衆議院

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第4号 平成21年3月25日(水曜日)

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平成二十一年三月二十五日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 河野 太郎君

   理事 小野寺五典君 理事 松島みどり君

   理事 松浪健四郎君 理事 三原 朝彦君

   理事 山中 あき子君 理事 近藤 昭一君

   理事 武正 公一君 理事 伊藤  渉君

      逢沢 一郎君    猪口 邦子君

      小野 次郎君    木原  稔君

      篠田 陽介君    柴山 昌彦君

      鈴木 馨祐君    中山 泰秀君

      西村 康稔君    原田 義昭君

      松浪 健太君    山内 康一君

      山口 泰明君    池田 元久君

      篠原  孝君    田中眞紀子君

      鉢呂 吉雄君    松原  仁君

      丸谷 佳織君    赤嶺 政賢君

      笠井  亮君    辻元 清美君

    …………………………………

   外務大臣         中曽根弘文君

   内閣官房副長官      松本  純君

   外務副大臣        伊藤信太郎君

   防衛副大臣        北村 誠吾君

   内閣府大臣政務官     並木 正芳君

   総務大臣政務官      坂本 哲志君

   外務大臣政務官      柴山 昌彦君

   外務大臣政務官      西村 康稔君

   国土交通大臣政務官    岡田 直樹君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 西村 泰彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 小原 雅博君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    梅本 和義君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    谷崎 泰明君

   政府参考人

   (防衛省防衛参事官)   岩井 良行君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  高見澤將林君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  徳地 秀士君

   政府参考人

   (防衛省経理装備局長)  長岡 憲宗君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  井上 源三君

   外務委員会専門員     清野 裕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十五日

 辞任         補欠選任

  御法川信英君     松浪 健太君

  笠井  亮君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  松浪 健太君     御法川信英君

  赤嶺 政賢君     笠井  亮君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

河野委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房参事官小原雅博君、北米局長梅本和義君、欧州局長谷崎泰明君、警察庁長官官房審議官西村泰彦君、防衛省防衛参事官岩井良行君、防衛政策局長高見澤將林君、運用企画局長徳地秀士君、経理装備局長長岡憲宗君、地方協力局長井上源三君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河野委員長 質疑の前に一言申し上げます。

 きょうの委員会の質問通告が若干遅かったようでございます。委員の諸君におかれましては、なるべく早い時間に質問通告をされることを望みます。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中山泰秀君。

中山(泰)委員 委員長初め、中曽根外務大臣初め、委員各位の皆様方にまずもっておはようございますとごあいさつを申し上げたいと思います。

 今、私、政治が非常に日本国民の人心を乱しておるような気配を、空気を感じております。その中で、日本の最古の憲法と言われる聖徳太子の十七条憲法の第一条は、先生方御存じのとおり、和をもってとうとしを旨となせ、人皆たむろありと。たむろというのは、各政党の党と書いてたむろと読みますが、要は、人間が三人寄れば二対一に必ず分かれる、派閥争いをする、だからこそ胸襟を開いて仲よくしなさいというのがその意味だと思います。

 そして、同じくその中で、十七条のうちの第六条にもっと大切なことが書いてあると思うんです。そこには何て書いてあるか。悪いやつには悪いと言え、いい人は褒めなさいと書いてございます。勲章を与える制度なんかもございまして、天皇陛下におかせられましては、国民のすばらしい功績を持った者に対して誉れを与えておられる。と同時に、やはり、悪い事案には悪いと言うことが政治の世界にも本当に必要であって、そして、それができないからこそ、逆に政治不信を国民の間に生んでいるんだというふうに私は思います。

 これは、与野党問わず、関係のない、全体の問題だと思いますので、御指摘を申し上げたいと思いますと同時に、現在、政治資金規正法、これは与野党問わずいろいろ問題になっておりますが、ぜひ、私の個人的な意見としては、例えば第三者機関をつくって、そして政治献金をしたい者が先に第三者から認証を受けるような、そしてそのオーソライズを受けた人が特定の団体やらその者に対して政治献金ができるようなシステム、現在は共産党さんは企業献金を受けていらっしゃらないということなので、逆に言えば、それ以外には相当の嫌疑がかかるということでございます。その点を踏まえて、与野党ともに一致をした、政治をクリーンにするための政治資金規正法の充実というものを審議できたらなというふうに思います。

 そして、けさ、NHKのBSのニュースでも入ってまいりました。実は、ダライ・ラマ十四世がサッカーを使った平和のための国際会議、世界平和を目途としたサッカーを使った外交の会議に出席をしようとしたら、南アフリカ共和国から入国を拒否されたという報道が香港のATVという放送で流れておりました。

 私は、ちょっとここに一冊の本を示させていただきたいんですが、これは早稲田大学の教授で元通産省のOBの平田竹男先生という方が書いた「サッカーという名の戦争」、これは新潮社から先々週ぐらいに発売されておりますが、まさしくスポーツと外交というのが表裏一体のものであるということと同時に、こういう今回の南アフリカのような、国際平和を目指そうということ、その席にたくさんの有識者が集まる中で、ダライ・ラマの出席が認められなかったこと、そしてまた、それに呼応する形で、ツツ元大主教ですとか歴代の大統領三名がおかしいということで、その会議自体が中止になったということに対して、ある意味、非常に意義深いものを感じておりますので、今後は、やはり世界で協調しながら、こういう平和を目途とした会議にはそういったことが起こらないようにしっかりと、何人たるものであっても、どこの国でも自由に入れるというような世界平和というものが一日も早く訪れることを心から望みたいというふうに考えてございます。

 きょう、今、先生方、委員各位の皆様に資料をお配りさせてもらっております。

 まず、資料の国力を算出する基礎的方程式というものをごらんください。ここには、Pp、国力量、計量認識された国力、これはパーシーブドパワー、それがイコールの左側に来ていまして、イコールの右側には、(C+E+M)×(S+W)と書いてございます。このCというのはクリティカルマス、その国家の基本要素を示します、人口と領土。そしてプラスE、経済力、エコノミックケーパビリティー。プラスM、ミリタリーケーパビリティー。

 このCというのは、日本においては一億二千万の人口がおり、そして領土が南北になんなんとあるわけで、周りを海に囲まれて海洋資源に恵まれている。そしてまた、資源のない国日本は、同時に人の知恵というものが我が国の資源だというふうに思いますので、そういったものが基本要素になるんだろう。これがいわゆるクリティカルマス。

 経済力ですけれども、エコノミックケーパビリティー、これは、GDP、世界で二番目と言われていますけれども、昨今のサブプライムローンの破綻、世界恐慌、金融恐慌を見ておりますと、この経済力というのも波にあおられてしまう可能性もある。

 このM、軍事力、ミリタリーケーパビリティーですが、軍事予算というのは、我が国は約四・九兆円、約五兆円でございます。しかし、そのうちの五〇%が実は人件費である。それを考えますと、残りの二・五兆というのは、実はお隣の、WBCで日本が勝ちましたけれども、韓国の防衛予算に大体相当する。そうすると、逆に、世界で十二番目という軍事力になろうかと思います。

 例えば、ここが中国だったらどうなのか。Cというのは、領土は大きいですよね。アメリカでも日本の二十六倍ある。人口も十二億。アメリカでも二億六千万ですか、ある。経済力も、BRICsと言われている中で非常に成長率が高い。軍事力も、最近透明性が増したとはいえ、空母を二隻つくったり、いろいろな軍事力の伸びというものが見られている。

 要するに、それぞれによって、このCプラスEプラスMというのは、イコールの左側の国力量をはかる上において変化をしているということも言えます。

 さあ、問題は、この掛け算の右側だと私は思います。

 掛け算の右側、S、これはストラテジックパーパス、戦略目標。そして、プラスW、Wというのは、ここに書いてございますとおり、ウィル・ツー・パーシュー・ナショナル・ストラテジー、国家戦略を遂行する意思。この意思というのは、私の認識では、国民の意識、意思、そして政府の意思、そして議会、要するに国家全体のすべての意思を総称してこのWということが言えると思うんですが、実は、これは掛け算の公式でございますので、掛け算というのは、掛け算の左側に、C、E、Mが幾ら数字がプラスで出ていても、掛け算の右側がゼロだったら、イコールの左側というのはゼロになるんです。

 私は、日本の、ある意味、言葉は悪いですけれども平和ぼけをしつつある国家を見ていますと、このSプラスWという部分が限りなくゼロなんじゃないかという気がして仕方ありません。そしてまた同時に、麻生内閣になって、そして過去の内閣においても、戦略目標を国民にはっきりと明示しておられるのかどうか。そして同時に、その国家戦略を継続するための意思を国民に対して鼓舞しておられるのかどうか。この点をどのようにお考えになられているか、中曽根外務大臣の御見識をお伺いしたいと思います。

中曽根国務大臣 今委員がお示しになられましたこの方程式は、米国のレイ・クライン博士が国力の分析に計量的な手法を導入したもの、そういうふうに理解をいたしております。この方程式そのものがどうであるかという学術的な評価はさておきまして、今先生がおっしゃいましたような各要素、これが国力を決定する上で重要であるということは私も十分に理解できるところでございます。

 委員の御指摘は、日本には、我が国には、このSとW、すなわち戦略目標と国家戦略を遂行する意思、これが政治や行政、また国民などの間で欠けているのではないか、そういうようなお話だったと思いますけれども、私は必ずしもそうとは思っておりません。また、必ずしも一〇〇%十分であるとは思っておりませんけれども。

 日本の今までの発展の状況を考えてみますと、第二次世界大戦後、とにかく平和で豊かな国をつくろうということで復興から始まりまして、政府も国民もみんなが頑張ってきたわけでありまして、そういう大きなある意味では目標というものがあった。そして、それを決意した上で、安全保障の上においては日米同盟というものを基軸といたしまして、そうして、かつ国際社会と協調し、またアジアの近隣諸国とも協力をしながら努力をしてきた。その結果、日本の経済というのは世界でも第二位と言われるまでに発展をしてまいりましたし、さらに各国との間で友好な協力関係を築いてきたということによりまして、また平和と繁栄を享受しているものだ、そういうふうに思っております。

 これを実現する主要な要因となりましたのは、このC、E、M、S、W、すべてが必要なのでありますけれども、委員はゼロとおっしゃいましたけれども、日本は日本なりに長期的な戦略目標、そしてそれを遂行するための意思、これがあったと私は思っております。

 従来、こうして今までは成長してきましたけれども、こういうふうに非常に情勢の変化の激しい今の時代にありまして、また、冷戦が終わっていろいろな紛争もまだ残っている、こういうときにおきましては、やはり国益を守るためにはこういう戦略目標やまたそれを継続する意思というものがますます重要になっているということは間違いないと思っておりまして、委員のおっしゃりたいことを十分に認識してこれからもやっていきたいと思います。

中山(泰)委員 ここに一枚のというか写真を額に入れてきました。これはちょうど外務大臣の御尊父、御父君である中曽根康弘元総理と若き時代の私でございまして、当時僕は十六歳だったと思います。スイスで写真を撮りまして、ベネチア・サミットの帰り道に、ちょうど私自身が一九八六年から八九年まで三年間フランスの方で高校寮生活をしておりまして、近所に日本の総理が来られるということで表敬訪問をさせていただいたときの写真でございました。

 たまたま隣には、これは深々とおじぎする二十五歳の私なんですけれども、実は、初めて衆議院の選挙に十四年前に出まして、落選をして、ごあいさつをさせてもらって、八年間で三回、当選まで落選をするという経歴を私は持っております。

 かといって、あそこにも私のおやじの、掲額されておりますが、ああやって、最近、世襲批判というのもたくさんありますけれども、そんなことを思っていても、同時に、しっかりと、長期的視野で、世襲の人もそうじゃない人も、学歴が中卒の人も大学院以上の博士のような人も、魚屋さん出身の人も銀行マンの人も、いろいろなジャンルの人が集まって議論をする民主主義の議会というのが衆議院だ、そしてそうあるべきだろうということを私は思っております。

 しっかりと、こういった、十六歳のときに中曽根元総理に質問をさせていただいたことを、実は、もう何十年、二十三年前のことなんですけれども、その当時のことを克明に私は記憶していて、そして同時に、今現在の外務大臣に対しても、そういった歴史を踏まえながら、中身のある質問を展開させていただきたいというふうに考えております。

 この中で、私は一つ申し上げたいのは、中曽根元総理の生きられた時代というのは、まあ、まだお元気なんですけれども、二十世紀のいわゆる冷戦構造の中にあったと思うんですね。いわゆる米ソの対立というのがありました。お互いが核の数を競い合ったり、いろいろなことが行われた。

 その米ソの対立の中で、東西冷戦構造というのが一応終えんをしましたけれども、特にベルリンの壁が崩壊をして、東西ドイツが統一をされて、そして同時に、当時のソビエトというのがペレストロイカという民主化の中でどんどん変化をしていった。他方、旧西側諸国のリーダーであった米国におきましては、例えば民主主義というのは保たれています、しかし市場主義経済というものが、今のサブプライムローンの破綻と同じように、実は、人間というのは神様じゃない、だから必ずうそをつく、うそをつくということは経済においても粉飾決算というものを行って、例えばエンロンショックですとか、映画にもなったようなことが起きました。一つ、米国型のバブルの崩壊と言えるんじゃないかと思います。

 そういったことが起きて、もう何か右でもないんだ、要するに自由主義、民主主義、市場経済主義でもないんだ、他方、共産主義というのはもうなくなった、さあ、これからは、右でもない左でもない、新しいハイブリッド主義というか、新しい政治中道主義というのを求めていかなきゃいけない時代になったんじゃないかということで、当時はたくさんのベストセラーが実はそういった話で出ていたというふうに思います。

 今は二十一世紀、外務大臣、ぜひ過去をちょっと振り返っていただいて、米ソの対立の終えんというものに対してどのような意見をお持ちかということと、もう時間もだんだん迫ってきていますので、実は、民主化されたロシアにおいても、例えばチェチェンの問題を取材していたアンナ・ポリトコフスカヤという女性のジャーナリストが自宅で暗殺をされる、そしてまた、飛行機に乗って移動中に紙コップに入ったジュースを飲んで数回暗殺未遂を受けている。そしてまた、ロンドンでは、元KGBの情報部員でリトビネンコという人がある大学の教授とすしを食べていて、放射性物質のポロニウム210の大量摂取によって暗殺される事案、二〇〇六年十一月なんかを見ましても、時代というのは、冷戦構造が終えんを迎えて、終わったよといいながら、何かまるで映画の007のような政治的な闘いというのが逆に激化しているような気がしてなりません。

 すなわち、私がお伺いしたいのは、確かに二十世紀の冷戦構造というのは終えんを迎えた、しかし、実は、それは白い雪をふわっとかぶせただけで、本質的に雪の下にはまだ冷戦構造というのが深く深く残っているんじゃないかという疑問を抱かざるを得ないんですが、その点に関して大臣の所見をお伺いしたいと思います。

中曽根国務大臣 東西冷戦が終えんをしたときに、世界の人々は、これで平和で安定した世界になるんじゃないか、そういう期待があったと思うんですね。しかし、冷戦後の世界というのは、もう皆さん御承知のとおり、地域紛争とか、あるいは内戦も後を絶ちませんし、そして今は大量破壊兵器、核兵器、それからテロ、さらには自然環境、地球環境とか、多くの課題が残っているわけであります。

 そういう意味で、またさらに我が国の近隣地域を見てみますと、御案内のとおり、北朝鮮のこういうような脅威といいますか、ミサイル、核の問題、また拉致の問題、そしてさらには台湾海峡をめぐる問題とか、数多くの課題があるわけでありまして、東西冷戦が終わったからといって本当に真の平和、安定が世界に来たとは必ずしも言えない、そういうふうに思っております。

 西側陣営と東側陣営の大きく二つに分かれて世界が自由主義と社会主義という形であったわけでありますが、一つの例えでありますけれども、磁石のSとNですか、両方に砂鉄みたいなのがくっついていたのが、この磁力がなくなってばらばらになってしまった、そんなようなことも例えとして言えるんじゃないかというような、今、世界の、そういう構造ではないかと思います。

 そういう状況になって、では今後世界がどういうふうな形でまとまっていくといいますか、ということを考えた場合には、やはり国連が一つの機能を果たすであろうということと、果たすべきであろう、そういうような期待というものが高まったわけでありますが、そういう期待がありましたけれども、果たして国連がまた十分な役割を果たしているかというと、それもまだまだ問題があろう、そういうふうに思っております。

 我が国は、御案内のとおり、ことしから非常任理事国になりました。そういう冷戦が終えんした国際社会の中で、平和と安定の実現のためには、やはり今置かれた立場、すなわち国連の理事国として、日本は大きな役割を果たす必要があるだろう、そういうふうに思っております。

 また、さらにつけ加えますならば、そのためには今の安保理の改革もこれは絶対必要でありまして、そういう点も含めて、日本は国連の活動を行い、そして世界の平和と安定のために貢献すべき、そういうふうに考えております。

中山(泰)委員 きょう、別の資料を配らせてもらっているんですが、カラーコピー版の「毛沢東語録」という資料を配らせてもらっております。これは実は一九六六年ですから、私が七〇年、昭和四十五年生まれなものですから、私の生まれる四年前に発刊をされておる本でございます。

 実は、発刊に当たって、毛沢東というのは恐らく共産党思想、共産主義思想を持っておられる方だと思うんですが、この本の表紙をあけますと、「すいせんのことば」というので、衆議院議員松村先生、自由民主党顧問と。それで、ここを読むと何と書いてあるかというと、「毛沢東等中国指導者は日本の明治維新の志士達と共通した所がある。毛沢東は西郷隆盛とも云うべきか。」と書いてあるんですね。自民党の人が毛沢東のこの本を推薦するというのは、ちょっと私には、政治思想、イデオロギーを考えますとよくわからないんですが、当時の背景、歴史的背景もあるでしょうから、もしこの松村先生が生きておられたら、もしくは私が死んで天国へうまく行けたらお伺いをしたいなとも思っているんですが。この中に、同じくこの「まえがき」の手前の後ろにも、社会主義研究所毛沢東語録研究会というので、衆議院議員の名前が六名ほど連なっております。

 そして同時に、ホッチキスどめのもう一個の方ですが、百七十一ページ、「十八、愛国主義と国際主義」と書いてあるんですけれども、ここに何が書いてあるかというと、要するに、毛沢東主義の言う国際主義というのは、簡単に言えば、共産主義者というのは愛国主義者であれ、そしてなおかつ国際主義者たれ、同時に、共産主義者で共産主義以外の国家に住まう者は自国の敗北を祈れ、共産主義者でもって共産主義国家に住まう者は自国の勝利を祈れ、これが毛沢東の言ういわゆる敗北主義ということだと思います。

 今現在、中国は、九七年、九九年の香港、マカオの返還というものを逆に一つのばねにして、一国二制度という、共産党、政治は一党独裁、しかし、経済は市場原理をしっかり利用すると。

 私、実は関西国際空港議員連盟というのにも入っているんですが、実は、関空の予算というのは、大阪、近畿一円の議員がみんな集まって、官邸、財務省へ予算をとりに行ってもなかなかつけてもらえないんですね。しかし、北京空港とか上海空港には過去にも日本のODAが関空に必要な分以上につけておられて、そして同時に、まあそのODAの果たした日中友好の意味というのも当然もちろんわかりますけれども、納税者の一部には違った意見も実はあるんだろうという認識をしております。すなわち、ODAをして空港をつくって、そして同時に、その空港を香港のストックマーケットで上場させてしまった、ところが、我々日本には、納税者には配当は一切来ないということ。

 これを考えますと、私は、なかなかこの問題というのもしっかりと考えていかなきゃいけないというふうに思いますが、この中国というのが、しかし同時にこの一国二制度というものを活用して、今、成長率が最も高いBRICsのうちの一つになっている。

 他方、この中国に隣接をしながら北朝鮮という国があって、同時にこの北朝鮮という国が、日本に対して、今度、来月の四日から八日ですかにミサイルか人工衛星かよくわからないような、まるでUFOのようなものを打ち上げると言ってきているわけです。

 ここで私がお伺いしたいのは、今、日本には最も大切な拉致問題、これは、横田めぐみさんを初め七件十名から始まった被害者の方々をしっかりと我が国民の同胞としてこの国に生きて帰してこなきゃいけないという大きな目標がある。そして同時に核問題、ミサイル問題、そしてよど号犯たちの逮捕帰国問題、こういったものもありながら、しかし、この北朝鮮、我が国から見たら鎖国状態にあるあの国をソフトランディングさせて、金正日なりが間違って核のボタンを押さないように、しっかりと協調しながら缶切りであの国をあけていかなきゃいかぬということも言えると思います。

 その中で、北朝鮮というのは、実は国交を百六十一カ国、外務省のホームページだときのうの時点で百六十カ国と書いてございましたが、そういった国交の締結数がある。韓国は百八十八カ国、日本は百九十二カ国と国交を有しておりますが、この北朝鮮が鎖国状態をひもといて世界に対して扉を開くとき、日本に対して、旧冷戦構造下の西側諸国に対して門戸を開くとき、このときにどういう判断を北朝鮮側から見たらなされるかというのが、我々自由主義国家、民主主義国家にとっては大切な問題になってくる。

 すなわち、日本がいろいろと、政府が国交正常化を目指しておられるというのは存じ上げております。しかし、懸案事項が今申し上げたように四つ以上ある。その中で、北朝鮮が、このままだとどうしても米韓日というのが、おい、おまえ、何やっているんだ、北朝鮮ふざけるなと言っている状態で、しかし、それがどんどんどんどん北朝鮮にとって、一つの、対話と圧力といいながら、北朝鮮が間違った判断をしかねない。それはどういう判断かといいますと、もうこれだけ日米韓に嫌がられるんだったら、国交正常化なんてやめて、そして、隣接する中国がおいでおいでと言っているんだったら、中国に対して門戸を広げて、そして中国のような民主化を朝鮮半島という大切な半島哲学において、マハン海上権力史論の中でも、ランドパワーとシーパワーのバランスを考えると、今最もこの地政学的拠点を我が自由主義国家でしっかりと押さえていかないと、この大切なときに、かえって北朝鮮を中国に寄せてしまう、北京に資するようなことになってしまうのではないのかという心配を恐らく外務省もなさっておられるんだろうというふうに思います。

 時間も余りありませんので、この部分の見解もまとめて後でお伺いしたいと思いますが、同時に私が心配しておりますのは、両岸関係、いわゆる台湾と中国の間の海峡問題というものも大切だと思うんです。

 アメリカは、イエス・ウイ・キャンと言って、オバマ大統領が文字どおり新しい政権を担われました。北東アジアに対する戦略論というのは、日本にクリントン長官がお越しになられていろいろと説明をされた。しかし、同時に私が一点心配をしておりますのは、米国にとってのキューバ問題というのは中国にとっての台湾問題のように見てとれるような気がするんです。

 その中で、米国の新政権が、台湾、中国を中心とした両岸関係に対する戦略というもの、それから、そこから見てとれる安全保障のバランスというのを、これから、さっき申し上げた北朝鮮の中国的民主化の可能性というものを踏まえて、この両岸関係というものも日本政府として大切にウオッチしていく必要があると思うんですが、この点に関して御答弁をいただけたらありがたいと思います。

中曽根国務大臣 委員の御質問を確認させていただきたいと思うんですが、両岸関係について今お答えすればよろしいということですか、とりあえずは。

中山(泰)委員 はい。両岸関係と、その手前に前段申し上げた、北朝鮮がいわゆる中国的民主化をする可能性を踏まえて、両岸関係。まあ地政学的につながっていますから、北東アジアのエリアで。ですから、北東アジア全般のエリアに対する米国の戦略もしくは中国の戦略、北朝鮮の思惑、そして台湾のバランスというもの、それをどのように日本政府としてごらんになられていますかということをぜひともお伺いしたいと思います。

中曽根国務大臣 まず、委員がおっしゃいましたように、この地域は大変に、北朝鮮の問題を中心といたしまして、両岸関係、またさらには、安全保障という面では中国の軍事力の増強とか、いろいろな課題といいますか、我が国の安全保障にとって重要な要素があるわけでありまして、そういう意味では、全体をよく眺めながら我が国のあるべき外交というものを考えていかなければならない、そういうふうに思っております。

 北朝鮮のことにつきましては、委員もいろいろ御心配されておられますが、私どもといたしましても、北朝鮮が、やはり民主化が進み、あるいは改革とか開放、そういうものが進んで、お隣の国ですから、国際社会の責任ある一員となることをまず期待しているところでございます。

 そして、我が国に対する北朝鮮の政治的影響につきましても、これも一概に述べることは困難でありますけれども、日朝関係のいろいろなプラスの影響が、そういうふうな北朝鮮が変わることによって影響がいい方向に出てくるということを期待しているところでございます。

 ただ、御案内のとおり、北朝鮮との間には、今委員が四つの課題とおっしゃいましたけれども、拉致やミサイル、そして核の問題、また、よど号の問題等々あるわけでありまして、当面は我が国としてはこれらの解決に全力で取り組むということが大事であろう、そういうふうに思っております。

 米国の北東アジア戦略というものは、新しい政権になりまして、まだはっきりと私ども、どういう形になるのか承知しておりませんし、また、今研究中であろうかとも思いますけれども、そういう意味では、米国ともよく緊密な連携をとりながら、また、我が国の考え方も米国にもよく伝えながら、協力をしながら、この地域の平和の構築に努力をするということがまず当然であろう、そういうふうにも思っておるところでございます。

 両岸関係の話がありましたけれども、中国は、一国二制度、そういうような国家運営をやっているわけでありまして、さらに、香港、マカオ、そことの間におきましても中国が二〇〇三年には経済連携の緊密化を進めてきて、また、両地域とも非常に発展しているわけでありまして、我が国と中国、また香港、マカオ、これの関係も大きく変わってきているところでございます。台湾との両岸関係におきましては、これは中国の国内といいますか、中国と台湾、中国の一国二制度という中での問題でございますので、私からのコメントというものは差し控えさせていただきたいと思います。

 いずれにいたしましても、アジア地域の安定化のためには、安全保障につきましては、バランスのとれた、そして透明性のある、そういうような形で進んでいくということが好ましいわけでありまして、我が国としても十分にそういう点を配慮しながら外交を進めていきたい、そういうふうに思っております。

中山(泰)委員 外務大臣、ありがとうございました。

 最後に、時間でございますので、私の希望として、今、国連本部というのは、南北アメリカでいえばニューヨークに本部があって、ヨーロッパはジュネーブに本部があります。しかし、アジアの本部というのは国連大学ぐらいしかないんです。私は、世界で唯一の被爆国であるこの国を考えますと、そして、歴史とその価値を思うと、亡くなった方々も含めて、国連、国際機関の事務所の合理化、効率化というのも国内においてやるべきだ、そして同時に、アジアに国連の本部機能、そして国際機関の本部機能を誘致して、世界じゅうの人たちが平和に対して話し合うことが日本でできるような、広島、長崎、そういった思いをぜひとも世界じゅうに伝えていきたいと思いますし、これはすなわち日本のスマートパワーと言えると思います。

 世界の何かの国が、北朝鮮もしくはそれ以外の国が日本に対して攻撃をした攻撃が世界に対する攻撃だといって日本が訴えることができるように、ぜひとも平和を希求されますことを心からお祈りして、外務大臣の御精進をお祈りして、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

河野委員長 次に、近藤昭一君。

近藤(昭)委員 民主党の近藤昭一でございます。

 幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 オバマ政権が誕生し、アフガニスタンに対するさまざまな、これからどうしていくかということを政権としても考えている、近々その方針も正式に発表されるんだ、こういうふうに理解をしております。

 ところで、そういう中で、日本としてもこの間いろいろな支援をしているわけであります。私ども、また私自身は、やはり民生支援といいましょうか、非軍事的な部分での支援をしっかりとしていく、こういう主張をさせていただいてきたわけでありますけれども、幾つか確認といいましょうかお聞きをしたいことがあります。

 外務省は一月の九日に、アフガニスタン中西部のチャグチャランで展開する軍民一体型の地域復興チーム、PRTに同省の職員二、三人を春にも派遣する、こう発表しておられるわけでありますが、その後の進展について具体的にお示しをいただきたい、チャグチャランにおける治安状況はいかがな状況かお知らせをいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 一月の九日でございますが、ことしの春以降に開発援助調整のための外務省の職員二、三名を、今委員がお話しされましたチャグチャランのPRTに派遣することを発表いたしました。派遣される要員につきましては、外務省の職員に加えまして、外部からも適切な方がいらっしゃれば任期つき外務省職員として採用したい、そういうふうに考えているところでございます。また、現在、派遣に向けてそういういろいろな面につきまして調整中でございますが、まず、なるべく早期に派遣したいと考えております。

 このチャグチャランPRTが活動しておりますゴール県というところは、アフガニスタンの中西部に位置をしておりまして、この国の中では治安が相対的に安定している、そういうふうに評価がされております。また、このPRTは、現地の住民やNGOの関係者とも大変良好な関係を築いている、そういうふうにも承知しているところでございます。

 他方、このチャグチャランは、アフガニスタンの中でも開発が最もおくれていて、貧困が深刻な地域の一つと承知をしておりまして、今回の我が国からの派遣を通じまして、同地のPRTを主導しております、これはリトアニアが主導しているわけでありますが、リトアニアとも協力をしながら、現地のニーズにより一層こたえていきたいと考えております。

 そしてさらに、チャグチャラン以外のPRTにつきましても、今後、同様のニーズがあれば、派遣した場合の効果とか、あるいは地域の治安状況、そういうものを慎重に、また総合的に見きわめをしながら文民派遣の可能性を検討する考えがあるわけでございますが、当面はチャグチャランPRTにおける協力活動を最優先に行っていく、そういう考えでございます。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 外務省の職員の人を中心に、また、適当なというかふさわしい人材があればその方をということでありますけれども、どんな状況で公募をされておられて、その公募の見通しといいましょうか状況を少しお知らせいただけるとありがたいのでありますが。

中曽根国務大臣 申し上げましたように、外部の適当なといいますか適切な人材がいればぜひ行っていただきたいと思っておりまして、二月に公募を行いました。そして今、応募された方々の中から選考中、そういう段階でございます。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 もちろん、外務省でこれまでにもアフガニスタンに取り組んでこられた、さまざまなこうした支援活動に取り組んでこられた、そんなメンバーがおられるんだと思います。そしてまた、民間にもいろいろと活動して頑張ってこられた、そんな方の力もぜひ活用していただきたいと思いますし、その公募でいい結果が出ることを期待しております。

 ただ、PRTに関しての支援の仕方についてはいろいろな意見もあるところでありまして、私自身は、先ほど大臣もおっしゃられたことでありますけれども、現地の状況、そしてまた現地で、PRT以外で国際NGO等々が活発に動いていらっしゃる、そうした現地をよくする、現地をよく知る国際NGOまた現地の方たちとの連携といいましょうか、そういうことをきっちりとしていただいて、日本としてのしっかりとした支援をしていただきたい、こういうふうに思うわけであります。

 続きまして、同じくアフガニスタンでありますけれども、アフガニスタンの警察官への給与を日本政府がODAを使って支払うことを決定し、また、緒方貞子JICA理事長と吉川元偉アフガン・パキスタン支援担当大使が、三月の九日、ホルブルック米アフガン・パキスタン担当特別代表とのワシントンでの会談において、警察官への給与支払いについて説明を行った、こう聞いております。

 その支払い方法を含む計画の具体的な中身と、その意義を日本政府はどのように考えておられるのか、このことについてお聞きをしたいと思います。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 議員が御指摘になったアフガニスタン警察官の給与への日本政府の取り組み、また、その進捗状況でございましたけれども、先般御承認いただきました平成二十年度の第二次補正予算における対アフガニスタン支援には、このアフガニスタン警察への支援を計上しております。

 具体的には、国連開発計画、UNDPに設置されておりますアフガニスタン法秩序信託基金、LOTFA、これに対する約百四十一億円の拠出というものが含まれており、今般、送金手続を終了したところでございます。

 なお、この拠出金は、今後、このLOTFAの口座に移換された後、アフガニスタン内務省が実施する警察官の給与支払い、警察施設の維持や機材の調達、またアフガニスタン内務省自体の能力開発等に充てられることになっております。

 アフガニスタンの治安は不安定の度合いを強めておるわけでございますけれども、そういうわけで、同国の治安当局の増強が喫緊の課題でございます。同国政府の行政基盤は残念ながら今なお脆弱でありまして、この治安部門を含め、政府機能の維持強化には、国際社会からの支援というものが必要不可欠でございます。

 今般の支援は、アフガニスタン警察の活動の維持強化、ひいてはアフガニスタンの治安情勢の改善に貢献する意義があると考えてございます。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 現地の治安を維持していく、そういう中で、日本がODAとして負担をする。これは、間もなくアフガンでは、カルザイ大統領の任期満了に伴う大統領選挙があるということであります。そういう中でも大きな役割を果たすのではないかな、こういうふうに期待しておりますが、どうでしょうか。

伊藤副大臣 議員御指摘のとおり、そのような効果が期待されていると存じます。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 少し確認をさせていただいたわけでありますけれども、現地での治安状況を安定させる、そういった面でぜひ日本の貢献をしっかりしていただきたいというふうに思うわけであります。

 さらにアフガンの問題でありますけれども、国連の人道問題調整部というんでしょうか、OCHAは、二月三日に、人道状況が悪化しているアフガニスタンに対して、総額六億三百九十万ドル、日本円で約五百四十億円でしょうかに上る二〇〇九年の支援計画をまとめ、発表した。武装勢力の攻撃が激化をして、干ばつによる被害も重なっているため、支援に必要な資金は〇八年の五億三千万ドルから約一四%ふえる、こういうふうに聞いております。

 これを受け、日本政府として、人道分野の問題に対し今後どのように取り組んでいかれるつもりなのか、お考えを聞かせていただきたいと思います。

中曽根国務大臣 ことしの二月の三日でございますけれども、今委員がお話しされましたUNOCHA、国連人道問題調整部、こちらから、二〇〇九年のアフガニスタン人道支援ニーズをまとめました、総額六億三百九十万ドルになります国連統一アピールが発表されました。このアピールによりますと、アフガニスタンの人道状況というのは非常に悪化をしている、そういうところから、国際社会としての一層の対応が必要である、そういうことが示されております。

 アフガニスタンの安定と復興には、何よりも現地におきます人道状況の改善が不可欠でありまして、我が国といたしましては、これまでも、食糧支援、それから保健衛生支援、また難民、避難民帰還支援などの事業に取り組んできておるところでございます。

 二〇〇一年の九月以降、我が国の人道復興支援の実績を申し上げますと、約十七億八千万ドル以上に上ります。ことしの三月には、議員御指摘の国連の統一アピールにもこたえまして、三億ドル規模の人道復興支援策を新たに決定いたしまして、そのうち約八千六百万ドルを食糧それから水、医療等の人道支援に充てて、早急に支援を実施することとしているわけであります。

 今後とも、そういう現地の援助のニーズを踏まえまして、国際機関等とも連携をしながら、アフガニスタンの人道状況の改善のために積極的な支援を行っていく考えでございます。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 冒頭申し上げましたように、こうした民生支援、そういった分野でぜひ多くの支援をし、日本の役割を果たしていただきたい。大臣もおっしゃったように、いろいろと国際社会がさまざまな支援をしてきた。ところが、気象状況なんかも影響しているところもあるんだと思いますが、この間、大分進んだところと、また逆戻りをしてしまったようなところがある。そういう中で、費用負担もふやさざるを得ないというか、しっかりと支えていかなくちゃいけない、こういうところが出ているんだと思います。

 それで、オバマ政権は、国際協調をしながら、いろいろと話し合いもしていきたい、タリバン勢力でも穏健派の人たちとは話をしていかなくちゃいけないんだ、そんなような大まかなというか基本的な方針もお話しになっておられるようでありますけれども、間もなくアフガニスタンに対するより具体的な方針が出るんだろうというふうにお聞きをしております。

 日本も、そこに合わせてまたさまざまな計画を、今少し検討中なのか、あるいは、それを受けて新たに展開する部分とか、いろいろなところがあるんだと思いますが、今、何か米国政府からは、こんなふうに間もなくアフガニスタンに対する政策を発表していくんだ、そんなようなことをお聞きになっておられるのか、また、それに対して日本政府はどのように対応していくとか、そんなことをお考えかどうか、お聞かせをいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 アフガニスタンに対します米国の今後の政策というようなお話でございますが、これにつきましては、米国政府からは、正式なといいますか、新たな政権のもとでの方針というものは明らかにされていないところでございますが、先ほどもお話がありましたように、我が国の吉川大使とそれから緒方さんが過日米国を訪問いたしまして、我が国が行っておりますアフガニスタンの支援の状況、あるいは我が国の対アフガニスタン外交についての見解を説明し、あるいはいろいろ意見交換を行ってきたところでございます。

 恐らく、そういうものも参考にしていただいて米国もまたアフガニスタン政策というものを決めていくものと思いますけれども、御案内のとおり、間もなくオランダのハーグにおきましてアフガニスタンの問題を議論する会議も開かれますので、私も国会のお許しをいただければ出席をしたいと思っておりますが、そういう会合でまた各国の見解等も表明されることと思います。そういう中で対アフガニスタン政策が固まってくるのではないか、そういうふうに推測をいたしております。

近藤(昭)委員 大臣、ありがとうございます。

 もちろん、非常に重要なパートナーである米国、また大きな力を持つ米国であります。米国ともいろいろと意見交換をしながら、また、今お話がありました、間もなくハーグで行われる、国際社会がいろいろと話をする、そういう中からまた新たな展開が出てくるんだと思います。そういう中で、ぜひ大臣にはハーグにしっかりとお出かけをいただいて、日本の役割をしっかりと訴えてきていただきたいなというふうに思っております。

 それで、次の質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど、アフガンの警察官の給料を日本がODAの中で負担する、こういう話がありました。国際社会の安定というものが日本にとっても大きな意味を持つ、また、まさしく人道的にはやはりそうしたところをきちっと支援していかなくちゃいけない、こういうことはやはり日本の役割だという基本的な考え方を持っております。

 そういう意味では、このODAの資金が不正に使われるということがあったということは非常に残念なことであります。最近も、ベトナムで起きた汚職の事件がありました。

 そういう中で、外務省は、ODAの不正防止の窓口を設置したということであります。その窓口について、どのような形で運用をするのか、具体的にお示しをいただければと思います。また、在外公館に窓口を開設する計画はあるのか、それぞれの公館に窓口を設置する計画があるのか、いかがでありましょうか。

中曽根国務大臣 ODAに関して不正があってはならないことは、もう言うまでもございません。

 御指摘のありましたベトナムにおきますPCIの贈収賄事件を受けまして、不正の防止、そして腐敗に関する情報の取り扱い体制、これを整備するその一環といたしまして、ODA事業における不正腐敗に関する情報を一元的に把握するための窓口というものを外務省の本省の国際協力局の政策課に設置することといたしまして、去る三月十八日に発表したところでございます。

 また、外務本省以外にも、在外公館やJICAにおいてもこの不正腐敗情報を受け付けるということで、これも決定をしたところでございます。

 これらのところに寄せられました情報というものは、国際協力局の中の政策課で一元的に把握をいたしまして、情報ですからこれは適切に管理しなければならないわけでありますが、管理いたしますとともに、必要な措置を適切に講じていきたい、そういうふうに思っているところでございます。また、当然のことながら、情報提供者の方々の保護についても万全を期してやっていきたい、そういうふうに思っているところでございます。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 日本の国民の納めた非常に貴重な税金であります。やはり有効に使っていかなくてはならない。そういう中で、先ほども申し上げたことの繰り返しになりますけれども、事件が起きた、きちっと有効に、再発防止、また不正防止ということで窓口を御設置いただいて、ぜひ有用に働くようにしていただきたい。また、今大臣も御指摘になったように、そういう中で、情報がもたらされる、情報提供者に不利にならないようにということで、ぜひさまざまな施策をしていただきたいというふうに思うわけであります。

 それでは、また次の質問をさせていただきたいと思いますけれども、今アフガニスタンの問題を質問させていただきましたが、今度はイラクの問題について幾つか質問をさせていただきたいというふうに思います。

 イラクからは大変に多くの難民が逃れているんだと思います。国外に、また国内難民もいるんだと思います。米国は、イラク人の帰国などを支援するため、二〇〇九年の会計年度で支援費を大幅に増額して、合計一億五千万ドル、約百四十四億円だと思いますけれども、する、こういう発表をしております。

 日本としては、こうしたイラクの国外への難民、また国内の避難民への支援を行うつもりはあられるのか、もしあるとしたら、どのように行うつもりでいらっしゃるのかお聞かせをいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 国連の難民高等弁務官事務所、UNHCRでありますけれども、そこによりますと、二〇〇九年一月現在、ヨルダン、シリアなどが受け入れておりますイラクの難民数は推定で約二百万人、そしてイラクの国内における避難民、この数が推定で約二百八十万人とされておるところでございます。

 難民それから国内避難民をめぐる状況というのは依然として深刻な状況でございまして、米国はこうした状況を重視いたしまして、今委員がおっしゃいましたように、三月二十日ですか、総額一億四千百万ドル以上になる追加支援策というものを発表したもの、そういうふうに承知をいたしております。

 我が国といたしましても、このような状況、そして国際社会の取り組みにこたえるためにも、二〇〇六年以降、これまでに総額千八百万ドルに上りますイラク難民、国内避難民支援を主に国際機関を通じて実施をしてきているところでございます。

 また、我が国のNGOとも緊密に連携をいたしまして、これらイラクの難民、国内避難民支援に取り組んでいるところでございますが、具体的には、ジャパン・プラットフォーム、これを通じまして、NGOによるイラク国内の人道支援事業に対し、これまで約三十億円の資金協力を行ってまいりました。また、ヨルダンにおける難民支援事業に対しましても、資金協力を実施中でございます。

 今後とも、現地におきます支援の、援助のニーズを踏まえまして、NGOとの連携も含めて、できる限りの支援をしていきたい、そういうふうに考えているところでございます。

近藤(昭)委員 大臣、ありがとうございます。

 百万単位といいましょうか、本当に多くの人たちが国外に逃れざるを得ない、また、国内においても、もともと居住をしていた、暮らしていたというところから避難をしなくてはならない、本当に悲しいことだと思います。それで、日本としても、今大臣がお話をいただいたような支援を国際機関あるいは国際NGOを通じて行っておみえになったということであります。

 今、イラクに対しては、国際NGOが行って、幾つか現地で活動しているということでありますが、今我が国の認識としては、避難をされている方、一番ニーズといいましょうか、現地のそうした方々が最も困っているというか、そういうことはどういうことか、あるいは大まかに、全体的にどんな状況なのかということを少しお聞かせいただければなと思います。

 また、今、イラクに対する渡航状況といいましょうか、国際NGOの人たちも入っているわけでありますけれども、イラクにそうした方々が行くときの状況、航空路線といいましょうか、そういうのも復活をしているんだと思いますが、日本からそうしたイラクに行くときの状況を、簡単で結構でございますので、お知らせをいただければと思います。

中曽根国務大臣 どういうようなニーズがあるか、そういうお尋ねでございますが、先ほど申し上げました我が国によります難民、避難民支援の中で、実績として挙げさせていただくと、避難民の保護、シェルター、それから生活物資の支援、またキャパシティービルディングなど、こういうものを実施してきているわけでございます。また、職業機会の提供、例えば職業訓練、難民の方たちがまた仕事ができるようにそういう職業訓練とか、学校修復とか、そういうものも含んでおりますのが我が国の支援の内容でありまして、これらもニーズの一つか、そういうふうに思っております。

 また、渡航状況につきましては、突然のお尋ねでございますので詳しく御説明できないかとも思いますけれども、地域といたしましては、イラクの北部のエルビルとスレイマニア、この地域に対しましては渡航の延期というものを今外務省としては勧めているところでございますし、その他の地域は退避を勧告しておるわけでございまして、そういう状況でございます。

近藤(昭)委員 大臣、ありがとうございます。

 いろいろと、そうした生活物資等、シェルター、職業訓練、こういうところのニーズもある。気になるのは、よく、物資がなかなかないと。生活物資というお話はありましたが、NGOなんかでも、そうした医療関係の国際NGOなんかもあるんだと思いますが、医療の状況はいかがでありましょうか。

 時として、けがをされた方、あるいはさまざまな治療が必要だということで、NGOの方が日本に患者さんを連れておみえになったりされることがありますけれども、少し詳しいことで、質問通告をしていなくて恐縮ではございますが、例えばそういう状況は明らかにあるんだと思います。

 そういう中で、今後日本は、例えば今大臣も御説明いただいた支援について、例えば支援の費用をどうしていくかとか、そうした医療についてどうしていくかとか、既にお話をいただいたことではありますが、国際NGOとの連携をより緊密にしていくかとか、そんな御決意をお聞かせいただければと思いますけれども。

中曽根国務大臣 まず、医療の状況については今手元に詳しい資料がございません、突然のお尋ねでございますので、大変恐縮でございますが。

 先ほど申し上げましたように、我が国が行っております支援の中で、先ほどは申し上げませんでしたけれども、医療など、また保険の分野などについても、こういう我が国の支援の中で改善のためにこれを活用していただきたいと思っておりますし、先ほど申し上げましたジャパン・プラットフォーム、これの中のNGOの中にはそういう医療支援関係の団体も入っておりますので、そういうようなところの経験等もまた生かして、アフガニスタンの国民の医療の改善にこれが資すれば、そういうふうに思っておるところでございます。

 それから、ちょっと失念してしまいましたけれども、よろしゅうございますか。

近藤(昭)委員 大臣、ありがとうございます。ぜひ現地の状況を踏まえて積極的な支援をしていただきたい、また、そういう御決意をいただいたというふうに感謝をしたいと思います。

 それで、そういうイラクへの支援の中、国際協力機構、JICAの職員が、イラクのクルド人地域であるイラク北部のエルビルに常駐することになった。これまで日本が約束したイラク支援は合計五十億ドル、そのうち三十五億ドルは円借款、また、これまでに約二千八百億円の契約がその中で終わっている、こういうふうに理解をしております。以前は、契約が終わっても治安状況などから実施に至らないケースが多かった、こういうふうに聞いております。

 イラクの治安状況は、一般的にではありますが、一般的によくなっているということのようではありますけれども、円借款案件の実施状況も良好になっているのか、そういう中で、契約をしたことの実施が順調に進む、良好に進むという状況になっているのかどうか、そういう理解でいいのかどうか、お聞かせをいただきたいと思います。

伊藤副大臣 二〇〇三年十月のイラク復興支援会合におきまして最大三十五億ドルの円借款供与というものを表明して以来、委員御指摘のとおり、我が国政府は、イラクの復興開発に資する案件の形成及び借款の供与等を行ってきている、これまでの供与額の合計は二千七百六十八億円になっているというところでございます。

 これらの円借款の案件の実施については、御指摘の厳しい治安情勢のほか、新生イラク政府における対外援助の借り入れの手続や実務が必ずしも円滑に進まなかった、こういう理由もございまして、これまで比較的長い期間を要しているということでございます。

 しかし、この間も、我が国政府及び国際協力機構、JICAは、イラク政府の国内手続の迅速化のためのさまざまな働きかけや、実施関係機関の手続の習熟及び能力向上のための支援、またさらに、実施促進のためのイラク政府との協議の立ち上げ等を通じて、供与を決定した円借款案件の実施を促進するように粘り強く取り組んでまいりました。

 こうした我が国の取り組み及びイラク側の努力の結果、これまで交換公文に署名した十二案件すべてについて借款契約が調印され、一部については既にコンサルタントの選定や供与金額の具体的支払い、ディスバースが開始されることとなっております。

 さらに、イラク国内の治安状況の改善を踏まえて、御指摘のとおり、JICAは近くイラク国内に事務所を開設する予定でございまして、このことも円借款の現地における実施が一層加速化していく上で大きな効果を発揮していくものと考えております。

 我が国政府及びJICAは、今後とも、イラク側の実施体制の強化や能力向上への支援を適切に継続しつつ、対イラク円借款の迅速な実施に向け、一層努力していく考えです。

 付言すれば、先日、エジプトのシャルムエルシェイクでイラクのジバリ外務大臣とお会いした際も、外務大臣の方からは、治安状況が一般的に改善しているということの表明があり、かつ、日本の累次にわたるイラクに対する支援に対しての謝意が示されたところでございます。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 本当に多くの犠牲がイラクの人々に、また米軍兵士にもあった、本当に残念なことであったわけでありますが、そういう中からも幾らか、だんだんと治安状況がよくなってきた。日本の、国際社会の支援がより実行しやすくなってきたんだと思います。

 ただ、今はよくなっているんだと思いますが、いろいろな円借款等々の実施の中で、まだまだ政権が脆弱だったというか、そういうところも、いわゆる外部環境といいましょうか、治安だけではなくて、まだまだ政権の中での脆弱性が実施を少し阻害しているところもあったんではないか、そんな話も聞いたことがあるんですが、いかがでありましょうか、そのあたりは。

伊藤副大臣 委員御指摘のそういった点も含めて、日本側はイラクの復興支援に協力しており、その点についてもジバリ外務大臣から大変な謝意が示されたということでございます。

近藤(昭)委員 さまざまな状況をぜひしっかりと把握していただいて、さまざまなルートで情報を収集していただいて、現地のニーズに合った、そして有効な支援をしていただきたいというふうに思うわけであります。

 それで、もう一問、今度はアフリカのことであります。

 TICAD4についてでありますが、その後の進展状況を話し合う閣僚フォローアップ会合において、中曽根外務大臣は、円借款の活用とともに、無償資金、技術協力も早期実施を目指す、四月のロンドン金融サミット、G20にもアフリカの声を反映させたい、こう演説をされておられるわけでありますが、具体的にどのような形でアフリカの声を反映させるおつもりであるのか、少し具体的にお話をいただければと思います。

中曽根国務大臣 先週末ですか、週末でございますが、アフリカのボツワナで開催をいたしましたTICAD4の閣僚級のフォローアップ会合に出席をいたしました。このフォローアップというのは、昨年の五月に横浜で開催されましたTICAD4、これのフォローアップということでございますが、共同議長を務めまして、またスピーチも行いました。

 この中で、横浜行動計画、昨年のTICAD4でまとめられた行動計画、これのその後の履行状況、進捗状況、これにつきまして、大変よいスタートを切っておるところでございますので、そういう点につきまして指摘をしながら、我が国が横浜で約束をいたしました、TICAD4で約束をいたしましたいろいろな支援策というものを必ず実施する、そういう決意を述べたところでございます。

 また、ほかの開発パートナーへも積極的なアフリカ支援というものを働きかけをしてまいりました。さらに、現下の国際的な金融経済危機、そういう危機に直面するアフリカへの支援策の表明等も行ったところでございます。

 また、あわせて、この機会に、ソマリアそれからアデン湾近辺の海賊問題との関連から、ちょうどこの閣僚のフォローアップ会合に出席をしておられましたボツワナそれからジブチ、ルワンダ、ソマリア、これらの首席代表と個別に会談をいたしまして、二国間関係、地域情勢、また安保理改革等について意見交換を行ってきたところでございます。

 このフォローアップ会合におきましては、今申し上げました履行状況に加えまして、やはりアフリカもかなりこの金融経済危機の影響を受けているということでございます。そういうときにこういう会議を開いてくれた、そして、アフリカの声をロンドン・サミットにつないでいただけるというのは大変ありがたい、そういう評価も得たところでございます。

 具体的に、ロンドン・サミットへのメッセージといたしましては、アフリカの開発資金の確保、それから各ドナーの既存のコミットメントの着実な履行、そして保護主義の回避、またドーハ・ラウンドの早期妥結、そして世界的危機対策におけるアフリカの声の反映、今申し上げましたもの、それらが打ち出されたところでございます。

 我が国といたしましては、しっかりとこういうアフリカの声をロンドン・サミットにおきまして参加国に伝達をし、そしてサミットにおける議論に反映をさせていきたい、そういうふうに考えておるところでございます。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 TICAD4、私も少し参画をさせていただいたわけでありますけれども、ぜひ、そうした進捗、進展状況を確認しながら、より具体的に、効率的にお進めをいただきたいと思うんです。

 時間も来ましたので、最後はちょっとお願いだけをして。

 そういう中で、先ほども、アフガニスタンでもそうであったと思いますし、イラクでもそうであった、またこのアフリカでもそうだと思いますけれども、非常に経済が世界的にも厳しい、金融問題が発生をした、こういう中で、非常に厳しい経済状況に、支援をする側もある。そして、現地では、そういう中で、国際社会が、やはり見放すべきではない、しっかりと支援をしていく。そういう中には、食糧とか医療の問題とか、そういうところが非常に多くの問題を抱えていると思うんです。ぜひ、そういう問題を積極的に支援をしていただきたい、そういうお願いをして、質問を終了したいと思います。

 ありがとうございました。

河野委員長 次に、武正公一君。

武正委員 おはようございます。民主党の武正公一でございます。

 それでは、質疑を行わせていただきます。

 お手元の方に資料を配付させていただいておりまして、昨年の五月十六日、当委員会でも行いました、尖閣諸島に対する政府としての対応ということで、再度、その後の経過も含めて、関係省庁、それぞれ政治家の皆さん、お運びをいただいておりまして、ありがとうございます。

 これはもともと、お手元に資料がございますが、当外務委員会が平成十八年一月に石垣市長からお手元のような要請を受けたのがきっかけでございました。同年の四月二十八日に、やはり、当時麻生外相にこの委員会でこの問題を聞きまして、総務大臣の経験もある麻生外相からは、政府の中同士の調整ということで、検討が必要であるというような御趣旨の答弁をいただいておりまして、その後、こうした問題について昨年取り上げたところでございます。

 そこでまず、総務省さん、お見えいただいておりますので。昨年この席で政務官から、外務大臣が政府間の取り組みが必要というふうに当時麻生現総理がお答えになられたんですが、昨年の段階では、総務省としてはまだ、特に内閣官房でしょうか、そうした協議にあずかっていないということなんですが、その後、そうした協議があったのかどうか、伺いたいと思います。

坂本大臣政務官 地方税との関係について申し上げますと、同法におきましては、固定資産税の課税について、固定資産税の現況を実地調査するというような旨の規定があるところでありますけれども、固定資産税の課税に当たって地方税法に基づき実地調査を行うことは、同法にのっとった行為であると考えております。

 ただ、その後、いろいろな変更、変化、ございませんので、前回先生が質問された後の変更はあっておりません。

武正委員 資料で一番後ろから二枚目に、今政務官が言われたように、固定資産の実地調査ということで、地方税法四百八条で、「市町村長は、」「固定資産の状況を毎年少くとも一回実地に調査させなければならない。」、こういう規定があるわけでして、石垣市の市域にある尖閣諸島に石垣市長とすれば現地に上陸をして調査をしたい、こういう要請を平成十八年、外務委員会として、口頭でありましたが、直接石垣市長から受けたことがこの発端ということでございます。

 そこで、内閣官房副長官は前回のときには大野官房副長官でありまして、大野さんの方からは、上陸については政府の方針が示されているわけなんですが、このことを踏まえながら、改めて対応を検討するということになろうと思いますというふうに、昨年五月十六日、御答弁いただいたわけです。

 今、総務省とすれば、その後、協議がないんだというお話ですが、政府内で改めて対応を検討するというふうに当時官房副長官は述べておるんですが、この間、そうした検討はされたんでしょうか。

松本内閣官房副長官 尖閣諸島四島は、もともと私有地でありまして、平成九年四月、当該四島の所有者から、国の機関を除き上陸等を認めない、また、第三者による権利侵害行為に対して厳重な対処を求める旨の要請がなされているところでございます。

 また、平成十四年四月には、政府が尖閣諸島の平穏かつ安定的な維持管理を図ることを目的として、尖閣諸島三島について当該所有者から賃借を開始したところでございますが、この所有者の意向を踏まえ、かつ、賃借の目的に照らしまして、原則として何人も尖閣諸島への上陸を認めないとの方針をとってきているところでございます。

 したがいまして、上陸を認めるかどうかについては、土地所有者の意向、政府の賃借目的などを十分に踏まえて検討していく必要があると考えております。

 固定資産税課税のための現地調査についても、このような考えを踏まえまして、関係省庁とも連携して対応を検討していくことになると思います。

武正委員 去年五月十六日、官房副長官が、対応を検討するということになろうと思いますと言われたんですが、今もまた同じ答えということは、対応を検討するということであっても、他省庁との協議には入っていないということでしょうか。

松本内閣官房副長官 現在まで、固定資産税課税のための尖閣諸島への上陸について、具体的な要望がなされていないというようなところから、仮に固定資産税課税のための尖閣諸島への上陸についての要望が出された場合には、改めて関係省庁とも連携して対応を検討させていただきたいと考えております。

武正委員 総務省にお聞きするんですが、固定資産税の評価については、ちょうど三月末が評価がえの締め切り、しかも、それは三年に一回の、ちょうど今佳境に入っているということでよろしいでしょうか。

坂本大臣政務官 今そういう状況であると認識しております。

 今官房副長官が言われましたように、そして、その後、具体的に要請がもし出されるならば、その段階で、改めて各省庁と協議をしながら対応策を考えてまいりたいと思っております。

武正委員 資料三ページを見ていただくとおわかりなんですが、石垣市議会の議長から、内閣官房副長官補室、当時の内閣事務官江口さんあて、平成十八年六月二日の「尖閣諸島上陸許可の再要請について」という文書が出されておりまして、再度ということで、平成十七年八月十一日付でも出しているということであります。中身は、四ページにありますように、「石垣市長も「尖閣諸島は石垣市の行政区域であり、上陸して視察する責任がある」と明確に上陸視察の姿勢を示しております。行政区の首長が尖閣諸島に上陸し、行政区域として明確な姿勢を示すことは大きな前進であり、」云々ということであります。

 私は、あるいは外務委員会の委員は、特に固定資産税の評価がえという、ちょうど三年前だったんですね、それは直接口頭で要請を受けていますが、この文書にあるように、もう既にこうした文書も出されておりますし、もっと明確な文書が必要だということであれば、そういうような意思もあるということも私も確認をしておりますが、この問題はもう三年前から取り組んでおりますので、今もって関係省庁内の協議に入っていないというのは、やはり政府としていかがなものかと改めて指摘をせざるを得ないわけであります。

 そこで、国交省さん、おいでなんですけれども、資料五ページにありますが、魚釣島の灯台についてであります。

 これも、昨年五月十六日、この席で、平成十八年十月二十七日と十一月八日に国交省の職員が上陸をしていること、また昨年四月にも上陸したことを言っておられますが、このことの確認とその目的、また、年に一回ぐらい上陸されているとすれば、平成十九年度も上陸されたのかどうか、お答えをいただきたいと思います。

岡田大臣政務官 御指摘の魚釣島灯台に関してでありますが、平成十七年に三回、これは、かつて私有であった灯台の補修作業等で、三回海上保安庁の関係者が上陸をしております。その後は、平成十八年六月二十二日、平成十九年七月二十三日、そして平成二十年四月十一日と、ほぼ年に一回上陸して維持補修の作業を行っているところでございます。

武正委員 関係省庁というか政府の機関もこうして上陸をしているわけですので、私はやはり、当該自治体が固定資産税の評価、地方税法四百八条という法律を守る、また、行政機関の長として、その市域の管理等、そうした責任を有しているということで、上陸を認めていくべきであろうというふうに思うんです。

 官房副長官、再度、こうした国交省さんの事例もあるわけなので、また要請もこうした形で文書としてのその趣旨はもう明確でありますので、もちろんそうした再度の文書の要請もまた出るとして、さらにこれは各関係省庁との協議を進めるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

松本内閣官房副長官 総務省の見解は、一般論として、地方税法に基づき、固定資産税課税のための現地調査を行うことにつき述べたものと理解をしております。尖閣諸島への上陸という文脈におきましては、土地所有者の意向、政府の賃借目的などを十分に踏まえて検討していく必要があるというのが政府全体の方針であります。

 仮に、固定資産税課税のための尖閣諸島への上陸について要望が出された場合には、上陸についての現在の政府の方針を踏まえつつ、改めて関係省庁とも連携して対応を検討することとなります。

武正委員 外務大臣、二月二十八日の日中外相会談でもこの尖閣諸島の問題が取り上げられたというふうに外務省のホームページで開示をされております。中国側からの提起を受け、説明があり、日中間の全般に影を差すことがないよう努力することで一致をしたということでありますが、私はやはり、日本固有の領土である、昭和十七年まで缶詰工場がちゃんと経営をしていたところでありますので、この固有の領土について、当該自治体の長が上陸をしたい、これは至極当然のことだというふうに思うんですね。

 ちょうど三年前、当時の麻生外相も、政府内の検討ということも言っておられるんですが、今回、日中外相会談でもこの尖閣諸島について取り上げられたということなんですけれども、まず、地元市長のそうした要望、これについて、外相としてどのようにお受け取りになられますでしょうか。

中曽根国務大臣 先ほどから総務省また内閣官房で御答弁をいたしておりますとおり、現時点におきましては、上陸につきまして具体的な要望は出されていない、そういうふうに承知もいたしておりますし、そういう要望が出された場合には、御答弁がありましたけれども、関係省庁と連携をしながら対応を検討するということになると思っております。

武正委員 それでは、それぞれ省庁の皆さん、ありがとうございました。お引き取りください。

 今の点に関して、もう一点。外務大臣、具体的に外相会談で中国側からどういう提起があって、どういう説明があったのか。ホームページからですとよくわかりませんので、もう少しつまびらかにしていただければと思っております。

中曽根国務大臣 委員もホームページをごらんになられておりますので、もう御存じのことと思いますけれども、このことにつきましては、中国側からの提起を受けたわけでございますが、私からは、我が国の原則的な立場についての明確な説明を行ったところでございます。

武正委員 どういう提起があったのかということをもう少しお答えいただければと思うんですが。二月の二十七日ですか、中国の報道官が固有の領土であるというようなことの発言があったちょうど翌日でありますので、その趣旨で発言があったのかということをお聞きしたいと思います。

中曽根国務大臣 これは外交上のやりとりということになりますので、詳しいことはちょっと申し上げるのは差し控えさせていただきたい、そういうふうに存じます。

武正委員 前日に報道官から中国固有の領土であるという発言があった翌日ですから、多分その趣旨の発言があったのではないかと思うんですけれども、我が国固有の領土でありますので、その固有の領土に対して、法律で認められたしかるべき対応を政府として粛々と進めていくことを、外務省としてもしっかりと政府の一員として取り組んでいただきたいということをお願いしておきます。

 それでは、次に、外交史料館の情報公開及びこの国会に提出されております公文書等管理法案への対応について伺いたいと思います。

 手元の方に資料を配っておりますのは、外交史料館の閲覧数でありまして、現状どういうふうになっているのか、また外交史料館の今の体制、これを資料として配らせていただきました。

 六ページをごらんいただきますと、外務省外交史料館利用状況というのがございます。外務大臣はもう、外務大臣になられて外交史料館の方は行かれておられますでしょうか。

中曽根国務大臣 大変残念ながら、まだ訪問というか行っておりません。

武正委員 ぜひ行っていただきたいというふうに思います。

 そこで、きょうは内閣府政務官もお見えなんですが、今国会に提出されておりますこの法案でありますが、この法案で「国立公文書館等」というふうにされておりますが、この「等」には外交史料館が含まれるということでよろしいでしょうか。

並木大臣政務官 先生も御承知のとおり、そうした「等」という施設の概念を設けているわけですけれども、現時点においては、外交史料館に関しましては、国立公文書館に類する機能を有する施設として認められれば、これは施行令で認めるということになりますので、その法案が、規定が適用される、そういうことになりますけれども、その時点の違いですけれども、そういう方向になるかと思います。

武正委員 法案もまだこれから審議に付されるということでありますので、まだこれからということも、前提があったわけですけれども、国立公文書館等ということで、この外交史料館が含まれるという方向だということであります。

 今回の公文書等管理法案の趣旨として、国立公文書館等が特にそうした政府の文書に対してより強い働きかけができるようになるという法律の趣旨だというふうに理解するんですけれども、その法律の趣旨でどのような点が強化されるのか、一部御紹介いただければと思います。

並木大臣政務官 当然のことながら、移管を受けた文書の保存、また目録作成とか、あるいは利用者の利用請求への対応、展示その他の方法による利用提供とか、こうしたことが法文において明確になっていく。

 そして、保存、利用状況について、もともと公文書館ができるときに、外交史料館とか宮内庁の書陵部とかあったわけですけれども、そういったものが今法案によって、内閣総理大臣への報告などの事務を行う、それが一つにまとめられていくというか、そういう方向が強化されるかというふうに思います。

武正委員 文書の保管、あるいは移管、廃棄、これについてより積極的に国立公文書館等が関与するという法案の趣旨というふうに理解をいたしました。

 そこで、外務大臣、お手元をごらんいただきますと、六ページなんですけれども、外務省外交史料館利用状況ということで、閲覧者数は若干減っておりますけれども、照会件数、それから展示室見学者数、とりわけインターネットの利用件数というものがふえている。これは、昨今のそうしたIT化の状況が背景にあるということであります。

 ただ、一番最後の資料を見ていただきますと、外交史料館の体制ということでいきますと、総勢二十六名、閲覧室は七名ということでありまして、これからいよいよ機能強化を求められる外交史料館の体制として、果たしてこれで十分なんだろうかということをぜひお伺いしたいというふうに思います。

 私とすれば、やはり今回のこの法案の提出もこれあり。そしてまた、特に外交文書については、三十年ルールということで公開に取り組んでおられまして、お手元の資料では七ページに、昨年の第二十一回の公開、官房総務課外交記録審査室の公開のファイルの一ページ目のコピーを持ってまいりました。佐藤総理訪米関係ということで、一九六五年一月の外交文書が四十四年たって公開ということでありますので、三十年ルールからいえばやはり遅いのかなということもあります。

 やはりこういったことも外交史料館の機能強化が求められてくる理由の一つでもあるわけでありますが、外交史料館の機能強化といった点について御所見を伺いたいと思います。

伊藤副大臣 外交史料館の機能強化は、まさに重要だと思います。

 私の立場でお答えするのもちょっと僣越ですけれども、ただ、国全体の財政事情、また外務省予算、人員の中で、委員御指摘のように、機能強化に対して最大限の努力をしてまいりたい、そのような考えでございます。

武正委員 そうしましたら、政務官、お引き取りいただいて結構でございます。ありがとうございました。

 ただ、外務大臣、私も史料館、飯倉公館の隣ですから、飯倉公館にはよく行かれると思うんですが、改めて行ってまいりまして、お話を聞いてまいりますと、今、外務省の文書管理規則の第十七条、十八条では、例えば十七条では、文書管理責任者、これは外務省の各課がそれぞれ責任者になっているわけですが、行政文書につき措置を講ずることができるとしているわけですね、行政文書ファイルのうち保存期間が満了したものについて。一つが、保存期間を五年以下の必要な期間延長すること。それから、歴史的文書として外交史料館に移管すること。そして、廃棄することということであります。

 十八条では、そうした文書管理責任者は、今言ったように、延長、移管、廃棄について、その適否について総務課長と協議しなければならないということがありまして、実際、外交史料館も移管に関していろいろ相談にあずかっているようであります。

 聞くところでは、年間一万ほどそうした案件がある中で、廃棄の文書が二千ぐらい提案されてくる、ただやはり、外交史料館がそれを見て、いや、これは廃棄しちゃだめですよというものが一割ぐらいあるんだ、こういったことを外交史料館あるいは外務省の方から聞いたんですが、副大臣はこの点について把握されていますでしょうか。

伊藤副大臣 細かい数字については必ずしも承知しているわけではございませんけれども、今議員御指摘のとおり、外交史料館を外交記録公開の審査においてどういうふうに活用しているかということは、協議している、そのことについては承知しております。

 今御指摘のとおり、外交記録公開の審査においては、これまでも担当の部局が、外交史の史料館と緊密に協議していて、その上で外交史料として同館に移管すべき文書の判断等を行ってきております。

 外交史料館においては、外交文書の整理、編集に当たって、外部の有識者から編さん委員としての助言等も得ておりまして、今後、これらの委員等の意見も参考にしつつ、適切な外交記録公開に努めてまいりたいというふうに考えております。

武正委員 ただ、こうした外交史料館の活用が、いわゆる三十年を経過した、先ほどの資料の七ページにありますような佐藤総理訪米等のこういった歴史的文書、三十年経過したものを公開するか否か、これの相談には外交史料館はあずかっていないというふうに聞いたんですが、この点は、副大臣、承知されていますでしょうか。

伊藤副大臣 ちょっと繰り返しの答弁になると思いますけれども、これまでも担当部局が、外交史料館と緊密に協議しつつ、外交史料として同館に移管すべき文書の判断等を行っていると聞いております。

 それからまた、外交史料館においては、外交文書の整理、編集に当たって、外部の有識者から編さん委員としての助言を得つつ、こういった意見を参考に、適切な外交記録の公開に努めていく、そしてまた努めてまいりたいというふうな考えでございます。

武正委員 私が聞くと、それぞれの文書の保存期間が過ぎて、さっき言った文書管理規則の十七条で、五年以内でその文書を各課が、各課の文書ですね、あれは何か外務省の地下に書庫があるんですか、そこに保存しているんだそうですが、確かに手狭ですから、ある程度、まあ多分、五年たったら、大事な文書は、五年以下であれば延長して保管するか、外交史料館に移すか、廃棄するか、それを十七条で決めているわけです。そういうような相談については外交史料館はあずかっているそうなんです。年間一万案件があって、二千廃棄するよと言われたときに、ちょっと待てと、それで一割の二百は廃棄させないでとどめている。それはやはりプロだから、プロの目から見た適切なアドバイスができると思うんですよ。

 問題は、三十年ルールで、この七ページにあるように、佐藤総理訪米、これも、この中で文書として公開されているものだけではない、非公開のものもあるわけなんです。そういった相談に外交史料館はあずかっていないということを私が聞いたものですから、やはりプロの外交史料館をもっともっと活用すべきではないのか。まして、先ほど内閣府の政務官が言ったように、今度、外交史料館がもっと積極的に外交文書の保管とか管理とかあるいはそういった公開についてあずかれるようになるわけですから、法律として。というふうに思うんですが。

 外務大臣、どうでしょうか、このやりとりを聞いていて。外交史料館というプロ集団、そうはいっても、閲覧の担当者はわずか七名しかいないんですけれども、もっともっとこれを活用する、もっと積極的にですね。そして、国民の皆さんに外交文書というものが、三十年たてば、ある面、一世代クリアしているわけですから、私はやはり原則公開ということでもっといくべきだという意見も持っておるんですけれども、こうした外交文書の公開に関する御所見も、あわせて伺いたいと思います。

中曽根国務大臣 武正委員におかれましては、先週ですか、みずから外交史料館に訪問された、そういうふうに聞いておりますし、私まだ訪問したことがございませんので、委員のお勧めもありましたので、できるだけ早く行ってみたいとは思っております。また、外交史料の保存の公開に対する御支援を引き続いてお願いしたいと思います。

 この制度につきましては、もう委員が一番御承知のとおりでありますけれども、こういうふうに順次一般に公開しているわけでありまして、膨大な数の史料というものを公開しているわけであります。

 私どもといたしましては、開示につきましては適切に対応していきたいと思っておりますが、その中におきまして、史料館の中でのいろいろな、例えば整理とか編集とか、そういうものにおきまして、先ほども御答弁させていただいておりますけれども、外部の有識者の方々にも参加をしていただいて、助言をいただきながら行っておりますので、今後も、そういう委員の御意見も伺いながら、外交記録の適切な公開というものに努めていきたい、そういうふうには思っております。

武正委員 私は、やはり外交は国民の皆さんが広く関心を持ってもらいたいと思っていますので、前回も、外務省のパブコメが著しく少ないということも苦言を呈したわけであります。三十年たてば、利害関係者も、一つの、ワン世代過ぎたということもありますので、日本の外交を広く開示して国民の目に、その外交についての評価をもらえるようにしていくべきであるので、私は積極的な取り組みが必要だというふうに思います。

 最後に、中国空母保有発言ということで伺いたいんです。

 去る三月二十日、二十一日、浜田防衛大臣の訪中で、浜田大臣から空母保有に関する考え方をただしたと。中国の国防部長からは、空母については、永遠に空母を持たないわけにはいかないが、空母を持つためにはいろいろな要素を考慮しなければならない旨発言と。ただ、これに至る間、中国の海軍の関係者から、全人代等で、こうした国産の空母保有について真剣に考慮という発言が相次いでいるわけなんです。

 私は、やはり、北東アジアの安定という点から、この中国の空母保有意図なりの発言がこれだけ出てくるということは非常に懸念を持つわけなんですが、この点について外相はどのように思っておられるのか。

 また、二月二十八日の日中外相会談で、空母とは言っておりませんけれども、懸念を率直に述べたということが書いてありますが、どのようなことを述べられたのか、空母についても言及されたのか、お答えをいただければと思います。

中曽根国務大臣 まず、委員の御質問にお答えする前に、けさほどの中山委員の御質問について、私自身、両岸情勢に関してお答えする際に、一国二制度につきまして言及いたしましたけれども、これはあくまでも、同制度が、現在、香港及びマカオで実施されているとの認識のもとでお答えしたものでございまして、若干誤解を招く表現がありましたので、改めて明確にさせていただきたいと思います。

 中国の空母保有のことに関してでございますけれども、今お話ありましたように、先般、浜田防衛大臣が訪中いたしました際に、梁光烈中国国防部長と会談をされたわけでありますが、梁部長が、中国の空母保有に関しまして、永遠に持たないわけにはいかないが、空母を持つためにはいろいろな要素を考慮しなければならない旨の発言があった、そういうふうに私も承知をいたしております。

 この発言から、中国は空母保有について大変強い関心を持っているものと理解をいたしておりますが、我が国といたしましては、空母保有を含めた中国軍の近代化の動向につきましては、引き続き注視をしていく考えでございます。

 二月の二十八日に行いました日中外相会談におきましては、私から中国のヨウケツチ外交部長に対しまして、中国の軍事力の増強、それから近代化などへの動きへの懸念を率直に述べまして、抑制的な対応と透明性の向上を求めたところでございます。

 いずれにいたしましても、中国の国防政策や軍事力につきましては、透明性を一層高めていくということが望まれるわけでございます。

 我が国といたしましても、安全保障分野におけるさまざまな対話、交流というものをまた中国政府とも行いまして、今申し上げましたような点につきましては、引き続き中国に対して働きかけていく、そういう考えでございます。

武正委員 北東アジアでいわゆる軍拡競争が行われてしまうということは、やはり北東アジアの安定という点からゆゆしきことになるわけですので、こうした、最近、中国が空母を保有したいと、今、世界で空母保有国は八カ国でありますから、あえてここでなぜそうした空母を中国が持つのか、やはりそれは北東アジアの安定にとっては非常に問題であるということを強く外務省とすれば指摘していただきたいということをお願いして、質問にかえさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

河野委員長 次に、松原仁君。

松原委員 先日、ある文化人と一緒に北方領土を視察してまいりました。北方領土は日本の固有の領土であるというふうに言われている場所でありますが、まさに納沙布岬から見ると、そこにさまざまな四島の島を見ることができるわけであります。歯舞、色丹群島を遠くに見ることができるのが、北方領土であります。

 外務大臣は北方領土にいらっしゃったことがあるかどうか、まずお伺いいたします。

中曽根国務大臣 私は、就任直後から、北方四島それから沖縄、この両地域と申しますか、視察をしたい、そういうふうに思っておりましたけれども、大変残念ながら、沖縄の方は訪問することができておりますが、北方の方はまだでございます。

 できるだけ早く行きたいということで、事務方とも相談して、日程が、都合がつく限り行きたいということで、ずっと考えているところでございます。

    〔委員長退席、三原委員長代理着席〕

松原委員 外務大臣でこの間、北方領土をまだ視察に行っていないというのは極めて残念であります。

 私も、その文化人も、ともに北方領土の視察に今回行ったわけでありますが、私自身は、約二十年ぐらい前に、ビザなし交流で一度、実際に北方領土の島にも行ったことがあるわけであります。実際、今回また納沙布から見て、また途中、漁船に乗って、北方領土の近くまで行ったわけであります。もちろん、その海域は日本の方の海域でありますが。そうしたときに、あの地域の方々は、漁師の方もそうですし、また実際、岬から望む方々もおられますが、昔、北方四島に住んでいた方、国後や色丹や歯舞に住んでいた方々にしてみれば、目の前に自分のふるさとがあるにもかかわらず、そこは手を伸ばせば届くような北方四島に行けないまま、今日まで経過をして、半世紀以上がたっているわけであります。

 私は大臣にお伺いしたいわけでありますが、大臣自身はすぐに北方四島に行ってほしい、北方領土に行って、目の前にある四島を見てほしいと思いますが、同時に、今、旧島民の方々がまだまだ生きておられます。大分亡くなってきておりますが、生きておられる。この旧島民の方々が生きている間にこれを解決したいという、それは当然政治家としての使命だと思いますが、そのことについての意気込みをお伺いしたいと思います。

中曽根国務大臣 先ほど申し上げましたけれども、就任したときから、一日も早く視察をしたい、そういうふうに思っておりますが、まだこれが実現しておりませんので、引き続いて早く視察できるように努力をやっていきたいと思います。

 なお、島民の方々のお話がありましたけれども、島民の皆さんのお気持ちを考えますと、一日も早くこれも解決しなければならないということで、政府といたしましても、歴代内閣といたしましても、努力はしているわけでありますが、メドベージェフ大統領と麻生総理との会談におきましても、次世代にこれをゆだねることをしないということを話し合われたわけでありまして、次世代どころではなくて、やはり一日も早くこれを解決するように、これは引き続いて全力を挙げていきたい、そういうふうに思っております。

    〔三原委員長代理退席、委員長着席〕

松原委員 引き続いて全力にという話ではなく、私は今言ったように、旧島民の方々が元気なうちにきちっと戻すという、このことは、今、大臣は北方四島は視察にまだ行っていないということでありますが、北方領土問題を考えるときに、旧島民はどんどんと年をとって、亡くなっているわけです。考えてみれば、終戦のときに二十だった人だって、もう七十、八十ですよ。

 そういうことを考えたときに、旧島民がたくさんまだ生きているうちに、元気なうちに取り戻す、それはもう政治家として、外務大臣としてのまさに責任である、そのことは政治生命をかける、それぐらいのことをおっしゃってください。

中曽根国務大臣 東京でではありますが、北方四島の旧島民の皆さんにもお会いをして、実情もお話を伺い、私も努力することはお約束したわけでありますが、今委員がお話がありましたように、政治家としても、外務大臣としても、一日も早い解決のために、これはまた全力という言葉を使いますとしかられるかもしれませんけれども、一生懸命やってまいる、そういう気持ちは大変強く持っております。

松原委員 全力という言葉を使うとしかられるというのは、それはふまじめですよ、そんなことを言っては。

 もう一回、私が言いたいのは、旧島民が元気なうちに戻すのは私の政治使命ですと言ってくださいと言っているんですよ。一日も早くということではないんですよ。少なくとも旧島民が生きている間には必ず解決をしますと、外務大臣、この場で言ってくださいよ。

中曽根国務大臣 まさに委員のおっしゃること、本当に大切なことでございますので、旧島民の皆様方がお元気なうちにこれが解決できるよう、私も政治家として、政治生命をかけて一生懸命やってまいります。

松原委員 物事は真剣にぜひやっていただきたいと思います。真剣にやれば、そのことに対して向こうもそれなりの反応を、ロシアの方もするわけであって、我々、当局が真剣にやっていないというオーラといいますか、そういったものが外交交渉で少しでも見えれば、結果的には島民の方々の思いというのはそのまま墓場まで持っていってしまうことになるというふうに思いますから、きっちりやっていただきたいと思います。

 日ロの交渉で、時間を区切った交渉、いつまでに何とかしましょう、こういう時間を区切った交渉が一回成立をしたことは承知していると思いますが、これはいつですか。

谷崎政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員の方から御質問のありました年月を入れたという約束でございますけれども、これはクラスノヤルスク合意ということで、一九九七年十一月でございますけれども、ロシアのクラスノヤルスクで行われた日ロ首脳会談において、橋本総理とエリツィン大統領との間で、二〇〇〇年までに平和条約を締結するよう全力を尽くすということで一致しております。

松原委員 大臣、別にクイズをやっているわけではないんですが、期限を設定して、日ロの間で、それまでに何とか合意にこぎつけようという議論はクラスノヤルスクですよ。このことはもちろん大臣は知っていたわけですよね。このときの平和条約を日ロで結ぶということは、当然前提として、四島の帰属問題、日本の領土を日本に戻すということは含まれていたわけでありますが、このクラスノヤルスクの二〇〇〇年というのは、今、既に過ぎているわけであります。このことに関しては、大臣はどういうふうな御感想をお持ちですか。(中曽根国務大臣「何に対して」と呼ぶ)

 つまり、クラスノヤルスクの合意の二〇〇〇年までに平和条約を結んで領土問題を解決しようというこのことは既に頓挫している。それは、ロシアも日本も、これに関しては、そこでそういうふうな共同で方向を出したんだけれども、現実には二〇〇〇年に解決をしていない、このことに関しての御所見をお伺いしたい。

中曽根国務大臣 二〇〇〇年末までに平和条約を締結する、そういう目標期限、これが実現できていないということは大変に申しわけなく思っております。

松原委員 申しわけないという謝罪の言葉があったわけでありますが、まさにこのことも含め、この間、日本が日ロ交渉で領土問題の解決ができなかった、今もできていないわけでありまして、この責任というのは極めてあると私は思うんですよ。本気で解決する意向があったのか、これが第一点。本気で解決するための機構、システムを我々がつくり得たのか、これが第二点。

 第二点のことを申し上げたいわけでありますが、きょうあえて呼んでいないんですが、この北方四島における漁業のさまざまな取り決めというのはどうなっているか、外務省の中で説明していただきたい。

谷崎政府参考人 ただいま御質問ありました北方四島周辺地域における漁業ということでございますけれども、これにつきましては、いわゆる北方四島周辺水域操業枠組み協定というのがございます。これに基づきまして、北方四島周辺十二海里水域内において幾つかの魚種について操業を行っております。例えば、スケトウダラ、ホッケ、タコ等を対象としております。この協定でございますけれども、九八年に設定されて以来、四島周辺水域の安全操業に少なからず貢献しているというふうに我々としては評価しているところでございます。

松原委員 例えば歯舞群島においては、今回根室に行って我々は漁師の方々とも話をしたわけでありますが、六月から昆布漁も解禁をされる、こういうふうな話でありますが、こういう日本の水産庁とロシアとの交渉というのに関して外務省はどういうかかわりを持っているか、お伺いしたい。全く無関係で水産庁の推移を見るのか、北方四島という一つの枠組みの中でそこに戦略的な立場をもって何か助言をしたりするのか、お伺いしたい。

谷崎政府参考人 北方四島関連の問題につきましては、当然のことながら、水産庁との間では大変緊密な連絡をとり合っております。これは日本の法的立場そのものに影響するということでございますので、外務省の方も逆に水産庁からは緊密に協議をいただいている、こういう状況でございます。

松原委員 つまり、この水域の問題では、外務省の考え方というのも、例えばどこのタコをとっていいとか、スケトウダラをとっていいとか、場所によっては、歯舞においては昆布をとるとか、六月とか、そういうのに関しては外務省と水産庁は話をしている、そういうことで理解していいんですか。確認します。

谷崎政府参考人 先ほど御答弁申し上げました枠組み協定におきましては、この地域において日ロ間で操業することについて合意という全体の合意がなされております。それを合意するに当たっては、水産庁とも当然協議した上で枠組みができているわけです。その上で、その範囲内において具体的にどこでどういう魚種をいつから操業するかということについては毎年決めているということでございます。その毎年については、水産庁との間でも我々としてはこれまで協議してきているというふうに理解しております。

松原委員 平和条約締結というのは、例えばクラスノヤルスク合意の二〇〇〇年を目指してということでありました。多くの北方領土関係の方々は二〇〇〇年に向かって期待を持っていたわけでありますし、私の知っているある有名な、末次一郎先生なんかは手術もしないで二〇〇〇年まで声を出し続けると言って闘病生活を続けてこられた経緯もあります。

 そういう中で、平和条約というのが締結をされない状況の中で、日本とロシアの経済交流はどんどん進んでいるわけであります。クリル開発の実態について今どうなっているか、時間もありませんから簡潔にお答えいただきたい。

谷崎政府参考人 御質問ありましたクリル経済発展プログラムでございますけれども、私どもがいろいろな公開情報等に基づきまして承知しているプログラムの全体でございますけれども、これは二〇〇七年から二〇一五年までの間の開発計画でございます。総額約百七十九億ルーブル、日本円にしまして約八百十二億円という規模で行っているということでございます。主に四島を中心としたインフラ整備ということで、実施が一部既に始まっているというふうに理解しております。

松原委員 このクリル開発によって四島に住んでいる住民の方々の意識に変化が起こっているんではないかということを我々はいろいろな情報で察知しているわけであります。

 従来、半世紀以上にわたって、どうも本国ロシア、特にヨーロッパ・ロシアの方から見て極東という場所のデメリットもあって、そのせいか開発というのはなかなか進んでこなかったわけであります。そのときに、日本のビザなし交流等が始まる中も含め、日本に対する期待感も逆に現地の四島の島民において高まったというふうに私は思っておりますし、私が実際ビザなしで行ったときにもそういったニュアンスも感じました。しかし、今日、クリルの開発がどんどん進むことによってむしろ帰属意識がロシアに対して求心力を持ち始めて、大変に住民意識も変わってきていると。こういったことについてのアンケートなりデータの調査というのは外務省としてはやっていますか。

谷崎政府参考人 お答えいたします。

 外務省はロシアの方々の全体の対日意識調査ということで調査したことは平成十三年にございます。全体で二十数問にわたりまして調査を行いました。その中で、四島あるいはこの領土問題に関連するのは全部で四問ございますけれども、その一部として、この領土問題そのものについて知っているかというようなことについて聞き、またさらに、どのような解決方法に賛成するか反対するかといった意識調査というのは行ったことはございます。

松原委員 ロシア全体の意識調査も必要だけれども、実際北方四島に住んでいる島民の意識調査というのは極めて重要で、恐らく、今から七年とか八年前であれば、帰属に関して、国と国との間で取り決めてもらえれば自分たちは日本への帰属に対して抵抗しないというぐらいまで意識はあったんじゃないかと私は思うんですが、またここに来て変わってきているんだろうというふうに思っております。そうしたことに関しても外務省はきちっとした把握をするべきだと私は思っております。

 さて、問題は、日本は例えばサハリン2で日本の利用する天然ガスの一七%がこれからずっと供給されるというふうな日ロの経済交流はサハリン等で進んでいるわけでありますが、平和条約が締結はされていないわけでありますが、経済交流はどんどん進んでいくということになっていくと、実態として平和条約というのはどういう点において日ロ双方にメリットがあり、特にロシアにとってメリットがあるか、このことについて、これは一般論の常識的な部分でありますから、大臣にお答えをいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 平和条約を締結するということはいろいろ両国の関係にとって、これは当然のことながら大きく発展し、また友好関係も強化されるわけでございますけれども、これによりまして、経済関係初め人的交流あるいは外交関係が強化されるということであります。

 ロシアは我が国のお隣にあるわけであります。また、経済的にもいろいろな面でも大国であるわけでありますから、隣の国との関係が平和条約を締結することによってより良好な関係になるということは、当然のことながら我が国にとって大変好ましいことである、そういうふうに思っております。

松原委員 もちろんいわゆる戦争状態をきちっと終結して、領土の問題で、それを確定する、実際、今、日ロの間の領土問題は確定していないというのは、もちろんこれは日本の立場だし、ロシアはサンフランシスコ講和条約にも参加をしていませんから、四島から北の千島列島に関しても、日本は領有権を放棄したけれども、ロシアのものかものじゃないかというと極めてそこは神学論争みたいになってくるわけであります。そうした中で、平和条約というのを締結するということは、普通であればロシアもそれを求めているし必要だということになりますが、一方において、経済のこういったさまざまな結びつきが深まっているわけであります。

 ちょっとお伺いしたいんですけれども、日本とロシアとの経済交流の拡大に関して、北方領土担当という立場から何らかの関連はしているんですか。これは完全に民間が自由にやっていて、北方領土を奪還しようとする、ロシア課になるのかどうかわかりませんが、そこは関与しているんですか、いないんですか、お伺いしたい。

谷崎政府参考人 お答えいたします。

 ロシアという国は、日本がいろいろな貿易関係、投資関係を進める上で、いろいろな意味において、経済上、政治的なカントリーリスクという点があるというふうに思います。その点につきまして、我が国の経済界というのは、特に政治的なリスクという点につきまして、かなり頻繁に外務省と意見交換しているということがございます。その中において、私どもは、この北方領土問題ということももちろん念頭に置いた上で、いろいろな意味でのロシアの現在の政治状況、経済状況について経済界の方にお伝えしている、そういう状況でございます。

松原委員 私は、こういう議論をして何が言いたいかというと、縦割りで、例えば経済産業省や民間がサハリンの問題を扱うとか、水産庁が四島周辺の水域の問題を扱うとか、外務省は外務省で、こういうさまざまな、一番中心でやらなきゃいけない領土問題を扱う。こういうふうな縦割りの、ちぐはぐとは言わないけれども、だって、経済の部分で国家と国家の間がどんどん深くなってしまったら、北方領土問題というのは意識の中でどこかに行ってしまいますよ。ロシアの方も、別に平和条約を締結しなくても、サハリンの開発に日本が巨額の民間のお金を出してくれるんだったら、いいじゃないかという話になってしまいますよ。もちろん、それは、ないよりは平和条約をつくるべきだと彼らは思うけれども、私はそのことを言っているんですよ。

 つまり、さまざまな外交上のカードというのは、経済の問題や水産資源の問題、さまざまな問題がある。そういったものが、水産庁があって、経済産業省があって、そしてこの外務省があってと、これで戦略的な、例えばここをこういうふうにロシアに対して言って、そのかわりこの部分を別の観点でギブ・アンド・テークで何とかいい条件を取り出そうとか、そういう戦略が、ロシア課という単位でやっている限りではできないと私は思うんですよ。

 大臣、私、まずこれは極めて大事なことだと思うんですが、戦後半世紀以上、ロシアは、これからまた質問しますけれども、八月十五日、終戦後ですね、八月二十八日に紗那町に、これは択捉ですか、上陸をして、そこから日本の内地に対して、ロシア軍が上陸をしてきたと打電があったわけですよ。一九四五年八月二十八日ですよ。もう戦後、八月十五日の終戦が終わって、その後ですよ。八月二十八日にロシア軍は北方四島、そして最後のところが九月四日とか五日ですよ、歯舞、色丹まで来たのは。九月四日、五日といったら、ミズーリの艦上で降伏の調印式まで終わった後ですよ。その後になってぎりぎりのところまで来たんですよ。そういうふうな状況のこの北方四島を取り戻すために、それからもう七十年近くたつ。五十年、六十年、七十年たつ。

 私は、その理由、その責任というのは、先ほど外務大臣は謝罪をなさったけれども、それは個人の問題ではなくてシステムの問題だろうと。

 経済交流の問題についても、また漁業交渉の問題についても、それは一つの、北方領土を奪還するための部局があるかないかで全然戦略的に違うと私は思うんですが、大臣、どう思いますか。

中曽根国務大臣 今委員が北方四島に関する歴史的な経過等も御説明いただきましたけれども、とにかく我が国にとりましての最重要課題であることは間違いございません。

 官庁といいますか役所の縦割り行政になっていて、これでは十分な対応ができないではないかということだと思いますけれども、各省、漁業は農林水産省とか、経産省とか、それぞれ専門の官庁があるわけでありまして、それらを外交交渉という場において代表し、また中心となってやっておるのが今外務省でありまして、こういうやり方で不十分ではないかということでありますが、連携をとりながらしっかりやっていきたい、そういうふうにも思っております。

 専門の部局を、そういうような御提言だと思いますが、このことについては、現在のところ、政府として、そういうような形で北方問題を取り組んでいく、そういう考えは現在のところはございません。

松原委員 それが問題なんですよ。だから、いまだに解決していない。

 戦略的にすべてのロシアとの、特に極東地域だけでいいんですよ。サハリンだって、実は南樺太の部分は終戦後日本が放棄したわけですよ。放棄して、実際は今ロシアが入ってきている。放棄しているから我々は何も言わないということでありますが、こういう部分全体に関して、北方領土問題ということで、それはあるじゃないですか、沖縄北方の委員会だって。北方領土に関して、今言った、経済的な分野は経済産業省がやりますとか、漁業の分野は水産庁がやりますとかじゃなくて、やはり一括した交渉窓口を決めるべきですよ。トータルで議論するべきですよ。それをしないというのは、本気でこの問題を解決しようという日本の国の姿勢に対して、ロシアから見れば本気じゃないんだなというふうなメッセージになるというふうに私は思っています。

 答弁は、恐らく外務大臣の答弁として、いや、そういったもので総合的な組織をつくりましょうと言えないでしょうから、これは麻生さんが言うべき話だから、これはここまでにしておきますが、それがないのは決定的な問題であるというふうに私は申し上げたい。

 さて、ビザなし交流というのはずっと行われてきましたが、その実績と効果についてお伺いいたします。

谷崎政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御質問のありましたビザなし交流でございますけれども、これは、北方領土問題が解決されるまでの間ということでございますが、相互の理解の増進を図り領土問題の問題解決をするというために九二年につくった制度でございます。これまでに約一万五千五百人が相互に訪問しているということでございます。

 評価でございますけれども、かつては、特にソ連時代でございますが、ある種のバイアスのかかった宣伝、それから遠隔地であることによる情報不足というのは、北方領土におりますロシアの方々はそういう状況にあったと思いますけれども、このビザなし交流が始まって以来、大変、領土問題を含めて、日本及び日本人に接する機会ができたということによりまして、率直な対話が実現しているというふうに私どもは評価しております。

松原委員 これはビザなし交流が始まったときにどういう形で決まったのか、日本の国はだれが出ていって、ロシアはだれが出てきたのか、お伺いしたいと思います。どこでこれが始まって、どのレベルで決まったかということですね。

谷崎政府参考人 お答えいたします。

 もともとは、これは九一年にゴルバチョフ大統領が訪日した首脳会談を契機としております。その後、同じ九一年でございますけれども、十月に、それぞれの、当時のソ連の外務大臣との間で往復書簡を交換して、このビザなし交流の枠組みができたということでございます。

松原委員 それぞれの外務大臣で往復書簡を取り交わしてと。

 今、ビザなし交流はどうなっていますか。

谷崎政府参考人 ビザなし交流の一形態であります支援事業というのを昨年末から準備してまいりました。しかしながら、残念ながら、ロシア側の方の国内法令の適用ということで、日本側の枠組みの合意と違う問題が生じておりますので、現在支援事業というのは一回実施されておりません。そのために、これを解決すべく今ロシア側と交渉している、こういう状況でございます。

松原委員 要するに、出入国カードを書きなさいとロシアは言ってきているわけですが、ロシアの出入国カードを書きなさいというこの国内法はいつごろロシアで整備されたんですか。

谷崎政府参考人 今御質問のありました出入国カードの提出義務云々の話でございますけれども、これは、二〇〇六年の七月、ロシアの国内法の改正に伴いロシアを訪問する外国人に対する出入国カードの提出が義務づけられたというふうにロシア側は言っておりますが、他方、ロシア側の、その後、二〇〇七年、二〇〇八年の具体的な実施に当たりましては、この法令というものが適用されなかったために、従来どおり支援事業が行われたということでございます。

松原委員 ロシアの国内法で二〇〇六年になった段階で、極東ということもあって、こちらのロシアの担当者は十分そのことを知っていなかったのか、もしくは徹底しなかったのかということでありますが、聞く話によると、新しい人が赴任してきて、なぜ二〇〇六年の国内法をきちっとやっていないんだ、厳格にやっていないんだということで始まったというふうに私は聞いています。

 ちょっとお伺いをしたいのは、二〇〇六年にこの出入国カードが必要だということが決まった段階で、当然ビザなし交流に影響があるということを外務省は把握をしていましたか、していませんか。どちらですか。

谷崎政府参考人 お答えいたします。

 二〇〇六年にそのような、先ほど答弁申し上げました国内法令ができたということは把握しておりました。しかし、その法令に基づいて、いわゆるこのビザなし交流に影響が及ぶということについては、私どもは当然影響は及ばないというふうに理解しておりましたので、把握しておりません。

松原委員 それが問題なんですよ。当然その影響はないとどうして判断したんだ。なぜそういうことを勝手に判断できたんだ。

 大臣、法令で二〇〇六年に出入国カードが必要だと。書くということはロシアの領土であることを認めることになるから、結局ビザなし交流できないし、日本から薬を持っていった船は戻ってきたんですよ。

 これは、外務省の甘い見通しというのは極端で、二〇〇六年の段階でそういうふうな出入国カードの記述が国内法として決まったとしても、北方四島は違うぞという外交交渉を普通は正々堂々とやるべきだと思うんだよね。それは例えば、ゴルバチョフが始め、外務大臣同士が決めていることだ、これは先にある話なんだからと。

 なぜそのことで、二〇〇六年に外務省はこのビザなし交流の継続のための具体的なアクションを起こさなかったんですか。大臣、理由は。

中曽根国務大臣 二〇〇六年の七月にそういうロシアの国内法が制定されたときの対応についてのお話でございますが、私自身当時のことはちょっと今承知しておりませんし、また、委員がおっしゃいましたように、そういうような法律が制定されたということであれば、そのときの迅速な対応というのは非常に重要であったわけでありまして、当時の外務省、また日本の政府の対応というものを現在承知しておりませんので、またさらに調べてみたいと思っております。

松原委員 結局、これが日本の外交なんだ。こういうふうな、最悪を常に認識してやらないということは、中曽根大臣はそのとき大臣じゃないからそれを追及するのは非常にかわいそうというか、申しわけないけれども。やはり、それを結局そのときなおざりにして、なあなあではっきりしないでやったというところが僕は問題だと思うんだよね。だからやはり、今実際ビザなし交流は、ビザなし交流の効果はありますよ、それが動いていないんだから。

 大臣、何かお話が。

中曽根国務大臣 先ほど申し上げましたように、二〇〇六年当時のことは、大変申しわけないんですが、私は承知しておりません。

 恐らく、一九九一年に北方四島訪問についての日ソの外相間の往復書簡がありまして、それの規定に従って、これによりますと「いずれの一方の側の法的立場をも害するものとみなしてはならない。」と、そういう共通の理解のもとに、身分証明書や挿入紙のみによる渡航で行われるということになっていたわけでございますので、その後、多分そういう認識のもとに対応が当時行われたのではないかと思っております。

 したがいまして、二〇〇七年、二〇〇八年におきましても、これはもう委員十分御承知のとおり、日本側代表団が北方四島を訪問した際にも、ロシア側から出入国カードの提出を求められることはなかったわけでございます。

松原委員 要するに、現実にビザなし交流で行けないんだから、薬を積んだ船が戻ってきちゃうんだから、それは全然、結果として失敗なんですよ。結果として日本外交の、私は敗北とは言わないけれども、後退ですよ。

 時間がないので、最後に、択捉の紗那の町に残っている建物のことをお伺いして終わりにいたします。

 紗那の町に、明治二十年以前に日本でつくられた紗那郵便局。明治十八年に開局され、そして昭和五年に無線電信局も設置された紗那郵便局。これは、昭和二十年八月二十八日、八月十五日の後ですが、ソ連軍が択捉島に上陸をして、そのことに対して、ここから無線で内地に対してソビエト軍が急遽上陸してきたと、日ソ不可侵条約はとっくに破られているわけでありますが、このことの打電があったこの建物。もう一つは、択捉島水産会。これもずっと今建っている。

 この二つの建物が老朽化をしているけれども、事実日本人が北方四島に住んでいたあかしであり、そして旧島民の心のシンボルなんですよ、戻れない。その二つの建物が老朽化で壊れようとしている。ロシアの国内法が変わることによって簡単に援助できないということになっているそうでありますが、何としてもこれは保存するべきだと思うんですよ。

 大臣、御所見をお伺いしたい。

谷崎政府参考人 ただいま御指摘の二つの建物でございますけれども、これにつきましては、二〇〇四年に元島民等の関係者の方々から、ぜひ修復、保存していただきたいという話が外務省の方に寄せられております。これを受けまして、外務省は、四島側、ロシア側との間で、解体を避けるように強く働きかけてきております。

 その上で、どういう形でこの建物を保存することができるのか、特に日本側の法的立場を損なわない形で保存できるかということについて、四島、ロシア側とその後折衝を続けてきているというのが現状でございます。

中曽根国務大臣 この件につきましては、日本側で建物の保存に取り組んでいる関係者の方々が四島交流の枠組みを利用して現地で修復また保存作業に向けた調査等を行っていると私は承知をしているところでございまして、これらの建物の修復また保存に当たりまして、北方領土問題に対する我が国の法的立場を害することがないように留意をしながら、内閣府、そして島民の関係者の方とも連絡を密にして、適切に取り組んでいきたいと考えております。

 今委員おっしゃいましたように、これは非常に大事な、当時の日本家屋でございますから、そういう歴史的にも重要なものでございますので、今申し上げましたような形で今後も取り組んでいく考えでございます。

松原委員 終わります。

河野委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。きょうは、外務委員会で質問させていただきました。よろしくお願いします。

 きょうは、米国艦船の石垣港への入港の問題、そして伊芸区の流弾事故、辺野古の問題などについて政府の見解を聞いていきます。

 米軍の佐世保基地所属の掃海艇パトリオットとガーディアンの二隻の石垣港への入港問題が持ち上がっております。昨日、石垣の大浜市長は、この問題で、米軍艦船の寄港に同意できない、このような記者会見を行いました。その会見文書によりますと、石垣の港は国内外の客船や貨物船に加え、圏域離島を結ぶ定期船、漁船、ダイビング船などが出入りしており、国内でもまれな、また県内一の過密状態の港である、このように述べております。

 この点について、外務省はどういう認識ですか。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまお話ございましたように、アメリカの掃海艦二隻が四月初旬に石垣港に寄港することを希望しているという件につきましては、これまで国会でも御答弁しておりますが、日米地位協定に基づき米軍艦船は我が国の港湾に出入りすることが認められているということでございますので、私どもも、石垣市長の御理解を得られるようにということで、職員を派遣して御説明をするなりしてきているところでございます。

 きのう二十四日に、市長が、米軍艦船の寄港は歓迎できないという趣旨のことを述べられたということは、報道を通じて承知をしているところでございます。

 また、私ども、現在も職員をまた派遣して市長さんとお話をさせていただこうというふうに思っておりますので、また市長さんから直接お話を伺うということになろうかと思っております。

赤嶺委員 私が聞いたのは、石垣の港は過密状態の港である、こういう認識を述べているが、あなた方は何度も石垣に派遣しているわけだから、その認識についてどうなのかということですよ。その点、いかがですか。

梅本政府参考人 失礼いたしました。

 私どもも、石垣市の港湾当局、市長さん初めからバースのあきぐあい等々についてはお話を伺っておりまして、確かに港湾施設についてもかなり使用されているということは承知しておりますが、しかし、同時に、あいている時期も一部あるというようなことも私ども情報として聞いておるという次第でございます。

赤嶺委員 大変過密な港なんです。そこは石垣に一歩足を踏み入れたらすぐ認識できることです。

 続いて、石垣市長は、よって港湾管理者である石垣市としては、日本最南端の重要港湾である石垣港が、民間船舶の運航目的として設置された港である以上、これら船舶の安全で円滑な航行を最優先する必要があり、軍港ではない石垣港へ米軍艦船を含むあらゆる軍用艦船の寄港は同意できない、このように述べているわけです。

 米側が当初寄港を通知したのが四月一日から三日、局長、先ほど述べておりましたが、クルーズ船が使うために米軍艦船の入港はできなくなったということであります。それだけじゃないんですよ。恒常的に過密なんですよ、外務大臣。そんな四月一日から三日がいっぱいだったという話じゃないんです。恒常的に過密な港になっている。ここに石垣の市長は米軍艦船の入港をやめてほしい、これは港湾管理者として当然の立場じゃないですか。

 この点について、外務省、非常に頻繁な船の出入りがある港に、やはり勘弁してほしい、これ以上の負担は無理だと言っている市長のそういう見解、尊重すべきではありませんか。

梅本政府参考人 日米地位協定は、米軍船舶と民間の船舶との間で港湾の施設の使用が競合した場合の入港のあり方について具体的に規定しているものではございませんけれども、先にバースの使用が割り当てられた民間船舶を排除してまで米軍船舶を優先させるということを当然としているものではありません。

 同時に、地位協定の趣旨にかんがみれば、米軍船舶は、少なくとも民間の船舶と同等に港湾施設を使用することが認められることは当然ではないかというふうに考えております。

 ただいま御指摘がありましたように、石垣港が混雑している港であるということは、私どももいろいろお話を伺って承知をしておりますけれども、今回の寄港につきましては、米側も必要な日程調整を行っておりまして、バースの状態等についての情報も踏まえた上で日程調整を行ったということでございますので、私どもとしてみれば、米軍艦船の寄港の障害となる物理的な制約は、日程を調整したということによってなくなったのではないかというふうに考えております。

赤嶺委員 あなた方は日程を調整したと言っている、石垣市長は、過密な港だ、軍艦の入港は勘弁してくれと言っている。

 地位協定の是非は別にしても、私は、地位協定の五条によって入港が認められるとは思っていませんが、たとえそういう立場にあなた方が立ったとしても、この規定は自治体の意向も踏まえた上で運用すべきではないかと思いますが、いかがですか、外務大臣。

中曽根国務大臣 先ほどから政府参考人が御答弁申し上げておりますけれども、まず、日米地位協定に基づいて我が国の港湾に米軍の艦船が出入りするということは認められているということでございますし、また、この地位協定は、米軍の船舶と民間船舶との間で施設の使用が競合した場合の入港のあり方について具体的に書いているということではないということ、そして、そういう場合には、一般的には先にバースの使用が割り当てられた民間船を排除してまでそういう米軍船舶を優先させるということを当然としているものではないということ、そういうことを考えてみますと、米軍の船舶も、混雑しているということは十分承知しておりますけれども、支障のない限りにおきましては民間船舶と同等に港湾施設を使用することが認められる、これは地位協定の趣旨でそういうことである、そういうふうに考えておるわけでございます。

 しかしながら、現地の地方公共団体のお立場からすれば、そういうような御要望というものも出てくるかとは思いますが、これは我が国の安全保障等を配慮した上での日米地位協定でございますので、ぜひ御理解をいただいて、円滑にこの港湾における入港が行われるようにまた御理解いただきたいと思いますし、私どももそれなりの丁寧な対応をしていきたい、そういうふうに思っております。

赤嶺委員 この間の外務省の対応はとても丁寧だという認識は持ち得ないものであります。

 外務省は、米軍艦船の民間港への入港は米軍の地位協定上当然だという立場をとっておられるようですが、以前の説明はそのようなものではありませんでした。仮に地位協定上の規定があったとしても、具体的な米軍の使用については必要最小限にとどめる、このように国会で答弁していたではありませんか。今のようなやり方だと、安全保障上認められているんだから、過密な港に入れろ入れろ、この日あいているだろうと、むちゃくちゃですよ。

 これまでの国会答弁との関連でどのように考えておりますか。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 米軍は、日米安保条約の目的の達成のために我が国に駐留しているわけでございます。そのために我が国及びその周辺において必要な部隊運用を行っているというふうに私ども認識をしているわけでございます。

 今般の掃海艇は、部隊の運用上、移動の途次に友好親善及び乗組員の休養を目的として石垣島に寄港するということで、そういう必要があるんだという説明を受けているところでございます。

 したがって、もちろん、私ども、地位協定によります民間港への出入りが民間の活動の大きな障害になるべきではないということはよくわかっておるわけでございますが、同時に、そういう民間の活動との調整を図って、日程調整をある程度やった上でこの出入りを地位協定に従って行うということは問題がないものというふうに考えております。

赤嶺委員 いろいろな離島を抱え、いろいろな島を抱え、その結果、あの港が過密になっている。その過密な港の中で離島の人々が暮らしている。その離島の人々に安保条約が見えぬかというのがあなた方の立場ですよ。何が友好親善ですか。

 あそこに入るのは、今回が入ろうと言ったのは初めてじゃないんですね。二〇〇七年に米国の沖縄総領事ケビン・メア氏が石垣市長に打診して拒否され、その後、与那国町長の反対を押し切って与那国港に入港した。

 今回は、当初は四月一日から三日に入港したいと通知して、それを拒否されたら、今度は三日から五日と都合よく日を変えて言っているんですね。変更したい、その日あいているだろうと。とにかく入港を認めるまで、これでもかこれでもかといって、入れろ入れろと言ってくる、これが安保条約ですか。

 去年の十一月は、市長の反対を押し切って、アメリカ海軍の強襲揚陸艦エセックスの艦載ヘリ二機が石垣空港を使いました。乗組員の休養と親善友好なんか全くの口実ですよ。これまで使用実績のない空港や港湾で軍事利用を拡大するため、まさにそのためなんです。必要最小限を超えているんです。

 これはなぜかといいますと、この間の米軍再編計画の中で、民間空港、港湾の詳細な調査を実施し、軍事利用を拡大する、このように書いているわけですよ。その目的のために、過密な港に、離島住民の暮らしを押しのけて、あなた方は入港を後押ししているんです。理不尽な要求ですよ。

 私は、そういうことが地位協定であれば、それは見直すのが当然だ、だから県民は地位協定を見直せと言っているんだ、見直せと言っているところに地位協定が見えぬかという態度は絶対に許せないということを指摘しておきたいと思います。

 次に、問題をかえまして、伊芸区の実弾問題について聞きます。

 米軍の実弾射撃訓練場に取り囲まれた金武町の伊芸区で去年十二月に起こった流弾事件、これをめぐりまして、三月一日に米軍演習被弾事件を糾弾する区民総決起大会が開かれました。人口九百人の集落で、区民を中心にお年寄りから子供まで四百人が集まりました。

 外務大臣、大会で住民が言われたのは、だれかが命を落としてからでは遅い、区民に銃を向けるな、私たち伊芸区民は米軍のターゲットではない、こういう訴えが相次いだんです。区長の池原さんは、今回の銃弾が一〇〇%米軍のものだと区民の皆さんはだれよりも知っていると訴えました。

 警察はこの流弾事故について捜査を進めてきたわけですが、あれから三カ月たっています。今どうなっていますか。

西村政府参考人 今お尋ねの事案は、昨年十二月十三日、沖縄県国頭郡金武町の住宅駐車場におきまして、駐車中の普通乗用車の前部ナンバープレートが破損し、その部分から銃弾様のもの一個が発見されたという事案であります。

 沖縄県警察におきまして、米軍側から提供を受けた数種類の弾丸と比較鑑定を実施したところ、そのうちの一つの弾丸の弾心と同種のものであるとの結果が出たと報告を受けております。

 また、米軍側に対しまして捜査に必要な事項について照会をしているところでありまして、今後、それに対する回答あるいは米軍の調査結果なども踏まえて、さらに捜査を進めていくものと承知しております。

赤嶺委員 ところが、米軍は、十二月十三日及び十二月二十一日に発見された金属片は海兵隊による最近の訓練とは直接的な関連がないと判断した、このように述べているわけです。警察の捜査でもそういう認識ですか。

西村政府参考人 警察におきましては、先ほどもお答え申し上げましたが、現在、米軍側に対しまして、訓練の状況でありますとか捜査に必要な事項について照会をしているところでありまして、捜査を継続しているところであります。

赤嶺委員 私もそのような捜査の継続が必要だと思います。

 外務省は、アメリカ側は捜査に協力しているということを繰り返し述べているわけですが、事件の当日、その周辺の実弾射撃訓練場で米軍の訓練が確認されております。異常な爆発音がきょうはひどいというような認識を地域の人々は持っています。

 県民の命にかかわる問題です。私は、この事態をはっきりさせるためには、当時の訓練内容、どのレンジでどんな訓練が行われていたか、そして、訓練をしていた部隊はどこか、部隊名、また、使っていた銃、これが流弾と一致しているのかどうか、なかったかどうか、弾丸、これらについて米側ははっきりさせるべきだと私は思います。これをはっきりさせなければ捜査に協力しているとはおよそ言えないと思います。

 ところが、米軍は、金属片にかかわる証拠、最近の海兵隊訓練に決定的な関連を示さずと。警察が求められていることには答えないで、いや、何の関連もなかったと言って居座っているわけです。肝心なことは示していないわけです。

 外務大臣、これでも米軍は捜査に協力しているという認識ですか。

中曽根国務大臣 先ほどから政府参考人が御答弁申し上げておりますように、現在、米側と日本の警察が捜査を行っているところでございますので、外務省といたしましては、この捜査の結果を見ながら適切に対応していきたい、そういうふうに思っておるところでございます。

赤嶺委員 外務省は、この事故が起きた直後に、安全性が確保されるまでは演習を中止してほしいと米側に申し入れたんです。米側は、それを聞き入れずにどんどん演習を拡大しております。

 今、演習場の安全性は確保されている、そういう認識ですか。

梅本政府参考人 お答えいたします。

 今先生が御指摘になりましたように、事案の発生後、外務省から在京の米国大使館に対しまして、訓練の安全が確保されるまでの間は関連する訓練を中止するように申し入れたということでございます。

 これに対しまして、米側からは、現時点で本件が米軍の訓練の流弾によるものかどうか判明していないけれども、改めて訓練における安全対策に万全を期すという回答があったわけでございます。そして、安全対策に万全を期したということで訓練を行っているというふうに私ども理解をしているところでございます。

赤嶺委員 流弾が米軍のものであるかどうか、日本の警察も一生懸命米側に資料を求めているけれども提出しない、でも、米軍のものであるという証拠がないじゃないかと言って居直る。米軍が、実弾射撃訓練場は安全に配慮してやっているから安全だ、こういう認識に立つ事態は変わらないのにですね。

 外務大臣、こんなことでいいんでしょうかね。住民の安全は守れますかね。いかがですか、外務大臣。

中曽根国務大臣 外務省といたしましては、今、政府参考人が御答弁申し上げましたように、在京の米国大使館に対しましては、安全の確保、それを申し入れ、また、訓練の安全が確保されるまでは中止するように申し入れたわけでありますが、御案内のとおり、今捜査中でございまして、この事実というものがまだ最終的に解明されておりません。

 私どもとしては、そういうふうに申し入れをしたわけでありますが、米側としては安全対策に万全を期すということでございます。そういうことでございますので、一日も早く捜査が終わり原因が究明されることを待ちまして、また対応をとっていきたい、そういうふうに思っております。

赤嶺委員 米側の捜査に協力しない態度は、外務省の、外務大臣のこういう態度では絶対に改まらないと思います。

 伊芸区は今度が初めてじゃないんですよ。戦後、繰り返し流弾事故が起きているんです。そのたびに不問にされてきた、いや、米側のものであるという証拠ないじゃないかと言って。どこから飛んでくるかわからない。命の安全がいつでも脅かされている。そのたびに外務省に訴え、防衛省に訴え、政府に訴えてきたけれども、全然解決しない。では、どうすればいいんですか。命と安全が守られない。米軍優先のそういうものが続いている。区民の訴えが無視されてきているわけですね。だから、今怒りが激しいですよ。伊芸区の区民の怒りは大変激しいですよ。キャンプ・ハンセンというのは、もともと米軍当局も欠陥演習場だと認めてきたじゃないですか、欠陥があるということを。

 だから、今度初めて伊芸区は、区民大会では、実弾訓練の即時廃止、流弾事故の全容解明、そしてすべての実弾訓練場の即時撤去ですよ、今求めているのは。撤去なんかを求めて、新しい段階に踏み込んだんですね。

 さらに新しいのがあるんです。軍用地などの財産を管理している伊芸区の財産保全会は、軍用地について、これまで沖縄防衛局と交わしていた賃貸借契約を二〇一〇年度以降はもう締結しない、こういうことを決めているんです。なぜか。これまでたび重なる流弾事件が起き、ほとんど原因解明されないままだ、一向に改善されない危険な環境の中、区民の命と財産を守るためには基地撤去しかない。伊芸の人たちが基地撤去しかないと言っている、この重みを外務省も防衛省も受けとめるべきだと思います。

 私は、こんなやり方で住民の訴えを無視するような政府の態度は絶対に許せないということを申し上げまして、質問を終わります。

河野委員長 それでは、警察庁、ただいま赤嶺政賢君から問題提起のありました事件につきまして、捜査の経過及び米軍の協力状況につきまして理事会に御報告をいただきます。

 外務省、米軍の安全対策の内容につきまして理事会に御報告ください。

 次に、辻元清美君。

辻元委員 社民党の辻元清美です。

 私は、本日、北朝鮮問題とミサイル防衛システムのあり方を中心に質問をしたいと思います。

 まず、外務大臣、本日、北朝鮮が人工衛星と主張するテポドン二号改良型と言われていますけれども、この発射への対処方針を、外務大臣、防衛大臣、官房長官で会合を開いて決めるということが報道されております。既に朝からこの会合はあったのか、でなければ、きょう、何時にどこであるんでしょうか。

中曽根国務大臣 三大臣といいますか、官房長官、それから外務大臣、そして防衛大臣によります会合は、本日行われると承知をしております。(辻元委員「何時にどこで」と呼ぶ)それについては、委員会もありますので、当然、終了以降だと思います。

辻元委員 そこで議論されるということに先立ちまして、ミサイル防衛システムの有効性や、それから日本の外交、安全保障上のリスクなどについて議論をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、今回の北朝鮮の発射物、日本の政府として、現在の認識は、長距離弾道ミサイルであるという認識ですか。中距離ではなく長距離であるという認識でよろしいんでしょうか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 北朝鮮は、四月四日から八日までの間に人工衛星を打ち上げるということでIMOの方に通告をいたしまして、具体的な落下区域等も示しておるということでございますけれども、具体的に、どのようなミサイルをどのような手段で、あるいは何を上げるかということについては、現段階ではまだ確かでないということが正直なところだと思います。

辻元委員 といいますのも、これは私は安保委員会でずっと議論してまいりましたが、日本のミサイル防衛システムは中距離型への対応ということで、長距離であった場合は日本のミサイル防衛システムで迎撃できないと久間大臣がかつて答弁していますが、この認識に間違いないですね。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 我が国が整備を進めておりますミサイル防衛システムといいますのは、まずセンサーでできるだけ早くその目標を探知する、それを一たん探知いたしました場合には、私どもの方に向かってくるということでございますれば、まずイージス艦によります防御、それから、落ちてくる場合にはPAC3というミサイルによる防御、この二層防御を基本として考えているものでございまして、その意味で、長距離の、ICBMとか、そういったものを念頭に置いて整備をしているものではございません。

辻元委員 そうしますと、きょうも会合があるということですけれども、非常に重要な会合だと思いますが、今想定されているのは、長距離の場合ですと、何らかの事故などを起こして日本の領土内に落下物が落ちてきたら危険だから、それに対応しようというようなことを議論しようとしているんでしょうか。いかがでしょうか。

徳地政府参考人 あくまで一般論ということで申し上げたいと思いますけれども、自衛隊法におきましては、我が国に飛来する弾道ミサイル等と。つまり、法律上の定義でいいますと、弾道ミサイルその他の落下により人命または財産に対する重大な被害が生じると認められる物体であって航空機以外のものをいう、こういうふうにされておりますが、今現在、私どもとして検討しておるのは、そのようなものが我が国に向けて飛来をするという場合にどうするかということを検討しているというものでございます。

辻元委員 そうしますと、何らかの故障や事故で落下物が来たときに、これに対して迎撃するとなると、我が国の本土に落ちてくる可能性、領土内に落ちてくる可能性があるものを上空で迎撃したら、迎撃してまた落ちてくるんじゃないですか。落下物は、迎撃されたら飛び散って、結局日本の領土内に落ちるんじゃないでしょうか。そうしたらどうやって危険を防ぐんでしょうか。いかがでしょうか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 もともと、今のイージスとそれからPAC3によります防御体制といったものにつきましては、そういった目標に対して、これを破壊するということを目的にしてやっておりますし、それから、また別のものが落ちてきたときに、それに対して対応する能力があればそれをやるというようなことで法律的な枠組みというのはできているわけでございます。

 いずれにいたしましても、ウエポンシステムといったものは一〇〇%完全なものではございませんので、その意味で、目標に対して、やはり人命、財産の保護という観点から最も適切な方策というのを講じていく、そういうことになりますので、その点で御理解をいただきたいと思います。

辻元委員 ちょっと理解ができなくて。

 有効な手段であるかどうかを考えるときには、各方面から検証しなきゃいけないと思うわけです。確かに、上空で、核を載せたミサイルが来る、撃ち落とすとか、そういう話を安保委員会でもしょっちゅうしていましたけれども、落下物を想定した場合に、それを迎撃した場合に、それがもっと本当に飛び散ると考えるのが普通だと思うんです。これは海上でも、それから陸上でもそうだと思います。そうすると、これが果たして落下物から守ることになるのかという素朴な疑問があるんですね。

 いかがですか、その落下物をまた撃ち落とすみたいな御答弁を今されたんですけれども、この点、いかがでしょうか。慎重にこれは対応しないと、勇ましいことだけを言って、牽制にも何にもなりませんから。いかがですか、さらに落下物が落ちてくる可能性があるかないか。ありますよね。いかがですか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 いずれにいたしましても、具体的な議論ということではなくて一般論として申し上げさせていただきたいと思いますけれども、現在の体制でございますと、破壊措置をとる、要するに、私どもとして法律に従いまして破壊措置をとるというのは、飛来する弾道ミサイル等によりまして国民の生命及び財産に重大な被害が及ぶ蓋然性が極めて高い事態でというようなことでやっておりますので、破壊措置をとった後の副次的被害というようなものを論ずる際には、このような措置が重大な被害を未然に防止するためのものであるということを考慮してやっていくということでございます。

河野委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

河野委員長 速記を起こしてください。

 高見澤防衛政策局長。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 四月四日から八日に、北朝鮮がそういうふうに通告をしているわけでございますので、仮に北朝鮮の言うような形であれば、落下地域というものはございますので、それに対応した、艦船とか航空機の被害を避けるというようなことが行われるというのは通常であると思いますけれども、今、先生の御質問で、具体的なデブリがどうか、つまり、実際に衝突した場合の被害がどうかということでございます。

 これは、今までのいろいろな実験の過程なり当たる場所にもよりますけれども、例えば空中で当たった場合には、落ちてくるまでにそれが消滅する、空中で消えて、溶けてなくなるというような形もありますし、どの場所でどういった形で当たるか、当たり方にもよりまして、まさに破壊されたものがどういうふうになるかということは全体に違うわけでございます。

 それから、落ちてくるものがそもそもどういった形で落ちてくるのか。弾頭のような形で落ちてくる場合もあれば、ロケットの一段目が落ちてくるとか、いろいろなケースがあるわけですし、それからまたその進行方向もいろいろな違いがございますので、一概にそういった破壊されたものがどういった形になるかということをお答えするのはいかがかというふうに思っております。

中曽根国務大臣 委員の御質問もよくわかるんですけれども、これは安全保障にかかわることで、日本の防衛能力にかかわることだと思いますので、今政府委員が一般論として申し上げました。委員長がおっしゃるとおり、四月四日からということで、大変切迫したといいますか、そういうことはあってはならないことでありますが、そういう事情もぜひ御理解いただきたいと私は思います。

 それから、何よりも、いつも申し上げているんですが、まだ四日まで、四日とは限りませんけれども、我々としては、そういうことが起きないように、発射しないように、させないように、ぎりぎりまで全力の努力をするというのが今の私たちの立場だと思っております。

辻元委員 それでは、先ほどから、実験をしているということなので、実験についてお聞きをいたします。

 今まで、SM3は二回実験をして、一回成功、一回失敗、PAC3はまだたった一回しか実験していないという認識でよろしいですか。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 SM3ミサイルの発射につきましては、平成十九年十二月にイージス艦「こんごう」、平成二十年十一月にイージス艦「ちょうかい」の二回実験を行っておりまして、イージス艦「こんごう」につきましては標的に命中いたしましたけれども、「ちょうかい」の場合は、標的を探知、追尾し、SM3ミサイルを発射して、大気圏外に誘導するまでの間、BMDシステムが運用され、システムは正常に作動しておりましたけれども、結果的に標的に当たってございません。

 また、PAC3につきましては、平成二十年九月に実施をいたしておりまして、これは標的に命中をしております。

辻元委員 結局、SM3の場合は二回実験をして、一回目は、ここに撃つぞと言って実験をしたときには当たった。しかし、二回目は、「ちょうかい」の場合は、いつ、どこから、どう撃つかを予告せずに練習をしたら当たらなかったということですね。

岩井政府参考人 お答えを申し上げます。

 「こんごう」の場合は、御指摘のとおり、いつ発射をするかという時間が決まっておりまして、それを追撃する実験を行いました。

 「ちょうかい」の場合は、発射時間を四時間のレンジの中で、その間にいつ発射がされるかということが決まっていない状態で発射実験を行いまして、「ちょうかい」の場合は、予告されていない時間に打ち上げられました標的につきまして、それを探知、追尾し、大気圏外に誘導するまでは作動しておったわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、最終的に標的には当たってございません。

辻元委員 結局、いつ来るかわからない実験はまだ成功したことがないということは事実だから仕方がないですね。

 それでは、その失敗した「ちょうかい」の場合の事故というか失敗原因の調査報告は出ているんですか。その原因はどういうように分析していますか。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の、今回標的に命中しなかった原因の究明でございますけれども、米国と共同で現在調査をしておりまして、現時点ではSM3の弾頭部分にその要因があるというところまでは特定できておりますけれども、最終的な要因につきましては、日米で協力をして、引き続き調査を現在行っているところでございます。

辻元委員 結局、いつ、どこから来るか、予告のは撃ち落とせたけれども、予告されていないものは失敗していて、その原因究明もまだ今やっている最中であるというような段階で、今、このミサイル防衛システムで北朝鮮から何か落下物があったら撃ち落とす、撃ち落とすと言っているのが日本の現状であるということを、大臣、しっかり認識していただきたいと思うんですね。

 そこで、内閣官房副長官にお出ましいただいておりますが、政府高官が、ピストルの弾をピストルで撃ち落とせるはずがない、成功したのは今から撃ちますよと言ってくれるからだと発言したと。これは鴻池さんですか。

松本内閣官房副長官 報道で、筋と言われる方からの御発言があったということは承知をしておりますが、詳細については私自身は承知をしておりません。

辻元委員 内閣官房の中で一緒に官房副長官で働いていらっしゃって承知していなかったら、日本は危機管理できていないですよ。違いますか。

 これ、割と当たっていると思うんですよ。別にそんな悪い発言じゃない。それに対して、私、中曽根外務大臣はさすが御見識がある、今の日本の現状を。難しいのは事実だろう、ミサイルがどういう形でどういうふうに飛んでくるのか、どこへ飛んでくるのかわからないと指摘された。私は、この認識は間違っていないと思います。外務大臣、いかがですか。

中曽根国務大臣 私の発言が報道で取り上げられまして、いろいろな取り上げ方があるものだな、そういうふうに思いました。

 私が申し上げたのは一般論でありまして、閣議後の記者会見、いわゆるぶら下がりでありますが、いきなり、政府筋の発言についてどう思いますか、そういう御質問でございました。

 ミサイル防衛システムが非常に高度で、そして難しい技術だ、そういうことを申し上げたかったのでありまして、例えば辻元委員にミサイル防衛システムは簡単ですかと聞かれれば難しいとお答えになると思うんですが、ある意味ではそういうような認識で、突然ぶら下がりでお答えいたしました。

 私自身は、そのお答えの前に、私はそういう発言は存じませんと。つまり、政府筋のこういう発言があるけれどもと言われたんですけれども、私自身、直接聞いていなかったものですから、正確な御発言も存じ上げないままに、難しいのは事実でしょうと申し上げましたし、確かに、今委員がおっしゃいましたように、我が国としてはまだ迎撃を行ったこともありませんし、どういう形でどのように飛んでくるのか、どこへ飛んでいくのかわかりません、とにかくそのようなことのないように、ぎりぎりまで全力で働きかけることだと思います、ここまで私は申し上げているわけでありまして、政府筋の発言、迎撃どうこうということじゃなくて、この技術は非常に難しいものですということを申し上げたということを皆さんに御理解いただきたいと思います。

辻元委員 この後、会合に出られるようですので、厳しい現状認識で話し合っていただかないと困ると思うんです。

 どういうことかといいますと、これは仮に、何か落下物があるといって、迎撃するぞと八十二条の二の一か三で決めるとしますね。決めていて、対応して、失敗したらどうなるんですか。これはアメリカでも今ジレンマに陥っているわけです。もしも命中しちゃったら、北朝鮮は、人工衛星の実験なのに軍事対応をしたということで、中国やロシアを初め関係諸国に物すごいロビーイングをするだろう。これは、非難する国も出てくるだろう。そして、これが失敗したら、北朝鮮の勝利になると言ったらちょっと語弊がありますけれども、ほら見たことか、では、ミサイル防衛しているけれども使い物になっていないじゃないかと。

 そうなると、撃ち放題と言ったらちょっと変な言葉ですけれども、これは外務大臣、日本の外交、安全保障上、失敗したときの日本が受けるダメージ、マイナスも考えてこの八十二条の二の一か三を適用するのかどうかということをこの後の会合で議論していただかないと、いわゆる日本の国益を大きく損ねると思うんですよ。

 私はそんなに単純な話じゃないと思います。来たら撃ち落としたらいいとか、ミサイル防衛を持っているんだと、余り勇ましいことを言い過ぎた対応をすると、日本もジレンマに陥って身動きがとれなくなってしまう。何か落ちたら撃たないとしようがなくなってくる。そして、軍事対応だと言う国も出てくる。そしてさらには、失敗したら、使い物にならないじゃないかと。

 今まで七千億程度のお金を使っていますからね。アメリカでも、財政が今厳しい中で、オバマ政権の中からは見直しみたいな声も出てきているわけですね。

 外務大臣、この後、重要な会合に臨まれると思います。私は、外務大臣として、軍事的対応というニュアンスをとるような対応はやめて、外交努力でいこうということを最後まで主張なさった方がいいんじゃないかと思いますが、いかがですか。これは、失敗したときの日本の損なうリスク、ダメージを考えたら、外務大臣としてはそのお立場をおとりになるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

中曽根国務大臣 まず、三大臣会合と申しますか、それは安全保障のことについて話し合うことになると思いますし、細かいことについては現在私は承知しておりません。

 それから、今委員がおっしゃいました自衛隊法を使わないでというようなお話でございますが、やはり政府といたしましては、仮に我が国の領土とかそういうところへ発射されたものが来るということであれば、国民の生命と財産を守る、あらゆる手段を講じて対処しなければならない、これは当然のことだと思いますので。それは技術的なこととかいろいろあろうかと思います、私は細かいことはわかりませんが。

 そういうことで、先ほどから申し上げておりますが、まずは今おっしゃいました外交努力をぎりぎりまでやるということは、これはもう当然のことで、万が一そういうような発射が行われて、万が一日本に来るということであれば、それは、政府としてはそういうような対応をとるというのは、私は国民の皆さんも理解をしてくださると思います。

辻元委員 終わりますが、国民の生命と財産を守る方法なんですよ。総合的に考えていただきたい。そう単純なものではないと思います。後々のリスクも考え、トータルな御判断をいただかないと。

 私は、外務大臣が、この発言、難しいのは事実だろう、すごく率直でいい発言だと思って評価申し上げたんです。そういう意味では、外務大臣のお立場をしっかり主張していただきたいということを申し上げて、質問を終わります。

河野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十三分散会


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