衆議院

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第3号 平成21年3月18日(水曜日)

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平成二十一年三月十八日(水曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 河野 太郎君

   理事 小野寺五典君 理事 松島みどり君

   理事 松浪健四郎君 理事 三原 朝彦君

   理事 山中あき子君 理事 近藤 昭一君

   理事 武正 公一君 理事 伊藤  渉君

      逢沢 一郎君    猪口 邦子君

      小野 次郎君    近江屋信広君

      木原  稔君    篠田 陽介君

      鈴木 馨祐君    平  将明君

      とかしきなおみ君    中山 泰秀君

      西村 康稔君    原田 義昭君

      御法川信英君    安井潤一郎君

      山内 康一君    山口 泰明君

      池田 元久君    篠原  孝君

      鉢呂 吉雄君    松原  仁君

      丸谷 佳織君    笠井  亮君

      辻元 清美君

    …………………………………

   外務大臣         中曽根弘文君

   外務大臣政務官      西村 康稔君

   外務大臣政務官      御法川信英君

   国土交通大臣政務官    岡田 直樹君

   防衛大臣政務官      岸  信夫君

   政府参考人

   (内閣官房拉致問題対策本部事務局総合調整室長)

   (内閣府大臣官房拉致被害者等支援担当室長)    河内  隆君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           門山 泰明君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房外務報道官)           兒玉 和夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中島 明彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石川 和秀君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 小田 克起君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 宮川眞喜雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 福嶌 教輝君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 山本 栄二君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   鶴岡 公二君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  高見澤將林君

   外務委員会専門員     清野 裕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十八日

 辞任         補欠選任

  小野 次郎君     安井潤一郎君

  柴山 昌彦君     平  将明君

  御法川信英君     とかしきなおみ君

同日

 辞任         補欠選任

  平  将明君     近江屋信広君

  とかしきなおみ君   御法川信英君

  安井潤一郎君     小野 次郎君

同日

 辞任         補欠選任

  近江屋信広君     柴山 昌彦君

    ―――――――――――――

三月十八日

 核兵器禁止条約の早期締結に関する請願(村井宗明君紹介)(第九九二号)

 同(長勢甚遠君紹介)(第一一一四号)

 グアム移転協定に反対することに関する請願(笠井亮君紹介)(第一〇七二号)

 七・一八沖縄県議会決議を尊重し、辺野古新基地建設の断念を求めることに関する請願(保坂展人君紹介)(第一〇七三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第二一号)


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     ――――◇―――――

河野委員長 これより会議を開きます。

 若干理事会がおくれまして、申しわけございません。

 内閣提出、在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長河相周夫君、大臣官房外務報道官兒玉和夫君、大臣官房審議官中島明彦君、大臣官房審議官石川和秀君、大臣官房審議官小田克起君、大臣官房審議官宮川眞喜雄君、大臣官房参事官福嶌教輝君、大臣官房参事官山本栄二君、国際法局長鶴岡公二君、内閣官房拉致問題対策本部事務局総合調整室長兼内閣府大臣官房拉致被害者等支援担当室長河内隆君、総務省自治行政局選挙部長門山泰明君、防衛省防衛政策局長高見澤將林君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河野委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉でございます。外務委員としては初めての質問をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、我が国は近年、アフリカ地域、南太平洋地域、旧ソ連構成国などにおいて比較的我が国と関係が薄かった地域、ここで、近隣国の大使館の兼館としていた国々での大使館の実館化に取り組んでおります。しかし、我が国の大使館の実館の数、これは百二十七。例えば中国の百六十六と比べて少ないという現状がございます。また、現在、相手国は我が国に大使館の実館を置いておりますが我が国は先方に実館を置いていない国、これが十八ございます。

 比較的関係が薄かったとはいえ、さまざまな国との外交関係、これ自体は重要であるのみならず、我が国の国際的プレゼンスの増大、また国連安保理常任理事国入りへの支持拡大、こうした意味で、現地に実館を置く効果ははかり知れないと考えております。特に、アフリカ地域については、二〇〇八年に横浜でTICAD4が開催をされ、同地域の支援に対して我が国が強いイニシアチブを示したことも受けて、大使館実館の設置を今後より一層積極的に行っていくべきと考えております。

 そこで、まずお聞きをいたします。アフリカ諸国を初めとする各国への大使館の実館設置に向けた今後の具体的な方針を御説明いただきたいと思います。

中曽根国務大臣 在外公館は、ある意味では我が国の外交の最前線に位置している、そういうふうに言えると思いますけれども、この公館は、国を代表し各国と折衝を行うことなど、また情報収集、あるいは場合によっては邦人保護など、そういう重要な役割を果たしております。

 外務省といたしましては、主要国並みの百五十大使館体制を目指しまして、引き続いて外交実施体制の強化に取り組んでいきたいと考えておるところでございますが、特に委員が今お話ありましたアフリカにつきましては、国連加盟国、今百九十二カ国でございますが、この約三割を占めておりまして、五十三カ国でございますが、我が国の主張に対する理解と支持の基盤を広げていく上でも、もっともっと大使館を増設していくということが重要でございます。

 また、大使館の活動を通じまして、我が国も、国際社会の責任ある一員として、アフリカに集中をしております貧困などの世界的課題の解決に貢献をすること、さらに、アフリカは天然資源等が豊富でございますから、そういう資源の豊富なアフリカ諸国との間で我が国の国益を踏まえて経済関係を強化していくということ、これも重要でございます。

 こうした考えを踏まえまして、アフリカを含めました大使館の新設の必要性について判断をしてまいるところでございます。

伊藤(渉)委員 ぜひ、大臣のリーダーシップで、アフリカとの関係強化に取り組んでいただきたいと思います。

 次に、平成二十一年度予算、ここには、パラオ、エストニア、キルギス、ベナン、ルワンダの五カ国における大使館の実館の設置が盛り込まれております。各国との関係強化という観点から、実館設置をもちろん歓迎したいと思います。

 そこで、二つお伺いをいたします。

 まず、これらの国々に実館が設置されることとなった背景についてお伺いをするとともに、平成二十年度予算に盛り込まれた在モーリタニア大使館の実館設置、これについては諸事情によって設置が遅延をするという事態が起こっておると聞いております。予算は当然決められた年度内に適切に執行する必要があるわけですが、平成二十一年度予算に大使館の実館設置が盛り込まれているこの五カ国のうち、特に二〇〇八年七月現在で五十四人の在留邦人がいるルワンダ、これは情勢の悪化するコンゴ民主共和国と隣接をしているために、治安状況等が急激に緊迫化する可能性もございます。この五大使館実館の設置にかかわるスケジュールについてもあわせてお伺いをいたします。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘がございましたように、二十一年度予算で五つの新しい大使館を新設するという予定になっておるわけでございます。

 それぞれの国との関係について簡略に御説明いたしますと、まずパラオにつきましては、ミクロネシア地域に位置をしておるわけでございますが、政財界でも多くの日系人の方々が活躍をされている、我が国と長い歴史的なつながりを有する友好的な関係のある国でございます。また、水産資源の重要な供給地でもございますし、このパラオを初めとした太平洋諸国というのは、我が国の国際場裏における活動について、非常に強い、いろいろな面での支持基盤となっているということでございまして、この関係をさらに強めていきたいと思っておるところでございます。

 二番目のエストニア。エストニアについては、もう御承知のように、EU、NATOへ加盟をいたしまして、アフガンなんかでも非常な、いろいろな積極的貢献をやっているところでございます。それから、御承知のように、天皇皇后両陛下がエストニアに御訪問されましたし、パエト外相などの要人訪問もございまして、この二国間関係をさらに強化していく必要があると思っております。

 それから、三番目のキルギス、これは中央アジアの国になるわけでございますが、この国は、希少金属等にも恵まれた、いろいろな天然資源を多く有している国であるということ。この中で、我が国の資源エネルギー外交を展開する中で重要な位置づけがあろうかと思いますし、また、アフガン情勢、まさにアフガンに近接している国でございますので、いろいろな情報収集ということでも役割を果たしているところでございます。

 次に、ベナンでございます。ベナンはアフリカの西海岸に位置をしておりますけれども、九〇年代以降、非常に安定した民主主義国家として経済改革を進めているという国柄でございまして、アフリカ支援を我が国としても拡充していく中で重要な役割を持っている。

 それから、最後になりますが、ルワンダ、これは今特に御指摘がございましたが、長年アフリカにおけるグッドガバナンスの模範国であるということでございます。かつてはいろいろ紛争ももちろんあったわけでございますが、最近においては非常にいい政治、統治を行ってきている。あわせて、資源が豊かな中部アフリカのかぎを握っている国ということでございます。

 そして、実館設置のスケジュールでございますけれども、二十一年度予算に盛り込まれているわけでございますので、この予算案を成立させていただいて以降、可及的速やかに相手国政府との調整を始めていきたいというふうに思っておりまして、来年の一月一日になりますけれども、設置を目指しているところでございます。

 言及のありましたモーリタニアにつきましては、本年の一月一日からスタートをしたいと思っていたわけですけれども、昨年八月にクーデターがあったという中で、ちょっと難しい状況でありまして、今状況を見きわめているということでございます。

 最後に、言及のありましたルワンダ、これは近接するコンゴ民主共和国の情勢というものは我々も危惧をしつつ見守っているところでございますが、現時点においてはルワンダの情勢は安定をしているということで、予定どおり来年一月一日のスタートということでスケジュールを進めているところでございます。

伊藤(渉)委員 いろいろ緊急の問題も勃発することもあろうかと思いますが、また慎重かつ速やかに進めていただければと思います。

 次に、総領事館の廃止の話で少しお伺いをいたします。

 レシフェ、そしてジュネーブの両地には引き続き出張の駐在官事務所が置かれ、大使館とあわせて総領事館の業務を引き継ぐことになるとのことでございます。今回廃止することとされている在レシフェ、在ジュネーブの各総領事館の管轄区域における在留邦人の人数や日系企業数に大きな変化はもちろんございません。よって、両館廃止後の出張駐在官事務所は、政務、経済、広報文化等の業務を行わなくなるとはいえ、領事業務に関して言えば、両館が担っていた仕事の量は全く変わらないと思われます。

 そこで、ここも二つお伺いしますけれども、領事機能以外の公館機能が停止をされることによって、同地域における我が国のプレゼンスの縮小が懸念をされます。廃止後の両地域における経済活動、広報文化活動について、親公館である大使館はこれをどのようにフォローしていくのか。また、総領事館の廃止は、管轄地域に在留する邦人に不安を与える可能性がございます。総領事館の廃止の経緯や、廃止後における邦人保護、各種届け出の受け付け、緊急連絡等への対応に関する在留邦人への説明はどのように行われるのか。この二点についてお伺いいたします。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、二つの総領事館が廃止をされるわけでございますけれども、レシフェにつきましては在ブラジル大使館、それからジュネーブにおいては在スイス大使館の管轄のもとに、出張駐在官事務所を設置することとしておりまして、今御指摘のありました領事サービス、それ以外の日本の広報活動等につきましても、引き続き業務を実質的に継続していけるような努力をしているところでございます。

 また、在留邦人の方に対しては、不安をもたらさないようにということで、今までも日本人会を初めいろいろなチャンネルを通じて、こういった実質的に邦人の保護もしくはそれに関連する種々の活動というのは維持をしていきますということは適時適切に説明をしてきているところでございますし、今後ともそういう説明は続けていきたいというふうに思っております。

伊藤(渉)委員 ジュネーブなどにおかれましては、国際会議も多々行われる地域でもございますし、きめ細かな対応をよろしくお願いしたいと思います。

 次は、在外公館の合理化という点で御質問申し上げます。

 今回の在外公館の名称、位置、給与法改正案には、ブラジルのレシフェ、スイスのジュネーブに置かれている総領事館の廃止が今申し上げたとおり盛り込まれております。レシフェの総領事館の管轄地域における在留邦人数は千人強程度、ジュネーブ総領事館の管轄地域は二千六百人程度。近年、特に大きな変動はないと認識をしております。また、日系企業数は、それぞれ十八、三十ということで、これにも大きな変動は見られないわけでございます。

 従来、総領事館の廃止に当たっては、在留邦人数や日系企業数の減少が主な理由とされてきましたけれども、今回廃止することとされる総領事館については、必ずしもそのような傾向は見られず、グローバルな視点に立って、新たな必要性が生じている地域に公館を設置するための廃止ということかと存じます。

 近年、近隣国の日本大使館による兼轄とされていたアフリカ等の国に対して、実館を増設する動きが積極的に推進されることは喜ばしいことでございます。ただ、折からの厳しい財政事情にかんがみると、公館の増設を進めるためには、今回の在レシフェ、ジュネーブ各総領事館のように、既存公館の廃止を決断しなければならないケースは今後も多くなるやに考えられます。そうした観点から、平成十九年度から導入されているコンパクト公館の活用、これも有意義なことだと思います。

 一方で、公館の廃止や縮小等によって、我が国の相手国におけるプレゼンスの低下を招いたり、邦人保護の領事業務に支障を来したりすることは避けなければなりません。このような側面を維持しながら合理化を実現するには難しい判断が求められるわけですが、明確な戦略を立てて取り組んでいく必要がございます。

 今後、具体的にどの総領事館が廃止の対象となるのかを含め、在外公館の合理化に関する外務省の方針をお伺いしたいと思います。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど大臣からも御説明申し上げましたように、外務省としては、十年間で百五十大使館体制を確立したいという中期目標を掲げて努力をしてきておるわけでございまして、これは皆様からもいろいろ厚い御支援、御支持をいただいているところでございます。

 過去、二十一年度を含めまして、この三年度の間に十八の大使館と総領事館を新設するということで進めておるわけでございます。それに当たりまして、先ほど御指摘のあった二つの総領事館を今般閉鎖するわけでございます。これについてはなかなか難しい判断が必要だとは思いますけれども、この厳しい財政状況の中でいかに外交を効率的に行っていくかということを考えて、総体的に、出張事務所を設置することで対応ができるかなということも考えながら、幾つかの総領事館は廃止せざるを得ないということで、今年度予定をしております二つの総領事館を含めまして、四つ総領事館を廃止するということでございます。ある意味で、めり張りのきいた外交実施体制を整備していかなくてはいけないということでございます。

 今後、一体どういう総領事館なりを閉鎖していくのかということを現時点で確たる具体的な形で決めておるわけではございませんけれども、基本的考え方としては、効率化ということ、そして同時に、総領事館を廃止しても、在留邦人の方々に不安を与えない、不便を与えない、また同時に日本のプレゼンスは維持をしていくという工夫をしながら進めていきたいというふうに思っているところでございます。

伊藤(渉)委員 これもなかなか難しいことだとは思いますけれども、やってみなければわからないところも多々あると思いますので、やった後のフォローも含めて、よろしくお願いをしたいと思います。

 次に、在勤の基本手当、これについて、少し細かい話ですが、お伺いをしたいと思います。

 在勤の基本手当は、「在外職員が在外公館において勤務するのに必要な衣食等の経費に充当するために支給」をする、こうされております。また、外務省のホームページに掲載をされている在勤手当に関する資料では、在勤手当は、海外で勤務するために必要となる基本的な経費に充当するために支給、在外職員は、海外での勤務、生活基盤を各自が整備し、基礎的な物品の購入等も各自で行っており、そのための経費もこの手当が充当されるとのことでございます。

 このような法律上の規定及び外務省の説明に基づけば、在勤基本手当は、海外に勤務するに当たってそれなりの衣食の水準を維持し、また、生活基盤を整えるための必要経費であると解されます。

 しかし、その一方で、過去の政府答弁からは、在勤基本手当の使途として、法律には明記されていないものの、外交官の非公式な形での仕事相手等との会食をする際などに使用する諸経費も含まれているとされております。

 外交官が外交活動を行うに当たっては、相手国政府職員等と円滑な人間関係を構築することは不可欠でございます。そのために特別な出費が必要となることは理解をできます。

 一方で、「在外職員が在外公館において勤務するのに必要な衣食等の経費に充当するために支給」をするとの法律の条文からは、在勤基本手当の使途として、このような人脈構築や交流等の諸経費が想定されていると読み取ることはなかなか難しいと思います。仮に読み取るとすれば、「在外職員が在外公館において勤務するのに必要な衣食等の経費」の「等」の中に含まれると解釈するしかないわけですが、これは、血税を支出するための法律的根拠の説明としては余りにも不誠実ではないかと思います。

 加えて、外務省のホームページに掲載されている一般的な説明文からもこれを読み取ることは難しく、先述した政府答弁を除けば、在勤基本手当に対する法律条文と外務省の説明が使用実態と乖離して、とても説明がつかない状態に今なってしまっていると思われます。

 この在勤基本手当を初めとする在勤諸手当が外交官の活動に必要不可欠なものであるならば、その使途について、政府は国民に向けてわかりやすく公明正大に説明をしなければなりません。そのために、むしろ、法律の条文に人脈構築等の諸経費といった文言を明記することを含めて、在勤基本手当はこのような目的のために支給され、かつ適正に使われているということを、法的根拠にのっとり現実に即して説明できるように措置すべきであると考えますけれども、お考えをお伺いしたいと思います。

河相政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘のとおり、在勤手当につきましては、基本的に衣食住等の必要経費に充てるということでございまして、法律の中に、人脈構築等の諸経費という科目として、もしくは文言として書き込まれてはいないわけでございます。

 片や、御指摘のとおり、在外公館で我々が活動をするということ、それに当たっては、駐在をしている国の政府関係者、もしくはほかの外交団の人たち等々、民間の方も含めて、人脈をつくる、日ごろから親しい関係をつくっておくということ、これが基本になるというのは、御指摘のとおりでございます。

 その意味で、在勤基本手当の法律の中にこういうこともやれという項目が書いてあるわけではございませんけれども、ある意味で、在外職員の基本的心得として、常日ごろの日常生活の中で、在勤手当も活用しながら、いわゆるインフォーマルなつき合い、公的なつき合いは公的なつき合いとしてこれは別途経費的な手当ても行いながら、普通のプライベートな生活の中での人間関係の構築というのがやはり外交活動の基本になる、基盤になるということかと思っております。

 御指摘のように、法律の中に書き込むという考え方もあろうかと思いますけれども、現在の時点においては、やはり在外職員が、その基本的心構えとして、在勤手当をいただいている中で、それをうまく活用しながら、こういう人脈を構築していく努力を今後とも続けていくということで当たっているところでございます。

中曽根国務大臣 今、参考人から御答弁いたしましたけれども、やはり外交活動に資するように、また、この趣旨を十分に踏まえて在勤手当が使われるように、私たちとしても適切にできるように一層徹底していきたいと思っております。

伊藤(渉)委員 当然、仕事上必要なことですから、だれからも何も余計なことを言われることのないような形をとっていくべきという趣旨でございますので、その点も引き続き御検討をお願いします。

 通告の順番を少し変えまして、北朝鮮の問題を先にお伺いしたいと思います。

 三月十二日、北朝鮮が、国際海事機関及び国際民間航空機関に対して、四月四日から八日までの間に人工衛星を発射すると通報をしたこと、これが明らかになっております。IMOへの通報によると、北朝鮮は、運搬ロケットの切り離しに際し、部品等の落下が予想される危険区域として、一つは日本海の秋田県沖、及び二つが千葉県の東方二千百五十キロの太平洋上を指定しており、一九九八年のテポドン一号発射時と同様、我が国本土の上空を通過する可能性が高いわけでございます。

 北朝鮮が発射しようとしているのが人工衛星であれテポドンなどの弾道ミサイルであれ、その発射によって民間の船舶や航空機が危険にさらされることは避けなければなりません。通報を受けて、我が国では、海上保安庁と国土交通省航空局による注意喚起がなされたと承知をしております。

 民間船舶等への注意喚起を行うためには、通報を受けたIMO及びICAOから正確な情報を入手する必要があると思われますけれども、両機関は、北朝鮮の通報を受け、関係国に対する周知徹底等について具体的にどのような手続を現時点でとっているのか、まずお伺いをいたします。

宮川政府参考人 両機関からの通報の内容についてお答え申し上げます。

 国際海事機関につきましては、日本時間三月十二日夜、IMOの事務局から、日本を含むIMO加盟国に対して、北朝鮮当局による試験通信衛星の打ち上げのための事前通報があった旨の連絡がありました。この通報によりますと、北朝鮮当局は、四月の四日から八日までの間、毎日、日本時間で十一時から十六時までの間に、日本海及び太平洋の一部に危険区域を設定しております。

 また、国際民間航空機関、ICAOにつきましては、日本時間で十三日朝、この事務局から、日本を含むICAOの加盟国に対して、北朝鮮当局による通信衛星の打ち上げのための事前通報があった旨の連絡がありました。この通報によりますと、北朝鮮は、IMOに通報したのと同じ時間帯に、しかも同じ区域の上空を危険区域に設定しております。

 以上でございます。

伊藤(渉)委員 北朝鮮がIMO及びICAOへ人工衛星の発射を通報したことを受けまして、政府は、首相官邸に情報連絡室を設置するなど、警戒態勢を強化しているわけです。発射が実行された場合について、河村官房長官は、たとえ人工衛星であっても発射は国連安全保障理事会決議に違反をする、こう述べられまして、中曽根外務大臣も、我が国に被害が及ぶ場合はしっかり対応すると明言をされております。

 北朝鮮は、あくまで発射するのは人工衛星であるとして、国際社会の批判をかわすことをもくろんでいると見られますけれども、人工衛星の発射も弾道ミサイルの発射も技術的には同じである。地域の安定という観点からも、今回の飛翔体発射に向けた行動が弁護のしようのないものであることは、もちろん言うまでもございません。

 一方で、軍事評論家の江畑氏らは、宇宙条約への加盟や関係機関への通報によって、北朝鮮の打ち上げを他国が非難できなくなった、あるいは、正規の手続を踏まえている以上、迎撃などの対応も難しくなる等々が報道をされています。

 そこで、北朝鮮が人工衛星の発射を関係国際機関に通報したという今回の行動について、国際法上、我が国はどのような理論づけで非難を行うことができると考えているのか、御答弁をお願いしたいと思います。

鶴岡政府参考人 北朝鮮が現在述べております飛翔体の発射についての国際法上の位置づけでございますが、まず、全体の国際法の枠組みから申し上げますと、今日の国際社会における基本的な法規は、国際連合憲章でございます。安保理決議は、この国際連合の憲章に従って採択をされたものでございまして、御承知のとおりの二本の決議が全会一致によって採択をされている次第でございます。その二つの決議の中で北朝鮮によるミサイル関連の活動についての停止を求めているわけでございまして、これは、現在の国際法上、北朝鮮、すなわち国連加盟国であるところの北朝鮮に対する国際法的な法的拘束力を持った規範として成立をしている次第でございます。今回北朝鮮が行いましたIMOないしICAOに対する手続的な通報というものは、この安保理決議の規範に何ら影響するものではございません。

 したがいまして、仮にこれらの手続を正しく行ったということがあったとしても、安保理決議で求められている行動がそれによって排除されるという結果をもたらすものではございません。すなわち、実質的な問題は、北朝鮮による発射が、我が国を含む近隣国や、核、ミサイルの脅威に引き続きさらされている中での安全保障上の重大な挑発行為であるということであって、我が国としてはこれは容認できないものである、そういう点についても安保理決議の中に記されているとおりでございまして、形式的な一つの規範について手続を整えたからといって、実質についての法的評価が変わるものではないと考えております。

伊藤(渉)委員 であればなおさらのこと、国連安保理による緊急会合や、六者会合参加国のうち北朝鮮以外の五カ国による合同非難の声明の発出、こういったことを通して北朝鮮に対する有効な圧力をかけていくべきだと思います。

 国際社会が一致団結して北朝鮮への強い姿勢を示し、発射を阻止するための方策について、大臣の見解、取り組みあるいは今後の見通しについてお伺いをしたいと思います。

中曽根国務大臣 北朝鮮によりますミサイル発射の問題につきましては、かねてからといいますか、そういう兆候があらわれましてから、あるいはそういう表明が行われましてから、地域の平和と安定を損なうようなことはされないようにと自制を強く求めてきたところでございます。

 関係国とも協議を行ってきております。例えば、私自身が米国や韓国、また中国といいましたそれぞれの外務大臣との間で、このミサイル問題を会談の際にも取り上げ、そして、北朝鮮が緊張を高めて地域の平和と安全を脅かすような行動はとるべきではないということで一致をし、また、その旨は対外的にも明確にしてきているところでございます。また、去る十六日には、近隣諸国ではありませんが、英国の閣外相とも面談をいたしまして、英国との間でもこういう点について一致をし、今後とも連携して対応していくことを確認したわけであります。

 また、さらに、北朝鮮に対しましては、北京の大使館のルートを通じまして、直接こういうことを強く伝達してきているところでございます。

 いずれにいたしましても、我が国といたしましては、引き続いてアメリカや韓国等とも緊密な連絡をとって、そして、発射を控えるように、そういう点に今全力で取り組んでいるところでございます。

伊藤(渉)委員 引き続き、どこまでも発射をさせないための取り組みを進めていただきたいと思います。

 また、きょう、時間の関係でちょっと質問できませんでしたけれども、在外選挙のことについて、また改めて総務省の方には機会を得て質問させていただきたいと思いますので、本日は御容赦いただきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

河野委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一です。

 在外公館の法改正についての質疑を行わせていただきます。

 昨年もこの同じ法案で質疑をさせていただいて、あのときは、為替の変動、これがやはり在外公館の手当の額にビビッドに反映されているのかどうか、こういったことを聞きまして、ことし、聞くところでは、財務省によると、まあ額を予算において確定する期間を二カ月に延ばしたんだというようなことも聞いておりますが、まだまだ改善の余地ありというふうにも考えております。

 また、財政事情が厳しい中、研修員手当では、他国からの留学生や留学国で入学している学生との生活レベルの比較など、これは民主党の外務防衛部門会議でも指摘をされております点がありますので、こういった点も、委員会審議を通じて、政府から、またこの後の同僚委員からも説明を求めていきたいと思っておりますが、民主党とすれば、賛成ということの方向できょうは審議に当たっているところでございます。

 そこで、詳しく在外公館にかかわるところ、それぞれ国土交通政務官、防衛政務官もお見えでございますので、まず、タイ空港騒乱脱出についてということで伺いたいと思います。

 御記憶だと思いますが、昨年十一月の二十五日、タイのスワンナプーム国際空港が占拠をされて、飛行機が飛べなくなったということでありまして、邦人が六千人から七千人、そこで足どめを食った。連日、ホテルでの模様とか空港での模様とか報道されていたわけでありますが、これについて、現地での在外公館の対応、また関係省庁の対応などをまずはお聞きしてまいりたいと思っております。

 十一月二十五日に占拠されてから、お手元に資料がありますように、十一月二十九日から十二月三日まで、臨時便が百二十キロ離れた軍用飛行場であるウタパオ空港から日本に向けて飛び、この七千人の方々が帰国されたというのが手元の資料でもございます。また、二ページ目には、在外公館のタイの大使館のニューズレターというか、ホームページ上の大使館からのお知らせに当たるんでしょうか、それから、同じく在タイ日本国大使館の対応、特に情報提供、共有についてということで三ページ目に資料がございます。特に、こうしたタイ空港の騒乱について、邦人の帰国について、このときを振り返ってお話を伺いたいと思います。

 まず、これを見ていただくと、七千人が五日間で帰国をするということでありますので、平均すると千四百人、もうちょっとざくっと言えば、大体アッパー二千人ぐらい、ああいった騒乱状態の中で臨時便を出すについては、これが一つ限界だったのかなということが教訓としてあると思うんです。これからこういったことというのはないとも限りませんので、今回の日本への帰国便を就航させることというのは、一つ教訓にしていく必要があると思うんです。

 まずは国交省、いかがでしょうか。今回のタイでのこうした案件、これをどのように今振り返っていられるか、また教訓とされているか、お答えいただけますか。

岡田大臣政務官 ただいま御指摘のありました、昨年十一月二十五日、タイ・スワンナプーム国際空港の閉鎖に伴いまして、日航、全日空及びタイ国際航空の三社が、御指摘のウタパオ空港等を利用して、計二十六便、約七千人の旅行者を輸送したところでございます。旅行会社各社も、これらの臨時便等を利用して旅行者が帰国できるように手配を行うとともに、日本旅行業協会を通じて、国土交通省及び外務省に状況の報告を行いました。

 国交省としても、各事業者と連携をとりつつ、成田空港に特別な発着便を確保するなどして旅行者の円滑な帰国を推進したところでございまして、今回、おおむね順調に帰国という目的を達し得たと考えております。

武正委員 外務大臣でよろしいでしょうか。

 今回のタイからの帰国、これを、今スムーズにという国土交通省の認識がありましたが、外務省としてどのように認識をされているのか、またこれをどのように教訓として考えておられるのか、あるいは在タイ日本国大使館の対応、ちょうどこれは在外公館の法律なものですから、現地の大使館の対応について、それがうまくいったのかどうか、こういったところも含めて御所見を伺いたいと思います。

中曽根国務大臣 今もお話ありましたけれども、タイ空港の事態に対しましては、ウタパオ空港から臨時便を運航したわけでございますけれども、あのような状況の中で全体的にはスムーズにいった、そういうふうに思っております。

 タイの在タイ日本国大使館では、まず邦人援護をしっかりやらなければならない、そういう観点から、スワンナプーム国際空港や、それからウタパオ空港、また邦人の皆さんがお泊まりになっておられるタイの宿泊のホテル、こういうところに館員も派遣をいたしまして、邦人の帰国に対する努力を図ったわけでございます。

 また、民間航空会社の御協力もいただきまして、また大きなトラブルもなく、無事に多くの方が帰国できたということは本当によかった、そういうふうに思っております。

武正委員 七千人の方に対してのフォローというか、今、それぞれ両省は、うまくいったというふうに言っておられますが、この七千人の方々、やはり大変な混乱があったと思うんです。

 資料の三ページを見ていただくと、大使館への問い合わせ件数ということで、まず電話については、一日四百三十件あったであろうと見込まれる。大使館への来訪照会件数は、一日当たり数件から十件。それから、特に、錯綜状態で邦人への対応を最優先して実施したことからという空港での照会件数などもかなりあったということでありますが、ただ、これはいずれも集計していないということなんですね。

 確かに大変だったと思うんですが、こういったときこそ、この後のいろいろ教訓というか役立つわけですので、ここら辺もちょっと残念だなというふうに思うわけですが、とりわけこの混乱を来した中で帰国の足どめを食ったこの七千人の方に対するフォローとかアンケートとか、こういったものを、まず国交省さん、やっておられるのかどうか。外務省さんもいかがか。お答えをいただきたいと思います。

岡田大臣政務官 今のところ、アンケート等の実施は行っておりません。

西村大臣政務官 アンケートは実施しておりませんが、その後、部内で反省会もやりまして、どういう教訓があったのか、そんなことをいろいろ検討しております。

 当時、私のところにも直接、どうなっているんだという電話をいただきまして、病人というか、通常は別に問題ないんですけれども、薬を三日分しか持っていっていなくて、その後あと二日間いなきゃいけない、どうしたらいいんだというような相談を受けましたので、そうした方を優先して帰国させるとか、そういったさまざまな面で教訓を整理して今後対応していきたいというふうに思います。

武正委員 国交省さんはアンケートを実施されていないということなんですが、これは、資料の三ページを見ていただくとわかるように、邦人の宿泊ホテルに、例えば日航さんとか全日空さんがお客さんを宿泊先に案内したりとか、タイ航空もこういった形で対応したりということなんですが、例えば航空会社あるいは当然旅行代理店のそうしたツアーで行っておられる方々もいたと思うので、やはりこれも所管ということですので、航空会社あるいは旅行会社、旅行代理店に対してのヒアリング等はやっておられますか。

岡田大臣政務官 ただいまの先生の御指摘もいただきまして、こうした航空会社やあるいは旅行会社からヒアリング等、今後行ってまいりたいと思います。

武正委員 一ページに戻りますが、外務大臣、臨時便で一日二千人ぐらいしか出国できなかった、これは一つ、やはり教訓になってくるのかなと思うんですね。

 タイの在留邦人というのは、外務省さんによりますと四万二千人なんですね。ただ、この七千人の方々というのは在留邦人ではなくて旅行客でありますので、旅行客でさえ七千人を日本に帰国させるのに一日せいぜい二千人ということが今回露呈したわけです。その在留邦人がもし帰国しなければならないといったら、タイにおいても大変なことになるわけなんです。

 今回のこの二千人、うまくいったというふうに言われましたが、やはりこの現実というものをどうとらえていくのかというのは大変大事だと思うんですが、この二千人ということについてはどのように見られますか。少ないということですね。ですから、例えば、タイの在留邦人は四万人いるわけですから、この七千人は旅行客ですから、もし在留邦人まで何かということになると、二千人ということで果たしてどうなのか、何か改善の余地があるんではないかという指摘ですが。

中曽根国務大臣 まず、私、先ほどスムーズで問題なかったというような発言をいたしましたけれども、空港に閉じ込められた方々とか旅行の日程が狂った方々とか、そういう方々は本当に大変だったと思っております。それをまずしっかりとお話ししたいと思います。

 今、いろいろ御答弁しておりますように、今委員もおっしゃいましたように、今回のこの事態というものを大いに参考にいたしまして、今後またそういう事態が起こることはもちろんないことを願いますけれども、そういうときのために、今後も、国交省、これは私の所管ではありませんが、外務省、また政府としてもそういう事態に対する検討というものは十分やるべきだ、そういうふうに思っておりまして、在留の方もということになりますと、これは大変また混乱も予想されるかもしれませんし、民間航空以外での対応とかいろいろ、仮定の話になりますが、今後幅広くいろいろ検討しておく必要があろうか、そういうふうに思います。

武正委員 防衛省さん、自衛隊法で在外邦人の輸送ということは法律にも明記されているわけですが、今回のこのタイ空港騒乱について、防衛省として何か準備を検討されたことがあるのか、あるいは、過去のこうした邦人の輸送の実績について触れていただければと思います。

岸大臣政務官 在外邦人の救出についてでございますけれども、委員の御指摘にもございますとおり、自衛隊法第八十四条の三で規定をされておるところでございます。

 昨年の十一月のこのケースについては、法律にもございますけれども、外務大臣からの依頼に基づき動くことになっておりますが、このときにはそういうことにはなっておりませんので、いろいろ情報の収集等はございましたけれども、具体的にはこのときには発動はされておりません。

 過去のそういうケースにつきましては、実際に平成十六年の四月にイラクの邦人の輸送を行ったケースがございます。これは、イラクからクウェートまで自衛隊のC130輸送機で邦人等を輸送したというケースがございます。そのほかは、いろいろと検討をした、あるいは準備を行ったということはございますけれども、具体的に邦人を乗せて輸送をしたというケースはございません。

 以上です。

武正委員 シンガポールでの待機とか、いろいろ準備されていることは過去あったんですが、これも外務大臣の要請がなければ準備できないということでしょうか。

岸大臣政務官 それぞれ、外務省の準備行為としての移動の依頼というものを受けた上でその準備を行ったということでございます。

武正委員 そこで次に、新型インフルエンザに話を移していきたいと思います。国交省さんはここで結構ですので。

 この新型インフルエンザの対策というのは、お手元に資料がありますように、これは外務省さんの資料で、四ページ目にありますが、政府も対策本部をつくり、外務省も緊急対策本部をつくっております。外務省さんのところでは、在外邦人の帰国手段の確保、もちろん邦人に対する情報提供、これは先ほどのタイでもやはり同じでありますが、在外公館での情報提供それから帰国手段の確保ということになります。

 今、タイの事例が、二千人ということが一つ出てきたわけなんですけれども、先ほど外務大臣、在留邦人までというと混乱を来すというようなお話がありましたが、当然、新型インフルエンザの万が一の発生のときの在外邦人の帰国手段の確保ということを考えなければならないわけですが、今回のこのタイのケースもやはり私は参考にしていくべきだというふうに思うんですね。

 それぞれ、経団連とか、あと与党PTでも、自衛隊機以外も、例えば海上保安庁の飛行機なども活用ということも言っておられるようですが、私は、やはり改めて、今回のこのタイの案件を参考に、新型インフルエンザ発生に対する在外邦人の帰国手段の確保に生かしていくべきだと思うんですが、この点はいかがでしょうか。

西村大臣政務官 武正委員御指摘のとおりでありまして、今回の事例を参考にして、我々もより一層いい形で邦人の保護に、帰国支援できるように努めていかなきゃいけないと思っております。

 御案内のとおり、新型インフルエンザについても、さまざまな情報をホームページに流しながら、発生状況等、疑いも含めて流しながら、在留邦人等に対して、退避についてあらかじめ検討することを勧める旨の感染症危険情報を発信することにしておりまして、自己の判断によってまず退避、帰国しようと希望する邦人に対しても、定期便の運航を継続する航空会社等の情報提供を行うなどの支援を行いますし、いざ感染拡大ということに万が一なった場合、民間航空機の定期便が運航を停止する場合もあり得ますので、日本への帰国を希望される邦人については、感染拡大防止の対策を講じつつ、チャーター機あるいは自衛隊機、おっしゃられた海保の飛行機も含めて、さらに言えば、陸路、海路、あらゆる手段をとって可能な限りの支援を検討してまいりたい、こんなふうに思っております。

武正委員 防衛省さんも、きのうですか、新型インフルエンザ対策を発表されたと思うんですが、その中にも自衛隊機による邦人の輸送ということを書いておりますが、防衛省として、この新型インフルエンザ対策について、特に邦人輸送について、考え方、計画の一部をお示しいただけますか。

岸大臣政務官 新型インフルエンザ対策につきましても、先ほどと同様の自衛隊法第八十四条の三に基づきまして邦人輸送ができる、こういうことになっています。条件としては、同じように、外務大臣からの指示、依頼があるということでございます。

 今委員からもお話ございましたとおり、昨日、防衛省としての新型インフルエンザ対策計画が策定されたところでございますけれども、インフルエンザという状況がございますので、輸送の手段といいますか輸送のルート、そういったことに安全が確保されていることに加えて、当然ながら飛行機に医師を同乗させなければなりませんし、また搭乗前に乗せる方々の感染の有無についてのスクリーニングを行うこととしておるところでございます。また一方で、搭乗してまいります自衛隊員につきましても、感染症の予防措置を施すというようなことになっております。

武正委員 防衛省さんの場合は、政府専用機ということで、ジャンボジェットだと思うんですが、改良されていると思いますが、政府専用機での邦人の輸送だとすると、一体何人輸送できるのか。それから、そのほか、例えばC130輸送機なども活用できるのか、C130輸送機の場合は何名輸送できるのか。お答えいただけますか。

岸大臣政務官 政府専用機の場合は、大体百四十人の輸送が可能でございます。あと、C130を使う場合には約八十人ということでございます。

武正委員 外務大臣、さっきの一ページを見ていただくと、ジャンボなどは三百人、三百二十四人あるいは三百八十二人ということで、今の政府専用機の百四十名とかC130の八十名に比べると、やはり輸送力が民間のジャンボはまさっているわけですね。当然、自衛隊機あるいは海上保安庁機あるいはまた船ということも視野に入ってくると思いますが、そうしたことも踏まえてやっていかなければならないということだと思います。

 一つは、去年、四川の大地震のときに、自衛隊機によって物資を輸送しようというような検討がありましたというか、そういう報道があります。ただ、これが結局行われなかったわけですけれども。

 例えば、お隣の中国、これは在留邦人十三万人、旅行客に至ってはタイよりも格段に多いことが予想されますので、こうした点からいっても、新型インフルエンザの万が一の対応のときのそうした自衛隊機あるいは海上保安庁機などの邦人の輸送といったことも、これは今、この間ちょうど外相会談もやってこられていますが、中国政府ともそうした緊密な連絡、去年ちょっと自衛隊機で物資の輸送で混乱があっただけに、やはり事前にこうした点も進めておく必要があるのではないかと思うんですが、外務大臣、いかがでしょうか、御所見を。

中曽根国務大臣 緊急事態といいますか、邦人の安全保護のためには、万が一そういうような事態になったときにはあらゆる手段を考えなければなりませんが、これは、現地の国との関係、政府との関係、あるいはいろいろな法律、いろいろな面があろうかと思います。そういう面を十分にクリアしながら、効率的に邦人の保護ができるようなことを考えなければなりません。

 いずれにいたしましても、今回の、委員がおっしゃっていますようなああいう事態を参考にいたしまして、今後いろいろな面での危機管理等について検討をやっていくことが大事と思っておりまして、そういうような形で進めていきたいと思っております。

武正委員 防衛大臣政務官、ここでお引き取りください。ありがとうございます。

 続いて、そうした意味で、今政務官も、在外公館での情報提供、情報共有が大事なんだ、新型インフルエンザ対策でもしっかりやっていきますというお話だったんですけれども、在外公館での情報提供、情報共有手段の充実について、例えばホームページあるいはメールでのやりとり、あるいはメールマガジンなどなど、これが充実しているのかどうかということについてはいかがでしょうか。

西村大臣政務官 お答え申し上げます。

 在外公館から在留邦人に対する情報提供、情報共有の手段として、今御指摘ありましたホームページあるいはメールマガジン等のシステムを有しておりますけれども、ホームページにつきましては、通信環境がどうしても悪いところはなかなか難しい面もあるんですけれども、随時、情報掲載を拡充しているところでありますし、在留邦人向けのメールマガジン配信システムについても、既に七十公館まで配信可能な状態になっておりまして、これも随時、情報を配信することにしております。この在外公館のホームページは、本省のホームページともリンクしておりますし、本省からの情報もあわせて伝達することができるものというふうに思います。

 それから、二十年十一月、昨年十一月ですけれども、大規模災害等の緊急時に在留邦人に対して在外公館から一斉に情報発信するシステムの運用も開始をいたしまして、新設公館を除いたほとんどの公館で、本省とオンラインで結ばれているということが前提になりますけれども、運用を開始いたしまして、さまざまな努力を今しているところでありますけれども、今後とも、外務省といたしましては、在留邦人向けに効果的な情報発信の仕組みを随時充実、検討していきたいというふうに考えております。

武正委員 これから、総務省の行政監視の通知、これに基づいて、以下いろいろ質問をさせていただきたいと思うんです。

 この中で、在留邦人五百四十人に聞いたところ、メールマガジンなどの電子情報提供サービスを利用している人は百四十二人、二六%、利用したことがない人は三百八十人、七〇%、うち、知らなかった人が二百二十六人、こういったことが出ておりました。

 また、在外公館におけるホームページの充実を図るための支援体制が不十分と。今七十公館ですか……(西村大臣政務官「メールマガジン」と呼ぶ)メールマガジンがね。だから、ホームページはまだ……(西村大臣政務官「百七十一です」と呼ぶ)百七十一。ただ、そういう支援体制が不十分という指摘があるわけであります。

 あと、今、メールマガジンなんですけれども、メールアドレスの把握ということが、在留届の方に記載欄があるわけですので、ここら辺、話を聞きますと、メールアドレスを把握している割合が三、四割というようなことも聞いていますので、まだまだ御努力をいただかなければならないなと思っております。

 そこで、資料の二ページをごらんいただきたいんですが、これが先ほどのタイの大使館からのお知らせなんですけれども、問い合わせ先に電話とファクスしか書いていないんですね。これはなぜなんだろうということで、三ページに書いてあるように、電話は六名で対応しましたとか言っているんですけれども、やはりお話し中にもなってしまいますし、またファクスも、何かニュースで出ていましたが、ファクスで送ったけれども見ていなかったとかいうようなことがあったりしますので。

 せっかく今、ホームページ、メールマガジン、それから在留邦人のアドレスを在留届に記載させている。在留届を見ると、これは義務づけております。また、在留届を出しなさいということで、パスポートの裏にもそのことが記載をされている。

 ですから、なぜこのときにここにアドレスが書いていなかったのかということを、もしおわかりでしたら伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。

西村大臣政務官 私も今気がつきまして、確かにおっしゃるとおり、不親切だなというふうに思います。メールアドレスも記載をして、メールでの問い合わせもできるように、これから改善をしていきたいと思いますので、委員の御指摘をしっかり踏まえて対応したいと思います。

武正委員 そこで、今の総務省の通知で、パブリックコメント、これは在外公館というより外務省全体なんですが、これが、他省庁は年間二十件ぐらいやっているんだけれども、外務省の場合は、十三年度ゼロ件、十四年度一件、十五年度二件、十七年度四件、十八年度未実施ということで、外交は内閣の専権事項と憲法にうたわれているからと言われるのかもしれませんが、オール・ジャパンの外交ということをうたっておられる外務省ですので、こうした在外公館での情報提供、情報共有、これをもっともっと着実に実施するとともに、やはり本省でのこうしたパブコメ、これをもっと積極的にやるべきだと思うんですが、この点はいかがでしょうか。

西村大臣政務官 御指摘のパブリックコメントの件ですけれども、御案内のとおり、他省庁に比べて件数は事実少ないんじゃないかというふうに私も思います。ただ、外務省が所管する法律自身が、法令等がそもそも少ないということがあるんだと思いますし、その改正等の件数も少ないんだというふうに思います。

 外務省としては、必要な場合は、行政手続法に求められている場合には、あらかじめ公示して広く意見を求めるということになっておりますから、適切に実施してきているものというふうに考えますけれども、いずれにしても、今後とも、この手続を十分、しっかり活用しながら、公正の確保、透明性の向上を図ってまいりたいというふうに思います。

武正委員 外務大臣は余りお答えいただけないので、いかがですか、パブリックコメントを、今政務官は法案が少ないからと言ったんですが、パブリックコメントというのは法案だけ聞くんでしょうか。広く国民の皆さんから御意見を伺うんだから、外交政策についてどういうふうに考えるか。国民の皆さん、しかも在留邦人も百万人を超えているし、海外に渡航されている日本人は二千万人ですか、大変な方々、たくさん行っていますよ。そうすると、世界で皆さん活躍していますから、商社とか、ビジネスマンもそうですよね、いろいろな情報を持っていますし、在外公館でのいろいろな問題点もたくさん持っているというか、よくわかっているわけなんですよ。

 そうした人たちのアイデアをもっともっとパブコメで聞いて、それで、さっき言った在外公館の情報提供、情報共有だって、アドレスがないとかいろいろ問題点があるわけですから、もっと積極的にパブコメをやっていくべきだと思うんですが、外務大臣、いかがでしょうか。

中曽根国務大臣 今政務官からも御答弁申し上げましたけれども、法律の関係はこのパブリックコメントで、行政手続法にのっとって外務省としてもやっております。確かに件数は少のうございますが。ただ、一般からのいろいろな御意見とかそういうものは、日ごろからホームページ等で外務省にもまたそういうような意見等も来ておるわけでございますし、また、外務省のホームページでも、外務省の考え等も広く国民の皆さんにお知らせをしているわけでありますが、至らない点があるとすれば、そういう点はまた改善をしていきたい、そういうふうに思っております。

武正委員 ぜひ、お取り組みをお願いしたいというふうに思います。

 続きまして、これも前も指摘をさせていただいて、外務大臣にもお答えをいただいたんですが、在外公館でのODA。これは五ページ、これはこの間も取り上げたメキシコでの、ODA施設火災、報告せず、国際協力銀行、会計検査院にという案件でしたが、このときも、話を聞いてみると、メキシコでの大使館職員、同行して現地に行ったりもするんですけれども、外務省としても把握していなかったというようなことなんですね。

 やはり、ODAについて、在外公館の裁量範囲の拡大について、先ほど触れました総務省の通知でも、効率化を図る余地がある、こういうような指摘をしているわけなんですね。実際に、先ほど触れましたように、公館の職員に聞きますと、特にODAに当たっている、調査した館員四百四名のうち従事している六十五名に聞きますと、効率化を図る余地があるというようなことを言っている、こういうふうに総務省の指摘もあるわけなんですけれども、ODAにおける在外公館の役割は、やはりODAの適正な執行ということでは極めて大事だというふうに思っております。

 資料六ページ、七ページを見ていただくと、これはアルバニアとの借款について記載をしているものなんですけれども、六ページの一番最後の行です、「借款が適正にかつ専ら計画のために使用されること。」、それから七ページに、「借款に基づいて建設される施設がこの了解に定める目的のために適正にかつ効果的に維持され及び使用されること。」、こういったことが記載されているだけなんですけれども、八ページをごらんください。これは、JICAが借款を結ぶときに、円借款基本約定ということで、ここにありますように、「国際協力機構に対してすべての情報を提供するか又は提供されるための措置をとるものとする。」ということを相手先と約定を交わしている。

 それから、九ページ目は、これはアメリカのGAOでありますが、これについても、「外国援助の表示及び公表努力に関して各機関の資料を収集し分析したり、」等、現地事務所にも、あるいはNGOなどに対しても調査を実施している。十ページ目、USAIDについては、「説明責任が確保されなければならない。」と。こういったことを事前に、相手国と援助を交わすときにしっかりと文書に記入をしているわけであります。

 私は、こういったことを記入した上で、やはり在外公館の職員がもっともっとこのODAの適正な執行に関与していくべきだというふうに思うんですが、この点について、外務大臣、いかがでしょうか。この間も聞いた質問です。

中曽根国務大臣 我が国は、ODAという形で世界各国に対しましていろいろな支援を行っているわけですが、これはやはり国民の税金をもとに行われているわけですから、適正な執行が行われるということはもう当然のことでございます。

 そういう意味で、委員もおっしゃいましたように、在外公館がODA等に対しまして、これで適正な執行が行われているかどうかというようなことも含めて、やはりしっかりとした現地での体制、そういう我が国の政策にかかわっていくということは大事だと思っております。

 今御指摘がありましたけれども、外務省としては、現地のそういう役割とか体制の強化を今図っているところでございますが、具体的には、現地の大使館を中心にいたしまして、JICAの事務所などの参加も得て、現地ODAタスクフォース、こういうものを立ち上げております。

 現在、七十八カ国でこのようなタスクフォースを立ち上げておりますけれども、このタスクフォースは、援助方針策定に当たってまず主導的な役割を果たしておりまして、従来以上に多面的で、またかつ密接な形で、被援助国の政府との協議や、あるいは他の支援国また国際機関、NGO、そういう機関との連携、また当該国の開発に係る情報の収集また分析、そして過去の援助のレビュー、こういうものが行われるようになっているところでございます。

 平成十八年に設置をされました海外経済協力会議、それからODAの関係府省の機能、役割の調整に係る会議を活用いたしまして、他の省庁やまた政府関係機関等との連携を強化しているところでございます。

 外務省といたしましては、引き続いて、こうした取り組みを通じまして、ODAの採択とかまた実施、これの効率化に一層努めていく考えでございます。

武正委員 また、在外公館にはそれぞれ三名ずつ予算執行職員の方がいますので、総務省が指摘するように、やはり会計研修というものに努めてもらいたいというふうに思います。

 最後に、資料の一番最後ですけれども、外務省政務本部というものが既に設置をされる。政と官の適正な役割分担と協力関係を維持するため、文書作成義務それから政務本部の設置の二事項が外務省改革行動計画、十四項目百六十事項であったわけですが、お手元のような資料を出してもらっていますが、何か開催回数が非常に減ってきているというのがおわかりいただけますか。これが今の実情なのか、なぜ減ってきたのか、お答えをいただきたいと思います。

西村大臣政務官 私も、昨年八月に就任をいたしまして、その後、九月に再任をされましたけれども、二度出席をいたしました。重要案件について、アフガニスタン、パキスタン情勢とか、あるいは海賊問題とか、邦人の保護の案件とか、サミットの案件等々、その場ではそんな議論をさせていただきました。

 その後、率直に申し上げて、いろいろ日程の調整、これは選挙があるかもしれないというような状況とか、さまざまな状況の中で日程調整がうまくいかなくて、政務本部としてしっかり開催したのは回数が減ってしまったわけでありますけれども、事実上、常に、しょっちゅうというか毎日のように大臣、副大臣、政務官は顔を合わせますので、その場で随時連絡をとり合ってやっておりますので、結果的に減ってしまっておりますけれども、しっかりと対応しているということを申し上げたいと思います。

武正委員 外務大臣、いかがですか。回数が、平成十八年度二十八回、十九年度十八回、二十年度五回ということで、大臣も過去に数回出席したことがありますということですが、やはり、政治主導、また政治家の皆さんが外務省の中でリーダーシップをとってもらうというような意味合いも込めたこの政務本部、私はもっともっと活発に開催すべきだと思うんですが、大臣としての御所見を伺います。

中曽根国務大臣 今政務官が御答弁申し上げましたけれども、国会日程等の、特に外務省の場合はみんな海外に、副大臣、政務官の皆さんも飛び回っておられますのでなかなか日程調整は難しいのですが、この本部の重要性にかんがみまして、それができるだけ機能を果たすように今後努力していきたいと思います。

武正委員 以上で終わります。

河野委員長 次に、松原仁君。

松原委員 日本の外交戦略というのは、特に、貿易立国であって、資源を輸入して製品を輸出する、昔風に言うならば加工貿易で成り立っている国であります。その日本において、特に外交戦略、多くの国家と極めて友好な関係にあるということは極めて重要な戦略だと思いますが、その根本戦略、外交戦略としての在外公館をどのように設置する方針なのかという基本的なことをまずお伺いしたいと思います。

中曽根国務大臣 現在、外務省といたしましては、在外公館の数でいいますと、主要国並みの百五十大使館体制をしくべく努力をしております。そして、それによりまして外交実施体制がさらに強化されるようにということで取り組んでいるところでございます。

 そういう考えのもと、この在外公館の設置に当たりましては、主として、一つは安全保障などの政治的な重要性、それから資源エネルギー獲得を含む経済的な重要性、さらに企業支援やまた邦人保護の観点、そして国際場裏での支持獲得などの要素を総合的に勘案をしているところでございます。また、二国間の貿易とかあるいは投資量、そして在留邦人、進出企業の数、こういった指標も参考にして、今、在外公館の設置を行っているところでございます。

 今後も適切に判断をして配置をしていきたいと思っています。

松原委員 百五十大使館体制をつくるということで、安全保障、そして資源エネルギーの獲得、当然、邦人保護等も含めて、貿易関係も含めてやるというのは極めて当たり前というか、日本のような国家では重要でありますが、現状はどうなっていますか。

河相政府参考人 お答えいたします。

 主要国と比較いたしまして、我が国の在外公館の数というのは、現実、現在のところ、少ない状況にございます。このもとで、今、大臣からも御説明したように、百五十大使館体制を目指してこれをふやしていきたいということで、皆様の御支援もいただきながら、増加に向けて努力をしているところでございます。

松原委員 今は幾つありますか。

河相政府参考人 現時点におきまして、我が国の大使館の数は百二十七でございます。それ以外に政府代表部というものが七つございます。これは、ほかの国、例えば主要先進国でいいますと、ドイツは大使館が百四十九、政府代表部が十二。アメリカでございますと、アメリカの場合は大使館が百六十七、政府代表部が十五。アメリカが一番多うございまして、フランスが百五十九の大使館と十八の政府代表部ということでございまして、我が国は、主要先進国の中で数としては少ないというのが現状でございます。

松原委員 中国はどうなっていますか。

河相政府参考人 中国につきましては、大使館が百六十六、政府代表部が八というのが現状でございます。

松原委員 百五十の大使館体制をつくるという、この百五十というのは、どうして百五十になったのか。中国が百六十六、こういうことでありますが、我が国のGDPは今中国より大きいわけですから、この百六十六を超える数字というものも、当然、百六十六を一つのめどにして超すという戦略が当初からあってもよかったのではないかと私は思っております。

 なぜ百五十になって、なぜそれでも、例えばアメリカは世界のGDPの第一位ですから、それで判断するだけではありませんが、中国の百六十六を超えるという発想がないのか。その辺の説明を大臣、ちょっとお伺いしたい。

中曽根国務大臣 この百五十というのは、当面のと申しますか、一つの区切りの目標の数字であろうと思います。もちろん、すべての国に在外公館を置いて活発な外交活動をやりたいというところでございますが、予算の面等もあると思いますし、できれば、今委員おっしゃいましたように、中国等と同等ぐらいにできるだけ早くしたいな、そういうふうに思っております。

松原委員 百五十体制は、いつがめどでこれは実現するのでしょうか。

河相政府参考人 十年間で百五十体制を目指したいということで、始めましたのは、ことしが三年度目ということでございます。

松原委員 今大臣、百六十六の中国を超えるぐらい頑張りたいとおっしゃいましたが、それは大臣の言葉ですから重く受けとめなければいけないのでありますが、いつごろのめどでしょう。

中曽根国務大臣 これは国会の御理解と御支援をいただいて、予算面もあります。今の百五十をとにかく早期にクリアするということだと思います。

 中国の百六十六ということにこだわらず、一館でも多く設置できるように努力はしていきたいと思っております。

松原委員 こだわる必要はないわけでありますが、今の社会というのは国益が相互にぶつかり合う状況であります。国連におけるさまざまな決議においても、常に多数派工作を、議会でやる以上に、国際社会は公職選挙法もありませんし、すべての手法を使ってやるわけでありますから、そのときに、やはり相手の、つまり、日本が共存共栄をしながらも日本の国益を主張しようとする場合に、直接その利害をお互い調整を理性的にしなければいけないとしても、利害を持って議論をするその国の在外公館の数を超えるというのは、百五十というふうな一つのめどではなく、戦略的に必要だと私は思うんですが、御所見をお伺いしたい。

中曽根国務大臣 おっしゃるとおり、単に数ということだけではなくて、まさに戦略的配慮を持って在外公館については配置をしていくべきと、私もそういうふうに考えております。

 私どもとしては、先ほどから申し上げておりますけれども、数多くの在外公館を設置して活発な外交活動、そして日本の国益を守るための、さらに発展のための活動をしたいと思っておりますので、ぜひ国会の皆さんにも御支援いただきたいと思いますし、私どもも、今百五十、十年ということでございますが、それに加えて今後数多くの公館ができるように、また御指導いただいてやっていきたいと思います。

松原委員 中国が百六十六ということでありますが、従来、中国の在外公館の数というのは、飛躍的にこの間伸びたのか、それとも昔からこれぐらいあったのか。かつて日本の方が中国よりも在外公館が多かったのではないかというふうに言う議論もありますが、実際はどうなのか。その辺の経過をちょっと教えてほしいと思います。

河相政府参考人 現在、申しわけございません、必ずしも正確な資料を持ち合わせておりませんけれども、過去というのが一体どこまでさかのぼってということによって、かなり昔までさかのぼれば日本の方が多かったということもあり得ようかと思いますが、ちょっと残念ながら、現時点で資料を持っておりませんので、また改めて御説明いたします。

松原委員 結論的には、中国より日本の方が在外公館は多かったと思います。後で資料を文書でも請求したいと思いますが。

 つまり、中国より日本の方が在外公館が多かったけれども、今は完全に、百六十六対百二十七、もう逆転して水をあけられている。そして実に、中国と日本との間では、さまざまな国連活動の中において、国益がぶつかり合う、もしくは利害が対立する部分も少なくない。とするならば、この間、外務省の在外公館の数が中国より多かったのが少なくなったというのは、戦略的に極めて、国益にとって大きな強いものを失っているというふうに言わざるを得ないと私は思うんですよ。

 そういった意味では、私は、中曽根外務大臣は百五十と言ったけれども、その百五十という数字の意味というのがちょっとわからないのは、少なくともアメリカに次ぐ、GDPでいけばそうなるけれども、直接的に国連を舞台にして駆け引きをしなければいけない、例えば北朝鮮問題でも、中国が北朝鮮側について行動するケースが間々今まであった、人権決議でも。そういう国が在外公館を百六十六持っているならば、我が国は、国益を、例えば拉致問題の解決等も含めてやろうとする場合に、それを超える在外公館を持つぐらいの、もちろんアメリカは同盟国ですからあるわけでありますが、そういう戦略を立てる。つまり、隣接し、利害を持つ国家の在外公館をしのぐという戦略を立てるべきだと思いますが、改めて御所見をお伺いしたい。

中曽根国務大臣 中国の在外公館は、先ほどからお話ありますように百六十六館。米国が百六十七ですから、それを見ますと、中国がいかにそういう海外の戦略に力を入れているかということがよくわかります。委員の今おっしゃっていることも、私たちも全く同感で、大切なことだと思っております。

 一日でも早く、一館でも多く、外務省としては在外公館を設置して、活発なそういう戦略的な外交をしたいと考えているところですが、御承知のとおり、予算等の制約もございます。私どもとしては、毎年一館でも多くこれが配置できるように要求しているところでございますので、ぜひまた御支援をいただきたいと思います。

松原委員 アフリカ五十三カ国における在外公館の数でありますが、実館でいきますと、日本は二十八、アメリカ四十八、中国四十八、フランス四十五、ドイツ三十九、イギリス三十二。これは説明によると、旧植民地が多かった仏独英は、四十五、三十九、三十二と。しかし、米中は四十八で並んでいるんですよ、四十八。こういうふうな状況を考えると、やはり日本の二十八というのは明らかに水をあけられている。これは事実であります。

 つまり、アフリカが国連において多く中国支持に回るというのは、それはこういう部分から見ても当然のことであって、その結果として、さまざまな日本の思いというものが国連において実現しないということが、これは実際あるわけですよ。

 だから、そういった意味において、私は、中曽根外務大臣に、もしくは外務省の皆さんに、大臣がいろいろな大臣になっても、外務省の皆さんは同じような方がずっとやってきた経緯もあるでしょうから申し上げたいのは、やはり戦略的に中国の在外公館を超えるという、はっきりそれを言わなくてもいいですよ。言っているのは、それは私が、議員でこう言っているのでもいいんですが、皆さんの内面においては、戦略的にそれを超えるということが日本の国益外交を展開する上での絶対条件であるということは、私はぜひとも御認識をいただきたいというふうに思うわけであります。

 そこで、お伺いしたいわけでありますが、在外公館に勤務する外務省職員の人数、このことをお伺いしたい。日本は、本省職員二千百七十五人、在外職員三千四百二十八名、こういうことでよろしいですか。

河相政府参考人 基本的にそういう数字でございます。

松原委員 中国の外務省のこういった在外公館の職員の数は幾らぐらいだというふうに思われますか。

河相政府参考人 今手元に持っております資料ですと、在外、本省合わせまして、日本の外務省の職員数というのは五千七百人を若干超える数字、これに対して、中国は八千六百人の数字でございます。この八千六百人のうち、在外と北京、国内にいる人数の内訳については、ちょっと現在、手持ち資料がございません。

松原委員 日本よりも三千人多いと。しかし、恐らくこれは違うんじゃないかという話もあるんですよ、まあ、これは伝聞のデータですから。中国の場合は、例えば、今回、軍事費が非常に伸びていますが、どうもよくそれが実際がわからないという議論がありますが、私は、中国は、例えばワシントンにいる日本のマスメディアの方なんかと話をしますと、ワシントンにいる中国の大使館、その周辺まで入れると明らかにめちゃくちゃな数字だと。あれは、中国の場合はまさに基本は共産主義国家ですから、その共産主義国家の範疇において、ワシントンに、多くの正式な職員も含め、まあ、非公式なというのはどういう立場なのかわかりませんが、物すごい数がいるというふうに聞いております。

 つまり、ワシントンにいるアメリカの上院議員、下院議員に対するさまざまなアテンドといいますか、ずっと人間関係をつくり、例えば相手の誕生日に物を贈るとか結婚記念日に贈るとか、そういう小まめな人間関係をつくり得るだけのマンパワーを中国は擁している。しかしながら、どうも見ていると、日本はそういうふうなメンバーはいない。極めてビジネスライクと言ってはなんですが、仕事があるときに行って上院議員や下院議員のスタッフと話をするということはあるけれども、プライベートにそれぞれの結婚記念日に花を出すとか、そういうふうなところまでは日本はサービスできない、マンパワーが不足している。こんな話も聞いているわけでありますが、これは極めて僕は外交上は重要だと思うんですね、そういったことができるかどうか。

 つまり、用事があるとき来るのは当たり前ですよ。用事がないとき行くから、それは用事があるときの効果が絶大になるわけですよ。日本の会社だってそうですよ。何も用事がないときにみんな回っていって、人間関係をつくっていくわけですよ。用事があるときだけ行くやつは、何しに来たんだという話ですよ。いや、用事があるから来ましたと。そうじゃなくて、用事がないときに頻繁に行くことによって人間関係ができて、それは、僕はそのことを外務省はわかっていると思うんですが。

 私、ちょっと質問としてお伺いしたいのは、そういう議員に対してのプライベートなコミュニケーションというのは、これは実際、在ワシントンの大使館なんかでかなりやっていますか。どうなんですか。

河相政府参考人 ワシントンにおける、例えば議会関係者とのつき合いというもの、これは、大使それから公使、参事官、書記官、いろいろなレベルでそれなりの努力はやっております。

 ただ、おっしゃるとおり、公的なつき合い以外のプライベートなつき合い、インフォーマルなつき合いというのが外交活動の基盤になるということは御指摘のとおりだと思いますし、この委員会でも御説明したように、在勤手当という経費をいただいているわけですけれども、その中で、公的なつき合いだけではなく家族ぐるみのつき合いとかそういうものを積み重ねていくことが必要であり、これはこれで十分だということはない、常にどれだけそれを日々ふやしていくかという努力が必要だというふうに認識しております。

松原委員 各国の在米大使館の館員数、これは資料をいただいているわけでありますが、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、ロシア、いろいろとありますが、カナダ、ドイツ、それからイギリス、中国、イスラエル、日本、この数字を教えてください。

河相政府参考人 お答えいたします。

 日本の、我が方の在米国大使館の館員数は九十九名ということでございます。これに対しまして、カナダが百十七名、それから、フランス六十九、ドイツ百五、イタリア三十九、ロシア百七、英国百二十、中国二百六、イスラエル四十六というのが私どもが把握している数字でございます。

松原委員 イギリスが百二十、これはアメリカとイギリスの極めて精神的に深い、もともとの歴史的なつながりもあるでしょう。カナダ百十七、ドイツ百五。ドイツ百五ですよ。ドイツ、フランス、イタリアというのはEUですから、EUでまとめたらもっと大きな数になる。中国二百六、日本九十九。アメリカの議会における戦略というのは、世界における最大の影響力を持つアメリカの議会に影響力を持つというのは外交戦略上極めて重要でありますが、中国が二百六名、これはおたくからいただいた、外務省からいただいた資料ですが、中国二百六名で日本が九十九名。

 このことに対して、大臣、御感想をお伺いしたい。二倍以上、中国の方が日本よりアメリカのワシントンの大使館員が多い、これをどう思いますか。

中曽根国務大臣 先ほどの在外公館数、中国の百六十六館ですか、それでも委員からもそういう御意見が、中国がいかに力を入れているかとありましたけれども、これも対米国戦略と申しますか、米国との関係を中国が重視しているということがこれでよくわかると思います。

 この数字を見まして、私どももできるだけ多い館員が配置できるようにしたいと思っておるところです。

松原委員 我々、日米同盟と言うんですよ、日米同盟。この数字を見ると、米中同盟の方が全然多いですよ、二倍。この数字を見ると、九十九対二百六ですよ。日米同盟というのは何なんだと思いますよ、これを見ると。日米同盟より米独同盟、独米同盟の方が百五名で大きいですよ。もちろん、米英同盟の方が大きい。

 しかし、米中同盟は二百六名ですよ、人数で見たら。九十九ですよ。これは、日本の頭越しにいろいろな議論が進む、その物理的な土壌があるということですよ。経済の部分じゃないですよ。人間的数値としては二倍いるんだから、中国の方は。恐らくこの二百六というのは違うと思いますよ。もっと多いと思いますよ。

 ただ、外務省が把握しているので二百六名でしょう。どうやって中国のアメリカに対するネゴに対して日本がアメリカに対するネゴで勝てるんですか、これで。日米同盟が日本の基軸的な同盟、国際同盟だと言うんだったら、日本は中国より多いというのが僕なんかは常識だったんだよ。見て、何だ見間違いかと思ったら、二倍なんだよ。

 もう一回、大臣、こんなことでいいのかどうか、答弁してください。

中曽根国務大臣 委員のおっしゃるとおりだと私も思っております。やはり人と人との日ごろからのつき合い、そういうところからいろいろな関係が深まってきて、また、情報等も収集できるわけであります。日米同盟という関係からもこの数字は少ない、そういうふうに思っておりまして、再三申し上げて恐縮ですが、予算の枠の中で、我々としては一館でも、一人でも多くということで要求しているわけでございます。

 そういう中で、今後、例えばほかの大使館とのやりくりとかそういうものも含めて、少しでも多くなるように、政府としても努力はしていきたいと思う。委員のおっしゃるとおりだと私も思っています。

松原委員 今大臣から何回も話がありましたが、主要国における外務省の予算という数字であります。

 主要国、日本、アメリカ、ドイツ、イギリス、フランス、カナダ、対GDP比は何%、それから国家予算当たり何%、数字をもらっていますが、一応それをちょっと述べてください。時間がないから、簡潔に。

河相政府参考人 済みません。ちょっと私どもから提出した資料だと思いますが、私持ち合わせておりませんで、申しわけございません。

松原委員 GDP比、日本が〇・一二%ですよ。アメリカ〇・二八%、ドイツ〇・三四%、イギリス〇・五八%、フランス〇・三〇、カナダ〇・四一。日本の〇・一二というのはもう断トツに少ないんですよ。イギリスは〇・五八ですよ。ドイツが〇・三四、第二次世界大戦の敗戦国であるドイツは日本の三倍ですよ、GDP比。

 国家予算比は、日本が〇・八二、アメリカが一・二一、ドイツ二・八二、フランス二・〇〇、カナダ二・七七、イギリス一・二三、断トツに日本は少ないんですよ。つまり、日本は貿易立国であるにもかかわらず、アメリカ、ドイツ、イギリス、フランス、カナダに比べて断トツに低くて、ドイツの三分の一ぐらいですよ。

 これは、中国のデータはあるのかと聞いたら、外務省は、中国はそれを表に出していないからわからないと言うんだけれども、恐らく中国は、ここにあるすべての国家よりも、GDP比また国家予算比で全然大きい数字を計上していると私は思うんですよ。

 これで外交戦略、勝てますかという話になってくるので、これは中曽根大臣にここで答弁を求めても限界があるかもしれません。それは、国全体の問題ですから麻生さんが決断をするべき問題であり、また今、国のトップが決断するべき問題ですが、私は、これは非常に国益を害するというふうなことをもう一回申し上げておきたいと思うんですね。同じ答弁になるかもしれませんから、いいですよ、時間もないので。

 とにかく、外務省としては、やはり強く国民にもこのことをアピールしてもらって、危機感を出してもらわなきゃいけない。日米同盟は危ないというのは当たり前で、中国は日本の二倍の人がいるんだよ、こういう具体的なことをやはり少しアピールしてもらわないと、国民はその部分が十分にわかっていないと思うんですよ。これをお願いしたい。

中曽根国務大臣 私のいわゆる外交演説でも述べておりますけれども、やはり各国とのいろいろな外交交渉あるいは政策とともに、外務省の外交体制をしっかりするというのが大事だということで述べさせていただいております。

 委員のきょうのいろいろな御意見、私どもも同様に考えておりますので、財務省やいろいろなところに対して、また力強い御支援をいただきたいとお願い申し上げます。

松原委員 そして、コソボの承認国や外交関係国が少ない理由、答えてください。

福嶌政府参考人 コソボに関してでございますが、現在のところ、コソボを国家承認した国は我が国を含む五十五カ国、また、コソボと外交関係を開設した国は我が国を含む二十六カ国と承知しております。

松原委員 まだまだ世界全体で見たら少ないわけでありまして、やはり国際社会の安全というのは、お互いにネットワークがあることが最大の安全だと思いますから、そういった意味で日本はぜひ努力していただきたいし、そのためにも在外公館は必要だろうというふうに思っております。

 さて、前回質問したときの積み残しを若干したいわけでありますが、前回、北朝鮮がミサイルか衛星かわからないけれども発射した場合に、それは日朝平壌宣言違反じゃないかと聞いたら、中曽根大臣は、日朝平壌宣言に違反している、こういうふうに前回この外務委員会で答弁いただきました。

 そこでお伺いしたいことは、日朝平壌宣言に違反したミサイルを北朝鮮が今回打ち上げた場合に、これは質問通告はしていません、前回の質問の続きであります。その場合に、日本は日朝平壌宣言に対して、それを離脱する、もしくはこれに対して何かをする、そういった行動を外務省としては考えているのかどうか、中曽根大臣にお伺いしたいと思います。

 違反するとおっしゃったので、違反したときにどういう行動をするのか、日朝平壌宣言を破棄するのかということも含めてお伺いしたい。

中曽根国務大臣 北朝鮮との間におきましては、我が国は、日朝平壌宣言を全体として履行するということ、そして、それで懸案を解決していくということでございますので、このやり方が一番前進させる効果的な方法だとは思っておりますが、引き続いて北朝鮮がこの日朝平壌宣言で確認をいたしました事項を誠実に実施するように、今後も強く求めていくところでございます。

松原委員 日朝平壌宣言に違反するとこの間大臣はおっしゃったんですよ。その認識は正しいんですよ。やはりそれは、黒は黒と言わなきゃいけないし、白は白と言わなけりゃいけない、当たり前であります。

 お伺いしたいのは、北朝鮮が日朝平壌宣言に違反する、衛星と言おうが何と言おうが、それは違反であると我々は言っているわけですよ、国連決議違反だと。であるならば、これは日朝平壌宣言に本質的にも違反しているわけであって、そのことを北朝鮮がした場合に、日朝平壌宣言に関して、そのまま何もしないでいくんですかと。

 これは、日朝平壌宣言に関して見直しをする、ここで破棄するとまでは言えないかもしれないけれども、もう一回検討をする、それぐらいの発言はいただきたいと思うんですが、お答えいただきたい。

中曽根国務大臣 私が御答弁申し上げましたとおり、日朝平壌宣言に確かに違反しているわけでありますけれども、今の時点では、とにかく発射を自制させるというかやめさせるということに全力を挙げさせていただいておるところでございます。

松原委員 この件で、日朝平壌宣言に違反をしているがゆえに、場合によっては日朝平壌宣言を破棄するかもしれないということを含めた議論は、閣内において行われているんですか、いないんですか。お伺いしたい。

中曽根国務大臣 閣内においてそういう議論が行われていることはないと私は承知しております。

松原委員 閣内でそういう議論をしなければいけないと思うんだけれども、中曽根大臣、その議論をする用意は、まだ四月まで時間があります、ありますか。

中曽根国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、今、非常に北朝鮮の発表いたしました発射の時期等を間近に控えておるわけでありまして、確かに違反をしておりますけれども、まずは発射をさせないということ、そして、この平壌宣言のことについては、違反しておることに対する対応につきましては、現時点では何ら行動を起こしていないわけでございますが、まずはこのミサイル対応に全力で取り組んでいるということで御理解いただきたいと思います。

松原委員 このミサイル発射に絡んで、では、時期は特定しません、発射前か発射後か。当然、このことについて日朝平壌宣言違反ではないかということを含め閣内で議論するのは、日本国民から見たら、当然の誠実な政府の中における議論だと思うんですが、それは当然行われるということでよろしいですね。

中曽根国務大臣 閣内でもいろいろな北朝鮮問題等の話し合い等も行っているわけでありまして、この平壌宣言に限定してとか、平壌宣言をどうこうというような議論は行っておりません。

松原委員 大臣、これは大臣に政治家として決断して、決然と御発言いただきたいんでありますが、いいですよ、ミサイル発射前とあえて言いませんよ。ミサイルに絡んで、当然閣内で、日朝平壌宣言に抵触する、違反するとこの間の外務委員会で大臣がおっしゃったんだから、違反するものに関して、これは議論をしますよねと。しないという。向こうはやると言っているんだから、発射すると言っているんだから、このことについては議論をするとやはり大臣としては言ってほしいのでありますが、お答えをいただきたい。

中曽根国務大臣 確かに違反をしているわけですから、議論をするのは当然だと思っております。また、そのほかいろいろなこと、北朝鮮とのことに関しましては、いろいろなことを含めて議論をする必要があろうか、そういうふうに思っております。

松原委員 日朝平壌宣言について、このミサイル発射に絡んで議論をする、それは当然であるというふうに大臣はおっしゃいましたから、その当然である議論は、発射前から議論をしていて発射後には結論を出すように、それは日本の国会議員の一人として私は心からお願いをしたいわけであります。

 さて、そうした中で、先般、大韓航空機爆破事件の金元死刑囚と、飯塚さんそして田口さんの息子さんが会ったわけであります。このときに、報道等によると、北朝鮮の説明は、田口さんは一九八四年に原さんと結婚した、八六年に死んだと、二人違う案件で亡くなったわけでありますが、それに対して違う情報が寄せられたような報道でありましたが、御説明いただきたいと思います。

河内政府参考人 お答え申し上げます。

 これまでの北朝鮮側の主張では、田口八重子さんは、一九八四年十月十九日に原敕晁さんと結婚、一九八六年七月三十日にマシク峠で交通事故により死亡したと説明しているところでございます。

 今回の面会におきまして、金賢姫氏は、同僚の工作員金淑姫の話として、一九八四年末の時点で田口八重子さんが結婚していたという事実はないこと、また、一九八六年にひとり暮らしをしていた拉致被害者らが結婚させられたと聞き、田口さんも結婚したと思ったこと、一九八七年二月から十月まで自分が招待所にいた間、だれも死亡したと聞いたことはない旨述べているところでございます。

 政府としては、従来より拉致問題の解決に向け、継続的に情報収集、分析に努めているところでございますが、帰国した拉致被害者からの証言でも、田口さんとは一九八六年七月まで同じ招待所にいたが結婚の事実はなかったと証言されております。こうした点も踏まえますと、今回の金賢姫氏の面会時の発言で、北朝鮮側の説明の信憑性につき疑念が一層深まったところでございます。一方で、今回の金賢姫氏より得られました情報で何かが断定できるものではございません。

 いずれにいたしましても、田口さんについての重要な証言者でございます金賢姫氏の話だけに、重要な参考情報として、この情報につきまして、今後、韓国政府の協力も仰ぎつつ確認作業を進めていく考えでございます。

松原委員 結論的には、再び北朝鮮の、本当のことをほとんど言わないからうそであろうと思われていたことが、どうもうその確率が高いということが今回の金元死刑囚の発言から明らかになったわけであります。そうなると、翻って、核の問題だって、やめましたといってやめるはずがないという議論がさらに出てくるわけでありますが。

 さて、そこで問題は、この田口さん以外の話題、それから訪日要請などに対して、韓国側は金元死刑囚に対して極めて抑制的だったという報道がなされておりますが、認識をいただきたいと思います。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 今回は、韓国政府の多大なる協力を得て今回の面会が実現できたということは大変よかったと考えております。

 外務省としましては、韓国政府が金賢姫氏に対して、今回の面会に際して特定の問題について制限を課していたということは承知をしておりません。

松原委員 この間、飯塚さんとお話をする機会があったときに、どうも、話としては、八重子のこと以外、田口さんのこと以外を聞くと、それはもう後ろから視線を感じてしゃべれない状況だったような話を、それは聞いているでしょう。話を聞いているわけですよ。というようなことを考えたときに、逆に言うならば、逆説的に言うならば、これに関してたくさんの情報を金元死刑囚は持っている可能性がある、そう私は思うんですよ。つまり、抑制的に言わなければいけないぐらい他の情報も持っているわけであります。

 したがって、私は、日本として、もちろん、例えばどこかの委員会でこの方を日本に参考人で呼ぶということは当然考えなければいけない議論だと思いますが、日本の外務省、警察がというふうに言うよりも外務省かもしれませんが、金元死刑囚にいろいろな事情を聞く機会を韓国側に要請する御意向はあるかどうか、お伺いしたい。

石川政府参考人 委員御承知のとおり、金賢姫元工作員については韓国内で非常に難しい立場にあるわけでございまして、そういう中で今回やっと実現をしたというところでございます。そういう中で、飯塚代表のお感じというのは別途あろうかと思いますけれども、今後、こういった情報も含めて、きちんとフォローアップをしていくということが極めて大事だというふうに認識をしております。

松原委員 韓国が盧武鉉政権から李明博になって極めて流れが変わってきた。大臣、最後に一問だけ質問して終わりますが、今回も、この件に関して言うならば、盧武鉉政権下の韓国のいわゆる情報局といいますか警備をしている部分、そういったメンバーが残っているので、将来的にその辺の人事がかなり変わってきたときには、もっとスムーズに拉致の問題でも議論が進むだろう、共同の情報共有等も進むだろうと言われておりますが、韓国と拉致の問題に関して共同の闘いをしようという、その決意をお伺いしたいと思います。

中曽根国務大臣 今回の面談に関しましては、お話ありますように、韓国政府の大変な御支援をいただきました。また、お互いに調整をやってまいりました。そのことからもわかりますように、また韓国の首脳の御発言からも、拉致問題の重要性と、またともに解決をしていこう、そういうお話もあるわけでございます。さらに、韓国には大勢の拉致の被害者というものがいらっしゃるわけでありまして、そういう意味で、今回の韓国政府のこの面談に対する対応をごらんになっていただいても、韓国政府の姿勢がわかると思います。

 私どもは、一緒になってこの問題の解決に努力をしていくつもりでございます。

松原委員 終わります。ありがとうございました。

河野委員長 次に、篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原でございます。

 今、松原さんの、中国大使館の設置との比較の上での日本の外交戦略、ほれぼれして伺っておりました。一つの切り口であれだけちゃんと核心を突いた質問ができるのに改めて感心させられた次第でございます。

 私は、また別の観点から同じように質問させていただきたいと思います。いつも資料をお配りしておりますので、ここから触れさせていただきます。在外公館の設置の基準とかなんとか、皆さんに通告しておきましたけれども、それはもうすべて質問されておりますので省かせていただきます。

 「外交費用比較」という私の資料をちょっと見ていただけますか。大臣にも渡っていますか。これは、いろいろな外交ですよ。日本がほとんどですけれども、クリントン国務長官との比較もあります。中曽根外務大臣のもあります。

 幾らお金が使われたか、どこが悪いかというのを、一番左を見ていただきたいんですが、本人は多少反省しているようですし、これも余り揚げ足取りはしたくないんですけれども、チャーター機を持っていって六千万もかかったと。随行人数のところを見ていただきたいんですが、これは確認していないのでわからないんですが、六人でと、バツと、玉木林太郎国際局長、一緒に飲んだくれていたので、これは不届き者だと思います。

 今度は右側の方を見ていただきたいんですが、クリントン国務長官は四カ国をぱっぱっと歴訪されました。そのときの随員は二十人。その左側の方の日本側の随行人数と比べてみていただきたいんです。非常にスリムなんじゃないかと思います。金額までは、聞いたんですけれども、わかりませんでしたけれども、非常に能率的にやっておるんですね。

 私は、こういう随行みたいなのにも参加したことはあるんですが、いつも感じておりました。日本の随員というのは多過ぎるんじゃないかなと思うんですけれども、この点について、いかがでしょうか。

河相政府参考人 随行者の規模、これをできるだけスリムにした方が経費の観点からもいいというところがございますが、政府もしくは外務省としても、経費の節減というのには十分努めて、必要最小限にしたいというふうに思っておるわけでございます。

 大臣が訪問された場合も、多くの場合、二国間での訪問の場合はすべて二十名以下の随員でございます。ただ、一方で、委員も御承知のように、多国間の国際会議の場合、これは、その国際会議で取り上げられる議題自身が多岐にわたる場合、それから、同時にあわせて、その国際会議の機会をつかまえまして数多くの二国間会談をやりますので、その二国間会談の担当の部局の者も同行するということがございますので、多国間会議の場合の方は人数が少しふえるという傾向にはございます。

 ただ、御指摘のように、常に随員の数はできるだけ必要最小限にし、予算が限られている中で効率的な運用を行っていくということに今後とも努めてまいりたいというふうに思っております。

篠原委員 大臣の海外出張のとき、先ほど松原さんの質問のところで、アメリカ大使館の館員が九十九人と中国と比べて半分ぐらいだというふうにありました。

 私の方からさっきのを補足させていただきますと、私は前回質問いたしましたけれども、領事館の方に日本はいっぱい置いているんですね、ほかの国と比べて。領事館の人数をうんと足すと日本は膨大な数にアメリカの場合はなるので、どういうふうにやっているのかなと。領事館と大使館の役割の分担というのもよくわからないんですが。海外出張のときに、それぞれの持ち場は持ち場でいろいろな経験、知識を提供し合って、外務大臣や総理大臣を補佐しなければならないと思いますけれども、随行していくのと大使館の館員との明確な役割分担というのは、どんなふうに考えておられるんでしょうか。

河相政府参考人 お答えを申し上げます。

 大臣もしくは総理ほかの閣僚の方が海外へ行かれた場合、現地におきまして、出国手続でございますとか宿舎の留保、それから車の運用等々、我々はよくロジと言っておりますが、この手続について、これはほぼ全面的に大使館が中心となって行う。東京からついていった、本省からついていく出張者というものは、主に会議での発言の対応、もしくは新しい状況を踏まえた対応、もしくは総理、大臣への御説明ということを主な仕事としております。

 ただ、同時に、これはケース・バイ・ケースでございますけれども、大使館、特に大使を中心として、大臣、総理に対するサブスタンスでの補佐ということもあわせて行っているのが現状でございます。

篠原委員 そういうのを、いろいろな人がきちんと携わってチェックするということをちゃんとやっていただきたいと思います。

 なぜこれを聞いたかというと、かつて松尾さんとかいう方が海外出張には常についていかれて、いろいろ悪さをされたりというようなこともありますので、そういうことをきちんとチェックできるような体制で臨んでいただきたいと思います。

 クリントンさんが来られたのを見てみますと、なかなかハードスケジュールじゃないかと思います。お年もなかなか召しておられるのに、疲れておられるのに、やたら笑顔を振りまいておられましたが、あれが外交かなという気がいたしました。なかなか職務にちゃんと忠実で、結構なことだと思いました。

 しかし、見ていますと、したたかな外交戦略がちゃんとあったような気が私はいたします。日本を最初に訪問されたというのは、前回の質問のところで申し上げましたけれども、ちょっと日本を軽視しているんじゃないかというふうに日本側から思われているので、それをぬぐい去ろうという意図があったと思います。

 それから、インドネシアもわざわざ訪問している。多分、オバマ大統領がインドネシアで育っておられますので、いずれ訪問されるというようなこと、その地ならしみたいなのもあったんじゃないかと思います。

 それから、実質的なこともあったはずです。スターン特使、地球環境問題を非常に大事にしている、環境問題をオバマ大統領の政策の柱に据えようとしている、だからそれをちゃんとしようということで、ポスト京都議定書についての議論も日本としたいということで連れてこられたんですね。なかなか、新聞記事を見たりしていても、明確な外交目的というのがわかるんです。

 資料の二つ目を見ていただきたいんですが、麻生さんの外交、行き先、日程、随員、費用と、表にさせていただきましたけれども、先ほども河相官房長が、いやいや、国際会議に行くのは随員が余計かかる、二国間だと少なくて済むとかいろいろ言っておられましたけれども、なかなかお金がかかるような感じの外交になっているんじゃないかと思います。

 三ページ目には、中曽根外務大臣の今までの外国訪問実績がございますけれども、どちらかというと、しようがないから行っていると言っては悪いんですが、会合出席が中心ですね。一番下の方に、五、六、七は、そういった国際会議だとか条約の署名とかそんなんじゃなくて、公式訪問ということになっておりますけれども、こういったときに、きちんとしたいろいろな目的を持って行っておられるんだろうと思いますけれども、例えば、この五、六、七のそれぞれの国に行かれたときに、どういう目的を持って行っておられるんでしょうか。

中曽根国務大臣 外国出張の意義とかこういう目的とかは、委員がもうよく御承知のことと思いますし、目的のない出張というのは僕はないと思うので、それぞれの公式訪問等におきましては、きちっとした目的があるのは当然のことでございます。

 私の出張についての目的、五、六、七についての御質問でございますが、五番目、カンボジア、それからラオス公式訪問でございますけれども、これにつきましては、タイ、カンボジア、ラオス、タイは立ち寄りでございますけれども、ことしの一月から、一月十二日に行ってまいりました。カンボジアではフン・セン首相等と会談を行いまして、またタイでは外相との会談を行いました。カンボジアでも外相等との会談を行って、また公式の行事にも出席をしてきたわけでございます。

 また、韓国は、報道もされておりますけれども、李明博大統領、そして柳明桓外交部長官と会談を行いまして、両国間のいろいろな問題、それから国際社会での協力、何を協力できるか、あるいは青年交流等の問題について話を行ってきたところでございます。

 それから、中国におきましても、温家宝国務総理、それからヨウケツチ外交部長等にお会いをしまして、また両国間の問題や、韓国と同様に、さまざまな課題、特に北朝鮮のミサイルの問題が今時期的に大変重要な課題でございますので、このこと等についても、両国の要人と意見交換や、あるいは、これを阻止させる、そういうような話をしてきたところでございます。

篠原委員 何でこんなことを聞いたかといいますと、ちょっと話を誘導させていただいているからなんです。

 私は、中曽根外務大臣はどんどん外国に行っていただいてしかるべきだと思います。外務大臣なんです。本当は、国会に縛られることもそんなにないんです、大事な議論はしなくちゃいけないんですが。

 二ページを見ていただきたいんです。私は、麻生総理はちょっと外国に行き過ぎのような気がするんです。何か、よく知りませんけれども、外交日程をやたら組んで、それでいっぱい仕事があるようなふりをされているとかいうのは、それは知りませんけれども、そういうふうに言われています。(発言する者あり)私は、そういうんじゃなくて、外務大臣がこんなのを、代行できるようなのをどんどん行っていただいて、麻生さんは国内が、百年に一度の未曾有の経済危機と言われているわけですから、日本におられて、日本の内政をちゃんとやっていただいた方がいいような気がするんです。総理大臣と外務大臣の役割分担というのをよく考えていただけたらいいんじゃないかなと思うんです。

 悪い例が一番下でして、皆さん覚えておられると思いますけれども、小泉総理、最後に何か続けてばたばたばたと出張しておられますね。これは本当に必要だったのかと思いますけれども、総理はやはり、大統領というのは、日本の国内にいて全体をやるというのを、私はそれが今、外交に総理がとらわれ過ぎている気がするんです。中曽根外務大臣に、かわりにいろいろな外交案件を抱えて世界じゅうを飛び回っていただきたいということが言いたいことなんです。

 外務省はそういったことを、総理にどういうところへ行っていただいて、外務大臣にどういったところに行っていただくとかいうような、そういうことをきちんと戦略的に練っておられるのでしょうか。私は、そういうことをきちっと練っていただいて、非常に効率的な外交をしていただきたいと思うんですけれども、その点はどうなっておりますでしょうか。

中島政府参考人 恐れ入ります。

 麻生総理は、先ほど先生がお配りいただきました資料にございますとおり、就任以来、国連総会、金融サミットでアメリカに行かれたほか、中国、ペルーなどの国々を訪問されております。

 これらの訪問先におきましては、各国の首脳が参加して行われます重要な国際会議への出席、あるいは二国間の首脳会談を行ってきているところでございます。

 現下の経済危機への対応を含めまして、国際社会の課題が山積している中、総理大臣として我が国の安全と繁栄の維持強化、二国間関係の発展、国際社会の平和と繁栄の確保といったことに向けまして指導力を発揮していくに当たり、それぞれ大きな意義のある訪問であったというふうに考えるところでございます。

篠原委員 よくわかりませんけれども、ちゃんとバランスをとってやっていただきたいということはお願いしておきたいと思います。

 それから次に、在外公館の設置なんかに関連するんですけれども、もう一つの大事な、設置と同じになるんですけれども、国際機関への人材の派遣というのについてお伺いしたいと思います。

 そういう点では、一つ喜ばしいことですけれども、小和田さんが国際司法裁判所の判事になられたというのは、私は非常に喜ばしいことだと思います。こういうのをどんどん進めていただきたいと思います。

 それで、外交青書にあった資料でおつくりさせていただいた、四ページを見ていただきたいんですけれども、これが主要国際機関における日本人幹部職員の名簿です。なぜかしら、常駐をしているということなんかもあったのかもしれませんけれども、小和田さんや柳井さんや裁判所関係のがないので私がつけ加えましたけれども、これだけ国際機関の幹部クラスが行っている。昔と比べたら非常に多くなったんじゃないかと私は思います。

 外務省は、こういう戦略、在外公館はきちんと設置していくのはもちろんですけれども、多面的な外交、多元的な外交もしなければいけないと思います。国際機関に人材を送り込むということも大事なんじゃないかと思いますけれども、このような人間を育成するための人事とかいうのをちゃんとされておられますでしょうか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、国際社会がどんどんグローバル化を進めていく中で、いろいろな国際機関が、国際社会の共通利益のためのルールづくり、もしくは枠組みをつくっていくということをやっております。また、専門的経験知識の集積という面でも、国際機関の果たしている役割はますます大きくなっていく現状だというふうに私どもも認識しておるわけでございます。

 外務省としても、そういう状況の中で、国際機関の幹部として十分活躍できる人材を育成するということが必要だというふうに思っておるわけでございまして、今、外務省から国際機関へ派遣されている職員、現在のところ二十一名、これは幹部からワーキングレベルまでいろいろなレベルがございますけれども、国際機関に派遣をしております。

 また、外務省の中で国際機関に携わる優秀な人材の専門性をさらに高めていかなくちゃいけないという努力をやっております。この中の一例としては、WTOの専門官という制度でございますとか国際連合専門官、こういう形のタイトルというか職種もつくっておるわけでございまして、引き続きこういう努力を続けて、まだ私どもとして国際機関における日本人職員の活躍は十分だと思っておりませんので、これをさらにどんどんふやしていきたいという認識でございます。

篠原委員 この四ページの表をじっくり見ていただきたいのですが、備考のところに、出向、外務省の関係者と農林水産省の関係者だけちょっと触れさせていただきました。外務省の関係者が五人で、非常にインターナショナルじゃない。次にある農林水産省は、四人も国際機関に出しておるんです。なぜこうなるのか。

 私は、外務省の皆さんはもっともっといろいろなところに行っていいと思うんですが、これはちょっと質問通告していませんけれども、何で農林水産省が四人もこういうところに出すようになったかというのをどういうふうに思われますか。大臣、これは何でか。

中曽根国務大臣 なぜ農水省から四名も出ているか。これは、たまたま委員からいただいた資料の六ページを拝見していましたら、野村さんの経歴が出ていました。これを見ますと農林水産関係それから国際関係を随分おやりで、この方が今、これを拝見しますとFAO水産局長ということですから、まさに適材適所ということで出られているんじゃないかと思います。

篠原委員 これは単純なんですよ。彼は、活躍していろいろなためになってくれているんですね。それから、上の遠藤保雄というのも、これは国際部長をしています。北原悦男というのも、インターナショナル、留学して、外交関係の仕事をしていたんです。

 こういうことを言うと悪いかもしれませんけれども、退職して団体に行くとか企業に行くというときに、農林水産省は残念ながらインターナショナライズしていませんので、国内の団体はこんな人要らないと言っちゃうんですよ。行き場所がないんです。それで国際機関しかないと。窮すれば通ずで、有能な人材だし、ちょうどいいから国際機関に出そうということになっているんです。やる気になればできるんですよ。農林水産省のような国際的におくれている役所ですら、ちゃんと送り込もうと思ったらできるんです。

 それで、大臣、さすがですね、先読みされてお気づきいただいたと思いますけれども、田中伸男さんというのは国際エネルギー機関の事務局長なんです。これは線を引っ張りましたけれども、見てください。外務省の皆さんもよく見てください。こうやって、留学して、アメリカ大使館へ行って、OECDに行って。OECDの一つの組織なんです、IEAは。IEAの局長になるべく、結果としてそうなっただけじゃなくて、途中からそういう感じの人事配置をしているんです。

 野村一郎もそうです。彼はもう典型的な、水産庁でもインターナショナルに、捕鯨から何から何でもやっている。彼はなぜFAOの水産局長になれたかというと、これを見たらわかると思います、もう世界の水産界の顔になっているわけです。野村ならいいと。全部がいいわけじゃないですよ。彼の能力が卓抜していたから、皆さんもすぐ受け入れる。

 書いていないんですけれども、途中でOECDの水産委員会の議長とかもやっているんです。それはなぜしたかというと、このときに藤井さんという大使がおられたんですけれども、だれもOECDの委員会の中で議長はいないと嘆かれました。なぜかというと、これはもう皆さんわかっておられますが、日本の役人は二年か三年ごとにかわるから、同じ委員会に五年、六年行っていないから、議長もとれないんです。ところが、野村さんはその前に世界の水産界でちゃんとわかっているので、行ったばかりでも議長になってもいいというので、根回しして、私が参事官のときにして、そのときにもう既に私は野村さんにも言っていたんです、手前みそになりますけれども。あなたの最終、行き着く先はFAOの水産局長だと。そのとおりになっているんです。

 こうやったらできるんです。官房長、よく聞いていてください。官房長だったら十人も二十人もこういう人をつくれるんですから。

 それで、外務省もちゃんとやっていまして、いわゆるグッドニュースだと思いますが、七ページを見ていただきたいんです。まだわかりませんけれども、天野之弥さんがそういう感じで、まだわからないんですけれども、IAEAの事務局長の選挙が行われて、ここに立候補されている。見てください、この華麗なる略歴。ここに収れんするような形で、先ほどの田中さんと同じように、軍縮、科学に特化しているんですね。わかりますか。これは非常に見事な人事だと思います。外務省のこういう人事をされた幹部が偉かったんですね。

 それで、天野さんは、偶然いろいろな新聞を取り寄せて見ていたら、八ページを見てください、二年半前に国際公務員で日本人採用増を支援してと言って、自分が支援される立場になっているわけです。いいことをする、慕われているといいことが起こるのじゃないかと思います。こういう目的を持ってやっていただきたいというのが私の願いでございます。

 次に、九ページを見てください。幹部の次に、全体のですけれども、これは、一番最近の国連の資料の中にあったので、それをそのまま訳して日本語の表にしたんですが、国連職員が望ましい職員数を大きく下回る加盟国の概要というので、日本が一番ひどいんですよ。この四カ国がひどい国なんだそうですけれども。

 それで、次のページ、十ページと十一ページを比べて見ていただきたいんですが、十ページは二〇〇二年の。これは順番がどういうのかというと、職員数が多い順なんです。そして、望ましいのが真ん中にあって、右側の下回り数というのを見てください。二〇〇二年は百四十五。日本に追随する国はないんです。ないというのはどういうことかというと、日本だけが三けたなんです。二けたの対下回り数の国はないんです。ほとんど、みんなその拠出金に応じた人数を出しているんです。中国との比較なんていうものの比じゃないんです。

 それで、二〇〇八年、ちょっとはましになりましたけれども、相変わらず百三十六人になっているというのですね。

 これはやはり何か努力が足りないんじゃないかと思います。在外公館の設置とか領事館の廃止、新しいところに持っていくとかいうのも大事なんですけれども、私は、それよりももっと大事なのは、多面的、多元的外交をするために国連の場あるいは国際機関の場に日本人職員をどんどん送り込むことだと思いますけれども、そういう努力は今までされてきておるんでしょうか。どのような努力をされてきておるんでしょうか。

中島政府参考人 外務省といたしましては、今先生から御指摘いただきましたとおり、国連を初めといたします国際機関の意思決定に我が国の立場、考え方を適切に反映させるということで、幹部職員を含みます邦人を輩出することは極めて重要なものであるというふうに考えております。

 各種支援策、三点ほどちょっと具体的に申し上げたいと思います。

 一点目が、累次の会談を総理、外務大臣がなさるわけですが、その際に、国際機関の長、幹部などに対しまして直接邦人職員の採用を働きかけておるということがございます。このような努力もございまして、松浦ユネスコ事務局長といった国際機関の長でございますとか、あるいは川上東ティモール統合ミッションの特別代表、中満平和維持局政策部長といった幹部職員も誕生しておるところでございます。これは一点目でございます。

 二点目といたしまして、邦人職員の採用を促進するという観点から、リクルートミッションの派遣を国際機関に要請しておりまして、先月も、ポラード国連事務次長補を団長といたしますリクルートミッションが訪日して、我が方の各行政機関等にいろいろ御説明いただいたところでございます。

 三点目といたしまして、外務省におきましては、将来国際機関での勤務を希望する三十五歳以下の若手の国民を対象といたしまして、我が国の費用負担で国際機関に派遣してもらう制度を実施しておるところでございます。これはジュニア・プロフェッショナル・オフィサー、JPOといった名前で呼ばれております。この制度によります国際機関への邦人職員の派遣人数、累計いたしますと千二百五十九名、来年度の新規派遣の予定人数は三十七名というところでございます。このJPOの経験者のうち約六割は、その後国際機関に採用されておるところでございます。

 今後とも、こうした取り組みを初めといたしまして、国際機関の就職に係ります各種情報の周知、広報、また選考状況のフォローアップ、それから国際機関の人事担当への働きかけ、こういった必要な支援措置を積極的に行ってまいりたいというふうに考えておるところでございます。

篠原委員 この問題は国会でもそこそこ議論した人がいるんじゃないかなと思って、古い議事録を見ていましたら、真っ先に突き当たったのは、六年前、川口順子大臣のときで、委員長は池田元久さんでして、質問されている方が河野太郎さんでした。だから、それから比べれば二番せんじになるんだと思いますけれども、なかなか進んでいないのが現状じゃないかと思います。

 その次に、また資料を、外務省が本来つくらなくてはいけないのを私が加工してわかりやすくつくっているわけですから、ちゃんと見てください。

 この十二ページ、十三ページ、十四ページに主な国際機関の望ましい日本人職員数の下回り状況というのを、私が同じようなルールに基づいて、皆さんからいただいた資料をちょっと加工してあります。計算しました。下回り数を大きく太く書いてあります。ドーネーションですね。拠出金に応じて切った人数だったらどれだけかというのを出して、現人数を引いていったんです。それをばあっと見ていってください。そうすると合計が何人になるかというと、千三百五十八人になるんです、十五ページ。これはやはり出してしかるべきなんです。どうやって出したらいいかというのを、外務大臣、ぜひこれはやっていきたい。私のアイデアです。そして、それについて御所見を最後にいただきたいと思いますけれども、簡単なんですよ、こんなのは。人事をちゃんといじれば。

 だから、若いときに一回は国際機関へ必ず出すということ、それから、それの関係する担当課、ここに担当課がいっぱい書いてあります、外務省の担当課。担当課の補佐とか課長はやらせると。もし代表部とかいうのだったら、そこの大使館にも行かせるというので、国の専門家もつくると同時に、国際機関の専門家もつくればいいんですよ。

 河相官房長などはどういう人間かなと思ったら、どこへ行かれたんですかね、シンガポール以外はアメリカばかりですね。アメリカ屋になっていて、何か国際機関にかかわるようなところにタッチされたことはないんじゃないかと思います。残念ながら、国際機関の長になる資格が多分ないんだろうと思いますけれども。もっと偉くなられて国際司法裁判所とかゼネラルなのはあるかと思いますけれども、一番行きやすいのは、特殊な分野のところのが一番送り込みやすいんだろうと思います。

 私は、やり方一つだと思うんです。それで、私も役人生活をやっていたときに感心した人がおりまして、中道さんという人です。農林水産省の構造改善局というところにいた人です。これはその辺の幹部の人たちは御存じだと思います。その人たちははっきり言って、発展途上国にいろいろ農林水産省が大使館に出していたんですが、余りぱっとした人じゃない人を出していたんです。しかし、それを改めようとした。どうしたかというと、ピカ一の人材を出したんです。そうすると、立派な人が外国へ行けるんだということになって、行くようになって、そういうふうに人事が回っていく。

 だから、ピカ一の人、立派な人を国際機関に出し、偉くしていく。そういう人を局長にし、そして最後は、ちゃんとこういう国際機関にして五年、十年、松浦さんなんて何年になるんですかね、ユネスコの事務局長をやられて。こういうことをやっていただければ。調べましたら、ユネスコの日本人職員数は、これは我田引水みたいになってよくないのかもしれませんけれども、松浦さんが局長になってからずっとふえているんですよ。(発言する者あり)九年になりますか。

 そういうふうにやっていただくといいんじゃないかと私は思います。こういう人事をぜひやっていただくことをお願いしまして、私の質問を終わります。大臣の御所見をお願いいたします。

中曽根国務大臣 先ほどからの委員のこの御指摘は大変重要なことだと思っております。御本人のためにもなりますが、我が国の外交を展開していく上でもこれは大事なことだと思っておりまして、いろいろな制約等はありますけれども、御指摘も踏まえまして、国際機関の中で十分活躍できる人材を、育成と言うとなんですが、計画的にそういうような形で人事をやっていくというのが大事だと思っております。

篠原委員 終わります。

河野委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 在外公館法の一部改正について、在レシフェ及び在ジュネーブの日本総領事館の廃止及び在勤基本手当の改定については賛成でありますが、在コソボ大使館の新設にかかわって質問いたします。

 コソボの独立をめぐっては、アルバニア系住民とセルビア系住民の武力衝突、NATOによる軍事介入を経て、国連安保理決議一二四四号が出されて、国連の暫定統治のもとで、関係各国などの仲介によるコソボ、セルビア間の地位交渉が行われてきたわけでありますが、いわばそれが不調のままに、コソボは昨年、二〇〇八年二月に独立を宣言いたしました。

 そこで、確認いたしますが、現在も、この国連安保理決議を受けて、コソボに国連暫定ミッションが存在しているというふうに承知しておりますが、そういうことでよろしいのでしょうか。

福嶌政府参考人 お答えいたします。

 今御質問のとおり、現地には現在、一九九九年に国連安保理が採択いたしました決議第千二百四十四号に基づきまして、国連コソボ暫定行政ミッション、UNMIK及び国連安全保障部隊、KFORがそれぞれ派遣されており、コソボの行政の監督や治安の維持に当たっております。

笠井委員 国連による暫定統治、行政、それから治安の維持ということで、それが続いているということであります。

 もう一つ、現在、コソボを国家として承認している国は、米国や欧州の主要国など五十五カ国で、外交関係を開設している国は二十六カ国で、他方で、ロシア、中国などは承認していなくて、欧州諸国の中でも、スペインとかギリシャなど少数民族問題を抱える諸国は慎重ないし反対な立場をとっていて、関係国の間で対応が分かれているというのが現実だと思うんですが、そういうことでよろしいでしょうか。

福嶌政府参考人 今御質問のとおりでございます。

笠井委員 そうしますと、そうした経過と現状から見て、我が党としては、日本政府が二〇〇八年三月、コソボの国家を承認したことをそのまま是とすることはできず、したがって、大使館の新設には賛成できないということを表明しておきたいと思います。

 次に、この際ですが、在外公館関係は、もう先立ってかなりいろいろな質疑がありましたので、前回の積み残しということで、引き続き、在沖縄米海兵隊のグアム移転整備事業についてでありますが、この事業に関連して、防衛省、これまで基本構想策定業務と基本検討支援業務を実施したほかに、グアムにおける建設費等及び住宅市場価格に関する二つの海外調査業務を実施し、既に報告書が提出されているということでありますが、それはそういうことで間違いありませんか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 防衛省が平成十九年度に行いました建設費等に関する海外調査役務、それから住宅市場価格に関する海外調査業務、この報告書は出ております。

笠井委員 二〇〇七年度と二〇〇八年度にかけて、グアム移転に関連して、基本構想策定業務を初めとして四つの調査業務を、計算しますと、合わせて五億八千万円もかけて行ってきたということであります。

 それでは伺いますが、グアム移転の整備事業について、これら四つのほかに発注をした調査業務はありますか。今後の予定はあるかどうか、その二点、お答えください。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 平成十九年度予算に計上されております再編関連措置としての調査業務として申し上げますと、グアムへの移転関係以外では四件ございまして……(笠井委員「移転関係だけですよ」と呼ぶ)移転関係で申し上げますと、先ほど申し上げました二件のほかに、前回確認をいただきました基本検討ですね。それから、平成二十年度に、これから、現在実施中のものがございます。

 以上、四件ございます。

笠井委員 四件ということですが、今後さらに予定はあるのかどうか、そういう調査、グアム移転に関連して。

高見澤政府参考人 前回も申し上げましたけれども、平成二十一年度の予算に今お願いをしておりますので、それに従って、いろいろな関係の調査というのは引き続き必要であるというふうに考えております。

笠井委員 今後もあり得るということであります。

 では、四つの業務、今までやってきたうち、現在は報告書としてあるのは三つですよね、一個はまだ進行中ですが。その三つの報告書が全体として、米側との間でいえば、米側のマスタープランに対応して、日米交渉を行う際の参考として用いられているということで理解してよろしいんですか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 必ずしもそういうことではないというふうに思っております。

 既に二件の報告書を公表しておりますけれども、その内容を申し上げますと、一つは建設費等に関する海外調査役務ということでございますので、これはグアムにおける工事単価等の事実関係の調査、一般的な調査でございます。それから、市場価格に関する海外調査役務というのは、グアムの民間住宅の販売価格、家賃等を調査したものでございまして、これは、本委員会あるいはほかの委員会でも住宅価格が非常に高いのではないかというような御指摘もありましたので、我々としてはそういった一般的な事実関係を調べるということでやったものでございます。

笠井委員 では、日米交渉の参考資料として使っている報告書というのは、この基本構想策定業務の、例の去年九月のもの、これを使っているということでいいわけですね。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 いろいろな事実関係の調査は、すべて日米関係の交渉には使うということになりますし、我々としても、一般的に得た知見というのをすべて反映させていくのは当然だと思いますけれども、ただ、一方、この十九年度の三件目の調査は、まさに対米交渉でありますとか、日本側の検討の参考にするための個別的、具体的な調査検討をしたというものでございまして、そういう意味において、先ほど申し上げました二件とはちょっと性格が違うということでございます。

笠井委員 いいんです、違っても。要するに使っているということです。

 来年度の予算案を見ますと、日本側の経費負担で三百四十六億円というのが予算計上されておりますが、そのうち、ロードマップに明記されていないアンダーセンの空軍基地やアプラ港地区の基盤整備として二百二億円が計上されております。

 この基本構想策定業務の報告書を見ますと、これらの基盤整備を予算化するに当たって、当然のこと、この報告書が検討の際の参考として用いられたということで理解しているんですが、そういうことでよろしいですか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 まさに、アメリカ側とやる場合に、そういったいろいろな中身の問題について、日本側として独自の判断、積算等を持ちながら米側の提案内容を評価していく必要があるということでございますので、御指摘のとおりでございます。

笠井委員 まさに、実際防衛省が提出した報告書概要版を見ますと、「アンダーセン地区及びアプラ港地区の基盤整備(敷地造成、ユーティリティ、幹線道路及びゲート施設等の整備)。」が、早期の着工が目標とされている事業として盛り込まれているわけであります。

 では、さらに、報告書の概要版には「米側案に基づき真水事業で実施する必要のある施設のうち、現時点で米側より提示されているのは以下のとおり」ということで三ページのところにありますが、この真水事業というのは、日本側が財政支出して整備される事業ということでよろしいんですか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 まさにここで言っている真水事業というのは、先生御指摘のとおりです。

笠井委員 その中で、この報告書の概要版には、来年度の予算案に設計費として約十六億円が計上されたフィネガヤン地区の下士官用隊舎とかアプラ地区のウオーターフロント司令部庁舎ということなども、着工することが予定されている事業として記されております。

 そこで伺いますが、このウオーターフロント司令部庁舎、港湾運用部隊司令部庁舎ということなんだと思うんですが、これはどういうものか。当初、米側案でフィネガヤン地区に建設予定としてきた沖縄から移設する海兵隊司令部庁舎、第三海兵機動展開部隊の司令部の庁舎のことなのか、それとも別のもののことなのか、これについて説明してください。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 現在、二十一年度予算に計上されておりますものは、その後の最新の日米間の調整でいろいろ議論した結果としてやっているものでございます。一方、この報告書というのは、その時点で予定されている事業ということでやっておりますので、現在までの調整の過程とここの報告書の内容というものがすべて一致しているものではございません。まさに、ここの報告書の概要を受けて、実際に日米間でいろいろな交渉をして精査をしていくという性格のものでございます。

笠井委員 ですから、この報告書の中には、ウオーターフロント司令部庁舎というふうに書いたのがあるわけですね、アプラ港地区と書いてあって。この予算書にも、ここに、港湾運用部隊司令部庁舎、アプラ地区、設計というのが入っています。

 私が聞いているのは、フィネガヤン地区の基盤整備事業というので工事費で百二十九億円つけている方は、これは、要するに、海兵隊が移るに当たっての第三海兵機動展開部隊の司令部庁舎というのはこっちの話なのかなとこの間の議論でいくと理解をしているんですけれども、他方で、もう一個司令部庁舎とか出てくるので、このウオーターフロント司令部というのは、これは報告書にあるかないか、交渉をどうしたかというのは別として、予算書に出ているわけですから、これはどういうものですか。沖縄から移転する際の第三海兵機動展開部隊の司令部のことなのか、それとも、また別個に、もう一個司令部というのを、移転と違って、またそれもつくろうという話なのかということを聞いているんです。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 そういう点でございますれば、アプラ港につきましては、沖縄からの海兵隊の移転に伴って移転する部隊、そのための庁舎というものがアプラ港地区に必要であるということで、そこも含めて予算を計上させていただいているということでございます。

笠井委員 そうすると、フィネガヤン地区に予定というふうに言ってきた、沖縄から移設すると言っていた海兵隊の司令部というのは、そっちはつくらないということですか。こっちにしたということ。その辺のことをちょっと整理してください。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 ですから、この点は前回の議論でもあったかと思いますけれども、フィネガヤン地区に行く部分というのは当然ありまして、先生御指摘の司令部的なものというのも当然入っております。それで、一方、アプラ港の方にもそういったものがあるということで、したがって、我々としては、そういった施設に関連するものとして、今までの基準に合致するということで、両方の整備というのに関連した経費を計上しているということでございます。

笠井委員 済みません、沖縄の海兵隊の司令部が二カ所に分かれていくというふうになるんですか、この辺の整理がよくわからないんですけれども。それとも、この際だから別個のものもつくっちゃうという話になっているのか。その辺はどういうふうになっているんですか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 司令部庁舎といいましても、一つの司令部に一つの司令部だけということではございませんので、我々としては、まさにそういった司令部機能を果たすような庁舎というものは、これまでも日本側が二十八億ドルの負担ということでやってきた基準に合致をいたしますので、その内容を精査して、両方が沖縄の海兵隊の移転を促進するために十分必要なものであり、これまでの基準に合致しているということであればということで計上しているものでございます。

笠井委員 これも本体を見ないとなかなかわからなくて、移転することに合致しているということと、つまり、その機能がそのまま来るのか、移転に伴って、さらにこの際関連ということでやるのかということもさらに究明が必要になることなので、そのものを見なきゃわからないという部分があると思います。

 では、伺いますけれども、報告書の概要版には、着工することが予定されている事業ということで幾つか書いてありますが、例えば、今言ったもの以外にも、NTCSフィネガヤン地区ということで、あるいは南フィネガヤン地区とかアプラ港地区ということで、生活関連と思われる、当初から真水でやるというふうに言ってきたことのほかに、それぞれに「その他」というふうに書いてあるんです。

 それが結局、米側案に基づいて真水事業で実施する必要のある施設のうち、現時点で米側より提示されているもので着工することが予定されている事業なんですけれども、「その他」というのは、これは一体何のことなんでしょうか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 この点については、要するに、この調査の中で議論されているときに、フィネガヤン地区にいろいろな施設が当然あるわけですし、アプラ港でもいろいろな施設があるわけでございますけれども、私どもとしては、具体的にどういったものが出てくるか。ここは例えば消防署というようなものが書いてございますけれども、それが生活関連的なものとして整備される具体性を持ったものである場合もあれば、それがまたなかなか具体化してこないというような場合もあると思いますので、私どもとしては、まさにそういう基準に照らして、必要なものは支援していく、そういう考え方でございます。

笠井委員 今、やってみなきゃわからないとかと言われたんですが、ここに、今私も言いましたけれども、文字どおり書いてあるのを読みますと、現時点で米側より提示されている事業があるはずです。米側案に基づいて真水事業で実施する必要がある施設ということで、こう書いてあるわけですから、提示されていて、実施する必要があって、着工することが予定されているわけですから、「その他」なんというはずがないですよね。具体的じゃなかったらおかしいですよね。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 その点につきましては、私、今全文のものを持っておりませんのであれでございますけれども、いずれにいたしましても、この性格は、委託をいたしまして、これから日米間で実際に事業をやっていくということを政府として別途判断するための参考材料でございますので、ここの記述が、今先生がおっしゃったようなところで何か具体的に入っているかということと、実際のこれからの予算の中に計上しているものというのは直接関係ございませんし、二十一年度予算ということで私どもが申し上げている内容は具体的になっているというふうに御理解いただきたいと思います。

笠井委員 そちらも今全文を持っていない。こっちも全文がないんですよ。だからこれはわからないという話なので。

 今いろいろ言われましたけれども、この報告書をまとめた久米設計ということですけれども、委託してやったんだと言うけれども、では、勝手に久米設計が、米側案に基づいて真水事業で実施する必要がある施設というようなことを勝手に言って、現時点で米側より提示されているというのが何かとか、着工することがそのうち予定されている事業は何かなんという話を勝手に想像でやるはずがないので、具体的に提示されて、それが必要だと政府も言っているから、それを受けて彼らがやっているはずなんですよ。

 そういう問題になってきて、結局、「その他」なんという形で一体何をやるかわからないと。しかし、具体的にアメリカなんかも言われていて、日本も必要があると判断しているから、そういうものに基づいて、彼らが、どうやったらそれがやっていけるかという具体的な実施要綱という形でこの策定業務をやったわけですから。

 これは大臣、来年度の防衛省予算、これは防衛省の管轄ですが、グアム移転関連経費について見ますと、真水事業について日米間で共通の理解が得られたために追加要求を実施などとあるわけですけれども、そういう形でロードマップで合意されたもの、あるいはそれ以外にも、グアム移転と直接関係ないものまで次々と共通の理解が得られたと、しかも、「その他」とかということでぼわっと書いてあるとなると、上限ということなんですが、これはまた協定のときに議論しますが、上限の範囲内とはいいますけれども、結局、その範囲内であっても、日本側が財政負担する対象というのは歯どめなく広がることになるんじゃないかと思うんですが、今のやりとりを聞かれていて、どのような感想をお持ちでしょうか。

中曽根国務大臣 このグアム移転に係る協定では、委員も御承知のとおり、お話にありますように、負担額の上限として二十八億ドルを規定しているわけでございますが、その枠組みの中で、大変厳しい財政事情を踏まえながらも、事業の概要そして費用の根拠などを適切に精査して、事業の関連予算を国会にお諮りしている、そういう考えでございます。

 実際、二十一年度予算案に計上しておりますこの事業の具体的な内容、またその所要経費につきましては、政府が精査した結果、必要な事業予算を計上したものでございます。

笠井委員 上限の問題はまた議論したいと思うんですけれども、二十八億ドルとなっていると。

 しかし、例えば仮として、いろいろ工夫したらやるのは二十億で済んだと。でも、八億まだあるから、アメリカが言ってきたそれに対して、また協議しながら、ぎりぎりまでは、ではさらに米側の要求でやっていこうなんという話になると、グアム移転と関係ない話まで入ってくるということになりかねない話なんですよ。

 だから私は、この問題もその前提として、この協定を検討するに当たって、先ほど局長も、私どもも今手元にありませんと言いましたけれども、しかも我々も持っていないわけですから、報告書本体の開示がいよいよ大事だというふうに思っているわけです。

 前回の委員会で、この問題を私も提起させていただいて、委員長からも理事会協議ということで扱いをしていただきましたが、この基本構想の策定業務に関する報告書の全文について開示をせよということに対して、防衛省はどういうふうに対応するつもりでおられますか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 防衛省として、これまでやったいろいろな調査につきまして、既に全文を出しているものもございます。

 ただ、今先生が御指摘の関係は、米側から入手した情報、これは非公表を前提にしたものが含まれていること、それから、今後の日米協議で日本側がしかるべく主張をしていくために、独自に積算した数値やその根拠等の情報も含まれておりますので、これまで概要版をお示しさせていただいたところですけれども、今回の委員会での御審議等も踏まえまして、今後、米側との関係も考慮した上で、可能な限りオープンにしていくことが重要であるというふうに考えております。

 報告書は大部のものでございますけれども、このような観点から改めて見直していきたいというふうに考えておりまして、その際、日本側が独自に積算した数値等にかかわる部分は、協議が終わるまではなかなか明らかにできないと思いますし、また、米側から入手した情報についても、改めて公表の可否等についての確認が必要でございますけれども、できるだけこの委員会の審議に資するため、情報の公開ということに心がけていきたいというふうに考えております。

笠井委員 伺っていますと、黒く墨塗りという話がすぐ頭に浮かぶわけですけれども、大部でと言われましたが、何ページのものなんですか、大体ボリュームとしては。

 それから、いろいろ検討しなきゃいけない部分があると言われましたが、では、いつまでに全体像について当委員会に対して提出するということで今進めているのか。二つ、簡単で結構です。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 報告書にはかなり細かい数字等のデータも含まれておりまして、全体としては二百ページを超える内容でございます。

 それから、報告書の全体像ということで申し上げれば、我々としてはできるだけ、この審議との関係ということもございますので、来週の水曜日には全体像をお示しできるように努力をしていきたいというふうに思っております。

笠井委員 出たものについて、よく過不足も含めて精査して、さらにただしていきたいと思います。

 終わります。

河野委員長 次に、辻元清美君。

辻元委員 社民党の辻元清美です。

 本日は、在外公館名称、位置、給与改正法及びそれに関連いたしまして質問をさせていただきます。

 今回の改正でコソボ大使館をオーストリアとの兼館として開設されるということになっておりますけれども、コソボは、先ほどからも出ておりますように、長い民族間の対立や、そして紛争の歴史があり、現在も、国際的にも独立に関しても賛否が割れるというような状況の中での大使館の開設ということになります。

 そこで、まず、この大使館開設に至った今回の目的及び主にこのコソボの大使館機能としてどういう役割を日本はリーダーシップを持って各国に発信してやっていくのか、それについて質問したいと思います。

福嶌政府参考人 まず、コソボの外交関係及び国家承認の関係でございますけれども、我が国は、コソボがアハティサーリ国連特使案に沿った国家運営を行う意思を明確にしており、我が国として同国の独立が長期的に地域の安定に貢献することを期待して、同国を昨年の三月十八日付で国家承認いたしました。

 また、先ほどお話のありました外交関係でございますけれども、我が国は、コソボ政府と協議の上、二月二十五日に外交関係を開設しました。これは、我が国として、コソボを国家承認した後、コソボ政府の外交実施体制の整備状況や国際社会の対応などを考慮しつつ、コソボとの間で外交関係を開設するために適当な時期を検討した結果行われたものでございます。

 また、今御質問のございました、コソボ大使館の設置理由及びいかなる活動機能ということでございますが、先ほど申しましたように、二月二十五日にコソボとの間で外交関係を開設したことを受けまして、今後、幅広い分野においてコソボとの関係の進展を図るべく、まずは法律上大使館を設置することが重要と考えた次第でございます。

 なお、在コソボ大使館につきましては、当面在オーストリア大使館が兼轄することを予定しております。在オーストリア大使館の館員をコソボに出張させるなどして、コソボに関する情報収集、分析とともに、コソボの経済社会の開発や人材育成などのための支援を引き続き行っていく予定でございます。

辻元委員 情報収集などを中心にというような御答弁であったかと思いますけれども、支援の関係は、今後コソボに対してはどうなっていくんでしょうか。

中曽根国務大臣 我が国は、今までも、コソボに住む人々のために、草の根・人間の安全保障無償資金協力を通じた医療とか教育の分野での支援を行ってきております。また、技術協力によります人材育成などの支援も実施をしてきたところでございます。昨年の十月には、国連における人間の安全保障基金を通じまして、UNDPなどが実施をいたしますコソボの地域開発プロジェクト、これに対しまして約三百万米ドルの支援を決定いたしました。

 我が国は、今後、コソボにおける経済水準それからニーズなどを考慮しながら、コソボの経済また社会の開発や人材育成のために、二国間そして国際機関を通じた支援を行っていく考えでございます。

辻元委員 私は、大使館を設置する、在外公館の役割としては、邦人保護など重要な役割があると思うんですけれども、それ以外に、特に途上国や、それから紛争を抱えている国々、対立を抱えている国々に対しては、日本がどれだけその国に役立つ支援を実効的に行えるか。そしてさらには、もう一つの機能として、紛争の調停ということを日本は人道国家としてどれだけ果たしていけるかということも大事になってくる。その前線に大使館というものが置かれるというふうに考えているんですね。

 安保委員会に以前所属しておった折も、私は、日本を人道大国であり、それから紛争などの調停国家として、世界じゅうのいろいろな問題解決に積極的に関与し解決していく外交をということを、中曽根大臣にもアフガニスタンの例などで提言したことがございました。

 今、そのときにも取り上げた例だったんですが、特にコソボについては、アハティサーリ前フィンランド大統領のあっせん案に基づいてという御答弁も先ほどあったとおり、この大統領は昨年ノーベル平和賞をとられ、コソボやそしてアチェなど、非常に難しかった紛争についての解決の糸口、道筋をつけられるということが評価されております。

 さて、そこで、この大統領が、まだ完全には解決していないわけですけれども、コソボの調停を行い、道筋をつけていったということに対して、どのように外務大臣は評価をされているか、お聞きしたいと思います。

中曽根国務大臣 アハティサーリ前フィンランド大統領は、もう三十年以上にわたる長いキャリアの中で、こういう国際紛争の解決に向けて多大な尽力をされてきた方でございますが、二〇〇五年以降は、国連の暫定統治下にありました、今議題になっておりますコソボの将来の地位問題に関する解決案の取りまとめに尽力をされまして、国際社会の監督下によるコソボの独立案を国連に勧告するなどされて、長期的な安定のために多大な尽力をされたわけでございます。

 その他の地域、インドネシアのアチェ州とかそういう地域におきましても、和平プロセスの進展に対する貢献を含めまして、前大統領の国際調停者としての業績を高く評価しているところでございます。

 ノーベル平和賞を受賞された際にも、私から大臣談話でお祝いの談話を出させていただきました。

辻元委員 アハティサーリ前大統領、フィンランド、それからノルウェーなどは、調停外交をトップ輸出品にしている国々と言われているわけです。私は、前回、中曽根外務大臣に、ぜひ大統領に次ぐ貢献者になっていただきたいということで、日本はあらゆる紛争を武力で解決しないんだと世界に宣言しているわけですから、武力以外のことでの貢献というので、これから調停外交というのは日本の大きな柱にしていただきたいと思っております。

 そこで、アハティサーリ大統領の功績を高くたたえるとおっしゃったわけですが、特徴があるんですね。調停外交の特徴、まず、コソボの大使館などもその点でこれから活動してほしいと思うんですけれども、同大統領が一つはこう言っています。コソボやアチェの紛争の解決のプロセスで、成功させるには少人数で有能な人々によるチームが必要だった、政府だけが和平交渉を担えるわけではない、交渉がだらだらと続いて何の成果も得られないこともある、市民も平和をつくる作業に加われる。そして、このほかにも、どんな和平調停にかかわる際にも、NGOの若い仲間を加えるようにしているというのが特徴なんです。

 これは、私はNGO出身の議員だから申し上げるわけではないんですけれども、例えば、この間の国際情勢を見ましても、対人地雷の全面禁止条約、そしてさらにクラスター弾の禁止条約、そしてさかのぼれば九〇年代にはオスロ合意もございました。これにかかわっては、国際的なNGOと、例えば対人地雷ですとオタワ・プロセスと言われる、これをカナダ政府がサポートしていく、そしてクラスターの場合はオスロ・プロセスと言われました、一緒になってこれはノルウェー政府がバックアップしていく。そして、世界の軍縮や紛争解決にNGOと一緒にパートナーシップを持って進めていったことが実際実績を上げているんですね。私は日本をそういう国にしたいと思っているわけです。

 そこで、今回、そういう中で、各国在外公館と、そしてそこで活動している日本初め世界のNGOとの情報交換ということが、在外公館の仕事の中でも大事になってくると思うんですね。

 以前いただきました、平成十七年三月に、総務省、外交・在外業務実施体制及び運営に関する行政評価・監視の中で、外務省に対する通知の中に「NGOとの新しい関係」という項目もございました。これは、外務省のいろいろな、さまざまな問題の折、この外務委員会でもこの総務省の勧告はかなり取り上げられておりますけれども、この中に一項目、NGO諸団体への職員の派遣とか、それからNGO担当大使の設置、そしてNGO連絡センターの拡充とか、さまざまな点を指摘され、これからも取り組むようにという趣旨の項目が入っております。

 そこで、現状どうなっているかお聞きしたいと思います。NGO諸団体への職員の派遣は、現在どこにどれぐらい派遣しているのか、それからNGO担当大使というのは今置かれているのか、それから連絡センターはどこにどのように拡充されたのか、御答弁いただきたいと思います。

兒玉政府参考人 事実関係のお尋ねでございますので、私の方からお答えさせていただきます。

 まず、先生御指摘の平成十七年三月の総務省の評価のことでございますが、その通知においては、「NGOとの新しい関係」に関するすべての事項においておおむね進捗しているという評価はいただいていると我々は認識しております。

 その上で、その後どういう努力をしているかということでございますが、まず、NGO諸団体への職員の派遣については、外務省は、さかのぼりまして平成十四年度から毎年度、若手省員をさまざまなNGOに一週間から一カ月程度、大体四週間の間で派遣をする国際協力NGOインターンシップ・プログラムを実施しております。これまで、平成十九年度までに、このプログラムを通じて合計八十名の外務省員が、若手省員が、合計十七のNGO団体で実際に研修をして、平成二十年度、今年度におきましても、三つの団体で計三名、二名はもう既に研修を修了して、一名がこれからでございますが、そういう予定でございまして、このプログラムは本当に今、意義深い、外務省とNGO団体との関係をさらに強化する上でも大変有意義なプログラムと思っています。

 それから、NGO担当大使につきましては、平成十四年十一月に大使を設置しました。現在も、NGO担当大使として非常勤の外務省参与である五月女光弘元ザンビア大使を任命しておりまして、今日まで六年四カ月の間、初代民間援助支援室長として培った人脈と実績を生かして連携の基礎をつくり上げ、特に今、新聞や雑誌等への寄稿、講演を通じて啓発に努めていると思っております。

 それから、最後にNGO連絡センターでございますが、これは平成十二年の十月に、国内広報課長をセンター長、その企画官をセンター長代理として、課員二名、合計四名を構成員として発足しております。その後、平成十四年十一月に先ほど申し上げましたとおりNGO担当大使が設置されて、同大使がセンター長を務めて、今日に至っているということでございます。

辻元委員 一週間から一カ月派遣されているとか、非常勤とか、二名プラス二名で四名とか、私はまだまだ足りないと思うんですね。

 もう一つお聞きしたいと思うんですが、ODAの評価をめぐりまして、これも在外公館がODAを効率的に、どういうようにどこにつけるというか、日本としてコミットメントしていくのがいいのかということで、在外公館の役割も大事ですけれども、その評価をということで、外部の評価、特に現地に詳しいNGOも評価をするメンバーとして、NGOや国際機関との合同評価ということもこの総務省から出されました勧告の中に出ております。

 実績をちょっと伺いたいと思うんですけれども、この間、NGOや国際機関によるODAの評価というのはどれぐらい、何件中何件というように報告していただけますでしょうか。

小田政府参考人 お答えいたします。

 平成十五年度以降で数字をとりますと、外部評価は全体で七十五件実施しております。このうち、NGOとの合同評価は四件ございます。それから、国際機関などほかのドナーとの合同評価が四件、被援助国との合同評価が十四件ございます。それ以外は、国際協力局長の私的懇談会でありますODA評価有識者会議、こちらの方に依頼して、年間九件程度の第三者評価を実施しておりますが、この委員会の中にはNGOの方も入っていただいておりますので、そこでもNGOの方の御視点が加味されているというふうに考えております。

辻元委員 今、七十五件中四件というお答えでした。

 先ほど、ノルウェーや、そして、前大統領がコソボなどの紛争の仲介ということで活躍され、ノーベル平和賞をとられたフィンランドなどの例を挙げましたけれども、例えばノルウェーでは、これは私も随分前から注目をしていたんですね。こういうように言われております。

 ノルウェーは、NGO要員を六万人以上育てた。実際に、紛争の調停の特徴というのは、ノルウェーの外交官が紛争地域で調停を始める前には必ず同国のNGOや学術研究団体の専門家が現地に何年か入り込んでいると言われている。スリランカでは、北東部のタミール・ゲリラ影響下の地域にタミール語の話せるノルウェーの学術調査団が早くから入っていた。また、NGOや赤十字、海外問題研究機関などとの交流が多いのがオスロの外務省人事の特徴でもあるということで、六万人、率先してNGOを育てている。

 私はNGO出身で、かつて地球サミットがブラジルでありましたね、気候変動の。これはもう二十年近く前になるわけです。そのときもびっくりしましたのは、欧米諸国は環境関係のNGOが政府交渉団の中に入って共同作業をしている現場を目の当たりにしまして、日本とはえらい違うなと思ったわけです。それで、ヨーロッパはどんどん気候変動についても先を進んでいます。非常にNGOの影響が大きいわけですね。

 日本にあるノルウェーの大使館のホームページにもちゃんと出ているわけです。外交をどういう方針でやっているかということを日本でアピールしているわけですね、ノルウェーは。その中に、「紛争地域におけるノルウェーの和平・調停活動」という項目を設けまして、かなりページを割いております。その中に、ノルウェーの和平調停努力は、多くの場合、紛争地域におけるノルウェーのNGOの活動に根差しています。教会のネットワーク、人道的組織、研究機関、労働組合が地域の状況に精通しており、紛争地域に幅広いネットワークを有しています。したがって、それらはノルウェー当局の活動のためのしっかりした基盤となっています。ノルウェーのNGOは、当事者間に信頼関係を構築しなければならない状況で特に重要な役割を果たし、交渉の土台を築く支援をしてきましたという項目が入っております。

 今回コソボにも大使館機能を設置されるということで、私は、日本の在外公館と、そして、そこに滞在する日本のNGOや、さらには諸外国のNGOとのつき合いも率先してしていただきたいと思うんです。お聞きしましたら、在外公館がNGOとつき合う際のガイドラインも日本は存在していないという外務省からのお答えでした。もったいないと思うんですね。

 さて、大臣、最後に、この前もお聞きしたんですよ、やはり紛争の調停というのはこれから非常に大事です。特にコソボの場合は、これは先ほどのノーベル平和賞をおとりになった大統領が言っています。なぜこの大役が可能だったのか、もしフィンランドがNATOの加盟国だったら、私は仲介役としての役割を果たせなかっただろうと言っているわけです。コソボはNATOが空爆しているわけですよ。実際、空爆をしたり軍事的介入をしたところは仲介しにくいわけですね、調停を。日本は、コソボとかパレスチナは、全く軍事的な関与も過去の植民地にした経緯もございません。ですから、だからこそ紛争の調停ができるというように私は考えております。いかがでしょうか、大臣。頑張っていただきたいと思いますよ。

中曽根国務大臣 紛争の調停に我が国が貢献するということは大変大事なことでありますし、今委員がおっしゃいましたような中立的な立場、これを活用してそういうような役割を果たす。例えば、ほかの国でも今そういうような状況のところもあります、現に努力しているところもありますが、委員の趣旨を踏まえて、今後もそういうような役割を果たしていけるよう努力をしていきたいと思います。

辻元委員 終わります。

河野委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

河野委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河野委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

河野委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、三原朝彦君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。武正公一君。

武正委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表しまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  一日も早い解決を迫られる北朝鮮拉致問題やその解決の目途が見えない北朝鮮やイランの核問題、自立を模索するイラク情勢、和解促進を必要とするアフガニスタン情勢等、国際情勢は不透明さを増しており、これら問題解決の遅れは更なる地域の不安定化を招来することになる。今、我が国に求められるのは国益を踏まえつつ、国際社会との協力・連携の下、これら諸問題に毅然と対応する外交力である。そのためにも、我が国外交を担う外務省の体制強化と危機管理体制の抜本的改革が必要である。他方、今日、サブプライムローン破綻による世界金融危機をきっかけとして国際経済の著しい後退局面を生じ、我が国経済は未曾有の危機的状況に陥っている一方、財政事情は依然として厳しい。外務省においては組織改革や手当の見直しに際し、こうした国内事情を重く受け止めるとともに、とりわけ外務公務員の手当に向けられる国民の声に真摯に応えていく必要がある。これらを踏まえ、政府は、本法の施行に当たり、次の事項について検討の上、適切な措置を講ずるべきである。

 一 我が国外交の最前線基地である在外公館等の新設に関しては、我が国の国益と相手国との相互主義の原則等を踏まえ、戦略的にその増強・整備に当たること。

 一 在外公館においては、大規模自然災害や犯罪・テロ等の緊急事態における在外邦人に対する迅速かつきめ細やかな支援を可能とするため、日常の情報提供、共有体制等も含めて危機管理体制の機能拡充に努めること。

 一 我が国の厳しい財政事情を厳粛に受けとめ、在外公館に関わる予算の効率性・透明性を高めるとともに、その執行に当たっては、適切な支出が図られるよう具体的な措置を講じること。

 一 在勤手当については、国内の財政状況や外交活動を推進する上での必要性を踏まえ、民間企業、諸外国の外交官の給与・手当の水準及び各任地の事情に鑑み、為替・物価等の変動が反映される形で客観的に算出されることにより、必要に応じて在勤手当全般にわたる内容の見直しを行うこと。特に為替変動による在外基本手当の見直しについては、直近のデータを基に見直しすること。

 一 国際社会のグローバル化による海外渡航者や在留邦人の増加とともに領事業務の重要性が高まっていることに鑑み、邦人の活動環境を向上させるための国民の視点に立った領事サービスの不断の向上に努めること。

 一 外務省においては、総務省の行政評価・監視結果を踏まえ、不祥事の再発を防止し、信頼を回復するため、より一層の情報公開と外交機能強化のための組織・制度の改革に全力で取り組み、その成果を国民に対して分かりやすく説明すること。

 一 在外公館における監査・査察体制の一層の強化を図ること。

  右決議する。

以上でございます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

河野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河野委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付すことに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣中曽根弘文君。

中曽根国務大臣 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を可決いただきまして、まことにありがとうございました。

 外務省といたしましては、ただいまの附帯決議の御趣旨を踏まえつつ、今後とも外交実施体制の強化を図り、種々の外交課題に全力で取り組んでまいる所存でございます。

    ―――――――――――――

河野委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

河野委員長 次回は、来る二十五日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十三分散会


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