衆議院

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第4号 平成16年11月12日(金曜日)

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平成十六年十一月十二日(金曜日)

    午前十時三分開議

 出席委員

   委員長 赤松 広隆君

   理事 谷本 龍哉君 理事 中谷  元君

   理事 原田 義昭君 理事 渡辺 博道君

   理事 大谷 信盛君 理事 首藤 信彦君

   理事 増子 輝彦君 理事 丸谷 佳織君

      宇野  治君    植竹 繁雄君

      小野寺五典君    川上 義博君

      木村  勉君    高村 正彦君

      佐藤  錬君    坂本 哲志君

      鈴木 淳司君    土屋 品子君

      平沢 勝栄君    三ッ矢憲生君

      宮下 一郎君    今野  東君

      武正 公一君    永田 寿康君

      鳩山由紀夫君    藤村  修君

      古本伸一郎君    松原  仁君

      赤羽 一嘉君    赤嶺 政賢君

      東門美津子君

    …………………………………

   外務大臣         町村 信孝君

   内閣官房副長官      杉浦 正健君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   外務大臣政務官      小野寺五典君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  堀内 文隆君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    岡田  薫君

   政府参考人

   (防衛庁長官官房審議官) 伊藤  隆君

   政府参考人

   (防衛施設庁施設部長)  戸田 量弘君

   政府参考人

   (防衛施設庁建設部長)  河野 孝義君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   北島 信一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 遠藤 善久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 西宮 伸一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 鈴木 庸一君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    海老原 紳君

   政府参考人

   (外務省国際情報統括官) 中村  滋君

   外務委員会専門員     原   聰君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十二日

 辞任         補欠選任

  河井 克行君     木村  勉君

  西銘恒三郎君     坂本 哲志君

  宮下 一郎君     佐藤  錬君

  田中眞紀子君     永田 寿康君

同日

 辞任         補欠選任

  木村  勉君     河井 克行君

  佐藤  錬君     宮下 一郎君

  坂本 哲志君     川上 義博君

  永田 寿康君     田中眞紀子君

同日

 辞任         補欠選任

  川上 義博君     西銘恒三郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

赤松委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長北島信一君、外務省大臣官房審議官遠藤善久君、外務省大臣官房審議官西宮伸一君、外務省大臣官房審議官鈴木庸一君、外務省北米局長海老原紳君、外務省国際情報統括官中村滋君、内閣官房内閣審議官堀内文隆君、警察庁刑事局長岡田薫君、防衛庁長官官房審議官伊藤隆君、防衛施設庁施設部長戸田量弘君、防衛施設庁建設部長河野孝義君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原田義昭君。

原田(義)委員 おはようございます。自由民主党の原田義昭でございます。

 まず、審議に入る前に、昨日御逝去されましたパレスチナ解放機構のヤセル・アラファト議長に対して心から御冥福をお祈り申し上げたいと思います。

 アラファト議長は、三十数年、半世紀近くこの地域の平和の回復のために努力をされてこられました。ついにその実現は見ることがなかったわけでありますけれども、残された皆さんが一日も早くその夢を実現するということについて大きな期待をしたい、こういうふうに思っております。

 さて、限られた時間でありますので、ただ、大事な時期でありますから、何点かについて質問また御意見を申し上げたいと思います。

 何といっても、もう既に一昨日になりましたが、沖縄・先島群島で国籍のわからない潜水艦が領海侵犯をしたという件を取り上げたいと思います。

 もう既にいろいろ報道がありますから大体の時系列的なことはわかっておりますが、これは、十一月十日未明といいますか、朝の五時から六時ぐらいの間に海上保安庁並びに海上自衛隊がそれを見つけた、直ちに防衛庁長官にそのことが通報されまして、そして最終的には、八時四十五分前後に防衛庁長官から海上警備行動が下令された、こういうふうに伺っております。

 その間二時間半から三時間ぐらいの時間がかかっておるわけでありますけれども、これについて、これだけ緊急の話、領土、領海を侵犯されたということなのにもかかわらず、三時間近くその命令が下るまで時間がかかったというのは少し遅過ぎるんではないか、こういうような声もあるし、私も率直にそう思います。

 この内部の手続、長官が命令を出されるまでの間に、当然官邸を含めて関係各所と一応相談はしなきゃいけませんけれども、この辺についてひょっとして手抜かりやら不的確な時間とかがあったんではないか、こう思いますけれども、またなかったことを期待しますが、この辺は政府としてどんな感じでしょうか、答えていただきたいと思います。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 十日早朝から国籍不明の潜水艦が先島諸島周辺海域の我が国の領海内を潜水航行しているのを海上自衛隊の対潜哨戒機P3Cが確認したとの連絡を受けまして、防衛庁本庁におきまして情報収集、分析を実施しつつ、関係省庁との所要の連絡調整を行い、その上で防衛庁長官から内閣総理大臣に対して海上警備行動の発令につき承認を求め、八時四十五分に、内閣総理大臣の承認を得て、防衛庁長官から海上警備行動を発令したところでございます。

 このように、今般の海上警備行動の発令は、位置の特定が難しい潜水航行中の潜水艦について慎重に情報収集、分析を実施するとともに、関係省庁間で所要の連絡調整を行い、必要な手順を踏んだ上で総合的に判断したものでございます。

 以上でございます。

原田(義)委員 必要な手順は踏んだ、手続としては踏んだかもしれないけれども、全体の状況の中でそれは的確であったか、こういうことをお聞きしたいわけであります。

 なお、けさ、この問題について、自由民主党の外交部会、安全保障関係の部会、合同の部会が行われましたけれども、一時間有余、とにかく怒りと抗議のあらしが吹き回っておりました。しかし、かようにこの問題の、今現在進行中でありますけれども、扱いについては国民を代表して非常に心配をしており、また仮に何がしかの現在の法整備等に問題があれば直ちにその改正を含めて検討しなきゃいけないんではないか、こんな感じがしたわけであります。

 なお、ただいまの海上警備行動のことでありますけれども、自衛隊法の八十二条には「必要な行動をとる」、こういうことが出ております。その前提として、平成八年十二月に閣議決定で潜水艦等の海上警備行動の指針が出されておるわけでありますけれども、この法八十二条に言う「必要な行動」というのは、これだけでは私は必ずしもわからない。

 むしろ、必要なあれであれば何でも武力の行使も含めてできるのか、ないしは、これは単なる警察行動なのでそこまでできないんだ、単なる威嚇射撃だ、こういうような議論があるようでありまして、私は、この法律はかなり広く書いているんだけれども、平成八年の閣議決定でむしろいろいろ手足を縛っているような印象があるんだが、いずれにしましてもこの解釈についてお話をお聞きしたい、こういうふうに思っております。

 なお、現在の時点では、もう領海外に早くに出ております。そういう意味で、現在とれるかどうかについては恐らく今の段階では難しいと思いますけれども、一般論として、この「必要な行動」、私は断固たる措置を含んでおるというふうに考えておるんですけれども、いかがでしょうか。

伊藤政府参考人 お答えさせていただきます。

 自衛隊法第八十二条に定める海上警備行動は、「海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て、」防衛庁長官が「自衛隊の部隊に海上において必要な行動をとること」を命ずるものでございます。

 我が国の領海を潜水航行する潜水艦に対処するために海上警備行動が発令された場合には、当該潜水艦が領海内で潜水航行を続ける限りにおきましては、水中電話やソナー等により浮上要求、旗を掲げる、あるいは退去要求を行うことができるものの、これを強制するために当該潜水艦に対して武器を使用することはできないものと理解しておるところでございます。当然ながら、領海外においても同様でございます。

原田(義)委員 本件で一番不思議なことは、どこの国の潜水艦かわからない。これは、考えてみれば私は非常に不思議な話だと思いますよ。

 既に、報道に関する限り、ほとんど全紙、これはもう中国籍だと決めつけているのもあります。これはもちろん、事は重大なことですからぎりぎりまで確認作業というのは必要でありますけれども、この全体の流れからして、後で申し上げますけれども、ガス油田の話とか数年前からの海洋調査船、こういう流れを見ますと、これは私は、第三国、よその国であるということはあり得ないんじゃないかというふうに感ずるわけであります。いろいろソナーといいますか、原子力潜水艦の解析については相当進んでおると思いますし、限りなく中国船籍だというふうに私は思うし、それは国民みんなもそう思っているだろうと思うんですよ。

 ですから、そういう留保といいますか一〇〇%じゃないという前提で、私は、日本政府もきちっとかの国にやはりそのことについて抗議をすべきではないか、こう思うわけであります。

 いろいろ、外交上の配慮というのは多分ないと思いますけれども、しかし私は、このことが主権を侵された、領土、領海を侵されたというこの重みは、これはいささかも消え去るものではないわけでありまして、もちろん最後まで確認作業というのは大事だと思いますけれども、今の段階でもとれることがあるのではないか、こう思いますけれども、もしこのことについて外務省、政府を代表して、あればお聞きしたいと思っております。

町村国務大臣 今委員御指摘のとおり、現時点では、ただいま現在では国籍を特定するには至っていないという状況でございます。

 今後、今追尾をやっているさなかでございますけれども、その結果がどういうことになるか、あるは原子力潜水艦であるということはほぼ判明していると思われますけれども、今委員が言われたようなソナーの分析等々もした上で最終的に判断をしていくということになろうかと思います。

 そして、国籍が判明をした、判断できるということが成った段階で、当然外交上のしかるべき措置、抗議を申し入れる、再発防止、原因究明、謝罪要求といったようなことをやっていくことは当然のことであろうと考えております。

原田(義)委員 これは一般論でありますけれども、国民外交とか民主外交という言葉があります。要するに、外交というのは、ただ単に国と国、外務大臣と外務大臣、外務省と外務省、こういうつながりばかりではなくて、これはもう、今やこの現代または情報化時代ですべての国民が実は外交にかかわっておるわけですね。

 また、今回の問題についても政府の一挙手一投足を恐らく一億二千七百万の国民がかたずをのんで私は見守っているのではないか、こう思っております。大変重い決断また勇気ある行動が必要とされますけれども、いずれにいたしましても、この問題について、やはり国の本当にある意味じゃ命運がかかっている、こういうこともこの際に申し上げておきたい、こういうふうに思っております。

 なお、私は、きょうの質問の中で、この潜水艦問題は、ただ単にこれだけが起こったのではなくて、この直前の中国ガス田開発の問題があり、それから数年前に海洋調査船の問題で日中間で大議論があったわけでありまして、これはみんな一連の問題だ。私は、ただ単に海洋を調査するとか、資源をどうするとかというだけではなくて、これはやはり中国のそれこそ海洋国家としての大きな戦略、戦術が前提にあって、着々とそういうステップが続いているのではないかな、あえて私は政治家としてそういう心配を持っているところであります。

 そのガス田の開発問題について、十月の二十五日に北京において実務者協議が行われました。お聞きいたしますと、北京に乗り込んでいったか呼ばれたかわかりませんけれども、かなり激しいやりとりが行われた。結論は、余りこれという成果は得られなかった、こういうように伺っておるわけであります。

 それに関連して、実は十一月の十日、一昨日の産経新聞の一面にこういう記事があります。従来、日本は主張としては中間線を日本の立場と主張し、そして中国側は二百海里どころかずっと日本側に押し寄せた、沖縄トラフというんですかね、そういうところを従来から主張してきた。ところが、今回この新聞の文章によりますと、中間線説をやめて、それなら日本も目いっぱい二百海里を主張するんだ、ある部分は領土にも陸上にも及ぶようなところにもなるわけです、こういうことが書いてありました。

 私は、これは従来から個人的にもまたいろいろな委員会でこのことを主張していたんだけれども、要するに、およそ交渉というのは目いっぱい同士を主張して初めて真ん中のラインというのが決まるんだろうと思うんです。ところが、最初から日本は中間線、すなわち海洋法に基づく二百海里がオーバーラップしているときはその真ん中をとるんですよ、この主張を最初からやっていたのでは交渉は成り立たぬのではないか、私はこう思うわけであります。当然、最後は、ではどこか妥協して沖縄トラフと中間線の間をとったら、はるか日本の側に決められるのはもうわかり切ったことだ。

 そういう意味で、この新聞の記事がそのとおりであれば、今回、中間線理論をむしろ乗り越えて二百海里理論まで押し込んだという意味では大変是とし、うれしく思っているんですけれども、この辺の状況について教えていただければありがたい、こう思っております。

逢沢副大臣 原田先生御指摘のように、去る十月二十五日に、中国・北京におきまして東シナ海に関する日中協議が開かれたわけであります。その協議の席におきまして、我が国は、両国の境界の画定を考えるべき水域はいわゆる両国の二百海里までの水域が重なり合う部分であるとして、その上で国連海洋法条約の解釈、またマルタとリビア等幾つかの国際判例もあるようでありますが、それを参考にしつつ、両国の領海基線間の距離などを踏まえれば、そのような水域において公平な解決を達成するための境界画定はいわゆる中間線によるべきであるという考え方を改めて説明いたしたわけであります。

 産経新聞の報道等を指摘されたわけでありますが、そういう意味では我が国の立場に変更があるわけではないということを改めて申し上げておきたいと思いますし、我が国の立場を十月二十五日の会議におきましても改めて中国側に対して明確にさせていただいたということを申し上げておきたいと思います。

原田(義)委員 今の副大臣の答弁、それはそれとして是としますけれども、ただ、今お話しになったように、中間線というのはまさに、日本側も二百海里、中国側も二百海里を主張している、じゃ、しようがないから真ん中をとろうということであって、これは全然その前提が私はないのではないか。日本側は最初から中間線と言って、向こう側は、全然、沖縄トラフというはるかに遠いところを主張しているわけでありますけれども、いずれにしても、ぜひこういう気持ちでこれからも折衝をしていただきたい、こう期待はします。

 三点目は、海洋調査船のことを私はぜひお聞きしたいと思っております。

 まずお聞きしたいのは、平成十六年、今年度、何件ぐらいのいわゆる違反行為があったか、それをお聞きしたいと思います。

西宮政府参考人 お答えいたします。

 これは厳密に申しますと平成十六年十月二十日現在でございますが、計二十件でございます。

原田(義)委員 計二十件とお話がありました。

 この調査船の問題はもう本当に長い間懸案となっておりまして、平成十三年の二月ですか、東シナ海領域においては日中間で覚書が署名されたわけでありまして、にもかかわらず、まだそこの部分についても違反がやめられない。それから、東シナ海以外は覚書の対象ではなくて、これは文字どおり日本のEEZの範囲内なんですけれども、これについての違反行為は最近大変なものがあります。

 指摘をすると、向こうの国は必ず何か弁解するんですよ。私の個人的な経験で申しわけないんですけれども、私は平成十二年の九月にたまたま中国におりまして、当時の事務次官に楊文昌という人が、外務次官がおりました。この人に表敬訪問するつもりで約束をしていたら、その前の日にやはり調査船が違反したというのがありましたから、私はその事務次官をどなり上げた。向こうもびっくりしましたね。

 これは表敬訪問だからと思ったら、いきなり原田義昭がどなり上げた。それで、きのうのあれは何だと私は言ったわけだ。そうしたら、汗をかきながら、偶発的に起こった事件ということを一生懸命言っていましたよ、きのうのことは偶発的な事件。ただ、私はもうそのころずっとこの問題に関与していたから、偶発的というのは毎度毎度おかしいじゃないか。しかし、それはそう言いますからその場は引き下がりましたけれども。

 私が言わんとするところは、この国は、今言うように調査船の問題、ガス田の問題、領海の問題、要するに、単に偶発とかそれぞれの部署の勝手な行動というのではなくて、長期的な意図を持った、戦略的な意図を持った一連の行動ではないか。そういう流れの中で、今我々は非常に危殆に瀕しているんだということを知らなければならない、私はこういうふうに思っておりまして、たまたまそういう経験を持ったものですから、やはりそうか、あのとき自分はこんなはずない、しきりに偶発的という表現をしたし、そのときの新聞もそういう表現をしていましたけれども。

 いずれにしましても、この領海侵犯事件は、どこの国か私も正直言って一〇〇%わかりませんけれども、ぜひともこの機会にそういう観点から厳しくやっていただく。そのことがまた、国民が外交というのを見ながら、立派な、堂々たることをやっていただければこれはみんな誇りに思うし、そこで多少情けないなと国民が素朴に思うようなことがあってはならないな、こう思うわけであります。

 さて、時間がほとんどなくなってまいりましたから、もう一つ、これは読売新聞のきのうの社説であります。「民主党の無責任な自衛隊撤収論」、こういう大きな見出しが出ております。日ごろ政府・与党に耳の痛い社会の木鐸たる読売新聞が、久しぶりに私は、なかなか立派な見識を示してくれたなと。もう一回言いますよ、「民主党の無責任な自衛隊撤収論」。

 説明するまでもありませんが、もう既に法案を出されているんでしょうか。イラク復興支援特別措置法の延長論が現実に出てきました。まだ一月ぐらいありますから、その間しっかり議論をしなければいけませんけれども、廃止法案を野党三党さんは出されたと聞いております。

 私が言おうとしたことを新聞がかわりに言ってくれましたから、ちょっとこれを、その部分だけ読ませていただきますが、「イラク情勢は確かに厳しい。だが、来年一月の国民議会選挙から来年末の本格政権発足に至る民主化プロセスの前進へ今、最も重要な局面にある。この時点で」、いいですか、自衛隊が撤収するということを早々と決めるのはいかにも無責任ではないか、国際社会の結束を真っ先に崩すものではないか、こういうような中身であります。これは説明するまでもないと思います。

 私も、イラクの現状、本当に心配をしております。せんだっての香田さんのあの痛ましい事件、事故。さらにはロケット弾が宿営地に撃ち込まれる。本当に、毎朝テレビやら新聞を見るのが本当は怖いんですね、また何かないかと。こういう状況でありますが、しかしそのことと、やはり国際貢献という仕事をしっかり果たすということとはまた別物でありまして、このことについてもこれから真剣に検討しなければならないと思いますが、外務大臣、今の段階で何かこの件についてコメントがありましたらお聞きしたいと思います。

町村国務大臣 国会の中で各党各会派がそれぞれいろいろなお考えを持ち、またいろいろな法案を出されることにつきまして、政府の立場からその是非を云々するのはいかがかと思われますので、そのことについては私どもあえて申し上げませんが、しかし委員今御指摘のように国際社会が一致してイラクの復興、そして民主的な国をつくるためのいろいろな政治プロセスが既に始まっているところでございまして、それを我が国としても支援をしていくということは当然のことであろう、こう考えているところであります。

 撤退するか否か、十二月十四日に期限が切れるわけでありまして、政府としても、今後最大限の情報収集に努め、またいろいろな方々の御意見等も聞き、最後は法に照らして、これを延長するのが妥当であるかどうかということを含めて適切な判断をしていきたいと思いますが、この特措法の枠組みそのものを廃止するということについては、それはいかがなものであるか、こう考えております。

原田(義)委員 それでは、もう時間もほとんどなくなりますから、もう一点だけ。

 今、北朝鮮で二国間協議が行われております。もう一日二日、まだ会議が続くようでありますから中間的なあれになるとは思いますけれども、今の時点で報告できるものがあればお話しいただきたい、こういうふうに思っております。

逢沢副大臣 まさに日朝実務者協議、今現在進行中でございますので、国会という正式な場で御報告を申し上げるには非常に限られたものということになることをまずお許しいただき、御理解をいただきたいと思いますが、御案内のように、九日に代表団がピョンヤンに入り、鄭泰和大使、また馬哲洙外務省局長ほかとの協議に入ったわけでございます。

 翌十日には、午前九時より、九時間近くにわたりまして早速協議が行われました。馬哲洙局長との間で、本年五月の日朝関係の進展についてのレビューを行う、そしてそれに引き続きまして、いわゆる調査委員会の責任者である陳日宝人民保安省局長から、横田めぐみさんを初め安否不明の十名の拉致被害者の方々についての再調査の結果を聴取いたしたわけであります。

 そして、昨日十一日でございますけれども、午前九時半ごろより、薮中アジア大洋州局長は、金桂冠外務省副相との間で約二時間協議をいたしました。内容は、北朝鮮の核問題の扱いということであります。

 当方より、核問題の早期平和的解決のためには、いわゆる六カ国協議の早期の開催、とりわけ年内の開催が必要である、そのことを強く働きかけたわけであります。先方からは、六者協議を通じての平和的解決を図ることにコミットしていることが確認をされたわけでありますけれども、早期に協議を再開させる環境にはない、そういう趣旨の発言があったと承っております。

 また、その後でございますけれども、約六時間にわたりまして、再び陳日宝局長との間で、安否不明の拉致被害者に関する再調査の問題についてさらに引き続き協議を行ったわけでありまして、きょう十二日の動きについてはまだ報告を受けていないわけでございますけれども、引き続き、安否不明者の再調査の問題等々について協議が行われているものと承知をいたしております。

原田(義)委員 国民の、また国益のためにしっかりやっていただきたいと思います。

 以上で終わります。

赤松委員長 次に、赤羽一嘉君。

赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。

 きょうは大変限られた時間でございます。また、昨今大変多くの、大きな外交テーマがございますが、FTAの問題、また対日関係の問題等々について絞らせて御質問させていただきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。

 まず、ASEAN各国とのEPA、FTA交渉の件でございます。私たち公明党の中にも、FTA推進プロジェクトチームというものがございまして、私はその事務局長を仰せつかっております。この十月の上旬、臨時国会の開会前にも実はフィリピン、タイを訪問いたしまして、フィリピンでは経済産業のプリシマ長官またアキノ次官、またタイでは外務省のピサン副次官また商務省の政務官、こういった今回の日本とのFTA交渉の責任者の皆さんと率直に意見交換をしてきたわけでございます。

 その中で、両国とも、彼らにとっても、例えば鉄鋼ですとか機械、自動車、こういったものを日本に対して関税をフリーにするとか、これは大変大きな実はリスクを踏むんだ、しかしそのリスクを踏んでも、日本との相互交流、補完的な位置にある日本とのFTA、EPAを結ぶことは中長期的には相互に大きなメリットがある、そう考えていると。しかし、なかなか、日本との交渉をしていると、総論賛成なんだけれども現実的には大変各論としては問題がクリアできない、本当に日本は一体このFTAをやる気があるのかなというような、本音というか率直な意見も出されたわけでございます。

 私、この問題、実は今回、臨時国会の予算委員会でも質問に立たせていただきまして、総理にも見解をただしたわけでございますが、総理は、このFTA、EPA、推進を大いにやらなければいけない、タイのタクシン首相とも実はこの問題で話し合った、米以外の問題についてはもう自由にやろう、米については、WTOでも一〇%は例外品目を認められるから、米についてはなかなか譲れない、こういったことは合意した、こういうような御答弁がありました。

 そういった中で、恐らく政府部内の中でもそれなりの進捗状況であって、きょうの新聞にも、見ておりますと農産物の関税について農水省は米を除き削減対象にするというような記事が、マスコミ報道でありますがあるようなので、それなりに進んではいるのかなとも思いますが、私、これは大変難しい交渉なのではないかというふうに思うんですね。

 メーンスピーカーは多分外務省でありながら、実体は経済産業省や農水省や厚生労働省だ。ですから、対外交渉をやりながら、ちょっと言葉は悪いかもしれませんが、対内交渉というか各省庁折衝というか。それで、この省庁の利益というか、どのようにマネジメントするかというのが、こういったことを相当全権を委任されなければ、交渉のメーンスピーカーである外務省、外務大臣であり藤崎さんなのかもしれませんが、大変しんどいネゴシエーションになるんではないかというふうに大変危惧をしております。ですから、それで特命大臣云々という話はなかなか、またこれも屋上屋を重ねるような話になるというような、ここの委員会でのやりとりもありました。

 私、FTAの関係閣僚会議というものがあるように聞いておりますが、なかなかそれは、官邸に対してどうなっているかというのを御報告されているような形で終わっているとも伺っております。しかし、FTAの関係閣僚会議のところでしっかりと本音を話し合って、何が国益なのか、FTAを結ぶことは国益なのかどうなのかということも本当に率直に話し合って、それなりに、外務省なら外務省、どこに権限が移譲されるかはわかりませんが、交渉の持ち方というものをしっかり話し合わないと、なかなか最後の大詰めを詰めることはできないんではないか、こう懸念するわけなんです。

 私が申し上げました、ASEAN各国とのFTA交渉を妥結することが本当にメリットと考えているのかどうかということも含めて、今の外務省の、交渉の一応責任者であると私は認識しておりますが、外務省としての御見解を伺いたいというふうに思います。

町村国務大臣 FTAあるいはEPA、これは私どもにとりましても大変重要な政策課題である、こういう認識を持っているところであります。ここ何年か、日本国は東アジア共同体という構想を発表し、一遍にEUあるいはそういった地域連携のようなものになるかどうかは別といたしましても、少なくとも長い目で見た方向感覚はそういう志向性を持ってやっていこう、その際の一つの有力な、特に経済面あるいは経済に関連する分野での有力な政策手段がEPAでありFTAである、こういう位置づけをしているわけでございまして、そういう意味で、私ども、これは日本政府を挙げての仕事だ、かように考えているところであります。

 今委員御指摘の経済連携促進関係閣僚会議というのがございまして、本年に入ってから、三月、九月、そして私が大臣を拝命してから後、十月の二十二日でございますが、計三回開かれておりまして、また事務レベルのそうした会議も持たれているところでございます。

 もちろん、それぞれの省庁のお考えもあるところでございますし、できるだけ国内への悪影響というものは少なくとどめながら、最大限のメリットをお互いに得るようにするという発想があることを、それを一切否定するというわけには、それはなかなか私はいかないと思います。

 ただ、一切我が国産業等々に影響を及ぼさないでこの交渉が進められるかといったら、それは無理であります。お互いに一定程度の犠牲を払いつつも、しかし、トータルで見たときのやはりそれぞれの国におけるメリットがある、ウイン・ウインの関係でなければいけない。こういう考え方に基づいて政府一体となって交渉していくという基本的な態度でありまして、私はその点、確かに今までのシンガポールあるいはメキシコの経験、途中の紆余曲折はいろいろあるけれども、最終的に仕上がったものを見た場合にこれはやはりそれぞれの両国に相当な恩恵があるという判断をして総理が最終的に署名をされた、こういうことであろうと思っております。

 今後とも全力を挙げて、特に私は、これからいろいろな地域、世界じゅうの国々からこういう御要望がありますが、やはりアジアを中心にEPAの協定の締結に向けて努力をしていくべきであろうと考えております。

赤羽委員 私たちが行ったときも、フィリピンとの交渉が一番進んでいるのではないかと。厚生労働省もそれなりの具体的な提案もしておりましたし、農水省も、きょうの新聞報道を見る限りでは随分前向きに足を踏み出したと。ただ、一方では、日経新聞の指摘なんかでは、余りレベルの低いEPAという交渉はいかがなものかというような懸念も指摘されているところであります。

 このフィリピンとの交渉、相手側のフィリピンは、本当に今回のASEANプラス3のときぐらいに大筋合意をしたい、明年早々に大統領が日本に来てそれでサインアップをしたいというような、そんなことも言われておりましたが、このフィリピンとマレーシア、比較的順調ではいると思いますが、どういったところに時期的なゴールを考えられて交渉されているのか、御報告をいただきたいと思います。

逢沢副大臣 まず、フィリピンのことについて御報告を申し上げたいと思います。

 我が国とフィリピンとの間のいわゆるEPAの交渉、これまでに事務レベルでさまざまな交渉を繰り返してまいりましたけれども、幾つかの進展があったのは事実でありますし、また、率直に申し上げて、幾つかのASEANの国々と交渉を行っておりますが、最もスピード感を持って交渉が行うことができている国であることはそのとおりでございます。

 赤羽先生御指摘のように、単に関税を引き下げるあるいは撤廃をする、貿易の自由化という範囲にとどまらず、投資あるいは人の移動、知的財産権の保護や競争政策等々の包括的なルールづくり、包括的なEPAを目指す、いわゆる質の高いお互いの経済環境をつくり上げていこうではないか、そういう方針で臨ませていただいているわけでございます。ただ、では、いつごろ交渉が妥結をするのか、その時期を示せということになりますと、現在進行形で交渉を詰めておるということであります。できるだけ早い時期に妥結をするということに引き続き努力を重ねてまいりたい、そう承知をいたしております。

 また、マレーシアでございますけれども、マレーシアとの間でも、現在まで六回にわたるEPAの公式会合を開催してまいりましたし、分野別に専門家間の非公式な会合等も行い、全体の協議を支えていくというスタイルでやらさせていただいております。ただ、率直に申し上げて、両国間の間には乗り越えなくてはならない幾つかの問題が浮き彫りになっております。

 例えば、我が方が大変関心を持っておりますのは、鉱工業製品の市場アクセスあるいはサービスや投資分野の自由化、これがやはり質の高い包括的なEPAを考えます場合に避けて通れない課題であるということでございますし、またマレーシア側からいたしますと、いわゆる人の移動の問題、例えば公認会計士の資格を持っていらっしゃる方、測量や建築、そういった分野で専門的な技能や能力を持った方々の力、力量、能力を広い意味でのEPAの中で生かすことができないか。

 いささかそういうことにマレーシア側は関心があるようでございますが、そういった浮き彫りになりつつある課題を、いわゆる双方が最終的にウイン・ウインの関係が築けるように努力を重ねております。引き続き、フィリピン同様、スピード感を持って交渉に当たり、できるだけ早い機会に妥結に到達をいたしたいということで努力を続けております。

赤羽委員 対タイ国の交渉について、大変ここはいろいろな問題、会合をやればやるほどいろいろな問題が出てくるような様相がございましたが、十月八日、先ほど申し上げましたハノイでの小泉総理とタクシン首相との会談で、米以外は対象としていこう、こういうような話があった。

 それで、私が聞いているのは、二十五日にタイ側から関心ある十品目、米以外の十品目が示された。同時に、自動車とか自動車部品、鉄鋼を、日本がこれは関心ある品目、これまでは例外対象としていたのが交渉対象とするということが表明されたと。

 ある意味ではボールは日本に投げられている、このように理解ができるものだと思いますが、このことについて、日本側として、このタイ側から来ているボールについて、前向きにとらえて交渉を進める準備があるのかどうか。

 タイとの取り組みについて外務省の方とまたお話をしていますと、どうもタイとアメリカの交渉を見てからというようなことを思われているんじゃないか、そういうニュアンスが感じられるんですね。アメリカとタイの交渉を見てからというと、もちろんアメリカ並みのメリットを享受しなきゃいけないというのは非常によくわかるのですが、アメリカとタイの交渉というのは来年いっぱいかかるとか、そのくらいの先の話になってしまう。

 ですから、交渉を続けていて向こう側もなるべく早期にというような中で、相当先の話に構えているのだとタイと日本との関係、友好関係にとっても余り望ましくない、そう考えるんですが、その点も含めて、タイとの交渉について御報告をいただきたいと思います。

逢沢副大臣 タイとアメリカの交渉状況について率直に申し上げれば、私どもとしてもいささかの関心を持っているということはそのとおりであると申し上げておきたいと思います。

 その中身でございますけれども、いわゆる日系企業に対する優遇が、米国を含む第三国の企業に対する優遇に比べて結果的に遜色のないものにするということは、どうしてもこれは確保しなくてはならない。そのほかにもございますけれども、その点が最も大切なことという意味で、アメリカとタイのFTAの交渉の行方を注目いたしているわけでありますが、しかしではタイとアメリカがどうなるか、それを見きわめなければ動くことができない、そういう態度ではございません。タイとでの間でもスピード感を持って交渉に当たっていきたい、そう考えております。

 赤羽先生御指摘のように、いわゆる十月八日、小泉総理とタクシン首相との間で、米を例外扱いにすることで合意がなされました。これは非常に大きな合意であることはそのとおりでございます。したがいまして、米以外のすべての品目について一括して交渉することが確認をされ、その後の動きにつながっているわけであります。

 我が方といたしましては、当然、自動車や自動車部品、鉄鋼、関心のある分野について積極的に話し合いをしていこう、こう提案をいたしているところでありますし、またタイも日本側に対して、いわゆる優先順位をつけた十品目を公表されたわけでございます。

 タイ側が比較的関心を持っておる品目としては、砂糖でありますとか革製品あるいは履き物、そういうところに比較的強い関心があるということは承知をいたしているわけでありますが、そういった状況の中、タイにつきましても、米タイ交渉に関心を持ちつつ、しかし我が方としてもスピード感を持って協議を進めてまいりたい、そういった姿勢で対応をさせていただいております。

赤羽委員 ぜひ、日本の経済の再生の一つの大きなきっかけでもあると思いますし、このEPA交渉については、スピード感を持って、前向きに取り組んでいただきたいとお願いを申し上げる次第でございます。

 今、大臣の御答弁にございました東アジア共同体構想、これはもう全く私も同感でありますが、そのためにも何よりも中国との関係というのが、これはASEANとの関係と同様、それ以上に重要な位置づけであるというふうに、私はそう認識をしております。

 日本の対中輸出というのは五百七十二億四千万ドルと、前年比ですと四三・六%増と驚異的に伸びております。

 私も、三井物産の社員として、三年余り、北京、南京に駐在をしておりました。当時はまだまだ中国ビジネスというのは開始の時期だったわけでありますが、もう会社をやめて十年、十数年になりますが、今、三井物産の営業部門の人間で中国に行ったことがないという営業マンというのはほとんど一人もいない。もう本当にすさまじいぐらいの激変をしている。

 恐らくこれは短期的な話ではなくて、中国との経済的なコミットメントというのは、もう抜き差しならないぐらいのコミットメントになっているし、これはまた大きな流れは、チャイナリスクということはよく言われますが、大きな流れとしては私は変わらないのではないかと。

 加えて、日本にとって中国以外の選択肢というと、よくベトナムとかインドとかありますが、リスクを分散する相手としては考えてもいいかもしれないが、中国に取ってかわるだけのマーケットにはなり得ない、私はそう思いますし、日本と中国の間で日本が逡巡をするようなことがあれば、それは、中国というのは実は国際的なマーケットでありますから、日本が行かなければアメリカやヨーロッパ諸国が行く、こういった構図というのは、もうこれは厳然とした事実だと思います。

 経済だけではなくて、隣の隣国でもありますし、また、今、実は、改めて言うまでもないぐらい、日本と中国の関係というのはちょっと難しい時期に来ている。サッカーのアジアカップのときのああいった感情の問題とか、尖閣周辺のガス油田の開発の問題とか、こういった問題がある。私は、しかし、こういった問題があるからこそ、率直に対話ができる環境がなければならないのではないか、こう思うわけであります。

 何か問題があって会話ができない、そして非常にお互い険しい関係になっていく、どんどんどんどんいく。これは、両国間だけではなくて、東アジア共同体構想を進めていく上でも非常に大きなマイナス要因になるというふうに考えておりますが、この対中関係について、日本外務省として、外務大臣としてどう考えられ、どう進めていくおつもりか、お聞かせをいただきたいと思います。

町村国務大臣 中国の重要性あるいは日中関係の重要性、これは、両国それぞれにとって重要であるのみならず、委員御指摘のように、東アジア全体、さらには世界全体の中でとても重要な二国間関係の一つである、こういうふうに位置づけているわけでございます。

 確かに、今、ちょっと中国ブーム的な様相を呈しているわけでございますが、これもブームが過ぎ去るとただ単なる冷たい関係になる、そういうことではなくて、やはり長い目で見ても、やはりお互いに信頼関係を持ちながら、しっかりとした二国間関係が築けるようになるべきだろう、こう思っておりまして、余り一時期のアップダウンに目を奪われ過ぎてはいけないんだろう、こう思っております。

 そういう中で、今委員御指摘のように、経済の関係は非常に飛躍的に伸びている。あるいは人の往来、投資、いろいろな面で大変な伸展が見られます。他方、これまた委員御指摘のように、いろいろな二国間で問題があるのもまた事実でございます。したがって、私は、意見の違いがある、あるいは摩擦がある、だから対話がないというのではなくて、違いがあるからこそ対話が必要なんだろう、こう思います。

 日米関係だって、過去を振り返ればいろいろな波風がありました。しかし、その間に、これは政府同士、あるいは政府以外のもちろん民間、あるいは政治家の皆様方、いろいろなレベルの交流があったからこそ、私は日米関係というのは揺るぎない信頼関係が築かれてきたと思います。それと比べるとまだまだ日中関係は不十分だな、こう思わざるを得ないわけでありまして、問題があるからこそ、また意見の違いがお互いにある意味ではわかっているからこそ、対話というものの必要性がある。

 そういう意味で、私は外務大臣として、着任早々でありましたが、ハノイのASEMの会議の合間を見つけて中国の外務大臣とも話をいたしましたし、また電話でも会談をする等々、いろいろな努力をしております。

 今度のAPECで日中首脳会談が開かれるかどうかというようなことも、今マスコミ的にはおもしろく報道されておりますけれども、私は、いろいろな問題がある、意見の違いがあるからこそ、日中首脳は、当然のことでありますが、チリという離れた場所ではあるけれども、そこで話し合いが行われる。

 さらには、十一月末には、ラオス・ビエンチャンでASEANプラス3というのがある。そこでもまた日中首脳の話し合いが行われる。そういう機会を大いに活用して率直な意見交換をすべきではないか、このように考えますし、外務省としてはそのためのいろいろな必要な準備はやっているところでございます。

赤羽委員 財界からも、八月末に奥田経団連会長、また九月には小林陽太郎新日中友好二十一世紀委員会の座長からも、とにかく日中首脳会談、今大臣言われたように、問題を解決するために日中首脳会談が三年近く開かれていないという、これを何とか全力を挙げて改善していただきたいという提言もあったようでありますし、私も日中のトップ同士が率直に話し合えないというのは全く不幸なことだと思いますし、また中国側も新しい第四世代である胡錦濤さんが国家主席になられた。やはり、今はしっかりとらえて、この日中関係をより正常なものというか、より健全なものにしていく努力をぜひ外務省挙げて全力を挙げていただきたいと強く要望する次第でございます。

 最後に、時間が限られてまいりますが、外務省改革について、最近余り外務省改革と、いっとき毎日のようにこれは言われていましたが、余り聞かなくなりましたが、今回の大臣のごあいさつの中で「八月の機構改革により、領事局の新設を含め、外交実施体制が一層強化されました。引き続き、領事サービスの向上、海外の日本人の安全確保、日本企業への支援、在外公館の警備強化等に万全を期してまいります。」こういう一文がございました。

 このことについて、私ちょっと、若干例えて申しわけないんですが、本年七月にイタリアに行ったときに、実はミラノの総領事館は十二人の館員がいるがイタリア語を専門に学んだ人がいない、イタリア語を専門にしゃべれる人がいない、こういう実態がありまして、大変びっくりしました。官房長の北島さんにも、これはどうなっているのかなと、こういう話を帰ってきてからもしました。確かにそのとおりだったので、改善をしなければいけないというようなお話もございました。

 しかし、恐らく、イタリア語、専門のイタリア語というと大変少ないんじゃないか。アラビストとかの方が圧倒的に多いというような話も聞いておりますので、なかなかそう簡単には人事体制というのはできないのかというようなことも思います。

 しかし、まず領事館のことですけれども、何か一説では、領事館というのは大使館と違って在外邦人を相手にするだけだから、その土地の言葉が、専門家がいなくてもいいんだというような、そんなことを言っているような話もあると、直接聞いたわけではありませんが、そういうことの認識を示されているというような話もあったりして、これもどうかここで改めてただしたいわけであります。

 私は、在外邦人のサービスをする役割であるからこそ、現地との折衝ができなければいけないと思いますし、またミラノというのは、確かに首都はローマであるから政治都市としてはローマであるけれども、経済的には日本の企業も圧倒的にローマよりミラノの方が多いわけであります。工業都市ミラノに日本の企業も集中している。だからこそ、総領事館であるかもしれないけれども、大使館と同じような充実が必要なのではないか。

 各省庁からアタッシェとして一等書記官が出ていますが、全員ローマ大使館にいるわけですね。これは、中国でいうと、みんな北京に人材を置いておいて、上海に日本の企業が多い、各国の企業が多い、それを出張で対応しているというのはやはりちょっと考えなければいけないんじゃないかと思うんです。

 ですから、たまたま私はイタリアの件で今回すごく強烈に感じましたが、外務省の機構改革、こういうふうに言われていて、大臣もこのように述べられていながらにして、例えばの話でこういった実態もあるということについて、どのような御見解があり、どういうふうに検討されていくのか、お答えをいただきたいというふうに思います。

町村国務大臣 領事の問題に入る前に一言申し上げたいんですが、首脳会談が全くここ何年か開かれていないというお話がございましたけれども、昨年だけでありますけれども、胡錦濤国家主席との五月のサンクトペテルブルクでの会談、あるいはバリ島でのASEANプラス3の際の会談、あるいはバンコクでのAPEC首脳での会談、三回の首脳会談は、先方の北京へ行って、あるいは東京でという形ではありませんが、海外では首脳会談が行われていることだけは念のために申し上げたいと思います。

 それから、イタリアの領事のお話がございました。

 確かに、イタリア語の専門家、数が少のうございまして、今、我が省では十四名の職員しかいないというのが実情、イタリア語専門ですね。したがって、ローマの大使館のみならず、ミラノの総領事館等々に十分な配置ができているかというと、委員御指摘のような問題があることも承知をしております。

 別に、領事業務が主だから言葉はできなくてもいいんだということでは決してございませんで、領事館でもいろいろな文化関係の仕事、広報関係の仕事もあるわけでありまして、その辺は、できる限り幅広い人材育成を、多少時間がかかっても育成をしながら対応する。ただ、きょうあす急にどうこうできるかというと、なかなか制約があるということは御理解をいただきたい、こう思います。

 それから、アタッシェの配置のお話も出ました。

 現状、各省庁からミラノに配置したいという希望がないものですから、そういう姿にはなっていないのが現状でございますけれども、ミラノの企業活動、日本の企業の活動の活発さといったことなどもやはり踏まえながら、今後よく委員の御指摘を踏まえて検討してまいりたいと思います。

赤羽委員 まず、済みません、日中首脳会談、もちろん三国でやっているのはよく存じ上げています。ただ、相互訪問ができないというこの異常さを僕は指摘したということを改めて言っておきます。

 あと、在外公館におけるスタッフの配置ですけれども、これは各省庁とも僕は責任があると思うんですが、省庁再編になっても人材の配置というのは旧省庁なんですよ。ですから、今パリなんかに行くと、国土交通省ですと、建設省もいる、運輸省もいる、例えばです。香港にはどっちもいない。とにかく、スーパー中枢港湾なんていって、国土交通省は一人もいない。

 ですから、これは前例主義で、何か島だと、決まっていると。そこにいてなぜ頭を切りかえないかというと、そんな力が入っていないんですよ。世界戦略だなんて、国土交通省は口ではどう言っているかわかりませんけれども、真剣に取り組んでいない。

 それは、やはり外務省がリーダーシップをとって、もう一回世界地図を見て、ミラノに僕は必要だと思いますよ。経済産業省なんか絶対出るべきだ。国土交通省の一等書記官も、ローマにいるより僕はミラノにいた方がいい。そういう問いかけをまず外務省からしていただきたい。

 そして、二人で出ているところは分けるとか、そういうことは同じ国内であるならばそんなに難しい問題じゃないし、今からイタリア語の例えば専門家を育てるのは大変時間がかかるかもしれませんが、配置を変えるとか、民間で優秀な人間を採用するとか、やり方はいろいろあると思いますので、総合力を発揮するという意味では、在外公館の機能というのは格段にやはりグレードアップしなければいけない、こう思いますので、ぜひ要望したいと思います。短く大臣の御感想を。

町村国務大臣 御指摘を踏まえて前向きに検討してまいりたいと思います。

赤羽委員 どうもありがとうございました。

赤松委員長 次に、増子輝彦君。

増子委員 民主党の増子輝彦でございます。

 きょうは質問をさせていただきます。よろしくお願いします。

 町村外務大臣、御就任まことにおめでとうございます。就任以来、なかなか直接お祝いを申し上げることができませんでした。この委員会でも三度ほど会っておりますが、なかなか直接お目にかかれませんでしたので、改めてお祝いを申し上げたいと思います。

 日本を取り巻く諸問題が山積をいたしております。そういう意味では、外務大臣の重責というものは非常に大きなものがあるわけであります。

 そこで、外務大臣に最初にお伺いをしたいことは、この国会において、外務委員会に、外務大臣は志ある外交を展開していきたいということを実は述べられておりました。志ある外交、なかなか漠然といたしておりますが、改めてお伺いいたしたいと思いますが、町村外交、すなわち、志ある外交というものは一体どういうものなのかをひとつ所見をお聞きしたいと思います。

町村国務大臣 御激励をいただきましてどうもありがとうございました。

 所信表明でやや肩に力が入ったような物言いをいたしましたが、町村外交などと大仰なことを私申し上げるつもりもございませんけれども、気持ちといたしましては、志の高い、やはり諸外国から尊敬と敬意を受ける日本国になりたいし、それを具現化する外交というものを展開していきたい、こういう気持ちを述べて、では具体的に何か、これは今後の活動によって示すしかない、こう思っております。

 たまたま私の政界入りをしたきっかけをつくっていただいたのが、当時の安倍晋太郎外務大臣でございました。安倍外務大臣も志のある外交ということを言われ、まさにそれを実践してこられた。私はまだ初当選間もないころでありましたが、その安倍外務大臣の極めて精力的な、また非常に諸外国から尊敬をされる外務大臣であったというような経験を目の当たりに見ておりまして、できればああいうふうになりたいなという、ちょっと個人的な思いも含めてそういう言葉を使いましたが、今後、要するに我が国の国益を実現できるような、そういう外交を邁進していきたい、かように考えているところであります。

増子委員 まさに、私がこれからお聞きしたいと思ったことは、安倍外交の件もあわせてございます。かつて私も安倍先生の御指導をいただき、また町村外務大臣の御指導もいただいてまいりました。今は立場は違いますが、基本的な政治に対する志は共有するものがあると思っております。

 安倍外交は、すなわち創造的外交ということを安倍先生はおっしゃられておりました。その創造的外交の中に幾つかの大きな問題があったわけであります。これから外務大臣、しっかりと町村外交をしていかれるということでございますが、しかし今日本を取り巻く環境は極めて厳しく、また重要な時期であります。

 これから勉強ではなく、やはり外務大臣には、今我が国における外交案件としてこういう諸問題が山積をしている、そういう中で、自分としては、政治家として、あるいは外務大臣として、このような形の外交をしっかりと進めていきたいんだということは、多分町村外務大臣はお持ちになっていると思うんです。そういう機会を、我々国会におる者も、あるいは国民も、そういう具体的なことを多分知りたいし聞きたいと思っているんです。

 あえてもう一度お伺いいたしますが、具体的に、志ある外交、町村外交はどこをどういうふうにしていくんだという重要なポイントだけでもここでお話しいただければありがたいと思います。

町村国務大臣 これを申し述べると、多分委員の御質問時間を全部使ってしまうようなことになってはいかぬか、こう思いますので、その概要は所信表明の際にお話をしたとおりでございます。ただ、幾つかの、本当に難しいけれども一歩でも二歩でも前進させなければいけない問題が、マルチの場でもバイの場でもたくさんあるなと思います。

 先ほど、例えば、一例でございますが、前の質問者の方から出た経済連携協定、もうちょっと広く言えば、これは東アジアの一つのコミュニティーというものを時間をかけてもつくっていく必要があるということ、これも言うべくしてそう容易なことではございません。日中だけをとっても、何といってもやはり中国共産党が支配している中国と日本とで、いろいろな意味でまだ価値観も違う、しかしそれでもやはり東アジア共同体という形でつくっていかなければならない。この一つをとりましても、大変、これは困難な作業だけれども、重要な仕事だと思っております。

 この面で、私は、もちろん日米関係の一層の緊密、同盟関係を強化する、その一つとしてのトランスフォーメーションという問題が差し迫ってありますが、それと同時に、特に私は、やはりアジアというものを重視した外交というものもやっていかなければならない。

 そう言いますと、ではロシアはいいのかとか、アフリカはどうだ、それぞれそれぞれあるわけでありますけれども、特に私は、日米同盟を基盤としつつアジア外交というものを、いかに日本がアジアの中で頼られる存在になるし、またアジアの皆さん方とともに前に進んでいくことができる存在になれるかということを一つの大きなテーマとして取り組んでいきたいと考えております。

増子委員 私も実は大臣と同じような考えを持っているわけであります。

 先ほど赤羽委員の方からも、対中国との関係、経済問題を含めてございました。もちろん、日米関係は基軸であります。と同時に、世界の中で日本が果たす役割は非常に大きいわけでありますが、やはり中国というものを私たちはこれからもしっかりと意識しながら、またこの関係を構築していかなければならないと思っておるんです。そういう意味では、今の日中関係は決して、私は、経済的には非常にいいものがあっても、政治的には非常に冷え切っているということで、大変心配をいたしております。

 これは言葉じりをつかまえるようで大変恐縮でございますが、やはり大臣は所信の中で「アジア太平洋諸国との良好な関係を構築、維持することは、我が国の安全と繁栄に不可欠です。著しい経済成長を遂げている中国の存在は、我が国にとって機会であり、より幅広い分野における協力を一層進めることが重要です。」と。実は、大臣がいらっしゃらないときの委員会だったと思いますが、この機会ということ、ここの文脈の、我が国にとって中国の存在は機会である、これはどういう意味を指しているのか、御所見をお伺いしたいと思います。

町村国務大臣 これは小泉総理がよく好んで使われるフレーズでございまして、しばしば、中国はこれだけ伸びている、あるいは軍事面でも大変な予算を使っている、脅威ではないかという見方が一方において存在をいたします。そういう側面が全くないとは言いませんし、先ほど原田委員からのいろいろな御指摘もあった問題もあります。

 しかし、トータルとして見た中国というのは、日本にとって機会、チャンス、オポチュニティーといいましょうか、そういう存在であろうということでありまして、それは何もビジネスチャンスというばかりではなくて、もちろんビジネスもありますけれども、文化の面、あるいはさっき申し上げた、東アジア全体の中で日中がさらに協力して、一緒に東アジア・コミュニティーというものを体制の違い等を乗り越えてどうやってつくっていくか、そういう意味のこれもチャンスだろうと思います。

 そういうことを含めて機会という言葉を使いましたが、そういう認識でいるということをそこではあらわしているわけであります。

増子委員 そうしますと、これだけのチャンス、機会があるということであるならば、やはり私は、日中の首脳が相互に訪問できないということはまことに不幸なことではないだろうかというふうに思っているわけであります。

 先ほど赤羽委員からもこの面については指摘がございましたけれども、今お互いが相互訪問できないという大変厳しい、そして不幸な状況が日中間にはある。先ほど外務大臣は、外国におけるいろいろな首脳会議を利用して、その機会をとらえて実は会談をしているような話がありましたけれども、しかしそれはあくまでも海外の機会を利用してであって、正式なものではないのではないだろうか、ついでの外交ではないか。そういうところで、本当にこの日中間の重要な懸案事項の解決や、あるいはさらに大きな発展をするための関係は構築できないのではないだろうかというふうに私は思っているわけであります。

 大臣、日中間の首脳が、もう既に三年を超える間、実は相互訪問ができていないという状況、この大きな原因はどこにあると認識をいたしておりますか。

町村国務大臣 外国における会談が正式であるとかないとか、私は、それは正式なきちんとした会談だと思っておりますし、そこで必要なさまざまな課題について話し合われている、こう承知をしております。

 それはそれといたしまして、委員御指摘の、相互訪問という形ができていないという事実はまさにそのとおりであります。その最大の原因は何かと言われれば、それはまさに靖国神社参拝の問題であるということは、これは非常に明確であります。

 私は、総理大臣が靖国参拝をなさる、それはどういう思いからかといえば、これはもう既に総理御自身がいろいろな場面で語っておられますけれども、さきの大戦を反省しながら、また今日の日本の繁栄はその間に国家のために命を落とされた方々の貴重な犠牲の上に成り立っている、したがって日本はこれからも平和国家であらなければならないという思いを込めて参拝をしているということであって、私はそのこと自体の考え方は総理の個人的な信念として別に間違っているとは思いません。

 もっと言いますと、中国と日本との間で、死生観について私は相当違いがある。もちろん、それとてもすべての日本人が同じ死生観を持ち、すべての中国人が同じ死生観を持っているとは思いませんが、しかし私はそこでやはり明確な違いがあると思います。

 やはり、日本では多くの場合、亡くなった方は、生きている間にどういうことをやったとしても、それは神様仏様になるというような死生観を持っている方が大部分だと思います。中国、あるいは韓国も何かそうだという話を聞きました、定かではないかもしれませんが。現世で罪を犯した者は、あの世に行ってもやはりそういう扱いを受けるというような考え方がある。

 しかし、ここはある意味では、そういう国と国というのでどうしても一致できない部分というのは私はあるんだろうと思うんです。しかし、それを、違いがあるからといって、では会いませんというのは正直言っていかがなものかと私も思います。

 その違いを乗り越えて、お互いに違いは違いとして認めながら、それでもお互いがやはり日中関係は大切だという思いに至って対応してもらいたいものだということを、機会を得て私も中国の方々には、私も日中議員連盟の役員をやったりしていたものですから、いろいろな機会に今まで中国の方々にもそういう話をしてまいりました。

 今後も、今は外務大臣という立場にあるわけでございますのでその辺は私のレベルでできる最大限の努力をして、いずれにしても、日中首脳がお互いに相互訪問できるような環境をつくるための努力をしてまいりたいと考えております。

増子委員 とうとい命を失われた多くの英霊の皆さん、私たちも全くそれは、追悼するということは一緒だと思います。多分、中国の皆さんも、それは同じような死生観を持っていると思うんですね。

 だけれども、問題は、大臣がおっしゃったように靖国が大きな問題になっているという場合に、その靖国がなぜ問題になっているかということをやはり大臣は御存じだと思うんです。御存じだけれどもなかなか言えないのかどうかわかりません。

 しからば、ひとつお伺いをいたしたいと思いますが、大臣は、靖国神社をみんなで参拝する国会議員の会に所属いたしておりますか。

町村国務大臣 所属をしております。

増子委員 外務大臣として靖国神社を公式参拝したことはございますか。

町村国務大臣 これまでのところはございません。

増子委員 死生観、あるいは英霊を敬う、あらゆる面で私どもは多分共有の認識を持っていると思います。

 外務大臣として、今後、靖国神社を公式参拝する予定はございますか。

町村国務大臣 慎重によく考えてまいりたいと思っております。

増子委員 そうしますと、外務大臣が慎重に考えていきたいということになれば、我が国を代表する総理大臣は慎重に考えなくてよろしいんでしょうか。

町村国務大臣 当然のことであろうと思いますが、総理大臣は総理大臣という重い立場でいろいろ慎重に考え、思いをめぐらせた上での行動であると私は考えております。

増子委員 それは総理大臣は総理大臣の考えとおっしゃいますが、大臣、先ほど大臣は、日中関係がこのような状況になっている一番の問題は靖国参拝問題だということをおっしゃられましたね。靖国神社に参拝をするということが問題なんだと思うんです。

 しからば、靖国神社に参拝をするということの問題の中身は、先ほど大臣がおっしゃったようなことではないところにあるのではないでしょうか。例えば、A級戦犯が合祀されているというふうなところに中国が問題としているというふうな認識はございませんか。

町村国務大臣 多分、委員言われるとおりのことだろうと思います。

増子委員 そうしますと、中曽根元総理が一度参拝をされました。大変な批判が国の内外から出てまいりました。その後、中曽根元総理は、自分の信条とは別に、一国の総理大臣として、指導者として、国際的な関係をおかしくしてはいけないという高度なる政治判断、一国の首相として判断をされたゆえに、以降、公式参拝をしなかったと私は思うんです。

 それを総理は総理のお考え、判断があるという形の中で、今の日中関係の最も大きな問題となっている靖国神社参拝をあえて総理の判断にゆだねるという形の中で、町村外交は総理と一体となって進めていけるんでしょうか。お伺いいたします。

町村国務大臣 最終的に小泉内閣総理大臣が参拝されるかどうか、これは最終的には小泉総理の判断にゆだねるしかない問題でございます。

増子委員 私は、それではやはり外務大臣の志ある外交というものにはなり得ないと思うんです。私は靖国神社を否定しておりません。私も参拝をいたします。先ほど申し上げたとおり、英霊に対する思いも私は強く持っております。

 しかし、総理大臣の判断にお任せをするということで、日中関係が殊さら重要だ、特にアジア外交というものが町村外交の中にあっても極めて重要だという見識をお持ちの外務大臣が、そのように総理大臣は総理大臣の判断だということでこの問題が解決するのか。それでは外務大臣としての職責を果たすことができないのではないだろうかと私は思います。

 もう一度お伺いいたしますが、総理大臣とその問題について話し合いをしながら、日中間の大きな懸案であるこの問題について何らかの解決策を出すような御努力はされるのかどうか、お伺いいたします。

町村国務大臣 もちろん、総理大臣とはこの問題で話し合いをしております。そして、現状は、小泉総理が最終的なみずからの行動についての判断、そして責任を感じながら最終的な判断をされるということでありますから、その判断は判断として尊重しなければならないと私は思います。

 しかし、その上で、すべての問題について、これは何も日中間のみならず、すべての問題についてそれぞれの国、それぞれの首脳が違う考えがあるから一切会わないというのも私はいかがなものかと率直に言って思っております。違いは違いとして認めながらも、やはりその中で対話を行い、そしてできるだけの一致点を見出して友好促進を図っていくというのがあるべき姿ではなかろうか、こう思っておりまして、したがって総理が靖国参拝を続けるから日中関係はもうだめだということにはならないし、またならないようにするために、私外務大臣初め外務省の仕事があるんだ、このように認識をしております。

増子委員 そうしますと、今の外務大臣の御答弁だと、何か日中首脳相互訪問ができないのは中国に問題があるような受けとめ方ができるんですけれども、それは外務大臣としてそのような認識なんでしょうか。私はやはり、靖国神社をだれも否定しない。私ももちろん、先ほど申し上げたとおり、やります。しかし、総理大臣という立場は、一議員でもなければ、違うんだと思うんです。

 そうしますと、この不幸な関係が、お互いが相互訪問できないという関係が、総理大臣は総理大臣の判断でやっていくんだ、そういう考えにいちゃもんをつけて、そして中国側が悪いんだということの論理の中でこの問題をしばらくこのままにほうっておいて、結果的に小泉総理が在任中は一切中国、日本両首脳が相互訪問できないという事態を招いてもいたし方がないというお考えなんでしょうか。お伺いします。(発言する者あり)

赤松委員長 御静粛に願います。

町村国務大臣 これは、中国が悪いとか日本が悪いとか、お互いにそうやって批判をし合ったり、あるいは非難をし合ったりする、そういう性格ではないと私は思っております。

 もう一度申し上げますが、私は、だからといって中国の考え方というものを批判するつもりはございません。ただ、違いは違いとしてお互いに認める部分がやはりあるんだろうということは、率直に中国にも申し上げておりますし、また彼らは彼らでまた別の意見を私どもに申し上げる。しかし、だからといって、日中間の政治的な交流、政治的な関係が全く成り立たないかといえば決してそうではなかろう、私はこう考えるものですから先ほど申し上げたような答弁をしたわけであります。

増子委員 そうしますと、お互いがお互いの考えを主張し合って平行線のままでいけば、結局、不幸な関係が続くということになると思うんです、政治ですから。ましてや、中国の存在というのは、日本にとっても町村外交にとっても極めて重要な位置づけにあるわけですから、どこかでやはり話し合いをきちっとして、妥協をして、譲るところは譲る、お互いですよ、一方的ではなくて。

 そういう関係を築いていかなければ、この日中関係というのは、経済的にはどんどんどんどんいいかもしれないけれども、やはり政治と経済というものは、今の時代、決して切り離すことはできない時代になっているわけでありますから、このまま平行線でいってもいたし方がないとお思いになるのか、やはり何らかの御努力をされて一致点を見出すような最大限の努力をしていくということをお考えになっているのか、その所見をお伺いしたいと思います。

町村国務大臣 もとより、そういう認識の違い、あるいは行動面での違いのギャップをどうやって埋めていくのかという努力をすることがまさに外交の務めであろう、こう思っておりまして、平行線のまま交わることのない状態がいつまでも続いていいというふうには、私は考えておりません。そのためのギャップを埋める努力というものを外交的にやることは、当然のことでございます。(発言する者あり)

増子委員 今、隣で同僚議員が言っておりますが、総理の判断だからいたし方がないということですべての物事が進んだのでは、この国はどういう方向に行くか心配になります。すばらしい見識を持ち、お考えを持って、道徳心を持つ総理大臣だけならばそれはそれでいいのかもしれませんけれども、やはりそのために外務大臣もおられる、多くの大臣がおられて、進言、直言、諫言をするということが、私は政治の一番大事な根底だと思っております。

 ところで大臣、大臣自身としては、先ほど私が申し上げましたが、A級戦犯の合祀の問題が大きな問題となっているのではないだろうかと私は思いますが、町村外務大臣としては、A級戦犯を切り離すことについてのお考えをどのようにお持ちになっているか、お伺いしたいと思います。

町村国務大臣 これは、個人の立場で言うことは可能かもしれませんが、外務大臣としてA級戦犯を合祀すべきか分祀すべきかということをもし私が言えば、それはまさに政教分離ということを決めた憲法に違反することになりますので、私の立場でそれを申し上げることは厳に慎まなければならない、かように認識しております。

増子委員 これは政教分離、信教の自由とは全く関係のないことだと思います。大臣がそうおっしゃることは、政治的な大きな波紋を及ぼす可能性があるということではないんでしょうか。私はそういうふうに認識をいたしております。

 いずれにしても、この靖国神社問題、我が国が抱える日中関係あるいは日韓関係の大きなネックになっているわけでありますから、できるだけ早く外務大臣として、まさに志ある外交をお進めになる町村外務大臣としては、ぜひ小泉総理としっかりと話し合いをされ、時には、憎まれても進言、諫言、直言をするということを私はぜひやっていただきたい、それがまさに志だと思うんです。志というのは、そのような環境をつくっていくことがまさに大事だと思っております。

 もう一つお伺いいたしたいと思います。

 先ほども潜水艦の問題が出ましたけれども、これはやはりなぜ発見されてから四時間近くもほうっておかれたのか。追跡はしていたけれどもなかなか発動命令が出されなかったというようなことがこれはあるわけであります。これも、中国という認識をお持ちになっているけれどもまだ公式的には言えない。そうすると、日中関係を考慮してそのような今状況になっているのかどうかということについての所見をお伺いいたしたいと思います。

町村国務大臣 領海を侵すということは、いかなる国の原子力潜水艦であれ何であれ、それは許されることではないわけでありまして、そこに中国だから、どの国だから、かの国だからという違いを私ども意識したことは全くございません。

 一部の報道では、外務省が防衛庁に何か圧力をかけるかして海上警備行動の発動をおくらせたかのごとき、ともとれるような報道が一部ありましたが、これはとんでもないことであります。

 時間の経緯の問題については私もつまびらかにはいたしませんけれども、今日ただいま現在、あの船籍がどこの国であるかということを政府としては特定していないわけでありますから、中国云々という委員の御質問ではございますけれども、その関係についてはこれ以上のお答えが現時点では全くできません。

増子委員 公式に中国の潜水艦だったということが明らかになれば、ぜひこれは強く抗議をしていただきたいと思っております。

 日中関係の中でもう一つ実は大事な点がございまして、ODAの関係であります。

 この夏に参議院が、参議院政府ODA調査ということで中国に行ってこられた、立派な報告書が出ております。ごらんになりましたよね、大臣。報告書をごらんになりましたか、派遣報告書、ODA関係。

町村国務大臣 資料として回ってきたのは覚えておりますけれども、今、具体の中身については、恐縮でありますけれども今のところ記憶がございません。

増子委員 実は、この中に中国のことがかなり割いてあります。これまで中国にはどのぐらい、累計として幾らのODAがなされたか、認識しておりますか。

町村国務大臣 中国に対しては、円借款で累計、二〇〇三年度末まででございますけれども、三兆四百七十二億円、無償資金協力は千四百十六億円、技術協力は千四百四十六億円でございます。

増子委員 大変大きな金額が実はODA援助としてなされているわけであります。この使い方に若干問題があるのではないかという報告書がなされておるわけであります。これも、まだ報告書は見たけれども中身は精査をしていないということでよろしいですね。

 この中にいろいろ実は書いてございます。外務省はこれまで中国のODAについて、その有効性評価や使途について事後チェックをしたことがございますか。イエスかノーかで結構であります。

逢沢副大臣 ODAのあり方につきましては、常に政府内とりわけまた外務省の内部でその評価また改善策、レビューはさせていただいておりますし、また国民の皆様からも大変高い関心をいただいております。会計検査院等からもその都度意見等をいただいておることも付言をいたしておきます。

増子委員 参議院のODAの報告書によりますと、幾つかのことがあると申し上げましたが、今中国は国防費がGDPの伸びを上回って増強していることはもちろん御存じだと思うんです。このことや、第三国への経済援助を行っていることもこの中で指摘をされております。日本が中国に多額のODA援助をしているけれども、このお金が軍事費もしくは第三国への経済援助に使われているのではないかという問題がある、疑いがあるというようなことも実はあるんですね。

 これらについて、やはり外務省としては、今後のODAの問題については、中国にこれだけの累計で多額のODA援助をしているわけでありますが、これからも引き続きODAの援助をしていく可能性は当然あるわけでありますが、こういった問題が国会の方の調査団の中で指摘をされているということになれば、ODA援助について中国に対してのやはり見直しというものは当然考えていかなければならないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

町村国務大臣 委員御指摘の幾つかの問題点、それぞれまた参議院の側の御指摘も含めてしっかりと受けとめなければならないと考えております。

 対中ODA、二千億円を円借款で超えるときがございました。平成十二年が二千百四十三億円ですか、平成十五年度は九百六十六億円と半減以下になってきております。現在行っている案件というのは、主として環境の問題でありますとか、あるいは人材育成の問題でありますとか、深刻な貧困問題を抱えている西部地域等々、限定をされたものになってきておりまして、かつてのような大規模プロジェクト、空港でありますとかそういう問題には一切手を引いております。

 そして、中国もかなり一人当たりの国民所得が上がってきておりまして、大きな国ですからどこまで統計を信頼するかという問題は感ずるんでありますが、それでも一人当たりが千百ドルを超えてきているということでありますから、一般的には援助受け取り国の一人当たりの国民総所得が大体千四百ドルに達すると無償資金協力は終了する、三千ドルを超えると円借款も環境とか人材案件を除いて終了するということも既に一般ルールで私どもは持っているわけでありまして、その辺を勘案したときに、この対中ODAをこうした大きな金額でいつまでも供与し続けるということにはならないであろうと考えております。

増子委員 ありがとうございました。

 大臣、ぜひODAを含めまして、日中関係、これだけの大きな交流があるわけでありますから、先ほどの相互訪問の問題、靖国神社問題を含めまして、どうぞ志ある外交で、お師匠さんでありました安倍外交を見習いながらこれから頑張っていただきたいと思います。ぜひこの日中間の懸案を解決するために御努力いただきたいと思います。

 私ども民主党として、言うべきははっきり申し上げます。しかし、協力することは協力させていただきますので、ひとつこれから頑張っていただきたいです。

 質問を終わります。ありがとうございます。

赤松委員長 次に、古本伸一郎君。

古本委員 民主党の古本伸一郎です。

 きょうは、質問の機会をいただきましたので、理事の皆さんに感謝しながら質問させていただきたいと思います。

 最初に、小泉内閣の枢要なスタッフである大臣、副大臣、政務官の、郵政民営化に対して賛成か反対か、まずお聞かせいただきたいと思います。続いて、年金がもはや忘却のかなたに行きかかっている今日、未納か加入か、納めているか納めておられないか。それぞれ大臣、副大臣、政務官、お答えいただきたいと思います。

町村国務大臣 郵政民営化の問題につきましては、今政府部内あるいは関係する方々で真剣な議論が行われているし、近日中に来年度の法案化に向けての方針も決まってくる、こう承知をしております。

 その方針に私は異を唱えるものではございませんが、その際に幾つかの点について、例えば地元北海道で言うならば、大変過疎の地域に郵便局がある、これらのものがどんどんどんどん、仮になくなるということはないというふうに聞いておりますが、その辺のことがはっきり担保されているようにという期待は持ちつつも、基本的には郵政民営化についての私の考えは、政府の方針と同じであります。

 年金の未納問題にもお尋ねがありましたが、昭和六十一年四月以降、五年二カ月未納期間があることは、既に私のホームページ等々で従前から公表をいたしております。

逢沢副大臣 郵政民営化につきましては、内閣の方針に従って民営化に臨んでまいりたい、そのように思います。

 年金の未納期間でございますが、大変私も反省をいたしたわけでありますが、通商産業政務次官に就任をしていた期間のある部分、ある部分でございますけれども、五カ月間未納期間がございました。

小野寺大臣政務官 郵政民営化につきましては、内閣の方針に一致して従ってまいります。

 年金の未納期間については、ございません。

古本委員 ありがとうございました。

 大臣は、安全保障委員会並びにさきの外務委員会での所信の中で、二つのポイントを大きく言われておられます。一つが国際協調、そしてもう一つが日米同盟、こういう理解であります。

 この際、日米同盟は当然に日米安全保障にかかわる国の根幹だと思いますが、日米関係と置きかえたならば、大臣にとって、例えば三つポイントを挙げてください、三つに絞れば何が日米関係の重要ポイントになるでしょうか。

町村国務大臣 これはいろいろな方々がいろいろなお考えをお持ちだろうと思います。私なりに、これは個人的な見解になることをお許しいただきますが、一つは、政治、軍事の関係というようなものがやはり基礎をなすものだろう、こう思っております。

 日米安全保障条約というものがあり、その上に立ってお互いの信頼関係がまず築かれているということ、これは非常に、ある方の表現をかりますと、これはアジアにおける国際公共財だという見方をする方もいらっしゃいます。これは定義の問題はあるかもしれませんが、いわば、そういうものとしての日米安保条約の位置づけというのがあると思います。さらに、政治の面でのお互いのやはり共通の価値観をともにするということが、私は大変大きなそのベースにあると思います。

 二番目に、何といってもそれぞれ大きな経済を持ち、その経済の交流が非常に大きくなっているという、この関係も非常に重要だと認識をいたしております。

 釈迦に説法でございますけれども、世界一、二位のGNPの経済大国が、もし仮に非常に悪い関係だとすると、これは国際経済全体にも及ぼす悪影響はいかばかりかと思わざるを得ません。そういう意味で、日米関係、時として自動車摩擦、繊維摩擦、いろいろな摩擦がありましたが、それらを乗り越えて、今日米間には、今でもBSEの問題等それはありますけれども、基本的には経済関係も良好だと認識をしております。

 三番目に、私はやはり、人と人とのつながり、さっき政治とだけは申し上げましたけれども、非常に幅広い分野での日米関係にはやはり人と人とのつながりというものがあり、それは学術研究面であり、文化面であり、経済面、政治面、非常に幅広い分野での人と人との強い交流、連帯というものがある。このことが私は日米関係を形成している大きな財産であるし、それはもっともっと発展させていかなければならない、そういうふうに私は認識をしております。

古本委員 今、政治、経済、人と人とのつながりという部分でお話がありました。

 だとすれば、今、イラクへの我が国の自衛隊の皆様が本当に国民を代表して行っておられる、これはそのとおりだと思いますが、大臣が大変重要だと言われる、所信の中にも入っている日米同盟、そして日米関係の三つのポイント、絞ってください、こうお願いをしたところ、最初に政治と言われた。

 今、イラクに我が国の自衛隊が行っておられる理由は、これはイラクの皆さんの人道復興支援、イラクの人のために、イラクの皆さんのために、こう盛んに言っておられる。しかしながら、この議論は途中で変わってきていませんか。

 私の理解では、少なくとも最初には、アメリカが困っているんだからこれを助けてあげよう、隣人が困っているんだから助けてあげよう、これが当初の、派遣の最初のきっかけではなかったでしょうか。それから、途中で、いよいよ自衛隊が派遣するというタイミングになって、石油を、日本はなくなっても大丈夫なんですか、中東という大変な地域がどうなってもいいんですかと再三言われた。そして、今はテロとの闘いということで言っておられる。いつの間にかテロとの闘いになっているわけです。

 申し上げたいのは、日米関係のポイントの三つのうちの一つに挙げていただいた政治と人とのつながり、ここに絞って申し上げれば、今、日米の安全保障体制ということが防衛白書の中にも書いてあります。安全保障体制の中に具体的に書いてあるんです。

 我が国防衛のための最も効果的な枠組みは日米両国間の緊密な防衛協力である、さらに、みずからの安全の確保に万全を期しつつ、米国とともに地域の平和と安定の確保に取り組んでいくことに当たっての基礎となっていると言われているんですが、アメリカを信じていて、本当に日本が困ったときに助けてくれるんですか、大臣。

町村国務大臣 どういう状況を指して助けてくれるんですかとおっしゃっているのか、ちょっと必ずしもよくわかりませんけれども、私は、日米、特に安保条約に基づく軍事面での協力関係、これは長年にわたって築き上げられたものでございます。

 ちょうど私が学生時代に、六〇年安保改定というのもございました。累次の改定を経た上で、そして今日の日米の信頼関係があるということでありますから、どういう事態で助けに来るんですかと言われるのがよくわかりませんけれども、しかし私は、国と国、最も信頼し得る国と国との関係の仲である、その基礎をなしている日米安保条約に基づくもろもろの約束、取り決めというものが、いろいろな事態できちんと作動し、効果的に運用されるということを常に確信しておりますし、今もそういう状態にある、こういうふうに私は考えております。

古本委員 だとすれば、先ほど来出ています潜水艦の問題があります。アメリカは、日本が事前に察知できたかできないかは、これは外交機密でしょうし防衛機密でしょうから聞きませんが、このことに対して何がしかのアメリカからのサポートはあったんでしょうか。台湾の目と鼻の先で起こったことですよ。事は重大だと思うんです。アメリカから何かあったんでしょうか。手助けがあったんでしょうか。

町村国務大臣 ただいま現在、私は、日米間でそういったやりとりがあったかどうか承知をしておりませんけれども、それは、まず一義的には防衛当局の間でどういうやりとりがあったかとは思います。しかし、それが仮にあったとしてもなかったとしても、この場でそのことを申し上げることは、それはできない性格の案件であるということは、委員もよく御承知のとおりでございます。

古本委員 私は、大臣のいわゆる思い切った町村外交に期待をしているからこういう質問をしているんです。

 かつての町村大臣の、これは毎日新聞社の平成十六年の五月三日の憲法アンケートに答えておられます。九条一項戦争放棄、変更すべきだ。九条二項戦力不保持、変更して戦力保持を明記すべきだ。集団的自衛権の行使、認めるべきだ。こう言っておられるんですね。

 ならば、これは今アメリカとの信頼関係は、政治、さらに人とのつながり、その二つに絞るというふうに申し上げました。ならば、今在日米軍の駐留経費は一兆のうち日本の負担は六千億円を超えていると思います、もちろんアメリカが持っている部分もあるでしょうけれども。そこまで負担をしていれば、例えば海上自衛隊の、本当に念願だったと思いますが、ヘリ空母が展開されるようになったと思いますね。これは一隻一千億と聞いています。六隻買えているじゃないですか。

 ということは、庭先を守るのはやはり自分たちで守らなきゃいけないんじゃないですかと。大臣は、憲法観からとってみても、そこに踏み込んでやってくれる人なんじゃないですかと思っているわけです。それを、アメリカとの関係を重視するという日米同盟重視ということと国際協調を併記して、これを両立するということを大臣所信に書かれているということは相矛盾するんじゃないですかということを問うているんです。御所見を伺います。

町村国務大臣 結論を言えば、全く矛盾はしない、こう思っております。

 確かに、アメリカに対するホスト・ネーション・サポートは相当大きなものを厳しい財政状況の中でも出しております。それはなぜかと言えば、これは、日米安保条約に基づき、米軍の抑止力というものが我が国の独立と平和を守るために、そしてこの極東地域、その周辺の平和と安全を守るために必要だという判断をしております。

 それは、すべて自賄いといいましょうか、日本独自ですべてのことをやれる、それはある種の理想かもしれません。しかし、現実それは不可能だ、私はこう思っております。みずから守る努力をしなきゃならないのは当然です。その気概のなき国家は滅ぶとさえ私は思います。

 しかし、そのことと、現実に、それじゃすべてのものを全部日本が持ち得るか。例えば、今委員はそういうお考えかもしれませんが、すべて自賄いをするとなったときに、では核の問題はどうするかということにまで議論は及ぶんだろうと思います。私は、みずから核兵器を持つべきだとは思っておりません。しかし、現実に核の脅威が発生したときに、もし日米安保条約がなかったときにどうするかということを考えれば、私はやはり日米安保条約の存在というものは非常に大きい、こう思っております。

 しかし、日米安保があるから、では自衛隊はどうなってもいいということを言うつもりは全くありません。自衛隊は自衛隊として、しっかりとした、これから近々決められるであろう大綱、そして中期防に従ってみずからの防衛力というものを質的に高めていくということは国家として当然のことでありますが、だからといって安保条約というものが不要であるということには決してならないし、そういう意味で日米同盟の重要性というものは今後とも続くであろう、こう思っております。

古本委員 核の話まで出ました。

 ただ、現実の、差し迫る国民的な危機感あるいはああいう報道を見るたびにまたかと思う国民の声を代弁すれば、差し迫る脅威は、国籍不明の潜水艦が我が国の領海内に入ってきているということの方が、核爆弾が飛んでくるということよりまずは差し迫っている危機であるわけですよ。

 そのことからいえば、冒頭申し上げたのは、アメリカが、世界に冠たる、小泉内閣が信奉してやまないアメリカ海軍なり陸軍なり空軍、何でもいいです、すべてを動員したとしてでも、そのインテリジェントの部分ですよ、あの潜水艦のことは本当にわからなかったんですか、それとも泳がせていたんですか、大臣。

町村国務大臣 まだこの事案は追尾という形で続行中である、ただいま現在も多分そうだろうと思いますので、細部にわたる検証を私は今申し述べる立場にもございませんし、そのオペレーションの一々について私が正直言ってすべてを知り得るという立場にはございません。いずれきちんとした報告なりを受けなければならないとは思います。ただ、現在まだオペレーション中であるということで、これ以上のコメントは差し控えさせていただきます。

古本委員 それでは、外交マター、少し防衛庁絡みの話ばかりし過ぎたようですので。

 仮に、これが中国、報道によれば中国の原潜だとして、何ゆえ彼らはああいう作戦行動に出ているのか。一人の艦長の判断で迷い込んだとは思えませんね。そういう意味からいきますと、在北京の武官あるいは在アメリカの武官、外交のスタッフとして赴いている人々が、どういう、インテリジェントの部分です、インフォメーションじゃないですよ、どういう諜報活動を行っておられるのか。中身は聞きません。私は大変期待したいです。日本はなめられていると思いますね。

 その意味からいくと、大臣は所信の中で大変力強いことを言っていただいています。情報能力の強化であります。国際協調と、それと日米同盟を二つの軸にしてやっていくと。「外交政策を能動的・戦略的に展開するに際しては、迅速かつ広汎な対外情報の収集に基づく洞察に富んだ分析が不可欠であり、対外情報収集・分析の能力と体制の強化にも努めたい」、こう書いておられるんです。

 一方、外務省からいただいている来年度の概算要求、これを見れば、大臣、寂しいですよ、これは。情報機能、分析能力強化経費コンマ五億円、五千万ですよ。もっとほかに使うことはないんですか。これで本当に中国の原潜がまた迷い込んだとは言わせませんよ。これは確信犯です。御所見を伺います。

町村国務大臣 国籍はまだ特定をいたしておりませんので、中国、中国ということについては私はコメントは申し上げません。

 ただ、それとは別にして、十七年度の概算要求の金額をお触れいただきました。率直に言って、これで十分かといえば、私は不十分だ、こう思います。それならばすぐ来年度予算をふやせ、こういう温かい御激励もいただけるもの、こう思いますが、もう既に要求してしまっておりますから、ある意味ではどうしようもないんですけれども。

 私は、このインテリジェンスの問題は、この予算に象徴されますように、戦後の日本の社会というのは、このインテリジェンス問題を全く無視してきた、むしろそれはない方がいいと言わんばかりの論調がずっと続いてきたんだろうと思います。

 私は、実は、九・一一の事件の後に自民党の中に三つほど小委員会ができて、その一つの小委員長が、このまさにインテリジェンスの問題をもっと我が党としても真剣に取り上げようではないかという小委員会をつくり、私はみずからその小委員長になり、いろいろな対応策というものを提言したりしております。少しずつそれらを今実現しているところであります。

 要は、国民全体がそうしたインテリジェンスという問題、この間の悲しい結末になってしまった人質の問題、あるいは今度の原潜のような問題、インテリジェンスはどうなっているんだと必ずおっしゃいます。しかし、何か政府がそういう関連の仕事をやろうとすると、今度は、インテリジェンスはどうなったと語った方々が、突然に、手のひらを返したように、そんなことは政府がやっちゃいけない、何でも情報は公開だ、報償費が何だ、秘密費が何だとか、官邸機密費も全部公開しろ、例えばこういう話にどんどんなっていくんですね。

 ですから、私はそういう意味で今回の事件を奇貨として、私は、本当にこれは与野党という立場を超えて、国家として日本のインテリジェンスはどうあるべきかということについて本当に率直な議論をして、その対策というものをつくり上げていく必要があるのだ、こう思っているところでございますので、ぜひ御指導を賜りたいと思います。

古本委員 では、もう一つの所信で述べられておられます柱について伺いたいと思います。国際協調であります。

 大臣のお考えによるところの国際協調の定義づけはこれすなわち国連主義だ、こう解釈してよろしいでしょうか。

町村国務大臣 国連も一つの重要な役割でありますし、しかし国際協調というと国連ばかりでもございません。近々開かれるAPEC、ASEANプラス3とか、そういういろいろな集まりがありますから、国連ばかりとはあえて申し上げませんが、重要な機関であるということはもちろんでありますし、そういう意味で、私ども、安全保障理事会の常任理事国に立候補をしたというか手を挙げたいという意欲を示したのも、まさに国連というものが非常に重要であるという認識があるからこそ、その常任理事国入りを希望しているということの具体のあらわれであると思います。

古本委員 だとすれば、国連の安保理の常任理事国に入るに当たっての目的について、改めて少し伺いたいと思います。さきの総理の国連での演説によれば、るるおっしゃっておられますが、大臣の認識での常任理事国入りするその目的を少し伺いたいと思うんですね。

 その際に、これはおもしろいデータがあるんですよ。外交に関する世論調査、内閣府が行っておられるものなんですが、これは国がやっているアンケートですから、これをそのとおり申し述べますと、国連安保理常任理事国入りについて、賛成の皆さんというのは平成六年に五六%だったんです。それが平成十四年には七〇ポイントになっている。だから、これは世論としては上がってきているんですね。これはいい。

 一方で、その常任理事国入りに賛成する理由として述べておられるのが、実は、第一に、非核保有国で平和主義を理念としている日本が加わることが世界の平和に役立つんじゃないかということにイエスと答えている人が一番多いんですよ。ところが、あいにくと申し上げますが、外務省が大変宣伝をなさっておられる、あるいは総理も現に言っておられる、国連費の分担金に見合った発言権を得たいんだと大変言っておられるんです。このことについては、国民世論としては一番の理由にはあいにく挙がっていません。

 何でこんなことを言うかといいますと、国連費の負担というのは、これは思わず口が滑ったということで許していただくんですが、数字がもうほかのものがべらぼうにでかいですから、たかだか三百億なんですよ、我が国の国連費の負担は。

 一方で、在日米軍の負担費は六千億です。もっと言えば、テロとの闘いとおっしゃられるイラクの、いつの間にテロとの闘いになったかは知りませんが、これについては五十億ドルですよ。レート換算で、途中で幾らか出すかは別にしたって、六千億ぐらいになるんですか。

 このことを思えば、実は常任理事国に入る目的のイの一番に唱えるべきは、その負担金に見合った発言権を常任理事国入りしてあれしたいんだというのは、これは国民に対する目くらましですね。常任理事国に入って何をしたいんですか。大臣の御所見を伺います。簡潔にお願いします。

町村国務大臣 その話に入る前に、今六千億とおっしゃったが、ちょっとどういう根拠か私どもにはわかりません。少なくとも、自衛隊の派遣費ということで言いますと、平成十五年度予備費で二百六十九億、十六年度予算で百三十五億、合わせて四百三億でございますから、ちょっと六千億という数字は、余りにも間違った印象を国民に与えるのではないかと思いますので、ここは申し上げておきます。

 それから、なぜ常任理事国入りを強く表明したのかというお問い合わせでございます。

 これは、やはり日本にとってという意味と国際社会にとってという両方の意味がある、こう私は考えております。

 日本にとっての意味というのは、やはり国連における、あるいは世界の中でも重要な政策決定がその場で行われるわけでありますから、その中に深くかかわりを持ちながら、日本が考える国益をその場で実現していくことができる、こういうことがあります。特に国際の平和と安全の確保について、より建設的な役割が果たせる、こう思っております。

 また、日本は専守防衛の国でありますから、先ほどインテリジェンスというお話がありましたが、一般的な情報も含めて、国連の常任理事国になるとならないとでは、やはり入ってくる情報、知り得る情報が相当違ってくる、こう私は理解をしておりまして、そういう意味からも日本にとっての国益にかなう、かように思います。

 また、国際社会にとりましても、これだけの経済規模を有する我が国が、それに見合う、ふさわしい地位を持つということは、バランスの上からも僕は必要なことだと思いますし、また安保理で今アジアの代表は中国一カ国であります。その一カ国について別にあれこれ言うつもりはございませんが、どう考えても、アジアの代表がバランスのいい形で、安保理に中国一カ国だけがいるということではないんじゃないんだろうか。日本が入ることによって、アジアというもののバランスのとれた地域構成というものが可能になってくる、アジアの代表性を高めることができるということもあろうかと思います。

 また、これまで日本は、先ほど委員御指摘の軍縮とか不拡散といったような分野でも積極的な外交をやってきたつもりであります。そういったことについて、これまでの実績を踏まえながらより一層の活動ができる、こういう意味で、国際社会にとってもまた日本にとってもそれぞれに意味のある国連常任理事国入りである、私はそう理解しております。

古本委員 初めに、先ほど在日米軍の駐留経費ということで、これは政府からもらっている資料ですから、総額六千三百八十六億円、平成十五年度分、そのことで申し上げました。間違っているということを言わないでください、合っていますので、米軍経費です。

 それで、イラクのことについては、単年でいえばそうかもしれませんが、総額五十億ドルをもくろんでいるというのはこれは事実だと思いますので、互いに、指摘は当たらないと思います。

 本題に戻りまして、だとすれば、大臣、平和国家日本を標榜して頑張っていくと。僕は、総理が国連演説の中で唯一の被爆国だと確かに言っていただいているんですが、もっと、他の常任理事国に対して、いざというときは机をけ飛ばしてでも平和外交に努めるんだというぐらいの演説をばあんとぶっていただければ、これはわかりやすかった。何をしに行くのかなんて、よくわからなかった。

 それで、その際に、今、インテリジェンスの部分で、大変な情報も集まる、即断即決もできるようになる、まさにいい答弁をいただきました。だとすれば、一昨日の例のファルージャの、戦闘地域か非戦闘地域か大臣は言われておられましたが、そのときの大臣の理解での定義づけによると、これは、国または国に準ずる組織が相手の場合は戦闘地域のメルクマールになると言われていますが、ここでイラク特措法の解釈を言うつもりはありません。

 外務大臣町村信孝として、常任理事国入りするということは物すごいことですよ、その日本の国民を背負って出られる大臣が、戦闘行為というのはどういう理解をなさっているんですか。一般論です。何をもってそれは戦闘行為なんでしょうか。待ったなしで判断しなきゃいけないんですよ、二十四時間体制で。僕は、大臣の戦闘行為に対する見解を問いたいと思います。

 ちなみに、広辞苑によると、兵器を用いて敵を倒そうとする行為、これはどう考えてももう戦闘行為に入っていると私は思います。

町村国務大臣 法律論とは別にしてとおっしゃったので、それは、ファルージャであれだけの激しい掃討作戦が行われているという意味ではそうだろうと思います。

 ただ、そのことと、ちょっと誤解を招くようなことを私が不正確に言った点を先般委員会でも実は御答弁申し上げたわけでございますけれども、私どものイラク特措法で言うところの戦闘地域、非戦闘地域という定義は、何もイラクの国全体を色分けするために用いているわけではなくて、非戦闘地域と認定したところに自衛隊を派遣しているという意味で、サマワは非戦闘地域という判断をしているだけでありまして、ファルージャがどうだこうだということを進んで判断する必要がそもそもなかったということでございます。

古本委員 ということは、国連安保理の常任理事国入りをした暁には、大臣は、日米関係を一方で重視しながら、日米同盟を重視しながら、日米同盟の方を重視しながら、国連の常任理事国として本当に平和外交をやっていただけるんですか。決意を聞きたいです。やれるかどうかです。

町村国務大臣 一般論で言うならば委員のおっしゃるとおりでありまして、私どもとしては、世界の平和を実現するために国連というものがいろいろな活動をする、そのためにいろいろな決議をする、そういう際に、いかにして平和を実現するのか。しかし、一時的には、国連も武力行使を容認する場合だってそれはあるわけですよね。だから、平和を実現するために、ある意味では矛盾かもしれないけれども、武力行使をすることがあるんだということ。

 それは、国連でオーソライズするケースと、あるいはそれぞれの国が持っている自衛権という形で行く場合が両方あるわけでありますけれども、国連も折に触れて究極的な平和を実現するために武力行使を容認するということもあるんだということでありまして、ややもすると、唯一の被爆国で平和国家日本ということは、一切のそういう武力行使に関することについてはすべて反対をするのが、それが平和国家日本のあるべき姿だという御議論もあるのでありますが、私はそうは考えていないということだけはあえて申し上げさせていただきます。

古本委員 現存する五つの常任理事国の中で中国が一体今何を考えているかわからない状況の中で、常任理事国入りできるんですか。

町村国務大臣 ちょっと御質問の意味が必ずしもよくわからないのでありますけれども、それは、それぞれの国はそれぞれの考えがあるわけですけれども、そういった考えをもとにして、安保理なら安保理という場でいろいろ議論が行われて一つの結論が出るということですから、最初からすべての国が同じ意見なんということは、それはもともとあり得ないわけでありまして、中国は中国のお考えがいろいろなケースにおいてある。だから、安保理が一致する場合、しない場合、いろいろなんだろうと私は思います。

赤松委員長 質疑者に申し上げますが、既に質問時間を超えておりますので、簡潔にお願いをします。

 古本伸一郎君。

古本委員 ありがとうございます。

 きょうは、大臣の国際協調路線と日米同盟重視路線が両立できるんだという決意を伺いました。本当に両方実現できるのなら、僕はどっちかを重視すべきだと思っているということを最後に申し述べながら、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

赤松委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

赤松委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一でございます。

 午前に引き続き、質疑が午後からということで、質問に立たせていただきます。

 午前中も、中国外交あるいは国連安保理等、大変中身の濃い質疑が外務委員会で展開されていると私は考えます。これから、米軍再編成あるいは武器輸出三原則見直し等々、午前中の同僚委員も指摘したように、外交案件山積というこの外務委員会の課せられた使命は大変重いものがあるというふうに考える次第でございます。

 私も、米軍再編や武器輸出三原則等、議論を外務大臣と行いたいんですが、外交案件が山積でございまして、きょうはこれまでのまだまだ外務大臣と質疑をできていない米軍ヘリについて、そしてまた今回のいわゆる中国原子力潜水艦とおぼしき、これは不審船とも言われておりますが、案件について質疑をさせていただきたいと思います。

 まず、警察庁お見えでございますが、既に沖縄県警は、米軍への検証嘱託の実現が困難との見方を強め、米軍が提出しましたあの分厚い英文の事故報告書をもって立証するとの報道がありますが、この点について事実確認をさせていただきたいと思います。

岡田政府参考人 報道については見ておりますけれども、警察といたしましては、機体の検証の嘱託を初めとして、関係者の事情聴取等について米側に現在協力を要請しているところであります。

 今後とも、警察といたしまして、事故報告書の内容も当然参考といたしながら、外務当局と連絡をとり、引き続き米側に対して捜査協力を求めるなどして捜査を続けていくというつもりでございます。

武正委員 これは十月二十七日の、ちょうどあの香田さんが拉致、誘拐をされたときの外務委員会での質疑の続きでございますが、あのときにも御質問した三名の整備士の氏名、ちょっとこれは質問通告にありませんが、あのとき何度かやりとりさせていただいて、まだわかりませんという警察のお答えでしたが、再度この点御質問させていただきますが、確認はできましたでしょうか。

岡田政府参考人 現時点におきましては、その人たちの固有名詞については確認をいたしておりません。

武正委員 いたしておりませんなのか、できておりませんなのか、どちらでしょうか。

岡田政府参考人 失礼しました。

 協力をお願いしていますが、まだ回答はございませんので、できておりません。

武正委員 沖縄県警がそうした、このままずるずると立証ができないまま事態の推移を待つことなく、やむを得ず事故報告書のみをもって立証にという報道が出ているのは、私は甚だ遺憾であるというふうに思っております。

 やはりこれは、民主党がこの間求めてまいりました原因究明の徹底と再発防止、そしてまた抜本的な再発防止策、そしてまた日米合同調査の必要性、さらにまた第一次裁判権について、刑事裁判管轄権分科委員会も開かれずに今日に至っている。

 こういったことへの政府としての取り組み、これが甚だ不十分であるということで、これは十月二十七日、墜落した在沖米軍ヘリ同型機の飛行再開に対する抗議を民主党、仙谷政調会長名で出しているところでございますが、日米合同委員会も、事故分科委員会、十月の初旬に二回開いて以来開いておられないようですが、次回はいつ行われるのでしょうか。これは、日米行動委員会ということもありますので、外務大臣。

 あわせて、私ども民主党では、日米での合同検証、合同調査の必要性をずっと求めてきているんですが、これも相変わらず行われていない。こういったことも行われるんでしょうか。お答えいただけますでしょうか。

町村国務大臣 事故分科委員会は、委員今御指摘あったとおり、八月から、十月二回、計三回会合を開かれております。次回会合の日程については、今鋭意調整中でございますが、現時点ではまだ決まっておりません。

 今後、事故分科委員会では、アメリカ側が提出をいたしました事故調査報告書とそれに基づくアメリカ側の説明を踏まえて、日米合同委員会の勧告について検討を進めていくこととなるわけであります。

 こうした検討の中で、御指摘の今合同検証という御提案がございましたが、ちょっとこの合同検証という意味がどういう形のものをおっしゃっておられるのか、必ずしもよくわからないのでありますけれども、必要に応じまして日米の専門家等によります技術的な作業が引き続き行われるものであろう、こう承知をしております。

 なお、警察の捜査については、これは警察庁の方から詳しくはお答えがあるんだろうと思いますけれども、米軍の財産であります墜落機体に関する検証について、米側の同意が得られなかったため現在嘱託の手続がとられているものと承知をしておりまして、外務省といたしましても、警察当局と連絡をとりながら、警察当局が十分な捜査協力を得られるようにアメリカ側と調整をしていきたいと考えております。

武正委員 先ほどの沖縄県警の記事では、やむを得ず沖縄県警は、民間の航空事故関係の専門家、こういった人たちの協力を得て立証しようとしております。

 今大臣言われた専門家というのは、今回の、この間、大臣御不在の委員会で御指摘しましたように、省庁の専門家である、民間の方は一人も入っていない。こういったことも含めて、昭和五十二年、横浜でのファントム機墜落事故のときのように、米軍基地に行って、合同で、民間の専門家も交えて合同検証が必要だということを、事故当初から民主党は求めてきたのでございます。

 こうしたことも取り組まれないまま、十月十二日、外務大臣を含めた関係大臣等会議で、事故原因を整備不良とし、点検方法改善、賠償請求にこたえることなどが勧告された米軍調査報告書をもって飛行再開を容認した。この中に外務大臣はおられたわけですが、本当に原因究明、再発防止はこれで十分なんでしょうか。大臣、どうお考えでしょうか。お答えいただきたいと思います。

町村国務大臣 先ほど申し上げましたように、調査報告書を踏まえまして、日本側の専門家が普天間飛行場を訪問するということ、それから事故分科委員会において検証も行いました。

 こういう形で、事故原因、これは発生事故原因というのは三つ挙げられているわけでありまして、整備要員が実施されるべき整備の内容に混乱をし、また事故機のフライトコントロールの接続について決められた手順を守らなかったことから、コッターピンをテールローターサーバーの接続ボルトに正しく装着していなかったためである。そのため、接続ボルトが飛行中に外れ落ち、テールローターの制御が不能になった。そのような中で、テールローターの羽根が垂直尾翼に当たり、続いて垂直尾翼が損傷してテールローターが事故機から外れた。

 こういう原因の分析があるわけでございまして、これと再発防止策、四点挙げられておりますが、これらについて十分説明を聴取できたというふうに考えまして、私どもとしては、三閣僚集まりましてゴーサインを出したということであります。

 今後につきましては、先ほど申し上げましたような事故調査報告書とそれに基づくアメリカ側の説明を踏まえまして、日米合同委員会への勧告について分科委員会でさらに検討を進めていくところでありまして、再発防止策についてもさらに引き続きこの場で検討されていくということにしております。

武正委員 私は、原因究明も不十分でありますし、それに基づいた再発防止策ですから、絵にかいたもちの再発防止策であって、とてもこれで日本政府が容認してはならないということを改めて指摘させていただきます。

 ただ、百歩譲って、事故報告書が出てきているから、これをもっていろんな検討を加えようというのであれば、あるいは沖縄県警もこれをもって立証に資するというのであれば、ましてこの外務委員会、きのうも安保委員会で指摘があったように、あの大部な事故報告書を英文でそれぞれ皆さん読みなさいというのは私はなかなか難しいんじゃないかと思うんですが、外務省、どうでしょうか。英文和訳を国会の方あるいは関係機関に提出するお考えはありませんか。外務大臣、いかがでしょうか。

町村国務大臣 本文約二十ページ、資料を合わせると二百十ページという大部なものでございます。今和訳作業をしておりまして、作業が終わり次第国会の先生方を初め関係する方々には提供させていただこうと思っております。

武正委員 いつまででございましょうか。もう臨時国会も、政府・与党によると十二月三日という期限が決められておりますが。

町村国務大臣 鋭意作業中でございます。

武正委員 私は、この臨時国会中に御提出をお願いしたいと重ねてお願いしたいと思います。

 さて、日朝実務者協議、ちょうど今開催、きょうはどうなんでしょうか、開催がされておりますが、いわゆる脱北者が持ち帰った、同一人物とおぼしき特定失踪者、藤田進さん、加瀬さんなど、こうした特定失踪者問題は今回の日朝実務者協議で取り上げられているのかどうか。これも外務大臣、お答えいただきたいと思います。

町村国務大臣 委員御指摘の藤田さん、加瀬さん、このお二方につきましては、今回の協議でも取り上げるということで事前の準備をしてまいっております。具体のやりとりが今どう行われているかということにつきましては、我が方に対して、出張している皆さん方から具体の報告はまだ来ておりませんけれども、当然、協議の中でこのお二人につきましてしかるべく取り上げるということになっております。

武正委員 さて、外務大臣は、十一月十五日から二十五日、チリ、エジプト。APECそしてイラクに関するG8及び周辺国による国際会議出席のため海外出張。そして、二十六日から二十九日はラオス、日本・ASEAN外相会議等意見交換のためということでの出張をされるわけでありますが、これは都合、まあ二十五日、二十六日、帰国はされますが、これをずっと十一月十五日からならしますと、二十九日まで二週間の海外への出張をされる御予定でございます。

 今の日朝実務者協議についても、交渉当事者が戻ってこないと詳細もわかりませんし、その報告を聞きながら外務大臣にさまざま拉致問題解決の質疑も行いたい。これは、当然この外務委員会メンバー皆さんの共通の思いだというふうに思うんですね。

 また、午前中も、自衛隊の派遣期限が切れる、ちょうど一カ月でありますので、しっかり議論をしなきゃいけない、これも同僚委員からも指摘をされています。また、首相からも、この十二月十四日ぎりぎりまでさまざまな情報収集しながら、外務大臣も午前中おっしゃいました、この派遣延長の是非を決定したいんだということをお聞きするにつけて、これから二週間、そしてまた香田さんの事件、あるいは今回の潜水艦事件、本当に一日一日何が起きるかわからない。そしてまた、外交案件山積。

 こういった時期に二週間も国会をあけるということは、私は甚だ外務大臣としていかがなものかというふうに考えますが、外務大臣、この点どうお考えでしょうか。

町村国務大臣 今委員御指摘のようなAPECの閣僚会議、それからイラクに関するG8及び近隣諸国の国際会議、この二つが大きな会議としてございます。さらには、一たん帰国した後、日・ASEAN外相会議がございます。こういうことで、今回、衆参のそれぞれの御承認をいただきまして、ASEANの方はまだでございますが、前二者の国際会議の方にはお許しをいただいて出席するということにさせていただきました。御配慮に感謝をしているところでございます。

 こうした国際会議、それぞれどういう意味があるのかということは、武正先生に私が一々申し上げるまでもないことでございます。

 確かに、国内に今御指摘のようないろいろな課題もございます。それに関連する国会の審議の重要性も、私もよく認識をしているつもりであります。しかし同時に、こうした国際会議でいろいろな意見交換をし、情報を収集して、それをまた国内のいろいろな対策に生かしていくということも、またこれは大切なことではないだろうかと思っております。

 ここから先は私の一議員としての感想でございますけれども、今般というか、もう森内閣のときに、大臣、副大臣そして大臣政務官という制度をつくった折の与野党の皆さん方の相当程度広範な御理解があったのは、特に御党の小沢先生あたりが、大臣不在のときは副大臣が国会に当たる。

 いろいろな面で大臣を補佐する副大臣がいろいろな国会答弁を含めて積極的な役割を果たすということで、従前の政務次官よりはより重い形で副大臣制度というものをつくり、大臣不在の折のかわりをどんどんやってもらうというようなことを、たしかそういう幅広い、別に明文規定がありませんが、そういう幅広い御理解のもとで副大臣制度というものができたはずでありまして、こういう折にこそ、ぜひ先生方の御理解をいただいて、大臣にかわっての副大臣の役割というものを果たせるようにしていただきたい。

 ちなみに、私、今衆参合わせて九つの委員会に出席をいたしまして、それこそ月曜日の午前中から金曜日の夕方まで、もうほとんど国会の中におります。そういうことを言うとちょっと僣越かもしれませんが、ほかのどの大臣よりも私がこの議会の中にいる時間が長いのではなかろうかとさえ思っておるほど、逆に言いますと、省内に戻っていろんな重要な方針を議論する時間が本当にとれないのが、率直に言って私の今大変な悩みでございまして、何とかそういう時間をとりたい、しかし海外にも行かなきゃならない。

 それらを両立させるために、深夜まで働く。まあ、別に深夜まで働くことが嫌ではございませんけれども、本当にこの時間のなさというのを今つくづく感じているところでございまして、ぜひその辺、武正先生からも御理解を賜れれば幸いだと思います。

武正委員 今例に出された点はいわゆる自自合意でありまして、私は、昨年の通常国会以来、ずっと政治家のみの御答弁ということを一貫してお願いしておりますのも、それにのっとったところでございますが、これは外務大臣経験者のお話ですが、外務大臣と副大臣との情報量は雲泥の差があるというようなこともありまして、それだけの委員会で求められる、それぐらいやはり外務大臣の職責は重いものがあるということでございます。

 私はやはり、もし海外に出なければならないのであれば、今のお話であれば、外務副大臣もお二人、政務官もお三方いらっしゃいますので、そういった方々に、そしてまた補佐官もこのたびは前外務大臣も含めていらっしゃるわけですので、たしかアラファト議長の御弔問にも前外務大臣が行かれるということも聞いておりますので、私は、やはり再度御再考いただいて、このイラク自衛隊派遣の大事な時期、外務大臣にはこの外遊をいま一度考え直していただきたいことを申し述べたいと思います。これは私の意見でございますので、よろしくお願いいたします。

 続いて……

町村国務大臣 今、ちょっとお許しをいただきまして、一言だけ、恐縮ですが言わせていただきます。

 副大臣にも大臣政務官にも随分いろいろな国際会議に出席をしてもらっておりますし、これからもまた出席をしてもらおう、こう思っております。ただ、いろいろな会議というのは、先生よく御承知のとおり、やはり、この会議には各国大体外務大臣が並んで座るんだよというようなものというのがあるんですね。

 そこはもうよく御理解をいただけると思いますので、そういう意味からも、私は、何も国会を軽視しようとかそういう意図は全くございません、最大限私は国会での御議論を大切にしながらお答えをしたい、こう思っておりますが、やはり、折に触れてここはやはり大臣が行かなければならないという性質のものもあるということはぜひ御理解をいただきたい。

 また、大臣と副大臣、情報量の差がある、確かにそれは若干のギャップはありますけれども、しかし昨今は重要な省内の会議等々にも副大臣あるいは大臣政務官も担当を決めたりしてどんどん加わってもらっておりますので、そういう意味で、随分副大臣、大臣政務官のそういう意味の外交に関するいろいろな情報は相当程度持ち合わせている、かように私は思っております。特に、逢沢副大臣は前回に引き続き今回も留任をしてこの重責に当たっていただいておりますので、どうぞそういう意味で御理解を賜ればと思います。

武正委員 情報量の差に加えて、いわゆる権限ですね、これはもう格段の差があるというふうに私は理解しておりますので、やはりその権限を持った省内のトップである外務大臣がお座りいただく、このことの持つ意味というのは格段に差があるということをあえて指摘させていただきます。あわせて、この臨時国会五十三日間の会期のほぼ四分の一の十四日間を外遊する、このことがやはり大きな意味があるということを重ねて指摘させていただきます。

 さて、今回の潜水艦事件の案件に移らせていただきますが、危機管理監は首相、官房長官に何時に連絡をされたんでしょうか。官房副長官、お見えでございます。

杉浦内閣官房副長官 事案の主要な経過を申し上げた方がよろしいと思います。(武正委員「いや、何時ということだけでお願いいたします」と呼ぶ)はい。

 六時五十分に事案発生を受けまして官邸連絡室が設置されまして、ここが情報の収集、事実確認に当たり、また防衛庁の発動をする際の閣議決定要件を満たすかどうか等の検討を行い、とり得る措置の検討等を行ったわけであります。七時ごろ内閣官房長官に報告がございました。

 そして、八時十分ごろ、総理承認に向けまして、順を追っての所要の説明、検討等が行われたわけでございます。八時半ごろ総理に報告が上がりまして、承認を受け、八時四十五分、海上警備行動が発令されたわけでございます。事実関係公表要領等について慎重に検討、調整をいたしまして、外には漏れなかったわけですが、十一時二十分に官房長官が会見で公表したという流れでございます。

武正委員 今、首相に八時二十分ということでよろしいんでしょうか。首相は八時ごろという報道がありますが。

杉浦内閣官房副長官 総理に報告が上がったのは八時半ごろでございます。承認が直ちに行われたと聞いております。

武正委員 きょう、お手元に、平成十五年十一月二十一日閣議決定等、資料を用意させていただきました。

 一ページ目の一番(三)「内閣危機管理監は、緊急事態に関する情報を掌握し内閣総理大臣及び内閣官房長官へ報告するとともに、必要な指示を受ける。」そして、三ページ目以降がこの実施細目でありますが、その四ページ目、二の(五)「内閣危機管理監は、緊急参集チームの協議の結果を速やかに内閣総理大臣及び内閣官房長官へ報告し、必要な指示を受ける。」

 お手元にその全体の流れ図のフローチャート、一番後ろから二枚目、これも内閣官房作成のものでございますが、ど真ん中に内閣危機管理監ほか三名がいらっしゃいまして、まず内閣情報集約センターから速報が内閣総理大臣、官房長官、官房副長官に届く。一方、今言われたような報告、指示が危機管理監から行われるということでございますが、この速報というものも、今言われた官房長官七時、そして首相は八時半ということでよろしいんでしょうか。

杉浦内閣官房副長官 速報の第一報がいつかちょっと調べてまいりませんでしたが、八時半に総理に上がったのは、事態の詳細な判明した事実関係、それに対してとるべき措置等の概要が上がったということでございます。

武正委員 速報は何時に入ったのでしょうか。きょうは政府委員の方も控えておられて、危機管理審議官の方もお見えでございますので、お答えいただけますか。

堀内政府参考人 お答えをいたします。

 総理及び官房長官に対しましては、秘書官を経由いたしまして、総理につきましては八時半ころ、官房長官につきましては七時ごろ、それぞれ報告をされているところでございます。

 一方、危機管理監を長とする官邸対策室による状況報告につきましては、総理に対しまして十一時ころ、官房長官に対して十時半ころ、それぞれなされているところではございます。

武正委員 八時半に首相に第一報が行くというのは大変驚きですね。また、報道の首相の八時ごろというのも、ちょっとこれは違ってきたわけでありまして、私は大変、今回の案件について、その初動のおくれというもの、政府の対応に問題はなかったというところは、甚だ問題があるということはここでまず指摘をさせていただきます。

 外務大臣、官房副長官、それぞれ何時にどちらから御連絡があったんでしょうか。

町村国務大臣 私には、当日の朝七時ごろ、秘書官の方から第一報を受けております。

杉浦内閣官房副長官 私は、出勤したのが九時ちょっと前だと思いますが、宿舎から。官邸に着いたところで秘書官から報告がありました。(武正委員「ちょっと聞こえなかった、何時でございますか」と呼ぶ)九時ちょっと前だと思います。

武正委員 官房副長官は九時に御存じになったということですね。

 さて、この九ページの(八)に書いてありますように、今回のこの案件、緊急事態の一つ「外国軍用機・艦船による我が国の領空・領海の侵犯及び我が国領土内への強行着陸等」ということでありますので、領海侵犯ということですので、一回で対策室を設けることもできたのがこの細目等でわかるところでございますが、六時五十分に官邸連絡室が設置されて、一時間二十分も官邸対策室への格上げがおくれたわけです。八時十分になりました。

 もう七時三十五分には領海外に行ってしまったという話ももう報道が出ております。八時四十五分に海上警備行動を発令したときはもう領海外、だから浮上も退避要求もできないありさまでありますが、何でこんな一時間二十分もかかったのか。これは官房副長官、どうでしょうか。官房副長官、お願いいたします。

杉浦内閣官房副長官 御指摘のとおり、六時五十分に官邸連絡室が設置されまして、事態の把握と関係省庁との綿密な連携の確保を集中的に行ってまいったところでございます。

 八時十分の時点で、具体的にどう対応するかということを前提として、必要な省庁間調整を開始することとしたために官邸対策室に格上げをいたした次第でございまして、総理に上げる、承認を求めるだけ情報収集をし、綿密な連絡をするのに時間がかかったということでございます。

武正委員 ちょっと時間がないので質問を飛ばしますが、尖閣諸島のときも連絡室さえつくられなかった。そして、今回も連絡室と対策室の間、一時間二十分。ともすると、外交案件について非常にその対応が遅い。今のこのお手元の資料を見ても、危機管理監がその判断、意思決定を持っているこの連絡室、対策室の設営。私は、ここに内閣官房長官、官房副長官、政治家がその決定に入るべきだというふうに思いますが、官房副長官、どうでしょうか。

杉浦内閣官房副長官 先生の御意見、もっともでございますが、チャートを見ていただければわかりますけれども、事態が発生した際に、官邸のポリティカルアポインティーにも速報が行く、危機管理監がいろいろ検討していく、そこに報告があって指示がある、ある場合もあるというふうに書いてございます。

 現実に、この間の新潟中越大地震の際には、総理に一報が行って、総理の指示で、対策室をすぐつくれという指示があって対策室が立ち上がったという経緯もございまして、いろいろな規則上の、そういう対策室等の立ち上げる権限は危機管理監にございますが、総理、官房長官、副長官との間の連絡等によって指示が行われることもあり得るということでございます。

武正委員 その首相に八時半、官房副長官に九時、これは一体どうなっているんでしょうかね。私は、やはりその最初の段階で危機管理監の判断に政治家が絡むべきと、これは改めて指摘をさせていただきます。

 最後でございますが、私は、こうした外交案件がこうした初動で非常におくれるのは、やはり外交的配慮がこの官邸で働くからだということを改めて指摘をさせていただきます。今回、いわゆる外交の配慮が今回のこの初動のおくれ、領海外での海上警備行動発令にあったのではないかと思いますが、外務大臣、いかがでしょうか。

町村国務大臣 全く今の御指摘は当たりません。

 海上警備行動等、こうしたものについて外務省が作動をおくらせたのではないかとおぼしきような一部報道がありましたが、まことに失礼千万な報道でありまして、私どもは一切そういうことはやっておりません。

武正委員 もう時間もありませんので、最後に指摘をさせていただきます。

 だからこそ、私は、政治家がその決定に絡んで、その責任の所在を明らかにすべきと。ですから、官房長官、官房副長官が危機管理監にあずかって判断をすべき、あらぬ疑いを受けないためにも必要だと思います。

 最後に、十一月九日、中国、章副報道官の指摘。いわゆるAPECでの日中首脳会談、その実現の前提は日本側が会議実現に向け良好な雰囲気、条件をつくり出すことを期待する、この指摘があったことをさせていただいて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

赤松委員長 次に、松原仁君。

松原委員 民主党の松原仁であります。

 既に今武正委員からも質問がありましたが、今回のこの潜水艦、不審潜水艦ということでありますが、このことでお伺いをいたしたいと思います。

 まず、初動のおくれ云々ということが議論をされておりますが、日本の領海を四十キロメートルにわたり、一時間四十五分に及んでこの潜水艦が悠々と日本の領海内を侵犯したということに関して、外務大臣はどのような御所見をお持ちか、お伺いいたします。

町村国務大臣 まことに遺憾なことでありまして、いずれの、そう遠くないうちにと思いますけれども、国籍が判明次第、これは厳重に抗議をし、謝罪を求め、さらには再発防止また事故の原因究明といったようなものを求めていきたいと考えております。

松原委員 今大臣まことに遺憾であるというふうなお話であります。

 その遺憾の中身をちょっとお伺いしたいわけでありますが、日本の領海を侵犯した潜水艦、その潜水艦の所属する国に対してはもちろん極めて怒りを禁じ得ないわけでありますが、これに対する日本政府の対応については、今大臣がおっしゃった遺憾という部分はありますでしょうか。

町村国務大臣 ちょっとよく聞き取れなかったんですが、これまでの政府のもろもろの作業がどこかまずい点があったかどうかということですか。

 これは、すべてのことが終結をした後、また検証すべき部分はあるのかもしれませんが、今まだオペレーションの最中でございますから、どこが適切であったか不適切であったかということについて冷静に分析をする段階では、今はまだ早いんじゃないのかなと思います。

 いずれきっちりと、これはこれで一つの、海上警備命令が出たのは今回が多分初めてだと私は記憶をしておりますので、そういう意味で、今回の貴重な経験は貴重な経験として、私は……(発言する者あり)二回目ですか、潜水艦で二回目。いや、最初ですね、たしか。失礼いたしました。潜水艦で初めてということでありますが、いずれにしましても、きちんと検証すべきは検証していきたいと思います。

松原委員 このいわゆる海上警備行動の発令が領海の外に出てということであるのは全くもってお話にならないということは大臣も率直に、これはオペレーション中であるということでありますが、終わった後はきちっとこのことについて検証し、そして私は今回のこれは極めて問題だと思うんですよ。それに対して、検証するだけではなくて、その責任についても、今遺憾であると大臣はおっしゃったわけですから、そのことを明らかにするということをおっしゃっていただきたいと思います。

町村国務大臣 遺憾であると申し上げたのは、潜水艦の行為について遺憾であると申し上げたのであって、政府部内の手続が遺憾であると申し上げたわけではごさいません。

 政府内の手続に不適切な点があったかどうかは、きちんと事後に冷静に検証していきたいと申し上げました。

松原委員 外交はどういうふうな考え方で臨むかということはありますが、私はやはり最悪の場合を想定するということは外交の基本的な考えとして持つべきだと思います。これについての大臣の御所見をお伺いいたします。

町村国務大臣 常にいろいろなケースを想定してやはりやっていかなきゃならない。その際に、最善のケースもあるだろうし、最悪のケースもあるだろうし、それはいろいろなケーススタディーをやって外交に当たっていくというのは当然の御指摘だろうと思います。

松原委員 最良のケースだったらそれは非常にラッキーなわけでありますが、最悪の場合を想定することは、日本の国の、当たり前でありますが、国民の生命財産、国を守るという観点からこれは極めて重要だということを大臣はおっしゃったんだと思うんです。

 今回の潜水艦が、この辺はどこまでその情報を持っておられるのかわからないんですが、原子力潜水艦であったり、または核兵器を持っていた可能性というものについてはどうなのか、お伺いいたしたいと思います。

町村国務大臣 今、事案の事柄、事案の内容に関してのお尋ねでございますから、その点については、現段階で細部にわたってのお話については時期尚早ではないかな、こう思います。

 また、これは時期がたっても、我が方の探知能力等々に関しての情報を相手に提供するというような問題にもなってしまいますので、その点はひとつ御理解をいただきたいと思います。

松原委員 であるならば、当然、その国籍も不明というふうな今公式のお話が続いている中で、そういった核兵器を持っていなかったということを示す、もしくは核兵器があったということを排除することができないとするならば、私は最悪のことを想定した場合、結果として今日本の領海から外へ出たわけでありますが、かの原子力潜水艦もしくはこの潜水艦が核を持っていて、そして、あしき、悪意を持って行動した場合に、それは大変に安全保障上大きな問題点となった可能性は私はあると思うんですよ。

 そういったことを考えたらば、今回のこの対応というのは極めて対応自体に遺憾な部分があると私は思っているわけでありまして、この部分をどうお考えか。もう一回、原子力潜水艦のそれは可能性は排除できないと思うんです。これに関しては、まあ、それは情報は出せない、わかってはいても出せない、こういう話でありますが、これは一国の国民の生命財産から考えるとゆゆしき一大事でありますが、これについて、外務大臣として御所見を一言お願いいたします。

町村国務大臣 貴重な御指摘として受けとめさせていただきます。

松原委員 貴重な御指摘として受けとめる、こういう話でありますが、私は事は極めて重要だと思っております。

 そもそも、日本の同盟国というアメリカにしても、こういう原子力潜水艦もしくは潜水艦がその地域にあるときに、例えば米空母の出動がそれによって阻害される可能性があると、ある軍事アナリストは言っているわけであります。つまり、かつて台湾に対していわゆるミサイルを発射されたときに、このアメリカの空母が行ってそして鎮静化した、そういったことはあくまでもそこに敵性の強い潜水艦が潜んでいる場合にはなかなかできないということをそのアナリストは言っているわけであります。

 そうすると、これに関して、日本が相手の国名も明らかにしない、抗議もはっきりできない、領海侵犯が終わってからいわゆる行動に出る、これではアメリカといえども日本に対してどこまで本気で日米安保の中でやるかという議論にも私はなりかねない。

 やはり、隗より始めよということでありますから、この問題については、これは終わってしまったことということではなく、きちんと検証して、今の対応のおくれに対して、このままの状況が次あったときにいいということにならないと思うので、これについてはきちんと検証するということをこの場ではっきりおっしゃっていただきたい。

町村国務大臣 委員の御指摘、先般来から、ごもっともである、こう思っておりますので、きちんとこれは事後の検証をやるというのは当然の政府の務めであると私も考えております。やります。

松原委員 次に、北朝鮮の拉致問題についてお伺いしたいと思います。

 この拉致の問題については、小泉総理が五月に北朝鮮・平壌に行った折に、日朝平壌宣言に違反しない限りにおいては経済制裁をしない、こういうふうな発言をしたわけであります。

 町村大臣は、かつて、大臣就任後、拉致被害者家族会の皆さんとの対面の折にも、経済制裁というのはやはり一つのそれは伝家の宝刀で、場合によったらそれを使うんだ、こういうふうな御発言があったわけでありますが、この思いは、もう少しこの場でおっしゃっていただきたいと思います。

町村国務大臣 拉致被害者の方々と初めて大臣としてお目にかかったとき、これらの方々の長い間の御苦労、またお気持ちを考えたときに、やはり政府としては本当に最大限の努力をしなければいけないという思いを改めて強くしたわけでございます。

 そういう中で、私は、就任以来、何かすぐにでも経済制裁をやるかのごとき印象を与えたかもしれませんが、これは別に経済制裁が目的ではございません。これはあくまでも正しい合理的な回答を先方から引き出すための、使うことがあるかもしれない手段であるということを言ってきたつもりでありますし、その思いは今でも変わっておりません。

 そういうことを相手側にメッセージとして伝えることによって、今回の、今行われている協議がしかるべき成果を上げられればいい、こう思って心から期待をしているわけでございまして、まだ現在交渉中でございますから、どのような答えが示されているのか、私もまだ承知をしておりませんけれども。

 いずれにいたしましても、私は小泉総理が平壌宣言に違反しない限りと言うのは、要するに先方からきちんとした答えを引き出したいという強い思いのあらわれを総理なりの表現の仕方をした、私は私なりの表現の仕方をしたということで、私は別に、総理と私自身の考えが著しく違っているという印象は率直に言って持っていないわけであります。

松原委員 日朝平壌宣言に違反をしない限りにおいて経済制裁をしないというふうに総理はおっしゃったわけでありますが、この今の日本と北朝鮮の関係において、外務大臣としては、日朝平壌宣言は守られているという認識をお持ちかどうか、お伺いいたします。

町村国務大臣 私は、何をもって守られているかいないかというのは、厳密な話というのはなかなか難しい部分があるだろうと。

 要するに、だれの目にも明らかなのは、仮にもしテポドン等が飛べばこれはもう違反だということが大変明らかなのかもしれませんが、要は、この日朝平壌宣言の趣旨にのっとって諸問題を解決していくということがこの精神であろうかと思いますので、その精神に照らして北朝鮮側がきちんと対応をしていくべきであるということを求めているわけでありまして、しかしだからといって私どもはいろいろな問題を不問にするというつもりは全くないわけでございます。要は、北朝鮮に対して諸懸案の解決を強く促していくということが大事なんだろう、こう思っております。

松原委員 北朝鮮がIAEAから離脱をするというふうなこともありましたし、また使用済み核燃料を封印して運び出しをするということもあったわけであります。

 明快に日朝平壌宣言違反というのは何かというのは議論があろうかと思いますが、明らかにこういう行動というのは日朝平壌宣言に違反する可能性が高いと思っておりますが、こういったものは、大臣としては違反をしていない、こういう認識でいるのかどうか、お伺いいたします。

町村国務大臣 例えば、核問題についての日朝平壌宣言の言及があるわけでございますけれども、「双方は、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。」と。ここで言う国際的合意というのは、NPT、核拡散防止条約あるいは南北非核化共同宣言、米朝間の合意された枠組みなどが含まれている、こういうことであります。

 例えば、北朝鮮がIAEAの査察官を国外に退去させたり、関連施設の封印を解除した行為、八千本の使用済み核燃料を再処理した行為、これはただし未確認ではありますが、こういったことは米朝の枠組み合意に違反するものであり、またウラン濃縮を行っているということは南北非核化宣言に違反するということが言えるわけであります。

 ありますけれども、要は、一つ一つの行為を列挙して、これが違反しているかしていないかということを検証することよりは、とにかく懸案を解決して前向きに問題を解決していくんだということが大切であり、そうした前向きな対応を北朝鮮に促していくことが大切なんだろう、このように考えているわけであります。

松原委員 今の大臣の御答弁をお伺いしますと、まあ、そういう今大臣御自身が列挙した幾つかの点を考えると、日朝平壌宣言、細かく言うと違反しているかもしれないが、全体の前進を図ることが大事だ、こういう発言なわけですが、それならば、この日朝平壌宣言に違反したときに初めて経済制裁を発動すると総理が言った、その違反というのはどういう状況が違反なのか、おっしゃっていただきたいと思います。

町村国務大臣 小泉総理は確かに日朝平壌宣言には履行されていない部分があると述べておられます。では、どの部分かということでありますけれども、この宣言そのものは、諸懸案を解決し、日朝国交正常化を含め、今後日朝関係を取り進めていく上での方向性を示す重要な政治的文書であるということでありまして、この総理の発言というのは、趣旨は、こうした諸点についていまだ達せられていない部分があるという状況を踏まえての発言であろう、こう思っております。

 したがいまして、宣言違反であるかどうかという端的なお問い合わせでございますけれども、私どもとしては、これこれが違反である、違反でないということを認定するよりも、とにかく今は諸懸案の解決に、諸問題の解決に努力をし、北朝鮮側から今まさにやっている交渉の中で誠実な回答、納得し得る回答を引き出す、その一点に今全力を挙げているところでございまして、今後の対応につきましては、今回の実務者協議の結果を子細に検討、分析をした上でさらにまた考えていかなければいけない、このように考えております。

松原委員 このいわゆる経済制裁ということが我々の外交上のカードとしてあるということは、これは町村大臣も御認識を持っておられるわけであります。ただし、この経済制裁なるものがどういう形で発動するのかということ、そしてどのような状況で発動されるのかということについては、日朝平壌宣言に違反していない限りということしか、今我々の前には原則論しかないわけであります。

 しかし、日朝平壌宣言は、両国にかかわる諸問題、これを解決しようということでありますが、拉致について北朝鮮側が誠意を持って回答しないということは、当然、誠意を持って回答しないということがあるならば、それは日朝平壌宣言に違反する、こういう認識でよろしいですね。

町村国務大臣 松原委員のように鋭く詰めていくと、確かに、どこまでが誠意がある対応か誠意がない対応か、議論が難しいところかもしれません。

 しかし、今、きょう現在としては、我々としては精いっぱいの対応を彼らに求めているわけでございまして、もちろん役所としては、その前に自民党の方でも既にいろいろなシミュレーションをおやりになったと伺っておりますけれども、それは政府の中ではいろいろなケーススタディーをやることは当然のことであろうと思いますが、今またその内容を逐一、交渉のさなかに、あるいは事前にそういうことを全部お話しするというのもまた不適切なのだろうと思います。

 いずれにしても、これは、場合によれば抜くことのある伝家の宝刀だと言った以上は、どういう場合に抜くかというようなシミュレーション、いろいろなケーススタディーをやることは、それは当然のことだと思っております。

松原委員 町村大臣に対しては、多くのこの拉致の問題を何とか解決したいという人たちは、川口さんとは違う、川口さんとは違ってこういった問題に対してかなり前向きに取り組んでいただけるだろうという強い期待があるのも事実でありまして、なかなか発言できない部分もあるのかもしれませんが、やはりその期待にこたえる形でぜひとも御答弁をいただきたいというふうに思うわけであります。川口さんとは違うんだというところをやはりめり張りつけておっしゃっていただきたいわけであります。

 例えば、私は、この拉致問題でやはり一番大事なのは、今言った経済制裁というカードをどういうふうに有効に使うかということが問われるわけであって、どういう状況になったら経済制裁をするかという判断は、では、だれがどこでいつ、どう判断するんですか、今のお話だと。お伺いいたしたいと思います。

町村国務大臣 だれがと問われれば、それは政府全体、これは外務省だけの判断でもありませんし、政府全体の判断で、実際には外為法等々があるわけですから、これは関係するお役所も多いわけでございますので、政府全体の判断だと思います。

 いつというのは、今まさに交渉中でございますからそれを今申し上げるのは難しいわけでありますが、今回の先方の回答ぶりを子細に検討した上で、またその後どうするかということを考えていかなければいけない、こう考えます。

松原委員 今、ピョンヤンで協議が行われていますが、その結果によっては、子細に検討して経済制裁もあり得る、こういう御発言と認識してよろしいですか。

町村国務大臣 今この時点で、それは可能性を言えばゼロ%から一〇〇%としか言いようがございません。

松原委員 ゼロ%から一〇〇%ということは、あり得るということですよ。経済制裁は今回のピョンヤンにおけるこの流れの中で検討してあり得る、こういうふうな答弁だと私は今の大臣答弁を理解したわけであります。

 そこで、問題は、やはりどういう条件のときに経済制裁を発動するかという手続論がない。私は、今回薮中さんや齋木さんがピョンヤンに行って交渉していても、言葉は悪いけれども、丸腰で交渉に行かせるような話になってしまわないかというふうに思っておるわけであります。彼らは外交交渉で切るべきカードというのをほとんど、私は、もちろん日本が北朝鮮に対して人道支援ということで物資を出すということの議論はありますが、しかし基本的なカードを持たずに彼らが北朝鮮側と交渉せざるを得ない状況なのではないかというふうに私は思っておるわけです。

 私は、そういう意味において、どうしても、経済制裁というこの言葉が、具体的にどういうランクで、いつどのような状況で行われるかということを明らかにする必要があると思いますが、そういう手続論を詰めるということは必要あると思われませんか。

町村国務大臣 手続論と委員がおっしゃる意味がちょっと僕にはよくわかりませんが、先ほど申し上げましたように、省内ではいろいろなケーススタディーを今やっているということだけは申し上げておきたいと思います。

松原委員 なかなか、のれんに腕押しみたいな話なんですが、やはり省内でいろいろな議論をしていて、例えば時間を切って何月何日までにこの拉致問題に対して具体的に、例えばこの十人の安否不明者に関して、生存しているなら生存で本人を出すとか、もしくは、そうではないんだったら、それは大変残念でありますがその遺骨を出しなさいというふうな、白黒はっきりした議論をしていかない限り、いつまでたってもこの議論というのは終わらないわけであります。

 期限を切って、それまでにそういったことについての具体的な今言った証拠を伴ったものが出てこない限りにおいては、まず経済制裁は第一段階からいきますよ、そういう時間を切った形でもいいわけですよ。そういう手続論を省内で検討を始めているということでよろしいんですか。

町村国務大臣 今まさに交渉をやっている最中でございますから、今委員が言われたようなアプローチがあることを私はあえて否定はいたしませんけれども、そのことを今私の方から具体に申し上げることは差し控えさせていただきます。

松原委員 これはいろいろな考え方があると思うんですよ。交渉をやっている最中だから静かに見守ろうという考え方もこれあるでしょう。しかし、交渉をやっている間だからこそ、そういったことについて若干、日本国内から外交の現場にいる薮中さんや齋木さんに対して補助をする、支援をするという発言を私は外務大臣がしても構わないのではないかというふうに思っておるわけであります。

 そういった意味では、この日朝平壌宣言に違反していない限り経済制裁をしないという、前提条件の中身を詰めるという作業を今省内でもやっているようなお話でありましたが、これからやるということでおっしゃっていただきたいと思います。

町村国務大臣 それは累次申し上げているように、いろいろな可能性を考えながらいろいろなケーススタディーをやっているというふうに申し上げております。

松原委員 いろいろなことを考えながらやっているということですから、当然、この問題については、今回の日朝における議論がそれなりの成果、具体的な何か証拠が出てくるという、生きているかそうでないかということも含め、そういったことをきちっと出すような内容がない限りは、外務省としてまた内閣としても経済制裁について取りかかるというふうなことで、とにかく具体的な手続論を始めない限り、どこまでいっても議論は詰まらないと思うんですよ、これは、町村外務大臣。

 具体的な話を、具体的にどういう状況でどういう経済制裁をするかということを決めない限り、いきなり経済制裁をやりますといってもなかなかそうは進まないわけですから、私はこの部分に関してはぜひとも外務大臣にはリーダーシップをとってもらって、そして経済制裁というのが、伝家の宝刀を抜かなければそれは全く無意味でありますから、そういった意味ではきちっとこれができるようにしてもらいたいと思います。

 次にお伺いしたいわけでありますが、外務大臣は、よど号犯の引き取りに関してどのようなお考えをお持ちかということであります。これは通告しておりませんから、外務大臣がこの場でお話しをいただけるだけで結構でありますが、ヨーロッパから拉致された日本人拉致被害者は、このよど号犯が極めて関係を持っているという議論があります。これについてどのような見解をお持ちか、お伺いいたします。

町村国務大臣 よど号のハイジャック事件というのは、私も余り、若干時間がたったので正確な事件のことについては記憶に残っておりませんけれども、いずれにしても、日本で初めて発生をしました非常に悪質かつ非人道的なハイジャック事件であったということぐらいは私も覚えております。

 これらの犯人については、警察庁からICPOを通じて国際手配が実施をされているというところでありまして、日本政府はかねてより、国交正常化交渉等の場で北朝鮮側に犯人の引き渡しを求めているわけでございますけれども、北朝鮮側は、彼らは政治亡命者であって、仮に本人の意思と決心をもって帰国したいということであれば別であるけれども、そうでなければ引き渡しには応じられないというのが彼らの基本的な態度である、私はそう理解をしております。

松原委員 外務大臣としては、すべての手段を使って拉致問題の解決のために取り組んでいただきたいと思うわけであります。

 最後にもう一点お伺いしたいのは、今言った経済制裁の時系列的なものや、その手続論、具体的なそういうものがなければ、私はいきなり経済制裁するといったってどういうものなのか、品目を指定するのか、全部いきなりいくのか、はっきりしないわけであります。

 こういったことを考えたときに、従来から議論があるように、内閣の中に拉致対策のための専門スタッフをきちっと置いて、常時それを扱う部署をつくるべきだと思っております。これについては、なかなかいまだにそういった形のものが具体的にできていないわけでありまして、これに対して、これは内閣の方に部署をつくるということがどうかということもありますが、外務大臣としては、これをつくるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

町村国務大臣 たしか、中山前参与もそういったようなお考えをお持ちであるという話を聞いたことがございます。一つの考え方であると思いますし、私もそれを全面的に否定するつもりもありません。

 ただ、現状、またそういうものを組織をつくるということになると、えてしてこれはまた屋上屋ということになりがちなものですから、それよりは現在のスタッフの中できちんきちんと責任をそれぞれ持ちながら総力を挙げてやっていく方がむしろいいのではあるまいかな、こう考えております。ただ、そういう御意見があることは、私もよく理解をしております。

松原委員 屋上屋というのは既にあった場合を屋上屋というのであって、それが現状ないわけでありますから。ずっと常勤でそのことをずっと突き詰めていき、戦略を練るという部署がないわけでありますから。それは、それぞれが集まってきている部署はありますよ。しかし、そのことを常駐でやる部署はないわけでありますから、私はそういう部署をきちっとつくるように強く要望して、私の質問を終わります。

 以上です。

赤松委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 社会民主党の東門美津子です。きょうは、本来でしたら順番はかなり後なんですが、民主党さんの特別な、今野委員の御好意をいただきまして、前の方で質問させていただきます。よろしくお願いします。

 町村大臣は、八月十三日の沖縄での米軍ヘリ墜落事故について、本土の主要全国紙がどのような報道の扱いをしたか御存じでしょうか。沖縄の地元紙二紙は、数日間にわたり一面トップで取り扱いました。主要全国紙は、翌日こそ写真入りで報道しましたが、その続報はほとんどありませんでした。

 また、事故直後、稲嶺沖縄県知事が総理に事故原因徹底究明と再発防止を求めるために面会を申し入れましたが、そのときは総理は夏休み中ということでお会いできませんでした。数日後、事の重大さに気づかれた総理とやっと会談ができたというありさまでした。

 「朝まで生テレビ!」のキャスターである田原総一朗氏は、九月四日の番組冒頭で、本土は沖縄に関心がなくなったのではない、沖縄を忘れてしまっていると発言をしたというふうに報道されています。本土の沖縄に対する認識がどの程度のものであるか、こうした現実を見れば明白です。

 外相は、在沖縄米軍基地の問題は沖縄だけではなくて日本全体の問題であると発言されておられますが、現実はかくのとおりであるということです。そして、本土と沖縄ではかなりの温度差が存在しています。

 しかし、よく考えてみてください。米軍の事件、事故は、たまたま沖縄で大きな問題となりますが、それだけそこに集中しているということからなんですが、単なるローカルな問題ではないのです。九五年の少女暴行事件、二〇〇一年の女性暴行事件そして今回のヘリ墜落事故。こうした事件、事故が起こった後には、必ずや日米地位協定改定の問題、ひいては日米安保条約にまで踏み込んだ議論が巻き起こり、政府はその都度、地位協定の運用改善で言を濁さざるを得なかったのではないでしょうか。

 沖縄における米軍の事件、事故は、安保条約、地位協定に係る我が国の安全保障に直結している問題だということを御理解いただきたいのです。当然、メディアも同様の意識を持って報道していただきたいと思うのが、私たち沖縄県民の思いです。

 外相は、こうした現状を踏まえて、沖縄における米軍による事件、事故が本当に我が国の安全保障に大きくかかわる問題であると認識されておられるのかどうか、どのように国民に対してこの問題を説明し、本土と沖縄の温度差をなくしていかれるのか、忌憚のない御意見をお伺いしたいと思います。

町村国務大臣 沖縄県民の皆様方が大変な御苦労をしておられる、それは戦争のさなかの御負担に始まり、もうちょっとさかのぼると島津藩の話まで行くのかもしれませんが、いずれにしても、戦後の占領という長い時期を経て今日に至っている。

 そして、現在もなおかつ基地の七五%以上のものが沖縄にあり、それに伴って発生するいろいろな事件も確かにあるという意味で、私は、沖縄県民の皆様方に過重なる負担をしょっていただいているなという思いを大変強くしております。先般、沖縄を訪問した折も、大臣として初めての訪問でございましたが、改めてその思いを強くしたところでございます。

 確かに、委員、ほかの委員会でも累次御指摘をいただきましたけれども、あのヘリの事故、奇跡的に、右でもなく左でもなく、あれがもしもう何メートルかずれていたらば道路に、さらに十メートル以上ずれたらば海岸の建物に墜落をするということになると、想像もできないような事故になったんだろうということを考えたとき、本当に沖縄の皆様方が大変な御苦労をしているなということを改めて痛感をいたしました。

 そこで、私としては、今回の米軍の再編成の作業が今議論が始まっております。その中で、安保条約の持つ平和維持機能、抑止力というものを維持すると同時に、沖縄の負担をどのようにして軽減していくのかということを日本側としての大きなとらえるべきポイントとして、取り組む姿勢のポイントとして置いてこれからも議論をしていこう、こう思っております。

 そういう意味で、私としては、確かに今委員御指摘のように、沖縄県とそれ以外の都道府県との間に温度差がある、私もそのように率直に感じます。もっともっと沖縄県以外の方々が沖縄の皆さん方のお気持ちというものに思いをいたし、日米安保を効果的に機能させるために、それぞれの地域でそれぞれの個人がどんなことができるだろうかというようなことをやはり考えて取り組んでいく必要があるだろう。

 これはささいな一例でありますけれども、ある東京のボランティア団体が、ウエルカム・マリーン・プログラムというのを東京であるいは東京周辺でやっておりまして、中谷議員もその一員として、一緒に海兵隊の人と富士山に登ったり、あるいは東京の個人のお宅に招いたりして、彼らとよき人間関係をつくりながらというような活動もいろいろな分野でやっておられます。

 そういうことの一つ一つの積み重ねということが、私は、沖縄県以外の都道府県の方々の思いを共通にするというか、共通まではなかなか難しいかもしれないけれども、その大きな温度差を埋める努力の一環ではないだろうか、このように考えているところであります。

東門委員 ウエルカム・マリーン・プログラムというのは何年か前にたしか東京で元総理大臣橋本さんの御夫人たちが始めたようなものだと伺っていますが、果たしてああいうことで沖縄の県民の負担の軽減ができるかということは全然私には理解ができないのですが、それはそれとして次に進みます。

 普天間飛行場は住宅街のど真ん中にあって、米軍でさえ、非常に危険な飛行場で、このような場所にある基地を見たことがないと言わしめるような危険きわまりないものです。可及的速やかに移転が実現されて、普天間が全面的に返還され、住宅地上空を米軍機が飛ばなくなること、これが沖縄県民、特に基地周辺住民がこうむっている過大な負担を軽減する唯一の手段なのだと思います。辺野古沖への移設は直ちに白紙に戻す、海外を含めた沖縄以外への移設を真剣に検討すべきときだと思います。

 いみじくも、外相は普天間飛行場の返還に大変意欲を示されていると私は承知をしております。先ほども米軍再編の話をしておられました。某雑誌によりますと、外務大臣は普天間の海兵隊を北海道の陸上自衛隊矢臼別演習場に移転することを考えておられるとのことです。別海町など三町にまたがる矢臼別演習場は国内最大規模であり、防衛構想の見直しで縮小傾向の北海道の陸自施設を延命させることにもなるということで、非常に現実性のあるお考えかと思います。

 外相は、さきの参議院の委員会、これは十月二十九日の沖縄北方特別委員会ですが、そこで矢臼別への移転について、日米間でそういう話をしたことはないとおっしゃっておられますが、日米間の協議ではなく、外務大臣御自身のお考えとして、辺野古沖代替施設建設の白紙撤回、海兵隊の矢臼別への移設、普天間飛行場の即時返還についての御意見をお聞かせいただければと思います。

町村国務大臣 まず、事実関係だけ申し上げますが、私が雑誌にインタビュー等で矢臼別移転ということを発言したことはございませんので、それは明確に否定をさせていただきます。恐縮でございます。

 その上で、政府といたしましては、平成十一年の閣議決定というものがございまして、これにはなかなか委員の御同意がいただけませんけれども、辺野古沖への移転というものに今後も全力を挙げていく。さらには、その他のSACOの合意につきましてもできる限り、大分おくれぎみでございますので、これをできるだけ早く進めて沖縄県民の負担をトータルで軽減していく。さらに、再編成の議論もあるので、その中でまた負担軽減がどこまでできるか努力をしていくということを、これから鋭意努力をしてまいりたいと考えております。

東門委員 私が勝手に申し上げたわけではなくて、実は雑誌のコピーがここにあるんですが「選択」十一月号に出ておりますので、一度お目通しいただきたいと思います。大臣のことですから。

 ただいまも御答弁いただいたんですが、沖縄の普天間の閉鎖の問題が出てきますと必ずSACOが出てくるんですが、SACOの最終報告は既に破綻している、私たちはそう見ております。それは、多分大臣もその点は一致すると思うんですけれども、言えないというお立場かもしれませんが、しかしそうではあっても、破綻しているにもかかわらず、まだ政府を挙げてその着実な実施を言い続けておられるというのは本当に理解に苦しみます。辺野古への移設には県民の八〇%以上が反対していることもよく御存じのことだと思います。県民の負担の軽減を本気で考えておられるのならば、辺野古への移設撤回はできると思うんです。

 これは西那覇防衛施設局長の新聞のインタビューでございますが、西施設局長はインタビューに答えて、変更するのであれば行政の決心、政治の決心が必要だ、政治としての判断は実務を担当する私どもからはうかがい知ることのできない高みにある、政治の決心を狂わせないよう県内の状況は誤りなく中央に伝えるのが私どもの務めだ、辺野古移設に至るために支払った膨大なコストがある、それをどうするかはすぐれて政治の世界だというふうな発言をしておりますけれども、すなわち、政治の決心さえあれば可能だということを防衛施設局長は言っていることだと私は思いますが、御所見をお願いいたします。

町村国務大臣 一々反論するようで恐縮ですが、私はその「選択」という雑誌にインタビューも受けたこともなければ全く取材も受けたこともないので、それは私の発言ではないということをまず明言させていただきます。

 その上で、今の辺野古沖移転に関する施設局長の発言、どういう真意か私にはわかりませんけれども、確かに、大勢の方々がかかわりを持ちながら十一年の閣議決定に至ったということであります。仮に、これを廃止して、それではどこか他の場所に移転をするかとなると、また一からの膨大な作業がこれはかかってくるわけであります。

 したがいまして、私どもとしては、確かに当初の期待をした、あるいは想定をした作業よりも大分これがおくれていることも事実でございますけれども、地元の皆さん方のそういう反対のお声もあるのも承知をした上で、なおかつ、ぜひまた御理解をいただきながら、普天間から移設をして普天間の危険な状態というものを解決するために、私はぜひ、東門議員も辺野古沖移転に賛成をしていただいて、これが一刻も早く進むように御協力を賜れば幸いでございます。

東門委員 辺野古沖への移設ということだけは絶対に私たちは納得ができないと思っております。

 大臣は、辺野古をキャンプ・シュワブからごらんになったのでしょうか。ぜひ一度、海上に出られて、どこの方が埋められるのか、見てください。とてもイエスと言えるものではないと思います。私は出ました。ここがこれだけ埋め立てられるんですよと、心が痛くなるような。ぜひ責任者としてそれはなさってください。その後でまたぜひ大臣の御意見も聞きたいと思います。

 関連ですが、辺野古移設に至るために支払った膨大なコストがあると西防衛施設局長は言っておられるんですが、その膨大なコストとは幾らになるのか、それは何に対してこれまでに支払われたコストなのかお聞かせください。防衛施設庁、よろしくお願いします。

河野政府参考人 お答えいたします。

 西局長の発言も必ずしも建設工事のことだけじゃないと思いますけれども、私ども代替施設の建設に関連する建設経費につきましては平成九年度から支出しておりまして、平成十五年度までに適地調査として約六億二千万円、工法選定のための基本検討として約五億一千万円、現地技術調査として約三億八千万円、それと環境影響評価として約五千万円、これら合計約十六億円を支出しているところでございます。

東門委員 もう時間だと思いますので終わりますが、外務大臣にもう一度申し上げておきたいと思います。

 沖縄県民の負担を軽減するということを本気で考えておられるのならば、普天間飛行場は閉鎖すべきです。もう沖縄県内への移設ということは絶対に考えないでいただきたい。特に、辺野古への移設ということはあり得ないとぜひ思っていただきたい。

 あそこでこれまで毎日のように座り込みをしているお年寄りの方々の気持ち、ぜひ考えていただきたい。これから沖縄を担う若者たちの未来にかけるその気持ちも、ぜひそこにも思いをはせていただきたいと思うのですが、沖縄はあそこをつぶしてしまいましたら観光としても全然成り立たなくなっていくということを強く申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

赤松委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。きょうは、イラクの問題について質問をしていきたいと思います。

 先日も、イラクの特別委員会で、政府が自衛隊を撤退させる判断基準について伺ったわけですが、引き続きそのことについて聞いていきます。

 首相が本会議の答弁の中で四つの基準を挙げられましたが、その中に、政治的、外交的な判断として派遣を終了させる場合がある、このように述べております。この政治的、外交的に派遣を終了させる場合、どういう場合でしょうか、外務大臣。

町村国務大臣 それはいつの、これは伺っちゃいけないのかもしれませんが、済みません、いつの総理答弁でございましょうか。ちょっと私の記憶にないのでございますけれども。

赤嶺委員 総理が本会議での質問に答えて、戦闘地域になった場合とか、安全を確保できなくなった場合とか、復興支援の任務の問題だとか、中で四つ挙げまして、政治的、外交的な判断として派遣を終了させる場合というのが挙がっております。御存じないんですか。

    〔委員長退席、増子委員長代理着席〕

町村国務大臣 法律の規定に基づいて、イラク特措法の規定に基づいて、今委員がおっしゃったような、非戦闘地域でなくなった場合とか、復興の目的を達した場合とか、それは幾つかありますが、ちょっと済みません、私、よく精査いたしますが、政治的、外交的理由で撤退というのは果たして、私の記憶する限り、イラク特措法にそういう表現があったかどうか、ちょっと定かではないので、もう一度精査をさせていただきたいと思います。

赤嶺委員 答弁に基づいて、この間のイラク特でも、私、四つの条件の中の一つとしてこれを読み上げて、質問しておるわけですから。

 精査したいということですから、若干の時間、とめていただいて、見ればすぐわかることですから、ちょっと確認していただけませんでしょうか。

 委員長、時間をとめて。十五分しかありませんから。

増子委員長代理 では、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

増子委員長代理 速記を起こしてください。

 町村外務大臣。

町村国務大臣 恐縮ですが、事前の御通告がなかったものですから、ちょっと用意ができておりませんので。恐縮でございます。

赤嶺委員 撤退問題というのは、今まさに国会の論議の中心になっていることですよね。そして、総理が本会議でも答弁していらっしゃる。それで私も、その四つの判断の基準について、この間のイラク特で、外務大臣も座っていらっしゃいましたよ、ちゃんと述べている。通告したかどうかの問題じゃなくて、撤退を議論するという場合には当然そのことが問題になるというのは、百も承知の話じゃないですか。

 納得できませんので、もう一回きちんと精査して、その問題について答えてください。

町村国務大臣 それは、総理大臣の立場ですから、いろいろなことを総合的に考えて、それはやめる、撤退させるという判断もあるかもしれない。それを称して政治的、外交的と言われたのかもしれませんけれども、それはそういう判断もあるのかなとは思いますね。

赤嶺委員 委員長、思うということで、認められたというぐあいに、ちょっと議論を進めたいんですけれども、本当に総理が四つ並べて出していらっしゃるわけですから、総理の意向を離れて外務省の判断があるなら別ですけれども、やはり今の姿勢には私は非常に納得いかないものを思います。

 それで、政治的、外交的判断と言う場合に、いろいろな国々のイラクに対する動きというのが非常に大事になってくると思うんですけれども、その場合には、何といっても、有志連合の中で、今イラクに対してどういう判断や動きがあるかということだろうと私は思っています。

 それで、有志連合の中から、軍隊を派遣していて今イラクから撤退をしている、そういう国があると思うんですが、それは何カ国ですか。

町村国務大臣 これまでイラクに部隊を派遣した国の中で、派遣を終了させた国がございます。他方、ことしの六月以降、トンガ、マレーシア、アルメニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、フィジー等、新たに部隊を派遣させる、あるいは派遣させる方向で準備を検討した国、いろいろございます。

 今まで撤退をした、派遣をやめた国、今まで九カ国。サウジアラビア、ニカラグア、スペイン、ホンジュラス、ドミニカ、フィリピン、シンガポール、タイ、ニュージーランド、九カ国が撤退を決め、それから三十八カ国が参加をしておりますので、三十八引く九で、現在二十九カ国が復興支援部隊として現地に派遣をされております。

赤嶺委員 三十八カ国というのは、どういう国々を入れたかわかりませんが、それは間違いないですか。ピーク時、三十八カ国でいいんですね。

町村国務大臣 合計で言っておりますから、瞬間タッチで言うと、三十六カ国というのが最大の国数になっております。しかし、やめたところと出たところと両方あるものですから、現在は三十八引く九で二十九、こういう姿になっているということであります。

赤嶺委員 やはりふえているんじゃなくて、かなり減っているんですね。部隊を派遣していた国々が撤退をしている。そういういわば有志連合の中から、次々に部隊を撤退していく。こういうのは、日本がイラク問題を考えるときに、自衛隊派遣を考えるときに、一つの判断の目安、目安というか基準というか、当然検討しなきゃいけない、そういう対象になるんでしょうか。

町村国務大臣 それは、さまざまな要素を考慮に入れることは当然であろう、こう思っておりますが、最後はもちろん我が国独自の判断で主体的に決めるべきものであって、この国がどうしたから日本がどうするという性格のものではございません。

赤嶺委員 外交というのは、我が国独自に、主体的に判断するのは当然なんですよ。その主体的に判断する場合に、それが本当に皆さんがおっしゃるような国際協調になるかどうかということは普通の基準でしょう。国際協調になるような事態になっているかどうかというのがあるわけですよ。

 それで、今後もさらに、来年から撤退する国々が続くと思います。それはどういう国々ですか。

町村国務大臣 例えば、委員はサマワ周辺を警護に当たっているオランダというようなものを念頭に置いて言っておられるのだろうと思いますが、オランダも、閣僚の中でいろいろな議論がまだあるようでございます。

 三月の半ばに至るまで、今後オランダの中で議論が進められるのだろう、こう思っておりますので、私どもとしては、そうした動きがあることを念頭にはもちろん置いてまいります。

赤嶺委員 有志連合の中で、オランダも非常に不安定だと言われました。私の念頭にあるのは、オランダだけじゃなくて、ウクライナもそうですし、ハンガリーもそうですし、それからポーランド、モルドバなどが次々撤退を表明あるいは検討している。私は、ポーランドまで、あれだけ米英有志連合の中核にあった国が撤退を検討せざるを得ないところまで来ているのは、非常に大きな動きだなと思っているんです。

 やはり、我々が国際協調と言う場合に、有志連合の動きが強まる方向ではなくて弱体化していく方向に来ているという点について、大臣、どんな御所見をお持ちですか。

町村国務大臣 御参考までに申し上げれば、さっき申し上げたトンガ、マレーシア、アルメニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、フィジー、こういった国々ではさらに派遣をするということを検討したりしておりますし、また韓国は九月に二千名を追加派遣するということも決めております。また、NATOは八月にイラクの治安組織を訓練するための訓練実施ミッションをイラクに派遣するといったような、それぞれの国がそれぞれの判断でやっているということの証明であろうと思います。

 そして、何といっても見落としてはいけない、また一番重要な要素というのは、今既に選挙に向けての選挙人登録、政党の登録あるいは候補者の登録というものがどんどん進み始めております。一月には国民議会の選挙が行われます。そして、憲法がつくられ、それに基づいたまた選挙が行われる。この民主的なイラクの国づくりのプロセスに向けて、日本がこの時点で我関せずという態度をとるのか、あるいは熱心にそういったイラクの国づくりに協力をしていくのか、そういうどっちの方向を向いて我が国がこれから進んでいくのかというその姿勢がまさに問われているのであります。

 私は、日本という国がイラクとこれまでもいい関係にあり、現在もいい関係にあり、また将来にわたってもいい関係を築いていくときに、一番苦しい状態にあるそのイラクに対して、我が国が、もうこれはおれと関係がないという形で背を向けたらば一体どういうことになるだろうか。その辺を委員もひとつよくお考えをいただきたい。

赤嶺委員 外務大臣、コアリション、有志連合というのは、強化されているのではなくて、あなたは今強化されているかのような強弁をしておりますが、弱体化し、国の数は減っていっているんですよ、あなた自身が説明したように。

 それをNATOのミッションまで持ち出して、NATOがどういう議論があって、今どんな形でイラクにかかわろうとしているかということは、フランスやドイツの態度を見ても百も承知です。NATOさえまとめ切れていないというような状況が一方にあるじゃないですか。イラクのためによかれということは何かということを、まさに政治的、外交的立場に立って、国際社会の流れもきちんと見ていかなきゃいけないと思うんです。

 そこで、来年は総選挙も開かれ、そしてイラクの政府も樹立されという政治プロセスが発表されています。それでは、政府が樹立されたとき、あるいは総選挙が行われたとき、当然、これはイラクの国の独立にかかわるわけですから、占領軍の撤退という問題も上ってまいります。こういうときには日本は、自衛隊の撤退の判断の基準、総選挙や政府の樹立の際には撤退するということは当然検討するわけですね。

町村国務大臣 もとより、未来永劫自衛隊をかの地に派遣しているなんということはだれも考えておりません。国連安保理の決議も、一応来年末、二〇〇五年の十二月末をもって、すべて予定どおりいけば、そこで新しい憲法に基づく新しい国民議会ができる。そこまでのマンデートを現在の多国籍軍に与えているわけでございまして、そこまでは少なくとも全会一致の安保理決議でそれを認めているということは、委員御承知のとおりでございます。そこは一つの大きな、自衛隊の撤退を考える際にはそれは一つの大きな要素、世界全体の動きとしての要素であるということは当然のことであろうと私も考えます。

赤嶺委員 今私、手元に、ブルッキングズ研究所のイラク・インデックスの多国籍軍撤退に関する世論調査というのを持ってきておりまして、連合軍の駐留に対し強くまたはどちらかというと反対六七%。連合軍は即時または選挙実施後に撤退すべき八〇%。いわばイラクの独立、そういうものが本当に大事な撤退の時期になると思いますが、同時に、日本は憲法上もそれからイラク特措法上も戦闘地域に自衛隊を送っているという面がありますので、これは私たちは即時撤退というべきものであります。

 選挙が、アメリカの気に入らない勢力は押しつぶされて、気に入る勢力だけで選挙をやる、そして気に入らない勢力には武力行使も行うというようなやり方では、決してイラクの平和プロセスは成功しないということを一言申し上げておきたいと思います。

 それで、最後に一つだけ。先ほどの東門委員へのSACO、辺野古、賛成してくれという外務大臣のせっかくのお話がありましたが、沖縄県民の九〇%以上は辺野古基地に反対で、防衛施設局が今行っている環境アセス調査の方法書についても県民から総スカンを食らっているということもつけ加えて申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

増子委員長代理 次に、今野東君。

今野委員 民主党の今野でございます。

 きょうは長時間の委員会でございまして、大臣には大変お疲れだろうと思いますけれども、私で最後でございますので、どうぞおつき合いいただきたいと思います。何か落語の前振りみたいですけれども。

 さて、まず私も、町村外務大臣の外交について、基本的な姿勢を伺っておきたいと思います。

 大臣の十月二十七日の大臣あいさつですが、アメリカとの関係についてこうおっしゃっています。「強固な日米同盟に裏づけられた日米関係は我が国の外交の基軸です。今後とも、日米安保体制の信頼性を維持強化し、国際社会の諸課題への取り組みに指導力を発揮していく考えです。」と、これは大変勇ましい。

 それはそれでいいんですが、それではアジアの中の基軸となるべき日本と中国との関係ということになりますと、「著しい経済成長を遂げている中国の存在は、我が国にとって機会であり、より幅広い分野における協力を一層進めることが重要です。」とありまして、アメリカとの関係をしっかり構築していくんだという入れ込みと比べますと、何か一歩も二歩も引けているような感じがいたしまして、これは外交上、アメリカとアジア、とりわけ中国とのバランス、これはどう考えるんでしょうか。

 例えば、対米貿易を見ても、ことし上半期の実績で、アメリカとは二十兆円、対中貿易は二十一兆円になろうという勢いで、最大の貿易相手国がアメリカから中国に変わりつつある。これは、経済はもちろん熱を帯びておりますけれども、政治の世界は、よく言われますように、政冷と言われておりまして冷えている。

 そういう中で、私は、あの大臣のあいさつ、ちょっと中国に対しての、あるいはアジア全体もそうですけれども、どういうものなのかなと。ぜひ所見を伺いたいと思います。お願いします。

町村国務大臣 文章表現というか字数というか、確かに違いがそれはあります。それは、やはり何といっても、日米の重要性というのは、それは他と比類すべきもなき、日本の国家の安全、繁栄にとって最も重要な二国間関係であるということは間違いなく言えると思います。

 しかし同時に、その日米の関係の上に立って、日中あるいは日・ASEAN、そういう関係をまた発展させていかなければいけないということを私としては述べたつもりでございまして、特に日中関係は非常に重要であるということをもし私の文章で読み取れなかったらば、それはまさに私の文章のつたなさのゆえだ、こう御理解をいただきたい。

 私は、自分自身、日中友好議員連盟の役員として長らくこの日中問題にかかわりを持ってまいりましたし、日中関係がよりよく発展することが日本の将来にとっても非常に重要である、ASEANもまた同様である、そういう思いでこれまでもやってきましたし、外務大臣としても、そういう思いでこれから、日米を基軸にしながらも日中、日・ASEAN関係の発展に全力を尽くしてまいりたいと考えております。

今野委員 中国に対する考え方については、午前中も大変重要な、また意味のある議論がありました。私もいろいろお尋ねしたいところはありますけれども、中国との関係についてはこれぐらいにしておきます。なぜ、しかし、こういうことをお尋ねするかというと、やはり政府全体として、アメリカ追随外交と言われても仕方がない状況であるなと思うわけです。アメリカのしたことは何でもすぐに支持してしまう、ファルージャの攻撃についてでもそうです。

 それから、十一月十日の小泉首相と我が党岡田代表との党首討論でも、小泉首相の発言ですけれども「自衛隊が活動する地域は非戦闘地域」などというふうに発言をされてしまう。これは国民のだれもが恐らく驚いただろうと思うんですけれども、町村大臣もそのようにお考えでしょうか。

町村国務大臣 現象を表から表現するか裏から表現するかの違いかな、こう思っておりますけれども、サマワは非戦闘地域であると私は考えております。それはまさに、イラク特措法第二条三項に規定されております戦闘行為が行われているとは認識できず、非常事態宣言が出されても、サマワの地域がいわば非戦闘地域の要件を満たさなくなったとは考えていない、そのように認識をしているからでございます。

今野委員 十月の二十二日のロケット弾に続いて三十一日にも砲弾が落ちたサマワの宿営地、私たちは、ここはもはや戦闘地域であるという認識であります。

 イラクの地元紙アルサマワは、ムサンナ県警のカリーム・ヘルベット本部長という方が話していることを報じています。どのように書いてあるかというと、カリーム・ヘルベット本部長は、ロケット弾攻撃の責任は約束を果たさなかった自衛隊にあると報じています。さらに、本部長は、これは市民の怒りの表現だとも言っております。

 自衛隊駐留に賛成という地元の意見もあるということは承知しておりますけれども、しかしこの状況は、サマワは、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域ではもう既にない、少なくとも戦闘地域となるおそれがある地域ではないかと思いますが、どうでしょうか。

町村国務大臣 先ほどのムサンナ県の有力な方の発言という新聞報道、これについては、我が省の、サマワの事務所に外務省の人間がおるわけでございますが、彼が何らかの折に確認をしたところ、あれは全く自分の発言とは違うということを明確に述べ、あの記事を否定されたそうでございますから、念のためにお伝えをしておきます。

 また、昨日、自衛隊の基地の前で、自衛隊にぜひ長く居続けてもらいたい、こういう賛成のデモンストレーションがあった。横断幕を掲げて、自衛隊、ぜひこのまま駐留し続けてくれ、こういうデモといいましょうか要請活動というんでしょうか、そういうものもあったという話もございます。

 さらには、現実に非常事態宣言が出された後、ムサンナ県で何か特段の措置が講じられているかというと、ムサンナ県においては全く従前と変わっていない、何ら特段の措置はとられていないということからしても、少なくとも、今日ここまで自衛隊が一年近く活動してきたムサンナ県あるいはサマワ市及びその周辺が非戦闘地域であると認定して約一年近くたちましたが、そういう判断を大きく変えなければならない状態にはないと思います。

 ただ、もちろん、委員御指摘のようなロケット弾、砲弾等が飛んできているというようなことも起きているのは事実でございますから、その辺については十二分の注意を払い、事態をよく注視していく、自衛隊員の安全を確保するためにそういう注意を払っていくということは、これまた当然のことであろうと思います。

今野委員 サマワについての議論は何度お尋ねしても恐らくそういうような答えでしょうから、次の質問に移りますが、きょうはちょっとミャンマー情勢についてお尋ねをしたいと思うんです。

 今、ミャンマーに対するODAは、たしか、人道的な支援については一部続けているものもあるけれども、ほとんどがとまっていて、そのあたり、どのようになると再開をするのか。キン・ニュン首相の解任で、ミャンマーの民主化への動きは遠のいたのではないかと思っておりますけれども、そういう中でこのODAは今後どういうふうになるか、御説明いただきたいと思います。

町村国務大臣 委員御指摘のように、昨年の五月三十日の事件が発生した後、原則として、日本は対ミャンマー経済協力の新規案件については実施を見合わせております。さはさりながら、緊急性が高い人道的な案件でありますとか、民主化、経済構造改革に資する人材育成のための案件というようなものについては、個別の案件を見ながら慎重に対処をしておりまして、昨年の五月三十日以降、今日に至るまで約一年半の間に実施した対ミャンマー経済協力の実績は約四十八億円、無償資金協力、技術協力、開発調査等々でございます。

 したがいまして、委員お尋ねの、では今後どういうふうになったらばこれが本格的な協力が実施できるかということでございますけれども、今の時点で、どういう条件が満たされればということを一義的に申し述べるのはなかなか難しいんだろうと思います。こうやって、政権の中枢にある人がある日突然交代させられる等々のことも起きるわけでございますので、今後とも、ミャンマーの政治情勢をよくウオッチしながら対応を考えていきたい、このように考えております。

 特に、日本は、ミャンマーが今回ASEMの一員にもなったということも踏まえながら、やはりパイプは切らさないようにやっていかなければいけないんだろうな、こう思っておりまして、もちろん民主化を強く要請しながらではありますけれども、昨年の六月に川口外務大臣が談話を発表して以降、外相会談あるいは副大臣が行く、川口大臣とまた先方副大臣と会う、外務大臣と電話会談をする、あるいは昨年の十月には首脳会談もやるというようなことで、またことしに入ってからも、つい先日、私はASEMの会合に出た折、ミャンマーの外務大臣がおられたものですから、そこで会って、私の方からも、ぜひ民主化を進めるように、そういう趣旨の発言をしながら、引き続き対話のパイプだけはしっかり保っていこうという努力をしているところでございます。

今野委員 パイプは切らさないようにということであればなおのこと、このビルマ、ミャンマーの情勢についてはきちんと把握をしておかなければならないと思うわけですが、ノーベル平和賞を受賞したアウン・サン・スー・チーさんの自宅軟禁が続いております。これについてどうお考えでしょうか。

町村国務大臣 今の事態が決して好ましい事態だとは思っておりませんし、憂慮もいたしております。いろいろな機会をとらえて、事態の早期解決に向けて、ミャンマー政府に対して粘り強く働きかけを続けていこうと思っております。

今野委員 アウン・サン・スー・チーさんの政治手法が反発やあるいは疑問という形で国民の間に広まっているという状況ではなくて、むしろ現軍事政権によって抑圧されているという状況が好ましいとは思っていないということでよろしいですか。

町村国務大臣 先般、ミャンマー外務大臣と会ったときに、私の方からは、今後はすべての関係者が参加した形での民主化プロセスが進展することを期待しているという形で私どもの考え方を、短い表現ではありますけれども、述べておりますので、結果、委員が今お話ししたとおりでございます。

今野委員 実は、私は難民問題に関心を寄せておりまして、さまざまな事案について触れることが多いわけですけれども、今ミャンマーからの難民の方で、裁判が起こっているケースがありまして、個別の事案について名前を申し上げたりすることはいたしませんが、その中で、高等裁判所に法務省がある方を控訴しているというのがあります。

 その中で、ミャンマーの情勢についてなんですが、このように表現をしておりまして、ミャンマーでは、特にNLDに対する抑圧が続いた結果としてNLDからの脱退が強制された旨判示しているが、NLDの党勢が弱体化したのはアウン・サン・スー・チーの硬直的な思考など政治手法に対する反発や疑問が国民や党員の間に広まっていることも要因としてあり、一概に政権側の弾圧の結果と論ずることは早計であるということを、これは法務省が出しているんです。今の大臣のお考え、見解とは随分違うと思うんですけれども、これはどういうふうにお考えになりますか。

町村国務大臣 ちょっと寡聞にして、今その法務省の見解というのを私は存じ上げません。

今野委員 いや、私、今読み上げましたその部分について、これはこの国としての考えでいいんでしょうかということです。アウン・サン・スー・チーの硬直的な思考など政治手法に対する反発や疑問が国民や党員の間に広まっていることも要因としてあって、一概に政権側の弾圧の結果と論ずることは早計であるということは、国の見解としていいんだろうかということをお尋ねしております。

町村国務大臣 ちょっと、全体のコンテクストの中で見ないといけないものですから、今その当該部分だけを読み上げてどうかとコメントを求められても、ちょっとそれはコメントをしがたいものがございますので、改めてよく勉強させてもらいます。

今野委員 機会を見て、またお尋ねをさせていただきたいと思いますが、しかしアウン・サン・スー・チーさんの政治手法が反発や疑問として国民の間に広まっているのではないというお答えをいただきましたので、法務省のこの表現、文章とは著しく違うということを確認させていただきました。

 さて、きょうは時間を例の沖縄の米軍ヘリ墜落のことに使いたいと思っていたんですが、大分時間がたちました。

 この前の外務委員会でも、それから九日の沖北の委員会では特に大臣がずっとおいででしたので、審議の様子、聞いていただいていたかと思いますけれども、大臣のこの間の当委員会最初のあいさつの中にも「沖縄等の地元住民の過重な負担の軽減の観点から米国と協議してまいります。」という言葉があります。沖縄の過重な負担を軽減しなければならないというのなら、今回の沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落に関しては、もう少し日本側の主張を強く申し入れるということがあってもいいのではないかと思っているんです。

 この間の沖北での議論もお聞きいただいていました。私は、救助活動の初動として最も大事なのは、事故を起こした米側から直接直ちに消防や警察や地元の自治体に通報があったかどうかということが最も大事なことであると主張しておりまして、その観点から、米側はそうした通報があったかということを再々お尋ねをしておりました。海老原局長がお出になりまして、米側は警察、消防、周辺自治体に通報したという報告を受けているという答えでしたけれども、しかし地元である宜野湾市は通報はなかったと言っております。ここに違いがあります。

 しかし、この違いはそのまま放置してはおけません。人命をまず救助しなければならない、少なくとも最小限の危険ということにとどめておかなければならないとしたら、これは事故を起こした当事者が通報するのは当然のことですが、この違いをそのまま放置していてはいけないと思うんですが、大臣はどのようにお考えでしょうか。

海老原政府参考人 この件につきましては、前回も今野委員から御指摘がありまして、私の方も、今回、現場におきましていろいろな問題があり得たということでいろいろな提起もされておりますので、この点につきましては、今の御指摘の点も含めまして、現場の協力に関する特別委員会で、日米で話し合っていきたい。

 その結果、特に通報手続につきましては、今野委員おっしゃいますとおりにこれは非常に大事なことでございますので、改善すべきところがあれば改善をしていくということでやっていきたいというふうに考えている次第でございまして、町村大臣からも、そういう点があるからこそ、今この特別委員会でやっているということを御答弁になさったというふうに記憶をいたしております。

今野委員 改善すべき点があればじゃなくて、改善すべき点があるんです。そこのところを私はぜひ大臣の口からお尋ねしたいと思います。

 これは宜野湾市と米側の主張が違うわけですから、そこのところをただして、これはさまざまな取り決めがあるかないかよりも、それ以前の問題ですよ。事故を起こしたら、当事者がまず消防や警察に通報するというのは当たり前のことです。それが、したという方となかったという方と両方あるわけですから、これは確認をしていただいて、もしなかったという場合には、そのようなことでは困ると、システムをちゃんとつくり直してもらわなければいけません。大臣、お考えをお聞かせください。

町村国務大臣 そういう現場での対応の問題というのがいろいろ指摘をされているわけでございますから、まあこれ、言った言わないということは、多分、もしかしたら水かけ論になってしまうかもしれないので、今回の現場での対応に関する、今後是正するための特別委員会ができているわけでございますから、反省材料にしながら、きちんとした対応ができるようにやっていかなければいけない、こう思います。

今野委員 こうした状況を受けて、少なくとも、普天間基地周辺にいる人たちはどう思っているかというと、自分たちの安全は守られていないと思っているわけですね。それがさまざまな形となって、結果となってあらわれているわけですけれども、普天間の県内移設についても反対する声が大きくなっています。

 八月十八日の琉球新報のアンケートですけれども、普天間の県内移設に反対する声、反対という声が八一%。それから宜野湾市議会で八月十七日、決議がありました。普天間、辺野古沖移設再考を求める決議であります。これは、一九九九年の辺野古移設の道筋をつけた決議の事実上の撤回であります。

 これからアメリカ側のトランスフォーメーションも恐らく一年ぐらいをかけて結論を出していくんでしょう。いろいろお尋ねをしても、まだ決まっていない、まだ決まっていないというお答えがその都度出るだけですけれども、こういう状況の中で、アメリカ側の状況を見ても、例えば九月二十三日、上院の軍事委員会でラムズフェルドさんの証言があります。

 これを紹介しますと、第一点は、部隊は要求され、歓迎され、必要とされるところに配置されるべきである、我が軍のプレゼンスや活動が地元住民の不快を誘って受け入れ国のいら立ちになっている場合がある。この後に、よい例として、韓国の首都ソウルの特等地に米軍の巨大な司令部が置かれているという現状をお話しになっているわけなんですけれども。これはまさに、ここに宜野湾の真ん真ん中に普天間基地があるということを入れれば全くそのまま当てはまるわけでありまして、地元住民の不快を誘って受け入れ国のいら立ちになっているというのがあります。

 それから、もう一つの状況は、第三海兵隊ですけれども、五十数機のうち四十数機がイラクに派遣されている。それから、ことしの一月には海兵隊遠征軍の三千人がイラクに派遣されました。この第三海兵隊、MEUはずっとイラクにとどまると発表されておりまして、もう普天間の県内移設だけを先行させる必要はなくなったのではないかと思いますけれども、大臣はそのあたりをどうお考えでしょうか。

町村国務大臣 今委員御指摘のそうした数々の世論調査等の結果につきましては、私どももよく承知をしております。

 その上で、私どもとしては、確かに現状の中で沖縄の海兵隊の人たちが移動していって現在イラクにいるということもあるわけでございますが、これはまあ一時的、緊急避難的な移動であっていずれまた帰ってくるということ、そしてそれを前提にして米軍の抑止力というものが維持されているということだろうと思います。

 しかし、さはさりながら、本当に今いる、これは海兵隊のみならずでありますけれども、沖縄にいるいろいろな米軍がすべてそのまま現在の姿で存続し続けなければならないのかどうなのかということは、このトランスフォーメーションの中でまさに議論をされなければならないという意識でおりますし、現にそういう議論が、今はまだ総論段階ではありますけれども始まっているわけでございます。

 そしてその中で、私どもは、抑止力は維持しながらも沖縄の過重負担はできるだけ軽減するという基本的な視点を持っているということを米側にも話し、アメリカ側もまたそのことは理解をしているというふうに思います。

 したがいまして、今イラクに行っている人たちが全部不要であるかどうかという議論は別にしても、私は、今回のトランスフォーメーションの議論の中で、できるだけ沖縄の皆さん方の御理解が得られるような形にしていきたいが、しかしさはさりながら、SACOの合意、そしてそれに続く代替施設基本計画というものは、これは基本的に普天間の皆さん方の御心配を一日も早く取り除く、そしてトータルとして沖縄の負担を軽減するためにはこれは必要な措置なんだというふうに考えておるものですから、私どもとしては、SACOの最終報告の実施というものは私は変えるつもりはなくそのまま実現をしていきたい、かように考えているわけであります。

今野委員 これから、その米軍の再編について、日本側もどのような要求、要望をし、どういう意見をその中で開陳していくのか注目をしていたいと思いますけれども、その議論の中で、これまでも米軍を受け入れるためにいかに多額の財政負担をしてきたか。きょう議論の中にもありましたけれども、米軍の受け入れのために、およそですが六千億以上の財政負担を日本側がしているわけであります。

 ことし三月三十一日のアメリカの議会で、ファーゴ太平洋軍総司令官はこう言っております。昨年、日本は米軍を受け入れるために約四十億ドルを支出した。私は、これは間違いで、もうちょっと多いはずだと思うんですけれども。まあ数字の正確さはともかくとして、約四十億ドルを支出した、これは同盟国のどこよりも気前のよい財政負担であるというふうに言っております。モストジェネラス、寛大な、気前のよいという意味だろうと思いますけれども。

 日本の側で、これまで米軍を受け入れるについて、あるいは米軍とのさまざまな話し合いの中で、我が国の厳しい財政状況というのを話したことがこれまであるんでしょうか。

海老原政府参考人 米軍の在留経費負担ということにつきましては、これは我々といたしましては日米安保条約の効果的な運用のために非常に重要な要素であるというふうに考えております。また、現在の水準も適切な水準であるというふうに考えております。

 他方、我が方の厳しい財政状況ということがございますので、今後、この経費負担というものをどういうふうにしていくかということについては、その点も十分踏まえながら日米で協議をしていかなければいけないというふうに考えておりますし、アメリカともいろいろな機会に当然そういう議論はいたしております。

今野委員 最後に大臣にお尋ねしますが、このファーゴ総司令官は四十億ドルと言っているんですけれども、私は六十億ドルぐらいあるはずだと思うんですが、これからもトランスフォーメーションの議論の中で日本の厳しい財政事情を説明するつもりはおありですか。

町村国務大臣 現実に、日本側の負担額は、平成十二年が六千六百五十九億円。これは最大限、全部含めてですけれども。これが十六年度には六千三百四億円ということで、三百五十五億円ですか、減ってきております。これはいろいろな状況がありますけれども、一つの大きな要素は、やはり我が国の財政の厳しさのあらわれでございます。

 もとより、今後、米側とのいろいろな議論をやるわけでありますけれども、これだけ厳しい財政事情にあるということは彼らもよく知ってはいると思いますけれども、また機会を得て私も、これだけ厳しい中でこれだけホスト・ネーション・サポートをやっているんだということは、それは機会を得て言うべきポイントの一つであろうとは思っております。

今野委員 十月二十七日の大臣のあいさつの中に、日米安保というこの基軸、アメリカとの関係をしっかり構築していくんだという力強いお言葉があって、それでは中国はどうするんだという、冒頭、私は中国との関係はどうするんだということをお尋ねしたわけですけれども、そういう中で、同盟関係、しっかり構築するのはそれはそれで結構ですけれども、再三いろいろなところから言われているように、言うべきことはきちんと言い、我が国の利益もきちんと図っていくという方向で外交を展開していただきたいと思います。

 ありがとうございました。

増子委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時八分散会


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