衆議院

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第8号 平成17年5月18日(水曜日)

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平成十七年五月十八日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 赤松 広隆君

   理事 谷本 龍哉君 理事 中谷  元君

   理事 原田 義昭君 理事 渡辺 博道君

   理事 大谷 信盛君 理事 首藤 信彦君

   理事 増子 輝彦君 理事 丸谷 佳織君

      宇野  治君    植竹 繁雄君

      河井 克行君    高村 正彦君

      菅原 一秀君    鈴木 淳司君

      土屋 品子君    西銘恒三郎君

      平沢 勝栄君    三ッ矢憲生君

      宮下 一郎君    田中眞紀子君

      武正 公一君    永田 寿康君

      鳩山由紀夫君    藤村  修君

      古本伸一郎君    松原  仁君

      赤羽 一嘉君    赤嶺 政賢君

      東門美津子君

    …………………………………

   外務大臣         町村 信孝君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   外務大臣政務官      河井 克行君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    岡田  薫君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    山中 昭栄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   塩尻孝二郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 齋木 昭隆君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 篠田 研次君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            西田 恒夫君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    石川  薫君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  佐藤 重和君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    鹿取 克章君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           長谷川榮一君

   政府参考人

   (国土交通省海事局長)  矢部  哲君

   外務委員会専門員     原   聰君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十八日

 辞任         補欠選任

  小野寺五典君     菅原 一秀君

同日

 辞任         補欠選任

  菅原 一秀君     小野寺五典君

    ―――――――――――――

五月十七日

 千九百六十五年の国際海上交通の簡易化に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

 千九百七十六年の海事債権についての責任の制限に関する条約を改正する千九百九十六年の議定書の締結について承認を求めるの件(条約第六号)

 西部及び中部太平洋における高度回遊性魚類資源の保存及び管理に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

同日

 都市型戦闘訓練施設の建設中止・地位協定の改定に関する請願(川内博史君紹介)(第一一七〇号)

 核兵器の廃絶に関する請願(佐々木秀典君紹介)(第一一七一号)

 同(土肥隆一君紹介)(第一一八五号)

 同(東門美津子君紹介)(第一二四二号)

 同(大畠章宏君紹介)(第一三一五号)

 同(金田誠一君紹介)(第一三一六号)

 同(平岡秀夫君紹介)(第一三一七号)

 ILOパートタイム労働条約に関する請願(高木義明君紹介)(第一一九一号)

 同(中村哲治君紹介)(第一一九二号)

 同(細川律夫君紹介)(第一一九三号)

 同(川内博史君紹介)(第一二四〇号)

 同(東門美津子君紹介)(第一二四一号)

同月十八日

 ILOパートタイム労働条約に関する請願(藤田幸久君紹介)(第一三九七号)

 同(金田誠一君紹介)(第一四四一号)

 同(阿部知子君紹介)(第一四七九号)

 核兵器の廃絶に関する請願(阿部知子君紹介)(第一四八〇号)

 同(横光克彦君紹介)(第一四八一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 千九百六十五年の国際海上交通の簡易化に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

 千九百七十六年の海事債権についての責任の制限に関する条約を改正する千九百九十六年の議定書の締結について承認を求めるの件(条約第六号)

 西部及び中部太平洋における高度回遊性魚類資源の保存及び管理に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

赤松委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長塩尻孝二郎君、外務省大臣官房審議官齋木昭隆君、外務省大臣官房審議官篠田研次君、外務省総合外交政策局長西田恒夫君、外務省北米局長河相周夫君、外務省経済局長石川薫君、外務省経済協力局長佐藤重和君、外務省領事局長鹿取克章君、警察庁刑事局長岡田薫君、防衛施設庁長官山中昭栄君、経済産業省大臣官房審議官長谷川榮一君、国土交通省海事局長矢部哲君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木淳司君。

鈴木(淳)委員 おはようございます。

 自由民主党の鈴木淳司でございます。久しぶりに質問の機会をいただきまして、まことに光栄に思います。

 さて、けさ私は、今帰国されております各国大使との意見交換の会がございまして、そこに少し出てまいりましたけれども、今回、各国大使を全世界から招集された、本当にこれは大変貴重なことだなというふうに思いました。

 今まで各局ごとのそういう会合はあったようでありますが、今回は初めて全大使を招集される。この機会に、日本の外交姿勢をしっかり確認しながら、今大変大事な局面でありますので、ぜひしっかりと日本の国益を守るための活動をお願いしたいな、こんなふうに思いますが、何といっても、世界諸事多難でありますが、こうした中で各国大使の、そして外務省本省の御尽力を心からお願いしたいと思っています。

 さて、まず最初に、きょうは国連の改革、安保理改革についてのお尋ねをしてみたいと思います。

 このほど、国連安保理の常任理事国入りを目指す我が国を含めた四カ国、ドイツ、インド、ブラジル、日本、いわゆるG4でありますが、その四カ国から十六日に、国連総会に提出する枠組みの決議案の草案というものを加盟各国に提示した、こういうことでございます。

 この草案では、拒否権つきを前提に、新たに常任理事国を六カ国ふやして、安保理理事国を二十五カ国へ拡大することを明記するとともに、スケジュールとしては、六月中に枠組み決議案を採択し、七月中に新常任理事国の選出とその後の二週間以内の国連憲章改正案の採択というスケジュールが示されております。

 その注目された拒否権でありますが、まず、四カ国の結束のために、インドが主張するその主張に配慮して、本来日本の持っておりました持論でありますが、やわらかな表現のシュッド・ハブ、これはシュッド・ハブ・イン・プリンシプルというんでしょうか、持つべきであるという案ではなくて、シャル・ハブ、持つものとするという強い表現とされたわけでありますけれども、アメリカその他現常任理事国が決して容認しないであろう拒否権の記述をめぐって、賛成国をふやすに当たっての草案の修正というものも今後現実的な課題になろうと思われます。

 G4は当初、九月の特別首脳会合の後での新常任理事国選出を予定していたはずでありますので、草案と同時に発表されたスケジュールの大幅な前倒しというものは、常任理事国拡大に反対をするいわゆるコンセンサスグループなどの抵抗を早目に抑えたい、こういう意向が反映されたものと思われますけれども、実際問題、今後始められる現常任理事国五カ国との個別折衝を初めとする各国への働きかけの成り行きはいかなるものと予測されるのでありましょうか。

 各国赴任の特命全権大使を招集して一堂に会する中で、我が国の基本方針たる国連改革と常任理事国入りの姿勢を確認されたことと思いますけれども、改めてここで、冒頭まず、我が国の取り組みの基本方針と、あわせて今回の提案の概略の説明、並びに現時点における今後の見通し、働きかけについて、お答えをいただきたいと思います。

町村国務大臣 鈴木委員にお答え申し上げますが、今週、月、火、水と三日間でございますが、全世界の大使、中にはイラクの大使等のように緊急の課題を抱えて帰国を命じていない大使もあるわけでございますが、原則としてすべての大使に帰国を命じまして、三日間の大使会議を行いました。

 いろいろな理由があるのですが、一番大きな課題は、今委員の御指摘のあった国連安保理の改革の問題について、改めて外務省本省の考えを明確に伝え、実は、まだまだ態度を決めていない国が多数あるわけでございます。もちろん、内々にいいですよと言ってくれたりしている国、あるいは公に、既に国際会議の場、国連の場等で言っている国、いろいろありますけれども、できるだけこれから公にその態度を表明してもらいたい、その辺を各国に対して強く働きかけをしてもらいたいという方針を伝え、それぞれの努力を促すということでございました。

 そこで、今、G4によりまして、安保理改革の枠組みを決めるための決議案というものをこのところずっと調整してまいりました。調整の過程の中で、四カ国必ずしも同じではなかった部分もございますが、最終的にはこういう案でいこうということで、今週月曜日からその案をニューヨークの国連代表部の中でそれぞれの国にお示しをしたということでございまして、とりあえず、十六日には、これまでの私どもの立場に理解を示してきている六十カ国以上の関係国にこの決議案の内容を説明した。この後、さらに多くの国々に順次説明をしていこう、こう考えているところでございます。

 もとより、それは、常任理事国の拡大に反対の国々もございますけれども、それらの国々に対しても今説明をしているところでございまして、現地国連大使からの報告によりますと、どれだけの数ということを今申し上げるには、まだ、いかにも時期尚早でございますけれども、一定の感触というものは得られていると、とりあえずの報告を受けているところでございます。

 今後のスケジュールにつきましては、各国の関心事項というのを幅広く聞きながら、余り原案にかたくなにこだわることなく、やはり賛同してくれる国の数をふやすということは非常に重要なポイントだ、こう思っておりますので、私どもとしては、できるだけ柔軟に対応して、そして、百二十八カ国以上、すなわち全加盟国の三分の二以上の支持を得るべく外交努力を展開していきたいと思っております。

 したがいまして、拒否権の問題についても、今委員御指摘のようないろいろな意見の違いは多少あったわけでございますが、最終的には、原則論として現常任理事国と新常任理事国に差をつけるべきではないという考え方でおりますが、この辺も、さっき申し上げましたような幅広い国々の支持を得るために柔軟に対応するという姿勢で日本としては今後取り組んでいきたい、かように考えているところでございます。

 夏、いつごろまでにこれが成立するかは、今後の説得活動次第かと思われますけれども、六月中には決議案を正式に国連総会に出すという手順を踏み、また、その後の成り行きで、できれば、九月中旬に首脳が集まるいわば国連サミットというものがあるわけでございますけれども、その前までに答えが出ればいいなと思っておりますが、そのとおり全部うまくいくかどうかは今後の展開次第だと思っております。

鈴木(淳)委員 今後、六月にはG8の蔵相、あるいは外相会合その他サミット等もあるわけでありますので、これは七月ですか、ぜひいろいろな機会で働きかけを強めていただければな、こんなふうに思います。

 さて、安保理改革には、やはり既得権としての拒否権を持つ現常任理事国の本質的な抵抗が予想されるわけでありますけれども、この機会に我が国としてまず一歩でも前進するためには、拒否権の有無を問わずに、まず常任理事国入りを果たすことが重要ではないかな、こう思うわけでございます。

 けさの大使の御報告にもありましたけれども、常任理事国というのは非常にいろいろな情報が集まるんだ、また各国の働きかけも多くて、そういう面では、ある面でほかの国とは全く違う外交的立場を得られるという説明もありました。

 まさにそうであろうと思いますので、ハードルを高くすることなく、まず何としても常任理事国入りを確実にすることが重要であろう、こう思うわけでございます。

 今後、活発な多数派工作が繰り広げられるというふうに思いますけれども、何といってもこれから大事なことは、アメリカの明確な支持というものを取りつけると同時に、また中国に強硬な反対をさせないということが必要ではないか、こう思うわけでございます。G4いずれの国におきましても、近隣諸国との関係が実は一番難しい、これはいろいろな問題を問わず、世の常であります。

 その中国でございますけれども、中国は目下、今回の日本の提案に対して、あるいは動きに対して、公式には賛成も反対もしていない、こういうことでございますけれども、中国を明確な反対に回らせないという意味において、そのためにも今問われているのは、今日の日中間に横たわる複雑な諸問題への対応であろうというふうに思います。

 そこで、これから、一連の反日デモが続いた後における今日の日中関係の現状をどのように把握し、理解し、関係改善をどのように図っていくのかというその方向についてお尋ねをしてみたいと思います。

 先月の九日に端を発しました中国の反日行動、これは、当初、中国政府が事実上黙認をするような形の中で各地に拡大をし、国際世論の激しい反応や、あるいは今度は逆に、政府自身の危機感からか、当局が一転して抑え込みに回り、心配されました五月四日の日も無事に過ぎた感があります。そしてまた、現在はとりあえず小康状態かな、こんな感じがいたします。

 ここで一連の動きを振り返ってみますと、当初、中国政府というものは、反日行動をある面容認する中で、日本への牽制に利用しようとした側面もあるやに思えたわけでございます。事実、従来、歴史認識問題や教科書問題は常に外交カードとして使われてきた感がありまして、当初は、中国国民の対日批判の盛り上がりを今回もまたそのような観点から黙認したかの印象がありました。

 しかしながら、一転して、過激な反日行動の力による抑止とインターネットやメールの規制強化、あるいは日中関係の重要性について党によるプロパガンダの開始等、今度は何とかそれをコントロールすべく力を尽くしている背景に、この問題に対して中国政府は極めて難しいかじ取りを迫られている、こういう様子が見てとれるわけであります。

 言うまでもなく、中国共産党の正当性というものは抗日戦争にあるわけでございまして、そのために歴史教育、反日教育というものが、とりわけ九〇年代、江沢民政権下で徹底され、その結果として今日の反日感情が、特にこれは戦争を知らない若い世代の間で高まっているわけでございます。

 一方では、国内的には、急激に経済成長する中でのひずみというものが拡大をして、潜在的な国民の不満というものがもはや抑えがたいレベルに達していて、都市部のみならず周辺部あるいは農村部においてもかなりこれは激しい腐敗批判やあるいは暴動にまでつながっている、こういうふうな報道もあるわけでございまして、ともすれば統治機構の崩壊につながりかねない、そうした要素があるのではないかという観測もあるわけであります。

 一方では、国民の不満のはけ口として反日行動を許容し、体制への批判をそらしながらも、行き過ぎは今度は逆に体制批判に変容しかねない、その危ういバランスの中で今中国政府が微妙なコントロールを強いられているのではないかという識者の指摘はまさに当たっているのかな、こう思うわけでございます。

 日本政府に対しての強硬姿勢を崩せば、弱腰として中国国民の政権への風当たりが強まるので、それもできない。さりとて、欧米先進国の国際世論への対応も重要でありますし、また、ある面、日中間の歴史問題や靖国問題、教科書問題に関しての国民世論への対処が、もはや従来の外交カードの域を超えて中国政府自身を悩ませ始めている、そういう側面があるのではないかな、こう思えるわけでありますが、これは行き過ぎた見方でありましょうか。

 本来、中国共産党がある面政治的に誘導し、利用してきたはずの反日教育の結果たる民衆の反日感情や体制への不満の圧力が、逆に国家がコントロールし得なくなるレベルに達すれば、それはいずれ中国政府自身に対する分裂圧力につながりかねない状況に至るのではないか、こう思われるわけであります。

 とすれば、我が国としては、中国における行き過ぎた反日行動の抑止や反日教育の是正を求めることは当然ではありますけれども、一定以上の踏み込んだ姿勢、具体的に言えば、さきの反日デモにおける損害賠償の執拗な要求とか、あるいは明確な謝罪要求とか、これを中国政府の体面を傷つける形をとれば、我が国の国民として感情的にはおさまったとしても、結果的には中国政府の国内対応を難しくさせ、問題をかえって複雑化させかねない側面があるのではないか、こう思うわけでございます。

 言うべきことは言い、毅然たる態度をとることは基本ではありますけれども、日中関係の安定のために、今日の状況の打開のために、ある面感情を超えた大人の対応というものが実は今我が国にも求められているのではないか、こういう思いがいたします。

 相手に貸しをつくるわけではありませんけれども、少し大所高所から見た中国への対応が時には必要であるのかな、こう思うわけでありますけれども、果たして我が国政府としてはこのあたりの中国の内政上の事情というものをいかに分析、把握しているのか、お尋ねをしたいと思います。中国国内の反日行動の制御等に関して、中国の内政上の事情を我が国としてはどのように分析しているのか、お聞かせをいただきたいと思います。

町村国務大臣 四月に発生をいたしました一連のデモ活動、これについて私どもから余り先方の国内事情をあれこれ申し上げるのもいかがかなと思いますが、先方の説明によれば、なぜこういうデモが起きるかというと、日本の、日本人の歴史認識に対する中国国民の不満から生じたものである、こういう説明を中国の外交部長等がしているのは御承知のとおりでございます。

 それは、いろいろな国内事情もあるんだろうと思います。今委員が御指摘になったような面、それぞれ当たっているのではないかという見方もかなりあると思います。実際、日中外相会談をやった際にも、彼らは、確かに謝罪ということは一切しないわけでございますけれども、原状回復、あるいは過激な行動の再発防止、あるいは実際に犯罪を犯した者の逮捕等をしっかり法に基づいてやるということを言っているわけでございまして、今のところ、そういう彼らの対応かなと思っております。

 したがって、四月十七日に日中外相会談をやったわけでございますが、それ以降、十九日、例えば李肇星外交部長が許可をされていないデモに参加しないよう呼びかけるとか、さらに二十一日には公安部の報道官が、あるいは二十二日には商務部長がそれぞれ、デモに参加しないようにとか、あるいは日本の商品をボイコットしたり日本の店を襲うということはかえって中国の利益にも合わないんだというような発言をしたりしておりまして、それ以降、暴力的な行為を伴うデモ活動は生じていないという状況かと思います。

 確かに、委員おっしゃるとおりに、何から何まで全部取り上げて、それを一つ一つすべてきっちりと詰めていくということがいいのかどうかということもありますが、しかし同時に、やはり、どういう背景、どういう事情があったにしても、ああいった破壊活動というものは、一般的なデモはどこの国でも表現の自由として許される、しかし、いかなる背景があったとしても破壊活動は許されない、その点だけは私ははっきり申し上げなければならないという思いで先方に申し入れました。そういう意味で、いまだに謝罪がないということについて言うならば、私どもとしては、やはり今後、その点は引き続き申し入れなければならない、こう考えています。五月七日の日中外相会談でも、引き続き私はそのことを先方に申し上げたわけでございます。

 ただ、いずれにしても、委員御指摘のように、日中関係の改善ということは大局的な観点から進めなければならない。まさにその点をインドネシアにおける日中両国首脳の会談で合意されたというふうに私どもは理解をしておりますので、今後、いろいろな手段を尽くして関係改善に努力をしてまいりたいと思っているところであります。

鈴木(淳)委員 この後は、歴史の共同研究あるいは人的交流の話をしたかったのでありますが、時間が参りました。

 これは、政府だけではなくて、民間も含めて、あらゆるレベルを通じて、やはり関係改善の糸口を探りながら、ある面ストレートな直球を投げながら、ある面で大人の対応もする、こうしたことが必要なのかな、こう思うわけであります。

 いずれにしても、難しい問題でありますが、町村大臣、いわゆる創造的な外交、ぜひ御尽力、頑張っていただきますように御期待を申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

赤松委員長 次に、赤羽一嘉君。

赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。

 きょうは、二十分間という限られた時間でございますが、私は、二つのテーマ、一つは安保理改革、もう一つは、時間があればということでありますが、日本とタイのFTA交渉につきまして御質問させていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 まず、安保理改革についてでございます。

 今の御質問にもございましたが、G4グループでとりあえずの枠組み決議案ということでまとまった。拒否権については、シャル・ハブにするのか、シュッド・ハブ・イン・プリンシプルか、シュッド・ハブにするのか、そういういろいろな取りまとめ、御苦労があったと思います。

 加えて、ドイツの国連大使は、今回の取りまとめというか、これからの採択への道というのは大変険しい道がある、一つは既得権を堅持したいという現在のP5、もう一つはP5と同等の権利を求め、差別的に扱われたくないという新しい常任理事国の思い、三つ目は拒否権は時代おくれで非民主的と考えている大多数の加盟国、こういった三つの異なる利益を考慮してまとめ上げていかなければいけない、そういった厳しい認識をしたコメントもあるようでございます。

 まず、G4の中でいろいろな意見があることはさりながら、多数を形成する、採択へ向けての四カ国間のどういう体制で組んでいくのか、地域的に分担をするのかとか、そのフォーメーションみたいなことも、取り組み体制についてどのようになっているのか、御答弁をいただきたいと思います。

町村国務大臣 今ドイツのニューヨーク代表部大使のお話をされましたが、今、その大使が言われたような問題点、確かに現実に存在をしていることだと私どもも認識をしております。

 さらに、もう一つ別の側面を言いますと、大部分の国にとりましては、常任理事国になる可能性というのはほとんどないということが自他ともにわかっております。したがいまして、非常任理事国の数が拡大すると、もしかすると、何年に一度か、あるいは何十年に一度かは自分たちにも回ってくるかもしれないという期待感は確かにあるんですね。

 そういたしますと、いわゆるモデルBといいましょうか、非常任理事国の数だけをふやす、モデルBも、今、緑案、白案、赤案とか、何かいろいろな案があるようでございますけれども、そういう案の方が一般的には、大多数の国にとっては、これはもしかしたら自分の国の利益にも合致するかもしれないということで、どちらかといえばA案よりはB案の方が魅力的に映る部分も確かにあるんだろうと思います。

 しかし同時に、もう少し冷静になって、本当に国連というものの機能を高めるためにはどういう姿がいいだろうかということを考えたときには、やはりいろいろな側面を考えたA案の方がより実効的であるというふうに私どもは考えて、今これを進めているわけであります。

 特に、この支持を拡大するためにどういうような役割分担をするのかという、作戦とでも申しましょうか、今お尋ねございました。

 ニューヨークの現場では、特に国ごとに、ここはどこの国が担当する、ここはどこが担当する、だんだんに話が煮詰まってくるとそういうようなことにもなるし、現に一部そういう議論は行われておりますが、まだ、それぞれの国がそれぞれのところで一生懸命努力をしようというようなことをやっておりまして、明確に役割分担を決めて取り組んでいるというところにまでは至っておりません。

 ただ、なかなか難しいといいましょうか、かえって、例えば南米の中でも、ブラジルにシンパシー、共感を示す国もあれば、ブラジルだけは嫌だという南米の国もあったりして、それぞれの地域にそれぞれの難しさがまたあるという部分は間違いなくあるんだろうと思います。

 私どもが非常に注目しておりますのはアフリカでございまして、アフリカからは、フレームワークとしては今二つの常任理事国ということで、七月上旬にアフリカ首脳会議が開かれる。そこで二カ国が選ばれるのかどうなのか、選ぶ努力をする、こう言っておりますが、そこがまとまると、かなり大きなグループとしてまとまる。では、しかし、アフリカ首脳会議で、そこで本当に二カ国まとまって、それで全部五十数カ国が結束するかというと、もう既に反旗を翻しつつある国もあるとか、なかなかその辺は難しい面があるんだろうな、こう思っております。

 いずれにしても、ニューヨークにおいて、またそれぞれの国の首都において、日本は日本として、他の三カ国とも協調しながら最大限の努力をしていく必要があるという考えでございます。

赤羽委員 最終的に加盟国の三分の二の採択を得るためにどのような作戦を立てていくかというのは、相当高度な戦略を持っていかないと、なかなか達成は難しいのではないか。地域を挙げて全面的にこのG4の決議案を応援してくれるというような地域というのはなかなか出てこないのではないか。やはり相当細かい国への対応、シラミつぶしのようにしていくことが大事なのではないか、私はそう考えておりますので、まずぜひ、G4それぞれ、国の外交の違いもありますし、経済的なつながりの違いもありますし、これ、安保理の構成を十五から二十五にしたというのは、最後の十枠はドイツの主張とか聞いておりますし、本当にドイツだけに任せるのではなくて、G4で担当を決めながら、四カ国連携をとりながら、限られた時間でありますけれども、戦略、フォーメーションをしっかりととっていただきたいということを強く要望したいと思います。

 次に、それでは日本の国内の体制はどうするのか、こういうふうに言われておりまして、きょうも何か、ある新聞では、この報道が正しいかどうかというのは全く私も確認をしておりませんが、外務省幹部のかぎ括弧のコメントとして、無理に決まっている、特に国連憲章改正は、敵国条項や国連改革全体のこともあり、そんなにすぐにできないとか、第二次大戦の戦勝国を中心に築いた国際秩序を、戦争なしで変えようという一大転換だからそもそも難しいとか、私は、どういう意味で言われたのかよくわからないし、事実関係もわからないし、それを問うことはないわけですけれども、こういったことを一掃するために、多分、きのう、おとといと世界じゅうから全大使を集めて、大臣が気合いをぶち込んだというふうに理解をしておるわけであります。

 外務省が全体で取り組むというのは、もちろんこれは最も基本でありますけれども、我々の中で話をしていても、外務省だけで、では、どう具体的に多数を形成していくのか、現状、先ほどお話がありました、六十カ国プラス、どうやって積み上げをしていくのかというのは、これは相当具体的な話になるのではないかというふうに私は思っております。

 一つは、ODAというのは、アフリカ諸国に対するODAというのは大変強力だというか、唯一の手段であるというふうに思っておりますが、このODAについては、最近、公共事業と並んで、ODAのバッシングというのは大変なもので、この二年間で激減をしているわけですね。現在、GDP比で、予算比ですかね、〇・一九%にもなっておって、このODAに対する逆風をどのように世論を変えていくのかということも、まず早急に手を打たなければいけないのではないかというふうに私は思っております。

 ODAというと、何かむだなものをつくっているとか、非常にネガティブな報道もあり、御発言もあったりとかするんですが、私は議員になって十二年間ですけれども、世界各地に行きますと、案外、草の根ODAとか、日本円でいきますと一千万円単位で、物すごく役に立っている。アフリカだけではなくて、中東とかアジア諸国で、非常に細かい話のようでありますけれども、大変その地域の振興には役に立っている。

 その一千万ぐらいの草の根ODAですと、結構、現地職員が決済で本当に現地の欲しいものをつくるというような話がありまして、大変いい話だなと思った。例えば、イスラエルなんですけれども、盲目の方でもできるミシンの工場をODAでつくって、それはもう大変な地元の障害者対策というか雇用対策につながっている。

 ああいったことを、私、かつて福田官房長官のときにも御提案申し上げたんですが、「プロジェクトX」というNHKの番組で幾つか取り上げたらどうですかと。大変その番組にふさわしい、ドラマチックな、本当に国際貢献にふさわしいODAというのは、草の根ODAだけではないんですけれども、数多くのドラマがあるわけでありまして、そういったことを通して、何かODAバッシングに対する気流を変えないと、具体的に言うと、来年度の国家予算の概算要求に退潮ぎみのODA予算を回復することはなかなか難しいのではないか。

 このODAの予算のパイを広げなければ、これからの具体的な多数派形成の中で、アフリカ諸国の賛同を得るのは、なかなかツールはないのではないかというふうに思うんですが、この点について御回答いただきたいということ。

 もう一つ、関連しますのであれですが、外務省だけではなくて、例えば農水省なんかはモロッコから水産品を物すごく日本は輸入しているとか、そういう役所ごとに物すごく関連がある、貢献をしている国々というのは、それはもうたくさんあるわけですよね。

 環境省もなかなか、経済的にというよりも、環境省は環境問題ということでニーズも高いと思いますし、こういった、外務省だけではなくて、各省庁の、本当にフル回転をして、気合いプラス具体的なプロジェクトをつくりながら取り組むということが大事なのではないか。気合いで頑張るのは浜口親子だけでありまして、多数派形成はやはり具体的な案件をもってやらなければいけない。

 各大臣、お忙しいかもしれませんが、関係閣僚会議とかを設置するというのはもとよりですけれども、実務的に、各副大臣がこういう特命チームみたいなものを形成して、この秋に向けて国内体制をとるべきではないかと私は思いますが、この点についても御答弁をいただきたいと思います。

町村国務大臣 貴重なお話をいただきまして感謝をいたしております。

 最初にお話しになった、なかなか実は難しいんだよという認識は、一般論として、確かに実際難しい面があると思います。

 戦後六十年、この仕組みでやってきた、いわば、本当に戦勝国がつくったその枠組みの中に、当時の敵国であった日本が経営者の一人として入ろうか、あるいはドイツが入ろうかという話ですから、それは確かに基本的に難しい面があるということは、一般論としては、確かにあると思います。それだけにまた、逆に言うと、新しい時代の実態というものを反映した国連にしていかなければ、国連そのものの有効性が問われるということではないだろうか、こう思っております。

 ODAのお話をいただきました。

 これは、常任理事国入りも大いに関係をいたしますが、もうそれ以前に、二〇〇〇年当時、ミレニアム・ディベロプメント・ゴールズという、ミレニアム開発目標、いろいろな分野にわたって、それを決めております。たしか二〇二〇年を目標にしていたかと思いますが、その中で既に、それぞれの開発援助をGNIの〇・七%という目標に努力をしましょう、こんなことも実はうたわれております。

 そういう中で、日本の予算が確かに御指摘のように二〇〇〇年に入ってから減り続けているということでございまして、私は、先般成立をしていただいた予算で、一通り、底を打ったかなということで、来年度予算からは、今後政府部内でも、また国会でも御議論をいただきたいと思っておりますが、来年度からは少し予算を、今度はODA予算をふやす方向に持っていきたい、こう考えているところでございます。

 その際に、やはり国民の理解というものが必要だというのは、委員の御指摘のとおりでございます。

 ちょっと調べましたら、あの「プロジェクトX」で既に二回ほど実は取り上げられているということが私もわかりまして、多少うれしい思いもしております。

 確かにいろいろな分野でODAが有効に活用されているというケース、私も見聞きしておりますし、先般の津波災害のときも、たしかスリランカだったと思いますけれども、日本の援助でできた防波堤が、モルディブの方だったかな、失礼しました、モルディブで非常に大災害を食いとめる効果があったという話を聞いて、そういった成果も上がっているんだということを実感しております。

 しかし、まだまだ国民の理解が必要だという意味では、さらに一層、広報の充実、ホームページにも載せたり、あるいはODA民間モニターといったようなことも始めておりまして、これらによって、幅広く国民の理解を得ていきたいと思います。

 最後に、政府の総力を挙げてやらなければいけないというのは御指摘のとおりだろうと思います。副大臣特命チームというのは大変いいアイデアかなと思って今伺ったところでございますので、早速、谷川副大臣あるいは逢沢副大臣とも相談をして、そういうものを立ち上げるかどうか、早急に検討をし、実現をしていきたい、かように考えております。

 また、政府ばかりではなくて、実は経済界も、それぞれの国にいろいろな大規模な投資をしたりして大きな影響力を持つ企業もございますので、経団連等にも実は既に依頼をしてありまして、いろいろな国々の首脳と会ったときにはぜひこのことを話題に取り上げてください、お願いします、こんなことも申し上げているところでございます。

赤羽委員 特にアフリカ諸国の賛同を得るということが大事だということの中で、我々が頑張るということも大事ですけれども、アフリカというのは、伝統的にというか、中国の影響が大変大きい、中国も相当面倒を見ている、こういった歴史があるわけでありまして、そういった意味で、先ほどの御指摘もありましたけれども、中国と今回のこの件について、やはり賛同を得る最大の努力をしなければいけないのではないかというふうに思うわけであります。

 中国のODAは、確かに、大臣の御発言もありました、卒業してもいいのではないか、そういった側面もあると思いますが、例えば黄砂の問題ですとか酸性雨の問題というのは日本にとっても大変大きな問題でありますし、こういったことを共同で解決していくという意味で、やはりODAというのは、これは日本の国民の支持も得られる案件だというふうにも思っておりますので、ぜひこういったことも進めていただきたいというのが一点。

 もう一つは、やはり今の日中関係のこじれている一番の肝の部分をクリアしなければいけないのではないかというふうに私は思うわけです。

 靖国参拝の件で、小泉総理の国会での答弁についていろいろな反響があるわけでありまして、けさの新聞各紙に出ておりましたが、シンガポールのリー・シェンロン首相は、日本の占領を経験したアジアの多くの国々の観点からは、戦争犯罪人も合祀する靖国への参拝は多くの不幸な思い出を想起させる、日本が戦争中に悪事を行ったということを完全には受け入れていない意思表示と多くの人々は考えてしまうと。私も先日韓国に行ったんですけれども、そういった感じが率直な感じだというふうに思うんです。

 そこのことについてどういう配慮をしているのかということを伝えるというのが大事だと思うんですね。私はそうは考えていないと言って角を突き合わせても、何ら外交的な解決にはならないというふうに私は思っております。思想は思想で、もちろん小泉総理の考え方は尊重されるべきかもしれませんが、それについての外交的な影響、国益といったことを当然考えるのが日本の責任者としての大事なことだというふうに私は思っております。

 この点も含めて、ぜひ、この秋までに日中関係が劇的に改善されるということが望ましいわけでありますけれども、そんな簡単な問題ではないと私も承知をしております。この常任理事国入りということも踏まえて、最大限の努力をする必要があると私は思いますが、最後に大臣の御見解をお伺いさせていただきたいと思います。

町村国務大臣 一点、修正をいたしますが、先ほどミレニアム開発目標二〇二〇年と申し上げましたが、二〇一五年の誤りでございました。ちょっと訂正をさせていただきます。

 中国の関係の御指摘がございました。一つは環境関係のODA。これは、今やっておりますODAの重点分野の一つということで、円借款、無償資金協力等を通じまして、かなり黄砂とか酸性雨対策に日本の援助を使っているという事実がありますし、確かに、オリンピックまでということでございますので、その間においても、あるいは、無償資金協力などはその後続けるかどうか今考えているところでございますが、環境対策というのは、いずれにしても日本にも大きな影響を持つという意味で、今後ともこれは日中間で共同で取り組むべきテーマの一つであろう、かように考えております。

 そういう中で、歴史認識あるいは靖国の問題に今お触れになられました。例えば、先般のインドネシアで開かれましたアジア・アフリカ首脳会議、そこでも小泉総理が、報道によりますと、何かひたすら謝罪だけの演説をしたように報道されておりますが、そうではございませんで、基本的には一九九五年の内閣総理大臣談話を踏まえつつ、引用しつつ、そういう反省の上に立って、戦後、日本は、平和国家として努力をしてきた、さまざまな平和活動をやってきた、援助もしかり、あるいはPKO活動しかり、幅広いそういう活動をやってきた。なぜそういうことを一生懸命やってきたかというと、それは、戦前の大戦中の活動の反省の上に立って、だから、そういう平和活動が重要なんだ、二度と戦争をしないような世界をつくることが重要なんだ。それで、具体的にはアフリカへの援助を三年のうちに二倍にする等々の話を、いわばそれを引き出すための前段階としての話をしたわけでございます。

 このことは、国会の中でも、国際会議の場で謝罪をするとは何事だという厳しい御指摘もいただいておりますし、他方、あれはいい演説だったという両方の御指摘がある。マスコミの評価もいろいろあるようでございますが、小泉総理の思いはそういうことであったということでございます。

 いずれにしても、中国の理解、何といっても常任理事国の一つでございますから、今回の安保理改革、国連改革に当たって、中国の理解を得るというのは大変重要なポイントであるという委員の御指摘はごもっともでございますので、今後とも、彼らの理解を得るためにも最大限の努力をしていかなければいけないと考えております。

赤羽委員 終わります。どうもありがとうございました。

赤松委員長 次に、松原仁君。

松原委員 民主党の松原仁であります。

 質問に入るわけでありますが、その前に、今の御質疑にありましたが、私たちは日本の歴史の中で今日生きているわけであります。この靖国問題がさまざま議論になったりする中で、その一つの問題点はA級戦犯ということになろうかと思っておりますが、このA級戦犯をA級戦犯たらしめた決定的な議論というのは、東京裁判から生まれているわけであります。

 この東京裁判について、これはもう外務大臣である町村大臣におかれては当然熟知をしておられると思うんですが、私たちは、日本の国益という立場から、さまざまなものを知っておかなければいけない。特に、あの東京裁判のときに、日本は無罪であるというふうに言って日本の戦争無罪論を書いた、インド代表の判事であったパール判事、この日本の戦争無罪論という書物について、町村大臣はお読みになったことがあるかどうか、差し支えなければ教えていただきたいと思います。

町村国務大臣 大分前に一回、目を通した記憶がありますが、大分記憶力も低下をしてきておりますものですから、余り詳細なことは覚えておりません。

 ただ、こういう議論を国際の場で、しかも戦後直後のああいう場でなさる、その見識の高さといいましょうか信念の強さといいましょうか、それには改めて敬服の念を持ったという印象が残っていることだけは確かでございます。

松原委員 このパール判事の議論というのは、罪刑法定主義といいますか、既にある罪状でそのときの罪は決めるのであって、後づけの罪状で遡及しないという当たり前のことを含め、さまざまな論点から東京裁判の違法性を参加した判事として訴え、こういった違法な裁判は認められないといって彼はインドに帰ったわけであります。

 私は、事の真実、事のよしあしというのはきちっと議論をされるべきだと思っておりますが、そういった意味において、少なくとも、これだけ靖国問題やA級戦犯という問題が議論になっている中において、このパール判事のあれだけの大著を、私もまだその抄訳しか読んでおりませんが、こういった大著について、やはり外務省の皆さんも、それは当然知っている一つの情報として、そういったものを踏まえ、この靖国問題等に対して対処するべきだと思いますが、御所見をお伺いいたします。

町村国務大臣 もし誤解があったらば正しておきたいと思いますが、立派な見識のある方だということでございます。ただ、そのことと、では極東裁判そのものを否定するのかと言われれば、確かに罪刑法定主義、遡及しないという一つのそれは法律の大原則にのっとってパールさんの御議論は展開されているんだろうと思いますけれども、それはそれとして、しかし私どもは、日本が国際社会に復帰する一つのプロセスとして、あの極東裁判というものがあり、その結果を受け入れ、日本が講和を結び、そして独立国になっていったというプロセスを考えたときに、今、日本としてあの極東裁判そのものを全否定するということには、それはならないんだろう、私はそう考えております。

 いろいろな議論があることを承知した上で、私どもは極東裁判は結果としてそれは受け入れるべき性格のものである、私自身はそう考えております。

松原委員 受け入れる、受け入れないではなく、私が今申し上げたのは、こういうふうなパールさんのような議論もあることを踏まえて、靖国問題について考える場合、さまざまに検討するべきだということを御示唆申し上げた次第であります。

 それでは、ちょっと今回、実はきょう、北朝鮮の万景峰号が新潟の方に寄港しているわけであります。寄港する予定というか、寄港することになっておりますが、これに対して、救う会や家族会、また議連、そういった三団体が行って、これに対しての反対行動を行っているわけであります。

 御案内のとおり、いわゆる改正船舶油濁損害賠償保障法、略称改正油濁法でありますが、これが三月一日に施行されて、それでその後の、施行後の北朝鮮船舶に関する交付状況、そして入港状況についてお伺いいたしたいと思います。

矢部政府参考人 お答えを申し上げます。

 平成十七年五月十七日現在、北朝鮮の船舶からの申請は二十件でございまして、それに対して交付は二十件でございます。

 それから、今入港状況というお話がございましたが、ちょっと今手元に正確な数字は持っておりません。三月一日に施行されまして、四月一日の時点で集計を一応とっておりますが、ちょっと手元に今数字がありませんが、その一カ月間を昨年と比較しますと、多少、北朝鮮の船の入港隻数は減っております。

松原委員 交付をする場合の大まかな審査内容と日数についてお伺いいたします。

矢部政府参考人 ただいま審査内容についての御質問がございました。

 国土交通省におきましては、一般船舶保障契約証明書の交付申請書の記載事項、それから添付書類等をもとに、個々の保険契約の内容、それから保険者が業務を適確に遂行する能力があるか否かという点について審査を行っております。

 まず、保険契約の内容についてでございますが、保険契約が法律上必要な損害、すなわち燃料油油濁損害及び船体撤去費用を担保するものとなっているのかどうか、それから保険金額が足りているのかどうか、そして、保険者がタンカーに関します強制保険を規定しております民事責任条約の証書、略称してCLC証書と我々呼んでおりますけれども、この証書の発行を受けている保険者の場合につきましては、このCLC証書が真正なものであるかどうかということを審査しております。

 それから、これに加えまして、保険者が業務を適確に遂行する能力を有しているかどうかという点につきましては、まず、当該保険者の所在地の法令に基づきまして業務が適法に営まれているかどうかという点、それからこれまで日本国内において油濁損害等に関する保険金を支払わない等の問題事例が発生していないかどうかということ、それから事故等が発生した場合に連絡がとれる体制が確立されているかどうかといった点を確認しております。

 それから、今審査日数という御質問がございましたけれども、これはケース・バイ・ケースでございまして、四、五週間かかることもあれば、一カ月半ぐらいかかる場合もありますが、その相手、申請の内容によってさまざまでございます。

松原委員 今、二十隻ということで、二十件でありますね。そのうちの十八隻がMMIAニュージーランド、二隻がセピア、ここで保険を入っているわけでありますが、まず、その十八隻が入っているMMIAニュージーランドについてお伺いいたします。

 この設立はいつでしょうか。

矢部政府参考人 MMIAニュージーランドは、平成十六年の六月二日、ニュージーランドにおいて設立をされております。その後、平成十六年十一月十二日にMMIAニュージーランドというふうに名前を変更して、ニュージーランドに所在する会社であることを明確にしております。

 ただし、この会社は、平成元年に西インド諸島におきまして設立をされましたMMIA、同じ名前でございますが、同じ名前のMMIAという会社がございますが、その会社の業務を承継している会社でございます。

松原委員 ちょっともう一回確認なんですが、平成元年に西インド諸島で設立をしているMMIAという会社があって、その事業を承継しているのがこのMMIAニュージーランドで、その設立は平成十六年六月二日ということでよろしいんですか。もう一回確認します。

矢部政府参考人 そのとおりでございます。

松原委員 この設立の平成十六年六月二日というのは、改正油濁法の施行前ですか、施行後ですか。

矢部政府参考人 改正油濁法は本年三月一日施行でございますので、会社の設立、平成十六年六月二日というのは施行前でございます。

松原委員 このMMIAニュージーランドというのは、保険料支払いの実績というのは今までありますか。

矢部政府参考人 MMIAの保険の支払い実績についてのお尋ねでございますけれども、MMIAニュージーランドに関します過去の保険金の支払い実績について、国土交通省としては承知しておりません。

松原委員 先ほど、支払い等のこういった事柄も調査内容に入るというふうにおっしゃったと思うんですが、過去のそういうものは承知していないということは、調べていないということですか。調べても、なかったということですか。

矢部政府参考人 先ほど審査の内容について御説明を申し上げましたが、この会社がこれまで日本国内において油濁損害等に関する保険金を支払わないような問題事例が発生していたのかどうかという点については確認をしておりますが、今先生御質問の過去の支払い実績全体ということについては承知をしておりません。

松原委員 万景峰ともう一隻はセピアという会社がその保険を担当しているんですが、これは風聞なんでありますが、わかればお答えいただきたいんですが、このセピアという会社というのは、MMIAニュージーランドの経営者であるポール・ランキンさんのお嬢さんと関係があるかどうかわかりますか。

矢部政府参考人 国土交通省としては承知をしておりません。

松原委員 通常のケースでは、PIクラブという連合で、金額が多額に上る場合に組むわけでありますが、このMMIAニュージーランドというのは一社でPIクラブを成立させているんですか、ちょっとその辺教えていただきたい。

矢部政府参考人 PIクラブということでございますから、相互保険会社ということで、ほかのメンバーとお互いに相互保険を結び合っている、ほかのメンバーと相互保険を掛け合っている会社というふうに理解をしております。

松原委員 ということは、このMMIA以外の会社もそこに入っている、こういう理解なんですか。ちょっと、私、この辺が込み入っているので教えてほしいんですが、MMIAという会社以外の会社も入ってこのPIクラブができているんですか、これをちょっと説明してください。

矢部政府参考人 MMIAというのは単独の会社でございますが、ここに保険契約をしているメンバーがお互いに保険を掛け合っているというのがこの相互保険会社の仕組みと理解をしております。

 したがって、会社は一つでございますが、ここに入っている何百という保険を掛けているメンバーが、お互いにお金を出し合って、相互に保険を掛け合っているということでございます。

松原委員 このMMIAニュージーランドの補償能力というのは、補償能力があるというふうに判断したと思うわけですが、その根拠というのは、どういう根拠があったのか、教えてほしい。

矢部政府参考人 先ほど、保険者が業務を適確に遂行する能力があるかどうかについて審査をしておりますという御説明を申し上げましたが、MMIAニュージーランドについて申し上げますと、まず、ニュージーランドの法令に基づき適正に設立されているということ、それから、加入船舶が五百隻程度ございます。さらに、ロイズ等の再保険契約を締結しております。さらに、事故等が発生した場合に連絡をとる体制が確立されていることを確認しております。また、先ほども申し上げましたが、これまで日本国内において問題事例が発生していないということでございます。

 こういったことから、我々としては、業務を適確に遂行する能力を有する保険会社であるというふうに認識をしております。

松原委員 ロイズと再保険契約を結んでいるというのは、そうすると、これはどういうことですか。ロイズも保障しているということですか、このMMIAの保険を。ちょっと教えてください。

矢部政府参考人 再保険契約をしているということは、この会社が何らかの事由によって支払えないといった場合には、再保険を引き受けておりますロイズ等がかわりに支払いを行うということでございます。

    〔委員長退席、増子委員長代理着席〕

松原委員 そうなると、ロイズが、世界でも最も有名なロイズが最後は引き受ける、こういう認識でよろしいんですね。もう一回確認だけしておきます。

矢部政府参考人 直接ロイズはMMIAに入っている船会社と関係はないんですけれども、再保険を引き受けているということでございますから、間接的には、最終的にロイズが引き受けるということでございます。

松原委員 つまり、このMMIAが何らかの形で法的に払わなきゃいけない状況になったときに、それを最悪はロイズが肩がわりするということですね。

矢部政府参考人 先ほど、問題があった場合にはロイズに行くという話をしましたが、もう一つ、損害額が非常に大きくて、MMIA自身が支払い切れないような場合、そこはロイズの方に、超えた部分は行くということでございます。

松原委員 行くということは、ロイズが払うということですね。

矢部政府参考人 はい、そのとおりでございます。

松原委員 わかりました。

 実は、保険会社のニュージーランド・リンクに慌てる日本という記事がニュージーランドの新聞に載ったそうでありまして、デビッド・キングという記者がこれを取材しているわけであります。この中で、日本政府はあるミステリアスなニュージーランドの保険会社について調査を求めている、同社は、ならず者国家の北朝鮮の船が船舶取り締まりから逃げることを許している、ニュージーランド政府は日本政府に対し、同社がニュージーランドの国内法に従属していないため、ニュージーランド政府としては何もできないと伝えている、こう書いてあるんですが、これは間違いなく誤報ですね。ニュージーランドはそれを認めているということ。ちょっと海事局長。

矢部政府参考人 国土交通省といたしましては、先ほども申し上げましたが、このMMIAニュージーランドは、ニュージーランドの法令に基づきまして適正に設立されている会社であるというふうに確認をしております。

松原委員 ここに産経新聞の五月十五日の記事があって、これは多くの国民の皆さんも読んでいて、これが本当にずさんな審査なのかどうかということは大変に問題になっているわけであります。

 この中で幾つかの事例も書いてありますが、ちょっとお伺いしたいんです。

 そのMMIAニュージーランドの代表者ポール・ランキン氏について、この人物が、この新聞に書いてありますが、平成六年の「ホンジュラス籍船と韓国船が衝突した死亡事故の際にも東京地裁に提訴され、二億八千万円の支払い判決(十二年一月)を無視。保険会社は事故後、倒産を理由に支払いを拒み、「保険の支払い、信用力への不安が排除できない」」と書いてありますが、これについて、その事実関係をちょっと教えてもらえますか。

 この案件、このときの会社の名前は何という会社なのか、ランキン氏はそこでどういうポジションにいたのか、お伺いしたいと思います。

矢部政府参考人 お答えいたします。

 五月十五日付の産経新聞に掲載されております、平成六年の事故に関します事実関係でございます。

 MMIAの代表者がかつて経営をしていて、この平成六年の事故にかかわります保険金を支払わなかったとされる別の保険会社の件ですが、このポール・ランキンという代表者は、この平成六年の事故にかかわります裁判が提訴されましたのが平成十年でございますが、その提訴される前の平成九年にこの保険会社を既に退職しております。したがいまして、その新聞記事にあるような報道には、ちょっと無理があるのではないかなというふうに考えております。

松原委員 私が聞いたのは、まず第一に、この会社の名称を聞いているんです。この会社が何という名称の会社か。事故が起こった段階で、ポール・ランキン氏はどの部署にいたのか。その裁判の方は十年ですよ。でも、事故が起こったのは六年と書いてあるんだから、そこを答えてください。

矢部政府参考人 私どもの調査によりますと、平成六年の事故にかかわっておりますホンジュラス籍船舶の保険者は、オーシャン・マリーン・ミューチュアル・インシュアランス・アソシエーション・リミテッドという会社でございます。

 それから、ポール・ランキン氏がどういう立場であったかということでございますが、このオーシャン・マリーン・ミューチュアル・インシュアランス・アソシエーション・リミテッドのダイレクターの立場にあったというふうに承知をしております。

松原委員 ダイレクターという立場は、これはどういう立場、取締役なんですか。一般の社員とは違うと思うんですが、どういったポジションなのか教えてください。

矢部政府参考人 このダイレクターという立場がその会社の中でどういう立場であったのか、経営の責任のトップであったのかどうかも含めまして、私どもは承知をしておりません。

松原委員 どういう立場か承知をしていないということでありますが、少なくともこの方が所属をしていたオーシャン・マリーンが、平成六年に事故を起こした際は二億八千万の支払い判決が下されたけれども、会社が十一年に倒産して払えなかった、こういうふうな話であります。確かに彼は平成九年にやめている、こういうふうにおっしゃっているわけでありますが、事故は六年である。これは、経営者として、信用する場合の一つの条件としてどうかなという議論に当然私はなるのではないか、こう思うわけであります。

 次に、平成十五年の南太平洋上で起きた日本漁船と台湾漁船の衝突事故、これについてはどうなっているのか、簡潔にお答えください。

矢部政府参考人 今御指摘の、平成十五年の事故につきましては、現在東京高等裁判所において審理中でございまして、責任関係はいまだ確定をしておりません。

松原委員 では、事実だけ淡々と答えてください。

 一審の東京地裁ではどういう判決であったか、もう一回確認します。

矢部政府参考人 お答えいたします。

 平成十七年の一月十九日、原告側、これは日本漁船の船主でございますが、原告側が全面勝訴をしております。この際、被告は台湾の船主でございますが、公示送達を受けましたが出頭せず、実質審理は何も行われないまま、原告側の提出証拠によって原告の全面勝訴が確定した、決まったというふうに聞いております。

松原委員 そのときの保険会社がMMIAでありまして、社長はポール・ランキン、こういうことであることは、この新聞紙上でもというか、私も、きのうのレクの段階で明らかにされているわけであります。

 つまり、このポール・ランキン氏に関して言えば、今までこういった二件の事柄にかかわっていて、一方はダイレクターという立場であった、社名も違う。一方は、経営者であり、社名は、今のMMIAニュージーランドのニュージーランドを取ったMMIAであった。

 結局、支払いに関して、最終的な裁判の結果でクロとなって払うということになるのかもしれませんが、要するに、今の段階だといろいろな極めて疑わしい部分が私はあるという判断も当然できると思うんですよね。それを、極めて短期間で、審査日数が短い間に、恐らくここの所属している北朝鮮籍船十八そうを認めたということは、私はちょっといかがなものかなという気がしてならないわけであります。

 ここで外務省にお伺いしますが、外務省はこのいわゆるMMIAニュージーランド、もしくはポール・ランキンという代表者について調査はしましたか。

    〔増子委員長代理退席、委員長着席〕

齋木政府参考人 お答えいたします。

 ことしの二月の十九日でございますけれども、国土交通省からの依頼を受けまして、私どもの方では、このMMIAにつきまして、我が方のニュージーランド大使館を通じて、ニュージーランド政府に対して問い合わせております。

 その結果を受けて、私どもは、先ほど海事局長からも御答弁がありましたけれども、この会社がニュージーランドの会社法に基づいて登録されているということを確認したということも含めて、調査結果はすべて国土交通省の方に伝えてございます。

松原委員 これは、ニュージーランドの法律に適合しているかどうかということでありますが、会社そのものの設立が極めて直近である。MMIAという会社からMMIAニュージーランドに、なぜ、同じ経営者でありながら場所を移してつくったのか。いろいろな憶測はできるわけでありまして、MMIAがもしも何かあった場合でも、MMIAニュージーランドという別の法人をつくれば、そちらで対応できるということもあろうかと思うんです。

 時間もないので詳しくは言いませんが、一般論として、事故実績を問うべきであり、そして、例えば、この会社の場合、不払いの予見という可能性も私はあると思うんですが、これについては全く問題ないという見解に海事局はなったんでしょうか。お伺いいたします。

矢部政府参考人 保険会社については、私ども審査をして、証明書の交付を行っておりますが、万が一この保険会社が倒産等することによりまして保険金の未払いがあった場合については、国交省としても責任があるのではないかという御趣旨の質問と理解いたしました。

 MMIAニュージーランドの審査に当たりましては、先ほど来御説明をしておりますとおり、保険者の再保険の契約状況等についても確認をしておりますので、倒産等のおそれはないと考えておりますが、万一、保険者が倒産をする等の事態が発生をいたしまして、被害者がこの補償を受けられないような場合に至りました場合には、実は補助制度というものがございますので、この適用についても検討することにしております。

 補助制度と申しますのは、この改正油賠法の審査をしていただきました平成十六年度に、地方公共団体が行った油等の防除措置や船舶撤去に関しまして国が一定の支援を行うという制度でございまして、平成十六年度に新たな創設、あるいは既存の制度の拡充を行っているものでございます。

松原委員 どちらにしても、私はそういう議論じゃなくて、責任はちゃんととらなければいかぬですよ、海事局長。「国交省ずさん審査」と、産経にここまで書かれて、確かに、ぎりぎりのところで、どうも怪しいけれども決定打ではないという感じの答弁だと私は思うんですよ、率直に言って。

 やはり、あえて北朝鮮船籍の船を入れるに際して、私は、厳しくしろとは言わないけれども、少なくとも、さまざまなこういう経営者の事例や会社の今までの経営を見たときに、十全なる信頼度のあるものを選ぶという、そのハードルの設定というのは海事局が行うわけであって、しかるべきハードルを設定するということが当然求められるだろうと思っております。

 きょうの三団体の抗議声明の中にも、万景峰を初めとする北朝鮮船舶に対する改正油濁法に基づく国土交通省の保険審査がずさんではないかという指摘も書いてありますが、こういうことがゆめゆめ言われないように、きちっとやっていただきたいということを申し上げる次第であります。

 次の質問に移ります。

 今、北朝鮮が核実験の準備をしているということであります。また、アメリカによれば、核弾頭を搭載できるミサイルがもう可能である、こういうふうな認識も示されているわけでありますが、このことについて日本政府としてはどのように認識をしているか、お伺いいたします。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 私ども、いろいろな国々、アメリカも含めて関係国といろいろな意味での情報交換をずっとしてきております。その中で、北朝鮮の核開発の動向については非常に注意深く追ってきているわけでございますけれども、今この現時点で、きょう、あすとかいうことも含めて、何か核実験を行うであろうという兆候があるというふうには私どもとしては現時点では判断しておらないということでございます。

 もちろん、引き続き、アメリカを含め関係国とは情報交換を密にしてまいりますし、今後、北の核の開発動向を注視してまいりたいというふうに考えております。

松原委員 これは、少なくとも北朝鮮がああいうふうにみずからが発言をしている以上、この部分に関しては日本政府もきちっと、それに対しての反撃といいますか、そういったことは逐次、フェンシングの突きみたいなものでありますが、出していかなきゃいけないだろうと思っております。

 次に、時間がないのでどんどんと参りますが、対独戦勝六十周年がロシアで行われたわけでありますが、この席上というかこの前後で、ヤルタ会談について米ソの認識の違いが浮き彫りにされたのではないかというふうに思っております。

 このヤルタ会談、戦後の世界の縮図を、世界のあり方を規定したヤルタ会談について、アメリカと、当時のソビエトでありますが、今のロシア、米ロがどのような評価、認識をしているか、簡潔にお答えください。

篠田政府参考人 お答え申し上げます。

 最近のアメリカとロシアのヤルタ会談、ヤルタ協定に対する評価につきまして、ブッシュ大統領がラトビア訪問中に、七日、演説を行っておりまして、その中で、ヤルタ合意は、ミュンヘン協定でありますとかモロトフ・リッベントロップ合意等の不正な伝統を踏襲するものであるというようなことを述べまして、大陸を分断させ不安定化させるものであった、総じてヤルタ合意というのは歴史の最大の間違いの一つであったという非常に否定的な評価を下しております。

 同日でございますけれども、プーチン大統領のフランス・フィガロ紙のインタビューにおける発言というものが掲載されておりますけれども、その中でプーチン大統領は、ヤルタの合意につきまして、反ヒトラー連合がナチズムの再生を防ぎ、世界を破滅的な世界規模の紛争から守る新たな国際秩序を構築しようとした点にこの合意の主たる意義があるのだということで、むしろ前向き、肯定的な評価をしております。

 ここに米ロの間の評価の差異があらわれておるかと思います。

松原委員 つまり、同じヤルタ会談について、アメリカは評価せず、歴史的な過ちだったと言い、ロシアは評価する、こう言ったわけでありますが、大臣、直接的ではないとおっしゃるかもしれませんが、日本はどんなふうにお思いか、簡潔にお答えください。

町村国務大臣 ヤルタ会談の結果をどう評価するかというお問い合せでございます。

 それぞれの立場でそれぞれの意見が今述べたようにあるということは承知をしております。このヤルタ会談の結果というのは日本にも影響があるわけでございまして、南樺太、千島、満州の権益と引きかえにドイツ降伏後二、三カ月内に対日参戦をするということもこのヤルタ合意の中に入っているわけでございます。

 そのこと自体を今、日本がどう考えるかということについて、私は、実際日本が当事国じゃないわけでございますし、日本がこの協定に拘束をされるというわけではないわけでございますけれども、これはいわば連合国側というか、結果的には戦勝国側の一つの戦後のあるべき姿、あるいはそれに向けてのプロセスというものを三カ国首脳が了解したという大きな歴史的な事実であるという以上の評価をするつもりもございませんし、それ以下でもまたないんだろうと思います。

松原委員 ここにこの歴史認識の難しさがあるわけであります。

 今大臣がおっしゃったように、日本はこの会合に直接みずからが主体的にかかわる側ではないので、またちょっと米ロとは立場が違うわけでありますが、私たちはこれに対してどう認識するか。今おっしゃったように、日ソ中立不可侵を破棄して入ってきたこともこの中に協定であるとするならば、私はこれに対してはアメリカと同じスタンスに立ってもいいんじゃないかというふうに思っているわけでありますが、どちらにしても、この歴史認識というのは、かようになかなか非常に難しいわけであります。

 私は、このことをやはり日本政府はきちっと踏まえて、これからのさまざまな歴史認識の議論をしていかなければいけないというふうに思っているわけですし、もっと言うならば、大臣みずからがヤルタに関しても、そういった日本としてはさまざまな意見があるけれどもと言って、これがどうだということをはっきり今おっしゃらなかったわけでありまして、こういった部分で日本としてはやはり見解をそれなりにつくっていく必要があろうか。

 そういう本来の日本のスタンスなくして歴史認識の議論をしたとき、中国にしても韓国にしても、強烈なスタンスを持ってきている国に対して、こっちがスタンスを持たないで議論をした場合に、私は、極めてそれは国益上不利益をこうむる可能性があるのではないかということを御指摘申し上げておきたいわけであります。

 時間がありませんので次に進みますが、前々回の委員会質問で東中野先生の「南京事件「証拠写真」を検証する」ということを伺いました。

 あのとき齋木審議官は、これを興味深く読んでいる、こうおっしゃいましたが、この本を読んでその感想、もしくはこの本に書かれていることに対してどのように思ったか、お伺いいたします。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 前回の御質問のときに、私、まさにあの本を手に入れて読んでいる最中であるということを申し上げたかと記憶しておりますけれども、あの後、本を読みました。

 非常に多くの写真を使って詳細な検証をしてある力作であるというふうに思いましたし、そういう意味では、個人的には大変興味深く読ませてもらいましたし、南京事件の問題についての理解を私なりに深める上で大変に参考になったというふうに思っております。

松原委員 お立場上、そこは精いっぱいの議論だと思うんですが、こういうふうなことを含めて、特に中国の歴史教科書に関して、日本の侵略性を証明する部分としてさまざまな事柄が書かれている。

 例えば、私は、前回の委員会の質問で田中上奏文のことを聞きました。御答弁としては、田中上奏文はほとんど事実ではないと否定的な見方が多いということをきちっと答弁なさっておられます。

 また、本日、最終陳述が東京地裁で行われる百人切りの問題については、七月に判決が出るわけでありますが、これについては、二人の百人切りをしたと言われる人の御遺族が、マスメディア等若干のそういったものを相手取って、名誉毀損で訴えているわけであります。この名誉毀損を何としても晴らさなければいけないということで訴えているわけであります。

 こういったことで、事実が確定していないこと、そして、この南京についても、中国側が指摘している事実が果たして本当の事実かどうか極めてあやふやであるということが、極めて詳細にわたってこの中で写真等で論述をされている。

 アメリカでは、例えば日本の国民の残虐性を明らかにするということで、「レイプ・オブ・南京」という著書が大変なベストセラーになった。これが日本で翻訳されるという話が、実際は出版されなかった。

 幾つかの憶測を生んでいるわけでありますが、最大の理由として、ある人たちが指摘するのは、それを日本で出すとその写真がにせものであるということが白日のもとに明らかにされるがゆえに、この「レイプ・オブ・南京」は、アメリカでは大ベストセラーになったにもかかわらず、日本では翻訳、出版は結果として見送られた、こういうふうな議論もあるわけであります。

 そうなりますと、実際我々は、実態と違うことをかなり中国等の教科書で書かれている、それをもって日本の弱みというか日本の侵略性の証拠として向こうは攻め込んできているということになるわけでありますが、こういう一つ一つの材料について、国際世論に対しての訴えも含め、我が国はどのように反撃するのか、それについてお答えいただきたいと思います。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 「レイプ・オブ・南京」について、先生今言及されました。この本は、出ましたときに非常に反響を呼びまして、私も、たしか英語で出たのをぱらぱら見た記憶がございます。

 当時、九八年でございますけれども、この本について私どもとしての見解というのも明らかにしておりますが、斉藤駐米大使が記者会見という場で、非常に不正確な記述、一方的な見解の多い本である、事実の誤認、曲解もあるんだということで、非常に強い不快感を表明しております。そういうことで、私どもとしては、この本の内容については非常に不愉快な気持ちを持っているわけでございます。

 記者会見という場で、既に私どもとしての立場はこの本については表明したところでございますが、先ほどの御質問の中で述べておられました出版の中止の経緯、これは私ども、報道で承知している限りにおいては、翻訳に当たっての本の内容について、著者と出版社の間でいろいろとやりとりがあったけれども、折り合いがつかずに出版中止になったということを承知しておりますけれども、それ以上については、私どもとしても特段何か事実関係について知っているわけではございません。

松原委員 時間もないので、最後に大臣にお答えいただきたいわけであります。

 この歴史認識、その土台になる事実の問題、極めて中国側の、特に教科書、ティーチャーズマニュアルの話は前回、前々回と二回続けましたが、教科書においては、明らかに田中上奏文はおかしい、明らかにさまざまな他の部分もおかしいということが論証されてきている。

 さらには、アメリカでは、日本の暴虐性を、まさにこれだけ大ベストセラーで、アメリカ人はみんな日本というのはひどい国だと思ってしまっている。この「レイプ・オブ・南京」が出版され、確かに今齋木さんがおっしゃったように、それに対してはアメリカの日本の大使が、おかしい、とんでもないと不快感をあらわにしても、それがどれだけのアメリカ国民に伝わっているか。アメリカ国民の多くは、日本というのはナチスと同じぐらいの残虐な国民だとその本で思ってしまっているかもしれない。

 こういう事実に対して、中国の教科書の問題もありますが、大臣、事実はやはりはっきりとさせなきゃいかぬという観点から、内政干渉との紙一重でありますが、どのようにこれから行動するつもりか。既にそのことについては李肇星さんとの間でも議論になっておりますが、これからこのことに対して組織的なプロジェクトチームなりをつくってやるべきだと思うのでありますが、それについての御決意と御見解をお伺いいたします。

町村国務大臣 今、教科書問題等について中国側に私どもの見解を述べる作業を、これはなかなか外務省ひとりでやり切れるものでもなかろうということで、文部科学省とも相談をしながら、先方の記述等について、より正確性を高める、あるいは、例えば戦後の日本の平和活動について積極的に触れるような内容が少ないとか、幾つかの点について申し述べるような準備作業を行っているということでございまして、まとまり次第、一定の方法で先方にそのことは伝えなければいけない、こう思っているところであります。

松原委員 これで終わりにいたしますが、中国の反日暴動が収束した理由も、国際世論というものがあったわけでありますから、特に、中国に対して申し入れるだけではなくて、国際世論に対してこのことを明らかにするための努力を、日本の国益に合致することでありますから、外務省、町村大臣中心に全力で取り組んでいただきたいということをお願い申し上げまして、私の質疑といたします。

 以上です。ありがとうございました。

赤松委員長 次に、首藤信彦君。

首藤委員 民主党の首藤信彦でございます。

 今、日本の関係する外交問題で非常に重要な問題は国連改革だと思うんですね。ですから、国連改革の問題について、まず最初に質問させていただきたいと思います。

 最近、外務省は、百二十二人の大使を世界じゅうから招聘しまして、そのうち百十六人が参加されて、三日間にわたってこの問題に関し討議して、そして町村大臣みずからリーダーシップを発揮して、日本の公館を置いている隅々まで徹底して日本の改革への熱意を伝え、日本の改革への支持を訴える方向性を力説されたと思っています。こうしたことに関して、むだだとか、非常に冷ややかに見られる論調も幾つかありましたけれども、私は本当にすばらしいことだと思っています。

 外務省も、非常に不幸な事件が重なって、ODAに絡むスキャンダルの問題とかあるいは機密費の問題で、組織的にももう本当にがたがたになってきたと思っているんですね。ですから、そういう意味では、町村大臣就任以後、一定の方向性が出て、そして今回のように、世界の隅々まで、少なくとも外務省の戦略的な方針というものを徹底させる、そういうことに関しては、私は、評価があってしかるべきだ、そういうふうに思っています。

 さて、その内容なんですが、今日本は、いわゆる四カ国提案といいますか、常任理事国に候補として上がっている四カ国を中心として提案をなされています。その内容に関しては、既に委員の中から質問が出ているわけですが、やはり最大の問題は言うまでもなく拒否権の問題だと思います。

 拒否権というものが、これはもう自動的に常任理事国になれば付与されるのか、あるいはそうされるべきであるという希望にとどまるのかということが論点であるというふうに思っておりますが、自動的に付与されるべきであるというインドの主張に対して、日本はその辺をある程度ぼかした形で先へ進もうと考えていたというふうに発言されていたと思います。

 ところが、私は驚いたんですが、十七日付のニュースというか報道の中で、何と十七日の外務省、政府の意見として、これは、日本の常任理事国入りを容易にするために拒否権の問題は落とす、これは妥協するということをもう早々と政府が言っているという報道がございました。一方、同じ日付の小泉首相の談話の中で、いや、この拒否権の問題は重要だから、それは必要だと思っているというような意見もあるんですね。

 一体、政府の統一見解としては、日本はこの拒否権を、これはあくまでも正義の御旗、日本がこれから国際社会において名誉ある地位を占めるためにもどうしても必要なものとして振りかざして前へ進むのか、あるいは、これはアメリカの顔色をうかがいながら、拒否権はそれはアメリカが言うんなら無理だろうということで最初から引き揚げられるのか。このどちらの道を進まれるか、責任者である外務大臣の口からはっきり国民に対して言っていただきたいと思います。

町村国務大臣 この枠組み決議の中で拒否権の問題をどう扱うのか、これはそれぞれの国がそれぞれどこまでどう主張したかということの詳細は避けますが、この四カ国の中でなかなか意見の一致を見なかった点であるということは率直に認めるべきであろう、こう思っております。

 最終的に、今出された決議の立場は、これは新旧の常任理事国が権限の上で異なった扱いを受けるということは、原則的な立場からするとそれは問題であろう、同じ立場に立つべきだ。これがあくまでも原則的な私どもの考え方でありますし、今回の決議案もそういう趣旨にのっとっております。

 ただ、そのことと、これからやはり幅広い賛同を得ていかなければいけない。それは、現常任理事国五カ国のみならず幅広い国々の支援を受けていく、そうでなければ決議案そのものが成立をしない。原則論に仮に固執する余りに、賛同する国が一向にふえないということであっては、これは本末転倒というか元も子もなくなるという見方もあろうと思います。

 その辺は、まず原則論で各加盟国に提示をして、その後の反応を見ながら、どうだろうかということを見きわめた上で、どこかの時点で修正をするのか原案のままでいくのか、その辺はいずれ判断をしなきゃならない。ただ、もう今後全くびた一文変えませんというほどかたくなな姿勢をとるのはいかがなものだろうかなということを述べたのであって、現時点においては、それは原則論の立場に立ってこの決議案がつくられているというふうに御理解を賜ればと思います。

首藤委員 今、原則が重要で、それをもちろん守りながら、場合によっては修正もあり得べし、そういう御意見だったと思います。それは実務家として当然の御発言であったと思います。

 そうなれば、原則を場合によっては変えることもある。それはなぜ変えるかといったら実利があるからですね。実利とは何か。それは常任理事国入りですよ。それはもう本当に、戦後の日本が独立国として認められていなかったときからずっと長い歴史を持って、ここまで来たかという感じを持って受けとめているわけですけれども、何年に一遍、あるいは十年、二十年に一遍回ってくるこの国連大改革の機会のときに必ず入る、その実利のために外務省挙げての力を傾注しているというふうに私は思うんです。

 一方、当の政府の小泉首相は靖国問題でまた中国を刺激するようなことをちらほら発言されて、もう既に中国がそれに対して反発している。せっかくこれだけひざを屈し、ある意味では妥協し、そして今までの長年の外務省職員の御努力も、こういう一言である意味ではつまずきの石となって目標に到達できないことだってあるわけですよね。

 ですから、外務省に数千人、四千人ぐらいいる職員の中で、どうして、小泉さん、ちょっと待ってください、少なくともこういう発言は白黒がつく九月まではされないようにと身を挺しておっしゃる方が外務省の職員には一人もおられないのか。あるいは、その長にある、外務省の責任を持つ町村大臣としては、それこそ日ごろ毎日会っているわけですから、どうして我が国にとっても最大の外交課題である常任理事国入り、この大きな外交目標のために、どうしてつまずきの石となるようなことを、わざわざ自分から石を置いていくようなことをするのか。

 その点に関しては外務省は猛省すべきであるし、こうした問題を発生させないために外務大臣としてきちっとさせるということを明言していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

町村国務大臣 五月十六日の衆議院予算委員会、仙谷議員とのやりとりにおける総理の発言の点にお触れになっているんだろうと思います。

 私もその場におりまして総理の発言を聞いておりましたが、従前からの適切に判断をするという発言と全く軌を一にする発言であった、そう私は受けとめているところでございます。

首藤委員 この場でそういうことしか言えない、そういうこともあるのかもしれませんが、私は小泉首相の歴史認識というものはやはり大変おかしいと思うんですね。また、外交手段というものが、外交目的、そしてその目的のために何を捨て、何を我慢し、そしてどのように迂回してそこに到達するか、そうした外交戦略というものを御理解されていないんじゃないかと思うんです。一方では、そうした努力や積み重ねや迂回路を飛び越して、直接行ってしまうこともあるんですね。

 例えば、この間は、小泉首相はモスクワに行ってプーチン大統領と会っているんですね。ところが、これは何のために会うかというと、日本は、プーチン大統領に日本に来てほしい、そして北方四島問題を話し合ってほしいということで呼びかけているわけですね。ですから、当然のことながら、町村外務大臣が行って、プーチンさん、来てくださいよ、そういう話をするのが当たり前だと思うんですね。しかし、そのプーチンさんを迎える側にある日本国の首相がみずから行ってそういう話をされるのはやはりおかしいのではないかと思うんです。

 一体何のためにモスクワに行かれたのか。それはどういうことでしょうか。外務省の公式見解をお聞きしたいと思います。

町村国務大臣 これは、委員御承知のとおり、昨年十一月、国連総会で満場一致の決議になりまして、五月八日、九日を追悼と和解のときというふうにするということで国連で決まったわけでございます。これを受けて、各国首脳、主要な各国に対してプーチン大統領から参加招待が来たということでございます。

 したがって、行った先はそれは確かにロシアということでありますけれども、ロシアとバイの会談をしに行ったということではなくて、それは、国際社会の首脳が集まって、戦勝国も敗戦国も区別することなく、国際社会の平和と安定に向けて幅広いコンセンサスをつくろうということでありました。

 したがって、もしこれに小泉総理が行かないということになると、逆に、では何で小泉総理は来なかったのかということが、そのことのみがまた大変な実は話題になったのではないだろうか。いわばロシアと戦って負けたドイツも出る、したがって戦勝国も敗戦国もないという位置づけであるにもかかわらず、ドイツは行って日本は行かない、それは何なんだということが大変な話題に実はなってしまったのではないのかな。

 私は、そういう意味で、小泉総理がそういった国際社会の首脳が一堂に会する場面に行くということは、先般のアジア・アフリカ首脳会議と同様に、適切な行動であったというふうに私どもは理解をしております。

 そして、そういう場で確かに二国間会談がそう大きな時間でなかったにせよ行われて、そこでプーチン訪日のことが語られたということもまた自然なことでありまして、プーチン訪日を要請するために、もしそれだけのために行ったというのであれば、それは首藤委員の御指摘も当たっているかとは思いますが、今回ロシアに行った目的はそういうことではないということにかんがみれば、私は、参加したことは極めて正当であった、こう考えているところであります。

首藤委員 ただいまの外務大臣のお話だと、第二次大戦でドイツが負けて、多くの戦死者があられるわけですが、その追悼と和解のための日に行ったということですね。

 世界的にはこれは一般的に何と言われているかというと、これは対独勝利六十周年記念なんですよ。ナチス・ドイツの対独勝利の記念なんです。私は英語のものもいろいろ見てみました、各国のも見てみました。結局そうですよ。ナチス・ドイツをソ連が討ち破った記念日なんですよ、五月というのは。

 では、日本ではどう書いてあるか。外務省のホームページ、「五月九日、戦勝六十周年記念式典出席」。何ですか、「戦勝」というのは。ソ連が勝った日ですよ。何に勝ったか。ドイツに勝った日ですよ。これは明らかにソ連がナチス・ドイツを討ち破った華々しい日なんですよ。

 ところが、その日というのはどういう日かよく考えてみていただきたいんですよ。

 ナチス・ドイツをソ連は討ち破った。だから西部戦線に張りつけた戦車も大砲も兵員も必要なくなって、すべて貨車でシベリア鉄道を通って極東に運んでいった。毎日毎日ソ連軍が満蒙の国境に集結している。東京では全部知っていた。にもかかわらず、そこにいた数十万人、あるいはもっと多い在留邦人、満蒙開拓団、そういう人たちには一切伝えずに、そして八月九日を迎え、ソ連は日本との中立条約を一方的に破棄して侵攻してきたわけです。

 そして、終戦を迎えて、終戦を迎えた後もさらにソ連軍は侵攻を続けて、そして、国後、択捉、歯舞、色丹、我々はそれを北方四島と言っておりますけれども、そこへ侵攻を続けた。その起点となったのがこの五月の記念日じゃないですか。どうしてそんなところに日本国の総理大臣がのこのこ行くんですか。

 私は、そういう意味で、この問題は外務省挙げて、先ほどの靖国の問題とも同じですけれども、個人的にはいろいろな考え方があるでしょう、世界平和というものがもっと重要だ、これからはもう未来志向でいかなきゃならない、いろいろな考え方があると思います。

 しかし、外交は歴史を忘れてはいけない、外交とはまさに歴史の積み重ねですよ。これだけ我が国の国民が塗炭の苦しみを経て、苦しんで、それをどうして、その起点となった記念日に日本の首相が行かなければいけないのか。私は、これは外務省の職員一人一人が反省すべきことだと思いますよ。このことに関して外務省の職員の中の一人もみずから辞職しなかったというのはおかしいと私は思う。

 こういうことを言うのは感情的かとも思います。私自身は、この問題は感情を抑えられません。私自身が、一九四五年四月五日、満州で生まれた。父は、根こそぎ動員で関東軍に編入され、そのままシベリア送りになりましたよ。

 だから、この問題というのは、日本の国民一人一人、日本の国のあり方にとって最も重要な問題の起点だったんですよ。それをどうして小泉首相は行ったのか、どうしてそれを外務省がとめなかったのか、あるいは町村大臣はどうしてそれはいけないですよと言わなかったのか。その辺はどうですか、町村大臣。

町村国務大臣 総理は、たしか去年の秋ごろですか、プーチン大統領から招待をもらいまして、ずっと実は返事をしておりませんでした。一つは、五月の八日、九日ごろ、果たして国内の政治情勢がどういうことになるであろうかといったようなこと、あるいは国際情勢、いろいろなことを考えて、たしか四月上旬ごろでしたでしょうか、最終的に参加をするという返事をしたと記憶をしております。

 その過程で……(発言する者あり)中旬過ぎでしたか、失礼しました。この問題について、私は小泉総理と議論をしたこともございます。むしろ、私は、私の判断で小泉総理に行っていただきたいというお願いをいたしました。総理は、よく考えるという返事をとりあえずされたことも覚えております。

 なぜ私が行っていただきたいとお願いをしたかといえば、日ソ中立条約に違反した、シベリア抑留をした、確かにそれは我々日本人にとって許しがたい事実が幾つもあった。今首藤委員の言われたようなことを含めて、よく私もそこは理解をしております。北方四島はまさに北海道に隣接する地域として、私も北海道選出の議員として、そうしたまことに不愉快な思いを個人的にもそれは持っております。

 しかし、そのことと、既に一九五六年、日ソ共同宣言で国交を回復し、さらにそれを一段進めて日ソ間で領土問題を確定し、そして平和条約を結ぼう、そしてよりよい日ロ関係を築こうという大きな流れの中にあるときに、ある意味では、これは確かに今委員がおっしゃったようなロシアの戦勝記念、対独戦線勝利という意味合いがあることは、それはもちろん事実でございます。

 しかし、やはりもう一つの意味合いは、先ほど申し上げましたように、国連という場で、追悼と和解をしよう、戦後六十年たったところで戦争中に亡くなられた方々を追悼し、そして戦争中にあった大きな対立というものを和解に持っていこう、そういうことをみんなで誓い合おうではないか。

 こういう意義を持つそういう会合にもし日本が行かないという判断をしたときには、では日本はそうした世界の国民がみんなこぞってやる追悼と和解に参加をしないのか、それは日本国民がではなぜそれに参加をしないのかということになるわけでありまして、それは、それぞれの国にいろいろな戦いがありました。もちろん、例えば東欧諸国などは、みんな当時のソ連に併合され、その後ずっと共産党体制のもとで独立権を持たずにやってきた。それぞれの国にそれぞれの思いがあるわけであります。

 しかし、そういった恩讐を超えて各国首脳が集まろうというときに、ひとり日本だけが参加をしないという判断をしたときの、国際社会の一員として、いかにもいわば偏狭なというか偏屈なというか、そういう国だなという印象のみを世界に与えるということは、これからの日本の国際社会の中の一員としての立場、そして日ロ間でもやはりこれから大きな流れをつくっていこうということからしたときに、私は、積極的にむしろ参加することが日本にとって大切である、こういう判断を申し述べて、私は総理に出席をしていただきたいというお願いをし、総理がしばらく考えてみるという結果、行かれる判断をされた、こういうことでございました。

首藤委員 そうすると、本件は町村大臣に責任があるということですか。

 今、大臣は和解という言葉をおっしゃいましたね。私は、随分長い間、NGOとして平和再建、和解に取り組んでまいりました。これは英語ではリコンシリエーションと言います。これは簡単に、和解というのは、ただみんなが手をとり合うということが和解じゃないんです。

 これは、真実、和解、許しなんですよ。要するに、真実は一体何であったかというのを明らかにして、お互いに、こんなひどいこともやったのか、こんな問題も抱えているのかというのをすべて明らかにして、それでもみんなお互いにわかり合おうじゃないか、許し合おうじゃないかというのがリコンシリエーション、和解なんですよ。

 まさにこの国連がやった和解というのはそれであって、今までいろいろな問題も、ポーランドにおける、例えばカチンの森でしたか、要するに、ポーランドの森の中で大量のポーランド将兵の死骸があった、一体だれがやったんだという問題もあり、それから、もうソ連邦崩壊後は、スターリンがやった、あるいはその後の人たちがやった、いろいろな行動に対しても明らかになっている。ナチスなんということも明らかになっている。

 そして、今でもヨーロッパ社会においては、ナチスに協力したということがもう大変な、つまびらかに明らかにされて、今回のローマ教皇の選出に当たっても、かつてヒトラー・ユーゲントであったんじゃないか、そういうことが話題になっているわけですね。

 ですから、和解というならば、それは当然のことながら、日本とロシアの関係のいろいろな問題がすべて明らかになっていかなければいけない。

 例えば将兵が、これは国際人道法に違反し、戦時国際法にも違反して、そして、日本のただの戦争が終わった将兵が数十万人もシベリアへ連れていかれ、あるいはカザフスタンやウズベキスタンまで連れていかれて、六万人の方が亡くなられている。一体どこに真実が明らかになっているでしょうか。そして、その過程で亡くなっていった、もう数を数えることもできない満蒙開拓団の人たち、国策のために、日本の市場を守ろうとして送られていった人たち、その人たちのことも、何の真実も明らかになっていない。

 そして、どうですか、今だって、御存じのとおり、シベリアへ送られた将兵は強制労働をさせられた。これ自体が人道法違反ですが、これに関しても、日本が参加したジュネーブ条約の中において、これはサラリーが支払われることになっているんです。では、そうした強制労働でラーゲリーへ行って多くの方が死なれた、その人たちに対して、日本政府は給料を支払っていますか、ソ連に対して要求しましたか、それを継承しているロシアに対して要求していますか。私は、そういう欺瞞があって、その上で日本とロシアの間で友好な平和条約が結ばれるとは思わない。やはり、そこには徹底した真実の解明というものが必要だと思うんですね。

 そこで、私は外務省の姿勢に対して先ほど苦言を申しましたが、私は、この問題は、外務省の職員一人一人が心の中、自分の良心に従って発言し、行動してほしいと思いますよ。

 先ほど言いました外務省のホームページ、「五月九日、戦勝六十周年記念式典のため」と書いてあります。この問題、結構問題がありました。ああ、違うんだ、日本とドイツと違うよと。五月十日、外務省のホームページです。「第二次世界大戦終了六十周年記念式典」外務省はどうしてこんなことを書いたんですか。世界のどこに、モスクワで開かれた会合が第二次世界大戦終了六十周年記念なんですか。だれが歴史を改ざんしているんですか。これは、外務省が歴史を改ざんしているんじゃないですか。世界のどこを見ても、五月の八、九日に行われたのが第二次世界大戦終了六十周年記念なんて書いていないですよ。

 この外務省の歴史の改ざんについて、外務大臣、どのように責任をおとりになりますか。

町村国務大臣 私は、国連決議における英語の原文がどういう、戦争終了六十年か、戦勝六十年か、今手元に資料がないので直ちにお答えはしかねますけれども、私が今まで理解してきたのは、追悼と和解の日ということを国連が決めた、こう理解をしております。したがいまして、それが一番正確な表現なんだろう、こう思います。

首藤委員 この件は後で外務省の中で調べていただいて、もしそうならば外務省のホームページを訂正していただきたいと思います。

 それがあって小泉首相が行かれて、あるいはそれに対して町村大臣が覚悟を持ってアドバイスされた、それはそれでしようがないじゃないですか、責任はあなたの肩にあるわけですから。それは歴史が後で証明するわけですよ。しかし、こういうことを、ごまかしをやっていたら外務省はさらに国民の信頼を失う。だから、外務省の職員一人一人に、自分がやっていることが本当に正義にかなったものか、ぜひ考えながら、みずからに照らしながら行動してほしい、私はそういうふうに思うわけであります。

 さて、米軍再編について話をお聞きしたいわけですが、もう既に米軍再編に関しては、今まで何度もお聞きしたように、全体的な戦略目標ではなくて第二段階に入っているんだということを大野防衛庁長官もおっしゃっているわけですが、その長官の声明の中で、具体的な基地名も入っているという発言があるわけですね。

 そうすると、一体どのような基地、前回2プラス2の後でしつこく町村大臣にお聞きしましたが、そこでは、たった二つの地名しかないよ、すなわち沖縄という言葉と横須賀という言葉、二つしかないんだと。さて、今は基地名も挙がっているとおっしゃる。一体どこの基地の再編が具体的な日米の共同作業のテーマになっているか、それをお聞かせ願いたいと思います。

町村国務大臣 委員御指摘のように、第一段階の作業は終わり、今まさに第二段階の作業中ということでございます。もちろん、そこでどの基地が議論の対象になるかといえば、それは在日米軍の数多くの基地、それらすべてが議論の対象になっているということでありまして、全部総ざらいをしながら、必要なものは残し、また再編すべきは再編し、またどこかから完全に撤退といいましょうか、廃止するものは廃止ということで、特定の地域だけを挙げて議論しているというわけではございません。全体で議論をいたしております。

首藤委員 質問がおわかりになっていないと思うんですけれども。

 その段階は超えて、自衛隊と米軍の新たな役割分担を明記した共同文書を六月に策定、公表する段階に入っている、こういうことが各紙で報道されているんですね。それは記者の人がうまく聞き出したんだろう、だから一つ一つの記事に対しては反論しないというようなことはもう通用しないですよ、みんながそう言っているんですから。

 六月といったらいつかというと、あと三カ月くらい先かなと思ったら、何と二週間先なんですよ。そこで、例えば座間にしても、座間市長さんみずからが音頭をとって、あるいは市民の方も多くの方が参加して、座間に第一軍団なんか来られたらとんでもないことだ、アメリカの陸軍第一軍団なんかが来るなんてとんでもないと。

 今までは我々も、ああ、ここに基地があるのかなんて思いながら車ですっと通ったところが、今度、司令部が来るわけですから、がっちりとセキュリティーを固めて、町の真ん中にぼんと通れない地域が出てきてしまうわけですね。それは市民の方だって大変お怒りになるわけです。そういうことが具体的な地名として当然書き込まれているわけですね。

 大臣、質問をちょっと変えますよ。座間への第一軍団の司令部機能の移転に関しては、今回の共同文書には含まれる予定か、含まれない予定か、いかがでしょうか。

町村国務大臣 今、委員が六月に文書をまとめると言われました。それは事実ではございません。今、鋭意、大車輪で作業をやっております。しかし、六月というのは、私の今聞いている限りではいかにも無理がある、こう思っております。少し幅をとった夏、夏といっても、昔、春ごろには景気がという発言をされた企画庁長官もおられたから、余り、あれかもしれませんが、夏ごろにはまとめなければいけないだろうということで、大車輪の作業を今やっております。

 その中に座間が含まれるか含まれないか。座間は今でも大変大きな役割を担っている基地でございますから、座間が当然その対象になってくるであろう、私はこう思います。そうすると、この基地はどうだ、この基地はどうだというお問い合わせにつながりますからこれ以上は申し上げられませんし、例えば普天間という問題は沖縄で大変大きな意味合いがあるところでございます。あれだけの事故も起きました。したがって、強いて挙げれば、それは普天間のことに触れない一つの答えというのはないんだろう、私どももそう思っているところでございます。

 ただ、では今それぞれの基地を挙げて、全部、これはどうですか、取り上げるんですかと言われても、そこはまさに今日米間で議論の真っただ中ということでございますから、これ以上の詳細の御説明は現時点では避けなければならない、こう思います。

 しかし、どこかの時点でやはりまとめて、これは最終報告ではなく、先般もどなたかの、どの委員会だかちょっと忘れましたが、御議論がありまして、田中慶秋委員だったと思いますけれども、ある種の中間報告といったような性格のものをまとめる、その上で各自治体等に御提示をし、御説明をし、できる限りの御理解を得て、また場合によれば中間報告から修正を施した上で最終決定に持っていきたい、こういう段取りは考えておりますが、現時点で座間に第一軍団云々というお話をされても、今の時点では、恐縮でございますがお答えをする段階にはまだ立ち至っていないということでございます。

首藤委員 外務大臣、このことは、普天間の基地というのはいわゆる基地の再編、リアライメントといいますけれども、その一部なんですね。ある意味でハードウェアの分野で基地という施設をどうするかということなんですよ。

 ところが、第一軍団の場合はだれも、何が来て住宅を建設するから騒音とか公害とか、大変だと言っているんじゃないんですよ。これは、米軍の世界戦略の中に、日本が陸軍の司令部を持つ、そして今まで言われているように基地の再編というのではなくて、アメリカのシアトルの分局みたいな形で、アメリカの世界戦略へのインテグレーション、統合だということで、アメリカであるとか各地では、あるいは軍事専門家はみんな言っているわけですよ。だから、全然違うレベルの話なんです。

 これはまさに、明らかに日米安保に抵触する、あるいは日米安保の改定に直結するような大きな問題だと思っているんですね。ですから、日本における基地というものの役割が根本的に変わってきているんですよ。そして、それはもちろん、いや、極東とか日本の防衛だけではなくて、世界にはアルカイダのようなテロリストがいると。アルカイダのテロリストのために日本の基地をこんなに変えていく、日本を司令部にしていくというようなことはもう通らないですよ。

 確かに九・一一のショックの後は我々もそういう考え方があるかと思いました。しかし、現実にアフガニスタンの現状を見て、イラクの現状を見て、そういう世界戦略はそもそも間違っていたということを私たちはわかっています。

 そこで、第一軍団が来たとき、そしてこれが司令部機能を持ち、アメリカと統合される。これは、当然のことながら日米安保六条、極東条項に反するわけですけれども、一説によると、日本に第一軍団の司令部が来ても、いや、日本にいる司令部だけを極東条項に触れない範囲で何とかやります、だから大丈夫ですみたいな答弁をまことしやかに言っているということです。

 これは、言っている人の顔を見ながら、私もつくづく、ああ、こんなことを言う人がいるのかと思って見ているわけですが、それは当然のことながらだれが考えても日米安保第六条に抵触する問題であり、日米安保そのものの改定なくして第一軍団の座間への統合はあり得ないと思いますが、外務省としての意見をお聞きしたいと思います。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど大臣からも答弁を申し上げましたとおり、現在、個々の施設・区域の見直しに関しましては、種々のアイデアを出し合いまして日米間で議論、検討を行っている状況でございます。その中で、今御指摘のような米陸軍第一軍団の司令部がどういう形でそこに関与してくるのかということについては、現在、何ら決定、結論を得ている状況ではございません。

 ですので、今御指摘のような第一軍団の司令部が我が国に移ってくるというようなことを前提に質問にお答えするということは現時点では差し控えさせていただきたいと思います。ただ、従来から答弁しておりますとおり、現在行っている米軍の再編というものについては、安保条約関連取り決めの枠内で行っていくというのが政府の基本方針であることを改めて御説明申し上げます。

首藤委員 そういうことを言われてなるほどと納得した時代もありました。それは、日本の身に迫る脅威というものをそれほど我々も強く感じていなかったときです。しかし、今はもう目の前に、そこにある危機なんですよ。そこにある危機に対して、いや、これは仮定の話ですから、まだ何も決まっていませんし、言うことはできませんということでは、私たちが国民の代表としてこの委員会において質問することの意味がなくなってしまうわけですね。

 ですから、それははっきり、たとえ仮定の話であったとしても、それはこの場合にはどうなるということをケーススタディーとして言っていただかないと我々は議論できないわけですよ。そんなことだったら、すべて結果が出た後、新聞に出て、新聞を見てくださいという形になってしまって、そうしたら国会というのは意味がなくなってしまうのですね。だから、国会軽視も甚だしいわけです。

 では、例えば北朝鮮問題に関しても、これもさまざまなことが言われています。例えば核開発に関しても、それに対してそれをとめるためにどうするかというようなこともいろいろな論議がされているわけですが、それに関しても、例えば、北朝鮮に直接それを外科的にといいますか、本当にレーザー光線で患部を焼き切るようにやろうというような考え方もあって。

 これはもともと、そういう原子力施設を破壊するということで、コンプラン八〇二二というのがあるわけですけれども、さらにそれが八〇二二―〇二、第二号ですね、という形で策定がされているということがワシントン・ポストの五月十五日の記事として挙げられているわけです。こういうことがあれば、それは当然のことながら、例えば嘉手納からそういうものが発進するというようなことがあれば日米安保に基づく事前協議の対象となると思いますが、外務省の意見はいかがでしょうか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、御質問の状況につきましては、一体どういう事態でどういうことが起こるかということによっていろいろな状況判断があろうかと思いますので、一般的に、概括的に申し上げるところは困難な点はございますけれども、安保条約のもとで一定の作戦行動に該当する場合、これに該当するのであればそれは事前協議の対象になるというのが従来からの考え方でございます。

首藤委員 大臣、やはり本当に私たちに、安保論議というものが本当に国民生活に非常に間近なところにまで迫ってきていると思うんですよ。ですから、一部の軍事専門家が議論しているのじゃなくて、これは本当に私たちの市民生活に直結する問題になりつつあると思うんです。ですから、その点で、国民に対してしっかり、はっきり方向を示す必要があると思うんですけれども。

 一方では、大臣もさまざまなことを言っておられまして、四月にニューヨークで台湾も日米安保の範囲内だという発言をされました。これは一部しか報道がないので実態はよくわからないわけですが、一体どのような意図でそれを発言されているのか。これはもともと日米安保の極東の範囲が広いということは知っていますけれども、今、2プラス2もそうですが、日米で共同歩調をとって軍事行動を起こそう、そのために第一軍団が来て、また基地の再編もしているというような状況の中において、大臣の発言は一体何を意味しているのかを明言していただきたいと思います。

町村国務大臣 これは、四月にニューヨークに参りましたときに、ジャパン・ソサエティーの昼食会という場でスピーチを行いました。そこで大変多くの方々が、当時、今でもそうでありましょうが、日中関係がこれからどうなるのかという大変強い関心が寄せられておりましたので、私の方から、訪中をしたときの日中外相会談の様子などを含めて、今後の日中友好のあり方というのを説明しました。

 その後、質疑応答の時間がありまして、ある参加者から、ちょっと正確な質問は覚えておりませんが、台湾は日米安保条約の対象になるのかならないのかという御質問が端的にあったものですから、この点は従前から日本は同じことを言っておりますということで、これまでの日米安保条約の解釈、あるいはその中にある政府統一見解というものを、全部言うと長いですからある部分だけを説明し、そして私どもは、2プラス2の共通戦略目標にも触れてあるとおり両当事者間の話し合いによる平和的な解決がすべてである、こう思っておりますということを申し上げたのでありますけれども、その全体の発言のある部分だけを取り上げると、何か殊のほか、台湾に対して日米が共同軍事行動をとるというような報道ぶりにそこが変わってしまったということは、大変、私の説明不足であったかもしれませんが残念なことである。

 しかし、私どもは、2プラス2の場ででもそうでありますけれども、何もあそこで新しい対台湾政策あるいは対中国政策というものを打ち出したわけでも何でもない、従前からの見解をそのままなぞらえて言っているだけであるということを改めてこの場で申し上げさせていただきたいと思います。

首藤委員 時間が来ましたのでこれで終わりたいと思いますけれども、最後にイラク情勢について短くお聞きします。

 日本の自衛隊出身の方が、国際的な民間軍事組織に参加されて、今イラクで武装勢力に拘束されている。現状はどうかということで、我が党の鳩山由紀夫ネクスト大臣がわざわざハート社まで行って事情聴取をしたところであります。ここのところに関しては非常な関心事であると思います。もちろん、そのことに関しては、果たして、そういう民間軍事組織に日本人が参加するのが、あるいは元自衛隊の方が参加するのがどういう意味を持っているのか、これから論議のあるところだと思いますけれども、邦人の安全ということに関してやはり外務省も責任を持って行動していただきたいと思うわけです。

 一方、最大の問題はイラクの将来であります。これに関しては、これもイラク特の方で大臣にも質問させていただきましたけれども、もう憲法制定プロセス、あるいは国民投票プロセス、そして議員選出プロセス、国会開設プロセス、最終的な独立プロセス、これはもうおくれにおくれています。

 その一方、ことしの十二月十四日ですか、国連の決議がいよいよ期限切れになるわけですね。それに関して、驚いたことに、各紙でもう既に日本の部隊は十二月十四日には撤退するというニュースが流れているんですよ。そういうことであれば、もう早い時期に現地社会とそういうことを打ち合わせしていかないと、これはまた日本の立場がイラクで傷つくことになるわけです。

 そうした当然のこと、当たり前といえば当たり前なんですが、そうした国連のマンデートに従って十二月十四日に撤退予定であるのかどうか、外務大臣の結論を言っていただいて、私の質問の終了とさせていただきます。

町村国務大臣 これは委員御承知のとおり、国連安保理決議一五四六というのでことしの十二月三十一日までに予定されている各種の政治プロセスが規定をされている、これを実現するために、今、日本を含めて二十六カ国が部隊を派遣する等、さまざまな支援活動をやっているという状況でございまして、今まさにそのプロセスの真っただ中であるということからして、今の段階で撤退論を議論することはいかにも時期尚早であると考えております。

首藤委員 終わります。

赤松委員長 次に、古本伸一郎君。

古本委員 民主党の古本伸一郎でございます。

 私からは、過日、本委員会で既に賛成で可決をされております旅券法につきまして、実は、御案内のとおり、不肖私の本委員会における最後の質問の中で、法案にいささかの瑕疵があるんではないかということが明らかになった経緯がありました。

 その後、実は党内で、いろいろな議論といいますか、急ぎ幹部の皆様にも集まっていただき、大変ある意味で、賛成をした後でありますので腹をくくって参議院に申し送りをするならしなければいけないわけでありまして、その際に、忘れもしない、鳩山委員からこう言われたわけであります。過ちてはすなわち改むるにはばかることなかれ。これは論語だと思いますが、おっしゃった。

 これは過ちというよりも、事実が明らかになった中でいかに対応していくか、これはまさに本院といいますか国会の危機管理能力が問われている、こう受けとめる中で、実は参議院で今大変な御議論をいただいているさなかであります。既に賛成をしているこの委員会からは、もちろん外野から何も申し上げることはないわけでありますが、少なくとも問題を惹起した当事者として少し説明責任を果たしたいという意味で、わけても与党の先生方にも聞いていただきたいという思いで、少し整理をさせていただきながら質問いたしたいと思っております。

 そこで、実は、この旅券法を改正しIC旅券を導入するということ自体は大変すばらしいことでありますし、テロ対策にもつながることでありますし、何らの問題もないわけであります。問題は、その発行に伴い要するその手数料というんでしょうか経費というんでしょうか、このお金の問題について議論を今参議院でもしていただいていると理解をしています。

 これは、お金はすぐれて税といいますか国民負担によってなされるわけでありますから、まさに国民の声として受けとめる必要があると思っています。その意味で、実は旅券を持つことによって領事業務の効果に浴することができるだろうということで効用分なるものがあると理解をしておりますが、改めて、この効用分というのは、手数料なんでしょうか、税なんでしょうか、何なんでしょうか。その点について確認をしたいと思います。

鹿取政府参考人 これは手数料として含めているものでございます。

古本委員 そういたしますと、手数料ということは、例えば、幾つか財政当局からも教えていただきましたが、例えば登録免許税というものがございます。これは、例えば不動産登記、商業登記、いずれにしても、登記をつける、登録をすることによって、国がそういうライセンスを付与することにより得る利益もさることながら、その方の担税力、担税能力に応じて、税を負担する能力に応じて税額が決まってくる、こういうことであります。

 したがって、これは税と違って手数料であるということは、実際に海外旅行に行くような人だからお金があるだろう、したがって、その担税力、能力に応じて幾ばくかを負担してもらおうという発想では全くなくて、何か具体的な実費があって、そのためにこの手数料があるんだ、そして徴収するんだ、こういう理解でよろしいでしょうか。

鹿取政府参考人 そのとおりでございまして、まず実費分がございます。それから、委員御指摘の効用分につきましては、海外でもしも何か事件、事故に遭われた場合の邦人保護という場合もございますので、邦人保護に必要な行政コストを平均的な形で計算しまして、その手数料に含めているわけでございます。

古本委員 そういたしますと、実は、先般の私の質問の中で大臣の御答弁をいただいた議事録を精査いたしますと、大臣はこうお答えになっておられるのですね。委員がおっしゃる意味が私もわからないではございません、これは大臣いわくですよ。しかし、切りかえは強制ではない。あるいは、あくまでも期待である。まあ、外務省としてもそういう旅券を導入したいという期待である、したがってパスポートを取得される方の判断である、こういうふうにこの場でおっしゃられました。

 そうしますと、実費の、パスポートの紙代ですとか、写真代ですとか、特殊ラミネートのそういうお金がかかるんでしょう。これも数字も全部出ています。四千円近い実費があります。これを何も返してくれだの、あるいは取るなと言っているわけではなくて、今言われた、実際に便益に供する、これは海外に行って、バーチャルの世界ではなくて、具体的にそれに浴することをもって効用分として取る。こういう理由からいたしますと、個人の判断ではないんじゃないでしょうか、局長。

鹿取政府参考人 済みません。もしも私が的確に御理解していなかったら恐縮でございますけれども、旅券の場合は手数料の中に実費分と効用分が入っております。そして、旅券というものは、原則として一度出しましたら最後まで有効期間内はそれを使うということが、一つ、外国でもそうですし、我が国の一つの旅券使用でございます。

 したがいまして、私どもは、基本的には、旅券を有効期間中にあえて変えられるという場合は、その個人の方がみずから判断されて、あるいはみずから御自身で何らかの理由で変える、こういうことはあるかと思います。その場合においては、原則はあくまでも旅券というのは通常は最後まで使うということが建前になっておりますので、新たに有効期間中に新しい旅券を購入される場合には正規の料金をいただいている、こういうことでございます。

古本委員 パスポートをとるというのは個人の判断です。そのパスポートもIC旅券にしたいかどうかは、個人の恐らくこれは判断でしょう。したがって、そのパスポートを発給するに伴う実費ですね、行政経費、直接経費は、これは個人の判断でしょうということはそのとおりじゃないかなと思います。

 しかし、それを持つことによって得る便益に対して、あらかじめそれは具体的な見合いでこれは幾らだということを積算なさって取る以上は、これは個々人の自由の判断は超えていると思うんですね。日本国民が日本国発給の旅券をとるということは、日本人である限りこれは選択できないわけであります。したがって、そこで実費を取る、効用分を取るという部分については、あくまでも個人の判断であるということはいささか疑問が残るわけであります。

 さらに、大臣はこうもおっしゃいました。独立採算で賄っているのであればよくわかります、しかしこれは一般会計、広く国民の税金という形でいただいている中で在外公館の運営が行われているわけであり、必ずしもそこは期間との対応で考えなくてもいいのではないか、こうおっしゃられました。

 そこで、もう一度参考人に聞きます。効用分は独立採算していますか、していませんか。

鹿取政府参考人 一つ具体的な例で御説明しますと、今の十年旅券は一万五千円でございまして、効用分は十年分、我々計算として入っております。それで、旅券を購入された方はこれを収入印紙で払いますので、それは直接国庫にすぐ入ります。また他方、我々、邦人保護を含め、外務省の予算は予算として計上して、予算として執行しておりますので、そういう形で運営しているということでございます。

古本委員 実は、効用分の積算根拠というのは極めて明快でして、通信関係諸費二十四億円、あるいは啓発宣伝費二億、旅費八十億、これは領事業務に要するものですね、人件費、これは館員の給料でしょう、百九十九億等々積み上げて、十六年実績で三百七十七億円、これを割り戻すと大体年間千円になるだろう。これは極めてわかりやすい実費なんですね。

 これは一般会計に入りますから、税外収入として入るんでしょう。ひもつき財源ではないにせよ、極めてこれは独立採算なんですね。独立採算という理解は、要は目的と使途が明確につながっているんじゃないでしょうか、そういう意味では。

 そこで確認をしたいのが、これは一般税で入っている会計分に加えて年間で大体平均三百億円ぐらい効用分があるというふうに伺っていますので、これを別建てで取る部分については、独立採算ではないんですが、個別の目的を持って、極めてひもつきに近い状況で取っている。これは間違っていますか。イエスかノーかでお願いします。

鹿取政府参考人 この点は若干御説明が要ると思うんですが、今、三百七十数億円ということをおっしゃいました。それは、我々が、外務省予算の中で邦人保護の経費が大体このぐらいになるであろうということで算出したものでございます。その算出の基準は、例えば人員であるとか通信費であるとか情報収集費であるとか、そういうものの中から恐らく邦人保護についてはこれだけかかるだろうということで計算しております。

 そして、それは独立採算という御指摘がございましたけれども、実は、これを個別に明確にすることは非常に難しい面があります。

 例えば、先般もマラッカでああいう海賊事件がございましたけれども、その場合には、在ペナン総領事館は全員でもうすべて邦人保護をやるわけでございます。したがいまして、例えば庁費であれ通信費であれ、では何が具体的に邦人保護にかかって、何が例えば政務であるとか経済とかほかの目的にかかったかというのは、なかなか個別に判断することは難しい場合があります。

 しかし、我々としては、平均的に、今までの経験を踏まえて、人員を考えたり定員を考えたり情報収集費を考えたり、あるいは通信費を考えて、この程度は邦人保護にかかるだろうということで一つの算出をしているわけです。

 独立採算といいますと、これは明確に邦人保護に使ってほかの目的に使っていない、こういうことで独立採算という言葉を御使用になっていると思いますけれども、そういう形でなかなか明確にするというのは困難な状況がございます。

古本委員 恐らく、関係者はもう皆わかっているんですね。ただ、想像では物は言えませんが、これはおかしいということに少なからず気づいている事案だと思います。そういう中で、先例があったり、あるいは法律を守ってきた先輩方の顔が浮かぶんでしょう。しかし、本当におかしいことであれば、何らはばかることなく直せばいいと思うんですね。

 もう一点新たな観点ですが、現行の旅券のままで今年の十月二十六日を迎えて、そして新しいIC旅券が導入される三月までの間に新規で発行されるこの数カ月間の旅券というのは、米国に入国する際に新たにビザを取得しなければ入れなくなる人が恐らく何万人か、その間に新しく旅券をとる人ですから、例えば学生諸君ですとか生まれて初めて海外に出るという人が、この間多分パスポートをとると思います。こういう人たちはすぐに気づくでしょう。ビザをとり続けなきゃいけないという非常に不便な旅券を私は発給してもらってしまった、ついてはIC旅券に切りかえたい、そういう人が必ずいると思います。

 そういう人のことを考えれば、今の機械読み取り式現行旅券を持ち続けることとIC旅券を持たないことによる不利益を見れば、これはIC旅券を持った方がいいに決まっているわけでありまして、国家としてもそれの導入を奨励しているわけでありますから、テロ対策等々の大変すばらしい観点から考えておられるわけでありますから、ぜひ効用分について見直していただきたいと思います。

 時間が参りましたので、最後に一言。

 総理は相当論語が好きなようですので、大臣にこんなことを言うのも大変僣越でありますが、久々に私も論語を読みました。鳩山先生に言っていただいた、過ちてはすなわち改むるにはばかることなかれ。これとセットで使われておりますのが、おのれにしかざる者を友とすることなかれ、要するに、自分より徳が劣る者を友とすることのないようにと。

 これは、やはりイエスマンばかり、あるいは大臣に耳ざわりの悪い話を言わない人を余り信じない方がいいと思います。そういう意味では、本格派大臣と呼ばれている町村さんでありますから、ここはぜひひとつ英断をしていただきたい。他院に対して言う立場ではありませんが、ハウスが違いますが、そんなことも思うわけであります。

 そして、行政。これはおまけで申し上げますが、過ちあれば人必ずこれを知るというのがあるそうです。これは、私は幸せ者だな、孔子が当時過ったことがあったときに、だれかが必ずそのフォローをして気づいてくれる、こう言われたそうです。

 まさに三権分立が問われています。行政から提案があった本案について、やはり瑕疵があったんです。そのことについてまさに立法府である議会から指摘があったわけでありますから、ああ、三権が分立し合って、互いに確認し合って、まさに至誠を尽くす、そんな外務省であっていただきたいことを強く希望いたしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

赤松委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 きょうも、前回に引き続き、航空機墜落事故に関するガイドラインについて聞いていきます。

 昨日も、沖縄県の久米島町に嘉手納基地所属の米軍ヘリが不時着をいたしました。農作業中の農家がすぐ近くにいたということもあり、久米島町民の怒りは広がっております。

 今回は、前回のガイドラインに加えまして、ガイドラインそのものの性格、位置づけについて聞きたいと思います。

 今回のガイドラインは、昨年の沖縄国際大学へのヘリ墜落を受けて作成をされ、四月一日の日米合同委員会で合意をされましたけれども、これまでの航空機墜落事故現場の対応とどこが変わっておりますか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のとおり、昨年の八月の事故を踏まえまして、現場統制をいかにより適切なものにするかということで日米間で作業を繰り返して続けてきた結果として、四月一日の合同委員会合意という形に達しまして、それを公表、発表させていただいたわけでございます。

 従来からも日米間で、不幸にして生じた墜落事故、もしくは類似のものについての対応は行ってきたわけでございますけれども、そういう過去の積み重ねというのも基礎にしつつ、より適切なものとして今回の合意に達したわけでございます。

 例えば、その個々について、過去、どういうプラクティス、慣行ということと照らし合わせてどこがというのをすべてここで例示することには限りがあろうかと思いますけれども、例えば現場統制についていえば、外周規制線と内周規制線という形で、より整えた形での現場統制をやる。

 このガイドラインを定めた大きな基本的な目標といいますのは、不幸な状況の中で仮に事故等が生じたときに、やはりまずは、乗員もそうでございますけれども、第二次被害的なもの、これを回避しなくてはいけないという目的、あわせて事故の原因調査等のために現場の保存をしなくてはいけないという二つのことを主として念頭に置きながらガイドラインを整備したということでございます。

赤嶺委員 航空機墜落事故に当たって、今局長が答弁されたように、ガイドラインで現場の統制について、内周側規制線それから外周側規制線を設定して、日米共同で現場管理、立ち入り規制を行うというような中身になっていると思うんですが、これは今回、ガイドラインを見直しました。

 ところが、それが去年の八月十三日の沖縄国際大学の事故現場でやられていたことと変わらないんですね。内周側の規制線もありましたし、外周側の規制線もありましたし、これまでの慣例を積み重ねて見直したといいますけれども、もう一度聞きますけれども、何が変わったんですか。

河相政府参考人 日米合同委員会合意という形で、従来からの慣行も踏まえつつ、それをより明示的な形で合意に達してそれを提示したということでございます。これは、御承知のとおり、外周規制線については基本的に日本側が行う、内周規制線については日米が共同して当たるということを定めておるわけでございます。

赤嶺委員 従来の慣行で行われていたものを、今回は日米間の合意で明確にしたとおっしゃるわけですね。

 それでは、今回のガイドラインに相当する事故現場の統制に関する日米間の合意というのはこれまでなかったんですか。

河相政府参考人 いろいろな形での合意というものは、日米間で従来からもそれなりのものは存在をしておりました。

赤嶺委員 そういう合意というのは、いわば現場の統制は日米の共同の管理で行うということになっていたわけでしょう。変わっていないじゃないですか。

河相政府参考人 基本原則として、従来から日米で共同して当たるということが原則になっておったわけでございます。

赤嶺委員 私、これまでも合意があったということでしたので、これまでの合意と、それから今回の合意の対照表をつくってまいりました。資料としてきょう理事会で御承認いただいておりますので、配付をお願いしたいんですけれども、この対照表、実は一九五八年当時のものであります。

 当時は、それまでの日米合意によって航空機墜落事故現場に対応してきたけれども、その処理について明確を欠く点があった、より明確にしようと、今のものと同じ言葉を使っているんですが、日米合同委員会で当時も検討を加えて、一九五八年十月十六日の日米合同委員会の合意に達し、これを日米がお互いに末端機関まで徹底させることになったというものであります。

 その内容について、これは資料の七枚目のところにこう書いております。この資料は、昭和四十七年三月に法務省刑事局において作成をされたものとして書いてあります。昭和四十七年といいますと、ちょうど沖縄復帰の年を前にして、恐らく法務省刑事局が執務の参考資料として、「合衆国軍隊構成員等に対する刑事裁判権関係実務資料」としてつくったものであります。これはマル秘、こういうぐあいになっているんですね。何でこんなものがマル秘なのか理解できませんけれども、その中の、この刑事局作成の資料の二百十二ページ、つまり次のページですね、八枚目の資料ということになります。

 ここには、通達番号六二―二、「航空安全 日本における米軍施設又は区域外の航空機事故」「在日米軍司令部」「一九五八年十月三十一日付」とありまして、これは在日米軍司令部が在日米軍の各司令官にあてた航空機墜落事故現場における通達の内容なんです。内部徹底のものです。

 日本政府は、その次のページあたりに、これでいきますとこのように書いてあります。この米軍の通牒、米軍が内部に送った通達を尊重せよ、こう書いてあるんですよね、この中に。それだけ航空機墜落事故現場に対する対応が米軍の言うとおりにしてきたという点では、当時も今日も屈辱的だったと思います。

 ただ、見ていて、対照表に戻っていただきたいんですが、ほとんど同じなんですよ。ほとんど同じ。そういう、今回のガイドラインというのは、今までの事故現場におけるいろいろな慣例をより明確にしたとおっしゃっているけれども、五八年当時のものも、これまでの日米合意をより明確にしたというぐあいに言っている点ではほぼ同じ内容が踏襲されている、そう思うんですが、その点はいかがですか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 委員から配付をいただきました資料でございますが、上段の方に本年四月一日に日米合同委員会で合意した内容が書いてあるわけでございまして、下段の、下の方のものにつきましては、「一九五八年十月三十一日 在日米軍司令部」というふうに書いてあるわけでございますけれども、ちょっと私ども、この下段に書いてある資料というものがどういう性格のものであるかということにつきまして、ここで断定的なことを申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。

赤嶺委員 その下段の資料と上段の資料を比べてみますと、一例ですが、三ページ目に、上段の資料では「事故現場への立入制限」、これは今回四月一日の合意の中身ですね。下段には「事故現場への接近制限」、大体同じようなことが書かれているんですよ。ですから、皆さんが今回のガイドラインでより明確にしたと言っているのは、従来の日米間の合意を踏襲したにすぎないと思うんです。

 ところが、五八年合意と今回の合意と明らかに変わっているところがあるんです。これは、資料の四枚目を見ていただきたいんですが、資料の四枚目の上の段に、ちょうど真ん中ごろに傍線を入れてある箇所があります。これが先ほど北米局長が答弁した箇所なんですね。いわばより明確にしたと言われた点です。「内周規制線の制限区域への立入りは、合衆国及び日本国の責任を有する職員の相互の同意に基づき行われる。」このように言っています。「相互の同意」です。

 去年のヘリ墜落事故現場でもいわば共同の体制はとっていたというのが皆さんの認識です。しかし、事故現場は危険なので近づくなということで、米軍の同意が得られなかったために近づけなかったわけですね。しかし、今回あえて「相互の同意」と書いている。そうすると、米軍が、危ない、近づくなと言えば、今回の場合も内周規制線の中に近づけないんですよ。

 ところが、五八年当時はどんな合意になっていたかといいますと、下段の方に、(2)で「責任ある日本政府の係官は、合衆国軍隊要員以外の者の立ち入る権利と必要とを決定する。」つまり、立ち入るかどうかを、日本国の人にとっては、例えば宜野湾の市長かもしれません、沖縄県の副知事かもしれません、あるいは外務省の外務大臣かもしれませんし、副大臣かもしれない。そういう方々が入る場合には、日本政府の判断でできるんですよ。いわば日本政府の係官は合衆国軍隊の構成員以外の者の立ち入る権利と必要とを決定する、このように言っているんですよね。

 当時はそういう合意だったんじゃないですか。今回の合意というのは、かえって、これまで日本政府が持っていた立場をも放棄して、よりアメリカ寄りに、アメリカの合意が得られなければ内周規制線に近づけない、こういうことになっているんじゃないですか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども申し上げましたとおり、配付いただきました資料の下段の方、一九五八年の決定、この紙の性格というものにつきましては、私どもとしてここでコメントは差し控えたい。どういう経路でこういう紙があるのか、どういうものなのかということを私としてここで判断することは差し控えたいというのが第一点でございます。

 今般、不幸にして事故なりそれに類似する事態が生じたときに、一体どういう手順で現場統制をするかということで、日米間で議論をしたわけでございます。第一に、先ほども申し上げましたとおりに外周規制線、内周規制線というものを設定する、それは主として二つの目的がある。

 一つは、けがをしているかもしれない乗員の保護というのもございますけれども、同時に、第二次災害的なものを回避しなくてはいけないということ、あわせて現場の保護、現場の確保を行うということが主たる目的として念頭に置いてあるわけでございます。

 そのもとで今回日米間で合意をした内容は、御承知のとおり、外周規制線については日本側が行います、内周規制線については日米双方で行うという線にしたわけでございますけれども、その墜落した航空機に関連する第二次被害的な危険性というもの、また現場の確保という視点を考えた場合に、専門知識を有する米側と協調しながら現場の確保をする、第二次災害を防ぐということに当たることがより合理的ということで私どもとしては判断をし、こういう規定としたわけでございます。

赤嶺委員 ですから、今回のガイドラインの日米相互の合意ということになれば、前回と同じように内周規制線の中に入ることを排除されるということになるわけです。

 今局長は、五八年合意というのはあずかり知らない態度をとり続けておりますが、私はその資料の表紙も明確にしております。発行先も明確です。政府が調べる気があればすぐ調べられるものですよ。それで、そこまではっきりしたものを、知らない知らないで通せるものじゃないんです。

 その資料の十枚目、ここのページでいきますと二百十六ページ、二百十七ページ。今回の、つまり五八年合意の特徴は何かということを書いているんですよ。ちょうど二百十六ページというページが打たれている最後の行の三に、「立入制限区域への米軍要員以外の者の立入りは、日本側責任者が決定すること。」日本側が決定すること。日米間の合意になっていないんですよ。

 それで、次の行、それは二百十七ページの一行目、こう言っています。「今後は、米軍要員以外の者については、日本側に独自の決定権があることが明確になったので、」「日本側に独自の決定権があることが明確になった」と、五八年当時に、内周規制線、当時もありますよ、その内周規制線には日本側の判断で入れるようになっていた。こういうのがあったんです。

 ところが、八月の事故当日に、当時の荒井正吾外務政務官が事故現場に近づくことを米軍により排除されました。荒井政務官は何と言ったか。ここはイラクではない、日本の領土だ、このように発言しています。まさに、ここはイラクではないと外務政務官が言わざるを得ないような状況が起こっていたわけです。やはり、当時の米軍の行為というのは五八年当時の内容にも反するものだったと思います。

 これは外務大臣、どのように考えますか。いや、外務大臣です。もう時間がありませんので。

町村国務大臣 局長が申し上げているとおり、一九五八年、こういう資料がどういう性格のものであるかわからない以上、これ以上のコメントは差し控えます。

赤嶺委員 私は、そういうすべての中身を明らかにしてきょう資料を提出いたしました。外務省や外務大臣が五八年当時の資料は知らないことだと言うのであれば、それは委員会として解明していかなければならないと思います。

 私、委員長にお願いしたいんですが、五八年当時の合意も含めて、これまでの航空機事故墜落現場における日米間の合意、すべての資料を委員会に提出するよう強く求めていきたいと思いますが、いかがでしょうか。

赤松委員長 後日の理事会で協議をいたします。

赤嶺委員 これで質問を終わりますけれども、まだガイドラインの中身は続きます。改悪された中身が次から次に出てまいります。いかにこの問題で、被害者である県民や国民の立場に立つのではなくて、米国の権利、権益を保護する、そして機密を保護するという立場に日本政府が立っているか。こういうことは許されないことだということを申し上げまして、私の質問を終わります。

赤松委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 社会民主党の東門美津子です。よろしくお願いします。

 まず最初に、本当にとても単純な質問なんですが、やはり大臣にお答えいただきたい。私は、去る三月三十日の当外務委員会で質問いたしました。でも、大臣からまだお答えをいただいていません。きょうぜひお答えいただきたい。

 なぜ海兵隊は沖縄に駐留する、要するに海兵隊の駐留先がなぜ沖縄でなければならないのかという点から、ぜひ大臣の、これまでも米軍ともお話しされてきたことだと思いますので、その答弁からよろしくお願いいたします。

町村国務大臣 たしか、米軍のしかるべき人と会うチャンスがないと前に御答弁を、四月二十二日にしておりますが、その後もまだ会うチャンスに恵まれておりません。

 それはそれとしまして、なぜ沖縄に米海兵隊の駐留が必要なのかというお尋ねでございますけれども、沖縄は、地理的に極東の各地域に近く、これらの地域に急速な展開を必要とする場合に迅速な対応が可能であるとともに、我が国が周辺諸国との間に一定の距離があるため縦深性が確保できるという利点を有しています。これらが緊急事態への第一次的な対処を担当する海兵隊を初めとする米軍が沖縄に駐留する主な理由と考えられます、こういうことであります。

東門委員 済みません、不勉強でよくわからない点があります。

 縦深性というのは何ですか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 軍事関連用語でございますので、私の知識として不十分なところもあろうかとは思いますが、基本的に縦に深さがあるということで、いろいろな事態に対応する際に、事態が生じ得る地域とのそれなりの距離というものを保ちつつ、かつ、そこの地域にそう遠くはないという考え方でございます。

東門委員 やはりよくわかりませんが、後でまたしっかり勉強して質問させていただきます。

 しかし、沖縄の海兵隊というのは、もともとそこにあったわけじゃないんですね。一九五六年に山梨県と岐阜県から沖縄に移転をされているということは御存じだと思います。ですから、必ずしも沖縄でなければならないということはないと私たちは思います。

 実は私、五月初めに訪米いたしまして、多くのシンクタンクの皆さん等ともお話ししてきました。そこでも同じような質問をアメリカの方にいたしました。なぜ沖縄なんですかと言いましたら、最初戸惑った顔をしておられたんですが、私が、これは沖縄でなくてもいい、要するに日本のどこかであればいいということにもなりますかとお聞きしましたら、そうだという答えが返ってきました。

 ですから、何か無理して、縦深性がどうのこうのとか地理的にどうのこうのとか、沖縄に押しつける口実に政府が使っているとしか私には思えないんですが、いかがでしょうか。本当に、沖縄でなくてもいいということは、しっかりアメリカの中にも声があるということ、それは多分、政府の皆さんですから、よく御存じだと思います、外務省の皆さん。

 もう一度お答えいただきたいと思います。なぜ沖縄でなければならないのか、県民が納得する形でお答えいただきたい。

河相政府参考人 米国内でシンクタンク等に委員がお会いになりましていろいろな御意見を伺ってこられたということでございます。ただ、私どもが米政府当局と話をしている中で認識をしていることということで、先ほど大臣から答弁をさせていただいたわけでございます。

 ただ、いずれにいたしましても、現在行っております在日米軍の再編協議という中においては、ともかく沖縄を初めとする地元の負担の軽減というものをいかに図っていけるか、同時にそれは抑止力の維持というのを念頭に置きながら負担の軽減を図っていくかというところで、現在、鋭意議論を行っているところでございます。

東門委員 今の北米局長の御答弁、多分、沖縄の海兵隊が大幅に削減される可能性もあるということを示唆したのかなというふうにとりたいと思います。前回の委員会でもお伺いしたことなんですが、海外基地見直し委員会の中間報告書には、しっかりと明記されているんですね。八千人までは削減可能だという議論もあるということですので、やはりそこのところは担当の部局が頑張っていただいて、沖縄から、本当にいつも何度も使っている言葉です、目に見える形でそういう負担の軽減がなされるということを期待したいと思います。

 次に、辺野古海域での作業について伺います。防衛施設庁長官おいでですから、まずこれを先にしていきたいと思います。

 那覇防衛施設局は去る四月の二十一日、地元の住民や多くの県民の反対の声を無視して、辺野古でのボーリング調査に向けての作業の再開を強行しました。日中の作業が組織行動で阻まれると、四月二十六日には深夜の午前三時以前に作業を開始するという抜き打ち的な行動に出て、反対派との対立が強まる状況をつくっています。

 私は、この件に関しましては、防衛施設局の判断ですか、施設庁からの判断ですかと前回お伺いしたのを、これは施設庁長官が、施設庁が指示したという御答弁だったことを記憶しております。

 今そういう対立が強まっているんですが、しかしこの行動は、作業計画では、作業時間は日の出一時間後から日の入り一時間前までとなっているのにもかかわらずなんですね。

 それで、お伺いしたいんですが、現在、辺野古で行っている夜間作業もあり、常にそういうやりとりが押したり戻ったりの状況にあるということですが、それについては県の了解は得ているのでしょうか。

山中政府参考人 これは私どもの判断でやっていることでございまして、その都度都度、県に御了解をいただくということはいたしておりません。

 ただ、県の方は当然、生活環境、自然環境に対して十分な配慮のもとにボーリング調査の実施ということを求めておられるわけでございまして、それが昨年の四月に示されております環境配慮事項ということにもあらわれているわけでございます。そういったものを十分尊重しつつ、作業を行おうとしているということでございます。

東門委員 いや、長官、私がお伺いしたのは、その都度その都度、毎日毎日了解を得ているかということではないんですよ。夜間作業に入るということに関しての了解を得ていますかと。それに対して了解を得ずに強行したということはどういうことなんでしょう。どこに根拠があってそういうことをなさったのか。

山中政府参考人 これは昨年の九月にボーリング調査の前提になる準備作業を開始いたしまして、実際には十一月から単管足場の設置等を試みてきたわけでございます。

 ただ、実際には、洋上におきまして、単管足場において反対派の妨害行為等もございましたので、そういう状況を踏まえて、私どもとすれば、どういう手だてを講ずればボーリング調査が円滑に進められるかというようなことを考える中で、夜間において単管足場への防護ネットの設置ということをやったわけでございまして、その段階で県の一々の了解を求めるというようなことはいたしておりません。

東門委員 県の方からは、五月十一日付で防衛施設局に申し入れが行っていますよね。「夜間の作業については、ジュゴンの行動に影響を及ぼすおそれがあり、好ましくないと考えておりますので、最大限の配慮をお願いします。」と。ちゃんとそういうのも出ているわけですよ。

 それを受けて何か、では夜間は自粛しようということでも出ているのでしょうか。

山中政府参考人 去る十一日だったと思いますが、県の環境担当部長の方からその文書をいただいております。

 当然、ジュゴンの行動特性というものにどうやって配慮しながら、例えばリーフの切れ目には足場を設置しないとか、これまでも繰り返し申し上げておりますけれども、日中において作業を行う。ただ、掘削そのものは音が出ますので、当然これは夜間に行いますと場合によったらジュゴンにも影響を及ぼすというようなことで、私どもの作業計画、あるいはさっき申し上げた県の環境配慮事項、こういうものに十分沿ってやっておりまして、夜間の作業そのものがこれらに反するというふうには考えておりません。

 ただ、現実に、先月の末に、さっき申し上げた防護ネットの設置をいたしました。実際には、反対派がそれを乗り越えて単管足場を占拠しているというような状況もございます。夜間のそういった作業そのものが、場合によったら危険を誘発することになりかねないというふうにも考えられます。現時点において、夜間において安全に作業をなし得るかどうか、これはかなり困難だろうというふうに考えております。

 今、現実にやっていることを申し上げますと、反対派が夜間も足場の占拠をやっておりますので、警戒船を出しまして安全の確認をしているということでございます。したがって、現地の状況を見て、そのあたりは適切に判断をするように局に指示をしたいというふうに考えております。

東門委員 今御答弁を承りましたけれども、私は、作業時間帯のセットはすごく甘いと思います。

 何でもないと思うという御答弁でしたけれども、皆さんがおっしゃる、いわゆる覆面専門家からの助言内容にも作業時間帯等はしっかり書いてありますよね。ジュゴンは本当に小さな音にでも反応するんですよ。出港、帰港を含む作業時間も日の出から日没まで、夜間はやめてほしいということを意味しているじゃないですか。そういうことをしっかり守ってください。もう夜間は絶対にだめだと打ち切っていただきたいと思います。

 次に、CH53Dヘリについてお伺いいたします。

 昨年の八月十三日に、世界で一番危険と言われる普天間飛行場に隣接する沖縄国際大学に墜落した大型ヘリCH53D型機と同型のヘリが、四月にはイラクから帰還し、その後、去る五月九日に三機が岩国から普天間飛行場に追加配備されました。

 同型機のイラクからの普天間飛行場への帰還に反対していた宜野湾市長や県知事は強い遺憾の意を表明し、伊波市長は在沖米海兵隊司令官に配備撤回の抗議もしています。今回、追加配備された三機のうち二機は、墜落後の昨年十月、県民の抗議の声に押されるかのように岩国に帰還していたものだということです。

 伺いますが、CH53D型ヘリコプターは、普天間飛行場のほかにはどこに配備されているのでしょうか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 米軍の個々の航空機の配備に関することでございますので、私がここですべて申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、御承知のように、岩国に配備をされていて、そのうちの三機が普天間飛行場に九日飛来をしたという事実関係は、私どもとしても掌握しておる次第でございます。

東門委員 これは、米軍から出た事故再発防止のための米側の取り組み状況報告書なんですが、その中でははっきりと書いているじゃないですか。海兵隊全体におけるすべてのCH53D中隊が実際には第一海兵航空団に所属していることを考えると、そのCH53Dのいろいろな操作はできたということなんです。それからすると、それでしたら、世界的に見て、海兵隊の中で配備されているのは岩国と普天間だけということにはなりませんか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 米軍の航空機に関しましては、御承知のように、いろいろな状況によりまして移動をしておることは御承知のとおりかと思います。

 その意味におきまして、現時点でどういう配備になっているかということを、私が、特に日本を離れまして、世界的規模で申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。

東門委員 局長、このCH53D型ヘリがどれくらい古いもので、どういう性質のものであるかは御存じですよね。どれくらい古いでしょうか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 私、ちょっと手元に細かい資料を持っていないのでございますけれども、記憶の限りにおいては、基本的には七〇年代につくられた航空機で、かつ、大型の、人員、物資の輸送に従事をするということを主たる目的にしているというふうに承知しております。

赤松委員長 東門委員にちょっと申し上げますが、質問時間がオーバーしていますので、あと簡潔にお願いいたします。

東門委員 はい、あと一問だけ。済みません。

 今、御答弁にもございましたけれども、三十年以上も前の老朽化したヘリなんです。その機体を人が密集している沖縄の上空で運用することは危険であると、伊波市長もとても心配しておられて、懸念を表明されております。ですから、ああいう事故が起こったわけですよ。

 その後、追加配備しますよということで、ああそうですかと、米軍の運用上であれば私たちは物は言えませんという態度で何でも受け入れているというのが外務省、日本政府の態度であるのであれば、本当に沖縄県民が、日本国民が余りにもかわいそう過ぎます。いかがですか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 CH53Dの運用につきまして、地元で反対意見がある、または地元住民の非常な不安があるということは、私どもとしても十分認識はしておる次第でございます。

 今般、米側から、普天間飛行場に追加的に三機を配備するという通報を受けた際に、これは米軍の所要の訓練の必要性に基づくものであるということと、あわせて、一時的な配備であるということを聞いております。

 その際、私どもといたしましては、米側に対して、飛行経路を含めまして、周辺住民への最大限の配慮を払った上で運用するようにという申し入れはしております。これに対して、米側としては、整備の着実な実施を含め、ヘリの安全な運用には万全を期すという回答を一応得ているところでございます。

東門委員 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

赤松委員長 次に、千九百六十五年の国際海上交通の簡易化に関する条約の締結について承認を求めるの件、千九百七十六年の海事債権についての責任の制限に関する条約を改正する千九百九十六年の議定書の締結について承認を求めるの件及び西部及び中部太平洋における高度回遊性魚類資源の保存及び管理に関する条約の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 政府から順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣町村信孝君。

    ―――――――――――――

 千九百六十五年の国際海上交通の簡易化に関する条約の締結について承認を求めるの件

 千九百七十六年の海事債権についての責任の制限に関する条約を改正する千九百九十六年の議定書の締結について承認を求めるの件

 西部及び中部太平洋における高度回遊性魚類資源の保存及び管理に関する条約の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

町村国務大臣 ただいま議題となりました千九百六十五年の国際海上交通の簡易化に関する条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 この条約は、昭和四十年四月にロンドンで開催された海上旅行及び海上運輸の簡易化に関する国際会議において採択されたものであります。

 この条約は、国際海上交通を簡易化すること等を目的として、国際航海に従事する船舶の入出港手続を簡易化するための措置等について定めたものであります。

 我が国がこの条約を締結することは、我が国の港湾の国際的な競争力を強化するとの見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、千九百七十六年の海事債権についての責任の制限に関する条約を改正する千九百九十六年の議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 この議定書は、平成八年五月にロンドンで開催された国際海事機関の危険物質及び有害物質並びに責任の制限に関する国際会議において採択されたものであります。

 この議定書は、千九百七十六年の海事債権についての責任の制限に関する条約において定められる責任限度額を引き上げること等を内容とするものであります。

 我が国がこの議定書を締結することは、船舶事故により生ずる被害について、救済の拡充を確保するとともに、海運業の安定的な発展を図るとの見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、西部及び中部太平洋における高度回遊性魚類資源の保存及び管理に関する条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 この条約は、平成十二年九月にホノルルで開催された西部及び中部太平洋における高度回遊性魚類資源の保存及び管理に関する多数国間ハイレベル会議第七回会合において採択されたものであります。

 この条約は、中西部太平洋における高度回遊性魚類資源の保存及び持続可能な利用を確保することを目的として、高度回遊性魚類資源の保存及び管理のための委員会を設立すること等について定めるものであります。

 我が国がこの条約を締結することは、このような目的に積極的に協力し、及び我が国のカツオ・マグロ漁業の安定した発展を図るとの見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 以上三件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認をいただきますようお願いいたします。

赤松委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十分散会


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