衆議院

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第3号 平成18年10月27日(金曜日)

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平成十八年十月二十七日(金曜日)

    午前九時三十三分開議

 出席委員

   委員長 山口 泰明君

   理事 小野寺五典君 理事 三ッ矢憲生君

   理事 三原 朝彦君 理事 やまぎわ大志郎君

   理事 山中あき子君 理事 長島 昭久君

   理事 山口  壯君 理事 丸谷 佳織君

      あかま二郎君    愛知 和男君

      伊藤 公介君    飯島 夕雁君

      猪口 邦子君    宇野  治君

      高村 正彦君    新藤 義孝君

      杉村 太蔵君    鈴木 馨祐君

      福田 良彦君    藤田 幹雄君

      松島みどり君    安井潤一郎君

      山内 康一君    笹木 竜三君

      田中眞紀子君    長妻  昭君

      前原 誠司君    笠  浩史君

      高木 陽介君    笠井  亮君

      日森 文尋君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   内閣官房副長官      下村 博文君

   外務大臣政務官      松島みどり君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  山浦 耕志君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 福島 克臣君

   政府参考人

   (防衛庁長官官房長)   西川 徹矢君

   政府参考人

   (防衛庁防衛政策局次長) 金澤 博範君

   政府参考人

   (防衛庁運用企画局長)  山崎信之郎君

   政府参考人

   (公安調査庁長官)    大泉 隆史君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 長嶺 安政君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 西  正典君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 本田 悦朗君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 草賀 純男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房広報文化交流部長)        山本 忠通君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)           佐々江賢一郎君

   政府参考人

   (外務省国際協力局長)  別所 浩郎君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      舟木  隆君

   外務委員会専門員     前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十七日

 辞任         補欠選任

  小野 次郎君     安井潤一郎君

  嘉数 知賢君     福田 良彦君

  河野 太郎君     あかま二郎君

  篠田 陽介君     飯島 夕雁君

  新藤 義孝君     杉村 太蔵君

  照屋 寛徳君     日森 文尋君

同日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     河野 太郎君

  飯島 夕雁君     藤田 幹雄君

  杉村 太蔵君     新藤 義孝君

  福田 良彦君     嘉数 知賢君

  安井潤一郎君     小野 次郎君

  日森 文尋君     照屋 寛徳君

同日

 辞任         補欠選任

  藤田 幹雄君     篠田 陽介君

同日

 理事嘉数知賢君同日理事辞任につき、その補欠として三ッ矢憲生君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

十月二十六日

 経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定第五条3及び5の規定に基づく市場アクセスの条件の改善に関する日本国とメキシコ合衆国との間の議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

 経済上の連携に関する日本国とフィリピン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 独立行政法人国際協力機構法の一部を改正する法律案(内閣提出第三号)

 経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定第五条3及び5の規定に基づく市場アクセスの条件の改善に関する日本国とメキシコ合衆国との間の議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

 経済上の連携に関する日本国とフィリピン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第二号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

山口委員長 これより会議を開きます。

 理事の辞任についてお諮りいたします。

 理事嘉数知賢君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に三ッ矢憲生君を指名いたします。

     ――――◇―――――

山口委員長 次に、内閣提出、独立行政法人国際協力機構法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本案に対する質疑は、去る二十五日に終局いたしております。

 これより本案に対する討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 独立行政法人国際協力機構法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

山口委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

山口委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、三原朝彦君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久でございます。

 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明とさせていただきます。

    独立行政法人国際協力機構法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  我が国は、米国に次いで世界第二位の援助大国であり、我が国の政府開発援助については、アジアを中心とした途上国の発展に、日本らしい手法で貢献してきたという特質を持っているが、他方で、入札・契約等の手続きにおける不正事件など、問題も指摘されている。今後、国際協力機構が有償資金協力、無償資金協力、技術協力を一元的に担うにあたっては、その特質を一層伸ばし、問題点を改善するため、効果的かつ公正な政府開発援助の実施体制を構築していくことが必要である。

  これを踏まえ、政府は本法の施行にあたり、次の事項について検討の上、適切な措置を講ずるべきである。

 一 有償資金協力と無償資金協力及び技術協力の各協力間における連携を強化していくこと。

 一 政府開発援助を戦略的に活用するため、国別、地域別に、各機能の一体的かつ効果的な運用を図ること。

 一 国際協力機構の組織改編を円滑に進めるとともに、同機構における適正な人材配置、人材育成等に努めること。

 一 独立行政法人と国の機関との人事交流については、独立行政法人が公正かつ自立的、効率的に運営されるよう配慮するとともに、政策と実施の効果的な連携がなされるよう、必要な措置を講ずること。

 一 独立行政法人の業務に対する独立行政法人評価委員会等による評価が、客観的かつ中立公正に行われるよう一層配慮するとともに、独立行政法人の調達手続きについて、透明化を図り、競争性を高めること。

 一 国際協力機構及び国際協力銀行の在外事務所を統合・再編成するにあたって、政府開発援助の実施に係る業務の継続性を損なわないよう、かつ、従来以上に円滑な業務の実施が可能となるよう、適切な配慮を行うこと。

 一 有償資金協力と、新たな政策金融機関が担うことになる国際金融等業務との間における有機的な連携・協力態勢を確保すること。

 一 今回の法改正による有償資金協力等の実施機関の変更について、途上国に十分な広報を行うこと。

 右決議する。

以上でございます。

 何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。

山口委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

山口委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付すことに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣麻生太郎君。

麻生国務大臣 独立行政法人国際協力機構法の一部を改正する法案を可決いただきまして、まことにありがとうございました。

 政府としては、ただいまの附帯決議の趣旨を踏まえつつ、新JICAの発足が政府開発援助の戦略性及び効率性の一層の向上につながるよう、円滑な組織改編などに十分配慮しながら作業を進めてまいる所存です。

    ―――――――――――――

山口委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

山口委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官長嶺安政君、大臣官房審議官西正典君、大臣官房審議官本田悦朗君、大臣官房審議官草賀純男君、大臣官房広報文化交流部長山本忠通君、アジア大洋州局長佐々江賢一郎君、国際協力局長別所浩郎君、内閣官房内閣審議官山浦耕志君、警察庁長官官房審議官福島克臣君、防衛庁長官官房長西川徹矢君、防衛政策局次長金澤博範君、運用企画局長山崎信之郎君、公安調査庁長官大泉隆史君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長舟木隆君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山口委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野寺五典君。

小野寺委員 おはようございます。自由民主党の小野寺五典です。よろしくお願いいたします。

 きょうは、北朝鮮の核実験の問題からお伺いしたいと思っています。

 特に、十四日、国連安保理におきまして制裁が決まりました。我が国が、安保理議長国として、決議案の提示に始まりまして、また、北朝鮮の伝統的な友好国でありました中国、ロシアを含めた憲章第七章に踏み込んだ制裁決議を全会一致で採択したということは、これは日本外交の中で大変大きな成果だと思っております。大変御苦労さまだと国民一同思っていると思います。

 その中で、当然、この決議に従いまして、北朝鮮の核問題の解決に数年努力してきました六カ国協議を含めて、この安保理決議を積極的に履行する責任が加盟国はあると思うんですが、その中で少し懸念があります。一部報道によりますと、韓国、ロシアの制裁の動きというのがどうも鈍いのではないか、私どもそういうふうに感じております。

 特に、韓国は、例えば観光事業の問題、開城の工業団地の問題、金剛山の観光事業を含めて、なかなか、北朝鮮の外貨獲得の根源になっていると言われているような友好事業について、中止あるいは見直しということを踏み込んで発言することが余り明確でなくて、また、今後、朝鮮半島の非核に関する共同宣言に違反して核開発を行った北朝鮮に対しても、盧武鉉大統領を含めて、言葉ではいろいろなことを言っていますが、実効ある制裁が行われるのかどうかということを不安に思っている日本国民も多いと思います。

 先般、二十日でしょうか、麻生大臣、直接盧武鉉大統領と会談されましたので、ぜひ、そのときに受けた印象、そしてまた、韓国が対北朝鮮制裁をしっかりと行ってもらえるかどうかという心証を得たかどうか、改めて伺いたいと思います。

麻生国務大臣 今御指摘のありましたように、いろいろ懸念があっておりますことは事実です。

 ただ、韓国としては、九日の北朝鮮の核実験実施を北朝鮮側が発表した直後、盧武鉉大統領が記者会見において北朝鮮を激しく非難、また、十四日の国連安保理決議の一七一八号につきましても、共同提案国、これは日本と一緒に共同提案国となっております。これは前回はありませんでしたので、そういった意味では態度は違ってきております。

 また、十九日、私と米国のライス国務長官と一緒に訪韓したときに行われた日米韓三カ国の外相会議においても、四点ほど言っております。北朝鮮による核保有、核実験は断じて容認できない、北朝鮮がさらなる事態の悪化を招く行動をとってはならない、北朝鮮が核兵器廃棄に向けた具体的な動きを示し、直ちに無条件で六者協議に復帰することが必要、また、すべての国連加盟国が安保理決議一七一八に基づく措置をとることが重要ということを、以上四点、確認を三者会議のときにいたしております。

 さらに、翌日の二十日の日に、潘基文外交部長官との会談のときと、その後、盧武鉉大統領との会談でも、先方の韓国の方から、安保理決議を誠実に実行していくという旨の発言があっておりますので、このように、韓国は、少なくともこの十八、十九日以後の一連の対応を見てみますと、誠実に決議を実施するということで、極めて前向きに実施しようとしていることでありますので、国内、いろいろ事情はあるんだと思いますけれども、精一杯努力をしつつあるという方向に行っていると思っております。

小野寺委員 会談されました潘基文外交通商相、今度は国連事務総長になるということで、改めて韓国の役割というのは重くなると思います。ぜひ、韓国に対してさらに一層の働きかけもしていただき、また一体となってこの北朝鮮への制裁を確かなものにしていただきたいというふうに思っています。

 そんな中、こうやって北朝鮮の制裁を行うということになりますと、幾つか日本として備えておかなければいけないことがあると思います。

 その第一は、経済制裁を行うということで、したがって、北朝鮮の国内の中にいろいろな不安要因が起きてきて、その中で脱北者あるいは難民という方が今後発生する、そういう危険性が当然あるというふうに思っております。

 事実、今月二十日から二十四日にかけまして、タイのバンコク周辺で九十六人の脱北者がタイ当局に拘束されたという報道がありました。タイでは八月にも百七十五名の脱北者が拘束されていまして、今のところ彼らはどうも韓国に行きたいということを表明しているということですが、このような脱北者、ますますふえる可能性があると思います。

 そして、今後、安保理決議一七一八に基づく経済制裁がさらに効果を発揮すれば、この脱北者、難民というのがさらに発生すると思うんですが、このことについて、外務省の考え方、あるいは、もし発生した場合にはどのぐらいの規模になるのか、日本にはどのような影響があるのか、お伺いしたいと思います。

松島大臣政務官 ただいま、脱北者に関する御質問でございました。

 その前提となります事柄の、今回の安保理決議一七一八号は、すべての加盟国に対して、軍関連、核、ミサイル、大量破壊兵器計画関連の指定品目、そしてまた奢侈品などの北朝鮮に対する供給等の防止を義務づけておりますが、我々は、この決議の実施により直ちに脱北者や難民が大量に発生することになる可能性は高いとは考えておりません。

 ただいま、いろいろ御指摘ございましたけれども、脱北者等の我が国の在外公館への駆け込み事案につきましては、四年前の在瀋陽総領事館事件を踏まえまして、関係いたします在外公館に詳細な対処方針を指示しておりますほか、関係公館の危機管理体制の整備、警備面での改善策の実施などを行ってきているところでございます。さらに、過去の経緯を踏まえまして、日本人学校の安全対策についても、在外公館を通じた安全対策の指導のほか、一部の日本人学校に対しては警備員雇用や警報機の維持管理などのための経費援助を行っているところでございます。

 このような対策を立てているところであります。

小野寺委員 今松島政務官からの明確な答弁があったんですけれども、ちょっと追加して伺いたいと思うんですが、それでは、もし外務省として四年前の瀋陽の事件というようなことが仮に発生した場合、あのときには中国の公安当局が敷地内に入って連れ去ったという日本にとっては非常に不名誉な事態になりましたが、もし今度同じような事例があった場合には、日本国の例えば在外公館は、これらの方々をまずは保護するという体制をとるんでしょうか。

松島大臣政務官 当然そのように考えておるところでございます。

小野寺委員 ぜひそのようにお願いしたいと思います。

 さらにお伺いしたいと思うんですが、今想定をされていない、どのぐらいの人数になるかということを、今のところではそんなに多くの人数にならないのではないかというお話でしたが、政府内で、実際、この経済制裁を行うということに並行して難民の問題というのを中で議論をしている、そういうことはないんでしょうか。

山浦政府参考人 政府としては、我が国の周辺地域における我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態を中心として、我が国に対する危機が発生した場合、あるいはそのおそれがある場合について、我が国としてとるべき必要な対応策について、平素から検討、研究を行っております。

 その中で、御指摘の大量避難民対策についても、関係省庁が共同作業グループを設置し、政府全体としての対処の手順等について整理を行った経緯もございます。しかしながら、当該検討内容は、緊急事態対応策について今後検討が必要な事項を整理した検討途上にあるものであり、その内容についてはお答えを差し控えさせていただいております。

小野寺委員 再度確認しますが、そうしますと、政府内では、今回のこの経済制裁に対応して、もし大量の脱北者あるいは難民が発生した場合にどのような対応をするかという、言ってみれば備え、シミュレーションみたいなものは行っているというふうに理解していいんでしょうか。

山浦政府参考人 もちろん検討は行っております。

 ごく一般論で申し上げれば、現行法令の枠組みの中で、関係省庁が連携をして、避難民の身柄保護、上陸手続、スクリーニングと呼ばれるふるい分け等、必要な措置をとることになるものと考えております。

 いずれにせよ、政府としては、我が国の安全に重大な影響を与えるさまざまな緊急事態に的確に対処することが必要であり、平素から不断の研究、検討を怠らず備えております。

小野寺委員 九四年のいわゆる北朝鮮の核の懸念がされた時点で、以前これは新聞報道に一部出ておりましたが、政府が「大量避難民対策について」ということで、当時の石原内閣官房副長官が、内閣法制局、防衛庁、外務省、警察庁、法務省等、担当してまとめたという経緯がありますが、このような文書というのはあるんでしょうか。

山浦政府参考人 先ほどから申し上げておりますけれども、御指摘のような大量避難民対策について、関係省庁が共同作業グループを設置しまして、政府全体として対処の手順等について整理を行った経緯はございます。

小野寺委員 ぜひそのようなしっかりとした対応をしていただきたいんですが、この九四年の資料を見ますと、これは明確になっているかどうかわかりませんが、報道によりますと、一時的な上陸を認めて収容所に入れた上で入管当局が厳密なスクリーニングを実施、避難民は半島情勢が安定すれば速やかに帰国させる、韓国や北朝鮮に帰還していた在日朝鮮人や日本人妻らは日本在留を考慮すると書いてある。こういう検討をされています。

 そこでお伺いしたいんですが、仮にこういう難民あるいは脱北者が発生した場合、当然この中に日本への希望する方も出てくると思います。もし日本人妻がこういうことを希望した場合、日本政府としてはどのような受け入れ方をするんでしょうか。

麻生国務大臣 いわゆる北朝鮮にいる日本人妻及びその子供の保護に関し、政府としては、これまでも日本の国籍を有している人の脱北者につきましては邦人保護の見地からしかるべき安全を図ってきているんですが、いずれにせよ、これがどれくらいのオーダー、数で出てくるのかというのは、ちょっと正直、いわゆる想像の域を超えない。北の方に、中国の方に大量に脱北していくと中国側は思い、韓国側の方も南の方にごそっと来ると皆思っております。

 私どもの方は、船で漂着するということを想像されるんですが、自然に流れていくことになると、田中眞紀子先生あたりの新潟にごそっと、流れ着くとしては一番流れ着くことになる。というのは、今までの流木やらごみの流れから見て大体そういうことになりますので、そういうことになるだろうと思っております。

 いずれにいたしましても、これは人道的な見地がありますので、スクリーニングの話については、対日工作員等々は考えないかぬところですから、そういったものも、いわゆる厳密にというふうに申し上げているのはそういうところでありまして、これは人道的な見地からも対応を急がれるところでもありまして、着のみ着のままで漂着する可能性というのは極めて高いと思った上で、どう対応するか、いろいろ検討させていただいてはおります。

小野寺委員 ちょっときょう政府参考人の方にお伺いしたいんですが、この日本人妻の方の国籍、もし日本人であるという場合には、そのまま日本人の国籍を有しておる場合には、例えば日本の在外公館に仮に逃げ込んだ場合には、そのまま日本に帰還することが可能なんでしょうか。

佐々江政府参考人 日本国籍を有しているわけでございますから、政府として、日本人として保護し、これを帰還するように最大限努力するというのが日本の考え方でございます。

小野寺委員 そうしますと、この日本人妻のお子さんとかお孫さんとか、その辺はどう考えたらいいでしょうか。

佐々江政府参考人 これはケース・バイ・ケースによって考える必要があると思いますけれども、そういう親子関係がはっきりとしているような場合には、同様の保護の対象になり得るというふうに考えております。

小野寺委員 日本人妻の方がどのぐらいの人数いて、リレーションズというか、お子さんとかお孫さんとかはどのぐらいいらっしゃると考えていらっしゃいますか。

佐々江政府参考人 突然の御質問で今ちょっと資料を手元に持っていないんでございますが、六〇年代、相当の数の日本人の方が北朝鮮に日本人妻として渡られていて、相当の数の人がまだ北朝鮮に残っておられると思います。今ここにちょっと数字を持っておりませんけれども、千のオーダーではないかというふうに記憶をしております。

小野寺委員 きのう外務省の方に尋ねたんですが、九万人というふうにお話を伺いました。

 それで、これは、実は同じく当時の読売新聞に一部報道されていたんですが、帰還事業で、実は法務省がもう既にこの九四年の段階で、もしこういうことがあったらどのぐらい帰ってくるかということを想定していたというふうに内部の資料があるそうです。

 その資料によりますと、朝鮮半島の情勢のまとめというメモらしいんですが、これで、二世、三世を加えると、この場合、帰ってくる人数というのは、日本に来るのは少なく見積もっても十万人と推定されるということ、これがいわゆる避難民ということで日本に来る可能性が高いとこの九四年の時点でも推定をしています。現在、このことについて政府はどうお考えでしょうか。

麻生国務大臣 今、小野寺先生と佐々江局長との間の答弁の差の内容というのは、昭和三十四年にスタートした帰還事業によりまして北朝鮮に帰還をいたしました在日朝鮮人、御存じかと思いますが、戦争が終わるまでは全部日本のパスポートを皆持っていたわけですから、その中で、向こうに戻りたい人、こっちに残りたい人、いろいろ希望をとって、その上で三十八度線で北と南に分けたという経緯がありますので、そういった意味では在日朝鮮人は九万三千三百四十名ということになっております。

 したがって、今の約九万人という数はその数字なんですが、その中には、朝鮮半島出身者である夫とかまた父に随伴して帰国、帰国というか北朝鮮に渡航したというべきか、妻とか子供というのは約六千人というのが、内地出身者が六千人いた、いわゆる一緒にくっついていった人たちが約六千人いたと言われております。この中で、いわゆる日本人妻と推定される者が、今佐々江の言いました一千八百人ぐらいと言われております。

小野寺委員 いずれにしましても、もしそうなった場合、当然、仮に日本に来なくても、この大量の脱北者あるいは避難民が中国あるいはロシアに、韓国にもたくさんいたとしても、そのことに対して日本政府がいろいろな支援をしなければいけない。それは、今回は、日本は北朝鮮の経済制裁を行う当事者になります。当事者の責任ということが当然行われると思います。

 お手元にお配りした資料の一枚目があります。この横長の「難民認定手続・大量発生時の違い」ということをちょっとつけさせていただきました。

 これで、実は、通常の入国の場合は、上の方の手続をとります。ですから、いろいろな手順がありまして、かなり時間がかかるということになります。これは日本では余り想定していない例ですが、下の、例えばこれは西アフリカ、大臣が昔二年間いらっしゃいましたシエラレオネの事例ですが、そこで大量発生した場合には、入国、登録、ですから、まず先ほどありました簡易のスクリーニングをしまして、そこで、戦闘員、非戦闘員、いわゆる武装難民の問題もありますので、その区分けをまず明確に、言ってみれば大ざっぱにして、それからシェルターという形で一時庇護をして、相手の国が安定して、そこで初めて、国に戻すか、あるいはまだまだ安定していないねということで難民手続を行うか、こういういろいろな手続をとる。この下のことを想定する必要があると思います。

 こういう事態、なければ一番いいんですが、万が一経済制裁をすると片方でこぶしを上げた場合には、片方でその受け皿となるところも内部で想定していく必要があるのかなと。特に、もし十万人規模ということになりましたら、相当の対応策を今のうちから考えていく、こういうことも必要ではないかと思いますが、ぜひこのことの対応についてのお考えをお聞かせいただければと思います。

麻生国務大臣 これは全くおっしゃるとおりで、平時と有事というか、非常時との差を考えないかぬのは当然のことであって、この真ん中の簡易スクリーニングのところが今一番難しいところになります。しかも、この中に武器を持っていないという保証がありませんから、そういった意味では、いろいろなことを当然のこととして考えねばならぬ。その扱いがまた、本当の難民と、いわゆる、正確には便衣隊というんですけれども、兵隊さんが私服を着て紛れ込むのを便衣というんですが、その便衣隊等々の者が紛れ込んでいる可能性というのはこれは排除できませんので、そういったものを含めて、これは、日本の中において新たなテロを画策する人が拡散するということを断固避けるというのは当然のことですから、そういった意味では、ここらのところはよくよく調査が必要ということになろうと存じます。

小野寺委員 全くおっしゃるとおりで、事実、九四年に内閣安全保障室がまとめた、内部の、あるかどうかわからないと言われていますが、大量避難民対策についてのマル秘メモという中では、万が一の場合、自衛隊がこのいわゆる警護あるいはスクリーニングに協力する必要があるということもうたっております。今後やはり、あらゆる体制、あらゆる省庁を超えて検討していくことも必要かなと思っています。

 そこで、ちょっと話題をかえまして、自衛隊のことについてお伺いをしたいと思います。恐らくきょうまた本会議の方で審議が行われると思いますが、防衛庁の省昇格の問題です。

 今回、省昇格について自民党としてはぜひ支援したい、そういう思いを強く持っておりますが、そのためにも、今回、例えばこういう北朝鮮の有事に際して、防衛庁が防衛省であればこういうことができるんだということをぜひ明確に示していただければなお強い力になるんじゃないかと思うんですが、そのことについてお伺いしたいと思います。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の防衛庁の省移行につきましては、国の行政組織としての位置づけを変更することを通じまして、我が国の危機管理あるいは国際平和協力活動に取り組む体制を整えるということでございまして、先生御指摘のように、今般の北朝鮮によりますこのような核実験の発表と、あるいはその後の国連安保理の制裁決議等を受けた制裁措置の実施といった事態に我々は直面しまして、こういうことはなお必要であろうというふうに我々は考えておるところでございます。

 具体的に幾つか挙げろということでございますが、いろいろなフェーズがあると思いますが、今回こういう事態が発生しまして、一番初めに情報の収集、それからまた、いろいろな対策の検討、あるいは、いわゆる現場の活動においてどういうことがあるのか、さらには、手続とかそういうことでどういうふうにできるのかということだろうと思いますが、ちょっと簡単に申し上げますと、情報収集の関係につきましては、諸外国の国防を担当する行政組織と省という形で対等にしていただけるということは、本案のような場合のいわゆるオペレーショナルな情報、あるいはもっと基本的な情報も含めまして、非常にスムーズな情報交換が期待できると我々は思っております。

 それからまた、事態に対してのいわゆる政策機能、あるいはいろいろないわゆる政策オプション、そういうようなものを考えるにつきまして、省という形で防衛大臣が主任の大臣としていていただくことによりまして、我々としてはまさにふさわしいような案をどんどんまたつくれるというふうに考えております。

 それからさらに、防衛庁・自衛隊が諸外国の国防機関と実際に、まだ現在はございませんが、協力する、そういうフェーズになりました場合に、具体的な活動になった場合には、省と位置づけていただけますと、プロトコル上も含めまして、各国と対等のパートナーシップのもとに効率的な活動ができる、これは当然隊員の士気が非常に上がって成果をそれなりに上げられる、こういうふうに我々は考えております。

 それから最後に、この省移行によりまして、その都度内閣府等を通すことなく直接行うということができますれば、これは事務手続等、簡素化が図れまして、今求められております……(発言する者あり)緊急事態に対して迅速的確に対応することがより可能であろう、こういうふうに我々は考えております。

小野寺委員 ぜひ、いろいろなやじが飛ばないようにしっかりとその辺の説明はしていただきたいと思っております。

 その中でちょっと心配なのが、この省昇格に関して、近隣諸国、特に東アジアの諸国についてどのような反応があるか、あるいは外務省としてこの辺、説明もかなり必要だと思うんですが、既に行っているか、そこをちょっとお伺いしたいと思います。

松島大臣政務官 おっしゃいました件に関しましては、この法案を本年六月に閣議決定し国会に提出するに当たっての基本的な考え方につきまして、諸外国との安全保障対話、防衛交流などの機会において必要に応じて説明してきております。そしてまた、今回このようにこの国会で審議される、この審議状況も踏まえまして、外務省としても諸外国に対して具体的な説明を行っていく考えでございます。

 いずれにせよ、現時点で防衛庁の省移行に関して懸念を表明している国があるとは承知しておりません。ございません。

小野寺委員 そこをぜひしっかりと手当てをしていただければと思っています。

 時間がなくなりましたので、少しはしょりたいと思います。

 実は漫画の問題です。実は、自分もいろいろ外交を回っておりまして一番感じましたのは、日本のアニメ、こういうソフトのコンテンツが非常に世界じゅうで評価されていると。大臣もこの間お話がありました、ポパイそしてブロンディの生活スタイルが私たち日本人にある面では大変な影響を与えたというお話もありました。

 実は、アニメのソフトを日本は海外に提供していますが、その中で、韓国はかなり安く提供しているので、韓国のいろいろなソフトコンテンツは外に出ていくんですが、日本の場合は版権が高いということでなかなか難しい。ようやく「キャプテン翼」がイラクで放映されている。お手元に配りましたこの写真は、日本の自衛隊の給水車にキャプテン翼のマークがついて、これが非常に、一番のお守りになっているという事例もあります。

 ぜひ、ODAの活用の中で、このアニメのソフトを例えば日本の国がある程度しっかりと版権を買って、それをアフリカとかあるいは中近東とか非常にお金がない国、そこの子供たちに見せてあげたい。そうすると、その子供たちはもう何年にもわたって日本のソフトを体の中に身につけて、日本人に対するイメージが物すごく大きく広がると思いますので、私は費用対効果はとてもすばらしいし、日本のお家芸になると思うんですが、ぜひこのことについて一言、短く御答弁いただければと思います。

麻生国務大臣 ことしフランスがサッカーのワールドカップで、チャンピオンになりましたが、キャプテンがジダンという、御記憶かと思います。相手方のイタリアがトッティという男がなったんですが、勝った後のインタビューで、ミスター・ジダン、あなたは何でサッカーをする気になったんですかと。同じ質問をトッティにしているんですが、両方とも、もちろんおれたちは「キャプテン・マージド」、マージドというのは、アルジェリア語じゃなかった、彼はアルジェリア人なんですが、もともとのアラビア語で翼という意味です。したがって、このキャプテン翼というのは、あの地域ではキャプテン・マージドといってかなり有名、はっきりしております。これはキャプテン・マージドなんです。

 それを知っておりましたから、自衛隊に対しては、日の丸を張ったってどこの国の国旗かわかりはしないんだから、こういうものを持っていった方がいいというので、これを給水車に張らせるというのをやらせて、結果的に給水車はただの一回も被害に遭ったことはない。効果は大きいと存じます。

小野寺委員 さすがカリスマと言われるだけあるなと今思いました。

 済みません、最後に、ちょっと地元の話題で恐縮なんですが、マグロ類の国際管理ということでお伺いしたいと思います。

 今回、ミナミマグロの件、かなり日本は漁獲枠を減らすことになりました。これはいろいろな資源の管理のために必要だということだと思いますが、これから同じように中国、韓国がこういう資源の獲得競争に来ると思います。ぜひ国際機関でのこの権益の確保、そしてまた、今他国のEEZの中に入漁していますが、これには水産無償はかなり有効に活用されています。

 こういう水産あるいはマグロに対しての外務省の取り組みについて、最後にお伺いしたいと思います。大臣、最後に一言、もし答弁していただければ。

麻生国務大臣 これはミナミマグロ、キハダマグロ、いろいろ、御存じのようにマグロというのは、おたく……(小野寺委員「気仙沼です」と呼ぶ)済みません、気仙沼の沖だけ以外にもいろいろとれるんですが、ホンマグロ以外にもキハダマグロ、いろいろなものがあります。おまけに、このところ日本食というかすしがやたらはやったものですから、マグロはテューナと言わずに、とろというのが今ほとんど世界語になりつつあります。

 そういう意味で、猛烈な勢いで、食べる人の量が昔と比べてけた違いにふえておるというのが、漁獲を求めて乱獲につながっていっているという背景ですが、これはもう間違いなく、きちんとした管理をしないと払底するということになりかねぬということで、特に、きちんとした約束を守らせるというところが一番難しいところだと思っております。

 日本としては、これは保存管理というのをやらないと持続可能になりません。我々日本側も破っておるじゃないかということを指摘されて、確かに破った面なきにしもあらずでもありますので、そういったところも含めまして、これは大きな問題なんだと思いますので、長くとろが食べられるようにきちんとやっていきたいと思っております。

小野寺委員 ぜひ、一番いいところを今度お持ちしますので、よろしくお願いいたします。

 では、最後に一言。

山口委員長 時間が経過していますので、手短にお願いします。

松島大臣政務官 補足させていただきますと、今、特に日本の水産業のため、そういう気持ちも持ちまして、太平洋諸国を中心とする国々に対して、水産の無償協力を支援しているところでございます。

 この水産無償対象国の選定に当たっては、排他的経済水域入漁等の水産資源確保の視点を重視しておりまして、我が国として、引き続き水産資源確保を含む友好協力関係のために水産無償をしっかりと行っていきたいと思っております。

小野寺委員 どうもありがとうございました。

 時間が経過して失礼いたしました。

山口委員長 次に、丸谷佳織君。

丸谷委員 公明党の丸谷佳織です。どうぞよろしくお願いいたします。

 きょうは私の方からは、国際情勢の中で機微な問題ではないのでございますけれども、外交上重要ではないかと思われる点について何点か御質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、いわゆる知日派、親日派と言われる人たちを外交戦略上どのような形で今は形成してきたのかという問題点を指摘させていただきたいと思います。

 例えば、同盟関係にございます日米でございますが、アメリカにおいて、マイケル・グリーン氏がホワイトハウスを去ると、また一人知日派が減ったといったような報道が日本の新聞でなされたり、あるいは中国において、いわゆる親日派、知日派という人が今どれくらい、トウカセンさんなんかは当然そうでしょうけれども、あるいは中東の安定あるいは日米、日・イラン関係の中、非常に微妙な外交政策、バランスをとっているイランにおいて知日派がどれくらいいるのか。いろいろなことを考えたときに、外交政策上で知日派、親日派づくりというのをしっかりと柱立てしていく必要があるのではないかというふうに思います。

 経済がよいとき、バブルの最中には、当然、経済関係の結びつきが自然と多くなってきますので、日本語熱も高まってきたり、民間レベルで日本を知ろう、日本語を勉強しよう、日本文化を知ろうといったような熱というのは大きくなってくるわけですけれども、日本経済の衰退とともに、自然の流れの中で、日本に興味を失っていった人たち、あるいは日本語教育が少なくなって日本語を学習する人口が減っていく、こういった現象はあるんだと思います。

 なので、経済の流れに任せて日本語に対する興味とか日本に対する興味、あるいは知日派、親日派が少なくなっていくという現象は外交上よくないというふうに私は考えるわけでございますが、この点については、大臣、共有していただけるでしょうか。

麻生国務大臣 必ずしも知日派が親日派とは限りませんけれども、今言われましたように、日本語の点で言わせていただくと、一つだけ、これは私も知らなかったんですが、過去十年間ぐらいの間に、日本の経済力が落ちたと言われた時期に、日本語の学習者は、統計の資料によれば約倍ふえております。経済が落ちたにもかかわらず学習熱はふえた。なぜふえたか。それはほとんど、今子供の間に猛烈な勢いでふえておるという現実を見るときに、間違いなく、いわゆるゲームソフトの解説本です。

 ゲームソフトの攻略本を最初に読んで覚えるのが、例えばマレーシアならマレーシアで英雄になりますので、日本語を読んで解説本を読破して、それで攻略ができるようになったらそれが英雄になるから日本語を最初に覚える。これが現実です。したがって、猛烈な勢いで、子供の間で、東南アジアでは日本語学習熱がふえたというのがこの十五年間ぐらいで顕著な例なところだと思っております。

 いずれにしても、こういったようなもので、言葉が、おすしから入ってみたり、漫画から入ってみたり、Jポップから入ってみたり、いろいろなところから日本語が入ってきつつあるとは思います。

 もう一点忘れてならぬのはアメリカだと思いますが、エズラ・ボーゲルじゃなかった、「代議士の誕生」を書いた男、何といいましたっけね……(発言する者あり)ジェラルド・カーチスは、この間言っていましたけれども、もうおれたちは終わったと。一番世代が「菊と刀」とか、サイデンステッカーとかそういった世代、二代目がGI、三代目が自分たちと思ったけれども、今現実、アメリカにおける知日派というのは完全に第四世代に移って、その背景は、すべてJETプログラム。イングリッシュティーチャーというのを各地でばらまいておりますけれども、年間約五千人入ってきております。これは、各地各地において、約二十周年になるんだと思いますけれども、毎年五千人以上入れかえてやっているんです。

 こういった人たちが今、アメリカのウィスコンシンならウィスコンシン、ダコタなんて、ほかに日本人が全くいないようなところから来ていますので、そういったところに戻って、きちんとアルムナイ、アルムナイというのは同窓会をつくっております。したがって、こういったものが、日本語をその後維持するためにとか、いろいろな形になっておりまして、これが万という数にふえ上がっております。

 今、各知事にお願いをしているのは、ニューヨークならニューヨークに行ったら、そこのJETプログラムのアルムナイ、同窓会があるから、岐阜県に行った人を呼んでくれと言ったら岐阜に行ったやつだけ集めてくれるから、そして知事として、岐阜県に行った人にアフターケアしてやってくれ、それがまた日本に対する関心を持ち続けてくれるからと。これは総務大臣のときにやったプログラムの一つですけれども、そういった形で、そこそこアメリカにおいては、そういった人たちが卒業して国務省に入りなどなどが進んでおります。

 余談ですけれども、鹿児島に行った人たちがべらべら鹿児島弁を覚えて帰ってきて、イギリス大使館でしゃべったら一言も通じなかったのでびっくりしたと言っていたのが、つい一月前ぐらいの話ですけれども、そういった話で、ここらが今我々として、育ちつつあるかな、組織的に国が絡んで育っているというのはこういうところかと存じます。いずれにしても大事なところだと思います。

丸谷委員 ありがとうございます。

 大臣おっしゃるように、知日派イコール親日派ではないかもしれないという御指摘、そのとおりだなというふうに思いました。まず知日派をつくっていくとともに、その方たちを親日派にしていくという視点も非常に重要な視点だというふうに私も思いました。

 その中で、一定の角度をつけてきょうは議論をさせていただきたいと思うんですけれども、例えば、当委員会でもODAの意義とは何ぞやという議論がされていました。大臣も、まずODAは我が国の国益にかなうものであり、またODA対象国の国益にかなうものでもあるという趣旨で御発言をされていらっしゃいまして、そのとおりだというふうに考えます。

 ODA対象国であれば、ODA実施機関に、いろいろな人的な協力であったり、技術的な協力であったり、ハード面での協力であったり、いわゆる親日派というのをつくるには非常に重要なツールとして使うことができるわけですけれども、そのODA対象国に援助をしていって、めでたくその国が非対象国になっていく、いわゆるODA卒業国というふうに言っていいのかどうかわかりませんけれども、その時点になると、日本から、せっかく育っていった親日派、知日派に対して、継続してその方たちにコンタクトをとっていく手段というのは現在余りないのではないかというふうに、経済大国になれば、経済的な、日・アメリカのような関係が非常に深くありますので、何も日本が支援をしていかなければいけないというものは余りないと思うんですけれども、貧困層から抜け出して、ちょうど中間層の国々に対して行っていく親日派、知日派づくりの外交政策というものを、いま一度強化していくべきなのではないかというふうに考えます。

 そこでお伺いしたいんですけれども、DACリストで結構ですが、この中でいわゆるODA卒業国というのは何カ国くらいになるのか、この点は数でお答えください。

別所政府参考人 OECD開発援助委員会、DACが卒業国としておりますのは、三十四の国と地域でございます。

丸谷委員 その中で、非常に勝手ながら分類をさせていただきますと、二つのタイプに分かれるのではないかと思います。一つは、GCCですとかあるいはブルネイのように、資源があるので所得が上がっていって、名目上、非対象国となっているんだけれども、人材力では不足をしているグループ。そしてもう一方は、ポーランド等のように、中東欧諸国に見られるんですが、EUに参加をしたあるいは参加をする意思があるという国に対してはDACリストから外れていくということがあります。しかしながら、この特に中東欧諸国というのは、親日感情というのが物すごく深い。文化から発する親日感情が物すごく深い。

 こういった二つのグループに対して、何か継続的に、知日派をつくり親日派でいていただくための外交政策というものがあるべきではないかというふうに思うんです。

 例えば、まず最初のGCCとかブルネイのような、資源があるんだけれども人材力が不足している国、大臣もカタールの方に行かれていろいろな対話を深いところまでされたというお話をお伺いしましたが、カタールなんかは、お金が非常にあるけれども若い人たちは職がない。この若い人たちに何をしてあげることができるのだろうかということを国王が考えたときに、教育だと。それで、教育はやはり日本の教育が一番いいであろうということで、日本の教育システムをそのまま持ってきてほしいといったお話があったというお話も聞いておりますし、あるいは、サウジアラビアは二〇〇八年に非対象国になるわけですが、二〇一〇年までは日本のODAの継続案件で女性起業家支援というのをやっているわけですね。

 こういったことを継続し、あるいは向こうのニーズにこたえるような政策ということができるのではないかというふうに思うんですが、この点で、外務省、何かお知恵があればぜひ披露していただきたいと思います。

麻生国務大臣 これは日本もそうなんですが、明治のときの国家予算の配分というのをどこか資料を見られるとわかると思いますが、国家予算の三割を国防費、国家予算の三割を教育費、文部省といわゆる陸海軍省に、それで六割です。残り四割でその他の省庁を全部賄ったという、かなり傾斜配分をした予算配分をして明治の非常事態を乗り切り、日露戦争に勝ち、いわゆる植民地にならずになっていった背景というのは、教育に金をかけた、それが日本が長期的に、資源のない国でこれだけいけた最も大きな背景は義務教育、イギリスより先立つこと三年も早く義務教育をやり、そして国費で海外留学生というものをやったのも日本が最初、そういった話をカタールだかどこかの人にしたことがあります。

 それで、それをそっくりそのまま、あそこはめちゃ金が余っていますし、そこのうち、ついこの間まで漁村に近かったようなところですから、そこが急にメタンハイドレート、いわゆる天然ガスというものが大量に出て、そのほとんどを日本が買っているわけです。したがって、巨万の富を得ているんですが、ただただぱっぱらぱっぱらわけのわからぬものに使うことなく、きちんとためておるんです、あそこは。そのためた金を何に使うかというのが国の悩みでして、その金の使い方として、教育というものに猛烈な勢いで金をかけるのは正しいという話からその話がスタートしたんです。

 いずれにしても、終わった後、金以外の方法で、向こうは持っておるわけですから、金以外の方法で日本というものと中近東というものとの関係をどういうぐあいにやっていくかというのを、これは真剣に今から考えにゃいかぬところだと思いますが、日本の場合、有利なところとしては、黄色い顔とは全然縁がないわけです、あそこは。大体、フランス人にやられたとかイギリス人にやられたとかアメリカ人に何とかとかいって、そういう白人に対してはちょっと非常に難しい感情が、十字軍にさかのぼっていろいろ出てくるところなんですけれども、いわゆる東洋人というのは全く縁がないし見たこともないしというところであります。

 パレスチナあたりでも同じように、選挙管理委員会で私どもの方から伊藤大臣政務官を出しますと、ぞろぞろ人が、珍しいものが出たというので見に来るわけです。あの人は自分が有名かと思っていたらしいが、全然違って、単なる顔が珍しかったから人がついてきたという話なんですけれども。

 こういうようなのが実態で、逆に、利害関係が全くない。かつ、日本というのは資源がないのに、えらく、世界で第二番目の経済大国に伸びたという尊敬もありますので、そういう意味では、向こうが構えず最初から受け入れてもらえる要素がありますので、そこのところをうまく活用して、何が向こうに期待されているかといったときに、教育とか文化とかいうのは大きいんじゃないかな、私自身はそう思って、今、音楽とかいろいろやろうとしているんですが、酒と音楽はなかなか難しいものがありますので、そういった意味では全然別のところから入らなくちゃいかぬというので、やはり教育かな、文化かなというところが、今、向こうといろいろやって、お金は向こうは出す、何でも金は払うというのに対して、どういうようなものが最もというのを、ちょっと真剣に考えていかにゃいかぬところだろうと思っております。

丸谷委員 ありがとうございます。

 実際に教育交流というのは、GCC諸国等は有効な手段だと思います。日本というものを知っていただく、知日派をつくりながら親日派になっていただくという視点では非常に重要なんですが、具体的に、ではどのスキームで何をしていくかということを、予算の枠も限られているものですから、非常に知恵を出していただかなければいけないかもしれませんけれども、国別で今対応していただいている中で、例えば日・イラン女性交流なんていうものも非常に細々とやっていただいているんですね。年に一人とか二人を来ていただいているような状況で、これをもっと戦略的に、人的交流、教育交流、文化的交流も含めて、親日派、知日派づくりというのを外交戦略上で、予算の確保も含めて、しっかりと柱として打ち立てていただきたいというお願いをしまして、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 次は、ちょっとロシアについて触れさせていただきます。

 先日、アメリカのライス国務長官、日本も訪問しましたし、ロシアにも訪問されました。このロシアの人権意識に対して、現在、アメリカあるいはEUというのは非常に明確なメッセージを送っていると思います。

 特に、私も声を大にして申し上げなければいけないと思うのは、チェチェンでの残虐な行為を批判していました女性ジャーナリストが自宅で殺害をされた、このことに関して、当然のことながら、言論というものを暴力で封じ込めること自体は、本当に許されざることとして大きな声で批判をしなければいけないと思いますし、同時に、ロシアに対しましては、迅速かつ徹底した調査を求めていかなければいけないのだと思います。

 ライス国務長官は、大統領との会談のわずかなすき間を、時間を割いて、射殺された女性記者の遺族らと会談するなど、非常にメッセージ性としては強いものを発しているというふうに感じますし、また、それだけの米国の関心の強さというものもあらわしているのだと思います。

 ほかにも、現在のロシアの状況を見てみますと、グルジアに対する制裁ですとか、あるいは外国のNGOに対する規制の強化、また国内のメディアの国有化による報道統制など、民主化の流れとは逆の道を歩んでいるというふうに見受けられます。

 しかしながら、ロシアという国は、当然のことながら、この間のG8の議長国、サミットの議長国でもあり、あるいは国連人権理事会の理事国でもあります。国連人権理事会の理事国の役割としましては、各国の人権の状況を把握しまして、国際社会の人権環境を改善していく役割を担っている国だという思いもございますけれども、現在、日本としまして、このロシア国内における言論の自由、人権状況というのをどのようにごらんになっているか、この点についてお伺いをいたします。

    〔委員長退席、やまぎわ委員長代理着席〕

麻生国務大臣 多分、御質問は、アンナ・ポリトコフスカヤという女性記者が殺害をされたという話だと思います。昨今のロシアの中において、自由とか言論とかいうものに関して最も熱心な記者で、いろいろ記事を書いていたりしたことでもありますので、これが殺害されたというのは、日本では余りニュースになりませんでしたけれども、BBC、CNNではこれは物すごく大きなニュースとして扱っておりました。

 いずれにしても、これは他国において起きた犯罪ではありますけれども、背景を想像するにいろいろなことが考えられますので、そういった意味では、犯人が検挙というところがまずは一番のところだと思っております。

 他方、プーチンという今の大統領がことしの五月に演説をしているんですが、いわゆる年次教書の演説の中で、ロシアの直面する緊急の課題は、市民の権利と自由、民主主義及び市民社会の発展などなくして解決は不可能であると述べております。これはこのままとればなかなか立派な話なんであって、私どもとしては、こういったことを今まで言った歴代の大統領もおりませんし、こういったようなことを堂々と言ってくるだけでも一つの進歩であろうと思って期待はしておりますけれども。

 いずれにしても、ロシアという国が、御存じのように、一九一七年のいわゆるロシアの革命、その前はツァーの時代、一九一七年から自由主義、民主主義というのではなくて、封建時代からいきなりどんと社会主義にいっております。それで、一九九〇年から初めて自由化というのをやった。他国に例のない形で、この国は今初めて、自由主義とか民主主義とかいうのを今まさに習得中というか練習中というか訓練中というか、いろいろな表現はあるんでしょうけれども、目下、少なくとも民主主義とか自由主義という点においては日本よりはるかに後進国であることはもうはっきりしている。これは自分たちでそう言っていますから間違いないと思います。

 そういったところにおいて、今いろいろルールを変え努力をしている最中なんだと思って見守ってはおりますけれども、今後、G8のメンバーとして、経済力だけではなくて、やはり自由主義とかいうようなものを背景とした人権とか法治国家とか、そういったようなものがきちんとされていくかいかないかというのは、この国が真のパートナーになり得るか否かの分かれ目だと思って、私どもとしては、この点はみんな関心は持っているのよ、あなたの国の中の言論弾圧というのは、他国にとっておたくの国の評判を落とすことになりこそすれという話はいろいろ、お茶飲んだりするときの話題でよく出る話の一つになりつつあります。

丸谷委員 ありがとうございます。

 国際社会の中で本当に自由と民主主義だけが唯一の価値観ではないというふうには私は思っておりますけれども、やはり人権あるいは言論の自由というものが少なくとも守られる国としてロシアは国際社会の中で存在していただけるように、また、そういう方向に向かうようにロシアに自覚を促す外交努力というのを続けていただきたいと思います。

 続きまして、これもロシアなんですが、サハリン2の刑事告訴問題への我が国の対応についてお伺いをさせていただきます。

 報道によりますと、サハリン2に関して、環境破壊状況の調査では、少なくとも五つの刑に違反しているとしまして、検察当局に告発する意向をロシア政府は発表したということになっております。

 当然のことながら、いかなる事業、公共事業にしろ、もう今の時代は環境に配慮をする、破壊をするとずっと長い間戻ってこない環境破壊というものを防ぎながら事業をするというのは当然のことでございまして、それは計画段階で、もはや、あるいはもうほぼ最終段階に近づく前にそんなことぐらいわからなかったんだろうかという思いがしてならないわけでございますけれども、このサハリン2の刑事告訴への今把握している状況と、我が国の対応はどういう形でなされているのか、この点いかがでしょうか。

松島大臣政務官 丸谷委員がただいまおっしゃいましたサハリン2の問題でございますが、このプロジェクトに関しましては、環境問題を含め、ほかにも諸問題含めまして、当事者、事業者でありますサハリンエナジーとロシア側関係当局の間で調査及び協議が進められているというふうに承知しております。

 我が国政府としては、今後とも、事業者等の当事者間の協議が進められることを見守るとともに、必要に応じては、政府といたしましても、適切な働きかけを通じてこのプロジェクトが円滑に実施され国内の需要を満たすことができるようにと、そのように考えております。

丸谷委員 ごめんなさい、刑事告訴の状況というのは答えていただきましたか。

本田政府参考人 お答えいたします。

 十月二十五日、トルトネフ天然資源大臣がサハリンを訪問中に発言した中で、今後、天然資源省は、修復できる部分につきましては修復を求めていく、修復できない部分については賠償を求める、それから、発見された五件の刑法違反行為については検察局に資料を提出するというふうに発言されておられます。

 この中で、確かに五件の刑法違反については資料を提出するということで、これが告発に当たるかどうかという点についてはつまびらかではございません。かつ、この五件の中身、どういう事件がここで資料を提出されている対象になっているのかという点についても、いまだ情報が伝わってきておりません。

丸谷委員 サハリン2もそうですけれども、サハリン1も、当然ながら、日本政府も参加しまして天然ガスを日本に輸入をしていこうという形でやっておりました。ところが、その輸入の仕方について、パイプラインなのか、あるいはLNG化をして日本へ運ぶのかというところで、結局はガスは日本には来ないというような状況になっているわけです。

 本当に、この対ロだけではございませんけれども、エネルギーの安全保障というのをどういう形で国として取り組んできたのか、あるいはどういう形で交渉し、今までなぜこんな結果になったのかというのは、また私もどう考えても、幾ら説明をしていただいても解せないところがあるわけでございますが、いろいろな議論をする国の体制というものも当然あるのかもしれません。

 ところが、こういった形で、ロシアで結局は自国の企業を守ろうとする動きが余りにも大きくなってくると、今後の日ロ間の経済関係に悪影響を及ぼさざるを得ないのではないか、このように思います。今は、日ロ間の貿易の拡大のためには、日ロ行動計画に盛り込まれた形でやっているわけですけれども、我が国からの積極的な投資を求めているロシア側がみずから投資をためらわせるような状況にあるのであれば、我が国としましては、もっと強くロシアに透明性のある投資環境の整備に努めていくような努力、強い要求をしていくべきと思いますが、今後のロシアとの貿易を改善していくために、今後どのような形で対話をされていくのか、主張されていくのか、この点、最後にお伺いいたします。

    〔やまぎわ委員長代理退席、委員長着席〕

麻生国務大臣 貿易量に関して言わせていただければ、この五年間で、約五千億円ぐらいから昨年が一兆一千億ぐらいまで確実にふえてきております。日本の輸出また輸入ともに順調にふえてきておるというのが実態だと思っております。

 今の中でガスの話がありましたけれども、これは、商売をまだ覚えていないというところが一番大きな理由だと、この間も本人、本人というか相手側に申しております。物を売るときには、買ってくれる人の範疇はなるべく広げようとするのが当たり前なんであって、少なくとも、中国だけとかいうよりは、サハリンの一番東まで持ってきて、あそこまで、東側をパイプラインで出してくれば、サハリンに限りませんよ、東シベリアからのものにしても持ってくれば、それはアメリカも買える、台湾も買える、韓国も買える、日本も買えるということになるんであって、そういうようにする方が、売り値、買い手というものから一方的に値段を決められることがない。これは商売の鉄則ではないのかという話をして、なるべく多くの人たちに言って一番高いところに売りますというのが最も正しいんじゃないのかというような発想は、なかなか商売をしたことのない人には出てこないところなんだと思っております。そういったものだから、だからこっち側に出して多くの国から買ってもらえるような施設というものに金をかけるべきという話はしております。

丸谷委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

山口委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 民主党の前原でございます。

 麻生外務大臣に、きょうは少し大局的な議論を外交、安全保障でさせていただければというふうに思っております。

 通告をしておりますように、まずは核の問題について議論させていただきたいと思います。

 核保有の議論をすることがどうのこうのという次元で質問するつもりは全くありません。やはり、この外務委員会で、日本が核保有した場合のメリット、デメリットというものをしっかり議論する、あるいは現状の外交の流れの中でそれが果たしていいのかどうなのかということをしっかり議論して議事録にとどめておくということは、私は大変有益だというふうに思いますので、ぜひ大臣も、そういった大局的な観点から質問させていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

 さて、先般アメリカのライス国務長官が来られたときに、ライス国務長官はこのような発言をされておりますということが外務省からブリーフで伺いました。米国は抑止と安全保障についての日本へのコミットメントをあらゆる形で履行する、こういう発言をされました。あらゆる形というのはフルレンジという英語を使われたという説明を受けているわけであります。

 これについては新聞等で解説がされておりますけれども、実際に日米外相会談で、このフルレンジ、あらゆる形でコミットメントということは、従来のいわゆる核の傘、核抑止力というものもアメリカはしっかり提供するということの意味だったのかどうなのか、会談をされた当事者からお話を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 今回のライス国務長官の訪日の主たる目的というのは、北朝鮮の核に隣国であります韓国、中国、ロシア、日本がどのような対応をするかということの調査の最初として日本を選んだというのがそもそもの背景。

 それに対しまして、私どもの方は、この種の話というのは今までの状況とは違う。少なくとも、二極構造の世界が終わって一極構造になり、そしてその一極構造の状況の中で、日本、中国、韓国にとって、ロシアを含めて、隣国で新たに核保有国というものが登場するという状況というものは、これは明らかに今までとは新しい状況になった。

 それに対して、アメリカとして一番大事なことは、米韓、日米、それぞれいろいろ安全保障条約、いわゆる条約を結んでいますが、この条約というのはいざというときにきちんと作動するのか、そこが一番肝心なところなんであって、日本はそれは疑わしいということになって、アメリカは確実に日本に核というものが落とされたときにそれに対して安保条約をきちんと履行するという、核の抑止力というものをきちんとそれに対応してくれるというギャランティー、保証がおれたちとしては一番肝心なところなんであって、それがないと国民の動揺が一番大きいということになるんだと思っておりますので、今言われましたように、フルレンジという言葉を使ったことも確かですし、その中に核の抑止力が含まれておる、その話をもとにしての答えがこの答えでしたので、今御質問の点については、間違いなく核の抑止力がその中に含まれていると思っております。

前原委員 今回のライス国務長官の訪日というのが、北朝鮮の核実験、向こうが主張している、アメリカは一応認定をした、日本はまだそれについての公式なコメントは出されておりません。日本政府は出されておらない。

 そういう中で、要は、北の核については、私は核抑止力というものについて二つ考えられるんではないか。

 まず一つを申し上げると、アメリカには直接的な脅威はないわけです。七月のミサイル発射によって、七発発射をして、そのうち一発失敗している。それはちまたではテポドン2だと言われている。これはもう発射してすぐ失敗をして、これはもともとテポドンの改良型で大陸間弾道弾、つまりはアメリカ本土へ届くようなものではなかったかと。これは失敗している。仮に核実験が成功していて、弾頭の大きさ、積めるかどうかという議論はあります。ありますけれども、仮の議論として、積めたとしてもアメリカには届かない、しかし日本には届く。その場合には、私は核の傘というのは一つの議論としてはあり得るのかなと思いますが、一般論として、これは米ソ冷戦時代にもあったわけでありますけれども、米ソ両国においては、相互確証破壊、MADというまさにばかげた、気違いじみた議論があった。それで抑止が働いていた。

 しかし、では今の時点においても、アメリカはみずからの本土に届くような国、これは特定しませんよ、第三国があって、それが日本が核攻撃にさらされた場合も、ひとしく北朝鮮の場合と同じように核の傘、つまりは核の抑止力を提供するということが本当に言えるんでしょうか。自国の国民を危機にさらしてまで同盟国を守るという義務を果たすのかどうなのか、その点について大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。

麻生国務大臣 これは、前原先生御指摘のあるとおりに、それこそが一番の日米安全保障条約におけるコア、一番の核だと思って、核というのは一番の肝心なところだと思っております。それが信頼性を、きちんとアメリカは日本というものを守った方がいい、それに対するある程度自国民の犠牲を覚悟してでも守った方がいいと思わせるほどのものをふだんのつき合いの間にやるというところが一番肝心なところだ、私どもはそう思ってまいりました。いわゆる商売で、契約はあるけれどもそのとおり履行するかどうかというのはよくある話ですから、条約があってもそのとおりやらない国はいっぱいあります。

 そういう意味では、契約どおりやるかどうかというのは、契約に書いてあるからやるというのではなくて、これはやるという気持ちにさせるふだんのつき合いというのはやはり大事なんだと思いますんで、この五年数カ月の間、九・一一以降と言った方がいいのかもしれませんが、少なくとも、アフガニスタンの話にしてもイラクの話にしても東ティモールの話にしても、日本というのは結構頼りになる、一緒に価値観を共有してやっていくに足るそういった国民だというように、アメリカにこの五年間間違いなく思わせてきたことだけは間違いない。これは、この五年間の成果の一つとして評価しないと公平性を欠くかなと思っております。

 そういう意味では、今回のライス国務長官との会談というのを見ますと、これまで何回来日しましたか、外務大臣になって五、六回、もう少し七、八回やったかと思いますが、公式、非公式にいろいろ会ったことがありますけれども、今回のも極めて明確にフルレンジというのはすぱっと言ってきましたので、渋々言ったんじゃない、ばんと最初から出てきましたので、そういった意味では、従来に比べて日米間の信頼関係はかなり高まっていると思っております。

前原委員 外務大臣のお立場としては今の御答弁になるんだろう、当然だと思います。そしてまた、ライス国務長官が今回訪日をされて、今、大臣が五、六回お会いされた中で、向こうから極めて明確に言ってきたというのは、それはそれで私は評価をすべきことなんだろうと思います。

 ただ、先ほど申し上げたように、北の問題が今回はメーンイシューであって、私が今質問いたしましたのは、今から核保有のメリット、デメリットというのを具体的に一個一個考えていきたいと思うわけでありますが、北の問題というのはひょっとしたら短期的かもしれない。しかし、核保有国というのはある。そして、日本を射程に置いているミサイルを持ち、そして核を保有している国もある。その国が意図しているかどうかは全く別の問題として、能力の問題として議論した場合にそういうものがある。

 その場合に、本当に日米同盟関係に基づいて傘を差したときに破れていないかどうか、本当に傘というのはちゃんと差すことができるのかどうかというのは、まさに答弁されたように信頼関係の問題であると思いますけれども、やはりその都度しっかりと責任ある外務大臣のような立場の方が確認をしていくということは私は大事なことなんだろう、このように思っております。

 そこで、もう一つのポイントを申し上げたいと思うんですが、米ソの冷戦時代については、先ほどMAD、相互確証破壊の話をいたしました。しかし、北朝鮮ですらノー・ファースト・ユースということを言っているわけですね。自分たちが先制攻撃に使うことはないということでありますけれども、しかし私は、ソ連の時代と大きく異なるのは、体制崩壊の危機というものがこれは想定される。そのときに、自暴自棄、暴発、さまざまなときに、果たしてその抑止というものが本当に働くのかということ。つまりは、やられたらやり返すということが抑止の一つの理論の根本にあるわけですけれども、もう自暴自棄、暴発というところでの核の使用というものについては抑止の議論そのものが成り立たないという議論はあると思うんですが、それについてはどう思われますか。

麻生国務大臣 これは、その国が崩壊したときにどういうことになるかという一つの例として、ソ連邦崩壊の後に、かなりの部分の核の弾頭、もしくは核技術者、もしくは核技術が四散した。そのものの中がウクライナに行ったりグルジアに行ったり、いろいろうわさの出ているところではあります。

 しかし、そういったのと同じような形で、撃たないまでも、そういった技術がテロリストに拡散する、テロリストに渡るというようなことは、これは断固避けねばならぬところだと思っております。少なくとも、あれは搬送技術がよく言われるところですけれども、何せ自分が死ぬ覚悟で自爆するという前提に立てば、核をトラックに積んで、バスに積んでというのは十分に可能な話ですから、自分が死ぬ覚悟でやればそれはもうかなりなことができるということを意味しますので、十分にそこらのところに注意を払っておかねばならぬというのは、前原さん言われるまでもなく、全くその点は注意をしておかないかぬところだと思っております。

 また、韓国も中国も、いわゆる体制崩壊が、革命というような形じゃなくて、本人の自暴自棄になったときが一番問題というのは韓国も最も意識しているし、中国も同様な意識をしております。二千数百万の難民が流れついてくるという話より、その前にボタンを押す可能性というものを考えないかぬとかいうのは、これは常に向こうの言う話の一つでありまして、果たしてそうかな、それほど体制の危機になっているだろうかと思わないでもありません。しかし、そういったものをネタにして我々に協力しない一つの理由に使っているんじゃないかという気持ちがないわけではありませんけれども、今言われたような点を、これは同じく韓国、中国はかなり懸念を表明しているというのも事実です。

 私どもとして、そこのところは、どの程度までが限度なのかというその限界の見きわめ方は難しいとは思いますけれども、いずれにしても、そういった可能性は全く否定してかかるのは危険だと思っていますから、今の御意見には賛成します。

前原委員 要は、核抑止力というのはその面では働かない点が出てくるということをお認めになった答弁だと思います。

 その次に質問しようと思っていたことをもう大臣が言及されましたので、引き続きそういった議論をしていきたいと思います。

 先ほどの相互確証破壊、そしてまた、対称的な核保有国というものから、これは九・一一テロの後でブッシュ・ドクトリンでも明らかにされていますけれども、アメリカ自身も、対称的な脅威から非対称的な脅威、あるいはユビキタスな脅威、そういうことをよく言われるようになりました。それで防衛体制というものを変えていかなきゃいけないということで、トランスフォーメーションなんかをアメリカがやって、日本に対してもそれに対する協力、あるいは日米安保の役割分担というのはその流れの中で生まれてきている。

 では、その非対称的な脅威の中で、今申し上げたような小さな国、自暴自棄になったり暴発したりしたら抑止力が働かない。あるいは、きのうでしたか、インターネットのニュースを見ていますと、北京でプルトニウムを売ろうとしていたやつが捕まったと。中国人ですね。そういう話があって、これから、後で議論しますけれども、そういう核関連物質というものの拡散、そしてそれがテロに使われるという非対称性の脅威というのがますます大きくなっていくんだろう、このように思っております。

 そこで、仮に日本が核を持つということになったときに、当然ながら今の核不拡散体制、NPTからは脱退しなきゃいけませんよね。今、我々が核を持つ持たないの議論をする前提として、今大臣とお話をしているように、核保有国で大国はある、これは理性が働く、核抑止力がある程度働く、しかし小さな国、これが何しでかすかわからぬという話。それからテロ、これに渡るとまさに手に入れた瞬間にやるかもしれない。これからの大きなポイントは、抑止もさることながら、核不拡散体制というものをいかにきっちりやっていくのかということが大事だと思いますが、もし日本が核を持つということは、みずからNPTを脱退しなきゃいけない、核不拡散体制の強化じゃなくて逆行することになる。

 私は、その意味からも、やはり核を持つ議論というのは、今の世界が直面をする核の危機に対しての逆行する話になるのではないかと思いますが、その点について大臣の考え方を教えてもらいたい。

麻生国務大臣 核の話は抑止より拡散の方に非常に問題点があるのではないか、これはアメリカも同じ意識だと思います。拡散体制になり得る、いわゆる核が無秩序に、テロリストが一番いい例だと思いますが、そういったものに散らばるというのは断固避けたい。特に、北朝鮮の核がイエメンに流れようとした過去の例がありますから、そういったものを見て断固阻止をしたいという気持ちがあります。

 また、今言われましたように、NPTの話やら何やら強化せないかぬ、私もそう思います。ただ、アメリカも、このNPT体制があとどれぐらいもつだろうかということに関しては、こういった現実問題として、今北朝鮮に限らずいろいろありますし、ウクライナだって事実大量のものを持っているわけですから、これだって十分にあり得るであろうというようなことを含めまして、この種の話というのは今後検討せねばならぬところだろうと思います。

 いろいろな意味で、アメリカも技術の進歩を使わないととてもうまくいかない。したがって、船にこっちからあれを当てると中に核が積んであると一発でわかるような機械の発明は不可能か、これによってNPTをきちんとやれるのではないかというような壮大な絵を、今研究をしようとしてみたり、いろいろあの国はそういったことを考える国なんですが、今そういった形でやろうとしていますので、核の話に関しましては、やられたらやり返すという面と拡散の話と二つ考えておかねばいかぬというのは、全く私もそう思います。特に後半の部分の方が今問題になりつつあるのではないかという前原先生の指摘も、私もそれも正しいと思っております。

 ただ、今、意識の問題として、日本の場合は、核をつくる能力はある、しかしつくらないという方針でこれまでやってきて、キャン・バット・ドントと言っているわけですから、できるけれどもやらないということを言っているのであって、そういった意味では一つの日本のやり方だった、だけれども、おれたち、つくろうと思えばつくれるのよというのをきちんと向こうに言って、そこはちゃんとある程度抑止になり得る部分もあろうというのがいろいろ言われている話の背景でもあろうと思っております。

 ただ、今言われましたように、拡散の方が大きな比重を持ちつつあるな、非対称性という話が大きな状況になりつつあるなというのは、私も同じような感じを持っております。

前原委員 私も、東海村、それから、この間アクティブ試験が始まった六ケ所村、両方とも視察に行かせていただきましたけれども、今大臣がおっしゃったように、恐らくプルトニウムだけで日本は国内外に四十トンぐらいのプルトニウムを持っている。しかし、プルトニウムだけで持っていると転用できるということで、わざわざまぜ物をして、そして核に転用できないよというような厳しい管理体制をしている。しかも、東海村でも六ケ所村でもIAEAの査察官が常駐をしていて、そして至るところに監視カメラがある。そして、IAEAの封印をしていて、IAEAしかあけられないような計器類もいっぱいある。

 それぐらい日本というのはしっかりとこのプルトニウムの管理をして、そして、やはり生産過程、再処理過程で若干、どこかに取り出すんじゃなくて、その過程で、中にたまって量が足りないということになったら、大掃除でもして微量でもプルトニウムをしっかりと探し出す、それだけ厳格なことをやっている。

 その一方で、先ほど申し上げましたように、大臣の本音がちょっと聞かれたと私は思うんですけれども、能力はあるよ、しかしやらないということが抑止になるんだろうと。そのことについては、メッセージには私はなると思うんです、それについては否定はしません。その議論はそれまでにしておきますけれども。

 私が大臣から答弁をいただきたかったのは、抑止と同時に核不拡散、PSIというものをきっちりやって、不拡散というものをこれからしっかりやらないと、だれかの手に渡ったら、そいつが、スーツケースか、さっきおっしゃった、船に乗せて土手っ腹にぶつけてくるかわかりませんけれども、そういった状況が生まれてくるということになれば、日本がNPT体制を脱退してまで、いわゆるNPT体制を脆弱化させるようなことを日本は私はすべきじゃないと思うんですが、その点については、大臣、どういうお考えですか。

麻生国務大臣 NPTというか、核をつくれるという部分が、今、つくれるけれどもやらないという話をさっき申し上げましたけれども、こういうのがテレビに出ると、つくれるという話だけで切られてばあんと表に出るのが大体マスコミという人たちの手口ですから。ですから、私どもとしては、そこらのところは十分に注意していかなきゃいかぬ。

 今言われましたので、事実として、そういった点は、私どもとして、十分にプルトニウム等々のことを考え、ロケット、衛星、いわゆる情報衛星、偵察衛星、いろいろなものができる能力があることは間違いありませんので、そういったものは知っている人たちはみんな知っているわけで、そういったものを考えますときに、それはきちんとして、日本としては、こういったものが拡散しないように、これだけおれたちは管理しているのよと。これを盗まれないようにするために、盗まれっこないと思っているんでしょうけれども、つまり、東京電力は多額の金を払って警備保障をやり、何をし、日本海沿岸側にも大量のいわゆる警察官を配備し、何をしというのを今やって、そういったものが盗まれるとかとられるとか拡散するというのを防ぐのにかなりの労力を費やしております。

 こういったものに関しては、今後とも私どもとしてはきちんと対応をするということ、対応するというのは、不拡散ということに非常な労力を割く、注意を払っていかなければならぬというのは、これははっきりしていると思います。特に、近くで何となく危なそうなのが出てくれば、それに対応して警戒を高めるというのは当然なんであって、それは不拡散という部分が一番大きな要素だと思いますので、今後とも、この不拡散の部分に関しては、相互破壊という話とは今時代が違っておりますので、小さな国に拡散していくというのを断固防ぐという態度は私どもとしてはきちんとしておかねばならぬと思っております。

 再三申し上げるように、日本として、今、原則というか、NPTを脱退するとか、それから、非核三原則をやめるとかいうような話を政府の中でしているわけでは全くありません。

前原委員 先ほども冒頭に申し上げたように、やはりちゃんと議論しておいて、メリット、デメリットを総合的に判断する中で、核保有の議論というのは、私は、非現実的だというところで結論づけるというのが一番健全なんだろうと思うんです。

 核を持つということになればNPTは脱退する、そうすると、国連安保理なんかで制裁決議も含めて出てくるでしょう。そうすると、さまざまな経済制裁というのが行われる可能性があって、当然ながら日本の経済というのが混乱する要因になってくると思うんですね。株は下がったり、為替は下がったり、あるいは金利は暴騰する。あるいは、日本に対する投資が減る。こういうようなことが当然ながら起きると思います。経済的な混乱を引き起こすという大きなポイントがある。

 もう一つ、細かなことでいえば、では、核を持ったとして、日本の狭い国内、どこで核実験をやるんだと。そんな、自治体が、私のところでどうぞというようなところがあるわけがないわけですよね。最終処分地すら今は手を挙げるところがないような状況でありますから、そういった意味では非常に非現実的だと思いますが、仮の議論として今しているわけでありますが、経済的などういう打撃が、核を保有した場合に日本に対して起こると思われるか。私は自分の考え方を申し上げました。あるいは、核実験についても自分の考え方を申し上げましたが、その二点について麻生大臣の見解をお伺いしたいと思います。(麻生国務大臣「影響」と呼ぶ)経済への影響、つまりは、核保有をするということはNPTも脱退する、そうすると、さまざまな国が制裁をしてくる、経済活動にも混乱が起きる可能性があるということを私は私の意見として申し上げたんです。

 もう一遍申し上げましょうか。為替、株、金利それから日本への投資、さまざまな経済にも影響が及んできて決して得策ではないと思いますし、核実験の場所の問題、その二点、お願いします。

麻生国務大臣 一部、まだ時間が少しずれておりますのですが、日本時間の本日未明ということになりましょうけれども、これは日本が国連総会に提出をいたした核軍縮決議案というのがあります。「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意」、これは日本が出しているんですからね。それに対して、国連総会におきまして、圧倒的多数、正確に言うと百六十二票対三票、反対三。反対の班は北朝鮮、アメリカ、インド、これが実態です。したがって、こういう実態を見た上で話を私どもはしているんであって、百六十九票、済みません、百六十九対三票ということでなっております。

 したがって、日本として、政府として、こういった形で、いわゆる核の廃絶の方向できちんと対応しているというのが政府の態度だということは、何となく、皆、おもしろおかしく話が広がらないように、これは日本の国益を損ないますので、今、そこの点だけはぜひきちんとしておいていただければと思います。

 また、今言われましたように、日本の経済的なデメリットというのは、たった今、きょうという前提に立った場合は、今おっしゃったような状況、いわゆる株の話とか、また為替の話とか、いろいろなものが直ちに影響が出てくるということは容易に想像のつくところだろう、私もそれはそう思っております。

前原委員 核の議論はこれで最後にしたいんですけれども、この最後が一番、実は私は核心の問題だと思っておりまして、アメリカとの同盟関係ですね。

 大臣の方がお詳しいと思いますけれども、歴史的な経緯を申し上げると、佐藤栄作首相が一九六四年の十二月に、当時の駐日米大使であるライシャワーさんと話をされたときに、日本の核保有は常識だという発言をされた。それでアメリカはびっくりして、翌年の一月に当時の大統領であるジョンソン大統領が、まさに先ほど議論した核の傘の提供をしますということで、日本のいわゆる核保有というものを必死になって打ち消しにかかるということになったと思います。

 非核三原則というのは、そのおよそ三年後、一九六七年十二月、これは国会で佐藤栄作首相が答弁されている。これは、沖縄返還を控えておりましたので、そういった交渉的な部分もあって非核三原則というものを打ち出された。そして、今国是としてそれが営々と続いているということであります。

 私が議論させていただきたいのは、アメリカは反対するだろう、簡単に言えば。しかも、日本の今の安全保障体制というのは、六十年間かかって、あるいはもっと短いですね、旧安保条約が一九五一年、そして新安保が六〇年ですから、五十六、七年ですか。その経過の中で、アメリカとの関係は、安全保障においては極めて緊密に、特に海上自衛隊、米海軍においては、一体化と言ってもいい状況が生まれてきている。

 今回のミサイル防衛導入にしたって、情報をアメリカからもらえなければ、あるいはそういうシステムをアメリカから購入しなければ、ミサイルを日本独自で撃つことはできない。あるいは装備体系にしても、最新型の次世代戦闘機というのはアメリカから購入をするということ。これは、武器輸出三原則がありますから、コスト面も含めてなかなか独自に開発することにはならない。あるいは、日本の海上自衛隊の持つイージス艦もアメリカから購入をしている。

 装備体系、それから情報、あるいは今までの流れの蓄積の中での日米安保体制において、トータルとして日本の安全保障を守っている、それが大きな意味での抑止力になっている、こういうことを考えたときには、アメリカがうんと言うか言わないかということは極めて大きな話。これは本質的な話だと思うんですが、ざっくばらんに伺います。

 私は、アメリカはうんと言わないと。今まで私も、大臣から比べると短い議員経験でありますけれども、アメリカというのは同盟国に対しても極めてシビアな国だ、比較優位は絶対に崩さない、そういう意味でのシビアな交渉相手だと私は思っておりますけれども、アメリカは認めるか認めないか。質問としては極めて簡単です。外務大臣というお立場でうまく答弁してください。

麻生国務大臣 今アメリカがそれを、日本が核を持つことを期待していない国の一つが、アメリカ、中国、ロシア。日本近隣にあります核保有国はいずれも期待をしていないと思います。それは、北朝鮮に核保有を期待していないのと同じだと思います。

 したがって、北朝鮮に核を保有されるとという話になって、中国も真剣に動かざるを得なかったというのが今回の背景だと思いますし、アメリカもフルレンジだということを最初から振り込んできたのは、間違いなくそういったような、どういう連鎖反応が起きるかというイマジネーション、想像力というものを働かせたら、この種のことに詳しい人ならだれでもそこに行き着く結論になったんだ、私どもはそう思っております。

 また、今言われましたように、濃縮ウランの話を先ほどしておられましたけれども、こういったものに関しましては、これは平和利用に限っておりますので、ああいったものに関しては約束が。いろいろな意味で、極めて制限をされておるという状況ですから、私どもはきちんと北の部分に関して、こっちが影響力を受けるという部分に関しては、きっちりやるという約束を履行してもらわなければ、こっちはこっちでしかるべき対抗措置を持たない限りは国民の安全は守れない。

 相手は普通の人じゃないと思ってかからないかぬわけですから、そういった普通の人じゃない人に常識の話をしても始まりませんから、そういったときにどうするかという状況に置かれているという上でどうするかというのをこれから考えないかぬところなんだと思っております。

 ただ、今言われましたように、アメリカの場合は、いろいろこのところ意見が佐藤内閣のところと変わってきたのは、やはりアメリカもかつてほどの力がなくなってきたということが一つ。

 二つ目は、日本の経済力が猛烈な勢いで出てきて、特に製造技術やら品質のいいものに関しては、これは一九七三年のオイルショック以来、量の拡大から質の向上というのに日本の経済は全部切りかえていますので、そういった意味では、明らかに品質のいい、民生品で軍需品に勝てる、そういったようなものまでつくり上げる能力というのを持った日本というものを最も信頼が置けるパートナーとして置いておきたいと思わない方がおかしい、また思わせるように我々は努力をしてきたわけです。

 そういったやり方で、日本は、少なくとも軍備費に金をかけずして、歳出を抑えて、その分だけをいわゆる経済に回し、その他に福利厚生に回して、この国の繁栄をかち取ってきた。結果、アメリカよりいろいろな面ではいい部分が出てきた。となると、今度は逆に、アメリカの中では別の意見がまた出てくるというのも、これは自由な国ですから、いろいろな意見が出てくるという状況になっているんだと思います。

 ただ、今言われたように、得か損かという話だけで考えたら、それは軽武装の方が得に決まっております。ただ、そのときには保障がありませんと、国家として、政府として国民の安全を担っておる立場としては、いわゆる安全保障という問題からいきますと、きちんとそれが作動するという保障と、やはり最低限、通常兵器によります攻略ということもありますでしょうから、その通常兵器に対しては、日本の通常兵力をもって一応対応できるものをきちんと備えておくという必要性は、我々は常に心がけておかねばならぬところと思っております。

前原委員 核の議論はこれぐらいにさせていただきたいと思いますが、結論として、最後のアメリカのところは、核武装を主義主張でおっしゃる方は、それは私はいいと思うんです。主義主張まで立ち入るわけにいきませんから。しかし、先ほど申し上げた経済的な影響とか、核拡散のいわゆる蓋然性を高めてしまうということとか、あるいはアメリカとの安全保障の体制を根本的に見直す意思というものがなければ、大臣がおっしゃるように、日本の国民の安全を守れないと思うんですね。

 もしそれを、アメリカとの関係は、将来的に解消を含めてある程度自立をしていくという意思を本当に持つのかどうなのか。私は、その腹構えがあってこそ、本当の核武装議論というのはできるんだと思いますし、それを今私は優先順位を高めてやる話ではないし、しかも、先ほど申し上げたように、六十年近くかかってこの体制ができてきて、もし変えようとしたって、それは何十年かかる話。

 ですから、今の北朝鮮の危機に対応するということを考えれば、外交、そして今の安全保障、同盟国としての信頼関係、そしてNPT体制の強化を図る、そして対外的には唯一の被爆国としての日本の訴えをしていくということが私は大事だというふうに思います。それについて同意されるかどうか。

麻生国務大臣 最初から申し上げてきましたし、政府としての立場も申し上げましたし、言論弾圧の話も全部御存じの上で話をされておられますので、これまでいろいろな方に質問されましたけれども、さすが党首経験者は違うものだと思って、改めて敬意を払います。きちんと整理はしてあると思いました。

 私の考えと基本的に差異は、細かいことを挙げれば幾らでもありますが、大目差異はないと存じます。

前原委員 次に、安倍内閣で集団的自衛権の見直しというものを内部でやっていこうということを聞いております。私は、集団的自衛権の行使については、フルレンジではないけれども認めるべきだという考え方に立って、今までもそのことについては主張をしてまいりました。ただ、観念論でこの議論をしたって余り意味がないと私は実は思っております。

 そこで、具体的な事例に即して幾つかお話をしたいなというふうに思うのでありますが、例えば、認定するかどうかは別にして、周辺事態というものの場合に、日本が行動できる法律というのがありますね、周辺事態法という法律がある。これについては、二つの内容が書いてあるわけです。一つは後方地域支援、もう一つは後方地域救助活動、そして別法律で船舶検査。この三つが法律として周辺事態においてやれるということになっているわけでありますが、これはいずれも今までの政府答弁の中で、日本に飛び火がするかもしれない。周辺事態というのは、まさに放置しておけば日本が有事に巻き込まれるかもしれないという状況の中で米軍は活動をしている。

 それについて、しかし、武力行使の一体化になった場合、一体化というものが認められる場合は、さまざまな米軍に対する支援というものは中断しなきゃいけないという項目が法律の中には入っているわけです。これは、私も議論したのでよく覚えていますけれども。だから、これは集団的自衛権という今までの解釈の中で、憲法上、主権国家として持っているけれども行使は認められないという政府見解を持っている。そして、それのいわゆるエキスとして、武力行使の一体化というところに集団的自衛権のポイントを置いている。

 しかし、一番リアルに想定される事案として、周辺事態として仮に認定するような状況になった、そのときに、しかし、それは日本に飛び火がするかもしれない状況でアメリカが活動している。しかし、一体化をしたときには救助ができない、あるいは支援ができない。これはやはり私は、日本の国益に背く話なんだろうというふうに思うんですね。

 一つの事例を申し上げましたけれども、この点、私は、例えば武力行使の一体性という政府見解には疑問を持っているわけでありますが、大臣の御答弁をいただきたいと思います。

麻生国務大臣 今、具体的な例をした方がわかりやすいという御意見は私も賛成です。

 今の例をさらに具体的にすると、例えば、朝鮮半島で仮にアメリカ艦船の給油をしておった。御存じのように、給油というのは並行して走りますので、いわゆるディフェンスの上からいきますと、最も弱い状況になります。動けませんから。

 そういう状況の中で、アメリカの艦船が攻撃を受けた、ミサイルでねらわれた等々の状況が起きたときに、そのときに、日本は逃げるかと言われると、それは個別自衛権ではないか等々、いろいろな問題を現実問題として考えないと、少なくとも、やはりちょっとそれをほたって逃げるというのは同盟関係でいかがなものかというようなのが、通常の観念としても、いわゆる一般論として申し上げても、そういったところで逃げちゃうというのはいかがなものかというのが私も同様な気持ちがあります。

 したがって、これをどういうように法解釈を変えるのか。いわゆる個別自衛権、集団自衛権、正当防衛、いろいろな範疇の話だと思いますけれども、今言われたような話は、具体論としてこの場合はできるようにするというような形の話ができてもおかしくないのではないかと思っております。

前原委員 時間がもうわずかになってきましたので、もう一事例、私の集団的自衛権の憲法解釈の中で、日本の国益を損ねているという点をお話をしたいと思います。

 これは、厳密に言えば、集団的自衛権というよりも、マイナー自衛権の集団的自衛権版。マイナー自衛権というのは、つまり部隊の自衛権ということなんですね。

 例えばPKO、あるいはこの間のイラク特措法でもいいんですが、海外に自衛隊の部隊が出ている、そうすると、部隊の自衛権というのは基本的に認めないわけです。なぜならば、部隊の自衛権という、自衛権という言葉を使った途端に、いわゆる自衛権発動の三要件に満たされなければいけないということで、基本的には、警察官職務執行法の準用で正当防衛とか緊急避難とか、あるいは自衛隊法第九十五条の武器等防護という中でしか武器使用ができない。こういう体系になっているわけですね。

 これだと、どういう問題点が出てくるかということになると、イラクの場合は、サマワというところで自衛隊が活動していた。我々はそれについて反対の立場でしたけれども、自衛隊の方はよくやられたと思うんです。無事に帰ってこられてよかったと思います。そのときに、日本の自衛隊の安全確保をしていたのはイギリスでありオーストラリアでありオランダですよね、同じ地域で活動している。日本が仮に攻撃された場合は、そういった国々が助けてくれるけれども、逆の場合、つまりは日本が同じ場所で活動していて他の国の部隊が攻撃をされたときには、日本はできないという仕組みに今なっているわけです。

 これは、マイナー自衛権的な集団自衛権の話だと思いますけれども、これは本来の国際貢献の議論からすると全くおかしな話であって、まともな国際貢献活動にはなり得ないと私は思うわけでありますが、その点については、大臣、どのようにお考えになられるか。

麻生国務大臣 これは今のままですと、あくまでも現行憲法の枠内で考えていかなきゃしようがないという答えにしかならないんですが、これは常識的に言って、隣にいた部隊がいきなりぼんとランチャー、ランチャーというのはロケット弾を食らって、いきなりこちらも撃たれるかもしれないという状況のときには助けちゃいかぬ、向こうは、敵はそこはわかっておるわけですから。

 こちらが撃たれたときには、オーストラリア軍もアメリカ軍も一生懸命日本のためにやってくれているというような状況のときには、それは、そこに置いてある武器やら何やら盗まれる可能性がないからやるなとかなんとかかんとか、いろいろな細かいことは決まっていますけれども、これはやはり国際的な一般常識としては、何だ、おまえ、おれたちがやってやるのに、おれたちがやられたら助けてくれないのかというと、それは、パートナーとか同盟とかアライとかいうような対応になるかといえば、国際常識的にはなかなか通らぬのではないか。常識的な範疇からいって、そういう感じが私もいたします。

前原委員 とにかく、こういった安全保障、外交の議論というのは、現実論の中で建設的な議論をしっかりしていくということが私は大事だと思いますし、それから、集団的自衛権の議論を閣内あるいは政府部内でされる場合には、余り形而上学的な議論ではなくて、具体的なニーズという国民にわかりやすい議論というものをしっかりやってもらいたいし、我々もそういった観点からしっかりこういった国会の場で議論させていただきたいと思います。

 終わります。

山口委員長 次に、長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻昭でございます。端的に御答弁をいただければ幸いでございます。

 まず、北朝鮮の地下核実験でございますけれども、日本国政府として、実験が行われた、こういう御認識でございますか。

麻生国務大臣 可能性は極めて高いと思っております。

長妻委員 可能性が極めて高い。これは、私が聞いておりますのは、アメリカや韓国というのは北朝鮮地下核実験を確認したというようなことだと聞いておりますけれども、正しいですか。

麻生国務大臣 アメリカは、自分によります核いわゆる放射能の収集をやって、核実験が行われたとアメリカは言っております。少なくとも日本側はまだ分析中としか申し上げようがありませんので、近々出せると思っておりますけれども、ただいまこの段階で核実験が行われたと確定しているわけではありません。(長妻委員「韓国、韓国」と呼ぶ)韓国も、核実験をしたというのは、アメリカより先に韓国の方が認めたと記憶します。

長妻委員 今、麻生大臣からの答弁ですけれども、内閣官房で来ていただいています下村副長官……(麻生国務大臣「韓国が後、アメリカが先」と呼ぶ)韓国が後、はい。下村副長官は、今どう確認されていますか。

下村内閣官房副長官 今、麻生外務大臣からお話ございましたが、同様に確認をしております。同様でございます。答弁、同様でございます。

長妻委員 そうすると、日本国は可能性という域をまだ出ていないということでありますね。

 やはり、これは非常に問題があると思いますのは、日本の周辺である、危機が及ぶとすれば非常に日本も可能性として高いわけでございまして、そのときに、アメリカもそのちり等の中から自然界に存在しない物質等を入手、あるいは韓国もそのようなことで、政府独自に北朝鮮の核実験を認めたということで、日本はまだ認められないというかそういう状況でございますけれども、独自に情報を収集する体制というのが今問題があるという御認識でございますか。

下村内閣官房副長官 北の核実験についての独自の情報ということでは、今委員からお話がございましたように、我が国におきましても、連日、大気中におけるちり等の調査を領空、領海の中でしておりましたが、その中でまだ確認できていないということでございます。

長妻委員 非常に心もとないと私などは思うのでございますけれども、ミサイルの発射の兆候があって危機が先ごろ高まった際にも、いつなのかというのは、私も質問しましたら、防衛庁の方が、いや、それは向こうに聞いてみないとわからないんだというようなお話をされて、情報収集というところに私自身は非常に問題があるのではないかと考えておりますけれども、日本の五大情報収集機関というとどういうところがございますか。

下村内閣官房副長官 お答えいたします。

 内閣情報調査室、警察庁警備局、防衛庁防衛政策局、公安調査庁、外務省国際情報統括官といった組織から情報を収集しております。

長妻委員 いわゆる日本の五大情報収集機関というのが配付資料の二ページにございますけれども、これらの情報収集強化に関する、政府が課題として、問題点として認識をされている点というのを資料一、内閣情報調査室で作成をいただきましたけれども、端的に言うと、内調の上司である下村副長官としては、課題としてはどこが課題なんだという御認識でございますか、いろいろ書いてありますけれども。

下村内閣官房副長官 委員が資料提出をしていただきました中にも、情報機能強化に関する最近の提言というところがございますが、これらの、情報収集機能、対外情報機能、情報集約・分析機能、情報共有の促進、情報の保全体制の確立、国会への情報委員会の設置、情報についての国際協力、いずれも我が国において、情報機能強化において重要な部分であると思いますが、さらに情報を共有しながらこれを戦略的にどう対応するかということは、大変重要な課題であると思います。

長妻委員 我が国は、専守防衛の国であるからこそ、対外情報の収集というのは、本当は、さらに世界でも誇れるような収集能力を持つべきだと私は考えているわけでございますけれども、一つの問題といたしまして、私もいろいろな情報収集、前線で頑張っておられる方のお話を聞きましたところ、最高責任者に情報をある程度上げて、そしてそこの決裁を得る。どこまで情報収集活動に踏み込んでいいのかというのは、やはりお役所が単独で判断するというのはリスクが大きい可能性もあるわけですね。

 どこまで踏み込めばいいのか、しかし、踏み込んだときに、いろいろ問題が発生したときに、上司である閣僚などの政治家と情報を共有していないと、いや、お役所が勝手に暴走したんだ、こういうことで責任をとらされる危険性も感じながら情報収集をやられている方もおられる。しかし、そういう危険性を顧みずに、自分が責任をとるということで、かなり踏み込んだ情報収集活動をされておられる方もそれは当然いらっしゃると思います。

 そういう意味で、きょうは公安調査庁の長官にも来ていただいておりますけれども、これは現実的に、抽象的な御答弁で当然結構でございますけれども、公安調査庁長官の上司というと、閣僚である、最終的に責任をとる法務大臣だと思いますが、法務大臣に逐一情報の共有というのはきちっとなされているという認識でよろしいのでございますか。

大泉政府参考人 公安調査庁は法務大臣の幕下にございますけれども、私どもは、各種情報の収集の過程で、関係の機関、例えば内閣情報調査室でございますとか、そういうところへの情報提供にもできるだけ努めております。

 大臣に対しても、随時情報を御説明するというような形で取り組んでいるところでございます。

長妻委員 こういう場所ですから当然今のような御答弁の域を出ないのかもしれませんけれども、私などが実態を拝見しておりますと、やはり先ほどの五大組織には、それぞれ上司として政治家が、閣僚がいるわけでありますけれども、そこと情報共有というのは、今のような御答弁で、しているということでありますが、実態は、やはり政治家はおしゃべりだから、閣僚もすぐしゃべるから、本当の話はなかなか言わない、抽象的な報告にとどめる、最後の責任は役所でとる。責任を共有することはしたいんだけれども、そこまでの話をしてしまうと大臣から漏れてしまう。ネタ元の保護というのもこれは当然重要でございますから。こういうジレンマというか問題が日本にはあるんではないかというふうに私は考えておりますけれども、麻生大臣と下村副長官、今の話はどうお考えですか。

麻生国務大臣 閣僚というのは守秘義務を負っておるというように理解しておりますので、新任の閣僚になられた方々はそのブリーフを受けておられると存じます。何回もなりますと、その点が私の場合はもうわかった前提で次の話にいきますけれども、基本的には守秘義務を負っておるというように理解しております。

 それから、今言われました点に関して、情報の共有という点に関して言わせていただくと、五つのいわゆる調査をする機関の中において、情報がどの程度でどれくらい共有されておるかということに関しては疑問です。各省庁が自分のところで持っている情報を他省庁に共有するべく出しているであろうかといえば、甚だ疑問だと思っております。

 それは、アメリカに行った場合、そこに行った場合はさっと横に、このレベルだったらどのレベルまでは全部ぱっと共有できるようになっておりますし、MI5、MI6、イギリスの諜報部でいっても同じような形になっておると思いますが、そういった情報の共有に関しては、日本の場合はなかなか難しいというのが現状ではないかと思っております。

下村内閣官房副長官 大臣、副大臣等におきましても、官吏服務紀律による守秘義務を負っているというふうに承知をしております。

 私自身も、総理、官房長官と同様、毎週内閣情報官からブリーフィングを受けておりまして、重要なものについて適宜そのような情報を得ているところでもございますし、また、官房長官が主宰をしております内閣情報会議において、情報関係省庁のトップ間で重要な情報事項について情報を共有しているところでございます。

長妻委員 やはり閣僚との情報共有と責任の共有ということが重要だというふうに思います。これは、例えばもう大臣も御存じだと思いますが、アメリカでは、この資料三ページ、四ページに概要が書いてありますけれども、国会による情報共有と責任の共有というような体制が完全ではございませんが、情報特別委員会というのが上院と下院に常設をされる。アメリカは大統領制ですけれども、議院内閣制のイギリスでも情報・安全保障委員会というのが置かれ、非公開での会議というのが頻繁に開かれ、そこで情報共有、責任共有という……(麻生国務大臣「週一ね」と呼ぶ)はい。週一回ですね。非公開でイギリスは会議が行われている、こういうようなことでございます。

 例えば、国会議員にも守秘義務が課されるということで、アメリカ、イギリスとも守秘義務を破った議員は懲罰委員会にかけられて措置をされるということでございますけれども、ここでも工夫があって、与野党の抗争になってはいけないので、アメリカもイギリスも、秘密漏えいに対する懲罰委員会は、与党と野党がちょうど半分ずつの数で委員が構成されているという工夫もあるということで聞いております。

 民主党といたしましても、これまで提言として、内閣情報委員会、官房長官を委員長とした委員会を官邸に設置して、先ほどの五大情報組織を束ねるようなそういう運用をすべきではないのか、そして、そこを当然閣僚がチェックするのはもちろんでございますけれども、衆議院の安全保障委員会の中に情報委員会のようなものをつくる、あるいは参議院でも外交防衛の委員会の中に情報委員会のようなものをつくって、そこで活動監視、勧告、定期報告、こういうような責任と情報を共有するような体制をつくるべきである、こういう提言もしております。

 ただ、我が党といたしましても、秘密会そして国会議員に守秘義務をかけるというところまではまだ検討している段階で、それは提言では出ておりませんけれども、やはり、例えばこういう公開の場で、私も今質問しておりますが、当然、私のこの質疑の内容というのは、北朝鮮でもこれを見ている人がいる可能性だってあるわけで、全世界にインターネットでこれは流れて、全面公開なわけでございまして、そういう意味では、本当に情報共有、責任共有というのを国会とできるのか、こういう懸念というのもあるんですが、これについて、お二方はどんな感想を持ちますか。

麻生国務大臣 ここは長妻先生、基本的には、今おっしゃったように、今、インターネットで、オンラインでほとんどオンタイムで出ていくような時代ですから、そういった意味で、行政府の活動というものを立法府がどのようにチェックするかという話なんだと思いますが、そのために、立法府がいかなる、守秘義務に限らずその他義務を負うかという話なんだと思いますので、そういう話は、これは第一義的には立法府において議論していただかないかぬということなんだと存じます。

 アメリカ、イギリス、それぞれやり方が違っておりますのは御存じのとおりですし、情報の上げ方もまた違っておりますので、そういった点を含めて、守秘義務のところは最も難しい、私自身はそのように感じます。

下村内閣官房副長官 興味深いお話だというふうに思います。しかし、今お話ございましたように、行政府のチェックを立法府がする、その立法府の委員会のあり方等については、やはり第一義的に立法府自体が御判断をして、まずは議論をしていただくことではないかと思います。

長妻委員 仮に秘密会ということを議論するにしても、やはりその背景には、政府が本当に信頼できる政府であるのかどうかということがあると思います。

 そういう意味では、河野談話と言われる慰安婦関係調査結果発表に関する談話というのを十四ページにつけさせていただいております。これは、下村副長官がいろいろ御異論があるのではないかというようなことも聞いておりますけれども、この談話のどこら辺に問題点があるとお考えでございますか。

下村内閣官房副長官 先日、私的な会合の中での発言の御指摘だというふうに思います。

 その中で私が申し上げましたのは、安倍政権の中においても、いわゆる従軍慰安婦問題における河野談話、これは閣議決定された内容でございますし、これはきちっと引き継ぐものである、そして、安倍政権の中においてもこれを変えるというような考えを持っているわけではもちろんないということで、そのまま内閣として踏襲していくのは当然であるということを発言いたしました。

 その上で、個人的にということをあえて断りまして、いわゆる従軍慰安婦問題については、その後、国会の議論の中でも、外務省の当時平林審議官が、この内容については、いろいろな、もっと研究、調査をしなければ事実関係が把握できないところもあるということを答弁もしております。そういう中で、私自身は個人的に、幅広く、科学的そしていろいろな知識等をもっと求めて、そして個人的には研究をしていきたい、そういうことを申し上げたわけでございます。

長妻委員 そうしますと、個人的にというお話でございますけれども、これは官房副長官としての発言ではないということでございますか。

下村内閣官房副長官 そのときは政治家下村博文としての発言でございます。

長妻委員 ここら辺の整理というのが私は非常に重要だと思うのは、海外に情報が発信をされる、あるいは国内にも情報がされるときに、当然、国会での発言は個人的見解を述べる閣僚の方というのは、副長官も含めて多分いないだろうと思いますけれども、国会の外での発言がどこまで個人的で、そして閣僚や準じる方々が公的な立場なのか、この使い分け。

 例えば、常識的に考えて、総理大臣が私の個人的意見ですということで外の会合であっても話すということはちょっとあり得ないのではないのか、個人的意見というか、それは総理大臣の意見になるというふうに認識しておりますので、これは官房副長官としては、官房副長官は閣僚に準じる重要な地位だと私は思いますけれども、外での会合での発言は個人的なものと公的な立場と、これは自分が断れば使い分けをするということはあり得るんだ、こういう御認識でございますか。

下村内閣官房副長官 過去の事例におきましても、同様の、もちろん内容は違いますが、個人的な政治家としての発言ということはあり得たというふうに理解をしております。

長妻委員 閣僚に準じる方は、非常にこれは混乱を招きますので、一々、それは個人的なのか、閣僚として政府なのか、これを全部チェックしていくということはできませんし、そういう意味では私は御注意をいただきたい発言であるというふうに考えておりますが、ただ、そういう発言が出る背景というのも私はなきにしもあらず、さきの大戦の政府のきちっとした調査というのが一体どういう形で進んでいるのか。

 これは政府にも通告しておりますけれども、今、日本国政府として、公式文書として、さきの大戦あるいは昭和戦争の記録というのはどこかに今ありますか。発表していますか。

松島大臣政務官 幾つかあると思いますが、まず、外務省分といたしましては、外交史料館で戦前及び戦中の日本外交に関する資料を個々のファイルごとに保管しておりまして、一般の閲覧に供しているところでございます。

長妻委員 防衛庁はどうですか。

金澤政府参考人 防衛庁として、太平洋戦争の公式の記録文書をつくったということはございません。

 他方、防衛庁では、従来より隊員の教育等の観点から戦史研究を行っているところでございまして、こうした成果の一つとして、防衛研究所戦史部において、昭和四十一年から五十五年にかけて、太平洋戦争につき編さんした戦史叢書というものを発行しております。

下村内閣官房副長官 政府として、戦後、さきの大戦に関する公式の記録、戦史が作成されたことはないと承知しております。

長妻委員 今、副長官の御答弁がすべてだと思うんですが、外務省からの御答弁というのは、外交戦史館ということで、戦史の資料的な、公式見解ではないということでございます。

 ここが非常に私はこだわるところでありまして、例えばドイツも、これは西ドイツの時代に、政府がいろいろな委員会をつくって、あのさきの大戦を公式見解として政府の記録にとどめていこう、こういう試みがありまして、捕虜に関しましては、四十万人もの復員兵の証言を活用、引用して、全二十二巻のドイツ戦争捕虜の歴史というのを、これは西ドイツ政府、行政府が公式見解として発表して、資料として残している。これで政府見解というのはきちっと出ているわけでございます。

 今のお話でも、公式な記録さえない、政府公式の。では、一体、三百十万人がさきの大戦で亡くなっておられるということですけれども、それも実は、三百十万か、きちっとした数字はよくわからない。あるいは、さきの大戦というのは当然税金を使って日本の活動が行われているわけですけれども、納税者に対して、どういう形で税金がどういうところに使われたのかということも一切明らかになっていない。

 個人の戦争責任者を特定するということも議論としてはあるかもしれません。それと同時に、組織の責任、日本がシビリアンコントロールが旧帝国陸軍にきかなくて、どういう仕組みで国策の誤りというのが生じたのかどうか。こういうことも議論する前提として、別に評価を入れて、政治的な議論の中で入れるということも必要ですけれども、その前の段階として、記録すら政府の公式文書として一切ないというのは、これはほかの国から見てもいろいろ混乱を招く大きな要因になるというふうに私は思っております。

 そういう意味では、民主党を中心に、国会図書館の中に恒久平和調査局というのを設置して、ここが権限を持って、政府にも文書を出してもらって、そういう資料をきちっとしてつくるという法案、これまで四回出しておりますけれども、過去三回は審議もされずに廃案、今出している最中でございます。私は、こういう非常におかしな状況がいろいろな問題を招いているんではないのかというふうに思っております。

 そういう意味では、もう一つの談話としては、村山談話というのも日本にはございます。

 これについても、十三ページに書いてございますけれども、これも私も質問主意書等で何回か政府に質問をさせていただきました。この中で「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、」という、「国策を誤り、」という文言がここにございますけれども、例えば麻生大臣の御見解としては、国策を誤りというのは具体的にはどの部分が国策を誤りというふうにお考えでございますか。

麻生国務大臣 一概に、長妻先生、国策を誤り、どの部分がと言われても、これはさまざまな議論があるので、具体的な、この部分が間違いだったというようなことが断定的に一つの部分が言えるということはなかなか難しいのではないかと思っています。あの発言とか、あの日あのときあの場面であの人の発言によってというようなことが断定できるかというと、なかなかそういったようなことは言えないのではないかと思っております。

 したがって、今、日本がやってきたことは、少なくともあの広島の原爆の記念碑にしても、いろいろな話でやはりこの種の話を風化させないようにすることということをいろいろ戦後ずっとやってき、少なくとも六十一年間確実に戦火を交えることなく平和でやってきたという実績を示したというので、実績でそれにこたえていると理解をしております。

長妻委員 国策を誤りということは、政府として公式見解としてあるけれども、どこの部分かというのはちょっとわからないんだと、これもおかしな話だと私は思うんです。やはり先ほど申し上げました組織の問題というのが当時の「国策を誤り、」の中に、日本の当時の軍事組織にあるとすれば、やはりその残滓といいますか遺伝子といいますか、そういうものが今の日本の組織に引き継がれているとすれば、これは非常に問題であります。

 ただ、それが引き継がれているかどうか、どこが問題だったのかすらわからなければ、今現在の組織にそういう問題が引き継がれているのかというのもなかなかわからないわけでございまして、公式な記録もないということではこれは問題があると私は思いますので、我々は、さっき申し上げた国会図書館内に恒久平和調査局を設置する法案等々、これをさらに出していきたいというふうに考えております。

 さらに、民主党は、野党と共同で、シベリアに抑留されておられた方々の補償の法案も提出しておりますけれども、これも実態は政府公式文書では何にもないということで、何から何まで、恩給欠格者あるいは戦後引揚者、何も公文書がない。こういうことで本当にその補償に、自民党としては、例えばシベリア問題あるいは恩給欠格者の方々あるいは戦後引揚者の方々に関しては今回の法案で、戦後六十一年、これで決着を図るというようなことを言っていると聞いております。しかし、基礎的なものが何もない中でそこでふたをする、こういうような姿勢に私は感じておりますので、ぜひそこら辺を御協力いただきたいというふうにも思うわけです。

 そして、次の問題といたしましては、北朝鮮の問題でございますけれども、公安調査庁にお伺いしますが、北朝鮮の関与が疑われている不法な事件というのはどういうものがございますか。

大泉政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの点につきましては、大韓航空機爆破事件などのテロ工作員事件のほかに、我が国からの大量破壊兵器関連物資などの不正輸出、我が国への覚せい剤の密輸あるいはにせドル札の所持などの事案を把握しております。

長妻委員 八ページに、公安調査庁からつくっていただいた「北朝鮮の関与が疑われる不法活動の一端」ということでいただいております。

 そして、防衛庁にお伺いしますが、北朝鮮というのは生物化学兵器、いわゆるBC兵器というのはどういうものを保有しているというふうに認識しておられますか。

山崎政府参考人 ちょっと突然の御質問でございます。資料を持ち合わせておりませんので、多少不正確な部分があろうかと思いますが、北鮮が有しております化学戦の能力としては、大体、諸外国が持っておりますサリン等すべての能力はほとんど持っているんではないかというふうなことが言われております。

 それから、生物関係につきましては、これも米国の国防省が発表しております資料等によりますと、天然痘、炭疽菌それからコレラ、そういう生物戦能力を有しているんではないかというふうに公表されております。

長妻委員 北朝鮮の脅威というのは、当然でございますが核だけではございませんで、テロということも想定されるわけでございますけれども、警察と防衛庁は国内で発生するテロに対してどういうような防止策というのを考えておられるか、一言ずつお願いします。

福島政府参考人 警察では、日本国内におけるテロを未然に防止するためには、事前にいかにその兆候をつかむかが重要であると考えておりまして、そのために徹底した情報収集を行っているところであります。その上で、警察では、重要施設に対する警戒警備など未然防止対策を徹底いたしますとともに、関係行政機関や事業者等と合同訓練を行うなどして、各種テロに備えております。

 引き続き、関係機関との連携を緊密にいたしまして、各種テロ対策を強力に推進してまいる所存でございます。

山崎政府参考人 防衛庁といたしましては、テロや武装工作員等へ対処するため、まず法的な整備としては、先生よく御承知だと思っておりますが、まず、警護出動等を新設するという法的な整備をずっと整えてきております。

 それから、運用面の強化としましては、テロや武装工作員等へ対処するために、個人用の暗視装置とか、あるいは情報収集用のヘリコプターの整備、あるいは高い機動力を有します特殊作戦軍の新編等を行っております。

 そのほか、自衛隊と警察が共同して、今申し上げましたようなテロや武装工作員等に対処するためにマニュアル等を整備するほか、共同の図上訓練とか共同の実動訓練を実施しているところでございます。

長妻委員 そして、この配付資料で十、十一、十二ページでお配りいたしましたけれども、公安調査庁が「国際テロリズム要覧二〇〇六」というのを発行して、その中でテロの手口というのを分析しておりまして、これは大変私も興味深く、防止の観点から拝見したわけでございます。

 これは公安調査庁にお伺いしますが、簡潔に言うと、この資料、どういう手口か御説明いただけますか。

大泉政府参考人 そこの、今委員お示しの資料にございますとおり、テロリストが用いる主なテロ手法として、この中では、誘拐及び爆弾テロというようなものについて少しく詳細に分析したものでございます。

 誘拐でございますれば、まず対象者の選定、誘拐の準備などなど、さまざまな方法でその周辺を十分調査した上で、最も成功率の高い方法をとるということであり、また爆弾事件につきましても、同様の周到な準備、またさまざまな技術の駆使ということで、爆弾テロの成果を高くしようということで動いているということについて少しく例を挙げまして、各国で実際に生起した事例などの集約を踏まえて作成したものでございます。

長妻委員 ぜひ、いろいろ情報収集をしていただいて、防止に取り組んでいただきたいと思います。

 最後に、きょうは経済産業省の御担当の方も来られておりますけれども、先ほどから議論になっております核兵器の議論の問題でございますけれども、十月二十五日の衆議院経済産業委員会で、甘利大臣の御答弁の中に、日本はこの平和利用に徹するという完全なお墨つきのもとに、日本なら任せて安心というわけでありますから、この信頼を揺るがせることはあってはならないと思っておりますと平和利用について述べておられて、核兵器の議論は、その種の議論もすべきではないと思いますと、甘利大臣も平和利用への影響の懸念というのを表明されていると私は感じました。

 経済産業省の方に聞きますけれども、こういう議論が出てくると、平和利用に関してどんなような影響が出てくるのか、御答弁いただきたい。

舟木政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国が、核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませずとの非核三原則を堅持することにつきましては、これまで歴代の内閣によりまして、累次にわたり明確に表明されているところでございまして、政府としては、今後ともこれを堅持していく立場に変わりはございません。

 また、法律上も、原子力基本法によりまして、我が国の原子力活動は平和目的に限定されております。さらに、我が国は、核兵器不拡散条約上の非核兵器国としまして、核兵器の製造や取得等を行わない義務を負っているところでございますので、このような点から見ましても、我が国が核兵器を保有することはないということを申し上げさせていただきたいと思います。

長妻委員 甘利大臣は、おとついの発言で、多分、そういう議論がエスカレートして、平和利用に影響が出てくる懸念を私は表明されたというふうにも思うんです。

 最後に、麻生大臣、閣僚からもこういうお話がある中で、この議論というのはどういうふうに御認識をされ、今後も議論をお続けになるおつもりなのか、具体的にはどういうような議論なのか、お尋ねをしたいと思います。

麻生国務大臣 たびたびお答えをいたしておると思いますが、一般論として、国の安全保障のあり方というものは、昭和四十三年、当時のいわゆる佐藤内閣のときとは大幅に変わりました。二極体制が一極体制に変わり、隣に核保有国と自称する国が出てきておるわけですから。したがいまして、それぞれの時代状況、国際状況を踏まえた上で、さまざまな国民的議論があり得るんだと考えておるとたびたび申し上げております。

 ただ、今申し上げましたように、これもたびたび申し上げておりますが、日本の政府として非核三原則を堅持するということにつきましては、歴代の政府が累次にわたって言明をしておるとおりということもこれまた申し上げておりまして、今後ともこれを堅持していく立場に変わりはありません。

 加えて、日本の場合は、いわゆる原子力基本法というものもありますので、これによって平和目的に限定をされておるという法律上の規定もありますし、また、兵器に関しまして言わせていただければ、いわゆる核兵器のノンプロリファレーション・トリーティーという、通称NPTというものの義務を、条約加盟国というのは義務を負っておりますので、そういった点から勘案しても、我が国が今、核兵器を保有することはないと、きのうも笠井さんに申し上げましたので、あらかじめお断りするわけじゃありませんけれども、もう一回申し上げるようで恐縮ですけれども。

長妻委員 以上でございます。

 ありがとうございました。

山口委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 大臣の答弁はおとといでしたけれども。

 日本共産党の笠井亮です。日本政府と麻生外務大臣の核兵器廃絶に向けた立場について質問したいと思います。

 まず初めに、現在開催中の第六十一回国連総会において、核兵器関連の決議案がさまざま出ておりました。非同盟諸国提案のもの、それから新アジェンダ連合のもの、さまざまありましたが、その中で、先ほど麻生大臣からも報告がありましたが、日本政府が提出していた核兵器の全面廃絶に向けた新たな決意と題する決議案が、軍縮、安全保障問題を扱う第一委員会で未明に採択をされたということであります。その趣旨と概要、ことしの新たな特徴について、端的に説明を願いたいと思います。

松島大臣政務官 おっしゃいましたように、けさ採択されました。これは、新たな部分といたしましては、一つに、二〇一〇年NPT運用検討会議を成功に導くため、二〇〇七年の第一回準備委員会に向けた協力を国際社会へ呼びかけるということ、そして第二に、停滞が指摘されておりますジュネーブ軍縮会議に対し、実質的作業の早期再開を呼びかけていく、これが新しい点でございます。

 そしてまた、昨年と同じ点につきましては、NPTの遵守、CTBTの早期発効、さらに、兵器用核分裂性物質生産禁止条約、いわゆるカットオフ条約交渉の早期開始、そしてすべての種類の核兵器の一層の削減と核軍縮のための具体的措置をとるように求めている次第であります。

笠井委員 決議の中では、ことし新たに北朝鮮の核実験を非難するという言及もあったというふうに、私、承知しております。

 広島、長崎の被爆から六十一年ということでありまして、ことしの広島平和宣言、長崎平和宣言も含めて、被爆者と被爆国民の思いというのは、非常に核兵器廃絶が強い。まして、北朝鮮が核実験の暴挙ということを行って、国際社会が厳しく糾弾をする、抗議するという中で、国連安保理で全会一致決議が上がって、そして今、要求しているという段階です。

 ことしは、原子兵器の各国の配備からの廃絶を誓った一九四六年一月の第一回国連総会第一号決議の採択から六十年という節目でもある。そして、来年四月には、今ありましたけれども、次のNPT運用検討会議の準備会合が開かれる。まさに今、唯一の被爆国の政府として、国連の内外で核兵器全面禁止、そしてまたその条約の締結に向けても交渉を速やかにやるということも含めて、核兵器廃絶のイニシアチブが非常に重要だと私は思います。

 そこで、大臣、ことしの国連総会に提出して、今第一委員会で採択された決議を通じて、日本政府として、国際社会に対して、また北朝鮮に対してどういうメッセージを送って、どういう行動をすべきだと求めることに、決議されたわけですから、なったというふうにお考えでしょうか。

麻生国務大臣 先ほど御答弁を申し上げましたように、百六十九対三という圧倒的多数で、全面的廃絶に向けた法案が、法案というか提案が、これは新たな決意として日本が国連総会に提案をした、提出をした決議であります。

 したがって、特に、今言われましたように、一七一八が出ましたように、十月の九日でしたか、北朝鮮のあれも行われておりますので、国際社会の政治的意思というものが新たに表明をされたというように理解をしておりますので、今後とも、日本としては、NPTというものを基礎として、来年からもう一回、これの見直しを含めまして、さらにこういったのといろいろな案が今出されておりますが、NPTを基礎とする国際的な軍縮不拡散の維持強化のために、NPTの主要なメンバーの一人でもありますので、我々としては引き続き努力をしてまいりたいと思っております。

笠井委員 反対したアメリカ、北朝鮮など三カ国という問題、向こうの問題があると思うんです。それから、棄権した中にも、日本決議案には私もいろいろ問題点は感じておりますが、いずれにしても、被爆国日本の役割が極めて重要だと、今大臣もそういう認識に立っているということでありました。

 ところが、その日本政府が、一方では、国連にこういう決議案を出して、そしてこれから総会で採択される段階になりますが、また、核兵器廃絶ということ、そして北朝鮮の核兵器、核開発の放棄を求めるということをやりながら、他方では、日本政府の与党や政府の要人が、日本の核兵器保有をめぐって議論すべきだと。いろいろなニュアンスがありますが、こういうことを発言するというのは、私は両立し得ないというふうに思うんです。

 世界各国や北朝鮮には、みんな持つな、なくそうじゃないかと言いながら、日本については、持つかどうかは議論する、検討するということでは、これはもう説得力もないし、信頼もないし、総会に向けてどうだということだって出てくる。核兵器廃絶の決議案を国連に出された日本の外務大臣として、この点はどうお考えになりますか。

麻生国務大臣 笠井先生、これもたびたび申し上げてきたと存じますけれども、佐藤内閣のときの、非核三原則が決まったときの経緯を知っておられる方というのは、今国会議員にほとんどいらっしゃいませんよ、ほとんどおられぬ。だって、その当時その現場におられた方はほとんど今、年齢からいってもそれは無理ですって。正直申し上げて、私の年齢ですら、その当時は学生でした。学生じゃない、社会人でありました。そういった意味では、なかなか御存じない方が多い。

 したがって、非核三原則という日本の原則というものになった経緯を含めまして、今の国際情勢が変わった中で、やはり非核三原則を堅持すべきだということを改めて議論した上で、非核三原則は堅持ということをきちんと議論して、腑に落とした上でやられた方がより説得力があるのではないかという結論もまたあり得るのではございませんかと申し上げております。

笠井委員 大臣、いろいろな言い方をされるんですが、そもそもの発端のとき以来、とにかく場面場面では、だんだん隣がみんな持つときに、日本だけが何も検討もされていないというのはいかがなものか、持つか持たないかを議論した上で持たないということも一つの選択肢だと。隣が持つということになったときに、一応そのことに関して検討するのもだめでというのではあれだということで言われたわけですが、それがもう世界を駆けめぐる、日本を駆けめぐる。

 私は、隣が持つことになった、その当時の、佐藤内閣の当時の経過からまた世の中が変わってきている、状況が変わっているからこちらも検討するということもあってもいいじゃないかという話は、このままでいいのかという話は、それ自体がもう既に誤ったメッセージを内外に発していると思うんです。

 これは、言論封鎖するかの問題じゃなくて、政府与党の要人、まして外務大臣が、核兵器廃絶をやろうじゃないかと国連で提案している政府の外務大臣がそういう発言をしたことが問題だ。安保理決議でも、国際社会が一致して平和的、外交的にと言っている、そして北朝鮮にどうやって復帰させるかと知恵を絞っているときに、そういうときに、まさに加盟国の緊張を激化させないようにしようねと言っているときに、それに反するような方向の発言が日本から発せられるという問題であります。

 大臣は、この問題にかかわって、昨日の参議院の外交防衛委員会、私も答弁を聞きました。時代状況も変わると非核三原則が話題になってもおかしくない、だが、今の政府として変えるつもりはないというふうに言われました。今は変えるつもりないと。

 これは確認ですが、では、将来については、状況が変わって変える必要も出てくることもあるというふうにお考えなんでしょうか。

麻生国務大臣 笠井先生、私は自分で、二十世紀が教えてくれた最大の教訓の一つは、二十年後のことはだれも予想できないということだと思います。一九七九年にアフガニスタンにソ連が侵攻したときに、十年後、ソ連邦がなくなるなんということを予想した人は一人もいません。したがって、私どもは、余り将来のことについてまで政治家がわかったようなことを言うのは、そういったところに対しては極めて謙虚であらねばならぬと思っております。したがって、どういう状況になるかというものに関しては、私は予測を超えられません。

 したがって、今の段階で、核の問題は、非核三原則というものに関しましては、今の現行政府は変えるつもりはないということであって、百年先どうなっておるかというようなお話をされても、私どもにはちょっと、何とも無責任な答弁にしかならぬと思います。

笠井委員 百年先の話をしているわけじゃないのですが、いずれにしても、日本は被爆国です。原爆の被害を大臣も強調されていますが、だれよりも知っているというふうな国であります。核兵器の危険性についてだれよりも知っている、知らなければいけないという国であり、その政府だということでありまして、周りが持つから、状況が変わって、そしていずれはいろいろなことも検討しなきゃいけないということになれば、これは目には目を、歯には歯をということで、やはり核兵器を持つ、必要なんだという話で、最悪の核軍拡につながる。絶対に被爆国日本がそういうことを言っちゃいけない。

 そして、そんなことを言えば、北朝鮮に口実を与えることになる、つけ込む余地を与えることになるということで、私は、将来にわたって、いかなる状況でも被爆国日本政府が絶対にとってはならない態度だし、核兵器廃絶ということをそれこそ国是として、そして非核三原則を国是としてやはり言い続けるということが必要だと思うんです。

 今の政府として、非核三原則、それについては堅持するというふうに言われるのであれば、少なくとも、隣が持ったら検討とか、持つか持たないかの議論ということは撤回されるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 これもたびたび御答弁申し上げていると思いますが、言論というものに関しまして、少なくとも、政府の中で議論をするわけではありませんが、広くこの種の問題に関して多くの議論というものがなされてもおかしくないのではないか、基本的にそう思っております。

笠井委員 日本政府としての責任と自覚というのを本当に持つべきだ。国連で提案しているわけです。そして、これから総会を迎える。でも、その日本では、閣僚の中からも議論したらいい、検討したらいいという話になったときに、こんな政府、信頼を得られませんよ。

 この一連の発言をめぐって、久間防衛庁長官は答弁の中で、百人のうち九十九人が持たないと思っていても、一人でも持つべきだという話をすると、国際社会に対してフィフティー・フィフティーの議論みたいに喧伝されるというおそれがあるというふうに言われて、日本は核を持たないことをはっきりさせることによって、国々に対して核を廃絶しようという訴えができるというふうに答弁しました。

 私、これは極めて重要な視点だと思うんです。そういう答弁が防衛庁長官から出るわけで、外交を担当する外務大臣こそ、むしろ先頭に立ってそういう主張をすべきだ。議論するというんじゃなくて、なぜ持たないのか、持ってはいけないのか、なぜ核兵器はなくさなければいけないのかという発言こそ明確にやっていただきたい。それこそ外務大臣のやるべきことだと思うんです。そして、世界に向けて被爆国のメッセージを発することになる。大臣、そのことを明確に言っていただきたいのですが、どうですか。

麻生国務大臣 余り大きな声を出されなくても聞こえますから、大丈夫ですから、余り興奮せぬで。大きな声を出されると、こっちも耳がいい方なものですから、済みません。

 今のことに関しましても、たびたび申し上げるように、日本政府としては圧倒的多数の決を得て、百六十九カ国から、アメリカが反対している中、日本は百六十九カ国、日本が提案して通しているという明確なメッセージを発し、しかも多くの国々の、百六十九カ国の賛成を得たというのは、これだけでも立派な事実として、日本の言葉に信用がなければこんなことはできない、過去六十一年間の実績がそれを証明している、私どもはそう思っております。

山口委員長 笠井君、時間が過ぎておりますので、手短に願います。

笠井委員 終わりますけれども、私、大きな声を出さなきゃ大臣の耳に届かないかなと思ってやっているわけですけれども、私は、やはりそういう点では、アメリカに大体反対されたこと自体が重要な点だと思って、またこれは議論したいですが、本当にそういう立場に立つなら発言は撤回すべきだということを重ねて申し上げて、質問を終わります。

山口委員長 次に、日森文尋君。

日森委員 社民党の日森でございます。

 余り大きな声ではなくて御質問させていただきたいと思いますが、一体この内閣はどうなっているのだという思いが、少数派の人はいらっしゃるかもしれませんが、多くの国民がそう思い始めているのではないかという心配があります。

 もちろん、大臣の発言もそうですが、先ほどまでそこにいらっしゃった下村官房副長官、当時の河野官房長官の談話について疑義を呈するというようなことがありましたし、これは自民党の党内ですが、中川政調会長も危ない発言をして、これがとりわけ国際社会から大変心配の目で見られているという状況があるわけです。

 これは何度も質問されていることですが、私はきょう初めてなものですから、改めて生の声で大臣からお聞きをしたいと思っています。

 二十四日の参議院の外交防衛委員会、核をなぜ持たないかという理由をきっちり議論しておいた方がいいというふうに大臣が答弁をされたようです。なぜ核を持たないかという理由をきっちり議論した方がいい、これは、今までの議論の中で非核三原則が生まれてきたというのは事実であって、今さら核を持たないかという議論をそもそも始める必要はないのではないか。にもかかわらず、大臣があえてこういう答弁を参議院の外交防衛委員会でなさった。これは、実は、日本が非核三原則を国是としているということについて大臣自身が疑問に思っているのか、あるいは、これまで核を持たないというふうに決めてきたということの経過の中に何か疑義を生じることがあったのか、ぜひこれを最初にお聞かせいただきたいと思います。

麻生国務大臣 これも、きょう初めてということなので、改めて全部申し上げさせていただきます。

 この非核、持たず、つくらず、持ち込ませず、持ち込ませずも含めて非核三原則ですから、それをつくられた昭和四十年代、まだいわゆる冷戦構造がはっきりしていた時代でありました。その当時、北朝鮮が核を持つという話はありません。しかし今、現実問題として、隣に核を持つという国が三十七、八年ぶりでそこに出てきたという状況にあって、二極構造は崩壊し、いろいろな形で日米安全保障条約は有効に作動するのかという話をみんなが論議しというような状況の中にあって、日本は核を持たない、持ち込ませもしないというような話をみんなでやっていくということに関しては、今おられる方々はそれ以後生まれられた方、そのころは私、今六十六ですから、そのときまだ三十代ですから。

 そういったことを考えますと、今の時代にあって、そういったものをもう一回きっちり考えないと、どうしてこういうことになったのかということは、いや、昔からそうなっているからというのではなくて、少なくとも、こういう新しい国際情勢の中であっても、我々は、つくらない、持ち込ませない、持たないという話をきっちりするというのは、私どもとしてきちんとしておかないと、ただただ昔からそう言われているからというだけで、持たない、持ち込ませないというのが、私どもとしてはなかなか理解は、説得力としては、きちんと一回されておいた方がよろしいのではないか、そう申し上げております。

日森委員 随分おかしな話で、大臣自身がその経過について、例えば六七年の佐藤内閣の、そのときはもう社会人になられていましたか、ということについて一つ挙げておられたし、それから、NPTの問題もそうですし、さらに、原子力基本法だとかということも、それも根拠になって非核三原則があるんだということをさっきおっしゃっていました。これはもう事実であって、そのことを再確認しろという意味なんですか、国民全体で再確認しろと。再確認して非核三原則を改めて確認する、そういう意味での議論をしようというふうにおっしゃったのか。

 ところが、そうだとすると、どうも北朝鮮が核を持っているかもしれないとか、一極というのは、アメリカだけがえらい強くなって国際情勢が変わった、時代状況が変わった、その中で議論しようということは、若干、どうも考え方にずれがあるんじゃないか。再確認するのか、それとも、新たな状況の中で非核三原則について議論しようというのは、随分違った意味が出てくると思うんですよ。

 本当のところは、大臣、それはどういう意味でそうおっしゃったのか、もう一回聞かせてくださいよ。

麻生国務大臣 少なくとも、今の論理が矛盾しているなんか全然思いません。今の状況は、あの当時とは状況は全く違っておるんですから、その上で、改めて再確認されるんですか、それとも全然別の議論が出てくるのか。こっちは言論封殺なんかしているわけじゃありませんから、いろいろな意味で広く議論がされるところでよろしいんじゃないか。

 したがって、そういう新しい状況の中にあって、議論の結果、同じような再確認のことになったら、それも結論です。また新しい状況が出てくるかもしれない、それはわかりませんよ。しかし、私どもとしては、少なくともいろいろ議論することによって、持ち込ませないという意味はどういう意味かというようなことも含めて、そういったものをきちんと再確認しておかないと、腑に落としておかないと、何となく昔から言われているからそうなったというのではないのではないのかというので、もう一回再確認をするという意味にとらえる結論になるかもしれませんし、そういった意味では、広く国民の間で議論が沸き起こっておかしいのではないのではないかと申し上げております。

日森委員 それを外務大臣が言うからだめなんですよ。外務大臣がだめなんです。(発言する者あり)いや、総理は何と言っていますか。議論もしないと言っているでしょう。非核三原則堅持、これは国是だと言っているんですよ。それが内閣の統一した見解だとおっしゃっている。議論しないと言っていますよ、安倍晋三総理は。

 それで、そこの内閣の一員である外務大臣、しかも、もしかしたら総理大臣になったかもしれない……(発言する者あり)それはまあ待ってください。なったかもしれないですよ、将来そうかもしれません、失礼しました。麻生さんがそれを言うと、だから内閣が心配だというふうに最初に申し上げたんですよ。もし、それを強烈にもっとおっしゃりたいんだったら、それは大臣をおやめになって在野で言った方がよろしいんじゃないかというふうに思いますが、どうなんでしょう。

麻生国務大臣 この点に関しましても、今までの議論を聞いていないと言われましたので、改めて申し上げさせていただきますが、この内閣としてはと言って、内閣の一員としてはということはずっと申し上げてきました。歴代の内閣が累次にわたってこの問題を表明してきており、この内閣でも、その種のことを変えるつもりはありません。内閣の一員ですから、変えるつもりはありませんと申し上げてきております。

 しかし、このことに関して、党がいろいろな意見を言われたり、また、国民の間でいろいろ議論が起き上がるのまで封殺するという気持ちはありませんと申し上げております。

日森委員 小泉総理の靖国参拝の理屈と同じような話になるんじゃないかという思いがあるんですが、しかし、外務大臣というのは本来そういうことを言っちゃいけないんですよ。いけないんですよ。

 しかも、先ほど来話に出ていました、国是となった経過その他についてはもう触れませんが、これはもう原点には、先ほどの話にありましたけれども、広島、長崎のあの悲惨な結果があるわけですよ。あるわけです。そこを原点にして、私たちは国是として非核三原則ということをしっかりと打ち出してきたし、これは単に我が国だけの問題ではなくて、世界に向かって核廃絶を積極的に訴えていくという物すごい重大なアピールだというふうに私は思っているんです。その意味で、外務大臣が果たす役割は大変重要なんですよ。

 もう時間がありませんから、ちょっと、全部省いて最後の質問だけしたいと思いますが、非核三原則、今、原子力基本法とかああいう法律が一定の規制をしていますが、これをきっちりと法制化していくこと、これは必要じゃないかと思うんですよ。我が国は、時代状況の変化あるいは国際状況の変化があっても、原点からしっかりと非核三原則をつくってきたわけだから、これは未来永劫不変です。百年先のことはわからないとさっきおっしゃったけれども、そうじゃないんですよ。そこをしっかりと原点にしないと国際社会にアピールできないということになるじゃないですか。もしかしたら、二十年先、日本は変わるかもしれないと思われていたら、非核の運動を国際社会にアピールできないですよ。そういう意味で、きちんと法制化をするということについて、麻生大臣だったらできるんじゃないかという期待を込めて、ちょっと質問しておきたいと思います。

麻生国務大臣 日本が核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませずといういわゆる非核三原則というものについては、これまでも、先ほど申し上げましたように、歴代の内閣が累次にわたって明確に表明をされてきております。したがって、世界じゅうで、日本というのはそういうことになっておるということについては十分に認識をされていると存じます。したがって、改めてここで法制化をする必要までは感じません。

日森委員 続きはまたどこかでやらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

山口委員長 次に、経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定第五条3及び5の規定に基づく市場アクセスの条件の改善に関する日本国とメキシコ合衆国との間の議定書の締結について承認を求めるの件及び経済上の連携に関する日本国とフィリピン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 政府から順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣麻生太郎君。

    ―――――――――――――

 経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定第五条3及び5の規定に基づく市場アクセスの条件の改善に関する日本国とメキシコ合衆国との間の議定書の締結について承認を求めるの件

 経済上の連携に関する日本国とフィリピン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

麻生国務大臣 ただいま議題となりました経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定第五条3及び5の規定に基づく市場アクセスの条件の改善に関する日本国とメキシコ合衆国との間の議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明申し上げさせていただきます。

 経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定の規定に基づき、鶏肉、牛肉及びオレンジ生果の関税割り当ての枠内税率等を定める議定書の締結交渉を行ってきた結果、平成十八年九月二十日に、メキシコ市において、我が方成田駐メキシコ大使と先方ガルシア・デ・アルバ経済大臣との間で、この議定書の署名が行われた次第であります。

 この議定書の締結が両国間の貿易の促進に資することが期待されます。

 よって、ここに、この議定書について御承認を求める次第であります。

 次に、経済上の連携に関する日本国とフィリピン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 平成十六年二月以来、両国間で協定の締結交渉を行ってきた結果、平成十八年九月九日にヘルシンキにおいて、我が方小泉内閣総理大臣と先方アロヨ大統領との間で、この協定の署名が行われた次第であります。

 この協定は、両国間において、物品及びサービスの貿易の自由化及び円滑化を進め、投資の機会を増大させ、ビジネス環境の整備を図り、知的財産の保護を確保し、幅広い分野での協力を促進するものであります。

 この協定の締結により、幅広い分野において、両国間の経済上の連携が強化されることを通じ、両国経済が一段と活性化され、また、両国関係全般が、より一層緊密となることが期待されております。

 よって、ここに、この協定について御承認を求める次第であります。

 以上二件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認賜りますようよろしくお願い申し上げます。

山口委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十五分散会


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