衆議院

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第12号 平成18年4月28日(金曜日)

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平成十八年四月二十八日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 原田 義昭君

   理事 小野寺五典君 理事 谷本 龍哉君

   理事 土屋 品子君 理事 水野 賢一君

   理事 渡辺 博道君 理事 武正 公一君

   理事 山口  壯君 理事 丸谷 佳織君

      安次富 修君    逢沢 一郎君

      愛知 和男君    伊藤 公介君

      伊藤信太郎君    宇野  治君

      大塚  拓君    北川 知克君

      高村 正彦君    篠田 陽介君

      新藤 義孝君    鈴木 馨祐君

      福田 良彦君    三ッ矢憲生君

      御法川信英君    武藤 容治君

      山内 康一君    吉良 州司君

      篠原  孝君    津村 啓介君

      松木 謙公君    松原  仁君

      谷口 和史君    笠井  亮君

      照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   内閣府副大臣       櫻田 義孝君

   防衛庁副長官       木村 太郎君

   総務副大臣        山崎  力君

   外務副大臣        塩崎 恭久君

   外務大臣政務官      伊藤信太郎君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房遺棄化学兵器処理担当室長)    高松  明君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         米田  壯君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛施設庁施設部長)  渡部  厚君

   政府参考人

   (防衛施設庁業務部長)  長岡 憲宗君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 三浦  守君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 長嶺 安政君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 梅田 邦夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際社会協力部長)        神余 隆博君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  佐藤 重和君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           中村 秀一君

   外務委員会専門員     前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十八日

 辞任         補欠選任

  伊藤信太郎君     北川 知克君

  中山 泰秀君     福田 良彦君

  山中あき子君     大塚  拓君

  田中眞紀子君     松木 謙公君

同日

 辞任         補欠選任

  大塚  拓君     武藤 容治君

  北川 知克君     伊藤信太郎君

  福田 良彦君     安次富 修君

  松木 謙公君     田中眞紀子君

同日

 辞任         補欠選任

  安次富 修君     中山 泰秀君

  武藤 容治君     御法川信英君

同日

 辞任         補欠選任

  御法川信英君     山中あき子君

    ―――――――――――――

四月二十七日

 所得及び譲渡収益に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第九号)(参議院送付)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)(参議院送付)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 腐敗の防止に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

 所得及び譲渡収益に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第九号)(参議院送付)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)(参議院送付)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

原田委員長 これより会議を開きます。

 腐敗の防止に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官長嶺安政君、大臣官房国際社会協力部長神余隆博君、北米局長河相周夫君、経済協力局長佐藤重和君、警察庁刑事局組織犯罪対策部長米田壯君、法務省大臣官房審議官三浦守君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

原田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。丸谷佳織君。

丸谷委員 おはようございます。公明党の丸谷佳織でございます。

 ただいま議題となっております国連腐敗防止条約について質問をさせていただきます。

 本条約につきましては、昨年のグレンイーグルズ・サミットで合意をされました文書の中にも、各国が本条約を締結していこうという趣旨が盛り込まれておりました。日本は二〇〇三年に署名はしたものの、ことしの批准、国会に提出をしていただいているわけでございますけれども、昨年、サミット明けの当委員会におきまして、私も外務大臣の方に対し、本条約の締結を早くしていただきたい旨、発言をさせていただきまして、そして今国会で提出をしていただいたことを大変高く評価している次第でございます。

 国内法の整備等、いろいろと日本で行わなければいけない作業があったと承知をしておりますけれども、政府が今国会で早期に批准をしていく、この姿勢を日本として示すことができたことは大変にすばらしいことだと、賛成の立場で質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 本条約は、腐敗のために公務員が責任感と自覚を持ち、職務を行うための行動規範の作成、そして、もし汚職があった場合、罰則等の国内法を整備すること、そして損害の回復に向けて国際協力をしていくこと等が内容となっておりますけれども、公的部門のみならず、民間部門での腐敗防止のための社会の参加を促す措置もとることとなっております。

 市民あるいはNPO等と協力していくことが求められるとともに、とかく厳しい日本の財政状況の中で、国民の目が行政に対して非常に厳しくなっている。当然、腐敗は許さないという視点がすごく重要になってくるわけでございますけれども、政府が今国会でこの腐敗防止条約を締結した意義を国民の皆様に深く知っていただくとともに、社会参加を促すための広報というものも重要かというふうに考えております。国民一人一人に本条約の意義を広く知ってもらうための努力を政府に求めるところでございますけれども、この点について御見解をお伺いいたします。

麻生国務大臣 丸谷先生御指摘のとおり、昨年の、御意見、御質問のありましたときに答える形になっておりますけれども、この腐敗防止条約というものは、国際協力について定めたたった一つの条約ということになろうと存じます。そういった意味で、こういう条約というのは、日本という国家の意思をきちんと示すという意味でも非常に大事なところではないか、重要だという点にかんがみてみれば、これはもっとはっきり国内外に広報せしめろという御意見なんだと思いますが、まことにおっしゃるとおりだと思います。

 この種の話をやはり国民の理解、協力というものを得てやるというのは不可欠だと思いますので、意識を向上させていくことは、これは役人側も、それに、贈る贈賄側も、収賄側も、両方の意識なんだと思いますけれども、こういったものを私どもとしてはきちんと認識させるために白書とかホームページとか、役所の持っている手段というのはある程度限られておりますけれども、いずれにいたしましても、広く積極的にこういったものを求める、理解を広めるという努力をしていきたいと存じております。

丸谷委員 どうぞよろしくお願い申し上げます。

 続きまして、開発途上国における腐敗防止の取り組み方針についてお伺いをいたします。

 日本は国際協力という形で、例えば途上国に対し、一人一人の国民が納税していただいたお金の中からODAという形で、いろいろな形で国際協力をしてまいりました。例えば貧困の撲滅あるいは民生の向上のための国際援助というものにおいて最も嘆かわしいと私が思うのは、被援助国における公務員の横領、あるいは一部の支配階級といいますか、特権階級の横領によって、本当の意味で支援を必要とする一般市民に援助が行き届かないということが一番残念でなりません。

 いろいろなケースも、私たち、目の当たりにしているところでございますけれども、例えばこれを防止するためには、本条約第六十条に、締約国は開発途上国の利益のために腐敗行為と戦うための最大限の技術協力を与えるという項があります。例えば我が国としてはどのような協力が可能となってくるのか、この点について政府のお考えをお伺いいたします。

塩崎副大臣 今のODAに関連して、腐敗が起きたのでは意味がないじゃないか、こういうお話でございます。腐敗防止条約の第六十条の腐敗行為と戦うための最大限の技術協力ということで、日本は何をしているのかということでございますけれども、JICAが技術協力をしておりまして、汚職の防止とか、あるいは刑事司法支援に関する研修の実施、汚職犯罪に係る情報解析に関する技術専門家を派遣するといったような積極的な技術協力をこれまでも進めているわけでございますし、今回の条約に関連しても、さらに引き続いて腐敗防止の分野における国際協力を進めていきたい、こう考えているわけでございます。

 今まで、例えばインドネシアに対してコンピューターの解析、最近いろいろな国でコンピューターを使った犯罪というのがたくさん出てきているわけでございますので、そういった面で、JICAから、データ解析の技術向上のための協力であるとか、あるいはタイに対して汚職防止の専門家の派遣というようなことで協力をしてきているわけでございまして、ODAがちゃんとしかるべきところに行き届くためにもこういうインフラを整えていくということが大事だというふうに考え、協力を進めているところでございます。

丸谷委員 今、副大臣から御答弁をいただきましたインドネシアあるいはタイの例、私も非常にいい事業、協力の仕方だと思っております。

 以前、子供の性的搾取、人身売買の問題におきまして、被害者が非常に多いアジアの各国の状況を見てまいりました。その際に、アジア各国においては、いろいろな宗教上の理由ですとか伝統の理由はあるにせよ、出生登録、いわゆるペーパー上の子供たちのアイデンティティーがまだないという国が多くあります。

 日本は出生登録、身分保障というのはきちんと戸籍でされているわけでございますけれども、こういった人身売買等を防ぐために、日本の出生登録技術ですとかノウハウをアジア各国に伝えることができないだろうかということで、外務委員会で外務省の方にもお願いをしてまいりました。

 その際に、インドネシアで、今おっしゃっていただきましたコンピューターの技術協力の中でそういったノウハウも一緒に伝えていただくようなことを、これはユニセフを通じて事業を展開していただいているというふうにも承知しておりますので、そういった意味で、より深く、本当の意味で支援を必要とする人たちにODAあるいは国際協力が使われるような形で、また引き続き、ぜひ御努力をしていただきたいと思います。

 この例を見るにつけ、やはりグッドガバナンスという視点が、特に被援助国においては求められるところでありまして、行政、立法府の透明性の確保というところが重要だと思っております。我が国のODAのあり方につきましては、ODA大綱にもグッドガバナンスの重要性がうたわれておりますし、また二〇〇一年からは無償資金協力の中にガバナンス無償が新設をされております。今まで、こういった新ODA大綱に基づきましてグッドガバナンスという視点で取り組まれてきたことにつきまして、その取り組み方、実績があれば御答弁願いたいと思います。

佐藤政府参考人 ただいま丸谷先生から御指摘をいただきましたグッドガバナンスの視点、これは途上国に対する援助を行っていくに際して非常に重要な視点で、特に近年、国際的な援助のコミュニティーの中においては、グッドガバナンスというものがないと、いかに援助をしても効果的な援助にならないということで、非常に重視をされている視点でございます。

 そうしたことから、我が国もODA大綱でそうした重要性を明記するとともに、実際、我が国の援助を実施する過程でも、先ほどいろいろな腐敗防止のための技術協力を行っているという御説明も申し上げましたが、いろいろな形で、各国に対する腐敗防止のみならず、いろいろな法的な体制の構築であるとか関係の制度構築、そういった面について技術協力、あるいは場合によっては資金協力という形で途上国のグッドガバナンスの構築ということに協力をしてきているところでございます。

丸谷委員 これは報道でございますけれども、先月ですか、ベトナムにおいて運輸省橋梁部高級官僚が巨額の公共事業費を賭博等に使い込んだ事件が報道をされておりました。運輸省のこの橋梁部高級幹部が公金二百万ドル近くを流用したという疑いを持たれ逮捕されているわけでございますけれども、この橋梁部においては全国で十五の巨大事業を管轄しておりまして、年間予算は合計二十億ドルを超えているとのことでございます。

 我が国のODAもこの同じ部署のプロジェクト資金となっておりまして、我が国のODAがベトナム政府幹部に横領のお金として使われていたとすれば大変なことでございますけれども、我が国のODAが正しく使われているのかどうか、これを精査するのも政府の役目と考えております。現在の時点で、このベトナムの汚職に関する事実内容、把握している部分を教えていただきたいと思います。

塩崎副大臣 ベトナムの交通運輸省の、今、橋梁部、橋梁の部門だというお話でございますけれども、恐らく第十八事業管理局というところだと思いますが、この高官によります今回の事件は、ことしの初めに、この事業管理局のズン局長などが公安省によりましてサッカー賭博関与及び収賄容疑で逮捕された、そしてさらに四月四日に至って、ティエン交通運輸次官も収賄容疑で逮捕されたというふうに聞いているわけでございます。

 問題は、今丸谷先生御指摘のODAの資金が使われているのかどうかということで、私どもとしても大いに関心を持っているところでございますが、今ベトナム政府が調査をしているわけで、私どもとしては、何回もベトナム政府に対して真相の早期究明というものを申し入れてきているところでございます。まだ最終的な形はこちらに報告がないわけでありますけれども、我が国としては、政府当局による本件調査の結果を早期に伝達をしてもらって、判断ができるようにしなければいけないと思っておりますけれども、とりあえずはさらなる情報収集に努めてまいりたい、このように思っているところでございます。

丸谷委員 その場合、例えばベトナム政府に対し問い合わせをしていただく、また真相解明を強く求めていくという日本政府の手段のほかに、例えば現地において我が国主導の調査という手段があるのでしょうか。この点についてはいかがでしょうか。

佐藤政府参考人 御指摘の点については、先ほど副大臣から御答弁申し上げたとおり、ベトナム政府に対してまず真相究明を求めていく、できるだけ早期にそこを明らかにしてくれということを求めてきているわけでございますが、私どもとしては、例えば世銀等の国際機関あるいは他の援助国も本件については非常に関心を持っておりまして、現地でそうしたほかの国際機関あるいは他の各ドナーともいろいろ協議をしながら、どういう対応をしていくべきか。それで、場合によっては、今丸谷先生お話があったように、調査団をその本国から、国際機関もそういったことを今検討しているようでございますので、そうした調査団を出して、ベトナム政府に対していろいろな事実関係の調査あるいは質問を行っていくということもこれから考え得る、検討していくというふうに考えております。

丸谷委員 ありがとうございました。

 こういった問題につきまして、国際協力の中で貧困の撲滅あるいは被援助国における民生の向上に対して日本は協力をしているわけでございまして、本当に、一部の高級官僚あるいは支配階級にこういったODAのお金が使われるということだけは絶対にあってはならない、その視点で今回の汚職事件、日本のODA資金流用いかんも、ぜひ徹底的に調べていただきたいと思います。

 以上、この腐敗防止条約に関しては大賛成の立場で質問をさせていただきました。

 若干時間がございますので、グアム移転の問題について質問をさせていただきたいと思います。

 防衛庁長官が訪米をされまして、ラムズフェルド国防長官と会談をされ、在沖海兵隊のグアム移転費につきまして、百二億七千万ドルのうち日本側の負担が五九%、米側四一%で合意をされてまいりました。まず、この額というよりも、どのような方針でこの結果を出すために臨み、どう評価をされるのか、この点からお伺いいたします。

木村副長官 私どもは、この米軍再編につきまして大きく二つの観点を大事にしながら、これまで努力を続けてまいりました。その一つが在日米軍の抑止力の維持ということでありまして、二つ目には地元の負担の軽減を図るという、この観点から取り組んできたところであります。特に、この地元の負担の軽減ということを考えますと、米軍の施設・区域の七五%が沖縄県に集中していることは丸谷委員も御承知のとおりでありまして、住民の皆さんの生活環境あるいは地域振興に大きな影響を及ぼしている現状を考えますと、できる限りこの沖縄の負担軽減を早期に実現することが大事だというふうに考えておりました。

 このことを大事にしながら、先般日米防衛首脳会談において合意に至ったということでありまして、その中身として、我が国のみならず米国も応分の財政負担をすることになったということを考えても、私どもは妥当な結論だと考えております。

丸谷委員 日本の負担分、日本政府が負担をするいわゆる真水と言われるところは二十八億ドルで、アメリカよりも少ない額になっているようでございます。そのほか、回収できる特殊会社への出資十五億ドル、あるいはJBIC等の融資十七・九億ドルという形で報告をされておりますけれども、どういう積み上げ方をしていったのかお伺いしてもよろしいでしょうか。何が幾らで、その結果ここまでは日本が負担をするという形であったのか、それとも、例えば項目で、住居費は日本が負担をしますといった結果こういった額の積み上げになったのか、この考え方について、交渉の臨み方、方針についてはいかがだったのでしょうか。

木村副長官 総額では百二・七億ドルという中でありますが、米側は、総額という中で日本側はどうあるべきだ、そして米国側はどうあるべきだというような考え方を示しながら交渉しようという考え方があったようでありますが、私どもは、今委員の御指摘あったとおり、一つ一つ、何が必要なのか、また早期に移転をさせるためにはどうなのかということを考えながら、いわゆる積み上げ方式でのお金の姿を我々は模索していったということであります。

 その百二・七億ドルの中で、例えば私ども日本側としては、司令部の庁舎とかあるいは隊舎などにおいて二十八億ドルという、今お話があった真水という形で御提示させていただきましたし、また、御家族の皆さんの住宅等については出資あるいは融資という形で二十五・五億ドル、また、電力、上下水道などいわゆるインフラ関係においては融資の形で七・四億ドル、日本側としては合計六十・九億ドルという形になってきたわけであります。

 しかし、これまで額賀長官も記者会見等でも申し述べているとおり、真水という財政支出の部分においてこの二十八億ドルが上限であるということで、先ほど言ったとおり妥当な線であったというふうに判断しております。

丸谷委員 今回のこの日本政府の負担分につきましては、今副長官から御答弁していただいたところを私なりに考えてみますと、まず、日本政府の負担がアメリカよりも多くならない範囲の中で、必要な分、例えば施設経費等を日本が負担をするという形で決着をしていただいたということだと理解をさせていただきます。

 これは大変に申しわけございません、通告をしていないので、御答弁いただけるところで結構でございますけれども、昨日より報道で三兆円という言葉が躍っております。ローレス副次官、今後六年から七年間で普天間移転等も含めて約二百億ドルを日本は必要とするだろうという形で、今回の六十・九も含めますと約二百六十億ドル、三兆円の日本の予算措置が必要になってくる等の報道がございますけれども、これについて政府は今どのようにコメントをされるのか、この点をお伺いいたします。

木村副長官 日本側の負担として合意したのは、あくまでもグアム移転の経費に関する、先ほど申し上げました六十・九億ドルについてでありまして、残りの二百億ドルという金額を負担するということは全く合意しているわけでもありませんし、その根拠や内訳というのも私どもまだ把握しておりません。

 いずれにしましても、我が国が負担すべき内容を、在日米軍再編という全体の中でかかる経費については、厳格に精査していく基本的姿勢は堅持していきたいと思っております。

丸谷委員 九一年の湾岸戦争の際には、実際に出したお金が円建てなのかドル建てなのかというところが明確にされていなかったため、実際に、為替の変動によりまして、後に五億ドルの補てんが日本側に生じたと承知しております。

 今回は、この円とドルの問題、しっかりと明確にされているんでしょうか。

木村副長官 ドル建てであります。

丸谷委員 また、大臣もこれから訪米されるということでございます。2プラス2において日米防衛協力の指針を見直すということも報道をされている次第でございますが、このガイドラインの見直しについて、日本の臨み方、方針というものを最後に教えていただきたいと思います。

麻生国務大臣 報道によったらガイドラインを見直すという話があるから、その事実は確かかというお話だというように思いますが、ガイドラインというものを今直ちに見直すというようなことを考えているわけではございません。

丸谷委員 実際にこれから行われるであろう2プラス2、そして、沖縄を含め各地元に対する政府からの御説明、また理解を得る努力というのがやはりこれから大変重要になってくると思いますので、この点を最後に改めてお願いをいたしまして、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

原田委員長 次に、山口壯君。

山口(壯)委員 民主党の山口壯です。

 きょうは、国際腐敗防止条約、このことについてお聞きするわけですけれども、最後にグアムについてはしっかり聞かせていただきます。

 まず、大臣、どうですか。アジアの国では余りまだ、この条約については、締約はしたけれども批准は少ないようなんですね。中国とモンゴルについては、そういう意味では批准をしているみたいですけれども、ほかの国についてどういうふうにおたくもどうぞということを言っていかれるつもりなのか、そこから聞かせてください。

麻生国務大臣 もともと山口先生御存じのように、とても腐敗の話を一国の中だけでやるような時代じゃなくなって、グローバルな、悪い方の面からいきますと、この種の腐敗の話もインターナショナルになってきたというのが多分背景なんだと思っております。

 したがって、アジアというところにおいても、これは何となく腐敗が当たり前みたいな雰囲気の感覚というのはこれまでなかったわけじゃありませんから、そういった意味では、腐敗というものはだめという話を、これは日本だけで幾らやったって、回り回ってということになると、このグローバルな時代にはとても合わないというところで、私どもとしては、前回のウィーン条約以来これをずっとやってきているんですけれども、これは、幸いにして中国というところも一応サインまではしておりますから、そういった意味では、これはきちんと、こういったものが、おたくもサインしたんだから、きちんとこの後も批准をして、実効あらしめるようにしてもらわにゃだめですよというような話を、私どももこれは他国に対していろいろ言っていかにゃいかぬだろう。

 腐敗の定義についてもちょっと、よくわかっているんでしょうけれども、これも腐敗なんですよという腐敗についての定義も、いや、それは普通なんじゃないのか、それぐらいお礼もらっても当たり前なんじゃないかというような話の感覚のところと、いや、ちょっとそれもだめという話やら何やら、これは小さいのを言っていけば随分切りなく出てくると思いますが、哲学のところからきちんとしなきゃいかぬところだと思いますので、セミナー開くなり何開くなりいろいろやっていかないと、私はこれは話は簡単にはいかないだろうという意識が、そういった感覚がございます。

山口(壯)委員 大臣、中国についてはサインしたのみならず、批准もしているんでしたかね。

麻生国務大臣 済みません。中国はサインをした上に締結もしております。

山口(壯)委員 サインをした上に、いわゆる批准行為もしているということですね。こういう意味では、ほかの国にとっては、腐敗というのが余り腐敗と感じられていないという文化もまだあるんですかね。そういう意味では、我々もなかなか話を通じるのは難しいかもしれないけれども。

 アメリカは本当はこういうことを一番積極的でなきゃいけないはずのところでしょうけれども、何かえらい消極的だというふうに聞くわけですね。現実に、アメリカは条約の交渉過程においても反対していたということも聞くわけです。実際、アメリカについて、どういうふうに今この条約については見通しがあるんでしょうか。

    〔委員長退席、土屋(品)委員長代理着席〕

塩崎副大臣 今、アメリカは余り積極的じゃないじゃないか、こういうお話でございますけれども、二〇〇三年の十二月にはこの条約には署名はしておったわけでありますけれども、昨年の十月に上院にこの条約を提出いたしまして承認を今求めているというふうに承知しているわけでございまして、アメリカとしては本条約の締結に向けて取り組んで、前向きにいこうということだろうというふうに私どもは理解をしているところでございます。

山口(壯)委員 いや、塩崎さん、前向きにと言われますけれども、要するに、議会で通っていないんですね。どうしてですか。

塩崎副大臣 しかし、去年の十月に提出をされて上院にかかっているわけでありますから、その程度の時間がかかるものはほかにも幾らでもあって、これについては、私どもが聞いている限りでは、積極的に進めていきたいと思っているというふうに聞いております。

山口(壯)委員 塩崎さん、条約の締結過程で現実にアメリカは反対しているわけですね。どうしてでしょうか。

塩崎副大臣 一つ事実として、今反対しているというふうにおっしゃったんですが、私どもが聞いている限りでは反対しているという事実はないというふうに聞いております。

山口(壯)委員 若干ちょっと認識が違うかもしれないけれども、ということは、アメリカもこの辺については大体すぐ批准もするだろう、こういう見通しを持っておられるわけですね。

塩崎副大臣 それは他国の議会のことでありますから、そう簡単に私どもが予測をするわけにいきませんけれども、一つあることは、アメリカの場合には、現行法令によってこの条約の実施が可能という仕組みになっているようでありまして、本条約の締結のために新たな立法措置が必要とされていないというような背景もあって、仮に少しスローペースだとするならば、そういうところもあるのかもわかりませんが、基本的にはこれの締結に向けて上院で議論をするということで進めているというふうに理解をしております。

山口(壯)委員 これは余りきれいごとの話じゃないと思うんですよ。CIAとかいろいろなところがあれば、当然いろいろな、いわゆるコーバートオペレーションというのをやるわけですから、彼らにとってはこういうものが出てきたら一番困ると思いますよ。きれいごとで、本当はアメリカだって前向きだという話ではないでしょう。彼らが一番困る立場にいると私は思いますよ。気候変動の例の条約についても、結局、アメリカが一番ネックになってある意味では前に進まない面もあるわけです、一番中心の一つですから。

 したがって、これは日本としてアメリカにきちっとこういうことについては言っていく話なんですよね。どうでしょうか。

塩崎副大臣 山口先生、アメリカに対して非常に後ろ向きだというお話でありますけれども、例えば二〇〇四年にシーアイランド・サミットというのがあって、そのときにも同趣旨のことをアメリカが主張しているということもあります。

 したがって、行政府の立場と立法府の立場というのは、アメリカの場合は当然いろいろな形で食い違ってくることもありますけれども、私どもの理解では、先ほど申し上げたように、基本的に上院でこれを通していこうということでやっているわけです。我々が予断を持って通る通らないの話を予測する話ではないと思っております。

 日本からも働きかけるべきではないのかというお話でありますが、それは一般論として気持ちは私も同じだと思っております。

山口(壯)委員 こういうのは正直言って余り深刻な話でもないんですから、しっかりアメリカにいろいろな機会をとらえて言われた方がいいと思います。よろしいですか。

塩崎副大臣 幅広く意見交換をしているアメリカでありますから、そういう中で日本としての気持ちを伝えていくことは決して悪いことではないと思いますので、先生のお考えには賛成をさせていただきたいと思います。

山口(壯)委員 非常にコーシャスに、コーシャスに答弁されているんですけれども、具体的にこんなのは認めてもいいと思うんですよ。

 この条約の履行、この担保のためにいろいろな監視体制も本当は必要なんでしょう。ほかのOECDの関係のものでは、そういう専門家が大丈夫かということで評価もしているようなことも聞きますから、この腐敗防止条約についても何か監視体制みたいなものを考えるといいかなと思うんですけれども、この点はいかがですか。

麻生国務大臣 御指摘のように、やはりある程度監視機能体制みたいなものはこの点にあった方がいいんじゃないのかなとは私どもも思います。国際的な監視機能、だって、数カ国だけやって、あとは全然やっていないというんじゃ甚だ公平性を欠きますので、そういう感じがいたします。

 ことしの十二月に第一回の会合というのを予定しておりますけれども、この実施状況を定期的に確認するといったようないわゆるアフターケアというかそういったものは必要なんだということで、今それを検討するという予定にいたしておりますが、とにかく締約国がこの規定を確実に実施するならいいけれども、実施しないというんじゃ話になりませんので、それを実施させていくためには、今言われたような仕組みというのを考えようじゃないかということで、この十二月にその種の問題の締約国間の会議をしようといたしております。

山口(壯)委員 まず、鋭意そういうものは提案されたらいいと思います。

 ちなみに、この事務局に日本人の職員を派遣するのかどうか、いろいろなことで今話題になっています。どうでしょうか。

塩崎副大臣 まず第一に、この事務局を独自に設置するということではなくて、この場合には、国連事務総長が事務局の役務を提供するということになっているようであります。

 しかしながら、では、どこが実体的にやるのかというと、幅広く犯罪防止などの分野で取り組んでおります国連薬物犯罪事務所というのがウィーンにございますけれども、ここが事実上の事務局の機能を果たすのではないのか、こういうふうに考えております。

 ここの事務所に現在十一人の日本人が勤務をしておりまして、ことしの二月には、日本人が、これは外務省の職員でありますけれども、条約局長に就任をいたしまして、前のウィーンの国際機関日本政府代表部の公使でございました尾崎久仁子さんという方が今条約局長として就任をして頑張っていただいているということでございまして、腐敗対策の取り組みにおける我が国と国連との間の、言ってみれば、橋渡しをこの局長が中心的にやっているということでございます。

山口(壯)委員 では、新たには派遣しないけれども、そういうことで日本人も頑張っているからという話ですね。

 ちなみに、こういう捜査体制というのは現行の我々の日本の中で対応できるわけでしょうか。

塩崎副大臣 この条約は、腐敗行為を防止して、これと戦うために、公務員に係る贈収賄とか公務員による財産の横領等々、一定の行為の犯罪化、それから犯罪収益の没収、財産の返還等に関する国際協力等について規定しているということは御案内のとおりでありますけれども、捜査当局についても、このような条約の意義にかんがみ、適切に対応すべきものと考えておるところでございます。

山口(壯)委員 今の体制で十分ですか。

塩崎副大臣 理想を言えば、どんなものでも十分とは言えないかもわかりませんが、私どもが今考えているところでは、とりあえず十分やっていけるんではないかと思っております。

山口(壯)委員 こういうものを、公の政府の意識だけじゃなくて民間の方も、例えば、援助するときなんかは相手国の政府の人たちと前もっていろいろ議論するわけですから、民間の人にも意識を共有しておいてもらわなきゃいけないんでしょうね。援助でも、先に自分たちでつくり上げて、それを向こうの方から要請という格好をとっていくわけだから、自分たちのプロジェクトをとろうと思ったらいろいろな工夫も必要なんですよね。

 そういう意味では、民間にとっては、全くきれいにやれよというのは本当はきついことかもしれないけれども、そういう意識を持ってもらわないとこういうものはなかなか担保されないんでしょう。そういう点はどうでしょうか、民間の企業の意識を高めるということは。

塩崎副大臣 おっしゃるとおり、一般的に、ちゃんとやれよと言ってみたところで、その実効性が十分上がるわけではないわけでありまして、この条約は、包括的な腐敗対策のために、公的部門以外に、今御指摘のように、民間においても腐敗の防止とか会計基準の強化であるとかの措置をとることを求めているわけであって、我が国も、民間企業に対して職員の行動規範の策定を促す指針等を、いろいろ経済団体等もやっていますけれども、公表しているほか、それから、関係法令によって民間部門における会計基準を定めているわけであります。

 我が国は、効果的な腐敗対策のためには、今御指摘のとおり民間部門の協力というのが不可欠と思っておりますので、企業の意識を高めるために、各種の指針それからガイドラインといいましょうか、基準などの策定等を通じて、引き続きこれは政府がしっかり努力をしていかなければならないというふうに考えております。

山口(壯)委員 民間の企業がこういうことに違反した場合には、やはり罰せられるということになるんでしょうかね、こういう体制では。

塩崎副大臣 外務副大臣になるまでは、私、自民党で商法小委員長というのと会計小委員長というのを両方やっておりましたが、今まさに、ホリエモンの事件を含めいろいろな問題については、まず、会社法に反するかどうかとか証券取引法に反するかどうかとかそういうことがあるわけで、会計というのは言ってみれば経済のベースになるわけで、そこを覆していくことについてはきっちり対応しなきゃいけないということで、国内法で対応していくというのが常識だと思います。

山口(壯)委員 それは新しく規定されるということですか。

塩崎副大臣 特にこれが新しいものを導入しなければならないということではなくて、我が国の場合には、当然そういうものは整備をされていますし、不足なものは今でも順次今国会でも罰則強化等々行われるようになっていますけれども、基本的には、国内法で今あるもので対応できる体制だというふうに理解をしております。

山口(壯)委員 この新しくというところで、今のは、今の既存のものでやるということなんですけれども、この条約の二十五条に、「不当な利益を約束し、申し出若しくは供与すること。」云々について「必要な立法その他の措置をとる。」こういうくだりがあるんです。

 これは要するにどういうことかというと、例えば弁護士の人がいて、自分のクライアントに関して証人に接触する、証人と喫茶店に入る、喫茶店に入って御苦労さまとコーヒーを払う、そういうようなことをした場合に、普通は社会的な常識の範囲内ですね。ところが、この条文を厳密に読み過ぎると、そういうことまでちょっとおかしいんじゃないかということで罰則の対象になりかねない。こういうことは起こらないでしょうねというのが私の質問の趣旨ですけれども、そのことについてはいかがですか。

塩崎副大臣 条約の第二十五条の御指摘、御質問かと思うわけでございます。

 いわゆる証人等の買収罪というものでありますけれども、刑事事件に関して虚偽の証言をするなどの報酬として、金銭その他の利益、今例示をされておりましたけれども、を供与した場合などに成立するもので、すなわち、仮に弁護人が刑事事件の証人等に対して何らかの利益を供与したとしても、その利益の供与が虚偽の証言をすることなどの報酬ではないという限り、今申し上げたこの証人等の買収罪というのは成立しないということになっております。

 したがって、証人等買収罪を設けることが、少し弁護士等々からいろいろ御指摘、日弁連からもあったようでございますけれども、正当な活動に萎縮効果をもたらすようなことはないのではないのかというふうに私どもは考えているところでございます。

山口(壯)委員 虚偽の証言が何だったかというのは難しいところですね、現実に。弁護士が自分のクライアントのために、こういうことをどうだ、証言してくれるか、別に虚偽でなくてもそういう証人をいろいろ当たるわけですから、したがって、それを後で虚偽かどうかというのは、非常に主観的な、検察の立場からしたら、ある意味で恣意的にもなりかねないわけですね。

 今の答弁は、この二十五条に基づいて新しい法的な措置はとられないというふうに理解していいですか。

塩崎副大臣 今、国内法の整備が要るのか、こういう話でありますが、今法務委員会にかかっている条約刑法については、それに該当するというふうに思っております。

山口(壯)委員 したがって、これによって新しい法的な整備等の措置はとられないということですね。

塩崎副大臣 ですから、今申し上げた条約刑法で整備は行われるということでございます。

山口(壯)委員 それであれば、やはりこの懸念というのは非常に私は深くします。弁護士の活動について、虚偽の証言というのは非常に主観的な部分も入っていますから、何が虚偽かというのはこれは本当に難しい問題ですね。事実というものがわからない面があるわけですから、したがって私は、これについては、弁護士の正当な活動というものをゆめゆめ阻害しないようなそういう対応を十分配慮を払っていただきたいと思いますけれども、それについてはよろしいですか。

塩崎副大臣 昨年まで私も法務委員長で、この条約刑法を途中まで審議いたしましたが、際どいラインというのがいろいろな点であって、今おっしゃったように、その辺についてはきちっとした整備がなされるべきではないかというふうに思っております。

山口(壯)委員 大臣、それで最後に、例の米軍再編のグアムの問題ですね。やはり、アメリカからちょろちょろ漏れてくるというのは非常によくないですね。代表代行の菅さんも、これについてはしっかりきちっと集中審議を求めたいというようなことを言っています。

 特に我々が懸念するのは、さっきも木村さんが、米軍も応分の負担、あり得ない答弁ですよ。応分の負担というのは、私にしたら、原則からこれは日本については認めるべきじゃないと思うけれども、日本も、無理を言わせてくれ、応分の負担をと言うのは、話はまだ若干の余地はある。米軍にも応分の負担をと言ったら、正直言って、やはり感覚が逆じゃないかと私は非常に強く思います。

 この枠組み、私はこれは決していい話ではないと思いますけれども、アメリカも、日本がアメリカに守ってもらっている以上はこれは当然じゃないか、こういう思考で今来ているわけですけれども、この法的な枠組みについて大臣はどういうふうに考えておられるのか、もう言わなきゃいけないです。さすがにここまで来た以上は、大臣として、国民の理解をきっちり求められるようなアクションに移っていかれるべきだと思います。いかがですか。

麻生国務大臣 これは、今、山口先生の御指摘にもありましたとおり、目下、兵力態勢の再編の問題について、日米間で今、審議官というか課長クラスで細目について最終的に、具体的な詰めを引き続ききょうもやっているんだと思います。

 いずれにいたしましても、最終的な取りまとめができるというところまでいかないかぬところなんだと思っておりますけれども、これは、全体の枠として、千なら千として、それを三分の一、三分の一、三分の一とか、半分とか、過去に余り例がありませんから、そういった意味では、どの程度の形でおさめるかというのは、これははなから、どの程度がいいのかというのは、正直、アイデアがあったわけではありません。多分、向こう側は百、こっち側はゼロで、二層ですから、それでずっと歩み寄っていかないかぬところなんだと思っております。

 しかし、少なくともこれは、日本側として、沖縄の海兵隊隊員並びにその軍属が沖縄県内から県外に移転していってくれるというのが沖縄県民の負担の軽減ということになりますので、それがなるべく早く促進されるのをもって優先順位の一番、かつ抑止力の維持、この二つを私どもは最初から目的としておりました。

 したがって、沖縄県民にとっての一番のところは、ずっと向こうは移転すると言ったまま二十年も全然変わらなかったのでは、何だということになろうと思います。なるべく早く移転してもらうためにどうするかというので、我々として、移転をする軍属のための家族のいわゆる家屋等々、それに伴う生活道路やら何やらいろいろ、あのジャングルのところですから、横井さんの隠れていたジャングルのところにつくるんだと思いますので、いろいろなところである程度のことをやらねばならぬのではないかという意識から始まっております。

 最終的に、経費のところに関しましては、真水の部分が一番財政的には大きなところですので、私どもとしては、三分の一としても、百とすれば三十三ということになりますので、そういった中にあって、真水の部分はなるべく少なく、かつ、ローンの話につきましては、これは発展途上国に貸すわけではない、少なくともアメリカに貸すわけですから、きちんとした返済というものが見込めるという前提で物が考えられるということも考えました。

 ただ、向こうにしてみれば、それもアメリカが払うわけではありませんから、アメリカは単に家賃を払っていくだけのことなので、そういった意味では、向こう側との、ある程度、日本がやってもらったということになろうかということで、真水とローンの部分と足して六割ということに、五九・幾つでしたか、ということになったんだと思いますが、そういうぐあいに頭の整理を私なりにいたしてはおります。

 いずれにしても、どの程度のところがという相場観というのがおよそ出てこない部分もありますので、いろいろ私どもとして悩んだところではあります。しかし、結果として、向こうも一応それで納得をしておりますので、そういった意味では、今回の部分は成功をし、少なくとも沖縄県民にとりましては負担の軽減が間違いなく見えてきたということになったのではないかというように理解をいたしております。

山口(壯)委員 この問題については、独立自尊の理念で外交ができるかどうかという部分がかかっていますから、私はまた集中審議をぜひさせていただいて、そのときにきちっとすり合わせをさせていただきたいと思います。

 終わります。

土屋(品)委員長代理 次に、津村啓介君。

津村委員 民主党・無所属クラブの津村啓介と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 国連腐敗防止条約について伺ってまいるわけですが、まず冒頭、今回、昨年の十二月に発効いたしまして、現在四十七カ国が締結をしているというこの国連腐敗防止条約が、なぜ今この時期に策定されるに至ったのかという国際社会における文脈、背景について一点お伺いしたいのと、それと同時に、翻って、我が国にとってこの条約に参加することのメリットはどのようなものがあるのかということについて伺いたいと思います。

 それに関連して一点だけ指摘をさせていただきたいんですが、トランスペアレンシー・インターナショナルという民間の団体ですけれども、こうした国際社会における腐敗の防止に取り組んでいる団体があるということなんです。こちらが昨年の秋に発表した腐敗認識指数、CPIという、何か消費者物価指数と同じですけれども、腐敗認識指数というものがあるそうです。

 どういう基準でやっているのかなと思って少し調べてみたんですけれども、これは必ずしもこの団体が恣意的にやっているものというよりは、十の独立した研究機関が行った十六種類の世論調査から認識を問う、この国をどの程度腐敗防止が進んでいる国と認識していますかということを内外の専門家に認識の度合いを聞く、そういう調査のようで、何かを数値化したというよりは、一種のアンケート調査のようです。これによると、日本は十点満点の七・三、これは十点の方がいいんですけれども、七・三点ということで、二十一位ということになっています。

 そういう意味では、日本国民がどう考えているかはともかく、海外からは、日本は必ずしも腐敗防止が進んだ国、先進的な国とはみなされていないというふうにも読めるわけですけれども、そうした環境の中で、この条約を今回批准していこうという我が国にとってのメリット。もう一回整理しますと、国際社会においてこの国連腐敗防止条約が今回結ばれることの意義と、それから我が国にとってのメリット、この二点をお尋ねしたいと思います。

麻生国務大臣 二点御指摘をいただいたんだと思います。

 まず、この背景というところですけれども、背景は、先ほどの丸谷先生の御質問にも一部関連しますけれども、グローバライゼーションという言葉に代表されますように、国内だけできちんと幾らしていても、非常に経済が、すべてがインターナショナル、グローバルというようなことになってきたものですから、やはり腐敗行為そのものが国内だけでおさまらずに、海外との間でというような形になってきた。金の移動が非常に自由になったということもありましょう。そういったもので国際的な問題になりつつあるということで、腐敗の防止というのを効果的にやろうと思えば、インターナショナルな部分も押さえねばならぬということが一番大きな背景なんだと思っております。

 これによって、日本にとりましては、例えばODAを含めまして、いわゆる政府開発援助の不正利用というようなところ、援助された国の政府がきちんとしていないがために、ODAで支援したお金が正しく効果的に使われないというようなところが出てきたときには、それは取り返しますよ、そういう話ができるようになります。そういった公的財産の返還のための国際協力ということにもなろうと思いますので、日本としては大きいメリットがあり得ると思っております。そういった国になるべく貸さないのが一番いいんですけれども、やると言ってもやらない人もいますから、そういった意味ではなかなか難しい。

 それから、トランスペアレンシーの話がありましたけれども、今先生分析されましたとおりに、これは何も国際標準でやっているんじゃなくて、いわゆる評判だけでやっていますので何とも言えないとは思いますが、こういったものにも締結をすると、イメージとしては上がってくる可能性があろうと思います。百五十八位が多分最下位だと思いますが、それが今、日本の場合はチリと並んで第二十一位ぐらいのところに上がっているというように理解しております。少なくとも、二〇〇四年が二十四位でしたから、少し上がってきているということだと思いますが、こういったものを締結することによって国のイメージというものが変われば、それはそれなりに一つの大きなメリットだろうとは存じます。

津村委員 ありがとうございます。今、最近、金の移動が自由になったというお話も出てきましたので、後でまたマネーロンダリングについてはお伺いしていきたいと思っております。

 そうした中、この条約の中身を少し掘り下げてお聞きしていきたいんですけれども、本条約の適用対象となる公務員について、これは参加各国によって公務員の定義というのはまちまちだと思いますし、そういう中で、この条約がどういう形でそれをカバーしていくのかというのは議論のあるところかと思います。

 条約の中で見ますと、公務員について三つの定義が示されています。「(1)締約国の立法、行政又は司法に属する職にある者、(2)締約国の国内法において公的なものとされる任務又は役務であって、当該締約国の関連する分野の法の適用を受けるものを遂行し、又は提供するその他の者、及び(3)締約国の国内法において公務員とされるその他の者」、こういった定義をされているわけで、必ずしも締約国の国内法において公務員とされる者というふうにかちっと定められていない。そういう意味では、国内法における公務員の概念とこの条約における公務員の概念というのが、もしかすると一致しない可能性がある条文になっているというふうに読むことができます。

 そういう意味で、一体どこまでの範囲なんだということをぜひこの条約審議の場で明らかにしていただきたいわけでございますけれども、具体的にはどう異なるのか、大臣のお考えをお示しください。

塩崎副大臣 今、この条約における公務員の定義を三つ、ジャンルとして御指摘をされたわけでありますけれども、この規定によりますと、本条約上、公務員の範囲は、我が国の国内法によって決まることと解せられるわけでありまして、このため、条約の各規定における公務員の範囲は、その条約の規定を実施するための我が国の国内法の適用の対象となる公務員の範囲に一致をするというふうに理解をしております。

津村委員 諸外国で申しますと、例えば、社会主義圏なんかはそうですけれども、政党関係者とかいったところも、外国では多分、公務員的な役務を提供する者という意味ではそういうことになるんでしょうし、我が国内でも、最近、いろいろ民営化が進んではいますけれども、各種の特殊法人や公的な企業、かつては公的な機関だったところ、さまざまに公的な役割を果たしている企業、団体というのがあると思いますが、そういったところは入らないということでよろしいですか。

塩崎副大臣 さっき申し上げたように、国内法で定める公務員の定義に当たるものが対象となるということでありまして、今、政党関係者とか特殊法人ということについてお尋ねがございましたけれども、これは、法令が国内でどうなっているんだということで決まってくると思うんです。

 先生も私も日本銀行におりましたが、日本銀行は、例えば、日銀法第三十条で「法令により公務に従事する職員」と規定されておりますので、本条約第三章の規定の対象となるわけであります。

 それから、例えば、条約三章に定められている犯罪化の規定は、我が国の刑法により実施されることになるわけでありますけれども、刑法の上では、「「公務員」とは、国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員」となっているわけであって、今申し上げた日本銀行の例は、今申し上げたとおり対象となるわけでありますし、特殊法人のいわゆるみなし公務員についてもやはり対象となるということであります。しかし、我が国の法律で、政党の関係者ということでは対象となり得ないというふうに思います。

 いずれにしても、国内法で定める公務員ないしはそれに準ずる者ということで当てはめてきているというふうに思います。

津村委員 確認だけですけれども、みなし公務員は含まれるが政党関係者、政党外交なんかもいろいろあるわけですけれども、政党関係者は含まれない、これでよろしいですか。

塩崎副大臣 そのとおりでございます。

津村委員 明快な御答弁、ありがとうございます。

 次の質問に移ります。

 今回の条約の中で、刑事共助条約そして犯罪人引き渡し条約に関連をいたしまして、こうした二国間ないし多国間の条約を締結するように促す内容になっているわけですけれども、翻って、我が国について見ますと、米国及び韓国とのみこうした条約の締結をまさしく最近進めているというところでございます。今後、どういった取り組みの方針をお持ちか、伺いたいと思います。

麻生国務大臣 御指摘のとおり、今、米国と韓国とのみ刑事共助条約というのを結んでおりますが、今、御存じのように、国際的な犯罪というのが増加をいたしております。したがいまして、捜査とか訴追とかいうことにつきましても、いわゆる国際的な協力の重要性というのは、間違いなく高まっているというように認識をいたしております。

 そこで、韓国、アメリカ以外との締結について、今、いろいろその必要性とか実施の可能性等々、条約を締結する意義について積極的に検討をしているところなんですが、これは、引き渡してもらう方も考えにゃいけませんけれども、こちら側の方から引き渡す方も考えにゃいけませんからね。捕まえてこっちへ連れてくることばかり思っておられるんでしょうけれども、こちらの側のが捕まえられて向こうに行く場合もありますから、そこらのところを両方考えておかにゃいけませんので、渡される相手側の刑事司法制度というものがきちんとしていますかというところにつきましては、留置場、拘置所、刑務所、いろいろありますけれども、その中のきちんとした対応が、虐待やら何やら含めて、いろいろなものがきちんとしているかどうかというのは、よほどしっかりしたものをしていてくれるという前提がないと、なかなかこちらから、こっちは丁寧に扱っても向こうは全く不当な扱いでは、とてもじゃないけれども公平性を欠くということになろうかと思います。

 いろいろ検討いたしておりますので、いわゆる相互主義というものが確実に履行される、保証されるというのを前提にしなければならぬところでもあろうと思いますので、この種のことを十分に勘案して、基本的にこれは進めていきたいと思っております。

津村委員 なかなか時間がないもので、質問を少し飛ばしながらお尋ねしていきますけれども、無償資金協力の事後評価について伺いたいと思います。

 この分野、従前から、JBICやJICAの方が比較的そうした政策評価というものは進んでいる感じがありまして、外務省については、昨年の十二月になってようやく、無償資金協力におけるプロジェクトレベルの事後評価の導入ということで、経済協力局長から出ていますし、評価も実際に少しずつ進められているようですが、まだまだ試行的なものということですし、多少、身内が身内を評価しているような側面もあるというふうな評価もあります。

 これからこの無償資金協力の事後評価をどのように拡充していこうというお考えか、伺いたいと思います。

麻生国務大臣 今御指摘のありました無償資金協力につきましては、プロジェクトレベルの事後評価というものを平成十七年度から実施いたしております。御指摘のとおりです。

 具体的には、完了したプロジェクトの三年から五年を経過したものであって、十億円以上のものを対象に、国際的な評価基準というのに準拠して、きちんと、いわゆる成果というものの事後評価の実施をいたしております。

 ちなみに、平成十七年度につきましては、四十三カ国において実施されました五十二の案件につきまして事後評価を行い、その結果内容については、昨年の十二月に公表をいたしております。

 こうした評価を公表するということによって、私どもは、きちんとした、一応公衆の目にたえるというようなものにしなきゃいかぬという意識がつきますし、やはりそういった意味では、評価結果というものを次のプロジェクトに役立てていくというのにも大いに資すると思っておりますので、これは、外務省に限らず、総務省の行政評価局等々において、国内のものについても、この種の行政評価というのはかなりいろいろ始まってきておりますので、いわゆる外部からの人材というものの事後評価も実施することなどによって、今年度から、今言われたような評価というものをさらに進めてまいりたいと考えております。

津村委員 次に、先ほど大臣の御答弁にもありましたように、今回の腐敗防止条約の一つの意義ともなります、マネーロンダリングの国際的な対策ということが一つの課題にもなってくると思いますけれども、そうした中で、実はこの間、この質問準備のために各省庁の方とほんのわずかですけれども意見交換をさせていただく中で、どうも取り組みにばらつきといいますか、外務省さんの問題意識が必ずしも各省庁に十分伝わっているのかどうかというようなことを物思う場面がありまして、改めてこれは委員会の場でお伺いしてみようというふうに思ったわけです。

 このマネーロンダリングの分野での対策というのは、実は日本は、世界一とは言いませんけれども、もう以前からテロ対策の中で金融庁なり日銀なり関係各当局が取り組んできた。そういう意味では、今回新たに加盟する他の締約国にいろいろな意味で、TAといいますか技術的な支援として、こういうようなマネーロンダリング対策というのができるんだよ、あるいはこういうルールでやっていこうよということを、ある意味主導的な立場で、ぜひリーダーシップを発揮して各国の腐敗防止に貢献をしていくということが戦略的に可能な分野じゃないかなということを個人的に思っているわけですが、外務省は警察庁や金融庁とこの間どういった協議をきっちりと進めてきたのかということが一点。

 それから、きょうは櫻田さんにも来ていただいていますが、金融庁それから警察庁の方でこれまで外務省とどういう協議をして、現状に比べてこの腐敗防止条約を踏まえて、国内はもとより海外への協力も含めて、どういった戦略的な取り組みを今御検討中なのか、ぜひ伺いたいと思います。

塩崎副大臣 先ほど来大臣から御答弁申し上げているように、犯罪も国際化をしてきたり、経済活動がそもそも国際化しているということもあって、このような条約がますます必要になってくるわけでありますが、マネーロンダリング、私も先生も日銀で経験を少しずつ積んできているわけでありますけれども、いろいろな意味で、お金が移動するということについては、特に拉致問題等々から北朝鮮の問題で注目を集めて、今国際的にもいろいろな協議がなされているわけであります。

 国内については金融庁の方からまた御答弁があろうかと思いますけれども、この条約の締結作業でも、この措置の実施に関する協議は、当然、警察庁それから金融庁、日銀、財務省等々と行ってきているわけであります。

 リーダーシップをとるべきじゃないかというお話がありましたけれども、国際的な枠組みとして八九年のアルシュ・サミットで金融活動作業部会というのができておりまして、ファイナンシャル・アクション・タスク・フォース・オン・マネー・ロンダリングというのがありますが、我が国は、ここの場で主要メンバーとして各関係官庁とも緊密に連携をしながら、国際的な協力をリーダーシップをとってやっているということでございます。

 そういう意味で、条約の締結によって、ますますそのリーダーシップを発揮するべき役割というのは増してくるというふうに考えております。

櫻田副大臣 お答えさせていただきます。

 国連腐敗防止条約におきましては、マネーロンダリング防止のための措置として、疑わしい取引の届け出制度や顧客の本人確認義務に重点を置いた規制監督制度の設立、国内的、国際的な協力及び情報交換を行うための制度の整備等が求められているところでございます。

 我が国におきましては、従来よりこうしたマネーロンダリング防止を重要と考えまして、既に銀行、証券会社等の金融機関等に対しまして、組織犯罪処罰法に基づく疑わしい取引の届け出義務及び本人確認法に基づく本人確認義務が課されているところでございます。したがって、疑わしい取引を金融機関等が発見した場合には、我が国の金融情報部門である金融庁特定金融情報室に届け出られることになっております。また、同室におきまして整理分析した情報は、国内捜査機関に提供するほか、外国の金融情報部門とも情報交換を行っているところでございます。

 金融庁といたしましては、引き続き金融機関等に対して疑わしい取引の届け出や本人確認法の遵守を促すとともに、外務省とも常に連絡をとりながら、外国関係機関や提供先捜査機関等との協力を通じ、マネーロンダリング対策に努めてまいりたいと思っております。

米田政府参考人 マネーロンダリング行為といいますのは、犯罪収益が犯罪組織の維持拡大とか、あるいは新たな犯罪行為に使われるおそれが強いということで、私ども、この対策は大変重要であると認識をしております。

 今までも、金融庁など国内の機関あるいは海外の捜査機関等と連携を図りつつ、麻薬特例法とか組織的犯罪処罰法を適用しまして、いわゆるマネーロンダリング犯罪を積極的に検挙しております。昨年末までに、麻薬特例法に規定するものは三十五件、組織的犯罪処罰法に規定するものは二百七十一件検挙をしているところでありまして、また、没収保全命令の請求も積極的に行っているところであります。

 このほか、捜査の過程で把握されました未申告所得等と見られる資金につきましては、国税当局に課税措置を促すなどして、違法な収益の剥奪に努めているところであります。

土屋(品)委員長代理 申し合わせの時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いいたします。

米田政府参考人 はい。

 今回、この条約が締結されれば、これを機会にますます海外との連携というのが活発になるということが期待されますので、私どもも、積極的に連携を進めながら対策を一層強化してまいりたいと思っております。

津村委員 ぜひ、この分野で国際社会でのリーダーシップを発揮していただきたいと思います。

 終わります。

土屋(品)委員長代理 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 国際腐敗防止条約は、腐敗行為の犯罪化、犯人引き渡し、捜査共助及び司法共助等の国際協力、不正な利益の回収等を進める法的枠組みをつくることによって、国際社会全体として腐敗防止を促進しようという積極的な意義を持っていると思います。また、お話がありましたように、百四十カ国が署名をし、締約国も四十七カ国ということで既に発効しているなど、その重要性から国際的な広がりも認められますし、この締結について賛成であります。

 そこで、まず大臣に伺いたいんですが、この条約の対象となるような犯罪、贈収賄、横領、資金洗浄に関して、日本から外国に対する協力と外国から日本に対する協力はこれまでどうなっていたか、その実績を、この条約の意義とのかかわりで、だからこれが大事なんだということで御説明いただけるでしょうか。

麻生国務大臣 これまでの分は、件数につきましては局長の方から説明をさせます。

 今御指摘のありました意義というのは、これはもう明らかに、先ほども申し上げましたように、これは国内できちんとしておれば犯罪、腐敗等々はないということではなくて、経済が、社会が非常にグローバル、インターナショナルになったものですから、海外と契約して海外で腐敗が行われて、そこでお金が寝かされていて、それがまたロンダリングされて、またこっちへというような形になるのが、非常に、ITの進歩とかファイナンスの技術の進歩とかいろいろな表現があるんだとは思いますけれども、そういうもので物すごく国境がないような形になりつつあるのをいかにして防止するかというのが一番の背景だと存じます。

 それに伴って、これまでいろいろな形で国内法だけで対応してきましたけれども、とてもじゃないということになって、この間、条約に署名をし、今度批准をということでお願いをしているというのが背景でございます。

 細目につきましては、政府参考人から。

神余政府参考人 お答え申し上げます。

 これまでどういう協力をしてきたかということでございますけれども、先ほど副大臣の方から御答弁申し上げましたように、特にJICA等を通じました協力といたしまして、インドネシアに対する協力の例、それからタイの汚職防止支援等に関します専門家の派遣、あるいは国別の研修といったようなことを通じて既に実施をしておりますけれども、この条約に入ることによりまして、ますますその協力を進めていきたいというふうに考えております。

笠井委員 そのますます進めていきたいというところなんですが、先ほどもありましたけれども、私も、国連薬物犯罪事務所の資料も拝見しまして、途上国に対するさまざまな技術支援ということで、これが重要になっているという話なんですけれども、途上国に対する支援として、インドネシア、タイという話がありました。この法的、制度的整備の支援ということでいうと、さらにこれからこういうことは検討できるのではないかというようなことがあれば、今お答えできる範囲で結構なんですが、挙げていただきたいんですけれども、どうでしょうか。

神余政府参考人 これにつきましては、まず、第一回目の締約国会合がことしの十二月にヨルダンで開かれます。具体的な途上国への協力等の可能性を含めまして、条約の実施状況の検討という範囲の中で、各国とそういう調整をしていきたいというふうに思っております。今、格別これがいいという具体的な案があるわけではありませんけれども、そういう意見交換を通じて検討してまいりたいと思っております。

    〔土屋(品)委員長代理退席、委員長着席〕

笠井委員 今回の条約自身について私は賛成なんですけれども、政府が、この条約と、二〇〇三年に国会承認された国際組織犯罪防止条約の両条約の司法妨害の犯罪化条項に基づいて、国内法上の措置だとして実施をしようとしている刑法改正には、問題があるというふうに私も思っております。日本弁護士連合会も反対しているということで、先ほど副大臣もそういう話がありましたが、いわゆる証人等買収罪の新設の問題です。

 この際、法務省にただしておきたいんですけれども、問題は、国内法、刑法改正案における前提犯罪の規定について条約の適用範囲に限定されるのかどうかがあいまいで、はっきりわからないということじゃないかと思うんです。日弁連もこの問題を取り上げて、条約の定めに適合しているかは大いに疑問があって、少なくとも要綱の一項は、条約の要請とは全く無関係な立法というふうな指摘もしております。

 そこで伺いたいんですけれども、証人等買収罪は、今回の条約の趣旨よりも広く司法妨害の犯罪化を定めているんじゃないかと思うんですが、この点でいかがでしょうか。

三浦政府参考人 若干経緯を含めて御説明させていただきます。

 先生御指摘のとおり、平成十五年五月に国会で御承認いただきました国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約は、締約国に対しまして、その条約の対象となる犯罪に関する手続において虚偽の証言などをさせるために不当な利益の約束、供与等をする行為を犯罪とすることを義務づけております。

 このような司法妨害の目的で不当な利益の約束、供与等をすることにつきまして、我が国の現行法ではこれを処罰する罰則がないということで、現在、国会において御審議いただいております法案、条約刑法と呼んでおりますが、これによって改正されます組織的犯罪処罰法におきまして、証人等買収罪を新設することによりまして、その義務を履行しようというものでございます。

 他方、本日御審議いただいております腐敗の防止に関する国際連合条約も、同様に、その条約に従って定められる犯罪に関する手続において虚偽の証言などをさせるために不当な利益を約束、供与する行為を犯罪とするよう義務づけておりますが、その対象犯罪、贈収賄や公務員による財産の横領などでございますが、これもその条約刑法の証人等買収罪の対象となる犯罪に含まれているということから、この腐敗防止条約との関係でも、その証人等買収罪によって義務を履行しようというものでございます。

笠井委員 今お話があったんですが、私は、本条約の目的は腐敗への対処であって、国際組織犯罪防止条約の方も、まさに犯罪集団による越境的な性質を有する行為への対処という目的であります。条約というのは、その目的を超えるような国内法化を求めるものではありませんから、国内法の整備も条約の適用範囲に限定すべきだ、それを超えるような、しかも、専門家からそのように指摘を受けるような国内法化は問題だということを言わざるを得ない。そのことを指摘して、質問を終わります。

原田委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 本条約に、社民党も賛成です。

 腐敗の防止に関する国際連合条約第十四条に基づく資金洗浄防止のための金融機関等への規制制度及び監督制度について、どのような具体的な処置を講ずるのか、外務省にお答え願います。

神余政府参考人 お答え申し上げます。

 条約の第十四条でございますけれども、資金洗浄を抑止し探知するために、銀行等の金融機関についての包括的な国内の規制制度及び監督制度を設けることを締約国に義務づけております。日本におきましては、そのような義務づけに基づきまして、次のような具体的措置をもって資金洗浄を防止するための取り組みを鋭意行っているところでございます。

 まず第一に、銀行法等関連の国内法によって、金融機関の業務を健全に遂行するための制度が確立されております。それから第二番目としましては、組織的犯罪処罰法によりまして、金融機関に対して、業務において収受した財産が犯罪収益である疑いがあると認められる場合等には、当局へ届け出るということが義務づけられております。

 以上のような措置を鋭意とっておるところでございます。

照屋委員 麻生大臣に、本日、四月二十八日はどんな日でしょうと聞いても、恐らくお答えいただけないと思いますが、四月二十八日は、沖縄の人々にとって特別な思い入れのある日であります。昭和二十七年四月二十八日、サンフランシスコ講和条約が発効しました。同条約によって日本は主権国家として独立をし、同条約三条によって沖縄は日本から施政権が分離され、アメリカの軍事支配下に置かれたのであります。一九七二年五月十五日の復帰の日まで、沖縄の人々は四月二十八日を屈辱の日とし、四・二八をさまざまな形での闘いの日に位置づけておりました。

 そこで、麻生大臣に、サンフランシスコ講和条約三条と沖縄の米軍基地化についてどのような所信をお持ちか、お答え願いたいと思います。

麻生国務大臣 一九五二年四月の二十八日、小学校五年生だったかなと記憶しますけれども、正確に記憶をいたしております。

 このときに、御存じのように、サンフランシスコ平和条約第十一条というのによって極東国際軍事裁判所の裁判を受諾したということも含めまして、これはいろいろな思い出が、私どもの世代でも、ちょっと私の方が若いんですけれども、きちんと正確に残っている世代、この辺は全然生まれていない世代だと思いますので、ちょっと違うと思いますけれども、かなり意識のあるところでもあります。

 この日をもちまして、いわゆる一九五二年というのがそういったことになっているんですけれども、沖縄がこのときに米国の施政権下に置かれたというのも事実でありまして、それ以後、沖縄の方が復帰されるまでの間、かなりの時間がずれておりますので、そういった中にあって、沖縄の県民感情としてかなり厳しいものがあったということに関しましては、私どももよく理解をしているところでもあります。たまたまうちの社員に沖縄の人がおられたものですから、よくその話を聞かされたという特殊な事情もありますので、そういった話に関しましてはよく理解ができている方だと思っております。

照屋委員 一九五二年四月二十八日、日本は独立をしたけれども、その日本の独立の捨て石として沖縄がアメリカの軍事支配下に置かれた。こういう厳然たる事実を麻生大臣にもしっかり理解していただくことを要望して、質問を終わります。

原田委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

原田委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。津村啓介君。

津村委員 民主党・無所属クラブの津村啓介でございます。

 国連腐敗防止条約について、民主党・無所属クラブを代表して、賛成の立場から討論を行います。

 私は、各国のパブリックサービスに対する信頼を揺るがす公務員等による腐敗行為に対処するため、我が国が率先して、その防止措置・犯罪化、犯罪防衛や解決のための国際協力等に積極的に取り組んでいくことは非常に重要だと認識しています。特に、公務員による腐敗行為は、国際社会の理念とも言える法の支配の根底を危うくするものであり、民主党として、包括的な国際協力の枠組みによって腐敗行為の防止と関連犯罪の解決を目指すという本条約の意義を認めて、賛同するものであります。

 ただし、一点、あらかじめ注意喚起させていただきたい点があります。それは、本条約第二十五条(b)に定める「司法妨害」の項の証人等買収罪の規定についてです。

 具体的には、刑事事件において弁護人が職務として証人に面談しチェックする際に、社会的儀礼の範囲内で打ち合わせの際の日当や飲食費用を支払うことが、本条約に定める不当な利益の約束、申し出、供与として罰せられるおそれが指摘されております。

 このような心配が出てくる背景には、しばしば捜査機関が弁護活動への不当な干渉等を実際に行ってきたことへの不信感があるように思います。今後の国内法の立法過程あるいは実際の法律の解釈、運用の場面において、このような心配が現実のものとならないよう配慮を求めます。

 民主党は、かつて、国際組織犯罪防止条約に賛成しましたが、条約実施のための刑法等の改正案には慎重姿勢で臨んできた経緯があります。その中には、犯罪の実行着手以前の共謀のみで処罰できるとする共謀罪の新設が含まれており、人権侵害の可能性を懸念したからであり、条約の趣旨を認めて締結や批准に賛成したからといっても、関連の国内法や運用実態を自動的に承認することにはならず、改めて、国内法体系の観点から厳しく監視していく姿勢であることを強調したいと思います。政府がこうした懸念に一つ一つ十分に配慮していくことが、冒頭申し上げた法の支配を徹底していく上で重要だと考えます。

 以上、条約に対する政府の姿勢、国内法との関連、実施体制について懸念もあり、政府に対して、指摘した懸念を払拭していただくよう特段の努力を要請しつつ、賛成の討論を終わります。(拍手)

原田委員長 これにて本件に対する討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

原田委員長 これより採決に入ります。

 腐敗の防止に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

原田委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

原田委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房参事官梅田邦夫君、北米局長河相周夫君、内閣府大臣官房遺棄化学兵器処理担当室長高松明君、防衛庁防衛局長大古和雄君、防衛施設庁施設部長渡部厚君、業務部長長岡憲宗君、厚生労働省社会・援護局長中村秀一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

原田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野寺五典君。

小野寺委員 自由民主党の小野寺五典です。

 本日は、在日米軍再編と我が国の安全保障戦略、特に海兵隊のグアム移転経費についてお伺いしたいと思っております。

 今回の額賀防衛庁長官とラムズフェルド国防長官との合意では、総額百二億七千万ドル、このうち日本が五九%、そしてまた米側が四一%という負担に決着したというふうに報道されております。

 また、この過程の中で、一部報道によりますが、この案、折衷案というんでしょうか、日本の融資、日本の真水、米国の真水を三分の一ずつにする、このアイデアを出されたのは麻生外務大臣だという報道があります。三方一両損の大岡裁きというのがありましたが、極めて政治的な判断かなと思っております。また、この過程の中では、日本の真水を米国より少なくしようということで額賀長官の努力がかなりあったということも一部報道されておりますが、この全体の交渉の経緯を含めて、今回の合意についての評価について外務大臣から伺いたいと思います。

麻生国務大臣 一番の話は、やはり沖縄にとっての負担の軽減というところが最も大きい要素として考えておりました。したがって、この話というのは、今、細目まだ詰めている段階ではありますけれども、少なくとも、今回日本側が負担をすることによって沖縄からの撤退の時期が早くなるというのが非常に大きな要素でありましたので、私どもとしては、これを考えるに当たって、このまま突っ張ってずっといくのでは、ではこのグアムの分を除いて合意なんということになりますと、さらにまた話が込み入ると思っておりましたので、一挙にという気がありました。

 何となく足元を見られずやるというのはこの種の交渉で最もしんどいところですから、そういった形で、結果としてみては、一応の納得を、双方で合意を得られたということは沖縄の早期の負担の軽減というものに資するものだという評価をいたしております。

小野寺委員 確かに、沖縄の負担軽減あるいは米軍基地の再編の問題につきましては新しい一歩を踏み出した、動き出したなという感触を私どもも得ております。ただ、国民の中には、若干この交渉過程のことについてさらにすっきりしたいなという気持ちもあります。

 例えばこのグアム移転経費ですが、昨年十一月の報道では米側は約五千億円を見込んでいたというふうに言われていますが、今回の合意では日本円で一兆一千九百億円ということになって、我が国は七千億円を負担するというような状況になっています。昨年十一月の段階では五千億円だったのが、半年の間に二倍に膨れ上がっております。これは、一部、もしかして水増しをされたんではないかという指摘もあると思います。ですから、しっかりとした根拠がなければ、私は、今回のこの経費の問題、国民に評価あるいは認識、承認していただけないんではないかというふうに思っています。

 そこで、防衛庁の方に伺いたいんですが、この内容について、答弁できる範囲で、細かい積み上げについて、積算について教えていただければと思います。

大古政府参考人 お答えいたします。

 まず沖縄の米海兵隊のグアム移転に関する経費の総額でございますが、これは、先ほど委員御指摘のとおり、全体で百二億七千万ドルということで聞いております。日本側の分担額については、これも委員御指摘のとおり、約六十・九億ドルということでございます。

 このうち、財政支出、いわゆる真水と言われる部分でございますが、整備いたしますのは、日本の分担のうちのいわゆる真水分でございますけれども、海兵隊の司令部庁舎、教場、隊舎、学校等生活関連施設の合計で約二十八億ドルということでございます。

 それから、家族住宅の整備につきましては二十五・五億ドルでございますけれども、このうち、出資で約十五億ドル、それから融資などで約六・三億ドルを措置することとしております。残りの四・二億ドルにつきましては、民活によって効率化が可能というふうに見込んでおるところでございます。

 またさらに、電力や上下水道など基地内のインフラの整備につきまして、融資などで約七・四億ドルを措置することとしております。

 今般の日米防衛首脳間の合意を踏まえまして、資金の流れを含む具体的な事業スキームや細部経費の積算などにつきましては、今後さらに事務的に詰めていくこととしております。

 なお、現時点においては、例えば家族住宅でございますけれども、全体で九千人の家族がグアムに移転するということでございますけれども、普通の家族構成で三千五百戸程度ということで考えておるところでございます。隊舎については、残り四千五百戸と見込まれておりますけれども、戸数については、最終的に沖縄からグアムに移転する海兵隊の階級構成や家族構成などにより変更があり得るため、あくまでも現時点での見積もりということでございます。

小野寺委員 少し細かいことをお伺いします。

 と申しますのは、今、歳入歳出の一体改革ということでかなり政府としては努力をしております。公務員住宅を売却してまで何とか財政を立て直したいと思っているさなかのこの負担ということになりますので、当然かなり精査されてこの見積もりをされているんではないかと思うんですが、例えば司令部庁舎、教場、隊舎、学校、生活施設というのがありますが、これは、どのぐらいの面積のものがどのぐらいの金額でつくれるということでこの金額の見積もりを出されているんでしょうか。

大古政府参考人 お答えいたします。

 先ほど、いわゆる真水分については二十八億ドルということで御説明しましたけれども、これはあくまで上限ということで考えてございます。

 今お尋ねの点については、具体的には、今後日米間で事務的に詰めまして整理していきたいというふうに考えておるところでございます。

小野寺委員 ということは、上限だけ決めて、内容については今後日米間で決めるということは、この数字には根拠がないということでしょうか。

大古政府参考人 今回の日本の負担する金額につきましては、いわゆる総額を決めた上で日本側がシェアをどうするかというような観点ではなくて、あくまでも日本が負担すべきものとして積み上げた結果でございます。

 今御指摘のところについては、一定の計算はしておりますけれども、細部的には今後日米間で調整して具体的に決めていきたい、こういうことで考えておるところでございます。

小野寺委員 本当に大ざっぱでいいんですが、どのぐらいの面積でどのぐらいのものをつくる、そういう規模も当然、本当は算出しているわけですよね。

大古政府参考人 その点につきましては、まだ今後事務的に調整したいと思っております。

 ただ、いずれにしましても、今後日米間の合意を見た暁には、できる限り説明して国民の理解を得るような努力をしたい、こう思っているところでございます。

小野寺委員 日本の国民が一番心配しているのは、アメリカから、このぐらいかかるよと、どさっと数字だけが飛んできて、その数字を、やあやあ、ではこういうふうに分けて、真水はこのぐらいで融資はこのぐらいでと、向こうから言われている数字をこっちでどう消化しようかということで必死に動いているんではないか。そういう一方的な向こうからの請求に対して対応しているということであれば、これはやはり国民として、税金を使うわけですから、大変心配をするわけです。

 協議の中で、きちっと日本側の通常の積み上げ、見積もり、そういうものを出して協議をしているのかどうか、再度聞きたいと思います。

大古政府参考人 お尋ねの件につきましては、基本的にはまず米側が見積もるわけですけれども、当然のことながら日本政府としても審査しているところでございます。

 いずれにしましても、お尋ねの具体的なところについては今後事務的に調整したいと考えておりますけれども、あくまでもこの二十八億ドルにつきましては上限でございますので、実際に支出するに当たっては、厳密な審査をして、厳密に予算支出をしていきたいということで考えておるところでございます。

小野寺委員 家族住宅、それから基地内のインフラで電力、上下水道整備というのがありますが、例えば住宅は何戸ぐらいつくるのか。そして、これも融資で行うと伺っています。これは融資ですから、当然だれかが返すわけです。家賃で返すのか。あるいは、基地内のインフラの電力、上下水道等についても、これは利用料金で返すというふうに一部報道されていますが、そのとおりでいいんでしょうか。

大古政府参考人 融資等で行う部分につきましては、基本的には返済してもらうということで考えておるわけです。今後細部は詰めたいと思っておりますけれども、米側においても、家族住宅についてはそこに住んでいる家族の方が家賃を払うということになっていますので、そういう部分で返済してもらうということで基本的に考えておるところでございます。

小野寺委員 今、基本的にというお話がありました。ということは、これはもう基本的外があって、最終的には返済はされないだろうということも想定されているんでしょうか。

大古政府参考人 ただいま私の方が基本的にと使いましたのは、まだ細部を今後詰めることがありますので、そういう言葉を使いました。

 融資でございますので、当然のことながらちゃんと返済してもらわなきゃいけませんので、そういうふうなところについても日米間で今後よく話し合う必要がある、こういうふうに認識しております。

小野寺委員 ぜひ、支出は支出として、私ども、これは税金から支出しなければいけません。そしてまた、この中で融資という部分もあります。これは、きちっと返していただく、そういう担保をとって本来であれば交渉を進めていくべきではないかというふうに思っています。

 沖縄の負担軽減ということは大切な要因ではありますし、また、日米同盟の問題も大切な要因であります。ただ、この日本の厳しい財政支出の中、しかも、公務員給与を削り、公務員を減らし、そして国の財産を売り、何とか財政を再建したいという中で、このことに関してだけは聖域だというようなことがないように、一生懸命努力していただきたいというふうに思っています。

 次に、財政支出のための法整備についてお伺いします。

 今回の財政支出を可能にするために、米軍再編推進関連法というような法整備が必要ではないか、これはもう既に検討に入っているというふうに一部報道されております。また、過去このような国外へ移転するための経費を出した事例というのは、たしか統一ドイツが東ドイツに駐留していましたソ連軍の撤退のために約一兆円を出した事例がありますし、また、今回の米軍再編の中で、在韓米軍の移転ということでは同じような経費分担の議論がされていると思うんですが、今回の支出に関して、現行法の中で対応できるのか、あるいは新たな法整備が必要なのか、その見通しについてお伺いしたいと思います。

木村副長官 経費分担に係る具体的な詳細というものは、先ほど局長からもるるお話がありましたけれども、今後政府部内で調整をしながら進めていきたい、こう考えておりますし、具体的に今お尋ねがありました法的措置が必要なのかどうかということも含めて検討していきたいと思っております。

小野寺委員 済みません、副長官にあえて言うわけじゃないんですが、既に交渉して、ある面では合意をしているわけです。合意をした後に、どうやって出すかというのを、今からどうやって考えていったらいいか、もう一回中で相談してからというような、そういう日本の政府のあり方ではないと思うんです。既にある程度その辺は内部で詰めてから話を進めているのが普通ではないかと思うんですが、いかがなんでしょうか。

木村副長官 いろいろなレベルで、またいろいろな担当ごとにも協議は続いているわけでありますが、やはり大事なことは、最終合意ということが大事な場面でありますので、それを踏まえながら、今申し上げたとおり、法的措置が必要なのかどうかも含めて詳細にその調整というのを加速化を進めていきたいと思っております。

小野寺委員 ぜひしっかりとした対応をしていただきたいと思います。

 また、法整備が必要となりますと、国会の審議もかなり重要になってくると思いますので、そこは与党に対してもしっかり説明をいただきたい、そう思っております。

 次に、駐留経費の負担の削減についてお伺いしたいんですが、今回の移転が仮に進展した後、終了すれば、沖縄からは、海兵隊員が八千人、家族が九千人、合計一万七千人がグアムへ引き揚げるということになります。これは、沖縄にいらっしゃいます米軍の軍人の三六%、家族の四三%に当たります。かなり沖縄からいなくなるということになります。

 というふうになりますと、現在日本が出している在日米軍の駐留経費、これは当然、人がいなくなるわけですから削減されるというふうに私ども理解をすべきだと思うんですが、例えばこれがもし削減されるのであれば、長期的に見れば、今回のこのグアムへの移転の経費というのはなるほどというふうに納得できることもあるのではないかと思うんですが、どのぐらいの削減が見込まれるか、お伺いしたいと思います。

木村副長官 先ほどの御質問にもお答えしましたが、今、最終的な取りまとめに向けて鋭意協議を行っているところでありまして、現時点で、具体的にお答え、確定的なことは申し上げることはできませんけれども、在沖米海兵隊員のグアム移転が実際に発生した場合に今お話があった駐留経費負担にいかなる影響があるかについては、その削減、再編された海兵隊が、具体的にいかなる形で沖縄にその後また維持されるのか、また、そのために必要となる施設や区域の規模等につきまして正確につかむ必要がありますから、それらをきちっと見きわめながら判断していくことだと思っております。

 なお、駐留経費負担に係る特別協定につきましても、今回こういった状況でありますので、特殊な事情ということを考えまして、従来は五年ということで取り組んでまいりましたが、今回、暫定的に二年という時間での協定で日米間で合意しているわけでありますので、この特別協定につきましても、二年後に、その再編の成り行きを含め、さまざまな要素を改めて総合的に勘案した上で判断することになると思います。

小野寺委員 細かい数字は出せなくても、大体常識からいったら、三分の一以上の沖縄の在日米軍の方が移りますし、また、家族の方の四割以上が移るとなりましたら、日本が出している例えば基地の管理運営、あるいはそのための人員の問題、これは普通はかなり軽減されるのではないかと思うのが常識なんですが、グアムへ移転しても、沖縄にいる米軍の方の数が減っても、相変わらず日本が出している駐留経費の負担というのは変わらないということであれば、これは何のために支出しているのかなという疑念も今後出てくるかと思っております。

 そしてまた、この委員会で在日米軍の駐留経費特別協定の審議もさせていただきました。この協定、二年ですので、早ければ来年の今ごろにはまた改定のためのさらなる日米交渉が始まるということにもなります。ですから、今回のグアム移転というのが決まりましたら、もう直近で次はこの駐留経費の特別協定の議論もしなければいけない。

 ですから、当然、防衛施設庁としてはこの時点で見積もっていなければ間に合わないわけです。そんなのんきなことを言ってもらっては困るんですが、ちょっとその辺の対応についてお伺いしたいと思います。

木村副長官 決してのんきなつもりで言っているわけではありませんで、最終合意がまとまれば、今お尋ねの点も含めて詳細な協議というのが加速化されていくと思いますし、ただいまお話があったその特別協定、暫定的に二年と先ほど言いましたが、当然にしてそのことも我々は意識しながら、詳細に協議を続け、いろいろな意味で合意というか、まとめをするよう努力していきたいと考えております。

小野寺委員 貫禄ある御答弁、ありがとうございます。

 次に、在日米軍再編に伴う経費負担の全体像についてお伺いしたいと思います。

 先ほど来、同僚議員からも一部お話がありましたが、四月二十五日に記者会見しましたローレス国防副次官、これが全体の経費、今回のグアム移転だけではなくて、普天間など日本国内の基地、部隊の移転、全体で約三兆円に上るという見通しがあるというようなお話がありました。特に、国内分の再編につきましては、六、七年で二百億ドル程度が必要になるという見方。これに対して安倍官房長官も、印象としては途方もない金額というようなお話がありますが、このような議論が既になされていたのかどうか、防衛庁に伺います。

大古政府参考人 今回の米軍再編に関連して、グアムの移転経費については、先ほど御説明したように、日米防衛首脳会談で先週末に合意されたことがございますけれども、日本国内での米軍の基地の移転等が伴いますけれども、その点についてはまだ詳細が明らかじゃない部分もありますし、具体的な積算を現段階でまとめられる状況にはないということでございます。

 ローレスさんの発言については、日本側としては承知していないんですけれども、いずれにしても、グアムの移転経費以外に二百億ドルという金額を日本政府として負担するということをアメリカと合意したということはございません。

小野寺委員 防衛庁に再度確認します。

 このような負担ということ、協議も試算もしたことはないということで間違いないでしょうか。

大古政府参考人 いずれにしましても、在日米軍再編に係る経費につきまして、我が国が負担する部分につきましては、その経費の内容をきちんと精査していく必要があると認識しております。

 そういう意味で、いろいろ、例えば普天間の移設に当たってどういう格納庫がどこに必要だとか、量がどの程度必要か、そういう議論はしております。ただ、その点が固まりませんと、日本側が負担するべき経費も積算できませんので、現時点でどの程度その部分についてかかるかという積算が固まっていないということでございます。

小野寺委員 ですが、報道によりますと、これは二十四日、防衛庁守屋事務次官、この方が、グアム移転経費を除き八年間で二兆円と試算しているというふうな講演をされているということです。これは事実でしょうか。

大古政府参考人 防衛庁の事務次官がそのような講演をしたということは聞いております。ただ……(小野寺委員「聞いている」と呼ぶ)承知しております。

 ただし、いずれにしても、日本側の負担としてどの程度かかるかについては、先ほど申しましたように、現在積算中でございます。

小野寺委員 済みません。お伺いしたいんですが、次官とあなたとではどっちが偉いんですか。

大古政府参考人 当然ながら、事務次官は局長の上位者でございます。

小野寺委員 ということは、次官が講演した内容をあなたは否定したわけですね。

大古政府参考人 否定したということではございませんで、事務次官としてもこの再編に関連して日本側が負担する部分があるということでいろいろ説明したんだというふうに承知しております。

小野寺委員 特にこの発言についていろいろ言いたいわけではないんですが、国会で審議をしていて、私ども、資料を出してくれ、説明してくれといろいろなところでお話をしています。ところが、それは全然何もなしで、何かあいまいな答えしか返ってこなくて、新聞報道で読むと、こうやって外できちっと講演している、しかも責任ある方が。こういう態勢というのは、国会を全く無視している状況ではないかと思うんです。

 これで、このまま、これだけの経費をまた税金として出せということ、しかも、それは国会の審議で出せということになりましたら、これは幾ら与党でも、もうちょっときちっと私どもにわかるように議論をしていただきたい、もうちょっと資料をちゃんと提出していただきたい、そういう疑念を思うことはまず間違いないと思うんです。

 副長官、この問題に対して、ぜひこれから国会の議論に対してもっと丁寧に答えていただくような方針を示していただきたいと思います。

木村副長官 守屋次官が講演の中で触れたということでありますが、その触れた際に、いろいろな協議というか、いろいろな詳細なことを詰めた上で話しているとは思っておりませんので、先ほど私が申し上げたとおり、最終合意した上でそういった細かい点を一つ一つ協議して、そしてその過程の中で、国会そして国民の皆様に説明していくことは当然だと考えております。

小野寺委員 ありがとうございます。

 ただ、今ちょっとお話の中で、守屋次官は細かいことを詰めないで発言をしているというお話がありました。これこそもっと重要な問題だと私は正直思っております。

 最後の質問になります。

 今回のこの一連の問題、済みません、何か小じゅうとみたいに細かいところを追及しているみたいで、私もとてもじくじたる思いがあるんですが、何せ、何回も言いますが、私どもは今、歳入歳出の削減ということで、本当に日本の公務員の方、国家公務員の方、地方公務員の方、ある面では一部の方には民間に移っていただく、あるいは純減をしなければいけない、あるいは年金の問題にしたって、将来どういうふうにできるかという議論を今している。そういう中で、この米軍の再編の問題だけ私ども目をつぶるわけにはいかないので、こういう細かい質問、また、もっと政府としてしっかりと内容を詰めていただきたいという思いできょうは質問させていただいております。

 最後に、在日米軍再編の原点についてお伺いしたいと思います。

 こういういろいろな、米軍の基地、グアムの移転、させていただいておりますが、最終的に私ども、テロの脅威、新たな脅威というのもございますし、また北朝鮮の問題、これは伝統的な脅威とも言えるかと思っております。このような、今回、在日米軍グアム移転だけではない、あるいは国内の米軍基地の移転の問題だけでもない。これは最終的には、この東アジア、そして世界の平和の安定のため、安全保障のための大きな戦略として位置づけられるべきだと思いますが、今回の再編の問題が、最終的に、在日米軍再編、そしてまた安全保障戦略、日本にとってどのような意義があるか、最後に外務大臣にお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 一九八九年に、いわゆるベルリンの壁の崩壊に伴って冷戦構造は終わったと言われております。それは、ユーラシア大陸の西半分ではたしかそのような傾向は顕著だと思いますが、東半分では変わったかといえば、一党独裁の国がそこにあるという状況におきましては、冷戦構造は基本的には変わっていないという認識を持っておかないと、この地域の安全という問題からいきますといろいろ考えなならぬということが大前提なんだと思っております。

 したがって、いわゆる関心が中近東だけに集まる。安全保障はすべて中近東だけかと言われるとそうでもないのであって、我々は、そういったところとちょうど反対側の東側の端にあっていろいろな安全保障の問題に直面しているという大前提を持って、今の日米、いわゆる抑止力というものを考えねばならぬということなんだと思っております。

 米軍との間の安全保障条約さえあればすべて円満かといえば、同盟というものは生き物であって、ある日、一方的に切られる可能性があるというのは、世界じゅうの同盟条約がどのような形で終わったかという歴史を見れば明らかだと思っております。そういった意味では、日本とアメリカとの同盟条約を実効あらしめるものにしていくためには、双方の不断の努力が必要ということだと思っております。

 したがって、今この沖縄の問題というのは、沖縄の負担の軽減という点と抑止力の維持という二つの面からというのを常に考えておかねばならぬことだと思っております。

 その意味では、今回の2プラス2の昨年の十月に始まったものが今一応の形を見つつあるんですけれども、そういった中にあって、双方でやはり協力し合って、この地域の安定というものを確保するためにいかにあるべきかということを常に頭に置いた上でどうするかという話にしないと、何となく金目の話だけになってみたり、何となく一部の話だけに偏ることなく、全体として実効あらしめるためにどうするかという観点が常に、これは国の安全保障というものの責任をとるべき政治家としては、その点が一番肝要な点だと考えております。

小野寺委員 ありがとうございます。

 まさしく日米同盟というのは大変重要な、また、日本にとっても世界にとっても大切な同盟だと思っています。そのためにも、今回のこのグアム移転の問題を含めて、米軍の基地移転に伴う負担につきましては、くれぐれもきちっとした対応をしていただきたい、そう思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

原田委員長 次に、松原仁君。

松原委員 一般質疑ということでありまして、特に今話題となっております拉致被害者家族、横田早紀江さんを含む拉致被害者家族の皆さんが、アメリカ下院の公聴会に行って拉致問題についての公述をしたわけでありますが、そうした中で、報道によりますと、日本時間ではあす未明になるんですか、アメリカのブッシュ大統領がこの拉致被害者家族と会う、こういうふうなお話のようであります。

 外務省の方で、このことに関して、今どういう状況か御説明をいただきたい。

梅田政府参考人 御説明いたします。

 御家族のブッシュ大統領への表敬につきましては、米国時間二十八日の午前十一時から実施されるということが決定いたしました。

松原委員 この家族の皆さんとブッシュ大統領が面談をする、これは私は大変に大きな北に対する圧力になると思っているわけであります。

 この面談が実現したということに関し、これは経緯の中で一応私も確認をしておきたいんですが、ブッシュ大統領の方がぜひ会いたい、こういうふうに思われてこんな話になったのか。そうではなくて、外務省の方が面会実現に向けてかなり労をとったのか。いや、外務省というよりは官邸が労をとったのか。この辺の働きかけ、実現に向かっての経緯を少し御説明いただきたいと思います。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 御家族が、訪米に当たりまして、米国におきましてどのような方々と会いたいのかという要請がございました。その中に、できれば大統領御自身とお会いしたいという話がございまして、それを受けまして、政府としましては、東京及びワシントンにおきましてさまざまなレベルでの働きかけをしたところでございます。外務省も行っております。

 ちなみに、ワシントンでは加藤駐米大使、それから齋木公使もいろいろと働きかけを行ったというふうに承知しております。

麻生国務大臣 たまたま齋木がアメリカに転勤をいたしておりましたので、非常に事情もよくわかっておったし、今回はそのような形でブッシュまで行き、かつ、あわせて、北の人で韓国に逃げた脱北者も一緒にということになる予定だと聞いております。

松原委員 齋木さんがアメリカに公使として行かれて、初仕事は大変な大仕事になったという評価ではないかと思うわけであります。

 このブッシュ大統領との会見において、日本の外務省が、現地は齋木さんがいた、主導的にこれに携わってきたとするならば、麻生大臣にお伺いしたいわけでありますが、外務省として、今回の面談のねらい、もちろん会うこと自体が北朝鮮に対しての大変な圧力になるというふうに私は思いますし、世界に対して拉致問題を広く宣伝する、広く知ってもらう最大の舞台になるわけでありますが、当然、それだけではなくて、ねらいがあると思うんですね。例えば、ならず者国家ともう一回言ってもらうのか、アメリカが日本に先駆けて経済制裁を発動してもらいたいのか。

 外務省が熱心にこのブッシュ、拉致被害者家族会の面談を実現したとするならば、そのねらいは大臣としてはどの辺に置かれていたのか、若干詳しくお伺いいたしたいと思います。

麻生国務大臣 ブッシュとの面会というのと議会というのは、両方、松原先生、これがやはり非常に大きな意義があるというのは、画像にまともにこれが出て世界じゅうに放映されるというのは、何で彼らに会うのかという背景は、アブダクション、拉致だという話が出るというのは、この拉致の話を知っているアメリカの国会議員って何人いますかね、私は正直そう思います。これは、キッドナップ、誘拐と同じようなレベルを超えますと、アメリカの場合は誘拐は死刑ですから、そういった意味では罪は極めて重たい。

 そういう意味では、このアブダクションという言葉を国連で採用させるところに一苦労し、これで今回、家族の面会を大統領とする前に議会で証言をさせる機会をつくる等々は、これは、いずれも国際社会における、この問題に関しては何も日本だけが言っているんじゃありませんよ、世界じゅうなんですよというような意味で、圧力としてはよっぽど大きいものがあると私は思っておりましたので、これにはすごくこだわったところであります。

 同行者としては、家族に同行して私ども山中政務官という人をつけ、行っておりますけれども、この方はおよそ物おじという言葉が全然頭にない方ですから、非常に英語もうまいし、そういった意味では、堂々とあそこらの状況を説明してくれるには最も適した人物だと私ども思っておりましたので、今回、ほかのところ行くやつはだめ、これは同行することという条件をつけて一緒に出しておりますぐらい、私ども外務省としては結構この問題に関しては、演出と言うとちょっとまた軽く聞こえますが、一生懸命この問題に関しては取り組ませていただきました。

松原委員 そうすると、もう官邸主導というよりは麻生外務大臣主導であった、こういう認識でよろしいですか。

麻生国務大臣 いろいろ知恵を出したところまでは確かです。

松原委員 本来は、官邸がこういうのをもっと頑張れば、横田めぐみにせ遺骨、おととしの十二月に発見以来一年間も、今さらでありますが、時間は戻りませんけれども、官邸が頑張れば、これは一年前にこういうことも起こった可能性があるわけで、私は、麻生さん頑張られたな、今の話を聞いてですよ、官邸はちゃんと対応していたのか、こういうふうな思いを持つ一人であります。このことは後でもう少し触れたいと思いますが、問題は、横田早紀江さんを含むこの会談においてブッシュさんがどういうふうな発言をするかということであります。

 いろいろな議論がありまして、一つは、この拉致の首謀者は、金正日は小泉さんとの会談では自分は関係ないと言っていたんですよ。しかし、ブッシュさんが金正日が首謀者であると言う可能性がある。その場合、日本政府は、私は首謀者は金正日だと思っているんですよ、あの体制で、金正日以外が首謀者で、あんな大胆な、あんな大規模な拉致というのは起きないわけですから。しかし、あくまでも日朝間では、まあそれは、小泉さんが日朝の条約をつくりたいという思いもあって、首謀者は別にいて、金正日さん知らなかった、こういう建前論でやっているんですが、アメリカが金正日が首謀者だと言ったときに、日本政府は、首謀者は金正日だという認識を持たざるを得ないのかどうか、御判断をいただきたい。

麻生国務大臣 これは松原先生、確たる証拠はゼロですから、やはり仮定の問題には答弁できないとしか言いようがないんですが、ブッシュが何と言うかもわからない、ブッシュが言って、その裏は何ですかと言って、その裏があるわけではないということになりますので、二国間の外交の話で、おまえはこういう国だという話は、悪の枢軸とかいろいろな表現がありましたけれども、そういった表現とは違って、首謀者として犯人と同等扱いするというところまでいくと、それはなかなか国同士の間においては問題は難しいということになると思うので、僕はブッシュはそういうことを言わないだろうという感じですよ。

 これまた仮定の話ですから何とも言いようがありませんけれども、そういった状況にあろうと思いますので、今この段階でどうだと言われたら、ちょっと仮定の問題に対してはお答えはいたしかねますというようにしか言いようがないと存じます。

松原委員 この問題、今回の会見が最大の圧力になるのは間違いない。

 私は、ブッシュさんが拉致被害者家族にこのタイミングで会う、いろいろな実は思惑があるのかもしれませんが、それはここでは述べません。しかし、とにかく、アメリカの大統領が自国民ではない日本国民の拉致の問題で時間をとって会う。一方の小泉さんは、最初に金正日に会いに行くときも、拉致被害者家族が会いたいと言ったけれども会わなかった。私は、極めてそこに、麻生さんに聞いてもお答えのしようがないとは思いますが、明らかに自国民に対しての小泉総理の愛情というか情愛というものを、なかなかそこが厳しい愛だというほどの部分まで至らず、どうも釈然としない部分があるわけであります。

 その後も、先ほど申し上げたように、横田めぐみにせ遺骨から一年、細田官房長官はあれだけ北朝鮮が誠意ある速やかな対応をしなければ厳しい対応をとると言って、一年間、拉致専門幹事会すらほぼ行われなかった。こういう経緯を見ると、何やら、私はわからないですよ、私も拉致の問題をずっと扱ってまいりましたけれども、外から見ていて、この問題に対しては、どうも日本政府よりも、極端なことを言えば、アメリカの方がここに来て動きが速くなってしまうのではないか、こういうふうな気もするわけであります。

 政府としては、少なくとも、このブッシュさんが会うということを受けて、この一年半に関して成果が上がっていたかどうか、その総括を、総括というのは、この一年半に関して、ここできちっとアメリカのヘルプが入るわけですよ。ヘルプが入ってから一気に動く、それはそれで解決がするんだったらいいのでありますが、ヘルプが入るまで自国民の問題なのにこの一年半、極めてその歩みがカメのような歩みだったということに対して私は大変に総括をするべきだと思いますが、御所見をお伺いしたい。

麻生国務大臣 最初に冷たいか冷たくないかという話から入られましたので、この拉致問題の家族の件に関しては、今松原さんが言われた話が、現象面としてはそういうように思われるというのはわかりました。ただ、ハンセン氏病というのが五年前に取り上げられたときに、政府は控訴というのを一方的に取り下げるということを判断して、あのハンセン氏病の解決に導いたのも小泉主導だったという点もある程度言わないと公平さを欠くと思いますので、たまたまそのとき政調会長をしていたから言うわけじゃないけれども、現場にかなり詳しかったので、その点をまず言わせておいていただきたいと思います。

 それから、この一年半、具体的進展が得られなかったではないか、これは甚だ遺憾であることはもうはっきりしています。ただ、この問題に関しまして政府としていろいろやってきたこともまた事実なんだと思います。少なくとも、この話は対話と圧力とずっと言い続けてきておりますけれども、対話しない限りは本当に話は前に進みませんから。

 しかし、対話しながら引き延ばされているというだけだったら、それはやはり圧力かけなしようがないじゃないかということになっていくんだと思いますので、私どもとしては、対話プラス圧力というものは両方でやっていかないと、段階的に圧力をかけていくということに関しては、日本だけだと力がないというのであれば国際圧力というので、国連でアブダクションという言葉を認めさせる、しかも総会でそれを通す。国連の総会でアブダクションという言葉が正式に出たのはこれが最初ですから、そういったところはやる。

 また、今言われましたように、いろいろな意味で最も力のあるブッシュ、またその議会で、こういった証言をというような機会をつくる等々は非常に大きな圧力なんだと思いますので、いろいろな意味で、私どもとしては、さらに国連等において、今から、形としては圧力というものが、法を執行した結果圧力になるというのは、この間のお金のマネーロンダリングの話もそうですけれども、そういうのを含めてやっていかないかぬということもまた一つの方法だと思っております。

 ただ、今回、松原先生、やはり拉致の問題というのが、私どももう知らないわけではないので、こういううわさがあるじゃないかといって、私らもそうなんですけれども、日本海沿岸にいる人は、多分、結構この問題は事実じゃないかなとずっと思っていたんですよ、新潟とか、私ら日本海側の沿岸にいる方は。時々、あれが不審船ですよとか、何かえらい簡単に漁師なんかが言うんだ。本当かという気はあったけれども、まさかという部分もあった。

 しかし、それをしっかり白日にしたのは、やはり小泉純一郎の二度の平壌訪問というのが一番これのきっかけになったこともまた確かなんだと思っている点も、もう大分前のことで忘れちゃっているかもしらぬけれども、その点もちょっと御記憶いただければと存じます。

松原委員 小泉さんが行って最初のきっかけをつくったということは、結果論としては、歴史の中で評価されると思います。しかし、その後のていたらくが余りにもひどいというのは、これはすべての国民の目にも明らかであるということはここで申し上げておきたいわけであります。

 経済制裁というのを従来から我々は主張してきた。いろいろなレベルのものがある。しかし、経済制裁というものを、ブッシュさんが会うこの段階で、ここまで来たら、やはり政府部内で既に検討に入っているというのは、前からそういったニュアンスの御発言があるけれども、自国民ではないこの拉致の問題でブッシュ大統領が会うぐらいなんだから、我が国としては、明示的に、経済制裁に向かって具体的に特命チームの中で議論を進めるべきだというふうに思いますが、麻生大臣の所見をお伺いしたい。

麻生国務大臣 ブッシュ大統領の場合は、たしか現地時間の二十八日午前に家族と会われる方向でということになっているんだと思いますが、その中で、ブッシュ大統領がどう発言し、そしてどういうぐあいに実際にやっていくかというのを予想するのは、結構難しいと思っております。

 いずれにしても、二〇〇三年の五月だったかの日米首脳会談において、いわゆる小泉・ブッシュ会談のときに対話と圧力ということを言い始めて、いろいろな形で北朝鮮との政策というのを、外務省の佐々江アジア局長と向こうのヒルとの間で綿密なすり合わせを何回かやってきたんですけれども、いろいろ今置かれている立場というのがありますが、それでも、どういうものが合法的にやれるか、きちんとしたものがやれるかという経済制裁のやれるやり方と、その結果、どういう効果が出てくるか、どういうダメージを向こうに与えられるかという点は、少し調査をしてみないかぬところであることも確かなんだと思うんです。

 そういった意味で、私どもとしては、今、これは私が直接担当しているわけではありませんけれども、政府部内でいろいろ、だんだん段階を追ってやっていかないかぬということになっているというように理解をいたしております。

松原委員 本来であれば、アメリカが、例えば金融制裁はやっているわけでありますが、この問題でさらに本格的な経済制裁を発動するということになったときに、後づけで日本がやるような、それだけは、やはり国の面目、主権から考えて、それこそ日本はアメリカの属国で、自国民の問題であるにもかかわらず、アメリカがやらないとやらないんだよという話に、そういうことだけはないように。

 アメリカが経済制裁を、きょう未明かあした未明、ブッシュさんが家族に会って、横田さんのお母さん、早紀江さんが、経済制裁をお願いしますと言ったら、ブッシュが、よし、アメリカ国内で検討しようと、アメリカが先にそんなことを言って、日本が後づけでやるような恥ずかしいことだけはないようにくれぐれもお願いをしたいと思います。

 ちょっと、もしよかったら。

麻生国務大臣 これまた直接所管するところじゃありませんけれども、基本的には、アメリカがその種のことをやる場合に、一方的にということではなくて、世界じゅうある程度きちんと、こういったことをやろうじゃないかというあらかじめの連絡もあろうと存じます。そういった意味では、この種の話はみんなで力を合わせてやっていかないかぬ。

 六者協議もそうですけれども、そういった中にあって、六者協議の中にも、核、ミサイルの話プラスこの話、拉致の話も私ども強く主張しているところでもありますので、今言われたように、日本だけ何とかというような形のないように、私ども努めなならぬと思っております。

松原委員 日本国民が国外の勢力によって拉致されたということで、これに対して、国家が国民を守るのかと国民は見ているわけですよ。頼りになるのは日本じゃなくてアメリカだった、日本は頼りにならなかった、一年半も全然何もしていなかったじゃないかと。アメリカが経済制裁をすると言ったから日本はやりましたと。それでは日本国民は日本国民じゃなくなっちゃいますよ。日本国を頼りにするんじゃなくて、いや、これから我々はアメリカを頼りにしよう、そんな国は国家としての体をなしていないと思いますので、くれぐれもよろしくお願いしたいと思います。

 時間がありませんから、次に参りますが、竹島及びEEZ内の調査の問題であります。

 残りが十分そこそこしかありませんので、お伺いいたしますが、竹島の問題に関して、玉虫色の決着ということでありますが、報道によると、日本側はそのように理解した、六月に名前を出さないと理解した。韓国側の柳さんという外務省の人は、このことに関して、いや、我々は提案することはできる、こういうふうに言っているそうでありますが、そごがあるんだけれども、これはマスコミ報道の間違いなんですか、それともそごがあるんですか。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 柳明桓外交通商部第一次官でございますけれども、二十六日行われました韓国の国会におきまして、今先生が言われた海底地名の提案につき、必要な準備を経て適切な時期に推進する旨答弁されました。しかしながら、報道では違った報道がされたということで、報道は正確でないというふうに理解をしております。

松原委員 そして、時間がないので少し飛ばしてまいりますが、今回のこういった流れに対して、盧武鉉さんが談話を発表しているわけであります。

 極めて、私は、この談話というのは、何か針小棒大に、事を荒立てようと、これだけの問題を、こんな、家ごとひっくり返して、大騒ぎして、どうだと言わんばかりの談話だと思うんですが、この辺、かいつまんで、どういうことが問題なのか、教えてください。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 大統領の談話の要点を御説明させていただきます。

 まず、日本が竹島に対する権利を主張することは、帝国主義の侵略戦争による占領地の権利、ひいては過去の植民地の領有権を主張するものである。これは過去の完全な解放と独立を否定する行為である。

 それから、日本が東海海底地名問題に対する不当な主張を放棄しない限り、EEZに関する問題もさらに先送りすることができない問題となり、竹島問題もこれ以上静かな対応により管理することができない問題となった。

 物理的な挑発に対しては、強力に断固として対応していく。世界の世論と日本国民に、日本政府の不当な仕打ちを引き続き告発していく、日本政府が過ちを正すまで、全国家的力量と外交的資源のすべてを動員していきます等々でございます。

松原委員 今、審議官がお読みにならなかったところで、私は、とにかく被害者意識だけが非常に先行している、ここまで言うのかという感じですね。

 我が国民にとって独島、彼らは独島と言っている、完全な主権回復の象徴である。靖国神社参拝、歴史教科書問題、過去の歴史に対する日本の認識、そして未来の韓日関係と東アジアの平和に対する日本の意思云々というのがあった。これが問題だと。その前のパラグラフで、これは過去日本が引き起こした侵略戦争と虐殺、四十年間にわたる収奪と拷問、投獄、強制徴用、さらに慰安婦まで動員したその犯罪の歴史に対する正当性を主張する行為で、こういうふうに書いてある。

 安倍さんがこれに対して、ちょっと違うんじゃないかと官房長官がおっしゃっておりますが、麻生大臣、これは所管の大臣として、これは向こうは大統領が言っているんだけれども、ちょっと御所見をお伺いしたいんだ。どう思いますか。

麻生国務大臣 盧武鉉大統領の今読まれたとおりの話ですけれども、改めて持論を述べたんだなという感じでありますし、いろいろな話で今これをこれ以上あおるつもりもありませんけれども、政府の立場というのは、たしかあの同じ日だったと思いますが、安倍官房長官の方から談話が発表されていると思っております。

 この領有権の話なんですけれども、この竹島の話は、基本的には領有権の話であって、歴史の話じゃないんですよ、この話は。そこのところが何となく、竹島問題は歴史問題ではなくて単に領有権の話というように私は認識しているんですけれども、そういった意味で、領有権の主張を歴史問題と絡めてというのは、誤りというような言い方は妥当ではないな、基本的にはそう思っております。

松原委員 盧武鉉大統領の発言は誤りである、こういう麻生大臣の御所見、私は極めて真っ当な意見だなと思って聞いているわけでありますが、問題は、彼が歴史的認識で今まで言っていたことをまた言ったというんだけれども、言ったタイミングが四月二十五日なんですよ。谷内さんが行って、こういうふうに話がまとまって、これを言うというのは、これは一体どういうことなんですか、外交上。それは違うタイミングで、二カ月も三カ月も、言うならいいですよ。ようやく丸くおさめようとして行って、日本大使館の前で日章旗が焼かれて、いろいろとあって、それでもこっちから外務次官が行って頭を下げて話をして、それでもって、舌も乾かぬうちにこういう発言をするというのは、これは外交上どういうシグナルと我々は思えばいいんですか、麻生大臣。

麻生国務大臣 まあ、外交部と青瓦台との意思がなかなかうまく疎通していないというように理解しなきゃしようがないでしょうね。そういうように、日本でも決して、その種の役所同士間の意思疎通ができていないという場合も、往々にしてないわけではありません。しかし、今言われたように、これだけなると、何となく外交部の方も、ううんと思ってはいるでしょうけれども、私どもとしては、少なくとも国際法にのっとって冷静に対応したというように理解をしております。

松原委員 結局、この六月、韓国でも選挙がある。来年、大統領選挙ですよ、向こうは。今回、この間も私、これは前回の質疑でもここで言ったんだけれども、韓国の野党の民主党の議員が来て、日本の国会議員に会って、盧武鉉さんも最近支持率が下がってきたから、これで支持率アップをねらってやったんじゃないかと彼は言っているわけですよ。それでぶわっとやって、韓国国民が盛り上がって、日本軍の船が来たら拿捕するぞ、臨検だ、拿捕するぞ、こうやって、それで一回静めて、いよいよ本番は来年だ、来年もう一回やるぞ、今度は大統領選挙だから、これで韓国の世論を盛り上げて、反日の感情の中で一気に選挙を突っ走るぞと。

 私、今回のこの結末というのは、先延ばしなんですよ。結論として合意したわけじゃない。全く違う。むしろ、彼らにとってメリットがある形で先延ばしをした。こんな先延ばしでいいんですか。むしろ、この際きちっとやって、それなりに決着を見るということをするのが本来であって、先延ばし、先延ばし、先延ばしで来たから、いつの間にか不法占拠が、不法占拠されていても、まあまあ、先延ばしだ、先延ばしだと言ってきたからこうなったんじゃないんですか。大臣、先延ばしでいいんですか、お伺いしたい。

麻生国務大臣 今回の例の六月の海底の調査の話ですけれども、海洋の科学的調査の話で六月に、我々はもう三十年前に海底地質調査というのはほぼ終わっていますから、一回は。さらにまた最近のをというと、それはいろいろな形で、何十年かたちますと海底の状況も地震等々で変わっている可能性というのは十分あります。そういった意味で、海底調査をして、それに基づいてそこの海底に名前をつける、つけないという話を、今回の六月にその話を国際的な場に持ち出すというから、それではうちもやりますという話をやったのが、そもそもの話のごちゃごちゃになってきた話なんですけれども、両方とも調査し合うというのは当たり前の話なんであって、この種の話がもめているということがはっきりすると、これは向こうが公式の場に持ち出しても、その公式の場の方で、いや、おたくは係争中でしょうといって取り上げる対象にはならないということを、私どもは決して知らないわけじゃないんです。

 そういった意味で、今回の場については、確かにお互い選挙をやっている立場ですから、それはわからぬことは、言われたような形に、ハンナラ党、ウリ党、ハンナラ党の人が言われた……(松原委員「民主党」と呼ぶ)民主党が言ったのかもしれませんけれども、私どもとしてはそれもわからぬじゃないとは思いますけれども、そういったときにこそ、やはり冷静にこちらも対応せにゃいかぬところだろうなという感じはいたします。

松原委員 時間が来ましたので終わりますが、冷静な対応というのは物を言わないということじゃないんです。冷静な対応が沈黙を守るということだったら、外交は相手の言いなりになってしまう。これが第一点。二つ目は、外交、防衛というのは国家がやることですから、島根県が県として竹島の日をつくったりしているけれども、国として本来やることを島根県がじれてじれてやっているんだ。この辺も対応方、お願いしたいというふうに思います。

 また、きょうは遺棄化学兵器のことも質問しようと思いましたが、時間切れでありますので、次回にまた質問したいと思っておりますが、とにかく、ブッシュさんとの会見で、そうはいいながら、拉致が解決されるように、外務省も全力で取り組むよう要望いたしまして、私の質問といたします。

 ありがとうございました。

原田委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党、武正公一でございます。質疑を行わせていただきます。

 本日は資料を、委員長、理事会のお許しを得て、お配りをさせていただいております。また、総務省からも副大臣にお見えをいただいておりますので、まずは、お手元資料、地方税法四百八条に基づきまして、「市町村長は、固定資産評価員又は固定資産評価補助員に当該市町村所在の固定資産の状況を毎年少くとも一回実地に調査させなければならない。」この法律にのっとりまして、石垣市役所におきましては、尖閣諸島、これの実地調査、この要望がありということが、今回一月に当外務委員会が沖縄に視察に行きました折、直接市長から陳情がありました。

 お手元の二ページ、三ページ目は、石垣市からの外務委員長あての要請書でありまして、特に、やはり尖閣諸島の領有権、これを中国、台湾が主張している、こういった中で格段の御配慮をお願いします、こういった文章もあるわけですが、固定資産税を所管する総務省として、この石垣市役所あるいは石垣市長の要望、これは法律にのっとって当然のことというふうに認識をされるかどうか、お答えをいただきたいと思います。

山崎副大臣 総務副大臣の山崎でございます。

 今委員お尋ねの点でございますけれども、当省の所管する地方税法の関係で申し上げれば、同法におきましては、固定資産税の課税について、その固定資産の状況を実地調査する旨が御指摘のように規定されているところでございますので、この固定資産税の課税に当たっては、いわゆる地方税法の考え方に基づいて実地調査を行うということにつきましては、同法にのっとった行為であるというふうに私どもは認識しております。

武正委員 麻生外務大臣におかれましては、総務大臣をお務めになられておりますので、この点は大変お詳しいと思うんですね。

 先ほど触れましたように、外務委員会の視察で、直接、石垣市長から、やはり課税をしなければならない首長として現地に調査に赴きたいと。ましてや、ことしは評価がえ、三年に一度のそういう年でありましたので、三月三十一日までに評価額を確定しなきゃいけない、これが地方税法四百十条でも決められている。そういった中での要請でありましたが、もう三月末は過ぎてしまっておりますが、こうした要望を外務委員会としても受けてまいりました。

 今、所管の総務副大臣からは、法律にのっとった行為であるということでございますが、この石垣市長あるいは市役所として現地調査を行うといったことについての御所見を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 この点につきましては、尖閣四島、四つ島がありますので尖閣四島というんですが、御存じのように、これはもともと私有地であります。平成九年に、四島の所有者から、たしか、国の機関を除き上陸等を認めない、また、第三者による権利侵害行為に対して厳重な対処を求める旨の要請というものが国に行われております。五年後の平成十四年の四月に、政府が、今のあれに応じて、尖閣諸島の平穏かつ安定的な維持を図るということを目的として、尖閣四島のうち、久場島を除く三島につきましては、所有者から賃借というものを開始いたしております。この所有者の意向を踏まえまして、いわゆる賃借の目的に照らしまして、原則として上陸は認めないという方針をとってきております。

 したがって、今、上陸を認めるかどうかについて、土地の所有者の意向とか、また政府の賃借目的などを踏まえて検討していく必要があろうと思いますので、これは、認めないということを政府で決めた以上、固定資産税の査察に、指定に入る、ちょっと待てという話になろうと思いますので、これはよく政府の中同士の調整というか検討が必要というようになろうと存じます。

武正委員 要請があって、そうした認めないということでありましたが、先ほど総務副大臣が言われたように、法律にのっとった行為をそれぞれの首長は精励される、それに待ったをかける政府というのはいかがなものかという今の御所見だったというふうに伺いますので、ぜひ御検討をお願いしたいと思います。

 総務副大臣、どうぞお引き取りいただきたいと思います。

 そこで、お手元に、先ほどお話がございましたグアムへの移転経費、四ページ目に、政府がおつくりいただいた防衛庁作成資料、これをお配りさせていただいておりますが、まず、百二・七億ドルの五九%日本側負担、これでまとまったことについて、外務大臣の御所見を伺いたいと思います。

 というのは、外務大臣、以前、五割を切りたい、こういうような発言もされておりました。ちなみに、この表を見ていただくと、効率化というのはちょっとよくわからないんですね。四・二億ドル安くなりますよというのに、何でここに出ているのかな。この四・二億ドルと、融資ですか、これを合わせた十・五億ドル。そしてまた、米国側負担の道路、何で米国側負担の道路まで総費用に入ってくるのかな。例えば、この二十・五億ドルを除きますと、八十二・二億ドル。これで日本側負担六十・九億ドルを割ると、当初米側が要求していた七五%、ほぼそれに近い。結局、米側主張の日本側負担四分の三というのをそのままのんだことになっているんじゃないのか、こういった指摘もあるわけですが、以上二点、外務大臣の御所見を伺います。

麻生国務大臣 まず、どういう所見を持っておられるかと言われれば、基本的には、沖縄の負担の軽減というのがやはり非常に大きな要素を持っておりますので、私どもとしては、政府としては、なるべく早く、沖縄に在住の米軍並びに軍属というものが沖縄の地から移転するというのが最も望ましい。そのためには、ある程度の経費を負担して移転をしてもらうことを考えないと、このままずっと、移転をすることは決まったけれども、十五年かかります、二十年かかりますと言われると、それはちょっと私どもとしては、沖縄のことを考えますとさようなわけにいかないから、なるべく早く移転ということで、早期実現というものをやるという観点に立ちますと、それなりの意義があったんだと思っております。

 傍ら、今、そのときに当たってその内容を詰めていくと、内容の詰めの方は施設庁の方に聞いていただかぬとよくわからぬところですが、私どもの感じとしては、少なくとも過去に例がありませんから、どれくらいが落ち着く相場観だと言われると、正直言って経験がありませんから、だれもないので、全然わからぬというのが正直なところだったと思います。

 そこで、話をするときに、真水がなくちゃ全然話にならぬでしょうから、私どもとしては、真水で三分の一、そちらも三分の一、残り三分の一はローンということにしないと、アメリカの方も、議会に対して、何で沖縄から出ていかなきゃいかぬのだというような話になると、また話が込み入るので、そちらの方の言い分もといえば、やはり三分の一ずつで、最後の残った三分の一がローンかなというような相場観だけは確かに提示したことは事実です。それに基づいて、あと、いろいろ額賀長官が苦労されて、その三分の一、三十三・幾つになるんでしょうけれども、そこのところが、上限が二十八になったといえば、その点は、ポイント五ぐらい下がったということにもなろうと思いますし、アメリカ側の方としても、その分が、これでいくと四十一になったというような考え方もありますでしょう。

 いろいろ後になって考えれば、それでも、おまえ、五割を切りたいと言ったけれども五割じゃないじゃないかという言い方もあるでしょうし、いや、そうおっしゃいますけれども、ここはローンですから、返ってくるお金ですからという言い方もできますでしょう。その意味でいえば、双方いろいろ、向こうも議会を抱え、こちらも議会、国民を抱えておる民主主義国家同士の話し合いですから、双方百点をとれるはずはないんですけれども、そういう意味ではそこそこのところで落ち着いたのではないかというようなのが、感想はどうかと言われれば、そういうのが、今持っております感想であります。

武正委員 五割をということについてはお答えいただけなかったんですけれども、先ほど来、沖縄の負担軽減を第一に、こう言っておられますが、これまでこの外務委員会では、沖縄の負担軽減と抑止力の維持はイコールである、この二つを同時並行でやられるというふうに言ってこられたので、それは改めて、変わらないということでよろしいでしょうか。

麻生国務大臣 はい。基本的には、負担の軽減と抑止力の維持という少々二律背反する部分を維持するという本来の目的は、これで、基本的なところでは達している、目的に向かって、その方向で走っておると思っております。

武正委員 であれば、沖縄の負担軽減で急がなければいけないからこの過分な費用負担はというところは、やはりこれまでの説明からいうといかがなものかなというふうに私は思うわけでございます。

 そこで、先ほどのこの表なんですけれども、いろいろちょっと数字を見てまいりますと、例えば百二・七億ドルから十億ドルを引きますと、道路の分ですね、大体六六%になってくるわけですね。

 それから、ちょうどこれは三月の末ぐらいですか、海兵隊施設七十五億九千万ドル、海軍、空軍施設九・四億ドル、基地以外の施設九・八億ドル超、自衛隊隊舎三億ドル、合計九十八・一億ドル、日本側の負担はそのうち七五%だよと、約百億ドルの内訳が表となって随分出たときがありました。

 これと、今のお手元の防衛庁作成資料を比べますと、日本側の負担の財政支出のところで、三月末よりも十二・三億ドル減りました。それから基地内インフラは二・七億ドル減りました。合計日本側の負担は十五億ドル減ったわけです。百億ドルで七十五・九億ドルだよと言っていたときよりも十五億ドル今回減ったわけですね。ただ、自衛隊の隊舎は今回抜けております、三億ドル。

 ただ、米国側の負担の財政支出が三月末の九・四億ドルより二十二・四億ドルふえているんですね。ですから、この二十二・四億ドルをこの百二・七億ドルから引いて、八十・三億ドルで日本側の六十・九億ドルを割りますと、やはりこれはまた七五・八%、こういった比率になるわけです。ここが、結局、日本側の負担割合というのは当初から変わらないんじゃないかなという疑念の一つでもございます。

 そこで、防衛庁副長官、この当初出ておりました自衛隊の三億ドル、自衛隊隊舎の整備のためというのが今回抜け落ちているんですが、そもそもこの三億ドル、自衛隊隊舎というんですか、この整備、これは一体何だったのか。それから、先ほども質問がありましたが、真水部分二十八億ドル、それから出資十五億ドル、そして融資十七・九億ドル、これについて、やはり国民への説明責任の上から法律を国会に提出すべきと考えますが、その必要があると考えているかどうか、あるいは提出する意向はあるのか。以上三点、防衛副長官に伺います。

木村副長官 自衛隊隊舎のお話ですが、何か一部報道にもあったようでありますが、我々、あくまでも移転のための協議を続けてきたわけでありますから、自衛隊の隊舎は移転のためだとは思っておりませんので、今まで、今回のこの合意で、隊舎ということについては含まれておりません。

 それから、これからどうするんだということでありますが、先ほども御質問にもお答えしたんですが、最終合意に向けて、今、それこそ最終局面を迎える努力をしているわけでありますので、それを意識しながらも、今後、具体的に調整していく中で、政府内できちっと考えながら、その法的措置も必要かどうかも含めて詰めていく方針だ、そういう考え方で対応していきたいと思っております。

武正委員 グアム移転経費に関係ないんだというその隊舎三億ドルということなんですが、では、グアム移転経費に関係ないとすれば、三月まで報道されていた自衛隊の隊舎というのは、一体どこにつくる三億ドルということでこうして報道されていたんでしょうか。

木村副長官 その報道そのものがどういう趣旨で報道したのかも、逆に私たち知らないというか承知していないということでありますので、何を根拠にどういうことで報道されたのか、我々は承知しておりません。

武正委員 そうしますと、日米審議官級協議なり昨年十月合意以来の協議の中で、その自衛隊隊舎を、このグアム移転経費にかかわるところに報道されているわけですから、例えばグアムに自衛隊隊舎をつくるとか、わかりません、何かそういうような隊舎をつくるというような話というのはされていたんでしょうか、あったんでしょうか。

木村副長官 まだ最終合意しておりませんので、一つ一つの個々の項目について、協議については、これまでも大変委員の皆さんからおしかりも時にいただいておりますが、協議事項を随時どうであった、こうであるということは、なかなか相手側もあることですから差し控えたいと思いますが、ただ、御理解いただきたいのは、自衛隊の隊舎をつくるということは今回の合意には全く含んでおりません。

武正委員 合意には含んでいないけれども、先ほどの話では、グアムに自衛隊の隊舎をつくるという可能性も残しながら話をしてきたというか、そういう話も上っていたんでしょうか、この協議の中では。

木村副長官 大変恐縮ですが、そういう協議内容についてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。

武正委員 否定をされないということで、自衛隊の隊舎がこれからグアムにつくられる可能性があるということだというふうに理解をいたしました。こうした点も、大変、グアムへ移転する経費を、先ほど沖縄の負担軽減ということでありましたが、一体なぜグアムに自衛隊の隊舎が必要なのか、こういったところも含めてきちっと説明をしていただきたいと思います。

 そこで、先ほども同僚委員から話がありましたこの二百六十億ドルの話でありますが、防衛庁は、これからきちんと精査していかないと積算できないけれども、事務次官はグアム移転経費以外に二兆円かかるという講演をしていることは認めたということでありますが、このことを外務大臣としてどのように受けとめられるでしょうか。そしてまた、審議官級協議で、これは外務省、防衛庁両方が一緒にやっているんですが、こういったグアム移転経費以外に、例えば二兆円かかるとか、二百六十億ドルであるとか、あるいは事務次官が認めたようなそんな二兆円の話というのはしてきたんでしょうか。いかがでしょうか。

塩崎副大臣 これにつきましては、午前中からずっといろいろ先生方からお話がありまして、もうお聞きかと思いますけれども、今回は在日米軍の兵力態勢の全体の再編をワンパッケージでやるということであります。そういった関係で、各関係省庁一緒になって鋭意検討して、そしてアメリカ側との話し合いをしているわけでありまして、現時点ではいまだ確定をしているわけではないということは防衛庁の方からもお話があったとおりで、先ほど来の二百六十億ドルということについては、このローレス副次官の発言についても、外務省としてもコメントする立場にはないのかなというふうに思っております。

武正委員 私が聞いたのは、日米審議官級協議で、グアム移転費以外も当然協議の中で、幾らぐらいかかるかと。だって、協議の中では、さまざまなそういった移転とか国内の移動とか、あるいは座間への第一軍団とかやっているわけですよね。その中で、やはりコストについては、当然協議の中で上っているんですかということです。

塩崎副大臣 先ほど申し上げましたように、ワンパッケージで全体をやっているわけでありますので、さまざまな協議をしているわけでありまして、今最終的な打ち合わせをワシントンでやっているところでございます。

 したがいまして、協議の内容についてはコメントをするのは差し控えさせていただきたい、このように思います。

武正委員 いや、私は、事務次官も二兆円と言って、ローレスも二百六十億ドルと言っているんだから、当然そういうコストについての協議もこの半年間やってきたんでしょうと言っているんですから、それについてノーコメントというのは、余りにもちょっと残念ですよね。いかがでしょうか。

塩崎副大臣 いや、さっき申し上げたように、あらゆることをワンパッケージでお話をしているわけですから、その言外に読み取っていただきたいことを込めたつもりでありますので、当然わかっていただいているものだと思っておりました。

武正委員 伊吹特別委員長は、ちゃんと議事録に残せというふうにこの間も行革特で言われておりますので、ぜひ言外ではなくて、きちっと御答弁をいただきたいと思います。もう協議をしているということで理解をいたしました。

 そこで、防衛庁、もう一回お伺いをしたいんですが、この米軍再編に伴う国内の米軍施設、例えば新規整備あるいは自衛隊との共同使用に伴う施設整備などは当然日本側の負担ということがローレス副次官からは出ているんですが、このような理解でよろしいんでしょうか。

木村副長官 協議中でございますので、ここで確定的なことをお答えすることはなかなか困難であることを御理解いただきたいと思いますが、ただ、一般論としては、日本国内において米軍施設の建設を行う場合、アメリカみずからの経費負担で行うものと、日本側が日米地位協定に基づき建設し、その上で米軍に提供するものがあるわけであります。

 例えば、自衛隊との共同使用に伴う施設整備のうち、自衛隊の所要に基づき必要になるものにつきましては日本側が負担するものと思っておりますし、いずれにしましても、今最終局面というか、最終合意へ向けての協議中でありまして、現在において確定的なことはお答えするのは差し控えたいと思いますが、その経費負担の問題も含めて、今後とも政府内で、関係省庁連絡をとり合って臨んでいきたい、こう考えております。

武正委員 大平外務大臣が昭和四十八年三月十三日、大平答弁ということで、これはもう累次予算委員会で取り上げられてきた答弁でありますが、代替、新規なしの運用指針ということで、「地位協定第二十四条の解釈につきましては、」中略「その運用につき、原則として代替の範囲を越える新築を含むことのないよう措置する所存であります。」と。これが大平答弁として、この間予算委員会でも議論の一つ、政府側の見解として使われてきたところ。

 あわせて、施設・区域の提供に当たって、我が国政府として、安保条約の目的達成との関係、我が国の財政負担との関係、社会的、経済的影響などを総合的に勘案の上、個々の事案に即して提供すべきものを決定するのであり、具体的には毎年度予算の承認を得た上で提供するのであるから、無制限な提供というような概念には当たらないと。毎年度予算の承認を得た上で提供するのであるから、こういったことで、国内での施設整備について、政府は予算委員会などの答弁、それこそ国会審議で述べてこられているわけですね。

 ですから、この巨額な、六十・九億ドル、ましてやプラス二百億ドル、これは、これまでの政府の見解の、毎年度の予算の承認を得た上で提供するのであるからをはるかに超えている額でありまして、私は、先ほどまだ検討中と言いましたが、当然法律も出さなきゃいけないし、それから、もちろん米側の二百六十億ドルというのはとんでもない金額でありますから、それこそ途方もない金額でありますから、これからきちっと精査をするときに、まず今までの政府の見解というものを超えている今回の米軍再編に伴う額である、こういったことを指摘したいと思うわけでございます。

 そこで、これは前からちょっと伺っているんですが、座間への米陸軍第一軍団司令部の移転。これは必ずしも米陸軍第一軍団全部が来るんじゃないよ、こういうふうに言っておられますけれども、これに伴う費用負担というのは、防衛庁として、やはり日本側が地位協定からいって負担すべきものというふうに考えておられますでしょうか。防衛庁、いかがでしょうか。

木村副長官 在日米軍の司令部を、例えば近代化にかかわる、いわゆる改修というような形など、あるいは今お話があった点、御指摘の点は、米側が負担することになると思います。

武正委員 米側が負担するということで今確認をいたしましたが、これまで在日米陸軍の司令部機能の強化というような報道があったんですが、最近の政府資料では、在日米陸軍司令部の改編というような形で、ちょっとトーンダウンをしているんですね。私は、その司令部機能が強化ということである分は、今回の米軍再編に伴って日本における在日米軍機能をよりアップしていくことについての費用まで日本側が負担するというのは、やはり安保条約あるいは日米地位協定の逸脱ではないかということを指摘したかったので、今取り上げたわけであります。

 在日米陸軍、座間への移転については、米側の負担ということで理解をいたしました。

 そこで、実は光熱水料の話も、この間思いやり予算のときに、本来あれはもう見直しなんだということだったんですけれども、今回盛り込まれませんでした。これは、二十四条一項で合衆国が負担することが当然ということに光熱水料が含まれていながら、思いやり予算で日本側が負担することになっているということでありまして、私は、本当はここで改正すべきだったのを延ばした理由というのは、これから日本側の負担が過重になってくるときに、いや、思いやり予算も削りますよということのために実はこの三月の改定から外したんではないのかということをあえて指摘をさせていただきます。

 そこで、次は韓国外務次官の発言、調査中止と海底韓国名、六月国際会議提案は無関係、こういったことが出ておりました。

 先ほどもありましたように、柳次官は、そんなことはない、発言はそんなことないと外務省は言っておりますが、国会での発言は、海洋調査と地名変更問題を関連づけているのは日本側であり、我々は受け入れられないと言明した、こういうことでありますね。これ、そごはないというのが、先ほども外務省、お答えをいただいてしまっておりますが、このことは本当は副大臣に聞きたかったんですけれども、副大臣も一日から訪韓をされるので、ぜひ、やはり訪韓をされてきちっとこの点、指摘をしていただきたい。

 大洋水深総図指導委員会、これが、六月二十一日に開かれる海底地形名称に関する小委員会、日本側はあくまで、今回三十五年ぶりの調査、これは韓国側の提案ということを受けて慌てて調査をしてきたわけでありますが、この間の外務次官同士で本当にそのことが、日本側調査、今回の調査ですね、この六月までの調査はとりあえず中止をした。谷内次官も言っていますね、とりあえず中止をしたんだと。

 だから、ここのあいまいなところをぜひ詰めてきていただいて、そして、共同調査というのは私はどうかなと思うんですね。日本側としてももう本当に三十五年ぶりで、さっき外務大臣、自信があったからと言いますが、海保に聞きますと、昔の調査というのは、何かおもりを落として深さをはかったとか、非常に原始的なやり方で、今の近代的な調査というのがやはり必要だと私は思います。

 そういう意味では、副大臣にはこの訪韓に当たって決意をお聞きしたいというふうに思いますが、この調査があくまでも必要なんだということをきちっと韓国側にもアピールすべきだし、そして、何をか言わんやは外務次官同士の合意、この再確認、これをきちっとやっていただきたい。御決意を伺います。

塩崎副大臣 一日から二日間韓国に行ってまいることをきのう最終決定いたしましたが、今先生がおっしゃったように、つい一週間前、金曜日、土曜日、二十一、二十二日に、谷内事務次官と柳明桓、先方の外務通商部の第一次官との間で精力的な話し合いをして、一定の合意に達したということでございます。

 したがいまして、両サイドの努力でできた合意につきまして改めて確認をし、一番大事なことは、未来志向で日韓関係を構築していく、友好関係を構築していく、そして冷静に、法律にのっとって物事を解決していく、こういうことを確認してくるのがまず第一のことだと思っております。したがって、それは今おっしゃったとおり、そのような決意で行ってまいりたいと思います。

 外務次官の発言ということで、今御質問がありました。もう既に答弁をしていると思いますが、その一週間前に合意したことは、この六月の会議では韓国の名称の提案を行わないということを日本側が理解をし、確認をしてきた。そのときに先方も、今後必要な準備を経て適切な時期に推進するという立場だということを言っているわけでありまして、実は今回の発言についても、こちらからも確認を改めていたしましたが、それと同じことを言っているんだということで確認できております。

 また、潘基文長官も、二十六日の定例記者ブリーフィングにおいて、この報道についてやはり聞かれたわけでありますけれども、先般の協議を踏まえて、柳次官と同様の立場を改めて確認をしているというふうに私たちは承知をしているところでございます。

武正委員 冷静にといっても、ああいう大統領の発言があるところに行くわけですから、私は、副大臣は余り冷静にと言わないで、外務大臣もいるわけですから、副大臣はやはり日本の主張をがんがんと言ってほしい。

 このことをお願いする上で、外務大臣、最後、こういった海洋調査、太平洋の方をやっているようですが、日本海は非常におくれているようなんです。私はやはり、政府としてこの海洋調査、海洋法条約の期限もありますので、急いでやるべしというのが一点と、それから日本海呼称問題、以前、航空会社の機内誌に関する調査は外務省にやってもらったんですが、航空会社に日本海の単独表記を申し入れるよう訓令しているんですが、やっていない大使館も実はあったんです。そういったその後の経過をぜひこれは報告をいただきたいというふうに思いますので、一点目は質問、二点目はお願い、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 では、まず一点目の方。

 保安庁とこの話をするときに、緊急ではありましたけれども、いろいろ話をしたんです。確かに太平洋側の方は進んでいるんですが、日本海側の方は、簡単なことを言えば、こっち側の方が大事だったものだから、どうしたってこっちに行った。向こうの方は海が荒いものだから、調査の船を出す時間がえらく限られている等々もあっておくれていたことも事実です。

 ただし、過去やってありますから別に何ということはなかったんですが、今、御存じのように、船でこうやっていくとずっと下の地図が出てくるという魚探の技術を使ったすごいものになっています。今の技術できちんともう一回やり直す必要があるというのは私も正しいと思いますので、そういった形で、少なくとも保安庁の測量船というものがそこに入ってやるというのは、別にこれは、向こうもやっておるわけですから、こっちも同じようにやって何がというのが正直なところだと思います。

 私どもとしては、データというものをきちんきちんと知らせてやっていかなきゃいかぬということだと思っておりますし、事実、そういった、向こうは六月に出されると言われるから、では私らの方もそれに対応すると言った途端に話が込み入りましたので、正直、出さないなら、うちは何も今すぐしなきゃいかぬというわけではないからということで、武正さんの言葉をかりれば、先延ばしで決着したではないかと言われれば、そういう形になっておろうと思いますので、今後とも、これは五月から話を開始することになっておりますので、今の話は、一番目の方はそういうことです。

 二番目の方は、全在外公館に対して訓令を発出、各国マスコミ、地図出版会社、航空会社、国際機関の文書、地図において日本海以外の呼称を使用しているものがあった場合、日本海という呼称の正当性を説明するとともに、日本海単独表記とするように申し入れを行わせております。日本海という呼称は、十九世紀初頭のヨーロッパにおいて定着していることは既にもう地図で裏づけられておりますので、今後ともこういった形でさらに進めていきたいと思っております。

武正委員 私は、申し入れた結果を、特に航空会社の、外務省としてまとめて御報告をいただきたいというお願いでございます。

 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

原田委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 麻生大臣に伺います。

 今回の米軍再編にかかわって日本側が負担する経費の総額がどれぐらいになるかという問題、これは当然、今までありましたように、重要な問題だと思います。このことについて、大臣は2プラス2の当事者ということで、この間の日米の協議が進む中で、どれぐらいになるかという試算案について、この案だということについて報告を受けられたことはありますか。

麻生国務大臣 試算案……(笠井委員「試算で結構です、案を取ってください。試算、在日米軍の再編に伴う経費の総額がどれぐらいになるか」と呼ぶ)ありません。総額でしょう、ありません。

笠井委員 私、それ自体を確かめてこられなかったとすれば、これは重要なことだと思うんですよ。この米軍再編というのを相当大規模にやる中で、財政という問題は、これは重要な問題です。極めて重要な要素だから、それは大臣として、一体これはどれぐらいになるんだということを当然当事者として聞かれないと、合意したから、あとは税金は決まったからという話にならないと、これは閣僚としても……(麻生国務大臣「岩国ではないでしょう」と呼ぶ)全体です。ちょっと私、それは驚きです。

 では伺いますけれども、先ほどから出ていますが、ローレス発言があります。私も二十五日の記者会見、このトランスクリプトを見ましたけれども、この額、あらあらということと、控え目に見てというふうな言い方でしながら、二百プラス六十億ドルというふうな形で言っております。それで、安倍官房長官は、これは途方もない金額だというふうに会見で言われて、そして、米側に内容も含めて真意、説明を求めて確かめたいというお話をされましたが、今回の米軍再編に伴う日本側の財政負担というのが、いろいろな事案があるということで積み上げて試算すると、大臣としては、これは恐らく途方もない額になるな、大変な額になるだろうという認識はお持ちだったでしょうか。

麻生国務大臣 これは笠井先生、岩国の沖合移転の経費も含んでいるということになるんだと思うんです。僕は今二百と聞いたから、そういう話を、あれも全部入れるんだろうなと私は思って、どうしたら二百になるのかなと思って、正直、一方的に英語の電報が入ってきましたもので、トゥエンティーシックスビリオンと書いてあったもので、何で二百六十という、六十はすぐわかりましたけれども、残りの二百はと思って、ああ、岩国の沖合移転の経費が入っているなとは思いました。

 そういったのと、辺野古の沖合のあれを出す分で幾らかかるんだかとかいろいろ計算しても、それでもそんなになるかなと正直思いましたので、私どもとしては全体をつかんでいないと申し上げたんですけれども、岩国の沖合移転の分を入れるという前提で考えるとかなりのものになるであろうなというのは、正直、埋め立てて飛行場をつくるというのはかなりの額がかかりますので、そこのところはそんな感じがいたしました。

笠井委員 防衛庁に伺いますが、先ほど、守屋事務次官の発言のことで、二兆円発言ということがあって、それは次官が詳細を詰めた上ではないというふうな答弁がありました。私、これは違うと思うんです。

 ここに、私、次官が四月の二十日に午後三時四分から記者会見を行っているということで、防衛庁からいただいた会見の概要文書があります。この中で守屋次官は、大変大きな額、巨額な金、大変な巨額な金ということを繰り返し何度も言われております。そして、具体的には三点言っているんですね。

 一つが、同盟国として既に大体年間六千億円を超える米軍の駐留経費を負担している、二つ目に、日本国内の移転事業の金額も大変な巨大な額に上る、そして第三に、その上でということで、グアム移転経費をどのように考えるか、その見積もりは、正確な数字をはじき出していないが、大変大きな金額、巨大な額がかかる、その負担の幅をどのようにするか、額賀長官が米側とぎりぎりの折衝をやっているという説明をされています。

 そもそも、この次官の会見では、長年大きな負担をしてきた上に、新しい合意で大変大きな支出が出る、国民の理解と協力を得られる金額でなければならないということを言われまして、そして米側は、グアム移転経費に約百億ドルかかって、七五%を日本側の負担と言っているけれども、その負担が要するに圧縮されるようにということでぎりぎりの折衝をしているという趣旨なんです。こういうふうに会見で言われたわけですね。これが次官の会見です。

 ということは、額賀長官のぎりぎりの米側との折衝に当たって、今三つ言いましたが、その要素を考えるならば、米軍再編に伴う国内の移転経費について具体的な試算を持っていたはずです。そうでなければ、ぎりぎりの折衝をして百二億七千万ドルという数字は出てこない。どれぐらいの大変な巨大な額なのか、向こうもあらあらで言っているわけですから、事業ごとの内訳を含めて大体概算こうなると明らかにすべきだと思いますが、いかがですか。当然出せるでしょう。

大古政府参考人 お答えいたします。

 米軍再編に関連して我が国としてどういう負担になるかということは防衛庁として一定の検討はしております。

 ただ、現在、日米間で最終的な取りまとめに向けて鋭意協議を行っております。その関係で必ずしも内容が確定しておりません。そういう意味で、日本側が負担する経費の見積もりについて今お答えできる段階にないということで御理解いただきたいと思います。

笠井委員 一定の検討というのは当たり前なんですよ。そうじゃなかったら、もう本当に交渉できないです、ぎりぎりの交渉をしているわけですから、コンマ幾つとやっているわけですから。ごまかしちゃいけないと思うんですよ。

 ぎりぎりの折衝で国内関連の金額を具体的に出したから、結果的にグアムの負担で百二億七千という数字が出てきた、これで合意したわけでありまして、まさにそこまで詰めているから、ちょうど日本時間で二十四日の午前五時から八時十五分まで防衛首脳会談をやった、その日の午後に守屋次官が内外情勢調査会で講演をして、今回の米軍再編ではグアム移転経費以外に約二兆円を八年ぐらいで経費負担しなきゃいけない、こういった流れであります。

 官房長官はこの問題を全く知らなくて驚いたはずがないんです。額賀長官と防衛庁が独断専行したのか。訪米する前にちゃんと総理とも話している、官邸も知っている。その上のことでありまして、国会や国民に言っていなくて米側に言った額をローレス副次官からいきなり公表されて驚いているだけじゃないか。三兆円という途方もない額を突然聞いて驚いたのは日本国民の方です。アメリカには言うけれども国民には言えない、こんな国はないと思うんですよ、大臣。

 麻生大臣、国民には言わないでおいて、2プラス2、五月初旬という話もありますが、最終合意したから、今度は約束したから負担してくれと国民に言ったってこれは到底納得できない。向こうだって国内的には説明してあらあら出しているわけです。出しているんだから、こっちだって国内的にきちっと説明して、納得を得ようと思うんだったら、ぎりぎりの折衝で出した金額、どういう規模かというのは当然出していいと思うんですけれども、いかがですか。いや、大臣が知らなかったら、防衛庁が出してください。

麻生国務大臣 これは多分額賀さんの担当なんで、人様の役所のところに口を差し挟むという話になると話がもめますので、やめておきます。

笠井委員 今のを聞いていらっしゃって、出した方がいいかどうかですよ。だって、これから訪米されて、帰ってきて、2プラス2の責任を負われるわけですから。

麻生国務大臣 今、課長クラスの最後の詰めをやっているところだと聞いていますので、その詰めを聞いた上での話でないと何とも申し上げられませんけれども、少なくとも、額賀長官との話を見て、私はグアムのことに関していろいろな話は知っておりますが、ほかの例えば岩国の沖合移転の埋め立ての経費とかなんとかいうのを全部入れるという計算になると、総額幾らになって、鹿屋の分が幾らになって、ほかにも、辺野古の埋め立て経費が幾らになるか、そういった経費の総額が幾らになるかというのは、ちょっと正直外務省の掌握しているところではありません。

笠井委員 そうしたら、大臣が御存じなければ、ちゃんと防衛庁に聞かなかったら、これからアメリカへ行って恥をかきますよ。

 三兆円といえば、国民一人当たり二万五千円です。他方で、今年度予算に盛り込まれた国民負担増というのは、定率減税の廃止とか医療費の負担増とか、二兆七千億円、三兆円近く。そして、歳出削減ということで、行革推進法で国民サービスを切り捨てる。これまでも米軍に対して政府は思いやりという予算を出してきた、大盤振る舞いしてきたわけですが、その上、米軍の再編強化のためにこんなに巨額を投入することは絶対許せないと思うんです。

 私は、ここまでぎりぎりの交渉をしてきたというんですから、防衛庁で結構ですが、政府で結構ですが、きちっと米側と話し合って出して、グアムについてあらあら合意したという時点での、それに至る日本の国内の再編に関する経費の総額と内訳をきちっと当委員会に出していただきたい。

 委員長、理事会で諮っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

原田委員長 ただいまの件は別途理事会で諮りたいと思います。

笠井委員 グアム移転について一点伺っておきたいと思います。

 今回、日米間で合意した百二億七千万ドルというのは、これはいろいろありましたが、厳密な意味で在沖縄海兵隊をグアムに移転する経費だけなのかどうか、いかがですか。

大古政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘の百二億七千万ドルにつきましては、沖縄におきます海兵隊の削減に伴いまして、グアムに移転する直接の経費に限定しているところでございます。

笠井委員 日米協議の経過の中で、この約百億ドルの中には、基地以外の道路とか上下水道、発電施設などのインフラ整備とか、九・八億ドル超というふうな話がありました。それから、海兵隊移転とは無関係な海軍、空軍の基地建設経費九・四億ドルなども含まれていたので、日本側は、とにかく積み上げ方式で何が必要なのかということで、海兵隊移設と直接関係ない経費は除くんだということで再三求めて交渉してきたとされておりますが、それが除かれたのなら、総額はほぼ同じ百億ドルですから、ほかの経費が膨らんだということになります。

 そこで、伺いたいんですが、今回、総額百億ドルかけて建設する施設を、移転する海兵隊司令部だけではなくて、例えば沖縄の空軍基地内の弾薬保管施設の整備費など、空軍、海軍などの施設や、あるいは共同で空軍、海軍が使うというものが含まれているのかどうか、そういう可能性がないと断言できるかどうか、伺いたいと思います。

大古政府参考人 お答えいたします。

 燃料弾薬施設については米側の分担でつくることになっておりますけれども、これも基本的に、沖縄の海兵隊の削減に伴いまして、海兵隊がグアムに移転することに伴う経費だということで承知しております。

笠井委員 今の話は空軍の施設もつくるということですよ。米側の負担というのはグアム移転経費というあの中の話でしょう。それはおかしな話ですよ。グアム移転経費の内訳と言って防衛庁は資料を出しているんです。海兵隊の移転に伴うものなのに何で空軍が入っているんですか。海兵隊以外も入っているという話でありまして、これは重大だと思うんですよ。国民には海兵隊移転だ、負担軽減という話をしながら、今の弾薬庫というのは空軍でしょう。それも入れるという話ですからね。これは本当に重大な話です。総額も言わない、そしてまた、具体的な説明もしないで、海兵隊以外のものが入っている、こんなことで納得しませんよ。

 これはもう、やはりこんな合意そのものは撤回していかなきゃいけないというふうに私は思いますし、政府は、道理のない米軍基地再編強化なんというものの経費負担、これは撤回すべきだと強く求めて質問を終わりたいと思います。

原田委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 最初に、米軍普天間飛行場問題について尋ねます。

 米軍普天間飛行場所属のヘリコプター飛行ルートを再検討する日米両政府の現地調整会議が、二〇〇五年十月以降開催されておらず、休止状態になり、開催のめども立っていないとの報道があり、沖縄で大きな社会問題になっております。

 同会議は、二〇〇四年八月十三日に発生した沖縄国際大学へのヘリ墜落炎上事故を受けて、安全対策の実現を目的に発足したはずであります。日米両政府による同会議の不開催は普天間基地の危険性を放置するものであり、重大な怠慢であると言わざるを得ません。

 そこで尋ねますが、同会議の設置目的、構成メンバー、その構成メンバーは機関によって構成されるのか、メンバーが個人として特定されておるのか、そして一番重要な、会議が開催されない理由を明らかにしてほしいと思います。

長岡政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど先生御指摘の報道があったことは承知をいたしておりますけれども、別に休止をしておるわけではございませんで、実は、去る三月の十五日でございますけれども、私どもの方から普天間の飛行場の方へ職員を派遣いたしまして現地調査をさせていただいております。それで、現地で向こうの米軍と技術的な事項を確認、検討させていただいておりまして、決して休止しているというような事実はございません。

 それから、お尋ねの設置目的とメンバーでございますけれども、設置目的、先生御承知のように、沖縄国際大学へのヘリ墜落事故に関する事故分科委員会報告書の勧告に基づきまして、同飛行場の場周経路の再検討及びさらなる可能な安全策について検討を行うことが目的でございます。

 メンバーにつきましては、現地レベルといたしましては、日本側から那覇防衛施設局の施設部長ほか、米側からは在沖の海兵隊基地司令部第三部長ほかでございます。それから、外務省の沖縄事務所からも参加をいただいております。それから、中央レベルからといたしましては、私ども、外務省、それから在日米軍司令部からも関係メンバーが検討会議に参加をさせていただいているところでございます。

照屋委員 ごまかさぬでまじめに答弁しなさいよ。去年の十月以降会議は開かれていないんでしょう。

長岡政府参考人 先ほども申し上げましたように、会議室でそういう会議は昨年の四月以降四回開かせていただいております。すぐ先月ですが、三月の十五日には現地調査ということで飛行場に行かせていただきまして、現地の問題につきまして技術的事項の検討をさせていただいているということを申し上げたところでございます。

照屋委員 三月十五日は施設庁が独自に現地へ行ったという話でしょう。なぜ去年の十月以降会議が開催されないのか、そしてそれは再開するめどはあるんですか。

長岡政府参考人 先ほどのお話でございますが、三月十五日は横田の方からも人を派遣していただいております。

 それから、会議の開催でございますけれども、この会議につきましては別に回数を決めておるわけでも何でもございませんで、日米双方が必要に応じて、会議の開催を含めて、報告書の作成に必要な作業を進めていくということでございます。

照屋委員 この会議は、当初、二〇〇五年度中に結論を得るということじゃありませんか。

長岡政府参考人 報道にそのようなことが書いてあったことは承知いたしておりますが、私ども、別にいつまでにということではなくて、技術的な検討もございますので、ある程度の期間を要するということは御理解を賜りたいと思っているところでございます。

 いずれにいたしましても、できるだけ早期に作業結果を取りまとめたいと思っておるところでございます。

照屋委員 できるだけ早期にやると言って、そんな怠慢や不誠実な態度で普天間基地の危険性が放置されてはいけない、それを言っておきます。

 それから次に、北マリアナ諸島のテニアン島にある慰霊碑「沖縄の塔」が何者かによって落書きをされ銘板が破壊されるという事件が発生しました。余りにも心ない悪質な事件に、塔を建立した沖縄の南洋群島帰還者会はショックを受けております。

 実は、私の死んだ両親もテニアンに出稼ぎに行き、サイパンで敗戦を迎え、私自身、敗戦後、米軍の捕虜収容所で生まれました。捕虜が産んだ捕虜であります。私もテニアンにある「沖縄の塔」に慰霊参拝をしたことがありますが、この事件について外務省として把握している事実関係及びいかなる外交的な対応をとるのか、お答えください。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘がございました慰霊碑でございますが、御指摘のとおり、南洋群島帰還者会という方が一九七八年に建立をされたということで、建立された施設自身は、その後、テニアン市当局が管理をしているというのが前提にございます。

 御指摘の事案につきましては、本年三月の九日に「沖縄の塔」の銘板が壊されているということが発見をされたということで我々は把握をしておるわけでございます。かかる慰霊碑に対する行為が行われたことというのは、政府としても極めて遺憾に思っておるわけでございます。

 本件につきましては、現在、テニアンの現地警察当局が捜査中であるということで、我が方はサイパンに出張駐在官事務所がございまして、そこから現地警察に対して迅速な捜査をしてくれということを申し入れているところでございますが、現時点までのところで、その壊した人間が特定をされもしくは検挙をされたというような事実にまだ至っていないわけでございますが、引き続き現地警察に働きかけを行っていくというのが基本方針でございます。

照屋委員 この問題について厚生労働省の援護局から御答弁ください。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 本件のような民間団体等が建立した慰霊碑というのは、私どもが調査している直近の情報では七百二十四基ございますが、この慰霊碑、こういったものが、今外務省からの御答弁もございましたように損壊されるというようなことについては、大変遺憾な出来事であるというふうに思っております。

 厚生労働省としては、民間団体が建立した慰霊碑ではございますけれども、七百基を超える慰霊碑がございまして、こういったものがきちんと良好に保存されるべきだ、こういうふうに考えておりまして、三年前から民間団体が建立した慰霊碑について調査を行い、不適切な状態にあるものについては例えば整理するとか、良好なものについては引き続き管理者に管理をお願いする、そういうふうなことをやっております。

 本件につきましては、基本的には、沖縄県の方とテニアン市の方で契約がなされておりまして、維持管理をテニアン市の方にお願いしているところでございますので、また本件の事件の究明を見ながら、沖縄県とテニアン市の間で解決していただきたい問題だ、こういうふうに考えております。

照屋委員 サイパン、テニアン、特にテニアン島は、広島、長崎に投下された原爆の飛行機が飛び立ったところなんです。そして、テニアン、サイパンで沖縄の県民が物すごく亡くなっている。沖縄県民だけじゃありません。日本人が玉砕かと言われるぐらい亡くなったわけです。だから私は、この問題については、外務省そして厚生労働省、しっかりした外交対応をしていただきたいということを強く要望して、質問を終わります。

     ――――◇―――――

原田委員長 次に、所得及び譲渡収益に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の条約の締結について承認を求めるの件及び所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 政府から順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣麻生太郎君。

    ―――――――――――――

 所得及び譲渡収益に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

麻生国務大臣 ただいま議題となりました所得及び譲渡収益に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明させていただきます。

 政府は、昭和四十五年に締結され、昭和五十五年に一部改正されたグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の現行の租税条約にかわる新たな租税条約を締結するため、平成十六年以来交渉を行ってまいりました。その結果、本年二月二日にロンドンにおいて、我が方野上特命全権大使と先方プリマローロ会計監の間でこの条約の署名が行われた次第であります。

 この条約の現行条約と比較した特色は、投資所得に対する源泉地国における税率の上限が全体的に引き下げられ、一定の親子関係にある会社間の配当、一定の金融機関が受け取る利子及び使用料については免税となり、また、条約の特典の濫用を防止するための規定などが盛り込まれることが挙げられます。この条約の締結により、我が国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間での課税権の調整がさらに図られることになり、両国間の経済的交流、人的交流などが一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、所得に対する租税に対する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明させていただきます。

 政府は、平成元年に締結されたインド共和国政府との間の現行の租税条約を改正する議定書を締結するため、昨年二月以来交渉を行いました。その結果、本年二月二十四日に東京において、先方トリパティ駐日大使との間でこの議定書に署名を行った次第であります。

 この議定書による改正の内容は、配当等に対する限度税率を引き下げること及びみなし外国税額控除規定を削ることであります。この議定書の締結により、我が国とインドとの間での課税権の調整がさらに図られることとなり、両国間の経済的交流、人的交流などが一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。

 以上二件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いを申し上げます。

原田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る五月十日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十五分散会


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