衆議院

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第13号 平成19年5月18日(金曜日)

会議録本文へ
平成十九年五月十八日(金曜日)

    午前十時三十分開議

 出席委員

   委員長 山口 泰明君

   理事 小野寺五典君 理事 嘉数 知賢君

   理事 三原 朝彦君 理事 やまぎわ大志郎君

   理事 山中 あき子君 理事 長島 昭久君

   理事 山口  壯君 理事 丸谷 佳織君

      愛知 和男君    伊藤 公介君

      猪口 邦子君    小野 次郎君

      河野 太郎君    篠田 陽介君

      新藤 義孝君    鈴木 馨祐君

      丹羽 秀樹君    松島みどり君

      三ッ矢憲生君    山内 康一君

      山本ともひろ君    笹木 竜三君

      田中眞紀子君    長妻  昭君

      前原 誠司君    笠  浩史君

      東  順治君    笠井  亮君

      照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   内閣官房副長官      下村 博文君

   外務副大臣        岩屋  毅君

   厚生労働副大臣      石田 祝稔君

   外務大臣政務官      松島みどり君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  斉藤  実君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  伊佐敷眞一君

   政府参考人

   (内閣法制局第一部長)  山本 庸幸君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    米村 敏朗君

   政府参考人

   (公安調査庁次長)    北田 幹直君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 木寺 昌人君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 長嶺 安政君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 猪俣 弘司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 伊原 純一君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   中根  猛君

   政府参考人

   (防衛省防衛参事官)   小川 秀樹君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 鎌田 昭良君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  山崎信之郎君

   外務委員会専門員     前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十八日

 辞任         補欠選任

  宇野  治君     山本ともひろ君

  高村 正彦君     丹羽 秀樹君

同日

 辞任         補欠選任

  丹羽 秀樹君     高村 正彦君

  山本ともひろ君    宇野  治君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約の締結について承認を求めるの件(条約第八号)


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     ――――◇―――――

山口委員長 これより会議を開きます。

 核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官木寺昌人君、大臣官房審議官長嶺安政君、大臣官房審議官猪俣弘司君、大臣官房参事官伊原純一君、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長中根猛君、内閣法制局第一部長山本庸幸君、警察庁警備局長米村敏朗君、公安調査庁次長北田幹直君、防衛省防衛参事官小川秀樹君、大臣官房審議官鎌田昭良君、運用企画局長山崎信之郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山口委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長島昭久君。

長島(昭)委員 おはようございます。民主党の長島昭久です。

 きょうは、核テロ防止条約の質疑をさせていただきます。

 今まさに人類はテロとの闘いの真っただ中にあるわけですけれども、幸いなことに、これまで放射能物質を使ったテロというのは起きておりません。九・一一のテロは、航空機を使う、犯人が使ったのは刃物とかそういう非常に原始的な手段でありましたけれども、それでも三千人の方々が一瞬のうちに亡くなられる。日本人も二十四名その中に含まれていた。それが最初かと思えば、実は日本が、九五年には地下鉄サリン事件でまさに大量の人たちが巻き込まれる、そういう事件を経験しているわけです。

 放射能物質との関連は、もう九〇年代の半ばから言われておりました。私もアメリカにいたころ、地下鉄サリン事件の問題が日本以上にアメリカで議論されていたのを非常に印象深く思い出すんですが、実は二〇〇二年の六月に、アメリカの国内で、いわゆるダーティーボムという、放射能物質を通常の爆薬で爆発させる、そういうテロ攻撃を計画していたということでアルカイダのメンバーが逮捕された、こういう事件もございました。未然に防いだわけでありますけれども、そういう意味では、この核テロ防止条約というのは非常に重要な、意味のある条約であると私は思います。

 きょうしっかり質疑をして、我が国も締約国になる。今、五月上旬現在で締約国が二十カ国ということでございますので、できれば二十二カ国という発効の最低条件に日本が加わることによって、これをぜひ発効させていきたい。このことを冒頭に申し上げて、幾つか質問をしたいというふうに思います。

 この核テロ防止条約は、九六年に国連総会で採択をされた国際テロリズム廃絶措置決議というものを契機として、翌年の二月から国連において交渉が行われた。同時に行われた条約で、もう既に発効しているものに爆弾テロ防止条約というものがございます。これは、爆弾テロの方はアメリカが提案国、そしてこの核テロ防止条約についてはロシアが提案国ということで国連において交渉が行われたんですけれども、採択のタイミングが随分ずれていまして、爆弾テロ防止条約は九七年の二月から国連において交渉が行われて、もうその年の十二月に国連総会で採択をされております。ところが、核テロ防止条約の方は、それから実に八年後の二〇〇五年の四月に採択を見ています。

 この違いは一体何なのか、ぜひお答えをいただきたいと思うんですが、交渉が開始されてから採択されるまでに、なぜこの核によるテロリズムを防止しようという条約の方が非常に時間がかかってしまったのかということを冒頭にお尋ねしたいと思います。

猪俣政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、まさに、核テロ防止条約、それから爆弾テロ防止条約につきましては、採択された時期が異なっております。

 特に核テロ防止条約に関しましては、テロ防止関連条約を含む他の条約との重複とか整合性の問題について加盟国間に意見の相違があったということで断続的に交渉が行われたためでございまして、もちろん、交渉の中身によって当然期間は異なるわけでございますので、そういった意味で、意見の相違があったがために少しおくれたというふうに承知しております。

長島(昭)委員 ロシアが提案したからおくれたとか、そういう話ではないんですね。

 というのは、ロシアは、ソ連邦が解体をされてから、残存核兵器が、ウクライナとかあるいはベラルーシといった国、カザフスタン、そういう国に残っていた。それを、処理するというか解体してきちんと廃棄をしていく、そういうプログラムをアメリカの上院議員のお二人、民主党のサム・ナン、それから共和党のリチャード・ルーガーという、サム・ナン議員はもう引退されていますけれども、非常に外交面では重鎮と言われているこのお二人が、二人で法案を提出して、ナン・ルーガー法というのを成立させて、そしてナン・ルーガー計画によって、このロシアにおける、つまり、旧ソ連邦における核の廃棄について相当巨額のアメリカの税金を投入してやっていた。こういう経緯がございますので、その点は、アメリカもロシアも非常に協調的な、当時はクリントン政権でありましたけれども、そういう時期だったというふうに思います。

 そういう中で核テロ防止条約が、二〇〇五年から本格的に、国連総会で採択をされ、議論になって、その年の九月十四日から署名のために開放される。我が国は、もう直ちに小泉総理が署名をいたしました。今百十五カ国が署名を完了しておりまして、発効には二十二カ国が必要ということで、今働きかけをしている。

 その働きかけなんですが、特に我が国は、唯一の被爆国でもあり、大量破壊兵器についてはこれまでもずっと積極的な取り組みをしてきたわけですけれども、G8サミットでもこのことについて広く国際社会に対して呼びかける、締約を急ぐことを呼びかけている、そういう事実もあるんですけれども、日本として、特にどんな努力をしてきたか。きょうここで、委員会で締約のための議論がなされるわけですけれども、それに向けて、各国に対する日本としての働きかけ、どんなことを主にしてこられたのか、ぜひ御説明をいただきたいと思います。

麻生国務大臣 日本といたしましては、二〇〇五年の九月の十四日に署名のために開放されました直後の九月の十五日に、小泉総理がこの条約に署名をしておられます。その後、昨年の七月のサンクトのサミットにおいて、一連のいわゆる国連のテロ対策プログラムの強化に関するG8の声明の発出とか、昨年九月のIAEAの総会におきます核セキュリティーに関する決議などの採択を日本としては積極的に推進して、いわゆるテロ防止条約の早期発効の重要性というものを指摘しております。

 特に、アジアに対しましては、アジア諸国に対して、昨年の十一月に、アジア諸国における核セキュリティー強化に関するセミナー、これは日本が主催して開催をしたんですが、こういったことによりまして、条約の重要性というものを非常に強調することによって、アジアの締結等々を促す等々の努力をさせていただいております。

長島(昭)委員 ありがとうございます。引き続き、働きかけを強めていただきたいというふうに思います。

 今大臣がお触れになった去年のサンクトペテルブルクのG8サミットにおいて、今お触れいただいたステートメントがあるんですけれども、そこにもう一つ書いてあるんですね。「我々は、テロ関連の安保理決議、その他国際テロ防止関連条約に規定された広範な法的枠組を補完する「包括テロ防止条約」の起草を迅速に完了させるようにとの国連総会に対する我々の要請を再確認する。」と。

 これまでも、テロ関連では十二本の条約を我が国はもう既に締結をして、その十二本はすべて発効しておりますけれども、それに加えて十三本目、この核テロ防止条約、これも間もなく発効ということになります。それに加えて、今紹介をしました包括テロ防止条約、これはどういう中身を念頭に置いたものなのか、外務省、ぜひ御説明いただきたいと思います。

長嶺政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員御指摘になりました包括テロ防止条約案でございますが、これはインドが提案をいたしまして、二〇〇〇年の九月より国連の第六委員会におきまして交渉が開始されてきておるものでございます。

 もちろん、これはまだ交渉中でございますので内容が確定しておるわけではございませんけれども、条約案の概要といたしましては、既存のテロ防止関連条約が特定の手段でありますとか特定の方法によるテロ行為を対象としておりますのに対しまして、この条約案では、手段や方法のいかんを問わず、広くテロ行為全般の容疑者についてこれを国内で犯罪化する、あるいは国際的な協力の枠組みを構築するということを目途に、今、内容を確定するための交渉が行われているものでございます。

長島(昭)委員 今、専らアメリカが主導する形でテロとの闘いということでやっておりますけれども、我が国は、先ほど冒頭にも申し上げましたように、地下鉄サリン事件というテロの被害国でもございます。ぜひ、この包括的なテロ防止条約、我が国が強力なリーダーシップを発揮して、国際社会に呼びかけて、採択の方向へ導いていただきたいというふうに思います。

 それともう一つ、これは実は我が国も一役買っていると承知しておりますけれども、二〇〇五年の七月に、核物質の防護に関する条約の改正案、これを我が国はたしか共同提案をしているというふうに認識しておりますけれども、これは、現行条約が国際間を輸送している核物質に対しての防護措置を規定していたのに加えて、例えば、我が国のように、平和目的で使用される核物質の国内における使用や貯蔵、輸送それから原子力施設、こういうものに対する防護措置をするように、こういう条約改正がなされようとしているわけです。

 この点について、我が国の取り組み、そして、これもまだ我が国は締結をしていない、つまり、国会の承認を受けていないと思いますけれども、今後の外務省の国会に対する承認を求める行為、その他どういう取り組みをするおつもりがあるか、御見解をいただきたいと思います。

麻生国務大臣 御存じのように、テロというのは、いかなる理由等々によっても正当化されることはないというものなんだと思って、断固としてこれは非難すべきだというのを、日本は従来からその立場を取り続けてきております。もう御存じのとおりです。

 国際的にも、このテロの脅威の高まりなどを受けて、いわゆる核物質及び原子力施設の防護を強化すべきだという意識が高まってきておりますのは御存じのとおりでありまして、日本でも同様に、原子力発電所の多いところなどなど、いろいろその対応をしているところです。

 これらを踏まえまして、日本としては、テロ対策の観点から、テロ関連防止条約の一つでありますこの核物質防護条約の改正というものを早期に締結する考えでありまして、今申し上げたように、情勢が随分変わってきておるということでありますので、この条約上の義務をいかに実施するかにつき目下検討を行っているんですが、これはたしか八十四カ国中九カ国だったかな、二〇〇七年の五月四日時点で締約国数は九カ国になっております。アルジェリア、オーストラリア、ブルガリア、クロアチア、リビア、ナイジェリア、ルーマニア、セーシェル、トルクメニスタンの九カ国であります。

 そういった意味で、この段階は、三分の二が批准書を寄託したという状況から三十日以内に発効することになっておりますので、現行、この条約の締約国数が百二十六カ国でありますので、八十四カ国が批准書を寄託する必要があるという意味で、今からこれはかなりの努力が必要であろうと思っております。

長島(昭)委員 ありがとうございます。

 核を初めとする大量破壊兵器、それからテロ、この二つは我が国が特に、これまでも被害に遭っている国ということで、世界に対してリーダーシップを発揮していく、そういう分野であると思いますので、ぜひ、外務大臣のリーダーシップに期待したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 条約の中身についてはそれほど争うところもございませんが、きょうはせっかくの機会をいただいておりますので、最近動きがあるようなないような北朝鮮の問題について、引き続き質疑をさせていただきたいと思うんです。

 大臣、一週間前というか先週の水曜日、この委員会で大臣に、北朝鮮の動き、つまり、今BDAの問題で暗礁に乗り上げているわけですけれども、これについて、もう少し北朝鮮に対して効果がある形で、彼らをもう一度六カ国協議のことしの二月十三日の合意を履行する方向に持っていけないものか、こういう議論を先週の水曜日にさせていただきました。

 そこで大臣の方から、基本的には、BDAの問題、送金の問題は、六カ国合意の履行とは関係ないと、これが一点。がたがたしていることはもう御案内のとおりでありますけれども、私は、もう少し日米を中心に圧力をかけた方がいいんじゃないか、こういう御指摘をさせていただきましたけれども、その点について、私もそう思っておりますというふうにお答えをいただいて、これはちょっと速記録から引用しますけれども、「これは直ちに今やるか、今の案でいくと、何が何でも今週いっぱいで決まらなかったら日本でやっちゃうのか、向こうがあくまでやると言えば、一週間ぐらいかな、その答えとしては。」大臣のお口から、一週間ぐらいかな、忍耐も限度があるという日米首脳会談での日米の首脳からのコメントもありますけれども、大臣からは先週の水曜日、一週間ぐらいかな、こういう御発言がありました。もう既に一週間を過ぎているわけですけれども。

 そうしますと、十五日の日に北朝鮮から声明がありました。外務省のスポークスマン、これは恐らく大臣もごらんいただいていると思いますけれども、ここには、資金の送金が実現をすれば、我が方は直ちに二・一三合意に基づく核施設の稼働中止措置を講じる用意がある、こういうふうにはっきり言っている。なるほど、随分プレッシャーを裏でかけていたのかな、こう思っていたんですが、そのパラグラフのちょっと上にこう書いてあるんですね。これは訳が正しいかどうかわかりませんが、従来のように資金を自由に送金することができるようにせよというのが我が方が最初から要求した制裁解除であると。

 クリス・ヒル次官補が随分頑張っておられるのは御案内のとおりであります。しかし、彼の与えられた権限というのは、あの例のBDAにあった二千五百万ドルの資金の送金について、これはおまえに任せようということで恐らく米政府内で合意があり、アメリカの財務省も、仕方ない、この二千五百万ドルを北にやって、それでもっと重要な国際的利益あるいは国益を実現できるなら、つまり核の放棄に北朝鮮が向かうんであれば、まあそれは特例としてしようがないだろうということで、二千五百万ドルの送金について、今や、米国内の銀行を使ってやろう、ここまでやってきたんです。

 そうすれば北朝鮮は動くとみずから言っていますが、しかし、従来のように資金を自由に出し入れできるというのは、北朝鮮の考えている送金という行為と、アメリカ政府が今無理無理で例外的にクリス・ヒル次官補に与えた権限の中でやろうとしている送金という行為がもしかするとずれている可能性があるんですが、その点、外務大臣、どういうふうに把握しておられますか。

麻生国務大臣 先週の長島議員に対する答弁を今引用されましたけれども、それと同じセンテンスで、「送金ができて二千五百万USドルが入っていった後、直ちに初期段階にすると向こうは言っていますよ。言っていますけれども、するという保証はない、私はそう思っています。」と答えておると思います。

 私の意見を言わせていただければ、これは、今週の十五日に北朝鮮のいわゆる外務省のスポークスマンが、今言われたような話で、第三国にある我が方の銀行口座に送金するための作業が現在進行中である、これはずっと同じことを言っておるんですけれども、進行中であると言うております。二・一三に基づいて直ちに稼働中止措置を講ずる用意があると言っておりますのと同じスポークスマンが、今言われたように、最初から要求した制裁解除であると言うておる話です。だから、前から申し上げましたように、この種の話は、最初は凍結解除だったわけですから、次は送金になって、今度はすべての制裁解除である、だんだん要求がエスカレートしているので、何となくどこかの手口と似ているような感じがしますけれども、少しずつ要求を上げてくるという話なので、こういった話はなかなか私どもとしてはいかがなものかというような感じがしておりますので、最初からこの種の話はいかがなものかと申し上げてきております。

 加えて、アメリカ時間の十七日に、これはアメリカのワコビアという銀行なんですが、その銀行は、我々はアメリカの国務省から北朝鮮との間で交渉の対象となっている他の銀行にある資金を銀行間送金することにつき協力を依頼されている、我々はこの依頼を検討することに同意、我々とさまざまな政府関係者との間の議論が継続中であるというステートメントを顧客に対して出したということを我々としては承知をしておるんです。また、このワコビアというのはこのステートメントの中で、すべてのアメリカの法律の規則を遵守します、規制当局より適切な承認なしにいかなる依頼にも同意しないということを言うております。

 このワコビアというのは、ノースカロライナにあります銀行で、全米規模の大手の銀行の一つですけれども、こういった話をしておりますので、私どもとしては、この種の話は、アメリカは、中国、他国に頼んだけれどもだめで、ついにアメリカのということになりますと、これはアメリカの財務省と国務省との間でしかるべく話がつきつつあるのかなという感じがしますが、しかし、仮についたからといったって、さっきのセンテンスのもう一個前のセンテンスの、すべての制裁解除がという話になりますと、これはBDAだけじゃだめ、ほかにもという話でまた一歩上がるということになりかねないというようなところになって、アメリカは果たしてBDAの話でもうこれ以上譲れないということになって、日本と一緒に圧力のレベルをもう一歩上げようと向こうがしてくるのか、そこらのところはちょっと今の段階で何とも申し上げられる段階ではありません。

 ただ、このワコビアの話がどういった形で決着がつくのか、今間違いなくそこに進んでおりますので、ちょっとこちらもそこの点は待たないかぬなとは思っております。少なくとも、これでうまくすっといって、向こうが二・一三の話に乗ってくる可能性はゼロとしませんので、そういった段階では、ちょっとここらのところのタイミングのはかり方は難しいと思っております。

長島(昭)委員 非常に包括的に御説明をいただいたと思います。

 ただ、中国やイタリアやロシアにやってくれと言って、向こうに断られた。なぜ向こうが断ったかというと、それは、アメリカの財務省がBDAとアメリカの国内銀行の取引を全面禁止した、そういう措置が生きているからですよね。

 これを、今そのワコビアという特定の銀行を使って、何とか特別の特別措置を、恐らく国務省は必死になって、このまま送金もできないで全部ポシャるということになるとメンツ丸つぶれですから、特別の特別で、アメリカの財務省に何とかこれだけは特別目をつぶってくれということで多分お願いしていると思いますが、しかし、さっき北朝鮮がハードルを上げたと大臣はおっしゃった。財務省が自由に出し入れできるようにするつもりがあるとは思えないんですね。つまり、この金融制裁を財務省が解除するというのは、もうこれは相当大きな政策転換でありますから。しかし、この間のアメリカの動きを見ると、そういう政策転換もないことはないのかなという不安もありますけれども、そこは恐らく最後の一線として彼らも踏ん張るんだろう、こういうふうに思うんです。

 そのときに、まさに大臣が今まで一貫してこの種の取引には懐疑的なコメントを繰り返しておられたのですけれども、それではどうするか、こういうことになるわけですね。それで私は、前回、国連決議一七一八の履行の厳格化というものを国際社会に対して呼びかける必要があるんじゃないか、こういう提案をさせていただきました。外務大臣も、それはアメリカとも既に話し合っておるよ、こういうお話でありました。

 私は、前回、外務省に資料を作成してくれとお願いしたら何だか失礼ながらいいかげんな資料が出てきてと、ちょっと質疑の中で毒づきましたところ、その後すぐに外務大臣からきちんとした資料が提出をされまして、感謝を申し上げます。きょう、それを皆さんにお配りをさせていただきました。

 こういうことなんですね。つまり、六十八カ国一機関、あの決議後、この決議を履行するために国内法を整備したりしているんですけれども、国内法を整備した国は実は三十一カ国にすぎない。そして、それに加えて、今やっていますよという国が二十七カ国。これを見ていただいてもわかりますように、例えばタイなんかについてはほとんど具体的な措置の記述がないとか、ロシアは提出しているんだけれども具体的な記述が全くないとか、アメリカ、NATO諸国あるいはオーストラリア、韓国、日本、こういう国々はかなりまじめにやっているのが見受けられるんですが、中国は「不公表」「不公表」「不公表」。前回、たしか麻生大臣は、中国は全くやらないかと思ったら、意外とそうでもないよというお話をされていました。それからロシアも、これだと全く不透明。

 こういうのは公開できないものなんでしょうか。どうしてこういうものの実態が我々は把握できないんでしょう。これは、国際社会、要するに国連の関係者でも把握できないのか、それとも、これはイラク特でもさんざんやりましたけれども、こういう日本の国会ではそういう情報は提供できないのか、この辺はどういうことなんでしょうか。

麻生国務大臣 中国、韓国は北朝鮮の隣国でもありますし、いわゆる陸路がつながっている部分もこれあり、いろいろな意味で私どもとしても関心の高いところなんですが、この履行ということに関しましては、対外的に明らかにしていない、公表していないということでありまして、やっている内容はちょこちょこ知らないわけではありません。ただ、公表していないというところでありまして、北朝鮮との外交関係やら何やらを配慮して言わないというところだろうと思いますが、私どもとして、その内容を、それなりの努力はされているということを知らないわけではありませんとしかちょっと申し上げようがないんです。

 韓国につきましては、核、ミサイル、それからその他の特定品目の輸出禁止が実施済みというところまではわかっておりますが、では、奢侈品はどうだといえば、これは輸出禁止措置は実施していないというのが韓国等々ということになっております。

 いずれにいたしましても、この対応につきましては、国によっていろいろ、まちまちとは言いませんけれども、差があるというのは事実であろうと存じますので、ここらのところは今後さらに詰めていかねばならぬところの議題の一つだと思っております。

長島(昭)委員 ここは、大臣、非常に私は重要なポイントだと思います。

 報道を読む限りなんですが、イタリアの国連大使スパタフォーラという方が安保理の制裁委員会の委員長をされて、そういう委員会が動いているんですけれども、実は、米朝がベルリンで交渉を始めたあたりからこの制裁委員会の動きも何となくフリーズして、北朝鮮の核がフリーズするんじゃなくて、こっちの制裁の委員会の方がフリーズしてしまうと、これは冗談じゃないという形だと思うんです。

 事実関係ですけれども、制裁委員会がこの決議にのっとって定めるべき凍結すべき資産あるいは渡航禁止の対象リストというものを作成することになっていたわけですね。ところが、それが議論すら始まっていないような状態だという報道もあるんですが、この制裁委員会の動きが鈍いことについて外務大臣がどういう御見解をお持ちか、承りたいと思います。

麻生国務大臣 長島先生、これはどういうような理由でそうなったかといえば、多分、アメリカと北朝鮮のBDAに関しての直接取引等々の話が全体としての話をとめることになって、これが動かない限りはその他のものが全然動かないということになった。六者協議の二・一三の話が、BDAという、これとは別の話で事がとまっているという状況が一つ。それのためにベルリンで米朝で交渉をやったことに関しまして、アメリカとしてはそれなりの努力だったんでしょうけれども、他国から見ていた場合は、その話は今まで交渉はしないはずじゃなかったのかということがいきなり動き始めたとか、いろいろなものもあるんだと思っておりますので、そういった意味では、これが動き始めるかどうか、このBDAという、我々としては予定外の話が入ってきたんですが、北朝鮮としては最初からこれを企画していたかもしれませんし、ここのところは、ちょっと正直、私どもとして、どれが本当の理由なのかというのはよくわからないんです。

 いずれにいたしましても、このBDAの話が、遠からずこれは、ゼロにしてもゴーにしてもノーにしても、何らかの形で決着が一応つくと思われますので、その上で、今のイタリアの委員長が率いますこの委員会の対応というのをスタートさせてくれ、もうこれは決着したんだから、こっちはさせてくれという話をするか、もしくは、BDAが決着したから、だからといって、二・一三同士、初期段階の実施に移ってくるのか、ちょっとそこのところがいま一つよくわかりませんが、BDAの話がそこそこついて、二・一三の初期段階を実施しないということになった場合は、この委員会をどうしても動かしていただかないかぬということになるんだと存じます。

長島(昭)委員 お立場があって、全部をここでぶちまけるわけに大臣としていかない中で、今、今後の動きを予想できるような重要な御答弁だったと思います。

 つまり、当初は、二・一三の合意履行についてBDAは関係ないというのが恐らく日本の原則的な立場だったと思います。しかし、ここへ来て、もしかすると、さっきのアメリカのワコビアという銀行でうまくいきそうな、恐らく大臣のところにはそんな情報がもたらされているんでしょう。ですから、それがうまくいったにもかかわらず、二・一三合意について北朝鮮が履行をおくらせるようなことがあったら、日本政府としては、かなり強力なリーダーシップを発揮して、この制裁委員会を動かしていく、こういうようなプロセスを展望されているように私は受け取ったんですが、間違っていないでしょうか。

麻生国務大臣 基本的には、相手のある話なので、それは、動きますかと言われれば、なかなかお答えはしにくいところなんですが、しかし、少なくとも状況としては、我々として障壁だった部分が取り除かれたにもかかわらず、向こうが全然履行しなくて、今度は、BDAに限らずほかのもだとか、何とかかんとかと言っているから、そんなの全然話が違うじゃないかということに言えるものが出てまいりますので、私どもとしては、それを盾に、この委員会を動かしやすいということになることは確かだと思いますので、その線で努力したいと思います。

長島(昭)委員 ぜひ、よろしくお願いします。

 これは私どもも非常にもどかしく見ているんですが、やはり国連安全保障理事会の理事国、常任でも非常任でもいいです、理事国になることによって、かなり日本のイニシアチブというのが発揮できる環境があるのかなというのを感じるんですね。

 というのは、つまり、決議一七一八を採択したときの日本外交の動きと、その後のフォローアップで、もう非常任理事国から外れてしまった日本として、例えば独自のリストを提出するとかということがなかなか難しいということを仄聞しているんですけれども、この辺も私はぜひ大臣の方から国民の皆さんに説明をしていただいて、だから常任理事国入りをするということは日本の国益にとって非常に重要だということをぜひこれからも発信し続けていただきたい、このように思います。

 それで、北朝鮮が仮に動き出しても、本当に核の無能力化までいくのかなというのが、私はかねてから懐疑的な見方を実はしていたんです。二・一三の合意で決まったことは、寧辺の核施設の活動停止、封印、それからIAEA要員の復帰、そして、すべての核計画の一覧表についてほかの五者と協議をする、こういうことになっているわけですけれども、私も以前も申し上げましたように、初期段階に仮に北朝鮮が移行しても、恐らくこれからいろいろなハードルがあって、シャットダウンと書いてありますけれども、このシャットダウンの定義も別に決まっているわけじゃありませんから、シャットダウンして封印をすると言うんだけれども、これは九四年の米朝のアグリードフレームワーク、つまり合意枠組みというんですか枠組み合意というんですか、その枠組み合意で決められたフリーズ、凍結というのとどう違うのかというのは、我々も実ははっきりしない部分がありまして、そこを、つまり何が言いたいかというと、BDAの問題がとにかく片づいた、それでも北朝鮮が動き出さなかったら制裁のレベルを上げる、これはわかります。では、二・一三の合意に何らかの形で形式的に着手をし始めれば、我々としては、ボールは向こうにあるんだから、じっと向こうがやることを眺めていれば足りるのかどうか。

 仮に北朝鮮が初期段階の措置に着手し始めても、我々としては、どんどん前に進めていくために、ある程度プレッシャーを与えていく必要があると思うんですけれども、その辺の日米の間の話し合いというのはどのように進んでいるんでしょうか。

麻生国務大臣 これは、ディスエイブルメント、ディスマントルメントのあの例の言葉の話なんですが、いわゆる活動の停止及び封印というものの対象になります寧辺の施設というものは、例の文書に明記されている再処理施設に加えて、黒鉛減速炉、五メガだか十メガだか忘れましたが、五メガワットかな、五メガワットの主要施設が当然これは含まれていると考えられるんですが、いずれにしても、具体的な対象についてどうするんだ、おまえ、ちゃんとやっているのかという話は、いわゆる五つの作業部会のうちの非核化作業部会というところで明確化されていくことになるんだと思いますが、向こうがやりますと言ったからすんなりやる、そんな話じゃないと思っております。これはIAEAの監視員が入るという話なので、そういったところを使って実際にやっているのかという話をきちんと後を追って監視するということは絶対必要ですし、そういった意味でちゃんとやるということでいかないと、後の話で五万トン、九十五万トン、いろいろありますけれども、そういった話につきましてもとてもだめよという話をしていかないと事は進んでいかないんだ、私どもはそう思っております。

長島(昭)委員 なぜ改めてこのことを伺ったかというと、恐らく北朝鮮が二・一三の合意を動かし始めると、特に韓国ですけれども、おお、よくやったということで、韓国は既に重油の五万トンはもうプレッジしていますし、自分たちで全部やる、プラス四十万トンの食糧、肥料の支援を再開するということを南北の協議の中で既にもう発表している。オーストラリア、カナダも、人道支援をやる準備があるよというようなことを言い始めている。

 つまり、今大臣がおっしゃっていただいたこと、恐らく多くの国民も支持する、日本は恐らくそこでかなりまとまっているんだろうと思うんですけれども、その一方で、日本や、アメリカもちょっと最近怪しくなってきましたけれども、圧力をかけよう、きっちり履行させようというプレッシャーもある一方、片方では、いや、もうこれでうまくいきそうだ、韓国なんか、七月にも南北首脳会談かというようなそんな記事が出るほど、韓国ではとにかく、盧武鉉の、もうあと十カ月しか残りがない、何の成果もないけれども、自分が退任するまでにさすがに南北関係ぐらいはうまくやりたいという思いは多分あるんでしょう、彼の周辺については特に。

 だから、こういうことでオーストラリアやカナダまでお人よしにくっついていかれると、こっちが幾ら圧力を上げよう、上げようと言っても全く圧力がきいてこない、こういう状況になりかねないので、外務大臣としてぜひここは、国際社会が一致してできるように、その切り札がやはり一七一八だと思うんですね。一七一八は、これは国連決議で決まったことだ、各国が履行しなきゃいけないんだ、こういうことなんだから、もちろん人道援助はいいでしょう、しかし、何となく雪解けムードが高まっていくような方向にならないようにぜひしていただきたいんですが、その点、大臣、いかがでしょう。

麻生国務大臣 これは昨年の六者協議の中でも日本として言い続けているところですけれども、他の四カ国と違って日本の場合は、ミサイル、核プラス拉致という問題を私どもとしては抱え、韓国の場合はこれを声を大にして言われませんけれども、日本としては、政府が拉致の問題を正面から取り組んでいる唯一の国だと思いますので、その点が忘れられてはいかぬところだと存じます。

 したがいまして、この点に関しましては、対話と圧力とかあめとむちとか、いろいろな表現をこれまでも使ってきておりますけれども、少なくとも我々としては、圧力という部分をなしに対話は進まないというのは、これまでの経験則から私どもとして理解をしているところです。

 きのう、東側、西側、それぞれ一日とはいえ一応機関車を動かしたという、あの機関車を動かしただけで何の意味があるかという感じがしますし、あれが経済の交流にというような話なら、それはずっとしょっちゅう動かしておかないかぬ話なんですけれども、単線が一日一往復してそれで終わりという話ですから、私どもとしては、それが何を意味するのか。今まであれは、韓国は動かしたい、北朝鮮はノーと言い続けてきたわけですから、それが数時間とはいえ一応動いたというのだけをもって、いろいろテレビの画像的にはおもしろい絵かもしれませんけれども、現実、経済とかそういったものにはほとんど影響のないものだと思います。

 したがって、あとは長島先生御懸念されるように、雰囲気がどうなるかというところにどういう影響を与えるかというところが北側のそれなりの計算なんだとは想像いたしますが、しかし、現実問題として、経済というものが最終的に回り回って戻ってきますけれども、少なくとも、現実、日本の経済力の大きさというのは、中国、ロシア、韓国、三つ足したものより日本の方が大きいというのははっきりしていますので、そういった意味では、日本との経済関係等々をきちんと立て直すということが北朝鮮の今後の経済の復興のためには避けて通れない選択なんだ、経済がちょっとわかっていればそう思うんですけれども、なかなかそこらのところが今は理解されず、拉致というまことに不届きな話をずっと継続しているという状態が我々としては正直申し上げて理解を超えているんですが、しかし、現実は現実として我々政治家はそれに対応しなくちゃいけませんので、今そこは腐心しているところであります。

長島(昭)委員 大臣、今ミサイルの話も触れていただきました。私もこの新型のムスダンというミサイルについてもちょっときょう伺いたかったんですが、それは時間がないので次回にします。

 最後に一点だけ、京義線の開通もほとんど意味がないという、全く私も同感ですが、同じぐらい意味がないのが、実は寧辺の核施設の閉鎖なんじゃないかということは専門家の間ではもう言われているんですね。あれで既にプルトニウムを五十キロ分もう抽出してあるし、老朽化で稼働するのに大変苦労している。しかも、黒鉛減速炉というのは解体するのに大変お金がかかる。我が国も東海村のものを物すごいお金がかかってやっている中で、これをIAEAがやってくれるんだったらこんないい話はないというのが恐らく北朝鮮の本音なんだろうと思いますので、あれを閉鎖したぐらいで我々は全く納得しないということを、外務大臣、ぜひこれからも発信し続けていただきたい、そのことをお願いして、質疑を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

山口委員長 この際、お諮りいたします。

 本件審査のため、政府参考人として内閣官房内閣参事官斉藤実君、内閣審議官伊佐敷眞一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

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山口委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 おはようございます。民主党の前原でございます。

 まだ入れかえが済んでおりませんので、入れかえが済みそうなときを見計らって質問をさせていただきたいと思いますが、まず、座っておられる外務大臣にこの条約について質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 まず第一点は、この条約の定義について御質問したいなというふうに思っております。この条約の四条のところに、四条の2でございますけれども、「国際人道法の下で武力紛争における軍隊の活動とされている活動であって、国際人道法によって規律されるものは、この条約によって規律されない。また、国の軍隊がその公務の遂行に当たって行う活動であって、他の国際法の規則によって規律されるものは、この条約によって規律されない。」こういう規定があるということであります。基本的には、戦争状況あるいは戦争状況とみなされる、あるいは準ずるときには、テロじゃないですよ、これはいわゆる戦争、交戦というところで、違いますよという話なんだろうというふうに思います。

 では、きょう私が一点確認をさせていただきたいのは、例えば、国の機関が関与したテロ行為というのがあるわけですよね。例えば、北朝鮮による拉致というものもテロであるということを政府は従来からおっしゃっているわけでありますけれども、こういった国家機関の要員が関与したテロ行為というのは、この条約の第四条の規定からするとどうなるのでしょうか。つまりは、武力紛争ではないけれども、国家機関の要員が関与したテロ行為というのはこの条約ではどう判断をするのか。その点について、まずお答えをいただきたいと思います。

    〔委員長退席、山中委員長代理着席〕

岩屋副大臣 今、前原先生がおっしゃいましたように、軍隊という話ではないですね。国家の要員がというお尋ねでしたよね。

 今前原先生御指摘のとおり、国際人道法等、この条約以外の国際法の規則によって規律をされる場合は、この条約は適用されない旨、本条約では規定をしているところでございます。

 そして、ある国家の要員が原発を破壊するような行為がこの条約の適用から除外されるかどうかということにつきましては、個々の事例ごとに検討する必要がございまして、具体的には、そのような行為が国際人道法のもとで武力紛争における軍隊の活動とされ、国際人道法により規律されるものかどうかというところを見なければなりません。また、国の軍隊が公務の遂行に当たって行う活動であって、国際人道法以外の国際法の規則により規律されるものかどうかというところを検討しなければいけないということでございまして、要は一概に述べることは困難だということでございます。

前原委員 では、少し具体的に、こういう事例はどうなのかということでお聞きをしたいと思います。

 ある国の工作員が我が国に潜入をして原子力発電所の破壊行為を行う、あるいは放射性物質をまき散らす、こういったテロ行為を行った場合は、本条約に規定する犯罪行為とみなされるのですか。

岩屋副大臣 ある国家の要員がということですよね、今の先生のお尋ねは。(前原委員「工作員」と呼ぶ)ある国家の要員、今先生、工作員とおっしゃいましたが、ある国家の要員が行った原発破壊等、今先生がおっしゃった行為も含まれると思うんですけれども、このテロ行為が軍隊の活動の一環として行われたものに当たらないときは、本条約上の犯罪に当たるわけでございます。

前原委員 とにかく私が質問している趣旨は、穴のないようにしてもらわなくてはいけないし、そしてこれは当然ながら、国内法の整備もやっていくわけでありまして、連動して、犯罪行為に対してはしっかり処罰するものを持っておくということで、個々の判断によるというものでございますけれども、基本的にはこの条約の犯罪行為に当たる、そして同時に制定される国内法改正の中身にも含まれるというところで、しっかりとした取り組みを行っていただきたいということをお願いしたいと思います。

 二つ目。この条約に関してでございますが、外務省の予算で、平成十八年度から、ODAの無償資金協力において、テロ対策等治安無償という枠組みがあるというふうに思っております。平成十八年度の額は七十億円、それから平成十九年度の予算は七十二億円だというふうに思っております。外務省からいただいた資料を見ておりますと、平成十八年度の実績は、インドネシア、海賊、海上テロ及び兵器拡散防止のための巡視船艇建造計画、これは供与限度額が十九・二一億円、それからもう一つは、カンボジア、主要国際港湾保安施設及び機材整備計画、供与限度額が九・二七億円、こういうことでございます。

 まず、お伺いしたいのは、いわゆるテロ対策等治安無償というものの適用要件は外務省としてはどういうふうにとらえておられるのかということをお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 今、インドネシア等々の例を引かれましたけれども、マラッカ海峡等々で、若松にあります会社の船がいわゆるハイジャックされて、世界最大のタグボートだったんですけれども、「韋駄天」という名前のタグボートが日本人ごと持っていかれたという事件がありました。

 御存じのように、あの周辺はこの種の話の多いところなんですが、とにかく向こうの持っている船の方が、インドネシア政府やらシンガポール政府が持っている船より向こうの方が速いとか、向こうの方が強いとかいうので、それは話にならぬ、いや、金がないからできぬ、こういう話を何回も交渉したことがあるんです。

 そういったことから、ちょっと何とかしてもらわないと、こっちに影響が出ますものですから、そういうテロが起きやすい状況、しかもその影響はもろにこっちに来そうな状況で、政府が貧しいがゆえに、その種の対応の武器もしくは艦艇が買えないというようなところを基本として援助するということで、もって、そこでの通航が安全になるというのが本来の基準というようにお考えをいただいたらよろしいので、対象国は、原則として一般無償資金協力が適用されない、いわゆる中進国と言われているところであって、世銀の融資ガイドラインによりますと、一人当たりの国民総所得が千六百七十六ドル以上六千五十五ドル未満の国を含む途上国という基準に、金額的な面からいくとそういうように決めております。

 私どもとしては、在外公館にありますODAのスタッフの間で、この案件の形成に当たっては、今申し上げたような基準等々を当てはめて、被援助国との協議をしながら、これは難しいのは、武器輸出という問題と非常に直に関係してくるところがありますのでなかなか難しいので、ボートは上げます、ただし重機関銃はそっちで据えつけるのよとか、そういったような話をしないと非常に難しいことになりかねないというところがありますので、私どもとしては、そういったところを考えて、案件の形成というのをいいのを選んでやっていかないかぬというのを配慮させておるようにいたしております。

前原委員 今、国の経済力の話がございましたけれども、マラッカ海峡というのは、我が国にとっても極めて死活的な、重要な海上航行路、物資の輸送、特にタンカーが通るところであります。

 そういう意味では、そういった支援というものが日本にも回り回って返ってくるという御説明をいただいたんだと思いますが、私が伺ったのは、お答えもいただいた部分もあります。つまりは、どういった国にということで、経済的ないわゆる基準を今大臣はお話をされたわけでありますけれども、私がさらにお聞きをさせていただきたいのは、もちろん、テロというのは何がどうかかわっているかわかりません、回り回って日本にもかかわってくるよという話かもしれませんが、いや、別に日本と純粋にかかわっていなくてもいいんだ、とにかくテロ防止のために、先ほどお話をされた経済的な水準というものに当てはまればいいんだということなのか、あるいは日本にかかわらなきゃいけないのか。その点はどちらなんですか。

麻生国務大臣 日本にかかわるというのをきちっと基準にしているわけではありません。テロというのは、別にこの国に直接関係していなくてもテロはテロと思っておりますので、基準として日本に直接かかわっていないから出さないというようなことを申し上げるつもりはございません。

前原委員 予算というのは必ず使い切れと言うつもりはありません。しかし、七十億円、平成十八年度では予算を立てられて、先ほどお話をしたように、十九億余りと九億余りですので、約二十八億五千万円ぐらいですね。つまりは、半分以下しか予算消化がこの点にはなされていない。

 今回は七十二億予算を立てられたということで、先ほどおっしゃった基準であれば、私は、ですから、いい無償資金援助だと思っているんですよ。だけれども、七十億、七十二億という予算を立てながら、その半分以下に十八年度はとどまっていたということから考えれば、日本にとって、やはり予算を立てた以上は、優良なそういったテロ対策の無償資金というものを開拓するということも必要かと思いますが、その点についてどう考えておられるのか。

麻生国務大臣 私どもとしては、今の御指摘は正しいと存じます。

 ただ、前原先生、ある程度これは、突如としてぼんと起きるものがありますので、そのときのためにある程度予備費みたいにして持っておかないかぬという部分もちょっとこのテロ対策の中にありますので、使い切っていきなりというわけに、なかなか難しいところもあります。

 しかし、今おっしゃるように、もっと使えるような案件はもっと探すべきではないかという努力は、私どもとしてはやらねばならぬところと存じます。

前原委員 条約について最後の質問を、下村官房副長官にお尋ねをしたいと思いますけれども、日本は、きょうは核テロ防止の関連の条約ということでございますけれども、非常に個別法のいわゆる寄せ集めで、一つ一つで何か束になって、テロに対するものが何とか抜け落ちることなく整備されているということでありますけれども、やはり私は、他国、例えばイギリスとかあるいはフランス、韓国、あるいは九・一一テロ以降、当然アメリカも含めて、そういった方向性に拍車がかかっているわけでありますが、テロ対策基本法とかあるいはテロ対策包括法のようなものをつくって、そしてテロに対する国としての毅然とした対応、そしてまたそれを、例えばサイバーテロも含めて、新たなものに対してもしっかりと取り組んでいくんだという、個別法の積み重ねではなくて、テロに対するやはり対策基本法、包括法のようなものをしっかりつくった上で個別法が整備されるという、国としての明確なテロに対する指針を示すべきだと私は思います。

 その点が日本には欠けていますが、その点、内閣官房として私は取り組まれるべきだと思いますが、官房副長官のお考えを聞かせていただきたいと思います。

下村内閣官房副長官 お答えいたします。

 御認識はそのとおりだというふうに思います。テロ対策については、国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部において平成十六年十二月に策定されましたテロの未然防止に関する行動計画に従い、必要な法律改正を行うなど、その着実な推進に努め、現在おおむね順調に実施してきたところでございます。

 これまでに行った個別の法改正に加えて、さらに今御指摘されましたようなテロ対策の包括的な法律を整備することについては、その必要性及び内容について諸外国の法制度を研究しながら、関係省庁が一体となって現在鋭意検討しているところでございます。

 政府としては、テロに対する厳しい情勢を踏まえ、引き続きテロ法制の整備に関する検討を進めていきたいと考えております。

前原委員 方向性は正しいという認識でありますけれども、要は、もちろん急いで、そして、余り粗雑なものができてもいけませんけれども、やはりスピード感覚というものも必要であります。今おっしゃったそのテロに対する包括的な法制というものは、これは私は閣法として出されるべきだというふうに思いますけれども、どのぐらいをめどにそういったものを国会に提出をされ、そして国会での議論をしたいと考えておられるのか。これはやはりしっかりとした政治的な判断が必要だと思いますが、いかがですか。

下村内閣官房副長官 今前原委員御指摘の内容については、国会でも、参議院では平成十八年、また、これも参議院ですが、ことしもやはり自民党、民主党それぞれの先生方から同様の御質問がございまして、昨年から鋭意検討をするという状況でございます。明確にいつまでという期限は決めてはおりませんが、できるだけ早く、現場の中で今鋭意検討ということでございますので、早目に出せるような努力を今しているというふうに聞いております。

前原委員 聞いておるのを受けてしっかりと政治で早くにまとめるということを、しりをたたいていただいて、早くに提出をしていただきたいということを要望したいと思います。

 さて、個別のテロ対策というものに、NBC兵器テロ対策というものに移っていきたいというふうに思っておりますが、質問通告しておりませんけれども、きのうも愛知県でけん銃を持った元暴力団構成員が立てこもって、そして機動隊員が殉死をされるという痛ましい事件が起きて、今なお立てこもっているということであります。亡くなられた機動隊員の方には心からお悔やみ申し上げたいというふうに思いますが、けん銃を使った犯罪というのが後を絶ちません。

 新聞等によりますと、約五万丁のけん銃というものが国内で不法に隠されているのではないか、不法所持されているのではないかということでございますが、これは本腰を入れて、先ほどのテロ対策基本法もしかりでありますけれども、政治のリーダーシップでこの不法けん銃の取り締まり、そしてまた島国でありますから、どうやってこれをしっかりシャットダウンしていくのかということ、政府としてこれもやはり真剣に取り組んでいかなくてはいけないテーマだと私は思っておりますが、次々に起こるこのけん銃を使った凶悪犯罪を受けて、内閣官房としてどういう取り組みをされようとしているのか、その点についてお答えをいただきたいと思います。

下村内閣官房副長官 本当に痛ましい事件が続いておりまして、残念な思いがいたします。これについて、このようなことが起きないように対処していく必要がある。直近でも、長崎市長銃殺事件がございました。また、町田市でも同時期に同じような事件がございました。

 これを踏まえて、今、内閣の中で官房長官が中心となりまして、銃器対策本部を設置し、これについて早急に、この銃器の問題について未然にどのような対応をするかということについて、関係省庁の実務者の方々に集まっていただいて、今対策をつくり、スタートしている段階でございますが、しっかりとこの銃器対策について取り組んで、国民の皆さんが安心できるような社会ができるように対応していきたいと考えております。

前原委員 もちろんしっかり取り組んでいただきたいというふうに思いますが、具体的には、その対応策の中で目玉になるのは何なんですか。実効性を上げるためには、銃の不法所持というものを認めないという実効性を高めるためには何がポイントなのか、その点について官房副長官。

下村内閣官房副長官 お答えいたします。

 この官房長官のもとでの会議の中でテーマになっているものとして、一つは水際対策で、海外から不法にもちろん入っているわけでありますが、これについてどう入れないように対応していくか。それから、所持をしている者に対して、それについて、みずからそれを警察等に対して持ってくるということに対する促進、インセンティブ等が今議論のテーマにもなっているというふうに聞いております。

前原委員 とにかく、銃を根絶する、不法所持を根絶する、そのために政府を挙げて取り組んでいただきたいということを、改めて重ねてお願いをしておきたいと思います。

 それでは、具体的なNBCテロ対策について、二つのテーマに分けてお話を伺いたいと思います。一つは未然防止、もう一つは起きてしまった場合の対応策、それに対する備え、このことについてお話を伺いたいと思うわけであります。

 まずは、起きてしまったときに対する対応策について幾つかお伺いをしたいというふうに思います。これも官房副長官にお答えをいただきたいというふうに思います。

 NBC兵器で、いわゆる核、Nが使われたときの基本的な対応というのは内閣官房で行われるということでありますが、病院等々に対する対応策、日ごろの、平素の対応策というのは文部科学省で行われているということで、私も事務方から話をお伺いいたしました。そして、緊急被曝医療体制ということで、初期医療機関それから二次医療機関ということで十九の各自治体が指定をされていて、それに当たるということであります。これは地方自治体が中心になって当たる。そして、さらにひどい場合においては第三次医療機関、放射線医学総合研究所などなどが当たるということでございます。

 私が若干気になりましたのは、この緊急被曝医療機関というものについては、十九の道府県で初期被曝医療機関というのが設けられているということでありますけれども、原発があるところ、あるいはそれ以外も考えていかなくてはいけないわけであって、私が申し上げたいのは、大都市、例えば東京にないんですよ、緊急被曝医療機関のいわゆる初期医療機関、二次医療機関として。

 今申し上げたように、原発所在地にはある程度ございます。この緊急被曝医療機関というものについてはあるわけでありますけれども、きょう議論になっているようなテロが起きた場合、つまりは、核物質を人口密集地、つまりは大都市にまき散らされた場合等々の被害というものについて言えば、この十九道府県、東京がないですよね。大阪もないですよね。あるいは名古屋もないということで、大都市については、被曝をした、つまりは核を使ったテロなどが大都市で起きた場合に、扱う医療機関というのがないわけでありますけれども、こういった体制をどう考えられるのか。

 やはり、もちろん原発立地のところにあるというのは、これは必要最小限度の話であって、必要条件であろう。しかし、今回の条約等で議論をしているように、大都市にもやはりこういうものが必要なのではないかというふうに思っておりますが、その点、官房副長官、どうお考えになっているかをお聞かせいただきたいと思います。

下村内閣官房副長官 お答えいたします。

 まず大切なのは、このようなことが国内で起きないように未然防止をすることが一番大切だというふうに思います。政府としては、関係省庁が緊密な連携を図りながら、テロ関連情報の収集、分析に努めるとともに、出入国、ハイジャック対策、重要施設等の警戒警備など諸対策を徹底して、未然防止対策を図っているところでもございます。

 しかし、今御指摘のように、それでももし起きてしまったらどうかということでございますけれども、万が一、NBCテロ、ほかの生物兵器とか化学兵器を含めましたテロが発生した場合には、初期措置を迅速的確に行うことが必要でございまして、これも関係省庁、警察、海上保安庁、自衛隊、厚生労働省等と連携をしながら、被害者の救助、被害の拡大防止、犯人の検挙等に全力を挙げることが必要でございます。

 そういう中で、今御指摘の中で、都市部における病院施設等がないではないかというお話がございましたが、まずはテロ防止ということの中ででございますが、今後、今御指摘のことも含めまして、関係省庁と連携しながらその対応について検討させていただきたいと思います。

前原委員 未然防止については後で議論したいと思います。

 ただ、起きてしまうことはあり得るわけで、それに対しての対応をどうとるかということを考えたときに、今お話をした、いわゆる核を使ったテロが大都市部で起きた場合においては、今の日本における緊急被曝医療機関というものが、大都市がすっぽり抜け落ちているというところをぜひ検討し直していただきたいということをお願いしておきたいと思います。

 次に、BC兵器について、これは厚労副大臣に、お越しいただいておりますが、質問させていただきたいというふうに思っております。

 これも、さまざまなところに第一種感染症指定医療機関とかあるいは特定感染症指定医療機関等々があるわけでございます。私がまずお伺いをしたいのは、生物兵器として考えられ得る炭疽菌あるいは天然痘、そういったものに対するワクチン、治療薬、予防も含めて、それは今備蓄状況がどのようになっているのか、これは都道府県が備蓄をしているというふうに厚生労働省から伺いましたけれども、どういう被害が出ることを想定して、厚生労働省として把握をされているのか、そのことについてお答えをいただきたいと思います。

石田副大臣 化学テロや生物テロが発生した場合に必要となるワクチン及び治療薬につきましては、天然痘につきましては、平成十三年度補正予算で備蓄を行い、その後も追加を行っております。それから、天然痘以外では、可能性の高いと考えられる炭疽、サリン等については抗生物質や解毒剤が有効であり、メーカー及び卸業者における流通量について定期的に報告を求めております。また、化学物質中毒解析器や防護服等の医療器材についても、各地域においてテロ発生時の医療の中心的役割を担う救命救急センター等への配置を進めております。

 なお、現時点でのワクチンの備蓄量等につきましては、前原委員からも以前御質問いただいたようでありますけれども、危機管理上の観点から公表は差し控えておりますので、御了承をいただきたいというふうに思います。

 今後とも、都道府県等地方自治体や関係機関とも密接に連携しつつ、こうした医薬品や医療資器材等の提供が迅速かつ適切に行われるよう最善を尽くしてまいりたいと思っております。

前原委員 危機管理上の観点からどれぐらい備蓄をしているかということについては言えないということでありまして、それについてはある程度は理解をいたします。

 私が伺いたいのは、どういう被害を想定して、それを前提として備蓄を考える、まあ、ある被害を想定して考えるわけですね。それに対して、例えば天然痘、炭疽菌に限定していえば、今は十分なワクチンあるいは治療薬等の備蓄量がもうあるんだというのか、あるいは、まだこれからも引き続き備えていかなくてはいけないということなのか、その点についてお伺いをしているわけです。

石田副大臣 これは可能性としては、例えば日本の人口一億二千七百万、そこまで考えるかどうかということももちろんあろうかと思いますけれども、そういう点も含めまして、備蓄量については相当量ある、こういう御回答で御理解をいただきたいというふうに思います。

前原委員 これはもう政府の責任として、今、相当量あるということでありますけれども、ぜひしっかりそれは整備をしておいていただいて、何かがあったとき、まあないのにこしたことはありませんが、起きたときに、実は十分ではなかったということのないように、そこはしっかりと危機管理としてやっていただきたいというふうに私は思っております。

 そこで、これも厚生労働省医政局からお話を伺ったことでございますけれども、器材整備ですね、NBCテロ対策として、対医療機関支援ということで、NBC災害・テロ対策整備事業というのが平成十八年度から厚生労働省で行われている。その支援対象というのは、救命救急センター、これは全国に二百二カ所ある、それから災害拠点病院、これが全国で五百七十七カ所にあるということでございます。

 しかし、この支援対象は、補助率、国が半分、都道府県が半分ということで、病院には負担が起きないようになっているわけでありますけれども、平成十八年度から始まったこの事業で、厚生労働省から承った回答は、救命救急センターは二百二カ所、災害拠点病院は五百七十七カ所あるにもかかわらず、平成十八年は四カ所しか申請がないということで、補助額も約五千万円、こういうことを聞いているわけでございます。

 これは、ある程度予算を確保されているにもかかわらず、先ほどのODAじゃありませんけれども、やはりスピードが大事だというふうに私は思っておりまして、これはかなり予算をとっておられるんですね、医療提供体制推進事業費補助金ということで予算をとっておられる中で、しかし、平成十八年度は四カ所。以前には整備実績が十から十三ぐらいあるということでありますけれども、やはりこれはスピード感覚として遅いのではないかというふうに思いますが、この点について、どう改善をしていこうとされているのか、厚生労働副大臣の答弁をお願いします。

石田副大臣 今委員の方からも触れていただきましたけれども、十八年度から始めまして、年度当初、十八年度では五千二百万、四つの施設、こういうことでありますから、これはやはり、どういうところまでいろいろ考えていくかということは大変大事なことだと思いますし、予算もしっかりと確保してやっておりますので、ぜひ、この指定が進むように、手を挙げていただけるように、これはまた働きかけていきたいと思います。

前原委員 とにかく、いつ起こるかわかりませんので、せっかくこういった予算をとっておられて、繰り返し申し上げますが、救命救急センターが全国で二百二カ所、そして災害拠点病院が五百七十七カ所あるにもかかわらず、一年で四カ所というのは、スピード感覚として、あるいは補助事業からすると、余りにもスローテンポ過ぎるというふうに思っておりますので、しっかりその点は取り組んでいただきたいということを強く私はお願いしておきたいというふうに思います。

 それから、医薬品等の再点検ということでありますが、各都道府県に対して、医政局の方から、平成十四年十月二十九日付、厚生労働省厚生科学課長、医政局長等連名通知の「国内テロ事件発生に備えたテロ対策の再点検等について」ということで、都道府県が策定をしている医薬品等の供給、管理等のための計画について再点検をお願いしている、こういうことでございますが、レクをいただいたことによりますと、それについて各都道府県からの報告を厚生労働省としては持っておられないという話を私は伺ったわけでありますが、それは事実ですか。

石田副大臣 委員御指摘のとおりであります。

前原委員 テロが起きた、あるいは間違ってそういったサリン、VXガスが散布をされる、テロの方がそれは確率は大きいと思います。そしてまた、あれほどの被害を出した地下鉄サリン事件というのを日本は経験して、こういったものに対する先進国でなければいけない、そういう事例をかがみとして。

 そういうことを考えると、何かが起きたときの医薬品等の管理については、各都道府県がその備蓄計画を持っているということでありますが、その全体を厚生労働省にフィードバックしてもらっていなくて全体像を把握していないというのは、これは極めて大きな問題だと私は思いますので、ぜひ改善をしていただきたいと思いますが、その点、厚生労働副大臣のお答えをいただきたいと思います。

石田副大臣 これにつきましては、今後の備蓄状況については定期的に把握してまいりたいと考えております。

前原委員 ぜひ、各都道府県、四十七都道府県からそういった備蓄状況を早急に提出させて、厚生労働省がそれに対するチェックを行うということをお願いしたいと思います。

 次に、地下鉄サリン事件の際、あるいは国民保護法制の際にも私は国会で同じような質問をいたしましたけれども、だれがテロを行ったのかということはなかなかわからない。あるいは、地下鉄サリン事件にしても、今だからサリンということを言えるけれども、病院に運ばれてきたときには、どういった毒性のものが使われたというのがわからないわけですね。しかも、東京で起きるか、北海道で起きるか、沖縄で起きるか、どこで起きるかわからないということになれば、先ほどお話をしたような救命救急センターとか災害拠点病院を含めて、全国の核となる病院においては、このNBCテロが行われたときのいわゆるマニュアルというか、こういう症状だったらサリンが使われたなとか、こういう症状だったらVXガスだなとかいうことがお医者さんにしっかりわかるような講習なりあるいは繰り返しの指導というものがなされないと、こんな症状は見たことがないなということで対応がおくれて、そして被害が拡大をするということであってはいけないと私は思います。

 そこで、厚生労働省さんは、平成十八年度から人材育成のための事業を行っておられるということで、それについては私は評価をしたいと思いますが、平成十八年度からということで、ちょっとこれも、先ほどの器材整備と同様、対応が遅いなというふうには思うわけでありますけれども、しかし、やっていることはそれはそれで結構であります。

 時間も余りありませんけれども、ポイントだけ絞って質問したいと思います。

 平成十八年には、十チーム、そして各チーム五名で年二回ということで百人、そして平成十九年では、十チーム、各チーム五名、そして年三回ということで百五十名ということで、できるだけ各都道府県一チームで、満遍なく各都道府県のお医者さん、看護婦さん、放射線技師等が研修を受けられるようにするということを行っておられるわけでありますけれども、これももう少しペースアップをして、各都道府県のお医者さんが、おれもこの講習は受けたよということで、NBC兵器テロが仮に行われたら、あるいはテロでなくても、例えば原発の事故あるいは化学薬品工場の事故が起きたときには、そういった拠点のお医者さんがしっかり対応できるような状況をつくるべきだと思いますが、この人材育成事業についてのスピードアップについて、厚生労働副大臣、御答弁をいただきたいと思います。

石田副大臣 今の委員の御指摘は、大変重要だと思います。

 私も、地下鉄サリン事件のときに、その後、映像を何度も見ましたけれども、駅員の方が素手で処理をされている。これは当然、わかっていればそれなりの対応をとれるわけでありますけれども、未知の物質ということで、いち早くということだったと思いますが、おっしゃるように、それが一体何なのであるか、こういうことについては、やはり周知徹底して学習する以外にはありませんので、御指摘いただいたように、さらにスピードアップをする、こういうことで取り組んでいきます。

前原委員 それからもう一つ、講義で本が使われるわけであります。つまりは、こういう症状だったらこういう化学兵器が使われているとか生物兵器だとかいうことであります。確かに、講義を受けないと、研修を受けないと、お医者さんあるいは看護師さん、放射線技師の方であったとしてもなかなかわからないかもしれませんが、少なくとも私は、教材を、さっきお話をした救急救命センター二百二カ所あるいは災害拠点病院五百七十七カ所にはどこかに常備されていて、だれかがそれは常に見られるような状況で対応するということは必要だと思いますが、私が厚生労働省さんから受けた説明では、そのようなことはされておらずに、講義で使ったマニュアルは、それぞれ持って帰って病院に備えつけられているというふうに伺っております。

 繰り返しになって恐縮ですが、講義を受けなければ医者といえども看護師といえどもなかなかわからないかもしれませんけれども、やはりマニュアル本ぐらいは、どの拠点病院あるいは救命救急センターにも置かれているというふうにした方がいいと私は思いますが、厚生労働副大臣、いかがですか。

    〔山中委員長代理退席、委員長着席〕

石田副大臣 このNBC兵器の問題については、難しいのは、実験をするということが現実になかなか難しいわけですから、おっしゃるように、研修していただく以外にない。そういう中で、書物を通す、スライド等映像を通してということしかできないわけですから、その人だけが持っているというよりは、やはり、広く認識してもらうということについてはもう少しいい方法はないか、これはしっかり考えていきたいと思います。

前原委員 とにかく、いつどこで起こるかわからないということで、確率論として、今、先ほど御答弁いただいたように、研修のスピードアップをしていただいて、できるだけ多くのお医者さん、看護師さん、放射線技師などがそういう研修を受けておられるという形にしていただきたいというふうに思っております。

 未然防止については、少し下村副長官とお話をしたかったんですが、時間が参りましたので、またの機会にさせていただきたいと思います。

 質問を終わります。

山口委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 まず、議題となっております核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約に関連して、テロ根絶に対する基本的な認識について質問しておきたいと思います。

 今までありましたが、核によるテロは、言うまでもなく、その他の手段によるテロも含めて、人命を無差別に奪う卑劣な犯罪行為であって、いかなる理由や背景があろうとも絶対に許されない。依然として相次ぐ野蛮なテロを根絶するというのは、二十一世紀に人類がこの地球上で平和に生きていくという上でまさに根本条件の一つになるものであって、今回の条約締結には賛成であります。

 重要なことは、核テロを初めとして卑劣なテロ行為は犯罪であって、それをどのように根絶していくのかということであると思うんです。そのためには、やはり、法に基づく裁きという立場から、国連憲章と国際法に基づいて、テロ犯罪の容疑者、犯罪行為を組織、支援した者を逮捕して、きちっと裁判にかける、そして法に照らして厳正に対処する、そして根絶のために一層効果的な国際的措置をとる、このことに徹するということだと思うんですけれども、改めて、麻生大臣の認識を伺っておきたいと思います。

麻生国務大臣 今、笠井先生御指摘のありましたとおり、これは、いかなる理由をもってしてもテロというのは正当化されることはない、明らかに犯罪というように考えて、断固として非難をされるべきというのは当然のことだ、全くおっしゃるとおりだと思います。

 したがって、これを撲滅するためには幾つかあろうと思いますが、今裁判の話が出ましたけれども、やはり、国内のテロ対策が一つと、それから、非常に国際的なこういう時代になりましたので、国際的な協力を、ICPOを初め国際協力ということをやらないかぬだろう。

 もう一つは、先ほど御質問のあっていました、いわゆる発展途上国に対するテロ撲滅のための支援というのをある程度考えてやらぬと、何となく、支援というのは、物理的な支援もあろうと思いますけれども、テロが発生する原因が貧困であってみたり絶望であってみたり、いろいろいたしますので、そういったものに対する支援を含めまして考えていかねばならぬと思っております。

 したがいまして、国際的な方途が、今、いわゆるテロはだめだという政治的な意思を各国皆共通してもらわぬと、目的のためやむを得ないなんというふざけたのも出てきますので、そういった意味では、国際関係、国際のいわゆる機関の意識というのは大事だと思っておりますし、情報もある程度提供していただかぬと、こういうのがおたくの国に行ったよとかいう話が、そこの警察からこっちの警察にわかってくる等々の情報。

 それから、やはり、ある程度、そういうのをわかっていても金がないとか、いろいろな話がありますので、対策するための資金の対策とか。あとは、いわゆる指紋を出してくるとか、センサー、いわゆる犯罪発見装置というものは物すごく今進歩しておりますので、犯罪者の顔、十二カ所ぐらい写真をばあっととらえ、いかに変装してもぱっとそれがわかるとか、いろいろなものがありますので、そういったものなど、いろいろ日本としては進んでいるところもありますので、我々としては、今おっしゃったように、いろいろやらねばならぬ。

 ただ、日本というのは、何となく、テロというと爆弾テロばかりしか出ませんけれども、先ほど長島先生のお話があっておりましたが、やはり地下鉄サリン事件というのは世界最大のテロじゃないですか、あれは。五千人ぐらいの人が影響を受けて、たまたまあのときは、たしか、防衛大学校の青木とかいう一等陸尉とかなんとか、たまたまその現場にばっと通りかかって、一発でサリンと見抜いて、このためにアトロピンという薬がある、これは聖路加病院にたしかこれだけあるはずだというので、しゃにむにばあっと注射を打ったから、あれは五千人の人が被害を受けたと言われながらも、死者というのは極めて数名でとどまった。

 しかし、現実、あの後、植物人間になられた方々、これはいろいろ影響が大きかったので、あの裁判の一回目のときは、あれは延々と数時間、検事が名前を全部読み上げたというのは、ああいった背景というのは、影響は極めて検察としては大きいと思ったからああいう反応を示した、私はそのように理解をしております。

 このテロというものは、日本では、地下鉄で人が殺されたのはあれが最初ですから。しかも、まとめてあれだけの数。そういった意味では、極めてインパクトが大きかったにもかかわらず、何となく、地下鉄サリン事件とテロとは別みたいなような感じは、我々としては注意しておかねばならぬところだと思っております。

笠井委員 今、大臣、テロ対策の重要性も強調されましたが、まさに今、国際的に言えば、関連条約が十三あって、そして我が国は既に発効済みの十二をもう既に締結していて、今度最後ということになるわけです。

 そして、大臣言われましたように、国際テロ組織というかそういう問題というのは、もう国境を越えて活動している。テロ対策にとっては、まさに、だれがテロ犯罪の容疑者であって、その支援者であるかを可能な限り立証する国際的な共同の努力が必要になってくる、不可欠だと思いますし、その勢力が明らかになるなら、国際政治と国際世論による包囲と告発、経済的、政治的制裁など、彼らを法に基づく裁きの支配下に置くために、国際社会として可能なあらゆる努力を共同すべきだ、まさにそのとおりだと思います。

 他方で、この間、国際社会が目の当たりにしてきましたが、テロ犯罪に対して軍事力で報復するということになりますと、これはテロ根絶に有効でないばかりか、地球上に新たな戦争とそれによる巨大な惨害をもたらす結果になる、さらに一層のテロ行為と武力報復の悪循環をもたらすということになるので、まさに泥沼化するということになると思います。

 そういう点では、国連憲章と国際法上の根拠を持たない軍事力による報復というのは、テロ根絶のための大義を失わせて、テロ勢力にとってまさに逆に思うつぼの事態を招くことになるということで、まさに、無法者に対しては、法に根拠を持たない対応じゃなくて、法に基づく裁きに徹するべきだということを強調しておきたいと思います。

 関連して、去る四月三十日から五月十一日までウィーンで開かれた、二〇一〇年NPT、核不拡散条約運用検討会議の第一回準備会にかかわって、幾つか質問したいと思います。

 この会議では、議題案をまとめるのに相当やりとりがあったということでありますけれども、最終的には、天野議長の作業文書を含む報告書が全会一致で採択をされたということであります。

 前回の、二〇〇五年のNPTの運用検討会議、私も国連本部で傍聴いたしましたけれども、あの失敗を繰り返さずに、核不拡散とともに核兵器廃絶に向けて前進すること、そのためにも核保有国がいわば率先して核軍縮の義務を履行して核兵器廃絶のための作業に踏み出すべきだ、今回の会議でも、そうした主張が多くの非核保有国やNGOの代表から共通して出されたというふうに認識しております。

 そこで、麻生大臣、こういう中で私が注目したのは、今度の会議における米国代表の発言であります。クリストファー・フォードという核不拡散担当の特別代表の、私、テキストも読みました。その中で、彼はこう言っております。NPT前文と六条は核兵器廃絶を求めているが、これを達成できるような世界をつくり出す実際的な方法に役立つ選択肢を奨励、支援することが重要だと。さらにその後、もし核兵器とすべての大量破壊兵器が魔法の呪文か何かであす朝までに世界じゅうから消えるとすれば、どの国よりも一番喜ぶのは米国であると言ってもいいと。私は、これは、そういう意味では、この間のアメリカの言ってきたことからすると、核兵器廃絶に言及しないという態度を重ねていましたので、一定の変化と言っていいんじゃないかというふうに感じました。

 この間、米国が核兵器廃絶に言及してこなかった姿勢ということから照らしてみると、私はこの点注目したんですが、三月二十三日の当委員会で、去る一月にキッシンジャー氏らの核兵器のない世界の呼びかけについて、私、尋ねましたら、大臣は、君子は豹変するなと思った、時代は大きく変わりつつあるのかなという感想を述べられました。今回の準備委員会での米国代表の発言に見られる変化、この流れがあると思うんですが、どのように受けとめていらっしゃるでしょうか。端的に感想をいただければと思います。

麻生国務大臣 三つぐらいの話題になろうと思います。

 まず最初に、今回のNPTの第一回の準備委員会、これはウィーン代表部の天野というのが議長をしたんですが、まず最初に、開催できるかどうかが極めて危ないところだったと存じます。

 これは、議題が決まらないという事態になりました。議題が決まらない最大の理由は、イランの反対であります。イラン一国の反対でつぶれるという話なので、これは連絡がなかなかほかの方ではできないものですから、アメリカなんかはいわゆる没交渉でありますので、私の方から電話することになって、とにかくいいかげんにせいという話で、おれたちのところが議長をやっているんだというので、翌々日だかにおりて、議題ができたというので、最初からこの話は、日本としては、我々の方が代表をしているところもありましたので、かなりかむことになったということです。

 いずれにしても、一応のスタートができることになりましたので、一応全会一致で声明も出せることになったと思って、よかったと思っておりますが、その中で、今言われましたように、いわゆるフォード次官補代理ですか、あの人の発言というのは、言われたとおりで、現実的な選択肢を奨励し等々、いろいろ言っていることは、なかなか今までとはかなりの違いが出るなというのは、それは私も同じような実感であります。

 キッシンジャーの話を言われました。これは先月でしたか、あの話は。たしか言われたので、この人の書いた昔の時代の、ニクソン時代のときのあの本は、私は、たまたま原文で書いてあって、これほど難しく英語を書けるものかと思うぐらいややこしく書いてあった記憶があったので、難解をきわめた本だったという記憶と同時に、何か全く確立した議論があそこにでき上がって、相互確証破壊ということで書いてあった人が、四十年したら、全くいきなり出ましたので、君子は豹変すという話を申し上げたんです。

 取り巻く環境も変わってきているんだと思いますけれども、いずれにいたしましても、こういったようなものというのは、第一次欧州大戦から第二次世界大戦にかけての武器の内容が随分変わっていったりしたことを考えますときに、こういったようなものに関しましても、私どもとしては、努力というものは結果として核廃絶に結びつくという希望は捨てちゃいかぬものだ、私は基本的にそう思っております。

笠井委員 このフォード代表は、三月、フランスのアヌシーでも、核兵器廃絶に向けてということで、この実現の条件について語るということがありまして、それはちょっと、どちらかというと核保有国の第一義的責任について転嫁する部分があるのかなと私は思いました。

 しかし、いずれにしても、この間、二〇〇五年のときには、アメリカの発言から、むしろ核兵器廃絶の追及そのものをあざけるような態度を私も感じましたし、そういう点では、威嚇するような態度もとってきた中で、一定の変化はある。これは国際的な流れもありますし、アメリカの国内でも、今下院でいろいろな動きが出ているということも承知しております。

 そういう点では、私、大臣に重ねてなんですが、そういう中で、やはり被爆国政府として、希望を持てるという話がありましたが、この役割、イニシアチブがいよいよ大事じゃないかと思うんですね。

 要するに、縮めて言いますと、この間、日本政府も国連に対して決議案を出してきました。率直に言って、去年のものでいえば、核兵器廃絶の明確な約束という文言について、ないということで、二〇〇〇年の合意についてはあえて言及しなかったけれども、それはやはり核兵器国も納得するものでなければいけない、受け入れ可能でなければいけないということで、態度をとってこられた。しかし、今、アメリカ自身が、条件ということで、これから先の問題はありますけれども、核兵器廃絶ということを言うようになった。

 そして、かつて軍縮大使を務められた堂之脇光朗氏も、最近寄稿された中で、まさに核軍縮に一条の光というような形で、そういう中で日本があらゆる機会を捉えて努力を尽くすべきだというふうに言われているんです。私もそう思うんです。

 大臣、そういう点では、ことしの国連総会、来年の第二回準備委員会、そして二〇一〇年に向けて、より被爆国としてイニシアチブを発揮する。明確な約束、核兵器廃絶で、とにかく核保有国がもっとやれという形で、具体的に着手せよというようなことを強力に言うときじゃないかと思うんですが、その点、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 これは笠井先生、今までも日本は、この核廃絶につきましては先進国というか、G8の中では最初を切ってやり始めた国でもありますし、思い返しますと、国際連盟のときも、いわゆる人種差別撤廃というのを最初にうたった列強の唯一の国だったと言うべきなのかもしれませんが、そういったものは結構これまでもやってきた歴史もありますし、それが、第二次大戦が終わった後、結果的にああいう形になりましたけれども、現実のような形になりつつあります。

 今申し上げたように、この核の話も、今おっしゃるように、とてもじゃないという状態から少しずつ、何となくこんな大きなものに、地球を何十回とかいうような話になりましたものですから、随分変わってきたし、使えない兵器になったじゃないかというような形で、意識も随分変わりつつあるんだなとは思っております。

 いずれにいたしましても、こういった話というのは継続してやらねばならぬと思っておりますので、私どもとしては、この努力というものはさらに進めていかねばならぬと思っております。

笠井委員 最後に一言だけ質問をしておきたいんですが、そういう意味でも、国際世論を喚起するという点で、政府の役割は大事だと思うんです。今回の準備委員会では、日本政府として「軍縮・不拡散〜日本の取り組み〜」というパンフの英語版をつくられたということで、配布をしたということであります。

 昨年六月七日に当委員会で、私、被爆の実相とか被爆者の訴えなどを英文パンフレットにしてぜひやってほしいというふうな提起をしましたら、当時塩崎副大臣が、作成する方向で検討したいというふうに言われて、実際にこれはつくられた。日本語版とも違って英語版は、日本語版にないような被爆の実相、被爆者の紹介、それを写真入りで出されている。私は、これは率直に評価したいと思うんですね。

 そして、今度の会議でも、「はだしのゲン」ということでの英語版を、大臣の肝いりという話も伺っておりますけれども、三十部配られて、もっとたくさん配ってほしいとか、もっと目立つところにとか、もっと被爆の写真もという話もあったんですが、そういうやはり世論喚起の上でこれからどういう努力を、特に若い世代も含めて国際的にもやっていこうとされているか、最後に伺いたいと思います。

麻生国務大臣 共産党に褒められるとはやばかったかなと思わないけない気がしないでもないので、何かなと思ったんですけれども。(笠井委員「いいことはいいんですよ」と呼ぶ)

 「はだしのゲン」やら何やら、確かに、「はだしのゲン」を知っておられるという方は、長島先生ぐらい若くなるともう「はだしのゲン」の世代じゃなくなってきているんじゃないかと思いますが、あれはやはり、私らは子供のときにあの漫画の記憶がありましたものですから、顔はちょっと、あのころの原文とは大分顔つきが今風の顔につくってありますけれども、あれは結構実は読まれた本になりました。

 そういった意味では、何となく、読むよりやはり見るという世代になってきておりますので、ああいうものの方が人に入りやすいんだ、私はそう思っておりますので、たまたまあの漫画の記憶がありましたものですから、使わせていただいたというのが背景です。

 いずれにいたしましても、読むより見る、ビジュアルなものの方にしていった方がこの種のものは説得力があるんだと思っておりますので、こういった努力は今後とも引き続きやらせていただきたいと存じます。

笠井委員 終わりますが、一言だけ。

 やはりそういう努力すればするほどはね返ってくる問題は、日本がアメリカの核の傘に依存している、この脱却がやはり必要になってくるという問題について指摘して、終わります。

山口委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社民党の照屋寛徳です。

 本条約は、核によるテロリズムの防止をうたっております。いかなる手段、動機、目的であれ、テロが許されないことは明白であり、その防止は国際社会の重要な責務だと考えます。社民党は核兵器の廃絶を党是としておりますが、核兵器は、合法的であれ不法目的であれ、所持することも使用することも禁止されるべきだと思います。

 ところで、本条約二条一項において、条約上の犯罪構成要件として、不法かつ故意に行う行為に限定した理由について外務省に尋ねます。

中根政府参考人 お答え申し上げます。

 この条約は、核によるテロリズムの行為を防止し、そのような行為を行った者をいずれかの国で処罰するための国際的な枠組みを構築するものでございます。

 放射性物質や装置の所持、使用等は、医療等の分野では広く行われております。この条約は、こうした正当な業務行為や法令に基づいて行われた行為、あるいは過失といったものを処罰対象とすることを求めているものではございません。したがいまして、この条約二条1では、不法かつ故意に行った行為のみに犯罪を限定しています。

 なお、爆弾テロ防止条約等、ほかのテロ防止関連条約においても、条約上の犯罪を不法かつ故意に行ったものに限定しております。

照屋委員 かつて、キャンプ・ハンセンでは、百五ミリりゅう弾砲、百五十五ミリりゅう弾砲の実弾射撃演習を、県民の通勤通学道路である県道一〇四号線を封鎖して、アメリカ海兵隊が実施しておりました。今では、本土の五カ所の自衛隊基地を含めて移動訓練をしております。

 ところで、百五ミリ、百五十五ミリりゅう弾砲は、原子砲と呼ばれ、核、非核両用の兵器であり、ベトナム戦争のときに海兵隊がダナンへ上陸したときに最初に携行した兵器であります。百五ミリ、百五十五ミリりゅう弾砲は、本条約第一条に定める「放射性物質」「核物質」「核爆発装置」のいずれかに該当するのか、外務省並びに防衛省に尋ねます。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のりゅう弾砲でございますけれども、申すまでもなく、りゅう弾を発射するための装置でございます。それ自体として放射性物質を含むということもございませんし、原爆、水爆等の核兵器等の核爆発装置でもありません。また、放射性物質、放射線を発散する能力は有しておりませんし、放射線の特性により重大な傷害、損害を引き起こし得るものでもないということから、本条約、核テロリズム行為防止条約第一条の装置、それからその他の核物質等に該当するものではない、そういうふうに考えております。

中根政府参考人 外務省としても、ただいま防衛省の方から説明があったとおりというふうに理解しております。

照屋委員 大臣に尋ねます。

 沖縄の本土復帰に当たって、基地の核抜き本土並み返還が言われました。復帰三十五年が経過して、本土並みになっていないことは明々白々であります。

 核抜きについても、嘉手納弾薬庫やキャンプ・シュワブなどにはいまだに核兵器が貯蔵されているのではないかと多くの県民は疑念を抱いております。麻生大臣は、沖縄の核抜き本土並み返還は実現していると思いますか。思うなら、その根拠をお示しください。

麻生国務大臣 これは日米安全保障条約上、核の持ち込みがされる場合にはすべて事前協議の対象となる、もう御存じのとおりだと思いますので、これまで、日米安全保障条約上、事前協議が行われた、少なくともこのことに関して事前協議が行われたことは一回もありませんので、このことに関しましては、我々は全く疑っていることはございません。

 それから、基地を含めて核の持ち込みがないということに関してはどうかというお話で、今の答えと同様で、全く疑いを要しておりません。

 では、なぜそのような話をという御下問でございますので、核抜きの返還というのは、一九六九年の十一月、時の佐藤栄作内閣とニクソン大統領との共同声明第八項というのがこの背景であろうと存じますが、日米最高首脳間の深い相互理解と信頼に基づく確約であって、という一連の意見であります。そして、この核に関することに関しては、協定第七条におきまして、核に関する我が国の政策には背かない、違反しないということを、沖縄返還に当たっての条約文として明記もされておるのは先生よく御存じのとおりであります。

 この二年後の、一九七一年の十月の二十七日から二十九日に、アメリカ上院外交委員会沖縄返還協定聴聞会というのが開かれておりまして、よく出てまいります、時の国務長官ロジャーズと、それからパッカード国防次官の二人で、復帰日には沖縄には核兵器は存在しなくなっていることを確約すると、この上院外交委員会で証言をいたしております。

 また、一九七二年の五月十五日、ロジャーズ国務長官から、時の外務大臣、福田赳夫外務大臣にあてて、沖縄の核抜き返還に関する米国政府の確約が完全に履行されたことを通告するという旨のこととあわせまして、米国政府は事前協議の対象となる事項については、日本国政府の意思に反して行動する意図のないということを確認するというような文章がありますし、以上のことをもちまして、復帰後の沖縄に核は存在をしていないというように私どもは確信をいたしております。

照屋委員 沖縄はテロの標的となり得る米軍基地が過密に所在しております。

 在沖米軍基地に対するテロ防止のため、政府はどのような施策を講じているのか、尋ねます。

米村政府参考人 お答えをいたします。

 委員御指摘のとおり、九・一一テロ以降も、世界的に見ますと、米国基地あるいは軍事施設等に対するテロ計画が明らかとなっておりますし、また現実に、爆弾テロ等も発生しておるところであります。したがいまして、御指摘のとおり、在沖米軍基地はもとよりでありますけれども、我が国におけるこの種のテロの未然防止には万全を期する必要があるというふうに考えております。

 そのため、現在、具体的なテロの脅威を示す情報には接しておりませんが、平素から外国治安情報機関と頻繁に情報交換をしながら、テロの脅威を示す情報の収集、分析等に努めているところであります。あわせて、入国管理局等と連携を図りながら、テロリストの潜入阻止、発見、こういったものについて取り組んでおるところであります。

 また、国内において入ってきたテロリストと呼応する組織なりインフラなりがあるのかないのか、こういった点についても情報を収集しているところであります。また、あわせて、その時々の状況に応じまして、施設等に対する警戒警備を実施しているという状況でございます。

 以上です。

照屋委員 きょうは、本条約本文で、テロに関する包括的な定義づけを行っていない問題や、あるいは、二〇〇五年七月の改正核物質防護条約を我が国が締結していない理由などについても質問する予定でありましたが、時間の都合で省略いたします。

 最後に、防衛省防衛参事官小川さんがお見えのようでございますので、あらかじめ質問通告はしておりませんが、意見の表明と、ぜひ久間大臣に伝えていただきたいことは、いよいよ本日未明に、普天間基地の代替施設で、建設予定地のキャンプ・シュワブ海域調査、事前調査に海上自衛隊の掃海母艦「ぶんご」を投入したようであります。掃海母艦は、大砲や機関銃を備えて、機雷の敷設や除去を任務とする軍艦であると理解をしております。ところが、辺野古海域は、大砲や機関銃を必要とする紛争地ではございません。もちろん機雷もありません。住んでいるのはジュゴンであります。

 久間長官は、この掃海母艦「ぶんご」を投入する理由として、国家行政組織法上の官庁間協力、こう述べておりますが、自衛隊員が災害や国際協力以外の活動に参加する法的根拠にはならないと私は思います。米軍の新規建設に反対する県民、国民を威圧するために、掃海母艦「ぶんご」を沖縄に派遣することに、私は断固として県民の一人として抗議をしたいと思います。仲井真知事も強い不快感を表明しております。

 かつて沖縄戦のときに、旧日本軍が住民を守らないというのが悲惨な沖縄戦の実相でありました。今また、自衛隊の掃海母艦が県民を威圧するために投入されるというのは、自衛隊は住民から米軍を守る、こういうふうにしか県民は受け取りません。

山口委員長 照屋委員に申し上げます。

 質疑時間が過ぎておりますので、御協力をお願いいたします。

照屋委員 はい。

 小川参事官、何か意見があれば答えて、あるいは、なければ、きちんとこのことを久間長官に伝えてほしいと思います。どうぞ。

山口委員長 山崎運用企画局長、時間が過ぎております。手短にお願いします。

山崎政府参考人 先生の御懸念は、久間大臣の方にお伝えをいたしております。

 ただ、「ぶんご」につきましては、機関銃とか大砲を使用するわけではございませんで、現況調査の実施に当たって、民間業者によるほか海上自衛隊が協力をして機材の設置について協力をする、そのために、海上自衛隊が保有する潜水能力の活用を図っている次第でございまして、先生の御懸念のようなことはないというふうに私どもは思っております。

 以上です。

照屋委員 終わります。

山口委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

山口委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

山口委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

山口委員長 次回は、来る二十三日水曜日午後一時二十分理事会、午後一時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十八分散会


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