衆議院

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第4号 平成20年4月2日(水曜日)

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平成二十年四月二日(水曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 平沢 勝栄君

   理事 河野 太郎君 理事 高木  毅君

   理事 三ッ矢憲生君 理事 三原 朝彦君

   理事 山口 泰明君 理事 山中あき子君

   理事 近藤 昭一君 理事 武正 公一君

   理事 丸谷 佳織君

      愛知 和男君    伊藤信太郎君

      猪口 邦子君    宇野  治君

      小野 次郎君    亀岡 偉民君

      木原  稔君    木村 隆秀君

      塩崎 恭久君    篠田 陽介君

      鈴木 馨祐君    中山 泰秀君

      永岡 桂子君    馬渡 龍治君

      御法川信英君    盛山 正仁君

      安井潤一郎君    山内 康一君

      川内 博史君    篠原  孝君

      田中眞紀子君    野田 佳彦君

      鉢呂 吉雄君    松木 謙公君

      松原  仁君    山口  壯君

      渡辺  周君    上田  勇君

      赤嶺 政賢君    笠井  亮君

      照屋 寛徳君

    …………………………………

   内閣総理大臣       福田 康夫君

   外務大臣         高村 正彦君

   外務副大臣        小野寺五典君

   防衛副大臣        江渡 聡徳君

   外務大臣政務官      宇野  治君

   外務大臣政務官      中山 泰秀君

   防衛大臣政務官      寺田  稔君

   会計検査院事務総局第二局長            小武山智安君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    米田  壯君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 河内 正孝君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 三浦  守君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 梅本 和義君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 猪俣 弘司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 小原 雅博君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    西宮 伸一君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   香川 俊介君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房長)   中江 公人君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  高見澤將林君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  地引 良幸君

   参考人

   (日本放送協会理事)   大西 典良君

   外務委員会専門員     清野 裕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二日

 辞任         補欠選任

  猪口 邦子君     木原  稔君

  木村 隆秀君     馬渡 龍治君

  篠田 陽介君     盛山 正仁君

  鈴木 馨祐君     永岡 桂子君

  御法川信英君     安井潤一郎君

  山内 康一君     亀岡 偉民君

  田中眞紀子君     松木 謙公君

  野田 佳彦君     山口  壯君

  松原  仁君     渡辺  周君

  笠井  亮君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  亀岡 偉民君     山内 康一君

  木原  稔君     猪口 邦子君

  永岡 桂子君     鈴木 馨祐君

  馬渡 龍治君     木村 隆秀君

  盛山 正仁君     篠田 陽介君

  安井潤一郎君     御法川信英君

  松木 謙公君     田中眞紀子君

  山口  壯君     野田 佳彦君

  渡辺  周君     川内 博史君

  赤嶺 政賢君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  川内 博史君     松原  仁君

同日

 理事山口泰明君同日理事辞任につき、その補欠として三原朝彦君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一号)


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     ――――◇―――――

平沢委員長 これより会議を開きます。

 理事の辞任についてお諮りいたします。

 理事山口泰明君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に三原朝彦君を指名いたします。

     ――――◇―――――

平沢委員長 次に、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、参考人として日本放送協会理事大西典良君の出席を求め、意見を聴取することとし、政府参考人として外務省大臣官房審議官梅本和義君、大臣官房審議官猪俣弘司君、大臣官房参事官小原雅博君、北米局長西宮伸一君、警察庁刑事局長米田壯君、総務省大臣官房審議官河内正孝君、法務省大臣官房審議官三浦守君、財務省主計局次長香川俊介君、防衛省大臣官房長中江公人君、防衛政策局長高見澤將林君、地方協力局長地引良幸君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第二局長小武山智安君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平沢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鉢呂吉雄君。

鉢呂委員 おはようございます。朝早くからの質疑でございますが、私、民主党を代表して質問をさせていただきたいと思います。

 まず、質問に当たりまして、私ども民主党として、この間、この問題で十四回外交防衛部門会議を行って、役所の方が中心でありましたが、ヒアリングをしてまいりました。

 一つだけ委員長に申し上げますが、きょうは、この問題は防衛大臣にもかかわる大きな問題である、半分以上は、外務省というよりも防衛省にかかわる問題でありますから、私ども、理事会で、筆頭理事を中心に連合審査、あるいはまた防衛大臣のこの外務委員会への出席を強く求めてきたわけでありますが、これもかないませんでした。また、三月末でこの協定は失効しておりますが、決して私ども民主党の、委員会をおくらせるような意図的なものは全くないわけでありまして、政府側が今の衆参の状況あるいは国会の状況というものを顧みない状況で今四月に入っておる、このことについても私の方からしっかり言っておきたい、このように考えております。まずは、防衛大臣の出席ができなかったこと、大変重要であるというふうに考えております。

 そこで、高村外務大臣には私、超党派の日ロ議連でも大変、いろいろな意味で交流がございますので、きょうは、思いやり質問というよりも、その立場を離れて厳しく意見を言ってまいりたいと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 まず、私ども、一昨年の十二月に民主党の政権政策の基本方針、マグナカルタというものを出しておりまして、その中で、私ども民主党としては、これからの国づくりはやはり共生だ、同時に自立というものも大変大事だということを述べ、外交政策の基本政策では、さきの戦争に対する反省を踏まえて、国家と国家との共生、つまり日本と世界の平和の確保、あるいは人間と自然との共生という視点も含めて、これを国是として世界の国々と相互信頼に基づく対等な関係をつくり上げていきたい、こういうふうに述べさせていただき、平和で自由で開かれた国際社会の実現を推進するということでございます。

 具体的には、アメリカとの関係も、相互の信頼関係、対等な関係をつくり上げる、これが大きな柱でありますし、また同時に、アジアの一員として中国、韓国を初めとするアジア諸国との連携強化、これが二つ目の大きな柱であります。そして三つ目は、国際平和維持活動については国連の平和活動を主体に、日本の主体的な判断でこれに参加をしていくという三つの柱を追求していきたいということを明確にしておるわけでございます。

 そういう中で、今回、在日米軍の駐留経費負担の問題、特別協定という形になっております。私ども、基本的に、十四回のいろいろな検討の中で、やはりこの問題、抜本的な見直しが必要だろうというふうに立ち至ったわけでございます。

 日米両国の経済あるいは政治、財政の状況も大きく変わっております。同時にまた、在日米軍基地のあり方も、日本の防衛という所期の目的から、アメリカの世界戦略といいますか、地球の半分にも至るアメリカの軍事的なプレゼンスを目的というような、目的が相当変わってきておるのではないか。そういった中で、日本の安全保障の再構築というものを、しっかりここで見直しをする必要があるのではないか、こういうふうに考えております。

 したがって、米軍基地の再編、これが今、去年も法案が提出をされました。あるいはまた地位協定自体、そしてこの特別協定、日本の負担のあり方自体も、この三つを総合的に見た中でゼロベースから見直しをする必要があるのではないか、こういうふうにまず申し上げさせていただきます。

 その中で、特別協定についても、基地縮小の観点から、必要な負担について根拠を明確にして精査を厳密にやっていく必要があるのではないか、この原則をきっちりと立てる必要があろう、こういうふうに思っております。現にそこで働く日本人従業員というものが相当数いらっしゃるわけでありますから、その雇用の問題、労働の問題等についても私どもとして十分に配慮する必要がある中で、しかし、この問題については抜本見直しを必要とする、こういうふうに考えております。

 日本はアメリカから守られているから金銭的な負担は当然である、こういった論調の形で来た感がありますが、それを超えて、私どもとして根本からの本質的な見直しを求めていきたい、こういうふうに考えておるところでございます。

 そこで、高村大臣にお聞きをいたしますが、二〇〇四年の十月に、在日米軍の再編論議の中で、キャンプ座間へアメリカ陸軍の第一軍団司令部が移転をするという関係の中で、政府の統一見解が国会の中で出されました。今次の在日米軍の兵力構成見直しは現行の安保条約の枠内で行われることは当然であり、極東条項の見直しといったものには至らない、これが政府見解でありましたが、高村大臣としてこの考えを踏襲されるおつもりかどうか、まず最初、それをお聞きいたしたいと思います。

高村国務大臣 その考えを踏襲いたします。

鉢呂委員 二〇〇五年の二月の2プラス2におきまして、日米政府の共通戦略目標というものが確認をされております。

 これは、日本の地域における目標と、それからもう一つは世界における目標と二本立てになっておりますが、世界における目標というものは二つありまして、国際社会における基本的人権や民主主義、法の支配といった基本的価値を推進していくということが一つと、もう一つは、国際平和協力活動や開発支援における日米のパートナーシップの強化。ですから後段の方は国際平和維持活動というような形でございまして、この二つだけ見ますと、いわゆるアメリカの世界戦略といいますか、あるいは極東条項を超えた新たな日米関係というような形にはなっておらないわけでございます。

 あるいは、いろいろな論議の中で、極東条項の範囲におさめる、従来と変わらない、そういった統一見解も出て、今、外務大臣はそこも確認をされたわけでございますが、この二〇〇五年二月の2プラス2の国際的な、世界における目標、これについてもそのまま踏襲するという形でよろしいんでしょうか。

高村国務大臣 基本的にそのとおりでございます。

鉢呂委員 民主党の先ほどの政権基本政策の中で、我が党は自衛権についても専守防衛の立場を堅持するということでありまして、我が国の平和と安全を直接的に脅かす急迫不正の侵害を受けた場合、憲法九条にのっとり行使する、これを堅持するという立場を鮮明にしておるわけでございまして、日米安保条約の範囲についても従来の極東条項を超えるものでない、この立場を民主党としても述べさせていただきたいと思います。

 それから、二つ目であります。麻生当時の外務大臣は、二〇〇六年の十一月の外交ビジョンで、いわゆる民主主義、自由、人権、法の支配、市場経済といった普遍的価値を重視する価値の外交を推進していくんだ、こういうふうに述べられたわけでありますが、今回の外交青書でもこの問題はほとんど顧みられない、一顧だにされないという論評もあるわけです。きのうそれが正式に決まったというようなお話を聞かせていただきましたが、識者によっては、自由と繁栄の弧という麻生大臣の外交ビジョンというのは、ユーラシア大陸の外周に勃発した新民主主義国家と連携をして、実質的には中国、ロシアを封じ込めるというようなとらえ方があるんですけれども、この自由と繁栄の弧ビジョンについて高村大臣はどのようにお考えなのか、また、高村大臣なりのお考えがあれば聞かせていただきたいと思います。

高村国務大臣 我が国は、従来より、東南アジアや中央アジア、中東欧といった地域において、民主化や市場経済化を進める国々との対話やODA等を通じた協力をしてきているわけであります。本年の外交白書におきましても、昨年一年を通じて、日本外交の地理的な拡大と深化が顕著に進み、民主化や市場経済化を進める国々との間で関係強化が進んだ旨、記述しているわけであります。

 具体的に申しますと、我が国が昨年末から本年年初にかけて、V4プラス1外相会合、日本とチェコ、ハンガリー、ポーランド、スロバキアとの対話の枠組みや、日本GUAM会合、日本とグルジア、ウクライナ、アゼルバイジャン、モルドバとの対話の枠組み、日本CLV首脳会合、CLVとはカンボジア、ラオス、ベトナム、あるいは日本メコン外相会議等を開催して、また南アジア地域連合、SAARC首脳会議に出席したことについて言及をしているわけであります。こういう中で、民主化や市場経済を慫慂してきているわけであります。

 私は、このような取り組みを引き続き実施していきたいと考えているわけでございます。

鉢呂委員 そこで、在日米軍の存在意味といいますか、その関係になるんですが、先ほど、安保条約の極東条項を踏襲という形でありますが、事実上はどうなのか。私が冒頭お話ししましたように、アメリカ軍の、二〇〇一年の中で、テロ問題はそこに発生しておりませんでしたが、機動的に米軍の基地を再編していくんだということが打ち出され、まさに九・一一後、アメリカの米軍基地の再編というものが精力的になされておるという形になっておりまして、日本が負担を軽減するからアメリカ軍の基地をどうこうするという以前にアメリカとしてのそういうお考えがある、こういう状況だと思うんです。

 昨年の給油法の関係で、いわゆるアメリカの第七艦隊空母が、イラク戦争が勃発する直前に、横須賀から最短距離でインド洋に向かって、間接的でありますが、日本が給油をしておったということが航泊日誌で克明に、日付ごとに追っていけば、横須賀から出て最短距離で中東に向かっておるということが明らかになったわけでありまして、私ども、やはり客観的事実として、米軍の日本における存在というのはかなり変わってきておるのではないかな、こういうふうに受けとめておるところであります。

 そういった中で、日本としては、軍縮という立場、これはやはり相当重いものとしてあるのではないか、常に軍事的な問題というものは考えていく必要がありますが、基本的には軍縮、日本の国内においても軍縮。ただ、日本だけでできることではありません。関係国とのバランスというものもしっかり踏まえた中でいくわけでありますが、しかし、やはり意図的に軍備を縮小するという形は、文民の側から常に投げかけていく必要があるのではないか。

 私ども民主党も基地の縮小というのを党是にしておりますし、旧民主党の時代は、駐留なき安全保障、駐留なき米軍との関係というものを打ち出した経過もあるわけでありまして、そういった意味で、冷戦後でも十九年たつわけでありまして、在日米軍基地の縮小といいますか、軍縮という視点から高村大臣はどのようにお考えになるのか、先ほど言ったような、今のアメリカの軍事的な世界に対する考え方との関係でも、お考えを述べていただきたいと思います。

高村国務大臣 アジア太平洋地域には、冷戦終了後も、地域紛争、大量破壊兵器やミサイルの拡散等、依然として不安定で不確実な状況が存在しているわけであります。このような現実の中で、我が国は、専守防衛を基本としつつ、みずからの自衛力のみでは自国の安全が脅かされるようなあらゆる事態に対処できない以上、日米安保条約を引き続き堅持することで米軍の前方展開を維持し、その抑止力のもとで多様な脅威に対し、我が国の安全を確保することが必要だと思っております。

 日米安保体制に基づき我が国に駐留し、海兵隊、空軍や海軍が主体で機動性の高い在日米軍の抑止力は、引き続き、我が国を含むこの地域の平和と安全にとって不可欠な役割を果たしていると認識をしております。

 今般御審議をいただいている特別協定分を含む在日米軍駐留経費負担は、今申し上げたような情勢の中で、我が国の安全保障にとって不可欠な日米安保体制の円滑かつ効果的な運用に重要な役割を果たしていると認識をしております。

 例えば駐留なき安保、これだと、基地周辺の住民負担はなくなるというところは確かにあるでしょうが、やはり抑止力の点で十分かどうかという点、そして何よりも、アメリカがいざというときに血を流してでも日本を守るという決意をするに当たって、駐留はさせないよ、だけれども守ってねというのは通用するかどうかということ、その二つの大きな点をきっちり検証しないと、駐留なき安保というのはなかなか成り立たない議論だ、こういうふうに思っております。

鉢呂委員 冒頭お話ししましたように、アメリカの戦略も相当変更しておるところであります。午後、福田総理が来たとき、次のアメリカ大統領候補の考えとの関係もお話をしたいと思います。

 そういう中で、米軍基地の問題、どうあるべきかということは、やはり日本としても相当突っ込んで検討する必要がある。今アメリカ軍がここに駐留しているからということ、あるいはそれを踏襲して逆に強化をされるような状況、後で質問しますけれども、そういうことではなくて、やはり機動的に対応する。何も日本に駐留していて、日本の抑止力にはなるかもわかりませんが、日本を守るという観点からいけば、そういった備えになっておらないのではないか。戦車一つあるわけではありません、あるいは迎撃ミサイルがあるわけじゃない、こういうふうなことも言われておるわけでありますから、そういう点はやはり根本のところから見直しをしていくという考えがなければならないのではないかな、こういうふうに思うわけであります。

 そこで、この在日米軍経費の負担の問題でありますが、これも、先ほど冒頭言ったように、日米地位協定に基づく負担も従来からずっとあります。この地位協定の範囲内で三十年間、特別協定がつくられて二十年間、行われてきておるわけであります。そして今回、米軍基地の再編という新たな形をずっとやってきておるわけでございます。

 この三つの関係というのは、日本の負担を伴うだけに明瞭に関係がある、こういうふうに私は思っておるわけでありますが、特に、日本政府側から米軍再編にかかわる問題が明瞭に示されてこないという形になっておりまして、昨年の米軍再編特措法の審議においても、これが不明確だということを中心として、我が党はこれに反対をしたわけでございます。

 特に参議院では、参議院の外防委員会で附帯決議、まだ民主党は野党、少数でありましたが、五月の段階でこういった附帯決議も出しております。ロードマップ策定から一年以上経過している中で、米軍再編に伴う日本の経費負担総額の概算をできるだけ速やかに国会に報告することが必要である、こういう強い決議がなされたわけでありまして、もうそれから一年弱たつわけでありますが、今のところ、この米軍再編に伴う総額経費がどのぐらいかかって、日本がどのぐらい負担をするのか、グアム負担が六十・九億ドルということだけが示されておるにすぎません。

 そういった中で、高村大臣としても、この参議院の附帯決議を踏まえて、やはり明瞭に出してもらわなければなりません。その点、いかがでしょうか。

高村国務大臣 在日米軍の兵力態勢の個別の再編案につきましては、平成十八年五月の再編実施のための日米のロードマップにおいて、再編案の実施における施設整備に要する建設費その他の費用は、明示されない限り日本政府が負担するということにされているわけであります。また、米国政府は、これらの案の実施により生ずる運用上の費用を負担することとされており、これらの考え方に基づいて経費負担することになります。

 現在、在日米軍再編の詳細な計画については日米間で検討が進められているところでありまして、経費負担について具体的に申し上げる段階にはないわけであります。具体的な日本側の経費負担の内容については、各年度の予算において所要の経費を計上し、国会において審議を受けることになると承知をしております。

鉢呂委員 今大臣の御答弁なんですが、確かに、もう既に十八年度補正予算から、十九年度本予算、また十九年度補正予算も組まれました、そしてことしの二十年度の本予算、合わせて予算額ベースでもう既に五百十七億に達しております。契約ベースでは八百四十九億円に達しておるわけでありまして、それぞれの年度の予算計上というだけでは全体像が示されない。

 例えば、よく言われるように、アメリカの国防副次官が、日本の負担は二百六十億ドル、当時の為替レートで三兆円というような見通しさえも二〇〇六年に語って、これは日本政府が否定したことになっておりますが、しかし、日本がどういった総額になるのか、またどのような負担割合になるのか、やはりここのところを、特別協定との関係においても明らかにする必要がある、こういうふうに思っております。

 次の質問の方でまたこれが質問されると思いますから、私は概括的なところでいきたいと思います。

 そういった中で、この特別協定、思いやり予算について、外務大臣としてどういった考えを持っておるのかをさせていただきたいと思います。

 前回の協定のときに麻生外務大臣は、光熱水料等の予算について、その節約に関する数値目標を盛り込むべしという質問に対して、時間をかけてこういったものはきちんとすべきだと思います、二年と言わずきちんとやっていくべきだ、こういうふうに前向きに答弁をされたわけでございます。

 その後、私ども、いろいろ事務段階で精査をしていますが、こういった具体的な数値目標でこの思いやり予算についての関係をアメリカと合意してやっていくという方向になっておらないわけでございまして、この点、前大臣が公約をされたわけで、高村大臣としてどのように考えておるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

高村国務大臣 我が国の在日米軍駐留経費負担が我が国国民の税金で賄われている以上、それが効率的、効果的に用いられるべきことは当然のことであります。新たな特別協定の交渉におきましても、米側に対し、日本が負担する経費の削減については強く求めたところであります。

 御指摘の、国会審議で当時の麻生大臣が節約に関して、今後ともいろいろな形で言い続けていく努力は必要だろうといった趣旨を述べたこととの関係について言えば、まさにその点を常に念頭に置いて交渉に臨み、交渉過程において節約努力の重要性を米側に提起してきたわけであります。

 日米間の個別の具体的なやりとりにつきましては、米側との信頼関係にもかかわることから、明らかにすることはできませんが、このような日本側の交渉努力の結果として、光熱費について、二年目及び三年目の負担額を、平成十九年度の予算額から若干ではありますが削減することとなった次第であります。

 さらに言えば、新たな特別協定の有効期間中に行うこととなった在日米軍駐留経費負担に関する包括的な見直しの場等を利用して、今後一層の節約のあり方につき、引き続き米側と協議していきたいと考えております。

鉢呂委員 前大臣は数値目標をきちっと掲げて行うということを明言されたわけでございますから、そこは今言ったような、四億円減額されたからということで済むわけではありません。節約の努力というものを具体化して、それが目に見える形であらわされるという仕組みをつくるべきだと思っております。

 いずれにいたしましても、諸外国、ドイツやイタリーと比べても、この特別協定にかかわる費用というものを直接費用という形で持っている国はありません。それはその国それぞれというふうに大臣は御答弁されておりますが、やはり米軍の他の国との関係というものは説得性を持つわけでありますから、ここのところをきちんとしていかなければ、全く無原則になってしまうわけであります。

 きょうは石破大臣が来ませんでしたが、石破大臣が一昨年、「軍事を知らずして平和を語るな」という書物の中で、思いやり予算はもっと減らす余地があると思います、こういうふうに明言をしております。何でこんなに払わなければいけないのか、こういう疑問を呈して、米軍は、光熱費を日本が負担するので、夏には冷房をがんがんかけて熱かんの酒を飲み、冬は暖房をきかせてビールを飲んでいる、こうやゆしておるというような表現さえ今の防衛大臣がしておるわけであります。

 きょうは大臣がいませんから、そのことを引用しながら、やはり無原則的な形はならない、諸外国でもこういった形はないわけでありますから、ここは、交渉方式もしっかり変えて、やはり基準というものをしっかり持って、あるいはゼロベースで見直しをする、こういう形をとっていかなければならない、こういうふうに思っております。詳しいことは他の委員からまた御質問があろうと思います。

 次に、米軍の訓練に関してでございます。

 これは、在日米軍の再編という形の中で、訓練移転というものが抑止力の維持それから地元の負担軽減に資するんだということで、今回、嘉手納基地等の移転、そして六基地で訓練されてきておるわけであります。詳しいことはもう時間がなくなってきましたから、去年の三月から四回の訓練を嘉手納から移転して行っております。軽減負担というからには、明確に負担軽減というのは、やはり騒音の軽減であります。しかし、残念ながら、北谷町の調査や、あるいはまた防衛省自体の調査でも、そのような結果が出ておりません。

 都合二十日間移転したんですが、その関係の騒音調査を見ても、その月の、例えば三月なら三月の月平均の騒音回数を上回るという方法で私はとったんですが、二十日間嘉手納基地からいなくなっておるにもかかわらず、そのうち十一日間は、通常の、月平均の一日の騒音回数よりも多いというデータになっておるわけであります。これでは、負担軽減という趣旨が全く生かされておりません。

 事務当局に聞きますと、その負担軽減に当たって、アメリカ軍に対してきちんと具体的に軽減すべきだという申し入れはしておらないと。確かに、嘉手納基地にはF15戦闘機が五十三機以上いるというふうになっておりまして、そのうち、今回いずれも五機が移転訓練をするという形になっておるんです。通常二十機程度訓練をするというふうでありますが、五機移転したのであれば、それが目に見えて騒音回数の減少につながるという形をとるべきであるというふうに私は考えます。

 これは大臣に答弁していただきたいんですが、戦闘機が移転をした場合、その移転元の戦闘機の訓練する回数を明確に減らす、あるいは騒音を明確に減らすというような、きちんとした大臣レベルの申し入れをアメリカ側にすべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

高村国務大臣 米軍再編にかかわる訓練移転の実施に伴う嘉手納飛行場周辺の地元負担の軽減につきましては、どのようなとらえ方をするかにもよりますが、本来であれば米軍飛行場で実施されていた訓練が訓練移転により自衛隊施設で行われたものであり、その分の負担は軽減された、これは間違いないところだと思います。

 政府としては、米軍の航空機による騒音問題につきましては、飛行場周辺の住民にとって大変深刻な問題であると認識しておりまして、米側に対し、騒音規制措置に関する日米合同委員会合意を遵守し、周辺住民への騒音の影響が最小限になるよう引き続き働きかけてまいりたいと思います。

 また、政府としては、平成十八年五月の再編実施のための日米ロードマップに基づいて、少しでも米軍飛行場周辺の地元の負担を軽減するために、米軍機の訓練移転を引き続き着実に実施していく考えであります。

 あらゆるレベルでアメリカ側には申し入れていきたい、こう思っております。

鉢呂委員 最後でありますが、日米地位協定の抜本改定についてお話をいたしたいと思います。

 この問題は、今回も沖縄におきまして女子中学生の暴行事件が発生をしたり、今解明途上でありますが、横須賀におけるタクシー運転手の殺人事件のかかわりで脱走兵がかかわっておるのではないか、こういった問題が頻発をしておるわけであります。

 民主党を含めて社民党さん、国民新党さん、野党三党で地位協定の抜本改定が必要であるということで精力的にこれも協議をして、先週まとまり、三党の幹事長がそれに署名をして、今週にも高村大臣を初めとする政府側にこの抜本改定についての申し入れをしたいという運びになっておるわけであります。

 一九六〇年以降の地位協定、一回も改定されておりません。韓国、ドイツではきちんと地位協定の改定をしておるわけであります。運用でこれをすればいいというのが政府見解でありますが、私は、本当の犯罪の抑止力、あるいはイギリス、ドイツでのこの種の暴行事件等の発生頻度が全く違う、日本が多発をしておる、こういう状況からいっても、やはり根本的な見直しが必要である。あるいは、さまざまな施設計画についても、その計画性はこの地位協定にはありません。あるいはまた、環境被害の問題についても、環境条項、あるいはそこの被害が発生したときにどこが負担をするのか、こういった条項もこの日米地位協定にはないのであります。

 特に、犯罪の被疑者にかかわる問題については、あくまでも、地位協定においては、事件発生をしても、起訴前においてはアメリカの中において、アメリカ軍においてこれを行うということになっておるわけでありまして、私どもとして、やはりこれらを全面的に改定することが必要である。非常にアメリカ側は嫌がっておる、ほかの各国の米軍の形に波及をするというようなことが言われておるようでありますが、それとこれとは別でありまして、日本がきちんとこういった問題についてアメリカ側と交渉をする、そのことが最終的にアメリカ側からも尊敬される国になる、こういうふうに私は思っておりまして、ぜひ大臣の前向きな御答弁をお願いいたしたいのでございます。

 今回のタクシー運転手の殺人事件についても、かなり証拠が固まっておるにもかかわらず、きょうの報道等によっては、事情聴取という形で、拘禁、拘束は米軍の中で行われる。本来は、日本が求めたら、アメリカ軍は同意をして被疑者は日本の拘禁施設で行う、これが我々三党の抜本改定の中身でありますが、こういったふうに変えていく必要があるというふうに私は考えておりまして、大臣の御答弁を求めたいと思います。

高村国務大臣 我が国に駐留する米軍の円滑な行動を確保するために、米軍による我が国における施設・区域の使用並びに我が国における米軍の地位につき規定した日米地位協定は、日米安保体制にとり極めて重要なものでありますが、その日米地位協定については、政府としては、従来から、その改正ではなく引き続き運用の改善によって対処していきたいと申し上げてきているところでございます。その時々の問題につきまして、より機敏に対応していくためには、運用の改善により対応していくことがより合理的であると考えているわけであります。

 実際に、刑事裁判手続や環境に関する分野を初め、さまざまな分野においても改善例を積み重ねてきておりますが、今後とも、目に見える運用改善の成果を一歩一歩積み上げていくように最大限努力していきたいと考えているところでございます。

鉢呂委員 これで終わります。ありがとうございました。

平沢委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺周でございます。

 今の鉢呂委員の質問を受ける形で、個別の問題につきまして、もう少し細かくお尋ねをしたいと思います。

 まず、今、地位協定に関係して触れられましたけれども、横須賀市内でタクシーのドライバーさんが殺害された事件で、神奈川県警の横須賀署の特捜本部が二十二歳の一等水兵を重要参考人として事情聴取をするということで、きょうにもというような報道がございました。現在、アメリカ海軍の犯罪捜査局に身柄を押さえられまして、脱走罪で調べを受けているわけでありますけれども、昨日、きょうあたりの報道では、きょうにも事情聴取に、横須賀基地内で取り調べをするという報道がありますけれども、政府として、現時点、この事案についてどこまで把握しているのか、まず冒頭伺いたいと思います。

小野寺副大臣 御指摘にありますように、この事案、米側は神奈川県警からの要請があればいつでも御指摘の米軍人に対する事情聴取に応じるということで言っております。

 一方、本件事案につきましては、引き続き神奈川県警で捜査中でありまして、捜査に関することでありますので、外務省からお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

渡辺(周)委員 外務省が把握をしているけれども、捜査の現在進展中の案件であるのでお答えできないということか、それとも知らないということですか、そこを確認させてください。

小野寺副大臣 この内容につきましては、あくまでも刑事事案でございますので、これは神奈川県警が一義的に捜査に携わっているというふうに私どもは認識をしております。

渡辺(周)委員 外務省として報道以上のことを知っている、だけれども、今ここではお話しできないのですよということで理解していいのですかというふうに私はお尋ねしたんですが。

高村国務大臣 報道以上のことでも知っている部分と知らない部分と、外務省より警察の方がはるかに知っているだろうと思います。

渡辺(周)委員 それを私は別に根掘り葉掘り、この事件がいつどこで何時ごろからどうされるかということを聞こうという意図ではございませんけれども、つまり、外務省が当然この問題については情報を持っていて、そしてこの事案については警察から何らかの情報は受けている、それによって、アメリカ政府なりと必要があらば何らかの協議もすることだって当然あるだろうという意味で聞いたわけでございます。

 この件についてさらに伺いますけれども、お答えいただけるのかどうか。

 米軍では、現在、脱走罪という罪で身柄を拘束され取り調べを受けているわけでございまして、日本側としては、あくまでも、現在、重要参考人という形なんですけれども、この脱走の罪に問われている、米軍ではもう既に罪が認識をされている人間、そして日本側は重要参考人なのだという段階で、どの時点で、つまり一人の同一人物がアメリカ、日本から見て両方とも非常に嫌疑がかかっているけれども、アメリカの方が明白であるとなった場合、アメリカの取り調べが済まないと、これは一般論でも結構です、引き渡されないのかどうなのか。あるいは、日本に身柄を拘束されて、さらに米軍の脱走罪ということについても同時に例えば調べを受けることになるのか。その辺についてはどうなんですか。ぜひ教えていただきたいと思います。

小野寺副大臣 この案件につきましては、現在、神奈川県警で捜査中でありまして、どういう内容になるか予断をすることは差し控えたいと思いますが、その上で、仮に殺人について事実が確認されれば、平成七年の日米合同委員会合意に基づきまして、被疑者の起訴前の拘禁移転を含めて、日米地位協定の枠組みにより適切に対処するということになります。

渡辺(周)委員 この点について、現在、外務省はアメリカ側と何かそういう話をしていますか。それだけ伺います。

小野寺副大臣 先ほど大臣が御答弁されましたが、報道以上のことを知っていることもあり、また知らないこともある。それは、捜査の第一義的な権限を有します神奈川県警が現在対応していただいているというふうに思っております。

渡辺(周)委員 では、それは、神奈川県警もしくはその上部組織である警察庁とアメリカ側が何かの話はあるかもしれないということですか。日本の外務省がこの問題について何か意見交換をしたことがありますか。別に中身のことなんか聞いていない、ありますかというふうに伺ったんですが、ありますか。

高村国務大臣 いわゆる外交交渉という段階ではないわけです。はっきり警察の方で身柄が欲しいということになれば、外交的な交渉に入りますが。ただ、その前段階的に、やはり何らかの話ぐらいはしているという段階だと思います。

渡辺(周)委員 捜査を待ちたいと思いますけれども、こういう点について、やはり日本政府の側が、それは捜査は警察に任せるわけでありますけれども、実際、この地位協定という壁があるという中で、通常の捜査と同様にはいかないということは我々も百も承知でございますから、鉢呂委員も指摘されたように、我々は地位協定の見直しについても、民主党を中心に国民新党や社民党の方々とも、この地位協定をめぐっての我々としての考え方をまとめてきたわけでございます。

 その点で、運用改善合意という形で、やや、一時期に比べれば日本側の主導権を得るようにはなってきた。しかし、やはり地位協定の大きな壁があることで、いろいろな事案が起きた場合に、やはり政府対政府、そういうハイレベルの何らかの形での協議なり折衝なりが出てくるんだろうという中で、ぜひ、この問題については、真相解明に向けて政府も挙げて取り組んでいただきたいなというふうに思うわけでございます。

 それでは、この特別協定についての質問に入ります。

 私どもは、民主党の部門会議で週に二回、外務省あるいは防衛省の皆さんに来ていただきまして、かなりこの問題につきましては質問をさせていただきました。その中で、やはり我々として、どうしてもこだわる部分というのが一つ。在日米軍の兵員は、二〇〇三年四万五百十九人から二〇〇七年は三万二千八百三人ですか、というふうに減員となっている。にもかかわらず、なぜ基地労働者数はふえていくのだろうかということをお尋ねしました。

 この点については、お答えいただいた政府の方、駐留軍等労働者の増加の理由については承知していないと、とんでもない回答をされるわけですね。なぜ米兵は減っているにもかかわらず基地従業員はふえているのかと聞いたら、増加の理由については承知していないと言うんですね。こんなものでどうやって交渉をまとめたんだろうか。まとめた、まとめたと言いますけれども、光熱水道費の四億円が減額されたのだというふうに一生懸命成果を主張されますけれども、反面で、人件費の話になると全く承知していないんだと、こんな木で鼻をくくったような答えをされまして、我々も憤慨したわけでございますけれども。

 実際、どうしてふえたんですか。その点についてお答えいただけますか。

地引政府参考人 お答えさせていただきます。

 駐留軍等労働者の雇用につきましては、地位協定第十二条の四におきまして、「現地の労務に対する合衆国軍隊及び第十五条に定める諸機関の需要は、日本国の当局の援助を得て充足される。」と規定されておりまして、これを受けまして、日米で締結した労務提供契約に基づきまして、使用者である在日米軍が必要とする個々の労務の需要に応じまして日本国政府が駐留軍等労働者を雇用して、その労働者を米側に提供する間接雇用契約をとっているわけでございます。

 したがいまして……

平沢委員長 ちょっと、地引局長、大きな声で、わかりやすくしゃべってください。

地引政府参考人 はい。提供することになっております。

 したがいまして、駐留軍等労働者の必要人数につきましては、やはり一義的には米側が判断するというスキームになっているということでございまして、基本的に米側の要望に沿うような形で我々は考えているというところでございます。

渡辺(周)委員 米側の要望にこたえるということは、この後も質問が出てくると思いますけれども、職種がどんどんふえていくわけですよ。細かいことをもう何回も指摘しました。バーテンダーが七十六人、クラブのマネジャーが二十五人、宴会係マネジャーが九人、挙げたら切りがありません。もう何度もここでも言われていると思いますが、ゴルフコースの整備員が四十七名とか、中には観光ガイドだとか娯楽用のボートオペレーター、これは何ですかと職種を調べたら、ダイビングに行くときの船を操縦したり、あるいはバナナボートを引っ張るモーターボートの操縦士まで日本側が税金を出して、この人たちの、米軍の娯楽ですよね、米兵の余暇のために何でここまでしなきゃいけないのか。中にはケーキの飾りつけ職人なんという人もいるわけですよ。これが一体、日米同盟の発展にどう関係するのか。

 私たちは、この人たちの、せめてこういうオフの分野で使われること、十五条諸機関と呼ばれる娯楽性の高いもの、建物については平成十二年の段階でそういう合意がなされて、娯楽性の高いもの、採算性の高いものについてはもうやめようということになったわけですね。にもかかわらず、人員については、ある意味では米軍の余暇をサポートするような人たちについては、どんどんその職種がふえて、減らないんですよ。施設整備費は減っているのに、どうしてこういう人たちは減らないのか。

 この点について、今お話がありました、根拠でよく言われるのが地位協定の十二条の第四項、現地の労務に対する合衆国軍隊及び十五条、先ほど申し上げた採算性の高い独立機関ですね、諸機関の需要は、日本国の当局の援助を得て充足されるというわけでございまして、この十二条を読む限りでは、アメリカは、必要というならばどんどん日本側に要請をすればどんどん充足されるのだという意味じゃないですよね。これはあくまでも間接雇用の原則を定めたものであって、アメリカの言いなりになってどんな職種の人間でも日本側は人件費を出さなきゃいかぬのだということではないですよね。

 ですから、十二条の四項を根拠にしてアメリカ側の言う人件費まで負担をしなきゃいけないということは当てはまらないと思うんですけれども、いかがですか。

高村国務大臣 おっしゃるように、これは間接雇用の、日本側がそういう人を雇用することのお手伝いをしますよ、こういう規定で、費用を負担するというまでを言っている規定ではないわけであります。ただ、米側がどれだけ人が要るかということをこうして、それに対して日本がお手伝いする。

 ただし、これだと、米側が幾らでも、どんどんふえていくのでは困るから、二万三千五十五人という上限を決めて、その範囲内でしか払いませんよと。アメリカ側が雇用する上でどんどんふえるということは、それはアメリカ側がそれを必要だということであれば仕方がないのかもしれませんが、それについては上限を決めて、それ以上は払いませんよということで、それ以上ふやす分についてはアメリカ自身の、アメリカの国民、アメリカのタックスペイヤーの負担でやっている、こういうことでございます。

渡辺(周)委員 おっしゃることはもちろん我々もわかっていまして、出てくる場合には必ず、こういうところで働く人たちの、ありていに言えば人件費の面倒を見てやることも、日米関係を維持していく上では仕方がないのだ、彼らだって休みの日には英気を養いたいし、それなりの福利厚生があったっていいじゃないかと。だからといって、先ほど申し上げたような、なぜ私たちの国家がアメリカ兵の休みの日のバナナボートを引っ張ることまで税金で出したり、ケーキの飾りつけ職人まで税金で出したりしなきゃいけないのか。

 向こうが必要だと認めるならば、私は、例えば警備だとかあるいは翻訳だとか、あるいは何らかの形で、いろいろな職種がどれだけあるかという一覧表もいただきました。一つ一つ見ました。中には必要だと思われるものも、見た限りでは、これは全部が不必要だとは言いません。こういう仕事も当然必要なのだろうな、それはよく言われる日米同盟の健全な維持のためには必要なのかなと、百歩譲って認められる方々もいるわけです。

 だけれども、余暇や、全くレジャーですね、遊びの時間までなぜ私たちが面倒を見なきゃいかぬのかということについて、日本側は協議の中で主張しているんですか。例えば、個別に観光ガイドが欲しい、あるいはバーマネジャーが欲しい、それについて、いや、もうそこまで、夜、酒を飲む席まで金を出すのは勘弁してくださいというようなことは日本は一回でも言ったことがあるんですか。その協議について、それぐらいの主張はしたんですか。いかがですか。

高村国務大臣 いわゆる十五条諸機関を含め、労務費の一層の節約合理化について米側に強く求めたのは確かでありますが、日米間のぎりぎりの交渉の結果として今般得られたような合意に達した経緯について理解を得たいと考えております。

 十五条諸機関の労務の需要については、合衆国軍隊の労務の需要と同様、日米地位協定十二条四に基づき、我が国当局の援助を得て充足されることになっています。米国は、こうした十五条諸機関と同様の機関を、我が国のみならず米国内及び海外に展開する部隊に付随して設けているわけであります。これは、米軍人軍属の士気及び能率を維持することを目的とした福利厚生のための事業に当たらせるために設けられたものだと承知をしております。

 在日米軍について、日本側がこれら十五条諸機関の労働者の給与を負担することは、同諸機関の経営基盤を安定させ、米軍人等の福祉、士気及び能率の維持の確保に寄与するものであります。これは、在日米軍の効果的な活動の確保という新たな特別協定の目的に合致するものであり、ひいては、これらの労働者の雇用の安定にも資するものであると考えます。

 委員がおっしゃること、わからないではないわけであります。そういういろいろな話をしている中で、大きな全体的の中でぎりぎりに決まったのが今度の交渉結果であるということでございます。

渡辺(周)委員 いや、私がお尋ねしたいのは、そういうことをちゃんと主張しているんですかと。

 つまり、在日米軍の余暇とか娯楽まで日本の税金で賄っている、こういうことまでしていたのかということは、我々も今回のこの審議をするに当たって資料を大分見ましてわかったわけなんです。言葉は悪いですけれども、こんなに日本は隷属的なのかなと。彼らの遊びの部分まで私たちは見なきゃいけないのか、そうしないといわゆる日米関係というものは維持できないのか、そんなにもろい関係なのかと。対等な関係でなかったら、私は、日米同盟を肯定する人たちですら、アメリカ軍あるいは米国に対して一定の敬意を持たないんじゃないのかなと。ましてや、私たちは自分たちの国家に対して卑屈さを覚えるんじゃないか、まあ、実際覚えている。

 ですから、本当にこの問題について、アメリカに対して、納税者の理解を得られません、そして、やはり国家の気概として、あなた方の遊びまで、ここまで税金で見るのはもう無理ですよ、我が国はやはり独立国家としてそれぐらいのことを言いますよということは言えないんですか。実際言っているんですか。言っているけれども、その協議の上で結果として、残念ながらこういう結果になったということなんでしょうか。もう一回お答えいただけますでしょうか。

高村国務大臣 交渉経過の一々については申し上げられませんが、我々が、日本国民の納税者の意識、どういうことを感じるかということについては幅広く言っているということだけは申し上げておきたいと思います。そういう結果、ぎりぎりの交渉の結果こういうことになったので。

 我が国とすれば、一番大切なことは全体の額をどう定めるかということで、そういう中で、ぎりぎり、我が方から、この娯楽性のものはだめです、こっちはいいということよりも、そういうこともひっくるめて、どこの線で我が方は、金額ですね、どの線で持つかということに重点を置いて交渉をした。

 今そういう枠組みになっておりますので、そういう枠組みの中でぎりぎりどうするか。さっき申し上げましたように、ずっとふえる傾向の中で、それを抑えるところで、二万三千五十五人だったかな、その人数をずっと当てはめて、そこまでしか持たないよ、さらにそれに上積みする分については米側が持つんだよ、こういうことでやってきているということであります。

 委員がおっしゃるように、もう少し切り込めればそれはそれにこしたことはなかったのですが、それはぎりぎりの交渉の結果であるということで御理解をいただきたいと思います。

渡辺(周)委員 二万三千五十五人を基準とするのか、一千百億円の人件費総額の中から交渉を始めるのか、どちらからでもいいと思うんですけれども、先ほどの第十二条の四項で、これは間接雇用の原則を定めたものであって、米軍による直接雇用を排除したものじゃないというのが、第六十五回衆議院予算委員会分科会の政府答弁の中でもあるわけでございます。

 米軍による直接雇用を排除したものでなければ、米軍が必要だと認めるけれども、日本側は、これは不必要だ、だからここまでの水膨れした人員はもうとてもじゃないけれども見切れない、例えば次には三千人減らすとか、十五条諸機関にいる六千人をやはり減らすべきだ、それは、悪いけれども独立採算でやっているんだから、あなた方、直接雇用してくれというようなことだって交渉の一つの中で出てきてもいいんじゃないかと私は思うんですけれども、多分その話をお尋ねしても、交渉の中身については言えない、そういう御答弁なんでしょう。

 この十五条諸機関が独立採算で賄われている、正式名称は歳出外資金機関と言われていて、これは米軍の軍規則を根拠とする機関として存在しているわけでありますけれども、例えばここで、採算がとれるのであれば独立採算で人件費は持ってもらえませんか、そういうことを交渉したことがあるのかどうなのか。それから、こういう十五条諸機関の利用状況であるとか収益の額などの情報を求めて、それを提供された上で協議をしているのかどうか、したことがあるのか。その点についてお尋ねをいたします。

 もう時間がありませんので、簡潔に御答弁いただきたいと思います。

高村国務大臣 より効率的な経費負担を求めるとの観点から、御指摘のいわゆる十五条諸機関を含め、米側からできる限りの情報提供を求めた上で交渉をしてきたわけであります。こうしたぎりぎりの交渉の結果、御審議いただいている今般の特別協定の内容となったところでありまして、ぜひ御理解の上御承認いただきたいと考えております。

 具体的なことを一々申し上げられませんが、我々が考えつくこと、いろいろなことを言っていますよ。

渡辺(周)委員 財務省が予算編成等に関する建議の中で言っていた、駐留米軍等労働者の人件費を初めとする経費全般を厳しく見直し、効率化を行うことは当然であり、まさに日米関係に対する信頼関係を高めていくために不可欠である、同時に、負担している経費の透明性を向上させることも重要である、こういうふうにも書かれているわけでございます。

 日本政府の側として、あるいは与党の中でも、今の世俗的に言われる思いやり予算、ここまで日本は負担をしなきゃいけないのかということについて、やはり日本側として、これはこれからも言っていかなければ、当然言っているでしょうけれども、当然日本の姿勢として、アメリカにはそれはもう理解させる。日米同盟のコストとしてこれだけのことを、もともとはなかった負担までも、拡大解釈をし、そしてさらなる特別協定を設けてまでやってきた中で、ここまで負担をするということは、もう本質的な問題でない。この人たちを十五条諸機関で採用しながら、日本人の納税者の納得が得られない、だけれども片っ方では日米同盟の維持のためには必要だと言われても、これは日本国の気概としてここまでやるのだろうか。残念ながら、交渉の結果の透明性についても全然お答えいただけなかったわけであります。

 もう質疑時間がなくなりましたので、残念ながら、これ以上持論を展開して質問することはできませんけれども、同じ日本の国の政党で、同じこの委員会室にいる我々が、民主党であろうと自民党であろうとどこの党であろうと、やはりこの問題に関してはおかしいと、先ほど石破大臣のお話が出てきましたけれども、やはりおかしいと思っているこの認識をぜひ日本政府は重く受けとめていただいて、とにかく、交渉するに当たっては、我が国として独立国の気概を見せていただきたい。この主張をぜひしていただくことを最後に強く要望しまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、山口壯君。

山口(壯)委員 民主党の山口壯です。

 きょうは、いわゆる思いやり予算についてお伺いしたいわけですけれども、きょう、議員会館にすっと入ったら、私はある張り紙を見つけたんです。高村大臣、議員会館にも時々お越しですよね。

高村国務大臣 議員会館に行くのは、月に一、二回は行くと思います。今はその程度です。

山口(壯)委員 そこにはこう書いてあるんです。「現在、議員会館は、電灯・冷暖房等の省エネ対策を実施しております。 ご協力をお願いいたします。 議員会館課」。多分気がついておられないでしょう。

 我々は節約、節約というふうによく言っていますけれども、なかなか、それでどういうふうになるかというのは私は限度があるように思えてなりません。先ほど大臣も、ああ、そういえば気がついていなかったなという趣旨のように私は受けとめますし、それは別に不自然なことでもありません。要するに、一般的な原則が具体的な結果を生むまでには相当な距離がありますね。

 さて、もともとこの地位協定の本体、ここには、日本が、我々がいわゆる思いやり予算と呼んでいる、その負担をする義務というものが規定されていますでしょうか。

西宮政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、大変恐縮でございますが、政府として、議員の御質問にございます思いやり予算という用語は使用しておりませんが、昭和五十三年度以降、日米地位協定の範囲内、あるいはその後、特別協定に基づき、当時でございますけれども、防衛施設庁予算として計上しております労務費それから提供施設整備費などにつきまして、私どもは在日米軍駐留経費負担という用語で使わせていただいております。

 それをお断りした上で申し上げますと、まず、労務費のうち福利費など及び格差給などにつきましては、日米地位協定第二十四条一の規定により、米側または我が国のいずれに負担の義務があると一概に言えるものではありませんが、雇用の安定という政策上の判断を踏まえまして、日米地位協定の範囲内で我が国が負担することとしているものでございます。

 それから、提供施設整備費につきましては、我が国が措置することとした案件の経費につきましては、日米地位協定第二十四条二に従い我が国が負担しておる次第であります。

 続きまして、昭和六十二年以降、我が国は、日米地位協定第二十四条一の規定により、米側に負担義務がある経費の幾つかにつきまして、日米両国を取り巻く諸情勢に留意し、また在日米軍の効果的な活動を確保するために、日米地位協定の特則といたしまして特別協定を締結しておりまして、そのことに基づき負担をしておる次第でございます。

 御審議いただいております新たな特別協定案に基づいて我が国が負担することとなるのは、在日米軍労働者の労務費、基本給等でございます。それから光熱費、そして三つ目に訓練移転費でございます。

山口(壯)委員 労務費、光熱費それから訓練移転費については、もともとの地位協定上には書いていない、こういう答えでしょうか。

西宮政府参考人 もともとの地位協定二十四条の書き方に、そういう用語はございません。

山口(壯)委員 今、西宮局長のお答えどおり、もともとの地位協定には、このような光熱費も労務費も訓練移転費も書いていないわけです。したがって、もともと交渉という位置づけじゃないはずなんですね。これが思いやり予算と言われているゆえんでしょう。そういう意味では、先ほどからもずっと、交渉がどうだったとか、それは確かに話し合いはしているんでしょう。しかし、もともと、これは根っこに返って、そろそろ卒業してもいいんじゃないのかというところから本来進めるべきものです。

 ちなみに、大臣が就任されて以降この交渉がまとまったわけです。大臣として、思いやり予算を、そろそろ卒業時期ではないのかという問題提起はされましたでしょうか。

高村国務大臣 西宮局長から申し上げたとおり、思いやり予算という言葉は使っておりません。

 そして、特別協定に基づく労務費、光熱費、訓練移転費について、もう卒業したい、そういう意思表示はしておりません。減額したいという意思表示はいたしました。

山口(壯)委員 これは政治の意思の問題です。役人に変えることはできません。したがって、政治家として高村大臣が行っておられるんですから、高村大臣が言わなければ、この話は、役人は前例どおりにやります。その高村大臣が指示をされていないんですから、それは今までどおりに打ち合わせをしたんでしょう。そこに一つの大きな問題があると思います。今までの枠組みを踏襲されているわけです。先ほどの答弁にも枠組みという言葉が出てきたり、あるいは全体の額だけ交渉したという言葉が出てきたり。量の問題じゃないと思うんですよ。質の問題ですよ。

 昔、我々は、明治に条約改正ということがあったことを歴史で学んでいます。それとはずっとレベルは違いますけれども、そろそろこの平成の条約改正に政治がかじを切ってもいいと思います。大臣、いかがですか。

高村国務大臣 政治の意思として、従前の枠組みの中でどうやって減額の方向に行くかということで交渉をしたわけでございます。

 同盟のコストということでいえば、在日米軍駐留経費だけ、そこだけ焦点を当てると、我々に言いたいことはたくさんありますけれども、同盟のコストといった広い意味からいうと、アメリカ側もまたいろいろなことを言ってくるというのは委員もよく御承知のとおりだと思いますね。

 そういう中で、全体の大きな観点の中で在日米軍駐留経費をどうするか、そういうことからこの特別協定についての交渉をした、政治の意思に基づいてやってもらった、私もやった、こういうことでございます。

山口(壯)委員 その政治の意思というのが間違っていると思うんです。例えば、グアムに、アメリカの軍隊がアメリカに帰っていくのに日本がお金を出すことを当然と思っている政治的感覚が、そろそろ卒業すべきだと言っているんです。在日米軍の駐留経費、これについても出して当たり前という感覚が、そろそろ卒業すべきだと言っているんです。我々が政権をとらせてもらったときは、こういうことをきちっきちっと、アメリカとの間で、あるべき同盟を目指してやるでしょう。それを言うのが政治家の役目ですよ。

 そういう意味で、今お配りさせていただいているこの宴会係マネージャーというところから始まる資料、今回どういうディスクリプションになっているか全部見てみたんですけれども、具体的な中身についてきちっと話をしなければ全体の姿というのは的を得ません。

 宴会係マネージャーというのは、「食堂における宴会、軽食会、舞踊、余興、その他の社交的な催し物に必要なすべての手配を計画し実行する。催し物の形式及び種類について主催者と相談し、集会の必須条件を勘案の上、注文されたサービスの程度に応じ費用の見積りを作成する。」云々云々とあるわけですね。

 めくっていただいて、一番最後、マッサージ師というのもあるけれども、マッサージ師の職務というのは、「依頼者にマッサージをして、血液循環を良くし、神経及び筋肉を交互に和らげ、又は刺戟し、凝りを解きほぐし、腫れを減らし、身体の柔軟部の痛みを取る。依頼者の要求に従って、又は医師に指示されたとおりに、必要あれば油その他の滑剤を使用して客の身体をこすり、もみ、たたき、ひねり、ひっぱり、衝撃を加え、ゆり動かす。 通常、マッサージと共に入浴、熱療法、及び紫外線又は赤外線療法を施す。依頼者に矯正運動、又はその他の身体の運動について勧告することもある。」云々云々。「又は蒸し風呂で顧客の世話をし、必要に応じ、蒸気を調整する。入浴の後、顧客をマッサージする。滑剤としてパウダー、アルコール、及び油を使用して、標準マッサージ法に従い、顧客の身体をこすり、もみ、たたき、ひねり、ひっぱり、衝撃を加え、ゆり動かす。支払いを受け、金銭登録機に収め、必要な場合には、つり銭を出す。」。

 大臣、これは日本の税金で賄われると承知して正しいでしょうか。

高村国務大臣 特別協定の労務費については、日本の税金で払うのは上限が定まっておりまして、そのどの部分が日本の税金で、どの部分がアメリカの税金か、そういうことはわからないわけであります。

 ともかく、上限を定めて、それについては日本が支払いをしている、こういうことでございます。

山口(壯)委員 今お答えをいただいていないんですけれども、このマッサージ師に対して、日本の税金で賄われるんでしょうか。

高村国務大臣 明確に答えていると思います。

 日本の税金が上限を定めて支払っており、その上についてはアメリカが支払っているんですから、そのマッサージ師の分が日本が払った分に入るのか、アメリカが払った分に入るのかということは、そういう一つ一つの仕事について特定する仕組みになっていない、こういうことでございます。

山口(壯)委員 それがおかしいとは思われませんか。

高村国務大臣 特にそれがおかしい、絶対的におかしいというふうには思いません。ただし、日本が払っているものについて、日本人のタックスペイヤーの感覚からいえば、そういうものについておかしいと感じるだろうなと。

 日本人の公務員に対してそういうことは一般的にしていませんが、ただ、アメリカはアメリカで、世界どこでもこうやっている中で、そういう中で日本が全体の何割払う、そういう特別協定を結んで、そしてその中でどの部分がだれに当たる、こういう特定はできない、する仕組みになっていないということは事実でございます。

山口(壯)委員 それは、まさに間接雇用という形をとっているからですね。アメリカがニーズを言ってきたものに対して、日本の防衛省が雇用をしてアメリカに提供する、間接雇用ですね。

 ほかの国で、例えばドイツでも韓国でもいいです、どこをとってもいい、間接雇用にしているところはどこですか。

西宮政府参考人 米国が軍隊を駐留させている幾つかの国との単純な比較というのはできませんが、間接雇用という明確な形でやっているかどうかは承知しておりませんが、例えば韓国などは労務費の一部を負担しているというふうに承知しております。

山口(壯)委員 西宮さんには大変世話になったから、あえて言いたくはないですけれども、今の答弁については若干正確さを欠きます。韓国は直接雇用です。ドイツも直接雇用です。したがって、寡聞にして私は世界のどこにも米軍に対して間接雇用でやっている例を知りません。もしも私のこの認識が間違っていたら、今教えていただけますか。

西宮政府参考人 お答え申し上げます。

 諸外国におけます米軍基地従業員の雇用形態について具体的に承知しているわけではございません。繰り返しで恐縮でございますが、接受国が従業員を雇用し米軍に提供する、いわゆる間接雇用方式が採用されている国として、英国、オランダ、ギリシャなどがあると思います。

 その他、先ほど述べた韓国などにつきましても、何らかの形での労務費、例えば管理費のようなものを支払っている、負担しているというふうに承知しております。

山口(壯)委員 西宮さん、最後の部分はいかにも韓国が直接雇用ではないような印象も与えかねないんですが、確認のため教えてください。韓国は直接雇用ですね。

西宮政府参考人 失礼いたしました。

 米軍が直接雇用をしているかどうかということでございますが、韓国、ドイツ、イタリアは直接雇用をしておる。ただ、その場合でも、接受国が労務管理に関する負担を、役割を担っているというふうに承知しております。

山口(壯)委員 最後の答弁はだんだん正確になってきました。何かもめごとがあれば政府が出ていって、ちょっと待て待て、そんなこと言われちゃ困るじゃないかということはあるんです。だけれども、日本のように、防衛省が雇用をして、言ってみればアメリカに言われるがままにやっているわけでは全くないわけですね。

 大臣、先ほどのこの資料に、一番最後はマッサージ師でしたけれども、IHAの二一二二、これは順番どおりに並べていますから、アイスクリームメーカーの前にある職種ですけれども、スロットマシン修理工というのもあります。「スロット・マシンを検査し、調整し、修理し、掃除し、及び整備する。検査により機械を分解し、及び作動部品若しくは他の機構を試験することにより、又は機械の動き具合及び何らかの正常でない音の聴取することにより、その機械の欠陥を診断する。」云々云々。

 大臣、これはもう普通の感覚で、別にこれがだめだと言っているんじゃないんです。日本が税金で面倒を見るという間接雇用をしなくていいんじゃないんですかということがポイントでしょう。これは別に、悪いとかいいじゃないんです。アメリカにとって必要でしょう、どうぞ、しかし、アメリカさんの普通の形の直接雇用でされたらいかがでしょうかと言う時期にそろそろ来ているんじゃないんですかと言っているんです。大臣、いかがですか。

高村国務大臣 直接雇用か間接雇用かというのは、まさに地位協定で間接雇用ということになっているわけであります。直接雇用か間接雇用かということと、その費用をどちらが持つかということは必ずしもイコールではないんだろう、こういうふうに私は承知をしております。

山口(壯)委員 まさに、どちらが負担をするかはっきりしていないのであれば、日本として言い出してしかるべき時期に来ていると思いますね。

 そしてまた、地位協定にその間接雇用ということを言っているということが一つの発想の根拠であれば、地位協定自身を改定するその時期に来ているのではないか。先ほど鉢呂議員からも、あるいは渡辺議員からもあったとおりです。

 では、そちらから行きましょう。

 地位協定の改定について、今、運用の改善だけではうまく連続する不祥事を抑え切れていない。そのことに対して、最近は行政の不作為が責任を問われることにたくさんなっている。これだけ問題が起きて、これだけ問題点を指摘されて、なおかつ運用の改善でいいというのは不作為にほかなりません。大臣、その責任はとられますか。

高村国務大臣 委員の言っていることは、私は全く理解不能であります。地位協定を改定したら、不祥事がなくなるんですか。そうじゃないでしょう。不祥事というのは、綱紀粛正、再発防止をどうやっていくかという話でしょう。起きた事件の身柄をどっちがとるかとか、そういうことが直接に不祥事の抑止力になるとは、とてもとてもそういうふうには私は思いません。

 それから、間接雇用制度というのは、駐留軍労働者に対し、国内労働関係法令の適用、労働者の権利保護等の面でメリットを有し、これにより在日米軍の駐留目的の達成を円滑にするものと考えております。これは労働者のためにとってもいいことだ、そういうふうに考えております。

山口(壯)委員 地位協定を改定すれば不祥事がなくなるのかどうか、それは政治が示す意思の問題ですよ。地位協定もきちっとやって、そして少しでもこういう不祥事をなくしていこうという政治的なメッセージが出ていない、そこに問題があるんですよ。政権交代しなければ解決しないのかもしれないけれども、現に、今聞いておかしいと思われた方はたくさんおられる。

 だから、大臣、政治家として役所を率いているんですから。役所は、前例に従って仕事をします。政治家は、道なきところに道をつくって、不可能を可能にするというのが仕事でしょう。役所は、できないことをできないとしっかり言うのが仕事ですよ。

 そういう意味で、大臣、政治家として今おられるんですから、運用の改善ではどうも足りなさそうだなという感覚は共有していただきたいと思います。いかがですか。

高村国務大臣 私が言ったことを聞いておかしいと思う人もたくさんいるかもしれませんが、委員が言ったことを聞いておかしいと思う人もたくさんいると思いますよ。だから各政党があっていろいろな考え方があるんだ、私はそういうふうに思います。

 そして、今の地位協定、地位協定と言ってもいろいろな分野があるわけでありますけれども、身柄の引き渡しに関しては、日本より有利な条件にある国はどこもないんですよ。米軍が駐留している国で、どこもないんですよ。委員は私よりよく勉強しているようですから、あったら教えてください。私は考えますよ、それは。日本より有利になっている国は一つもないですよ。そして、少なくとも、運用の改善で起訴前に身柄が引き渡されている、一部の犯罪にしてもですよ。そういう国は日本以外にない。そういう条件の中で、日本だけ特別というわけになかなかいかないでしょう。

 ぜひ、身柄の引き渡しについて日本より有利な地位協定になっている国があったら委員に教えていただきたいと思います。教えていただいたら、私も勉強します。

山口(壯)委員 被害者の御家族の方に、私の言っていることがおかしいと思われるかどうか、一度ぜひ聞いてください。そこに、今の政治の感覚の問題がある。

 そして、もう時間ですけれども、最後に一つ聞きましょう。

 先ほどのスロットマシン修理工あるいはマッサージ師、日本側の負担で面倒を見ているかもしれないし、見ていないかもしれないという答弁だったですけれども、少なくとも日本側のこの二万三千五十五人の中に入っているかもしれないということは認めておられる。では、これをどうしても税金で見ることが必要なのかどうか、それをはっきりと答えてください。

高村国務大臣 ぎりぎりの交渉の結果、こういうことになった。私たちの感覚からいって、すべてそれがすとんと落ちるものではないことも交渉の結果あり得るということは、外交に長く携わった貴委員ならおわかりのことだと思います。

 それから、地位協定をどうするかということ。被害者の家族の感情だけでやっていいというのは、余りにもポピュリズムというんですよ、そういうのは。もちろん、被害者の感情を十分私たちは大切にしたいと思いますよ。大切にしたいと思うけれども、地位協定を改正するかしないかをそれだけによって決めるなどという、そんなことはとんでもないことだ、私はそう思います。

山口(壯)委員 国民の生命財産を守るのが外交の一つの大きな役目です。そして、私は何も被害者だけに聞けと言った覚えはない。たまたま大臣が、私の言っていることをおかしいと思う人もいるかもしれないとおっしゃったから、ああ、それだったらいろいろな人にお聞きになられたらいかがですかという一つの例として申し上げました。

 ぜひ、耳を大きく持たれて、そして、日本国民の生命と財産を守る大事な立場にある仕事に今つかれているわけですから。しかし、今回の特別協定の交渉の経過を見る限り、二万三千五十五人という大きな枠しか議論していないということがはっきりしました。全体の具体的なことには一切関知していないということがはっきり答弁に出てきました。そういう意味で、私は、この特別協定は極めて時代に沿わないものだという認識を持つに至った次第です。

 質問を終わります。

平沢委員長 次に、川内博史君。

川内委員 川内でございます。

 委員長や本委員会の理事の先生方にお許しをいただいて発言をさせていただくことに感謝を申し上げます。ありがとうございます。

 それでは、早速質問を始めさせていただきたいと思います。

 まず、平成十六年に発生をした宜野湾でのヘリコプター墜落事故、沖縄国際大学に墜落をしたという事故のその後のことについてお聞かせをいただきたいんです。

 この米軍ヘリコプター墜落事件は、航空危険行為等処罰法第六条の業務上過失犯として、氏名不詳の米軍整備士四名が、昨年、平成十九年八月一日に書類送検され、八月十日に不起訴処分になったということを聞いております。

 まず法務省にお尋ねいたしますが、この航空危険行為等処罰法の業務上過失犯の法律上の罰則と、本事件を不起訴とした理由について教えていただきたいと思います。

三浦政府参考人 お尋ねの事故につきまして、那覇地検におきましては、航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律六条二項に定めます業務上過失墜落罪の罪名で送致を受け、不起訴処分にしたというふうに承知しております。

 処分の理由につきましては、第一次裁判権なしということでございます。

川内委員 その航空危険行為等処罰法の業務上過失犯の罰則を教えていただけますか。

三浦政府参考人 航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律六条二項の業務上過失墜落罪につきましては、その法定刑は三年以下の禁錮または二十万円以下の罰金でございます。

川内委員 日本の法律でいえば、三年以下の禁錮または二十万円以下の罰金というのがこの航空危険行為等処罰法上の罰則であるということであります。

 不起訴とした理由は、第一次裁判権なしということだということでありますが、それでは、本件について米軍の第一次裁判権が行使をされたのか、そして、米軍の第一次裁判権が行使されたとすれば、その行使の結果がどのようなものであったのかということについて教えてください。

三浦政府参考人 本件につきましては、事故機の整備にかかわりました海兵隊整備士四名につきまして、第一海兵航空団司令官によりまして、二名が二カ月間の五〇%減給及び文書による譴責処分、それから他の二名が一等級降格処分を受けたというふうに承知しているところでございます。

川内委員 米軍の第一次裁判権の行使の結果は、二名が五〇%減給そして文書による譴責処分、二名が降格。これは、我々の通常の感覚でいうと、何か罰則というより行政上の処分みたいな感じなんですけれども、減俸とか譴責とか降格というのが第一次裁判権の行使の結果であるということなんです。先ほど、航空危険行為等処罰法では三年以下の禁錮、二十万円以下の罰金ということでありました。裁判権の行使ということが、言葉の意味が、若干、私ども国民的な感覚と、あるいは常識と違うのではないかなという気がするんですけれども、その理由について、地位協定上の条文なども引用していただいて教えていただきたいと思います。

猪俣政府参考人 お答えいたします。

 地位協定第十七条、刑事裁判権について規定のあるところでございます。「被告人がこの条の規定に従つて日本国の当局又は合衆国の軍当局のいずれかにより裁判を受けた場合において、無罪の判決を受けたとき、又は有罪の判決を受けて服役しているとき、服役したとき、若しくは赦免されたときは、他方の国の当局は、日本国の領域内において同一の犯罪について重ねてその者を裁判してはならない。ただし、この項の規定は、」云々かんぬん、こういう形で書いてございますけれども、「合衆国の軍当局が合衆国軍隊の構成員を、その者が日本国の当局により裁判を受けた犯罪を構成した作為又は不作為から生ずる軍紀違反について、裁判することを妨げるものではない。」という、ただし書きの部分だと思います。

川内委員 私の質問の仕方が悪かったのかもしれないですが、米国において行使された第一次裁判権とはいかなる裁判権であったのかということについて教えてください。

西宮政府参考人 お尋ねの点につきましては、事故機の整備にかかわりました海兵隊の整備士四名が、合衆国統一軍法典の規定、具体的に申し上げますと、統一軍事法典第九十二条違反ということでございまして、九十二条というのは、職務怠慢ということで責任を問われたということでございます。

 中身につきましては、先ほど法務省から説明がございましたけれども、文書による譴責処分というのは、通常、これに従って、その後、昇給ができなくなるということも承知しております。

川内委員 職務怠慢ということですが、地位協定上は、「合衆国の軍当局は、合衆国の軍法に服するすべての者に対し、合衆国の法令により与えられたすべての刑事及び懲戒の裁判権を日本国において行使する権利を有する。」と十七条の一項(a)に書いてあります。

 私が聞いたのは、米国において行使された第一次裁判権は懲戒の裁判権ですか、刑事の裁判権ですかということをお聞きしております。

猪俣政府参考人 失礼いたしました。

 今回の事例につきましては、統一軍法に基づいた形で処分されたというふうに承知しております。

川内委員 ですから、私どもの疑問は、日米地位協定第十七条一項(a)に、裁判権の中には刑事及び懲戒の裁判権があるよと書いてあって、その二つとも日本国において行使する権利を有するというふうに書いてあるので、普通、裁判権というと刑事裁判権だというふうに常識的には思うわけですよね。だからこそ、国内法でいえば航空危険行為等処罰法で送検され、しかし不起訴になった。なぜかならば、第一次裁判権が行使されたからだということなわけでありますが、米国で行使された第一次裁判権とは刑事裁判権なのか、それとも懲戒の裁判権なのかということをお聞きしております。

猪俣政府参考人 たびたびで恐縮でございます。

 日米地位協定第十七条一には、先ほど一部言及いたしましたけれども、米国は米国の軍法に服するすべての者に対しということで、委員の方からありましたが、米国の法令により与えられたすべての刑事及び懲戒の裁判権を日本において行使する権利を有する旨が規定されているところでございます。

 懲戒の裁判権は、刑事裁判に至らないような事案であっても軍隊がその規律を維持するためにとることが必要な措置であるというふうに認識しておりまして、NATO地位協定や米韓地位協定にも同様な規定があるというふうに承知しております。

 以上にかんがみまして、米軍の裁判権を刑事裁判権に限定することは適当だというふうに考えておりません。

川内委員 いやいや、だから私が聞いているのは、本件に関しては懲戒の裁判権が行使されたというふうな理解でよろしいですか。

平沢委員長 では、ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

平沢委員長 速記を起こしてください。

 猪俣審議官。

猪俣政府参考人 失礼いたしました。

 今回の事件については、統一軍法に基づいてされているわけでございますので、裁判権という意味においてのどちらがこうだということではございませんので、懲戒によるとか裁判権によるという点での重複はないというふうに考えております。

川内委員 いやいや、だから、別に米国において行使された裁判権が不当だとかおかしいとか言っているんじゃないですよ、事実関係を教えてくださいねということを言っているので。ここに「刑事及び懲戒の裁判権」と書いてあるので、懲戒の裁判権が行使されたんですよねということを確認している。なぜかならば、文書による譴責とかあるいは降格というのは普通懲戒というふうに我々は思うし、そうですよねということを聞いているんですけれども。

猪俣政府参考人 どうも恐縮でございます。

 日米合同委員会において承認されました事故分科委員会の報告書、これは平成十七年二月十七日に出たものでございますが、ここにおきましては、「責任のある者に対し、懲戒及び行政処分がとられた。」と記述されております。

 先ほどから議論がありますように、事故原因に責任を有する者に対して適切に処分が行われたというふうに聞いておりますけれども、これはまさに、刑事という点でも、当然に日本側と米側との関係で両方で競合するものですから、先ほど十七条の八で説明しましたように、米側で一度判決が下りましたので、それについての、同一犯罪についての裁判はしないという部分が適用されるというふうに承知しております。

川内委員 委員長、今の説明でわかりましたか。私は、刑事の裁判権が行使されたんですか、懲戒の裁判権が行使されたんですか、どっちなんですか、懲戒なんでしょうと聞いているんですよ。委員長、今の説明でわかりましたか、どっちの裁判権が行使されたのか。

平沢委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

平沢委員長 速記を起こしてください。

 猪俣審議官。

猪俣政府参考人 失礼いたしました。

 今回の事件に関しまして、先ほど来答弁いたしておりますけれども、統一軍法に基づいて処分されたということでございますので、それが懲戒ないしは刑事どちらかという点について、我々がその判断をする立場にないというのが今の整理でございます。

川内委員 いや、判断する立場にないというのはどういうことなんですか。委員長、私が聞いているのはおかしなことですかね。

 日本側も捜査をして、氏名不詳だが、米軍は名前も教えてくれないわけですからね、氏名不詳のまま四名送検して、そして不起訴処分にした。不起訴処分にしたのは、第一次裁判権が行使されたからだというふうに法務省の御答弁があったわけですね。

 日本では、第一次裁判権というと、裁判権とは刑事裁判権のことであるということは明確なんですよ、国内法上は。裁判権というのは刑事裁判権のことである。しかし、米側が第一次裁判権を行使したんだと言うからには、それは地位協定上は刑事でも懲戒でもどっちでもいいよと書いてあるから、どっちでもいいんですよ。懲戒なら懲戒でいいんですよ。それを確認させてくださいと言っているだけの話じゃないですか。

 それを、いや、統一軍法典に従ってやっていますから我々は知りませんと。そんな政府の答弁はあるんですか、委員長。そんなことどっちだっていいんだ、おまえたちの知ったこっちゃねえよと言われたんですよ、私、今。どういうことですか、これは。

高村国務大臣 おまえたちの知ったこっちゃないよと言ったわけではございません。おれたちの知ったこっちゃないという話、どっちかというと、どっちかというとですよ。

 それは、日本の刑法なら刑法、行政法なら行政法と分かれているんじゃなくて、同じ統一軍法の中に記載されている条文によって処分された。それで、今の処分の内容を見れば、日本でいえば懲戒に当たるものです。ただし、アメリカの軍法典の中でこう記載されているものですから、日本政府が有権的に、これは刑罰でこれは懲戒ですよ、そういうことを確定的に言えない、こういうことを政府委員が申し上げた、こういうことでございます。

川内委員 それでは、米側に対して、これは懲戒の裁判権であったのかということを御確認いただきたいということが一点。

 さらに、軍法というのは、今大臣がおっしゃるように、軍部の中でさまざまなものが完結するので、こういうことがあるんでしょう。しかし、国民的には、国民的な感情でいえば、本来ならば刑事罰を受けなければならないであろう事態に対して、米軍の中で行政的な処分、すなわち懲戒ということで終わってしまっているという実態があるということに関しては、なかなか理解できないね、それは、ああ、そういうものかなというふうにはなかなか思えないという感情もあるわけです。

 だからこそ、日米地位協定の改定というか、この裁判権のところも、「刑事及び懲戒の裁判権」ではなくて、もう懲戒は外すとか、刑事的なことに関しては日本も裁判権をしっかり行使しますよというふうにしていかなければならないのではないかというふうに思いますが、これは、答弁を求めても多分大臣も余りいい答弁をしてくれないと思うので、私の意見として聞いておいてください。

 さらに……(発言する者あり)いやいや、いいんです、時間がないから。だって、これはきょう採決しないんだったらきちんと議論しますけれども。だから、そういうことをちゃんと議論させなきゃだめですよ、与党の理事だって。あっという間に採決するからだめなんだよ。(発言する者あり)

平沢委員長 静粛にお願いします。

川内委員 では、もう一つ、次の論点に移ります。

 横須賀市における日本人男性殺害被疑事件について、外務省日米地位協定室がつくったペーパーによりますと、「三月二十二日早朝、在京米大使館から、米軍人の身柄を拘束したとの連絡があり、外務省から米側に対しては、日本側当局の捜査への最大限の協力を要請。」と書いてございます。米軍人の身柄を拘束したとの連絡がありと書いてあります。

 しかし、日米地位協定の十七条十項の(b)には、米軍の軍事警察は、必ず日本国の当局との取り決めに従うことを条件とし、かつ、日本国の当局と連絡してこの警察権は使用されるものとし、その使用は、合衆国軍隊の構成員の間の規律及び秩序の維持のため必要な範囲内に限るものとすると書いてあります。

 この日米地位協定によれば、拘束する前に連絡がなければならないと思うんですが、これは、三月二十二日の早朝に、この脱走兵の米軍人の身柄を拘束したと、拘束するよというふうに日本国の当局に対して連絡があったのでしょうか。

西宮政府参考人 お尋ねの点につきましては、拘束に際しましては、米側から事前に日本側当局への連絡があったものと承知しております。

川内委員 だれからだれにあったんでしょうか。事前に、だれからだれにあったのか。

西宮政府参考人 拘束をいたしました米側当局から日本の警察当局だと理解しています。

川内委員 それは、日本側の当局もそれでいいという御判断だったということですね。

西宮政府参考人 日本側当局がそれでいいという判断だったか否かというお尋ねについて、私は答える立場にございませんけれども、米軍当局は、少なくとも地位協定に従って職務を執行したということであろうかと思います。

川内委員 それでは、次の特別協定のこともちょっと聞かないと、時間があと五分しかないので聞かせていただきます。

 光熱費について、平成十三年の改定時に、施設・区域外の米軍住宅については光熱費を負担しないというふうに除外をしたと聞いておりますが、この除外をするというのは、特別協定上、どのように文章上担保されているのでしょうか。

西宮政府参考人 このたび御審議いただいております特別協定に加えまして、日米間の往復書簡というものをお示ししているわけでございますが、日本側書簡の二bというところがございまして、そこで書いてございます。

 読み上げさせていただきますと、「日本国の各会計年度のための概算要求額に関し、日本国政府は、当該概算要求額に、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族の住宅であって、施設及び区域の外側にあるもののための予想調達量に係る経費を算入しない方針を有する。」ということでございます。

川内委員 日本側書簡の二のbですか。ちょっと、私も部会でもらった資料を持ってきたんですけれども、外側にあるとどこに書いてありますか。

西宮政府参考人 日本側書簡の二のaというのがまずございまして、そこには、電気、ガス、水道、灯油、プロパンガスと、しばらく金額に相当する量というのがずっとございます。その後に、二のbというのに到達いたしますが、よろしゅうございますでしょうか。

 そのbのところをもう一度読み上げさせていただきますと、前記aに言う日本国の各会計年度のための概算要求額に関し、日本国政府は、当該概算要求額に、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族の住宅であって、施設及び区域の外側にあるもののための予想調達量に関する経費を算入しない方針を有するというふうに書いてございませんでしょうか。(川内委員「いや、書いていない。ちょっと見てよ。これは部会で配られた」と呼ぶ)往復書簡でございますが。

川内委員 これが正しいんですね。では、ちょっとこれに基づいて。

 「施設及び区域の外側にあるもののための予想調達量に係る経費を算入しない方針を有する。」、「方針を有する。」と書いてあります。では、この施設・区域外の光熱費については算入されていないよということをどうやって実態として担保してきたのかということを教えてください。

地引政府参考人 お答えいたします。

 施設・区域外の米軍住宅分の光熱水料等につきましては、我が国が当該経費を負担しないことに米側として同意したものでありまして、したがって、米側が当該経費の請求書等を公用証明書とともに日本側に提出してくることはございません。

 仮に、かかる書類が誤って提出されたといたしましても、通知書類につきまして、内容について我々は精査しておりまして、その差異等から我が方としても施設外なのか施設内なのかについて判別可能であり、事務処理に誤りがあった旨を米側に対して通知し、我が方の負担の対象とはしないよう適切に処理するということでやっておる次第でございます。

川内委員 今何と言ったの。間違いが起こってもちゃんと指摘しているとおっしゃったんですね。指摘して返してもらっている、あるいは払っていないと。

 だって、防衛省も外務省も、基地の外にどのくらいの人が住んでいるか、つい最近知ったんでしょう。どうなんですか。何をどうやって見分けるんですか。

地引政府参考人 米側から毎月提出されてきます支払い関係書類の中で明確に判断できると思っています。

 具体的には、請求書のあて名、住所、明細書などが確認できますし、また、基地外の住宅に住まわれる方につきましては、それぞれ個人に対して、各電力会社でありますとかガス会社から個別に請求を出している。したがいまして、その請求書の内訳を見れば、個人なのか、基地外の請求書なのか、基地内の請求書かが確認できるということでございます。

川内委員 ちょっと、あなた、でたらめな答弁してはだめですよ。つい最近、基地の外に住んでいる実態を詳細にアメリカから教えてもらって知ったということなのに、何で今までこれが基地の外のものだということがわかるんですか。

 米軍の基地の外に住む人たちの契約の状況は、光熱費の手当については全額米軍が負担するよと米軍の内規に書いてありますよ。光熱費については全額米軍が負担するよと内規に書いてありますよ。そうすると、契約をそもそも米軍にしてしまえば、あて名は全部米軍になるじゃないですか。そういう区別をきちんとしているのかということを私は聞いているんですよ。つい最近まで知らなかったでしょう、実態について。何で、いや、完全にやっていますとそんな明確に言えるんですか。わかりませんと言うべきじゃないですか。

高村国務大臣 余り実態を知らない私が答弁に立って大変申しわけないんですけれども、常識的に考えると、基地で電力会社と一括契約をして、そこでメーターが出て請求が来るわけですから、そこのメーターから特別の線でも引いて基地の外にやっていない限り外の人の請求が来るということは普通ないので、基地外の人は、それぞれの家にメーターがあって、そこに対して電力会社から請求が来るというのは、ごくごく当然の話だと私は理解するんですが。

平沢委員長 川内君、申し合わせの時間が経過しておりますので、御協力をお願いします。

川内委員 はい。時間が来ていますからもうやめますけれども、委員長、最後。

 では、家族住宅、基地施設ごとの光熱水料の使用実態についてという部会での私どもの質問に対して、防衛省は、光熱水料等については、在日米軍が調達し、施設・区域ごとの支払い実績を日本側に提出してくることから、施設・区域内の使用実態、例えば家族住宅、施設ごとの内訳について日本側として把握できる状況にないと、部会では把握できる状況にないと言っているんですよ。なのに、今ここでは、いや、きちんとできているんだというふうにお答えになられるのは、私はよく理解できません。

 そこで、委員長、きょう採決まで決まっていますから、採決はされるんでしょうが、本委員会にきちんと水道光熱費について、基地の中での使用実態がどうなのか、領収書も出してくださいと、この前、武正議員が聞いていますよね。まだ出されていないんでしょう。出されたんですか。(発言する者あり)いいかげんと。そういうものを、きちんと精査できるような状況で御報告をいただくということの御協議を、引き続き外務委員会として、これは大変重要な問題だと思いますので、よろしくお願いをして、終わりたいと思います。

平沢委員長 理事会で協議させていただきます。

 次に、近藤昭一君。

近藤(昭)委員 民主党の近藤昭一でございます。

 本日もまた、在日米軍駐留経費負担特別協定ということで質問をさせていただきます。

 さて、本会議、先週の委員会と質問をさせていただきました。大きく分けて二つの観点で私は質問をさせていただきました。一つは、米軍の駐留を受け入れている国々の中で日本の負担が突出して多い、これはなぜなのかということ。そしてもう一つは、この経緯になるわけでありますけれども、円高・ドル安、そして米国の財政赤字などへの思いやりということから始まったとされる経費負担。しかしながら、日本も、財政状況が大変厳しい中であります。日本においても、ほかに支出すべき分野がたくさんある。また、経費の中身も、先ほど仲間の委員も質問させていただきましたけれども、まあ国民には理解されないものが多く含まれている、こういう観点であります。

 しかし、防衛省、外務省から返ってくる答えは、結局は、総合的に考えて、日米関係にとって重要だから、この地域にはこの地域の特徴がある、だから仕方がないんだと言うばかりでありまして、私はなかなか、なるほどというふうに理解できないのであります。本当に今、財政状況が日本も厳しい、限られた予算。ただ、この間のやりとりの中でも、政府としても、非常に課題がある、米側とも交渉してきた、こういう話であります。

 そこで、江渡副大臣にお伺いをしたいと思うんです。そういう交渉をしているわけでありますけれども、しっかりと取り組んでいただきたいという中で、米軍のグアム移転費の関係であります。

 これも本会議でも質問させていただきましたが、改めてちょっとお聞きしますけれども、海兵隊関連施設の沖縄からグアムへの移転を含む米軍再編計画の総額については、二〇〇六年四月、在日米軍再編協議の米側担当者であるローレス国防次官補が今後八年間で三兆円と発言をしている。それで、米軍のグアム移転に伴う建設工事は、二〇一〇年春以降、グアム北部などで着工する。部隊ごとに順次移転を開始し、二〇一二年からは沖縄に駐留しております第三海兵隊遠征軍などの移動が始まり、二〇一四年にはすべてが完了する。こういう計画であります。

 そういう中で、興味深い新聞記事を見つけました。昨年の十二月十一日付の米軍の準機関紙であります星条旗新聞であります。ここでの記事は、グアムでの米軍再編に伴う基地拡張計画を取り仕切るバイス米海軍省グアム統合計画事務局長の発言であります。そこでは、二〇〇八年三月まで、もう三月は過ぎておりますが、先月の末までにグアム移転計画に関するマスタープランの原案が作成される、こういうふうに新聞では報道されているわけであります。

 そして、この原案に基づくのでありましょうか、日本の報道機関が今から申し上げるようなことを三月の二十九日に報道しております。ちょっと読ませていただきます。

  海兵隊グアム移転経費総額百二・七億ドルのうち、日本側負担は五九%に当たる六十・九億ドル(約六千九十億円)。司令部庁舎や生活関連施設に二十八億ドル(約二千八百億円)の拠出や、七・四億ドルのインフラ整備融資などが盛り込まれていた。日本政府の関係者によると、海兵隊の移転先となる米海軍基地の外に発電所や上下水道、廃棄物処理施設などを整備し、これに日本が融資することで調整が進んでいる。

こういう報道があるわけであります。

 まあ、移転経費でありますから先ほどの三兆円とはちょっと違うわけでありますけれども、この間、高村大臣も、まだまだ全体的には把握をされていない、年度年度だと言っておられるわけでありますが、このマスタープランの原案、このことについて、もちろん日本側も承知だと思いますが、江渡副大臣、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、三原委員長代理着席〕

江渡副大臣 近藤委員にお答えさせていただきたいと思います。

 今、マスタープランのことについての御質問でございますけれども、現在、米国は、今後グアムに移転する在沖縄海兵隊を初め、グアムの米軍基地全体で今後必要となる施設やインフラの詳細な配置計画、すなわちマスタープランを作成中であるわけでございます。

 そして、米側の説明によりますと、まずは主要な基地機能に係る土地利用計画案の検討を行い、その上で海軍省部内において詳細な施設等の配置計画案をまとめる旨を我が省としても承知しているところでございます。そして、最終的には、所要の環境影響評価の手続を行った後に、この計画、マスタープランですけれども、これが確定することになるというふうに説明を受けております。

 また、今御指摘の二〇〇八年の三月までにグアム移転に関するマスタープランを策定するという点につきましては、あくまでも、ことしの三月の六日から八日なんですけれども、米側主催の企業説明会の場において、米側よりの素案という形で策定したい旨の発言があったということでございますけれども、現段階におきまして、かかるこの素案の作成が実際に完了しているかどうかという説明等は、我が省としてはアメリカ側から受けておらないわけでございます。

近藤(昭)委員 江渡副大臣のお話の中にも、冒頭、米側の話によりますとという話がありました。この間も委員会でいろいろ質問させていただいて、日米で協議をしている中で、相手もあるからなかなかこちら側の主張だけは通らない、こういうこともおっしゃってきたわけです。しかしながら、実態として日本側が大変大きな費用負担をしているわけでありますから、やはりそれは、きちっとこちらの言うべきことは言う、言うだけではなくてきちっと実現をしていかなくちゃいけないと思うんです。

 そういう中で、マスタープランというのは主要な、もとになるプランだと思うんですね。それを今作成しているに当たって、米側がやっていることであってこちらは必ずしも、そういうことで進んでいるかもしれないけれども、アメリカはアメリカでやっていて余りこちらは知らないみたいな、そういうふうに聞こえるんです。これは大変に政府としては無責任ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 委員のお考え方で、無責任ではないのかというようなお話があったわけでございますけれども、我々としても、国民の税金を無駄なく使わなければいけない、そういう流れの中で鋭意協議させていただいているわけでございまして、ですからこそ、先ほど委員の方からもお話があったとおり、真水での財政支出というのは二十八億ドルを上限にいたします。そしてまた、その他、家族住宅等においては二十五・五億ドル、インフラ等に対しては七・四億ドルということで、総枠では六十・九億ドルという形で日本側の負担というのは決まっているわけでございますけれども、あくまでも日本側の財政支出の真水の部分では二十八億ドルでございまして、アメリカ側よりも少ないという形になっております。

 また、これはあくまでも現段階での上限設定という形で協議をさせていただいて、そのことを日米両方で合意されているわけでございますからこそ、これから種々の、マスタープランあるいはそれからの日米の協議の中において、できるだけ日本の国民の税金が無駄に使われることのないような形で鋭意協議を進めていきたいと思っております。その点のところ、御了解いただければと思っているところでございます。

近藤(昭)委員 いえ、私はちょっとそれは理解できないんですけれども。

 つまり、上限が決まっている、上限が二十八億ドルだ。だから、後はどうなるかはこれからで、二十八億ドルは生活関連ですね。しかしながら、全体でいうと百二・七億ドルでしょう。それで、日本側負担は五九%じゃないんですか。日本側の方が多いじゃないですか。全体でいうと六十・九億ドルですよ、六千九十億円。まださらに、先ほど御紹介しましたように、八年間で三兆円とローレス国防次官補が発言しているんですよ。

 何かいつも交渉しているけれども、結局そういうところに出てきた数が最後は行ってしまって、いや、交渉してきたけれども何ともできなかった、これはやはり無責任だと思うんです。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 先ほどもお答えさせていただいたと思うわけでございますけれども、総額として一応日本側の負担が六十・九億ドルという形には合意したわけでございます。財政支出としての真水は、日本側は二十八億ドルでございまして、アメリカ側の方の財政支出、アメリカ側の真水は三十一・八億ドルでございまして、日本側が三・八億ドル低いというのが状況でございます。

 なお、家族住宅等の整備の方については、出資等は行いますけれども、しっかりと回収ができるように、日本側の出資部分が回収できるようにという形のスキームの協議も今現在しているところでございます。

近藤(昭)委員 真水の部分では日本側の方が少ないんだ、こういうことであります。しかしながら、やはりこれは米軍が移転するわけであります。そして、少ないからいいということではないと思うんです。

 では、日本側の二十八億ドルの中身、そしてそれが適正かどうかというのはどういうふうに考えていらっしゃいますか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 二十八億ドルの真水の支出は、具体的には国会の方で御承認をいただかなければできないことでございますので、累次国会で御答弁を申し上げておりますように、日米間で真剣な議論を行いまして、これまで国会で明らかにさせていただいている範囲内で、当然、できるだけ効率的、合理的な支出になるように交渉をしていくということでございます。あくまでも税金を使って我が国が支出する話でございますので、我々の方として主体的に取り組んでいく。

 二十八億ドルというのも上限でございまして、一定の前提を置いてやったものでございますけれども、これは具体的な計画をつくっていく中で、まさにマスタープラン等が出てくる中で、日本側のこれまでの考え方というのを十分に説明し、米側にも納得してもらい、そしてできるだけ少ない経費でやっていくというのが基本であろうかと思います。

 ただ、あくまでも我が国の負担の軽減につながるような、移転が円滑に進むための経費として支出していくんだという観点でやっているところでございます。

近藤(昭)委員 ですから、ちょっと教えていただきたいんです。二つお聞きしたいと思います。

 上限だ、上限だからあくまで上限であって、これからの審議の中で、いろいろとマスタープランをつくっていく中で、国会にも諮るとおっしゃっていましたけれども、これはおかしいんじゃないかということであると、上限よりも少ないところで妥結するのかということが一点。それと、では、その上限の額はどうしてこの額になっているのかということを教えてください。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 委員も御承知だと思いますけれども、二〇〇六年の五月一日に合意いたしました再編実施のための日米のロードマップ、ここのロードマップの中におきまして、日本の分担のうち、海兵隊の司令部庁舎、教場、隊舎、学校等生活関連施設は財政支出、いわゆる真水で整備するということにしておりまして、ここの部分で二十八億ドルという形になるわけでございます。

 ただ、これとても、お互いに協議する部分においてある程度の金額のめどというものが立たないと協議できないだろうということで、あくまでもその協議の中において上限が二十八億ドルということで、そして、今お話しさせていただいたように、あくまでも海兵隊員がグアム移転後に直ちに使用することが必要不可欠なものに限定して支援する、そういう考え方のもとにおいて合意したものでありまして、この考え方というものは基本的に変わっていないというふうに私は思っているところでございます。

    〔三原委員長代理退席、委員長着席〕

近藤(昭)委員 そのときにそういう話し合いになったと。ただ、これからも協議をしていくということなんですけれどもね。

 ですから、もとに戻ると、そのマスタープランを、先ほど紹介した新聞では三月末までにつくると。それがどうもできている。できているから新聞報道にも、どういう取材源があるのかわかりませんけれども、そういうのが出てきて、それをやはりきちっと政府が、日本側が知らないのはおかしいんじゃないですかというふうにお聞きしているんです。

 先ほどのバイス米海軍省グアム統合計画事務局長は、日本側のパートナーとして、防衛省も外務省もいらっしゃいますよね。防衛省は丸井大臣官房米軍再編調整官ではないか、外務省は小野日米安全保障条約課企画官だと思いますけれども、交渉していらっしゃるんでしょう。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 米側のマスタープランの作成といったものについては、米側の中でいろいろな具体的な案がなければ議論できませんので、それを前提にしていくわけですけれども、私どもの方としては、当然そういった案が我々の考え方に沿って策定されるよう、いろいろな機会を通じて日米間で議論をさせていただいております。そして、バイスさんにつきましても、私も直接会ったこともございますし、いろいろ日本側の立場というものはやっております。

 ですから、これからまさにこういった日程ということでございますので、真剣に、もう昼夜分かたずといいますか、連続的に議論をして、日米間にそういったそごがないようにしていく、その中で日本側の主張をきちっとしていくというのが非常に重要であるというふうに考えております。

近藤(昭)委員 私どもの部門会議でもちょっと資料をいただいたわけですが、そういうところでこの間も交渉してきている、こういうことなんだとは思うんです。

 そうすると、このマスタープランの原案は、最終的にはどういう形で出てくるんですか。日本側も、ああ、なるほどなという交渉の結果出てくるのか。あるいは、米側のマスタープランなんだからあくまで米側が勝手に、今交渉はしていらっしゃるんでしょうから勝手にではないかもしれませんが、どちらかというと、日本もこう言うけれども、アメリカ側の主張がほとんど盛り込まれ、余りこちら側が言ってきたことが反映されないような形でぼっと出てくるのか。最後はどういう形で出てくるのか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 このグアムのマスタープランにつきましては、海兵隊の移転に伴う部分だけではなくて、米軍全体としてのグアムの基地をどのように建設していくかということがございますので、もともと、私どもが支出する部分が全体の中でどれだけを占めるのかという問題がございます。

 ただ、一方におきまして、私どもにかかわる部分につきましては十分な議論をさせていただいておりますし、その部分については反映をしていくように協議をしていくということが重要であると思っております。

 ただ、全体は、アメリカのいろいろな状況がございますので、私どもだけの事情で全体がすべて決まるという関係にはなってございませんけれども、先生の御指摘も踏まえて、今までもやってきておりますし、これからもやっていきたいと思っております。

近藤(昭)委員 少し先ほどとはお答えの仕方が変わったわけじゃなくて進んだのかもしれませんけれども、米側がつくっていて、そこは余り承知していないということではなくて、きちっとそれは、マスタープランですから、やはりそこがもとになって動いていくんです。そこできちっとやっていただきたいと思いますし、私は、これはまだ最終的でないからとおっしゃるかもしれませんが、その報道によると、ちょっと心配なところがあるわけであります。

 つまり、先ほどの二〇〇六年五月の日米合意の当時は、インフラ整備については基地内部の施設が対象だったんじゃないか、そう思いますが、新聞の報道だと、基地の外につくる、そこに融資をする、こういうふうになっているんですが、大丈夫でしょうか。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 今委員から御指摘されました日本の分担に対するインフラの整備でございますけれども、インフラ設備を基地の外に建設するということを必ずしも排除したものではない、そしてその詳細についてはこれからしっかりと日米間で協議してまいりたいと思っているわけでございます。

 基地の中だけという答弁は今まであったかもしれませんけれども、しかし、全体の枠の中での整備という形になりますと、今ある既存のものに対して足りない部分を足していった方が、あるいはそこで設備をした方が日本の負担分が安くなる場合も考えられるわけでございます。ですからこそ、あくまでも全体の日本の国民の負担の部分をできるだけ合理的に、そして効率的に使うため、そういうことも考えていかなければいけないのではないのかな、私はさように考えているところでございます。

近藤(昭)委員 今までは違うと答弁していたかもしれないがというのは、ちょっと無責任ではないでしょうか。

江渡副大臣 お答えしたいと思います。

 ですから、インフラ設備を基地の外に建設することを必ずしも排除したというような形で答弁されていたかというと、私は、その辺のところはいろいろな考え方もあるのではないのかなと思っております。

 どちらにしても、この辺のところにおきましては、やはり一番大事な点は、日本の国民の税金を使って移転をするわけでございますから、しっかりと効率的であり、そしてまた合理的な形のものにしていくということが一番大切であろうというふうに思っております。ですから、そういう観点でしっかりと日米間で協議もさせていただきたいと思っております。

近藤(昭)委員 必ずしもという、少し言葉をいじるようなお答えの仕方というのは、やはりこの間の論議を台なしにすると思うんです。必ずしも排除するという言い方ではなかった、そういうとり方もできるというのは、これはやはり、まさしく副大臣がおっしゃるように、国民の税金を使うわけだから、それは国民もいろいろな意見があるので、最後はその中で合意を形成していくわけです。でも、その合意を形成するためにも、やはり前のことを踏まえていかないといけないと思うんですね。前はこう言ったのに後はこうだ、いや、前は必ずしもそうではなかったんですというのはおかしいと思うんです。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 基本的にはやはり基地内であるということが前提であろうかとは思っておりますけれども、しかし、先ほどお答えさせていただいたように、日本の国民の税金を有効に活用するためにおいて、もし外側の方にある、既存のグアムにあるいろいろな施設等を活用しながら整備した方が安くなるといった場合には、その辺のところも考えるべきではないのかな、そういうことでお答えさせていただいたわけでございます。

近藤(昭)委員 そうすると、政府は方針を変えた、こういう理解でよろしいんですか。

高見澤政府参考人 お答えさせていただきます。

 再編特措法の考え方も、あるいは日米間の合意の考え方も、基本的には、海兵隊のグアムへの移転というのをできるだけスムーズにしたい、そのために日本としても応分の負担をしたいということで考えてきているわけでございまして、このインフラの負担につきましても、そういった観点でこれまでも御説明をさせていただいております。具体的にどういったインフラがあるかといえば、まさに電力の施設であるとか上下水道であるとか廃棄物の処理施設ということを申し上げているわけでございます。

 ですから、こういったグアムに海兵隊が移転することに伴って増加する部分というのをどのようにして効率的にやるかということがこれまでの答弁の基本でございますので、そういう意味において、変わっていないというふうに思います。

 ただ、基地内のインフラという言葉が、基地を運営するためにインフラとして必要となるものが基地だけに限定されるという意味ではない。それは基本的にという言葉で、排除されないということは言っておりますので、そういう点で、同じような趣旨を申し上げているというふうに思っております。

近藤(昭)委員 だから、そういうふうな意味でと言うと、何でもかんでも解釈が変わっていってしまうんではないか、そういう心配、心配というか疑問なんですね。おかしいと思います。

 それと、ちょっと関連をして質問します。

 この報道によりますと、今度は基地の中の学校あるいはレクリエーション施設も負担をする、こういう報道があるんですね。

 これは、先般私も委員会で質問させていただきましたけれども、採択基準というのを設けた。日本の国民には理解されにくい、そういう施設についてはもう採択をしないということの中にそういうレクリエーション施設が入っている。ところが、今度はまたグアムでつくるというのはいかがなものかと思うんですが、どうでしょうか、高村大臣。

高見澤政府参考人 報道についてまた前提にしての議論というのはあれですが、まさにこれから議論をしていくところでございますが、これまで国会でも答弁させていただいておりますけれども、娯楽施設といった要するにFIPでも新規採択を控えているようなものというのは、日本がそれを分担するというのは必ずしも適切でないというふうな考えを示しておりまして、私ども、これからまさに生活関連施設の中身というものをきちっと精査していく中で個別の必要性を議論していく、今申し上げましたように、FIPではやっていないという事実を念頭に置いて具体的な議論をしていくということになろうかと思います。

 その意味で、必ずしも新聞報道は正確ではないというふうに考えております。

近藤(昭)委員 そうすると、今まではやっていなかったから、それを念頭に置きながら今度グアムは精査していく、でも、いろいろ精査した結果、グアムは別だから認めることもある、こういう考えなんですか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 ですから、あらかじめ具体的なものを議論しないでこれはやりますというようなことを決めるということではなくて、まさに個別の事情を精査してやっていく。ただ、その基本的考え方としては、新規のものは、FIPでやっていないということを大前提としてやっていくということでございます。

近藤(昭)委員 何か原則があるようで、しかし、原則に基づくとこういう解釈もできるみたいなことがどんどん進んでいくのはいかがなものかと思うんですが、高村大臣、いかがでありましょうか。

高村国務大臣 これは防衛省予算でありますから私が申し上げるのが適当かどうかわかりませんけれども、今、高見澤局長が申し上げた方向でやるということになると思います。

近藤(昭)委員 まあ、高村大臣に申し上げることではないかもしれませんが、防衛省予算だとおっしゃった、だからこそ、我々は石破大臣に直接質問をしたい、こういうふうに要請をしてきたわけであります。

 私は、この間の交渉は、残念ながらいつも押し込まれている、やられている、そのことを、何か理由をつけて、いや、交渉した結果、最初はそうではなかったけれどもこうなった、そういうところもあると言ってきたんですという言いわけばかりしているような気がするんですね。

 私は、これは防衛省でありますけれども、外務省としても交渉をしているわけですから、やはりきちっと政府としてやっていただきたいということと、少し関連で、余り時間がなくなってまいりましたが、簡単にちょっとお答えをいただきたいと思うんです。

 私は、こんなになぜ負担するのかなと冒頭申し上げました。そういう中で負担しているわけであります。ところが、この負担を米軍の人たちが、米兵の人たちがどれだけ知っているのかなと。これは、そういう話を聞いたということでお聞きをいただきたいんですが、駐留の米軍基地で働いている日本の人たちがいます。日本側が、雇用の安定も考えながら負担をしてきた。せっかく負担をしてきた、こういう言い方をするのがいいかもしれませんが。しかしながら、そのことをどうも十分に米兵の人たちが知らない、自分たちの国が払っている、こういうふうに思っているところもあるのではないか。

 そういう中で、先ほどからも間接雇用、直接雇用の話がありました。これだけせっかく日本側が負担をしているにもかかわらず、現場ではパワハラとかセクハラ、こういうものが起こっている。そして、日本側が、防衛省が雇用している、そして使用しているのが米軍だ、こういう二重構造というか、複雑な構造なわけですね。そうすると、防衛省が雇用して、日本側がお金を出して、しかしながら、そこではセクハラやパワハラも起こっていて、日本の労働基準法とかそういうものがきちっと遵守されていない。このことについて政府はどのようにお考えか、お答えをいただきたいと思います。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 御指摘のような、駐留軍等の労働者の職場において生じる問題につきましては、第一義的においては、使用者であります米軍が問題解決の責任を負うべきものであると考えております。

 仮に御指摘のような事態が起きた場合におきましては、労務提供契約の枠組みで、苦情申し立てがあった場合の救済手続等が設けられておりまして、それで問題解決がなされることになると思っております。

 いずれにいたしましても、我が防衛省といたしましては、良好な職場環境の確保は大変重要なことである、そのように認識しておりまして、そして、職場内の問題につきましては、労務提供契約に求められた措置に加え、駐留軍等労働者から事情聴取した上で米側に申し入れを行ったり、米側が職場内の問題について調査する際に、日本側で調査した内容を米側に示すなどして問題の解決に努めるなど、良好な職場環境が確保できるようにこれからも適切に対応してまいりたいと考えております。

近藤(昭)委員 日本側が負担をしているよいところはきちっと反映させていただきたいと思いますし、これでグアムに移転していくわけであります。離職対策といいましょうか、そこはそこできちっとやっていただきたいということをお願いしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一でございます。

 午前中最後のバッターになりますが、順次質疑を行わせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 特別協定についてということで、三月二十六日も質問をいたしまして、この間も理事懇談会でお願いをして、外務省、防衛省、本協定にかかわる情報開示、資料提供、これを真摯に国会に対して御提出いただくようお願いをしてまいりました。

 特に、平成十四年度以前、光熱水費の立てかえが行われているかどうか、これは何度も何度も伺ってきたんですが、現時点でそれが判明されたかどうか、防衛省、お答えをいただきたいと思います。

江渡副大臣 お答えさせていただきます。

 日本側から米側への光熱水料の概算交付日につきまして、平成十五年度までは当省の資料により特定できておりましたけれども、今般、日本銀行の協力も得まして調査を続けた結果、平成十四年度から平成十二年度までさかのぼって概算交付日が特定できたところでございます。そしてまた、その資料等も本日の理事会等において出させていただいたと思っておりますけれども、このことによりまして、平成十四年度につきましては、米側による立てかえ払いを行っていないことが明らかになったところでございます。

 しかしながら、平成十三年度以前につきましては、必要な資料が保存されておりませんので、確認できていないという状況ではございます。

 なおさらに、平成十年度及び平成十一年度の概算交付日につきましては、引き続き、今現在、日本銀行の協力を得て調査をしていただいているところでございます。

 一方で、アメリカ側の支払い日につきましては、米側においては支払い関係のデータは一年で破棄しておりまして、当省においても平成十四年以降の分しか残っていないため、確認することはできないことから、米側による立てかえ払いの有無というのは確定できてはおりません。ただ、概算交付日が通常よりも相当日数おくれている場合には、一般的に、米側による立てかえ払いが行われたことと、そのように推察することはできると考えておるところでございます。

武正委員 外務大臣、この協定の担当大臣として、国会に承認を求めるこの審議の過程において、米側による立てかえ払いが五年を超えるものについて、ようやく平成十四年度のみがわかった。こういう政府の米側とのやりとり、交渉、これについてはどのようにお考えですか。

 私は、国会に承認を求める以上、やはり政府としても、米側の支払い状況について確認できるだけのことを日ごろからしっかりと合同委員会なりで行ってきてしかるべきというふうに思うんですが、ようやくこの審議になってどたばたと、ついには日銀までお願いをしてということですが、もっと前からこういったことをやっていれば当然わかることで、あるいは日々確認をしておくべきものだと思うんです。所管大臣としての御所見、御感想を伺いたいと思います。国会に対する説明責任でございます。

高村国務大臣 政府とすれば、国会から求められたことはできるだけ説明をするように努めているところでございますが、今、防衛副大臣から、いろいろ苦労して調べた結果をわかった部分についてお伝えした、こういうことであろうかと思います。

 委員の御要求からすれば十分でなかったかもしれませんが、防衛省としては説明責任を果たそうと一生懸命された、こういうふうに承知をしております。

武正委員 担当大臣として国会に対する説明責任を果たそうという気概を感じられないのは、やはり私は大変残念でございます。

 そこで、続いて節約交渉について伺いたいんですが、三月二十六日、本委員会で外務大臣から、特に光熱水料、これについての合同委員会での分科会はどこですかということで、これは施設委員会であるというお答えがありました。この責任者は防衛省でありますが、施設委員会で節約交渉、特に光熱水料について、どういうように取り組んできたのか。具体的に、この施設委員会で昨年、回数は六回開かれておりますが、その中で節約交渉、光熱水料について提起をしたのか、防衛省、お答えいただきたいと思います。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 今委員の御指摘の日米合同委員会のもとにあります施設分科委員会ですけれども、この施設分科委員会は、基本的に施設・区域の提供、返還等に関する協議を行う場でございまして、ほかに節約努力につき取り上げる場があったことから、本件が当分科委員会の議題として取り上げられることはなかったんですけれども、非公式に日米協議をしたことがあったというふうに報告を受けております。

 当省といたしましては、従来から、機会あるごとにアメリカ側に対し光熱水料等の節約を申し入れ、例えば平成十九年度におきましては、四月二日及び四月二十五日に、当時の防衛施設庁業務部長から在日米軍司令部の第四部長に対して申し入れを行いまして、また、米側からは、節約のために必要なすべての措置をとるということで回答を受けたところでございます。

 また、今御議論いただいておりますこの新たな特別協定におきましては、米側が経費の節約に一層努めることが確認されているところでございまして、どのような節約というものが可能かについては、これからも鋭意米側と協議させていただきたいと考えております。

武正委員 本協定の六条でも「この協定の実施に関するすべての事項につき、合同委員会を通じて協議することができる。」という条文があるから、こうしたことを聞いております。

 ちなみに、日米合同委員会の組織図がお手元の資料の一番最後のページに載っておりますので、ごらんをいただきたいと思いますが、今お話があった施設分科委員会は、昭和三十五年六月二十三日にできた、上から六つ目の分科委員会でございます。

 そこで、続いて、米軍再編に伴う訓練移転に伴って、地元負担の軽減の検証をこの合同委員会は行っているのかどうかを伺いたいと思います。同じく組織図の一番下に在日米軍再編統括部会というのがあります。かねてより指摘がありますが、嘉手納での訓練移転に伴って、嘉手納の基地負担、騒音等の負担が軽減されたことをこの統括部会で検証しているのかどうか。

 これは、代表は外務省、防衛省両省でありますので、外務大臣に伺いたいと思います。過去一年間、昨年、そうしたことをこの統括部会で取り上げたのかどうか、検証したのかどうか、外務大臣、お答えをいただきたいと思います。よろしくお願いをいたします。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 防衛省といたしましては、嘉手納飛行場周辺等の十四カ所でございますけれども、十四カ所に自動騒音測定装置を設置し、騒音状況を把握しているところでございます。しかしながら、今回の米軍再編に係る嘉手納飛行場からの訓練移転につきましては、これまで四回しか実施しておらず、訓練移転に伴う騒音の軽減については、現時点において評価できるような分析には至っておりません。ですからこそ、この分科会においてまだ協議はしておらないところでございます。

武正委員 外務大臣、これは外務省も所管になって、代表は両省庁になっております。基地負担の軽減と抑止力の維持、これがロードマップのうたい文句でありますが、その基地負担の軽減の検証をこの統括部会で行わないと、やはり抑止力の維持のみが強くなっていってしまうということになると、結局はロードマップの遂行にも支障を来すし、ひいては日米同盟にも信頼感を揺るがすということになろうかと思うんです。ちゃんとこの統括部会で基地負担の軽減が行われているかどうか検証するということを行うべきだと思うんですが、どうですか、外務大臣。

高村国務大臣 日米間で検証するということは必要なことだ、こういうふうに思っております。

 ただ、その前提として、今防衛副大臣がおっしゃったように、やはりみずから騒音測定等そういうことをきっちりやって、データを調べて、その上でやらないと、ただ減っている、減っていないと言い合ってもしようがないことですから、その基礎的データはさらに訓練移転が行われる中で積み上げていく必要もある、こういうふうに思っております。

武正委員 しっかりと担当省として取り上げていただきたいというふうに思います。

 繰り返しますが、本協定の第六条で「日本国及びアメリカ合衆国は、この協定の実施に関するすべての事項につき、合同委員会を通じて協議することができる。」このように条文に位置づけられているからこそ、この条文にのっとって合同委員会の各分科委員会でしっかりと取り上げていくことを強く求めたいと思います。

 そこで、資料の三ページをごらんいただきたいと思います。午前中、同僚委員から、職種を挙げればバーテンダーとかあるいはゴルフ場の職員とか、なぜそういうようないろいろなアミューズメントの施設の職員に日本側はとても税金を払えませんよと言わないんだろうか、言わないのかということの指摘があったんですが、これは言えないんですね。それがこの三ページの諸機関労務協約でございます。

 主文の第四条aの「在日米軍は、」の(二)、「職位および従業員の数、種類及び責務を決定する。」b、「防衛施設庁は、」「この協約の規定に基づき、諸機関の要求に応じて、適格応募者を差し向ける。」ということですから、この諸機関労務協約を変えない限り、今の枠組みでは、米側が言ってくる、こういった職種をふやしたい、どうだどうだということについて、日本側は、いや、これはだめだとか、これはとても認められない、こういうことが言えない枠組みになっているというふうに考えますが、外務大臣、いかがでしょうか。

高村国務大臣 おっしゃるように、やはり今の枠組みでは、上限労働者の数を日米間で協議して決めて、そしてその上限労働者の数というのは上限労働者の範囲で日本が労務費を負担する、こういう仕組みであります。さらにそれを上回るものについてはアメリカ側が負担する、そういうふうになっていて、これは必要だ、これは必要でないという判断はアメリカ側がする。そして、そんなもの必要ないじゃないかとか、そういう話じゃなくて、金額として幾らまで、上限労働者の数に基づいて金額が幾らまでということが決まる、こういう仕組みになっているわけであります。

 そういう意味で、今の中で、お互い話し合いですから何でも言えないことはありませんけれども、決まるところはその上限の労働者の数というところで決まっていく、こういうことでございます。

武正委員 先ほどいみじくも、米側が必要だと言えば仕方がないかもしれないと。強く求めてきたぎりぎりの交渉であると言いましたが、非常に、労務協約がこういった形で結ばれていると、やはりこれを変える必要があると思うんですが、外務省として、これを変える、そうした御意思は、あるいは必要性を感じておられますか。

高村国務大臣 今後、アメリカ側との交渉はしていかなければいけないと思います。それは、いろいろな観点があると思うんです。職種がどうだとか独立機関だからどうだとか、いろいろな観点から交渉していかなければいけないと思いますが、我が方の最大の関心事はどれだけ負担するかということであり、アメリカ側の最大の関心事もまさにそこなんだろう、こういうふうに思っています。

 そういう中で、今の枠組みで最大の、どこまで負担するかというのが、まさに今度の交渉の最終的決着点、こういうふうになったということをぜひ御理解いただきたいと思います。

武正委員 外交交渉は、やはり国際協約、国際協定あるいは条約、あるいはこうしたいろいろな書簡とか、そうしたことで交渉が積み上げられているものだというふうに理解いたしますので、こうした協定あるいは書簡、そしてまた協約、これでただすべきところをただしていくということで日本側の考え方、主張を実現していく、これが外交交渉だと私は理解しておりますので、やはり労務協約のこの部分を変えていくということが必要だというふうに私は考えるわけであります。

 そこで、続いて光熱水料に移らせていただきますが、四ページ目、これが光熱水料等の事務処理手続の流れでございます。防衛省から概算交付をし、そして、在日米軍司令部がそれに基づいての支払いを行うについて、支払い関係書類を防衛省に送るということでありまして、今回の委員会で出していただきました資料の一部を、五ページ、これが電気についての米側の公的機関としての書類。そして六ページ目が、これは東京電力が米側に出したインボイス、請求書、納品書。そして七ページ目は、これは灯油の、やはり米側の公的機関としての支払い証明書のようなものということであります。

 私は、当初説明を受けたときに、米側が東京電力に払った領収書を防衛省の方に提出しているんだというふうに聞いていたんですけれども、これを見ると、これは、アンダーラインを引いたところは私の方で防衛省の説明で書きました。例えば支払い日は、右側の上、二〇〇六年四月十三日というようなこと。それから支払い先、受取人の住所が四番に東京電力というふうに書かれておりまして、支払い機関名は「ユーエス デパートメント ビューロー オア エスタブリッシュメント アンド ロケーション ディフェンス ファイナンス アンド アカウント コロンバス」ということで、オハイオにあると。オハイオにあるこの支払い機関から支払われるということでありますが、東京電力の受領者のサインとか受領印とか、そういうものがない、こうしたもので米側が支払ったというふうにされて本当にいいのかどうか。

 先ほどの基地外は含まれないということも、この六ページ目の東京電力の請求書だけ見て、果たしてでは本当に基地内だけなのかということの、そのことも検証がどうやってできるのかということもあります。私は、この光熱水料の日米間のやりとり、やはり本来であれば、もう光熱水料、私は支払うべきでないというふうに思いますが、今こうした現状の中で問題点を指摘していく中で、こうしたやりとりも、やはりただすべきだと思います。

 外務大臣、どうですか。この五ページ目をもって東京電力に支払ったんだというふうに防衛省は考えておられるようですが、外交交渉でこの光熱水料の節約も求めている外務省、外務大臣として、これでいいというふうにお考えでしょうか。私は、東京電力の領収書を出してもらえば一番いいと思うんですが、どうでしょうか、外務大臣として、外交交渉で節約努力ぎりぎりのと言いますが、これでぎりぎりの交渉になりますか。どうですか。いや、外務大臣に聞いているんです。外務大臣としてお答えください。

高村国務大臣 これは、協定の執行の部分ですから、やはり防衛省からお答えいただくのがいいと思います。

 我々は、ぎりぎりの節約をしてくれよということは言いまして、協定の中にそれを書き込んでいる、現行協定も書き込んでいますが、次の協定もより一層のものをしてくださいよということを書き込んだわけで、執行の部分としてこれで証明になるのかならないのか、どうしてなるのかということは、それは防衛省からお答えいただくのが正しいことだと思います。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 委員がお配りしたこの紙なわけですけれども、これは公用調達証明書及び支払い証明書というものでございまして、在日米軍が公用のため調達した光熱水料に係る支払い関係書類につきましては、合衆国軍隊等は、特別協定第二条の規定に基づきまして、公用で調達したことを証明する書類に添付して当省に書類を提出しているわけでございます。これが今の紙でございます。

 在日米軍の光熱水料等に係る料金あるいは代金の供給業者への支払い等は、電算処理、つまり電信振り込みをされていることから、領収書の添付はございません。支払い関係書類といたしましたこの公用証明書ほか請求書、明細書などが提出されているわけでございます。

 先ほど申し上げました特別協定第二条の条文におきましては、「合衆国軍隊又は合衆国軍隊の公認調達機関が適当な証明書を付して」というふうにしておりまして、支払いの証拠書類としてどのような形式であるべきかというものは明示されておりません。

 政府といたしましては、たとえ領収書の添付がなくとも、合衆国軍隊等が公用で調達したことを明確に証明していることから、十分証明がなされているものと理解しているところでございます。

 なお、防衛省が行っております光熱水料等の経費負担については会計検査院の検査の対象となっておりまして、支払い関係書類について提示も行ってありまして、これまでの検査において支払い関係書類の不備を指摘されたという経緯はございません。支払いの証拠書としては十分な内容を満たしているものである、そのように理解しているところでございます。

武正委員 特別協定の二条にあるんですね、今のことが。

 外務大臣、この特別協定の二条も問題なんじゃないですか。公認調達機関が適当な証明書を付して代金の支払いに要する負担をするということで、その証明書、これでいいというふうにして本当にいいんでしょうか。

 この特別協定が根拠だとすれば、私はこの特別協定はやはり変えるべきだと思いますよ。ちゃんと支払いをしたという、その支払いを受けた側の領収書をもって証明をするというのがやはり普通、一般の我々のルールの中での当然の確認の事項ですから、支払いましたよという、支払った側が何かそういう書類を出せば、それをもって我々が、日側はそれで確認できたというふうに変えるべきじゃないでしょうか。いかがですか。

高村国務大臣 防衛省が責任を持って処理をし、会計検査院もそれを是としている、それについて政府内部で、外務省がそれはおかしい、そういう話ではないんだろうと思います。

武正委員 やはりこうした外交当局者の対応では、国民の税金を無駄なく有効に使い、そしてそれがひいては日米の安全保障条約あるいは日米同盟の確固たる基盤の確立につながる信頼感の醸成につながるとはとても思えないということを申し上げて、質問にかえさせていただきます。

 ありがとうございました。

平沢委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

平沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。松原仁君。

松原委員 それでは、午前中に引き続きまして質疑を進めてまいりたいと思います。

 今回の議論の中でやはり大事なことは、この事柄に関して国民の理解が得られるかどうかということが一番問われるというふうに思っております。日本が日米の安全保障条約を持って国の安全というのを維持していることは国民も理解しているわけでありますが、しかしながら、それが適切な関係であるのかどうか、余りにも不適切になっているのではないか、こういった疑問が国民から投げかけられるようなことになれば、そのこと自体が、日米の連帯に長い時間をかけてむしろくさびを打ってしまうことになる、ここを顧慮していかなければいけないと思っております。

 米国防省が算出した各国における米軍駐留経費の負担の割合で、この数字は既に御案内のとおりでありますが、日米において、日本側は七五%、アメリカは二五%という数字でありますが、例えばイタリアやスペイン、そして例えば韓国、これはほぼ五〇%切っているわけであります。そういった数値の違いというのも大きな問題があると思っておりますが、こういう数値の違いがなぜ生じたかについて、通告しておりませんが、理事者の方でお答えいただければと思っております。

西宮政府参考人 駐留米軍経費の負担の仕方につきましてはさまざまな要因が絡んでおりまして、まさに、どのような経費をどのようにカウントするとか、そういった点がいろいろ種々違っておりまして、そういったことから数値の違いというのは出てくるのであろうかというのが一つでございます。それからやはり、それぞれの国を取り巻く安全保障環境、それに関連します米国とその国の関係といったようなものも関係しているのかもしれないなというふうに存じます。

 ただ、いずれにいたしましても、各国比較ができます国防省の報告書というもののさまざまな基準となっている考え方であるとかいうことが我々は有権的にお答えできる立場にございませんので、各国数値比較という点につきこれ以上詳細にお答えすることは、申しわけございませんが、いたしかねるところでございます。

松原委員 資料の出所は、今局長お話しになった米国防総省のアライド・コントリビューションズ・ツー・ザ・コモン・ディフェンス、二〇〇四年のものでありますが、恐らくこれは、当初から七五%ではなくて、日本は最初は他の国々とそう違いはなかったのではないかというふうに言われているわけであります。

 これもちょっと通告しておりませんが、資料があれば、これは二〇〇四年の米国防総省のデータでありますけれども、古いデータにおいてはどうであったか、その辺のトレースをしている方がおられればお答えいただきたいと思います。

西宮政府参考人 申しわけございませんが、手持ちの資料がございません。

松原委員 ぜひこれは最低限、私は通告しておらないので強くは言いませんけれども、この辺は基本的なデータだと私は思うんですね。アメリカの国防総省が発表している各国の駐留米軍経費負担の割合というのに関して、調査局が出している資料の中に入っているのは、これは二〇〇四年のデータがあるわけでありますが、昔までずっとトレースをして、どういう経緯だったのか、アメリカ国防総省の中でどうだったのかということが常にわかるような状況にしておくことは、やはりこれは外務省としては必要なことだと思うんですが、局長、何か資料は出てきましたか。

西宮政府参考人 御期待にこたえずに申しわけございませんが、今御指摘の国防省の統計概要と呼んでいる資料ですら、これは最新版なんですが、二〇〇四年版ということでございまして、そこで各国比較に使われている数字は二〇〇二年版、二〇〇二年の暦年の数字ということで、これ以上新しいものもございませんし、版によって出てくるものが若干違っているとか、なかなか系統的にトレースできない事情もありますことを御理解賜ればと思います。

松原委員 一応こういうものを、トレース自体は、外務省としては今までやってきたことはあるのかないのかだけ、お伺いしたいと思います。

西宮政府参考人 お答えになるかどうか、先ほど申し上げましたように、最近の二〇〇四年版であるとか二〇〇三年版であるとか二〇〇二年版であるとかいうのは持っておりますけれども、それ以前について持っているかというのは、今承知しておりません。

松原委員 今回の協定の中で、日米で締結した中に節約努力規定というのが入っていますよね。これは、入るに当たって、当然そういう時系列の議論というのは、余りにも他の国に対して突出をしている、のみならず、その突出する間、昔はそうではなかったという議論があってこの節約努力規定は入ったんだろうというふうに認識をしているわけですが、この節約努力規定、日米においてお互いに明記されたこれに関しては、そういった議論は全然なかったわけでしょうか。

西宮政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの趣旨が、各国との比較で日本の負担が多いのではないか、したがって節約努力ということであれば、そのようなことで入っているわけではなくて、国民の税金を使わせていただく中でこの特別協定で負担していく、そういう米側が使う経費について節約を求めるのは当然であるという趣旨で入っているものでございます。

松原委員 この節約努力規定というもの、これは、米軍は経費の節約に努める、こういうことでありますが、具体的な明示的な数値とかというのは、全くこれはないわけですか。

西宮政府参考人 お答え申し上げます。

 四条に書いてありますことは、いわゆる努力規定ということでございまして、節約のための具体的な措置の実施を義務づけるであるとか、あるいは米側に対して節約の具体的な結果の実現を義務づけるといった書き方にはなっておらないわけでございます。

 他方、そうしたものであったとしても、政府間の合意文書の中で、米側がこの新しい特別協定の有効期間中に一層の節約実現に向けて努力していくということを約束したこと自体は、私は、大変重いことであるというふうに考えております。

松原委員 米側がなぜこの節約努力規定を盛り込むことに合意したのかということに関して、どのように分析をなさっておられますか。

西宮政府参考人 これは、切れました前回の協定にも四条で入っておりますが、今回の新しい御審議いただいている特別協定では、一層の節約努力という書き方になっております。

 これはまさに我々も求めたところでありますけれども、こうした特別協定に基づく我が国による米軍駐留経費負担につきましては、やはり国民の税金を使わせていただく立場から、その経費を極力節減することが極めて重要であるということを申しましたし、そういった点で国民の皆様の理解を得ることが必須であるということを強調したことを受けて、米側として合意した文言ではなかろうかというふうに思います。

松原委員 私は、日本側の事情というのは、当然これは余りにも膨大になってきているということがあろうかと思いますが、米側においては恐らく、こういった国防総省のデータがあるわけですよ。日本が七五%、例えば今申し上げましたイタリアあたりだと四〇%前半ぐらいですか、米側が過半を負担している。こういうふうなことで、米側から見れば、明らかに日本にはちょっと負担を求め過ぎているんじゃないかなというふうな、これは客観的な国防総省のデータですから、そういうものがあるからこそ、私は、節約努力規定というものが、日本側の要請だけではなくて、もちろん、前回に比べて今回、一層という言葉が入っているのは、恐らく前回の実効性が十分担保されていなかったからではないかと思いますが、そういったものが前回から入っているというふうに認識をしているわけであります。

 ということは、節約努力規定の目指すところは、少なくとも、例えばこの米国防総省のデータでいきますと、サウジアラビアが六二、三%でしょうか、日本だけ七五%、イタリアは今言った四七、八%ですか、少なくともそこの突出している部分をサウジアラビアレベルにするのかイタリアレベルにするのか、どのレベルにするのかわかりませんが、そういうふうな一つの目安というのは当然議論していいと私は思うんですが、この節約努力規定に関しては、明示的な数値目標の努力目標というんですか、そういったものもなく、ただ漠然と言葉だけで、こうやって盛られているだけなんでしょうか。

西宮政府参考人 先ほども御答弁申し上げたことの繰り返しになるかもしれませんが、我々といたしましては、やはりこうした国民の税金を使わせていただく以上、経費の使用については極力効率的にしてほしいということを強く申し入れ、そういったものを反映したものであるというふうに考えております。また、数値目標的なものは含まれておりません。

松原委員 高村大臣、私は、会社でもどこでも、数値目標とかそういうものが設定されないものというのは実効性が担保されないと思っているんですよ。

 私は、節約努力規定が盛り込まれた経緯というのは、恐らく米側はそういう認識もあったんではないかと思っておりますが、この節約努力規定が、全くそういった具体的な数値目標なしで、ただ文章としてある。文章としてあるというのも、ないよりはずっとそれはいいわけでありますが、こういうことでよろしいんでしょうか。ちょっとお伺いしたいと思います、正式な協定の中身ですから。

高村国務大臣 その前に、米軍駐留経費負担がなぜ日本が突出して大きいのかということについてちょっと申し上げると、例えばドイツについては、北大西洋条約に基づき、米国との関係で相互防衛義務を負っています。韓国についても、米韓相互防衛条約に基づき、太平洋地域において米国との間で相互防衛義務を負っているわけであります。

 また、防衛費の対GDP比についても、米国防総省の、同じものでありますが、共同防衛に対する同盟国の貢献に関する統計概要二〇〇四年版によれば、二〇〇三年の数字では、ドイツは約一・五%、韓国は二・八%となっております。

 これに対して我が国について申し上げれば、日米安保条約は、第五条において、日本国の施政のもとにある領域における日米いずれか一方に対する武力攻撃を対象とするとしており、我が国は米国との相互防衛義務を全く負っていないわけであります。

 また、我が国は、専守防衛、軍事大国とならない等の防衛政策の基本を堅持しつつ、仮に我が国に対する武力攻撃が生じた場合、我が国自身の自衛の措置のみならず、米国の強大な兵力によって対処されることになることをあらかじめ明らかにすることにより、抑止力を維持しているわけであります。

 また、我が国防衛関係費の対GDP比は、平成十九年度については〇・九一四%です。

 さらに、米国が我が国の防衛のために払っている米側自身の負担についても考慮に入れる必要があります。すなわち、本年八月から前方展開を開始する予定の空母ジョージ・ワシントンの建造費は約五十億ドル、搭載される艦載機は合計で十億ドル以上であり、総コストは約六十億ドル以上になりますが、これは日本の防衛費の約一三%に相当します。また、弾道ミサイル防衛に従事するSM3、迎撃ミサイル搭載型イージス駆逐艦は一隻十二億ドル、千二百億円強でありますが、この数字は特別協定に基づく我が国の負担にほぼ匹敵する額であります。

 そういうことも全体的に考えて、同盟のコストをどう持つかということの中で、駐留米軍経費も定まってくる。

 こういうことを一つ前提にして、その上で節約努力について申し上げますと、節約努力は数値目標をつくらないと余り意味がないのではないかとおっしゃいますが、これは我が方から言って入れた規定ではありますけれども、私は、日本に対する以上に米側に対して意味がある規定だと思っております。

 というのは、上限で日本が持つ額が決まっていて、そして、その上については、労務費にしても光熱水費にしても米側が持っているわけであります。だから、まず最初、節約のあれは直接アメリカの負担が減ることになるわけであります。さらにうんと節約されれば日本の懐まで入ってくるかもしれませんが、ともかく、数字だけからいえば、まずアメリカが負担する分から節約が直接きいてくるという規定でありますから、日本が主張して入れた規定ではありますけれども、米側については、これは節約努力をするインセンティブはそれなりにある、こういうふうに思っております。

松原委員 大事なことは、いわゆる国際的な米国防総省の比較において日本は七五%と極めて高いというのは、これは日本の地政学上や日米安全保障条約の中身から見て、例えばその次は、このデータで見るとサウジアラビアの六十数%ですか、この七五%は妥当である、こういう認識を大臣はお持ちなのかどうか、お伺いいたします。

高村国務大臣 これが妥当であるかどうかというのは難しいところでありますけれども、はっきり申し上げて、日本側にすれば低ければ低いほどいいわけであります。アメリカ側からすれば、高ければ高いほどいいわけであります。そういう中の、駐留米軍経費だけでなくて、全体の同盟の負担をどうするか、そういう観点も考慮し、あるいは日本の置かれた今の安全保障環境も考慮したところで、日米間のぎりぎりの交渉でこういうことになっていると御理解していただきたい。

 ここで私が妥当だと言っちゃうと、次からアメリカと交渉するときにまた困っちゃうという話にもなるわけですから、なかなか妥当とも言えませんけれども、今のところではこういうことになっている、こういうことで御理解をいただきたいと思います。

松原委員 今、この協定が続いているわけですが、このことに関してどういう評価を、つまり、日本がこれだけ負担をしているということは米側も十分評価していると思うわけでありますが、本当は、きちっとそのことをアメリカの文化人その他も含めて認識しているかどうかというところが実は非常に疑問を感じているところであります。

 どちらにしても、サウジアラビア他の国に比べて、日本が一番ある意味でアメリカのこういった防衛によるメリットを享受している、こういう認識を高村大臣は持っているということでよろしゅうございますか。

高村国務大臣 アメリカ側もそれなりの評価をしている、そして、そういう評価をしている中で、いざというときはアメリカ国民、若者の血を流してでも日本を守るという決意ができてくるんだ、こういうふうに思っております。

松原委員 ということは、この協定にかかわる費用が、この間はどんどんと拡大をしてきたわけであります。昭和五十三年が六十一億八千七百万、ずっとまいりまして、ピーク時が二千七百五十六億四千四百万、そして現在は二千八十三億二千三百万。ずっとふえてきて、これも極めて自然の成り行きだった、アメリカの経済の問題等があって、日本がこういった負担をどんどんふやしていったということであります。

 そこで、ちょっとお伺いしたいわけでありますが、在日米軍駐留経費負担の予算額、この推移は、最初は今言った六十一億八千七百万から項目もふえ、金額もどんどんふえていくわけでありますが、これが拡大した理由、経緯についてお伺いいたしたいと思います。

西宮政府参考人 多少長くなりますが、お尋ねでございますので、お答えさせていただきたいと思っております。

 我が国は、従来から、我が国の安全保障にとり不可欠な日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を確保していくことが極めて重要である、そういう観点から、在日米軍駐留経費負担についてできる限りの努力を払ってまいりました。

 具体的には、まず、昭和四十年代後半からの我が国の物価と賃金の高騰や国際経済情勢の変動により、在日米軍の駐留に関して米国が負担している経費が増大してきていることを勘案し、政府としては、以下のとおり在日米軍駐留経費を負担してきております。

 すなわち、まず、昭和五十三年度から福利費等を負担することから始まりました。

 次に、昭和五十四年度からは、提供施設整備費などの負担を開始しました。この背景には、先ほど申し述べましたが、当時の我が国の物価、賃金の高騰や国際経済情勢の変動、なかんずく急激な円高・ドル安という事情があったわけでございます。

 それから、昭和六十二年度からは、特別協定に基づきまして、労務費につきまして、調整手当など八項目につき日本側が負担するようになりました。この背景にも、当時の日米両国を取り巻く経済情勢の変化により、在日米軍の経費、なかんずく労務費が急激に逼迫してきたという事態がありました。その中で、従業員の皆様の安定的な雇用を維持するという必要性もあった、そういう事情がございます。

 それから、平成三年度からは、特別協定に基づきます労務費を、基本給など四十四項目をカバーするということにいたしますとともに、光熱費を日本側が負担するようになりました。この背景にも、引き続き日米間の経済情勢、従業員の雇用の安定に配慮する必要性に加え、我が国が国力にふさわしい役割をみずから積極的に果たしていくことが国際的にますます求められたような事情があります。

 そして、平成八年度からは、この特別協定に基づきまして、新たに訓練移転費を日本側が負担するようになりました。この背景には、米軍の訓練が周辺地域住民の生活環境に影響を与えることを防ぎ、安保条約の目的達成と地域住民の要望との調和を図ることが重要であるというふうに判断した事情があるわけでございます。

 このような経緯をたどって項目がふえ、また経費がふえてまいりましたけれども、経費は、実際は平成十一年度をピークに、また下がってきておるわけでございます。その間、中には、けさほどもございましたけれども、光熱費につき、基地外の住宅については持つことをやめたといったような事情もありますし、今回の交渉におきましては、光熱費につき、三年の有効期間のうち二年度目、三年度目につきそれぞれ減額をするといったような努力もさせていただいている次第でございます。

松原委員 いろいろと理由をつけることは簡単なんだろうと思いますが、最初は福利費等から始まって六十一億、ピーク時では平成十一年二千七百五十六億と、この間にふえていった。

 日本の経済の繁栄を見るならば、平成元年の前ぐらいが恐らく一番の頂点だったのではないかと私は思っているんですね。その段階における合計額は千二百三億とか千九十六億とか、平成元年で千四百二十二億ですが、その後、平成十一年でピークを打つまでどんどんと膨らみ続けている。

 インフレがあったと。インフレといったって、インフレはむしろこの段階でデフレに転じているような状況ですよね。最初、インフレもあったからふやしたとかそんな御説明がありましたが。

 そうすると、平成元年以降ふえているというのは、本来はこの段階で少し減らす努力をしようという議論があってしかるべきだったと思うんですよ。

 要するに、国民の皆さんの不信というのは、何かもう青天井でどんどんふえていくのじゃないかと。今の説明で、最初、インフレだったからとか物が上がったとか経済も大きくなったから、こういう話をなさっていましたが、ピークは平成元年の前あたりで、その後二倍までこの経費がふえていることを考えると、なぜそこで、民間の会社もどんどんと節約し、もしくは倒産したり、厳しい経済環境の中で、これが伸びていったんだろう。やはり、そこでブレーキを踏むという作業を何でしなかったのかということが一番問題で、そういうふうな考え方でやっていく限り、基本的に青天井、最近はさすがに減ってきたけれども、どうも不信感があるんですけれども、この段階では少しブレーキを踏もうという議論はなかったんでしょうか。

西宮政府参考人 毎年毎年の負担額ということになりますと単価の問題とかいろいろございますので、趨勢ということのお尋ねでございますが、先ほど答弁させていただきましたように、日本のみならず、アメリカも含む国際経済の状況、為替レートの変動、その中で米側の負担がし切れない、その中で日本側の雇用の安定も図っていく必要がある、さまざまな背景を申し上げた次第でありまして、そうした形で負担額がふえてきたということでございます。

 なお、実際の負担額がふえてきた中では、例えば基本給につきましても、最初は二五%分を見るということでございましたが、これを全部見るというふうになっていったわけでございます。そして、その歯どめといたしまして、平成八年度以降につきましては、けさほど来話題になっております、二万三千五十五人ということで我々が負担する部分の労働者の上限というものを固定してきたわけでございまして、まさに青天井でどんどんふえていくということではなくて、労務費につきましては二万三千五十五名で頭打ちになって今日に至っているということでございますし、光熱費につきましても、二年度目、三年度目につきましては減額ということをこのたび交渉で実現した次第でございます。

松原委員 時間があと十五分になってしまったので、関連をする形で、先ほど高村大臣が、日本の地政学上の立場、従来も答弁を、これは三月二十六日の質疑でやっていますね。アジア太平洋地域において依然として不安定な不確実な状況が存在している中でこういった経費負担は極めて妥当性があるというようなことや、アジア太平洋地域には、冷戦終了後も、地域紛争、大量破壊兵器、ミサイルの拡散等、依然として不安定で不確実な状況が存在しております、こういうのを言っておられます。

 私は、七五%の是非という議論は議論として、そういう認識を持っているのであれば、やはり日本政府は、日米の連携の中で、日本の安全、そして日本が絶えざるテロに襲われ続け、それも現在進行形で続いているテロであると我々が認識している拉致問題に関しても、米側ときちっとスクラムを組んでいかなければいけないと思っております。

 聞くところによりますと、ヒル国務次官補はまだ依然として北朝鮮のテロ支援国家指定解除を考えているんではないかというふうな議論もあるわけでありますが、この六者協議の現状と日朝協議の現状についてお伺いいたしたいと思います。

小野寺副大臣 六者会合につきましては、北朝鮮は、昨年十月の六者会合成果文書におきまして約束しました寧辺の三施設の無力化を完了しておらず、また、同じく約束したすべての核計画についての完全かつ正確な申告を提出しておりません。このため、六者会合が残念ながら膠着状態に陥っております。政府としては、これらが実現し、さらには北朝鮮のすべての核兵器及び既存の核計画の放棄が実現するよう、米国を初めとする関係国と緊密に連携しつつ、最大限の努力をしていきたいと思っております。

 日朝関係につきましても、昨年十月の成果文書において、日朝双方が平壌宣言に従って早期に国交を正常化するため誠実に努力すること、また精力的な協力、協議を通じて具体的な行動を実施していくことが約束されましたが、北朝鮮が拉致問題の解決に向けて具体的な行動をとっていないことから、具体的な進展は得られておりません。政府としましては、引き続き、平壌宣言にのっとり、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決して、不幸な過去を清算し、日朝国交正常化を早期に実現していくという方針であります。最大限努力してまいります。

松原委員 六者協議というのは、これは日本と韓国とアメリカ、中国、ロシア、北朝鮮でありますが、我々も、韓国で盧武鉉政権から李明博政権にかわって、大変に期待をしているわけであります。

 というのは、盧武鉉政権は極めて親北でありまして、六カ国の中身が二対四になってしまう、日本と米側がこちらで、ほかの四つがアウエーになってしまう。それではどうしようもなくて、なかなか六カ国では拉致問題が議論にできないという環境があったわけでありますが、このことに関して、李明博政権ならば場合によったら三対三、拉致の問題をともに闘おうという旗幟鮮明な姿をとり得るんではないかという期待を従来から持っておりました。

 このことに関しては、何らかの連携等は既に、各級レベルありますが、行われているのかどうか、お伺いしたいと思います。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 李明博大統領でございますが、これまでに、非核・開放・三〇〇〇政策を表明いたしまして、北朝鮮によります核放棄と対北朝鮮支援を比較的明確に関係づける立場を示しております。

 日韓両国といたしましては、六者会合を通じて、朝鮮半島の非核化を実現することが重要との点で一致しておりまして、このように北朝鮮の核放棄を重視する李明博大統領の姿勢は、日本としても賛同できるものでございます。このような方針の韓国とは、二月の日韓首脳会談におきまして、北朝鮮の非核化に向けて日韓両国さらには日米韓三カ国での連携を一層強化していくということを、福田総理と李明博大統領の間で確認したところでございます。

 日韓両国にとりまして共通の課題であります北朝鮮問題の解決に向けまして、今後さらに一層意見交換を行っていきたいと思っています。

松原委員 聞いている質問の中身が違うんですよ。拉致に関しては李明博政権と話をしていますかということを聞いているので、私はするべきだと思っておりますが、現在は全くしていないのかどうかをお伺いしたい。

 高村大臣、いかがですか。これは政治のリーダーシップの問題ですから、お伺いしたい。

高村国務大臣 全くしていないということはありません。

 李明博政権と盧武鉉政権では若干立場が違うというふうに承知しておりますので、これからも各レベルでその点についても話していくことは当然のことだ、こう思っています。

松原委員 政治家として、外務大臣としての高村さんにお伺いしたいわけでありますが、李明博政権と共同歩調をとって、拉致問題に関して、六カ国協議のきちっとした議題として上げるべく努力をする決意はありますか、ありませんか。

高村国務大臣 先ほど、盧武鉉政権と李明博政権は拉致問題に対する立場が若干違うと認識していると申し上げましたが、現在の時点でいえば、日本と新政権においてもそれは差があることは事実であります。

 さらに、どういう点で協調体制がとれるかということを、我々としてはあらゆるレベルで働きかけていきたい、こういうことを申し上げているわけであります。

松原委員 日本による北朝鮮に対する経済制裁に関して、韓国の新しい政権と議論をしたことはありますか。

小原政府参考人 先ほども答弁いたしましたが、新政権が発足して以来、我々はさまざまな外交チャネルでもって協議をしてきております。御質問の点につきましても、要するに、新しい新政権の発足に伴いまして、両国の関係を一層緊密にして、北朝鮮問題についても連携をよくしていくということで対応してきております。

松原委員 これは政治家である高村大臣がリーダーシップを持ってどこまでやるかという議論になろうかと思いますが、日米韓の協調というのは、やはりこれは極めて拉致の問題の解決に必要だと思うんです。

 従来は日米しかなかったんです、盧武鉉さんがなかなかこれに関しては一緒に組もうという状況ではなかったわけでありまして。やはり多数派を握らなければできませんから、私はそこにロシアまで加えられるかどうかというのがポイントだと思いますが、日米韓で拉致問題に対しての何らかのアクションを起こすおつもりは、高村大臣は大臣としてお持ちですか。

高村国務大臣 日米韓で緊密な連絡をとっていきたいと思います。日米韓だけじゃなくて、ロシアも中国も緊密に連絡をとっていきたい、こういうふうに思います。

 それぞれ立場が違いますけれども、それぞれがそれぞれの影響力を持っていますので、できるだけ、北朝鮮に対して影響力を持つ国とは何らかの連携をとっていかないと、その中の幾つかの国が連携すれば簡単に解決するという話ではないので、それはできれば一対五の形をつくるようにどう努力していくか、こういうことだと思います。

松原委員 いよいよ四月十三日に制裁の一つの見直し期限が来るわけでありますが、当然、現在における北朝鮮に対する制裁は延長するという決意をお持ちでしょうか。

小野寺副大臣 四月十三日に期限切れとなります対北朝鮮措置の取り扱いにつきましては、核問題、拉致問題を含む諸懸案に関する北朝鮮の対応を見きわめながら適切に判断する考えです。

松原委員 適切に判断する中身は、制裁を始めたときと違いはありますか。

高村国務大臣 まだ四月十三日まで時間があるわけでありますから、断固延長するというんじゃなくて、何とかそれまでにむしろ延長しなくて済む行動を北朝鮮がとってくれないかな、くれるように淡い期待を持っているわけでございます。

松原委員 淡い期待は淡い期待であります。

 それで、実は昨日、北朝鮮による拉致被害者家族会連絡会、救う会、また議連の総会がございました。我々は、その中で議論になったことは、一年、一年というかこの間ずっとやってきて、再延長する場合には、今までの制裁では不十分だったという認識の中で、さらなる追加制裁を行うべきではないかというふうに考えております。

 具体的には、北朝鮮チャーター外国籍船の入港禁止、対北輸出、送金の全面禁止、日本人、在日朝鮮人の北朝鮮渡航全面禁止等の追加制裁を行う、三団体でこれは上げたわけでありますが、こういった動きを私は評価する立場でありますが、高村大臣、こういった追加制裁の可能性について前向きな発言をいただきたいと思います。

小野寺副大臣 我が国の対北朝鮮措置につきましては、核問題や拉致問題を含む諸懸案に関する北朝鮮の対応や、六者会合、国連安保理等における国際社会の動き等を踏まえて総合的に判断することとしております。

 追加的な措置については、現時点では具体的な検討が行われているわけではありません。

松原委員 小野寺副大臣ともあろう方が、現段階で検討していないなんということをこの場で言っちゃいかぬのですよ。私は、発動するかどうかは別にして、常に検討はするべきだというふうに思っているわけであって、そういったのり代がなかったら外交におけるバーゲニングパワーなんというのは存在しないと思っているのであります。

 高村大臣、この追加制裁に関しては全く政府部内では検討していないんでしょうか。

高村国務大臣 現時点で具体的な検討が行われているわけではございません。

松原委員 私は、拉致問題が風化してはならないというふうに思っている一人でありますし、同時に、今の政治状況の中で、例えば、中国における北京オリンピックの開催、また李明博政権の発足、つまり、六カ国協議を囲む環境も大きく変わってきている。一方において、米側における大統領選挙の帰趨もまたさまざまな影響を及ぼすことは想定をされるわけであります。

 こういう変化が外面上、外交上起こるときにおいては、やはり一つの構想を持って、構想力を持ってこの問題の解決を進めるべきだと思いますので、ぜひとも、先ほど高村さんは一対五にすると言いましたが、それはそのとおりなんですよ。しかし、まず一番中枢の三カ国を固める。日米韓、李明博政権になったわけですから、ここが変化要因なんですから。この変化要因で固めて、日本とアメリカと韓国で拉致問題に対してのスクラムを組む、さらにそこにロシアを入れ、そして中国を入れ、こういうふうなことで、一気に解決に向かって頑張っていただきたいというふうに強く要望をいたしておきます。

 もう一点は、チベットの問題でありますが、先回も質問いたしました。

 ダライ・ラマ法王がトランジットで四月十日に成田にいらっしゃるということであります。私は、日本の外交上、あえてどなたか政府高官がダライ・ラマ法王に四月十日に会うということも、一つの日本の人権を重んずるというメッセージで必要だと思っておりますが、そういったことに関して、今、外務省としてお考えがあるのかどうか。もしくは、外務省という組織ではなくて、政治家個人、例えば高村個人もしくは小野寺個人が、個人の毅然たる意識の中でお会いをする決意があるのかどうか、お伺いしたい。

小野寺副大臣 またおしかりをいただくかもしれませんが、ダライ・ラマ氏からは、米国への訪問の途中に我が国に立ち寄るということで査証申請がございました。

 ダライ・ラマ氏との接触につきましては、従来から、チベットをめぐるさまざまな要素を総合的に勘案しつつ対応することとしており、今回、政府として同氏と接触する予定はございません。

 いずれにしましても、チベット情勢につきましては、引き続き懸念を持って注視し、関連情報の収集を行っていきたいというふうに思っております。

松原委員 今のチベット紛争、そして人権問題の一番の渦中の人であるダライ・ラマ法王が、トランジットということであっても日本に一回は足を寄せる、これに関して我が政府は、我関せずえん、こういうふうな態度でいくということなのか、もう一回確認します。

小野寺副大臣 政府関係者とダライ・ラマ氏との面会につきましては、チベットをめぐるさまざまな要素を総合的に勘案しつつ対応しておりまして、今後とも、そういうふうにしていく考えであります。

松原委員 小野寺議員も本当は違うことを思っているんだろうけれども、それ以上言えないというのは大変残念だろうと推察をするわけであります。

 高村大臣にお伺いしますが、中国の他の地域においてもさまざまな騒乱が起こっているという状況について、これをどのように人権の立場からごらんになっておられるか、高村大臣にお伺いしたい。ウイグルを含めてであります。

高村国務大臣 現状を正確に把握することは困難でありますが、チベット自治区や自治州以外に、最近、新疆ウイグル自治区においても市民と当局の衝突が発生しているといった情報が出ているわけであります。こうした情勢を引き続き懸念を持って注視しているところであります。複雑な問題ではありますが、関係者が国際社会の関心を踏まえつつ冷静に対応し、事態が早期に鎮静化することを強く期待しております。

 チベット自身あるいはチベット自治区自身、その他の地域でも、人権の問題というのはやはり世界じゅうが関心を持つべきことでありまして、それに対しては、透明性を発揮し、オープンにしていくことが中国自身のためにもいいですよと、私は中国の何人かの人に既に言ったところでございます。公にもそういうメッセージを出しております。

松原委員 時間が来ましたので最後の質問にしますが、結局、共産主義の国であって、いわゆる情報を完全に統制しているわけであります。したがって、何が起こっているのかわからない、もう一カ月たって何が起こっているのかわからない、ウイグルで何が起こっているかわからない、ほかのところで何が起こっているかわからない、人権的なものなのかどうかすらわからない、恐らくチベットは人権だろう、こういう議論になっている。

 私は、やはり従来から言った国際的な監視団の派遣、これは、何が起こっているかわからない状況、人権というある意味でまさに国家を超えた概念です、この部分で日本はきちっとやるべきだろうと思っております。

 その人権監視団や、また、四月十日に成田トランジットで通過するダライ・ラマ法王と中国が、私は、中国が、台湾と何とかがどうのこうのなんという条件つきじゃなくて、無条件に話し合うべきだと思っておりますが、この二点、前回の外務委員会でも質問いたしましたが、これについて高村大臣として、あれからまた日がたっている中において、新しくメッセージとして言うことがあればおっしゃっていただきたいと思います。

高村国務大臣 異なったメッセージを出すような状況にはなっていないと思います。前に申し上げた、透明性を持ってほしい、オープンにしてほしい、そして中国側とダライ・ラマ十四世の側で話し合いが持たれることは歓迎する。変わっておりません。

松原委員 以上で終わりますが、私は、異なったメッセージを出す状況ではないというのは極めてネガティブな考え方ではないかと思っておりまして、やはり政治であり外交でありますから、その中で、では、我が国の人権外交の主張が通らない場合、何をするのかを我々は考えるべきではないか、何をもって次のカードを切るかというのを考えるべきではないか、こう思っておりますことを申し上げまして、私の質問を終了いたします。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原でございます。

 きょうは、民主党オールキャスト、ほぼフルキャストで質問をしておりまして、私、先輩議員に続きまして、最後のスイーパーで質問させていただきたいと思います。午後の質問ですし、ちょっと今、松原さんの非常に大きな声で皆さん目が覚めたかと思いますけれども、ずっと同じような質疑をされておりますので、ちょっと形を変えて質問させていただきたいと思います。

 きょうの議論を私はずっと聞いておりまして、何か足りないなと思う点があるわけです。何かというと、この大事な防衛問題について、別に江渡副大臣じゃ足りないというわけじゃないんですけれども、防衛大臣がここにおられないということ、これはよくないことじゃないかと思います。

 それで、今資料をお配りいたしましたけれども、資料をちょっと見ていただきたいんです。私は、この点、いろいろ注文をつけているんですよ。資料の三ページのところを見てください。二年前の外務委員会、ちょっと思い出していただきたいんですが、百六十四通常国会、外務委員をやらせていただいておりました。

 それで、こういった条約とか、二国間条約、多国間条約がかかっているけれども、これをみんな外務委員会だけでやるのはよくないんじゃないか、一つの方法として、関係委員会の皆さんと差しかえで質問したりするというのもあるけれども、大事なことについては連合審査でやるべきじゃないかと。

 その典型的な例として、一番下に挙げましたが、国際組織犯罪防止条約。条約のときはさっさと通った。しかし、国内法になったら、すったもんだして、さっぱり審議が進まない。条約のときにちゃんと議論をしておけば、そこから始めておれば、こういうことはなかったということなんです。そして今回、その前のページ、百六十九国会にもこれだけ出されているということですね。

 それで、では一体、連合審査というのはどれだけ行われているのかというのを調べてみました。四ページを見てください。これだけあるんですよ、連合審査。軽やかに皆さん、やはり関係するところは仲よく一緒に議論していこうということでやっておるわけです。

 そういうことを考えましたら、一般常識からいえば、この協定、外務委員会だけじゃなくて、安全保障委員会、そして石破防衛大臣もいて議論すべきだと思うんですが、二年前の指摘、まず外務省、これについて何か考えて動いたんでしょうか。

猪俣政府参考人 今篠原委員から御指摘がありましたが、二年前の外務委員会におきましても、同じような、連合審査を考えたらどうかという御指摘がございました。

 その際、政府側から答弁いたしましたとおり、国会での御審議のあり方につきましては、これはやはり国会でお決めいただくことだという認識でございますので、政府の方から、行政府の立場から意見を述べることは差し控えたいという点につきましては、恐らく、立法府、行政府両方経験された篠原委員ですから、よくおわかりだと思います。

篠原委員 そういう情けないことを言っている。これは大体、僕はよくないと思います。外務省はそれでもいいかもしれませんけれども、自分たちのところにかかわる問題を、防衛省が、外務委員会だけで議論していていいのかと、我々がちゃんと参加、いやもちろん事務方は参加している、副大臣は参加されていますけれども、やはり御大将が出てきて議論すべきですよ。

 防衛省、そういうことを考えて根回ししたりしたんですか。するべきは防衛省だと思いますけれどもね。

中江政府参考人 連合審査会の開催につきましては各委員会の御判断によるものと考えておりまして、本件につきまして、当省として何らかの働きかけを行ったということはございません。

篠原委員 今、公務員改革で、国会議員と接触してはいけないとかなんとかというのがあります。僕は、これはいろいろ議論があるんだろうと思います。

 資料の一ページを見ていただきたいんですが、今から十二年前の連合審査の例です。懐かしい名前がいっぱいあるのでちょっと見ていただきたいんですが、海洋法条約の批准とそれに関連する国内法体制の整備について、四つの委員会の連合審査が行われているんです。

 一番下、出席国務大臣を見ていただきたいんです。内閣総理大臣は今は亡き橋本龍太郎さん、不思議なんですが、四人全員亡くなっていて、中川秀直さんだけがしぶとく生きておられるんですね。まあ、元気でいいことだと思いますが。これは四委員会でちゃんとやっておるわけです。どうやってやったかというと、いろいろな知恵がなかったらこれはできないんです。農林水産省の水産庁の企画課長にシ何とかという気のきいた課長がいて、これは理事たちが働きかけたんですよ。

 見てください。外務委員会の理事に玉沢徳一郎さん、農林水産委員会はもちろんですけれども、運輸委員会、辻一彦委員長、理事武部勤さん、なかなか言うことを聞いてくれない人でしたけれども。それから、科学技術委員会は井上喜一委員長。私は、私なんて言っちゃうといけない、こういうところに事務方が回って、やった方がいいでしょうと。当然その方がスムーズにいく、大局的な議論ができるということで、でき上がっているんですよ。なぜこういうことをされないのか、私にはよくわからないんです。

 それで、国会のことだからという言いわけがありましたけれども、そういうことでは、両方に席を置くというのは、私だけではなくて防衛副大臣も高村大臣も皆同じなんですが、防衛副大臣、この点についてどう思われるでしょうか。やはり両方で議論していただくべきじゃないでしょうか。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 あくまでも、この件に関しましては、その委員会においての御判断だと思っていますから、国会側の御判断で決められることだと、私はそのように考えているところでございます。

篠原委員 みんなそうやって言っておりますが、だれかが音頭をとってやらなければいけない。先ほど、午前中の議論でも高村大臣は正直に答えておられましたが、これは防衛省が答えるべきだと。事務方でもいいのかもしれませんけれども、やはり私は、防衛大臣もここにいて、ちゃんと審議していくべきではないかと思う。

 これは審議全体にかかわることですから、もう一度ちょっと申し上げておきますと、私は、外務委員会というのは、ほかの委員会と違ってアンブレラ委員会だと思います。いろいろな省庁、いろいろな委員会にかかわる、そのみんな上にかかわっている。だから、大変だろうと思います。

 ですから、今の資料の、ことしの国会にかかっているのをちょっと見ていただきたいんですけれども、二ページ目のところを見ていただきたいんです。これでいったら、定型的なもの、例えば投資協定とか社会保障協定、こういうようなものですね。定型的なものはさっさと議論してやって、一般質疑を多くしたり、あるいは、この在日米軍駐留経費負担特別協定、これは圧倒的に重要だと思います、こういうのをたくさん議論する。

 さっき河野理事から、民主党が応じなくてこんな一日しかできないんだ、それはそのとおりだろう、それはよくないことだと思います。臨機応変に議論して、これにはちゃんと防衛大臣も来ていただいて、何日も議論するべきだと思います。

 これは、委員長、今後の審議のやり方として、ぜひ考えていただきたいと思います。

平沢委員長 委員会の運営につきましては、理事会で十分御協議いただきまして、その結果に基づいて行っておりますので、その点、御理解をいただきたいと思います。

篠原委員 はい、わかりました。一番前の列を見ますと、非常に意欲的な立派な理事が並んでおられるわけですから、今後は改善されていくんだろうと思って期待しております。

 それでは、本論に入らせていただきたいと思います。

 先ほどから、思いやり予算、思いやり予算と言われています。西宮局長は思いやり予算なんて言っていないということをおっしゃっていますけれども、俗称としてずっと言っているわけですね。これは、英語でどうやって言うんでしょうかね。教えていただきたいのですが。いろいろなことを言われておりますけれども。

西宮政府参考人 先ほど申し上げた注釈は省略させていただきまして、我々は、在日米軍駐留経費負担というふうに申し上げているという前提で、我々が在日米軍駐留経費負担というふうに使っている言葉に対応する英語の訳といたしましては、ホスト・ネーション・サポートというのが一般的ではないかというふうに思います。

篠原委員 いろいろな訳し方があると思いますけれども、それは余りにも美しく聞こえ過ぎているんじゃないですかね。やはりシンパシーバジェットとか、そういう直訳の方がぴったりなような気がします。

 それで、皆さんにA3の資料をちょっと配りましたが、これは、皆さんに見ていただきたいというよりは、私の頭がこんがらがっているので、この在日米軍駐留経費負担がどのように動いてきたかというのを整理するためにつくった表です。それなりのできだと思いますので、左側に置いてよく見ていただきたいと思います。

 ここにちょっとないので言いますと、この上ですけれども、今後考えるに当たって大事なことなんですが、戦後すぐは特別調達庁というのがあったんですね。それは米軍御用達みたいなのでできて、そのときは日本政府がすべて負担していたんです。今はバードンシェアリング、半分かもしれませんけれども、かつては日本政府がすべて負担していた。

 それが、一九五一年、昭和二十六年、これじゃよくないということで米国の負担となって、地位協定ができて、二十四条ですね、それでアメリカがほとんど負担して、土地の貸借とかそういったものはただにしてくれというだけになっているわけです。

 ところが、そこから変わってきたわけですね。そして出てくるのが、二番目の「日本側のなし崩し的妥協」という、タイトルもちょっと私の恣意的なタイトルでございますけれども、見出しですけれども、金丸さんの思いやり予算というのが出てくるわけですね。これは左側の方の、どういう人たちが関与していたかというのも見ていただきたいと思います。

 ここに書いてありませんけれども、七七年の福田内閣のときの防衛庁長官は違う三原さんでしたし、一九八〇年のころは伊藤宗一郎さんという、また違う伊藤さんです。なかなか縁のある方がたくさんおられます。これをよく見ていただきたいと思います。

 何で「なし崩し的妥協」というふうに書いたかと言うと、本当にこれは、先輩の委員の皆様方も質問をされておられましたけれども、こんなにずるずると予算をふやしてきた例というのは私はないんじゃないかと思うんです。

 同じころ日本国政府はどういうふうに言っていたかというと、マイナスシーリングの時代だったんですね。覚えておられるかと思います。それで、例外があったんです、一九八〇年代。何かというと国際貢献論が盛んに言われておりましたから、防衛費とODAと、なぜかしら科学技術振興費、中川一郎科学技術庁長官がおられたりして、声がうるさかったからだと思いますけれども、この三つがマイナスシーリングの例外で、どんどんどんどん伸びてきたんです。その中でぬくぬくとこれがふえてきたんだろうと思います。

 日本のように、条約上の根拠もなくてこんなにずるずると経費を負担してきた国というのは一体あるんでしょうか。先ほどから各国との比較をいろいろ質問しています。それに対して、いやいや、それぞれ事情が違うんだ、事情が違うんだと。事情が違うのはわかりますけれども、日本のように、こんなに何かずるずると五月雨式に経費負担がふえていった国というのはあるんでしょうか。

西宮政府参考人 先ほど来御答弁申し上げておりますけれども、各国が負担している米軍駐留経費というのは、あくまでも当該各国を取り巻く安全保障環境などの種々の要因を総合的に勘案して負担されているものであり、単純な比較評価は困難でございますし、米国がそうした我が国以外の米国の同盟国と締結しているさまざまな協定につき、政府として御説明申し上げる立場にはございません。

篠原委員 こういうのを考えるときは、交渉事もそうですけれども、EPAやFTAをやるときに、交渉するときに、各国、事情が違うから、ほかの国のことはどうでもいいというようことで交渉はしていないはずです。ほかの国はこういう事情があってこういう協定になっている、日本はこうだといってやっていくのが普通じゃないでしょうか。

 私は、一たんこういうふうに、言ってみれば不平等条約的な感じになったのを直すのは大変だろうと思います。幕末の不平等条約も何年もかかって、アメリカとのことでいったら、日米修好通商条約ですか、それを日米通商航海条約にするには何年もかかっているわけです。ですから、大変だろうと思いますけれども。地位協定上、日本には負担する義務はなしで枠内でとか言っていた。ましだと思います。特別協定をつくってやり始めたわけですけれども、やはりこれは野方図過ぎたんじゃないかと思います。私は、ずっと削減対象にされっ放しの農林水産省というところにいまして、予算がふえたことなど一度も経験しないできたので、こんなにふえてばかりいる予算を見るとそれだけで腹が立ってくる。非常によくないことだと思います。

 事情が変わったんですね。事情が変わってきたんです。今は事情が変わっているので、これと似たようなのでずるずると来たのでは、道路特定財源があります。それを福田総理、大胆に一般財源化すると言っておられました。

 この道路特定財源というのは田中角栄さんそのものの財源だったんじゃないですか。しかし、田中角栄さんはやはり遠くになりにけりなんじゃないかと思います。それから、同じ時代の金丸信さんのつくられたこの思いやり予算というのも遠くになりにけりにしなければいけないんじゃないかと思います。なぜかといったら、田中眞紀子さんが近くで非常に元気でおられますけれども、私は時代が変わってきているんだと思います。やはり道路特定財源、事情が変わってきた。道路事情が悪かった、七十万台しか自動車がなかったころにつくられた、そしてオイルショックがあった、暫定税率にした、しかし事情が変わってきたのと、これは同じじゃないかと私は思います。

 アメリカ全体のトランスフォーメーションとか米軍再編とかいうのもあるわけです。事情が変わってきているんです。

 先ほどから、事情が違う、事情が違うと言っておられます。事情の違いはちゃんとドイツはわかっています。NATOの地位協定がありましたが、それをボンの補足協定で改めたりしていますよ。事情が変わったから改めているんですよ。そして、この経費負担も改めているんです。

 日本でいったら、事情が変わったというので、午前中余り議論になりませんでしたけれども、日本は、いいことだかどうかわかりませんけれども、変わってきているわけです。テロ特措法もできました、二〇〇一年に。二〇〇三年にはイラク人道支援特措法もできましたし、米軍再編整備法もできました。日本はいろいろやってきているじゃないですか。ですから、駐留経費負担にも私は絶対変化があっていいと思うんですが、高村大臣、いかがでしょうか。これは余り変わっていないんじゃないかと思います、日本の考え方、態度ですね。私は大胆に変えていくべきだと思いますが、いかがでしょうか。

高村国務大臣 事情が変わってきたとおっしゃるけれども、どういうふうに変わってきたんでしょうか。

 例えば、北朝鮮が核実験をやったというのは、防衛費あるいは駐留米軍経費を下げる方に働く変わり方でしょうか。例えばドイツなんか、SS20がずっとドイツ国内を射程におさめて本当に危険な状況にあったときと、まさに冷戦構造が崩壊して、委員がおっしゃるように、劇的に事情が変わったと言えますけれども、この北東アジアにおいて、冷戦構造が崩壊して、全くそういう要素がなくなったと言えるんでしょうか。

 私は、大きな観点からは事情は変わってきていない、むしろ安全保障環境はより厳しくなっているぐらいだと言えなくもない、そういう状況だと認識をしております。

篠原委員 高村さんの認識は、それはあってもいいと思います、厳しくなっていたらなっていたでいいので。日本国を守っていったりするときに考えなくちゃいけないのは、第一義的責任は、別にアメリカじゃないんです、日本なんです。日本がきちんとやっていけばいいので、日米安保条約が片務的だとさっきおっしゃっていましたが、そんなのもいろいろありますけれども、事情は変わってきているんです。変わってきているから変えているので、その表をちょっと見ていただきたいんです、そのでかい表を。

 私は、新たに負担がふえてきたのを「新たな負担項目」というので、あるいは「なし崩し的妥協」というのでバツをつけてきております。しかし、二〇〇一年ぐらいから丸とか三角になってきているんです。例えば、一九九六年のときに、従業員の人数の引き上げはしましたけれども、上限を設定したんです。これはいいことだろうと思います。二〇〇一年には経費の節約規定を初めて明文化しました。だから、負担増に歯どめをかけようとしているんです。別に、ずっとなし崩し的にふやすということを続けてきているわけじゃないんです。二〇〇一年がターニングポイントだったんだろうと思います。

 しかし、ずるずるとやっていて、五年後、二〇〇六年になったらもっと大幅に削減するのかと思ったら、そうでもなかった。しかし、よかったんです。二〇〇六年のところを見てください。期間を二年に短縮している。米軍再編の状況がわからない、米軍再編の成り行きいかんによってはこの経費負担も大幅に変わってくるだろう、だから二年にしたと言っているんです。しかし、今回、何で三年なのか。道路特定財源は、五年とか二年でやってきて、何か今回十年でやっている、へんちくりんな話だと思いますけれども。

 この二年と三年、急激に変化しつつある、安全保障は危うくなってきているという高村さんの認識は、それはあるんだろうと思います。そうしたら、もっと変わっていくかもしれないのです。変わっていくかもしれないんだったら、二年になったら二年、これは二年が絶対的な合理的な理由がある、三年が絶対的な合理的な理由があるということはないと思いますけれども、二年を三年にした理由というのは、前例にとらわれずに三年にされた理由というのは何か特別あるんでしょうか。

西宮政府参考人 御指摘のとおり、従来は有効期間というのが五年間になっておったということでございまして、五年間に限定した暫定的な性格の特別協定を締結してまいった次第でございますが、平成十八年に締結しました前回の特別協定につきましては、平成十七年十月の2プラス2の共同発表に盛り込まれました在日米軍再編の勧告に関するその後の検討実施の進展の見通しも踏まえる必要があったわけでございまして、その時点では在日米軍再編の進展の結果を見きわめることが困難であったとの特殊な事情を踏まえまして、従来のように五年ではなく二年という協定にしたわけでございます。

 二年か三年かという合理的な理由というお尋ねでございますけれども、今回につきましては、その後、平成十八年五月の2プラス2で、再編に係ります最終報告、いわゆるロードマップが決まりまして、その中にある個別の再編計画の詳細がしかしながら依然として日米間で協議中であるということで、現時点でもなお、再編の最終的な経費の全体像が見えてこないということが一つ、暫定的なものとせざるを得なかった背景でございます。

 さはさりながら、在日米軍の駐留、これはより安定的なものにすることが望ましいということ。また、今回の交渉の結果、一つの成果だと考えておりますが、今後、在日米軍駐留経費負担の包括的見直しを行うこととなったといったようなことも考え合わせまして、さらに二年か三年かということであれば、従前五年でございましたので、前回の二年と三年を足して五年になるということなどを総合的に勘案したということでございます。

篠原委員 私は別にけちをつけているだけじゃなくて、二〇〇一年から方針を変えて負担増に歯どめをかけた、それから二年にしている、三年にしているというのは、しらばくれて十年で通そうとしている道路特定財源の変な動きからすればよほどましだと思います。

 しかし、申し上げたいのは、もっと柔軟に変えていっていただきたい。例えば、一九六〇年に地位協定ができたときに、貧乏な日本にいろいろな経費を負担してもらうなんというのはアメリカは夢にも思わなかったはずですよ。それから、信じられないぐらいの高度経済成長があった。そして、ドルショック、ニクソン・ショックのときに三百六十円の固定レートだったのが、百八十円に、半分になったりして、よくいろいろなところに書いてありますけれども、米軍の将校の給料が沖縄の基地の勤続二、三十年の、勤続年数の相当長い警備員の方の給料よりも少なくなった、これはおかしいというので日本にも負担してもらうというような動きがあったわけですね。

 そういうことからすれば、日本はもう経済も一流ではなくなった、そんなに金が余っているわけじゃない。日本の財政当局なり日本のパフォーマンスが悪いので仕方がないかもしれませんけれども、日本がかつてのようにいつまでたっても負担している事情はなくなったんですよ。そっちの方も考慮してしかるべきだと思います。

 ドイツの方も変わったわけです。SS20の話が出ました。駐留の役割は縮小したというのもそのとおりだと思います。しかし、日本には新たな北朝鮮の脅威とかいうのがありますけれども、少なくとも冷戦のときの、ソ連があって三沢基地を拡充しなくちゃならないというような事情はなくなったわけですから、それに応じてアメリカ軍の再編もしてもらわなくちゃならないので、それに応じて日本の負担も少なくしていくというのを私は考えてもいいんじゃないかと思います。

 それから、次に移らせていただきますけれども、いろいろな協定の具体的な内容については、先輩議員がいろいろ細かいことをお聞きになっておられますので、それは通告はしてありますけれども、ダブるものは聞きません。しかし、いいことをやり始めたらもうちょっとやっていただきたいというのが一つです。

 平成十二年の日米合同委員会では、米軍の娯楽性、収益性の高いような施設というのは提供施設整備の対象から外す、これは当たり前だと思います。皆さん触れられませんでしたが、教会とかショッピングセンターとか映画館とかゴルフ場とか、そういうのはもう新規なのはやらないということになったそうです。

 それは当然のことだと思いますけれども、それだったら、先ほど山口さんが午前中に言っておられました、武正さんも触れておられましたけれども、いろいろなアミューズメントというか娯楽関係の人件費なんかも、建物にはお金を出さないといったら、そこで働いている人たちの生首を切るのは、まあすぐ首にするのはよくないですけれども、娯楽関連の従業員については日本の支払いの対象にしていかない、そして新規採用しない、そういう細かい配慮もしてもいいと思うんです。日本の予算査定だと、すぐ財務省の主査や主計官はそういうことを言ってきます。しかし、それはアメリカ側にも私は言っていいんじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 今も、おわかりだと思いますけれども、特別協定は、協定前文に明記されているとおり、駐留軍等労働者の安定的な雇用を維持することを大きな目的にしているわけでございます。この目的実現のために駐留軍等労働者の労務費に係る負担と、地位協定に基づき負担している提供施設整備とを一概に比較してお答えするということは困難だと思っております。

 また、駐留軍等労働者の労務費に係る日本側負担につきましては、特定の所属や任務につく支払い対象者を個別に特定して負担しているわけではなくて、あくまで日米間の負担のバランスという総体的な観点から、その規模を日米間で交渉の上、決定するものでございます。

 そしてまた、提供施設整備については、地位協定の個々の施設ごとに、我が国の自主的な判断によって適切に措置しているというところでございまして、委員が御指摘のとおり、平成十二年にはこの提供施設整備の案件採択基準を作成し、娯楽性及び収益性が高いと認められる施設の新規採択を控えるということにしたわけでございます。

 なお、日米両政府は、新たな特別協定の期間中に在日米軍駐留経費負担の包括的見直しを行うということで合意しておりますので、この場を利用などいたしまして、先生の御指摘の娯楽性の高い駐留軍等労働者の給与負担の問題についても議論してまいりたいと考えているところでございます。

篠原委員 ぜひそうしていただきたいと思います。

 それからもう一つ、資料の方を見ていただきたいんですが、「駐留米軍に対する各国の負担割合」、これは、松原さんが先ほど熱心にやられましたので、私が改めて指摘する必要もないかと思いますけれども、資料は私の方がずっときちんとしておりますので、ぜひ見ていただきたいと思います。

 私は、これもまた苦労してつくったのです。これは、本当は私がつくるんじゃなくて防衛省なり外務省につくっていただきたいんですけれども、どうもだめなんですね。ちゃんとつくってくれないので、間違っているかもしれません。よく見ていただきたいんですが、日本、韓国、ドイツ、イタリア、それからNATO同盟国、二〇〇四年のもあるんですが、二〇〇二年のにして、米国軍人数などは二〇〇六年のでやりました。ちょっと見てください。

 各国負担費、それぞれ、それなりに多いというふうに言われていますけれども、Dのところですけれども、日本は四十四億に対してドイツは十五億だ。韓国は八億だと言われています。

 その下を見ていただきたいんですが、直接支援、要するに労務費だとかそういったものですよ、日本が山ほど負担しているもの。それは三十二億なんです。ほかの国になると、がたんと減っているわけです。わかりますか。ドイツは二千八百七十万ドル。イタリアに至っては三百二万ドル。直接支援はしていないんです。やはり欧米は、そういうのじゃなくて土地の賃貸料とかそんなのばかりを負担している。それで、負担していることになっているんですけれども、実際にお金を払っているというのはほとんどないんです。

 韓国がちょっとかわいそうだと思う。いつも韓国はかわいそうだと思います。韓国は多分日本を恨みに思っていると思います。隣の日本が気前よく出すから、おれたちも出さなくちゃならないと。韓国というのは、いろいろなところでいつもそういう目に遭っているんですね。ドイツやイタリアは、日本がやろうと、へのかっぱです。

 直接支援を見ていただくと、この二千八百七十万ドルと三十二億ドル、百十二倍です。そして、NATO同盟国全体、これと比べてもすごく多くなるわけです。全体でもちょっとだけなんで、七千六百五十五万ドルですから、日本だけで四十二倍も出しているんですよ。そして、アメリカの外国に駐在する軍隊に対して直接支援しているものの全体が四十一億ドルです。その八割近くを日本が出しているんです。

 やはり、これは異様じゃないでしょうか。国連の分担金とか、いろいろな国際機関の分担金というのはあります。そのように考えても私はいいんだろうと思います。世界の平和と安定に日本も資する。しかし、それにしても、余りにもほかの国と比べて多過ぎるんですよね。この数字をしっかり頭の中に入れておいていただきたい。

 先ほど松原さんは、日本のXのところの一番下の負担率、七四・五%というのを見ました。しかし、その上のB分のAも見ていただきたいんです。アメリカ軍人百人に対して、日本人従業員が七十六人くっついている。やはり労働者数も多過ぎるんじゃないかなという気がいたします。こういうのをちゃんと頭に入れておいていただきたいと思います。この点についてはもう申し上げません。

 それから次に、もう一つ、同じような細かいことですけれども、私はびっくりしました、どんぶり勘定だなというのですけれども。米軍の基地内の住宅にメーターが全然ついていないというんです、ガスも電気も水道も。私なんか、金帰月来で、余り帰れないときもありますから、長野の駅前にワンルームマンションを借りているんですが、八万円で高過ぎるんですけれども、ろくすっぽ使わないのに、ちゃんとメーターがあって、毎月きちんと請求されます。米軍の住宅は全然それがないというんですね。私は、これは不思議だと思うんです。

 アメリカの国内の陸軍基地、海軍基地に同じように宿舎があると思います。そういう宿舎も同じようにどんぶり勘定で、一軒一軒にメーターがついていないんでしょうか。この点、承知しておられますでしょうか。

地引政府参考人 お答えさせていただきます。

 米軍基地内の家族住宅に居住いたします米軍人等の光熱水料等につきましては、在日米軍を維持する上で必要なものとして、家族住宅以外のものもあわせて公用として米側が一括して調達していることから、メーターの設置は、戸々には置かれておりません。

 また、御指摘の諸外国、米国等も含めまして、駐留米軍基地内の住宅に係る状況については、現在当省としては承知しておりません。

篠原委員 これだけ節約とか言っているときに、しらっと、諸外国については承知していませんなんて、よくぬけぬけと答えられますね。そのぐらい調べて当然じゃないですか。駐在武官が何カ国に何人行っていますか。そんなの、調査訓令を打って調べればすぐわかることですよ。節約節約と言っているときに、別に、メーターをつけて一軒一軒で節約してください、そのぐらい言ったって罰は当たらないと思いますよ。それはすぐやってください、やっていないんだったら。

地引政府参考人 御指摘も踏まえまして、調査させていただきたいと思います。

篠原委員 この点、僕はいつもこれは非常におかしいなと思うんですけれども、ほかのところのいろいろな経済関係ですと、国際比較というのは常に出てくるんです。物価が、これが高い、米が高い、これだけ価格差がある、これをどうするのかと。カリフォルニア米はどれだけだ、タイ米はどれだけだ、こんなことばかりやらされていますよ。それで、日本はけしからぬ、もっと安くしろと。国際比較が必ず、いろいろな政策のときに出てくるんです。

 なぜ、これだけインターナショナルな安全保障の問題について、各国比較というのがきちんと行われていないんでしょうか。これは外務省の問題でもあり、防衛省の問題でもあります。この数字をきちんと明らかにしてください。私がちょっと時間をかけてつくるというようなことじゃなくて、さっさと、言ったらすぐ出てくるというようにぜひしていただきたいと思います。そして、それをこれからやる包括的な交渉の材料としてぜひ使っていただきたいと思います。そうじゃないと、私は進んでいかないんじゃないかと思います。

 それからもう一つ、細かいのですが、細かいというか皆さんがお気づきにならなかった点ですけれども、米軍用の施設にはいろいろなものがあって、へえ、こんなのまで建てていたのかというのが非常によくわかりましたけれども、従業員も物すごく多いわけです。

 この従業員の皆さんが、バーだとかクラブだとか、将校クラブには入れないでしょうけれども、体育館とかいろいろなものを、日本人従業員が使えるんでしょうか。使えるのか、使えないのか。使えないとしたら、従業員だけでも二万五千四百三人もいる、この人たちのレクリエーション施設とかいうのは米軍基地の中にあるのかないのか、教えてください。

地引政府参考人 お答えいたします。

 在日米軍施設内におきましては、駐留軍等労働者の方々が利用できる在日米軍の福利厚生施設、具体的には体育館、野球場、テニスコート、ボウリング場、食堂、売店等につきましては、基地ごとに異なりますけれども、米側の許可を得てその一部を利用している状況でございます。

篠原委員 それを聞いて安心しました。日本はそういうふうになっているんですが、アメリカは、将校クラブとかがあるのと同じように、食堂も別になったりしていて、余り使えないんじゃないかなというのが気になったんですが、使われていればいいかと思います。

 それで、ちょっと時間がなくなりましたので、いろいろな通告した質問を省かせていただきますけれども、日本がこれだけやっているというのが余り知られていないんじゃないかということを先輩の委員の皆さん方も聞いておられました。私は、実際そうじゃないかと思う。日本がこれだけ出しているというのを恩着せがましく言うのはよくないかと思います。私は、座右の銘として、尽くして求めずとか、尽くされて忘れず。わかりますかね。いろいろやったことは余り恩を着せちゃいけない、恩を受けたのはちゃんと忘れずにいなくちゃいけないというのを心がけているわけですけれども、どうもアメリカはそうじゃないような気がするんですよね、見ていますと。

 それで、恩を着せるやり方というか、日本はこれだけやっているんだよというやり方は何かないかなと考えたんですけれども、そうしたら、あるんですよ。田舎へ行ってみてください。農林水産省だけがこういうことを押しつけているわけじゃないと思いますけれども、これこそ自発的にです。日本が思いやり予算をつけているというのを、自発的に、御丁寧に、道路とか建物で、平成二十年度農林水産省何とかかんとか事業と、でかく書いてあるんです。これは何十年も看板がかかったままです。感謝しているんです。それで、あの施設は小坂善太郎さんがつくってくれた建物だとか、残念ながら篠原ハウスとか篠原橋はできておりませんけれども、こういうのがあるわけです。

 それだったら、日本がつくっているというようなことをちゃんと知らせるべく、日本のこの予算でつくられているというのを明記するようなことを考えても私はいいんじゃないかと思いますけれども、副大臣、いかがでしょう。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 FIPの関係で、提供施設の方の場合は、日本の税金をしっかりと使って、その形で施設ができているわけでございますから、委員の今の御意見を承って、検討させていただければな、そう思っているところでございます。

篠原委員 今、山中さんが多分、この○○が何かといって気にされていたんじゃないかと思います。思いやり予算というのは、いつのころから言われたか。私は、これは思いやりが過ぎているんじゃないかと思います、余り感謝もされずに。

 それで、余り露骨に書くのはやめて○○にしてありますけれども、何かおわかりでしょうか。これは、悪女の深情け予算。全く、こんなにやっているのに余り効果が出ない、感謝されないというようなものじゃないかと思います。これは、男女差別で、女性からけしからぬという声が出てくるんじゃないかなと思ったので、アでわかりますかね、アッシー君の貢ぎ物予算。だけれども、そのたぐいだと私は思います。

 もっとちゃんと考えて、対等に、私はこの議論を本格的にやっていっていただきたいと思います。そうじゃないと、余り野方図に予算をつけたりしていると、やはりばかにされますよ。レストランに行って、何か羽ぶりのいい服を着た人が五倍、十倍のチップを出す。この人は尊敬されるか。尊敬されないですよ。それなりのチップを出す人がわかっている人というふうに思われるんじゃないでしょうか。私は、日本はチップの出し過ぎだと思います。

 ぜひ、この三年間きちんと検討して、この次の三年後は連合審査でもっときちんとした議論が行われることをお願いしまして、私の質問を終わらせていただきます。

平沢委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 最初に、神奈川県の横須賀市で起こりましたタクシー運転手高橋正昭さんの刺殺事件で、米兵が米軍の捜査当局に対して、私がやりましたと犯行を全面的に認める供述をしたと報道されております。

 警察庁に聞きますが、今捜査はどういう状況にあるのですか、説明してください。

米田政府参考人 御指摘の事件につきましては、この事件について何らかの事情を知っていると思われるアメリカ兵を、けさから神奈川県警において取り調べ中でございます。

赤嶺委員 今取り調べ中ということでありましたけれども、当然、逮捕し、起訴前の身柄引き渡しを米側に求めていくという報道もありますが、要求するんですか。

米田政府参考人 起訴前の身柄移転の要請ということも視野に入れながら捜査を進めてまいります。

赤嶺委員 ぜひしっかりやっていただきたいと思います。

 タクシー強盗事件というのは、殺人事件に至る前の事件が沖縄県下でもことしに入っても続発している事項ですから、本当に法と証拠に基づいて厳正な処罰を求めていきたいと思います。

 基地外居住について聞きます。

 きのうの質問主意書に対する政府答弁の中で、基地の外に住む米軍関係の実態について、実際には二〇〇四年からアメリカ側から情報提供を受けていたというぐあいに答えております。ところが、その情報は、原則として地元自治体以外に公表しないということが前提だったということです。

 この点にかかわって防衛省は、積極的な公表はしていなかったが、自治体からの問い合わせがあれば回答していた、このように言っているようですが、いつ、どこの自治体に回答していたんですか。

地引政府参考人 お答えいたします。

 防衛省は、在日米軍人等の施設・区域内外の居住の実態につきまして、米軍人等の人数を公表するまで、自治体からの問い合わせに対しまして回答したことはございません。

 なお、平成十六年より米側から提供されております施設・区域内外に居住する米軍人等の人数につきましては、普通交付税の算定上、基地が所在することにより生じる財政需要を算定するための基礎資料といたしまして米側から提供されたものであり、これを総務省に提出しているものでございます。

 これを受けまして、総務省におかれまして、法令に基づいて、地元自治体に対し、普通交付税の算定の基礎として用いられている米軍人等の人数を通知しているものと当方としては承知しているところでございます。

赤嶺委員 米軍から知り得た情報を自治体に直接回答したことはないということなんですか。

地引政府参考人 繰り返しの御答弁になるかと思いますけれども、防衛省といたしましては、在日米軍人等の施設・区域内外の居住の実態につきまして、米軍人等の人数を公表するまで、自治体からの問い合わせに対しまして回答したことはございません。

赤嶺委員 回答したことがないということなんですが、去年の三月に、沖縄の北谷町で、米軍属の子供が北谷町の自宅マンションのベランダから歩いていた女性や自動車に空気銃で発砲した事件がありました。これも基地の外に住んでいる軍属の息子であります。

 こういう事件が起きたときに、当該自治体が基地の外に居住している米軍属軍人について説明を求めているわけですが、あなた方は何でそういうものに対しても説明をしなかったんですか。

地引政府参考人 お答えいたします。

 十九年三月に係ることでございますので、過去の記録、すべて記録が残っているわけではございませんけれども、平成十九年三月に北谷町で発生した事件、これは、米軍属の子息による空気銃発砲事件に対しまして、同町議会から、その一帯に所在する米軍人軍属の居住者数を公表するよう要請したわけでございます。

 当該要請を受けまして沖縄防衛局が米側に確認したところ、米側からは把握していない旨の返答がありましたけれども、防衛局は同議会に対してこの旨を連絡はしなかったということでございます。

赤嶺委員 今ちょっと答弁も聞き取りにくいんですが、もっとはっきり、クリアな声で答弁していただきたいと思います。

 今あなた方は、要するに、事件が起きて北谷町は、基地の外に住む米軍属の自宅マンションから空気銃が発砲されたその事件で、基地の外に住んでいる米兵の実情について問い合わせがあった、あなた方は米側から情報を得た、だけれども教えなかったということなんですか。そんなの、情報を教えて当然じゃないですか。提供したんですか、しなかったんですか。

地引政府参考人 お答えいたします。

 私ども、平成十六年より米側から提供されているものにつきましては、施設・区域内外に居住する米軍人の人数のトータルでございます。

 一方、十九年三月に北谷町で発生した事件に対して、同町議会から、その町会の一帯に所在する米軍人軍属の居住者数を公表するよう要請されたわけでございまして、当該要請を受けまして沖縄防衛局が米側に確認したところ、米側からは掌握していない旨の返答がありましたが、防衛局は同議会に対してこの旨を連絡しなかったというような状況でございます。

赤嶺委員 事件が起きても、あなた方がそれにきちんと対応しない、米側から情報が得られなかったから町当局に対しても情報を出そうとしない、そういう態度が今度の女子中学生暴行事件につながっているんですよ。私は厳しくこの点についても抗議したいんですが、当たり前じゃないですか、そういう事件が起きたときに情報を提供するのは。

地引政府参考人 お答えさせていただきます。

 防衛省におきましては、繰り返しになりますけれども、平成十六年より日米合同委員会の枠組みの中で、政府がその所掌事務を遂行する上で必要なデータの基礎資料といたしまして、施設・区域内外を合わせた居住する米軍人等の人数について米側から提供されているわけですから、原則として地元自治体以外には公表しないということを前提としたものでございます。

 他方、政府といたしましては、先般の在沖海兵隊員によります日本人女子中学生に対する暴行被疑事案への対応として、本年二月二十二日、当面の措置としての再発防止策を発表し、かかる措置の一環として、年に一度、施設・区域外に居住する米軍人等の人数に関する情報を地元自治体と共有することとしたところであります。

 こういう中、防衛省としては、先般の在沖海兵隊員によります日本人女子中学生に対する暴行被疑事案の重要性にかんがみまして、米軍人等の施設・区域外居住の実態について、可能な限り早期に公表するとの方針のもと、最新の公表可能な資料の提供を米側に求めるとともに、同時に、過去に提供を受けておりました当該データの公表について、米側と調整した結果、二月二十七日に、十九年三月末時点の市町村別居住者数を公表したところでございます。

 今後、そういう念頭のもとで対応してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。

赤嶺委員 あなた方の態度というのは、当該自治体がどんなに基地の外の米兵の犯罪に恐れ、住民の安全を守るために必死にやっているか、そういうことに思いをはせない態度であるというのが今の答弁の姿勢でもはっきりしていると僕は思います。

 それで、次はキャンプ・ハンセンについて聞いていきます。

 特別協定、今議論しているわけですが、この訓練移転には、キャンプ・ハンセンで行われていた県道一〇四号線越え実弾砲撃演習の本土移転、これが盛り込まれております。これは、SACO合意で、沖縄の痛みを分かち合うとして本土五演習場で分散実施してきたものです。負担を軽減したはずのキャンプ・ハンセンでどういうことが起こっているか、これについて聞いていきます。

 キャンプ・ハンセンにはレンジ4という訓練場があります。隣接した金武町伊芸区の集落からわずか三百メートルしか離れておりません。住民は、爆音や流弾事故や山火事に苦しめられてまいりました。ところが、二〇〇五年にこのレンジ4に新たな米陸軍の複合射撃訓練場が建設をされまして、これに対し、地元金武町や伊芸区の住民が反対運動を繰り広げ、一万人が参加した県民集会が開かれ、当時の稲嶺知事も参加をしました。

 そういう県民の怒りの声に追い詰められて、政府は、レンジ16の奧に、これも思いやり予算でレンジ4にかわる訓練場を移設すると発表しました。ところが、レンジ4は、訓練場が完成するまでの間はもちろん、完成した後も米軍が使い続けることが明らかになり、そして住民の激しい怒りを買っております。

 先日の外務委員会でもこの問題を取り上げましたが、米軍の訓練で工事が約束の期限よりも一年半おくれていることが明らかになりました。極めて重大です。そもそも、工事のおくれは日米両政府側の都合によるものです。レンジ4の使用は直ちにやめるというのが当然じゃないですか。外務大臣、いかがですか。

西宮政府参考人 レンジ4の移設の時期についてお尋ねだと思います。詳しくは防衛省にお尋ねいただきたいと存じますが、現時点で、レンジ4の代替施設の完成は二十一年三月末以降になる見込みであると承知しております。

赤嶺委員 約束の期限どおりできなかったわけですよね。できなかった責任というのは日米両政府にあるわけですから、あなた方自身が一年半たったらレンジ4での実弾射撃訓練をやらないと言ったんですが、またおくれるわけですから、レンジ4についての訓練は直ちにやめるのが当然じゃないですか。政府の責任じゃないですか。いかがですか。

地引政府参考人 お答えさせていただきます。

 レンジ4の代替施設につきましては、政府として、沖縄県、金武町等が懸念を有していることを考慮いたしまして、日本政府の予算でキャンプ・ハンセン内のレンジ16に近接する場所に代替施設を建設し、レンジ4で行われる訓練を移転させることとし、平成十七年九月、日米合同委員会で合意し、十九年三月、工事に係る契約を行っているところでございます。

 防衛省といたしましては、できるだけ早期に代替施設を移設するとの考えに基づき努力してきたところでございますが、米側の射撃運用と並行して工事を実施することについては、安全性の確保に問題が生じること、及び、米軍が現に使用している既設レンジでは日米安保条約の目的達成のための必要不可欠な訓練が実施されていることから、順次、各レンジごとに工事を実施せざるを得ないため、最終的に、レンジ4の移設につきましてはいましばらく時間がかかるというところでございます。

 いずれにしても、そういう事情でおくれましたけれども、なるべく早く移設をさせていただきたいと思っていますが、その間、レンジ4での訓練につきましては、やはり日米安保条約の目的の達成のため必要不可欠な訓練が実施されていることでございますので、その辺は御理解を賜りたいというふうに思っている次第でございます。

赤嶺委員 ことしの三月までに完成し、訓練は移転するというのがあなた方の約束だったんですよ、日米安保の円滑な運用とかなんとか、もうちょっと我慢してほしいといって。そんなの納得できないですよ。次々、時期が来たら期限を切って、時期が来たら都合のいい話を持ち出してくる。

 伊芸区の池原区長、この二年半の暫定使用についてもこう言っているんですよ。区民はこれまでも暫定使用の被害に苦しんできた、これ以上我慢しろというのか、工事がおくれたのは政府の努力不足と見通しの甘さ、米軍の責任だ、我慢も限界だ、こう言っているんですよ。我慢も限界だという状態を、今、皆さん、伊芸区の住民に押しつけているんです。

 私は、具体的に、何でレンジ4の移設、レンジ4の実弾射撃訓練場のかわりの施設の建設がおくれたか、それにかかわって訓練場施設の移設内容について聞いていきます。

 先ほどの説明にもありましたが、レンジ4にあった複合射撃訓練場の代替施設をレンジ16の付近に建設する、私はそれだけかと思っていましたら、皆さんの説明を聞いていましたら、それとは別に、レンジをあと二カ所整備するという内容になっているんですね。レンジ16の奧に移すだけじゃなくて、二カ所新たなレンジを整備する、何でそんなふうになっているんですか。

    〔委員長退席、三原委員長代理着席〕

地引政府参考人 お答えいたします。

 キャンプ・ハンセン内の米陸軍複合射撃訓練場の代替施設の整備予定地は、現在、米軍により開発整備しております既設レンジでございまして、日米安保条約の目的の達成のための必要不可欠な訓練が実施されていることから、その訓練について他のレンジに移設する必要がございます。当該訓練につきましては、現在、三カ所の既設レンジで行われていることから、それぞれ代替移設が可能となったものでございます。

赤嶺委員 一カ所移すのに三カ所整備する。あなた方の説明では、その三カ所のレンジのことをA地区、B地区、C地区と呼んでいるようですが、C地区というのがレンジ16の付近であります。ところが、C地区にあるものはB地区に、B地区にあるものはA地区に移す、こういうことなんですが、具体的に、それら三つのレンジに今何があって、何を新たにつくる必要があるんですか。

地引政府参考人 現在C地区にございますのは、射場、訓練塔、ウエザーシェルター、管理棟でございます。これをB地区に移設するわけでございますけれども、B地区に現在ありますのは、射場及びウエザーシェルターが置いてあるという状況でございます。

赤嶺委員 外務大臣も今お聞きだったと思いますが、移すところにあるのは射撃場やウエザーシェルター、そして、その別の場所にあるのも同じものがあるわけです。今既にそこのレンジにはあるわけですが、また新たな施設をつくってあげる。今あるものを使えば済むことじゃないですか。いかがですか。

地引政府参考人 お答えいたします。

 代替施設の整備につきましては、各レンジ相互間の安全距離確保、跳弾防止のための着弾堤へのゴム緩衝材の設置など安全面へ配慮しつつ、鉄筋コンクリートづくりとするなど塩害対策等を施しまして、現地地形を最大限生かした計画とすることとしておりまして、緑地保全、赤水対策等の環境面を重視して、国内法令に基づき訓練を円滑に行うための最小限の整備を行うものでございます。したがいまして、既存施設と比較して過剰となっているわけではないというふうに認識しているところでございます。

赤嶺委員 この間、繰り返し説明を聞いてきましたけれども、レンジ16の付近にあるものは、B地区にあるのも射程五十メートルの小火器用の射撃場、機能的には変わらないわけですよ。しかも、既存の施設だって地形に合わせてつくっているはずですよ。なぜ、今あるものを使わないで、新たな施設をつくるということを理由にしてレンジ4の移設がおくれてしまうのか、三つもレンジを整備しなきゃ移設先が機能しないということになっているのか。既存のレンジが老朽化したのを新しくつくりかえてあげようということじゃないですか。

地引政府参考人 既存の三カ所のレンジにおきましては、それぞれ日米安保条約の目的達成のための必要不可欠な訓練が実施されていることから、今回のレンジ4訓練施設の移設にあわせてそれぞれの代替施設を整備する必要があるという観点で実施しているところでございます。

赤嶺委員 ですから、日米安保条約の観点からすれば、それぞれのレンジにある施設は老朽化しているから、この際、レンジ4の移転というときに新しくつくってあげようということなんでしょう。

地引政府参考人 繰り返しの答弁になるかと思いますけれども、現在の三カ所の既存レンジにおいて、それぞれ日米安保条約の目的達成のために必要不可欠な訓練が実施されております。したがいまして、今回のレンジ4訓練施設の移設にあわせてそれぞれ、それらの代替施設を整備する必要があるというものでございます。

赤嶺委員 A地区というのは今原野ですね。原野にも射撃場とウエザーシェルターをつくる。結局あなた方は、レンジ4の訓練移転を一生懸命やってきたのではなくて、二年半おくらせた上に、なお、レンジ4の移転のためだと称して古くなったレンジをつくりかえ、原野だった地域に新しい訓練施設をつくる、こういうことを日本政府の予算で、まさに思いやり予算でやっているということじゃないですか。

 レンジの問題はそれだけじゃないんですよ。

 米陸軍は、レンジ3で、米軍再編合意にもなかった小銃用の射撃場の建設に着手をしております。外務省のプレスリリースによると、レンジ3を改修するとあるんですけれども、これは改修なんですか、新たな射撃場の建設ではありませんか。

西宮政府参考人 先ほどのレンジ4のほか、在日米軍は、キャンプ・ハンセン内のレンジ3を改修いたしまして、現在のレンジ3施設の付近に在沖陸軍が使用する小銃用の射撃場を米側予算で整備しているというふうに承知しております。

 このような整備を行っています理由は、米側によれば、小銃の射撃訓練についてはこれまでキャンプ・ハンセン等の既存の射撃場を使用して実施していたが、より安全で効果的かつ効率的な訓練を行い得るようにするために、訓練の集約、改善を行うこととしたためとのことでございます。

 政府としまして、本件施設については、部隊の練度維持等、日米安保条約の目的達成のために必要なものと考えております。

赤嶺委員 確認しますが、レンジ3に今ある施設を取り壊して新たな施設をつくるのではなくて、レンジ3の付近にまた新たな訓練施設をつくる、そういう理解でいいんですね。

西宮政府参考人 おっしゃるような理解ではなかろうかと思います。

 すなわち、レンジ3とは、現在の施設が立地する場所も含め地理的に広がりのある概念でございまして、レンジ3の改修というのは、そうした全体としてのレンジ3を改修、整備するものでございます。

赤嶺委員 レンジ3の今ある施設の付近に新たな訓練施設をつくるんですね。

西宮政府参考人 そのとおりでございます。

赤嶺委員 結局、新たな施設の強化じゃないですか。レンジ4で苦しめられていて、その移転だ、それはもう県民の負担の軽減だから日本政府の予算で負担してあげようやといって、一カ所かと思ったら、三カ所もレンジを改修して新たなレンジ施設をつくる。そして、レンジ3、ここにも新たな施設をつくる。

 いや、西宮局長、私は、あなた方のプレスリリースをそのまま聞いただけなんですよ。それ以上の説明は何も要りません。ただ、あなたのさっきのお答えでは、レンジ3の射撃場の建設は、米陸軍の訓練の集約、改善を行うものだということでした。

 では、今後、陸軍はこの新しい射撃場以外、使わないんですね。

    〔三原委員長代理退席、委員長着席〕

西宮政府参考人 レンジ3ということでお尋ねだと思いますが、これは米陸軍の予算で改修をしているものでございます。申し上げましたように、これまでハンセン等でやってきたさまざまな射撃訓練を整理統合していくということでございますが、それ以外のことを一切やらないということであるかどうかについては、我々、確認しておりません。

赤嶺委員 結局、近代化されたレンジ3、これをまた容認して、陸軍は、統合された、集約化されているからキャンプ・ハンセンのほかのレンジでは訓練をやらないかというと、それは日本政府は定かじゃない、こういう認識ですね。

 キャンプ・ハンセンというのは、それだけじゃないんですよ、米軍だけではありません。キャンプ・ハンセンの陸上自衛隊の共同使用、これを合同委員会で合意し、先月の十七日から二日間、第一混成団が訓練を行いました。どういう訓練を行ったんですか。

地引政府参考人 お答えいたします。

 三月十七日、十八日の二日間、沖縄米海兵隊キャンプ・ハンセンにおきまして、陸上自衛隊が初めての訓練を実施いたしました。

 今回の訓練におきましては、那覇駐屯地に所在いたします第一混成団の一個中隊を基幹として、約百五十名の隊員が、主に野営、ロープ降下及び部隊の行進等の訓練を実施したものでございます。

 なお、今回の訓練では、射撃訓練及び爆破訓練は実施いたしておりません。

赤嶺委員 今回の訓練では射撃訓練と爆破訓練は実施していないということでありましたけれども、そういう訓練は今後も実施しないということなんですか。

地引政府参考人 お答えいたします。

 訓練日数等を含め今後の訓練につきましては、引き続き米軍と調整中でありまして、現時点では確たることを申し上げることはできません。

 いずれにいたしましても、キャンプ・ハンセンの共同使用に当たっては、安全対策に万全を期すとともに、地元の方々の御理解と御協力が得られるよう努めてまいりたいと考えている次第でございます。

赤嶺委員 地引局長、射撃訓練と爆破訓練は今後も実施しないと明言できないんですか。

地引政府参考人 繰り返しの御答弁になりますけれども、訓練日数等を含めた今後の訓練につきましては、引き続き米軍と調整中でございまして、現時点では確たることを申し上げることはできないということを御理解賜りたいと思っております。

赤嶺委員 今回のキャンプ・ハンセンでの自衛隊の共同使用、これは期限を定めてあるんですか。

地引政府参考人 今回の訓練につきましては、発表ベースで二日間という期間をお知らせしたということでございます。

赤嶺委員 米軍再編で合意した共同使用というのは、期限を定めたものですか。

地引政府参考人 お答えいたします。

 キャンプ・ハンセンにおきます自衛隊の共同使用については、期限は付しておりません。

赤嶺委員 キャンプ・ハンセンというのは、既存のレンジだけでも大変な負担を負わされているのに、今度は自衛隊が、日本政府が配慮するのではなくて、そこに出かけていって、爆破訓練や射撃訓練もやらないということは今明言できないような状態になっているわけです。

 一〇四号訓練移転が行われている本土の五つの演習場、これも、りゅう弾砲の演習だけではなくて、今や、当初のSACO合意になかった小銃の訓練にまで拡大されています。沖縄でも本土でも、訓練移転というのは基地機能強化の連続だ、こう指摘せざるを得ません。

 こういうもとで、三月二十六日から、また米軍演習による山火事がキャンプ・ハンセンで起こりました。鎮火したのは十時間後です。火は民間地の約六百メートルのところまで迫りました。住民を延焼の恐怖に巻き込んでおります。

 私は現場を見てきましたけれども、山肌は黒く焼けただれ、むき出しです。今回の山火事が起きて、雨が降ればそれはそのまま赤土となって海に流れ込む、そういう状態がキャンプ・ハンセンの焼け跡の様子です。

 今回の山火事発生の原因、これは何だったんですか。そして、焼失面積、これはどのくらいの規模に及んだんですか。

地引政府参考人 お答えいたします。

 三月二十六日にキャンプ・ハンセンにおきまして発生いたしました大規模な山火事につきましては、米軍による消火活動にもかかわらず日没後も燃え続けたことから、地元の方々に大きな不安を与え、防衛省としても大変遺憾でございます。

 今回の山火事の出火原因につきましては、在沖米海兵隊によりますと、出火原因は訓練ではなく、定期的に行うレンジのメンテナンス作業中に不発弾が見つかり、廃弾処理場へ移動させることが危険だったことから、その場で廃弾処理を行ったことから結果的に山火事が発生したとのことでございます。

 防衛省といたしましては、今後このような廃弾処理を原因として山火事が発生しないよう、周辺の枯れ草の除去や土のうを積むなどの対策を講じ、さらに、安全に廃弾処理が行われるよう、防衛省本省からも在日米軍司令部に対し重ねて申し入れを行ったところでございます。

赤嶺委員 地引局長、今の米側の説明によると、定められた廃弾処理場以外の場所で廃弾処理をやった、つまりレンジ4ですよね、その結果起きた山火事だ、そういうことですか。

地引政府参考人 お答えいたします。

 出火原因は、訓練ではなく、定期的に行うレンジのメンテナンス作業中に不発弾が見つかりまして、廃弾処理場へ移動させることが危険だったということから、やむを得ずその場で廃弾処理を行ったことから結果的に山火事が発生したというふうに聞いております。

赤嶺委員 どこのレンジで見つかったんですか。

地引政府参考人 キャンプ・ハンセン内の廃弾処理場付近というふうに聞いております。

赤嶺委員 私が聞いているのは、どこのレンジかと。廃弾処理場付近のレンジといえばレンジ4しかないんですが、それでいいんですね。

地引政府参考人 繰り返しになりますけれども、米軍からは廃弾処理場付近だというふうに聞いております。

赤嶺委員 あなた方、米側に問い返すという意思はないんですか。問い返して、住民の安全にかかわってどうだったかと、そのぐらいの気持ちも持てないんですか。もう一度答えてください。

地引政府参考人 防衛省といたしましては、このような廃弾処理を原因として山火事が発生しないよう、その場所も含め、周辺の枯れ草の除去でありますとか土のうを積むなどの対策を講じ、さらに、安全な廃弾処理が行われるよう、防衛省本省からも引き続き在日米軍に対し重ねて申し入れる所存でございます。

赤嶺委員 委員長、今私が聞いているのは、まさに新たな特別協定にも盛り込まれている訓練移転にかかわって、思いやり予算にかかわって、キャンプ・ハンセンのレンジについて、どこのレンジで不発弾の処理をしたのかということを聞いているんですよ。そうしたら山火事対策をとっていますと別の回答をして、何か言い逃れしているとしか思えないですよ。

 委員長、ちゃんと答えさせてください。

平沢委員長 地引局長、今の質問に答えてください。

地引政府参考人 現時点で聞いておりますのは、キャンプ・ハンセン内の廃弾処理場付近だと聞いておりますけれども、さらに、場所について問い合わせ等、原因も含めて報告していただけるよう日本側から要請していきたいと思っております。

赤嶺委員 こんな状態で、あなた方に予算を使う資格はないですよ。地元の人たちは何と言っているか。今、廃弾処理場以外の場所で廃弾処理をしたと地引局長は認めたんですけれども、これは地元住民の安全にとっては大変な出来事なんですよ。

 この山火事というのは、レンジ4付近で大きな爆発音があった。本来、レンジ3の爆発物処理場だけで行われている爆破訓練がレンジ4付近でも実施されているのではないかと地元住民は指摘しています。しかも、ことしに入って、レンジ4付近で、こうした大きな爆発音を伴う火災が三回発生しています。その大きな爆発音を伴う原因が、さっきの、廃弾処理場まで運ぶのが危険だといって米軍が判断して、そこで爆破させて、その山火事が三回も繰り返されている。これについてちゃんと米側に問い合わせて、レンジ4付近でのことしに入っての三回の爆発音、爆発音が終わった後に山火事が起こる、それは定められた爆発物処理場以外で処理をしたためではないかどうか、今回の火事との関係も含めて、ちゃんと調査してくれますか。

地引政府参考人 お答えいたします。

 最近の何回かの火災が起こっております。それも含めて、出火の原因または場所等、当方から確認いたしたいというふうに思っております。

赤嶺委員 キャンプ・ハンセンの付近の住民にとって、山火事というのは生死にかかわる出来事なんです。二〇〇五年には、八十ヘクタール焼失した大規模な山火事が発生をいたしました。今回の焼失面積、まだ米側から教えてもらっていないんですか。それと、二〇〇五年以降、毎年、山火事が何件起きているんですか。

地引政府参考人 お答えいたします。

 最近の沖縄におきます米軍演習場におきます山火事の発生状況でございますけれども、平成十七年では九回、平成十八年では八回、平成十九年におきましては約二十回発生しているところでございます。(赤嶺委員「ことしは」と呼ぶ)平成二十年の状況でございますけれども、六回発生してございます。

赤嶺委員 ことしは三月までに、もう既に六回ですね。二〇〇五年、二〇〇六年の二倍、昨年は山火事が発生している。何でそんなに火災発生がふえているんですか。

地引政府参考人 米軍によります山火事の発生件数が、平成十八年に比べ、十九年は二十件と発生件数が多かったことから、沖縄防衛局から米軍に対しまして、その原因等を究明するよう申し入れたところでございます。ただ、現在までのところ、米側から回答は来ておりません。

赤嶺委員 日米安保条約の目的達成のために必要だ、必要な基地提供だと言いながら、住民の安全については全く無策、そしてアメリカに問い返すことしかできない。

 金武町議会は、こういう意見書を上げています。結局、日本政府の予算でキャンプ・ハンセンにおいてアメリカ側に新しいレンジをどんどんつくってあげる、自衛隊まで出かけていって向こうで訓練をする、そういう状態が続いているものですから、この山火事が訓練拡大によるものであることはもう明らかですが、金武町議会はこう言っているんですね。

 「米軍が金武町に駐留以来、米兵による殺人・婦女子の暴行等数多くの事件、事故を起こし、住民の人権を蹂躙してきた。また、本町は演習による山火事、騒音、異臭、被弾、跳弾、赤土汚染等の被害をこうむり、理不尽な犠牲を強いられてきた。現在においても実弾演習、爆破訓練、都市型戦闘訓練、ヘリによる離発着及び民間上空での旋回訓練等が昼夜を問わず行われており、極めて異常な事態は明らかで、安寧な住民生活が脅かされているのが実情である。これ以上の基地機能の強化負担は断じて許されない。」ということで、自衛隊の共同使用にも反対していますし、レンジ3の建設にも反対しておりますし、いわんや、レンジ4を口実にしてほかのレンジまで思いやり予算で整備してあげようとする皆さん方の態度に非常に怒っております。

 金武町長は、皆さんもよく御存じの方だと思います。この金武町長が山火事の後、何とおっしゃっているか。「伊芸区にとって、ふるさとの山が焼かれる屈辱感や悲しみは想像を絶する、燃えたら消せばいいという発想ではだめだ、このままでは、これから安保体制に協力できるかどうかわからない。」このように金武町長が発言しているんですよ。

 外務大臣は、基地を抱える当該自治体の首長が、このままでは安保体制に協力できるかわからないとまで言うような基地の現状をどのようにお考えですか。

高村国務大臣 政府といたしましては、今般、米側予算により整備される本件施設については、部隊の練度維持等、日米安保条約の目的の達成のため必要なものと考えておりますが、米側に対しては、訓練の実施に当たっては地元の方々に与える影響が最小限のものになるよう、また安全にはくれぐれも万全を期すよう働きかけを行っていきたいと思います。その上で、地元の方々の理解を得ていきたいというふうに考えております。

赤嶺委員 日米安保の円滑な運用のために、思いやり予算と言ってみたり、新たな特別協定と言ってみたりして、莫大な費用をそこに注ぎ込んでいるわけですけれども、皆さんが注ぎ込んだ訓練移転の予算というのは、現場では実態としてこういうことが引き起こされている。乱暴な米軍基地の運用について、日本政府は一言も注文をつけられない、改善を求められない。依然として基地の苦しみは何も変わらない。保守的な町長をして、日米安保体制に協力できるかどうか疑問だと言わざるを得ない、そういう現状が起こっているということを申し上げておきたいと思います。

 それで、あとちょっと時間がありますので、伊江島について伺いたいと思います。

 伊江島もひどい状態が起きているんです。伊江島の補助飛行場の滑走路、向こうはコンクリート敷きじゃないんですよね。輸送機がおりてくるパラシュート降下訓練、これも新たな特別協定に基づいて伊江島に移転したものですが、それが、コンクリート敷きじゃない、粉じん被害が大変だというような訴えがあります。

 それともう一つ。伊江島に今ある海兵隊の通信棟、地下ダム建設との関係で米側が移転を日本政府に求めていると聞いていますが、この二点、簡潔に答えていただけますか。

地引政府参考人 お答えいたします。

 伊江島補助飛行場の滑走路につきましては、野戦を想定した航空機による離発着訓練を実施していることから、あえて滑走路は舗装していないと米側からは聞いているところでございます。

 なお、防衛省といたしましては、施設・区域外への粉じんの飛散による被害の軽減のために、防災施設として、民間地に近い滑走路の南端部に突き出した一部分を舗装したものでございます。

 いずれにせよ、米軍機の離陸に伴い粉じんが施設・区域外に飛散したとの話があることから、日米間でその対応策を協議しているところでございます。

 また、地下ダム等の建設のために管理棟を移設したいという話は米側から聞いているところでございます。

赤嶺委員 外務大臣、伊江島も、伊江島補助飛行場の滑走路というのは、葉たばこ畑のそば、民間住宅のそばなんですよ。皆さん方が移転させたパラシュート降下訓練で、米兵が民間地に落下してくる、物資が落下してくる、こういう事故を起こしているところなんです。一度、思いやり予算でそこの滑走路を舗装したことがあるんですが、ほんのごくわずかの一部なんですよ。あとはコーラル敷きの滑走路ですから、被害が大変なんです。何でそんな一部しかやらないんだというぐあいに聞いたら、今、地引局長は、それは米側が野戦用の滑走路として使っているからだというお話でした。

 もう米軍は何でもありの基地の運用、県民への被害は何の配慮もない。それに対して、思いやり予算を出すことはあっても米軍の運用についてきちんと発言できない、そういう政府のもとでは、こういう予算の使い方の資格なしということを申し上げまして、私の質問を終わります。

平沢委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社民党の照屋寛徳です。しんがりとなりました。

 私は、平成十八年三月十日の新特別協定の締結が議題となった外務委員会で、防衛省に対し、復帰後、駐留軍労働者の法的雇用主である日本政府を被告とした労働裁判の実態について尋ねました。

 そこで、防衛省に重ねて質問しますが、日本政府が被告となり敗訴した事件は九件でしたが、九件の事件名、事件内容、原告労働者の数についてお答えください。

中江政府参考人 お答えをいたします。

 御指摘の点につきまして、本土復帰後、沖縄県の駐留軍等労働者における国を被告として提訴された裁判のうち国が敗訴した事件は、賃金請求事件が八件、退職金の差額請求事件が一件でございます。

 なお、この賃金請求事件八件の内訳を申し上げますと、軍警備員の賃金カットに係る賃金請求事件が六件でございます。それから、年次休暇の欠勤扱いに係る賃金支払い請求上告事件が一件、賃金支払い請求事件が一件ということでございます。

 それから、原告の方の数でございますが、それぞれ一件ごとに申し上げましょうか。

 賃金請求事件の八件の原告の数でございますが、賃金仮払い請求仮処分事件が五百七名でございます。軍警備員の賃金カットに係る賃金請求事件につきましてそれぞれ時系列的に申し上げますと、昭和五十八年に提訴されたものが四百六名、五十九年に提訴されたものが二十五名、五十九年に提訴されたものが二十四名、昭和五十九年に提訴されたものが三十五名、同じく五十九年に提訴されたものが五名でございます。それから、年次休暇の欠勤扱いに係る賃金払いの事件につきましては、原告の方の数は九名でございます。賃金支払い請求事件については、原告の方は一名でございます。

 それから最後に、退職金の差額請求事件の原告の方は一名ということでございます。

 以上でございます。

照屋委員 私はその九件を全部担当したんですが、敗訴した九件で政府が支払った経費の総額は約千三百六十万円という答弁でした。防衛省は、それらの金額について、米国の理解を得て賠償していただくよう要請を続けると答弁しておりましたが、きょう現在、米側から償還は得られておりますか。結論だけ。

地引政府参考人 お答えいたします。

 本土復帰後、沖縄の駐留軍等労働者に係ります国を被告として提訴された裁判において、国が敗訴した九件について支払った経費の総額は一千三百六十万円でございます。

 このうち、軍警備員賃金カットに係る賃金請求事件六件につきましては、約七百五十万円について米側に償還を求めているところでございますが、当省として、従業員保護の観点から控訴を断念したことなどによりまして、米側の理解が得られず、償還を得るに至っていないところでございますが、引き続き米側の理解を得るよう償還を要請しているところでございます。

 また、年次休暇の欠勤扱いに係る賃金支払い請求事件一件、十万円につきましては、米側の主張が必ずしも不当なものではないと判断したことから、現在償還を求めていないところでございます。

 なお、残り二件、賃金支払い請求事件、いわゆる大村事件及び退職金差額請求事件、約六百万円につきましては、米側から償還されているところでございます。

照屋委員 政府が米側に償還請求をしている根拠について説明してください。

地引政府参考人 お答えいたします。

 国が確定判決及びこれに関連する仮処分決定を受けて支払った金銭のうち、米国が負担すべきものとして米側に償還を求めている場合の根拠は、日米地位協定第二十四条一及び基本労務契約でございます。

 また、担当省庁は防衛省でございます。

照屋委員 償還請求をしているもののうち、米側がそれを拒んでいる理由、それに対する日本側の反論などはどうなっているんでしょうか。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 軍警備員の賃金カットに係る賃金請求事件の訴訟経費につきましては、平成元年二月十日に米側に償還を求め、その後も引き続き償還を求めているところでございます。

 なお、当該賃金請求事件につきましては、国が控訴を提起しなかったことにつきまして米側から理解を得られなかったため、償還を受けるに至っておりませんけれども、控訴を提起しなかったことについてはやむを得ないものであったと考えていることから、今後も引き続き米側の理解を得て償還がなされるよう要求を続けていきたい、そのように考えているところでございます。

照屋委員 外務大臣、この事件が発生してから二十年以上三十年近く、裁判が確定してからももうかなりの期間がたっておるが、米側は地位協定二十四条に基づく償還請求にも応じない。大臣としてどういう見解をお持ちでしょうか。

小野寺副大臣 本件事案に関しましては、控訴断念の是非をめぐっての日米間の意見の対立等で米側から償還されていないものがあると承知しております。先ほどの防衛省の答弁のとおりでございます。

 このような問題に関しまして、日本国が被告である駐留軍等労働者関係事件に関する敗訴費用の償還につきましては、防衛省と協力しまして米側に対して償還を要請していきたいというふうに考えております。

照屋委員 私は、やはりおかしいと思うんですよね。特別協定、思いやり予算でもって、地位協定上義務的な負担を超えてまで経費負担をしながら、米側から償還すべきものをきちんと求償しないというこの政府の態度、あるいはそれを拒んでいる米側の姿勢というのは、やはり主権者、納税者の国民の視点から考えても、率直に、それは異常だ、おかしいなと。しかも、そういう状態が二、三十年も続くというのは尋常ではないと思うんですね。

 それで、確定判決について、政府が支払って米側が償還しない、そういうやり方について、財務省もしくは会計検査院もお越しでしょう、意見があれば聞かせてください。

香川政府参考人 防衛副大臣それから外務の副大臣からも御答弁がございましたが、政府としては、本件に関しまして米側の償還を求め続けているというところでございまして、私どもも問題の解決に向けて引き続き努力していく必要があると考えております。

照屋委員 私は、やはり毅然たる態度で求償、償還を求めていくべきだ、こういう意見を申し上げておきたいと思います。

 私は、新特別協定に関する本会議代表質問で、高村外務大臣に、嘉手納、横田、厚木などの騒音訴訟で日本政府が敗訴し支払った費用のうち、米側が負担すべき金額についてただしました。大臣からは、敗訴が確定した八件の事件における賠償金額の合計が約百二十二億円で、米国政府は分担すべき費用を一切支払っていないことが明らかとなる答弁がございました。

 外務省、確定した八件の事件名を特定してお答えください。

中江政府参考人 お答えをいたします。

 御指摘の米軍関連飛行場における航空機騒音訴訟におきまして、これまでに八件の事件が確定をしております。

 その事件でございますが、まず、嘉手納基地関係の訴訟が一次から三次、それから、それに関連しての遅延損害金請求事件というものがございます。それから、厚木基地関係の訴訟におきまして、これが一次、二次、三次の訴訟につきまして確定をいたしております。それから、横田基地関係の訴訟につきまして、これは一次、二次、それから三次、それから五次から七次の訴訟につきまして裁判が確定をいたしております。

照屋委員 それでは、その大臣の御答弁にあった八件の中には、一審判決は国側が敗訴したが、まだ高裁係属中の嘉手納の爆音訴訟などは入っていないわけですか。

中江政府参考人 まだ係争中で確定していないものがございます。

照屋委員 御答弁がありました第一次から第三次の嘉手納爆音訴訟、私も弁護士として約十八年間、手弁当でかかわりましたが、原告数が九百六人、一九九八年五月二十二日には福岡高裁那覇支部の判決があり、賠償額は約十三億七千三百万円、これは間違いございませんか。

中江政府参考人 御指摘のとおりでございます。

照屋委員 この一次から第三次の嘉手納の爆音訴訟、国が敗訴して支払った賠償額十三億七千三百万のうち、米側が負担すべき金額は幾らでしょうか。

西宮政府参考人 米軍機による騒音に係る訴訟に関する損害賠償金額等の日米地位協定に基づく分担のあり方につきましては、政府としては外務省が中心となって米国政府に損害賠償金等の分担を要請するとの立場で協議を重ねてきておりますが、この問題につきましては、我が国政府と米国政府の立場が異なっておることから妥結を見ていない状況にございまして、米国が負担すべき金額等について現時点でお答えできないというのが現状でございます。

照屋委員 第一次の厚木爆音訴訟は、原告が七十一人、一九九五年十二月二十六日に東京高裁で判決があり、賠償額は一億六百万、政府は払っておりますが、これは間違いないですか。

中江政府参考人 お答えいたします。

 厚木基地の一次訴訟につきましては、原告の方の数は九十二名というふうに承知をいたしております。それから、損害賠償の額でございますが、一億六千九百三十七万四千五百九円というふうに承知をいたしております。

照屋委員 これまた結論だけで結構ですが、米側に負担を求めている金額は具体的に決まっているんでしょうか。

西宮政府参考人 大変恐縮ながら、先ほどの御答弁の繰り返しになるかと存じますが、米軍機による騒音に係る訴訟の判決に基づき国が支払った賠償金等に関する日米地位協定に基づく分担のあり方につきまして、政府として米国政府に損害賠償金等の分担を要請するとの立場で協議を重ねてきておりますが、我が国政府と米国政府の立場が異なっていることから妥結を見ておらず、個別の訴訟にかかわる問題の協議は困難な状況にあるということでございます。

照屋委員 これは大臣、お聞きのように、私は八件全部について確認を求めようと思いましたが、西宮さんの答弁を聞いておると時間がもったいないので。

 要するに、重要なことは、日本政府は百二十二億円も払って、しかも、軍用機を実際に運用しているのは米軍なんです。法律の構造上、日本政府を訴える以外ない。しかも、被害を受けているのは国民なんです。それで、基地周辺の住民が慰謝料や飛行差しとめを求める。過去の損害分は、今の判例上、政府がいかに抗弁しようが、負ける。そして、日本政府が支払った百二十二億円という大金が、本来米国政府が負担をすべき、あるいは日本政府の求償にこたえるべきものが全然なされていないのが問題なんです。

 外務省に聞きますが、これら爆音訴訟によって日本側が支払った賠償額は、地位協定十八条五項(e)に基づいて、その二五%だけが日本国、七五%は米国が払うというのが地位協定上の原則ではありませんか。

西宮政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますが、政府といたしましては、米国政府に損害賠償金等の分担を要請するとの立場で協議を重ねてきておりますが、我が国と米国政府の考え方、立場が異なっていることから、分担率を含めて、妥協を見ておらないという状況にございます。

照屋委員 局長、要請やお願いではないでしょう。地位協定上、当然のことのように米国が負担する割合があって、日本政府としては、要請とかお願いじゃなくて、堂々と請求できるはずなんです。要請やお願いを繰り返しているんですか。

西宮政府参考人 分担を要請するとの立場で協議を繰り返してきていると申し上げたつもりでございます。お願いしているという趣旨ではございません。

照屋委員 それでは、米側と交渉している主務官庁やその担当課はどこなのでしょうか。

西宮政府参考人 外務省を中心に関係省庁でやっておりますが、外務省で申し上げれば、日米安全保障条約課の日米地位協定室でございます。

照屋委員 法律家である外務大臣に尋ねますが、もう敗訴が確定をして、事件によっては、日本政府が賠償金を支払ってから十年以上も経過をしておるんです。にもかかわらず、米側が支払いを拒んでいる。しかも、地位協定十八条に基づいて、当然の権利として日本政府は求償すべきであるにもかかわらず、それが履行されていない。そのことについて、高村大臣、どのようにお考えでしょうか。

高村国務大臣 地位協定十八条の規定は、米軍だけに全面的に過失がある場合に、日本側二五%、米側七五%、こうなっているわけで、まさに米軍の飛行機の運用でそうなっているんだから、そうだという解釈も成り立ち得ますけれども、アメリカ側とすると、日本側が提供した施設・区域を利用して米側がやるべき訓練をやったらそういうふうな結果になっちゃったんだから、米側だけの過失ではないよと。では、どれだけ負担すべきかということで交渉を重ねてきている、残念ながら、まだ決着していない、こういうふうに承知をしております。

照屋委員 大臣、日本側が提供義務があるのは、施設・区域、いわゆる基地であって、裁判になった周辺住民に暴露される爆音、沖縄の場合には殺人的爆音と呼んでいる。これは、日本政府が提供した施設・区域の結果によるものでも何でもない、アメリカの軍用機の運用によってもたらされるんです。日本政府は何ら過失はないじゃありませんか。

高村国務大臣 委員がおっしゃるように解釈する余地は、それはあるんです。あるんです。あるんですが、アメリカはそう思っていない、そういう中で今交渉が進んでいる、こういうことでありますが、進んでいるといっても、交渉が余りにもゆっくりでありますから、加速させたいと思います。

照屋委員 防衛副大臣、何かこの件について所信がありましたら、お聞かせください。

江渡副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 今、外務大臣の方からも答弁があったように、私もそのように感じているところでございます。

照屋委員 特別協定と関連して、米軍住宅問題について若干お尋ねしますが、これまた私の本会議での代表質問で、日本政府が在日米軍駐留経費負担、いわゆる思いやり予算でつくった米軍向けの基地内家族住宅が一万一千二百九十五戸、そのための予算支出が約五千四百五十九億円に上ることが判明いたしました。一方、政府が明らかにした資料によると、神奈川県逗子市の池子住宅地区及び海軍補助施設では、一九七九年から二〇〇七年にかけて、八百五十四戸を約六百六十六億円かけて建設したことも判明しております。一戸当たり約七千八百万円に上りますが、余りにも高額の建設費で、豪華住宅と言わざるを得ません。

 高村外務大臣は、かかる支出、財政負担が妥当だと思われますか。

高村国務大臣 これは防衛予算でつくっておりますので、できれば、防衛副大臣が来ておられるので、防衛副大臣から答えていただいた方が適切であると私は思います。

地引政府参考人 お答えさせていただきます。

 池子住宅地区及び海軍補助施設におけます家族住宅の整備につきましては、神奈川県におけます米海軍家族住宅の不足の深刻化にかんがみまして、その解消に資するため、昭和五十六年から平成九年度にかけて八百五十四戸の建設事業を行ったところであり、これらに要した予算額は六百六十四億円でございます。

 この六百六十四億円につきましては、当該整備に先立ちまして、工事着手前に文化財の有無について確認調査を実施する必要があることから、埋蔵文化財の発掘調査に約五十一億円を要したほか、自然環境の保全に留意しながら山を切り開いての宅地造成でありますとか、既設構造物等の撤去のための敷地造成工事に約百三十五億円を要しており、これらを除いた予算は四百七十八億円になっております。

 池子住宅地区におけます住宅は、平たん地につくられるその他の米軍住宅とは異なりまして、基礎の補強を特に要したため、今申しました四百七十八億円にはこれらにかかる予算も含まれており、家族住宅一戸当たりの費用を他の米軍施設の住宅と比較した場合、池子住宅地区の住宅が特に高額であるというふうには考えておらない次第でございます。

照屋委員 関連して、政府が建築引き渡し後の米軍家族住宅のメンテナンス工事は、どのような手続でなされ、その経費はだれが負担しているんでしょうか。

地引政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねのメンテナンス工事が、仮に、例えばペンキ塗り等の住宅の維持補修に係る工事ということでございますれば、日本から米側に提供されましたわけで、提供を受けた米側みずからが賄っているものと承知しておりまして、具体的な手続等については承知してございません。

照屋委員 一たん引き渡された後の米軍用家族住宅のメンテナンス費用は、新特別協定による提供施設整備費で賄っているんでしょうか。賄っているとすれば、平成十九年度からさかのぼって過去五年分に支払った金額をお答えください。

地引政府参考人 お答えさせていただきます。

 繰り返しになりますけれども、メンテナンス工事、例えばペンキ塗り等の維持補修に係る費用につきましては、米軍みずからがやっております。また、老朽化が著しく居住が困難な住宅につきましては、提供施設整備によりまして、現有施設の範囲内の規模で建てかえ工事を実施しているところでございます。過去五年間に完成した建てかえ実績は百十六戸、その予算額は約五十七億円でございます。

照屋委員 次に、いわゆる基地外に居住をする米軍人軍属らの貸し住宅の経費や家賃の支払い関係、米側の家賃補助の実態について、政府は米側からどのような説明を受けておるんでしょうか。

地引政府参考人 お答えいたします。

 米軍人軍属、その家族が米軍施設・区域外に居住する場合は、米軍独自の基準を設けて、光熱水料等を含めた住宅手当を支給していると承知しておりますけれども、その具体的金額等については把握してございません。

照屋委員 政府は、基地外に居住する米軍人軍属の貸し住宅に対する光熱水費についても、いわゆる思いやり予算で支払ったことがあるのではないでしょうか。支払った年度や額をお答えください。

西宮政府参考人 お尋ねの基地外の住宅の光熱水費につきましては、平成十二年度に終わった特別協定までは負担しておりましたが、平成十三年度からの特別協定でこれを負担することをやめたというのが事実でございます。

照屋委員 最後に、NHKもお見えだと思いますが、在日米軍人軍属とその家族らもNHK放送受信料の支払い義務はありますか。

大西参考人 お答え申し上げます。

 放送法第三十二条一項は、NHKの放送を受信できる受信機を設置した者に放送受信契約の締結義務を定めており、また、締結された放送受信契約に基づき、放送受信料の支払い義務があります。これは、在日米軍人や軍属、その家族にも当然適用されるものでございます。

照屋委員 昭和五十三年、今から十五年以上も前ですが、在日米軍司令部が軍人軍属等に受信料の支払いを拒否せよとの指示をしたことがあったようですが、現在米軍はどのような態度でしょうか。

大西参考人 お答え申し上げます。

 昭和五十三年一月、在日米軍司令部は、所属の軍人軍属に対し、受信料は一種の税金であり、日米地位協定によって支払いを免除されるので、支払いを拒否すべきであるとの趣旨の指示をいたしました。その後、昭和五十三年から五十四年にかけまして、NHKは米軍側と、文書及び会談により直接折衝を重ね、受信料の性格について説明し、支払いを要請してきました。これにより、在日米軍は、NHKが米軍関係者に受信料の請求をすることは自由であるとし、また、受信料を免除されるとの見解を積極的に表明はしておりません。として、今日まで至っております。

 ただし、日米地位協定により放送受信料を免除されるとの在日米軍の見解は、NHKや日本政府からのたび重なる主張にもかかわらず、現在は変わっておりません。

照屋委員 NHKの放送受信料は、地位協定十三条で言う租税ではないんですよ。だから、支払いを免れることはできません。

 ところで、政府は、基地外に居住する在日米軍人軍属とその家族の数が二万二千八百九名であると公表しておりますが、そのうち、NHKと放送受信料契約を結んでいる者は何名でしょうか。

大西参考人 お答えいたします。

 NHKが放送受信契約を取り次ぐ際には、契約者の国籍や職業を尋ねることはいたしておりません。NHKが管理する放送受信契約者の台帳には国籍、職業を示すデータはありません。このため、基地外に住居する在日米軍人軍属、その家族が締結している放送受信契約者数は把握しておりません。

 以上でございます。

照屋委員 当然のように、払うべきである、NHKもちゃんと徴収すべきである。ところが、基地内への立ち入りもことごとく拒んでいる、こういう状態です。

 詳しく後で聞きますが、関連して、最後に防衛省に尋ねたいのは、自衛隊や米軍の飛行場でターボジェット発動機を有する航空機の離着陸が頻繁に実施されている周辺地域のうち、一定の区域において、NHKとの放送受信契約者に対して受信料の半額を助成しております。ところが、普天間飛行場については、爆音がうるさい地域にもかかわらず、ターボジェット発動機を持つUC35輸送機が一機しか配備されていないとの理由で助成対象地域に指定しておりません。実際には、普天間飛行場にはF15やFA18などの外来機も飛来しており、私は、当然、助成対象区域に指定してしかるべきだと考えますが、防衛副大臣、お答えください。

江渡副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 防衛省が行うNHK放送受信料の助成措置につきましては、防衛施設周辺放送受信事業補助金交付要綱に基づきまして、自衛隊または米軍が使用する飛行場等でターボジェット発動機を有する航空機の離陸、着陸等が頻繁に実施される施設の周辺地域のうち、一定の区域を助成措置の対象としているところでございます。

 普天間飛行場へ外来するF15及びF18等のターボジェット発動機を有する航空機の離着陸等につきましては、頻繁に実施されているものではないと承知しているところでございます。このため、当該飛行場周辺地域につきましては助成の対象としていないところでございます。

 なお、本件につきましては、昨年二月の衆議院予算委員会第二分科会において防衛省から、「今後、普天間飛行場を助成措置の対象施設に指定するか否かを含めまして検討してまいりたいと考えております。」とお答えさせていただいたところでございまして、これまでの検討状況について申し上げれば、普天間飛行場の騒音状況、NHK放送受信料に関する全国的な要望、現在の制度の考え方等について検証するとともに、今後のあり方について防衛省内部で鋭意検討していきたいと思っているところでございます。

照屋委員 終わります。

平沢委員長 これより内閣総理大臣出席のもと質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鉢呂吉雄君。

鉢呂委員 民主党の鉢呂吉雄です。

 午前中に引き続きまして、この時間は総理を迎えて、在日米軍の駐留経費負担、この関係の特別協定についてお伺いをいたします。

 私は、福田総理の真髄は、やはり外交問題だというふうに思います。福田総理の所信表明等でも、日米同盟の強化とアジア外交のシナジーといいますか、共鳴というような表現をされておるわけでありまして、その問題を最初にお伺いいたしたいと思います。

 総理は、一昨年六月二十三日、インドネシアで講演をされております。これが、福田外交の理念といいますか、それを表現されておるということであります。

 この中で、中国、韓国等の東アジアの経済統合の進展、日本を含めてのことだと思いますが、三国に現状打開のための政治的英知と決断が求められておる、資源利用の効率化、環境への負荷軽減の努力、あるいは、思いやりや足るを知るといった共通の価値観がこの三国にはあるので、その再評価を打ち出したい、中国がやがては民主主義、人権の尊重、法の支配などの価値観を共有することを期待しておるというような表現をされておるわけであります。お父さんの福田ドクトリン、日本はいわゆる非軍事大国という道を進むということに言及しておりまして、福田さん自身も、平和に徹し、軍事大国にならない政策を堅持していくというような表現をされ、アジア重視、善隣友好という福田外交の真髄を表現されておるのではないか、こういうふうに見ております。

 二年前のあの演説、福田外交の一番の本質だ、こういうふうに受けとめてよろしいんでしょうか。

福田内閣総理大臣 私の基本的な考え方、これは、やはり、日本がアジアのこういう位置にあるということ、そしてまた周辺をアジアの諸国に囲まれているというふうなこと、そういうような地勢的なことも考えまして我が国が外交的にどうあるべきかということは常々考えているところでありますけれども、基本は、やはり日米同盟と申しますか、安全保障そしてまた文化、経済、いろいろな面で日米関係というものは、深い、また幅広い関係があります。これを基本としながらも、近隣アジア諸国といかに調和していくか、こういうことが極めて大事だというふうに思っております。

 日米関係が安定しているということは、とりもなおさず、近隣アジア諸国との関係も安定する、こういうふうに基本的に考えておりますので、この日米関係を大事にしながらも、アジアといかに近い関係に持っていくかということは極めて大事であり、その中で、最も近い韓国そしてまた中国、こういう両国とは、深い関係を持てるような、そういう外交を展開する、それが日本の平和と安定そして繁栄につながるんだ、こういう基本的な考え方をいたしておるわけでございます。

鉢呂委員 理解をいたしました。

 日米関係を基本として、アジア諸国、とりわけ中国、韓国、ここに共鳴ということでプラスに働くということでありまして、その関係については、きょうの法案の、協定の中身でありますので、後ほど触れさせていただきますが、中国、韓国、朝鮮半島、今大きく政治が動いております。その関係で若干総理の見解を求めておきたいと思います。

 この前の日曜日の総理の単独記者会見でも、チベット騒乱事件について胡錦濤さんと何らかの接触をしておるかの総理の御発言だったと思いますが、この問題、隣国、思いやり、総理はそういう形でありますが、知らぬ存ぜずというのはやはりよくない。友好関係を深めるには率直に物言いをするということも必要ではないだろうか、こういうふうな感じが私はいたします。

 そういう中で、五月六日に胡錦濤さんが来るということでありますが、やはり今は直接電話、ブッシュさんも電話をしておるようでありまして、胡錦濤さんと直接この問題を話し合われたのか、また、そういうお考えがあるのかどうか、そこを少し聞かせていただきたいと思います。

福田内閣総理大臣 中国にとってチベットの問題というのは大変大きな問題であり、いろいろと今までも配慮しながら、また心配しながら対応してきたんだろうというふうに思います。しかし、このような状況が生じまして、これは単に中国の中だけの問題ではない、そういうような事態になっておるというような認識を私もいたしております。

 また、私どもも、この問題について、なるべく問題が拡大しないような形で、両者が納得するような形で解決してくれればいいな、こういうふうに思っております。また、国際社会もこれに敏感に反応いたしておりますので、そういうような要素も中国政府がよく考えた上で判断をされるべきだというふうに思います。

 いずれにしましても、中国政府、チベット、両者が冷静に対応するということは必要なんでしょう。そしてまた、納得のいく話し合いがされる、そして透明性高くこの問題が解決されるということが、国際社会が納得する方法でもあるんだろうというふうに思います。

 我が国も、いろいろな形でもって、そういうような基本的な考え方は中国要人、要路に伝えております。私も、そういう意味において、具体的なことは申しませんけれども、私の考え方も伝えております。

 そういうようなことで、中国としては、国際社会の中で経済的にも、そしてまた政治的にも羽ばたこうとしているわけでありますから、この問題で誤りなきようしっかりと対応して、そして来るべきオリンピック、また万博もあるわけでございますから、そういうものに備えてほしいというのが私どもの願いであり、また私どもも、そういうふうな観点から、取り組むべき問題また対処する方法があるのであれば、それは対応してまいりたい、このように考えておるところであります。

鉢呂委員 私ども日本人もそうですが、割と思いやりというか、周りから心配をして見るということが人間関係でも多いと思うんです。こういう中で、マスコミを通じて相手に伝わるという方法もあろうかと思いますが、やはり本当の友好関係をつくるには、それを国民の皆さんに、いや、話したぞということを言うのかどうかは別として、こういう問題については、中国との関係はギョーザ中毒問題とかガス田の共同開発問題等あろうと思いますが、一番隣の国であれば、直接やはり率直な話をするということも必要ではないかな、こういうふうに私は思っています。どうでしょうか。

福田内閣総理大臣 私、先ほど具体的に申し上げるわけにはいかない、こう申し上げましたけれども、そのようなことも含めて私どもの考え方はしっかりとお伝えをしておる、こういうことでございます。

 日中関係全般を考えまして、いろいろな日中間だけの問題もあります。そういうものをいかにして両者が納得できるような方法で解決できるのかということは、我々の一番考えているところでございまして、このチベット問題につきましても、同様な考え方をして対処しておるということを申し上げております。

鉢呂委員 ヨーロッパを中心に、北京オリンピックの開会式に政府首脳が参加するとか欠席するとかいう議論もあるんですが、私、個人的には、そういうスポーツの世界にという感じは自分自身はあるんですが、総理はこういう問題についてどういうお考えでしょうか。

福田内閣総理大臣 オリンピックのお話でございますけれども、さあ、今の段階でオリンピックに参加する、しないとか、そういう段階では私はないと思っております。ヨーロッパも、出席しないとかいう話もあるようでありますけれども、極めて限定的であるということでありまして、今は中国がどういう対処をするのかということを注目しているということだと思いますので、その辺は、我々も十分注意をして対応していくべき課題だと思っております。

鉢呂委員 昼からでしたか、同僚議員からお話があったんですが、ダライ・ラマ十四世が日本に若干の時間立ち寄る。また、我が党の篠原議員の質問でも、日本政府関係者が直接お会いしたことは過去に一度もないと。ブッシュ大統領を初め、アメリカ、ヨーロッパの大統領、首相がかなり会っているということは確かなようでありまして、高村外務大臣はその必要性については言及しておりませんでしたが、福田総理はどういう考え方をしていらっしゃるか、お聞きをいたしたいと思います。

福田内閣総理大臣 今度、米国への訪問の途次に本邦に立ち寄るというような話があるようでございますけれども、ダライ・ラマ氏も、これまでもたびたび訪日をされているということであります。その都度適切に対処をしている、このように承知しております。

鉢呂委員 お隣の朝鮮半島といいますか、韓国と北朝鮮の関係、李明博新大統領が選出されて、この数日間に、北朝鮮のスポークスマンといいますか、李大統領を名指しで、しかも呼び捨てで、極めて厳しい表現で非難をするというようなことが出ておりまして、私どもも極めて憂慮するといいますか、心配をする状態なんです。

 この問題、お隣の国の形でありまして、福田総理として、北朝鮮、六者協議もなされておるんですが、現段階でどのように見ていらっしゃるか、御見解をお伺いしたいと思います。

福田内閣総理大臣 日本と北朝鮮の問題、これはもう非常に大きな問題があるわけでございますけれども、北朝鮮の問題と申しますと、北朝鮮の核の放棄という問題もあります。これは、米朝協議という形で行われているわけでありますけれども、今のところ、この問題の進展がもう一つというような状況にあるわけです。

 そういうような状況にありまして、また六者協議も開催されないというようなことがございますので、私どもとしては、やはり北朝鮮に、この核の問題について米朝協議を成功させるような方向にまずは持っていってもらわなきゃ困る、こう思っております。

 核の問題というのは、何も米朝だけの話ではなくて、日朝関係、日朝交渉をする上におきましても、拉致の人権問題とあわせて極めて大きな問題でありますので、この進展がないと、これはなかなか日朝交渉もはかばかしくいかない可能性があるかもしれません。しかし、それはそれとして、人権問題でありますので、日朝間の拉致に関する交渉、これも進めております。

 今のところ、決定的なものはないというようなことであって、時間がかかっておりますけれども、核の米朝交渉とあわせ考えながら、今後も日朝交渉を粘り強く続けてまいりたい、このように思っているところであります。

鉢呂委員 冒頭の日米関係に戻しますが、総理は、先ほど言ったように、共鳴というお話でございました。

 昨年の十一月に訪米して、ブッシュ大統領との日米首脳会談でも、ペーパーが出ておりますからそれに基づいてお話をさせていただきますが、日米安保体制が日米同盟の基盤であって、この体制に基づく抑止力の一層の強化の重要性について一致した、こういう表現でございます。なかなか全容は明らかにならないのでありますが、この首脳会談後に出たペーパーを見ますと、私の感想ですが、福田総理の数少ない提言といいますか、その中で、将来の日米関係を強化すべく、知的交流とか草の根交流及び日本語教育の三本柱を日米の文化交流の強化のもととして提言をされております。

 私は、そういう面では、日米関係は軍事的な安全保障の段階だけではない。福田総理自体がこういう文化交流、具体的に三つの交流を挙げられて、福田総理の発案だかどうかはちょっとわからないんですが、その前から、河野外務大臣も、所信表明というか、これではこの三つを言っておりますから、外務省自体のものになっておるんだと思いますが、こういう日米関係を幅広い形でとらえておるというふうな感じがしておるところでありまして、先ほど冒頭に言った二年前の形からいっても、福田外交の中身かなと思っておるんです。

 この文化交流、三つの柱を含めて、そういった総合的な文化交流だという考え方についてお聞かせをいただきたいと思います。

福田内閣総理大臣 日米同盟と申しますけれども、これは、先ほど申しましたように、幅の広いものである、そして歴史的にも長い時間をかけて醸成してきたものであるということでありまして、この関係はこれからも大切にしていかなければいけないと思います。

 そういう観点からしまして、最近私どもが危惧しておりますことは、日米関係の人脈が果たして大丈夫かどうかということであります。特に、政府関係者、政治家で知日派と言われるような方がだんだん少なくなってきているのではないか。そしてまた一方、米国の関心は今や中国ですよ。

 そういうことを考えますと、ここでひとつ、日本のことについてまたもう一度米国の方々に関心を持っていただき、そしてまたこの関係をさらに強化するような、また幅広いものにできるような、そういう人脈構築を今のうちにしておく必要があるんじゃないかということを考えたのが、前回のブッシュ大統領との会談でもそういう観点からのお話をし、そして具体的に日米交流強化のためのイニシアチブというような形でもって発表させていただいた、こういうことであります。

 私自身も、米国の有力なシンクタンクの方々の代表とか日米交流を一生懸命やってくださる方々にお会いしまして、そういう思いを申し上げ、そして協力をお願いしてまいりました。

 その結果、今現在、米国の有力なシンクタンクとの関係のための具体的な研究テーマを掲げて、お互いに協力していこうというような関係もできましたし、また、米国の日本研究プログラムへ支援する、これは大学などを含めまして十機関程度でございますけれども、そういうようなこともしていこうということもしております。また、草の根交流も強化していこう、こういうことで、米国にあります日米協会の支援をするとかJET経験者とのネットワーク強化、それから在米の日系人との交流強化、そういうようなことを進めていこうではないかということ、また、在日米軍関係者との交流もしていこう、こんなふうなことも具体的なテーマとして今掲げて、そして実行に移しておる、こういう状況でございます。

 もう一つは、今委員御指摘のとおり、日本語教育の強化ということで、日本語教育の中等レベル、高等レベルの連携支援とか、また初中等教育関係者の日本への招聘、そして日本への関心をより増していただこう、こういうふうな努力をしているわけでございます。

 こういう取り組みは、幅広く、そしてまたきめ細かなことでございますので、また委員にも御協力をひとつよろしくお願いしたいと思っております。

鉢呂委員 日米関係は、ともすれば軍事的な形で、2プラス2というような形で基地の再編がどうしても重要視されて、そのことが喧伝されるわけです。

 ただ、総理のアジア外交との共鳴という形からいけば、私は、過度に軍事的な形が前面に出れば、それがこのアジアにおいてむしろ逆に警戒感を呼んだり、そういうぎくしゃくしたものになってはならない、こういうふうに思うわけであります。例えば、世界の中の日米同盟とか、こういう表現もあったわけですが、日米の軍事的な戦略が、日米安保条約の日本の専守防衛とかあるいは極東条項を飛び離れて、世界の軍事的な戦略の一翼を担うというようなことであってはならない、こういうふうに思うんですが、共鳴という観点から、いかがでしょうか。

福田内閣総理大臣 まさに、先ほど来私から御説明申し上げているとおり、また委員御指摘のとおり、日米軍事同盟ということではない、幅の広い同盟関係というようなことで、文化的にも定着したと思いますよ。そしてまた、この関係がよい関係だということが、いかにアジアの国々に安心感を与えるかということじゃないかと思います。

 それを共鳴というような形で表現しておるところでございまして、また同時に、あわせて、例えば日中関係、日韓関係がいいということがアメリカにとっても安心感につながるということではないかと思っておりますので、その両方を追求していこう、そしてアジアにおける日本の立場というのはそういうものだということをアジア全域に理解してもらう、また世界全体にそういう認識をしてもらえるような努力をしていこう、こういうふうに考えているところでございます。

鉢呂委員 きょうは、特別協定ということで、在日米軍の基地における負担のあり方ということになっております。

 私どもも、午前中お話をしたんですが、今、米軍再編全体の事業、特にグアムに移転するとか、沖縄に過度に負担を負わせておるこの状況を変えていこうというようなことで取り組んでいる政府は、その全容が明らかでない。特に総額経費については、国会でも、参議院の昨年の委員会でも、早急に、速やかに明らかにすべしという附帯決議が出ておるにもかかわらず、毎年度予算でしか出てこないということで、私ども民主党としても相当論議をしておりますが、この特別協定と米軍再編問題、これらの全体像がなかなか出てこないという状況でございまして、また、いろいろ日本の財政審等からも、この特別協定の抜本見直しといいますか節減というものを強く求めてきておるわけであります。

 私ども、日米同盟の役割を十分評価しながら、しかし、日本が根拠もなしに、しかも、特別協定自体はもう既に協定という形をとって二十年、しかも当時の国会答弁でもこれは暫定的と。福田総理は暫定という従来のものをなくす役割を担っておるのではないか、私はこういうふうに思っておるんですが、暫定とか当分の間という形で二十年も三十年も続けられてきたということで、あとのお二人の質問にも出てくると思いますが、私どもとしては、これを根本から見直しすべきでないか、こういうふうに思っておるわけでありまして、この考え方について、総理の御意見をお聞かせいただきたいと思います。

福田内閣総理大臣 さて、暫定と申しますと、何かすぐあっちの方に頭が行っちゃうんですけれども。

 安全保障体制を米国と組んでいる、こういうことでありまして、米軍の軍事プレゼンス、これは、我が国の安全保障にとっても、またアジア太平洋地域にとりましても、平和と繁栄を維持するという観点から極めて大事なものであるということ、これは御理解賜れると思います。

 米軍再編は、日米同盟に基づく抑止力の維持と、それから沖縄を含む地元の負担を軽減するという観点から、着実に実施していくことといたしておりまして、我が国として相応の負担をするということが必要であると考えます。

 そういう観点から、米軍再編に伴う日本側の経費負担につきましては、現在、再編関連措置の詳細な計画等について検討しているところでございまして、具体的に申し上げる段階にございませんけれども、引き続き、厳しい財政事情を踏まえて鋭意検討を進めて、所要の経費を精査してまいりたい、こういうふうに思っております。

 これはこういう大きな日米の安全保障に関することでございますので、それは相手もあるわけでありまして、また、先ほど申しましたように、アジア全域の安全保障にもつながってくるというようなことを考えますと、この地域の安定のために、これは必要な期間は継続していかなければいけない暫定であるというふうに思っております。

鉢呂委員 私ども、暫定を全部全廃しろ、道路と違ってそこまでは言いません。しかし、暫定ということで惰性で今日まで来たのではないか。きちんと根拠を示しながら、これを見直しをするということを主張させていただいております。

 時間があと四分ぐらいしかなくなりました。アメリカの大統領選挙が、予備選挙の段階ですが、今白熱をしておるところでございます。総理がこの候補者にあれこれ言うのは今の段階では適当でないと思いますが、二、三の外交的な関係で御質問をさせていただきますので、御感想をいただければと思います。

 共和党の候補は大体マケインさんになるようでございますが、昨年十二月の雑誌の中身を見ても、やはりブッシュさんの一国単独というものをかなり戒めた形で、しかし、価値観外交のような形を言っておるようでありまして、例えば、G8サミットはロシアを除いてということですから、今回の北海道洞爺湖サミットが八カ国では最後になるのかと思うぐらい、繰り返し、ロシアを除いてインドとかブラジルを参加させろというような表現をしております。

 あるいはまた、国連とはまた違って、冷戦期に西側で団結をしたそういった国々を民主国家連盟のような形で連帯させるような仕組みをつくった方がいいのではないか。また、日本とオーストラリア、インド、アメリカの四カ国の安全保障パートナーシップというものをアジア太平洋地域で制度化することが必要じゃないかというようなことを述べております。

 一方、民主党の候補者、まだお二人おりますが、バラク・オバマさんは、抽象的な、変化というようなことを訴えて相当の支持を集めておるようですが、この方は、アメリカの使命は、やはり他の国に模範を示して世界をリードしていくという役割が大切であって、同盟関係の国に圧力をかけてこれを実現するというようなものを戒めていく必要があるというようなことで、新たな同盟関係とパートナーシップの必要を考えておる。

 アジアについては、中国が台頭して、日韓が自己主張を強めている、日本も自己主張を強めているというふうにオバマさんは見ておるようでありますが、この北東アジアにおいても、従来の二国間合意ですとか不定期な首脳会議、六者協議のようなものを超えて、もっと効果的な枠組みを導入すべきというような表現で話されております。

 時間がなくなりましたからクリントンさんは別として、こういったアメリカの大統領候補の考え方に対して総理として何か感想がございましたら、お述べ願いたいと思います。

福田内閣総理大臣 質問が長かったんですけれども答えは簡単で、そっけなくて申しわけないんですけれども、特定の米国の大統領候補の御発言でございますので、政府としてこれに対してコメントをすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、どなたが候補者が大統領に選出されようとも、我が国としては、日米同盟とそれから国際協調、これを基本に、地球規模の課題の解決に積極的に取り組み、世界の平和と発展に貢献する平和協力国家として、国際社会において責任ある役割を我々としては果たしてまいりたい、このように考えておるところでございます。

鉢呂委員 どうもありがとうございました。終わります。

平沢委員長 次に、近藤昭一君。

近藤(昭)委員 民主党の近藤昭一でございます。

 本日は、在日米軍駐留経費負担特別協定についての審議で総理に質問させていただくという貴重な機会をいただきました。私は、この協定の審議に当たり、本会議場でも質問をさせていただきました。議場には総理はお見えになったと思いますが、壇上にはお見えにならなかったということで、関連して質問をさせていただきたいわけであります。

 ちょっと午前中にも触れさせていただきました。今回、本会議あるいは委員会で質問をさせていただいた観点、大きく言うと二つある、こういうことであります。

 一つには、経費負担。各国しているけれども、諸外国と比べて突出している。二番目、三番目でしょうか、ドイツ、韓国と比べても。あるいは、思いやりということで始まったこの予算だと思いますが、今大変に円高あるいは米国の財政赤字、そういう中で非常に今、日本も財政赤字で厳しいところがある。もちろん日本という国が平和で発展していくために外交をしていく、あるいは国内の政治をしていく、いずれにせよ、とにかくここで、日本に住んで頑張っている、そういう人たちにしっかりと目を向けていかなくてはならない、私はこういう観点で質問したわけであります。

 また、本会議のときに私はこんなお話をさせていただきました。よく、ねじれ国会ねじれ国会という言葉がある。しかしながら、こう言うべきではない。ねじれというと何か悪いイメージがあって、何かもとに戻ろうとするようなイメージがある。これは、何かねじれで……(発言する者あり)いやいや、悪いイメージだという意味です。

 それで、これは衆議院と参議院で第一党が違う、違う答えを出す、これはおかしいみたいなことだという意味であります。しかしながら、日本は二院制をとっていて、衆議院と参議院で違う答えも出すことがあるということがチェック機能を果たすんだということで、私は、こういう何か後ろ向きな言葉を使うべきではない、こういうことを言ってきたわけです。

 ただ、こういうことが今までなかったので、では、衆議院と参議院が違う結論の中でどういう合意形成をしていくかということでいうと、まだまだなかなか課題があるんだろう、十分に確立されていないんだろう、こういう思いは持っているわけであります。

 そういう意味で、私は、いわゆる大連立というのは反対ではありますが、やはり与野党はきちっと合意形成をしていくために粘り強く話をしていかなくてはならない。その意味で、私は、福田総理が大変に努力をしておられるということに敬意を表したいと思うわけであります。(発言する者あり)いえ、国民の皆さんのために、しっかりと合意形成のために議論をしたい、こういうことでありますけれども。

 それでは、この協定の問題について直接、あるいはその背景の外交について、総理と率直に意見交換、議論をしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 先ほど申し上げましたことの繰り返しになるんですけれども、日本の負担している経費が大変に多い。日本は四十四億一千万ドルです。そして、ドイツは十五億六千万ドルであります。韓国は八億四千万ドル、こういう費用であります。そして、先ほど、日本も大変に今財政赤字が厳しい、こういうお話をさせていただきました。

 これは本会議で触れたことの繰り返しになるんですが、いよいよ後期高齢者医療保険も始まる、これは大体八百億円あればそれぞれの高齢者の方の負担をなくすことができるわけですし、全国で待機児童、若いお父さん、お母さんが大変に困っている、幼稚園、保育園に入れないということで一万八千人の子供たちが待機している、また、老人ホームでも入居待機をしているのが四十万人だと。大変に国内で課題がある。米軍基地が残って国民の生活が壊されていく、こういうことがあってはならないと思っているんです。

 そういう意味で、こういう状況の中で、大変に大きな日本の負担、どのように考えていらっしゃるか、総理の御見解をお聞きしたいと思います。

福田内閣総理大臣 アジア太平洋地域の戦略環境を踏まえた上で、日米同盟の円滑な運用のために必要な経費は同盟国として負担していかなくてはならないと考えております。ただ同時に、国民の税金の一層効果的、効率的使用を求めていくことも当然でございます。

 この総額が比較すると多いではないかというようなことを御指摘ございましたけれども、これは諸外国のケースと単純比較することはできない。それは、それぞれの国を取り巻く安全保障環境などは異なるからでございまして、そういうことも御理解をいただきたい、こういうように思っております。

近藤(昭)委員 総理、この間ずっと委員会でそのような答弁が多かったわけです。とにかく総括的に考えてとか、日米関係が重要だ、もちろんそのことは私も否定しないわけでありますが、日米関係が重要だとか、あるいはこの地域に特殊なことがあると。

 ただ、この間もずっと出てきているのは、もちろんNATO諸国もそうでありますけれども、米国との関係を大事にしながら、世界の安全保障、平和に資する、こういうことでそれぞれが協力してやっていると思うんです。でも、これは篠原議員が指摘したことなんですが、世界でこうしてアメリカとも協力してやっている中で、総理、この地域にはこの地域の事情もあるとは思います、しかし、全世界の平和ということの中で考えても、日本の負担している、この日米関係の中で負担している割合は本当に多いんですよね。諸外国と比べても多いわけであります。

 そのことと、今、後段でつけ加えさせていただきました、もう一つは、大変に国内で課題があるわけであります。米国に対する思いやり、特別協定での負担、これもいろいろ経緯があったわけでありますが、今、日本の国内を見ると本当に苦しい。このことについて、どういうふうにお考えになって、これからどうしていこうと考えていらっしゃるのかということをお聞かせいただきたいと思います。

福田内閣総理大臣 確かに国内も、国民生活、楽ではありませんよ。それは、物価が上昇するし、いろいろな状況を考えて、この安全保障のための経費も減らしたいというように思います。

 しかし、そういう状況を勘案した上で、この六年間、防衛支出も減らしているんですね。そういう努力もしてまいっております。それで済むわけではありませんので、一層効率的でそして効果的な負担とするために包括的な見直しを行っていくというように考えて、また努力をしてまいりたいと思います。

 しかし、根本的には、我が国をめぐる戦略環境を改善するということが必要なんであって、このためには外交努力も必要なんですね。そういうこともしっかりと行うという上において、この安全保障の問題もその中で考えていくべきであるというように思っております。

近藤(昭)委員 今後についてということで総理にお答えをいただきました。戦略的に、包括的に考えてと。この間の委員会等々で、全体的に考えて、総括的に考えて、日米関係をきちっとやっていくためにはこういう経費も、この間も努力はしてきているけれども、負担していくんだというようなお答えだったんです。

 ただ、今さらに大きなことで、戦略的に日米関係も重視しながら、この地域に不安定なことがあればそういうことも解消しつつ、日米関係は重視しているけれども、そういう軍隊に頼らないような形をつくっていくんだ、そういう、より戦略的な外交というふうにおっしゃったんだと思います。

 それで、そのお話もしっかりとお聞かせいただきたいのでありますけれども、この今回の特別協定での負担もさることながら、やはり日本の防衛ということでお聞かせをいただきたいと思います。総括的に防衛と外交で、後ほど外交も聞かせていただきますけれども、防衛ということで。

 二〇〇六年の世界の軍事費は、約百四十六兆円だったと思います。そのうち四六%、半分近いわけでありますが、断トツの一位がアメリカだ、米国である。そして、増加傾向を持っている。

 しかしながら、冷戦終結後から九〇年代末まで世界の軍事費は減少傾向にあったわけですし、一九八八年、九千百七十億ドルだった世界の総計の軍事費は、十年後の一九九八年には六千九百三十億ドル、二五%も減ったわけであります。

 しかしながら、この間、日本は、一九九六年の日米安全保障共同宣言、九七年の日米防衛協力のための指針等々という中で、防衛費が三兆七千億円から四兆九千億円、三〇%以上も増大をしているわけであります。いわゆる冷戦後の平和ということの恩恵といいましょうか、成果を日本がきちっと受けとめているのかなという気がするわけでありますし、自衛隊も、今二十五万人であります。国家公務員の総数六十一万人のうちの四割。専守防衛を国是とする島国の日本が本当に二十五万人の自衛官を必要としているのか、こういうことを私は考えていかなくてはならないと思うんです。

 もう少し数値を挙げさせていただきますと、陸上自衛官の数は十五万人であります。イギリスの陸軍と海兵隊を合わせた兵員数は十一万人なんですね。イギリスにあっては今、イギリスの事情があると思います。フォークランドなどの海外領土は持っていますし、ドイツに二万人を駐留させていますし、イラク、アフガンにも兵を送り出しているわけです。そのイギリスよりも地上部隊の数が自衛隊が多いということはいかがなる理由かな、こういうふうに思うわけであります。

 何も私は、何でもかんでも減らしていけばいいと考えているわけではないんです。先ほど総理もおっしゃった、平和をつくるための戦略的な外交をする。そのことと同時に、しかしながら、やはり自衛隊を、今申し上げたように、英国と比べても陸上部隊の数が多過ぎやしないか、もっともっと効率が図れるのではないか。世界の傾向は、そういった陸上の兵士数を減らして、いわゆる情報先進化とか武器の効率化あるいは質を高める、こういう方向にあると思うんですが、それについては、総理、いかがお考えでしょうか。

福田内閣総理大臣 私は、日本の防衛がどういう規模が適当なのかという議論、これはなかなか難しい議論なので、ここでもって申し上げるというようなことになりませんけれども、しかし、我が国の防衛が他国に突出しているというような状況ではまずないと思いますよ。近隣諸国を見てください。

 そういうようなこともありますし、また、日本の防衛費というものが過去において急膨張したといったようなこともありません。日本の防衛費というのは、これは三木内閣のときに何となく決まったGDPの一%、こういうのがございまして、それを中曽根内閣のときに若干、〇・〇一%ぐらいオーバーしたことはありますけれども、それ以外は常にGDP一%以下なんですよ。今はそれよりもずっと下がっているんじゃないでしょうか。この六年間ずっと防衛費は減っているんですよ、実額で減っているんですよ。そういうことも考えていただきたい。

 そして、近隣諸国がどうしているかということもあわせて考えていただかなければいけない。これは、防衛というのは、安全保障というのは相対的な問題でありますので、そういうことも考えて、そしてどれぐらいのものがむしろ適当なのかということはぜひお考えいただきたいと思います。逆にお願いを申し上げたい。

近藤(昭)委員 私が申し上げたのは、もちろん、どのぐらいのそういった兵力が適当なのかということの照査といいましょうか検証とともに、これは他国と簡単には比べ切れないのかもしれませんけれども、先ほど英国のことを例に挙げさせていただきました。英国にもさまざまな課題がある、またイラク、アフガニスタンにも兵員を出している、そういう中での数を挙げさせていただいて、なかなかこれを検証するのは難しいわけですから、そういう諸外国と比べながら検証していくということと、今もう一点申し上げたのは、ではそういう中で、例えば、具体的にどれぐらいの兵力とか戦車の数とか飛行機の数とかということを決める、検討する、ある種の、これぐらいのこういう状況があって、その辺に向かってはこういう兵力を持っていく、その兵力のあり方の中でやはり今、質を高める、近代化をしていくというか、そういうことが必要なんだということであります。

 そのことについては、また今後議論していくべきだと思います。

 ただ、では、どのぐらいの兵力で、兵員力で、また戦車等、飛行機等々で守っていくか、その前提となる地域の状況でありますね。先ほど総理は、戦略的に外交もしていってと。つまり、そういった、より平和な社会をつくっていくことが一番重要だというふうに思うわけであります。

 そういうことで申し上げますと、東西冷戦が終わって、しかし、必ずしもその恩恵を日本が受けてはいないのではないかということをさっき申し上げさせていただいたんですが、私は、戦後の日本の外交というのは三つの柱があったと思うんですね。それは、やはり一つには国連を大事にしていく、国連主義。そして、対米協調、日米関係ですね。このことももちろん重要ですし、先ほど鉢呂委員の質問の中にもありました、アジア外交を大事にしていこう。つまり、地域を大事にし、そしてアメリカ、日米関係も大事にし、しかしより大きく国連を大事にしていく。

 一九五六年に日本が国連に復帰というか加盟をしたときの重光外相の演説を私は改めて思うわけであります。それを思うときに、今回議論させていただいておりますが、やはり日米関係は大事だ大事だ、確かに大事なんです。しかし一方で、では、この間のイラク戦争のことでも、国連を中心にやっていくのか、英米を中心にやっていくのかという議論があった。そういう中で、私はやはりより国連をだと思ったわけでありますけれども、英米が中心になっていった。そして、残念ながら今イラクは泥沼になっているわけであります。ですから、日米関係、米国との関係は大事だけれども、もっともっと国連のことを振り返るべき、もっともっと重きを置くときが来ていると思うんですね。

 そういう意味で、先ほど鉢呂委員の指摘の中にもありました福田ドクトリン、一九七七年のことであったと思います。軍事大国とならない、心と心の触れ合いをしていく、対等な立場でやっていく。改めて、福田ドクトリンも視野に入れながら、大きく総理としてどのような外交を展開していかれようと考えていらっしゃるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

福田内閣総理大臣 私が申し上げているのは、日米同盟と国際協調なんですよ。国際協調の中には、国連重視、そういう姿勢もきちんと入っているんですね。ですから、その辺をうまく調和させながら進めていくのが日本の外交である、こういうことでございます。

 日本は、今の日本の防衛力では、これは十分でありません。ですから日米安保ということでありますし、また、十分でないという原因には憲法の問題があるわけですね。憲法の問題で、憲法九条、これに基づいて今の国策は進めているんだということでありますので、そういう制約の中で日米安全保障条約の重要性というのは当然あるわけであります。

 しかし同時に、国際協調を果たしていくということが日本に課せられた大きな課題でありまして、そのために、近隣外交をもちろん進め、そしてまた国連を重視して、そして国連が関心を持つような事項については、これには積極的に協力をしていくという姿勢を今まで貫いてきたわけですね。ですから、今後もそういう姿勢を持って我が国外交を進めていくということが、私は日本の将来のためにも大事なことであるということ、この考え方はいささかも変わっていないというように考えております。

近藤(昭)委員 これは鶏が先か卵が先かということになるのかもしれません。今総理は、日本の軍事力というか兵力、自衛力が十分でないところもある、だから日米関係でもというようなことをおっしゃったんです。

 ただ、私は、どこまでの軍事力、兵力が適当かという議論もきっちりとしつつ、やはり福田ドクトリンの中にあった、軍事大国とならず世界の平和と繁栄に貢献する、そのためにも、心と心の触れ合い、信頼関係をつくる、対等な立場で東南アジアの諸国の平和と繁栄に寄与していく、つまり軍事大国にならないという前提の中でそういう環境をつくっていく、そういう努力がドクトリンの信条ではないかなと思うんです。ですから、当時は、アヒルの水かき外交ですか、外にははっきり見えるわけではないけれども、水面下で物すごい努力をしてきた、そういう外交ということであったと思うんです。

 私は、ですから、今こうだから兵力を云々ということではなくて、軍事大国にならないという前提の中でどう努力をしていくか、また軍事大国にならないということがやはり近隣諸国の理解を得ていくと思うんです、相互信頼を得ていくと思うんです。そのことでもう一度お聞かせをいただきたいと思います。

福田内閣総理大臣 私は委員のおっしゃることに賛成ですよ。それは、日本が武力をもって侵略をするとかいうような考え方、これはもうありませんよね。六十年前にすべて捨てたわけですね。そして、そうでなくて、近隣諸国はもちろんのこと、世界全体と平和な関係を維持しながら日本の外交を進めていく、そしてその結果、日本の国力が増進するという結果に終わるように努力をしていく、これが日本の外交の基本的な姿勢であり、なお日本の基本姿勢でありますよ。ですから、そういう道を追求していかなければいけないと思います。

 しかし、だからといって、いざというときに何の備えもないということでいいのかどうか、これもやはり必要なことだというように思います。やはり日本が平和な地位をこの地で築いていく、続けていくというためには、それなりの備えも持っていなければ、あらぬ思いを近隣諸国に抱かせる、ほかの国に抱かせる、そういうふうなことがあってはならない、そのための備えというものはきちんとしていかなければいけないと思っております。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 相互信頼を確立していくために、共鳴外交ということで総理はさらに御自身の外交を進めていかれることと承知をしておりますので、日米関係のあり方、そしてアジアとの関係、またそこに、先ほど申し上げましたけれども、ぜひとも国連ということも一つのこととして置いていただければと思うわけであります。

 それで、ただ、特別協定についてもう一つ最後にお伺いをしたいというふうに思います。

 これもこの間、随分と質問をしてまいりました。米側がこれからグアムに移転するに当たって経費がかかっていく、三兆円という言葉がひとり歩きしているようなところがある。これについては、高村大臣にもお伺いをしましたけれども、まだまだ確定をしていない、これからということだというお話もありました。いろいろと考え方はある。しかし、それがどうもこの間、漠然とした言葉で、必要だから、大事だからということで来ているんです。

 ですから、これはやはり透明性のある、きちっとした歯どめのある、そういう支出になっていかないといけないと思っているんですね。そういう意味で、この三兆円についてどのようにお考えであるか、総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

高村国務大臣 午前中もお答えしたように、まだ全額が確定しているわけではありませんけれども、当面、日本が負担する上限については、真水でこれだけだ、それから融資でこれだけだ、そういうことを大体取り決めて、その中の実際の真水部分については、年度年度で予算請求をして国会の判断を仰いでいく、現在はまだそういう段階でございます。

近藤(昭)委員 総理にもぜひお考えを聞かせていただきたいと思うんですが、三兆円、三兆円というのが前面に出てきているような気がして、それに向かって最後はつじつまを合わせるということがないように、やはりきちっと言うべきことは言う、そういう形でやっていただきたいと思うんです。

高村国務大臣 三兆というのは全く別の話で、グアム移転ではないんですよ。これは、再編全体についてアメリカのある方がそういう言葉を発したというだけの話で、それについては全く、午前中もちょっとそう思ったんですが、委員がおっしゃっているのは、グアム移転と在日米軍再編全体と混同しておられるところがありまして、グアム移転については、ある程度の額が上限としてもう既に出ているわけですね、これは上限ですけれども。そして、三兆円というのは、アメリカのある担当者がそういうことを言ったというだけの話で、私たちは、その額が正しいとも正しくないとも、そういうことを言った覚えは全くないわけであります。

 そして、これについては、どういう再編をするのかということをこれから詰めていくわけでありますから、このグアム移転と再編全体とは別でありますので。

近藤(昭)委員 米軍再編という中でそういう数字が出てきた、私は、それがグアム移転等の関係の中で日本が負担しなくてはならないという額にならないように、ぜひきちっと交渉と情報の公開をしていただきたいと思っているわけですし、金額のことはさておいて、午前中の質問の中で、マスタープランが出てくるまできちっと知らない、マスタープランが出てきてそれからと、それでは結局は遅いのではないかというお話をさせていただいたわけであります。ですから、総理、金額のこととは別に、本当に日本の政府も、やはり国民の税金を使う、だから、そこについては、いろいろな意見があっても、きちっと説明できるということでないといけないと思うんです。

 そういう中で、政府も交渉して、五十億円でしたか目標を立ててきたけれども、今回も、非常に、成果としては大きくなかったわけであります。それはきちっと目標に合った成果を上げていかなくてはならないわけでありますから、そのことについて、総理としての決意といいましょうか、お考えを聞かせていただきたいと思います。

福田内閣総理大臣 委員おっしゃるとおり、これは国民の税金でございますから、できる限り効率的、効果的に用いるということがどうしても必要なわけでございますので、そういう観点から、包括的な見直しを行うというように考えておるわけであります。

近藤(昭)委員 総理におかれましては、日本の平和と発展を目指していく、そういう中で、特に特別協定の関係でありましたから、日米関係が大事だ、減らすという目標は持っているけれども、重要な負担だというお答えがあった。しかし一方で、国内に目を向ければということで私は申し上げてまいりました。ぜひ、全体的にこうした基地に関する予算が減るような、そういう方向に向かって、共鳴外交ということで総理には御努力いただきたいと思います。

 やはり国民ということで考えれば、もちろんこういう支出、どうしてだと思っている人たち、そしてまた、午前中ちょっと質問させていただいたんですが、そこで働いている人たちも、雇用をしているのが政府、しかし使用しているのが米軍、そういう中でさまざまな課題があります。ぜひ、そういった本当に一生懸命頑張っている人たちに目を向けていただきまして、共鳴外交を進めていただければと思います。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一でございます。引き続き質疑をさせていただきます。

 民主党では、早朝、外務防衛部門会議という会議を行いながら、外交、防衛全般にわたるさまざまな質疑を行っております。そうした中でも、特に日本外交について、特に外務省を中心とする日本外交が、諸外国とのかかわりで、日本の国益の主張、国民の生命財産を守る、あるいは領土、領海を守る、こういったことについて言うべきことを言っていないのではないのか、こういった疑念というものがやはりいろいろな場面で出てまいります。

 一番目には、在日米軍関係経費日本側負担についてということで総理に伺いたいんですが、ちょっとこれまでの同僚議員とのやりとりの中で、やはりチベット問題、総理は直接中国の首脳にそのことを伝えるおつもりはないというお話でございましたが、中国という国は、そうした首脳レベルには直接言わないとなかなか伝わらないというのを、私も数少ない印象をいろいろな機会の中で持っておりますので、やはりそうした機会というものは大変大事であるというふうに思っております。

 昨年、十二月一日でしたか、日中ハイレベル経済対話があった折、たしか日中間で共同文書というものを合意しながら、中国側が一方的にその文書の内容を改ざんしたということがありました。私は、先ほど触れた外務防衛部門会議の中で、その後、総理の訪中が予定されておりましたので、こういったことは今までかつてなかったことなので、総理の訪中もやはり控えるべきではないのかということを提起したことがございました。そのぐらい、両国間あるいは多国間での合意文書、あるいは条約、協定、こうしたものはやはり重いものがある。国と国あるいは多国間での信頼、これは、法と正義という言葉がありますが、そうしたものに基づいてお互いが約束を守らなければ、外交にならないわけであります。

 また、この間ミャンマーでは大変痛ましい事件が起こりました。これについては、この外務委員会の理事懇談会で、やはり外務省に対して、長井さんが至近距離で撃たれたこと、あるいはビデオのシリアルナンバーなどをしっかりと外務省としてミャンマー政府に突きつけて、真相究明をしっかりと求めるべきだということをやってまいりました。

 また、中国製のギョーザについても、過日、これは警察庁の方々ですか、現地で会議をして戻ってこられたら、中国側が一方的に、中国でのそうした浸透というものはないと発表しているということもあります。

 私は、やはり首脳外交ということで、これは中国に限らず、また今のミャンマーもそうですし、あるいは北方領土、四島返還ということでいえば対ロシア外交も含めてでありますが、言うべきことを言う、そうした日本外交であるべき、そして、領土、領海を守り、国民の生命財産を守り、国益を守る、こういった主張をやはりしていくべきだというふうに思います。

 特に、今の時点で対中国の関係がやはり注目をされるわけですが、総理として、こうした考えについてどのように御所見をお持ちか、お答えをいただきたいと思います。

福田内閣総理大臣 先ほど委員がおっしゃったことで、違うことがありますよ。私はそういうふうな答弁をしたことはありませんので、後で議事録をよく見て訂正しておいてください。

 私は、日中に限らずほかの国々すべてそうでございますけれども、お互いに胸襟を開いて何でも言える関係をつくっていきたいな、こう思っております。それが私の外交におけるとても大事な要素だというように思っておりますので、そういうことを目指して、そういうことが言い合えるような環境づくりをしておる、こういうことでありますので、私どもの方で言いたいことも言っていないんじゃないかといったような御懸念はないというようにお考えいただきたいと思っております。

武正委員 それでは個別具体的ですが、今回のチベットにおける中国での騒乱というか暴動というか、これについて、特に人権という観点から。

 これは日米も、二〇〇六年のブッシュ・小泉会談、やはりあのときの共同文書で初めて人権というものが普遍的価値ということで盛り込まれたというふうに記憶をしておりますが、そうした人権というものを掲げていく日本外交にあって、果たして今回のチベットでの騒乱について、では、総理としては中国首脳に対して言うべきことを言うということでよろしいでしょうか。あるいは、言うことが可能でない関係なのか、まだまだそうした信頼関係ができていないというふうな認識なのか。

 今はもうそういう信頼関係を当然、訪中もされているわけですから、あるいはこれまでの御経験から、言うべきことを言える、今そういうお立場だと思いますので、言っていくということでよろしいでしょうか。

福田内閣総理大臣 チベットの問題については、人権にかかわる問題であるからこそ透明であってほしいというのは、これは日本の基本的な考え方です。ですから、そういうふうな形でもって、あらゆる場面にそういうようなメッセージは伝えておるということであります。

 私が何もしていないかどうかということは具体的には申しませんけれども、していないということはないということを申し上げておきます。

武正委員 そうすると、具体的に総理みずから首脳に対してその点を指摘する、取り上げる、特にこれから首脳の訪日があるわけですので、そうした機会も、先ほど言われた電話あるいは直接お会いするときにそうしたことを取り上げるということでよろしいでしょうか。

福田内閣総理大臣 ですから、それは状況をよく注視しているわけですよ。今現在、関係者が冷静な対応をしてくれるということを望んでおります。そして、事態が早期にかつ平和裏に解決する、委員もそういうふうに思っていらっしゃるんでしょう。それとも、何か騒動になってほしいというふうに考えているわけじゃないと思いますよ。

 ですから、我々はそういうふうな観点で、いかに問題が平和裏に解決されるかということを一点に注視しておりまして、そういう観点から必要なことがあれば、いろいろな措置はとっていかなければいけない、こう思っておるところであります。

武正委員 隣国中国は日本にとっても最重要な国の一つであるというふうに私は認識をして、これまでもそうした中国の方々とのいろいろな交流をしてきた一人でございますので、今の総理の御指摘は大変遺憾であります。

 また、私が申し上げているのは、やはり先ほどの、日中ハイレベル経済対話の共同文書がいつの間にか改ざんをされたように、やはり間髪を置かず、そのときに言うべきことを言わないといけない、そのときにやはり日本側の首脳がみずからの言葉で、胸襟を開いている関係であれば、言うべきことを言っていくべきだろうということを申し上げているんです。

 ぜひそういうことで、これから大変大事な訪日を迎えるわけですから、その中でやはり適時適切に、今タイミングを見ているとおっしゃられたので、言うべきことを言う、そういうことで臨んでいただきたいというふうにお願いをしたいと思います。(高村国務大臣「委員長」と呼ぶ)済みません、ちょっと先を急ぎたいのでよろしいでしょうか。今、総理とのやりとりですから。恐れ入ります。

平沢委員長 では、高村外務大臣。

高村国務大臣 日中両政府は、言うべきことを率直に言い合う関係になっていると思います。なっていますが、まだお互いの国民感情が非常に脆弱なところがありまして、それを、例えば片方がメディアを通じて率直に言うと、それに対して一方の国民感情がののしられたと感じるような面がまだ日中両側にあるので、そういう面では、静かに、言うべきことは両政府はきっちり言っております。

 先ほど近藤委員から、アヒルの水かき外交、福田総理のお父様の時代でありますが、大変評価していただきましたが、まさにアヒルの水かき外交というのはいつの世でもあるんですよ。御理解をいただきたいと思います。

武正委員 私は、やはり総理の言葉で直接伝えるということが必要であるということを申し上げたわけでございます。

 そこで、在日米軍関係日本側負担に移らせていただきます。

 まず、資料をお手元に、これも先ほどもう配っておりますが、一ページ目をごらんいただきますと、A3の資料をA4にしておりますので大変細かい字で恐縮ですけれども、在日米軍に対する駐留経費の総計ということで、一番下の欄をずっと目で追っていきますと、実際に提供している公用地の借り上げ試算も含めますと、約六千億円を在日米軍に対して日本側は提供しているというのが平成十九年度の数字でございます。

 これについて、先ほど総理は、いや、今日本を取り巻く状況を考えるとこれは適正であるというような趣旨のことを言っておられますし、防衛費全体では減っているんだということでありましたが、当然、米軍再編全体でのそうした額あるいはミサイル防衛の額などなどをかんがみていきますと、今回の特別協定のこの国会での承認の審議では、今回のこの特別協定部分については、この中の棒グラフを引っ張っているように、千四百十六億ということでありますが、やはり政府から詳細な説明を求め、その額が適正な支出であるかをより強くしっかりとやらなければいけない、そういう日本の、あるいは日米を取り巻く経済社会、財政状況だという認識で臨んできたわけであります。そうした意味では、まだまだ資料が政府から十分出されておりません。大変残念であります。また、遺憾であります。

 そして、そうした中、総理は先ほどのようなことを言われましたが、先ほど触れた外務防衛部門会議では、昨年の臨時国会以来、まずは守屋前事務次官の事件、案件、山田洋行とのそうした不明朗な契約関係、これにかなりの時間を割かれました。そして、ことしになってからはまたイージス艦の事件、事故ということでありまして、そうした防衛省をめぐる契約、あるいは既に三月八日、海上自衛隊の指揮官会議も行われましたが、やはりもう一度教育というものも立ち返っていかなきゃいけない。

 あるいは、私も知らなかったんですが、海上自衛隊の定数というのは実は充足されていない。私も、それこそ戦前であれば海軍ということでの、非常に当時の海軍に対するあこがれみたいなものがあったりして、今はどっちかというと海上自衛官の定数が充足していないということも初めて知ったわけであります。

 そうしたことも含めて、実はそうした基本というものが、日本の防衛、特にその防衛をなす防衛省・自衛隊で、ある面問われている今回の一連の不祥事、事件、事故だったのではないのかなというふうに思っているわけでありまして、だからこそ、防衛省をめぐる、あるいは今回の防衛省所管の予算、特別協定について、タックスペイヤー、納税者の代表である国会として、つぶさにやはりチェックをしなきゃいけない、こういう立場で審議をしてきたわけでございます。

 先ほど総理は、これで過重な負担ではないというようなことを言っておられますが、私は、この特別協定は、ここでやはり一度見直しをするタイミングではないかなということを改めて指摘させていただきます。

 そこで、次の米軍再編、グアム移転経費、辺野古移設経費について質問させていただきます。

 十二ページをおあけいただきたいと思います。これは、グアム移転経費の内訳ということで、既に政府が国会でのさまざまな説明で使われた資料、防衛省の作成資料でございます。総額百二・七億ドル、そのうち日本側の負担が六十・九億ドル。特に、この中で家族住宅が二十五・五億ドル、効率化四・二億ドルを引いても二十一・三億ドルという経費、これが三千五百戸と言われるグアムでの米軍住宅の費用とされております。三千五百戸でこの二十五・五億ドルを割れば一戸当たり七十二万八千ドル、効率化を引いてそれを割っても六十万八千ドルということであります。

 次の十三ページをごらんいただきますと、これは、グアム・リアル・エステート・インベスターズ・ガイドというグアムの不動産の投資を行う人向けの本の中から抜粋をした資料でございます。

 左側、ニュー・シングル・ファミリー・サブディビジョンズというんですか、プロジェクトということで、いろいろな地域の開発の地区名が書かれておりまして、ユニット、家の戸数というものが真ん中、そしてそのプライス、価格が右側に出ているわけであります。先ほどの、効率化をして六十万八千ドル、それを除けば七十二万八千ドルということからすると、非常に高いグアムにおける住宅の価格、建設費であろうということもこれを見ておわかりだと思います。右側の同じガイドに載っていた市場における平均の価格というものが、確かに毎年上がってはいても二十万ドルを下るということでありまして、これからすると、先ほどの一戸当たり七十二万八千ドル、あるいはそれを効率化しても六十万八千ドルというのはやはり高いというのが率直な印象であります。

 こうした点、総理として、グアムのこうした投資家向けの現地での価格を見比べながら、どのようにお考えになられるか、お感じになられたか、御所見を伺いたいと思います。総理、お願いいたします。

高村国務大臣 米海兵隊のグアム移転事業では、三千五百戸程度の家族住宅の建設費は、民活による効率化が見込まれる約四億二千万ドルを除き、約二十一億三千万ドルでありまして、敷地造成費及びユーティリティー整備費を含め、単純に平均すると一戸当たりの平均単価は約六十一万ドルとなりますが、これは検討段階における米側の見積もりであって、あくまで概算であります。現在、防衛省において、グアム現地の住宅市場価格に関する調査検討を行っているところであります。その結果も踏まえ、今後、我が国が主体的に海兵隊の家族住宅の積算等を精査し、その上で所要の予算要求を行い、国会の審議を受けることになるわけであります。

 いずれにせよ、海兵隊のグアム移転については、事業の一層の効率化に努めつつ、日米合意に従い、着実に進めてまいりたい。

 武正委員、防衛省の人間を呼ばないで、こういうことを総理と私に聞くというのも、ちょっと行き過ぎじゃないかと思います。

武正委員 私どもは防衛大臣に本委員会への御出席を何度もお願いしてまいりましたが、それが与党の側で受け入れられませんでした。そのときに与党の理事からも、いや、総理は自衛隊の最高指揮権者だ、こういうような話もありまして、きょう、総理にお伺いをしているわけで、今、感想でいいんですよ、感想。どうですか、総理。一戸当たり七十万ドルとか六十万ドルというのは、やはりグアムのこれを見ても高過ぎやしませんか。どうですか。

福田内閣総理大臣 では、感想を申し上げます。

 グアムへの移転に係る日米分担額は、米側の見積もりに基づくものでありまして、あくまで概算であるために、今後、我が国が主体的に積算等を精査する必要があり、その上で所要の予算要求を行い、国会で御審議をいただくことになる、こういうことであります。

 先ほどの七十五万ドルですか、あれは、私はほかの委員会でもって、予算委員会でしたか、防衛大臣が答弁するのを聞いていまして、ちょっと記憶しておったんだけれども、単純に戸数で割るべきものでないということなんですよ。というのは、あの地域にある、あの中における米軍の公的な公共施設、そういったようなものも含んでいるものであって、一戸当たり住宅建設額幾ら、こういうふうに簡単に計算できるものでない、こんなふうな話を聞いておりますので、御紹介申し上げます。

武正委員 これはやはり、今言った、国会に対する説明責任というものを政府が十分果たせていない一つの証拠だというふうに思うんですね。我々だって、三千五百戸で二十五・五億ドルということでやってきているわけですから、今のようなことを言って、じゃ、公的なものを除いたら一戸当たり幾らなのか、こういったことがやはり十分議論ができていないんですね。つまり、政府からの説明が十分でないんですよ。そのことをいみじくも総理が今明かされたということだと思います。

 先ほど既に、基地内インフラということでここに書いてありますが、総理、基地内インフラと書いてあるのに、報道で基地外も負担する可能性があるということが出てまいりまして、先ほど防衛副大臣はそういうこともあるんだというようなことも言っていますし、生活関連施設では、ゴルフ場がつくられる可能性がある。ゴルフ場は平成十二年の日米間の合意でつくらなくなったはずなのに、これは防衛省が、リロケーションの場合はつくる可能性があるということを言っておられますので、こうしたことがどんどん出てくる。肝心なことがよく政府から説明がない。

 こういった中で、今回、特別協定の審査というものは、やはり政府の全体の、日米間のさまざまな費用負担の説明ということが不十分であるということも改めて指摘をさせていただきます。

 そこで、十一ページをごらんいただきたいんです。総理、よろしいでしょうか、十一ページを。

 今、防衛省改革、内閣官房で総理も出席で取り組んでおられますが、防衛省では既に、調達のプロジェクトチームが最終報告を三月二十八日にまとめられました。その中で、やはりFMS調達というものも改革が必要だということであります。

 FMS調達は、フォーリン・ミリタリー・セールスということで、ただ、これが日本語で有償援助契約でしょうか、援助というのは非常におかしいなというふうに思うんですが、三千二百億円ものこうした調達の契約で、百六十六億円の利子つき口座というものも、今ようやく利子ももらえるようになったというのが日米間の関係であります。

 そうした中、手元の方に、これは今回の特別協定の給与の支払いの流れというものが八ページ以降出ておりますので、こちらをごらんいただきたいと思います。

 八ページのこの仕組み、そして同じく九ページ、十ページをごらんいただきますと、先ほど、二万三千人、日本側は負担しているんだというふうなお話でしたけれども、約二万五千人分の従業員の給与を全額、四月から十二月分払って、そして、要は二千人分多く払っておりますので、その分で一月、二月、三月の米側負担を賄うということでありますので、百五十七億円を先に支払うというような仕組みになっております。当然ここには、民間の観念でいきますと、利子というものが発生をするというふうに思うのであります。

 私は、やはりこうした支払い方も何か見直さなきゃいけないのではないのかなというふうに思うんですが、総理、聞いていただいていますでしょうか。では、外務大臣、どうぞ。

高村国務大臣 特別協定に基づく給与の支払い方法についてでありますが、上限労働者数の範囲内で給与の全額を負担することとなった平成七年度以降、特別協定による日本側負担分が米側負担分に比して非常に大きくなったことから、米側負担分の特別調達資金による立てかえ払いを年度末に集中して処理することにより、日米双方にとって事務の効率化を図ることとしたものであり、適切な支払い方法であると考えております、これが防衛省の見解であります。

 防衛副大臣は出る用意があると言ったのに委員に断られたそうで、私は政府側として非常に遺憾に思っております。

武正委員 やはり、この特別協定の交渉というものは外務省、防衛省で行っておられます。そしてまた、資料をごらんいただくとおわかりのように、一番最後に、日米合同委員会がございます。この日米合同委員会のそれぞれの分科会で、日米間の、駐留にかかわる、あるいは日米同盟にかかわるいろいろな交渉がされる。本協定でも、日米間にかかわるものは合同委員会で協議をするというのが第六条にあるわけです。

 ですから当然、外務省、防衛省、特にそうした米軍再編にかかわるところは両省庁というのもここにも出ておりますように、また、外務省、防衛省がそれぞれ代表として交渉にかかわっているわけですから、私は、やはり外務省がより主体的にこの特別協定の、特に何度も多くの議員が指摘をしているような節約努力、こういったものに主体的に取り組んでいただきたいということを申し上げているわけであります。

 ですから、今のように、外務大臣としてお答えになるのは極めて遺憾であるというふうに言ってしまいますと、いや、だって、こうした交渉、やはり外交当局としてどうなんだ、条約は外務省ではないのかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

高村国務大臣 協定を結ぶ交渉は、外務省が防衛省と協力して、外務省が主体となって行うわけでありますが、その執行については防衛省が担当している、こういうことでございます。今の御質問は執行に関する話ですから、防衛副大臣が出ると言っているのにそれを認めないというのは、私の常識ではちょっとわかりません。

武正委員 それでは、最後の質問に移らせていただきます。地位協定の改定についてでございます。

 総理、日米地位協定の改定について、民主党はこれまで、その改定案というのをまとめてまいりました。過日、在日米軍の少女暴行事件もあり、また、きょうも質問が出ておりますが、品川駅から横須賀へのタクシーの中でタクシー運転手の方が刺殺をされるということについての、今、米軍人がそうした犯行をほのめかしているという報道もこれありということでありまして、米軍人によるそうした事件、事故が続く中で、やはり、私も、米軍ヘリが沖縄国際大学に墜落をした三日後、沖縄におりましたので、なぜ沖縄県警がそうした沖縄国際大学の敷地の中にあるそのヘリに近づけないのかということをかんがみますと、それはやはり地位協定だ、合意議事録だという話でございました。

 やはり、ここに来て、この特別協定の審議とも当然絡みます地位協定、第一次裁判管轄権も含め、また特に、在日米軍基地で働く日本人従業員の方々のそうした日本の法令遵守ということも日米で見解が分かれておりますので、私は、ここで地位協定の改定という時期に来ているのではないかと思います。もう既に外務大臣からは運用改善でということはお答えいただいておりますので、時間の関係もありますので、総理の地位協定改定についてのお考えをぜひ伺いたいというふうに思います。

福田内閣総理大臣 大変恐縮でございますけれども、私の答弁も外務大臣の答弁と同じでございます。運用の改善に一歩一歩努力をしてまいりたいと思っております。

武正委員 やはり、特別協定の審議と同様、地位協定の改定というものが、今まさにそれをやらなければならないタイミングであるということを強く申し上げて、私の質問にかえさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

平沢委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 まず、総理に端的に伺います。

 総理は、昨年十一月の日米首脳会談で、ブッシュ大統領に対して、本日の議題であります在日米軍駐留経費負担特別協定の見直しについて、なぜ提起をなさらなかったんでしょうか、お答えください。

福田内閣総理大臣 日米首脳会談で、いろいろ協議をすることがございました。時間の関係もございますので、すべてを協議することはできなかった。当面大事な、当面急いで話し合いをしなければいけないこと、これを優先いたしました。そして、私も初めて総理大臣としてブッシュ大統領にお会いする、そういう大事な会談でございますので、日米間の大きな外交の枠組みというものを十分議論してまいったということでございます。

笠井委員 時間の関係と言われましたが、総理御自身この問題に触れて、外務省の要旨を見ましても、本件については、引き続き……

平沢委員長 ちょっと、笠井君。

 内閣総理大臣。

福田内閣総理大臣 失礼いたしました。

 その問題も話をいたしました。これは、日米同盟のあり方、負担特別協定についてやりとりをいたしております。

笠井委員 時間の関係と言われて、やりとりはしたけれども、しかし、見直しの提起はされていないということであります。

 政府が思いやりと称して在日米軍駐留経費の負担に踏み出してから三十年になります。加えて、地位協定の二十四条の暫定的、限定的、特例的な措置として特別協定を結んで、その改定を重ねて二十年になります。既に総額は五兆円を超えております。そのほかに、地位協定に基づく駐留経費などを含めますと、全体で十四兆円の規模にも上る。とりわけ、昨今、沖縄少女暴行事件を初めとして、米軍基地あるがゆえの事件、事故が相次ぐ。その一方で、国民生活関連の予算はばっさり削られる。昨日からは後期高齢者医療制度が始まって、怒りが沸騰です、町じゅう。そういう状況の中で、こういう思いやりなどというやり方をきっぱりやめるべきだという厳しい世論が広がっております。

 しかも、この三十年、二十年というふうに見ますと、日米の経済財政状況も大きく変化してきた一方で、米軍基地負担というのは増大し続けております。財政審も見直しを提起して、これを放置していては国民の理解を得ることはできない、そこまで指摘をしているわけであります。

 そこで、総理に伺いたいんですが、先ほど、必要な期間、この特別協定を継続というふうに言われました。しかし、暫定的、限定的、特例的な措置という以上、いつかは終了することになるはずであります。一体いつまで、特別協定を含めて、いわゆる思いやり予算という在日米軍駐留経費負担、こういうやり方を続けるというおつもりでしょうか。総理に伺います。

福田内閣総理大臣 政府といたしましては、前回、特別協定終了後の在日米軍駐留経費負担のあり方についても、これまでの特別協定と同様に、日米両国を取り巻く現下の諸情勢を総合的に勘案いたしております。その上で、日米安保条約の円滑かつ効果的な運用や在日米軍施設・区域で働く労働者の雇用の安定といった特別協定の目的を踏まえまして、日米地位協定第二十四条に定める経費負担の原則は原則として維持しつつも、新たな特別協定を締結することが適当であるとの判断を改めて行ったものであります。

 したがって、政府としては、現時点においてこれ以外の措置をとることは検討しておりません。

笠井委員 それでは伺いますが、現時点においてというふうに言われましたが、どのような状況になれば、こういう暫定的、限定的、特例的な措置である特別協定は解消されるということになるんでしょうか。総理にお考えを伺いたいと思います。総理に伺います。今のは総理の答弁ですから。

高村国務大臣 どういうような状況というのを具体的に述べることはなかなか難しいわけでありますが、安全保障環境が全く変わって、日米安保条約を抑止力として活用しなくとも日本の平和と独立が保たれる、こういうような状況になれば、そういうものが全体的に枠組みが変わってくるだろう、こういうふうに思っております。

福田内閣総理大臣 今外務大臣から答弁したとおりなんですよ。日本の安全保障環境がどう変わるか、これはわかりませんよ、正直申しまして。相手のあることでございますから。それも、一つの国とかそういうことでない。そういうような状況をよく踏まえた上で考えるべきことであって、今から予断をするべきではないと思います。

笠井委員 必要でなくなるような状況をつくるというのがやはり政治の仕事だし、外交の仕事だと思うんです。

 それで、結局は、そういう状況に来ないということで、日米安全保障体制の効果的な運用という観点で、先ほども言われましたけれども、そういう形でこの安保体制を続けていくという限り、結局この仕組みをいつまでも続けていくということになれば、これは事実上の恒久化ということになります。しかし、安保賛成の立場の人さえ、こういう負担のやり方を続けるのはいいのかという疑問が上がっているわけであります。

 今国会では、国民世論の高まりの中で、四月一日にガソリン税の暫定税率が失効して、道路特定財源も法的根拠を失いました。この特別協定に関しても、政府は暫定的、限定的、特例的と言い続けてきたわけですから、そうしたごまかしももはや通用しないということを指摘しておきたいと思います。

 さて、在日米軍再編関係経費について聞きたいと思うんですが、加えて結局別枠でそうした再編経費を負担することになっている、そして、今後もこれは増大し続けるということになります。

 そこで、総理に伺いたいんですが、先ほども若干ありまして、三兆円というのは、そういうことを言った人がいるという話でしたが、三兆円規模にもなるという発言もあったような米軍再編関係経費をめぐって、昨年三月一日の衆議院予算委員会で当時の安倍総理は、私の質問に対して、日米間で検討して詰めている、鋭意検討を進めて、できるだけ早い段階で明らかにしていきたい、米軍再編の総額について、こう答弁されました。

 もうそれから一年が過ぎました。しかも、日米の最終文書、ロードマップが合意されてから既に二年近くたとうとしているわけですから、できるだけ早い段階というのはもうとうに過ぎたと思うんですが、現総理として、この問いにどうお答えになりますでしょうか。前は総理の答弁だったので、今度は現総理で答弁をお願いします。

福田内閣総理大臣 米軍再編に伴います日本側の経費負担につきましては、沖縄の負担軽減の大きな柱でございます嘉手納以南の土地の返還などの内容について日米間で検討中であります。また、地域振興策の具体的な内容も、この検討の進捗を踏まえつつ、地元の意見も聞いた上で調整されることになるため、現時点では決まっておらず、申し上げられる段階にはございません。

 引き続き、厳しい財政事情も踏まえて鋭意調整を進めてまいりますが、調整が整い経費の見積もりができれば、その範囲で明らかにしてまいりたいと思います。

笠井委員 まあ、沖縄の負担軽減というのにはならないという議論がこの委員会でもありました。

 そして、今総理は、今申し上げる段階にないというふうに言われましたが、というふうにおっしゃるなら、どういう段階なら具体的に言えることになるのか。総理は、こういう問題というのは国民の理解を得られるものであることが重要だということを繰り返し言われております。それなら、少なくとも、どれぐらいの規模あるいは額の幅になるのかということを、いつまでに国民に示すというふうに努力されるのか、目標ですね、これぐらいはきちんと約束されるべきじゃないんでしょうか。

高村国務大臣 いつまでというよりも、この問題について日米間でどういうことをやるんだという具体的な内容が定まらないと積算できませんので、何かお金が先にありきみたいな話でやってはいけないのだろうと思うんですね。ですから、具体的な内容を詰めなければいけない。具体的な内容を詰めるためには、地元の声も聞かなければいけない。そういういろいろなことがあって、そちらの進捗状況いかんによる、こういうことでございます。

笠井委員 では、何で一年前に、当時の安倍総理が、日本政府を代表して、できるだけ早く示すというふうに答弁されたのかということなんですよ。

 昨年三月といいますと、それは米軍再編特措法審議前です。当時の総理大臣は、できるだけ早く示す、鋭意検討して詰めているんだ、だから待ってくれという話をされたんです。そうやって答弁されながら、法律を通した後になったら、もうそんなことはできないんだ、それぞれ詰めているんだから、一個一個、単年度で出していかなかったらできないんだということでは、これは私は、率直に言って国民を欺くことになると。

 だって、当時は三兆円というのがどうなるのかとすごい問題になったわけです。こんなに負担するのか、いや、そうじゃないんだと。そういう中でできるだけ早くと言われたわけですから、それは、できるだけ早く、きちっと、いつまでに、どれぐらいのことについては努力するのかどうか、それぐらいは福田総理、現総理ですから、やはり国民に対して言うべきじゃないでしょうか。いかがですか。総理にお願いします。

高村国務大臣 いや、安倍総理は、率直な願望を言われたんだと思います。

 政府としては、この米軍再編自体できるだけ早くやりたいんだから、できるだけ早くやるために、できるだけ早くそういうことをお示ししたい、そういうことを申し上げたわけであります。

笠井委員 では、福田総理の率直な願望をお聞きしたいと思います。

福田内閣総理大臣 再編にかかわる問題でございますので、これは重要なことであります。したがいまして、調整をしていかなければいけないのでありますけれども、いつその調整が終わるか、それは諸般の状況を考えながら判断していくことになると思います。

笠井委員 再編特措法が通る前には、できるだけ早くやりますからとにかくこれは通してくださいと当時の政府が言われながら、今なかなかそのことをはっきり言えないというのは、これは国民に対して本当に責任を持つということにはならない、結局は欺くことになりますよということを私は申し上げたいと思います。

 問題は、米軍再編関係経費の総額だけじゃありません。米海兵隊のグアム移転事業について、一点ただしておきたいと思います。

 この間も議論がありましたが、一昨年の五月のロードマップで、この事業全体の約六〇%、六十・九億ドルという日本側の経費負担の中には、電力、上下水道、廃棄物処理などの基地内インフラ整備七・四億ドルも含まれている。午前中の質疑で、また先ほどもありましたが、午前中には防衛副大臣が、これらを基地外に建設することを必ずしも排除するものではないと答弁されました。

 そこで私は、防衛省に来てもらっていますので確認しますが、ということは、基地外に新増設をして、それが結果として基地外に住んでいるグアム住民にも供される可能性も排除していないということですか。そうだとすれば、その法的根拠はどこにありますか。お答えください。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 今回日本が分担するインフラに係る民活事業につきましては、海兵隊のグアム移転に伴う需要の増加を賄うためのものでございます。その内容や事業スキーム等については、引き続き日米間で協議中でございまして、決まっておりません。

 いずれにいたしましても、インフラに係る民活事業というものは、今後米側が支払うインフラ使用料収入により出資や融資などが確実に回収されるような形で事業スキームを決定する必要があるということでございまして、インフラ整備のあり方につきましては日本側で主導的に検討を行う必要があるというふうに考え、現在、米側と鋭意協議をしている段階でございます。

笠井委員 基地外についてどうかと聞いているんですから、ちゃんとそれに答えてください。排除するのかしないのか、それから根拠はどこにあるのか。質問に答えてください、時間がないんですから。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 ですから、本日も副大臣が答弁をしておりますように、まさにこのインフラ整備というのは、沖縄からの海兵隊の移転をスムーズに進めるためにやるということでございますので、インフラ設備というものを基地の外に建設するということを排除したものではないというふうに副大臣はお答えしているところでございます。(笠井委員「根拠はどこですか、法的根拠」と呼ぶ)

 根拠につきましては、まさにこういったインフラの整備ということにつきましては国会でもいろいろ御議論があるところでございまして、一つは、沖縄県民からの県外移転の要望というものを考え、さらに、それが米国政府からもそういうことであれば財政負担をしてほしいということ、それから、日本におきましては国内の土地が返還されてそれが利用に供されるというふうなこと、そして、沖縄県民及び日本全体の負担の早期軽減というふうなこと、そして日米同盟の信頼関係の維持、そして日米同盟の抑止力の維持、そういうふうなことがあって、沖縄の負担軽減に向けての日米双方の決意を示すということで、こういった経費の分担について閣僚レベルでいろいろなぎりぎりの交渉が行われてこういった形になったということでございます。

 具体的な支出根拠につきましては予算といったような形でこれからもいろいろ議論されるでしょうし、具体的な事業のスキームといったことも今の法的な枠組みの中できちっと担保されていくというふうに理解をしております。

笠井委員 法的根拠を聞いても答えられないんですよ。ないということですね。

 もともと、他国領土に存在する基地等の建設を日本の国税で負担することは世界に類例のないことだと、外務省は私の質問に答えてまいりました。海兵隊の施設をグアムにつくるためになぜ日本国民の税金を使うのかという問題がある上に、そのインフラを基地の外、基地外に増設、新設して、軍民共用といいますか、グアム住民も使うことまであり得るというのでは、日本国民や沖縄県民の納得は得られない。合理的、効率的とか負担額の問題ということで安くなるということを言われましたけれども、その次元だけの問題じゃありません。そもそも筋が通るかという問題です。日本の国民の税金です。

 そこで、総理に伺いたいんですけれども、海兵隊の移転元となる沖縄県のインフラ整備はどうかといいますと、例えば下水道の普及率を見ますと、これは国交省の資料なんですけれども、全国平均は八二・四%、それに対して沖縄県は全体で六三・三%ということであります。そして、とりわけその中でも海兵隊基地がある金武町、東村、宜野座村を見ますと、下水道の普及率〇%なんです。つまり、下水道事業未着手という状況であります。

 だから、沖縄の地元住民には全く整備されていないものを、沖縄の負担の軽減とか今も話がありましたけれども、そのためということで、結果としてグアムの住民が恩恵を受けるというやり方をしたら、これは地元の沖縄の人たちの理解、国民の理解を得られるというふうに、率直にそういう感想を持たれますか、総理に伺いたいと思います。

平沢委員長 申し合わせの時間が来ましたので、できるだけ簡潔にお願いします。

福田内閣総理大臣 海兵隊のグアム移転については、日本政府の資金が適切に使用されることは当然であるというように考えております。そういう考え方のもとで着実に進めてまいりたいと思っておるところであります。

笠井委員 終わりますが、至れり尽くせりの思いやり予算とか特別協定という仕組みを続けるから、道理も際限もないことになって国民負担につながるわけであります。こんなやり方はきっぱりやめるべきだ、このことを強く申し上げて、質問を終わります。

平沢委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社民党の照屋寛徳です。

 せっかく総理がお越しでございますので、何点か所見を伺いたいと思います。

 去る三月二十八日、沖縄じゅうの耳目が集まる裁判で、歴史を刻む判決が大阪地裁で言い渡されました。悲惨な沖縄戦のさなか、座間味、渡嘉敷、両島で起きた集団自決をめぐり、両島に駐留していた日本軍の戦隊長が住民に自決を命じたとの本の記述は誤りだとして、座間味島の元戦隊長梅沢裕氏らが作家大江健三郎氏や岩波書店に出版差しとめ等を求めていた裁判の判決であります。

 判決は、住民などの集団自決に対する旧日本軍の関与を明確に認定し、戦隊長らによる命令が援護法の適用で補償を受けるための捏造であるとした原告側の主張を全面的に否定しました。

 問題は、昨年三月、文科省は、高校歴史教科書の教科書検定で日本軍の集団自決の強制命令、関与の記述を修正、削除しました。その際、文科省は、当時梅沢氏が裁判に提出した自決命令を否定する陳述書を、検定意見を付した根拠の一つに挙げていたのです。

 今回の判決で、文科省の検定意見の根拠は大きく崩壊しました。にもかかわらず、政府や文科省は、昨年九月二十九日の県民大会で十一万六千余の沖縄県民が強く求めた検定意見の撤回と、集団自決への旧日本軍の命令、強制をいまだに否定しております。

 判決は、自決命令についてそのまま認めるには伝達経路が判然としないためちゅうちょを禁じ得ないとしたものの、自決に日本軍所有の手りゅう弾が使われたこと、赤松戦隊長がスパイ容疑で住民を処刑したことなどを指摘し、日本軍の関与を認定したものであります。

 沖縄県民にとって暫定税率や道路特定財源の問題以上に重大な意義を有するこの判決に対する福田総理の所信と感想を尋ねます。

福田内閣総理大臣 沖縄の渡嘉敷島と座間味島における集団自決について、先般、大阪地裁において判決がございました。

 その判決の詳細について私は承知しておりませんが、いずれにしても、この裁判は私人間の法的紛争に関して司法が下した判決でございますので、政府としてお答えする立場にはないのでございますので、私からこれについて何か申し述べるということは差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、沖縄戦が住民を巻き込んだ悲惨な戦いであり、多くの人々が犠牲になったということにつきましては、歴史を風化させないよう、これからも子供たちにしっかりと教えていかなければならない、そのように考えておるところでございます。

照屋委員 福田総理、去る三月二十六日にキャンプ・ハンセンで、翌二十七日はキャンプ・シュワブと、米軍基地内で大規模な火災が立て続けに発生しました。

 米軍基地内の火災は、昨年だけで二十件も発生し、前年の八件から倍増しております。火災原因のほとんどは実弾演習によるもので、住民の命が危険にさらされております。基地内火災の場合、沖縄県や関係基地所在自治体は消火活動に関与できません。日米地位協定第三条の基地管理権がこれを拒んでおるのです。

 私は、総理に細かい事実関係をあれこれお聞きしようとは思いません。ところが、米軍の実弾演習に起因する火災は、公共に対する危険罪であり、環境を破壊する行為であって、断じて許されるものではないと思います。

 福田総理、十時間以上も燃え続けて住民地域の直前まで延焼した。事実関係はお聞きをしないと言いましたが、事件、事故で苦しむだけではなくて、このような公共危険罪あるいは環境破壊が起こっていることに対する総理の所見と感想をお聞かせください。

福田内閣総理大臣 沖縄の米軍施設・区域内で山火事が委員御指摘のとおり相次いで発生しているということは、まことに遺憾なことでございます。

 特に、三月二十六日にキャンプ・ハンセンで発生した大規模な山火事につきましては、これは日没後も燃え続けて、地元の方々は大変な不安を感じられたというように承知いたしております。

 政府としましては、山火事の発生当初より、防衛省から県や町に情報提供を行って、そして米軍に対しては、ヘリコプターの追加出動を求めるなどの早期消火に努めるように厳重に申し入れております。また、鎮火後の二十七日には、米軍に対し、文書により原因の究明、防止策の徹底等について申し入れを行ってきたわけでございます。

 しかし、このような不安を地元に与えてはならないと思いますので、米軍に対し、さらに厳しく、山火事の未然防止策の徹底、消火活動の体制整備について働きかけを行ってまいりたいと思います。

照屋委員 福田総理、これまた事実関係はお聞きをしませんが、去る三月二十七日、在沖米海軍の軍用車両が、事もあろうに、県立高等養護学校に侵入する事件が発生しました。昨年七月にも同校で、八月には私の母校である県立前原高校で同様の事件が発生しております。まさに異常事態であり、強い怒りを覚えます。

 総理、続発する米軍人軍属の犯罪と今回の学校現場への米軍車両無断侵入の暴挙に総理はどのような所見と感想をお持ちでしょうか。

福田内閣総理大臣 米海軍の車両が沖縄の高等養護学校に無断侵入する、こういう事件が発生いたしまして、米側から、新任の隊員が運転する米海軍の車両が道を誤って学校の敷地に侵入してしまった、こういう説明を受けておりますけれども、昨年の夏に引き続いて今般このような米軍による事故、事件でございますので、学校関係者に不安を与えたということは本当に申しわけないというように思い、遺憾に思っているところでございます。

 学校関係者に不安を与えないように、外務省から米側に対し、隊員に対する再教育、そしてまた再発防止の徹底を図るように改めて申し入れておりまして、これに対して米側からは、全隊員に対し厳重注意を行ったという説明を受けていると承知しておるところでございます。

照屋委員 新特別協定で問われているのは、日米地位協定二十四条で我が国が負っている義務以上の際限のない経費負担のあり方であります。豪華な米軍住宅建設などに見られる提供施設整備費や訓練移転費、米軍の無駄遣いによる光熱水費の高額負担など、過剰なまでの米軍関係経費は国民の血税で賄われております。

 総理は、本当に現在のまま駐留経費負担を継続してよいと思っていらっしゃるんでしょうか。

福田内閣総理大臣 在日米軍駐留経費負担は、我が国の安全保障にとりまして不可欠な日米安保体制の円滑かつ効果的な運用に重要な役割を果たしているものでございます。

 今回の交渉の結果、労務費及び訓練移転費について平成十八年に締結した特別協定の内容を維持する一方で、光熱費については一定の削減ができたということは、政府として適切な対応であったと考えております。

 日米両政府は、より効率的で効果的な在日米軍駐留経費負担とするために包括的な見直しを行うことで一致いたしておりますので、今後、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を確保しつつ、さらに見直しを進めてまいりたいと考えております。

照屋委員 最後に、総理、沖縄では、続発する米軍人軍属等の事件、事故に対して日米両政府による再発防止策は何らの具体性、実効性も持たないものとして、多くの県民が強く批判をしております。根本的な解決のためには、基地の縮小、撤去や、不平等、不公正で米軍人軍属等に多くの特権・免除を与えている日米地位協定を主権、人権、環境の視点から抜本的、全面的に改定すべきだと強く希望しております。

 福田総理は、沖縄県知事を初め県民の強い希望が地位協定の抜本的改定であると受けとめていらっしゃるでしょうか。総理の所信をお聞かせください。

福田内閣総理大臣 県民の皆さんのお気持ちというものは、我々は常々考えていかなければいけないことだと思っております。

 しかしながら、米軍、特に米軍関係者による事件が繰り返される、そういうような状況の中において、そういう思いを強く持たれておるということはよく理解するところでございますけれども、日米地位協定については、政府としては、その改正ではなくて、その時々の問題について運用の改善によって機敏に対応していくということが合理的であるという考え方を持っておりまして、そういう観点から、これまでも種々の分野で実績を積み重ねてまいっております。

 政府といたしまして、今後とも、目に見える運用改善の成果を一歩一歩積み上げていくよう、最大限の努力をいたしてまいりたいと考えております。

照屋委員 終わります。

平沢委員長 これにて内閣総理大臣出席のもとの質疑は終了いたしました。

 内閣総理大臣は御退席いただいて結構でございます。

 以上をもちまして本件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

平沢委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。山中あき子君。

山中委員 自由民主党の山中あき子でございます。

 私は、自由民主党、公明党を代表し、在日米軍駐留経費負担に係る新たな特別協定につきまして、賛成の立場から討論を行います。

 第二次世界大戦終結から既に六十年余りたちました。足かけ七年にわたる米国の占領下で、日米外交の基軸となるこの条約を大変な御苦労の末に締結され、我が国の発展の礎を築かれた故吉田茂首相を初めとする先人の努力に、改めて心から敬意を表します。

 歴史は日本に日米同盟関係という選択を与えたのです。そして、敗戦後の灰の中から驚異的な復興、発展を遂げ、現在でもアジア、アフリカの発展途上国のよい目標、手本となっている日本が現在あるのは、まさにこの日米同盟関係が外交、安全保障の基軸となっているからだと申しても過言ではありません。

 米国のキッシンジャー博士にお会いしたときに、博士は、日本に駐留する米軍は、日本の安全を守ると同時に、アジア太平洋を中心に国際社会の平和と安定のために寄与していると述べられました。

 東西冷戦終結後においても、日米安保体制の重要性はいささかも揺らいでおりません。昨今のアジア太平洋地域、ひいては国際社会に目を向けますと、難航する北朝鮮情勢、とどまることを知らない中国やロシアの軍備増強、さらに終結の兆しの見えないテロとの闘いなど、まだまだ不安定で不確実な情勢にあります。このような状況下、民主主義という共通の価値観を有する日米両国が、これまで以上に真のイコールパートナーとして協力関係を強化しなければなりません。

 在日米軍の効果的な活動を確保するための本特別協定は、在日米軍労働者の労務費、光熱費、訓練移転費の全部または一部を我が国が負担しようとするものであります。すなわち、本特別協定は、同盟国として果たすべき責務としてのホスト・ネーション・サポートそのものであります。したがって、本特別協定を締結することは、健全な日米同盟を維持していく上で非常に重要な施策と考えます。

 ドイツの東西統一をなし遂げたゲンシャー外務大臣は、外交はプラクティカルでなければならないと述べております。

 本特別協定は非常に重要な協定でありますが、一方で、引き続き我が国の財政状況は厳しく、また、在日米軍再編に関連して大きな財政支出が見込まれていること、これもまた現実であります。したがって、光熱費につき一定の負担を削減するなど、厳しい経済情勢にも目配りした内容となっています。すなわち、平成二十年度と平成十九年度を比べると、本特別協定分を含む在日米軍駐留経費負担の全体額は約九十億円軽減されております。

 しかしながら、在日米軍駐留経費負担について、国民のさらなる理解と支持を確保し、日米安保体制の信頼性を向上させていくためには、一層の無駄を省き、節約に努め、負担軽減を図るべく米軍の認識を喚起し協力を求めていく、このことも重要です。さらに、駐留米軍一人一人にも規範ある行動を求めていくこともあわせて必要と考えます。

 この点に関して、政府に一層の努力を要請し、賛成討論といたします。(拍手)

平沢委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一でございます。

 日米地位協定第二十四条についての新たな特別措置協定に関し、民主党・無所属クラブを代表し、反対の立場から討論を行います。

 民主党の安全保障政策の基軸は日米同盟、日米安全保障条約にあります。二年前の改定では、防衛施設庁の官製談合が在日米軍施設でも行われていた疑いがあること、沖縄海兵隊のグアム移転に係る巨額の費用負担を政府から国会に何ら報告がないまま日米当局で議論が進んでいること、米軍再編協議の中で在日米軍の位置づけが変質してきたことなどの問題点を指摘しました。そのような問題を指摘しつつも、米軍再編協議の中で現行枠組みを維持する暫定的な措置であることから、今後の米軍再編協議の動向や基地移転経費などのあり方、米軍のさらなる節減努力について厳しく検証していくことを条件に賛成した経緯があります。

 しかし、この二年間で、民主党が前回指摘した問題点について、政府から十分な検証があったとは到底言えません。本特別協定に定める労務費、光熱水費、訓練移転費の日本の納税者に通用するだけの説明責任を、日米合同委員会で政府は求めたと言えません。我が国の防衛、アジア太平洋地域の平和と安定のために日米同盟の重要性を認めた上でも、我が国の負担割合が約七五%なのに対し、ドイツは三三%、韓国は四〇%であり、日本は突出しています。指摘が相次ぐ娯楽施設及びその従業員の職位等は、諸機関労務協約を変えなければ日本側からは正せない枠組みも放置されたままであります。

 また民主党は、在日米軍再編の経費総額、再編交付金の交付に際し自治体の受け入れ表明を条件とすることの問題、在沖米海兵隊のグアム移転費を日本の国民の税金で負担することなどについて政府に説明を求めましたが、十分な説明がないまま、米軍再編特措法を政府は強引に成立させました。

 さらに、グアム移転経費のうち、基地内インフラ整備が基地外にも及び、ゴルフ場などを建設するとの報道もあり、一戸当たり六十万ドルという多額な整備費など到底認めることはできません。このように、政府から辺野古移設経費の総額を含め米軍再編日米協議の詳細が開示されない中で、特別協定分の日本側負担が減額されなかったにもかかわらず、よしとする政府の説明を了解することはできません。

 そして、米軍ヘリ墜落事故、沖縄における米軍少女暴行事件など、相次ぐ事件、事故を契機とする第一次裁判管轄権の見直しなど、日米地位協定の改定が必要にもかかわらず、政府は運用改善に固執しています。日米同盟を結んでいる同盟国にもかかわらず、言うべきことを言えない姿勢が、地位協定同様、本協定をめぐるやりとりにも見られます。基地従業員に対する日本の法令遵守についても、地位協定の見直しが欠かせません。

 日米両国を取り巻く社会・経済財政情勢は大きく変化しています。また、在日米軍基地の役割は、日本の防衛という所期の目的から、地球の半分近くに及ぶ米軍の世界戦略を担うという目的へと、比重が大きく転換していると指摘されます。そうであれば、まず本協定を手始めに、分担すべき費用負担のあり方を見直すべきだと考えます。

 以上の諸点から、本協定には反対いたします。ただし、健全な日米同盟の維持のため、必要な経費負担のあり方について、明確な支出根拠に基づき行う原則を確立すべきであり、あわせて、政府は、日本人の基地従業員の雇用の安定確保並びに離職対策に資する措置についても十分配慮すべきです。

 また、政府は、国会や国民に情報を開示し、本協定に定める経費節減努力はもちろん、米軍再編に係る経費のあり方、刑事裁判権、環境条項の改善など、日米地位協定改定を早急に実現すべく、誠意ある対応を重ねて求め、私の反対討論といたします。(拍手)

平沢委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 私は、日本共産党を代表して、在日米軍駐留経費負担特別協定に反対の討論を行います。

 反対の理由の第一は、本協定が日米地位協定二十四条の原則に真っ向から反するものだからであります。

 そもそも地位協定二十四条は、米軍の維持経費は合衆国が負担すると規定しており、日本側に負担義務はありません。ところが政府は、一九七八年、思いやりと称して米軍駐留経費の一部負担を始め、一九八七年には、地位協定の解釈からも説明のつかない基地従業員の手当を負担するため、特別協定を締結したのであります。以来、暫定的、限定的、特例的と繰り返しながら、負担内容は、給与本体、光熱水料、訓練移転費へと拡大され、米軍人軍属の給与以外のほとんどが日本側負担になっています。これらの負担総額は、三十年間で五兆円を超えるに至っています。地位協定二十四条の原則を踏みにじる特別協定の継続は、断じて容認できません。

 反対理由の第二は、本協定を含む駐留経費負担を続ける理由は、当初の政府の説明からしても成り立たないからであります。

 昨年十一月、政府の財政制度等審議会でさえ、「日米両国を取り巻く社会・経済財政情勢は大きく変わってきており、従来どおりの負担の継続は適当ではない。」と指摘しました。ところが、政府は、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用の確保を理由に、あくまで継続するとしています。しかも、沖縄少女暴行事件を初め、米兵による凶悪犯罪事件が頻発する中、米軍思いやり負担を続けることを国民は到底納得しません。

 さらに政府は、米軍再編経費の負担を開始し、米海兵隊グアム移転経費まで負担しようとしており、米軍経費負担の新たな膨張は必至であります。これらは、米戦略に基づく新たな拠点づくりであり、日米軍事同盟を地球的規模に拡大するためのもので、認められません。

 以上を述べて、反対討論とします。

平沢委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社会民主党・市民連合を代表して、在日米軍駐留経費負担特別協定について、反対の立場から討論いたします。

 反対討論の前に、駐留軍労働者問題について、我が党の見解を明らかにしておきたいと思います。

 間接雇用制度のもとにおける駐留軍労働者の法的雇用主は国であり、駐留軍労働者の雇用の確保、労働条件の維持向上を図ることは、法的雇用主たる国の責任であります。同時に、使用者たる米軍当局にも、我が国の労働関係法令遵守義務があることを強調しておきたいと思います。

 反対理由の第一は、この特別協定で負担する経費が、日米地位協定第二十四条の原則を超えた、際限のない我が国の経費負担になっていることであります。例えば、年間約二百五十三億円の光熱水費のうち、削減幅はわずか八億円程度にとどまっており、無駄遣いが多く、包括的見直しや節約努力規定も実効性ある担保がありません。

 二〇〇八年度予算に占める在日米軍関係経費の日本側負担は総額で約六千百七十億円に上り、このうち千四百三十八億円が特別協定による負担となっております。国民の血税を使って米軍に対する思いやりの巨額な財政支出を続ける必要など全くありません。

 反対理由の第二は、米軍再編による日米同盟の加速度的な強化で、米軍と自衛隊の一体化、融合化が進み、再編関係経費が約三兆円と予測される中、訓練移転費や施設提供整備費などの巨額な経費負担が続けられていることです。約三十年間に米軍の家族住宅一万一千二百九十五戸を五千四百五十九億円の予算を支出して建設していることなども判明し、日米地位協定上の義務を超えた思いやりが余りにも大き過ぎます。

 財政事情が厳しき折、必要なのは米軍への思いやりではなく、医療、教育、雇用、福祉など国民への思いやりであることを表明し、反対討論を終わります。

平沢委員長 これにて本件に対する討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

平沢委員長 これより採決に入ります。

 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

平沢委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

平沢委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時二十八分散会


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