衆議院

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第7号 平成21年4月8日(水曜日)

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平成二十一年四月八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 河野 太郎君

   理事 小野寺五典君 理事 松島みどり君

   理事 松浪健四郎君 理事 三原 朝彦君

   理事 山中あき子君 理事 近藤 昭一君

   理事 武正 公一君 理事 伊藤  渉君

      逢沢 一郎君    秋葉 賢也君

      飯島 夕雁君    猪口 邦子君

      小野 次郎君    木原  稔君

      篠田 陽介君    柴山 昌彦君

      鈴木 馨祐君    関  芳弘君

      とかしきなおみ君    中山 泰秀君

      西村 康稔君    原田 義昭君

      盛山 正仁君    山内 康一君

      山口 泰明君    池田 元久君

      篠原  孝君    田中眞紀子君

      鉢呂 吉雄君    松原  仁君

      丸谷 佳織君    赤嶺 政賢君

      笠井  亮君    辻元 清美君

    …………………………………

   外務大臣         中曽根弘文君

   外務副大臣        伊藤信太郎君

   防衛副大臣        北村 誠吾君

   外務大臣政務官      柴山 昌彦君

   外務大臣政務官      西村 康稔君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 西村 泰彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房地球規模課題審議官)       杉山 晋輔君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中島 明彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石川 和秀君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 北野  充君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 渡邉 正人君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    梅本 和義君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   鶴岡 公二君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   木下 康司君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  高見澤將林君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  井上 源三君

   参考人

   (財団法人平和・安全保障研究所理事長)      西原  正君

   参考人

   (宜野湾市長)      伊波 洋一君

   参考人

   (拓殖大学海外事情研究所所長)

   (拓殖大学大学院教授)  森本  敏君

   参考人

   (沖縄大学学長)     桜井 国俊君

   外務委員会専門員     清野 裕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月八日

 辞任         補欠選任

  小野 次郎君     盛山 正仁君

  西村 康稔君     関  芳弘君

  御法川信英君     飯島 夕雁君

  笠井  亮君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     秋葉 賢也君

  関  芳弘君     西村 康稔君

  盛山 正仁君     小野 次郎君

  赤嶺 政賢君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  秋葉 賢也君     とかしきなおみ君

同日

 辞任         補欠選任

  とかしきなおみ君   御法川信英君

    ―――――――――――――

四月八日

 七・一八沖縄県議会決議を尊重し、辺野古新基地建設の断念を求めることに関する請願(小川淳也君紹介)(第一三七九号)

 同(小宮山洋子君紹介)(第一四三〇号)

 同(篠原孝君紹介)(第一四三一号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一四八三号)

 同(笠井亮君紹介)(第一六三九号)

 同(川内博史君紹介)(第一六四〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一六四一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一六四二号)

 同(仙谷由人君紹介)(第一七三八号)

 女性差別撤廃条約選択議定書の速やかな批准を求めることに関する請願(小宮山洋子君紹介)(第一四二九号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一四八五号)

 同(石井郁子君紹介)(第一四八六号)

 同(笠井亮君紹介)(第一四八七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一四八八号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一四八九号)

 同(志位和夫君紹介)(第一四九〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一四九一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一四九二号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一四九三号)

 グアム移転協定に反対することに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一四五五号)

 同(石井郁子君紹介)(第一四五六号)

 同(笠井亮君紹介)(第一四五七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一四五八号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一四五九号)

 同(志位和夫君紹介)(第一四六〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一四六一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一四六二号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一四六三号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一四八四号)

 沖縄の新基地建設中止、基地の全面撤去に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一六三八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 第三海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一号)


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     ――――◇―――――

河野委員長 これより会議を開きます。

 第三海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 本日は、本件審査のため、参考人として、財団法人平和・安全保障研究所理事長西原正君、宜野湾市長伊波洋一君、拓殖大学海外事情研究所所長・拓殖大学大学院教授森本敏君、沖縄大学学長桜井国俊君、以上四名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにしております。

 参考人各位の皆様におかれましては、本日、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。どうぞ本日は、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜りますようお願いを申し上げたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、西原参考人、伊波参考人、森本参考人、桜井参考人の順序で、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際は委員長の許可を得ることになっております。

 それでは、最初に西原参考人にお願いいたします。

西原参考人 西原でございます。

 私は、このたびのグアム移転協定を強く支持する立場をとっておりまして、日本では、とかくこの問題に関しましては、経済的観点、民生的観点から議論する傾向にございます。その重要性は十分わかりますけれども、私は日本の安全保障の観点からも議論をしておくべきだと考えております。

 最初に、アメリカの対アジア太平洋戦略と日米同盟との関連について述べまして、次に、協定賛成の理由を、安全保障上の利点及び経済、民生的利点とに分けて述べたいと思っております。そして最後に、私の考えとしまして、日本の今なすべきことに関しまして一言述べたいというふうに思っております。

 まず最初に、アメリカのアジア太平洋戦略と日米同盟の点でございますけれども、米国は冷戦後、ソ連の脅威は消滅したとしまして、冷戦時代の封じ込め態勢から、予期せざる場所で起こる紛争に迅速かつ柔軟に対処できるような態勢へと移行してまいりました。前線基地に大変大きな兵力を張りつけて仮想敵国を抑止するというのではなくて、地域ごとに中核となるハブ基地を設け、そこに即応戦力を配備し、有事の際にはそれらが緊急展開して対処する態勢に移行しております。

 しかし、東アジアにおきましては、現在まだ予測可能な紛争地点がございます。朝鮮半島や台湾海峡のようなものでございます。したがって、米国は兵力を一方で削減しながらも、他方で同時に抑止力の維持をすることを考えてまいりました。

 その具体的なあらわれが沖縄の海兵隊の一部グアム移転です。これによって、兵力は削減しますけれども、同時に、米国はグアム基地の強化をし、そして太平洋から中東に広がる広大な地域における部隊の展開を効率的に行う計画を進めてきております。これを一言で言えば、米軍の再編という形になります。八千人近い海兵隊と九千名の家族をグアムに移動することで、この海兵隊は東南アジア、南アジア、中東地域により迅速な兵隊の展開をすることができますが、同時に、有事には日本に戻り、沖縄に残る海兵隊とともに、日本の防衛と北東アジアの敵性国への抑止力を維持することができます。

 したがって、日本は、こうした米国による効率的な戦力の配備と抑止力維持を追求する計画は自国の安全にも必要であると判断し、これを支持し、他の幾つかのことをアメリカと協議して、そして実施してまいりました。例えば、横田基地に航空自衛隊航空総隊司令部を移動させ、在日米軍との連携を強化することにしました。また、在日米陸軍司令部のあるキャンプ座間に陸上自衛隊の中央即応集団を移転させ、そして司令部の連携を強化することにしております。

 こうした点を考えますと、日米同盟とアメリカのアジア太平洋戦略とのつながりがはっきりしていると思います。ここでのキーポイントは、柔軟かつ迅速な配備と抑止力を同時に維持するということであろうと思います。

 次に、安全保障上の利点につきまして、四点まとめて申し上げたいと思います。

 まず第一点は、こうして米国がグアムの基地機能を強化し、アジア南部から中東に続く不安定の弧の周辺海域に沿って延びる長いシーレーンの安全を確保することは、地域の安定に役立つばかりか、日本のエネルギーの安定的確保にとっても極めて有利となります。

 二番目の利点。沖縄に残る海兵隊の兵力は六千名から一万名となりますけれども、司令部、陸上、航空、戦闘支援及び基地支援能力は残ることになります。グアムに移転するのは主として司令部機能でありまして、即応性の高い強力な実戦部隊は沖縄にとどまることになります。その面で、有事のときにはグアムの海兵隊が日本防衛の支援にも増派されることになります。海兵隊のグアム移転で日本の安全が危ぶまれることはないと考えております。

 第三番目の利点としまして、在日米軍の再編によって、在日米軍と自衛隊との司令部連携が進み、日米同盟はより強化されることになると判断します。グアム移転はこの意味で日米同盟を強化することになると考えております。

 第四番目の利点。グアムの基地が強化されることで、日本が攻撃を受けた際の米軍の反撃能力が高まることが期待できます。グアムには、北朝鮮や中国などの地域諸国のミサイルや戦闘機の大半が届きません。したがって、グアムの米軍はむしろ安全地帯にいるために、先制攻撃や報復を余り恐れないで必要な反撃を行うことができるというふうに思います。

 したがって、ここでのキーワードは、アメリカの太平洋での部隊の展開が柔軟になるということ、それから日米同盟が強化されるということであります。

 次に、経済的、民生的利点につきまして申し上げたいと思います。ここでも四点、利点を申し上げたいと思います。

 お手元にあります一枚の表をごらんいただければと思います。この移転のために日本が負担することになっておりますいわゆる真水の財政資金は二十八億米ドルです。これを一ドル百十円として換算いたしますと三千八十億円になります。今後、二〇一四年までの六年間に年平均五百十三億三千万を防衛予算に計上することになります。これは平均でございます。この額は、例えば平成二十一年度の国防予算四兆八千四百四十九億のわずか一・〇六%にしかなりません。そういう面で、大きな負担になるというわけではございません。

 二番目の利点。さらに、グアムの工事を請け負っている日本企業がつくる、司令部庁舎、教場、隊舎、学校等の生活関連施設、家族住宅、インフラというような点は、いずれも維持、更新、修理、補修が今後必要になります。したがって、日本の企業は、この協定にありますように、企業参入の公平の原則に従ってそうした工事に今後もつくことができるわけですから、長期にわたって日本企業に仕事が残ることになります。

 第三点。海兵隊のグアム移転によって普天間飛行場などが全面返還されるということは、嘉手納飛行場以南の人口が集中している地域にある相当規模の土地が沖縄県民に戻ることを意味します。地元関係者の試算でも、返還による経済効果は八千七百億になると言われています。日本政府がグアム移転に拠出する真水の三千八十億円の二・七倍になります。その上、住宅街の騒音や航空機事故がなくなるという一大利点がございます。

 最後に第四点。アメリカ海兵隊のグアム移転に伴いまして全面返還されるのは、普天間飛行場、陸軍貯油施設、キャンプ桑江、牧港補給地区、那覇港湾施設でありまして、これにキャンプ瑞慶覧の部分返還があります。これらの返還される土地を合計しますと、ここの表にございますように、九百七十八ヘクタールになります。これは、現在の沖縄の米軍施設全体で見ますと四・二%にしかすぎません。非常に少ないと思われるかもしれませんが、しかし、この返還面積が那覇市面積の四分の一に相当することを考えれば、普天間飛行場の移設の意義がより明確になると存じます。人口密集地である地域の返還の意義は極めて大きいと考えるわけでございます。

 最後に一言。日米両政府は、八千名の海兵隊員をグアムに移すことによって、沖縄県民の基地負担をできるだけ緩和する姿勢を示してきました。一九九六年の橋本・クリントン首脳会談で沖縄県民の基地負担を軽減するという合意がなされて以来、大きな懸案が部分的にしろこの協定によって解決されることは、何といっても日本にとって喜ばしいことだと考えます。これで地元住民の対基地感情の改善を期待することはできます。このことが日米同盟への支持基盤の強化につながると思います。すべて完全な解決ということは考えられませんが、こうした形で日米の間で妥協し、さらに一歩進むということは非常に重要であると考えております。

 このような利点があることを認識しまして、国会は速やかにこのグアム協定を批准すべきだと考えております。一九九六年の日米首脳会談以来、既に十三年が経過しております。米国側は移設の大幅な遅延に失望をこれまで表明してきました。ロードマップで合意されました二〇一四年までの移設・返還計画がおくれるようなことになれば、米国の対日不信がさらに強くなる心配がございます。さらに、沖縄県民や日本国民全体から日米同盟に対する支持低下を生むことになるかもしれません。こうしたことを考慮して我々は対応していくべきだというふうに考えております。

 どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

河野委員長 ありがとうございました。

 次に、伊波参考人にお願いいたします。

伊波参考人 おはようございます。沖縄県宜野湾市長の伊波洋一でございます。

 衆議院外務委員会に付されている第三海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国との間の協定の締結についての承認の審議において、日米政府間の長年の懸案事項となってきた米海兵隊普天間航空基地に関して、宜野湾市長として意見を述べる機会を与えていただき、河野太郎委員長並びに各委員の皆様に感謝申し上げます。

 さて、米海兵隊普天間航空基地については、一九九五年に設置された沖縄に関する特別行動委員会、SACOの課題とされ、一九九六年十二月二日のSACO最終報告で、ヘリ部隊が駐留する代替施設の建設を条件に、五年ないし七年以内の全面返還が合意された経緯があります。その全面返還合意から十三年がことしで過ぎるわけですが、依然として普天間基地は存在し、住宅地上空を米軍機が旋回飛行訓練を繰り返しています。

 二〇〇四年八月十三日には、CH53D型米海兵隊大型ヘリコプターが市内の沖縄国際大学本館に墜落、炎上する大惨事が起き、大学本館が使用不能になったほか、周辺民家二十九戸、車両三十三台を損傷し、地域住民には心的外傷後ストレス障害、PTSDを発症する方もありました。多くの物的被害の中で、学生や大学職員、市民に直接的な身体被害が起きなかったことは奇跡的なことでありました。

 日常的に市内住宅地上空での旋回飛行を繰り返している米軍ヘリや米軍機がある限り、二〇〇四年八月のような墜落事故はいつでも起こり得ることであり、二度と起こさないためには、一日も早く普天間飛行場での飛行訓練や部隊運用を停止することが必要です。

 私は、二〇〇三年以来これまで、宜野湾市長として、日米両政府に対して、普天間飛行場の危険性除去の緊急性を訴え、これまでに三回の訪米要請行動を含めて日米両政府関係機関に九十回を超える要請行動を取り組んでまいりました。あわせて実施してきた米軍航空基地の安全基準についての調査などを通して明らかになったことを含めて、以下に、今回の米軍再編の流れの中で不透明になっている事柄などについて意見を述べたいと思います。

 まず、普天間飛行場では、滑走路の両端前方で一切の障害物を除去するために設置すべきクリアゾーンが民間地区に大きく張り出して設けられ、その一番危険なクリアゾーン内に市立小学校や児童館、地域公民館、保育所などと約八百戸の住宅があり、合わせて三千六百名の市民が居住していることです。このことは、宜野湾市が二〇〇七年末に明らかにするまで隠されてきました。明らかに米軍基準に違反しており、国として直ちに運用停止を求めるべきです。

 私は、このような見逃してはならない危険性が放置されて運用している普天間飛行場を一日も早く閉鎖させ、早期返還させるために、米軍再編の流れの中で、海兵隊を沖縄から撤退させ、海兵航空部隊の米本土やハワイ、グアムなどへの分散移転を実現するよう、強く両国に求めてまいりました。

 米軍再編の日米協議で二〇〇六年五月に合意された約八千人の海兵隊員とその家族九千人の沖縄からグアムへの移転については、宜野湾市民の普天間飛行場の基地負担の解消と嘉手納以南の返還による沖縄の基地負担軽減に結びつくものと期待していましたが、今回の委員会での政府の答弁を聞いておりますと、国としての沖縄の基地負担の軽減への熱意や普天間飛行場の危険性の除去への熱意を感じることができません。

 この協定の提案説明として、中曽根外務大臣からは、第三海兵機動展開部隊の要員八千名と家族九千名の沖縄からグアムへの移転実施を確実なものとし、沖縄県の負担軽減に資するものと考えられますと説明されております。私は、この沖縄県の負担の軽減について、資するものと考えるとあいまいにせず、委員会議論を通して、ぜひ明確に沖縄の負担軽減につながるものとしていただきたいのです。同時に、普天間飛行場の一日も早い危険性除去につながるものにしていただきたいと思います。

 三年前の二〇〇六年の五月一日に2プラス2協議で合意した再編実施のための日米ロードマップにおいて、約八千名の第三海兵機動展開部隊の要員とその家族九千名は、部隊の一体性を維持するような形で二〇一四年までに沖縄からグアムへ移転するとし、日本は、これらの兵力の移転が早期に実現されることへの沖縄住民の強い希望を認識しつつ、これらの兵力の移転が可能となるよう、グアムにおける施設及びインフラ整備のため、二十八億ドルの直接的な財政支援を含め、六十・九億ドルを提供するとしました。

 同時に、沖縄に残る施設・区域が統合され、嘉手納以南の相当規模の土地の返還が可能になるとされ、さらに、双方は、二〇〇七年三月までに、統合のための詳細な計画を作成するとしました。そして、嘉手納以南のキャンプ桑江、普天間飛行場、牧港補給基地、那覇港湾施設、陸軍貯油施設第一桑江タンク・ファームの五施設を全面返還し、キャンプ瑞慶覧については部分返還と可能な限りの統合としました。さらに、SACO合意による移設・返還計画について再評価が必要となる可能性を示しました。

 米側のよく言うパッケージ論について、ただいま述べた詳細な返還計画の作成もまたパッケージの構成要素であるはずです。二年前の二〇〇七年三月までに作成されるはずだった嘉手納以南の統合のための詳細な計画は、いまだ作成されておりません。そのために、宜野湾市では、SACO最終報告で二〇〇八年三月までの返還が合意されたキャンプ瑞慶覧の普天間ハウジングエリア五十五ヘクタールの返還跡地利用の作業が二〇〇六年以来凍結されているのです。

 それどころか、沖縄のどの部隊がグアムに移転するのかもあいまいにされたままです。あげくの果ては、沖縄からグアムへ移転する八千人の海兵隊は、実数ではなく定数である、それも米国がロードマップ交渉で示した在沖海兵隊実数約一万三千人から五千人も水増しした一万八千人の定数から移すのだと説明しています。全くあきれるばかりです。有事への即応性を海兵隊駐留の理由にして沖縄に負担を押しつけてきたのに、幽霊定数が重視されるのなら、六十・九億ドルは無駄金になりかねません。

 国としても、沖縄県民も納得できる明確な説明責任を果たしてもらいたいと思います。

 沖縄県民の負担軽減を前面に押し出して二〇〇六年の合意をしたにもかかわらず、現時点までに、沖縄の負担軽減にどのようにつながるのか明らかにされていません。むしろ、基地周辺では、嘉手納基地の米軍機の騒音激化や外来機の増加、普天間基地では深夜十一時までの住宅地上空での旋回飛行訓練が繰り返され、金武町では実弾による被害まで起こっています。

 宜野湾市では、米軍再編の流れについて、数年にわたり、国内だけでなく米国内の動きに注視し、要請行動や調査を行ってきました。以下にその概要を述べますが、その内容は、先週までの政府答弁のようなあいまいなものではなく、当初から詳細な計画案が示されてきました。最終的に、環境影響報告書の出そろう二〇一〇年当初に確定するものと思われます。

 グアム移転の一方の当事者である米国では、米太平洋軍司令部が、二〇〇六年七月に策定中のグアム統合軍事開発計画を同年九月に公表しました。その内容は、重要部隊のグアム到着を二〇一〇年以降になるとしつつも、具体的な部隊構成や移転の順位まで示しました。その内容は、実戦部隊を含むもので、演習地、訓練地の詳細な検討も求めていました。

 二〇〇七年七月に沖縄県中部市町村会の市町村長十名でグアム調査を行い、グアム統合計画室とアンダーセン空軍基地の責任者から説明を受けて、移転予定地の視察も行ってきました。詳細は資料のとおりですが、本市の抱える普天間基地の海兵隊航空戦闘部隊についても、アンダーセン空軍基地の受け入れ予定地を案内され、六十五機から七十機の航空機と千五百名の海兵隊航空戦闘部隊員が沖縄からアンダーセン基地に来る予定と説明されました。グアム統合計画室とアンダーセン基地の二カ所の説明で、沖縄からの海兵隊のグアム移転は、米軍のアジアを含む軍事的抑止力の強化につながることも強調していました。

 その後も米国で幾つものレポートが出されましたが、ほぼ同じ内容です。最新のものとしては、二〇〇八年九月十五日に、国防総省が海軍長官の報告書として連邦議会下院軍事委員会に提出した、国防総省グアム軍事計画報告書があります。

 その中で、普天間基地の中型ヘリ部隊を含めて、具体的に部隊名を挙げて説明しています。現在、普天間飛行場とキャンプ瑞慶覧に常時駐留している海兵隊航空関連部隊では、KC130部隊関連を除いて、全部隊名がそのリストで、グアムに移転する海兵航空司令部要素として挙げられています。ロードマップでも、八千名の部隊は一体的にグアムに移転するとされていることから、私は、普天間基地の航空部隊は、KC130を除いて、グアムに移転するものと考えてきました。

 グアムで増加する海兵隊員数は一万六百二十名とされていますが、内訳の少なくとも八千名は沖縄からの海兵隊員になるわけです。この人数は、常駐部隊数であり、一時駐留と区別されているもので、給付金や手当の受給資格を持つものとされています。

 ですから、先週委員会での議論があったような、幽霊定数人員がグアムに移転してくると太平洋軍やグアム群島政府が考えているとは思えません。

 しかし、なぜ国は、沖縄からグアムに移転する八千人は主として司令部関係で、実人数ではないと説明するのでしょうか。国として海兵隊のグアム移転に六十・九億ドルを負担するのなら、米国防総省のリストにも挙げられているように、沖縄で負担の大きい実戦部隊の移転を優先すべきです。普天間基地についても、海兵隊航空部隊を一日も早くグアム等へ、国外に移転させて、危険性の除去を実現し、沖縄の負担軽減に結びつくようにすべきです。明らかに、政府の説明責任が果たされていないと思います。

 最後に、私も、ことし二月二十三日に米国大使館で普天間飛行場の早期返還と海軍病院の移設見直しを要請したときに、沖縄から海兵隊八千名と家族九千名がグアムに移転するので、SACO合意で建設計画が始まり、埋蔵文化財問題でストップしている海軍病院建設を見直すように求めた際に、グリーン安全保障課長から、沖縄の海兵隊員の定数は一万八千人だから、八千人移っても一万人まで外から兵隊と家族が移ってきますと説明されたときには、大変驚きました。

 もしそれが本当だったら、私だけではなく沖縄県民の多くにとって、到底納得できるものではなく、憤慨するでしょう。そのようなロードマップは、辺野古新基地建設を含めて、すべてを直ちに白紙に戻して、グアム移転の財政支援も凍結すべきです。ぜひ、国会において、沖縄県民の負担軽減に結びつくのかつかないのか、国民が理解できるように委員会審議を尽くしてもらうことを要望して、意見陳述を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

河野委員長 ありがとうございました。

 次に、森本参考人にお願いいたします。

森本参考人 本日、在沖縄米海兵隊のグアム移転に関する日米協定に関し、参考人として招致され、若干の個人的所見を述べる機会が与えられたことは、大変光栄に存じます。

 しかし、冒頭、西原参考人が御説明いただいた内容に全く私は賛同するもので、したがって、つけ加える点についてのみ強調したいと思います。つまり、重複を避けて、同じ説明をここで繰り返すということになるべくしないように、三点に要点を絞って所見を述べたいと思います。

 そもそも、米軍再編というプロセスは、アメリカ国防省が冷戦後のグローバルな戦略体制の中で、特に前方展開戦略として欧州並びに東アジアに主として展開していた米軍のあり方を見直した作業であり、作業そのものは一九九七年ごろから始まったものであります。

 当時の状態は、ヨーロッパにおいて特にドイツから、アジアにおいては韓国から、米軍をどのように撤退するかということが大きなねらいであったわけですが、二〇〇二年の末から、この米軍再編のプロセスの中に在日米軍を含めてアメリカが交渉に提案をしてきた。

 この機会をとらえて、我が方は、冒頭、西原参考人のお話のように、抑止力を維持しながら、主として沖縄の負担を軽減するということを基本的な方針として、米軍再編を我が国の国益に最も合致するよう、どのような形にすれば望ましいのかということを考えて、この交渉に臨んできたわけであると思います。

 結果としては、二〇〇五年の二月に共通の戦略目標が決まり、二〇〇五年の十月に中間報告、そして翌二〇〇六年の五月に最終報告がロードマップという形で出たことは御承知のとおりであります。

 この全体のプロセスの中で、第一に申し上げたい点は、沖縄にいた海兵隊、現在も展開している海兵隊をどうしてグアムに一部であれ移転することになったのかという、海兵隊の持っておる基本的な背景要因について要約をして申し述べてみたいと思います。

 そもそも、海兵隊であれ、海軍であれ、陸軍であれ、冷戦後の米軍の戦略というのは、フォースプロバイダーとフォースユーザーというものが別々に概念されており、海外に展開している部隊がそのまま部隊として戦闘集団になるというのではなく、主としてフォースプロバイダーとして兵力を特別任務部隊の指揮官に提出し、提出された兵員を使って任務を遂行し、部隊はその任務が終わったらまたもとへ戻る、そういう部隊の運用を繰り返しているわけです。

 この観点から、現在の第三海兵機動展開部隊、すなわち3MEFと言われるいわゆる師団級の部隊は、司令部と、そして戦闘部隊である海兵連隊並びにこれを支援する航空部隊及びすべての部隊に対する後方支援部隊という性格の異なる部隊を全体として一体化して運用するということになっているわけであります。この場合、訓練を行い、部隊の態勢を整え、即応態勢を高度に維持するためには、物理的に、ある一定機関の中に部隊を置かないと、部隊としての任務を効率的に遂行することができないわけで、例えば海兵連隊と航空部隊と後方支援部隊を全く別々の場所に置いて部隊が運用できるかというと、必ずしもそういうふうにはなっていないわけであります。

 海兵隊としては、したがって、全体として、ある一定の箇所の中で運用したいと考えていたわけですが、日本側の強い要請もあって、どの部隊を外に出せるのかということを検討した結果、実動部隊である、つまり海兵連隊と航空部隊並びにこれを支援する部隊を切り離すことはできそうにないと考え、最も抑止力を低減させないように海兵隊の部隊の一部を展開するためには司令部機能を外に出すという以外にないと考え、アメリカは、西太平洋のグローバルな戦略体制を見直した結果、我々が今知っているとおり、そして今回、日米協定に署名されたとおり、兵員とその家族合計一万七千名を二〇一四年までにグアム基地に移転させるということを内部的に決め、日米交渉の場に持ち込まれて、日米間でこれが合意されたものであります。

 実は、日本政府は、この移転計画の中で最も懸念したのは、これによって海兵隊の全体の機能が低減し、日本に対する抑止力というものが減るのではないかというふうに考えていたわけでありますが、アメリカは、幾つものシミュレーションを行った結果、司令部の要員の一部を動かしても部隊全体の戦闘能力に変わりはないという結果を得たので、日米は、このグアムに沖縄の海兵隊の一部の司令部要員を中心に移転することを日米で合意したという経緯があります。

 その際、移転するにしても、グアムには、移っていく海兵隊の住宅その他関連施設等が全く余裕がないという状態であったので、これに必要な経費、すなわち、移転する部隊の兵員の隊舎及び家族住宅並びにこれに伴う各種の施設を建設整備するに必要な経費のうち、我が方が合理的に判断をして、まさに沖縄から移る兵員及び家族の住宅及び関連施設に係る経費を日本として財政支援する必要があると考えて、今回、日米協定の中に具体的な経費の分担を入れたわけであります。

 今回、この協定が国会で御承認いただくことになり、計画どおりに進めば、二〇一二年には移転が開始され、二〇一四年に移転を完了するという全体計画が実行されたとしても、海兵隊が持っている本来の機能である抑止力はほとんど変わることがないというふうに考えられるので、したがって、沖縄の負担が軽減されると考えられるこの在沖縄海兵隊のグアム移転に私は基本的に賛同するものです。これが第一の点です。

 第二は、しかしながら、このグアムというのが実際どうなっているかということ、私も個人として非常に気になり、昨年は、アメリカ側の協力を得て、数回にわたっていろいろな有識者がグアム基地の現状を見てまいりました。昨年、私も、グアムの基地の中に、説明を国防省から受けつつ、この基地を見てきたわけです。

 私が冷戦時代に考えていた、つまり、冷戦時代に外務省に勤務していたころ、グアムというのは、正直申し上げて、入れる基地ではありませんでした。当時、安全保障課に勤務して、グアムに行こうとしたのですが、基地の中に入って、一般的なといいますか、基地を見学するというクリアランスはとれても、基地の中にある、米軍の実際に展開している部隊の中に入り込むということは現実にはできないぐらいグアムというのは当時、当時というのはベトナム戦争前後から冷戦が終わるまで、非常にグアムというのは西太平洋全体の戦略を担う部隊として、部隊及びそれを駐留させる基地として特殊な役割を果たしていたと思います。

 久しぶりに昨年この基地に入ってみて気がついたのは、冷戦構造の中でグアムが置かれていた目的が相当変化し、かつその時点にあった施設が数十年たって老朽化し、ほとんどそのままの施設の状態では使用に耐えられないという状態であることに気がつきました。アメリカもこの基地を今どうしようとしているかということについては、アメリカの一方的な説明を我々はそのまま受けとめることはできませんけれども、しかし、現在あそこにある部隊は、御承知のとおり、主として、海軍については第七艦隊の隷下の部隊、兵員四千五百名ぐらいと、それからアメリカ空軍、これはフィリピンにいた第十三空軍がハワイに移ったわけですが、その後、太平洋空軍直轄隷下の第三十六航空団が兵員二千名を擁してここに現在駐留しています。

 この部隊に、さらにアメリカは、これから西太平洋全域における長距離のパワープロジェクション能力を向上させるため、この基地を新しく主としてインフラ整備をしようと考えていて、したがって、沖縄から来る海兵隊だけではなく、陸軍及びその他の部隊を受け入れ、非常にトータルな戦略基地として新しく生まれ変わる基地としてグアムに新たな役割を与えようとして、現在インフラ施設の整備計画をつくっていると考えます。

 したがって、二〇一四年以降は、恐らく空母が時々は駐留することもでき、戦略潜水艦あるいはB2などの爆撃機、そして第五世代の最新鋭の戦闘機であるF22など、アメリカが太平洋に持っている最新鋭の兵器体系がここを本拠地にして西太平洋に向かって必要な態勢をとる非常に重要な戦略基地として恐らく位置づけられているのではないかと思います。海兵隊の部隊をそこに入れるということを契機にこの基地をそのような形にしようとしているのは、これはアメリカが西太平洋というものをどのように考えているかということを知る一端でありますが、そのことは我が国にとっても決して悪い話ではなく、西太平洋、東太平洋における今後の紛争事態や、現在、北東アジアに見られるような非常に深刻な不安定要因を考えてみると、アメリカが、どちらかというと、グアムというものを、アメリカの本土から見た一番西側にある最重要拠点として新しい役割を付加しようとしていることは、アジア太平洋の安定全体にとって意味があるというふうに考えられる次第です。

 最後に、第三点。

 グアムの移転の経費を日本が支出する背景、理由については、西原参考人がるる御説明になったので繰り返しを避けますけれども、しかしながら、日米は、米軍再編のプロセスの中で、抑止力を維持するということに努めつつも、沖縄の負担を軽減するためにどのようにして兵員と基地の削減を図るかということを鋭意アメリカ側と交渉した結果、グアムに海兵隊の一部を移すということになったわけで、この問題は、単にグアム基地の問題だけではなく、普天間の基地問題や、あるいは嘉手納飛行場以南の六つの施設の返還と深く連係する問題でもあり、米軍再編は、日米間で三年にわたる話し合いを通じて既に結論が得られているわけで、今後は、この日米間で合意された内容をいかにして遵守し、日米同盟の信頼性を確保しつつ、将来についての協議を続け得るかということが今後の政策課題であると思います。

 言うまでもなく、両国間で約束したことを実行するということが今我々の前に差し迫った大きな課題であり、約束したことを実行できずに次の問題を話しても意味がないわけであります。したがって、これからの日米同盟を強化するために、グアムの基地移転、そして、その次に控えている普天間の基地の返還及びその他の関連施設の返還及び米軍再編全体のロードマップを最も効率的に実行することが、これからの日米安全保障協力にとって不可欠の課題であるということを強調したいと思います。

 以上でございます。委員長、ありがとうございます。(拍手)

河野委員長 ありがとうございました。

 次に、桜井参考人にお願いいたします。

桜井参考人 第三海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件の審査のために参考人として招致されました、沖縄大学の桜井でございます。私の意見を述べさせていただきます。

 ことし二〇〇九年は、薩摩侵攻から四百年、明治政府の琉球処分から百三十年の大きな節目の年でございます。薩摩侵攻も琉球処分も、外部の強大な力によって沖縄の運命がねじ曲げられたものとして、琉球・沖縄史に深く刻まれた事件でございます。本年二月十七日に締結されたグアム協定は、沖縄では、新たなる琉球処分となるのではと危惧されております。

 グアム協定の国内適用対象は、ほぼ沖縄県に限定されます。憲法第九十五条は、「一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。」としております。この憲法第九十五条の精神にのっとり、県民の意思を聞くべき事案であると私は考えます。しかるに、グアム協定は、地元沖縄の人々に一言の相談もなく、その意思が全く問われることなく押しつけられようとしております。沖縄の米軍基地は、戦争中から戦後、すべて県民の意思を無視してつくられてきましたが、復帰後の今、また新たな基地がつくられようとしているのです。

 新基地建設についての沖縄の民意は、ノーです。それは、名護市民投票によって、また各種世論調査によって明らかです。直近の民意としましては、沖縄県議会も、昨年七月十八日に新基地建設反対を決議しております。

 国土面積のわずか〇・六%を占めるにすぎない沖縄に、米軍基地の七五%が集中しております。基地がもたらす各種の人権侵害や環境破壊は既に限界に達しております。小さなかごに卵が山盛りの状態、これが沖縄の現状です。普天間飛行場代替施設が国家安全保障上必要であるとしても、その移設先が沖縄県内である必然性はありません。沖縄県民には、人間の安全保障の観点から、県外への移設を求める権利がございます。小さなかごにこれ以上卵を盛ることは不可能です。

 日米両政府によって締結されたこの協定は、沖縄の負担軽減をうたっておりますが、沖縄で私どもが日常的に感じているのは、むしろ負担の増加でございます。また、基地受け入れと一体となって我慢料、沈黙料として提供される高率補助による土木公共事業は、沖縄の風土に配慮を欠くものが多く、沖縄の山と川と海を破壊し続けております。

 さらに、基地受け入れと高率補助の関係は、二〇〇七年五月の米軍再編特措法によっていわゆる出来高払い制となり、出来高に応じて防衛省が普天間代替交付金を支給するという、今まで以上にわかりやすいむき出しのあめとむちの政策となりました。このことから、今や、環境ばかりか、沖縄の自治も誇りも押しつぶされようとしております。

 沖縄の祖国復帰に際しての県民の要求は基地撤去と恒久平和でしたが、本土政府の方針は、これを認めず、米軍基地は温存し、その犠牲の代償として補助金による経済援助をするというものでした。

 国庫補助金による公共事業は、全国画一的で地域の実情に合いませんが、特に沖縄の場合、それが言えます。道路や農業基盤整備によって赤土が流出し、海を汚染し、サンゴ礁を死滅させました。沖縄の自然に合わない公共事業が、環境破壊という社会的損失を生み出すこととなったのです。

 沖縄は全国一の埋立県です。埋め立て自体が自己目的化しております。埋立地の多くは有効利用されずに放置されています。埋め立てによって一時の利益は生じますが、その後に続く雇用機会が生まれていないのも沖縄の特色でございます。

 かくして、沖縄では、自然のままの海岸線や湿地は今や極めて希少なものとなりました。そして、今、沖縄本島に残された貴重なサンゴの海が、新たな埋立事業により泡瀬と辺野古で消えようとしております。

 辺野古に基地をつくろうとする米軍の計画は、既に、ベトナム戦争時の一九六〇年代にございました。その昔のプランが急浮上することとなったのは、九五年の少女暴行事件を契機とした九六年のSACO合意によってであります。沖縄の負担の軽減という名目でなされたSACO合意に基づき辺野古につくられようとしている基地は、普天間飛行場代替施設と呼ばれております。しかし、これを代替施設と呼ぶのは適切ではございません。人口稠密な都市に包囲されて使い勝手が悪い旧式の普天間飛行場を返還し、かわりに、人口密度の低い地域に日本国民の血税で普天間にはない軍港つきの最新鋭の施設をつくってもらうというものであり、米軍から見れば、これはまさに焼け太りでございます。

 当初は、キャンプ・シュワブ内にヘリポートを建設するという案でした。そうしたささやかなヘリポート案がなぜV字形案へと肥大化を遂げたのでしょうか。利権絡みで肥大化したのではないかと考える県民が出てきて当然の経緯でございます。

 辺野古沖合案であれば、リーフの外の深い海を埋めなければならず、技術力の乏しい地元土建業者が出る幕は余りございませんが、沿岸案であれば、浅いイノーの埋め立てであり、地元業者の出番がある。そこで、住民への騒音被害や危険を軽減するという大義名分のもとに、もう少し沖合に移動させて地元業者のうまみをふやそうというのが知事並びに名護市長の沖合移動案でございます。一方、国や米軍は、沖合に移動させると反対運動が展開しやすくなるとして、あくまでも沿岸案にこだわっておられます。

 そして、本土マスコミは、あたかもこの違いこそが国と地元の意見のずれであり争点であると錯覚させる報道を行っております。知事案に多少なりとも歩み寄れば地元の意向が受け入れられたとの誤ったメッセージが国民に送られることになります。しかし、県民世論は、圧倒的に、新たなる基地建設を許さないというものであり、真の争点は、つくるか、つくらせないかでございます。

 さて、辺野古では、環境アセスが形の上では進み、去る四月一日に準備書が提出されました。

 しかし、辺野古アセスは、アセス法の趣旨にもとる点が多々あり、環境アセスメント学会の学会員であり、学会の評議員でもある小職としましては、これをアセスとして認めることはできません。

 時間の制約がありますので、二点のみ、重大なアセス法違反を指摘しておきたいと思います。

 第一には、私のメモの第二と書いてあるところでございますけれども、ロードマップで設定された二〇一四年というゴールに間に合わせるために、アセス法の手続に入る直前に、アセス法に基づく方法書の洗礼なしに、二十数億円とも言われる巨費を投じて大がかりな事前調査が実施されました。ジュゴンやサンゴ礁調査のための機材の設置は、海上自衛隊の掃海母艦「ぶんご」まで繰り出して、非暴力で反対活動を展開する市民を威圧する中で、潜水隊員によって夜間に行われました。サンゴやジュゴンの生態を知らない者によるそのような無理な作業の当然の結果として、機器の設置でサンゴの損傷が生ずることともなり、また、ジュゴンを威嚇するような形でビデオカメラが設置されることとなりました。

 本年四月一日に、公告縦覧に供された準備書は、辺野古沿岸域にはジュゴンはいない、したがって、辺野古新基地の建設と使用はジュゴンに影響を及ぼすことはないと記述しておりますが、それはこうした威嚇の結果である可能性が高いと言えます。なぜなら、長年にわたって、金武湾から北の辺野古沿岸域を含む沖縄本島東海岸では、ジュゴンが目視され、海草のはみ跡が観察されているからでございます。

 その次に、私のメモの第四というところでございますが、事業者である沖縄防衛局は、事業内容に関する情報を後出ししております。昨年一月にも、百五十ページもの追加資料が提出されております。その追加資料提出の際に、事業者は、埋立用土砂として、沖縄近海で採取された千七百万立方メートルの海砂を民間業者から購入するという計画を明らかにしましたが、それがもたらす環境影響についてアセスは行わないとしております。

 この海砂の量は、沖縄県での二〇〇六年度の海砂採取量の十二・四倍、二〇〇五年の全国採取量の一・一四倍に相当する膨大なものであり、それがもたらす沖縄の沿岸、海浜環境に及ぼす影響には、はかり知れないものがございます。沖合の海砂採取で砂浜がやせ細るのを沖縄の人々は経験的に知っております。ところが、沖縄防衛局は、民間業者が合法的に採取した海砂を購入するのだから問題はないし、アセスの対象とする必要はないとしております。ここでは、いわゆる合成の誤謬が発生します。

 また、皆様御存じと思いますけれども、辺野古周辺海域を中心とする沖縄本島東海岸には北限のジュゴンが生息しており、昨年十月十四日にスペイン・バルセロナで開催されたIUCN会議において、三度目のジュゴン保護の推進勧告が採択されております。来年十月には、名古屋で生物多様性国際締約国会議が開催されますが、議長国日本のジュゴン保護の取り組みに国際世論は注目しております。

 さらに、ジュゴンについては、辺野古新基地建設で絶滅するおそれもあることから、沖縄ジュゴン訴訟が米国サンフランシスコ連邦地裁で争われ、国家歴史保存法に基づき、原告勝訴の判決が昨年一月に出ております。この判決で米国防総省が求められているのは、辺野古新基地の建設と使用が、既に絶滅の危機に瀕している沖縄のジュゴンにいかなる影響を与えるかということを評価し、建設と使用に当たっては評価結果を考慮に入れることでございます。これに対し、米国防総省は、日本政府が行う環境アセスがその評価を行うことになるとしております。

 しかし、今行われているアセスは欠陥アセスでございます。この欠陥アセスが同連邦地裁で妥当な評価作業と認められるかについては、大いに疑問がございます。四月一日、エープリルフールの日に出されたということは、もしかすると、後日、本当のアセス準備書はこれですと出し直しがされることではないかと考えたりもしております。

 それでは、私の意見をまとめます。

 グアム協定は、沖縄県民の声を聞かずに辺野古新基地を押しつけるものであり、断じて認めることはできません。国は、外交と防衛は国の専権事項とおっしゃいますが、米軍基地の存在は沖縄の人々の人権を日常的に踏みにじっており、人間の安全保障の観点から基地廃絶を求めることは県民の権利でございます。現在の地方自治法において、国と自治体は原則的に対等、同格であると規定されております。これは、たとえ日米安全保障条約に関する決定は国の権限であるとしても、そのもとでの基地配備決定については、当然、地域の権利が保障されるべきだということでございます。

 本土復帰後の沖縄は、米軍基地が集約され、その見返りとして土木公共事業が集中的に展開される構造にあり、深刻な環境影響が予測されたことから、時には免罪符として利用されるという側面を持ちつつ環境アセスが実施されてきました。環境アセスのラッシュ状態が沖縄で生じてきたのです。

 アセス法の精神に反するような手法が沖縄で拡大し蔓延してきました。日本社会の維持可能な発展を実現する上で欠かせない仕組みの一つであるアセス制度に沖縄で大きな穴があき、その欠陥が日本社会全体にブーメランとなって返っていこうとしております。沖縄に問答無用で基地を押しつけ、その余のことに無関心を決め込むことは、結局は日本社会を大きくむしばむことになるでしょう。

 故後藤田正晴元官房長官は、死の前年の二〇〇三年二月に、国の安全は全部米国任せだから、今のように日本はアメリカの属国になってしまったと発言されております。この発言を踏まえつつ、オーストラリア国立大学名誉教授のガバン・マコーマックさんは、その著書で、日本は質的に米国の属国と言っていい状態にまで変容したと述べておられます。日本が米国の属国ならば、沖縄は米国の軍事植民地ということになります。沖縄県民が国民として誇りの持てる外交政策を強く日本政府に求める次第です。

 以上が、私の意見でございます。(拍手)

河野委員長 ありがとうございました。

 これにて参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

河野委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野次郎君。

小野(次)委員 おはようございます。

 参考人の方々には、早朝から、また遠方からお越しいただいて、貴重な御意見を賜りましたことを厚くお礼を申し上げます。

 委員長、私は、きょう、いろいろな方々の御配慮によってこういう機会を与えていただいたんだと思っておりますけれども、私個人としても、自分の中で、こういう機会が私に回ってきたということについて大変深い思いがございます。それは、この国会議員になる前、総理大臣秘書官を四年半やっていたときに、ずっと安全保障担当の秘書官をやってまいりました。このときは、同時にまた、沖縄北方領土担当の秘書官でもございました。

 そういったことから、官邸の中からこの問題について自分なりに見てきましたし、もっと振り返ってみますと、先ほど桜井参考人のお話の中にもありましたけれども、一九九五年九月の四日だったと思いますけれども、女子小学生に対する米兵の強姦事件がありました。このときに、私は警察庁の国際課長ということで、米軍人の犯罪に対する担当の課長でもございました。当然ながら、速やかに身柄は日本側に引き渡すべきであるということを強く主張しましたけれども、余り強く主張し過ぎまして、当時の外務省当局から、小野さんは合同委員会に出てくると不規則な発言をするかもしれないから、だれかほかの人にかわってもらえないかということを上の人にお話がありまして、当時、まだ若手の課長だった私は、ラインから外された思い出がございます。

 それから数年たって、今度、秘書官になりましたら、やはりまた米軍人の犯罪があり、また、二〇〇四年だったでしょうか、ヘリコプターが墜落したという事件もあって、そのたびに、地位協定については、余り多くは申しませんが、歯ぎしりをしながら見詰めた記憶がございます。

 そういう中で、全くそれと同時並行的に出てきたのが、この米軍、アメリカ政府のリディプロイメントというんでしょうか、再配置、これは世界的規模での再配置という作業だと思うんです。それが、二〇〇六年五月、2プラス2の合意で今回の協定案のもとになる合意ができたというふうにされていますけれども、実はもっとその前から、九五年のさっき申し上げた女児強姦事件、九六年のSACOの合意など、そういった系譜と相まって今の問題にたどり着いているんだと思うんです。そこがまた逆に言うと、なかなか私たちが一義的にというか、すぱっとこの問題について判断できない二つの流れがあるということだと思うんです。

 それは、二〇〇四年に実は、2プラス2の合意は二〇〇六年ですけれども、これは報道もされていますから申し上げますけれども、内閣の中で、再配置についての日米間の協議についての対処方針が実質的に決められました。そのときには、最初、抑止力の維持ということが大きな問題だというふうにされておりましたけれども、いや、それだけじゃないだろう、やはり沖縄を初め日本市民が米軍の存在によって感じている制約、負担感というものを軽減するものでなければならないだろうという話もあって、皆さんも御存じのとおり、抑止力の維持と負担軽減を両方、二つの要件としてこの問題に取り組んでいこうということが政府の方針になったわけでございます。

 その際にも、一部の方から沖縄における負担の軽減という表現が出ましたけれども、いろいろな議論の中で、いや、それを言ったんでは、では、米側が沖縄以外のほかの県にパズルのこまを動かすようにどんどんどんどん動かしていけばそれで事が済むのかといえば、三沢だって厚木だって横須賀だって、やはりそこの市民にしてみれば、制約というか負担というか、重く感じているわけであって、それも戦後以来数十年にわたってそういうことを感じているわけですから、そういったレベルの問題、沖縄については特段の配慮をしなければいけないけれども、だからといって、それを国内でたらい回しにするだけで済む問題ではないだろうということで、抑止力の維持と負担の軽減ということで、もちろん沖縄を中心とするということではございましたけれども、政府として取り組もうということが決まったわけでございます。

 その流れの中で今回の協定ということが出てきているんだと思いますので、そこにまたこれに対する各会派の問題もあり、また各個人についてもいろいろな認識の難しい差が出てきているというのは、こういった経緯にあるのかなと私は思っております。

 それでは、まず、時間が余りありませんので、軍事的側面の方からちょっとお尋ねをしたいと思いますが、西原参考人にまずお伺いします。

 グアム島というのは、沖縄から南東に約二千四百キロ離れているわけですね。在沖海兵隊がいわばほぼ二分されて、約半分が遠距離の地点にセットバックする形になるわけでございます。先ほどのお話だと、米側にとって反撃能力というか対応能力にはマイナスの部分、悪い影響はないですよというお話でございましたけれども、だったら全部グアムに引き揚げてもらったらいいじゃないかという話にもなるかもしれないですね、そういう話だけをおっしゃれば。

 ですから、米側にとって好都合だとしても、我が国の安全保障にとって抑止力の低下という不安は本当にないのかどうか、もう一度、ちょっと参考人の御意見を、御所見を伺いたいと思います。

西原参考人 今の御質問ですけれども、全部沖縄から海兵隊をグアムに移すということになれば、それだけ日本の抑止力は減るだろうと思いますね。

 現在、アメリカが沖縄から海兵隊を一部撤退させてもいいと考えているのは、例えば朝鮮半島におきまして、これまでは、朝鮮半島の三十八度線を境にする緊張から、大きなことが起きた場合にはこれらに対する対応が必要だというふうに考えてきたと思うんですけれども、現在は、韓国の軍隊も相当に強くなっておりますし、それに引きかえまして北朝鮮の部隊はむしろ弱くなっている。補給その他から見ましても随分弱くなっている。そういう面では、沖縄に今までほどの規模のものを置いておく必要はないと考えたと思うんです。それに反しまして、むしろグアムに多くの部隊を置くことによってより大きな展開ができるというふうに考えていると思います。

小野(次)委員 ありがとうございます。

 森本参考人に伺いますが、在沖と在グアムの海兵部隊相互間で緊急介入能力あるいは統一的な対応能力を維持、補完するために、どのような施設や機能が必要だとお考えか、もし御所見があれば伺いたいと思います。

森本参考人 今、西原参考人の御説明があったように、今回のグアムの移転というのは、実動部隊といいますか、実際に海兵隊としての戦闘部隊は沖縄に置いたまま、司令部の機能にかかわる要員だけをグアムに移すわけです。

 その際、グアムに移すためには、もちろん、その司令部の要員に必要な基本的なインフラ及び、司令部を別の場所に動かすということになると、指揮通信上の機能も移さないといけないので、したがって、細かいアメリカのマスタープランは必ずしも私は個人として承知していませんが、恐らく、遠方で部隊を指揮するために必要な一切の指揮通信能力、それに係るインフラ、これがグアムの中にできないと部隊を遠方からコントロールすることができない、このように考えるのが自然なのではないかというふうに考えます。

小野(次)委員 ありがとうございます。

 今の問いと関連してまた森本参考人にお伺いしたいんですけれども、協定の内容は実行されたとしても、定数ベースでいって約一万の海兵隊が沖縄に残留するわけですね。その方たちの移動手段というのはどうするのかなという疑問があります。この残留する方の米海兵隊というのは、キャンプ・シュワブなどを中心に残る形になると思うんです。

 一方で、これから聞いていきます普天間の代替施設の問題もございます。定数ベースで一万の米海兵隊を沖縄に残留するとして、部隊が駐留するという問題と普天間の代替施設、飛行場というのは切り離して、残るのはいいけれども飛行場は沖縄になくてもいいというふうな形で海兵隊の機能というのは維持できるものかどうか、そこについてもし御所見があればお伺いしたいと思います。

森本参考人 いわゆる沖縄の3MEFという部隊は、冒頭申し上げたとおり、部隊として戦力を発揮するのは、訓練を行うこと以外に、実任務は第七艦隊機動部隊の一角を占めるという形で部隊運用されるわけです。その際の移動は、原則としては、佐世保にある揚陸艦を沖縄に動かして、それに海兵連隊の兵員とそれからヘリの部隊を搭載し、任務について、戻ってきたらまたもとの部隊に戻るという移動の仕方をします。

 他方、ヘリを運用するときに、実任務は別として、訓練を行う際、ヘリコプターに対する給油機というのが必要で、この給油に必要ないわゆるヘリコプター用の給油機そのものを日本の国内に移転する場合は、明らかに余り遠方に動かすこともできず、したがって、今のところは九州及び岩国に部隊として移転させる。それは、常に、ヘリコプターが訓練をするときに、ヘリの部隊に近づいて給油をして、また基地に戻るという運用をするわけです。

 すなわち、海兵隊全体の運用の仕方というのは、訓練を沖縄周辺で行う以外に、実際に任務になるときは、フォースプロバイダーとして戦力を第七艦隊機動部隊、つまりタスクフォースに出して、その部隊は、今申し上げたように揚陸艦の中にいわゆる地上の兵員とヘリの部隊を出して、それに一部の後方支援部隊を一緒に出して、部隊として任務を遂行し、戻ってきたらまたもとの部隊に戻る、そのような運用の仕方になっているわけです。

 実際のところ、冷戦前と冷戦後と少し様子が違うのは、このフォースプロバイダーのやり方が、以前は部隊そのものが戦闘隊員として活動していたのですが、今はフォースプロバイダーとフォースユーザーというものが割合はっきりと区分されている。ここが部隊運用の違いであるというふうに理解しております。

小野(次)委員 今いろいろ伺いましたけれども、要するに、沖縄に引き続き駐留される米海兵隊の機動力を維持するためには、場所はともかく、近距離のところにそういった移動手段を提供できる施設の問題が切り離せない状態としてあるんだということを認識いたしました。

 次に、地元の沖縄県民の意識というか御意向について伺いたいと思います。

 伊波参考人にお伺いしますけれども、この在沖海兵隊、定数ベースで八千の減少、グアム移転ということですから、半分強が残る。逆に言えば、約半数がグアムに出ていくということですけれども、その約半数がグアムに転出していくということについて、地元ではどのように、好感を持って受けとられているんでしょうか、それとも、全部出ていってくれるんじゃなければ、半分残るのはかえって受け入れられないという形なのか。その辺、ざっくばらんに、忌憚のない地元の反応というのをお伺いしたいと思います。

伊波参考人 グアムへの八千名の部隊の移転、そして家族九千名の移転について、私は、その資料にも載せてございますけれども、沖縄の今の実員数はおよそ一万二千人から三千人だと理解しております。そして、家族は八千名前後である。そうしますと、八千名の家族から九千名移るとなりますと、みんな家族はいなくなるというふうに普通に考えるのが我々の理解なんですけれども、一万二千人、一万三千人から八千人が移れば四、五千人が残るというのが普通の理解だと思いますので、それだけの負担の軽減が行われ得るというふうに私は理解をしておりました。

 そして、先ほども申し上げましたように、現実に、米太平洋軍が公表しておりますグアム統合軍事計画書等には細かい数字が入っております。これまで別の参考人が述べているような司令部だけの移転では決してなくて、実動部隊がまず行くのであるということだろう、このように思います。ですから、合意においても、一体的に移る、このように書いております。

 グアムだけの議論になりますけれども、実は、北マリアナ連邦共和国のテニアン島の半分が、要するに、米国政府がこれを借りまして、ここに大きな演習場が建設されるという計画が進行しております。そういう意味で、アプラ港には、当然のように佐世保の部隊がそこに着岸をして、そこで戦闘部隊を乗せていくということが構想されております。これは、先ほど申し上げましたように、昨年九月十五日の米連邦議会に対する海軍長官からの報告書の中にも、具体的に部隊名が表現されております。

 ですから、この全体的な、本当の意味での部隊の移動に対する認識自体がないままに米軍再編合意が、協定などが結ばれていくことに対して、大変な懸念を私は持っております。先ほど申し上げましたように、本来ならば、二〇〇七年三月末までには、沖縄からどの部隊が移るのかということが明確に示されて、そして嘉手納以南マスタープランというのが日米両政府の中で示されるべきであるというのが合意の中に入っておりますので、私としましては、八千名並びに家族九千名というものが実数として沖縄から移れば大きな負担軽減になる、このように感じております。

小野(次)委員 ありがとうございました。

 また伊波参考人にお伺いしますけれども、これと関連しますが、今回の協定の中で、これとワンパッケージになっている問題として、嘉手納以南の米軍施設用地は大変利用価値が高い、私も人から聞いた話ですけれども、観光資源にもなるんじゃないかというところが含まれているようでございます。それらが日本側に返還されるということについて、地元では待望しているというような認識でよろしいんでしょうか。その辺の感触をお伺いしたいと思います。

伊波参考人 普天間飛行場については、九六年に全面返還が合意されて以来、市としても、この跡利用に細かく取り組んでまいりました。

 具体的に、基本方針も含めて、今、具体的な基本計画の策定に向けて、個別行動計画をつくって、県とともに行っているところでございます。しかし、やはり返還のめどが立たないとそれが実現できませんので、そういう意味では、より早く返還のめどを立ててもらうことが本当の意味での跡利用に結びつく、このように理解をしております。

 そういう意味で、普天間飛行場の返還というのは沖縄県全体の振興に結びつく、この意味で私たちは計画をつくっておりまして、それは確実にそうなるだろう、このように期待をしております。

小野(次)委員 今、二つお尋ねしました。いずれにしても、実際の数としての、表明されているだけの海兵隊の存在、プレゼンスというものがグアムへ出ていくということで、軽減に早くつなげたいということであり、また、タイムスケジュールも含めて、具体的にそういうプロセスが確実なものになっていくに従って地元としては具体的な利用のプランが立てられるということで、着実に進めていってもらいたいというのが恐らく地元の反応なんだろうと思います。

 もう一つ、地元の印象について、意向についてお伺いしたいと思います。

 これはやはり伊波参考人にお伺いした方がいいのかなと思いますが、この委員会でも、普天間飛行場の代替施設を県内に移設するという両国政府案については、沖縄中心に異論が多いんだということが議論されているわけでございます。

 確かに、私も、関係者間のコンセンサスというのは最後までつくり上げるべきだと思うし、そのことは大変重要だと思うんですけれども、一方で、本協定案というのはワンパッケージになっている、そういう組み立てになっているということも事実でありまして、その状況というのは、もともとをたどれば、SACOの合意からすれば十三年たっているにもかかわらず、こういう状態になっている。このコンセンサスが、政府レベルの両当事者もありますし、また、地元の方々、関係者間のコンセンサスのめどというのが立っていないわけでございますね。

 普天間からの移転は、緊急だというふうに先ほど伊波参考人もおっしゃいましたけれども、実際、市民感情として、十数年たってめどが立っていないということについて、待ったなしの悲願なのか、それとも、時間をゆっくりかけてでもすべての当事者のコンセンサスをつくるべきだというような認識なのか。地元の率直な感触というのはどちらなんでしょうか。

伊波参考人 普天間飛行場の危険性については、先ほども申し上げましたように、小学校が本当に基地のすぐそばにありまして、すぐ横を毎日のようにジェット戦闘機や空中給油機が飛行しているわけです。また、ヘリコプターは住宅地上空を毎日のように深夜まで飛行しております。

 そういう意味では、これは待ったなしの撤去が求められている、こういうふうに私たちは理解しておりまして、その部分、この間、宜野湾市としては、大変困難な県内移設によることなく、部隊をまず移すべきである、こういうことを要請してきたわけでございます。

小野(次)委員 時間もだんだんなくなってきましたので、西原参考人にお伺いしたいと思います。

 今回の協定では、普天間の代替施設の県内移設と海兵隊のグアム移転、さらには嘉手納以南の米軍施設用地が何カ所か返還される、貴重な、利用価値の高いものだそうですけれども、返還されるということもワンパッケージの仕組みになっているということが一番特徴的なことだと思うんです。

 では、我々の頭を一たん真っ白にして、リセットして、このワンパッケージをなしにして、海兵隊も出ていってくれ、飛行場の完全海外移転も求めるということで、これからオバマ政権との間で再交渉するという選択肢は、外交上、実際あり得るのか。どういう御所見をお持ちか、お伺いしたいと思います。

西原参考人 再交渉の可能性は私はないと思いますし、再交渉をもし日本側が要求するならば、日米間の信頼関係は損なわれると思いますね。これはもともとは、御指摘のように、一九九六年に話し合って、それから二〇〇六年の2プラス2でも合意されロードマップができという過程を経て、これから、いや、実はこれはおかしいんだという交渉というのは、私は日本の政府の信義にかかわる問題になってくると思います。

小野(次)委員 ありがとうございました。

 政権がブッシュ政権からオバマ政権にかわったということで、私どもも変えなきゃいけないところは見方を変えなきゃいけない面もあると思いますが、これだけの経緯を持って進めてきた外交交渉の中で提示されている協定案ということで、それだけの重みがあるということをおっしゃったんだろうと私は受けとめます。

 いずれにいたしましても、この問題は、十数年というか、ずっと沖縄の戦後に関係する問題、奥の深い問題でありますけれども、一方で、日本の安全保障を維持するために日米関係を強化しながら、抑止力を維持しながら、沖縄を初めとする日本国民の米軍駐留による負担の軽減という、難しい二つの要件を何とか果たしていかなきゃいけない、その一つの部分を扱っているのがこの協定案でございます。

 きょうは、参考人の方々には、貴重な意見をどうもありがとうございました。私を含め、また委員、同僚議員ともども、さらに議論を深めてまいりたいと思うところでございます。きょうはどうもありがとうございました。

河野委員長 次に、近藤昭一君。

近藤(昭)委員 民主党の近藤昭一でございます。

 きょうは、参考人の四人の方には、大変に御多用の中こうして外務委員会にお越しをいただいたこと、まずもってお礼を申し上げたいと思います。早速幾つか質問させていただきたいと思うんです。

 伊波市長にお伺いをしたいというふうに思います。

 日本の安全保障という大きな枠組みがあるわけでありますが、そういう中で、大変に地元の市民の皆さんの不安が大きい、また、実際に非常に大きな事故、そして悲惨な事故も起きている、そういう中で、地元の住民の皆さんの声を代弁していろいろと交渉に当たっておられる。私はこの間、この委員会の審議を聞いていて思ったんですが、そうした地元の皆さんの声をきちっと政府が代弁すべきだ。ところが、それをきちっと代弁していない、そういうことをすごく感じたんですね。

 そういう中で、市長がみずから、三回ですか、訪米をされておられて、さまざま要請をされたり活動していらっしゃる。こうした活動の中で感じられたこと、わかったこと、さらにお話をいただければと思います。

伊波参考人 訪米を三回しておりますが、やはり普天間飛行場の写真を見せますと、米軍関係者あるいは米政府関係者はみんな驚きます。どうしてかといいますと、米国においては、海兵隊の航空基地であのようにすぐフェンス近くまで住宅が密集しているところはないわけであります。というのは、アメリカにおいては基準があって、AICUZというような基準があったりさまざまな基準がありますが、そういう中で米軍基地が運用されているわけでございまして、一応知っているつもりでも、米国政府関係者には具体的に基地の実態を知らない方が多いということでございます。

 ですから、去年もハワイの方に行きましたけれども、ホノルル市の副市長さんとお話をしたときに、どうして住宅がこんなに米軍飛行場の近くまであるんですか、だれが許可したんですかというような質問がありましたり、それから、二〇〇五年にはファインスタイン上院議員がこの写真を見たら本当に驚いて、どうなっているんだということをスタッフに振り向いて本当にいろいろと聞いておりました。

 そういう意味で、国内ではこの写真を見ても当たり前に、これが沖縄問題なんだ、普天間問題なんだというふうに受けとめられて議論がされてきておりますが、アメリカではこういうことはあり得ない話として一目に理解されております。

 ですから、我が国に米軍基地を維持しながらいることの意味をぜひ政府においてもしっかりと受けとめてもらいたい、このように感じております。

近藤(昭)委員 海外に行かれて、アメリカの政府、自治体の関係者に普天間の基地の写真を見せると一様に驚く、まさしく、どうしてこんなところに基地があるのかということだと思うんです。

 それで、この委員会の中でも私も指摘をさせていただきました。先ほど市長もお触れになったクリアゾーンの問題であります。

 これもびっくりするわけですが、市長がアメリカに行く中でこういう基準があるというのがやっとわかった、一体政府は何をやっていたのかなという思いで私も質問をしましたところ、それは、日本の政府の立場は、あくまで土地を貸しているだけであって、それについてどういう運用をされているか、どういう使用をされているかというのは日本政府の関知することではないと。市民がそこに、日本の国民がそこに住んでいるにもかかわらず、そのいいかげんさというのか、それは一体何なのかと思ったわけであります。

 そして、先般私どもも沖縄に視察をさせていただきました。そのとき、外務委員会として、河野委員長を初め我々もお邪魔をさせていただいて、そういう中で伊波市長の御指摘もありましたクリアゾーンの問題。これは、先ほどこの委員会が始まる前に報告が外務省の方からありました。クリアゾーンの問題であります。このクリアゾーンには、住居があってはならない、住民が住んでいてはならない、これは正式にアメリカの国防総省から日本の国内の基地には適用されないんだ、こういう返答があったようであります。

 そのことについて、どんなふうに思われますでしょうか。

伊波参考人 私も委員長の方からそのお話を聞きまして、大変驚きました。というのは、ここに普天間飛行場のマスタープランがございます。このマスタープランの中にはクリアゾーンのこともきちんと書いてあります。ですから、基地のフェンスの中では、米軍はそれをきちんと制度にのっとってやっております。そして、基地の中における障害物についてすべて、これは本来撤去するべきだけれどもそのまま置いておくことを認可するというような手順がとられています。

 先ほど私が申し上げました、クリアゾーンが民間地にはみ出して設定されている、お手元の資料にありますけれども、それは、このマスタープランでは、このマスタープランの認可を得るために必要だと思うんです。そして、それが確立されているとちゃんと書かれています。もし国防総省が普天間においてそのことをする必要がなければ、あえてここに書く必要はなかったはずですし、現に基地の中については厳密に検証されているんですね。そのことをやはり私は憤りを持って、きょうの、国防総省としてそれは必要がないということについてあったということについては驚いております。

 あと一つ申し上げますと、国防総省の日本環境管理基準というのがありますね。これは要するに、域外、米国の国外における米軍の活動に関する環境指針として守らなきゃならない基準です。これの中で、いわゆる騒音ガイダンスという、AICUZなどもそうなんですけれども、これは当然これに適用されるというふうに理解されております。それならば、日本政府が日米で二〇〇〇年の九月十一日に発表した環境管理原則に関する宣言、いわゆるアメリカの基準と日本の基準と、より厳しい基準をこの米軍基地に対して適用するんだという基準を宣言しているにもかかわらず、一番重要なクリアゾーンを適用しないという話は大変な矛盾だ、こう思います。

 これについても私は大変残念でならないんですが、この日本環境管理基準、これは二〇〇三年の時点では、日本政府はこの仮訳もしていません。今は仮訳があるかどうかわかりませんけれども、少なくとも、本来、米軍基地に関して一番重要な日本環境管理基準であるにもかかわらず、要するに、国としてはほぼ関知していない形でいる、そういうことが先ほどの国防総省としてクリアゾーンは適用しないということを平気で回答できるような状況をつくっているのではないか。私は、そうであっては決してならないだろう、このように感じております。

近藤(昭)委員 市長、ありがとうございます。

 改めて今のお話を聞いていて、国防総省がつくった日本環境管理基準がある、それが、また委員会かどこかで確認をしたいと思いますが、日本語訳はないんではないか。御自身たちでそれも検討し、その中ではきちっと、国防総省としては、日本の国内の基地にも環境基準はより厳しいものが採用されているはずだ、そういうふうに思われてきた。

 先般市役所にお邪魔をしたときに伊波市長もおっしゃった。しかしながら、そういったクリアゾーンの問題についても、今回までははっきり国防総省からも返事がなかったということではないかなと思うんです。この間、直接市長が訪米をし、いろいろな情報も得てきた。そうすると、その間は、外務省等々というか、沖縄大使も外務省としているわけでありますが、市長にとって、日本の外務省はどういう対応をしてきたと、どういうふうにお感じになっておられますでしょうか。

伊波参考人 率直に申し上げまして、要するに、米軍基地については提供施設として管理権も含めて米軍に渡しているので、米軍がどのように使っても基本的には文句を言わないというのが沖縄の基地の実態であります。

 ですから、沖縄防衛局、当時は那覇防衛施設局長などがインタビューに答えて、米軍がどこを飛ぼうと文句は言えないというのがよく新聞にも出るわけですけれども、そういうのが今の沖縄の基地の実態でありますし、これは多分、沖縄だけではなくて、全国の基地に対して、そういうことが日本政府が許容している範囲に入っているということだと思うんですね。クリアゾーンの話もそれから敷衍して行われていることだと思いますけれども。本当の意味で安全基準やそういう環境基準というものに全く縛られていないというのが現の日本における米軍基地ではないか、そのことをやはり私は強く感じます。

近藤(昭)委員 伊波市長、もう少し質問させていただきたいんですが、そうすると、私もいろいろと仄聞しますところによると、地元と米軍との間で、騒音の問題、騒音に関していろいろな協定が結ばれているんではないかと思います。しかしながら、それが守られていないというような現状があるのかなと思いますが、その点についてはいかがでありましょうか。

伊波参考人 普天間に関しては、一九九六年三月に騒音防止の措置というものが日米合同委員会で合意されております。主要なものとしては、夜十時以降の飛行をしないというふうな措置であります。あわせて、住宅地あるいは学校、病院等の上をできるだけ飛行しないというふうになっておりますが、ほとんどそれは、十時までについては一応守られてきた経過がありますけれども、二〇〇四年のヘリ事故以降、ヘリが運用を再開した後は、夜の十一時まで飛ぶように現在なっております。これについて見直しがされたわけではなくて、二〇〇四年以降は十一時まで飛ぶようになった。さらに、二〇〇七年の八月に場周経路というものが日米間で合意されましたが、ほとんどその場周経路を飛んでいないということを私たちは一年間調査をしながら感じて、そのことを申し上げて、政府に対応を求めているところでございます。

近藤(昭)委員 今回のグアム協定で、よく政府は、沖縄の負担軽減だ、こういうことを盛んに言うわけであります。しかしながら、既に、今市長もおっしゃった、さまざまな協定が実際には守られていないということであります。そこを大変に危惧するんですけれども、市長、事件が起き、そうした協定が結ばれ、守られていないだけではなくて、最近は、どうでしょうか、騒音等々、あるいは、いわゆる米軍の戦闘機あるいは輸送機、こうした飛行機の訓練が増加をしているというか、負担がかえってふえているというふうに感じておられるか、いかがでありましょうか。

伊波参考人 率直なところ、嘉手納に関して、嘉手納のジェット戦闘機は宜野湾の上空も飛ぶわけでありますが、かなり頻繁な飛行回数になってきているというふうに感じております。これは地元紙でもよく報じられますけれども、嘉手納への外来機の飛来がとても多くなっておりますし、いわゆる米軍再編の中で、国内の他基地への訓練の移転というのが合意されて、それも実施されながら、なおかつ飛行回数そのものは極めて大きくなっているというのを近くに住んでいて実感いたします。

 それから、普天間についても、夜遅くまでのヘリ飛行が、住宅地上空での飛行が頻繁に、毎日のように行われる。さらに、従来なかったF18などのジェット戦闘機の飛行のあり方がかなり頻繁になり、そしてまた住民地区を旋回するようにもなったという意味では、決して米軍再編の流れの中で沖縄の基地負担が軽くなっているわけではなくて、ますます何かピークに向かって進んでいるような、そのような実感をしているところでございます。

近藤(昭)委員 さらに、市長が懸念をされている、先ほども質問の中にもありました、いわゆる海兵隊の移転が、実数としてどれだけの兵士、部隊が移動するのかよくわからない、余りにもあいまいなことが多い。しかしながら、御自分たちで調査した中では、米軍の方ではいろいろと計画もできていて、実はそういうことははっきりしているんだというようなことをおっしゃっておられたわけでありますが、その点についてちょっとお伺いをしたいと思います。

 あるいは、市長が大変に懸念をされている、八千人も移転するはずならば、本来ならば新しい病院がつくられるのは理解しにくい。なおかつ、その病院がつくられるところが、非常に文化的にも、歴史的な遺跡といいましょうか、そうした価値がある。何か表面的に言われていることと実際に動いていること、あいまいさと、何か現実に動いていることと言われていることの落差、あるいは、国内で言われていることと、アメリカに行ってみて、逆に言うと、もっときちっとしているんだということの落差とか、その辺についてどういうふうにお感じになっておられますでしょうか。

伊波参考人 米軍の沖縄からのグアム移転に関しては、先ほど申し上げましたように、グアム統合軍事計画書というのがございます。そして、今、お手元の資料の八の見出しの方に掲げてございますけれども、これが二〇〇八年九月十五日に海軍長官から米国下院軍事委員会議長への資料でございますが、細かい部隊名が書かれております。

 普天間に関してのみをお話ししますけれども、普天間に関して、これを見ますと、実は、その後ろの方の九の見出し、これなんですけれども、普天間の部隊は黄色と紫の部隊ですが、黄色が全部グアムに移ることになっております、この挙げられているそれぞれの司令部、部隊名を言いますと。そういう意味では、普天間の部隊がグアムに移るんだなというのを感じるわけです。

 ほかの部隊も当然同じようなことでございまして、そういう意味では、グアムの方での作業というものは、アセスを含めて着々と進んでいるというふうに理解をしております。ですから、そのことが実態として本当に行われるとすればかなりの負担軽減に結びつくのかな、このように感じております。

 ただ、きょうのいろいろな御意見を聞いても、必ずしもどうも日本側ではそのことが明確にされていない。アメリカではこのようなあいまいな議論は成り立たないと思うんですね。そもそも、なぜかといいますと、歳出に関して軍事委員会はかなり厳しい権限を持っていますので、政府が言っても、それを支出するのかどうかは議会の権限の中に入っておりますので、より細かい議論が求められます。ですから、当然のこととして、その細かい部隊の員数だとか、そういったことが議論されるというふうに思っております。

 そういう意味で、我が国における政府と議会での議論が、どうもそのあたりがあいまいになっている、なり過ぎるのではないか、本来、であることをであるように国民に示して、どうなんだというふうな議論がないといけないのではないか、このように感じております。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 議会制民主主義でありますから、やはりこうしたことはさまざま、きちっとしたデータに基づいて議論がされていかなくてはならない。しかし、そうしたデータを、地元に一番かかわるさまざまなことが、地元の負担が大変に大きな中で市長も御苦労をされている。しかしながら、どうもそうしたものは市長御自身が入手をしないといけないような状況、また、入手をした情報を見ると、どうも国内で議論されていることとの落差があるんではないか、そういうことを非常に大きく感じていらっしゃっているんではないかなと思います。

 先般、沖縄に参りましたときに、私どももケビン・メア総領事にお目にかかりまして、いろいろとお話をしましたが、どうもメア総領事がおっしゃっていることと委員会の中で質疑をさせていただいたことの違いもありまして、そのことについてもまた私は委員会の中でやはりきちっとただしていかなくてはならないと思っております。

 さて、余り時間もなくなってまいりまして、それぞれの参考人の方がせっかくお越しいただいているのに大変恐縮でございますが、あと桜井先生に一つ質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど、辺野古に移る、辺野古の環境アセスがどうも、まず辺野古に移転ありきだというような前提の中で、なおかつ、基地の意義も当初と変わっているような状況がある。そのことで、まさしく地元の頭越しでいろいろなことが行われてきたんではないか、こういうような御趣旨ではなかったかと思います。

 そういう中で環境アセスメントの準備書が出されたわけですが、先ほど伊波市長も御指摘になられました、米軍が出している日本環境管理基準等々があるわけでありますが、それがきちっと国内の方には適用されていない、そういう状況ではないかと思うんですが、そうしたことについて桜井先生はどのようにお感じになっておられますでしょうか。

桜井参考人 先ほど伊波市長の方からJEGSの話がございましたけれども、現在進んでいる環境アセスの作業で最大の問題は、辺野古の新基地でどういう事業がされようとしているのかが極めて後出しされているということですね。小出しにされている。

 二〇〇七年の八月に方法書、アセスの手続で、これは関係者に示して、みんながいろいろ意見を言える、そういう場でございますけれども、二〇〇七年の八月の方法書は、事業の内容についてはわずか七ページの記述でございました。そこで飛ぶ飛行機についてはたった一行でございます。米軍の回転翼機それから短距離で離発着できる飛行機と。

 しかし、片方で、九六年から米軍の方からはオスプレーを配備するんだということが言われていて、これは公然たる秘密でございます。しかし、御存じのように、オスプレーは非常に落ちる、悪名高き飛行機でございますので、これを配備するということでは地元の理解は得られないだろうということから、米軍は、配備するというふうに地元に言えと日本政府に言っていたにもかかわらず、日本政府は、地元の反発を恐れて、それは抑えてくれという形で来た。これが実は、アメリカのジュゴン訴訟の経緯の中で、アメリカ側の資料の中から明らかになっております。

 こういう形で、常に、軍事基地であるために、ここで何が行われるのかということが明確にされない、そういう形でアセスが進んできております。

 先ほども申しましたように、二〇〇七年の八月の方法書では、事業内容はわずか七ページ、飛ぶ飛行機についてはわずか一行。それで、これではアセスにならない、もっと事業の内容が熟してから出し直すべきだということが、県知事の諮問機関であります環境影響評価審査会の方から繰り返し出され、これではいけないという形で、二〇〇八年の一月に、百五十ページにも及ぶ追加資料が出されました。

 この追加資料に対しては、我々市民は意見を言えないわけです。意見が言えるのは最初の方法書に対してだけです。ですから、手続法としてのアセスの法の精神が踏みにじられる形で展開されている。これは、まさに軍事基地だからだと思うんですね。

 今度出ました四月の準備書の中に、新たに、例えばヘリパッド四カ所が設置される、これも後出しでございます。このような形で後出し後出しされる限りは、我々は最終的にどうなるのかはわからない、軍事基地である限りは。しかも、それをどう使うかはアメリカ次第というこの間の日本政府の説明。先ほど伊波市長の方からの御説明もありましたけれども、運用に関しては米軍次第、こういうことではアセスにはならない。

 つまり、日本政府がおっしゃっているように、運用は米軍次第ということであるのならば、そもそもアセスにはなり得ないのだ。どんな事業を行うのか、それをどう使うのか、それがわかって初めてアセスになる。事業内容が後出しされるようでは、これはアセスではない。それが、私はアセスを専門とする者として非常に危惧を覚える点でございます。

近藤(昭)委員 質問の時間が終了いたしましたが、桜井学長、もう一言だけ。

 そうすると、事業内容がはっきりしていない中でアセスが行われ、なおかつ、それが後出しでどんどん出てくる。まさしく、沖縄の負担軽減どころか、負担が大きくなっていく。さらに、今度の基地の意義というものが、当初ヘリパッドでつくられるものだったのがどんどん肥大化しているんではないか。そういう何か新たな意義づけのものがあるのではないかと学長は思っていらっしゃると思うんですが、そこのあたりはいかがでありましょうか。

河野委員長 桜井参考人、短くお願いします。

桜井参考人 私は、冷戦が終わって明らかにアメリカの戦略が変わってきている中で、この普天間の基地の位置づけは変わってきているんだろう、軍事の専門家でなくてもそう考えます。

 そういう中で、アメリカはみずから考えて、移設に際しては、当初はヘリポートでよいということだった。それがなぜここまで肥大化したか。それは、私が先ほど申し上げましたように、日本側に利権で大きくしてくる経緯があったのではないか。これは、普通の沖縄県民が考えるところでございます。

 国民の血税で、極めて使い勝手のよい、訓練のための基地。あそこにはジャングル訓練場がすぐそばにございます。そういうところで訓練できる施設が日本国民の血税で日本政府によって提供されるならば、これはアメリカにとっては言うことはない。それがこの間の経緯ではないのかと考えます。

近藤(昭)委員 ありがとうございました。

河野委員長 次に、伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉です。

 きょうは、本当に貴重なお時間をちょうだいして、参考人の先生方に改めて御礼を申し上げます。

 私の方からまず冒頭は、西原理事長の方に、我が国の防衛、抑止力の維持という観点からお伺いをしたいと思います。

 ここまでも何度も出ているとおり、負担の軽減ということと抑止力の維持ということは本当に難しい、普通に考えれば二律背反するものを同時になし遂げていくということの難しさというものを改めて感じながら、お話を伺わせていただいておりました。

 まず、米軍のグアムの移転。我が国は、負担を軽減するということを強調しながら、もちろんそれが大きな目的の一つでもございますけれども、一方で、今申し上げた、我が国の抑止力というのは維持をしなきゃいけない。これは、アメリカ側から見るとどう映っているのか。その点の御所見をまず理事長にお伺いしたいと思います。

西原参考人 ただいまの御質問でしたけれども、まず、アメリカから見るならば、沖縄における海兵隊の規模をこれまでのように維持する必要はなくなった。朝鮮半島における緊張が以前よりは低くなっている。もちろん最近のテポドン、その他はございますけれども、海兵隊が出ていかなくてはいけない事態は、以前よりは下がっている。特に、韓国の軍隊の力がずんと伸びましたから、アメリカの海兵隊が以前ほども大きな規模で出なくてはいけないという必要性は下がったと判断していると思います。

 と同時に、グアムに海兵隊を増強することによって、アメリカ自身が、より自由な形で、柔軟な形で、海兵隊を東南アジア、南アジア、あるいは中東の方に送ることができるという面では、大きな利点がある。この利点の二つを、私は、アメリカは両方追求して、今度のようなことになったんだろうと思います。

 しかし、私がもう一つここで申し上げたいのは、沖縄の海兵隊を減らすべきだということの意見は、日本側が強く最初に出した問題ですよね。それに対して、アメリカがどういうふうにこたえたらいいかということを考えながら、今回のようなことになったと思うんです。ちょうど、それが冷戦の終結以後の事態と重なりましたから、アメリカ海兵隊に沖縄から多くを移すことによって、より柔軟な対策がとれるというふうに考えたんだと思います。

伊藤(渉)委員 そうしますと、やはり、この協定を進めることによって、我が国の一つの悲願である基地負担の軽減ということは、スピードが上がっているといいますか、これを積極的に進めることで負担の軽減のスピードは上がっている、私はそう理解をしているわけですが、その点についての御所見はいかがでしょうか。

西原参考人 スピードは上がっているというよりも、これまで随分おくれてきてしまった。したがって、約束の二〇一四年までに何とかしなくてはいけないという面では、いわば両方とも焦りがあるんじゃないかと思いますね。それで、現在であるならば、あと六年以内の体制の中で、何とかやっていけるだろうというふうに両国が考えていると私は思っております。

伊藤(渉)委員 また、私は軍事の専門家ではないのであれなんですが、シンプルに言うと、日本とアメリカ以外の国から見たときに、やはり純粋に日本にいる米軍の人数が減るということは、もちろん今は、いわゆる軍事における革命ということで、抑止力というのは数じゃなくて能力なんだ、こういうふうに言われているわけですけれども、抑止力というのはあくまで使わずにぐっと威嚇しているわけですから、そのプレゼンスが外から見て下がるようなことになってしまうと、やはりこれは日本の防衛という意味ではマイナスなわけで、この点はそうならないように努めていかなければいけないと思います。

 まず、日本とアメリカ以外からどう見えるのかということと、抑止力が厳然と維持されているということをこれからも対外的に発信していくためにはどういう取り組みが必要なのか、この点についても御所見をいただければと思います。

西原参考人 アメリカ以外の国が、今度のこういう日本とアメリカの協定に関してどう見ているだろうかという点ですけれども、一番関心を持って見ているのは、北朝鮮とか韓国とか、あるいは中国、台湾という国々だろうと思います。東南アジアの国々も関心を持っていると思います。

 例えば、北朝鮮にしろ韓国にしろ、日本から海兵隊の数が減るということは、日本に対するアメリカの防衛力が減るのではないかというふうに見る傾向があるかもしれませんが、少なくとも、そのためにアメリカが抑止力を維持するためのほかの方策はとってまいりました。例えば、キャンプ座間に陸軍と日本の中央即応集団と一緒に司令部を置くというようなこととか、あるいは横田基地にアメリカの空軍と航空自衛隊との司令部を併置して、そしてより強固な、効率的な司令部連携ができるようにしていこうというような措置とか、いろいろ考えられると思います。

 それからまた、先ほどの海兵隊の件ですけれども、グアムに移転した海兵隊が、必要ならば日本に戻ることは割合短期間でできる形になっております。二、三日で移動ができるというふうに聞いております。例えば、そのために高速艇を考慮しておりますから、それによって、増派といいましょうか、日本を守るために部隊を再度動かすということは比較的容易にできるんだと考えております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。

 では、次に、森本先生にお伺いをしたいと思います。

 今回の協定も含めて、日米同盟ということで、先生、著書の中で、同盟を良好な状態に維持するためには不断の努力と覚悟が必要だ、そういうことをおっしゃっていただいております。その中で、印象として感じるのは、なかなかその努力がまだまだ日本としては至らないので、アメリカが日本を見放してしまうんじゃないかというような悲観的な将来予想というものを感じるわけでございますけれども、この点、先生は、この日米同盟の維持の努力という点、どのように見られているのかということと、また、これを不断の努力で維持していくためにどのようなことが重要になってくるのかということについての御所見をお伺いしたいと思います。

森本参考人 同盟というのは、同盟国双方が同盟を維持するために払うべきコスト、払うべきリスクというのが双方から見て平等である、対等であるという状態でなければ、同盟の信頼性を長きにわたって維持することはできないというのが、同盟の関係を歴史的に見た場合の評価であると考えます。この場合、均等で平等でというのは同じことをやるということではありませんで、それぞれが、自分たちの国の持っておる役割を、その政治的な、あるいは軍事的な能力の範囲の中で、どのようにお互いに機能を相互補完しながら同盟を強化するかということを考え、それを実行することが相手にとっても意味があるという状態が、同盟を強化できる非常に重要な手だてではないかと考えます。

 そういう点を考えると、実は日米同盟というのは、イコールパートナーシップであると言いつつ、実は日本側が、いろいろな理由で、払うべきコスト、払うべきリスクを十分に払っていないという状態がずっと続いておって、これをこのまま放置することは、同盟を健全な状態で維持するためには危険性があると考えるものです。

 いろいろな問題があってと今申し上げたわけですが、この問題の中には、もちろん我が国の法的な与件というものがありますし、それが、例えば集団的自衛権が行使できないとか、領域の外で武力の行使に至る行為ができないとかということによって、必要な場合にアメリカに必要な協力支援ができないということももちろんあります。それだけではなくて、やはり国内の世論あるいはその双方の同盟関係が置かれている客観情勢から見て、日本がなかなかやるべきことを十分に果たすことができないという場合が多く、アメリカから見て、常に同盟国日本の役割分担が不十分であるという不満を彼らに持たれてきた、そういう印象を持たれてきたということはあるのではないかと思います。

 だからといって、今申し上げたように、国内の政治的、法的リスクを冒すということは、これは政治の現実を考えるとできないわけですから、範囲の中で何をやるべきかということについては、現在、米軍再編協議の合意に基づく、いわゆるRMC協議という日米協議を通じて、お互いにどのような役割を相互に負担するかということを話し合っているところです。この話し合いの結果として、日本がどういう任務を、どういう役割、どういう能力をもって行うべきかということは、今後日本がアメリカとの協議を通じて行うべき、果たすべき役割ということで、すべてがまだはっきりと解決できるに至っていないというふうに私は考えております。

伊藤(渉)委員 また、やはりその著書の中で、同盟を維持していくためには、多国間の安全保障の枠組み、これをつくっていかなきゃいけないということもおっしゃっていただいているわけですが、この点についても、短い時間で恐縮ですけれども、より具体的に、多国間というのはどういうエリアまた国をイメージされているのか、また、その中でこの日米同盟というのがどういうふうに作用していくのか、その点の御所見もお伺いできればと思います。

森本参考人 同盟というのはあくまで、同盟国がお互いに持っている国家の目的、国家価値を共有できるということによって同盟関係が維持されるわけです。これを逆の目から見ると、基本的なそういった国家目的、国家価値というものを共有できる国であれば、必ずしも未来永劫にわたって二国間同盟である必要はないということだと思います。

 しからば、アジア太平洋で今、日本とアメリカ以外の国で、日本とアメリカが共有しているような国家価値、国家目的を共有できる国があるのかというと、私は見当たりません。見当たりませんが、少なくとも、冷戦後に、国が持っている基本的な国益や価値観の多くを共有できる国としてアジア太平洋の中にそれを求める国があるとすれば、多分、日米に次いで豪州という国があるんだろうと思います。

 ところで、そういった日米同盟という二国間同盟を多国間協力の場に広げるための手だてというのは、すぐに、いわゆる国家の命運をかけた危機の場合、お互いの国家の安全を維持するために自国がリスクを負って他の国のために防衛活動をやるというところまでは至らないような分野、例えば、それがアジア太平洋であれば、平和維持活動だとか災害救助だとか、あるいはテロ活動だとか海洋の安定だとか、あるいはパンデミックに対する各種の協力だとかディザスターリリーフだとかといった直接武力を行使しない分野においてこの日米同盟を多国間同盟に広げることによって、ゆっくりと価値観を共有できる国との協力関係に進めていくという手だてがあるのではないか、かように考えているわけでございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。

 こうした大きな国の防衛という枠組みの中で、確かにその負担が沖縄にしわ寄せがされているという実態は、私も現地に何度か足を運ばせていただいて見させていただきました。先ほど来、伊波市長の話を聞いていても、本当に痛感をいたします。自分は愛知県の名古屋というところに住んでいますが、その名古屋に本当に基地があったらどう自分は動くだろうかと思って、いつもその点を考えているわけです。

 難しい防衛の抑止力の維持という中で、少しでも負担を軽減していくという意味で、私は、今回の協定は非常に重要だ、こう認識をしております。八千人の削減という話も、これまでもるるありました。実数なのか定数なのかと。これは私、率直に申し上げますと、例えば、今実員数が一万三千人、これが定数が一万人になることで三千人減る、これだけでも一歩前進なんだ、沖縄の負担は減るんだ、だからこそこれはやるべきだ、こう理解をしているわけですけれども、改めてその辺の市長のお考え、理解をお伺いできればと思います。

伊波参考人 三千人減っても、減った分、負担は軽減になるんじゃないかという御指摘でございますが、御承知のように、那覇軍港、キャンプ瑞慶覧あるいは普天間飛行場、キャンプ・キンザーと、大きな海兵隊基地が返還されることであります。そうしますと、残った部隊はどこへ集約されるのか。当然、北部に集約されるわけでありますけれども、集約されればそれはここにおいて強度が強くなるということは目に見えております。当然一万人も北部に、人口十万しかいませんので、北部に一万人ももしそこに配置がされて、本当に米軍がそこで活動するということになるならば、極めて大きな基地被害なり関係のことが起こるだろう、このように思っております。

 今沖縄全体でこれだけの、一万二千人から三千人を受け入れているわけですけれども、辺野古基地を中心としたところに一万人が入っていくということは、私にとっては到底考えられないことであります。それが負担の軽減に結びつくという認識はなく、ますますそれはこの地域においては大変な負担になるだろうということはもう目に見えていることではないか、このように思います。

伊藤(渉)委員 確かに、その新しく移転していく場所、普天間付近で負担が減る分それが名護の辺野古の方に行ってしまう、これはそうなんだろうと思うんですが、全体として少しでもそれが小さくなる、こういうふうに私は理解をしているからこそ、本当に負担の軽減にならないんだったらやるべきじゃないと思うんですね。少しでも、確かに地域のその問題はまた別途ありますけれども、沖縄全体として、また日本として基地負担は少しでも減る、こういう理解はどうなんでしょうか、なかなか共有できないんでしょうか。もう一回お願いします。

伊波参考人 米軍再編の流れというのはトランスフォーメーションの考え方のもとで行われておりますが、トランスフォーメーション局でそういう案を練った方が、日本国内の、日経新聞だったと思います、セミナーに来て、二〇〇二年か二〇〇三年ごろに発言したのを覚えているんですけれども、SACO合意のときには、アジアにおける十万人の体制であるということから、普天間を返しても同じ部隊を沖縄の中に置かなきゃいけないという制約の中で、あるいは日本国内に置かなきゃいけないという制約の中で、新たな代替施設議論が出たわけですね。すべてのSACOの返還合意は、同時に沖縄への移転でした。

 ところが、トランスフォーメーションは、そのときにこの方が述べたことは、アジアにおける将来的な配置、二〇二五年ごろは二万人ぐらいなんだということを想定してお話をしておりました。

 今回も、アジアから三万人を引くということを前提にこのトランスフォーメーションが動いているわけですが、それならばやはり沖縄の海兵隊を全部撤退させていくことの方が、日米の安全保障の強化と、より信頼ができる、つまり国民を犠牲にして日米安保を維持するよりも、国民にも理解を得られながら日米安保を維持していく、そういう流れになるべきであると私は考えております。

 ですから、無理して本当に小さいところに新たな基地をつくってより大きな兵隊を詰め込むような仕組みではなくて、本来日本が担うべき役割、アメリカが担うべき役割を互いに理解しつつ、その上で国民にも理解されるような形で対応していく、それが大変重要ではないかなと思います。

 ですから、決して沖縄から海兵隊を撤退させることが難しいことではない状況になっているのではないかと私は認識しておりますので、現在の、皆さんのお手元にあるグアムの統合計画書や今の報告書を見ましても、基本的には沖縄の部隊や佐世保の部隊も全部グアムへ行くようになっておりますので、そういう意味では、なぜ、それがそのとおり実施をして、そして沖縄から海兵隊を撤退させることにちゅうちょするのかということを、ぜひ沖縄の立場からは政府関係者には強く訴えたい、このように思っております。

伊藤(渉)委員 そうですね、西原理事長に、今の話を聞きながら、ちょっとシンプルに、全部グアムに移転するということは今の仕組み上できるんでしょうか。

西原参考人 今の仕組みとおっしゃいますと、二月十七日に調印された協定のことかと思いますが、協定では既に、オバマ政権のもとでこの方針でいくということをアメリカが表明し、日本政府がそれに賛意を表したから署名したわけですから、これを今変えるのは難しい、不可能だと私は思います。

 さらに、沖縄から海兵隊を全部削減したということになりますと、もう一つ大きな問題は、やはり抑止力の維持がそれだけ少し低下するのではないか。

 それから、先ほどから出ておりましたように、米軍が日本で日本の防衛のために、あるいは極東地域の安全のために動くためには、武力の一体化というのも非常に重要な概念であって、全部海兵隊がグアムに移転するというのではなくて、一部残すことによって、前線基地である沖縄から最初の行動ができるということが重要であり、しかも、沖縄にはほかに米空軍もおりますし、それから本土には海軍もおりますし、そういうところと一体になった作戦が必要であるということを考えますと、一部が沖縄にとどまっているということが私は重要だと思います。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 もう一回、伊波市長に聞きます。ちょっと論点が変わりますけれども。

 一方で、愛知県は結構沖縄の方が仕事でいらっしゃっているところで、友人もいるんですけれども、地域の生活と米軍の基地との関係というのはやはり非常に密接なところがあって、負担が減る、基地がなくなるということのいい面と、一方で、景気、経済とか雇用とかという面でデメリットというか問題もまた発生してくるんじゃないかということを言う子もいるんですが、その点については市長はどのようにお考えですか。

伊波参考人 やはり地域経済の中で米軍基地が占めている割合も一定ありますので、それが返還されるということがある、今それから利益を得ている皆さんにとってはマイナスになるであろうことは確かだと思います。従業員もいますので。ただ、やはりそれが跡利用を通して、町になり、そして利用されることによって何倍もの経済効果がある、このように思っております。

 そして、あと一つだけお話しさせていただきたいのは、今回の問題で、31MEUという部隊、二千名の部隊ですけれども、これが本当に沖縄に居続けるのかどうかというのが一番重要なポイントだと思います。

 31MEUというのが沖縄全体の戦闘部隊なんですね。ところが、お手元の資料にもありますけれども、グアム群島政府は、その31MEUがグアムに来ることを前提にして、いろいろな資料をつくっております。ですから、本来ならば、GAOの報告書でも、要するに、佐世保からグアムに艦船が行って、そこで部隊を乗せて、そして戦闘地へ、出先へ行く、この経費がかかるということがきちんと書かれておりまして、そういう意味では、これからは沖縄に行くわけではないんですね。

 だから、沖縄の部隊があったにしても、今沖縄にある部隊は、インド洋のディエゴガルシアの補給部隊の戦車を例えば沖縄に持ってきて、ペンキを塗りかえたりして、そしてまた送り返すという作業もやっております。全部が戦闘部隊ではないんですね。二、三千名だと言われておりますので。そういう意味で、やはり移せるときに移していくことが大変重要ではないか、このように私は考えているわけでございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。

 桜井先生、時間の関係でちょっとお伺いできなかったんですけれども、貴重な御意見をちょうだいいたしました。また、委員会での審議にしっかり役立てていきたいと思います。

 ありがとうございました。

河野委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、四人の先生方、参考人として御出席いただいて、大変感謝を申し上げたいと思います。

 まず最初に、伊波市長の方から伺っていきたいんです。

 沖縄の広大な米軍基地は、去った戦争で沖縄に上陸した米軍が住民を捕虜収容所に収容し、そして、その住民がいない間に、軍用地、民用地を問わず基地建設に着手して形成されたものであります。住民が収容所から帰ってきて、鉄条網が張られ、自分たちの土地が基地に変えられていた。これが、伊波市長がいつも語る普天間基地の形成の歴史だと私たちも伺ってまいりました。

 その後、一九五一年のサンフランシスコ講和条約の後の銃剣とブルドーザーによる新たな基地の拡張、住民の抵抗を抑えつけての拡張でありました。

 ところが、今回のグアム移転協定は、普天間飛行場を初め嘉手納以南の土地の返還は辺野古の新基地建設と海兵隊のグアム移転費用負担とのパッケージだということになっています。本来、奪った土地ですから、強奪した土地でありますから無条件で返還すべきであり、返還の際にアメリカが新たな条件をつける、これは私は県民を愚弄するものではないかと考えております。

 市長はどのようにお考えでしょうか。

伊波参考人 普天間飛行場のおよそ九二%の土地は個人有地でございます。戦争前はそこに村役場があり、小学校があり、幾つもの集落があったわけであります。今委員御指摘のように、沖縄の基地というのは、このような形で占領を通して米軍基地が形成された経緯がございます。そういう意味で、本市の立場としては、当然、これらの土地はそれぞれの地権者に返されて、そして、市としてのいわゆる町づくりがしっかりできるようにするべきである、こういう立場でございます。

 だから、一定の条件で返されるような筋合いのものではなくて、本来ならば、これらの沖縄の土地は、私たちが願っておりました復帰の時点で沖縄の人たちのそれぞれに返るべきものであるという思いを当時から今までずっと持ち続けているわけでございます。

赤嶺委員 ところが、日米交渉が進むごとにいろいろな条件が拡大されていくんですね。

 SACO合意のときは、普天間飛行場の返還のかわりに、返還を求めるのであれば、新しい基地をつくれと言われました。今は、普天間飛行場の返還を求めるのであれば、新しい基地をつくるのはもちろんのこと、グアムの基地建設まで日本が負担せよと。むちゃくちゃなんですね。

 私、ただやはりそういう感情というのは沖縄の中に強いんですが、なぜ、普天間飛行場の当該地の市長である伊波市長が、普天間飛行場の返還でその代替条件になっている辺野古新基地建設にも反対していらっしゃるのか。基地のたらい回しに反対していることについて、この点も伊波市長のお考えを聞かせていただけたらと思います。

伊波参考人 宜野湾市としては、普天間飛行場を抱えて行政をしておりまして、そして、私もそこに住んでおりますが、先ほどから申し上げておりますように、本当に米軍基地はほとんどの規制がなくて、深夜までの飛行、そして生活が妨害されております。

 今回の辺野古への移設にしても、シュワブにつくるわけですから、辺野古の飛行場と住民地区との距離と、本市の飛行場と住民地区との距離というのはほぼ相似的でございまして、当然、同じような頻度あるいはもっと厳しい頻度でこれが運用されれば、近くの住民地域に対して宜野湾市と同じような被害が及ぶことは明らかだろう、このように私は考えております。

 ですから、市としては、この辺野古への建設について賛成することなく、国外への部隊移転を通して普天間問題を解決していきたい、このような立場で取り組んでまいりました。

赤嶺委員 それでは、もうちょっと、伊波市長と桜井先生お二人に沖縄の視点からお伺いしたいんです。

 この協定では、海兵隊約八千人、その家族約九千人が沖縄からグアムへ移転すると明記されております。一方で、四月三日の外務委員会で、外務省の梅本北米局長は「安保条約及び地位協定によりまして、在日米軍は、その目的達成のためにいろいろな部隊が日本に駐留しているわけでございます。その駐留の数について何らかの形で上限を設けるというような仕組みにはなっておりません。」このように答弁しておられるわけです。兵力構成に上限は設けていないんだと。

 無条件そして無償の米軍基地提供を義務づけている安保条約の枠組みが変わらない限り、米軍基地がどうなっていくかということは、結局、米軍次第、こういうことになるのではないか。それが沖縄の現実だと思いますけれども、伊波市長の方から先によろしくお願いします。

伊波参考人 私はそういう話は初耳でございまして、そもそも、当然、駐留であれば駐留の数なりが日米で合意されているものだというふうに思っておりました。

 海兵隊については、およそ一万六千というのが普通に言われてきた数字でございますので、当然一万六千人というのがあっての沖縄駐留だと思っておりまして、今回、そういう一万八千が急に出たり、あるいは定数の議論があったり、あるいは今言う限りない駐留だという話は、本当に驚いております。そうであってはならないのではないか。

 本来、これだけ住民、地域に接している基地の運用のあり方が、一定規制する必要があるし、そこに、米軍の勝手次第にどう使われてもいいということではやはり困るのではないかというふうに率直に感じております。

桜井参考人 在沖縄米軍の行動につきましては、日米地位協定で日本政府は常に運用に関しては米軍次第であるというふうに言われるわけですけれども、今のような形で、配置する兵員の数については上限がない、それは米軍次第だというのは、先ほど伊波市長が報告された沖縄国際大学へのヘリの墜落の場合、私は大学人でございますので、あの事態は一体何なんだろうかということを常に考えるわけです。沖縄国際大学には二〇〇四年八月十三日にヘリが墜落しましたが、あの後七日間、学長はみずからの大学に入ることができませんでした。みずからの大学から排除された。大学関係者はすべて排除されて、いわば軍規の保持、あるいは証拠の隠滅のために海兵隊が占拠したわけです。大学のキャンパスをそのような形で占拠されるという事態、これが今の運用の実態ではないのか。それに対しては、日本政府は何も言ってくださらない。

 これは、先ほど私が申し上げたように、沖縄の実態は軍事植民地であるというふうに考える次第です。そのようなことについて、私は、日本政府は沖縄県民に対して明確に説明責任を果たすべきであって、国と国の信義もございますけれども、国と沖縄県民の信義をぜひ重んじていただきたいと思います。

赤嶺委員 先ほどから、八千人のグアム移転、九千人の家族のグアム移転が実現すれば沖縄の負担の軽減になるというお話が繰り返されておりますが、日本政府は、特段、安保条約に兵力構成の上限を求めていない。日本の安全保障、安保条約の目的達成のためであれば、軍の移動は可能であるし、駐留は可能である、こういう梅本北米局長のせんだっての答弁について、これはむしろ森本先生や西原先生の方もお詳しいと思いますので、それらの考え方について先生方の御意見がいただけたらと思います。森本先生からよろしくお願いします。

森本参考人 米国がグローバルに展開している軍隊のありようは、基本的にはアメリカの国防戦略、アジア太平洋においては米国のアジア太平洋戦略の一環の中で考慮され、策定されるものだと考えます。

 さらに、それだけではなく、在日米軍については、在日米軍がそもそも収容できる能力、それは施設の能力だけではなく、政治的に、あるいは地域社会との関係においてどのような部隊を収容できるのかという、つまり戦略的、軍事的必要性と、それから受け入れ可能性、その二つを勘案して日本側と協議をして部隊が決まっているんだろうと思います。

 したがって、日本の安全だけではなく、安保条約は、極東の平和と安全のために合衆国軍隊が日本の施設・区域を使用して活動できることになっているわけでありますので、日本の安全保障、日本の防衛だけではなく、この地域全体の安全のために、米国は必要と考える部隊をその状況の変化に応じて駐留させるというのは、軍隊のありようとしては当然のことではないか、かように私は考えています。

西原参考人 今森本参考人が御指摘された点、私も賛成です。

 もう一つもしつけ加えることがあるとするならば、安保条約が一九六〇年に改定され、新しい改定安保条約ができましたときに、両国の間で主要な部隊あるいは意味の変わる主要な兵器その他を持ち込む場合には協議が必要だという了解があったと思いますが、今赤嶺議員がおっしゃったような部隊の数に関しては協議の対象になっていないというふうに了解しております。

赤嶺委員 沖縄県民は兵力構成における兵員の削減というようなことを求めてきたわけですが、グアム協定の根幹にある日米同盟、日米安保条約というのは結局米軍次第の運用になっていくというものを私も非常に疑問に思っております。

 県民の負担の軽減になるからということでグアムの移転費用を日本政府も負担するわけですが、当然、グアム協定の中には、アメリカ政府もそれなりの負担をするということになっています。

 それで、これは森本先生にお伺いしたいんですけれども、今回のグアム移転協定はアメリカにおいては行政協定扱いであり、議会の承認は必要としないというぐあいに伺っています。アメリカでは、先ほど伊波市長が触れられておりましたが、行政府に予算提出権はなく、予算を構成する法案の作成と提出は議会自身が行うということになっておりますが、もともと、アメリカ議会は海兵隊のグアム移転に否定的だったと伝えられてきました。また、百年に一度と言われる現下の経済状況、その発信源はアメリカであります。F22ステルス戦闘機の問題にもそれはあらわれているのかなと思いましたけれども、今回の協定によってアメリカによる予算措置を担保できるのでしょうか。森本先生、よろしくお願いいたします。

森本参考人 少なくとも、沖縄にある海兵隊の部隊並びにその家族をグアム基地に移転することに係る経費のうち米国が負担する部分というのは、先生御指摘のとおりあるわけであります。

 それは、我が方が負担するのには必ずしも適切と考えられない部分、すなわち、合衆国軍隊がまさに必要とされるインフラの整備あるいは移転する部隊ではないその他の部隊に必要な経費を、米国がいわゆる軍事建設予算、ミリタリー・コンストラクション・プログラムの中で国防省が議会に提出をし、それが米国によって認められて予算がつくということに仕組みとしてなっているわけで、今回私が承知する限り、グアム移転経費は、この協定が皆様方に御承認になった後、国会で予算が承認され、日本は日本として予算措置がとられるわけですが、米国も軍事予算が別途とられて予算が執行されると考えます。

 その際、それは安定的に予算が担保できるのかということについては、アメリカも長期にわたる軍事建設計画の中で会計年度ごとの予算が決められて、今回も、グアムの移転経費については、米国は米国として、アメリカ議会にしかるべき予算が計上されると考えております。

 一方、部隊が動いてしまいますと、動いてしまった部隊の兵員の、いわゆる家族住宅費といいますか、住宅経費そのものは、国防省から規定に従って支払われ、それが日本側が負担する真水でない部分については適切に返還されるものと考えておりますので、日本から見るとアメリカは非常に国防予算が厳しい状態ではありますけれども、グアムが置かれている戦略的重要性にかんがみ、アメリカの予算措置が今後とも十分に充当されるということについては我が方は特段の心配をする必要はない、このように考えてよいのではないかと思います。

 以上でございます。

赤嶺委員 引き続き森本先生にお尋ねしたいのですが、ふだんから森本先生がおっしゃっている日米ガイドライン以降のいわば計画検討作業にかかわっての質問なんですが、最近、沖縄では、米軍による民間空港と民間港湾の使用が非常に目立ってきています。二〇〇七年には与那国港へ、最近も石垣港へ、地元自治体が反対する中、米軍の掃海艦が初めて入港いたしました。

 米軍再編の計画の中には、日米ガイドライン以来の周辺事態や武力攻撃事態に際しての計画検討作業の拡大が盛り込まれているわけですが、こうした最近の民間空港、港湾の使用と計画検討作業との関係について、先生はどのようにごらんになっていますか。

森本参考人 私の理解が間違っているかもしれませんけれども、日米で締約をしている日米地位協定の本来の趣旨は、我が国にある施設は合衆国軍隊がいかなる場合にでも使用できる、これは恒常的にという意味ではありませんで、使用できるという権利をアメリカ側が留保しているものと私は理解しています。

 もちろん、ある民間空港あるいは民間の港湾を合衆国軍隊が使用する場合、必要な手続に従って使用の許可をとるということは当然でありますけれども、日米地位協定に基づく合同委員会で提供されている施設・区域以外は使えないということではないと思います。

 それが頻度が高くなっているかどうか、私はつまびらかにしません。時々報道にそのような事例が載ることは承知しておりますけれども、それは多分、沖縄だけではなく、アメリカが北東アジアでいろいろな活動をするときに、例えば、最近では、日本海の中にアメリカ海軍のイージス艦等が入ってくるときに、民間の港湾に寄港したりするという頻度が多くなっていることは確かであると思います。そのことが、今先生御指摘のように、ガイドラインに基づく日米のいろいろなこれからの約束事と直接かかわりがあるというふうに私は理解しておりません。

 以上でございます。

赤嶺委員 西原先生にお伺いします。

 現在、沖縄では、米軍だけではなく、自衛隊の強化も進んでおります。米軍再編計画に基づいて、キャンプ・ハンセンでの共同使用も開始をされました。ことしに入って、航空自衛隊那覇基地では、F4戦闘機との入れかえでF15戦闘機が配備されました。来年度は、陸上自衛隊の旅団化改編、航空自衛隊の与座岳分屯基地へのミサイル防衛関連のレーダー配備も予定されております。

 こうした一連の自衛隊の沖縄における態勢強化は、防衛省・自衛隊のどういう方針に基づくものか、また、強化のこうした傾向は今後も続くと見ておられますか。いかがでしょうか。

西原参考人 今後も続くと私は思っております。

 御承知のとおり、冷戦後は、朝鮮半島における緊張というのは昔の冷戦時代のものではなくなりましたけれども、最近の北朝鮮のテポドン2の発射及びその失敗もありましたけれども、そうした事例にもありますように、ほかの形での緊張は、私は緊張の種は大きくなっていると思います。

 それから、尖閣諸島に対する中国側の領土権主張も以前よりも強くなっております。中国の海軍の力も増強されております。潜水艦及び駆逐艦も増強されておりますし、将来は空母も検討するんだということを言っております。

 こうした事態を考えますと、不慮の事態に対して、西日本側、日本の西部の海域における緊張は将来大きくなると考えざるを得ません。そういう面で、限られた自衛隊の力を適切に配分するということであれば、東あるいは北の方に置くよりも西の方に置いた方がいいというふうに考えるのは当然だというふうに私は思っております。

 もう一つは、沖縄にあります自衛隊の基地は民間と一緒になっていて、御承知のとおり、極めて使いにくい施設になっております。そういう面を少しずつでも改善することによって、自衛隊がより効率、効果のよい作戦準備をすることは重要だというふうに私は思います。

 以上です。

赤嶺委員 私、今の質疑を通じて、自衛隊は強化される道筋ははっきりしているけれども、米軍削減の道筋というのはなかなかあいまいで、はっきりしていることは、日米安保条約の目的達成のために沖縄を使い続ける兵力構成は、それは米軍の勝手次第ということになりはしないかと非常に不安に思っております。

 地位協定五条に基づく米軍艦船の入港は、権利ではなくて、当然、港湾管理者の合意によるものでなければいけない。実は、神戸の非核宣言のときには中曽根総理大臣はそう言っているんですよね。当該首長の意見を尊重すべきだという国会答弁もあった次第なんです。

 そういう点で、今回のグアム協定は、その根幹にあるのが変えられない限り本当に県民が納得するものにはならないんじゃないかというような私自身の意見もつけ加えまして、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

河野委員長 次に、辻元清美君。

辻元委員 社会民主党の辻元清美です。

 きょうは、参考人の皆様、お時間を割いていただきまして、貴重な御意見をありがとうございます。

 それでは、四名の皆様に御質問をさせていただきます。

 まず、森本参考人にお伺いしたいんですけれども、先ほど、冷戦構造下からグアムの位置づけがアメリカの戦略的に変わってきたというようなお話がありました。基地そのものも老朽化しているし、それから新しいインフラを整備しよう、そのように変わってきたのはいつごろからなんでしょうか。

森本参考人 グアムの戦略的重要性が高まったのは冷戦後になってからだと思います。しかし、グアムの基地の機能を強化するという決定を米国が行ったのはいつのことであるのかということを正確に承知していません。

 他方、グアムの基地を見る限り、中を見て、冷戦時代に見たときの印象と見比べて感じることは、少なくとも、中国の海空軍が冷戦後に東シナ海、南シナ海に進出してくるようになり、アメリカ側が、太平洋、西太平洋による米軍のプレゼンスの中で、ディエゴガルシアまでの間に至る一番西側の重要な拠点としての基地機能を持っているということをアメリカが認識し、しかも東シナ海の中で中国海軍が出てき、アメリカがフィリピンのクラーク航空基地、スービックベイの海軍基地から引いてしまった後、グアムというのが西太平洋の中で大変大きな意味合いを持つようになってから、恐らくアメリカ側がグアムという基地を再評価し、これを新たな戦略的な拠点として、いわゆる主要基地機能というんでしょうか、メーン・ベース・オブジェクティブといいますか、という機能に格上げしようとしたのは、米軍が米軍再編というプロセスを通じて行ってきたものであり、これはこの数年のことではないのかなというふうに理解しております。

辻元委員 今アメリカは戦略的に格上げをしていく中で、この海兵隊の取り扱いなんですね。ですから、沖縄の負担の軽減と言いながら、実はアメリカが戦略的にグアムを強化していく、海兵隊の基地もつくりたいというアメリカの意図があって、それに対してこの沖縄から八千人を移すんだ、だから日本にも財政的負担をという、これは沖縄の中でも、実はアメリカはグアムをもっと最新鋭の基地機能を持つ島にしたいという意図があって、ですから、後から、八千人が帰ることが沖縄の負担軽減になるんだというのがついてきたんじゃないかという意見も根強くあるわけですね。私もそこのところは不信感を持っているわけです。

 そこで、西原参考人と桜井参考人に同じ質問をお聞きしたいと思うんですが、そこで次に出てきたのがパッケージ論なんですよ。そうすると、沖縄の負担をいち早く軽減したいという意図が先んじるならば、八千人はさっさとお帰りになってもいいわけですね。八千人は帰る、だから日本は上限二十八億ドルまでの負担をしてくださいということを、まず実行することもできるわけです。しかし、本協定を見ますと、辺野古地区に新しい基地をつくらないと八千人は帰ってあげませんよというふうに条件になっているわけです。いわゆるパッケージ論なわけですね。

 ですから、最初に、グアムの基地機能もアメリカは強化したかったという意図、これはあったと思いますよ、事実として。負担の軽減を重視するならば、辺野古地区の新基地建設と、八千人が負担の軽減のために、それも日本から予算も支出して出ていくことと、別にばらばらに実行してもいいわけです。どなたに質問しても、辺野古地区に新しい基地をつくらないとグアムに八千人帰れない合理的な理由を私は理解することができないわけです。

 このパッケージ論について、西原参考人そして桜井参考人はそれぞれどのようにお考えでしょうか。このパッケージ論を支持されるとすれば、合理的な理由を聞きたいわけです。八千人がグアムに沖縄の負担軽減だよと帰ることと、辺野古に新しい基地をつくる、この関連性が見えないんですけれども、いかがでしょうか。

西原参考人 パッケージ論の中で、私は、重要なキーワードは、日本の防衛に関して米軍が軍隊の配備の一体化ということを使っている、一体化ということだと思うんですね。

 海兵隊の全部をグアムへ移した場合の米国が持つ日本の防衛支援力と、一部を残してそれをうまく利用しながら日本の防衛、日本防衛のための抑止ですね、抑止をやるというのでは大分違うと思います。現在、アメリカがそのパッケージとおっしゃる中でやろうとしているのは、一部を残して、それを辺野古基地をつくることによって海兵隊の力を温存し、そしてそれを抑止力として使う、これが私は日本の防衛には非常に必要だと思うんですね。それがアメリカが進めようとしている点だと思うんです。

 したがって、普天間基地を閉鎖するということが、これこそもう普天間基地の周辺にこれだけ住宅が密集していることを考えますと、普天間基地の閉鎖そのものが非常に重要であるということを考えますと、私は、辺野古基地が新しく基地として生まれ、そして海兵隊が残るということは非常に重要だと思っております。

 それから、沖縄におきましては、北部の方にはまだ海兵隊の訓練の基地がありますから、その辺でも、私は、そのことも考えながら日本の防衛ということを考えるべきじゃないか。だから、抑止力の問題が重要だというふうに思います。

桜井参考人 私は、パッケージ論というのは米軍にとっては極めて好都合な、日本のお金でグアムの基地を整備し、そして辺野古に訓練のための最新鋭の基地を整備するということで、そういう形ではパッケージ論になるわけですが、沖縄の我々にとっては全く必然性がないと考えております。

 特に、そもそもこの普天間の基地の移設は、これはぜひとも必要なわけですけれども、その移設が当初出てきたときには、先ほど私が申し上げましたとおり、キャンプ・シュワブにヘリポートをつくるというような極めてささやかな案で始まったはずのものが、いつの間にかここまで肥大化してきたということで、これは米軍にとって、日本の税金でそこまで立派な訓練施設を辺野古につくってもらえる、それが北部訓練場と連携して使えるということであれば、これは願ってもないわけですけれども、それは必然性がなかったものなわけだと思います。

 ですから、私は、この間の経緯を見ましても、私ども沖縄県民にとりましては、このパッケージ論というのは全く必然性がないと考えております。

辻元委員 私も、どうもやはりこのパッケージ論が理解できなくて、一つ一つ実行していく、同時並行に実行したいという意図がアメリカ側にあるならば、パッケージにせずに一つ一つを主張して、本協定で八千人と二十八億ドルの関係を規定するだったら規定する、私たちは反対ですけれども、というようにするのがフェアじゃないかというように思うわけですね。

 そこで、伊波市長にお伺いしたいんですが、もう一つ出てくるのが、普天間にかかわることですけれども、普天間の負担が重い、ですから、普天間から出ていってもらえるんだったらどんなことでもするぞと強く訴える声があるというように主張される委員の方もいらっしゃるわけです。県内からもちろん出ていってほしいけれども、それが認められないんなら、県内でどこか受け入れるところがあるならそこへ行ってもらって、もう一刻も早く普天間から出ていってほしいというような声が強いとおっしゃるわけなんです。

 私が、沖縄にも再三参りまして、関係者の皆さんや地元の皆さんにお聞きしましても、そうではなくて、基地のたらい回しは嫌だ、そして、普天間の基地というのは、代替施設をつくる、つくらないにかかわらず、クリアゾーンの話、先ほどありましたけれども、アメリカでは成り立たない基地をそもそも日本に置いていて、そしてこれだけの事故があるわけですから、そういう意味から見ても、この基地はもともとやはり一刻も早く閉鎖する、それを代替としてどうするかというのはその次の話であって、しかし、私は、普天間の住民の皆さんが、いや、辺野古に行ってくれるんだったら普天間からいなくなるからいいよと思っていらっしゃるとは決して思いたくないんですね。

 やはり七五%の基地の負担があり、そしてたらい回しは嫌だという思いがある。日ごろ地元の皆さんと接していらっしゃって、普天間の皆さんの思いというのは率直なところどういうところなのかということをお聞かせいただきたいと思います。

伊波参考人 宜野湾市民の多くは、普天間飛行場を辺野古に持っていけばいいというふうには考えていないと思います。沖縄世論全体としても、調査をしてみましても、辺野古やむなしというのは二割以下ぐらいになっていて、やはり県外への移設というのが七割はいつもコンスタントにあると思いますので、直接的に議会でなんかだとそういう主張をする方はおられますけれども、市民の多くは普天間のこれだけの被害の状況を毎日のように感じておりますので、それを辺野古に持っていって、それで解決だというふうには多くの皆さんは思っていらっしゃらないというふうに思いますし、そのことが直接私に、なぜ辺野古に持っていかないのかというふうなことを言われたことはございません。

辻元委員 伊波市長も選挙で選ばれていらっしゃる市民の代表としてきょうお越しいただいていますけれども、選挙のときも普天間の基地は即時閉鎖だ、しかし、辺野古に持っていくことも反対だということを堂々と主張されて当選していらっしゃるので、やはりその声が、私は皆さん苦しいと思いますよ、人間ですから。一刻も早く出ていってほしい、どこかに受け入れてくれるんだったら、どこか受け入れてくれるところがあれば、もうどこでもいいから、この騒音から、事故から解放されたいとか、人間ですから思うと思います。しかし、そうじゃないんですよね、皆さんの思いは。

 ですから、私は、そこのところを取り違えて、普天間の皆さんが、普天間からさえ出ていってもらえばいいと思っていないということを私自身は考えながら今回の協定を審議すべきだというふうに思っています。

 といいますのは、今おっしゃいましたように、普天間の皆さんは基地被害を一番よく御存じなわけですね。それで、辺野古地区の新基地を建設したいと今政府もアメリカも言っているわけですけれども、このことについて、普天間の基地被害の経験から伊波市長に御質問したい点があります。

 まず、普天間ではいろいろな訓練をされていると思います。十時までというのを十一時までやっているという話も先ほど伺いました。タッチ・アンド・ゴーの訓練はどれぐらい行われているんでしょう。

伊波参考人 基本的に普天間の訓練というのはそういうタッチ・アンド・ゴーのような訓練なんです。というのは、演習場じゃございませんので、専らそういう基礎的な、飛行回数を一時間あるいは二時間、五分に一回、回りながら、着陸するような形でおりて、そしてまた上がっていく。これはKC130もそうですし、P3Cもそうですし、対潜哨戒機もそうですし、それから中型ヘリコプターもそうですし、大型ヘリコプターもそうですし、攻撃型ヘリコプターもそうです。

 つまり、基地というのは、そこにいる駐留部隊が技量を維持していく、練度を維持していく、そしてそれを、必要な回数が、多分これはハワイの方の司令部から個々のパイロットに対して課されているものをしっかりやっていくということで、それだけのものが課されていて、深夜も含めてですが、それを行っているのが普天間の実態だと思います。そして、多いときは一日に三百回を超えるタッチ・アンド・ゴーが繰り返されていたわけでございます。

辻元委員 今一日に三百回を超えるタッチ・アンド・ゴーの訓練と聞きまして、私だけではなく委員の皆さんも、普天間の現状、びっくりされたんじゃないかなと思うわけです。

 さて、そこで、辺野古地区への新基地の建設の案はV字形滑走路になっているわけです。このV字形滑走路というのを提案した際の提案理由に、辺野古地区の集落の上を避けて飛ぶから、離陸する滑走路と着陸する滑走路は別にして、離陸は離陸で集落の上を飛ばない、着陸は着陸で集落の上を飛ばないというような機能にするので、地元の皆様の集落の上空は飛びませんというのが政府の説明なわけです。

 そして、一方、普天間の基地機能の移転を辺野古地区にしたいと言っています。では、普天間でどんな訓練をしているかというと、一日に三百回以上もタッチ・アンド・ゴーの訓練をしているという今市長の証言でした。

 そうすると、辺野古地区のV字滑走路で、普天間の基地機能を移転して訓練をやるんだったら、タッチ・アンド・ゴーをやらないというのはちょっと考えられないと思うんですよね。そんなにやって、実際の訓練そのものが、それが主体であるという現状ですから。

 そうすると、結局、V字滑走路という政府の案にしても、タッチ・アンド・ゴーでいけば、着陸と離陸は別の滑走路だから集落の上を飛ばないというようなことは、現実的に見て、今の普天間の状況を見ますと、それは単なる絵にかいたもち、政府が言っていることは私は実態とかけ離れたことを沖縄の県民にも示し、そして国民にも示しているのではないかと思いますが、いかがでしょうか、伊波市長。

伊波参考人 当然そのように私たちは考えております。

 そこで、それが発表されたときに、防衛大臣等との懇談の場もありまして、やはりタッチ・アンド・ゴーというものが頻繁に繰り返されているのが普天間飛行場でございますということで、それは着陸だけじゃなくて、着陸と同時に離陸をするという訓練が二時間ないし三時間続くわけです。

 P3CやKC130だと五分に一回回ってきますので、さらに攻撃型ヘリだと、二機ぐらいでやりますと一分三十秒ぐらいで交互に回ってきますので、それだけの回数がその時間ずっとずっと繰り返されるということでありまして、当然、どの滑走路を使うにしても、滑走路は一つを使うことになるのだろう、このように思います。

辻元委員 実際、米軍も進入灯はどの滑走路も両方につけてほしいというふうに今言ってきているようなんですね。

 そして、一方、先ほどから伊波市長のお話を聞いておりますと、そういう実態があるにもかかわらず、アメリカ側に申し入れをしても受け入れてもらえない。また、外務省に問い合わせをしても、外務省としては、米軍の訓練内容に立ち入ることはできないという姿勢であると先ほどからお話がありました。

 そうしますと、普天間の機能を辺野古地区に移す、そして二本滑走路をつくったけれども、タッチ・アンド・ゴーをがんがんがんがん今のように訓練でやって、そして住民の皆さんを初め、米軍に対して約束が違うじゃないかと言ったところで、今の外務省や米軍の態度だと、普天間の御経験から、それは米軍の訓練の中身について外務省はとやかく申し上げることはできませんというような姿勢になるのではないかと私は考えるわけですけれども、市長、いかがでしょうか。

伊波参考人 現状だとそういうことになるわけですが、そこで、先ほど来指摘しているのは、日米間では二〇〇〇年の九月十一日に環境原則に関する共同発表なども行って、より厳しい基準で基地周辺への影響を少なくすると言っているわけですから、実効的にJEGS、日本環境管理基準なども含めて具体的な基地運用に関して共同した作業ができる場をつくっていかないとその問題は解決できないだろう。

 だから、今のままであれば、当然、米軍基地をどのように米軍が運用しても日本政府が物を言わないという姿勢を貫く限り、問題の解決はできないであろう、このように考えております。

辻元委員 大分、私、先ほどからパッケージ論と申し上げて、それに疑問を呈しているのは、辺野古地区の基地の計画にもそのような問題点があるわけですね。ですから、本協定はそれが条件になっているわけですよ、はっきりと、アメリカ側からの。

 ですから、私たちは日本の国会議員ですから、これは単に基地が移ればいいとか、あの案だと被害が減るんだとか、そういう簡単な問題ではないということ、これはまた協定の審議の中でさらに詰めていきたい。きょうの市長のお話も、現実に即したお話ですので、材料にさせていただきながら詰めていきたいと思います。

 さて次に、もう一つの側面として、環境への配慮ということは国際的に関心が高まっております。ですから、やはりアメリカ国内でも、住民への配慮、環境への配慮なくして米軍基地の建設というのは難しいと思うんですね。

 森本参考人にお伺いしたいんですけれども、これからやはりそういう配慮についてはますます要求が高まってくるのではないか。ジュゴンの話が出ておりますけれども、私は先ほどの普天間のクリアゾーンの話も、アメリカでは普天間のような基地は成り立たないと思うんですよ。そして、ジュゴンが出る海というだけで、アメリカではやはり非常に大きな問題になると思うんです。二十一世紀を見通して、率直な御意見を伺いたいんですね。いかがでしょうか。

森本参考人 辺野古に新しい施設を建設するに際し、一番重要なのは、二つ側面があって、一つは住民の方の安全とか騒音という側面と、それから、この施設そのものが海洋の中に入るわけですから、海を一部埋め立てるわけですから、当然のことながら、先生御指摘のように、海洋の環境に与える影響というのが大変深刻で、だからこそ、環境評価調査というのをずっとやってきたわけですね。

 物事を簡単に話すと、沖合に出せば出すほど環境に大きな影響を与え、海岸に近くなればなるほど住民の方々の騒音と安全に影響を与え、その接点をどこに求めるかということで日米交渉をやって、現在のV字形滑走路の案になっているというふうに理解しますので、環境問題だけで現在の建設計画ができているというふうに私は理解しておりません。

辻元委員 今、沖合に出すか、それから陸に近づけるかという、これは比較評価というんですね。

 そこで、桜井参考人にお伺いしたいと思うんですが、環境アセスの国際的な流れとしては、比較評価ではなく絶対評価という価値を大事にしなければいけないという流れになっていると私は承知しております。

 そこで、絶対評価を当てはめた場合、この辺野古地区はどうなのか。一点目、まず、県は、環境ファーストということで、自然環境の保全に関する指針で自然環境の厳正な保護を図る区域のランク1に辺野古地区を指定していると聞いております。これは、沖縄県にとってはどのような評価なのか。

 それからもう一つは、先ほどジュゴン訴訟の話がございました。これをもう少しお聞かせいただきたいんです。

 国家歴史保存法、アメリカでは、天然記念物がいた場合、そこに大きな公共物がつくれない、これは海外のアメリカ関連施設にも適用されると承知しているんですが、それでいいんでしょうか。その場合、適用した場合、アメリカでは辺野古地区のようなところに米軍基地のようなものを建てることができるとお考えかどうか。

 そして最後に、埋立用土砂、これを私は再三国会で指摘しておりますけれども、十トントラックに五百二十万台分の砂なんですね。そうすると、砂というのは、深いところから掘れませんから、浅瀬から掘りますよね。今、本土からも砂を持ってくるというけれども、そんなもの、船で運んで、大変なことになりますね。そうすると、沖縄周辺の浅瀬から掘ると、海岸に影響が出るわけですね。ざあっと海岸がやせ細る。そうすると、海岸に生息する生物などに多大な影響を与えるわけです。この点については私も非常に危惧をしておりますけれども、この埋め立てによる被害をどのようにお考えか。

 その三点をお聞かせいただきたいと思います。

桜井参考人 まず最初に、御指摘の沖縄県の自然環境の保全に関する指針で、辺野古沿岸地域は評価ランク1、厳正な保護を図る区域に分類されているわけですが、これは、沖縄県では特別な保護の必要がある地域という形になっております。

 先ほど私が意見で述べさせていただきましたように、沖縄では、比率でですけれども、全国一の埋立県でございまして、自然海岸がどんどん消失しております。沖縄は、もちろん基地関連の収入もあるわけですが、今一番大きな収入は観光でございます。観光はすばらしい海があってこそでございまして、自然海岸がどんどんなくなっている中で、残された貴重な海がこの辺野古の海なわけです。それが評価ランク1ということでございます。これを埋めてしまうということは、この第一級の自然そのものが消滅するということですので、それに対して、絶対的な評価がこのアセスでなされるのかどうなのかということが問われるわけですけれども、そのような形では行われていないと私は考えます。

 先ほどタッチ・アンド・ゴーのお話がありましたけれども、現在、五千四百ページの準備書が出されております。私、五千四百ページ、見ました。このタッチ・アンド・ゴーについては全く触れておりません。騒音の予測の際に、V字形の滑走路をどのように飛ぶか、飛行経路が書いてありますが、タッチ・アンド・ゴーについては全く触れられておりません。

 それどころか、このアセスの経緯を見ますと、方法書、つまり、これから調査をするという段階で既に、この辺野古の基地をつくれば、騒音のコンター、コンターといいますが、騒音のレベルを等高線のような形で書いてあるものが、これが方法書の段階、つまり調査をする前の段階で既にその絵が出ております。もうできレースなんですね。結果がコンサルタントでは書かれている。こんなアセスを私は今まで見たことありません。これは全くの醜態だと思いますね。それがあります。

 それから、ジュゴン訴訟のお話がございましたけれども、このジュゴン訴訟はアメリカの国家歴史保存法に基づいて行われているわけですが、これは、アメリカという国家が行う行為が、たとえ海外であっても、それが天然記念物に影響する場合にはアメリカはそれを、テーク・インツー・アカウント、考慮に入れなければならないということになっております。この法律に基づきましてサンフランシスコ連邦地裁で争われているわけですが、これに対して出された判決は、米国防総省は、辺野古の基地を日本政府がつくり、それを使うのは米政府なわけですから、米軍なわけですから、それをつくり、使うことが、既に絶滅の危機に瀕している沖縄のジュゴンにどんな影響を与えるのか、そのことをきちんと評価した上で基地をつくる、あるいは使うということを求められているわけです。

 この基地をつくることがジュゴンの絶滅を加速するということがわかっても、だからやめなさいということはこの法律は求めておりません。この法律が求めているのは、基地をつくったり、使用したりする前に、それがどのような影響を及ぼすかをきちんと評価しなさい、評価して、それを考慮に入れて、これは英語ではテーク・インツー・アカウントになっています、考慮に入れてやりなさいと言っているわけですね。考慮に入れて、基地を使うこともあり得るわけです。

 しかし、きちんと評価したかという作業については、米国防総省は裁判所に対して、この評価の作業は日本政府がやるアセスである、こう言っているわけです。このアセスが連邦地裁の評価にたえ得るか。つまり、連邦地裁がきちんと、米国防総省にかわって日本のアセスがやったと言えるかどうか、ここが問題なわけです。

 しかし、先ほども私が申し上げましたけれども、ジュゴンを追い出すような調査方法をとっていること、それから、沖縄の東海岸沿岸ではジュゴンが観察されておりますけれども、ということは、辺野古の沖も含めて、ジュゴンの生息には適している、あるいは適していた環境です。その環境をこの基地はなくしてしまうわけですね。それを沖縄の東海岸からなくしてしまうことが将来のジュゴンにどういう影響を与えるか。私、五千四百ページのアセス準備書を読みましたけれども、ジュゴンは今現在、辺野古沖にはいない、離れた嘉陽沖に住んでいる、辺野古に基地をつくっても嘉陽のジュゴンには影響しない、だから大丈夫だという結論なんです。これが私はアメリカの連邦地裁を納得させるとは思いません。

 沖縄の沿岸にジュゴンの生息に適している環境がある。そのうちの一部である辺野古をなくす。そのなくすことがジュゴンの将来にどういう影響を及ぼすかということを、このアセス準備書がきちんとやっているとはとても思わないだろうと思います。つまり、アメリカの連邦地裁の判断にたえられないだろうと思います。

 それと、海砂の件でございますけれども、海砂は、沖縄では、沖合で海砂をとると海岸がやせ細ることは地元の人は皆わかっております。そうしますと、台風が来ると塩害が起きます。という形で、当然のことながら、海砂を採取すれば、これは砂浜の砂がどんどん沖合に流れていくわけですから、ジュゴンがえさにする海草が全島的に大きな影響を受けるだろう。

 ところが、これをアセスの対象に入れておりません。日本全国の海砂採取量の一・一四倍に相当する膨大な量の海砂をとって埋めるというわけですが、これをどうするかというと、適法に採取された海砂を買うからいいんだと言っているわけです。一つ一つの小さな海砂採取は小さな環境影響しか及ぼしませんから、これは許可されるでしょう。しかし、そうやって許可されたものを次々と膨大に買っていく、それがもたらす環境影響を評価しないというアセスが、これまた私はアメリカの連邦地裁を満足させるものだとは思いません。

 以上でございます。

辻元委員 どうもありがとうございました。今後の審議に役立てていただきたいと思います。

 四名の皆様、ありがとうございました。

河野委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人各位におかれましては、お忙しい中、本日は貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。今後とも、この協定の審議を初め、外務委員会の諸審査に御指導、御鞭撻を賜りますようお願いを申し上げるとともに、外務委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。まことにありがとうございます。

 さて、本日は、沖縄の皆様を初め大変大勢の方々に傍聴に来ていただいております。若干この十四委員室は傍聴席が手狭でございますので、午後の質疑は十七委員室、傍聴席が比較的大きいようでございますので、十七委員室に移って審査を進めてまいりたいと思います。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

河野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、第三海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房地球規模課題審議官杉山晋輔君、大臣官房審議官中島明彦君、大臣官房審議官石川和秀君、大臣官房審議官北野充君、大臣官房参事官渡邉正人君、北米局長梅本和義君、国際法局長鶴岡公二君、警察庁長官官房審議官西村泰彦君、防衛省防衛政策局長高見澤將林君、地方協力局長井上源三君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 御出席の政府側各位に申し上げます。審議の中では、委員の質問に真摯に正面からお答えをいただきたいと思います。論点をずらしたような答弁の場合には、再び答弁をお願いすることがございます。よろしくお願いいたします。

    ―――――――――――――

河野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山内康一君。

山内委員 自民党の山内康一です。

 きょうは、まず最初に、海兵隊のグアム移転に伴うお金の話、予算の話、それも歳出削減の話について御質問したいと思います。

 まず、グアムへ海兵隊が、兵員で八千人、家族で九千人という説明になっていますが、これだけ大勢の海兵隊及び家族が沖縄からいなくなれば、そのサポートというかお世話をしている基地の従業員、基地の駐留軍の労働者等の人員削減も可能になってくるはずだと思うんですね。そういった意味で、今回、グアム移転に関して、コストの部分の質疑、これまでそういうお話は多かったと思うんですが、それによって削れる部分のお金の話、削れる歳出の話についてさせていただきたいと思います。

 まず、質問通告の中に入っていなかったかもしれないんですけれども、政府の参考人にお尋ねしますが、これまでそういった、海兵隊と家族が日本からグアムに行くことによって削れるはずの予算、削れるはずの歳出についての計算というか推計みたいなものはやったことがありますでしょうか。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 この海兵隊のグアム移転につきましては、現下の安保環境の中で、抑止力を維持しながら沖縄の負担を軽減するというためにどういうことがあり得るのかという観点から検討してまいりました。

 したがいまして、そういう観点から進めてまいりましたので、コストが、海兵隊の移転によって例えば駐留経費負担がこれからどうなるであろうかというようなことについて、精密な計算等というのはまだやっていないという状況でございます。

山内委員 それでは、ぜひこれから、精密でなくともやっていただきたいと思いますし、まず、目標を設定して、これぐらいはアメリカ側に対してコストを削減すべきであると日本側から申し入れていくといったことは可能になるんじゃないかと思います。

 今、昨年の十二月の外務省のデータによると、在日米軍の軍人が四万七千百十七人、家族が四万六百九十四人、合わせると八万七千八百十一人の米軍の軍人と家族がいらっしゃいます。それに対して、日本側の負担で雇用している駐留軍の労働者というのが二万三千五十五人ということで、この比率を見ると、大体、駐留軍の労働者一人でアメリカの軍人と家族三・八人ぐらいの比率になります。三・八対一ぐらいの比率になります。それを適用して、一万七千人減ると仮定すると、大体四千人以上駐留軍の労働者を減らしてもいいはずなんですね。もちろん単純計算というのは絶対できないとは思いますが、それでも、単純に考えて四千人程度は減らしてくれと日本側から申し入れることができるんじゃないかと思います。

 そして、労働者の人件費が一人当たり大体六百数十万円かかっているようですが、仮に六百万と大ざっぱに計算すると、年間二百四十億ぐらいは浮くかもしれないし、それから、光熱費なども考えると、日本側として、やはり二百五十億円ぐらいは削ってくれ、ホスト・ネーション・サポートを一万七千人がいなくなった暁には削ってほしい、そういうふうに申し入れることは十分妥当だと思うんですけれども、政府の御見解をお伺いします。

中曽根国務大臣 在日米軍の駐留の経費の負担は、今も北朝鮮の問題で大変緊迫した状況になっておりますといいますか、発射されたということで大変この地域は不安定な状況になっておりますけれども、そういうような状況の中で、我が国にとって、安全保障にとって大変不可欠な日米安保体制、これを円滑にまた効果的に運用するために重要な役割を果たしているわけでございます。

 この在沖縄海兵隊のグアム移転を初めといたします在日米軍の再編は、複数年にわたる大変大規模な事業でございます。したがいまして、将来それが在日米軍駐留経費負担に与える影響の程度につきましては、今からどれぐらいということを具体的に申し上げるということは困難なところがございますけれども、在沖縄海兵隊のグアム移転は、借料とかあるいは駐留軍の労働者数の削減の要因の一つにはなる、そういうふうには考えているところでございます。

 政府といたしましては、今後も、大変厳しい財政事情にも十分に配慮をしながら、この日米安保体制を円滑に、そして効果的に運用するために、在日米軍の駐留経費の負担につきましても適切に対応していきたい、そういうふうに思っております。

山内委員 やはり、ほっておいてもアメリカ側がみずからコストを削ってくれるとは思えませんので、ぜひ前広に、日本側からコスト削減に努めてもらうように常に口を酸っぱくして言い続けることが大事なんじゃないかと思います。そして、そこでお金を浮かすことができれば、そのお金で元労働者の、基地の従業員の方の雇用対策とか地域振興にも財源を捻出していくことができると思いますので、ぜひとも、そういったコスト削減の観点も忘れずに、グアムへの移転、これから円滑に進めていただきたいと思います。

 次の質問に移ります。

 おととい、衆議院外務委員会の沖縄公式視察に私も参加させていただきました。先ほどいらっしゃっていた宜野湾市の伊波市長、仲井眞知事、あるいは県会議長さんたちのお話を伺いまして、本当に、政府として、地方の自治体のサポートというか、地域の住民の皆様に対する国としての対応が不十分だったなというふうに実感いたしました。

 午前中の参考人質疑においてもいろいろお話がありましたが、騒音防止協定などに関しても、アメリカ政府に対して直接宜野湾市から申し入れをやっていたりということが多々あるようであります。本当は外務省なり日本の国がやらなくてはいけない仕事を地方自治体、市長さんであったりあるいは沖縄県がやっている、こういう状況が決して望ましい状況とは思えません。ぜひとも、外務省として、もっと地方自治体に対するサポートを行って、そして地域の住民の皆さんの要望をアメリカの政府に対してつなげていく、そういうチャンネルとしての機能がこれまで以上に重要になってくるのではないかと思います。

 そういった意味で、今現在、外務省の中でそういったアメリカ軍の基地の問題に取り組んでいるスタッフの方、職員の方、大体どれぐらいの人数がいらっしゃるんでしょうか。

伊藤副大臣 お答えを申し上げます。

 外交体制の強化の中でも、議員御指摘の部分というのは非常に重要だというふうに外務省としても考えております。

 現在、外務省としては、沖縄には沖縄担当大使以下の職員による沖縄事務所がございますが、それ以外の地方についても、関係都道府県及び市町村に外務省職員を派遣して地元の声を伺ったり、また、関係自治体の方々が上京される際に意見交換を行うなどして、限られた人数のもとでありますが、関係自治体との緊密な連携をとっているところでございます。

 また、昨年十二月三日には、米軍基地の所在する十四都道府県で構成されている渉外知事会からの御要望を踏まえ、在日米軍施設・区域に係る日米両政府の代表及び渉外知事会との連絡会議を初めて開催いたしまして、日本政府、米側及び関係自治体が一堂に会し、米軍基地に係る諸問題への取り組みについて意見を行ったところでございます。

 委員御質問の在日米軍にかかわる仕事を定義することは困難な側面もありますけれども、直接かかわっている事務方の数ということで申し上げれば、現在、外務省の本省北米局及び外務省沖縄事務所を合わせ約四十名の職員がおります。基地を抱える地元との連絡を今後とも積極的に進める人員体制等を強化することがぜひ必要だと考えており、これによって地元との連携をより緊密にしていきたいと考えております。

山内委員 四十名という少ない人員でやられているということで大変御苦労は多いと思うので、ぜひそういった部門の強化というのが必要だと思いますし、基地のある都道府県との初めての会合が持たれたということで、方向としては非常に望ましいと思いますが、まだまだ不十分ではないかと思います。

 例えば、外務省の職員をそういった基地のある自治体の市役所であったり県庁であったり、そういうところに、人事交流だったり出向だったり、そういった形での外務省職員の派遣といったようなものは行われているんでしょうか。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 事前にちょっと御通告いただいておりませんでしたので、正確な事実関係はまた追って調べた上でお答え申し上げたいと思いますが、例えば沖縄県には、かつて私どもの外務省から職員を派遣しておりました。ただ、これは沖縄事務所をつくりまして、沖縄県に外務省の組織ができたということで、その出向を現在は続けてはおりません。それ以外にも幾つか自治体には出向している例はございますが、特に基地との関係で出しているということはないと思います。後ほどまた調べた上でお答えいたします。

山内委員 私の地元の神奈川県も基地がいっぱいあるので、そういったところとの人事交流や出向というのは考える価値があるのかなというふうに思いますので、ぜひ前向きに御検討いただきたいと思います。

 今、外務省の沖縄事務所のお話がありましたが、私も、外務省の沖縄事務所あるいは沖縄担当大使というのは非常に重要な役割だと思っております。ただ、今ある沖縄事務所とそして沖縄担当大使がいても、まだまだ宜野湾市とか沖縄県の要望がアメリカ政府に対してなかなか伝わっていないという実情があることを考えると、むしろ、沖縄事務所や沖縄大使のいないほかの本土の自治体、三沢とか岩国とか佐世保とか、そういったところはもっと多くの苦労を抱えているのかな、アメリカとのコミュニケーションに関していろいろ問題を抱えているのかなというふうに感じますが、そういった沖縄大使、沖縄事務所の所轄外の米軍基地のあるほかの都道府県や市町村との連絡調整の強化ということを外務省としてぜひ検討していただきたいと思います。

 先ほどちょっとお話がありましたが、例えばですけれども、今、関西担当大使というのがあるのをホームページで見てびっくりしました。沖縄大使というのは何となく必要性が理解できるんですけれども、なぜ関西担当大使があって、九州大使とか東北大使がないのかなという……(発言する者あり)あるんですか。今、北海道と関西はあるそうですけれども、正直言って、関西大使……(発言する者あり)そうですか。ちょっと関西か大阪かわかりませんが、せっかくだったら、こういったステータスの大使ではなくて、例えば米軍基地問題担当大使みたいな大使を、ポストをつくって、沖縄以外の米軍基地、佐世保だの横須賀だの三沢だの、そういう自治体の悩みを聞いたり、そういった自治体や地域住民の皆さんの声をアメリカに伝えるための、そういう専任のポストというのをつくる価値は十分にあるのかなというふうに思います。

 それで、関西大使をつぶしてというふうに考えてはいるんですけれども、どうして関西だけ必要なのかちょっとわかりませんが、仮に必要だとすれば、増員したり、あるいは兼務でもいいと思うんですが、何らかの形でそういった米軍基地問題を専門に扱う窓口としての大使がいれば、各地方自治体や地域の住民の皆さんもコンタクトしやすいんじゃないかと思いますが、そういったアイデアについて外務省の御見解をお伺いします。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 関西担当大使について御質問がございましたが、関西担当大使につきましては、関西方面における外国公館、地方公共団体等との関係者との連絡調整、また国賓、公賓等の接遇という面におきまして重要な役割を果たすということで置いているものでございます。

 いずれにいたしましても、米軍基地問題については、沖縄担当大使それから私どもの北米局あるいはその関係職員が関係自治体と連絡調整を密にするように努力をしておりますけれども、外務省全体の体制強化の中でさらに努力を行っていきたいというふうに思っております。

山内委員 ぜひ、体制を強化して、宜野湾市長が一生懸命アメリカに対して申し入れていた姿を見て、本当は外務省なり日本の政府がやるべき仕事まで地方自治体に今任せてしまっている、こういう状況は改善していただきたいと強く願います。

 大使ついでに、もう一個、大使絡みの質問をさせていただきたいんですが、今、NGO担当大使というのが何年か前からあると思うんですけれども、今の大使はちょっと存じませんが、前の大使は外務省の職員の方だったと思うんです。せっかくNGO担当大使をつくるのであれば、外務省のプロパーの職員にこだわらず、民間の企業の出身の方でもNGO出身の方でも、国際機関でも大学の先生でも、そういった民間の人をつけて、そして外務省とNGOとの窓口として機能してもらえるような、そういうポストにした方がいいんじゃないかと思うんですけれども、外務省、いかがでしょうか。

渡邉政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省は、NGOを国際協力の重要なパートナーと認識しておりまして、NGOの開発事業に資金を供与し、国際協力に携わる市民社会の発展をさまざまな形で支援してきました。その結果、今日では、NGOと外務省との連携は相当進んできていると思います。

 こうした中で、四月一日付で、長年NGOとの連携に携わってきました五月女外務省参与にかわりまして、小田国際協力局審議官にNGO担当大使の名称が付与されております。小田審議官は、従来からNGO担当の審議官として、年に七回ほど行われますNGOとの定期協議会に外務省側を代表して出席するなど、NGOとの対話と連携に積極的にかかわっております。

 先生から御提言のありました民間出身のNGO担当大使は、貴重な御提言と受けとめますが、NGOと外務省の間の対話と連携を推進し、NGOの皆様方の御要望や御意見を政府のNGO支援策、政府のODA政策に反映させていくためには、これらの問題について最新の知識を有する現職の外務省職員がNGO担当大使を務めるのが適当ではないかと考えた次第でございます。

 なお、外務省は、平成十四年度から、若手の省員をさまざまなNGOに一週間から一カ月程度派遣する国際協力NGOインターンシップ・プログラム、それから、平成十九年度からは、NGO勤務経験者の任期つき職員としての採用など、NGOとの関係強化に努めているところでございます。

山内委員 今、外務省の方から、NGO担当大使はプロパーの職員じゃないといけないという御答弁がありましたが、やはり本当にそうなのかなと思います。ぜひ、政治家としてのお立場から、中曽根外務大臣から個人的なお考えを聞かせていただければ。

中曽根国務大臣 今、参考人から説明をいたしましたけれども、民間出身の、NGOという方でも、もちろん適材適所で、ふさわしい方がおられれば私はそれは結構なことだと思っておりますが、先ほど御答弁申し上げましたように、現在、NGOの支援策とか大変幅広い、いろいろなものがありますし、また政策と密接にかかわっておりますので、そういう意味で、やはり知見を有している外務省職員が現在のところ適当ではないか、そういうふうに考えておるところでございますが、委員の御意見というものもまた貴重な御意見だと思って承らせていただきます。

山内委員 ぜひ前向きに御検討いただきたいのと、これからNGOと外務省なりあるいはJICAのような実施機関との人事交流を広げて、NGOの中にも外交政策なり外務省の仕組みなりをよくわかった人が育っていけば、民間出身でも十分務まるのではないかと思います。そういった意味で、長い目で検討していただきたいと思います。

 次に、別の質問に移りたいと思います。

 最近、アフガニスタンで、警察力強化のために、警察官の給与の補てんというか、警察官の給与を日本のODAで負担するという事例がありました。これに関しては国際社会からも大変高い評価を得ております。

 しかし、これまで日本のODAは、建前上、経常経費はODAでは支援しないというルールがありました。したがって、公務員の給与である警察官の給与はODAでは負担しませんというのがこれまでずっと外務省なりJICAなりの公式見解であったと思います。それが、例外ができたということで、私はいいことだと思います。

 警察官の給与をODAで補てんするという事例、突破口ができましたので、ぜひこれからは、例えば学校教育、教員の給与をODAで補てんする、負担する、そういったことも日本政府としてやっていくべきだと思います。特に、日本のNGO団体の連合体である教育協力のネットワーク組織から外務省に対して要望が来ているのは、ぜひ、紛争後の教育復興をやっているところ、ある程度安定した国は別としても、特に紛争直後であったりあるいは災害直後である、そういった国の教員給与に関してはODAで補てんする、そういうスキームをつくってほしいという要望が来ております。

 それについて外務省の御見解、特に実施が可能かどうかという可能性についてお尋ねします。

渡邉政府参考人 お答えいたします。

 教育分野の支援でございますけれども、我が国は、教育分野への支援を大変重視しておりまして、基礎教育の分野におきましては、成長のための基礎教育イニシアチブに基づきまして、学校建設などのハード面の支援と教員養成などのソフト面の支援を組み合わせ、積極的に支援しております。また、職業訓練、高等教育など、途上国の国づくりを支える人材を育成するための支援を行っております。

 教育分野は、教員給与を初め経常経費を多く必要とする面もございます。ただし、途上国が経常経費の財源を過度に外部に依存し続けることは、教育制度の自立的発展性及び持続可能性の観点から疑問なしともしません。

 先生から、紛争後、災害後の教育分野での支援の可能性という御質問をいただきましたけれども、今後、ODAによる支援に当たりましては、以上申し上げたような点も考慮しながら、顔の見える援助であるプロジェクト型支援を補完するものとして、適切な場合には経常経費の確保等についても支援を行うことにより援助効果の増大を図っていく考えでございます。

山内委員 一番最後の部分が大変重要でありまして、もちろん教員給与をODAで補てんするというのは本来望ましくないのは重々承知しておりますが、例外的な場合ということで、特に紛争直後であったりあるいは災害直後であったり、そういうケースにおいてはぜひ教員給与の補てん、確保、これを日本のODAでやる方向で前向きに検討していただきたいと思います。

 大体、教育活動というのは別に学校がなくても成り立つんですね、先生さえいれば。青空教室という言葉もありますし、大体どんな国に行っても、お寺かキリスト教会かイスラム教のモスクは大抵の村や町にありますので、そういう施設を使えば、学校の先生さえいれば教育活動というのは必ず成り立ちます。日本の戦後もそういうところがあったと思います。

 そういった意味で、教育援助というとすぐ学校建設に目が向いてしまうんですけれども、ぜひ人の面、給与の補てん、そういった面もこれから強化していただきたい。それから、未来永劫教員給与を補てんするということではなくて、例えば一年なり半年なり、極端な話、三カ月でもいいんですけれども、そういう緊急事態においては教員の給与の補てんを積極的にODAでやっていけるようにお願いしたいと思います。

 以上、要望いたしまして、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 私は、自民党の中の国際NGO小委員会という委員会の事務局長を務めておりますが、NGOの関係者の方から懸念の声が上がっていることがあります。それは何かというと、JICAが寄附金を集めるようになりました。

 独立行政法人ですから制度的には寄附金を集めることはできるんですけれども、本来望ましいお金の流れというのは、民から民へのお金の流れをつくっていくということであります。例えば、個人であったり企業から国際NGOに対して直接、民から民への寄附の流れをつくっていく、それが本来望ましい形、望ましい健全な市民社会のあり方だと思うんですけれども、そのお金の流れが、JICAという非常にブランドネームがあって、そして全国各地に立派なセンターがあって、職員の数もたくさんいて、そういう大きな組織が寄附金を集め始めると、民間の草の根の市民団体、草の根のNGOが集めてもなかなか集まらない、そういう状況につながりかねません。

 そもそも、日本の寄附金のマーケットというのは非常に狭いということが前から言われております。そういうNGOに対する寄附をふやすために、例えば寄附金の優遇税制とか認定NPO制度とかいろいろ工夫してきたわけです、超党派で取り組んできたわけでありますけれども、そういった地道な努力をしても、やはり寄附金が一番集まりやすいのは、国際援助の世界でいうとユニセフ協会だったりするわけですね。ブランドネームのある大きな組織の方が簡単にお金を集められてしまうということは、もしJICAが本格的に寄附金を集め出すと、本来小さなNGOに行っていたような寄附金まで含めてごっそりJICAの方に集まってしまう、そういう懸念が民間NGOの方から寄せられております。

 一言で言うと、JICAみたいな独法が、小さな市民団体が集めるはずの寄附金まで集めてしまうのは、民業圧迫以外の何物でもないということが言えると思います。ちっちゃなNGOでは、とてもJICAのキャパシティーとブランドにはかないません。

 そういった意味で、こういったJICAによる寄附金集めを本格的にやっていくというのは私は望ましくないと思いますが、外務省の見解をお尋ねします。

渡邉政府参考人 お答えいたします。

 日本がオール・ジャパンの国際協力を官民一体となって積極的に推進していく上で、国民の皆様の御理解と御支持を得ることは極めて重要でございます。寄附を集めさせていただきますのは、国民の皆様に国際協力を身近に感じ、関心を持っていただく上でもよい活動であり、国際協力に対する支持を広げるために有意義だと考えます。

 JICAに寄せられた寄附金は、JICAが運営費交付金で行う事業自体に使われるものではなく、主としてNGOなどの活動を支援するために使われることになっております。平成二十年度には、寄附金活用事業としてNGO九団体に資金が配分されたと承知しております。ODA予算が大きく減少する中、国際協力に携わるすべての人々にとって、国際協力にかかわる資金量を増大させることは極めて重要でございます。

 外務省としては、これまでも資金協力や活動環境整備事業などを通じましてNGOとの連携を進めておりますけれども、JICAの寄附金活用事業等を通じましてNGOとの連携を一層促進しつつ、国際協力のすそ野を広げていきたいと考えております。

 なお、JICAの寄附金の実績でございますけれども、二〇〇七年度は約八百六十万円、二〇〇八年度は約二千二百万円規模でございます。

山内委員 JICAが寄附金を集めて、それをもう一回民間のNGOにまた配分していくということは、本当は民から民へお金が流れたらいいのに、間にJICAという官が入ってインターセプトしてもう一回民間に流すという非常に効率の悪いことをやっているわけでありまして、それにかかる管理費を考えると、決して割に合うやり方ではないと思います。

 そもそも、NGOがまたJICAからお金を助成してもらうときに、簡単に言えば、頭を下げてJICAからお金をもらわなくてはいけない、またしても官に対する依存というか、JICAに対してますます頭が上がらなくなってしまう。そういう状況を考えると、やはりこれも官の肥大化につながっていくということが言えるのではないかと思います。

 例えばユニセフ協会なんか、ああいう大きな組織は、寄附金を年間大体百六十何億円も集めるわけでありますけれども、それにかかる管理費とか宣伝費とかがやはり十数%。普通、NGO業界の標準でいうと、寄附金を集めて管理費に二割ぐらいというのがいい団体の標準なんです。そういう意味では、その管理費分を考えると、JICAの非常に人件費の単価の高い職員が寄附金を集めるというのは、余り割に合いません。

 大体、NGOで寄附金集めをやっているスタッフというのは、年収でいうと三百万いかないぐらいの人がほとんどであります。そういう人たちが自分の年収の何倍か寄附金を集めてやっとNGOを運営しているというのが多くの団体の普通の姿であります。

 それに対して、JICAの職員がJICAという大きなネットワークとブランドネームを使って寄附金を集め、そこで管理費もかかって、それをさらにもう一回NGOに戻すということであったら、こんなことはやらない方がよろしいのかなというふうに思います。

 今もう既に始まっている事業をこれからすぐやめろとは申しませんが、JICAが一生懸命寄附金を集めるということは、民間の市民団体、草の根のNGOの発展を阻む可能性があるということを認識していただいて、これ以上余り積極的に寄附金集めをやらないようにお願い申し上げます。

 政府の見解をもう一度お願いします。

渡邉政府参考人 国際協力に国民各層の関心を広めていくためには、多様な寄附の受け入れ窓口があることには意義があると思います。

 必ずしも寄附者をJICAとNGOで奪い合うという問題ではないと認識しておりますけれども、先生御指摘のような、一部のNGOの皆さんに御指摘のような御意見があることも踏まえまして、JICAとしては、積極的な寄附の募集のPRに努めるといった行動は抑制していると承知しております。

山内委員 以上で質問を終わります。

河野委員長 次に、鈴木馨祐君。

鈴木(馨)委員 きょうは、質問の機会をいただきましてありがとうございます。自由民主党の鈴木馨祐でございます。

 中曽根大臣が就任されて、こちら外務委員会で質問させていただくのは初めての機会になります。ぜひともよろしくお願いいたします。

 まず、在沖の米軍でございますが、なぜ沖縄に米軍がいなくてはならないのか。本来的に言えば、一切いない方がいいわけであるのは現実であります。しかしながら、実際の国際情勢あるいは日本を取り巻く安全保障環境を考えれば、必要最小限の中でもやはりそういった展開がやむを得ず必要である、それが今の現状なんだというふうに思っております。

 そういった中で、三日前の十一時半ですか、北朝鮮からミサイルの発射がされました。そういった中で、日本を取り巻く安全保障環境も非常に大きく変わりつつある、そんな中だと思います。

 まずもって、日本にとってのリスクは何なのか、脅威が何なのか。これから短期的、中期的、長期的にやはりいろいろなリスクのことを考えていかなくては在沖米軍の適正な規模というものも恐らくはわからないんだろうというふうに私自身感じているところでございます。

 そこで、そういった観点から、今の我が国を取り巻く安全保障環境のファクターということで、最初に北朝鮮に関する事項について質疑をさせていただきたいと思います。

 わずか三日少々がたったわけでありますけれども、やはりいろいろと、世間的にもあるいは報道的にも、ともすると、無事に済んでよかった、そういった形の反応というものもあちこちに見られているのが今の現状です。

 しかし、長い目で見て考えれば、実際にミサイルの実験は、少なくとも一段目においては成功裏に終わったわけでありまして、そういった意味では、日本に対する脅威というものはますますふえてきた、そういう評価をせざるを得ないのが今の現状だと思います。

 そういった中で、従来から言われているところで、これが長距離の核兵器なりなんなりを運ぶ手段であるミサイルと、そして核の小型化、弾頭にきっちりとつけられるような大きさへの小型化というものが一緒になってしまえば、東アジアそして日本を取り巻く安全環境というものは劇的に変わってしまうわけであります。

 そのことを考えれば、今我が国として恐らくはやっていかなくてはいけないことは、北朝鮮がこうした核の小型化というものを成功するような、例えば資金の流入であるとかあるいは技術の流入であるとか、こういったことについてきっちりとした実効性のある対策というものを国際的にとっていかなくてはいけない、それが今の現状なんではないかという認識を私自身は持っております。

 そこで、よく報道でもされております国連決議の二〇〇六年の一七一八、これは制裁のメニューが幾つもあった決議でございますが、実際どの程度の実効性があったのか。

 今お手元にお配りをしております紙、英文で恐縮でございますけれども、ここの十一というところの内容は、言ってみれば、三十日以内に安保理の各加盟国が、参加国が今の制裁の実行状況について報告をしなくてはいけない、そういった事項であります。そして、その下のものが、九十日ごとに今の検討状況あるいは進行状況というものをきちんと報告しなくてはいけない、そういった事項だったわけであります。

 この報告内容、これは主要国だけで構わないかと思いますけれども、一七一八において定められていた制裁のメニュー、これは数多くあると思いますけれども、そこは実際どの程度きちんと遵守をされて、実効性があったのか、そういった観点から、この一七一八の遵守状況について、特にこの第十一項の報告を中心に、政府参考人の方から、外務省からお答えいただければと思います。

    〔委員長退席、三原委員長代理着席〕

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども承知しているところによりますれば、我が国はもちろんでございますけれども、アメリカ、カナダ、それからヨーロッパ諸国、オーストラリア、ロシアといった国々は、この千七百十八号に基づきまして、軍関連あるいは核、ミサイル、大量破壊兵器計画関連の特定品目の輸出禁止、それからいわゆる奢侈品の輸出禁止、こういった措置を既に実施しております。また、中国、韓国もこの決議に基づく措置を実施したということを表明しているところでございます。

 御指摘のとおり、主文第十一で、各加盟国に対して、そのとった措置についての報告が求められております。この規定に基づきまして、これまでのところ七十三カ国一機関、一機関はEUでございますけれども、これらが報告書を提出しているということになっております。

 それからまた、第十二パラというところで、国連制裁委員会に対して、この作業とこの決議に基づく措置を強化する方法の評価それから勧告、これを九十日ごとに報告するということを求めているところでございますが、これまでこの期間内に計九回こういった報告が行われて、各国の報告書の提出状況について国連に対して報告が行われたというふうに承知をしております。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 ちょっと細かいところになりますけれども、今の中国の報告の状況についてでございますが、これは報告が既に出てきていて、それぞれのメニューについて実効的な対策がされているという報告が出てきたという認識でよろしいでしょうか。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 中国でございますけれども、中国は安保理決議第一七一八号に基づく義務を履行するため、関連する国内法令に基づいて具体的な措置を実施しているということを明らかにしておりますが、他方、その具体的な措置の内容につきましては、中国自身が対外的には公表していないというところでございます。

鈴木(馨)委員 今の御報告のとおりだったと思うんです。実際、中朝の国境あるいはお金の流れを見ても、完全に、一七一八の効果が十分に上がったとは言えない状況も一部にあったんだというふうに思っております。実際、その後、いろいろな制裁にもかかわらず、さまざまな形の実験がされて、あるいはミサイル技術についても明確な進歩が見られた。これは、まさにその証左でもあると思うんです。

 先ほど、中国について一つの例として挙げていただきましたけれども、細かい細部についての具体的なことというものはオープンにされていない、そういった状況で恐らく効果が十分かどうか測定するというのは難しいと思いますけれども、ある意味で中途半端なというか、そういった形になってしまった理由ですね。今回まさに国連決議の議論をしている最中でございますので、今回同じようなことを繰り返すわけにはいかないんだというふうに思います。そういった意味で、こうなってしまった理由というものをどのように分析されていますでしょうか。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 一概に一つの理由というふうに絞ってお答えすることは困難だと思いますけれども、今回こういった中で北朝鮮が安保理決議一七一八号に違反する行為をはっきりと行ったわけでありまして、まずこのことに対して国際社会が毅然と対応することがぜひ必要だと考えております。

 日本政府としては、この機会に改めて、すべての国連加盟国が安保理決議一七一八号に基づく措置を完全に実施することの重要性ということを強く訴えたいと思っております。

 そのようなことも踏まえて、我が国としては、今回の発射を受け安保理決議を採択することが望ましいという考え方であり、引き続き関係国との協議にできる限り努力をしていくということでございます。

鈴木(馨)委員 まさにおっしゃるとおりでございまして、これからどういった形をつくっていくのか、まさにそれが一番大事なんだというふうに私も思うところであります。

 そこで、今回の北朝鮮の事案については、関連国というとある程度、当然限られるわけでございまして、六カ国協議の参加国ということになるのかというふうに存じます。

 そういった中で一つ、これは知られているのか余り知られていないのか、そこら辺は定かではありませんが、お手元にお配りしております資料の下の方の文書ですね。中朝友好協力相互援助条約、一九六一年に締結された条約でございます。以前、私も中国にお邪魔して、党の外交のかなり上のクラスの方とお話をした際にも、この条約というものはやはり当然見直しなんということは考える余地もない、そういったような反応も得たところで、これはまさに今生きている条約なわけでございます。

 その中で、いろいろな条項があるんですが、第三条という、下に抜粋をしたところでございますけれども、「いずれの締約国も、他方の締約国に対するいかなる同盟をも結ばず、また、他方の締約国に対するいかなるブロック、行動又は措置にも参加しない。」と。今回のケースでいえば、中国は北朝鮮に対するいかなるブロック、行動または措置にも参加しないということを、この条約の中でも明確にうたっているわけでございます。

 そういった状況の中で、国連決議の一七一八、これは考え方次第だと思いますけれども、その一七一八に署名をして、実際それを行動に移せば、ある意味でこの条約との整合性というか、そこにも問題が出てくるような環境にあるのではないかというふうなことをやはり考えざるを得ないわけでありますけれども、そこの点について国際法的にというか、この整合性、あるいは今の中国の置かれている状況を外務省の方から御説明いただけますでしょうか。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、中朝友好協力相互援助条約でございますが、我が国が条約の当事国ではないということで、我が国政府としてこれを有権的解釈する立場にはないということは御理解をいただきたいと思います。

 その上で、今委員御指摘のとおり、同盟関係と思われるような条文もこの中にも入っておりますが、中国の外交部はかつて、同盟国であるというのは正しくないということも言ったような事実がございます。

 ただ、いずれにしましても、国連安保理決議との関係で申し上げれば、中国ももちろん国連加盟国でありまして、安保理決議に従う義務がございますし、先ほど答弁申し上げましたように、現に中国はこの決議に従って必要な措置はとっているという立場を表明しておるところでございます。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 確かに、国連の決議と二国間の条約ということで、その優劣というか、これをどうやって整合させるかというのは、恐らく中国の当局者もとても苦労をしているのではないかなというふうに思うところであります。

 そして、ロシアと北朝鮮の間でも、これは軍事条項はないものの、似たような形の友好条約的なものも結ばれているという状況があるのが現実のところであります。

 そんな中で、今これからどういった決議を国連の場で我が国として求めていくか、そういったことにもこの事実というものは関係してくるのかと思いますけれども、そういった中で、やはり今とても厳しい状況になっているんだというふうに私自身も思うんです。

 というのは、安保理の決議ということであれば、中国、ロシアという国もこれは拒否権を持っている国であるわけでございまして、棄権ならいざ知らず、反対をされてしまいますと、これは決議も成り立たないということになってしまうわけであります。

 しかし、その一方で、核の小型化初め核実験、あるいはさらなるミサイルの発射、そのリスクに一番さらされているのは、沖縄も含めてこの日本でございます。そういった意味でいえば、我が国としては、こういったことがされないような実効的な措置もとっていかなくてはいけない。

 そういった中で、これからの国連における戦略ということで一つ伺いたいんですが、これは二つの考え方が恐らくはあるのかなというふうに思います。

 一つは、多少ハードルを下げても、全会一致という形で、国連全体が北朝鮮に対して明確なメッセージを発するという問題。もう一つは、内容にあくまでこだわって、きっちりと我が国の安全保障環境というものを守れるようなハードルを維持した上で、国連というオープンな場で、オフィシャルな場で、どこの国が反対をしたのか、そういったことを明らかにするという方法も一つはあるのかなというふうに考えております。

 特に、議長声明やプレス声明であれば、これは全体で一致をして出さなくてはいけないわけでありますけれども、国連決議ということでありますと、これは賛否というものがはっきりするわけでございます。

 そういった中で、今、政府の方針がどうなっているのか私は詳しくは存じないわけではございますけれども、しかし、報道によれば、やはりあくまで全体で、全会一致の形を、ある程度ハードルを下げてもまとめた形にしていくというような報道もあるわけでございますけれども、もしそういった方向でいくのであれば、そうする意義は何なのか。あるいは、そうではないのであれば、そうするメリットは何なのか。そういった点について大臣に御答弁をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

中曽根国務大臣 今回の北朝鮮の発射につきましては、もう申し上げるまでもありませんけれども、安保理決議違反ということで私ども強く抗議をし、そして国連の場において決議を目指して今各国と議論を行っているところでございますが、委員おっしゃいますように、これは今後の決議なり対応を講じていく場合においては、やはり国際社会全体の明確な意思というものを示すことも当然大事でありますし、またもう一つは、実効性のある内容のものにするということが大事でありまして、いわば両方が備わっているということが一番いいわけでございます。

 我が国の要請に基づきまして、五日以降、安保理におきまして、精力的に、非公式協議におきましても、また常任理事国と我が国を加えました会合におきましても議論が行われておりまして、我が国としては、この我が国の立場というものを強く主張しているところでございます。

 大変まとまるのが難しいような状況になっておるようでございますけれども、また、具体的な現在の交渉の内容については、今進行中でございますので差し控えさせていただきたいと思いますけれども、安保理として明確な、そして強いメッセージが出るように、引き続いて関係国との間で協議をしていきたいと思っております。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 本当に大変な交渉なんだというふうに思っております。

 そういった中で、今回に関しては、やはり北朝鮮がこうした核あるいは核ミサイルというものを持つのに大きく前進したというふうにも言えるわけでありまして、やはり失敗は許されない。そして、大臣おっしゃいますように、本当の意味で実効性がある、そういった対策というものを国際社会としても出していかねばいけないんだというふうに思っております。そういった中で、これは本当に、のど元過ぎればではありませんけれども、国際社会が注目をしているうちに、やはりある意味で熱いうちに一刻も早く結論を出していただけるように、今後とも御努力をしていただけるようにお願いを申し上げたいと思います。

 そして、加えまして、やはりこの問題は非常に複雑な問題でございますけれども、今の北朝鮮という国のあり方を考えれば、これは中国の影響力というものは決して無視はできないんだと思うんです。影響力がないというようなこともよく言われますけれども、しかし、実際に資金のルートやあるいは原油、こうしたエネルギーのルートを考えてみれば、ここに大きな力があるのは事実でございまして、そうした中国の出方と、先ほど友好条約のことを申し上げました。彼らも、彼らのメンツとそして本音というものがやはりこれはあるんだと思います。そういった中で、ぜひとも、今後とも、今までにも増して、我が国の今の状況、いい打開策となるような決議に導いていただきたい、そう思っております。

 今週断続的に開かれております安保理の臨時会合あるいは会合でございますが、今後の見通し、触れられる点がもしございましたら、副大臣の方からもお聞かせいただければと思います。

伊藤副大臣 今大臣から答弁いたしましたように、五日開催された安保理の非公式協議においては、まず我が国より、今回の北朝鮮の行為に対し、国際の平和と安全の維持に主要な責任を担う安保理が決議を採択することが望ましいという立場を強く訴えたところでございます。それから何回か開かれておりますけれども、その協議の中身は非公開でございますので、それぞれの国の具体的な発言内容について詳しく説明、言及することは避けますけれども、種々の意見が表明されました。

 協議後の記者会見において、例えば米国は、北朝鮮の発射は安保理決議の明白な違反であり、安保理による明確かつ強い対応に値すると表明し、また、今委員から御質問のあった中国は、安保理の対応については慎重かつつり合いのとれたものであるべきと述べたと承知しております。

 いずれにいたしましても、安保理での議論の結果について、現時点ではまさに予断ができない状態でございますけれども、安保理が一致した強いメッセージを迅速に出せるように、日本としては引き続き関係国との協議に戦略的に、また精力的に対応してまいりたいと思います。

鈴木(馨)委員 よろしくお願いいたします。

 では、話題をかえまして、この在沖の話の根っこにあります日米同盟というか、この日米の関係性についての質疑をさせていただきたいと思います。

 まず、三月の二十七日ですかね、三月の終わりにこういった、毎年アメリカのペンタゴンが議会に対して出している、中国の軍事情勢に関するレポートというものが発表されました。その中で、新しい航空母艦の建設の話であるとか、あるいは、一万三千キロという射程ですから、アメリカ全土を射程におさめた新しいICBMの話、こういった中国の意図がわからない軍拡の件、こういったものも非常に大きな懸念を表明されていたところであります。同時に、先ほどから申し上げております北朝鮮のミサイル技術の向上。こういったさまざまな軍事情勢の変化というものが、ここ一年、二年、急速に明らかになっているわけでございます。

 そうした近隣諸国の軍事情勢というものが我が国の安全保障、あるいは東アジア、さらに言えば日米同盟、こういったものに与える影響というか、そういったリスク評価について防衛省の方から伺えればと思います。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 ただいま先生御指摘になりましたように、アメリカは中国の軍事力について公表いたしましたけれども、私どもとしても、周辺諸国の動向には非常に関心を持っているところでございます。

 それで、まず中国でございますけれども、核・ミサイル戦力もございますけれども、全般としまして、国防費を二十一年連続で一〇%以上伸ばしているというようなことで、全体に軍事力の近代化が推進されているというふうに考えております。

 この中で、軍事力の現状や将来像というのがなかなか明確になっていない、安全保障や軍事に関する意思決定プロセスも透明性が十分に確保されていないというふうに中国については認識をしておりまして、私どもとしては、中国が国防政策や軍事力に関する具体的な情報開示などを通じて一層透明性を高めていくということを強く言ってきているところでございます。

 それから、北朝鮮につきましては、軍事面にその資源を重点的に配分しておりまして、核を初めとする大量破壊兵器や弾道ミサイルの開発や配備に努めているというのが実情でございます。今回の一連の活動もございますけれども、もしこういった開発が進めば、弾道ミサイル能力、あるいは核兵器の開発ということと相まって、我が国のみならず、東アジアあるいは国際社会の平和と安全に対する重大な脅威であるというふうに認識をしております。

 いずれにいたしましても、こうした状況に対して、事態に適切に対応できる自衛隊の体制の構築に努めるとともに、日米安保体制の実効性をさらに高めるということが非常に重要ではないかというふうに認識をしているところでございます。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 本当に、今こういった形で安全保障の環境も大きく変わっている中でございます。

 そういった中で、アメリカのゲーツ国防長官、これは三月二十九日にFOXテレビの中で発言をしているわけであります。これはいろいろな形で報道されて、やや報道が先行しているところもあるかと思いますけれども、アメリカの本土に来たもののみを迎撃する、そういったニュアンスもあったようでございます。

 これは他国の高官の発言でございますので、実際の意図というのはおっしゃりにくいかと思いますが、これまでのいろいろな関係性などから、この真意というか、誤解をある意味で解いていただけるようなことが必要かと思いますので、その意図について大臣の方から、よろしくお願いします。

中曽根国務大臣 今委員が御紹介されましたゲーツ国防長官の御発言は、お話ありましたように、三月二十九日ですか、米国のFOXニュース・サンデーに出演したときの御発言と承知しておりますが、委員からお話ありますように、お尋ねの、長官がいかなる意図でそういうような発言を行ったのかについて、私自身がコメントする立場にはございませんが、長官自身は浜田防衛大臣との間でも電話会談などを行いまして、今回の北朝鮮の事案につきましても、日米で緊密に連絡をとって、そして冷静に対応していこうということを確認しているわけでございます。

 我が国は、弾道ミサイルなどへの対処につきましても、さまざまなレベル、分野において情報交換等をやってきているわけでありますが、実際、四月五日の北朝鮮によります飛翔体といいますかミサイルといいますか、あれの発射のときも、自衛隊と米軍の間で大変緊密な連携が行われて、無事に、大きな問題はなかったわけであります。

 御発言の文言をちょっと御紹介させていただきますと、キャスターというんですか、それの質問に対して、もし軌道をそれたミサイルがあって、もしハワイに向かってくるようなミサイルがあれば、もしハワイに向かってくる、もしくはそれに類する事態であるように見える場合には、それを検討するかもしれない。つまり、これは迎撃と思われますけれども。しかし、現時点ではそのようなことをする計画は有していないと思うと述べたということでありまして、まさに委員がおっしゃいましたように、本土に対する危機が迫った場合ということを述べていることでございまして、自国のみを防衛する、そういう意図で御発言されたものではない、私はそういうふうに理解をいたしております。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 まさに今、日米同盟が両方のサイドから、これは沖縄の皆様の御負担ということも含めまして、いろいろきちんとやはり考えていかなくてはいけない時期になっているんだと思います。そういった中ですから、こうした国防長官の発言というものがいろいろな誤解をされていたということが実際にあるのも現実でございますので、そこについては何らかの機会で、こうした発言についてはお気をつけいただけるようにということを大臣の方からもお伝えいただければというふうに思います。

 時間も迫ってまいりましたので、本当はここで、アメリカがトランスフォーメーションの中で、在沖の米軍も含めて、今後どういった方向性で考えていくのか、あるいは撤退する可能性もあるのかなどなど伺いたい点もあったわけでございますけれども、あとわずか数分ということでございますので、最後に一問。

 今申し上げましたのは、これは日米同盟の根幹にかかわる問題だというふうに思います。同盟というのは、考えてみれば一枚の紙にすぎないということもあり得るわけであります。そこを実際に実効性があるようにするためには、同盟国の両サイドがきちんとそのメンテナンスというものをしていかなくてはいけない。これは、アメリカにおいて沖縄の現地の感情というものに十分に配慮をしていただく、十分過ぎるぐらいの配慮をしていただくというのも当然の要求でございますし、その一方で、我が国としても、これはアメリカの世論が、自分たちが危険にさらされているのに何で日本を守らなきゃいけないんだ、彼らは何をしてくれるんだ、そういった世論が起きないような形の仕組みをつくっていくこともまた大事なのかなというふうに思っております。

 そういった中で、やはり我が国の今後を考えれば、日米同盟を基軸とせざるを得ない以上、集団的自衛権ということもある程度議論をしていかなくてはいけない、これは政治のサイドも含めてですけれども。そういうことを考えるわけでございますけれども、今の時点での大臣のその点についての御感想というものを最後にお伺いしたいと思います。

    〔三原委員長代理退席、委員長着席〕

中曽根国務大臣 従来から政府は、この集団的自衛権の行使ということにつきましては、憲法上許されない、そういう解釈をとってきているところでございまして、現在でもこの立場は変わっておりません。しかし、本件は、今お話ありましたように、極めて重要な問題でございます、課題であります。今までさまざまな議論もありました。そういうことを踏まえまして、その解釈につきましては今後十分な議論が行われるべきものと私は考えております。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 時間となりましたので、質疑を終了させていただきます。ありがとうございました。

河野委員長 次に、伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉でございます。

 今、北朝鮮のミサイルの発射という暴挙について時間を割いて質疑をしていただきましたので、私も冒頭一点だけ。

 本当に今回のこのミサイルの、ミサイル、飛翔体、どっちかよくまだ……(発言する者あり)ミサイル、はい。この発射、本当に許されざる行為だと。それに対して国連としての決議を取り決めていくに当たって、中国、ロシア、こういったところがなかなか共通の認識に立てていない。これに対しての打開、これは先ほど来大臣から御答弁いただきましたので、私の方は質問から省かせていただいて、日米同盟を取り巻く環境という意味で、アジア地域、特に北東アジアと米国の関係、これが大きく影響をしてくると思います。

 そういう意味で、日本はアジア地域での信頼をさらに高めて、そのリーダーとしての役割を強化していかなければいけない、こういうふうに私は考える次第でございますけれども、現状の認識と今後の取り組みについて大臣にお伺いいたします。

中曽根国務大臣 今委員からお話ありましたように、アジアにある日本はアジアの発展とともに発展していく、アジアが平和で安定していなければ日本の平和の安定もないと私は思っております。また、アジアが豊かで、そういう繁栄するアジアであることが大切でございますが、我が国は、そういう中におきまして、日米同盟を基軸といたしましてアジア各国とともにそういうようなアジアを築いていきたい、そういうふうに考えているところでございます。

 昨年の十二月に、御案内のとおり、麻生総理は、従来はASEANの会議などのときに日本と韓国と中国の首脳の会議がその場で、開催場所で同時に行われておりましたけれども、それとは独立した形で、初めていわゆる日中韓サミットを福岡で開催いたしました。そして、国際金融危機などの共通の課題に対して取り組んでいくということで一致をしたわけでございまして、そういう意味では、アジア地域の安定と繁栄のためにこの三カ国が協力をしてリーダーシップをとっていくということは大変大事であり、またいい会議であったと私は思っておるところでございます。

 また、この地域の大変大きな懸念であります北朝鮮の問題でございますが、これにつきましては、先般のホワイトハウスで行われました日米の首脳会談、あるいはクリントン国務長官と私との会談などを通じまして、今後北朝鮮の問題は連携して対応していくということで一致をしたわけでありますが、我が国といたしましては、拉致の問題、核の問題、ミサイルの問題、これを包括的に解決していく、そのためにも各国の理解をまた求めているところでございます。

 さらに、今週末でございますが、タイのパタヤでASEAN関連首脳会議が開催されることになっております。総理が御出席され、私自身もこの機会に出張する予定でございますけれども、この会議におきましては、当然のことながら、現下の国際金融の問題、経済の問題、それへの対応、これが主要議題になると思いますが、私どもとしては、アジアの諸問題についてもリーダーシップを発揮しながら、また特にアジア各国の取り組みを支援するようなそういう支援策をこの会議で表明していきたい、そういうふうに思っているところでございます。

伊藤(渉)委員 本当に我が国は、国自体小さいですし、人口も世界的に見れば大変小さな国。しかし、ここまで発展を遂げてきたのは、やはり隣国またアメリカとの同盟、その国と国の関係を大事にしてきたからこそこの今の現状があると思います。よって、引き続き、さらなる発展を遂げるためにも、ぜひこのアジア地域におけるリーダーシップを強化していっていただきたい、そのように思います。

 では、在沖海兵隊のグアム移転にかかわる協定の方に入らせていただきますけれども、まず基本中の基本、何度も確認をさせていただいている内容かと思いますけれども、この協定を取り決めていく上で、私は、我が国にとって基地の負担が最も過重になっている沖縄の負担の軽減、これはもう絶対に避けられない、それでなければやはりこの協定を進めていく価値は本当になくなってしまう、そういうふうに思います。

 一方で、抑止力の維持、これも防衛という観点から避けては通れない。文字どおり二律背反するこの条件をどう満たしていくのかということが問われているわけですけれども、改めて大臣の御認識、御見解をお伺いいたします。

中曽根国務大臣 在日米軍の再編、これを進めるための協議におきましては、日本側からは、抑止力を維持しながら、特に沖縄の負担を軽減することの重要性を強調してきたところでございます。

 在沖縄海兵隊のこのグアムの移転というのは沖縄の負担軽減を実現する一つの措置であると思いますけれども、これを行う場合にも、沖縄に現在よりも縮小された一定規模の海兵隊を配置して即応態勢を維持しておく、そういうことによりまして、海兵隊はグアムへ移転を行いますけれども、これは全部ではありませんが、そういうことによって抑止力を維持することができる、そういう認識を日米が共有するに至ったものでございます。

 また、海兵隊の要員は、グアムに移転した後でも、在日米軍とともに我が国の平和、極東の平和そして安全の維持に重要な役割を移転した後も果たしていくということになります。

 このように、政府といたしましては、抑止力の維持とそれから沖縄の負担の軽減、この二つは両立が可能であると考えておるところでございまして、沖縄の住民の皆様が強く希望されておられます在沖縄海兵隊の移転の速やかな実現が可能となるように努力をしていきたいと思っているところでございます。

伊藤(渉)委員 これまでの審議の中でも、この中である第三海兵機動展開部隊の定員を一万八千人からマイナス八千人して一万人にすると。きょう午前中の参考人の質疑の中でも出ていましたけれども、伊波市長が、海兵隊の現在の実員数は一万三千人ぐらいだ、そういうこともおっしゃっていて、これまでもこの委員会の中で、実際に何人いるんだとか定数はどうなんだとか、そういう話がずっと進んできているわけですが。

 これは改めて、海兵隊はこれまで一番多いときで何人ぐらいいたのか、また少ないときでどれぐらいだったのか、また、その変動がどれぐらいの時間的スパンで発生をするものなのかということ、また、在沖縄の海兵隊が守っている守備範囲、これはどこまで、どういったエリアになるのかということをまずお伺いいたします。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国全体に駐留をいたします海兵隊の実員数について申し上げますと、過去五年間の数字をとってみますと、最も人数が多かったのは二〇〇三年九月末時点の一万九千二百六十八名、また、最も少なかったのは二〇〇八年九月末時点での一万四千四百五十七名というふうに承知をしております。

 在日米海兵隊の実員の変動幅及びその期間に関しましては、特定の数字を申し上げるということはなかなか難しいわけでございますが、その実員数というのは部隊運用状況に応じ常時変動しておるということでございます。提出をさせていただきました資料でも、毎年の数字ということで、千のオーダーで一年ごとに変わっているというものがあるということでございます。

 また、お尋ねのありました沖縄の海兵隊が責任を有する地域ということでございますが、沖縄におります海兵隊は、日米安保条約第六条に基づきまして、我が国及び極東の平和と安全の維持という目的のために我が国に駐留をしているわけでございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 よって、変動するものだからこそ、私は、負担の軽減という意味で定員、定数を一万人、上限一万人にする、これが、今の話でいけば、一万四千人のときなら四千人の削減になるし、最大の一万九千人のときなら九千人の削減になる、いずれにしても負担の軽減になるというふうに理解をし、だからこそ、この協定は基地負担の軽減という沖縄の県民の皆様方の願いにもかなうものだ、こういうふうに理解をしております。

 一方で、抑止力の維持という観点で少しお伺いをしますと、マイナス八千人、定員一万八千人のうちマイナス八千人というのは、これは四四%ぐらいに当たります。そうすると、在沖海兵隊の中の第三海兵機動展開部隊、この役割、構成、これがどう変わるのか、また、その背景あるいは原因はどういうものを想定してこういうことが抑止力の維持という観点から可能になっているのか、これをお伺いしておきたいと思います。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 在日米軍の再編に係る協議というのは、何年間もかけて相当詳細にわたる協議を行いました。その中で、これは非常に高いレベルで我が国の方からは、抑止力を維持しながら特に沖縄の負担を軽減するということが重要であるということを強調してきたわけでございます。

 そこで、沖縄海兵隊のグアム移転でございますけれども、これはロードマップにもございますように、第三海兵機動展開部隊を移すわけでございますが、「第三海兵機動展開部隊の指揮部隊、第三海兵師団司令部、第三海兵後方群司令部、第一海兵航空団司令部及び第一二海兵連隊司令部を含む。」ということでございます。これは、海兵隊が、現在、機動展開部隊、師団の規模であるものを旅団の規模に縮小する、しかし、いろいろな機能は沖縄とグアムに適切にバランスを持って配置して、そして、一たん緊急事態ということで海兵隊が迅速に動かなければならないときに、いろいろな輸送力、いろいろなものを組み合わせまして抑止力に遺漏がないようにということで現在の案になっている、こういうことでございます。

伊藤(渉)委員 これもきょう午前中の参考人の方にもお伺いをしたんですけれども、言われていたのは、朝鮮半島等での危機の発生のリスクは下がっているとか、そういったことも要因にあるんじゃないかというふうにおっしゃっていました。

 ただ、一方で、現実に日本にいる海兵隊の数を減らすわけですから、日本はアメリカ以外の国から見たときに果たして抑止力が維持されているとちゃんとプレゼンスができるのかどうかというところを若干不安視しておりまして、そういう意味で、この抑止力の維持ということが何をもって担保されていると政府として判断をされているのか、これをお伺いしたいと思います。

中曽根国務大臣 先ほどの私の答弁、また今の政府参考人の答弁とも重なりますけれども、海兵隊のグアム移転は行いますけれども、現在よりも縮小されました一定規模の海兵隊は沖縄に残るわけでございます。そして、即応態勢というものを維持していくことによりまして抑止力が維持できるだろうということを日米で共有して、今回こういう形になったわけでございますが、グアムに海兵隊が移転いたしました後でも、在日米軍とともに我が国そして極東の平和と安全、その維持に重要な役割を果たしていくということになります。

 したがいまして、政府といたしましては、在沖縄海兵隊がグアムに一部移転をいたしました後でも抑止力は可能である、そういうふうに考えているところでございます。

伊藤(渉)委員 抑止力というのは目に見えないものなので、そこのジャッジは非常に難しいわけですけれども、その辺を慎重にアメリカとの協議を進めていただきたい、そうお願いをしておきます。

 一方で、沖縄の負担の軽減という意味で、先ほど来申し上げているとおり、八千人の定数の削減をする。人が、実員、例えばきょうの午前中の話で、今いるのは一万三千人ぐらいだという話もあったりして、そうすると、三千人が実際には減るのかなと。この人数だけですと、ただ、具体的にどう沖縄の負担が減るのかというところが実は見にくいわけで、そういう意味で、定数の削減に伴って具体的にどのような負担がどう軽減をされるのか、これが県民の皆様にとっては一番関心の高いところだと思いますので、できるだけ具体的にこの点の御答弁をいただきたいと思います。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 海兵隊要員と家族が移転をするわけでございます。今委員も御指摘のとおり、この実数というのは常に変動するということがございますので協定には明記していないわけでございますが、しかし、実数が変動するに当たりましても、その変動のベースになっておりますのはやはり定員でございます。したがって、定員を大きく減らすということにより、やはり実数も減るであろうと。その実数の減り方については、今、どこの定員が充足されているのか、されていないのかということによって、なかなか一概には申し上げられないわけでございますが、いずれにしても、一万八千人から一万というふうに定員を減らしますので、私ども、実数の削減についても相当大きな意味があるだろうというふうに思っております。

 また、この海兵隊要員とその家族が移転をいたします。定員ベースで大きく減るということは、そのために必要であります施設というようなものもこれは減らすことができる。したがいまして、この施設・区域の統合、返還ということは、これをうまく集約することによって可能になるであろうということでございまして、具体的には、人口密集地が多くて経済的にも使いやすい嘉手納以南の施設・区域、これは五つの施設・区域の八百九十五ヘクタールの全面返還、それから、キャンプ瑞慶覧につきましては部分返還ということを目指しているわけでございます。この返還が実現すれば、これは七二年の沖縄返還以降最大の規模のものであるということでございまして、これは沖縄の経済振興にとっても大きな機会を提供するのではないかというふうに思っております。

 また、先ほど来御説明を申し上げておりますけれども、在日米軍駐留経費の面におきましても、これは削減要因になってくるというふうに考えているわけでございます。

伊藤(渉)委員 私は、その定員を削減するということは負担の軽減になる、それはもちろん理解をした上で、今具体的な中身をお聞かせいただきました。

 一方で、沖縄県内という意味では、名護市の辺野古沖、その周辺の方にとっては、やはり負担はふえてしまうんだろうということはありますので、今環境のアセスなども行われている、本当にここは地域の方の声をよくよく聞きながら慎重に進めていただきたい、これもお願いをしておきたいと思います。

 また一方で、基地と沖縄の、またその周辺の皆さんの生活というのは、非常に大きくかかわっていると思います。ある意味で、この基地が、例えば普天間の基地が移転をすることによって、その地域の経済にとってはマイナスの影響も出ようかと思います。雇用の機会の減少ということもあろうかと思います。

 こうしたことへの対応も含めて、さらなる沖縄振興に対する、これは決意でも結構でございます、大臣の御所見をお伺いいたします。

中曽根国務大臣 まず、今参考人から御説明いたしましたように、海兵隊がグアムに移転するということによって、あるいは嘉手納飛行場以南の施設・区域が返還されるということによって、大変広い土地などが返還されるということで、その跡地利用を通じまして、いわゆる沖縄の経済の振興にとって大きなチャンスといいますか機会を提供するものになると思っておりますが、一方で、お話ありますように、雇用の問題というものも発生してくるわけでございます。

 この米軍再編に伴う駐留軍などの労働者の方々の雇用の問題につきましては、平成十八年五月三十日付の在日米軍の兵力構成見直し等に関する閣議決定、それから、平成十九年五月に成立をいたしました米軍再編特別措置法におきまして、雇用の安定確保に全力で取り組む、そういうふうにされております。そういうことを踏まえまして、関係省庁が連携して取り組んでいくことが非常に重要だと考えておるところでございますが、引き続きまして、沖縄の皆さんの声にやはり誠実に耳を傾けて、そして、再編が着実に実施していくように進めますとともに、産業の振興、それから雇用の促進、あるいは教育機関の整備などを含みます沖縄の振興、発展のためにしっかり取り組んでいきたいと思っております。

伊藤(渉)委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 とにかく、地域の方が最も望まれること、地域の方のニーズをよく把握してやらないと、せっかく対策を打ってもそれが地域の方に受け入れられないということもあり得ますので、その点は本当によくお話を聞いていただきながら進めていただきたい、こういうふうに思います。

 沖縄の治安という意味で、二つお伺いをいたします。

 先ほどの機動展開部隊の移転、これは司令部要員がグアムに移転をしていく。そうすると、戦闘部の要員、戦う人の要員の割合がふえるので、規律が低下をしてしまうんじゃないかとか、その結果、事件や事故、こういったことの発生がふえるのではないかと、沖縄の治安において少し御心配をいただいている声を聞くわけですけれども、この点についてはどう考えられているのか、また、懸念があれば、それをどう払拭されていくのか、これも政府にお伺いをいたします。

梅本政府参考人 米軍による事件、事故につきましては、司令部要員あるいは実動部隊の要員、そのいずれが統計的に多く起こしているかといったことについては、それを分けた統計がございませんので、なかなか一概にお答えすることは難しいわけでございます。

 ただ、いずれにいたしましても、だれによってということであっても、米軍による事件、事故が発生しているということはまことに遺憾なことでございます。そういうことは許されるべきではないということでございまして、これは、例えば先般、中曽根大臣も、沖縄を訪問されましたときにジルマー四軍調整官に対して、事件、事故の防止ということについて改めて直接申し入れをしたところでございます。今後とも、このような努力は、私ども続けていきたいというふうに思っております。

伊藤(渉)委員 少し早いですが、最後の質問にさせていただきます。

 本協定の前文にあるとおり、「同盟関係における協力において新たな段階」、これがこの協定でもたらされると。であれば、日米両国間の安全保障上の法的取り決めも、未来のための変革を行うべきだろう、そういうふうに思います。

 前の質問とも関係しますけれども、地位協定、これにはさまざま問題があるわけでございます。これまでの多くの悲しい事件、事故、これが発生をして苦しんできたのも、やはり沖縄の県民の皆様でございます。もちろん、雇用の改善は行われてきましたけれども、どこまでいっても対症療法でございますので、事件等の容疑者の起訴前の引き渡し、これにしても、あくまでも米軍側の好意的な配慮、これにゆだねられているというのが現状でございます。

 日米同盟協力が新たな段階に進むこのときに、今までの運用の改善として手当てされてきた部分を改めて地位協定の中に取り込むことも含めて、やはりこのタイミングで地位協定の見直しということも視野に入れて取り組んでいくべきと考えますけれども、大臣にお伺いをいたします。

中曽根国務大臣 この日米地位協定につきましては、かねてからさまざまな意見があるということを私も承知いたしております。先ほど参考人からお話しいたしましたけれども、私も過日、沖縄を訪問いたしまして、改めて沖縄の実情というものを自分の目で確かめました。騒音の問題や、いろいろな問題があります。また、事件、事故の問題もありまして、特に事件、事故の問題につきましては、ジルマー四軍調整官にも、こういう防止について直接申し入れを行いましたけれども、こういうようないろいろな沖縄の県民の皆さんの負担というものをいかになくしていくかというのは大変重要な問題だと思っております。

 こういう観点から、日米地位協定につきまして、政府といたしましては、日米地位協定の見直しということではなくて、その時々の問題につきまして、運用の改善によって機敏に対処していくということを今までも行ってきたわけでありますし、また、それが合理的であると考えているところでございます。

 実際に、刑事裁判手続や、また環境を初めといたしまして、種々の分野において改善の例を積み重ねてきているところでございます。その結果、例えば刑事裁判手続につきましては、一九九五年、日米両政府は、凶悪犯罪を犯した米軍人の身柄を起訴前に日本側に移転する枠組みを設けたところでございますが、このような枠組みのもと、実際に起訴前に引き渡しが行われているのは、米軍駐留国の中では日本だけでございます。

 今後も、目に見える運用の改善というものを、そういう成果が上がるように一歩一歩積み上げていくということが大切であり、また、これが効果的である、そういうふうに考えているところでございます。

伊藤(渉)委員 ぜひ、運用の改善にとどまらず、根本的な地位協定の見直し、これはやはり我が方から言っていかなければ絶対にテーブルにのってこない話題だと思いますので、そこはぜひお願いをしたいと思います。

 沖縄の負担軽減にしても、こうした治安の問題にしても、本当に、自分がその立場だったらどう考えるのか、自分の住んでいる真横に基地があったらどうなんだ、その想像力をとにかく高めながら、沖縄の県民の皆様の心を体して、負担が軽減になるからこそこの協定は断じて進めていかなければならない、そういうふうに最後に申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

河野委員長 次に、鉢呂吉雄君。

鉢呂委員 民主党の鉢呂吉雄です。

 四月三日に続きまして、民主党として質問をさせていただきたいと思います。

 委員長に、まずお願いがございます。

 河野委員長は、今回の沖縄視察におきましても大変な指導性を発揮していただいて、私ども、時間のない中で審議をしております。今の沖縄米海兵隊の定員、グアムにどのぐらい移転するのか等についても、大変時間を食う中でやっておるわけであります。委員長には、その資料も迅速に出せという形になりました。前回の質疑、また沖縄での視察を通じまして、三つほど、委員長にぜひ、外務省に統一見解を、政府見解を出していただきたい、このような取り計らいをお願いいたしたいのであります。

 一つは、この普天間飛行場の移設、辺野古への移設の問題で、アメリカのメア在沖総領事は、この移設ができなければ本協定違反である、こういうふうに言ったわけでありますが、日本の外務省のこの間の答弁は非常にあいまいです。これを明確に政府見解を示してもらう。

 それから二つ目に、私ども民主党も、日本の税金を使うわけでありますから、この税の使い方、その透明性、非常に私ども注目をしておるわけであります。例えば、アメリカ政府は、二〇一〇会計年度の歳出法案、この関係で、アメリカの法案に予算が盛り込まれなかった場合には、これは協定違反になるのかどうか。これも日本の政府見解を求めたい。

 それから三つ目に、その場合には、日本も予算執行を停止するという形で協定上は問題がないのかどうか。この点について文書で政府見解を求めていきたい。

 三十五分しか私の質問はございませんから、まずは、毎回聞けば、外務省は、この協定についても、グアム移設の協定であって、法的な拘束力があるかないかの、あるいはしかし条件だというようなことを言うわけでありまして、これは委員長に、当委員会として、日本の外務省にきちんとした文書における政府見解を求めて、お願いをいたしたいと思います。

河野委員長 それではまず、辺野古への移設ができなければ協定の違反になるかどうか。私も沖縄で、メア総領事が違反になると御発言になるのを聞きました。政府としてどう考えるのか、統一見解をいただきたいと思います。

 二〇一〇年の米国の歳出法案の中で、この協定に必要な米側の歳出が盛り込まれなければ協定違反になるのかどうか、これについても政府の統一見解をいただきたいと思います。

 その場合、日本側が、歳出をしない……(鉢呂委員「予算の執行を停止できることについて」と呼ぶ)予算の執行を停止できるかどうかについて政府側の統一見解をいただきたいと思います。

 この三点につきまして、速やかに文書で御回答をいただきたいと思います。

鉢呂委員 委員長、大変ありがとうございます。

 そこで、順番を違えますが、協定上の関係を最初にやらせていただきます。防衛副大臣北村さんによろしくお願い申し上げます。

 前回、最終盤で、私、途中になりました。いわゆる真水と融資の関係であります。三年前のロードマップにおきまして、真水の部分については、司令部庁舎等、それから学校等の生活関連施設ということについては、そのとおりだという御確認を先般いただきました。

 そこで、この資料を提出、配付をしていなかったですか。(発言する者あり)ありますか。資料の一番目を見ていただきたいんですが、これはロードマップにおける経費の内訳ということでございます。今言った二十八億ドル、「真水」「財政支出」ということで、「司令部庁舎」と書いています。そして三段目に、日本側の負担ということで、「インフラ(電力、上下水道、廃棄物処理)」、そして「融資等」と。この「融資等」、「等」というのは、これは、債務保証というものが入るというようなことで「融資等」でございます。そして、七・四億ドルという形でございます。

 これは、北村副大臣、この形、インフラについては主にこの括弧に書いてあるような三つの項目、こういう形でロードマップ上きちんと明記されている、これだけ確認をいただきたいと思います。

北村副大臣 お答えいたします。

 在沖縄米海兵隊のグアム移転は、我が国政府が主体的、積極的にアメリカ側に働きかけまして、その結果、合意にこぎつけたものである。グアムに移転するに係る我が国の経費負担につきましては、日米間でぎりぎりの協議を行った結果、米国が当初主張いたしました七五%という総額に占める割合ではなくて、我が国は六十億九千万ドル、米国は残りの四十一億八千万ドルを分担することとなったわけであります。さらに、日本側負担六十億九千万ドルのうち、直接的な財政支出、いわゆる真水は二十八億ドルを上限といたしております。米側の財政支出三十一億八千万ドルを下回っております。このため、日本側の分担額は妥当であるというふうに考えておるところであります。

 以上、お答えをさせていただきました。

鉢呂委員 副大臣、端的に答えてください。私は、インフラの括弧の三つ、電力、上下水道、廃棄物処理、これでよろしいんですねというだけです。時間が三十五分しかありませんので、簡潔に答えてください。そのとおりかそのとおりでないか、それだけでいいです。

北村副大臣 日本の分担するインフラ民活事業は、在沖縄米海兵隊の移転に伴う、先ほどおっしゃられるように、電力、上下水、廃棄物の基地内需要の増大に対応するための事業であります。例えば、電源や水源を開発して電力や水を供給するための事業を行うということであります。ということでよろしいですか。

鉢呂委員 そこで、四枚物の私のペーパーの二枚目、これは、平成二十一年、日本が関連経費ということで、真水事業ということで合計三百四十六億。工事費、三つの地区、この三つの地区でほぼ三百億、こういう形で出ております。いずれも基盤整備事業という形でございます。

 次のページを、三ページと明記したところを見ていただきたいんですが、アプラ地区基盤整備事業ということでございます。この中で、最初に書いてあるアプラ地区の基盤整備事業ということで、「既存の基幹ユーティリティ(電線、上下水道管等の敷設)の改修」という形が載っておるわけでございます。

 若干御説明しますと、これが六・五ヘクタール、敷地造成も含んで、こういったインフラの整備を行う。このお金が下の方に出てきますが、百七十四億のうちの百四十三億円を使うという形であります。敷地造成はたったの五億円という形であります。この具体的な工事内容も、そこに1、2、3と書いてあります。

 私は、ことしの平成二十一年度の予算、こういった形で、基盤整備という形でありますけれども、先ほど言った、ロードマップのいわゆる電力、上下水道、廃棄物処理、この形からいけば、融資等で終わるべきものではないか、こういうふうに考えますが、副大臣の明快な御答弁をいただきたいと思います。

北村副大臣 今般、平成二十一年度予算に計上いたしました基盤整備事業は、個々の施設整備を行う際に当然必要となってくる敷地造成、当該敷地内での電線、上下水道管、送信線等の埋設などの基幹ユーティリティーの整備及び門やアクセス道路等を整備する事業でございます。真水事業として実施すべき性格の事業というふうに考えております。

鉢呂委員 私は、ロードマップに基づいてこの質問をしておるとおり、いわゆるインフラについては、先ほど副大臣言われましたように、増設、さらにグアムの海兵隊が移転することによってふえる分という形であっても、当然これは融資事業で行うべし、こういうふうに普通は考えるわけであります。

 例えば、平成十九年三月二十日の参議院の外防委員会で久間防衛大臣が、事業のスキームで、海兵隊の司令部庁舎、教場、隊舎、学校などの生活関連施設はいわゆる真水でやる、そして、家族住宅、インフラ整備は民間に仕分けた、それ以外のものについては真水にしたということで、インフラ整備そして家族住宅は、いわゆる使用料等で回収できるものとして融資でやることをきちんと答弁しておるわけであります。

 その他いろいろ、各大臣、この間、答弁をしてきておりますが、このように明快に、インフラについては融資事業で、真水を使わないということを言ってきております。

 副大臣、もう一度、型どおりの、役所の書いた答弁ではなくて、ロードマップ、一ページの表はこういう形で明記されているんです。これは防衛省がつくって、我々に示して、この間ずっとこれで答弁してきたものであります。私は、いささか、今回の、真水でこの支出をするというのは、この当初のロードマップから全く違った形になっておるのではないか、こういうふうに思います。明快な御答弁をいただきます。

北村副大臣 お答えいたします。

 民活事業でありますインフラ事業につきましては、在沖米海兵隊移転に伴いまして、電力、上下水、廃棄物の基地内需要の増大に対応するための事業と先ほどから申し上げておりますが、例えば、電源や水源を開発して電力や水を供給するためその事業を行うということであります。

 今般、平成二十一年度予算に計上した真水事業として我が国が分担する基盤事業は、敷地内における配管の埋設等の基幹ユーティリティー、そういったものを行うということであります。

鉢呂委員 まさに基地内におけるユーティリティーということで、上下水道あるいは電気関係、これは電線敷設、こういったものはまさに、例えば米軍の家族住宅であれば、電気料、上下水道料として徴収できるインフラ整備であります。まさにロードマップで、そういう形で、そういったものは民間を活用して、そして、何年になるかわからぬけれども、そういう中で、使用料として回収できるからこれは融資等事業で行う、こういうふうに明確に答えておるわけであります。

 私は、まさに、平成二十一年度の予算の支出の段階で、アメリカと協議をした中でこれがかなり変わってきたのではないかと。その証拠に、ことしの二月六日の衆議院の予算委員会、これは、共産党の赤嶺委員の質問に対して高見澤防衛政策局長がこのように答弁しています。明確に、少しはしょったところはありますが、少し長くなりますが、言います。

 運用面での施設整備というのは米軍が責任を持って行うわけだが、全体的な基盤整備はできるだけ早く、集中的、効率的に行うという中で、日本のお金の使い方としてどういう方法が最もいいかということで精査した結果、アンダーセン地区について、日本として基盤整備を行うことが適切ではないかという判断に至ったものであります、こういう答弁をしております。

 まさに、これは、三年前はロードマップ上ではこういうふうに、インフラは融資だと言ったにもかかわらず、今回の、ずっと、毎年度の支出でアメリカと協議する中で、行政の交渉の中で精査をした中でこのような結論に至ったという答弁ではないでしょうか。私は、これは重大だと思うんですね。

 当初のロードマップで決められたことと相反する支出というのはやはり厳格に精査をして、アメリカにもきちんと対応しなければならない。だれが見たって、インフラ整備の電力、上下水道、これは融資という形になっておるじゃありませんか。どういう理由でこれが真水になるんですか。御答弁を願います。

北村副大臣 お答えさせていただきます。

 先ほど来申し上げてきておりますけれども、御理解いただければと思うんですが、民活事業であるというインフラの事業につきましては、在沖縄米海兵隊の移転に伴いまして、先ほど申しましたとおり、電力あるいは上下水道、廃棄物の基地内需要の増大に対応するための事業であります。例えば、電源や水源を開発したり、電力や水を供給するための事業を行うということであります。

 今般、平成二十一年度予算に計上いたしました真水事業として我が国が分担する基盤整備事業、それは、敷地内における配管の埋設等の基幹ユーティリティー、これでございまして、その性格は異なるというものでございます。性格の異なるものでございます。

鉢呂委員 アプラ地区というのは漁港でありまして、これ自体が基地であります。今、そういうふうに二つに分けられたことは、ロードマップのどこに明記され、私ども立法府にどのようにこれを知らせておったか、それをお伝えください、そうであれば。

北村副大臣 お答えいたします。

 駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法施行令十一条の二から五までに規定されておる、電源の開発及び電気の供給に関する事業、そして水源の開発及び水の供給に関する事業、さらに下水の排除及び処理に関する事業、または廃棄物の収集及び処理に関する事業、これが、これまで申し上げてきましたインフラ整備事業の内容ということで、一号から五号まであるうちの二号、三号、四号、五号というものであると申し上げてきたところであります。

河野委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

河野委員長 速記を起こしてください。

 北村防衛副大臣。

北村副大臣 お答えいたします。

 まず、真水事業というのは、基盤整備事業であり、米軍の基地内の基幹ユーティリティー、これを満たすための事業であります。そして、インフラ事業ということで説明いたしておりますことは、米軍の基地外の事業で、発電施設から基地内に引き込みます電力線であります。あるいは、上下水道においては、上下水道の水源施設から上水道、基幹として基地内に引き込んでいくための基地外の施設、本管あるいは基幹というふうな上下水道管の施設、あるいは下水道における下水道の米軍基地外の基幹的な管路、そういったものを整備するというふうに分けて考えておるというところでございます。

鉢呂委員 基地内であろうと基地外であろうと、この区分けはロードマップではしておらないと思います。基地外においてというのは、日本の真水を使うというのは、どこで私どもにそれをこの国会で知らせておったのか。それを明瞭にお伝えください。

北村副大臣 お答えいたします。

 米軍の需要につきまして、基地の内にある、基地の外であるとを問わず、需要の増大する、それの需要を賄うためには、基地の外に設けることもある、あるいは基地の中に設けることもある。そういったことを行うということであります。

鉢呂委員 そうであれば、基地内、基地外の区分けはロードマップではしておらなかった。したがって、先ほどの二月六日の防衛政策局長の答弁に至る。このように、アメリカとの精査の中で、最も早く、集中的に、効率的に行うということが、日本のお金の使い方としてどういう方法が最もいいかという中で、日本として基盤整備を行うことが適切ではないかという判断に至ったものであります、こんないいかげんな、行政の裁量でやったような答弁、これは認められないと私は思うんです。

 外務大臣、どうですか。そんな簡単な形で日本の税金を使うということにはならないわけであります。

中曽根国務大臣 今回の移転は、二〇〇六年五月のロードマップ、これに基づいて、政府としては、財政支出それから出資、双方によりましてグアム移転を早期に実現する、そういうことで進めているわけでございまして、我が国の政府によります資金提供によって行われます、いわゆる真水事業としてこの基盤整備の一部を行うことは、ロードマップの関係で何ら問題はない、そういうふうに考えておりますが、いずれにいたしましても、国の税金を使うわけでありますから、透明性を持って、また国民の皆さんに十分御理解いただけるような、そういう細心の注意を払ってやらなければならないことは言うまでもないと思っておるところでございます。

鉢呂委員 外務大臣の御答弁でも、ロードマップのどこに依拠して今回の基盤整備事業、基地外という形でありますが、できるという根拠を示したことにはならない、こういうふうに私は思います。

北村副大臣 私の答弁のしようが少し不適切な、正確を欠く部分があったかと思いますので、補足的にお答えをさせていただきます。貴重な時間をいただいて大変恐縮でございます。

 確かに、アプラ港というのは船の施設でございます。けれども、海兵隊として一体的に運用になりますので、強襲揚陸艦等が停泊する予定の施設などもございます。そういった実態を考えまして二十八億ドルという限度が決まっているわけでございますから、そういった中で、これまでの考え方に沿いまして、実態を精査しながら進めてきているというふうなことでございます。御理解いただきたいというふうに思います。

鉢呂委員 このアプラ港は、防衛省の事務方に聞きますと、もちろん、グアム移転の海兵隊が利用する、同時に、佐世保基地等の強襲揚陸艦の寄港ということも考えられると。どういうものが、ここに書いてありますように、一番下に、アメリカ側は検討中、アメリカ側は予定する施設の内容については検討中ということで、いまだ明記はされておりません。

 しかし、こういった強襲艦等が寄港するという場合に、例えば燃料貯蔵施設を設置する、さまざまな資材の保管施設も設置をする、あるいは、その資材を強襲艦に積み込む運搬施設も必要になる。いずれも電力を使う。あるいはまた、例えば強襲艦が寄港した場合は、この船の中に積み込んださまざまな、下水処理等のものも使うという形であります。

 私どもも、これまでの答弁、詳細にずっと見ましたが、いずれも、日本の税金の負担分は、隊舎ですとか司令部の庁舎ですとか、あるいは家族住宅、こういった、海兵隊のいわゆる軍事的な支出にかかわらない部分、こういった形を想定して支出をするということであります。

 したがって、まず最初の真水の部分として、インフラ整備は全く載っておりません。これは、やはりきちんとした政府見解を出していただかなければ、局長あたりが、そういったアメリカとの精査の中で至ったという表現では、説得性が全くない、こういうふうに思います。

 同時に、本当に、この米兵の生活あるいは事務的な形のものの支出、こういうことを認めるにしても、それ以外のものについては、アメリカがきちんと使用料を払う中でこの負担をするとか、そういった形にならなければなりません。効率的に、集中的に一気にこれをやることが必要だからということで、全部、日本の真水が使われていくというのは、このロードマップの内訳、基準から逸脱をしておる、こういうふうに私は思います。

 いずれにしても、委員長に、この点も明瞭に政府見解をお願いいたしたいと思うのであります。これだけでもう三十五分いっちゃいますので、河野委員長の御判断をいただきたいと思います。

河野委員長 それでは、電線、上下水道等、インフラの中で真水が使われる部分について、なぜそういうことになっているのかという政府の見解を後で理事会に御報告いただきたいと思います。

鉢呂委員 順番が逆になりましたが、若干、外務大臣に、北朝鮮の人工衛星と名目をしておりますけれども、長距離弾道ミサイルの発射問題についてお伺いをいたしたいと思います。

 私どもも、この今回のミサイル発射に対して、安保理決議違反ということで強いメッセージをやはり送るべきだ、こういうふうに思っています。

 同時に、一つは、きのうも外務省に聞いたんですが、この間の安保理の決議で、実行しておる国、通告を国連にしたのが七十四カ国・地域と。その中身については、例えばノルウェーとかミャンマー、イラン、これは通告をしておらないということであります。

 同時に、通告をしたということで、どういった制裁を、安保理は詳細な制裁を求めておりますが、どういった内容で制裁をしておるのか、これが定かではありません。日本の外務省は、その中身を把握しておらないというふうに言っておるわけであります。これは人的なこともありますから、把握しておらないかとは思いますが、しかし、ロシアとか中国、こういった周辺諸国はどういった制裁をしておるのか、国連決議に基づいて、この間制裁をしてきたのかどうか。

 こういったものは、外務大臣として把握をした上で、やはり各国に、これらの問題についてのさらなる安保理決議等についても言うべきではないだろうか、こう思うわけでありまして、この点の御所見をいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 ただいまの委員の御質問につきましては、質問の御通告をいただいておりません。しかし、委員がおっしゃるように、そういう各国の状況はしっかりと把握した上で、今後の決議の実現に向けて取り組んでいくということは大切であると思っております。

 もしお差し支えなければ、お許しいただければ、参考人の方からお答えをさせていただければと思います。

鉢呂委員 私は、把握したのは事実だと、きのう把握しましたから。

 そこで、北朝鮮の政治的な目的、意図というものをやはり判断して、我が日本としても、どう、北朝鮮のこういったミサイルを製造、実験していく、実用段階に持っていくというのをストップするかということだろうと私は思っています。

 今回のこのミサイル発射についても、さまざまな北朝鮮としての意図というものがあろうかと思いますが、いわゆる対外的に、特にアメリカに対して、どういった目的を持って北朝鮮が臨んでおるのか、まずそういった問題もやはり日本の外務省として的確につかまえて、そして、私は、六カ国協議の五カ国あるいはまた国際社会全体と連携をよく、あるいは結束をより密接にして対応していくことが大切だと思っておりますので、この北朝鮮のミサイル発射の意図、対外的な意図といった問題について外務大臣の御所見をいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 今回の北朝鮮によりますミサイルですか、飛翔体の発射の意図というものを私の方で云々する立場にございませんし、あくまでも推測の域を脱しないわけでありますが、いずれにいたしましても、今回の発射は、我が国を含む周辺地域にとりまして、この地域の安定と平和にとりまして大変な脅威であります。また、この安定を損なうものでありまして、私どもとしては、自制を強く求めたところでございます。

 それにもかかわらず発射をしたわけでありますが、北朝鮮は、人工衛星の打ち上げだ、そういうふうに説明しておりますけれども、仮にそうだといたしましても、弾道ミサイルにこれは使用可能な技術であることは間違いございません。そういうことで、今回の発射が大量破壊兵器のいわゆる運搬手段の強化を意味することは明白であると思っております。

 また、米国との関係におきまして、これも私の方から推測するのは適当でないと思いますが、このいわゆる飛距離というんですか、それが延びるということであれば、米国の方にもまた大きな影響も生じてくる可能性もあるわけでございまして、いろいろな意味があろうかと思っております。

鉢呂委員 時間がなくなりましたので、端的に質問させていただきます。

 やはり日本として独自の北朝鮮に対する働きかけ、これも非常に大切だ。拉致、核、ミサイル、こういった問題について、あらゆるチャンネルを通じて、日本として強い姿勢で臨むということも大事だろうと思います。

 一つだけ、日朝協議をめぐる状況で、昨年の八月に、日朝実務者協議でいわゆる拉致調査を再開するという形だったにもかかわらず、日本が政権交代をしたことによって、北朝鮮側から突然、日本での政権交代が行われたことによって調査開始を見合わせることとした旨の連絡があったと、九月四日に。このように外務省から私ども聞いておりますが、やはり麻生政権でも、拉致被害者の調査というのは早急だと。昨年の八月では、昨年の秋じゅうに、できるだけ早い段階で調査結果を知らせるということで始まったわけでありますから、早期に調査が開始されるように、大臣として、やはりこれは北朝鮮側と直接の交渉というのが私は大事なんだ、こういうふうに思います。

中曽根国務大臣 委員がおっしゃいましたように、昨年の八月に、日朝間でこれは調査のやり直しをするということが合意をされておるわけでございますが、昨年の九月の四日でしたか、北朝鮮側から、この新政権、すなわち麻生政権ですね、これが実務者協議の合意事項にどう対応していくかということを見きわめるまで調査の開始は見合わせることにした、そういう旨の連絡があったわけでございます。

 麻生内閣におきましても、これはもうさまざまな場で明らかにしておりますが、拉致、核、ミサイル、この三つの諸懸案を包括的に解決して、そして不幸な過去を清算して、日朝国交正常化を図る、そういう方針に変わりはないわけでありまして、八月の日朝実務者協議の合意内容を実施する、そういう方針は一貫しているところでございます。

 こういうような考え方につきましては、麻生内閣が発足直後から、これは北京の大使館ルートを通じまして北朝鮮側に対しても伝達をしておりますし、また、こういう調査の委員会を早く立ち上げて全面的な調査をやるようにということは強く先方に申し入れしているわけでございますけれども、また、総理の国会での御発言や私の発言等を通じまして、そういう政府の基本方針が変わらないことは表明しているわけでございますが、残念ながら、今までのところ、調査の開始をしておりません。

 委員がおっしゃいますように、ちょうどミサイルの事件が起きてしまったものですから、なかなかこういう六カ国協議あるいは拉致の交渉というものも状況が多少変わってくることもまた心配もされておりますけれども、私どもとしては、一日も早く、調査のやり直しが行われて、拉致の被害者の方々が帰国できるように、一生懸命やっていきたい、そういうふうに思っております。

鉢呂委員 最後ですが、今回の北朝鮮ミサイル問題で、日本も核武装すべきというような政府・与党筋からの発言もあると、私は大変憂慮するところであります。

 四月五日のチェコ・プラハでのオバマ大統領の二万人市民に対する、核兵器のない世界、これに対してオバマ大統領が明確にメッセージを送った。中曽根外務大臣、この点について、唯一核を使った大国アメリカ、道義的な責任を持ってこれを行いたいと。これにやはり日本政府はきちっとこたえるべきだ。唯一核被爆国の日本がもっと明瞭な形でこの点のリーダーシップをとるべきではないか。

 きょうはもう細かいことは言いません。私ども民主党も、岡田副代表を先頭にして、核軍縮議連というのがあって、東北アジアの朝鮮半島と日本が核を持たない、そして関係の中国、ロシア、アメリカ、これに対してこれを尊重する、こういった東北アジア非核地帯条約というようなものの提案もしておるわけであります。

 したがって、一問だけ。一年以内に核管理に関する首脳会談をオバマ大統領は提案いたしました。これはやはり日本で、広島で、広島、長崎の人は、これに対してテレビでもきちんと答えています。日本の中曽根外務大臣がやはり日本でこれを開催するということをオバマさんにメッセージとして送るべきだと思いますが、どのように考えるか。これを最後の質問にいたしたいと思います。

中曽根国務大臣 まず、プラハでのオバマ大統領の演説でございますが、これはもう平和で安全な、核兵器のない世界を追求することを明確に宣言したものでありまして、私どもも強く支持をしているところでございます。

 また、我が国は、委員おっしゃいますように、唯一の被爆国といたしまして、当然のことながら、核兵器のないそういう世界に向けて努力をしていくことは、もう言うまでもございません。

 オバマ大統領が、首脳会談ですね、核管理に関する首脳会談の一年以内の開催を提案されているわけでありますが、これは核セキュリティーに関する世界サミットというんでしょうか、来年じゅうにこれをホストすることを提案しているわけでございますが、これの開催時期とか内容とか、そういうものにつきましては、今後、大統領のそれからさらなる具体的なお考えというものもまだ明らかになっておりませんので、私どもはわかりませんが、我が国としても、このサミットの開催に向けて米国と協力していきたい、そういうふうに思っております。

鉢呂委員 終わります。ありがとうございます。

    ―――――――――――――

河野委員長 この際、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として財務省主計局次長木下康司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河野委員長 質疑を続行いたします。池田元久君。

池田委員 民主党の池田元久でございます。

 「かくも長き不在」という映画がございましたが、久々に委員会に加わらせていただきました。委員会の沖縄現地視察等、心から敬意を表する次第でございます。

 私は、普通、質問する場合は、政府参考人なしで、政治家同士の討論、議論というのを重視しておりますが、きょうは、補足的な答弁をしていただくということで、参考人の出席を認めたわけでございます。答弁はできるだけ端的にお願いをしたいと思います。

 今、鉢呂委員が、オバマ米大統領のプラハでの演説に言及をされました。その点、若干質疑でお尋ねをしたいと思います。

 唯一の核保有国として行動への道義的責任があるとオバマ大統領は言ったわけでございます。各国の人々、とりわけ唯一の被爆国である日本の国民に感銘を与えた演説だと思いますが、まず、大臣の率直な感想を端的にお尋ねしたいと思います。

中曽根国務大臣 先ほども鉢呂委員の御質問にお答えいたしましたけれども、我が国は、これまでもすべての核兵器国による核軍縮努力というものを求めてきたところでございます。今般オバマ大統領がプラハにおきまして、平和で安全な、核兵器のない世界に向けた、現実的かつ具体的な方途を追求することを明確に宣言したことは、強く支持をしたいと思っております。

 特に、米国は核兵器を使用した唯一の国であることに大統領が言及をしながら、START1、第一次戦略兵器削減条約、そして後継条約の年内交渉の妥結、また包括的核実験禁止条約批准の追求、また兵器用核分裂性物質生産禁止条約交渉開始、そういう意思を改めて表明したことは歓迎したい、そういうふうに思っております。

 さらに、NPT体制の強化のために、ルール違反国やNPTを脱退しようとする国に対しまして、実質的で、かつ即時の対応をとるべきことを強調した点につきましても、我が国としてこれは賛同するところでございます。

 また、今般の北朝鮮による発射につきましても言及をされまして、御案内のとおり、違反は罰せられなければならないと述べたということは、大変重要な発言だと思っております。

池田委員 感想をお尋ねしたわけでございまして、できるだけ答弁資料を離れて、外務大臣として、政治家として感想を述べていただきたい、そのように期待しておりました。残念であります。

 日本として、唯一の被爆国として、アメリカの新政策に直ちに呼応して、新しい取り組みを考えることはしないのかどうか、端的にお答えを伺いたいと思います。

中曽根国務大臣 私は、オバマ大統領がこの演説を行った後、談話を発表させていただきました。こういう大統領の呼びかけというものが、そのほかの核兵器保有国も参加した世界的な核軍縮の機運を盛り上げるということを強く期待しているわけであります。核兵器のないそういう世界の実現に向けて、また、最も近い目標として、二〇一〇年NPT運用検討会議の成功のために、引き続いて、米国を初めとする国際社会との連携を強化していきたい、そういうふうに考えているところでございます。四月中を目途に、改めて私自身から、こういうような考え方を演説の形で表明したいと思っているところでございます。

池田委員 せっかくおっしゃいましたので、期待をしたいと思います。やはり、マンネリズムではなくて、我が国として主体的に新しい取り組みをしていただきたい、このように思います。

 そのほんの手始めとして、先ほど核の関係の会議のことをおっしゃいましたけれども、ことし後半で調整している大統領訪日の際に、大統領の広島訪問を働きかけるつもりはないかどうか、中曽根さんにお伺いしたいと思います。

中曽根国務大臣 それは、大統領が中国を訪問するときに日本にも寄る、そういうようなお話だと承知しておりますが、それにつきまして、まだ日程も、具体的な日程とかそういうものの調整なり、そういう話が行われておりませんので、現段階では何とも申し上げることができませんけれども、ということでございます。

池田委員 日本の政治は、アメリカ側からすると、能プレー、日本の伝統芸能の能みたいに非常にスローモーだと従来から言われております。アメリカのオバマさんがあれだけの演説をしたわけですから、直ちに呼応して、外務大臣として、こうしたらどうかということをぜひ考えていただきたい、そういうふうにしていただきたいと要望をしておきます。

 さて、グアムの協定について入りたいと思います。

 まず、交渉の経過、そのうち地元への説明などについてお尋ねをしたいと思うんですが、私は、外交、対外政策の展開には国民の理解と支持が重要であり、そのために政府の説明責任が欠かせないと思っております。

 その点から協定締結交渉の経過について聞くのですが、アメリカとの交渉はいつから始め、交渉担当者のレベルはどうであったか、まず端的にお尋ねをしたいと思います。

伊藤副大臣 日米両政府は、二〇〇六年五月の日米安全保障協議委員会、2プラス2においてロードマップに合意して以降、在沖縄海兵隊のグアム移転の実施のあり方の詳細につき、まさにさまざまなレベルで随時協議を行ってきたところでございます。

 こうしたたび重なる協議の結果、本協定について、昨年十二月の内容に関し日米間で実質的な合意を見るということに至ったわけでございまして、そして、本年二月十七日に、中曽根大臣とクリントン国務長官の間で署名を行ったという次第でございます。

池田委員 今不明確だったんですが、どのレベルで何回ぐらいやったんですか。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 本協定に係る米側との話し合い、交渉、これはグアムの移転をどういうふうに実施するのかという話でございますので、非常に実務的なレベルから、それからまた、課長レベル、審議官レベル、局長レベル、さらには、必要があれば次官級を含むレベルでやっております。

 また、そういう交渉をいたします際には、外務省、防衛省が中心になって交渉をいたすわけでございますが、それぞれの大臣の了承も得た上で対処方針を練って交渉するということでございますので、まさに副大臣から御答弁申し上げましたように、いろいろなレベルで交渉をしてきたということでございます。

池田委員 外務省は、昨年の末、十二月二十七日に、協定を締結すると報道されております。しかし、その後の経過は明らかではなく、二月十七日に、来日したクリントン国務長官と協定に署名をした。表に出ている事実はその程度であります。

 どうも、年末からばたばたと拙速にやったという印象を受けるんですが、今いろいろな各レベルの官名をおっしゃいましたが、これは、どのような経過であったかというのを資料で出していただければありがたいと思います。

梅本政府参考人 このような交渉をいたします際に、もちろん、グアムの協定の交渉それだけのために人が集まることもございますし、私ども、米軍再編、もろもろの案件がある中で、米軍案件のいろいろな案件を実施するための協議の中でグアム移転についても協議もすることがあるということでございますので、それが何月何日に、だれがいつしたというものを全部網羅的に御説明するというのはなかなか難しいので、恐縮でございますが、それはなかなかできないというふうに申し上げざるを得ないと思います。

池田委員 重要な協定でございますので、そういうのは説得力がないと思いますので、委員長の方で委員会として資料を出していただくように、そんな難しい問題ではありません、お願いしたいと思います。

河野委員長 後に理事会で協議いたします。

池田委員 協定の締結について、地元沖縄へどのような説明をしたか、お尋ねをしたいと思います。

中曽根国務大臣 私が一月の下旬それから二月の一日でございましたか、沖縄を訪問いたしました際に、仲井眞知事さんとお会いをいたしました。そのときにお話をいたしましたし、また、協定の締結が近づきましたときに事務レベルでそのようなお話をしております。

池田委員 外務大臣が今おっしゃったように、一月三十一日に沖縄を訪問された。仲井眞知事からグアム協定の条約の姿形を差し支えのない範囲内で話してほしいと要請されたのに対して、外務大臣は、国際契約、グアム協定については調整中だ、しかるべき段階が来たら県にも伝えたい、このように述べたと言われておりますが、しかるべき段階に県に伝えたのでしょうか。お尋ねをしたいと思います。

中曽根国務大臣 確かに、知事さんにお会いいたしましたときには、今委員が御発言されましたような、私から発言であったと思いますが、二月十六日でございました、直前でございますが、詳細につきましては沖縄県側に説明をさせていただいたところでございます。

池田委員 署名の前日に外務省の日米地位協定室長らが説明したというふうに言われておりますが、署名前日に説明したんですか。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 今大臣の方から御答弁になりましたけれども、大臣自身が沖縄訪問の際にも趣旨について知事に直接説明をされたわけでございますし、それに加え、沖縄県とは米軍再編について日ごろより随時連絡をとっているということでございます。その中で、二月十六日には日米地位協定室長が参りまして、防衛省関係者とともにこの協定そのものにつきまして詳細な説明を行ったところでございます。

 私ども、米軍再編のいろいろな案件についても、まさに今申し上げましたように、沖縄県とは随時連絡をとっているところでございますが、協定のテキストそれから協定そのものについては二月十六日に詳しい説明を行った、こういうことでございます。

池田委員 しかるべき段階に県にも伝えるというのは、そういうことだったんですか。それでいいんですか。外交のやり方、外交を預かる者として。もちろん説明責任もありますね。説明は十分だったと思われますか、大臣。

中曽根国務大臣 協定でございますので、署名の直前にはなりましたけれども、その内容については説明をさせていただいたところでございまして、私どもとしては適当な方法であった、そういうふうに判断をいたしております。

池田委員 全く適当でないと思いますよ。主に沖縄がかかわる問題で、事後了承みたいな形で、説明といっても通告じゃないですか。こんなことでいいんですか、大臣。政治家としてお尋ねをしたい。

中曽根国務大臣 これは外交交渉の一つでありますのでそのような形になったということも御理解をいただきたいと思いますが、そこに至るまでの間、地元の御意見等も拝聴しながらやってきた、そういうことでございます。

池田委員 しっかりと説明責任を果たしていただきたいと思います。

 次に、協定をめぐって、国会やアメリカの連邦議会の承認の問題についてちょっと取り上げたいと思うんですが、今度の協定は、日本には国会承認を求め、アメリカには連邦議会の承認は不要となっています。先日の審議でも取り上げられましたが、政府の答弁は極めて不明確です。

 端的にお尋ねしますが、我が国と同じように、アメリカに対して連邦議会の承認をどうして求めなかったのか。その点、大臣にお尋ねをしたいと思います。

中曽根国務大臣 これは、我が国では国会承認条約であるわけでありますが、米国では行政協定ということになっているわけでございます。

 この事業は、先ほどからお話ししておりますけれども、二〇一四年までの事業完了、これを目途とする多年度にわたる事業でございまして、これを円滑に進めるためには、我が国としては米国政府に対して多年度にわたって資金を提供する、そういう必要があるということから、さらに、これはいわゆる財政事項を含む国際約束であるために、我が国としては国会承認条約として、この協定の締結について国会の御承認を得るということで今御審議いただいているところでございます。

 他方、米国のことにかかわりましては、米国が本協定を議会承認条約とするか、また行政協定とするかというのは、米国の行政府と立法府の関係などを踏まえて、これは米国自身が決定すべき事項だ、そういうふうに思っております。

池田委員 質問をよく聞いていただきたい。

 米国の問題じゃなくて、日本としてアメリカ側に連邦議会の承認を求めるべきではなかったか、こういうふうに聞いているわけですから、端的にお答えをいただきたい。

中曽根国務大臣 これは、先ほども申し上げましたけれども、アメリカの政府内の手続につきましては、アメリカの行政府と立法府の中のことでございまして、私どもの方からそのようなことを申し入れということは行っておらないわけでございます。

池田委員 日本の国益をしょって外交をするわけですから、何ら差し支えないことなんですね。外務省は、さっき大臣も言っていましたけれども、多年度にわたる資金の拠出には法的に安定した協定が必要だと。ならば、アメリカ側に当然承認を求めるべきであったと私は思います。

 私が調べたところ、日本がこれまでに先進国と締結した条約で、日本は国会承認、先方は行政取り決めという事例はあるのかどうか、調べてもらったんですが、ほとんどない。〇二年一月署名のシンガポールとの新時代経済連携協定の一件しかありません。主要国との間は皆無です。こういうことで、霞が関、外交というのはいいんでしょうか。大臣、どうですか。

中曽根国務大臣 米国の政府も、この協定に署名をするということによりまして、このグアム移転事業の実施に対しては明確なコミットメントというものを示しているわけでございまして、この移転の事業において米側が行うということになっております施設の建設事業というのは、これは米国の国内事業として、言うまでもありませんが、米国自身が米国議会の承認を得て予算措置を講じて実施をしていく、そういうものでございます。

 したがいまして、我が国政府としては、米国がこの協定を行政協定として締結するということが、これはグアム移転事業の実施において特段問題となるとは考えていないところでございますし、さらに日米の両政府におきまして、これまで首脳を含むさまざまなレベルでロードマップの実施を確認しているということでございます。

池田委員 あれこれおっしゃいますけれども、とにかく、国と国民を背負って外交しているわけですから、何ら差し支えないことですから、アメリカに対しても日本はお金を出すわけですから、当然議会の承認を求めるべきであった、私は強調したいと思います。

 次に、アメリカの国防戦略とグアム移転の関係についてお尋ねします。

 アメリカがなぜ海兵隊の一部を沖縄からグアムへ移すのか、そもそも論でありますが、その点、外務大臣に端的にお尋ねをしたいと思います。

中曽根国務大臣 海兵隊をグアムに移すということにつきましては、これはもう申し上げるまでもありませんが、ロードマップに基づいて、その中の一つであるこの移転を着実に実施していこうということでありますが、なぜ米軍がそのようなことをやるかということは、オバマ政権の新しい政策といいますか、それについてはまだはっきりなっていないわけでありますけれども、それは、米国軍隊の中での新しい政策に基づき、あるいは従来からの予定された一つの計画に基づいて行われているんだ、そういうふうに思っておるところでございます。

池田委員 今少しおっしゃいましたけれども、オバマ政権からじゃないんですよね。アメリカでブッシュ政権が発足した直後、二〇〇一年九月の四年ごとの国防見直しから、脅威ベースアプローチから予測不可能な事態に備える能力ベースアプローチへ国防戦略を転換したとされています。これまでの在外米軍の配備は不適切として、地球規模で前方に駐留して前線に緊急展開できるよう米軍の配置を見直し、二〇〇四年八月には、ブッシュ大統領は、欧州とアジアに駐留する約二十万人の米兵のうち、今後十年間で六、七万人の米兵と十万人の家族を本国に戻す考えを明らかにしたことは御承知のとおりです。

 海兵隊の沖縄からグアムへの移転は、まさにアメリカの国防戦略の転換という文脈で読むべきだと思います。国防戦略の転換というアメリカの主体的な選択によるものと思いますが、外務大臣はどのように考えますか。

中曽根国務大臣 今委員が御説明されましたような、米国側のそういう米軍の体制に対する考え方というものもあることと思いますが、さらに、日米の安保体制というものを基盤とする日米同盟、これを新たな安全保障環境に適応させていこう、そして、かつ、我が国の平和と安全、これを確保するために在日米軍の兵力態勢の再編というものに取り組んできたと承知をしております。

 また、さらに、我が国の方といたしましても、沖縄のいわゆる負担を少しでも軽減したい、そういうような従来からの県民の皆さんの御要望も受けた我が国の考え方とも合致したものだ、そういうふうに思っております。

池田委員 それに関連して、協定ではアジア太平洋地域での抑止力を強化するものだと述べていますが、グアム移転によってこの地域での抑止力は強化されると理解していいのかどうか、端的に聞きたい。

梅本政府参考人 この協定の前文にもございますように、米軍再編、これは、グローバルに行われる米軍再編の中で、特にアジア太平洋においてもいろいろな再編が行われます。その中の一つの重要な要素として海兵隊の移転というのが入っているわけでございますが、その総体としての米軍再編を勘案したときに、このグアムへの移転というものも全体としてのアジア太平洋における米軍の抑止力の強化になる、こういう認識だというふうに考えております。

池田委員 きょう参考人として来ていただいた西原正氏も、論文で、グアム移転によって西太平洋から中東に至るまでの広大な地域へのアメリカ軍の介入能力が高まる、グアムはアジアのホットスポットに十分近いが他国の攻撃を受けにくいなどなど、安全保障上の利点を挙げております。

 要するに、アメリカ海兵隊の沖縄からグアムへの移転は、アメリカの国防戦略の転換によるアメリカの主体的な選択であり、アメリカの利益にかなうものと言ってよいと思いますが、その辺、大臣の考えを端的に聞きたいと思います。

中曽根国務大臣 これは先ほども申し上げました。もちろん、軍隊を移動するわけですから、これは米国の、米軍の中でのいろいろな再編計画とかあるいは長期的な戦略とかあろうかと思いますが、単にそれだけではなくて、アメリカの都合ということだけではなくて、これはずっと協議をしてまいりました日本における米軍再編の一環でありますし、そして、かつ、沖縄の皆さんの負担を軽減しようという、これは先ほどからの繰り返しになりますけれども、そういう日本の考え方とも一致したものだ、そういうふうに思っております。

池田委員 アメリカ海兵隊のグアムへの移転は、冷厳な安全保障環境に対する認識、それに基づいて主体的な選択をする。安全保障ですから、お涙ちょうだいじゃないわけですよ。

 そういう認識に立つと、麻生総理大臣が、何と驚いたんですけれども、外務大臣のときにこの委員会でこう言っているんですね。〇六年五月十九日、外務委員会で、資金の供与がなければ、「沖縄県から海兵の撤退が進むまであと何十年とかかることになり得るということだったろう」と答弁しています。要するに、資金を供与しなければ海兵隊の撤退が進むまであと何十年もかかる、こういう認識なんですよね。〇六年ですよ。QDRとかGPRとかいろいろ言われてかなりたって、このような認識を外務大臣が持っていた。ですからアメリカから足元を見られるわけですよ。お金を出さないとあと何十年もかかるんだと。そうすると、国民や財政当局も説得しやすいですよね。しかし、これは明白な間違いじゃないですか。外務大臣、どうですか。

中曽根国務大臣 麻生現総理のかつての御発言を御紹介されましたけれども、先ほどからの多少繰り返しにもなりますけれども、米軍再編の中での海兵隊のグアムへの移転というものは、何よりも、我が国にとりましては沖縄の負担の軽減を実現するという大変な効果もあるわけでございます。同時に、抑止力は維持しながらそういうものが実現できるということでありますし、米側からすれば、委員がおっしゃいましたように、もっともっと広い意味での意味もあろうかと思います。

 いずれにしましても、そういうような考え方に基づきまして、住民の皆さんが強く希望しております在沖縄の海兵隊の移転、これが速やかに実現できるように、米国とともに、グアムにおきます施設やインフラ、これの整備のための負担を担うこととしたわけでございまして、特に、この協定におきましては、先ほどからお話ありますけれども、我が国政府はいわゆる真水事業に対して二十八億ドルを限度として出すわけでございます。これは円滑に安定的に実施していく上で必要な経費だ、そういうふうに思っております。

池田委員 任命権者ですから、余り触れたくないという気持ちはわかりますけれども、そんな端っこの問題じゃなくて、グアム移転に係る我が国政府の首脳の認識がこれでは本当に困ったなと私は感じた次第でございます。そのことを強く申し上げておきたい。

 さて、資金の供与について触れたいんですが、アメリカの主体的な選択、方針によるグアム移転については、国家の間のあり方として、日本が移転のための費用を供与するのはどうか、原点に返って考える必要がある。

 このような形で、先進国が自国に駐留する同盟国の軍隊の撤収や同盟国の国内基地建設のために資金を出した例はあるのかどうか、お尋ねをしたい。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、すべての事例についてすべてを承知しているわけではございませんけれども、同盟国の間で、一方が他方の部隊の撤退を求める、そしてその撤退について経費を負担する、そういう例があるというふうには承知をしておりません。

池田委員 ありませんよね、そんなことは。常識的にはあり得ませんね。

 ただ、ベルリンの壁の崩壊の後、統一ドイツ政府がソ連の撤退に対して、お金がなかったわけですから、お金を出した例はある、そういう例外的なことはありますが、どこの国もそんなことはしないと私は思います。

 アメリカの方針、主体的な選択によってグアム移転をするわけですから、普通はアメリカがそれを賄う。主権国家として、なぜ日本が移転のための費用を供与するのか。よく民事訴訟で、立ち退かないので立ち退き費用を出す、そんなことを言ったら、本当にアメリカに対して失礼ですよ。

 私は、安全保障のコストは必要だという立場ですよ。しかし、こういう財政というか財政支出はいいのか。タックスペイヤーの立場からいって大変問題がある。どうですか、大臣。

中曽根国務大臣 これは、私どもとしては、抑止力はとにかく維持をしなければならない、かつ、長い間の沖縄の県民の皆さんの御要望であるいわゆる負担を軽減するということ、これは一日も早く、少しでも多くやらなければならない、そういう立場から、今回このような協定に至ったわけであります。

 お金を出さないということで、協定といいますか話し合いが全然進まないということで、何年先になるかわからない、そういうことも一つの方法というとおかしいんですが、やむを得ない形としてあるかもしれませんが、私どもとしては、やはり早くそういう形で負担を少しでも軽くしなければということ、そして、例えば嘉手納以南の土地にいたしましても、これが返還されるということによって沖縄の振興に役立つ、そういうプラス面もあるということ、そういうものも考えてのことでございます。

池田委員 私は、お金の使い方を言っているわけでありまして、お金の使い方はいろいろありますよ。民生を含めたいわゆる総合安全保障戦略という見地からいったって、このようなお金を沖縄に供与するとか、基地の周辺をどうするとか、そういう筋道立った金の使い方こそ、やはり政府に対する信頼、日本の防衛に対する信頼を高めるものであると私は思っております。

 湾岸戦争の九十億ドル。どうして日本はこの二〇〇九年の現在までもこういう形で、まるで財布になったような形で、余り原則なくお金を出すのか、これは厳しく反省をしなければならないことじゃないかと私は思います。

 さて、この点について、財政法とのかかわりについてほんのちょっと触れたいと思うんです。

 財政法の原則とのかかわりについて、まず、財政法では国の支出について規定していると思いますが、どうなっているのか、木下主計局次長、きょう来てもらいましたが、端的に一言、答弁をお願いします。

木下政府参考人 お答えいたします。

 財政法第二条一項についての御指摘だと思いますが、ここでは、「収入とは、国の各般の需要を充たすための支払の財源となるべき現金の収納をいい、支出とは、国の各般の需要を充たすための現金の支払をいう。」とされております。

池田委員 グアム移転の費用は、建設されるグアムの基地は米国の財産になるもので、国の需要を満たすための現金の支払いに当たるということはなかなか難しいのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

 だれに聞いたらいいのかな。では、木下次長。

木下政府参考人 お答えいたします。

 一般論として申し上げれば、我が国の政策目的の遂行のために必要なものであれば、外国への資金提供も、財政法二条第一項で言う「国の各般の需要を充たす」ものと認められると考えております。

池田委員 はっきり国の需要を満たすとはなかなか言えないんじゃないでしょうか。

 要するに、我が国が主体的に事業を行って、それで金を使うというならわかりますけれども、アメリカが主体的な選択、方針としてグアムに移転する、抑止力も高まる、アメリカの利益にかなう、それに対して日本がお金を出す、これは国の需要を満たすものかどうか。どうでしょうか。何回も聞いて申しわけないけれども。

木下政府参考人 お答えいたします。

 今回の米海兵隊のグアム移転については、在日米軍の抑止力を維持しつつ、沖縄の負担をなるべく早期に軽減するため、日本側も応分の負担をするものであることから、我が国の政策目的の遂行のために必要な経費であり、国の各般の需要を満たすための支出であるというふうに考えております。

池田委員 私も財政とか金融にはかかわりあるんですが、他国の基地建設に我が国が金を出すことについて明示的に禁止する規定は確かにないですよ。しかし、財政法の原則、精神からいって、私は財政の節度が大事だという立場ですが、問題があるとはっきり言えるのではないかと私は思います。

 いずれにしても、今回のグアム移転そのものというよりも日本の国のお金の使い方は、納税者として、また財政をしっかりと維持していくという点から、大変問題がある。

 アメリカでは、あれだけ力を入れたF22の発注中止までやるわけですよ。日本は足元を見られて、それでお金をそんなに出していいんでしょうか。予算管理、財政の節度というものを私は強調したいと思います。

 もう時間が来てしまいましたので残念ですが、最後に、外交当局は、先ほど申し上げましたが、説明責任を十分に果たすべきだと強調しておきたいと思います。

 それから、北朝鮮の現状、中国の不透明な軍備増強といった我が国を取り巻く環境からいって、安全保障のコストは必要だという立場ですが、民生を含めた総合安全保障の立場などに立って、主権国家らしく、誇りある日本として別の形でコストを負担すべきだということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

河野委員長 次に、松原仁君。

松原委員 先般、月曜日ですからおとといですね、沖縄に視察に行ってまいりまして、沖縄の実情をつぶさに見てまいりました。そうしたことを踏まえて議論をしていきたい、このように思っております。

 今池田委員が、私が質問しようと思っていたことをかなりなさいましたが、問題意識が似ているんだなと拝察をするわけでありますが、この部分をやはりはっきりとさせておかなければいけないと思っております。つまり、なぜアメリカは連邦議会の承認がなく、日本がこういった国会承認の作業をしているのか、この問題であります。

 そもそも論として、今回、沖縄を訪問して非常に感じたことは、やはり、情報にしても意思決定にしても、そのことに関してアメリカ側の一方的な思いというものが極めて強く出ているんではないかと現地の人が思っているということであります。現地に住んでおられる日本の国民がそう思っているということは、日本の国益を代弁する外務省としては、きちっとその説明責任や、そして国益にかなった行動をとらなければいけないというふうに思うわけであります。

 冒頭申し上げたいことは、大臣、今まで、例えば池田委員に対しての答弁で、アメリカは連邦議会の承認がない、日本は国会承認をすると。これは極めて対称性を欠いている、非対称性だということを我々は主張しているんですが、対称性を持っていると思っておられるかどうか、まずこれをお伺いしたい。

中曽根国務大臣 先ほども池田委員の御質問に対して申し上げましたけれども、我が国は、もうこれは多年度にわたって米国に対して資金を提供する必要があるということで、これはいわゆる財政事項を含む国際約束でありますから、国会承認条約として、この協定の締結について国会の御承認をいただく、そういう必要があるということでありますし、アメリカの方は、議会承認条約とするかどうかというのは、これは繰り返しになりますけれども、行政協定とするかどうかというのは、行政府と立法府の関係を踏まえて米国自身が決定すべきことでありますが、米国政府は、この協定に署名するということによりましてこのグアム移転事業の実施に対して明確なコミットメントを示しているわけであります。

 米側が行うことになっておりますこういういろいろな施設の建設事業は、米国の国内事業として、米国自身が米国議会の承認を得て、予算措置をこれはいずれ承認を得てやっていくものでありますから、そういう意味では、行政協定として米国がこの協定を結ぶということが、先ほどから申し上げておりますように、我が国としては、特段問題になるとは考えていない、そういうことでございます。

松原委員 いろいろな問題があるわけでありますが、例えば、米側との議論の中で、真水の部分の二十八億ドルという話がありました。そして、真水ではないPFIでやる部分の約二十六億ドル、議論がありました。先般の議論で、これが本当に戻ってくるのかと。二十八億ドルに関しては、これは一体どの段階でその負担軽減の効果が出てくるのか。大臣も、これは極めて重要な指摘で、検討したいとおっしゃいましたけれども、この分野に関して言うならば、この二十六億ドル弱の家族住宅の部分に関して、これは事務方にお伺いしたいんですが、日本が一体どれぐらいの金利を取って、いつごろまでに返済されるかという具体的な議論というのは進んでいるのかどうか、現在どこまでそれは固まっているのかどうか、お伺いしたいと思います。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 家族住宅の融資のスキームにつきましては、現在、日米間でいろいろな、最も効率的なやり方について議論をしているところでございまして、もうしばらく時間をいただきたいと思います。

松原委員 この二十五・五億ドルというのは固まっているんですか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 ロードマップの考え方に従ってやっておりますので、その範囲内でやっていくということでございます。

松原委員 その範囲内ということですから、これより減るのかもしれませんが、恐らく減らないだろうと我々は思っているわけであります。

 重要なことは、これはだれでもわかる話で、わかった上でおっしゃっているんだろうと思うけれども、だれでも、金融機関からお金を借りる場合、それは一体、三十五年ローンなのか、二十年ローンなのか、三十年ローンなのか、金利は幾らなのか、これは一番大事なところですよね。金融機関が金を貸す場合に、一体金利は幾らで、一体何年で返すのか、そして、そのことはだれが一体担保するのかというのは、一番大事なところですよ。この部分、どうなっているか答えてください。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 先生今御質問になった点でございますけれども、まさに、我々としては、きちっとした手続が決まり、そしてまた日米両国政府が適切に関与できる、そしてまた、オープンな形で、公正な形でやっていく、さらに、この趣旨からいたしまして、民間事業者の自主性と創意工夫というようなものを活用していく。そういう前提の中で、また一方で、住宅手当等については米軍が出すわけでございますので、そういう現実を踏まえながら、最も適切なスキームということで進めているところでございまして、いましばらく時間をいただきたいと思います。

松原委員 全然答弁になっていないわけでありまして、要するに、これはもう大きなざるに入れて、具体的な中身に関しては決まっていないと。いいですか、大臣。私がアメリカの連邦議会の承認も必要ではないですかと言っているのは、こういう部分もある以上は、きちっとその部分に関して担保するのはどこなんだと。

 いや、結局、これはなかなか返せませんよと。移転が終わるのは二〇一四年。今アメリカはオバマ政権ですが、二〇一四年といえば次の政権。そして、返済が全部、例えば三十年で返済が終わるとしたら、その間、八つの政権が、八、四、三十二だから、アメリカでは政権交代があるか、同じ人が三期はできないんですから、二期ですから。そうしたときに、行政との議論で、こっちは国会承認で、次のアメリカの大統領、どなたになるかわかりません、今はオバマさんですよ、次の大統領になっても、我々は二十八億ドルと二十五億ドル出しましょう。国会承認ですから、こっちの内閣が政権交代があっても、国会承認をしていますよ、こういうふうな議論になるでしょう。向こうに関しては、それは連邦議会の承認がない。この部分が余りにも非対称的じゃないかということを言っているんですよ。わかりますか、言っている意味が。

 つまり、大事なことは、今おっしゃったように、金融機関がお金を貸す場合には、当然それは、ローンは、一体金利は幾らなんだ、何年で返済するんだ、そして担保はどうするんだと。行政は、政権は、日本もアメリカもかわるか、同じ政権であってもそれは人がかわるか、キャビネットがかわるか、全部かわっていくときに、そのことにもう一発、別のところからきちっとしたけじめをつけてギャランティーをする、これが議会承認じゃないですか。何で日本だけ国会承認があって、アメリカの連邦議会承認がないんですか。今言ったところが担保されるという保証は、日本に比べてアメリカの方が小さいという、だれが見たってそう思うんだけれども、そう見えないですか、大臣。お答えいただきたい。

中曽根国務大臣 日本は、今、国会で御議論いただいており、また、国会承認ということになりますし、米国は、先ほどから申し上げておりますように、予算措置を講じていくということで、これは米国の議会の承認を得るということになるわけであります。

 そして、今、政権がかわったらというような趣旨のお話がありましたけれども、これは国際約束でございますから、政権がかわったからといってこの約束は守られなくていいというものではない、そういうふうに思っておりまして、私どもは、そういうような義務とか責任というものは継承されていくものだ、そういうふうに思っています。

 なお、家族住宅等につきましては、出融資につきましてはこの協定の枠外ということでありまして、先ほど御答弁を参考人からいたしましたように、これは今後、この事業のスキームというものを米国としっかりと間違いのないようなものを組み立てていくということが大事だと思っております。

松原委員 二つあるんですよ。アメリカの連邦議会の承認がないというのは、今言ったような部分で、本当にいわゆる経費を、大体、大臣、それは普通に考えたらあり得ない話なんですよ。金利はわからない、何年で返済するかわからないというのは。これは何年返済まで決まっていないんでしょう。ちょっと事務方にお伺いしたい。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 具体的にこの事業スキームを考える場合に、出資や融資が回収不能となることのないように具体的な事業スキームを検討するということを答弁させていただいておりますし、それから家族住宅の事業期間については相当長期間だということを推定しておりまして、現実にアメリカの例ではかなり長期間のものもございます。そういう前提の中で、最も効率的なやり方、つまり米軍の家賃、使用料によってしかるべく回収されるような制度設計というものをやるべく、今調整をしているところでございます。

松原委員 私、いろいろと言いたいんです。一体何年なのかという数字も出てこないというのは、これはもう本当に、大臣、僕はアメリカには連邦議会承認を求めるべきだと思いますよ。

 ちょっとお伺いしたいけれども、円・ドルレートというのは今一定の流れで動いている。しかし、これは四十年も五十年もたてば、円がドルに対してがあっと上がるか、ドルが円に対してがあっと上がるかわからないけれども、さまざまなことが五十年だったら起こるんですよ。その部分は、どういうふうなレート計算になっているんですか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 実際の金利の動向がどうなるかとか為替がどうなるのかとかと、いろいろな要素がもちろんあると思いますけれども、今までの民間のノウハウでありますとか米側の経験ですとか、そういったことを見ながら総合的に判断して、最も安定的、効率的なスキームというのを今まさに検討しているということで御理解いただきたいと思います。

松原委員 民間のいろいろな意見を聞きながらって、民間だってこれは意見の出しようがないじゃないですか。民間だったら、きちっとした担保があったり、利息があったり、年限があったりする。全然ないんだから、これは民間のスキームじゃ全然ないですよ。だから、これは、やはり連邦議会の承認は絶対必要だという理由の一つですよ、大臣。

 そして同時に、やはりこれは、日米の地位協定の問題もあるけれども、要するに、日本は議会承認でやるぐらいだけれども、向こうは議会ではない、行政だけだという、このアンバランスがあるわけですよ。

 例えば、夜間の離発着を含め、十時までが騒音規制だ、こういうふうに現地に行って言っていました。では、実際、十時なんですかと聞いたら、いや、十一時までやっています、必要に応じてと。それは河野委員長が向こうに行って強く言っていましたよ。十一時まで必要に応じてという中身に関して、なぜそれが必要だったかを書類で出してくれというのを委員長がおっしゃっていたけれども、私は、そういうことも含めて、余りにもその部分で歯どめがなくて物事が進んでいる。全部歯どめがない。何で歯どめがないかという理由の一つに、恐らく、こういうところで、日本は議会できちっとやるけれども、アメリカは、連邦議会はこれに関しては日本のような扱いをしていない。これが一事が万事、すべてのことを物語っていると思うんですよ。ある場所における例の流弾の話もありますよ。

 結局、僕は沖縄の皆さんのフラストレーションというのは、もちろんさまざまな分野があるけれども、その大きな一つが、余りにも日本政府がアメリカ政府に対してきちっと、それはいいんですよ、負担はある程度するという議論があってもいいかもしれぬけれども、それ以上に、その部分の議論も含めて五分五分の議論をしていないんじゃないかと。

 だから、例えば、今回行った、この市長は何を言っているかというと、彼がアメリカのいろいろな人に手紙を出したり、会ったりして、話をしている。それはまさに、河野委員長も視察でこれも言っていた、それは国がやることを国がやらないから市が前面に出てやるというのは明らかにお粗末ではないかというのは、そのとおりなんですよ。

 結局日本の政府は、外務省を含めて、アメリカに対してきちっと言うことを言って議論をしてそして物事を決めるんじゃなくて、自分の方は、今言った金利の問題もそれからローンの年限の問題も含め、言わない、はっきりさせない。そして、連邦議会に対しても、承認するようにということをアメリカ側に言わない。ここに問題があるんですよ。

 ちょっと一つお伺いしたいのは、さっき池田議員もおっしゃっていたわけですが、アメリカの側に対して、日本も議会承認なのでおたくも連邦議会の承認をとっていただけないかということを言った事実はあるんですか、ないんですか。お伺いしたい。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。事実関係でございますので、お答えさせていただきます。

 先ほど来申し上げているとおり、アメリカが本協定を議会承認条約とするかどうかというのは、アメリカの中の行政府と立法府の権限関係の問題でございますので、これはアメリカ自身が決定すべき事項でございます。したがって、私どもの方からこの協定を議会承認にかけてほしいというようなことを言ったということはございません。

松原委員 アメリカ側は、これを議会承認するということは、現実的にそれは行政が必要であると感じればそれはやることは十分できるわけですよね。どうなんですか。絶対この案件ではできない案件なんですか、議会承認は。必要ない案件なんですか。必要ないというか、必要ないのかもしれないけれども、求めれば、議会承認をしようと彼ら行政府が思えば、それはすることは当然あり得る案件じゃないですか。お伺いしたい。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 これはアメリカという別の国のまさに行政府と立法府の関係、大変微妙な関係があるわけでございます。そこの関係について私どもがこうだというふうに申し上げることはできないということは御理解いただきたいと思います。

河野委員長 速記とめてください。

    〔速記中止〕

河野委員長 速記を起こしてください。

 梅本北米局長。

梅本政府参考人 アメリカの政府がそういうことを議会に対して求めることができるかどうかという御質問でございますが、そこについては私どもわかりません。

松原委員 これがすべての実態で、すべての問題なんですよ。これでアメリカと対等の関係であるというふうに思いますか。時間がないから、それだけ答えてください、大臣。

中曽根国務大臣 ちょっと今聞き漏らしましたので、申しわけありませんが、もう一度お願いします。

松原委員 大臣、私が言っているのは、いや、これは笑い事じゃないんですよ、一番大事なところなんだから。

 アメリカに対して平等なつき合いをしてやるならば、向こうだって日本が国会承認だったら連邦議会承認をしようとするのが普通なんですよ。その部分に関して余りにもそれは平等ではないと私は言っているんですけれども、大臣はこれで全く同等の状況でこれが進んでいると思っているか思っていないか、一言だけ答えてください。

中曽根国務大臣 我々もアメリカ側から国会承認を求められたわけでもございませんし、日本のこちらのルールにのっとってやっておりますし、米国側も行政府と国会の関係において、今局長から答弁ありましたけれども、そういう関係において処理をしているわけでありますが、いずれにしましても、これはしっかりと長い間の協議の中で信頼関係を築きながらやってきたものでありまして、委員のおっしゃることも、そういうものを求めるべきだということも、そういう御意見もございますけれども、先ほどから答弁しておりますように、米国の中でのことということでこれは御判断いただきたいと思います。

松原委員 はっきり言って、これでは沖縄の人は納得できないし、我々国会議員も納得できません。これは、いわゆる我々の日本国のプライドを含めても納得できない。我々は属国じゃないんだから、それはきちっとやるべきだ。やった上で納得する部分があればいいけれども、片っ方は連邦議会の承認は初めからなし、こっちは国会承認。先ほどの池田委員の質問の部分と同じ議論だけれども、これはおかしいよ。はっきり言って、それではなかなか国民の理解は出てこないということを私は言っておきます。

 ちょっと残りの時間がないんですが、いわゆる北朝鮮のミサイル問題に関して私も少し触れたいと思っております。

 このミサイル発射に関して、防衛省は、ミサイルと思っているのか、衛星だと思っているのか、成功したと思っているのか、失敗したと思っているのか、お伺いしたい。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 今回の発射事案でございますけれども、現在各種の情報を集約しているところでございまして、その中で、飛翔高度、時間、速度などのそういった詳細かつ正確な情報について集めまして、それを総合的、専門的に分析を行っていきたいというふうに思っております。そのためには相応の時間を要するということになりますけれども、着実に分析を進めていきたいというふうに思っております。

松原委員 大至急分析をしてもらわなきゃいけない。

 これは、外務省はどうなんですか。同じ質問。

中島政府参考人 先ほど防衛省の方からお答え申し上げましたとおり、この飛翔体の発射につきましては、詳細についてさらなる分析を行う必要があると考えております。

 その上で申し上げますと、委員御案内かと思いますけれども、弾道ミサイルと人工衛星の打ち上げに使われる宇宙打ち上げ機がほぼ同一で、互換性のある技術に由来するものでございます。

 いずれにいたしましても、国連安保理決議の関連で申し上げますと、一六九五号、一七一八号、いずれも北朝鮮の弾道ミサイル計画に関連するすべての活動の停止を求めておりまして、今般の発射が一連の国連の決議に違反するものであったと判断しておりまして、これはミサイル開発に直結するものであるということは疑いのないものと考えております。

松原委員 これが軌道に乗ったという情報はありますか。一言だけ答えてください、時間がないので。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 そのような情報には接しておりません。

松原委員 軌道に乗って電波を発していないとすればこれは人工衛星でないということになるわけでありまして、そうなると、これはもうミサイルだと。互換性があると今話がありましたが、まさにその意味においては日朝平壌宣言に違反していると思っております。

 大臣、日朝平壌宣言を破棄する思いというのはないですか。

中曽根国務大臣 我が国といたしましては、日朝平壌宣言を全体として履行することが北朝鮮との間の諸懸案を解決するということで大事であるわけでございまして、そういう意味で、これは日朝関係を前進させる上で効果的なやり方だと私は考えておりますので、引き続いて、これを破棄することなく、この宣言において確認した事項を誠実に実施するよう北朝鮮には強く求めていきたいと思っています。

松原委員 そもそも日朝平壌宣言の肝ですよ、これは肝。肝の部分でこれだけのことをやって、互換性がある。日朝平壌宣言の破棄も含めて検討するぐらいのメッセージをなぜ出せないんですか。

 追加制裁のことをお伺いしたい。

 前回は、北朝鮮がロケットを発射した、ミサイルを出した後に、即座に万景峰の入港禁止を行いました。その迫力を持って国連に行って、安保理決議をかち取ったわけであります。

 つまり、私が申し上げたいのは、日本は本気なんだぞというメッセージを持って国連安保理に行かなかったらば、中国、ロシアを説得できるはずがないじゃないですか。なぜ今回は、前回のように追加制裁をした上で国連安保理に行き、日本が背水の陣で真剣であるというメッセージを出さないのか、お伺いしたい。

伊藤副大臣 外務副大臣の立場で追加制裁をすべきかどうかという権限があるわけではございませんけれども、我が国の対北朝鮮措置のあり方については、これまで政府部内で不断の検討を行っておりまして、実際の対応については、国連安保理等における国際社会の動き等を踏まえて、総合的に判断することとしております。

 今回北朝鮮が発射を強行したことは国連安保理決議に違反するものであり、我が国の要請を受け、国連安保理緊急会合が直ちに招集され、議論が開始されたところでございます。安保理での議論の結果については現時点で予断することはできませんけれども、安保理が一致して強いメッセージを迅速に出せるように、日本政府として全力を挙げているところでございます。

松原委員 副大臣の思いはいいけれども、要するに、私が言っていることは、おわかりのように、前回は万景峰をとめて行ったんですよ。だから、これは本気だぞとなったんですよ。今回は何もしないで行っているんですよ。本気だなと思わないんですよ、外交は。

 なぜ前回と違う対応をしているのかというのを聞いているんですよ。大臣、答えてください。

中曽根国務大臣 それは、今、国連の場でまさに各国がこういう緊急事態ということで協議していることですから、一つは、それの対応を見るということは当然だと思います。

 委員は行く前になぜやっていかないのかとおっしゃっているわけですが、今ある制裁決議に対してこれにさらに加えるかどうかとか、そういう制裁といいますか措置については、不断の検討をずっと行ってきているわけであります。党の方でもいろいろ議論があるわけであります。そういうものを踏まえて、今後どうするかということは決めていきたいと思います。

 いずれにいたしましても、今、安保理の場で大変熱心に議論しているところでございますので、決議になるのかならないのか、決議の場合は内容がどうなるのか、大変微妙なところでございますので、今、決議になるように全力でやっているということでございます。

松原委員 この部分だけは気合いを入れてやってほしいなと思ったんですよ。つまり、決議がかち取れなかったら、追加制裁をしないで行ったことが敗因ですよ。本気でとろうと思うなら追加制裁して行きますよ、前回万景峰をやって行ったように。それをやらないで、今何か外務省は、レクで、僕はわからないよ、聞いている話、いや、追加制裁しても意味がないとかあるとか、回っていると。冗談じゃないですよ。メッセージ性が大事なんだから。やらなきゃしようがない。

 それで、北朝鮮のミサイル兄弟というのがいるというのは御存じですか。名前が徐錫洪と徐判道。ミサイル兄弟と言われている。ミサイルエンジンの専門家で、北朝鮮の朝鮮労働党の下に、こういった科学技術者が千二百人ぐらい集まっている組織がある。その中に、徐錫洪と徐判道、兄弟なんですよ。これが金剛原動機合弁会社というのをやっている。この金剛原動機合弁会社というのは、いわゆるエンジンをやっている会社だというんだけれども、この場合は完全にミサイルだというのはわかっているわけであります。特に徐判道さんというのは、副社長をやっていて、東大を出ている方で、北朝鮮で共和国博士号も取っている、ミサイルエンジンの専門家と言われている。

 こういった方々が、前回は、ミサイル発射の前後で一カ月、二カ月北朝鮮に行って戻ってきているんですよ。私が聞いたところによると、戻ってきたときの万景峰が入港禁止になっていたので、結果として、人道的措置ということで、一人おりて戻ってきたというふうな話も聞いております。日本の警察の方もここはいろいろな捜査に入っています、いろいろな理由で入っています。つまり、別件でいろいろとやっているんじゃないかなと私は率直に言って思います。しかし、こういう人たちが北朝鮮と日本の間を全くもって普通に行き来しているわけであります。日本のさまざまなところの情報を持って彼らが北朝鮮に行っている。昨年十月中旬、この二人のミサイル技術者と一人の核専門家が訪朝して一カ月滞在していることもわかっている、こういうふうな情報が入っているわけであります。

 こういう人の出入りに関して、私は、やはり追加制裁でこれをやるぞということを含め、検討ではなくて、本来であれば、即座にこういったロケット兄弟とあだ名されるような方々が往復することに関してはストップをかけるべきだったと思うんだ。そういうふうな人的なストップも含め、なぜかけていないのか、これからかける予定があるのか、お伺いしたいと思います。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国が単独でとる措置のあり方につきましては、先ほど大臣、副大臣から御答弁申し上げましたとおり、安保理の行方を見据えながら最終的に判断をしていく過程にあるところでございますので、個別具体の措置につきまして今現段階で確実に答弁申し上げることはできないということでございます。

松原委員 前回と今回となぜ違うんですか。では、それを答えてください。前回は即座にやっているんですよ、万景峰。今回何でやっていないんですか、追加制裁を。何でプラスやらないんですか。前回、何もないところから一気にやったんですよ。違いを教えてほしい。

石川政府参考人 前回、二〇〇六年のミサイル発射の事案、それから、その後の核実験実施発表というのを受けて、我が国の単独の措置をとったわけでございますが、それ以前におきましては我が国の単独の措置はとっていなかったわけでございますから、その際に導入をしたということでございます。

 今回、ではどうするかということにつきましては、国連の安保理の動向、あるいはその他関係国、国際社会の動き、それからもちろん国内のいろいろな御意見、そういったものを総合的に踏まえて判断をするというところでございます。

松原委員 時間が参りましたからこれでやめますが、私は、それでは外交交渉は、国連の安保理決議も恐らくとれないだろう、そういう状況であれば。やはり、追加をしてやるというところが、日本の怒りを国際社会に明らかにすることになる。

 それから、冒頭言ったように、米国との関係においては、この件では連邦議会の承認をとるというところが、日本は国際社会できちっと発言をする国だということにつながると思います。

 大臣、もう答弁をもらっても同じような答弁になるだろうからあえて聞きませんが、私は、中曽根大臣も本当はじくじたる思いがあると思うんだ。おれは松原委員と同じ意見だよと言いたい、それぐらいの決意がなかったら、大臣としての矜持にかかわる。本当にそこは胸に秘めて、きちっとやってください。日本の外交と国益は、日本のプライドも含めて、この北朝鮮問題もそうだし、今ずっと申し上げた議会承認の件でも、明らかに一方的過ぎる。我々は外交においてまさに敗北を重ねようとしていると思っております。敗北をこれ以上続けるわけにいかないと申し上げたい。

中曽根国務大臣 委員からすれば十分な答弁ということにならないかもしれませんが、私も、今委員おっしゃいましたように、日本の頭上をミサイルといいますか、これが飛び越えていく。今回二回目です。今後、人工衛星だ、人工衛星だというたびに飛び越えていくなんというのはとんでもないことで、そのたびに、万が一のことがあったらということでやらなければならない。

 したがいまして、北朝鮮の今回のこういうような発射に対しましては、本当に毅然とした態度で国際社会と一緒にやらなきゃならないと思っています。ですから、その日のうちに各国に連絡し、きょうも九時と十時と、夜、海外の外務大臣と電話することになっていまして、そういう意味では、委員ほどじゃないかもしれませんが、私も同じような気持ちでやっております。ぜひ御指導いただきたいと思います。

松原委員 終わりますが、日本が最初の行動を起こさなかったら、国際社会は動きません。

 以上であります。

河野委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 いわゆるパッケージ論について聞きます。

 今回の協定は、前文、さらに本文第三条と第九条で、嘉手納飛行場以南の土地返還は普天間飛行場の代替施設の建設と海兵隊のグアム移転のための日本の財政負担が条件だと規定しております。

 まず、外務大臣に伺いますが、沖縄の米軍基地、どのように形成されていったという認識ですか。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 ちょっと、必ずしも質問の通告をいただいておりませんでしたので、私の方からお答えをいたします。

 沖縄につきましては、戦後、サンフランシスコ平和条約が発効した後も、七二年までの間は米軍の施政下にあったわけでございます。その間に、いろいろな米軍の基地、施設・区域がつくられたということがございます。そして、そこには民有地、公有地というものがかなりある、そういう背景があるということは私ども承知をしているところでございます。

赤嶺委員 外務大臣、私は毎回外務大臣にはそのことを質問しておりますが、毎回北米局長が出てきて答弁し、これがまた経過が間違っているという、これの繰り返しなんですよ。今、サンフランシスコ条約の発効の後の土地の取り上げ、こういうお話でしたが、普天間基地は違います。米軍は、上陸して、四月一日、すぐに普天間飛行場の建設に取りかかっております。

 ところで、外務委員の皆さんが沖縄に行ってこられて、先ほども大変リアルな質問が続きましたけれども、きょう、早速、四月六日衆議院外務委員会の沖縄視察における懇談メモ、こんな早くこういうメモが出ているのかということで大変びっくりしましたけれども、その懇談メモが渡されました。

 その中に「ジルマー司令官との質疑応答の後、スミス普天間飛行場司令官から普天間飛行場の概要説明があり、その中で、普天間飛行場が市街地の真ん中にあり、市民生活に非常な危険をもたらしているとの批判に対して、」これは委員の皆さん方がそういう批判をなさったと思います。そうしたら、スミス普天間飛行場司令官は、一九四五年に同飛行場がまずできて、それから徐々にその周囲に市街地ができ上がったとのアメリカ側の説明があった、このようにメモになっておりますが、スミス普天間飛行場司令官のこの説明は当たっているんでしょうか。これは北米局長でも結構です、答えてください。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 ちょっと、私、その司令官の発言を正確に承知しているわけではございませんので、そういう前提で申し上げますと、確かに私どもも、千九百何年の普天間飛行場とその周りというような写真とか、経年変化を経た状況等は見ておりますけれども、アメリカ側においては、確かに、飛行場ができた当時は周りに家等が少なかったというようなことを言う人がいるということは承知をしております。

赤嶺委員 同様の発言は、二〇〇五年にも、私たちが普天間飛行場を訪ねたときに、ブラックマン四軍調整官、米軍トップは、普天間飛行場について、サトウキビ畑とパイナップル畑で何もなかったところに飛行場を建設したらその周りに人が集まってきた、このように言いました。大体、宜野湾にパイナップル畑なんてないですよ。

 それから、北米局長、あなたが見せられた写真というのは米軍が用意している写真なんです。米軍が用意している写真ばかり見るから、そういう先入観になってしまって、国会で聞かれるたびに、外務大臣は答え切れない、北米局長は正確な答弁にならない、こういうことの繰り返しであります。

 普天間飛行場というのは、上陸したその日に米軍が取りかかりました。住民は収容所に入れられておりました。収容所から戻ってきたら、鉄条網が張られ、自分たちの土地が基地に変えられていた。そして、そこには民家があり、田畑があり、郵便局もあり、公民館もあり、製糖工場、当時でいえばサーターヤーといいます、こういうのがあったんですよ。集落ですよ。そこを強引に、無理やり米軍が基地にしたわけです。さらに、銃剣とブルドーザーによる土地強奪、これもありました。私の出身地も、その銃剣とブルドーザーによって土地を強奪された、旧小禄村というところであります。

 米軍は、戦後六十四年間、県民に何の補償もすることもしないで沖縄に居座り続けてきたわけです。日米安保条約、地位協定によって、無条件、無償の基地提供が義務づけられているからであるわけです。地主への補償は日本の税金で賄われてきました。

 外務大臣に伺いますが、政府が嘉手納以南の土地返還を求めるというなら、アメリカ政府の負担で土地をもとに戻して返還せよ、こういうぐあいに求めるのが当然ではありませんか。ましてや、土地を強奪され、そしてその強奪された土地の返還にアメリカ側から条件をつけられる、こういうのは到底許されないと私は思いますが、外務大臣、いかがですか。

中曽根国務大臣 嘉手納以南の返還された土地の使い方等については、まだ詳細が決まっておりませんので、今後そういうような話をする中においていろいろと検討していくべきだと思っております。

赤嶺委員 グアム移転協定の中に、嘉手納以南の土地返還、無償で返せなんて言っていないですよ。今、沖縄の人たちは、その土地が返還された後に、どんな毒物で土壌を汚染されているかわからないと言っている状態なんです。

 私は、土地の返還をするから、県民の負担の軽減になるから、移転するグアムのお金を出せというのが間違っていると思うんですよ。無条件の土地の返還が当然なんです。それから、逆にこれまでの負担に対する迷惑料を払え、このぐらい言うべきですよ。これが県民の感情です。

 米軍は、基地返還の費用も一切負担しない、そして日米地位協定で土地の原状回復や補償の義務も負わない。九五年に返還された米軍の恩納通信所、あるいはキャンプ桑江も、全部土壌が汚染されていた。その後始末は自治体が苦労しながらやっている。

 日本政府は、その地位協定の改定も求めない、アメリカ言いなり、本当にアメリカ言いなりです。強奪された土地の返還に条件をつけてきたSACO合意。SACO合意のときは、普天間飛行場、これは嘉手納以南の土地の一つです、普天間飛行場の返還を求めるのであれば名護市に新しい基地をつくれと条件をつけてまいりました。これが破綻して失敗したら、今度は米軍再編では、名護市に基地をつくることは当然だ、その上に、海兵隊がアメリカのグアムに戻るから、その収容先まで負担しなさい、それがなければ土地返還には応じないと言っているのがパッケージ論ですよね。まさにパッケージになっている。

 要するに、米軍再編というのは、普天間飛行場などの土地の返還に対して、グアムの基地建設費用の分担という新たな条件を、SACO以上の条件を追加した、そういうことではありませんか。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 SACO、沖縄特別行動委員会におきまして、施設・区域の整理縮小ということ、その中で普天間の移設及び返還ということを合意して、自来実施をしてきているわけでございますが、SACOにおいては、特に部隊の大きな移動というものは伴わない中で施設・区域を効率的に使う、そういう中で施設・区域の中で不要なものを返還しようということでやったわけでございます。

 今回の米軍再編におきましては、それを超えまして、さらに米軍についても大きく動かす、動かすことがあり得るということで協議をし、したがって、沖縄から海兵隊の要員八千名をグアムに移す、グアムに移設するということで、より根元の方から負担軽減ができないかということで現在のようなロードマップになっている、こういう次第でございます。

赤嶺委員 根元の方からというのであれば、六十年間土地強奪して、居座って使い続けて、土壌も汚染した米軍です、グアムに撤退するというなら、撤退してもらったらいいじゃないですか。何で、撤退する条件として、沖縄県民は新しい名護市の基地建設を受け入れ、それからグアムの基地建設の負担を日本政府が受け入れるというこのパッケージに甘んじなければいけないんですか。パッケージ論というのは、結局、県民を侮辱するものなんですよ。私は、そのことを外務大臣にも強く申し上げておきたいと思います。

 それで、さっきの問題で、このグアム協定、先ほども議論になりましたけれども、アメリカにおいては行政協定扱いである、議会の承認も必要としない、そういうことに先ほどの議論はなっていたわけですが、四月三日の当外務委員会で梅本北米局長は、九条2で、「移転のための資金が利用可能であること、」とは、米国政府がグアムにおける施設及び基盤の整備を実施するために必要とする予算がアメリカ議会より承認をされている、こういうことを指しておりますと言っているんですが、これはそのとおりで間違いないですね。

梅本政府参考人 先般御答弁したとおりでございます。

赤嶺委員 それでは、議会の承認がアメリカの側でも必要になってくるということになりますけれども、このグアム協定の、日本の場合は幾ら拠出するか。第一条で二十八億ドルと明記しているんです。それで議会の承認を今得ようとしています。ところが、アメリカ側の資金拠出を定めた第二条には拠出額は明記されていないんですね。これはなぜですか。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 第二条は、まさにアメリカ合衆国は、「第九条2の規定に従い、グアムにおける施設及び基盤を整備する同政府の事業への資金の拠出を含む移転のために必要な措置をとる。」ということでございまして、特に上限等を設けていることはないということでございます。

赤嶺委員 この拠出額、ロードマップで合意した額、これが入れられていないのはなぜですか。

梅本政府参考人 ただいま申し上げましたように、米側については、あくまでもその必要な措置をとるということでございまして、上限を定めておらない、こういうことでございます。

赤嶺委員 今、グアムへの拠出額というのは、日本の方が多いんですよ。アメリカは少ないんですよ。そんな、上限を定めていないなんて、そのぐらい言うなら、最初から日本より多い金額を負担しておけばよかったじゃないですか。どうもここは、ロードマップで合意した金額をグアム協定に書いていない、今北米局長の説明を聞いても、なるほどという感じはいたしません。あいまいです。

 それで、やはり議会の承認を得る必要がある問題とかかわっていると思うんですよね。アメリカ連邦議会の海外基地見直し委員会は、二〇〇五年五月の中間報告書の中で、在沖海兵隊のグアム移転について、沖縄県での戦闘能力の削減は東アジアにおける我々の国益を危険にさらすと否定的な見解を述べているわけですね。この議会の見解に対する配慮、これもアメリカ政府の側にはあったのではありませんか。

梅本政府参考人 私ども、日本政府として、米議会と米政府の関係についてあれこれ申し上げるわけにはまいりませんけれども、常々、米議会については、できるだけ米国の負担を下げよう、同盟国の負担を求めるという姿勢が非常に強いという一般的な傾向があるわけでございまして、そういう中で、米政府が今回の協定について、議会の承認の問題については、議会承認を求めない行政協定というふうにしているというふうに私どもは理解をしております。

赤嶺委員 本音がぽろりと出ているじゃないですか。やはり議会にかけると削減しようとするから、ロードマップで合意した金額が入れられないわけですよ。

 アメリカでは、行政府に予算提出権はない、予算を構成する法案の作成と提出は議会自身が行うということを私は学んできました。大統領は予算教書を提出するが、それは議会が予算を審議する際の参考資料にすぎないわけです。政府は、今回の協定で、多年度にわたる資金拠出を初めとする日米双方の行動が法的に確保されるとおっしゃいました。日本の側は確保されたかもしれません。ここで言っているのは日米双方ですから、アメリカ議会による予算措置は担保できるんですか。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 この協定の第二条におきまして、アメリカ政府は、「グアムにおける施設及び基盤を整備する同政府の事業への資金の拠出を含む移転のために必要な措置をとる。」ということを約束しているわけでございます。

赤嶺委員 ですから、さっきから民主党の先生方は、何でそれを議会の承認にしなかったんだという議論が生まれたわけでしょう。協定には書かれているけれども、議会の承認はとらないわけでしょう。それでは、議会の予算承認の担保はどこからとるんですか、どこから説明するんですか。これを説明したって何の担保にもなりませんよ、議会の承認を得ない協定ですから。いかがですか。

梅本政府参考人 私どもは、あくまでもこれは政府と政府の約束として、アメリカ合衆国政府は資金の拠出を含む移転のために必要な措置をとるということを約束しているわけでございますから、その約束に従ってこれから案件を実施していくということでございます。

赤嶺委員 アメリカは、議会の権限が日本よりもはるかに強い。予算の場合には、行政府、大統領は予算教書を提出するが、それは議会にとっては予算を審議する際の参考資料にすぎない。予算を構成する法案の作成と提出は議会自身が行う。議会自身が行わなければ予算は担保できないじゃないですか。

 だから、アメリカの側には一切の担保なしに、しかし日本だけは二十八億ドル必ず出せ、そして沖縄にはパッケージであらゆるものを押しつける、こういうようなものがまともな独立国の協定なのかということを強く指摘したいと思います。外務大臣、いかがですか。

中曽根国務大臣 まず、先ほどから参考人が御答弁申し上げておりますように、この協定の第二条でそういうような、資金について米国側が必要な措置をとるということははっきりと明記されておるわけでありまして、これは米国の国務長官と日本の外務大臣である私が署名をしたものであります。

 それで、先ほど申し上げたんですが、これは国際約束でありますから、そういう意味では、私どもとしては、米国もこのことにつきましてはきちんとこれを守って実行に移すということ、そういうふうには思っているところでございます。

赤嶺委員 何遍国際約束だと言っても、アメリカは、議会の承認というこの関門をくぐらない限り、ロードマップで決められた金額の担保はないわけです。いや、これ以上負担することになっているから協定に金額を書かなかったんだなんて、だれがそんな話を信用しますか。議会のチェックを逃れるためですよ。議会ではさらに自国の負担を少なくしようという力が働く、日本だけが一方的に負担する、こんなグアム協定は批准すべきではないということを強く申し上げて、質問を終わります。

河野委員長 次に、辻元清美君。

辻元委員 社民党の辻元清美です。

 私も、まず政府の統一見解を示していただきたい点がありますので、委員長、お聞きいただきまして、お取り計らいの采配を振るっていただきたいと思います。

 その点につきましては、国際的な協定は国内法の上位に来るのかどうかという点。これは、先般、知事及び副知事にお会いしました折も、特に、環境アセスメントやその後の知事の埋立許認可権など、国内法を超越しないのかどうか政府からも説明を受けたが、この点、政府の統一見解のようなもの、しっかりしたものを委員会で検討してほしいというか、そういうような御要望もございましたので、この点、政府の統一見解を求めたいと思いますが、委員長、お取り計らいをよろしくお願いしたいのですが。

河野委員長 後ほど理事会で協議したいと思います。

辻元委員 といいますのも、今までの政府の答弁は、過去には、憲法九十八条の規定に照らして、条約を国内的に実施する場合に、これを法律で実施する場合もございまして、条約をそのまま国内的に受容してこれを実施するという場合もございますけれども、いずれの場合にいたしましても、国内的な面におきましては憲法が条約に優先するというのが政府の見解であるということというのが今までの政府の答弁なんですね。

 これは、憲法九十八条では、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守する」という、この「確立された国際法規」というのに今回の協定が入ると思うんですね。これで環境アセスメントや埋め立てに関する権限が縛られるのではないかという懸念をぜひ政府の統一見解として晴らしていただきたいということで、追加で私の方からお願いをしますので、後ほど協議をお願いいたします。

 それからもう一点、伊波市長とお目にかかりました折に、視察で参りました折、きょうもお話がありましたけれども、クリアゾーンの適用がなぜ普天間にされないか米国に照会をしてほしいという御要望でございました。即刻、委員長が、その点について外務省に、照会をするようにということでした。しかし、きょう理事会でお聞きしましたお答えは、外国には適用しないということですというお答えなんです。

 この趣旨は、どうして普天間には適用されないかということを照会してくれということでしたので、しっかりした答えにはなっていないと思うんです。外国には適用しないのなら、アメリカはどうどうどういう理由があって適用しないかということまで外務省はきちんと問い合わせて、理事会に報告をしていただきたいと思いますので、この点も、委員長、引き続き御協議をお願いしたいと思います。

河野委員長 外務省、今答弁できますか。

梅本政府参考人 御指摘の航空施設整合利用ゾーンプログラム、いわゆるAICUZでございますが、私ども、またアメリカ側に照会をいたしました。その結果として、次のような回答をもらっております。

 あくまでも米側が作成し運用しているものでございますので、それ以上の詳細について、私ども、なかなか責任を持って御説明することは難しいわけでございますが、アメリカ側からの説明は以下のとおりでございます。

 AICUZは、米国内において、騒音、安全等の観点から、飛行場周辺の土地利用のガイドラインを自治体に対して勧告するものということであります。同時に、AICUZに基づくガイドラインは地元自治体に提供されるけれども、これに沿った土地利用を行うか否かを判断するのは自治体である。そして、自治体がこれと異なる決定をすることを妨げるものではないということであります。

 また、米側は、そのようなAICUZというものでございます、あくまでこれは米国内において周辺の自治体に対してガイドラインを与えるものだということでございますので、そういう性格のものであるということから、海外の航空施設には適用されないというふうに私どもは聞いております。

辻元委員 海外に適用されないということは、海外ではやりたい放題と言ったら言葉は悪いですけれども、そういうことにつながるわけです。それが今の普天間の悲劇を起こしているわけです。

 これについては、引き続き、またいろいろ追及をしていきたいと思います。

 さて、ここから本題に参ります。

 外務大臣、前回の委員会で通告を申しました。それは、特に今回、辺野古の基地建設をめぐりましてさまざまな意見が出て、地元の住民の皆さん、不安、疑念、そして反対の声が上がっている、そこにぜひ一度意見を聞きに、どういう点が不安なのか、どういう点に反対しているのか、出向かれたらどうですかと申し上げました。

 きょう皆さんのお手元にお配りしている、これをちょっとあけていただきたいんですけれども、この右の下を見ていただくと、ジュゴンとウミガメが一緒にランデブーという写真、これも辺野古周辺で撮られたものです。これは、日本テレビも撮りまして、テレビでも放映されております。そして、その上は、きれいなサンゴの群生に集まる魚たち、そして左の方も、クマノミ城とか、きれいなこういうサンゴ礁が出ております。ですから、こういう海を埋め立てる、そこに影響が出てくるという認識なんですね。

 ですから、きょうは沖縄の皆さんも傍聴に来ているとお聞きしております。辺野古にお住まいの方、そして辺野古の近辺の集落の方も心配して傍聴にいらしているようなんですね。最初に、外務大臣に御答弁いただきたいと思います。いかがでしょうか、大臣、一度行って、車座でひざを突き合わせてゆっくりお話しされたらいかがですか、私も同行しますから。いかがでしょうか。

中曽根国務大臣 前回の委員会で、委員から、一緒に辺野古に行ったらどうかというお話がありました。私は、申し上げましたけれども、去る一月三十一日から二月一日にかけまして沖縄を訪問した際に、キャンプ・シュワブの普天間飛行場代替施設の建設予定地を見せていただいたわけでございますが、また、そのときは仲井眞知事さんや多くの関係市町村の方とも懇談をさせていただきました。

 実際、今これをいただいておりますが、大変きれいな海だというのが率直な感想でありますし、沖縄の自然というものもできるだけ守らなければならない、これは言うまでもないことでございます。

 きょう、実は、この委員会の終了後、五時半から、第九回目となる普天間移設協議会が開催されることになっておりまして、そこでまた仲井眞知事さんや島袋名護市長さんとか関係市町村の皆さんにもお会いする機会がありまして、またいろいろと意見の交換や、また御要望も伺うことになろうかと思います。

 つい二カ月ほど前に訪問しておりますので、また今の国会日程等を考えますと、なかなか日程を割くのが難しい状況でもありますが、いずれにいたしましても、これはいつも申し上げておりますけれども、地元の皆さんのお声には耳を傾けながら、普天間飛行場の移設、返還というものを着実に進めてまいりたい、そういうふうに思っているところでございます。

辻元委員 大臣には引き続き働きかけをさせていただきたいと思います。

 私は何も、びくびくすることもないし、そこへ行ったら何か対立するというのではなくて、やはり直接政府が姿勢を示し、直接意見を聞くというのはとても大事だと思うんです。今の政治にそれが欠けていると思うんです。ですから、引き続きこれは求めていきたいと思います。

 さて、きょうは、協定の中身の九条を中心にお聞きしたいと思います。

 本協定の第九条では、日本側の資金提供の条件とアメリカ側の措置の条件が規定されているという認識でいいですか。いいかどうか。

梅本政府参考人 まさに第九条におきましては、日本側の資金の提供、それから合衆国の措置について、いろいろな条件等が書いてあるわけでございます。

辻元委員 そうしますと、日本側が、二十八億ドルを上限に資金の拠出を実行して、そして九条二項で規定されている条件をすべて満たしたら、アメリカは何をするんですか。

梅本政府参考人 このグアム移転は、二〇一四年までに多年度にわたってそれぞれが必要な措置をとりながら進むということでございますので、片一方が全く単独に八年間何かをやって、そこで終わって初めて次のことが起こるということではなく、日本側も、二十八億ドルを限度といたしまして資金的な拠出というものを各年度、これから国会の御承認を予算で得ながらやるわけでございます。また、アメリカも、アメリカの会計年度ごとに予算を講じて措置をとってくる。双方がそれぞれ各予算年度ごとに措置をとっていく、こういうことでございます。

辻元委員 そうしますと、二〇一四年というのが出ましたけれども、二十八億ドルを上限に日本が資金の拠出はしたけれども、九条二項に定められるその他の条件を日本側が二〇一四年までに満たされなかった場合、どうなるんですか。八千人の海兵隊は帰るんですか、帰らないんですか。

梅本政府参考人 委員の御質問のような状況というものがどういうものかというのはちょっと、必ずしもよくわかりませんけれども、日本側としてみれば、これは今、グアムの移転のために予算措置を講じながら拠出を行っていくということでございますし、また、普天間の移設、返還についても着実に措置を進めていくということでございます。また、アメリカの方も、移転のための資金の手当て等の所要の措置をとっていくということで、それぞれが並行して進んでいくということを想定しているわけでございます。

辻元委員 協定の契約関係がどうなっているかということを聞いているわけです。ですから、今の私の質問が理解できないというのはちょっと不安ですけれども、大丈夫かなと思いますけれども、協定では、二十八億ドルまでのお金はどんどん拠出しているけれども、九条二項ですよ、その他の条件を満たさなかったら八千人は帰らないのかと言っている。その他の条件というのは何がありますか。日本側が果たさなければいけない条件、お金の拠出と、ほかに何があるんですか。九条二項で規定されていることです。

梅本政府参考人 九条二項は、ロードマップに記載をされております普天間飛行場の代替施設の完成に向けて日本国政府による具体的な進展があること、それからロードマップに記載された日本国の資金面での貢献があることということでございまして、これは民活事業等についてもきちんと進めていくということでございます。

辻元委員 ということは、一方でお金はどんどん払う、せっせと払う、しかし、九条二項の(2)、普天間の代替施設、具体的には、辺野古の新基地の建設が進まない場合は、八千人も帰らないし、日本側が約束を二〇一四年までに守らなかったということになりますか。

梅本政府参考人 あくまでも、政府としては、それぞれの事業をそれぞれ着実に進めていくという立場でございます。

 そういう前提で、条約の仕組みとして御説明を申し上げますと、第九条の一項においては、日本国の資金の提供は、今度は、アメリカ合衆国政府による資金の拠出があることを条件とするということでございまして、全く仮に、例えば普天間の移設が具体的な進展がない、あるいはアメリカが資金をつけないということであれば、日本側もその資金を提供する義務がかかってこないわけでございますので、要するに、何も起きないということになるわけでございます。

辻元委員 私は、日本側のしなければならないことを、条件を、アメリカ側から見たら日本側の条件は何かということを問うているわけです。ですから、アメリカもお金を出している、日本もお金はせっせと出しているけれども、辺野古の新基地の建設の進展が見られない場合は、お金はどんどん出しているけれども、そしてグアムにはいろいろなものが建設はされるけれども、八千人は帰らないという事態が本協定では起こるということですね。根性論とか、いや、政府はやるんです、そんなことは聞いていないわけですよ。本協定の約束ではそういうことですねと聞いているわけです。

梅本政府参考人 まさに協定の仕組みとして申し上げますが、仮に、例えば普天間飛行場の代替施設の完成に向けての作業が何らかの理由により滞るというようなことがあるといたします。そういう場合には、確かにアメリカ側が資金を拠出する条件が満たされないような状況が出てくる可能性がある。

 そうなりますと、私どもの方の拠出についても、この拠出をする条件が整わないというような、そういう状況になるわけでございまして、そういう場合は、この両政府は、第十条にもございますが、この協定の実施に関して相互に協議をするということでございますので、何か、万が一物事が順調に進まないような兆しというものがある場合には、よく協議をして、まずはそういうことをどうやって克服して全体を着実に進めるかということを協議するということで、適切な措置をとっていくことになろうかと思います。

辻元委員 なぜこういうことを聞くかと申しますと、間もなく総選挙があります。どういう組み合わせで政権をとるかわからないわけですね。それで、野党は大体県外移設なんですよ、普天間の代替施設は。そうなりますと、一年以内にこの辺野古の新基地建設については見直そうというような事態も、これは政治のメカニズムですから、政権がかわれば政策が変わるのは当たり前ですから、それは否定できません。

 政府の見解を求めたいんですが、そういう場合は十条にのっとって、日本は政権もかわったし、ちょっと方針が変わりました、ですから今までのこの協定の九条二項は実行できませんとなった場合には、払ったお金はどうするんでしょう。それは日本側の都合だから一銭も返ってこないんですか。いかがですか。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘になった事態といいますのも、先ほど梅本北米局長の方から答弁をいたしましたように、この協定の実施に当たって、双方、それぞれ相手方がどういうふうな措置をとるかなどの条件というのが満たされないという事態が起こったときにどうなるかということでございますけれども、そのようなときには、この十条の規定に基づきまして、両国政府で相互に協議をするということになろうかと存じます。

辻元委員 そうしたら、そこで今まで支払ったお金の行方や、そういうことも協議ができるということでいいんですね。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 具体的な状況、どのような形になるかということ、想定がなかなか難しゅうございますので、具体的にお答えする点はやや限界がありますけれども、もしそのような事態となります場合には、双方がそれぞれ、それまでにやってきたこと、もしそれが資金の提供、それぞれが資金の提供以外にとってきた措置につきまして、それをどうするかということにつきましても、当然のことながら協議をするということになろうかと存じます。

辻元委員 といいますのは、協定というのは取り決めですから、政治状況が変わったり、いろいろなことに対応できるということを想定してやはりメカニズム、仕組みをつくらなきゃいけない。

 きょう確認させていただいたのは十条で、これは新基地建設ありきではなくて、それが今まで実際に十年以上つくられてこなかった理由というのは根深いわけですよ。それが、あと五年でつくれるかと思っている方もいらっしゃるかもしれませんけれども、それは甘いと思います、政治状況も変わりますから。ですから、十条で話し合って、この協定自体が破棄になったり無効になるということも考えられるということでよろしいんですね。それを最後に答弁してください。

北野政府参考人 これも仮定の事態でございますので、なかなか確定的なお答えは難しゅうございますけれども、仮に、今委員が御指摘になるように、この協定の実施に当たって日米双方それぞれで難しいというふうな事態が起これば、そのときには、まず十条の規定に従ってお互いに協議をするということだろうと思います。

 また、そのようなときには、日米双方が、日米同盟に当たっての、お互い同盟関係にある日米の信頼関係というものを踏まえて協議がなされるということであろうというふうに理解をしております。

中曽根国務大臣 今参考人が、そういう事態にならないことが望ましいわけですが、仮定の御質問にお答えしましたけれども、確認のため基本的なことを申し上げさせていただきますと、いわゆる国家間の国際約束というのは、一たん締結されれば、当事国としてはそれに拘束されるわけでありまして、仮に政権交代がありましても、それを誠実に履行するということが求められているものでございます。国内の事情によってそうした性格というものが影響を受ける、そういったものではございません。これはこの協定についても同様である、そういうふうに考えております。

辻元委員 ですから、最初に申し上げましたように、要するに条約や国際約束は国内法の優位に立つのかとか、何がそうなのかという見解を出していただきたいと思うんですね。

 ですから、いろいろな論調で、選挙があって政権交代が起こるかもしれない、次までも縛ろうと協定をわざわざ急いで結んだんじゃないかというような論調が出てくるわけですよ、今のような御答弁だから。

 ですから、今大臣がおっしゃったこと、しかし、十条でしっかり話し合って、この協定自体も政権がかわったら変わると、可能性があるということをやはり確認しないと、日本の政治というのはきちんと政権をとった方がイニシアチブをとってするという政治にならないということを申し上げて、今の答弁で私、またちょっと疑問点が出ましたので、審議をこれでやめるわけにはいかない、引き続きこの問題についても質疑をさせていただきたいと思います。

 以上です。

河野委員長 次回は、来る十日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時六分散会


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