衆議院

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第3号 平成19年11月2日(金曜日)

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平成十九年十一月二日(金曜日)

    午後一時三十分開議

 出席委員

   委員長 平沢 勝栄君

   理事 河野 太郎君 理事 高木  毅君

   理事 三ッ矢憲生君 理事 山口 泰明君

   理事 山中あき子君 理事 武正 公一君

   理事 丸谷 佳織君

      愛知 和男君    伊藤信太郎君

      猪口 邦子君    宇野  治君

      小野 次郎君    木村 隆秀君

      塩崎 恭久君    篠田 陽介君

      鈴木 馨祐君    中山 泰秀君

      三原 朝彦君    山内 康一君

      石川 知裕君    川内 博史君

      篠原  孝君    野田 佳彦君

      松原  仁君    上田  勇君

      笠井  亮君    照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         高村 正彦君

   内閣官房副長官      大野 松茂君

   外務副大臣        木村  仁君

   防衛副大臣        江渡 聡徳君

   外務大臣政務官      宇野  治君

   外務大臣政務官      中山 泰秀君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房遺棄化学兵器処理担当室長)    西  正典君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   塩尻孝二郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 梅本 和義君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 草賀 純男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 小原 雅博君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 羽田 浩二君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 廣木 重之君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   小松 一郎君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院首席統括安全審査官)         福島  章君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 松本隆太郎君

   政府参考人

   (防衛省経理装備局長)  長岡 憲宗君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  地引 良幸君

   政府参考人

   (国際協力銀行理事)   新井  泉君

   外務委員会専門員     清野 裕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二日

 辞任         補欠選任

  田中眞紀子君     川内 博史君

  鉢呂 吉雄君     石川 知裕君

同日

 辞任         補欠選任

  石川 知裕君     鉢呂 吉雄君

  川内 博史君     田中眞紀子君

    ―――――――――――――

十月二十九日

 沖縄県名護市辺野古地区への新基地建設の白紙撤回及び普天間基地の即時撤去に関する請願(小川淳也君紹介)(第二一四号)

 核兵器の廃絶に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二九二号)

 同(石井郁子君紹介)(第二九三号)

 同(笠井亮君紹介)(第二九四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二九五号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二九六号)

 同(志位和夫君紹介)(第二九七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二九八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二九九号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三〇〇号)

十一月二日

 沖縄県名護市辺野古地区への新基地建設の白紙撤回及び普天間基地の即時撤去に関する請願(辻元清美君紹介)(第三五四号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第三五五号)

 同(日森文尋君紹介)(第三五六号)

 同(赤松広隆君紹介)(第三六四号)

 同(小川淳也君紹介)(第三六五号)

 同(岡本充功君紹介)(第三六六号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第三六七号)

 同(重野安正君紹介)(第三六八号)

 同(保坂展人君紹介)(第三六九号)

 同(近藤昭一君紹介)(第四三九号)

 同(阿部知子君紹介)(第四五九号)

 同(横光克彦君紹介)(第四六〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

平沢委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長塩尻孝二郎君、大臣官房審議官梅本和義君、大臣官房審議官草賀純男君、大臣官房参事官小原雅博君、大臣官房参事官羽田浩二君、大臣官房参事官廣木重之君、国際法局長小松一郎君、内閣府大臣官房遺棄化学兵器処理担当室長西正典君、資源エネルギー庁原子力安全・保安院首席統括安全審査官福島章君、防衛省防衛政策局次長松本隆太郎君、経理装備局長長岡憲宗君、地方協力局長地引良幸君、国際協力銀行理事新井泉君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平沢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山内康一君。

山内委員 自民党の山内康一です。

 去る九月二十六日、ベトナムのカントー省で、円借款事業で建設中の橋の橋げたが崩落するという事故が起きました。多数の死傷者が出ましたが、このプロジェクトの概要と、そしてその事故の概要についてお尋ねをいたします。

木村(仁)副大臣 お答えいたします。

 御指摘のように、九月二十六日に、我が国の円借款案件であり、かつ我が国の企業がコントラクター、コンサルタントとして実施いたしておりますカントー橋建設計画の建設現場において、長さおよそ八十メートルにわたって、建設中の橋げたが落下する事故が起こりました。

 我が国政府は、本件事故が発生したとの報告があった直後から、現地大使館を通じ、関連情報の情報収集に努めるとともに、ベトナム政府と緊密な連携をとっておりますが、十一月一日時点で、死者は五十四名、負傷者は八十名でありまして、すべてベトナムの人でございます。

山内委員 死者が、五十四名も亡くなっている大変重大な大惨事でありまして、恐らくODA史上ほとんど前例のないような深刻な事態だと思います。そもそも二国間の関係をよくするためのODA事業で、ベトナムの現地の方々をこんなに多く殺してしまったと言っても間違いではないと思いますが、そういった悲惨な事故でありますが、それに対して外務省及び国際協力銀行、事故後の対応についてお尋ねをしたいと思います。

木村(仁)副大臣 我が国といたしましては、事態を大変重大に考えまして、まず福田総理からズン・ベトナム国首相あて、九月二十八日に、また高村外務大臣からキエム・ベトナム副首相兼外相あて、二十七日に、それぞれ弔辞を発出いたしました。また、九月三十日の現地での合同慰霊祭には、我が国から服部駐ベトナム大使、葉山大成建設会長等が出席をいたしました。

 十月七日から九日にかけまして、私が副大臣としてベトナムを訪問いたしまして、事故現場に参りまして、犠牲者に対して弔意を表しますとともに、現場を視察いたしました。

 その後、現地のカントー市の人民委員会の委員長、つまり市長さん、それから、ビンロン省という、最も多くの犠牲者を出した省でありますが、そこの知事に当たる方と会談をいたしまして、遺憾の意を表しますとともに、ズン首相、それから担当であります交通運輸大臣、ズン大臣でありますけれども、この方にお会いをして、心からの弔意を述べますとともに、今後の問題について御相談をいたしてまいりました。

 ベトナム政府側からは、もちろん、これは日本国及びベトナムの両政府にとって極めて信義にかかわる重大な事件であるという強い遺憾の意を表されましたけれども、あわせて、福田総理大臣及び高村外務大臣からの弔意の発出あるいは私の訪問も含め、さらに企業が急ぎ弔慰金を拠出する等のことを行いましたことについては感謝の意を表され、今後とも日越協力関係がこの事件のために害されることがないようにしたいという強い意思が表明されました。

山内委員 木村副大臣みずから現地に行かれて弔意の発出があったという点についてはいいことだとは思うんです。ただ、九月三十日の慰霊式典に関して言うと、相手国ベトナム側は、副首相もお見えになって、それから大臣も二人、現地の慰霊祭に参加されてと、非常にハイレベルで対応されておりますが、日本側は現地の大使が行っただけということです。九月三十日が何の日かというと、日曜日ですので、特に国会等もありません。本当は、私は、日本からもやはり、相手が副首相、かなりハイレベルの慰霊祭を行っているのであれば、それなりのポジションの方が行かれて、相手国の国民感情に配慮した対応をとるべきだったと思うんですけれども、ちょっと私は、十月七日以降に行かれたというこの対応は遅いのではないかというふうに感じますが、それについていかがでしょうか。

木村(仁)副大臣 葬儀等に政府の代表が日本から行けばよかったということは言えると思いますけれども、日本国を現地で代表する者は大使であります。その大使のベトナム政府とのやりとりの中で、そういうセットが行われたと理解をいたしております。

山内委員 恐らく、ベトナム政府としては、次のODA案件をやってほしい、もっと日本から援助がほしいということで、日本政府に対しては非常に丁寧な対応をされるとは思うんですけれども、やはりベトナムの国民感情からすれば、特に橋の事故があった近隣の住民からすると、今回の件は、対日感情を悪化させかねないような非常にデリケートな問題だと思います。もちろん、この時期、ちょうどミャンマーの方で長井さんがお亡くなりになって、外務省なりマスコミの対応も大分おくれてしまったということもあるかもしれません。もし万が一似たような事件があったときは、ぜひとももっと迅速に、かつもっとハイレベルの謝罪なりを行っていく必要があるのではないかということを意見の表明とさせていただきたいと思います。

 次の質問ですが、今回負傷した被害者の方、あるいは五十四人も亡くなられていますけれども、その御家族の方々に対する補償の状況についてお伺いします。

木村(仁)副大臣 補償でございますが、日本国政府は、これは直接の関係ではございませんので、政府が補償するという関係は直ちには出てまいりません。

 日本のコンサルタント会社及びコントラクター、特にコントラクターでありますが、十月四日に現地において、総額九十億ドンと申しますから、六千三百万円の当面のお見舞金を拠出するということを約束し、うち十億ドンを直ちに支払い、あと八十億ドンは送金をするという約束をいたしました。十億ドンは、当面の死者、負傷者に対するお見舞金でございまして、あと八十億ドンは、七十人の孤児等に対する今後の養育費として、十八歳まで支給するための基金を造成するものであると聞いております。

 それはあくまで心の問題でございまして、これから原因究明等とともに法的な補償が行われるものでございますが、その交渉も始まっていると聞いております。

 これはベトナム首相の要請でございますが、ベトナムの国法に従った補償をしっかりやるとともに国際基準に見合ったことも考えてほしい、こういうことでありまして、政府としては、コントラクターを中心に誠実に対応するように要請をいたしているところであります。

山内委員 日本企業は比較的誠実に遺族に対する対応をしているのかなという印象を受けますが、外務省としてもきちんとフォローをしていただきたいと思います。

 それとあわせて、もちろん、日本政府が直接御遺族の方に何かやるということはできないとは思うんですけれども、例えば、この橋の周辺で遺族の人たちが通っている学校とかそういうところに、草の根無償資金協力といったようなスキームで、地域に還元するというか地域に何らかの形で支援をしていく、そういった対応も考えられるのではないかと思います。ぜひ前向きに考えていただきたいと思います。

 次の質問として、事故原因の究明の状況についてお伺いします。

木村(仁)副大臣 我が国といたしましては、事故直後からベトナム政府と緊急な連絡をとって事故原因の究明に努めることにいたしましたが、現時点では、まだ事故の原因は明確にされておりません。

 この事故原因の究明は、ベトナム政府が建設大臣を議長とする国家事故調査委員会を直ちに設置し、極めて迅速な日程で究明をするということで取り組んでいるところでございまして、我々としては、ベトナム政府がみずからの責任と権限において調査をするということでありまして、日本は橋梁専門家をその委員会に派遣されたいと要請がございましたので、専門家を派遣し、協力を行い、その結果を見守ることとしております。

山内委員 このプロジェクトは、日本のJICAが調査を行って、その後、JBICが二百四十八億円の融資を行い、そして日本企業が受注してやっている。多分、外から見たら、明らかに日の丸案件、丸抱え、オール・ジャパンでやっているような、そういったプロジェクトであろうかと思います。

 そういった意味では、ベトナム政府が事故調査をやるのは当然でありますけれども、やはり日本政府としても、もっと独自の調査を行っていく必要があるのではないかと思います。もし同じような橋の案件、アフリカでも中南米でも似たような橋をこれからつくるかもしれませんし、あるいは橋じゃなくても、ほかのインフラ事業においても、同じような事故が起きないように、再発防止のために何らかの教訓を日本政府として酌み取っていく、そういった対応が必要ではないかと思います。

 外務省には事故原因を究明するための経験なりノウハウは多分ないと思いますので、ぜひとも、例えば国土交通省と協力しながら、そういった専門家の力をかりながら、きちんと真相の究明、原因の究明を行って、二度と同じような事故が起きないように、ほかのODA案件でも同じような事故が起きないようにするといったような対応が必要だと思います。

 実際、共同通信の記事によると、二〇〇五年にもメコン川でODA案件で事故があって、九名亡くなった事故があった。メコン川ですから、すぐ近所ですし、同じ日本のODAの案件で九名も死んでいる事故がわずか二年前に起きている。そういった状況があるにもかかわらず、今回もっとひどい事故が起きている。これはやはり前回の事故の教訓が全然生かされていないということではないかと思います。

 そういった意味で、今後、日本政府としての原因究明のあり方について、もう一度御見解をお伺いします。

木村(仁)副大臣 我が国といたしましては、事故原因の究明が第一であると考え、私が現地に赴きますと同時に、十月十日から十二日までの日程で、ベトナムに調査団を派遣いたしました。その目的は、事件の経緯、背景を確認し、その結果を今後の円借款事業の実施に反映し、同様の事故の再発防止等を検討することを目的として、ともかく事故現場において事故状況の視察、コントラクター等関係者からのヒアリングを行いました。

 そういった過程の中で、ベトナム政府から、この原因究明、第一次の調査についてはベトナム政府の権限と責任において行うので、日本政府はしばらく静かにしておいてくれという要請もございましたので、現在の形になっております。

 いずれにいたしましても、このベトナムの国家調査委員会は早急に結論を出すと言っておりますので、その結論を待って、これをきちっと受けるべく、こちらの専門家を加えた検討会議の設立を準備しております。

山内委員 日本側の専門家を加えた検討会議というのは大変いいことだと思うんですけれども、ただ、やはりもう少し日本政府として積極的にやってもいいのかなと思うんです。

 例えば、今ベトナム政府は迅速に迅速にということをおっしゃっていますけれども、私は、事故原因の究明に関しては、スピードよりもむしろ正確さの方が大事じゃないかなと思います。単に急いだ結果、結論が誤るようなことがあっては何もなりませんし、国交省からちょっと教えてもらって、もし日本国内で橋の事故が起きたらどういう対応をしているのかというのを聞いたことがあるんですけれども、平成十年の案件でいうと、現地調査を三回も行っております。それから、専門家も、大学の教授ほかが六名ぐらい入って、かなり本格的な調査を三カ月ぐらいかけてやっていて、それでやっと事故の原因を究明しているというような状況があります。

 そういった意味では、何もそこまで迅速にということよりも、むしろ正確にということが私は大事だと思うんです。そのためには、やはりもう少し時間も予算もそれなりにかけて丁寧に対応していくということが必要だと思いますが、外務省の御見解をお伺いします。

木村(仁)副大臣 ベトナム政府はみずからの責任と権限において調査を行うということで、調査期間はとお尋ねいたしましたところ、一カ月、こういうことでございました。私どもは、その調査に協力はいたしますけれども、一カ月というのは日本的な常識では大変短い、正確な原因究明をするにはもう少し時間がかかるのではないか、こういうことは御意見として申し上げましたけれども、ベトナム政府が一月という決意でやる以上はそれに協力しなければなりませんというやりとりになったと記憶いたしております。

 こういう大きな事故が起きましたときには、各国の政府の態度で非常に対応の仕方が違ってまいりまして、決して外国の政府を入れないという国もございますし、また、当初からしっかり協力してやるという国もあります。ベトナム政府の場合には自分だけでやるという決意で、しかも一カ月でやるということでありましたので、私どもとしては、その結果を待って、さらに正確な調査が必要であるということであれば、またベトナム政府と交渉の上、そういう調査をしなければならないと思います。

 なお、ベトナム政府の調査委員会は、極めてエネルギッシュに現地調査その他を行っていると聞いております。

山内委員 ベトナム政府の立場はよくわかりますが、ぜひとも日本政府としても独自の調査をきちんとした形でやっていただきたいと強く訴えたいと思います。

 特に、今後、近いうちに日本のODA案件でもう一個、同じようなスタイルの橋の工事が予定されているということを聞きました。同様の橋をつくるのであれば、今回の事故の原因をきちんと特定した上で次に生かしていかないと、また同じようなことを起こしてしまう。二〇〇五年に事故があって、二〇〇七年に事故があって、またやったら、もう目も当てられないという状況になりますので、日本政府独自の調査がやはり私は重要だと思います。お医者さんの世界でよくセカンドオピニオンみたいなことを言いますが、ベトナムの原因究明、日本政府の原因究明、それぞれ同時並行でやっていくというぐらいの形の方が望ましいのではないかと思います。

 以上、意見表明で、次の質問に移りたいと思います。

 この事故の原因が特定されたら、当然工事が再開されるわけであります。その再開のめどはついていないかもしれませんが、いつごろを目標にされているのか、あるいは、工事を再開するにしても、幾つかの条件をクリアした後じゃないと再開できないと思うんですけれども、どういった再開のための条件を考えているのか、お尋ねします。

木村(仁)副大臣 工事の再開はベトナム政府が最も望んでいることで、それも早急に再開を行いたい、こういう意思が表明されました。しかし、何しろ原因がきちっと究明され、そして設計図そのものの再検討等も行われなければなりませんし、また、亡くなられた方あるいはその遺族の方々に対する措置も十分行われなければ再開はできないと考えますが、現時点では、いつ再開になるかは我々はつかんでおりません。

山内委員 ぜひ、早急にというよりも慎重にこういった場合は対応をお願いしたいと思いますし、それから、再開のための条件をきちんと日本政府とベトナム側で合意をした上で再開するといったような配慮なり工夫が要るのではないかと思います。ぜひ御検討いただきたいと思います。

 それから、今回の事故の対応、外務省の対応ぶりを見ていると、若干対応が遅い部分があったかなというふうに感じる部分があります。特に、ミャンマーがああいう情勢だったので、担当部署が忙しかったということもあるかもしれません。しかしながら、こういった事故が起きたときの危機管理の仕組みなりマニュアルといったようなものがあれば、教えていただきたいと思います。

木村(仁)副大臣 一般的に、ODAの資金協力事業の案件管理を含む実施は、被援助国が主体的に行うというのが原則でありますが、我が国政府は従来から、被援助国等が事業を適切に実施することとなるよう、我が国のODA事業の実施機関であります、この場合は国際協力銀行、JBIC及び国際協力機構、JICAに対して監督し、及び指導を行っております。

 例えば円借款について申し上げますと、JBICは平時から、円借款の受注本邦企業に対して、安全対策に係る文書を送付する等の措置を実施することや、事故等が発生した場合の対応として、迅速な事故状況の把握、関係機関との情報共有及び対応策の検討を可能にする等の手続を記載した文書を作成し、周知徹底しているというふうに承知しております。

山内委員 余り具体的にはよくイメージがつかめなかったんですけれども、今回の件を見ている限りは、私は非常に問題があったと思うのは、マスコミに対する対応に問題があったんじゃないかなと思います。

 私は、この事件を新聞か何かで知って、その後二、三日、ずっとインターネットや新聞を見ていましたが、全然情報がなくて、それから、外務省、JBICのホームページを見ても、プレスリリース等はしばらくほとんどなくて、最初に外務省のプレスリリースが出たのは、木村副大臣がベトナムに行かれる直前に初めて出ました。そういった意味で、情報公開をきちんとやらないと、相手国のメディア、特にベトナムの現地のメディアに対して非常に不信感の種になってしまうのではないかと思います。

 実際、共同通信の記事等を読むと、ベトナム側のメディアがかなり事故後の説明に対して不満を持っているというようなことも聞きました。共産国家なのである程度コントロールはきいているのかもしれませんが、やはり相手国の国民感情に配慮した情報公開というものが必要だと思うんです。あるいは、日本の納税者に対しても、やはりきちんと的確に情報を流していくことが必要だと思うんですが、そういったメディア対応のあり方について非常に問題があったと私は認識しております。今後どういった改善の余地があるか、外務省の御見解を承りたいと思います。

木村(仁)副大臣 事業の実施主体であるベトナム政府の意向も打診しながら、原因究明等に関する支障が及ばない限りにおいて、ホームページにおいて本件事故に係る我が国の対応ぶり等についてはできる限り公表し、また外部からの個別交渉にも応じております。また、現地調査をいたしましたときには、日本のプレスはもとより、現地のマスコミに対してもちゃんと説明をし、インタビューに応じて対応したわけでございます。

 今後、事件の原因究明等が進んでまいりますにつれ、さらに情報の公表等が重要になると思いますので、状況を見ながらできるだけ詳しく報道するように努力をしたいと思います。

山内委員 今回のマスコミ対応、外務省としてはきちんとやっているというお話でありましたが、それが現地のベトナム側のメディアの間では余り評判がよくなかったということは事実であるようでありますし、また、こういった場合の対応というのは、多分、最初の初動を誤ると、その後ずっとイメージが悪くなってしまって、結果的に、誠実に対応しているにもかかわらず誤解を受けてしまう、そういうことは十二分にあり得ると思います。

 そういった意味で、そういう危機管理的なマスコミ対応、プレス対応のあり方についてよほど工夫をしていかなくてはいけないと思いますが、それについて改めてもう一度お伺いします。

木村(仁)副大臣 状況の中で最善の努力をしていると考えておりますけれども、今の御指摘を体し、今後十分に努力をしてまいりたいと考えます。

山内委員 ありがとうございます。

 そして、このような重大な事故を起こした企業に対する今後の対応というものはどうなっているんでしょうか。

木村(仁)副大臣 今後の対応といたしましては、まず、亡くなられた方、けがをされた方に対する補償、これをちゃんとやる、誠意を持ってやることが第一。それから、ベトナム政府の原因究明の調査に十二分に協力し、原因をきちっと明らかにするとともに、事業再開に向けて最善の努力をし、完全な橋を建設していただくように指導してまいりたいと考えております。

 また、指名停止をしなければいけないのかというような話になるかと思いますけれども、JBICにおきましては、原因の究明が終わった後にそのことについて検討し、必要であれば、原因の究明で企業に責任があるということがわかれば、指名停止等の措置を講ずるというふうに聞いております。

山内委員 では、JBIC、せっかくお越しなのでお聞きしたいと思います。

 もう大成建設は人事にも反映されて、降格人事になったり役員の給与の返上というような対応をとられていますが、明らかに日本側に非があるということを日本企業は認めているわけでありますけれども、こういった場合は、前例からいってどれぐらいの指名停止期間なり、指名停止の措置というのがとられるんでしょうか。

新井政府参考人 今回の事故というのは、ある意味では非常に前例のないことでもございますので、なかなかこれはというような基準になるものはないと思います。

 また、現在、まさにベトナム政府における調査委員会が事故原因を究明中でございますので、何はともあれその事故原因の究明、また責任関係というのも入ってくるかもしれませんが、そういったものが明らかになったところで十分に検討してまいりたいと思っております。

山内委員 わかりました。

 今回の事件は、日本では余り大きく報道されていなかったように感じます。最初、事故が起きて数日後は、日本人の犠牲者はゼロです、以上みたいな簡単な報道しかなかったように記憶しております。しかしながら、どうも欧米のメディア等ではかなり大きく取り上げられているというふうに聞きました。このことが日本の技術に対する信頼を損なったり、あるいは日本のODA全体に対する信頼を相当損なっていくということが考えられます。

 事前に通告はしていないんですけれども、今後、この事件、よほどきちんと誠実に対応しないと、日本のODA全体に対する信頼を相当損なうことになると思いますが、それに関してどのような方針なり対応をお考えなんでしょうか。外務省にお願いします。

木村(仁)副大臣 この事件につきましては、私ども日本国政府も、またベトナム政府も同じ見解でございますけれども、極めて両国の信義にかかわる重大な事件である、したがって、その原因をきちっと究明し、十分な対応をした後、事業を再開し、早急にベトナム政府の計画に従った建設が進むようにしたいというのが考え方でございます。

 いずれにいたしましても、今後の対応をしっかりやりますとともに、ただいまJBICの代表から御説明がありましたように、必要な措置はきちっと講ずるという態度で臨みたいと思っております。そして、このことが日本の技術に対する世界的な不信を招くとか、あるいは両国関係に支障が生じるとか、そういうことが絶対にないように心して対応していかなければいけないと考えております。

山内委員 今ODAは、ここ数年ずっと削減が続いております。私自身は、こういった中でODA削減にずっと反対をしてきました。今、先進国で日本以外の国はどこも、テロとの闘いの意味も込めてODAを大幅に増額しているのに、日本だけが削減されている。そういったトレンドを何とかしたいな、ODAの削減をとめたいなというふうに私は考えております。

 しかしながら、こういう事故が起きて、しかもその後の対応が、正直言って後手後手に回っているような印象を受けました。こういう事件があると、国民の、納税者の皆さんの理解は決して得られないと思います。ぜひとも誠実に、かつ確実にフォローアップをお願いしたいと思います。

 以上で質問を終わります。

平沢委員長 次に、篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原でございます。

 おくればせながら、高村大臣、外務大臣就任おめでとうございます。

 四半世紀前に、新進気鋭の、二年生議員か一年生議員かちょっと忘れましたけれども、高村大臣に初めてお会いしましたときに、このようなところでこういう形で討論を闘わすというのは夢にも思いませんでした。四年前に私が図らずも民主党の国会議員として国会に議席を得ましてからは、一日も早くこういう事態が来るのを望んでおりまして、きょうやっとその機会がめぐってまいりましたことを非常に喜んでおります。

 きょうは、やはり私は、大事な節目も迎えておりますテロ特措法の関係について御質問させていただきたいと思います。

 まずこのテロ特措法についてでございますけれども、日本国政府は一体どういうふうに情報を収集したりしているのかということです。それから、今給油をストップして、「ときわ」も帰ってくる、こういったのは多分外国のメディア等では報道されているんだろうと思いますけれども、その前に、日本でこの問題が国会でごちゃごちゃしている、党首会談まで開かれているというようなことを諸外国のメディアはどのように報じているんでしょうか。ちっともそのところが見えてこないんですけれども。

梅本政府参考人 テロ特措法をめぐる日本国内の事情等については、私どもが承知する限り、G8各国メディアは自衛隊の給油活動をめぐる問題をかなり大きく取り上げているというふうに承知をしております。ただ、どこまでリアルタイムで日本の党首会談等を報じているかというと、それはタイムラグというのはあるんだと思います。ただ、かなり大きく取り上げて注視をしているということだというふうに思っております。

 そこで、特に欧米メディア、主としてアメリカ、イギリスでございますが、給油活動が国際的に高く評価されているということを言った上で、例えば、同活動の停止は日本に対する信頼を減ずることになる、のみならず国際社会及びテロリストに悪いメッセージを送るという関係者の発言を引用したり、あるいは、厳しい軍事的任務を恥ずかしげもなくよその国に任せる昔の日本に戻ってしまうのかというような批判論調も出ているということでございます。

篠原委員 きのう資料要求をして、持ってきてくれというのが私のところに全然事前に届いていないんですよね。外務省ではよく、各地の大使館がその国の論調ということでさっさっと電報を打って、報告が来ているはずですよ。

 なぜこれを冒頭お聞きしているかといいますと、国際社会の貢献というのが問題にされているということを常に言うわけですね。ですから、一体その国際社会というのはどこなのかということ。

 さかのぼって申し上げますと、これもふわっとしたことなんですが、湾岸戦争のときに、汗を流さない、血も流さない、金だけだと、批判された批判されたと。だから何とかしなくちゃいけないんだというふうにずっと言われ続けてきましたし、今も同じことが言われております。その当時というのは、直前になって、大分たってからはありましたけれども、日本というのはそういうことのできない国だというのが国際的に認識されていて、それでいいんだということで済まされていたんじゃないかと思うんです。

 それを日本は、湾岸戦争のときに恥ずかしい思いをしたと何か自虐的にみずから思って、盛んにそれを言って、それを過度に言い過ぎているんじゃないか。今回の給油活動についても、私は悪いことではないと思うし、やっていてもいいと思います。しかし、それをやめることが国際社会に物すごいショックを与えていると少々大げさに言われ過ぎているんじゃないかと思っておるんです。

 ですから、この節目の十一月一日の撤収について各国がどのように考えているかというのを、それをまず知りたいわけですよ。早急にそういった情報を集めてしかるべきじゃないかと思います。マイケル・グリーンさんのペーパーとかを見せていただきましたけれども、もちろん、外国人の専門家は、そういうことを言っている人はおります。特にアメリカは日本の世話になっているんですから当然だと思いますが、例えばアラブ諸国なんかはこのことについてどのように思っているのか、アラブ諸国のメディア等はどのように報じているのか、それがさっぱり見えてこないんですね。

 なぜこれを聞いているかというと、我々はアメリカ経由の情報みたいなものをもとに、我が国ではああでもないこうでもないと議論をしておる。一体現場ではどうなのか、現地ではどうなのか、どう思われているのか、そういったことを余り考えないで、何か上っ面な情報だけで議論しているような気がするんです。

 アラブ諸国における我が国の給油活動についての評価あるいは論調というのはどうなっておるんでしょうか。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、アラブ諸国、またアラブ以外のイスラム諸国におきましても、大使館等を通じまして、現地の論調あるいは現地政府あるいは現地の国民の動向等は絶えず調査をしているわけでございます。

 今回の給油を中止した、中断したということについては、例えばサウジアラビアあるいはアフガニスタンで、これは事実関係を報じるという形でございますが、記事は出ているわけでございます。

 それから、各国政府ということであれば、これはいろいろな場で大臣等からも御答弁されておりますけれども、例えば、パキスタンの大統領から小池防衛大臣に感謝の気持ちが表明をされているとか、あるいはサウジのバンダール国家安全保障会議の事務局長から福田総理あて、高村大臣あてに書簡が来ているとか、これはイスラムの諸国においても我が国の給油活動については高い評価を得ているというふうに私どもは認識をしている次第でございます。

篠原委員 では、アラブ諸国でも日本の給油活動というのは一般に知られているということでしょうか。

 なぜこれをお聞きするかというと、日本の評判はアラブ諸国とか中近東諸国ではいいわけですね。よく言われておりますけれども、イスラム諸国の同胞の血を流すのに直接手を汚していない、これが一つの親近感を持たれる理由になっているわけですね。

 それを、そうしたことに手をかしている、一たんはそういう危機があったわけです。イラクに自衛隊を派遣したということがあったわけです。しかし、私は、去年、おととしの外務委員会で申し上げましたけれども、メンバーもかわっておられるのでちょっと申し上げますと、私は、あの件、あれは災い転じて福となすということで、今となっては日本の律儀な対応を評価するもとになっているんじゃないかなと思っているんです。

 なぜかといいますと、自衛隊は派遣しました、これはアメリカとの国際関係とかいろいろあって仕方がなかったんだろうと思います。しかし、武器を一切使わなかった。こんなに律儀にまじめに、憲法のとおりに振る舞える国があるのかと、多分軍事専門家は驚いているんじゃないかと思います。ですから、あれは風化していったんじゃないかと思います、軍隊を派遣したということは。

 だから、あちらで活動しているNGOの方々の意見も聞きました。そうしたら、日本がイラクに自衛隊を派遣したときは、今まで掲げていた日の丸をとったと言うんです、テロの標的にされるのではないかということで心配で。ところが、今再び日の丸を掲げられるように、今というかちょっと前ですね、掲げられるようになった。日本はやはりそんな軍事活動に手をかしていない、まじめな国なんだ、平和国家なんだということなんですよね。

 ところが、今海上でもって給油をしているというのは、結局、何だかんだと言っても、海上阻止活動とは言っていますけれども、海上の阻止、武器弾薬を持っていったり麻薬を取引したりするのを阻止するんだと言っていますけれども、テロ特委や何かでさんざん議論されましたとおり、爆撃にも行ったりする艦船が、きょうはアフガニスタン、きょうはイラクと決まっているわけじゃないですからね。そんなの私は、どっちかにしろなんていったってどだい無理だと思います、そんなのを見きわめろといったって。

 ですから、軍事活動、軍事プロセスにも日本が加担しているというのがわかるということはよくないことじゃないかと思っておるんですよ。

 例えば、端的に言って、アルカイダの皆さんは、日本がインド洋で米軍に給油活動をしているということは、ちゃんと承知しているんでしょうか、していないんでしょうか。外務省は、その点はどのように認識されておるんでしょうか。

梅本政府参考人 アルカイダがどのように認識しているかということでございますが、アルカイダが海上自衛隊の給油活動に対してどういうふうな認識を持っているのかということについては、これは政府として承知する立場にはございません。

 ただ、アルカイダについては、日本に言及のある声明等というのは幾つか出されているということでございまして、それなりに日本の動向はフォローしているんだろうとは思いますが、では、どう認識しているかということについては、私どもが承知をする立場にはない、こういうことでございます。

篠原委員 わからないといえばわからないのかもしれませんけれども、少なくとも現地のNGOの人たちは、アルカイダには知られたくないという行為だろうと私は思います。ですから、その辺のところは微妙なんですけれども、日本がやっていることをちゃんと宣伝しなくちゃいけない、国際貢献をちゃんと果たしているということを一方では宣伝しながら、一方では後ろめたい部分が私はあるんじゃないかと思います。

 中東諸国の問題というのは、ここで四十分の間で議論はできません。パレスチナの問題とか、いろいろややこしくて、あの問題とかが解決しなかったら私は解決しないんだろうと思います、複雑怪奇な地域ですから。ですけれども、今、アルカイダがどのように承知しているか知らないと。しかし、いろいろなところで、声明文を発表したり、現地の新聞もありますし、日本のことがどのように評価されているかというのは非常に気にしなくちゃいけないと思うんです。

 こういった問題が起きてから、外務省は、アラブ諸国、例えばアフガニスタンとかイラクとか、イランもあります、核疑惑とかいろいろなのがあります、ああいったアラブ諸国の大使館の陣容の強化というようなことをこの数年でされておられるんでしょうか。例えば情報収集一つにしてもそうだと思いますけれども。

塩尻政府参考人 お答え申し上げます。

 アラブ地域、日本の外交にとって非常に大事な地域でございます。そういうことで、大使館もそれぞれの国に置いていますし、なかなか外務省全体の定員が足りないということで我々苦労しておりますけれども、重要な地域だということを勘案して、ある手勢の中で適切に対応させていただいているというふうに理解しております。

篠原委員 それでは、外務大臣、今議論をお聞きになっておられたかと思いますけれども、日本は、やはりアメリカ経由なりヨーロッパ経由の情報で、ダイレクトに情報を収集したりというのはどうも苦手なんじゃないかと私は思っております。

 外務大臣から、アラブ、これは大変な問題になっておりますので、今すぐは養成できないんでしょうけれども、外務省はほかの役所と比べてなかなか柔軟で、ほかの役所なんかでも民間から採用したというのはよくあるわけですね。外交の世界でこそ、こういったアラブのところでごちゃごちゃしていたりしたら、あちらの現地で長年いた例えばNGOの人とかというのを採用して、アラブの体制を整えたりした方がいいと思うんですが、そういったことをお考えいただけませんでしょうか。

塩尻政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省の職員の中でも、やはりアラビア語、アラビストというのを育てなければいけないということで力を入れています。

 ただ、委員が御指摘のとおり、外務省の人間だけではなかなか追いつかないというところがあります。そういう中で、オール・ジャパンで、必要な人材、いい人材に外務省にも来ていただく、大使館で活躍していただくということでやっております。

 現に、ア首連ですとかバーレーンですとか、そういうところに、外部からそういう専門の方に来ていただいて、御活躍いただいているということでございます。

篠原委員 それでは、先ほどの問題に戻りますけれども、日本の今の活動というのは、ちょっと一たん中断していますけれども、給油活動等が、先ほども申し上げました日本の信頼、一朝一夕にでき上がったのじゃないですね。

 よく言われますけれども、アフガニスタンなんかは、でかいソ連、ロシアに二十世紀の初め、戦争をして、どうせ負けるだろうと思っていたら思いがけず勝った、ちゃんとやっている。それから、長崎に原爆、広島にも原爆を落とされたけれども、ちゃんとそこから復興してきていると。それは、相手は、今あちらで反米感情が高まっているんだろうと思いますけれども、そのアメリカにやられたんだけれども今はちゃんと復興しているということで、それなりの尊敬の念を持って見られておる。

 それを、インド洋上で戦争、軍事プロセスに加担しているということで、少々日本の信頼が揺らいでいるんじゃないかという心配をするんですが、その点についてはどうお考えでしょうか。

高村国務大臣 洋上補給活動でありますが、それによって日本の信頼が揺らいでいるということは全くない、こう思っております。むしろ、それを中断したことによって大変揺らいでいるということはあるかと思います。

 日本は、別にアメリカからだけ情報をとっているわけじゃありません。あらゆる国から、直接とることもありますし、それから、いろいろな国を通じてほかの国の情報をとることもありますし、幅広く情報をとっております。

 委員がおっしゃったように、確かに、イラクに陸上自衛隊を送ったときは、私のところにも、私の友人の複数のアラブの人たちから、自衛隊を送るのはよくないよと、彼らは、ジャパニーズアーミー、こういうふうな言い方でそういうことを言っていた人がいましたけれども、そういう人たちも、いざ自衛隊が行って、帰ってくるころには、ああそういうことだったんだね、よくやってくれたね、こういう評価に変わってきておりました。

 海上自衛隊の補給活動について言えば、そういう友人たちも、最初から行くなと言った人は一人もいません。それから、早く帰れと言った人も一人もいません。もういいんじゃないかと言った人も一人もいません。続けてくれと言った人は、アラブの人だけじゃありませんけれども、たくさんおります。

 そういう状況だと思っています。

篠原委員 海上ですし、プレゼンスというか、いるかいないかよくわからないので、私は、先ほどのお話じゃないですが、余り知られていないということが、かえっていいことじゃないかなというふうな気がいたします。

 今、高村外務大臣お答えになったとおり、イラクの場合は、復興支援活動に全力を注いで、軍事活動とかそういうのは一切していないわけですね。僕は、ここがポイントだろうと思います。しかし、海上の給油活動というのは、そうじゃない部分も含まれているわけです。ですから、ここは厳密に考えていきますと、復興プロセスじゃなくて軍事プロセスに手をかしているということで、それなりに批判は受けても仕方がないんじゃないかなという気がいたします。

 さっき、山内委員がベトナムのことについていろいろ言っておられました。私はベトナム戦争を、アフガニスタンのときもどうしても思い出すわけですけれども、ベトコンというのがいた。あれは一部の協力者だといっていたのが、ところがベトナム人全体が反米になっていって、ああいう形になっていったわけですね。

 今、わかりませんけれども、似たような状況になっていると思う。タリバンを一掃すると言いつつ、民間人も相当巻き添えを食っている。テロ特委で三千人だ四千人だという議論が行われていましたけれども、私は、徐々に徐々に状況が悪化してきているんじゃないかと。もちろん、タリバンなんというのは一部だと私は思います。一部ですけれども、自分の親兄弟、親戚等が米軍の爆撃を受けて殺されたりしていくと、何十年と続いて恨みがずっと残る、これは非常に危険なことじゃないかと思います。

 それで、そこのところにそんなに加担していなくて海上の活動の阻止なんですけれども、軍事プロセスにそれなりに後方支援で加担しているというのは、やはりそれほどいいことじゃないというふうな気がします。これは私の意見でございます。

 それから、高村外務大臣は、海上の給油活動というのはローリスクでハイリターンでちょうどいいというのをおっしゃっておられたようです。私は、ある面から言えばそうだと思いますけれども、売り言葉に買い言葉になるわけですけれども、そうすると結局、現地に行っていない、海上だけでやっている。日本のぎりぎりの線かもしれませんけれども、やはり現場で汗をかいていないという点では湾岸戦争と同じような批判を受けるんじゃないかな。これは別に小沢代表にごまをすってISAFに自衛隊を派遣した方がいいというつもりで言っているわけじゃないんですけれども、そういうことも考えられるんじゃないかなと思うんですよ。

 矛盾する質問になるかもしれませんが、その点についてはどうお考えでしょうか。

高村国務大臣 ローリスクでハイリターンという言葉を確かに私は使ったことがあります。ローリスクと言う前に、海上自衛隊の高い技術をもってすればローリスクでと、こういうことを言っているんですね。ローリスクでそしてハイリターンであることは間違いない、こういうふうに思うわけであります。

 それで、では本当にリスクが高いところで活動している人たちから見ればばかにされるのではないかと、観念的に考えることはあり得ても、現実問題として、高い評価を受けているじゃありませんか。受けているんですよ。それは国連の決議にしても、あるいはそれぞれの国からも。

 ですから、ローリスクでということではばかにされるから、もっとハイリスクをやれ、こうおっしゃるのかどうかわかりませんけれども、ローリスクであったらばかにされるかもしれないねと観念的に考えるのを私は間違いだと言いませんけれども、現実に、それで高い評価をして、まさにハイリターンというのは、直接的な国益もあるけれども、世界から評価を受けているハイリターン、そういうことを申し上げている。

 そういう事実があるんですから、事実を認めていただければ、頭の中で考えて、そういう懸念は当たらない、こう思います。

篠原委員 私も別に海上給油活動にけちをつけるつもりはありませんで、隊員の皆さん、三週間後に帰ってこられるそうですけれども、ちゃんとねぎらうべきだと思います、一仕事されてきたわけですし。それから、いろいろな抑止効果は私はあったんだろうと思います。効果がないことはない。

 ですけれども、六年間、日本は下支えをしてきたけれども、アフガニスタンの現状はどうかというと、改善されていない。中近東諸国の情勢も、先ほどもちょっと触れましたけれども、イランの核疑惑もあり、パキスタンでもブット前首相が帰ったらテロが起こったりとか、風雲急を告げております。

 このあたりでやはり日本国政府もちょうど見直していい時期じゃないかと私は思っております。ほかのやり方を考えたらいいんじゃないかというふうに考えております。それは何かというと、文民支援です。

 タリバン、タリバンと言っていますけれども、よく聞きますと、そんなにいない。どこかほかの国で教育を受けたりした人たちが来て、そして、アフガニスタンというのは山ばかりです。イラクは真っ平らです。まあ長野県みたいなところです。先週、伊那谷に行きましたけれども、谷々でみんな区切られていて交流もない。二十民族、部族はもっと多くて、交渉もない。そういうところで、貧しい。

 そして、今こういった現地情報を外務省がちゃんと把握して伝えなくちゃいけないんだと思いますけれども、いろいろNGOの皆さん方に聞きますと、地球温暖化の影響をもろに受けているんだそうですね。雪が降らない。それで、アフガニスタンでは、金がなくても食っていけるけれども山の雪がなくては食っていけないという言い伝えがあるんだそうです。つまり、山の雪解け水がちゃんと流れてこなかったら、作物ができない。雪の量が減っている。

 皆さんのところに資料を一枚だけお渡ししてありますけれども、三千万近くの人口のうちの三分の一近くが、戦争どころじゃない、食っていけないという状況になっていると。

 よく言われていますが、これはきれいごとというかそんなのじゃなくて、本当のテロを生んでいるのは何かということです。爆撃で一掃できるんじゃなくて、六年間いろいろやった、改善はされているんでしょうけれども、それほど改善は実際はされていないんだろうと思います。外務大臣も官房長官も、いかにアフガニスタンの経済状況が改善されたかというのを、GDPが平均一〇%だ、就学率が高まったと言っておられる。それはそれでいいことだと思いますけれども、悪い方でいいますと、それは全然触れておられないんですが、食料自給率。私は食料問題を専門にやってきたので気になるわけですけれども、九〇%以上の自給率だったのが六〇%になり、四〇%になった。恥ずかしい日本の自給率と同じになっている。あんな国で四〇%なんて本当に悲惨ですよね。

 ですから、私は、この際いい機会だと思うんです。軍事プロセスに係るような貢献をしてきたけれども、いいんですよ、民主党を悪者にすれば。民主党が反対して継続できなかった、帰ってこなくちゃならないと。だから、違う貢献を考えるという転機にして、民生支援の分野に大々的にお金を注ぎ、人も注いでいくべきだと思います。

 きょう、新聞を見ましたら、外務大臣が発表されたんですけれども、追加支援を二百四十億円していくというのが新聞記事に載っていました。きのうだかの経済協力関係の会議で言っておられましたけれども、そのような方向は非常にいいことだと思うんですが、この点についてはいかがでしょうか。

高村国務大臣 今御紹介あった新聞記事のような内容は私は存じておりません。存じておりませんが、日本は、いわゆる民生支援、ずっとやってきているんですよ。

 既に千四百億円の支援をしてきて、これはアメリカに次いで世界第二位の規模の民生支援をしてきた。これからもやっていくわけでありますが、その中心としては、今まで日本はDDRという、旧国軍の武装解除をやってきたわけでありますが、これから非合法武装集団の武装解除、DIAG、そういうことをやっていきたい。そして、今委員がおっしゃったような農業、農村開発、そういうことも支援をしていきたい。そして道路、インフラですね、そういうこともやっていきたい。そして教育の分野でもやっていきたい。その四つの分野を重点に、今までもやってきましたが、これからもどんどん力を入れてやっていきたい。

 そしてもう一つは、難民がどんどん帰ってきているんですよ。既に五百万人の国外にいた難民が帰ってきている。ただ、せっかく帰ってきた難民が、定職を持たない、定住を持たないということであると、また治安は悪くならざるを得ませんから、そういう帰還難民、帰ってきた難民の方たちに対する支援、そういうこともやっていきたい、そういうふうに思っております。

 自衛隊を動かす場合には絶対に法律の裏づけが必要ですから、そして、十一月一日で切れるということでその法律を通そうということで、反対だという人たちがいて、そこで国内では何かこの問題だけが大きくクローズアップされておりますけれども、何も政府がこれを大きくクローズアップしようと思ったわけでも何でもなくて、結果として、そこに、政局も含めてかどうかわかりませんけれども、論争があって、大きくクローズアップされましたが、日本は、それ以上の民生支援を既にやっている。これからもやっていきたい。何もこれを転機としてとかそういう話じゃなくて、今までやってきたものをさらにやっていきたい、こういうふうに考えております。

篠原委員 千四百億円でアメリカに次いで二位だ、イギリスと同じぐらいだというのはよくわかります。それは日本は、先ほどODAの総額が下がっている下がっていると言っていますけれども、金額としてはほかの国に比べて大きいと思います。

 ただ、最近の政府の動きを見ていると、ちょっと首をかしげざるを得ないわけですよね。旧テロ特措法は、石破防衛大臣のお言葉をかりればメニュー法だといって、三つのいろいろなのがあった、協力支援と捜索とか、それから災害救援ですね。それを、その中から給油のところだけ取り出して、協力のところだけ取り出したというので、私は今、それがあったから言っている。逆行しているようなこと、一年にして、給油活動、給水活動だけに限定した法律を出してきておられる。私は、むしろ逆ではないかと思うんです。

 今、DDRのことをおっしゃいましたけれども、武装解除について、日本がそれなりに、珍しくというか、そういったプロセスに参画して成功しているというのは、前から申し上げておりますけれども、日本に対する信頼があったからだ。丸腰で、武器を持っていっていないということがバックにあって、そういう国だから、日本に任せてやってもいいんじゃないかというのが私はあったんじゃないかと思うんです。ですから、今やるとしたら、やはり転機だと私は思います。

 軍事プロセスのところをストップした、それは批判されているかもしれません。それに対してこたえるためにも、むしろ今は、自衛隊を派遣するのに恒久法とかいって、どこか偉い人二人がこの三時からお話し合いもするとかいって新聞に書かれていますけれども、それはむしろ逆行しているんであって、日本にできることは何か。言葉もそんなに、アラブの専門家を養成しているとおっしゃいましたけれども、アラブ諸国を縦横無尽に立ち回れる政治家、要人というのは日本にはおりません。遠い国ですし、そこまでする必要はない。

 軍事プロセスは、やはりいろいろな事情があって、自衛隊はそんなに海外に派遣できないですから、できない。そうすると、日本に期待されていること、日本にできることは何かというと、だれが見ても復興支援プロセスであって、それを中心の法律にしなけりゃ、私は筋道が通らないと思っているんです。それを、そうじゃなくて、外してきて一年だけでというのは、何か対立構造がいたずらに出てしまっているんじゃないかなと思うんです。

 ですから、今急ぐべきは、緊急民間支援をもっと大々的にやる。そのときに、ここからまたちょっと難しいんですけれども、民間支援なんていったって、危うい国に一体どうやって民間人が行くかという問題があるわけです。

 ちょっと資料を見ていただきたいんですけれども、この私がつくりました簡単な資料でございますけれども、アフガニスタンとイラクの比較です。ばっと見ていただきたいんですが、どっちが今危険な国かというのを見ていただきたい。大体人口や何かも同じぐらい。死者数のところを見てください。イラクの方が、当然ですが、いっぱい亡くなっている。民間人九百人となっていますけれども、これはもっと多いかもしれぬ。テロ件数、大分違う。自衛隊派遣等はここに書いてあるとおりです。サマワからは撤退いたしました。きょう、左側の方のも終了しているということですね。

 これを見ますと、私は、サマワに自衛隊を派遣したようなやり方で、復興支援でアフガニスタンに大々的に派遣してもいいような気がするんですけれども、この表をごらんになって、いかがでしょうか。その当時は、では非戦闘地域ならいいというので、自衛隊を派遣しているところが非戦闘地域だということまで言って派遣したことがあるわけですね。それだったら、アフガニスタンこそ今、比べたらできるような気がするんですけれども、いかがでしょう。

高村国務大臣 アフガニスタンでも、自衛隊が行って、そして人道復興支援をする場所は絶対にないと私は言ったことはないわけであります。あり得る。あり得るけれども、そう簡単ではないんですね。

 イラクの場合も、亡くなった奥大使たちが、それに適した場所があるかということを本当に必死に探して、そして、サマワというそのピンポイントで、ここならできるねと。こういうところを探すその途中でも、私はいろいろ奥大使から話を聞いていましたから、そういうことであったので、これから探せばあるかもしれない。

 だけれども、今、安全で評価されている活動がある、海上阻止活動に洋上補給をするという。それをわざわざやめて、そしてこっちに変えましょうというのは、私はどうしてもわからないんですね。さっき、ローリスク・ハイリターンというのにちょっと御批判がありましたけれども、やはり、ハイリスクで、それほどのリターンがあるかもわからないところを、ローリスク・ハイリターンの仕事をやめて行くという、そのことがちょっとわからないんです。

 私は、積極的に民主党から、ここでこういうことをやろうじゃないかという提案があれば、必死に検討しますよ。何でも反対じゃありませんから、必死に検討いたします。そこで、憲法上大丈夫かね、今の武器使用の基準で要員の安全が守れるかね、十分に効果を発揮できますか、そして他国の足手まといにならないかね、そういうようなことを十分検討した上で、いや、それはリスクよりリターンが多いねということになれば、私は、どなたが提案したことでも反対するものではありません。どうか指導力を発揮されてまとめて、御党で提案してください。

篠原委員 私と党首の距離は、高村大臣との距離よりもちょっと遠いような気がいたしますので難しいかとは思いますけれども、私は、一つの区切りで、やっていないというのに対して、そうじゃないと思うんです。だから、民生支援の、復興支援の方に力を入れていくと宣言してやっていくいい機会じゃないかというので申し上げている。もちろん、続けられたら続けてもよかったんでしょうけれども、区切りがつきました。

 それで、国際交渉というのを農業交渉でちょっと申し上げますと、EUなんて非常に勝手ですよ。何か農業の、さんざんアメリカが言ったってだめだと言う。フランスがぎゃあぎゃあ言っていると。確かにフランスは文句を言って、EUの言うことをさっぱり聞かないわけです。フランス政府はどう言うかというと、農民が暴動を起こしてパリに食料が入ってこない、全部閉鎖しちゃう、トラクター二十台ぐらいで。そうすると、ちゃんと新聞に書かれていた言いわけで、しようがないからといって、アメリカもフランスの農民には負けるという感じで、妥協が成立していくわけですね。

 だから、最初、情報がどこで、日本のがどう報じられているかというのを聞いたのはそういうことでして、日本のことがいろいろ問題になっているということで、政府・自民党は一生懸命やっているわけです、党首会談までしてやったけれどもだめだったと。悪者にして、民主党の石頭どもでいいんだろうと思いますよ。しようがないし、あっちの説も一応一説ではある、ちょうどいいから、ではほかのところで貢献するというので、ぜひ、絶好機ですので、高村外務大臣の腕力でもってそういう方向に変えていただきたい。私も、他党でございますけれども、全面的に援助をいたします。

 それから最後、一つ外務省に御提案、お願いでございます。

 今、ねじれ国会でどう対応したらいいかわからないというので、党首同士が話しているという。しかし、ねじれ国会なんてそこらじゅうにあるんですよ。塩尻官房長はフランスで研修を受けられて、フランスをよく御存じだと思いますけれども、フランスなんかは、保革共同政権というかコアビタシオンというので、常識ですよ。社会党の大統領のミッテランの下で、シラクが首相ですよ。国会なんかねじれているのが当たり前で、私は、ねじれ国会というのは続いた方がいいと思っているんです。

 なぜかというと、一つは、役人が跳梁ばっこして、何かへんちくりんな、四年間も事務次官をやって何とかかんとか、そういう役人はいなくなるんじゃないかと思います。謙虚になる。それから、野党が、美辞麗句を並べ立てて格好のいいことばかり言って、通ることのない法案を提出してわいわいやるということもなくなるんじゃないか。与党の方も、何か大した法案じゃないのに大事だといって、数の力でもって強引に通す、僕は、与党の方も謙虚になってくる。それでいろいろ議論して、国会で決まっていくと。

 だから、党首同士でどうやってねじれ国会をやっていくかというんじゃなくて、諸外国にはねじれ国会だらけだろうと思うんですね。日本が異例だったんですよ。

 ですから、外務省にお願いしたいことは、そういうねじれ国会というか、ねじれているところで、国会活動がどのように行われて、どのように成案が得られていくかというのを、ちゃんと調査訓令を発して、そして我々に示していただきたい。向こうの方が先輩になるわけです。僕が想像できるのは、議員が本当に勉強して決定していかなくちゃいけない。ぼうっとしている議員は議員をやっていられなくなると思うので、いいことだと僕は思いますし、その調査訓令を発していただいて、この委員会にちゃんと報告をしていただくことをお願いいたします。

 この答弁をいただいて、私の質問を終わらせていただきます。

塩尻政府参考人 お答え申し上げます。

 私の手元にあります資料でございますけれども、OECD、三十カ国加盟国があります、そのうち十七カ国が二院制をとっています。ですから、日本以外では十六カ国ということでございます。この十六カ国のうちで、現在、いわゆるねじれ状況という国が二カ国ございます。スペインとカナダでございます。例えば、スペインの場合ですけれども、これは法令上、下院が優勢だということになっております。したがって、ねじれ現象そのものは必ずしも法案の審議等に大きな影響を及ぼしていないというのが現状だということでございます。それから、カナダでございますけれども、ここは上院が非公選ということでございます。したがって、下院の判断を尊重するということでございまして、ここもそういう意味で、必ずしも審議に大きな影響が出ていないということのようでございます。

 いずれにしましても、在外公館を含めまして、外務省は各国におけるこういう政治情勢をフォローするというのが任務の重要なところでございますので、引き続きやらせていただきたいというふうに思っております。

篠原委員 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一です。

 質問項目に従って質疑を行わせていただきます。

 まず、この外務委員会と同時並行でテロ特委員会が開かれておりますが、その中でも、いわゆる恒久法の議論というものも今週行われているように伺っております。これは質問通告にないので、私の恒久法に対する考え方を述べておきたいと思います。

 私は、テロ特の委員会あるいは本委員会などでも、恒久法については慎重なスタンスをとってまいりました。それは、久間防衛大臣などもそういうような御意見だったというふうに認識をしておりますが、もちろん、国会の承認とか、自衛隊を海外に派遣する、それが特措法でない形で出す場合には、いろいろな縛り、制約、こういったものをしっかりかけてというのはもちろんでありますが、一つ、日米の物品役務協定、いわゆるACSA、このACSAの付表2というところに法律案を書き込めば、政令でそうした米軍の物品、役務への後方支援ができる、こういう枠組みがあるものですから、恒久法が付表2に書かれたときに、全世界、地球の裏側まで米軍の後方支援をしなければならないのではないのかといった点から、私は、国会の中ではこの恒久法の議論について慎重なスタンスをとっているということをお伝えしておきたいと思います。

 そこで、質疑に移らせていただきますが、十月三十一日、カナダ大使館で、OEF・MIO十一カ国大使から、このOEF・MIOについての説明が午前七時半から午前九時まで行われました。各党の議員に対して、あれは多分国会議員の議員数を勘案して呼びかけがあったんでしょうか、限られたスペースということもあったんでしょう、民主党からは六名の議員が参加をいたしました。民主党の国際局長、前国際局副局長、そして次の内閣の外務、防衛の四名の副担当、六名で参加をいたしました。

 六名で参加をした理由というのは、八月八日、小沢代表とシーファー米国大使の会談のときに、シーファー大使から、OEF・MIO等についての詳細な情報提供をしても構わない、こういう申し入れがあって以来、民主党の国際局長からアメリカ大使館にはそうした詳細な説明を随時求めてまいりましたが、それがないままこの十月三十一日を迎えたといったこともこれあり、私どもでは、やはりまずは今回六名で、議員を絞って参加をさせていただいたところでございます。

 そこで、私も参加をした一人なんですが、たしか、政府というか、自民党議員としてかもしれませんが、外務副大臣も御参加されていたと思います。このときは、カナダ大使が冒頭、十一カ国を代表してごあいさつをされ、そしてまたアフガニスタン大使もいらっしゃいました。その後、四名の方からスライドを使って説明を受け、その後、各党一名ずつの質疑、そして個別の国に関する質疑は受け付けないというようなお話がありましたが、特別ということでドイツ、アフガニスタン両大使からもコメントがあったということで、一時間半が終了したわけでございます。

 全体の情報、これはパッケージとしてコンフィデンシャルであるということもありましたので、私も戻っての院内でのブリーフでは、個々の、一部ブリーフを述べたところでございます。

 四つのテーマで説明を受けましたが、私なり、一緒に参加をした民主党議員が見たところ、米国国家情報会議、NICの方、それから米国国防総省の方、そして米海軍、米空軍の四名の方から私は説明を受けたというふうに承知をしておりますが、事実確認をお願いしたいということを質問項目で述べておりますが、いかがだったか、お答えをいただきたいと思います。

高村国務大臣 残念ながら、私は内容を知らないわけであります。私、出ておりませんし、それから副大臣、政務官が出たかもしれませんが、国会議員として出ていまして、事務方からは全く報告が上がってきておりませんので、政府として説明するべき立場にないんだろう、こういうふうに思っております。

武正委員 各国大使からの説明の中でも給油継続の直接の要請というものはなかったと私は承知しておりまして、給油の重大性についての説明はあったり、あるいは、国会で議論になっている、日本提供の油がテロ特措法以外に転用はされていないということはスライド等で説明をされていたと承知をしております。そういった意味では、各国大使はいわゆる内政干渉になることをやはりはばかって、今回の説明会を慎重に進めているのかなというふうに認識をしたわけであります。

 ただ、私は、確認を願いたいというふうにお願いをきのうさせていただいたわけであります。特に、少なくとも米軍武官以外に他国の武官が説明をしたかどうか、事実確認を願いたいと昨日の要旨ではお出しをしたんですが、事実確認をいただいたのかどうか。立場にはないというお答えを今いただいたようですが、私はそういうお願いをしたんですけれども、していただいたでしょうか。

高村国務大臣 私のところにそういう報告が届いてきていないんですが、ともかく、このブリーフィングに実は事務方も入れてくれとお願いしたら断られたという経緯があるということはお伝えしておきたいと思います。政府との関係でやるんじゃない、国会議員に説明したいんだ、こういうことでありましたので、むしろ、そこに出席された武正議員から御説明いただければ私は大変ありがたいわけであります。

武正委員 私どもが確認をした限りは、先ほどの四名の方ということで米国の方から説明を受けたと私は承知をしておりまして、一部報道では各国武官が説明をしたという報道が流れたものですから、あれは各国の武官の説明ではなかったということを指摘したいと思いまして、政府から照会をお願いしたわけでございますが、今まで照会していないし、そういうことも上がってきていないようですが、改めて照会を、例えばカナダ大使館なりあるいは十一カ国の大使館なり、御照会をいただけますでしょうか。

高村国務大臣 カナダ大使館に聞くように指示をいたします。

武正委員 あわせて、政府も聞きたいと言ったら断られたということですが、今回のこの説明会が設営されるに当たって、政府から、逆に、OEF・MIOの説明会をやってくれと十一カ国の大使なり大使館なり、あるいは十一カ国の外交当局に対し、依頼をした、要請をしたということはあったんでしょうか。

高村国務大臣 私が知る限り、ありません。

 確実じゃありませんけれども、報道等を通じて私が承知しているのは、シーファー大使が小沢代表に説明をすると言ったことからこれは始まっているんだと思いますが、日本政府の方からは、こういうことをやってくれと言ったことは、後でしっかり聞いてみますが、ないと承知をしております。

武正委員 では、ぜひその点も御確認をいただきたいと思います。

 ただ、ブリーフで私も述べましたし、民主党の次の内閣の外務防衛部門会議、週二回開催をしておりますが、そのときに、十一月一日、報告をしましたが、残念ながら目新しい情報がなかった。あるいは、この委員会でも、特に、例えばOEF・MIOでテロリストは何人捕まえたんですかとこの間も、先週外務大臣にもお聞きしましたが、こういったことについてはやはりコメントを控える、あるいは言えない、こういったことで、残念ながら目新しい情報がなかったといったことを御報告させていただきたいと思います。

 さて、十月二十五日、先週の木曜日、部門会議で、きょうは梅本外務官房審議官がお見えでございますが、週に二回、私どもは部門会議で、給油継続を政府が求めるという、そうした旧法の延長、あるいはまた、結果、新法の提出といったことになりましたが、参議院選挙以来、部門会議で関係三省庁を中心に資料要求を重ねてまいりました。関係省庁の皆さんにも真摯にお答えをいただいているところも本当に心から感謝を申し上げますが、残念ながらまだまだ、いろいろ求めている資料をしっかりと出していただいているところになかなかならないといったところも事実でございます。

 その部門会議で、梅本外務審議官がこのように述べたわけでございます。米国が給油量は八十万ガロンと言っていたので、それを前提にイラク戦争に転用していないか確認していた、量が問題になっているとの認識がなかったので、数字の確認はしなかった、こういうふうに述べられて、そのことも報道をされたわけでございます。

 その報道、あるいは、我々も、そうすると、では、外務省はそれこそ日本の給油が「ときわ」からペコスへの八十万ガロン、こういう認識のまま米国に対して照会をしてきたのか、その八十万ガロンがテロ特措法以外に転用されていないということを、八十万ガロンを前提で確認していたのか、こういうふうに受け取ったわけですが、改めて事実確認を願いたいと思います。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の民主党外務防衛部門会議での私の発言について、正確な事実関係ということで御説明をいたします。

 御案内のとおり、二〇〇三年の五月六日に、モフィット・キティーホーク機動部隊司令官が、キティーホークが海上自衛隊から間接的に、これはアメリカの補給艦を経て燃料補給を受けたということを述べたということが報じられたわけでございます。これに対しまして、政府からは、米国政府に対して、報道にあるその司令官の発言等について照会を行ったということでございます。

 これに対しまして、アメリカ側からは、まず司令官の発言は、米軍の補給艦はオマーン湾において海上自衛隊から燃料を受けた、我々は、アメリカ政府でございますが、対テロ戦争における日本政府の支援に感謝しているという趣旨を述べたものだということ、それから、キティーホークは、OEFに従事中の二〇〇三年二月二十五日、当該アメリカの補給艦から、ペコスということでございますが、約八十万ガロンの燃料を受給したということ、それから、アメリカは、これまで海上自衛隊から提供を受けました燃料については、テロ対策特措法の趣旨や目的以外に使用したことはなく、今後も使用することはないことということにつきまして確認がなされたということでございます。

 私が御説明いたしましたのは、そういう事実関係に基づきまして、二〇〇三年の二月二十五日に米空母キティーホークがアメリカの補給艦から約八十万ガロンの燃料の提供を受けたことを当時アメリカ側に確認した、そのほかにも今のようなことを確認したという趣旨で申し上げたことでありまして、海上自衛隊の補給艦が当該アメリカの補給艦に対して行った給油量について確認を行ったという趣旨で述べたわけではない、こういうことでございます。

武正委員 梅本審議官の述べた趣旨では、「ときわ」からペコスへの給油量については幾らだったと認識をされていたんでしょうか。

梅本政府参考人 まさに報道が、キティーホークがアメリカの補給艦から給油を受けたと。報道は幾つかあるんですが、そのうちの幾つかの報道の中には、アメリカの補給艦から約八十万ガロンを受けたというのもございました。

 いずれにせよ、報道にありましたのは、アメリカの補給艦からキティーホークが給油を受けた、その補給艦は日本の海上自衛隊から補給を受けたということでございます。ですから、私どもが確認したのは、アメリカの補給艦からキティーホークに補給を受けた、そこの部分について、一つは、キティーホークがその補給を受けた後OEFに従事していたのかどうか、すなわち、特措法の趣旨、目的に合致した補給であったかどうかということを確認したわけでございます。

 ですから、その前段階の、海上自衛隊から補給艦のところの補給の量等について、こちらの方から問題にしたり、照会をしたということはございません。

武正委員 いや、私が今聞いたのは、当時外務省は、アメリカに照会をしたときに、「ときわ」からペコスへの補給量についてはしっかりと認識をした上で、まあ私は八十万ガロンというふうに認識していたんじゃないですかとさっき聞いたんですね、部門会議の発言から。

 いや、そうじゃありませんということであったんですが、では、その数量は認識をされて米国に照会したということでよろしいですか、二十万ガロンということで。

梅本政府参考人 これは部門会議でも御説明したと思うんですが、この当時は、海上自衛隊の「ときわ」からアメリカの補給艦ペコスへの給油量については特に問題になっておりませんでした。したがって、そこについて私どもは確認する必要があるとも考えておりませんでしたので、そこについて幾らだったのかということはアメリカに対して確認をしたということはございません。

武正委員 「ときわ」からペコスへの補給量は外務省として承知をして、米国にテロ特措法以外に使われていませんねということで確認をしていたということでよろしいですか。

梅本政府参考人 当時の状況でございますが、「ときわ」からアメリカの補給艦に対して給油量が幾らであったかということは、私ども承知をしておりません。

武正委員 十月二十五日の小野寺外務副大臣の記者会見が外務省のホームページに載っておりまして、その中で、当時の防衛庁が言うとおり、二十万ガロンだと理解していた、こういうふうに述べているんですけれども、今の御発言とは異なるんじゃないでしょうか。

梅本政府参考人 もう少し詳しく申し上げますと、この報道は五月六日になされたわけでございます。私ども、五月六日の、恐らくもう夜だと思うんですが、あるいは昼かもしれません、報道の直後にアメリカ側に対して照会をしたということでございます。その後、五月七日にアメリカ側から回答があった。さらに、それ以降も、これは私どもが在京大使館に対して照会をしておりますが、同時に、より詳しい照会は防衛庁の方からやはりアメリカ側になされております。

 その結果としていろいろなことが確認をされたということで、防衛庁の方でいろいろな応答要領等を作成された。そういうものをまた私どもがちょうだいした。

 その後の段階で、まさに防衛庁の資料によって、私どもは、「ときわ」からペコスへの給油量が二十万ガロンだということを、説明を受けたというか、そういう資料をちょうだいした、こういうことでございます。

武正委員 後というのは、どのぐらいの後でしょうか。

梅本政府参考人 五月の六日に報道があり、私どもが防衛省の方からいろいろな資料をちょうだいしたのは五月の八日だというふうに、当時のいろいろな関係者に話を聞いたり、防衛省の方からいただいた応答要領のような資料を見ると、そういう日付のものがございます。

武正委員 五月の八日に、「ときわ」からペコスへは二十万ガロンだったというふうに承知をしたということでよろしいですか。

梅本政府参考人 当時の資料をいただいたわけですが、防衛省の資料からは、五月八日付の応答要領の資料というものをいただいております。その応答要領には、海幕防衛課長の五月八日付のブリーフィングの記録というものがついておりまして、その中で、海上自衛隊からアメリカの補給艦に二十万ガロンの給油を行ったというようなことが述べてあるということで、まさにそういうことを通じて私ども承知をいたしました。

武正委員 そうすると、では、最初の五月六日の照会のときには、「ときわ」からペコスへは一体幾ら補給をしていたのかは知らないまま米国に照会をしたということなんでしょうか。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 そのとおりでございます。

武正委員 ただ、ここでは、キティーホークのモフィット司令官が八十万ガロン、これは間接的にせよ補給を受けたというふうになって、まずは、イラク戦争に従事をしてきたキティーホークに間接的に給油がされたということがまず問題になり、しかも、そうすると、では、八十万ガロンが間接的に給油をされたのかという報道で、翌日の新聞もそうした報道になったわけなんですが、照会をするときには、あくまでテロ特措法に違反していませんねしか照会をしていない、しかも、そのときには、間接給油を行った日本の補給艦が幾ら米国の補給艦に補給したかも知らないまま照会をしている。これが外務省の当時の実情ということでよろしいですか。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 当時の私どもの問題意識というのは、まさに、テロ特措法に基づくアメリカの艦船に対する補給が、法の趣旨、目的との関係で適正に行われたかどうかということを確認したいということでアメリカ側に確認をした、こういうことでございます。

武正委員 ただ、五月七日の福田官房長官の当時の記者会見、それはテロ特措法にのっとっている、こういう記者会見。

 しかしながら、一連の七、八、九と、五月九日の福田官房長官の答弁は、御案内のように、二十万ガロンは一日で瞬間的に消費してしまう、だからイラク戦争あるいはテロ特措法以外には使われない、こういうようなことになっていったわけなので、当初からそうした認識、まず補給艦から補給艦へは幾らだったかは知らなかった、八日の防衛庁の答弁要領で初めて知ったというのは、この後、官房副長官にもお伺いをいたしますが、当時、防衛省ではなくて防衛庁である、内閣府の外局である、内閣府の長は内閣総理大臣であるといった中での対応として、官房長官が法案の担当者、そして、外務省、防衛庁、すべてこの法案の実行に当たっている。そして、先ほど触れたように、内閣府の長は総理大臣である。こういった中で、外務省として余りにもお粗末ではないかというふうに思うんです。

 これはどうでしょうか、外務大臣、やりとりを聞いていて、そんなものなのかということで、我々はとても、外務省が日本の補給艦から補給艦への給油量の確認もしない、知らない、そのまま米国に、単にテロ特措法にかなっていますかという照会をしたというのは、やはり信じがたいわけなんですね。

 八十万ガロンと言っているんだったら、では日本の給油は一体幾らだったのか、そういうのを確認して、まず米国に照会するのが当然だと思いますし、また、今言ったような、政府を挙げて、内閣総理大臣が責任者として、そして内閣官房、外務省、防衛庁と一体となってかかわってまいりましたこのテロ特措法ですので、防衛庁の答弁要領で初めて給油量を知りました、それまではそうした給油量については知りませんでした、これは余りにもお粗末としか言いようがないんですが、いかがでしょうか。

高村国務大臣 アメリカ側と日本外務省は日常的にやりとりをしている中で、アメリカのキティーホークの司令官が、日本の認識と全く違うことを言ったということであれば、これはどういうことなんですかと、日常的にやりとりをする中で聞いて、今梅本審議官が説明したような答えが返ってきたということで、日本の補給艦からアメリカの補給艦に幾ら入ってきたなんということは、アメリカ側に問い合わせるべきことじゃなくて、これはもう防衛庁がわかっている、わかっているはずのことでありますから、そんなところに外務省の疑問点があるわけじゃなくて、違う用途で使われたよ、それはどういうことなのと日常的なやりとりの中で聞いたと。そうしたら、それは違いますよ、こういう意味ですよと返ってきたというのは、そんなに不思議なことじゃないんじゃないでしょうか。そういう感想です。

武正委員 いや、それは八日の時点でようやく防衛庁の答弁要領で二十万ガロンと知ったと今お答えだったので、六日の時点で八十万ガロンの間接的補給を受けたといったときに、今、米国に照会する必要はない、日本のことだということであれば、それで百歩譲って、せめて防衛庁に問い合わせをして、一体「ときわ」はペコスに幾ら補給したんだいと、それを聞いてから照会するのが、同じ政府で一緒になってテロ特措法に当たってきた外務省、当時の防衛庁のあるべき姿なんじゃないでしょうか。それも聞かないで照会をする、そんな、逆にアメリカから、日本政府は何やっているんですか、関係省庁の連絡が余りにも悪いんじゃないんですかと言われないですか。

高村国務大臣 当時のことを考えれば、何ガロンということが問題になっていたんじゃないんですよ。今、取り違えたから、何ガロン何ガロンというのは大きな焦点になっていますけれども、違う目的で使われましたよ、こういうことが衝撃だったから、本当に違う目的で使われたのという照会をしたんですね。

 今でこそ、取り違えということが大きな焦点になっているから、何ガロンというのに皆さんこだわりますけれども、当時の外務省で問い合わせた人の意識からすれば、違う目的に使われましたよということが大きな関心事であって、何ガロンということは大きな関心事じゃなかったというのは、私はよくわかります。

武正委員 ただ、八日、九日の国会答弁、質疑、そして官房長官記者会見では、二十万ガロンだから、瞬間的に一日で消費するから転用はないと、転用なしの根拠に二十万ガロンということを述べておられるわけですね。ですから、六日の時点ではそうした認識はなかったということが述べられましたが、私は、ちょっとそれはおいておいて。

 そうすると、その後、八日、九日に至って、その二十万ガロンということが根拠になっている時点で、果たして今のことが通用するのか。今、防衛庁からの答弁要領が五月八日だというお話でしたが、それについては、私はやはり疑問が残ります。

 そこで、ちょっと先に質問を移りたいと思うんです。

 先週の金曜日、外相は、それとは別個に外務省は在京米国大使館より説明を受けておりますと述べているが、それはいつなのか、また、いつ照会をしたのか。先ほど梅本審議官も述べていましたが、照会は外務省あるいは在米日本大使館のどちらから米国政府のどこに行ったのか。いわゆる防衛庁ルート以外に外務省が別個に照会をしているわけですが、その詳細な照会の日時、場所、相手方、お答えをいただけますか。

高村国務大臣 モフィット・キティーホーク司令官の発言については、基本的には防衛庁が中心となって米国とのやりとりを行ったと承知をしております。同時に、外務省からも照会を行った結果、在京米大使館を通じて二〇〇三年五月七日に説明を受けました。

 具体的なやりとりの詳細については、通常の外交慣行に照らしてお答えを差し控えたいと思います。

武正委員 こちらからの照会は、どちらに対して、特に在米日本大使館から国務省、国防総省などにしたのかどうか、いかがでしょうか。

梅本政府参考人 何分、四年以上前のことでございますので、詳細は、確かなことはよくわかりませんが、私ども、いろいろな照会をいたしますときに、在京の大使館に照会することが一番多うございます。

 また同時に、時差の関係とかいろいろございますので、あわせて、ワシントンの方でも、よろしくお願いしたいということで照会する場合もかなりあるということでございますが、この二〇〇三年の五月六日、五月七日については、必ずしもそこはよくわからないところであります。

 ただ、いずれにせよ、回答はまさに在京アメリカ大使館から返ってきた、こういうことでございます。

武正委員 この点、非常に大事なポイントになりますので、ぜひ照会あるいは確認をお願いしたいというふうに思いますが、これは委員長にお願いしたいと思います。

平沢委員長 後刻、理事会でまた協議します。

武正委員 こうしたモフィット司令官発言事案で、先ほど触れたように、防衛庁は内閣府の外局、そして外務省と内閣官房と、三省庁挙げてこうした事案に当たっていたと承知をしているわけですが、当然外務省も答弁要領、想定問答集をつくったと思いますが、それはございますでしょうか。

高村国務大臣 モフィット・キティーホーク司令官の発言に関しては、当時防衛庁が作成した想定問答集を外務省においてもしかるべく共有していたものと承知をしております。

武正委員 外務省として答弁要領、想定問はつくらなかったということでよろしいですか。

高村国務大臣 今答弁したとおりですから、つくらなかったんだと思います。

武正委員 外務省は、先ほど言いましたように、独自に問い合わせをした、回答は在日大使館から得たということですが、それは内閣官房に伝えたかどうか、いかがでしょうか。

高村国務大臣 在京米国大使館から受けた説明については、内閣官房を含め、政府部内でしかるべく共有したと承知をしております。

武正委員 伝えた日時がわかれば、教えていただきたいと思います。

高村国務大臣 政府の内部でしょっちゅうこういう話をお互いにやっていますから、特にわからないんだと思います。調べようがあるのかないのか、多分調べてもわからないと思います。

武正委員 しょっちゅうやっているということですので、五月七日に回答を得ているわけですから、多分五月七日に伝えたというふうに想像してもかたくないと思いますが、それを例えば八日にしたとか九日にしたというのは、今の外務大臣の発言では、やはり違うのかなと。五月七日にすぐ伝えた、情報を共有したといったことで私は理解をしたいと思いますが、確認はできないということでしょうか。

高村国務大臣 五月七日の近辺で行われたと思っています。間違いなく七日で共有したと、そこまで断定する勇気はとてもありません。

武正委員 そこで、官房副長官、お見えいただきましてありがとうございます。

 外務省は答弁要領、想定問をつくっていないということだったんですが、内閣官房も同様でしょうか。

大野内閣官房副長官 特に、内閣官房において、御発言の想定問答、問答対応、そういうことはいたしておりません。

武正委員 そうすると、官房長官が答弁されるときには、何をもって答弁とされたんでしょうか。

大野内閣官房副長官 ただいまお聞きしておりますと、キティーホークの空母戦闘群のモフィット司令官が五月六日の日に行った発言に関連してお尋ねのようでございますが、今般、内閣官房のテロ対策特措法担当部局、これは内閣官房の安全保障・危機管理室でありますけれども、同時期以降の同部局の作成にかかわるところの保存文書を調査いたしたわけなんですが、当該発言に関しまして、当該応答要領あるいは想定問答集などの資料は存在いたしておりません。

 ただ、当該発言に関しましては、防衛庁が作成をいたしました想定問答集について、当時、内閣官房としては共有をしていたということであります。

武正委員 今回の給油量取り違え事案について、資料が防衛省から配られたわけですが、その二十一ページに、いわゆる想定問答集、防衛庁としての対外応答要領というのがあって、その資料配付表には、内閣官房、外務省に対しても行ったと。多分このことを外務省も内閣官房も言っておられるというふうに思うわけですね。

 ただ、この配付年月日は五月九日になっていますので、先ほど外務審議官は五月八日に防衛庁から想定問答集を受けたという日にちとは異なるわけなんですけれども、外務審議官、この想定問答集でよろしいでしょうか。

梅本政府参考人 確かに、先ほどは五月八日付の応答要領集、基本想定集をいただいていたということでございます。私どもがそれをいただいた時点というのは九日であったのかもしれないと思います。

武正委員 ぜひその点は御確認をお願いしたいと思います。

 官房副長官、どうぞお引き取りください。

 お手元に、先週お求めいたしました委員会提出資料が配付されております。時間の関係もありますので、副大臣、二つお聞きをいたしますが、まず、五月八日入手の米側メモの内容、これはどこから受け取ったものなのか、それから、この墨塗りの十二ページのもの、協力支援活動実績、これは私ども、七百七十七回、早急に資料提出を求めておりますが、これはいつ提出をいただけるのか、お答えいただきたいと思います。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 そのメモですけれども、この御指摘の五月八日入手の米側のメモというのは、平成十五年の五月十六日の衆議院の安全保障委員会におきまして、当時の石破防衛庁長官の方からも述べられたメモであるわけでございます。なお、この当該メモというのは、当時、石破防衛庁長官からも答弁しているとおり、在日米海軍並びに在京米大使館から受領されたものであるわけでございます。

 引き続き、その七百七十七回の件についてお答えさせていただきたいと思いますけれども、我が国から補給した燃料、これはテロ対策特措法の趣旨に沿って適切に使用されているというふうに我々は認識しておりますけれども、適切に情報を開示することによって国民からしっかりと理解を得られるというふうに、そのもとで、七百七十七回ではなくて、全部で七百九十四回になりますけれども、この補給すべてについて今再確認を行っているところでございます。

 本調査につきましては、各国に対して、補給状況等の確認に必要な資料、これらを今要求しておりまして、そのために多少時間はかかっておりますけれども、今全力で確認作業を続行しております。ですから、近々明らかにできる、そのように思っているところでございますので、御理解いただきたいと思います。

武正委員 時間が参りましたので、この墨消しの感想も外務大臣に聞きたかったんですが、来週テロ特もあるようですので、そこでまた御感想を求めたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

平沢委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 来年の三月で、在日米軍駐留経費の日本側負担、いわゆる思いやり予算に関する特別協定の期限が切れることになります。その改定をめぐって、日本側は負担を減額するという意向であり、米側は増額を求めているというふうに報道もされておりますが、現行の平成十八年度特別協定については、平成十七年、二〇〇五年十二月に合意をして、翌二〇〇六年一月二十三日に署名をされました。

 まず、高村大臣に伺いますが、今回の協定についても同様に、来年度予算編成のプロセス、それとリンクしながら、来年の通常国会で新協定案の承認を得るために、今、日米間で協議中ということでしょうか。それから、これまでにどのレベルで何回の協議が行われているか、いつごろまでにまとめるという段取りになっているかという概要を伺えればと思うんですが、いかがでしょうか。

高村国務大臣 今、協議中であります。それだけは申し上げますが、まさに協議中でありますので、どのレベルで何回とか、そういうことはちょっと差し控えたいと思います。

笠井委員 いずれにしても、前回同様に、来年度予算とリンクさせながら、しかるべくまとまるように協議をしているということではよろしいでしょうか。

高村国務大臣 もちろん、来年度の予算編成をにらんで協議をしております。

笠井委員 外務省に伺いますが、昭和五十三年、一九七八年以降、在日米軍駐留経費について日本側が段階的に負担を拡大して、昭和六十二年度、一九八七年度以降は、特別協定を締結してさらに段階的に負担を拡大してまいりました。

 額の問題なんですが、この二十九年間の負担の総額と、今年度分が幾らになっているか。それから、そのうち特別協定に基づく、二十年間ということになりますが、総額と今年度分はそれぞれ幾らになっているでしょうか。数字を端的にお答えください。

羽田政府参考人 ただいま御指摘になった数字について御説明申し上げます。

 平成十九年度の在日米軍駐留経費負担額は約二千百七十三億円でございます。また、昭和五十三年度以降の在日米軍駐留経費負担の総額は約五兆一千六百二十六億円でございます。在日米軍駐留経費負担のうち、平成十九年度の特別協定分は約一千四百九億円でございます。また、昭和六十二年度以降の特別協定分の総額は約二兆三千七百十億円でございます。

笠井委員 日米地位協定に照らしても支出義務のないと言われる、この米軍への思いやり予算に、莫大な国民の税金が使われているということであります。この問題をどう扱うかというのは、もう言うまでもなく極めて重要な問題だと思います。この日米協議に当たって、日本側として考慮すべき幾つかの要素があるというふうに思うんです。

 一つは、米軍再編との関連であります。現行の特別協定締結の際には、政府側の説明はこうでした。現時点では在日米軍再編の進展の結果を見きわめることが困難であるとの特殊な事情を踏まえ、従来のような五年間ではなく、さらに暫定的な二年間を対象とする協定とした、こう政府は説明しておりました。

 要は、米軍再編に伴って、その進展で経費を見きわめるという、そしてさらに、それを見ながら見直しもある、あるいは、いろいろな協定の結び方があるということだったという説明でした。

 そこで、防衛省に伺いますが、その二年間という期限が切れようとしています。当時は米軍再編の中間報告という段階だったわけですが、その後、ロードマップもまとめられる、そして当然、米軍再編の経費の総額も、これは計算して明らかになって、進展の結果を見きわめることが可能な段階になっているというふうに承知していいのか、米軍再編の日本側の負担については一体幾らかかることになったのか、そのことをお答えください。

地引政府参考人 お答えさせていただきます。

 米軍再編につきましては、日米同盟の新たな安全保障上の諸課題に的確に対応していけるようにするとともに、関係地方公共団体、住民の皆様の負担軽減を図るためのよい機会でありまして、ぜひとも実現しなければならないと考えている次第でございます。昨年五月に日米間で合意されました再編実施のための日米のロードマップに従って、着実に実施しているところでございます。

 米軍再編のこれまでの主要な進捗状況について御説明させていただきますと、沖縄関係で申しますと、まず、普天間飛行場代替……(笠井委員「額について聞いているんですから、それはいいですよ」と呼ぶ)はい。

 いずれにしても、経費につきましては、ロードマップに示されたそれぞれの実施時期を踏まえつつ、適切に予算上の措置を講じていく必要があると考えておりまして、現在、十八年度補正予算、それから十九年度予算をそれぞれの進捗状況に応じて計上させていただいているというところでございまして、内容的にまだ米側と協議しているところが多うございまして、現時点で、全体経費についてできるような状況じゃないということを御理解賜りたいと思っております。

笠井委員 目的についてはさんざん当委員会でも議論してきたので、負担軽減にならないということを私は言ってきましたけれども。

 今、総額はまだ言えないんだ、明らかになっていないという話でありましたが、私は、ことし三月一日に予算委員会で質問しまして、当時、安倍総理は、この問題を質問しましたら、日米間で検討して詰めている、鋭意検討を進めて、できるだけ早い段階で明らかにしていきたい、こう答弁していたのが、政府の、総理大臣の答弁なんですよ。その後、半年以上もたっているわけですね。

 いまだに国会や国民に明らかにできないということで、再編だけは交付金を、国策ということで、それに従わせるてこにまで使って、どんどん進めていく、こんなことは私は許されないと思うんですよ。

 では、防衛省に伺いますけれども、ことし六月二十二日に、ブルース・ライト在日米軍司令官が日本記者クラブで記者会見を行っております。ここにテキストがありますけれども、「効果的なパートナーシップを」ということで、会見の中でこう言っています。日本における米軍の再編、これは沖縄における米軍の統合ということを含めて、あるいは普天間の飛行場の移転など、あるいはグアムへの移転なども含めてでありますけれども、大ざっぱに言って日本側の負担は二百六十億米ドルくらいではないかと言われています、こういう形で、具体的な数字もここで言っています。

 二百六十億米ドルというと、大体三兆円ですね。当初から三兆円という数字は言われてきた額でありまして、たしか守屋前次官もそういう数字をどこかで言われていた。しかし、政府としては認めてこないとずっと言ってきた。

 ロードマップが確定して実際に再編を進めている中で、米側がこれぐらいになるということで繰り返し言ったりしているのに、なぜ当事国である日本として、総額これぐらいになるという規模を明らかにできないのか。一体これはいつになったら明らかにするんですか。前総理大臣は、鋭意検討を進めてできるだけ早い段階で明らかにすると言っている。でも、先ほどの説明は、一個一個やりながらやっていくので出せませんという話です。全然違いますけれども、では、いつになったら明らかにできるんでしょうか。

長岡政府参考人 御指摘の点でございますけれども、平成十八年の五月に防衛庁長官からも発言をさせていただいておりますけれども、在日米軍の再編につきましては普天間の代替施設の建設を初め国内の米軍施設の移転などの措置を講ずることが必要となるわけでございますけれども、こうした措置に伴う所要経費につきましては、米側から詳細なスペック等のデータの提供がなくては正確に見積もることが困難ということで、今鋭意作業はしておりますが、現在積み上げた数字というものはございません。できるだけ早急に、わかり次第、作業を急ぎたいとは思っております。

 以上でございます。

笠井委員 いつもできるだけ早急に急いでやりたいと言って、ずっと来ちゃっているんですね。米側からデータがなかなか来ないという話ですが、求めて早く計算すればいいと私は思うんです。

 今度の協定改定に当たっても、では、また政府は、現時点では在日米軍再編の進展の結果を見きわめるのが困難であるとの特殊な事情があるということで、また協定の期間も含めてやるのかということが問われてくると私は思うんです。

 協定改定に当たって、いま一つの要素として、日本の財政事情があると思います。ことし六月六日に発表された財政制度等審議会、「平成二十年度予算編成の基本的考え方について」というのがございますが、これを見ましても、この中で、人件費の見直しの問題とか、それから光熱水費、この使途の実態把握などの改善を求めるということが出されております。

 防衛省に伺いますけれども、この指摘を受けて、協定改定に向けてどのような検討を行っているんでしょうか。

地引政府参考人 お答えさせていただきます。

 在日米軍駐留経費につきましては、いわゆる平成十八年七月七日の閣議決定であります骨太の二〇〇六におきましても所要の見直しを行うこととされており、また、財政制度等審議会等においても議論されております。

 政府といたしましては、在日米軍駐留経費負担のあり方につきまして、まず国民の御理解を得られるものであることが重要だと考えておりまして、今後とも、厳しい財政事情にも十分配慮しつつ、所要の見直しを図りつつ、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を確保するため、適切に対応していく考えでございます。

 このうち、お尋ねの駐留軍等労働者の給与につきましては、ことし六月六日の財政制度等審議会の建議におきまして、「国民負担に係る駐留軍等労働者の人件費はしっかりとした見直しが求められる。」とされ、「具体的には、長年見直しが行われてこなかった、基本給にその一〇%を一律に上乗せする「格差給」等の国家公務員の水準を上回るとされる部分の問題をはじめ、その給与等のあり方について基本に立ち返った見直しが必要と考えられる。」とされております。

 これらのことを踏まえまして、在日米軍駐留経費負担のうち、駐留軍等労働者の給与につきましては、昨今の社会経済情勢の変化も踏まえまして、国家公務員の給与水準を上回る手当等を見直す方向で、現在、関係機関と真摯に協議している状況でございます。

笠井委員 人件費の問題は、実際にそこで働いて生きている人がいますから、これはいろいろな意味で慎重にやらなきゃいけないと思うんですね、そういう特別な条件がありながらということでつけてきた問題ということであれば。私は、今の答弁ぶりを伺いながら、これは、ではそういうものをだれが負担するのかということも含めて、本当にそういう意味でのきちっとしたことがなければ、働いている人のこれからどうやって生活するかという問題も出てくるということだと、今の感想としては持ちました。

 大臣、いずれにしても、協議中ということでありますが、しかし、そもそもこういうやり方で駐留経費をとにかく負担してきて、二十九年間で五兆円を超えるという負担を、こういう形でこのままこの枠組みで続けていいのかということ自身も、やはり根本が問われる時期に来ているのではないかというふうに思うんです。

 米側にしますと、自国の深刻な財政事情がある、これは言われておりますし、自分たちでも言っています。それから、アフガニスタンでの対テロ報復戦争あるいは彼らの軍事活動、イラク戦争の莫大な戦費という問題もある。さらに、昨日テロ特措法が期限切れになったということを含めて、日本側にさらなる負担をという話も出てくるというような議論もあるということでありまして、シーファー大使も日本側の負担増を求めるような発言も、この協定のもとでの話ということでも、その期間中にありました。

 今月、日米首脳会談も行われることが予定されているということでありますけれども、大臣、今度の改定をめぐるさまざまな要素、私は二つのことを主に挙げましたが、それ以外にもあるかもしれません。そういうことを踏まえて、日本政府として、どのような基本姿勢で米国との改定の協議に臨むおつもりか、その基本姿勢についてお答えいただけるでしょうか。

高村国務大臣 一方で、国民の理解が得られるようなことが必要であります。一方で、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用が図られるような、その両方を満たすような、そういう方向でアメリカと今調整しつつある、こういうことであります。

笠井委員 日米安保体制の問題をめぐっては、ここで始めちゃったらまた議論がずっといろいろあるわけですが、我々はまた全然違う立場を持っています。

 しかし、いわゆる思いやり予算という問題は、むしろ、いろいろな立場の人も含めて、こういうあり方でいいのかという議論があった問題でありまして、ゆめゆめ、アメリカの事情を思いやって増額要求を受け入れるというような形であってはならないというのが、少なくとも私、多くの国民の思いだと思うんです。

 今、国民の暮らしという点では、国民の理解ということも大臣は言われましたが、暮らし負担増という問題では非常に大変な状況にあります。社会保障は削られる、医療も大変という中で、やはりそういう点で、安心できる年金制度の問題とか社会保障の問題とか、いろいろなテーマがある中で財源ということがテーマになっている。そういうことの中で、日米の地位協定に照らしても支出義務のない米軍への思いやり予算にこの二十九年間でこれだけの額の税金をつぎ込んできた、世界で見てもなかなかこういうところはないです。

 こういう問題については、やはり私は、直ちに撤廃ということで、そういうことに踏み出すべきだ。しかも、米軍再編、額を言わないけれども、しかし三兆円と言われる、アメリカもそういうふうになるだろうと言っている。こういう問題についても、やはり中止すべきだ、別枠でさらにやるということはやめるべきだということを強く主張しておきたいと思っております。

 さて、この際ですけれども、別のテーマになりますが、去る六月六日の当委員会で私が質問をしましたOECDの多国籍企業行動指針の問題にかかわって、その後の取り組みの報告を求めておきたいと思います。

 あの質問で取り上げたように、ネスカフェで知られる国際企業ネスレ日本で、八〇年代以来二十年以上にわたって、ネッスル日本労組の組合員に対して、人権侵害、暴力行為、不当解雇などが繰り返されて、今日まで続いている。これはOECDの多国籍企業行動指針に抵触するということで、労働組合側がこの指針の日本連絡窓口、政府の窓口でNCP、外務省と厚生労働省と経済産業省で構成している窓口に申し立てをしておりました。そして、私がこの問題を取り上げて質問をさせてもらいました。これに対して政府は、この指針を重視しており、遵守されるように十分努力してまいりたいということで答弁をされました。

 日本の連絡窓口として、このネスレ日本の事例について、ことし六月以降どのような取り組みをされてきたでしょうか、報告をお願いしたいと思います。

草賀政府参考人 お答え申し上げます。

 ネスレ日本の労働問題につきましては、先生まさに御存じのとおり、これまで、日本NCP、日本連絡窓口におきまして、労働組合側とか企業側の関係者と意見交換を行ってまいりました。特に六月以降でございますけれども、九月十日付で、日本NCPといたしまして、さらなる検討を行うに値するか否かという、いわゆる初期評価ということを行いまして、今回提起されたネスレ日本の労働問題がさらなる検討に値するものであるという結論を出しまして、問題の提起者であります全国労働組合総連合とネッスル日本労働組合側に通知をいたしました。この初期評価に基づきまして、日本NCPといたしまして、OECDの多国籍企業行動指針というものに従いまして、利害関係者の問題解決を支援するために尽力して関係者と協議を行うことといたしました。

 この初期評価を踏まえまして、日本NCPといたしまして、九月十日に初期評価をネスレ日本株式会社に対して送付いたしました。それと同時に、初期評価に対するネスレ日本株式会社側の見解を聴取いたしました。あと、経済団体の経団連と労働団体の連合に対しましても初期評価の結果を伝達いたしまして、さらに、ネスレ本部が所在するスイスの連絡窓口に対しまして、初期評価の概要を今伝達しようとしているところでございます。

笠井委員 この間の取り組み、それから日本NCPの対応を踏まえて、今後、日本のNCPとしてどのようなことをやっていかれるつもりでしょうか。今の段階で言えることについて、お答えいただきたいと思います。

草賀政府参考人 日本NCPといたしまして、まずこの初期評価の内容をきちんとスイスNCPに対して伝達して、スイスNCP側の本件事例に関します見解を求めようということでございます。それから、ネスレ本部の本件に対する見解をスイスNCPにおかれて聴取してほしいという要請をいたす予定でございます。

 そういう形をとりながら、日本NCPといたしまして、多国籍企業の行動指針に基づきまして、今後ともこの問題の解決に貢献するよう努力してまいりたいと思っております。

笠井委員 企業活動のグローバル化に伴って、やはり国ごとの法制度や慣習の違い、これもあって、多国籍企業とその国の労働者との間でさまざまな問題が起こる、労使問題やトラブルが起こるということで、起こり得ますし、実際にあるのが現状であります。だからこそ、この行動指針の遵守がいよいよ大事だというふうに思うんです。

 現在のところ、日本が抱えている日本国内の個別事例というのはこのネスレの争議の問題ですけれども、この問題、今お答えいただきましたけれども、引き続きしっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 終わります。

平沢委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 我が国外交の最高責任者である外務大臣の歴史認識と深くかかわる、沖縄における集団自決、強制集団死への日本軍の命令、強制の存在について伺います。

 集団自決は、悲惨な沖縄戦におけるほんの一部の実相にすぎません。日本軍から軍との共生共死を強いられ、手りゅう弾を軍から配られた住民にとって、強制された死であったことは間違いありません。

 私が尊敬し、信頼する高村外務大臣は、沖縄戦における集団自決への日本軍の命令、強制の有無についてどのような所見をお持ちでしょうか。

高村国務大臣 沖縄戦が住民を巻き込んだ悲惨な戦いであり、その中で集団自決を初めとする悲劇が起こり、多くの人々が犠牲を払われたことを常に忘れてはならないと考えております。余り集団自決について私は知見を有していないわけでありますが、いずれにしても、全く軍の関与がなかったということは考えにくい、こういうふうに思っております。

照屋委員 嘉手納基地における未明離陸による爆音は深刻です。福田総理も高村大臣も、同様の認識を示されました。

 私は、去る十月二十六日の当委員会でも、大臣にこの問題でお尋ねをしました。その際、大臣は、早朝離陸が行われないよう米側に働きかけているところでありますとか、米側とのやりとりの詳細を明らかにすることはできないが、可能な限り周辺住民への影響が最小限になるよう米側に働きかけているとの答弁をしておりました。

 ところが、米軍は、去る十月三十日未明、F15戦闘機などの機体更新を理由に、ことし六回目の未明離陸を強行しました。

 高村大臣、十月三十日の未明離陸について外務省はどのような申し出を行ったのか、それと、米側が未明離陸の理由にしている機体変更というのは合理的な理由になり得るとお考えか、大臣の答弁を求めます。

高村国務大臣 米軍機の早期離陸にかかわる騒音問題につきましては、先日も答弁を申し上げたとおり、飛行場周辺の住民の方々にとって大変深刻な問題であると認識をしております。このため、できるだけ早朝離陸が行われないよう、米側に働きかけを行ってきているところであります。

 十月三十日に行われた早朝離陸につきましては、二十六日の夕刻、未確定ながら、その可能性があり得るとの情報を得たわけでありますが、直ちに外務省から在京米大使館に対して、運用の調整等により、できるだけ早朝離陸を行わないように働きかけをいたしました。また、二十八日には今井沖縄担当大使から嘉手納飛行場司令官に対して、二十九日には西宮北米局長からドノバン在京大使館次席公使に、同様の申し入れを行いました。

 これに対して米側からは、航空機の早朝離陸により住民に騒音被害が及ぶことは十分に認識しているけれども、今般の早朝離陸はF15の機体更新のため必要なものであり、ぜひ理解を得たい、こういう説明があったところであります。政府としては引き続き、米側との協議を通じて、早朝離陸による地元の影響を最小限にとどめるよう働きかけていきたいと考えております。

 機体更新のために必要だということが合理的かどうかということは、これはなかなか難しいことでありまして、米側はそう考える、我々は住民の騒音被害を重く考える、そういうことで、いろいろこちらからは申し入れを行っている、こういうことであります。

照屋委員 大臣、未明離陸による爆音は、北谷町砂辺で最高百九・二デシベルが測定されております。これはもう、やかましいとか騒音というレベルではないのです。周辺住民は、静かに寝かせてほしい、こういう素朴な願いなんですね。

 高村大臣は法律家でもありますが、百九・二デシベルの爆音を想像できますか。私は恐らく想像を絶するという感覚でしか受けとめられないと思いますが、どうでしょうか。

高村国務大臣 確かに、直ちに想像できるということではないわけでありますが、騒音のレベルについては一般に、百デシベルは電車のガード下、百十デシベルは前方二メートルで自動車のクラクションを鳴らした際の音の大きさだ、こういうことを言われているわけで、百九・二デシベルということは相当の騒音であったと思います。

照屋委員 大臣、この未明離陸問題の背景には、一九九六年に合意された日米合同委員会の嘉手納飛行場による航空機騒音規制措置の不完全さがあります。米軍は住民生活を無視して勝手放題の基地運用を行っており、それを許しているのは、私は日本政府の怠慢である、ぜひ実効ある爆音措置を米国に強く迫るよう求めたいと思います。きょうはこれは大臣への要請にとどめおいて、重大な事犯がありますので、残りの時間をそれに充てたいと思います。

 ことし七月、米軍ホワイトビーチに寄港した米海軍の原子力潜水艦ハンプトンの乗組員が、原子炉の定期検査を怠って、記録を偽造した問題が判明しました。この事件について、政府は米側からどのような報告を受けているか、お答えください。

高村国務大臣 米側からは、原子力潜水艦ハンプトンの定期検査を行った際、乗組員がとった手順に米海軍が定める基準に満たないものがあったと判明したため、調査を行っているが、これによって艦内、乗組員及び艦外への影響は全くなかったとの連絡を受けております。

照屋委員 大臣、私が入手した情報によると、この米海軍の原潜ハンプトンでは、毎回実施をすべき原子炉の安全検査を一カ月以上も行わない、それを隠ぺいするために記録を偽造した、こう言われておるんですね。

 それによって米海軍の将校と兵士六人が処分されたというのは外務省に伝わっておるんでしょうか。

高村国務大臣 米側によると、本件は、原子力潜水艦ハンプトンのとった行動及び記録の一部が米海軍の設定している高い基準を満たしていなかったことと関係しており、同艦の士官一名及び五名の下士官が既に処分を受けたとのことでありますが、詳細については引き続き米側にて調査中であるということでございます。

照屋委員 我が国の国内法上、原子炉の定期検査を怠り、しかも記録を偽造するという危険きわまりない悪質な行為はいかなる法律に違反するのか、お答えください。

福島政府参考人 原子力発電所の検査制度についてお答えいたします。

 我が国におきまして、原子力発電所を設置する者は、電気事業法第五十四条の規定に基づきまして、経済産業大臣が行う定期的な検査を受けることが義務づけられております。原子力発電所において御指摘のような行為がありました場合には、同法に違反するということになると考えます。

照屋委員 アメリカの原潜ハンプトンの、定期検査を怠っておった、それによって将校らが処分をされた、そのことは、外務省から沖縄県や関係自治体には通報をされたのでしょうか。

高村国務大臣 まことに申しわけありませんが、現時点でわかりません。

 ただ、外務省が今知っているのは、詳細についてまだわからない、米側について調査中ということでありますので、まだ知らせていないかもしれません。ちょっと調べてみます。

照屋委員 大臣、私はこれは重大な事項だと思いますので、政府、外務省が入手した情報は、ぜひ沖縄県やうるま市など関係自治体に通報をしていただきたいと思います。

 最後に、嘉手納基地におけるパラシュート降下訓練について伺います。

 この訓練は明確なSACO合意違反であります。米軍は、例外的として、去る十月十九日、訓練を強行しております。米側による例外的な訓練強行の理由に伊江島補助飛行場上空の天候不良を挙げておりますが、実際には嘉手納基地上空と変わらない天候状況であったという気象データがあります。政府、外務省、気象データを入手して、米軍の言っていることが正しいかどうか確認したんでしょうか。

地引政府参考人 お答えさせていただきます。

 米側は、SACO最終報告に沿って、パラシュート降下訓練は基本的に伊江島飛行場において実施しているわけでございます。一方、米側によりますと、伊江島につきましては、天候面での悪条件とか、伊江島の訓練が過密なため、一度キャンセルとなった訓練を再度行うには期間を要するなど、訓練実施に対する制約が多いことから、過去半年間、当該訓練を実施できないことが多く、訓練所要を満たさない米軍兵士が生じているということでございました。

 こうした事情を踏まえて、米側は、去る十月十九日午後三時五十分ごろ、嘉手納飛行場におきまして、人命救助のための態勢維持のための、救難隊員九名によるパラシュート降下訓練を実施したわけでございます。

 防衛省といたしましては、日米安保条約の目的達成のため、米軍が訓練を通じて即応態勢……(照屋委員「気象データについて聞いているんだ」と呼ぶ)はい。維持する必要があることは理解せざるを得ないと思っておりますけれども、パラシュート降下訓練につきましては、日米両政府は、SACO最終報告にのっとって、引き続き、基本的に伊江島飛行場を使用することを確認しておりまして、嘉手納飛行場はあくまで例外的な場合に限って使用されるものと理解しております。

 当日の伊江島の天候につきましては、私どもは詳細に承知しているわけではございませんけれども、気象庁発表の沖縄本島の北部地域の午後の天候は曇りであったと承知しております。

 米側によりますと、伊江島補助飛行場は、各軍がさまざまな訓練を実施していることから過密状態であり、今回の緊急を要する救難隊員の訓練を消化することができないということ、また、伊江島でのパラシュート降下訓練は、救難艇でありますとか航空機、さらには地上での要員の待機など、事前に周到な準備が必要であり、当日、天気がよいからといって直ちに計画を変更することは困難であるというふうに聞いております。

 私どもといたしましては、これらの点も踏まえまして、今回の例外的な訓練はやむを得ないものと考えている次第でございます。

照屋委員 気象データをしっかり入手して、米側が訓練強行理由をごまかしていないかどうか、それをしっかりしてちょうだい。

 終わります。

平沢委員長 次に、松原仁君。

松原委員 民主党の松原仁であります。

 まず冒頭、お伺いしたいわけでありますが、中国における遺棄化学兵器であります。この中で、今かなり、四万発を超える弾が回収をされているわけでありますが、この中身、もう既に先般も与党議員の方も問うているわけでありますが、簡潔に、黄弾何発、赤弾何発等々、お指し示しいただきたい。

西政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、これまで約四万二千の弾を回収してまいりました。これまでの回収作業、合計十七回でございますが、その結果、私ども回収しておりますのが、黄弾が約二千二百、青白弾が三発、あと、赤弾、赤筒、緑筒、この赤弾系列のものが大体一万五千二百七十、それ以外に未分類のもの約二万四千がございます。そのうちの二万三千余りは、これは有毒発煙筒でございまして、日本のものではございますが、細部をもう少しチェックしたいというようなものでございます。

松原委員 ここに、おたく、遺棄化学兵器処理担当室から平成十四年十月に出された資料があるんですが、この中に、「化学兵器の定義」というのが十六ページに書いてあります。この定義の中に「「化学兵器」の定義は、化学兵器禁止条約第二条に示されている。また、同条約検証付属書の表には、これに該当する毒性化学物質名及びその前駆物質名が示されているが、この表に載っていない場合でも第二条の定義に合致すれば化学兵器として扱われる点に注意する必要がある。例えば、旧日本軍の化学兵器に含まれる化学剤のうち、「あか剤」については検証付属書の表に載っていないが第二条の定義に合致するため化学兵器として扱われている。」こういうふうに書いてありますが、これは御存じですよね、もちろん。

 ということは、赤剤等はこの検証附属書の表に載っていないということになるわけでありますが、これは要するに、「化学兵器の定義」の中で化学兵器として認められている薬剤というのは、通常の国際的な化学兵器で決められている薬剤の中に、この赤剤等の、これは入っていないということですか。お伺いしたい。

西政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど先生お読みになられた資料にございます、赤筒、緑筒、これは化学兵器とは言えないのではないかという議論、これまでもございました。先生、今おっしゃられますように、化学兵器禁止条約二条において毒性化学物質及び前駆物質などと定義されるものでございますが、赤剤及び緑剤について、ここの中の記載云々、これは従来から先生御指摘のとおりでございます。

 ただ、それに関しましては、これまでもお答えさせていただきました。赤剤及び緑剤については、生命活動に対する化学作用により、人または動物に対し一時的に機能を著しく害する状態を引き起こし得ることから、条約上の毒性化学物質、すなわち化学兵器に該当するということで、私ども、これを判定いたしております。

松原委員 それはいつから日本はそのように認定をしたんですか。

西政府参考人 恐れ入ります。条約上のことでございますので、これは外務省本来のことかとは思いますが、私ども、これは化学兵器禁止条約締結後、このように理解をしていると承知しております。

松原委員 そのような理解をしている国は、日本と中国が恐らくそうなんだろうと思いますが、他の国もそういう理解をしているというふうに御認識ですか。

西政府参考人 済みません、他国のことに関してはちょっと私、承知をいたしておりません。

松原委員 結論から言えることは、少なくともこれは、条文の中で日本はそう読み込むということでありますが、国際社会においては別に読み込まないケースも非常に多い、こういう認識だと思うんですね。

 したがって、今冒頭おっしゃった部分で、黄弾というのは明らかにどこの国が見ても化学兵器禁止条約に該当する、これはもうマスタードでありまして、二千二百発。ただし、赤等に関しては一万五千発、これが一番大きいんです、未分類をまた別にして。

 この一万五千発というのは、要するに国際社会の、この条約の中で文言としては書かれていない。我々は有害物質という文言の中でそれをそのように読み込むということを、日本は日本の一つの解釈の中で入れている、こういうことなわけであって、私が申し上げたいことは、実際、この部分に関しては、催涙ガスなんかに関しては今でもそれぞれデモ隊の鎮圧等に使ったりしているわけですから、厳密にどうしてもやらなきゃいけないのは黄剤の二千二百発を中心としたものであって、それは全体の過半数までいっていない。これをまず第一に指摘しておきたいと思います。

 その中で、未分類のもの二万四千発、これは有毒発煙筒ということでありますが、ちょっと詳しく内容を教えてほしい。

西政府参考人 条約のことを私が申し上げるのはいささか越権かとは思いますが、先ほど先生おっしゃいました赤剤、緑剤に関しまして、いささか差異がございます。赤剤に関しましては、先生御存じのとおり、くしゃみ剤あるいは嘔吐剤と言われるものでありましたが、他方、緑剤、これが催涙剤ということで、これは国内の暴動治安用には、国内向けには使用が許されるというようなことはありますが、赤剤に関して、そういうような国内向け、国際向け云々の記述というものは条約の方にないと承知しております。

 それから、今先生おっしゃられました、今、不明弾と俗に私ども分類しておるものでございますが、これは現在のところ、私どもの承知しておる範囲では有毒発煙筒が一番多数ございます。そのほかに、焼夷弾なのか黄弾なのかちょっとわからないものというようなものも若干数入っておりますが、いずれもこれが日本製のものであるということで、今後、細部をチェックをすべきものと承知しております。

松原委員 この有毒発煙筒というのは何なんですか。黄剤なんですか、赤剤なんですか、緑剤なんですか、何なんですか。

西政府参考人 これは赤剤の入っておる発煙筒を指しております。

松原委員 そうすると、この有毒発煙筒というのは、いわゆるここに書いてある、黄剤とか赤剤とか、これが全く含まれていない発煙筒は一切入っていない、紛れていない、こういうことですね。

 答弁を考えている間に、もう一つ質問させてもらいます。

 今言った有毒発煙筒というのは、そこにどういうふうな文字が書かれているのか。そこに有毒発煙筒で赤とか黄とか、何かそのシグナルが書いてあるのかどうか、そのことも教えてほしい。

西政府参考人 まず、発煙筒の性状から、これは基本的には、くしゃみ剤、嘔吐剤、そういったものが中心になっておりますので、赤系統のものというのは、先生御指摘のとおりでございます。

 それから、有毒発煙筒の形態につきましては、大中小いろいろな形態がございまして、これに関しまして、表面に明示的なものがあったかどうか、申しわけございません、今ちょっと私、記憶にございません。

松原委員 どこまで現場のことを皆さんが把握しているかというのは極めて重要なわけであります。

 では、その発煙筒のどこをもってこれは有毒ガスの発煙筒だという判断をするのか。例えば、発煙筒の中に、場合によっては、普通はそこにそういった有毒のものを入れないけれども、有毒のものをオプションでつけるということもかつてあったんじゃないかという、私は可能性があると思うんですよ。そういったことを含めて、何をもって外観から有毒かどうかと判断をしているのか。その辺の基準も教えてほしいと思います。

西政府参考人 お答え申し上げます。

 発煙筒、赤系統の発煙筒に関しましては、俗に赤筒という名称のもとに、そのサイズに違いがございます。他方、先生御指摘のとおり、単に煙を発するだけの発煙筒、これも別途ございまして、その剤は全く異なるものでございます。

 今私ども、その過去の資料から調べて、それを赤剤の発煙筒、また、それ以外の単に発煙のみの意図の発煙筒、そういったものについては明示して議論しております。

松原委員 議論していてふと思うんですが、発煙筒として日本が使ったものが、いわゆる化学兵器としての、まあ赤剤自体は、日本の方は条約第二条のそういう趣旨の中で読み込んでいるという話を冒頭申し上げました、黄剤は入っているけれども。そういう中で、この発煙筒に関して、それは日本軍は発煙筒として使ったものなんですか、それとも毒ガス兵器として使ったものなんですか、どっちですか。

西政府参考人 先ほど先生おっしゃられました、発煙筒という点に関して申し上げるならば、例えば六塩化エタンというものがありまして、これはもう全く発煙剤として扱われております。他方、先生今御指摘の赤系列の発煙筒、これは、その性状からいって、その煙によって著しく人体に対する傷害を起こす、おのずからその用途が違っておったものと承知しております。

松原委員 ということは、この赤剤の含まれている発煙筒というのは、発煙筒ではなくて武器として使った、発煙筒というイメージは煙を出すわけだけれども、いわゆる赤剤と類似したものとして使った、こういうふうに考えていいわけですね。

西政府参考人 先ほど先生おっしゃられましたように、赤剤の性格というものは、嘔吐、そういったものを人体に強いるものでございます。よって、この赤筒、大中小とございますが、それから発する煙によってそういった性状を周囲の人間に強いる、こういったような用い方で赤筒は使われておると承知しております。

松原委員 資料も大分古いものになるわけでありますが、ここに「独立歩兵第百九十七大隊兵器引継目録」というのがあるわけですが、九九式発射発煙筒というのが三十個、この中にあるんですね。そこには資料がないかもしれないけれども、ある。これは、例えばそれが九九式ということで、九九式というのは随分とこの中でも、遺棄化学兵器の室の方でも、九九式の中に赤剤とかいろいろとあるわけですが、こういうものが資料として出てきて、これは毒ガス兵器ではない、いわゆる化学兵器ではないという、これは俗に言うシベリア文書ですよ。それが毒ガス兵器ではないということに関して、この文書からどの辺まで確定をしているのか。この文書を読むだけでそれが確定できるのかどうか、これをお伺いしたい。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のシベリア史料館が所蔵します旧日本軍関係の資料でございますが、これにつきましては、外務省の方から財団法人ディフェンスリサーチセンターに調査を委託いたしまして、本年一月に取りまとめられ、調査報告書となって届いております。これにつきましては、先生の方にも内容につきましては御説明しているとおりでございます。

松原委員 答弁になっていないんだけれども。

 要するに、例えば、このディフェンスリサーチセンターの方で、このシベリア史料館の所蔵資料のこれをずっと、まあ全部じゃないと思うんですよ、まだ三分の一ぐらいですか、扱っている。A、B、Cとつけて、Aは、まさに武装解除のときに化学兵器を引き渡している。Bは、それに附属する防毒マスクとかこんなようなもの。Cは、そういうものはありませんと。そうすると、全部Cで来ているわけですよ。本当にそうなのか。

 これが、遺棄化学兵器というものが、我々が遺棄をしたんじゃなくて、実は中国側に武装解除で渡っていたのではないかという議論があるわけでありますが、この中に、例えば第六軍第七〇師団というのがあって、Bと書いてあるんですよ。Bというのは、これはいわゆる化学戦資材として、防毒面が武装解除のときに渡されている。通常、防毒面が渡されていれば、それにかかわる毒ガス等も使う可能性があるわけでありますが、その第七〇師団司令部の武装解除のときの資料というのがここにあるわけですね。「第七十師団兵器関係軍需品引継目録」、中華民国、三四年と、当時は中国は中華民国でしたから、これでやっているわけであります。

 移管責任者は、日本側、第七〇師団長、陸軍中将内田孝行、中国側は、第一〇戦区司令長官部日軍軍需品第二接管所兼所長、陸軍少将李盛宗と書いてありますね。こういうのがたくさんある、もちろん。

 そこで武装解除しているわけでありますが、この中で、九二式歩兵砲りゅう弾というのが一万四千百七十二発、その下に、ちょんちょんと書いて一千四百七十三発、こう書いてあるんですよ。その次に、四一式山砲りゅう弾三千六百二十三発、その下に、横にちょんちょんと書いて五百十四発と書いてあるんです。

 九二式も四一式も、化学兵器をこれで使うことが十分できるというのは、こういうさまざまな文書から、これは秘密兵器概説、陸軍の中で軍事秘密、こう書いてある。この中に、この兵器は化学弾を使うことができる、四一式や九二式がそうですと。その弾があって、一万四千百七十二発とあって、その隣にちょんちょんと書いて一千四百七十三発とある。四一式が三千六百二十三発と書いてあって、ちょんちょんで五百十四発と書いてある。

 私は、実は、これは化学弾だった可能性が極めて高いというふうに認識をしているわけでありますが、このちょんちょんの部分はどうやってチェックをして、本当はここに呼ばなきゃいけなかったんだけれども、このディフェンスリサーチセンターは、AじゃなくてBというランクをつけたのか。

 このことについて、外務省なり遺棄化学兵器室なり、ディフェンスセンターに確認をとりましたか。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 本件の調査につきましては、防衛装備、戦史、化学兵器といった分野における豊富な経験や高度な専門的知識を持った、まさにディフェンスリサーチセンターという専門家の集団の財団に調査分析をお願いして出てきたものでございますが、ただいまの具体的な指摘につきましては、事前に先生からの御質問も私、受けておりませんでしたので、この場ではただいま確答できません。申しわけありません。

松原委員 事前にそれを言っていなかったというのは違うんだよ。私は、ディフェンスセンターのことについては質問しますときのう言っているからね。

 さはさりながら、シベリアのそれを全部二つの目ですぐ見ろ、そこまでは言わない。言わないけれども、言いたいことは、このディフェンスリサーチセンターがABCの評価をしたわけですね。Aというのは、今言ったように、化学兵器の引き継ぎ記録がある。台湾しかないというデータになっている、台湾しかないと。しかし、実は、ロシアの方では、あったという疑いが極めて濃厚であるという資料も出てきている、ロシアに対しては、ソビエト軍に対しては。

 だから、化学兵器の引き渡しがあったならば、例えば、日本と中国との遺棄化学兵器の枠組みというのに関して、いろいろな再考を迫る条件というのが出てくるわけなんだけれども、中国に対しては、台湾においてはあった、しかし、大陸においてはなかったということで、これはABCのBとCしか大陸にはないんです。それは御案内のとおり。Bは幾つか散見されますよ。しかし、今言ったような、こういうものに関して、四一式のこれに関しては、ちょんちょんのこの後、火炎弾とかいろいろと書いてあるんですよ。

 だから、数からいっても、ここに関しても調査して、恐らく、このデータをつくった当事者、中国の陸軍少将と日本の陸軍中将ですか、それこそ数人しかわからない資料を、ディフェンスリサーチセンターは、後でこうやって眺めて、ちょんちょんもあるけれども、これはAじゃなくてBだ、いや、この部分に関していえばCだと、なぜ彼らが判断できたんだ。私は、それを判断するのはおかしいと。だから、これは一回参考人か何かで呼んで議論しなきゃいけないかもしれないけれども、判断するのはおかしい。

 私も膨大な資料を、まだ序の口でありますが見始めていて、明らかに、どうしてこれで化学兵器じゃないと判断できるんだというようなところがたくさんあるんですよ。それをもって、化学兵器でありません、したがってこのランクではCですというふうに言うことは、私は、かなり何か意図的な発想でそれは誘導しているとしか思えない。

 リサーチセンターの評価は、最後に非常におもしろいことを言っている。「旧第一〇方面軍による中国軍への化学兵器引渡事案は、旧支那派遣軍の化学兵器引渡事案と連動しない事案であると推察する。」とあるんです、「推察する。」と。これは、連動してしまうと遺棄化学兵器のこの枠組みがおかしくなるから、違うということを必死に言いたいわけですよ。

 だから、疑わしいものは間違いなくそうじゃないだろう、こういう議論をしているけれども、私は、これはこれから時間をかけて精査をしていきたいと思うけれども、明らかに化学兵器が含まれていた可能性があるというふうに申し上げたいわけであります。

 そして、時間が余りないので、次の質問に入ります。

 例えば、今回、中国側の強い要望があったせいかどうかわかりませんが、移動式のトレーラーというものが、これが予算として九十億ですか、これは幾ら計上されたんでしたか、お答えください。

西政府参考人 移動式の処理施設に関しましては、本年四月、温家宝総理と安倍晋三首相の間で、その導入についてお話をさせていただいた経緯がございます。

 そのために、現在、概算要求では、国庫債務負担行為において九十四億円、平成二十年度の概算要求分として約四十億円、これを要求させていただいております。

松原委員 いただいたこの調査研究にかかる経費、百五十七億、前回、探査が入ってないのにすごい数字だな、探査が入っていないのに百五十七億もとるのか、こういう話を私はしたわけでありますが、その中でいろいろな数字がある。恐ろしいことに、コンサルタントに払われている費用が、二十二億、十六億、十億の四十八億、約五十億。五十億円をコンサルタント会社に四年間で払っている、こういう状況もあるわけであります。

 それで、この移動式トレーラーの話というのは、いわゆる調査研究のどこに入るんですか。

西政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど先生御指摘の、平成十二年から十五年までの間とおっしゃられた、その関係は、これは、中国における化学兵器処理のための技術、その確立のために、一々、中和法、燃焼法、そのほかすべて実証実験をやったときに必要としておった金目でございます。

 ただいま御指摘の移動式処理施設に関しては、その範疇には含まれておらないかと思いますが、精査して、後刻、再度きちんとお答えさせていただきます。

松原委員 百五十七億も調査研究をし、移動式トレーラーで処理をすることもやるわけだから、もしこの百五十七億に移動式トレーラーが入っていなかったら、この百五十七億というのはどういうことなのか。これは、精査すると言ったから精査してください。どこか入っているでしょう、これをやるためには巨大な中国という場所において移動式トレーラーが適切ですという文書が。百五十七億も使って、コンサルタント会社には四年間で五十億も払っているんだから。

 実際の化学兵器の処理をしているわけじゃないんですよ、この段階は。探査も入っていないとこの間お答えになった。探査も入っていないし、処理も入っていない。単に調査をするのに百五十七億かけているんだから。コンサルタントには五十億払っている。

 これはもっと細かい細目を一つ一つ出してもらうことは可能ですか。

西政府参考人 ただいまお尋ねのございましたコンサルタント経費を含んだ百五十七億というお金、これは先ほど申し上げましたように、我が国が、ハルバ嶺において大量に埋蔵されておる化学兵器をどのように処理するか、そのための実証実験を繰り返していった関係で生じたお金でございます。

 その一々の調査資料に関しましては、これは当然、税金を使ってつくり上げているものでございますので、提出することはもとより可能でございます。

松原委員 きょうは三十分という時間でございますので、もう質問をそろそろ切り上げたいと思いますが、今回の遺棄化学兵器の動きというのは極めておかしな部分が大きい。まず、この予算の使い方、百五十七億も、非常にべらぼうな話であります。これは細目を出してもらわなきゃいけない、納得できない。五十億円をコンサルタント会社に三年、四年で払うなんてべらぼうな話であります。そこには現実の処理は行われていないし、探査も行われていないんですよ。

 同時に、二つ目に、我々が注意したいことは、今回のこの議論の中で、ここに移動式トレーラーも入っていないとしたら、全くこれの意味がどうなるのかという話です。入っていない議論が突然出てくるんだったら、これでやった意味があるのか。

 そして同時に、三つ目の議論としては、私は、このシベリア文書から出てくる限り、日本の化学兵器が中国側に武装解除のときに手渡された可能性を否定することはできない。行っていませんというのも、それを声高に言おうとしているけれども、全然それを証明することはできない。これは、リサーチセンターを呼んで今度やりたいと思うけれども。実際これも、おびただしい数の資料が我々に示すところは、明らかに、遺棄化学兵器と言われているものは、実は渡されたものもある。全部が渡したとは私は言わない。渡されたものは、それを否定することはできない。

 そして、最後に申し上げたいのは、冒頭言ったように、黄弾は、これは、まあ化学兵器をやめましょうと。しかし、ほかのものに関してやる、これは日本のサービスみたいなものであります、ある意味で。しかし、それ以上に、未回収のもの二万四千発という中に、私はこれはきょうは余り突っ込まなかったけれども、どういうレベルでどういう発煙筒なのか、実際、形状はどうなっているのか、そういったことについても議論をしていかないと、この中国の遺棄化学兵器の問題というのは余りにもずさんになってしまうだろうというふうに思っております。

 内容は、こちらも精査してまた質問したいと思いますが、大臣がおられますので、一言、大臣の御所見もお伺いしたいわけであります。

 私は、遺棄化学兵器のこういうことをきちっと確認をしていくということは日本にとっては絶対に必要なことだと思いますが、いかがですか。

高村国務大臣 今の委員の一連の質問に耐えられるような予算の使い方もしていかなければいけない、こういうふうに思っております。

 特に、一部引き渡した、全部とはおっしゃらなかったけれども、一部引き渡した、そして今ある遺棄化学兵器と言われるもののどの部分について引き渡したものかということ、これはどっちに立証責任があるかといえば、それは条約上の建前からいって、日本側にあるんだろうと思います。これについては引き渡したものですよ、これについては日本側に責任はありませんよと。それは非常に困難なのではないかな、こういうふうな感じを、今御質問を聞きながら思いました。

 それから、私は、どれが化学兵器かどうかというのは知見を有しておりませんので、ちょっと勉強してみたい、こういうふうに思っております。

松原委員 時間が参りましたので終了いたしますが、立証責任というのは、それは一つあるかもしれないけれども、しかしながら、化学兵器の禁止条約という枠組みから思えば、日本は踏み込んで処理している。普通やらなくてもいいところまで、と言うと語弊がありますが、踏み込んでやっているということを考えれば、やはりそこは、それなりに私は、主張するべきは主張するし、しかも、このデータのチェックを、シベリアのこの部分に関しても三分の一しかまだ終わっていないというふうなことでありますから、これも早急にやって、そしてだれもが納得できる形で議論を進めていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 以上で終わります。

平沢委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十三分散会


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