衆議院

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第9号 平成17年6月3日(金曜日)

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平成十七年六月三日(金曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 赤松 広隆君

   理事 谷本 龍哉君 理事 中谷  元君

   理事 原田 義昭君 理事 渡辺 博道君

   理事 大谷 信盛君 理事 首藤 信彦君

   理事 増子 輝彦君 理事 丸谷 佳織君

      井上 信治君    宇野  治君

      植竹 繁雄君    河井 克行君

      高村 正彦君    佐藤  錬君

      菅原 一秀君    鈴木 淳司君

      土屋 品子君    西村 明宏君

      西銘恒三郎君    平沢 勝栄君

      三原 朝彦君    小林 憲司君

      田中眞紀子君    武正 公一君

      永田 寿康君    鳩山由紀夫君

      藤村  修君    古本伸一郎君

      松原  仁君    赤羽 一嘉君

      赤嶺 政賢君    東門美津子君

    …………………………………

   外務大臣         町村 信孝君

   外務副大臣        谷川 秀善君

   外務大臣政務官      河井 克行君

   国土交通大臣政務官    岩崎 忠夫君

   政府参考人

   (防衛施設庁施設部長)  戸田 量弘君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 西宮 伸一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 長嶺 安政君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際社会協力部長)        神余 隆博君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   天野 之弥君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    石川  薫君

   政府参考人

   (水産庁資源管理部長)  竹谷 廣之君

   政府参考人

   (海上保安庁警備救難監) 坂本 茂宏君

   外務委員会専門員     原   聰君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月三日

 辞任         補欠選任

  宇野  治君     井上 信治君

  小野寺五典君     西村 明宏君

  高村 正彦君     三原 朝彦君

  三ッ矢憲生君     佐藤  錬君

  宮下 一郎君     菅原 一秀君

  田中眞紀子君     小林 憲司君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 信治君     宇野  治君

  佐藤  錬君     三ッ矢憲生君

  菅原 一秀君     宮下 一郎君

  西村 明宏君     小野寺五典君

  三原 朝彦君     高村 正彦君

  小林 憲司君     田中眞紀子君

    ―――――――――――――

六月三日

 ILOパートタイム労働条約に関する請願(近藤洋介君紹介)(第一四九七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 千九百六十五年の国際海上交通の簡易化に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

 千九百七十六年の海事債権についての責任の制限に関する条約を改正する千九百九十六年の議定書の締結について承認を求めるの件(条約第六号)

 西部及び中部太平洋における高度回遊性魚類資源の保存及び管理に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第七号)


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     ――――◇―――――

赤松委員長 これより会議を開きます。

 千九百六十五年の国際海上交通の簡易化に関する条約の締結について承認を求めるの件、千九百七十六年の海事債権についての責任の制限に関する条約を改正する千九百九十六年の議定書の締結について承認を求めるの件及び西部及び中部太平洋における高度回遊性魚類資源の保存及び管理に関する条約の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官西宮伸一君、外務省大臣官房審議官長嶺安政君、外務省大臣官房国際社会協力部長神余隆博君、外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長天野之弥君、外務省北米局長河相周夫君、外務省経済局長石川薫君、防衛施設庁施設部長戸田量弘君、水産庁資源管理部長竹谷廣之君、海上保安庁警備救難監坂本茂宏君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武正公一君。

武正委員 民主党の武正でございます。おはようございます。

 それでは、今の三条約について質疑をさせていただきます。

 まず、国際海上交通の条約締結についての承認を求めるの件でございますが、これは署名して今回承認を求めるについて四十年経過をしておりますけれども、なぜ四十年かかってしまったのかという理由と、それから実際に今政府が署名をしてまだ未締約の条約というのは幾つあるのか。また、それが、例えばILO関連などが多いということはもう既に当委員会でも指摘をされておりますが、その内訳についてお答えをいただけますでしょうか。

町村国務大臣 武正議員にお答えいたします。

 まず、FAL条約を署名してから相当時間がたっている、なぜそんなに長い時間がかかったのかというお問い合わせであったと思います。

 私も、最初聞いたとき、四十年というのは一体これは何だと、当然不思議な、疑問を持ったわけでございますが、一言で言いますと、かつて日本の港湾は非常に競争力があったということで、日本独自のやり方で十分やっていける、日本の港湾手続を国際標準に合わせる必要性というものが必ずしも認識をされないまま時間がたっていったということではなかろうかと思います。

 しかし、特にアジア諸国、いろいろな国々の経済が急速に発展をする中で、港湾の整備が進み、港湾手続も近代化、合理化するという中で日本の港湾の競争力が失われてきてしまっているという実態があり、しかも日本の手続等が諸外国と比べて非常に煩雑であるという点が日本の港湾の競争力を低下させている、こういう指摘を受けていたわけでございます。

 そんなこともありまして、日本の港の手続を見直すことによって競争力を強化していきたい、こう考えた折に、ちょうど二〇〇二年にこの条約が改正をされまして、新しい船舶の入出港書類の具体的な国際共通様式、FAL様式と呼んでいるようでございますが、これが定められまして、EU諸国が二〇〇三年九月に同じような様式を採用するということで、国際的な手続の画一化に向けた新しい大きな動きも出始めてきたという状況がありました。

 そうしたことを踏まえながら、外務省としても、関係省庁と相談をしながら、平成十年、二〇〇二年から、こうした動きを現地調査するなどして取り組みを始めまして、今回、港湾法、港則法、関税法の改正等によりまして入出港に必要な書類を半分程度まで減らす、他の締約国と比べて遜色のない程度まで手続を簡易化した上でこの条約を締結することにしたという次第でございます。

 大変時間がかかってしまったことは、これは率直に反省材料である、こう思っておりますし、現に港湾の競争力がこれだけ国際的に見てもだんだん下がってきているという実態をもっと早く認識して、より早期に、こうした条約の批准というものを早くやるべきではなかったかという率直な反省も必要ではないか、かように考えているところでございます。

 なお、後段のお問い合わせにつきましては、今、谷川副大臣の方からお答えをさせます。

谷川副大臣 先生から御質問のございました、我が国が条約を締結いたしまして、まだその締結について承認を求めるために国会に提出をしていない条約は、過去五年以内に署名した条約が三件、五年以上前に署名した条約が三件、計六件がございます。

 具体的に申しますと、過去五年以内に署名した条約といたしましては、国際組織犯罪防止条約銃器議定書、腐敗防止条約及び万国郵便連合条約等の三件、五年以上前に署名いたしたものといたしましては、武力紛争の際の文化財保護条約及び議定書、国際機関条約法条約及び国連公海漁業協定の三件、計六件でございます。

武正委員 ILO関連の条約は、たしか署名はしたけれども国会で承認を求めていないということでよろしいんでしょうか。今、御説明はなかったんですが。

町村国務大臣 ILOの条約は、署名という行為は行われないで、すぐ直接、この批准をするかどうかというふうに持っていくようでございます。今まで、ILOでは百八十五本の条約が戦前から今日まで採択をされております。そのうち四十六本の条約を批准しているという状況でございます。

 それぞれの非常に幅広い分野のものが採択をされてきておりまして、主として労働省、あるいは今現在の厚生労働省を中心に、条約の目的、内容、日本にとっての意義等を検討して、批准することが適当と考えられるものについては国内法制との整合性を確保した上で批准をしてきたということのようでございまして、今後ともこうした方針で検討を進めていくということが政府の考え方でございます。

武正委員 百八十五から四十六を引くと百三十九本が未批准ということでよろしいんでしょうか。今の計算ではそうなります。

 先ほどの四十年というのも、結局、国内的な事情で政府は批准をしなかったわけでありまして、国際的な条約等の批准、未批准、こうした判断が政府によって、恣意的にというか、握られている。これに国会は、私は国民の代表として、外交は行政府の専権事項とされますけれども、やはりかかわっていくべきであろう。

 それは外務委員会で指摘をしておりますように、条約等が国内法を規定する、あるいは我が国は条約が国内法よりも優先する、こういった法体系をとっているからこそ、国会は条約等の批准、未批准にかかわっていくべきであろうし、あるいはまた先般も指摘をいたしましたが、大平三原則等の見直し、あるいは特にバイではなくてマルチの、多国間の条約については留保を、この国会でもやはり注文をつけていく、こういったことがあってもいい。これは憲法調査会でも参考人からも指摘があったところでございます。

 そこで、五月十三日の外務委員会でも指摘をした、特に政府が交わしております外交公文、これについては国会に提出を求めたいというふうに思っておりますので、これは委員長、お取り計らいをお願いしたいと思います。

赤松委員長 ちょっと済みません。もう一度お願いします。何を取り扱えということですか。

武正委員 つまり、外交公文、政府が交わしている文書が必ずしも国会に提出されていないものですから、私は、国会に政府が交わした外交公文はすべからく提出すべきというふうに思っておりますので、この点について御検討いただきたいというふうに思います。

赤松委員長 理事会で検討してほしいという話ですか。(武正委員「そうです」と呼ぶ)今、武正委員からのお申し出につきましては、後日理事会で協議をさせていただきたいと思います。

武正委員 続きまして、国土交通の政務官もお見えでございますので、昨日、四十三時間ぶりに解決をされたという報道がございました、今回の韓国の漁船の排他的経済水域内での違法操業の疑いありということに関する件につきまして、まず政務官の方からその事実経過を御報告いただけますでしょうか。

岩崎大臣政務官 今回の事案でございますけれども、五月三十一日深夜、海上保安庁の巡視船が対馬北東の我が国EEZ内を徘回しておりましたシンプン号を認めまして、立入検査を実施すべく停船命令を繰り返しましたが、これを無視して逃走を図りましたため、立入検査忌避罪で検挙すべく追跡を行ったものでございます。

 逃走を続けますシンプン号を停船させるため、巡視艇が強行接舷して海上保安官二名が移乗いたしました。しかし、海上保安官を乗せたまま再び韓国領海へ向け逃走を続けましたので、六月一日未明、韓国海洋警察庁の警備艦の協力によりまして、公海上でシンプン号を捕捉いたしました。その後、シンプン号の取り扱いをめぐりまして、海上保安庁と韓国海洋警察庁との間で協議が行われてまいりました。

 六月二日午後、海上保安庁は、当該船の船長が立入検査忌避罪を認め、担保金の支払いを確約することを条件に、必要な手続が終了いたしました時点で、現場海域において、該船の船長を釈放して韓国側に引き渡すことといたしました。これについて、韓国海洋警察庁も同意をいたしました。その後、該船船長から自認書及び同人の代理人から担保金五十万円の保証書が提出されましたことから、六月二日午後五時三十分、シンプン号船長を釈放したものでございます。

武正委員 今、釈放したと言いましたが、釈放というのは、逮捕をして身柄を拘束した者を釈放するというふうに言うと思うんですけれども、逮捕をして身柄を拘束したんでしょうか。

岩崎大臣政務官 排他的経済水域におきます漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律の第二十四条がございます。これは担保金の提供による釈放の手続が書いてありますが、その法にのっとって処理したものでございまして、一たん拿捕した者につきまして、担保金が提供された場合にはこれを釈放することができる、こういう手続にのっとったものでございます。

武正委員 二十四条では逮捕、拿捕と書いてありますが、私が聞いているのは、船長なりを逮捕して、そして船を拿捕したのかどうかを聞いているんです。

岩崎大臣政務官 第二十四条に基づいて拿捕されたという判断のもとに処理したものと承知いたしております。

武正委員 逮捕についてはいかがですか。

岩崎大臣政務官 拿捕の中に含まれております。

武正委員 拿捕の中に含まれているんでしょうか。これはちゃんと二十四条には、拿捕の中に含まれているということですね。

 そうしましたら、では、拿捕をしたということでよろしいんですか。

岩崎大臣政務官 そのとおりでございます。

武正委員 映像も公開をされておるんですけれども、どういう点であれを拿捕したというふうに認識したらいいのか、お答えいただけますか。

坂本政府参考人 お答えします。

 海上保安庁は、巡視艇が該船に横づけしまして海上保安官を該船に乗り移らせまして、その場で該船の行動の自由を束縛したということで、我々としては拿捕と考える。拿捕をしたことによって次の担保金の手続に入ることができますので、法律の手続としては、我々は、拿捕、その後これを釈放したというふうに考えております。

武正委員 今の時期というのは、五月三十一日午後十一時三十五分、強行接舷のことを言っておられますか。

坂本政府参考人 その場合にはまだ完全に拿捕には至っておりませんが、韓国の警備艇と協力して我々はこれを拿捕したというふうに考えております。

武正委員 二人の海上保安官が乗り移って、そして韓国EEZ内までそれこそ連れ去られる、こういったことが起きたわけです。これは公務執行妨害ではないかという指摘もあるんですけれども、これについてはいかがですか。

坂本政府参考人 公務執行妨害につきましては、積極的に我々に対する抵抗があったというふうには考えておりません。彼らが逃走をする手段としてそういった抵抗をしたということでありますので、公務執行妨害に当たるというところまでは認識しておりません。

武正委員 今回、外務省は韓国側とどのようなやりとりがあったのか、事実経過も含めてお答えいただけますでしょうか。

町村国務大臣 具体のやりとりでありますが、まず、一日の午後、これは別件もありまして逢沢副大臣がソウルを訪問しておりましたが、その折に潘基文外交通商部長官と会談をしておりましたときに、先方が本件を取り上げて、逢沢副大臣に申し入れがあったということでございます。

 また、この日の会談に先立ちまして、先方外交通商部から在韓国日本大使館に対して、本件に関する協力の要請があったということでございます。

 その後、国内では、海上保安庁とのいろいろな情報の交換、事実の確認、意見交換等を行いながら、随時、先方外交当局とやりとりを行って今回の結末に至った、こういうことでございます。

武正委員 先ほどの、拿捕した理由というのはどういう理由でございますか、政務官。

岩崎大臣政務官 拿捕しました理由は、立ち入りをしようとしたところ、立入検査を忌避したという立入検査忌避罪で検挙するということで追跡を行い、拿捕を行ったものでございます。

武正委員 そうすると、EEZ内での不法操業、違法操業でということではないわけですか。

岩崎大臣政務官 EEZ内での違法操業の事実は現認をいたしておりません。したがって、それを問うてはおりません。

武正委員 そうすると、拿捕の理由はあくまで立入検査を忌避したということでよろしいですか。

岩崎大臣政務官 そのとおりでございます。

武正委員 ちょうど去年、イルグァン号というのが違反事件があったんですけれども、これについての事実関係をお答えいただけますでしょうか。

岩崎大臣政務官 昨年に発生しました韓国漁船イルグァン号事件についてのお尋ねでございますけれども、本件は、平成十六年六月十四日、対馬海上保安部所属の巡視艇三隻が、対馬の西約十三海里付近の我が国排他的経済水域内において、外国漁船の取り締まりを行っていましたところ、韓国漁船イルグァン号の違法操業を現認いたしました。

 イルグァン号はその直後に逃走を開始いたしましたために、巡視艇がこれを追跡し、対馬の西約十四海里において、強行接舷の上、イルグァン号を捕捉いたしました。イルグァン号の船長につきましては、同人の代理人から担保金の支払いを確約する保証書の提出がございましたので、翌十五日に釈放されております。

 なお、検挙後、不詳の捜査を実施中のところ、韓国の海洋警察庁警備艦の乗組員が我が国の捕捉しておりましたイルグァン号に乗り込んできたという事実はございましたけれども、我が国からイルグァン号の違反事実を説明いたしまして、これを理解した韓国側は直ちにイルグァン号より下船しております。現場海域において適切な処置が行われたものと認識をいたしております。

武正委員 イルグァン号のときには、海上警備当局同士で話がついた、しかも違法操業が現認をできた、こういったことでありましたが、今回は、違法操業を現認できないまま保安官が二名乗り込んでそのまま逃走をして韓国EEZ内で拿捕をした、そして立入検査忌避ということで担保金支払いで解決、こういうことでございます。

 日韓合意後に記者会見した警備救難部の檜垣企画調整官、きょうお見えの方は坂本警備救難監でございますが、新聞によりますと、逮捕ができず十分な調べができなかった、今回のケースは例外にとどめたい、こう述べたとされておるんですけれども、これはどういうことになるでしょうか。

坂本政府参考人 記者会見における檜垣企画調整官の回答ぶりについては、必ずしも私もきちっと把握しておりませんが、私どもとしては、適正な事件処理ができたというふうに考えております。

武正委員 先ほど、拿捕に逮捕が含まれると言いましたが、逮捕はしたんですか。

坂本政府参考人 今回の事件については、逮捕はいたしておりません。

武正委員 政務官は先ほど逮捕は拿捕に含まれると言われましたが、今の答弁でよろしいんでしょうか。政務官が先ほどお答えになったので、政務官。

坂本政府参考人 拿捕の中に逮捕と船体の拘束ということが入りますが、今回については、被疑者の逮捕はいたしておりません。船は拿捕しております。

武正委員 つまり、二十四条に拿捕ということで担保金の支払いがあるけれども、被疑者の逮捕はせずに拿捕だけして、そして担保金の支払いで拿捕したものを要は返した、船を返した、押収物を、ということであって、被疑者の逮捕はしていない。また、檜垣調整官のように、十分な調べができなかった、今回のケースは例外にとどめたいということでありますが、政務官、この例外にとどめたいということを檜垣さんが言っておられることを政務官としてどのように受けとめておられますか。

岩崎大臣政務官 担保金等によります早期釈放制度というのが第二十四条の規定でございまして、今回は、その担保金等による早期釈放制度を適用して事案の処理を行ったものであります。

 なお、念のため申し上げますと、過去五年間に海上保安庁が取り扱いましたEEZの漁業法違反の検挙件数が四十五件ございますが、そのうち四十件については今回と同様の担保金による早期釈放制度が適用されたものでございまして、今回の処理はその通常の処理を行ったもの、このように理解をいたしております。

武正委員 報道によると、その合意の中に、韓国側は、海上保安官が暴力を振るった、こういうような報道をしたり指摘をしているんですけれども、それに対して日本側が謝罪をした、あるいは接舷するときかなり、ビデオで流れましたが、どんとぶつかってきましたよね、その漁船の賠償をすることも日本側は認めているんだ、こういうような報道がありますが、この事実はございますか。

坂本政府参考人 全くそのような事実はございません。当然、逃走している船で、波がある中ですから、接舷するときには若干の接触はつきものでございますので、これは逃走する方がその責任があると我々としては考えておりますので、賠償するつもりもありません。

 また、暴力行為が行われたということについても、我々としては、全くそういうことは認知しておりませんので、そういったことについても、謝罪は現にしておりませんし、今後もするつもりもないということでございます。

武正委員 重ねて先ほどの点を指摘させていただきますが、やはり海上保安官が二名乗り込んで、たしかビデオを見ていると、もしかしたら一名の方は本当に落下されたのかなという感じですよね。実際に該船にその後追いついたのは二時間半後ということですから、多分その落下された方を救助しているので手間取っていたんではないかなと思うんですが、やはり、我が国のEEZ内で海上警備に当たる当該当局の保安官が乗り込んだのに、そのまま逃走する。これが公務執行妨害でない、しかも、そのときにさまざまな公務執行妨害、公務に対して妨害でないというそういった判断、これが本当によろしいんでしょうか。外務大臣、どうですか。今やりとりをお聞きになっておられて、今回の事案についてどのような御感想をお持ちでしょうか。

町村国務大臣 海上保安庁当局として、全力を挙げて事態の適正な対処のために、解決のために努力をされたもの、こう理解をいたしております。韓国漁船が逃走したというところに始まって、その後の対応が本当に遵法精神にのっとって行われたものかどうか、ただいま委員の御指摘なども含め、大変問題があったのではないか、こう考えております。

 しかし、最終的には、担保金を払って、今後しっかりと韓国側が法律に基づいて措置をとるということで合意を見たということのようでありますし、またこれはいわば両方の国が管轄権を持つというような状況の中で、ここは、ある意味では話し合いによって今回は管轄権を韓国側が行使することになったというふうに私は理解をいたしますので、その限りにおいて、私は、協議の結果こういう決着を見たということ自体は適正であったのではなかろうか、こう考えております。

武正委員 今の外務大臣の認識、ちょっとおかしいんじゃないかと思うんですが、両方の国が管轄権を持つというのはどういうことでしょうか。

 我が国のEEZ内での停船命令措置で、そして強行接舷をして二名乗り込んだのも我が国のEEZで、その後それを振りほどいて逃走するということでありまして、どういう御認識でしょうか。

町村国務大臣 これは、日本は当然この海洋法条約に基づく追跡権という国際法上の権利を行使して管轄権を持っている。他方、これは一般論として、韓国は公海あるいは排他的経済水域において自国船舶に対して管轄権を持っている。そういう意味で、今回の事案で、韓国政府はこの漁船に対して必要な措置をとる法的な根拠を持っている。そういう意味で、双方の管轄権が競合している状況であるということを申し述べたわけでございます。

武正委員 結局、先ほど海上保安庁の方のコメントを言いましたように、やはり捜査が十分行われていないで、そして手打ちしてしまったということが今のような外務大臣の発言に結びついているんですね。

 一番の最初は、やはり我が国のEEZ内での漁業法違反なんですよ。漁業法違反の疑いで立入検査をしようとしたわけですよ。それを振りほどいて韓国EEZに逃走したわけですから、もともとは、やはり我が国のEEZ内での漁業法違反の疑いあり、これが一番最初の出発点なんですが、これがどこかに行っちゃって、さっきのEEZ、漁業法二十四条でというようなことで、担保金を払ったからいいですよと。

 先ほど言われたように、捜査は十分できず、そして前例としたくない、こういったことになっているわけであって、私は、やはり今回のこの措置というものは、まさに前例にしてはいけない大変まずい対応であったのではないかと。これは、ちょうど逢沢外務副大臣も訪韓をしている、あるいは、きょうから北側国土交通大臣が訪韓をする、そしてまた、二十日には日韓首脳会談が行われる。

 こうしたことが重なっているわけですが、こうしたことが出てくるのは、やはり小泉内閣の外交が原理原則を欠き、場当たり的な対応に当たってきてしまっている、こうしたツケがこうしたところにも及んでいるということを指摘させていただいて、谷川副大臣におかれましては、昨日はたしか記者会見で、話を聞いておらぬということで怒っておられましたし、外務大臣も一日の夕方に聞くということで、これは私は、海上保安庁が海上警備に当たる韓国の海上警備庁と信頼関係を持って独自にやっていただく、その関係はどんどん深くしていただいていいと思うんですね。

 ただ、やはり、外交にも及ぶことであるだけに、これが外務省に話が行っていなかった、あるいは副大臣も立腹をされる。これは逆に、外務省当局がもし知っていたとすれば、そのことを政治家である外務大臣や副大臣や政務官にきちっと伝えていない、これはやはり行政府として問題ありということも改めて指摘をさせていただいて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

赤松委員長 次に、大谷信盛君。

大谷委員 民主党、大谷信盛でございます。

 武正委員に引き続きまして、千九百六十五年の国際海上交通の簡易化に関する条約、以後FAL条約と呼ばせていただきますけれども、これに関する質問をさせていただきたく思います。

 まず最初、この条約は港の出入りというものを簡単にして、いっぱい日本に船が来ていただける、日本の港をいっぱいの人に利用していただこうという内容のものでございますけれども、来てもらっちゃいけない人も、来てもらっちゃ困るものもあるわけでございまして、悪い船が来ないような工夫もちゃんとこの条約と絡めてしてあるのかどうなのか。

 相違通告といって、この基準に合わせたもの以外のことはできませんよということをここで決めて、通告したらそれでいいということになっているんですが、九個ほど日本は相違通告をする予定だというふうに聞いておるんですけれども、この中には悪い船が来ないようにという工夫もあるのかということからまず教えていただきたいというふうに思います。

神余政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、我が国が相違通告を行う必要のある標準規定の数は九規定ございます。この条約は締約国がそれぞれ個別の事情と政策に応じて相違通告を行うことを認めているところでありますが、我が国としても、保安の確保、法令の遵守等の観点から、必要な制度に関して相違通告を行うこととしているところでございます。

 具体的に、この条約のもとで要求することが認められる書類以外のもので我が国として引き続き要求するものとしては、さまざまな書類がございますけれども、これらは保安対策や座礁船対策として不可欠な書類でございますので、相違通告を行い、引き続き要求することとしているものでございます。

大谷委員 ぜひとも、悪い人や悪いものは日本に入らないようにしっかりと頑張っていただきたいというふうに思います。

 先ほど、武正委員の方から質問がございました、何でこの条約は四十年もかかったんだと。そこをちょっと深掘りして質問をさせていただきたいのと、条約という大切なものの意思決定の流れというものをおさらいさせていただいて、大平三原則を含め、もう一度、条約の決め方、武正委員の方からは外交公文は国会にすべて示して国民の前で議論をすべきというような提案もございましたけれども、それを踏まえてちょっとやらせていただきたいというふうに思います。

 先ほど、谷川副大臣の方から丁寧に、まだ締結されていない六個の条約があるんだという説明がございました。武正議員の質問の結果、ILOのものを含むと百三十九が未批准なんですねというようなやりとりがあって、これは後でまた委員会が終わったらしっかりと数字を確認させていただきたいというふうに思っておるんです。

 私の聞いたところでは、いわゆる大平三原則にかかわって、国会で承認をしなければいけない条約で署名したものは十一本、さっき谷川副大臣が御説明になられた三つプラスあと五つあるというふうに聞いておりまして、これは、もう時代が変わってしまったとか、もしくは新しい条約がその後できて意味がなくなった。五十年前のものもありますし、十六年前のものもあります。

 そうやって、署名したんだけれども、ほったらかしているうちに五十年、それで意味がなくなっちゃった。今回のこのFAL条約は、四十年前に署名したんだけれども、四十年間何もしてこなかった。そして、何で四十年もかかったんですかという質問に対して大臣は今、何の不備もなかった、日本の港湾に競争力があって何の不備もなかったという御回答でしたけれども、では何で署名なんかしたんですか、条約に入る必要はなかったんじゃないですかということになってしまうというふうに思うんですね。

 その質問をする前に、一体、我が国は条約を年間何本ぐらい署名しているのか、また世界じゅうで条約、協定、書簡というようなものはどれぐらいあるのかということを確認したいんですけれども、これは、お願いしていいですか。

長嶺政府参考人 お答え申し上げます。

 署名する条約がどのくらいあるかというお尋ねでございます。

 一例として、平成十六年、昨年の数字を掲げさせていただきますが、平成十六年に署名した条約で国会の承認をいただいたもの、あるいは国会の承認が必要と見られるもの、大平三原則への言及がございましたけれども、そういうものとしてございますのが六件でございます。

 このうち五件につきましては、既に国会の御承認をいただいたものでございます。残りの一件は、万国郵便連合憲章の追加議定書、万国郵便連合一般規則、万国郵便連合及び郵便送金業務に関する約定でございますが、これにつきましては今鋭意準備を整えておるところでございまして、早期に国会に提出して承認を得るようにしていきたいというふうに考えております。

大谷委員 ちょっと僕の質問の仕方が悪かったかもしれません。何件署名したかというのは、行政取り決めの方に回って締結されるものも含めてどれぐらい署名をしたのかということでございます。

 例えば平成十五年ですと、行政取り決めでもって締結された条約、条約といっても二国間の協定また書簡の交換というのがほとんどなんですけれども、これが六百九十六件ありますから、去年署名したものは、こうやって行政取り決めに回るものも含めたら六件なんということはないというふうに思うんですが。

長嶺政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員が御指摘になりました、いわゆる行政取り決めの数を申し上げますと、平成十六年に閣議を経て発効いたしました行政取り決め、これが三百三十五本でございます。ただいま委員御指摘になりました六百九十六本という数字は、それに該当する平成十五年の数字であるというふうに理解しております。

大谷委員 いや、署名した数なんですけれども。閣議を通過して行政取り決めで締結したんじゃなくて、この四十年前にFAL条約に署名したように、去年署名した数ですよね、それが何個あるのかという話なんですけれども。

長嶺政府参考人 お答え申し上げます。

 署名ということでくくりますと、先ほど申し上げました、国会の承認を必要とする、あるいは国会の承認をいただいた条約が六件、それから行政取り決めが先ほど申し上げました三百三十五件ということでございますので、これを総合した数が昨年の行政取り決め及び国会承認条約の署名に係る数字ということでございます。

大谷委員 わかりました。

 何を知りたいかというと、世の中に多分毎年何千というような協定や書簡や条約というものが国際機関を通じてつくられているというふうに思うんですね。その中で、日本は、国益をかんがみて、日本の安定をかんがみて、これに入ろうとかこれに署名しないとかということを決めると思うんですよね。そこのときにどうやって決めているのか。全体でどれぐらいあって、そのうちのどれぐらいを日本が戦略的に署名したのかということを知りたいなと思ってこんな質問をしておるんですが、ちょっと飛んで質問しますと、この署名をするとき、どういう基準でだれが、この署名はしておこう、この署名はしないでおこうというふうに決めているのか。

 例えば、十一本、今まで、署名して国会で締結されていないものの中には、国際冷凍協会に関する条約、一九五五年署名、五十年前ですね。これは、署名のみで参加できる条約でありというような説明がされていて、署名だけでいいんだよ、締結する必要はもうないんだよというような条約もあると思うんですね。そういうものをだれがどうやって判断しているのかということを知りたいんです。

長嶺政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員が御指摘になりました国際冷凍協会を含めまして、先ほど武正委員に対する答弁の中で谷川副大臣から六件と申し上げたのは、これは締結の意義があると考えている六件でございます。

 今委員が御指摘になりました冷凍協会を含めて五件ほど、もはや締結の意義がないと考えておる条約がございます。一々その名称は申し上げませんけれども、これらにつきましては、個々の条約ごとにそれぞれ背景は異なりますけれども、署名をした後の状況の変化等をいろいろ勘案いたしまして、外務省として、条約によりましては関係省庁と調整をした上でこれはもはや締結の意義がないと。その事情は先ほど申し上げましたように個々異なりますけれども、そのような判断を下しておるというものでございます。

大谷委員 わかります。

 ですから、だれが署名するというのを決めるのか。これは行政取り決めの分も含めたら大臣が絶対やれるわけないですよね。何か戦略的な基準があって、それでもって、この条約は署名しようか。例えば、四十年前のことですから、長嶺さんも生まれてなかったかもしれないので、わからないということはよくわかるんですけれども、では今はどうやって、署名をこれはするとかこれはしないとかということを決めているんですか。

 いや、国益を守るためにこの条約が必要だと判断したから決めているんだということだと思うんですけれども、そこはだれがどういう基準でお決めになられているんですか。私たちの国民生活の安定を、条約というツールでもってどうやって守ってくれているんですかということを知りたいんです。

長嶺政府参考人 国会承認条約と、それから行政取り決めもそうでございますが、署名に当たりましては、これは閣議の決定を経た上で署名をすることにしております。これは、条約の締結あるいは外交関係の処理ということで外務大臣から提起をして、それで閣議でもって内閣としての意思を統一した上で署名を行うという手続がとられておるところでございます。

大谷委員 ちょっと僕が勘違いしているのかもしれないのですけれども、署名というのは日本国政府が署名しますよね。これは多分総理のお名前で署名するんですよね。それでこうやって外務省が関係省庁と取り決めをして、それで閣議に提出されるんですよね。閣議で、大平原則なりに合わせて、これは国会で御議論いただこう、これはもう行政取り決めでやっちゃおうという話ですよね。

 そのとき外務省が、やはり上流に戻ると、何らかの形で我が国はこの協定を結ぼうとかというのを決めますよね。そのときは条約局さんが決めているんですか、それとも現場の国際機関に出張っている日本国の公務員さんが、この条約はこれこれしかじかで大事なものだから私たちの国は署名した方がいいよというふうに決めているのか、いろいろなルートで情報が入ってきて決まるというふうに思うんですね。

 それを国益を守るという観点から総合的に判断されていると思っているんですけれども、されていますかという質問なんです。ですから、閣議にかかるもっと事前の段階での我が国の条約を選ぶ役割みたいなものを、ちょっと機能を教えてほしいんです。

長嶺政府参考人 お答えいたします。

 先生の御指摘は、恐らく、署名という行為の前の段階から始まって、我が国として国際社会における新たなルールメーキングというんでしょうか、そういったところにどういう意思決定をして臨んでいるのかという点も含んでのお尋ねかと思います。

 これは、条約を一本締結する流れというのは、今御指摘のように、条約について、まず国際社会の上の問題が何であるかというのを話し合った上でこれを条約という形にまとめる、しかもその交渉を行った上で署名、そしてその締結、こういう流れになるわけでございます。

 外務省といたしましては、条約の締結あるいは外交関係の処理という観点から責任のある官庁ということで、この条約の締結の初めの段階からリーダーシップをとって戦略的に取り組むということで今努めてきておるところでございます。

 もちろん、それを行うに当たりましては、案件によりましては関係省庁と緊密な連絡をとってその合意のもとで進めていくわけでございますけれども、そのような意味におきまして、条約締結の流れの各段階におきまして、必要に応じて関係省庁、そして署名とか、あるいは国会承認を求めるとか、節目節目で内閣としての統一的な意思を確認しながら進めていく、こういう形になっております。

大谷委員 いや、まさに指摘させていただきたいのはその点でございまして、外交力、国力とかといいますと、競争の局面をとらえて、ソフトパワーだのハードパワーだのということで、競争力をつけようということで、平和維持またバランスを保とうという考え方と、もう一つは、協調する側面をとらえて、協調をいっぱいすれば国益も守れるし安定するしというような側面と、国際政治の進め方には二通りあるというふうに思うんです。

 この協調的なものというのは何かというと、まさに国際機関等々を使って上手に日本国にとって有益な、それはもちろん平和という意味ですけれども、制度を国際社会の中につくっていきましょうよということだというふうに思うんですね。それの一番大きなツールが条約になりますよね。その条約を戦略的に使っていますかということが聞きたいし、そうするべきだというふうに言いたい。

 それはどういうことかというと、交渉の段階まで入っていっているのか、それとも、いやいや、こんなのができそうですよというのを聞きつけてきて、ああ、それは入っておかなあかんなとか、いや、これは入る必要ないなぐらいな受け身的な判断をされているのか。こういうのを、ほかの国と一緒になって、あの機関に職員を送り込んででもこういう制度をつくろうじゃないかと積極的にやっているのか、すなわち交渉のもっと前の構想段階から入ってやっているのか。

 やっているものもあれば、やっていないものもあると思う。例えば、この前の海賊の事件を踏まえて、海賊を退治していくような国際的取り組みをやりましょうねと言ったのは日本だと思うし、そんなイニシアチブをいっぱい発揮してほしいなと思っている。

 しかしながら、そういう戦略的主観に立ってできるような部署というか人というのは、だれに当たって、どうなるんだろうなと。そういうものがあるんだったら応援したいし、意見具申もしたいし、ないんだったらつくらなきゃいけないなというのが僕の観点なんです。

 大臣、その辺はどうですかね。この条約というものを使って、上手に国際社会を日本にとって有益なものにしていく。そのとき、戦略的に動けるように今なっているんでしょうか。それとも、なっていないというんだったら、何かそういうものをつくる必要があるんじゃないのか。どうも皆さん個人個人が優秀だから、その時々、職人芸みたいにして頑張っておられるようですけれども、組織立ってのものが必要なんじゃないかなというふうに思うんですけれども、どうでしょうか。

町村国務大臣 貴重な問題提起である、こう思っております。

 私も詳細を全部知っているわけでは率直に言ってございません。ただ、いろいろな条約の中身を見ると、外務省単独で判断をするというよりは、皆さんそれぞれ関係する省庁があって、この関係は漁業の関係だから農水省だとか、これはいろいろ警察にかかわるからとか、したがって、そうしたいろいろな、魚、マグロならマグロの国際的な動きについて一番詳しい農水省、水産庁が、今こういうような国際的な動きになっている、例えば、日本はきちんとここでマグロをとりたいから、とれるようにする今条約の動きがあるけれども、これを一番日本にとって有利にするとしたらどうしたらいいだろうかと。

 そんなような形で、多分、条約という形ができ上がる前から相当積極的にかかわりを持ってやっていく部分と、先にいろいろな構想が諸外国から進んで受け身的にやる部分、確かにおっしゃるとおり両方あると思いますね。でありますから、できる限り、その中でやはり日本の考え方、国益に沿ったような条約の内容にする努力をしていくということは、外交としては当然のことであろう、こう思っております。

 しかし、総合的にどこでどう判断をしているのかというのが先生の今お問い合せだった、こう御理解をいたしますと、役所の機構でいえば、それは条約局ということに、条約局は今は国際法局ですか、そういうことになるんだろう、こう思われます。

 では、そこが本当にそういう戦略性を持って、国際法局が一々の判断をしているのかと言われると、ちょっとそこは私も、自信を持ってお任せくださいと言えるほどになっているのかどうか、よくわからない部分もございます。では、それを全部大臣が判断できるかというと、もう膨大な数で、多分一々の判断はなかなか難しい。しかし、ここぞという重要なものについては、多分大臣の方まで相談が来るんだろうな、こう思っております。

 貴重な問題提起だと思って、今後真剣に考えなければいけない課題である、かように受けとめさせていただいております。

大谷委員 屋上屋みたいに新しいものをつくれということじゃだめだというふうに思いますので、僕はこの条約の審議のためにいろいろと勉強をさせていただくと、昔条約局、今国際法局、ここがむちゃくちゃ以前に増して重要になってきたな。

 重要な役割を果たしてきたんですけれども、さらに重要な役割を果たすところになってきたなということをぜひ認識をして、人員だの財政だの、いろいろな、意識も含めて拡充をして、もう世界じゅうに人を放すぐらいのことをしていただけたらというふうに思うんです。受け身だけだったものから、積極的に国際機関を利用して制度をつくっていく、そんな役割を担っているのが国際法局だというような、ぜひともそんな仕組みをつくっていただけたらというふうに思っています。

 それで、最後の時間、ちょっとFTAについて質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 五月の初めの新聞報道だったというふうに思うんですけれども、FTA、EPA交渉を、今は四つ目でマレーシアとというふうに聞いておるんです。現状もさることながら知りたいんですけれども、それよりも、これはやはり戦略的に交渉を進めていこうじゃないかというのは、私から、また有識者の皆さんから再三指摘をされているところでございます。

 戦略性を持つために、戦略をつかさどるところとか、実行できるところの必要性が指摘されているんですけれども、何か聞くところによると、対外交渉室を内閣官房につくる、つくった、つくらないみたいなことが言われているんですけれども、ここはあるんですか、ないんですか。それとも、こんな機能を持ったようなところが今あって、四つ目、五つ目の交渉に挑んでおられるんでしょうか。その辺はどうなっているんでしょうか。

谷川副大臣 御指摘の内閣官房に組織をつくるという報道があったということは承知をいたしておりますけれども、内閣官房にそのような組織をつくるという方針は現在のところございません。しかし、EPA推進は非常に委員御指摘のとおり重要な課題でございますので、政府一体となって積極的に取り組んでまいる必要があると思っております。

 具体的には、昨年の十二月に今後の経済連携協定の推進についての基本方針を決定いたしまして、東アジアを中心とした経済連携を推進するとの方針のもとに、交渉相手国、地域の決定に関する基準を示したところでございます。

 今後とも、このような政府一体となった取り組みにより、戦略性を持ったEPAを推進してまいりたいというふうに考えておるところでございます。

大谷委員 では、できていないし、つくろうとしているわけでもないということですね。今までの体制でしっかりやっていきますということですよね。

 谷川副大臣に感覚として教えていただきたいんですが、大臣として統括しておられて、これは農林水産省や厚生労働省さんや財務省さんや、いろいろな省庁が入ってFTA交渉というのは進んでおるんですけれども、何かこう、一般的には外務省と経済産業省さんが推進で、農林水産省さんと厚生労働省さんがどちらかというと慎重みたいなふうにいつも言われているんですけれども、決して僕はそうじゃないと思っています。

 スピードの問題だけでありまして、そこをやはり外務省というか大臣、副大臣が、こういう日本を目指しているんだから、こういう国際社会を目指しているんだからという大きなものを示してあげないと、なかなかみんな一つになって進んでいけないんじゃないのかなというふうに思うんですけれども、今の体制で、十分これからもスピード感を持って、なおかつ自由度の高いものにしていける交渉ができるというような感覚ですか、谷川副大臣。

谷川副大臣 委員御指摘のとおり、大体今の交渉につきましては、それぞれ省庁ごとに第一義的には交渉をしている、それを外務省も一緒になってやっているということでございますが、なかなか委員御指摘のようなスピード感といいますか、非常にそれぞれ省庁によりまして考え方も違いますから、画一的に非常にスピード感が出るということでもなかろうと思いますが、現在の段階でそれに大変不都合があるということでもございませんので、一緒になってやる。

 将来、何かそういう戦略本部みたいなものができれば、私は非常にいいのかなと思いますけれども、現在は今のような状況で進めたいというふうに思っておるところでございます。

大谷委員 FTAの方はまた詳しくやらせていただきたいというふうに思っております。

 三十分使って一番言いたかったことは、このFTAも含めてそうですけれども、今戦略本部がない、不便はないと谷川副大臣おっしゃいましたけれども、そんなわけもなくて、四つも五つも省庁が入っているわけですから、それなりに事務方の皆さんとしては御苦労も多いんだというふうに思います。

 そこは政治のリーダーシップが発揮しやすいような場をつくる必要があるんじゃないのかなというふうに思いますし、その上で、やはり条約局、今国際法局というものがしっかりとリーダーシップを果たせるような、そんな意識を大臣、副大臣にもお持ちいただいてというふうに思っております。また、この後、条約審議の中で条約のあり方については議論をさせていただきたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

赤松委員長 次に、西銘恒三郎君。

西銘委員 自由民主党の西銘恒三郎でございます。

 きょうは、議題となっております西部及び中部太平洋における高度回遊性魚類資源の保存及び管理に関する条約の締結について質疑をしたいと思います。

 冒頭、私ごとではございますけれども、私の祖父が、戦前、南洋のパラオ地域でカツオをとって、かつおぶし工場をつくって南洋から我が国にカツオを送って、それで私のおやじなどが旧制の中学から高校と教育を積んだ、そういう御縁がありまして、きょうこの中西部の太平洋地域におけるマグロ関係の質疑ができることを何かの因縁かなと、急に出番が回ってきましたけれども、うれしく思っておりますので、質疑を展開してみたいと思います。

 この条約が締結されるに当たりまして、我が国の漁業関係者に不安と申しますか、懸念と申しますか、これまでやってきた方法に何らかの影響が出るのではないかというような懸念も聞こえてまいりますので、ちょっと細かくなりますけれども、その辺のところから質疑を展開してみたいと思います。

 この中西部太平洋水域において、いわゆる違法な漁船、あるいは規制のない無規制、あるいは国に対して報告のない無報告、いわゆるIUUの漁船の操業がよく見られます。これらのIUU漁船の操業によって、資源が悪化するといいますか、深刻な問題になっている点も報道等で見られますけれども、我が国がこの条約に締結、加盟をして、これらのIUUの漁船の操業に対して何らかの措置を、是正を求めていくといいますか、そういう操業を規制するようなことが可能になりますか。どうか水産庁の関係者の方、御説明をいただきたいと思います。

竹谷政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘のように、IUU漁業といいますか、違法であり、また無報告であり、また無規制であるという漁船が資源に与える影響が非常に大きな問題となっております。

 今回御審議いただいておりますこの条約に加盟することによりまして、私ども対策として、具体的にはポジティブリスト対策ということで、しっかりとした規制をかけていきたいというふうに考えております。

 具体的には、IUU漁船の活動実態というものを統計証明制度により把握いたしまして、また、それを踏まえまして、正規船として登録されている船からの漁獲物の輸入に限りまして我が国への輸入を認めるという形で、しっかりとした対応をとってまいりたいというふうに考えている次第でございます。

西銘委員 この条約に加盟しない国といいますか、締結をしない国の、こういうIUU操業みたいなところはありますか。その辺は、この条約に加盟をしない国々の、悪質なといいますか、いわゆる国際的なルールにのっとった操業以外の操業をするような漁船に対しては、もうどうしようもないということになるんでしょうか。どうでしょうか。

竹谷政府参考人 お答えいたします。

 現在、中西部太平洋の今回の条約以外にも、大西洋あるいはインド洋といった各地域の漁業管理機関で、正規船の登録制度すなわちポジティブリスト対策を行っております。

 そうした中で、浮き彫りになってきておりますIUU漁船漁業につきましては、現在、禁輸措置をとっている国がございます。具体的に申し上げますと、ボリビアでありますとかグルジアといった二国を指定しておりまして、これらの国からのマグロ類の輸入に関しましては禁輸措置をとらさせていただいております。

西銘委員 いわゆる中西部太平洋域の、その域内に面している国々というのは、すべてこの条約に締結、加盟の意思があると見てよろしいんでしょうか。我が国が今回締結をすれば十八番目の締結国になると聞いておりますが、我が国を含めて十八国以外に、この域内に面している国でこの条約に加盟をしない国というのもあるんでしょうか。

長嶺政府参考人 お答えいたします。

 この条約の締結主体といいますか、この条約に入ることが予定されている諸国、これは、この中西部太平洋における沿岸国、それから自国民がこの海域で漁獲を行っている国ということで、限定列挙になってございます。そういう意味では、この条約は、この地域に接している国とそれから漁獲の実績がある国ということになっております。

 もちろん、後から加入ということも条約は設定はしてございますけれども、そのためには、今申し上げたような関係国のコンセンサスによる承諾が必要だということになっておりますので、全く無関係な国がこの条約に入ってくるという事態は想定されておりません。

西銘委員 長嶺審議官、私の趣旨は、この域内に面している国々はすべてこの条約に加盟の意思があるというふうに理解していいのかと。この域外の国々でこの域内で漁業をしている国という意味じゃなくて、この中西部太平洋地域に面している国々はすべてこの条約には加盟の意思を表明しているのかという点が中心でございますけれども。

長嶺政府参考人 御指摘の点でございますれば、これはこの条約に沿岸国あるいは漁獲をしている国ということで列挙されている国につきましては、これは基本的に条約の作成段階から関与しておりますので、時期の早い、遅いはあろうかと思いますし、国内的な手続もあろうかと思いますけれども、条約に入る意思を持っておるというふうに認識しております。

西銘委員 わかりました。

 それでは第二点目でありますけれども、南半球の国々、ニュージーランドやオーストラリア、これらの国々は、例えば鯨に関する行動等を見ておりましても、我が国にとりましては非常に自然保護の観点が強いような行動も見受けられますが、これらの国々が今後中西部太平洋地域において漁獲禁止とかあるいは禁止区域を設定するなど、我が国の従来の方法からすると過剰な保護規制を求めてくることはないか。我が国の漁業者はその点も心配をしておるようでございます。

 また、公海上で旗国主義によらない乗船検査、いわゆる臨検等ができるために、自然保護を目的として我が国の漁船の操業の妨害に当たるようなことが起こらないのかなという点も漁業関係者の間で心配点であるようでございますが、この辺はどう考えていますか。説明してください。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の点、私どもも耳にすることがあるわけでございますが、この条約の締結主体は、原則として中西部太平洋における沿岸国、先ほど御指摘いただきました、及び自国民が中西部太平洋で漁獲を行っている国に限定されており、かつ沿岸国の多くは自国経済を漁業に依存している島嶼国あるいは我が国と同様の漁業国でございます。

 したがいまして、我が国としましては、中西部太平洋のマグロ類の保存及び利用に関し利害を共有する国々と連携したい、そういう連携をしながら、過剰な規制といったことがないように委員会等の場で適切に対処していきたい、かように考えております。

 また、公海上における他国による乗船検査は、今後委員会で採択される保存管理措置の遵守を目的とし、今後委員会が定める手続に従って行われることとされております。したがいまして、我が国漁船にとって過度な負担とならないことを確保するため、適切な保存管理措置及び乗船検査の手続が作成されるよう努力してまいりたいと思っております。

 よろしくお願い申し上げます。

西銘委員 いわゆる水産資源が持続可能なという、これは国際的な流れであろうかと思いますが、それはそれでいいことですけれども、余り過剰な形で我が国の漁業者が不利益をこうむることがないようにという視点もまた必要かと思っておりますので、どうぞその辺のところをよろしくお願いしたいと思います。

 三点目に、北緯二十度以北で、この条約のもとで北委員会が設置をされます。クロマグロ、メカジキ、ビンチョウ、これらの三つの魚種については、関係国が全会一致の方式、コンセンサス方式で規制勧告を決定することになっておりますが、この三つの種類以外の、いわゆる我が国沿岸で漁獲されているカツオ、メバチ、キハダ、マカジキ、ソウダガツオ、シイラ、海洋性のサメ等々については対象外となっております。

 これらの対象外となった魚種に行き過ぎた規制がかけられることはないのか。行き過ぎた規制といいますのは、例えば、沿岸ではそういう大量にとるということはないですが、釣りのような形でちょっと小さいものまでとっていたりするんですけれども小さいものはとるなとか、そういう過剰な、行き過ぎた規制がかけられることがないのか。こういう場合にこのコンセンサス方式、いわゆる全会一致の方式では、我が国の沿岸漁業者が従来やっていることができなくなるんじゃないか、沿岸漁業者を守ることができないのではないかという懸念が現場の声として聞かれます。

 すなわち、政府として沿岸漁業者を守るといいますか、その辺の規制とのバランス、もし出てきた場合の、仮定の話ではありますけれども、政府の責任を、現場の漁業者が心配しているようでありますので、御説明いただきたいと思います。

竹谷政府参考人 お答えを申し上げます。

 今先生が御指摘のように、北委員会の対象魚種になっておりません魚種、これらの魚種は条約の対象水域全域にわたりまして回遊しております魚種でございます。主なものは、御指摘のようにカツオ、メバチマグロあるいはキハダマグロといったようなものが挙げられるわけでございます。

 こうした魚種に関しましては、我が国にとってももちろん重要でございますけれども、他方、島嶼国にとりましても大変重要なものでございます。島嶼国の経済は大きく漁業に依存いたしておりますし、またそれぞれの国におきまして重要な食料資源となっているわけです。また、日本などからそれぞれ入漁料収入も得ている、財源ともなっております。そういった意味で重要な魚種であるわけでございます。

 したがいまして、先生が今御指摘のような、万一これらの魚種について過剰な規制といったものがもしこの委員会の場で議論になるという事態になった場合には、我が国だけではなくて、これらの島嶼国にとりましても非常に重大な問題というふうになるわけでございますので、島嶼国におかれましても、当然そういった規制については一定の適度なものとなるように動くというふうに想定されます。そういった意味では、過剰な規制が北委員会以外の魚種についても行われるという事態は非常に可能性が少ない、想定しがたいのではないかというふうに考える次第でございます。

 いずれにいたしましても、我が国といたしましては、今後本条約に基づきます委員会の運営に当たりまして、関係漁業国、島嶼国とよく連携をとって、過剰な規制が行われることの決してないようにしっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えている次第でございます。

西銘委員 この条約では、予防原則あるいは二百海里の内側でも外側でも水産資源の保存管理を一貫して確保していく、すなわち両立させるというんですか、同等性、適合性というんでしょうか、コンパチビリティーという考え方が基本の底流としてありますが、行き過ぎた無理な規制が加盟国の間で可決された場合、我が国の二百海里内の、いわゆるEEZ内で操業するカツオなどのひき縄釣り漁業、こういうことに規制が出てくることはないか。ただいまの前の質問と少々ダブりますけれども、釣りの形で沿岸でとっている二百海里の内側の問題と、この条約で全般的に規制をかけていく公海との関連でございますが、その辺はどうなっておりますか、御説明をいただきたいと思います。

竹谷政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の条約におかれましては、この条約の制定の背景といたしまして、現在南太平洋の水域におきます大型のまき網漁船、特に漁業新興国によりますまき網漁船の増隻等の動き、あるいははえ縄漁船の増隻等の動き、それによる漁獲の増大といったものが大きな課題となっておりまして、それへの対応というものが第一の規制課題ということになってこようかと思っております。

 そうした中で、逆に、我が国の沿岸漁業者の方々ですけれども、従前からそれぞれ沿岸漁業者としてひき縄漁船をそれぞれ小型の漁船を用いてやっておりまして、漁獲を大きく伸ばしているわけではございません。従来からのペースで取り組んでいるところでございます。また、先ほど申し上げました南太平洋の国々などにおきましても小型の沿岸漁業者が多数おりまして、そういった方々もそれぞれの沿岸漁業者としての取り組みを行っているわけでございます。

 そうした実態からいたしまして、沿岸漁業者の方々に過度の規制がかかるような取り組みというものがこの委員会の場において議論になり、またそういったものが具体化していくという可能性は極めて小さいというふうに考えておりまして、そういうことがないように、この委員会の運営が適切に行われるようにしっかりと取り組んでまいりたいというふうに考える次第でございます。

西銘委員 この一貫性についてでありますけれども、この条約の第八条では、保存管理措置の一貫性が定められております。公海で定められる措置と沿岸国の管轄水域の措置とは、マグロ類の保存、管理を確保するために一貫性を持つと明記をされております。

 二百海里内、沿岸国での管轄水域での措置が委員会措置の実効性を損なわないという形で明記をされておりますけれども、我が国の二百海里の内側で、我が国が政府の責任で独自に管理をすることと、この条約あるいは国連海洋法条約では二百海里内の制限水域のいろいろな規定があろうかと思いますけれども、国連海洋法条約とこの条約、基本法が国連海洋法条約で今回の条約ができているものと思っておりますけれども、この辺の関係はどうなっていますか。政府の責任で二百海里内の管理をしていく流れと、今回の条約での保存管理措置の一貫性という点で、我が国の方針とこの条約の保存管理措置の一貫性ということがぶつかることはないでしょうか。その辺、どうなっていますか。

竹谷政府参考人 お答え申し上げます。

 日本の水産政策という観点からいたしますと、やはりこの中西部太平洋水域におきまして、大型のはえ縄漁船、また大型のまき網漁船によりますマグロ類の漁獲というものが大きな問題であり、また資源に与える影響が大きいと懸念しているところでございます。

 そういう観点に立ちまして、日本といたしましては、大型のはえ縄漁船、大型のまき網漁船に対する規制の問題を国際的に大きな課題として取り上げていきたいということで、ほかの水域におきましてもそれぞれ取り上げてきているわけでございます。今回、中西部水域におきまして新しくこの委員会が設立され、この問題について取り組んでいただけるという環境が整いますので、そういった流れの中で、私どもといたしましては、その流れにのっとって規制の問題を取り上げて議論していきたいというふうに考えております。

 他方、それぞれの沿岸漁業者の方々が小型の形で従前どおり少量の漁獲という形で行っている漁業に関しましては、漁獲に与える影響というものは大きなものとは考えておりません。そういった意味では、これらの問題が本来この委員会の場で大きな議論になるとも考えがたいと思いますし、またこの点については、他の加盟国、島嶼国などにおいても同様に継続的に行っていることで問題視をしているわけではございませんので、大きな問題になるとは考えておりません。そういった日本の立場、それからこの委員会がこれから取り組んでいく課題ということにおいて違いはないというふうに考えております。

 そういう意味では、日本の政策の方針とこの中西部太平洋の条約の委員会の問題意識というものの間に違いはなく、同じ方向性を見て取り組んでいけるものというふうに考えている次第でございます。

西銘委員 我が国漁業者の不安、懸念を中心に質問をしてまいりましたけれども、ここで少し視点を変えまして、外務大臣が見えました。外務大臣に全般的な形で質問をしたいのでありますが、これからこの条約のもとで我が国の漁船が安定的に操業を実現していくためには、これらの加盟をしている国々、南太平洋の小さな島嶼国といいますか島々の国との、我が国の友好あるいは協力関係を日ごろから自然体で樹立していくことが極めて重要になろうかと思います。

 漁業のみに限定をすることなく、我が国が二十一世紀に海洋国家としてこれから我が国の国益を考えていく視点からも、この南太平洋の島々、国々との外交、交流はいろいろな意味で極めて重要になってくるものと考えますが、大臣はこの南太平洋の島々との、国々との関係を今後どういうふうに、今までやっていること等を含めまして、御説明をいただきたいと思います。

町村国務大臣 参議院の本会議でちょっと採決がございましたので、失礼をしておりました。

 太平洋にある島嶼国と日本との関係でございます。

 日本とは昨今、大変御縁も深く、それは漁業のみならず、いろいろな面での縁、関係が深くなっていると思っております。島サミットというものを日本が御承知のように提唱し、沖縄でもそれが開かれたということでございます。来年でしたか、再来年でしたか、島サミットをやるのは。たしか私の記憶が正しければ来年だったと記憶をしておりますが、島サミットをまた開くということで、既にいろいろな準備も始まっているところでございます。どこで開くかということで、先般、沖縄の皆さん方からは、島サミットを引き続き沖縄でという御意見も既にちょうだいをしているところでございます。

 例えば、今、安全保障理事会の改革について、その共同提案国になってもらいたいという働きかけをいろいろやっておりますけれども、例えば島嶼国の方からは、太平洋の島々の国からは大変好意的な反応も寄せられておりまして、それだけ日本に対する信頼感も厚いということもあるんだなということを改めて痛感いたしているところでございます。

 そして、これらの国々は、例えば地球温暖化が進み、水位計が上がると、国そのものがもしかすると消滅してしまうかもしれない、そういう危機感すら覚えている。そういう意味で、環境保護といった観点からも、こうした国々との共通点といいましょうか、ともに取り組まなければならない課題もあるというふうに考えております。

 そういう意味で、漁業はもとよりでございますが、それ以外の分野でも大変政治的、経済的、社会的につながりの深い国々であるというふうに認識をし、こうした国とのより一層の友好関係を築くために我々は努力をしなければいけないと思います。

 ただ、昨今、大変ODAの予算が削減傾向にございまして、こうした島々へのODAの供与額が数年前と比べると半分ぐらいに減ってきております。これは大変問題ではないか、こう思っておりまして、そういうこともあり、来年度予算では何とかODA予算をこれ以上減らさないように、できればふやすようにということで今関係方面に働きかけを強めているところでございますが、ある意味ではその一番のあおりを食ってしまったのが島々へのODAの供与額といったようなこともございます。

 そういう意味で、幅広い観点から、日本と非常にいい関係を築いている国々でございますので、今後さらに友好関係を深めるため努力をしてまいらなければいけない、かように考えております。

西銘委員 最後に、今回のこの中西部太平洋マグロ条約のほかにも、大西洋のマグロの関係の条約もありますし、またインド洋もありますし、これで全世界、地球規模でそういう条約ができるような形になります。

 このそれぞれの地域の漁業管理委員会の協力と申しますか、例えば我が国、私の友人もスペインの方でマグロ船に乗っていたとかいう話もありますので、この中西部太平洋域と他の大西洋、インド洋地域、それぞれの委員会の連携も必要になってくるかと思いますが、その辺はどうなっておりますか。伺って、私の質問を閉じたいと思います。

竹谷政府参考人 お答えを申し上げます。

 今先生御指摘のように、近年、それぞれの海域におきまして、地域の漁業管理機関ということで順次設立をされてまいりまして、今回、中西部の太平洋水域の地域の漁業管理機関が最後の設立という形になっているわけでございます。そうした中で、他方、大きな問題といたしまして、新興漁業国が非常に大型の漁船をふやしてきている、それによって資源に与える影響が大きい。

 この問題は、ある区域だけの問題ではございません、ほかの区域にまたがって生じる問題でございます。そして、違法のIUU漁船なども、その操業活動を各水域にまたがって行っているといったような問題もございます。そうした各水域に共通する課題というものが浮き彫りになってきておりますので、こうした問題に各地域の漁業管理機関が共同して取り組む必要性というのは非常に高まってきているところでございます。

 そうした問題がございますので、実は、ことしの三月にFAOの定例の水産委員会、閣僚レベルの会合が開かれたわけでございます。ローマにおいて開かれたこの会合におきまして、今後の地域漁業管理機関の協力の問題についても話し合われまして、マグロ類の資源問題にしっかり対処するために、地域の漁業管理機関、マグロ類の漁業管理機関が共同で会議を開いて共通の課題について話し合い、また情報交換をしていこうではないか、そういったことについて関係閣僚の方々の意見の一致を見たところでございます。

 そうした方向に即しまして、今後とも一層の共同化、協力化が図られるように、日本としても積極的に取り組んでまいりたいというふうに考えている次第でございます。

西銘委員 どうもありがとうございました。

赤松委員長 次に、丸谷佳織君。

丸谷委員 公明党の丸谷佳織でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 六月に入りまして、クールビズということで、室内の設定温度を上げ、そして、暑苦しいというか、スーツ、ネクタイはやめていこうという流れの中で、大臣、副大臣みずから率先されましてさわやかな服装で臨んでいらっしゃる姿を見て、大変好感度が高いなというふうにも感じました。

 その大臣、副大臣のさわやかさに比べてと申しますか、後ろの外務省職員の皆様がしっかりとまだダークスーツを着られていまして、質問する側からしますとちょっと威圧を感じる部分がございます。交渉に当たっては威嚇するときもあるのかとは思いますけれども、外交官の皆様が環境問題を考えて日本は今こういった形で取り組んでいるんだと見せるということもあると思いますので、どうか今後、環境問題に取り組んでいる外務省ということで、大臣、副大臣の服装を見習っていただきたいなというふうにも思います。

 本日質問をさせていただきます三条約については、賛成の立場から何点かにわたって質問させていただきたいと思います。先ほど質問をされました西銘委員とも重なる部分があるかと思いますけれども、御答弁の方をどうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず、中西部太平洋まぐろ類条約について質問をさせていただきます。

 現在、全世界では約百五十万トンのマグロ類が漁獲をされておりまして、そのうち日本の消費量は約六十五万トン、そのうち約四十五万トンを刺身として食べている状況の中で、マグロ資源を持続的に利用するための国際的な保存管理は、我が国にとって重要課題であると考えております。

 既に日本が加盟をしておりますマグロ類に関する地域漁業管理機関は、大西洋そしてインド洋、みなみまぐろ、全米熱帯まぐろと四地域にわたっております。世界のマグロ類の漁業生産の約半分を占め、日本のマグロ類漁獲生産にとっては約八〇%を占めます中西部太平洋における地域漁業管理機関というのは、日本の食生活のみならず、漁業者にとっても大きく影響をしてまいります。

 この中西部太平洋における管理機関について、この機関が設立されることによってマグロ類の漁獲については資源の保存等がほとんどカバーされるのかなと思いますけれども、この中西部について設立がおくれた理由というのは、背景には何があるのか、この点についてお伺いをいたします。

    〔委員長退席、増子委員長代理着席〕

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、各地域にこの地域漁業管理機関が設立されているわけでございます。それぞれの経緯は、当該地域に生息している魚種や資源の状態、漁業実態等によりさまざまでございます。先ほど西銘委員からも、カツオについて大変興味深いお話を賜りました。

 東部太平洋及び大西洋については、早くから関係国間でマグロ類資源の合理的利用と管理の必要性が認識されており、かなり早い段階で地域漁業管理機関が設立されておりました。

 その後、生息水域が広範であるマグロ類等の資源の持続可能な利用のためには、地域ごとに関係国が適切な保存管理の枠組みをつくり協力していくことが必要との認識が国際的に広まることとなり、八二年に作成され、九四年に発効した国連海洋法条約第六十四条の規定は、今申し上げましたような認識を踏まえたものとなっております。

 こうした国際的な動きがございまして、これを踏まえて、九四年にはみなみまぐろ保存委員会が、九六年にはインド洋まぐろ類委員会が、二〇〇四年六月に中西部太平洋まぐろ類委員会が設立された次第でございます。

 御指摘のとおり、中西部太平洋地域につきましては、マグロ類資源が比較的豊かな水域でございます。これまでは地域漁業管理機関の設立の必要性が実はそれほど高くなかったと私ども認識しておった次第でございます。しかしながら、近年になって台湾等が大型漁船をつくりまして、ふやしまして、漁獲量を急増させていることによって、資源の安定的な管理の必要性が高まってまいりました。こうした中で、九四年からこの条約の交渉が開始され、二〇〇〇年に採択、二〇〇四年六月に発効したという経緯がございます。

丸谷委員 水産資源の管理につきましては、当然各国との協力が必要なことがありますし、また持続的に水産資源を利用していくというのは漁業存続の基本であると考えております。しかしながら、本条約の対象となります水域には我が国のEEZなどを含んでいることから、条約を締結することでのメリット及びデメリットというものも考えていかなければいけないものと考えております。

 そこで、水産庁の方にお伺いをしたいと思うんですけれども、先ほども西銘委員の方から御質問があったかと思いますけれども、本条約の対象水域にEEZを含むということ、また沿岸漁業等にも関する初めての国際条約となることから、現在国際社会で見られるような反漁業的圧力、例えて言うならばIWCでの議論の傾向性など、今後不合理な規制が行われるのではないかという懸念の声は大きいと承知をしております。

 資源保護は非常に重要なことでございますけれども、これは科学的根拠に基づいて行われることによって初めて成立するものでございまして、予防原則だけがひとり歩きをしないようにという思いでおります。

 今後不合理な漁業規制が行われないように政府が責任を持って臨んでいく姿勢を求めていきたいと思いますが、この点、水産庁の御決意をお伺いさせていただきます。

竹谷政府参考人 お答え申し上げます。

 この条約を今御審議いただいているわけでございますが、この条約のもとにおきます資源管理措置が行われますと、現在中西部太平洋地域において非常に問題となっております台湾等によります大型漁船、大型のまき網、あるいははえ縄漁船といったものの増隻、漁獲量の増大といったものがございます。

 それによる資源の悪化というものが非常に懸念されておりますので、こうした資源問題に適切な対応を早急にとることが可能になるのではないかというふうに大いに期待をいたしている次第でございます。また、そういった取り組みに対しましては、日本といたしましても、漁業国といたしまして積極的に取り組んでいく必要があるというふうに考えている次第でございます。

 他方におきまして、そうした条約に基づきます資源管理措置をとる際に、しっかりとした科学的な根拠に基づいて措置が行われることが極めて重要であるというふうに考えている次第でございます。

 この条約におきましては、具体的に、条約の中で科学的根拠に基づいて行うことということがしっかり書き込まれておりますし、また、それを裏づけるものとして科学者によります専門委員会の設置というものも規定されているところでございます。これらの規定を通じまして、科学的根拠に基づくしっかりした運営がなされるように取り組んでまいりたいというふうに考えております。

 この条約におきましては、加盟国の範囲につきましては、漁業国また中西部太平洋地域の沿岸国というふうに対象を限っております。新たな漁業国ということが出てまいりましても、既存の加盟国のコンセンサス方式によって限定的に加盟を認めていくというスタイルもとっておりますので、そうした中で、科学的根拠に基づかないような議論をする、あるいはマグロ漁業に余り関係がない国が入ってくるという可能性は極めて低いと考えておりまして、適切な運営がしっかりと図られていくように、日本としても取り組んでまいりたいと思いますし、また、そういった条約上の規制の整備もなされているというふうに考えている次第でございます。

丸谷委員 ありがとうございました。

 では次に、NPT会議についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 五月二日から二十七日の間、ニューヨークの国連本部で行われました二〇〇五年NPT運用検討会議、この会議初日には、外務大臣が一般討論演説で、地域問題として北朝鮮の核開発への懸念またイランの懸念を表明し、CTBT早期批准を求めたほか、「二十一世紀のための二十一の措置」を日本として提出するなど、日本の核廃絶に取り組む姿勢というのを十分にアピールしていただいたと思っております。

 また、五年に一度と定例化されましたこの検討会議を円滑に行うようにと、日本政府は、二月には東京でデュアルテ議長ほか大使級の参加を得ましてNPTセミナーを開催してきたと承知しております。しかしながら、今回のこの検討会議の結果を見てみますと、残念ながら成果を得ることができなかったと言わざるを得ないというふうに考えております。

 そもそも、本来であればこの検討会議の開会前に決定されているべき手続事項も決まらない中でこの会議が開始をされ、そして会議自体が空転をしていく中、核軍縮また核不拡散そして原子力の平和利用の三委員会とも合意事項がないまま決裂をし、日本政府が求めてまいりました議長声明もかなうことができなかったという状況でございます。

 この会議を終えまして、日本政府、かなり努力をしたとは思いますけれども、この二〇〇五年度の運用検討会議についてどのように評価をしていらっしゃるのか、この点からお伺いをしたいと思います。

    〔増子委員長代理退席、委員長着席〕

町村国務大臣 今丸谷議員詳細に御説明をいただいたとおりでございまして、五年に一回という大変重要な会議であるということで、外務省を初め政府としてはかなり力を入れて取り組んできたつもりでございます。しかし、残念なことに、結果は実質的な事項に関する合意文書の取りまとめができなかったということで、非常に残念な思いでございます。

 ただ、議論の過程でいろいろなグループや締約国が提案をしたり、また集中的な意見交換が行われたという意味では、それなりに有益な面もあったのかなと思っております。ただ、いかんせん、きちんとした意見集約ができなかったということはまことに残念であった、こう思っております。

 一つには、これは全会一致という手続的な問題、これだけ多くの国が集まって、一カ国が反対したら物事が決まらないというのはまことにおかしな慣行が成り立っているな、こう思っていたのでありますけれども、案の定、全会一致主義というのが合意の形成を阻んだという点が間違いなくある。したがって、手続を決めるだけで日時の三分の二が費やされてしまったということになったのは、やはりこの辺から改める努力をしなければいけないな、こう思っております。

 それから、中身についても、特にイスラエルの核の問題を初めとする中東の問題、あるいはイランの核をめぐっての関係国での意見の隔たりといったような問題、あるいは核軍縮についても核保有国とそうでない国々との意見の大きな隔たりなどなどがあって、この辺の隔たりがあることは事前に予想されたわけでございますが、それらを埋める努力を、日本政府としてもかなり一生懸命仲介役として努めたつもりでございましたが、結果を生み出すことができなかったというのは、何度も申し上げるようでございますが、大変残念な結果になってしまったな、こう考えております。

丸谷委員 実際に、このNPT運用検討会議は五年に一度定例化して行われることになります。今後は二〇一〇年の会議を目指していくということになると思うんですけれども、では、これからこのNPT会議、NPT体制崩壊の危機とも言われている時期に当たって、どのように改革をしていくのか、有意義なものにしていくのかという議論になってくると思います。

 今大臣の御答弁にありましたけれども、この会議のあり方自体が、コンセンサス方式をとっているところに非常に難しい点があったというふうにおっしゃいました。このNPT条約自体は、現在は非常に存続の危機かとも言われておりますけれども、以前は最も成功した軍縮関連条約とも言われたこともございました。

 一九七〇年の三月五日に発効し、六七年一月一日前に核実験をして核兵器を持っていた国以外は核兵器を今後持ってはならないという、理論的に考えると非常に不平等な条約でありますけれども、それにもかかわらず国連加盟国と並ぶような数の国、今は百八十九カ国が加盟をしているという、非常に有効な条約であったんだと思います。

 ただ、今後、二〇一〇年の運用会議に向けて、またいろいろな会議の方式で、コンセンサス方式が難しいというのであればどのような形で変えていくのか、ここは日本としてもかなり知恵を出していかなければいけないと思うんですけれども、大臣の今のお考えでは、コンセンサス方式というものを変えることも一つの手段として提案をしていきたいというお考えでいらっしゃるんでしょうか。

町村国務大臣 こうした国際会議のあり方、それなりにでき上がったものを変えるというのは、率直に言って大変難しい点もあろうかと思います。

 ただ、明らかに、今回、それこそ極端な話、一カ国でも反対すれば物事が何も決まらないというのは、これは自民党に置きかえてしまってはいかにもいけないかもしれませんが、自民党総務会も全会一致ということで物事が決まらない。しかし、そこは自民党なりの知恵で、いざ決める段階に反対の方はトイレに立っていただいているとか、日本的な解決策というものをそれなりに講じてきて全会一致方式を維持してきたという点もございますが、国際会議となるとそういう、トイレに立ってくださいというわけにもいかないものですから、やはりそこは会議のルールというものをはっきりと決めていく、その議論をやはり早目に始めていかないと、五年に一回の会議というものがまことに残念な結果に終わってしまうということになるんだろうと思います。

 したがって、何もルールのことばかりではなくて、実質的な内容についても、どうやって事前にこの会議を立ち上げていくための事前会合をやっていくか、事前会合のあり方なども含めて、大いに反省をしながら、より建設的な役割を日本として果たせるように、今後外交的な努力をしていかなければいけないと考えております。

丸谷委員 ありがとうございました。

 本当に各国の国家防衛にかかわる問題について、主権国家が集まり、そして核廃絶という非常に地球規模の究極の目的に向かっていくときに、コンセンサス方式をとってきたというのは、それはそれでまた非常に崇高な目的があったんだろうというふうに考えます。

 しかしながら、今回の結果を見てみると、そこのコンセンサス方式があるばかりに何一つ成果が上がらないという負の一面も見えたわけでございまして、コンセンサスというものの乱用というのは国際会議の場であってはいけないのだなというふうに私もつくづく感じておりました。

 今後、いろいろな場がございます。近いうちにはG8サミットがありますし、また九月には国連で特別首脳会合等々ございます。こういった場で、ぜひ大臣の方から日本の提案として議題の投げかけというのをしていただきたいと思いますし、今回のNPT会合の中で成果が上げられなかった分をこの五年間で取り戻していくという意味において、例えばサミットでCTBTの早期批准、CTBTという言葉を盛り込むことができればいいんじゃないかなというふうに思いますけれども、この点については大臣はいかがお考えになられるでしょうか。

町村国務大臣 CTBTについては、アメリカが否定的な立場をとっているというのは御承知のとおりでございまして、そういう中で、しかし国際的には圧倒的にこれが今進んできているという実態もあるわけであります。

 日本はアメリカの核の傘の下にありながら、何だ、ダブルスタンダードではないかというような批判ももとよりあるのでありますが、しかし、そうはいっても、アメリカはアメリカで、モスクワ合意に基づいて核弾頭の数を減らすという努力は、当初期待したスケジュールどおりであるかどうかは別にして、一応その方向性としては着実に減らしてきているというようなこともやっているわけでございまして、ただ、現実に核によってある種の平和が保たれている、バランスがとられているという現実からまた目をそらすわけにもいかないということもあろうかと思います。

 いずれにいたしましても、今後、いろいろな国際的な集まりの場を通じて日本としての考えを明確に述べ、そして国際的なコンセンサスができる努力をしていかなければいけないと考えております。

丸谷委員 そこの働きかけについてなんですけれども、米国の今のあり方では多国間でのこういった交渉というものの限界が見えた以上、もっと、例えば核軍縮、核不拡散という面では、NPT以外の枠の中で、例えばPSIといったようなところで実質的な議論をしていくべきだといった報道も見受けられるわけでございますけれども、核軍縮、核不拡散という面において、日本は二者択一ではないと思います。NPTでやるのか、あるいは枠外でやるのかという二択ではないとは思いますけれども、どういった方針でこの点について臨んでいくのが望ましいのでしょうか。

町村国務大臣 基本は、やはりNPT体制を基礎とします国際的な核軍縮あるいは不拡散体制の維持強化ということで取り組んでいかなければいけない、こう考えております。今回の会議の結果を踏まえながら、日本としては幾つかの対応をとらなければいけないと思っております。

 一つは、これは毎年のことでございますけれども、核軍縮決議案を国連に提出する。できる限り多くの国の支持を得てこれが可決されるように、毎年やっている努力でございますが、ことしもこれをぜひ成立させたい。それから、CTBTの早期発効でありますとかFMCT、兵器用核分裂性物質生産禁止条約、これの早期交渉開始のための外交努力をやっていくこと。

 それから、特に今回問題になりましたイランあるいは北朝鮮、この核問題の早期かつ平和的な解決、これは各国とも認識はそう大きく違っていない、こう思いますので、北朝鮮については六者会合でありますとかあるいはG8、先ほどお触れになったそうした場を初めとするいろいろな機会をとらえて問題の早期解決に取り組んでいく。イランについては、今EU三カ国が大変熱心に代表選手のような形で取り組んでいるわけでございますが、それを私ども全面的に支援しながら問題の解決に取り組んでいく。

 さらに、IAEAの追加議定書を受け入れる国がふえていくようにこれまた積極的な努力も必要であろうということでございまして、今申し上げましたような幾つかの点を中心にしながら、今後NPT体制の強化というものに取り組まなければいけないと考えております。

丸谷委員 ありがとうございました。

 これは私の考えでございますけれども、今回の検討会議が迷走した理由の一つには、やはり米国の核戦略というものがあったというふうに考えております。核軍縮の委員会でサンダース米国大使が、現在の米国の核戦略の弱点を特定した結果、新しい兵器が求められると述べたように、通常兵器では歯が立たない地中への核兵器使用の観点から、地中を貫通する新型爆弾ですとか、小型核の必要性に立っている米国は、CTBTの批准にも合意をしない。また、こういった合意をしないことで核保有国と非保有国との相互不信を深めることにつながったと考えますし、新たな核開発競争を招くものではないのかというふうに危惧をいたしております。

 もちろん、日本と米国は安全保障条約を結んでおりまして、同盟国であります。その点は十分に理解しておりますけれども、核軍縮、核廃絶という問題に関しては、やはり日本はどこの国も持ち得ない痛ましい経験、被爆国であるという観点から、日本がリードをしていかないと世界は動かないという観点もやはり忘れてはいけないと思い、この米国の核戦略については危惧をしている次第でございます。

 こういったアメリカの現在の戦略、また他国の防衛のことですから、日本がとやかく、また外務大臣の口からとやかく言うのはなかなか難しいのかもしれませんけれども、大臣としてどのような見解を持っておられるのか、この点についてお伺いいたします。

町村国務大臣 まず、アメリカの核軍縮への姿勢でございますが、先ほど申し上げましたようなモスクワ条約、これは米国とロシアの合意なんでございますけれども、これに基づいて核弾頭の数を削減してきているという実態もあると思います。

 一九九〇年時点では、アメリカは二万一千発、ロシアは三万三千発を持っていた。これが二〇〇四年一月の時点で、アメリカは七千発、ロシアは七千八百発ということで、大体三分の一程度には減ってきている。ただ、二〇一二年までですか、目標はそれぞれ二千発前後まで削減をするんだということになっているわけでございまして、これを着実に遂行してもらう必要がある、こう考えております。

 また、今回の運用検討会議で、アメリカは、核軍縮交渉を誠実に行う義務、NPTの第六条でございますけれども、この履行については誠実にやっていきますという決意表明は繰り返し行っておりますし、またNPTを強化するためすべての締約国と協力をしていく考えというものも明らかにいたしているわけであります。

 ただ、包括的核実験禁止条約、CTBTについては、これは従来から反対という立場をとっているのは委員御承知のとおりで、今回もまたそういう立場を表明いたしました。この点が今後の大きな課題である、こう考えておりますけれども、日本としては、アメリカを含むすべての核兵器国に対しまして、核兵器の削減あるいはCTBTの早期批准等を今後ともとるように求めていきたい、こう考えております。

 アメリカに対して何もやっていないのではないかという指摘も時折聞かれますけれども、決してそういうことではございませんで、アメリカに対しても、またその他の核保有国に対しても、日本は日本独自の立場でそうしたことを要求し続けているということがあるわけでございます。

丸谷委員 では、最後に短く聞かせていただきたいと思いますけれども、阿部国連事務次長が発言したというふうに報道で存じておりますが、実際にこのCTBTがいつになっても発効しないということで、このCTBT批准国間協定による暫定発効をしてはいかがかということをこのNPT検討会議を終えられて語っていらっしゃいます。

 こういった構想を日本政府はお持ちなのかどうか、この点について確認をさせていただきます。

天野政府参考人 お答えいたします。

 今委員が御指摘のありましたような構想というのは、実は、CTBTの交渉段階でも、特に最後の段階でいろいろな国から提起され、また実際の議論もされました。

 しかし、CTBTが現在のような形でまとまりまして、いまだ発効していないわけでございます。そういたしますと、例えば暫定発効ということになりますと、条約そのものを改正しなければならない、発効していない条約を改正しなければならないというようないろいろな難しい問題が出てくるかと思います。

 その点は別にいたしまして、現在我々が努力しておりますのは、なるべく多くの国にCTBTを批准するように働きかける、また署名するように働きかける。その結果、CTBTは法律的に見れば発効していないけれども、事実上、核実験が非常に難しいという状況をつくり出すということで、努力をしているわけでございます。

 以上でございます。

丸谷委員 暫定発効等、できることからやっていくという、一つでも二つでも前進を見るという形で取り組んでいくべきだという意見を申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

赤松委員長 次に、古本伸一郎君。

古本委員 民主党の古本伸一郎でございます。

 私からは、議題となっております条約審議の中で、海事債権を中心に質問をしてまいりたいと思います。

 まず冒頭、先ほど来、委員会の委員の皆さんの出席の状況は、委員長以下、御案内のとおりであったと思います。考えれば、本日の事案につきましては条約の審議であります。したがいまして、本件につきましては、議院内閣制のもとで、言うならば町村大臣も、一方で行政府の立場でじくじたる思いでごらんになっておるというよりも、むしろ連帯責任も担っているんじゃないかとさえ感じるわけであります。

 今、修学旅行の季節であります。子供たちも大変見に来たりしております。そういう中で必ず漏れ聞こえる声が、どうしてあんなにおじさんたちは座っていないんですか、こう言われます。あるいは、どうしてあんなに騒がしいんですかと聞かれます。どうして立ってあんなにうろうろしているんですかと聞かれます。

 子供たちに学校の授業で学級崩壊だといって、あるいは徘回児童がいるという前に、徘回先生がいっぱいいる。そういう中でこの審議が行われているわけであります。かつて文部大臣も務められました町村さんでありますから、まさに条約の審議をするこの場に対して、何か御意見がありましたら御所見を求めたいと思います。

 なお、参考までに、大臣が鬼のいぬ間の何とやらで、もしくはそうだったのならば申し上げますけれども、十時ちょうど前から大臣が戻ってこられる十時四十分までの約四十分間にわたり、その間、一体何名がいらっしゃったか後でお調べいただければありがたく存じます。

 そこで、大臣の御所見を求めます。

町村国務大臣 内閣の立場で国会のありようについてあれこれ申し上げるのが適切であるかどうかということはあろうかと思いますが、同じ議員という立場であえてのお尋ねでございますから申し上げれば、しばしば定足数に満たないということで赤松委員長も審議を停止されたようなことも、前回でしたか、前々回でしたか、ございました。

 そういう姿を見たときに、それはもう本当に、一人でも多くの委員のいわば義務として国会には出席をし、審議に参加をするという姿が望ましいし、またそうあるべきであるということは全く論をまたないことであろう、かように考えております。

古本委員 大臣の責を問うているわけではありませんが、これは全体の責任だと私は思います。しかも、条約の審議でありますから、これは内閣提出であるわけですから、厳に戒めていただきたいですし、重く受けとめていただきたいと思うわけであります。

 そして、何よりも、日本の未来を、恐らく、好むと好まざるとにかかわらず背負わなきゃいけない、さまざまな制度の負担者となる、担ぎ手となるであろう子供たちが今大変見に来ているわけでありますから、そういうことも含めて我々は戒めていかなきゃいけないんじゃないかなと思うわけであります。

 そして、条約の方でありますが、本件につきましては、せっかく限度額の上限を引き上げたとしても、結果、無保険船があったときにはもとのもくあみという側面があると思うんですね。その意味からいきますと、本当に上限を引き上げたことだけによって、船主並びに被害者である漁協や、あるいは周辺自治体、我が国臨海の、そういう海洋の海難事故に伴うそういう被害者たる可能性のある人々、これは双方が幸せになる条約の手だてである、このように理解してよろしいでしょうか。

神余政府参考人 お答え申し上げます。

 この議定書を締結することにつきましては、いろいろな関係者がおられるわけでございますけれども、船舶所有者の関係団体を所管します関係省庁、あるいはその他の関係者と十分に協議を行っているところでありまして、この船舶所有者、あるいはまたその船舶所有者もその被害者になるであろうということも含めまして、この関係者の基本的な了解を得ているものと承知をいたしております。

古本委員 条約の締結に伴って、国内の利害関係人が、これは船主の立場もそうでしょうし、日本が将来ハブ港湾となって、巨額の港湾整備費を投入してそれぞれの港を整備しているわけでありますから、日本に入港する際には高い保険を払わなきゃいけなくなる、それから保険が義務づけられた、そんなことによって荷役が減っては元も子もないわけでありますし、他方、かつての、いわゆる重油流出事故が散見された、ずっと続いているわけでありますが、そういったものでの被害者の泣き寝入りにならないように、ぜひ、国内法の整備も含めて、今後とも充実をしていただきたいと思うわけであります。

 その際、私からも過日の韓国船漁船の問題について確認をするわけでありますが、まず排他的経済水域の日本側において不審船並びに違法漁業を操業しているとおぼしき漁船を発見したときの逮捕権といいますか、停船命令権は日本の海上保安庁が有しているんですか、それとも韓国側の海洋警察庁なんでしょうか。

坂本政府参考人 我が国の排他的経済水域内における立入検査権あるいは漁業管轄権の行使につきましては、我が国が持っております。

古本委員 その後、追跡権も有しておると。先ほど来大臣の答弁にもありましたが、これは領海に逃げたもの勝ちなんでしょうか。それとも、そうさせないようにしっかりとEEZの日本側の追跡の中で確保し、拿捕する。どちらが望ましいんでしょうか。

 そう考えましたら、これは領域内で、しっかりと日本側の水域内で検挙、拿捕、それは船も船員もということになるんでしょうが、そのことを考えますと、数日来の韓国サイドでの報道を見ますと、いかにも我が日本国民の感情をあおるような報道が続いているわけでありますが、例えば暴行を加えられた映像も流れていました。ああいうものを見るにつけ、一体どうなっているんだろうと国民は思うわけであります。事実が知りたいわけであります。そういう意味では、先ほど来、暴行の事実はなかったということの話がありました。そうすると、どっちがうそをついているのかという問題になるわけであります。今は情報社会でありますから、ああいった映像が流れる、そして両国民が見る。これは、国連の常任理事国入りをまさに内閣の目玉としておられる小泉内閣にあってもゆゆしき事態であります。

 さらに、現地に逢沢副大臣がいらっしゃった。向こうからの申し出とはいえ、これは政治的問題なんですか、それとも海保庁の領海を侵犯した者に対するいわゆる領海での逮捕権の問題なのか。これは外交の問題であって外務副大臣が出張っていただく場面なのか、これはどっちだとお考えですか。

坂本政府参考人 私どもとしましては、今回の事件については通常の犯罪についての捜査を行っているということで、決して私どもは外交上の問題と考えているわけじゃなくて、通常の犯罪捜査を行ったというふうに理解しております。

古本委員 そうしますと、現地で、韓国当局からの誘い水であったにせよ、このことについて逢沢さんが話題にしたということは遺憾に感じておられるわけですか。

坂本政府参考人 逢沢副大臣についての発言については、私どもがコメントする立場ではないというふうに思っております。

古本委員 縦割りということであればそうなのかもしれませんが、海上保安庁は国土交通省の組織であります。国土交通大臣、町村大臣並びに各大臣は小泉内閣の閣僚であります。したがいまして、コメントする立場にないというのはそのとおりだと思いますが、少なくとも連携はとってもらわないと困るわけであります。

 現場の海上保安官の命がけの、落水した人は二名と聞いています。そういう命がけの中で我が国の領海を守っている皆さんに対して申しわけがないと思いませんか。現場でまさにつばぜり合いで、さあどうしようというときに、手打ち式が行われているかもしれないとの報道がある。これはどう考えますか。現場として思いがあったらこの際言った方がいいと思いますね。御見識を求めます。

坂本政府参考人 海上保安庁といたしましては、先ほども申したとおりでございまして、私どもは韓国において逢沢副大臣がどういうお話をされたかは把握しておるわけでもございませんし、あくまでも私どもは私どもの任務であります犯罪捜査を行ったというものであります。

古本委員 解決に当たって、担保金の支払いで決着という報道が流れております。これはボンド制ということで、世界的に見ても、逆に日本の漁船がそういう立場に、被疑者になったときに早期に釈放してもらうということは、相対の話でありますから、これはそういう判断もあったんだと思うんですね。これは了とするんだと思います。

 他方、先ほど同僚委員からも指摘がありました、かつてのイルグァン号事件のときも保釈金、担保金があったと聞いておりますが、このときの金額は幾らだったんですか。

坂本政府参考人 前回の場合は、違法操業ということで、担保金は二百万円でございます。

古本委員 これは、国際的な何か担保金に対する、ある意味、レートのようなものがあるんでしょうか。何をしたときは幾らと、科料のレートのようなものがあるんでしょうか。

坂本政府参考人 担保金の額につきましては、事件の種別やその態様に応じ、あらかじめ主務大臣により定められた基準に従って取締官が決定することになっております。この取り締まり基準につきましては、非公表の扱いとしております。

 また、我が国では、担保金の額は条約上も各国の判断にゆだねておりますが、国際相場も参考にして、関係省庁により現在の額を設定しております。

古本委員 国民が今この話題は大変注目していると思いますね。特に日本海で、島根や鳥取方面、山口、まさに操業をなさっている漁民の皆さんの切実なる思いの中で、今回の結果は、テレビにかじりついてごらんになっていたと思うんですね。

 そういう状況を考えますと、手心を加えたというようなことは、これは法的にも、あるいは政治的にもないという理解でいいでしょうか、町村大臣。

 大臣の政治的な見解を求めます。

坂本政府参考人 私どもとしましては、通常の手続きに従って、通常どおりの捜査を行い、通常の担保金の提供を受けたと。現在まだ担保金の提供そのものはありませんが、犯罪を認めて、なおかつ担保金を提供する保証書をとっておりますので、そのうち、一定の期間内に支払われるものというふうに考えております。

町村国務大臣 海上保安庁の皆さん方の対応は、私どもも適切に対応されたものと理解をしております。

古本委員 非常にタイミングが、両国民的にも、未来志向でいこうと町村さんも常々おっしゃっています。小泉さんも常々おっしゃっている。しかしながら、こういうことがあるたびに、一人一人の国民感情からすれば、なかなか未来志向には感じにくいわけでありますね。片や殴っていないという当局がいて、片や殴られたという人の映像が出て、そしてボンド金なるものが支払われて、釈放といいますか一件落着と。これはどうなっているんだというのが国民感情のベースにあると思います。

 ただ、他方、日本漁民が全く逆の立場になったときに、これは我々もそういう立場になるわけでありますから、そこは相対の部分だと思うんですね。

 そうしたときに、実はおもしろいデータがあるんです。これは旗国、要するに国籍別の、監視取締状況の推移という海保庁の資料によりますと、平成十二年から十六年までの五年のトレンドを見ますと、排他的経済水域で韓国漁船を確認したというのが、平成十二年で千六百八十九件、それから平成十三年が二千百七十九件、平成十四年が九百五十七等々と続いてきて、問題は、確認して立入検査をして検挙をした数が、これは相対比較ですが、年々減ってきています。

 例えば平成十二年の排他的経済水域で、立入検査に至ったのが二十一件、検挙したのが九件であります。これに対して、平成十六年、昨年は、検挙に至ったのは五件であります。また、中国に目を転じれば、排他的経済水域の平成十二年で確認された船の数は、中国船籍です、旗籍ですね、九千九百八十一件、検挙が三件。平成十三年が一万四百六十件、そして検挙が六件。そして、飛びまして平成十五年が二万三千六百四、そして検挙がゼロ。平成十六年、昨年に至っては、中国の旗籍船は一万六千三百五十五確認に対して、検挙がゼロなんですね。

 これは何か逆比例しているような感じがしまして、確認された船の数はふえているのに検挙されていない。これはとり逃がしているのかそれとも思いやりでやっているのか、どっちなんですか。それとも海保庁の船が足りないんですか、職員が足りないんですか。だったら、まさに小泉改革の行政の予算定員の再配置の中で海保庁の予算をしっかりとって、警備艇もふやすべきじゃないんですか。御所見を求めます。

坂本政府参考人 お答えします。

 先ほど先生の申された大きな方の数字でございますが、これは必ずしも違反した船というわけではなくて、私どもが漁業水域内で外国漁船を視認した件数ということになっております。その後、先生の方から申されました、そういった件数については、これは私どもの立入検査あるいは検挙した数字をおっしゃられているものと理解しております。

 あと、海上保安庁の体制をもっと整備すべきではないのかという御質問でございますけれども、今回の事案を教訓として、船艇、航空機のさらなる向上に努めまして、海上における犯罪の取り締まりの能力をさらに向上させてまいる所存でございます。

古本委員 少し乱暴な言い方をしたことは現場の皆さんにおわびをしながら申し上げるわけでありますが、これは相当な思いで昼夜を分かたず日本の海を守ってくださっていると私は信じています。

 その意味で、そういう現場の皆様が銃後の憂いなくやるためには、政治がしっかりしなきゃいけない。そういう意味からいきますと、近年のトレンドを見れば、これは全く想像の域は超えられませんが、小泉内閣が発足来、何か弱腰になっているんじゃないかとさえ思わざるを得ない。数字は、少なくとも見れば物語っているわけでありますね。これは想像の域は超えません。

 そこで大臣にお伺いをするわけでありますが、大臣は先日、ハウスが違いますが、参議院での我が党の同僚議員の質問に対して、国連の安保理常任理事国入りの問題につきまして中国が今反対をしておるんではないかと思われる中にあって、質問の流れでこう答えておられるんですね。「中国が日本の常任理事国入りに反対をするという発言がない以上、したがって、それと靖国との関係がどうかという御質問があっても、それはちょっとお答えしづらいわけであります。」こう言われました。

 ところが、大臣、これはタイミングが余りにもよ過ぎるんですが、中国の王国連大使が明確に日本の常任理事国入り反対をコメントされています。したがいまして、日本の常任理事国入りを、少なくともP5の一角を担っておられる中国の、しかも国連代表の方が公言をなされたわけであります。少し雲行きが変わってきたわけですね。

 さあ、今後どういう町村外交でこれを攻めていくかということでありますが、そこで再度質問を申し上げます。靖国の問題が解決すれば、逆に私は参議院の質問をさらに膨らませたいと思います。靖国の問題がなかりせば、中国、韓国はもろ手を挙げて日本の常任理事国入りに賛同してくださると思いますか、お答え願います。

町村国務大臣 手元の資料を見ると、五月三十一日に王国連大使が報道機関に対して、日本を含むG4の枠組み決議案は非常に危険であり、それが実現しないことを目指して他国と共同をするという発言をしております。したがって、間接的にそれは日本に反対と言っているのかもしれませんが、直接的に日本の常任理事国入りに反対という言い方はしていないという事実だけはまず申し上げておくべきだろうと思います。

 その上に立って、今委員が言われたのは、小泉総理が靖国参拝をやめれば安保理常任理事国入りに賛成するかどうか、こういうお尋ねであったと理解をいたしましたが、それは先方がどう考えるかということであり、こうなればこうなるという、必ずしも論理的必然性、帰結を持つ話ではないだろう、こう思いますから、私としては今の仮定の御質問にお答えすることはできないわけであります。

 ただ、全体として、私どもが今後ありとあらゆる外交活動を展開する中で、中国であれ韓国であれ、あるいはこの枠組み決議に反対をしているほかの国々もあるわけでございます、そういう国々に対して、なぜ安保理が改革されなければならないのかという必然性を含めて、必要性を含めていろいろな機会に説得をし、そういう外交活動を今後積極的に展開していかなければならないということは当然であろう、こう考えております。

古本委員 それでは逆にお尋ねをするわけでありますが、大臣は、かの国が、中国、韓国がどうしてここまでも、日本が常任理事国入りをすることに対して、明確な否定はしていないといたしましても、快くは思っていない、世論も含めてあると思われますか、お答え願います。

町村国務大臣 国連改革、常任理事国改革のモデルA、モデルBという話が三月のアナン事務総長の報告で触れられ、私どもは主としてモデルAを中心とした形の枠組み決議を今出している。これに対して、モデルB的な案を今、いわゆるコーヒークラブという方々、その中には韓国、メキシコ、イタリア等々が入っているわけでありますが、非常任理事国のみの拡大でいこう、そういう構想で今決議案づくりをやっているということだろうと思います。

 そういうことからすると、確かにそれは想像して、中国や韓国が日本の常任理事国入りにもろ手を挙げて賛成をしていない雰囲気だということは想像できるわけであります。しかし、では靖国の問題がその原因であるとかないとかいう話は、私も何度もこの話をしましたけれども、少なくとも両国の外務大臣からそういう話が出たことは一度もないわけでございまして、したがって、靖国が原因だからすべてがうまくいかないということには決してならないんだろう、こう考えております。

古本委員 今、大臣はっきり答弁をしてくださいました。両国の外交トップとお話をされた中にあって、靖国が原因でそういった国民感情に、かの国の皆様の国民感情を含めてなっているわけじゃないと明言があった。では、一体何が原因でここまで言われなきゃいけないのかなと思っているのが、一般的な日本国民の感情じゃないかなと思うわけであります。

 そこで、もう少し、残された時間で聞くわけですが、尖閣や竹島、あるいは南暁、春暁のガス田の問題等々、両国とは、領土、領海、そして海底資源をめぐる問題が大変議論になっています。このことをハーグにある国際司法裁判所に提訴しようとした際に、これは両当事者からの了解が得られないと提訴できないというルールは大臣も御案内のとおりであります。

 この際、この両国はこれを拒んでおる、このことは事実かどうか。その際、我々が仮に念願成就して安保理常任理事国に入った場合には、このことを議題とできるんでしょうか、お答え願います。

町村国務大臣 まず、中国との間で領土問題は存在しておりません、これが日本国政府の考え方であります。したがって、このことについて国際司法裁判所云々ということは日本側からは考えられないし、中国からそういう提起もございません。

 竹島に関しては、一九五〇年代であったと記憶をいたしておりますけれどもそういう問題提起をし、韓国側がそれを拒絶した、したがって国際司法裁判所にはこの問題が提起をされるに至らずに終わったという経緯がございます。

古本委員 国連安保理常任理事国入りした暁には、このことを日本単独で議題にできるルールになっているかどうか、そして、このことを解決するために問題を提起する、国連の場で提起をする御決意があるかどうか、大臣にお尋ねいたします。

町村国務大臣 安保理になろうとなかろうと、国際司法裁判所という場面は、同じ、双方の合意ということでございますから、これは別だろうと思います。

 それは、国際の平和と安全に必要なことを議論するのが安保理でございましょうから、そういう意味で議題設定することは論理的には可能であろうと思います。しかし、それが多くの国の賛同を得て議題になるのかならないのかということは、また別途の問題がそれはあるのかもしれませんが、論理的にはそれは可能であろうと思っております。

古本委員 靖国のことが問題ではないと両国の外交トップがおっしゃった。では、今申し上げているような領土、領海をめぐる、中国とは領土、領海の問題はないとおっしゃいましたが、少なくとも韓国とはあるわけでありまして、このことが原因となっているかどうかの確認を両首脳に、あるいは外交トップに確認をしたことはございますか。

町村国務大臣 この国連改革の問題について、既に二度三度と、中国あるいは韓国の外務大臣と話し合っております。両国外務大臣ともに、国連改革の必要性あるいは安保理改革の必要性ということについて、彼らは全く否定をしていないどころか、それは改革をしなければならないという意味で、中身は別としても、改革の必要についてはそれぞれ一致をしている、こう考えております。

 あとは、その具体論の、どういう形で、どういう中身でこれを改革するのかということについては、彼らは主として、さっき申し上げたようなモデルBという、非常任理事国の拡大という方法でそれを実現したらいいのではないかという考えであると理解をしております。

 もっとも中国は、インドでしたか、発展途上国の代表制を常任理事国の中で拡大することには賛成だということも言っておりますので、そのこととモデルB的な決議案がいいという話と、どう論理的に整合性を持つのか私にはちょっとよく理解できないところではありますが、そのような表現をとっているわけであります。

 したがって、彼らと、なぜあなたは日本国の常任理事国入りに反対なのですかという直接的な問いかけをするまでもない、その前の段階で、そもそもアプローチが違うんだ、基本精神は同じだけれどもアプローチが違うんだという形の議論になっていくわけですから、何が原因なんですか、靖国なんですか、領土なんですかといったような議論には至らないわけでございます。

古本委員 この問題は大きな問題でありますので、続きは次の機会にゆだねたいと思います。

 最後に一点だけ。例のIC旅券の導入に伴っての効用分の扱いにつきましては、文字どおり大臣の御英断をいただいて、まさに国民に喜ばれることをしていただきましたことに、まずお礼を申し上げたいと思います。

 十月の二十六日から来年三月末まで発行される、二百万冊に及ぶだろう旅券を、受給される皆さんの中で新たにIC旅券に買いかえるだろう多くの国民の皆様、何となれば米国入国に際してビザが要るようになりますから、そういう皆さんに関して言えば、効用分を徴収しない方向で御検討いただけるということであります。

 額にすれば恐らく百億円を超える国民負担減といいますか、いわれのなき行政経費負担を未然に防いだというところであります。これはまさに大臣の御英断だと思いますが、効用分の本質的な問題はまだ解決していないと思いますので、引き続き本院の方でも議論をさせていただきたいと思うことを申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

赤松委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 私たちは、三つの条約については賛成であります。

 きょうは、情勢が急展開しております沖縄県の金武町のキャンプ・ハンセンの都市型訓練施設について、政府の見解を問うていきたいというぐあいに思います。

 米軍が金武町のキャンプ・ハンセン、レンジ4で建設を進めていた都市型戦闘訓練施設が完成をして、近く実弾射撃訓練を開始する予定です。政府は、キャンプ・ハンセン内のレンジ16の奥に代替施設を建設して移転させる、こういう方針を発表いたしました。そして、移設が完了するまでの間、レンジ4の施設を使って暫定使用を行う、これを容認する、そういう姿勢であります。地元の伊芸区では、工事着工以来、区民ぐるみで施設の撤去を求める運動を繰り広げております。もちろん、金武町や沖縄県も、暫定使用は容認できないと繰り返し政府に申し入れております。

 この安全性について区民や県民が危惧を表明し移設をせざるを得なくなった、こういうところに立ち至った以上、危険なレンジ4での訓練はやめてほしいという区民の声、県民の声は当然だと思いますが、外務大臣はどのように考えているのですか。

町村国務大臣 四月二十八日に、外務省及び防衛施設庁共同での発表を政府の決定としてしたわけでございますけれども、レンジ4について、建設中の複合射撃訓練場については、安全、環境等に配慮した内容となっていると認識をしております。他方、沖縄県、金武町等が懸念を有しているということも考慮いたしまして、どういう対応が可能であるか、いろいろ意見交換を沖縄県あるいは米軍関係者とはやってきました。

 かかる懸念に最大限配慮した結果として、委員今御指摘あったようなキャンプ・ハンセン内のレンジ16の奥に日本政府の予算で代替施設を建設して、レンジ4で予定されていた訓練を移転させるという具体的な検討作業を行うということとしたわけでございます。まず、この点を率直にお認めいただきたい、こう思っております。

 その上で、移設が完了するまでの間の訓練というものは必要であろうということで、レンジ4での訓練は、代替施設が完了するまでの間は、地元の懸念にも配慮しつつ、また練度維持のため必要最小限の限定的なものにとどめつつ、安全には万全を期すようにした上で、この間についての訓練は私どもは認めることは妥当である、このように考えているところでございます。

赤嶺委員 区民の安全に対する懸念の表明、これに対応する措置としてレンジ16の奥に訓練施設を移転する、しかし、それまでの間、レンジ4での暫定的使用を認めるのはこれは当然だという、全く理屈が通らない姿勢なんですね。

 もともとレンジ4というのは、実弾射撃訓練施設が民間施設にわずか三百メートルしか離れていない、そして戦後半世紀にわたって被弾事故が繰り返されてきた。安全をそのたびに説明するけれども、万全であったということはなかった。言ってみれば欠陥訓練場ですよ。そういう欠陥訓練場で、暫定的といえども実弾射撃訓練を強行するということは、本当にそこのそばで暮らしている区民あるいは県民の立場に立って外交を考えたことがあるかということを厳しく指摘したいと思うんです。

 皆さんは、そういうことを言いますと、いやいや、米軍は必要最小限の訓練を行うんだ、安全には配慮している、こう言うわけですから、必要最小限について聞いていきたいと思います。

 部隊の練度維持のための必要最小限で限定的なものにとどめる、そのために米軍に改めて働きかけると言っているわけですが、必要最小限とは、例えば実弾を使用しない、そういうこともあり得るんですか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど大臣からも御説明したように、レンジ4が、一時的な間、部隊の練度維持のため必要最小限の範囲において使用されるということでございます。その内容として個々具体的なことは、米軍の運用にかかわることでもございますので今ここで詳細を申し上げることは差し控えたいと思いますけれども、一切実弾を使わないというようなことはなかなか難しいのではないかと理解しております。

赤嶺委員 そうすると、例えばレンジ4にはいろいろな施設がつくられました。この中には使用しない施設があるんでしょうか。例えば、一番危険な屋外で射撃訓練は行わないというようなことも必要最小限の範囲内に入っているんでしょうか。

河相政府参考人 お答えいたします。

 先ほども申し上げましたように、個々の具体的な訓練内容というのは、米軍の運用にもかかわることですので詳細に立ち入ることは差し控えたいと思いますけれども、屋外における射撃訓練を排除するということはなかなか難しいのではないかなというふうに思っておる次第でございます。

赤嶺委員 はっきりしていることは、実弾は使う、屋外でも訓練は行う。必要最小限度の範囲内といっても、米軍の運用に関することだからそれは米軍の判断しかないということなんですね。県民の、あるいは射撃訓練場に近い区民の安全性というのは何の担保も行われていないと思うんです。

 それでは、次に、一時的、暫定使用だからレンジ4を使わせてくれ、このように言っております。この一時的、暫定的というのは、それはいつまでのことですか。

河相政府参考人 お答えいたします。

 政府としては、先ほど大臣からも御説明申し上げたとおり、キャンプ・ハンセン内レンジ16の奥に日本政府の予算で代替施設を建設していくということで検討作業を行っておるわけでございます。ですので、これが、代替の施設が完成するまでの間ということでございます。

赤嶺委員 ですから、それは具体的にいつまでなんですか。何年ですか。一時的、暫定的と言いますけれども。

河相政府参考人 現在、その建設につきましては、政府部内で検討作業を開始しておるわけでございます。政府といたしましては、できるだけ早急に代替施設を完成したいという考えでございます。

赤嶺委員 検討しているというものの中に、代替施設の予定地、そこの下流域にはリュウキュウルリモントンボという非常に希少種も生息する、こういうような報道もありますが、これらについて防衛施設庁はどのように認識していますか。

戸田政府参考人 お答え申し上げます。

 レンジ4の代替施設の建設でございますけれども、先ほど外務大臣から御答弁させていただいたように、政府として、できるだけ速やかに代替施設を建設することとしております。具体的に、当庁としましては、既に移設先地におきます訓練施設の配置等について検討を行うための地形図の作成等につきましての契約を五月下旬に行ったところでございます。

 そこで、先生お尋ねの環境調査との関係でございます。

 私ども、この地域につきましては、自然に配慮する必要があろうかと考えてございます。具体的には、環境影響評価法あるいは沖縄県環境影響評価条例といった法令の対象となるものではございませんけれども、自主的に環境調査を実施してまいりたいと考えているところでございます。

赤嶺委員 沖縄というのは、どの地域を特定しても、豊かな環境を持っています。ですから、環境に対する配慮をせざるを得ない。

 例えば、SACOの合意になったあの北部訓練場、ここもいわゆる環境の調査によって、年限は決められているのに、それ以上の移設作業が進んでいないというような状態があります。そういう意味では、明確な展望を描き切れない。暫定的、一時的というけれども、それが実情じゃないですか。いかがですか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 具体的に、今何年何カ月でということについて断定することは難しいわけでございます。これは今まさに施設庁の方からも御説明申し上げたように、基本計画等々、実際の作業を進めていく中で明確になっていくことと思いますが、政府としては、一刻も早く、できる限り早く代替施設を建設したい、こういう基本方針でございます。

赤嶺委員 政府が代替施設を建設しようというのは、そもそもレンジ4の危険性について担保できない、だから代替施設をつくる、そういうものでありながら、しかし暫定的と聞かれたら、この暫定的について、いつまでなのか全くはっきりしないというような状況が出ていると思うんです。今の答弁でも明らかだと思うんです。

 それでは、仮に訓練を移設するということになった場合、レンジ4には都市型戦闘訓練施設が完成をしております。これはそのときには使用しないで撤去するということでアメリカ側とも確認をしているんですね。

河相政府参考人 お答えいたします。

 まず第一点、御指摘のございましたレンジ4の安全性でございますけれども、この点につきましては、大臣からも御説明申し上げました。また、四月二十八日に政府として発表したときも明確にしておるわけでございますけれども、政府としては、現在のレンジ4の安全性、これについては配慮した内容になっているというのが基本的な考え方でございます。

 他方、沖縄県それから金武町等において本件施設に対して懸念があるということを考慮しまして、その懸念に対しての対応として、米側それから県と相談をした上で、この懸念に最大限配慮する結果として、レンジ16の奥に日本政府予算で代替施設を建設するということでございまして、基本的にレンジ4の安全ということについては、政府はそういう認識のもとで、近隣の方々の懸念というのを配慮して、あえて代替施設をつくるという考え方でございます。

 また、もう一点お尋ねの、施設につきまして今後どうなるのかということにつきましては、代替施設が完成した暁には、訓練は複合射撃訓練としては新しい施設に移る、その結果においてレンジ4のところで複合射撃訓練を行うことはないというのが基本的な考え方でございます。

赤嶺委員 陸軍は代替施設で複合訓練を行う。しかし、都市型戦闘訓練施設は残るわけです、レンジ4は残るわけです。これは米軍は一切使わないわけですね。いかがですか。

河相政府参考人 米軍として、レンジ4の複合射撃訓練場で射撃訓練を行うということは想定していないというふうに理解しております。

赤嶺委員 答弁をそらさないでください。

 陸軍がレンジ16の奥でやる、代替施設でやる。しかし、レンジ4と都市型戦闘訓練施設は残る。陸軍が使わなくなったら、それは海兵隊のものに戻るんですか、それとも閉鎖して撤去するんですか。いかがですか。

河相政府参考人 このレンジ4の複合射撃訓練場において、陸軍のみならず米軍が実弾射撃訓練を行うということは想定されていないということでございます。

赤嶺委員 五月一日の米軍の星条旗紙、この中で在日米軍の報道官ビクター・ウォージンスキー大佐がこのように述べております。

 まず、日本政府の四月二十八日の発表について、我々も発表について承知している、しかしこれまでどちらの側からもいかなる公式の提案もなされていない、米国政府はレンジ4で現在建設中の施設を完成させ使用するという考えだ、レンジ4から移設ができたなら、現在建設中の施設と土地は海兵隊に戻ることになるだろう、このように言っているんですよ。

 ですから、米軍は、レンジ4の施設を撤去する、こういうことでは同意していないんじゃないですか。海兵隊に戻ると言っているんですよ。いかがですか。

河相政府参考人 お答えいたします。

 星条旗新聞というものの位置づけ、性格としては、必ずしも米軍の公的立場を説明するものではないというふうに理解しております。それを前提に申し上げれば、我々の理解として、レンジ4の複合射撃訓練の代替施設が完成した場合には、その施設を使った実弾射撃訓練は行われない。

 ただ、レンジ4の管理というものは、現在、複合射撃訓練場は陸軍のためにつくられ、それに使用されるわけですけれども、代替施設がつくられて陸軍の複合射撃訓練というのが代替施設に移った後は、レンジ4は海兵隊の管理下に置かれるということが我々の理解でございまして、しかし、そこは海兵隊がそこで実弾射撃訓練を行うということとは異なるものと理解しております。

赤嶺委員 明確に、海兵隊が使わない、そういう約束のもとに代替施設の建設も合意したんだということを答弁できますか。

河相政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御説明したことの繰り返しになろうかと思いますけれども、レンジ4の複合射撃訓練が新たな代替施設に移された後、そこのレンジ4の管理は海兵隊の管理のもとに置かれますが、そこにおいて海兵隊が実弾射撃訓練を行うことはないというふうに理解しております。

赤嶺委員 それでは、レンジ4にある都市型戦闘訓練施設を撤去すればいいじゃないですか。使った建物ですね。それはしないで、一方で思いやり予算で代替施設をつくる。二つとも施設をつくっていくことになりかねない、こういうことを指摘いたしまして、質問を終わります。

赤松委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 社会民主党の東門美津子です。

 我が党も、ただいま議題となっております三条約に関しましては賛成ということを表明させていただきまして、私も、沖縄の今の状況です。ちょうど前の赤嶺委員と重複するレンジ4についての質問をさせていただきます。よろしくお願いします。

 赤嶺さんから今質問がございました陸軍の複合射撃訓練場の件ですが、本当に、昨日工事を完了して米軍に引き渡されました。それは、住民が安全上の観点から強く反対をしている中、暫定使用が始まることになるわけですが、四月二十八日の外務省及び防衛施設庁の文書は、先ほど大臣の方から御紹介がありましたので私はこれは省きますが、その中で、同訓練施設を使用するのは米陸軍の特殊部隊ですね。いわゆるグリーンベレーですが、なぜグリーンベレーが沖縄に駐留をして都市型戦闘訓練を行う必要があるのか、理解ができません。私は、その点からお伺いしたいと思います。

 まず第一に、グリーンベレーはいつから沖縄に駐留しているのでしょうか。沖縄へ来る前はどこにいたのでしょうか。また、沖縄へ移転してきた理由は何なのか。そして、グリーンベレーの任務は何なのか。この四点についてまずお伺いいたします。

河相政府参考人 突然のお尋ねなので、手持ちの資料に限りがあるのでございますけれども、その範囲で御説明申し上げれば、キャンプ・ハンセン内レンジ4の陸軍複合射撃訓練場、これを使用する者、部隊は、主としてトリイ通信施設に所属する米陸軍第一特殊部隊群第一大隊が使用するというふうに承知をしておるわけでございます。

 グリーンベレーという呼び方、これは一般的に米陸軍特殊部隊の通称ということでいろいろ呼ばれているわけでございますが、今手持ちの資料の範囲内では一九八三年に再配置をされたということでございまして、それ以前にも沖縄にはいた。一たんほかに移動したものが八三年に再度トリイに配置をされているということであると理解をしております。

 この部隊の任務の詳細、それはその性格上必ずしも細かいところまで明らかにされていないわけでございますけれども、従来、昭和五十年代から国会で御説明しているところでございますが、いわば少数精鋭の特殊な部隊であり、その活用によって、いわゆる安保条約の効果的運用という面から、日本の防衛あるいは日本に対する侵略の抑止といった面についての役割を果たすものである。また、日本における抑止力、日米安保条約を効果的に運用するという立場から見て価値があるということで、従来国会で御説明をしてきている次第でございます。

東門委員 済みません。沖縄へ来る前はどこか。再配置されたということですが、どこに一度引き揚げて沖縄に戻ってきたのか。そして、その理由は何なのか、そこもお答えください。

河相政府参考人 現在手持ちの資料によりますと、この部隊が再配置される前はノースカロライナ州フォートブラッグに所在をしたというふうに承知をしております。

東門委員 三度目です。

 沖縄へなぜ移転してきたんですか。なぜ再配置されたか。

河相政府参考人 お答えいたします。

 先ほど御説明したこの部隊の任務、それの役割ということで、少数精鋭の部隊でありますけれども、その役割というのが安保条約の効果的運用ということに照らして必要であるという状況判断のもとで再配置されたというふうに理解しております。

東門委員 では、大臣に伺います。

 その米陸軍特殊部隊が沖縄で都市型戦闘訓練を行う必要性というのは何でしょうか。

 大臣にお願いします。ちゃんと通告してあります。

町村国務大臣 これまでも陸軍は、先ほど局長がお話をしたとおり、日米安保条約上の任務を遂行する上で不可欠な訓練をキャンプ・ハンセン及びキャンプ・シュワブにおいて行ってきております。本件訓練場の施設については、損耗した施設を代替するとともに、これまで分散実施してきている訓練を集約し、これを効率的、効果的に実施するためのものと承知をしているところでありまして、引き続き本件訓練場を用いて日米安保条約上の任務遂行の上で不可欠な訓練を行うものと認識をいたしております。

東門委員 安保条約上の不可欠な訓練、どういう中身かわからないんですが、中身を聞くと、きっと先ほどの長官の御答弁のように、訓練の内容の詳細については米軍の運用上云々ということが出てくるのかと思います。その詳細は述べられないと多分お答えが出てくるので、私、もう自分で言ってしまいます。

 しかし、中身は把握はしているんですね。どういう訓練であるということは日本政府は把握をしているかどうかだけは教えてください。

河相政府参考人 一般的に申し上げて、陸軍の複合射撃訓練場でいかなる訓練がなされるのかという概括については、政府として承知しております。

東門委員 私が本当に申し上げたいのは、なぜ、海兵隊があれだけの大きな、基地を使いながらいろいろな訓練をする。そこに陸軍がいる。しかも、日本に駐留している陸軍は千九百人ですか、そのうちの四百人が特殊部隊として沖縄にいる、その訓練をするというだけ。そこが理解できないんです。

 あれだけ地元の人たちが危険だと反対をしている。それを今度は、米軍の予算でつくったからということかもしれませんが、レンジ16の奥の方へ移すということです。先ほどの赤嶺委員の質問に対して、このつくられたレンジ4、これは米軍の予算であることはわかります。それは終わって、もし16の方へ移転をしたら、これは取り崩していくというのが当然だと思います。

 そうでなければ、沖縄県民の負担は軽減ではありません。基地の強化です。負担の強化になることですよね。今、米軍再編の中で地元の負担の軽減が協議されている。その中で、新たな施設がつくられるということは強化にほかならない、軽減にはならないと思うんですが、いかがでしょうか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど御説明申し上げたことの繰り返しになりますが、レンジ16の奥に代替施設が完成した後には、レンジ4の複合射撃訓練場で陸軍が実施する訓練はすべて代替施設に移される、レンジ4において実弾射撃訓練が行われることはないというふうに理解をしておる次第でございます。

東門委員 私は強く申し上げておきます。これは県民の負担の強化につながる行為であるということ、政府は逆行している、負担の軽減はすると言いながら強化につながる動きをしているということを強く指摘しておきたいと思います。

 では、防衛施設庁に伺います。

 今回のレンジ16の奥への代替施設建設についての発表では、建設予定地の位置を明示した地図が添付されております。建設に必要な期間及び予算額の見積もりに必要な条件はそろっているのではないかと思われますが、防衛施設庁に建設の期間及び予算額を示していただきたい。また、代替施設建設後、レンジ4の訓練施設は私は撤去されるべきだという考えのもとに伺いますが、その場合、その費用を我が国が負担することになるのかどうかも含めてお伺いします。

戸田政府参考人 お答え申し上げます。

 当庁におきまして、移設作業を円滑に行うために、先ほど申し上げたような地形図作成についての作業に着手したところでございます。この後、この地形図に基づきまして、移設先におきます訓練施設の配置等の詳細につきまして、検討、調整することになります。具体的には、こういった配置等を踏まえた上で建設工期といったものが出てくるわけでございます。また、建設予算についてもその過程で判明してくることになります。

 したがいまして、現段階では、建設工期それから建設予算につきまして申し上げることは困難でございます。しかしながら、いずれにしましても、政府としては可能な限り早期に本件訓練場の移設を実現すべく努力したいと思っております。

 なお、完成した後のレンジ4におきます現有米軍施設の撤去経費につきましては、私どもが現時点でお答えする範囲のものではないと考えております。

東門委員 大臣、今の米軍再編の協議の中で、ぜひ沖縄県民の声を聞いて、それは米側と協議していただきたい。その一番大きなところにおられるのが大臣であり総理大臣であると思うんですが、今のままでは本当に不安ばかりがどんどん大きくなっていく、地元の声が全然吸い上げられていないのではないかという思いがいたします。

 辺野古の件も、いろいろなものが出たり入ったりする。本当は毎日新聞の記事についても伺いたかったのですが、それについては多分大臣はあれは新聞記事であって何も決まっていないとおっしゃるだろうということで、きょうは控えましたけれども、本当に、嘉手納統合案が出ておりますが、先日も申し上げました県内での基地の移設、これはぜひやめていただきたい。たらい回しだけはしていただきたくない。私は強く申し上げます。国外、県外への移設を強く要望して、終わります。

 ありがとうございました。

赤松委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 これより各件に対する討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、千九百六十五年の国際海上交通の簡易化に関する条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

赤松委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、千九百七十六年の海事債権についての責任の制限に関する条約を改正する千九百九十六年の議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

赤松委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、西部及び中部太平洋における高度回遊性魚類資源の保存及び管理に関する条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

赤松委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

赤松委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時八分散会


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