衆議院

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第1号 平成19年2月21日(水曜日)

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本国会召集日(平成十九年一月二十五日)(木曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。

   委員長 山口 泰明君

   理事 小野寺五典君 理事 嘉数 知賢君

   理事 三原 朝彦君 理事 やまぎわ大志郎君

   理事 山中あき子君 理事 長島 昭久君

   理事 山口  壯君 理事 丸谷 佳織君

      愛知 和男君    伊藤 公介君

      猪口 邦子君    宇野  治君

      小野 次郎君    河野 太郎君

      高村 正彦君    篠田 陽介君

      新藤 義孝君    鈴木 馨祐君

      松島みどり君    三ッ矢憲生君

      山内 康一君    笹木 竜三君

      田中眞紀子君    長妻  昭君

      前原 誠司君    笠  浩史君

      東  順治君    笠井  亮君

      照屋 寛徳君

平成十九年二月二十一日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 山口 泰明君

   理事 小野寺五典君 理事 嘉数 知賢君

   理事 三原 朝彦君 理事 やまぎわ大志郎君

   理事 山中あき子君 理事 長島 昭久君

   理事 山口  壯君 理事 丸谷 佳織君

      愛知 和男君    伊藤 公介君

      猪口 邦子君    宇野  治君

      小野 次郎君    河野 太郎君

      高村 正彦君    篠田 陽介君

      新藤 義孝君    鈴木 馨祐君

      原田 令嗣君    松島みどり君

      山内 康一君    田中眞紀子君

      長妻  昭君    前原 誠司君

      笠  浩史君    東  順治君

      笠井  亮君    照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   外務副大臣        岩屋  毅君

   外務大臣政務官      松島みどり君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 長嶺 安政君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 佐渡島志郎君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   中根  猛君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)           佐々江賢一郎君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    西宮 伸一君

   政府参考人

   (外務省国際協力局長)  別所 浩郎君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  山崎信之郎君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    北原 巖男君

   外務委員会専門員     前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十一日

 辞任         補欠選任

  三ッ矢憲生君     原田 令嗣君

同日

 辞任         補欠選任

  原田 令嗣君     三ッ矢憲生君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国政調査承認要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

山口委員長 これより会議を開きます。

 国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。

 国際情勢に関する事項について、本会期中国政に関する調査を行うため、衆議院規則第九十四条の規定により、議長に対し、承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

山口委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 平成十九年度外務省関係予算について、その概要説明を聴取いたします。外務副大臣岩屋毅君。

岩屋副大臣 おはようございます。

 平成十九年度外務省所管予算案について概要の説明をさせていただきます。

 平成十九年度一般会計予算におきまして、外務省は六千七百九億二千七百万円を計上しております。これを前年度と比較いたしますと、二・九%の減となっております。また、ODA予算は、外務省所管分として、対前年度比四・〇%減の四千五百四十三億五千九百万円となっております。

 外交は、中長期の観点から、我が国の国益を確保することを目的とするものでございます。今日、この目的を我が国単独で達成することは困難であり、関係国や国際機関等との協力を安定的に継続することが重要です。このような考え方に基づき、平成十九年度につきましては、以下の四つの柱から成る重点外交政策を踏まえて、予算案を作成させていただきました。

 第一の柱は、日本外交の基礎体力の強化でございます。

 まず、外交実施体制の強化に向けて、外務本省及び在外公館の体制強化や、NGO、地方自治体との連携の強化等を図ります。特に、外務省の定員、機構につきましては、定員合理化の努力を一層進めると同時に、主張する外交に必要な人員体制を整えるべく、定員の五十一人の純増及び六大使館の新設を図ります。

 また、国際貢献等を担う層を拡充するために、平和構築分野の人材育成や国際機関における邦人職員の増強に必要な予算を計上しております。

 さらに、外交の重要な資源であります情報収集・分析体制の強化に引き続き取り組む一方、我が方の情報防護体制の強化に向けて、不断の努力を行ってまいります。

 第二の柱は、国民の安全の確保と繁栄の促進でございます。

 まず、我が国国民の安全、安心を確保するために、日米同盟を基軸とする安全保障政策に係る予算や、在留邦人へのサービス向上及び邦人保護体制の強化といった領事政策に係る予算を計上しております。

 また、我が国が経済成長を達成していくために、EPA戦略の推進やエネルギーの安定供給確保のための取り組みを強化してまいります。

 第三の柱は、アジア外交の強化と望ましい国際環境の確保でございます。

 まず、地域協力、青少年交流等を通じて、近隣アジア諸国との関係強化を積極的に推進してまいります。同時に、アジアとの連帯を基礎として、国際協力の幅の拡大を図ってまいります。

 また、国際社会で主要な責任を担う一員として、テロ対策、人間の安全保障等のグローバルな課題に対して、ODA等を活用して、積極的に取り組んでまいります。

 第四の柱は、日本の魅力並びに日本からのメッセージの積極的な発信でございます。

 外交を行う上で、我が国に対するよいイメージが浸透しているかどうかは、極めて重要でございます。さまざまなメディアを通じ、攻めの広報を行うとともに、伝統的な日本文化のみならず、ポップカルチャーも活用した文化外交を積極的に展開していきたいと考えております。

 以上が、平成十九年度外務省所管予算案の概要でございます。

山口委員長 以上で説明は終わりました。

    ―――――――――――――

山口委員長 次に、麻生外務大臣から国際情勢に関して説明を聴取いたします。外務大臣麻生太郎君。

麻生国務大臣 外務委員会の開催に当たり、山口委員長を初め委員各位に謹んでごあいさつを申し上げますとともに、現在の主な国際情勢について御報告をさせていただきます。

 我が国をめぐる国際情勢は、大量破壊兵器やミサイルの拡散、テロとの闘い、地域紛争の多発など、大きく変化をいたしております。

 このような中で、外交の使命は、国益を確保するために望ましい環境をつくることであります。

 言うまでもなく、世界とアジアのための日米同盟は引き続き外交のかなめであり、本日、チェイニー副大統領とともにその重要性について確認する考えでもあります。

 また、先月、安倍総理が、英国、ドイツ、ベルギー、フランス各国とEU、NATOの本部を、そして私は、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリー、スロバキア各国を訪問いたしております。

 欧州諸国との関係強化は、我が国外交にとり極めて重要であります。自由と繁栄の弧の形成の観点からも協力関係を強化してまいりたく存じます。

 先般の六者会合では、北朝鮮による核兵器及び核計画の放棄に向けた具体的措置を含む成果文書が発出されました。

 北朝鮮の核開発は、断じて容認できるものではありません。

 我が国は、六者会合議長国の中国や、米国、韓国、ロシアとの連携をしつつ、北朝鮮が一昨年の共同声明に沿って誠実に対応するよう働きかけてまいります。

 また、拉致問題の解決なくして日朝国交正常化はなく、引き続き、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的解決に向けて最大限努力をいたしてまいります。

 中国との間では、先週来日いたしました李肇星外交部長と会談をしております。四月の温家宝総理来日も念頭に、戦略的互恵関係の構築という指針を両国国民及び国際社会に具体的に示してまいりたいと存じます。

 韓国やインド、ASEAN諸国、豪州など、その他のアジア太平洋諸国との間でも関係が強化されております。本年一月には、フィリピンで第二回東アジア首脳会議が開催され、着実な成果を上げております。

 重要な隣国であるロシアとの関係では、これまで日ロ行動計画に基づき幅広い分野で関係を進展させてまいりました。このような進展を踏まえ、本年一月には初めて日ロ戦略対話が行われ、二月末にはフラトコフ首相が訪日いたします。

 最大の懸案である北方領土問題につきましては、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針に従い、粘り強く取り組んでまいります。

 また、中東に目を向ければ、イラクやアフガニスタンの復興開発やイランの核問題、中東和平などの問題が山積をいたしており、国際社会と協力して取り組んでまいります。

 以上で国際情勢についての報告とさせていただきます。

 このような問題に取り組んでまいりますためには、総合的な外交力強化が必要であり、外交実施体制の充実に努めてまいります。

 山口委員長を初め委員各位の御支援と御協力を心よりお願い申し上げます。

山口委員長 以上で説明は終わりました。

    ―――――――――――――

山口委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官長嶺安政君、大臣官房審議官佐渡島志郎君、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長中根猛君、アジア大洋州局長佐々江賢一郎君、北米局長西宮伸一君、国際協力局長別所浩郎君、防衛省防衛政策局長大古和雄君、運用企画局長山崎信之郎君、防衛施設庁長官北原巖男君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山口委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤公介君。

伊藤(公)委員 おはようございます。

 久しぶりに外務大臣に質問できる機会をお与えいただきましてありがとうございました。大変恐縮ですが、限られた時間で、もし時間がなくなってしまうといけないので、最後にちょっと質問しようとしていたことを最初に一問だけさせていただきたいと思います。

 これは、米軍再編の中で、日本の在日米軍を含めていろいろな協議が行われてきました。その中で、特に東京都が強く要望してきた、今日本の空港が国際空港からいうと非常に立ちおくれている、そういう中で横田の軍民共用が非常にクローズアップされてきました。また、東京都も具体的にそれに取り組んでいるところであります。

 それに関連をして、実は、多摩サービス施設ですね。外務大臣、ここでゴルフをやった経験があるかどうかわかりませんが、ここは横田の米軍の方々のいわゆるレジャー施設になっているわけですが、恐らく、パーセントからいったら圧倒的に日本の人たちが、米軍のだれかの、友人なりの名前をかりて使っているということだろうと思います。もちろん、横田の方たちも使っているわけであります。しかし、ほとんど、ゴルフ場以外のところはもっと広大な、キャンプ場ということになっていますが、全く使われていない状況なんですね。

 もちろん、地元の人たちが使うときには、年に一度、二度、申請をしなければなかなか難しいという状況で、これは長年にわたって歴代の防衛庁長官あるいは外務大臣に、何とか返還して、横田の米軍の人たちが使っていただくのはいい、ゴルフ場もそのとおり同じように使ってもいい、だけれども、やはりこれは多摩ニュータウンに続いたところでありまして、東京都としてもぜひ返還してほしいということを強く言ってきたところでございます。

 今、まさに副大臣からも、主張する外交という報告がございました。やはり、日米は非常に基軸として大事ではありますが、日本も主張すべきはちゃんと主張すべきで、そして、そういう中で本当に信頼関係というものが大事だと思います。

 私は、外務大臣が間違いなくいずれ日本のトップリーダーになる、国民の期待も非常に高い、選挙に苦労した経験がありますから、庶民性もあればカリスマ性もある。麻生大臣のこの間の総裁選挙の街頭演説を私も聞かせていただきましたが、道行く人たちが、まさに選挙でいえば浮動票という人たちが立ちどまって麻生大臣の演説にみんな足をとめるという、非常に期待をかけられているわけです。

 私は、きょうは冒頭にこの質問をするに当たって、役人の皆さんからレクチャーを受けた返事をするのではなくて、外務大臣として、日本の政府として、やはり長い間地元の皆さんが、もともとは地元の皆さんが半強制的に収用された土地でありますから、返還をして、そして米軍の方々にもきちっと使っていただける、そういう意味で、これは日米の合同委員会で提案をしなければなりません。その合同委員会の委員長は外務省北米局長でありますから、ぜひひとつ大臣に、このことを検討して、そして合同委員会でアメリカとじっくり納得いく形で話をしていただきたいと思いますが、大臣の御見解を伺っておきます。

麻生国務大臣 今御指摘のありました問題は、これはかなり以前から伊藤先生の方から御指摘になっておったところでもありますし、外務大臣になります前から話を伺ったところでもあります。

 この話は、横田関連に付随するいわゆる福祉施設の一環だと存じます。その中で、ゴルフ場と、いわゆるキャンプ場というか一種の広野とか雑木林というか、役所用語で言うと何と言うのだか知りませんけれども、そういったキャンプ場用地としての一種のレクリエーション施設、レジャー施設がそこに付随してかなりの面積を持っておるということは事実であります。

 これまでも、ぜひ返してもらいたいという話を米軍側と交渉した経緯は確かにあります。ただ、これまでのところ、全くほったらかしでもないので、結構利用頻度があるという事実もある程度わかっておりますし、事実、おっしゃるように、日本も言えばそこを一緒になって使えるということになって、私はちょっとしたことはないんですけれども、ゴルフ場としては大したゴルフ場じゃないという話でしたけれども、内容については、ゴルフ場がそこにあることは事実ですから、そういった意味では、いろいろな意味でもっと利用範囲があるのではないかという御指摘なんだと思いますが、これはこれまでも交渉した経緯がありますので、今、御指摘は改めてあっておりますので、この問題については、先方側とどういった方法がもっと具体的にうまく使える方法があるのかというようなことは考えてもいいのかもしれませんし、横田の話もいろいろ進んでもおりますので、検討はさせてみたいと存じます。

伊藤(公)委員 きょうはほかの質問がありますからこれ以上申し上げるつもりはありませんが、ぜひ外務大臣に、その答弁を前提に関係機関にもよく調査をしていただいて、合同委員会に日本側から提案をしていただきたいということを強く要望しておきたいと思います。

 さて、六カ国協議についてお伺いをしていきたいと思います。

 今月の八日から北京で開かれた六者会合、これは十三日に共同文書を採択して閉幕をいたしました。この最大の成果は、寧辺の核施設を最終的に放棄するということを目的として活動停止及び封印することを北朝鮮に約束させたことだろうというふうに思います。

 ただ、問題は、これまでも北朝鮮は何回も約束をほごにしてきた経過もございます。これは、私だけではなくて、今度の北朝鮮のこの合意についてかなり悲観的な、韓国の新聞でありますが、朝鮮日報で千六人を対象に実施した世論調査の結果を見ましても、悲観的回答をした人が七七・九%、きちんと履行するであろうと答えた人がわずかに一五・八%という状況だという報道がありました。

 さはさりながら、我々は、この協議の結果は、言ってみればこれからの外交努力にかかっているというふうに思うわけでございますが、日本の政府として、この六者協議の評価、そして今後どのように対応していくのかをまず伺っておきたいと思います。

麻生国務大臣 御指摘がありましたように、今回の六者協議で五者側が一致しておりますことは、いろいろそれぞれ思惑はあろうとは存じますが、五者で共通していることは、北朝鮮を核保有国としないというのが最大の目的であって、そのことに関しましては、今回はその第一歩としては一応の成果を得たというように理解すべきだと存じます。

 今言われましたように、いわゆる寧辺の核施設等々の活動の停止、封印とか、IAEAの話とか、いろいろありました上に、さらに核計画の完全な申告の提出及び既存の核施設の無力化という次の段階まで踏み込んだところが従来とはかなり大きく違ってきたと思いますので、問題は、今伊藤先生御指摘のとおり、これがこの後はきちんとそれを実行させていくことができるかどうかというところで、向こうが誠実にこれに対応するか否かということが一番の問題だと存じます。

 したがって、三十日、九十日、いろいろな区切り方をしておりますけれども、そういったものを、我々としては、他の五カ国とよく連携をしてここのところをきちんと見きわめていく必要がある、そのように思っております。

伊藤(公)委員 外交交渉ですから、いろいろな困難のあることも十分わかるわけでありますが、やはり日米の関係が非常に大事だなということをつくづく思うわけでありまして、ところが、アメリカもなかなか、国際的にいろいろなものを抱えているといいますか、そういう背景もあるわけでございまして、アメリカが後退しないということがとても日本の外交にとって大事だということを今思うわけであります。

 そこで、いろいろ心配されている問題があります。アメリカが、優先順位が核の廃棄から核の拡散防止に移ったのではないかと評価をする人もいます。これは、今まで核を保有した国が、実際に国際情勢、いろいろな圧力で核を廃棄したという国があるかどうか。いろいろなことを我々は考えてみると、アメリカの対応というのは非常に大事な局面になっていくであろうというふうに思います。結局核を持った方が勝ちだという、結果として核拡散につながっていく危険が非常に高いというふうにも思わざるを得ません。

 北朝鮮の問題について、アメリカの政策に最近変化があると見られているのかどうなのかを大臣から伺っておきます。

麻生国務大臣 アメリカは、従来より核の不拡散ということに関しましては強い関心を有しておりましたし、これに関しては非常に精力的に最初からずっと一貫して取り組んできておると思っております。

 一方、いわゆる核兵器に関しましては、これを既存の核計画の放棄と一緒にあわせて、いわゆる核兵器の拡散というものに関してもだめ、今言われるように、二つのことを両方とも一貫してこれまでも北朝鮮に限らずその他に対しても求めてきておると思っております。

 今回アメリカとの交渉の中におきましても、今回は日米、日中、極めて連携が密だったと思いますけれども、米国は今回も初期段階、かなり最初の段階からこの措置につきましては、いわゆる六者会合の六者共同声明の完全実施ということをしつこく言っておりましたし、北朝鮮に対して核の放棄を早期に実現しろということに関しても強く求めてきておりましたので、この点に関しては一貫しておりますので、米国の立場というものが今回の交渉の期間中に変化したというような感じは我々としては持っておりません。

伊藤(公)委員 これからも、アメリカが強い意思を持って北朝鮮の核を、ウラン型のものも含めて完全に廃棄させるという強い意思を持ってやっていただくことを日本側としてはきちっとアメリカにアナウンスをしていく必要がある、あるいは、いろいろなアメリカとのやりとりのこれからの機会もあると思いますので、強く働きかけをしていただきたいというふうに思います。

 今度の六者会合を見ていて、まず、それぞれの国のスタンスが違うというのは、外交交渉ですからわからないわけではありません。まして隣の韓国は、やがて南北統一する、これは戦略家が考えるならば、世界のどこからも批判を受けないでやがて核保有国になる、そういうことも戦略家としては考えることかもしれない。あるいは、中国やアメリカにとっては、拉致と核とどちらがといえば、それはそれぞれの考え方もあると思います。そういう中で、日本が孤立するのではないかという若干の声も聞けないわけではありません。

 しかし、今度の、そして現在までの交渉の段階では、日本の外交はよくやったのではないかと実は私は思っているのです。核を廃絶させなきゃいけない、しかし、日本にとっては人権外交を展開する上からも、そして、日本国内でも拉致に対して、しかも日本の国民の強い感情の中からしても、拉致問題を解決しなくして国交回復をするとか援助をするなんということはとんでもないという強い国民の意思があると思いますね。そういう中でぎりぎりの交渉をされたのではないかというふうに思います。それはしかし、現在までのところであります。

 問題は、これから日本が、拉致問題と核の問題を含めて、どういう展開をするかというのは非常に難しい、また大事な選択になると思いますが、きのうなどは、拉致被害者の皆さんが総理にも会われて、かなり長い時間、徹底的にこの拉致問題をやってほしいと切実な訴えをしているわけであります。いろいろな機会に私もこの拉致被害者の会に出席をするんですが、非常に強烈な国民の支持があります。

 私は、この機会に、日本は、まさに日本の独自の外交といいますか、決して孤立するものではない、人権を大事にする日本の外交を、まさに主張する外交の非常にいい局面だ、中国、韓国、アメリカ、それぞれの立場があるけれども、日本は日本としての外交を主張するという非常に大事な局面だと思いますが、そこで、拉致問題について、もっと強力に日本は北に対してメッセージを送るべきだ。例えば、きのう、拉致議連などでは、この機会に規制をもっと厳しくしてほしいという決議もしたと伺っております。私はたまたまほかの会合があったので、きのうは出れなかったので、結果を伺いました。

 これからもし規制を強力にするとすれば、例えば輸出入の禁止を完全にするとか、今までやってきたことじゃなくて、まだやり残していることで、仲介貿易の取引を禁止するとか、あるいは資産の凍結であるとか、数々あるわけでありますが、むしろこの機会に日本は拉致問題についてはっきりとしたメッセージをさらに強く打ち出すべきだという声も非常に強いわけでありますが、外務大臣としての見解を伺っておきたいと思います。

麻生国務大臣 今回の中で、日本が孤立しているという話はよう出ておったですな、本当、不思議に。自虐的な話がえらいお好きな方が多いなと改めて思いましたけれども。孤立したのは北朝鮮であって、日本ではありません。これは非常にはっきりしていたと思います。

 日米、日中、日韓、いずれも、今回の中に関しましては、少なくともこの拉致の問題に関しましては、この一年数カ月の間、結構いろいろなところで努力をした成果が出てきて、アブダクションという英語が、拉致という意味の英語が、少なくとも国連の総会で取り上げられたりするようなところまで来た。これは非常に大きな問題として、人権問題と今言われましたが、それとあわせて非常に大きな問題になっていって、これは国家が人さらいをやる話ですから、そういった話はちょっと普通じゃないということだと存じます。

 この拉致の問題を政府が正面切って取り上げている国というのは、多分日本だけだと思います。ほかの国でもこれはないわけじゃないんだと存じますが、結構この問題を正面切って取り上げているという国は、私が知っている範囲では日本だけなんですけれども、これを日本は取り上げている以上、この問題に関してはぜひ、おれたちは特殊な事情があるんだという点に関しては、今回交渉した国もそれぞれ理解を少なくとも今までのところは得ていることははっきりしております。したがって、今回の百万トンと言われる石油等々のエネルギーの供給に関しては、うちはそれに関与しないということで、これをほかの国にも納得をさせた上で今回の協定に至ったということだと存じます。

 いずれにいたしましても、この問題は日本以外の国でも、拉致された人の話によると、いや、タイの人もいた、何人もいた、かに人もいたという話がいろいろあって、私どもとしては、それらの国々の方々にも、実際、おたくでもそうだったんじゃないんですかという話を申し上げて、いろいろ理解を得て認識を広めつつあるというところなんです。

 いずれにいたしましても、こういった問題というのは、日本だけで、一対一でやってきた、交渉した結果は大きな成果がこれまで得られておりませんので、少なくとも、一つでも多くの国を味方につけて、国連の総会決議を通してすら動かないところですから、だんだんこの種の話で、対話プラス圧力というので、圧力の部分が大きくならざるを得ない。圧力なくて対話が出なかったというのがこれまでの歴史ですから、そういった声を含めて、今後ともこの問題を、窓口を閉めるつもりは全くありませんが、この圧力なくして対話も成り立ちにくかったというのがこれまでの経過だというのを踏まえて交渉していかねばならぬと思っております。

伊藤(公)委員 これからの交渉次第ではありますが、五万トンからやがて九十五万トン、百万トンのそういうことが進んでいくとすると、北朝鮮が手を挙げて、そしてもう拉致問題を解決しなければ大変なことになるという状況に追い込む、そういう選択肢もあったわけですが、これから韓国、中国、アメリカもその手を緩めるということになっていく。そのときに、もう日本はいいんだ、拉致問題をおいても北朝鮮は生き延びていけるんだという選択を北朝鮮が持ったとすれば、これは日本の拉致問題は置いてきぼりになる可能性だってあるわけですね、実際に。だから、本当の勝負は今なんじゃないか。この厳しいときに、もっと厳しい制裁を日本はやるよという強い日本の決意を示すことが大事ではないかと私も思うんです。

 今、外務大臣の姿勢はわかりました。先ほど具体的にちょっと私申し上げたように、この協議の状況によっては制裁をもっと厳しくするということも選択肢の中にありますか。

麻生国務大臣 これは三十日以内に日朝交渉が開始されて、六十日以内にという一応の目安は協定の中になっておりますので、日朝交渉を三十日以内に交渉するときの相手の対応次第というところだろうと存じますので、さらなる制裁、もしくは、向こうが誠意を示しておりてきてこちらが緩める、いろいろな選択があろうと思いますが、その逆の意味で、全然誠意がないならさらに制裁、十分にあり得ると存じます。

伊藤(公)委員 日本の政府の強い意思を私はぜひお願いしておきたいと思います。

 そこで、ちょっと一点、防衛省に伺っておきたいんですが、この交渉が順調に進んでいけば大変いいことでありますが、しかし、先ほどから申し上げてきているとおり、北朝鮮もそんなに簡単な国ではないのではないかというふうな考えも、反面ではございます。そうすると、非常に日本に近いところの北朝鮮が核を持っている国、この状況が続いていくという可能性もある。その期間に、少なくとも、日本の政府はこの日本の国土と国民を安全に守るという責任があります。非常にリアルに、今東京に向けて北朝鮮からミサイルが核を積んで日本に向かったということになったときに、確認したとき、日本の防衛省は具体的にどういう作業ができますか。この領土と国民を守るということはどうしてできますか。

大古政府参考人 北朝鮮につきましては、まず、この間、核実験ということはございましたけれども、ミサイルの弾頭部に核を載せられるほど小型化の技術が進んでいるという情報には接しておりません。

 ただ、先生の仮定の御質問に対してお答えさせていただきますけれども、弾道ミサイルに対する対処能力といたしまして、現在の自衛隊は、一定の監視能力は既存のレーダーでございます。ただ、弾道ミサイルを撃墜する能力につきましては、極めて限定的なものしか保有しておりません。他方、米軍につきましては、既にイージス艦のシャイローという船が横須賀に配備されておりますし、PAC3については沖縄にも配備されております。

 そういう状況下で、先生の仮定の事態におきましては、日米安保体制下で日米で協力して当該弾道ミサイルに対処するということになろうかと思います。

伊藤(公)委員 外務大臣は今の防衛省の答弁をどのように聞いていただいたかわかりませんが、これは防衛省の問題というより、我々を含めて政治家の責任でもあります。日本のこの領土と国民を守るのは、選挙で選ばれた我々の責任であります。まして、外務大臣や防衛大臣は責任は極めて重大ですよ。結局、今日本は、この隣の北朝鮮からの核に対して日本の力ではどうにもならないんですね。

 そこで、ではもう一点聞きます。

 ミサイルディフェンスが実用して、例えばイージス艦もいろいろ配備されるという話も聞いています。それから、埼玉県の入間には迎撃ミサイルが今年度中というか三月までには配備されるでしょう。この全土を核のミサイルから守れるというように、きちっと日本の力で守れるというのはどういうときなんですか。どういうように整備されたときですか。端的に答えてください。

大古政府参考人 今、弾道ミサイル防衛につきましては、上層防衛用にイージス艦の改修、それから低層防衛用にPAC3の導入を進めてございます。平成二十三年度にはイージス艦は四隻改修されますし、PAC3につきましても四個高射群が配備されます。それから、一定の指揮通信システム、センサーシステムについても整備されますので、その段階におきましては、弾道ミサイルに対して自衛隊としても能力が整備されるということになると考えております。例えばイージスミサイルでございますと、大体二、三隻で日本全土を守れます。

 そういう状況下で、弾道ミサイル防衛については万全を期したいというふうに考えているところでございます。

伊藤(公)委員 余り現実的な話を聞いても恐縮ですが、外務大臣、今官邸にはシェルターがありますか。御存じですか。

麻生国務大臣 行ったことがないので、知りません。

伊藤(公)委員 きょうはこれ以上聞くつもりはありませんが、少なくとも、日本の外務大臣が官邸にシェルターがあるかどうか、言わなくてもいいですよ。しかし、それは、そのくらいの備えは、この国の領土と国民を守るときには、総理大臣や防衛大臣や外務大臣は生きていて指示をしてくれなきゃなりませんよ。これだけ北朝鮮という国の核問題が現実的になったときに、この国家と国民を守るという意味で、安全ということがこんなに身近に問われているときに、私は真剣に取り組んでもらいたいと思います。

 短く何か答弁はありますか。いいですか。

麻生国務大臣 伊藤先生、これは昔というとそんな昔でもなくて、十年ぐらい前に比べまして、これは北朝鮮の核ミサイル、ノドン、その前のノドン、テポドンの話以来、日本における防衛関係の国民の理解、意識というのはかなり高まったというのは事実だと存じます。したがって、このバリスティックミサイルの迎撃ミサイルの話にいたしましても、少なくともこの面に関して理解を得られて、予算がつく等々、昔に比べて随分変わってきた。また、北朝鮮の不審船を日本海で撃沈、あの騒ぎをもって初めて、これはうそじゃなかったということになった。

 いろいろな意味で意識は変わってきつつありますので、ここが一番問題だと思っておりましたので、その点に関しましては大きな変化があるというふうに思っておりますので、少し期待ができるようになってきているなとは思っております。

伊藤(公)委員 機運があるときにあらゆることを我々は想定して準備をしていくことが大事だと思います。

 最後に、ちょっと今大臣の話を聞いたら長くなっちゃったんですが、恐縮ですが、ちょっと問題が違っているんですけれども、安倍総理が集団自衛権の問題について発言をされました。非常に私は、総理がかねてから考えてきたことなんだろうと思いますけれども、この集団的自衛権について、具体的な類型に即して研究を進めてまいりたいという発言を本会議場でしました。

 私は、今度のイラクの問題をずっと考えてきて思ったんですが、日本の自衛隊は人道支援ですよね。そこをイギリス軍や、あるいはオーストラリアの軍隊が守ってくれていました。そういうときに、そのイギリス軍が見えるところで攻撃を受けたときに、日本の自衛隊はどうすることもできない。そんなことで、日米も、それから国際協調も本当にできるんだろうか。私たちは、今、国連加盟百九十二カ国の中でたった日本だけが、国連憲章五十一条で認められている集団自衛権を憲法の解釈によってできなかったんですね。

 私は、あすの日本のリーダーになって、まさにトップリーダーになろうという麻生大臣がこの問題については真剣に考えてほしい、そして国民に問題提起をきちっとしてもらいたいと思いますが、集団的自衛権を、憲法を改正してできることはわかっています。でも、憲法を改正するまでに若干時間がかかりますよ。その中で日本の外交を展開するときに、集団的自衛権をぴしっともう一度、我々は、解釈を変えるとか変えないとかといいうことの、現実的にどういうことができるかということを対応すべきではないかと思いますが、大臣の御見解を伺っておきます。

山口委員長 麻生外務大臣、質疑時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いいたします。

麻生国務大臣 質疑時間が過ぎているので、これを丁寧に説明するとかなり時間を食いますので、以後、別の時間にでもこの点に関してお話しさせていただかないとちょっとできませんので、済みません。

 いわゆる時代に合った、今の時代に合ったと言うべきなんだと思いますが、安全保障のための法的基盤というものを再構築せないかぬということは総理の考えておられる背景なんだと思っておりますし、私どもも、その点に関しましては必要だろうと思っております。集団的自衛権、個別的自衛権、いろいろありますけれども、きちんとしたもので、個別具体的な類型に即して研究を進める旨表明をされておりますので、私ども、その線に沿ってやってまいらねばならぬと思っております。

伊藤(公)委員 ありがとうございました。

山口委員長 次に、丸谷佳織さん。

丸谷委員 公明党の丸谷佳織でございます。おはようございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 本日、冒頭、大臣の方から、国際情勢に関する御説明をいただきました。

 その中でも、一つの柱の中に、望ましい国際環境の確保ということに関しまして、テロ対策、人間の安全保障等のグローバルな課題に対するODA等の活用に対しての御説明もいただきましたので、まずODAについて最初にお伺いをさせていただきたいと思います。

 二〇〇五年七月、グレンイーグルズ・サミットがございました。その中で小泉首相は、二〇〇五年から二〇〇九年の五年間でODAを百億ドルの積み増しをするという方針を表明されました。その一方で、経済財政運営と構造改革に関する基本方針、いわゆる骨太の方針の中では、一般会計から拠出しますODAを二〇〇七年から二〇一一年の五年間に毎年二%から四%削減していくという方針を打ち出しまして、実際にも、十九年度予算の中では、ODA予算に関して、骨太の方針に従い、前年度比四%減の七千二百九十三億円となってございます。

 しかしながら、補正予算もございましたし、あるいは、財政投融資による円借款ですとか債務削減という要素が加わっていくことを考えますと、一般会計予算だけでこのODA予算云々かんぬんという議論はできないのであろうということも考えるわけでございますけれども、実質、すべてを含めて、前年度比約七%の増ということが言えると思います。

 今後、補正予算を毎年毎年見込んで、どうだという議論もおかしな話でございましょうし、実際、骨太の方針のもとで、今後、国際公約であります百億ドルの積み増しという形を実現していくためには、どのような考え方を持って予算組みをされていこうとされているのか、この点についてまずお伺いをさせていただきます。

麻生国務大臣 丸谷先生御指摘のありましたとおり、この百億ドルという話に関しましては、基本的には、事業量の中にはいわゆる円借款とか債務救済というのも含まれておりますので、今まで既に貸してあるお金を、返ってこないという前提に立ってあきらめて、その分は求めません、債権回収をしませんということになって十億認めれば、その十億円も新たなODAとして認めますというやり方になっておりますので、そういったものも構成いたすという前提は御存じなんでしょうが、その上に立ちましても、いずれにしても、前年度比マイナス四%ということで決められております。

 これは結構大変な、我々にとりましては大きなマイナスになりますので、円借款の事業規模七千七百億円ぐらいだと思いますが、これを最大限に活用するにいたしましても、平成十八年度の予算を見ますと、補正予算と合わせたところで前年度プラスアルファぐらいのところになっております。

 したがって、一応ODAの量としては押し上げた形になっておりますが、毎年そんなことできるわけないじゃないかという御指摘は全くそのとおりなので、私どもとしては、公約達成ということを、対外公約しておりますので、これをやるためには、今後とも財政当局と、この点については、国際公約ということを大前提にしてきちんとやっていかねばならぬと思っております。

 同時に、いろいろ御指摘もいただいておるところでもありますので、海外経済協力会議というのを新たに昨年立ち上げていただいておりますので、ここのところで責任を持って、今までやってきたODA関連の事業に関しては、モニタリングとアフターケア、そういったきちんとしたものを見た上で、もうちょっとここは効率的になるのではないか、もっと安くできるのではないか、安くできればその分だけ事業量が確保できますので、そういった、金だけの話プラス事業量とのバランスというものも考えないかぬところだと思いますので、実質、同じ十億円でも、事業量としては二割増しふえましたという形にしていくというような、もっといろいろな努力をしていく必要があろう、私どもとしては、基本的にそのように思っております。

丸谷委員 そこで、素朴な疑問なんですけれども、例えば、一般会計予算の中でODAを発注していく部分をふやしていきますという考え方もあるでしょうし、しかしながら、我が国の財政的には非常に厳しい、外務省予算だけではなく、すべてにおいて縮小傾向にある中ですから、ODA予算だけ国際公約だからといってふやすのは難しいという理論もあるでしょう。

 その反面、国際公約を達成するためにはどうしたらいいのかと考えたときに、例えば円借款ですとか、あるいは債務の放棄といったことが考えられるわけなんですが、債務の放棄に関して、例えば、NGOの皆さんなんかも、アフリカ各国に対する債務の放棄を世界各国に、貸した側に対して求めるような傾向にございますので、債務の放棄をふやしていくことによって国内的にもあるいは国際的にも一定の評価を得られるものなんでしょうか。この点について、大臣はどのようにお考えになりますか。

麻生国務大臣 御存じかと思いますが、一九〇五年、今から約百年以上も前の話ですが、日露戦争のときに、日本は、千万ポンドの軍事国債というものを発行して、イギリスから一千万ポンドのうちの約半分の五百万ポンドを借りたという経緯がありますが、その後、ポーツマスで平和条約が締結されました後、日本という国は、一日たりともおくれず、一銭たりとも金利をいわゆる値切ることなく、きっちり払い切った世界唯一の有色人種の国として、ユダヤ人の中まで物すごく評価を受けている。これは、最近の日本の教科書には載っていませんけれども、歴史的事実であります。

 借りた金は必ず返すというのはすごく大事なところでして、こういった意味では、今、日本でも、経済的にいろいろ復興しようとしている発展途上国の中で、借りた金を必ず返している国というのが、ここに資料が全部ありますので、そういった国を見ていきますと、これは間違いなく自助努力、いわゆるセルフヘルプ、自立自助でやっているというように私どもは理解をしております。そういった意味で、私どもとしては、それがまず第一。

 しかし、同時に、どうにもならぬというところもあるのも事実でもありますので、そういった意味では、御存じかと思いますが、パリクラブの中で重債務貧困国でしたか、そういったような言葉があるんですが、そういったようなところ、これはもうどうにもならぬというところに対しましては、私どもとしては、適当なところでみんなで合意した上で債務の返済を免除しようということで、日本一国でもうあそこだけはいいやということはしないで、みんなで決めてやるという形にいたしておるというのが最近の傾向であります。

丸谷委員 大臣の方から先ほど、実際に事業量をどのようにふやしていくかという考え方も重要であるとの御発言がありました。実際に、限られたODA予算の中で、戦略的かつ効果的にどのようなODAを実施していくかということに関して、非常に知恵を出していかなければいけない時代に今なってきたと思います。

 例えば、よく、顔の見えるODAというような言い方、あるいは顔の見える援助という言い方をされるわけなんですけれども、比較的、日本の今までのODAのプロジェクトというのは、橋であったりとかダムであったりとか、割と大きなプロジェクトというのが多かったと思います。

 しかしながら、地域に密着した案件としまして、草の根ですとかあるいは人間の安全保障無償等は、非常に少額であっても、使う側にとっては使い勝手がよく、しかも地域にとっては非常に効果が大きいという大きな高い評価を得ています。あるいは同時に、無償資金援助ですとか技術協力ですとか有償資金援助、円借款も有効的に組み合わせながら使っていくべきだと思います。

 例えば、一つには、こういった草の根・人間の安全保障無償等を数多くこれから扱っていくということに関してお考えはいかがかというのが一点と、また、円借款ということ、有償資金援助ということのあり方に関して、昨年ノーベル平和賞を受賞されましたグラミン銀行等への融資というのも一つ考えられるのではないかなと思います。

 先週のニューズウィーク日本版にも、小さな記事でございましたけれども、途上国の援助としまして、このマイクロファイナンスの需要がふえているという記事がございました。マイクロファイナンスの需要は年三千億ドルに達するというふうに言われておりまして、これだけではもう足りないので、ついにインターネット融資の時代、少額のインターネット融資というものが始まったという記事がございまして、二〇〇八年には総融資額が一千万ドルを超えると見られているという記事が出ておりました。

 こういった、実際に五百ドルあればアフリカの地で水を得て商売ができるんだけれども、余りにも少額過ぎて普通の銀行からは借りることができないといったような、こういった少額の融資に対する我が国としての有償資金援助ということがもっと工夫できないのかなというふうに考えております。二〇〇八年にはTICAD4が日本でもあるわけでございますし、こういったところでそのような提案というのを日本としてできたらいいのではないかなというふうにも思うわけですが、この点についてはいかがでしょうか。

岩屋副大臣 丸谷先生御指摘のとおり、きめの細かい支援を行っていく、またNGOを通じて行っていくということは極めて重要なことだと考えております。

 外務省は、NGOに対する支援もこれまで積極的に行ってきておりまして、実績を申し上げますと、平成十七年度のNGOの事業に対する資金協力は、日本のNGOを対象とした日本NGO支援無償資金協力、百二件、二十八億七千万円、それから、外国のNGOを対象とした草の根・人間の安全保障無償資金協力は千六百三十三件、百四十三億八千万円となっております。

 このような資金協力を効果的に行うためにNGOの強化を図ることが重要だと思っておりまして、先生御承知のとおり、外務省は、日本のNGOを対象に、人材育成、専門性の向上、組織強化を目的とした各種のプログラムを行っておりまして、十七年度の実績は約二億円ということになっております。

 それから、今先生御提案ありましたグラミン銀行といいますか、マイクロファイナンスの件ですが、円借款でグラミン銀行に資金を出したこともございまして、今後とも前向きにこれを検討していきたいというふうに考えております。

丸谷委員 ありがとうございました。

 NGOの人材育成と、あるいはNGOと外務省の連携というのは非常に重要だと思いますし、そこの人材育成には力を入れていただきたいと思います。御答弁どおりでございますけれども、比較的少額の、使い勝手のいい草の根無償あるいは人間の安全保障に関する支援というのをふやしていったらいいのではないかということもあえて主張させていただいておきます。

 また、実際には、こういったマイクロファイナンスに対する融資というのは、ある程度、今の段階は模索しながら政府としてやっているんだと思うんですね。円借款において為替リスクの負担をどうするんだ等々の問題も出てくることは承知しておりますけれども、新たな切り口でODAを我が国として発信していく、あるいはこういった形で、本当に一人一人の生活が目に見えるような形で変わってくるODAを日本が実施しましたという例では、こういったマイクロファイナンスの融資というのは非常に効果があると思いますので、ぜひ外務省としても今後研究をしていただきたいと思いますし、また、これはバイでやるような問題でもないんだろうと思います。二カ国の問題ではない。例えば、アフリカであればアフリカ開発銀行ですとか、そういったところと連携しながらやることも可能だと思いますので、ぜひ今後の検討案件に入れておいていただきたいと思います。

 次の国連改革に移らせていただきますけれども、よく、ODAに関しては、国連安保理常任理事国入りが果たせなかった、まず第一弾としての効果がなかったのでODAは増額する必要はないのではないかとか、ODA不要論みたいなことをおっしゃる方もいらっしゃるんですけれども、そういう問題ではないだろうと私は考えております。

 国連改革というのは、これだけ加盟国が多い中ですから、そうそう簡単に、日本がODAをやっているのですべての国が常任理事国入りに賛成してくれました、そういった状況になるということを考えること自体が、これは不謹慎ではないかなというふうにも思っているわけでございまして、国連発足から六十年、加盟国もふえまして、国家間戦争から、国際テロですとか、あるいは民族紛争、環境等に対する国連の担う役割が変わっていく中で、国連自体の改革というのも引き続き国際社会にとっては大きな問題でございます。

 既に組織改革された部分、あるいは機能強化されたと言っていいと思いますけれども、平和構築委員会ですとか人権委員会の創設等がなされておりますが、引き続き残っている問題として、一つには、前アナン事務総長が強い意欲を見せていらっしゃいました安保理改革、もう一つの組織改革という二点が大きなものとして残っていると思います。

 安倍首相も、国会の冒頭演説におきまして、我が国は国際社会における地位に見合った貢献を行うべきと考えるとした上で、「包括的な国連改革に粘り強く取り組み、安全保障理事会の常任理事国入りを目指します。」というふうにおっしゃっておりますが、現在、我が国の安保理改革について、いま一度、基本的な我が国政府の考え方をお伺いしておきたいと思います。

麻生国務大臣 今御指摘がありましたように、ODAをやったから入れろとか入れないとかいうような品のない話というのは、する人が多いですけれども、私の主義に合わぬです。私は、そういった感じでやるような話ではないのであって、私どもとしては、基本的には、日本としては、常任理事国となってしっかりその責任を果たしていくべき国というのをまず根本に据えて、態度で臨んでいくというのが一番正しい。それで、それに見合った行動をしていくというのが正しいんだと思っています。

 同時に、国連も、でき上がったころと違いまして、今、百九十二カ国でございますので、そういった意味では、でき上がった六十年前とはかなり大きな状況の変化があっておりますので、そういった意味では、二十一世紀、この百九十二カ国という非常に大きな世界になったものに合わせて組織の改革というのをやっていく。その意味では、その中での安保理の改革というのは、アナン事務総長の言葉をまつまでもなく、大事なものだと私どもも基本的にそう思っております。

 今、日本としては、昨年のG4の案、うまくいきませんでしたので、我々としては、新しい案というものを我々なりにいろいろ考えて、今、関係しております各国と協議をいろいろしておりますので、具体的に成案を得るべくいろいろやっておるところですけれども、しかるべきその案ができ上がりました段階では、改めて加盟国にその協力を得るべく案を示した上で、改めて運動を展開していきたいと思っております。

 基本的には、常任理事国というものに関する日本としての、これに断固入っていくという決意をそのまま持っているというように御理解いただければと存じます。

丸谷委員 そのG4案につきまして、これは報道ベースでございますけれども、尋ねられた大島国連大使の発言の中では、安保理改革G4案にはやはり限界があったと。このG4案の限界に関しては、ともに二つの壁があったということで、一つにはアフリカが壁になった、あるいはアメリカという壁があったという御発言がございました。アフリカの壁という言葉の裏には、中国という存在があるものと想像するところでございますけれども、先日、李肇星中国外交部長が来日をされまして、外相会談の中でもこの安保理改革に関して議論がされたと承知をしております。

 実際に外務大臣がお話しになった中で、安保理改革、特に日本の常任理事国入りに対しての中国側の反応というのはいかがだったんでしょうか。この点をお伺いいたします。

麻生国務大臣 かなりの長い時間、一時間半ぐらいだったと記憶しますけれども、会談をいたしておりますが、その中で、国連改革につきましては、李肇星外交部長より、日本が国際社会の中において、より大きな役割を果たすということを我々も望んでいる、中国側も望んでいる旨の発言はあっております。これはそのとおりあっておりますし、また、双方は国連に関していろいろ会話を強化していかないかぬということで、そんなに連携がよかったわけではありませんから。ただ、昨年の七月のミサイルの話、あの辺ぐらいから非常に連携が密になったと思っております。正確には、昨年の五月、カタールのドーハ以来、これで李肇星部長と、電話を入れたら十回ぐらいやったんだと思いますけれども、そういった話で、密になってきておりますので、こういった意味で、李部長の方から、この問題について近く北京で協議を開催したいという旨の話があっておりました。

 この局長レベルでの協議というものに関しましては、こういうのは積み重ねないと、何となく、なかなかこれまで関係が難しいところでもありましたので、この種の問題に関しましては、政治的決着の前にいろいろ事務レベルできちんと積み上げておかねばいかぬ部分も多々あろうと思いますので、その点に関しましては、局長レベル、部長レベルでの会合というものを積み重ねていくということで両方で合意をしておりますので、国連の問題につきましても、中国と日本との間でいろいろな意味での話し合いが進められていくと存じます。

丸谷委員 一昨年のG4案提出に向けての動きの中では、中国の日本に対する反応というのは、非常に、日本の常任理事国入りをしたいという願望は理解をするという程度だったと思いますけれども、今回の日中外相会談の中では、日本が主要な役割を果たすことに関しての期待感というのがにじんでいたのだと理解をしておりますけれども、うがった見方をすれば、一つには、安保理改革自体の機運が下がってきているのでこれは余り動かないだろうという中での、一つの中国側の安心感からのそういった御発言なのか、それとも、最近、日中関係というのは、非常にバイでの対話が促進されていることから得られてきている、これは我が国の国益にかなう、中国の理解度の促進というふうに政府は見ていらっしゃるのか、この点について率直な御意見を聞かせていただければ幸いです。

麻生国務大臣 人の往来が多くなってきたというのは、昨年の十月、安倍訪中以来、その傾向は確かに、要人往来というのは多くなってきたことは確かであろうとは思いますが、会えば話が済むというのとは全然違いますので、会っても成果が出なければ話になりませんので、そういった意味では、会った上でどのような成果を得るかというのがこれから大事なところだと思っております。御指摘のとおり、往来が多いだけで事足れりというような話ではございません。

丸谷委員 安保理改革に関しては、最近、オランダですとかキプロスが提案している準常任理事国を暫定的に新設する案というものが注目を集めているようでございまして、いろいろ報道にも載っております。

 キプロス大使私案というものを見せていただきましたけれども、国連への貢献度に応じて五カ国を準常任理事国として、任期二年で五回連続再選をすると常任理事国入りができるといったような非常に弾力的な案もお出しになっているようでございますけれども、これは一つ検討に値するのかなと私は思いながら読んでおりました。

 こういった考え方自体については、日本政府としてはどのように受けとめていらっしゃいますか。

麻生国務大臣 準構成員じゃなくて準常任理事国、済みません、準常任理事国や暫定措置の導入という話があっておりますというのは、これは、一部の国連加盟国から提起されているということに関しては我々も承知をいたしておりますが、これがすぐ、早期に達成されるかなと言われると、ちょっと、一つのアイデアとしては私どもも理解をいたしておりますが、それが直ちに答えになるというほど簡単かなというような感じが正直なところであります。

 いずれにいたしましても、日本としては、従来どおり、常任理事国を目指しておるということでありますので、日本が常任理事国になれますようにするためにはこれしか残った案はないのかという点をちょっともう少し詰めてみないといかぬところかなと思っております。

丸谷委員 続いて、組織改革についてお伺いをいたします。

 これも、潘基文事務総長になられましてから、いろいろな発信がございました。やはり我が国としてはどうしても気になるのは、軍縮局をどうするべきなのかという問題がございまして、潘基文事務総長としては、軍縮局を御自分の直轄機関にして、そして自分がかかわっていく中で軍縮というものを進めていきたいという意欲をお示しになったものであろうと思いますけれども、実際には、この軍縮局について、事務総長の直轄の組織に再編された場合、人員ですとかあるいは予算面ですとか、そういったものがどういうふうになっていくのか。

 これは、我が国としては、現在、トップに田中国連事務次長が就任をされているということもありまして、また、猪口衆議院議員も我が国の代表として大いに働いていただいた分野でございますので、我が国としては非常に重要視しているわけでございますが、この軍縮局、現在どのような議論がなされて、また、今月末までには再編案の総会承認を得るような見通しになるのか、この点についてお伺いいたします。

岩屋副大臣 今丸谷先生御指摘のように、潘基文事務総長から、PKO局及び軍縮局の改編について提案がされているところでございます。我が国といたしましては、基本的に、潘事務総長の国連改革を理解し、支持をするという立場でございます。

 ただ、先生御指摘のあったような心配というか、懸念もあるわけでございますが、PKO局につきましては、平和維持活動の拡大に対応するために事務局の能力の強化が必要という問題意識を共有いたしております。

 また、今御指摘のあった軍縮局の再編についてでございますが、軍縮局の位置づけがもしかして下がるのではないかという心配をしておったわけでございますけれども、これについては、引き続き事務次長クラスを軍縮分野のヘッドに充てるということでございますので、この点は歓迎したいというふうに思っております。

 今、人員の、人材の面でも先生御指摘あったように、これまで、明石さん、阿部さん、田中さん等、我が国からもしかるべきところに人材を輩出しておりますし、猪口先生にも御活躍をいただいたということでもございますので、この事務局の改編問題につきましては、事務総長の提案を受けまして、今後の協議に我が国として積極的に参加をしてまいりたいというふうに思っております。

丸谷委員 考え方は理解ができたわけなんですけれども、現在の時点でそういった具体的な軍縮局に関しての再編案、まあ、格下げではない、そしてトップのポストの位置づけはある程度見えてきたわけなんですけれども、では、事務総長の直轄機関になった場合の予算面ですとか人事に関して見えてきている部分はあるのか、その点、非常に重要だと思います。

 我が国の国連負担金というのは非常にしっかり出しているわけですし、軍縮というのは、一番の柱として、また国連の中でも取り組んできたものですから、これに関して我が国として発言をしていかなければいけない分野だと考えておりますので、この議論の中で見えてきている部分があれば教えていただきたいと思ってもう一度質問させていただきます。では、これを最後に短く答えていただきたいと思います。

中根政府参考人 お答えを申し上げます。

 軍縮局の再編の問題につきましては、事務総長の方から、大量破壊兵器、それから通常兵器も含めて、今後事務総長直轄ということでしっかり取り組んでいくというアイデアが示されていますが、では、それを具体的に予算面あるいは組織面でどういうふうにしていくかについては、今後の議論を待つということになってございます。

 日本としては、そうした議論にも積極的に参加していく所存でございます。

丸谷委員 ありがとうございました。

山口委員長 次に、山口壯君。

山口(壯)委員 民主党の山口壯です。

 きょうは、六者協議とかあるいはそれをめぐるいろいろな情勢についてまた議論をさせていただきたいと思います。

 前臨時国会で、最後の方でしたね、防衛庁を防衛省にという話のときに、あれは安全保障の委員会でしたか、大臣、それから当時の久間長官、今の大臣、相当イラクについて私も率直に意見交換をさせていただいて、あれはよかったですね。あれから久間さんには非常に正確な認識をされた発言もしていただいているし、大臣についても非常に私の意を酌んだ発言もしていただいていること、やはり議論はきちっとすべきだと感じた次第です。

 六者協議の合意が今回なされたわけですけれども、本当にどこまで効果があるんだろうかというのが一般の人が一番心配しているところです。いろいろな評価もあるでしょう。タイムなんか、今週号のものにハン・スンジョさんが書いていますね、「ベター・ザン・ナッシング」、ないよりましだ。現実にはかなりこういうところがあるんじゃないのか。究極の非核化に向けてどういうふうに検証がなされる仕組みになっているのか、まずそこから、大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 こういうのは交渉ですから、山口先生、ベター・ザン・ナッシングという表現だそうですけれども、交渉というものに関して、合意をされた後、それは検証が必要であるということに関しましては、これは私どもも全く同じ見解であります。

 今回の六者会合におきまして、合意文書の中にありますように、合意後六十日以内でやりますいわゆる初期段階の措置につきましては、北朝鮮の寧辺の核活動の停止、いわゆるシーリングをやって、それで封印に同意しましたし、また今回の成果文書に対しては、これに対してIAEAの要員のいわゆる監視及び検証ですか、視察についても明記をされておりますので、この段階の措置につきましては、きちんとしたIAEAの要員を入れて視察をさせるというので、いわゆる検証をしていくということになろうと思っております。

 また、その後の次の段階の措置につきましては、すべての核計画の完全な申告の提出というものと、すべての核施設の無能力化という言葉を使っておりますけれども、そういったような措置の実施に同意をしておりますので、今後、五つ部会が立ちます中で非核化の作業部会が立ちますので、その部会を中心にして措置を検討していくんだと思いますが、この検証のあり方につきましては、日本もここの中に参加することになろうと思いますので、日本もしかるべき人を出してこの非核化の検証を作業部会で検証していく、どれが一番安心できるかということについての検証をみんなで議論していくんだと存じます。

山口(壯)委員 今私が実はお聞きしたかったのは、検証という、要するにベリファイする限りは、本当は何発あるはずだと、例えば核兵器についてですね、今それがどうなっているかという二つがないと検証できないわけです。そういう意味では、例えば、これは順番に本当は聞いていかなきゃいけないんですけれども、核兵器、究極のポイントは核兵器ですね、核兵器に今回の合意文書は言及されていますか。

麻生国務大臣 核兵器というものに関しては、少なくとも今回の最大の目的は北朝鮮を核保有国として認知することはしないというのが五カ国の一致した意見、おなかの中だと存じます。

 したがって、核兵器を持っているという前提で核兵器国として相手をしておるわけではありませんというのは、もう御存じのとおりです。

山口(壯)委員 共同文書で核兵器については言及されていますか。

麻生国務大臣 核兵器国として認めていませんので、核兵器に関する記述はないと記憶します。

山口(壯)委員 では、大臣、北朝鮮は全く核兵器を持っていないという認識ですか。

麻生国務大臣 我々としては、核兵器を持っているという前提で核兵器保有国として相手をしているわけではございません。

山口(壯)委員 建前と現実の情報、あるいは情勢に関する認識というのは違うはずです。

 大臣の認識として、北朝鮮に関する核兵器の保有、あるいはそれはどういうふうに認識されていますか。

麻生国務大臣 何回も申し上げておりますように、断定的なことを申し上げることはできません。しかし、それを持っている可能性を否定することもできないということだと存じます。

山口(壯)委員 知っていて言えないのか、あるいは現実によくわからないのか、それはいかがですか。

麻生国務大臣 断定的なことは申し上げられないというのは、そういう意味です。

山口(壯)委員 この辺に関しては、実はアメリカもよくわかっていないんです。これが一番のポイントなんです。八発とか十発とか、推定はされている。しかし、この北朝鮮に関しては、例えばヒューミントと言われているような、実際に人が行って確かめるということが非常に難しいものですから、確たることは彼らも実はわかっていないんです。したがって、核兵器が実は何発あって、それをなくしていくという検証というものは、現実には、この今回の合意の仕組みでは難しいんですよ。そうなると、金正日さんの好意あるいは誠意にすがるしかないみたいな変なところがあるわけです。

 今週のエコノミストです。「トラスト・ミー?」というのがこの意味です。金正日さん、私を信じてくれているわけと。これが一番の本質ですね。彼のバッジにピースとかラブとか、勲章のかわりにこういうものをエコノミストがおもしろおかしくもじっているのでしょう。

 したがって、例えば核兵器についても、今回の合意文書では触れていないわけです。大臣の先ほどの所信表明のような中で、「先般の六者会合では、北朝鮮による核兵器及び核計画の放棄に向けた具体的措置を含む成果文書が発出されました。」とありますけれども、現実には核兵器は言及されていないわけです。それは難しいわけです。例えば、ほかに高濃縮ウランあるいはプルトニウム、こういうものも検証しようと思えば現実にはどこにどれだけあるかということが本当はわからなければいけないわけです。これに関しては、大臣、どういう把握をされていますか。

麻生国務大臣 相手は極めて閉ざされた北朝鮮でありますから、中に立ち入って検証ができなかったというのが事実だろうと存じます、これまでも。今回初めてできることになるんだと思いますが、共同声明の中に核計画という言葉を使っているというのは御存じのとおりですので、核計画といえば、普通、核爆弾がその中に入るというのが常識的なところだろうと思っております。

 ただ、核爆弾という言葉がないではないかと言われると、私どもは核計画といえば、普通、核爆弾もその中に入るものだと思っておりますが、今言われましたように、その検証方法は金正日にトラスト・ミーという話で、クエスチョンマークがそこについていたと記憶しますけれども、その話の中にも出ておったと記憶しますけれども、今、我々として、スパイでもない限り北朝鮮の中に入れないわけですから、したがって、入れないところに対して、今回の計画で、五万トンなり百万トンなりという石油をネタに、もしくは六者協議とは関係なく財務省の方でやっていたマターとしてBDA、バンコ・デルタ・アジアの話にしても、そういったところで北朝鮮は少なくともこの核開発計画等々の放棄というものを一応言っておりますから、それに基づいて、それから調査を、検証を、査察を、視察をということになっていくということだと存じますが。

山口(壯)委員 確かに、金正日さんは、トラスト・ミー、本当にあなた信用しているわけ、私のことをと。まあ、これは皮肉ですね。

 今、例えば、合意文書の後に、金正日氏が、国営通信社が十五日に、我が国が核開発を一時停止する見返りに重油百万トンが供与されると報じていると。しかし、共同文書には一時停止なんか言っていないわけです。現実に、これはある意味でおかしいぞと。ただ、現実に金正日氏というのは、こういうことを言ったりやったりする相手であることは我々よく承知しているわけですから、そういう意味では、これですら、本当は、それはあなたの間違いでしょうというふうに言わなきゃいけないぐらい、相手との間に、核計画の中には核兵器が入っているはずだということは、実は大臣、そこは本当は通用しないんですね。今の我々の議論の中では、今の答弁、それはあり得るでしょう。しかし、交渉の中では、佐々江局長に、しっかりこういうことについても、君、やれよというふうにきちっと指示をしていただかなければいけないと思います。

 この今の高濃縮ウランあるいはプルトニウムについて、現実にどこにどれだけというのはだれもわからないわけです、だれもわからない。アメリカですらある程度のことしか推測、これが精いっぱいです。ということは、アメリカが知っている範囲での検証ということにまずなるわけですね。まずその部分は押さえなきゃいけない。

 それから、あと向こうの、ある意味で正直ベースの話がどこまで出てくるか。これは非常に危うい話なわけです。そういう意味では、北朝鮮の自己申告に頼るシステムですから、例えば、今回の検証について、いつまでに行うという話とか、あるいはどういうメカニズムで行うという話とか、この辺がはっきりしていないと思うんです。IAEAの査察の話は、向こうが受け入れ、譲歩した非常に数少ないものの一つですね。だけれども、本当にそれで大丈夫かという議論はあります。

 これは大臣、いかがですか。いつまでにとか、どういうメカニズムでという話です。

麻生国務大臣 基本的には、IAEAの査察というのが、これ以上査察に関するプロの集団を国際的に我々は持っておりませんから、そのIAEAが査察をする。そして、どういうぐあいにやるか、いつまでにやるかというのが、今立ち上がります作業部会の中で決められるということになるんだと存じます。作業部会が三十日以内にスタート、六十日以内にある程度の形をつくるという形になっていたと思いますけれども、その中で検証をしていくことになろうと存じます。

山口(壯)委員 今大臣が言われたとおり、今から決める話として今回合意しているわけです。確かにベター・ザン・ナッシングです。それを全く私は否定するものじゃないですけれども、しかし、本来であれば、そういうことがきちっとメカニズムもはっきりし、そして期限もある意味ではっきりした中で、今回本当は時間をかけてやらなきゃいけなかったはずです。その部分が、なぜこんなに急いだんだろうという点はあります。

 アメリカの中にも議論は分かれていた。財務省は、バンコ・デルタ・アジアを初めとして、金融制裁がしっかりきいている、もう少し待った方がいい、こういう意見だったはずです。国務省は全然違っていた。この辺に、ホワイトハウスの支持率が低下しているということに対して、ヒルとライスが、よし、ちょっとサクセスストーリーをひとつ考えてあげよう、こういうふうにしたのが今回だという話も伝わってきています。なぜそんなに急ぐのか。財務省は、金融制裁がきいているんだからもう少し待った方がいいという議論をしていた。

 金融制裁がきいていたかどうかについて、大臣はどういうふうに認識されていますか。

麻生国務大臣 金融制裁がどれくらいきいていたかと言われると、ちょっとこれはわかりませんけれども、ああいう閉鎖的な国ですから何ともちょっとよくわかりませんけれども、少なくとも一七一八に基づく措置やら、また、日本からでいきますと万景峰の話とか、いわゆる一連の圧力というものの大きなものの一つにBDAがあったということは、これは確かだと思っております。

 こういった中で、いわゆるマネーロンダリングの話というのは、これはBDAが挙がっておりますけれども、BDAしかないのかと言われるとちょっとこれまた疑問であって、ほかにもあるのかもしらぬということは当然考えておかねばならぬ。そこもアメリカは実際は捕捉しているのかいないのか、私どもにはちょっとそこのところまではわかりません。

 ただ、少なくともアメリカは、今回の中において北朝鮮のこの問題を、なぜ急いだかと言われるとわかりませんけれども、少なくとも、時間を余りかけるということをすることによって、それが向こうにとって得か、こっちにとって得かというところをいろいろ悩んだ上での結論だったと思っております。

山口(壯)委員 バンコ・デルタ・アジア、例えばこれが一つのシンボルですね。ここについてアメリカがああいう措置をとったがために、例えばオーストラリアも含めてほかの西側諸国の金融機関は、ほとんどすべてがと言っていいくらい、みんな自粛したわけです。物すごい象徴効果があったわけです。そういう意味では、アメリカは、この北朝鮮の問題については、もしも余りにも乗ってこないんであれば、あと七つバンコ・デルタ・アジアのようにやるからな、こういうようなことも言っていたはずです。それは大臣のところにも伝わっているでしょう。

 そういう意味で、アメリカは、これは象徴的に、そしてかなりいろいろな流れを捕捉して、そして金融制裁をやっていた。そういう意味では、なぜ急ぐのかと。

 これは先週号のエコノミストの表紙です、「ネクスト・ストップ・イラン?」と。これも象徴的ですね。今週のニューズウィーク、「ヒドゥン・ウオー・ウイズ・イラン」、イランとぶつかるんじゃないのかというのが表紙ですね、アフマディネジャドさんとブッシュさん。

 イラクでもブッシュさんはほとんど孤立無援の状態に近い。イラク・スタディー・グループが、言ってみればシニアの先輩たちが何とか窮状を脱してやろうというんで、イランとかシリアとの対話も含めていろいろ言ったけれども、とにかくブッシュさんは増派するのみだと。上院の方では、それを認めないという決議まで、与党の共和党の一部も賛成しながら通ってしまった。イラク、イランで頭がいっぱいなんじゃないですかね。

 私、何度も言っていますけれども、一番最初から、まだ核を持っていないはずのイラクあるいはイラン、この辺に関してアメリカは物すごくいら立っている。しかし、核を持っていると言う北朝鮮については、最初から中国に六者協議という格好で丸投げしていた。今、余り北朝鮮の問題で手をとられたくないという気持ちもあったんでしょう、こういう急ぎ方をしているんじゃないのかというふうに思うわけです。

 ちなみに、大臣、イランについては、核に関する、いわゆる核兵器ですね、核兵器に関する能力、どういうふうに把握されておられますか。

麻生国務大臣 まず、なぜ急ぐのかと言われても、アメリカの話を聞かれても、ちょっと私の方では何とも答えようがないんですが、少なくとも、この北に対する核というものをきちんとしておかないと、北の核の技術が他国に拡散する、イランを含めて、いろいろなところに拡散していくというのは断固避けたいというのであろうと思いますので、そういった意味では、私としては、なぜ急ぐのかと言われたら、そこらがお答えなんだろうと存じます。

 それから、イランの核保有力をどう見積もっているのかと言われると、これはちょっと正直、遠心分離機の数のレベルとかいろいろなことを、プロの方はいろいろおっしゃいますので、おととい、イランのモッタキと、電話がかかってきておりましたのでいろいろ話をしておりますけれども、基本的に、核というよりは、いわゆるこういった平和利用の技術に関して我々は何らとめているんじゃないのよ、おたくらが今まで十八年間、やらないと言ってずっとヒドゥン、隠してやっていたという部分が国際的な信用を失って、だから、ほかの国は、今平和利用に限っている。限っているといったって、本当かというようなことに関しては、査察だ、検査だといったら、それは入れない、入れたら今度は追い出したというようなことが続いておりますから、そういったことになってくるところが信用されていないんだから、イランに関しても、少なくとも、こういったものは、日本は核に関して、原子力の平和利用は皆やっておるから、原子力の平和利用を使って発電やら何やらみんなやっているので、そういったものはむしろ日本は徹底してガラス張りになっているんだから、うちと同じようなことをやった方が国際的な信用を得る。何もおたくらの原子力の平和利用の権限をとめているわけではないということをずっとそのときも言ったんです。

 少なくとも、高濃縮ウランの話については、いろいろ見解がありますので何とも言えませんけれども、とにかく、今イランに関しての核能力はあるかと言われたら、今すぐ、ことしじゅうでも、核弾頭になって、それが小型化できてミサイルの上につけられて搬送できるようなところまで行くかと言われると、私はそこまでのレベルには至っていないのではないかと。これはしかし、私はプロじゃありませんので、想像の域を超えません。

山口(壯)委員 今大臣の言われたとおりでしょうね。大体の専門家の見方は、早くても二、三年かかるという見方で、今自前の核兵器は持っていないというのがもう一致した見方です。だから、大臣の言われるとおりでしょう。どこかから勝手に買ってきたものがあるかどうか、それはわかりません。しかし、現実に、そういう意味ではイランは核兵器を自前のものは持っていないというわけですね。

 大臣、今、なぜ急ぐのかという答えについてそれはわからないと言われましたけれども、実はそこは本当は問題なんです。なぜか。アメリカと日本は同盟でしょう。もっともっとよく相手の気持ちはわかっておられるべきです。相手のアメリカのことがわからないと言うようじゃ、これは同盟のパートナーと本当に言えるのかということでしょう。だから、それは国会答弁だからそういう言い方をされたんでしょう。しかし、本当はきちっと、アメリカもこういういろいろな事情もあったようだ、そこはわかってやってくれ、こういう答弁をぜひお願いしたいと思いますね。いろいろな事情、我々も理解できるものがあるかどうかですよ。

 そして、先ほども私申し上げたように、イラクもイランも核兵器を持っていないわけです。北朝鮮は持っていると一生懸命叫んでいて、現実に我々も何発かあり得るなというところまで来ている。でも、アメリカは不思議でしょう、矛盾があるでしょう。北朝鮮については、とりあえずちょっとここでおいておこう、検証のシステムも決して万全じゃない。他方、いろいろなニュースに出てくるような、「ネクスト・ストップ・イラン?」と書かれたり、あるいは「ヒドゥン・ウオー・ウイズ・イラン」と書かれたり、結局そっちの方に行ってしまっている。

 そういう意味で、今回の合意というのはベター・ザン・ナッシングだけれども、北朝鮮の核について現実に脅威に感じるのは日本だけですから。中国は自分のところに撃たれるとは毫も思っていない、韓国も自分のところに同じ民族で撃つとは全然思っていない、ロシアも心配していない、アメリカも全くまだ今安心している。日本だけが一番脅威なんですよ。その日本が、本当はもっともっと詰めた合意をしなきゃいけないということをちゃんと知っておいていただきたいんです。

 そして、北朝鮮が今回具体的に譲ったのは、私が見る限り三つしかないんですね。全部とっている。例えば、共同文書に明記してある寧辺の施設、古いものですよ、寧辺なんというのは。向こうにとってみたら、こんな古いものでよくここまで五万トンとか百万トンの手形を切らせたなという話ですよ。あるいは、向こうが受け入れた二つ目は、IAEA査察受け入れですね。そしてもう一丁、彼らは現実には、軽水炉を建設する事業をもう一回ちょっと頑張ってよ、ここまで言わなかったのがある意味でこっちにとってみたらまあまあラッキーねという話で、ほとんど向こうはごね得なわけですね。

 だから、アメリカでもよくいろいろな議論が出ているのは御存じでしょう、ボルトン前国連大使とか。結局、今まで金正日氏はレジームチェンジ、体制変更を非常に恐れていた。アメリカに何かやられるんじゃないかと。ところが、今回の六者協議を通じて、核実験を敢行した北朝鮮が今や歴然たる交渉相手になってしまっているわけですよ、歴然たる交渉相手に。存在を認めざるを得ないものとして、レジームチェンジなんてもうだれも言っていない。アメリカもそう判断したんでしょう。だから、アメリカにとって圧力をかける対象ではなくて対話の相手になっているわけですよ。圧力から対話に基本的にスタンスが変わっている。

 先ほど大臣は必ずしもそういう答弁をされませんでしたけれども、世界の見方はもうほとんどこの点では一致していますよ。アメリカが圧力から対話にスタンスを移している。その背景に、イラクもあるでしょう、イランもあるでしょう、あるいは、支持率が低下したホワイトハウスがヒル・ライスラインに乗っかって、このサクセスストーリーはどうですかといってやってみたという話もそれはあるかもしれない。そういう意味で、日本としては、こういうアメリカのスタンスはあっても、やはり一番の脅威を感じる我々として、もっともっと本当は交渉を詰めることが必要だったんじゃないかと私は思います。

 大臣、私、今、次の内閣の外務大臣ということになっています。この次の内閣というのは邪魔でしようがないんだけれども、しかし、まだ政権交代していないんだから。私、大臣の立場であれば、やはりワシントンにばんばん行って、あるいは場合によっては北京にもばんばん行って、あるいは場合によってはテルアビブに行って、場合によってはテヘランにも行って、ばんばん、もっともっとされるべきじゃないですか。イランにお友達もいっぱいおられるわけですから。

 だから、その辺が、佐々江さんも有能な局長ですけれども、現実に、我々が議論をする中で、大臣が動かれた形跡というのは我々は見えないんです。やはり大臣、ここは一番大事な話なんですから、大将みずから、構成員に頼ることなく、現実に突っ込んでいくということは非常に大事なことですので、これからこのプロセスが始まりますから、大臣にはぜひ先頭を切って、ワシントンに、テルアビブに、テヘランに、そして場合によっては北京に行って日本の存在感を見せてください。

 こういうことがあって初めて安全保障理事会の理事国にという話も実質味を帯びてきます。今は現実に日本が安保理事国になっても、何をしたいんだろうということが諸外国はわからないと思うんです。やはり、そこは大臣、私は、ある意味で応援する気持ちで言っているわけですから、これからの今後の動きとして、ぜひそういう気持ちでお願いします。いかがでしょうか。

麻生国務大臣 大体、日本では外務大臣を二期連続やると亡くなられるか、大病をされるか、大体みんなそうなられる最大の理由は、海外と日本との間、特に国会との間の関係がなかなか難しいからほとんど体力がということなんだというのは現実なんだと思いますね。そういった意味では、コンディ・ライスが年間何回ぐらい国会に呼ばれるのかといったら二回とか三回とかいう話をしていましたので、こっちは二カ月か三カ月の話でもなくて全然違いますので、状況が少し違います。

 そこらのところは、今山口先生御理解を示していただきましたように、日本に対する国際的な評価というのはこの四、五年で猛烈に上がっていると思いますね。それが今回外務大臣に就任して一番の感想なんですけれども、今言われましたように、そういったところにいろいろ行ってみないかぬ、先頭を切って行かないかぬと。今回のルーマニアとかああいった東ヨーロッパの国々、中欧の国々に行っても同様なことを感じております。

 それから、先ほどごね得かという話がありましたけれども、石油の九十五万トンの、五万トンはともかく九十五万トンの点についてはこれは六十日以内のいろいろなステップがかかっていますので、それがやらなければないのよという話は、これをやったら後は何とかということで、これからの交渉だろうと思っておりますので、それなりの歯どめはかかっていると思っております。

 アメリカも、これは圧力から対話じゃなくて、圧力と対話の並立というところまでやってきて、今まではもうイランとも絶対交渉しないと言ってずっとやってきて、十七年ぐらいイランとも交渉していなかったと思いますけれども、それと交渉するようになった。こっちも、マデレーン・オルブライトの例の事件以来、アメリカと北朝鮮とも全く交渉がなかったのが交渉をするようになったというところであって、これは圧力から対話に変わったんじゃなくて、圧力と対話が並立しているのかなというのが今の実感です。

山口(壯)委員 大臣、例えば、三日あればワシントンを往復できるんです。きょう出て、あさってにはちゃんと着いています。一月には国会がなかったんですから、その間に米朝がベルリンで、言ってみれば事前に根回ししてしまっているわけですね。だから、やはりそういうときには大臣はワシントンに行かれて、日本の立場というものをきちっと前もってインプットしておくということが非常に大事ですし、国会を理由にそれができないということはぜひ言わないでいただきたいと思います。大臣、いいです。そこはもう私は質問をしていませんから。気持ちは十分伝わっていると思う。

 ボルトン氏の痛烈な批判がありますね。イランがこれをじっと見ていたら、同じことをやるんじゃないのか、やはり、持って核実験した方が得だということになりかねないぞと。

 大臣は、アメリカが核不拡散について非常に強い関心を持っているというふうに先ほど言われましたけれども、インドについては全くのダブルスタンダードですね。これはアメリカ国内にもそういう議論がある。したがって、インドが米印合意を昨年の三月に、アメリカと一緒に、米印の原子力に関する合意をしてしまったというのは、私は、日本は本来簡単にいいですよと支持する話じゃなかったと思うんです。

 先日の所信表明では、それについて、むしろ支持するということをはっきり言われたように私は記憶していますけれども、本当は日本は核不拡散についてはかたい立場をとるべきですから、アメリカはインドを支持しても、これはちょっと本当はよくないね、アメリカにもっと話さないかぬなというふうに言うのが筋だと思うんですよ。アメリカは核不拡散について強い関心を有している、それ一つでは割り切れない部分があります。

 特にインドの話について、大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 米印の話については、昨年のシドニーの日米豪の外相会議のときにも、米印の原子力協定についての懸念の表明は、終わってすぐでしたので、即、その話はもう既にしておると記憶をいたします。

 この点に関しましては、日本としては、インドに関して、好意的に見れば、少なくとも、あれだけの、十億、十一億の民が経済復興して、石油を使われてどんどん発電をされることによって起きる地球温暖化の話とか、そういったような話も含め、また、石油の消費量の絶対量がふえることを含め、いろいろな意味で、原子力の平和利用ということに関しては我々は理解の示せるところである。これはプラスの面。

 ただし、マイナスの面からいうと、ここはIAEAやら問題のところが幾つもありますので、そういった意味では、その点に関しては今後ともきちんと、こちらはIAEAの理事国ですから、最終的にはIAEAのサインが要りますので、そういったところに関しては注意深くこの議論は見守っていかないかぬですよという話も事あるごとに言っておりますので、安易に合意したというようなことはありません。

    〔委員長退席、やまぎわ委員長代理着席〕

山口(壯)委員 ということは、大臣、アメリカがインドとの間で去年の三月に合意をしたということがあったとしても、日本としては簡単にそれを支持しないということでよろしいですか。

麻生国務大臣 これまでの間、何回となくその話はあっておりますけれども、今の段階ではサインはできませんと申し上げております。

山口(壯)委員 支持しないということでよろしいんですね。

麻生国務大臣 今の段階ではと申し上げたとおりです。今、まだ私ども、その内容まではわかりませんから。今の段階でぜひこれは認めてもらいたいという話でしたので、そんな簡単な話ではありませんと申し上げております。

山口(壯)委員 先ほど、アメリカのスタンスが、圧力から対話にかなり重心を移したなということを私は申し上げました。

 ある意味で、テロ支援国家というラベルも外すという話になっているようですね。これは、そういう方向に向かっているんでしょうか。

麻生国務大臣 テロ支援国家の、外すという話に関しましては、その点に関して合意をしたということはございません。

山口(壯)委員 日本としては、拉致問題を抱えているわけですから、容易にこの話については、アメリカがたとえそういうことを考えていたとしても、むしろブレーキをかけていくべきだと思います。拉致の問題については、相当頑張らなければいけないというふうに私は今認識しています。特に頑張らなきゃいけない状況にさらになってきたと。

 大臣、拉致問題です。どこまでいけば、あるいはどういうところまで解決すれば、拉致の問題については解決だということが言えるのか。一番核心の問題ですけれども、その点については、大臣、いかが認識されていますか。

麻生国務大臣 これは山口先生、物すごく意見の分かれるところですね、正直申し上げて。

 一体何人拉致されたかという正確な数字は我々も知らぬのですから。日本の警察は、十三件十七人ということに一応なっておりますけれども、本当にそれだけかと。それだけですねと念を押されたら、我々もちょっとなかなか、ほかにもいろいろ、国会議員の中でも自分のお兄さんがそうじゃないかという方もいらっしゃるわけですから。

 そういった方々を含めていろいろいらっしゃいますので、私どもとしては、基本的には、いわゆる被害者と言われている方々の、少なくとも拉致されている方々の安全な即時の帰国とか、また、いわゆるやった本人の、容疑者の逮捕とか、真相の究明とか、いろいろなことを我々はこれまでずっと言ってきたのは御存じのとおりなので、そういった問題というものでいきますと、今言われたように、どういったものが本当に具体的にできるかというところだろうと思います。

 横田めぐみさんが帰ってきたら一つの大きなステップだと思いますが、その他、この人たちが帰ってきたら一応というのか、どの辺までいけば完璧な答えなのかというのは、正直、我々の方も正確なところが今できているわけではありませんので、そこのところで、どれをもって拉致問題は解決した、完全に解決した、よって、日朝国交正常化は完全にできるんだということに関して、国民的合意がどの程度あるかということに関してはわかりません。

 少なくとも、我々としては、全員帰国を目指すというのは当然のことでしょうけれども、現実問題として、正直なところ、我々は、今すべて生存しておられるという前提に立って、すべての方々を全員帰国というのが我々の最終目標ですけれども、それが果たして可能なのか、できる状態なのかということに関しては、ちょっとわからぬというのが正直なところです。

山口(壯)委員 大臣、一番難しい問題を私は聞かせてもらったかもしれません。今、一番正直に答えていただいたんでしょう。

 拉致の問題が解決するまでは、五万トンであろうが百万トンであろうが、日本は支援を行わない、こういうことでよろしいですね。

麻生国務大臣 これは、日朝の作業部会でこの問題を討議していくことになるんですけれども、今我々は、日朝の問題が解決をしない限り、では何が日朝問題だと言われると、いろいろありますので、では拉致問題、今言われたとおりですから、どの程度までいけばどの程度なんだということは、今我々は持っているわけではありません、正直なところ。

 ですけれども、我々は、日朝問題というものが少なくとも解決をされるということができない限り、少なくとも今、五万トンとか、残りの九十五万トンとかいう話にお金を出す、応分の負担をするつもりはありません。

山口(壯)委員 拉致問題というものが、大臣の言われるとおり、どこまでかというものについてのはっきりした、これを基準と呼べるかどうか、ないわけですね。他方、実は、これがないから、どこまでで解決になるのかということがはっきりしないわけです。

 であれば、そういう話が残る以上、日本は一切、今回の五万トンなり百万トンなりには参加しない、支援は自分たちはできないということになるわけですね。今それを大臣はおっしゃったように私は受けとめましたが。

麻生国務大臣 山口先生は外務省におられたので言葉をよく御存じだと存じますけれども、少なくとも、日朝問題に関しては、拉致に関しての進展がなければということがあって、向こうが誠意ある回答とか誠意ある対応等々の進展がなければと書いてあると存じます。

 私どもは、この話をずっとしておりますので、どれが解決なんだと言われると、先ほど申し上げたとおりでありますので、我々としては、何らかの進展がなければならぬという話を申し上げている。横田めぐみさんが仮に帰ってきたとすれば、それだけで進展と認めるのか、いや、残り十七人全部帰ってこないと進展と認めない、いや、そのほかにもとか、いろいろこれは考え方があろうと思いますが、少なくとも、進展というものが見られない限り我々が応じることはない、そのように答えております。

山口(壯)委員 そうなると、今度は実は、進展というものの中身が大事になるわけですね。この進展というものを、どこをとって進展があったとみなすかということは、実は、これは今度の、交渉の相手と認めるということは私は軽々に言いたくないけれども、日朝で話をすることになっているわけですから、相手との間でその辺のやりとりもできなきゃいけないわけですよ。だから、今、我々のサイドでは確かに難しいわけです。国内的にも非常に機微な部分がありますから、それはすべての人の気持ちを酌みながらしていかなきゃいけないということもあります。

 他方、これはもう現実にまた相手があっての話ですから、そういう意味では、その部分についても、解決と呼ぼうが進展と呼ぼうが、どこら辺というとこら辺は、徐々に、国内でのプロセスも含めて、話をある程度具体的にしていかなければいけないのじゃないかというふうに思いますが、いかがですか。

麻生国務大臣 拉致問題の進展がどの程度であったとするかという点については、これはもう間違いなく、今言われたとおり結構難しいところなんだと思いますが、我々としては、北朝鮮の実際の対応、まだ対応が全く成り立っていませんから、少なくとも三十日以内に一応スタートすることになっておりますので、さらに残りの三十日かけてということで一応の形をスタートさせるというところまでつくり上げたいと思っております。

 しかも、それも、山口先生言われるように、本当に相手が出てくるのかという点に関しましては、前回は出てくるはずが出てこなくなったりしておりますので、そういった意味では、なかなか難しいところだと思いますが、個別具体的に、こういったところで、その段階で対応していくという以外に方法がないと思いますが、これは非常にエモーショナルというか情緒的な話も含めまして、少なくとも、自分の子供がある日突然に人さらいに遭っていなくなる、しかもそれは国家権力の名のもとにやっているということに関しては、これは冗談じゃないという話に関しましては国際的な理解も結構広まってきたという状況でもありますので、私どもとしては、この問題に関しては、かなり強く今まで以上に出て、かつ他国の理解も得られるというところまでは、少なくともこの一年数カ月の間やってきたような感じがいたしております。

 その後どうなってくるか。これからですけれども、どれぐらい向こうの誠意ある態度が引き出せるかというところに関しては、今のところ、すごくここまで追い込んだんだから大丈夫だという結構楽観的な意見もございますけれども、私はそんなに楽観的な意見ではございません。

山口(壯)委員 この問題については、ある程度具体的に話をしていかなきゃいけない部分があるという部分を認識していただきたいと思います。

 今、チェイニーさんが来ているわけですね。チェイニー副大統領は、一月二十九日号のニューズウィーク誌に出ていた話ですけれども、イランの話で、イラン核問題は外交的解決に努めているが、我々はどんな選択肢も排除しないことを明確にしている、どんな選択肢も排除しない、これは軍事的なオプションの話を当然におわせているわけですね。

 お会いになられるときには、このイランの話についてはよく自制をきかせて、決して急な結論を出さないようにということを日本が同盟国としてきちんと言っておくことも必要かと思います。現実に軍事的オプションをとってから、日本が同盟国だから応分の協力もしてほしいというのは順番があべこべです。前もって、同盟国のやはりパートナーとして、そういうことがないように、お友達もたくさんおられるわけですから、やはりイランとの間にも、日本が、例えば大臣が行かれてそういうこともする、アメリカとの間でもそういうことをする、これは日本にとって大事な役割です。チェイニーさんも来られていることですし、この点についてはっきり言っていただきたいと思いますが、いかがですか。

麻生国務大臣 チェイニーという人は、学者と違って、国会議員から上がってきた人ですので、少なくとも、私らと話をしていて、今晩会いますけれども、話をして、いろいろなことに関しましては、安保理の決議というのはきっちりしてあるので、安保理決議に基づいてやってもらわなきゃだめよというのは、この前会ったときも言ったんですけれども、そういった話だと思いますので、そういった話の仕方としては、これは基本的に安保理決議というのは大事にしてもらわなきゃだめで、アメリカ一人だけでぱっと思いつきでやってもらうのはだめという話は前にも言いましたけれども、御趣旨は踏まえて対応いたします。

山口(壯)委員 いや、大臣、そういう法の理論的な話は余り、私は、最後の理屈づけですから、やはり政治家同士で会われるときには、別に安保理決議があるからしていいだろうという話じゃないんですね。あれは後からつける話です。やっちゃだめよという気持ちを先に、安保理決議さえあったら何でもできるんだよという誤解を与えないようにしていただきたいと思います。

 この議論はイラクの決議に関して非常に深い議論を持っていますから、また別の機会にします。

 最後に、きょうの議題とは少し、全く違うんですけれども、我々も国対から大臣にきちっと聞くようにと言われている話がありますので聞きますが、事務所の経費について公表すべきではないか、こういうことについて、大臣はいかが思われますか。我々は、一件一万円を超えるものは領収書を添付して五年間の保存を義務づける政治資金規正法の改正案を出すつもりです。これに関して、大臣はいかがお考えでしょうか。

麻生国務大臣 すごく手間がかかると思いますね、一万円ということになると。これは膨大な資料を、手間暇がかかる作業になろうと思いますので、それは秘書さんをふやしていただけるということじゃないんでしょう。今のままの現状でやれという話だと、それは物すごい労力のアップにつながるなというのが率直な実感です。

 したがって、今、一万円までやれといったら大変だなというのが率直な、今初めて伺いましたけれども、そういう実感です。

山口(壯)委員 労力がかかるからやらないという答弁ではないですよね、今のは。

麻生国務大臣 決まったらやりますよ、決まったら。しかし、それまでやって透明性がどれだけ確保できるかの方が、私には、費用対効果の話だと存じますが。

山口(壯)委員 大臣も、この件に関しては、そういう議論が出てくれば、それはやりますという話として私は受けとめさせていただきました。

 そしてもう一つ、私は、聞くように言われているのが、格差の問題です。

 この格差の問題、いろいろなところで今議論が出ています。現実には、例えば公明党の太田代表も、格差があるとかないとかじゃない、あるんだ、こういうのを全国のテレビでざあっと出ていましたね。現実にそれはあるわけです。あることがいいとかないとかの議論ではなくて、例えば、この見出しなんかも、「あなたにもやって来る「下流」転落シナリオ」、確かにそういう心配をしている国民の方は今多いですよ。例えば、一部の人だけが利益を得るような政治になってしまっていないか。すべての人にチャンスが与えられるような政治を私は望みます。民主党は望みます。

 そういう意味では、大臣、今の格差の問題について、必ずしも自民党の方からは、私は与党の方から具体的な案が出ているとは思えません。大臣、この点について、御自身の気持ちはいかがでしょうか。

麻生国務大臣 政調会長ならともかく、大臣をやっていますと、所管外の話というのはなかなか言いにくい話でして、したがって、これが財務大臣をやっているとか、しかるべき担当の大臣をやっているといいんですが、外務大臣をやっていますと、なかなか発言はしにくいというのが率直なところです。

 第一、これは所管外の話じゃないかと言われると話が込み入るので、山口に乗せられて、おまえ何をしゃべっているんだと言われる話は、今度は、そっちがよくてもこっちはちょっとたまらぬことになりますので、発言は注意せないかぬというところをまず前提に置きながら話をしなきゃいかぬと思っております。

 済みません、時間が食い込みまして。私のせいじゃないからね。

 その点に関しましては、今の話で、僕は一番の問題は、格差は地域格差が最大の問題だと思っています。その同じ地域にあって、ある程度競争が抑制される共産主義社会をやるつもりは全くありませんから、僕は、少なくとも、地域間格差というのはかなり深刻じゃないかなと思っているんです。少なくとも、九州の南とか東北の辺あたりの話と愛知県周辺の部分とは、かなり有効求人倍率にしてもいろいろ問題があるというのが一点。これはもう非常にはっきりしているところです。

 もう一点は、格差の点については、少なくとも、情報通信技術の著しい進歩によって、POSシステムを開発した人は巨万の富を得たけれども、これに基づいて配送している人たちという人は、幾ら配送をうまく、プロになっても、給料がだんだん上がっていくかというようなあれとは、情報通信技術の急激な発達というのはかなりのものをつくり上げているというのは事実だと思いますね。だから、そこらのところの間の中産階級と言われる人たちの問題を、中間管理職なしでいきなりどんと直接おりてくるということになっていますので、そこらのところの対応をどうするかというのは、これは別に産業構造として考えないかぬのじゃないかなというのが私の思っている感じです。

山口(壯)委員 これは、大臣、地域間格差があることは、それは認識されているとおりです。しかし、やはりそこだけじゃないですね。ワーキングプアと呼ばれている人たち、幾ら仕事を二つかけ持ちで頑張っても年間二百万なり、多くても二百五十とか三百とか、それぐらいしか手にできない。生活保護世帯よりも、ある意味で低い金額で生活しなければいけない。

 こういうことに対して、何でそんなことが起きているのか。正規雇用が四百万減って、非正規雇用が六百万ふえている。これはやはり社会の風土に、経営者側のコスト削減、そして、それをよしとする、大企業の減税はいいけれども障害者自立支援法案を一方で通す、こういう風土があるわけですね。それはおかしいではないかというのが我々民主党の主張ですし、大臣にも、一政治家として、弱い立場の方々のそういう立場も酌んだ認識をしていただければと思います。よろしくお願いします。

 質問を終わります。

やまぎわ委員長代理 次に、長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。

 六カ国協議の話から入りたいと思います。

 きょうは、佐々江局長にもお見えいただきまして、本当に交渉、御苦労さまでございました。

 今回の合意につきましては、いろいろな見方が当然あるのは、先ほど伊藤先生の方からもお話がありました。日本は、拉致にこだわり過ぎて孤立化するんじゃないか、そういう俗論もあります。また、逆に言うと、逆の方からは、北朝鮮と取引をそもそもするなんというのはばかげた話だ、こういう話も出てきております。もろ手を挙げて歓迎されるわけでもなく、けちょんけちょんに非難されるわけでもなく、そういう意味では、世論の反応、有識者の反応を総合的に考えてみると、意外とそこそこの合意ではあったんではないだろうかな、こんな思いも実はしております。

 先日、ちょっと、読売新聞のコメントが余りにも政府に甘過ぎて、上司から怒られたんですが、きょうは少し批判的な検討をしていきたい、こう思うんですが、ただ、合意の意義のやはり確認をしておかなきゃいかぬと思うんです。

 私、今回の合意の意義は、やはり拉致の問題の進展あるいは解決と六カ国の枠組みというものをきちんとリンクさせた。つまりは、ある批判は、余り拉致拉致と言うと六カ国のみんなが、おい、日本だけが違うことを言っていて、あんたが動かないから六カ国の取り決め、合意が履行できないじゃないか、何をやっているんだ、こういうことで孤立化する、こういうことに警鐘を鳴らしておられる方の意見を聞きましたけれども、いや、そうじゃないんだ、日本を動かしたいんだったら北朝鮮を譲歩させろと。

 こんなことを言うと少し言い過ぎになるかもしれませんが、拉致問題を日朝二カ国間だけで解決するというのはなかなか難しいと思います。やはり別の力を、あるいは大きな力をかりて、そこを動かすことによって北朝鮮の姿勢を変えて、そして、その拉致問題の解決に持っていく、こういう手法しか、今、先ほどのイランの話ではありませんが、日本が北朝鮮に武力で押し込んでいって、それで、返せ、こういうわけにはいきませんので、やはりおのずと選択肢は限りが出てくる。

 そのときに、では、どこを利用するかといえば、それはやはりアメリカあるいは中国、こういう国々の影響力を利用する以外にない。とすれば、六カ国の合意を何とか進めて朝鮮半島を非核化したいという思いはみんな同じです。アメリカも中国も、それぞれメンツをかけてこの合意を何とか履行したいと思っている。そのときに日本がきちんとした主張で、この拉致の問題が解決しない限り国交正常化は無理だ、ある程度進展しない限りは援助も無理だ、支援も無理だということをきちんと国際社会に対して鮮明にすることによって、彼らは、日本に文句を言うのではなくて、ちゃんとやっていない北朝鮮に対しては文句を言う、そういう枠組みを今回つくれたということは、私は、一歩、小さな一歩でありますけれども前進だというふうに思っています。ですから、私は、日本外交の踏ん張りどころだなというふうに思っております。

 ただ、それを申し上げた上で批判の切り口に入っていきたいと思うんですが、まず、アーミテージ前国務副長官が何と言ったか、今回の六カ国協議の合意。ブッシュ政権発足時に戻っただけだ、つまりは、二〇〇一年一月二十日の状況に戻っただけだ、こういうふうに言いました。これは言い得て妙だな。つまり、言いかえれば、九四年の枠組み合意の状況に戻った、こういう言い方をされたわけですけれども、しかし、私、二つ申し上げたい。

 これは、アーミテージさんがおられたら直接申し上げたいぐらいですが、一つは、何で今の核危機になったか。それは、その二〇〇一年一月二十日の翌年の、たしか十月だったと思いますけれども、ジム・ケリー当時の代表が行って、ウラン濃縮型の核開発について、これがあるだろうといって暴露をして、そこから北朝鮮の態度ががらっと変わって、寧辺の核施設の封印を解除して再稼働して、今回のような核危機になった。ということは、二〇〇一年に戻ったと言うんだけれども、では、この六年間一体何をやっていたのかというのがまず一つアメリカに言いたいこと。

 それからもう一つは、では、その核危機の過程で、さっき、どのぐらい核爆弾があるか、核兵器があるかという話がありましたけれども、これはCIAを初めとする国際的な情報機関が推定している中では、少なくとも七発から八発分の、ここは注意して言わなきゃいけないんです、兵器級のプルトニウムが北朝鮮の手に渡った、ある、こういうことですね。しかも、核実験もしてしまった。こういう状況が、九四年のときよりももっと悪い状況が今起こっている。だから、アーミテージさんはいろいろな思惑でこういう言い方をされたんだと思いますが、戻っただけではなくて、それよりも悪い状況になっている、ここを私たちは認識の原点にしていかなきゃいかぬなというふうに思っているんですね。

 その上で、ここは佐々江局長に伺いたいんですが、九四年の米朝の枠組み合意と今回の六カ国合意が非常に似ている、彼らが核を放棄する、まあ、あのときは凍結でしたけれども、フリーズ、凍結するかわりにエネルギー支援をやる、スキームが似ているじゃないか、デジャビュじゃないか、こういう指摘があるんですが、この違いについて、佐々江局長、交渉を担当された方として、どういうことを念頭に置いて、九四年の枠組み合意との違い、ここで御説明いただきたいと思います。

佐々江政府参考人 先生御承知のように、今回の合意というのは非常に広範なものを含んでおりますけれども、非核という点に着目すれば、私は大きく分けて三点において違いがあるというふうに思っております。

 第一は、九四年の枠組み合意というのは米朝合意であったということで、もちろん、その過程で関係国と協議のプロセスはありましたけれども、その合意はあくまでも米朝合意であって、ほかの当事者を拘束するものではない、中国も拘束するものではないということで、今回は六者の合意である、したがって六者の監視のもとで行われる合意だということが第一点でございます。

 それから、第二点目で、この非核化につきまして、九四年の合意の場合には当面の核の関連施設につきまして寧辺の施設とかそういうものを凍結するということにとどまっていたわけでございますが、今回は対象がすべての核兵器あるいは既存の核計画ということで、これを申告するということになっております。そして、これにはいろいろな施設が含まれております。したがって、対象が広いということでございます。それから、さらに施設について無能力化を行うということで、単に現状の稼働を停止するということではなくて、稼働する状況にできないような状況にする。その深さにおいて九四年の合意を超えておるということになると思います。

 ですから、その点において、この兼ね合いでエネルギー支援を行うことに、これは意味あるコストだというふうにほかの五者も考えたわけでございます。

 第三点に違いますことは、九四年の合意の場合には、単に現状凍結と申しますか、それに対して、毎年重油を五十万トンアメリカが提供するということでございましたけれども、この点につきましては、はっきりと今回の合意については、無能力化を行うこととの組み合わせでエネルギー九十五万トン分相当の支援を行うということで、組み合わさっている、リンクされているということで、現状が続くままに毎年支援をするという枠組みにはなっておりません。したがいまして、そこは一回きりの支援である、ここに差があるというふうに思っております。

 これは非核化に関するところでございますが、さらにより大きな視点からいいますと、先生も御承知のように、米朝交渉あるいは日朝交渉というものがこの枠組みの中に大きく視野に入ってきておりまして、さらにその延長上に将来の北東アジアの平和と安全のメカニズムをつくるのだ、より大きな将来を見通した枠組みである、この点については、私は米朝の当時の枠組み合意とは異にしているというふうに思っております。

長島(昭)委員 今、三つに大別をしていただきました。非常にわかりやすい御説明をいただいたと思うんですが、多国間で監視できるメリットももちろんあるんですが、デメリットもあるんですね。つまり、同床異夢ですから、さっきこれも伊藤先生から御指摘いただきましたけれども、アメリカが究極的に目指している、もちろん非核化でみんな一致はしているんですけれども、非核化に至るプロセスでどこを強調するかというのは、日本は核の開発プログラムが存在することそのものが脅威になるわけですから、そういう意味では、いろいろな思惑で、もうちょっと進めたいという国もあれば、いやいや、待ってくれという我が国のような厳しい、厳格に対処している国もあれば、ここはそこをコントロールするのは非常に難しい、その結果、協議が難航して時間稼ぎになってしまう、こういうリスクはいつもあるということは指摘しておきたいと思います。

 それから、対象が広くなった、すべての核計画になった。ただ、先ほどもちょっと触れましたけれども、ウラン濃縮型の核計画について、アメリカが最初に言った、そして向こうは何か認めたような認めないような答弁だったんですね、二〇〇二年の最初の段階。しかし、その後否定した。それ以来、全然、六カ国の協議の中で不問に付されてきているわけですね。今回、プルトニウムという言葉は、文言はこの合意の中にはあるんですけれども、ウランという言葉が、文言がどうして入っていないのか、そこについてぜひ伺いたいのが一点。

 それから、もう一つは、無能力、ディスエイブルという言葉が初めて今回出てきたんですけれども、たしかアメリカは、これまでディスマントル、つまり解体、使用不能にするだけではなくて除去する、リビアなんかは全部撤去して国外に施設を出しちゃったわけですね、ここまで何で詰めていかないのか。仄聞するに、北朝鮮側はこのディスマントルには最後まで抵抗した、それで、ではディスエイブルでどうだということで最後ディスエイブルに決まったやに聞くんですけれども、この真偽についてもお答えいただければと思います。

 つまりは、北朝鮮側から見ると、ディスマントルという概念とディスエイブルという概念は違う、解体してなきものにするという話と今回この合意で目指していく方向性とが若干ずれがある、このことについてはどういうふうに考えておられますでしょうか。

佐々江政府参考人 まず、濃縮ウランが明示的に含まれていないというか、文書に入っていないという点でございますが、これは先生も御承知のように、今おっしゃられましたように、北朝鮮との間で、北朝鮮は一度認めた経緯もありますが、その後、翻して、存在しない、ないというふうに言っておるわけでございます。それに対して、我々は、これはあるということで、これが廃棄の対象に含まれている、これが我々の実は一昨年の共同声明の我々側の立場、我々の解釈でございます。

 しかしながら、北朝鮮との間で濃縮ウランの存在について依然として意見が一致していないということも事実でございまして、したがいまして、その点については、完全な核の申告において引き続き非核化作業部会の場で話し合いが行われていくということになると思いますし、我々としては、あくまでも、廃棄あるいは完全な非核化の対象であるのは当然である、そういう立場で北朝鮮に対応していくということであろうというふうに思います。

 それから、今回の合意で、英語で言うとディスエイブル、無力化ということで終わったのはどうしたのか、ディスマントルというか、廃棄と違うのはどうしたのかということでございますが、実は、当然のことながら、我々はディスマントルというか、一昨年の共同声明で合意したことは完全な廃棄でございまして、これが最終的な合意であることは明らかであるわけでございますが、今回の合意、そもそもの出発点というのが共同声明を完全実施するための初期の措置である、そういう位置づけの交渉であったということをまず先生に御理解願いたいと思います。

 もちろん、我々としてはこの初期の段階で非核化の部分について最終的なゴールである放棄に達すれば、それは最も望ましいことであるというふうに思いますし、そういうふうに交渉を行ったわけでございますけれども、残念ながら、北朝鮮はすべて非核化するということに合意しなかった。したがって、次善の策として、いわゆる現状の単なる凍結ではない、すぐれて非核化、完全なる放棄に近いある面で中間段階の措置だと思いますけれども、そういうもので最終的には合意せざるを得なかったということでございます。

 したがいまして、ディスエイブルメント、無力化につきましては、それが一体何を意味するのか。我々の理解では、これはさらに稼働がもう一回できなくなるような状況である、つまり、もとに戻れない状況であるというのがほかの五者の共通認識でありますし、恐らく、そのことは北朝鮮も理解していると思いますが、では、何がそういう状況なのかということについては、対象となる施設の具体的な中身に照らして今後非核化作業部会で詰めていかなければいけない問題である。

 しかしながら、我々が評価をしておりますのは、これは最終的な非核化に向けた相当大きな実質的なステップだ、そういうふうに見ておるということでございます。

長島(昭)委員 大臣、今聞いていただいたとおりでありまして、これをインターネットなどで見ておられる国民の皆さんも、なかなか北朝鮮と合意をしてそれを履行させるというのはどの政権でもどの国でも容易な作業ではないんですが、これは今後の交渉や話し合いにゆだねられている部分が相当大きいなということは感じ取っていただけたんじゃないかなと思うんです。

 そこで、根源的な質問を一つしたいんですけれども、今回の合意に臨む北朝鮮が、いつも実は大臣とはやりとりさせていただいているんですが、追い込まれてどうしても合意せざるを得ない状況になって今回臨んできたのか、それとも、先ほど山口委員の方からもお話がありました、何かアメリカがいろいろな要素で焦って合意に臨んでしまったのか、ここが私は実は一番のポイントなんじゃないかといつも思っているんです。

 そこで伺いたいのは、今回の北朝鮮の判断というのは、本当に核の放棄をしなければいけないのなら、まあ、すぐするとは言っていないし、すぐするとも思っていないと思いますが、いよいよ我々も核の放棄をしなきゃいけないという、言ってみれば戦略的な決断をしたのか、あるいはしようとしているのか、それとも、これまでどおり、当座をしのいでエネルギーでもせしめておくかという戦術的なステップを踏んでいるのか、大臣はどちらだというふうにお考えでしょうか。

岩屋副大臣 後でまた大臣の御見解を聞いていただければと思うんですけれども、むしろ、長島先生の御見解を興味深く聞かせていただきたいと私ども思っておるんですが、私は両方なんじゃないかなというふうに思うんですね。

 やはり北が非常に厳しい状況に置かれてきたということも事実だと思うんですね。国連決議による制裁もきいているだろうし、我が国独自の制裁もきいているだろうし。以前は毎年五十万トンという話に飛びついたわけですが、今回はうまくいっても一回こっきり百万トンという話に飛びついてきたというのは、やはりかなり制裁の圧力がきいていて厳しい状況にあるということもあるでしょう。

 一方、アメリカの状況だとか中東の状況だとか、いろいろな世界情勢を見ておって、ここはひとつテーブルに着くべきところなのかな、ここで前に出ればいろいろな話が体制維持のために進むかもしれないなという思惑もきっとあったでしょうし、我が方からするとそれを利用したということになると思いますが、北から見れば、逆にほかの国々の状況を見てとって利用したという判断になるかもしれませんが、なかなか一言では言いにくいと思いますが、両方あったのではないかなというふうに感じております。

麻生国務大臣 これは、長島先生、なかなか難しいところだと思いますが、少なくとも国連制裁決議の全会一致はきいた、これはもう間違いないと思っております。

 それから、日本がそれにあわせて万景峰等々の入港を停止等々は、これは日本側の決断としてやっておりますけれども、これもきいた。

 そしてもう一つは、いわゆる今度の六者協議と関係なく、アメリカ財務省の方でやったバンコ・デルタ・アジアに関しましては、この波及効果というのは極めて大きく、商取引、資産が凍結される、資金が凍結される以外のいわゆる決済、国際的な為替の決済等々の決済にまで影響したというのは非常に大きな影響。

 その三つが重なった上に、六者協議で五者がほとんど割れず最後までずっと来ましたものですから、私が北朝鮮だったら、日本とアメリカの分断とかいろいろなことを考えるのは当然ですから、その分断に日本もアメリカも全然乗らず、そのままずっと一緒に来たというところが、向こう側の立場に立てば、結構しんどかったなという感じのところだろうと思っていますので、追い込まれたという部分はかなりな大きな要素だったろう、私自身はそう思っております。

長島(昭)委員 だといいんですけれども。

 私、一つ伺いたいのは、今おっしゃった、去年の秋からばたばたばたっと国際社会がぎゅっと締まっていった、そのことは私も同じ見解なんです。ただ、もう少し圧力の効果を見きわめることができなかったのかなと思うんですね。つまり、六年間放置していたんです。ある種、北朝鮮は時間稼ぎしながら、相手の五者を翻弄しながらずっとやってきた。リプロセッシングをずっとやってきたわけですね。再処理を進めてきた。我々から言わせれば、やっと去年の秋からぐっと国際社会が締まってきた。ですから、もうあと半年ぐらいじらしていけば、私はもっともっと彼らが戦略的な決断をしやすい環境をつくることができたんじゃないかな、これは交渉を担当しているわけでもない、政権にいるわけでもないですから一つの見方でありますが。

 もし麻生大臣がこの交渉の主導権を握っておられたらどういう対応をされたのか、非常に関心があるんです。というのは、こんなことを言ったら自虐的と言われるかもしれないけれども、やはり主導権を握っていたのはアメリカであり中国だったと思うんですよ。ところが、もし麻生大臣がこの交渉の一番のかじ取りをされている立場だったら、あと半年ぐらいじらして、もう少し圧力の効果を見きわめてやるという選択肢はおありだったでしょうか。

麻生国務大臣 これはなかなか難しいところだと思いますが、私、中国の代表なのか、アメリカの代表なのかで違うと思うんですね、両方とも主導権を持っていましたけれども。

 仮に議長国の中国の代表という立場に立ってというような、もちろん仮定の話とか質問になかなか答えにくいところなんですが、やはり二千七百万人、豆満江を越えていきなり北朝鮮人民が中国人民になだれ込んでこられる、暴動とか崩壊とかいうのは断固避けたい、私が中国だったらそう考えると思います。

 また、韓国側も、あそこの三十八度線の地雷原、あそこからばっとやはり数百万人流れ込まれるのもちょっとかなわぬというところがありますので、決定的な崩壊というところまで追い込まれるかどうかと言われるのは、ちょっと私どもにとっては正直見えないところです。

 それでもう一つは、やはり北朝鮮の内容、実情については、これはどう考えても中国やら韓国の方が実態は詳しいと思うんです。私らもいろいろ聞くと、いや、もう本当えらいことになっていると中国側も言いますし、中国側も今回は一七一八に伴ってそれなりの制裁に参加しておりますので、北朝鮮は中国に対してはかなりな思いが、ふつふつたる思いがある。したがって、安倍総理の中国訪問が終わったその日に核実験をやるわけですから、明らかにそういったものはいろいろな意味を込めている、私どもにはそう理解できますので、おまえがその立場だったらどうだと言われれば、ここはちょっと正直その実態を見ないとわかりませんけれども、もし本当に彼らが我々に言うようにしんどい状況になったら、これ以上追い込んでというのはかなわないなという気持ちになるかなというところで、今回のところはそこそこかなという感じが正直なところです。

長島(昭)委員 非常に御答弁しにくい質問だったと思います。

 私は、もう少し様子を見ている必要があった、中国側の動きとか韓国側の動きを見ると、確かに切迫感もあったやに見えますけれども、それほど、にわかに崩壊するような、そんな状況じゃなかったんじゃないかな、こう思うので、やはりアメリカのある種影響というのが今回の合意についてはあった。ただ、合意は合意で小さな一歩ですから、これから三十日、六十日と彼らの出方をきちんと見きわめ、検証し、だめならまた圧力をかければいいわけですから。

 そういうことでいうと、合意で、はい、終わり、だから早過ぎたという結論では必ずしもないと思うんですけれども、これからぜひ、私は日本が一番厳格審査で臨んでいると思いますので、その点、拉致問題を一つのてこにしながら、日本側はきちっと、この査察だって、さっき佐々江局長は申告というふうにおっしゃった。申告だって結局自己申告でしょう。昔、あの米ソ冷戦のときに、ミサイルの査察だって、ソ連が全部出したものしか見れないとかそんな話で、中途半端じゃないか、こんな批判もありました。恐らくそんなことが繰り返されるんだろうと思うんです。そういうところも含めてきちっとやっていただきたい。

 もう時間がなくなってきたので、一番気になっていることをずばり伺いたいと思うんです。

 皆さんのお手元にもこの合意書の概要が行っていると思うんですが、日朝のところです。「六十日以内に実施する「初期段階の措置」」「(三)日朝 日朝平壌宣言に従って、不幸な過去を清算し懸案事項を解決することを基礎として、国交を正常化するための協議を開始する。(「懸案事項」には、拉致も含まれる。)」ただ、この外務省が作成した概要には、拉致が含まれる、こうなっているんですが、皆さんには本文は行っていませんが、合意の仮訳を見ると、そこには括弧の注はないんですね。ですから、ここの認識が日朝の間で本当にとられているかというのが、やはり拉致の被害者の皆さん、あるいは我々拉致議連のメンバーも一番気になっているところなんです。

 そこでも、やはりよくも悪くも影響力を持っているのがアメリカだと思うんですね。アメリカも同時に米朝の作業部会で、この括弧ですね、テロ支援国家指定を解除する作業を開始する、この括弧は実はこの合意の本文の中に入っているんですね。この括弧の使い分けが外務省の中でどうなされているのか非常に興味深いところなんですが、そこは、きょうは聞きません。

 そこで、このテロ支援国家指定の解除については、日本はたしか、拉致問題がきちっとかかわっているんだよということをアメリカに言い続けてきていると思うんですが、この日米の認識は本当に共有されているんでしょうか。

麻生国務大臣 おります。

長島(昭)委員 それを一つはかるものに、国際テロに関する年次報告というのが国務省から毎年出されていて、これはもう皆さんも御案内のとおりだと思いますが、一九八七年に例の大韓航空機の爆破事件があって、それ以来、不名誉なことに、北朝鮮はテロ支援国家ということで指定された。それ以来ずっと国務省のドキュメントに載っているんです。それに拉致が加わった。北朝鮮がなぜテロ支援国家であるかの理由の中に拉致が加わったのが、二〇〇四年の四月に公表された二〇〇三年版の年次報告。この間、これをこの年次報告にぜひ入れてほしい、拉致は現在進行形のテロだ、国家テロだということで、救う会の皆さん、家族会の皆さんが何度もワシントンに行かれて、最初はほとんど相手にされなかった。だんだん関心が上がってきてここまで来たというのは、外務省ももちろん御努力をされたと思いますが、そういうことですね。

 それで、現行のものが二〇〇六年の四月二十八日に出ております。これが恐らくことしの四月に、再来月ですけれども、アップデートされるということになると思うんですが、ここできちんと記述をしていくということが一つの試金石だ、アメリカが本当に拉致というものをテロと関連づけているんだなということをあらわす試金石になると私は思うんですが、これはぜひ外務大臣にお願いしたいんですけれども、二点あるんです。

 一つは、上にラインマーカーを引かせていただきました。北朝鮮が五人の拉致被害者の生存者を返した年が二〇〇三年になっているんですね。これは二〇〇二年です、正しくは。こういう単純な事実誤認があるということ、これはきちっと外務省から、外務大臣からおっしゃっていただきたい。

 それから、そのパラグラフでそこからあと三段、四段下がったところですが、これは、横田めぐみさんを初めとする方のにせ遺骨を返還してきた事件がありましたけれども、このことが触れられた後に、この問題は二国間の間で論争になっているという書きっぷりなんですね。「ジ イシュー リメインド コンテンシャス アット イヤーズ エンド」というふうに書いてあって、あたかも、アメリカ側から見ると、何か日本と北朝鮮がこのにせ遺骨をめぐって対等に論争しているんだというような書きっぷりになっているんですね。

 ここはやはりきちんと、にせ遺骨であった、そして、これは対等に論争しているんではなくて、全員生存しているんだから、それをきちんと日本は奪還をしていかなきゃいけないんだということを示すような書きっぷりに、これはアメリカにしていただかなきゃならない。そうしないと、アメリカは前科があるんです、クリントン政権の末期に一度このテロ指定を、北朝鮮の指定を解除しようとした動きをしたことがあるんですね。ここから、この国務省の文書からも削除して、そういう動きをしたことがありますので、今回、私たちは非常に警戒をしております。

 いきなりテロの指定国解除の話し合いを始める、まだ話し合いを始めるだけですけれども、この始めるということをいきなり今回持ち出してきたので、またばたばたばたっといきやしないかということを非常に心配しておりますので、外務大臣の方からぜひ御答弁をいただきたいと思います。

    〔やまぎわ委員長代理退席、委員長着席〕

麻生国務大臣 今の、年数の違う話とか、この「リメインド コンテンシャス アット イヤーズ エンド」という言葉になっておるところをきちんと、にせ遺骨であったということをきちんとというお話に関しましては、御趣旨はよくわかりましたので、僕はちょっとこの文章を初めて見ましたので、年数が違っている等々につきましてはきちんと対応いたします。

 それから、もう御存じのように、これは指定の解除と言っているんではなくて、その作業を開始するというところまでの合意なんであって、少なくとも日朝の話やら何やらをきちんと見た上で対応していくということになろうと思いますので、私どもとしては、この点につきましては引き続き今までどおりの対応で進んでまいりたいと存じます。

長島(昭)委員 ぜひよろしくお願いいたします。これは麻生大臣でないとなかなかできないことだと思いますので、ぜひお願いいたします。

 最後に、もう時間がないんですが、チェイニー副大統領が昨日いらっしゃいました。恐らく、きょうの夕方、麻生大臣とお会いすることになるんだろうと思いますが、久間防衛大臣とお目にかからないというふうに報道で聞いておりますが、それは事実でしょうか。これは外務省、お答えいただければと思います。外務大臣。

麻生国務大臣 それに出るのは総理大臣と外務大臣だけと聞いております。

長島(昭)委員 これも報道レベルでありますが、今回、副大統領が来られることになった目的は、一つは、日本のイラクやアフガニスタンでの努力に謝意を伝えることがある、こういうふうに言われておりますし、これは、米政府高官によると、日本とオーストラリアを選んで、同じ同盟国はアジアに幾つか、韓国も含めてあるんですが、わざわざ日本とオーストラリアを選んだのは、これはやはり、イラクやアフガニスタンでの対米協力で非常に頑張っている国だということが一つと、それから、これは最近の報道で知りましたが、日豪の外務、防衛閣僚の定期協議をこれからやっていこうと。これは、日本とアメリカはもちろん2プラス2があります、それから、オーストラリアとアメリカも同じように外務、防衛担当がある、しかし日豪がないということで、戦略対話を大臣が始められたのでありますが、それも含めて、日本とアメリカとオーストラリアの関係を、安全保障も含めて、普通はまあ経済とかということでお茶を濁してきたんでしょうけれども、これは安全保障の分野も含めてやっていこう、そういうことで、チェイニー副大統領はわざわざ日本とオーストラリアを選んで来ている。

 そこで、久間防衛大臣、つまり防衛担当、安全保障の担当大臣と会われないというのは非常に不自然な気がするんですけれども、大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 正直、私どもから会わないという理由は、基本的には、ホワイトハウスの相手というのは官邸であって、外務省は関係ありませんし、防衛省も余り、正直なところを言って、関係ありません。したがって、大統領府としては官邸というのが基本なんだと思っておりますので、あとは外相しか会わないということなんだと。しょっちゅう、昔から知っている関係もありますので、私の方からという話をしましたので、そこだけだと思っております。

 それから、日豪の話がありましたけれども、それは当然、やはり一年少々の間で大きな成果が、やはり日米豪の外相会談というのが定期的にあるようになったというのは大きなことの一つだったと思っております、日米豪というのは。その中で、日米は2プラス2がある、日豪がありません。日豪は、外務大臣とのはかなり頻繁にやりましたけれども、その点では、2プラス2を日米豪でというのは、御趣旨はわかりますけれども、正直申し上げて、これは物理的に言うと、四人一緒に会わせるというのは大変。これはもう、ちょっと日程が全然、今のアメリカとの関係も、三人、ライスまでオーケーと言ったらゲーツがいない、何とかいったらこっちがいない。常に四人会わせるというのは、かなり先の日程まで押さえないと四人はなかなか難しいというのが今の現実でもありますので、私はどうもプラクティカル、現実派なものですから、これは日豪の防衛大臣会合を頻繁にやった方がよっぽど実が上がりゃせぬかなとは正直思います。

長島(昭)委員 少し回りくどい聞き方をしましたけれども、伝えられているところによると、防衛大臣がたび重なる、アメリカに対して耳の痛い発言をした、だからチェイニー副大統領は会わない。しかも、横須賀へ行って幹部自衛官とは会う。何か作為的なことを感じているんですが、もしそうだとしたら、非常に子供じみた対応だと私は思いますし、日米同盟というのは、言い方はいろいろあるとは思いますが、時には耳の痛いこともお互い言い合えるような成熟した関係であるべきだと私は思うんですね。

 その点、もし副大統領の日程が合うようだったら、きょう大臣がお会いになったときに、帰りに防衛大臣にでも会って帰っていったらと少しアドバイスをしていただければ、こういうふうに思いますが、何でもアメリカの言っていることに、やっていることに引きずられていくような同盟ではなく、ぜひ、この機に、対等の日米同盟を目指して頑張っていただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

山口委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 安倍総理は、一月の施政方針演説の中で、世界とアジアのための日米同盟は我が国外交のかなめであるというふうに述べて、そして、麻生大臣の外交演説の中でも、世界とアジアのための日米同盟と題した部分で、普遍的価値と戦略的利益を共有する米国との関係は日本外交のかなめというふうに述べられております。

 我が国外交のかなめというふうに言われるわけですけれども、これまで世界とアジアのための日米同盟という言葉を公式に使った内閣はなかったと思います。総理は、就任直後、昨年九月の所信表明演説で初めて使われて以降、日米同盟と言う際には、まくら言葉のようにこれを言われて、世界とアジアのためのということを述べられております。

 大臣に伺いたいんですが、一つは、一体いつから日米同盟というのが世界とアジアのための日米同盟になったのかというのが一点と、それから、小泉前総理の時代には、世界の中の日米同盟というふうに言われて、そして日米首脳会談でもそういうことで話し合われているというわけでありますけれども、それ自身が日米同盟の質的転換点ということも大分議論されました。

 そういう点でいうと、世界の中の日米同盟と世界とアジアのための日米同盟というのは違いがあるのかどうか。どういう違いがあるのか。発展があるのか。つまり、いつから世界とアジアのための日米同盟になったのか。それから、これまでの世界の中の日米同盟と、世界とアジアのための日米同盟というのは違いがあるのかどうか。いかがでしょうか。

麻生国務大臣 ちょっと正直、法学部でもありませんし、文学部でもありませんので、今の言葉で言えば、今の世界とアジアのための日米同盟という言葉の方が、何となく、日米両国の連携というものが世界とアジアの平和と安定に貢献するというような側面により重点が置かれている。世界の中の日米同盟より世界とアジアのための日米同盟の方が、今申し上げたように、両国の連携が世界とアジアの平和のために貢献しているというように、私ども、その側面に重点が置かれているように響きますが、いつから変わったのかと言われると、ちょっと私、正直記憶がございません。

笠井委員 ためのということになりますと目的性が非常に明確になるんじゃないか、私はぱっとそういうふうに受け取るんですけれども、いずれにしても、自衛隊をイラクに送る、派兵についても、小泉前総理は、世界の中の日米同盟という中で、そういう理由づけの中で出された。そして、安倍総理もこれについては是とし、指示するという中で、世界とアジアのための日米同盟という理由づけをされているということで、いずれも日米同盟だからと自衛隊を海外に送る、ましてやイラクに送るのは非常に問題だ、理不尽だというふうに思うんです。

 私は、どんな軍事取り決め、軍事同盟でも、もともとは条約上の権利と義務で組み立てられたものであって、それを超えて、今度は日米同盟という言い方をするわけですが、しかしそれをまた、ためのということで、世界のための、アジアのための日米同盟ということになると、こういう形でどんどん目的を広げていくというのは非常に重大だというふうに私は思っております。そういう点で、この問題を一つ指摘をしておきたいと思います。

 同時に、麻生大臣は、外交演説の中でも触れられていますが、「今や、我々は、」というところで、この日米同盟に、世界とアジアのためと呼ぶにふさわしい内実を持たせなければなりませんというふうに演説されました。このふさわしい内実、つまり世界とアジアのための日米同盟にふさわしい内実というのは一体どういうことを指して言われているのか、具体的にどんなことをやっていかなければ世界とアジアのための日米同盟になっていかない、その内実がないというふうに考えていらっしゃるんでしょうか。

麻生国務大臣 日本とアメリカというのは、経済力でいきますと一番と二番というのが、少なくとも軍事的にも同盟関係を結んで力強いものがあるというのは、日本のプレゼンス、存在というものを非常に大きなものに見せているんだと思います。

 事実、日本がいろいろな形で、最初はカンボジアからスタートしたんだと記憶しますけれども、PKO等々の一連のモザンビーク、東ティモール、いろいろやってまいりましたけれども、そういったところでの成果というのは極めて大きなものだった、私自身はそう思います。

 外務大臣になって一年半近くになりますけれども、やはり一番の正直な実感は、世界の中における日本の評価というのは、私がそれなりにちょっと外国のことを知っている方でも、私が思っているよりはるかに国際的な評価は高かったというのが、正直、私がこの一年少々の間に感じた実感なんです。したがって、期待がでかい。そこらに対してどうやってこたえていくかということなんだと存じます。

 卑近な例ですけれども、いきなりイスラエルの外務大臣という方から電話がかかってきて、この間のパレスチナ、イスラエル、アメリカの三者会談の内容をずっと、英語でお話しになりますのでこうやって聞かないかぬ、必死に聞いて話をして、それを日本に報告するというのは、いまだかつて絶対そんなことはありませんでした。

 アメリカで話がついていればいいという感じの態度だったのが、明らかに、日本にもしかるべきというようなことを言うようになっただけでも物すごく大きな変化だと思いましたので、情報をもらってありがたいけれども、それは、だからおれたちに理由を説明したからおれたちでやりたいようにやるよというのはだめよ、少なくともここは辛抱、おれたちも辛抱して北朝鮮とここまで、少なくとも交渉まで来て、つい数日前、一応のステップが、うまいステップいったんだから、それは長い間の話なんだから、それはそちらだってここは我慢よ、日本人並みに我慢せいという話を、ペーシャントだ、英語ではペーシャントと言うんですが、日本人並みにやることを倣った方がいいと言ってお互いに話をする。そんなことは今まで、日本に電話をかけてくるなんということは全くありませんでしたから、そういった意味では全然別の評価が上がってきているんだ、私どもはそう思っております。

 そういった意味では、もとの話になりますけれども、日本という国が対応していくに当たっては、何となく、みんなと仲よくてじっとしているんじゃなくて、日本もそれなりに力をいろいろな形で出していくという必要に迫られている。それに、日本とアメリカと一緒にやる方がより効果が大きい。ただ、それがアメリカの国益に資するかもしれませんけれども、同時にこちらの国益にも資するということなんだと思いますので、もちろん、その当事者の国を含めてという関係がうまくいくようにやっていくのが、これからの外交で物すごく大事な要点だと思っております。

笠井委員 その評価はまたいろいろ議論したいんですけれども、大臣が言われた呼ぶにふさわしい内実というのは、この演説の中で、具体的にはその後、安保体制の信頼性の強化とか米軍再編の問題を触れていますが、当然そういうことも含まれているわけですか。

麻生国務大臣 はい、含まれております。

 いろいろ、この種の話だとすぐお金の話になるんですけれども、今、例えばアフガニスタンの武装解除の話とか、それからカンボジアというところで今クメールルージュの裁判をしておりますけれども、このクメールルージュの裁判も、これは裁判官は日本人の野口という人がやっております。これは国際法でやる裁判官。傍ら、法務省から、カンボジアの民法、民事訴訟法等々の法律をつくるのにも日本から人を出しているというような形で、いろいろな形で、武装とかドンパチやる話とは違って、戦争が終わった後のその国の平和構築と秩序づくり等々には、かなりの部分が我々としてお役に立てる部分ではないかというような感じはいたしております。

笠井委員 私は、冒頭から伺ってきたんですが、施政方針、それから外交演説の中での世界とアジアのためのという流れの中で、この間、大臣自身が、外交演説の冒頭でも、戦後、我が国の外交の基礎の三本柱に加えて、四本目ということで、自由と繁栄の弧をつくるという話も提起をされている。そして、去年五月にはNATO本部に初めて外相として行かれて、安倍総理も行かれるということで、総理も、今や国際的には、平和と安定のためであれば自衛隊が海外で活動することはためらわないというふうなことまで言われる。

 総理も大臣も、憲法の諸原則を守りながら、厳守しながら、遵守しながらというふうには言われるけれども、やはり日本の憲法九条のもとで、集団自衛権で武力行使しているNATOとの軍事的協力を深めるということの方向でいくと、これはやはり許されないことだというふうに私は非常に感じているところなわけです。

 そして、この大臣の言う自由と繁栄の弧というのが、アメリカでいえば、この間、QDRがあって、国防報告でも言われましたけれども、まさに不安定の弧と言われたところに重なってきて、そして、そういう中で在日米軍再編ということに重なってくるんだろうというふうに私は読みました。

 そこで、米軍再編に係って一点だけ質問しておきたいんですが、外務省は、一月、米軍戦闘機のF22ラプター十二機と兵員約二百五十人が嘉手納基地に配備されると発表して、既に、十七日の二機を皮切りにして到着をしてきている。このF22というのは米国外でいえば初めての配備ということになるわけですが、これは、去年五月の米軍再編の日米の最終合意、ロードマップがありましたが、ここに盛り込まれていた計画でしょうか。その事実について伺いたいと思います。

西宮政府参考人 お尋ねの点につきましては、盛り込まれておりません。

笠井委員 なかったということですが、政府は、沖縄の負担軽減ということなどを言われながら、F15を嘉手納基地から移転訓練させるということで、そういうことを一方でやりながら、今度F22が、最新鋭機が新たにやってくる。現地では、航空機の騒音も百デシベルを超えていたということまで言われております。暫定的措置ということも言われているわけですが、政府関係者は、アメリカから太平洋地域へのローテーション展開には、これまで主にF15が派遣されていたけれども、これからはF22も組み込まれるということも言っております。

 そういう点でいうと、負担軽減どころか、この沖縄、肝心の沖縄という点でいうと、県民や地元市町村にとっては、これは負担増、それから基地強化そのものだというふうに思うんですね。しかも、配備やあるいは定期的な展開、飛来というのが今後もあり得るということになるということは非常に重大な問題だと思うんです。

 そこで、外務省に確認しておきたいんですが、この嘉手納基地に所在するアメリカの合衆国軍隊の飛行機というのは、日米地位協定との関係ではどういうふうに整理されて位置づけられるんでしょうか。

西宮政府参考人 嘉手納基地に所在する航空機、現在、F22のお尋ねもございましたけれども、一時的、暫定的に展開しております。日米地位協定に言う「日本国における合衆国軍隊」というのは、我が国の施設・区域を一時的に使用するものも含まれるというふうに解釈しておりまして、今御指摘のF22も含めまして日米地位協定の適用を受けることになります。

笠井委員 そうすると、そういう合衆国軍隊の飛行機が、自衛隊との共同訓練とか、あるいは沖縄周辺以外の本土の訓練空域を使うということは排除されない、あり得るということでよろしいんでしょうか。

西宮政府参考人 現在、嘉手納飛行場に一時的に展開しておりますF22戦闘機の具体的な訓練計画については、米軍の運用にかかわることであり、外務省としては承知しておりません。ただ、一般論として申し上げれば、米軍が、飛行訓練を含め、軍隊としての機能に属する諸活動を一般的に行うことは、我が国が米軍の我が国への駐留を認めていることの当然の前提でございます。したがいまして、特定の施設・区域に一時的に展開している米軍の航空機が各種訓練に参加すること自体は地位協定上排除されているわけではありません。

笠井委員 排除されていないと。

 しかも、米軍側は三沢基地のF16戦闘機などと訓練を実施するということを今度来るに当たって説明をしているわけです。F22の運用も嘉手納にとどまらないということだと思います。

 防衛省に伺いますが、合衆国軍隊の飛行機と自衛隊との共同訓練ということになりますと、米軍再編では、嘉手納飛行場、三沢飛行場及び岩国飛行場の三つの米軍施設からの航空機が、千歳の基地、三沢の基地、それから百里の基地、小松基地、築城基地、新田原基地など、自衛隊の施設から行われる移転訓練に参加することになっております。当然、F22もその対象機になり得るということでよろしいんでしょうか。

大古政府参考人 お尋ねの訓練移転につきましては、基本的には、嘉手納、三沢及び岩国飛行場に配備されている米軍機の訓練を移転することを想定しているところでございます。しかしながら、この三飛行場の周辺地域における訓練活動の影響を軽減するという訓練移転の目的に沿う場合におきましては、今般のF22のように一時的に配備された航空機がこの訓練移転に伴う日米共同訓練に参加することまでを排除するものではないというふうに考えているところでございます。

笠井委員 排除するものではない、あり得るということであります。

 私は、冒頭に申し上げましたが、世界とアジアのための日米同盟ということで、そういう流れの中で、米軍と自衛隊との一体化、そして米軍の基地強化、機能強化を進めて、米戦略をより幅広く補完しながら協力しようとしている。しかも、今ありましたように、ロードマップにもなかったものまで次々と加わってきている。そういう形でアメリカがやるような戦争に地球規模で協力する新たな軍事同盟に拡大しようとしている、大臣、こういうことは非常に重大だと私は思うんです。

 そのために、大臣もいろいろ講演の中で言われているやに伺っておりますが、集団的自衛権の行使の問題についても、いろいろやるべきだとかいうような議論があったり、総理も検討、研究するというわけでありまして、そういうことで憲法まで変えようとしている。これはまさに、先ほどからいろいろありましたけれども、二十一世紀の大きな世界の流れの中でいえば、むしろ逆行する方向に日本が向かおうとしているということを言わざるを得ないということを申し上げたいと思います。

 私は、六者協議の問題については時間の関係できょうはできませんが、この後、拉致問題特別委員会の方でやらせていただきたいと思っております。

 終わります。

山口委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社民党の照屋寛徳です。

 私も、F22ラプターの問題からお伺いをします。

 このF22Aラプター、嘉手納基地へ配備されましたが、配備目的についてアメリカから政府に対してどのような通知がありましたか。

西宮政府参考人 F22戦闘機の嘉手納飛行場への配備に関しまして、米側から次のような説明を受けております。

 一つ、米空軍はF22戦闘機十二機を嘉手納飛行場に暫定的に展開する。これに伴い約二百五十名の要員が暫定的に配置される。

 二つ、今回の展開を行うこととしたのは、米軍の運用状況を勘案し、極東における米軍の適切な抑止体制を維持するため、一時的に航空機を補う必要があるためである。地域における特定の脅威の増大によるものではない。

 三つ、展開期間は現時点では未確定であるが、およそ三カ月、五月ごろまでかと思いますが、およそ三カ月を想定しているという説明を受けております。

照屋委員 このF22Aの配備は三カ月程度だという説明がありましたが、配備終了後には、その要員である軍人や家族は引き揚げるんでしょうか、撤退しますか。

西宮政府参考人 米側よりは、今回のF22戦闘機の嘉手納飛行場への展開はあくまでも一時的なものであるとの説明を受けております。現時点で、F22戦闘機を我が国に恒常的に展開するといった具体的な計画はないと承知しております。

照屋委員 その配備が常態化する、兵員や家族が沖縄へ駐留して居残るということはありませんか。

西宮政府参考人 先ほどお答えしたかと思いますが、米側から約二百五十名の要員が暫定的に配置されるとの説明を受けておるところでございます。

 なお、家族が沖縄に来られるとの説明は受けておりません。

照屋委員 F22Aラプターと航空自衛隊のF15との嘉手納基地の共同使用による共同訓練はあるんでしょうか。

山崎政府参考人 先生御承知のように、従来から、航空自衛隊におきましては、日米双方の戦術技術の向上等を目的として共同訓練を実施しております。

 御指摘のF22型機との訓練でございますが、まだ米側と調整を行っているところでございます。したがって、その時期、場所、参加規模等の詳細については現在調整中でございますが、我々としては、もし機会があれば、ぜひ共同訓練を行いたいというふうに考えております。

照屋委員 先ほども防衛省から説明がありましたように、F22Aラプターは、米軍再編の最終報告、ロードマップでも嘉手納への配備は日米合意にないんです。ところが、それが嘉手納へ配備をされる。また、嘉手納基地では、早朝、未明の軍用機の離陸による激甚な爆音被害、パラシュート訓練の強行実施、パトリオットミサイルの配備など、周辺住民が恐怖のどん底に落とされております。爆音もすごい、墜落の恐怖もある。

 このように、嘉手納基地の機能は強化をされておりますが、そこで、外務省に尋ねますが、日米合同委員会合意による嘉手納基地の使用主目的はどうなっていますか。

西宮政府参考人 飛行場でございます。

照屋委員 この使用主目的の飛行場、訓練場、補助飛行場では、どういう違い、区別があるんでしょうか。

北原政府参考人 照屋寛徳先生にお答え申し上げます。

 まず、先生御指摘の飛行場あるいは訓練場、補助飛行場等の区別でございますが、これは、沖縄が復帰いたしました昭和四十七年五月十五日の日米合同委員会で合意された、沖縄県に所在してまいりました米軍施設それから区域の使用主目的について、それまでの使用実態あるいは用途などに即しまして、個々の施設・区域ごとに使用の主たる目的を定めた、そういった経緯があるものであります。

照屋委員 一九九六年の十二月二日のSACOの最終報告で、パラシュート降下訓練の伊江島補助飛行場への移転に日米が合意している。一九九九年十月二十一日の日米合同委員会において、読谷補助飛行場におけるパラシュート降下訓練のすべてを伊江島補助飛行場に移転実施することで合意をしている。それにもかかわらず、去る一月二十六日、嘉手納基地におけるパラシュート訓練を強行実施している。これは日米合意に明確に違反するのではありませんか。

西宮政府参考人 米側は、SACO最終報告に沿って、パラシュート降下訓練を基本的に伊江島補助飛行場において実施してきております。しかしながら、米側によれば、伊江島については、天候面での悪条件等、訓練実施に対する制約が多いことから、訓練所要を満たさない米軍兵士が多数生じているとのことでございます。

 こうした事情を踏まえ、米側は、一月二十六日午後、嘉手納飛行場において、人命救助のための体制維持のため緊急を要する六名の救助隊隊員によるパラシュート降下訓練を実施いたしました。政府といたしましては、日米安保条約の目的達成のため、米軍が訓練を通じて即応態勢を維持する必要があることと理解しております。

 パラシュート降下訓練については、日米両政府は、SACO最終合意に沿って、引き続き、基本的に伊江島補助飛行場を使用することとしており、嘉手納飛行場はあくまでも例外的な場合に限って使用されるものとの認識で一致しております。

 一月二十六日の嘉手納飛行場におけるパラシュート降下訓練は、このような認識のもとで行われたと承知しており、SACO最終報告に照らし、特に問題があるとは考えておりません。

照屋委員 嘉手納基地は、使用主目的は飛行場であって、訓練場ではない。したがって、パラシュート降下訓練なんかできないはずであります。

 それとも、防衛省は、あるいは外務省は、嘉手納基地の使用主目的、五・一五メモの飛行場から、その後、修正合意があったんですか。

北原政府参考人 嘉手納飛行場についての使用主目的は、先ほど御答弁申し上げたとおりで、飛行場でございます。

 それで、私どもといたしましては、その米軍の活動が、今申し上げました使用主目的、すなわち、飛行場としての形態に反しない限り、そのパラシュート降下訓練のような訓練の実施をすることを排除している、そのようには考えておりません。それは従来からの解釈、政府の立場でございます。

 それから、御指摘の合同委員会合意で変更があったのかということでございますが、これは五・一五合意以来変更はございません。

照屋委員 各基地は、それぞれ提供目的が限定されているんだから、飛行場として使用するといって訓練なんかやってはいかぬ、やらせちゃいかぬ、そういうことを政府がきちんとしないといけないと思いますよ。外務省、どうでしょうか。

西宮政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますけれども、飛行場の使用の主たる目的が飛行場であるということであっても、使用主目的が飛行場であることに反するものでない限り、パラシュート降下訓練のような訓練を実施することを排除しているとは考えておりません。

照屋委員 では、最後に、この嘉手納基地のパラシュート降下訓練との関連で、去る一月二十五日の日米合同委員会において、パラシュート降下訓練、嘉手納基地の場合は例外的に限る。この例外的の基準は何ですか。しかも、最小限度と言っている。最小限度の規模の基準について、外務省、明確にお答えください。

西宮政府参考人 例外的、最小限度とのお尋ねでございますが、まず第一に、パラシュート降下訓練につきましては、引き続き、日米両政府は、SACO最終合意に沿って、基本的には伊江島補助飛行場を使用するということでございまして、嘉手納飛行場の利用はあくまでも例外的な場合に限って使用されるものという認識でございます。

 いかなる場合が例外的に当たるかにつきましては、個別の事例ごとに、その具体的事情に即して判断する必要があると考えておりまして、あらかじめ一概に申し述べることは困難であります。

照屋委員 規模、最小限度の規模については。

山口委員長 局長、時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いいたします。

西宮政府参考人 例外的な場合という中で、今回の訓練のように、定期的に行われるのではなく、小規模なものであって、悪天候などの制約によって伊江島補助飛行場で訓練を行えぬものなどを指す場合と承知しております。

山口委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十三分散会


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