衆議院

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第20号 平成18年6月7日(水曜日)

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平成十八年六月七日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 原田 義昭君

   理事 小野寺五典君 理事 谷本 龍哉君

   理事 土屋 品子君 理事 水野 賢一君

   理事 渡辺 博道君 理事 武正 公一君

   理事 山口  壯君 理事 丸谷 佳織君

      逢沢 一郎君    愛知 和男君

      伊藤 公介君    伊藤信太郎君

      宇野  治君    高村 正彦君

      篠田 陽介君    新藤 義孝君

      鈴木 馨祐君    中山 泰秀君

      三ッ矢憲生君    山内 康一君

      山中あき子君    吉良 州司君

      篠原  孝君    津村 啓介君

      松原  仁君    谷口 和史君

      笠井  亮君    照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   外務副大臣        塩崎 恭久君

   外務大臣政務官      伊藤信太郎君

   外務大臣政務官      山中あき子君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房遺棄化学兵器処理担当室長)    高松  明君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局次長)   金澤 博範君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    北原 巖男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 遠藤 善久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 佐渡島志郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 梅田 邦夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房広報文化交流部長)        岡田 眞樹君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  佐藤 重和君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   小松 一郎君

   政府参考人

   (海上保安庁警備救難部長)            石橋 幹夫君

   政府参考人

   (海上保安庁海洋情報部長)            陶  正史君

   外務委員会専門員     前田 光政君

    ―――――――――――――

六月五日

 在日米軍基地の再編と日米軍事同盟の強化に反対し、基地の縮小・撤去に関する請願(阿部知子君紹介)(第二六七二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

原田委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官遠藤善久君、大臣官房審議官佐渡島志郎君、大臣官房参事官梅田邦夫君、大臣官房広報文化交流部長岡田眞樹君、経済協力局長佐藤重和君、国際法局長小松一郎君、内閣府大臣官房遺棄化学兵器処理担当室長高松明君、防衛庁防衛局次長金澤博範君、防衛施設庁長官北原巖男君、海上保安庁警備救難部長石橋幹夫君、海洋情報部長陶正史君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

原田委員長 質疑の申し出がございますので、順次これを許します。松原仁君。

松原委員 今回、幾つかの質問をさせていただきたいと思いますが、冒頭、まず遺棄化学兵器の問題からお伺いをしたいと思っております。

 第一にお伺いしたいことは、外務省にお伺いしたいわけでありますが、化学兵器を保有することは国際法違反であったということが、いわゆる大東亜戦争、一九四五年の戦争の前の状況で、使用することは禁止されていたというふうなことが言われているわけでありますが、保有することに関しての禁止条項というのはあったのかどうか、お伺いしたいと思います。

塩崎副大臣 これは戦前の話でもございますが、当時、今御指摘のとおり、国際法上、化学兵器の保有自体は禁止されていないで、使用は禁止されていたということになっておりまして、それは、ヘーグ陸戦規則及び一九二五年のジュネーブ議定書というのがありまして、これらで化学兵器について戦争で使用することを禁止したもので、化学兵器の開発、生産、保有までは禁止しなかったというのが事実だと思います。

松原委員 今の塩崎副大臣のお話であれば、使用は禁止だけれども保有は禁止されていなかった、こういうことになるわけであります。

 そこを押さえた上で御質問を続けていきたいと思うわけでありますが、在中国日本大使館ホームページで、四月七日、「高松内閣府遺棄化学兵器処理担当室長による中国メディアへのブリーフ」というものが日本語と中国語で掲載をされているということであります。このことは事実でしょうか。

高松政府参考人 お答え申し上げます。

 事実でございます。

松原委員 その中で、中国側のマスメディアとの議論のやりとりがあるわけでありますが、問いがありまして、「遺棄化学兵器はすべて中国の東北地方にあるのか。」という問いに対してのお答え。この答えは、高松室長がしているわけでありますが、「文献等資料が残っておらず、自分の個人的な推測であるが、化学兵器は日本の広島県の大久野島で生産された後、中国大陸に持ち込まれたと考えられている。これらの化学兵器の大部分は中国東北地方に配備されたが、東北以外の部隊もまた化学兵器を装備していたと考えられる。戦後、中国の各地方にいた日本軍は、これも私の個人的な推測であるが、化学兵器を保有することは国際法違反であるという意識が強かったため、直ちに地面に埋設したり水中に投棄したケースも少なくなかったと考えられる。これらについては日本国内で」、こういうふうな文章が続いているわけであります。

 まず、この中で「化学兵器を保有することは国際法違反であるという意識が強かった」ということを高松さんは言っておりますが、この発言をしたわけですか。

高松政府参考人 お答え申し上げます。

 当時は、御承知のとおり、第一次世界大戦におきます毒ガス使用、そういったことに対する非常に厳しい国際的な認識ないし世論があったというふうに認識しておりまして、また、そういった旧軍関係者への聞き取り調査におきまして、一部の関係者が、当時ジュネーブ議定書により化学兵器の使用が禁止されていた、そういうことに言及しつつ、化学兵器は当時旧軍により対外的に極めて慎重に取り扱われていたといった趣旨の証言をされているところでございます。

 御指摘の私の発言は、こうした証言等を念頭におきまして、旧軍関係者の化学兵器に対する当時の認識を個人的な推測として述べさせていただいたものでございます。

松原委員 先ほどの塩崎副大臣のお話で、保有は当時禁止されていなかった。高松さんのこのブリーフを読むと、保有も禁止されていると、「化学兵器を保有することは国際法違反であるという意識が強かった」、極めて具体的に「国際法違反であるという意識が強かった」と書いてある。ちょっとこれはよくわからないんだな。事実は、保有は禁止されていなかった。しかし、国際法違反という意識が強かったと。

 なぜ、これをまた中国の記者とのブリーフで言う必要があったのか、ちょっと答えてもらいたい。

高松政府参考人 今お答え申し上げましたとおり、当時、一般的に、化学兵器の製造、保有ないし使用につきましては国際的に非常に厳しい世論があったというふうに考えております。特に、旧軍におきましては、そういったことについて非常に対外的には慎重に取り扱っていたというのが私の認識でございます。

 御承知のとおり、生産場所の大久野島は我が国の地図には全く載せられなかったということもございます。

 失礼いたします。

松原委員 ちょっとやはり発言が軽率だと思うんだよね。これを言うこと自体が僕は非常にどうかなと思うけれども、戦後、中国の各地方にいた日本軍は、これも私の個人的な推測であるが、事実は国際法違反ではないけれども、保有することはいけないという意識が強かったと言うのだったら、それはまだわかりますよ。こういう表現を使うというのは、私は少なくとも、日本の政府関係者のこの問題の一番の担当者が言うということの重みを考えてほしいと思うんですよ。

 それで、これも私の個人的な推測であるが、化学兵器を保有することは国際法違反であるという意識が強かったため、直ちに地中に埋設したり水中に投棄したケースが少なくなかった。これは、例えば参議院の委員会でも、あそこは山谷さんが質問したと思いますが、それぞれの委員会で、遺棄化学兵器が本当に遺棄されたかどうかというのが今、日本の国会で議論されているときに、担当者が中国の記者との質疑の中で、私の個人的な推測だがと言って、地面に埋設したり水中に投棄したケースが少なくなかったと考えられる、ここまで言うというのは、これはどういう認識で言っているわけですか。

 国会で、遺棄されたのかどうか、我々日本の旧軍は武装解除するときに相手に渡しているというような資料も随分出てきている。この間の外務委員会でもそれを私は取り上げました。その中でなぜ、個人的な推測だがと言って、水中に投棄したケースが多かったとかと。高松さんが評論家だったらいいですよ。日本の国の遺棄化学兵器の担当室長でこういう発言をするというのは、麻生大臣、これはどうお考えですか。ちょっと内閣官房とは違いますが、大臣に御所見をお伺いしたい。

麻生国務大臣 ちょっと担当の役所と違いますので、他省庁のあれなんで何とも言えませんけれども、今松原先生から御指摘を受けるような内容を、向こうに何となく保有も禁止されていたかのごとき感じを与える可能性がある発言だなとは思いました。

松原委員 麻生大臣、重要なのは、しかも、個人的推測で、地中に埋設したり水中に投棄したケースがあったと考えられると。今この部分で国会でも議論がなされているときに、これを中国のメディアとの議論で言っちゃったら、では、我々の国会でのその議論は何なんだ。国会の議論は関係なく、担当者は、私の個人的推測です、個人的推測といったって、室長ですからね。

 今麻生大臣にお答えいただきましたから、今度は塩崎副大臣、こういうふうなことを、山谷さんあたりも遺棄はされていないというふうなことを言っているときに、個人的推測だが埋設したり投棄したケースがあると思われると中国のマスメディアに語っている。ちょっとこれ、塩崎さん、御感想をお伺いしたい。

塩崎副大臣 御案内のように、九七年になってやっと開発も生産も保有も禁止ということになったこの化学兵器でありますが、先生御指摘のように、今問題になっているのは中国において日本が遺棄をしたのかどうかということでありますから、事はやはり正確に言った方がいいというふうに思います。

松原委員 少なくとも、中国のマスコミとの質疑で、在中国の日本大使館のホームページにこれが掲載されている。これを見た中国の人は、これは日本の担当者で、ある意味では対立する側のトップの人間が言うんだから間違いないよというふうになるわけであります。私は、高松室長に、やはり自分のお立場を考えて、発言する場合は慎重に発言をしていただきたいということを、これはもう既に流れているので、今後これをどうするかということは、この事態も見ながらでありますが、とりあえずきょうはそのことを強く要望しておきたい。

 次に、私はこの外務委員会での質疑で何回も訴えてきたわけでありますが、やはり今、日本を悪者にしようという議論が中国やアメリカで非常に起こっている。アメリカはやはり原子爆弾を投下したトラウマというのがありまして、例えば広島の原爆ドームが世界遺産に登録されるときに、どうもそれに一番抵抗したのがアメリカだという話はマスコミで伝わっているわけでありますが、結果として、あの、人類に原子爆弾というものを投下したということに対して、アメリカのそのことを正当化しようとする人たちは、戦前の日本は原子爆弾を投下してもおかしくない悪い国だった、ある意味ではナチス・ドイツ・レベルの悪い国だった、だから彼らには原子爆弾を投下することの正当性がある、こういうふうな恐らく論理立てを求める人たちはいるだろうと私は思っております。

 従来、私もこの外務委員会で質疑をしましたが、中国においては、逆に今の中国共産党、例えば北京市の市の副部長が七億円とかそういう額のお金をいつの間にか蓄財をしていた、泥棒が入ってびっくりした、こういう話も伝わっている。

 結局、そういった中で、年間で七万件の五十人以上の規模のさまざまな反乱といいますか、農民一揆といいますか、そういったものが起こっている。その矛先、中国共産党はあのゲシュタポのような日本を中国大陸から追っ払ったんだから、まあ、今の状況に対しては多少目をつぶって、この栄光をきちっと評価しなさいと。愛国主義教育というのは、時間軸を現在から昔に戻すことによって、現在に対しての国民の怒りを昔に対しての思いの中で共産党に対する意識の高まりをつくる私は一つの国家的な戦略ではなかったかというふうに思うわけでありますが、そこで言われるのは、アメリカにおいてもそうであります、中国においてもそうであります、結果として、日本という国が悪い国だったということをつくり上げることによってそのレトリックは成立をするわけであります。そういう中で、私は、非常に今アメリカという世界の世論の中枢においてこういったプロパガンダが進んでいるというふうに思っているわけであります。

 そういう中で幾つか質問をしていきたいと思うわけでありますが、まず第一に、中国に対する円借款等の凍結が解除されるというのが新聞に報道されたわけでありますが、この具体的な中身について教えていただきたいと思います。

麻生国務大臣 御存じのように、二〇〇五年度の対中国円借につきましては、政府としては、二〇〇六年に入りましてから、日中関係その他の状況を踏まえて、北京オリンピックですから二〇〇八年前までに円借款の新規供与というものを円満終了とのことに関しましては、日中間で共通の認識なりというものが、政府部内の調整で鋭意進めてきたというのはもう御存じのとおりです。

 日中関係につきましては、先般、カタールで行われました日中外相会談におきまして、李肇星外交部長の方から日中関係改善への強い意欲が示されたと考えております。未来志向の日中関係を築いていくためにあらゆる分野での交流を一層進めることで一致、このような外相会談の結果を踏まえまして、御存じのように、対中円借款を二〇〇五年度中に実施するというのを、とめておりました部分がありますので、いずれにいたしましても、二〇〇八年度までに新規供与を円満終了ということになっておりますので、私どもとしては、外相会談の結果を踏まえまして、日中二国間関係を総合的に勘案した結果、今回の海外経済協力会議において、今とめております二〇〇五年度の対中円借款についての供与を再開ということにしよう、少なくとも向こう側からそういったメッセージが伝わってきたというように理解をして、私どももそれに対応したというように御理解いただければと存じます。

松原委員 今大臣の御発言で、二〇〇五年においてとめていた、なぜそのときにとめたのかということについて、その原因というんですか、理由を教えていただきたいと思います。

塩崎副大臣 年度末に大体決めてきたのがこれまでのやり方でございましたけれども、当時、政府内並びに与党の中でもさまざまな意見がございまして、あの時点までにまとめ上げるという流れではなかったわけでございまして、そういうことで、今回、その後も鋭意合意を目指して協議をしてきた結果、先般のカタールでの外相会談の結果も踏まえて、総合的に判断をしてこのような結果になったということでございます。

松原委員 私の理解は、これを少しとめていたというか、大臣の先ほどの表現を使わせていただけば、とめていた。それは、明らかに過去中国政府によって行われたウィーン条約違反と目される三つの件がある。

 一つは、瀋陽総領事館への官憲の侵入、これはハンミちゃん一家が滑り込んだときに、あの映像が極めて生々しく出たわけでありますが、引きずり出して、それをある意味で逆に日本の領事館から中国の官憲が拉致をしていった、ハンミちゃん一家を拉致していった。それは映像で映っていますから、かなり鮮明であり、インパクトがあった。

 それからもう一つは、在中国大使館の建物の破壊、反日暴動であります。デモではありません。反日暴動によって破壊された、このことに対する謝罪が行われていない。これは謝罪が行われたのかどうか。

 瀋陽の総領事館への官憲の侵入、ハンミちゃん一家の拉致、そして在中国大使館の建物の破壊、そして在上海領事館員自殺問題についての謝罪、この三つの謝罪、私は先回の外務委員会でも三点セット、ウィーン条約抵触違反三点セットということでこの外務委員会でも尋ねたわけでありますが、この三点セットに対して中国の謝罪は現状まであるのかないのか、お伺いしたい。

麻生国務大臣 二〇〇二年の五月の例の在瀋陽総領事館の事件につきましては、御存じのように、事件後、一連の日中外相会談というものを受けまして、領事協力の枠組みに関する協議というのを実施して、いわゆる日中領事協定の交渉を進めているというのが実態です。

 中国国内におきますデモ、我が国のいわゆる大使館等々の公館に対する暴力行為につきましては、累次にわたりまして、いわゆる陳謝、原状の回復、中国側の責任ある対応というのを求めておりますが、中国側は、国際慣例及び国際法の関連する原則に従って適切に処理をするという旨述べております。

 現実は、原状回復作業につきましては、中国の日本大使館また大使公邸の修復は、昨年十二月をもって基本的に終了をいたしております。また、上海総領事館につきましても、中国側と今、建築技術の話で技術的な調整を進めておるところでもあります。御存じかと思いますが、壁代の値段についてという話ですので、技術的というか値段的な話で、ほぼ話が終わりつつあります。

 陳謝につきましては、現時点で中国よりその表明はなされておりません。引き続き、中国側の対応が日中相互の信頼の醸成の上からも極めて重要と思っております。

 上海総領事館の自殺問題につきましては、現地の中国側の公安当局者による領事関係に関するウィーン条約上の接受国の義務違反に関する遺憾な行為であったと考えております。したがって、日本政府としては、中国政府に対して厳重な抗議を行っておりまして、事実関係の究明も累次にわたって求めております。

 それ以後も、去る三月六日に行われましたアジア大洋州局長と中国外交部との非公式協議におきましても、本件陳謝の件につき、中国側の誠意ある対応を改めて促してもおりまして、放置しているわけではなく、その後引き続きやらせていただいておるというのが現状であります。

松原委員 今の大臣の御答弁をお伺いして、このいわゆるウィーン条約違反三点セット、瀋陽総領事館への官憲の侵入、在中国大使館建物の破壊、これは今大臣はデモとおっしゃいましたが、やはり日本政府の見解としては、デモではなくて、あれは暴動であるというふうにぜひとも路線を修正していただきたいと思っております。三点目は在上海総領事館員自殺問題、これは中国側がいまだに誠意ある謝罪をしていない、謝罪をしないということであります。

 私は、円借款がとめられた理由というのは、こういう中国のウィーン条約抵触三点セットが全くもって反省の色もなく、それに対しての日本の抗議、遺憾の意を表しての抗議に対してもどこ吹く風ということに対して、ちょっとそれは違うんじゃないかというふうなことがそのとめた理由ではないかと思いますが、塩崎さん、いかがでしょうか。

塩崎副大臣 先ほども申し上げたように、当時、今御指摘になられた事項以外にも日中間にはさまざまな懸案もあって、意見の対立も含めて、いろいろな、それに対応するやり方としてどうすべきかということについて意見の分かれ方がかなりあったというのが、政府部内並びに与党の中での現実だったと思います。

 したがって、先生御指摘の今の点も含めて、さまざまな意見の相違の中で年度末までに決め切れないという状況であったというふうに思っていただければと思います。

松原委員 つまり、他の要素もあるけれども、このウィーン条約抵触三点セットは入っていた、こういうふうな認識を私は今の御答弁で持つわけでありますが、この三つに関していまだに謝罪がない中で、一回とめていたものを、円借款を再開するというのは、結局中国に誤ったサインを送ることになるのではないか。

 つまり、このことに対して、こういった、日本との間でウィーン条約に抵触するようなことを起こしても、まあ時間の中で日本は、日本から頭を下げて円借款の再開を求めたわけじゃないと思いますが、まあ何をやったって日本は最後は大丈夫だ、たたけばたたくだけ得だ、こういう誤ったメッセージを送るのではないかという危惧を持つわけでありますが、このことに関しての御所見を大臣にいただきたい。

麻生国務大臣 松原先生御指摘のように、十分注意せないかぬところです。

 ただ、基本的には、今回の対応というものを変えていった、先ほど諸般の事情によってということで、昨年度末、本年三月三十一日までのあれを、今まで年度内に対応しなかったことは一回もないんですが、今度だけは三月三十一日までやらないということをあのとき決めた経緯は、その他いろいろありますが、これらの一連の中国内における対日感情等々がちょっといかがなものかというのはあったことは確かです。

 ただ、三月十四日の第十回全人代が終わった後の温家宝の会議後の記者会見の内容、それから三月三十一日の訪中七団体に対する胡錦濤の会見場でしゃべったうちの靖国以外の部分等々は、いずれも日中関係についての改善の必要性というものを、シグナルをはっきり送ってきておるという内容というのが大きいところでもありましたし、それに基づいて、カタールの会談におきましても、この点は、私どもの方も、きちんと評価した上でどうするという話をしようじゃないかという話に対して、向こうも、そういった幾つかの問題、いわゆる靖国初めの問題は言ったものの、その他もろもろに関して、いわゆる衝突したときの、衝突というのは境界線上の衝突が起きたとき、不測の事態が起きたときの、あらかじめそういったものに対して対応するようなシステムをつくり上げようではないかとか、また、日中間においていろいろ交流を進めようではないかとか、軍事に関しましても、日中間できちんとした、いろいろな勉強会等々が今とまっておりますから、そういったものを再開しようではないか。いずれも、そういった話に対しては答えが前向きになってきておりますという現実等々にこたえて、私どもも少し対応したというように御理解いただければと存じます。

松原委員 今、冒頭大臣がおっしゃられた部分で、やはり中国はウィーン条約抵触違反三点セットを一切謝っていない状況でありますので、その中で、こういったものの再開が、結果として彼らの日本に対する認識を、さらに、たたけば最後は折れてくるというふうにならないように、くれぐれも御留意をしていただきたい。やはり毅然たる外交を展開しないと、これは続くということであります。

 そうした中で、先般、これも報道によって、大手スポーツ用品メーカーが一昨年中国の瀋陽に一号店を開店した、店舗の土地を所有する瀋陽行政府との間で二〇〇八年まで土地を借りる契約を交わしていたにもかかわらず、本年四月に、香港の開発会社に土地を売却することを理由に、行政府より契約を一方的に破棄をされて、店舗を閉鎖することとなった。

 このことについて外務省は御存じでしょうか。

麻生国務大臣 これはミズノの件だと思いますが、ミズノ瀋陽店なんだと思いますが、六月一日に閉鎖をしたとの事実は承知しております。

 現時点において、ミズノの方から日本大使館あるいは現地の総領事館に対してこのトラブルについての相談がなされたという事実はございませんが、日本の在瀋陽総領事館を通じて、現地の瀋陽市の政府に対して事実関係を今照会している最中、これは本当かという話で照会している最中であります。

 私どもは、少なくとも、日本の企業が世界の各地で大いに活躍をできるようにするように支援をするというのは、日本の外交の重要な仕事の一つだと考えておりますので、ビジネス環境とか投資環境というものをきちんとするということは、これは向こうにも得だし、こっちも得なんだ、両方得なんではないかということをよく言っておるんですが、こういった企業の意向も踏まえつつ、一方的な都合でやられるということにつきましては、投資意欲を阻害するということになりかねませんということで、従来にも増して、この点については、そういった考えを申し述べると同時に、支援というものをきちんと対応してまいりたいと思っております。

松原委員 今の大臣の答弁で十分でありますが、この大手スポーツ用品メーカーはミズノであります。瀋陽におととしオープンした大型の直営店について、店舗の不動産を所有する現地の行政府から賃借の契約を一方的に破棄されたため閉鎖されたと発表した、こういうふうに発表されております。閉鎖に追い込まれたのは、ミズノが中国東北部瀋陽におととし九月に開いた売り場面積千二百平方メートルの大型の直営店、六月一日で営業終了。

 ミズノによると、店の土地を所有する瀋陽市の行政府とは、二〇〇八年まで土地を借りる契約を交わしていた、しかし、ことし四月になって、二カ月前であります、一カ月半かもしれない、瀋陽市の政府から、香港の開発会社に土地を売却することを理由に一方的に契約を破棄された。

 ミズノは、再来年の北京オリンピックに向け、中国国内に大型の直営店を三店舗出店する方針で、瀋陽はその一号店。今回の件についてミズノでは、契約の破棄は受け入れられるものではないが、政府の町づくり計画の一環ということで、従わざるを得なかった、こう言っているわけであります。

 今、大臣が答弁なさったように、こういうふうな、ビジネス環境が不整備であって、それは他の中小企業でもよく聞いているわけでありますが、これはかなり大きなミズノという、しかも名前が通った会社の話であります。ミズノは、ここに書いてあるとおり、契約の破棄は受け入れられるものではないが、従わざるを得なかった。

 私は、やはりこれは外務省と経済産業省がやることかもしれませんが、こういったものに関して、法人企業が、契約にのっとって、こちらが契約を守っているのに、一方的に破棄されて、従わざるを得なかった、こういうのもいかがなものかということで、きちっと対応をしていただきたいと思います。

 そうした中で、今中国のことを幾つか申し上げてまいりました。今度はアメリカであります。アメリカにおいて幾つかお伺いしたいわけであります。

 一つは、米国下院ですね。昨年七月に、東京戦犯裁判結果を、これは東京裁判のことでしょう、再確認する対日勝利決議案を満場一致で通過させているというふうな報道がありますが、これは事実でしょうか。

麻生国務大臣 これは下院の方ですが、昨年の七月、太平洋戦争終結の六十周年を記念し、第二次世界大戦の太平洋及び大西洋の戦場における従軍兵士に敬意を表する決議案を全会一致で可決したというように承知をいたしております。

 この決議案は、第二次世界大戦に従軍した、これはこの委員長自身も従軍していると思いますが、米軍に奉仕したすべての兵士をたたえて、感謝の意を表するとともに、戦後の日本との同盟がアジア太平洋地域の平和と繁栄に多大の貢献を行っていることを確認するとの趣旨の決議案ということになっております。

 また、この決議案には、御指摘のとおり、極東軍事裁判等々いろいろ関係してくるというのは御存じのとおりであるということも承知はいたしております。

松原委員 一番最後の部分でありますが、この辺をやはり歴史を、私は実際、東京裁判でいろいろとなされた中にかなり誤謬があるということは従来から主張してまいりましたが、それを固定化するという動きであります。

 もう一点お伺いしたいわけでありますが、アメリカの、これも下院のエバンス米民主党下院議員が、先月、四月に、従軍慰安婦動員非難決議案を上程する方向であるということでありますが、このことについて外務省は把握をしておられるでしょうか。

塩崎副大臣 今の、エバンス下院議員が慰安婦に対する明確な、あいまいでない謝罪を公式に表明することを日本政府に求める決議案というのを下院議会に提出したということは承知をしているところでございます。

 御案内のように、慰安婦問題を含めて、さきの大戦に係る賠償並びに財産そして請求権の問題については、我が国は、サンフランシスコ平和条約、それからさまざまな二国間の平和条約、その他関連する条約で、これら条約等の当事国及びその国民との間で法的に解決済みであるわけでありますけれども、我が国は、これらの条約等に従って、過去をめぐる問題に誠実に対応してきておるわけでありますが、今回の決議案につきましては、事実関係を踏まえていない誤った記述が含まれているというふうに思っております。

 したがって、外務省より指示を行って、在米国大使館関係者が米国下院や政府関係者に対してその旨説明等を行うとともに、慰安婦問題についての日本政府のこれまでの立場、現在の立場について、先方の理解を求めていきたい、このように考えている決議案でございます。

松原委員 結局、日本政府のロビイスト活動が極めて不十分だということになると思うんですよね。彼らは、一方的な中国側もしくは中国側ロビイストによるプロパガンダによって、完全に考え方を支配されてしまっている。

 これは、日本側の方の資料は、御案内のとおり、石原信雄元官房副長官が、この慰安婦問題があったのかということを探したときに、本人を強制的に徴用したと言うが、文書はどうしても存在しない、そう言った。手を尽くしたけれども国内では本人の意思に反して強制されたという点で確認されなかったとか、例えば、慰安婦問題があるというふうに主張した吉田清治、これも私、この外務委員会で主張しているわけでありますが、これは、済州島に渡って、この話がでっち上げであるということを、秦教授が「正論」に発表しております、一九九二年の「正論」でありますが。一九九六年の五月の週刊新潮で、従軍慰安婦問題を書いた吉田清治が語っているのが、本に真実を書いても何の利益もない、新聞だってやっていることじゃないですかと。うそを書くことですね。こう言っているんですよ。

 つまり、こういった問題というのは、国家が関与したかどうかという点において、国家がそういったものを強制的に連れていって慰安婦として使ったという事実は日本はなかったわけであって、それをあったかのようにうそを言う吉田何がしは、週刊新潮で、本当のことを言ってもしようがないじゃないですか、こう言っている。

 今度は、アメリカの下院でこういうものが出てきた。今、塩崎副大臣が、日本の大使館を通して、事実と違うところがあるということですが、そこら辺の、こういった事実は、国がやったという事実はない。民間が営業している人間が行ったというのは、それはあったでしょう。過去だってあるでしょう、今だってあるでしょう、そんなものは。国がやっていないというところが一番大事であって、そういったところをきちっと、エバンスさんは大分間違った認識をしているようでありますから、これを伝えていただきたいと思いますが、御所見をお伺いしたい。

塩崎副大臣 先ほど申し上げたように、今回の決議案につきましては、いろいろ事実関係を踏まえていない誤った記述があるということで、その点についてはきっちり申し入れをしていきたい、このように考えております。

 一方で、我が国の、平成五年に官房長官談話というのが出ていることも事実でありますから、事実は事実、おかしなところはおかしなところできちっと言っていくということではないかというふうに思います。

松原委員 その平成五年の官房長官談話がおかしいんですよ、私に言わせれば、はっきり言って。

 そのことを質疑しても、なかなか答弁しづらいでしょうが、麻生大臣、思い切って、何か御発言があれば。

麻生国務大臣 事実と違うことは違うということをきっちり言っておくということは、すごく大事なことであろうと思いますね。今塩崎副大臣から言われましたとおりに、きちんとした事実を事実として、このエバンスに限らず、この種の意見というものが一回出たら一種の固定概念みたいなものができ上がりますので、そういったものに対しては、その払拭に努力する、事実をきちんと伝えるという努力は必要だ、私どももそう思います。

松原委員 そういう中で、いよいよ、アメリカの原子爆弾投下を正当化しようとするような人たちも含むこのチームと、一方では、中国の共産党の最近のさまざまな問題を愛国主義教育で乗り越えようとする、これも僕はどこかで結びつくと。

 今、映画制作者ジェラルド・グリーンが、「レイプ・オブ・南京」というアイリス・チャンのあのでたらめな本がアメリカではベストセラーになって、日本はそのでたらめな本の内容を否定する。この間も、私ここで、すぎやまこういちさんの、ニューズウィークに出すという原稿をちょっと読みましたけれども、写真が全部うそっぱちですよ、ほとんど。ほとんど全部。東中野さんによれば全部うそっぱち。

 そういうふうなものが、やはりアメリカの多くの知識人を含めてのマインドの中にプロパガンダとして入ってしまっていて、そのアイリス・チャンが言うような南京虐殺をバックにして、何かこの映画がいよいよつくられる、このことについて外務省は把握をしておられますでしょうか。

塩崎副大臣 今先生がおっしゃっている映画につきましては、ジェラルド・グリーンという冒頭出てきた名前の制作者がつくろうというふうなお話かと思うわけでありますけれども、報道自体は、先生からも教えていただいておりますけれども、外務省としても承知をしているわけでございますが、映画の中身は一体どんなことになるのやらさっぱりまだわからないという段階で、どうもこの秋ぐらいとかいう話が私どもに届いているわけでありますけれども、制作が始まるのではないのかということで、内容については何とも言えないというのが正直なところでございます。

 いずれにしても、本件に関しても、今後の動向をよく注意をして、先ほど大臣からも指摘をいたしましたとおり、その中身に応じてきちっと対応すべきは対応していくということでやっていかなきゃいけないと思っております。

松原委員 この映画はフィクションだ、フィクションだと言いながら、ノンフィクションなんですよ。今回どこかの絵が盗作というのがあったけれども、フィクションだから事実と違うことを言ってもいい。例えば、織田信長は本能寺で殺されなくてどこかへ行って大成功したとか、それがいいかどうかというのは、作家のインスピレーションだからいいじゃないかと言われたらそうですかという話だけれども、では、南京大虐殺でむごたらしく刺しまくって殺しましたと事実と違うことを映画で、南京大虐殺という名称で発表されて、これは、南京大虐殺といったってフィクションだから、ほら、歴史のあれと違うんだよと言われたって、一般の人は南京大虐殺ですよ。

 そうして間違った、エバンスさんの方の決議案はその間違いを正すのは当たり前でありますが、映画において完全に、そのことによって多くのアメリカの国民が日本というのはやはり原爆を落としていい国だったと思わせるような内容の映画だったときに、これは政府としてはどうしますか。それに対して反論いたしますか。

塩崎副大臣 今フィクション、ノンフィクションの話がありまして、表現の自由からかんがみてなかなか難しいところがあると思いますけれども、我が国として、どういうイメージをつくられるのかということは事実との兼ね合いからきっちり見て、やはりそこで総合的に判断をした上で言うべきは言っていかなきゃいけないことではないのかなというふうに思います。

松原委員 言うべきことは言うということで、これはぜひ、こういう映画の方がむしろエバンスさんの決議より一般大衆に影響力があると思いますから、誤った情報が伝わっちゃいかぬということです。

 ただ、これもよく見ると、横道にそれますが、私が前に言ったように、あそこに二十人の宣教師がいたんですよ。例のエール大学の神学校の図書館にあるという。彼らは、我々は無辜の南京市民の命を守ったと。たしか十万とかという数字ですよ、みんな逃げちゃっていてそれぐらいしかいなかったんですよ。守ったと胸を張って言っているんです。守ったなら大虐殺はなかったんですよ。大虐殺があったんだったら守れなかったんですよ。彼ら宣教師は、我々は、中国国民党軍とも話をして安全区には大砲を置くな、日本軍と話をして安全区には大砲の弾を撃ち込むな、そして十万人の無辜の命を守ったと。守ったならば虐殺はないんですよ。

 ところが、この映画監督、今報道によるとおもしろいんです。米国教育者というか宣教師、有名なヴォートリン、彼の手紙もエール大学にありますけれども、攻撃中三十万人の中国人を確実に迫る殺人とレイプから守ったというんですよ。三十万人いなかったんですけれどもね。三十万人を殺人とレイプからヴォートリンが守ったならば、虐殺はなかったんですよ。

 ところが、この映画は、その三十万人を守ったヴォートリンはすばらしいと喝采しながら、一方で日本人は虐殺をしたという、私に言わせればどうも自己矛盾。聞くところによると、こんなことはあろうはずがないわけでありますが、どちらにしても、私は、この場で申し上げたいのは、こういう日本に対するかなりマイナスのイメージを植えつけようという意図的な動きがやはりあるだろう。

 これに対しては、やはりすぐ反撃をするだけではなくて、前の外務委員会でも私は指摘をさせていただいたように、ニューズウィークに意見広告を出すかどうか別にしても、意見広告は一回一千万ですから、三百六十五日載せたって三十六億五千万ですよ。国連で二千万使うんだったら、三十六億五千万というお金が日本人の先人の誇りと名誉と子孫の誇りのために有効であれば、私は高過ぎるということはないと思うんですよ。

 そういうことを、もしかしたらきょうが、今回、この後も我が党はもう一回質疑ということで求めていくわけでありますが、最後かもしれないのであえて言わせてもらうけれども、麻生さん、これについてはそういう取り組みを系統立ててなさる決意はありませんか。

麻生国務大臣 アメリカに限らず、表現の自由というものが保障されている国々において、特定の国が特定の国に対するいわゆるプロパガンダと言われるようなものは、これは今の時代に限らず、よくこれまでも意図的に行われてきましたし、また、自国の宣伝のためのプロパガンダ、他国を陥れるためのプロパガンダ、これは戦争中に限らず、いろいろな形で行われてきたのはもう御存じのように歴史的事実であります。ただ、そういったものに対して、日本は余り対抗するとか抵抗するとか、そういうのに断固反論するというような習慣もしくはシステムというのができ上がっていないというのも事実でしたし、今に関してもそれがうまくきちんとでき上がっていると思っているわけでもありません。

 ただ、今言われましたように、そういったことに関して、自国の不利になりますことははっきりしておりますので、そういったものに対してきちんと丁寧に反論していく、事実とは違う、もしくは、その映画はたしかクリント・イーストウッドは受けるのを断ったと思うんですが、そういった話の手回しはだれがやったかはちょっと言えるところではありませんけれども、それらの事実は、一応しておるということも頭に入れておいていただければと存じます。

松原委員 最後の部分は、麻生外務大臣になってロビイスト活動を頑張ってやっておられるのかなという期待感にも結びつくわけでありますが、やはりこれをやらないといけない。やはりそれは外交の一番重要な部分だと思うんです。

 時間が参りましたから、最後にもう一問だけ質問します。

 韓国政府と日本との排他的経済水域、EEZの問題でありますが、韓国が従来と違う主張に転換した。このことに対して政府はどういうふうに評価しているのか、そしてどのように韓国政府から説明があったのか、お伺いしたい。

麻生国務大臣 来週から予定をしております交渉に対して韓国がいろいろ言っているという報道がなされているということは承知をしておりますが、具体的な交渉の内容についてまだ交渉の前から明らかにするはずもありませんし、そういった意味では、きちんと明らかにされているわけではありません。したがって、交渉の内容をあらかじめ予断して申し上げるということは差し控えたいと思っております。

 いずれにいたしましても、排他的経済水域境界画定交渉というものにつきましては、この間のドーハでの日韓外相会議においても、この交渉で意味のある成果というものを上げていくことは、これは両方で確認をしております。今回は、この種のことに関しては六年ぶりに再開ということになります。双方とも問題の解決を図るように交渉に臨むことが重要だと思っております。

 そして、忘れちゃいかぬのは、平成八年の橋本、金泳三の間で行われました、竹島の領有権問題とは切り離して排他的経済水域の境界画定の促進を図る旨の合意がなされておりますので、五回目となります今回においても、この合意が基礎となっていることにつきましては日韓で理解を共有していると理解をいたしております。少なくともこれは破棄したという話は聞いておりませんので、いずれにいたしましても、現下の日韓関係というものを考えて、安定的な運営ということが大事なところだと思っておりますので、意味のあるものにきちんとしていきたいと思っております。

松原委員 この竹島問題は韓国側がいろいろと動きが慌ただしいわけであって、逆にこの機会にあえて国際紛争化をさせて、我々の領土であるということで、それをハーグの司法裁判所に持ち込むようなやはり手練手管をぜひとも使っていただきたいと思います。

 これできょう質問を終わりますが、韓国でハンナラ党が今回の選挙で勝った。このことに対しての麻生さんの感想をお伺いして、質問を終わります。

麻生国務大臣 国内で自民党が民主党に圧勝したという話なら感想を述べられますけれども、他国の選挙の結果の感想を外務大臣の立場として悪かったともよかったともなかなか言えぬところで、その種のコメントは差し控えさせていただきます。

松原委員 了解です。

 以上で終わります。

原田委員長 次に、山口壯君。

山口(壯)委員 民主党の山口壯です。

 確かに、麻生大臣とはこれがひょっとしたら最後の質疑になるかもしれないんですね。我々はもう一回頑張ってやらせていただきたいとは思うものの……(発言する者あり)では、今度は別の形での質疑というのがあり得るんですかね。敬愛する麻生さんだから、ぜひいろいろ頑張っていただきたいと思うんです。

 きょうは、通告させていただいているのは米軍再編の話と靖国ですけれども、その前に、例の国際組織犯罪防止条約について、先週いろいろやりとりがありました。そして、民主党の我々が出している案について、大臣も感想というか所見を述べられたわけです。

 条約締結のプロセスというのは、例えば国連で署名をした、それから国会に持ってきて承認をした、承認をしたときにその留保の条件というのは確かについていなかった。それは交渉したのは、外務省を初めとする、あるいは法務省を含んだ政府のチームで交渉されて、それを我々は一括して、留保があるかないかも含めて一括して国会での承認を求められたわけですね。

 これについて、今度は国内法を整備していく。その中で共謀罪について、民主党としては、おっと、これはちょっと大変だなという議論をさせていただいたわけです。

 これが、国内法の整備が整うと、今度は批准書の寄託という格好で国連に寄託する、御名御璽というものもつけるかどうか、これで条約締結行為が完了するわけですね。

 したがって、条約締結行為は、この批准書の寄託を我々は今行っていないわけですから、言ってみれば、全部終わってしまっているということじゃないわけです。どの時点で、例えばある項目について受け入れられないかとかいうことというのは、我々のいろいろな日本政府としての、あるいは日本の国のやり方として私はあり得ると思うんです。

 これを踏まえて、まず大臣、記者会見で民主党案では批准できないというふうにおっしゃられたことの趣旨を少し詳しく教えてください。

    〔委員長退席、谷本委員長代理着席〕

麻生国務大臣 正確には、これは元法務委員長、法務の筆頭をやっておられた塩崎副大臣が答えるのが一番、経緯等々、答弁も含めてやっておられましたので、こちらの方がお詳しいと思います。そちらの方が適切と思いますが、私の所管しております外務省の立場からいえば、あれはたしか六百幾つの項目か、正確な数字は覚えていませんけれども、約半分の三百幾つになったと思います。

 そういったもので、日本は、この三百は認められます、しかし六百のあれでは認められないと言っておりましたので、条約上の義務というものは、この六百の方で義務をやっておりますので、国内の担保法に係りますいろいろな話というのが出てくるんですが、そういった意味では、従来の六百を認める、国内法で三百だけということになりますと、これは、この批准という方の六百でこっちはやっておりますので、日本だけ三百にしてねという交渉をやって果たして通るだろうかといえば、極めて難しいだろうなという従来の立場を申し上げたというように思っております。

山口(壯)委員 従来の立場はそういうことでしたね。

 民主党案の趣旨というのは、国際組織犯罪防止条約なものですから、テロについて共謀している、おい、テロをやろうかと共謀しているのがいれば、実行していなくても捕まえる、こういうことを可能にするというのが趣旨でした。そういう意味では、例えば民主党が国際犯罪に限るというようなことというのは、これは正直、非常に筋が通っていると思うんです。

 だから、言ってみれば、国内法を整備する段階で気づいた話ではあるんですけれども、それは気づいた段階で、やはり何らかの手当てというものはなされてもそれほどおかしくないと私は思うんです。

 そういう意味では、大臣、今までの答弁、あるいは日本のやり方として、締結した、署名をしたときに、留保するかどうかということにとらわれずに、これは国によって違いはあるはずですから、いろいろな留保の仕方がある、これは学説だって分かれているぐらいですから。したがって、日本として、例えば国会が、我々が議論をするときにも、留保をつけるかどうかということの可否も含めて、これからの条約締結のあり方について、旧来の風習にとらわれずに、あるべき姿を、麻生大臣、これからの大きな可能性も含めて、もしもそれが日本にとってなるほどということであれば、やはりそれは新しいやり方というものを、例えば国会でも留保について議論ができるということについてもお考えいただくことはどうでしょうか。

塩崎副大臣 今大臣から答弁申し上げたように、この間の大臣の発言は、これまでの政府がどういうことを言ってきたかということを繰り返し申し上げたわけですね。

 今先生の御指摘は、留保というのはどの段階でもできるじゃないか、つけられるじゃないか、こういうことだろうと思うんですけれども、しかし、これも何度も申し上げたように、平成十五年に社民党以外みんな賛成して国際組織犯罪防止条約に承認を国会として与えたときに、留保をつけずに締結するということについて国会の承認を得たという事実があることは、私たちは踏まえないといけないというふうに思っているわけであります。

 条約法に関するウィーン条約というのがあって、どういう場合に留保をつけられるかというのがあるのは先生御存じのとおりでありますけれども、一番大事なのは、留保を仮につけるとしても、条約の趣旨とか目的とか一番の根幹部分に照らしてみてどうかということをやはりきちっと考えた上で、つけられるかどうかというのは最終的に決まってくることだということを、これまた法務委員会の方でも申し上げてきたわけであって、ですから、一つは、平成十五年に承認したときに留保をつけないということで承認をいただいているということをどう考えるか。

 それともう一つは、先ほどの国際性というのは、確かに第三条に国際的な組織犯罪について問題にするというふうになっているわけですけれども、それの実施のところで国際性をつけてはいけないというふうになっていることをこれまたどう考えるのかということで、意見のやりとりがずっと民主党との間であったということであって、あの時点で、前回金曜日は、仮に与野党で合意をすれば、外務省としては、当然国会の意思に従って締結に向けて努力をするんだということを大臣のメッセージとして、時間が、なかなか始めてくれなかったものですから、私の方から文書のものを読み上げさせていただいた、こういうことだと思います。

山口(壯)委員 今塩崎副大臣の方から、国会で何らかの決意あるいは決心があれば、それを踏まえて行政としてはあり得る方策を探っていこう、こういう話ですね。それはそれでよくわかりました。

 あと二つ、これはもうある意味で意見の分かれ目ですから別にここでやりとりをしようとは思わないですけれども、国会に承認が求められた際には、一括しての話であれば、例えば国際組織犯罪防止というのはだれだって賛成するわけです、九・一一があった後、それはもうそうだ。他方、それを一括して、どこに留保があるかないか、全部もうおぜん立てができ上がって、これを一括して認めるか認めないか、イエスかノーかという話として来られると、やはりそれは本当は正直つらいところもあると思うんです。

 そういう意味では、趣旨というものも、趣旨を損なわない範囲の留保ということについても、例えば民主党案の中には、国際犯罪に限るという面があります。私らの感覚からしたら、それは国際組織犯罪防止条約ということのもともとの趣旨を損なわないだろう、こういう判断もあります。

 したがって、この件については、また継続して審議されますから、またそういうことも踏まえていろいろしてもらったらとは思いますけれども、きょうは大臣の記者会見で言われたことの趣旨をこの委員会でも確かめさせていただきたかったということです。

 さて、米軍の再編の話について聞かせてください。

 米軍の再編、これは日本についてやっているだけではなくて、むしろグローバルにされているわけですけれども、今回の再編によって日本の自衛隊とそしてアメリカ、米軍がどのように緊密になろうとしているのか、その辺についてお聞かせください。

麻生国務大臣 二〇〇二年の十二月の2プラス2以降に関して、日米の同盟のあり方についていろいろ協議を行ってきて、その中で任務、役割、また能力等々、兵力態勢の再編に関する検討の成果というものを取りまとめられてきたんだと思います。

 これは、防衛庁の方が詳しいところだと思いますが、自衛隊の安全保障、米軍と一緒になって安全保障とか防衛協力のあり方を検討した中で、少なくとも日米安保体制を強化するというので、現実的に、国際社会の諸問題に取り組んでいけるよう効果的に貢献するということになりつつある昨今の国際情勢の中にあって、日本と一緒になっていかに効果的にやるかということをやって、具体的には三つぐらいあると思うんですが、司令部間の連携の強化、それから相互運用性の向上、そして情報共有の強化などを目的としたんだと思っております。

 具体的には、第五空軍司令部の話とか横田の話とか即応集団司令部のキャンプ座間への設置とか、いろいろ御存じのとおりでありますので、そういった形で、効果というものが効果あらしめるようにするためにどうすればよいかということで、役割、任務等々の分担の編成をより正確にしていった、明確にしていったということだと理解しております。

山口(壯)委員 今、大臣も、日米の関係、関係というか、いわゆる米軍と自衛隊の関係が緊密化されるということですね。それは、確かに、今までずっと政府が志向してきた方向であるとは思います。

 私は、ずっと吉田茂さんの話を引かせてもらいながら、独立自尊の我々の気持ちというものも非常に大事にしなければいけない、それは吉田茂さんの発想でした。そういうことから考えた場合に、今回の緊密化の話というのは、テクニカルに防衛庁に任せておけばいいという話ではなくて、もう少し大きな観点でもってとらえた方がいいと私は思うんです。

 大臣、防衛庁の方が詳しいと思いますがと言われたのは、それは気持ちとしてよくわかるし、実態、そういう面もあるから、それはそのとおりでしょう。しかし、少し視野を越えて、シビリアンコントロールという考え方も大事にしていただいて、このことについては外務省としてよく知っておかなければいけない。そのことがアメリカとの関係、あるいは、場合によっては世界をどう日本がつくっていこうとするか、世界というか秩序ですね、そのことにも関係しますから、これは防衛庁の話だというふうに外務省が言わずに、日米安保条約を主管するのは外務省ですから、外務省の話だという認識を持って取り組んでいただきたいと思うんです。

 まず、このことについて確認してください。

麻生国務大臣 日米協力がより緊密化したことが、直ちに日本の自衛隊の在日米軍への従属化を意味していることではないことははっきりしております。

 言われましたように、独立自尊、自立等々の基本的な概念、哲学というのはきちんと押さえた上でやらないと、従属化するということは断固避けねばならぬというのは、これは日本という国は独立国家である以上当然だと思いますので、御趣旨は踏まえて、一番肝心なしんのところだと思いますので、きちんと対応していきたいと考えております。

山口(壯)委員 大臣、外務省の主管事項として認識していただけますか。

麻生国務大臣 外交の基本中の基本の一つでもありますので、当然のことだと存じます。

山口(壯)委員 日米安保条約に関しては外務大臣が責任を持って遂行する、この基本をしっかり押さえておいてください、これがシビリアンコントロールのことにもつながっていくわけですから。

 そして、今、従属化するわけではない、もちろんそれはその気持ちでやっていかなきゃいけないわけです。

 他方、我々、軍事の関係で、やはりアメリカと日本と、例えばミサイルディフェンスの話をとってみても、Xバンドレーダーというものをこれから配備していく、急速に話を進めていますね。

 このXバンドレーダーについて、例えば、日本に置かれているから、その運用を日本が主体的に、あるいは、場合によっては主になってやるかどうか、この辺になりますと、どっちかというと、ミサイル防衛の話はアメリカはぐんぐん進んでいるものですから、ついつい、言ってみればアメリカの指揮系統にも似たような話になりかねないということがあるんだと思うんです。

 繰り返しますけれども、この話は吉田茂さんが、ユニファイドコマンドというものを突きつけられたときに最後まで突っ張ったことなんですね。NATOでは、アイゼンハワーに来てくれとまでイギリスやフランスが頼んで、そしてアイゼンハワーの号令一下、全軍を指揮するユニファイドコマンド、統合司令部という概念があった。まさか戦争に負けた日本がそれに反対するとは思いもよらず、最後まで反対したわけですね。ダレスが、講和条約についても、もう上院で承認求めるようなことしないぞ、要するに、占領国でずっと居続けるかというプレッシャーまでかけられて、なおかつ吉田茂さんは、いや、日本とアメリカというのは本当の意味での対等のパートナーでなければ国民に受け入れられない。それから比べると、ちょっと、だんだん吉田茂さんがむしろ危惧した方向に今は向かっているわけです。

 だから、私はしきりに言っている、いわゆるディフェンスコミットメント、大臣はもちろん、条約上の解釈として、日本がどこかの国に攻められたときには、アメリカが日米安保条約上、防衛の義務を有する、それは条約にはそう書いてある。しかし、それが本当に、例えば中国との関係とかで、中国が今がんがん核も備えているときに、本当に大丈夫かという議論というのはどうしてもしておかなければいけないところなんですね。

 それを考えると、アメリカのディフェンスコミットメントという話も、これは正直言って、イラクやイランで、イスラエルが心配するところにはがんがん行くけれども、そうでない北朝鮮については六カ国協議という格好で中国に任せっ放しだということになると、この五年間、小泉内閣の間に日本の安全保障に関するアメリカのディフェンスコミットメントは低下しているという評価すら成り立ってしまうんです。キャッチボールとかジャンパーの交換をしている間に、現実に、アメリカのディフェンスコミットメントというのは大丈夫かという心配を私はしています。

 そういうことからいきますと、日米の防衛に関する緊密化というのは、本当のところへいくと、どうもミサイルディフェンスについて、ぎゅっと強くなっているというところが突出してしまっている。本当の意味での、日本とアメリカがどういう安全保障の政策を持ってしているのかということのすり合わせができていないわけです。防衛当局がぐんぐん突き進んでしまっている。だから、私はシビリアンコントロールということで、外務省が主管事項としてやらなければいけないということを強く申し上げているわけです。

 このことについて、例えば、冷戦が終わって、日本が安全保障をどういうふうに守るかという議論がなされていないんです。防衛大綱をどうするかという非常にテクニカルな話に毛が生えた程度でしか終わっていないんです。外務省としても、アメリカの言い分にどう対応するかという次元でしか物事が来ていなかった。

 しかし、敬愛する麻生さん、これからさらに上を目指していかれる九月に備えて、やはり日本がどういうふうにこれから安全保障を考えていくかということは、ぜひ披露していただきたいと思います。

麻生国務大臣 これは、自分の国は自分で、自分のことは自分でが基本ですから、少なくとも、平時においては日本の自衛隊、また、いかなる有事、有事の設定の仕方によっても違いますけれども、有事においては日米安全保障条約ということになろうというのは、これは基本中の基本で、今さら申し上げることもありません。

 ただ、日米安全保障条約が、いざ有事というときに、機動的に働くように不断の努力が要る。私は、条約というのは契約と同じで生き物だと思っていますから、少なくともその契約が、いざというときにちゃんと作動するか否かというのは、これはふだんからの努力というものをやっておかないと、いわゆる不断の努力が要るんだと思っておりますので、そういった点から考えますと、私どもは、日米間の条約というものはきちんとできるように、少なくとも九・一一以降、冷戦以降はともかく、九・一一以降はかなりというようなことまで周りの状況が変わってきたこともあって、国民の意識も変わってきたし、また政府の意識も含めて変わってきているように思っております。

 少なくとも、政府の中においては、そういった状況を踏まえて、今回の2プラス2にしても、いろいろな意味で、従来では考えられなかったぐらい現実的なものとして、日本海、朝鮮半島等々いろいろ考えますと、対応を現実的なものにしておかなくちゃいかぬという意識がわいてきて、現実問題として、有事法制ができ、そして国民保護法制ができ、いろいろな形で具体的なものをバックアップする法律というものもこの五年間にできたということは大きな進歩ではなかったかと思っております。

 ただ、それも法律ですから、その法律がきちんと作動するためには机上ではだめなんであって、実践、現実、現場というものを踏まえてやらないかぬというところもまた確かだと思います。

 いずれにいたしましても、御指摘のありましたように、日本のことでありますので、日本において周辺の事態というのはまだ不透明、不確実な部分が多々ありますので、そういったところを踏まえてきちんと対応していくという努力、決意というものはきちんと持ち続けておかねば国は預かれぬということになろうと存じます。

山口(壯)委員 大臣、外務省がやはり責任を持って日米安保条約にかかわることを主管していく。これに関して、防衛庁を防衛省に昇格しようかという話も、額賀長官は、私が本会議で質問させてもらったときにも、何とかこの会期中にという話をされていたし、現実にその動きが、六月九日ですか、閣議でもお話しになられるように聞いています。

 我々は数の上で今非常に少ないわけですから、私は、実は防衛庁を省にするのは、まだ、本当はもう少し時間をかけていいと思っております。でも、どうしてもという場合に、我々は反対し切れない数ですから、万が一省になった場合、これは誤解のないようにしておいていただきたいですけれども、私も防衛庁には出向を二年間していて、大韓航空機の撃墜事件の後始末を目いっぱいやって、当時西廣さんは別のところにいて、矢崎さんが防衛局長でいて、夏目さんが次官でいて、いや、実は君が防衛庁を救ったかもしらぬぞとまで言ってもらって、大変なアキレス腱になるところだったと。まあ、私はそこまでやった以上、思い入れもありますから、そういう意味では防衛庁は好きですよ。好きですけれども、省にするにはまだ早いと私は思っているんです。

 そういう意味では、防衛省にした場合に、外務省が日米安保条約について主管の省であり続けるということは変わりないですね。

麻生国務大臣 そのように考えております。

山口(壯)委員 それはぜひそういうふうに、その体制で、あるいはその気構えでやっていただきたいと思います。

 今回の米軍再編については、アメリカのラムズフェルドさんは、ビジネスマンという面もあるからでしょう、できるだけ節約する、とにかくアメリカは節約するんだ、同盟国に金、人を任せて、戦略は自分たちだ、こういう面が見られるわけです。広く金、人、戦略といいますけれども、戦略はアメリカだ、同盟国はついてこい、金、人を出せ、こういうところが現実によく見える。

 これについても私は何度も申し上げたけれども、本来外務省が、アメリカとの関係というのは、もっと大もとから握っておかなければいけない。それは新聞を読めば、官邸から丸投げされたからとか、真実はいろいろな表現の仕方があるんでしょう。しかし、もう少しこのことに関しては、外務省がきちっと、もっと表面に出て、最後に決着するのが額賀さんとラムズフェルドじゃなくて、やはり麻生さんがあそこに、最後の場面にいなければいけなかったと私は思うんです。そういうことを私は申し上げているわけです。

 先ほど、現実に即してということも言われました。現実と原則と、この二つをいつもバランスをとりながらやっていくわけですね。それで、私は何度も言っていますね、原理原則がおろそかになっていると。このグアムの話についても、在日米軍じゃないんだから、在日米軍に関する思いやり予算の発想とか、在日米軍に対する特別協定とかという発想は本来成り立たない話なんです。吉田茂さんがいたら出さなかったと思いますよ。少なくとも三十億ドルの融資、外務省が考えたその原案で突っ張ったはずですよ。

 そういう意味では、額賀さんが、最後は半額に値切った、ちょっと待ったと、私は正直言ってつらかったですよ。でも、それが今の日本の状態かもしれない。現実には即している、しかし、原則を大事にしなければいけない、ここが外務省の役割でもあるのですよ。麻生大臣もあと何カ月かもしれないけれども、ぜひその気構えを伝えていただきたいと思います。

 冷戦というものが終わって、日本の安全保障戦略について大きく変わったという議論がなされたとは私は承知していません。実は、アメリカも迷っているんです。アメリカも、中国がぐっと出てきて、これにどう対応するかというのはまだ結論を出していない。ステークホルダーと言うゼーリックがいたり、いや、コンテインするべきじゃないかと言う人もいたり、あるいはコンテインすら成り立たないんじゃないかと言う論者もいたり、まだ決まっていないんです。

 そんな中で、この米軍再編というのは中国を意識したものであることは間違いない。これはだれもがよく理解している。でも、我々は中国にどう対応するかということをまだ決め切っていないわけです。日本の中にも、あるいは麻生さんのおられる党の中にも、いろいろな議論がある。我々はもちろんいろいろな議論を持って、これから中国とどう対応するかというのは本気で考えなければいけないわけですね。

 そのときに、大臣、きのうちょっと見ていただいた、このほかにもいろいろな記事が出ています、靖国について専門家たちが懸念している。さっき松原さんの方から下院のいろいろな話も出てきていましたけれども、ここに出てきているのは、ケント・カルダーとかマイク・モチヅキとか、ワシントンのインテリの人たちですよ。そういう人たちがいろいろ懸念している。

 この底には、結局、極東国際軍事裁判をどうとらえるかというところに関してのアメリカの懸念というものが出てきているのだと思うんですね。中国とどうつき合うかと同時に、その根本がある。これは、私も、一番仲のいい松原さんで、非常に心合わせできているつもりですけれども、極東国際軍事裁判をどうとらえるかについては、ちょっとニュアンスが違うと私としては思うんです。

 それはどういうことか。例えば、外務省の先輩の広田弘毅さんがいわゆるA級戦犯ということに入っている。彼にしてみたら、おれが一生懸命とめようと思ったときに軍人たちが勝手に動いていって、どうしようもなかったと。ちなみに、広田弘毅さんは、吉田茂さんの同期で外務省に入ったんですね。

 この広田弘毅は、城山三郎さんの「落日燃ゆ」によれば、一切の言いわけをしなかった。これは大変なことだなと、自分がある意味で、人によったらおれの責任じゃないよと言ってしまいそうな状況のときに、あえて一言も言いわけせずに十三階段を上っていったその心というのはどういうことだろうか。それは、私が察するに、おれがもしもこれで全部ひっかぶって、ここで日本が新しいスタートを切れるのであれば、あえてひっかぶろうじゃないか、私は、その心意気は無にしちゃいけないと思うんですよ。

 そういう意味では、極東国際軍事裁判というのは間違っている。間違っているけれども、それを正しいか間違いかということで議論するよりも、賢いか賢くないかという議論の仕方をした方が、我々新しいページを開いていけるというふうに思っているんです。

 そういうことからいけば、この極東国際軍事裁判で間違っていることはいっぱいあります。広田弘毅が入っていることすら間違いだと私は思います。だけれども、賢い対応の仕方も考えなければいけない。

 アメリカのこのおじさんたちが言っていることというのは、マイク・モチヅキは、「米国のエリートは概して靖国神社の歴史観には否定的だ。歴史問題が原因で、日本に対する批判的な見方が強まっている」、これは靖国の話。これは密接に関連していますから、結局、極東国際軍事裁判でA級戦犯とされた方々は、一九七八年以降、今合祀されているから、そのことに関係するわけです。

 国務省の中では、日本がアメリカと協力して中国を国際社会のパートナーにしていこう、あるいは日米がそうしていこうという気持ちを持ってほしいと考えている。

 でも、カルダーさんなんかは、「隣国と対話できない日本は、米国にとっても役に立たない。日米同盟が機能するのは、日本がアジアのなかで役割を果たしてこそだ」、これは本論ですよ。

 今、麻生大臣は努力されていると、しかし、現実には首脳同士の会話というのが成り立っていない。まあ、これから新しい段階を迎えられて、それは修正していくことでしょうけれども、しかし、こういうことというのは、我々賢く対応しなきゃいけないと思うんですよ。

 正しいか間違いかだけでこの議論をしていると、日本が昔のページにどうしても戻ってしまう。これは日本として、私は賢くないと思うんです。間違いは間違いで、我々の心の中でちゃんとそれは認識しておけばいい、アメリカ人の中にもそういう人はいっぱいいますから。だけれども、この靖国の問題に対して、麻生大臣、この記事を読まれてどういうふうに思っておられるか、感想をお聞かせください。

麻生国務大臣 朝日新聞の一面トップに掲げるニュースかねと思いながら、いつものようにそう思ってちょっとだけ見ましたけれども、この小泉総理の参拝問題に関しましては、これはもうこの前、累次説明をしておられるもので、改めて説明することは省かせていただきますが、アメリカの国内にも、これは山口先生、いろいろ意見があるというのはもう当然です、二億五千万もいるんだから、いや、かれこれ三億ぐらいいますからね。自由な国ですから、いろいろな意見を述べられるのは当然のことなんだと思っておりますし、事実、いろいろな意見があるということはよく承知しておりますが、少なくとも、アメリカの政府が靖国神社参拝というものを批判したという例を私は知りません。それから、批判的な受けとめ方が専門家の間で一般的かということに関しても承知をいたしておりません。

 いずれにしても、日本の政府としては、この種の総理の参拝の趣旨について、随時、今後とも説明をしていかねばならぬと思っております。

 先ほどの極東軍事裁判の話につきましては、これは一九五一年五月の三日のマッカーサーの米上院の軍事外交委員会での証言等々において、その内容もよく御存じのとおりですので、そういった話もあるというのは事実なんです。しかし、日本としては、サンフランシスコの講和条約においてサインをするときには、この極東軍事裁判を受け入れる前提でサンフランシスコ講和条約にサインをしているという現実もまた歴史的事実として知っておかなければ、いわゆる賢い、現実的な対応にはならぬというように考えております。

山口(壯)委員 大臣にはよくわかった上でお答えいただいていることは承知の上で、それはブッシュ大統領も言っていない、それはそのとおりです。それから、あるいは一般の米国人も余り言っていない、それもそのとおりです。

 他方、この記事の中でも、例えば「ブッシュ大統領が首相の靖国参拝を批判することはなく、国防総省も日本の歴史問題を重視していない。」それはそのとおりだ。だけれども、「外交を担う国務省内には、日米が協力して中国を国際社会のパートナーにしていこう」、そういう発想もある。

 したがって、それは、大統領としてはそこまで言わぬですよ。あるいは、言おうとしても、小泉総理が四十五分間独演のスピーチされたという話もあるじゃないですか、だから、そこまでしている人にそれは言わぬでしょう。だけれども、やはり外交を担当する外務省としては、とりあえずそのことをもう既に流れとして察知しておいてほしいわけです。ケント・カルダーも、「多くの米国人が靖国を知るようになると、日米関係の障害となりかねない」と。

 それは、特にびっくりするのはあの博物館なんですね、特にびっくりするのは。根本的にはA級戦犯の話も絡まっていますけれども、博物館の話、大体外交官が、靖国、それは見ておかなきゃいかぬと大使みんな行くわけです。ところが、博物館に行ったときの、びっくりするというのが一般の感覚ですよ。これは、いい悪いとか、正しい、間違いだということを乗り越えて、彼らはびっくりするわけですね。静かな神社だと思って行ったら、ちょっと全然趣が違う。

 私、いい悪い言っていないんですよ。でも、彼らはそういうふうな感覚で受け取っているわけです。米国人についてもそうでしょう。博物館に来た米国人は、それはもちろんほとんどいないですよ、だけれども、知れば知るほどびっくりするかもしれない。

 そういうことを知った上で我々は対応を考えなきゃいけないので、大臣、ブッシュ大統領も言っていないから、あるいは米国の一般の人はまだ知らないとかということで済まされないことはよくわかっていますから、ぜひそれを長期的な深謀遠慮でもって対応していただきたいと思います。

 私のきょうの質問というのは、確かに、大臣とちょうちょうはっしやらせてもらうのは最後かもしれない。もっともっと厳しくやった方がよかったかもしれないけれども、ついつい敬愛する麻生大臣だから矛先も鈍ったかもしれません。でも、一番大事なところは酌み取っていただきたいんですね。

 独立自尊、それはアメリカに対しても、そして中国に対しても、そして日本は、みずからの哲学、「和を以て貴しと為す」、あるいはともに生きるというところを、これから日本が外交政策の中で、あるいは安全保障政策の中にもそういうことが入ってきてもいいかもしれません。

 ぜひそういうことを踏まえて、今曲がり角に来ている日本外交ですよ。ついこの二十年間を見てみましたら、防衛の分野で積極的にやることがどうも日本の責任を果たすみたいな感覚が一般的にあった。それに我々、外務省にいたときに、援助ということもあるだろう、ソフトパワーの援助を使って日本が役割を果たしていこうということで、当時ロン・ヤスと言われた中曽根元総理とレーガン大統領、戦略的な援助の使い方ということも我々仕組んだつもりです。

 そういう意味では、決して、言ってみれば、アメリカに防衛の分野でぴたっとくっつくことが日本の独立自尊ということにつながらないわけです。むしろ逆だと思うんですね。

 独立自尊というのは、例えば、自民党の中にもたくさんおられると思いますけれども、親米保守、親米保守の考え方というのがむしろ日本の政策判断能力というものを低下させてしまったかもしれない。アメリカの言うことを聞いていればそれでいいじゃないかという心がついつい潜んでしまっている。

 申しわけないけれども、小泉総理の発言にも似たようなところがありますね。日米同盟さえしっかりしていればというところで誤解を招きかねないところもあった。中国、韓国との関係というのは、日本が自分の秩序をつくっていく、そういう気概でやっていただきたいと思います。

 麻生大臣、これからもまた、国会でもいろいろ会うことは多いと思いますし、まだまだ外務大臣としての時間も十分ありますので、ぜひ独立自尊のこの精神でもって日本の外交を進めてください。

 終わります。

谷本委員長代理 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 きょうは核兵器をめぐる問題について質問したいと思います。

 今日、北朝鮮、イランを初めとして、核開発問題ということについては、それぞれの地域の情勢を厳しい緊張にさらす行動をとらずに、いかに平和的、外交的に解決できるかどうかが国際社会にとって重要な課題になっていることは当然だと思います。

 そういう中で、内外の世論や主張の中で、やはり核兵器を保有する国があるから対抗して持とうとする国が後を絶たないんだ、地球を守るために、人間の生命を守るために、今こそ地球から核兵器を廃絶しようという声が大きく広がっていると思います。

 広島、長崎の原爆投下から六十年以上たった今なお、最高時からは減ったとはいえ、世界には依然として膨大な核兵器が存在しております。新たな核兵器国の出現を許さない上でも、核兵器廃絶の課題がいよいよ重要になっていると思うんです。

 この点で、先月来日しました国連のアナン事務総長も、東京大学における講演で、唯一の被爆国である日本の役割に大きな期待を表明しましたが、麻生大臣に、核兵器廃絶の課題の今日的重要性、そして日本がどのような役割を果たしていくのか、端的にまず伺いたいと思います。

麻生国務大臣 アナン事務総長の話も今引用されましたけれども、少なくとも日本の場合は、国民感情に照らして、いわゆる被爆国としての国民感情と言った方が正確かもしれませんが、国民感情に照らしてみても、この核兵器の廃絶というのは極めて重要な課題であろうと存じております。

 核兵器がないから平和とは言いませんけれども、核兵器のない、平和とか安全という社会とか世界というのを実現していくためには、日本は、たしか毎年欠かしていないと思うんですが、国連の核軍縮決議案というものに関しての提出国をずっとやってきていると思っております。今のは一つの例ですけれども、外交努力というのは引き続きやっていかねばならぬ大事なところだと思いますので、今後ともそのような努力は強化してまいりたいと考えております。

笠井委員 昨年の被爆六十年の状況、それから、とりわけ、五月にはNPTの運用検討会議が行われました。秋には国連加盟国の首脳会議があり、それから、国連総会ということで結果も出た。そういうことも踏まえて、二〇一〇年に開かれる次の運用検討会議に向けても、日本の役割、いよいよ重要になっているというふうに考えます。

 特に、私は二つのことをきょうは端的に提起したいと思うんです。

 一つは、広島、長崎の、今国民感情と言われましたが、被爆の実相を広く世界に知らせるための政府のイニシアチブという問題です。

 昨年五月、国連本部で開かれたNPTの運用検討会議、私も傍聴に行きました。この会議に合わせて、日本原水爆被害者団体協議会、日本被団協が主催をしまして「ノーモア・ヒロシマ・ナガサキ展」というのが開かれました。これは、広島、長崎両市が共催をし、日本政府、国連代表部も後援をするということでありました。

 この原爆展は、各国から訪れた政府その他の関係者の多くの人々の心を打って、核兵器廃絶を求める声を広げる機会になりました。

 私自身、個人的にですが、母が広島で被爆をしまして、その体験を聞いて育ったということで、それが原点となって今日までやってまいりましたが、こうした被爆の実相、そして原爆展の取り組みというのが世界の至るところで実施されれば、核兵器廃絶を求める声がさらに広がって、各国政府を変える力になるというふうに私は確信をしております。

 昨年五月に厚生労働省所管の国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館がアメリカのシカゴの平和博物館で原爆展を開催しましたが、私が承知しているところでは、国の機関としては初めてであったと思います。国連本部での原爆展も、被団協がやるということで二〇〇一年に提案をしながら、四年間かかってようやくできたということでありました。

 そういう意味では、関係者、自治体、いろいろ要望はあると思うんですけれども、原爆展の開催とか、あるいは、そういう被爆の実相を広げるということに対する支援ということで、やはり日本政府が、ある意味、アメリカに遠慮しないでとかいう点で、もっと本腰を入れて取り組むべきじゃないかと思うんですが、大臣、その点はいかがでしょうか。

 そしてもう一点、あわせて、外務省は、最近、「軍縮・不拡散 日本の取り組み」というパンフレット、リーフレットを出されました。これを拝見しまして、戦後世代が多くなっている中で、唯一の被爆国の原点として、被爆の実相とか被爆者の訴えというのが残念ながらこの中にないんですよね。

 それで、拉致問題で、政府、外務省は英文パフレットをつくられて、大いに国際的にも世論を喚起しようということで出されているわけですが、核問題でも、世界に核兵器廃絶を働きかける上で、被爆の実相とか被爆者の訴えとか、やはり独自のパンフレット、リーフレットも含めて、つくることを検討されたらどうかと思うんです。

 原爆展への開催と支援、それから被爆の実相についてのパンフレット、リーフレットの発行についてはどういうふうに考えていらっしゃるか、伺いたいと思います。

塩崎副大臣 笠井先生とは参議院時代から親しくさせていただいておりますけれども、大体同じようなことを考えているというのは今回が初めてかもわかりませんので、申し上げたいと思います。

 親しみを覚えているわけでありますから、なおさらのことでありますけれども、実は私も、今先生はお母様が被爆をされた、それが政治活動の原点だという話がありましたが、私の父も広島で国税局勤務がありまして、私は小学校のときに初めてあそこの原爆記念館に行って、衝撃を受けて以来、政治に関心を持つようになったという意味において、極めて共通するところがあるな、所属する政党が若干違うぐらいのことであろうと。

 そこで、イランの、今の核の問題について、麻生大臣も汗をかきながら、独自の外交を展開しているのも、説得力を持つのは、やはり唯一の被爆国であって、NPT政策を推し進めている中心的な国として日本があるからだ、こういうことだろうと私は思っています。

 そこで、当然、核兵器のない平和で安全な世界を一日も早く実現することを目指して積極的な外交をするのは今先生がおっしゃったとおりでありますが、特に、長崎、広島、この悲劇を人類の記憶にとどめるということが極めて重要だというふうに思っています。

 それで、今の原爆展、共産党が支援をしているというお話があったかと思いますけれども、政府といたしましても、これまでこの原爆展の開催を後援等々で支援してまいりましたし、昨年五月のシカゴにおける国立原爆死没者追悼平和祈念館による海外原爆展、これについても、厚生労働省所管のここがやっているということで、政府としてもバックアップをしているわけでございます。

 さらに、世界各地から毎年二十五名から三十名の若手外交官を広島、長崎に招聘いたしまして、被爆者との交流を含め、被爆の実態を体験してもらう国連軍縮フェローシップ計画というものを国連と協力して推進しているわけであります。

 政府として、委員の御指摘も踏まえて、こうした努力を引き続き積極的に行っていきたいと思っておりますが、特に、今のパンフレット、「軍縮・不拡散」というものでございますけれども、これの英語版についても作成する方向で検討してまいりたい、このように考えております。

笠井委員 英語版というか、その中身でやはり被爆の実相とかそういう問題を大いにきちっと盛り込むということで検討をいただきたいということなんですが、いかがですか。あるいは別途独自に被爆のパンフレットです。

塩崎副大臣 この中身を見てみますと、これからどうするかという話が多いものですから、今先生がおっしゃったように、私も個人的にそのことを事務方にも言いましたが、やはり過去のことも少し、後世に伝えるという意味で、あってもいいのではないかというふうに私は個人的に思って、事務方にそのように伝えてあります。

笠井委員 同じ思いでということで心強いわけですけれども、被爆展については、原爆展は共産党が独自に支援というよりも、大いにやはり広範な人々が支援して応援しているということで、今、ようやくこぎつけたということだと思うんですが、大事なことだと思うんです。

 この際、私、一言だけ申し上げたいのは、原爆症認定裁判で大阪地裁の判決に政府が控訴するということがありまして、被爆六十年を経た今なお、被爆国政府が被爆者と裁判で争っているというのは、世界から見ても異常なことだと思うんですね。この姿勢は直ちに改めるべきことを強く求めておきたいと思います。

 それからもう一つ、時間が限られておりますので、日本政府がやるべきことということで私が申し上げたいのは、核兵器廃絶に向けて核兵器保有国に対して働きかける、特にアメリカに対して、はっきりやはり物をもっと強力に言うべきではないかというふうに思うんです。

 米国政府は、昨年五月のNPTの会議のときにも準備委員会の段階から、二〇〇〇年の核兵器廃絶の明確な約束をほごにするということがありました。核保有国、特に米国の核兵器には指も触れさせないという態度をとって、核軍縮、不拡散、平和利用のすべての面で会議を決裂させる、九月の国連加盟国の首脳会議でも核軍縮と不拡散に関するすべての合意を不可能にするということがありました。

 昨年の国連総会では、非同盟や新アジェンダ連合の決議はもちろんですが、日本政府が、はっきり言って米国などの核保有国に相当配慮して、明確な約束というのは今回は入れなかったということがあると思うんですが、そういう決議案にさえアメリカは反対しているということであります。

 最近のニュースですが、スウェーデン政府の提唱で設置された世界の有識者十四人から成る大量破壊兵器委員会という、例のブリクス委員長が務めておりますが、六月一日に発表した報告書で「恐怖の兵器 核・生物・化学兵器からの世界の解放」というのを出しまして、そこでは、米国などの核政策をも批判しながら、すべての核保有国に、核兵器に依拠しない安全保障の立案を開始して、核兵器違法化の準備を始めるべきだということで提言をいたしております。核兵器をめぐる国際交渉が停滞している中で、これが一つの契機となることが期待されると思うんです。

 私が申し上げたいのは、今こそ日本政府が、唯一の被爆国として、また、アメリカの同盟国というなら、米国に対して、核兵器の全面禁止、廃絶の国際協定の実現に向けた速やかな協議、交渉に応じるように、これは強く求めるべきじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか、大臣。

    〔谷本委員長代理退席、委員長着席〕

塩崎副大臣 核戦力を含めた大規模な軍事力が世界に存在をして、不安定そしてまた不透明な安全保障状況であるということは先生も御案内のとおりだろうと思います。

 そういう中で、我が国も日米同盟関係のもとで、核を含めた米国の抑止力を前提とした安全保障政策をつくっていることは間違いないことで、これについては変わるところはないと思うわけでありますけれども、一方で、核兵器のない安全な世界の実現のために、今先生から御指摘がるるございましたように、米国を含むすべての核兵器保有国に対して、我が国としては、核軍縮に向けた努力を粘り強く訴え続けていかなければいけないと思っておりますし、そのようにしているところであるわけでございます。

 特に米国にというお話がありましたけれども、これはもちろんそうでありますけれども、それを含めて、すべての核兵器を保有している国あるいは保有しているのではないかと思われる国に対して、種々の機会を通じて、核兵器の削減あるいは不保持、それから包括的核禁止、CTBTですね、禁止条約の早期批准等、核軍縮のための具体的な措置をとるように求めて、そして、それを基本的な外交の柱にしていくというふうに考えております。

笠井委員 最後に一言大臣に、よく二律背反ということを大臣は言われますが、今の塩崎副大臣のお話でもそうですし、外務省のこの本とかパンフレットを見ても、一方では、唯一の被爆国として核兵器廃絶を求めるということですが、他方では、アメリカの核抑止力に依存するということをとられるわけです。

 アメリカは、今、そういう意味では、核兵器先制使用ということも含めた先制攻撃戦略をとっている、そして、核兵器使用の敷居も下げるという状況で新しい戦略を展開している中で、唯一の被爆国日本が、一方でアメリカの抑止力に頼っていて、世界に核兵器廃絶をと訴えるということについて、これは本当に説得力を持つだろうか。どうお考えでしょうか。

麻生国務大臣 核兵器の廃絶を願っておるのは、これは多分、皆同じなんだと存じます。

 ただ、今、我々は政治というものを預かっている以上、現実問題というものに対処しないとやっていけませんので、政治というのは、理念、理想だけではなくて、現実にも対応しなければならぬという仕事でもあります。

 したがいまして、今、現実問題として、日本というものに対する侵略、もしくはいろいろな形での日本に対する攻撃に対応するためには、しかるべき抑止力というものに頼らざるを得ないという現実に対応していくために、日米安全保障条約というものを結んでいるんだと存じます。

笠井委員 終わりますが、米軍再編もそうですが、まさに抑止力、核抑止力に依存しながら再編も進めていくということが2プラス2でも書いてあるわけです。そういう形である限り、やはりこの核兵器問題でも打開の道が見えないだろう。はっきり言って、日本がそういう意味で、確固として、アメリカに対しても、この問題で、廃絶のために踏み出せということをやらない限り、アメリカはとにかく核兵器をなくさないし、世界からもなくなっていかないだろうというふうに思います。

 人類と核兵器は共存できないということで、ここはきちっと外交政策を転換するということを求めて、きょうは終わります。

原田委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 毎回毎回、沖縄にこだわっております。

 きょうは北原防衛施設庁長官に尋ねますが、長官は、六月二日の定例記者会見で、米軍普天間飛行場の代替施設建設計画について、日米間で年内に策定し、その後に、政府と地元でつくる協議会を立ち上げて内容を説明すると言明したようでありますが、それは間違いありませんか。

北原政府参考人 照屋寛徳先生に御答弁を申し上げます。

 私、先日の記者会見についてでございますけれども、先日、まず五月の三十日に閣議決定が行われたわけでございます。そうした中で、先生御承知のように、五月一日の2プラス2で承認された案を基本として、これまでの協議の経緯などを踏まえて進める、そして、早急に代替施設の建設計画を策定する。そして、具体的な代替施設の建設計画、安全・環境対策、地域振興については、沖縄県及び関係地方公共団体と協議機関を設置して協議し、対応するといったことが決められているわけでございます。

 私は、この閣議決定を踏まえまして、今先生御指摘いただきましたけれども、地元と協議するに当たりましては、ユーザーが米側でございますので、米側との協議状況を踏まえて、そして沖縄県等と協議をしていくといったお話をさせていただいたところでございます。

 いずれにいたしましても、私ども今考えておりますのは、沖縄県あるいは名護市等との協議に当たりましては、建設計画が具体化していく中で、閣議決定に基づきまして、協議機関を設置して協議し、適切に対応していく、そのように考えているところでございます。

照屋委員 重ねて尋ねますが、代替施設建設計画は、米側と策定を終えて、合意を終えてから、協議会でその内容を地元に説明するんですか。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 米側との協議状況を踏まえながら、適時適切に、沖縄県等と、これまでうちの大臣が結びました確認あるいは合意に基づきまして、誠意を持って継続的に協議を進めていく、そういうことでございます。

照屋委員 長官は、この代替施設計画について、日米間で年内に策定をすると。しからば、沖縄県や関係自治体と政府の協議会はいつまでに組織されるんでしょうか。

北原政府参考人 私が申し上げた趣旨と申しますのは、ロードマップによりまして二〇一四年という後ろが決められているわけでございます。そうした中で、日米の協議を進め、そして、その協議の状況等を踏まえながら、沖縄県と適切に協議を進めていきたいということを申し上げたわけでございまして、アメリカとの協議を年内に終えるといったことに特定したわけでございませんで、我々といたしましては、できるだけ早くその協議を、地元にお話しできるような状況をつくり出していきたい、そういうことを申し上げたわけでございます。

 そして、二〇一四年ということが定められているわけでございますので、記者の方から、そうすると年内ですかという御質問がございまして、そういうことを考えれば、当然のことですということを申し上げた次第でございます。

 なお、地元との協議機関をいつ立ち上げるかといった点につきましては、今現在まだ決まっておりませんけれども、地元の御協力を得ながら、政府部内で検討して、できるだけ早く立ち上げることができれば、そのように考えているところでございます。

照屋委員 長官、建設計画を日米間で合意、策定をした後に地元協議をしても、意味がないと私は思うんです。それでは、地元に対しては、実質的な事後説明にしかすぎない。地元の意見は全く反映されないことにはなりませんか。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 私が申し上げておりますのは、まず地元、県を初めとする地元にお話をするに際しましては、やはり具体的な計画の裏づけといったものがないと実質的な御協議はできないということを申し上げているわけでございまして、日米での協議を進めたい、そして、そうした協議の状況を踏まえながら、適時適切に御説明はしていく、そういうことを考えているわけでございます。

照屋委員 長官に尋ねますが、沖縄県は閣議決定後も協議会への参加を拒否すると知事も副知事も明言しておりますが、その場合、たとえ日米両政府間で合意をしても、その建設計画はうまく進展するでしょうか。私は進展しないと思いますが、長官はいかがお考えですか。

北原政府参考人 政府といたしましては、沖縄県との関係では、五月十一日に私どもの大臣と基本確認書というものを交わしております。そうした基本確認書などを踏まえまして、さまざまなレベルで協議を行ってまいりまして、そして、それぞれの立場を踏まえながら、閣議決定をまず行ったもの、そのように考えているところでございます。

 そして、今先生御指摘の稲嶺沖縄県知事の御発言につきましては、私も承知をいたしております。六月二日の定例記者懇談会で、先生御指摘の御趣旨のことを知事さんは述べられていらっしゃいます。

 なお、その同じ定例懇談会の席上で、知事さんはあわせて、県は県の立場を主張し続けていくといったことと、それから、私どもは常に話し合いはしっかり続けていくという基本概念があるといった趣旨のこと、そして、一生懸命話し合いを続けていくという姿勢には全く変わりありませんから、その中で前進するよう努力をいたします云々といった、政府との協議は継続していくといったお考えは、明確に述べていらっしゃいますので、私どもも、これからも引き続き沖縄県とは緊密に協議を続けてまいって、そして、閣議決定にある協議機関につきましても、何とか御出席をいただいて、そして、全体として本当にこの普天間の危険の除去というものが早く達成できるように努めてまいりたい、そのように考えております。

照屋委員 この代替施設の建設計画の策定は重要な問題だと思いますので、麻生大臣にもお伺いをします。

 どうやら防衛庁や防衛施設庁は、先ほど申し上げたように、ロードマップに基づいて、代替施設の建設計画を日米両政府間で合意の上、策定して、後から地元に説明をして協議をするんだ、このような考えですが、私は、それではうまくいかないと思うんです。

 大臣は、この重要な問題について、まず日米両政府間の合意、合意に基づく策定の上に、地元説明、協議をすべきだとお思いなんでしょうか、お伺いいたします。

麻生国務大臣 照屋先生よく御存じのとおり、これは防衛という国の専権事項、専管事項にかかわる話という大前提があろうと存じます。これはもう申し上げるまでもないところだと存じます。

 したがって、日本とアメリカ、両国政府の間で基本的な合意というのがある程度できていないと、どこから何を話していいかがわかりませんので、一応の枠組みというものを考えた上で、現実的にここに、現実的にこれをこっちに等々の話をさせていくんだとは思います。

 先般の閣議決定におきましても、承認された案を基本として、早急に代替施設の建設計画を策定する旨、具体的な代替施設の建設計画等々につきましては、沖縄県及び関係地方公共団体と協議機関を設置して協議していく旨が決議をされているという背景なんだと思います。

 私どもといたしましては、外務省といたしましては、この閣議決定を踏まえて、引き続きアメリカとの間で建設計画の具体的な策定というものを今度やっていかないけませんから、そういったものに向けた協議を行って、同時に、地方公共団体との協議というものが行われるように、これは関係省庁と対応していくというのは当然のことだと存じます。

原田委員長 予定の時間が過ぎておりますので、御協力いただきます。

照屋委員 最後に一点、通告してありましたが、ウェーバー四軍調整官は、去る六月一日の共同記者会見で、在沖海兵隊の人数が一万一千から一万二千人と言明しております。ロードマップで在沖海兵隊の数を一万八千人とした根拠を北原長官に尋ねます。

原田委員長 簡潔に答弁お願いします。

金澤政府参考人 今先生御指摘のウェーバー調整官の発言、私も報道で見ておりますけれども、通常約一万八千人の海兵隊が駐留している。しかし、世界規模のテロ支援などで、現在一万一千から一万二千人の隊員がいるという報道がございます。

 現在、沖縄に駐留しております海兵隊の人数につきましては、協議の過程で、米側から約一万八千人がアサインされているというふうに聞いておりまして、グアムへの移転が実現する際には、その人数から八千人が削減されるものだというふうに認識しております。

 もとより、その時々で、現実にいる人数につきましてはその時々の米軍のオペレーションによって変動があるというふうに認識しております。

照屋委員 終わります。

原田委員長 次に、新藤義孝君。

新藤委員 先週に続きまして質問の機会をいただきましたことは、委員長、そして理事、また同僚委員の皆様方に感謝を申し上げたいと存じます。

 大臣、御出発されなければいけないということなので、手短に、一問だけ麻生大臣にお尋ねしたいと思います。竹島の海洋調査をめぐる関係でございます。

 この問題で、四月の十四日に、我が国海保が海洋調査を行う、こういうことで表明して以来、摩擦が起きました。そして、谷内事務次官が韓国へ行って話をまとめてきた。その後に、今度、大臣は五月二十三日、カタールで潘基文外交通商部長官と会談をしてお話をされたわけです。EEZの境界画定交渉を来週始めることを合意していただきました。

 そのときに、大臣は三つのことをお話をされておりますが、その中で、特に海洋調査に関しては、今後の海洋調査をめぐる協力も取り上げたいということでお話をされました。海洋調査の協力というのはどういう趣旨をおっしゃるつもりだったのか。

麻生国務大臣 御指摘のありました、先般の日韓の外相会議において、私より、EEZの境界の画定交渉をやるに当たっては、懸案になっている海洋の科学的調査にかかわる協力についてもその場で取り上げようじゃないかという話を私どもの方から発言をいたしております。

 この海洋の科学的調査に当たりましては、先般のような、先般というのは、谷内が行くことになりました先般のような事態が再発することを防止するということが必要、重要と思っております。

 したがって、日韓間での話し合いでEEZの境界が画定するまでの間、これは、EEZの境界が画定するまで結構時間がかかると思いますので、その間、日韓の間で海洋の科学的調査をめぐる協力というものは進めていく必要があろうと存じます、このEEZの画定とは別に。

 そこで、私としては、そういった点もこのEEZの境界画定交渉の中であわせて論議をすべきではないかということを、趣旨を申し上げたということでありまして、きょうこの段階で、韓国側が私どもの提案に対して、十六日からだと思いますが、来週から交渉の議題とすることにはまだ応じてきてはおりませんけれども、引き続き、この点につきましては調整をしていきたい。六月十二、十三日だそうです。調整をしていくというように考えております。

新藤委員 それでは、大臣、お時間でしたら、大丈夫です。どうぞ。

 今の大臣のお答えは、両国において、この周辺海域で国際法で認められている海洋調査を進めていくんだ、進めていくためのいろいろな協議をしようじゃないか、こういうお話をされた、こういうふうに理解をします。

 その上で、ちょっとお尋ねをしたいと思います。

 きょうは提出資料をお配りしておりますので、これは委員の皆さんもごらんをいただきたいと思うんですが、海洋調査を行うためには水路通報というものを出します。これはだれでも見られることで、私も、ホームページでチェックをして、きょうはここに持ってまいりました。

 これによると、一枚めくっていただいて、我が国の水路通報、四月十四日付、これで、一番上に四角で囲ってある、二枚目のところです。水路通報をもう一枚めくっていただくと、二枚目に、日本海南西部、水路測量実施、そして四点に囲まれる区域、それが一番最初にあります図表の中の斜線で囲まれた区域。

 これについて調査をやろうとして、四月の十四日にこれを公表したら、その日の午後に猛烈な抗議が来て、そして日本はこの問題で韓国と大きな争いになって、結果的に今この調査は中止している、こういう段階だということなんです。

 ところが一方で、韓国側はどういうふうになっているかというと、もう一枚めくっていただいて、今度は英文のものがございます。これは韓国が出している水路通報です。ことしの一月の二十七日付で水路通報が出ていて、これをめくりますと、非常に興味深いというか、いろいろ書いてあります。韓国が、ことし一年間でこんな水路調査を行います、こういうことを通報しているわけなんです。

 その中に、よく見ると、下の方の二のエリアのところに、「ドンハエ―ドクト」と書いてあります。それから、その下が「ドクト―ウルサン」と書いてあります。これは、ハエヤン二〇〇〇という船で調査を行いますということが予定されているんですね、この予定海域が。

 それは、オーシャノグラフィック・オブザべーションをいつ行うかというと、ハエヤン二〇〇〇が、今下線が引いてあるのが七月十八日になっておりますが、これは間違いです、この一段上、七月三日から十七日にイーストシーで行う、それから十月十二日から十月三十一日に同じくイーストシー及びサウスシーで行う。

 この表からいうと、トンヘと竹島、それからウルサンと竹島をめぐる我が国の排他的経済水域の中で、韓国はことしも水路調査を予定しているということになっておるわけなんでございます。

 今度は、韓国がこの水路調査をやるときにどうなるんだろうか。またここで摩擦が起きて、緊張が発生するようなことであれば、極めて非建設的だと私は思っているんです。

 今、大臣のお話のように、海洋調査を進めていこうじゃないか、こういう趣旨でこれからEEZの画定交渉が始まるんだとするならば、交渉の場でしっかりとこの部分は取り上げる。

 それから、まず日本も、私たちもよくわからなかったんです、一月の二十七日の段階で韓国はもう海洋調査をやると言っているわけなんですから、これに対して我々はどういう抗議を行ったのか、しっかりと国民は知らなければいけないと思っております。

 そして、何よりも摩擦が起きないようにするためには、例えば、こういう水路調査、海洋法条約で認められた科学的な調査であれば、お互いに自由にできるようなもの、または共同調査を行うとか、そういうルールを何か決めて、建設的な話し合いをしていく。共通のルールをつくる必要があるのではないかと思いますが、政府として、いかがですか、副大臣。

塩崎副大臣 かつて、二〇〇〇年ごろ、二〇〇一年にかけて、中国が東シナ海で調査船を日本のEEZと目されるような水域にも繰り返し出してきたことがあって、特別円借款の一時停止の問題にまで至ったわけでありますけれども、その際に、共通のルールをつくろうじゃないかということで、かなり時間をかけましたけれども、そこでルールができ上がったという経験を持っているわけであります。

 今、先生御指摘のように、本来、日韓関係が未来志向で、発展的な関係を結ばなければならないということは、特に近隣の一番近い国でありますから、それはおっしゃるとおりでありますが、今回、いろいろな問題が起きました。

 先ほど大臣から答弁がございましたように、五月の二十三日の外相会談でも、EEZの交渉の中で、海洋の科学的調査をめぐる日韓間の協力について取り上げるようにということで働きはしているわけでございますし、私も五月の一日に潘長官とお会いをしたときに、要は、同じような問題がまた起きるようなことはやめましょうねということで、意見の一致を見ているわけでございます。

 今御指摘のようなオーシャノグラフィック・オブザべーションというのがホームページに載っているわけでありますが、私どもとしても、日韓間で、海洋の科学的調査をめぐる同じような事態を避けるべきだという認識を潘長官との間にも共有しまして、できる限り日韓関係の大局を見据えた話し合いを行うことによって、今おっしゃったようなルールができればいいかなというふうに思っているわけであります。十二、十三日の東京における交渉において、できる限りそういう方向で進めるように努力をするよう事務方の方にも申しつけているところでございます。

新藤委員 この間の四月の二十一、二十二日の谷内次官と向こうの第一次官との話し合いというのは、今回の海洋調査は中止する、それから韓国は地形名称の提案を行わない、それからEEZの画定交渉を始めようじゃないか、三つだったんです。

 でも、そこにもう一つ、韓国側が予定をしている水路調査の問題があって、これはEEZ交渉のときに取り上げてしっかりと議論をしなければいけない、これは日本人もみんな知らなければいけない、私は、その意味で、きょうはこのことを取り上げたのでございます。

 そして、この海洋調査、何度もさっきから言っているように、科学的な調査であれば、これはどの国にも認められた権利です。そして、韓国は、過去、少なくとも四年間ずっと調査を行ってきているわけです。竹島周辺の水路通報を公表しておりますけれども、海上保安庁、きょう来ていただいていると思いますが、海上保安庁としては、この水路通報に対してどういう対応をしてきたのか。

陶政府参考人 お答え申し上げます。

 海上保安庁といたしましては、我が国のEEZ内における韓国の海洋調査を水路通報により認知いたしました場合、直ちに外務省を初め関係省庁に連絡しているところでございます。

新藤委員 そうすると、直ちに関係省庁に通報してもらっている、その関係省庁である外務省、これはどういうふうに対応しているんですか。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 今、先生が指摘されたように、過去四年間、韓国は水路通報を行ってきておりますけれども、我が方は、その事実を承知次第、韓国側に対しまして、我が国のEEZ内における海洋の科学調査については、国連海洋法条約により、我が国の明示の同意が必要である、きちっとした事前通報がないことは遺憾であるということを、外交ルートを通じ、そのたびに抗議してきております。

新藤委員 時間がありませんので一つ一つ取り上げませんけれども、少なくとも韓国は、四月十四日に我が国が水路通報を出したらば、その日の午後に、まだ相手に書簡が郵送で届いていない、ホームページに上げた段階でチェックをして、猛烈な抗議を行ってくる。

 うちの方は、一月の二十七日に、韓国が水路通報を出しちゃっているわけです。しかも、これは、今の現状では有効なわけなんですから、やはりこれをしっかりと抗議するとともに、それは我々がみんな知らなければいけないじゃないか。

 これは本来、韓国が、我々の科学的な調査に対して、あのような反応をしなければ、お互い、粛々と進めればよかったことなんだけれども、これは、向こうがああいう過激な態度をとってしまっていると、そこはまた別の政治問題化するということになるわけでございまして、これはしっかりと外務省もやっていかなきゃ困る。大体、一月の二十七日なんですから、これはよく心にとめておいていただきたい、こういうふうに思います。

 今申し上げましたように、理屈で言えば、韓国の水路調査は今のところ有効です。だとすると、この七月にもし韓国の船が日本のEEZ内に侵入してきた場合、海上保安庁はどういう対応をするんですか。

石橋政府参考人 海上保安庁としては、竹島周辺海域の我が国排他的経済水域において韓国側の海洋調査が行われた場合には、国際法に基づき適切に対処してまいる所存です。

 我が国の排他的経済水域において海洋調査を行う他国の海洋調査船は、一般的には公船であるため、国連海洋法条約の規定により旗国以外の国の管轄権から完全に免除されることになりますけれども、当該船舶の調査活動を確認した場合には、巡視船などにより、無線などを通じ厳重に中止要求を行うなど所要の措置を講ずるとともに、外交ルートにより申し入れを行うこととします。

 いずれにしましても、海上保安庁としましては、関係機関と綿密に連絡をとり適正に対処してまいります。

新藤委員 海保が限られた、限定的な条件の中で極めて頑張っているというのは、私はよく承知しています。現場にも視察をしておりますから、極めて厳しい状況であると思いますが、今お話のございましたように、これはもう厳密に対応していくしかない。国際法にのっとってしっかりと対応しなきゃならぬ、こういうことになるわけです。

 でも、その対応は、結果的には国の摩擦を生むことになります。何でこんなに摩擦が起きるのかといえば、私は、前回のときにも取り上げさせていただきましたが、韓国の人たちは、竹島、独島は私たちの島で、日本が不当に持っていってしまったものなんだ、それを戦争が終わった後の解放によって我々は取り返したんだ、二度と入れてはならぬ、こう思い込んで、とてつもない大きな反応を示すわけですね。日本人の方は、一方で、どうしてそんなに摩擦が起きるんだろう、竹島って日本の島じゃないの、でも、何で日本の島なんだかはよくわからないと。

 ですから、そこのところをしっかりと、これは、今の時代は政府間同士が、役人の人たち同士でもって、部屋の中だけで話し合いが済むわけじゃないわけですよ。これは、両国民の世論が、日本人と韓国人が、冷静に、客観的な事実に基づいて、この問題をどう対処していくか。これをそういう形に持っていかない限り、いつまでたっても進まない。そして、要するに、その場をうまく玉虫色におさめて先送りする。それで、いつかは起こってはならない不測の事態、摩擦が起きたらどうするんだ、こういうことになります。

 その意味においても、これは事務方でなかなかやり切れるのも難しいと思います。前回、ホームページだとか政府の広報物としての竹島のパンフレットとかつくったらどうだと御提案しましたけれども、ここはやはり、政治任命を受けている政務官が、御担当の政務官と御相談されて、これは御自分の任期中に一つ成果物をつくったらどうかと思いますが、いかがですか、伊藤政務官。

伊藤大臣政務官 さきの大戦で硫黄島の司令官をなさった栗林大将を祖父に持たれる新藤議員の日本に対する大変な愛情、そしてまた島国、海洋国である日本の権益を守ることに対する熱情には大変敬服するところでございますし、先ほど名前が出ましたクリント・イーストウッド監督でありますけれども、今度は、栗林大将が新藤さんのお母様に書かれた手紙を一つのベースに、日本語による硫黄島の映画を撮られて、全世界で公開されるということでございます。

 これからの広報というもの、おっしゃられたようなホームページまたパンフレット、また今はビジュアルといいますか映像の衝撃もありますので、ぜひ政治主導で、日本国民に対する御理解を深めていただくことはもとより、韓国民を含む世界の世論に訴える力強い広報活動というものを外務省としても進めてまいりたいと思いますし、今おっしゃられましたように、政治任命された我々もリーダーシップを持って、このことに対しては、遅かりし由良之助ということにならないようにしっかり進めてまいりたいという考えでございます。

新藤委員 映画の宣伝までしていただきまして、ありがとうございます。さすが伊藤政務官、元映画づくりの専門家でございますので、大変ありがとうございました。

 しかし、今の話は、まさに政務官の仕事だと私は思うんですね。政務官がこういう大臣、副大臣をバックアップするための仕事をして、事務方に御指導いただいて立派なものをつくることを期待したいというふうに思います。

 そして、最後でございますが、来週予定されている日韓のEEZ画定交渉に関しまして、先ほど松原議員さんからも少し御指摘がございましたけれども、報道によれば、韓国側は独島を基点とする新しい境界線の提案をする、こういう話が漏れ伝わってきました。

 これは、あくまで未確認の報道です。でも、もし、こんなようなことを韓国がやってくれば、日本も引くに引けなくなってしまいます。ですから、こんな互いに傷ついて、真っ正面からぶつかり合うようなことをやるのは全く得策でないと私は思っています。

 そして、それはまず、今、日韓のEEZの境界画定については、平成八年の三月、橋本総理と金泳三大統領との首脳間において、日韓のEEZ問題は領有権問題と切り離して、EEZの境界画定や漁業協定交渉を促進することに合意した、これが今我々が日韓で持っている知恵です。ですから、こういうものをしっかりと前提にして、これも事務方にきちっとした指導、指示をしなければいけないと私は思っています。

 今、大臣はもう御出発ですから、副大臣にお尋ねしますが、「愚者は体験に学び、賢者は歴史に学ぶ」、これはビスマルクの格言です。我々はそういう歴史を踏まえて、そして日韓は隣り合った友好国として、お互いに仲よくやっていこうじゃないか、いろいろな歴史があって、それを踏み越えていかなくてはいけません。そのときに、過激な、単なる独善的な提案は絶対に慎むべきだ。

 その意味において、来週から始まってしまうわけでございます、一回で終わるとは思いませんが、しっかりと政治的なリーダーシップが必要ではないかと思いますが、副大臣、御見解をぜひお願いいたします。

塩崎副大臣 先生おっしゃるとおり、日韓関係は未来志向で、冷静な、そしてしっかりとした関係にしなければならないのは言うまでもないわけでありまして、先ほど大臣から答弁申し上げたとおり、来週、東京で開催されます交渉において、前向きな答えが出るように努力をせないかぬと思っておりますが、先ほどの報道につきましては、私たちも承知はしておりますけれども、内容についてはまだ確認をしているわけではございません。

 いずれにしても、はっきりしていることは、六年ぶりに再開されるEEZに関する交渉をきちっと建設的に、前へ向いて進めさせるということが大事であり、そしてまた、さっきの御指摘にあった海洋調査、科学的な調査に関するルールについても交渉のテーブルにのせて、そして国際法にのっとったルールをつくっていくということをやらなければいけないと思っておりますし、日韓間でその大事さについては認識を共有していると思っておりますけれども、今お話がありましたように、来週始まるこの交渉に当たっては、事務方がきちっと、今申し上げたような問題点を含めて頭の中に入れて、しっかりした交渉をするように大臣からも、私からも申しているところでございます。

新藤委員 ありがとうございます。

 これは外務省だけに任せておくことではなくて、我々国会も、この外務委員会も、そして国民の皆様も、やはり事実を知った上で、みんなで応援していかなきゃいけない。世論をきちっとつくっていかないと、大ごとでございますので、頑張っていただきたい、また私たちも頑張りたいと思います。

 どうもありがとうございました。

原田委員長 次に、丸谷佳織君。

丸谷委員 公明党の丸谷佳織でございます。

 本通常国会も、あと残り一週間になりまして、この外務委員会も恐らくきょうで最後の質問になるのかなと思いながら、通常国会が終わりましたら、いよいよまた来年度予算のシーリング等が始まってまいります。

 本日は二十分のお時間をいただいておりますので、ODA関連について質問させていただきたいと思います。

 公明党としまして、ODAに対する考え方、来年度予算の中では、まず、ODAの中期的な目標として策定をされました今後五年間の事業量について百億ドルの積み増しを目指すという十分な額の確保、しかしながら、厳しい財政の中で、その使われ方に関しては重点化を図っていくべきだというふうに考えております。

 その一つに平和の構築あるいは人間の安全保障、環境分野等に重点化をしていくべきだという考え方をしておりますし、また、ODAの実施に当たりましては、言うまでもなく、一層の効率化とNGOの積極的な活用を図っていくようにするということをまた予算に向けて訴えさせていただいている次第でございますけれども、この中で人間の安全保障というのは日本も非常に力を入れて頑張っている分野でございます。

 このODAの実施、また国際社会への支援に関しては、人間の安全保障の入り口は教育であるという考え方を外務省、文科省も同じでございますけれども、日本政府は持っていらっしゃいます。小泉総理も米百俵の精神ということで信念をお話しされておりますし、また、さきの外務委員会におきましても、麻生外務大臣の方に日本を支えてきたベースとなった教育の大事さについての御見解をお伺いさせていただきました。

 国際社会の動きの中にもこの教育というのは非常に大きな柱となっておりまして、ミレニアム開発目標の中、二〇〇〇年に策定をされておりますけれども、二〇一五年までには男女の区別なく初等教育の全課程を修了できるようにすること。あるいは、二〇〇二年には世銀の方が中心となりまして、低所得国が二〇一五年までに完全に初等教育を普及するための支援の枠組み等をつくって支援を行っているところでございます。

 こういった我が国の支援あるいは国際社会の支援を受けて、今どのような初等教育の進捗状況にあるのか、まずこの結果からお伺いをしたいと思います。初等教育の完全普及の達成度及びジェンダー格差の解消について、進捗状況、逆に遅い地域がどこなのか、この点から状況を教えていただけますか。

塩崎副大臣 委員から、MDGsの取り組み状況の中の、特に初等教育の完全普及の達成ぐあい、進捗状況ということでお尋ねでございました。

 これを見ますと、モニターしているのはUNDP、国連開発計画がモニターをしているわけでありますけれども、初等教育の完全普及達成については世界で約一億人以上が未就学の状況にある、サブサハラ・アフリカ、南アジア、オセアニア地域において特にその改善がおくれているというふうにされていると認識をしているところでございます。

丸谷委員 サブサハラ地域、そして南西アジアにおきましては、貧困の度合いに応じてと言うべきなのでしょうか、初等教育の完全普及の達成度がおくれている。特にジェンダー平等推進におきましては、やはり宗教上あるいは風習等の理由もあってサブサハラで非常におくれているということでお伺いをいたしました。

 日本は、特にジェンダー格差の解消のための女子教育に対する支援ということを行っていると承知をしておりますけれども、我が国のこの支援の実施の状況について御説明を願うとともに、ジェンダー格差の解消を行うためには、やはりそれができる女性教師を育成しなければいけないという現状がございます。

 この点について、女子教育、あわせて女性教師の育成に対する我が国の支援の今までの実施についてお伺いをいたします。

塩崎副大臣 先ほど、初等教育のみかと思いましたが、ジェンダーも同時にお尋ねだとするならば、おくれている地域は、ジェンダーの方は、サブサハラ・アフリカと南アジアと、西アジアというのも加えておかなければいけないなというふうに思いました。

 そこで、今、女子教育に対する我が国の支援実施の状況はどうだ、こういうお尋ねでございましたけれども、二〇〇二年に我が国が発表いたしました成長のための基礎教育イニシアチブ、BEGIN、これにおいて、ジェンダー格差の改善の観点から、女子教育を支援することを特に重視いたしまして、開発途上国における女子の就学促進を支援してきているところでございます。

 具体的には、例えば学校関係者、地域住民に対する女子教育の重要性についての啓蒙活動を支援しているほか、女子の就学率の改善のために、女性教員の比率を上げるということを目的として、教員養成学校の女子寮、寮ですね、ドミトリーを建設する等の支援を行っているところでございます。

 我が国としては、今後とも、開発途上国の援助需要等を踏まえつつ、先生御指摘の女子教育並びに女子教員養成に関する支援を積極的に行っていきたいと思っております。

丸谷委員 どうぞよろしくお願いいたします。

 私も、この女子教育及び女性教師の育成ということに関して、外務省の方からもお伺いしましたし、この間たまたま行かせていただいたケニアの現状もお伺いいたしましたし、いろいろな状況をお伺いしていると、その地域地域に応じて本当にきめ細やかな体制で臨んでいかなければ、なかなかこのミレニアム開発目標の達成というものもできないでしょうし、また女子教育の向上ということも図れないということを感じました。

 お話をお伺いした中で、ああ、なるほどなと思いましたのは、例えばアフリカにおいて、男女別のお手洗いをつくっただけでも女子の通学率が上がったというお話を聞きました。それは、日本にいる私たちが単純に考えてしまうと、ああ、やはり恥ずかしいのかなとしか思わないんですけれども、実際に小学生、中学生なりが大人になっていく過程で、生理という期間があって、それが始まってしまうとなかなか男女一緒のトイレで通学をしながら通うということはできていなかったという現状があるというお話をお伺いいたしました。

 そういった本当に現実に即した知恵と現場の声をしっかりと吸い上げて、そして日本がODAの柱の一つとしています教育支援、その中でも教育の度合いがおくれている女子教育というものにしっかり力を注いでいただきたいと思います。

 副大臣が今お話をしていただきました、日本がカナナスキス・サミットで提案をされましたBEGINでございますけれども、非常によい日本の教育支援イニシアチブだというふうに評価をさせていただいております。

 本当に、ジェンダー格差改善のための支援ですとか、さまざま細かな内容を書かれていて、始まっているところでございますけれども、先ほどお伺いをいたしました、では実際に女子教育あるいは女性教師の育成に対して日本が行っていることはどんなことでしょうかと聞いたときに、若干やはりまだ事例が少ないなという気がしてならないのが私の実感でございます。

 しっかりした柱を持ってやっていただいていることですから、先ほど申し上げましたように、現場のしっかりとしたニーズを細やかに聞けるような体制をとっていただきたい。もし事例が少ないというその背景に現場のニーズを情報収集できない在外の体制があるのかとか、いろいろな、そこまで考えるわけですけれども、細やかな心配りができる援助を行うために、あえて私は在外の体制の強化充実が必要というふうに考えておりますけれども、この点についてはいかがでしょうか。

塩崎副大臣 在外の体制強化についての御指摘でございました。

 政府としても、効率的なあるいは効果的な援助を実施するということは、血税をきちっと使うということでありますから極めて大事であって、被援助国のニーズをきちっと押さえ、それから援助の実態を最も直接的に把握できる立場にある現地の機能強化をするということが大事だということは、全く同じ共通認識だと思っております。

 近年、ODA改革の一つとして、そのお取り組みの体制整備というものを特に進めているわけでございますけれども、御案内のように、例の現地ODAタスクフォースというのが昨今力を入れてきている一つの柱であって、これは大使館だけでひとりやってみても限界があるわねということで、JICAあるいはJBICのそれぞれの事務所の参加を得、また、今七十カ国で現地ODAタスクフォースというのが立ち上がっていますけれども、できる限り幅広い人に参加をしてもらおうということで、被援助国政府、当事国との政策協議はもちろんでありますし、他の支援国等との連携も行い、なおかつ、現地における外部の専門的な人材の積極的な活用を図る、そういう新たな試みもしてきているところでございます。

 さきに、官房長官のもとで海外経済協力に関する検討会というのが報告書を出しましたけれども、その中にも、海外経済協力をより効果の高いものとすべく、現地ODAタスクフォースのさらなる強化、在外公館の経協担当ポストへの専門家の配置等を一層推進して、やはりプロの援助というものがきちっとできるように体制強化をしていかなければならないと認識しているところでございます。

丸谷委員 先日アフリカに行かせていただきまして、非常にアフリカにおける日本のプレゼンス、残念ながら大きいとは言えないなという感じを受けました。

 総理もこの間アフリカを訪問されましたけれども、アフリカ地域におけるジェンダー格差解消の必要性というのは非常に高くございまして、また、アフリカの貧困度というのが高い、その中で日本のプレゼンスは少ないという中において、ODAにおけるアフリカに対する支援のあり方、額あるいは充実に対するどのような見解を今政府は持っていらっしゃるのか、この点をお伺いします。

塩崎副大臣 ジェンダー平等推進の必要性についてはもう先生おっしゃるとおりでございますけれども、我が国の政策として、先ほど申し上げた、教員養成大学における女子寮をつくってみたり、それから家族計画における女性の意思決定権の確立に向けた啓蒙活動ということ、それから環境保全、農村開発のためのマスタープラン策定へのジェンダー参加型担当者というのを配置するというような支援を通じて積極的にやろうということで、今進めているところでございます。

 ジェンダー平等推進にも配慮しながら、我が国として優良な開発案件の発掘に努めて、先ほどもお話がございましたが、これからアフリカは特にODAを三年間で倍増しようという小泉総理の目標もあるわけでありますので、今言ったような問題点をしっかりと据えながらその実現に向かっていきたい、こう思っております。

丸谷委員 ありがとうございました。

 女子の子供たちが教育を受けたら、自分は例えば将来こういう職業につくんだとか、自分はこんな女性になるんだとかいったような、アフリカには見本になるような女性のロールモデルがなかなかいないというお話もお伺いをいたしました。

 ですから、そういった女性のよきリーダーを育てていくという意味でもやはり教育というのは重要ですし、また、そういった女性教師を日本に招聘して、そして教育のあり方を見て帰っていただくといったようなやり方も今後御検討願えればというふうに思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 では最後に、インドネシアのジャワ島の西部大地震についてお伺いをさせていただきます。

 私たち公明党では、震災発生直後の五月の二十八日に被害対策本部を設置いたしまして、三十日には、冬柴幹事長を団長とします現地調査団を派遣させていただきました。六月二日に帰国しまして、小泉総理へ御報告し、御要望もしてきたところでございますけれども、日本でいえば、マグニチュード六であれば、今回のジャワ島のように五千人、六千人というふうに亡くなるというケースは余りございません。

 今回見てきた中で、残念ながらこの五千人、六千人という多くの死者が出た理由に、やはり住宅の問題があったでしょうということが報告をされておりました。れんがをしっくいでつなぎとめているので地震には非常に弱く、その瓦れきが寝ていた人たちに落ちてきて亡くなってしまったという現状であったというふうにお伺いをしております。

 インドネシアのユドヨノ大統領を初め政府高官の方々からは、日本が耐震技術を生かした協力を行ってほしいという要望が党の調査団にも寄せられておりまして、こういった意向は官邸の方にも伝えさせていただきました。

 日本の耐震建築の技術がこういった減災という形でお役に立つのであれば、本当にこういったものを役立てていくべきというふうに考えておりますけれども、こういった観点から、インドネシア・ジャワ島の大地震についての今後の支援ということになるかと思いますが、支援についてはどのようにお考えになるのか、この点をお伺いいたします。

塩崎副大臣 もう既に実施された支援については、先生御案内のとおりであろうと思いますけれども、国際緊急援助隊医療チーム、あるいは、同じく国際緊急援助隊としての医療支援のために自衛隊の部隊も派遣をしたということでございます。金額的には、緊急援助物資二千万円相当、あるいは無償資金協力で一千万ドルということです。それから、JICAは現地に調査団を派遣いたしまして、災害復旧復興のための具体的な支援、ニーズの把握に今努めているところであります。

 今御指摘のように、地震の非常に多い日本として、耐震技術あるいは防災、この経験を日本としてどうインドネシアで還元できるのかという、その支援の中身について積極的にこれからも検討いたしまして、そのためには、現地の調査がJICAで今行われているわけでありますけれども、その調査結果をしっかりと踏まえ、また、公明党も冬柴幹事長を先頭にいろいろな情報を持ち帰りをいただいたので、その知恵も交えて、これからしっかりとやっていきたい、このように考えております。

丸谷委員 どうもありがとうございました。

 以上で終わります。

原田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十七分散会


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