからFTA交渉に臨むべきだと考えますが、政府の見解をお伺いします。

吉村政府参考人 まず、国内農業対策をしっかりした上でという御質問でございますけれども、我が国の農業をめぐる状況につきましては、消費者の食の安全、安心への関心の高まりや、構造改革の立ちおくれなどの課題に対応した政策改革が求められている状況にあるというふうに認識しております。

 このような状況の中で、現在、今後の農政推進の指針となる食料・農業・農村基本計画の見直しにつきまして、食料・農業・農村政策審議会で精力的に検討を進めているところでございます。審議会における各界各層の代表者の幅広い意見を踏まえながら、食糧自給率の目標や基本政策の方向につきまして来年の三月の閣議決定を目指して取り組んでいるところでございます。

 一方、各国とのFTA交渉に当たりましては、農業の多面的機能への配慮、我が国の食糧安全保障への確保に加えまして、ただいま申し上げましたような、我が国農業における構造改革の努力に悪影響を与えないように交渉を進めていきたいというふうに考えております。

東門委員 本協定締結後の焦点となっているASEAN諸国との交渉では、人の移動の自由化が論点の一つになっていると報じられています。タイが看護師あるいはマッサージ師、フィリピンではベビーシッターや介護福祉関係の労働市場開放を求めているというふうにされておりますけれども、外国人への労働市場開放のあり方について政府の基本的な見解をお伺いしたいと思います。

町村国務大臣 外国人の働く方々の受け入れ、これは大変大きな問題であろうと思っております。

 今委員御指摘のようないろいろなリクエストが今相手から出てきているのもまた事実でございます。これを無制限にもうどなたでもいらっしゃいということになりますと、極端な話をすれば人口十億の国から何億人も日本に来るなんという、そんなばかなことは現実にあり得ないと思いますけれども、しかしそれでも理論的にはそれもいいということになりましょう。

 やはりそれはおかしいのであって、今、私どもとしては、いろいろなリクエストはありますけれども、ある程度やはり特定の分野の専門的な知識、技能を持った方に絞って受け入れるということで、これを無制限に全面開放するということは考えていないわけでございます。ただ、現実に、諸外国の外国人の受け入れ方というのを見ると、それはさまざまでございますけれども、日本がかなり制限的であるということもまた事実だろう、こう思います。

 どこまで緩めるか、大変これはデリケートな問題で難しい問題でありますし、特に昨今、外国人による犯罪問題であるとか治安の問題といったようなまた新しい問題もあるわけであります。そんなことをいろいろ考えたときには、やはり徐々にそういったものを進めていくというのが現実的なアプローチなのかな、こう考えているわけであります。

東門委員 制限つきではあれ、労働市場を開放して外国人労働者を受け入れた後は、外国人労働者の人権、それをどのように保障するかが問題になってくると思います。具体的には、労働条件、就業環境、居住環境の改善などだと思いますが、これらの問題について関係省庁との協議はどのように行われているのか、お聞かせください。

佐々江政府参考人 ただいま委員の指摘された幾つかの分野における専門的な職業従事者の扱いにつきまして、どういう方針で交渉に臨むか、あるいは仮にある一定の条件あるいは制限つきでこれを受け入れる場合にそれをどのような受け入れ方をするか、あるいは国内でどういう手当てが必要かということも含めまして、関係省庁間で十分協議を行って、今交渉に臨んでいるということでございます。

 これは内閣の方で音頭をとられて会議も行っておりますし、また首席代表のもとで随時協議も行っております。ですから、この点につきましては、関係省庁が一体となって協議をしながら進めているということでございます。

東門委員 昨日超過しました分、ちょっと時間前ですけれども、終わります。

 ありがとうございました。

赤松委員長 先ほどの篠原孝君の発言中、不穏当な箇所があると指摘がありましたので、後刻、速記録を取り調べ、理事会において協議の上、措置することといたします。

 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。東門美津子君。

東門委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、いわゆる日本・メキシコEPA協定に条件つき賛成の討論を行います。

 社民党は、世界の経済社会の単位を国家の枠組みを超え地球規模に拡大していこうという方向自身を否定するものではなく、FTA、EPAが、双方の各産業が公平な利益を享受でき、相手国との相互発展と繁栄の促進、各産業分野における公平な利益の享受、各界各層との相互理解の促進につながるものであるべきだと考えています。

 しかし、現実に進められるグローバリゼーションの実態は、新自由主義的なグローバル化という側面が強く、FTA、EPAによって、現地経済の先進国への従属性、貧富の差の拡大、労働者の権利の制約、医療や食糧、水、エネルギーなどの商業化などが促進されるとともに、国内産業、とりわけ農業分野へしわ寄せが生じるなどの負の側面も否めず、これらの諸問題への対応が不可欠です。

 さて、メキシコについては、現在、日本企業が高関税負担を強いられ、欧米企業との競争上不利な状況に置かれておりますが、本協定によってこうした点を解決でき、加えて、メキシコ経由で北米・中南米市場へのアクセス拡大も見込まれるなど、世界十位の経済規模を有するメキシコとの経済連携の強化自体には意義があると認められます。

 一方で、豚肉、鶏肉、オレンジ等農産品目の輸入面で国内産業への影響が懸念されており、農産物を工業製品の犠牲にするなとの声も根強くあります。

 したがって、社民党は、これらの品目について、国内需給や価格に影響が生じることのないよう十分な施策を講じるとともに、輸入農産物の安全、安心面の対策に万全を期すことを条件としつつ、本協定に賛成することといたします。

 終わります。

赤松委員長 これにて本件に対する討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 これより採決に入ります。

 経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

赤松委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

赤松委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時七分散会


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