衆議院

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第16号 平成19年6月6日(水曜日)

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平成十九年六月六日(水曜日)

    午前九時四十分開議

 出席委員

   委員長 山口 泰明君

   理事 小野寺五典君 理事 嘉数 知賢君

   理事 三原 朝彦君 理事 やまぎわ大志郎君

   理事 山中あき子君 理事 長島 昭久君

   理事 山口  壯君 理事 丸谷 佳織君

      愛知 和男君    伊藤 公介君

      猪口 邦子君    宇野  治君

      小野 次郎君    高村 正彦君

      桜井 郁三君    篠田 陽介君

      新藤 義孝君    鈴木 馨祐君

      松島みどり君    三ッ矢憲生君

      山内 康一君    川内 博史君

      笹木 竜三君    田中眞紀子君

      前原 誠司君    笠  浩史君

      東  順治君    笠井  亮君

      照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   外務副大臣        岩屋  毅君

   外務大臣政務官      松島みどり君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  山浦 耕志君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   塩尻孝二郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 佐渡島志郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 梅本 和義君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 本田 悦朗君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 草賀 純男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 猪俣 弘司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 伊原 純一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 片上 慶一君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            奥田 紀宏君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    谷崎 泰明君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 佐々木豊成君

   政府参考人

   (国税庁調査査察部長)  鈴木 勝康君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           森山  寛君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           草野 隆彦君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           小林 裕幸君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房参事官)           原口 和夫君

   政府参考人

   (海上保安庁警備救難監) 冨賀見栄一君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    北原 巖男君

   外務委員会専門員     前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月六日

 辞任         補欠選任

  河野 太郎君     桜井 郁三君

  長妻  昭君     川内 博史君

同日

 辞任         補欠選任

  桜井 郁三君     河野 太郎君

  川内 博史君     長妻  昭君

    ―――――――――――――

六月六日

 適合性評価手続の結果の相互承認に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一四号)(参議院送付)

 知的所有権の貿易関連の側面に関する協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一五号)(参議院送付)

 二千六年の国際熱帯木材協定の締結について承認を求めるの件(条約第一六号)(参議院送付)

同月五日

 女性差別撤廃条約選択議定書の速やかな批准を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一二九五号)

 同(石井郁子君紹介)(第一二九六号)

 同(笠井亮君紹介)(第一二九七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一二九八号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一二九九号)

 同(志位和夫君紹介)(第一三〇〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一三〇一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一三〇二号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一三〇三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とフランス共和国政府との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)(参議院送付)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とフィリピン共和国との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)(参議院送付)

 社会保障に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一三号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

山口委員長 これより会議を開きます。

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とフランス共和国政府との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とフィリピン共和国との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件及び社会保障に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長塩尻孝二郎君、大臣官房審議官佐渡島志郎君、大臣官房審議官梅本和義君、大臣官房審議官本田悦朗君、大臣官房審議官草賀純男君、大臣官房審議官猪俣弘司君、大臣官房参事官伊原純一君、大臣官房参事官片上慶一君、中東アフリカ局長奥田紀宏君、領事局長谷崎泰明君、内閣官房内閣審議官山浦耕志君、財務省大臣官房審議官佐々木豊成君、国税庁調査査察部長鈴木勝康君、厚生労働省大臣官房審議官森山寛君、大臣官房審議官草野隆彦君、農林水産省大臣官房審議官小林裕幸君、大臣官房参事官原口和夫君、海上保安庁警備救難監冨賀見栄一君、防衛施設庁長官北原巖男君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山口委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。

 麻生外務大臣には、外遊、大変お疲れさまでございました。けさ改めて外務省のホームページを見たんですけれども、本当に一週間の間にまことに目まぐるしい会議日程をこなされて、きょうはその成果をぜひ御報告いただきたい、こう思っておるんですが、その前に、条約審査でありますので、三つの条約、三つの観点から質問をさせていただきたいというふうに思います。

 最初は、日仏の租税条約の改正についてでありますが、今回の改正によって初めて社会保険料に関する条項がつけ加えられました。つまり、就労者が自国の社会保障制度に支払う社会保険料について就労地国における所得控除を相互に認める、こういう規定が盛り込まれたわけであります。

 既に日仏間には社会保障協定が締結をされております。そこでは、日仏両国の社会保障制度への二重加入を防止する、今年金が話題になっておりますけれども、両国で年金の加入期間を通算して年金保険料の掛け捨てがないように、こういう制度が確立されているわけでありますけれども、今回、我が国はフランスと結んだわけですが、そのほかにも社会保障協定は、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、韓国、ベルギー、カナダ、七カ国で結んでおります。しかし、既に締結されたアメリカ、イギリスとの租税条約では、今回のような社会保険料の条項は導入されておりません。

 例えば、アメリカで働く日本人は五万人、イギリスでは一万人を超える、こういう状況でありますから、やはり滞在者が多いこうした国は特にですけれども、こういう国々においても社会保険料の所得控除が認められる、そういう施策が必要だというふうに思います。今回、なぜ日米、日英の新租税条約ではなく、フランスとの間の租税条約の改正でいち早くこの社会保険料の条項が導入されたのか、この経緯をお伺いしたいのと、今後、当然のことながら日米、日英との租税条約の中にこういう条項を盛り込んでいく必要があると思いますけれども、今後の見通しについてもあわせてお伺いをしたいと思います。

麻生国務大臣 御指摘ありましたように、これは、それまでは余り人的交流がそれほど多くなかったこともありましたでしょうし、いろいろ理由はあるんだと存じますが、一番最初に、昭和四十年代にアメリカとドイツとの間に年金への二重加入問題というのがあり、意見交換を行ってきたのが歴史なんだそうです。ところが御存じのように、それ以後両国とも年金制度が随分いろいろ変わっていったりしたものですから、そういった意味で、正式には平成十一年度にドイツと協定を締結したのが初めてのケースということになったというのが歴史的な背景で、日本に限らず相手の社会保障制度も大きく変わったということだと存じます。

 以来、御存じのように、英国、韓国、米国、ベルギー、フランス及びカナダと社会保障協定の締結ないし国会承認をいただいてきたんですが、御存じのように、これは、掛けた、払ったのに丸々返ってこないということになりますので、そういった意味では、丸々掛け捨てみたいな形になるというので、負担させられる本人また会社にとりましてかなり大きな負担になります。そういった意味でこれは解決していきたいと思っております。

 今国会において、各国との協定の実施のために特例法の内容をすべて網羅した包括的なものが厚労委員会で今審議をされておると思いますので、これが成立をいたしますと、今後国内法の整備を機動的にぱっと行えるようなことになります。そういった意味では今後迅速化されると思っておりますけれども、これは個別にいろいろあったのがこれまで長くかかった大きな背景だと存じます。

長島(昭)委員 今回、あわせて日本とオーストラリアとの間の社会保障協定を締結することになりました。これは、我が国が締結した社会保障協定の中では八番目、こういうことになるわけですけれども、これまで我が国が締結してきたフランスやイギリス、ドイツ、アメリカ、それぞれどのぐらい社会保障協定を結んでいるか。今麻生大臣からおっしゃっていただいた、非常に意義深い、これから相互に人の交流がさらに発展をしていけば当然必要になってくる条項だと思いますけれども、この社会保障協定、どのぐらい締結しているかというのを調べてみると、フランスは五十八カ国、これが一番多いですけれども、イギリス、ドイツがそれぞれ四十五カ国、アメリカも二十一カ国と、日本が今回オーストラリアで八番目ですから、何となくおくれをとっているような印象を与えます。

 昨年の五月十七日に本委員会で麻生外務大臣は、日本とカナダとの間の社会保障協定の審議に当たって、「社会保障協定というのは、これは二国間関係というのを強化する上で非常に大きな道具になる」、このように答弁をされています。この大臣の御認識の割には、我が国の社会保障協定の締結というのは他国に比べて、特に今挙げた仏、英、独、米に比べておくれをとっている。その理由は何かということが一点と、今後締結を加速していく必要性について、外務大臣の御所見を承りたいと思います。

麻生国務大臣 これまでかかりました大きな理由は、先ほど申し上げた点と、今厚生労働委員会で審議されておりますあの法案が今国会で成立をいたしますとかなり大幅に進められると、私どもとしては国内法の手続が楽になるなと思って、私どももそれを期待しております。

 今後これを加速させると双方にとってというのは、やはり長期滞在が五年だ六年だという人がこれだけふえてきますと、五年以内はということになっていますけれども、五年以上というのはかなり多くおられますので、オーストラリア等々も千人ぐらいおられると思いますので、そういったような方々にとりましては、両方で払わせられるというのは、会社もそうですが、個人負担が大きくなりますので、そういった意味では、こういったものがなくなると、払わせられる個人にとりましては、海外に行くとか長くいるというのが、非常に行きやすくなる、そういった負担が少なくなるというのが大きいと思います。

 二国間関係を促進する意味で、特に長期滞在者が多くおられるというのは私は二国間関係にとっていいこと、それはいいことばかりでもありませんけれどもいい例が多くなると思いますので、二国間関係を促進するという意味において、この種の協定ができ上がるというのは、もっと推進されてしかるべきものだ、私自身はそう思っております。

長島(昭)委員 国内法の問題も今御指摘いただきましたけれども、外務省としてこの二重加入の問題についてどのくらいお調べになっておられるのか。

 昨年の十月に日本経団連が「社会保障協定の一層の締結促進を求める」という意見書を提出していると思うんです。そこでは、調査対象の二十四カ国中十三カ国においていまだに社会保険料の二重負担が生じている、こういう結果が出ているんですけれども、外務省として、在外公館を使って、この二重加入の問題、どのくらい調査をして把握をされているか、これが恐らく今後の促進のきっかけになっていくんだろうと思いますが、その点、御答弁いただきたいと思います。

岩屋副大臣 外務省といたしましては、日系企業が多数進出している幾つかの国の社会保障制度について調査を行っております。この結果得られた在留企業関係者の数、それから各国の保険料率等の情報をもとにいたしまして、二重負担の大まかな水準を比較しております。そして、それを協定締結の候補国について検討する際の判断材料の一つにしているところでございます。

 現在、当局間での協議を行っておりますイタリア、スペイン、チェコ等につきまして、今長島先生御指摘の経済団体の方は十億円から四十億円程度の二重負担が生じていると試算をしておられますが、これは当省の認識と大きく異なるものではございません。他方、協定締結により軽減される二重負担の具体的な金額についてでございますけれども、それは、協定の対象となる制度の範囲、それから人数、給与水準等によって確定するものでございますので、保険制度の範囲が固まる前の段階でこれを一々お示しすることはなかなか難しいということは御理解いただきたいと思います。

 いずれにしても、経済団体等からの要望を真摯に受けとめまして、各国との協定締結の可能性を検討していきたい、こう思っております。

長島(昭)委員 ありがとうございます。

 彼我の制度が確立をしていかないとなかなかこういう協定に結びつかない、こういうことでございますので、ぜひ今後とも努力をいただきたいと思います。

 最後のポイントですけれども、今回、租税条約の改正をやっているわけで、フランスとフィリピン、こういうことになっているわけですが、現在、オランダ、アラブ首長国連邦、クウェート、オーストラリア、パキスタン、この五カ国と締結を進めている、手続中あるいは改正の交渉中と認識をしております。

 一つ加えてお伺いしたいのは、ことしのゴールデンウイークに安倍総理が中東五カ国を訪問されています。サウジアラビア、UAE、クウェート、カタール、エジプトを歴訪しておられますけれども、ここで総理は、石油を超えた重層的な協力関係によって日本と中東の新時代を切り開いていくんだ、こういうお考えを示されました。

 その点では、私は、中東とのこれからの経済関係の深化ということを考えると、租税条約の整備というのは必須ではないかと思うのでありますが、今後の方針について外務大臣から御答弁をいただきたいと思います。

麻生国務大臣 今御指摘ありましたように、中東諸国との関係において、GCCと言われる諸国との関係は、我々というと、ドーハの悲劇等々、サッカー等々思い出すところではありますけれども、これまでは専ら石油に偏っていたと思います。これは、いろいろ向こう側の状況も大きく変わりましたし、例えばカタールを見ましても、ついこの間までは漁村と真珠取りぐらいしかなかったところが、いきなりLNGが四百万トンぐらい出ていますから、物すごい、今、中部電力は全量ここだと思います。

 そういったようなところを含めまして、偏っている傍ら、そこらの国々は多額に入ってきた収入をもって何に使うかというので、例えばカタール等々は、この多額の金を教育費にため込んで、物すごい勢いで貯蓄をしております。これは、日本が明治時代にやった、いわゆる政府歳出の三割を教育費に充てたという例に倣ってこれをスタートさせておると、皇太子の話ですけれども、そういう話をしております。そういった話では、日本がどのように明治時代にやってのけたかという話等々は物すごく関心を示すところでもありますので、そういったところで我々としては今後やっていかねばならぬと思って、積極的にこの種の話をさせていただいております。

 この租税条約につきましても、アラブ首長国と、例えばクウェート等々と租税条約締結を今行って、これまでも、三月に一回、去年に一回しましたので、既に二度交渉を行っております。したがいまして、今御指摘のありましたように、重層的なという話が出ておりますけれども、この租税条約もその一つだと思いますが、いろいろ双方で行き来がしやすいように、我々も、長く向こうに滞在している人もかなりおりますので、そういったことを考えますと、この種の話を含めまして、長くいれば必然的に文化の話とかいろいろしやすくなってまいりますので、私どもとしては、この種の話は今後積極的に進めていかねばならぬと考えております。

長島(昭)委員 ありがとうございました。

 条約審査はこのぐらいにして、外務大臣、せっかく外遊をしてこられました。ASEMの会議がハンブルク、G8がポツダム、あとポーランド、スペインを回られて、そして最後に済州島で日中韓外相会議をされた、こういうことであります。これを全部聞いていたら切りがないので、少し論点を絞って伺いたいと思うんです。

 これは私もずっと本委員会で外務大臣と議論させていただきましたけれども、北朝鮮の問題ですね。この問題、今回私拝見をしていて、この委員会で御答弁をいただいたとおりに、麻生外務大臣が、圧力の強化、忍耐は限界があるんだ、無限ではない、こういう言葉を使われながら、一段と圧力を国際社会でかけていかなきゃいけない、こういうことで、この点についてリーダーシップを発揮していただいたこと、大変評価をさせていただいているんです。

 議長声明がそれぞれASEMとG8と出ております。書きぶりは、それは参加国が違いますので、少しやわらかかったり少し厳し目であったり、いろいろな表現の違いはあるんですが、基本的には核と拉致の問題をそれぞれぎりぎりの表現で表明をしているなというふうに感じているんですけれども、大臣御自身の感触を率直に御披露いただきたいんです。

 ヨーロッパの感触、それからあわせて、日中、日韓と外相会談を個別にしておられますので、特に中国の外相は、ヨウケツチさんですか、新しい外交部長だと思いますので、この辺のことも含めて、大臣の感触、どのくらい浸透してきたか、この辺のところを御答弁いただきたいと思います。

麻生国務大臣 核の話がどうしても関心の高いところなんですが、昨年五月、モスクワでG8外相会議をやったときには、ほとんどの方の関心はイラン。その中で日本だけが、イランより北朝鮮の方が深刻だという話をずっとそのときも言い続けて、あのときはかなり孤立しました。それでも、ロシアが議長ではありましたけれども、ヒューマニタリアンイシューという表現だったと思いますが、人権の話をあのとき織り込むことに成功したんです。

 五カ月後にはいわゆる核実験ということになりましたので、嫌らしく電話をして、おれが言ったとおりになっただろう、私のことですけれども、確実におまえが無知であったので、おれの方が知っていただろう、アジアのことはおれたちの話を聞けという話をロシアにもみんなそれぞれ言いましたので、それはみんな反論の余地がありませんから、認めた。

 それで、今回が来ましたので、もう一回、昨年五月の話を思い出せ、ロシアさん、おたくは去年も出ていたでしょう、新しくかわった人は知らないけれども、この前出ていた人はあのときの話を思い出してもらいたいと。だから、今回は、ほとんど抵抗することなく、したがって、アブダクションとヒューマニタリアンイシューと二カ所書かせるということになりました。去年の表現より後退することは認められぬというのに即乗ってきたのがコンディ・ライス・アメリカ国務長官だったと記憶しますが、これは即賛成という話になって、表現は、ドイツが今回議長国をしておりましたので、まとめるのにそれほど時間はかからなかったというようなのが感じであります。

 中国、韓国は、中国はドイツでも会いましたし、いろいろ機会があったんですが、新しくなっておりますので、李肇星に比べれば何となくまだ初心者運転みたいな感じで、確実に確実にというような感じではありました。ありましたけれども、六者協議の話からスタートをしましたが、少なくともこの問題に関しましてはかなり向こうもよく引き継ぎがなされているというのかな、そういった感じで、従来に比べれば最初からはっきり態度が出てきておりますので、二月十三日の合意の履行ということに関しましては非常にはっきりしておりました。

 韓国につきましては、同様でありますけれども、少なくとも、北朝鮮のことに関しましては、韓国は四十万トンの米の輸出をとめておる背景を説明しておりまして、早期履行というものをしない限りは韓国としてはこの種の話には、いわゆる今までみたいに何となく友好第一みたいな話ではなくなってきているというのが韓国の対応として感じられるところでもありましたので、情勢としては、国際情勢がいろいろ大きく変わってきつつある中にあって、長いことかけた結果、核と拉致の話につきましてはこの種の理解が前に比べて大きく進んでおる、この一年間の間の努力がそれなりに報われていると感じております。

長島(昭)委員 この問題ではもう一点、初期段階の措置に移るということについては議長声明には出ております。恐らく、それは国際社会のコンセンサス、当然のことながらコンセンサスだと思うんですが、それを行わしめる、北朝鮮をしてそういう行動に移らしめるために何が必要かということで、一方で圧力の問題があり、もう一方で、韓国なんかは、うちは援助をしないという圧力、それもまあ一つの圧力になるんでしょうけれども、そういう姿勢の違いが多少あるんですが、私が伺いたいのは、BDAの問題と初期段階に移行する措置との関連性を中国や韓国がどういうふうにとらえているのか。もしそれが話題になっているとすればお話をいただきたいんです。

 というのは、クリス・ヒルは、あと二、三週間とか、今週中にとか、あと二、三日とかと言って完全にオオカミ中年に成り下がっておりますので、こういう意味においては、BDAの問題は、例えば最近やめたビクター・チャ、彼は、凍結解除というところでもうアメリカとしては仕事は終わっているんだ、こう言っておりますので、そこのところ、もちろん日本とビクター・チャを初めとするアメリカの、アメリカはまあ割れているわけですけれども、およそコンセンサスはあると思いますが、中国や韓国も同じような考えでいるのかどうか。ここは多分ポイントになってくるだろうと思いますので、ちょっと通告はしませんでしたけれども、よろしくお願いします。

麻生国務大臣 最初にこれが出たときを御記憶かと思いますが、バンコ・デルタ・アジアの資金凍結という話が出たときは、これは基本的には六者協議とは全く関係ない別の話で、アメリカでいきますと財務省の話であって国務省の関係ではありませんでした。いわゆるマネーロンダリングの話から、BDAはとんでもないといって、財務省、あれはキミット以下がたしか入ってきたんだと記憶しますが、ばっととめられた、ポールソンが入ってくる前だったと思いますけれども、とめられたのが最初だったと記憶します。その結果、簡単に言えば、アメリカが思っているよりはるかに大きな効果が上がったということ、影響力があった、上がったんだと存じます。

 それで、その他の国々は、それはアメリカと北朝鮮の話だからといって、そっちで、二者でやったらという話だったんですが、アメリカは北朝鮮との間で二者協議をやってよかったという思い出が一つもありませんので、必ず六者の中での話だというので、まずそこからなかなかスタートしませんでした。アメリカ、中国、北朝鮮という三者みたいな話で少し前に進んで、BDAの話に余りにしつこくこだわってこちらの六者が動かないものですから、アメリカも少し譲ってフリーズを、凍結を解除というところまで譲った、アメリカ側にしてみれば。そうすればこっちに入ってくるんだなといったら、今度は、凍結解除じゃだめだ、北朝鮮まで送金だと。

 そんな話は聞いておらぬという話になって、またしばらく時間がかかって、今度、送金できるような手続というのは、御存じのように、銀行というのは預金を単に預かってそこでおろすだけじゃない、その金が送金できたり為替の分野がかわったり、いわゆるそういった業務というのを全部総合的に動けない銀行なんというのは銀行としての体をなしませんから、その部分がアメリカの法律、国内法によって解除されない限りは、少なくともその銀行は今後とも、この問題が解決してもほかの業務が全然できないことになるというのが初めて理解ができ始めた。僕は、そのころから多分、アメリカの中でも金融に詳しい役人と詳しくない役人との意識の差がかなり出たと思いますね。北朝鮮なんか特にお役人は全然わかっていなかった、僕にはそう思えます。

 私は最初から、去年の末ぐらいから、これは問題なんじゃないのと言っていたんですけれども、それは余り、いいえいいえ、凍結解除すれば終わりだ終わりだと言っていたので、やれ二週間だ、何か十日ぐらいでとかずっと言っていたのは多分そうなんだと思います。いざ今度は、やむを得ずアメリカもいろいろな、中国の銀行でやってくれないかとか、ついにアメリカの銀行に、おまえやれとかなんとか言ってみたり、ちょっとそこまで譲らなくちゃいけないのかねという感があるほどいろいろやったのは事実なんですが、みんなそれは国内法にひっかかりますので、財務省はノー、それから司法省もノーというような感じになってきたものですから、今、そこらが話を非常に込み入らせている大きなもとだと思っております。

 二千五百万ドルといえば二十五億円。個人としては大きいですけれども、国家の金としては二十五億とは大した金だとは思いませんが、これよりは、その他の、送金を含めますいろいろな銀行業務というのが大きい。したがって、今回の五月十三日の北朝鮮のスポークスマンをかりれば、すべての経済制裁だとまたレベルが上がってきていますので、何となく、少しずつ少しずつ凍結解除、送金、全面解除というような感じにだんだんだんだん条件を、要求を上げてきているというのが認識です。ちょっとこれはもう我慢にも限度があるという話がブッシュ大統領から安倍総理に伝えられたりする背景は、多分それだと思っております。

 いずれにしても、今そこらのところの駆け引きが最も激しくなってきているんだろうと思いますが、残念ながら我々はアメリカ側の情報しかとれませんし、中国側に聞いても、この情報はどれだけ知っているんだ、武大偉から聞いているはずだがどれだけ知っているんだと今度のヨウケツチという中国の新しい外務大臣に聞いても、そこらは我々が得ている情報以上のものを知っているわけではありませんでした。

 今、基本的には、アメリカの司法省、財務省、国務省、この三省の中の調整プラス北朝鮮との交渉ということがどの程度推移しているのかにつきましてはよくわかりませんが、総じて、財務、司法がハードランディング、こっちの国務省の方がソフトという感じかな、ちょっと他国のことはよく見えませんけれども、大体今私どもの得ている情報はそんなところまででして、これ以上の内容をつまびらかにしているわけではありません。

長島(昭)委員 私個人は非常に悲観的でありまして、これはアメリカの財務省がそう簡単に譲るはずがないので、自分たちがつくったルールですから、それを自分たちでなくすといったら法治国家としてはあり得ない話ですから、恐らくそこは切り離して、どうやって北朝鮮を動かすかということを各国考える必要があるんだろう、こう思っております。

 もう時間がだんだん迫ってきたんですが、二点伺いたいんです。

 一つは、今回の公式の会議の日程の合間を縫って、外務大臣は三人の外務大臣とお会いになっています。一人は今お話があった中国の楊外務大臣、それからもう一人がパキスタンのカスーリ外相、そしてもう一人がミャンマーの外務大臣なんですね。私は、ちょっとこの点は目を引きました。今なぜミャンマーなのか、何を目的に麻生外務大臣は、なぜミャンマーの外務大臣とお会いになって、どんな話をされたのか。ちょっと唐突な感じが恐らく国民の皆さんはされると思うので、その辺の意義について御説明をいただきたいと思います。

麻生国務大臣 アウン・サンという将軍がいたんですが、これはいわゆるミャンマーにおいてというかビルマにおいてというか、有名な将軍の娘ということになっておるんです。この人の自宅軟禁という状況が続いておりまして、面会を申し込んだ日の前の日に自宅軟禁の期限が切れるはずだったんですが、それを延長するという状況になりつつあるという情報を私らは得ていたものですから、それが直接その日に面会を申し込むことになったんです。

 前からニャンという元軍人さん、今の外務大臣に二度ほど会ったことがありましたので、この話に関しては、少なくとも今国際情勢というのがどういう状況になっているのかということに関しておたくの議長さんはわかっておらぬのではないかと。なぜなら、フィリピンのロムロというのがASEANの議長としてミャンマーまで面会に行って拒否、その他の人が行っても拒否、だから全然会わないという状況が続いていて、何となく聞きたくないものは聞かないみたいな話じゃとてもじゃないよという話を、きちんと情報を上げるのがあなたの立場ではないかという話をしております。

 そうしませんと、これは何となく勝手な思い込みで、世界じゅうからいじめられるから、私、ほかに親切にしてくれるところはお隣の中国しかないというような話になると、そんなに中国と近いわけではなかった国がそうせざるを得なくなったのは自分たちのせいなのであって、おれたちのせいじゃないよというのが一点であります。

 もう一点は、少なくともこの国というのは、ビルマ気違いというのを略してビルキチというのだそうですが、日本では我々の世代より上の方には物すごくこのビルキチが大勢おられまして、いろいろこの国に関して、商社はもちろんのことですけれども、いろいろやっておられるんですが、なかなか最近の状況の中では難しい。首都も山の奥の方に移しちゃったりなんかしているような状態ですから、ますます自分で自分を孤立させているのは意味がないのではないかということで、そろそろここらのところをやらないとという話を言ったんです。

 簡単に言えば、この人を保釈したらもしくは釈放したらミャンマーの国内は政治的に大混乱をするという話をするから、混乱するのはおたくの軍人政府が混乱するのであって、ミャンマーの国民は別に混乱しないんじゃないの、するすると言って、おたくの体制が困るだけであって、その他の国民はそれはよかったとするんじゃないのかというような話やら何やらいろいろ、この前もしましたけれども、今度はもっとはっきりそういった話をしております。

 いずれにしても、極端に情報が偏っているんだなというのを、いろいろなほかの外務大臣以外の人の話から聞きますので、少なくとも、あなたが影響力が上にないというんだったら影響力のあるやつにおれたちを会わせろ、それがあなたの最低限の仕事ということだけはやってくれ、やってくれさえすれば情報は提供するし、こういうやり方をすればこういうことになるという手口から何から、全部説明はできるからという話をして帰っております。

 その後のASEMの会議で、新しく今度来たフランスの外務大臣というのは人権問題ばかりに詳しいのが出てきましたので、これはもう満座の前で、まあちょっとと思うぐらいミャンマーを名指しでやっておりました。本当に肩を落としたような感じでしたので、おれが言うとあれくらい品よく聞こえるけれども世界はあれぐらいに思っている、おれは品よく言ってやっているだけなんだからと言って、あの人のおかげで私は株を上げさせてもらったと思っているんです。

 西欧諸国の方はすごく激しくなってきているなというのが正直な実感です。例のカンボジア、ラオス、ベトナムにミャンマーが入ってきていますので、ミャンマーだけがASEANの中で極端になるというのはいかがなものかと思いますから、何らかの形でというので、全然糸口が全く、向こうの方が拒否してきておりますので、そこのところを何とかするのを考えなければいかぬなと思って、たまたまアウン・サン・スー・チーのが延長になったものですから、その日を選ばせていただきました。

長島(昭)委員 今の外務大臣の御説明でかなり語り尽くされているという印象を持っているんです。ちょうど今フランスの例を挙げていただきましたが、これはアメリカも相当強硬にやってきていまして、欧米のアプローチと日本のアプローチが若干ずれていることが気になる部分でもあるんですが、最初に私の個人的な見解を言えば、アプローチの違いというのはあり得るのであって、上品か下品かという話は別としても、どちらがよりミャンマーの民主化を前に進める力を持っているのか、有効なのか、そういうことなんだろう、こう思っております。

 アメリカでは、知日派で有名なマイケル・グリーンでさえ去年起こった出来事について、彼のCSISのニューズレターをきょう私は持ってきましたけれども、このニューズレターの中でかなり激しく日本のアプローチを批判しているんですね。この辺のところの調整をぜひ麻生外務大臣にはしていただきたいんです。

 ちょっと触れさせていただきますと、去年の五月の末に国連の事務総長の特使としてガンバリ国連政務局長がミャンマーに行かれているんですね、その後また行かれていますけれども。この方がミャンマー情勢について国連安保理への報告を行いました。これに対して日本の大島大使がとった行動について、マイケル・グリーンはこう書いているんですね、この十年間の日本外交で最も失望したと。「マイ グレーテスト ディサポイントメント ウイズ ジャパニーズ フォーリン ポリシー イン ア ディケード」、こう言っているんですね。

 どういうことかというと、これは外務省の方に伺うと、公表されていない中身なのでお答えできませんという話なんですが、マイケル・グリーンはこう書いているんですね。ミャンマーが特使との会談の中で民主化への具体的な努力を拒否したと。特使が、経済援助をするからそれと引きかえに何か具体的な動きをしなさい、こう示唆したら、これに対して拒否、こういうことでミャンマーに対する民主化の問題について報告をした。これに対して各国がいろいろな意見を言って、もうそろそろ安保理でやろうということが欧米から出た。その中で大島大使が、いや、国連安保理によるさらなる行動は必要ないのではないか、こういう主張をした。これがアメリカ側から見ると、何だ、中国とロシアと変わらないじゃないか、こう映った。麻生外相が提唱する価値外交の名が廃るではないか、こういうことだったわけですけれども、これについて、ぜひ麻生外務大臣からの反論を伺いたい。つまり、日本政府のとっているアプローチは決して中国、ロシアと軌を一にしたものではないと私は思いますけれども、その点の誤解があることが一点。

 それから、米欧のアプローチ、つまり、何でもかんでも安保理に持っていってやる。別に、北朝鮮やイランと違って、ミャンマーの民主化、人権問題が周辺諸国に対して平和と安全に対する脅威になっているとは私もとても思えませんので、この辺のところをどういうふうにアメリカやヨーロッパに対して外務大臣として御説明をなさるのか。この辺のところ、御見解を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 これは非公式ではあったんですが、昨年の九月の前にこの問題についての協議が出されたときにうちは反対ということを言って、九月の段階でこれは賛成という票を投じたんです。そのときの間に、我々としては何となく、アウン・サン・スー・チーという人のおかげでえらく、一人だけちょっと違う感じなものですから、ここだけに物すごく関心が集中しているので、この種の話は極めて危ないと思っております。

 国全体の中で、このアウン・サン・スー・チーだけがかわいそう、だからここは何とかかんとかと言うけれども、それはミャンマー全体で見て本当かというのが一点。

 それから、ミャンマー政府自体に対する評価というのは、国民は、腐敗の話とか、いろいろ昔から言われているところなので、そういったところが重ねてきているのが反対なのであって、アウン・サン・スー・チーさんかわいそうだけが、西欧から見るとそうなんでしょうけれども、中にいる人たちは、別にアウン・サン・スー・チーは単なるシンボルになっているだけなのであって、現実は今の現体制に対する不満というのが大きな理由なんだと思っております。

 ミャンマーというところに関しましては、今言われましたように、いろいろな問題が大きく意識に差がある。我々の方のように長くミャンマーとの関係のあるところから見ると、それはそこだけがえらくシンボライズされているような感じがするけれども、現実は違うんじゃないかと。

 そこで、この問題は、要は民主化という話と軟禁状態という世界的になっちゃったこの話を何とかするというのが問題なんだから、したがって、アメリカやヨーロッパに対して、この問題を、簡単に言えば、ちょっと我々アジアにやらせないか、この問題をちょっとおれたちにやらせてみたらどうかという話が多分やるべき手段なんだと思って、まずはと思って、ちょっとASEANでやってみてという話を去年したんですが、ASEANはいろいろな関係がありまして無理だったというのが昨年の状況でもあります。

 日本がこれを窓口になってやるというのも一つの方法で、自由と繁栄の弧の中にもこの地域は入っておりますので、これを使ってやるか、いろいろな話でやらねばならぬと思いますが、そのときには、アメリカやらヨーロッパとか西欧諸国に対しては、おれたちにちょっとしばらくやらせてみてというような、努力をおれたちに三年間やらせてみろというような話をするか、いろいろなやり方はあろうかと思いますけれども、そういったようなことからアプローチしてみるのも一つの方法かなと思って。

 ただただこの問題一点だけを、軟禁状態一点だけを取り上げてずっと別の方向に追いやるのも、本人たちの希望しているところではないと存じますので、何となく、インド洋にも面して、非常に重要な地理的なものがありますし、その後ろの背景もよく御存じのとおりなので、いろいろな問題を妙な形で、こちらに結果として不利になるような形に追い込むのはいかがなものかというのが正直なところです。

長島(昭)委員 私も全く同感でありまして、ここは日本の独自性というのは主張していいと思いますし、欧米流のやり方でいくと、結局は、ミャンマーに対して耳の痛いことを全く言わない中国やロシアの方に彼らを追いやっていく、これは我々にとっては余り得策ではないと思いますし、最後にお触れになった戦略的な観点というのが非常に重要だと思いまして、天然ガスに今中国が相当関心を示しているし、あるいはアンダマン海の東側というのは非常に重要な戦略的要衝になっておりますので。

 こういうことを考えて、あなた方のやり方が民主化を促進するわけではなく、反発だけを買い、そしてミャンマーを孤立化させ、気がついてみたら、だれがミャンマーを失ったかみたいな、そんな状況になりかねないと私は思いますので、ぜひここは踏ん張っていただいて、日本独自のアプローチを展開していただきたい、こう思います。

 最後に、もうちょっと時間がなくなってきましたけれども、外務大臣が外遊をされている間に、ロシアのラブロフ外相が北方領土を訪問すると。これは、我が国固有の領土でありますから、普通に考えてもかなり挑発的な行為ではないか、このように私は思います。

 特に、九三年の東京宣言で、はっきり四島を名指しして、そしてこれは係争中であると。この領土の係争中の中で一方の外交当事者がその土地を訪問するということは、これは初めての出来事だそうでありますが、この点について、まず外務大臣の御所見を承りたいと思います。これが本当に積み上げてきたこれまでの日ロ交渉にとってどういう影響を与えるというふうにお考えか、見解をいただきたいと思います。

麻生国務大臣 今月の四日、五日、ソウルで行われました第六回のアジア協力対話に出席する途中、ユジノサハリンスクに立ち寄るということになって、国後、択捉及び水晶島を訪問したというように承知をいたしております。今おっしゃいましたように、昨年九月この計画というものを発表しておりますが、そのときはたしか天候上の理由で行けなかったというのがあの当時だったと記憶しています。

 今回、意図、いろいろ考えているところが向こうもあるんだとは思いますけれども、少なくとも、ここらのところに関して自分たちは関心があるというのを示すのと同時に、この人が行ったことがないところでもありますので、日本との交渉をするに当たって、現状を見ておきたいと思ったかもしれませんし、これはいろいろなことを、都合よく解釈すれば都合よく解釈できますし、都合悪く解釈すれば都合悪くも解釈できますので、これは両方考えておかなければいかぬところだと思っております。

 いずれにいたしましても、これは、この間のプーチン大統領と安倍総理との会合のときに、これまでの諸文書、諸合意等々に基づいてという、あの席には、私もラブロフ外務大臣も両方とも同席しておりました席でプーチンが正式にきちんと言った言葉でもありますので、それに基づいて今後どうしていくかという話なんだと思いますので、今の段階で、あらかじめ予断をもってなかなか、どういう意図であったかと言われると、ちょっとなかなか難しいところだと思いますが、現状を見ておくというのは決して間違った行動だとは思いませんけれども、これが挑発的な行為にならないようにしてくれという話は、これは我々は既にもう欧亜局を通じて、また現地の大使館を通じてロシア外務省に対しては申し込んできたところではございます。

長島(昭)委員 つまり、訪問そのものが挑発的な行為とは見ておられないということなんでしょうか。それは、国民感情からすると、少し穏当に過ぎる気がいたしますけれども。

 私も今の外務大臣のお話を伺ってなるほどなと思ったのは、官房長官の談話でも、非常に抑えたトーンで話をされている。つまりは、こういう行為を相手の外務大臣がしても、日ロ交渉をこれから進めていく上でそれほど支障がない、そういう御見解なのか、それともやはり、悪影響があるんだから余り調子に乗るなよ、そういうシグナルはきちんと送っておかなければならないと思っておられるのか、ここだけ一点確認をさせていただきたいと思います。

麻生国務大臣 我が方では、これまででは、最近では十七年の七月に小池当時の北方担当大臣が択捉島と国後島に行っておられますし、歴代、平成十年以降、十年、十二年、十四年、十五年、十七年と、いろいろ総務長官やら担当大臣がずっとこの場所を訪問しておるというこれまでの経緯、向こう側はゼロだったという経緯があります。

 そういう意味で、今後この話というものが、いろいろ話が煮詰まってくるというといかにも期待が高まるような、安心なことは言えませんけれども、少なくともこの問題に関して、我々としては、今度の行動だけをとって直ちに日ロのその他の交渉にすべて応じないとかいうようなことをするつもりはありませんし、向こう側もそういう感じになると思ってはいないと思いますが、ただ、この種の問題に関しては、非常に大きな問題を提起しかねないことになるからという話は言ってありますし、その終わった後も同様のことを既に向こう側には伝えてはあります。

長島(昭)委員 今よくわかりました。

 この問題はもう少し深く、時間をかけてやらせていただきたい、こう思いますが、一点私が気になるのは、最近のロシアの動きですね。国内的には非常に強権的になっているし、外務大臣も、ポーランドの外務大臣から、ロシアについては、いろいろ苦情というか文句というか、そういうのを聞いてこられたやに仄聞しておりますけれども、周辺諸国に与えるロシアの悪影響といいますか、そういうトレンドも踏まえてぜひ交渉していただきたいし、だからといって全体をぶち壊すわけにもいきませんし、ここは本当にデリケートな交渉だと思いますけれども、ぜひ主張する外交できちんとやっていただきたい、このことをお願いして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

山口委員長 次に、川内博史君。

川内委員 おはようございます。川内でございます。

 早速質問を始めさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 まず、社会保障に関する日本国とオーストラリアとの間の協定に関して聞かせていただきたいと思います。

 本協定、日豪社会保障協定の締結によって、両国において何人ぐらいの方々が利益を受けるのか、そしてまた、その経済的効果はいかばかりか、そして、その経済的効果の計算の基礎、根拠というものを教えていただきたいと思います。

岩屋副大臣 現在、我が国からオーストラリアに派遣される駐在員等につきましては、日豪双方の年金制度に強制加入ということになっておりまして、したがって、両国で保険料を支払う義務が生じている、これは企業及び個人に大きな負担となっているということでございます。

 したがって、本協定の締結によりまして、原則として就労地国の年金制度にのみ強制加入するとしつつ、派遣期間が五年以下である場合は派遣元国の年金制度のみが適用される、そして二重加入の問題が解消されるということでございます。

 そして、先生お尋ねのどのぐらいの効果が上がるのかということについては、日本から豪州に派遣されている企業駐在員等でこの協定の対象になる者は約千人に上る、そして、豪州の年金保険料免除による負担軽減額は年間九億円と推定されております。一方、豪州から日本に派遣されている駐在員は二百人と推計されておりまして、その効果は三億円と試算されます。

 これが二重負担解消の負担軽減ですけれども、こういうことが進めば、さらに両国の経済関係が一層促進される、そういう効果を生むというふうに思っております。

川内委員 ありがとうございます。

 それでは、日豪の関係について今大きな話題になっております日豪EPAの今後の見込みについて、何点かお尋ねをさせていただきたいと思います。

 日豪のEPAの交渉について、センシティブ品目という言葉、あるいはセンシティビティーという言葉がよく出てくるわけでございますが、センシティビティーという言葉、あるいはセンシティブ品目という言葉をなぜ日本語にしないのかということを教えていただきたいと思います。

 ごめんなさい、聞き方が悪かったので、改めて。

 日本語に訳すと何になりますか。

原口政府参考人 センシティビティー、センシティブという言葉でございますが、一般的には、敏感なといいますか、影響を受けやすく、したがってそれに応じた慎重な取り扱いを要するという意味だと認識しております。

 したがいまして、そのような非常に深い意味のある言葉でございますので、センシティビティーという言葉をそのまま用いているというふうに考えております。

川内委員 外務省は。

草賀政府参考人 お答え申し上げます。

 今農水省の方から御説明があったように、そういう品目につきましては、実態に着目して、センシティビティーの訳として、重要品目であろうというふうに考えております。

川内委員 もう一回答えてください。

草賀政府参考人 英語でセンシティビティー品目と言いますけれども、それを直訳いたしますと、敏感ですとか、その他の訳もあろうかと思いますけれども、日本の農業にとっての重要性という点をかんがみまして、重要品目というふうに訳すのが今大体定着しているかと思います。

川内委員 農業の分野においては重要品目と訳すのが定着をしているというふうに、今外務省から御説明がございました。

 農林水産省も、今後は重要品目というふうにおっしゃるということでよろしいんですね。

原口政府参考人 私ども、今まで日豪関係のいろいろな資料におきまして、その文脈においてセンシティブなり重要なということで使ってきております。その趣旨といたしましては、ほぼ同様な意味であるというふうに考えております。

川内委員 いや、重要なという言葉を文脈によって重要品目と言ったりセンシティビティーと言ったりするというのではなくて、同趣旨であると考えているというのではなくて、農業の分野においては、センシティビティーあるいはセンシティブな品目というのは、日本の農業にとっては重要品目であるという訳語をこれから使うというふうにおっしゃるのかおっしゃらないのかということをお聞きしているんですけれどもね。

 農林水産省が出しているペーパーには、「農林水産分野等におけるセンシティビティについて十分な説明を行い、」というような、一体何のことを言っているのかよくわからない書き方がしてあるので、農林水産分野等における重要品目についてというふうに、農林水産省が出すペーパーに重要品目と書かずに、外務省は重要品目だと考えていますと言っているのに、農林水産省がわけのわからぬことを言っていたら、これから交渉にならぬと思うんですけれども、農林水産省は、重要品目という訳語を使いますというふうに言うんですか、言わないんですか。

原口政府参考人 先ほども申し上げましたように、センシティブという言葉は、重要であるというのももちろんでございますけれども、その前提として、非常に影響を受けやすいという意味も含んでおりますので、そこは、重要であるという認識に基づいて、重要であるという位置づけのもとに、今後適切に位置づけをしていきたいというふうに考えております。

川内委員 まあ、何かよくわからぬ答弁だったんですが。

 外務省経済局が平成十九年三月におつくりになられたペーパーでは、センシティブというのを脆弱と訳しているんですね。「脆弱(センシティブ)品目の扱い」というふうに言っている。

 まあ、センシティブというのは訳すのが非常に難しいということなんでしょうが、私は、農水省はそれを、日本の農業にとって非常に重要な品目であるというふうに思ってはいるけれども、訳すのがなかなか難しいと答弁されるのがちょっと理解に苦しみますが、これにこだわっても問題が進みませんので、次の課題に進みます。

 では、今後、そういう非常にセンシティブな問題について、どのように日本の政府として日豪の交渉に臨まれるのかということについて、今まで繰り返し聞かれていると思うんですが、改めて教えていただきたいと思います。

原口政府参考人 日豪EPAでございますけれども、交渉の前に、日豪の政府間の共同研究で報告書を出させていただきました。そこにおきましては、これまでのほかの国との共同研究と異なりまして、関税につきましては、段階的撤廃のみならず除外及び再協議を含むすべての柔軟性の選択肢を用いるという趣旨を明らかにしたところでございます。

 今後の交渉に当たりましては、この報告書の記述を土台にいたしまして、また国内農業への影響を十分踏まえ、守るべきものはしっかりと守るという方針のもとに、我が国として最大限の利益を得られるよう政府一体となって交渉してまいりたいというふうに思います。

川内委員 今審議官の方から日本の政府の方針の御説明があったわけでございますが、外務大臣もそれでよろしいんですよね。

麻生国務大臣 日本として、豪州に限りませんけれども、日本の農業産品に対して急激かつ重大な影響が起き得る可能性につきましては、そこを、攻めるところは攻め、守るときは守りというようなところで、ここらのところは重要な配慮をしていかねばならぬ、その上でどうやっていくかというのが交渉なんだと存じます。

川内委員 これも繰り返し聞かれていることだと思うんですが、守るべきものは守るという言葉について、守るべきものとは何なのか。守るべきものの具体の内容というものを教えていただきたいというふうに思います。

原口政府参考人 守るべきものが何かというその具体的な取り扱いにつきましては、現在、第一回交渉を終えまして、交渉中でございます。したがいまして、交渉の帰趨に予断を招くおそれもございますので、この場ではお答えを差し控えさせていただくということで御理解いただきたいと思います。

川内委員 守るべきものとは交渉の帰趨による。とすると、交渉の過程の中で守れないものも出てくるということでよろしいですか。

原口政府参考人 農林水産物に限らず、さまざまな品目がございます。その中で、守るべきものはきちっと守っていく。交渉でございますので、攻めるべきものは攻め、譲るべきものは譲るということであろうかと思います。

川内委員 譲るべきものは譲るというのは、守らないものがあるということですね。

草賀政府参考人 オーストラリアとのEPAにつきましては、もちろん、農産品だけではございませんで、幅広い分野、品目が対象になってきますし、また、物品だけでなくて、投資だとか、あるいは資源エネルギーですとか、あるいはまさに向こうからの食料の安定供給ですとか、非常に多岐にわたる分野が交渉の俎上に上がってくると思っていますので、これはまだ本格化していかないと、なかなか、どういうふうに向こうが考えているか、あるいはこちらがどう臨むかということは具体化してこないところがございますので、そこは御理解いただきたいと思います。

 いずれにいたしましても、今度の交渉相手は農業大国でございますので、やはり、そこをしっかり踏まえまして、国内農業の構造改革の進捗状況とか、その他いろいろなものに大臣もおっしゃったように十分注意しながら、日本全体として最大限の利益を得られるように政府一体で交渉を進めてまいりたい、こういうふうに考えております。

川内委員 いろいろな事情は私も大体は理解をしているつもりなんですが、私が聞いているのは、そういう最大限の利益を追求していく上で一番の問題になるのは日本の農産品である、その農産品の中で守れないものも出てくるということですねということを聞いているわけです。

麻生国務大臣 それは出ますよ。別に改めてそんなの聞かなくたって、出るに決まっていますよ。

 これは、言っておくけれども、被害者はこっちだけじゃありませんから。向こう側も多分、自動車工場がえらいことになりますよ、日本からの輸出がどんどん行くんですから。今あそこにある自動車工場というのは、多分、雇っている人だけで何千人いますかね、これはかなりの被害が出る。それはお互いさまで、それでトータル利益としてどうかという話をするんだと存じますが。

川内委員 それは日本の農産品の中で守れないものも出ますよ、これは私も当然だと思います。その当然のことを踏まえた上で交渉に当たっていただくということが政府のお役目であろうというふうに考えるので、そのことを確認させていただいたということでございます。

 それでは、ちょっと最後に非常に瑣末なことをお聞きして大変心苦しいのでございますけれども、平成十九年三月、先ほど申し上げた外務省経済局の日豪EPAについての説明の資料の二ページでございますけれども、これには、「交渉方針」として、「日本政府としては、豪州との戦略的関係を強化するとともに、経済面でも両国関係を更に緊密なものにすることを目指し日豪EPAの交渉を開始することとしたが、交渉に当たっては、日本にとっての農業の重要性にも十分配慮しつつ政府一丸となって交渉していく。」と書いてございます。

 普通のペーパーには、日本にとっての農業等の重要性というふうに「等」が入るんですけれども、外務省のこのペーパーは等が入っていないんですが、農業の重要性だけに配慮するということでよろしいんですか。それとも、等を入れ忘れたんですか。

草賀政府参考人 私、今その資料、手元にあるかどうかあれですけれども……(川内委員「見せてさしあげます」と呼ぶ)はい、わかりました。

 もちろん、農業以外にもいろいろなものが重要なわけでございますので、これはある意味で代表例として言及させていただいたということだと思っております。

川内委員 やはり麻生外務大臣は大したものだなと思います。きちんと、それは被害も出るものは出るんだというふうにしっかりとおっしゃった上で交渉に当たる。しかし、間違いを指摘されて、いろいろなことはありますわという言いわけをされる事務方は、この交渉に当たってはもうちょっとしっかりしないといけないんじゃないかなというふうに改めて私は思います。これは訂正された方がいいと思います。

 それから、では、次の問題に移ります。

 今、サミットが始まっているわけでございますが、当然、日米の首脳会談がサミットで行われるということになろうかというふうに思います。そこで、ブッシュ大統領からは、安倍総理に対して牛肉の問題というのは必ず言及をされるのではないかと予想されるわけでございますが、四月二十八日に一回目の日米首脳会談が行われたわけでございまして、そこで米国産牛肉の問題についてどのようなことが話し合われたのかということについて教えていただきたいと思います。

麻生国務大臣 四月二十七日だと思いますが、日米首脳会談において、米国産牛肉に関するやりとりは極めて短いもので、簡単に言えば、よろしくみたいな話があって、お互いさま、もうずっと話し合ってきている話ですから、牛肉の話に軽い感じで触れられたというのが全体の内容で、その後のプレスに関しましては、良質で健康によい米国産牛肉をぜひ日本人に食べていただきたい、発言としてはこれだけであります。

川内委員 ブッシュ大統領から、良質で健康によい米国産牛肉をぜひ日本人に食べてほしい、ギャグか、物すごいブラックジョークだなというふうに私などは思うわけでございますが、こういう発言に対して、総理はどのように応答されたのかということについて教えていただきたいと思います。

麻生国務大臣 首脳会談の細目につきましては、対外的にどういう、それこそセンシティブな言葉が使われたかに関しては、これは公表しないことになっておりますが、これに対しては総理は全く返事をされておりません。

川内委員 私は、ブッシュさんが良質で健康によい米国産牛肉という言葉をお使いになられたときに、では米国産牛肉は果たして良質で健康によいのかということについて、日本を代表する総理として、言及されたのかもしれませんが、言及をすべきではなかったかというふうに思います。なぜかならば、米国産牛肉について、良質で健康によいとはとても思えない状況がいまだに米国内においてあるからでございます。

 そこでお尋ねいたしますけれども、サミットで日米首脳会談が行われると聞いておりますが、もう既に行われたのか、これから行われるのか、ちょっと教えていただきたいと思います。

麻生国務大臣 行われることは決まっていますが、時間を物すごくやりくりしておられたので、まだやったとは聞いておりませんけれども、やる段取りで進んではおりました、きのうまで。その後どういう段取りで時間を詰め切ったかどうかまでは私ども承知をいたしておりません。

川内委員 恐らくまた再びブッシュ大統領から米国産牛肉のことについて言及があろうかと思いますけれども、今回も安倍総理は何もおっしゃらないのか、それとも何かおっしゃる予定なのか、もし教えていただけるものであれば教えていただきたいと思います。

麻生国務大臣 今度の首脳会談において輸入牛肉の話が議題に上がるということは決定されていないと思います。ほかにはいろいろありましたけれども、あらかじめ上げる議題として、この議題、この議題と一応あらかじめ予告みたいな話を双方でするんですが、その問題には上がっていなかったと存じます。

 それから、今言われましたように、輸入牛肉の話につきまして、これは消費者の信頼等々いろいろなものを我々としては考えなきゃいかぬと思っておりますので、信頼確保が大前提、当然のことだと思います。

川内委員 松岡大臣の御冥福をまずお祈りさせていただきます。

 きのう、新しい農水大臣とジョハンズ農務長官の電話会談が行われたと聞いております。その電話会談の中で牛肉のことがやはり話題になっていると思います。そうすると、ブッシュ大統領は食肉生産者協会の会合で日本に牛肉を買わせるというふうに演説をしていらっしゃるので、サミットでも当然またおっしゃるのではないか。

 さらに、四月二十七日と今回では、アメリカにとっては、OIE、国際獣疫機関というところでBSEリスクのステータス評価が、五月二十一日に、管理されたリスクの国と評価されたということが、多分アメリカとしては非常に大きな出来事である、状況が変わったのだということをおっしゃっていらっしゃるのではないかと思います。

 そこで、農水省に、このOIEのBSEリスクステータス評価について若干の御説明をいただきたいと思います。

小林政府参考人 OIEにおけますBSEのステータス認定の位置づけということだろうと思うんですけれども、手続的には、まず申請国がデータを提出いたします。その提出いたしましたデータに基づきまして、OIEが、無視できるリスクの国か、管理されたリスクの国か、あるいはいずれにも当たらないのか、この三通りで判断を示すという形になります。まずOIEがこういう形で判断を示します。この判断を示しまして、それを各国が受け入れるかどうかについて、各国がまた判断をすることになる。

 それから、OIEでは、ステータスごとにリスク管理措置というのを決めております。こういうふうな措置をしなさいということになっています。これについては、基本的には各国が従うことになるんですけれども、科学的な根拠があれば国際基準以上の措置をとるということも認められております。

 以上でございます。

川内委員 まず確認させていただきますが、日本は、このOIEのBSEリスクのステータス評価については申請をしていませんね。

小林政府参考人 OIEの申請の手続については、今回が初めての手続ということもありまして、日本はまだ申請をしておりません。

    〔委員長退席、やまぎわ委員長代理着席〕

川内委員 では、このOIEのリスクステータスには法的拘束力はないということを確認してください。

小林政府参考人 ただいま御説明申し上げましたけれども、まず、ステータスの認定自体につきましては、OIEが認定いたしまして、その結果を各国が受け入れるかどうかについては、各国の判断ということになると思います。それから、リスク管理措置の方については、基本的にはこれは一応国際的なルールということになるんですけれども、科学的な根拠があればそれを上回る基準を各国の責任で決めることはできる。その意味でいいまして、各国の判断にゆだねられているということは言えると思います。

川内委員 そうすると、OIEのステータス評価と、我が国とアメリカとの間の輸入条件を決定するに際しては、これは両者の間には直接的な関係はないということでよろしいですか。

小林政府参考人 BSEの問題、特に牛肉の問題につきましては、農林水産省の所管しておりますえさの問題もありますけれども、実際に食用にする食肉の問題等もございます。全体として、そういうふうな安全が確保できるということについてはそれぞれの国が判断することでありますので、OIEがこのステータスを決めたから自動的に日本国が、そのまま何の手続もなく、何の議論もなく何らかの外部からのルールが押しつけられるということはございません。

川内委員 さらに、このOIEのステータス評価に関して、米国のステータスは管理されたリスクの国ということになってはいるわけですが、OIEの科学委員会というところがステータス評価について意見をつけておりますね。この意見を教えてください。

小林政府参考人 OIEの科学委員会は、米国のステータス評価について、御指摘のとおり意見を述べております。

 まず、意見の前に、報告事項としての指摘がございまして、それは、飼料規制の管理、それから査察の状況、サーベイランスの実施に関するデータというのを毎年提供しなさいということをまず宿題として米国に対して課しております。また、コメントとしましては、飼料規制の遵守率には一定の改善が見られるものの、まだ改善の余地があるというふうなこと、それから、交差汚染の可能性が存在することから、動物用飼料からSRMを除去することについて注意深く検討すべきであるということを助言するというふうなコメントがついております。

川内委員 その中で最も重要なのは、要するに、アメリカにおいては特定危険部位入りの肉骨粉をいまだに家畜の飼料として使っているということですね。特定危険部位入りの肉骨粉がアメリカ国内においてはいまだに飼料として流通をしている。したがって、交差汚染の可能性がある。特定危険部位が入っているというところが非常にみそなんですけれども。

 そういうアメリカ国内の状況の中で飼育をされている米国産牛肉あるいは米国の牛が良質で健康によいというふうにとてもとても言えないのではないかということを、私は、ブッシュ大統領に日本の総理は言わなきゃいけないということを盛んに昔から申し上げているわけでございます。ジョハンズに対しては言っているわけです、ジョハンズに対しては。しかし、ジョハンズは直接飼料規制の担当大臣ではないので、それは伝えるというだけです。担当セクションに伝えるというだけの話。

 私は、ブッシュに、あなたは良質で健康によいと言っているけれども、特定危険部位入りの肉骨粉をいまだに使っているようじゃ、とてもとても、良質で健康によいなんということは言えませんぜということをやはり言ってあげないと、ブッシュは知らないと思いますよ。なぜ言わないんでしょうかね。私は、まだ日米首脳会談が行われていないのであれば、こちらからそれをブッシュに初めて安倍総理がおっしゃるべきであるというふうに思いますが、内閣としての御意見を聞かせていただきたいと思います。

麻生国務大臣 そんなに詳しくないのでうかつなことは言えませんけれども、特定危険部位というものが何かぐらいはわかっておるつもりであります。

川内委員 この前の首脳会談のときも、松岡大臣に、総理にそのことをしっかり伝えて、総理がブッシュに対してそのことを言うべきだと私は申し上げたんですね。松岡大臣は、伝えるべきは伝えると、さっきのEPAの話みたいに、何か伝えるのか伝えないのかよくわからぬようなことだったんですけれども。

 特定危険部位入りの肉骨粉が飼料として流通している。そして、国際獣疫機関というのは、麻生大臣、割と農業生産国に甘い機関なんですよ、農業生産国がつくっている組織ですからね。そこでさえ、米国内における飼料規制はちょっと甘いんじゃないのという意見をつけているわけですから、そのことをアメリカの大統領にしっかり申し上げるというのは、だれかが言わなきゃいけないことなので、私は、日本の総理が言うべきではないかというふうにずっと繰り返し申し上げているわけですけれども、なかなかそのような御返事がいただけないことを大変残念に思いますという感想だけ申し上げて、時間もないので、次の問題に移らせていただきたいと思います。

 内閣委員会で先ほど、松原仁、内閣委員会の私どもの筆頭理事が裏で怒りまくっていたわけでございますが、公務員制度改革の問題についてはさまざまな議論があるわけでございまして、果たして押しつけ的あっせんによる再就職が根絶できるのか否かということ、国民の目から見て、大変に注目をされているわけでございます。

 内閣委員会で議論になっておりますことを外務省のことに当てはめてお聞きをさせていただきますが、外務省事務次官経験者の再就職の状況について、行政改革推進本部に四月に報告をされている以上のことを再度報告される予定がおありになられるかどうか。そしてまた、報告を訂正されるのであれば、それはいかなる内容の訂正なのかということについて教えていただきたいと思います。

塩尻政府参考人 お答え申し上げます。

 委員が今御指摘されたように、四月の段階で、事務次官経験者の再就職状況についてということで報告を出させていただいております。そのときには、当省が、外務省が保管しております行政文書を全部調査しております。その結果、確認できるものがなかったということで、その旨回答いたしております。他方、その後、さらに本人への確認等の調査を継続しております。その結果、あっせんがあったということが確認できたものについては、その結果を内閣行政改革推進本部事務局の方に報告いたしております。

 調査の結果でございますけれども、平成二年以降の事務次官経験者の再就職に関しては、四件について当省によるいわゆるあっせんが行われたということが確認されたということで、それ以外につきましては、あっせんが行われたということは確認されなかったということでございます。

川内委員 済みません、その四件について具体的に教えていただけますか。

塩尻政府参考人 四件でございますけれども、一番目が栗山尚一、二件目が柳井俊二、それから竹内行夫が二件、合計四件でございます。

川内委員 具体的にというのは、だれがどこにあっせんされたのかということを教えてくださいということですけれども。

塩尻政府参考人 栗山元次官でございますけれども、第一勧業銀行顧問でございます。それから柳井元次官でございますけれども、これは竹中工務店のコンサルタントということでございます。それから竹内前次官でございますけれども、一件は日本経済団体連合会特別顧問、それから三菱東京UFJ銀行の顧問ということでございます。

川内委員 これは、行政改革推進本部に報告の訂正を上げたということでよろしいですね。

塩尻政府参考人 そのとおりでございます。一昨日夕刻に事務局の方に報告いたしております。

川内委員 実は私、この外務委員会に来る前に内閣委員会で質疑をしてきまして、まだ外務省は認めたからしっかり調査をされたんだなというふうに思いますけれども、厚生労働省はいまだにゼロだと言い張っているんですよ。だから松原仁は裏で怒っていたわけですけれども。

 私もちょっと、官僚の皆さんのさまざまな、法律の抜け穴というか言い逃れに、大したものだなという思いを持ちながら、しかし、国民の目から見たときに、こういういわゆる渡り鳥みたいにして多額の報酬、退職金を得ていくことが果たしていいことなのかどうかということをしっかり議論していくためにも、まず基礎となる事実というものをしっかりと確認する必要があるということで、外務省分について聞かせていただいたということでございます。

 それでは、最後に、拉致問題について一つだけ聞かせていただきます。

 以前、新聞に、アメリカのチェイニー副大統領と麻生外務大臣が会談をされたときに、拉致問題の解決というのは何なんだ、これをしっかりと定義すべきである、どういう状況になったら拉致問題の解決というふうに言うのか、それをはっきりさせて交渉に臨むべきだというようなことを指摘されたというふうな記事を読みました。

 まず、その事実の確認と、そしてまた、政府として拉致問題の解決とは何ぞやということを教えていただきたいと思います。

    〔やまぎわ委員長代理退席、委員長着席〕

麻生国務大臣 違うと思いますけれども。チェイニーとその種の話をしたという記憶はちょっとないので。(川内委員「違いますか。シーファーさんかな」と呼ぶ)シーファーとだとあり得るかもしれません。まあ、どっちでもいいです。

 拉致問題等の解決という話については、それは当然のことなのであって、これはいろいろな人としたことがあります。基本的には、日本としては、解決というのは、生存者の帰還、真相の究明、被疑者の引き渡し、これが解決という話をしております。

 それで、今回の二月十三日の交渉をやるときに当たっては、この問題については、向こう側、向こう側というのはアメリカ側としては、この問題について、日本を除きます残りのいわゆる四者との間で、例の約九十五万トンの石油等々の話が出るに当たって、日本は、この問題が我々としては一番ネックなので、これが全然向こうの話が今のままではうちは金は出さないという話を申し上げたのが今回の二月十三日の決定ということになったんですが、それに当たっては、どうしたら出せるような状態になるのかと言うから、解決が望ましい、しかし、少なくとも今、拉致の問題はないというような誠意のない態度ではうちとしては全く進展がないということなので、その進展というものすらない状況ではこの問題に関しては一切応じることはないというのがそのときの経緯だったと記憶しております。

川内委員 ちょっと時間が来てしまいましたので、またこの後の議論については次回に譲らせていただきます。

 ありがとうございました。

山口委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 まず、日比の租税条約改正議定書に関して質問いたします。

 本条約は、みなし外国税額控除制度の十年間の適用延長とともに、適用範囲の拡大と限度税率引き下げを措置しております。ところで、政府税調は、みなし外国税額の控除制度の存続について、対象となる国や優遇措置を合理的な範囲にする時限措置とともに、縮減、廃止に努めるとしております。

 これは政府参考人で結構ですが、政府税調がみなし外国税額控除制度の縮減、廃止を提言しているもとで、なぜ今回このような措置を講じたのかということについてお答えを願います。

伊原政府参考人 今委員御指摘のみなし外国税額控除についてでございますけれども、これは、開発途上国である租税条約の相手国に投資している我が国の居住者が、相手国の租税優遇措置によって減免を受けた租税の額を、相手国において納付したものとみなして我が国の税額から控除する、そういうことを認める制度でございます。この制度は、開発途上国が経済開発を促進するためにとる外国企業誘致措置等の政策減税につきまして、我が国の課税権をいわば制約することでこれを支援する、そういうものでございます。

 他方、御指摘のとおり、この制度は、課税の公平性、中立性の観点から問題がある、そういう認識から、対象となる国や優遇措置を合理的な範囲に限定し、また、みなし外国税額控除制度の規定自体を今回のように時限措置とするなど、同制度の廃止、縮減を政府として図ってきているところでございます。

 今回、フィリピンとの関係では、我が国としては、こういう基本的な考え方に基づきましてみなし外国税額控除の廃止を当初提案したわけでございますけれども、フィリピン側は即時の廃止はなかなか受け入れが困難であるという立場をとりましたので、その後、フィリピンとの交渉の結果として、十年間の適用期限を設けて、将来的には廃止するということで合意に至ったものでございます。

笠井委員 これは、他の租税条約と比較しても、今回の措置は突出していると思うんです。また、フィリピンに進出する現地の日本法人の数と規模が圧倒的に大きいので、源泉地国課税の引き下げというのはフィリピン側よりも日本側企業に有利に作用して、必ずしもウイン・ウインの関係にならない懸念がある。

 日仏の租税条約改正議定書についても、大銀行、保険会社、証券会社への免税措置及び親子会社間の持ち株比率要件の大幅緩和を定めている問題があるということをこの際指摘しておきたいと思います。

 この際ですので、経済のグローバル化が急速に進む中での多国籍企業の行動をめぐって幾つか質問をしたいと思います。

 今日、さまざまな国の大企業が母国以外の国に進出をして、多国籍企業となっている。

 まず麻生大臣に伺いたいんですが、OECDは多国籍企業行動指針というのを定めておりますけれども、この指針を定めた理由と目的、その意義についてどのようにお考えか、また、我が国外務省としての取り組みについてお答えをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 このたびのOECDの行動指針というのは、御存じのように多国籍企業というのは、巨大なものになって、もう一国の経済を上回るほどの企業というのがございますので、そういったようなものがその国に出ていくというのは、その国にとってまた非常に大きな影響を与えるということだと思いますので、やはり企業というものも責任ある態度をとってもらわねばならぬというのが基本的な概念であります。

 そして、その行動指針の内容というのは、今御指摘のありましたように、情報の開示、雇用及び労使関係、環境、贈収賄の防止、消費者利益、科学及び技術、競争、課税等々幅広い分野になっておりまして、多国籍企業に対して、こういった分野に関しては、企業というのは基本的に自己利益の最大追求ですから、そういったものに対しては責任ある行動を求めております。

 これは、拘束力はないということだとは思いますけれども、少なくとも先進諸国と言われますOECD加盟国にとっては、そういったものを自主的に実施することが我々としては期待をされているところだと存じます。

笠井委員 そこで、具体的な問題なんですけれども、国際企業でネスレというのがあります。これは、本部をスイスに置いて、巨大な多国籍企業で、日本ではネスカフェという商品で有名でありますが、ネスレ日本という名前で古くから日本に展開をいたしております。二〇〇五年の総売上高二千五百億円、グループ各社の社員数は二千五百人という大企業であります。

 ところが、このネスレ日本では、かなり前から、一九八二年、三年にかけて、まず労働組合に支配介入を仕掛けて労働組合を乗っ取ろうとするけれども失敗する、そしてインフォーマル組織をつくって労働組合を分裂させた、その後、第一組合とその組合員に対する無法な限りの人権侵害、暴力行為、不当解雇や不当労働行為が依然として続いております。

 例えば、二〇〇六年十月、最高裁で不当解雇は無効と断罪された霞ケ浦の工場の二人の組合員は、職場には戻れたんですけれども、会社側から一切謝罪もなくて、一人はごみ集め、もう一人の方は補助業務にしかつけずに、差別扱いを受け続けております。この会社はヒューマンカンパニーということを看板にしているんですけれども、まさにそれにあるまじきことがあって、本国ではとてもできないようなことをやっているという実態だと思います。

 厚生労働省もおいでだと思うんですけれども、このような二十数年にわたる重大な事態を承知しておられるかどうか、その点だけ伺いたいんですが、いかがでしょうか。

草野政府参考人 ネスレジャパン社の労働組合であるネッスル日本労働組合から、平成十八年五月でございますけれども、親の介護を抱える労働者の遠隔地への配置転換でありますとか労働組合役員の解雇などの問題が生じており、従業員の権利が尊重されていないことなどを理由に、多国籍企業行動指針に違反しているということで、同指針に係る日本連絡窓口、これは厚生労働省、外務省、経産省で構成しておりますが、そこへ申し立てがあったということは承知しております。

笠井委員 今申し立てがあったという答弁でありますが、二〇〇五年八月十二日であります。このネスレ日本の労働組合が、上部加盟団体の兵庫労連それからナショナルセンターの全労連と連名で、OECDの日本政府の連絡窓口NCPに対して、多国籍企業行動指針に違反しているということで正式に文書で申し立てたのは、もう二年も前のことであります。

 ネスレ日本の労働組合は、地方労働委員会、中央労働委員会に救済を申し立てて、その多くが認められて救済命令が出されております。最高裁の判決も出ているという例もある。これに対して会社側は、地労委や中労委の救済命令の取り消しを求める行政訴訟を乱発して、いわば時間稼ぎをして、正常な解決を徹底しておくらせる態度をとってきたわけであります。

 そこで、申し立ての中で、労働者側は、日本国政府の窓口がOECD理事会決定の手続に従って当事者を含む関係者との協議の場を設定すること、関係両国のNCPの協議を行うこと、問題解決のための調停を行うこと、合意に至らない場合には勧告をすることを申し立てで求めております。私も読みましたけれども、全く当然の申し立てだと思います。

 そこで、厚生労働省、既に申し立てがあってから二年近くたつんですけれども、これまでこれを受けてどういうことをやってきたんでしょうか。

草野政府参考人 先ほど申しましたように、日本連絡窓口へ文書で正式な申し立てがございましたのは平成十八年五月でございます。それ以後、労使双方の意見などを聞いているところでございまして、今後、同行動指針に係る手続にのっとりまして、本事案の解決に向けて努力してまいりたいというふうに考えております。(笠井委員「十八年ですか」と呼ぶ)十八年五月でございます。(笠井委員「十七年じゃないですか」と呼ぶ)いや、十八年五月、正式申し立ては……(笠井委員「ここに文書があります。二〇〇五年です」と呼ぶ)十八年五月でございます。正式に申し立てまで……(笠井委員「十八年」と呼ぶ)はい、そうです。(笠井委員「二〇〇五年、文書です」と呼ぶ)いや、十八年五月となっております。

笠井委員 私、これは文書を持っているんですが、二〇〇五年八月十二日、印鑑を押した文書が申し立て書になっていますので、それは事実関係が違っていると思いますが。

草野政府参考人 正確に申しますと、十七年八月十二日にネッスル日本労働組合らが日本連絡窓口あて申し立て書を持参しておりますが、文書内容がきちっと整理されていないということで、整理を依頼いたしまして、その結果、十八年五月九日に再び持ってきて、そのときに提起を受理した、こういう経緯でございます。

笠井委員 出されたのは二〇〇五年八月で、その後整理したということですけれども、それから二年間、正式に出されてからも一年以上たっているわけですね。

 外務省に伺いますが、このような不当労働行為や人権侵害などは、一般的に言って、OECDの多国籍企業の行動指針に抵触するというふうになるんじゃないでしょうか。いかがですか。

草賀政府参考人 お答え申し上げます。

 この多国籍企業の行動指針につきましては、政府といたしまして、また外務省としても重視しておりまして、この指針が遵守されるように十分努力してまいりたいと考えております。

 そして、この行動指針の実効性を促進するために、外務省、経済産業省、厚生労働省、この三省におきまして、連絡窓口、ナショナル・コンタクト・ポイントというのを設置して対応するようにしてございます。

 実は、委員おっしゃるとおり、申し立てを受けまして、政府としてこの窓口におきましてOECD事務局にもこの問題を既に報告いたしております。かつ、当該労働組合あるいは企業側といったところから状況をお聞きして、いろいろ情報交換も行っているところでございます。

 直近のことで申し上げますと、五月、先月、我が国の年次報告書におきまして、この問題に対して日本政府が取り組んでいるという旨を報告いたしまして、六月に行われますNCPの年次総会というところでこれが回覧される、こういう状況になってございます。

笠井委員 抵触するかしないかという問題と、どう対応していくのかという点については、もう少し具体的にお答え願えますか。

草賀政府参考人 事は、もちろん双方の言い分がかなり食い違ってございまして、かつ、裁判も現在係属中のものが幾つかございます。ということで、かなり慎重にその事実関係等を見きわめていく必要もあるということで、先ほど申し上げました報告書において、取り組んでいるということではございますけれども、まだ確定的な結論が得られたということではないわけでございます。

笠井委員 このネスレ日本では、ことしに入ってもゆゆしき問題が起こっております。既に地労委、中労委含めて救済命令が出たり、判決も出ている例もあるわけで、それもきちっと処理されていないわけですが、二〇〇七年、ネスレ社は、グローブという世界じゅうのネスレを結ぶコンピューターシステムを導入しました。各国にあるすべての本社や工場、営業所は、ネットワークを接続して業務を行っております。

 工場内で倉庫から材料を出してラインに入れるときも出すときもネットワークへのアクセスが必要とされて、すべての社員が固有のIDを持ってアクセスをしております。ところが、私も実態を聞いて驚きましたが、第一組合の組合員がアクセスすると、あなたは資格がありませんと拒否をされて、仕事を進めるためには、近くにいる別の社員にアクセスを頼まなければ一切の仕事ができないというふうになっている。つまり、その職場部門のすべての労働者が働いている条件、これを一部の労働者には適用しないということであります。しかも、何の合理性もなくて、あるのは差別的扱いだけであります。

 厚生労働省に伺いますけれども、これは労働者の均等待遇を定めている労働基準法の三条に違反するのではないか、早急に調査を行って是正すべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。

森山政府参考人 お答え申し上げます。

 労働基準法三条は、先生今御指摘ありましたように、「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」と定めておりますけれども、この同条違反に該当するかどうかは、それぞれの要件について個別具体的に判断をされる必要があるというふうに考えております。

 本件の具体についての調査、監督につきましては、まさにこれは個別事案でございまして、お答えをすることは差し控えさせていただきますけれども、労働基準監督機関としましては、従来から、具体的な資料等をもって問題の提起があれば、必要に応じて調査を行うなど、的確な対応を行っているところでございます。

笠井委員 最後に、大臣に一言だけですが、企業活動のグローバル化が急速に進展をして多国籍企業がふえる中で、国によって法律制度とか慣習の違いもあって、こうした多国籍企業とその国の労働者の間でいわゆるトラブルというのは必然的に発生し得るし、実際にあるということはあると思うんです。

 したがって、ILO条約とかあるいはOECDの多国籍企業行動指針、さっき大臣もおっしゃいましたけれども、その遵守ということについては、それ自体はますます必要になっていると思うんですが、そのことについて一言御答弁いただきたいと思います。

麻生国務大臣 慣習の違いもございますし、その地域、生活水準の違い、労働等々、この種のものに対する理解は日本も過去六十年間大分いろいろ変遷してまいりましたので、そういった違いが起きるのはある程度避けて通れぬところではあります。そういったので、やはりこれはいわゆる連絡窓口みたいなものをつくっておかなければいかぬということで、いわゆる通称ナショナル・コンタクト・ポイントというんですけれども、各省に窓口ができておりますので、そういったものをつくって、この連絡窓口は労働省に限りませんので、経産省もございますし外務省もありますので、そういった連絡窓口をつくって調整するということで臨んでいかねばならぬと思っております。

笠井委員 終わります。

山口委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社民党の照屋寛徳です。

 最初に、日比租税条約議定書について尋ねます。

 先ほどの笠井委員の質問にもありましたが、政府税制調査会も、みなし外国税額控除については、見直し、縮減を図ることを提言しております。これは、課税の公平性の視点から、対象となる国や優遇措置を合理的理由のあるものに絞って縮減、廃止に努めんとするものと私は理解をしております。

 ところで、今回の日比租税条約議定書は、その内容において、大企業優遇にはなっておりませんか。尋ねます。

佐々木政府参考人 お答え申し上げます。

 みなし外国税額控除につきましては、御指摘のとおり、政府の税制調査会におきまして、今後の条約改正の機会をとらえて廃止、縮減に努めるべきであるという御提言をいただいております。今回の日比租税条約におきましても、みなし外国税額控除につきまして交渉が行われまして、即時の廃止は大変困難であるということでございましたので、期間を置きまして将来廃止、その期限が切れたら廃止するという措置を講じたわけでございます。

 みなし外国税額控除を初めとして、全体として大企業優遇の結果になっているのではないかということでございますけれども、今回の日比租税条約の内容につきましては、みなし外国税額控除の適用を将来廃止するという以外に、配当、利子及び使用料につきましての源泉地国課税の限度税率を引き下げるという内容も主な内容としております。これらの内容につきましては、フィリピンと経済関係を持ちます企業に幅広く一般に適用されるものでございまして、大企業を優遇するものであるとの御指摘は当たらないのではないかと考えております。

照屋委員 政府税調においても縮減、廃止せんとするみなし外国税額控除が、実態としては近年むしろ増加しているのではないか。その数字と理由を御説明ください。

鈴木政府参考人 みなし外国法人税額についてのお尋ねでございますが、直近三年間におきます数字を御説明いたしますと、資本金三百億円以上の法人を中心としたサンプル調査ということで把握した件数を申し上げますと、平成十五年分、これが二百二十億円、それから平成十六年分、これは二百八十億円、それから直近でございますが平成十七年分、五百二十億円という数字になっております。

 みなし外国法人税額が拡大している理由というお尋ねでございますが、国税当局としましては個々の具体的な理由までは把握しておりませんで、確たることは申し上げられないと思いますが、例えば、同制度の適用が認められます租税条約相手国で所得を稼得する内国法人等の経済活動、これを反映しまして所得が増加しているということも一因とも考えられると考えております。

照屋委員 日比租税条約のみなし外国税額控除制度の十年間の適用延長という場合の十年間には、いかなる理由、根拠があるのでしょうか。また、適用範囲拡大の具体的内容について尋ねます。

佐々木政府参考人 みなし外国税額控除の適用期限十年の理由でございますけれども、みなし外国税額控除は、先ほど申し上げましたように縮減、廃止の方向に向かって条約改正ごとに努力をするということで、そういう方向に沿っているわけでございますが、即時の廃止は難しいということで、いろいろな総合的な交渉で、いろいろな総合的な検討の結果としまして十年ということになったわけでございます。これまでも条約交渉におきまして期限を付した例もありまして、十年というのは、そういう過去の例からいって一つの基準になっているわけでございます。

 さらに、適用範囲の拡大の内容をお尋ねでございますけれども、十年間におきまして、従来、これまでの条約上は、みなし外国税額控除の対象、利子、配当、使用料という投資所得が対象でございました。その中で、フィリピンの投資奨励法令のもとで投資委員会というのがございまして、そこで登録された企業、恐らくフィリピンのいろいろなインフラの整備あるいは産業の発展のために有用であるとして認定された企業に係る利子、配当、使用料というものに限定されておりましたが、今回の交渉の結果、十年後廃止するまでの間は、利子、配当、使用料につきまして全般的にみなし外国税額控除の対象とするという措置を講じております。

照屋委員 本日は租税条約関連の質問を予定しておりましたが、昨日、米軍嘉手納基地内で、二万リットル、ドラム缶約百本分のジェット燃料漏れ事故が発覚し、地元沖縄で大問題になっております。事故は五月二十五日に発生したようでございますが、四日間も流れ続け、一週間後にしか公表されておりません。

 外務省は、米軍からいつ通報を受けたのか、事故原因、事故内容はどのように通報されたのか、尋ねます。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の嘉手納飛行場におきます航空機燃料の流出につきましては、五月三十一日十九時半ごろ、在京のアメリカ大使館より外務省に対して通報がございました。その内容は以下のとおりでございます。

 すなわち、五月二十五日二十時三十分ごろから嘉手納飛行場内で、航空機燃料、これはJP8というものだそうでございますが、これをあるタンクから別のタンクに移しかえる作業を行っていた。ところが、タンクのシステムが正常に作動しなかったということで、二千三百八十四ガロン、約九千リットルの航空機燃料が流出をした。また、米軍として、排水路などにオイルフェンスを設置する等の措置を行った。この事故による飛行場外への燃料の流出は確認されていない。このような連絡があったわけでございます。

 これを受けまして、外務省といたしまして、直ちに関係機関へ連絡をいたしたわけでございます。そして、六月一日に、防衛施設庁那覇防衛施設局の方から、嘉手納町、北谷町、沖縄市及び沖縄県に対して通報が行われたと承知をしております。

 通報が三十一日になったということで、私どもアメリカに照会をしたわけでございますが、アメリカ側からは、確かに事故が発生したのは二十五日であるけれども、流出が確認されたのは二十九日であった、また、飛行場外への燃料の流出は確認されなかったものの、流出の事後処理あるいは流出した燃料の量の把握等に時間を要したということから日本側への通報が三十一日になったという説明がございました。

 私どもといたしましては、平成九年三月の日米合同委員会合意に従いまして、日本国民等に実質的な損害または傷害を与え得る相当の蓋然性がある事故等が発生した場合には、できるだけ速やかに日本側に通報を行うということになっているわけでございます。そういうことでございますので、私どもとして、アメリカに対して、今回についても速やかな通報をすべきであったということで、今後とも速やかな通報に努力してほしいという申し入れを行った次第でございます。

照屋委員 最後に、北原長官に尋ねます。

 毎回お越しいただいて申しわけありません。別に私は長官に個人的な恨みも何もありませんし、むしろ信頼しているんです。尊敬すらしているんです。恐らく、那覇防衛施設局の局長時代を含めて、沖縄県民から一番慕われ、愛されたのは北原長官でしょう。個人的にも沖縄の文化を理解しようと一生懸命なのも、私はよくわかっております。だから、誤解しないでください。沖縄の事情が長官を当委員会に呼ぶんです。

 米軍の地元軽視の今回の事故隠しに怒りを禁じ得ません。かつて、嘉手納基地からのジェット燃料が地下にしみ込み、燃える井戸として住民に不安を与えました。防衛施設庁は、今回の事故に関し、いかなる対策を講ずるのか、また、いつどのような現場調査を実施したのか、調査結果で何が判明したのか、土壌汚染、地下水汚染は既に生じているのではないか。

 皆さん、この嘉手納基地の地下は、嘉手納井戸群という県民にとっては有数な貴重な地下水源なんです。だから私は声を荒げて質問しているんです。

 長官、お答えください。

北原政府参考人 照屋寛徳先生に御答弁を申し上げます。

 今回の件につきましては、先生初め地域の方々に大変御心配をおかけいたしております。

 私どもといたしましては、外務省からの通報を受けまして、六月一日、先ほど梅本さんからもお話がございましたが、関係自治体に通報をいたしました。そして、同時に、通報したのは六月一日でございますが、同じ六月一日の日に、私ども施設局の職員を現場に派遣いたしました。そして、米軍の関係者と、油漏れの発生現場、そしてタンク付近の排水路や排水路の下流の暗渠の付近、これらに米軍が講じましたオイルフェンスがございますが、その設置の状況などを確認いたしました。それから、その際、付近の排水路におきます油膜ですとか油臭がないことなども確認をいたしたところでございまして、また翌日以降も、けさもそうでございますけれども、施設の外への流出が生じていないかどうか、施設局の職員による確認を行っております。

 そして、現在までのところ油膜あるいは油臭というものは確認されていない、また、現在までのところ排水路へ流出した形跡は認められていないといった報告を今現在受けているところでございます。

 しかし、このような事故というのは地域の皆さんに大変な不安を与えるものでございまして、私ども、六月一日には、現地の局から米軍に対しまして、原因の究明それから再発の防止の徹底を求めますとともに、それから、去る平成九年三月に合同委員会合意で、現地レベルでの那覇防衛施設局への補助的な通報ということも定まっているわけでございますので、その徹底をお願いするとともに、事故が起きたときの早期の通報といったことも申し入れをいたしました。翌四日の日には、本庁から在日米軍にも同旨の申し入れをいたしました。

 そして、現在私どもが承知しておりますのは、米軍は、油がしみ込みました部分の土、土壌については、土壌の入れかえ作業を実施する、そのように聞いております。私どもといたしましては、こうしたアメリカ側の作業の状況をしっかり確認して適切に対応してまいりたい、そのように考えております。

照屋委員 長官、既に土壌汚染がある、水源汚染も水質汚染も心配されますので、しっかり対策をとって、アメリカにも強く抗議しないとだめですよ。

 終わります。

山口委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

山口委員長 ただいま議題となっております各件中、まず、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とフランス共和国政府との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件及び所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とフィリピン共和国との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件の両件について議事を進めます。

 これより両件に対する討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。笠井亮君。

笠井委員 私は、日本共産党を代表して、日仏及び日比の租税条約改正議定書の締結に反対の立場から討論を行います。

 日仏租税条約改正議定書にある、日仏社会保障協定に基づく就労地での所得控除や、フランス匿名組合員に対する日本の源泉地国課税権の確保は、当然の措置です。

 他方、この議定書には、大銀行、保険会社、証券会社の配当所得と利子所得に対する免税措置と使用料等の免税措置が盛り込まれています。

 企業の海外投資活動の活発化やプロパテント競争がグローバルに展開される今日、企業に対して、海外で事業活動を展開して得た収益に応じて何らかの税負担を求めることは当然であり、これを過度に軽減することには問題が多いと言わなければなりません。

 日比租税条約改正議定書のみなし外国税額控除措置は、フィリピン側の税制激変緩和措置の要望に乗った形で、適用期間延長、適用範囲拡大、税率引き下げをワンセットで実現しようとするものです。

 しかし、OECDや政府税調さえこの税額控除制度の縮小、廃止を検討しており、この制度を廃止する租税条約が実際にふえている中で、既にある大企業優遇税制に上塗りする優遇措置をとろうとすることには問題があります。

 以上をもって討論とします。

山口委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

山口委員長 これより採決に入ります。

 まず、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とフランス共和国政府との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

山口委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とフィリピン共和国との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

山口委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、社会保障に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の締結について承認を求めるの件について議事を進めます。

 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 社会保障に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

山口委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

山口委員長 次回は、来る八日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十三分散会


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