衆議院

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第10号 平成21年5月8日(金曜日)

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平成二十一年五月八日(金曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 河野 太郎君

   理事 小野寺五典君 理事 松島みどり君

   理事 松浪健四郎君 理事 三原 朝彦君

   理事 山中あき子君 理事 近藤 昭一君

   理事 武正 公一君 理事 伊藤  渉君

      逢沢 一郎君    猪口 邦子君

      木原  稔君    篠田 陽介君

      柴山 昌彦君    鈴木 馨祐君

      関  芳弘君    中山 泰秀君

      橋本  岳君    原田 義昭君

      御法川信英君    盛山 正仁君

      安井潤一郎君    山内 康一君

      山口 泰明君    池田 元久君

      篠原  孝君    田中眞紀子君

      鉢呂 吉雄君    松原  仁君

      丸谷 佳織君    赤嶺 政賢君

      辻元 清美君

    …………………………………

   外務大臣         中曽根弘文君

   外務副大臣        伊藤信太郎君

   防衛副大臣        北村 誠吾君

   外務大臣政務官      柴山 昌彦君

   外務大臣政務官      御法川信英君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 廣木 重之君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石川 和秀君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 北野  充君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   佐野 利男君

   政府参考人

   (防衛省防衛参事官)   岩井 良行君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  高見澤將林君

   外務委員会専門員     清野 裕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月八日

 辞任         補欠選任

  小野 次郎君     安井潤一郎君

  篠田 陽介君     橋本  岳君

  西村 康稔君     関  芳弘君

  笠井  亮君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  関  芳弘君     西村 康稔君

  橋本  岳君     篠田 陽介君

  安井潤一郎君     盛山 正仁君

  赤嶺 政賢君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  盛山 正仁君     小野 次郎君

    ―――――――――――――

五月七日

 七・一八沖縄県議会決議を尊重し、辺野古新基地建設の断念を求めることに関する請願(阿部知子君紹介)(第二一五〇号)

 中国及び中国周辺地域における人権弾圧問題等の解決に向けて、日本国政府からの働きかけを強化することに関する請願(枝野幸男君紹介)(第二二三四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 クラスター弾に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)

 国及びその財産の裁判権からの免除に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

 強制失踪(そう)からのすべての者の保護に関する国際条約の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)


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     ――――◇―――――

河野委員長 これより会議を開きます。

 クラスター弾に関する条約の締結について承認を求めるの件、国及びその財産の裁判権からの免除に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件及び強制失踪(そう)からのすべての者の保護に関する国際条約の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官廣木重之君、大臣官房審議官石川和秀君、大臣官房審議官北野充君、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長佐野利男君、防衛省防衛参事官岩井良行君、防衛政策局長高見澤將林君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河野委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木原稔君。

木原(稔)委員 おはようございます。自由民主党の木原稔でございます。

 本日は、三本の条約について順次質問をさせていただきます。

 まず、クラスター弾に関する条約について始めたいと思いますが、これまでに世界じゅうで使用されていたクラスター弾及びその不発弾というものが、世界各地で一般市民に与えてきた被害、これは甚大なものであるという認識を私はしております。そのことは大前提とした上で質問をさせていただきますが、もともと武器というものは、殺傷能力が高いほど優秀なものであります。クラスター弾は、そういう意味でいうと極めて優秀な武器であるということが定義づけられます。しかしながら、特定の個体だけでなく、周辺の不特定の個体までも同時に破壊または殺傷してしまうというところから、さまざまな問題が起こっているのではないか、そのように考えるわけであります。

 我が国の防衛というのは、もう言うまでもなく、憲法九条に基づいて、専守防衛、これを国是としておりまして、防衛戦略によって我が国の防衛というものを担保しているわけであります。我が国は自衛隊の限られた戦力の中で、島国という極めて特異な環境の中、その海岸線を広域にわたってカバーしながら対処するということが求められております。

 幾ら兵器が近代化したとしても、地理的な条件というものは不変であります。そういった観点で、広域を制圧できるクラスター弾というものは極めて有効な装備でありました。上陸侵攻を担う敵にとってみれば、クラスター弾というのは大きな抑止力となり、日本にとっては、これまで十分にこれが機能していたのではないかな、そういうふうに分析ができるわけであります。

 こういった観点を踏まえますと、クラスター弾が我が国の安全保障においてこれまでに果たしてきた役割、意義というものはどのようなものであるか、これは防衛省に伺います。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 クラスター弾の意義につきましては、今先生御指摘のとおりでありまして、クラスター弾というのは、基本的には、密集の目標に対しても、移動中の目標に対しても、分散した目標に対しても、あるいは位置がよくわからない目標に対してもこれを攻撃することができるという意味で、非常に有効な兵器だというふうに思っております。

 ただ、私どもは、専守防衛という観点で、敵部隊が上がってきたような場合に、それを通常爆弾で撃破できないような形で、広範囲で、しかも迅速に対応できるということで、抑止力として非常に重要な機能を果たしてきたというふうに考えております。

木原(稔)委員 やはり、これまではクラスター弾というものが、我が国の防衛戦略上、大変これは意義のあるものだったという答えがございました。

 冷戦崩壊後は、我が国は、これは平成七年の防衛大綱または平成十六年の防衛大綱、〇七大綱、一六大綱、これを定めた中で、一貫して、防衛力というものは削減する、そういった政策をとってまいりました。しかし、この冷戦崩壊以降の国際情勢が安定化に向かうという情勢認識に基づくものであったにもかかわらず、しかし、実際のところは、地域紛争が一層激化をしたり、また、ならず者国家というものが台頭してきたり、また、大量破壊兵器が拡散するといったこと、また、新たな脅威、つまりテロの脅威というものが増大をしたということ、安定化どころか、予測した情勢とは全く異なる方向でこれは推移してきたのではないでしょうか。もう、これは事実、現実だというふうに思います。

 我が国が軍縮政策をとってきた中で、周辺国を含む主要国は、冷戦直後はこぞって軍縮政策をとったものの、国際情勢の悪化を踏まえて、特に米国同時多発テロの発生以降は、各国とも軍事力の増加の傾向にあります。一九九八年の対人地雷廃止条約の批准のときもそうでありましたけれども、日本だけは周辺諸国の軍事力の動向を余り踏まえることなく、やや一方的に防衛力を廃棄または縮減してきたように感じます。今回のクラスター弾廃棄においても、我が国の安全保障上、周辺諸国の動向を考慮した対応を考えることがある程度必要になると思いますが、我が国の周辺諸国及び先進諸国のクラスター弾の現在の保有状況を、わかる範囲で御教示ください。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 クラスター弾の保有状況については、厳密に申し上げれば、すべて網羅的になかなか把握しがたいところはございますけれども、これまでのジェーン年鑑等、あるいはNGOなどでございますけれども、アメリカやロシア、中国といった大国のほか、我が国周辺におきましては、北朝鮮あるいは韓国といった国々がクラスター弾を保有しておりますし、また、アジアでは、インド、タイ、シンガポール、インドネシアというような、大体主要国は持っておるというふうに理解をしております。それから、ヨーロッパの関係でも、旧ソ連の国を初め、あるいは、主要国というのは大方クラスター弾を保有しているという国が多いというふうに承知をしております。

木原(稔)委員 クラスター弾の主要な生産、保有国であるところの国、主に米国、ロシア、中国、また北朝鮮、韓国、インド、あらゆる国が現在保有をしておるというところでございます。特に米国とロシアと中国というものは、生産国でもあり、大量に保有をしている国でもある。この三カ国について、本条約の加入の意思というものがこれはありませんね。しかしながら、本条約の二十一条1においては、今後、締結国は非締結国に対して加入するように奨励することとしています。日本は、これらの国に対して、具体的に、どのような機会にいかなる説得を今後行っていこうと考えているのか、伺います。

 また同時に、我が国は、CCW、特定通常兵器使用禁止制限条約、この取り組みも行っているわけでありますが、これは先ほど申し上げた三国、米国、ロシア、中国、これが加入をしているわけでありまして、むしろ私はこちらを注目しているわけですが、残念ながら、本年四月の第二回政府専門家会合でも結局進展は見られませんでした。このCCWにおいて、クラスター弾問題の交渉を今後日本が主導していく気持ちがあるのかどうか、あわせて外務省にお伺いします。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 本条約においては、クラスター弾の禁止という法規範を国際社会の中において進展させて、また、議員御指摘のように、クラスター弾がもたらす人道上の懸念への対応に向けた国際的な協力、これを促進するものであります。

 日本政府としては、できる限り多くの国がこの条約を締結することが重要というふうに考えております。政府としては、非締約国に対して、この条約の批准等を奨励するとの第二十一条1の規定に従いまして、非締約国に対しこの条約の締結を働きかけていく考えであり、これまでも実際にこういう働きかけを行ってきているところでございます。

 また、CCWとの関連もありますけれども、我が国としては、この条約を締結する一方、同条約については、一部の有志国の主導により作成プロセスが開始されたという経緯もあり、御指摘のように、主要なクラスター弾の生産国及び保有国が署名していないという現実があります。その現実を踏まえつつ、もう一つの枠組みでありますCCWの枠組みにおいても実効的な国際約束が作成されるように、これまでもやってきましたけれども、引き続き積極的に貢献していく考えでございます。いろいろな国に働きかけておりますけれども、御指摘のように、米ロ中韓等に対しても実際的に働きかけを行ってきております。

木原(稔)委員 積極的に働きかけを行ってきたし、今後も行っていくということでありますが、なかなか、それに応じるかどうかというのは、これはまた別の問題であり、同時並行してさまざまなことを考えていかなければいけない、私はそのように認識をしております。

 しかしながら、我が国はどうしても専守防衛というのに基づいて安全保障を担保しているわけであり、また、抑止力を高める装備品を今後も保有するということ、これは極めて重要なことであります。クラスター弾は、先ほど申し上げましたように、沿岸部に着上陸する敵を広範囲に制圧することが可能な装備であり、海岸線の長い日本にとっては、これは、現在は着上陸侵攻という蓋然性が遠のいたといえども、北朝鮮による拉致の例もあります。これはすべて沿岸で起こったものであります。日本国内で拉致された方はそうであります。我が国の抑止力の一端が欠けたと言ってもこれは過言ではないと思います。

 クラスター弾廃棄が我が国の防衛に及ぼす影響に関する認識を再度お伺いしたいんですけれども、何か広域の制圧能力を代替装備品で補うことができるのかどうか、クラスター弾廃棄に伴う我が国の抑止力低下を補うための政策を何かお持ちであるのかどうか、防衛省にお伺いします。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 クラスター爆弾に限りませんけれども、いろいろな装備につきましては、技術革新等の問題、あるいはこういった規制の問題、あるいは突然故障して全く長期間にわたって使えなくなる、そういうふうなウエポンシステムに穴があくということは当然考えておかなければいけないことでございまして、ある一つの機能がなくなったからといって、それで抑止力の低下を放置するということは許されないというふうに考えております。

 その意味で、クラスター弾に関する条約が我が国について発効いたしました場合には、すべてのクラスター弾の使用が直ちに禁止されるということでございますので、私どもとしては、我が国の防衛に遺漏なきを期すという観点から、できるだけ早くこのような機能を補完する、全部ではございませんけれども、一部補完するための精密誘導型の装備品の導入をするでありますとか、あるいは迅速に大量に攻撃できるような、そういった発射機能にすぐれた、火力を集中できるようなシステムを整備するというようなことが重要になるというふうに認識をしております。

木原(稔)委員 現在日本が持っている四種類のクラスター弾の合計は、これは装備の段階で二百七十六億円ということでありました。廃棄のための調査費というのが、これが二億円もうついております。実際の廃棄に係る費用は、これから算出することになると思いますけれども、二百億円ぐらいかかるのではないかと言われております。

 代替兵器の導入の予算というのは、もうこれも平成二十年度の補正予算で約六十億円、二十一年度の予算では六億円ということで、代替兵器導入について準備は整いつつある状況ではないかと思うんですけれども、ことしは防衛大綱の見直しの年でもありますが、そういった防衛力の低下、または、それを補完するものということ、そういったことを総合的に考えた上で、今回の防衛大綱及び中期防の見直しの中でクラスター弾廃棄を踏まえた議論を行うべきだと感じておりますが、その辺、御見解はいかがでしょうか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、平成二十年度の補正予算におきましては、精密誘導能力を有する装備品ということで、M31ロケット弾あるいはレーザーJDAMというものを導入し、それを二十一年度予算でもお願いしているところでございます。

 これからの戦い方というのを考えますと、戦闘様相も変化してまいります、そして装備体系の変化も必要でございますので、私どもとしては、ネットワーク化、つまり、情報をできるだけ迅速に集中してそれを有効に活用していく、それで、しかも精密誘導能力を持つものを持って効率的、効果的に対応していくというようなことを考えております。

 いずれにいたしましても、大綱、中期防の検討の中では、こういったクラスター弾の規制ということも踏まえまして、また、ほかのいろいろな技術進展の動向も踏まえましてしっかりと検討した上で、十分な計画が立てられるように努力をしていきたいというふうに考えております。

木原(稔)委員 精密誘導弾というお話が出ましたが、これはピンポイントで目標の攻撃を行うことができるというもので、いわば点の攻撃であります。クラスター弾というのは、これは面の攻撃だったわけでありまして、したがって、防衛力の低下というのは、これはやはり免れることができないわけでありますので、しっかりとそれにかわる、補完すべき予算の獲得と、また装備の配置というものをしっかりと行っていただきますように、よろしくお願いいたします。

 この条約に関して最後の質問になるんですけれども、本条約の二十一条の3には、締約国以外の国との関係として、軍事協力、軍事行動を行うことを認めております。したがって、米国は本条約に加盟していないとしても、自衛隊と在日米軍との関係においては大きな影響はないというふうに思われます。米軍の日本国内でのクラスター弾の保有、また日米共同演習などでは使用は可能なわけであります。その認識でいいのでしょうか、確認のためお伺いします。

 また、本条約の加入に当たって、米軍または米国政府には事前に協議をしたのかどうかということもあわせて質問をいたします。といいますのは、我が国と米国とのクラスター弾に関する認識の違いが今後の日米安保体制に悪影響を与えることがないのかどうか危惧しましたので、質問いたします。

 これは防衛省と外務省とそれぞれお伺いします。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 日米安保条約に基づきまして日米間ではいろいろな問題について常日ごろから、計画の前あるいは訓練の前、あるいはいろいろな共同開発とか共同研究とかやっておりますけれども、この問題につきましてもいろいろと協議をさせていただいてきているところでございます。

 私ども、こういった協議を通じまして、いずれにしましても日米安保体制の円滑な運用ができるように最大限の努力をしていきたいと思っておりますし、これまでの協議の中あるいは条約の考え方からいたしましても、こういった日米関係に大きな影響が出るというようなことはないというふうに認識をしております。

中曽根国務大臣 委員から御指摘がありましたように、米国はこの条約を締結しておりませんが、米軍に対しましてこの条約の義務が課されるということはないわけでございます。

 この条約は九条におきまして、締約国に対し、この条約が禁止する活動であって、自国の管轄または管理の及ぶ範囲にあるものを防止し、及び抑制するため、あらゆる適当な措置をとるよう求めているわけでございますが、米軍によるクラスター弾に係る活動はこれに該当いたしませんので、我が国はこの活動を防止し、また抑制する義務を負っているわけではございません。

 さらに、二十一条の3及び4におきましては、締約国は、みずからクラスター弾を使用、貯蔵、移譲しないことなどの一定の条件を満たす限り、締約国に対して禁止されております活動を行うことのある非締約国との間で軍事的な協力及び軍事行動を行うことができる旨、規定をされております。

 以上のようなことから、米軍の活動に支障が生じるということはないわけで、日米安保体制に悪影響が出るとは考えておりません。

 また、政府といたしましては、我が国の防衛に万全を期す、そういう観点から、米国とも緊密に協議を行ってきておりまして、今後とも米国とは引き続き緊密な協議、協力をしていく考えでございます。

木原(稔)委員 ありがとうございました。引き続き、日米同盟に関しては十分に協議の上、しっかりとお互いの役割を果たしていただきますようによろしくお願いいたします。

 続きまして、国及びその財産の裁判権からの免除に関する国際連合条約、国連国家免除条約と略称で言われておりますこの条約について質問させていただきます。

 これは二国間条約ではなく国連を舞台とした多国間条約であるために、相当の年数がかかったということはいたし方ないと私は理解をできます。しかし、お互いに国連各国の中で議論を進めていく中で、先進国と途上国の間で、おのおのの立場で利害やまた主張が交わされたというふうに聞いております。実際に条約が発効する中で、その内容が妥協の産物的な決着をしていないかということが、年数がかかった分、またおのおのの主張が強かった分、非常に心配になってくるわけであります。

 例えば本条約は、いずれの国も、自国及びその財産に関し、他国の裁判所の裁判権から免除されることを一般原則としつつ、例外として免除されない範囲等を定めているわけでありますけれども、免除されない一例として商業的取引というのが挙げられております。

 この商業的取引であるかどうかということの判断基準が、先進国と途上国の間で二説あるということを聞きました。一つは行為性質説というもの、もう一つが行為目的説というものであります。ここではあえてその具体的な内容は私からは説明いたしませんけれども、日本はどちらの説をとっているのか、また他の加入国というのはどういう立場なのかということをお伺いしたい。

 また、本条約の本旨はそもそも、国及びその財産がいかなる場合に他国の裁判権から免除されるのかという、民間の企業が予見可能性を高めるということで極めて重要なものであるという理解を私はしているんですけれども、二説あるということになると判断基準もそれぞれ違うということになり、本旨と合致しているのかどうかということもこれも疑問でありますので、その辺をお伺いいたします。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘ありましたように、この条約におきまして、商業的な取引から生じた裁判手続については、国家が他国の裁判権、民間との関係で免除が認められない、そういうふうなことになっているところでございます。

 また、それでは商業的取引というのは一体何なのかということにつきまして審議経緯の中でさまざまな議論があったということも、今委員から御指摘があったとおりでございます。そのさまざまな議論をした結果として、この条約の第二条の二項において、以下申し上げるような考え方をとったということでございます。

 第二条二項におきまして、契約または取引が商業的取引に該当するかどうかということを判断する際の主たる基準として、契約または取引の性質を考慮するという性質基準を採用するということでございます。そして、性質基準のみによれば商業的取引と判断されることになるものであっても、公的な目的で行われる契約または取引については商業的取引と判断されることが適当でないと判断される場合もあるだろうということから、契約または取引の目的も考慮するという目的の基準も補完的に採用するということでございます。

 したがいまして、繰り返しになりますけれども、性質基準が主、そして目的基準についてはこちらは補完的という形で決着をしたということでございます。

 今委員の方から、各国についてはどのような形でやってきたかという点についてお尋ねがございました。

 我が国につきましては、これまでの判例の中で主に性質に着目をするという考え方をとってございます。それから米国におきましては、国内法において性質基準をとっているというところでございます。また、審議経緯の中で、途上国を含めまして、目的基準についても含めて考えるべきだというふうな主張があったということも先ほど申し上げたことと関連するところでございます。

 それでは、今後どうなるかというところでございますけれども、我が国を含めましてこの条約の締約国となった場合には、従来の国家実行というものにかかわらず、条約の定める、先ほど申し上げた考え方、すなわち性質基準を主とし、目的を補完的に考えるという考え方に従ってやっていくということになるということでございます。

木原(稔)委員 私は昨年、トルコ共和国を訪問いたしまして、そのときに視察をしたところが一カ所ありまして、それはボスポラス海峡の横断鉄道建設といって、今アジア大陸とヨーロッパ大陸に分断されているトルコの、海底トンネルを掘って地下鉄を通そう、そのような工事だったわけであります。

 トルコはそういった技術がないので、日本にそのプロジェクトをゆだねた。国家プロジェクトでありますけれども、それを日本の民間の企業、建設会社が受注したということでありますが、そのときに、その建設会社からお話を伺ったんですけれども、当然大プロジェクトであり、技術者が二十五名必要なんだと。しかしながら、トルコの基準といいますか、トルコの外務省が十名分の労働ビザしか発行してくれないと。技術者が二十五人必要にもかかわらず十名分の労働ビザしか発行してくれない。これは技術者の労働組合というのがあって、外国の建設会社及び外国からの企業がトルコ国内の事業を受注する際には外国人の技術者の上限というのが決まっておって、それが十名ということであって、これはその建設会社、納期に間に合うか、工期が大変おくれておって焦っておりました。

 まさしくこれも民間の企業とトルコ政府との商業的取引だろうと思います。

 こういったことが世界各国で行われており、また、この条約を批准する国も今後ふえてくるかと思いますが、各加入国が共通の理解のもとに民間との取引が円滑に行われて、今後もこの条約の内容が余り説が分かれることなく成熟していくことを望みますし、日本もそれをぜひ主導していただきたい、そのように思います。

 最後に、三本目の条約ですけれども、強制失踪(そう)からのすべての者の保護に関する国際条約、強制失踪条約に関しまして質問をさせていただきます。

 この条約が作成された背景を教えていただきたいんですけれども、世界各国で起きていた、または今起きている自国政府による大量の自国民の拉致事件や失踪事件、これはどんなケースがあるんでしょうか。この条約は、強制失踪条約というこの文言だけを見ると、我々日本人はどうしても北朝鮮による日本人拉致問題と結びつけてしまいがちなので、まず冒頭に、その背景、この条約をつくるに至った背景というものをお伺いします。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 個人の身体の自由及び安全を基本的人権として保障する条約としては、既に市民的及び政治的権利に関する国際規約、いわゆる自由権規約というものが存在しますけれども、その規約の存在にもかかわらず、特に一九七〇年代に軍事政権下の中南米諸国、例えばアルゼンチン、チリ、こういった国において、一般の市民等が国家権力により身体の自由を不法に剥奪された上で秘密裏に拘禁されるという事例が見られたわけでございます。

 そういう背景といいますか、こういったことに対する反省から、このような国家による不法な拘禁を禁止するとともに、かかる行為を強制失踪犯罪として、それを行った個人を処罰することにより再発を実効的に防止するための新たな国際文書を作成する必要性が強く認識されるようになりまして、今回の条約ということになったわけでございます。

木原(稔)委員 どうしても我々はこの条約について、北朝鮮による日本人拉致問題、これの解決の手段の一つにならないかどうかということを期待してしまうわけでありますけれども、しかし、この条約、中身を一見しても、個別の拉致問題の解決につなげるには限界があるように思えます。理由は、遡及適用が認められないということが一つありますし、また、北朝鮮自身が本条約を締結しない限りやはり実効性に乏しいということであろうかと思います。

 それでも、やはり我が国が一番の問題として取り組まなきゃいけない、また解決を急がなければいけないこの拉致問題に限って言えば、本条約を締結する意義は、拉致に立ち向かう我が国の力強い意思を国際社会に示すこと、これは十分意義があることだと思います。

 そうなると、実は我が国の署名は二〇〇七年の二月六日でございましたので、二年前の通常国会でも提出をしていち早く締結国になることができたわけでありますけれども、実際にことしの通常国会になってしまったということでございますが、そのあたりの御説明をお伺いいたします。

廣木政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘ございましたとおり、二〇〇七年の二月に本条約の署名式において署名させていただいたわけでございます。

 また、御指摘がございましたように、この条約の意義でございますけれども、拉致を含む強制失踪が犯罪として処罰されるべきものであることを国際社会において確認するとともに、将来にわたって同様の犯罪が繰り返されることを抑止するという意味で意義があるというふうに考えておるわけでございます。

 それで、本条約は現在未発効ではございますが、このように意義が大きいということで、我が国として可能な限り早期にこの条約を締結したいと考えておりました。条約上の義務の国内実施の具体的なあり方の検討、あるいは類似した規定ぶりを持つ他の条約の例も踏まえた訳文の作成等の作業を進めてきたところでございまして、こういったことから、署名から二年かかりましたけれども、これらの作業が終了したということで今国会へ提出したものでございます。

木原(稔)委員 さまざまな手続の結果、二年後になったということでありますけれども、私は、あらゆる分野で、あらゆる場面でこの拉致問題に立ち向かう我が国の強い姿勢を示す、そういう機会があるのであれば、それは貪欲に求め続けていかなきゃいけないし、迅速に対応し続けなければいけない、そのように思っておりますので、この条約に関しては賛成という立場でこれからも議論を重ねていきたいというふうに思っております。

 終わります。

河野委員長 次に、鉢呂吉雄君。

鉢呂委員 おはようございます。民主党の鉢呂吉雄です。

 きょうは条約三本の質問をさせていただきたいと思いますが、ゴールデンウイークは中曽根外務大臣が世界各国を回りまして、本当にお疲れさまでございました。私ども、報道で、また、きのう、私どもの部門会議でその内容については外務省からお聞かせをいただきましたが、オーストラリア、ニュージーランド、あるいはイラン、エジプトでしたか、御訪問をいただきました。本当にありがとうございます。

 また、連休前でありましたが、四月二十七日ですか、核軍縮に関する中曽根演説がございまして、私も詳細を見させていただきました。特に、私も質問させていただきました、日本がこの種の核軍縮の国際会議を早急に開くべしということにいち早くこたえていただきまして、来年早い時期に東京で開催をしたいということに、心から敬意を表するわけであります。

 きょうは、核軍縮のみならず、クラスター爆弾、クラスター弾の禁止条約もございまして、この種の軍縮に日本が先頭的な取り組みを、ぜひ中曽根外務大臣が果たしていただきたい、このように冒頭申し上げさせていただきます。

 そこで、今、木原さんからも御質問があった強制失踪から保護する国際条約について、そして北朝鮮の問題について質問をさせていただきたいと思います。

 私は、外務大臣にしか質問しないという形で、できるだけ外務省の官僚の皆さんの負担を軽減したい、また、副大臣も……(発言する者あり)いや、これは事実で、そういう形になっております。あの北朝鮮のミサイル発射に伴う国連での働き、大変困難な中で活動があったと推測しますので、そういう面でも、私は政治家も、特に外務省であれば、大臣以外は国会に張りつかないで、むしろ世界各国を回るぐらいの形でやっていただきたい……(発言する者あり)外務大臣以外ですよ、そういう形で私は考えておるところでございます。そういう形で、きょうは外務大臣に質問をさせていただきたい、こういうふうに思っております。

 一つは、今回の条約について、今、木原さんからも御説明がありました、世界各地で過去に一般市民が国家権力によって身体の自由を不法に剥奪されたり秘密裏に拘禁されるということが行われてきた、現在も行われている部分がある、そういうことにかんがみて、国家による不法な拘禁を禁止するとともに再発を防止するということが目的の条約だ、私もそういうふうに承知をさせていただきました。平成十八年の十二月に国連総会で採択をされたということでございます。

 今回のものは、犯罪を直接防止するという犯罪対策の条約ではなく、何人も国家権力による強制失踪の対象とされないという権利の条約、人権の条約というような意味合いがあるというふうに考えています。今もお話があったとおり、過去の強制失踪や非締約国による強制失踪には無力だという批判があるわけでありますけれども、改めて大臣にこの条約の積極的な意義についてお聞かせをいただきたい、こういうふうに思います。

中曽根国務大臣 委員から、大臣が答弁するようにということで、私もできるだけお答えできるように誠意を持ってきょうは進めたいと思います。

 ただ、やはり外務大臣は、外国とのいろいろな外交的な活動というものも大変重要でありまして、国会のお許しをいただいて随分海外へ出させていただいておりますが、主に土日中心ということになりますと先方もお休みであったりして、私のこの半年の感想としては、十分な外交活動ができているのか、いささかそういう点は考えるところがございます。ニュースによりますと、ラブロフさんとヒラリーさんがまた会っているとかそういうことがあって、国際会議の場で私もそこへ顔を出せればな、非常任理事国になってこういうときにそこにいられないのは本当につらいということがあるわけであります。

 そういう点では、今までも十分御理解いただいておりますが、ぜひ、副大臣、政務官制度もありますので、そこら辺は弾力的にまた運用していただければ、日本外交も、顔の見える外交もできるんじゃないかと思っているところでございます。

 それはそれといたしまして、この強制失踪の条約の意義ということでございますが、この条約には、強制失踪が犯罪として処罰されるべきものである、それが国際社会において改めて確認をされたわけでございます。そして、将来に向けてこのような犯罪が繰り返されることを抑止する、そういう意義があるわけでございます。

 我が国がこの条約に署名を行って、それに引き続いて、また他国に先駆けましてこの条約を早期に締結するということは、拉致問題を含む強制失踪の問題への国際的な関心を高める上でも非常に重要なものだ、そういうふうに思っております。

鉢呂委員 そこで、先ほどもお話ありましたが、締約国が四月十五日現在十カ国という数の少なさ。署名がされた二年前には五十七カ国が署名をし、その後、現在七十二カ国が署名をしておる。二十カ国の批准で発効するということで、まだ非常に少なく、日本も、今回我々も賛成をしておりますけれども、早期批准をすると同時に、やはり世界各国にこの促進方を働きかける必要があるのではないか、こういうふうに考えます。

 これはやはり具体的に、大使館を通じてでも、署名された各国に早期に行うというような働きかけが必要になってくるのではないか。発効されない限りはこれはまだ署名の段階ですから、そういう点で、大臣のお考えといいますかお答えをいただければと思います。

中曽根国務大臣 この条約におきまして、我が国といたしましては、拉致を含む強制失踪が犯罪として処罰されるべきものであることを国際社会において確認するとともに、そして将来にわたってこのような犯罪が繰り返されることのないように、そういう抑止する上でも意義があると先ほども申し上げました。

 こういう考えのもと、我が国は、昨年の十二月、第六十三回の国連総会、そして、ことし三月の第十回の人権理事会におきまして、この条約の未署名国及び未批准国に対して署名及び批准を呼びかける決議案につきまして、共同提案国として率先してその採択に向けて積極的な働きかけを行ったところでございます。各国によるこの条約の締結を促進すべく努力をしてきているところでございます。

 我が国といたしましては、この国会で御承認をいただいて速やかに締結をした上で、引き続いて、さまざまな機会をとらえて各国によりますこの条約の早期締結を呼びかけていきたい、そういうふうに考えております。

鉢呂委員 拉致を含む強制失踪に関する条約ですから、日本の強い意思が国際社会に示される必要がある、私もそのように思います。

 ただ、問題は、北朝鮮問題の六者会合、北朝鮮は当事国のような形でありますけれども、北朝鮮も含めて他の五カ国がいずれも署名をしておらないという状態であることは外務大臣も御承知のとおりだと思いまして、なぜ、このような形、署名までされておらない。

 ですから、この五カ国、北朝鮮は難しい問題もあるかもわかりません。しかし、国連の人権委員会等ではこの北朝鮮の拉致問題についても、後ほどまた私説明しますけれども、この問題を人権委員会で取り上げ、第三委員会でも北朝鮮がこれに対して弁明をするということもあるわけですから、北朝鮮も含めて、署名あるいは批准をするという働きかけを、アメリカであろうが、韓国であろうが、ロシアであろうが、中国に対して、最低限ここはやっていくということでなかったら、日本が拉致について盛んに、六者会合でも拉致、ミサイル、核ということを言っておるわけですから、ここはやはり日本政府の真価が問われると私は思うんですが、外務大臣のお考えを聞かせてください。

中曽根国務大臣 六者会合の関係国といいますか会合の国を強制失踪条約の署名、締約国にする、我が国としてどういう働きかけをやったらということでございます。

 先ほど申し上げました強制失踪条約の署名、批准を呼びかける決議というものは、国連の総会におきまして、申し上げたとおり我が国も共同提案国となってこれを進めたわけでございますが、これは六者会合の関係国を含めましてコンセンサスで採択されたものでありまして、この条約の基本的な趣旨や目的につきましては広く国際社会から支持されているもの、そういうふうに考えております。

 ただ、六者会合関係の四カ国によるこの条約の署名につきましては、各国において種々の検討が行われている、そういうふうに承知をしておりますけれども、署名の判断につきましては、それぞれ各国の個別の事情を踏まえて各国自身が行うべきものでございますので、我が国といたしまして、例えば署名に至っていない理由などについて詳細というようなものは承知をしておりません。

 しかし、いずれにいたしましても、我が国といたしまして、引き続いて、国連の場などを通じまして、各国にこの条約の署名、締結を促していきたい、そういうふうに考えております。

鉢呂委員 本当に強い姿勢で他の五カ国に署名、締結国になる働きかけをすべきだと思います。

 質問の順番を変えますけれども、北朝鮮の拉致問題を大臣にお聞きいたしたいと思います。

 今、ミサイル発射、そして国連議長の声明等で、また困難な状況に立ち至っておるわけでございます。しかし、昨年の八月の実務者協議で合意をした拉致に関する再調査、再調査委員会を立ち上げて、去年の秋、今秋の早い時期というような言い方ですけれども、合意をしておった拉致に関する再調査について、これをどのように動かしていくのかということは、今の現状でこの問題だけを取り上げていくというのは非常に難しい面もあろうかと私は思いますが、しかし、外務大臣としてのお考えも聞いておく必要があるし、あるいは、北朝鮮に対するメッセージなりそういうことについてもやはり必要ではないか、こういうふうに思いますので、この問題についてお聞かせをいただきたいと思います。

 この日朝の局長レベルの合意、これは今も政府は継続をしておる、こういうふうに見ていいでしょうか。

中曽根国務大臣 この日朝の実務者協議は昨年の八月に行われたわけでありまして、その後内閣がかわりまして麻生内閣となりましたけれども、麻生内閣におきましても、さまざまな場で明らかにしておりますとおり、拉致や核やミサイルといった諸懸案を包括的に解決をして、そして不幸な過去を清算して日朝国交正常化を図る、そういう政府の方針に変更はないわけでございます。これは、総理も私もいろいろな機会にこのことは発言をいたしております。またさらに、八月の日朝実務者協議の合意内容を実施する、そういう方針にも変わりはございません。

 こういう考え方につきましては、先ほど申し上げましたとおり、さまざまな機会での発言と、それから北京の大使館ルートを通じまして北朝鮮側に対しても伝達をし、そして、この合意にありますように、権限が与えられました調査委員会の早期立ち上げ、そして全面的な調査の開始を求めてきているわけでございます。

 また、去る四月の十日に内閣官房長官がこの対北朝鮮措置の延長を発表いたしました際にも、改めて我が国の考えに変わりはないことを明らかにした上で、北朝鮮側に対しまして具体的な行動をとることを求めているわけでありまして、私どもとしては、これは、北朝鮮による調査のやり直しが早期に開始をされ、そして拉致被害者の方々の一刻も早い帰国につながるように、そういう成果が得られるように、引き続き北朝鮮側に強く求めていく考えでございます。

鉢呂委員 改めて、私、昨年の合意の中身を見せていただきまして、これは大臣の御感想でいいんですが、拉致問題に対する全面的な調査の具体的な態様等について合意をしたということで、具体的に書いています。

 六つありまして、一つは、調査対象は政府認定被害者その他行方不明者等と、具体的に対象を定めております。それから二は、先ほど大臣もお話しされた、権限が与えられた調査委員会を設立する、調査は迅速に行い、可能な限り秋に終了、これが三つ目。四つ目は、その進捗過程について日本側に随時通報、協議をする。日本側と随時通報したり協議をする。そして五番目に、生存者が発見された場合には、その後の段取りにつき協議、合意をする。それから六番目に、調査結果を日本が直接確認できるよう協力をする。

 外務省からきのう聞きましたら、直接確認というのは、そこで生存者がいたとか死亡者がいたというときには、日本政府関係者が行って現地で調査をするとか、そういうことが直接確認。先ほど言いました、権限が与えられた調査委員会というのは、その調査委員会の結果というのは、やはり北朝鮮の最高責任者からきちっとオーソライズされた委員会というふうに私は見るわけであります。

 したがって、非常に具体的に、また、その後の進展があった場合には日本にも随時確認を、また結果について日本政府みずから確認ができるような、こういう形でありますから、私は、これは拉致を解決する一つの非常に大きな手段としてあるのではないか、こういうふうに思うんですが、大臣として、大臣はそのときは大臣でありませんでしたが、改めてこの調査委員会の調査の中身についてのお考えを聞かせていただきたいと思います。

中曽根国務大臣 今委員がこの日朝実務者協議の内容について改めて御紹介をいただきましたけれども、お話ありましたように、北朝鮮側が実施するこの調査について、大変具体的にここに記されているわけであります。

 一方、日本側の措置というものもここに明記されているわけでありまして、私どもとしては、北朝鮮側が実施するそういう調査、これを開始することと同時に、御案内のとおり、日本側も人的往来の規制を解除するとか、あるいは航空チャーター便の規制の解除を実施する、そういうことで、先方が調査をそういうふうに開始すればこちらもやりますよということで合意がされているわけでありまして、私どもとしてはそういう用意があるということは再三申し上げているわけでありまして、そういう意味では、北朝鮮の方もこの約束、合意に基づいて一日も早くこれを実行に移してほしい、そういうふうに思っているところでございます。

鉢呂委員 そこで、先ほど、現在の経過、若干お話がございました。日本政府、麻生内閣になっても繰り返しこの調査開始を要求しておる、こういうふうに今言われました。しかし、いまだ北朝鮮から確たる回答がない。九月一日、福田内閣が辞任したとき、見合わせをするという北朝鮮からの北京大使館経由の話があって、その後繰り返し要請しておる。しかし、向こうから確たる回答がない。また、きのう外務省から聞いた形では、昨年十一月か十二月、先ほど言いました国連の第三委員会、人権に関する委員会で、北朝鮮の国連大使が、再調査をやる用意があるんだ、あるいはまた、再調査という形を今この日本人の拉致問題については考えておるんだ、こう言明した、こういうふうにも言われておるわけでございます。

 しかし、外務大臣、北京ルートで実務者レベルといいながら、実際は非常に事務的な形の要請の繰り返しに終わっておるのではないか。もう少し高いレベルといいますか、この連休中の報道を見ていますと、北朝鮮の外務大臣は例えばキューバとか中南米を訪問しておるというニュースもあるわけでございますが、いずれにしても、この問題についての再調査立ち上げ、進展についてももう少しく高いレベルの接触があってしかるべきではないかな、こういうふうに思いますが、大臣のお考えを聞かせてください。

中曽根国務大臣 先ほど私も申し上げました、また委員からもお話ありましたように、内閣はかわりましたけれども我が国の方針に変更はないということは、北京の大使館ルートを通じ、また再三いろいろな機会を通じて私どもその旨を表明しているわけでございますが、残念ながら、まだそのような先方のアクションがございません。

 しかし、これは外交交渉で難しいということも事実でございますが、そのような外交ルートとともに、いろいろな形でこの再開を求めるということを、私どもとしてはそのようなことも模索をし、またこれは外交という中で活動も行っているわけでありますが、ただ、これは外交交渉でございますのでそれ以上の具体的なことは申し上げられませんけれども、今後も一日も早くこの調査のやり直しがスタートされるように、これはもう全力で取り組んでいきたい、そういうふうに思っております。

鉢呂委員 ミサイル発射問題を契機に、北朝鮮はいわゆる六者会合の離脱、不参加といいますか、あるいはまた核の再開発に踏み込むと、きのうきょうのニュースでは核実験に向かう兆候が、人の往来ですとかそういうものが出てきたという報道もあるわけでございまして、ちょっと拉致問題から離れますが、このミサイル発射問題、あるいはその後に続くさまざまな北朝鮮の動き、北朝鮮の政治体制も含めて、外務大臣としてどのように見ておるのか。

 一説では、アメリカの政治体制が変わった、テロ支援国家指定の解除をブッシュ大統領の末期にやったわけでありますけれども、政権交代時には北朝鮮のこういった形は過去にも相当あるというような評論的な見方もあるのでありますけれども、国内的な要素として、こういったミサイル発射が行われ、その後のこういう形があるのか。

 そういったものも含めて、外務大臣として、ちょっと時間がなくなりましたので、そこを細かく聞くのを全体的に今聞いておるわけでありまして、外務大臣としてのお考えを今の段階で聞かせていただければありがたいと思います。

中曽根国務大臣 北朝鮮は、ミサイル発射、これは我が国を初め各国が自制を求めたにもかかわらず発射をしたということで、委員も御案内のとおり、その後、国連におきまして議長声明が発出され、そしてそこで北朝鮮に対する安保理決議、これを履行するように、そういうような内容のものが出されたわけでございます。

 北朝鮮の外務省は、国連の安保理においてこの議長声明が発出されたことを受けまして、六者会合に参加をしないとか、あるいは使用済み燃料棒を再処理する、そういうような立場を表明した、そういうふうに承知をしておりますけれども、しかし、国際社会の声はこの安保理議長声明に明記をされておりますとおりでありまして、やはり北朝鮮がこの議長声明を重く受けとめて、そして六者会合に復帰をし、安保理の決議一七一八号を完全に履行することを求めたい、そういうふうに思っているところでございます。

 また、四月の二十四日には、北朝鮮の制裁委員会が大量破壊兵器関連品目、そして資産凍結対象となる北朝鮮の三団体を指名いたしまして、また、それに対して北朝鮮側の反応があったわけでありますけれども、そもそもこれは安保理決議に違反したというところに、それを受けてこの議長声明も発出されているものでございますので、そういう意味では、再三申し上げておりますけれども、北朝鮮がやはりこの議長声明を重く受けとめて、地域の平和とか安定を損なう行為を慎んで、そしてこの決議を遵守するよう求めたい、そういうふうに思っているところでございます。

鉢呂委員 北朝鮮がどういう考えでというところを私は聞きたかったんですけれども、私も、外交というのはやはりその国々のスタイルというのがあるのではないかと。日本は日本なりの歴史的な経緯や地政学的な環境、あるいは政治、文化など。

 私は、麻生外務大臣が自由と繁栄の弧というようなことで、まず価値外交と。中曽根さんの国益重視の外務大臣の施政方針と若干違うのかなと。あるいは、マケインさんとオバマさんのあの大統領選挙で、マケインさんであれば、かなりそういった価値外交というようなことを大統領選挙でも言っていました。今オバマさんになって、中曽根さんも、むしろアフガニスタンですとかパキスタン、あるいは今回のイラン、五年ぶりの外務大臣の訪問という中で、やはりいろいろな、自由、民主主義、人権、あるいは市場経済、これは普遍的な価値ということで、推進することはもちろん私は一番いいと思いますけれども、しかし同時に、そこに至らない国等についても、それを追いやるといいますか差別をするというか、そういう形でないものが中曽根外務大臣の外交姿勢にはあるのではないか、こういうふうに期待をするわけであります。

 そういう面では、日本はある面では、そういう価値を押しつける、アメリカはある面ではそういう面もあるのかもわかりません、そういうものとは違う歴史的な外交というものをつくり上げてきたのではないかなと私は一定それを評価させていただいています。

 私は、韓国の国防大学のキム・ヨンス教授は、ある本をずっと読んでいましたら、北朝鮮にも外交のスタイルがある、こういう言い方をしておりました。一つは、強大国に対する外交というのは、強い国のはざまで、戦後、北朝鮮がソビエトですとか中国に対する綱渡り的な外交というのをやってきた。これは、冷戦構造の中で小国としての生きる知恵だったのかもわかりません。そういう対強大国外交ということをずっと、ある面では今も冷戦の中に北朝鮮はいるという意識にあるのかもわかりません。

 それから二つ目は、軍事資源を第三世界に輸出したり、あるいは軍事を背景にした、先軍政治だとかいろいろ言われていますけれども、外交も、ある面では、遊撃隊外交というような言い方をこの先生はしていますけれども、相手の意表をつく奇襲待ち伏せ外交をずっと続けてきておる。

 それから、三つ目に言っているのは威信外交だと。威信を傷つけられることに対しては敏感な反応を示すという言い方。これは、北朝鮮の歴史的な経緯の中で、これも日本の植民地支配ですとか、あるいはその後の大国の干渉があって、威信を傷つけられることに物すごく抵抗するという外交をやってきたと。体面、威信というようなことをしっかり見ていく必要があるだろう、こういう言い方で、専門家はその辺の北朝鮮の外交のあり方についても十分頭に入れて交渉している。

 ですから、単に制裁、制裁といっただけではなかなか前に進まないのではないか、こういうふうにも私は思うわけであります。

 時間が来ました。

 そういう形で、金賢姫さんがこの前飯塚さんにお会いしたときに、北朝鮮の自尊心というものにきちっと着目をして交渉すれば道は開かれるというような、本当に、金賢姫さんが、外交の専門家ではありませんけれども、プライド、自尊心というような言い方をしたようでありまして、ぜひそういう面も、十分中に入っていると思いますけれども、北朝鮮の拉致問題の解決に当たって、中曽根外務大臣の積極的な主導性といいますか、それを発揮していただきたい、こういうふうに思います。

 終わります。

河野委員長 次に、篠原孝君。

篠原委員 民主党・無所属クラブの篠原でございます。

 鉢呂先輩委員が強制失踪関係の条約について質問されましたので、残り二つについて質問させていただきたいと思います。

 まず、国及びその財産の裁判権からの免除に関する国際連合条約の関係ですけれども、これは、過去の判例等を見させていただきましたら、結構いろいろな事例があるわけですね。それで、慣習法としてもう確立しているというもの、それを今、きちんとした方がいいわけですけれども、それで、法務省からももう法律が提出されている、こういった時期に、この条約を今ここで締結する意味というのは一体どこにあるんでしょうか。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 この条約の意義につきましては、今委員からも御指摘ございましたけれども、主権免除の範囲、すなわち、国が他国の領域においてどの程度の範囲で裁判権に服するかということについての国際的なルールを明確にするということでございます。

 各国のこの点についての国家実行ということにつきましては、必ずしも一つのパターンに一致をしているということではございませんで、この条約を作成するに当たりましても、国連の場におきまして、長年の間、先ほどの質疑の中でも若干ございましたけれども、議論をしてきたというところでございます。そのような討議を踏まえまして、この条約において、先ほど申し上げた主権免除の範囲ということについての国際的なルールというものをつくろうとしているというところでございます。

 したがいまして、端的に申し上げれば、この条約の意義というのは、そのような国際ルールを確立するということにあるということでございます。

篠原委員 ルールを確立するのはいいんですけれども、何かふわっとした規定しかなくて、本当にこれがワークするのかなと。

 こういったのは、余りきちんとした法律とかいうのはしなくて、国際慣習法上認められている。例えば相互主義がありますね、あっちの国が認めるから我が国も認める、あっちが認めないならこっちも認めないというのが。裁判権じゃないかもしれませんけれども、私のつたない経験でいいますと、外交官なんかが交通違反をするというのも、それなんかも、全然、外交特権で何も服さなくていいという。それで、何か、国連に行っている人たちは外交特権がみんなありますから、ニューヨーク市では国連の代表部の人たちはみんな平気で駐車違反をしているというので、ニューヨーク市警察は頭にきて、それを毎年公表する、どこの国の外交官が一番とぼけているかというようなことをやっているというふうに聞きます。

 こういったようなのを、いろいろ問題あるんだろうと思いますけれども、私見ていますと、日米地位協定についての問題もこれにかかわってくるんですね。この条約がこんなふうに大事なものとは思いませんでした。日米地位協定がある、それで横田基地の周りがうるさい、これはおかしい、何とかしてくれというのは、これは国家の主権行為だから裁判権の免除にならないというふうに言われて却下されているわけですね。今度、そういった難しいのには触れていませんけれども、商業的取引の場合は、国家だろうと、その国のというか、日本でいろいろもめた場合は日本の裁判権に属するという、いいといえばいい規定なんですが、そんなことを言ったって、裁判官の適当な裁量で決まっていっちゃうような気がするんですけれども、その点は大丈夫なんでしょうか。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどの質疑にもございましたけれども、この条約におきまして、商業的取引から生ずる裁判手続については免除の対象とはならない、そういうふうなルールをつくっているところでございます。

 そして、それでは、それを実際に適用するに当たって、商業的取引とは何かというところが問題となるわけでございますけれども、この点も先ほど木原委員からの質疑の中でございましたけれども、主たる基準としては、その契約または取引の性質に着目をするという性質基準を採用するということとなっております。また、補完的に契約または取引の目的も考慮するという、そのようなルールをこの条約において定めたところでございます。

 したがいまして、この条約の締約国につきましては、この条約を実際に実施するに当たって、今のようなルールに従ってこれを適用していくということでございますので、その意味で国際的なルール化が図られているというふうに理解をしております。

篠原委員 では、まあわかりました。

 今追加で配らせていただきましたペーパーをちょっと見ていただきたいんですが、第百七十一回国会に提出した条約一覧というものですね。

 これは、私が外務委員会に所属させていただいてから再三にわたってお願いしたりしておるわけですが、なかなか実現しないんですけれども、あえてきょう申し上げるのは、河野委員長はいろいろなことを改革していただいておるので、河野委員長時代にきちんとできるんじゃないかと思って、委員長にお願いですけれども、この表を見ていただきたいんですが、条約とこれに関係する関連国内法というのがあるわけですね。あるのとないのがあるわけですけれども、きょう審議されておりますクラスター弾に関する条約と国連国家免除条約、この二つが、偶然ですけれども、国内法がきちんとしてあるわけです。そして、もう二つとも提出されておるわけですね。これは、深く関連するもの、こういったものはやはり一緒に議論されてしかるべきじゃないかなといつも思っているんです。

 どうしてかというと、国際的な組織犯罪の防止に関する条約もございました。そして、その条約がぱっぱと通って、後で、三年後ぐらいに共謀罪ですったもんだして、さっぱり国内法ができないわけですね。こういうことが結構あるんじゃないかと。

 私は、クラスター弾に関する条約の方は、条約を読み、法案を読んだら、そんな問題はないような気がするんですけれども、国連国家免除条約についてはわかりません、わかりませんけれども、結構もめてくるような気がするんです。

 そういったものは、全部が全部、連合審査にする必要はないわけですけれども、大事なようなもの、あるいは時間を節約するためにも、この外務委員会というのは言ってみればアンブレラ委員会です。ですから、国内法が必要とされるのがある、そういったものは、うんと深くかかわりがあるのは連合審査にする、そうでないものは、少なくとも、実質的には来ていただいていますけれども、マザーミニスターというか、関係する国内の実施官庁の副大臣は必ず出席するとかいうルールをつくっていただくといろいろなものがスムーズにいくんじゃないかと思うので、ぜひこれをやっていただくことをお願いしておきます。よろしくお願いいたします。

河野委員長 理事会でしっかり協議させていただきます。

篠原委員 それから二つ目の、クラスター弾に関する条約ですけれども、これについては十二月十日に私が質問させていただきました。そこでいろいろお答えいただいているので大体のところはわかっておるんですが、先ほど木原委員も聞いておられました、このクラスター弾が、僕はよくわからないんですが、日本は海岸線が長い、海岸線の防衛について絶対必要だと。何でそんなこと、地雷と違うし、置いておくわけじゃないし、どうやって使うのかなというのが漠然としてよくわからないんですが、仮にこのクラスター弾が日本の防衛に絶対不可欠だとしたら、これを全面的に禁止、廃棄する、使用しちゃいけない、生産しちゃいけない、みんな何でもいけないとなると、安全保障上問題が出てくるんじゃないかと思います。

 このクラスター弾の廃棄と、クラスター弾にかわる兵器をちゃんと用意して、日本の安全は大丈夫だという、この兼ね合いは一体どういう感じで動いていくんでしょうか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 この件につきましては、外務委員会あるいはほかの委員会でも議論があったところだというふうに思いますけれども、クラスター弾の持っている意義合いというのは、抑止力として、着上陸侵攻対処の場合において集中的な火力を、面的に制圧することができる。現在、私どもが持っております例えばMLRSという発射弾ですと、大量に短期間のうちに発射できるというような機能を持っているわけでございますので、そういう意味で非常に抑止効果が高いということで、私どもとしては、その必要性につきましては、クラスター弾の廃止が大分議論になる前から、国会でも、久間大臣初め、必要性はあるという答弁をずっとさせてきていただいているところでございます。

 一方、今回の議論の中でいろいろクラスターの廃止、廃棄の議論が高まったときに、高村外務大臣からも御答弁いただいておりますけれども、安全保障上の必要性というものと、それから人道上の要請に対応するための議論に対して日本としても積極的に対応していく、そういうバランスをとった中で、今回いろいろな議論があって、我が国としてもクラスターの廃棄ということに踏み出していったという経緯がございます。

 しからば、その代替手段というのが十分かということでございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、ある一つのシステムが完全に使えなくなったというときに、直ちにすべての機能を代替するというのは難しいと思いますけれども、我々としては、いろいろな戦い方を変えていくという中で、そしてネットワーク化を図る、あるいは精密誘導化を図るというような中で、できるだけそういった機能の低下がないようにさせていただきたい、そういうことで、緊急性も要するということで、二十年度の補正予算等でお願いをしたというような経緯もございます。

篠原委員 どっちが先で後になるのかがよくわからないんですが、今聞いていてもよくわからないところが多いんですけれども、私は、兵器の開発、これは人道上問題があって、一般人にも危害を与えるから禁止する、地雷がそうですし、クラスター弾がそうです。イタチごっこを繰り返しているんじゃないかという気がするんですね。こんなことをしていると、つくって、買わせて、だめにして、そしてまた違う兵器をつくって、お金を使って、まただめにしてと、何か兵器をつくる会社だけがもうかるような気がするんです。

 わからないとは思いますけれども、一体、今持っているクラスター弾の廃棄にどのぐらい費用がかかると見込んでいるんでしょうか。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 クラスター弾に関する条約上、各締約国は、条約が自国に対して効力を発生した後、原則として八年以内に廃棄することが規定されておりますので、私どもも、この条約に従いまして、八年以内に自衛隊が保有するクラスター弾の廃棄を安全かつ着実に実施するということを考えております。

 その際、安全かつ着実に実施するということにつきまして、例えば具体的にどのような廃棄方法を行えばいいのか。やり方といたしましては、親弾を分解して子弾を取り出しました後、大きく二つ方法があり得ると思いますけれども、子弾の炸薬部分と信管部分を分離して炸薬を除去するという方法と、子弾をそのまま爆破処理するというような方法がございますけれども、それぞれどのような具体的な廃棄方法をとればよいのか、その際、どのようなやり方でやることになるのかというようなことにつきまして、具体的な廃棄方法、廃棄期間及び廃棄費用等につきまして、現有クラスター弾の安全かつ効果的な処分方法についての検討、調査が必要であるというふうに考えておりまして、本年度予算でクラスター弾の処分に関する調査という予算をつけていただいたところでございます。

 したがいまして、具体的な廃棄をするに当たりましては、今申し上げたような調査を行った上で方法を決めていくということになりますので、現時点では廃棄費用については申し上げることは困難でございますので、御理解をいただければと存じます。

篠原委員 今困難というのはわからないでもないですけれども、ぜひしていただきたいと思うんです。

 だって、ばかなことをしているんですよ。今のも、どっちが先かというのですけれども、予算の多寡で言うわけじゃないですけれども、代替兵器の開発や何かに補正予算で六十億、本予算で六億円、廃棄処分については調査二億円と、遅いんです。私は、一たん決まったことはたったとやるべきだと思います。条約発効はもっと先でしょうし、発効してから八年以内ですから、もっと大分先なんでしょうけれども、とっととやってください。

 やるときにも大事でして、いかに無駄な、ばかなことをしているかといって、ちゃんと、兵器を買うのにどれだけかかったか、廃棄するのにどれだけかかったか、多分廃棄の方が金がかかるんじゃないですか、ちゃんと公表したり、いかにしてやるかというのを国民の目の前にさらして、こんなばかなことをしているというのをちゃんと見せていただきたいと思います。

 それで、日本はさっさとやっているわけです。後で触れますけれども、核兵器についても廃棄していくべきだということを言っているわけです。クラスター弾についてもう断を下したわけです。私は、率先垂範してとっととやるべきだと思います。

 そして、これは日本の得意分野を生かせるんですね。どういうことかというと、こんなの、ほかの国もどうやって廃棄したらいいかわからないはずなんです、よくわからない。だけれども、地雷の処理なんかも日本の技術がいろいろ生かされていると聞いております。それと同じで、クラスター弾の廃棄処分についても、きちんとやったら日本が一番効率的なやり方ができるんじゃないかと思います。ぱっぱとやっていただきたいんですね。ですから、発効後八年なんというなまくらなことを言っていないで、さっさとやっていただきたいんですが、その点はいかがでしょうか。

北村副大臣 お答えいたします。

 政府といたしましては、クラスター弾に関する条約の締結を進めるに当たりまして、安全保障上の観点からは、我が国に対する武力攻撃等の事態に際しまして国際法規を遵守しつつなし得る限りの対処をすべきということから、条約の発効までの間にクラスター弾の廃棄を行うことにより万やむを得ずクラスター弾を使用する可能性を完全に排除することは適切でない、こう考えております。

 他方、政府といたしましては、この条約が、クラスター弾がもたらす人道上の懸念への対応に向けた国際的な協力を促進するという見地からは有意義であると当然考えております。

 かかる観点から、防衛省としては、我が国による条約の批准の後はクラスター弾の使用は極力慎むべきと考えておるというところでございます。

篠原委員 核兵器について何で日本が立派なことを言えるかというと、何も持っていないからです。クラスター弾についても、もう身ぎれいにしてしまって、そして、アメリカやロシアや中国に何やっているんだと言っていけばいいんですよ。そのためにも、外交上の強いスタンスをつくるためにも、そんな、条約発効前に廃棄するのはできませんなんというなまくらなことを言っていないで、これは絶対、とっとと進めてください。この議論だけしていると長くなってしまうので、やめます。

 次に、これまたアメリカ軍が関係してくるんですね。前回、十二月十日に伊藤副大臣にお答えいただきましたけれども、日本が条約に加盟する、アメリカは例によってわがままで入らない、米軍側はどうするかという問題になってきます。

 法律的な議論をしていれば時間がなくなっちゃうんですけれども、地雷のときにも問題になったようですけれども、日本の自衛隊なり日本の民間企業が米軍から要請を受けてどこかへクラスター弾を運ぶというと、日本国が保有することになるからだめですよね、こんなへ理屈の法律理論をしたってしようがないんですよ。しかし、日本はもうやめて身ぎれいになってきているのに、日本を守ってくれているのかどうか知りませんけれども、日本国内に来ている米軍のはほったらかしにしておくというのはやはりよくないんじゃないかと思います。

 私は、核抑止論というのはわかります。しかし、核はないからアメリカに頼るんです。今、北村副大臣からお答えいただいたように、日本は持っているんです、日本はちゃんと持っているんです。十分かどうかはわかりませんけれども日本は持っているんですから、アメリカのクラスターになんか頼る必要はないんです。クラスター弾抑止論というのは聞いたことがありません。だから、アメリカには、クラスター弾については日本がちゃんとやっているので、日本が代替兵器も開発するんだから要りません、在日米軍についてはちゃんと日本国のルールを守ってくださいと、先ほどの裁判権の云々と同じですよ、そう言ってしかるべきだと私は思いますけれども、いかがでしょうか。

伊藤副大臣 先ほども木原委員にお答えしたように、米ロ中韓に対しては、我が国の立場を説明し、このオスロ条約といいますか、クラスターの条約に締結するように働きかけているところでございますが、現在のところ米国はこの条約に締結しておらず、したがいまして、法律論になりますけれども、米軍に対してはこの条約上の義務が課されることはないわけでございます。

 また、この条約は、第九条において、締約国に対し、この条約が禁止する活動であって、自国の管轄または管理の及ぶ範囲にあるものを防止し、また抑制するためにあらゆる適当な措置をとるように求めておりますが、米国あるいは米軍によるクラスター弾にかかわる活動はこれに該当しないために、我が国は、この同活動を防止し、抑制する義務を負っておりません。

 我が国を取り巻く安全保障環境には今なお不透明、不確実な要素が残されておりまして、政府として、この条約上の義務を超えて、米軍のクラスター弾の保有、使用の可能性をあらかじめ完全に排除することは適切ではないというふうに考えているところでございます。

篠原委員 この前もちょっと触れましたけれども、オバマ大統領は、二〇〇六年のクラスター弾を廃棄していくという法案の修正案に、議員のときに賛成しておられるんですね。核兵器についてアメリカが使用したことについて道義的責任があるというふうにおっしゃっていましたけれども、私は、日本はこの条約に加盟しているんだから、道義的にはアメリカも考えてほしいという要求をしていっていいんじゃないかと思います。

 それでは次に、もう一つの資料をちょっと見ていただきたいんです、ゴールデンウイークの海外出張リストというのを。済みませんね、何か、やったことを調査しては、こんな、どこへ行った、どこへ行ったなんというのを、この前も出しまして、この前はお金がどれだけかかったかということをやりましたけれども、今回は、ちゃんと有効なことをやってきていただいたかという検証に使わせていただきたいと思います。

 中曽根外務大臣、体力があるなと感心しますけれども、四カ国を駆け足で行っていただきました。私は、これは大事だと思います。ここでこういう議論をしているのも大事ですけれども、外務大臣というのは日本の顔ですから、できる限り外国に行っていろいろやってこなければいけないんですよ。

 ただ、そのときに一体どういうことをやってきていただいているかというのが問題でして、例えばこのクラスター弾の禁止条約について、ニュージーランドは何にも持っていないのにちゃんと署名している、豪州は持っているんですけれども署名している、イランとエジプトは署名すらしていない。それから、地雷禁止条約についても同じ。こうやってマル・バツを見ると、一番横暴な、勝手な国がやはりアメリカですよね、バツ。これは、私の主観で二重マルとかバツとか勝手にやっているんですけれども。

 こういうのを一体外務大臣は、きのう鉢呂委員も触れられていましたけれども、外務防衛部門会議で聞きましたけれども、ここまではさすがに書いていないんですが、こういうことについては触れておられるんでしょうか。例えば、年末、ラオスの関係では、外務大臣はちゃんとラオスについては行っておられるんですね。こういうことについて一々念を押してこられたのかどうかというのをお伺いしたいんです。

中曽根国務大臣 この条約の二十一条の規定で非締約国に対して働きかけをするということになっておりますので、先ほどから御答弁申し上げているように、我々としてはそのような努力をしなければなりませんし、またしているところでもありますが、今委員のおっしゃいましたイラン、エジプトにつきまして、これはイラン、エジプトに限りませんが、その国の国防といいますか、どのような形でやるかというのは、これはもう言うまでもなく、それぞれの国の、また近隣諸国や、そういうような安全保障上の条件から判断されておられることだと思います。例えば、韓国などもまだ未署名ではありますが、恐らく、私が推測するには北朝鮮もあるわけで、そういう点からだと思います。

 私の出張に関して、イラン、エジプトに対して働きかけをしたのかどうかというようなお話でありますが、出張する際には、これはもう当然のことですが、何を一番の外交の目的としてその国へ行くかというものがあるわけであります。ここにありますように、例えばIAEAの理事国の問題とか海賊の問題等、いろいろ課題があるわけでありまして、それらを一つ一つ外交の短時間の交渉の中で我が国の考えなり要望を申し上げる、これも一つの大事なことではありますが、肝心なことがぼやけてしまっても困るというようなこともあるわけで、そういう意味で、私の判断で、この国との会合、この人との会合はこういうことが大事だと、そういう一定の時間の制約の中で判断させていただいているところでございますので。

 ただ、これをやらなくていいということでは決してございません。また別の機会なり別のルートなり、そういうものを通じてこういう努力は引き続きやっていくべきものと考えておりますので、御理解いただきたいと思います。

篠原委員 そんな何でもかんでも言っていたりしたら焦点もぼけるというのは、そのとおりでございます。わかります。

 それから、今出ましたIAEAの関係ですけれども、これは一番右側に書いてありますけれども、天野さんがまた立候補してというのは、私は、こんなことぐらいはついでの話で根回ししてきていいと思いますし、ほかの閣僚なんかが行かれるときに、言ってきてくれということを言っていいと思うんです。

 何でこういうことを申し上げるかというと、いろいろな役所とつき合っているんですが、外務省は、国会議員に対する根回しが一番下手くそな役所の一つですよね。本当に不親切ですよ、さっさと条約なんて通るからというので。そういうのがインターナショナルにも同じような感じで、根回しとか何か一言言っておけば全然違うのに、そういうことを余りしていないんじゃないかと私は思うんですね。

 だから、これはやっていなかったといって、アキューズするつもりも多少ありますけれども、それよりも建設的に、これから、こうやってこれだけ行くわけですから、こういう閣僚クラスのときで、例えば浜田防衛大臣とか二階さんとか、環境にかかわりますし斉藤環境大臣とか、みんなかかわるわけですね、科学技術もかかわるわけですから野田さんとか。そこを、理事国の五十三カ国でもって投票で決すると一言言ってくれば済む話なんですが、外務省は閣僚の皆さんにそういうことをお願いしておられるんでしょうか。

中曽根国務大臣 IAEAの事務局長選挙につきましては、昨年から大変な働きかけをやりましたけれども、残念な結果になりました。その際は、閣僚はもとより、在外公館あるいはいろいろなところに協力を要請したわけでございますが、委員おっしゃいますように、国会議員の皆さんへのお願いなり働きかけが足りないということであれば、これは深く反省しなければならないと思っております。

 なお、例えばIAEAの理事国の選挙でございますけれども、働きかけを行っていますが、これはある意味では選挙ですから戦略もあります。そういうことで、どことどこでどういうふうにと余り明らかにできないところもあるわけでありますし、また一方、こちらが要求すればあちらも要求するという、クロスの支持の要求とかそういうものもあるわけで、そういう点の判断というのは各国ごとに非常に違いますので、そういうものを適切に判断しながらやっているということも御理解いただきたいと思います。

篠原委員 わかりますが、エジプトなんか候補を出しているんですね。そこへ行って、日本も一緒によろしくというのは言えないのはわかりますけれども、こういうことをちゃんとやっていただきたいということです。

 それから、次ですけれども、地雷、クラスター弾、こういうふうに、生物兵器もある、化学兵器もある。こういうのについて軍縮がだんだん進んでいるわけですね。とどのつまりは核兵器ですよ。

 核兵器については、この二、三週間、日本は非常にいい立ち居振る舞いをしているんじゃないかと私は思うんです。外務大臣も、ゼロへの条件というのを大演説されました。私は非常にいいことだと思います。外務大臣がそういうことをされ、麻生総理がプラハでもそういうことに触れられ、そして安倍元総理が親書を持っていかれたということ。私は、ぜひこれをさっさと進めていただきたいんです。

 覚えておられると思いますけれども、この前のときは、オタワ・プロセスがあった、それからオスロ・プロセスがあった、オ、オ、オーで太田プロセスとかと冗談を言いましたけれども、太田というのは世界には全然知られていませんからだめですね。やはり私は、核兵器についての軍縮の交渉というのは広島・長崎プロセスだと思いますね。さっきも鉢呂委員も触れられましたけれども、日本で開催していきたい、これは非常にいいことだと思いますけれども、これについて、十一の条件とかおっしゃっています。

 国会ではそれについてそれほど触れられてはいないと思いますので、ぜひその点についての思いのたけを述べていただきたいと思います。

中曽根国務大臣 去る四月の五日ですか、オバマ大統領が、たしかプラハであったと思いますが、核軍縮、不拡散に対するスピーチを行いました。大変な反響があったわけでありますし、私どもとしても、このスピーチにつきましては強く支持をしているところでございます。

 また、ちょうどその同じ日に北朝鮮のミサイルの発射というものがありまして、この核軍縮、あるいはミサイル等をどういうふうにして削減していくかというのは現下の国際問題の大きな課題の一つだ、そういうふうに私は思っております。

 また、御案内のとおり、シュルツ元国務長官やキッシンジャー元国務長官などもそのような論文を発表しておるということでありまして、やはりこの機会をとらえて、オバマさんは、米国が核を使った唯一の国だというようなことをたしか発言されておりますが、私どもは、唯一の被爆といいますか、そういう国でありますので、私たちがやはり声を大にして、この機会に、軍縮それから不拡散のそういう考えを述べ、行動をとることが必要だろうということで、先ほど委員からもお話ありました十一の指標というものを発表させていただいたところでございます。

 先日は、柴山政務官、そこにおられますけれども、国連総会のNPTの準備会合におきまして、我が国の考え方を各国に示したところでありますが、引き続いて、広島・長崎プロセスというんでしょうか、そういうような立場から強くアピールをしていきたい。そして、来年の国際会議、またその後のNPTの運用検討会議、こういうものが成果が出るようにやっていきたいと思っています。

篠原委員 日米同盟は、何もグアム移転とかいうのに仲よくする云々にあるわけではありません。核廃絶についてこそ、日米同盟、ぴったり一緒になってやっていくべきではないかと私は思います。

 そういう点では、世界にアピールするにも、例えば広島、長崎の訪問というのはよく新聞に取りざたされております。カーター元大統領が一九八四年に、ゴルバチョフさんは現職のときに一九九一年に来られております。しかし、アメリカの現職大統領は訪問されたことがない。広島、長崎の日にオバマ大統領が夏休みを返上して来て、そして、とかいう、そんなことは筋書きがあるのかどうかわかりませんけれども、そんなことで選挙に突入するとちょっと困る党もあるかと思いますけれども、私は、そういった思い切ったことをしていってもいいんじゃないかと。

 そういう点で、日米同盟を進化させていくというのは大いに歓迎いたしますので、ぜひそのような外交をやっていただくことをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

河野委員長 次に、近藤昭一君。

近藤(昭)委員 民主党の近藤昭一でございます。

 主に、クラスター弾禁止に関する条約について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 先ほどから何人かの委員が質問されているわけでありますけれども、廃棄についてお伺いをしたいと思うんです。

 どのような方法で廃棄するのか、これから検討していく、こういう御答弁があったわけでありますけれども、既にこのクラスター弾についての廃棄をドイツ等ではやっている。そういう中で、どういうふうに二億円という調査費を使ってやるのか、私は、少々疑問を感じるわけで、疑問というか、どういうふうなのかなというふうに感じるわけなんです。

 以前、遺棄化学兵器のときでありましょうか、その背景について、かなりの費用を使ってちょっと不透明なこともあった、こういうような記憶がございまして、そういう関係からちょっとしっかりと聞きたいと思うのでありますが、いかがでありましょうか。

岩井政府参考人 お答えを申し上げます。

 先ほども御答弁をさせていただきましたけれども、クラスター弾を廃棄する場合には、親弾を分解して子弾を取り出しました後、大きく二つ方法があり得ると思っております。

 一つの方法は、子弾の炸薬部分と信管部分を分離して炸薬を除去するという形で爆発しないようにするというやり方と、子弾をそのまま爆破処理するという方法があろうかと思います。その際、それぞれ難しさがございまして、子弾の炸薬部分と信管の部分を分離する際に、爆発させずに上手に分離ができるだろうかという技術的な問題が考えられますし、子弾をそのまま爆破処理する場合には、爆破に耐え得る構造を有する燃焼炉が必要であるというような問題が出てこようかと思います。

 私どもが保有しておりますのは四種類のクラスター弾があるわけでございますけれども、それぞれのクラスター弾の特性を勘案して、どのような方法でやることが安全であろうか、あるいは、御指摘がございましたように、廃棄の費用を効率的に、予算をそうかけずにやるためには、共通的なやり方があるのであれば、共通的なやり方はないだろうかというようなことも模索していく必要があろうかと考えておる次第でございます。

 このため、私どもといたしましては、今年度の予算でクラスター弾の処分に関する調査ということを行いまして、具体的にどのようなやり方で廃棄をすることが安全であり確実であり効率的であるのかということについて調査をまず行いたいということでございますので、御理解いただければと存じます。

近藤(昭)委員 ドイツとかはどんな方法でやっているのかなということがわかれば教えていただきたいということと、ほかにも何か既にいろいろと取り組んでいる事例があって、お答えいただけることがあればお答えいただければなと思うのと、もう一つは、この廃棄の過程を、プレスとか、あるいはこうしたクラスター弾の禁止について取り組んできたNGOとかに公開をする予定はあるのかどうか、お聞きをしたいと思います。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども御答弁申し上げましたように、方法としても二つあるわけでございますけれども、一般的に申し上げれば、炸薬部分と信管部分を分離するというようなやり方は、つくったところに近いようなやり方の廃棄の仕方ということになろうかと思います。他方で、爆破処理をするという場合には、先ほども御答弁申し上げましたように、爆破に耐え得る構造を有する燃焼炉を持っているというような設備的な問題も出てまいりまして、できるところとできないところが、そういうところで差が分かれてくるのだろうと思います。

 御指摘のようにドイツが技術を持っているということも聞いておりますので、私どもも、今調査訓令を発出するなど調査もしておりますし、先ほど申し上げました、本年度から開始する調査におきましては、例えば、先ほどのような爆破に耐え得るような構造を持っている燃焼炉を持っておられる事業者の方が世界じゅうどこにおられるのかというようなことも含めて、処理能力も勘案しながら対応をしていくということを考えている次第でございます。

 以上のようなことでございますので、具体的にどのようなやり方で、どのようなタイミングでこれを行っていくのかというのは定まっておりませんけれども、これが定まってまいりますと、条約の趣旨を勘案いたしまして、公表できることについては公表させていただくというようなことを含めてやっていくことになろうかと存じますけれども、現時点で具体的なやり方が定まっておりませんので、今の時点で申し上げられることに限りがあることを御了解いただければと存じます。

近藤(昭)委員 そうしますと、状況を見ながら可能であるところというのは、ちょっとひっかかるところでありますが、公表をしていく、公開をしていく、こういう理解でよろしいでしょうか。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 基本は、クラスター弾の廃棄を安全かつ着実に実施していくということになりますので、安全面の問題等からどのようなことができるかというようなことにつきまして検討を要する要素があろうかと思いますけれども、基本的には、公開できるものは公開をするという考え方に沿って廃棄は行っていくことになろうかと存じます。

河野委員長 防衛省、質問には端的に答えてください。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 ぜひ積極的な公開をお願いしたいと思うんです。危険というところを除けば、特に非公開にするようなところはないのではないかと思うんです。

 それで、続きましては、これも先ほどから幾つか、何人か既に質問は出ているんですけれども、クラスター弾の持っている機能というのがある、それを代替するということの装備をしていくという計画があるんだと思いますが、今後どのような装備品を装備する予定なのか、それぞれの装備品の機能上の特徴、こういったものはどういうことなのか、具体的にお示しをいただきたいというふうに思います。

 また、新たな装備品の量的な整備目標、これはどういうふうなのか、具体的にお示しをいただけると幸いです。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 防衛省としましては、クラスター弾の機能を近々に一部補完するための精密誘導型の装備品としまして二つ装備することを考えておりまして、一つは、戦闘機搭載のレーザー型の、レーザーJDAMというものでございます。それから、これは陸上装備でございますけれども、多連装ロケットシステム、MLRS用のM31ロケット弾の整備を行うということでございまして、平成二十年度の第二次補正予算と平成二十一年度予算に、導入経費として合計約六十六億円を計上しております。

 これらの装備の特徴でございますけれども、一つは、先ほど申し上げましたように、移動目標でありますとか分散目標であるとかいろいろあるわけですが、レーザーJDAMにつきましては、移動目標をピンポイントでねらえるということでございますので、遠距離から移動目標を攻撃する機能という点ではすぐれているものだというふうに考えております。

 それから、M31ロケット弾でございますけれども、MLRSの持つ迅速射撃能力ということで、これは一分間に十発以上のものが大量に飛んでいくということでございますので、これに炸薬の量をふやしまして破壊力を上げるということでございまして、それに精密誘導能力も組み合わせるということによりまして、遠距離から多数の静止目標を攻撃する能力、そういうものを短時間で制圧する機能というのはすぐれているというふうに考えております。

 それで、量的な問題でございますけれども、これは現在最小限の数というものを整備をお願いしておりまして、今後、防衛計画の大綱ですとか次の中期防という中でいろいろ議論をしてまいりまして、先ほど申し上げましたように、情報収集能力をどう高めるかとか、ネットワーク化をどう図るか等、そういったいろいろな問題を検討しながら具体的に議論をさせていただきたいというふうに思っております。

近藤(昭)委員 ありがとうございます、お聞かせをいただいて。

 次の質問に移りたいと思うんですが、本条約は、締約国がクラスター弾の被害者に対し援助を行うことを規定しているということであります。また、本条約は、国際的な協力及び援助に関し、援助を提供することができる締約国は、クラスター弾によって影響を受けた締約国に対し、この条約に基づく義務が履行されるようにするための技術的、物的、財政的援助を提供すると規定しているわけであります。

 こうした国際協力の枠組みの中で、日本政府もクラスター弾の被害者の支援を積極的に行っていかなくてはならない、こういうふうに考えているわけでありますが、この点について日本政府はどのような計画を持っておられるのか、具体的にお知らせをいただきたいと思います。

佐野政府参考人 お答え申し上げます。

 先生おっしゃいますとおり、このオスロ条約、非常に被害者支援という点に重点を置いておりますけれども、我が国はこれまでも、地雷あるいはクラスター弾の不発弾の除去活動、被害者に対する支援、さらには回避教育ということを実施してきておりまして、九八年以降、この支援の実績は四十カ国に対して約三百八十億円に上っております。

 このうちの三十五億円が被害者への支援でございますけれども、一、二の最近の例を述べますと、例えばレバノンにおきまして、職業訓練を通じてクラスター弾の被害地域への経済復興であるとか、不発弾の除去のための、国連のPKO局地雷対策サービスというのがございますけれども、ここに対する財政支援三億八千万円を行っております。また、アフガンなど複数の被害国におきまして、国際赤十字に財政支援を行っておりまして、約五千万円でございますが、不発弾・地雷被害者の支援を行っている。

 今後でございますけれども、日本政府は、この犠牲者支援に対しまして非常に前向きでございまして、国際機関を通じた支援、それから二国間、日本のNGOの連携無償というのがございますけれども、さらに草の根・人間の安全保障資金協力というのがございますが、こういうスキーム、さらにはNGO、自治体を通じた支援も活用しつつ、積極的に貢献していきたいというふうに考えております。

近藤(昭)委員 ぜひ積極的に貢献をしていただきたいというふうに改めてお願いをしたい、期待をしたいというふうに思うわけであります。

 それで、今、さまざまな国際機関等々を通した支援が金額的には多いというふうに聞いております。ただ、件数的にはかなりNGO等を通じての支援も多いのかな、あるいは多くなってくるのではないかなというふうに思うんです。私は、やはり現場を非常によく知っている、もちろん国際機関が知らないという意味ではありませんけれども、やはり非常に草の根的にやっている、現地の皆さんともしっかりと連携をしてやっている国際NGO、あるいは現地のNGO、あるいは日本のNGOとしっかりと連携してやっていっていただくことが非常に肝要ではないかなというふうに思っております。

 そういう中で、例えば日本のNGO団体が、具体的にこういうふうな支援をしたい、それについては財政的な、あるいはその他の面における支援を日本政府にお願いしたい、こうした場合は、どんなふうに要請をしていったらいいんでしょうか。

佐野政府参考人 お答え申し上げます。

 日本のNGO、これとの連携無償というのがございまして、日本のNGOが開発途上国で実施します経済社会開発事業に政府の資金を供与するという制度でございますけれども、地雷あるいは不発弾の処理、犠牲者支援あるいは回避教育という事業もその対象となっております。

 その手続でございますけれども、外務省の中に民間援助連携室というのがございます。日本のNGOが提案いたします事業計画、これの妥当性をまず審査いたしまして、資金協力案件としての採否を決定しております。事業の申請書は、事業を行う国あるいは地域に所在する在外公館、大使館、総領事館あるいは外務省の本省でも、直接、随時受け付けております。

 なお、そのほかにも、草の根・人間の安全保障無償資金協力というのがございますけれども、これもやはり、途上国におきます国際的なNGO等が、その国を管轄する我が国の大使館なり、そういった在外公館に要請書を出していただきまして、そこで要請内容を検討して実施候補の案件を選定し、外務省の本省で承認して実施するという手続になっております。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。そうした手続の方法がある。

 ただ、これはやはり、どうなんでしょう、財政的な、予算の枠組みで縛られるのかなというふうに思うんですが、そんな状況はいかがでしょうか。そしてまた、このクラスター弾の禁止条約を批准することによって、そうした今おっしゃったような窓口を通しての予算の枠がふえていくことになるのか、いかがでありましょうか。

佐野政府参考人 お答え申し上げます。

 財政的な話でございますけれども、基本的には、犠牲者支援、不発弾処理等々の事業案件が出てくれば、実態的には優先的にこれを採用してきております。したがいまして、最初からこれは幾ら幾らという形で枠を設けているわけではございませんが、その需要に対しては十分こたえ得るものが用意されているというふうに御理解していただいて構わないと思います。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 そうしたところを優先的にお取り扱いいただくとともに、その他にも重要な、クラスター弾とは違った分野での草の根というかNGOの支援もあると思うんです。そういうところが逆に減らないような形でぜひお願いをしたいというふうに思います。

 それで、この条約の第六条の九項で、援助の提供を容易にするために、関連する信託基金に拠出できる、こういう条項があると思います。この信託基金の運用に関して、日本の政府はどのように考えておられるのか。また、地雷対策支援信託基金というものがありますが、これとのかかわりでいくと、どのように活用されていくのか、お聞かせをいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 この条約の第六条の9におきまして、締約国は関連する信託基金に拠出することができる、そういうふうにあるわけですが、この御指摘の信託基金に関しましては、必要に応じて、条約の発効後に開催される予定の締約国会議において議論されると考えられます。そのような国際的な議論も踏まえつつ、真剣な検討を行っていきたい、現在はそういうふうに考えております。

近藤(昭)委員 どういう形にせよ、いかにきちっと支援をしていくことが重要だというふうに思いますので、効率的、また本当に十分な支援ができる形を実施していただきたいというふうに思います。大臣、よろしくお願いします。

 それと、少し気になっているところがありまして、対人地雷条約との比較で申し上げますと、対人地雷条約のときには、事実調査使節団の設置と当該関係国への派遣を行うこと、こういう規定がありました。ただ、今回のクラスター弾禁止条約にはその条項は入っていないということであります。

 既にお聞きしますところによると、いろいろと実質的に機能していないところがあった、そういう中から入らなかったようなお話を聞いているわけでありますが、いずれにせよ、これはどういうふうに実質的なことを、条約の履行状況を確認、そして履行をきっちりと担保していくのか、このことについて日本としてはどのように考えておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

佐野政府参考人 お答え申し上げます。

 このクラスター弾の廃棄義務の履行をいかに確保するかという点でございますけれども、オスロ条約の七条、八条に、検証機能といいますか、規定されておりまして、まず七条におきましては、次に申し上げます事項に関する情報について、締約国が国連の事務総長に対して情報を提供する、これも発効後百八十日以内に提供するということになっております。

 その情報と申しますのは、一つは、廃棄義務の対象となるクラスター弾の総数、それから、クラスター弾の廃棄計画及びその廃棄計画の進捗状況、さらには、廃棄されたクラスター弾の型式及び数量、また、クラスター弾の廃棄を実施するに当たり割り当てられた国内の予算額、そういったものを国連の事務総長に提出いたしまして、その情報はすべての締約国に共有されるということになっております。

 さらに、八条におきまして、これはクラスター弾の廃棄義務を含む条約の遵守に関する問題が仮に生じた場合に備えた条項なんですが、国連事務総長を通じまして関係国へ説明を求めることができることになっております。さらに、国連事務総長を通じまして、当事国間での協議、さらには締約国会合への付託といった方法により、その問題を解決する仕組みが規定されております。

 先生おっしゃいましたように、オタワ条約の場合は事実調査団という項目がございます。ただ、これは実際一度も発動されておりませんで、そういう経緯にかんがみて、今回の条約交渉におきまして、どの国からもこの問題が提起されなかった。ただ、条約の八条6に、条約に違反する事案の解決のための項目が設けられておりまして、締約国が認めれば特別な仕組みを設置することが可能である。したがって、この事実調査団についても、その可能性はあり得るということでございます。

近藤(昭)委員 対人地雷禁止条約の反省から学ぶところはしっかり守って、実質的に担保していただきたいというふうに思いますし、NGOがランドマイン・モニター・レポートですか、そういうような方法もとっておられるようであります。しっかりとそういうところとも連携をしていただきたいと思います。

 ちょっと余り時間がなくなりましたので、最後、簡単にお答えいただければと思いますけれども、本条約は、非締約国との間での一定の軍事的な協力及び軍事行動は認めている、こういうことでありました。本条約は、移譲を、クラスター弾が「領域から物理的に移動し、かつ、当該クラスター弾に対する権原及び管理が移転すること」と規定をしている。自衛隊や業務委託を受けた運送会社などが在日米軍が保有するクラスター弾を運搬することは本条約の規定に反しないと解釈できる、こういうふうにお聞きをしております。

 しかし、本条約の掲げる理念の普遍化を訴える立場からは、自衛隊や業務委託を受けた運送会社などが在日米軍が保有するクラスター弾を運搬することに対し強い懸念も表明されている、これは事実だというふうに思います。私は、この点を日本の政府はしっかりと認識していただきたい、こういうふうに思うわけであります。

 やはり、非締約国との一定の軍事的な協力及び軍事行動を認める本条約の規定から発せられる懸念への抜本的対応は、そういう中では本条約の普遍しかないと私は考えます。そういう意味では、本条約の非締約国である米国、中国、ロシア、イスラエルなどの国に対して、日本政府として今後何らかの働きかけを行っていくつもりはあるのかということ。

 それと、時間がないので少しまとめて質問したいと思いますが、先ほどからもお話がありましたけれども、米軍との共同訓練の中では、日本の射爆場において米軍がクラスター弾を使用することに対して、日本は特にとめないというか、容認をするというようなお答えであったと思いますけれども、かつて平成十年の九月二十五日の外務委員会だったと思います。これは対人地雷のことでありますが、当時の町村外務政務次官は、「自衛隊自身が対人地雷の使用を目的とした訓練を行うということは認められない、」いわゆる、「米軍と共同であるか、あるいは自衛隊単独であるかということにかかわりなく、」つまり、米軍との共同であるときでも、対人地雷を使うということは認められない、こういうお答えをしているんですね。

 そうすると、その精神から考えると、あるいは、この質問の冒頭でというか、今のこの項目の質問でいろいろと述べましたけれども、このクラスター弾の禁止の精神からすると、やはり、こういうことは対外的にも働きかけるべきでありますし、日本の国内において米軍が使用することについてもすべきではないということを言うべきだというふうに思うんです。

 私もこの委員会で何回も質問させていただいておりますけれども、セルビアのブラニスラブ・カペタノビッチさん、あの方が日本に国際NGOの招きで来たとき、御本人は不発弾の処理で両手両足を失われたということで、大変に本当に人道的に、兵器に人道的、非人道的があるとは思えませんけれども、しかし、戦争が終わった後、不発弾が残ってということでいうと、本当に非人道的だ、こういうふうに思うんですね。

 そういう趣旨からこの条約が出てきているということで考えると、他国への働きかけ、日本の国内での使用、このことについては、やはり先ほど申し上げたようなことでやっていくべきだと思いますが、いかがでありましょうか。

中曽根国務大臣 まず、米国とか中国とかロシアとか、そういう国々がまだ署名もしていないわけでありますが、これらの国々、またそのほかの国に対してもそうですが、働きかけをするということは大変大事なことで、二十一条にもそういうような規定があるわけであります。

 我が国としましては、ロシア、中国、韓国等に対しましても働きかけを行っております。日中安保対話、あるいは日ロ軍縮・不拡散協議等々の場を初めとするいろいろな機会で働きかけはやっております。

 こういう国々につきましては、直ちにこの条約を締結する可能性はなかなか難しいとは思いますが、そういう現実もありますけれども、特定通常兵器使用禁止制限条約、CCW、こちらの枠組みにおきましては、御指摘のような国々を、今のような国々を含むクラスター弾の主要な生産国とか保有国も参加をしておりますので、そういう意味で、こちらの規制に関する国際約束、これの作成の交渉が、できるだけ早くこれが進むように、そういうふうにも思っているところでございます。

 また、米軍のクラスター弾の使用についてでございますが、これにつきましては、日米安保条約によりまして日本を防衛する義務を米国は負っているわけでありますが、その対日防衛義務を履行するために必要な訓練も行っているわけでございます。

 今この日本を取り巻く地域の環境というのは非常に不透明、不確実の要素も残されているわけでありまして、こういう状況の中での北東アジアの安全保障、こういうものを考える中において、やはり日米安全保障体制の円滑な運用に制約を課すということは適当ではないのではないかと思っております。

 しかし、いずれにいたしましても、この条約の精神というものは非常に大切なものでありまして、そういうところから私もオスロに行って署名をさせていただきましたので、そういう点を十分に踏まえながらこの運用といいますか、それについて、また我が国としても主張すべきところは主張していきたいと思っております。

近藤(昭)委員 ありがとうございました。

河野委員長 次に、松原仁君。

松原委員 まず、この強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約に関してお伺いします。

 この条約が、今、特にこの条約の中に拉致という言葉が入っている、このように認識をしておりますが、この拉致問題に対してどのようなプラスの影響があるのかお伺いいたしたいと思います。

中曽根国務大臣 この条約は、今委員がお話しされましたように、拉致を含む強制失踪が犯罪として処罰されるべきものであるということを国際社会におきまして改めて確認をするとともに、将来に向けてこのような同様の犯罪が繰り返されることを抑止する、そういう大変重要な意義があるわけでございます。

 この条約は、締約国に対しまして、強制失踪犯罪の容疑者を捜査する、そういう義務や、訴追のために自国の権限のある当局に事件を付託するか、あるいは他の国へ引き渡す義務等を課しているわけでございますが、他方、この条約は過去に遡及しては適用されないようになっておりまして、また、非締約国に対してはこれらの義務というものも課されないわけでございます。

 したがいまして、北朝鮮が本条約を締結しない限り、北朝鮮による個別の拉致問題の解決にこの条約が直接資すると期待するということには限界があるというのが実態でございます。

 しかし、我が国がこの条約を締結するということは、拉致を含む強制失踪を許さない、そういう我が国の強い意思とまた姿勢を国際社会に示すものでもあるわけでございまして、また、この拉致問題を含む強制失踪に関する国際社会の関心というものを高めることにもつながると思っておりまして、そういう意味で意義があるものと考えております。

松原委員 まさにそういったことで、日本としては、我が国民が拉致をされた案件に関して、こういった条約においても、それが一つの前進になるということを期待して、私も賛意を表すわけであります。

 そうした中で、私はこの四月、五月、家族会の方々や、また救う会、議連でワシントンを訪問してまいりました。オバマ政権が発足をして、拉致問題、北朝鮮問題に対してどのようなスタンスで彼らがこれから行動していくのか、そして、それに対して、ブッシュ政権下においては二回ほど私もワシントンを訪問して拉致の問題で議論してきたわけでありますが、オバマ政権に対してそういったことをきちっとアピールするという観点から今回は訪問、訪米をいたしました。

 私は、古代ローマの言葉で、人間というのは自分が見たい事実だけを見るということわざがあるということを聞いております。その見たい事実だけを見るというのは、これが人間の心情における真理ではあろうかと思いますが、外交においてはそれが非常に問題になってくる場合がある。

 今回は、多くのアメリカの関係者にこの四日、五日の訪米でお会いいたしました。基本的には外務省の設定というものも含めてお会いしたわけでありますが、私はそれと別に、独自に、米側に人脈を持っている人物とともに、違った方々にも個別にお会いしてまいりました。率直に言って、意見が若干違っていたということを申し上げたいわけであります。

 というのは、この外務委員会を通してでも言われていることは、米側と日本との間の日米同盟は揺るぎがない、そして日米の関係は緊密である、こういったことが常に外務委員会での答弁でもなされてまいりました。もしそれがそうでなくなったとしても、それを言明して否定するのは、それは外交上愚かなことだと思いますが、私はアメリカの国防総省の、これは元日本部長だった方ではないかと思いますが、その方ともお話をいたしました。そのとき、彼がこういうことを言っていました。一九七〇年代、八〇年代というのは、日米は極めて密接な意思疎通が行われていた。しかし、現在においては、そういった意思疎通は極めて厳しいと思っていると。これは、日本と極めて深い関係があった、ペンタゴンの人であります。

 つまり、それはどういうことかというと、私はこういうことを質問したんです。例えば、尖閣に日本が何らかの形で自衛隊を駐屯するような議論が日本では行われているがどうなんだ、こう聞きましたら、それは極めて現実的ではない、むしろ重要なことは、日米が一九七〇年代、八〇年代のような密接な意思疎通をすることが大事であって、意思疎通がない限り、そこにそんなものを置いても、他の国の脅威というものに対してはほとんど抵抗力がないと。彼の議論であります。しかしながら、逆に言えば、きちっと日米が意思疎通をしているならば、それは、尖閣にそういった人間がいなくても十分に尖閣は日本領土として担保されるだろうというふうに彼は発言をしていたわけであります。

 重要なことは、今、例えば尖閣のあたりを中国の原子力潜水艦とかが徘回をしたりする。彼の見解ですよ、しかし、彼はそういったポジションにいた人間でありますが、それは、日米の密接な意思疎通がないということを中国は理解をしているがゆえにそういうことをやっているんだ、そのことを日本の政治家は認識をするべきだ、こういうふうな話をその人物は言っていたわけであります。ペンタゴンにいた、恐らく元日本部長だと思いますが、言っていたわけであります。

 そして、元ホワイトハウスの補佐官であった人物が言っていたのは、これは別の観点から言っておりましたが、日本は極めてアピールが下手であると。アメリカの一般国民は、中国がアメリカに対してさまざまなことをしてくれていることには大いに感謝をしているが、日本が経済投資などでどれほどアメリカに対して貢献しているかということに関して理解をしていない国民がほとんどであるというふうに言っておりました。これはホワイトハウスにいた人物であります。

 そして、彼は、例えば、ワシントンで日本とアメリカをテーマにしたシンポジウム等が行われたときも、英語で言っているわけですが、彼が言うには、松原さん、日本のメディアは来るけれども、アメリカのメディアは来ないじゃないか、そのことを日本は認識をしているのかと。大きなお金をかけてやっている、恐らく資金的にも日本側が仕掛けをしているシンポジウムでもそういう状況である。

 私は、実はこの二人だけではないんです、二人というか、一回に二人会っているところもありますから、四、五人。外務省が設定した面談とは全く別の面談でありますが、それぞれ、元ホワイトハウスの重要なポジションにいた人間であるとか、こういった人物からそういう発言があったということは、極めてこれは、先ほどローマのことわざに言ったように、人間というのは自分の見たいことだけを見る、そういうことになってしまっているのではないかというふうに思っているわけであります。

 拉致問題に関しては、我々は大きな問題としてとらえております。例えば、韓国政府は、かつて盧武鉉時代は、はっきり言って、盧武鉉さんは拉致問題に対して余り熱心にやっていなかった。しかし、あのときから私はそれを感じておりましたが、明らかに、拉致に関しても、拉致という言葉を言うと、我々が接触している人たちは日本人拉致をいいますが、アメリカの一般の議員なんかでは韓国人拉致のことを印象として持っているケースが多いんじゃないかと私は思っているんですね。今のオバマ大統領が上院議員のときに、韓国人の拉致の問題に関して、いわゆる決議案に署名をしている。北朝鮮の経済制裁を緩めるなという決議案に韓国人の拉致の問題に絡んで署名しているというふうに私は聞いております。日本人の拉致ではないんですよ。

 つまり、韓国の方が、ある意味ではアメリカ人にアピールしている。アピールの仕方がいろいろとあると思いますが、日本の外務省のアメリカにおけるアピールの仕方、そして日米安全保障の意思疎通に関して、極めて否定的な、このままでいいんですかという問いかけがアメリカ側の何人かからあった。今回の外務省設定の面談ではないですよ、これは。しかし、それはそれなりのポジションにあった人物たちです。私は、このことは極めて重要なことだということを冒頭指摘をしておきたいと思います。

 したがって、アメリカにおいて、日本人拉致問題でなかなか日本と共同歩調をとってもらえないというふうに我々は言ってまいりました。飯塚さんも増元さんも何を言ったかと言えば、アメリカに行って、テロ支援国家指定を再指定してくれと。ブッシュの末期において解除したテロ支援国家指定をもう一回指定し直してくれ、こういうことをアメリカに言ってきたわけですよ。また、金融制裁もやってくれと。金融制裁というのは、これは制裁ではなくて、別の、いわゆる犯罪に対する、マネーロンダリングに対する措置であるから、彼らの認識としては別物なのでありますが、この二つをやってくれということを強く言ってきたんです。

 ベースに、日米同盟、日米同盟と言っているけれども、どうもその部分で、我々日本の政府や外務省や、もちろん与党の皆さんが接触をしてきた米側の関係者は、日米同盟は盤石である、そして日本の存在感をアメリカの知識人は全員理解していると言うけれども、それは、我々と非常に親しい人は言っているけれども、我々と親しくない、むしろ、アメリカのそういった外交の有力者においてはそういった議論があったということは、これは極めてゆゆしき一大事だと思っておりまして、ぜひその辺の御認識を改めていただき、従来以外の新しい人間関係も構築をしていただきたいと思います。

 これは一般的な話ですから、大臣、御所見をお伺いしたい。

中曽根国務大臣 まず、日米同盟でありますけれども、私どもとしては、オバマ政権になりましてからも、委員も御案内のとおり、米国も、例えばヒラリー・クリントン国務長官がアジアを訪問し、我が国を訪問する、あるいは麻生総理がホワイトハウスに外国の賓客として最初に訪問するとかそういうところから始まりまして、国務長官の発言等におきましても、あるいはオバマ大統領の発言におきましても、日米関係というのはアメリカのアジア外交政策のコーナーストーンである、そういうふうな発言をされているわけであります。

 また、拉致の問題に関しましても、ヒラリー・クリントン国務長官が来日いたしました際にも家族の皆さんにもお会いをされたり、あるいはオバマ大統領も、御自分の出身地のところで韓国人牧師さんですか、拉致もされているということもありまして、関心も持っておられる、そういうふうに私は承知しておりますが、大切なことは、今委員がおっしゃいましたように、表面的なことだけでなくて、しっかりとした本当の日米のきずなといいますか、同盟が結ばれているかどうかということにつきましては、私たちもこういうことについてはやはりしっかりと抜かりのないようにやらなければならないと思っております。

 今、拉致については米国の国民は余り知らないんじゃないかというようなお話もありました。私たちも、事あるごとに、国際会議やいろいろなところで拉致の問題を持ち出し、私も、昨年の夏から、大臣になりましてから十回ほど海外へ行っていますが、必ずこのバッジをつけていって、これは何だかわかりますかということで説明してやっているわけでありますが、国民に対するPRというのは、まさに委員のおっしゃるとおり、不足しているかもしれません。

 シンポジウムとかあるいは新聞広告とか、いろいろな方法もあるわけでありますが、そういう意味では、今の委員の御発言、また、委員の御発言というのは米国の高官の御発言を受けたものだと思いますが、謙虚にそういうものを私どもも受けとめて、今後の日米同盟のあり方、あるいは拉致問題に対する働きかけ、行動のあり方についてはしっかりとやっていきたいと思います。

松原委員 オバマ政権になってからということじゃないんですよ、これは。例えば、さっき言った、これはポール・ジアラかな、彼は、日米の密接な意思疎通がないというのは、八〇年代まではあったけれどもと。こういうことですよ。だから、こういうことは、何がポイントかというと、元高官ですから、今は違いますよ、ただ、彼らがそういう印象を持っているのは、もちろん個人の認識もあるだろうけれども、それが複数からこうやって寄せられたということは、やはりちょっと、従来の、日本側に対して、日米同盟、大丈夫だ、大丈夫だと言っている人たちの声だけ聞いて、見たいものを見て大丈夫だと言うのでは困りますよ、こういうことであります。

 時間があと七分ぐらいしかないんですか、非常にタイトなスケジュールでありますが。本当にあと七分ではどう質問しようかと思っておりますが、北朝鮮のこの問題で国連がどのように稼働しているかというふうな話であります。

 国連の部分で、従来から北朝鮮の人権の決議が上がっておりますが、この決議の中で、何回か行われておりますが、その何回かの中で、賛成がどういうふうに数が変動したのか、反対がどのように変動したのか、棄権がどのように変動したのか、事務的にお答えいただきたい。

廣木政府参考人 お答え申し上げます。

 国連においてでございますけれども、我が国とEUが国連総会に共同提出した北朝鮮人権状況決議案というのがございます。これは昨年十一月二十一日に第三委員会の方で採択されまして、さらに、十二月の十八日には本会議の方で採択されました。

 そのときの票数でございますけれども、本会議の方では、賛成が九十四票、反対二十二票、棄権六十三票でございます。

 この票数の動きでございますけれども、反対は大体これぐらいの数が過去四回続いてきてございます。賛成の方は、若干ふえたり減ったりしながらこういった数になってございます。

 とりあえず、手持ちの資料で恐縮でございますが。

松原委員 韓国は当初棄権していたのが、李明博政権になって賛成をした。これは一つの極めて重要なポイントであります。

 しかし、棄権の中にインドとかブラジルが入っているんですね。何でインドやブラジルが棄権なのかというのが、外務省は、インドやブラジルにこの決議に対してどういう働きかけをしてきたんですか。何でこれはずっと棄権なんですか。インドなんかは極めて親日的な国家である側面も多いわけでありますが、なぜ彼らが棄権なのか、何で賛成しないのか。ちょっとお答えいただきたい。

廣木政府参考人 お答え申し上げます。

 国連の方でこの決議案が取り扱われる前に、各国に私どもの方から訓令を出しまして働きかけをしてございますし、東京でもやっております。

 多くは、途上国の政府は非同盟のグループをつくっておりまして、そこのグループが、こういった個別の人権案件についてはできるだけ賛否を明らかにしない、あるいはやらないという意向を持っている国がございまして、そういったところと歩調を合わせている国もあるものでございますから、私どもの働きかけは引き続きやっていきたいと思っていますけれども、そういう形で、二十二の反対がまだあるわけでございますけれども、できるだけ賛成に回ってもらうようにこれからも外交努力を続けていきたい、かように考えております。

松原委員 率直に言えば、外交努力が不足していると思うんですよ。今言ったように、個名で言うとインドとかブラジルとか、経済的な連携その他、非常にあるんですよ。これはやはり、北朝鮮の人権、特に拉致も含めてなんですが、やるときに、何で六十二カ国も、フィリピン、ブルネイ、スリランカとか、全部非同盟だから云々かんぬんなんという、そんなのは理由にならないですよ。

 これは、しっかりとこういった国々に対して、個別のロビー活動をどこまでやっているかというのが問われていると思うんですよ。最初の一回目に、賛成が九十カ国で、反対が二十数カ国で、棄権が六十カ国だったら、それはいいとは言わないけれども、それもロビー活動の時間がちょっと足りなかったんだろうという議論もあるでしょう。何回やっても同じぐらいの数で増減していますなんというのは、外交努力をしていないとみずから告白しているのに等しいと僕は思うんだよね。

 当然、日本はこういった国々に対してさまざまな援助をしているケースもある。もちろん、援助とこれは別だという議論があっても、当然、戦略的にはそういったものも含めてやらなかったら、それは全然国益にならないので。しかも、やっていることは人権を何とかしましょうという、これはだれもが否定できない内容なんですよ。

 私は、実際、今回ブルッキングス研究所の上級研究員ともお会いしたんですよ。彼女が言うには、何で日本はこういうところでもっとやらないんだと。確かに、これは強制力を持っているとは思わないけれども、それで反対が三つの国か四つの国になってしまうならば、それは圧倒的な圧力になるんですよ。しかし、こういうものをやっても、賛成の方が多いけれども、棄権がこんなにあって、反対がこれぐらいある。こういったこと自体が、言ってみれば、中ロにとって、北朝鮮の問題で日本が強く出るのを否定する理由を与えてしまっている要素だろうというふうにその女性は言っていたんですね。

 もう時間がないのでこれはこれ以上聞きませんが、私は非常に問題だと思います。経済大国であり、国連の中でそれなりの地位を占めようとする日本が、この部分で、正しいことを言っているからみんなついてくるなんて思っちゃいけないですよ、当たり前ですが。一つ一つの国家に対するネゴであり、ロビー活動をちゃんとやっているかどうかなんですよ。私は不足していると思います。

 最後に大臣にちょっと感想をお伺いして、質問時間が参りましたので終わります。

 今回アメリカを訪問して、これは元国防総省の関係者ですが、さっきとは別の人ですが、北朝鮮が核を事実上持っている、そのことによって北朝鮮は核を持っていない国は交渉の相手にしようとは思わないんじゃないかというニュアンスの発言がありました。それはニュアンスですから、要するに、北朝鮮は自分は核保有国だと思っている。アメリカの別の方も、我々は核を持つ権利を与えていないが、事実上核を持っているとか、そういう表現をしている人は、私は、今回、これは外務省設定の中にいたと思っております。

 そうした中で、ロシアのプーチン首相が、昨年、核兵器を保有しない国は真の主権国家とは言えないと言ったというんですが、これは産経新聞の報道なんですが、この発言に関しては、大臣、どんなふうな御所感をお持ちですか。核を保有しない国は真の主権国家とは言えないとプーチンさんが言ったと産経新聞が報じているんですよ。

中曽根国務大臣 今のプーチンさんの発言は新聞からということでございますが、私自身、その報道も、大変申しわけないんですが、それも拝見していないのでコメントは差し控えたいと思いますが、その発言がもし事実とすれば、それはやはり私は問題であると思います。やはり、核の保有、あるいは、私どもとしては核をなくそうということで今運動をやっているわけでありますから、そういう点では、今の御発言が事実とすれば、我が国の考え方とは違う、そういうふうに言えるところでございます。

 それから、先ほどの御発言で、北朝鮮は現在核を持っていると思うが、今後も核保有国としてのステータスを認めることはないとか、こういう米国の元国務次官補の発言を引用されたのではないかと思いますけれども、日本といたしましては、再三申し上げておりますように、核放棄を目指すということについては完全に一致をしているわけでありまして、引き続いて、米国などと連携をしながら、このような核軍縮あるいは不拡散については一生懸命やっていきたいと思っております。

松原委員 これで終わりますが、北朝鮮の拉致問題に関しては、私たちは精いっぱいやってきているというふうに思っているわけですが、まだまだいろいろな手はあると思っております。そのあたりに関してはよく研究していただき、従来の発想を超えて闘っていただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

河野委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 条約については、いずれも賛成であります。きょうはクラスター弾条約について聞いていきます。

 クラスター弾は、一つの親爆弾から広範囲に数百個もの子爆弾をまき散らし、無差別に人を殺傷する非人道兵器であります。使用後は大量の子爆弾が不発弾となり、人々の生活を脅かし続ける。しかも、子爆弾は子供の興味を引く形にしたものがあり、多くの子供たちが犠牲になってまいりました。

 中曽根外務大臣は、昨年十二月、ノルウェーのオスロでクラスター弾条約に署名をしたわけですが、問題は、日本政府が今後どういう対応を行っていくかということであります。御承知のように、クラスター弾を大量に保有するアメリカ、ロシア、中国、イスラエルなど、この条約に参加しておりません。

 外務大臣に伺いますが、政府は、昨年十二月以降、こうした国々に対しどういう働きかけを行ってきたんですか。

中曽根国務大臣 このクラスター弾、これの条約の重要性は、もう今さら委員に申し上げるまでもございませんが、政府としては、この第二十一条にもありますように、できるだけ多くの国がこの条約を締結することが大事であり、その働きかけをするということで、署名をしていない国に対する働きかけも行っております。米国、中国等につきましても、会談、会議等の場におきまして、あるいは我が外務省の人間がカウンターパートに対しまして署名に対する働きかけは行っているところでございます。

 一日も早くこれが締結されるように、私も署名を行ってきた者としてはそういうふうに願っておるわけでございまして、今後も引き続いて努力をしていきたいと思っています。

赤嶺委員 その一方で、先ほどからの答弁でCCWのことが出ているわけですが、これは外務省に伺いますが、CCWの場で、アメリカ、ロシア、中国、イスラエルなどの国々は、それぞれ具体的にどういう発言を行っているのか、そして、それに対し日本政府は何を主張しているのか。ちょっと説明してください。

伊藤副大臣 CCWの枠組みにおいては、クラスター弾の主要な生産国及び保有国も参加して、クラスター弾の規制に関する新たな国際約束の作成のための交渉というのが行われているわけでございますが、先月ジュネーブで開催された政府専門家会合では、クラスター弾の定義や規制に係る規定等、また、新たな国際約束の中核的な要素についての議論が行われたところでございます。各国の立場は近づきつつありますけれども、同会合で合意に至らず、八月の非公式会合で交渉を継続するという運びになっております。

 我が国としては、クラスター弾に関する条約を締結する一方、同条約については、一部の有志国の主導によりその作成プロセスが開始されたという経緯もありまして、主要なクラスター弾の生産国及び保有国が署名していないという現実がありますので、そのことを踏まえて、このCCWの枠組みにおいても実効的な国際約束が作成されるよう、引き続き積極的に貢献していく考えでございます。

 CCWでの交渉に参加している各国は、クラスター弾のもたらす人道上の懸念を共有しつつ、それぞれの国の置かれた安全保障環境も踏まえて、クラスター弾の問題に実効的に対処する国際約束を作成するための交渉ということに真剣に参加しているというふうに承知しております。

赤嶺委員 オスロから始まった今度のクラスター弾の禁止条約と、今CCWで言われているクラスター弾の定義がどんなふうになっているかはっきりしませんけれども、先ほど実効的な議定書というお話もありましたが、外務省の言う実効的なものというのは具体的にどんな内容を指しているんですか。

佐野政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御承知のように、オスロ条約の場合、主要なクラスター弾の生産国、保有国が今の段階で入っていないということでございまして、したがって、これらの国をいかに規制の網のもとに置くかというのが実効性の確保ということなんだろうと思います。

 そういう意味で、CCWの交渉にこれらの主要国、米、中国、ロシア、韓国等々入っておりますので、これらの国々がCCWの交渉の過程で合意に達していくということが、その条約、実際のクラスター弾の規制を実効ならしめるものであるというふうに考えております。

赤嶺委員 CCWでクラスター弾、どんな定義に基づいて何を禁止していくのか、何が実効的なものになるのか。私は、加盟していない国が今の条約に加盟して働きかけていくということが一番有効だと思いますが、今のCCWの説明については、ちょっと余り私の方でははっきりいたしません。

 それで、今回の条約締結に当たっては、問われてくるのは、私は在日米軍の問題だと思います。

 外務省に聞きますが、日本の国内の米軍基地にどれだけのクラスター弾が保管され、訓練で使用されているのかという点について、どのように把握されておられますか。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 米軍は、我が国領域内の施設・区域内にもクラスター弾を保有しているというふうに承知しております。米軍が保有するクラスター弾の種類、機能、数量、場所等の詳細については、米側として運用上の理由から回答できない立場であるというふうに承知しております。

赤嶺委員 米側は回答できない、そういうことを問い合わせて、そういうことを言っているんですか。

伊藤副大臣 そのように承知しております。

赤嶺委員 クラスター弾の訓練での使用については、これまでも報道されてまいりました。主に沖縄のメディアが詳細に報道しておりますが、その報道について米軍自身も認めております。

 二〇〇七年の九月には、クラスター弾を装着した岩国基地所属のFA18戦闘機が嘉手納基地を離陸し、爆弾のない状態で嘉手納基地に戻ったことが報じられております。その報道について、沖縄県の基地対策課の照会に対し、在沖米海兵隊外交政策部が、新聞報道はそのとおり正確だが、詳細は答えられないと回答しております。訓練でも使用しているということなんですね。いかがですか。

佐野政府参考人 お答え申し上げます。

 かかる報道の真偽につきましては、我々として、それの真偽、事実かどうかということを申し上げるのは適当ではないと思います。

 といいますのは、先ほど副大臣の方からも指摘いたしましたように、米軍が保有するクラスター弾の種類とか機能、さらには数量、場所について、運用上の話ですね、そういうことについては回答できないというのが米側からの返事でございますので、我々としては、そのままお答え申し上げるしかないということでございます。

赤嶺委員 報道について外務省が関知していないという話はともかく、米側は、沖縄県当局の問い合わせに対して、訓練での使用も認めているわけです。事実だと言っているわけですよ。皆さんが米側に問い合わせたというのは、何年何月、どこに問い合わせたんですか。

佐野政府参考人 お答え申し上げます。

 米側とは、特にクラスター弾の規制に関しまして、過去二年以上にわたりまして、累次、何度も何度も協議を行っております。これは主に東京あるいはワシントンで行っているわけでございますけれども、その過程で先ほど申し上げましたような回答が米側から来ているということでございます。

赤嶺委員 何年も何回もやったということですが、訓練で使用しているのかとか、どこで使用しているのかとか、そういう確認はなさったことがありますか。

佐野政府参考人 お答え申し上げます。

 先生今御指摘の個別の質問について、米側に対する答えをいただいているということじゃないんですけれども、先ほど申し上げましたような、クラスター弾の種類であるとか機能、数量、場所、そういった詳細について、米側としては、これを運用上の観点から公にすることはできないという回答でございます。

赤嶺委員 外務大臣、日本政府の方が非常に無関心ですね。クラスター弾が保有され、使われている地域、そこの当該沖縄県の基地対策課は、報道に基づいて問い合わせし、回答も得ている。皆さんの答弁は、相変わらず何の変化もない。事態に対処していないということがよくわかるような答弁であります。

 そこで、外務大臣に伺いますが、今回の条約第二十一条によって、日本は、非締約国に対し、この条約を批准するよう奨励すること、それから、非締約国がクラスター弾の使用を抑制するよう最善の努力を払うことが求められる、二十一条ではそのようになると思いますが、それは間違いありませんね。

中曽根国務大臣 そのとおりでございます。

赤嶺委員 二十一条では、クラスター弾の使用の抑制も日本政府の努力として求められてきているということですが、それでは、日本国内で米軍が保管し、そして訓練でも使っているクラスター弾について、政府はどうするんですか。

中曽根国務大臣 まず、非締約国であります米国に対しましては、きょうは各委員にも申し上げておりますように、我が国としては、これに署名または締結するように働きかけを行っているわけでありますが、米国、また、我が国にあります米軍に対しまして、また私どもも一定の働きかけを行っているところでございます。

 米側も、クラスター弾がもたらす人道上の懸念、これへの対応というものも十分に認識をしておりまして、今からちょっと申し上げるような立場を米軍も米国も表明をしております。

 それは、一つは、二〇一八年末までに不発弾率一%を超えるクラスター弾の使用を禁止するとの政策に基づきまして、人道上の懸念に配慮した不発弾率一%未満のクラスター弾への換装を早期に行っていくということ。それから、米軍による我が国領域内でのクラスター弾の使用につきましては、日米安全保障条約の目的を達成する上で必要な極めて例外的な場合を除いては想定されない。また、そのような極めて例外的な場合でありましても、文民に対する被害を可能な限り回避すべく最大限の自制及び人道的な考慮を払う、そういうふうに米側も表明をしているわけであります。

 我が国といたしましては、このような米国の立場も踏まえつつ、委員がおっしゃいました二十一条の2の規定に従いまして、米軍がクラスター弾の使用を抑制するよう最善の努力を払う考えでございます。

赤嶺委員 米軍が新型のクラスター弾を開発するまでは使い続ける、そのための訓練を沖縄ではやり続ける、今そのことを問題にしているわけですが、条約締約の意義について政府がるる繰り返している、クラスター弾がもたらす人道上の懸念への対応に向けた国際協力を促進するということであるわけですが、そうであるなら、非締約国に対して条約を批准するよう求めるのは当然です。同時に、少なくとも日本の領土、領空、領海においてクラスター弾の使用や保管を行わないよう米軍に求めるべきではありませんか。

中曽根国務大臣 日米安保条約があるわけでありまして、それによって米軍は日本を防衛する、そういう義務を負っているわけでございますが、米軍の訓練というのは、その対日の防衛義務を履行するために必要な訓練を行っているもの、そういうふうに承知をしております。

 今、この日本を取り巻く地域の状況というのは不透明、不確実なそういう要素が残されているわけでありますが、そういう状況の北東アジアの安全保障の環境のもとにおきましては、この条約上の義務を超えて日米安保体制の円滑な運用に不必要な制約を課すということは、やはりこれは安全保障上は適切ではない、そういうふうに考えております。

赤嶺委員 では、防衛省に聞きますが、条約を締結した後、クラスター弾を使用する米軍との共同訓練、これは取りやめるんですか、継続するんですか。

岩井政府参考人 廃棄についてのお尋ねをいただいておりましたので、廃棄についての担当者が参っております。今いただきましたことにつきましては、防衛省の運用にかかわることでございますので、後ほどしかるべく対応させていただきたいと存じます。

河野委員長 後ほど理事会にお答えをいただきたいと思います。

赤嶺委員 外務大臣のさっきの答弁を聞きながら感じるんですが、条約を締結しているわけですよ。ところが、日本国内で米軍によるクラスター弾の保有や使用は認める。第二十一条の非締約国がクラスター弾の使用を抑制するよう最善の努力を払うという条約上の義務、これを日本は果たすことになるんですか。

中曽根国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、日米安保条約のもとで米軍も我が国の防衛義務を負って活動しているわけでありまして、そういう意味では、米軍には、米国に対しましては、この条約への署名とそれから締結というものを、働きかけは当然やらなければなりませんし、やっておりますし、一方で、先ほどこれは申し上げましたけれども、この二十一条の2の規定に従いまして、米軍がクラスター弾の使用は抑制するようにということ、これも強く働きかけを行っているということでございます。

赤嶺委員 先ほど近藤委員の質問にもありましたけれども、明確な答弁をいただけていないんですが、対人地雷の場合は、在日米軍による我が国領域内での使用、開発、生産については、条約を締結するという我が国の立場から、いかなる国によるものであれ、認められない。保有、貯蔵については、極東の平和及び安全の維持に寄与しており、認めないとすることは適当でないと答弁しています。これは、九八年九月二十五日の衆議院商工委員会での須田外務審議官の答弁を引いてきたわけですが、この点は、対人地雷の場合のこの答弁は、今でも全く変わりないわけですよね。

佐野政府参考人 お答え申し上げます。

 対人地雷の場合は、先生おっしゃったとおり、全く変わっておりません。

 それで、先ほど先生、二十一条の2を引用されまして、つまり、非締約国がクラスター弾の使用を抑制するように締約国は最善の努力を払う、これをやってきている、今後もやるわけですが、同時に、二十一条の三項、四項というのがございまして、ここで、禁止されている行為にかかわらず、一条でいろいろな行為が禁止されているんですけれども、一定のもとで締約国と非締約国が軍事的な協力を行うことができるというのが二十一条の三項にございます。

 これは、対人地雷にはない、オタワ条約にはない条項でございますけれども、先ほど大臣あるいは副大臣から申し上げましたような形の、非常に厳しい北東アジアにおける戦略環境、あるいはNATO等々において、こういう条項を入れることによって、国際社会の現実と、それから人道主義の旗を掲げていこうというこの二つの要請を、現実的に妥協を図っていったということでございます。

赤嶺委員 今、対人地雷条約との違いを説明されましたが、外務大臣、きょうはもう時間がなくなりましたけれども、申し上げておきますけれども、沖縄県でクラスター弾を使用している射爆撃場は久米島の鳥島です。那覇の近郊でもあり、久米島からわずか二十八キロしか離れておりません。去年の十一月、外務大臣にも質問いたしました。県内有数の好漁場だ、そして知事を初め超党派で返還を求めていると。

 ところが、そこでは、かつては劣化ウラン弾も誤射爆という形で使われ、撃ち込まれ、それで今は何の制限もなくクラスター弾が撃ち込まれている。どれだけ不発弾として残っているかわからない。そういうようなものが、戦場でもありますけれども、現に今、日本の領土、領海、領空、その領域の中にあるわけですよ。クラスター弾に対する県民の不安というのは、はかり知れないですよ。

 それを、その二十一条の抑制について政府が努力するわけでもない、それから米側に、使ったと米側が認めた報道について改めて確認するわけでもない、クラスター弾を使った訓練は野放し。これでは、県民の不安は解消されない、また条約の精神にももとるものであるということを強く指摘しまして、質問を終わります。

河野委員長 次に、辻元清美君。

辻元委員 社民党の辻元清美です。

 本日は、クラスター弾禁止条約について質問をいたします。

 本日、日本もこのクラスター弾禁止条約を承認する、間もなく承認することになるかと思いますけれども、大変意義深いという気持ちを持つのと同時に、やっとかという思いです。それは、このクラスター弾については非人道的な側面があるとずっと指摘し続けられてきました。しかし、いまだ全世界で一致して禁止しようと、全面的に禁止しようじゃないかというところには至っておりません。

 そこで、本日、承認をきっかけに、日本政府としてはさらに積極的に、この非人道的なクラスター弾、全面的に、世界じゅうからなくなるように努力していただきたい、その思いで質問をいたします。日本政府の取り組みが中途半端では、そのリーダーシップをとったことになりません。

 さて、最初に、事実関係ですが、現在保有しているクラスター弾の種類と数を示してください。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、自衛隊が保有するクラスター弾の種類でございますけれども、CBU87Bクラスター爆弾、MLRS用M26ロケット弾、対戦車ヘリ用七十ミリロケット弾、百五十五ミリりゅう弾砲用多目的弾の四種類でございます。

 クラスター弾は、現時点では我が国防衛のための装備品でございますので、その保有の数につきましては、我が国の防衛能力にかかわるものであるため、お答えは差し控えさせていただきたいと存じます。

辻元委員 そうしますと、この廃棄計画をどのように進めていくかということ、これは非常に重要なポイントだと思います。そして、日本としてもすべて廃棄したということが国際的にも示され、国民の皆さんにも示されなければなりません。

 そうしますと、今は、現状、数は言えないということですけれども、廃棄する都度都度、数を示すということでいいんですか。幾つ廃棄しました、幾つ廃棄しました、ここで全廃になりました、どのように示していくんでしょうか。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 条約上の規定に基づきまして、今御指摘がありましたように、廃棄する都度、その数量等を明らかにしていくことになろうかと存じます。

辻元委員 そうしますと、地雷の際は、審議の過程で地雷の数、最初は政府は明らかにしていなかったわけですけれども、九十九万九千四百九十六でございますと答弁されているわけですね。そしてさらに、この廃棄計画につきましても、例えば予算をつける際に対人地雷二十二万発の廃棄のための経費として約四億円を計上しましたとか、一発当たりの処理単価は二千円で大体できそうですとか、最初は三万円と言っていたわけですけれども。このように、随時明らかにしていっているわけですね。

 このような地雷の前例に基づいて情報を公開していくという考え方でよろしいですか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 御質問の趣旨は、対人地雷の保有数については国会審議において公表したということだろうということだと思いますが、対人地雷の場合は、当時既に保有しておりました指向性散弾地雷が比較的容易かつ短期間にその条約の規制にかからない形で改修可能であったということでございましたので、防衛上の問題というようなことを考えても、これによりましてその機能を一部補完するめどが立っていたというような事情がございましたので、その保有数を公表したわけでございますけれども、クラスター弾につきましては、先ほど申し上げたような形で、条約の趣旨にのっとって適切に公表していきたいということでございます。

辻元委員 そうしましたら、もう一度確認しますが、これからは廃棄について予算を随時計上されていくと思うんですね。その際に、予算計上する際には、どれだけ廃棄しますから幾らというような形で数とそしてその廃棄計画、プロセスを示していかれる、そういう方向で進まれるということを確認したいと思いますが、それでいいですね。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 本年度からやります調査で具体的な方法等が決まってくることになろうかと思いますが、それに基づきまして、具体的に廃棄をする際の予算要求においては、今御指摘があったような考え方で取り進めさせていただくことになろうかと存じます。

辻元委員 きちんと示していただきたいと思います。

 それで、次に、これも事実関係ですけれども、二条二項で例外とされたクラスター爆弾のことが書かれておりますけれども、この二条の二項で示されているような例外とされたような爆弾を新規購入する予定はありますか。

北村副大臣 お答えいたします。

 御指摘のクラスター弾に関する条約第二条第二項の(c)の五つの例外規定にのっとった兵器というものがございます。

 ヨーロッパで導入されているような、センサーつきの子弾を内蔵するタイプのクラスター弾が想定をされておりますけれども、現時点では、そのような装備品を導入する具体的な計画はございません。

辻元委員 現時点と言わずに、未来にわたって、やはり日本は軍縮のリーダーシップをとるという意味で、今の御答弁を守っていただきたいというように考えておりますので、確認をさせていただきました。

 そしてもう一つ、先ほどから在日米軍との関係ということが議論されてまいっております。そこで、アメリカに対する働きかけをどうしていくかということは、今後、他の中国、ロシアもそうですけれども、一つの軸になるかと思うんですね。

 そこで、中曽根大臣にお伺いしたいんですが、中曽根大臣は先日、二〇〇八年十二月三日に署名された折にスピーチをなさっております。そのスピーチの中に、このようなくだりがありました。いろいろな被害の状況などもいろいろ御自身でもお知りになりまして、「紛争終結後も人々の憎しみを蘇らせるような兵器の使用を許してはならないと、痛切に感じました。」というようにおっしゃっております。

 そういう意味では、私は、先ほどから出ておりますアメリカへの働きかけというのは、この趣旨からのっとりましても非常に重要だというふうに思うんですね。同盟関係を結んでいるからこそ日本が言える、またリーダーシップをとれるという点もあるかと思うんです。

 それで、もう一度確認をいたしますけれども、今までアメリカに対して働きかけをしたとおっしゃってまいりましたけれども、これが十二月ですね、スピーチをされたのは。この後具体的に、大臣は、いつ、どんな形でアメリカに働きかけをされたのか。そんなに日がたっておりませんので御記憶にあると思いますので、具体的にどういうように働きかけていらっしゃるのか、いつ、どうされたのかということをお聞きしたいと思います。

 そのときに、先ほどちょっと赤嶺委員の質問もありました、やはり沖縄の問題を含めまして、米軍基地の問題というのは非常に大きなポイントになってくるかと思うんですね。米軍基地の問題についても大臣から何かおっしゃったのか。おっしゃっていないのならいない、今後言おうとされているのかどうか。これは、大臣の思いですから、今後どうしたいか、積極的にどうしていきたいのかということですから、率直な御意見をお聞かせください。

中曽根国務大臣 委員が私のスピーチを御紹介されましたけれども、私も、昔から地雷除去については多少のお手伝いを個人的にやっておりまして、そういうことで、カンボジア・タイ国境などに行きまして、地雷原に行って、本当に悲惨な状況も見てきました。そういうところからあのような発言をさせていただいたところでありまして、また、そういうところからも今回みずからオスロにも行ったところでございますが、この気持ちというのは、これは私の一番の基本的なものでありまして、そういうところから、米国がこれに署名をしていないということについては、やはり、米国のみならずですけれども、署名をしていない国については署名を働きかける必要性というのは私は本当に強く感じております。

 ただ、先ほどから御答弁申し上げておりますように、米軍に対しては、これは米軍は、締結しておりませんので、米軍そのものはこの条約上の義務が課されることはないとか、あるいは、日米安保体制のもとで米軍というときは、米軍は日本を防衛するという義務から、また米軍なりの考えで保有をしているわけでありますけれども、私たちとしては、この第二十一条の二項に基づいてこれは抑制するということ。

 そして、さらに、先ほども御紹介したんですが……(辻元委員「いつ話をされたかということを明快にという質問です」と呼ぶ)はい。米軍がクラスター弾の使用を抑制するよう今後も最善の努力をしていきたい、そういうふうに思っております。

 あと、いつ、どういう形で働きかけをしたかということについては、事務方から御答弁させていただきたいと思います。

佐野政府参考人 お答え申し上げます。

 米側とは累次にわたってやってきておりますけれども、本年の二月、私自身がワシントンに赴きまして、カウンターパートである国務省に対して、そのほかの省庁も入っておりましたけれども、実際要請いたしました。

辻元委員 何を要請されたんですか。

 それと、在日米軍の問題については触れられたのかどうか。

佐野政府参考人 ですから、二十一条の二項にございます抑制について要請いたしました。

 在日米軍の件につきましては、条約上、これはアメリカはまだ入っていないわけでございますので、条約上の権利義務関係というのは米国が直接受けるわけではございませんので、その点については自明でございまして、協議そのものは私が行った時点ではいたしませんでした。

辻元委員 今回の軍事の協力という項目、先ほどから議題になっておりますけれども、その中に、米軍が日本国内で保有しているクラスター弾の輸送について自衛隊や民間が協力できるというような解釈になっているというようにお聞きしているんですが、そういう解釈なんですか。

北村副大臣 お答えいたします。

 クラスター弾に関する条約第二十一条の3及び4におきましては、締約国は、みずからクラスター弾を使用、貯蔵、移譲しないことなどの一定の……(辻元委員「簡単に。輸送だけの答えで結構です」と呼ぶ)はい。一定の条件を満たす限り、非締約国との間で軍事的な協力及び軍事行動を行うことができる旨規定されております。

 このため、本条約のもとでは、自衛隊が米軍のクラスター弾を運搬することなど、米軍との間で軍事的な協力または軍事行動を行うことは可能であります。

辻元委員 確かにその項目が入っているからという御答弁なんですが、日本としてどうしたいかということなんですよね。

 地雷のときは、亡くなられました小渕総理が、これは地雷の場合は先ほどの項目が入っていないわけですけれども、しかし、このように答弁されているんです。「対人地雷を輸送する行為は条約上禁止をされております活動の一つである保有に当たりますので、」「自衛隊による在日米軍の対人地雷の輸送は認められず、また民間人による輸送も我が国国内法上対人地雷の所持に当たるものとして禁止されることになります。」ということで、先ほどの協力という条項が入っているという違いはありますけれども。

 中曽根大臣が先ほど非常に格調の高い立派な演説をなさった趣旨から申し上げますと、私は、米軍が国内に保有したり、それから演習をしたりすることにもクラスター弾を使うことはやめていただきたいと考えておりますけれども、自衛隊が輸送したり、民間業者に輸送させるというようなことは、これは先ほどからの趣旨から申し上げまして、アメリカ軍に対して、それはちょっとうちは、日本は条約を承認し、これを世界に積極的に進めていこうとしている、そしてまた、抑制ということもおっしゃっているので、そういう方向で、自衛隊や、少なくとも民間業者がコミットメントしていくことについては、これは認めない方向の検討も始められた方がいいんじゃないかと思うんですが、大臣、いかがですか。大臣です、これは。

中曽根国務大臣 この条約の趣旨、そして我が国がこれに署名した、そういうところを考えますと、委員もおっしゃいますように、これは使用しない、あるいは保持をしない、生産しないということ、これが一番大事なことであります。

 米軍におきましては、安保条約とか、あるいはこの条約の中での決まりがありますので、それは可能であるわけですが、私たちとしては、今後、強く米国側に、使用はもちろんのこと、この目的にできるだけ米側も協力し、また締約国として署名も早く行うように働きかけをやっていきたいと思っております。

辻元委員 強く何を働きかけるかなんですよ。漠然として、さあ、やりましょうじゃなくて、日本として具体的に、アメリカがこの条約を批准するその方向に向けてどう働きかけるか。私は、まず第一歩として、ちょっとうちの国内で輸送にはこれは協力できませんよとか、具体的なことで前に進めていかないと、ただ外交辞令で言っているわけではありませんから。強く働きかけは、口で言うだけなんですか、それとも、アメリカに対して何か具体的な行動を呼びかける、どちらなんでしょうか、大臣。そこはすごく大事なポイントだと、ちょっと、これは大臣ですから、大臣にお答えいただきたい。

 こういう評価を受けているわけですよ、日本は。クラスター弾の禁止条約をつくる過程で、「日本が「特に主張」し、非加盟国との共同軍事作戦を容認する条項が入った。日本は米国の規制逃れを手助けする一方で、米国に署名を働きかけようとしているのが現状だ。」なんという評価をしている報道などもあるわけですね。これは恥じゃないですか。

 ですから、私が申し上げたのは、アメリカに対して、まず在日米軍があるわけですから、自衛隊や民間は少なくとも日本としては難しいですよというような具体的な呼びかけをすべきだと思いますが、大臣、いかがですか。

中曽根国務大臣 何よりも我が国の安全、これを確保するということが一番大事でありますから、そういう意味では、日米安保条約、これが有効に機能する、また、それに支障になるようなことは、これは私たちとしてはならないようにしなければならないということからは、やはり安保条約の円滑な運用に不必要なといいますか制約がかかってこれが機能しないようになるということは避けなければならないということが一つでございます。

 それからもう一つは、これも先ほど御答弁申し上げたんですけれども、米国も、このクラスター弾がもたらす人道上の懸念、これへの対応というものも十分に認識しているわけでありますから、これは繰り返しになりますけれども、米側としては、二〇一八年の末までに不発弾率一%を超えるクラスター弾の使用を禁止する、そういう政策に基づいて、人道上の懸念に配慮した不発弾率一%未満のクラスター弾への換装を早期に行っていくということです。

 それからもう一つは、米軍によります我が国領域内でのクラスター弾の使用につきましては、日米安保条約の目的を達成する上で、先ほどから申し上げておりますけれども、必要な極めて例外的な場合を除いてはこれは想定されない、また、そのような極めて例外的な場合でありましても、文民に対する被害は可能な限り回避すべく最大限の自制及び人道的な考慮を払う、そういうふうに米側も表明をしているわけでございます。

 二十一条の2の規定に従いまして、私たちとしては今、米側のこの表明というもの、確実にこれを遵守といいますか実行してもらわなければなりませんが、さらに、この条約の趣旨からいいましても、米側に対して、私たちとしては、先ほど委員からは、何がということでありますけれども、使用なり訓練におけるもの等につきましても、やはり安保条約がありますから、これは防衛上の難しさもありますけれども、こういう人道上の観点からも働きかけをやっていきたい、そういうふうに思っております。

辻元委員 終わりますが、最後に一言、何をおっしゃっているのかよく、日本は何がしたいのかなんですよ。ですから、アメリカに対して呼びかけて、全部、クラスター弾を使わないように、アメリカのも破棄させるようにしますと言っているわけですよね、クラスター弾はもう要らぬと。ところが一方で、いや、いろいろな必要がありましてとおっしゃっている。これが今の日本の立場なんです。ここから脱却しなきゃいけないですよ、このクラスター弾については。

 クラスター弾というのは非常に非人道的であるということは、もう皆さん御承知のとおりなんですよ。この非人道的な兵器についての態度と日米安保条約、これはリンクしているように見えて、実はしていないんですよ、非人道的については。ですから、そこはしっかり脱却をしていただきたい。

 そして、最後にもう一つ、きょうは質問はいたしませんけれども、NGOの果たした役割というのは非常に大きいわけですね、こういうようなリーフレットもつくりまして。引き続きNGOとの連携をしながら、アメリカを含めてへの働きかけを進めていっていただきたいと思っております。

 終わります。

河野委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

河野委員長 これより各件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、クラスター弾に関する条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河野委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、国及びその財産の裁判権からの免除に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河野委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、強制失踪(そう)からのすべての者の保護に関する国際条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河野委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

河野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十四分散会


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