衆議院

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第4号 平成18年11月1日(水曜日)

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平成十八年十一月一日(水曜日)

    午前九時三十二分開議

 出席委員

   委員長 山口 泰明君

   理事 小野寺五典君 理事 三ッ矢憲生君

   理事 三原 朝彦君 理事 やまぎわ大志郎君

   理事 山中あき子君 理事 長島 昭久君

   理事 山口  壯君 理事 丸谷 佳織君

      愛知 和男君    伊藤 公介君

      飯島 夕雁君    猪口 邦子君

      岩永 峯一君    宇野  治君

      小里 泰弘君    小野 次郎君

      河野 太郎君    高村 正彦君

      鈴木 馨祐君    鈴木 淳司君

      田中 良生君    西本 勝子君

      松島みどり君    山内 康一君

      近藤 洋介君    笹木 竜三君

      田中眞紀子君    前原 誠司君

      山井 和則君    高木 陽介君

      笠井  亮君    照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   外務副大臣        岩屋  毅君

   経済産業副大臣      渡辺 博道君

   外務大臣政務官      松島みどり君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 深山 卓也君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  稲見 敏夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 猪俣 弘司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 梅田 邦夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 水上 正史君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    石川  薫君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           草野 隆彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           白石 順一君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 岡崎 淳一君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           中村 秀一君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           佐久間 隆君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           立岡 恒良君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           高田 稔久君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      舟木  隆君

   外務委員会専門員     前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月一日

 辞任         補欠選任

  猪口 邦子君     飯島 夕雁君

  嘉数 知賢君     岩永 峯一君

  篠田 陽介君     西本 勝子君

  新藤 義孝君     田中 良生君

  長妻  昭君     近藤 洋介君

  笠  浩史君     山井 和則君

同日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     猪口 邦子君

  岩永 峯一君     小里 泰弘君

  田中 良生君     新藤 義孝君

  西本 勝子君     篠田 陽介君

  近藤 洋介君     長妻  昭君

  山井 和則君     笠  浩史君

同日

 辞任         補欠選任

  小里 泰弘君     鈴木 淳司君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 淳司君     嘉数 知賢君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定第五条3及び5の規定に基づく市場アクセスの条件の改善に関する日本国とメキシコ合衆国との間の議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

 経済上の連携に関する日本国とフィリピン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第二号)


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     ――――◇―――――

山口委員長 これより会議を開きます。

 経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定第五条3及び5の規定に基づく市場アクセスの条件の改善に関する日本国とメキシコ合衆国との間の議定書の締結について承認を求めるの件及び経済上の連携に関する日本国とフィリピン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官猪俣弘司君、大臣官房参事官梅田邦夫君、大臣官房参事官水上正史君、経済局長石川薫君、法務省大臣官房審議官深山卓也君、入国管理局長稲見敏夫君、厚生労働省大臣官房審議官草野隆彦君、大臣官房審議官白石順一君、職業安定局高齢・障害者雇用対策部長岡崎淳一君、社会・援護局長中村秀一君、農林水産省大臣官房審議官佐久間隆君、経済産業省大臣官房審議官立岡恒良君、大臣官房審議官高田稔久君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長舟木隆君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山口委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。丸谷佳織さん。

丸谷委員 おはようございます。公明党の丸谷でございます。

 本日は、二つのEPAについて審議をさせていただきますので、よろしくお願いします。

 その前に、昨日の報道で、六者会合の復帰という報道が入ってまいりましたので、この点について、冒頭、若干質問をさせていただきたいと思います。

 報道によりますと、米国、そして北朝鮮、中国の三カ国の首席代表が昨日北京で非公式協議を行い、六者会合を近く再開することで合意したというふうにございます。北朝鮮はこの会合に復帰をすることには無条件で参加をするといったような報道もございますけれども、現在、日本政府として把握をしていらっしゃる事実関係、また事実であればこれに対する評価、そして開催時期、どのような時期を見込まれるのか、この点についてお伺いをいたします。

麻生国務大臣 昨日八時に中国外交部の方から正式に発表があっておりますのはもう御存じのとおりであります。

 日本としては、従来より六者会合に北朝鮮が復帰をするということは求めてきていたところでもありましたので、六者協議というのはこの問題を解決するに当たっては最適な協議の場所だと思っております。その考えは従来とも変わっておりません。したがって、近いうちに六者会合が開催されることになりつつあるということはまことに喜ばしいことだと思っております。

 ただ、その条件についてはまだわかっておりませんので、何となく、六者協議が開催される、よかったよかったという、赤飯が炊けるような話じゃない、私は基本的にそう思っております。したがって、北朝鮮というところの話は、安保理決議の一七一八というのを思い出していただくとわかると思いますが、あれはすべての核兵器及び既存の核開発計画というものを放棄しなければならないというように書いてありますので、六者会合を通じてこれが実現するように、これは当然のこととして引き続き求めていくことになります。

 会合の時期につきましては、これはちょっと六者の話でありますので、関係国間で協議を今から開始することになろうと思いますので、今の段階で来週とか来月とかいうようなことを申し上げる段階にはありません。

丸谷委員 六者協議の場が、核問題あるいは日本にとって非常に重要な問題でございます拉致等も含めまして、北との対話を再開する非常に重要な場であるという御認識は私も共有をしております。

 ただ、北朝鮮の核実験に対する国際社会の一致したメッセージとして一七一八というものを発出できたこと自体が非常に効果が大きかったのかなという思いがするわけでございますけれども、一方で、この一七一八にある経済制裁に対して、北がこれに対して非常に、当然ですが不満を持っているという中で、作業部会も設置をするというお話がございますが、また一方で、我が国は、核だけではなく、ミサイル等の実験の問題があり、独自の経済制裁というのも実行をしております。

 この日本の独自の経済制裁について、国際社会の流れの中から考えたときにどのような判断をしていくのか、これは今後の問題になると思いますが、今お考えがありましたら、ぜひお伺いをさせていただきたいと思います。

麻生国務大臣 日本の独自案をこのまま継続するのかという意味でございますか。基本的に継続いたします。

丸谷委員 当事国であります日本がこの六者協議の場でまた重要なキープレーヤーになっていただきたいという思いを持っておりますので、ぜひ、年内にも再開されるかと思われます協議の場におきまして、日本として確固たる外交姿勢で臨んでいただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 それでは、EPAについてお伺いをしてまいりたいと思います。

 今回のEPAは、特にフィリピンについてまずお伺いをいたしますが、二〇〇三年の十二月、小泉総理大臣とアロヨ大統領が首脳会談において交渉を開始することを合意いたしまして、二〇〇四年から約二年九カ月に及ぶ交渉を行った後、本年の九月、ヘルシンキにおいて署名をされました。

 日本とフィリピンの貿易額は、二〇〇五年ベースですが、約一兆七千七百四十八億円に上ります。本協定の発効によりまして貿易額の約九四%において関税が撤廃されることになりますし、また、今回、我が国のEPAとしましては初めて労働市場の開放ということが盛り込まれております。

 この日・フィリピンのEPAを締結したことによりまして、今後、ASEAN諸国との包括的なFTAあるいは東アジア共同体構想の実現を目指していく中で非常に意義深いものがあると思いますけれども、改めて本協定、日・フィリピンEPAの意義と見込まれる経済効果についてお伺いをいたします。

麻生国務大臣 今、丸谷先生御指摘のありましたとおり、日本とフィリピンの間で物品の関税削減、撤廃、いろいろございますけれども、サービス貿易のいわゆる自由化というのに加えまして、投資とか知的財産とか反競争的行為の規制とか税関手続その他、ビジネス環境の整備、人の移動、協力、いろいろございますけれども、いわゆる幅の広い分野で、フリー・トレード・アグリーメント、FTAと違いまして、EPAとなりますと、幅の広い分野を対象として、包括的な経済連携が可能になるということが大きいと思っております。

 したがいまして、これらのことをやりますには、法的ないわゆる基盤というものを確立しておかないと、いろいろ話が込み入ってまいりますので、こういうのを確立しますと、商売をしている側から言わせると、経済をする、商売をする、投資をするというときに関しまして、安定性とか予見可能性というのが高まってまいりますので、そういった意味では、今回のこの協定ができますと、日本、フィリピン双方にとりまして利益が大きい、私どもはそのように思っております。

 また、他の協定と言われましたが、東アジア諸国とのEPA交渉、これは日本で四番目になりますので、さらに交渉が進展していく一つの糧にもなろうと存じます。

丸谷委員 既に日本のFTAあるいはEPAの取り組みは、アジアの中でも足取りが遅いのではないかという声もあったわけですけれども、今回の日・フィリピンで四番目ということがございます。

 その中で、実際にこのEPAを、今後はいろいろASEANですとかあるいはインドネシア、タイ、ベトナム等々、あとGCC諸国も含めて、いろいろな国との交渉が今考えられているところかと思いますけれども、その前に、一たんEPAについて、既に発効しております三つのEPAについて、評価というものをしっかりと一度検証して、確かめながら一歩ずつ進むことも必要かというふうに考えております。

 既に発効しておりますシンガポール、メキシコ、マレーシア、この間でEPAを締結したことによりまして政治的、経済的効果というのはどのような形で評価をされるのか、この点についてお伺いをいたします。

麻生国務大臣 シンガポール、メキシコ、マレーシアと三つ例を言われましたけれども、マレーシアの場合はちょっと協定を結んで余り日がないものですから、少なくともシンガポール、メキシコについては、これまでの数字を申し上げさせていただくと、発効いたしましたのが二〇〇五年の四月がメキシコとの関係でありまして、貿易は両方とも、両方というのは輸出輸入ともに伸びております。二〇〇五年四月から二〇〇六年三月の貿易額、前年同期比三八%の増ということになっております。また、投資の分野でも、協定の発効前後に、日本から自動車とか自動車関連のいわゆる部品メーカーなどなど、新工場や販売会社がメキシコに多く設立されるなど、活発な動きが見られた、見られたというか、今でも見られております。

 また、マレーシアとのEPAにつきましては、協定発効後を見越しまして、日本企業による投資増大効果というのが見られたということだと存じますが、二〇〇五年の日本の製造業による対マレーシアの投資というものは、前年比三・七倍、三七〇%ということです。三十七億リンギ、約一千百十億円ということで、過去五年間で最も高い数字となっております。

 したがいまして、EPAの連携強化によってもたらされる二国間のいわゆる交流促進というものは、これは政治分野も含めまして、相手との関係において、二国間の経済によります一層の緊密化というのを促進しておりますし、当然、これに人的交流が加わりますので、そういった意味では非常に大きな効果を少なくともこの二国間においては上げたという実績は証明されていると存じます。

丸谷委員 それでは、この日・フィリピンのEPAにつきまして、特に議論を呼んでおります人の移動について、次、お伺いをしてまいりたいと思います。

 私も、今回初めてこの人の移動、労働力の市場の開放ということで、いろいろな懸念を持っております。少し細かい話になりますけれども、御答弁のほどよろしくお願いいたします。

 今回は、フィリピン側から看護師、介護福祉士を受け入れるという形になっておりまして、二年間で一千人、看護師は四百人、介護福祉士は六百人、これは目標値ではなく上限値であるという御説明をいただいております。

 この看護師と介護福祉士、実際に日本でこのような形で資格を取って働けるようになるには、簡単に言えば、合わせて三つのコースがあるというような形になっておりますが、看護師の方は、日本語研修を受けて、病院で就労して国家試験を受けていただくという形になっております。一方で、介護福祉士については、実務経験コースと養成校コースという形で二つに分けているわけですね。看護師は一本化なんですが、介護福祉士においては二本のコースに分けたこの背景、理由をお伺いいたします。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 介護福祉士は、介護福祉士の名称を用いまして、専門的知識及び技能を持って介護を行うこととする国家資格でございます。

 今先生から介護福祉士の資格取得に二つのコースを設けた理由ということでございますが、我が国の制度で、そもそも介護福祉士につきまして、就労前に集中的に勉強した上で資格を取得するルートと、働きながら勉強して資格取得が可能なルート、これは前の方が養成校において勉強していただくルートでございまして、また、働きながら三年の実務経験で国家試験に合格して資格を取得するルート、二つのルートを設けているところでございます。

 経済連携協定に係るフィリピン政府との間の交渉において、ただいま申し上げましたような我が国の介護福祉士制度を前提とした交渉を行った結果、協定による受け入れにつきまして、委員から御指摘ございましたように、実務経験コースと養成施設コースの二つのコースを設けることとしたものでございます。

丸谷委員 報道によりますと、本年の七月にまとめられた介護福祉士のあり方及びその養成プロセスの見直し等に関する検討会、これは援護局長の私的懇談会、この報告書によりますと、すべての者について一定の教育プロセスを経た後、国家試験を受験するという方向で一元化を図るという形でこの介護福祉士の資格取得方法がレポートされているわけでございますけれども、この事実関係、方向性、来年の通常国会にもこの議論をしたいというような報道がございますが、この方針をお伺いするとともに、そうなった場合、このフィリピンの看護師、介護福祉士の方の資格取得についても同様な方針をとるようになるのか、この点をお伺いします。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員から御指摘ございましたように、介護福祉士の資格制度につきましては、昨年、介護保険の改正法案についても国会で御審議いただいた際に、介護労働者の資格のあり方の見直しに取り組むべき旨の附帯決議なども付されております。また、この制度ができまして二十年近くたっております。この間の介護を取り巻く状況は相当変化しておりますので、介護福祉士の資格についても見直すということで、検討会を設けまして、意見をいただき、現在、社会保障審議会の福祉部会を開催しておりまして、この問題の点について検討していただいております。

 見直しの内容としては、介護福祉士の教育内容の充実を図り、すべての方について一定の教育プロセスを経た後、国家試験を受験していただくということで、今大きく分けて二つのルートがございますが、制度見直しを行いました場合には一元化を図りたい。すなわち、実務経験ルートの方は、今、三年の実務経験で国家試験を受ける、養成校の方は、高校卒業後二年の養成研修で試験なしで資格を取得されておりますが、これからはすべての方に国家試験を受験していただく方向で見直しを図りたいと考えております。

 ただ、これは、こういうシステムの見直しになりますと、現に在学されている方に対する既得権の保障みたいなものもございますので、成案が得られれば、来年、国会にこの資格取得方法の見直しについても提案させていただきたいと考えておりますが、実際施行できるのはさらにそれから数年先、こういうことになります。

 そういったことも踏まえながら、見直しにつきましては、協定との関係で問題が生じないように関係省庁とも緊密に協議しながら進めてまいりたいと考えております。

丸谷委員 実際には、国内法というか国内の制度にこの協定の内容も整合性を持たせていくということが将来行われるんでしょうけれども、既にそういう方向があるのにこういう形で出して現場が混乱しないのかなという不安がございますけれども、この点についての懸念はどうですか。外務省としては、協議の中でこういったことも話し合われましたでしょうか。日本としての懸念、向こう側の懸念が表明されたとか、いろいろな点について、いかがですか。

石川政府参考人 交渉の経緯についてのお尋ねでございました。

 私どもといたしましては、日本の制度について先方に説明をし、先方はそれを了解しておる、こういう経緯がございます。

丸谷委員 再確認をさせていただきたいんですけれども、その協議の際には、この介護福祉士に関しては、日本の資格取得について今議論がされていて今後変更もあり得るということは、向こうは承知をしていたという認識でよろしいですね。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の看護師国家試験を受ける方たちの候補者あるいは介護福祉士の候補者の方たちの実務経験コースと養成校コースについては、国内の議論も踏まえて詳しく説明してございます。

 なお、お尋ねでございますので、この介護福祉士の二つのコースについて一つ補足を申し上げますと、フィリピン側は、交渉の過程では実務経験コースに大変高い関心を示していたということを御報告させていただきます。

丸谷委員 実際に、人の流れというのは非常に重要なものとして受けとめておりますので、さまざまな問題意識というのは持っているということはぜひ御理解をしていただきたいんですね。

 私も数年前、五年前ですか、アロヨ大統領と短い時間ですがお会いさせていただく機会がありまして、大統領の方から真っ先に出てきたのが、フィリピンの看護師とか介護福祉士というのは非常に優秀な人材がいるので、ぜひ日本で働けるようにしていただきたいという御要望がありましたので、フィリピン側からの要望というのは非常に強いものがありますし、また一方で、我が国の需要はどうなのかといいますと、第六次看護職員需給見通しに関する検討会の報告書では、平成十八年の需要は日本国内で百三十一万四千人に対して、供給が百二十七万二千人ということで、四万二千人不足しているという数字が出ているわけですね。

 ですから、需要と供給の要望が合致するのが、日本は人を受け入れなければいけないし、向こうは送り出したいというニーズが合致するのが今回の非常に重要な問題なんですが、ただ、実際に人の移動というのは本当にうまくいくのかな、資格取得がうまくいくのかなという不安もぬぐい切れないのが現状でございます。

 例えば、看護師、介護福祉士両方、入国していただいて六カ月間の日本語研修を日本で受けます。病院で就労、研修あるいは養成校という形になるわけですけれども、三年間で国家試験を通らなければいけない人たちが大半かと思うんですね。私も、一年間でしたけれどもポーランドの大学で大学生に日本語を教えておりました。その中で、そのレベルから考えても、確かに、フィリピンの看護師さんとか介護福祉士さんというのは、四年制大学を出ていて、非常に優秀な、クオリティーの高い人たちだというのはわかるんですけれども、日本語という壁をそんなに簡単に、六カ月の研修を受け、数年間日本で就労しただけで国家試験を通るぐらいのレベルに語学がなるのかなという不安はどうしても残るんですね。

 その点についてお伺いをしますが、まず、看護師そして介護福祉士、現在、国内で実施をしている国家試験の合格率、この点は何%になっていますか。

中村政府参考人 我が国の国家試験の合格率についてお答え申し上げます。

 直近、二〇〇六年、平成十八年の試験で、看護師国家試験の合格率でございますが、受験者数約四万九千人、合格者数約四万三千人で、合格率はことしの場合八八%となっております。近年、おおむね九〇%前後で推移してきているところでございます。

 介護福祉士の国家資格につきましては、同じく平成十八年の試験では、受験者数約十三万人、合格者数約六万人で、合格率は約四七%でございます。制度施行後本格的になってまいりましてから、介護福祉士国家試験の合格率は大体五〇%前後で推移してきているところでございます。

丸谷委員 そうしますと、看護師は約八八%という形でかなり高い合格率を我が国において出しております。一方で、介護福祉士、六百人を上限に受け入れるというこの介護福祉士については、国内の国家試験でも四七%、多くても五〇%という形になりますと、今の考えられているシミュレーションをするとすると、どのぐらいの合格率を見込んで、何人ぐらいが実際に働けるようになるという期待値でも結構なんですけれども、この見込みはどのように考えていらっしゃいますか。

中村政府参考人 先ほど先生からお話がございましたように、日本語を勉強していただかなければならないという、いわば一つの越えなければならない課題があるという一方、フィリピンから来られる方につきましては、一定の質の方が来られるということで、正直申し上げまして、私ども、合格率について見通しすることはなかなか困難でございますが、我が国の平均の合格率は先ほど申し上げたとおりでございます。

 私どもとしては、とにかく初めて実施することでございますから、日本語研修とか、その後の実務研修、そういったところにおける日本語教育、そういったことについてしっかり見守っていく必要があると考えております。

丸谷委員 初めて行うことなのでやってみなければわからないということだと、これは本当に、物ではないので、人が日本に来て、そして働いて、またいずれ帰っていただくということになるのかもしれないんですけれども、それこそ先週質問させていただいた、知日派イコール親日派ではないという話もあったんですが、働きに来ていただいた看護師の方、介護福祉士の方に親日派になって帰っていただかないと困るというのがあるんですよね。

 ですから、人に関することですので、本当に慎重に慎重を重ねた上で、日本の労働市場を圧迫しない形でフィリピンの方にもしっかり働いていただくという視点をやはりしっかりと持って、細やかな対策をとらなければいけないんだろうというふうに考えております。

 その中で、今局長もおっしゃいましたけれども、日本語という一つの壁がどうしてもあって、フィリピンの実績としては、米国ですとかGCC諸国ですとかいろいろな送り出しを行っておりますが、英語で通じた国なんですね。ただ、日本の場合は、やはり日本語を話してもらわないと看護、介護はなかなか実現できないという状況ですので、まず、現在では、希望する方、ある程度送り出しのところから選考するんでしょうけれども、日本に来ていただいて六カ月間研修を受けていただくという形になっております。ここの受けた時点で、既に語学のセンスがないというと大変失礼になるのかもしれないんですけれども、日本に来て初めて、六カ月、日本語研修を受けて、さあ就労、研修をしてもらいましょうという一つもっと前の段階があっていいのではないかと思います。

 というのは、フィリピンにいて日本語研修という形で、どうしても日本語というものが読めない、書けない、どうも好きになれないという人もいるかもしれません。その時点で、じゃ、日本に来ることをやめようという決断をすることもできると思いますので、EPAを結んで人の移動を可能にした以上、もっとフィリピンにおける日本語教育というものに関心を高めていくべきではないか、充実をさせていくべきではないかというふうに考えますが、この点についてはいかがでしょうか。

岩屋副大臣 先ほど先生、ポーランドで日本語を教えておられたというお話がございましたが、やはり語学というのは、その国に行って初めてその国の言葉の感性というものがしっかり把握、理解できるのではないかなと思っております。

 初めてのことでございますので、しっかり日本語能力を獲得していただかないと、まず試験に通らない。その後、国民の皆さんの生命、健康にかかわる大事な仕事をしていただくわけですから、今回は、その能力をしっかり担保しなければいけないという観点から、財団法人海外技術者研修協会、AOTSというところで研修をするように、それがいいということを判断したわけでございます。

 このAOTSというのは、東京、神奈川、大阪、愛知に研修センターを持っておりまして、平成十六年度の研修実績は六千六百二十一人、平成十七年度は七千五十六人、そういう実績を持ったところでございますので、ここでしっかり研修していただくのが適当ではないかというふうに考えているわけでございます。

丸谷委員 いや、幾ら充実した施設とはいえ、六カ月の日本語研修の中で、日本の国家試験、漢字を読んで、片仮名も入って、平仮名も入って、これはなかなか簡単な話ではないだろうというふうに私は思いますので、国家試験を通って働いていただくのであれば、この日本語研修というもの自体はもっと深く考えていただかなければいけないというふうに、あえて再度御要望を申し上げたいと思います。

 それでは、最後の質問をさせていただきます。

 実際にフィリピンから働きに来ていただいたその後、特にニーズが多いのは過疎化が進んだ地域であり、私の北海道もそうなんですけれども、非常に物悲しい、寂しいところで高齢者の方の介護福祉士に当たっていただくケースというのは非常に容易に想像できるわけですね。その中で、文化の違い、言葉の壁、いろいろなストレスですとか、そういったものもため込まれる方も出てくるという予測もできます。

 不法就労、不法滞在に結びつかないための未然の方策というものも必要ですし、また、ストレス軽減のための国内支援策も大変に必要かというふうに考えておりますけれども、この点についてどのようなサポート体制を考えていらっしゃるのか。主体はどこが行うと考えていらっしゃるのか。マッチングをした国際厚生事業団が行うんでしょうか。この点について、最後お伺いいたします。

岡崎政府参考人 先生御指摘のように、あっせんを国際厚生事業団が行います。これは、あっせんのみならず、その後の各事業場におきます受け入れの支援、研修の支援、それからフィリピン人の方が不安になった場合、あるいは苦情、そういったものの窓口、そういったものすべて、ここがやっていくということを予定しております。ここにしっかりやらせていきたい、こういうふうに考えております。

丸谷委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

山口委員長 次に、山井和則君。

山井委員 民主党の山井和則です。これから四十五分間、質問をさせていただきます。

 フィリピンの看護師、介護士受け入れということですが、冒頭、麻生外務大臣に、核保有発言についてお伺いしたいと思っております。

 先日、フィンランドの議長団が日本の国会を訪問いたしました。そうしたら、その質問の三分の二は、日本は核武装をするのかという質問でありました。このように諸外国も非常に心配をしております。昨日の報道でも、アメリカのブッシュ大統領も、日本が核を保有することを議論するということに関して非常に、核を本当に持ったら困るということで懸念を表明したというニュースも流れておりました。

 このことについて、フィンランドの議長団もこういう核武装の心配をしているということに関して、麻生大臣、いかが思われますか。

麻生国務大臣 きのう、外務省の方にも大勢来ておりました。フィンランドの議長は前に総理大臣もしていましたし、来ておりましたので、私どもの方にその質問があるのかと思って待ち構えていたんですけれども、私の方には直接なかったんで、普通、ああいう話は直接ないとおかしいなと思うんですけれども、何で私にはないのかなと思って、こっちの方から質問したんです。日本では議論しちゃいかぬという話なものですから、なかなか議論がしにくいけれども、向こうはフィンランドだから議論してもいいんじゃないのかなと思って、むしろ私の方から話をしたというのが正直なところです。

 私の方として申し上げているのは、ずっとたびたび、議事録やら何やら、きっと先生のことだから熱心にあちらこちら読まれた上なので、同じことを申し上げるようで甚だ恐縮ですけれども、もう一回言わせていただきます。

 ずっと申し上げてきているのは、一般論としては、国の安全保障というものを考えるときにおいては、その時代時代において当然考えるべき時代背景がある。持たず、つくらず、持ち込ませずというのをもって非核三原則というのがほぼ決まりましたのが佐藤内閣のころであります。いわゆる沖縄返還のあの時代の話でありまして、当時はいわゆる冷戦構造のさなかでありまして、一九九〇年代以降の一極の時代とか、また今のように、いわゆる隣国、北朝鮮が核を持った、もしくは実験したと言い、かつ、それを搬送するミサイルの技術もかなり実戦配備、かつ、実験というよりは訓練の段階まで来ている、その射程距離が日本には届く、かつ、その射程距離がどんどん延びているという状況下にあるというのであれば、当然いろいろな国民的議論が起きてくるということを封殺すべきではないのではないか。

 また他方、日本としては、核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませずという三原則について、これを堅持することにつきましては、歴代の内閣が累次にわたって言明をしているとおりでありまして、政府としても、今後これを堅持していくという立場に変わりはないということを、きのうもフィンランドの人に申し上げておりますし、今またここで申し上げているところです。

 加えて、この問題には、いわゆる原則以外に法律上の問題もあります。それは、原子力基本法という法律がありまして、この法律によって日本の原子力の利用というのは平和目的に限定されているというように、法律で決められております。

 また、NPTという核不拡散条約というものに、これは条約ですけれども、これに非核兵器国として日本の場合はいわゆる義務を負っておりますので、このような観点から見ましても、日本が核兵器を保有することはないということを申し上げてきております。

山井委員 私は、麻生大臣の答弁を聞いていてよくわからないのが、非核三原則は堅持する、核を持たないと決めていると言っているにもかかわらず、それならなぜ核保有の議論をしてよいということをおっしゃるのかがわからないんです。

 核保有の議論について、麻生大臣はどう思われるんですか。

麻生国務大臣 これは、昭和四十年当時、山井先生がどれくらい成長しておられたか、御年齢であったか存じませんけれども、三歳ぐらい、じゃ、そのころの記憶はほとんどない、全く、天才でも三歳ぐらいのときは余りないと思いますので、ないんだと思いますが、私は当時もう既に大分年を食っていましたので、そのころの議論を学生として、また社会人として聞いていましたから、そこそこの意味はわかるつもりでおります。

 ただ、今、多くの方々が先生と同じような世代だと、どうしてそういう原則になったかという経緯を御存じの方はほとんどないという状況にあるときに、我々は議論をして、状況が変わったというのを前提にして議論をして、その上でみんな納得ずくで三原則を維持、堅持するということに決めるようにしないと、どなたも議論は一切することはまかりならぬ、そういうことをするということを、啓蒙の上議論をしない、啓蒙だけして議論、いろいろやり方はありますよ、だけれども、議論もさせないというのは私はいかがなものか。

 どうして議論しちゃいかぬのかというのが私にはちょっとよく理解ができないので、政府としては決めておりますが、多くの議論を行われるということに関しましては、私は別におかしくないのではないか。言論封殺するつもりはありません。

山井委員 一議員が議論をするのと日本政府の外交の責任者の外務大臣が議論するのとでは、全然意味が違うんですね。だからこそフィンランドも心配している。

 それで、御質問したいんですが、そうしたら、核保有の議論をしてもよいということは、こういうことになりますよ。NPT、核拡散防止条約の脱退についても議論をしてよいという意味も持つわけですが、本当にそれでいいんですか。

麻生国務大臣 重ねて申し上げますが、政府としてはというのであって、私は政府の一閣僚でありますから、私は議論を私がすると言ったようなことは一回もないのであって、議論をするのは大いにされてよろしいのではないか。国民の言論を封殺するつもりは私ども自由民主党にはないと申し上げております。

山井委員 何か麻生大臣、逃げていられるような気がするんですよね。議論していいと言い出したのは麻生外務大臣じゃないですか。自分で議論していいと言い出していながら、今さら自分は議論する気はないというのは。

 それで、安倍総理は、非核三原則は堅持する、これはもう結論が出ている、政策判断としてやったと言っているわけですから、そういう意味で、議論をされているこの麻生外務大臣の発言というのは閣内不一致ではないですか。

麻生国務大臣 議論があってもいいとずっと申し上げてきておりますし、私どもは議論があってもいい、政府としてはこれは堅持します。

 しかし、国民の中で、政府としてはこう思って、憲法九条はとかいろいろ意見がありますじゃないですか。そういった中にあっても、国民の中で議論があってもちっともおかしくないんじゃないでしょうか。一億二千万おりますので、いろいろ議論があって、それを全部封殺する、私は、議論をしたいわけじゃないです。そちらが御質問なさるから私が答弁しているだけであって、こちらから吹っかけたことは一回もありません。

山井委員 麻生大臣がどう弁解をされても、麻生大臣の発言もあって、フィンランドの議長団も、これはもう全世界が心配しているわけですよ。唯一の被爆国である日本は、これからも核拡散防止条約の、核廃絶の先頭に立つと。その先頭に立つべき麻生外務大臣が逆のメッセージを発している、これは非常に問題だと申しておきます。

 それでは、この問題ばかり議論しておれませんので、これは改めて、こういう問題はきっちり予算委員会を開いて私は議論すべきだと思っております。

 それでは、看護師、介護士の議論になりますが、私は、きょう厚生労働委員会からやってまいりましたが、この問題、非常に関心を持っております。

 私は、二十七歳から三十一歳まで四年間、海外の介護施設、日本の介護施設を回って、実習をしたりボランティアをして回りました。日本でも老人病院、特養、老健施設、十カ所ぐらい実習をさせてもらいましたし、シンガポールの老人ホームでは一カ月ぐらい、イギリスの老人ホームも住み込みで一カ月、アメリカの老人ホームでもボランティアとして手伝わせてもらったことがあります。

 そのときに私が感じたことは、アメリカでも移民労働力が介護現場の中心となっておりました。やはり、賃金が安いという部分もあって、労働条件も悪いということで、移民労働力が中心でありました。イギリスでも、ロンドンあたりではかなりそうでありました。例えば、私がボランティアをしていたシンガポールの老人ホームでは、そこでは介護現場はシンガポール人はほとんどタッチせずに、半分がスリランカからの外国人の介護者、半分はフィリピンからの介護者でありました。

 それで、そのときに私はつくづく感じたんですね。シンガポールで、介護は安い外国の労働者にやってもらう、そういう私が行ったシンガポールの老人ホームの一部の姿だったわけなんですけれども、その姿を見て、本当にこういうことでいいのかなということを考えさせられました。シンガポールのお年寄りは、中国語です。ところが、フィリピン人もスリランカ人も中国語はほとんどしゃべれません。そのことをフィリピン人やスリランカ人に聞いたら、いや、会話は余り必要ない、食事をさせてトイレへ連れていっておふろへ入れる、シャワーを浴びさせるぐらいだから、会話は中国語ができなくてもいいというようなことを言っておりました。

 しかし、私も介護問題をライフワークとする人間として、例えば今の老人ホーム、七割が認知症のお年寄りです。どういうコミュニケーションか。御飯食べましたか、食べていないと。食べていないと言うけれども、本当は食べているんですよね。それで、でも、さっき食べたんじゃないのと言う。家に帰りたいと言う。でも、そのあなたの言っている家というのはどこですか。それは今の家じゃなくて、もう二十ごろの家だったりする。非常にコミュニケーションは、これは日本人でも難しいわけなんですね。

 そういう意味では、この介護、看護の現場というのは、ただでさえ非常に労働条件も過酷ですし、かつ、ハイレベルのスキルがこれからますます求められている時代であります。そういうときに、安易な安上がりの労働力ということで万が一あるならば、そういう形で入れるのは非常に問題が多いと思っております。

 ただし、一言つけ加えますと、スリランカ人、フィリピン人あるいはメキシコから来た介護スタッフと私も一緒に老人介護のお手伝いをしましたが、みんな非常に心優しいです、心優しい。もしかしたら日本人よりお年寄りを大切にする気風は残っているかもしれません、個々人は。しかし、個々人はそうであっても、その方々が大量に入ってくることによって、労働条件が今まで以上に悪化するんではないかということを非常に私は危惧しております。

 そういう観点から質問をさせていただきますが、まず、麻生大臣、中心のことですので最初に一問お伺いしたいんですが、ちょっと私も調べさせてもらいましたら、大臣の地元福岡でも御親戚の方が麻生飯塚病院というのを経営されている。うなずいておられますが、この病院では八月から看護師が七対一というのを策定しており、人員増により安全なケアが提供されていると考えられて、大変喜ばしいことであると。

 しかし一方で、この七対一という仕組みの導入によって、今まで以上に看護師不足というものが深刻化しているわけですね。こういうときに今回のEPAというのが導入されるのは甚だ問題があるんではないか。具体的には、フィリピンの看護師が安上がりな労働力確保の突破口となって、日本の介護、看護労働市場に悪影響を与えるのではないかと危惧されます。

 日本の看護師不足の一つの大きな要因として、労働環境の低さに起因する離職率の高さ、後でも述べますが、一年目にもう九%も離職されているわけです。それで、フィリピン看護師が日本の看護師免許を取得する前後の労働者保護を徹底しないと、製造業のように安価な労働力に転じてしまって、結果的に日本人看護師の労働環境が影響を受け、看護師不足あるいは介護士不足に拍車がかかるのではないか、こういう心配をしております。

 今回の条約の責任者、外務大臣として、このような受け入れが労働条件の悪化につながって、さらなる労働力不足につながるのではないか、このような懸念に関して、麻生外務大臣の見解をお聞かせください。

麻生国務大臣 これは山井先生御存じのように、一番の問題は労働力がないことですよ。介護士という労働力がないの、それに対して需要が多いの。需要がすごくふえているんですよ。しかし、ないのは、万といたり、毎年ふえていますよね、ギャップが。すごくふえているんですよ。その介護士という労働力が不足しているギャップをどうやって埋められようとしておるのかが私らにはよくわからない。私どもは看護学校を持っていますから、自分たちのところはそれでできないわけじゃありませんよ。しかし、ないというところは、うちはないからだめですと言われるところがふえているところが大きな背景になっていた、私の知っている範囲ではそれが大きな背景だったと思っております。

 それから、少なくとも、アメリカで看護婦の資格を取ったフィリピンの人たちが大勢おられるということも事実。そして、その人たちがそこそこの年齢になってから日本に来る。いや、そんな難しい顔をされるけれども、難しい話じゃないんであって、普通の話ですよ、この話は。難しい顔をする傾向があるのかどうか知らぬけれども、難しい顔をされると、こっちはもっと易しくしゃべらなきゃいかぬかと思っていろいろしゃべらないかぬのですが。

 労働力の絶対量が不足していないという前提で話をされるのか、看護師、介護士という労働力が不足しているという前提でしゃべるのかによって私は全然考え方が違ってくると思いますけれども、少なくとも看護婦、介護士、いずれも、いわゆる町の病院で見ていると、看護婦というのは皆不足しておるというのが多く聞かれる話でもありますので、私どもとしては、そういったものを考えるという点においては、外国人労働者というのは大きなものだと思っております。

 それから、これはたしか契約においては日本人とほぼ同じようなものを払わなければならないというように規定されていると記憶をしますので、そういった点については、もしそういうことを満たしていないというのであれば、その段階で、それは違反しているわけですから、むしろきちんとそういったものに対応していくというのが大切なんであって、払われないかもしれないと言うけれども、一応規定は払うことになっておりますので、それを前提にして話をしないと、あれもこれもと可能性だけいろいろ言っていくと、なかなか現実には即さないことになるのではないかと思います。

山井委員 私、実は、今麻生大臣の答弁を聞いて、ちょっとびっくりしたんですね。というのが、今回のEPA受け入れの大前提は、人手不足対策ではありませんというのが今回の受け入れの大前提なんですよね。であるにもかかわらず、今の大臣の答弁を聞いていると、これだけ人手不足なんだからという答弁がのっけから返ってきたので、ええっ、ちょっとこの話は前提が変わってくるなと思うんです。

 それで、麻生大臣、お聞きしたいんですけれども、私が質問したのは、これを受け入れたときに、それによって日本の労働条件、看護師さん、介護福祉士さんの労働条件が低いまま固定化されたり、今、離職率が介護職員で年間に二二%、介護士さんで一年目にもう九%やめてしまう。本来、労働条件を向上させて人を集める、賃金も上げる、これが先決だと思うんですが、そのようなことに対して、安易にフィリピンから安い労働力を入れる、同等の賃金とおっしゃいますが、やはりその施設の職員では一番安い労働力に事実上はなると思うんです。それによって、労働力が向上するブレーキになったり、労働条件悪化につながらないか、このことについては、麻生大臣、どう思いますか。

麻生国務大臣 これは、グローバライゼーションの中で人のグローバライゼーションというのが大前提になっているというのは、EPAに関して言わせていただければ、いわゆる世界じゅう同じようなグローバライズされているというのが大前提、それはもう当然御存じのことだと思いますので、その点は触れなかったというだけの話だと思います。

 それから、今の話で、扱いというか、そういった賃金とか環境というものがどんどんどんどん劣化していくのではないかという御心配のように見受けられますけれども、少なくとも、そういったようなことは規則で決められているという大前提、規定が最低限決められていますので、その規定を大前提にして話をしないと、その規定が守られなかったからどうするかという話は、それは守られなかったらそこはきちんと指導するなり介入するなり、いろいろなやり方をしていくのが当然なんだと思っております。

 少なくとも、今のような状況の中で、私どもは、今の現状を考えたときに、いろいろ、やめていく比率が高いというのは決して、病院によっても違いますし、病院には人が居つかない病院もあれば、ずっと定着する病院もあれば、実にいろいろなんですよ、これはもう御存じのように、渡り歩いておられるという経験がおありのようだから。だから、そこらのところも、その病院によって種々違いがありますので、離職率が高い病院は、どうしてその病院は離職率が高いのかというようなところも調べてみるというのも非常に大事なところだと思います。

山井委員 まさに、二年間受け入れて労働条件が悪化していないかどうかというのを検証するのは、これは非常に大事だと思うんですよ。麻生大臣は、そういうことにならないようにするということで、そこはきっちり守っていただきたいと思うんです。

 そこで、例えば、これはイギリスでも問題になったことがありまして、劣悪な労働条件で看護師さん、介護職員が働かされたということや、アメリカでもそういう問題が出てきておりまして、その結果、結果的には看護師さん、介護職員の労働条件が悪化して、いわゆる自国民が魅力のない職場と考えて、集まりにくくなって、結果的には外国人を受け入れたことが人手不足に拍車をかけてしまった、そういう問題点もイギリスやアメリカでは出ているわけです。

 そこで、厚生労働省にお伺いしますが、だれがどのようにして今回の就労、研修状況というのをチェックするんですか。

岡崎政府参考人 国際厚生事業団が、あっせんからその後の就労等につきまして、すべて支援、それから相談をするということとともに、そこが年一回各事業場からきちっと報告を受け、また巡回して指導もする、こういうことにしておりますので、第一義的には、国際厚生事業団が今先生がおっしゃったようなことについてきちんとやられているかどうかを把握するということにいたしております。

 さらに、労働基準法違反その他という問題が生ずれば、これは権限がある機関がそれぞれきちんと対応する、こういうことにしていきたいというふうに考えております。

山井委員 年一回報告書を出してもらう、あるいは巡回するということで、本当にこれ、チェックできるんでしょうか。

 きょうの資料の最後のページにも入れましたが、例えば、「外国人研修見直し 劣悪な環境、失跡が問題化」という共同通信の記事もあります。これによると、二〇〇一年から五年間で八千三百人の研修生、実習生が失踪し、行方が不明になっているというようなこともあるわけなんですね。やはり、これは本当に、今おっしゃった国際厚生事業団で年一回のチェックでいけるのかというのが、私は非常に心配に思っております。

 このことは後ほど触れたいと思いますが、これはぜひ、こういうことを受け入れるとともに、やはり看護師あるいは介護職員の労働条件がよくなるような取り組みと並行してやらないと、これは問題があると思うんです。

 そこで、まず看護師の方についてお伺いしたいと思いますが、ちょっと資料を見ていただきますと、資料の表紙に、病院に就職した新人看護職員の離職率は九・三%と。ここにパネルもつくってまいりました。今、看護師不足が非常に深刻です。私も先日、二日間、ある病院で看護師さんと一緒に回らせてもらいました。夜中の三時、四時、夜勤のときにナースステーションで話を聞いていると、私、実はもう二年前からこの病院をやめたいと言っているんだけれどもやめさせてもらえないの、やめたらもう次の人が来ないのということをおっしゃっておられまして、看護師不足、本当に深刻になっているんですね。

 その一つのポイントは、新しい人を入れることも大切なんですけれども、せっかく養成した人がどんどんやめていったら、これは本当にもったいない話なんですね。それで、これ、九・三%、十一人に一人は一年以内に離職してしまっているんです。麻生大臣の御親戚は麻生医療福祉専門学校というのも地元で経営されていると聞いておりますが、看護師学校養成所百四十校分に相当する人が一年間でやめてしまっているんですね。では、なぜなのかということです。

 それを見てみますと、「新卒看護職員の職場定着を困難にしている要因」というこの資料を見てみますと、トップが、「看護基礎教育終了時点の能力と看護現場で求められる能力のギャップ」、これが病院調査でも七六%、学校調査でも八〇%でトップなんですね。今、医療事故の問題とか非常に深刻になっています。いろいろ、ヒヤリ・ハット事例、そういうものを自分自身経験してしまった新人看護師は、もう怖くなってやっていく自信がなくなるというケースが非常に多いわけです。

 それで、厚生労働省にお伺いしたいんですが、幾つかに分けてちょっと細切れに質問しますが、まず、現時点で日本は三年制ですよね、白石審議官。この今の三年制の看護基礎教育、それで非常にこういうふうに、これでは不安で離職率も上がっているという現実もあるんですが、この三年制で、今のカリキュラムで十分だというふうに厚生労働省、考えておられますか。

白石政府参考人 委員御指摘のとおり、看護職員の労働実態、いろいろ調査で把握しておりますと、離職率、今新人の御指摘がございましたけれども、全体の職員でも大体一一%ぐらいという実態でございまして、特に夜勤の回数等々は、いろいろな看護の基準等もございますので、着実に改善はしておりますけれども、今御指摘がありましたように、医療技術の進歩、あるいは患者の高齢化等による重症化、そういったこともありまして、看護職員の役割は非常に複雑多岐になっている。しかも、いろいろな安全の話もございました。そういうことから考えれば、全般的に業務密度が高まっているというふうに私どもも考えております。

 そうしますと、それに対応するためにということで、いろいろなレベルでの研修あるいは資質向上ということ、あるいは職場環境の改善という観点で例えば院内保育所とか、そういうふうなこと等々もあるわけでございますけれども、その中で、特に御指摘になりました新人の場合のことを考えると、看護基礎教育の御指摘がございましたけれども、そこの部分につきましては、御指摘のように、養成所の修了時点の能力と現場で求められるレベルというものの間には乖離がある、必要な能力が必ずしも身についていないのではないか、特に実習がなかなか思うほど行われていないんじゃないかというふうなことが、いろいろ指摘がございました。

 それを受けまして、本年の三月から、看護基礎教育を充実すべきだという観点からの検討会を組織いたしまして、今も議論が行われているという事態でございます。今後とも看護基礎教育の充実が大変重要だという観点で、現在、見直しの議論が進められているということでございます。

山井委員 麻生大臣、申しわけございません、それで一つお伺いしたいんですが、今答弁があったように、今、日本は看護基礎教育は三年なんです。フィリピン、今回受け入れるわけですけれども、フィリピンは何年か。麻生大臣にお伺いしておりますが、麻生大臣、いかがですか。フィリピンの看護基礎教育、何年か。

麻生国務大臣 他国のことまでよく知りませんけれども、たしか看護大学、四年じゃなかったですかね。

山井委員 そうなんですよ。日本は三年なんです。ところが、今回受け入れる、来てくださるフィリピンの方は四年なんですね。今白石審議官から話がございましたが、日本では実習が少ないのが問題になっている。例えば、フィリピンでは四年で、看護師の基礎教育、実習時間が二千百四十二時間。それで日本は半分以下の千三十五時間、そういう統計もあるんですね。

 この件について、私、先日、厚生労働委員会で取り上げまして、この基礎教育を三年から四年にする必要があるのではないかということを質問しましたら、川崎大臣からは、その方向性で検討しなきゃいかぬと考えていますという答弁をいただいておるんですが、三年制を四年制に向けて基礎教育延長を検討するということについて、厚生労働省、いかがでしょうか。

白石政府参考人 議員御指摘のように、看護基礎教育の充実が重要だということで、先ほど申し上げましたように、看護基礎教育の充実に関する検討会を開催して検討してございますが、その中におきましては、この問題も当然視野に入っている、そのことも議論の俎上に上っているという状況でございます。

山井委員 確認ですが、そうしたら、四年制に延長するということも視野に入れて検討しているということでいいですか。

白石政府参考人 そのようなことも排除せずに議論が行われているのを見守っているところでございます。

山井委員 ぜひこのことは、繰り返しになりますが、やはり人手不足の根本的な解消、労働条件をよくしていく、またこういう新人看護師さんが離職しないようにする、そういうこととセットにしないと、やはり何か安上がりの労働力を入れて、日本は看護師人手不足、介護職員人手不足の問題を解消するんじゃないかということを思われたら、若い日本の看護師あるいは介護職員志望者が減っていってしまうと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 それでは、千人が入ってくるわけですが、この千人、その就労状況、ちゃんと就労しているのか。残念ながら、外国人の研修生、実習生では、女性の方がセクハラに遭ったり、あるいは寮に閉じ込められて逃げようにも逃げられなかったとか、そういうこととかも問題になっているわけで、これはチェック体制が非常に重要だと思っております。

 それで、まずお聞きしたいんですが、千人が行かれた施設、病院は、どこの施設、病院に行かれたかというのは、当然これは公表されるんですね。

岡崎政府参考人 個々の受け入れ施設については個別の問題でございますので、その受け入れ施設自体を個別に公表するということは、現在のところ考えておりません。

山井委員 それはちょっとおかしいんじゃないですか。千人も入ってきて、どこにいるかは公表しない。私たち国会議員が、どういう仕事ぶりをされているか一回見に行きたい、訪問して激励したいと思っても、教えてもらえないんですか、それは。

岡崎政府参考人 就業状況については国際厚生事業団が責任を持って対応いたしますが、個々の受け入れ施設との関係において国会その他から要請があった場合には、必要に応じて私どもとしても対応するということは考えてまいりたいというふうに考えております。

山井委員 でも、必要に応じてじゃないでしょう。隠すものですか、こういうのは。まさに国際交流をやっていくんでしょう。隠すのはおかしいんじゃないですか。そうしたら、これは、来年か再来年の四月かからもしかして入ってきて、どこに入ったかもわからないわけですね。それで二年間終わってしまうわけですね。それは問題じゃないですか。このこと、ぜひちょっと後でまたこれは詰めないと、こんなこともオープンにしないというやり方は私は大問題だと思いますよ。もし何か問題が起こったときにチェックしようがないじゃないですか。

 それで、そのチェックが国際厚生事業団で、これが年に一遍、巡回とか報告書なんですけれども、それで本当にチェックできるんですか。国際厚生事業団というのは、人数、何人ですか。

岡崎政府参考人 国際厚生事業団、現在の職員は十六人というふうに理解しておりますが、これは、今その業務をしていない現在の状況の人数でございます。当然のことながら、この業務をするに必要な人員については国際厚生事業団の方で手当てをして、必要な体制を組んでいくというふうになると承知しております。

山井委員 いや、それを何人にするのかとか、きっちりこれは審議の中で言ってもらわないと、十六人で千人の人をチェックする。ただでさえ、今までこういうのが、サービス残業とか、あるいはうまくなじめなくて、それこそいじめられてしまう人ももしかしたら出てくるかもしれない。あるいは、私も特養で一日六十人のおむつ交換とか入浴介助五十人とかやりましたけれども、これは本当に腰痛になりますよ。腰とか痛める方もめちゃくちゃ多いんですよね。

 そういう意味で、これは、ある意味で大切な、来られたフィリピンの方がきっちり就労できているのかというのを、千人をチェックするというのは非常に重要なことですよ、支援も含めて。それを十六人で、まだ何人にふやすかわからない。

 それで、年に何回行くんですか、現場に。

岡崎政府参考人 チェックにつきましては、受け入れ施設からの書面による報告と、それから国際厚生事業団から少なくとも年一回は行く。ただ、これは通常のペースで行くということでありますが、フィリピン人の就労している方からいろいろな苦情、相談があった場合には、当然のことながら必要な回数随時対応していく、こういうことを考えているところであります。

山井委員 それは、年一回訪問して、二年間で二回かわかりませんけれども、それでどういう状況になっているのか、これはきっちり把握できないですよ。今まで、五年間で、ほかの外国人研修、実習生、八千三百人も失踪しているわけでしょう。あるいは、これは本当に体を壊される方も多いですよ。

 そういうきっちりとしたサポート体制をつくらないと、私も現場によく行きますが、今でも、サービス残業で、夜勤が八時に明けても十二時ぐらいまで残っている介護職員というのは多いわけですよ。そういうことも原因で、三十歳になったらもう仕事を続けられない、子供を産んだら仕事を続けられないということで、多くの介護職員が、よりお年寄りを大切にしたいと思っても、バーンアウトして倒れていっているという現状があるわけですよね。そういうある意味で過酷なところに、言葉も不十分なフィリピンの方に来てもらいながら、年に一遍の巡回、それではきっちりとこれはチェックできないんじゃないんですか。

 そうしたら、二年後にこれは千人の枠を見直すことになっているわけなんですが、どのような項目で、労働条件が悪化していないかとかうまくいっているかとか、そういうことをいかにしてチェックするんですか。どういう体制ですか。

岡崎政府参考人 二年間千人という枠は現在通知しているところでありますが、その後については、それまでの間の受け入れ状況等を勘案して判断していく、こういうことにしております。当然のことながら、問題が生じていないかどうか、それから、労働条件その他に問題が生じていないかどうか、そういったことも考慮しながら考えていくことになるというふうに考えております。

山井委員 それは、十六人なり、ちょっとふやしても、それで千人がきっちり就労できているかとか、そんなことをチェックできるはずないじゃないですか。それは無理ですよ。だから、やはりそういう体制を整えてこういう法案を出してもらわないと、それは困りますよ。

 ただでさえ今、労働市場の規制緩和で、偽装請負だとか社会保険の加入漏れとか、日本の国内の人でも非常に深刻なんです、問題。それを、自分の権利も主張できない、そういう日本語もたどたどしい女性が例えば一人でぽんと来て、セクハラにでも遭ったり、体を壊したときにどうするのか。やはり、そういう体制をちゃんと答弁できないと、こういう法案も通せないですよ、これは。

 次に、そのことに関連して、では二年後、例えば二年間は千人ですけれども、その後、二千人にするか五千人にするか、あるいは五百人に減らすかということに関しては、そのときは、きっちり当然この報告をして国会審議をして、労働条件の悪化につながってないかとか、そういうことを検証して、これはきっちりチェックしないとだめだと思うんですが、二年終わって、その後の受け入れ枠の数を決めるときに、国会審議というのは当然してもらえるんでしょうね。

麻生国務大臣 今、四百人プラス六百人、合計千人ということで、とりあえず今回の場合千人、二年間ということでスタートをするということであって、まずは円滑なスタートをさせるということが大問題だと。最初のとき、とにかく、山井先生、これまでずっとこれは議論してきたところで、この話はもう長いんですよ、十年以上やってきている話ですから。

 そういった意味では、この話を千人でスタートさせるということでありまして、それがどういう結果になるかというのに関しましては、今御指摘にありました質問のところも出てくるでしょうし、うまくいくところもあるでしょうし、これは実にいろいろ差が出てくると思いますね、私どもの感じでも。うまくいっているところのようにしてもらえばいいわけなんであって、そういったところにつきましては、この人数枠を今後どうするかについて、今の段階で全く何にも決まっておりません。

 フィリピン政府からも、取り急ぎ千人だけれども次は二千人ですよなんという要望も向こうからは正式に出てきているわけではございません。

山井委員 それで、麻生大臣、お聞きしているのは、その次の人数を決めるときには国会審議をしてもらえるんですねということです。

麻生国務大臣 今の段階でその件について特に詰めたわけではありませんけれども、まずはスタートしてみた結果どうなるかというところを見ているだけであって、次の場合のときに、千人を二千人にふやすときに、法律にするのかとか、法案にしてまた出すのかとか、国会審議をするのかを含めて、今の段階で詰めているわけではございません。

山井委員 やはりそれでは非常に心配なんですね。

 その二年後、労働条件が悪化しているか、あるいは賃金の低下を招いていないかとか、いろいろなさまざまな問題が出てきて、もしかしたらフィリピンは、では次は五千人だ、一万人だと言ってくるかもしれないし、もしかしたら現場の職員じゃなくて経営者の方々は、こういう安い労働力が入ってきてくれるんだったら、うちも入れてくれ、うちも入れてくれ、同じ賃金でももう人が集まらないからうちも入れてくれというふうになる可能性があるんですね。

 やはりそこは国会に検証結果を報告して審議をするということを言ってもらわないと、一回これを決めたら、二年後、もしかしたら一万人になるかもわかりません、そのときは野党はもう議論に加われませんよということでは到底納得ができない。いかがですか。

麻生国務大臣 転ばぬ先のつえという話はよくあるので、多分そのおつもりなんだろうとは解釈しておりますけれども。受け入れの人数の枠について等々は、これは今まさに始まるばっかりですから、今の段階から、二年後の先はどうなるということを今は申し上げられるわけではありません。

 ただ、基本的には円滑にスタートさせることが大事なんだと思っておりますので、この問題に関しましては、この二年間の実績等々を踏まえて、国民の間にどのような反応が出てくるか、どういった意見が出てくるか、もっと受け入れろという意見が出るのか、それとも、いや、とてもいけないというのが出てくるか、これまた病院によって、人によって違うということも確かだろうと思いますが、そういったところを踏まえて研究をしていかねばならぬところだと思っております。

山井委員 いや、それでは到底納得ができませんので、ぜひ、委員長、これは理事会でこのことは議論をまたしていただきたいと思っております。二年後、結果がきっちり報告されて、私たちもきっちりそれを議論できるという担保がないと、これはそんなフリーハンドを与えるということは私は極めて問題だと思っております。

 これは先ほどの答弁にもありましたけれども、では、うまくいっているのかチェックしたいと思って私がその現場を一回見させてくださいと言っても、これは教えてくれないわけでしょう。だから、チェックしようがないじゃないですか。それで厚生事業団がたった十六人しかいなくて、うまくいっていますという報告書が出たら、それはマスコミも、多分、公表されないんだから行けないし、ブラックボックスじゃないですか、そんなの。このことはちょっと今後も議論していきたいと思います。

 それで、もう一つ大きな問題点は、きょうもパネルにつくりましたし、資料の二ページ目にも入れておりますが、今回三つのスキームがあって、一つ心配なのは、先ほど丸谷先生も質問されたかと思いますが、養成校コースは、このコースが唯一、養成学校に行けば試験なしで介護福祉士を取れるわけなんですよ。ところが、恐らく来年の通常国会には、この介護福祉士法が改正で、すべての日本人は試験を通らないと介護福祉士になれないという法案が出てくると予想されているんです。

 そこで、お伺いしたいと思います。

 その法案が可決された暁には、すべての日本人は試験を通らないと介護福祉士になれないということになります。そしたらその時点では、当然、この今回のEPAにおいても、フィリピンの方も日本人と同様に試験を受けてないと介護福祉士になれないということでよろしいですか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 介護福祉士制度については先ほど来議論に出ておりますので省略させていただきまして、本年七月、私どもの方の介護福祉士制度の見直し検討会につきまして、今、山井委員から御指摘ございましたように、すべての者について一定の教育プロセスを経た後に国家試験を受験するという方向で一元化を図ることが適切ではないか、こういう報告書がまとめられたところでございます。

 その上で、現在、社会保障審議会の福祉部会で九月よりこの議論を行っておりまして、成案が得られましたら、来年の通常国会の方に所要の法案を提出することといたしたいと考えております。

 一方、それで、もし、この法案が提出されまして、仮にすべての者に国家試験を課すこととされた場合でも、現在養成ルートにいる人たちのこともございますので、施行されるまでには数年の準備期間が必要であるというふうに考えており、現行制度がその法案が通った暁に直ちに実施されなくなるというものではございません。

 けれども、今回の日比経済連携協定に基づくこの介護福祉士候補者の受け入れに係るスキームは現行の資格取得体系を前提としたものでございますので、我が国の介護福祉士資格取得方法の見直しが行われた場合には、協定との関係で問題が生じないように、関係省庁とも緊密に協議してまいりたいというふうに考えております。

山井委員 明確に答弁してください。

 その法案が通れば、日本人はすべて、介護福祉士は試験が必要になってくるんです。そのときには、当然日本人と同じように介護福祉士の試験をフィリピン人も受けることになるんですね。裏返せば、日本人は全員試験を受けないとだめなのに、フィリピン人は試験を受けなくても自動的に介護福祉士になれる、そんなことはおかしいと思います。明確に答弁をお願いします。

中村政府参考人 具体的なことにつきましては、私どももまだ法案提出について審議会で議論をしているところでございますので、法案審議の際に御審議いただきたいと思いますが、私どもは、基本的な考え方は、あくまでも現行制度に基づいてこの協定がつくられているということですので、現行制度が変わった場合には、その変わった制度に基づいて基本的には考えていく。私どもは、今度の場合でも、日本とフィリピンの方、同等のものとしてお願いしているものでございますので、当然そういう前提で私どもは考えてまいりたい。しかし、これは外交の問題もございますので、そういった意味で、関係省庁とよく協議はさせていただきますが、あくまでも私どもの基本は、今回も同じように、国内と入ってこられる方は同等ということを基本に考えております。

山井委員 もう時間がなくなりましたので、最後に一言で終わりますが、今おっしゃったように、フィリピンでも一番関心が高いのは、試験はハードルが高いからこれは無理だな、やはりねらい目は、養成校に行ったら自動的に免許がもらえる、ここだなということになっているわけですよ。

 だからここは、中村局長は今微妙な発言で、厚労省としてはそう思うけれども、外務省とまた協議をしたいということですが、これは法案審議をしているんですからね、法案審議中にそこはぴしっと結論を出さないと、これが、フィリピン人が日本人と違って、試験を受けなくても資格を取れるんだという今回の議論なのか、それは違うんだ、日本と同じようにしっかりと資格を取らないとだめなんだということになれば、今回の審議の中身、違いますから、来週水曜日も質疑をしますので、それは早急に結論を出して、次のときには答弁をしていただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございます。

山口委員長 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介でございます。

 私のふだん所属する常任委員会、ホームグラウンドは経済産業委員会でありますが、本日は、外務委員会で初めて質問の機会をいただきました。委員長そして理事の皆様に心から感謝を申し上げたいと思います。

 早速質問に入りたいと思うわけでありますが、私も冒頭、同僚の山井議員と同様に、政府・自民党の幹部の中から出ております核保有に関する議論の是非論についてお伺いしたいと思います。

 麻生大臣のお考え方は山井議員の御答弁で私も聞いておりましたので、繰り返し聞くことはいたしませんが、最初に確認したいのですけれども、甘利明経済産業大臣は、十月二十五日の経済産業委員会の私の質問に対して、核保有議論の是非論をすべきかどうかということに関連して、その種の議論はすべきではないと明確に答弁しております。

 これは、麻生大臣も御存じのとおり、我が国の原子力発電は、核兵器を持たない、すなわちもう議論の決着は済んでいる、この大前提のもとに成り立っていると私は理解をしております。使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す技術、すなわちこれは核兵器をつくる技術でもあるわけでありますが、この技術を使った核燃料サイクル事業というのは、核爆弾をつくる技術の保有を許されているのは、平和利用というお墨つきを国際的にも国内的にも得ているから認められてきた。したがって、甘利明大臣の御発言は、この種の議論を、内閣で啓蒙するようなことはすべきではないということの趣旨だと理解しておりますが、本日は経済産業副大臣に御出席いただいていますが、こうした認識でよろしゅうございますでしょうか。

渡辺(博)副大臣 ただいま委員の御質疑の中にもう既に触れられておりますが、経済産業委員会、十月二十五日開催しておりますけれども、その際、甘利大臣は、我が国は非核三原則を一貫して掲げ、法律上も原子力基本法により原子力活動は平和利用に限定されており、その種の議論もすべきではないと答弁されております。

 経済産業省としての考え方は、甘利大臣が答弁したとおりでございます。

近藤(洋)委員 そこで、麻生外務大臣にお伺いしたいと思うんです。

 甘利明大臣は、こう答えていますね。「日本には技術はあるけれども、しかしやらないという宣言をするんだ、それが核兵器をこの地球上から駆逐していく大きな説得力になると思います。ですから、その種の議論もすべきではないと思います。」こう答えておりますが、この答弁と先ほどの麻生大臣の、啓蒙しよう、勉強しよう、勉強する、そして議論する、この議論は明らかに矛盾すると思うんですが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 全然矛盾していないと思うんですね。矛盾させたい気持ちはわからぬでもありませんけれども。

 私どもは、政府としてはと一貫して申し上げてきておりますので、甘利さんもまたほかの方々も同様の発言をしておられると存じます。

 もとのもとになりました中川昭一政調会長の発言というのを私も「サンデープロジェクト」の中である程度は見ました。政府として非核三原則は守りますと答えておられます、政府として、よく読んでいただくとわかるように。でも議論はという話をしているんであって、これは、政府で議論していくということではなくて、みんなで議論をするという。それで、田原さんの質問に対して、議論はタブーではない、もちろんということで答えておられるんであって、閣内で議論をするという話を申し上げたことは一度もないんであって、政府としては、ずっとこれは守ります、累代内閣が申し上げてきたとおりですとずっと申し上げてきておるのであって、国民の中でいろいろこの種のことは議論が起きてくるというのを封殺するというつもりは、私ども自由民主党としてはいかがなものかと思っておる、それが私の一貫したお答えであります。

近藤(洋)委員 麻生大臣は、議論は大事だとおっしゃっているんですね。ここは、大臣も大変御経験のある政治家でいらっしゃいますし、総理にも出馬をされた大政治家でありますから、政治家の発言の重み、そしてその影響というのは十分承知な方だと思っているわけであります。

 現に、議論は大事だ、そして封殺すべきではないということを外務大臣が繰り返しおっしゃるということは、まさに議論を促進している結果になっているわけですね。この結果の責任を問うているわけです。結果の責任を問うているわけです。

 大臣、もう一度申し上げます。今まで言った発言は大変反省している、軽率だったと撤回をするお考えはありませんか。

麻生国務大臣 まず最初にお断りしておきますが、撤回するつもりは全くありません。

 それから、何回も繰り返してという話をされますが、繰り返して質問をされておられるのは民主党のあなたたちであって、私の方から積極的に発言を求めて言っているということはございませんので、その点だけはよく御認識いただきたいと存じます。

近藤(洋)委員 姿勢に変わりがないから繰り返し確認しているわけですよ。大臣の軽率な発言が大きな影響を与えているから、その姿勢をただそうと思って、我が国のエネルギー政策にも大変重要な影響を与えるものだから、そして、甘利明大臣の考え方、立ち位置と麻生大臣の立ち位置が全く違うんです。一切すべきではない、封印すべきだ、そういったことを考えるべきではないと、非常に気を使って発言をされている甘利明大臣と麻生大臣の立ち位置が全く違うから、いかがなものか、こう申し上げているんです。

 具体的に言いますと、エネルギー政策でお伺いしたいんですが、外務大臣は当然核関連でエネルギー安全保障も所管されていますし、自民党の政務調査会長でもあられましたから原子力政策についてお伺いしたいんですが、具体的に今、例えば六ケ所村で、例えば大臣の御地元の九電の玄海でプルサーマル計画が進められようとしていますが、住民の方々には、およそ核兵器などはつくりません、一切やりません、全く議論すらあり得ません、議論などあり得ませんという約束を地元の住民の方々と交わしているんですよ。それを大臣が、いや、言論の自由だ、こういうことを、まあ詭弁を弄して、過去を学ぶことは重要なんだという言い方で議論を促しているようなことがあれば、我が国の原子力立地も、地元の住民の方にどうやって説明されるんですか。九州電力のプルサーマルとまっちゃいますよ。撤回した方がよろしいんじゃないですか。

麻生国務大臣 プルサーマルもとまるとも思えませんけれども。

 まず、原子力エネルギー、私はちょっとそれの専門家ではありませんけれども、原子力というもののエネルギーにつきましては、エネルギーの需要の増加、また地球温暖化の対策に対する観点から見てこの有用性というのが見直されつつある、原子力発電は見直されるべきであるというのが世界の潮流になっているのは御存じのとおりだと思います。

 したがって、日本としてもエネルギーの需要の増加に伴って、これの安定供給に我々も対応していくためには、当然の基幹になります電源として原子力発電というものに関してその役割を果たすことが大いに期待されているということであります。

 基本法につきましては、先ほども繰り返してずっと申し上げてきておりますので、私どもとしては、これの平和利用を担保するに当たりましては、核不拡散の考慮を十分に行った上で、原子力の平和利用に不可欠である原子力安全、核物質の管理などの分野において二国間及び多国間のさまざまな協力を実施してきておりますと答えておりますとおりなんであって、政府といたしましては、きちんとしたエネルギー政策、またその他の原子力基本法等々に基づいて、非核三原則を維持しますというのをずっと申し上げてきております。

 ただし、日本として、いろいろ国際情勢の変化に伴ってきて、今の状況に合わせていろいろな議論が出てくるということを封殺するつもりはありません。たびたびあなたが言うと言うから、私の場合はたびたび、自分から発言を求めて言ったことは一回もないのであって、すべて御質問に対するお答えでしております。

近藤(洋)委員 大臣の御発言が、あえて先輩の政治家の先生に失礼を承知で、ただ、これは私も立場ですから申し上げますと、やはり軽率であったと思うんですね。その御発言が軽率であったからこうして指摘を受けているわけであります。極めて軽率な御発言だったと。

 閣僚として、軽率な発言を撤回されたらどうかというチャンスを、日本国の国益をもって私どもは聞いているわけです。繰り返し申し上げて、撤回するつもりはないと。議論は大事だ、啓蒙する。しかし、勉強するのと議論を促すのとは違うんですよ。極めて軽率な発言なので、私は憂慮いたします。

 さらに、あえて言えば、この委員会の場はEPAの議論でありますけれども、少なくとも、経済産業大臣の立ち位置と麻生外務大臣の立ち位置が違うということが明らかになりました。こういうばらばらな状況では、経済外交も非常に足元、心もとないなと。エネルギー政策、日本国の極めて重要な分野において、原子力エネルギー政策の機微に触れる分野について、これだけ感覚がずれている閣僚が二人おるというのは、非常に危惧と憂慮を感じざるを得ません。

 本題に移りたいと思います。

 経済連携協定でありますが、各国間の交渉であるWTOの交渉が難航する中で、EPAを結ぶ動きが非常に活発化している。特に、お隣の韓国、さらには中国も積極的に展開をしているわけでありますけれども、我が国の経済連携協定の交渉は、地域的に、さらには分野別に、経済外交として、どのような戦略性を持って、国を選んで交渉を進められているのか、方向感を外務大臣にお伺いします。

麻生国務大臣 このエコノミック・パートナーシップ・アグリーメント、いわゆる通称EPAと称するものに関しましては、これはもう御存じのように、経済のグローバル化というものが好むと好まざるとにかかわらず潮流として進んでおります。その中心になっておりますのはWTO、ワールド・トレード・オーガナイゼーションというものなんですが、この多角的な自由貿易を補完するというものとしてこのEPA、FTAというのがいろいろ考えられてきた。

 特に、ドーハ・ラウンドが今一時中断しておるという背景もありますので、こういったことを考えまして、日本としての対外経済の発展とかいろいろなことを考えて、経済的な利益の確保にこのEPAとかFTAというものは資するものだ。特に、EPAというものは、ただ物の移動に限りませんので、そういった意味では、私どもとしては、大いに国際環境というものを有益なものにすることに資するものだ、基本的にそう思っております。

 したがって、これらの観点をもって、今御指摘のありましたイーストエーシア・サミットというのを昨年の十二月に立ち上げておりますけれども、東アジア諸国との交渉というものの中で重要な課題とこれは位置づけられております。したがって、今後の交渉相手としては、平成十六年の十二月に策定した基本方針にのっとりまして、経済の確保、いわゆる国際環境の形成や確保というものにのっとって私どもとしては進めていきたいと思っております。

 エネルギー安全保障の観点からも極めて重要なパートナーであります湾岸諸国、GCC、ガルフカントリーというところがありますけれども、この六カ国で構成されておりますいわゆる湾岸協力理事会などともこの問題については交渉をいたしておるところでもあります。

近藤(洋)委員 麻生大臣御答弁のとおり、このスケジュール表を見ますと、やはりアジアとそしてエネルギー保有国、この二つに我が国は大きな方向で絞って戦略的に進められている。この方向感自体は極めて正しいと思うわけでございます。

 エネルギーのない我が国でありますから、産油国なりそうした資源国との連携を密にする。さらには、委員長のお許しを得て資料を配付させていただいておりますが、一枚目の、一九八五年から二〇〇五年の、これは財務省の貿易統計に基づいた経産省提出の資料からでありますけれども、二〇〇五年東アジアの我が国の貿易量は五〇%、二十年前と比べて、三割だったのが五割に膨れ上がった、こういうことでありますから、当然そういった実態を反映しての取り組みだろうなと思うわけであります。

 そこでお伺いしたいんですが、とりわけ、先ほど言及がございましたASEANとのEPAの交渉であります。

 中国、韓国も大変な勢いでASEANとの交渉を進めておる。昨年、二〇〇五年の七月には、中国が物品の、いわゆるFTAといいますか、こちらの方を中国はASEANと結ばれて、韓国も同じように物品分野でありますが、ことしの八月に発効しておるところであります。

 日本はその意味では若干おくれをとったなという気がしないでもないわけでありますけれども、ASEANとの包括的なEPAの交渉、現在進んでおりますが、いつまでに締結するということで進められているのか、外務大臣にお伺いします。

岩屋副大臣 今、近藤先生お尋ねの、日本とASEANの包括的経済連携協定でございますが、二〇〇五年四月から交渉を開始しておりまして、現在も交渉中でございます。目標としては、来年春までの実質の交渉妥結を目指して、最大限努力をしているところでございます。

 それから、中国と韓国の動きについて先生の御指摘がございました。

 先生の御指摘のとおり、中国、韓国がやっている自由貿易協定、FTAというのは、物品貿易に関連する取り決めでございますが、我が国が進めておりますEPAは、さらにこのFTAの要素に加えて、投資あるいは私的財産あるいはあらゆる分野での協力、これは人材育成とか中小企業対策とかいろいろなことが含まれているわけですが、そういう幅広い分野でのルールづくりを含む包括的な内容となっておりまして、グローバル化が急速に進んでおります経済実態に法的枠組みを与えることを目的にして、交渉を続けているところでございます。

近藤(洋)委員 ぜひこれは積極的に取り組んでいただきたい、こう思うわけであります。

 配付資料の二枚目をごらんいただければと思うのですが、貿易立国の我が国において、人と物とお金の自由化はそれだけで経済を押し上げる、これは本委員会の委員の皆様なら共通認識だと思うわけでありますけれども、日本がそれぞれの国とEPAを結んだ場合、大体どれだけ実質GDPを押し上げる効果があるのかというのを、これは内閣府の研究所の調査でありますけれども、添付させていただきました。日・ASEANの場合は約一・三兆円、日本にとってプラス、GNPの押し上げ効果がある。そして、ASEAN、日中韓、こちらが一体になった場合は約四・二兆円、我が国においてプラス効果がある。

 何も損得勘定だけというわけではありませんが、それだけ我が国の経済に資することは明らかであろうかと思っておりますし、とりわけここで強調させていただきたいのは、やはりEUの経済状況を見ると、大臣、外務省の方々は恐らく骨身にしみて感じていらっしゃるかと思うのですが、ユーロが大変強くなっている。日本の円が非常に弱くなっている。一ユーロ、たしかスタートのときは百円だったかという気がいたしますが、最近、百五十円程度になっているわけだと思います。

 このユーロが強くなったというのはさまざまな要因があるのでしょうけれども、決してそれほど、マクロで見てヨーロッパが、EUが経済が強いとは極端には感じないわけですけれども、やはり統合の効果というのが非常にあるな。一つ一つがまとまった経済区域をつくった、この効果はやはり出ているな。ドルのことを考えてみても、通貨が強いというのはその国の国力でありますから、やはりEUの例を見るまでもなく、統合の効果というのは、これは歴史が証明をしているのだろう、こう思うわけであります。

 EUは最初できたときには、だれもが絵そらごとと当初思われたはずであります。しかし、通貨統合を経て、今もなかなかの問題はありますけれども、経済的には一本になりつつある。その中でお伺いしたいのですけれども、やはりそうなると、今現在はバイ、二国間でEPAを取り決めしておりますけれども、東アジア、ASEANを含めて、中国、韓国、日本を合わせた東アジア全体でEPAを締結する。もちろん、アジアはそれぞれヨーロッパと違う事情があるのは重々理解をしておりますけれども、東アジアのEPAを結ぶ意義は極めて高いのではないかと思いますが、これはたしか通告はしているかと思うのでお答えいただきたいのですが、外務省、東アジアEPAの意義についてお答えいただきたい。

麻生国務大臣 質問はちょうだいしていませんでしたけれども、今、御存じのように、昨年の十二月、ASEANプラス3プラス3、足すということで、豪州、ニュージーランドとインドというものを構成員とする、いわゆるASEANプラス6ということを称して、いわゆる東アジアというような形になっておりますが、経済産業委員会なりそちらの方で聞かれた方がよろしいんだと思いますが、少なくとも今こういったところに対して、豪州とかインドとかニュージーランドとかいうような、いわゆる自由主義経済、そして法治国家、民主主義というような基本的価値観を共有した国というのがこういったところに入ってくるということは、私たち、いわゆる旧ASEANにいるメンバーとしては非常に大きな意義を有するのではないか。

 しかも、資源国であり、片っ方は今IT等々で伸びてきている国でもありますので、そういった国々と一緒にいろいろな競争の条件を整えるということは、これは東アジアとして今後伸びていくに当たって、やはり人口的にも大きなところでもありますし、そこにインドとか中国とかいう大きな、巨大な人口を抱えている国、しかも、今BRICsの一端に入っています二つの国がその中に入ってきますので、そういった国々が先進的な段階に達している日本と一緒になってやっていくということは非常に大きな意義があると思っております。

 もともと中国はそんな賛成ではなかったんですが、最終的にこれは昨年の十二月、マレーシアだかシンガポールで押し切ってこれをスタートさせておりますので、こういったものはいろいろな意味で意義があると思っておりますし、方向としては間違っていないと思っておりますので、こういったもの、今すぐヨーロッパみたいに、似たような背景とも思いませんし、こちらも大分条件は違うと思っております。ヨーロッパよりもっと難しい条件をいっぱい抱えているとは思いますけれども、育てる価値のあるものだと思っております。

近藤(洋)委員 大臣、ありがとうございます。お答えいただきました。まさにそのとおりで、育てる価値のあるものだろうと思うんですね。

 そういう中で、現在、東アジア版OECD構想というものが政府内で練られておるやに聞いております。これ自体、さまざまな立場の違う国が一つの共通の土俵をつくるという意味では注目したい計画だと思っておりますが、簡単に、いつ、具体的にどう進められるのか、お答えいただきたい。

渡辺(博)副大臣 お答えいたします。

 東アジアの経済統合を推進するためには、将来的にはOECDのような政策提言や政策調整を行う国際的な体制を構築していきたいと考えております。その実現に向けての第一歩として、八月にマレーシアで行われました東アジア各国の経済大臣との一連の会合において、仮称ではございますが、東アジア・アセアン経済研究センターを来年度から設立することを我が国から提案したところであります。

 具体的な準備を進めるために、各国の賛同も得て、十一月と十二月に、インドネシアで各国の研究機関の専門家を集めた準備会合を開催し、その結果を十二月にフィリピンで行われる東アジア各国の経済大臣会合への報告をする予定であります。また、十二月に開催されます東アジア・サミットにおいては、同センターの設立が首脳レベルでも歓迎されることを目指しております。

 経済産業省としましては、来年度の同センターの設立に向けて、必要な予算の確保を目指すとともに、関係国との連携を深めてまいりたいと思っております。

    〔委員長退席、やまぎわ委員長代理着席〕

近藤(洋)委員 我々民主党は別に何から何まで反対するつもりは全くないわけでありまして、いい構想はいいと思うわけですね。ですから、こういう構想はぜひ我々も注目したいと思っておりますし、よりよい構想になるように注目をしていきたいと思っているわけであります。

 EPAは、麻生大臣も御答弁いただいておるように、人の自由化を含む、お金と人の、物だけではない、これが大きなポイントであるわけであります。同僚の山井議員が看護師、介護士の件について鋭い質問を繰り返されておりましたけれども、お伺いしたいのですが、今後も他国とのEPA交渉の中で人の自由化を盛り込む計画があるやに聞いておりますが、具体的にどこを進められるのか、お答えいただきたい。

岩屋副大臣 今お尋ねの今後のEPAの扱いについてでございますが、もちろんこれは個別に交渉していくということになるわけでございます。

 具体的にどういう話があるかというお尋ねでございましたが、まずタイでございますけれども、協定の発効後二年以内に介護福祉士候補者の受け入れの可能性について結論を得るように協議を継続するということで合意をしております。ただし、タイ側の政治状況によりまして、いまだ協定の署名には至っておらないということでございます。

 それから、インドネシアでございますけれども、先方の方から看護師及び介護福祉士の候補者の受け入れについて要望が出されておりますけれども、協定の具体的な中身については現在まだ交渉中であるということで、何か決まっているということではございません。

近藤(洋)委員 いずれにしろ、進める方向下にあると思うんですね。

 そこで、麻生大臣にお伺いしたいんですけれども、御承知のとおり、今我が国はいわゆる単純労働者の受け入れは原則認めておりません。移民を受け入れてもおりません。そして、これは日系人を除いてということでありますけれども、認めていない。だけれども、その一方で、人口の構造も変化したり、産業の構造も変化したり、そういった時代の変化に合わせて、一部には、移民政策というのも視野に置いたらいいのではないか、少なくとも入国のルールを見直した方がいいのではないかと望む声も非常に強い声があるのも事実でございます。

 そこで、麻生大臣は、政治家として、そして内閣の重要閣僚として、我が国はいわゆる移民政策といいますか、単純労働も含めた入国ルールの緩和ということを、受け入れることについて、その是非を検討することについてどのようにお考えですか。

麻生国務大臣 近藤先生、これは物すごく長い話でして、森喜朗政務調査会長のときに自由民主党はこの問題を特別の委員会を立ち上げてスタートさせております、もう十年ぐらいになろうと思いますが。そのとき、たまたまそこの事務局長をずっと約一年間しておりましたので、その当時からの話題ですから、随分古い話題ですが、基本的には、専門職とか技術職という人は受け入れる、単純労働者については、今近藤先生言われたとおり、十分慎重であるべきということで、ずっと一貫してきていると思っております。

 ただ、今このいただいた資料の中で、これはブラジル系が十五万三千人と一番多いというので、知らない人は大体みんな中国人が一番多いとか思っている方が多いんですが、実はブラジル人が一番多い、群馬県太田とか、いろいろ地域別もありますけれども。そういったところを見たらわかるように、この問題に関しましては、今いろいろ少子高齢化に伴った話とか、経済が多国籍化したとかいうところの話から、いろいろな話からこの話がまたまたいろいろクローズアップされてきておるというのは事実です。

 私も、一概に外国人労働者とか、また不法在留外国人による犯罪の激化とかいろいろな表現をして、マイナス面で言われる方も大勢いらっしゃることも知っております。また、労働条件というものを考えていった場合に、日本で学んだ人が多く自国に帰って、自国でいろいろな経済発展に寄与しているという現実もありますので、私どもとしてはこの問題については今結論を出すというところにまではまだ至っておらぬのではないか、もう少しこの経過を見た上で話をしないと、話としてはなかなか難しい問題があるのではないか。

 昔みたいに、隣のうちに外国人が住むところまでは何となく受け入れられるような感じになってきた人も、私どもの地方におりましてもそういう感じはいたします。ただ、一緒にというようなことになりますと、なかなか、そういったものにはちょっといま一つ引いたりなんかするところがあるというのも、現実として私たちは現場を見てそう思いますので、そういったものを見た上でどうしていくかというところが一番大事なのではないかというような感じがいたしますので、どちらかと言われれば、私は、積極的でもなければ断固反対でもない、極めて慎重にこの問題は検討すべきだと思っております。

近藤(洋)委員 麻生大臣、これも質問通告なくて恐縮ですけれども、事実関係だけなんで。

 大臣は深夜のコンビニエンスストアに行かれたことはありますか、最近。

麻生国務大臣 深夜の定義を知りませんけれども、十一時以降ということでしたら、しょっちゅうあります。

近藤(洋)委員 だとすると、大臣、都内のコンビニエンスストア、この質問をつくるために十二時ごろですけれども私もきのう行きました、帰る前に。ほとんど外国人ですよ。もうおわかりいただけると思います。深夜のコンビニエンスストアは、あらゆるコンビニが店員の方は外人であります。ほとんどは外国人の方が多い。これは調べたデータもありますので、時間があれば御紹介申し上げたいですけれども、外国人の方がほとんどであります。

 とりわけ、新宿なりそういう大都会はそうでありますけれども、申し上げたいのは、まだまだ先の話とおっしゃいますけれども、外国人労働者が入ってきているということ自体は既にもう身近な問題だ、こういうことを申し上げたいわけであります。

 さらに言えば、製造現場の外国人の方は非常にふえている。大臣の方からも御紹介いただきました。この添付資料の方、四枚目を見ていただければと思うんですが、岐阜県美濃加茂市、これは外国人登録者数の占める比率ですけれども、九・六%です。群馬県のある町では一五・八%。さらには、そういった特殊な町だけではありません、浜松、そして豊田、豊橋、こういったところの外国人が非常にふえている。

 私は、浜松に行って活動したときに、異常に多い。要は、すべて電機、自動車部品の集積地なんですね。製造現場の現実は、もはや、外国人労働者というか、日系人労働者も含めてですが、これがなければ成り立たないというのが現実の姿です。日本の冠たる産業の現実が、もはや根っこで支えているのは、実はこういった日系人二世、三世、さらには、場合によっては不法で働いている人もいるかもしれません。そういった方々が根っこで支えているのが今の現実だということですね。

 大臣は、お言葉ですけれども、いや、僕はさすが森さんも立派なところがあるなと思いましたよ。十年前から着目されてこの問題を取り上げていたといって、最初は期待しましたけれども、十年間放置していたんだな、こういうふうに思わざるを得ませんね。このままの状況で、何もしなかった。

 大臣は慎重にとおっしゃるけれども、もはや慎重に判断すべき時期はとうに過ぎているんだ、こういうことを申し上げたい。さまざまな問題が起きているし、日本の基幹産業もそこに頼っているんだという現実があるんだということを、認識を改めていただきたい、こう思います。

 そこで、経済産業省にお伺いしたいんですが、そうした状況の中で、片っ方で厚生労働省は選んで入れるという姿勢ですね、これは日本政府の基本姿勢。しかしながら一方で、経済産業省の現実、産業現場を預かる現場として、果たしてそのままで大丈夫なのか、日本の産業基盤は大丈夫なのかという危惧を思うわけですが、現実と制度のギャップをどのように埋めようと思っていらっしゃいますか。

    〔やまぎわ委員長代理退席、委員長着席〕

渡辺(博)副大臣 お答えいたします。

 先ほど外務大臣からお話ありましたけれども、政府の一貫した方針というのは、専門的、技術的分野の労働者の受け入れは積極的に受け入れていきましょうという方針です。その一方、一般の単純労働者については慎重に対応する、この姿勢は今も基本的には変わりません。

 御指摘のとおり、それぞれの地域の中では大変多くの外国人の方が産業の担い手として活躍をしている、これも一つの事実でありますけれども、しかしながら、外国人の受け入れ拡大には国内市場の労働市場への悪影響や社会的コストの増加を懸念する声もあるということも、また一つの事実であります。

 この問題を検討するために、関係省庁の副大臣から成るプロジェクトチームで議論を行いまして、本年六月、「外国人労働者の受入れを巡る考え方」を取りまとめたところであります。その内容としまして、高度な外国人人材の受け入れ促進及び対象範囲の見直しの検討。二番目としまして、研修・技能実習制度の見直しの検討などを示してきたところであります。

 これらを踏まえまして経済産業省では、高度な外国人人材の対象範囲の見直しの検討を行っております。また、産業界のニーズにもこたえつつ、諸外国への技術移転を図ることができる研修・技能実習制度の適正化、充実に向けた研究会を行っているところであります。

 今後とも、関係省庁と連携して、我が国にとって望ましい外国人労働者の受け入れのあり方について検討してまいりたいと思っております。

近藤(洋)委員 残念ながら、よくわからない御答弁でございました。一生懸命やっているということはわかるんだけれども、どこまで頑張るんだと。今言った、現実とのギャップをどう埋めるんだということについては、やはり経済産業省としても、それは政府部局の一員ですから、選んで入れるという方向の中での話なんだろう、そう思うんです。

 ただ、実際にはそうでもない。現実はそんな甘くない。製造の現場はそういう状況もとうに超えているということを申し上げたい。そして、一部報道では、外国人研修制度について再来日を認める、要するに、今三年いるのを五年に引き上げるという研究会を経済産業省は発足させていますね、副大臣、うなずいていらっしゃいますが。うなずいている一方で厚生労働省は、いやいや研修制度というのは悪用されているから、できるだけ絞り込もう、再来日なんかとんでもない、こういう研究会を片っ方でつくっているんですね。

 これは、麻生大臣ほどの見識のある、総理に次、場合によってはなられるような方が判断をちゅうちょしているからこういう状況に陥るんですよ。ばらんばらんになるんですよ。どっちを向いていいかわからなくなるんだと思うんですよ。

 ちょっと時間がないので指摘だけにしますが、法務省の方の体制もこれは三千人で、全部に表を出していますけれども、各国、一概に比べられませんが、ほとんど大変な勢いでふえている外国人に対して、対応すら体制すら整えられていない。法務省の入管ですらそうであります。大変厳しい状況に迫られている。法務省も困っているわけです。人員も足りない。政府が、核がないから、考え方をきちっと現実に踏まえて対応していないからそういうことになるのではないかと思うわけでありまして、そこで、最後の質問です。麻生大臣、もう一度お伺いします。

 要するに、単純に移民を受け入れるか受け入れないか。それはさまざまな社会的な問題がある、重要な問題である、海外も苦労している、重々承知しております。では、受け入れないのであれば、どういう体制を、日本の産業を競争力を維持するために、また社会を守るために、活力を維持するためにどういう手だてがあるのか。今のような場当たり的な、どっち向いているのかわからないような対応では、とても対応できないと思うんです。

 もう一度重ねて伺います。移民の是非について、麻生大臣は、森先生の下で事務局長をやられていたんであれば、早急にこの問題についてもう一度整理をする必要があるんじゃないですか。核保有の議論よりよっぽど大事ですよ。

麻生国務大臣 核保有の議論よりもっと大事かどうかという判断をあなたに聞くつもりはありませんけれども。

 基本的には、今申し上げたように、移民を受け入れるか受け入れないかというような単純な話とも思わぬのですね。移民を受け入れるということで、一挙にウン百万単位で入ってくるということを日本の国民が望んでいるであろうか。僕は望んでいないと思うね。はっきりしているんじゃないですかね。移民を受け入れなきゃいかぬというのであって、人口密度を考えていただいても、少なくとも、香港、台湾に次いで人口密度の高い日本に一挙にウン百万人、ウン千万人のオーダーで入ってくるというのは、私はちょっと理解できない。

 したがって、今、日本として必要と言われる労働人口というものの技術を持っている人、そういった人たちは受け入れましょうというのが一点。また、日本の技術を習得したい、また、日本語を勉強したい、日本の何とかといろいろな形で学生が入ってきている、そういった人たちがアルバイトの形でコンビニなんかにいる。事実、そういったところもあります。また、現場がそういったのに頼っているところもあるという両方の現実を踏まえて今のような形なんであって、今の方針というのは、技術者は受け入れる、単純労働者は受け入れない、学生は大いに受け入れましょう。その中で、いろいろな人たちで日本に残っていろいろ大いに学びたいという人がおられるのであれば、それはそれでまた結構。そして、そういった人たちが日本語を習得して、また日本に再来日される、それも結構。

 ただ、私どもとしては、何となく労働者じゃなくて観光で入ってきて、いつとはなしにいなくなっちゃうという形での、いわゆる不法移民というのがふえるのだけは断固とめねばならぬというのはきちんとしておるのであって、そこが一番の基本だと思っております。十年前からその基本は変わっていないということなのであって、現実というものを見た場合に、結構そういった人たちもおりますし、私どもの会社なら、外国と組んで、うちが六、フランスが四で組んだ会社を持っていますから、そういった意味で、現場がどうなっているかというのを結構知らないわけじゃありません。

 そういった現場というのを知っているがゆえに、今いろいろな形で時間をかけて、十年もかけると、筑後弁しかできなかったやつがそこそこ英語をしゃべるようになり、向こうも日本語は筑後弁が標準語かと思ってしゃべるようなことになってきますから、そこそこ話も合ってくるようになるのにやはり十年かかりました。そういったのを時間をかけてやっていった結果、いろいろなうまくいき始めた例というのも知らないわけではありませんので、全く入ってくるのを排除するつもりもありませんし、だだ漏れでただただ単純に受け入れることもない。

 したがって、その答えとすると、今中間みたいなところにしか、慎重に対応していけば今のような結論になるのではないかという感じがいたします。

近藤(洋)委員 時間ですのでやめますが、何も、私も移民に単純に賛成している政治家ではありません。その上で、現状の制度が破綻しているんだ、この現実を踏まえて対応しないともうもたないですよ、このことを指摘しているわけであります。

 時間ですので、終わります。

山口委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 本題に入ります前に、中国政府が六カ国協議が近く再開されると発表したことについて、我が党の志位委員長は昨日談話を発表いたしました。今回の合意は、国連安保理決議が全会一致で求めた六カ国協議への北朝鮮の即時無条件復帰と、平和的、外交的努力による問題の解決という国際社会の総意に即したものであって、我が党はこれを心から歓迎いたします。できる限り早期に六カ国協議を開催して、朝鮮半島の非核化という目標に向けて、関係各国が真剣な努力を図ることを期待いたします。

 さて、日本とフィリピンの経済連携協定について質問いたします。

 今、世界の各地で国際秩序の新たな担い手として、自主的な地域の平和共同体の動きが大きく発展をしてきている。東南アジア諸国連合・ASEAN、上海協力機構、南米諸国共同体、アフリカ連合・AUなどであります。これらの地域共同体は共通して、国連憲章に基づく平和秩序、紛争の平和解決、各国の経済主権の尊重と民主的な国際秩序、経済秩序を主張しているということだと思うんです。

 そこで、まず麻生大臣に伺いたいと思います。

 こうした動きがとりわけ大きく広がっている東アジアの中で、二十一世紀の日本が進むべき道は、東アジアの一員として各国の政治的、経済的な主権を尊重し、自主的な地域の共同体の発展に積極的に貢献をする方向にあると考えます。私自身も、東アジア共同体については、マレーシアで行われた、これはトラック2の会議ですが、何度か参加しまして、当時のマハティール首相や現在のアブドラ首相も出席しておりましたけれども、大いに議論に加わったことがあります。

 今回の日本・フィリピンEPAは、アジア諸国、またASEANの成長戦略との関係でどういう位置づけと意義を持っていると大臣はお考えになっているか、改めて伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 今、笠井先生言われましたけれども、この東アジア共同体というのは、余り中国は賛成ではなかったんです。昨年の十二月まではそんなに賛成ではありませんでしたし、現場に行ってから話を私どもとさせていただいたという経緯もあって、そして今ASEANプラス3プラス豪州、ニュージーランド、インドということになったんだと記憶をいたします。

 しかし、この東アジア共同体というのは、御存じのように、宗教も違えば、人種も違えば、言語も違うというので、ヨーロッパのEUでも、ゲルマンだ、アングロサクソンだ、ラテンだといろいろ違うにしても、一応、シャルルマーニュ大帝のときには、ほぼ同じシャルルマーニュのところにいた時代もありましたし、トルコを除いて、そういったある程度のバックグラウンドがあったと思いますが、こちらの場合は、それはほぼありませんので、そういった意味では、これはなかなか難しいというのは、もう御存じのとおりですから。

 私どもは最初、EUみたいな話をするときにも、フランスとドイツだって、もう戦争を何回したんだと。普仏戦争から数えて三回やっているんだから、とてもじゃないけれどもと言われながらもうまくいったではないか。したがって、こういった話を考えてみれば、我々も今、もう一回考えられるのではないか。

 ちょっと問題になったのは、共産党だった東ヨーロッパは入らなかったわけですから、最初のころは。しかし、それが終わった後、今はみんな一緒になっているんだから、先のことはわからぬのだから、とにかく東アジア共同体というのをスタートして、みんなで共通点からSARSの問題やら何やら、そっちは情報を隠して苦労したのは、みんな周りにいるんだから、お互いに情報の交換をしようとか、そういったところからスタートして、幾つかの共通基盤やったらどうですかと、随分手間暇、いろいろな例を引きながら、やりながら、結果的にこれに乗ってきたという経緯があります。

 しかし、現実問題、それはそれとして、その中でもEPAとかFTAとか、いろいろな具体的なところを、どんどん進められるところは進めていった方がいい、私はそう思いますので、その意味では、この中で、フィリピンはアジアの中で三番目だと思いますけれども、シンガポール、マレーシア、三番目だと思いますが、その意味では、フィリピンの場合も、ほかの例えばASEANの中では、少なくともタイやらインドネシアより先にここはできることになったというのは大変いいことなのであって、私は、これを機会に、フィリピンがASEANの中ではちょっとおくれたような経済にはなっておりますけれども、このEPAというのを機会にして、フィリピンの経済成長とか日本との関係がよりよくなるということを心から期待をし、それが結果として東アジア共同体に進んでいく一つの過程になりやせぬかなというのが正直な実感です。

笠井委員 世界のいろいろな動きも言われました。東ヨーロッパの共産党とうちは違ういろいろな問題がありまして、そこをまた一緒にしてもらっても困るので、あえてそういうことを言わなくていいんですが。

 今、大臣言われましたが、EPAにしろFTAにしろ、もともと政治経済制度や発展段階が違う。東アジアは特に多様です。そういう中で、相互の関係でも各国内の調整でも、地域的な協力の利点を生かして、それぞれの利益を増進しようというものであります。

 それで、経済連携協定が東アジア共同体の促進に資するというのであれば、そこにはやはり、二国間でも多国間の機構との間でも、お互いに違いを認識しつつ多面的な協力の枠組みをつくっていくということが大事で、そのためにもやはり平等互恵という開かれた相互発展のそういう関係をつくる。そして、平和的に共存するし、そしてアジアの平和努力に加わっていくということが大事だと思うんですけれども、それは当然そういうことですね。

麻生国務大臣 基本的には同じルールでやらぬと、少なくともこっちはこのルール、こっちはこのルールでは意味がありませんので、それは国によっていろいろ、ここだけはちょっと勘弁しろとか、うちはこれだけはだめだとかいうのは、それはいろいろ事情があるだろうとは思いますけれども、互恵と言われましたけれども、全く基本としてはそれをベースにしてということだと存じます。

笠井委員 そこで、本協定がこれまでの経済連携協定と大きく違う点というのは、先ほど来ありますが、人の移動ということであります。日本・フィリピン協定が、看護師、介護福祉士の研修生について、それぞれ二年間で四百人、六百人という受け入れ枠を設けている。

 これは厚生労働省に確認ですが、この受け入れというのは、そもそも日本の医療現場から出た要求なのか、それともフィリピン側の要望かというので改めて確認したいと思うのですが、端的に一言お願いします。

岡崎政府参考人 それは、両方ともニーズはあったのだろうと。そういう中で今回協定ができたというふうに理解しております。

笠井委員 どちらから言い始めた問題ですか、提起は。

岡崎政府参考人 フィリピンの方が熱心だったように理解しております。

笠井委員 我が国における看護師、介護福祉士、介護職員などの医療福祉分野の労働者は、先ほどもありましたが、長時間過密労働による健康破壊とか低賃金などの深刻な労働環境となっていて、離職者の発生がさらなる人手不足に拍車をかける悪循環に陥っている。そういう現状の中で、フィリピン人の看護師、介護福祉士の研修生を受け入れることは、日本の医療、介護の労働条件の改悪とか、我が国の医療、介護体制の後退につながりかねないという懸念が現実に寄せられているわけです。

 さきの本会議での質疑で、柳澤厚生労働大臣は、これは労働力不足対策ではなくて、あくまでも協定の枠内で例外的、特例的に行うものであって、受け入れ規模については、当面、現在の協定内容以上に拡大する予定はないというふうに答弁されました。

 それで、この当面というのはいつまでのことというふうに想定しているのか。また、事前に伺ったところでは、場合によっては、様子を見て受け入れ枠を縮小することもあり得るということも言われたわけですけれども、そういうこともあり得るということなのか、そこをお答えいただきたいと思います。

岡崎政府参考人 二年間で千人ということにつきましては、この二年間に千人というものを拡大するつもりはないという趣旨で大臣は答弁したというふうに理解しております。

笠井委員 いや、だから、当面、現在以上に拡大する予定はないというのは、当面というのはいつごろまでのことなのか、あるいは見直しということがあればいつなのか、それから、場合によっては縮小することも当然あり得るということなのか、その点です。

岡崎政府参考人 当面というのは、要するに、二年間千人ということを固定しているという趣旨でございますので、二年間について千人をさらに拡大するというようなことは考えていないという……(笠井委員「いや、その後は」と呼ぶ)その後については、今後の受け入れ状況等を見ながら三年後以降は検討するということでありまして、二年間は千人。

 それから、労働市場に影響があった場合については、将来に向けて、EPA協定上、受け入れを停止することもあり得るという条文があるということでございます。

笠井委員 欧米の例でいくと、やはり現実にその国にとって深刻な事態があるというのは承知していますので、くれぐれもそうならないようにしなきゃいけないという問題だと思うんです。

 とりわけ医療、介護の現場では、患者や利用者にとって、やはり安心、安全のサービスということが何より大事なところだと思います。高齢者もとりわけ多いという状況の中で、例えばコミュニケーションの能力がとりわけ重要であって、先ほどもありましたが、短期間の語学研修で病院や介護施設の現場に出るということで研修をする、就労するということになりますと、それで本当に安心、安全のサービスということに携わることができるのかという疑問も出ているわけであります。

 それでは、端的に三つ伺いたいんですが、研修生の日本語の習熟について、現場の専門家や職員から、日本語の検定、例えば二級ということになれば日常会話を話す能力であって、専門用語を初めとして広範なコミュニケーション、しかも微妙なところですから、いろいろな話の中で、患者や利用者の思い、それが本当に受けとめられてこたえられるか、そういう点では対応が可能かという問題提起があります。厚労省の見解は、これに対して可能なのかどうか、それをどういうふうにお考えか。

 二点目は、研修生に医療行為をさせないということが大事だと思うんですが、その担保措置があるのかどうか。

 それから、これはあってはならないことですが、例えば、コミュニケーションのうまく通じないことの結果として、万一介護を受けている人や患者の方が事故に遭った場合にどういう対応となるのか。

 この三点、お答えいただきたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 当面、フィリピンの方が来られた場合、介護福祉士の場合、お話ございましたように、実習ということで現場に入ることが多いわけでございますが、今、私ども、実習していただく施設につきましても、普通の施設以上にきちんとしている施設ということを考えておりますし、リーダーとして、研修のリーダーも豊富にいなければならないということで、例えば常勤の介護職員の四割以上が介護福祉士を持っていただくとか、そういったことを考えております。

 端的にお答えいたしますと、日本語研修につきましても、三年間の実習をしていただきますので、最初入られたときは施設において週報などが読める程度というふうに考えておりますが、だんだん進歩していって、最後にはやはりきちんとケース記録を日本語で書けるようにならなきゃなりませんので、そういうプログラムを組んで実習をしていただき、最終的に、もちろん最後は介護福祉士の試験を受けていただいて介護福祉士になるわけですが、なった場合に現場で働けるような日本語習得をしていただきたい、そういうふうに考えて、研修プログラムについても私どもも協力して作成しているところでございます。

 医行為につきましては、まさに日本の法律で、資格を持った人以外は医行為をしてはならない、これは日本人であろうとだれであろうとそういうことになっておりますので、それはきちんと、フィリピンから来られた方がとかそういうことではなく、医行為の問題については日本の法令で、これは施設であっても、日本人、フィリピンの実習生あるいはフィリピンの介護福祉士を問わず適用されるということでございます。

 事故なり苦情の問題というのは、基本的には施設と利用者の方の問題になり、施設が責任を持って例えば事故の場合の補償などをするということになると思いますし、そういった場合の例えば保険制度なりそういったことについては、今、日本の学生さんが実習を受けられるときもそういう保険などもございますので、そういったことで配慮していかなければ、あってはならないことでございますが、万全を期さなきゃなりませんが、補償ということは施設の責任で考えていただかなければならないと考えております。

笠井委員 今ありましたけれども、これは体制的にも、受け入れのところの体制としても、それから本人にとってもなかなかこれは大変な話だな、容易ではないということが今御説明の中でもあったと思うんです。ここは本当にきっちりやらないと、こういう形でやるとなったときに、大変な結果になったときには、これはどうやって責任を持つのかということがあると思います。

 本協定のもとで実行されるフィリピン人の研修生の受け入れ制度の細部は未定ということでありますが、例えば看護師コースの場合、雇用主は、六カ月の語学研修修了後に現場に行って就労するということになりますが、看護助手ということでの賃金水準はどうなのか、そして実際に具体的にはどうやって決められるのかということについてはどうでしょうか。

白石政府参考人 看護の現場のお尋ねでございますけれども、研修中でございます場合は、当然まだ日本の看護師の資格がございません。したがって、看護師の資格がない、同様の例えば看護助手であるとか、そういう人との給料の比較ということで、過不足ないかというふうな形で見ることになろうかと思います。

笠井委員 研修に名をかりて低賃金で働かせるとかいうことで、悪用されることがあってはならない。それから、医療団体や専門家の一部から、こういう研修生を、要するに帰国前提で、三年間でも結局取れないだろうということで、結局はその制度を使いながら、使い回していくという制度上の可能性があるんじゃないかという指摘もあるわけで、これについても、やはり大きな問題としてきちっとしなきゃいけないというふうに思うんです。

 もう一点、我が国は一九九三年に、開発途上国の産業振興の担い手となる人材を育成する観点、それから技術移転の目的で、外国人の技能研修制度というのを始めました。この制度が実施されて十数年たつわけですけれども、何が問題になっているかということについてであります。

 例えば、具体的に、徳島労働局の調査では、労働基準法、労働安全衛生法違反の過去最悪の数が出ていて、六十六事業場に上った、このうち割り増し賃金違反が七割で、最低賃金未満で労働させていたケースも五件見つかるということで、賃金が適切に支払われていない実態が明らかになっております。また、福井の労働局による外国人実習生の監督指導結果のまとめによりますと、七十二事業場中、六十五事業場で違反が見られて、違反率九〇%というふうに出ております。

 ある職場では、中国人の実習生四人に対して、平成十六年の九月から十七年三月までの六カ月間で、時間外割り増しも含めて時間給八百四円以上を支払わなきゃいけないのに、一カ月当たり二十時間を超えるという者に対して時間額四百五十円で計算して支払いをしていたという事例もあって、こうしたことが各地で起きている。私も実際に、ある研修生の給与支払い書を見せてもらいました。

 これは、国際貢献の名のもとで安い労働力として働かされているのが実態だと思うんです。こうした実態について厚生労働省はどう考えているのか、これらの問題についてどう対処するつもりなのか、お答えをいただきたいと思います。

草野政府参考人 お答えします。

 お話しのように、技能実習制度は、国際貢献の観点から開発途上国への技能移転を図ることを目的としているわけですが、おっしゃるように、一部に労働基準法違反、賃金未払い等の事案が発生していることについては、本制度の目的に照らして問題であるというふうに考えております。

 そこで、厚生労働省としましては、国際研修協力機構、JITCOと言っておりますが、ここを通して、受け入れ団体、企業に対する巡回指導の強化でありますとか、さらには、労働基準監督機関におきまして、労働条件の履行確保上問題がある技能実習生受け入れ事業場に対する監督指導の強化、さらには、入管当局を初めとした関係行政機関の連携などによりまして、制度の適正な運営に努めてまいりたいというふうに考えております。

 また、規制改革・民間開放三カ年計画などにおきまして、本制度の適正化について指摘がなされております。それを踏まえまして、厚生労働省としましても、学識経験者による研究会を設置いたしまして、問題点の整理と適正化に向けた方策についての検討を行ってまいりたい、今年度中に関係省庁とも連携しながら結論を得てまいりたいというふうに考えております。

笠井委員 終わりますけれども、そういう事態が今回の日本・フィリピンのEPAによってまた引き起こされてはならない、これがそういう場になったら絶対いけないと思うんですよね。このことを強く指摘して、きょうの質問は終わります。

山口委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 日本とフィリピンとのEPA協定について伺います。

 この協定は、日本とフィリピン両国における物品及び貿易障壁を削減、撤廃すること、及び幅広い分野での法的枠組みや協定のための枠組み設定を定め、もって物品及びサービスの貿易の自由化を円滑に促進することなどを目的とするものだと理解しております。

 質問の第一点は、本協定に伴う我が国の農林水産業に対する影響であります。

 長期に及ぶ自民党政権の中で、我が国の農業政策は、農家、農民にとって実効ある有効な政策がないままに進められ、農業基盤は脆弱化しております。今度の日本とフィリピンとのEPA協定によって、粗糖、糖みつの関税割合についてどのように取り決められたのか、お答えください。

佐久間政府参考人 御質問の砂糖につきましては、フィリピン側の強い関心品目でございましたが、我が国におきます砂糖産業への影響を考慮しました結果、粗糖につきましては、協定発効後四年目に再協議とすることといたしました。また、糖みつ及び一キログラム以下の小売容器入りのマスコバド糖、これは含みつ糖でございますが、これらにつきましては、関税割り当てを導入いたしまして、枠内税率を枠外税率の五〇%といたしまして、割り当て数量につきましては、協定発効後三年目に、糖みつにつきまして二千トン、マスコバド糖につきまして三百トン、四年目にそれぞれ三千トン、四百トンといたしまして、その後の取り扱いにつきましては再協議とする、こういうことで両国の合意を見たところでございます。

照屋委員 今回のフィリピンとのEPA協定により、農産物の輸入がさらに拡大されることになります。沖縄はパイナップルの自由化で大打撃を受けましたが、今回また枠内無税となりました。マンゴーについても、メキシコやマレーシアと同様、関税が撤廃されることになっております。

 沖縄のパイナップル、マンゴーへの影響、及び熱帯フルーツ全般についての輸入に関して、どのような政府方針で臨んでいるのか、伺います。

佐久間政府参考人 パイナップル、マンゴーの合意でございますけれども、今回の合意におきましては、パイナップル缶詰につきまして、現行の関税割り当て制度及び関税率はこれを維持しまして再協議といたしましたほか、生鮮のパイナップルにつきまして、九百グラム未満の重量の小さいものにつきまして、これに限って初年度千トン、五年目で一千八百トンの無税枠の設定を行うことといたしております。また、マンゴーにつきましては、現行三%の関税を即時撤廃とすることといたしました。

 沖縄産のパイナップル及びマンゴーに対しましての今回の合意の影響につきましてでございますが、まず、パイナップルにつきましては、缶詰用につきましては何も変更はないということでございますし、また、生鮮の小さいパイナップルにつきましては、輸入場が限定されております。また、マンゴーにつきましては、既に特恵関税の適用によりまして、今、実質上無税になってございます。さらに、国産のマンゴーにつきましては、完熟栽培等によりまして、高品質果実ということで売られておりまして、輸入マンゴーとは差別化されて販売されているということでございますので、今回のフィリピンとのEPA締結によりまして、沖縄のパイナップル、マンゴー等の果樹生産への影響はほとんどないというふうに考えてございます。

 また、今後の対応の方針でございますけれども、パイナップル、マンゴー等の熱帯果実につきましては、今後のEPA、FTA交渉におきましても、交渉相手の理解を求めつつ、国内果樹農業への影響を極力回避するよう粘り強く交渉してまいりたい、このように考えてございます。

照屋委員 サトウキビは沖縄の基幹作物であります。沖縄は台風常襲地帯でありますが、サトウキビ農家は台風襲来にめげず、土づくりを初め、効果的、効率的なサトウキビの増産に励んでおります。

 今度の日本とフィリピンとの協定締結によって、サトウキビの生産者価格にどのような影響が予想されるのか。また、今後のサトウキビ生産振興のあり方に対する国の方策を尋ねます。

佐久間政府参考人 先ほど申しましたように、砂糖につきましては再協議、または我が国の生産量と比しまして、少量の関税割り当てということで合意いたしました。これによりまして、サトウキビ生産者、含みつ糖の製造業者を初めといたします我が国の砂糖産業に与える影響は、価格を含めて最小限のものというふうになると考えてございます。

 今後につきましては、今般の合意内容に基づきます関税割り当て等の輸入制度を適切に運用いたしますとともに、現在、沖縄県、鹿児島県におきまして取り組んでおられますサトウキビ増産プロジェクト等を推進することによりまして、我が国砂糖産業の振興に努めてまいりたい、このように考えてございます。

照屋委員 先月中旬、フィリピン残留日系人十五人が日本の戸籍をつくる就籍審査の目的で来日しました。フィリピン残留日系人は約二千五百人前後と推測されております。沖縄からフィリピンへの移民は、一九〇四年に三百六十人が第一陣として渡っております。第二次大戦前には約二万人の沖縄出身者がいたと言われております。そのことからすると、現在でも多数の県系人が残留していることも考えられます。

 フィリピン残留日系人は、中国残留孤児に比べて、ほとんど国の支援の手を差し伸べられてきませんでした。しかし、戦争の犠牲者ということでは中国残留孤児と一緒であります。

 麻生外務大臣に尋ねます。

 国の海外残留孤児の支援は、中国やサハリンの在留邦人に限定されております。フィリピン在留日系人の支援などは民間団体にゆだねられているのが現状ですが、国として、フィリピン残留日系人にも支援の手を差し伸べるべきではありませんか。麻生大臣のお答えをお願いします。

麻生国務大臣 これは御存じの上で聞いておられるんだと思いますが、これは、フィリピン残留日系人というもののまず定義からスタートしなきゃいかぬところなんですが、今、いわゆる日系人というものに関しての大規模な調査を一九九五年から、過去四回、外務省は実施をいたしております。

 そのうちで、二つに分かれるんですが、一つは、いわゆる現地で出産して当時の日本の戸籍に日本人として既に登録、記載されている人が三百九十三名と判明しております。また、一千四百三十六名の方、この方は日本人の子であることは確認をされておりますが、いわゆる当時の日本の戸籍に記載をされていない方々、今照屋先生言われましたいわゆる就籍手続が必要な方が一千四百三十六名に上っております。

 これが確認ができておる数字でありまして、これがこの十一年間の成果であります。また、これらの方々を血縁とされるいわゆる日系と言われる方、約三万人に上っております。それらの方々の家系図というものを作成する必要もあり、この家系図の作成も終わっております。

 こういった外務省によります累次のいわゆる戸籍調査というものに関しましては、これは在フィリピンのいわゆる日系人連合会から累次にわたって感謝をされているところでもあって、この点につきましては、きちんと、この場合は、照屋先生、中国の残留孤児と条件が違いまして、そこにほとんど残っておられるんですよ。フィリピンの残留孤児の方はほぼ現地に、同じ集落に残っておられる、居住しておられる方が多いものですから調査がしやすかったということもあります。

 もう一つは、そういった意味で、現地の日本人会もそこそこまたしっかりしておられるところもあったものですから、いわゆる職業訓練センターなどなど、いろいろなことをさせていただいて今日に至っております。したがって、今後ともまたいろいろやっていけることもあろうと存じます。

 他の中国とかサハリンとかに比べてというお話でしたけれども、これは背景やら経緯やら、あれが大分違いますので、一概に支援内容を比較するというのはちょっと無理があろうかと存じますが、いずれにいたしましても、フィリピンの残留孤児とか、いわゆる残留日系人に対する配慮というのは、御指摘の点もあろうと思いますので、これは外務省だけの話じゃなく、厚生省、いろいろ出てくると思いますが、関係省庁ときちんと連絡をして対応に努めてまいりたいと存じております。

照屋委員 法務省に尋ねます。

 残留日系人二世は高齢化が進んでおります。日本人の子であることの証言や書類があるなら、就籍をかなえるよう配慮すべきだと思うが、どうでしょうか。

 また、就籍審判事務をスピーディーになされなければならないと考えます。先月来日したフィリピン残留県系人指定の神山ツキコ、シゲルさんには、沖縄県名護市に住むいとこが名乗り出て劇的な親族対面を果たしております。神山ツキコ、シゲルさんの一日も早い就籍許可を望むものであります。法務省どうでしょうか。

山口委員長 予定の時間は経過しておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

深山政府参考人 御指摘の事案につきましては、既に就籍許可の審判事件として家庭裁判所に係属しております。

 そこで、個々の事件についてのコメントを法務省の側でするというのは差し控えさせていただきますが、ただ、一般論として、裁判所におきましては、議員御指摘のような申立人が高齢であるといった事情も含めて、個々具体的な事案に応じて適正かつ迅速な審理に努めておられるものと承知しております。

照屋委員 終わります。

山口委員長 次回は、来る八日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時七分散会


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