衆議院

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第16号 平成20年5月23日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十年五月二十三日(金曜日)

    午前十時十五分開議

 出席委員

   委員長 平沢 勝栄君

   理事 河野 太郎君 理事 高木  毅君

   理事 三ッ矢憲生君 理事 三原 朝彦君

   理事 山中あき子君 理事 近藤 昭一君

   理事 武正 公一君 理事 谷口 和史君

      愛知 和男君    伊藤信太郎君

      猪口 邦子君    宇野  治君

      小野 次郎君    木村 隆秀君

      塩崎 恭久君    鈴木 馨祐君

      とかしきなおみ君    中山 泰秀君

      山内 康一君    篠原  孝君

      野田 佳彦君    鉢呂 吉雄君

      松原  仁君    上田  勇君

      赤嶺 政賢君    笠井  亮君

      照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         高村 正彦君

   法務副大臣        河井 克行君

   外務副大臣        小野寺五典君

   外務大臣政務官      宇野  治君

   外務大臣政務官      中山 泰秀君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 井上 美昭君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 五十嵐邦雄君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 田部 秀樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 秋元 義孝君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 水上 正史君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 小田 克起君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 石川 和秀君

   政府参考人

   (外務省大臣官房広報文化交流部長)        山本 忠通君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   中根  猛君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    西宮 伸一君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  徳地 秀士君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  地引 良幸君

   外務委員会専門員     清野 裕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十三日

 辞任         補欠選任

  山口 泰明君     とかしきなおみ君

  笠井  亮君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  とかしきなおみ君   山口 泰明君

  赤嶺 政賢君     笠井  亮君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

平沢委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官秋元義孝君、大臣官房審議官水上正史君、大臣官房審議官小田克起君、大臣官房参事官石川和秀君、大臣官房広報文化交流部長山本忠通君、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長中根猛君、北米局長西宮伸一君、警察庁長官官房審議官井上美昭君、長官官房審議官五十嵐邦雄君、総務省大臣官房審議官田部秀樹君、防衛省運用企画局長徳地秀士君、地方協力局長地引良幸君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平沢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。篠原孝君。

篠原委員 おはようございます。

 おとといに引き続きまして質問させていただきたいと思います。おととい、外務大臣の方から御答弁がありまして、ではその続きは次にということを申し上げましたので、約束どおり、続けさせていただきたいと思います。

 資料を例によってお配りしてあります。一ページの資料を見ていただきたいんですが、私はこれは非常にいいことだと思っております。日本の国際緊急援助隊、十二日に大地震が発生しまして、なかなか来てくれという通知が届かず、三日後の十五日になりましたけれども、行って、生存者を救い出すことはできなかったようですけれども、日本の援助隊の活躍ぶりがあちこちで絶賛されている。

 日本の新聞に載った記事だけちょっと切り抜いてまいりました。一番のところには読売新聞があります。ここで、ネットは何か日本批判の温床になっているそうですけれども、「「ありがとう、日本」「感動した」「かっこいいぞ」」というので、全然違ったということですね。一番困ったときに助けていただく人が本当の友人だとかいうふうによく言われますけれども、そのとおりじゃないかと思います。

 下から二段目の、新華社通信系の中国紙の国際何とか報、これは何と読むのですか、「第二面を日本の救援隊の同行ルポで埋めた。見出しは「見捨てない、あきらめない!」。昼夜を問わず救援活動にあたる勤勉な姿や最新の装備、被災者の感謝の言葉などを紹介し、「救援活動を通じて両国の国民感情に変化が生まれている」とまで書いた。」と。

 それから、何かと敵対的というんですか対日強硬姿勢が目立つという副報道局長、「日本の行動は中国に対する友好の感情を表したもの。」と言って、心から感謝しているということを言っておられます。

 私は、これは非常にいいことではないかと思います。やはり、日本の得意分野というのはあるんですね。世界からこういう役割が期待されているんじゃないかと思います。

 僕は、国際緊急援助が今までどんなふうに行われているかというのを説明いただきました。ここの室長さんにおいでいただきましたけれども、今まで外務省の皆さんから説明を受けた中でベストでした。簡潔明瞭そして親切、いいことをやっている人たちは押しなべてこういうふうになるんだろうと思います。心が晴れ晴れするようなことだらけですね。

 やはり、こういう緊急援助のプロとして、日本がいろいろなところで信用をかち得ていくのは非常にいいことじゃないかと思います。それで、国際緊急援助派遣法という立派な法律がある、PKO法もある、私は、日本の役割はこういうこととして、これを拡充して、今の体制を拡充していくのがベストだと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

高村国務大臣 このたびの、国際緊急援助隊が中国で評価されて、そしてその評価したことをまた日本の国民が評価するという、それなりにいい循環が生まれたということ、これは大変すばらしいことだと思いますし、国際緊急援助隊のようなものをさらに強化するということは私は大変結構なことだと思っております。まさにこれは得意分野でありますし、あるいは貧困の撲滅というようなことをODA等を通じてやるということも得意分野だと思っております。

 ただ、ここは不得意分野だから一切やらなくていいということが国際的に通用するかどうかという話もある。それなりのバランスも必要だ、こういうふうに思っております。

篠原委員 先の方に触れて、挑発をしていただいておりますけれども。

 聞きましたら、かわいそうというか、予算がそれほどついていないというので、なかなか……。

 非常に私はうまくいっているんじゃないかと思うんです。派遣する人のリストがあって、訓練を受けて、それで登録されていて、今度のような地震があったら行ってくれる人いますかというので準備しておいて、そしてその人たちからピックアップしていく。私の地元の長野からも国立長野病院の看護婦さんが医療チームとして行っていられるというんですね。混成部隊ですけれども、そこは、日本人はチームワークがすぐでき上がりますから、一緒に訓練されていますし、ちゃんとできるんですね。

 それで、私は、こういうような派遣リストというのがどのぐらいあるのかなと思ったら、研修したりする予算が足りないからなかなかふえていかない。私は、こういうのは余裕があるときに、ODAの予算でできるんだろうと思いますし、どんどんリストを多くつくっておく、それでこういう問題意識を高めておく、そういう意識を、自分は研修を受けていつでも行けるんだ、行くんだ、こういう人たちの輪をいっぱい広げておいた方が非常にいいような気がするんです。思い切ってこういう予算をふやしていただきたいと私は思います。

 この点について、ODAをうんとふやすんだという決意を述べておられますし、多分そうしていただくんだろうと思いますけれども、こちらは最重点項目のような気がするんですけれども、そのようにしていただけるでしょうか。

小田政府参考人 御説明いたします。

 今御指摘がございました医療チームにつきましては、国際協力機構、JICAで派遣者リストの登録制をとっておりまして、現時点では約七百八十人の医療関係者に登録をいただいております。

 これまで登録者の問題で活動に制約があったということはございませんけれども、国際緊急援助隊の活動をより効果的なものにしていくために今後とも引き続き努力していきたい、こんなふうに考えております。

篠原委員 私は、ここのところに非常にいい仕組みがあるというのを知りませんでした。

 これは後々、また次に、今国会中にODAのことを集中的に議論させていただきたいと思いますけれども、いろいろな分野に当てはまるんですね。これは一週間か二週間ですから、ぱっと行ける。しかし、例えば私が携わってまいりました農業技術援助なんかになりますと、農業改良普及員の皆さんが一番ぴったりなんです。ですが、県の職員なんです。穴をあけて行く、意欲的な人たちが幾らいても、県で定員削減が行われている中で穴をあけて行くというと、なかなかそれは難しいです。これを、このようなプール制でプールしておいて引っ張り上げている部分を、例えば二百人だか三百人をODAの予算で見ておいて、いつでも循環して行けるような仕組みにしたらいいんじゃないかと私は思いますけれども、きょうはその議論はしている時間がありませんので、先に進めさせていただきます。

 それで次、核心部分に迫るわけですけれども、次のページの自衛隊の海外派遣あるいは憲法改正、これに関連する世論調査結果を見てください。外務省から資料を取り寄せて御質問しようと思いましたけれども、面倒なので自分でつくってまいりました。

 まず、内閣府の調査ですけれども、よく見ていただきたいんです。これは日本国内のものですけれども、海外派遣について、「災害派遣」が七五・三%。それで、「国際平和協力活動への取組」というのは四一・八%。「今後力を入れていく」というのは、「国際平和協力活動への取組」、これは順序が逆転しているんですね。そして、「国際平和協力活動の今後の取組」については、残念ながらというか、「現状を維持するべき」だ。国内がこれだけ困っているのにというのがあるんだろうと思います。「これまで以上に積極的に取組むべき」だというのは三一%しかありません。現状のままでいいという人が五三%。これはちょっとよくないなという気がします。しかし、次、「外国の災害等に対する救援活動の賛否」。当然だろうと思いますけれども、九〇%の人が賛成だ。私は反対している人の気が知れないんですけれども、反対というのはわずか。

 次、今度は自衛隊の海外派遣ですね。「憲法九条改正」、ここは触れません。しかし、「変えないほうがいい」というのが六六%、これは余り出すべきじゃないという人たちだろうと思います。それで、これからの自衛隊の活動、「海外で活動は一切認めず」というがりがりの人たちが一五%。それから、「必要なら武力行使も認める」という人が一七%。そして、真ん中です、日本人はやはり賢いと思います、「武力行使をしなければ認める」と。これは朝日新聞の世論調査です。

 ところが、読売新聞になると、世論調査というのも、質問の仕方で違ってくるんですね。篠原孝さんはいい人ですかと聞いたら、ほとんどの人はいい人ですと言うんじゃないかと思うんです。ところが、いい人ですか、悪い人ですか、どっちでしょうかと聞いたら、悪い人だと答える人もふえてしまう。世論調査の質問の仕方で違ってくるんです。読売新聞はトリッキーで、恒久法制定の必要性いかんといったら、「そう思う」というのが四六%なんです。

 ところが、どういう恒久法かというと、朝日新聞のとがっちゃんこすると、武力を行使しない恒久法だったらまあいいかと。これは、積極的に送るというんじゃなくて、変なことをしないように、なるべく抑えるように恒久法をつくって、抑えるための恒久法という意識なんかがあるんだろうと私は思います。読売新聞は、社説でこういうのを、行け行けどんどんの方ですから、多分こういう意図的な世論調査をしているような気がします。

 それで、この世論調査結果を見たら、大臣は先ほど、不得意分野だからといって全然やらないというのはと、それはそのとおりだ。しかし、日本国民の世論あるいは国際世論、中国とかそちらの国、そんなに警戒していないというのもありましたけれども、やはり、我が国の世論は海外派遣の恒久法ということをまだ望んでいないんじゃないか。私は、それに従って政治をやっていった方がいいような気がします。

 最近の政治の状況を見ていますと、国民が望んだりとかいうんじゃなくて、それは大衆迎合的にならないように我々が考えてリードしていかなくちゃいけませんけれども、簡単に言うと、おせっかい政策がまかり通っている。憲法改正なんて言う人がいないのに、憲法改正とか言う、教育基本法もそうだ。みんな言われてやるばかりが能じゃないですけれども、余り先走って行くべきではない。こういった大事なことはやはり世論のコンセンサスを得てからじゃないといけないような気がいたします。

 ですから、私は、自衛隊の海外派遣の恒久法化という選択は今はなくて、むしろ、するんだったら、国際緊急援助隊派遣法の拡充強化ということの方が優先すべきなような気がするんですが、いかがでしょうか。

高村国務大臣 民意をどうとらえるか、それは両方あると思うんですね。民主主義ですから、民意は大切にしなければいけない。では、すべて民意に従うべきか、そうではない。いわゆるバランスの話だと思うんです。どっちかだけ強調すると、国民がみんな鬼畜米兵討つべしと言えば戦争を始めるのか、こういう話にもなってきて、そういうときに、そうではないよととめるステーツマンがいるというのも必要なことだ、こういうふうに思います。

 例えば、朝日新聞の「武力行使をしなければ認める」、これは六四%ですか、私は、極めてこの民意は常識的なものだ、こういうふうに思います。例えばインド洋の補給活動、これは武力行使など一切いたしません。こういうものはやはり認める方向、まあ、一部の方たちがあたかも武力行使と連動するかのごとく扇動したから、だまされた方たちも、そういうふうに誤解した国民もおられたかもしれませんが、まさに、武力行使をしなければ認める、極めて穏健な民意だ、私はそう思っています。

篠原委員 そういうバランスのとれた態度をずっととり続けていただきたいと思います。

 次に、安全保障問題をいろいろ考えるのは非常にいいことだと私は思います。こういう危機管理も安全保障です。それから、通常兵器をどうするかというようなのも大事なことだと思います。

 次の三ページを見ていただきたいんですが、これは一度使った表なんですが、もうちょっとわかりやすくいたしました。これはきちんと見ていただきたいと思います。またこれは何かエデュケーショナルなペーパーになってしまっているんですけれども。

 今、日本は、軍事安全保障や食料安全保障、ほかに、次のページもちょっと見ながら聞いていただきたいんですが、エネルギーの安全保障もあります。安全保障は、総合安全保障で、トータルで考えていきましょうという考え方がありました。総合安全保障、すべてパラレルに、全体で、国がやっていくのにどこか欠けたりしたらがたがたになるというんですね。そういう意味で、ちょっと比較してみました。

 軍事的な安全保障と食料安全保障。日本国民は、真ん中の「自衛」というところ、軍事安全保障でいいますと、「自国は自国民、自国の軍隊で守る」という非常に平均的な考え方。今の世論調査にあらわれていますように、海外へは派遣しない。上の「外国進出」は、「イラクへの派遣」等はありますけれども、非常に抑えて、いろいろ国際関係、アメリカとの友好関係もあるからしようがないから派遣する、しかし武力は行使しない、そこは日本は違うんだということを守るということですね。これは食料に合わせると、「なるべく国内で自給」なんです。

 軍事の方を見ていっていただきたい。一番下、非武装中立論というのがありました。野坂昭如さん、いまだもって健筆を振るっておられます。「火垂るの墓」で自分の妹さんが飢え死にされた経験から、食料の自給というのに非常にこだわっておられます。非武装中立です。石橋さんもそうでした。しかし、これは日本では、余りよくないんじゃないか。日本というより世界じゅう、これは余りにも常識外れだ、やはりこれはよくない。

 ところが、この右側を見ていただきたいんですが、食料安全保障については、自由貿易のもと、米なんか日本でそんなにつくらなくたっていいんだ、外国から自由化していいんだ、こういうことを平気で言うタカ派もおられるんです。我が党にもそういうゆがんだタカ派がいましたので、私は一喝してやりました、論理が全く一貫していないと。しかし、日本にはよくこの手がいるんですね。全然論理的に考えられないんです。

 一番上を見ていただきたいんですが、非論理的なことを言っているようですけれども、中川昭一さんと麻生太郎さんは論理の点では多少合っているんです。まあ、ちょっと例は悪いんですけれども、お話しいたしますと、防衛族兼農林族というのは結構おるんですね。古くは中川一郎、渡辺美智雄。今でいえば石破茂、赤城徳彦、中川昭一。赤城徳彦、中川昭一は、おじいちゃん、お父さんの義理でやっているような気がしますけれども、まあ自分の信条でやっているのかどうかは知りません。しかし、政治家たるものは何かというのを考えたら、国民の生命、安全を守る、食わせることが政治家の仕事だ。生命を守るのが、日本国を守るのが政治家の仕事だ、こういう気概に燃えて政治家になっていったら、この二つをセットでやるという選択というのは自然に成立してくるんじゃないかと私は思います。

 ところが、どうも今は右側の方が軽視されてしまっているような気がするんですけれども、高村外務大臣は、この点についてはどういう価値観をお持ちでしょうか。

高村国務大臣 やはり、一番大切なことは国民の命を守るということだと思っています。ですから、軍事的、軍事というのは日本で今使わないのかどうか知りませんが、防衛的安全保障というのは大切だと思っています。また、食料の安全保障も大切だと思っています。

 ただ、どちらも、一国だけで全部賄うというのは今の国際情勢の中で非現実的だと思っております。バランスよく考える。そして、政治の一番大切な、国民の命を守るということは、食料安全保障の面でも軍事的安全保障の面でも大切なことだ、こういうふうに思っています。

篠原委員 私はそのとおりだと思います。「全て自力で」というのは、安全保障でいえば、核兵器を持つとは言っていませんが、「持つ議論をすべし」とかいうふうになるわけですね。それでいえば、右側は「完全自給」。これは両方極端だろうと思います。

 しかし、ぜひ考えていただきたいのは、食料については右隅のことを平気で言う人がいるということ、これは左側と比べたら空理空論だということを、今の食料価格が高騰したりしているというのでわかっていただけるんじゃないかと私は思います。

 その点でいうと、ちょっと気になった記事があったわけですけれども、毎日新聞で、開発相会議で、ドイツ、フランスが食料価格の高騰を問題にしているのに、日本の総括文書には食料の文字はなかったとかいうふうに書いてあるんですね。やはりこれはちょっとよくない。

 ドイツとかフランスとかいうのは、資料の次のページを見ていただくと、「先進国の総合安全保障比較」というのを見ていただきたいんですが、1、2というのは、自国で、自立、自力でやる政策の度合いを1にしてあります。ですから、軍事、高村大臣の言葉からは軍事というのは穏やかじゃないので、今度からは防衛にしておきます。防衛で、フランスは、NATOの軍事機構には加盟しないんですね、米軍は絶対駐留させない、自分だけでやると。イギリスとドイツはNATOに加盟しています。日本も安保条約がある。核保有についてはこういった感じです。食料のところへいきますと、食料は、みんな自給率を上げてきているんですね、ほかの国は。それを日本だけが下げて、これは四〇になっていますが、もう四〇じゃなくて今は三九%になっちゃっているんですね。これは二〇〇二年の数字でやっていますけれども。

 これを見ていただくとわかるんです。それぞれパラレルに考えているということなんです。ですからドイツもフランスも食料自給というのを非常に気にする。自分のところは大丈夫なわけですけれども、発展途上国で食料価格が高騰して困っているといったら、それはちゃんとしなくちゃというので、EUは、日本でいう減反、アメリカでもヨーロッパでもやっているんですが、セットアサイドをもうやめて、食料増産態勢に入っている、金をかけてもいいんだと。EUの予算の半分が農業に使われているという状況です。

 そういった中で、日本はちょっと対応が遅いような気がしますけれども、この開発相会議のやりとり、どうだったんでしょうか。

小野寺副大臣 四月五、六日に開催されましたG8開発大臣会合では、食料価格高騰の問題の重要性について議論が行われました。この問題は、開発全般、中でもアフリカに対して深刻な影響を及ぼす問題として国際社会が真剣に取り組むべき問題であることについて見解が一致をいたしました。

 食料価格高騰問題というのは、国際社会として緊急に取り組まなければならない重要な課題であり、我が国としては、四月下旬に、今後三カ月で約一億ドルの食糧援助を実施することを表明し、その具体的実施の第一段として、本日の閣議で、アフリカを中心に、合計五十五億七千万円の食糧援助実施を決定いたしました。

 我が国としましては、国際社会の各種取り組みを踏まえつつ、北海道洞爺湖サミットで力強いメッセージを発出できるよう各国と協議をしていく考えでございます。

篠原委員 ちょうどいい時期を迎えていると思います。福田総理大臣も、六月上旬にローマで開かれる食料サミットに行かれる、そのついでに洞爺湖サミットの根回しもしてこられる。私は、これは日本の農業政策なり食料政策を転換する絶好機だと思います。

 それはどういうことかというと、日本は、明けても暮れても、ウルグアイ・ラウンドとかいろいろなのがありましたけれども、今でもそうですけれども、フードセキュリティーということを言ってきているわけです。なかなか国際的に認知されない。日本は口を開けば食料安全保障のことしか言わない。しかし、今そうなってきているわけですね。

 ですから、日本だけが主張していたんじゃだめなんです。今小野寺副大臣がお答えになったとおりで、姿勢を保つべきだ。日本は、自分の国のことも考える、しかし、アフリカ、発展途上国のことも考える。そうすると、それをやってやって、食料安全保障が大事なんですよということをやっておけば、彼らは、日本が食料安全保障を主張したときに、日本の立場はよくわかる、食料自給率三九%なんてのは我々の国よりも低いじゃないか、それで一体大丈夫なのかということを考えてくれるんじゃないかと思う。

 ですから、TICADも開かれます。その場でもぜひこの姿勢を堅持して、彼らの要望を聞き、日本が、稲作を中心とする農業技術、大変すぐれたものがあるわけです。こういうものを、西アフリカなんかは米を食べる習慣があるわけです。それで、需要の方が多くなって、自給できないでいるわけですね。だから、こういった状況を直すことに全力を挙げていただきたいと思います。

 それで、先ほどの方に戻ります。

 安全保障全般について日本国民の賢明な選択というのがあるんですが、海外派遣というのについて非常に賢明な判断をしている、武力を行使しなければ出ていったっていいんだという。ところが、外務大臣はおっしゃいましたが、インド洋や何かも誤解されていると言っています。

 私は、日本国が主体的に判断し、外務大臣が判断し、防衛大臣もそうだと言い、総理大臣も言い、国民ももういいと言うんだったら、派遣したっていいと思います。そうやって国際責任を果たしていくべきだと思います。

 しかし、今現状を見ますと、自衛隊の海外派遣がどういうふうに使われているか。本当に日本が考えてというんじゃなくて、むしろ、アメリカに気兼ねして、アメリカに配慮して、アメリカの御機嫌を損ねないための派遣、外交の手段として海外への自衛隊の派遣が使われている面があり過ぎるんじゃないかと思います。日本の外交上主体的に判断しているんだと言われますけれども、どうもそうじゃない気がするんですけれども、この点についてはいかがでしょうか。

小野寺副大臣 我が国は、適切な防衛力の整備に努め、日米安保体制を堅持して、国際環境の安定を確保するための努力を行うことを安全保障政策の基本としております。

 このような考え方に立ちまして、外務省は、我が国を取り巻く国際環境の安定のために、二国間関係の推進や、多国間の協力、経済協力、文化、人物交流等、総合的な外交努力を行っております。また、その一環として、防衛省と緊密に連携協力をしておりまして、軍事力、軍事面を外交手段として使う傾向が強過ぎるという御指摘は当たらないと思っております。

篠原委員 そういうふうにしてください。

 では、典型的な例はクラスター爆弾です。唯一の被爆国として、クラスター爆弾なんかも、私は、日本は、どこの国よりも声を大にして即刻禁止すべきだと言っていくべきだと思いますけれども、オスロ・プロセスに参加しながら、何か腰が定まらない態度をとっている。これは、どこかの国に気兼ねしているからじゃないんですか。こういうのが出過ぎていると僕は思うんですけれども。

 では、この点についてはいかがでしょうか。

小野寺副大臣 クラスター爆弾につきましては、この委員会でも何度か議論として取り上げられました。日本の防衛力、安全保障面でのことと人道面での問題、このバランスを考えて、外務省としましてはこの条約についても対応していきたい、そう思っております。

篠原委員 非戦闘員に危害が及んで、手足を失った人、命を失った人、特に子供たちですが、そういう人がいるわけですから、これはもう絶対にこういうのには、やはり日本のポジションというのはあるんですね。食料自給率が低い、だからこのことを訴えて、わかってほしいと言って、そこの国が困っていたら助ける。クラスター爆弾も同じですよ、これは絶対日本の主体的な立場を堅持していっていただきたいと思います。

 そういう点では、日本はどういう道を行くかというと、やはり中道を行くべきだと思います。真ん中を行く。それでだんだん信用もされるようになってきているわけですよ。ですから、余り大国意識は持たずに、私は昔、石橋湛山さんの小日本主義というのにほれぼれして、「農的小日本主義の勧め」という本を書きました。小というのはちょっとしみったれていてよくないかもしれません。ですから、そういう点では、ミドルパワー、中進国、その役割でもって、特徴ある役割を国際社会でも果たしていくということが私は必要なんじゃないかと思います。

 日本の外交方針として、緊急援助とか農業技術援助とかですね、それで武器、弾薬、核兵器については絶対ノーと言う、こういった姿勢を鮮明にして外交をしていくべきだと思いますが、この点について外務大臣の所感をお聞きして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

高村国務大臣 中道を行くべきだ、中庸を行くべきだという篠原委員の指摘には、極めて、私はそのように考えておりますので、そういう外交をやっているつもりであります。

 民主党の委員の方たちからいろいろ質問をされ、篠原委員からも質問され、近藤委員からも質問され、松原委員からも質問され、足して三で割ると非常に中庸になるんじゃないかな、こういう印象を持ちながら聞いております。

篠原委員 非常に中庸な答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 これで質問を終わらせていただきます。

平沢委員長 次に、松原仁君。

松原委員 拉致の問題をまず質問いたします。

 十九日、日米韓代表者協議が行われました。本当は齋木局長に来ていただきたかったわけでありますが、このときの会議の中身について、概要をお伺いしたいと思います。大臣からでも結構であります。

高村国務大臣 二十一日まで齋木アジア大洋州局長がワシントンに出張し、六者会合の進め方について米国及び韓国の首席代表と個別に意見交換を行うとともに、日米韓三カ国首席代表会議に出席をしたところであります。

 これらの意見のやりとりにおきましては、これまでの米朝間のやりとり、また、北朝鮮が米国に提示した一万八千ページに及ぶ資料の概要につき米国から詳細に説明を受けた上で、申告に含まれるべき要素について突っ込んだ議論を行いました。さらに、寧辺にある三つの核施設の無能力化作業や、北朝鮮に対する経済、エネルギー協力についても議論を行いました。その上で、北朝鮮が早期に申告を議長国中国に提出し、六者会合プロセスを前に進めることができるよう、引き続き日米韓で緊密に連携していくことを確認しました。

 また、拉致問題を含む日朝関係を前進させる重要性についても確認されたわけであります。

 米国は、拉致問題に関する我が国の立場をよく理解しており、これまでもあらゆる機会をとらえ、北朝鮮に対して拉致問題の解決に向けた具体的行動を働きかけるなど、協力してきていますが、今後とも協力していくとの立場が確認されました。また、韓国からも、我が国の立場に対する理解と支持が改めて表明されました。

 今回、米韓の首席代表と意見交換を行ったことは大変有意義であり、今後とも、両国と積極的に協力しつつ、非核化と拉致問題を含む日朝関係がともに前進するよう、北朝鮮に対し粘り強く働きかけていく考えでございます。

松原委員 この中で、実は細かくこの議論を進めていかなければいけないんですが、稼働記録の検証見込み、一万八千ページ以上、これは、どれぐらいの時間で、どういう形で進められるのか、お伺いしたい。

小野寺副大臣 北朝鮮が米国に提出しました、寧辺の五メガワット実験炉及び再処理工場の運転記録等に関する資料につきましては、十九日に行われました日米韓三カ国会合におきまして、その概要につき米国より説明を受けました。

 政府としましては、北朝鮮が早期に申告を議長国中国に提出することを期待しており、その内容の検証のあり方につきましては今後六者会合の場で議論されることと考えております。

松原委員 今回のこの議論で、北から出ている申告資料というのは、この寧辺の一万八千ページ以外のものはあるんですか。

石川政府参考人 お答えいたします。

 今回の提出された資料は、この一万八千ページに及ぶものですけれども、寧辺の五メガワット実験炉及び再処理工場の運転記録ということでございます。

松原委員 寧辺以外のものは一切ないわけですね。

石川政府参考人 今回の提出資料にはございません。

松原委員 さて、この寧辺の記録で何がわかるというふうに外務省では判断をしていますか。

小野寺副大臣 この寧辺の実験炉及び再処理工場の運転記録等に関する資料の概要につき米国より説明を受けましたが、その内容については、米国との関係もあり、明らかにすることは差し控えさせていただきたいと思っております。

松原委員 明らかにしなければいけないと思うんですが、特に一番日本がこの北朝鮮の核によって直接的なターゲットになっている。アメリカにはまだ届かないわけですから。それは日本側にはきちっと説明を、国民に対してもするべきだと私は思います。

 この寧辺の一万八千ページのものが、どれぐらい時間がかかるかはわかりませんが、そこから出てくるのはプルトニウム抽出の記録だろうと思うんですよ。プルトニウム抽出の記録がどうなるかということが出てくるわけですが、ほかに何かそこから、資料から出てくるものがあると予想されるかどうかだけお伺いしたい。役人の方で結構ですよ。

石川政府参考人 今回のその一万八千ページの資料というのは、寧辺の再処理工場、五メガワット実験炉の運転記録ということでございますので、その施設の過去の運転記録についての分析に関する資料でありまして、それに対して分析がなされるということでございます。

松原委員 つまり、プルトニウムの抽出がわかるんですよ。

 では、寧辺のこの今回の申告の記録から、どれだけの抽出されたプルトニウムが原子爆弾に使われたかというのはわかりますか。

石川政府参考人 今それをまさに分析しているというところだと思います。

松原委員 その記録の分析からどれぐらいの原子爆弾がつくられたかというのは、分析をしているということですが、わからないでしょう。このペーパーからわかるのは、抽出のプルトニウムの量だけじゃないんですか。もう一回重ねて聞きます。

石川政府参考人 その点も含めまして、今後の分析の結果を待ちたいと思っております。

松原委員 それしかわからないと私は思うんですよ。

 さて、これを核計画の申告とみなすかどうか。日本政府は、今回の寧辺の一万八千ページのもので核計画の完全申告とみなすんですか。お伺いしたい。

小野寺副大臣 今回出されました、この再処理工場、実験炉等の運転記録に関する資料ですが、これは、北朝鮮が提出する申告を分析、検討していく際の参考資料とでもいうべきものでありまして、申告そのものとは異なるものと思っております。

 政府としましては、北朝鮮が提出する申告について、しっかりと分析、検討していくことが重要と考えておりますが、まずは北朝鮮が早期に申告を議長国中国に提出するよう、引き続き関係国と緊密に連携していく考えであります。

松原委員 重要な発言ですから確認をします。

 これは核計画の申告の一部であり、これですべてとはみなしていないということでよろしいですね。

小野寺副大臣 今回の資料は、あくまでも参考資料とでもいうべきものであり、申告そのものとは異なるものと受けとめております。

松原委員 それでは、三カ国で議論した中で、核計画の完全な申告というのはどういうレベルのものだというふうに認識をしているのか、お伺いをしたい。

石川政府参考人 お答えいたします。

 いずれにいたしましても、核計画の全容が解明されるようなものというふうに考えております。

松原委員 今回の寧辺の一万八千ページは、全容は確認できるものではないという認識でありますけれども、よろしいですね。

石川政府参考人 今回のその一万八千ページは、寧辺の核施設の稼働記録でございますけれども、その分析を含めて今後検討していくということになると思います。

松原委員 今の答弁で、もう一回確認しますが、今回の一万八千ページをもって、これは申告とみなし、例えば北朝鮮テロ支援国家指定解除するというふうなことは、基本的にはこれはアメリカの国内法の部分もありますが、そういったことも含めて、認識は、日本はそうは思っていないと。小野寺副大臣の話も、参考資料である、こういう話でありましたから、これで北朝鮮はすべての自分の義務が終わったとみなすのは違うぞというふうに日本政府は思っているということでよろしいですね、小野寺さん。

小野寺副大臣 そのとおりであります。

 十九日に行われました日米韓三カ国会合においては、これまで米朝間のやりとり及び北朝鮮が米国に提示した資料の概要につき米国側より説明を受けた上で、申告に含まれるべき要素につき突っ込んだ議論を行いました。ですから、この申告がどのようになされるかというのは、このような要素が必要だということ、それはこの三カ国で共通の認識を持っているというふうに思っております。

松原委員 わかりました。私は、そこまで政府が認識を持っているならば、その認識を堅持していただきたい。

 つまり、今回のこの一万八千ページのものが明らかにするのは、恐らく寧辺におけるプルトニウムの抽出の記録であって、そのプルトニウムがどれぐらい原子爆弾に転用されたかということすら、私は憶測でしかわからないと思う。

 アメリカの、例えばボルトンさんあたりは、ウラン濃縮は間違いなくやっていると。アメリカの別の会議でもそのことははっきりと文書になっている。そういったウラン濃縮は北朝鮮は否定をしておりますが、このことに関しては北朝鮮は否定をしているから当然この申告には出てこないのでありますが、大事なことは、拉致問題でも、北朝鮮は拉致をやっていないと言い続けてきて、拉致を認めたということがありますから、北朝鮮はうそをつくことがあり得るという前提でいくならば、ウラン濃縮がないということも、これも本当かどうかは北朝鮮の申告だけによって我々は確信することはできないということになろうと思いますが、このウラン濃縮についての認識はいかがですか。

石川政府参考人 御指摘の点も含めまして、核計画の全体像がわかるような申告がなされるべきというふうに考えております。

松原委員 重要な核の技術拡散の問題、米側ではシリアにそれが移転されたのではないかという議論で、そういった議論も含めていろいろな議論がなされているようであります。こういったことを含め、日本も、当然それは全体を見ての判断だということでよろしいんですね。くどいようでありますが。

石川政府参考人 これまでの合意のとおり、完全かつ正確な申告、これによって北朝鮮の核計画の全体像がわかることが必要であるというふうに考えております。

松原委員 大臣、認識として、今回の寧辺の一万八千ページは、小野寺副大臣が言うように、参考資料のレベルのものであると。少なくとも、今言った他の要素も含め、ウランの問題、実際原子爆弾にどれだけそれが使われたかということも明らかにならないと私は思うけれども、そういったことも含め、そのごく一部の申告であるという認識で大臣もおられるんですね。確認します。

高村国務大臣 核兵器計画の全貌が示されることが必要だ、そういうふうに考えております。

松原委員 以前、私は、米国でクリストファー・ヒル氏と議論したことも含め、原子爆弾製造工場の場所すらヒルさん自身が聞いていないということをこの委員会で明らかにいたしましたが、当然、その要素の一つとして、こういった場所の特定も必要だという認識をお持ちかどうか、確認をします。

高村国務大臣 日本政府なりアメリカ政府が、何を知っていて何を知らないかということを明らかにするというのは、決して得策でない、こういうふうに思っているんですよ。

 北朝鮮がこれから申告をしてくる、それを検証する、その申告の中自体に矛盾があるか矛盾がないかということも当然調べますが、我々が実は知っていることと矛盾するかしないかというのも検証の重要な要素の一つ。

 我々はこれは知っていてこれは知らないというふうなことがすべてわかると、我々というか、特にアメリカが多いのかと思いますけれども、そういうことがわかると、そこを避けた一つの体系をつくって出してくるというおそれだって全然ないとは言えないわけで、何を知っていて何を知らないか、そういうことについては申し上げることを差し控えたいと思います。

松原委員 私の質問の趣旨は違います。何を知っていて何を知っていないかを確認しているのではなくて、原子爆弾製造工場の場所等を明らかに政府部内で知っていることが、それは、最低限そのことを、原子爆弾製造工場の位置も特定できないような状況で、合意というか、北朝鮮の申告を完全だというふうに思うことは日本政府は当然あり得ないでしょうねと。知ったことを言うかどうかは別です。知らない限りはあり得ないだろうなということを言っているんです。そのことをお答えいただきたい。

高村国務大臣 要するに、全体的に、核兵器計画の全貌が明らかになることが必要だ、こういうことを申し上げているわけであります。

 それ以上のことは差し控えたいと思います。

松原委員 全貌の中にはこれも入るということですよ。そういうことですよね。いいですよ、それ以上。

 次に行きます。

 この中で、テロ支援国家指定解除の動きというのがマスコミでは随分と言われているけれども、外務省としてはこのことについてどう認識しているか。

高村国務大臣 アメリカはまだ決定をしていないというふうに承知をしております。そして、決定をする際には日本に当然相談をする、こういうふうにも承知をしております。

松原委員 アメリカの、個名はあえて差し控えますが、ある共和党の政策スタッフ、幹部であります、当然高村さんも個人的面識はあると思いますが、彼は、三〇%の可能性である、しかし、日本政府が、テロ支援国家指定をアメリカは解除するなと言うならば、三〇%は限りなく〇%になるとワシントンで語っていたわけであります。

 私が申し上げたいのは、日本政府は、米国の国内法だからこれについては語らないという議論もあるかもしれないけれども、アメリカの政府当局に入ったような方でありますが、そういった方々が、日本政府からの強いテロ支援国家指定解除反対の声が支援国家指定解除の可能性を極めて低くすると言っていて、我々と同じような物の尺度に立って拉致問題の解決が大事だと思っているアメリカの方々は、ぜひそれを日本政府に強く言ってくれというふうなことで、これは水面下で言っているという理解でよろしいのか、お伺いしたい。小野寺さんでもいいですよ。

小野寺副大臣 繰り返しになりますが、米国は拉致問題に関する我が国の立場をよく理解しております。これまでも、あらゆる機会をとらえまして北朝鮮の拉致問題の解決に向けた具体的行動を働きかけるなど、協力してきております。ライス国務長官も、拉致問題は米国の非常に高い優先事項であり、米国にとっても重要な課題である、問題である旨を確認しております。

 政府としては、拉致問題の解決に向けて、引き続き米国を初めとする関係国と緊密に連携していく考えであります。

松原委員 小泉内閣のときでしたっけ、拉致問題解決なくして国交正常化なしと。このことは堅持をするということでよろしいか、高村大臣。

高村国務大臣 拉致問題の解決なくして国交正常化なし、国交正常化なくして経済協力なし、その経済協力というのは過去の清算としての大型経済協力のことでありますが、そういうことを一番先に言った政府要人は私だと思っております。

松原委員 つまり、拉致問題の解決なくして国交正常化なしであり、そして拉致問題の解決なくして経済支援もなし、こういうことでよろしいんですか。もう一回確認します。

高村国務大臣 拉致問題の解決なくして国交正常化はありません。そして、過去の清算としての大型経済協力は、国交正常化後でなければできません。

松原委員 大型経済協力でないものは、拉致問題が解決しなくてもあるということにはなりませんね。確認。

高村国務大臣 例えば人道支援のようなものは、拉致問題の進展とか、その他いろいろな状況の中で、絶対にあり得ないということは言えないんだろうと思います。ただ、今の状況でするような状況ではないということは当然のことであります。

松原委員 拉致問題の解決なくしても人道支援はする、こういうことですか。

高村国務大臣 私が十年前に外務大臣のときに、拉致問題の解決なくして国交正常化なし、国交正常化なくして経済協力なし、こういうことを言いました。そして、私が外務大臣のときは人道支援もしませんでしたが、その後に人道支援をしたことはあります。一度じゃなくてある、こういうふうに承知をしております。

 ですから、今の状況において人道支援ということは私はあり得ないと思いますが、今政府が言っていることは、拉致の問題について何も進展がないのに支援はできませんよ、そういうようなことは言っている、こういうふうに思っております。

松原委員 確認します。拉致問題の進展なくしては人道支援もないという理解でいいんですね。

高村国務大臣 拉致問題が全く進展がないのに国民の理解は得られない、そういうように思っております。かつて人道支援をしたときに、一自民党議員であった私が反対した理由は、そういうことで反対をいたしました。

松原委員 ここは厳密にいかなければいけないと思うんです。

 今回、米国に行って脱北者の方々とお会いしたときに、彼らは、自分の身内が飢餓で苦しんでいるけれども、我々の会合のスピーチで、フロアの人間が、ことしの北朝鮮は極めて厳しいが、人道支援は必要なんですかと聞いたら、お願いしますとは言わなかったんです。なぜ言わなかったのか。それは語ると長くなりますから言いませんが、非常に複雑な思いがあるということなんです。安直であってはいけないということを申し上げたいわけであります。

 それで、もう一回確認しますが、公務員の訪朝原則禁止、これは政府の方針として確認をされているでしょうね。

小野寺副大臣 平成十八年七月五日、北朝鮮より七発の弾道ミサイルが発射されたことを契機としまして、我が国政府は、我が国国家公務員の北朝鮮への渡航を原則として見合わせるということにしておりますし、また、民間人につきましても、我が国からの北朝鮮への渡航を自粛要請しております。

松原委員 国会議員は、これは準公務員といいますか、そういう立場の人は民間人以上にそれは原則禁止、こういう理解でよろしいんですね。

小野寺副大臣 一般論としまして、国家公務員についても、公私の別を問わず、北朝鮮への渡航を自粛していただきたいというふうに考えております。

松原委員 この問題は、私は、逆に言えば、北朝鮮の体制の中のことも考えても、一つの剣が峰に差しかかってきていると思っております。我慢比べの中で毅然とした態度を堅持することが私は大事だと思いますので、外務省におかれても、ぜひともそういった方針で頑張っていただきたいと思います。

 残りの時間がわずかでありますが、先般の聖火リレーの関係の質問に続けて参りたいと思います。

 聖火リレーに関して、実際どのような状況が起こったのかということでありますが、警備上の問題があったかなかったかに関して、そして、中国人の数はどれぐらいいたのか、チベット人はどうだったのか、このことについてお伺いいたします。

五十嵐政府参考人 お答えいたします。

 当日の聖火リレーの観客の延べ人数につきましては、主催者発表で約八万五千六百人であったと認識をいたしております。

 当日のインターネットによりますと、二千人前後の中国人留学生が長野に入ることを目標とする旨の記事が流れていたところ、実際にはそれを上回る人数が集まっていたものと思われております。

 一方、チベット人あるいはその支持者につきましては、あえてそのような分類等をいたしておりません。また、支援者の間でもグループが分かれたりしておりましたため、明確に把握はしておりませんけれども、少なくとも数百人単位で集まっていたものと思われております。

 次に、聖火リレーの警備でありますけれども、各国におきまして、チベット問題など中国国内事情から派生をいたします諸問題に抗議する動きが顕著であり、また、我が国固有の問題としていわゆる右翼の抗議活動が見込まれるなど、極めて厳しい情勢にありましたことから、管轄する長野県警察のみならず、警視庁機動隊や関東管区機動隊を動員するなどして、三千人態勢で警備の万全を期したところでございます。

 こういった形で進めまして、聖火リレーの安全な進行等が確保でき、聖火リレー警備における警察の責任は果たせたものと考えております。

松原委員 先般の外務委員会の質疑で、この問題で多少のいざこざがあったと警備局長さんはおっしゃったんですが、中身をもう少し詳しくお話しいただきたい。

五十嵐政府参考人 先日の警備局長の答弁で、小競り合いということを申し上げたわけでございますけれども、その逐一について把握しているわけではございませんが、例えば殴る、けるなどの暴行事案や傷害事案等を念頭に置いて申し上げたものでございます。

松原委員 私も、その後さらにヒアリングを続けておりますが、とにかく、日本の警察がほとんどいなかったという証言もかなりあるんですね。中国人に殴られた人間に聞きましたらば、彼の場合は、とめに入ったのも中国人。殴りかかってきたのも中国人だし、とめに入ったのも中国人、日本の警察はいなかった。恐らく、そこでとめに日本人が入ったら、それはほかの中国人に殴られたかもしれない、こういう状況だと思うんですよ。

 だから、警備が問題なかったかと言われれば、やはり非常に問題があったんじゃないかというのが現地の声です。

 それから、非常に学生ではなさそうな、一見すると柄の悪い中国の方が来て、流暢な日本語で、我々はとめに来た、何かあったらいけないからとめに来た、こういうふうに日本の参加者に言っていたというんです。

 だから、かなり、これは警備上議論があってしかるべきだと私は思うんですね。中国人が日本人を殴っているのを、日本人じゃなくて中国人がとめたり、とめた中国人は、それは非常に結構でありますが、そういう状況というのは、警備からすると極めていかがなものかという議論があるわけであります。

 あと、やはり旗ざおがかなり凶器になっていたということは、警察としては認識を持っていますか。

五十嵐政府参考人 お答えいたします。

 ポールつきの旗が直ちに凶器準備集合罪に言う凶器に当たるというわけではございませんので、公然とポールつきの旗を持っているというだけでは現行法上規制するのは困難であると考えております。

松原委員 これは、私もちょっと聞いたんですが、新潟の、万景峰号が入港するのに対して、反対の、入港するなということで、当時、今からかなり前でありますが、救う会、家族会が抗議に行った。そのときに、伝聞なんですが、日本の人たちは旗とかを持っていたのを、これは凶器になるかもしれないと言って、全部没収をされた。船の近くまで行ったら、朝鮮総連の方は大きな旗を振っていて、こっちはもう旗がなくてプラカードしかなかった。そのことで、当時、蓮池透さんが怒ってインタビューに答えているという話があったわけですね。

 であるとすると、これもまた非常に一方的な話なんですが、日本の場所にいながら、日本の家族会や救う会、恐らく横田さんもいらっしゃったのかもしれない、蓮池さん等が日本の旗を持っていったのには、凶器になるかもしれないからここで置いていけと言って、朝鮮総連の方々の旗は大きくたなびいていた、こういうことであります。万景峰号のときは、救う会、家族会に対しては、凶器になるかもしれないからと言ったと言われているんですよ、証拠があるかどうかわからないけれども。この辺はどういうことになりますか。

五十嵐政府参考人 長野県警察におきまして、聖火リレーの安全な遂行、関係者の安全確保ということから、中国人、日本人を問わず、現場において法令を遵守するよう指導を行ったところでありますが、旗を道路に突き出したり、あるいは旗を持って走る、そういった、道路における交通の危険を生じさせるような行為を警察官が現認した場合には、国籍等を問わず、必要に応じ指導を行っていたものと考えております。

松原委員 だから、指導を行っていたという認識をみんな持っていないところが問題なんですよ。

 つまり、万景峰のときもそうなんだけれども、今回は、日本の方々は、万景峰でそういったこともあったからでしょうけれども、基本的には小旗で行ったというんですよ、小旗で。この間話を聞いたら、もし我々が普通の旗を持っていったら、これは大変なことになったかもしれないと。中国側は大きな旗で、この間資料で見せたように、横八メートルぐらいあって、縦四メートルぐらいの旗とか、異様な旗を振り回していたわけですよ。壁の上に乗って振ったり、いろいろとそれは映像も流れていますよ。北海道新聞の女性記者がたたかれたとか、普通にチベット、ウイグル人に取材していたら後頭部を殴られたとか、この間御披露したとおりですよ。

 そういうふうな状況の中で、旗で一人一人の行進者をくるんでたたくという行動が行われていたことはほぼ間違いないんですが、これは旗が完全に凶器になったんですよ。今後、聖火リレーがもう一回来てということはどうかわからないけれども、例えば、そういう旗がたくさん、明らかに凶器になる可能性があったら、一方的に日本人に対して万景峰ではそれはやめさせているんだから、持たせないという指示をしているんだから、指導しますか。

五十嵐政府参考人 旗を持つこと自体につきましては、先ほど申し上げたとおり、それ自体で凶器に当たるとは考えておりませんけれども、状況によってはそういうことになる可能性もあるかもしれませんので、必要に応じ、安全のためにはいろいろな配慮が必要かとは思います。

松原委員 もう時間なので、たくさん質問はあるんですが、最後に一問だけお伺いしたいのは、中国人に対する指示というのが、僕もちょっと映像を見たら、日本人はいろいろと指示、注意されているんですが、中国人はほとんどされていないようなんですね。中国人側に対する何か警察からの指示というのは確実にあったんですか。どの程度、どうあったのか、ちょっとお伺いしたい。

五十嵐政府参考人 お答えいたします。

 長野県警察におきまして、聖火リレーの安全な遂行と関係者の安全確保のため、日本人、中国人を問わず、現場において、法令を遵守するよう指導を行ったものでございます。

 また、電話で問い合わせがあった場合には、現場の警察官の指示に従うようになど、指導をしているところであります。(松原委員「内容的な……」と呼ぶ)

平沢委員長 松原君、指名してから発言してください。

松原委員 はい。

 このことに関してはほとんどこの間聞いていますから、もう一点だけ申し上げますが、やはり、今回のこのことを契機にして、長野市において、極めて中国に対する反感が市民の中において高まっているというふうに私は聞いているんですよ。やはり、極めて反感が高まるというのは日中の友好から見てもよろしくないわけであって、このことの実際はどうだったかというのを私は検証してほしいと思うんです。

 それから、長野の、実際そこにいた市民の方々に、今ここに篠原さんも、現場を見て非常に憤っているわけでありますが、そういう方々のアンケートをとるとか、どうしたらいいのかとか、その辺の話を聞いていただかないと、私は、この問題は、聖火が無事に通ったからよかったよかったではこれは終わらないと思っておりますし、このことに関して、私も含めて、超党派で、長野における聖火リレーの実態を検証するというチームを今度立ち上げようと思っていますが、とにかくこの問題に関してはきちっと検証作業をし、また、長野市民がどういうふうな印象を持ったか、確認作業をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

五十嵐政府参考人 およそ警備実施につきましては、警備が終了した都度、教訓として記憶すべき事項があればこれを抽出して、次回の警備実施に生かしていくことにしているわけであります。そういう形で、今後、聖火リレーについても同様ですので、北海道洞爺湖サミットを初めとする警備に生かしていきたいと思います。

 また、アンケート調査というお話でございましたが、今回の警備に対する反応につきましては、例えば、聖火リレー終了後の新聞各紙はすべて、混乱は小規模にとどまり聖火リレーは無事に終わったことを肯定的に受けとめていただいていると承知しており、改めて調査することは考えておりません。

松原委員 これはもう少し議論しなければいけないと思っております。

 時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。

平沢委員長 次に、野田佳彦君。

野田(佳)委員 民主党の野田佳彦でございます。

 私も、篠原さん、松原さんに続きまして、中一日で質問をさせていただきたいと思います。

 きょうは、主に科学技術外交並びに宇宙外交という視点で、限られた時間でございますが、質問をさせていただきたいと思います。

 昨年来、総合科学技術会議などで、科学技術国際協力の強化が重要な政策課題であること、さらには、イノベーションに向けた科学技術政策の課題としても環境問題などでの国際貢献が重要である、こういう議論が行われてまいりました。

 私も、民主党の中で、科学技術政策のワーキングチームの座長をやっておりまして、昨年の参議院選挙のマニフェストで科学技術にかかわる部分はまとめさせていただいた、そういう観点もございまして、科学技術を外交に生かすという新たな政策概念に注目をしているところでございます。

 科学技術、まさにこれは日本にとって大きな武器でございます。その武器を外交課題にどんどんと生かして、我が国の国益にかなうだけではなくて、まさに地球的な課題解決で世界に貢献をするということは大変大事な視点ではないかというふうに思っているわけでありますが、高村大臣におかれましては、この科学技術外交という新たな政策概念が用いられるようになってきた経緯、背景、そしてその理念は何なのか、どのようにお考えになっているか、お尋ねをしたいと思います。

高村国務大臣 科学技術外交を強化すべきとの主張の背景には、我が国が有する世界最先端の科学技術を外交資産として活用し、環境、エネルギーなど国際社会が抱える諸問題の解決に貢献すべきであり、また同時に、科学技術のさらなる発展のため外交活動を強化すべきである、そういう問題意識があると考えております。

 外務省といたしましても、科学技術外交を強化すべく、積極的に取り組んでまいります。

野田(佳)委員 総合科学技術会議が、外務省も含めてだと思いますけれども、関係府省からヒアリングなどを行って、今後我が国政府が主導して取り組むべき施策について検討を重ねて、その結果を「科学技術外交の強化に向けて」という報告書にまとめられたというふうに承知をしております。

 この施策を着実に実践、実行していくためにも、特に外務省を中心に、関係省庁との連携を図っていくということが不可欠であるというふうに承知をしておりますけれども、この点についての大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

小野寺副大臣 今月十九日に総合科学技術会議が官邸でありました。私は、高村大臣の命を受けて出席をいたしました。

 ここで決まりました「科学技術外交の強化に向けて」の内容は、多くの機関に関係するものであり、関係府省の連携が不可欠との御指摘は大変重要だと思っております。

 現在、外務省、内閣府、文部科学省、経済産業省で連絡会議を毎月開催しているほか、独立行政法人、これは例えば外務省であればJICAになりますが、その参加も得た会合を開始するなど、連携強化に努めているところであります。

野田(佳)委員 その科学技術外交の強化の一翼を担うだろうと思うのが宇宙の開発利用だというふうに承知をしていまして、五月二十一日に宇宙基本法が成立をいたしました。私自身は、党の中でこの宇宙基本法の検討チームの座長をさせていただきまして、超党派の議員立法という形で国会に提出をしましたけれども、法案の起草と、そして国会での説明、答弁のお役も果たさせていただきました。

 その宇宙基本法についてお尋ねをしていきたいと思うんです。

 初めて人類が人工衛星を打ち上げたのが一九五七年でございまして、ちょうどこれが私が生まれた年なんですが、約半世紀にわたって、人工衛星を利用してさまざまな、例えばGPSであるとか、放送サービスだとか、災害監視、資源探査等が実用化をされて、国民生活にも多くの利便を今供給しているだろうというふうに思います。

 特に、最近では、あの大きなサイクロンでミャンマーが大変な被害を受けましたけれども、その被害状況であるとか、四川省におけるあの大きな地震の後の、雨が降って二次災害が心配をされるときも、たしかあれは台湾の人工衛星だったでしょうか、そこからの映像で、ダムが決壊するかもしれないという状況を大変リアルに映像で見ることができました。

 地球で起こっていることを知るということでは、やはり宇宙から見るということはとても大事だというふうに思いまして、改めて宇宙開発利用の重要性は増大をしてきていると思うわけであります。

 ただ、一方で日本は、やはりどうしても文部科学省中心で、研究開発中心で、特化をしてきた嫌いがございまして、もちろん、経産省や国土交通省や内閣官房やら、いろいろと宇宙開発にかかわる省庁はあるんですけれども、ばらばら感が強かったように思います。それをしっかりと、他国と同じように国家戦略として宇宙開発利用を位置づけて、そして総合的に、一体的に推進をしていくという体制整備が、これは宇宙基本法のねらいの重要な一つでございました。

 そして、この宇宙基本法の中身としては、宇宙開発利用に関する基本理念を定めたり、宇宙開発利用に関する国の責務等を明らかにしたり、宇宙基本計画の作成をすることを決めたり、あるいは宇宙開発戦略本部という、これからの宇宙開発利用の司令塔をつくるというような内容で、宇宙基本法をまとめさせていただきました。

 この宇宙基本法の成立を受けまして、まずは、この基本法の意義自体をどのように御認識、評価をされているか、大臣にお尋ねをしたいと思います。

高村国務大臣 今般、野田衆議院議員を初め宇宙問題に関心のある議員の方々から、与野党の枠を超えて、議員立法として提案された宇宙基本法に関し、皆様方の御尽力にまず敬意を表する次第でございます。

 宇宙の開発及び利用に関する国際協力の推進、産業の振興、宇宙活動に関する法制の整備等を明示した宇宙基本法が今後の宇宙開発及び利用において果たす役割は大きいと考えております。

 外務省といたしましても、宇宙開発戦略本部の一員として、同本部との連携を進めつつ、宇宙基本法の目的や趣旨に沿った施策を推進してまいりたいと思います。

野田(佳)委員 まだ成立したばかりですから、大臣、すべての条文を読まれているわけではないと思いますけれども、この宇宙基本法の第六条に、「宇宙開発利用は、宇宙開発利用に関する国際協力、宇宙開発利用に関する外交等を積極的に推進することにより、我が国の国際社会における役割を積極的に果たすとともに、国際社会における我が国の利益の増進に資するよう行われなければならない。」という規定がございます。

 この趣旨なんですけれども、まず、前段の「宇宙開発利用に関する国際協力、宇宙開発利用に関する外交等」というところでございますが、これは、宇宙開発利用を他国と協力して行うことであるとか、宇宙開発利用の成果を他国に提供すること、宇宙開発利用に係る国際的な調整を行うことなどを念頭に置きながらつくった規定でございます。具体的には、宇宙ステーションにおける他国との協力であるとか、人工衛星等の他国との共同開発、射場に関する他国との協力、衛星を利用した災害監視や気象観測等の情報の他国への提供、いろいろと具体的なことが想定をされているわけでございます。

 この規定を受けて、特に今、先ほど四川省のお話をしましたが、中国自体も、我が国に比べれば宇宙開発利用は後発国でございますが、積極的に宇宙開発利用が推進をされて、それを外交ツールとして活用している向きも非常に強まっているというふうに思うわけであります。したがいまして、この第六条を、ぜひその基本的な考え方をお酌み取りいただき、ぜひ宇宙外交を積極的に推進してほしいと私は思うのでございますが、今どのような御決意でいらっしゃるか、お尋ねをしたいと思います。

高村国務大臣 外務省といたしましては、これまでも、宇宙関連諸条約の適切な実施、宇宙の開発及び利用に関する国際協力、環境監視や防災等を目的とした人工衛星のデータ利用等に関する支援等の施策を推進しているところでございます。

 今後もこれらの施策を関係省庁と連携しつつ一層推進するとともに、宇宙基本法の目的や趣旨を踏まえた施策のあり方に関して、外務省としても鋭意検討を進めてまいります。できるだけ委員の御趣旨に沿った方向で努力してまいりたいと思っております。

野田(佳)委員 今読み上げた宇宙基本法の六条というのは、裏話を申し上げますと、外務省設置法の第三条の任務規定を参考にしてつくっているわけで、まさに外務省に頑張ってくれという意味を込めてのこの六条であるということをぜひ御理解いただきたいと思います。

 大体、日本は、世界で四番目に自己完結的な宇宙能力を備えた国であること、自主開発の優秀な固体ロケットも持っていること、世界で三番目に静止衛星の打ち上げに成功し、世界で三番目に多くの衛星を打ち上げた国でもあること、国際協力プログラムの中で自国の宇宙飛行士を継続的に生み出していることなどから、まさに外交ツールとして十分に使える分野だということを改めて申し上げさせていただきたいと思います。

 続いてでありますが、宇宙外交といっても、いろいろ具体的に考えると、いろいろなやり方があるだろうと思うんですが、まず最初に思い浮かぶのは、宇宙開発利用の国際プロジェクトへの参画であろうというふうに思います。その代表的なものは、さきに土井さんが頑張って、そして帰ってこられましたけれども、国際宇宙ステーションにおける実験棟「きぼう」を開発製造し、その中でのさまざまな実験を行ったりいたしました。

 こういうさまざまなプロジェクトに大いに参加をすることによって世界に貢献をする、我が国の科学技術の水準をぜひ知らしめるという意味からも大いに推進をしていくべきだろうと思いますし、去年の一月ですか、中国が衛星破壊衛星を飛ばして多量の宇宙ごみ、スペースデブリが発生をいたしました。例えばこういう問題についても、スペースデブリの回収衛星のようなものをつくりながら、国際的な取り組みに宇宙先進国の一角としてイニシアチブを持って取り組んでいくようなことも私は大事だと思います。

 そこでお尋ねをさせていただきますが、こうした外交的な意義、国際的なこういうプロジェクトにどんどんとかかわっていくその外交的な意義については、政府はどのようにお考えでしょうか。

高村国務大臣 もうすべて委員がおっしゃったとおりだと思います。

 代表的な宇宙開発利用の国際プロジェクトとして国際宇宙ステーションがありまして、三月には、米国スペースシャトルにより我が国初の有人宇宙施設である「きぼう」の船内保管室が打ち上げられ、土井宇宙飛行士により取りつけられました。このような宇宙開発利用の国際プロジェクトの参加は、人類の将来の進歩に貢献し、我が国に対する国際社会の期待にこたえるのみならず、他国との科学技術協力を通じて我が国の科学と産業の発展にも寄与するわけであります。

 外交的意義でありますが、例えば、日本の人工衛星「だいち」によるブラジルのアマゾンの違法伐採のモニタリングや、最近では、ミャンマーや中国の自然災害の被害状況に関する衛星画像を国際災害チャーターへ提供する等の国際貢献の実例もあるわけであります。このような人工衛星の技術や情報を活用した国際貢献により、宇宙分野などの世界最先端の科学技術を活用して国際貢献する国日本との国際社会の期待にこたえることができる、こういう意味でも外交的意義があると考えているわけでございます。

野田(佳)委員 次の質問にかかわることでお答えをもういただいてしまいました。

 国際的なさまざまなプロジェクトへの参加というものと、今大臣がおっしゃったように、日の丸人工衛星を活用して国際貢献をする、そういう外交的な意義もあると思っています。その国際貢献の中では、今おっしゃったような「だいち」、これは私は高い評価をされるようなプロジェクトというか事業になると思いますし、例えば超高速インターネット実験衛星WINDSに対しては、東南アジア各国から、デジタルデバイド解消の突破口になるという期待もあるということで、日の丸人工衛星を打ち上げることによる国際貢献もあるというふうに思っておりまして、多分、何か前倒しでお答えをいただいたようなので、この質問は飛ばします。もう既にお答えをいただいたものというふうに思うわけであります。

 問題は、日本も、こういう形で、宇宙の開発利用を生かして外交戦略に平和的に組み込みながらこれから国際貢献をしたいということを考えてはいますが、一方で、中国もこの意識が猛烈に今強いわけでございます。

 日本の場合は、一九九三年以降、文科省とJAXAがアジア太平洋地域宇宙機関会議、APRSAF、これを開いてまいりました。その会議の中から、インド洋の津波災害を踏まえて、アジア防災・危機管理システムを構築することが決定をされて、いわゆるセンチネル・アジアのプロジェクトもスタートしたわけであります。

 これに対抗するという言い方をしたら変なのかもしれませんが、二〇〇五年の十月から、中国が主導したアジア太平洋宇宙協力機構、APSCOという機関ができて、ここに、何と、これまで日本と大変関係が深かった、深かったというのは、我が国からも相当に政府開発援助などで支援をしてきたタイやインドネシア、イラン、パキスタンあるいはペルー、モンゴル、バングラデシュ、こういう国が、中国政府からの働きかけもあったんでしょうが、アジア太平洋宇宙協力機構に入ったというような事態で、アジア太平洋地域においては、日本が主導しているアジア太平洋地域宇宙機関会議と中国主導のアジア太平洋宇宙協力機構は、ある種ライバル関係になっているというのが現状でございます。

 ライバルと競ってお互いに切磋琢磨して、それはアジア太平洋地域のためになればいいんですが、ただ、これまでの、宇宙基本法ができる以前の日本の宇宙開発利用というのは、冒頭でも申し上げましたとおり、文科省主導で、その実行機関としてJAXAがあってと、やはりいささか外交的な視点が足りなかったような気がしております。いささかどころではなかったかもしれません。

 そういう意味では、この文科省、JAXA主導でやってきたアジア太平洋地域宇宙機関会議、これにもっと外務省も全面的に出て、まさに外交戦略としてこういうかかわりを持っていった方がいいのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

小野寺副大臣 御指摘がありますように、現在我が国では、文科省、JAXA及びホスト国機関の共催によりましてAPRSAFを毎年開催しており、中国からも参加を得ております。外務省としましても、APRSAFに各国政府よりハイレベルの参加を得るべく、在外公館を通じて働きかけを行っております。また、国連宇宙空間平和利用委員会では、APRSAFの活動を積極的に紹介し、各国から高い評価を得ております。

 今後も、アジア太平洋地域における我が国の国際的な地位の向上及びリーダーシップの確保を図る観点から、このような取り組みを通じてAPRSAFの一層の発展に貢献していく考えであります。

野田(佳)委員 ぜひここは気合いを入れて取り組んでいただきたいと思いますのは、中国の外交戦略では、科学技術の援助を明確に位置づけている。科強富国、先ほど冒頭に科学技術外交の理念の話をしましたが、もうそのことを中国は明確に国家戦略では位置づけているわけであります。宇宙についてもまさに同じです。そこはやはり日本も負けないように、外務省には気合いを入れて取り組んでいただきたいということを重ねて申し上げたいというふうに思います。

 次の質問なんですが、宇宙基本法の第十六条にこういう条文がございます。「国は、宇宙開発利用において民間が果たす役割の重要性にかんがみ、民間における宇宙開発利用に関する事業活動(研究開発を含む。)を促進し、我が国の宇宙産業その他の産業の技術力及び国際競争力の強化を図るため、自ら宇宙開発利用に係る事業を行うに際しては、民間事業者の能力を活用し、物品及び役務の調達を計画的に行うよう配慮する」という規定でございます。

 今読み上げた規定は、要は、国際競争力を日本も持たなければならない、民間の事業者の能力を生かさなければならない。何を言いたいかというと、やはり自国の力でこの宇宙開発利用をもっとやっていきたいという思いがあるんですよね。

 これは、背景にあるのは、日本の宇宙開発利用、それぞれ文科省中心であったかもしれませんが、研究開発衛星についてはそれなりの実績を上げてきたと思いますけれども、残念ながら、当時としてはしようがなかったかもしれませんが、日米摩擦が激化した折にいわゆる日米衛星調達合意というものができて、研究開発の目的以外の通信・放送衛星などの実用衛星が市場開放を余儀なくされた。そのことによってやはり国内産業が打撃を受けて、いまだに後遺症を持っているというふうに私は思っているんです。

 こういうことを考えて十六条は、ストレートにそういうことを法文には書けませんから、法案提出者の思いとしては、これは与野党の思いなんですが、日米衛星調達合意、これは平成の不平等条約と今は言われ始めています。当時はいろいろ事情があったのは承知していますが、もちろん、これは相手のあることですから一方的にどうと言うことはできませんけれども、相手の理解も得ながら、そろそろこの衛星調達合意を円満に終了させるべく取り組んでいってほしいという思いを込めての十六条であります。

 この日米衛星調達合意についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。

小野寺副大臣 平成二年に我が国の自主的措置として決定しました非研究開発衛星の調達手続は、非研究開発衛星を調達するための透明、公開かつ無差別を原則とした競争的手続を定めておりまして、WTO政府調達協定の要件との整合性を確保しつつ実施されると定めております。

 また、米国政府も本手続と同様の措置をとることとしていることからも、政府としては、本手続が世界各国の常識から大きく逸脱しているものであるとは考えておらず、引き続きこれらの原則にのっとった非研究開発衛星の調達を行うことが適切と考えております。

 その上で申し上げれば、今般宇宙基本法が成立したことを受けて、政府として今後いかに対応するかについてはよく検討すべきだと思っております。

野田(佳)委員 この基本法が成立をしたことによって、これからつくられる宇宙開発戦略本部において、我が国の宇宙産業の国際競争力を強化するためのいろいろな施策であるとか、先ほどの衛星調達のあり方についても必要な検討が行われるだろうと思いますが、先ほど申し上げた問題意識をぜひお酌み取りいただきたい。

 実際、この間の衆議院の内閣委員会で経産省から答弁があったんですけれども、一九七〇年代の後半から九〇年までの間に、国内の衛星メーカーは、政府及び関係機関から、気象衛星、通信衛星、放送衛星を合計十三基受注した実績がありました。しかし、この日米衛星合意の後、九〇年以降は、同様の衛星について十三基を国際競争入札に付しており、一件だけ運輸目的の衛星が国内の衛星メーカーに受注されたということですから、やはり間違いなく大きな影響があったんだろうと思います。

 そのことを踏まえて、相手国もあるので、その理解を踏まえながらぜひ円満なる終了を目指してほしいと重ねてお願いをしたいと思います。

 最後の質問をさせていただきたいと思いますけれども、宇宙戦略本部の本部長は内閣総理大臣がなるんです。副本部長を内閣官房長官と宇宙開発担当大臣が担うということになっているんですが、この宇宙開発担当大臣は、当然のことながら、「内閣総理大臣の命を受けて、宇宙開発利用に関し内閣総理大臣を助けることをその職務とする国務大臣」として、この法律の二十九条に位置づけられているわけでありますが、どういう人を選ぶのか。

 専門の宇宙開発担当大臣、専任になる可能性もなくはないかもしれませんが、今のいろいろな閣僚の枠を考えるとどこかの大臣が兼務をするということもあります。宇宙開発担当大臣を外務大臣が兼ねるという可能性もなくはないんですね。私個人としては、宇宙軍拡の懸念とか、いろいろ何か変な論調もあるので、いきなり防衛大臣が宇宙開発担当大臣をやったらおかしいと思うし、これまで中心的な役割をしてきた文科大臣が兼ねても今回の法案の精神とは少し離れてしまうんですが、外交戦略、特に平和的な外交戦略のもとで外務大臣が兼ねることは一つの案だというふうに思っています。

 こうした問題意識について高村外務大臣御自身はどうお考えでしょう。

高村国務大臣 宇宙開発担当大臣につきましては総理大臣が選任するとされており、諸般の事情を総合的に考慮し、最も適切な方を任命されるものと考えております。

野田(佳)委員 それはそうです。それはもう御意です。御意ですが、せめて、外務大臣だけれども、私が宇宙開発担当大臣をやったらこういうようなことができますねぐらいは言っていただきたかったんですが、時間が来ましたので、きょうはこれで終わりたいと思います。

平沢委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、地位協定に関連して、米軍の犯罪、そして沖縄の米軍基地運用、これらの問題について聞いていきます。

 まず最初に、二〇〇二年に米空母キティーホークの乗組員に暴行されたオーストラリア出身ジェーンさんに対し、防衛省が見舞金三百万円を払うことが報じられております。これは米国政府が時効を理由に支払いを拒否したためでありますが、ジェーンさん本人は、六年間の闘いを振り返れば喜ばしいが、本来支払うべき加害者が何の罰も受けずに自由に暮らしているのはおかしい、本当に性犯罪をとめたいと思うなら米国はすべての被害者に謝罪すべきだ、加害者が見つかるまではあきらめない、このように述べております。

 犯人の米兵は本国に逃げ帰ったまま、米国政府も賠償金を支払わない、外務大臣はこういう現状についてどのように考えておりますか。

西宮政府参考人 米軍人等の公務中の行為などで第三者に損害を与えたものから生じます請求権は、日米地位協定第十八条五に基づき、日本国政府を相手とした訴訟等により日本国政府が処理することとされており、その上で、個別の事案ごとに、請求を満たすために要した費用を日米両政府間で分担することとなっております。

 一方、米軍人などの公務外の行為から生じた損害につきましては、加害者が賠償を行うべきものとして、当該軍人等を相手とした訴訟等で処理することができるわけでございますけれども、あわせて、日米地位協定第十八条六は、米国政府が慰謝料を支払うことによる処理方法を規定しておるわけでございます。

 また、米軍人等の公務外の行為から生じました損害につきまして、被害者を一層救済するとの観点から、運用改善といたしまして、日米両政府による前払い制度であるとか無利子融資制度及び見舞金などの措置がとられるようになってきておるところでございまして、こうした制度に基づきまして、被害者が適切に救済されるように取り組んできておるところでございます。

 御指摘の事件につきましては、防衛省としても、本件が、「合衆国軍隊等により損害を受けた者に対する賠償資金及び見舞金の支給について」との閣議決定、昭和三十九年の閣議決定でございますが、これに該当する事案と判断して、見舞金が支給されることとなったものと承知しております。

赤嶺委員 犯行に及んだ米兵はアメリカに、本国に逃亡し、そして米国政府も謝罪しない。結局、北米局長が説明した仕組みの中ではこういうことが起こっているわけであります。

 公務中の犯罪被害の補償も、これは大変です。公務外についてはなおさらであります。私は、犯罪被害者救済のための新たな法の制定も必要だと考えておりますが、結局、今のような日米関係では、加害者に対する性犯罪の抑止力そのものが欠けているような制度の仕組みということを強く指摘しておきたいと思います。

 こういう事例はジェーンさんにとどまらず、犯人の米兵は本国に逃げ帰り、米国政府も賠償金を払わない、結局泣き寝入り、こういう事態に追い込まれた被害者がたくさんいるということをぜひ政府は受けとめていただきたいと思います。

 嘉手納飛行場の未明離陸問題について聞いていきます。

 先月の二十三日の午前五時過ぎ、地元自治体の中止要請にもかかわらず、F15戦闘機や空中給油機など計五機がアメリカ本国に向け離陸をしました。アイロンフローというF15の機体更新の一環であるというぐあいに説明を受けてきました。機体更新は今回が最後と思っていましたら、今度はアラスカの演習に参加するといって、今月二日にF15など計十一機、三日にも計十一機が未明離陸を強行したわけです。立て続けに行われております。

 前回、昨年十月に行われたとき、外務大臣は、「飛行場周辺の住民の方々にとって大変深刻な問題である」、「できるだけ早朝離陸が行われないよう、米側に働きかけを行っている」と答弁しておられます。

 外務大臣に伺いますが、日本政府の要請にもかかわらず、米軍機による未明離陸が繰り返されていることについて、どういう認識を持っておられますか。

小野寺副大臣 四月二十三日未明に、嘉手納飛行場のF15戦闘機三機及び空中給油機二機が早期離陸を行いました。これは、旧型F15戦闘機の機体入れかえ計画の一環として、新しい機体と入れかえるために行われたものということでございます。

 また、五月二日、三日に、F15戦闘機と空中給油機が、アラスカで行われる訓練に参加するため、嘉手納飛行場からそれぞれ五時台、六時台に離陸したものと承知をしております。

 政府としましては、米軍機の早朝離陸による騒音問題については、飛行場周辺住民にとって大変深刻な問題であると認識をしており、米側に対して、できるだけ早朝離陸が行われないよう働きかけを行いました。これに対し、米側からは、先般のこれらの早期離陸について、航空機の早期離陸により住民への騒音の影響が及ぶことを十分認識しているが、乗員らの安全確保、飛行中に空中給油を受ける必要性を踏まえ、運用上必要なものであり、理解を得たいとの説明がありました。

 こうしたやりとりの結果、今回、五月三日の離陸については騒音規制時間外の午前六時台の離陸となりましたが、政府としては、今後も引き続き、米側との協議を通じ、運用の調整によりできるだけ早期離陸の回数を減らしたり、また、早期離陸の実施がやむを得ない場合でも、可能な限り周辺住民の方々への影響が最小限になるよう配慮するよう米側に働きかけていきたいと考えております。

赤嶺委員 今回の未明離陸は、アラスカの演習に参加するという理由をつけているわけですね。アラスカで行われている演習、これはどういう演習ですか。

西宮政府参考人 お答え申し上げます。

 五月二日及び三日に、F15戦闘機と空中給油機がアラスカで行われる訓練に参加するため早朝離陸を行ったわけでございますが、この訓練につきましては、五月一日付の米側報道発表でございますが、F15戦闘機は、パイロットの空中戦闘技術を向上させ、日本の防衛に必要な運用能力を高めることなどを目的として、ノーザンエッジ、それからレッドフラッグ、これは例年行われている演習だそうですが、これに参加するということでございます。

 それ以上の具体的な内容につきましては承知しておりません。

赤嶺委員 今北米局長がノーザンエッジ、これは、現地のホームページによりますと、年一回行われているようであります。レッドフラッグ・アラスカは年四回行われている。そういうことでよろしいですか。

西宮政府参考人 申しわけございません。開催頻度の正確なところは、ちょっと手持ちに資料を持っておりません。

赤嶺委員 ホームページで見るとそのようになっています。

 ですから、今、両方に参加しているということでありましたけれども、そうなりますと、米軍の運用次第で、少なくとも年五回はアラスカの演習に参加するために嘉手納の米軍機が未明離陸を行う可能性がある、そういうことですか。

西宮政府参考人 事実関係、正確に把握しておりませんので、余り仮定に基づいてお答えするのは差し控えたいと思います。

赤嶺委員 事実関係、ぜひ掌握してください。これはホームページで公開していますので。こうなっているんですよ、レッドフラッグ・アラスカは今後、六月、十月の実施が計画されている。これはアイルソン空軍基地ホームページの中で掲載されています。

 アラスカの訓練参加のため、さっき北米局長が、ノーザンエッジあるいはレッドフラッグ・アラスカ、これには自衛隊も参加している。こういう訓練が行われている限り、外務省が、政府が毅然とした対応をとらない限り、アラスカの演習があるからということで、今後も未明離陸は繰り返されるということになりませんか。

西宮政府参考人 先ほども副大臣から御答弁申し上げた点でございますが、米側は、こうした早朝離陸につきまして、航空機の早朝離陸により住民への騒音の影響が及ぶことは十分認識しつつも、乗員らの安全確保、飛行中の空中給油を受ける必要などを踏まえ、運用上必要なものであるということを説明しております。

 他方、我々といたしまして、米軍機の早朝離陸による騒音問題につきまして、周辺住民の方々にとりまして大変深刻な問題であるという認識から、米側に対して、できるだけ早朝離陸が行われないよう働きかけを今回も行いましたし、行ってきておるわけでございます。

 そういうわけで、今回につきましても、五月三日の離陸につきましては騒音規制時間外の午前六時台の離陸となったわけでございまして、政府といたしましても、引き続き、米側との協議を続けてまいり、できるだけ運用調整をしてもらうように働きかけてまいりたいというふうに考えております。

赤嶺委員 今回の訓練、五月三日ですよ。公休日に、午前六時台になったということが何か前進であるかのようにおっしゃっておりますけれども、そういうゴールデンウイークの連休のさなかに爆音に苦しめられる住民にとってはこういうのは解決の中に入らないんです。

 ですから、運用上必要だといえば今までも繰り返されてきた。今までは機体更新のためだと言っていた。今度はアラスカでの演習と言う。アラスカでの演習というのは定期的に行われている。そうなれば定期的に嘉手納での早朝離陸、未明離陸が行われることになるのではないか、私はこのように危惧しております。

 アラスカの演習には自衛隊も参加しているわけですが、いつから、どういう部隊が参加しているんですか。

徳地政府参考人 お答えを申し上げます。

 航空自衛隊は、日米共同訓練の一環といたしましてこの演習、コープサンダーと呼ばれていたころでございますけれども、平成八年度から平成十五年度までは、年一回、輸送機C130を派遣してきたところでございます。

 それから、平成十五年度以降でございますけれども、F15、それからE767すなわちAWACSでございますけれども、それと基地防空部隊を年一回参加させて、米空軍と連携をした防空戦闘訓練、それから基地防空訓練を行ってきているところでございます。

赤嶺委員 結局、アラスカで日米共同訓練も行われている、そのために嘉手納では未明離陸が繰り返されている。

 自衛隊は、アメリカに向けて飛び立つときは未明離陸を行っているんですか。

徳地政府参考人 お答えを申し上げます。

 例えば今回のレッドフラッグ・アラスカ演習に千歳基地のF15が参加をすることとなっておりますけれども、千歳基地のF15は午前六時半に千歳基地を離陸するということになっております。

赤嶺委員 なぜ早朝六時半に離陸するんですか。

徳地政府参考人 千歳基地からアラスカに行くということになりますと、所要時間といたしまして約七時間を見込んでおります。それで、現地の日没の時間あるいは途中での飛行の安全その他、いろいろ考慮をいたしますとこの離陸時間、千歳のF15については六時半というふうに考えているものでございます。

赤嶺委員 最後ですが、現地での日没と言いますが、自衛隊は夜間訓練もやっているじゃないですか。早朝の離陸については苫小牧や千歳からも抗議を受けているわけでしょう。夜間訓練をやっていて、何でアラスカに行く場合にこういうことを早朝の理由に持ち出すんですか。

徳地政府参考人 地元の苫小牧市と、それから千歳市の方からは確かに御要請をいただいておるところでございます。

 日没の時間との関係というふうにも申し上げましたけれども、アラスカに行くということで、航空自衛隊の方もそれほどアラスカあるいはエレメンドーフの基地というものに慣熟をしているわけでもございませんので、やはり安全第一ということを考えまして、ある程度時間の余裕を持って出かけることが必要であるというふうに考えているところでございます。

赤嶺委員 終わりますけれども、米軍の運用優先、こういうことばかり政府が受けとめていたら早朝・未明離陸訓練は絶対に根絶できない。根絶が県民の願いであるということを申し上げまして、質問を終わります。

平沢委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社民党の照屋寛徳です。

 去る五月十二日、福岡高等裁判所那覇支部は、二〇〇四年八月、米海兵隊普天間基地所属のCH53D大型輸送ヘリが沖縄国際大学構内に墜落、炎上した事故をめぐる日米両政府間の協議内容の一部が情報公開請求で非公開とされたのは不当だとして那覇市の長嶺哲さんが国を被告に処分取り消しを求めた控訴審で、国側に、文書の不開示部分を裁判所に提示するよう命じた決定を言い渡しました。国に情報公開を求めた訴訟で裁判所が不開示文書の提示を命令するのは画期的な決定だと私は思います。

 法務省に尋ねますが、同訴訟の経緯、及び不開示文書について提示命令を出した決定はこれまでほかにもあったんでしょうか。

河井副大臣 照屋寛徳委員にお答えをいたします。

 本件の基本事件は、申立人が情報公開法に基づきまして、先ほど先生御指摘の米軍ヘリ墜落事故に関する外務省保有行政文書の開示を請求したところ、外務大臣がその一部につき同法の定める不開示事由に該当することを理由として不開示決定をしたため、申立人がこれを不服としてその取り消しを求めた事案であります。第一審の福岡地方裁判所が申立人の請求をいずれも棄却したため、申立人が控訴し、現在、事件は福岡高等裁判所において係属中であります。

 控訴審におきましては、申立人は、裁判所に、本件不開示文書の内容を確認してもらうべく検証の申し出及びこれを目的物とする検証物提示命令の申し立てを行い、裁判所がこれらを認めて今回の決定に至ったものであります。

 また、続けて御質問いただきました、過去においてこういうことがあったかということでありますけれども、情報公開法に基づく国に対する開示請求に係る不開示決定に対する取り消し訴訟において、裁判所が本件と同様の検証物提示命令を出したことはないと承知しております。

照屋委員 今御答弁ありましたように、裁判所が検証物提示命令を出すというのは今回が私は最初だと思うし、非常に画期的な決定だと思います。

 沖縄国際大学へのヘリ墜落炎上事故は、死傷者が出なかったのは奇跡と思われるほどの大惨事でした。墜落事故を受けて日米間でどのような協議がなされたかは、当然その全容を公表すべきであります。米国との信頼関係を損なうという理由で情報を秘匿し、開示を拒む外務省の態度は許されません。

 外務大臣は、福岡高裁那覇支部の検証物提示命令の決定をどのように受けとめたのでしょうか。

高村国務大臣 平成十六年の沖縄での米軍ヘリ墜落事件に関する情報公開に関する訴訟に関し、十二日付で、福岡高等裁判所が国に対し検証物提示命令の決定を行ったということは承知をしているところでございます。

 国としては、行政機関情報公開法その他現行関係法令において、開示、不開示の妥当性を判断するための第三者による見分は、不服申し立て制度において、情報公開・個人情報保護審査会によって行い得ることが規定されており、一方、裁判所が不開示文書を実際に見分することは認められていないと判断をしているわけでございます。

 委員、画期的とおっしゃいましたけれども、画期的という言葉に肯定的な意味が含まれるのかどうかでありますが、過去の裁判例でも、その判断が妥当であると、私たちの判断がです、妥当であると確認されていると承知しています。委員がおっしゃるように、こういう検証物提示命令の決定というようなものは初めてのことだ、こういうふうに思っております。

 このように、今回の福岡高裁の決定は不適法と考えております。法務省とも相談しつつ、十九日付で、最高裁の判断を仰ぐための抗告許可の申し立てを行ったところでございます。

照屋委員 高村大臣おっしゃるように、福岡高裁那覇支部の決定に対し、国は、民事訴訟法三百三十七条二項に基づく許可抗告をなしたようです。許可抗告は、民事訴訟法第三百三十六条の特別抗告と異なり、申し立ての理由が認められない限り抗告は許可されないと思いますが、法務省、そのような理解でよろしいでしょうか。

河井副大臣 お答え申し上げます。

 民事訴訟法第三百三十七条の許可抗告とは、高等裁判所がした決定または命令について、その高等裁判所の許可したときに限り、最高裁判所に対して特に抗告することができる制度であります。

 同条第二項によれば、許可抗告の申し立てを受けた高等裁判所は、その決定または命令が最高裁判所の判例と相反する判断、あるいは憲法違反以外の法令の解釈に関する重要な事項を含む場合には抗告を許可しなければならないものとされております。

 これは、決定により判断される重要な法律問題について高等裁判所の判断が分かれていることによる混乱を避けるため、最高裁に対する抗告を認めることにより、法令解釈の統一を図ることを目的とした制度であります。

照屋委員 検証物提示命令が出た段階から、マスコミでは既に、外務省はその提示命令に従わないんだ、こういう報道もありますが、裁判所の文書提示命令に従わない場合の効果と過料については民訴法上どのような定めになっておりますか。

河井副大臣 国が検証物提示命令に従わない場合、民事訴訟法上どのような罰があるのかというお尋ねでありますが、あくまでもこれは一般論としての御質問でございますので、一般論としてお答えをさせていただきます。

 当事者である国が検証物提示命令に従わない場合、民事訴訟法上の罰はありません。第三者が正当な理由なく検証物提示命令に従わないときは、民事訴訟法第二百三十二条第二項により、裁判所は二十万円以下の過料に処することとされていますが、当事者が検証物提示命令に従わないときにはこのような制裁規定は設けられておりません。

 もっとも、民事訴訟法上、当事者が検証物提示命令に従わない場合の制裁として、裁判所は、当該検証物の性状等に関する検証申し出者の主張を真実と認めることができることとされ、また、検証申し出者が当該検証物の性状等に関して具体的な主張をすること及び検証により証明すべき事実を他の証拠により証明することが著しく困難であるときには、裁判所は、その事実に関する検証申し出者の主張を真実と認めることができるとされております。

照屋委員 福岡高裁那覇支部における検証物提示命令申し立て事件では、同裁判所より高村外務大臣に対して求意見が発せられたと思います。同求意見に対して高村大臣はどのような回答をなされたのでしょうか。また、外務大臣の求意見に対する回答に対し、裁判所は、決定においてどのような判断を示したんでしょうか。

高村国務大臣 本件訴訟におきまして、昨年十二月、控訴人から福岡高裁に対し、いわゆるインカメラ審理を求めるための検証物の提示命令の申し立てがあったことを受けて、三月七日に、福岡高裁から外務大臣に対する求意見がありました。

 外務省としては、行政機関情報公開法その他現行関係法令においては、開示、不開示の妥当性を判断するために裁判所が当該文書を実際に見分することは認められないと考えております。このため、三月十九日に、控訴人による不適法かつ法的根拠のない申し出に基づく求意見に回答することができず、速やかに本件検証等申し出を却下することを求める旨回答したところでございます。

 かかる回答について、まことに残念ながら、福岡高裁の理解を得るところにはならず、五月十二日付で、福岡高裁から検証物の提示を命ずる決定が出されましたが、政府としては、今般の福岡高裁の決定は不適法なものであると考えているところでございます。このため、十九日付で、最高裁の判断を仰ぐための抗告許可の申し立てを行ったところでございます。

照屋委員 高村大臣も法律家でございます。求意見に対する回答に対しては、決定の中で非常に詳細に検討した内容の判断が下されておりますので、私は、やはり司法の判断として、国も、あるいは実質的な当事者である外務省も真剣に受けとめるべきだと思います。

 最後に、総務省、情報公開法におけるインカメラ審理と、今回の福岡高裁那覇支部のインカメラ審理に対する決定理由に対する総務省の考え方をお教えください。

田部政府参考人 お答えいたします。

 情報公開法におきましては、いわゆるインカメラ審理の規定というものはございません。

 ただ、情報公開・個人情報保護審査会設置法におきましては、審査会は、必要があると認めるときは、諮問庁に対し、行政文書等の提示を求めることができる、この場合においては、何人も、審査会に対し、その提示された行政文書等の開示を求めることができないというふうに定められておりまして、この情報公開・保護審査会におきましてはインカメラ審理を行うことになってございます。

 ただ、インカメラ審理そのものの規定につきまして、訴訟制度の根幹にかかわる問題でございますので、慎重な検討が必要ではないかというふうに考えてございます。

照屋委員 終わります。

平沢委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十分散会


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