衆議院

メインへスキップ



第7号 平成17年5月13日(金曜日)

会議録本文へ
平成十七年五月十三日(金曜日)

    午前十時一分開議

 出席委員

   委員長 赤松 広隆君

   理事 谷本 龍哉君 理事 中谷  元君

   理事 原田 義昭君 理事 渡辺 博道君

   理事 大谷 信盛君 理事 首藤 信彦君

   理事 増子 輝彦君 理事 丸谷 佳織君

      宇野  治君    植竹 繁雄君

      小野寺五典君    木村 隆秀君

      高村 正彦君    鈴木 淳司君

      土屋 品子君    西銘恒三郎君

      平沢 勝栄君    三ッ矢憲生君

      宮下 一郎君    川内 博史君

      河村たかし君    武正 公一君

      中山 義活君    永田 寿康君

      古本伸一郎君    牧野 聖修君

      松原  仁君    赤羽 一嘉君

      赤嶺 政賢君    東門美津子君

    …………………………………

   外務大臣         町村 信孝君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   外務大臣政務官      小野寺五典君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  鈴木 基久君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  伊藤 哲朗君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         知念 良博君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    大古 和雄君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  三浦 正晴君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 遠藤 善久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 齋木 昭隆君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 篠田 研次君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 長嶺 安政君

   政府参考人

   (外務省大臣官房広報文化交流部長)        近藤 誠一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際社会協力部長)        神余 隆博君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  佐藤 重和君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    鹿取 克章君

   外務委員会専門員     原   聰君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十八日

 辞任         補欠選任

  今野  東君     永田 寿康君

五月十三日

 辞任         補欠選任

  河井 克行君     木村 隆秀君

  田中眞紀子君     牧野 聖修君

  鳩山由紀夫君     川内 博史君

  藤村  修君     河村たかし君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 隆秀君     河井 克行君

  川内 博史君     中山 義活君

  河村たかし君     藤村  修君

  牧野 聖修君     田中眞紀子君

同日

 辞任         補欠選任

  中山 義活君     鳩山由紀夫君

    ―――――――――――――

四月二十七日

 核兵器廃絶に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一〇四四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一〇四五号)

 同(志位和夫君紹介)(第一〇四六号)

 同(今野東君紹介)(第一一五二号)

 同(土井たか子君紹介)(第一一五三号)

 ILOパートタイム労働条約に関する請願(石毛えい子君紹介)(第一一四〇号)

 核兵器の廃絶に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一一四一号)

 同(石井郁子君紹介)(第一一四二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一一四三号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一一四四号)

 同(志位和夫君紹介)(第一一四五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一一四六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一一四七号)

 同(土井たか子君紹介)(第一一四八号)

 同(中川正春君紹介)(第一一四九号)

 同(山口富男君紹介)(第一一五〇号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一一五一号)

は本委員会に付託された。

四月二十八日

 核兵器廃絶に関する請願(第一一五二号)は「今野東君紹介」を「石毛えい子君紹介」に訂正された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(特に女性及び児童)の取引を防止し、抑止し及び処罰するための議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する陸路、海路及び空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第二号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

赤松委員長 これより会議を開きます。

 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(特に女性及び児童)の取引を防止し、抑止し及び処罰するための議定書の締結について承認を求めるの件及び国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する陸路、海路及び空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官遠藤善久君、外務省大臣官房審議官齋木昭隆君、外務省大臣官房審議官篠田研次君、外務省大臣官房審議官長嶺安政君、外務省大臣官房広報文化交流部長近藤誠一君、外務省大臣官房国際社会協力部長神余隆博君、外務省北米局長河相周夫君、外務省経済協力局長佐藤重和君、外務省領事局長鹿取克章君、内閣官房内閣参事官鈴木基久君、警察庁生活安全局長伊藤哲朗君、警察庁刑事局組織犯罪対策部長知念良博君、防衛庁運用局長大古和雄君、法務省刑事局長大林宏君、法務省入国管理局長三浦正晴君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮下一郎君。

宮下委員 自由民主党の宮下一郎でございます。

 本日は、議題となっております国際的組織犯罪防止条約を補足する二つの議定書に関して質問をさせていただきました後、その他の諸問題について伺いたいと考えております。

 まず、国際組織犯罪防止条約人身取引議定書についてでございますけれども、二〇〇〇年十一月の国連総会における採択を受けまして、我が国は二〇〇二年十二月に署名を行ったわけでありますが、さらに、その実効性を確保するために、政府としては昨年の十二月に人身取引対策行動計画を策定し、その中の主要な施策の一つとして、本議定書の締結が掲げられているというふうに伺っております。

 この行動計画におきましては、外務省だけではなくて、法務省や警察庁、厚生省など関係各省が連携をとりながら、法律改正を含めたさまざまな取り組みを行い、その総合的な調整を内閣官房の方で行っておられると伺っております。

 そこで、この行動計画についてのそれぞれの取り組みが現在どのように行われてきているのか、法改正の状況を含めて、内閣官房からまずお伺いをしたいと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 人身取引につきましては、大変な問題であるということで、政府を挙げて対策を講じる必要があることから、政府といたしましては、委員御指摘のとおり、昨年四月に人身取引対策に関する関係省庁連絡会議を設置いたしまして、昨年十二月に、人身取引の防止、撲滅、それから被害者の保護を柱といたします包括的、総合的な人身取引対策行動計画を策定し、関係省庁が連携して対策を推進しているところでございます。

 具体的には、行動計画で位置づけられた施策のうち、現在御審議いただいております人身取引議定書に加えまして、法整備が必要なものにつきましては、人身売買罪の新設等についての刑法改正、それから人身取引被害者の在留資格の取り扱いについての入管法改正、風俗営業等に係る人身取引の防止のための風営法の改正について、今国会での御審議をそれぞれお願いしておるところでございます。

 また、本年度の予算措置といたしまして、人身取引被害者の民間シェルター等への一時保護委託費や、国際機関を通じました被害者の帰国支援のための費用について予算措置を講じておるところでございます。

 そのほか、在留資格「興行」の上陸許可基準の見直しのための法務省令の改正が行われたほか、行動計画に掲げられた施策については、関係省庁、関係機関において着実に推進されておるところでございます。

 人身取引対策は内閣の重要課題の一つであることから、今後とも人身取引の防止、撲滅と被害者の保護に向け、関係省庁緊密に連携をとり、また関係のNGOや関係機関とも協力しつつ、行動計画に掲げられた施策を着実に推進してまいりたいと考えております。

宮下委員 ただいまのお答えの中で出入国管理法の改正のお話が出ましたけれども、特に不法入国や不法滞在の身分である人身取引被害者の方々にとりましては、例えば、申し出をしても、すぐに強制送還されるのではないかというようなさまざまな心配もあって、なかなか被害の申し出すらしにくい状況に現在あるのではないかなと思っております。

 こうした状況が法律改正によって改善するのかどうかを含めまして、具体的な対策の内容について法務省から御説明をいただけないでしょうか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 入国管理局におきましては、これまでも、特に、委員御指摘のような、不法滞在状態になっている人身取引の被害者につきましては、在留特別許可を柔軟に運用するなどして、その保護に努めてきたところでございます。

 現在、国会におきまして御審議をいただいております入管法の改正に関しまして、人身取引により売春などに従事したことなどを理由に退去強制等の対象にはならないようにするという内容、また、人身取引の被害者として他人の支配下に置かれたために不法滞在状態に陥った者でありましても、在留特別許可により保護の対象となるということを法律上明確にすることとしておりまして、このような今回の改正が成立いたしますと、委員御指摘のような、不法滞在者であるがために被害の申告をためらうというような被害者の方につきましても、今後は安心して入管当局に保護を求めることができるようになりまして、被害者の保護を積極的に進めることが可能になるものと考えておるところでございます。

宮下委員 今回のこの補足議定書は実は三本あるというふうに伺っておりまして、今回審議されております人身取引議定書と密入国議定書のほかに、もう一つ、銃器の取り締まりについての補足議定書があるというふうに伺っております。

 今回、三本一括で出された議定書がなぜ条約承認案件としてこの三本目だけ国会提出されていないのか、まだ解決しなければならない点があるとすれば、それは何なのか、また発効の見通しはどうかなどの点について、外務省から御説明を伺いたいと思います。

神余政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、銃器関連の国際組織犯罪が世界的に深刻化する状況を踏まえまして、銃器にかかわる組織犯罪への国際協力体制の早期構築が急務であるという認識のもと、犯罪対策閣僚会議におきまして策定されました犯罪に強い社会の実現のための行動計画において、銃器議定書の締結に向けた関連の国内法の整備を目標の一つとして掲げ、議定書の早期の締結を目指して関係省庁とともに鋭意準備を進めてきているところでございます。

 他方、この議定書に基づく義務には、銃器の特定、追跡を可能とするために、銃器の輸入時の刻印等の新しい制度を設けることが含まれておりまして、現在、EU、欧州委員会、欧州連合を含めた主要国におきまして、制度の具体的なあり方について真剣な検討が行われているというところでございます。

 我が国としても、こうした主要国におきます検討の状況も踏まえながら、早期の締結に向けて引き続き作業を行っていく所存でございます。

宮下委員 続きまして、幾つかの諸問題について御質問をさせていただきたいと思っております。

 まず、ODAのあり方についてでございますけれども、私は、この五月の初めに、総理が御訪問された後ですけれども、同僚議員などとともにインドとスリランカを訪問してまいりました。

 インドでは、チャタジー下院議長でありますとか上下両院の外交委員会のメンバーの方々などと懇談する機会を得まして、国連安保理改革問題を含めて、政治、経済などさまざまな分野で日印両国が協力関係をもっと強化していくことが重要だというようなことを再認識するとともに、核軍縮を含めまして安全保障問題についても意見交換をしてまいりました。

 また、総理も視察された日本の円借款によってつくられた地下鉄、これは総理は乗られなかったようですが、実際に乗ってまいりました。また、下水処理施設などの現場、これも円借款で行われたものでございますけれども、こういった現場を視察してまいりまして、その中で、日本のODAがインドのインフラの整備に非常に大きな貢献をしている、それからまた、地元の皆様から大きく高く評価されているということを実感してまいりました。

 また、続いて参りましたスリランカでは、スマトラ沖地震の津波被害のつめ跡を視察しますとともに、スリランカ経済の心臓部を現在支えておりますコロンボのコンテナ港を見てまいりました。この港の主要部分がすべて日本の円借款によってつくられているということを聞きまして驚いたわけでございますが、近年、このコロンボ港は、インド市場を控えたハブ港としての機能を発揮することによりまして、コンテナの取扱量が急増しまして、既に飽和状態にあるということで、さらに日本の支援をぜひ得て港の大規模な改修を行いたい、拡張をしたいというような意向も示されたところでございます。

 その他支援としましては、津波被害に関しても、スリランカだけでなくて、インドネシア、モルディブも含めて、約二百五十億円、ノンプロジェクト無償による支援が行われつつあるなど、日本のODAが果たしている役割が多いというのを実感したところでございます。

 一方、国連の安保理改革に関しましては、三月二十日にアナン事務総長が出されました報告書の中で、先進国は、遅くとも二〇一五年までにODAの対GNI比〇・七%を達成するためのタイムテーブルを策定し、手始めに二〇〇六年までに大幅にODAを増加し、二〇〇九年までに少なくとも〇・五%を達成すべきである、こういうふうに述べられておるわけです。

 今〇・二以下という状態だと思いますので、こうした高い水準を一気に達成することは難しいとは思うんですけれども、他のG7諸国が足元のODAを軒並み増加させておりまして、一方、緩やかな削減を続けているのは日本だけというような状態になっております。

 こういうさまざまなことを考えますと、世界に多くの味方といいますか理解者をふやして、それからまた国連を含めた国際社会において発言力を高めていく、また、存在感を高めていくためにも、戦略的にODAを今拡充すべきときなのではないかというふうに考えますが、大臣の御認識を伺いたいと思います。

町村国務大臣 宮下委員、インド及びスリランカを訪れて御視察いただき、日本のODAが、いろいろ批判も日本にはあるわけでございますが、しかし、そういう中にあっても現地に行ってみると大変役に立っているという実態をごらんいただいたこと、大変にありがたいことだと思って感謝をしております。

 今委員お触れをいただきました、それぞれの国の経済あるいは社会活動にとって有益なODAというのを私どもはやってきたつもりでおりますし、また、先般のインド洋の津波、まさにインドも、またスリランカも被害を受けた国でございました。さらに、日本としては、イラクの復興支援等いろいろな面でODAを活用しているわけであります。

 さらに、これからは特にアフリカというものに着目をして、今後はアフリカのODAというのも拡充をしていかなければいけないという実情、実需があると私は思っております。

 また同時に、今委員お触れをいただいた世界的なODAの流れ、一九九〇年代は、ややもすると援助疲れというような中で諸外国が援助を低下させてきている中で、日本はむしろ大変経済あるいは財政状況が厳しい中にあってもかなりの高水準を維持してきた。したがって、九〇年代は常に日本が最大の援助供与国であるという実情にございました。

 二〇〇〇年代に入りましてから、いよいよ日本の財政も逼迫している、ODAに対する批判も強いということで、少しずつ減ってきている。他方、諸外国は二〇〇〇年に入ってから、それぞれの国の事情はあるにせよ、今委員御指摘のように、急速にそれぞれの援助をふやしてきているという状況にございます。

 したがいまして、私どももいつまでもこうしたODAを減らす状態が本当にいいんだろうかということで、つい先般成立をいただきました十七年度予算では、正直言うと、十六年度の補正とあわせてみると大体前年並み、したがって援助減少傾向に底を打つ、したがって今後、来年度以降はむしろODAをふやしていくという転換点にしたい、そういう位置づけで十七年度予算を編成し、成立させていただいたところでございます。

 既に財務省等とも話をしているわけでございますが、いやいや、もう一段と財政が厳しいんだから、とてもいけませんというような反応は別途あるわけでございますが、私どもとしては、先般、アジア・アフリカ首脳会議がインドネシアで四月下旬に開かれました。小泉総理がその場で、ミレニアム開発目標に寄与するためODAの対GNI比〇・七%目標の達成に向けて引き続き努力する観点から、我が国にふさわしい十分なODAの水準を確保していきたい、なかんずくアフリカ向けの支援は向こう三年間で倍増したい、こういう宣言をしたわけでございまして、これに対して国際的にも大変高い評価を受けているということであります。

 したがって、今委員御指摘をいただいたように、ODAについて、もっと効率的に、もっと戦略的に、いろいろ改善をすべき点は多々ございますが、トータルとして見たときには、やはりこれを来年度以降何とか増加させていく、そして開発需要というものにしっかりとこたえていくという日本の姿勢を明らかにするために、一生懸命努力をしていきたい、こう思っておりますので、ぜひ宮下委員からも力強い御支援を賜りたいとお願いをする次第でございます。

宮下委員 ぜひ、日本の国旗がさまざまなプロジェクトで世界各国に翻るという格好で、また存在感を高めていっていただきたいなと思っております。

 次に、北方領土問題についてお伺いをしたいと思います。

 御案内のように、本年は、日露通好条約締結百五十周年、日露戦争終結百周年、また、ソ連による北方領土侵略から六十年という節目の年に当たっておりまして、プーチン大統領御自身も、昨年の中国との間の領土問題解決を受けまして、日ロ間の問題解決に向けても意欲を示しておられるというふうに報じられております。いわば、北方領土問題解決に向けて大きな進展が期待できる年になるのではないかというふうに考えているわけでございます。

 先日の日ロ首脳会談では、残念ながら、プーチン大統領の訪日日程については進展がなかったようですけれども、今月末にはラブロフ外相が来日予定となっておりまして、ロシア側は、大統領の訪日日程については、この際の交渉の内容を見きわめてから決めようとしているのではないかなというふうにも思われます。

 昨年十一月十四日にロシア国内のテレビ局にラブロフ外相が出演した際の発言と、それを受けて、翌日、拡大閣僚会議でプーチン大統領が発言された中では、一九五六年の日ソ共同宣言を引きまして、二島返還が残されている問題であるというような表現も使われたようですけれども、このこと自体、領土問題の存在とか平和条約締結の必要性をロシア国民に広く発信したということでは評価できるわけですけれども、二島というのを前面に出しているのはいささかいただけないというふうに思います。

 今月末の外相が来日した際の会談では、やはり四島の帰属問題を一括して解決しなければ平和条約締結はできないという日本の立場をはっきりと主張していただきたいと考えております。同時に、領土問題を解決して平和条約を締結することは、ロシア側にも大きなメリットがあるのだということも訴えていくことが必要なのではないかなと考えております。

 そこで、今月のロシア外相との会談、また、その後に予想されますプーチン大統領の訪日に向けまして、どのような方針で臨まれるのか、できれば戦略的な視点も含めてお聞かせをいただけないかと思います。

町村国務大臣 領土問題、考えてみると、戦後六十年間ずっと変わらない状態で今日まで来ております。一九五六年、日ソ共同宣言以降も、いろいろな方々がいろいろな努力をされました。あるときには、いよいよ解決かと思われたような時期すらあったわけでございます。しかし、結果、翻ってみると、全く平行状態が続いております。

 今後もずっとこの平行状態を続けていくという選択肢もあるのかもしれません。あくまでも四島一括返還だということで日本の主張をずっと続けていく、これも一つ大切な姿勢かもしれません。しかし、いつまでもこの領土問題に何ら進展のない状況をさらにこれから五十年も百年も続けていくということが本当に日本の国益に合致するか、また世界の状態を見てそれでいいのか、またロシアにとってもそれがいいんだろうかということを考えたときに、やはりこの辺で何かこれを動かしていく努力をしなければいけない。

 そういう思いから、私は、一月、日ロ外相会談の折に、それぞれの主張は確かに違う、何とかここにかけ橋をかける努力をお互いにするべきではないだろうかという、ややこれは抽象的な物言いでありますけれども、そういう話をし、向こうもそれはそうだということになりました。

 五月九日のモスクワにおける日ロ首脳会談で詰めた領土の議論はしていないわけでございますけれども、しかし、今月末、三十日、三十一日、ラブロフ外相の訪日の折に、平和条約問題及び日ロ共同行動計画というのがありまして、そのアクションプログラムをしっかりと実行していく、いろいろな日ロ間に実務的な課題もある、こういったものを解決しながらしっかりと準備をしていこうということで一致をしたわけでございまして、訪日の日程については、今後、外交ルートを通じて調整しようということになりました。

 そういうことでございまして、私は、なかなか容易な仕事ではないと思いますけれども、それぞれが努力をするきっかけというものを来る日ロ外相会談でつくりたいし、そのうちに実現するであろうプーチン訪日の折にも、何か一つの足がかりをつくっていくというようなことで、もちろん、我が国固有の領土であります北方四島を、日本が、当然のことですけれども、日本に帰属をしているんだということを前提にしながら、その中でどういう工夫ができるかということについていろいろ知恵を絞り、先方としっかり交渉もしていかなければいけない、かように考えているところでございます。

宮下委員 このほかにも安保理改革とかイラクの情勢とかお聞きしたいとは思ったんですが、残念ながら、時間が参りましたので、本日は質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

赤松委員長 次に、丸谷佳織君。

丸谷委員 公明党の丸谷佳織でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 きょうは、二つの議定書についてお伺いする前に、少し北朝鮮情勢についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 北朝鮮の核保有についての言及、あるいは六カ国協議への無期限の中断宣言、そしてミサイルの発射、また核実験の可能性の高まり、そして、昨日報道されておりましたけれども、八千本の使用済み燃料棒取り出し完了の表明等、最近の北朝鮮の情勢について我が国政府としてどのような分析をしているのか、この点からお伺いをいたします。

町村国務大臣 北朝鮮と関係五カ国の間のいわゆる六者協議、昨年の六月に第三回の会合が開かれて以降、約一年近く中断状態だ。そしてその間に、特にことしに入ってから、二月十日に、今委員が言われた、無期限参加しませんよとか、あるいは自分たちは核兵器を持っている国であるといったような発言、さらには三月三十一日に、六者会合というのは米朝間の軍縮協議の場となるべきである、さらには一昨日ですか、使用済み燃料棒の取り出し作業が成功裏に終わったと。要するに、一生懸命緊張の度合いを高める、そして自分たちが核兵器あるいはミサイルというものを持って大変な大武力国家なんだ、軍事国家なんだということを一生懸命強調する。

 どこまで本当にそうした核兵器の保有あるいは核実験の有無、どこまでのミサイル能力があるのか、いろいろな軍事筋の情報等々あって、正確なところは把握できない部分が多いわけでございますが、私どもとしては、そうした彼らの実態について、十分な情報の収集、分析を関係国と一緒になってやっているというところでございます。

 やはり、交渉をする立場を少しでも強くしたいということなんでしょう。そうしたいろいろな、さまざまな強いアナウンスをするわけでございますけれども、こうしたいわゆる瀬戸際外交的なやり方というものは、私は、決して北朝鮮のためにもならないし、地域の平和という観点からもためにはならないし、彼らの利益にとっても、六者協議に復帰をする、そしてそこで結論を得て核兵器を廃棄していく、あるいはその準備をやめさせる、そのことが彼らの平和の国づくりにとって一番役に立つんだということについて、ごくごくそうした当たり前のことを彼らに理解させていくという努力をしなければいけない。あくまでも平和的な手段によって、外交努力を通じて北朝鮮を説得していくということをやらなければいけないんだろう、こう思います。

 同時に、六者協議だけで本当に解決できるだろうかということもあります。いつまでも六者協議がそもそも開かれない、仮に開かれても、いたずらにそこに時間がかかるというようなことでは本当の解決にならない。国際社会の大変な強い関心もあるということを、例えば安全保障理事会の場、あるいは北朝鮮を除く五者協議の場といったようなものを設定していって、彼らに国際的なそうした関心の強さというものをよく理解させる努力といったようなことも必要なのではないだろうか、こんなことを考えながら、今後、引き続き、日本としても最大限の努力をしていきたい。

 つい先般も、日中あるいは日韓外相会談、京都でやりましたけれども、やはり影響力の大変強い中国、今までも努力をしているけれども、さらに一段の努力をしてもらいたい、そんなことも話し合ったところでございます。

丸谷委員 実際に我が国の防衛を考える上で、ミサイルが我が国に向けられているであろう国における軍事の拡大あるいは核実験の実施に関しては、非常に日本としても、当然大変な危惧を抱き、対応策をとっていかなければいけないというふうに考えます。

 今回の北朝鮮の核実験が実施されるのかどうか、このこと自体に関してはまだ何もわからない状況なのかもしれませんけれども、シミュレーションとして、ひとつ対応策というものも考えていかなければいけないでしょうし、また、九八年のインド、パキスタンにおける地下核実験が行われた際には、我が国としても経済的な措置をとりました。こういった経済的な措置をとるに当たっては、やはり、より広い国際社会の協力と理解というものが当然必要になってくるでしょうし、その際には、国連という場での日本の意思の表明あるいは働きかけということが非常に重要になってくると思います。

 報道で見ている限りにおきましては、アメリカ、そして中国、韓国には、やはりこの北朝鮮の動きに対して若干温度差があるのかなというふうにも思います。日本にとって、よりどちらに近いかというような議論は余り意味がないというふうに思うわけですけれども、六カ国協議を、まず、現実に今動いていないけれども、あるものとして目指していくのか、あるいは、国連安保理ないし国連というより広い場で議論をしていくことが日本にとってはいいことなのかどうか、この点については大臣のお考えとしてはいかがでしょうか。

町村国務大臣 当面は、この六者協議の再開ということについて関係五カ国との一致はあるところでございまして、まず、この六者協議の再開ということを大前提にしながら、関係国と努力をしていこうということでございます。

 ただ、同時に、本当にこれで、例えば六月、別に一年が絶対的なタイムリミットと思いませんけれども、例えば六月になって一年たった、一年をさらに過ぎるというような事態をただ漫然と見ているわけにもいかないだろうということから、私は、例えば日米外相会談でも、あるいは先般の日中、日韓外相会談でも、そういう事態のときに、ただ六者協議を、必要だ、やろうと言っているだけでは事態が進まないかもしれない。そういう場合には、例えば国連安保理というような他の選択肢も念頭に置きながら、六者協議再開に向けて努力をしていくという姿勢ではないだろうかということを申し上げました。

 安保理については、率直に言って、それはそうだという国と、そこはちょっとまだ議論するのは早いのではないかという国々もありました。そこにおいて多少の差はあることは率直に認めますけれども、しかし、いずれにしても、目的とするところは皆同じだし、また、当面、六者再開ということについては共通のポジションがある、こう考えておりますので、そういう方向で今後さらに努力をしていかなければならないと考えております。

丸谷委員 ありがとうございました。

 それでは、二つの議定書について質問をさせていただきます。

 人身取引議定書、そして密入国議定書についてでございますけれども、私は昨年、人身取引について問題意識を持っていることから、被害者が多いと言われていますタイ、カンボジアを視察してまいりました。各国の政府関係者あるいはユニセフ、NGO、国際機関の皆さんと意見交換をさせていただいたわけでございます。

 公明党としましても、昨年の十一月に、人身取引対策プロジェクトチームを発足させていただきまして、法務大臣あるいは女性問題担当の細田官房長官に、対策あるいは行動計画の実施と強化について申し入れをさせていただいております。

 そういった中から、私の整理として、特にこの人身取引に関する問題を撲滅するために重要なこととしては、まず一点目に、各国の人身取引に関する法整備が重要であり、それと同時に、人身取引は一カ国だけでは当然できませんので、送り出し国、受け入れ国、そして中継国、それぞれにおける捜査協力と、また被害者保護というネットワークを、各国の国内法の整備とともに、車の両輪として実現をさせていかなければいけない。それプラス、人身取引の根本的な原因であります貧困の撲滅、この点について力を入れていかなければいけない。こういったことで人身取引対策を目指すべきであるというのが私の結論として持っているわけでございます。

 その意味から、今回の人身取引議定書、実際に日本としては批准をするのが遅かったわけでございますけれども、今回の国内法の整備、刑法の改正あるいは人身取引罪の新設等が整うことによって、この議定書を批准できるということは非常に評価をされるべきであろうというふうに考えております。

 そこで、この議定書の内容も重要でございますけれども、実際にこの議定書に沿った内容で、我が国として今後どのような努力をしていくのか、あるいは行動計画そのもの自体がより重要になってくるであろうという観点から、まず、政府が昨年十二月に行動計画を立てられました被害者保護について幾つかお伺いをさせていただきたいと思います。

 この被害者保護については、まず、婦人相談所というところが相談窓口として挙げられているわけでございますけれども、この婦人相談所というのは、全国四十七都道府県に基本的には一つずつあるという中において、ドメスティック・バイオレンスの対応も今国内では一生懸命されていまして、婦人相談所自体が機能としてはもういっぱいいっぱいになっているところもあります。婦人相談所あるいは民間のシェルターというところで相談ができるわけでございますけれども、やはりこの婦人相談所に相談窓口を求めることは、かなり難しい、無理があるのではないかなというふうに私は考えております。

 その意味から、被害者支援センターという位置づけをしっかりしていく必要が今後あるのではないかというふうに考えますが、この点についていかがでしょうか。

鈴木政府参考人 被害者支援センターの設置について検討したらいかがかというふうな御質問でございます。

 政府といたしましては、昨年十二月、委員御指摘のとおり、人身取引対策行動計画を策定して、関係省庁が連携して人身取引対策を推進しているところでございます。

 その中の大きな柱でございます人身取引被害者の保護についてでございますが、婦人相談所の一時保護所、これを、婦人相談所をシェルターとして活用するとともに、また、本年度新たに民間シェルター等への一時保護委託ということが行われることとされたところでございます。

 被害者支援センターの設置という話でございますが、こういった新たな組織を設けるのではなくて、婦人相談所等既存の施設を活用して保護を図るということが政府としては適当であるというふうに考えておりまして、引き続き関係省庁が緊密に連携して、被害者保護に向けた適切な対策を講じてまいりたいというふうに考えております。

丸谷委員 今回の人身取引罪の新設によって、実際に日本国民に、例えば、地域名を特別に挙げるのはふさわしくないかもしれませんけれども、いわゆる人身取引の被害者が多く見つかっておりますフィリピン・パブとか、そこで働いて強制的に売春をさせられているような被害者に対して、今回初めて人身取引罪が新設をされたわけなんです。そういう人身取引の被害者が我が国の国内で、いわゆる風俗店で働いているその女性が被害者なんだという認識、被害者もいるんだという認識がなかなか国内では醸成されていないのではないかなというふうに思います。

 今回この罪が新設されたこともあって、人身取引というものに対して、あるいはこの防止に対して日本政府が行っていることに対して、国民の理解を求めていくことが今後求められると思います。この啓発活動についてどのように考えていらっしゃるのか、お伺いします。

鈴木政府参考人 人身取引を防止、撲滅し、被害者の保護を図るためには、委員御指摘のとおり、国民の理解というものが不可欠でございまして、行動計画におきましても、関係機関が協力して社会啓発、広報活動を推進することといたしております。

 これまでにも、国民の皆様の御理解を得るために、人身取引対策に関するポスターを作成、配布したほか、各種の広報媒体、政府のホームページ等も活用いたしまして広報活動を行っておるところでございます。また、人身取引の被害者になる可能性のある方々に対しましては、被害に遭った場合に警察やNGO等に助けを求められるように、電話番号を外国語で記載したリーフレットを作成中でございます。

 引き続き、関係府省庁が協力いたしまして、人身取引を防止、撲滅するために、国民の理解、協力を得るべく、広報啓発活動に努めてまいりたいと考えております。

丸谷委員 よろしくお願いいたします。

 それでは、法務省にお伺いをさせていただきます。

 人権団体の調査によりますと、実際に母子が離れ離れになって入国管理センターに収容されているケースが幾つか報告されているというふうに言われています。もしこれが事実であるのであれば、我が国も批准をしております子どもの権利条約、子供の最善の利益を求めていくという観点から、基本的に、母子における隔離、別々に収容するというケースは望ましくないということになるわけでございますけれども、今後、このような事実があるのであれば改めていただきたいというふうに考えております。事実とともに考え方をお聞きします。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 退去強制手続につきましては、入管法上、身柄を収容してこれを進めるということになっておるわけでございますけれども、これは児童についても例外ではございません。しかしながら、子供の人権に配慮をするという観点から、児童につきましては、特に仮放免を弾力的に運用いたしまして、収容は極力行わないという対応を行っているところでございます。また母親につきましても、子供の監護養育の必要性などを配慮いたしまして、人道的配慮を要する事情がある場合には仮放免を弾力的に運用しているところでございます。

 今後とも、これまで同様適切な運用を行っていきたいというふうに考えております。

丸谷委員 それでは、警察に来ていただいておりますので、最後に一点、不法滞在に関連してお伺いをさせていただくわけでございます。

 昨年の新聞に、日本人の男性に胎児を認知してもらい、生まれてきた子供に日本国籍を取って、自分も日本での長期滞在資格を取得しようとした中国人の女性が実際に検挙をされたという報道がございます。

 そういった報道を見てみますと、偽りの父親に日本国籍を取るためにおなかにいる子供の認知をさせて、そして日本国籍を取らせ、その扶養の義務から日本に長く滞在するという目的の新たな手口として、この不法滞在におけるいわゆる偽装認知ということがあるのではないかという報道に触れまして、実際に、今いわゆる偽装認知が不法滞在を増長させる問題として日本政府はとらえて行動していらっしゃるのかどうか、この問題についてどのような対策をとっているのか、この点についてお伺いをいたします。

知念政府参考人 不法滞在者問題に絡む偽装認知事件でございますが、不法滞在等の外国人女性が妊娠の機会に、共謀した日本人男性に内容虚偽の胎児の認知届を提出させることによりまして、出生した子供に日本国籍を取得させる、その上で、日本人の子供がいることを理由にその母親として合法的な在留資格を取得しようとする事案の摘発事例がございます。警察では、この種事件を偽装認知事件ととらえているところであります。

 この種の事犯は、いわゆる偽装結婚事案と同様に身分関係を偽装するものでありまして、また、それ自体が犯罪を構成するものであります。それからまた、私どもで第一線警察からの検挙報告を受けている事件などからしますと、ブローカーなどの介在等、組織的な背景もうかがわれるところであります。

 警察としましては、今後とも、入国管理局等の関係機関との連携を強化しまして、この種事犯の取り締まりの強化に努めてまいりたいと考えております。

丸谷委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

赤松委員長 次に、松原仁君。

松原委員 民主党の松原仁であります。

 まず最初に、この人身取引議定書の関係で御質問いたしたいと思います。

 人身取引対策行動計画や、また今国会提出されている刑法等の一部を改正する法律案において、被害者保護の問題でありますが、被害者には在留特別許可を認めるなど一定の前進は見られております。しかし、多くが当局の裁量にゆだねられているというのが事実であります。このため、我が党は、被害者の保護が果たして十分に図られることになるのかに懸念を持っております。

 例えば、アメリカにおいては、二〇〇〇年に、人身取引を犯罪であると明言し、人身取引業者を訴追し罰すること、その被害者を保護し社会復帰させること及び人身取引を防止することを米国政府に義務づける人身取引被害者保護法が制定されております。

 また、韓国においても、本条約批准に向け、二〇〇四年、売春及び買春行為等の全般に関する規制と被害者の保護について定める性売買あっせん等の行為の処罰に関する法律及び性売買防止及び被害者保護等に関する法律が制定され、人身取引の取り締まりと被害者の保護に着目した新規立法が行われております。

 我が国においても、人身取引の取り締まりとともに、被害者の保護、支援を総合的に規定する法律を制定すべきではないかと思いますが、政府の見解を伺いたいと思います。

鈴木政府参考人 政府といたしましては、昨年十二月に、人身取引対策関係省庁連絡会議におきまして、人身取引の防止、撲滅、被害者の保護を柱といたします包括的、総合的な人身取引対策行動計画を策定いたしまして、関係省庁が連携して人身取引対策を推進しているところでございます。

 人身取引被害者の保護につきましてでございますが、その行動計画におきましても、その被害者を保護の対象として明確に位置づけ、被害者の状況に応じ、一時保護のためのシェルターの提供、被害者の帰国支援等のきめ細かな対応を行うこととしており、関係省庁が一体となってこれらの施策を適切に実施することにより、人身取引被害者を適切に保護してまいりたいというふうに考えております。

 被害者の保護、支援を総合的に規定する法律を制定すべきとの御質問でございますが、被害者の保護につきましては、現在御審議をお願いいたしております入管法の改正のほか、現行法制度におきましても、保護をするべき施設でございます婦人相談所は、国籍にかかわりなく被害者を保護することが可能となっておりますこと、それから、本年度の新規の予算措置として、民間シェルター等への一時保護委託制度を開始したというところでございまして、こういったことから、基本的には、現行法体系の中でも十分効果的な政策展開が可能であると考えておりまして、まずはこれらの対策を着実に実施することが重要であるというふうに考えております。

松原委員 現行法で十分かどうかというのは、ひとりよがりになってはいけない議論でありますので、さらに、我が党はこういった方向を持って議論を進めていきたいと思っております。

 次に、国際組織犯罪防止条約密入国議定書についてお伺いいたしますが、現状の難民認定審査では、難民認定申請書が出されてから最終結果が出るまで、数カ月から場合によっては約一年と大変長期かかる場合があります。このため、長期にわたる難民認定審査期間中は入管当局や警察による強制収容、強制送還が見送られやすいことを利用し、虚偽の難民申請をし、強制退去を免れようとする不法滞在外国人が多いとの報道もあります。

 こうした報道等が事実だとすれば、それは、別途入管当局や警察において何らかの対策が必要だと考えますが、根本的な解決方法としては、迅速な認定審査を行えるようシステムを構築し、可能な限り短期間で難民か不法滞在者かなどの法的地位を確立させていくことが肝心であります。これに関して政府はどのような取り組みをしているのか、お伺いいたします。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 委員が御指摘のとおり、現在、難民認定審査におきましては、申請から最終的な判断まで約一年間を要するという状況にございます。このような状況を踏まえまして、難民認定手続の処理体制につきましては、その強化に努める一方で、手続を担当する難民調査官の資質、能力の向上を図るため、定期的に必要な研修を実施するなどしておりまして、高度な専門的知識を有する難民調査官の育成に取り組んでおるところでございます。

 今後とも、引き続き、体制整備に努めるほか、これまでの事案処理を通じまして蓄積された知識、情報を有機的に活用するなど、より一層効率的、効果的な審査を行うことにより、適正かつ迅速な処理に努めていく所存でございます。

 なお、本年の五月十六日からは、昨年六月二日に成立いたしました入管法の一部を改正する法律が施行されますところ、これによりまして、今後、不法滞在者から難民認定申請が行われた場合でありましても、仮滞在を許可いたしまして、一たん退去強制手続を停止しまして、難民認定手続を先行して行うということが可能となりましたので、新たな制度を適正に運用することによりまして、事務処理の迅速化を図っていきたいと考えておるところでございます。

    〔委員長退席、大谷委員長代理着席〕

松原委員 とにかくこういったものは、その処理の迅速化というのは極めて重要でありますので、くれぐれもそういった方向で新しいシステムの構築等を目指していただきたいと思います。

 それでは、目下の国際状況等についてお伺いしたいと思っております。

 一つは、五月一日午前八時過ぎに在日米軍司令部から日本政府に通報があったわけでありますが、北朝鮮がミサイルを発射したと思われる、こういうふうな話であります。

 これに関して、このときに、このことに関するのは当然総理大臣、外務大臣、防衛庁長官等がこういった緊急時に対応することになっているわけでありますが、このお三方は恐らく外遊をなさっておられたと思うわけであります。したがって、その間は臨時代理がこれに対応したというふうに思っているわけであります。

 大変にこの北朝鮮の問題というのは国民の関心事であり、日本にとっては最も真剣に考えなければいけない事柄であって、この北朝鮮のミサイル発射と合わせた、この時期におけるこのことに対してどのような対応をとったのか。そして、そのときのこれに対応する各大臣もしくはその臨時代理がどのような足取りをたどってこれに対応したのか。これについて、きょうは質問通告をしておりませんが、理事会においてこういった事実関係を一度議論していただきたい、このように思っております。理事会でお諮りいただきたいと思います。

大谷委員長代理 はい、そのようにしたいと思います。

松原委員 ありがとうございました。

 次に、この連休中といいますか、連休前後でありますが、小泉総理が先日、ロシアの六十周年記念式典に参加をしたわけであります。この式典に参加をしたことに関してお伺いをしたいわけであります。

 日本政府として、六十年前、日ソ不可侵条約を破棄してロシアが日本に侵攻したわけでありますが、これに対してはどのような見解を持っているのか、また、このことに対してソビエトに対して、ロシアに対してどのような抗議をしてきたのか、これについてお伺いいたしたいと思います。

篠田政府参考人 お答え申し上げます。

 日ソ不可侵条約と申されましたけれども、正確には日ソ中立条約のことを指しておられるのかと思いますが、この条約は、一九四一年四月二十五日に締結されまして、有効期間は五年間でございますので、一九四六年、昭和二十一年の四月二十四日まで有効であったわけでございます。

 その間、一九四五年の四月五日に本条約の廃棄通告をソ連が行ったわけでございますけれども、それにもかかわらず、条約は昭和二十一年の四月二十四日まで有効であったということでございまして、その間に、一九四五年の八月九日にソ連は対日宣戦布告を行ったわけでございますので、これは国際条約である日ソ中立条約の明らかな違反であるというふうに考えておりまして、この点については、累次にわたり、ソ連側、そして現在はロシア側に我が方の立場を明らかにしておる次第でございます。

松原委員 さらに、その際に日本兵がおびただしくシベリアに連れ去られ、日本の家族がじゅうりんされ、迫害され、そしてシベリアに抑留された、こういった経緯がその後あるわけでありますが、この補償問題等は現在どのようになっているのか、どのようにこの点に対してロシア側に対して、ソビエトに対して、抗議をしてきたのか、お伺いいたします。

篠田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生今御指摘になられましたいわゆるシベリア抑留問題につきましては、これは真の信頼関係に立った日ロ関係を築いていくために真摯な取り組みがロシア側から必要だというふうに考えております。

 補償の問題、つまり請求権の問題につきましては、日ソ共同宣言の第六項によりまして、戦争の結果として、すべての請求権を、相互に、放棄しておりますので、これは両国間においては既に解決済みの問題ではございます。

 しかしながら、一九九一年、ゴルバチョフ大統領の訪日の際でございますけれども、いわゆるこの問題についての一九九一年協定というものが結ばれまして、遺骨収集でありますとか埋葬地の墓参、資料の調査、慰霊碑建立等々の問題でさまざまな取り組みを行っておるところでございます。

 したがいまして、引き続き、この九一年協定に基づきまして、協力の一層の加速が得られますように、ロシア政府にさらなる取り組みを働きかけていきたい、このように考えております。

松原委員 請求権の放棄ということでありますが、時間の問題があると思うんですよね。戦争という言葉で表現したときに、それが日本側が一九四五年八月十五日以降に連れ去られた人のどの部分、どの時間的なものまでこの請求権の放棄になるのかどうかというのは、いろいろな厳密な議論が恐らくあるんだと思います。私は、もちろんそういった請求権の放棄というのが一たんなされた、一九四五年の終戦のときの段階までという認識でありますが、その後のごたごたの段階を含むどこまでどうなのかというのは、もう一回詰めておく必要もあろうかと思っております。

 私がきょう今ここで質問したいのは、こういった状況がある中において、小泉総理はロシアの六十周年記念式典に参加をしたわけであります。御案内のとおり、このロシアの六十周年の式典には、バルト三国から唯一ラトビアだけが参加をしたということは御承知のとおりであります。

 これは新聞記事に載っておりますが、バルト三国のうちラトビアだけが参加した、なぜならば、エストニアとリトアニアは、自由と民主主義を弾圧する国の祝賀式典に出ることは戦死者たちへの冒涜であると言って式典参加をしなかったわけであります。ラトビアは、しかしながら、自国の意向が反映されないままその運命が決まるような過ちを繰り返してはいけないと参加したが、ラトビア大統領はこの六十周年の記念式典において、対独戦線終結は共産主義のソ連がナチス・ドイツにかわっただけで、ラトビアの真の解放はソ連崩壊まで訪れなかったと言明し、さらに、いわゆる独ソ不可侵条約の秘密議定書等を含め、旧ソ連によるバルト併合についての謝罪をロシアに求めた、こういうふうに書いてあるわけであります。

 これに対してプーチンさんは、日本の小泉総理大臣とは違いまして、二回にわたる謝罪は行わないとこれまた突っぱねたわけであります、これがいいかどうかということは別にしまして。

 私が申し上げたいのは、ラトビアの大統領がこのようなことを言ったわけでありますが、今回小泉総理は、この六十周年の記念式典に参加して、ロシアに対して、こういった日本の国益を背景にして、例えば今言った不可侵条約を一方的に破棄したことに対しての抗議をしたのかどうか、これをお伺いいたしたいと思います。

篠田政府参考人 今回、モスクワ訪問中に、短時間ではありますけれども、日ロ首脳会談が行われたわけでございます。会談は非常に短時間でございましたので、中立条約の問題につきまして総理から言及をされるということはなかったというふうに承知しております。

松原委員 私は、外交というのはやはり外交上のカードというものが極めて重要だと思っておりまして、少なくともロシア、旧ソ連でありますが、それに対しては、国際法的に考えても今言ったように一方的な過失が向こうにある。もちろん領土問題もまだ現存しているわけでありますが、人道的にも許されざるシベリア抑留問題等も含めて、我々はやはり、こういったことに対しては、先人のまさにみたまを大事にするという観点からもきちっと主張していくというのは政治として必要なことだと私は思っております。

 これに関して、町村大臣、御所見があればお伺いいたします。

町村国務大臣 いついかなる状況でどういう話をするか、それぞれあろうかと思います。一九五六年日ソ共同宣言という形で日ソ間の国交が正常化をしたということ、もちろん、未解決の問題は当然領土問題であったわけでございます。その折に、当然、今言われた抑留者の問題あるいは不可侵条約の問題といったようなことも念頭に置きながら、どこまでどう具体に議論されたか、私は今議事録が手元にないからわかりませんけれども、そうした戦争中あるいは八月十五日以降のことを踏まえて、すべてをある意味では包括した形で五六年の共同宣言ができ上がったものと理解をしております。

 したがって、それぞれの国の間に起きたことを常に首脳会談で必ずすべて取り上げるという性格のものでは必ずしもないのではないかな、こう思います。これから日ロ間では、基本的なそうした領土問題を解決しながら、さらに日ロ間の関係をどのように改善していくのか、平和条約を結びながら、政治の面、経済の面あるいは文化の面、両国の戦略的な利益に、プラスになるようないろいろな活動をやっていこうというときに、常に過去の問題を取り上げるのが本当に日本の外交としていいことなのかどうなのかということは考えなきゃなりません。

 ただ、今の問題、依然として議論にはなっております。例えばシベリア抑留者に関する日ロ政府間協議というものがありまして、ごく最近時点でも、例えば平成十五年十月二十日、二十一日、第一回、両国関係における困難な過去の遺産の克服の一環としてこうした問題を取り上げる。第二回、平成十七年、ことしの二月十五日にもこの抑留者の問題について、今まで平和祈念事業特別基金による調査等々いろいろなことが行われているけれども、こうした問題について幅広く議論するというようなことで、現に外交交渉がついことしの二月にも行われているというようなこともあるわけでございまして、もうこれは全部済みになったから一切取り上げないということではないということもまた御理解を賜りたいと存じます。

    〔大谷委員長代理退席、委員長着席〕

松原委員 私は、それは大臣がおっしゃるのもそういった側面があろうかと思いますが、特に、この六十周年という式典、まさに今次世界大戦に関する式典であるからこそ、参加をするということは、ある種ロシアに対して賛意もしながら行くという前提の中において、逆に、だからこそこういったことに触れるべきだったのではないかなと私は思っているということを申し上げたいわけであります。これは、戦争六十周年ですから、終戦六十周年の式典だからこそ触れるべきだったんではないかということを私は申し上げたいわけでありますが、これはこれで、次に参ります。

 昨今の、例の中国における反日暴動でありますが、結果として中国側はきょうに至るまで陳謝をしてこなかったわけであります。謝罪をしてこなかったわけであります。

 実務的にお伺いしたいわけでありますが、まず第一に、この反日暴動によって在中国日本大使館等が被害を受けた、その原状回復、補償について、中国は、同大使館は中国の所有物であって、日本への賃貸物件であって、家主という立場で原状回復、補償を行うということを述べたと聞いておりますが、このことは事実でしょうか。

逢沢副大臣 四月に反日、抗日デモが起こり、その際、一部の中国人が暴徒化をし、暴力破壊行為、活動を行ったわけであります。

 その結果、北京におきます我が国の大使館また大使公邸、あるいはその翌週と記憶をいたしておりますけれども、上海におきまして我が国の総領事館が相当な被害を受けたわけであります。

 あってはならない大変遺憾なことであるというふうに承知をいたしているわけでありますが、その後、町村外務大臣が李肇星中国外交部長と四月、五月、二度にわたりまして会談を持ったわけであります。

 この反日デモまた破壊暴力行為につき、大臣は李肇星外交部長に対し、中国政府から、日本政府また国民に対する明確な謝罪、また原状回復を含む賠償、そして暴力行為を働いた者の処罰、そして再発防止について厳重に対応をとってもらいたい、その四点を指摘したわけであります。

 その後、原状回復、いわゆる広い意味での賠償のことについて日中間で幾つかのやりとりがございました。また、中国当局も幾つかの発言をいたしてきたわけでありますが、当初は、いわゆる中国の北京におきます大使館、これは松原先生御承知のとおり、我が国の国有財産ではございません、中国政府からの貸与物である、そういう状況の中で、いわゆる賃貸契約に基づく原状回復と受け取れる旨のやりとりが日中間であったことは事実というふうに承知をいたしております。

松原委員 それで、今逢沢副大臣は四項目おっしゃったわけでありますが、もし、その他の三項目が今どうなっているか、わかればどなたか簡潔に御説明いただきたいと思います。副大臣でも結構であります。

逢沢副大臣 私も今週の前半訪中をいたしまして、李肇星外交部長また武大偉副部長と、二度にわたります日中外相会談を踏まえ、幾つかのやりとりをさせていただきました。

 簡潔にお答えをさせていただきますと、いわゆる破壊活動に対する謝罪、これについての言及は、大変遺憾なことでありますけれども、中国側からはいまだにございません。

 また、再発防止について、これは中国としては積極的に対応している。今後このような破壊活動あるいはまたいわゆる反日、抗日デモ、そのようなことは中国にあって違法な形では起こらない。そのことについては十二分に対応をとっている。同時に、先般の破壊暴力行為について直接違法な働きをした者については、既に当局が厳重な処罰を行っている。そういった言及が李肇星外交部長また武大偉副部長からございました。

松原委員 そうすると、中国側が原状回復をする、こういうことでありますが、これについては、例えばどういう見通しで行われるのか。向こうの思惑でありますが、私はこれについてさらに議論を進めていきたいんですが、どういう思惑でやるのか。

 つまり、この場合の原状回復、補償をするのは、例えば、もちろん日本でいえば業者がやるわけであります、その仕事ができる業者さんが入ってやる。こういった業者選定に対しては、日本は無関係で中国がそれを一方的に決めるのか。もしそうであるとするならば、それは大変に難しい問題、機密の保持の可能性とか、まさか盗聴器をつけないとは思いますが、それはわからないわけでありますから、機密保持から考えれば、例えばそういった意味において、どこの業者をだれが頼むのか。それは家主の中国が日本にお任せしますといっているのか、いや、こちらの方で業者選定しますといっているのか。その辺がもしわかればお伺いしたい。

逢沢副大臣 原状回復について若干補足をさせていただきたいと思うわけであります。

 当初、中国側は、北京の日本大使館については原状回復について基本的には応じる、その他のことについては言及をしていない、そういう段階があったわけでありますが、町村大臣が李肇星外交部長に、大使公邸あるいは上海の総領事館、また民間企業も大変な被害を受けている、この部分について大変強く原状回復あるいはまた広い意味の賠償を求めました。

 その結果、今週になりまして中国政府当局は、大使館に加え、大使公邸あるいは上海総領事館、こういったことも含め原状回復について積極的に応じる、そのことを日本側に通告してきたわけであります。私も、李肇星外交部長との会談の中でそのことを確認させていただきました。

 そこで、松原先生の御質問でございますが、そういう意味で、中国政府の原状回復について応じるという姿勢がここで日中間で確認をされたわけでありますが、どういう形でこれを進めるのか。細かい具体的な話になれば、具体的に言えば業者が入ってやらなければならないわけであります。それをどっちが選ぶのか等々のことについては、まさに日中両国の間で事務的に適切にその詰めを行っていかなくてはならない、そのように理解をいたしております。

 当然、我が国の大切な大使館あるいは総領事館でございますので、機密の保持その他万全の状況を確保する中で原状回復がなされなくてはならない、当然のことと承知をいたしております。

松原委員 それは中国側の思いも含めての話だと思うんですが、私はここは、大臣が既にもう原状回復のことも強く申し入れてということであると、そごはあるかもしれません。この問題に対しては、中国がウィーン条約に明らかに抵触しているわけでありますから、この問題に謝罪、陳謝をしない限り、補修等の事柄も進めるべきではないと私は思っております。

 やはり、この問題で中国側が原状回復と補修をしてしまえば、日本側が謝罪要求をしてもそれは極めて迫力のない議論になってしまうと私は思っておりまして、これは外交の一つの考え方で、それは大臣は、松原委員、ちょっと私とは考えが違うよといえば違うかもしれませんが、私としては、謝罪ないままで、中国側がこのことで謝罪しない、そのままで原状回復をし、結果として謝罪というものが永遠にかち取れないということのかなりの前進になってしまう。

 言うならば、私は、それならば謝罪があるまでは原状回復にむしろ応じない。それは、そこに勤めている外務省の外交官の方々は、ちょっと、ガラスが割れていたりしていれば寒いかもしれないし、大変な苦労があるかもしれない。しかし、これは国と国との面目をかけた闘いでありますから、私は、謝罪がない限りは原状回復にも応じさせないというぐらいのことを日本政府は考えるべきだと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

町村国務大臣 そういう御議論もあるんだろうとは思います。

 しかし、一国の大使館の大きなガラスがずたずたになった状態でいつまでも置いておいていい、あるいは、今委員御指摘になったように、執務室の窓が破れたままで、そのままにしておいていいということにはやはりそれはならないんだろうと思います。

 謝罪は謝罪として今後しっかりと私どもは求め続けてまいりますけれども、やはり直すものは直すということは、また別の問題として対応していいのではないか、こう私は考えます。

松原委員 私は、極端なことを言えば、北京オリンピックが仮にあるとして、北京オリンピックの開催地の変更も、謝罪がなかったら我々は言うべきだと思いますよ、はっきり言って。そういった非常識な国ならば、オリンピックを開催するのに適切かどうか議論をするべきだ。何か東京都知事の石原慎太郎さんもそういうのを本に書いているみたいですけれども、これは事実、ありますよ。

 しかし、それはそれとして、私は、北京オリンピックが仮に二〇〇八年にあったとしたら、もしその段階まで中国が謝罪をしないで、日本大使館に来て、あれは中国の暴動があの窓ガラスを割ったんだと国際社会に見せればいいですよ、中国というのはそういう国なんだと。

 少なくとも、ここで補償を受け原状回復を受けたら私は中国から謝罪がとれないと思いますが、大臣、見通しを言ってください。

町村国務大臣 見通しを言えと言われても、私どもは、それを求め続けるということでございます。

松原委員 私は、あくまでも、謝罪がない段階で補修はするべきではないという、私の外務委員会の委員としての見解を申し上げておきます。

 続いて、先般も中国の教師用教本、ティーチャーズマニュアルの議論をいたしました。あの古いものはきょうは持ってきておりません。これは新しい教師用の教科教本です。こういったものはたくさんあるわけであります。

 まず、これは実務的にお伺いしたいわけでありますが、このいわゆる中国の教師用教本、こういったものを外務省は従来から入手し、そして分析していたのか、このことをお伺いいたします。

近藤政府参考人 お答えいたします。

 中国におきましては、学年ごとに複数の教科書が出版、使用されております。外務省では、我が国の中学校に相当する学年のものを中心に、これまで主要な歴史教科書、及び、一部につきましてそれに準拠しました教師用の指導参考書、いわゆるティーチャーズマニュアルといったものも入手をしております。そして、その教科書とマニュアル、それぞれについて、現在、分析を進め、その結果を踏まえてどういう対応をするかを検討しておるところでございます。

松原委員 ちょっと細かい点をお伺いしたいんですが、中国が複数のと、複数のというのはどういう意味か非常に難しくて、日本の場合はそれぞれの地域が選択するわけでありますが、中国の場合は、教科書の選択の余地があるんですか。

近藤政府参考人 中国におきましては、中国政府から権限を付与された出版社が教科書を作成し、そして、それに対して教育部、日本の文部科学省に相当いたしますが、教育部のもとに設置されております検定委員会というのがございまして、その委員会が検定を行います。そして、その検定をパスした教科書につきましては、学校あるいは地方政府がそのリストの中から選定をするということで、一応、複数の教科書があり、かつ、学校や地方政府はその中から選択ができるという体制になっているものと承知しております。

松原委員 ちょっとこれは見解の相違があるので議論したいんですが、きょうは時間がもうありませんから、次回の質問に回します。

 私が申し上げたいのは、この中国のティーチャーズマニュアル、この中に、この間も大変に鮮烈な、牢記という表現があったと。日本に対しての恨みを胸に深く刻み込むという、こういう表現があった。きょうはまた別の部分の表現も、ちょっと一カ所、皆さんに申し上げたいわけであります。

 なぜそれを言うかというと、中国の歴史教科書が、客観的事実を教える歴史教科書というよりは、思想教育、かつて文化大革命とかありましたが、あのような思想教育の一環として教科書、歴史教育が使われているということを、短時間でありますが、皆様に承知をしてもらって、そういった観点から、どういうふうに我々は対応するのかを考えなければいけない、これが骨子であります。

 中国の教師用教本の古いものですね、この間持ってきた九五年版というものがありますが、それの四十五ページにある内容は、こういう内容が日本語訳で書いてあります。

 九・一八事変、満州事変の勃発を説明するときに、教科書本文に従って解説するが、加えて、スライドやビデオを活用し、直観的な教育を強化するのが望ましい。本課の内容は、愛国主義教育を行う上で最もよい教材であり、原文は最佳素材、思想教育が予期された目的を達成するために、授業に臨むときは教師自身が、日本帝国主義を心から恨み、原文は痛恨、蒋介石の無抵抗を心より恨み、国土の喪失を恨み、憂国憂民の感情を、心に持たなければならない。松花江のほとりの歌を、教師や生徒が沈痛な思いを込めて歌うか、録音を教室で再生するが、その際、教室の雰囲気に気を配り、思想教育の実質的効果が上がるように心がけなければならない。

 これが四十五ページの記述であります。

 私は、前回のこの外務委員会の質疑でも申し上げたんですが、教科書ももちろん問題だ、しかし、教科書を教えるのに、教師がどのようにこの教科書を教えるべきか、このティーチャーズマニュアルに踏み込んでいかなければ、反日教育は変えることはできない。

 教師用マニュアルのこういう文書、この間も、牢記、深い恨みを持つようにしむけなければいけないとか、戦後の記述は一カ所しかないとか、戦前の記述に関しては日本帝国主義に対する恨み恨みのオンパレードで、三十回も四十回もそういうフレーズがある。

 しかし、これは同時に、きょう申し上げたいのは、思想教育として達成される、愛国主義教育として達成される、つまり、思想闘争の一環としてこれが使われているということが問題だということを私は指摘したいわけなんですよ。ほかの部分でも、このことを使って思想教育のメリットを生かさなければいけないとか、日本語に訳するとそういった箇所がたくさんあるんです、ティーチャーズマニュアルに。

 そこで、ちょっとお伺いいたしますが、中国のいわゆる愛国主義教育というのが盛んになってきたわけであります。ちょっと時間がなくて大変あれなんですが、中国の愛国主義教育については、一九九四年に愛国主義実施要綱というのがつくられたというふうに聞いております。この愛国主義実施要綱について、つくられた段階で外務省としては、それを取り寄せ、分析し、それがなぜつくられたか、そういったものについて調査をした経緯があるかどうか。今わからなければ結構なんですが、ちょっとお伺いしたい。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 確かに、そういうものについて私どもとして入手いたしましたけれども、ちょっと今手元にございませんので、後ほどよく調べてまた御報告申し上げたいと思います。

松原委員 私は、齋木審議官は大変に御信頼申し上げております。それはそれとして、しかしながら、この愛国主義実施要綱は、私は、中国はそれで一つの教育の、まさにそれまでの愛国主義教育をさらに徹底して進めてきた原点であります。そこに書いてある内容は五項目で、これを国会図書館の方がちゃんと分析したものを出していますから、これは当然外務省の大洋州関係の方は読んでいるべきなんですよ。

 この中に、愛国主義教育は、教育機関関係者の仕事だけではない、社会を挙げて愛国主義的雰囲気を醸し出すことが必要であると書いてある。この段階で、戦略上、愛国主義教育と学校教育が完全にリンクしているんですよ、見ればわかるんだけれども。

 愛国主義教育のための基盤基地というのは、反日の記念館がかなり多いのは御承知のとおりなんですが、愛国主義教育がなぜそこで始まったか。私は、中国国内におけるさまざまな矛盾点があって、それに対して、中国共産党の信頼感を高めるための一つの戦略として思想闘争が始まったというふうに申し上げたいんです。時間がないので細かい議論、細かい実証データは今申し上げません。

 であるならば、私たちは、実はいわゆる愛国主義教育と反日教育、それから例えば反日の拠点、愛国主義拠点といったものは、まさに一括して、一つのトータルとしての思想教育の実を達成しよう、こういうことになるというふうに思っております。

 逆に言うならば、大臣、この歴史教科書の問題は、単に歴史教科書の問題であるという議論ではなくて、中国の思想教育の一環としてのツールとして使われているんだということを御認識いただきたいというふうに思うわけであります。

 そういう中で、その思想教育の一環として教科書の中で使われている項目の幾つかを、もうぎりぎり時間になっておりますので質問したいと思いますが、一つは、例えばこの中国の教科書の中では、特に高校生の教科書の中で田中上奏文というものが使われております。この田中上奏文というのは、簡単に言ってください、どういうものでしょうか。

近藤政府参考人 委員御指摘のいわゆる田中上奏文なるものは、昭和二年に、当時の田中義一総理が天皇陛下に対して、日本は中国を侵略するべきだというふうに上奏をしたと言われている文書でございますが、その真偽のほどについては、専門家の間ではかなり否定的というふうに了解しております。

松原委員 ほとんどインチキだと言われているんですね。これは読売新聞の五月五日でありますが、「しかも、教科書に記載された中国側の「史実」には、意図的に反日感情を植え付けようとする表現が多い。 高校教科書にある「田中上奏文」がその一例である。田中義一首相が中国侵略計画を昭和天皇に密奏した文書、と記述しているが、中国側のねつ造だったことは、とっくに立証されている。」これはもうほとんど間違いなくインチキだとこれだけ言われているんですよ。それが中国の教科書ではこうやって載っているわけですね、きちっと載っている。それが日本の中国侵略の大きな根拠として、理由として説明されている。

 例えばこれだけじゃなくて、百人切りの問題についても、御遺族の二家族は名誉毀損で裁判を起こしているんですよ、某マスメディアに対して。どうもそれは、その御家族の出している方のいわゆる名誉毀損の方が正しいんじゃないかというのが通説になっているにもかかわらず、これも中国側は、日本の残虐行為のあかしとしていろいろと教科書に記述しているんですよ。

 私はお伺いしたいんですが、日本国内においてはほとんどこれは現実と違うということが証明されているようなこういったことに対して、中国が子供たちの教科書に当然の事実として載っけていることに対して抗議をしていますか、お伺いしたい。

近藤政府参考人 中国の青少年に対する教育というのは大変重要でございまして、事実関係あるいは具体的な教科書あるいはマニュアルの表現、指導のための表現等につきまして、現在、分析官の協力も得ながら分析をいたしまして、今後適切に対応していきたいというふうに考えております。

松原委員 この問題は極めて重要な問題でありまして、中国の教科書を私も取り寄せて、ティーチャーズマニュアルも分析しております。

 内容も変わってきております。新しいティーチャーズマニュアルでは、南京大虐殺に特化したり、例えば台湾に対しての批判をよりウエートを増したり、いろいろなデータの変化はあります。しかし、私たちは、その中で、一九九五年以前のものも含めて、これに対しては総括をして中国には言うことを言っていかなきゃいかぬ。このことによって、無辜の人たちが物すごく洗脳されてしまう。洗脳という表現は極端でありますが、もう完全にそうですよ。思想教育として、そのメリットを上げるために、教室において教師は真剣にやれとか、みずからが恨みを胸に抱いてやれとか、こういう表現をしているわけでありますから。

 その中で、町村大臣にお伺いしたいわけであります。

 町村大臣も、この中国の教科書問題については議論をしているわけでありますが、このことの今後の決意と、中国の教科書だけではなくて、ここにあるようなこういったティーチャーズマニュアル、ここに記されたところまで、本当は踏み込みたくはないけれども、余りにもそれは極端であるがゆえに、踏み込んで何とかすべきではないかということを大臣として中国に対してこれを言わなければ、第二第三のもっと極端な反日暴動が必ず起こると私は思いますが、大臣としてこれに対してどう立ち向かうのか、御所見をお伺いしたい。

町村国務大臣 松原委員を初めとして、国会でいろいろな委員の方々から、中国の教科書のあり方あるいは抗日記念館のあり方等について御指摘をいただいているところでございます。

 そういったことを踏まえながら、先般私は、四月十八日、トウカセン国務委員との話の中で、まさに愛国教育の問題点、あるいは教科書の問題点、抗日記念館の問題点を指摘し、トウカセン委員からは、それが真実のものであるならばどうぞおっしゃってください、こういう発言がありました。

 それを受けて、先般、五月七日の日中外相会談で、今、近藤部長がお話をされたような、私、日本としては、詳しい内容は、今後具体的に一定の調査を経た上で提起はするけれども、概括的に言うならば、事実関係に疑問のあるもの、残虐な表現があるもの、戦後の日本の平和国家としての発展、国際貢献に対する記述が少ない、あるいは抗日記念館についても事実関係に疑問があり、あるいは過度に刺激的なものが見られる、こうした問題点があるということを先方に指摘をしておきました。

 したがって、今後、これは外務省だけの作業ではなかなか行き届かない点もあろうかと思いますので、文部科学省とも相談をしながら、教科書等について、きちんとした調査をした上で先方に対して問題提起をしていこうということで、今作業を始めているところでございます。

松原委員 もう質問を終わりますが、できればこの教師用教本のあり方、ここまで踏み込まない限りにおいて根本的な解決にはならないということと、ここにあるのは、まさに歴史を客観的な歴史ではなくて思想教育として使おうという意図が見えている、文言で明確に書かれているということも指摘しておきますし、あと、在駐日の王毅大使がこの反日暴動はこの教科書が原因ではないということを言っていますが、ああいう発言を向こうがしてくるということを踏まえて、いや、違う、その原因にあるに違いないということも含め、日本の外務省としてきちっと言うことを言ってほしい、このことを申し上げまして、私の質問といたします。

 以上です。ありがとうございました。

赤松委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一でございます。

 条約の審議についてまず行わさせていただきます。

 今回の組織犯罪防止条約の二つの議定書でございますが、そもそも組織犯罪防止条約、これが国内法のさまざまな改正を引き起こす条約であるということでございます。共謀罪の創設などの関連法、これはまた刑法、あるいは入管法、あるいはまた旅券法というような形での法改正ということでございますが、私は昨年からこの外務委員会に所属をさせていただいて、あるいは憲法調査会でも提起をさせていただいておりますが、我が国の条約の国会における審査、これはもっともっと行政当局に対して強くかかわりを持つべきであろうということを提起させていただいております。

 例えば多国間の条約については、国会が留保をつけるというようなことも含めて、国内法に対する影響が条約は大きい。我が国は条約が国内法を規定するといった法体系をとっておるだけに、条約が署名されて後は批准、しかも国会では、きょうの条約もそうですが、反対するか賛成するか、附帯決議ももちろんつけられない、そして条約に留保もつけられない、こういった国会のあり方は私は大変疑問に思っております。条約の署名、批准に当たって国会の関与を強めるべきというふうに考えておりますが、この点について、大臣、いかがお考えでしょうか。

町村国務大臣 この点につきましては、かなり本院においても長い間議論があった問題であるというふうに理解をいたしております。大平外務大臣時代の昭和四十九年に衆議院外務委員会において、我が国の憲法上、いかなる国際約束の締結について国会の承認を有するかについての政府見解というものについて、今までの慣行というものを整理しながら統一的に明らかにしたいわゆる大平三原則というものがここである程度整理をされたわけでございます。

 私は、その後これに沿ってずっと国会との関係については運用をされてきている、このように理解をいたしておりまして、私も改めてこの大平三原則なるものを勉強いたしましたが、私は、今の時点でこれを変えなければならないという積極的な理由は率直に言って見当たらない、これはこれでよく整理をされたものではないだろうか、こう理解をしているところでございます。

武正委員 ちょっと次に飛んでしまったんですが、国会の関与をもっともっと強めるべきだということも含めてお答えをいただいたというふうに理解をいたします。

 ただ、昭和四十九年の大平外務大臣ですか、当時の外務大臣の大平三原則、ことしは昭和でいえば八十年ですから、もう三十一年経過をいたしております。やはりこれだけ外交が国内の内政に与える影響が大きい今日でございます。日本の国際的な地位というものもこの昭和四十九年から大きく変わってまいりました。そうした中で、私は、やはり国会の関与はもっともっと強めていいということで、大平三原則がそのままでいいとは到底思えません。

 大平三原則、繰り返しになりますが、第一が、国内の法律にかかわる事項については国会に提出をしよう、あるいは財政にかかわる事項、それから政治的な重要度というような観点からの国会への提出あるいは批准を求める、こういった三原則でございますが、やはりこの政治的重要度というのは、ある面、行政当局の裁量の働く余地が多いということと、このときはいわゆる交換公文について問題となりました。このときは、日米原子力協定に基づく濃縮ウランの交換公文を交わした後、では外務委員会に提出しますよ、あるいは国際ココア協定についても、では外務委員会に提出しますよというようなことが後から問題になりましての改めての三原則の明示でございました。

 例えば、交換公文でいえば、昨年の十二月十四日、町村外務大臣はベーカー駐日大使とミサイル防衛技術協力、包括的な技術協力について交換公文を交わしております。これまでは一回一回交換公文を交わすというものを、すべてまとめてというような交換公文になったということで、私はきのうも安保委員会でこのミサイル防衛構想の質疑に立ちましたが、日米の交換公文というのは我が国の安全保障、防衛にとって大変大きなものであるというふうに考えておりますが、例えばこの交換公文も国会に提出をするとか外務委員会に提出をするとか、あるいはそこで議論をするとか、こういったことはこの大平三原則ではないわけでございます。

 私はやはり、イギリスやアメリカなど諸外国を参考にしますと、例えばアメリカでは、国会、特に上院外交委員会でありますが、修正、留保、了解、意思表明、ただし書き、そしてしかも重要でない条約であってもすべて国会で採決、一括採決のようなやり方もありますが、これをいろいろ工夫している。

 イギリスにおいても、やはり三つの条件があります。歳入、いわゆる財政にかかわるもの。それから、もともと国会に例えば批准の要件がある規定がある。三つ目が、いわゆるポンソンビー・ルールということで、署名して二十一日、批准前に議会に提出する。あるいは、国家活動を拘束するすべての協定、確約、了解、通知、これはポンソンビー・ルールに基づいて、すべて討論ではありませんが、野党が討論を要求できるということなどがございます。あるいは、散会討論というような形で国会が関与することができるということもございます。

 町村外務大臣、ちょっと順序が逆になりましたが、大平三原則については先ほどお話がありました。私はそうじゃないということを申しましたが、国会がやはり国際間のさまざまな条約等についてもっともっと深くかかわっていくということは、私は、日本の外交、安全保障にとっても大変有意義である。もちろん国民の理解を、国会、代表を通じて理解を深めるとともに、さまざまな知恵やアイデアがその国際間の条約等の取り決めについてかかわってくることは大変重要であるというふうに思うんですが、この点について再度御所見を伺います。

町村国務大臣 それぞれの国の政治状況あるいは憲法の成り立ち、条約締結に当たってのいろいろな経緯があるんだろうと思います。日本は日本としての運用、慣行をやっておりますが、同じような議会制民主主義を採用している今のイギリスあるいはアメリカの例もお引きになられましたが、どこの国でも、やはり一定の範囲の国際約束というのは行政府限りで締結し得るということにはなっているんだろうと思います。ただ、さらにそれを超えて、一般的にそうした国際的な取り決めを結ぶ際に国会の関与を強めるべきというのが武正議員の御議論だろうと思います。

 私は、大いに、今でもそうでございますけれども、かなり詳細な議論が日本の国会の中では行われている、こう理解をしております。それはなぜかといいますと、しばしばいろいろな国の外務大臣とも話をしますけれども、別に恨み言を言っているつもりもございませんが、これだけ長時間外務大臣あるいは総理大臣が国会に出て答弁をしている国はまず世界に例を見ない、そんなにあなたは長い間国会に行ってどうやって外交をやるんだ、まことに不思議であるという質問を受けるほどでございます。

 そして、その中には、例えば条約の審議、あるいはこの中の何人かの方々が、例えば地位協定の問題なども大変詳しくいろいろ議論をしておられる方もいらっしゃいます。その地位協定の運用のまた解釈等についてもまことに緻密な御議論を展開される方がいらっしゃいまして、私はいつも敬服の念を持っているわけでございます。

 そういう形で、今あるものについてもかなり子細な議論がこの国会の中で十分行われている。そういう意味で、国会の関与は諸外国と比べてある意味では最も進んでいるのが日本ではないだろうかとさえ私は、印象でございますがそういう印象を持っておりますので、私は、今、結論として申し上げれば、大平三原則を改めるか否かという点については、今のままで十分ではないだろうか、そういう結論を持っているわけでございます。

武正委員 今の外務大臣のコメントでございますが、このゴールデンウイークも随分外務大臣そして首相が外遊をされまして、火曜日、私ども部門会議で、ゴールデンウイークの外務省からの報告を、大変な大部の報告をいただきました。とてもその時間では追い切れないというような外遊をされております。また、当外務委員会も、これまで外相の外遊について、国会としてそれをとめてきたということはないというふうに伺っております。

 そうした、外務大臣が海外での外交をやっていただく、これはもとより問題のないことでございますが、何といっても国会に対する説明責任あるいは国民に対する説明責任、これがあっての外交である、これは論をまたないというふうに思いますし、あえて申せば、日本外交の今の現状は、海外で外務大臣が走り回るよりも、まず国内における説明を重視する方が先である、こういう現状ではないかと私は認識をしております。

 さて、条約については以上で、次に移らせていただきます。

 まず、当初予定をされておりました四月二十二日の日中首脳会談が二十二日に行われなかった理由、これについてお答えをいただけますでしょうか。

町村国務大臣 ちょうどその折、私もインドネシアに行っておりました。二十二日に帰ったのかな。いずれにしても、ちょうどやりとりをやっている状況もその場におりましたのでわかっておりますけれども、たしか二十二、二十三、二十四のいずれかの間でしかできないだろうと。その間に、バンドンに行く時間もある、あるいは総理御自身がアチェの被災地の現場を見に行く必要がある、会議もある。

 非常に限られた時間の中で、それぞれやりくりをどうやってつけるかということで、細かい日程をいろいろすり合わせているうちに二十三日ということに結論がなっていったということで、特にこの日でなければならないということをあらかじめ決めていたわけではなくて、双方がジャカルタ、インドネシアに滞在中のどこかで時間をつくろうということで日程調整をしていた現場を私は見ておるところでございます。

武正委員 これは副大臣の方でよろしいでしょうか。私たちも外務部門会議で、二十二日の当初の予定が二十三日にずれ込んだことによっての影響ということで、当初、例えばミャンマーの首脳と日・ミャンマー首脳会談、こういったものも机を挟んで予定していたんだけれども、それが、日中首脳会談がいつ開かれるか、いつ開かれるか、こういった過程において、結局立ち話になってしまった、こういった報告を外務部門会議で受けたんですけれども。

 当初予定されていた首脳会談のうち、そうした立ち話になってしまったもの、あるいは取りやめになってしまったもの、これはどことどこがあるんでしょうか。お答えをいただけますか。

逢沢副大臣 どういうふうに御報告を申し上げたらいいのかと思うわけでありますが、私自身も実はそういった、まあレベルはもちろん中レベル、そんなに高いレベルではございませんものも含めてでありますけれども、国際会議に出席をし、できるだけバイの、その機会を通じて会談を持とう、そういう積極的な姿勢で臨んだ経験が何回かあるわけでありますが、相手方の都合、あるいは会議そのものの進行の状況等々によって、当初こういうものをこちらも望んでいた、あるいは双方で合意をしていたけれども、結果的にその時間が持てなくなった、あるいはちょっと会議と会議の合間を使って立ち話になった、そういう経験があるわけでございます。

 今回、小泉総理、今御指摘のように、ミャンマーのタン・シュエ国家平和開発評議会議長とは会議場内において短時間の立ち話を行ったという、結果的にはそういうことでございましたが、いわゆる冒頭申し上げました双方の都合等を勘案して日程調整を行った結果、そのようになったというふうに申し上げさせていただきたいと思います。

 また、カダフィ・リビア最高指導者との会談でございますけれども、これは会談の調整の詳細につきまして、相手国との関係もございますので、個別具体的なことをここで申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。

 ユドヨノ・インドネシア大統領、ムベキ南ア大統領、胡錦濤国家主席、カルザイ・アフガニスタン大統領、そしてアナン国連事務総長とそれぞれ会談を行い、先ほど申し上げましたタン・シュエ・ミャンマー議長と結果的には立ち話の会談を行ったということでございます。

武正委員 そうすると、当初、日・ミャンマーは、ミャンマーの議長とは首脳会談を行うということで調整はしていたということでよろしいでしょうか。

逢沢副大臣 短時間でありますけれども、会談を行おう、つまり、あえて正確に申し上げれば、会談ということになれば、立ち話ではなくて着席をして会談を行うということを希望いたしておりました。

武正委員 さて、このアジア・アフリカ会議で、小泉首相のスピーチでございます。いわゆる第二次大戦の惨禍について小泉首相がその反省とおわびを述べたわけでございますが、過去、こうした国際会議でこうしたことがあったのかどうか。

 その原文を読みますと、「我が国は、かつて植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。こうした歴史の事実を謙虚に受けとめ、痛切なる反省と心からのお詫びの気持ちを常に心に刻みつつ」云々かんぬんということでございますが、アジア・アフリカ首脳会議で述べたわけですが、過去、日本の首脳が国際会議で、まず第二次大戦の惨禍について反省を述べた例があるかどうか、そして今回と同じように反省とおわびを述べた例があるのかどうか。以上二点、お伺いをいたしたいと思います。これは町村外務大臣、よろしいでしょうか。

町村国務大臣 表現の仕方はいろいろかなと思っておりますけれども、例えば、一九九五年、ちょうど国連五十周年、十年前のことでありますが、当時の村山総理が国連の記念総会特別会合における演説の中で、我が国は再び戦争の惨禍が起きることのないようかたく決意をして平和憲法を制定したことや、平和国家としての基本理念に基づき、国連への協力を外交の重要な柱として、国際社会の平和と繁栄のために積極的な貢献を行ったというような言及があります。

 あるいは、一九五一年九月、サンフランシスコ講和会議におきまして当時の吉田総理が、世界のどこにも将来の世代の人々を戦争の惨害から救うために全力を尽くそうという決意が日本以上に強いものはないこと、あるいは、諸国の全権代表がさきの太平洋戦争において人類がなめた恐るべき苦痛と莫大なる物質的破壊を回顧されるのを聞いたこと等に言及しているということでございます。

 そういう発言の意味というのは、まさに小泉総理が言われた、植民地支配と侵略によって多くの国々の人々に多大の損害を与え、苦痛を与えたことを反省し、二度とこのような不幸な歴史を繰り返さないとの決意を明らかにしたということと同趣旨ではないだろうか、こう考えているところであります。

 なお、この大臣スピーチについて申し上げるならば、確かにこの部分が非常にマスコミ等々でも大きく取り上げられております。しかし、これは第一パラグラフでありまして、第二パラグラフでは、日本が戦後、平和国家としていかに歩んできたかということをより大きく述べておりますし、さらにその後、より具体的に、例えば日本が開発援助の部分でどれだけのことをやってきたか、またこれからどういうことでさらに援助等を積極的に進めていくか、アジア、アフリカ諸国の発展に寄与していくかということを全体として述べたのであって、このおわびの部分だけを取り上げて小泉スピーチというものを見ていただきたくないな、こういうことを、蛇足ではございますが、あえて申し上げる次第でございます。

武正委員 私が今二つ例を挙げた、村山元首相の国連での演説と吉田元総理の演説について、それぞれ今、外務大臣の御紹介では、反省という言葉もおわびという言葉もなかったというふうに私は今聞いておりました。

 報道によりますと、九一年の海部元首相の演説、国際会議で反省という言葉を使われ、そして、これまで初めてでありますが、今回小泉首相が反省と、今、二度とというような形で外務大臣は言われましたが、原文には、「痛切なる反省と心からのお詫びの気持ちを」ということをしっかりと言明したのは初めてではないかということでございます。

 さて、なぜこのアジア・アフリカ会議で反省とおわびに小泉首相が触れなければならなかったのかといったことでございますが、アナン事務総長がこういったことを言っています。痛切なる反省と心からのおわびを表明した二十二日の小泉首相の演説を全世界が受け入れると確信していると評価したと。

 アナン事務総長は、それまで、外務大臣御承知のように、特に日中間の歩み寄り、話し合い、これを事務総長として何度も何度もするようにということを述べておられましたし、当然、そうしたこともあったんでしょう。その後に、事務総長は、今回の首脳会議で参加国が大きな関心を寄せた日中首脳会談について、小泉首相の演説があったから実現したんだろう等の見方を示したということなんですね。

 もしかしたら、このアジア・アフリカ会議で、先ほどの反省とおわび、過去、日本の首脳がこのことを口にしたことがなかった国際会議での初めての発言、これをしたことによって、二十三日、アジア・アフリカ会議のある面重要事項、すべてのものとは言いませんが、一段落した後に、中国の主席が滞在をするホテルに出向いていってお会いをいただいて、そして日中首脳会議になったのではないかと。こういったことは大臣としていかがお考えでしょうか。

町村国務大臣 ことしのかなり早い時期、一月のどこかの時点であったと思いますけれども、私は、小泉首相といろいろな話をする中で、ことしは戦後六十年という一つの節目の年である、こういう折に、どこかの機会をとらえて、日本の戦後の歩みを含めて前向きのメッセージを小泉総理として出した方がいいのではないだろうか、そんな話をいたしまして、それはそうだ、どういう場面があるのかなというような話をする中で、ちょうど四月の下旬ごろにインドネシアでバンドン会議五十周年という大変大きな集まりがあるので、そこでまとめて、どれだけの時間がとれるかわからないけれども、メッセージを出したらどうだろうかという話をしたのが、たしか一月の早い時点だったと私は記憶をいたしております。

 そして、その際に、総理とのやりとりの中で、ではどういう内容にするかというのを順次議論していったんですが、こんなことをこんなに詳しく言っていいのかどうかわかりませんが、三月の中旬ごろに、大体言うべき内容の骨子をまとめました。その時点でもう既に、過ぐる大戦の話、そして戦後の日本の平和国家としての歩み、さらにこれから日本がどういうことを世界に対して貢献していこうとするのか、特にアジア、アフリカ諸国に対してどういう貢献をしていったらいいかということを前向きのメッセージとして出そうということを、私の記憶が正しければ、もう既に三月の中旬ごろには、大体あらあらの骨子は固めて、それでそれに基づいて文章を書いていったという経緯がございます。

 したがいまして、例えば中国のデモが起きたのはそのはるか後のこと、四月に入ってからのことであります。私どもは何も、あのデモがあったから急にこのおわびの言葉を入れたのではないかという一つの推測を今、武正議員はなさっておられる、あるいはそういうような記事を私も見たことがございますが、あるいはそういう発言があったから日中首脳が確定をしたという、まことにストーリーとしてはおもしろい推測をつくられる方がいましたが、実態はそういうことではございませんで、かなり早い段階から、小泉総理としてのメッセージを国際社会に出そう、この場が非常にいいのではないかということを考えてやったわけであります。

 したがいまして、例えば小泉総理が到着をする前の段階で、二十二、二十三、二十四のどこかで日中首脳をやろうということは、もう既に固まっておりました。具体の日取りの調整は、それぞれの日程調整は両首脳が着いてからにしようということで、まずやるという前提はあったものですから、したがって、今、ある方の、たしかどこかの新聞記事が、小泉さんの、総理のおわび演説があったから初めて首脳会談が成り立ったという推測がありましたが、それはまことに事実に反する話でありまして、その演説が公表される前の段階に、既に首脳会談が開かれるということについては日中間で合意があったということでございます。

武正委員 三月から、過ぐる大戦についてあらあらということでございましたが、あとデモがあったから今回日中首脳会談をということ、私はそれは先ほどは申し上げなかったんですけれども、あらあらは三月でしょうが、国際会議で日本の首脳が初めて反省とおわびを言明するという、これは大変なことであると私は考えるわけなんです。

 それが、やはりこの日中首脳会談、あのときは、二十二日も含めて中国側が応じるかどうかというようなことを言われておりましたので、そういった推測があっても当然であろうと私は思いますし、なぜこのアジア・アフリカ会議で初めてこうしたことを言明したのかということを大変疑問に思います。

 ここでちょっとお伺いしたいんですが、日中共同声明で反省という言葉が出ております。「日本側は、過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する。」これは前文にあって、国際法上は例示的規定というもので、それによって賠償などの義務や謝罪声明の必要が生じるものではない、こういった指摘があるんですが、これについての御所見を伺いたいと思います。

長嶺政府参考人 お答えいたします。

 今、日中共同声明にお触れになりましたけれども、共同声明は、首脳会談のような重要な会談に際しまして、その内容を公表する目的で作成される政治的な性格の文書でございます。その意味で、法的な拘束力を有するいわゆる国際約束あるいは条約等のものとは異なるわけでございます。

 日中共同声明も同様でございまして、両国政府の見解や政策の表明等を示した政治的性格の文書でございますので、今委員の方から前文という御指摘がございましたけれども、前文と本文の違いといった、通常条約について言われることが妥当する文書ということではございません。

武正委員 九五年の村山談話で反省とおわびということが出てきて以降、小泉首相も、歴史認識はこの村山談話を遵守あるいは踏襲というようなことを言っておられるわけでありますが、今般初めて、しかも日本の首脳として国際会議でそのことに触れたというのは、私は大変大きい意味があるというふうに思いますし、果たしてアジア・アフリカ会議で触れるのが本当に適切だったのかどうかということも含めて、あくまで、やはり日中首脳会談を二十三日に開催しなければならなかった、そういった理由があるのではないかというふうに考えるところでございます。

 さて、この二十三日の日中首脳会談で、先ほど来触れておりますように、日本側からは、今般の大使館への投石などに対して、謝罪及び賠償請求は小泉首相からはなかったわけですね。それに対して中国主席からは、共同記者会見で、いわゆる五点主張というんでしょうか、これをしたんだと。しかも、外務省のペーパーによっても、その五点主張について、同意をしたとは日本の外務省は書いていませんが、それについて承ったというような、そういったことですね。「貴国家主席の提起された五つの点に配慮していきたい。」こういったことを言っているんです。

 中国の主席が泊まっているホテルに出かけていって会って、しかも謝罪も賠償請求もせずに、そして逆に五つの提案というか要求をされ、しかも靖国問題を含めて具体的に行動で示してくれ、こういった注文までつけられる。これが果たして日中間の外交としていかがなものかなというふうに私は思うわけでございます。

 現状、やはり日中首脳の相互交流が三年半行われていない、これがまず第一の理由。そしてまた、これは小泉外交にあって、先ほどの国際会議で初めて謝罪とおわびを口にするということも含めて、外交の原理原則というものがどこにあるのかなといったことも含めて、今回の日中首脳会談での点についても、私は、一体何のために会ったのかということも大変疑問に思うわけでございます。

 この時期にそこまでして会わなければならなかったというふうに外務大臣はお思いでしょうか、お答えをいただきたいと思います。

町村国務大臣 先ほど来から、この小泉スピーチと首脳会談の関係を盛んに不思議がっておられますけれども、今私の手帳を見ると、私は四月二十一日木曜日の夜にジャカルタを出発しておりますが、この二十一日の夕方、李肇星外交部長から電話がかかってきて、二十二、二十三、二十四の三日間のうちどこかで日程調整をして首脳会談をやろうということで合意をしておりますから、この演説の内容と全く関係なく、独立して首脳会談がセットされたという点だけはまず事実として明確にしておきたい、このように思います。

 また、先ほど申し上げましたように、ことしの早い段階で、もう既にこのアウトラインというものをつくっておりました。それは、やはりアジア、アフリカ諸国の皆さん方が集まったときに、日本が平和国家として戦後やってきたということを自信を持って主張する、その根拠として、なぜそういう気持ちを持つに至ったかといえば、それは戦争あるいは植民地支配といったことの反省の上に立って戦後の日本があるんだということを導き出すための、一つの論拠と言うと変ですけれども、そういう日本人の心情の上に立って戦後の日本の平和国家としての活動があるんだということを述べるためにこれを使ったわけであります。

 私は、国際会議でこうしたことを堂々と主張するということに何ら不思議は感じませんし、むしろそういう意味で、あのデモがあろうとなかろうと、あの小泉スピーチというものは十分説得力のあるものであった、このように評価をしているものでございます。

 そういう中で、何で二十三日の日に日中会談をやったのか、意義が認められないというようなお話でございました。私は、世界の国々が、やはり日中関係がもし本当にこのままどんどん不正常な状態になって進んでいくということになると、これは日中両国間にとってマイナスであるのみならず、アジア全体、さらに世界全体にとってそれは決していいことではない。

 日中両国がこれからしっかりと同じ方向を向いて、より友好的な関係を築いていく、そういう努力をするという際に、もちろん、その前段階としての日中外相会談もあったりしましたが、やはり両国のトップがしっかりとその場で話し合いをし、握手をし、ともに努力をしていこうという確認ができたこと、その姿を見て、世界の人たちは、ああ、これ以上悪化はしないんだな、これからよくなっていくんだなということを確認できたわけであります。

 そういう意味で、私も、例えば五月六日、七日の京都で開かれましたASEMの会議の場でヨーロッパのあるいはアジアの外相等とお目にかかったわけですが、やはり皆さん方が、あの首脳会談は非常によかったというふうに素直に受けとめているという事実があることをぜひ御理解いただきたい、こう思います。

 五点の主張、それは中国の主張としてあるわけでありまして、小泉総理はこの五つの点に配慮をしていきたいということを述べておりますし、その言っている中身、台湾についての主張は、日本側は今まで何ら新しい主張をしているわけでもありませんし、歴史認識についても同様でございます。何か格段のことを、この五つの主張の中で何か日本の国益を害するようなことが大きく含まれているかどうかということについては私はないので、これに配慮していくという総理の受け答えはまた当然であったんだろうと思っております。

 また、おわび等々の話になぜ触れなかったのかという御指摘もございました。それは、外相会談でかなりそこのところは十分もう既に話し合っておりますから、また同じことを首脳レベルで全部繰り返す必要もないだろうという総理の御判断だろう、こう思っております。

 ただ、それにしても、ああした過激な行動は好ましくないという点については、中国における大使館、総領事館、日本企業、日本人の活動については適切な対応をすべきであるという主張も小泉総理はしておられますから、そういう意味で、私は、必要なことはちゃんと小泉総理は言っておられる、このように理解をいたしております。

 そういう意味で、私は、四月二十三日の首脳会談は意義のある、また国際的にも評価される、そういう会談であったと理解をしております。

武正委員 この連休中の日中外相会談で、外相は引き続き謝罪を要求したけれども、それについて返事はない。これは、日中首脳会談で謝罪要求をしなかったということをもってして、中国側はこれでよしとしているということも指摘がされているわけでございます。

 繰り返す必要はないというふうに言われましたが、日本側が大使館へのああした事件について謝罪を要求しないのに、何でアジア・アフリカ会議で、初めて日本の首相がおわびを国際会議で口にしなければいけないんでしょうか。外交の最高責任者であって、おわかりのように、国際間で、エクスキューズというかアポロジャイズというか、謝るというのは大変なことですよね。

 アメリカ人も、あるいは海外でいかに彼らが謝らないか。本当に悪かったら謝りますよ。でも、謝ってしまったら、もうすべてうちが悪うございましたということだから、いかにそれを謝らずにいろいろな言葉のテクニックを弄するか、これが外交ではないでしょうか。

 その中にあって、初めて国際会議で日本の首脳がおわびという言葉を口にする。一方、その日本の首脳は中国首脳におわび、謝罪を求めない。これが今の日本外交の現実じゃないでしょうか。先ほど何ら不思議ではないと言った外務大臣、まあ反省についてということでありましたが、おわびについては触れておりませんが、今回のこのバンドン五十周年会議でなぜ反省とおわびを入れたのか。それは、やはり何としても二十三日に首脳会談をやらなければならなかった、その理由があったからだというふうに私は考える次第でございます。

 さて、最後、副大臣に御質問でございますが、モスクワ訪問はいつ発表し、ぎりぎりまで明確に返事をしなかった理由は。そして、名簿ではアルファベット順で日本が最後になっているという今回の第二次大戦終了六十周年記念式典、これは事実かどうか。以上二点、お答えをいただきたいと思います。

逢沢副大臣 総理がモスクワに行かれまして、モスクワにおける第二次大戦終了六十周年記念式典に出席をし、私どもとしては、やはり総理に行っていただいてよかった、そのように評価をいたしているわけでございます。

 総理は、御承知のように、今まさに議論になっておりましたバンドン会議への出席、そしてその後、インド、パキスタン訪問、またEU、ルクセンブルク、オランダ等々、連休の前半を使いまして直接外交活動に対応をされたわけでございます。

 また、ちょうどこの時期というものが、連休が終わりまして国会等も動き出す、そういうタイミングにもなる。あるいは、モスクワの戦後六十周年記念式典なるものが一体どういう性格で、どういう意味合いのものであるか、何しろ初めてと申しますか、かなり多くの、各国の首脳が集まる、そういった状況の中で、その性格等を見きわめる。国会等の日程あるいはその他の日程との調整、またモスクワでの記念式典の中身、内容、そういったものを精査、吟味しながら、最終的に総理の決断であのような日程で訪ロをされたということでございます。

 なお、その席次と申しますか順番でございますが、私も、なるほどということで初めて理解をしたわけでありますが、いわゆる英語のアルファベットでいいますと、日本はJでありますので、二十六のうち何番目になりますか、真ん中辺ということでありますが、ロシア語のアルファベット順ということになりますと、ロシア語はアルファベットではございませんのでここでちょっと答弁はしにくいわけでありますが、ヤポーニヤ、このロシア語をアルファベットで置きかえますとヤポーニヤ、つまりYから始まる、こういうことのようでありまして、私どもも、なるほど、ロシアではこういうことなんだなということを初めて理解ができたわけであります。したがって、ロシア語のアルファベットという表現が適当なのかどうかあれでありますが、ロシア語のあえて申し上げればアルファベットの順では最後の文字に当たる、こんなことであったようであります。

武正委員 以上で終わります。ありがとうございました。

赤松委員長 次に、増子輝彦君。

増子委員 民主党の増子輝彦でございます。

 先ほど大臣が、海外に行かれると、大変国会で長く縛られて、審議時間をこれほどやっている外務大臣はいないというような話をされましたけれども、私はあえて申し上げると、やはり国会のあり方そのものを見直すべきではないかなと常々委員会あるいは理事会等でも申し上げております。

 外務大臣が十の委員会に実はかかわっている、そのスケジュール調整に大変苦慮しているということを考えれば、これはもう大臣が国会にずっといなければだめだということが当然出てくるわけでありますから、今後、私は、この国会のあり方、すなわち委員会、特別委員会の設置等も含めまして見直す時期に来ているのではないのかなというふうに思っているわけであります。

 と同時に、もう一つは、与党側は事前審査制ということで事前にさまざまな法案や条約等の審議をやる、もう国会は審議をしなくてもいいんだ、審議を促進して早く成立させてしまえばいいんだというような傾向が実はあることが、国会の形骸化ということの大きな原因の一つにあると私は思っております。今後、大臣が国会に口を挟むことはできませんが、将来的なことも含めて、この問題にしっかりと我々は取り組んで、大臣が国会の審議も十分、海外での外交もしっかりやっていくというような体制をつくることが国会のあるべき姿だと私は思っておりますので、あえて申し上げさせていただきたいと思います。

 さて、きょう、実はこの二つの条約の件について質問させていただき、その後に関連について質問させていただきたいと思います。

 まず、この条約の関連でありますけれども、それぞれの委員がそれぞれの立場で質問されておりました。私は、ちょっと切り口を変えさせていただきたいと思っているわけであります。

 この人身取引条約、密入国条約等に関連してでありますが、やはり日本が海外からいろいろな形の中で人を受け入れる、その中には今回問題になっているような取引、あるいは密入国、不法滞在、さまざまな問題が実は起きていることは言うまでもございません。そういう中にあって、やはりこれが多く犯罪につながっているということが私はかなりの部分がある。その犯罪も、やはり暴力団とのかかわり合いというものがどうしても否定できないということを私はかねてより何度か委員会等でも質問させていただいているわけであります。

 そういう意味で、簡単に申し上げますけれども、この人身取引や密入国が暴力団やいわゆる中国の蛇頭と言われるような犯罪組織の一つの資金源となっているのではないのかというふうに思っておりますが、この件について警察の見解を伺いたいと思います。

知念政府参考人 国際的な人身取引事犯で検挙された暴力団構成員、準構成員は、昨年平成十六年中、九人でございます。暴力団構成員等に係る具体的な検挙事例からそのかかわりの状況を御説明申し上げますと、飲食店従業員という名目で雇用した外国人女性を売春稼働させたもの、不法滞在者たる外国人女性に金を貸し付けまして、その返済をさせる目的で当該女性を売春稼働させていたものなどがあります。人身取引事案は暴力団の資金源となっている可能性があるものと認識しているところであります。

 また、中国人に係る不法入国、不法残留など入管法違反事件での検挙人員でありますが、近年増加傾向にありまして、平成十六年中は四千三百人余となっております。その背後には、先生御指摘のように、蛇頭や犯罪組織がかかわっているものがあると思われますし、そういった事犯で不法な収益を上げているものと見ているところであります。

 警察におきましては、人身取引等の捜査に当たって、このような犯罪組織の関与を視野に入れつつ捜査を推進しているところであります。

増子委員 今お話しになりました数字、私は少ないんだろうなと思っているんです、実態はもっともっとあるんだろうと。ただ、これがなかなか表面に出てこない。そして、警察もやはり人員をもっともっとふやして取り締まりを徹底しなければ、どうしても隠された部分が暴き出せないという問題が私はあるんだろうと思っております。

 実態はもっともっと根深く、そして幅広く、多いものがあろうというふうに思っているわけであります。そういう意味で、今回の人身取引議定書等を実施するためには、どうしても国内法の整備強化というものがもっともっと重要になってくるんだろうというふうに思っております。

 今回、国内法でいろいろとされておりますが、私は、この罰則規定等はもう少し厳しくしてもいいのではないか。そうしなければ、この問題はなかなか解決できるということにはいかないんだろうと。やはり、人身取引等を含めさまざまな問題は当然我が国の治安というものについて大きな問題になってまいりますし、あわせて、先ほど来の話のとおり、暴力団の資金源ということを含めれば、これは大変大きな社会問題でありますし、国民の生活を脅かすということにもなってまいります。

 そういう意味で、同法成立後の警察の対応についてお伺いをいたしたい。

知念政府参考人 今回、人身取引議定書などの締結に伴う国内法として提出された改正刑法案での人身売買罪等の新設や、改正組織的犯罪処罰法案におけるマネーロンダリング犯罪の前提犯罪への人身売買罪等の追加は、今後、組織犯罪対策を推進する上でも有効なものと認識しているところであります。

 これらの法案が成立した後には、警察としましては、法に盛り込まれた規定を活用しながら、暴力団や蛇頭など犯罪組織の取り締まり及びその資金源に対する取り締まりを一層徹底してまいる所存でございます。

増子委員 この関連の中で、さらに大きな問題になっているのは、人身売買取引をされた多くの女性の方々、あるいは不法入国あるいは不法滞在という形の中で日本におられる方々が、まさに風俗営業の中にぶち込まれて、先ほど来申し上げておるとおり暴力団の資金源にもなっているということは、否定できない事実であることはもう当局がよく御承知のとおりだと思います。

 日本は極めて法的に、風俗営業法等について、厳しいというふうに思われておりますが、実態はどうでしょうか。私はかなり手ぬるいのではないかと。どこに行っても、さまざまな風俗営業法の中で売春行為は既定の事実である。あるいはそれに類するさまざまな実は風俗営業が行われている。

 これは子供たちに対する影響というものも実は極めて大きいわけであります。これが実は性感染症の大きな原因の一つになっていることも事実であります。そういう意味で、まさに日本はセックス大国なのですね。そういう意味で、私はちょっとどぎつい表現を使いますが、世界一のセックス大国ではないか。

 そういう意味で、この風俗営業法等の問題について取り締まるということは、まさに今回の議定書にも十分関連をしてくることでありますけれども、これらの風俗営業法等の、特に性風俗であります。性風俗営業についての取り締まりというものについて、今後どのようにされていくのか、その見解をお伺いしたいと思います。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のように、人身取引事犯におきましては、被害者が風俗営業や性風俗関連特殊営業で違法に働かされている場合が大半でございまして、人身取引を防止するためには、人身取引事犯への取り締まりとともに、こうした違法な風俗営業や性風俗関連特殊営業の取り締まりを推進することが重要だというふうに考えております。

 このため、警察では、新宿歌舞伎町に見られるような、歓楽街対策というものを推進するとともに、今国会で御審議いただくことになっております風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案におきまして、人身取引事犯を防止するための規定を盛り込んだところでございます。

 具体的に申しますと、刑法に新設されます人身売買罪等を風俗営業を営む者の欠格事由にするとともに、風俗営業や性風俗関連特殊営業を営む者に対しまして、外国人を接客従業者として雇用する場合には、在留資格等の確認義務を課す規定を新設したところであります。また、この法律案では、現在、歓楽街において違法な性風俗関連特殊営業等が乱立し、客引きのばっこやピンクビラ等のはんらんが見られますことから、罰則の引き上げや広告宣伝規制を強化しまして、違法な性風俗関連特殊営業等の取り締まりを図ることとしております。

 こうした改正は、性風俗関連特殊営業等の営業所において、人身取引の被害者が働かされることの防止や、違法な性風俗関連特殊営業等に対する取り締まりに大きく寄与するものと考えているところでございます。

 警察では、こうした風営法の一部改正案が成立後は、同法も含めまして関係法令を的確に運用して、違法な風俗営業や性風俗関連特殊営業の取り締まりを一層強化して、人身取引の抑止を図ってまいりたいと考えているところでございます。

増子委員 今お話しのとおり、大変な実態があるわけであります。と同時に、これは東京都下の新宿とか、あるいは池袋とかいうところだけではなくて、全国各地にこの問題がもう出ていることは御承知のとおりだと思います。

 ですから、全国にわたって、これは徹底的に、特に性風俗等の取り締まりというものを強化していただかなければならないということを強く申し上げておきたいと思います。

 次に、密入国等に関する件でありますけれども、先般、この委員会でも、旅券法の件で、IC旅券を実はつくるということで審議が行われました。私どもも基本的にはこれに賛成をいたしたわけであります。と同時に、これは今参議院の方で実は審議が行われておりまして、一応審議は終局した状況にありますけれども、採決が実は延び延びになっている。

 その多くの原因は、もう御承知のとおり、当委員会で古本委員が既に指摘をしたとおり、このIC旅券等についてはまさに手数料の二重取りだということが指摘をされておりますし、これは外務大臣もおおむねそのようなことを認められた。しかし、何となくその財源が税外収入ということで一般財源化してしまって、どんぶり勘定のような表現もされたことを私も当委員会で聞いておりますが、なかなかその把握ができないというようなことになっておるわけであります。

 しかし、これはやはり私どもとしては、実は参議院の方では、反対討論をし、反対をするという方向で今進めているわけであります。と同時に、与党側でも、このIC旅券に対する二重取りという問題については、本当は決してこれを認めるわけにはいかない、しかし与党という立場上、なかなかこれを修正したり反対するという立場にはないというような考え方もあるということも内々に実は聞いておるわけであります。

 しかし、私どもはやはりこの問題については、これだけ税金というものが二重取りをされるような形の中で、何に使われるかわからない、ここに大きな問題があるわけでありますから、衆議院の方では私どもは賛成はいたしたけれども、参議院の方では反対をせざるを得ないという立場であります。

 そういう意味では、今回のIC旅券の二重取りという問題等について改めて見解をお伺いいたしたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、大谷委員長代理着席〕

町村国務大臣 先般、参議院の外交防衛委員会で御議論をいただきました。民主党の議員の方々からそういう御指摘があったことを私もよく承知をいたしております。

 今増子委員から、私が二重取りを認めたというお話がありましたが、私は認めたつもりはございません。いろいろなサービスが、確かにパスポートの原価という部分と、あとそれにかかる効用部分というのが分かれているという説明は確かにしたところでございます。しかし、その効用部分というのは、厳密にこれだけの対価を払ったからこれだけの効用サービスを受けるという性格のものでは必ずしもないということがまずありますし、それからもう一つ申し上げると、これは強制をするものではございません。自発的になさる方はどうぞと。

 もちろん、犯罪者の出入国等々をきっちり管理するために、多くの方が持ってもらいたいという気持ちはあります。しかし、基本的にそれを選択するかしないかは、いわばユーザーの選択肢、自由があるのだという理由等々から、私は今の仕組みがおかしいとは思っておりませんし、また諸外国においても既に導入を決めているところでも、期間を割り返して、その部分を返すというようなことをやっている国はないといったようなこともございます。

 したがいまして、反対の御意向は承りましたけれども、私どもとしては、今この法案を変えるという考えはございません。

増子委員 大臣、強要するものではない、自主的にとるべきだというお話をおっしゃいますけれども、IC旅券を導入するという理念は、テロを防止するだとか、今回の議定書等における中身にあるとおり、さまざまな問題を解決するために促進すべき大事な実は手だてだということは、私が言うまでもなく、大臣は御承知のとおりだと思います。ですから、やはり大臣、発言は少し、その点については慎重にされた方がいいような気がいたします。

 と同時に、もう一つは、私たちは、古本委員もそうなのですが、一度納めたものを返せということが行政のあり方からすれば難しいのであれば、今回の旅券の発行に対する手数料というものを少し割り引くということが、安くするということによって、その部分のいわゆる還元をすることは十分可能だということも主張をいたしているわけであります。

 この問題、時間が余りありませんのでこれ以上申し上げませんが、そういった面において、ぜひ今後、国会と行政のあり方の中で、特に国民の皆さんにとっての一番大事なものということからすれば、税金という手数料というものになっていくときに、大事に大事にしていただかなければなりませんので、改めてもう一度この問題を申し上げさせていただきました。

 さて、問題を変えさせていただきたいと思います。

 この委員会でも大臣と何度か、日中関係や日韓関係初め、先般も台湾問題関係を含めて東アジア、極東等の考え方について議論をしてまいりました。きょうもこの問題に若干触れさせていただきたいと思います。

 その前に、大臣、イラクで拘束をされた齋藤さんの件であります。まだ安否がわからないということでありますが、現状はどういうことになっているのかお伺いをいたしたいと思います。

町村国務大臣 いろいろな報道がありますけれども、率直に言って、なかなか最後の安否という点については確認できていないというのが現在の姿であります。

 わかってきている点は、八日に、ハート・セキュリティー社関係者が、イラクの西部の方にありますアルアサド米軍基地まで物資を運ぶ車両の警護を行い、到着した後、その日の午後、十数人のハート・セキュリティー社の関係者が基地を出発して帰る途中、ヒートという町の近郊で車列が襲撃をされた、その際、死亡者が出たほか行方不明者も出ている。

 私どものいろいろな情報を集約いたしますと、確認はまだできない部分はあるんですが、死亡者の中にはどうもおられなかったようだと。それから、生還した方々の中には齋藤氏はいないということで、何名かの行方不明者がいる中の一人ではないだろうかな、という確率が高い、こう思っております。

 また、目撃情報によりますと、齋藤氏は襲撃を受けた際にかなり負傷をした可能性も高いということでありますが、では最終的にどこでどういう形で、拘束をされているのかいないのか、どの程度のけがの実情なのかということについては必ずしも定かではございません。したがいまして、イラクの大使館を中心として関係在外公館、引き続き一生懸命安否の確認を急ぐとともに、仮に同氏が拘束をされ、またけがが事実であるとすると、一刻も早い無事の解放に向けて全力を挙げて取り組んでいきたい。

 昨日、イラク特の方で、御党の藤田議員から、アルジャジーラ等で一刻も早い解放を訴えてはどうかという御提案もいただきました。きのうの夕方、それからけさの時点で、大筋、この死亡者の中には含まれない可能性が高いという判断をある程度したものですから、それならばまだどこかに生存しておられる可能性も十分あるという判断のもとに、きょうの午後、アルジャジーラと相談をして、解放を訴えるメッセージを私の方から出そうかな、こう思っているところでございます。

 いずれにしても、一刻も早い事態の解決に向けて全力を挙げて努力をしてまいりたいと考えております。

増子委員 いずれにしても、齋藤さんの無事と、できるだけ早く安否がわかり、なおかつ救出されることを願っております。

 と同時に、対策本部を設置する割には、やはり情報源というものがいま一つ乏しいという危惧を私どもいたしております。前回も前々回も、この人質拘束の問題について同じような問題が指摘されているわけでありますから、やはり外務大臣としても、こういった場合の危機管理という体制の中で、しっかりとした情報収集の体制もおつくりいただきたいと思っております。

 さて大臣、日中関係、以前より申し上げているとおり、やはり最大の懸案の一つとして総理の靖国参拝問題があるということは御承知のとおりだと思います。と同時に、大臣からもそれが明確であるということも何度かおっしゃっていただいております。と同時に、今回さらに、これは大臣から言わせれば、いや、そんなのはそうではないんだ、以前からこの問題についてはあったことだということで、台湾問題が実は新たな中国側からの問題として出されてきたことは御存じのとおりであります。

 そういう意味で、若干、台湾等についての問題を整理していきたいと思っております。

 大臣、一九六〇年に日米安保条約が改定されました。その中で、六条に、米軍が日本国の安全と極東における国際の平和及び安全の維持のために日本で基地を使用できると定めたということをうたっていることは御案内のとおりであります。改めてお伺いいたしますが、この時点での極東の範囲ということでありますが、これはこの時点ではどのようなことだったんでしょうか。

町村国務大臣 昭和三十五年、一九六〇年の政府の統一見解というものが出されておりまして、国際の平和と安全の維持という観点から日米両国が関心を有する地域であり、実際問題としては、米国が我が国の施設・区域を使用して武力攻撃に対する防衛に寄与し得る区域であり、大体においてフィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であって韓国及び台湾地域を含む、なお、この区域に対して武力攻撃が行われ、あるいはこの区域の安全が周辺地域で起こった事情のため脅威されるような場合、米国がこれに対処するためとることのある行動の範囲は必ずしも前記の区域に局限されるわけではない、こういう統一見解が出されているところでございます。

増子委員 当然台湾がその中に入っているということであります。

 と同時に、この時点では、まだ台湾は蒋介石政権でありましたから、当然、正統政府として承認をしていたということになるのでありましょう。

 その後、一九七二年に田中総理が訪中をされまして、いわゆる日中共同声明が出された。ここにおいて、実は、日本は台湾が中華人民共和国、いわゆる北京の領土であるとの中国の立場を十分理解し、尊重するということが明言されております。

 ということは、この時点で台湾というものはどのような立場になったのか、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

町村国務大臣 共同声明、委員も御承知のとおり、日本国政府は中華人民共和国が中国唯一の合法政府であることを承認する、中華人民共和国は台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する、日本政府はこの中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言八項に基づく立場を堅持する、こういうことで、この時点で日中国交が正式に回復をし、台湾が国家ではなくて地域という扱いになり、そことの外交関係はなくなったという立場に変わったわけでございます。

増子委員 続きまして、一九七八年、福田首相のときに日中平和友好条約が締結されました。もちろん、福田総理は町村外務大臣の恩師でもあります。私もかつて同じ派閥に所属をいたしておりましたから、共有するものが大いにあるわけであります。

 と同時に、この日中平和友好条約を締結した時点で、ここの第一条に、「両締約国は、主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政に対する相互不干渉」ということが実は書いてございますが、この時点で、今大臣がおっしゃいました、台湾は国家ではなくて地域であるという話をされましたが、台湾は国家ではなくて中国の一部であるということを認めたということになるんでしょうか、そうではないのでしょうか。その見解をお伺いしたい。

    〔大谷委員長代理退席、委員長着席〕

町村国務大臣 これが、先ほどちょっと申し上げました共同声明の中の第三項で、当時日中間で大議論が交わされた部分であったと私は承知をしております。すなわち、中華人民共和国は台湾が中国の領土の不可分の一部であるという意見を表明し、日本はこの立場を理解し、尊重をするということで、そこにまことに微妙なニュアンスの違いがあるという、まさに大変苦心をしてできたこの一項であったというふうに、当時のやりとりをされたということを私は聞いているわけでございまして、そういう意味で、そこのニュアンスというものをやはり我々は尊重しなければいけないんだろうと思っております。

増子委員 そのニュアンスが非常に理解しにくいものですからもう一度お伺いいたしますが、台湾は中国の一部ということでよろしいんでしょうか。

町村国務大臣 一部であるという中華人民共和国の主張に、日本は理解し、尊重をする、こういう表明をした、その見解を今私どももそのまま踏襲いたしております。

増子委員 私の理解では、今の大臣の御発言であれば、やはり台湾は中国の一部と理解してよろしいんでしょうか。

町村国務大臣 再三申し上げているとおり、まさにこの共同声明第三項の、私が申し上げている中国の立場を理解し、尊重する、これに尽きる。これ以上でもこれ以下でもないわけでございます。

増子委員 大臣、それでは実はこの後の質疑ができなくなるんです。そこの条約の文言を読むだけでは、日本の外交としての考え方、国としてのこの友好平和条約というものの読み取り方の問題がはっきりしないと、実はこの後の質疑に入れないんです。

 もう一度お伺いいたしますが、そこに書いてある文言をお読みになるだけではなくて、中国の一部である、台湾は中国の一部であると理解してよろしいんでしょうか。大臣はそう認めるんでしょうか。

町村国務大臣 これは、日本はサンフランシスコ平和条約によって台湾を放棄いたしました。日華平和、当時の中華民国の華ですから、日華平和条約においては同放棄が承認をされた。ただ、その場合、どこの国に対して放棄したかは明記していないわけでございます。したがって、台湾がどこに帰属するかについて、これは専ら連合国が決定すべき問題であり、日本は発言する立場にない、これが日本側の一貫した法的な立場であります。

 したがいまして、さっき申し上げた、中国が、中華人民共和国がそういう考え方であるということについて、日本政府は理解し、尊重をする、こういう表現に結局ならざるを得なかったというか、ここに落ちついたというのは、その当時のサンフランシスコ平和条約からの、ずっとこの条約の解釈をしながらここに行き着いたんだということでありまして、その点は大変先人が御努力をした部分でございますから、ぜひ増子議員にも御理解をいただきたいと思います。

増子委員 残念ながら、理解できません。ここのところをもっと明確にしていただかないと、実はこの後の質疑には入れないわけであります。

 ちょっと時間がもうございません。

 ということは、中国の一部であるかどうかによって、実は日中関係にも大きな影響を及ぼしてまいります。それは、前回の委員会でも申し上げましたとおり、2プラス2の中で、中台紛争等についての対応ということが実は共通の目標といいますか、そういう形の中で出てきているわけであります。2プラス2で、いわゆる日米の共通戦略目標として台湾海峡問題を明記されました。きのうの新聞報道によれば「日米、有事計画に着手」と。ここで、中台紛争への対応が焦点だということになってまいります。

 そうしますと、これが実は大きな問題点になってくると私は思うんです。台湾は中国の一部であるということのこの問題がはっきりいたしませんと、そうではないということでもいいんですが、ここの問題がはっきりいたしませんと、実はここのいろんな問題の整理ができません。と同時に、私自身も質問もできません。それはまた、あわせて日中関係の大きな問題として実は出てまいりましたこの問題もクリアできないんだろうというふうに思っているわけであります。

 これは、また次回、ゆっくりとこの件について質問させていただきたいと思いますが、実は大臣、もう一度お伺いをいたしますが、わかるようにお答えをいただきたい。その文言の理解の中で、台湾は中国の一部であるのかどうか、それについて最後に御見解をちょうだいして、私の質問を終わります。

町村国務大臣 この点は、まことに今まで何度も何度も国会の中でも議論をされ、今私が申し上げました国会答弁以上のものは従来からも言っておりませんし、またこれからも言い得る性格のものではない、私はそう考えております。

増子委員 終わります。

赤松委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 きょうは、国際犯罪防止条約人身取引議定書、それから密入国議定書について質問していきます。

 人身取引は著しい人権侵害であり、国境を越えた人の移動がますます活発になる中で起きている犯罪であるため、国際社会全体が協力して対処することが不可欠の課題であります。日本が人身取引の根絶を目指す国際的な努力に加わることは重要であり、人身取引議定書と密入国議定書の批准については賛成の立場であります。

 それで、最初に警察庁に聞いていきますが、人身取引をめぐって、日本はその受け入れ国であると言われているわけです。ILOの駐日事務所が昨年十二月に発表した報告書は、「日本は、主として東南アジア、南米、そして東欧からの女性の人身取引の目的地国として認識されている。」こういうぐあいに指摘されているわけですが、まず現在までの状況について、特にこの十年間の検挙数の推移はどうなっていますか。

伊藤政府参考人 ここ十年間の検挙数の推移についてのお尋ねでございますけれども、私どもが統計をとっております平成十三年から見ておりますと、平成十三年には、人身取引事犯でブローカーあるいはこれを雇用しておった者等を検挙しておるわけでございますけれども、その検挙数は六十四件四十人でございます。平成十四年は四十四件二十八人、そして平成十五年が五十一件四十一人、そして昨年、平成十六年は七十九件五十八人を検挙したところでございます。

赤嶺委員 この人身取引の取り締まりや捜査の面で、どのような努力を今までしてこられたんですか。

伊藤政府参考人 人身取引事犯が、御指摘のように大変大きな事案であるというふうに警察庁の方でも認識しております。

 この取り締まりに当たりましての問題はどんなところかということでございますけれども、やはり潜在化した事犯であるということもありまして、被害者の協力を得てこの事犯を検挙していくということが極めて重要でございます。しかしながら、被害者である外国人女性は、ブローカーなどから、警察に保護を求めれば母国に残した家族に危害を加えるとおどかしたり、あるいは警察に言っても全くむだだぞというようなことを、虚偽の情報を吹き込まれたりしておりまして、人身取引事犯の取り締まりに当たっては、被害者の協力を容易に得ることができないという問題がございます。

 そこで、警察では、被害者の可能性のある外国人女性の事情聴取に当たりましては、まず被害者ではないかとの認識のもとに、できる限り女性職員や被害者の母国語を解する職員を充てまして、被害者が安心して被害の実情や人身売買組織の実態について申告することができるように努めているところでございます。

 また、警察だけでなく、人身取引等に関係します国の在京大使館や国際機関あるいはNGOとの間でコンタクトポイントを設けまして、いつでもこれらの国や機関との情報交換や連絡がとれる体制を警察との間で構築しているところでございます。

 加えまして、人身取引の被害者に対するこのような警察の姿勢というものを被害者に知っていただくということが大事であります。警察は信頼できる、保護してもらえるということを知ってもらうことが大事でございますので、警察は、関係国大使館や関係機関、団体と協力しまして、被害者に、警察が人身取引の被害者を保護する旨を呼びかけるリーフレットをつくりまして、今、百万部をつくろうということで作成中でございまして、近々これを配布することとしているところでございます。

赤嶺委員 今後の警察の努力の方向というのが示されたと思いますけれども、そうすると、やはり今の答弁を聞いていても、いわば先ほど述べられた事件の件数というのは氷山の一角だ、このように認識していいわけですね。

伊藤政府参考人 警察では昨年、人身取引事犯の取り締まり等によりまして七十七人の被害者の確認を行ったところでございますけれども、人身取引事犯の被害者でありましても、先ほど申しましたような事情から、自分が人身取引事犯の被害者であることを警察に正直に届け出ていない方も数多くいるのではないかというふうに思っております。それらを踏まえれば、我が国に相当数の被害者がいるのではないかというふうに考えております。

赤嶺委員 やはり、この問題の非常に大きなポイントは、被害者に対する支援、それらの体制をどのように強化していくかということにもかかっていると思うんです。

 それで、次に、関連しまして、入国管理のあり方のところで質問していきたいんです。

 刑法等の一部改正の質疑でも出入国管理のあり方が論点になっていました。入国管理のあり方というのは、厳格な入国審査と一体に、被害者保護の第一線として極めて重要な位置づけを持っていると考えます。

 法務大臣は、不法滞在となった人身取引被害者は原則として在留特別許可を発行すると繰り返し明言されているわけですが、在留特別許可というのは、被害者の身分を法的にも保障、安定させるということと同時に、人権回復に向かう第一歩になると私は考えています。そういうような重要な位置づけを持たせてこれに対応していくことが必要ではないかと思いますが、いかがですか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、まさに人身取引は極めて重大な犯罪でございまして、まずもって、被害に遭われた方の被害の回復が、心身含めて、非常に大事だというふうに思われます。

 入管当局といたしましては、その前提といたしまして、被害者の方の多くが不法滞在状態にあるという状況にかんがみまして、これらの方々に合法的な形で我が国に滞在をしていただいて、その上で種々の保護を行うということが妥当であると考えておりまして、現行法のもとにおきましても、在留特別許可の弾力的な運用を行いまして在留の資格を付与しているところでございます。

赤嶺委員 そういう立場で本当に臨んでいただきたいんですが、それで、その被害者保護を徹底していくという点で、入国管理の現場を担う審査官、そして警備官、事務官等の職員にとってどんなことが必要なのか、法務省として今何を考えているのか、この点いかがですか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどもお答え申し上げましたが、まさに委員御指摘のとおり、入管の職員は、人身取引の関係では第一線に立って業務を行うという立場にあるわけでございますので、人身取引が極めて重大な人権侵害であるということを職員一人一人が肝に銘じて職務を遂行するということが大事であると思っております。そういう意味で、各種の研修等を通じまして、私どもその啓発に努めておるところでございます。

 また、このほかにも、そもそも人身取引を未然に防止するということも非常に重要でございますので、被害者が我が国に入国して被害に遭うということを、いわば水際で防止するということも大事だろうというふうに考えております。

 そういう観点から見ますと、被害者の方は偽変造旅券を使って入国するというケースも多いわけでございますので、文書の鑑識能力を高めまして、水際でこういう事態を発見するというようなことにも努めているところでございます。

赤嶺委員 そういう努力も非常に大事だと思うんですよ。

 それで、私、今度の議定書の審査に当たって、少し、入国管理に当たっている現場の方々の意見も聞いてみたんです。現場の方から上がってくる、被害者保護で一番、自信を持ってやれる、あるいはもっと後押しが欲しいということをおっしゃっているんですね。自信を持って職務を果たす上でも、被害者保護支援法を制定して、被害者支援に対する国の責任を明確にして、中心となって対応する国の機関を定める、あるいは医療保障を含む財政上の措置や民間のシェルターへの十分な援助などを整備することが欠かせないんじゃないか、このように意見を述べているわけです。

 被害者保護の第一線を入国管理局職員が担うということを先ほどおっしゃっておりましたけれども、それを十分な後押しをもって担うためにも、私はやはり被害者保護支援法が必要である、このように考えておりますが、この点はいかがでしょうか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 委員の御質問のすべての趣旨に私の方から御答弁申し上げるのが適当かどうかという点はあるかと思われますが、入管の立場から若干申し上げます。

 現在、政府で人身取引対策の行動計画を策定されておりまして、これに基づきまして、政府を挙げて人身取引対策に取り組んでいるところでございます。

 もちろん、その中では、先ほど来御答弁ありましたような、警察もそうでございますし、入管も努力をしておるところではございますが、さらに被害者の保護、アフターケアという点では、婦人相談所でございますとか民間のシェルターの協力が不可欠であろうというふうに思うわけであります。こういうところにつきましても、厚生労働省等でいろいろな手当てをされているというふうに承知しております。

 こういう現在ありますいろいろな制度を有効に活用して被害者の保護を図っていくということが当面は大事ではなかろうかというふうに考えておるところでございます。

赤嶺委員 まずそういうことを踏まえながら、同時に、現場の入国審査に当たる職員の方々が自信を持ってその仕事、職責を遂行していく上でも、もっと強い法的な後押し、被害者支援法ですね、これについてもぜひ皆さんの方でも検討していただきたいと思うんです。

 それで、あと一点、やはり現場から上がってきた要望であります。

 これは皆さんからいただいた、入国審査に当たる職員の体制についてですが、ここ数年、定員は百人、百五十人、毎年ふえてきております。ふえてきているんですが、職員配備の重点は成田やあるいは関空ということになっているわけですね。これはこれで道理があることだと思うんですが、一方で、地方自治体も、地元空港を活用して積極的に国際便をチャーターしてきているわけですね。

 現状では、地方空港で、では入国審査に対応するためどうしているかといいますと、東日本地域は成田空港から、あるいは西日本は関西空港の支局から、いわば機動部隊として、その都度経験ある審査官が出張してカバーする、こんなふうになっていると思います。今後、地方空港が人身取引やあるいは密入国のルートとしてねらわれる可能性が出てくるという指摘も、これは現実にあるわけです。

 私、これは、今後の入国管理体制全体の充実の中で、地方空港の問題も検討していくべきではないか、このように思いますが、この点どうでしょうか。

三浦政府参考人 委員御指摘のとおり、このところ海外の各国から日本の地方空港にチャーター便がかなり飛来するようになっております。従来は考えられなかったような事態でございます。

 私ども入管といたしましては、もともと外国便が就航していない空港につきましては、入管の出先を設けていないところが多いわけでございますが、最近は北海道でも、女満別空港ですとか帯広空港ですとかそういったところにも、また能登の方の空港にも外国のチャーター便がかなり来ておるという状況でございます。にわかにそういうところに組織というわけにもいきませんので、今委員御指摘のとおり、いろいろなところから出張いたしまして、適切に対応するべく努めておるわけでございます。

 また、これも委員御指摘いただきましたが、入管職員、このところ御理解いただきまして増員を認めていただいておるわけでございますので、そういう中で人員の配置を合理的に行いまして、外国からお見えになるお客様方に御迷惑がかからないような努力を今後とも継続していきたいというふうに考えております。

赤嶺委員 最後に、外務大臣にお伺いしたいと思います。

 この人身取引について、日本の対応に対して世界から批判が強いという問題があります。アメリカの方から、日本の人身取引問題は大きく、国際的に活動する暴力団組織が関与している、日本政府は、全面的に対策を講じ、国内のこの重大な人権犯罪に対し対処し始めなければならない、このように強く指摘されているわけです。これはアメリカの国務省の人身取引報告書の中から引用したわけですが、日本もいわば人身取引の監視対象国というぐあいにしているわけですが、他国から人権問題でこのように批判されるということ自身が大変重大だと思うんです。

 その点で外務大臣がどんなふうに受けとめておられるか。また、国連等からも勧告が出ているわけですが、これらについて今後どのような具体的な努力をなされるおつもりか、外務大臣の答弁をお願いしたいと思います。

町村国務大臣 人身取引、まことに重大な人権侵害である、私もそう思います。人道的な観点から、こうした対策をしっかりやらなければいけない、そういうこともありまして、先ほど来からお話をしておりますように、昨年十二月に、関係閣僚が集まりまして人身取引対策行動計画というものをつくりました。これを今着実に実施していく、そのためのいろいろな法整備をしていく、今回御議論をいただいているこの条約についても、まさにその一環であろう、こう思っております。

 いやしくも、諸外国あるいは国際機関から日本が人身取引対策が非常におくれているという批判を招かないように、これはもうしっかりと取り組んでいかなければいけない大変大きな課題であるというふうに思いますので、外務大臣も関係大臣の一人として、政府全体を挙げてこの問題に全力で取り組んでいきたいと考えております。

赤嶺委員 終わります。

赤松委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 社会民主党の東門です。いつものことながら最後です。よろしくお願いいたします。

 条約に入る前に、沖縄関連で二、三質問をさせていただきます。

 米連邦議会の海外基地見直し委員会が五月五日、中間報告書をまとめてブッシュ大統領に提出いたしました。事実上の最終報告となると言われているこの中間報告は、普天間飛行場について、嘉手納飛行場か岩国飛行場へ移転、統合すべきと勧告しています。私自身は、今月初めに訪れたワシントンDCにおいて、この報告書は、今回の米軍再編に何ら影響を与えないとの意見に接してはきましたが、政府としては、この中間報告の在日米軍再編への影響をどのように見ているのでしょうか。外務大臣の見解をお伺いいたします。

町村国務大臣 御指摘の報告書でありますけれども、この点、アメリカ政府によりますと、米海外基地見直し委員会が米連邦議会の委託に基づいて作成をしているものであり、米政府の方針や現在の検討状況を必ずしも反映したものではないということでございます。したがいまして、そういう性格のものである以上、日本政府として、これに一々のコメントをする立場にはないということでございます。

東門委員 この中間報告の中で、私申し上げました、嘉手納飛行場か岩国飛行場へ普天間飛行場を移転、統合すべきというふうに勧告されていると。その上に立って、けさの東京新聞ですが、普天間早期返還をねらって、これはやはり「米海兵隊普天間基地のヘリ部隊を嘉手納基地に移すことで、普天間基地の早期返還につなげる狙いだ。」ということで、済みません、同じところを読んでしまいましたけれども、その普天間飛行場、嘉手納統合案というのが、しっかりと日米両政府関係者が明らかにしたという報道があるんですが、今現在、日米の間で普天間の飛行場は嘉手納に統合するという案が実際にあるのでしょうか、協議されているのでしょうか。お聞かせください。

町村国務大臣 毎回同じことを言って大変恐縮でございますけれども、いろいろなアイデアを協議はしておりますけれども、両国で今具体の案について意見が一致しているということではございません。今意見交換を行っている最中であるということで、今その新聞の記事、私は承知をいたしておりませんが、いろいろな新聞記事が出され、その都度沖縄の皆さん方、あるいは関係する地元の皆さん方にいろいろな期待やら不安やらを与えているということを大変申しわけなく思っておりますが、新聞が書くことをとめるわけにもまいりません。したがいまして、私どもとしては、その一々の報道についてもこれまたコメントすることは差し控えさせていただきます。

東門委員 私、この記事を読んだときに、かなり信憑性があるなと感じたんですね。ワシントンに行って、シンクタンクの皆さん、アメリカ政府の関係者の方々とお会いをしてきまして、いろいろお話を総合して、これはあり得ることかなと。それで、日米両政府関係者が明らかにしたとあるものですから、多分そうかと思いましたが、今明確に否定をされましたので、そうだろうと、ではその方にとっていきたいと思います。

 その報告書についてさらに続けて伺います。

 報告書は、普天間以外の在沖海兵隊を沖縄に残留させることも勧告しております。それは承知しております。在沖海兵隊の大幅な削減がなければ、たとえ普天間飛行場が返還されたとしても、住民の負担の軽減が十分に確保されるとは言えないと私たちははっきりと言えます。

 この中間報告には、日米両政府が沖縄の海兵隊を最大で八千人削減することを検討しているということも言及されていますが、政府として、在沖海兵隊の削減について、どのような方針で米国と協議を進めておられるのか、あるいは進めるお考えなのか、お伺いいたします。

町村国務大臣 これもかねて申し上げているとおりでございますけれども、在日米軍の抑止力を維持しながら、また同時に沖縄等の地元の負担の軽減を図る、両方の観点を踏まえながら協議を進めているところでございます。

東門委員 海兵隊の削減、どうしてもやっていただきたい。これは大きな負担であるということを常々申し上げております。ですから、普天間飛行場が辺野古にできないのであれば、ではそれは県内にたらい回しをしていくということだけは絶対にしていただきたくない。本気で、いつもおっしゃっているように、抑止力の維持と県民の負担の軽減というのが、本当におっしゃっている意味がそのとおりならば沖縄県内でのたらい回しはやめていただきたいと強く要望しておきたいと思いますし、それから海兵隊の大幅な削減、これは真剣にアメリカ側に申し出ていただいて、協議をしていただいて、実現していただきたいと思います。

 今はすべて協議中だとおっしゃっておりますので、それ以上はお聞きしませんが、ただ、アメリカ側は、六月中にはアメリカ側の案は提案できるでしょうということもおっしゃっておられます。それはもう大臣御存じだと思います。そういうことからすると、そんなに悠長に待っておれないのではないかと思いますが、その件については、またこの次に質問をさせていただきたいと思います。

 時間がありませんので、条約について伺います。

 人身取引議定書について質問をいたします。

 先ほどから重複する部分があろうかと思いますので、ちょっと省きまして飛んでいきますけれども、人身取引の被害者は、多くの場合、不法就労や売春行為にかかわっているため、入管法や売春防止法などの、これは公然勧誘罪となっているようですが、法律違反で処罰される可能性があります。

 本来は、人身取引被害者が関与した法律違反は、大半が犯罪組織によって強制されたものであります。まず、被害者である本人を保護することが第一でなければなりませんが、被害者が処罰される可能性がある中では、被害者が我が国当局に保護を求めることをちゅうちょさせる結果になっています。したがって、被害者が人身取引の結果強制された行為で処罰されないことを担保するための法整備が必要であると思われますが、いかがでしょうか。

大林政府参考人 お答え申し上げます。

 人身取引の被害者が我が国において何らかの犯罪を犯した場合には、その犯罪の内容や人身取引被害との関連性を含めた犯罪の経緯等のさまざまな事情を総合的に考慮して起訴、不起訴の判断がなされるところでございまして、人身取引の被害者であるとの一事をもって一律に処罰をしないとすることは適当でない、このように考えております。

 なお、警察当局におきましては、このような事件に関する起訴、不起訴の判断において、人身取引の被害者であることなどの諸事情を総合的に考慮し、適切に対処しているもの、このように承知しております。

東門委員 現在、我が国への人身取引送り出し国とされているタイ、フィリピンと、経済連携協定について今現在協議が進められていると思います。しかし、フィリピンからの人身取引の被害者の多くが興行ビザで入国していることを考えれば、経済連携協定による人の移動が人身取引の隠れみのとされないためにも予防措置が必要だと考えますが、いかがでしょうか。

神余政府参考人 先ほどの御質問でございますけれども、隠れみのとして悪用されることが懸念されるということでございますけれども、外国人労働者受け入れに関します政府の方針は、平成十一年に決定されました第九次雇用対策基本計画に示されておりますとおり、専門的、技術的分野の外国人労働者の受け入れは積極的に推進し、単純労働者の受け入れについては十分慎重に対応するというものでございます。

 このような方針を踏まえつつ、経済連携協定の交渉における相手国からの労働者の受け入れの要望の扱いにつきましては、受け入れる場合の適正な受け入れ方法や労働条件等の問題を含め、関係省庁間で十分協議を行った上で交渉に臨んでおります。

 人身取引につきましては、政府は、昨年の十二月に策定されました人身取引対策行動計画に従って、出入国管理の強化を含む防止に関する諸施策を講じているところであります。

 いずれにしましても、人身取引の防止と活発な経済交流という二つの目的を両立させるために、引き続き効果的な人身取引対策を講じてまいる所存でございます。

東門委員 一点だけ、密入国議定書について質問させてください。

 本議定書は、密入国の効果的取り締まりとともに、移民を密入国させることがその移民の生命及び安全を危うくすることがあることを懸念し、密入国の対象となった移民の権利を保護することを一つの目的としています。これを具現化するために、第十六条一項には、生命に対する権利及び拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取り扱いもしくは刑罰を受けない権利を保全し、保護するため、すべての適当な措置をとると定められています。

 しかし、密入国者や不法滞在者などが収容されている入国管理センターの施設では、職員による暴行の訴え、対応への不満が絶えず、本項の要請に十分にこたえているとは言いがたい実情が知られています。今後、施設を第三者が監視するようなシステムを構築するなど、密入国者の基本的な人権を保護、援助する法制の整備に真摯に取り組むべきだと考えますが、政府において具体的な検討は進んでいるのでしょうか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 入管法におきましては、入国管理センターなどの施設に設けられておりますいわゆる収容場、退去強制手続の対象となった方を収容する施設でございますが、これにつきまして、法律上は、被収容者に対しまして、保安上の支障がない範囲内においてできる限りの自由が与えられるという規定、また一定の寝具や糧食、食べ物を与えるということなどが規定されておりまして、この規定に基づきまして適切に運営をしておるところでございます。

 万が一、暴行など、あってはならないことでございますが、そういう事態が仮に発生したといたしますれば、当然、我々といたしましても、犯罪に該当するということであるならば、事件を第三者である警察等に申告して、適切な捜査をお願いすることになろうかというふうに思っております。

東門委員 終わります。ありがとうございました。

赤松委員長 これにて両件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 これより両件に対する討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。松原仁君。

松原委員 私は、民主党・無所属クラブを代表して、人身取引議定書及び密入国議定書に対し、賛成の立場から討論を行います。

 近年、複雑化、深刻化する国際組織犯罪に国際社会が一致して対処する上で、我が国が人身取引及び密入国に関する両議定書を締結することは有意義なことであり、賛成であります。とりわけ人身取引議定書に関して、我が国がILOなどの国際機関やNGOなどから人身取引の主要な受け入れ国となっていることを指摘されている状況を解消することは急務と考えます。

 他方、人身取引議定書の締結に伴う国内法整備のため今国会提出されている刑法等の一部を改正する法律案が成立すれば、加害者の処罰は可能になると考えますが、被害者の保護については、被害者に在留特別許可を認めるなど、一定の前進は見られるものの、多くが当局の裁量にゆだねられているため、被害者の保護が果たして十分に図られることになるのか懸念を持っております。

 我が党は、人身取引の予防や被害者の人権を救済するためには、個別法の改正だけにとどまらず、責任体制、保護支援体制、予算措置等について明記した法律の制定が必要と考えており、政府に対し、このような観点からの包括的な法整備を進めるよう求めるものであります。

 また、我が党は、両議定書の本体条約である国際組織犯罪防止条約については、国際組織犯罪を防止するために同条約の締結は有意義なことと考え賛成いたしましたが、同条約実施のために政府が提出している犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案に、共謀罪の新設が含まれていることに大きな懸念を持っております。客観的行為とその結果により処罰することを原則としている我が国の刑法体系のもとで、犯罪の実行着手以前の共謀のみで処罰することができるとする共謀罪を新設することは、人権を不当に侵害する可能性があると考えます。政府は、こうした懸念に配慮しつつ、同法案を見直した上で、同条約を早期に批准すべきであります。

 このように、我が党は、条約の国内法整備に関連した人身取引被害者の保護法制の不備及び共謀罪の新設を問題視するものでありますが、人身取引及び密入国への効果的な対処、並びに国際協力に資するために両議定書を承認することが妥当であると考えていることを指摘し、賛成討論といたします。

 以上です。

赤松委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 これより採決に入ります。

 まず、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(特に女性及び児童)の取引を防止し、抑止し及び処罰するための議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

赤松委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する陸路、海路及び空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

赤松委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

赤松委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後一時二十二分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.