衆議院

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第5号 平成18年3月15日(水曜日)

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平成十八年三月十五日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 原田 義昭君

   理事 小野寺五典君 理事 谷本 龍哉君

   理事 土屋 品子君 理事 水野 賢一君

   理事 渡辺 博道君 理事 武正 公一君

   理事 山口  壯君 理事 丸谷 佳織君

      逢沢 一郎君    愛知 和男君

      伊藤 公介君    伊藤信太郎君

      伊藤 忠彦君    宇野  治君

      小里 泰弘君    高村 正彦君

      篠田 陽介君    新藤 義孝君

      杉田 元司君    鈴木 馨祐君

      谷  公一君    松本 洋平君

      三ッ矢憲生君    山内 康一君

      山中あき子君    吉良 州司君

      篠原  孝君    田中眞紀子君

      津村 啓介君    松原  仁君

      谷口 和史君    笠井  亮君

      照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   外務副大臣        金田 勝年君

   外務大臣政務官      伊藤信太郎君

   外務大臣政務官      山中あき子君

   経済産業大臣政務官    小林  温君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    縄田  修君

   政府参考人

   (防衛施設庁総務部長)  地引 良幸君

   政府参考人

   (防衛施設庁施設部長)  渡部  厚君

   政府参考人

   (防衛施設庁建設部長)  山内 正和君

   政府参考人

   (公安調査庁次長)    北田 幹直君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   塩尻孝二郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房外務報道官)           鹿取 克章君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 遠藤 善久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 梅田 邦夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 松富 重夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房広報文化交流部長)        岡田 眞樹君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   中根  猛君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    石川  薫君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  佐藤 重和君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   小松 一郎君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房参事官)           伊地知俊一君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        近藤 賢二君

   外務委員会専門員     前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十五日

 辞任         補欠選任

  宇野  治君     松本 洋平君

  篠田 陽介君     小里 泰弘君

  中山 泰秀君     伊藤 忠彦君

同日

 辞任         補欠選任

  伊藤 忠彦君     杉田 元司君

  小里 泰弘君     篠田 陽介君

  松本 洋平君     谷  公一君

同日

 辞任         補欠選任

  杉田 元司君     中山 泰秀君

  谷  公一君     宇野  治君

    ―――――――――――――

三月十三日

 経済上の連携に関する日本国政府とマレーシア政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第二号)

 マルチチップ集積回路に対する無税待遇の付与に関する協定の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 経済上の連携に関する日本国政府とマレーシア政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第二号)

 マルチチップ集積回路に対する無税待遇の付与に関する協定の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

原田委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長塩尻孝二郎君、大臣官房外務報道官鹿取克章君、大臣官房審議官遠藤善久君、大臣官房参事官梅田邦夫君、大臣官房参事官松富重夫君、大臣官房広報文化交流部長岡田眞樹君、大臣官房国際社会協力部長神余隆博君、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長中根猛君、北米局長河相周夫君、経済局長石川薫君、経済協力局長佐藤重和君、国際法局長小松一郎君、警察庁刑事局長縄田修君、防衛施設庁総務部長地引良幸君、施設部長渡部厚君、建設部長山内正和君、公安調査庁次長北田幹直君、農林水産省大臣官房参事官伊地知俊一君、資源エネルギー庁資源・燃料部長近藤賢二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

原田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。水野賢一君。

水野委員 おはようございます。自由民主党の水野賢一でございます。

 さて、きょうは、今月の六日、七日に行われました東シナ海の問題についての日中の局長級協議について、まずお伺いをしたいと思います。

 この局長級協議においては、中国側から油ガス田についての新提案があった、共同開発についての新提案があったというふうに言われておりますけれども、この新提案は内容としてどのようなものだったのか、お伺いしたいと思います。参考人で結構です。

伊藤大臣政務官 多少、質問通告の内容と違いますので……(水野委員「いや、しているんですよね、ちゃんと。冒頭にしていますよ」と呼ぶ)新提案の内容の特に核心の部分でございますけれども、日本側からは常に、中国側から開発の中止、データの提供について強く求めていたわけでございますけれども、中国側が従来からの立場といいますか、中国側としては係争のない水域で行われているという従来の立場を繰り返しまして、情報の提供、一方的な作業の中止について前向きな回答は得られなかったということでございます。

 この情報提供については、前回の第三回協議、昨年九月に行われたものでございますが、中国側は、情報提供については共同開発の原則的合意の後に検討し得ると発言しております。

 日本の政府としては、今後も対話を通じ我が国の主権的な権利を確保しつつ、東シナ海を協力の海とすべき考えでございますので、引き続き、中国側の開発については、情報提供と、一方的な作業の中止を求めるとともに、共同開発による問題解決の可能性を含め、率直な議論を行っていくという考えでございます。

水野委員 外務省側に言いたいのですけれども、参考人が来るのが遅くて、定刻に間に合わないで、質問通告をしている冒頭の問題に間に合わないというのはどういうことなのか、ちょっと参考人に聞きたいと思います。

梅田政府参考人 まことに申しわけございません。

 私は、参事官なものですから、車がございません。それで、今、お恥ずかしい話でございますけれども、通常タクシーをお願いして来ますが、けさはなかったものですから別の局長の車に同乗させていただいて来た次第でございます。まことに申しわけございません。

水野委員 厳重に抗議をしたいというふうに思います。

 さて、繰り返しになりますけれども、この一番最初の質問を参事官に、日中局長級協議の新提案、今政務官からも話があったけれども、きちっと説明をもう一回お願いします。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 中国側からは、東シナ海の南と北につきまして、二つの地点についての共同開発地域にしてはどうかという提案がございました。

 それ以上の詳細につきましては、まことに申しわけございませんけれども、現在交渉中のことでもあり、また、中国側と、中身については詳細に、それ以上のことを言わないということになっておりますので、差し控えさせていただきたいと思います。

水野委員 今の話だと、これは報道にもっと詳しいことがいろいろ載っているわけなんですけれども、報道ベースよりもさらに漠然とした言い方になっています。

 今交渉の途中だからすべて答えられないというのはわかるんだけれども、しかし、その報道も錯綜しているところがあるわけですよね。例えば、中間線よりも中国寄りの部分についても提案に含まれているという報道もある、いやいや、含まれていないんだという報道もあるんですけれども、その辺はどうですか。参考人でいいです。

梅田政府参考人 その点につきましては、今精査をしておりますが、日本側が言う中間線をまたいでいる可能性はあると考えております。

水野委員 先ほど政務官にもお伺いしたところなんですけれども、一方的な開発中止とかの日本側の要求をずっと中国側にしていたわけですね、一方的な開発というものは中止してくれと。この部分については今回進展がなかった、つまり、明確な回答がなかったというふうに考えますけれども、それでよろしいですね、参考人。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 今先生が申されたとおりでございます。

水野委員 ということは、一方的な開発を中止するということを日本側が求めていて、それに対して明確な回答、約束がないということは、裏を返してみれば、一方的に資源を吸い取られるような日が来るかもしれない。そのことをやらないと向こうは明言していないわけですよね。

 そうすると、これは大臣にお伺いをしたいと思うんですけれども、例えば春暁もしくは天外天、今これは日本名もついていますけれども、どちらかというと春暁というような名前の方が人口に膾炙していますからあえて中国読みの方で進めさせていただきますけれども、春暁など、もしくは天外天では、炎が上がっているというふうにも言われている。

 この春暁などにおいて、もしくは天外天などにおいて、油ガス田の本格的な生産というものが開始をされるような日というのもそう遠くないかもしれないというふうに言えると思うんですね。これは何も全く荒唐無稽なことを言っているわけではなくて、現実にそれだけの設備ができているわけですし、仮定の話とはいっても、何も荒唐無稽な仮定の話ではなくて、現実に起こり得る話だと思います。

 そういうようなことが起きたときには、日本としてしっかりとした対抗措置をとるぞということを明言した方がいいのではないかと思いますし、そういう厳しい姿勢をとるということを明言する方がかえって抑止にもつながるというふうに思うんですけれども、もし、こうした油ガス田に対して中国側が一方的な本格的な生産というものを開始するようなことがあれば、どのような対抗措置をとるようなことをお考えなのか、大臣に伺いたいと思います。

麻生国務大臣 今白樺の話が出ていましたけれども、この問題に関しましては、従来から、向こう側の一方的な開発とか、また情報につきましては、申し込んでいるというのは御存じのとおりです。

 現在、主として経産省等々と一緒にやらせていただいていますけれども、これは基本的には、これまでの例で言えば、大陸棚の話と中間点の話とでもめたままずっとここまで来ていますので、そういった意味では、双方なかなか言い分としては相入れられないところで来て、今回の提案も、こちら側も相入れられない、相入れない点で向こうが提案をしてきておりますので、私どもとしては、それに対しては、全く話のほかですということをお答えせざるを得ないところに来たままずっといっているんです。

 今炎が上がっているからといって、実際問題、そこの採掘が始まったということにもしなった場合は、その段階で改めて対応措置を検討せねばならぬ。いろいろなやり方があろうと思いますが、それを、白樺に手をつけられた場合うちはこうしますよという手のうちを今この段階で向こうに示すというのもちょっとどうかと思います。ただ、私どもとしては、対抗措置をとらざるを得ないということになろうと存じます。

水野委員 毅然とした対抗措置をとられることを希望いたします。

 さて、この日中中間線の話というのは、ちょっと整理をしてみる必要があると思うんですけれども、大陸棚の話とEEZの話の両方があるわけですよね。この二つというのは密接に関係はしているけれども、これは大陸棚は大陸棚で、EEZはEEZで、別のものなわけなんです。

 これは、中国側の主張というのを改めてちょっと整理してみる必要があると思うんですが、中国は、大陸棚の方は自然延長論で、要するに沖縄トラフまで自然延長しているんだ、だからそこまで自分たちのものだというのが中国側の主張ですよね。

 一方、EEZについては、中国はどういう主張をしているんでしょうか。参考人で結構です。

小松政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生おっしゃいましたとおり、大陸棚の制度とEEZの制度というのは別でございまして、国連海洋法条約、一九九四年十一月に発効しておりますけれども、大陸棚の制度は、それ以前から慣習国際法として発達してきた制度で、一言で申しますと、海底及びその下の天然資源探査、開発に関する主権的権利を沿岸国が持っている。

 排他的経済水域、EEZでございますが、これは国連海洋法条約によって創設された制度でございます。これにつきましては、上部水域及び海底、その下の天然資源の探査、開発等の主権的権利に加えて、人工島でございますとか海洋科学調査、海洋環境の保護、保全に関する管轄権等が沿岸国にある。

 この二つを比べますと、重なっていない部分もございますが、海底及びその下の天然資源の開発というところは当然重なっているわけでございますので、したがって、密接に関係があるのは先生の御指摘のとおりでございます。私どもといたしましては、大陸棚の境界と排他的経済水域の境界というのは一致しているということが自然であるというふうに考えております。

 中国の主張でございますが、実は、ちょっとはっきりしていないところがございまして、排他的経済水域と大陸棚の境界は相互に連関している問題であるということは言いつつ、排他的経済水域については具体的な境界線を示すということまではせずに、いずれにせよ、自国の大陸棚については沖縄トラフまで自然延長しているという主張をしておると承知しております。

水野委員 今御説明のあったように、中国側がEEZについてはその主張がやや不分明なところがあるということだと思うんですけれども、いずれにしても、日本側の主張というのは、これは大陸棚もEEZに関しても本来は二百海里の権利があるというものですし、だから、そこは中間線で折り合おうと言っているという話ですよね。再確認です。

小松政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど御答弁いたしましたように、私どもは、先ほど御説明申し上げましたような観点から、やはり相対する国の間で四百海里未満であるということから考えますと、排他的経済水域と大陸棚の境界は一致すべきであるというふうに考えてございます。

 また、EEZにつきましては、国連海洋法条約五十七条に、「二百海里を超えて拡張してはならない。」ということが非常にはっきり書いてあるということもございます。

 したがいまして、中間線ということを基本といたしまして境界が行われるべきであるという主張を行っておりますが、中国は、海洋境界の画定については、例えば、一方は大陸で、それが島であるとかの対比でございますとか、大陸棚の自然延長など東シナ海の特性を踏まえて行うべきであり、中間線による境界画定は認められないという主張を行っております。

水野委員 この点は、日本側の主張というものを、国際法に準拠しながらしっかりとした主張をしていただきたいというふうに思います。

 さて、この日中の協議の中で、今中間線のラインの話とか、もしくは資源の問題などについてお聞きしましたけれども、一点看過できない問題が報道されたので、それについてお伺いをしたいんです。

 報道によると、日中の実務者協議、この非公式協議というのがことし一月に行われた。その一月に行われた日中の非公式協議の中で、中国側から日本政府に対して、日本国内で中国脅威論が高まっている、そして、この中国脅威論が高まるような報道をマスコミがしているので、そういうような報道をさせないようにマスコミを導けというようなことを中国側が言ったという話があるわけですね。

 これは本当だとしたら、非常にゆゆしい問題であって、極めて重大な内政干渉。しかも、その問題というのは、ただ単に、例えば経済政策をお互いこうした方がいい、ああした方がいいと言っているというのではなくて、言論の自由というのはまさに自由とか民主主義の一番根幹の部分の話ですから、このようなところに対して、言論統制をすべきだというような主張が本当に中国側からあったのかどうか、これは事実関係を確認したいと思います。

梅田政府参考人 お答えさせていただきます。

 去る一月九日に北京におきまして、佐々江アジア大洋州局長と崔天凱中国外交部のアジア局長、当時の人でございますけれども、との間で行われました局長級非公式協議におきまして、崔天凱局長から、中国はメディアが日中関係のプラス面を報道するようにリードしており、日本側にも、メディアが客観的で冷静な責任ある態度で中国に関する報道を行うよう導いてほしいとの発言がございました。

 これに対しまして、佐々江の方からは、日本はそのような体制じゃないんだ、報道の自由が保障されているということを申し述べました。

 以上でございます。

水野委員 今のお話の崔天凱氏の言う、中国ではメディアが日中関係のプラス面を報道しているという、そのこと自体がかなり疑問があるわけなんです。要するに、かなり反日的なものをあおっているのではないかという疑念を我々は持っているわけですけれども、まあ、そのことはさておいても、そもそも、政府がそういう一定の方向にマスコミを導くとか誘導するというのは、中国のような国ではあるんでしょうけれども、日本でそれは、そういうことをすべきでもないし、あるわけもない。

 このことからすると、そういうようなことを要求してくるというのは、そもそも我々の価値観に対する、自由とか民主主義という価値観に対する大きい挑戦だというふうに思いますし、それは当然、だからこそ、そういうことはしないということを言下に断ったということでしょうけれども、その点については今後もしっかりとした態度というものを堅持してもらいたい、そのように思います。

 さて、東アジアの状況について、何点か続いて質問をしていきたいと思うんですけれども、北朝鮮の脅威もしくは拉致問題がなかなか解決しないという問題があるわけであります。

 その中で、日本国内でも、北朝鮮に対して圧力を高めていくべきだ、もしくは経済制裁をしていくべきだという議論があるわけなんですが、一方で、その反面、北朝鮮が中国に対して経済的依存度を高めているということが言われているわけですね。これは、貿易とか投資とか、そういうような経済的依存度を北朝鮮が高めているということだけではなくて、それに加えて、中国が積極的に経済支援、経済協力をしているというふうにも言われております。

 これは公安調査庁にお伺いをしたいんですが、この辺の問題についてどのように把握をしているか、お伺いしたいと思います。

北田政府参考人 お答えいたします。

 北朝鮮は、かねてから、食糧やエネルギーを初め各種物資の欠乏に苦しみ、国連や各国からの援助に依存してきたところでございますが、各種情報から見ますと、昨年十月の胡錦濤国家主席の訪朝、そしてことし一月の金正日総書記の訪中などに見られますような両国関係の緊密化の中で、中国からの食糧、エネルギー支援、さらには無償援助による工場建設のほか、道路、港湾等経済インフラの整備なども含めまして、中国の各種支援に依存して、経済建設そして国家体制の維持を図っているのではないか、このように考えております。

水野委員 そうすると、日本の政府は、今、対話と圧力、圧力と対話という言い方をしているわけですね。北に対しては圧力をかけていかなきゃいけないと言っている。しかしながら、北朝鮮の幹部などの話を伝え聞くところによると、要するに、日本が圧力をかけたり制裁をするようなことを言っても、自分たちの後ろ盾に中国があるから、中国から支援をもらっているから大丈夫なんだ、そういうような発言もあるやに聞くわけですね。

 そうすると、要するに、日本政府としては、圧力を高めていくためにも、まず中国に対して、少なくとも、北に対して、貿易をするなとはなかなか言えないかもしれないけれども、経済支援をいろいろ積極的に行うというのはやめてくれと言うのは当然だと思うんですね。

 要するに、日本国内で、あめとむちという言い方をすれば、むちを当てなければいけないというようなことを議論している中で、中国に積極的にむちを与える側にくみせよとは言わないまでも、あめを積極的に与えている国があるのであれば、これは圧力の抜け道になってしまうわけですから、中国に対して、北朝鮮への支援とかそういう協力とかいうようなものの中止なり自粛なりを求めるのは当然だと思いますけれども、事実関係として、まず、そういうようなことを求めてきたケースはあるのか、お伺いしたいと思います。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 今先生が申されました問題意識は我々も共有しております。

 それで、今までに日中間の事務レベル協議におきまして、中国として、ただ単に寛大に北朝鮮に支援を行うのではなくて、六者会合への復帰を含めて、北朝鮮のさまざまな問題についてきちんとした対応を迫るべきではないか、そういう方向で中国がその影響力を発揮してほしいということは申し述べております。

 例えばということでございますが、ちょっと詳細は先方との関係がございますので差し控えさせていただかざるを得ないのですが、今月三日に佐々江アジア大洋州局長が訪中した際に、武大偉副部長に対しても今申し述べたような働きかけは実施しております。

 以上でございます。

水野委員 大臣にお伺いしますけれども、今後、そういう北朝鮮への協力とか支援というようなものを、これは少なくとも自粛すべきじゃないかとか、とめてもらいたいというような日本の意向というものをより強い形で中国に対して申し入れる、そういうようなお考えはございますか。

麻生国務大臣 今、梅田参事官の方から答弁を申し上げましたように、これまで、もう既に、武大偉外交副部長に対して佐々江局長の方から前回も申し入れをいたしております。

 今、御存じのように、日朝間の貿易はこのところ、約四年間で半分ぐらいになっていると思うんですね。それで、中国からの支援が二・五倍ぐらいにふえているかな、一・五倍か二・五倍ぐらいにふえているんだと思います。そういった状況の中にありますので、韓国からの貿易もふえておりますので、そういった意味では、逆に言えば、日本からの経済的な影響は相対的には下がっておるということだとは思いますけれども、少なくとも、向こう側にただただ何のために援助をしているのかがちょっと私どもからはよく理解ができない。

 基本的には、核の問題というのはおたくにとっては一番大変な問題なんだろうし、我々にとっては拉致の問題を含めて核ということになろうと思いますので、目的はそうそう違っていないと思いますので、私どもとしては、何のためにやるのかという点ははっきりさせなければいかぬということで言っておりますし、今後とも、必要を感じればさらに申し込んでいかねばならぬと思っております。

水野委員 まさに核の問題というのは国際的な重大な懸案事でありますし、拉致の問題というのも、当然、日本の主権を侵害した、この重大な問題もあると同時に、あわせて、これは普遍的に、だれが見てもとんでもない人権侵害であり、人道に対する挑戦的な行為なわけですから、その解決のために中国にもそうした点からの申し入れもしていくべきだということを期待したいというふうに思います。

 さて、台湾海峡の問題について何点かお伺いをしたいと思います。

 まず、これは政務官にお伺いしたいと思いますけれども、台湾海峡で中国がミサイルを配備している、もしくはミサイルを増強しているという問題がありますけれども、これに対して、中国側に自制を求めたり抗議したということはございますでしょうか。

伊藤大臣政務官 お答え申し上げます。

 水野委員御指摘のように、やはり、近年、中国の国防予算の伸び率が大変高水準で推移していること、その中において、弾道ミサイルや海空軍の質的向上、近代化が進められている、このことに対して大変注視しておりまして、これまでも各種対話の場で、核、ミサイルの近代化を含めた国防政策の透明性を高めるように累次求めているところでございます。

 それと同時に、今御指摘のように、我が国としては、台湾をめぐる問題について、中国に対しては、当事者間の直接の対話を通じた平和的な解決、そのための当事者間の対話の早期再開というものを強く希望していること、また、武力行使には一貫して反対しておりまして、平和的解決以外のいかなる解決方法にも反対であることを累次の機会で主張しているところでございます。

水野委員 質問通告には、次は大臣への質問なんですが、今席を外されたようなので、ちょっと順番を変えて、資源問題、環境問題に関して、これはエネ庁の方にお伺いをしたいというふうに思います。

 サハリン1、サハリン2というのがありますね。要するに、サハリンの原油なり天然ガスをパイプラインなりLNGの形で日本に持ってくるという計画ですけれども、これは私は基本的には大いに推進をすべきだというふうに考えています。

 これは、一つには、天然ガスをより普及させていくというのは、環境面からしても、例えば石炭火力発電所とLNGの火力発電所を比べれば、CO2の排出量は同じ発電量で見れば半分ぐらいで済むわけですし、また、エネルギー安全保障という観点から見ても、エネルギー、資源の供給源を多角化していくということは非常に意味がありますから、中東依存度を下げるという意味でも非常に意味はあると思うんです。

 特にサハリン1についてお伺いをしたいと思いますけれども、このサハリン1に対して、これまで国はどれぐらい、国というのは、例えば石油公団とかJBICとか、そういうものを含めてですけれども、どのぐらい支援をしてきたのか、事実関係をお伺いしたいと思います。

近藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 今御指摘のサハリン1のプロジェクトに対する国の支援でございます。

 このプロジェクトにつきましては、三〇%の権益割合で参画をしておりますサハリン石油ガス開発株式会社というのがございます。この会社に対しまして、これまで石油公団が百十三億円の出資をいたしました。また、百五億円の融資をしております。また、同社の債務に対しましては、十六年度末の実績で六百二十億円の債務保証を行っているところでございます。また、同社に対しましては、国際協力銀行が十五億五千万ドルの融資の承諾ということを行っているところでございます。

 それから、サハリンで、現在のサハリン1プロジェクトの対象鉱区を含む石油天然ガスの探鉱を行いまして、平成十二年五月に清算が完了しております、今申し上げたサハリン石油ガス開発株式会社の前身とでも申しましょうか、サハリン石油開発協力株式会社というのがございます。この会社に対しましては、石油公団が百三十五億円を出資いたしました。また、三百八十五億円の融資を行ったところでございます。

 なお、石油公団は、サハリン石油開発協力株式会社の清算の際に、融資の代物弁済といたしまして、サハリン1プロジェクトが生産に移行した場合には、サハリン石油ガス開発株式会社及びエクソン・モービル社から、サハリン1プロジェクトの生産量に応じまして二億七千七百万ドルを限度に支払いを受けるという権利を取得しているところでございます。

 これらの権利は、石油公団が昨年の四月に廃止をされましたので、経済産業大臣及び独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構に承継をされているところでございます。

水野委員 私は、先ほど申し上げたように、エネルギー供給源を多角化するとか、石炭から天然ガスなどにエネルギー源を転換するということは大いに意味があると思っていますので、サハリン1に対して国が支援をしてきたということ自体は大いに結構なことだと思うんですね。理解は示します。

 しかしながら、問題は、それが日本に資源が来るということを前提に支援していたはずなんですね。日本に資源が来るからこそ、エネルギー源を多角化するということになるわけですから、中東依存度を下げるとかそういうことになるわけですから、支援してきたわけですけれども、最近どうも、サハリン1のオペレーターのエクソン・モービルなどは、このサハリン1で開発した資源を日本にパイプラインで持ってくるのではなくて、中国に持っていこうというような話がありますね。そうすると、何のためにこういう支援をしていたのかさっぱりわからなくなっちゃうわけですね。

 要するに、ロシアで生産したものを中国に持っていく、これは民間のビジネスであれば別にそのことにあれこれ言うつもりはないけれども、何のために日本としてそれを支援していたのかということ、ロシアで生産して中国に行くというだけであれば。これは、もしそういうような形で中国に行っちゃうというようなことがあれば、非常に甘い見通しだったとか、この支援は何だったのかとか、無駄なものになってしまったんじゃないかというような指摘はあって当然だと思うんですけれども、これは経済産業大臣政務官にお伺いしたいと思います。

小林大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 今ほど御説明申し上げましたように、サハリン1プロジェクトについては各種の投資、融資そして債務保証を行ってきたわけでございます。これまでに、約二十三億バレルの石油と約十七兆立方フィートの天然ガスの埋蔵量がこのプロジェクトにおいては確認されております。

 そこで、石油については、昨年十月から生産が開始されており、二〇〇六年度末にもピークの生産量である日量約二十五万バレルに達する見込みで、これは我が国の総輸入量の約六%でございますが、我が国との地理的な近接性及び先ほど来申し上げておりますように日本企業が主要なパートナーであることを考えてみれば、我が国が主要な供給先になるということを期待されておるわけでございます。

 一方、御指摘の天然ガスでございますが、基本的には、経済合理性に基づいて、民間企業である需要家の判断により決定されるものでございます。既に、約九百七十億立方フィートの天然ガスがロシアの本土向けに供給されることが見込まれているほかは、日本と中国の需要家との話し合いがこのオペレーターであるエクソン・モービルの子会社、エクソンネフテガスとの間で行われているというふうに承知をしております。

 政府といたしましては、今後とも、このプロジェクト主体と民間需要家の話し合いが進展し、サハリン1プロジェクトからの石油天然ガスの我が国に対する供給が実現するということを期待しながら見守っているというところでございます。

水野委員 これは、開発をしているエクソン・モービルなり、もしくはそこに参加をしている日本の伊藤忠とか丸紅などにしてみれば、それは結局、売り先が日本であろうが中国であろうが、買ってくれる人がいれば、ペイすればいいわけですから、買い先がどこであろうと売り先がどこであろうと彼らにとっては問題ないんでしょうけれども、しかしながら、これは日本の国として支援していたというのは、要するに日本が買うということを前提に国として支援していたはずなわけですよね。

 ですから、原油だけじゃなくて、天然ガスに関しても、政務官最後おっしゃられたように、最終的に日本に来るということを最後の最後まで努力をしていただかなければ、これは何のために支援していたのかわからなくなっちゃいますから、その辺はしっかりと今後もこの問題について取り組まれることをお願いしたいというふうに思います。

 さて、大臣が戻ってこられたので、ちょっと台湾問題について話を戻したいと思うんです。

 ことし、台湾では、十月というふうに言われておりますけれども、日本の技術を供与したもの、新幹線が開通をする予定でございます。このときに、日本からの技術というものが台湾に行ったという意味で言うと、両国の共同での大きいプロジェクトだったというふうに言えると思うわけですけれども、ここで当然、開通、開業式典みたいなものがあるんでしょう、恐らく。

 例えば、そういうようなときに、日本の政府の高官が台湾を訪問するようなことがあっても、僕は非常に自然なことであると思いますし、決して問題はない。例えば閣僚級の人が行かれたとしても問題はないというふうに思いますけれども、大臣、いかがお考えでしょうか。

麻生国務大臣 これは水野先生よく御存じのところなんで、台湾と日本とのいわゆる基本的立場というのは非政府関係に基づく実務関係ということになっていますので、これはアメリカも似たようなことになっていますが、いわゆる総統と大統領とか、総理大臣と大統領とかその他閣僚級の形ではなくて、課長とか審議官とかいろいろなクラスで向こうも対応しているんだと思っております。

 今度の台湾高速鉄道、いわゆる新幹線を台湾高速鉄道とあそこでは言うんですが、台湾高速鉄道のでき上がるのは、予定通りいけば十月末ぐらいになるんだと思いますけれども、それができ上がるというのはまことに歓迎すべきことで、これは民民レベルでできている話ですから、まことに歓迎すべきことなんだと思っております。

 したがって、この開通式が当然行われるのでしょうけれども、それに当たってだれが出てくるかということに関しましては、これは式典の形式とかだれが主催するかというようなところ、まだちょっとそこまでいっていませんので、それを踏まえた上で判断をしなきゃいかぬところだと思っております。

水野委員 確かに、例えば現実にどういうような招待状が来るのかとかいろいろなことによるでしょうから、まだ先の話ですから仮定のこととしか言えない部分はあると思うんですけれども、例えば米国なんかでも閣僚級の人が訪台したりしている例なんかもあるわけですよね。

 そういうことでいうと、これはちょっと質問通告になくて申しわけないんですけれども、九月、十月ごろだと、麻生大臣が外務大臣におとどまりになっているのか、もしくは時期によると総理になっていらっしゃるのか、それはわかりませんけれども、例えば、そういうようなとき、外務大臣だとして、こういうようなことに対して招待などがあった場合に訪問したりするようなこと、これは何か問題はないと私は思うんですけれども、ちょっと仮定の質問で申しわけないですけれども、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 これは、御存じのようにいわゆる内規みたいなものがありまして、例えばWTOとかAPECとか、そういった日台双方のメンバーが正式メンバーとしている国際的な枠組みの中での会議等々でやる場合はこうだとかそうじゃないとか、いろいろな内規がきちんと、アメリカも日本も似たようなものなんですけれども、そういうものにしておりますので、今のような問題に関して具体的に、ちょっと仮定の問題でなかなかお答えしにくいところです。

 その場になって、十月、どのような状況になっているか、ちょっと想像を超えておりますので、私の後任の方がいらっしゃるのか、私がそのままなっているのか、全然私はもうなくなっていないのか、いろいろ条件はありますので、新幹線の事故で亡くなっているかもしれませんし、いろいろな例は考えられます。仮定の問題はなかなかお答えがしにくいところでありますので、ちょっとその場になってみないと何とも言えませんけれども、柔軟に対応するということになるんだと存じます。

水野委員 この台湾海峡をめぐる問題というのは、要するに、中国側が一つの中国という原則、これに固執しているわけですね。

 私は、一つの中国というのを、例えば中国がスローガンとしてそういうようなものを掲げるのは別に構わないと思うんですね。

 よく、アジアは一つとか世界は一つとか、これはスローガンとしてそういうようなものはいろいろあり得ると思うんですけれども、問題は、中国政府がその価値観というものを他国に押しつけているわけです。要するに、一つの中国というものを認めなければいかぬというふうに日本とか諸外国に対して言っている。そこに大きい問題があると思うんですね。

 例えば、分裂国家だとして、分裂国家のようなところでも、かつてドイツは東西に分裂をしていた。しかし日本は、西ドイツとはもちろん友好関係もあって国交もある、だけれども東ドイツとも当然同時に国交を持っていたわけです。そういうようなことを、もしくは、北朝鮮、朝鮮半島についても、日本は韓国ともちろん国交を持っていて、北に対しては、現在はないけれども、これは今持つべく交渉をしているわけですね。

 ところが中国は、そういうようなものは認めない、一つなんだから、自分とだけ国交を持ったら、台湾とは断交しなきゃいけないというふうに、いわば自分たちの主張を他国に押しつけているというふうに思うんです。

 私は、これは日中共同声明、一九七二年の声明の中に、そういう中国の立場を理解し、尊重するという言葉があるのは重々承知をしておりますけれども、現実に、この一つの中国というのは、現在の世界の中ではもうフィクションに、政治的スローガンとしてはあるかもしれないけれども、現実問題としてはフィクションになっているんじゃないかというふうに思いますけれども、この問題について外務大臣の所見をお伺いして、質問の終了とさせていただきたいと思います。

麻生国務大臣 確かに、おっしゃるとおり、日本と台湾の間を見ますと、どうでしょう、貿易総額で、中国が今一番ですから、中国、アメリカ、韓国それから多分台湾ぐらいだと思います。貿易量も日本の対外貿易の第四位でありますし、ビザ等々、いろいろお働きかけもあって、ビザも査証免除ということになったりして、今こちらから台湾に行く人も百万人超えたと思いますね。向こうからも百三十万人ぐらい、どんどんこっちに人がふえてきておりますので、それからいきますと、百三十万人というと、去年が百十ちょっとでしたから約二〇%ぐらいふえたということだと思います。そういう意味では、かなり貿易量もふえたという関係で、現実問題としては、今言われたように、実務関係は急速の上に伸びておるということだとは思います。

 ただ、先ほど一番冒頭に水野先生おっしゃいましたように、一九七二年の日中共同声明に基づいて、日本としては台湾または台湾当局というものを国または政府としては扱っていないという形になっておりますので、それが今政府の立場として条約上決められているというのが現実問題としての対応ということになります。

水野委員 終わります。

原田委員長 次に、谷口和史君。

谷口(和)委員 おはようございます。公明党の谷口和史でございます。

 きょうは、インドについて質問をさせていただきたいと思います。

 私は、昨年六月まで経済記者をやっておったわけですけれども、ここ数年、本当に読者の方、特に投資家の方々なんですけれども、インドの情報をたくさん欲しい、読みたい、こういう要請もございましたし、御存じのように、BRICsということで大変注目を集めているわけでございます。

 麻生大臣もことし一月初めにインドを訪問されて、その後、アメリカのブッシュ大統領も一月末の一般教書演説で、中国そしてインドを新たな競争相手と位置づけて、アメリカ自身の競争力強化の重要性を強調されたわけです。

 その後、今月に入ってブッシュ大統領がインドを訪問されて、偉大な二つの民主主義国家によるパートナーシップは世界を変革する力を有する、こういうふうに述べられて、アメリカとインドの協調関係をさらに前進させていくということで決意を表明されたわけで、ブッシュ大統領自身も、この合意は歴史的なものである、こういうふうに言われたわけであります。

 さらに、中国も、そしてまたフランスなども、インドとの関係強化については動き始めておりますし、日本も日印関係の強化を、今も進めておられると思いますけれども、一層進めていかなければならない、こういうふうに思うわけです。

 きょうは、この中国とインドとの関係についてまずは伺いたいと思います。

 三月のブッシュ大統領とシン首相との首脳会談で、御存じのように、民生用の核開発分野での協力に関する協定で合意をされました。大きな衝撃であったと思いますけれども、九八年にインドが核実験をしたときには、米国は経済制裁をしております。そういった背景を考えると、今回の合意は、米国のインドに対する政策の大きな転換であるというふうに受けとめられるかと思います。

 これに関して、ブッシュ大統領はインドの核保有を実質的に認めた、こういう見方、インドが核保有国としての地位を得た、こういう見方も出ているわけですけれども、大臣は、アメリカがインドを核保有国として認めたのかどうか、この点についてどういう認識か、お伺いをしたいと思います。

麻生国務大臣 これは谷口先生御存じのとおりに、去る三月二日のいわゆるバーンズ米国務次官のプレスリリースを読みますと、インドを核兵器国として公式に認めることはしなかったとこのバーンズ国務次官の発言に出ております。

 その後、ホワイトハウスで出ましたプレスリリースの中には、核爆発装置を製造しかつ爆発させた国がNPTのいわゆる核兵器国というのを決めておるので、インドはこの定義に当てはまらず、NPTのいわゆるルールを改正することを求めないと言っておるんですね。

 ただ、これはなかなか難しいところで、NSGという、核供給国のグループの中、これは約四十五カ国あるんですが、今回の一連の話を見ていると、そことの関係は、あの話があったにしろ、今度の米印の話を正確に見ていくと、これはある程度調整をする必要があるだろうなという感じはします、これはアメリカの国内とNPTの話ではありますけれども。

 そういった意味では、私どもとしては、核実験をしましたのは九八年でしたか、それで、それ以来NPTに入っておりませんので、インドを核兵器国として取り扱う気は、今、日本としては認められないと思っておりますけれども、少なくとも、非核兵器国としてインドはNPTに加入すべきだということをずっと一貫して言い続けてきておりますので、今新たに核兵器国だとして直ちに認めてNPTにと、なかなか難しいところだと思います。

谷口(和)委員 わかりました。

 今お話しになったNPTでありますけれども、インドは、おっしゃられたように、このNPTに対して五大国だけが核兵器を、核を独占する不平等条約であるということで非難をして、NPTの加盟を拒んでいるわけであります。ただ、NPTに入っていないということで、インドは核を軍縮する努力義務などが適用されない、つまり、NPTに入らずに核保有をもくろむ国々にとって、大変おいしい地位であるわけです。

 さて、確認をしたいと思いますけれども、NPT上、このインドはどういうふうに位置づけられるのか、もう一度大臣の見解を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 基本的には、米国は、今回の米・インドの合意にかかわらず、NPT自体の改正を求める考えはないということを明らかにしておりますので、今後インドがNPT上のいわゆる核兵器国として認められるとは考えておりません。

 ただ、日本としては、このNPT体制というのをもとにして、いわゆる不拡散体制とか核軍縮とかいうのをずっと強化を進めてやってきておりますので、いろいろな意味で、二国間対話等々の立場を通じてインドに対してはNPTに非核兵器国として加入することを求めていくということであって、私どもとしては、今、この間のときも、インドを含みますNPT条約未締約の、いわゆる無条件のNPTへの非核兵器国としての加入をずっと要請しております。

 この前のところでは、賛成百六十八のうちですけれども、イギリスもフランスもこれに賛成しております。反対がインドとアメリカ、棄権が中国、北朝鮮等々が出てくるところなんですけれども、私どもとしては、この決議は国連総会で過去最多の賛成をもらっているところでもありますので、こういった問題については引き続き、対応としては、今、従来どおりの方向で要請していくということになるのは基本的な方向だと考えております。

谷口(和)委員 でも、今回の米印の合意につきましては、IAEAのエルバラダイ事務局長は、インドが査察を受け入れたということでNPT体制に一歩近寄らせたというような評価をして、画期的である、核不拡散体制の強化や核テロとの対決に貢献する、こういう評価をされているわけですけれども、この評価についてはどういうふうに見ていらっしゃいますでしょうか。

麻生国務大臣 エルバラダイの話というのは、御存じのように、エネルギーの不足等々、爆発する人口に対応して、化石燃料等々に対応して、エネルギー資源確保のためからこういうのはいいことではないかというのが、一面これは否定しがたい事実としてあるんだと思っておりますし、そういった意味では、今回の米印合意に関してはある程度評価をしておるということを私どもは知らないわけではありません。

 他方、核軍縮とか核不拡散という点の見地から見ると、NPTに加入していないインドに対して、いわゆる原子力技術の協力、そういったものを行うことについては、NPTを基礎にして、礎にして、不拡散とか核軍縮とかいうようなことをやっております我々としては、これはちょっとそう簡単には、いいですよというわけにいく話ではありませんので、これは注意深く検討せないかぬところなんだと思っております。

 いずれにしても、この原子力体制、インドへの原子力協力の是非については、これは結構国際的にもいろいろ議論が出てくるところだと思っておりますので、この議論には私どもとしても積極的に参加をして、その中から結論を導いていきたいと思っております。

谷口(和)委員 もう一つこの問題についてお伺いをしておきたいと思いますけれども、今回の合意で、イラン、そしてまた北朝鮮の核問題に与える影響というものはかなり大きいんではないかということで、かなり懸念をされているわけです。

 恐らく、特にイランは、この米印合意を盾に、インドがいいのなら、うちもということで反発を強めてくるだろうということが予想されるわけでありますけれども、大臣は、今回の合意がイラン、北朝鮮の核問題に与える影響についてはどういうふうに見ていらっしゃいますでしょう。

麻生国務大臣 インドとイラン、北朝鮮というのは前提条件がかなり異なっているとは思うんですが、大量破壊兵器と言われるものの不拡散というものに関しましては、これはインドはきちんとコミットしております。また、今回の米印の合意の中におきましても、いわゆる国際的な核不拡散体制に関しましては強化するものであると説明をしておりますので、そこのところは基本的に違っております。

 また、一貫して日本としては、NPTのルールのもと、体制のもとで、これを維持強化していくことがいわゆる核不拡散につながっていく、核軍縮につながっていくという立場でありますので、イラン及び北朝鮮の核問題の解決に関して、私どもとしては、こうした立場から、今回の話が悪影響を及ぼさないようにするというような必要があるということは、率直にそういう感じはいたしております。

谷口(和)委員 次に、今度は日本とインドの関係についてお伺いをしたいと思います。

 インドはアジアの巨象というふうに言われておりますけれども、日本とインドの貿易額を見ますと、韓国とインドとの大体十分の一、そして、中国とインドの三十分の一ということで、これまで日本とインドの関係は余り目立たないというか、特に目立つようなものではなくて、最近では中国に対する牽制というような文脈でこの日印の関係強化が語られることが多いように思うわけですけれども、私は、単に、インドとの関係強化というのは中国に対する牽制ということにとどまらず、日本にとってインドは、インドの持つ潜在力、またIT分野における急成長、そして地理的な位置など、経済安全保障面でも非常に大事であり、また魅力的である、こういうふうに思うわけであります。さらに、アジア地域の発展という意味でも無視できない、こういう存在になっていると思います。

 インドは、インドの状況を見ますと、ITとかそれから医療技術、こういった分野では世界の最先端を行く能力を持っておられるわけで、その一方で、製造業はどちらかというと弱い。そうすると、日本とお互いに補完関係というか、補い合う、そういう体質にあるかというふうに思うわけです。

 この日印関係を、今も政府は大変御努力をされていると思いますけれども、より発展させていくためには、経済連携協定、EPAなど経済面での協力をしっかりと進めていくことが大事であるというふうに思います。

 EPAにつきましては、麻生大臣が一月にインドを訪問された際に、EPAの可能性を真剣に検討していくということで合意をされております。それから、今月の八日に日本記者クラブで講演をされた中で、EPAについて、慌ててやる必要はないが、急いでやるべしというふうにおっしゃられて、その後、三つの改善策を提案されております。

 その中で、その第一として、これまでの交渉の蓄積ができてきたので、初めから仕上がりの姿をいわばひな形という形で相手国にお見せし、つくっていく方法がある、これは、ベトナム、ブルネイ、そしてインドといった相手に試しつつある、こうおっしゃられておりますけれども、実際に、今このインドとのEPA締結に向けた交渉はどういう状況であり、今後どう進めていかれるのか、また、締結に向けて何か障壁となるようなものがあるのかどうか、お伺いをしたいと思います。

麻生国務大臣 インドとの関係におきましては、少なくとも世界最大の民主主義国家、もちろんアジアの中において、十億の民を持ち、選挙というルールによって国が運営されている多分最大の民主主義国家であること、また、人口が間違いなく急激にふえてきていること、英語は通じる。かなり難しい英語ですけれども、通じます。それと、八月十五日を独立記念日にしておりまして、八月十五日に独立記念日、たしか八月の広島の原爆投下の日が国会では黙祷というような、これをしている国というのは私はインド以外知らないんですが、そういった極めて親日的な国であるのが一点。

 もう一点は、今、フラッシュメモリーという例のIT関係の機械やら何やらのものでいきますと、ソフトはインドの方が私はなかなかのものなんだと現実的にそう思っております。シリコンバレーに行きましても、かつての東洋人から、今インド人の比率が急激に高まっているというのは、シリコンバレーのオラクルやいろいろな会社に行きましても、説明に出てくる人たちやら何やら見ていますと、大体インド系という人がすごく多いように思いますし、日本としては、ハードはいいんですがソフトはいま一つというのはよく言われているところなので、これは双方で補完し合えるのではないかという谷口さんの御説は、間違いなくそのように思っております。

 したがって、日本としては、今後ともこれを組むべきということで、昨年の四月に小泉総理の訪印、その後私も八月の選挙の真っ最中に行ったり、マンモハン・シンという人があらわれたり、いろいろなことをさせていただいて、私どもとしては、インドに非常に大きな可能性を認めておりますし、向こう側も非常に親日的なこともこれあり、日本と同じように中小企業をすごい数育成しようというので、大企業だけぼんというのじゃなくて、中小企業をきちんと育成していこうという姿勢も日本とかなり似たような考え方をしておりますので、この国とはいろいろな意味で話をきちんとし合って、力を協調し合う可能性というのは非常に高いと思っております。

 今言われましたように、EPAの話につきましても、この六月ぐらいには多分大筋合意ができ上がるであろうと思っておりますので、私どもは、この報告書の内容を踏まえて、今後積極的にインドとのEPAは進めてまいりたいと考えております。

谷口(和)委員 ぜひ強力にお進めを願いたいと思います。

 先ほどインドの方の英語がちょっとというお話もありましたけれども、私もかつて上司にいましたので実感も多少はしておるところであります。

 先ほどお話しになりました中小企業も含めて、日本の企業がインドに出ていくためには、特に電力、道路、鉄道、港湾などのインフラの整備が大変重要であるというふうに思うわけです。そのためには、インフラ整備のためには、インドに対するODAをしっかりと拡充していくべきだというふうに思います。

 インドのODAで、日本の円借款で進められている地下鉄の建設事業があります。麻生大臣も一月に行かれたときに多分視察をされておられると思いますけれども、デリー・メトロ、我が党も二月にインド訪問団を出しておりまして、そこを視察した際も、大変喜ばれていたというようなお話を伺っております。

 このODA、インドに対するODA、政府として、今後インフラ整備も含めてODAをどういうふうに進めていかれるのか、その戦略を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 日本のインドに対しますODAに関しましては、今おっしゃいましたように、インフラ整備というのは非常に大事だというのは間違いないと思っております。すなわち、インフラ整備することによって経済成長を促進させるというのが、まず第一の観点なんだと思います。

 もう一個は、やはり豊かになった、いわゆるインターネット等々の最近の情報技術関連に関与する人たちはわっと豊かになっていったんだと思いますが、他方、十一億人からの人で貧困層というものの部分がある。また、環境問題というのもこれは真剣に考えないと、急激な経済成長は必ず環境問題を引き起こすのは、日本もその例外ではありませんでしたから、そういった意味では、そこらのところの改善。

 三つ目は、これは、人的交流の拡大、人材育成等々、こういったことはきちんとやっていかないかぬということで、インフラ整備、インドの地下鉄の話をされましたけれども、今、貨物鉄道網の輸送というのを向こうからの要請も踏まえて調査中であります。

 そういった意味で、ODAを呼び水として、日本からの企業もこっちにということで、かなりの数が二〇〇三年からこの三年間、二〇〇六年一月までで見ましても、かれこれ一年半ぐらいの間に二百三十一社ありました日本企業は三百二十八社まで四〇%ぐらいふえておりますし、また、過去三年間の円借款の案件を見ましても、経済インフラの分野に関しましては、電力とか運輸等々のインフラが占める割合は約六割、六〇%ということになっております。

 私どもといたしましては、今のデリー・メトロ、地下鉄のことですけれども、このデリー・メトロと言われる地下鉄に関しましても非常に大きな成功をおさめた。

 視察をされたそうですが、あそこの総裁の言ったせりふが私には非常に忘れられないんですけれども、入り口に、もうだれが見ても目につくように、これは日本との円借のおかげでできました、下におりていくと、今度は、改札口の入り口に円グラフがつくってあって、七五%は全部これは日本からのお金でできたんですよというようなことが、だれの目に見ても感謝というふうなことが書いてあるんです。

 わかりやすくしてもらってありがとうございますと言ってその総裁にお礼を言ったら、いや、とんでもない、私は、この工事の最初から関与したんですが、朝八時に来いというので、日本人の技術屋がざっと来て、我々もつらっと行ったら、八時に行ったら日本から来ている人は全員作業服を着て待っていた。八時に来いと言ったら八時には仕事ができる格好で来るのが当たり前じゃないかとどなりつけられて、次の日は七時四十五分に行ったらもう既にみんな遅かった。三日目にはやむを得ぬから七時半に行った。みんな既にそのころで着がえ始めていた。

 いわゆる労働とか勤勉とかいうものの態度というものに関しては、今回のこのニューデリーの真っただ中で、働くというのはどういうことか、勤勉とは何たるかという、勤勉、労働の哲学、文化というのを日本から輸出してもらった。これが最大の感謝だ。したがって、我々はこのデリー・メトロをベストアンバサダーと呼んでいるんだという話をしたときには、こっちの方が、ちょっと、うん、なかなか聞かせる話をするなと思って、人の弱いところをついてくるなと思って感心して聞いていたんです。

 これは、だれに聞いてもみんな同じことを言いますが、技術屋さんは特にそういうように言ってきたそうで、予定の期日、これだけ大きなあれを、予定というよりも納期がめちゃうるさかったというわけです。一日おくれると、わんわん言われる。

 とにかく、天気がいいんだから、雨でおくれるなんということはないのだから、きちんと時間通りやれ。時間もうるさい、納期もうるさいという話を延々としていましたけれども、少なくとも予定より前にできたというのは、過去インドで、これだけ大きなプロジェクトで予定期日の前に納入ができたというのは過去に一回も例がない、その意味では我々は心から感謝をすると言われたのが、やはりODAというお金の裏には文化とか労働とかいうものも一緒について出ていっているんだという意識というものを、私ども、JICAやら技術協力をしている者、もちろん外務省職員に至るまで、この点だけはきっちり頭に入れて、我々の態度がちゃんと大事なんだ、働いている態度というものが輸出されているという点も忘れちゃいかぬところだというのが率直な実感です。

谷口(和)委員 ぜひベストアンバサダーをたくさんつくっていただけるようにお願いをしたいと思います。

 もう時間が余りありませんので、最後一点、これはちょっとやわらかい話をお伺いしたいと思います。

 インドにはマンゴーレインという言葉があるそうでありまして、四月の中旬から五月の初旬にかけてデカン高原に降る雨で、マンゴーの王様とまで言われるインド産のアルフォンソマンゴーを一気に熟させてくれる恵みの雨である、こういうふうに言われているそうであります。

 しかし、非常においしいと言われるこのアルフォンソマンゴーは、今のところ日本には入れることが、輸入することができないという状況にあります。インターネットなんかを見ておりますと、今加工品は入ってきているそうでありますけれども、ぜひこのアルフォンソマンゴーを生で食べたい、こういう声がたくさんあるように見受けられます。

 先ほど言いましたけれども、我が党がインドを訪問した折も、ぜひこのインド産のマンゴーを日本に輸出したい、こういう強い意向を持っておられたようでありますし、検疫の問題をクリアしなければいけないんでしょうけれども、日本とインドの友好の象徴的な話題として、ぜひインド産のマンゴーの輸入を早急に解禁すべきだというふうに思いますけれども、植物検疫上の手続、今現状はどういうふうになっているのか、最後にお伺いをしたいと思います。

伊地知政府参考人 お答えいたします。

 インドでは、我が国では発生をしていない果樹類の重要な害虫でありますミカンコミバエなどのミバエ類が発生をしているため、我が国は植物防疫法に基づきまして、寄主植物でありますマンゴー生果実の輸入を禁止しているところであります。

 マンゴー生果実の輸入解禁に必要となります殺虫処理技術がインド側で開発をされまして、この殺虫処理の有効性を確認する現地確認試験を行うために、本年三月下旬から我が国の専門家をインドに派遣する方向で協議をしているところであります。

 今後、この現地確認試験によりまして、インド側の殺虫処理が有効かつ適切であることを確認し、インド側と具体的な検疫条件について協議をした上で、輸入解禁に向けた国内手続を進めることとしております。

谷口(和)委員 ぜひ、できるだけ早いうちに輸入ができるようにお願いをしたいと思います。

 ありがとうございました。

原田委員長 次に、篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原孝でございます。

 今国会では外務委員会で初めて質問をさせていただきます。外交問題、もう既にいろいろな方が質問されておりますけれども、山ほどあります。私もそういったものについてお伺いしたいことがあるんですが、それはさておきまして、きょうは、外交の体制の整備について、援軍の意味を含めましてちょっと質問というか指摘させていただきたいと思います。

 私も、にわか外交官で、パリに三年ほど外務省のお世話になったことがございまして、ですから、一歩外から、外務省の組織体制のあり方、こうしたらもっとうまく動くんじゃないかなというのを感じたことがございまして、ずっとそれを温めておりました。

 外交は非常に大事だと思っております。私は、印象に残る外交についての本はいろいろあるんですが、高坂正堯京都大学教授、国際政治学の先生でございますけれども、「文明が衰亡するとき」という本を書かれました。

 政治学者の本としては一般でもそこそこ読まれた本だろうと思いますけれども、その中で、オランダのチューリップの関係のバブルですね、バブルが起こる前ですけれども、そういったことが起こり得るということを指摘されていました。

 それから、最も印象に残ったのがベネチアのくだりでした。ベニスですね。繁栄した、しかし当然衰えていく。勃興期にある国と衰退期にある国というのがあるわけです。日本は今どこにあるのかわかりませんけれども、そろそろ衰退期なのかもしれません。しかし、そのベニスは、衰退期になっても五百年ほどずっと、いろいろな国が勃興しては衰えていくというのに、一つの国として、一つの地域として繁栄し続けた。その理由はたぐいまれなる外交にある。

 ヨーロッパは、御存じのとおり、小さな国がいっぱいあって、例えば今のドイツ、フランスなんてあんな形になったのはつい最近のことです。国境はしょっちゅう変わっていたわけです。

 日本はそういうのがなかったわけです。そういうことから見ると、日本というのは、もともと外交がない、隣に対する配慮なんというのは余りない。配慮に欠ける発言をされる方も政治家の中にもいっぱいありますし、それはしようがないんだろうと思うんです。学習してこなかった。

 それに対してヨーロッパの小国のベニスは、外交官というか、そういったものを育て上げて、その人たちに大活躍してもらって五百年栄えた。五百年なんて日本は気が遠くなりますけれども、江戸幕府だって一六〇〇年ですから、それからまだ五百年たっていないというのがあるわけです。

 その外交官がやはりしっかりしてもらわなくちゃいけない。我々の先兵に、日本国の先兵になっていただく人たちですから、この人たちに、言ってみれば外交力なんでしょうけれども、最近の言葉で言うとコミュニケーション能力を高めていただかなくちゃならないと思うわけですけれども、一体どうやってこれを高めていくかというのをちょっと聞かせていただきたいと思います。

 最近、チャイナスクールとかいうのがよく新聞にも出てきます。大使をチャイナスクールから選ぶかそうじゃないかとかいうのがありますけれども、そういった中国語の専門の人を何人つくるか、あるいは今イラクの問題等ありますけれども、アラビア語の人を何人つくるかというような、そういった語学の人数の振り分けというのはどういったことを基準にしてやっておられるのでしょうか。そして、最近の国際情勢をかんがみて、どの国をふやしてどの国を減らすということをしておられるんでしょうか。

塩尻政府参考人 語学の振り分けでございますけれども、入省した時点で振り分けを行っております。今、四十二カ国語、これについての研修をしております。四十二カ国語の専門家がいるということでございます。

 お尋ねの言葉の現在の人数でございますけれども、中国語が今百五十四名おります。それから、韓国語が六十八名おります。アラビア語が百十八名おります。これは、その言葉が使われている国の数、人口、あるいは我が国との関係、それから情報収集、外交活動をするのに必要な要員、そういったものを基準として決定しているということでございます。

 最近どういうところの言葉をふやしているかという御質問でございますけれども、今申し上げましたような点を勘案しまして、最近でいえばアラビア語あるいは中国語等々の言葉の専門家をふやしているというのが現状でございます。

篠原委員 やはり語学が中心になりますから、最近、外交官試験がなくなって、一般の公務員試験の中から選ぶわけですから、語学がそれほどできなくて、語学音痴の人も入っている。それでも僕はいいんだろうと思います。ですから、語学の訓練をちゃんとしていただかなければならないと思います。

 そこで問題になってくるのが、私が聞いている限りでは、今お答えになったアラビア語や韓国語や中国語は特殊外国語だ、だから英語も研修させなければいけないという配慮がなされているはずなんです。ところが、スペイン語とかフランス語とかドイツ語になると、そこの研修に行くけれども、英語は勝手に覚えろという形で、余り研修の機会が与えられていないというのを、私は十年ほど前、パリの代表部の勤務のときに伺ったんです。

 どういうことがあったか、ちょっとエピソードをお話しいたしますと、私が英語ができなくて、これでは大変だ。OECD代表部というところですから、抽象的な議論を英語でするわけですよ。日本語だったら幾らでもまくし立ててやるんですけれども、英語だと十分の一ぐらいになって、それでもしゃべり過ぎだとか注意を受けたことがありますけれども、そういうのがあるわけです。

 それで僕が嘆いていたら、篠原さん、何ぜいたく言っているんですか、あなたは国費で留学した、人事院で二年間留学したんです、彼は優秀なんですが、スペインに留学しただけだというんです。英語圏の勤務なんて一回もしていない、そして英語でやっている。僕の方がうまくて当然だとか言って、理論的な反論を受けまして、それは外務省がとぼけているからだ、そんなことは直したらいいんだ、スペイン語なんてそんなに使うはずがないんだから、スペイン語を二年やったら英語を一年とかいうのに何でしないんだと言ったら、いや、アラビア語や韓国語や中国語やロシア語はそうなっているけれども、フランス語とドイツ語とスペイン語はそうなっていないと。それはかわいそうじゃないかということを申し上げたんです。

 今もそういう状態なんでしょうか。もしそういう状態だったらぜひ直していただきたいんですね。簡単にできることじゃないですか。大臣の一言で変わるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

塩尻政府参考人 今委員が言われたとおり、アラビア語、中国語、韓国語等々については、二年間その国に行って勉強をし、一年間は英語圏で勉強するというようなことでやっております。

 ただ、他方、フランス語、ドイツ語、スペイン語等々については、人員の関係あるいは予算の関係等々もあって、これは二年間の研修をその国でやっているというのが現状でございます。

 ただ、他方、いろいろな機会に、研修から帰ってきたとき、あるいは中堅の職員になったとき等々の機会を使って、集中的な英語の研修、これはかなり徹底した英語の研修をやっているというのが現状でございます。

麻生国務大臣 これは、篠原先生、基本的には予算と人数の関係なんですよ。予算がない、人数が足りないから、その一年間、研修に出すというと穴があいちゃうわけで、それを何とか埋めなければいかぬからというので、それでそのままということになっておるのが一つの理由、もちろん予算の関係、二つあるんだと思います。

 もう一つ、やはり我々はよく頭に入れておかないかぬのは、これはイギリスの外務省の人でしたか、教えてもらったんですが、入省しますでしょう、おまえ、何語やるんだと言われると、日本は自分の希望をざっと書くわけですよ。そうすると、ウルドゥー語とかスワヒリ語なんて書く人はほとんどいませんから、そういった中にあって、ずっと書いたものの中で、書いた希望の順番ということになっておるけれども、それはうそ八百で、一つでも合っていれば希望というので、第十何番目の希望でも希望ということになって当てはめざるを得ません。

 ある国に行きますと、イヤホンをつけさせて、いきなり関係ない、例えば、アラビア語ならアラビア語、モンゴル語ならモンゴル語をうわっと聞かせるわけです。それを、ノートをとらせて、一番とれた者が一番語学の才能がある。したがって、ヨーロッパから一番遠い日本、中国、韓国に出すんですよ。だから、日本語がうまい、韓国語がうまいというのは、イギリス人から見たら最も語学センスがある者がそのときの試験で出されるわけです。

 逆に言えば、我々の方は、反対が必ずしも正しいとは限りませんが、日本から見たら、英語とか何とかいうのは最も難しいということになりますね、逆ですから。

 事実、日本人は語学が下手だという話はよくありますが、海外青年協力隊なんかの研修なんか何回かいろいろ行くことがありましたけれども、例えば、インドネシア語なんというのは、三カ月ぐらいするとべらべらなのが実は若い者で何人もおりまして、そういうものを見ていると、これは語学の天才かと思うと、英語はもう全くだめ。どこか左脳とか右脳とかよく知りませんけれども、そこらのところが、やはり我々は、事このユーラシア大陸の西半分の方の言葉はなかなか難しいんだという大前提を知った上でちょっとやらぬと、なかなか難しいなというのが正直なところです。

 いずれにいたしましても、英語というのはインターナショナルなものになりつつありますので、これは、パソコンを含めて全部そうなってくるとなると、言われるように、スペイン語であろうとドイツ語であろうと、最低限の英語はそこそこできるようにせいという御要望は、よく私ども理解をできるところであります。

篠原委員 さすがに大臣、すぐおわかりいただけるかと思います。

 それで、提案ですけれども、韓国語やアラビア語や中国語が三年になっているというんだったら、英語圏の人は、今大臣がおっしゃったウルドゥー語とかスワヒリ語、マイナーな言葉をそのかわり習えといって三年にするなり、一年半英語なりスペイン語なりドイツ語で、あと一年はほかの語というのをやったりして対応できるんじゃないかと思う。ちょっとした工夫で私はできるんじゃないかと思いますので、ぜひそのようにしていただきたいと思います。

 それから、語学の専門家というのも大事なんだろうと思いますけれども、私は、外交の専門家でぜひ外務省で気を使っていただきたいのは、語学の専門家、国別の専門家は非常に立派な人が育っているはずなんです。何回も、三回、四回勤務して、そちらの大使になる。小さな国でも、若いときに書記官で行ったところの大使になるとかいうのが行われているケースが多いんだろうと思いますけれども、項目別の専門家が一体育っているかどうかという、これが問題なんです。

 例えば、先ほどインドについて、大臣は、環境問題が大事だ。地球環境問題というのはずっと大事になってきて、環境省では、地球環境部だったのが地球環境局になっている。環境省も慌てて言葉のできる人材を育成しているはずなんです。しかし、そういったものを補って、やはり外務省の人がリードしていただかなけりゃならないんですが、テーマ別の専門家の育成というのをぜひ取り組んでいただきたいと思っているんですが、大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 これはもう篠原先生、全く正しい指摘だと思っております。

 例えば、いわゆる安全保障とか軍備管理、軍縮等々、ほかにも経済問題やら、いろいろ私どもとして育成をしていかないかぬところなんだと思いますが、特に外務省の場合、条約というのをたくさん結びますので、この条約というのは、コンマがこっちについていたからバツで、こっちについていたから丸とか、物すごく、コンマ一個で意味が全く違っちゃう文章がありますので、そういった者を養成しているところではありますけれども、一つだけ、余り表に出ていないところで、通称ガッチャマンというガット専門のプロがいるんです。

 ガッチャマンという外務省の中でしか通じない言葉なんですけれども、ガットマン、通称ガッチャマンというので、国際の条約で、例えば経済協力のそればかりやっている専門官というのが二十数名、これはもう本当に、これこそ私はもっと世の中に日を当ててもらいたいなと思う人たちなんです。

 この人たちが今EPAをやったりFTAをやったり、そこが最先端でやって、一つEPAをつくり上げますと、この間メキシコができ上がりましたけれども、英語と日本語とスペイン語と、大体一メーターぐらいの文書になるんです。これ、サインするというと、するときに、書類の方が高いなんというのが出ました中で、この間、小泉総理とメキシコのあれを見て、何だあの白い棚はと聞かれましたが、あれが全部書類の量なんです。

 それを全部やるわけですから、そういった意味で、プロというのを育てなければいかぬというのは全くおっしゃるとおりなので、これは専門官はもちろんのこと、こういったプロの養成というのは、これは枯渇いたしますので、体力的な問題もありますし、経験も積ませないかぬし、いろいろな意味で、最も私どもとして今後、言葉がうまければいいだけだったら別に苦労はせぬのであって、それ以外のところを、きちんとした専門的な知識、経験というのを積ませなきゃいかぬという御指摘は、全く正しいと思います。

篠原委員 大臣、これも前向きに答弁いただきまして、ありがとうございます。というか、そうやっていかなくちゃいけないんだろうと思います。

 例えば、プロの育成の仕方なんて幾らでもあるのに、どうも、だけれどもそういう人事はしていない。どういうことかといいますと、例えば環境問題。地球環境課がありますよね。ですけれども、環境省への出向というのもあるんですけれども、余りしていない。

 外交は全部の省庁にかかわりますから、人事交流をしようといったら外務省が一番しやすいはずなんです。農林水産省も人事交流いたしまして、第一号で来られた方が大出世されておられます、どなたか、外務省の人たちはすぐおわかりいただけるのだろうと思いますけれども。

 そうやって、プロになっていかれる。そういう人を、だから、環境でいったらUNEPに出向するとか、ナイロビに行くとかいって、意識的に三、四回やって、プロになって、最後は事務局長になる、そういったようなことを考えていかなくちゃいけないんだろうと思います。

 もう一つ、外務省が人事で、体制のところで欠けているのがあるのは、国際機関への出向じゃないかと思います。

 いろいろな省庁が国際機関へ出向させている。今、大臣、ガッチャマンとおっしゃる、ガット、WTOですね。そういったところの事務局にもやはり人を派遣しなけりゃいけないんじゃないかと思いますけれども、伺ったところによりますと、外務省のキャリア官僚でたった七人しか出向していない。

 僕は、これは少な過ぎるので、もっと、先ほど人数が足りない、予算というのがありましたけれども、国際機関に出向する人も考えて、それで採用して、常に国際機関に日本の優秀な外交官が行っていて、インターナショナル・ディシジョンメーキング・スタイルを身につけて、ばりばりやっていただくというようなことにしなけりゃいけないんじゃないかと思いますけれども、外務省は国際機関への出向についてはどのような感じで取り組んでおられるのでしょうか。

塩尻政府参考人 グローバル化の世界になりまして、ますますプロアクティブな外交が求められているというふうに思っております。その中で、ルールづくりをする国際機関、あるいは国際的な枠組みをする国際機関、それから、豊富な経験、豊富な情報、そういうものを持っている国際機関にもっともっと日本の職員を、日本人を送らなければいけないというふうに思っています。

 外務省も、そういう観点からできるだけ人を送りたいというふうに思っておりますけれども、先ほど篠原先生おっしゃられたとおり、一種の人間では七人ですけれども、外務省全体では二十二人出しております。まさに国際機関で活躍できる人材を育て、もっともっと出したいというふうに思っております。

篠原委員 今、ついでに、質問通告しておりませんけれども、塩尻官房長、石川経済局長、小松国際法局長おられますが、今の局長クラスで国際機関への勤務の経験おありになる方おられますか。

塩尻政府参考人 ちょっとうろ覚えで、もしかしたら間違っているかもわかりませんけれども、今WTOの担当大使であります近藤、これはOECDの事務局に行っておりました。それから、アジア局長をやっております佐々江、これがUNHCRに出向していたというふうに記憶しております。

篠原委員 済みません、通告していないのに。

 何でそんなことを申し上げたかというと、やはり、エリートコースみたいのがちょっとあるわけですね。何か、言っちゃ悪いんですが、端パイみたいな人を国際機関にやるとかいうんじゃなくて、ピカ一を出して、そして出世させるというふうにしてやっていただければうまくいくんじゃないのかと思います。

 それで、最後はやはり国を挙げて、日本はいっぱいお金を出している、金ないと言いますけれども、日本は、国際機関からはお金だけ出して文句を一番言わないいい国というふうになっているわけです。

 今、松浦さんがユネスコの事務局長をやっておられます。これは小渕総理が相当力を入れて、どの大使にもぜひ運動しろとかやって、いろいろな経緯でうまくいったんですけれども、ああいった人たちを幾らでも、幾らでもといって簡単にはできないと思います。やはりそういう人材の宝庫は外務省に私はあると思います。

 大臣も、そういった感じで、専門家を養成して、国際機関にぜひいろいろな人を送り込んでいただきたいと思いますけれども、御見解をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 これは、篠原先生、私ども外務省に来てかれこれ四カ月なんですけれども、やはり国内で押しの強い大蔵省と交渉するのに向いた役人とか、わかりますか、言っている意味。やられたからおわかりだと思います、この辺にも元経験者がいますけれども。それとか、海外の大使館で映える者とか、国際機関に出すと、日本の中だとしゃべり過ぎて折り合いが悪いけれども、外国に出すとちょうどいいとか、これは人によって全然能力が、ああというような者でも、海外へ行くとえらく輝いているのっているんですよ。ほう、こいつはというのが、私どもちょっと長いことおりますので、そういうのを見ていますと、これは向き不向き、適性というのを探さないかぬなというのが正直な実感なんです。

 ただ、今おっしゃいましたように、松浦にしても、それからITUの内海にしても、それぞれ、いわゆる情報通信の技術の一番上に行きます日本人を今度も出します、これはNTTから持ってきて出すんですけれども、そういったようなところには、私どもとして、今後こういった部分で、一番先に情報がそこに入ってきますから、そういった意味では、すごく大事なところだ、全くおっしゃるとおりにそう思います。

 ここらのところに向いた、またそういった能力に適したのは、何とかパイ、端パイと言われましたね、ちょっと私マージャン詳しくないので、端パイみたいなものじゃなくて、最もこうしたところに適した人材というのは、役所の中でも、国際機関向きとか外国向きとか、いろいろおりますので、そういったものを選抜して、とても外国に向かないけれども交渉屋として向いているとか、そういったのは、とにかく、おまえ、ずっと国内とか、やり方はいろいろあるんだと思いますね。

 私、そういった意味で、人の見方もいろいろ、官房の方で探さないかぬところだとは思いますけれども、国際機関にこれだけ金を出して、しかも何にも文句も言わず、何もしていないというのはおかしいじゃないかというのは、全くおっしゃるとおりなので、私どもとしては、そういったところにただただ資金を出すだけではなく、いい人材も提供していく、そういった姿勢というのは大変大事なものだと思っております。

 ありがとうございました。

篠原委員 今、大臣は向き不向きがあるということをおっしゃいましたけれども、私は、氏と育ちとどっちが大事か、才能と育ちと。役所の中で見ていると、みんな優秀ですよ。特に外務省の方はみんな優秀で、どちらかというと才能云々よりも、どういうポストでどういう人にどういう仕事をしたか、どういう立派な上司に仕えたか、どういうだめ上司に仕えたか、そういうので結構変わってくるんじゃないかと思う。

 ですから、いろいろな機会を与える。だから、さっき語学のことも申し上げたわけですけれども、私は農林水産省というさえない役所に三十年勤めておりました。ろくな行政をしていなくて、隣の方には予算をばっさばっさ切られたりしておりましたけれども、たまにはいいことをしているんです。

 どういうことをしているかというと、研修制度がありまして、どういう研修かというと、入省二年目の若手を農山漁村派遣研修というので一カ月農山漁村にぶち込むんです。

 私なんか帯広の酪農家に行って、朝六時から起きてやって働きました。余談になりますけれども、疲れるんですよ。それで、牛乳の缶が、中学二年生の子供が上がるのに、僕は上がらないんです。やせこけていまして、ばかにされて、歯を食いしばって草かきしていたら、きば出しているとかいって、そういうのをやってきているわけです。

 ところが、ぼけた者は、農林水産省がお金を出して置いてもらっているんですが、アルバイト料をもらってくるべきだとかとんでもないことを言うのがいるんですけれども、おまえ、農林水産省にいて貢献したのは一カ月の農作業だけだとかいって僕は怒ったこともあるんですが、これが一つあるんです。たたき込むためにです。

 もう一つ研修がありまして、市町村に三年目に出向させるんです。これは全部じゃないです。何とか郡何とか村です、何とか町。それは、農政は現場に直結していますから、何とか所長とか、何とか局長とか、何とか課長で行くんじゃないんです。非常に平等なんです。農林水産省では数少ないいい仕組みだと私は思っております。

 それで非常に成長してくるんです。一生、定点観測できる。農政、こんなぼけたことをやると、今度も変な法案を出すわけですけれども、現場に聞くことができるわけです。そこの市長さんや何かが、ずっと、陳情に来たら必ずそこに寄るというのができるわけです。だから、国内に大使を置いているようなもの、それで向こうからすると霞が関に大使を置いているようなもの。

 これは、なぜこれを申し上げているかというと、市町村、何とか町役場に行って、農政もやるんですけれども、二年目は企画とか総務とかに必ず行くんですよ。全体をやる。そうすると、市町村が一体どう動くかというのがわかってきて、なかなか感度がよくなるんですね。

 外務省の皆さんを見ていると、感度がいいんですが、多分そちらに並んでいる局長さんたちは大国に行って、政治マターをやり、経済マターをやりということで、小さなアフリカの国、中南米の国に行って、十人ぐらいの大使館で、十人ぐらいの大使館でも国という点では同じです、その国全体を見てくるということは余りされていないんじゃないのか。

 ですから、語学の研修もそうなんですが、二十代後半から三十代のときに、一年でいいんだろうと思うんですが、小国にぶち込んで、そして、そこで全体の国の外交の姿を見せる。

 そうじゃないと、優秀な人たちは、さっきガッチャマンじゃないですが、パーツ、パーツ屋になっていって、そしてトータルのができない。一つの国を見ていると、今度、国際機関の長としても成り立つ。語学だけできる云々じゃなくて、トータルな人間が絶対でき上がってくるんだろうと思います。

 氏より育ちで、育成する方に重点を置いていただきたい。これもぜひ実現していただきたいんですが、いかがでしょうか。

塩尻政府参考人 今篠原委員が言われたお話、大変共鳴を持つ次第でございます。

 外務省の職員も個人差がいろいろありますけれども、できる限り、先進国と、それから小国、途上国に勤務をバランスよくするというようなことで今考えて、人事に意を用いているということでございます。

 それから、特に、最近アフガンですとかイラクですとか、そういうところの復興支援あるいは平和構築というようなものが大きな外交の課題になっております。そういう点でも、途上国で活躍できる人材をもっともっとつくっていきたいというふうに思っております。

篠原委員 外務省の中で、今、語学のプロもいて、安全保障のプロ、地球環境問題のプロとつくっていって、何でもできるみたいな感じになりますけれども、やはりそれでは無理だろうと思います。外交も、先ほど大臣がおっしゃったように、こんなに長くなったりする、こんなに積み上げられるような条約が必要になってくると、細かいところはやはり各省に任せなけりゃいけないんじゃないかと思っております。

 それで出向とかいうふうになるわけです、人事交流になるわけですけれども、そのときに、どうも外務省は、そこになると各省からようでもないのが、ようでもないというのは標準語ですか、要らないのに受け入れられないというような感じで、結構嫌がる傾向があるんじゃないかと思います。

 これでまた思い出すのは高坂正堯教授ですけれども、私がパリに勤務したときに来られまして、私と、それから教え子のもう一人、今は駐英公使をやっている方が貿易問題担当でしたし、中近東局長も欧州におられまして、我々三人と高坂さんとパリで外交問題について議論しました。

 高坂さんが主張されたことはどういうことかというと、その一端を御紹介いたしますと、外務省は一たん上に立つべきである、パーツは各省から来させてやらせたらいいというのを小和田さんとこの間議論してきたけれども、全然議論がかみ合わなかったとおっしゃっていました。おまえらはどうだと我々に意見を聞きまして、どう言ったか忘れたんですけれども、私は従順に賛成したような気がするんですけれども、二人の外務省のお役人というか官僚はどうしたかわからないんですが、私は高坂さんの言うとおりだと思っております。

 そういう点では、各省、例えば、具体的なのは、僕は環境省のところで、環境委員会にも所属しております、そこで質問をしたわけですけれども、そうしたらそこであぶり出されてきたんですが、EU代表部に環境省から一人も行っていないと。世界の環境政策はEUが結構リードしているわけです。それは、EUへ出したいと言っているのを拒否しているのはやはりよくないので、そんなのはさっさと認めてやらせてとかいう形で、各省との融合等についてもぜひ配慮していただけたらと思います。

 これについての見解をお伺いして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

金田副大臣 先ほど篠原先生からは、これまで公務員としての経験を踏まえられたなかなかよい御意見や御指摘をお聞きできたなという思いでおりました。

 ただいまの質問につきましては、在外公館に派遣されます各省庁からの出向者、いわゆるアタッシェと言っているわけですが、これを受け入れることは、外務省として、各省庁の高い専門知識を有する人材を外交の場で活用するという意味では非常に有益なことということで私どもは認識しているわけであります。実際に、在外公館において貴重な戦力になっているということも、活躍されていることも確かであります。

 各省庁の派遣要望というのは基本的に尊重しているわけですけれども、その派遣要望が例えば特定の在外公館に集中しましたりした場合には、その公館の総館員定数というのが適正規模を上回ってしまうといったような問題も生じたりもいたしますので、そういう場合には、やはり慎重な判断というものが求められる場合もあるということは御理解いただけると思います。

 いずれにしましても、在外公館におけるアタッシェの配置につきましては、外務省改革の一環としまして、平成十四年以降、時代のニーズに適合したものであるか否かを中心に見直しを行うということをしておるわけであります。その見直しを踏まえまして、各省庁とも協議をしながらアタッシェの適正な配置に努めていきたい、このように思っている次第であります。

 今、貴重な資料をいただきましたので、平成十八年二月現在のEU代表部の館員構成、これをお話し申し上げますと、全館員数三十六人のうち、外務省職員数が十八人、そして各省庁からのアタッシェの数は十八人、同じ数であります。そして、複数のアタッシェを派遣する省庁及び人数が、経済産業省三人、財務省二人、国土交通省二人、農林水産省二人、厚生労働省二人ということで、合併された省庁を含めて、昔からの役所が続いているわけですね。こういった役所について、一人で十分かどうかとか、そういうことも見直しをしている状況であるということを御説明させておいていただきます。

篠原委員 ありがとうございました。

 今の合併省庁は一人でいいとか、そういうので、でこしゃこつければいいんだろうと思います。ぜひ、そういうふうにして一番いい体制で臨むようにしていただけたらと思います。

 どうもありがとうございました。

原田委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十時四十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十二分開議

原田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。山口壯君。

山口(壯)委員 民主党の山口壯です。

 この間、特別協定については、本会議で、心ならずもという部分が大分あるんですけれども、賛成ということにしました。

 でも、グアムへの海兵隊の移転の問題については、根本的な問題を含んでいますから、このことについては本当はもっともっときちっとした説明がなければいけないと私は思ったんですけれども、前回も賛成ということで、これからさらに光熱水費とか切り込んでいくということでしたわけですけれども、ハワイでの協議は十一日に終わったわけです。既に局長のところにも大臣のところにも報告電は入っているんです。その中で、グアムへの海兵隊の海外移転についてどういうふうなやりとりがあったのか、それについてお聞かせください。

麻生国務大臣 今お話がありましたように、去る三月の七日から十一日まで、ホノルルにおいて、兵力再編につきまして最終的な合意を三月までに行いたいということで、いろいろ当局の間で、審議官クラスということになりましょうか、そこで協議をさせていただきました。

 お話しになりましたように、グアム移転に関しましては、これはいろいろ問題を抱えていることは確かでありますので、そういったことを、今、細目を詰めて、双方で持ち帰って、さらにどうするか等々引き続き協議を行っていかなきゃしようがないので、これは多分来週ぐらいになるんだと思いますが、もう一回協議を行っていかざるを得ないと思っておりますので、今この段階で、こうなっている、ああなっているということは、ちょっと協議の途中でもありますので、今この段階で申し上げられることは余りないと思います。

山口(壯)委員 大臣、私は前回も、吉田茂さんの外務省の同期入省の広田弘毅さんが、関東軍が現地でどんどんどんどん独断専行をして、決定を突きつけられたことによって、最後はA級戦犯として命であがなわれたということまで説明しました。今、決定がなければここに持ってこれないというのであれば、昔の関東軍と一緒なわけですね。しかも、これはシビリアンコントロールがかかわっているわけですから、そういう意味では、今大臣も答弁されましたように、細目を持ち帰ってこられたと。

 では、その細目の中にどういうものが入っていたんでしょうか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 今大臣からも御答弁申し上げましたように、ハワイにおいて、グアムの移転に関する資金的な措置、これも含めていろいろな議論をいたしました。どういう施設が要るのか、それから、それに当たってどういう金額がかかるのか等々の議論はございましたけれども、米側の説明を受け取った上で、日本国内で関係省庁間での協議をいろいろやらなくてはいけないということで、ハワイで日米間で何らかの決定が行われた、何らかの合意が行われたという事実はございません。

 今後、米側の説明を受けて、日本側としてそれにどう対応をしていくかというのを関係省庁間でもよく協議をした上で、また米側と話をする、さらなる説明を求めていくという過程にあるわけでございます。

山口(壯)委員 今、河相さん、やはり決定がなければ国会に持ってこないという答弁なわけですね。でも、現実には話が行われている。

 そんな中で、例えば、どういう権限に基づいてこういう支出を要する話をされているんですか。

河相政府参考人 今も御説明したとおり、ハワイに行った日本側、これは外務省それから防衛庁の関係者が行って米側と話をしておるわけでございますけれども、その場において、日本側として何らかの決定をして、米側に対して何らかのコミットメントをしてきているということはございません。

 基本的に、今回ハワイで行ったことというのは、米側の説明をよく聴取する、そして、それに基づいて、我が方として質問をせざるを得ない、事実関係として必要な質問をしてきたというところが現在の状況でございます。

山口(壯)委員 今、河相局長、細目についてある程度出てきているわけです。大臣の答弁からもそれはうかがえます。細目について持ち帰って今関係省庁で協議をするということです。その中に、例えば、アメリカの請求書を突きつけられて、そのまま、はいそうですかじゃないと思うんですね。この間も、施設庁の長岡さんからも、ボウリング場等の話については、今は国内ではそれを自粛しているということもありました。

 したがって、アメリカから出てきた細目について、当然、そのようなものについては難しいぞということは日本側からおっしゃったんでしょうね。

河相政府参考人 お答えいたします。

 基本的に、いわゆる御指摘のようなボウリング場のみならず、いろいろな施設、具体的にボウリング場等々という議論があったわけではございませんけれども、ここの部分については資金負担をするとか、できるとかいうことも含めて、我が方としては、何か合意をする、もしくは我が方の立場を表明するというような協議内容ではございません。

山口(壯)委員 河相局長、そうすると、その合意というのは、国会での議論を経てアメリカ側にもコミットをされる、こういうことでよろしいですか。

河相政府参考人 現時点で政府として言えることは、まず、米側が一体どういう施設を考えているのか、どういうものを必要とするのかという事実をきちっと詳細に聴取した上で、日本側としてこれにどう対応していくかということは今後検討していく過程にあるわけでございますので、現時点で、先の、今後どういうふうになっていくかということを、私が今予断を持って発言をすることは差し控えさせていただきます。

山口(壯)委員 ハワイで五日間もいろいろな話をされたわけです。その中で、グアムの話も当然あって、今大臣の答弁として、細目を今検討しているんだ、こういうふうにありました。

 したがって、今アメリカから何が出てくるか待っているなんという話じゃないわけです。当然のことながら、審議官、梅本さんとかあるいは金澤さんが行かれて、そして向こう側のローレスが来て、向こう側から言ってくることが、今ここで細目がまだアメリカから何も出てこないんだなんという話じゃないはずです。それは普通に考えたってわかる。そのことを、待ってくれという話はもう通らないです。三月にまとめるといったって、今もう三月です。現実に、きょうは十五日、半分過ぎようとしている。

 そういう意味では、今大臣、お聞きになられて、大臣のところには既にいろいろな説明が入っていますか。細かい、例えば、この間も議論しました。大臣からもしっかり、そういうものについてはやはり余りよくないなという答弁もありました。そういうことが事務方にも確保されるようにぴしっと御指示をされているのでしょうか。

麻生国務大臣 しております。

山口(壯)委員 今、大臣の答弁がはっきりあったわけですから、それは河相局長、別に公電を通じれば、ワシントンの方に、こういうものについては出てきても、それは申しわけないけれども難しいよということはおっしゃれるわけです。ぜひそういうふうにしていただけますか。

河相政府参考人 いろいろな施設、いろいろなそれにかかわる資金の需要というのがあり得るんだろうと思っております。

 ただ、現時点においては、それ以外のものは日本側として資金負担ができるというようなことでもございませんし、全体として、我が方として、その米側の提案というのを精査し、また質問するべきところは質問をして、それに対してどう対応していくかというのは今後決定をしていくというプロセスにございます。

山口(壯)委員 河相局長、それで、出すときの態様、そのことについて、例えば今までのような、思いやり予算のような出し方ではなくて、私も局長とひそひそ話で、貸し付けというのもあるのかなという話をさせてもらいました。それは別に民主党として今まとめたわけではないけれども、貸し付け、要するに、本来出すべきお金ではない、しかし、待っていたら、アメリカが十年も十五年もかかるのであれば、沖縄の海兵隊が移ろうと思っても移れない、そういう中で、では日本が面倒見るのかという文脈だということが、るる答弁の中で明らかでした。

 そういう意味では、すぐに要るのであれば、しかし、日本側から最終的には出すのではなくて返してもらう、こういうのも一つの態様だと思うんですけれども、これはアメリカ側に言ったわけですね。

河相政府参考人 融資によるということかと思いますが、現時点において、融資による支援を含めていろいろな可能性について政府部内で今後検討していくということでございますけれども、何らかの具体的な措置について決定をしたという状況にはございません。

山口(壯)委員 貸し付けなり融資なり、そういうことの場合には、例えば国会での承認は必要ないとお考えなんですか。

麻生国務大臣 これは、融資を行うとか貸し付けをするとか、向こう側に対していわゆる真水でいくとか、いろいろな話がよく出ていますけれども、御存じのように具体的な決定がまだされていない以上、今申し上げることはないんですが、少なくとも国内法上どういうことになるか等々は、これは関係省庁、財務省を含めて、防衛施設庁等々、いろいろあろうと思いますので、そこらのところと、省庁と相談をした上で、新しい法律が要るなり何が要るなり、ちょっといろいろなところを詰めにゃいかぬところだと思っておりますので、今この段階でどうなったかというわけではございません。

山口(壯)委員 私は、これは非常に大事な話だと思うんですね。この大事な話を役人で決めてから国会に持ってくるというのは、今の大臣の答弁でもありました。でも、私、歴史の教訓という意味でるる申し上げていますけれども、これは本来、やはり国会にある程度きちっとした話を持ってきていただかなきゃいけないと思うんです。

 ちなみに委員長、委員長はこの話、聞かされていますか。

原田委員長 いや、私はまだ……。

山口(壯)委員 ですね。やはりこれは問題なんですよ。

 そういう意味では、きちっとした、我々がチェックができるように、役人だけでまとめるというのではなくて、そういう、我々がシビリアンコントロールができるような取り組みをしてほしいわけです。

 私は、今のグアム移転の話については、同盟の抑止力、この話についてはまだ大臣と議論していませんけれども、抑止力について、大臣は本会議での私の質問に対して、日米安保条約があるから大丈夫なんだという答えでした。

 でも、一九五一年に安保条約が結ばれたときに、これは経緯としてあるわけですけれども、例えば、最終的にアメリカ側としては、できるだけ日本に対するコミットメントをしたくなかったんです。次の戦争はヨーロッパで起こると思っていたから、極東でできるだけ足を引っ張られないようにしたかった。だから、最初は、パシフィックパクトみたいな、マルチでやりたかったんです、自分たちのコミットメントができるだけ薄くなるように。

 最後の段階で彼らは、在日米軍は極東の平和と安定のためにメイ・ビー・ユーティライズドという条文を出してきたんです、当時の西村条約局長と藤崎条約課長に出してきたんです。朝鮮戦争が行われていたから、メイ・ビー・ユーティライズド、朝鮮で在日米軍を使うことができるというふうに言われて、しようがないなと思ってオーケーしたんです。そうしたらアメリカは本当に喜んだ。要するに、メイ・ビー・ユーティライズドということは、メイ・ノット・ビー・ユーティライズド、使われないかもしれないという意味が入っていたんです。

 それで、吉田首相に当時すぐ報告したら、激怒されたらしい。ばか者、これじゃディフェンスコミットメントがなくなるじゃないかと。次の日に、条約課長がフィンという書記官あてに、メイ・ビー・ユーティライズドではなくて、本土がやられたときにはシャル・ビー・ユーティライズド、必ずユーティライズドされるということですねとノートを出したけれども、アメリカ側は完全に黙視です。

 だから、ディフェンスコミットメントが最初の五一年の条約には入っていなかったんです。十年かかって、六〇年の安保改定で初めてこのディフェンスコミットメントを取りつけたわけです。

 だから、そういう意味では、アメリカはできるだけディフェンスコミットメントをしたくないという気持ちが当初からあったということは知っておかなきゃいけない。そのために今まで日米関係において、牛肉買えと言われたら牛肉買い、オレンジ買えと言われたらオレンジ買い、今では変な牛肉さえ買えと言われているわけでしょう。全くこのディフェンスコミットメントというのがすべてのキーワードなんです。

 だから、そういう意味で、大臣が、安保条約に書かれているから大丈夫だと言うのは当てはまらないんです。そして、これを大丈夫だと思っていることが平和ぼけということにも言われてしまう。

 このことが、例えばイランの核兵器の能力、現実にはないわけです。でも、アメリカのブッシュ大統領はもうイランのことで頭がいっぱいだから、北朝鮮のことについては六カ国協議ということで中国に丸投げしてしまっている。中国は、北朝鮮が問題であればあるほど自分たちが北朝鮮カードとして使えるから、温存しているわけです。

 だから、そういう意味では日本は、現実に北朝鮮が核兵器を持っている。アメリカは、持っているところの話はほっておいて中国任せ。そして、持っていないイラン、まだ核兵器を持つまで十年はかかる、そのことについては安保理まで持っていってやろうとしている。その中で、グアムのことについては金まで出せというのは、おちょくられているんです。本当におちょくられているんです。

 だから、我々は、そういうことをわかった上でやらなきゃいけないわけでしょう。だから、ディフェンスコミットメントの話については、決して安保条約に書かれているから大丈夫だという話じゃないということをよく我々は知った上で、アメリカとの対応をしなければいけないわけです。イラクにブーツ・オン・ザ・グラウンドと言われて陸上自衛隊を持っていったのも、結局このコミットメントの話がかかわっているわけでしょう。

 麻生大臣、いかがですか。安保条約に書かれているから大丈夫だということではなくて、もう少し、吉田茂首相が当時苦心されて、そして安保条約を、最後に、メイ・ビー・ユーティライズドについて激怒された。本来だったら、西村局長というのは安保条約を結んだ大仕事をした人だから、次官になるはずですよ。でも、なっていないんだ。それはそのときの経緯があったからでしょう。だから、そういう意味では本当に大事な話なんです。ただ単に文言の上でどうのこうのという話じゃないはずです。それは今までの五十年以上にわたる日米関係の日本側の努力がすべてそこに帰着するから、私は申し上げているんです。

 吉田茂首相が安保条約を結ばれるときには、まず講和条約の署名をしてから、一人で署名したわけですね。自分の子分の池田勇人とかみんな、おまえたちには責任を負わせたくない、本当にアメリカが守ってくれるかどうかおれはわからないから、おれが一人で歴史の責任を負うというので、あのプレシディオで自分で一人で署名をされた。それほどかたい気持ちでもってされたわけです。

 サンフランシスコについては特別の思いがあるかもしれない麻生大臣、そのことも含めて、この日米条約というものは決して条約に書かれているから大丈夫だという話じゃないと私は思います。いかがでしょうか。

麻生国務大臣 あの話は、こっちが困ったときは助けてくれ、そっちが困ったときには助けてやらないというのがもともとの基本でしょう、日米安全保障条約をよくかみ砕いて言うと。片務条約と言われていたわけですから。そういった意味では、我々としては、向こうが何かに巻き込まれているときは見て見ぬふりします、こっちやったときにはちゃんとやってくれるというような話になっているわけですから、それは向こうとしてはなかなか、言われたとおりにはやりたくない。何でこっちだけやらにゃいかぬのかという気持ちはおなかの中ではありますよ、両方とも。僕はそう思いますね、サインする立場だったら。僕は、それが正しかった、向こうの気持ちとしてはよくわかる。

 しかし、現実問題としては、我々は、そういったものを結んだ以上は、それがきちんとオーソライズされているわけですけれども、ちゃんと現実に実行、施行させるためにどうするかというのは常に気を砕いておかなきゃならぬ。当然のことですよね。

 私どもは、そういったところを、書いてあるから大丈夫なんという話はとても当てにならぬということは、何も海外に限らず国内法でも常に気をつけておかないかぬところですから、そういった意味では、日米の間に間断なくいろいろな方々が常に努力をし続けてこられてこの六十年間、安保条約協定からかれこれ五十数年間がたちますけれども、そういった努力はみんななされてきた。

 その中に、みんながみんな、メイ・ビー・ユーティライズドかシャル・ビー・ユーティライズドかどうかは別にして、そこのところまで知っておられる方はどれくらいおられるかは存じませんけれども、基本的には、そういった気持ちはみんな持ち続けてきて努力をし続けてこられたのが歴代外務大臣なんだ、私はそう理解しております。

山口(壯)委員 今の大臣の答弁で、私ももちろんそのとおりだと思います。だから、このグアムの海外移転の話についても海兵隊の移転の話についても、結局は、アメリカ側のディフェンスコミットメントを実質上欲しいという、言ってみれば、日本のお願いベースの話にとってしまっているというところに私はずっと警鐘を鳴らしてきているわけです。

 このグアムの話についても、アメリカが当然のことのように言っているというところに河相局長の苦悩があるんだと思う。それは、言ってきたことについてなかなか断りにくいという気持ちが北米局長としてはあるんでしょう。

 しかし、そのときに吉田茂さんというのは、国会での議論を使ったんです。野党でこういうところまでの議論があって、なかなかそれはのめない、だからそれは勘弁してくれということを彼は言っているんです。だから、決定してから国会に持ってくるというふうにせずに、やはり我々の議論も踏まえてアメリカ側ともう少し対等の立場できちっと議論ができるように、国会での議論をかませた方がよくないでしょうかということを申し上げているわけです。

 そういうところについて、最後に大臣、一言お願いします。

麻生国務大臣 関東軍がお好きなようで、よく名前が出ますけれども、関東軍の時代と今とは全然違いますよ。あの時代は、少なくとも機密費の話がかんでおりまして、当時の政友会の幹事長は多分森恪という人だったと記憶しますけれども、そういった人との関係から何から、ずっとの流れがありますので、今の新憲法のもとでシビリアンコントロールはきいていないんじゃないか、軍が先走り過ぎるのではないかというようなことはないのであって、少なくとも、国会に提出する前につきましても、いろいろ与党の中でも検討されますし、少なくとも選挙で選ばれた大臣が、副大臣が、政務官がその場にかんでおりますし、いろいろな形で、軍が一方的にとか官僚が一方的にというようになされているわけではないという点だけは、誤解のないように申し上げておきたいと存じます。

山口(壯)委員 大臣がそう言うのであれば、ちょっと一言つけ加えなければいけない。戦前そのものではないかどうかというのは、これは議論が分かれます。しかし、例えばアメリカで、ベトナム戦争の後に選挙で選ばれた大統領が決めるのではなくて、やはり議会のコントロールが非常に大事だという流れもあるわけですね。例えば日本の中においても、選挙で選ばれた人がそこで決めるのであれば全部いいということじゃないはずなんです。

 というのは、シビリアンコントロールの中身を、大臣、やはりもう少し考えていただいた方がいいと思うんです。シビリアンというのは決して、例えば防衛庁が言うような、制服じゃないシビリアン、内局という意味でもない、あるいはもう少し、例えば内閣総理大臣が見ているからそれでいいというわけでもないと私は思う。やはり国会、シビリアンの代表である国会がきちっとコントロールしているということが非常に大事な部分だと思うんです。

 だから、そういう意味で、昔と今は違うから今は大丈夫だという議論は、アメリカの大統領の権限についても議会がかなり厳しくコントロールしているというところも踏まえて、アメリカにおいてすらそうなんです。だから、我々もその辺は少し参考にして、日本のシビリアンコントロールに遺漏なきようにしていただきたいと思います。大臣。

麻生国務大臣 大統領制度と議院内閣制と全然違うと思いますけれども、議院内閣制の方がよほど議会のコントロールはきいているように、私自身はそう思っております。

山口(壯)委員 議論はさらに続くと思いますので、きょうはここまでにしておきますけれども、大臣、国会議員のみんなが自分の首を絞めないようにということを切にお願いして、私の質問を終わります。

原田委員長 次に、松原仁君。

松原委員 きょうは、外務委員会の一般質疑ということで、広範にわたってお伺いしたいと思います。

 島根県が竹島の日を昨年制定したわけであります。二月二十二日でありましたが、本年二月二十二日に、島根県において竹島の日の啓発行事が、竹島は日本固有の領土である、これはずっと今まで係争してきているわけでありますが、我々の立場は日本固有の領土であると。

 外務大臣は、この啓発行事に招待されていたけれども欠席をしたというふうなことであります。また、代理出席等の対応もなかったというふうに聞いておりますが、なぜ欠席をなさったのか、また、なぜ代理出席等の対応も考えなかったのか、お伺いをいたしたいと思います。

麻生国務大臣 二月の二十二日に行われたんだと記憶しますけれども、島根県竹島の日が地方自治体の権限において条例で定められてあるということは確かだと思います。国会会期中でもありましたので、私どもとしては、検討した結果、欠席をさせていただくということになったと記憶します。

 竹島の領有権につきましては我が国の立場は一貫しておりますので、改めて松原議員に申し上げるまでもなく、これは日韓双方、李承晩ラインにさかのぼる話なんだと記憶をしますけれども、いずれにいたしましても、大局的見地から国民感情を双方であおらないようにということで、問題解決を図るべく、これは引き続き粘り強く努力をしていかないかぬということなんだという以外にないと思います。

松原委員 国会会期中であったということでありますが、このときに外務委員会が行われていたかどうか確認はしておりませんが、私は、この竹島の日というのは、日本の国内における思い、日本の固有の領土であるというこの思いと、やはり我々の決然たる意思を、それは韓国だけではなくて世界に知らしめるためには、呼ばれていなければいいんですよ、呼ばれて行かなかったということは、私は極めて残念であるというふうに申し上げたいわけであります。

 来年以降、呼ばれたらぜひ行っていただきたいと思いますが、代理出席も一切なかった。こういう場合、代理出席というのがどういう形であるかというのはわかりませんが、全くもってそういったことも検討する余地はなかったのか、お伺いいたします。

麻生国務大臣 正確な記憶じゃありませんけれども、二月の二十二日はたしか予算委員会の最中だったと記憶しますので、代理出席を含めて、ほかの議員もとられておったんだと記憶しますけれども、検討させていただいた記憶があります。私どもとしては、それはしようがないねという話をした記憶がありますので、呼ばれたから何となく避けたとかいうような話になりますけれども、竹島という領土に関しましては、従来、一貫して主張し続けてきておるというところに関しましては、全く変更があるわけではございません。

松原委員 そういたしますと、これは予算委員会がこのときあったということでありますが、こういった明らかに国会の公務で出席できないという条件が二月二十二日にあったから今回出なかったけれども、そうでなければ、これは出席をする意思はあった、こういう認識でよろしいですね。

麻生国務大臣 この種の話は、最初に申し上げましたように、双方で、双方でというのは韓国と日本との間で、妙に話が感情的にならないように努めるというのはすごく大事なところなんだと思っております。

 基本的に、私どもとしては、ここはいわゆる諸般の事情を考えてというのが一番正しいんだと思いますけれども、少なくとも、地方自治体でおやりになる事業でもありますが、私どもとしては、こういうような形で、例えば拉致の話にしても、いや、あれは新潟県だけの話じゃないんですよ、みんな日本じゅうでこういう関心を持つべきなんですよということで、こういったものを風化させないようにきちんとした配慮をしておく。

 そういった意味で、竹島の日等々いろいろ含めて、何も領土の問題はこれに限らないんですけれども、北方領土を含めていろいろありますけれども、そういったものに関しましても、私どもは、こういった形での運動がなされるというのはきちんとされるべきものだと思っております。

松原委員 時間の都合があって次に移りますが、大臣の御答弁をいただいた限りにおいては、このとき公務があったから行けなかった、そういった公務がなければ出席をした、こういう認識であるというふうに私はとらえさせていただきました。

 次の質問に参りたいと思います。

 先ほど水野賢一議員から、中国のマスコミ統制の話がるるありました。私は、このことについてさらに議論をしていきたいと思うわけであります。

 先般、李肇星外交部長、李肇星さんが発言した内容について、日本側が中国駐日大使を呼び出したときに、その呼び出しに対して拒否をしたという報道が一部報道機関によってなされたわけであります。それに対して、「中国大使館スポークスマンのコメント」として、「一、三月八日午後、外務省から中日関係について大使と意見交換したいとの連絡があった。正式の申し入れとの明示はなく、具体的なテーマの提示もなかった。 二、たまたま当日大使主催の重要な行事などを予定していたため、双方が相談した結果、翌日に会うことにした。」こう書いてありますが、その後に、「各報道機関には、今後中国大使館に関する記事を発表する際に、事実関係を当大使館と事前に確認するよう要望する。」こういうふうなコメントがなされているわけでありますが、こういったコメントに関してどのように感ずるのか、これをお伺いいたします。

金田副大臣 委員御指摘のただいまの点につきましては、在京中国大使館が御指摘のコメントを発表したということは承知をいたしております。

 いずれにしましても、報道の自由は我が国における基本的な権利であります。各報道機関もこれに基づいて客観的な報道に努めているものと承知をしております。

松原委員 私は、こういったコメントを大使館が発表するというのはかなり異例ではないかと思うわけでありますが、仮に、日本の大使館がこうしたコメントをどこかの国のマスコミに対して要望したということは過去あったのかどうか、わかる範囲で教えていただきたい。

鹿取政府参考人 今の先生御指摘の「中国大使館スポークスマンのコメント」、最後の二行のことをおっしゃっているんだと思いますけれども、こういうコメントを我が方大使館が在外で行ったということは承知しておりません。

松原委員 私は、このコメントというのは先ほどの水野議員の質問ともラップしているように思うわけであります。つまり、日本の報道機関に対して、日本の政府は日中の関係を良好にするように指導してほしいという話がさっきあった。彼らの認識はかなり違うわけでありますが、その認識を日本に持ってきて、今後中国大使館に関する記事を発表する際、事実関係を当大使館と事前に確認するように、何か戦前の事前検閲制ではありませんけれども、どうも彼らの意識はそういうものがあるんじゃないかと私は思うわけであります。

 しかも、こういったことに関して、私は先回の外務委員会での質問でも、中国側のプロパガンダ、反日のプロパガンダというのは、かなりこれはアメリカ国内においても徹底して行われているということを論証していったわけでありますが、日本国内においても、こういったコメントを出して、マスメディアに対してのあめとむちというんですか、こういったコメントを出すことによって、仮に、事前に接触してくるマスメディアがあれば、ちょっともしかしたらあめを出すかもしれない、逆らうところがあれば、何かむちが出せるかどうかそれはわかりませんが、そういう彼らの報道に対する姿勢というのはここにもあらわれていると思うので、私はこの委員会を通して申し上げたいのは、こういうふうな中国大使館のスポークスマンのコメントというのは極めて批判されるべきものだというふうに思っております。

 これに関して、今雑誌のウイルというものが随分出ておりますが、そのウイルの中で掲載されていて、事の真偽は明らかになっておりませんが、「対日政治工作」という文章がつくられた。これがウイルの中で掲載されているんですよ、雑誌で。一昨年あたり創刊された雑誌なんですが。

 その中でいろいろなおもしろい記事があって、これ自体の信憑性というのは議論が必要ですけれども、その三ページ目に書いてあるのは、「今日では、新聞、雑誌を含めいわゆる「マスコミ」は、世論造成の不可欠の道具にすぎない。マスコミを支配する集団の意思が世論を作り上げる」「偉大なる毛主席は「およそ政権を転覆しようとするものは、必ずまず世論を作り上げ、まずイデオロギー面の活動を行う」」というふうなことを書いてあって、世論操作が必要だ、これは最近といってもちょっと前でありますが、中国の対日工作の書物である。

 ただ、真偽のほどはわからないです。ウイルという雑誌に取り上げられているわけでありますが、「雑誌、特に週刊誌については、過去の工作は極めて不十分であったことを反省し、十分な人員、経費を投入して掌握下に置かねばならない。接触対象の選定は「十人の記者よりは、一人の編集責任者を獲得せよ」」こういう話になっているわけであります。

 私は、先ほどの水野議員の議論も今の中国大使館の議論も、一連の完全に日本悪者説を定着させるための戦略が、この工作の真偽というのはありますけれども、そういったものがあるのではないかというふうに思っているわけであります。

 そうした中で、昨今非常に中国国内でおもしろい現象が起こっておりまして、「氷点」という雑誌のことが議論をされているわけであります。その氷点という雑誌の前に、マスコミに対する圧力としてもう一点、「大紀元」という報道があるわけであります。

 大紀元という雑誌がある。その大紀元大阪事務所というものが、今月の三月十日午後五時から十一日の深夜にかけて、日本大紀元時報社大阪発行事務所に何者かが侵入した、こういったことが書かれているわけであります。

 この大紀元というのは、例えば中国において既に八百万人以上の共産党員が脱党したとか、そういうかなりえぐい話を載っけているわけです。真相というのはなかなか確認のしようがありませんが、例えば鳥インフルエンザで多くの死者が既に発生しているとか、かなりそういった意味では際物的かもしれないけれども、それが事実かもしれない、そういった内容をずっと報道しているグループであります。

 その大紀元という雑誌社というか時報社の中に泥棒が入った、こういったことでありますが、この経緯についてお伺いいたします。

縄田政府参考人 お尋ねの事件につきましては、これは被害者の方でみずから公表されておられることでございますので、若干お答え申し上げたいと思いますけれども、御指摘のとおり、本件は、本年の三月十日から三月十一日にかけまして、大阪市内の被害者方においてパソコン等が窃取されたという被害届を大阪府警の方で受理をいたしておりまして、現在捜査中であるというふうに報告を受けております。

 詳細につきましては、捜査中の事案でございますので、差し控えさせていただきたいと思います。

松原委員 この大紀元というところの情報を持っているパソコン三台が盗まれた、金品の被害はなかった、こういうふうに書かれているわけであります。

 かつて、この大紀元は、日本で創刊し始めた五年前の三月十四日にも、そういった意味で、資料を物色している男、ファイルを保存していた引き出しが破壊されたということも報告をされているわけであります。

 この大紀元の関係者によると、最近、最近というのは今この段階で、世界各地の大紀元支社が盗難や襲撃、破壊工作等の被害を受けているというふうに書いてあるわけでありまして、このことについて関係者は、この事件は中共が関与している可能性がある、こう言っているわけであります。しかし、これも真実はわからないわけでありますが。

 こういったことを含め、情報に関して中国が、これがどうかということではなくて、全般に、極めてプロパガンダという点においてさまざまな工作をしている。これはどこでもやっていることであります。やっていない国は日本だけかもしれないと思うぐらいであります。

 そういう状況にあるということをまず認識した上で、その中国で、「氷点週刊」という雑誌が、先般、中国において一時停刊処分になった。なぜ氷点週刊が停刊になったか、その理由について、知っている限りで教えていただきたい。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 氷点週刊でございますが、一月の十一日付の版で、「現代化と歴史教科書」と題する中国の歴史教科書を批判する論文を掲載いたしました。それがゆえに一月二十五日付をもって停刊処分となり、さらに李さんという同紙の編集長が更迭されたものと承知しております。

 その後、氷点週刊は、三月一日、停刊の原因となりました論文を批判する論文を掲載し、復刊したというふうに承知しております。

松原委員 その批判された論文の中身に関して、どういう中身だったか教えていただければと思います。

梅田政府参考人 少し長くなるかもしれませんが、できるだけ簡潔に述べます。

 論文は、中国の歴史教科書の問題点を次のとおり指摘ということで、例えば、中国の歴史教科書については、義和団事件の記述に見られるように、多くの誤った記述があります。中国の近代史観にも、自己の近代史に対する深い反省が足りないといったような問題があります。歴史教科書の編さんに見られる共通点は、現有の中華文化が最高のものであり、外来文化の邪悪さにより現有文化が純血を侵食され、政権あるいは暴徒の専制的な暴力を用いて思想文化分野の邪悪を排除するものである。いずれにしろ、今こそ我々がみずからの歴史教科書を正視するものではないではないかといった論旨でございます。

松原委員 つまり、一九〇〇年に起こった義和団事変において、児童五十三人を含む二百三十一人の西洋人が虐殺された史実を、この中国の中学、高校の歴史教科書がほとんど記述されていない、これは歴史に忠実ではないという自己批判したものである、こういう内容なんであります。そのことを載っけたことによって「氷点」は停刊処分に追い込まれ、その記事を自己批判して三月一日に再刊された、こういうことであります。

 このことについて麻生外務大臣がどうお考えか。既に麻生外務大臣はウォールストリート・ジャーナルの中で、もはや中国が完全に民主化の国家へ変容するか否かではなく、どの程度の速度でそうなるかということを述べていて、中国のこの民主化の中で、こういう言論の自由というものも踏まえたお話だったと思うわけでありますが、この週刊氷点のこういった事柄について、この辺の経緯についてどのような認識を持っているか、お伺いいたします。

麻生国務大臣 これは私の主観ですから、あらかじめお断りしておきますけれども、主観として申し上げさせていただければ、やはりインターネット、携帯電話、モバイルホン、そういったようなものというのは、基本的には情報統制をするのに最も扱いにくいツールとして、道具として、三億四千万台、今中国に携帯だけで普及しておるという現実からいきますと、今言われたような紙の文化という「氷点」初めそういったものを統制しても、現実問題としては情報はすさまじく速く流れるという現代の情報機器の進歩についての基本的理解が余り足りていないかなと。日本の方もかなりおくれた政治家もいっぱいいますけれども、そこらのところの情報機器の操作が全然わかっていない人というのは、正直、この話を聞いて一番最初に、ああ、とてもそんなものやってもというのが正直なところです。

 二つ目は、やはりこういった道具が出てくるということは、とりもなおさず、少なくとも日本初め報道の自由が保障されている国においては、ちゃんとどうとかしろとか、こうとかしろとかいったって、それはなかなかどうともならぬということは、これは日本に限らず、いわゆる民主主義国家の中において報道の自由というものはいろいろな形で自由にされるという大前提がありますので、そこらのところは、中国が今後さらに経済的に発展していく段階において、この情報というものはすごく今までと違ったものだ、こういうものだという理解がないとなかなか難しいなというのが正直な実感で、今言われれば、その二つが一番、私、今伺ったんですけれども、今伺った範囲ではそのような感じが率直な実感です。

松原委員 そういうわけで、中国側が、情報統制というのはなかなかできない。実際、そうはいいながら、一つの威嚇も含めてさまざまなことが行われている可能性があるわけですが、むしろ、前回の外務委員会の質問で言ったように、情報統制ではなくてデマを流すという、このことの効果の方が、逆に言えば、今大臣がおっしゃったような情報化社会では、デマの内容を精査することなくデマがデマを呼びということは、これは、流言飛語が飛び交うというのは、情報時代の一番際立った内容だと思うんですね。

 そこで私はお伺いしたいわけでありますが、日中戦争でかつて中国人は一千万人死んだと言い、そして二千百万と言い、最近は江沢民さんが三千五百万という数字まで挙げた。この三千五百万という数字までどんどんと数がふえている日中戦争における中国人の犠牲者の数について、これは外務省としてどう認識しているか、お伺いしたい。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、中国政府は、抗日戦争期間中の中国の軍と民の死傷者は三千五百万人余りであるとしております。この数字につきましては、昨年九月三日の日の胡錦濤国家主席の演説でも指摘されています。それから、先ほど先生からお話のありましたように、一九九五年以前は中国政府は二千百万人という数字を述べております。

 いずれにしましても、この日中戦争の死傷者の数につきましては、専門家の間でも一致した認識が得られないものと承知しております。それからまた、中国側もこれらの数字の根拠につきましてきちっとした説明をしたことはないというふうに承知しております。

松原委員 日本側はなぜ反論しないのかの理由を簡潔に教えてください。

梅田政府参考人 中国側に対しましては、さまざまな機会に、この数字の根拠は何であるのかというようなことも照会しておりますし、それから、根拠のない数字は使わないようにということも申していることもございます。

松原委員 問題は、今、日本側がその認定、数字的なそういったものは見方によって違うわけですね。しばしば集会でも、主催者側発表が例えば二千人でも警察発表が五百人とか、こういうのはよくあるわけであります。

 ところが、それは実際の実数というのはなかなかわからない。しかし、中国側は三千五百万と。最初二千百万と言っていたのが三千五百万、その前はもっと少なかった。どんどん数を上げていって、三千五百万人、三千五百万人、こういう数字の刷り込みを今やっている。これはある種のプロパガンダだと思うんですよ。

 国家がプロパガンダをやることは、上品な国家とは私は必ずしも思えないわけでありますけれども、中国政府が国家を挙げてこうした数字を誇張して全世界に発散をしている。そのことによって、情報化社会でその根拠は何かということよりもその数字がおもしろおかしくどんどん伝わるということは、大変に危惧するべきことだと思うんです。

 こういうふうに中国側が数字を三千五百万にしても、例えば南京だって、実態とかけ離れた話をし、そして実態とかけ離れた数字を挙げて、何十万人も残虐に殺された、それはあたかもナチスのホロコーストのようであった、こういうふうなプロパガンダを中国がどんどんしていって、日本はまじめですから、それは日本としてはもっと数が少ないということを証明して、反論するわけではなくて、それは根拠はどうですかということを聞く程度であるならば、私は、世界のいろいろな世論とかそういったものはどんどんと中国側のデマゴーグ、中国側のプロパガンダに引きずられていってしまうと思うんです。そのことによって我々は大変な国益を損なうと思うんですが、麻生大臣、いかがお考えでしょうか。

麻生国務大臣 基本的には、歴史的な事実についてはいろいろな意見がある。南京虐殺三十万とか、やれ、死んだ現場をあなた見たことが何人ぐらいありますかと言うと、二人ですとか一人ですと。どうして三十万と言うんですかと言うと、答えがなかった。これはいろいろ記録がいっぱい残っています。写真も、これは関東大震災の写真であって歴史的事実とは違っているじゃないか。これは全部、検証されたものは幾つもあります。松原先生も御存じのように、そういったものがあることは事実なんであって、そういった意味では、専門家と言われる方、専門家と称される方、もしくは専門家と思っておられる方の認識は、これは必ずしも一致していないというのは事実だと思っております。

 ただ、私ども、今おっしゃられたように、外国の政治家とか知識層とか言われる世論に影響を与える方々の間で、ある程度バランスのとれた対日認識というようなものをつくっていくという努力は大変大事なところだと思っております。そういった意味では、プロパガンダというか広報というかPRというか、いわゆるADとは違ってPRの方が非常に重要なものなんだ、私どももそう思っております。ただ、そこらのところが、国的に挙げてやっているかというと、これは余り日本人のうまいところじゃありませんから、やるならちょっと全然別の方法を考えないかぬのかなと思っているのも正直なところです。

 ただ、これは、この間BBCというところがやった、BBCによる世界の世論調査という数字が出ましたけれども、これは日本政府がやったわけじゃない、BBCがやったんですが、世界の中で最もインフルエンスの大きい国はどこかというところでは、単体で日本というのが上がってくる。一番はEUですから、EUは二十何カ国ありますので、それは一概には言えないと思いますが、ジャパンというのが二番目に上がってきているというのは、これは我々なり我々の先輩なり、多くの方々が不断の努力をし続けてこられた結果がこういった評価を得ておるんであって、インドネシア、フィリピン等々、そういった地域におきましては極めて高い支持率が上がっておるという現実は、私どもとしては大変喜ばしい。現実として悪い話もいっぱい聞きますけれども、こういういい話は余り耳に入ってこないので、こういったところは大事なところだという感じがいたしております。

松原委員 日本に対しての評判というのは、私は、この間ベトナムに行ったときも本当に悪くなかった。ただ、こういった、南京が実態と違って大虐殺があったとか三千五百万とかというのに関して信じているけれども、今の日本は頑張っているねという評価では、これは私は国として不十分だと思うんですよ。やはり、事実なかったものはなかったというふうにやっていかなきゃいかぬ。

 きょうは時間が余りないので南京大虐殺について余り触れることはできませんが、しかし、一冊の本がありまして、これは、アメリカ人で、コロンビア大学を出て、新聞記者、コロンビア大学英文科教師を経て国務省に入って、一九三一年、最初に国民党軍が南京に進駐したころに上海副領事として中国におった方であります。

 この本、原題は「ウエーズ・ザット・アー・ダーク」という名前でありまして、「暗黒大陸 中国の真実」という訳名で日本では発刊されているんですが、その中でラルフ・タウンゼントさんという人が文章を書いてありまして、それが「南京虐殺に関する声明文」というので、その文章の中にこういう声明をうたっているわけですね。

  南京虐殺の真相を広くアメリカ人に知ってもらわんがため、外国人の生命財産に危害を加えられた三月二十四日

これは日本がやったんじゃないですよ、国民党軍の方がやっている話であります。日本の南京進駐の十年前であります。

 我々アメリカ人は、署名のうえ、ここに声明文を記す。この残虐行為は、上官の承認の下、制服着用の兵士によって行われた。南京在住の我々アメリカ人全員がこの目で見たのであるから断言できる。彼らは、外国人の私邸、領事館、学校、病院、会社の事務所を略奪しただけではない。家にも学校にも火を放った。外国人と見ると老若男女構わず撃った。誤射ではない。殺意を持って撃った人殺しである。ある若いアメリカ人娘などは二発も銃弾を打ち込まれ重傷を負った。アメリカ女と見ると強姦する。その他、外国人女に、言葉にできないほどの侮蔑行為を加えた。こうした事件の多くをこの目で目撃した

これは北伐軍の関係とかいろいろと書いてあります。長いですから、今もう時間がないから言いませんけれども。

 こういうふうな南京における虐殺は、日本が南京に入城する十年前に中国人が中国人に対する虐殺であった。いろいろと記述を読んでいくと、極めて統制のとれた、上官の承認書を持って虐殺をされていたということをこのアメリカの副領事をやっていたタウンゼントさんは書いているんであります。

 こういったことも我々は検証して、その記憶がその後の十年後のものにラップされたのかもしれないし、経緯というのは、これはだんだんわからなくなるんです。ですから、私はこういったものの検証をしていかなければいけないと言っているんですが、逆の意味で反日的な検証になるようなドキュメンタリー映画が今つくられようとしているということを最後に質問したいわけであります。

 それは何かというと、これは仮名が「南京プロジェクト」という題名でありますが、このプロデューサーがビル・グッテンタグ、ドイツ語でグーテンタークですから、こんにちはというような意味ですか、おはようございますですか、このグッテンタグ、彼はスタンフォード大学で教鞭をとり、ドキュメンタリー作品を撮り続けている、こういうドキュメンタリー映画監督であります。彼が中心になって、新しいパープル・マウンテン・プロダクションズというところが制作、映画をつくる、南京に関しての映画であります。ドキュメンタリー風につくる。

 その作品主旨においては、大虐殺と呼ばれる状況、これは中国国民党が南京に入ったときの虐殺を映画にしているんじゃないんです、日本が南京に入ったときのことをドキュメンタリー風にしようとしている。そして、大虐殺と呼ばれる状況が起きたことにどのような社会的、文化的背景があったのか、そういったことを西洋人の目から明らかにしていこうということであります。

 これをつくる経緯は、この間ALPHAという話を私申し上げましたが、どうもいろいろなかかわりが裏にあると言われているわけでありますが、こういった映画がつくられて、ある意味、さっき言った、とめられない新しい時代のデマゴーグ、プロパガンダ、反日のプロパガンダが今アメリカで起ころうとする可能性がある。

 表現の自由というのはいろいろとあるわけでありますが、ある国家について全くのうそを書く表現の自由はあるのか。それは、かつて慰安婦を書いた吉田何がしが、本当のことを書いても売れないじゃないかと週刊新潮で言っている、こんなとんでもない話もありました。

 しかし、我々は、くどいようでありますが、我々の国家の名誉と国益に関することですから、この映画に対して、こういったものをどういうふうにつくられるか、まさにそれは我々に対しての国益と名誉を損なう可能性もある。こういった映画がつくられようとしていることに対して、どのような情報をつかみ、どのような対策を講じようとしているのか、外務省、お伺いしたい。

岡田政府参考人 お答えいたします。

 お話のあるビル・グッテンタグ氏あるいはダン・スターマン氏については、南京事件を題材としたドキュメンタリーを作成したいとして、本年二月来日して、南京事件を研究している我が国の研究者と接触した経緯があるということを承知しております。

 ドキュメンタリーの内容についてはつまびらかにしておりませんが、公平な見方に立った作品がつくられることを希望しております。

松原委員 それは、日本の政府がハリウッドの映画をつくるのに注文を出すわけにいかないと思うんですよ。

 しかし、ここで問題なのは、そこでつくられた映画が明らかにデマゴーグ的な内容を、彼らも、つくっている側も、自分は正しいものをつくっていると思ってやっていて、実際そこにある資料が、さっき麻生大臣が言ったように、関東大震災の写真を持ってきたり、この間言ったように、あのティンパーリが全く違うところの写真を持ってきて日本が虐殺している写真に使ったというのは、APがそれを否定したことで明らかになっているということを私は申し上げましたが、こういうふうなでたらめな材料にだまされてつくる可能性も極めて大きいと私は思うんですよね。

 こういうふうなものが流れていくと、やはりそれは反日感情というのは、日本に対してはいい国だけれども、かつて日本はナチスみたいなことをやった、李肇星さんが、日本はナチスのヒトラーと同じじゃないかみたいなことを彼は言ったけれども、そういうふうなことを色濃く洗脳されていく。アメリカの世論というのは、ある意味で世界を決める世論であります。日本としては決定的な、重大な世論であります。そういう世論にこういう映画がつくられる。

 だから、それは、例えば織田信長が本能寺で明智光秀に殺されたのは史実だけれども、殺されなかったということを言ったって、それはフィクションだからいいでしょうと言われてしまったら、それだけで済んでしまうかもしれない。しかし、表現の自由という問題と、それぞれの国家のプライドの問題はどういうようになっていくんだ。この辺に関して、なかなか外務省としても答えづらいと思いますが、我々はこういった映画に関してきちっとウオッチをし、言うべきことは、それは外務省が言うべきじゃなくて、ほかのだれかが言うべきかもしれないけれども、やっていかなきゃおかしいと思うんですよ。

 こういうふうな一つの中国の対日プロパガンダが今や行われようとしているということに関して、危機感でも結構であります、麻生大臣、御答弁をいただきたいと思います。

麻生国務大臣 今、岡田の方からも答弁をいたしましたけれども、基本的にこの種の話は、意図的にやられるという部分もありましょうし、また、深く信じてやっておられる方もいらっしゃるでしょうし、その背景はいろいろなんだと思いますけれども、私どもとしては、こういったものは基本的、歴史的事実に基づいて書いてもらわないと甚だ公平を欠くということだけははっきりしておるし、それが国益を損なうという松原先生の御指摘は全く正しいと思っております。

 日中で歴史共同を一緒にやろうという話が、アメリカも、おれも一緒にやろうということをこの間ゼーリックが言ってきたというのも一つの方向かとも思いますけれども、この種の話は、第三者の目を入れたところできちっといろいろしていくという努力は今後とも続けていかねばなりませんし、そういったプロパガンダを始めて、対日工作というのは、常にこういった世界の中では、平和であろうと戦争であろうと関係なく、いろいろ起こっているということは常に心して事に臨まねばならぬものだと思っております。

原田委員長 申し合わせの時間が過ぎておりますので、御協力をお願いいたします。

松原委員 以上で終わりますが、こういった情報戦に負けない外務省をつくっていただきたいということを要望して、質問を終わります。

 ありがとうございました。

原田委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 去る三月十二日に行われた米空母艦載機部隊の移駐計画の賛否を問う岩国市の住民投票で、圧倒的多数の市民が移駐反対という意思を示しました。

 大臣もよく御承知のように、もともと岩国市は、長年基地との共存ということでそれを強いられてきた自治体であり、基地そのものの是非については、単純に基地反対が多数になるような状況じゃありません。しかし、厚木基地から空母艦載機が大量移駐してくる、これ以上の基地被害は我慢の限界だからこれには反対だという点では、広範な市民の一致点がある。まさに、基地機能強化の内容が、地方自治と住民の生命と安全と健康にかかわる重大問題だからこそ、それを住民の意思という形であらわすために、艦載機部隊の移駐への賛否の違いを超えて住民投票で意思を確かめよう、決めようという取り組みでありました。

 その結果、四万三千四百三十三人という有権者の過半数を上回る市民が移駐反対の意思を示したことの意味は極めて重いと思います。

 そこで大臣に伺いたいと思いますが、岩国市長は、あすにも政府に対して改めて移駐案の撤回を求めて要請に来られるようでありますが、大臣は機会があれば市長に会われるおつもりか、そして、政府としてどう対応されるか、伺いたいと思います。

    〔委員長退席、渡辺(博)委員長代理着席〕

麻生国務大臣 一点目、あしたの国会の日程がわかりませんので、何ともお答えのしようがありません。

 二つ目の点につきましては、住民投票が行われて、今言われたような数字で、投票率五八%で行われたという結果、反対多数の結果になったということも承知をいたしております。取り扱いにつきましては、これは市の御判断なんだと思いますから、国としては、国全体の安全とか防衛とかいう責任を持って考える必要があろうと思っております。

 厚木から岩国に艦載機等々が移転をしていくことになりますけれども、平成二十年になりますと、飛行場は沖合にかなり移転をされるということが今建設中でありまして、埋立工事も、過日行きましたけれども、かなり進行いたしております。そういった状況の中にありますので、それが沖合に移転されると、計算上では騒音地域は現在の約三分の一に減るということになっております。

 そういったもので、私どもとしては、ただただ今の上にさらに騒音がふえるというように理解しているわけではありませんけれども、いずれにしても、地元の方々の御理解というものを得るように、今後とも防衛施設庁ともども誠心誠意努めていきたいと思っております。

笠井委員 さんざん政府が地元に説明して理解を求めてきたといった結果が出たわけであります。岩国市民は、国の説明がされたけれども、納得、理解できないということだったと。

 事態は、そういう意味では、投票前と投票後では変わっているということでありまして、私は、引き続きと言われても、同じ説明を繰り返してもこれは納得いかないだろうというふうに思います。問題は、今回の結果を踏まえて、新たに何か説得できるような話があるのかどうかということであります。

 大臣、今幾つか言われましたけれども、大臣御自身、一月十六日だったと思いますが、現地に行かれて、県知事や岩国市長らに会った際に、抑止力の維持それから国内全体、国全体の負担軽減を図るとの観点から、御理解と御協力をお願いしたい、そして、地元からいただいている御質問については、誠心誠意お答えしていきたいというふうに言われました。

 国内全体の負担軽減と言われますけれども、岩国基地というのは、進行中の沖合への移設工事と言われることはありますが、それをやっていく中で、米国外に所在する米軍の航空施設の中で世界第三位の巨大な基地になるわけでありまして、常駐の戦闘機も厚木から移駐してくれば百二十から百三十機体制になる。沖合に出れば軽減すると言いますが、これは参議院の予算委員会でも市田書記局長が質疑をやられて明らかになりましたが、米軍機がふえたら、それだけ訓練回数もふえるし、そこで騒音もふえてくる、事故の危険が増大する。そして、兵員もふえれば、そこに犯罪の増加につながってくる。住民の負担はふえることは明らかだと思うんです。だから、反対の意思が出たと。これでは、第二の厚木を今度岩国につくるだけで、いずれまた第二の岩国がどこかに必要になるということになってしまうんじゃないか。

 総理は、参議院の予算委員会の中で、新たに持ってこられた地域という点では負担になり得るということを言われました。政府は、要するに、厚木は負担が大きくてかわいそうだ、だから今度岩国の方に持ってきて、岩国は我慢してくれ、こういう話になるんですか。

麻生国務大臣 厚木の負担が軽減されるというのは事実だと存じます。

 その分だけ岩国にふえる分につきましては、岩国に関しましては、沖合移転という部分が厚木とは全く違いますし、従来の岩国とは全く違うというところで、沖合へ移転されることの分につきまして、第二の厚木が岩国にそのまま移るというような計算とは、私どもの計算とは大分違っているような感じがいたします。

笠井委員 私も沖合の移設が始まった当初、今からかなり前になりますが、参議院の委員会の調査で米軍基地に実際行きました、米軍関係者とも話し、地元とかにも話を聞きました。そして、そのとき騒音は軽減されるという話もあって賛成された人たちも、今度いよいよ沖合にできることになったら一層騒音が増大すると。

 しかし、これは厚木から来るわけです。そうすると、離発着訓練という話で、これも既に参議院でもやっておりましたが、テストするという試験の訓練だけじゃなくて、その事前にやるタッチ・アンド・ゴーもどんどんふえる。これはもう政府も認めざるを得なかったわけでありまして、そういう中で、結局沖合に行ったけれども、今度は沖合に行ったらまた本格的部隊が来て、そして訓練もさらにふえていく、だまし討ちじゃないかという意見が出たのは当然だと思うんですよ。

 私、厚木の人たちだって、こういう形での負担軽減というのを望んでいないというふうに思うんです。国全体の負担軽減、厚木の負担軽減といってほかの自治体に押しつけるというのは、根本的な解決にならないというふうに思います。

 防衛施設庁に伺いたいと思うんですけれども、この岩国移駐問題では、これまでに関係自治体から三回の質問、照会文が政府に寄せられております。どこから、いつ照会があって、そして、いつ回答したか、そのうち、未回答がどれくらいあるか、端的に概要を報告してください。

渡部政府参考人 お答えいたします。

 山口県関係につきましては、昨年十一月二十四日、山口県知事、岩国市長及び由宇町長三者連名によりまして、防衛施設庁長官に対し、岩国基地再編案に対する三十三項目の質問書が提出されております。これに対しまして、昨年十二月二十一日、防衛施設庁長官から三十三項目のうち二十六項目について回答いたしました。

 残りの七項目につきましては、今後日米間の協議等により、具体的内容を詰め、その途中経過については適時適切に御説明する旨、回答したところでございます。

 その七項目のうち、厚木への移駐に伴う海上自衛隊の家族数及び現在の家族数につきましては、本年の一月三十一日、山口県、岩国市及び由宇町に対し回答したところでございまして、現在六項目が未回答という状況になっております。

 次に、広島県関係につきましては、昨年十二月二十日、広島県知事、広島県市長会会長及び広島県町村会会長の三者連名によりまして、外務大臣、防衛庁長官及び防衛施設庁長官に対し、岩国基地再編案に対する二十四項目の質問書が提出されました。これに対しまして、本年一月三十一日、防衛施設庁長官から二十四項目のうち二十三項目について回答したところでありまして、現在、一項目が未回答となっているわけでございます。

 また、広島県知事等から、本年二月十六日に、外務大臣、防衛庁長官及び防衛施設庁長官に対しまして、九項目について再質問書が提出されました。

 また、山口県の和木町長から、本年二月十日に、防衛庁長官、防衛施設庁長官及び広島防衛施設局長に対しまして、岩国基地再編案に対する質問書が提出されたところでございまして、これらの御質問については、現在、速やかに回答できるように鋭意努力しているところでございます。

笠井委員 大臣、一月に行かれた際に、地元からいただいている御質問に誠心誠意お答えしていきたいと答えてこられたわけです。

 今お聞きになったように、施設庁から報告がありましたが、地元から三回、それからプラス一回ですか、照会があって、最初の回答書には未回答がいまだに六件ある。そして、その次もまだ一件残っていて、三回目の広島関係の照会に対しては三月末を目前にしてもいまだ回答していないということであります。

 これが住民に対する誠心誠意の実態だと現地は受けとめていると思うんです。私もそう思います。政府等のこうした対応について大臣はどう思われますか。まだ答えていない。

麻生国務大臣 わかっている範囲で誠心誠意答えている、米軍との間の交渉もありますけれども、交渉を目下継続中のところでもありますので、全部が全部答えられるわけではないと思いますが、答えられる範囲で誠心誠意答えている、私どもはそのように理解しております。

笠井委員 地元が一番知りたい肝心なことは答えられない。一月三十一日の回答でも、米軍との協議状況について適宜地元自治体等に御説明し、御理解と御協力が得られるよう努力してまいりたいと言ってきました。

 岩国の結果が出た翌日の参議院の予算委員会でも、額賀防衛庁長官は、住民の皆さん方にその過程過程、一つ一つを説明しながら理解の努力を求めていきたいと答弁されています。

 国会の審議でも、先ほどもありましたが、肝心なことは協議中なので差し控えるということで回答をされない、拒否される。

 例えば、「岩国基地に関する具体的な負担軽減の内容を示されたい。」という質問に対しても未回答でありますけれども、これにはそもそも回答のしようがないというふうに今政府も思われているかもしれません。

 昨日、小泉首相と防衛庁長官が三月末の日米合意の方針を改めて確認したとされております。合意内容を変更する考えがないという立場を堅持しながら、関係住民の具体的な不安や疑問にも真摯に答えようとしない。これでは、関係自治体や住民に幾ら理解と納得をしてもらうといっても、しょせん無理な話じゃないかと私は思うんです。

 今回の住民投票には、基地機能強化とともに政府が頭ごなしに国策といって押しつけるやり方への怒りも示されている。昨日の岩国市議会の全員協議会で、住民投票実施に反対した保守会派の議員からも、市民の意見が出た以上、撤回を求めるよう市長には努力していただきたいとの意見が出たのも当然だと思います。

 その上、国防総省からは空中給油機まで岩国に移設が望ましいという話まできょうまた出ております。

 私は、こうなったからには、理解を求めていく相手が違うと思うんです。今政府がやるべきは、米国政府に対して、地元の意思を理解してもらうこと、岩国移駐は無理だと撤回を表明することだと思うんです。

 来週にはまた日米協議を東京でされて、大臣はその前に、今週末の十八日、この前も伺いましたが、オーストラリアでライス国務長官と会談することになっている。こういうことでありますけれども、当然ながら、大臣に伺いたいんですが、岩国の住民投票の結果について事実は直接伝えますよね。地元との調整がついていない現状で、その上で三月末までの実施計画の合意はできないということをきっぱりと言うべきだと思うんですが、その二つについてお答えいただきたいと思います。

麻生国務大臣 日本の場合は、報道管制がしかれているわけでもございませんので、ここのところはきちんと向こう側も十分御存じで、どこかの国とうちは全く違いますので、丸々出ておりますので、向こうも知っている上で改めてこちらの方からこういう事実があるということを伝える、そういう理解でよろしゅうございますね。当然のことだと存じます。また、それだからといって三月末までに絶対できないという前提で話すつもりもございません。

笠井委員 米国との約束期限は誠心誠意守る努力はされるけれども、住民、国民にはまともな誠意も示さない。これでは、どっちに顔が向いているのか、どっちに耳が向かっているのかと言われても仕方がない話だと思うんです。

 私は、岩国市民の移駐計画撤回という意思を無視して強引に日米合意を進めることは断じて許されないということを申し上げて、質問を終わります。

渡辺(博)委員長代理 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 去る三月十二日に行われた米海軍厚木基地の空母艦載機の受け入れの是非を問う岩国市の住民投票は、投票率五八・六八%、反対票が有効投票の八九%を占める結果に終わりました。岩国市民の九割近くが日米両政府の推し進める厚木基地から岩国基地への艦載機移転を明確に拒否したものであります。岩国市の住民投票の結果は、過密な米軍基地の負担に苦しむ沖縄県民にも大きな感動を与えました。

 私は、政府はこの住民投票の結果を重く受けとめて、関係自治体や住民の意思を尊重して米軍再編に関する日米交渉をやるべきだと考えます。麻生大臣は岩国の住民投票の結果をどのように受けとめたのでしょうか。所信をお聞かせください。

麻生国務大臣 去る十二日に行われております岩国市におきますいわゆる空母艦載機、岩国飛行場受け入れに関しましての是非について住民投票が行われ、投票率五八・六八%、賛成、反対、それぞれ八九対一一という数字になっておる、反対多数の結果になったということは承知をいたしております。

 住民投票の結果の取り扱いにつきましては、これは市の御判断ということになろうと存じますけれども、国といたしましては、政府といたしましては、これは、国全体のいわゆる外交とか防衛とか安全保障の立場に立って問題に当たらねばならぬという必要があると考えております。

 現在、日米間で、兵力再編の問題につきまして、いろいろ具体案また最終案というものの取りまとめの協議が行われております。厚木が軽くなった、今度は岩国だけ一方的に重くなったというような話ではなくて、基本的には岩国に移りますけれども、岩国は、従来の飛行場の位置と違って沖合に移転させることによって、飛行の経路が大幅に沖合に出されますので、その分だけ騒音地域が約三分の一、計算上はそういうことに減る等々、減少というものもあります。ただ過密の沖縄からいきなり岩国にそのまま移って、騒音がそこまで丸々ふえたという感じではないということだと私どもは理解をしております。

 いずれにしても、岩国市民の方々にその点を御理解いただけないと、今のまま厚木にずっと置いておいてもいいというわけにもいかぬと思いますので、私どもは何らかの形で負担の軽減というものを考えると同時に、今のこの情勢の中におきましては、少なくとも抑止力の維持というものに関しましても留意しなければならぬ、ここらの難しいバランスをどうするかというのが一番の悩みだと理解しております。

    〔渡辺(博)委員長代理退席、委員長着席〕

照屋委員 ハワイで行われた日米審議官級協議について尋ねますが、まずその前提として、米軍再編問題に関して、昨年十月の2プラス2における日米合意は、日本政府は中間報告と言い、アメリカ政府は実質的な最終報告だと言っております。大臣、アメリカのヒル国務次官補は、三月末の取りまとめは昨年十月の日米合意を実行に移すための実施計画だと言っております。

 麻生大臣、中間報告なんでしょうか。三月末のは実施計画なんでしょうか。明確にお答えください。

麻生国務大臣 昨年十月の2プラス2の共同文書で示された在日米軍の兵力再編という問題に関する案というものは、それまでに日米間で実施されてまいりました協議、日米間の協議の成果を取りまとめたというものであります。したがいまして、この案は、日本国内及び二国間の調整の過程ということになろうと存じますので、中間的なものだというのは当然であって、これから一メーターも十センチも全く動かさないなんという話ではない、私どもは基本的にそう理解をいたしております。

 いずれにしても、最終案というものをつくるべく、今、まだ協議が、もういろいろなところで断続的に行われておりますし、私どもも持ち帰り、私どもも向こうに投げる、いろいろな形で計画というものを作成する作業を行っている最中と御理解いただいてよろしいんだと思います。

 したがって、これは最終案かといったら、やはり中間的なものだというぐあいに御理解をいただいてよろしいんだと存じます。

照屋委員 ハワイで三月十一日まで開催された日米審議官級協議において、アメリカ側から、グアムへの移転費として、総額約百億ドル、日本円に換算して約一兆一千七百五十億円の提示があり、そのうち七五%の日本側負担が求められたと報道されておりますが、先ほど来の質疑を聞いておりますと、まだ交渉中だ、こういうことであります。

 交渉中というのはわかりますが、この百億ドルの根拠、試算項目というのは、すべて日本側には提示をされたんでしょうか。

麻生国務大臣 照屋先生、基本的には、私どもの知っている範囲で、米軍による撤退が行われた、例えば韓国で三十八度線から以南の方にずっと下がった等々、いろいろな例はございます。そういった例は、米軍の都合で移動した例。それから、東ドイツからソ連が撤退をした、一九九〇年の話ですけれども、このときはソ連兵に、撤退を統一ドイツが要求ということになったときには、たしか一兆円、ちょっと正確には覚えておりませんけれども、マルクで払ったという例があります。

 いずれにしても、私どもの場合は、沖縄の負担軽減というものを考えたときに、これを十年先とか二十年先ではなくて今だという話になりますと、どうしても移転するに当たってはある程度資金援助というものをしないと、向こうも財政は赤字という状況の中において、ただただこちらの都合でという話になりますと、それはある程度のものをこちらも負担せねばならぬなというのは私どもも理解しておりますが、そこに関して、幾らなのだ、その額の積算は何とかという、まだとてもそこまで至っておる話ではございません。

 したがいまして、それに当たりましては、先ほど御質問も民主党の方からあっておりましたけれども、それに対して現金なのかローンなのか何なのか等々の話というのは、とてもそこまで話が伝わっているわけでもございませんし、その内容については、その中にボウリング場が入っているか何が入っているか、とてもそんな話まで、細目に至るところまでも至っておりません。

 それが正直なところでもありますので、ぜひその点は、私どもとして、このところは納得を得られるように、かつ、そういった話は速やかに、こちらから、向こうが移転が可能になるように、私どもとしては向こうと目下交渉中というのが正しいところだと存じております。

照屋委員 最後に防衛施設庁にお伺いをしますが、今、捜査が進んでいる官製談合事件、これで、全国にある十一の防衛施設局が発注した五億円以上の工事すべてに配分表が作成されて、いわば官製談合であったということが東京地検の捜査によって判明しております。これは、岩国、佐世保の工事だけではありません。

 このことについて防衛施設庁は内部調査をやったのか、そのような事実を究明できたのか。そして、官製談合と認定された工事については、発注機関たる防衛施設庁は関与した職員に損害賠償を請求する法的な義務を負っておりますが、その請求はやりますか。具体的に答えてください。

地引政府参考人 お答えをさせていただきます。

 本事案の徹底的な事実関係の究明を図るために、去る一月三十一日に、防衛庁長官の統括のもとに、施設庁長官を長といたします調査委員会を施設庁に設置いたしまして、検察当局の捜査に影響を与えないことを最大限配慮しつつ、施設庁職員、また、必要に応じてOBに対してもヒアリング等を行うなど、鋭意作業を実施しているところでございます。

 先生御下問の点につきましては、現在まさに検察当局の捜査が進んでいるところでありまして、捜査にかかわる事項であること、また、今まさに調査委員会においてヒアリング等の作業を進めているところでございまして、現時点におきまして確たることを申し上げる状況じゃないということを御理解賜りたいと思っております。(照屋委員「損害賠償を請求するのか」と呼ぶ)

 損害賠償につきましても、その事実関係、まさしく進めているところでございますので、事案が判明し次第、法令にのっとり対応していくという所存でございます。

原田委員長 申し合わせの時間が過ぎておりますので、御協力をお願いいたします。

照屋委員 法律上、これは官製談合だと認定されたら、関与した職員に損害賠償を請求しなくちゃいけないんだから、これをちゃんとやらぬとだめですよ。そのことを強く申し上げて、質問を終わります。

     ――――◇―――――

原田委員長 次に、経済上の連携に関する日本国政府とマレーシア政府との間の協定の締結について承認を求めるの件及びマルチチップ集積回路に対する無税待遇の付与に関する協定の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 政府から順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣麻生太郎君。

    ―――――――――――――

 経済上の連携に関する日本国政府とマレーシア政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

 マルチチップ集積回路に対する無税待遇の付与に関する協定の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

麻生国務大臣 ただいま議題となりました経済上の連携に関する日本国政府とマレーシア政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明申し上げます。

 平成十六年一月以来、両国間で協定の締結交渉を行ってきた結果、平成十七年十二月十三日にクアラルンプールにおいて、我が方小泉内閣総理大臣と先方アブドゥラ・アフマッド・バダウィ首相との間でこの協定の署名が行われた次第であります。

 この協定は、両国間におきまして、物品及びサービスの貿易の自由化及び円滑化を進め、投資の機会及びビジネス環境を改善し、知的財産の保護を確保し、中小企業等の分野における協力を促進するものであります。

 この協定の締結によって、幅広い分野において両国間における経済上の連携が強化されることを通じ、両国経済が一段と活性化され、また両国間の関係がより一層緊密化されることが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、マルチチップ集積回路に対する無税待遇の付与に関する協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明させていただきます。

 この協定は、平成十七年十一月二十八日、ブリュッセルにおいて作成されたものであります。

 この協定は、マルチチップ集積回路に対して適用する関税を無税とすることを内容とするものであります。

 我が国がこの協定を締結することは、国際貿易における我が国の利益を増進するとの観点から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 以上二件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いを申し上げます。

原田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三分散会


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