衆議院

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第2号 平成19年10月26日(金曜日)

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平成十九年十月二十六日(金曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 平沢 勝栄君

   理事 高木  毅君 理事 三ッ矢憲生君

   理事 山口 泰明君 理事 山中 あき子君

   理事 近藤 昭一君 理事 武正 公一君

   理事 丸谷 佳織君

      愛知 和男君    伊藤信太郎君

      猪口 邦子君    宇野  治君

      小野 次郎君    木村 隆秀君

      塩崎 恭久君    篠田 陽介君

      杉田 元司君    鈴木 馨祐君

      中山 泰秀君    三原 朝彦君

      御法川信英君    山内 康一君

      石川 知裕君    篠原  孝君

      野田 佳彦君    松木 謙公君

      松原  仁君    上田  勇君

      笠井  亮君    照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         高村 正彦君

   外務副大臣        小野寺五典君

   防衛副大臣        江渡 聡徳君

   外務大臣政務官      宇野  治君

   外務大臣政務官      中山 泰秀君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房遺棄化学兵器処理担当室長)    西  正典君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 須江 雅彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 梅本 和義君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 伊原 純一君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    原田 親仁君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            奥田 紀宏君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局アフリカ審議官)     目賀田周一郎君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術参事官)         林田  博君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  金澤 博範君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  高見澤將林君

   政府参考人

   (防衛省経理装備局長)  長岡 憲宗君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  地引 良幸君

   外務委員会専門員     清野 裕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十六日

 辞任         補欠選任

  猪口 邦子君     杉田 元司君

  田中眞紀子君     松木 謙公君

  鉢呂 吉雄君     石川 知裕君

同日

 辞任         補欠選任

  杉田 元司君     猪口 邦子君

  石川 知裕君     鉢呂 吉雄君

  松木 謙公君     田中眞紀子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

平沢委員長 これより会議を開きます。

 この際、小野寺外務副大臣から発言を求められておりますので、これを許します。外務副大臣小野寺五典君。

小野寺副大臣 我が国の平和と繁栄を確保することは、外交に課せられた最も重要な使命であります。

 私は、先般、イランを訪問し、同国政府要人に対して、イラン南東部で拘束されたと見られる邦人の早期解放に向けた協力要請を行ってまいりました。

 引き続き、高村大臣を補佐し、直面する外交課題に全力で取り組み、我が国が国際社会においてリーダーシップを発揮できるよう頑張ってまいります。

 平沢委員長を初め委員各位の御指導をよろしくお願いします。

 ありがとうございました。(拍手)

     ――――◇―――――

平沢委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官梅本和義君、大臣官房参事官伊原純一君、欧州局長原田親仁君、中東アフリカ局長奥田紀宏君、中東アフリカ局アフリカ審議官目賀田周一郎君、内閣府大臣官房遺棄化学兵器処理担当室長西正典君、総務省大臣官房審議官須江雅彦君、国土交通省大臣官房技術参事官林田博君、防衛省防衛政策局長金澤博範君、運用企画局長高見澤將林君、経理装備局長長岡憲宗君、地方協力局長地引良幸君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平沢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山中あき子君。

山中委員 自由民主党の山中あき子でございます。

 高村外務大臣と初めて御一緒させていただきましたのは、十年ほど前に、日米新ガイドラインの修正案の提案者として、衆議院一カ月、参議院一カ月の委員会の審議の折でございました。そのときに外務大臣を務めておいでで、非常にシャープな答弁をなさって、大変勉強をさせていただきました。

 私は、当時から、ガイドラインを通すと同時に、その当時は予防外交という言葉を使っておりましたけれども、予防外交の専門家の育成を提唱しておりました。すなわち、日本の若者はもちろんのこと、アジアの若者もともに、英語で、国際交渉術やあるいは自己防衛術を習得し、将来のアジアの平和と安定の礎となる人材とネットワークを日本のイニシアチブで育成していくことによって、平和を国是とする日本が信頼という国益をかち得る、そういう外交政策を実現してほしいという意見を申し上げ、議事録にも記録をされているところです。

 ですから、二〇〇五年に国会復帰をいたしまして、早速に外務大臣政務官として外務省の中で勉強会を立ち上げ、ようやく平和構築分野の人材育成のためのパイロット事業が、本年度、広島大学を中心に実施されました。

 高村大臣としても本件を引き続き重視して取り組んでいくかどうかという、そのお考えをぜひお伺いしたく存じます。

高村国務大臣 お尋ねのありました平和構築分野の人材育成のためのパイロット事業は、国立大学法人広島大学を委託先として、本年度より立ち上げられ、九月中旬に国内研修が開始されるなど、着実に実施をされております。

 冷戦終結後、世界各地で、国際紛争の増加等により、紛争終結から復興まで包括的に取り組む必要性が増大しております。平和の定着と国づくりを外交の柱の一つに掲げる我が国としても、国際社会の平和と安定のため、平和構築分野における協力が不可欠だと考えております。

 このような観点から、私といたしましても、本件事業を初めとする平和構築分野の人材育成に引き続き積極的に取り組んでいきたいと思います。

山中委員 平和構築の人材育成事業というのは、現在は単年度の事業として実施されております。福田官房長官当時の平和協力懇談会、私も大学人として委員をさせていただいておりました。そのときの二〇〇二年十二月の報告書にありますように、この事業がいずれ本格化する際には、委託先等を含め事業の継続性を確保することが極めて重要と考えております。このようなときに、どのようにその先に向かって工夫していく所存をお持ちかということをお伺いしたいと思います。

高村国務大臣 まずは、初年度である本年度事業を成功裏に実施していくことが重要と考えますが、本件事業は、人材育成という事業自体の性質上、中長期的視座に立って運営していくことが不可欠だと認識をしているところであります。

 パイロット段階を終えて事業が本格化される場合の具体的あり方に関しましては、パイロット段階で得られた教訓やノウハウを組織的に集積していくのみならず、関係省庁間の情報共有、連携協力の推進、関係省庁の取り組みの強化を目的として内閣に設置された平和構築分野における人材育成に関する関係省庁連絡会議の枠組みも活用しながら、政府一体として、効果的、効率的な対応がとれるよう、引き続き検討してまいりたいと思います。

山中委員 単年度、単年度の積み重ねではなく、ただいま大臣おっしゃいましたように、今後、継続的な方向で実施できるようにぜひ御尽力いただきたいと思います。

 来年の五月のTICAD4に向けて、アフリカの平和構築についても日本の貢献を強化していくことが非常に大事な課題と考えております。その際、今般開始されたこの平和構築人材育成事業を通じて得られた知見を積極的に活用すべきではないかと考えておりますけれども、外務大臣の御所見をお伺いしたく思います。

高村国務大臣 冷戦後、内紛を初め紛争が多様化しまして、特にアフリカにおいて数多くの国連PKOが設立されるなど、アフリカにおける平和構築は非常に重要かつ世界的に注目を集める課題であると認識をしているところでございます。

 我が国は、これまでもさまざまな方法でアフリカにおける平和構築を支援してまいりましたが、明年開催されるTICAD4でもこの問題を主要な課題として取り上げる予定でございます。

 御指摘いただいた平和構築分野の人材育成のためのパイロット事業に関しましては、既に国内研修においてアフリカの平和構築に関する講義を行っているところでございます。こうした研修の結果、例えば同事業を通じて培われた国内外の研修機関や専門家とのネットワーク等を活用したり、また、より将来的には、同研修の卒業生がアフリカの平和構築の現場で貢献していくなど、同事業のノウハウも積極的に生かしていくことが肝要だと考えております。

山中委員 ぜひ、アフリカに対してもアジアと同じように積極的に日本が関与していく、このことが、国連の国際平和構築委員会、現在日本が議長をしておりますけれども、ここが本格的に始動したときの、ある程度のレベルを確保した人材の育成、そしてその確保、提供できる、そういう状態というのとも連携いたしますので、ぜひさまざまな形をネットワーク化して進めていただきたいと思います。

 次に、ミャンマー情勢について一点だけお伺いいたします。

 先日、ミャンマーの軍事政権のデモ弾圧を受けて、日本人ジャーナリストの長井さんが凶弾に倒れるという非業の死を遂げられ、胸が痛みます。

 欧米諸国は、ミャンマーに対し制裁を強化してきています。しかし、その一方、人道支援を増加している面も見受けられます。例えば、DFID、英国援助庁は、毎年行っている人道状況の緩和のための資金供与八百万ポンドに加え、今回新たに百万ポンドを供与すると決定いたしましたし、オーストラリアの国際開発庁も、人道支援供与としてWFPに三百万ドル、あるいはケア・オーストラリアに八十万ドル、これはオーストラリア・ドルでございますけれども、さらに人道支援パッケージとして四百三十万ドルなどの確保をする予定になっております。

 私が以前ミャンマーを訪れましたときも、各地の母子センターで乳幼児の死亡率が四〇%という報告があり、早速、必要な各地の母子センターに日本からベッド百台を供与し、大変感謝をされました。

 現在、日本はミャンマーに対する経済協力のあり方を検討していると思いますが、ミャンマーに対しては、民主化支援のためにも、これまでのパイプを維持することにより、バランスのとれた対応が必要であると考えておりますが、外務大臣の御意見はいかがでしょうか。

高村国務大臣 ミャンマーに対する経済協力につきましては、従来、ミャンマー国民に直接利益をもたらす人道案件等に絞り込んで実施してきているわけであります。

 日本・ミャンマー人材開発センター建設計画は、中長期的にミャンマー国民に利益をもたらし、ミャンマーの民主化、経済構造改革に資する人材育成にも有益との観点から、これを支援すべく実施に向けて調整してきていたわけでありますが、しかし、現在のミャンマー情勢及び、先般、国連安保理議長声明が発出されたこと等を踏まえ、実施をとりあえず取りやめることといたしました。

 他方で、委員が御指摘のように、打ち切ることが適切でない支援活動もあります。政府としては、ミャンマー情勢の推移を注視しつつ、各案件について個別に検討を実施していく考えであります。

 ポリオのワクチンみたいなものは、これを取りやめるとなると、ただでさえかわいそうな立場にある民衆がもっと困る。そういうものは、こういう状況下でも支援を続けていく予定でございます。

山中委員 日本が温かい思考を持ってミャンマーの人たちのことを考えているということがミャンマーの国民に届くような支援をぜひ続けていただくと同時に、外交的にも、やはり、軍政側と民主化側というふうに色分けする中で、両方をつなぐ役割を、国連のガンバリ特使を支援しながら日本独自の役割、これから果たせると思いますので、ぜひそのようなバランスを考えていただきたいと思います。

 さて、給油量の間違いの隠ぺい、航海日誌の不法廃棄あるいは前事務次官の汚職疑惑等は、まさに現在重大な外交案件の審議の時期ですから、事実究明と再発防止を、防衛省に対して外務大臣としてもしっかり物申していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

高村国務大臣 今委員御指摘の事案につきましては、総理からの指示を踏まえて、現在、防衛省において、文民統制にかかわる極めて重大な問題であるとの認識のもと、防衛大臣のもとに設置された文民統制の徹底を図るための抜本的対策検討委員会において濃密な議論を行い、文民統制の徹底を図るとの観点から、再発防止の徹底を含め、抜本的な措置を講ずる予定であると承知をしているところでございます。

 私といたしましても、まさに防衛大臣と同様の認識を有しておりまして、防衛省において速やかに調査の上、抜本的な改善措置が講じられることを強く期待しております。石破防衛大臣、頑張っておりますから、応援をしていきたいと思っています。

山中委員 さはさりながら、この不祥事問題と新法の議論を混同せずに、並行して行われるべきであると私は思っております。さもなければ、国内の問題によって外交、安全保障の問題が停滞してしまっては、それこそ国益を損ねることになりかねないというふうに考えるからであります。

 そこで、お尋ねいたします。

 我が国は、自衛隊による支援のみならず、アフガンに対する民生支援を以前より積極的に行ってきたと承知しております。例えば、保健医療に関しては、二〇〇二年以来、母子保健病院機材整備計画や小児感染の予防、先ほどワクチンのお話もミャンマーでもありましたけれども、結核対策、助産師教育、そういったさまざまなプロジェクトにおいて、単独支援や人材派遣、あるいはほかの機関との共同プロジェクト、資金の援助など、草の根・人間の安全保障無償などを使って医療的な面での支援もしてまいりましたし、かんがい支援やDDR、そして、私の母校も含む五大女子大学、そのコンソーシアムによる指導的女子教育者のための研修というのも二〇〇二年から毎年継続して行ってきております。

 今現在、外務省はこのような民生支援をどのように総括していられるのでしょうか。お伺いしたいと思います。

高村国務大臣 我が国は、アフガニスタンを再びテロと麻薬の温床にしないとの決意のもとに、これまで、二〇〇二年一月のアフガニスタン復興支援国際会議を初め、日本で計四回の国際会議を開催したほか、元兵士の武装解除、動員解除、社会復帰、いわゆるDDRでありますが、そこで指導的な役割を果たす等、これまで同国の和平、復興に積極的に貢献してきております。

 また、我が国は、厳しい治安状況の中でも、知恵を絞りつつ、これまでに政治、治安、復興等の幅広い分野で総額千四百億円以上の支援を実施してきております。実施額では米国に次いで第二位となっており、我が国のこのような支援は、アフガニスタン政府を初め国際社会から高い評価を受けているところでございます。

 このような我が国を含む国際社会による復興支援により、アフガニスタンではそれなりの成果が見られているわけであります。二〇〇三年から二〇〇六年のGDP成長率は年平均約一〇%でありまして、着実な経済成長を達成いたしました。初等教育就学率は、二〇〇〇年の一九・二%から二〇〇五年には八六・五%に向上しました。子供の就学数は、五年前の百万人強から現在は五百四十万人以上になっておりますし、女性の就学率は何と〇%だったんですけれども、今は三五%に増加しております。はしか予防接種を受けた子供は、二〇〇〇年の三五%から二〇〇五年の六四%に向上いたしました。

 このような成果も見られる一方、アフガニスタンは、依然として治安改善や麻薬対策等、困難な課題に直面しており、引き続き、国際社会による一致した支援が必要であります。

 我が国は、来年のG8サミット議長国であり、G8において重要な課題となっているアフガニスタン和平、復興に、引き続き積極的に取り組んでまいります。

山中委員 ただいま御説明いただきました。そして、私もさまざまな形でかかわらせていただきましたように、アフガニスタンに対して日本はさまざまな形の民生支援を行ってきているわけでございますし、決して自衛隊だけの支援という、一般的に受け取られているイメージとは違うわけでございますから、そういう意味で、今回の海上自衛隊によります補給支援活動というのは、いわゆるテロとの闘いという国際社会の取り組みへの意思を示す上でも非常に重要だと思います。

 そして、今回のこの新しい法律におきましては、ここは引用いたしますけれども、「テロリスト、武器等の移動を国際的協調の下に阻止し及び抑止するためインド洋上を航行する船舶に対して検査、確認その他の必要な措置を執る活動」ということで書かれておりますけれども、このように限定された今回の新しい法律、そして、日本の場合には、現在、海上阻止行動そのものを法的に実施することができないというそのことにかんがみまして、ですから補給支援という後方支援を行うわけであるというふうに承知しております。

 この活動は、とりもなおさずアフガニスタン本土と比べて安全な地域での活動であり、しかも各国から感謝をもされており、これ以上の有効な支援はないと考えますが、外務大臣の御認識はいかがでいらっしゃいましょうか。

高村国務大臣 日本の繁栄や日本国民の安全は、平和で安定した国際社会があってこそ確保されるものであり、テロとの闘いは決して他人事ではないわけであります。実際、九・一一テロで日本人が二十四名も犠牲になっております。

 海上阻止活動は、インド洋をテロリストの自由にさせないための大きな抑止効果を発揮しております。海上阻止活動の手を緩めれば、テロリストの移動や武器の輸送等を許し、事態は悪化するおそれがあります。また、インド洋上でテロリストの移動等を阻止、抑止していることは、結果として、中東に石油需要の九割を依存する我が国のエネルギー輸送ルートの安全確保にとっても極めて重要であります。

 今も何十カ国という国々が、アフガニスタンで犠牲を払いつつ、同国を再びテロの巣窟としないように忍耐強く努力をしているわけであります。この努力にはほとんどすべての先進民主主義国が参加して、永世中立の立場をとるスイスのような国さえ参加をしているわけであります。

 さらには、国連安保理と国連事務総長も給油支援活動の継続を期待しており、米国の中では共和党も民主党も一致して我が国の貢献を期待しているわけであります。補給支援活動を続けてほしいという声がたくさん来ますが、やめてくれとかやめてもよいという声は、私は国際社会から聞いたことがないわけであります。これほどの期待があることは、やはり世界の中の日本として重く受けとめなければならないことだと思います。

 テロ対策特措法に基づき実施してきた海上自衛隊の補給活動は、このような大きな意義を有しており、国際的にも高く評価されている、目に見える人的貢献であります。一九九〇年の湾岸危機のときに、約百四十一億ドルもの資金を出しながら、人的貢献が行えなかったことにより国際社会で評価されなかった無力感を想起すべきだと思います。憲法上の制約を抱える日本が、それ以来十五年かけて積み上げてきた努力と、かち得た国際社会の信頼と評価を水泡に帰さないためにも、海上自衛隊による補給活動をぜひとも継続する必要があると思います。

山中委員 海上自衛隊の補給したその油を目的外に使用しないということは非常に大事なことだと思いますが、このことにつきましては、基本的には、例えば日米同盟などのハイレベルの信頼関係で担保しているというふうに承知しておりますが、しかし、現場やあるいは末端までそれが徹底されるのはかなり難しいことというふうに思われます。

 そこで、この新法のもとでは、海上自衛隊の補給した油の適正使用を一層徹底する仕組みが必要ではないかというふうに考えております。そのためには、もっと制度化すべきではないかというふうに考えておりますが、この点につきまして外務大臣はどう認識されておられますでしょうか。

高村国務大臣 これまでも、テロ特措法に基づく我が国の協力支援活動については、交換公文の締結や各国との連絡調整を通じて、我が国が補給した燃料がテロ対策特措法の趣旨に沿って適切に使用されることを確保してきたわけでございます。しかし今、国会において、その適正使用の確保についてさまざまな議論が行われてきたことにかんがみ、新法案のもとでは一層わかりやすい形で適正使用を確保するための枠組みを整備する考えでございます。

 まず、新法案では、支援対象について、テロ対策海上阻止活動を明文上、明確に定義いたしました。また、補給支援活動について、その対象となる艦船がテロ対策海上阻止活動に係る任務に従事するものであり、その艦船に対して補給支援活動を実施することがテロ対策海上阻止活動の円滑かつ効果的な実施に資するものと認められることが必要である旨を、補給支援活動の定義として明確に規定をしております。新法案では、活動の透明性がより増大していると考えているところであります。

 このような本法案の規定については、諸外国に対し十分に説明するとともに、新たな交換公文の締結など適切な措置を検討していきたいと考えております。

 御指摘のとおり、実際に適正使用を確保していくためには、こうした各国との間の枠組みに加え、現場で十分な調整を行う枠組みが必要であります。ある国の軍隊等の艦船に対して実際に補給支援活動を行うか否かについては、今述べた法律の規定に則して個別具体的に検討する必要がありますけれども、その際、これまでも連絡調整の拠点として実績を積み上げてきたバーレーンの司令部における連絡調整をさらに徹底しながら、当該艦船の活動内容等を勘案して補給の可否を判断してまいります。

 このような仕組みのもとで、我が国が補給する艦船用燃料等が新法の趣旨に沿って適切に使用されるように努めていきたいと思います。

山中委員 ぜひ、ただいま外務大臣おっしゃいましたように、末端まで、あるいは、それぞれの法律の違う、あるいは軍隊によっては、相手方がいろいろな活動が違っているわけですけれども、そういったことを超えて、日本のこの意図がしっかりと伝わるように枠組みをつくり直し、そしてその実施を強化していただきたいというふうに思います。

 もう一度、その点について確認をさせていただけますでしょうか。

高村国務大臣 今でも適正に使用されていると思っておりますけれども、さらに、目的に従って油が使われているように、国民にわかりやすいようにさらに努力をしていきたい、こう思っております。

山中委員 日本が独自のアイデンティティーを毅然として打ち立てながら、しかし国際社会の一員として国際社会の平和と安定のために寄与するという姿勢と実際の行動を示す正念場に現在置かれていると感じております。もし、ここで日本が復帰せずに給油活動を中止してしまったら、どこかの国が肩がわりをすることでしょう。しかし、それは日本のプレゼンスがなくなるということを意味するものであり、これまでの努力、協力さえも忘れられてしまうのではないでしょうか。国連の常任理事国入りを目指す国が、そういう日本が、プレゼンスをなくして、それでよいのでしょうか。

 質問を終わります。

平沢委員長 次に、丸谷佳織君。

丸谷委員 公明党の丸谷佳織でございます。

 高村大臣、御就任おめでとうございます。大臣におかれましては、山積する外交問題の解決に当たりまして、高村大臣ならではの高い見識とまた強いリーダーシップを持って諸問題の解決に当たっていただきますように心より期待を申し上げながら、本日、大きく二点にわたって質問をさせていただきます。

 まず、一点目は日ロ関係でございます。

 本年の九月にシドニーで開かれましたAPECにおきまして、トップ会談が日ロ間で開かれました。領土問題を含めまして日ロ間の諸問題の解決に当たって、加速度をつけて解決をしていこうといったコンセンサスがなされまして、その中では、十月の外相会談あるいは十一月の副首相の来日、また本年度中には日ロの戦略対話の開始等々、矢継ぎ早に大事な会合が設定をされたところでございます。

 先日でございますけれども、十月二十三日、高村大臣と訪日中のラブロフ外務大臣の会談が行われたということでございます。まず、その成果に当たりまして、大臣の率直な、かなり日ロ関係は前向きに動いてきている兆しを私は感じているのですけれども、外相会談を終えて、その成果についてまずお話を聞かせていただきたいと思います。

高村国務大臣 ラブロフ外務大臣とは、夕食会を含めて二時間三十分にわたって、北方領土問題を中心に二国間問題や喫緊の国内問題について、かなり内容の濃い協議をしたと思っております。

 北方領土問題につきましては、御指摘にあったように、シドニーでの首脳会談で、具体的な進展が得られるよう両首脳が指示を出すことで一致したわけでありますが、それを受けて外相間で、双方に受け入れ可能な解決策を真剣に検討していくことを確認し合いました。

 北方四島を含む日ロの隣接地域における生態系の保全の分野での協力については、環境が主たるテーマとなる来年の洞爺湖サミットに向けて具体的な協力プログラムを作成することで一致をいたしました。

 また、四島交流の改善策として、双方の立場を害さないことを前提に、北方四島と北海道本島との間の冬季における航空機の利用の可能性を含め検討していくことで一致をいたしました。

 また、極東・東シベリア・イニシアチブの今後のフォローアップのあり方につき協議し、本日、ウラジオストクで開催される貿易経済日ロ政府間委員会第一回地域間交流分科会においてこれを開始することで一致をいたしました。

 具体的に領土問題で何が動いたかというと、具体的に動いたということはないわけでありますが、今まで以上に、ラブロフ外相もプーチン大統領の指示を受けて、この問題を凍結するつもりはない、缶詰に入れるつもりはない、そういうようなことを積極的に言っておりまして、動かしたいという気持ちは感じられたところでございます。

丸谷委員 ありがとうございました。

 最近のロシア側からのいろいろな立場の発信を見てみますと、例えば、領土問題は封印をするべきだといった議論ですとか、あるいは敗戦の結果として日本は受けとめるべきだといったような意見、あるいは、そもそも領土問題なんてものはもう存在しないという、全く問題を否定するかのごとき、かなり乱暴な意見というものばかりがどうしても報道に載ってきたものですから、元島民の方を初めとしまして、非常に日本側の感情的な部分では悪化をしていたように私自身も感じておりますし、私もそういった意見に関しては怒りを持って感じてきておりました。

 両トップの、また両外務大臣の会談によりまして、やはりこれは政治決着をしていかなければいけないところですから、そこを動かそう、プーチン大統領は封印するつもりはないんだという意思をまず感じ取って帰ってきていただいたというのは非常に重要なことであろうと思います。この機を逃さずに、また具体的な次のステップが踏み出せるように、日本外交としてももう一歩、頑張っていただきたいと思います。

 その中で、外交面で頑張っていただくとともに、やはり二国間の国民レベルでの信頼関係の醸成を図っていかなければいけませんし、また、四島周辺も含めました日ロ間の相互依存関係を強化していくことも必要かと思います。

 先日でございますけれども、例えば、十月の十二日には、国後島で重度のやけどを負いました一歳十一カ月のニキータ君が、とてもじゃないですけれども国後島では治療ができないということで北海道の方に運んでこられまして、そして今、札幌医科大学で手厚い看護を受けています。こういった、本当に国民レベルでの交流といったものも非常に重要な一つでございます。

 その意味におきまして、国際交流基金がモスクワに事務所を出すといった報道に触れておりますけれども、これも文化の発信、こういった交流の面では非常に重要だと承知をしております。この国際交流基金のモスクワ事務所の見通し、また、期待値について教えていただきたいと思います。

高村国務大臣 日ロ間の文化交流は、両国国民間の友好及び相互理解の促進という観点から重要であると考えておりまして、引き続いて、日ロ行動計画に基づき、文化、人的交流を含めた幅広い分野で日ロ関係の進展に努めてまいりたいと思います。

 この観点から、先般の日ロ外相会談において、ラブロフ外務大臣と、日ロ両国で文化交流のためのセンターを双方が開設することについて協議を行うことで一致をし、また、私からは、早期に、準備を兼ねた国際交流基金モスクワ事務所を暫定的に開設するとの希望を表明いたしました。この実現により、日ロ両国の文化交流がさらに拡大していくものと期待をしているところでございます。

丸谷委員 双方が開設するということでございますので、ロシア側も日本で開設するのを待ってという、正式には日ロ間で打ち合わせをしなければいけないという状況にあるということなんですよね。済みません、ちょっと今、理解度が低くて申しわけございません。もう一度説明をしてください。

原田政府参考人 先生ただいま御指摘のように、ロシア側は、日本の文化センターを開所させるためには自分たちも出したいと。当然、こういう場合、相互主義になりますので、正式には双方で合意した上で設置するということになろうかと思いますが、先ほど大臣が御説明しましたように、そうはいっても、正式になる前にも、暫定的にでも開所したいというのが我々の考えでございます。

丸谷委員 わかりました。正式な開設に向かってまた努力を進めていただきたいと思います。

 こういった両国民の交流、文化交流、人的な交流、こういった部分も非常に重要であることは間違いございませんけれども、また一方で、残念な報道もやはりあるわけですね。

 例えば、現在、北方領土を含めまして、クリル開発計画というのが大々的に巨額の予算をかけてロシア側では行われているわけでございますけれども、こういったクリル開発計画の中で、北朝鮮も含めて中央アジアからの労働力を安価で雇い入れているというような報道に接しております。私たち日本人の感情からしますと、北方四島でまた安い外国の労働力を取り入れてというか、ロシア側が買ってきて、ロシアのために働かせているというような部分では、どうしても私たち感情的に受け入れられないものが、特に北方領土においてでは、ございます。

 こういったことに関して、事実関係はまたいろいろな部分があるかもしれませんけれども、大臣としてはどのような御認識をお持ちになっているのか、お伺いします。

高村国務大臣 本件につきましては、政府としても私個人としても強い関心を有しておりまして、ロシア外務省に対して事実関係の確認を求めるとともに、北方領土問題に関する我が国の立場を申し入れたところであります。また、二十三日に行われた日ロ外相会談においても、私からラブロフ大臣に対して、本件のように領土交渉に悪影響を及ぼすようなことは避けてほしい旨、直接申し入れをいたしました。

 一方で、我が国固有の領土である北方四島がロシアに不法占拠されている状況下において、このような問題を根本的に解決するのは、北方領土問題そのものを解決する必要がどうしてもあるわけであります。政府としては、双方にとり受け入れ可能な解決策を見出すべく、引き続き強い意思を持って真剣な交渉を行っていく考えでございます。

丸谷委員 戦後六十年以上もたちまして、ずっと取り組んできていただいている問題でございます。引き続き、元島民の皆さんのお気持ちも限界に達しているというのはもう大臣十分わかっていただいていることと思いますけれども、またこの機会を逃さずに、いろいろな国際情勢の中で、領土問題も含めた日ロ関係の前進に向かって頑張っていただきたいと思います。

 続きまして、当委員会の第一回目の大臣の所信的なごあいさつの中でも出ておりましたけれども、来年は非常に日本にとって重要な外交の年であるという中で、我が国で開催されます二つの国際会議、五月にはTICADが開催され、また七月には北海道でサミットが開催され、それの成功を期して全力で当たっていく旨の御発言がございました。

 そこで、私は本日、TICADについて質問をさせていただきたいと思います。

 このTICADは、一九九三年に、冷戦終結後、国際社会がアフリカというものに対して興味を失っていった中で、日本がアフリカへの支援の再喚起を促すためにリーダーシップをとって始めた会議ということで、アフリカの大使の皆様にお話をお伺いしましても非常に高い評価をいただいている会議がこのTICADだと思います。

 五年に一度開催され、来年はその四回目を迎えるわけでございますけれども、今までのTICADの成果としまして、アフリカの発展とまたそれを持続させていくためには国際社会のパートナーシップとアフリカのオーナーシップが重要であるというコンセンサスを根づかせてきたということが一つ大きな成果であると私は考えております。

 さて、来年は四回目になるわけでございますけれども、来年のこのTICAD成功に向けました御決意といいますか、プラス、何を目指して、ゴールを何として来年四回目のTICADを行おうというふうに考えているのか、この点についてお伺いいたします。

高村国務大臣 TICADは、一九九三年に我が国の提唱によって第一回会議を開催して以来、アフリカ諸国、先進国、国際機関等の幅広い参加を得て、アフリカに関する国際社会の関心を喚起する重要な役割を担ってきたわけであります。

 我が国は、TICADの場を通じ、人間中心の開発、経済成長を通じた貧困の削減、平和の定着、アジアの経験の活用など、アフリカ開発の理念や方向性、重点支援分野につき共通理解を深める上で重要な貢献を行ってきており、委員御指摘のように、アフリカ側からも高く評価されているわけであります。

 また、我が国は、これまで三回のTICAD開催に際し、アフリカ諸国に対する人材育成、資金協力など種々の貢献策を発表し、着実に実施してまいりました。来年の五月のTICAD4では、これまで以上に多くの首脳の参加を得て、アフリカ諸国のニーズや希望を酌み取り、その成果を七月に開催される北海道洞爺湖サミットにつなげていきたいと思います。

 それで、来年五月のTICAD4では、近年、平和の定着や民主化の進展、経済の成長等で明るい兆しの見られるアフリカ諸国を後押しするために、元気なアフリカを目指してというメッセージのもとで、今後のアフリカ支援の方向性を打ち出したいと考えております。

 具体的には、成長の加速化、人間の安全保障の確立、環境・気候変動問題への対応の三つの重点項目を中心に、アフリカ支援のために、我が国を含む国際社会の資金と知識を結集したいと考えておりまして、現在、アフリカ諸国や国連、世銀とともに鋭意準備を行っているところでございます。

丸谷委員 私も、来年のTICAD4の成功に向けて、またそれをサミットにつなげていくためにはどうしたらいいんだろうかということを私なりに随分と考えてきたつもりでございます。外務省からもいろいろな御説明をしていただいておりました。

 その中で、どうしても私の中に残って消えない問題意識というのがございまして、生意気を承知で言わせていただけるとすれば、TICAD、五年に一回、今度、来年で四回目になる、まさしく二十年の計なわけですね。その中で、九三年のときのアフリカを取り巻く国際環境と、今アフリカを取り巻く国際環境というのを見誤ってはいけないのではないかという気がしております。

 九三年には、冷戦終結をして、国際社会が何となくアフリカに目が行っていなかった。では、今アフリカはどうなんだろうといいますと、例えば来年のTICAD4の三つのテーマ、人間の安全保障、気候それから経済の成長の加速化ということは、G8でも多分こういったことはうたわれておりますし、また二〇〇〇年には、国連のミレニアムサミットでMDGも設定をされている。まさしく人間の安全保障分野ではもうゴールを設定されているものがあり、また、我が国でも独自に、バイであったりマルチであって、アフリカに支援を今までずっとこの何十年としてきている。また、最近いろいろな意味で発展が目覚ましい中国やインドもアフリカに対しては独自の支援を今行っているというところが、九三年当時と今とでは、アフリカを取り巻く環境としては大きく変わっているんだと思うんです。

 その中で、TICADというもののあり方もやはり、成果文書、合意文書、コンセンサス重視という会議体から、結果重視の会議体へと変わっていくことが、我が国にとっても、またアフリカ諸国にとっても、お互いにありがたい会議になっていくのではないかという思いがいたしておりまして、どうも、TICAD4、これから詰めていくところがかなり多いかと思いますけれども、元気なアフリカを目指してというところだけではちょっと足りないのではないか、もっと、五年後のTICAD5があるのであれば、そのときに検証可能なようなゴール設定ができる会議体として存在をしていくべきではないかというのが、私の問題意識としてずっと持っているものでございます。

 まず、大臣にお考えをお伺いさせていただきたいのは、アフリカを取り巻く環境が変わっていく中で、日本が主催、世銀とUNが共催ではありますが、TICAD自体を成長させていくというか変質をさせていくことで、日本とアフリカにとって相互利益が、また新たな利益が生まれてくるという考え方についてはいかがでしょうか。この点についてお考えをお伺いします。

高村国務大臣 確かに、十五年前と今とではアフリカを取り巻く環境というのは変わってきておると思います。だから十五年前のやり方じゃだめなのだということでは、私は必ずしもなくて、例えば、先ほど委員が御指摘になりましたように、アフリカ諸国自体のオーナーシップ、そして我々のパートナーシップですね。やはり、自立と共生ですか、彼らに自立してもらって、我々がお手伝いする。十五年前は、そういうことを言いましたけれども、それが必ずしも生かせるような環境でなかったかもしれません。十五年たって、そういうことが本当に根づくことになりつつあるというような気もしているわけであります。

 委員は、十五年前と変わってきているんだから、そういうこともいろいろ変えなきゃいけないと言うんですが、やっと十五年たって、そういうことが、オーナーシップとパートナーシップ、自立と共生、彼らに自立してもらって我々がお手伝いするということが本当にやれる環境が整ってきた、そういうことも言えないわけではない、こう思います。

 それと同時に、このTICAD自体で何らかのゴールをきっちりつくって五年後に検証するようにしろという委員の御提案は参考にさせていただきたい、我々も考えさせていただきたい、こういうふうに思います。

丸谷委員 そうしますと、例えば、外務省にお伺いしますけれども、TICAD2、一九九八年に行われております。この中には、具体的な行動プランとして東京行動計画というものが盛り込まれております。この行動計画に沿って、今までどのぐらい達成してきたものがあるのか。この達成度についてはどのように私たちは考えればよろしいでしょうか。

目賀田政府参考人 先生御指摘のとおり、一九九八年に東京で開催されました第二回のTICADの場におきまして、社会開発やあるいは経済開発、紛争予防と紛争後の開発といった分野で、優先的に取り組むべき政策や行動、あるいは達成すべき目標といったものが東京行動計画という文書のもとに採択されております。

 その中の、特に御指摘の達成すべき目標というのは、実はこれは一九九八年にこのTICAD2の場で採択されたんですけれども、実はその多くの目標が、二〇〇〇年のミレニアム目標の中に取り入れられておるわけでございます。そういう意味では、このTICADでのアフリカ諸国、国際社会が合意した目標が、ミレニアム国連目標に吸収されて、現在その目標達成という一環として、アフリカに対する支援というものにも取り組んでいるというふうに御理解いただければと存じます。

丸谷委員 結局、このTICAD2の東京行動計画というのはMDGの中に吸収されていったということで、先見の明があったと申し上げればいいのか、あるいは、結局はまだ、結果としてMDGと同じように途上であるというふうに考えたらいいのか、あるいは、検証がなされていないというふうに考えたらいいのか、いろいろな考え方があるかとは思いますけれども、その中で、ではTICADの独自性というものをどこに求めていけばいいんだろうというのが、やはり私にはどうもわかりません。TICADを開催する意義というのが、本当にまだ私自身には、先ほど大臣の御答弁をお伺いしても、ちょっとまだわからない部分があるんです。

 なぜアフリカ支援なんだといえば、それは日本のアフリカ外交の指針でもございます。アフリカの繁栄なくして世界の繁栄と安定はなしという外交政策のもとで、また、国際社会と一緒になってアフリカを支援していくんだと。だからやっている。それには、国連を通してやることもあるし、G8の一カ国としてやることもある。我が国独自でやることもある。その中で、我が国がまずリーダーシップを持っているのはTICADなわけですけれども、このTICADの独自性、存在意義というのはどこにあるというふうに考えたらよろしいでしょうか。

高村国務大臣 一九六〇年代から七〇年代にかけて、アジアとアフリカがどっちが貧しいか、似たようなものだったんですね。似たようなもので、アジア・ペシミズムなんという言葉があって、アジアは決して豊かになれないなんという論文まで世の中には出る。それから、アフリカは、輝けるアフリカ、将来はあるぞと言われたようなこともある。大体同じ程度の貧しさ。それが今、アジアとアフリカとどっちが貧しいかなんて比べる人がいないぐらい差がついてきた。

 それにはもちろんいろいろな理由があるんですが、やはり日本の経済協力ということも一つあるわけです。アジアが豊かになったことの理由の中の一つに、日本の経済協力があったということも言えるわけなんですね。アジアの成功体験をアフリカに持っていこうということは、私はTICADの一つの大きな目標であり、特色である、こういうふうに思います。

 TICADで最初打ち出したのは新開発戦略、それはまさに、委員が先ほどおっしゃった、アフリカ諸国自身のオーナーシップと、私たちがお手伝いするパートナーシップ。オーナーシップがないところに、幾ら貧しい人にパンを与えるんだというようなことをやっても、それはパンを食べてしまえばおしまいだ、こういうことにもなるわけで、やはり彼らが自立して、みずからのオーナーシップで伸びてもらう、そこをお手伝いするんだ、そういう新開発戦略というものを世界に根づかせるという意味はまさにTICADにはあったんだ、今でもあるんだ、こういうふうに思っております。

 それはまさに、日本が経済協力をしてアジア経済を離陸させた、その成功体験をぜひアフリカにも定着させたい。これは、TICADというのは日本でなければできないことだと私は独自に考えているわけでありますが、とりあえずそういうことを申させていただきたいと思います。

丸谷委員 国際資金と知恵の結集がTICADの場だということでございまして、本当にそのとおりになるように、結果を出していただきたい、頑張っていただきたいという思いで本日は質問させていただいたわけでございます。

 やはり、アフリカ諸国の首脳、もう何十人も、何十カ国からも、わざわざ日本に、遠い中、来られる。その各国首脳を集めて、恐らく精神的な部分だけの会議ではもうもたないというのが私のTICADに対する意見でございまして、オーナーシップ、パートナーシップが大事だと。このオーナーシップというのは、では、アフリカは何を求めているんだというと、例えば、投資と貿易、域内経済の発展であったりとか、あるいは知財をどう守るか、こういった具体論にまで踏み込んでいる時期を迎えておりますので、その中でどのように、日本が持っている経験と知恵を適材適所でアフリカ諸国に対して発信していけるか。また、今後煮詰まっていく中で、外務省から詳しい説明をいただける日を非常に楽しみにしておりますので、どうか一生懸命取り組んでいただきたいと思います。

 本日は以上です。ありがとうございました。

平沢委員長 次に、近藤昭一君。

近藤(昭)委員 民主党の近藤昭一でございます。

 高村大臣、御就任おめでとうございます。

 私は、政治の役割というのは国民の生命と財産を守ること、そう思っております。そして、いろいろと見方、いろいろな意見があると思います。私は、ただ、軍事力では平和はつくれない、守れない、そういうふうに思っているんですね。

 昨日、参議院で外交防衛委員会が開かれました。与党の議員の方もおっしゃっていた、外交と安全保障の問題が同じ委員会で開かれる、諸外国の中でも珍しいというような発言をされておられました。

 私は、専守防衛、自衛隊、自衛力というのを否定するわけではありません。しかしながら、やはりまず、先ほど質疑の中にもありましたように、しっかりと外交、予防外交ということをきっちりとやっていくべきだ、そういうふうに思っているんです。そういう中で、日本はきっちりと日本の外交、自主外交、また自主防衛ということをしていくべきだと思います。

 そういう中で、外国の軍隊が日本の中にあるということは、私はいかがなものかなと。そして、残念ながら、その外国の軍隊の兵士が、残念な事件を繰り返し起こしているということであります。

 さきの十月十四日、海兵隊岩国基地所属の四名の兵隊が、広島市内で、十九歳でありますでしょうか、女性を集団で暴行した、こういう事件が発生いたしました。このことについての捜査の状況について御説明をいただきたいと思います。

高村国務大臣 御指摘の十月十四日未明に発生した日本人女性に対する暴行が疑われている事件につきましては、引き続き広島県警が在日米軍当局と協力しながら全容解明に向けた捜査を進めていると承知をしております。

 今後、捜査等を通じて明らかになった事実に即して、日米地位協定の枠組みにより適切に対処することとなりますけれども、現時点では引き続き捜査中であるというふうに承知をしております。

近藤(昭)委員 捜査中ということでありますけれども、捜査中ではないというか、過去に多くの本当に残念な、悲惨な事件が起きているわけであります。

 一九六〇年の安保条約発効以来、日米の地位協定がある、それが一度も改定されていない。私は大きな問題を抱えていると思うんですね。それで、御承知のとおり、日米地位協定第十七条では、被疑者たる米軍人が米軍施設・区域の中にいる場合には、被疑者の身柄は日本側で起訴が行われるまで米側が拘束すると規定をしている。

 一九九五年、沖縄において発生した少女集団暴行事件後、凶悪犯罪に関しては運用の改善によって対応するという日米合同委員会の合意が結ばれたわけでありまして、そして、基本的には対象を殺人または強姦に限定している。それ以外の犯罪に関して、同合意は、日本側から起訴前に身柄引き渡し要請が出された場合、米軍は十分に考慮をする、こういうことであります。

 日本の国で起きた犯罪、それに対してこういう地位協定がある。しかし、地位協定は改定されることなく、運用の改善によってこういう状況になる。つまり、一義的には米側の配慮といいましょうか、そういうことに任されている。これは、私は残念でありますし、問題があると思いますし、その後もこういった事件が繰り返されているということの、原因ではないかもしれませんけれども、非常に、歯どめになっていない、こういうふうに思うんですね。そういった意味で、私は日米地位協定の改定が必要だと思います。

 例えば今の、米側が判断するというのではなくて、やはり日本側が要求する。日本の国民が被害に遭っているわけでありますから、日本側が要求する場合には、起訴前の被疑者の拘束、いわゆる拘禁ですね、引き渡しは速やかに行うようにすべき、そういう文言を入れるべきだと思いますが、いかがでありましょうか。

高村国務大臣 日米地位協定十七条五の(c)は、米軍人等被疑者の身柄が米側の手中にある場合の拘禁の移転につき規定をしておりますけれども、この点についてはNATO地位協定にも同様の規定が置かれているわけであります。我が国だけが特別NATOより劣位の条件にあるというわけではないわけであります。

 そして、我が国の場合は、平成七年の刑事裁判手続に関する日米合同委員会合意によって、殺人または強姦という凶悪な犯罪等の特定の場合について、我が国として重大な関心を有しているものにつき起訴前の拘禁移転を可能にする道を開きました。このような起訴前の拘禁移転の要請を可能とする枠組みに基づき実際に起訴前の拘禁移転が行われている地位協定は、日米地位協定以外存在しないわけであります。ほかの、NATO等に比べて日本にとって有利な状況にあるということも言えると思います。

 政府としては、起訴前の拘禁移転については、今後とも本件合意に基づき適切に対処していく所存でございます。

近藤(昭)委員 高村大臣のお答え、NATOの規定、外務省のホームページにも書いてありまして、NATOと比べても決して劣るものではないという書き方がしてあるわけであります。しかし私は、先ほど申し上げましたように、日本は日本としてきちっと外交をしていく、そういった意味で、NATOのことはNATOとして、やはり、より日本の国民を守る、そういう観点から日米地位協定の改定をぜひ進めていただきたいと思います。

 もう一つ申し上げますと、よく事件が起きる、そうすると、公務中に犯した犯罪の一次裁判権は米側に認められているということがあります。しかし、この公務中というところが非常に恣意的に使われているのではないかという思いを持つわけであります。

 事故が、事件が起きてから、後から公務執行中であったという証明が出される場合、あるいは、公務執行中というものが出されるけれども、実は、確かに公務に出かけていたかもしれない、しかし、帰りにお酒を飲んで、飲食をして、そして帰る途中であった、しかし公務執行中であった、こういう事例も、二〇〇二年であったと思いますが、起きているわけであります。

 私は、そういった意味で、この公務執行中というものを米側が恣意的に濫用しないように、そういうような規定を整備する必要があると思いますが、いかがでありましょうか。

高村国務大臣 米軍関係者による犯罪が公務執行中に行われたものであるか否かについては、捜査当局は被疑者の事情聴取等の必要な捜査を行っており、米側から発給された公務証明書についてもその内容をしっかり確認しているものと承知しております。

 また、検察当局において公務執行中に行われたものではないと認定するような場合には、米軍当局に対して反対の証拠がある旨の通知を行い、協議する枠組みが設けられているわけであります。

 政府としては、このような日米地位協定の枠組みを通じ、個別の事案に即して適切に対処してまいります。

近藤(昭)委員 そういう仕組みがあるということでありますが、必ずしも十分にそれが機能していないのではないか。もちろんそういう仕組みの中でチェックをしていくとともに、先ほどの被疑者の引き渡しの問題でも申し上げましたように、NATOはNATOとして、日本は、やはり日本側が要求した場合にはそれは引き渡される、そういうことをぜひ書き込んでいただきたいと思うわけであります。

 続きまして、次の質問に参りたいと思いますけれども、遺棄化学兵器処理事業についてであります。

 十月十七日、中国における旧日本軍の遺棄化学兵器処理事業を受注しているPCI、パシフィックコンサルタンツインターナショナルの元社長が約一億円を不正流用した疑いで東京地検特捜部が捜索をした、こういうことが報じられておるわけであります。

 そもそも日本政府による遺棄化学兵器処理事業とは、中国遺棄化学兵器処理事業基本計画によると、人の安全を確保し、保護することを最優先としつつ、化学兵器禁止条約の義務を履行することを目的とする、そういう事業であると。ところが、これまで遺棄化学兵器処理事業に注ぎ込まれた数百億円もの事業資金、これが、人の安全の確保から最も遠ざけられた、すなわち旧日本軍による遺棄化学兵器によって身体をむしばまれて現在も苦しんでいる中国の被害者らにほとんど行き渡ることがなかった。旧日本軍の遺棄化学兵器によって亡くなられた被害者とその遺族は無念の思いを抱き、生存する被害者たちも非常に大きな苦しみを負い続けているわけであります。

 仮に今回のマスコミ報道が事実だとすれば、本来ならば遺棄化学兵器処理事業によって救済されるべきはずの人々が救済されていない、そしてまた、その被害者がこれからも出る可能性がある、そういった危険と、そして現在、既にこの被害に遭っている人たちが救済されることなく、一部の人たちがその利益をむさぼっている、本当に問題だと思うわけであります。

 そこで、まず大臣にお聞きしたいと思います。

 遺棄化学兵器に関する裁判というのは、日本でも幾つか行われています。その中で政府は、被害の原因となった化学兵器は旧日本軍が遺棄したものではないという主張をした。さらには国民党がやったのではないか等々、そういう主張をしているわけであります。ただ、判決ではその主張は退けられている。日本軍が遺棄したものである、こういうふうに裁判では認められております。

 大臣はそのような認識でいらっしゃるかどうか、確認をさせていただきたいと思います。

高村国務大臣 政府として、中国に旧日本軍が遺棄した化学兵器が多数埋設されていること自体は認めているわけであります。

 御指摘の判決は、あくまで、訴訟となった個別的、具体的な事例について裁判所が判断を行ったものだと承知をしております。

 いずれにいたしましても、一九九七年に発効した化学兵器禁止条約により、我が国は中国における遺棄化学兵器を廃棄する義務を負っております。

 今後とも、同条約上の義務を誠実に履行していくとの方針のもと、中国における遺棄化学兵器処理事業を一日も早く完了させるべく、中国側の協力を得ながら最大限の努力を行っていく考えであります。

近藤(昭)委員 そうしますと、そういう事業を国が責任を持ってやるということを決めている、だから、裁判ではいろいろ主張がされているわけでありますが、それは日本軍が遺棄したものである、こういうようにお認めになっているということでよろしいですか。

高村国務大臣 必ずしもそういうことではありません。

 国は、その裁判において、個別具体的にそれなりの理由をもって、日本軍が遺棄したものであるという証拠はないという立場に立って主張したというふうに承知をしております。

近藤(昭)委員 裁判で政府がそういう主張をした、そこにはそういう根拠があるというか、そういう主張をしたと。

 しかしながら、私は、日本は三権分立、日本はこの遺棄化学兵器の問題だけではなくて、さまざまな医療の問題でも、最高裁というところが政府の過ちを認めても、なかなか厚労省であったり政府が認めないということがあって、本当に残念であるわけでありますけれども、大臣のお答えはそうだということでお聞きをしました。ただ、そういう枠組みをつくっている、遺棄化学兵器の処理の事業をしている、そこに政府が予算を出しているということであります。

 それで、日中関係は政冷経熱と言われまして、高村大臣も、日中友好議連の会長として日中関係の改善に努力をされている。私も先般御一緒させていただいて訪中をさせていただいたわけでありますけれども、先ほど申し上げました遺棄化学兵器、これは、戦争中のことではなくて、私は思うわけでありますが、戦中に日本軍が遺棄した化学兵器によって、戦後、戦後生まれで全く罪のない子供たちがその遺棄化学兵器の化学物質に接して被害をこうむる。私もその被害者の子供たち、関係者にお目にかかったことがありますけれども、子供がそれにさわった、そして皮膚がただれた、そして学校へ行く、学校へ行くと病気がうつるといって遠ざけられる、差別をされる、そういう話を聞くと本当に悲しくなるわけであります。

 そして、日本は遺棄化学の処理事業には予算を組んでいる、しかしながら、そこで被害に遭った、日本軍が遺棄したその化学物質によって被害をこうむった子供たち、子供というか被害者に対して救済の枠組みがないんですね。今、辛うじて行われているのは処理事業、その遺棄化学兵器を処理するという事業で組まれた予算の中で、特別にといいましょうか、まあ、イレギュラーな形で費用が出されている。

 費用が出されていることはある意味ではまだましなのではありますけれども、被害者の人たちは、一体どうなるんだろうか、これがいつそういった救済、救済というか、例えば治療に対する支援とか、こういうことに対して不安を大きく持っているわけであります。

 私は、そういった意味では、やはり日中関係、罪のない子供たちが被害に遭っている、そこにはきちっと救済の手を打っていく、そういう仕組みを政府としてつくるべきだ。

 冒頭申し上げましたように、残念な事件が起きて不正にお金が流用されていった。例えば一億、一億であればかなりの救済ができる、こういうふうに思うわけでありますけれども、そういう不正をなくす、そしてまた、不正をなくすだけではなくて、きちっと予算を組んで、要は、やはり日中関係の信頼を醸成するためにもそういった枠組みをつくるべきだと思いますが、いかがでありましょうか。

高村国務大臣 そういう不正があり、不正で不当な利得を受けたとんでもないやつがいたということと、このかわいそうな人たちに補償すべきだということ、やはりそれを直接絡めて議論するのは、感情的にはそうかもしれないけれども、必ずしもそうではないのだろう、こう思います。

 さきの大戦に係る日中間の請求権の問題については、一九七二年の日中共同声明発出後、存在しておらず、旧日本軍の遺棄化学兵器による被害者についても、この立場を踏まえて対応しているわけであります。

 先ほど委員が三権分立だとおっしゃいましたが、裁判所の判断もそういうことだったと思います。

    〔委員長退席、山口(泰)委員長代理着席〕

近藤(昭)委員 少し時間が限られていますので、私の要望だけお伝えしますけれども、やはりそういったきちっとした枠組みをつくっていく、そういうことを要望したいと思います。

 さて、最後にもう一点だけ、もう一つのテーマでお伺いをしたいと思います。先ほども質問がありました日ロ関係であります、北方領土。

 私も先ほど申し上げました自主外交、日本はきちっと日本の国、国民の安全、安心を守る、財産を守る。そういう意味では、実は私も、北方領土返還要求愛知実行委員会、こういうのが愛知県にありまして、そこの代表も務めております。現地には残念ながらまだ参ったことがないんですけれども、北海道納沙布岬の方まで参りまして歯舞あるいは国後を望み、返還を進める、そういう立場からいろいろと活動しているわけであります。

 それで、お伺いをしたいと思います。

 十月二十四日、ロシアの新聞コメルサント紙は、ラブロフ・ロシア外相が二十三日に訪日した際、日本側が北方四島のうち国後、択捉両島の地位に関する交渉継続を条件に平和条約の締結を非公式に打診したと報じています。記事によれば、日本側は日ソ共同宣言に基づき平和条約を締結、色丹や歯舞両島が引き渡されるが、その前提として残る二島の係争的性格を条約に明記することを提案したと。

 ロシアのマスコミでありますが、こういうふうに報道しているような提案は、公式、非公式を問わずあったのかどうかということを確認させていただきたいと思います。

高村国務大臣 御指摘のような提案を行ったことはありません。もしこのような提案を行ったとしたら、私は腹を切ります。

近藤(昭)委員 ロシアのマスコミが報道した、大臣はそういう話はなかったということであります。これはロシアのマスコミでありますけれども、ぜひそこは確認をしていただいて、きちっと返還要求をしていっていただきたいと思います。

 ただ、町村前外相がことし八月の記者会見で、四島一括返還というのは我々の年来の主張だと述べたほか、その後、面積二等分とか三島返還論とか、いろいろな提案が浮かんでは消えている。ですから、今も高村外相が言われた、そんな提案はなかった、先ほどの報道はなかったとおっしゃるわけですが、一体日本の現在のスタンスはどこにあるのか、そこを明確にお話しいただければと思います。

高村国務大臣 四島の帰属の問題をはっきりさせて、その上で平和条約を締結するというのが日本の方針でございます。

近藤(昭)委員 四島一括返還ということで。

高村国務大臣 一括返還という意味を、必ずしも一緒に返ってくるというふうな一括返還ということにこだわっているわけではありません。ただし、四島とも日本の固有の領土でありますから、全部日本の領土であるという帰属の問題をはっきりさせたい、そしてその上で平和条約を締結したいというのが日本の立場であります。

    〔山口(泰)委員長代理退席、委員長着席〕

近藤(昭)委員 外交交渉というか交渉事でありますから、最終的に実現するために、いろいろな方法があるんだとは思います。

 ただ、私が申し上げたかったのは、四島をきちっと返還を実現するために行動していく。また、交渉事でありますからいろいろな考えが出てきたりはするんだと思います。ただ、余りいろいろな、あちらからこういう考え方が出たり、こちらからこういう提案が出たりして、大臣はそうではないとおっしゃるかもしれませんけれども、何か日本の提案が、考え方がぐらついているようだ、そんなふうでないように、とられないようにお願いをして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一です。

 大臣所信への質疑を行わせていただきます。

 高村大臣、外務大臣御就任おめでとうございます。よろしくお願いいたします。

 まず、十月十九日の大臣記者会見から入らせていただきたいんですが、このときに大臣が、国際的に見ればまさに子供だましのことが要求されてしまっているから子供だましの議論に入ってしまったということもあるわけです、こういうように記者会見で述べておられまして、それが大きく報道されたところでございますが、この記者会見の真意をまずお聞かせいただけますでしょうか。

高村国務大臣 予算委員会をずっと見ていていただいた方はおわかりだと思いますが、正確な言葉は覚えておりませんが、子供だましとか子供っぽいとか子供じみたとかいう言葉を最初に使ったのは、民主党所属の委員が、石破防衛大臣が油の使われ方について懇切丁寧、誠心誠意説明されているのに対し、石油はタンクの中でまじっちゃっているんだから、その三日間で使われちゃったというような、子供じみたというか子供だましと言ったかよく覚えていませんが、そういう議論はするな、こういうことをおっしゃったのに、言葉をおかりして言った、こういうことであります。

 そして、私は、疑点があればはっきり言っていただいて、その疑点についてアメリカ側に問いただすということはしっかりしなければいけない、こう思っております。ただ、いろいろな問題について、この油の問題だけじゃなくて、疑点もないのに、これただせ、あれただせ、こう言われても、同盟関係の中で、それで同盟がもつのかなというほどアメリカはいら立っている面があるという客観的な事実はここでお伝えをしたいと思います。

 そして、油の点について申し上げれば、イラク戦争が始まる前の月までに日本がアメリカの艦船に給油したのは、すべてテロ特措法に定められた範囲で給油しているわけでありますが、その給油したものは、アメリカがOEFもしくはOEF・MIOに使ったすべての油の約二〇%なんです。そしてその後、イラク戦争が始まった月から今日に至るまで日本が同じくテロ特措法の範囲で給油した油の量は、OEFもしくはOEF・MIOにアメリカが使った油の量の七・数%。

 アメリカ側の論理からいうと、OEF、OEF・MIOをやる範囲でもらって、そして自分たちが使った分の、イラク戦争が始まる前は大体二〇%ぐらい、始まってからは全体で七%ぐらいにしかすぎないので、それはもうそれでいいじゃないかというのが大体アメリカの量です。

 それで、我々はそれでは足りませんと。油を入れてから、例えば、例えばですよ、これから三日間OEFもしくはOEF・MIOに従事しますね、ですから三日分の油ですよと入れたとします。そうしたら、我々はそこまでやればいいだろうというのが我々の考え方なんです。

 ところが、民主党の委員がおっしゃったのは、タンクの中で油がまじっちゃっているから、その後数日たってからも、イラクの方に今度は任務で行ったので、物理的にその油だって使われているかもしれないじゃないか、そこを立証しろと言われれば、そこまで立証できませんというのがアメリカが国防総省声明で言っていることなんですね。

 私は、国際常識としても、あるいは法律的常識としても、その考え方の方が正しいと思います。物理的にまじっちゃっているから、この三日分ですよといって与えて、その三日分、確かにOEF、OEF・MIOにすればそれだけ使ったんだねと、両方の合意で使ったと言えば、私は、それは目的内使用だと当然思います。

 民法の初歩の講義をさせていただきますと、物には特定物と不特定物があるんですよ。不特定物で、同じ量のものをこれだけここに使ってくださいよといってそれだけ使えば、それはお互いに目的内に使ったなと了解されるというのは、法律の世界の常識だし世界の常識だと私は思います。そういう意味で申し上げました。

武正委員 米国がいら立っているという認識を持たれていることが確認できたことが一つ、私にとっては、やはりそれが外務大臣の認識なんだなと。米国といっても、政府、政府の中でも国務省、国防総省、あるいは米軍、米軍にも四軍ありますので、どのことを指しているのかということだと思いますが。

 ただ、会見では、国際常識に基づく大人の議論なんですよと、今言われたとおりですね、国際常識に反するのではないかと思いながら一々聞いて、石破大臣が答えている、三日間で使用した、イラクには使われませんよといったことを言っていますと。

 私がやはり問いたいのは、なぜ私どもが一つ一つの給油、その実態、これを把握しようと努めているのかということは、一にかかって、国会で法律として認めたその法律の趣旨に反しているのではないかという疑念があるからでございます。これはやはり国会として、法律を通した国会、そしてまた基本計画、二年ごとの見直しなど、その責任があるということでございます。

 そこで、お手元の方に資料を配らせていただいたんですが、二ページをごらんいただきたいと思います。これは、国際海事機関と国土交通省の調べということで、最近の海賊、船舶に対する武装強盗事件等の発生状況、全世界の発生状況でございます。年々下がっている。決してインド洋だけではないということもよくおわかりいただけると思います。

 まず、きょうも午前中のテロ特で大臣も、テロリストを何人捕まえたかなんて言われても困るんだよというようなことをいみじくも答弁されていますが、改めて、このOEF・MIOで、成果は外務省のホームページで出ているんですけれども、いわゆるテロリストを何人捕まえたか、お答えいただけますでしょうか。

高村国務大臣 テロリストを何人捕まえたかというのは、明確に各国とも発表していないと承知をしております。

武正委員 OEF・MIOにおける具体的成果の例ということで外務省が発表している中でも、アルカイダへの関与の疑いがあり十名とか、疑いがあり乗組員十五名を拘束といった程度にとどめているわけでありまして、日本がここでこういうふうに書いてある実績についても、OEF・MIOのこの六年間の実態、実情、それを国会は検証しなければなりませんので、具体的な成果というものはやはりここでもう少し明らかにしていく必要があるのではないかというふうに思っております。

 そこで、この表でありますが、先ほどちょっと冒頭触れたように、全世界的に、こうした海賊、船舶に対する武装強盗事件等の発生状況が減っている、この表を見られて、またインド洋だけではないということも見られて、外務大臣としての御感想をお聞かせいただければと思います。

高村国務大臣 世界的に武装強盗事案が減っているというのは大変いいことだ、こういうふうに思っておりますし、例えばマラッカ海峡なんかについては、日本もその地域の国にいろいろ支援をしたりあるいは協力したりして、海賊等を取り締まってもらっているわけであります。そういうそれぞれの世界の各地でいろいろな努力が行われて武装強盗事件が減っているんだと思いますし、インド洋においても、OEF・MIOみたいなものも一つの大きな抑止力となってこういうものも減っているとすれば、それもそれでまたすばらしいことだ、こういうふうに思っております。

武正委員 前後逆になりましたが、テロ新法について、福田総理も、シーレーン防衛との関係について、直接的にこの新法は関係ないけれども、今のような、いわゆるシーレーン防衛という言葉は使いませんが、石油の供給、日本に対するルート、やはりその安全確保に非常に寄与しているんだ、だからこの給油は続けたいんだというふうに言っていますけれども、果たしてインド洋などでOEF・MIOが直接的にこのシーレーン防衛にかかわるのかどうかということは、やはりこの表を見る限り、今いみじくも外務大臣がおっしゃったように、二〇〇一年に日本が提案をしたアジア海賊対策地域協力協定、ReCAAP、あるいはまたSUA条約、これは百四十四カ国が参加をしておりますが、二〇〇五年議定書、これは、生物化学兵器などの船舶上の使用など及びテロ関連条約において規定される犯罪を行った者を輸送するについて、それを取り締まろうという議定書でありますが、こういった国際的な枠組み、あるいは、先ほど言われたように、海保が世界的なそういう海上警察と連携をとっている、そういうような総合的な仕組みで、日本の石油の、主に公海の航行自由、これがやはり担保されているというふうに見た方がいいのではないかと私は考えるんですが、この点、大臣の御所見、いかがでしょうか。

高村国務大臣 それぞれの海域でそれぞれの方法で海賊対策等をやっているわけでありますが、OEF・MIOの場合は、直接の海賊対策というわけでなくて、むしろテロ対策ですね。それは結果として海賊対策にもなっている。

 まさに、アフガニスタン、パキスタン、そのあたりはいわゆるアルカイダなんかが潜伏しているところでありますから、海上のテロもされやすいところでありますし、そして、海賊よりもテロの方が、やる方からすれば易しいというのがある面ではあるんですよ、ただ攻撃すればいいわけですから。海賊というのは、例えば船を乗っ取ったら船を処分しなければいけないという非常に困難な話でありますが、ただ相手に打撃を与えればいいというのがテロですから。

 そういう意味で、OEF・MIOが、事実上、インド洋をテロリストの自由の海にしない、そして我々にとって平和の海にする、その効果というのは大変大きい、こういうふうに思っております。

武正委員 テロリストという定義が案外まだまだ定まっていないこと、また、日本の公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律では、テロリズムに関連する規定として、航行中の船舶を沈没させ、もしくは転覆させ、またはその航行に危険を生じさせる行為などが、あるいは警察庁組織令第三十九条で、国際テロリズム対策課においての事務の所掌などが書かれている程度で、テロリスト、テロリズムの定義というものがまだまだ漠としている。

 また、今海賊について定義を述べられましたが、海賊は、国連海洋法条約第百一条において定義されていて、公海上の不法行為のことをいい、これもかなりばくっとしているということでありまして、今テロリストは除去されているんだというお話だったので、では実際何名なんですかと先ほども伺いましたし、特にアフガン、パキスタン国境は二千キロでありますので、実はこの陸上部を通じてのテロリストの移動、あるいは特に麻薬、ケシの移動というものの方が多いのではないかという指摘もあるものですから、OEF・MIOの実態、効果、検証、これについてやはりもっともっとつぶさにその成果を出していただく必要があるというふうに考えるわけでございます。

 ちなみに、今お手元のこの表でございますが、航行中、この六年間で十四件、日本関係の船舶が被害を受けております。航行中の被害十四件。航行中の被害を受けた全船舶七百八十八件のうちの十四件。うち、インドネシア沖が七件、マラッカ海峡沖が四件ということでございまして、インド洋というものは、日本船舶の海賊及び船舶に対する武装強盗事件等の被害は、航行中は、この六年間は受けていないということをお伝えさせていただきたいと思います。

 そこで、次に移らせていただきますが、テロ特措法に係る日米交換公文、一ページ目にお戻りをいただきますと、政府は盛んに、交換公文でテロ特措法の趣旨に沿って使ってくれるように言っているから信頼している、大丈夫だ、このように言うわけでありまして、実は、日米あるいは米国を入れた十一カ国と結んでいるこの交換公文というものが、この新法の審議でも、あるいは旧法と言ってもいいんでしょうか、今月末に失効する法律でも、大変大事な役割を担っているというふうに私は認識をしております。

 そこで、この二項、三項にありますが、事前の同意を求められたことがあるのか、そして三項、書面により通知されたことはあるのか、いずれもお答えをいただきたいと思います。

高村国務大臣 米国から、御指摘の米国との交換公文の二に基づく事前の同意を求められたことはありません。

 また、米国との交換公文の三に基づく書面による通知については、二〇〇一年十二月からの米国に対する協力支援活動開始に先立って、同年十一月二十八日付で、バーレーンにある我が方大使館から同地の米大使館に対して口上書を発出し、第五艦隊司令部への伝達を要請いたしました。

武正委員 つまり、これは同意を一回も求められていない、だからこそ転用、移転がないんだという二項、それから、書面によってちゃんと条件を日本政府は通知しなきゃいけないというふうに書いてあるんだけれども、一回しかやっていない。

 例えば、これは、イラク戦争が平成十五年三月二十日でありますので、その開戦の前などに、今、一回、テロ特措法が施行された直後に書面は出したけれどもそれ以後出していないということでしたが、当然、やはり外務省とすれば、イラク開戦の前に書面で、テロ特措法以外に使っちゃだめですよという念押しを、三項に書いてあるわけですから、書面でやるべきだったというふうに私は思いますが、なぜそれをやらなかったのか。口頭ではやっているやっていると言いますが、せっかく交換公文にこのことが盛り込まれているのに一回やったきりでやっていないというのは、私はやはりいかがなものかと思いますが、大臣の御所見を伺います。

高村国務大臣 一回きっちり口上書で、書面でやったら、同じことを何度も何度も、何か特別の疑いでも出てくれば別ですよ、そうでない限り、何度も何度もやる必要ないんじゃないでしょうか。

 ただ、そのかわりに、交換公文の調整の過程や、その後行われた協議の場において、米国に対してはテロ対策特措法の趣旨、補給実施の要件等について繰り返し説明し、米側としてもこれを十分に理解しているということでありますし、油を補給するときに、バーレーンにおいて海上自衛隊の連絡員が、OEF、OEF・MIOに参加する船ですねということを確かめて、これから何日間それに従事するんですかということまで確かめて、それに見合う範囲内でしか油を上げていないということまでやっているんですから、それ以上必要だとは思いません。

 特別な疑惑が出てきたときにそれを聞くとか、そういうことはまた別の話ですよ。ふだん事前にやっていく、同盟関係の信頼関係に立って、そこまでやればいいんじゃないでしょうか、と思います。

武正委員 この後触れる第四回の調整委員会、二〇〇二年十一月十二日、第五回調整委員会、ここの二回の調整委員会ではテロ特措法の趣旨の徹底などを求めていますが、第一回から第三回の日米の調整委員会ではそういった記載も、外務省作成のペーパーにはなかったわけであります。

 ですから、このテロ特措法の趣旨の徹底ということでは、特に私ども国会で問題視している、イラク開戦の前にはやはり文書で、書面により徹底を図るべきであった、これは私の指摘とさせていただきます。

 そういう意味で、この交換公文、新法でも結ばれる、そういう制度設計だと思いますが、この交換公文については、改めて、その文書の中身、あるいは検証の仕方など、大変大事な役割があるということを指摘させていただきます。

 交換公文については指摘にとどめておきますが、続いて、二〇〇六年六月二十三日に、日米相互防衛援助協定に基づく武器及び武器技術に関する交換公文が十二年半ぶりに、昨年七月二十五日、外務委員会に提出をされました。これは、いわゆる大平三原則に基づいて、国会が締結した国際条約等に関して後刻結ばれた交換公文は、重要なものは国会に提出をするということが、ようやく十二年半ぶりに提出をされたわけでありまして、私は、これについては新外務大臣にも国会への提出、報告を改めてお願いしておきたいと思います。

 その次の質問は先ほど触れておりましたので割愛をさせていただきまして、次に移らせていただきます。

 お手元の資料の三ページ目をおあけいただきたいと思いますが、二〇〇三年五月十六日、衆議院安全保障委員会、防衛庁長官答弁、五月八日、海上幕僚部が在日米軍に、内部部局が在日米大使館に確認し、米空母キティーホークへの米艦艇による補給に関するメモを受領したとありますが、お手元の仮訳というものが、リチャード・A・クリステン在京米国大使館首席公使が守屋防衛庁防衛局長にあてた手紙の仮訳ということでありますが、これがそのメモだとすると、このメモに対しての防衛庁からの照会、確認の文書が当然あるというふうに思うんですが、まずは、防衛庁長官が言った、メモを受領したというのはこの手紙のことなのか。そして、この手紙があるのならば、こちらから照会、確認の文書があるはずだが、それはあるのか。あるとすれば御提出をいただきたいと思いますが、防衛副大臣、いかがでしょうか。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 御指摘の在京米大使館公使リチャード・A・クリステンセンという、センがつくそうであります。このリチャード・A・クリステンセン氏からの守屋防衛庁防衛局長に対する文書による回答は、平成十五年の五月七日に行われておりまして、米空母キティーホークへの米艦艇による補給に関する同年五月八日のメモとは別のものでございます。

 なお、平成十五年の五月十六日の衆議院の安全保障委員会におきまして当時の石破長官からも答弁しておりますとおり、文書でこちらから確認したということではないということでございまして、本件につきまして、こちらからの照会文書は確認しておりません。

武正委員 そうすると、防衛局長あてのこの文書というのは、どういう経緯で防衛局長あてに届いたんでしょうか。

江渡副大臣 お答えします。

 どういう経緯ということで、こちらもいろいろ今調べているところでございますけれども、もしくは口頭か、あるいはいろいろな形で当時聞かれたのではないのかなと思いますけれども、今調査中でございますので、わかり次第お答えさせていただきたいと思います。

武正委員 メモとはまた別だということがわかりましたので、ぜひメモも当外務委員会に御提出をいただきたいと思いますので、いかがでしょうか。

江渡副大臣 お答えいたします。

 今、提出していただきたいということでございますけれども、当該メモにつきましては、米側との関係で、公表を前提としたものではありません。しかし、今委員の方から御要求がありましたので、この件につきましても十分検討させていただきたいと思います。

武正委員 委員会でも御協議をお願いしたいと思います。委員長の方でお願いいたします。

平沢委員長 後刻、理事会で協議いたします。

武正委員 そこで、今、こういうやりとりがあるわけなんですが、防衛省が提出された「諸論点に対する防衛省の考え方」十月二十二日付には、「二 給油量取り違え事案について」(五)、五月八日の米軍、大使館への問い合わせが、このやりとりが記載されていないんですが、その理由はなぜでしょうか。今の、クリステンセンさんからのこのやりとりが記載されていないんですが、その理由、お答えいただけますか。

江渡副大臣 その経緯等につきましては、私もきちんと把握していないので、お答えできる状況ではないわけでございますけれども、その当時においてそこまで詳しく入れる必要があったかどうかというようなこともあったのではないのかなと思いますけれども、この辺のところについても、しっかりと調べさせていただいてからお答えさせていただきたいと思います。

武正委員 この「諸論点に対する防衛省の考え方」というのは十月二十二日付で出ているわけですから、こういったところが漏れているというのは、やはりきちっとまだ調査もできていないし、あるいは、こういったものが開示されていないというのはいかがなものかというふうに言わざるを得ませんので、その点はやはり、私はつくり直しをお願いしたいというふうに思います。

 そこで、こうした米国とのやりとりについて、特に在京大使館とのやりとりなどは外務省ルートということがよく常とされておりますが、まずは、このクリステンセンさんと防衛局長とのやりとり、これに外務省は関与しているのかどうか。別途外務省が調査をしたというふうに言われていますけれども、どこにこの五月の時点で調査をかけたのか。国務省、国防総省に問い合わせをしたのか、問い合わせをした内容は何なのか。これをお答えいただけますでしょうか。

高村国務大臣 防衛庁からの問い合わせは、防衛庁から直接在京米国大使館等に行われたというふうに承知をしておりますが、それと別個に、外務省も在京米国大使館より説明を受けております。

 受けた内容は、キティーホーク司令官の発言は、キティーホークが海自から直接給油を受けたのではなく、米軍の補給艦がオマーン湾において海自から燃料を受けたことを指摘し、対テロ戦争における日本政府の支援に感謝している、そういう趣旨を述べたのであるということ、また、これまで米国は、海自から提供を受けた燃料について、テロ特措法の趣旨や目的以外に使用されたことはなく、今後も使用することはない、そういうことについて説明を受けたわけでございます。

武正委員 このときは、二十万ガロン、八十万ガロンという取り違えということも大変俎上に上っていたわけですから、私は、外務省がまず防衛庁に、入力ミスのまま二十万ガロンということで、司令官は八十万ガロンと言っているわけですから、何でこれは数字が違うんですかと、八十万ガロン米補給艦から受けたんだ、それは日本の油ですよとモフィットさんが言っているわけですから、では二十万ガロンじゃないの、八十万ガロンと違うじゃないですか、そういったことをやはり外務省は聞いてしかるべきだというふうに私は思うわけでありまして、テロ特措法の趣旨に沿っているかどうかといったことしか照会していないというのは甚だ疑念を持つわけでございます。

 そこで、ちょっと時間もあれなので、次に移らせていただきますが、お手元のこの資料をごらんいただきたいんです。

 次のページですね、四ページ。これがその取り違えの証拠だというふうに防衛省さんは言うわけなんです。入力ミスです、ペコスに八百十二キロリットル、ポール・ハミルトンに三千キロリットルですよ、こういうふうに言うわけなんですけれども、大体この表が、だれがつくったのか、いつつくったのかというのも書いていない。これをもって取り違えの証拠とされても、そうですかとはなかなか言いづらいわけなんです。

 防衛副大臣、これはいつつくったもので、全部で十二ページだと思うんですけれども、これを見ると十二分の九と書いてありますから、十二ページの中に、例えば作成者の名前とか書く欄があるのかどうか、あるいは記入日を書く欄があるのかどうか、それについてお答えいただけますでしょうか。

 いつつくったのか。そして、全十二ページには記入者名とか記入日を書く欄があるのかどうか。いかがでしょうか。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 この作成の方は、今先生の方から御指摘いただいたこの資料、十月十六日の民主党さんの外務防衛部門会議において提示させていただいたものであるわけでございますけれども、当時の海上幕僚監部防衛部運用課の担当者が、海自、海上自衛隊の補給艦による補給の実績について、パソコンソフトを使用して記載したものであるわけでございます。

 この当該資料につきましては、テロ特措法に基づく補給が開始されて以降、給油実績を示したものでありまして、この一ページについては二十件を記載させていただいておりまして、その中において、米空母キティーホークへの給油が問題となった二〇〇三年五月当時、十二ページまで入力が行われたところでして、ファイルとして保存したものであるわけでございます。このファイルは、現在残っているものの中で、米補給艦に対する補給が行われた二月二十五日の状況がわかる、その九ページ目というものがその資料でございます。

 それをお示ししたわけでございますけれども、あくまでもこのページにつかれているもの、今御指摘いただきましたけれども、総数で現在七百八十件を超えておりまして、現在四十ページ目まで記録されております。ただし、九月の二十一日にピースデポ等の関係でデータの間違いが判明したものですから、それ以降はこのデータの更新はしておりません。

 また、今御指摘ありましたように、具体的な作成者氏名というものについては記載しておりません。また、当時の海上幕僚監部防衛部運用課の担当者が作成したものであることは事実でありますけれども、いずれにしましても、二〇〇三年当時の作成者につきましては、今回の給油量の取り違え事案につきまして、現在、我が省において鋭意調査中でございますので、氏名等々につきましてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。

武正委員 記入日も書く欄もないということが今わかったわけなんですけれども、記入者名も書く欄もないということがわかったんですが、少なくとも、この十二ページの全資料、御提出をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

江渡副大臣 できるだけ速やかに提出できるように、今努力している最中でございます。でき次第、提出させていただきたいと思います。

武正委員 これも委員会への提出を求めていただきたいと思いますが、委員長、お取り計らいをお願いいたします。

平沢委員長 後刻、理事会で協議します。

武正委員 続いて、ページをめくっていただきたいんですが、これは補給艦「ときわ」の航泊日誌、上に日付が順に書いてありますので、それぞれの日の航泊日誌、これは、民主党の外務防衛部門会議に提出をされたものでございます。

 まず一枚目、五ページ目は、これは有名な二月二十五日の、ペコス、上は三千キロリットル、さっきの防衛省のでいうと八百十二キロリットル、それから下のポール・ハミルトンが八百十二キロリットル、これを取り違えたということで、米艦船も名前が出された唯一の今のところの航泊日誌でございます。

 六ページ目は、これは十五年の二月八日のものでありまして、これも予算委員会に提出をされましたが、一二〇三という、これは時間でありますが、十二時三分のところを見ていただきますと、主燃料搭載終了、三千四百六十五キロリットル、つまり、補給艦「ときわ」に三千四百六十五キロリットル補給しましたよと、ちゃんと補給量が出ております。

 続いて見ていただきますと、これは十四年十二月十六日のものでありますが、これは、洋上補給開始、〇八〇〇、〇九二五、一一一四、一四一八、いずれも全部消されておりまして、どの艦船に、しかも、どのぐらい補給したのか、全部墨で消されております。

 続いてごらんいただきますと、これはちょっと上が消えておりますが、十四年十二月二十七日のものでございまして、これは、洋上補給開始の〇七〇九、〇九一〇は墨消しですが、その後、これは、日本艦船だからでしょうか、艦船名と給油量は出ております。一〇二三の以下、「ひえい」「はるさめ」でございます。

 その次、九ページをごらんいただきますと、これは十四年十二月二十九日のものでございまして、〇八四八、主燃料搭載開始、一三五二、主燃料搭載開始、これはいずれも、主燃料を「ときわ」にどのぐらい積んだのかという、その数量が出ておりません。

 防衛大臣は、七百七十七回、悉皆調査をやっておりまして、それが判明次第、しかるべき方法で国会に対して御説明することになりますということなんですが、なぜ主燃料の搭載の量まで消したものを出されるのか、私には理解できないんですが、防衛副大臣、いかがでしょうか。

江渡副大臣 お答えいたします。

 今、主燃料の供給をなぜ隠すのかという御質問でしたけれども、今回の補給艦「ときわ」の航海日誌の開示に当たりましては、主燃料搭載に係る開始時刻、終了時刻及び搭載量については一応開示しているところでありますけれども、今回提出しておりますこの資料、主要燃料搭載に係る記載は約二十カ所ありまして、そのうちに、具体的に搭載量まで記載しているのは、委員が御指摘に出されました平成十五年の二月八日、終了時十二時〇三分という、ここの一カ所のみでありました。

 私も、まさか一カ所だけではないだろうということで、しっかり調べてくれということで、いろいろ調べさせていただきましたけれども、御提出させていただいた平成十四年十一月二十五日から平成十五年五月二十日までの間では、これ以外ありません。

 なお、この航泊日誌におきましては、主燃料の搭載量については、必ずしも記載するべきということではございませんので、たまたまこのときに書かれたということではないのかなというふうに私は判断しているところでございます。

武正委員 艦船名が墨消しで出ているのは、多分、米国への照会が必要だということなんですが、防衛大臣が全部やりますよと言っていながら、この十月十日の予算委員会でしょうか、もう二週間を経過しているんですが、出てくる資料は相変わらず艦船名が出ていないんですけれども、これはまだまだこうした傾向が続くのかなというところを大変危惧いたします。

 外務大臣、国会に対して、こうした一々の調査に、米国はいら立っているという冒頭の発言がありましたが、私どもは、こうした、どの船に給油をしたのか、これを一件だけ、ペコスとポール・ハミルトン、その一日しか公表されないということでは、やはり国会として、この六年間の検証について十分な検証ができないというふうに考えるわけなんです。

 ですから、これは特に外交ルートで、国務省あるいは国防総省ということが、防衛省が検証するについても外務省が果たしている役割が大きいというふうに聞いておりますので、やはり外務省として、艦船名をオープンにすること、これについて特段の御努力をいただきたいと思いますが、御所見を伺いたいと思います。

高村国務大臣 給油を受けた外国艦船に関する情報につきましては、関係する部隊等の安全や円滑な活動の確保に支障を来す可能性、関係国との信頼関係を損なう可能性等を考慮し、公開の可否を判断する必要があります。

 米国政府は一般的に、米国の作戦行動上の安全に係る情報について開示できない立場であると承知しておりますが、政府としては、米国の理解も得ながら、可能な限り積極的に情報を開示していきたい、こう考えております。

武正委員 ペコス、ハミルトンは公開できたわけですから、公開できないことはありませんので、やはりそこで外務省の果たす役割というのは非常に大きい。あだや、防衛省がその実態を開示したいところに外務省がそれを阻むようなことがあってはならないということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

高村国務大臣 私自身、ライス国務長官に、情報開示が必要である、米国内で情報公開法に基づいて公開しているようなことを日本国政府に教えられないなんということはあってはならないことだということを直接申し入れまして、そして、もうそういうことはないようにする、できるだけ日本政府に知らせるという了解は得てきたところでございます。

 ただ、抽象的に得たことと、具体的に本当にどれだけ返ってくるかというのは、またこれから相当の努力が必要だ、そういう努力はしていきたい、こう思っています。

武正委員 日本の航泊日誌ですから、主体的に御公開をお願いいたします。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、松原仁君。

松原委員 遺棄化学兵器の問題は今大変に大きな問題、従来からなっていたわけでありますが、日本国内におけるこの問題について幾つかお伺いをしたいと思っております。

 福岡県の苅田港から化学弾発見がされたわけでありますが、このことについての調査というのは、これはどこの会社が行ったでしょうか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 苅田港で発見されました化学弾の無害化処理事業につきましては、神戸製鋼と契約をしております。最初は一般競争入札契約によりまして平成十五年十一月に、そして二期目は随意契約によりまして平成十六年十二月に契約を締結しております。

松原委員 これは、一般競争入札で最初入札するときに、どれぐらいの値段が適正かということを、事前に何かの調査をしないで、これは最初は防衛省ですか、これがこのぐらいだというふうなイメージを持たれたんですか、それとも、どこかに調査をさせて、それで、まあ大体これぐらいだろうというイメージの中で競争入札をさせたのか、お伺いしたい。

長岡政府参考人 予定価格を算定する場合でございますけれども、私どもは、業者さんから見積もりを出していただきまして、それから、そのほか市場価格等も参考にしながら、当省におきまして担当のところで積算をしたということでございます。

松原委員 すると、この積算根拠というのは、業者から出てきた見積もりとかそういうのを見ながら積算根拠を算定したということですか。

長岡政府参考人 そういうことを参考にさせていただきました。それから、平成七年度から十二年度にかけまして、北海道の屈斜路湖において化学弾が発見されまして、これを処理した実例もございますので、そういうことも参考にさせていただきました。

松原委員 ちょうど話題が屈斜路湖の問題に飛んだので、この屈斜路湖においてはどういうふうな受注と経緯があったか御説明をいただきたい。

須江政府参考人 お答えさせていただきます。

 平成八年五月に屈斜路湖で発見されました旧軍の化学弾の処理に関しましては、内閣官房で関係省庁による連絡会議を開催し、関係省庁連携のもと、化学兵器禁止条約に基づき、当時の総理府が中心となって廃棄を行ったところでございます。当該化学弾の無害化の処理につきましては、当時の総理府が平成十二年九月から同年十一月にかけて行ったと承知しております。

 平成十三年の中央省庁の再編によって、当該廃棄処理の決算事務を総務省が引き継ぎまして、決算事務処理を行っておりますが、お尋ねの本件受注の経緯等に関しましては、現在関係書類を調査中ですので、まことに恐縮でございますが、この場でお答えすることはできないことを御理解いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

松原委員 私が知る範囲では、化学弾が二十六発引き揚げられた、約八億円前後でこれが受注された。このことはおおむね合っていますでしょうか。

須江政府参考人 さようでございます。

松原委員 この破砕処理といいますか、無害化処理のための施設をつくるための経費も必要ですが、単純に八億円を二十六発で割ると一発三千万ぐらい、こういうことになると思います。今資料がないというお話でしたが、私は、実はこの最初の段階で、大体、費用の値ごろ感というのが与えられたのではないかと率直な印象を持っております。

 したがって、今すぐにはこの資料を出せないということでありますが、早い段階で何とか資料を見つけてもらって、どのような積算根拠によって二十六発の化学弾の屈斜路湖における処理が八億円で行われたのか、そのベースとなる積算根拠を出していただきたいと思いますが、よろしいですか。

須江政府参考人 お答え申し上げます。

 中央省庁再編をまたいでおりまして、書類が今どこにあるかを確認しておりますので、見つかりましたら適切に処理させていただきます。

松原委員 今、政治というのは、我々政治家も一円単位からということでやっておりまして、これはもちろん、公的なものにかかわるものはすべてそうであろうと思っております。国の無駄遣いも、年金を初めとして、これはもう厳しく一円から見ていこうじゃないかというのが時代の趨勢ですし、まして一発三千万。一発というのは、これはどれぐらいの大きさなのか、ちょっと専門家の方にそこで身ぶりでやってもらいたいんだけれども、だれか身ぶりでできる人はいますか。だれも見たことないの、実物。

 大臣は見たことありますか。黄弾とか赤弾とか、実物。これぐらいのイメージだとか、ちょっと手を広げてください。

高村国務大臣 見たことはございません。

松原委員 めちゃくちゃな、中国に至っては百六十億、七十億かけているんだから、物がどんな大きさなのか。例えば、これぐらいのものの一発の処理に三千万というと、電気洗濯機だってこれぐらいだったらそんな三千万もしないわけだから、三千万するというのはとんでもないことなんだよ、それを一発処理するのに。

 だから、これは、やはり国民の立場に立ったらば、きちっと積算根拠を出してほしい。もう一回、確認します。

須江政府参考人 現在、資料を確認中ですので、見つかりましたら適切に対応させていただきます。

松原委員 それでは、また質問を最初のラインに戻しますが、神戸製鋼が競争入札をしたときは、何社入札しましたか。入札した会社の名前を教えてください。

長岡政府参考人 お尋ねは、無害化処理事業についてだと思います。

 平成十五年度に一般競争を行いまして、株式会社神戸製鋼所、JFEエンジニアリング株式会社の二社が応札をいたしております。

松原委員 二回目からは随意契約になった、その経緯を教えてください。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 化学弾の無害化処理というものは地域住民の安全、安心にかかわりますので、化学弾による被害を未然に防止するため、可能な限り早期に処理を実施する必要があるところでございます。

 そして、先ほど申し上げましたとおり、第一期は平成十五年十一月に契約をいたしましたけれども、第二期に当たってどうするかということでございますけれども、第一期に処理施設をつくっておりまして、それを引き続き使用して早期に処理を行うという必要がございました。この処理施設をほかの社が譲り受けて使うということはできないということでございましたので、できるだけ早く処理をするということで、神戸製鋼所との間で随意契約を実施したという経緯がございます。

松原委員 必要処理施設を神戸製鋼が所有していた。建設をするときの費用等はどういう形で捻出されているか。時間も短いので、簡潔にお答えください。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 最初に神戸製鋼が実施いたしましたときに、役務の内容でございますけれども、化学弾の海中からの揚収と輸送、それから処理のための保管処理施設の建設、化学弾の一時保管と処理ということで見積もられておりまして、この中にそういった経費も含まれてございます。

松原委員 その契約のあり方も、ちょっと私はいろいろと疑問を感ずるところもあるのですが、時間の都合があるので、ちょっと確認します。

 そうすると、屈斜路湖の件に関しては、積算根拠はもう文書がない、苅田港のものに関しては、積算根拠は、応札された例えば神戸製鋼とか、そういったところの資料によって積算根拠を正しいとしたという認識でよろしいんですか。

長岡政府参考人 業者さんから見積書の提出は受けますけれども、それをうのみにするというわけではございませんので、市場価格、それから、当省におきましてその担当官が査定を加えて積算をいたしております。

松原委員 市場価格というのは、具体的にどういうことですか。

長岡政府参考人 一般的な言葉を使わせていただきましたけれども、例えば、施設整備とかそういうものもございますので、そういったことについてはそういった市場価格はあろうかと思っております。

松原委員 それならば問いますが、例えば、苅田港の場合は、第一期は平成十六年、第二期は十七年で、五十七発が最初は二十一億三千九百八十五万円余なんですよ。それで、五百三十八発処理した第二期、十七年が五十六億四千七百三十六万なんですよ。第二期に関しては、既に基本的に施設はできていますから、施設の中でも、例えば爆破処理をするとか、さまざまな処理のことによって常に変えていかなきゃいけない部分もあろうかと思いますが、基本的に、これを計算すると、施設が幾らかというのは大体数学でわかるわけですよ。

 それで、さらにそれが国土交通省に移管された後のデータを言いますと、これは無害化処理業務で六百五十九発が平成十八年、これが六十九億七千三百万。十九年は七百発、これが六十八億七千七百五十万というふうなことでありまして、大体、約一発一千万ですね、簡単に言うと。屈斜路湖のときは単純計算すると三千万だけれども、その後は一発一千万。一発一千万ということで基本的に認識しておりますが、いかがですか。

高見澤政府参考人 お答え申し上げます。

 化学弾の処理につきまして、単純にいろいろな条件の違いを無視して計算するということはできないかと思いますけれども、防衛庁が処理しました分について申し上げれば、単純計算をいたしますと、大体一発千三百円程度になるというふうに承知をしております。(松原委員「一千三百万」と呼ぶ)一千三百万でございます。

松原委員 これは通年で、平成何年に何発処理して幾らと出てきているんだから、大体、一発一千万強なんだね、一千三百万という話も今あったけれども。

 そうすると、この一千三百万が妥当であるという積算根拠というのがどこかになきゃいけないんだ。建物があるとか、あれがあるこれがあるという議論はあるけれども、一千万を超えるのが積算根拠としてあるような資料を出していただきたい。ちょっと時間がないので、きょうはこれは、時間があればまだやりますが、そういうことです。一千三百万というのが非常に高いんです。

 そういう中で、いわゆる苅田の場合の調査研究費、これは幾らかかっていますか、いろいろな費目があるかもしれませんが。急いで答えてください。

長岡政府参考人 調査委託研究でございますが、平成十四年度でございまして、契約額は九百万円でございます。

松原委員 それを受注したというか、その調査をしたのは日米文化振興会安全保障研究所でよろしいですか。

長岡政府参考人 さようでございます。

松原委員 調査の内容に関して、簡略に教えてください。

 例えば、それに関して積算というものも行われたのかどうか、積算根拠というものもあるのかどうか、お伺いしたい。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 報告書の概要につきまして簡単に申し上げます。

 まず一つは、処理技術は、本件に適した安全確実な処理方法は爆破、燃焼法であるということ。それから、二点目でございますけれども、環境保全、作業環境につきましては、一定の立入禁止区域等を設けること。三点目でございますが、処理場所は、浮体構造物、メガフロートの利用は必ずしも適当ではなく、既存の護岸等を活用し、海上に桟橋的な構造物を建設することが現実的であること。

 以上でございます。

長岡政府参考人 予定価格の算定でございますけれども、これにつきましても、業者さんから見積書を出していただきまして、それを参考にさせていただきまして、当方で積算をいたしました。

松原委員 かなり大きな額で、一発一千三百万とかいう話になってきますから、この積算根拠に関して、軍事上の機密があるというなら別ですが、私は、中国でも今後またいろいろな形で行うわけですから、積算根拠を示していただきたいと思います。

 それで、内閣府遺棄化学兵器担当室は来ていますか。内閣府遺棄化学兵器の方は、調査研究はどこに委託しましたか。

西政府参考人 お答え申し上げます。

 内閣府の方、遺棄化学兵器の処理に関する調査研究に関しましては、平成十五年まで各種行っております。

 その際の調査研究に関しましては、国際問題研究所等いろいろな機関に出しておりますし、また、その内容に関しましても、単に処理だけでなく、埋設砲弾の発掘、回収の技術、また、処理に際しての化学剤の分析そのほか、多岐にわたるものが支出されております。

 以上でございます。

松原委員 内閣府の遺棄化学兵器処理担当室からペーパーをもらっているんですよ。「調査研究等にかかる経費の内訳」。トータルで百五十七億二千七百万円でありますが、これは全部、分析とか構想とか計画とか評価とか調査とか。調査というのは、例えば爆発リスク調査、もしくは混合調査、例えばピクリン酸基礎実証実験等とかいうのがあるんですが、探査はこの百五十七億の中に入っているんですか。確認します。

西政府参考人 ただいま先生お尋ねの件が、中国の現地における探査か、こういうことでございますでしょうか。そうしますと、ちょっと記録をもう一度確認させていただきますが、そういった経費は基本的に入っておらなかったものと思っております。

松原委員 簡単に言うと、防衛庁の方の福岡県苅田港のものについては九百万で調査研究が行われている。九百万ですよ。九百万で調査研究が行われていて、確かに探査というものは、例えば神戸製鋼が別にやっているわけですよ。例えば探査試験とかも別にやっていますが、しかし、基本的にはこの探査試験で、実証試験なんかは例えばこれは千六百五十八万四千円ですから、金額的に。

 そうすると、探査というもので、例えばこの神戸製鋼は、二億九千二百九十五万円とか十七億八千三十八万円とか、探査なんです。探査というのは、これはそれなりにお金がかかると思うんですよ、時間もかかるし。こちらの国問研に出した方の、そういったところを中心にして出した方の調査は、探査が入っていない調査で百五十七億二千七百万円。

 片っ方は九百万という答えでありますが、九百万に若干入れたとして、これは千六百五十八万を入れても二千五百万ですよ。百五十七億二千七百万、片っ方はベース九百万ですからね。いかに何でも、これは説明がつかないと思う。

 そこで、きょうは時間がないので後日に回すかもしれないけれども、これは十二年度、十三年度、十四年度、十五年度、もらいました。それぞれの、例えば十二年度は十億九千九百万、それから十三年度が三十八億九千七百万。個別の項目が、廃棄処理基本何とか計画とか、要は、基本的に計画とか実験とか、こういうものだけなんだよ。何でこんなにかかっているんだ。個別の中身を教えてほしい。

 とりあえず、いいですよ、一回答弁。

西政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど先生の方にも資料をお届けさせていただきました。そこにもありますように、先生今おっしゃるように、探査の部分は入りませんが、これがハルバ嶺の山中に埋まっておる。その山中に埋まっておるものを合理的に掘り出すための機械設備をどうつくるか、そういった実証実験から始まっております。その発掘、回収、爆破、その後の後処理、すべてが入って、今先生御指摘のこの金額になっております。

 また後ほど、その一々、どのような実験を行ったのかについては御報告させていただきますが、単に爆破処理の部分に限らず、発掘から始まる一連の中国におきます遺棄化学兵器処理に関するすべての技術に関し、かつ、単に書面上ではなく、現実にパイロットプラントを設けて研究する、そういったこともございますし、さらに申し上げれば、当初この事業が起こりましたときには、ピクリン酸塩の過敏反応そのほか、全く未知の分野がございました。そういったところにも相当程度、私ども意を用いて作業したような次第でございます。

 いずれ改めまして、きちんと先生のところに参上させていただきたいとは思っておりますが、そういった多岐にわたる研究分野であるということだけ御承知いただければと思います。

松原委員 はっきり言ってべらぼうですよ、この数字。まじめな顔をしてお答えになるけれども、べらぼうな数字で、探査をしていないんですよ。僕は最初、これは中国全土の探査は入っていると思ったんだ。それでも高いなと思ったけれども、探査が入っていないんですよ。すべて、本物をつくるための調査ですよ、実験調査であり何とか調査であり。具体的な掘るものをつくって云々じゃなくて、その調査ですよ。それが百五十七億ですよ。防衛省がやっている方は、これは確かに、逆に言えば実験が若干抜けたりはするけれども、九百万ですよ。実験を入れて二千五百万。これは実験を入れて百五十七億。中国の方が日本より物価が全然高いのかもしれないけれども、百倍ぐらい中国の方が日本より物価が高かったらこういうこともあり得るかもしれないけれども、高いわけないでしょう。

 私は、この一つ一つの内容を、きょうは時間がないからもうこれ以上詰めていけないけれども、これをもらったときに目が丸くなったんだ。点になると言うのかな、日本語だと。おかしい、こんなことで何で百五十七億なんだと。一つ一つじっくりとチェックをさせてもらいたい。

 こういうことに関して、大臣、最後に一言お伺いしますが、こういう極めてアバウトな、探査も入っていないんですよ、百五十七億、調査費だけですけれども、これはどう考えたっておかしいですよ。さっき言った一発一千万の根拠も、これはなかなか出てこない。では、中国は、一発一千万だったら、四十万発だったら四兆円になるのか、こういう話でしょう。

 これ全体に関して、大臣、こういう議論を聞いていて、御所見をお伺いしたい。

高村国務大臣 はっきり申し上げて、よくわからなかったというのが率直なところでございますが、委員の指摘を踏まえて、政府側はしっかりやらなければいけないな、こういうふうに考えております。

松原委員 よくわからなかったと。わかるように言ったつもりなんだけれども。わかるつもりじゃなきゃだめなんですよ。これは中国と日本との間の話で、もっとでかい話になってきているわけだから、まず積算根拠だって明らかにしてもらわなきゃいけないし、誠心誠意、やはり国民の血税を無駄にしないという観点から、大臣にも汗を流していただきたい。

高村国務大臣 誠心誠意、国民の血税を無駄にしないという観点から、私を含めて、政府側全員、しっかりやってもらいたい、こういうふうに思います。

松原委員 終わります。

平沢委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 高村大臣とは、かつて小渕内閣外務大臣のときに、九八年と九九年だと思うんですけれども、私、参議院の予算委員会などでも質疑をさせていただきましたが、久々ということになります。

 大臣は、十月十九日の当委員会の大臣あいさつの中で、国際社会では今この瞬間もテロとの闘いは続いているというふうに述べられました。卑劣なテロを世界から根絶しなければならない、これが国際社会と日本国民の強い総意であることは言うまでもないことであります。

 問題は、テロ勢力を追い詰めて、厳格な審判を下して、世界からテロを根絶するという目的を達成する上で、国際社会がどのような手段をとるべきか、そして、どのような手段が有効であり、また法と道理にかなっているかという問題、ここが一番本当に難しいし、大事な問題だと思っております。

 そこで、まず、国連総会は、昨年、二〇〇六年九月八日に、国連として初めての包括的対テロ戦略である地球規模の対テロリズム戦略と題する決議をコンセンサスで採択いたしました。これは、テロ行為を計画、準備、実行、支援する者を引き渡し、起訴することを原則として、彼らを捜し出し、避難所を与えず、法の裁きを与えるために、国際法のもとでの義務に従って全面的に協力することを国際社会の総意としてうたっているわけであります。さらに、すべての国がこうした能力を高めることこそ世界的なテロ対策の取り組みの核心的要素というふうに位置づけをしております。

 そこで、高村大臣に伺いますが、日本政府もこの決議に当然賛成したわけですけれども、この国連の昨年の決議をどのように政府としては評価をされているでしょうか。

    〔委員長退席、山中委員長代理着席〕

高村国務大臣 テロは、国際社会の平和と安全に対する深刻な脅威であります。テロ問題は一層複雑化し、息の長い取り組みを求められる課題となっているわけでありますが、以前にも増してテロ対策の強化と国際協力が必要とされていると思います。

 こうした中、二〇〇六年九月に、国連総会におきまして、国連グローバル・テロ対策戦略に関する決議が採択されて、現在、国連加盟国は、同決議の実施に取り組んでいます。

 この決議は、あらゆる形態のテロリズムを非難し、テロ防止関連条約の締結、包括テロ防止条約交渉の早期妥結並びに国際テロ撲滅措置に関するすべての総会決議及び安保理決議の履行に努めること等を内容としているわけであります。

 我が国といたしましては、本年九月の国連総会における一般討論演説におきましても私が明確に申し上げたとおり、本決議を支持しているわけであります。我が国としては、国連によるさまざまなテロ対策に協力してきたところでありますが、今後とも、本決議の実施に貢献し、テロ対策の強化に引き続き積極的に取り組んでまいりたいと思います。

笠井委員 外務省に伺いますが、国連安保理のもとに国連テロ対策委員会というのが設置をされております。来週十月二十九日から、ケニアのナイロビで第五回特別会合が開かれる。

 この委員会は、各国のテロ対策能力を向上させるセンターとしての活動を進めて、安保理決議一三七三で各国にはテロ対策の取り組みの報告の提出が義務づけられて、その審査に基づいて各国の能力構築が進められております。アルカイダなどのテロ容疑者については氏名リストが公表され、資産凍結や出入国禁止、武器関連物資の禁輸の対象として国際的に包囲する仕組みがつくられているわけであります。

 この委員会に対して、国連加盟国百九十二カ国のうち何カ国が合計何回の報告を提出しているでしょうか。そのうち、日本政府としては、何回、どういう報告を提出して、取り組みを政府としてどう評価しているか、簡潔に御答弁願います。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇〇一年九月二十八日に採択されました安保理決議第一三七三号、これは、金融面を含む包括的な措置を各国がとるということを決めているわけでございます。この決議のもとで安保理テロ対策委員会、CTCというものが設置をされたわけでございます。各国はそれぞれ、この決議の履行のために実施した措置をこの委員会に報告するということになっているわけでございます。

 しからば、この委員会に対して何カ国が報告をしたかということでございますが、私どもの承知している限り、二〇〇六年六月に国連に新規加盟したばかりのモンテネグロを除いて、すべての国連加盟国がこれまでに少なくとも一回は提出をしておるということでございます。ちなみに、その数は、国連に実は加盟をしておりません地域であるクック諸島も本件報告書を自発的に提出しているということでございますので、数字的には、同地域を入れて百九十二の国または地域が報告書を提出しているということでございます。

 その国連加盟国等から提出された報告書の総数は、六百九十七件だというふうに承知をしております。

 我が国は、これまで報告書を五件提出して、外国為替及び外国貿易法によります資産凍結措置の実施であるとか、テロ防止関連条約の締結等について報告をしております。なお、ちなみに、二〇〇一年十二月に第一回目の報告をしているわけでございますが、そこにおきましては、テロ特措法が国会で可決されたというようなことも言及をしているわけでございます。

 なお、報告書の提出回数そのものがテロ対策への取り組みの度合いをはかるということではありませんけれども、最も報告件数が多い国で六回ということでございまして、そういう意味では、我が国が五回出しているということで、提出回数的に見れば相対的に多いというふうに考えております。

    〔山中委員長代理退席、委員長着席〕

笠井委員 高村大臣、このように、国際テロを全体として国連のもとで法による裁きにかけていく、そしてやはり、テロを犯罪として徹底的になくしていくということで一致した努力がされている。その中で、日本の活動も当然、これは国際的なテロリズムの防止及び根絶の活動である、テロをなくすための日本の貢献の重要な内容だということでは間違いないわけですね、こういうことも。

高村国務大臣 一人一人テロリストを追い詰めて法の裁きにかけられれば一番いいんだろうと思いますが、かつてのアフガニスタンのタリバン政権のように、まさにアルカイダに聖域を提供していて、だれも裁きをかけられないような状況になっていたときは、やはりそれに対してやらなければいけないということはあったんだろうと思いますが、そういうことも含めて、全体的に委員のお考えに反対するものではございません。

笠井委員 福田総理は、海上阻止活動をやめれば我が国がテロとの闘いで消極姿勢であると受けとめられるということも言われたり、政府はあたかも、あれをやめちゃうとテロとの闘いをすべて放棄するかのような答弁も繰り返しされているわけですけれども、そんなことはないということであります。すべての国の協力で国際テロを法の裁きというものにかける、国連、とにかく百九十二カ国すべてというわけですから、そういう取り組みをさらに進めて、やはりテロリストの逃げ場は世界のどこにもないという状況をつくるという重要性と可能性を本当に追求すべきだということだと思います。

 次に、アフガニスタンの治安情勢について伺いたいんですが、外務省は、去る七月二十五日に、アフガニスタン全土から避難勧告を発出いたしました。私自身、二〇〇一年の秋に、報復戦争が始まって直後ですけれども、国境付近まで行きまして、難民キャンプでいろいろと実態を目の当たりにした経験がございます。当時、全土から避難勧告を出すということがありました。その後、カルザイ政権が発足して、二〇〇二年春には解除して以来、初めて今度また全土に発出するという状況だったわけですが、大臣、なぜそうせざるを得ないほどアフガンの治安は今、不安定、懸念すべき状況を強めているのか、その要因についてどのようにお考えでしょうか。

高村国務大臣 要因を申し上げる前に、テロリストの逃げ場はこの地球上にどこにもないようにするべきだ、こうおっしゃいましたけれども、まさにそうだと思うんです。

 それで、重ねて申しますが、タリバン政権のときのアフガニスタンはまさにテロリストの逃げ場で、そこには主権国家としてどうしようもなかったわけであります。今でも、アフガニスタンの南部、東部、南東部、そういったところはまさにテロリストの逃げ場になっているという客観的事実があるということも申し上げておかなければいけないと思います。

 アフガニスタンの治安情勢は不安定の度合いを強めており、今後の見通しは楽観できない状況にありますが、この原因につきまして、本年九月付国連事務総長報告は、アフガニスタン情勢の悪化の原因に関し、政府や政治指導者に対するアフガニスタン国民からの信頼が、ふえ続ける汚職と脆弱な統治のため、特に地方において不安定であること、タリバン及び関連の反乱グループが完全な治安の確立を阻み続けていること、自爆攻撃、待ち伏せ攻撃及び直接攻撃が大胆さ及び頻度を増していることを挙げております。

 このようなことが原因と思われますが、一方で、国軍、警察、経済成長、教育、保健、道路建設及び地方開発等で、アフガニスタンには前向きな動きもあると認識をしております。アフガニスタンが再びテロの温床とならないようにするためには、人道復興支援と治安・テロ対策の双方に取り組むことが必要だ、私は双方が必要だと、そこが委員とちょっと違うところかと思います。

笠井委員 本会議でも総理も、両面で、人道復興支援と治安・テロ対策でやるということで繰り返し言われているわけですが、にもかかわらず、治安は悪化の一途をたどっている。

 今、大臣、タリバン政権のもとでアルカイダがこうなってということで、結局戦争でやったという話もありましたけれども、しかし、テロに対して戦争をしかけて、しかも、掃討作戦を続けること自体が、それがよかったのかどうかということがまさに今問われているわけであります。

 長年、アフガニスタン人道支援活動に取り組んでいる日本国際ボランティアセンター、JVCというのがございますが、十月十二日に、アフガニスタンにおける対テロ戦争と日本の軍事支援の見直しを求める声明というのを出しました。大臣もごらんになっているというふうに思うんですが、ごらんになっていませんか。ぜひごらんいただきたいんですが、この中で、「対テロ戦争はアフガニスタンに平和も安定ももたらしてはいません。「テロリスト掃討」と称する対テロ戦争による民間人の犠牲者は後を絶たず、アフガニスタン人の間にこの戦争に対する疑念と反発が高まっています。」「戦争の泥沼化に拍車をかけて」「NGOや国連など援助機関による人道復興支援の実施を困難なものにしています。」と厳しく指摘をしているわけであります。

 大臣は、あのアフガニスタンに対する報復戦争、そして、今も続いている掃討作戦というのが、少なくともアフガニスタンの情勢悪化の要因の一つにはなっているというふうにお考えかどうか。それとも、あれは情勢をよくするためのものだ、悪化のことには全然関係ないんだと思っていらっしゃるか、どっちでしょうか。

高村国務大臣 日本の改革に光の面と影の部分があるのと同じように、光の面と影の部分があると思います。

 治安とかあるいは麻薬対策、そういった面については非常に悪戦苦闘しているといいますか、余りうまくいっていない面も現実にありますが、経済成長もここ数年平均一〇%ぐらいの経済成長をしていますし、教育を受ける人たちもたくさんふえていますし、初等教育、例えば女性は、初等教育は一切受けていなかった人が、三割を超える人たちが受けるようになったとか、暗い面だけに焦点を当てると暗い面だけ見えますけれども、明るい面もあるわけで、今、国際社会が全体として、民生復興、人道支援をやると同時に、テロに対する直接の対策、治安対策もやっていく、車の両輪でやっていくことが必要だ、こういうふうに考えております。

笠井委員 大臣、光と影と言われましたが、まさに今、影の部分が大きな影として、しかも、影どころじゃなくて泥沼化の状況をつくり出しているという大問題になっているわけです。

 だから、去る九月二十三日に、国連本部でも、潘基文事務総長とカルザイ大統領が共同会見をやりました。国連のホームページにも出ています。カルザイ大統領自身も紹介しておりますけれども、この間アフガニスタンでは平和と和解のプロセスが進んでいるんだと。タリバンを含む反政府勢力との交渉を始めようとする動きが、あの会見を読んでも、具体的にそういう努力をしているということが出てきている。それなしには、本当にこれは先がないんだということであります。

 潘基文事務総長も、アフガニスタンの国内和解のための包括的な政治的対話の促進への努力を呼びかけているわけでありまして、外務大臣はいろいろ影とか光とかおっしゃいますが、こうした彼ら自身が取り組もうとしている平和と和解のプロセスを促進するために、日本政府はどのような協力、支援をやろうとしているのか。これまでいろいろあったということはあるでしょうが、今から、これからどうしようと思っているのか、その点、端的に、いかがでしょうか。

高村国務大臣 今までやってきた分はいいんですか。(笠井委員「いや、これまではいいですから、これからの方を」と呼ぶ)

 もちろん何らかの意味の和解ということはあり得ると思うんですが、それは、タリバンの中でも、すべてがアルカイダと一体で、すべてがビンラディンみたいな人ばかりではないということは、そのとおりだと思うわけでありまして、ある意味で将来的な国民的和解というのが必要なことは、それは事実だと思いますが、一方で、やはりビンラディンと和解するというのはなかなかあり得ない話なのではないかな、こういう感じもいたしますし、そういう中で、そういう人たちは排除するということについては、それなりの力も必要である、こういうふうに思います。

 ことし八月、カブールにおいてアフガニスタンとパキスタンの関係者が一堂に会して、いわゆる和平ジルガを開催して、テロ撲滅の重要性について確認したのは、私は有意義だったと思うんです、まさに多くのテロリストがそこにいる地域でありますから。

 我が国としても、今後、アフガニスタンとパキスタン両国政府に、さまざまな機会をとらえて協力関係を強化していきたいと思いますが、そういう中で、ある種の、将来何らかの和解ということは、それは考え得ることだし、そういう機運ができれば私たちも支援していきたい、こう思っています。

笠井委員 時間になりましたので終わりますが、私も何もビンラディンと和解しろなんという話をしているわけじゃないし、現地でも、カルザイ大統領自身が、ここで、記者会見で言っています。我々は既に、アルカイダの一部ではなく、テロリストネットワークの一部でないタリバン、そのようなものが実際には多数なのだが、私の言っているようなタリバンとの間で、平和と和解のプロセスを通じて接触を行っているんだということを言っているのでありまして、ところが、一方では、タリバン掃討作戦を米軍などがやっているという現実があるということで、これは余りに今の努力と違うことで、そういうものを支援するということになると、これは日本の役割が問われるという問題を私は申し上げたいと思います。

 この続きはテロ特でもさせていただくということで、きょうは終わります。

平沢委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社会民主党の照屋寛徳です。

 高村外務大臣は、就任あいさつの中で、日米同盟が我が国外交のかなめであり、その強化を図ると述べました。一方で、沖縄を初めとする地元負担の軽減と在日米軍再編を着実に進めるとの決意を表明しました。

 私は、当委員会で再三再四、在日米軍再編の実態は、沖縄の基地負担の軽減にはならず、むしろ在日米軍基地機能の強化と負担増が進んでいると非難してまいりました。

 外務大臣は、日米両政府間で合意されたロードマップに基づいて、普天間飛行場の代替施設建設は現段階で工程表どおり順調に進んでいるとの認識でしょうか。お答えください。

高村国務大臣 普天間飛行場の移設、返還は、海兵隊司令部要員等のグアム移転とともに、沖縄の負担を軽減するものであり、ぜひ実現する必要があると考えているわけでありますが、日米両政府は、二〇一四年までに普天間飛行場の代替施設を完成させることで合意しており、このための環境影響評価を適切に行う必要があることから、本年八月七日に、防衛省より、沖縄県等に対する方法書を送付しました。また、その後、公告縦覧の手続を経て、十月二十二日に、防衛省より沖縄県等に対し、方法書に対する住民等意見の概要が送付されたものと承知をしております。

 政府としては、引き続き、地元の声によく耳を傾け、関係省庁と連携しつつ、普天間飛行場の早期移設、返還を着実に実現してまいりたいと考えておりますが、それほど順調だ、順風満帆だとも考えておりませんが、何とかうまくやりたい、こう考えております。

照屋委員 大臣も私も弁護士ですから、質問にはなるべくずばりお答えいただきたいと思います。

 日米両政府が合意した辺野古沿岸V字型滑走路案に対して、沖縄県や名護市は反対を表明し、沖合への移動を求めております。もちろん、私は、狭い沖縄県内へのいかなる新基地建設にも反対の立場であります。

 外務大臣は、沖縄県や名護市の要求をどのように受けとめておられますか。お答えください。

高村国務大臣 現在の政府案、いわゆるV字案でありますが、これは実行可能性を伴いつつ生活環境や自然環境に配慮したものであり、さらに、地元の名護市、宜野座村からの要請を踏まえ、昨年五月のロードマップで米側と合意したものでございます。

 このように、現在の政府案は、さまざまな観点から分析した上で最も適切な形として決定したものでありますから、合理的な理由がなくて変更することは困難であると考えております。

 今後、環境影響評価の手続を進める中で客観的なデータを収集して、その結果を、沖縄県を初めとした地元に丁寧に説明していくことが重要だ、こういうふうに考えております。

照屋委員 米軍嘉手納基地の機能強化が進んでおります。軍用機の未明離陸で暴露される殺人的爆音で周辺住民は苦しめられ、パラシュート降下訓練、それから有事を想定した即応訓練の強行実施で住民は不安におののいております。

 私の本会議における代表質問に対し、福田総理は、未明離陸による爆音被害を深刻であると受けとめ、米側に対し、騒音規制措置に関する合意を遵守し、可能な限り早朝離陸を回避するよう働きかけてまいりますと答弁されました。

 高村大臣、外務省としてアメリカ側に対してどのような具体的働きかけを行ったのか、また行おうとしているのか、明確にお答えください。

高村国務大臣 米軍機の早朝離陸に係る騒音問題につきましては、先日福田総理が答弁されたとおり、飛行場周辺の住民の方々にとって大変深刻な問題であると認識をしております。このため、できるだけ早朝離陸が行われないよう、米側に働きかけを行っているところであります。

 米側とのやりとりの詳細を明らかにすることはできませんけれども、運用の調整により、できるだけ早期離陸の回数を減らしたり、また、早期離陸の実施がやむを得ない場合でも、可能な限り周辺住民の方々への影響が最小限となるように配慮するよう、米側に働きかけております。

 政府としては、引き続き、米側との協議を通じ、早朝離陸による地元に与える影響を最小限にとどめるよう働きかけていきたいと考えております。

照屋委員 普天間飛行場の辺野古沿岸部への移設が、単なる移設ではなくて、在沖米軍基地の機能強化であることが判明しました。沖縄防衛局の鎌田局長は、昨日の定例記者懇談会で、米軍が普天間飛行場代替施設に戦闘機装弾場を建設することを認めました。

 防衛省に尋ねます。戦闘機装弾場建設は事実か、端的にお答えください。

金澤政府参考人 今、先生は戦闘機装弾場とおっしゃいましたけれども、日米合意のロードマップにも明らかにされているとおり、この辺野古の代替施設には米軍は戦闘機を運用することはございませんので、戦闘機装弾場というものはつくられることはございません。

 ただ、この飛行場には、ほとんどがヘリコプターでございますけれども、一部固定翼でございますが、主としてヘリコプターに弾薬を装着する場所というのはつくる考えでございます。このことは、五月一日のロードマップの図面にも明らかにしておりますし、その旨、名護市などにも御説明しているところでございます。

照屋委員 では、辺野古に新たにつくる装弾場の規模と機能について答えてください。

金澤政府参考人 弾薬を装着する場所、弾薬装着エリアと申しますか、これをつくることは日米で共通の認識でございます。

 今、この施設の詳細な設計等を詰めておる最中でございまして、具体的な仕様というものはまだ申せませんが、ロードマップにも添付されています地図におきまして、海側といいますか、南側といいますか、そこに突起が書いてございますけれども、それがそのことでございます。

照屋委員 けさの沖縄タイムス、琉球新報ともに、鎌田局長の記者会見を受けて、いずれも、戦闘機弾薬、要するに、装弾場、こう言っているんですよ。これは間違いなんですか。

金澤政府参考人 報道で戦闘機装弾場と書いてあるのは誤りでございます。正しくは弾薬搭載エリアともいうべきエリアでございます。

照屋委員 では、鎌田局長の説明も間違えたんだな。

 では、もう一点聞くけれども、アメリカの公文書を私も見ましたが、普天間代替施設に二百十四メートルの大型岸壁建設をアメリカが日本政府に要求した、これは事実か。その要求に対して、日本政府は合意したのか、合意を拒否したのか、国民に隠しているのか。明確に答えてちょうだい。

金澤政府参考人 普天間代替施設は飛行場でございますので、当然燃料が必要でございます。そのための、燃料受け入れのための桟橋といいますか、その施設は必要でございまして、これをつくることは日米で合意しております。

 ただ、一部報道にありますように、これが人員とか物品の恒常的な出し入れを可能とするような、いわゆる軍港といったようなものをつくる考えはございません。

照屋委員 どの規模の、具体的に何メートルの岸壁をつくるんですか。どう合意したの。はっきり国民に説明しなさいよ。

金澤政府参考人 この油受け入れの桟橋の規模につきましては、現在、先ほど申し上げましたように、設計を調整中でございまして、規模は決まっておりません。

 ただ、繰り返し申し上げますが、いわゆる軍港に見られるような岸壁といったようなものではございません。

照屋委員 時間ですので終わりますが、規模が決まらぬで設計中というのは自己矛盾じゃないか。規模も決まらぬで設計が進められるの。そんな子供だましで、あなた、我々委員会の委員が黙るとでも思っているの。国民はごまかせませんよ。

 終わります。

平沢委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時一分散会


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