衆議院

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第8号 平成19年4月25日(水曜日)

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平成十九年四月二十五日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 山口 泰明君

   理事 小野寺五典君 理事 嘉数 知賢君

   理事 三ッ矢憲生君 理事 三原 朝彦君

   理事 やまぎわ大志郎君 理事 山中あき子君

   理事 長島 昭久君 理事 山口  壯君

   理事 丸谷 佳織君

      安次富 修君    愛知 和男君

      伊藤 公介君    宇野  治君

      小野 次郎君    高村 正彦君

      篠田 陽介君    新藤 義孝君

      杉田 元司君    鈴木 馨祐君

      松島みどり君    山内 康一君

      笹木 竜三君    長妻  昭君

      笠  浩史君    渡辺  周君

      東  順治君    笠井  亮君

      照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   外務副大臣        岩屋  毅君

   外務大臣政務官      松島みどり君

   政府参考人

   (外務省大臣官房地球規模課題審議官)       鶴岡 公二君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 新保 雅俊君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 佐渡島志郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房広報文化交流部長)        山本 忠通君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    西宮 伸一君

   政府参考人

   (文化庁文化財部長)   土屋 定之君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        岩井 良行君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  山崎信之郎君

   外務委員会専門員     前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十五日

 辞任         補欠選任

  猪口 邦子君     杉田 元司君

  山内 康一君     安次富 修君

  笠  浩史君     渡辺  周君

同日

 辞任         補欠選任

  安次富 修君     山内 康一君

  杉田 元司君     猪口 邦子君

  渡辺  周君     笠  浩史君

同日

 理事三ッ矢憲生君同日理事辞任につき、その補欠として嘉数知賢君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

四月十八日

 武力紛争の際の文化財の保護に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

 武力紛争の際の文化財の保護に関する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第六号)

 千九百九十九年三月二十六日にハーグで作成された武力紛争の際の文化財の保護に関する千九百五十四年のハーグ条約の第二議定書の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 武力紛争の際の文化財の保護に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

 武力紛争の際の文化財の保護に関する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第六号)

 千九百九十九年三月二十六日にハーグで作成された武力紛争の際の文化財の保護に関する千九百五十四年のハーグ条約の第二議定書の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

山口委員長 これより会議を開きます。

 理事の辞任についてお諮りいたします。

 理事三ッ矢憲生君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に嘉数知賢君を指名いたします。

     ――――◇―――――

山口委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房地球規模課題審議官鶴岡公二君、大臣官房審議官新保雅俊君、大臣官房審議官佐渡島志郎君、大臣官房広報文化交流部長山本忠通君、北米局長西宮伸一君、文化庁文化財部長土屋定之君、資源エネルギー庁資源・燃料部長岩井良行君、防衛省防衛政策局長大古和雄君、運用企画局長山崎信之郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山口委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。おはようございます。

 外務委員会でこうして質問をさせていただきますのは私の記憶では初めてかなと思いますけれども、非常に貴重な時間をいただきましたことを感謝申し上げます。

 まず最初に、昨日発表になりました、先進国首脳会議、サミットが北海道洞爺湖で決まったということで、あの小さな町、私も何回か訪ねたことがございますけれども、かつてバブルの象徴と言われた今のウィンザーホテル、それ以前の大変豪華なホテルが、北海道拓殖銀行の破綻とともに所有者がその後かわりまして、最近ではもう本当に高級ホテルとして非常に復活をした象徴と言えるわけでありますけれども、あのウィンザーホテルが会場となって、先進国首脳会議が開かれる。

 さまざま全国各地から誘致、招致を願う声がありました。開国の歴史のある横浜が新潟と一緒になってぜひサミットをという声もあれば、京都でという声もあったことはもう御存じのことでありますけれども、あえてこの洞爺湖畔でやるということです。

 私も、丘までは行ったことはないですけれども、洞爺湖には行ったことがあります。ちょうどあのときは有珠山の噴火があって、災害対策の特別委員会だったか当時の建設委員会だったかで行きました。非常に独特の雰囲気を持ったところでございまして、大変すばらしいところでありましたけれども、この場所に選定されたという理由と、また、このサミットを成功させるに当たって日本国としてどのような取り組みをこれからしていくのかという点につきまして、まずお伺いをしたいと思います。

麻生国務大臣 今、渡辺先生御指摘のありましたように、関西サミットとして関西の大阪、京都等の一グループ、それから瀬戸内海として岡山等々、その向かい側のところ、それからもう一グループが横浜、新潟の港等々のグループがあったと記憶しますが、最終的に洞爺湖に落ちついた背景というのは、多分、総理の美しい国というイメージでいきますと、従来の日本とはおよそイメージとしては、全く都会ではなくてというところが一点。

 二つ目は、いわゆるテーマとしては多分環境というものが、来年のサミットでは省エネ、環境が大きなテーマになる、その意味では、環境問題というものに関しては、全く空気がきれいというところがやはり非常に大きなところかなというのが二点目。

 それから、地方というものを考えますと、都会ではなくて地方でもやれるというのが三点。

 それから、警備体制の話がよく言われますけれども、これはかなり独立したところでもありますので、警備体制等々が考えられるかな等々、いろいろな理由で総合的に判断をされたということだと存じます。

 もう一つ、その次、一週間後には北京オリンピックを控えておりますので、北京オリンピックとの対比等々で、日本というものの存在というものを全然違ったイメージで浮き立たせる等々、いろいろなことを総合的に判断された結果だと存じます。

渡辺(周)委員 サミット、先進国首脳会議が一九七五年にフランスのランブイエで始まってから、日本の当時の首相は三木武夫氏でありましたけれども、それから本当に三十年以上のサミットが行われる中で、決してその国の首都ばかりではなくて、我々も名前を聞いてどこだかイメージできなくて、地図を見て、ああこんなところか、こんな古い町で、時には古城でやったり、あるいは非常に素朴な田舎の都市部でやったり、農村部に近いようなところで開催されたりしながら、見ておりまして、日本だけがどうして、沖縄サミットまで過去三回東京サミットなんだろうか。

 東京だけが日本ではないという意味をもちまして、これは本当に残念ながら、我々誘致まで至らなかったんですが、私の選挙区は静岡県の富士山のふもとでありますから、県知事さんに、何とか静岡県でサミットをやりたいぐらいのことを手を挙げないのか、富士山サミットをやればいいじゃないか。あるいは温泉の中でつかって、あるいは足湯につかりながらサミットをやったっていいじゃないか。何かそういうその国その国の独自のものをやはり見せていくことが、決して東京だけじゃないということを我々も実現したいと思います。

 例えば、これからですけれども、八年ごとに大体開催国が、当然また日本に参るわけでありますけれども、それが地域の要望を受けてある程度考慮されるものなのか、やはりそうはいってもいろいろ、今お話があった、恐らくサミットのテーマやあるいは警備体制でありますとか、そういうことも含めてある程度国で決めてしまうのかということを考えたときには、やはり地方の意向をぜひ、これからサミットがこの後どれだけ続いていくのかわかりませんが、恒久的に続くとすれば、日本のよさというものをこれから世界に知っていただくようなことをぜひお考えいただきたいなと思います。

 その点につきまして、今後、サミットのあり方につきましてどう考えていくのか、ぜひ外務大臣の御所見を。

麻生国務大臣 渡辺先生おっしゃるように、最初のランブイエと聞いて、どこかいなと思いましたし、ことしのハイリゲンダムにしても、その前のグレンイーグルズにしても、今でもどこかよくわかっていませんけれども、少なくとも名前が売れたことはもう間違いないと思いますので、地方の活性化等々で、洞爺湖というのは多分むちゃくちゃ、え、ここがサミットをやった場所というような話で、観光誘致にもなりますでしょうし、大変東京に偏るというのは明らかに間違っている、私もそう思いました。

 前回も、沖縄のときも、ちょっと沖縄までは思いませんでしたけれども、地方の方がいいのではないか、ほかの国は皆地方でできるのに何で日本だけできないんだと随分私どもも申し上げました。事実、沖縄でできましたので、今後とも地方でやれる。今度北海道で成功すれば、ますます今渡辺先生がおっしゃったような線で、いわゆる地方都市、地方でできるんだと思います。

 先生のところ、富士の三島だっけ。(渡辺(周)委員「沼津、伊豆の方も」と呼ぶ)あの辺の地域を含めまして、やはり日本といえば富士山というのが一つのものとしては十分にあり得るんだ、私もそう思います。

渡辺(周)委員 この質問についてはこれで終わりにさせていただきたいと思いますけれども、実は、私の新選挙区であります伊豆半島というところは、先日亡くなられたエリツィン大統領が伊東の川奈に来て、太鼓の音色の中で一緒に演奏したり、そこではやはり亡くなられた橋本元総理とエリツィン会談が行われまして、大変歴史的にも重要な役割を果たした。たしか国境の、領土問題なんかを話し合ったんじゃないかと思いますけれども、地域と溶け込んだイベントの中に参加をされた。たしかあのときは、地元で開かれていた結婚式に飛び入りで出たサプライズがありましたけれども。

 今は失脚してしまいましたけれども、ペルーのフジモリ大統領、この方が、今お国に帰られたんですかね、熱海のその先の初島に来たり、フランスのシラクさんは非常に日本通でして、わざわざ伊豆の修善寺まで来て、こっそりお忍びで。結構世界じゅうのいろいろな方が来ている。もっとさかのぼれば、伊豆の下田というところには、かつてカーター大統領が来て、開国の歴史をまさにスタートしたところであります。

 選挙区の宣伝をして申しわけないんですけれども、やはりアメリカの大統領と当時のロシアの大統領、米ソの二大超大国のトップが来たことがあるエリアというのは非常に全国でも限られているところでありまして、将来、またぜひそういうサミットの誘致をするときまで私も議員バッジをつけていたいなというふうに思うわけでございます。

 やはり地方のそうした場所でサミットが開かれるということは、その土地にとっても大変名誉なことであるだけではなくて、やはり治安の面においても、あるいはその土地の文化や歴史を感じさせるという意味においても、世界的に日本のよさをまさに発信できる最大のチャンスでありますので、これからぜひ、サミットの選定に当たっては地域の声を反映させていただきたいなというふうに思います。

 そんな中で、洞爺湖サミットの成功を祈りつつ、次の質問に移らせていただきます。

 ここからがらりと質問の内容が変わるんですけれども、東シナ海の資源開発について、まず伺いたいと思います。

 先日、温家宝首相が来られまして、その後、温家宝首相のいわゆる微笑外交、ほほ笑み外交の中で、今回は氷を解かす旅である、訪日であるというようなことが言われました。しかし、その反面で、この東シナ海のガス田の問題は一貫して横たわっている問題であります。

 この問題につきましては、今後協議をしていくのである、日中で協議をしていくという中では、外務大臣も当事者としていらっしゃるわけでありますけれども、この東シナ海の問題については、温家宝首相の来日において、あるいはその前の昨年十月の安倍総理の訪中において、どのような変化があったのか、実際変化はなかったんじゃないかと私は思うんですね。今までと何か少しは変わったのか、進展する可能性があるのか、その点につきまして、外務大臣、お答えいただきたいと思います。

麻生国務大臣 今渡辺先生御指摘がありましたように、この東シナ海のいわゆる資源開発問題というのは両国間にとりまして極めて大きな問題だ、私もそう理解をしておりますし、昨年の五月、カタールのドーハで李肇星外交部長と初めて交渉を持って以来、この問題はずっと引き続き懸案事項になっております。

 今回の首脳会談の中でどのような変化があったかという御指摘なんだと思いますが、一番問題なのは、変化が出ておりますのは、少なくとも、この問題は一方的にもう問題にしないという対応から、両首脳の間で、平和、友好の海にするために双方が受け入れ可能な、ここからが一番問題なんですが、比較的広い海域という言葉が入ったところが一番大きな変化です。この比較的広い海域という、比較的という言葉がついたことが一番大きなところで、これが、いわゆる境界線を越えて双方で共同開発をしていけるという可能性をこの中に秘めておりまして、これが共同プレス発表の中で出したところであります。

 これまでもこれは両国の局長だけで七回ぐらい会談をしていると思いますが、今後さらにこれはやっていかないかぬところだと思いますが、長引いても余りいいことはありませんので、なるべく迅速な対応を、この秋ぐらいまで目指してやりたいなというふうに考えておるのが今の現状であります。

 どういう変化が起きたかといえば、その言葉が入ったというところが大きな、大きいとは申しませんが、変化だと存じます。

渡辺(周)委員 確認ですけれども、今大臣がおっしゃられたこの秋までというのは、この秋には共同開発について何らかの結論が出るということでよろしいんでしょうか。それとも、今言及されましたけれども、この問題に必ず出てくるこの境界線の画定については、いわゆる大陸棚が沖縄トラフまでずっと続いているんだという中国側の主張と、我々はやはりいわゆる国際的な海洋法条約に基づいていけば二百海里ずつの境界線で線を引くんだという、全くこれまでも双方の主張に隔たりがあるんですけれども、この問題をちょっと先送りして、とりあえず共同開発をするということになるのか、その点についての結論がこの秋というふうにおっしゃったのかどうか、ちょっとその確認をさせていただきたいと思います。

麻生国務大臣 この秋を目指して、中国側の首脳、こっち側の首脳、両首脳に対して、こういうことになったという結論を報告できるまでにしたい。少なくとも、工事が着工するというのはこの九月からというのまで、そこまで考えているわけではありません。それが一点目です。

 二つ目の境界線の問題につきましては、我々の主張というのは、例のもめている、ちょうどそこですので、そこの線を私どもとしては大陸棚の線に譲るつもりもありません。私どもとしては、少なくとも今の二百海里、二百海里の例の境界線の上に立って、こうなりますけれども、私どもが言っているのは、おたくの掘っておる油田があると言われる量と、うちの量からいったら、こっちの方が多いでしょうがと。それがほぼ同じ地域という、重なっているところが確実なので、少なくとも、そっちが掘るということはこっちのものを吸い出していくことになりかねないから、それは一種の盗掘とか言われる騒ぎになりますので、少なくともこちらの方が広い、そちらの方が狭いと、あれによれば。

 そういうことになると、こちらの側と一緒に共同開発した方が利益としては双方の利益になるのではないか。一方だけでやるよりは、こっち側と一緒に組んだ方が双方利益になる。加えて、技術はどう考えても日本の方が上と思われますので、コストも安くなるのではありませんか等々、いろいろな話をして、双方で共同開発するというのが落ちつけるところかなというのが私どもの言っている言い分であります。

渡辺(周)委員 この日中の共同でのプレス発表がされたときに、時を同じくして、中国では、日本名白樺、中国名春暁というところに加えまして、日本名樫、中国名天外天、これはガス生産を開始したというふうに発表された。そして、個々の企業の具体的な活動状況は把握していないけれども、主権に基づく正当な活動だということを、四月の十二日には中国の北京での定例記者会見で実は中国の方では発表をしているということでございました。

 片っ方では共同開発でやって、これから我が国と中国で、この東シナ海の問題については、比較的広い海域と今おっしゃいましたけれども、境界線のことも越えて、ある程度双方の利益になるようにしようじゃないかと言いながら、反面、もう既に中国では活動を始めているということですね。これは主権に基づく正当な行為だというふうに言っているわけですね。

 それを考えますと、いわゆる今回の共同プレス発表に、相互主義の原則に基づいた共同開発、あるいは今回何度も使われた互恵という言葉、果たしてこれは中国のしたたかな戦略の上に、既に中国は進めている、日本と協議をしながらも、だけれども既得権益化をどんどん中国はしていくということではないのかな、その言葉の裏腹には、やっていることがダブルスタンダードではないかと私は思うわけであります。だとすれば、この中国による開発ということをある程度休止させるということがこれからの協議の上においては先決ではないかというふうに思うわけでありますけれども、その点について、大臣、いかがお考えですか。

麻生国務大臣 今御指摘のありました四月の十二日のいわゆる外交部報道官の話で、これは記者会見になっておりますが、日本側と争いのない海域で行っている、それから、中国の主権的権利を行使する正常な活動である旨述べておりますというのが、御指摘のとおりなんですが、私どもとしては中国側の立場を受け入れることはできません。

 したがいまして、日本側として、日本の調査によれば、この油田は、その構造が中間線の日本側まで継続している可能性が大ということを確認、第二に、我が方はこの油田の日中間の境界画定まで係争となっている海域に位置しているとの立場であります。

 したがって、以上の立場を踏まえて、今回のこの中国の海洋石油総公司のホームページ上におきまして生産中とされていることに関して、おかしいじゃないかということで、この文については翌日からホームページ上から落ちたというところまでは来ております。その後は、今我々の方が申し込んでいるというのが現状であります。

渡辺(周)委員 ホームページから消されたことは余り重大な問題じゃなくて、実際問題としてそれが続けられているのかどうかということは、やはり外交ルートで、政府間協議でこれは決着をつけなきゃいけないと思うんです。つまり、今係争中であるエリアにおいて、これからいろいろその問題についても協議をしていこうではないかということがハイレベルで決まっているのに、結果として、こっちでは、今申し上げたように、もう既に主権に基づく行為であるということで大々的に発表されている。

 実際、実態として今どうなのかということについては、外務省は今どう判断していらっしゃるんですか。そして、今後協議の上でどうするのか。今の現状と今後この問題をどうするのか。当然これは外交ルートで、政府間交渉でしかできないわけでありますので、その点につきましての現状をちょっとお聞かせいただけますか、参考人。

佐渡島政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもは、定期的に、その生産地点の視認という方法とそれから先方への照会という二つの方法をとりまして、現状の把握ということに努めております。必ずしもその結果が、一〇〇%生産が行われていないという証拠はなかなか得がたいというものはございますけれども、少なくとも、生産状況、空からの視認ということにつきましては、生産が活発に行われているという兆候はございません。

 同時に、それだけでは一〇〇%とは言えませんので、私どもは累次にわたって中国側に詳細なデータの提供ということを求めております。残念ながら、これまでは私どもの満足のいく答えは返ってきておりません。先般も、そういうことで、その局長級の協議に加えて専門家同士の会合を開いて、中国側もついに応じたわけでございますけれども、そういう協議の場を通じてデータの提供を引き続き求めていく。

 この両面から、私どもの情報を得る努力を継続していきたいと考えております。

渡辺(周)委員 もう向こうは既に生産に入っている中で、我々はまだこれから係争中のところにつきまして協議をしていかなきゃならない。もう既に後手後手において、なぜこの中国のしたたかな戦略に対して日本の打つ手打つ手はいつも本当に後手後手なのか、非常に歯がゆい気がしております。この点については、私もかつて経済産業委員会でも何度となく当時の中川昭一経済産業大臣とも議論をしましたけれども、とにかくこの日本の対応というのは歯がゆくてしようがないというふうに思うわけでございまして、これは皆様方同じ認識だろうと思います。

 ですので、この試掘権は既に付与されているけれども、実際問題として、この海に行って、では我が国の民間業者がここへ行って何かできるかといったら、相手は、当然のことながら、その背後には中国の海軍が控えているわけでございまして、いつでも平和の海が緊張の海になることは想像にかたくないところであります。

 ですので、このたび、海洋基本法それから海洋構築物に関する安全水域設置法という法律が、与野党超党派で、私も若干かかわっていましたけれども、協議をしまして、今日に至っているわけでございます。ある意味では、この試掘への環境整備についての法的根拠をつくった、法的な整備も進めたわけでありますけれども、この点につきましてはいかがお考えか。

 この試掘をするということについて、ある程度条件は整ってきたわけでありますけれども、我が国として、それならば我が国もやはり着手をしなきゃいけないんじゃないかというふうな思いがあるわけですが、その点については、外務大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 この試掘権の話は、もうこの三年ぐらいかな、かかわって、中川昭一、政調会長になられる前ですから経産大臣のときになるんだと思いますが、あの試掘につきましては、これがきちんとできるという法的なものをきちんと整えておくというのはすごく大事なところだと思いますので、不備の点はきちんとやらねばならぬと思っております。

 それから、これはたしか鉱業権者が帝国石油だと記憶しますけれども、この帝国石油、日本の場合は、これは何とか公司でやるんじゃなくて、こっちは商売でやるわけですから、そちらのところが判断をすることになるんだと思いますけれども、政府とよく協議はしてくださいねという話は当然のことといたしまして申し込んでありますが、最終的に帝国石油がぜひ試掘をやるというような話、いろいろ協議の結果、されるということになった場合は、その時点で改めてこの問題は検討しなくちゃならぬところが出てくるとは思います。

 おかげさまで法律がきちんと整備を、まだ言いたいことはいろいろおありなんだと思いますけれども、この法律が全くできていなかったことを考えると、ちょっといろいろ問題があると思っておりましたので、私どもとしても、この法律がきちんと整備をされたことによりまして対応がしやすくなりつつあるということはもう間違いない事実だと思って、こういうのが、向こうと交渉するときの、いや、日本側もちゃんと法が整備できたということになって、初めて話し合いということにもなっていくんだと思いますので、この法律は大きかったし、試掘ができるということだけは我々の、いわゆる企業の話ではありますけれども、できるというものを、決まりました場合はそれをバックアップしていくということになろうと存じます。

渡辺(周)委員 ぜひともこの問題、氷を解かす旅、ほほ笑み外交を重ねながら、実はもう中国は着々とこの既得権益の確保のために強固にしている。それで、我が国として、その微笑の裏に隠されているそのしたたかな戦略に対して、やはり我が国も毅然とした戦略を持って臨まなきゃいけない、そのことはもう認識しているでしょうけれども、ぜひとも早く、見える形で相手国に対して、中国に対してやっていただきたい、そのことを強く要望するわけでございます。

 残りの時間で別の質問に移らせていただきたいと思います。

 ことしの十二月十三日で、南京虐殺と言われる、と称される、中国が言うわけですけれども、七十年であると。それに合わせて、七十周年に合わせて反日プロパガンダ映画、特に南京をテーマにした映画が中国、アメリカ、カナダという国で十本ほどつくられるということになりました。これの原作になりましたのは、アイリス・チャンという中国系アメリカ人の亡くなった作家の書いた「レイプ・オブ・南京」という、正直言ってでっち上げの本の中がもととなってできている映画でございます。この問題が恐らくことし大きくクローズアップされてくる問題だろう。もう既に、今この南京の問題については、民間レベルでは、民間というか学者レベルで随分これは進んで、私もそうした会に出ていろいろ見せてもらいました。

 つまり、「レイプ・オブ・南京」という本の中に出てくる写真というのは、全く違う、アサヒグラフであるとか毎日新聞社が出していた上海事変の従軍記者の方が撮った写真が、そのままあたかも日本軍が当時婦女子を連行していく写真だというふうにキャプションをつけて、写真として本に載せているわけですけれども、これは実は、アサヒグラフを見ましたら、日本軍に守られて、いわゆる日の丸村という守られている村に帰る婦女子たちの帰るシーンなんだと。ところが、そこをトリミングして、後ろの綿を積んだ荷車、台車を引っ張ったおばあさんは笑っているものですから、そこのところを入れるとこれはキャプションと合わないということで、そこはトリミングしてカットされて落とされている。あるいは、鶏を買った兵士の笑顔が、これは略奪したものだということで差しかえられている。出どころはもう既に、昭和の写真の、もっと言えば、南京とは関係ないところで撮られた写真までもが、すべて南京で行ったことだということで、平気で使われているわけなんです。我々としては本当に口惜しい、悔しい話であります。

 ただ、こうした本をもとにして、アメリカの脚本家なり作家なりが読んで、これから映画づくりに着手をする。そういう意味では、これは、史実としては全く疑わしい話をさも事実のように取り上げられているわけでありますけれども、この映画が上映をされる、世界で見た人にしてみると、極東の小国である日本が八十年前にやったことを欧米の人間が理解するわけがない、その映画がすべてである、現実、事実であるというふうにして、これは非常に我が国の名誉をおとしめることになると思います。

 これは、中国のプロパガンダとどう戦争するかということはもちろんなんですけれども、誤解をする人たちに対して、どのように我が国としてちゃんと説明をし、国として主張するか、否定をするかということについて、まず国がどうお考えかということを伺うんですが、日本の外務省のホームページを見ましたら、南京の事件についてどうお考えですかといったら、非常にさらりと書いてありました。これも、本当にこんなのでいいのかなと思うぐらい、人数はわからないけれども、そういうことがあったことは事実だろうと思います云々という形で、ちょっと今資料がここにはありませんけれども、本当に数行なんですね。

 中国はあらゆる、映画を作成するに当たっても、巷間言われているのは、当然、中国側から、あるいは反日団体から資金提供も受けて、政府の協力もある中でやってきている。つまり、直接のプロパガンダというのは銃弾にまさる、これはある意味では宣伝戦争であるということを言う識者もいるわけであります。

 ところが、日本の外務省を見ますと、南京のこの問題については、「歴史問題Q&A」のクエスチョン八に、「「南京大虐殺」に対して、日本政府はどのように考えていますか。」「一 日本政府としては、日本軍の南京入城(一九三七年)後、多くの非戦闘員の殺害や略奪行為等があったことは否定できないと考えています。」「二 しかしながら、被害者の具体的な人数については諸説あり、政府としてどれが正しい数かを認定することは困難であると考えています。」「三 日本は、過去の一時期、植民地支配と侵略により、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えたことを率直に認識し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを常に心に刻みつつ、戦争を二度と繰り返さず、平和国家としての道を歩んでいく決意です。」たったの七行しか書いていない。

 これが日本の外務省の、「歴史問題Q&A」とホームページに出てくる、これが見解なのかなと思いますが、やはり、この問題について、史実として認められること、認められないことについては日本としての見解をちゃんと出すべきだし、また、それを世界に向かって私たちは発信しなきゃいけないと思うんですけれども、外務省、いかがですか、外務大臣。

麻生国務大臣 南京事件、いわゆる南京事件というのが正確だと存じますが、このいわゆる南京事件というものにつきましては、今例に出されました、アイリス・チャンの書きました「レイプ・オブ・南京」という話につきましては、いわゆる歴史家の間でも、不正確な記述が多数存在し、歴史書としての信憑性に乏しいという評価があることは私どもも承知をいたしております。

 少なくとも、この種の話に関しまして、今までもこの話につきましては、双方の意見の違いというのはもうずっとこれまで指摘されてきておりましたが、まず今、人数の、三十万人等々の話がありますが、私どもとしては、当時の南京の大きさは大体今の世田谷区ぐらいの話で、人口が何十万あったかというところで三十万というのは現実的にはいかがなものかということで、渡辺先生、少なくともこの一年間ぐらい、三十という数字が中国側から出ることはなくなりましたですね。

 やはりこの種の話は、伝聞に基づいた話、情報というのは幾らでも、どうにでもなりますので、その当時の世界じゅうの新聞に何と書いてあったかという史実を全部洗い出さないかぬということが最も正しいんだと思っております。

 今回の日中歴史共同研究のグループの中でも、この問題等々を含めて、双方の意見の違いというのをただしていかないかぬところだと思いますので、歴史認識が一致するというのはなかなか難しいんだと思いますが、少なくとも、乖離している部分の間を狭めるという努力は、私どもとして今後していかねばならぬと思っております。

 そういった意味では、この問題というものは、私らは基本的には、事実とかなり違っておるのではないか、また極東軍事裁判等々いろいろな資料がありますので、そういったものに基づいて、きちんとした対応をしておかねばならぬ。一方的なプロパガンダ、また宣伝戦、情報等々の話によって私どもの話が不必要におとしめられるというのは、これは断固戦わねばならぬところだと思っております。

渡辺(周)委員 今、断固戦わねばならぬという御発言をいただきまして、まさにそのとおりなんですね。いずれ、この三十万という数字は出てこなくても、しかし、虐殺というものはあったではないか、人数ではないんだというふうに、必ず論理が変わっていくわけでございます。

 実際、確かにそこで便衣兵、ゲリラ兵を処刑したということも事実として当然あったでしょうし、実際問題として、さまざま、戦時中の話でありますから、それが、変な言い方ですけれども、正当な処刑という言葉はちょっと語弊がありますけれども、いわゆるハーグ陸戦法規に基づいた中での、これは戦場における行為としてはやむを得ない措置であったということも当然出てくるわけであります。ただ、それを理解するのは近代人にとってはなかなか難しいんですけれども。

 問題は、こうしたことが、論理をすりかえながら、恐らく日本をおとしめるためにさまざまなプロパガンダが使われるということで、日本として戦うと言われますけれども、具体的にどう戦うかということについて一つ聞きたいと思うんです。

 今度は、いわゆる南京虐殺記念館、中国、南京にありますこの記念館が世界遺産になるのではないか。中国側の中で世界遺産にするという動きがあるわけですけれども、果たして、この記念館の展示物も、かなり今我々が、日本で学術界の方々が研究されているように、全く違う写真が平気で、虐殺の証拠だ、あるいは日本軍が南京でやった事実であるという形で展示されているんですけれども、この展示の内容については、日本政府は把握しているのかどうなのか。

 そしてまた、これを世界遺産として申請をしようということが一部中国紙で報道されていて、そのために拡張をしているのだということもありますけれども、その点については外務省はどう認識していますか、把握していますか。

麻生国務大臣 御指摘の記念館というのは、これは二つ例のある話で、両方の話だと存じますけれども、少なくとも、これを世界遺産というものにしようという話があるという報道は確かに承知をいたしておりますが、世界遺産をやるためには、各国別、希望の一覧表を出さないかぬ。その中には、今現在ですよ、今現在載っていないということだけは確認をいたしております。

 それから、拡張中でありますので、工事中でありますので、今これはあいておりませんで、どういう目的でどういう程度のものをつくろうとしているかは私ども内容をつまびらかにしておりませんけれども、今、展示内容というものに問題があるのではないかという御指摘でしたので、展示内容に問題があったときには、これまで累次にわたって、最近でも、二〇〇五年の八月十五日に、これは侵華日軍南京大虐殺史実展というのに、私どもの大使館員から送って、使われた写真パネルが違うじゃないかという等々の話を含めまして、いろいろなものに対して、これまでも我々としての抗議を申し込んでおりますし、意見というものを開示いたしております。

 それから、最近、私の前の町村大臣のときも同じように、トウカセンとの会談の中において、あの抗日記念館の中には日中友好に資するものがあるかどうかわからぬという話も言っておるところでもありますので、今後ともこういったようなことは引き続きやっていかねばならぬと思っております。

 今言われましたように、渡辺先生、歴史というのはなかなか一致しないものだというのはもう御存じのとおりです。過日もコンディ・ライスという人と話をしたことがあるんですが、少なくとも、彼女の生まれたアラバマ初め南部の通称デキシーと言われるところの学校の同じアメリカの教科書を読みましても、アメリカの南北戦争、北の方ですとシビルウオーと書いてありますけれども、南の方の教科書を読むと、ノーザンインベージョン、北部の侵略と書いてあって、同じ国家の中でもなかなか歴史認識は一致しないというのがよくある話でもあります。

 しかし、それはそれとして、こちら側の意見として、そこそこの違いならともかく、一方的にこちらの方がという話になりますと、これは少し話が違うし、ましてや国が違うとなっておりますので、いろいろ意見が違うというのは当然のこととは思っても、現実として全く違う話であるなら、これは全く違うということは断固主張すべき、当たり前の話だ、私もそう思います。

渡辺(周)委員 その断固違うという意見、意思をどういうふうに伝えるか、もっと言えば世界にどうアピールするかということだと思うんです。その点については後ほどお答えいただきたいと思います。

 今申し上げたいわゆる南京虐殺の記念館、二・二ヘクタールをことし十二月十三日の落成を目指して、約七十億円、五億四千万元を投じて七・四ヘクタールの大きなものにする。これは多分、中国国内では、実は世界遺産の登録については、その条件の中で面積基準があって、五・三三ヘクタールを超えていないと世界遺産になれない。そんなことあるのかな、面積で決まるものかなと思いますが、中国側ではそれをそう言って拡張しているわけです。

 きょう文化庁に来ていただきましたので、あるいは外務省の広報文化交流部に来ていただきましたので、実際、世界遺産に対してこういう面積基準のようなものがあるのか、もし中国側から本当に申請が出た場合、たとえ面積をクリアしたにせよ、南京虐殺記念館がなるのか。ユネスコには、日本の事務側、松浦さんが事務局長、それから大勢の日本人職員がいるわけでありますけれども、もし申請があった場合、該当するのかどうか。その点はどうなっているんですか。中国側の主張というのは当を得ているんでしょうか。

土屋政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、先生から御指摘ございました世界文化遺産登録の可否に当たっての面積の問題でございますが、ユネスコ世界遺産委員会におきましては、世界文化遺産の登録に必要な要件として、構成資産となる建造物あるいは敷地の面積に関する定量的な基準は設けていないというように承知しております。

 それから、世界遺産のいわゆる基準でございますが、顕著な普遍的価値を有すること、また真正性、完全性の条件を満たすこと、また資産の保護がきちっとできる体制ができ上がっていることということでございまして、これは個々に具体的に判断されるというふうに承知してございます。

渡辺(周)委員 そうしますと、これはちょっと古いんです、二〇〇四年の三月十三日のピープルズ・デーリー・オンライン、中国の人民網というんでしょうか、中国プレスの日本語版を見ますと、記念館の朱成山館長は、申請は時期尚早だというふうな見方を示したと。

 「「記念館は現在のところ、世界遺産への申請の条件をまだ満たしていない」と説明する。」「ユネスコは世界文化遺産への登録条件として、「敷地面積は五・三三ヘクタール以上」の項目を設けている。」だから、これをクリアするには拡張しなきゃいけないんだということをその中国のプレスは言っているわけですけれども、これについては、今のお話では、まず面積による最低基準というものはない。そうすると、この中国のプレスで書いてあることは誤りである、あるいはこの朱さんという館長の認識が恐らく違っているのかなというふうに思うわけです。

 もう一つ、たしか、私がちょっと調べたところでは、世界遺産に登録されるという条件の中には、そこに事実性というものが入っていますね。つまり、これがないものは、当然、申請しても恐らくはねられるだろうということでもございますけれども、そういう認識でよろしいでしょうか。

土屋政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、世界遺産の要件の中に真正性というのがございまして、これは、当該資産の価値がいろいろな属性におきまして真実であり、また信用性があるということが満たされる場合というふうになってございます。

渡辺(周)委員 としますと、先ほどから議論をしている、いわゆる虐殺記念館の中の展示物は非常に事実ではないものがあるということは、私の認識でありますし、外務省、外務大臣もそういう認識を持っている。となりますと、この記念館自体が非常にプロパガンダ用につくられたものでありますし、これはとてもではないけれども、今の現状では、世界遺産にたとえ申請することがあっても恐らく登録されることはないだろうと私は思うんですが、外務大臣、御所見はいかがでございますか。それが一つ。

 それから、なぜ我々がこれの対応を急がなきゃいけないかというのは、先ほどサミットの質問のときに出てきました北京オリンピック、それからその後の上海万博、エキスポがありまして、中国に世界じゅうから大勢の方が多分来られるんですね。そのときに、この拡張されたいわゆる南京大虐殺記念館に大勢の外国人の方が、全く歴史を知らない人たちが来る。

 私も、どこかの国に行ったときに、ホロコーストの記念館というのがありまして、そういう施設がアメリカ等へ行くとありますけれども、行くとやはり大変なショックを受けるわけでありまして、これは当然、これから北京五輪や上海エキスポで大勢の方々が世界じゅうから訪れる。そして南京に行って、ツアーの中で、例えば、エクスカーションといいましょうか、遠足で出ていってそこに行ったら、何と日本はひどいことをしたんだ、これだけのことをしていたのかということがまさに刷り込まれてしまうものですから、我々はとにかく対応を急がなきゃいけないと思っています。

 外務大臣、先ほど、ユネスコ登録の正当性と、今後のこの問題に対して日本の政府として本当にどうするのか。ほっておいたらいずれ問題はやり過ごされて解決をする、あるいは、しばらく我慢していればいずれ風はやむさなんて思っていると、事実ではないことがどんどん積み重なっていってしまうんですね。それを後から、そうではありません、こうではありませんと言っても遅いんですけれども、その点について今そういう危機感を持っていらっしゃらないのかどうか、外務大臣の御所見を伺います。

麻生国務大臣 ユネスコの世界遺産登録につきましては、先ほど役所の方から答えたとおりなので、ちょっと常識的には考えられぬと思っております。少なくとも真実という話になりますので、そういった意味では、片っ方で一方的に言われたPRを世界遺産に登録するというのは常識的には考えられぬと思っております。

 また二つ目には、今こういった話を、これはもうきちんと、政治家レベルの話になると、双方でやはり国内事情をそれぞれ抱えているから話がどうしても感情的にならざるを得ない部分もありますし、事実を事実としてきちんと視認したり確認しないまま一方的な話をするというのもいかがなものかというので、日中歴史共同研究というのをスタートさせていただくことになって、今、北岡それから山内両先生等々にお願いをしてやらせていただいておるところなんです。こういったものをきちんと積み重ねていくというのはすごく大事なことだ、私どももそう思って、双方の意見が丸々一致するとは考えておりませんけれども、そういった対応は、政治家に一方的に任せるだけでなく、きちんとした事実認識という点からいったら、学者等々の話はすごく大事だと思います。

 もう一点は、先生、先ほど言いました便衣隊という言葉は多分若い人には全然通じない言葉だと思いますけれども、便衣隊というのは、まあ早い話が、軍人が私服に着がえて紛れ込んでいるという意味で、まあゲリラみたいな意味に、今風に言えばゲリラ、もうちょっと組織立ったものだというぐあいに考えればいいんでしょうけれども、南京を開城した蒋介石が撤退していくときに使った手法なんです。これは明らかに、話をさらに混乱させた大きな理由の一つだったことは歴史上明らかにされておりますので、この便衣隊に対する対応等々が一方的に利用されるというのは、我々としてはきちんと抗議をすべき大事なところだと存じます。

渡辺(周)委員 抗議をすべきはもちろんですが、でも、それは発表して、発信しなきゃいけないですよ。とにかく、さっきの外務省のホームページじゃないですけれども、学術研究者の方を集めて共同研究をやっても、恐らく両論併記になって溝が埋まらない。そうなれば、結局両論併記になって結論を導けないんだったら、その時間を待つよりも、日本として、今こういう主張があるということ、これは事実として認められないんだ、あるいは、この写真は実はこういうものが出典であって、これが使い回されている写真だからこの写真は否定する。やはりはっきりと、あったことはあったと認めるけれども、なかったことまで、なぜこれが真実のように語られているのかといって、正式に、僕は世界じゅうに向かって発信しなきゃいけないと思うんです。政治家同士で抗議したって、聞いただけで終わっちゃいますから。

 それについては、残念ながら明確なお答えをいただけていないんですけれども、もう一つだけ質問して、長島さんに移ります。

 南京問題がことし大きな政治問題でありますが、いわゆる従軍慰安婦の問題、これは訪米前に、総理大臣、心から同情するということを言っていますので、その人たちの身の上については私たちも同情を禁じ得ません。だれも好きこのんでこんな商売、仕事をする人はいなかっただろう、その人たちの女性としての人生にとって非常に気の毒なことであったということは、もちろん私どもも同じ思いです。

 問題は、アメリカ議会においてさまざまな議論がされております。こうした中で、我々は、そのもとになっているのが河野談話であり、これまでの日本の中では信憑性を疑われる吉田清治なる人物の著書であったりするわけですけれども、慰安婦については、いつも主語が欠けているんです。いわゆる、銃剣で駆り立てて、女性を強制的に家からつつき出して、おまえ、慰安婦になれということはなかった。しかし、実際、戦場において慰安所を設けるに当たっては、当然、軍の管理なり軍の関与なりがあって当たり前だ。

 その問題について、狭義だとか広義だとか言うものですから、アメリカ人にわかるのかな。広義の強制と狭義の強制の話をしても、これは非常に難しい、日本人でも特にわからないと思うんです。

 だから、これはもう一回整理をして、日本として、慰安婦制度というものはあったし、そういう業者が慰安婦を募集して軍の関係者のところに実際そういうものを設けていた。それに対しては、例えば、いわゆる性病検査のようなことは軍がやったし、そのときは軍票が発行されていたという事実で認められているものは出せばいいし、ただ、言われているような済州島で強制的に連れ出したというのは、あれは吉田清治なる人物が書いた捏造の話である。これは中国の記者ですら否定をしているんだ。

 そのことを、もう少し日本としてちゃんとしないと、すべてがなかったとは言わないけれども、これはあったけれどもこれはないみたいな、狭義と広義なんと言っているとわけがわかりませんので、ぜひ、これについては、アメリカの人間にも、議会関係者にもわかるように、ちゃんとした資料、アメリカの議会で資料を出されたのを私も日本語で読みましたけれども、この問題について、ちゃんとやはり日本は出さなきゃいけない。

 いわゆる、下院で証言をした人たち、元慰安婦とされる人たちに対して反論をする機会もなかった。中立的な立場で述べる人もいなかった。つまり、初めから結論ありきの公聴会であったというのはもう御存じのとおりだと思います。

 この問題について、南京と同じように、日本は認めるところは認める。日本人というのは、もう潔くて、ちゃんとそういうこと、あったことはあったと言うし、あったことまでなかったと言うことはない国民性だと思っています。ただ、なかったことまで、不名誉なぬれぎぬを着せられて一生歴史の負の遺産として言われ続けることに関しては、これを我々としてやはり許すことはできない。

 その点において、外務省、外務大臣、どういうふうにこの問題についても、ある意味では、河野談話ではなく政府の見解として、河野談話、私はあれは政治的な打算のものだということは、石原信雄元副長官にもお会いをしてきまして、あれは事実関係のものではなくて外交的な判断によるものだったということはもう言われているわけであります。

 だとすれば、談話などというあいまいなものではなくて、政府として、ここまでは調べがついている史実です、しかし、ここについては全く証明するものはないんです、これについては現状ではないと言わざるを得ないということを、これは談話などという形ではなくて政府の見解として、ある意味では、河野談話が出てからかれこれもう十四年たつわけですので、あえてその後で出てきた事実も含めて、何らかの政府の見解というものをどこかで発表しなきゃいけないと思いますけれども、外務大臣、その辺はどうお考えでしょうか。

麻生国務大臣 渡辺先生、政府の基本的立場というものは、繰り返し申し上げておるとおり、平成五年の河野官房長官談話を継承するというものに関しましては、今の政府の立場としては変わりありませんし、辛酸をなめられた方々に対して同情し、おわびを申し上げるというものであります。

 したがって、この種の話で、今すぐこれに対してという話をきちんと言うわけではありませんが、先ほど言われましたように、従軍という言葉が使われておりましたり、これは従軍と少し違うんじゃないか、したがって、いわゆる従軍慰安婦という言葉にかえたり、いろいろ努力はなされているんだと思いますが、少なくとも、きちんとした事実というものに手間暇かけて時間をかけてやらないと、おっしゃるように、狭義の広義のと言っていると、話をさらに弁解がましくとられるのは私らとしては甚だ心外でもありますので、きちんとしたものにすべきだという御意見は傾聴に値すると存じます。

渡辺(周)委員 残念ながら言い尽くせませんでしたけれども、これもぜひまた質問したいと思います。

 終わります。

山口委員長 次に、長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。

 きょうは、外務大臣、参議院の方に行かれるということで、もう時間がないということなので、もう十分少々になりましたが、端的に伺いたいのは、先日、先月ですけれども、私、本会議で代表質問に立たせていただいて、米軍再編の問題で、ちょっと与野党不正常だったので事前に質問内容がうまく渡っておらずに、大臣もその場で、もう少し詳しくお話をしたいという御見解だったので、改めてきょうこの機会に伺いたいと思っているんですが、ぜひ、政治家麻生太郎という立場で御答弁いただきたいと思っておるんです。

 米軍再編については、この前衆議院を法案が通過いたしました。いろいろ批判もあるし、足りないところももちろんあると思うんですが、私は、お金の問題、二チョウ、三チョウ、豆腐じゃないんですから、お金の問題ではないと思っていまして、ただ、日本の政府としての姿勢が本当にあれでよかったんだろうかというふうな思いがずっとありました。

 あえて、五二年の四月二十六日に、二日後にサンフランシスコ講和条約が発効して独立を回復するわけですけれども、その二日前に、当時のリッジウェー極東軍司令官が、「独立する日本国民諸君へ」という祝福のメッセージを発表して、その中に、駐留というのは、日本が固有の自衛権を行使するための有効な手段を持たぬ期間、日本を防衛するための暫定的な取り決めだ、自己を防衛する力ができたと自信を持つようなときが来れば、駐留軍は撤退することも期待できるわけである、私はその日が余り遠くないことを望んでいる、こういうメッセージを発して、六十年たってしまった。こういうことなんですけれども、しかし、今の状況というのは、沖縄のことはもちろんでありますけれども、米軍の施設がある種全国に散在をしている。

 こういう状況の中で、米軍再編というある意味大規模に米軍の基地を見直していく、世界的な規模で、日本の基地ももちろんそうだ、こういう時期をとらえて、もう少し日本として、戦後のこれだけ積み残されたものを何とか整理するいいチャンスだったんじゃないかということを私はずっと思っていたんです。

 恐らく、大臣としては、もう既に米軍再編のプロセスが始まったところに外務大臣になられましたので、そこから一からやり直すなんということはもちろん無理だと思いますけれども、もし大臣がもう一回こういうチャンスが来たときに、今申し上げたような観点から、どんな姿勢でこういう米軍再編をとらえて、戦後を終わらせる、そういう立場でやろうとなさっておられるのか。私は、大臣は多少じくじたる思いをお持ちになって今回の再編のプロセスを見詰めておられたんだろうというふうに信じているんですけれども、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 ジェネラル・リッジウェーの昭和二十七年のころの状況というのは、御存じのように朝鮮事変等々の時代でもあります。それからかれこれ五十何年間がたったことになるんです。

 先生、今何となく、一九九〇年をもって、当時のいわゆる朝鮮事変勃発のときは米ソ対立が非常に顕著になった時代、今はそれが終えんして二極が崩壊した時代、時代背景が大きく変わったというのは事実だと存じます。ただ、我々のおりますこの北東アジアと言われるところにおいては、台湾海峡、朝鮮半島、いずれも情勢は極めて不安定、安定しているとは言いがたい状況にあるという中にあって、日本は地理的にそこに位置しておりますので、日本という国の安全というものをきちんとしていくためには、しかるべく日本としての国防力、防衛力を確立しておく必要がある。

 そのときに、日本という国は、アメリカという世界最大の抑止力、国防力というか、軍事力を持った国と同盟関係、日本が軍事同盟というか、こういった同盟を結んでいるのはアメリカだけなんですが、この同盟をきちんとしていることによって、日本という国の安全が保障されている、いわゆる抑止力がきちんときいているということなんだと思います。

 そのときに、問題は二つだと思いますが、一つは、金の面だけじゃないとおっしゃいましたように、同盟関係を切って自主防衛ということに踏み切ったときに、かかるコスト、そしてそれによって他国が日本という国をくみしやすいと見るのか、さらに独立がきちんとされたと理解するのかという相手側の感情も含めまして、その点が一点。

 もう一点は、我々、民主党を支持する方も、自民党を支持する方も、そういったものに関して、日米安全保障条約の内容を変えて、日本が自主独立という方向を歩んだ方がいいという方の意見の方が強くなるのか、そこのところがいま一つ私にはよく見えていないというのが正直なところです。

 したがいまして、今のこの段階でどちらということになりますと、なかなかその判断が私自身としてもできかねているというのが今の現状におきます私の心境です。

長島(昭)委員 少なくとも民主党は、山口筆頭を初め、日米同盟関係についてはイエス、まさにこれを基盤にして日本外交を進めていくべきだ、こういうことが大勢でございますので、若干例外もいるかもしれませんが、そういう意味では、世界最大の同盟国アメリカと一緒にやっていく、これは全く揺るがない事実でございますので、また引き続きこの問題については大臣と意見を闘わせていきたいというふうに思います。どうぞ、あとは岩屋副大臣とさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 もう一言伺いたいところだったんですが、水が入ってしまいました。岩屋副大臣、引き続きこの問題をやらせていただいてよろしいでしょうか。

 私は、同盟を切って米軍をたたき出して自前でやろう、こんなおめでたい話をしようと思っているわけではもちろんありません。ですが、同盟関係をきちっとマネージしながら、しかし仮にアメリカの兵力が日本周辺にだぶついているとしたら、その部分については、もうグアムでもハワイでも本国でも結構ですからお引き取りいただいていいですよ、あとは私どもできちんとやりますよという体制が築ければ、これはまさにリッジウェー司令官がおっしゃったことの趣旨だと思うんですね。そういう体制を日本も自助努力を中心としてやっていくんだ。

 しかし、もちろん核の傘の問題とか、厳密に言うと少し残る部分が当然あるんですけれども、その部分の努力が、実は、憲法上の制約という言われ方をずっとしてきましたけれども、厳密に言うとそんなことはないと私は思いますが、そういう言われ方で今までなおざりにされてきた。それで、何となくお金を払って、あるいは基地の負担を自治体の皆さんにお願いして、基地を置いておくことによって事足れりという形で来てしまった惰性が今日の状況に至っているんじゃないか、そういう思いを持っているんです。

 ですから、もちろんそれは我々から問題提起し続けなきゃいけないことですけれども、たまたま今回は、何十年かに一度あるかないかというぐらいの規模で米軍を再編しましょう、ある意味で米軍としては、テクノロジーの進化とか、いろいろな要素を踏まえて大胆に見直そうという、当時、ラムズフェルド国防長官がイニシアチブをとっていましたけれども、そういうチャンスがめぐってきたんだから、そこに我々の自助努力も含めて協議に臨めばもう少し違った結論が得られたのではないだろうか、こういう思いがあるんですけれども、その点について、副大臣としていかがでしょうか。

    〔委員長退席、やまぎわ委員長代理着席〕

岩屋副大臣 大臣が参議院に行きまして、私で大変恐縮ですが、私は、この間の本会議での先生の質問に非常に感銘を受けました。福沢諭吉先生のお話をされましたが、大分県中津市は福沢先生の出身地でございまして、私の選挙区でございまして、私も福沢先生をこよなく尊敬しておりますが、独立の気概なき者は国を思うこと深切ならず、有名な言葉を先生は引かれましたが、私も基本的に同じ考え方に立っている、その前提でお答えしたいと思います。

 先ほど大臣もおっしゃいましたが、ある意味ではようやくここまで来たんじゃないかという気がするわけですね。最初の日本国憲法というのは、明らかに武装解除というのを前提にしたものだったと思います。とはいえ、自分の国は自分で守らなきゃいかぬ、自然的な自衛権はあるはずだということで自衛隊が誕生し、安保とのセットで来たわけでございまして、ここ数年になりまして、有事法制とか周辺事態とかガイドラインとかいろいろなものができて、ようやくここまで来たというところだったと思います。

 先生がおっしゃるように、もうちょっと日本側で踏み込んで、同盟関係をある意味ではかなり大きく変質させるべきではなかったかというのは、将来の課題としてはそうではないかなと私も思いますけれども、大臣がおっしゃったように、日本の周辺の安全保障環境、それから米軍の持っている抑止力を果たして本当に我が方で代替できるか、その決意があるか、果たしてそれは国民のコンセンサスを得られるか、いろいろなことを考えますと、この段階においては、ぎりぎりいっぱいのことを今回の米軍再編でやろうとした、その努力をしたというふうに御理解をいただければありがたいと思います。

長島(昭)委員 さすが岩屋副大臣の御答弁、本当に私も感銘を受けました。というのは、やはりこういう議論を次の課題に向けてぜひこの委員会でもやっていきたいし、安全保障委員会でもやっていかなきゃいけない。今までは、何となく神学論争に近い議論で、守るも攻めるも意外と気楽にやっていたというところがあると思うんですけれども、これからは、やはり与野党の議論も、白か黒かみたいな話ではなくて、負担とリスクとコストをどうアメリカとの間で適正に配分、共有し合うかという、そしてその中で、国民の皆さんに説明をしながら、こういう基地負担をし続けることを是とされるのか、それともリスクの部分についても我々が踏み込むとこういう負担がなくなる、こういう説明もきちんとしながらやっていく時代を迎えたし、これからなお一層こういう議論をしていきたい、こういうふうに思うんです。

 その点で、今ガイドラインのお話をしていただきましたけれども、やはりガイドラインのブレークスルーというのはかなり大きなものがあって、有事来援でアメリカが来たときに、民間の港湾とか飛行場とか、こういうものをある程度使えるようにする。あるいは、その後の有事法制を整備しながら、そういう米軍が、あるいは米軍と一緒になって戦う自衛隊とが円滑に活動できるような、そういう基盤を整備しましたので、私はそのことも踏まえて、例えば、グアムに司令部が今度移動しますけれども、実戦部隊が仮にグアムに移動しても、その間の高速輸送システムについては我が国が責任を持つ、有事来援のときにはきちんと即応できるような態勢をとれますよとか、あるいは、ヨーロッパではポンカスといって、装備を事前集積させている。沖縄についても、事前集積を日本側が、ある種メンテナンスも含めて責任を持ちますから、兵員の皆さんについてはお引き取りいただいて結構ですとか、そういういろいろな工夫の仕方が見えてくるんだろう、こう思いますので、これは引き続き岩屋副大臣と議論を深めていきたい、こういうふうに思います。

 一応、この米軍再編についてはここで終わりにしたいと思いますが、あと、きょう考えていたテーマは六者協議とイラク、二つありまして、六者協議を先にやりたいと思います。

 鳴り物入りで二月に、二・一三合意なんて呼ばれていますけれども、今度こそアメリカも本腰を入れて北朝鮮の核開発をとめる、こういうことで六者合意がなされて、三十日間、六十日間ときちんと期限を切って、そして何をそれまでに履行するかということを決めて始まったわけですけれども、カウントダウンが終わって四月十六日、つまり六十日が過ぎたんですが、何事も起こっていない。こういう状況で、はっきり言えば、初期段階の措置というのは全く進んでいない。つまり、北朝鮮側は、六者のこの合意によって寧辺の核施設を停止して、そして封印をする、そしてIAEAの要員の復帰をし、そしてすべての核計画の一覧表について協議をする、これは全く不履行だ、約束不履行、こういう状況になったわけですけれども、これについて、今のところ何もする気配がない。

 日本としては、それとは別の独自制裁の延長を決めました。しかし、この核問題についての先方の約束不履行について、アメリカも含めて何らの措置も行われない。この状況は、ある種、逆に言うと、足元を見られるというか、適当にやっても何事もないなということであれば、これはまたさらにずるずる行く可能性があるんですが、これは日本政府として、今度アメリカとの首脳会談を控えているわけですけれども、今どんな見解と見通しを持っておられるのか、御答弁いただきたいと思います。

岩屋副大臣 これは、先生御承知のように、本当はBDAの話というのは六者協議とはちょっと別の話だと大臣もいつもおっしゃっておられますが、しかし、実際問題としてはそのBDAの問題でひっかかってしまっているということだと思います。

 我々としては、非常にそれは遺憾に思っておりまして、本来、さきの二・一三で決まったことについてはしっかりと初期段階の措置を履行してもらいたい、すべきだという立場で一貫して関係各国と連携をとらせていただいているところでございます。

 BDAの話は、アメリカ側の措置はもう済んだ、だから、北朝鮮はBDAからお引き出しになることについてはそれ以上深追いはしないという状態に今あるんだと思いますが、北朝鮮は、もうとにかくそのことに執拗に、この問題がクリアされなければということで、動かないということになっておりますので、できるだけ早く、中国を初め関係国の助力も得て、この問題が解決をすれば直ちにでも六者会合を再開して、初期段階の措置を北朝鮮にとってもらうべく努力を続けていきたいというふうに思っております。

長島(昭)委員 BDAの問題については、アメリカは大分譲歩したと思いますよ。資金凍結を解除するのみならず、資金を返還する。二千五百万ドルですから、松坂の契約金に比べると四分の一とか三分の一とか、こういうことであるわけですが、しかし、向こうはそれは金正日総書記のある種自由に使えるポケットマネーだったらしいですから、かなりこだわっていることは間違いない。

 しかし、同時に、マネーロンダリングに関与したということで、BDAとアメリカの国内の銀行取引停止ということを発表していますから、そういう意味では、世界的波及の効果を考えると、アメリカの金融制裁はいまだに厳然として続いている、私はこういうふうに見ております。

 それにしても、初期段階に入れずにいることについて、今副大臣は、遺憾に思っておられる、それから、中国を初め関係国とそちらの方へ、初期段階を履行するように促していく、こうおっしゃったんですが、ちょっとそのてこが弱いような気がするんです、はっきり申し上げて。初期段階ですからね。これから無力化して、そして廃絶まで、こう行かないと、朝鮮半島の核非核化プロセスというのは完了しない。しかも、本当にその核廃絶まで行けるかどうかというのは、先軍政治ですから、軍が持っている核の管理を本当に金正日総書記ですら手を突っ込めるかどうか、これもある種本当かねという専門家の議論もあるぐらいですから、その前の段階で、こんなところでまごついているということは、私は先が思いやられる、はっきり言って。

 ですから、ここで少してこの方を、つまり対話と圧力というのであれば、ちょっと圧力の方をきかせていくような努力を日本政府として、独自制裁とは別に、アメリカや中国も巻き込んで、そういう準備がおありなのかどうか、御答弁いただきたいと思います。

岩屋副大臣 もうすぐ安倍総理が訪米をされるわけでございますが、総理も、北朝鮮が約束を守っていく、また北朝鮮に約束を守らせるためにはどうすべきかということについても率直に大統領とお話をしたいというふうに言っておられます。

 ある意味では、北朝鮮からすると、関係国の分断、特に日米の分断というのが一つのねらいでもあろうかなと思いますので、やはり日米の連携がしっかりできている、非常にそこは強固だということをまずきちんとするということが今後の交渉において極めて大事だと思いますので、総理がどのようにお話をされてどういう形になるのかについては、まだ予断を持って申し上げるわけにいきませんが、まずは総理が訪米の中でブッシュ大統領としっかりその点をお話しされるというふうに私どもは思っております。

長島(昭)委員 そういう意味では、今度の首脳会談は非常に重要だと思います。アメリカ側も、ボルトンさんとかデビッド・アッシャーとか、ある種強硬派の人たちが政権から離れていった。それから、寛容派の人、北朝鮮ともある種協議をしていくんだ、そういう人たちが今中心になって進めているんだろうと思いますけれども、余り足元を見られるような交渉はできないし、こちらはある種、拉致という問題がありますので、これを一つのてこにして、日本はあくまで厳格審査でいくんだ、中国や韓国は太陽政策、我々はもう少し厳格政策、この辺のところをきちんと、ぜひアメリカと詰めてこられるように外務省の方からも官邸の方に言っていただきたい、こう思います。

 それと、もう一つ私が気になっているのはミサイルです。もちろん核も問題ですよ。アメリカも核については拡散させないとはっきりした決意を持っていると思いますが、日本にとってやはり喫緊の課題は、ノドンの二百基とも言われているミサイルに対する抑止力をどうしていくか、こういうことになるんだと思うんですね。あるいは、そのミサイル自体を削減させる努力をどうやって進めていくか、この辺については余り語られないんですよ。

 六者協議でも、拉致と核、核と拉致というのはよく話題に出るんですけれども、実は、核が搭載されようがされまいが、あのどでかい物体が日本に向かって飛んでくるということ自体が日本にとっては非常に脅威でありますので、ミサイルの問題をどう解決しようとされているか、これは副大臣でも結構でございますが、御答弁いただきたいと思います。

岩屋副大臣 必要であれば事務方から補足させますが、もちろんミサイルというのは、先生おっしゃるように、核の問題があろうがなかろうが、我が国にとって重大な脅威でございまして、それがために我が方もミサイル防衛という措置をこれからとろうとしているわけでございますので、作業部会の中でしっかりこの問題については結論を出していかなくちゃいかぬというふうに思っておりますが、その作業部会も、六者協議そのものがきちんと再開されなきゃ進まないということだと思いますが、その辺の状況について、必要があれば事務方から補足をさせます。

長島(昭)委員 事務方の方からも御答弁いただきますが、作業部会とおっしゃったんですが、五つありますね。朝鮮半島の非核化、米朝国交正常化、日朝国交正常化、経済及びエネルギー協力、北東アジアの平和及び安全のメカニズム。これは、ミサイルの問題は五番目の北東アジアの平和及び安全のメカニズムで協議するんでしょうか、それとも日朝国交正常化の作業部会で協議するんでしょうか、どっちでしょう。

岩屋副大臣 北東アジアの安全保障環境と日朝、両方のトラックで取り上げるということになると思います。

長島(昭)委員 ぜひこれはしっかりやっていただきたい。しかも、これは防衛省とも連携をとって、制服の人たちもですね。というのは、日本の交渉団に制服の方はほとんどいつもいない。いますかね。それは、一度私、前に質問したことがあるんですけれども、ほかの国は大体武官が出席して、だってそうですよ、安全保障の問題ですから。それは外務省の皆さんも優秀だと思いますけれども、軍事的なディテールになったら、そこはやはり、その点について軍事的に専門知識のある人が参加をして、きちんと詰めていかなきゃいかぬと思いますので、これはぜひ、提案をしておきますので、今後の六カ国協議の作業部会で進めていただきたい、こういうふうに思います。

 それでは、もう残り少ない時間でありますが、イラクについて。これは、私はイラク特の委員でないので、こちらで伺いたいと思っているんです。

 私ども民主党は、イラク特措法廃止法案という非常に思い切った法案を、三度目、出しました。ただ、私個人的には、これがベストの案かどうか実は悩んでいます。悩んでいますというか、迷いがあるんです。現実的なオルタナティブをきちんと示さないで、特措法の廃止をするだけで本当にいいんだろうかと実は思うし、戦争の大義について批判をしていますけれども、戦争の大義、もちろん批判するところはたくさんあります。しかし、戦争の大義と復興支援というのは、ある意味切り離して考えていかなきゃいけないとも思っております。ただ、目の前に契約書を出されて、二年間延長するんだけれどもよろしく、判こをついてと言われても、なかなかやはりすぐに判こをつくという環境では実はないんですね。

 そこで、きょう伺いたいのは、航空自衛隊のミッションが残ったわけです。ここで果たそうとしている国益といいますか、我が国の目的は一体何なのか。そして、その航空自衛隊のミッションというのはその中でどんな効用、効果、価値があるんだろうか。これをぜひわかりやすく国民の皆さんに説明していただきたい。

 なぜそんなことを今さら求めるかというと、小泉政権のときに派遣議論をしたときにはこう言っていたんですね。民間人ではできません、だから自己完結的な自衛隊の皆さんに行ってもらうしかないんです、こういう筋書きで、戦闘地域には行きません、こういうある種三本立てで承認を求めた経緯があるんです。

 今回の場合は、バグダッドとエルビルの両飛行場に輸送活動を行うということなんですが、実はこれ、民間航空機ががんがん飛んでいますよね。DHLの貨物の航空機も飛んでいますね。エジプト、ヨルダン、オーストリア、イギリス、トルコ、クウェート、シリア、UAE、いろいろなところから飛行機が飛んできている。そうすると、民間機が行けないということでも実はなさそうだ。では、自己完結的な航空自衛隊、こう言うんですけれども、C130、三機行っています。これまで約千日間ぐらいオペレーションをやっています。一機を待機させるとして、二機を常時運用するとしたら、大体二千ソーティーぐらいはやっているかと思いきや、五百に満たない、こういうことになる。

 向こうでは石橋をたたいても渡らないという言い方もされているようなんですけれども、これは航空自衛隊の皆さんには非常に失礼な物言いかもしれませんが、そうなりますと、どういう効果をこれによって上げようとしているのかというのがなかなか見えてこないんです。陸上自衛隊のサマワのミッションは非常にわかりやすかった。病院やります、道路やります、学校を再建します、実際それが目に見えた。しかも、陸上自衛隊の場合は、撤収するタイミングをきちんと見計らって撤収した。

 航空自衛隊の場合は、国連のミッションということも今回言われるようになって、ちょっとエンドレスになる可能性も出てきていますので、その辺のところをやはり国民の皆さんにきちんと説明していただきたいと思いますので、ぜひ御説明いただきたいと思います。

岩屋副大臣 私も、長島先生はきっと悩んでおられるのではないかなと拝察を申し上げておりました。

 今先生がお尋ねの空自のミッションの意義、我が国の国益とどういう関連があるのかというお尋ねだったと思いますが、言うまでもないことですけれども、この中東地域の安定、イラクの復興というのは日本がエネルギーの大半を依存している地域の安定に資する、したがって我が国の国益に資するということがあると思います。それから、このままイラクがだめになってしまいますとテロの温床、破綻国家になってしまう、それは極めて我が国にとってもマイナスだということもあると思います。それから、もともと安保理決議に基づいて各国が出ていって復興支援をやっているわけでございますから、その中に日本のプレゼンスがしっかりあるということが、やはり国際社会の中での日本の信頼という意味で大事だというふうに思いますし、もちろん日米同盟関係における信頼ということも当然あると私は思いますけれども、そういうことで、サマワから陸自が引いた後、空自がこういう活動をしっかりやっていただいているということは非常に大事なことではないかなと思っています。

 それから、今やもう自衛隊じゃなくてもいいのではないかという御議論もあろうかと思いますが、しかし、やはりイラクというのはまだまだ安定をしている、治安が完全に保たれているとは言えない状況の中にあって、やはり自己完結的に航空機を運用して輸送支援ができるという空自の存在は、現地からも、あるいは国連からも高い評価を受けておりますし、引き続いてやってくれという依頼もいただいているところでございますから、これにこたえていくということが大事ではないかと思っているところです。

長島(昭)委員 意義は、今御説明いただいた以上のことはなかなか出てこないんだろうと思いますが、これは引き続き質疑をしたいと思います。

 そうはいっても、出口、これはアメリカ自身も今出口を求めて必死の努力をしているわけです。撤収のタイミングといいますか、撤収の条件、この辺を今どういうふうに、二年延長ということですから、もちろん言い方によっては二年以内に撤収するタイミングを迎えるかもしれませんね。その辺について、我々もいきなり二年と言われてもなかなか判こをつけませんけれども、こういう環境が整ったら我々としては粛々と撤収させる方向なんだよという説明は絶対必要だと思いますし、撤収についても、そんなにアメリカや国際社会の目を気にすることはないと私は思っているんです。

 今まで撤収した国はたくさんあります。三つぐらいパターンがあると思っているんです。一つはフィリピンとかスペインのパターン。フィリピンは、御承知のとおり人質問題で引いた。それから、スペインは、爆弾テロがあって、政権交代して引いた。これはある意味で国際社会にとってはかなり衝撃的な引き方だと思いますよ。ただ、次の二つのパターン、例えばイギリスやデンマークは、今度アフガニスタンの方にシフトさせる、全体としてテロとの闘いに引き続き参加し続ける形で、ある種兵力を削減していこうとしている。それから、三番目のパターンとしてはポーランドとかオランダ、これは撤退という法律の期限が来たので、その期限に基づいて粛々と撤収しますと。

 ですから、法治国家ですから、そういう意味でいろいろなパターンがあって、何か一抜けたという形で無責任に撤収することを我々は政府に奨励しているわけでは全然ないわけでありまして、この辺のところが今回の首脳会談でも恐らくテーマになるんだろうと思いますので、どういう形で日本が努力してそういう撤収のタイミングをはかっていくのか、この点についても明確に御答弁いただきたいと思います。

岩屋副大臣 先生おっしゃるように、もし今国会で二年の延長が認められたとしても、必ず二年間いなくちゃいけないということはないわけでございまして、状況、環境が整えば、その間に撤収することもあり得るということだというふうに思っています。

 それから、今先生、イギリスなどの例を引かれましたが、我が方は、アフガンの方では海上自衛隊による活動、オペレーションをずっと続けているということ以外に、陸に上がって何かをやるという選択は現行法上ないんだと思います。だから、PRTがやっている活動を側面からお手伝いするということは決めさせていただいておりますが、したがって、イラク国内においては、空自の輸送活動をしっかり必要があるときまで継続していくということが必要だというふうに考えているわけでございます。

 では、どういう状況だったら撤収が可能かということは、これまで答弁をしてきた言い方からそうはみ出るわけではございませんが、当然のことながら、イラクの政治状況、現地の治安状況、国連及び多国籍軍の活動や構成の変化等の諸事情をよく見きわめながら総合的に適切に判断をしていくということになろうかと思います。

長島(昭)委員 もう終わりにしますけれども、治安維持に当たっている、安定化に努力をしている米英を初めとする多国籍軍への安全確保支援活動を自衛隊はやっているわけですから、多分、治安の状況と、それから、治安をきちんとイラク人ができるようになるというのが一つのタイミングなんだろうと思いますが、その辺はやはり見きわめていただきたいと思います。

 ちょっと今、言葉じりをとらえるようで申しわけないんですが、アフガンのPRTの活動は現行法上できないとおっしゃいましたが、二つの特措法をつくってこられた政府のお立場としては何か矛盾するような物言いだと思ったので指摘しておきたいと思いますが、法律をつくれば、場合によってはPRTに参加する選択肢ももちろんあると思います。

 一言だけつけ加えたいんですが、限られたアセットなんですね、C130にしても補給艦にしても。C130は十六機しかないうちの三機、それから補給艦も五隻しかないうちの一隻をずっと出しっ放しにしているわけですから。

 そういう意味では、我々は、やはり地域の安全保障というのも担っていかなきゃならない、そういう責任がありますので、ようやく国際平和活動を本来任務化して、これからそういう面でも装備を整えていかなきゃいけないという、まさに緒についたばかり。現在保有している装備で何とかやりくりしておりますので、余りあれもこれも、二年も三年も、こういうことにはならないだろうと思いますので、外務省としても、少ないアセットをなるべく有効に使っていけるような、そういう外交戦略を展開していただきたい。そのことを要望して、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

やまぎわ委員長代理 次に、篠田陽介君。

篠田委員 自民党の篠田陽介と申します。

 私は、衆議院では外務委員会と環境委員会、二つの委員会に属させていただいております。私は、地球温暖化対策というのをやりたくて議員になったと言っても過言ではないということで、この二つに所属をさせていただきながら、若い世代として、このままじゃ地球がもたない、地球がもたないといっても、人類が住めなくなるという前提においての地球がもたなくなるという危機感を持って取り組みをさせていただいております。

 そこで、来年の日本でのサミットの開催地が決まりました。また、ことしから来年にかけて、今世界がいろいろな動きをしていると思います。地球温暖化対策につきまして、要点を絞って質問に立たせていただきたいと思っております。

 特にヨーロッパ、そしてアメリカ、中国、その中で、今、日本がどういった立ち位置にあるのか、また、世界が、ヨーロッパやアメリカなどが今どういった動きをしているのかということで、その中での日本政府の対応を主に聞いていきたいというふうに考えております。

 本年、気候変動に関する政府間パネル、いわゆるIPCCの第四次報告書、先般、第二作業部会までの報告書が出ましたが、このIPCCの報告書によって、温暖化が人為的な影響である可能性が非常に高い、九〇%以上人為的だということが結論づけられたということと、あと全世界的に、今まさに気候変動の影響が生じているということが膨大な実測データについて証明されました。

 例えば、最近十二年間のうち、そのうちの十一年が一八五〇年以降で最も暑い年の上位を占めているという現状であります。また、二〇〇三年、ヨーロッパにおきましては熱波で五万二千人以上が死んだ。また、二〇〇五年、ハリケーン・カトリーナの被害ではアメリカで千七百人を超える死亡者が出た。また、二〇〇六年、オーストラリアでの記録的な干ばつによりまして小麦の生産量が前年比のマイナス六〇%となりました。

 このままでは、今後、水資源、そして生態系、食料、沿岸域など、さまざまな分野で影響が深刻化することが予測されています。日本でも、台風や熱波が頻繁に発生しながら、豪雨も全国的にふえると予想されています。一番恐ろしいのは、やはり、毎年夏になったら台風がだんだん大型化してきている。これでは幾ら災害対策といってやってもなかなか追っつかないということです。私の地元名古屋でも東海豪雨がありました。また東海豪雨のような被害が二度と起こらないように取り組んではおりますが、しかしながら、はるかに予測を超える規模の大きな台風がやってくるんじゃないかということが心配されています。

 また、昨年十一月にスターン・レビューが出されました。この中では、気候の安定化のための対策コストは世界のGDPの一%であるのに対して、対策をとらない場合の損失額は少なくとも世界のGDPの五%、最悪の場合では二〇%以上に達する可能性があるとしている。これは要するに、今対策をやらないと、このままほっておくともっとお金がかかってしまうよということを端的にあらわしているレビューであります。

 このように、地球温暖化対策は、今、広く人類の生存基盤や地球生態系に深刻な影響を与える問題として認識されるべきであり、安全保障の問題として取り組んでいく必要があると思っております。

 また、先日、四月十七日、国連安保理事会におきまして初めて気候変動問題が取り上げられました。まさに今、国連安保理でこの温暖化問題が取り上げられるということ自体、これだけ全世界で危機感が出てきているということであります。

 まず、この気候変動の問題と安全保障の関係について、今、外務省ではどういうふうに考えているのか、その見解をお伺いしたいと思っています。

岩屋副大臣 篠田先生には、地球環境問題に熱心にお取り組みいただいていることに心から敬意を表したいと思います。

 私も九州ですが、三原先生もそうですが、もう台風銀座みたいなところでして、毎年大型化してくるということを非常に脅威に感じております。今や、一般の国民の皆さんも本当に地球環境問題というのを肌で感じておられるところだと思います。

 先生が今御指摘になられました四月十七日の国連安保理における公開討論には、我が国も参加をいたしております。そして、気候変動は地球規模の課題であって、国連が強力な役割を果たすべきだということを主張させていただきました。また、気候変動は、自然の生態系及び人類の生存基盤に深刻な影響を及ぼす問題でございまして、すなわち我々の安全保障の問題だと。先生がおっしゃるとおり、気候変動問題は安全保障の問題だと認識すべきだということで、外務省としては、今後とも、国連等の場を通じ、またあらゆる国際場裏の場において、この気候変動の議論に積極的に参加をしてまいりたいと考えております。

篠田委員 ありがとうございます。

 それで、いわゆる京都議定書の次、ポスト議定書について、日本政府の考え方をお尋ねしたいと思っています。

 御案内のとおり、現在の対策の京都議定書は、二〇〇八年から約束期間が始まりまして二〇一二年までに達成せよ、日本国内においては、一九九〇年に比べてマイナス六%温暖化排出ガスを削減しなさいと。しかしながら、現状、プラス八・一%、ふえてしまった。ですから、マイナス一四・一%を二〇一二年までに達成しなければならないという大変深刻な状況だと私は思っています。

 それで、今、ヨーロッパにおきましては、二〇二〇年までにEU全体で二〇%削減しますよという案が打ち出された。また、先進国がこれに同調するのであれば三〇%まで枠を広げて削減しますよということであります。これは、いわば駆け引きが既に始まってきているということであります。ここで主導権争いに日本がおくれてしまったら、私はいろいろな面でデメリットが出てくるのだろうというふうに考えています。

 恐らく、EUは、自分たちで主導権を握りながら、自分たちに都合のいいような規制を打ち立てていく。そのための技術開発を進めていきながら、日本がそれに振り回されるというような状況になってしまえば、せっかく技術立国であります日本が振り回されて、発展が阻害されてしまうということを私は非常に心配をしております。

 まず、質問させていただきますが、このようなEUの積極的な取り組みに比べて、我が国の対応が、方針が今余りないのではないか。それはやはり、まずは目達計画、マイナス一四%削減がなかなか厳しいということがバックグラウンドにあるから、余り発言権が、なかなか出てこないのかなというふうにも感じています。

 そんなことで、我が国は二〇一三年以降の次期枠組みの基本方針、どのように考えているのかということをお伺いしたいと思っています。

岩屋副大臣 篠田先生おっしゃるように、日本がこれから短期間の間にマイナス一四%近くやるというのは本当に大変なことだと思いますが、やはり京都議定書という名前がついている以上は、最大限の努力をしてクリアするようにやっていかなきゃいけないんだと思っております。

 次の枠組みについてどう考えているのかという先生のお尋ねですけれども、これはもう当然のことですが、アメリカ、中国、インド、こういった主要排出国による最大限の削減努力を促す実効性のある枠組みをつくらなくてはいけないということをもうかなり前からしっかり言っております。これは、アメリカは同盟国でありますが、米国に向かっても、中国、インドに向かっても、やはり次の枠組みにはしっかり実効性のある形で参画をしていただきたいということを言っているわけでございまして、こういう国際的な議論を日本政府がリードをしていくことが大事だというふうに思っております。ポイントは、実効性のある枠組みを今度はつくるということだと思います。

篠田委員 岩屋副大臣、どうもありがとうございました。

 実効性のある枠組みということで、また関連で質問させていただきます。

 私は、去年十月に、中国でカーボンエキスポ・アジアというのが開かれたタイミングで国際会議に参加をしてまいりました。これはいわゆる排出権取引制度の見本市でありまして、特にヨーロッパの企業が多く出展をしておりまして、日本企業は残念ながらおくれをとりまして、五、六社ぐらいしか出展をされておりませんでした。その中で、ヨーロッパあるいはアメリカ、そして日本からは私だけだったんですが、あとは開発途上国から五カ国ですね、中国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカ、そういった国々から国会議員が参加をしまして、この機会にあわせて国際会議をやってまいりました。

 気候変動、温暖化防止になりましたら、最後にはやはり開発途上国と先進国のいわゆるエゴがぶつかってくるというのを肌で感じました。開発途上国は、先進国に対して、先進国はこれまで経済発展をしながら、石油あるいは化石燃料を使いながら、そしてCO2を大きく排出しながら便利な生活を得てきたじゃないか、我々にその生活をやめろというのは、それは先進国のエゴじゃないかというのが主な主張です。それも確かに最もわかる話であります。ですが、そうは言っていられない状況でありますので、どうやって取り組んでいくか、そこはODAを活用しながらも取り組んでいきたいと思いますし、また、それぞれの国のメリット、優位性も考えながら取り組んでいきたいというふうに私は考えたところであります。

 その中で、特にアメリカと中国、排出量で今世界一位と二位のこの二カ国の動き、これをポスト議定書にどうやって取り込んでいくか、いわば巻き込んでいけるかということが次の枠組みづくりにとって重要だと思っています。

 先般、温家宝首相が来日をされまして、安倍総理とともに環境に関する共同声明を発表されたということであります。その中で、特に、「「気候変動に関する国際連合枠組条約」及びその「京都議定書」の枠組みの下で、改めて、双方は「共通に有しているが差異のある責任」の原則に基づき、国際的な協力を通じて気候変動問題の解決に関する努力を行うという政治的決意を表明する。双方は、上述の条約及び議定書の原則及び規定に基づき、二〇一三年以降の実効的な枠組みの構築に関する過程に積極的に参加する。双方は、クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップにおける協力及び協議を強化し、実務的協力を推進し、「京都議定書」の下でのクリーン開発メカニズムプロジェクトの協力を引き続き行う。」というような共同声明がなされたということ、私はこれは一つの大きな前進だと思っています。

 この共同声明に対する評価についてどうお考えなのか、また、今後、具体的にどのような分野でどういうふうに協力をしていくのかということをお伺いさせていただきたいと思います。

岩屋副大臣 今、篠田先生がさきの共同声明の中身について詳しく御紹介をいただきました。お答えする予定のところを言われてしまいましたが、先生おっしゃるとおりでございまして、中国が、こういう日中の共同声明の中であるとはいえ、しっかりとこのことを明言したということは大きな前進だったと思います。

 特に、双方は「二〇一三年以降の実効的な枠組みの構築に関する過程に積極的に参加する。」というふうに、中国側もしっかりとそこを明言したということでございますので、この成果を踏まえて、これから新しい枠組みの中に中国が、まさに実効的な枠組みをつくるために参加をしてもらうために、日本としては最大限の外交努力をしていきたいというふうに考えているところでございます。そういう意味では、今回の中国の意思の表明を高く評価したいと思っているところでございます。

篠田委員 どうもありがとうございます。

 他方、アメリカ、米国の巻き込み方について、私からも質問させていただきます。

 中国などの途上国は、先進国であるアメリカが次期枠組みに参加しない限り、排出削減につながるいかなる義務も負わないと言っています。ブッシュ大統領は、二〇〇一年に京都議定書からの離脱を表明されて、京都議定書への復帰にも一貫して否定的であります。

 しかしながら、二〇〇五年、カトリーナなどで大規模な被害がありました。また、映画「不都合な真実」などのヒットで、大変国内で関心が高まっている。それに後押しされまして、アメリカ議会におきまして、温暖化法案が数多く提出されているという現状、また、アメリカの大統領候補として有力でありますマケインさん、このマケインさんがマケイン・リーバーマン法案というのを出しまして、二〇二〇年に一九九〇年比で同等とする、そして二〇五〇年までには最終的に一九九〇年に比べてマイナス六〇%を削減するということを求めてきております。

 また、州レベルにおきましても、カリフォルニア州を中心に動きがありまして、カリフォルニアでは既に法律が成立しておりまして、二〇二〇年に一九九〇年と同様、また二〇五〇年にマイナス八〇%という大胆な削減をする法律案を打ち出している、それに産業界も同調しているという現状が今あります。

 このように、アメリカは今風向きが大変変化をしていると考えておりますが、アメリカのこのような最近の動向につきまして政府はどのように考えているか、質問させていただきます。

岩屋副大臣 先生がおっしゃるとおりでございまして、アメリカの中で、特に議会においてさまざまな動きが出てきていると私どもも承知をしておりまして、それは好ましい変化だと思って歓迎をしているところでございます。

 先ほども申し上げましたように、ポスト京都議定書の枠組みの中には、米国が実効性ある形で入っていただくということが大事でございまして、そういう意味では、この議会での動きに私たちも強い関心を払っているところでございます。

 ただ、具体的な立法化に向けた作業の動向については、いま一つまだわからないところがございまして、引き続いて、米国の議会や産業界での動向をしっかりと注視していきたいというふうに思っています。

篠田委員 ありがとうございます。

 それで、アメリカを巻き込むということにおきまして、私は、有効な一つの手段でありますCCSについて質問させていただきたいと思います。

 CCSというのは、御案内のとおり、炭素を回収して貯留する、カーボンをキャプチャーしてストレージするという技術であります。これは実際に今CDMのメカニズムには組み込まれておりませんが、アメリカはカナダとこれをやっています。なぜやっているかというと、油田を少しでも多く絞り出すために、たしかカナダの発電所かどこかで回収したCO2をアメリカにパイプで輸送しまして、アメリカの油田で圧入をしている、それによって油田が絞り出されるということでありまして、これは別にそういった温暖化対策ではなくて、ただ油田を絞り出すためにやっていた。また、アメリカ国内においては、これまで採掘してきた炭鉱の跡地が相当あります。ですから、CO2を封じ込めるにおいて、百年から二百年の容量があると言われております。

 ですから、有効でありますこのCCSをこれからクリーン開発メカニズム、CDMにどうやって組み込んでいくかということでありまして、たしか昨年十一月、気候変動の国際会議の中で、南アフリカで行われましたが、この会議の中の主要議題の一つでありましたのが、CDMにCCSを加えるかどうかという議論がなされました。これはいわゆる地球環境への被害、CO2がしみ出て、地表に出てくるんじゃないかとか、そういう危険性がまだ確証されないということで、引き続き議論するということになりました。

 私は、この中で一つ、このCCSについて日本政府がどういった考え方を持っているのか、日本の立ち位置が、ちょっと、いまいちわからなかったのが正直なところであります。

 実は、日本はCCSについて世界のトップの技術を持っているわけでありまして、CCS、御案内のとおり二酸化炭素を回収してためるという技術でありますが、ソーダ水の一種なんですが、ソーダ水のような水でまず空気中の二酸化炭素だけをキャッチアップして、それで液体を温めることによってまたCO2だけを回収するという、この特許を日本が世界の中でとっておりまして、この技術、また関連技術は世界一だと私は思っています。

 このCCS、まさに日本のトップの技術をこれから世界に売り出していくのをなぜ日本はしないのかという不思議な気持ちも持っておりますので、このCCSについて、今国際会議の中でもこういったようにいろいろな動きが出てきていますが、日本政府の立場、考え方というのはどうなのかというのを聞かせていただきます。

岩屋副大臣 CCSの技術については、今先生が詳しくお話ししていただきましたが、私も勉強したばかりですが、カーボンダイオキサイド・キャプチャー・アンド・ストレージという技術、二酸化炭素を回収して貯蓄するという技術でございますが、これは先生おっしゃるとおり、地球温暖化の防止に貢献し得る有望な技術の一つだというふうに認識をしております。しかもこれは、先生これまた御指摘のとおり、CDMのメカニズムの対象として今のところ認められていない。

 しかし、日本は世界最高峰の技術を持っているということでございますので、我が方としては、今後CCSがCDMとして認められるようにCOP/moPの場で主張していきたいと思っていますが、この技術的問題について各国間にまだかなり見解の相違があるというふうにも承知をしておりますので、この技術がしっかりCDMとして認められるように頑張っていきたいと思っています。

篠田委員 副大臣の前向きな発言、どうもありがとうございます。

 私、この技術を見ていまして、確かに安全性の確証がまだ万全ではないと思います。しかしながら、今の地球のCO2排出の状況を見ていまして、まず一時的でもいいから取り組むべきだというのが私の考え方でありまして、その間、やはり新しい技術を活用する、あるいはCO2を無害化するような技術もまた出てくるかもしれない。しかしながら、まずはこれを取り入れていかないと、本当に取り返しのつかないことになってくると私は思います。

 まずは、その技術、CDMに組み込んでいきながら導入を図る、その中で、その過程において、それをやっている二十年、三十年の間に新しい資源エネルギー技術を開発する、そういう動きになって、いずれはやめなきゃならぬと思っています。これから永久、二百年、三百年にわたってずっとCCSを行えというわけではありません。しかしながら、一時的な一時しのぎではありますが、今の地球環境においては私はぜひ取り組んでいただきたいということでありますので、日本政府としても一生懸命それをバックアップしていただきたいと思っております。

 ですから、四月二十七日から安倍総理が訪米をされますが、ブッシュ大統領と会談が予定をされております。この気候変動問題への取り組みについてブッシュ大統領に働きかけ、建設的な対応を促すよい機会だと思いますが、総理の訪米時にアメリカに対してどのように働きかけるおつもりなのかということをお聞かせいただきたいと思っております。

岩屋副大臣 先ほども申し上げましたように、次の枠組みには最大の排出国である米国にも実効性ある形で参画をしていただきたいというのが我が方の考え方でございます。

 先生御指摘のとおり、もうすぐ総理が訪米をされるわけでございます。首脳会談の議題については現在米側と調整中でございますが、安倍総理もこの問題には非常に御熱心でございますので、取り上げられる可能性が非常に高いというふうに考えておりますし、期待をいたしております。

    〔やまぎわ委員長代理退席、委員長着席〕

篠田委員 ありがとうございます。

 それで、次は、ヨーロッパを初め国際会議の動向であります。来年、洞爺湖でサミットが開催されますが、メーンのテーマは気候変動問題、地球環境問題であるというふうに承知をしております。また、ことしはドイツでG8サミットが開催され、気候変動が主要議題とされています。ドイツのメルケル首相は、過去環境相としてCOPの議長を務めた経験もあり、非常に気候変動問題に熱心であります。また英国のブレア首相も、二〇〇五年、グレンイーグルズ・サミットで気候変動を初めてサミットの主要議題とし、G20対話と呼ばれる主要排出国二十カ国の対話を立ち上げる等、積極的にこの問題に取り組んでいます。このように、気候変動問題は首脳間の主要議題となってきました。

 来年は日本でG8サミットが開催されます。来年のG8サミットでは、G20対話等、グレンイーグルズ・サミットで始まった取り組みの結果が報告されることになっており、非常に重要なものになるというふうに考えております。このような重要なサミットに向けて、日本は議長国としてどのようにリーダーシップを発揮されるおつもりなのかということをお聞かせいただきます。

岩屋副大臣 先生おっしゃるとおりだと思います。来年の我が国でのサミットというのは、地球環境問題というのが非常に重要なテーマの一つになっていくだろうというふうに思っています。今先生が御指摘になったグレンイーグルズ・サミットの結果立ち上がったグレンイーグルズ対話というものの結果が、来年の我が国のサミットにおいて発表されるということになっております。

 過去開かれた対話におきましては、エネルギー効率を向上させる必要性等について突っ込んだ意見交換がなされております。専門家の間でもなされておりますので、その結果が来年の日本のサミットで発表されるということでございますので、来年のサミットで我が国がこの結果の発表を受けて積極的な役割をこの問題について果たしていくことが必要だというふうに考えておりまして、来年のサミットに向かって、具体的な成果を上げるべくこれからしっかり努力をしていきたいと思っています。

篠田委員 ありがとうございます。

 ぜひ、来年のサミットを機に日本が世界で主導権を握っていただきたいと私は考えておりますし、また心配もしております。

 例えば、イギリスにおきましては、今、与党と野党の中で、いわゆる地球温暖化対策に向けて議論が、次の選挙の主要課題となりつつあります。私は、日本でもいずれそういうふうになってもらいたい、与党と野党が地球温暖化対策についてお互いどのような認識を持っているのか、こういった議論が選挙の本当に主要テーマになるような、そういった関心を国内において高めていくことも、まず一つ大きな取り組みだと思っています。

 また、温暖化対策の推進には、途上国への支援が課題となっています。途上国にとっては経済発展が重要でありまして、これを阻害しない形で対策を進める必要があります。先ほども申し上げましたけれども、やはり、国際会議に出ましたら、開発途上国は必ず、今まで先進国が受けてきた恩恵を我々も受けたい、しかしながら先進国は我々に開発をするなと言っているのかというふうな感情論がどうしても最後の方に来てしまって、物別れになるということが多いわけであります。ですから、先進国がどのように開発途上国に対して対策を講じていけるのか、経済発展を阻害しない形で対策を進められるかということが重要であると思っています。

 また、温暖化の悪影響への適応も重要でありまして、特に途上国は温暖化の影響に大変脆弱であります。今月十三日に、外務省が気候変動への適応部分における開発途上国支援に関する提言を出しました。その中でも触れられていますが、気候変動対策のためにODAの強化、拡充が必要と考えられておりますが、どのようにお考えなのか、外務省の見解をお尋ねいたします。

岩屋副大臣 これも先生おっしゃるとおりだというふうに思っておりまして、開発途上国は特に気候変動に対して物すごく脆弱でございます。

 先般、私は、TICADの閣僚会議、日本が主催するアフリカ開発会議の閣僚会議をケニアのナイロビで私が議長になって開催をしてまいりましたけれども、そのときのテーマが、持続可能な開発のための環境とエネルギー、これについて議論をさせていただきました。その会議におきましても、気候変動に対してアフリカという地域が非常に脆弱であるということが強調されました。

 外務省といたしましては、来年はいよいよTICAD4の本番が開催されるわけでございますので、アフリカを初めとする途上国の支援のあり方についてしっかりとこれから中身を詰めていきたいというふうに思っています。

 先ほど先生が御指摘になった提言につきましては、今後、国連、世銀、OECD等の国際機関と共有して気候変動対策に関する国際的な議論にしっかりと反映をさせていきたいというふうに思っております。また、提言の内容を踏まえまして、我が国のODAを活用しながら、開発途上国の気候変動への適応に対して積極的に日本の科学技術等も駆使して貢献していきたいというふうに考えています。

篠田委員 岩屋副大臣、どうもありがとうございました。

 地球温暖化問題、私は、これまで、初当選させていただきましてから、環境委員会、外務委員会の場で何度も質問に立たせていただいております。しかしながら、やはり省庁の連携も大事だと思っています。私がこの二つの委員会に所属をしておりますが、外務省の考え方と環境省、そして経済産業省、あるいは文部科学省も出てくると思います。そういった政府の一体的な連携が必要でありまして、聞くところによりますと、官邸内におきまして会議が設置されて主要閣僚に通達を総理から出したとしても、なかなかその中で実効性のある具体的な話まで及んでいかないというのは、これは私は非常に心配をしています。これは、これから日本経済が発展していくかあるいは停滞するのかという大きな問題につながってくるのだと私は思っています。

 環境最先端ということで、これから環境技術をどうやって活用していくかという部分においては、やはりEUにおくれをとってはいけないと思っているんです。ですから、これからの一年、二年、これが非常に重要な年になると私は思います。この一年、二年をどうやって日本がイニシアチブをとってリーダーシップを発揮するか、それで日本のスタンダードを世界のスタンダードにできるような、そういった環境づくりに日本が政府を挙げて取り組むべきだという私の考え、思い、お願いをさせていただいて、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

山口委員長 午前十一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時二分休憩

     ――――◇―――――

    午前十一時三十三分開議

山口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 イラクの国内外で急速に増大している難民、国内避難民の支援の問題について質問いたします。

 まず初めに、現状でありますけれども、国連難民高等弁務官事務所、UNHCRによれば、イラク国内外の難民、避難民は四百万人を超えるとされ、人道危機の状態にあるとしています。去る一月には国際社会に対して緊急の支援のアピールが出されて、そして、この四月十七、十八日にはジュネーブで国際会議が開催された。

 これはまず外務省に伺いますけれども、イラクの難民、避難民はどれぐらいの規模で、どのような現実に直面していることを把握しているか。それから、一月のアピールと四月の国際会議の概要について端的に報告をお願いします。

鶴岡政府参考人 お尋ねにお答え申し上げます。

 まず初めに、国連難民高等弁務官事務所、UNHCRによりますと、現在、イラク国内には約百九十万人に上る国内避難民がおります。また、シリア、ヨルダンなどの周辺国には総勢二百万人以上ものイラク人難民がいるとされております。

 このような状況に対応するために、UNHCRは、ことし一月に総計約六千万ドルに上る追加アピールを発出いたしまして、国際社会に対して支援を呼びかけております。このアピールでは、国内避難民及びイラク国外に逃れております難民の保護を中心に、教育、保健分野などにおける支援が必要であるという要請がなされております。

 先ほど御指摘のとおり、UNHCRは、四月十七日及び十八日の二日間にわたりまして、ジュネーブの国連欧州本部におきまして、イラク及び周辺国における難民・避難民支援に関する国際会議を主催いたしました。この会議では、深刻化しております難民、避難民問題などに焦点を当てて議論がなされ、六十カ国以上の参加、また国連・国際諸機関やNGO関係者を含めて総勢四百五十名が出席をいたしております。我が国からは、宮川在ジュネーブ代表部大使が首席代表として参加をいたしまして、ステートメントを行っております。

 イラク及び周辺国は、この会議の席上、現状の深刻さについて説明を行いまして、国際社会によるさらなる支援を訴えました。また、イラクは、周辺国に対する拠出につきましてもみずから主導的な役割を果たしていく考えを表明しております。さらに、参加各国や国際機関などから、難民、避難民をめぐる人道状況の悲惨さについて懸念が表明されておりまして、今後、周辺国への支援を含め、より一層取り組みを強化していく必要があることが会議において確認いたされました。

麻生国務大臣 今、笠井先生が言われましたように、現実問題として、内外合わせまして約三百九十万、状況は極めて深刻ということで、この懸念を参加国皆共有するということになりました。

 日本としては、このような深刻な状況を踏まえて、去る二月の二十三日になりますけれども、イラク及び周辺国における難民及び避難民を支援するため、国連難民高等弁務官事務所、いわゆるUNHCRと、それから国際移住機関、例のIOMを通じまして、総額一千三百五十万ドルの支援を実施するということをやっておるというのが現状でございます。

笠井委員 今大臣も言われましたけれども、三百九十万、四百万といえば、日本の人口に当てはめてみると二千万人ぐらいの規模で住んでいた家を追われる、想像を絶する事態になっている。

 私もUNHCRの資料も見てみましたが、国内避難民は月五万人の規模で増加をしているということで、ことし末には二百三十万人になると推定していて、隣国に避難をして安全を確保するのがますます難しい状況になりつつあるというので、ほぼ封じ込め状態みたいになっている。グテーレス高等弁務官が、中東地域の難民としては、一九四八年のイスラエル建国の際に発生したパレスチナ難民以来の規模だという懸念をして、国際社会一致して取り組むべきだということを強調している。しかも、受け入れ側のコミュニティーも避難民の増加に悲鳴を上げているということでありまして、子供の二三%が恒常的な栄養失調という、まさに人道危機の実態は非常に深刻だというふうに思います。

 そこで、大臣は、今千三百五十万ドルという支援を実施したということでありましたが、昨日の本会議で答弁された中で、現地の状況、現状等々により、必ずしも緊急人道支援から復興支援の段階に円滑に移行するとは限らない、現場の必要に応じて適切に対応していくということで、現地の必要を踏まえて緊急人道支援を行っているということも言われました。それが千三百五十という話だと思うんですが。

 とりあえず千三百五十万ドルを、このアピール、要請にもこたえながら補正でやったということだと思いますが、これは、これで終わりということじゃなくて、必要に応じて、それこそ今後もさらに日本として支援を増額することも検討するということでよろしいんでしょうか。

麻生国務大臣 笠井先生、昨日の本会議でしたかで答弁を一部申し上げたとおりでございまして、状況というものは極めて流動的、これで落ちつくかもしれませんし、さらにふえるかもしれません。そういう状況に応じまして日本としてはしかるべく対応をやってまいりますので、柔軟にとか、役所用語では適切にとかいろいろな言い方をするんだと思いますが、そういった状況に合わせて、私どもとしては千三百五十万だけで終わりですということを申し上げていることはございません。

笠井委員 二〇〇一年にアフガニスタンの戦争があったときにも、私はパキスタンの国境の難民キャンプも実際行きました。それで、国外への難民とともに国内避難民の支援のあり方についても関係者からもいろいろ状況を聞くことがあったんです。その中で、支援の額と同時に、やはり実態に即してきめ細かな支援というのが大事だということも共通して言われましたし、私も痛感しました。

 今回の問題でも、日本のNGOの方々の話を聞きますと、やはり地域の実情をよく知っていて、そして、実際に中に日本から入るというのはなかなか大変な状況もあるんだけれども、しかし、イラク国内の協力者がいるという方々との人的ネットワークも豊富なNGOへの支援を強く要望しておりました。そうしたNGO経由の支援を強めるなど、より効果的な支援のあり方への知恵を絞るべきだと思うんですが、その点については、大臣、いかがでしょうか。

岩屋副大臣 経験豊富なNGOとの連携を強化せよという先生の御指摘、おっしゃるとおりだと思います。

 安倍総理も、さきの施政方針演説におきまして、NGOとも連携したODAの活用によってイラクを支援していくということを表明されておられます。その方針を踏まえまして、政府としては、豊富な経験や能力を有する我が国のNGOとの連携を推進してきております。例えば、UNHCRのイラク国内避難民支援計画、これは五百万ドルの無償資金協力でございますが、我が国のNGO、ピースウィンズ・ジャパンがその避難民受け入れや学校再建事業、雇用創出事業に携わる予定になっておりまして、今後ともこうしたNGOあるいは国際機関との連携をしっかり進めていきたい、こう思っております。

笠井委員 そこで、大臣に改めて伺いますが、このようにイラク国内外の難民、避難民ということで急増している人道危機の状況、これを支援する、これは当然だと思うんですが、では、ここまで事態が深刻になっている原因は一体どこにあるというふうに大臣は認識をされているか、伺いたいと思います。

麻生国務大臣 これはもう先生、いろいろなことが想像とか解析とか分析とかいうのができるんだと思いますが、やはり大きくは、非常に治安が悪化しているというのは非常に大きな状況だと私どもも理解をいたしております。これは特に、地理的にいいますと、北の方のクルドとか、自衛隊を出しましたムサンナとか、あの辺の南の方には、石油の出るところでは余り起きていなくて、真ん中の辺のバグダッド周辺に集中しておるというのが現状を見たときの状況だと存じます。

 日本としては、この点は一番頭の痛いところで、これは三派の人を過日日本に全部それぞれ四、五人ずつ呼んで、三派一緒に泊めて、話をさせたり何かするというのをやりますと、最初はすごい構えていた人たちがやはり日を追うごとにしゃべってきて、私、最初の日と最後の日と会ったんですけれども、最後の日はどれが何だかわからないぐらいになって、もともと顔を見ただけで我々には全然クルドとあれがどこが違うのかさっぱりわかりませんけれども、向こうの人は最初に見ただけでわかるらしくて、こう構えたら、最後の方は結構話をしていたのが印象に残りました。

 今、御存じのように、あそこは大統領というかあれはクルド人、それからマリキはシーア、そしてハシミという副大統領がスンニ派なんですけれども、こういった人たちの話を個別に聞いてみても、いわゆる宗派間で、何となく意思の疎通が余りないんだと思うんですけれども、かなり険悪な雰囲気なんだというような感じはします。

 ただ、話が終わって、ずらっとこの間マリキ引き連れて、クルド、いろいろな閣僚、皆違うんだそうですけれども、話を聞いて、終わった後の話では、とにかく日本に来てもらって、こういった機会をつくってもらったおかげで少なくともいろいろな話ができて、我々としては非常に感謝をしておるというので、我々としても、治安の維持というのと国民融和、だから、二つ今やっていますけれども、治安も確かに現象面としては大切ですけれども、そのもとは国民融和というところの方にありますので、そちらの方にも目を向けてやってもらわないと、なかなか簡単にいかない。結果としてそれが避難民になってきますので、そういった点も、治安維持だけ、抑えつけるだけじゃなくて、そのもとの根絶のところに、融和というのが一番大事なんだというので、そこのところにぜひ力を注いでもらいたいという話は我々の方としても申し込んでおります。

笠井委員 もとの根絶というのは非常に大事だということだと思うんですが、国民融和と逆行するということでいいますと、まさに治安を悪化させて、民族間あるいは宗派間の抗争の根底には、やはりイラク戦争と米軍による軍事掃討作戦と空爆がある。武力衝突の長期化や激化によって、戦争とテロによる犠牲者とともに、やはり難民問題が一層深刻になっている。中東の政府の外務大臣の中にも、多国籍軍のイラク侵攻の結果であることはだれも否定できない、こういう難民問題が起こっているということについて言えば。多国籍軍が責任を負うべきだという意見もありますし、NGOの中にも、まさにここまでなっている大もとにはやはり米英によるイラク戦争開戦があるんだという指摘が今回の国際会議の中でもステートメントとして出されていると思うんです。

 そこで、大臣、一言伺いたいんですが、そういう中で、最近バグダッドで米軍がスンニ派とシーア派の居住区を隔てる壁まで建設するということがありました。イラクでは一斉に反対の声が起こって、さすがにマリキ首相も、二十三日、建設の中止を命じたというふうに報じられておりますが、大臣はこの米軍の行動についてはどういうふうに見ていらっしゃいますでしょうか。

麻生国務大臣 私、正直BBCとかCNNの画像で見たぐらいのところでしか情報がありませんので、笠井先生、ちょっと、うかつなことは言えぬところだとは思います。

 安全のためを思ってフェンスを建てたとアメリカ側は言ったとしても、建てられている、そこにいる人たちにとっては、我々が閉じこめられているととる。だから、そこのところは、同じものを見てもどうとるかというのは、なかなか双方意見が違うと、もともと双方の不信感ですので、そういったことになりやすいと思いますので、こういったフェンスを建てるなどというのはあらかじめよくよく話をしておかないと、この種の話、さらにエスカレートすることになりかねぬ。これはイスラエルとパレスチナの間でも似たようなケースがありましたので、今も似たようなことになっておるのかなという、ちょっとそれ以上の想像の域を出ません。

笠井委員 まさに大臣言われましたけれども、かつてのあちらの壁、こちらの壁を連想するということも含めてやはりあるので、これはまずいということをやはり大臣としてははっきり言うぐらいのことは必要だと思うんですが、まさにイラクで必要な国民的な和解と融和に逆行して、むしろ対立を永続化しかねない、そしてかえって治安の悪化を招くという指摘もあるわけで、そういう問題だというふうに私は思うんです。

 そこで、イラク情勢の安定化を目指した国際会議が五月三日からエジプトで開かれる。大臣も出席を予定されているというふうに伺っておりますが、イラク政府が治安の回復に向けて宗派や民族間の融和を実現できるように国際社会が後押しすることが会議の目的だというふうに言われております。

 総理も中東を歴訪されるということでありますが、こういう中で、昨日朝日新聞に寄稿があって、エジプトの駐日大使、バドル大使が寄せられております。ここで、「多くの大国と違って、日本は中東で植民地主義や内政干渉の過去を持たないため、この地域に前向きな影響を与えることができる誠実で公平な大国だと受け止められている。」日本の政治、外交での積極関与を強く期待するという旨を言われております。

 私は、日本政府にはこういう期待にこたえる必要があるんじゃないか、難民をめぐる事態が深刻で、支援をする、千三百五十万ドルにとどまらないというふうに言われるのであれば、その原因を取り除く努力こそ本当に真剣にやるべきだし、イラクにおける国民的和解と融和に向けた国際社会の協力と外交努力に専心する、むしろこういうことこそ本当に日本に求められているし、期待にこたえる道だと思うんですが、この点、どういうふうにお考えでしょうか。

麻生国務大臣 御指摘のように、シャルムエルシェイクという、保養地としては有名ですけれども、同時に例のかつてテロのあった場所としても有名なところですけれども、このシャルムエルシェイクで五月三日、これまでイラクと国境を接する周辺六カ国によります会議で、これで七回目か八回目、もっとあったと思います。これに今度G8を広げたところでやるということになって、日本もこれに要請をされておりますので、それに参加をすることにいたしております。

 今、中近東におけます日本という国に関するイメージを言われましたけれども、簡単に言えば、少なくとも、いろいろな要人と会って共通して言っていることは、大体要約すると三つになるんだと思います。少なくとも、欧米文明に余り汚染されることなく、そこそこ文化、伝統、歴史を維持しつつ、近代工業化社会に成功し、資源がないのに世界第二の経済大国、そして、中近東に全くこれまで直接的、間接的な関係はほとんどなかったというのが、我々によく聞かされる日本に対するイメージであります。

 したがって、その中で、これまで利害関係が、一九四八年、ある日突然にここへイスラエルなんていうようなことに直接関係したわけではありませんし、そういった関係からいいますと、影響としては最も公平に見てもらえるのではないか。

 エジプト大使というのは、日本語もできますし、大分長いこと日本にいますのでいろいろ話をすることもありますが、そういったイメージを持っておりますので、日本としてはそれを使って、今、パレスチナの中のジェリコというところの近くに平和の回廊というのを、今度正式に打ち上げて、イスラエルのシモン・ペレスも呼んで賛成した上で、既に調査団を送って、開始をしております。

 六月にはやりたいと思っておりますが、そういった形で、日本だから丸々向こうも受け入れてくれるという部分というのを利用して、やはり貧困と絶望がテロの温床になる一番大きな理由だ、私はそう思うところがあるものですから、ぜひその点で、今言われましたように、手伝える部分というのは、全然別の角度からの切り口があるのではないかという御指摘は、私もそのように考えております。

笠井委員 時間が来ましたから終わりますが、やはり私、今、イラク情勢の打開と難民、避難民問題の根本的解決のためには、期限を切って多国籍軍が撤退するということが何より必要だというふうに思っております。日本政府が難民、避難民への緊急人道支援を積極的に行うのは当然だと思うんですが、他方で、いまだにイラク戦争は正しかったというふうに、反省もしないで自衛隊派遣を二年間も延長するのでは本当の解決にはつながらない。

 空自の問題でも、九割近くが掃討作戦に参加する武装米兵等の輸送をしているという実態も政府からも明らかになりましたけれども、そういう形での軍事支援というのではなくて、それをやめて、やはり緊急人道支援に力点を置いて日本の支援のあり方を根本的に見直すべきだ、そういう時期に来ているということを申し上げて、質問を終わります。

山口委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社民党の照屋寛徳です。

 航空自衛隊は、四月二十六日から二十七日の両日、米空軍のF22Aラプターと航空自衛隊のF15などとの共同訓練を行うようであります。F22Aラプターの嘉手納基地配備により、周辺住民は不安を覚え、爆音被害の激化などに苦しんでいる中での航空自衛隊の米軍との共同訓練は、許されるものではありません。

 特にこの共同訓練は、当初、四月十六日から十九日の間と通告されておりましたが、突如延期されたもので、参議院補選と宜野湾市長選挙が終わるや否や強行実施されるのは、両選挙を意識し、結果として県民を愚弄するもので、断じて容認できません。

 そこで尋ねますが、共同訓練の実施目的を具体的かつ詳細に明らかにしてもらいたい。特に、防衛省において、航空自衛隊の次期主力戦闘機選定との関係で、F22戦闘機の性能確認が目的ではありませんか。

山崎政府参考人 F22との訓練の目的でございますが、これは戦術技量の向上と日米共同対処能力の向上を目的として従来から行っている一環でございます。

 訓練の参加部隊につきましては、航空自衛隊の方からは、南西航空混成団、それから第八三航空隊、南西航空警戒管制部隊、第六航空団……(照屋委員「いや、実施目的に絞って聞いている」と呼ぶ)実施目的は、戦術技量の向上及び日米共同対処能力の向上を目的としております。

照屋委員 次期主力戦闘機の機種選定とは本当に関係ありませんか。

大古政府参考人 お答えいたします。

 防衛省におきましては、F22が現有のF4EJの後継機の候補機種の一つになっているのは事実でございます。

 ただ、今回の共同訓練の目的については、ただいま運用局長が答えましたように、あくまでも戦術技量の向上ということでございます。

照屋委員 共同訓練では、二十七日に戦闘機が敵味方に分かれて模擬空中戦を展開するようでありますが、模擬空中戦は、どのような方法で、そして使用基地及び訓練空域は具体的にどの場所で行われるのか、明確にお答えください。

山崎政府参考人 まず訓練空域でございますが、沖縄周辺に定められております米軍に割り当てられているW179、173、172等の訓練空域でございます。

 それから、模擬空中訓練ということにつきましての詳細については事柄の性格上控えさせていただきますが、戦術技量の向上ということを主眼として訓練を行うということで御理解をいただきたいと思います。

照屋委員 ところで、在日米軍トップのライト司令官は、昨日、嘉手納基地を来月離れる予定のF22について、再配備の可能性が十分あるとの認識を示し、その旨記者会見しました。けさの地元紙で大きく報道されて、沖縄現地は大変な騒動になっております。

 F22の再配備や共同訓練によって、中国など周辺諸国が軍事的警戒を強める可能性が高まると思いますが、麻生大臣の見解を求めます。

麻生国務大臣 最初のライト在日米軍司令官の話については、報道でそのようなことがあったということは承知をいたしております。

 ただし、米国側からは、F22のいわゆる展開期間というものにつきましては、本年の二月からおよそ三カ月間、大体五月末ぐらいまでということを私どもとしては聞いておりますので、今、F22を恒常的に沖縄に配備するというような話を聞いておるということはございません。

 それから、二つ目の御指摘のありました、今回の共同訓練等々の目的につきましては、先ほど防衛省の方から話がありましたように、軍事技術の向上というものと、日米の軍事能力の向上ということを目的として実施しているものでありますので、当然のこととして、特定の国を想定しているわけでもありませんので、周辺諸国からいろいろな関係で問題があるという御心配をいただいているようなことを、私どもは全く期待をいたしておりません。

照屋委員 今、麻生大臣は、ライト司令官の発言については報道で知ったということでございまして、私もけさの地元紙の報道で知って驚いておりますが、これは、ライト司令官の発言については質問通告の段階ではわかりませんでしたので、あえてこれ以上聞きませんが、要するに、嘉手納基地周辺の住民としては、当初暫定的な配備である、こういうふうに言われておったのが、ライト司令官の発言によってF22の配備がかつてのB52戦略爆撃機のように嘉手納基地に常駐化するのではないか、こういう不安が関係自治体や住民の間に高まっておるのであります。

 そこら辺を、麻生大臣として、地元の住民の不安な気持ちもしっかり押さえて、私は、正式に米軍から通告等がありましたら、やはり主権国家として慎重な対応をしませんと、沖縄だけにどうも基地負担が強化されるということになりますので、通告はしておりませんが、大臣の決意をお聞かせください。

麻生国務大臣 この話は、先生と私と情報を得た時期も情報のソースも多分同じでありまして、報道をもって承知をしておりますので、その報道というのは大体外れることもいっぱいありますので、ちょっと正直申し上げて、今の段階でお答えのしようがないんですが、少なくとも、私ども、従来どおり、五月末には暫定期間が終わるものと承知をいたしておりますので、ちょっと仮定の問題でございますが、この種の話は、急遽延びてくるような、今の段階でそのような情報には全く接しておりませんので答弁のしようがないところでございますが、お気持ちの方はよくわかっておりますので、その辺も踏まえて対応してまいりたいと存じます。

照屋委員 それでは次に、防衛省は、中国軍の航空機や艦艇の情報を収集、分析するため、沖縄県宮古島市に新型地上電波測定施設をつくるようですが、施設の規模、着工時期、完成時期についてお尋ねします。

大古政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の施設については、南西方面の情報収集体制を強化するため、平成十七年度から宮古島において整備中のものでございます。特定の国を対象とするものではございませんけれども、これにつきましては、平成二十年度に施設の完成ということを目指しているところでございます。

 施設としては、いわゆる電波収集施設でございますので、電波のアンテナの施設、それを作業する局舎、それから隊員が寝泊まりする隊舎、こういうことから考えているところでございます。

照屋委員 この施設は新規につくられるんですか。それから、先ほど私は規模を聞いたんですが、規模についても丁寧に答えてください。

山口委員長 大古防衛政策局長、時間が参っておりますので、的確にお願いします。

大古政府参考人 ちょっと建物の規模については数字を持ち合わせておりませんけれども、宮古島にレーダーサイト、これは従来からありますけれども、そこの敷地に新しい電波測定施設を建設するものでございます。

照屋委員 終わります。

     ――――◇―――――

山口委員長 次に、武力紛争の際の文化財の保護に関する条約の締結について承認を求めるの件、武力紛争の際の文化財の保護に関する議定書の締結について承認を求めるの件及び千九百九十九年三月二十六日にハーグで作成された武力紛争の際の文化財の保護に関する千九百五十四年のハーグ条約の第二議定書の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 政府から順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣麻生太郎君。

    ―――――――――――――

 武力紛争の際の文化財の保護に関する条約の締結について承認を求めるの件

 武力紛争の際の文化財の保護に関する議定書の締結について承認を求めるの件

 千九百九十九年三月二十六日にハーグで作成された武力紛争の際の文化財の保護に関する千九百五十四年のハーグ条約の第二議定書の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

麻生国務大臣 ただいま議題となりました武力紛争の際の文化財の保護に関する条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明させていただきます。

 この条約は、昭和二十九年五月にハーグにおいて採択されたものであります。

 この条約は、文化財の保護のため、文化財に対する敵対行為を差し控えること等、平時及び武力紛争の際にとる措置等について規定するものであります。

 この条約は、文化財保護のための国際的な枠組みの主要な部分であります。我が国がこの条約を締結することは、文化財保護の分野における国際協力に寄与するとの見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、武力紛争の際の文化財の保護に関する議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明させていただきます。

 この議定書は、昭和二十九年五月にハーグにおいて、武力紛争の際の文化財の保護に関する条約とともに採択されたものであります。

 この議定書は、占領地域からの文化財流出を防止し、流出した文化財については、締約国が、管理、返還すること等について規定するものであります。

 この議定書は、武力紛争の際の文化財の保護に関する条約とともに、文化財保護のための国際的な枠組みの主要な部分でもあります。我が国がこの議定書を締結することは、文化財保護の分野における国際協力に寄与するとの見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、千九百九十九年三月二十六日にハーグで作成された武力紛争の際の文化財の保護に関する千九百五十四年のハーグ条約の第二議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 この議定書は、平成十一年三月にハーグにおいて採択されたものであります。

 この議定書は、武力紛争の際の文化財の保護に関する条約を補足し、その実効性をより高めるためのものであります。その内容は、平時及び武力紛争時に締約国が負う義務を具体化し、武力紛争の際に文化財を攻撃の対象とすることなどの特定の行為の犯罪化、裁判権の設定等につき規定するものであります。

 この議定書は、武力紛争の際の文化財の保護に関する条約とともに、文化財保護のための国際的な枠組みの主要な部分でもあります。我が国がこの議定書を締結することは、文化財保護の分野における国際協力に寄与するとの見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。

 以上三件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いを申し上げます。

山口委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る二十七日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十一分散会


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