衆議院

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第13号 平成21年6月5日(金曜日)

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平成二十一年六月五日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 河野 太郎君

   理事 小野寺五典君 理事 松島みどり君

   理事 松浪健四郎君 理事 三原 朝彦君

   理事 近藤 昭一君 理事 武正 公一君

   理事 伊藤  渉君

      猪口 邦子君    小野 次郎君

      木原  稔君    柴山 昌彦君

      鈴木 馨祐君    中山 泰秀君

      西村 康稔君    牧原 秀樹君

      御法川信英君    山口 泰明君

      石川 知裕君    川内 博史君

      篠原  孝君    松原  仁君

      丸谷 佳織君    笠井  亮君

      辻元 清美君    保坂 展人君

    …………………………………

   外務大臣         中曽根弘文君

   外務副大臣        伊藤信太郎君

   外務大臣政務官      柴山 昌彦君

   外務大臣政務官      西村 康稔君

   外務大臣政務官      御法川信英君

   国土交通大臣政務官    岡田 直樹君

   政府参考人

   (内閣官房総合海洋政策本部事務局長)       大庭 靖雄君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官)            山崎 達雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房地球規模課題審議官)       杉山 晋輔君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中島 明彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 廣木 重之君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石川 和秀君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 羽田 浩二君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 兼原 信克君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 高岡 正人君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   鶴岡 公二君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           中尾 昭弘君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           二川 一男君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           梅田  勝君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           大下 政司君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局次長)           立岡 恒良君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 小林 正明君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  高見澤將林君

   参考人

   (日本銀行企画局長)   雨宮 正佳君

   外務委員会専門員     清野 裕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月五日

 辞任         補欠選任

  柴山 昌彦君     牧原 秀樹君

  池田 元久君     川内 博史君

  鉢呂 吉雄君     石川 知裕君

  辻元 清美君     保坂 展人君

同日

 辞任         補欠選任

  牧原 秀樹君     柴山 昌彦君

  石川 知裕君     鉢呂 吉雄君

  川内 博史君     池田 元久君

  保坂 展人君     辻元 清美君

    ―――――――――――――

六月四日

 領事関係に関する日本国と中華人民共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第二号)

 国際通貨基金における投票権及び参加を強化するための国際通貨基金協定の改正及び国際通貨基金の投資権限を拡大するための国際通貨基金協定の改正の受諾について承認を求めるの件(条約第九号)

 国際復興開発銀行協定の改正の受諾について承認を求めるの件(条約第一四号)

五月二十八日

 女性差別撤廃条約選択議定書の速やかな批准を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二九九四号)

 同(石井郁子君紹介)(第二九九五号)

 同(笠井亮君紹介)(第二九九六号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二九九七号)

 同(志位和夫君紹介)(第二九九八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二九九九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三〇〇〇号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三〇〇一号)

 同(小宮山洋子君紹介)(第三〇七六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三〇七七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 刑事に関する共助に関する日本国と中華人民共和国香港特別行政区との間の協定の締結について承認を求めるの件(第百七十回国会条約第一号)

 領事関係に関する日本国と中華人民共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第二号)

 国際通貨基金における投票権及び参加を強化するための国際通貨基金協定の改正及び国際通貨基金の投資権限を拡大するための国際通貨基金協定の改正の受諾について承認を求めるの件(条約第九号)

 国際復興開発銀行協定の改正の受諾について承認を求めるの件(条約第一四号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

河野委員長 これより会議を開きます。

 この際、御報告いたします。

 去る三日の理事懇談会におきまして、「平成五年度一般会計予備費使用要求額(国際連合ソマリア活動等分担金の内訳)」及び「米国の尖閣諸島に関する立場」について、外務省から報告を聴取いたしましたので、委員各位の参考に供するため、お手元に資料を配付いたしております。

 この資料につきましては、これを本日の委員会議録に参照掲載いたします。

    ―――――――――――――

    〔資料は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

河野委員長 また、北朝鮮の短距離ミサイルの発射の件につきましては、先ほど理事会で外務省より、理事会メンバー限りということで説明を聴取いたしましたことを報告申し上げます。

     ――――◇―――――

河野委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として日本銀行企画局長雨宮正佳君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として外務省大臣官房長河相周夫君、大臣官房地球規模課題審議官杉山晋輔君、大臣官房審議官中島明彦君、大臣官房審議官廣木重之君、大臣官房審議官石川和秀君、大臣官房審議官羽田浩二君、大臣官房参事官兼原信克君、大臣官房参事官高岡正人君、国際法局長鶴岡公二君、内閣官房総合海洋政策本部事務局長大庭靖雄君、金融庁総務企画局参事官山崎達雄君、厚生労働省大臣官房審議官中尾昭弘君、大臣官房審議官二川一男君、農林水産省大臣官房審議官梅田勝君、経済産業省大臣官房審議官大下政司君、製造産業局次長立岡恒良君、環境省大臣官房審議官小林正明君、防衛省防衛政策局長高見澤將林君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。猪口邦子君。

猪口委員 本日は、発言の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 現在外務大臣は所用のため御不在ですけれども、まず、北方領土問題についてお伺いいたしたく思いますが、その問題の解決のために外務大臣として熱心な取り組みをされていると拝察し、敬意を表したいと思います。この問題は麻生総理も、外務大臣のときからひときわ熱心に取り組まれまして、それだけに、総理としての今、解決のためのリーダーシップを発揮したいというお気持ちが強いのではないかと思います。

 まずお伺いいたしますが、日ロ両首脳は七月のイタリアでのG8サミットの際に日ロ首脳会談を行うことで一致しているという理解でよろしいでしょうか。

兼原政府参考人 事実関係でございますので、私からお答え申し上げます。

 本年の二月にサハリンで行われた日ロ首脳会談におきまして、麻生総理とメドベージェフ大統領が、七月にイタリアで行われるG8サミットの際に首脳会談を行う方向で調整するということを含めまして、日ロ間で首脳レベルでの政治対話を加速したいということで一致をした次第でございます。

 その後に、四月のロンドン・サミットの際及び五月三十日の日ロ電話首脳会談におきましても、両首脳は、七月にイタリアで行われるG8サミットの際に日ロ首脳会談を行うことを改めて確認しております。

 このように、日ロ間では七月の日ロ首脳会談を行うということで既に一致をしておりまして、今後、具体的な調整を進めていくこととなっております。

猪口委員 どうもありがとうございます。

 日ロ両首脳は領土問題を我々の世代で解決するということで一致していると私は理解しています。これは、例えばエリツィンの時代には長期的な解決という考えが表明されていたことを想起いたしますと、かなり前向きな姿勢と評価できるものであります。

 今お話しいただいた、ことし二月のサハリンでの日ロ首脳会談後に、麻生総理も北方領土問題につきまして、我々の世代で解決すべく具体的な作業を加速しようということで一致した、こう述べておられます。

 ところで、この我々の世代とは、これは年齢というよりも、両首脳直接の政治的決意でみずから打開のための首脳外交に全力を尽くす決意と理解してよろしいでしょうか。また、伊藤副大臣として、外務大臣を代理されまして、首脳外交を支える決意を伺いたく思います。

伊藤副大臣 猪口委員にお答え申し上げます。

 御指摘のように、本年二月にサハリンで行われた日ロ首脳会談において、麻生総理とメドベージェフ大統領は、この問題を我々の世代で解決すること、これまで達成された諸合意及び諸文書に基づいて作業を行うこと、メドベージェフ大統領が指示を出した、新たな独創的で型にはまらないアプローチのもとで作業を行うこと、そして、北方四島の帰属の問題、すなわち国境の画定の最終的な解決につながる作業を加速するべく追加的な指示を出すことで一致したわけでございます。

 このうち、今委員から御指摘があった、我々の世代でという意味でございますけれども、昨年十一月のリマにおける日ロ首脳会談において、メドベージェフ大統領から、領土問題の解決を次世代にゆだねる、先送りすることは考えていないという発言があったことを受けて、改めて確認したものでございます。これは、平和条約締結問題を棚上げすることなく、できるだけ早期に解決するとのメドベージェフ大統領の決意をあらわすものと受けとめております。

 イタリア・サミットの際の首脳会談を含めた今後の一連の首脳会談を通じ、また、私のレベルでも、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針のもと、北方四島の返還を実現すべく、引き続き、強い意思を持って粘り強く交渉を進めていく考えでございます。

猪口委員 伊藤副大臣、まことにありがとうございます。

 今御指摘くださいましたとおり、メドベージェフ大統領も、この新たな独創的で型にはまらないアプローチの指示を出したと伝えられています。

 それで、ラブロフ外務大臣のことですけれども、私が軍縮大使のとき、ニューヨークでラブロフ現外務大臣は国連大使を務めておられまして、非常に熱心で建設的な外交官としての記憶がございます。

 日ロ関係の重要な時期でございます。私としてこう理解していてよろしいでしょうか。メドベージェフ大統領の側から七月の首脳会談において具体的な考え方が提示される、そう期待したいと思いますけれども、そのように期待してよろしいとお考えでしょうか。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘があった、新たな独創的で型にはまらないアプローチとは、まさにメドベージェフ大統領がロシアの事務方に指示を出したものでございまして、具体的な提案という性格のものではなくて、領土問題に真摯に取り組もうとするメドベージェフ大統領の姿勢のあらわれと認識しております。

 また、五月十二日に行われた麻生総理とプーチン首相の会談においては、プーチン首相から、七月のイタリア・サミットで予定される日ロ首脳会談においてメドベージェフ大統領は北方領土問題について詳しく話す用意があると述べております。こうしたやりとりを踏まえ、七月のイタリア・サミットの際の首脳会談においては、メドベージェフ大統領から、サハリンでの首脳会談を踏まえたロシア側の取り組みについて説明を伺えることを期待しているものでございます。

猪口委員 それでは、まさに七月のサミットの際の首脳会談は非常に重要になる可能性があります。

 このような文脈の中で、事務方の方にちょっとお伺いしたいと思いますけれども、それに向けて事務方側の準備が極めて重要であり、また、ロシアへの働きかけをどう取り進めておられるのか非常に重要であると思いますので、お伺いします。

兼原政府参考人 お答えいたします。

 これまでの累次の首脳レベルの会談の結果を受けまして、麻生総理及び中曽根外相から、北方四島の帰属の問題の最終的解決に向けて交渉を強化、加速するようにという指示をいただいております。その内容につきましては、申しわけございません、申し上げるわけにはまいりませんけれども、外務省としては、今後とも、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するという基本方針のもとで、北方四島の返還を実現するべく、事務レベルにおきましても、さまざまな機会をとらえて、ロシア側との間で精力的に交渉を進めてまいりたいと考えております。

猪口委員 外務委員会においてこのように質問しておりますので、どうぞ事務方の方もよろしくお願いいたします。

 ここで、委員長、私は、領土問題解決に向けて、若干の自分なりのコメントを申し述べたいと思っております。

 領土問題を議論し、交渉する際に想起していただきたいことがあります。それは、そもそも日ソ共同宣言には、日本としてはシベリア抑留者の人命重視の考え方があったということです。

 当時の鳩山総理は、事態打開のために以下の文言の書簡を用意しました。すなわち、領土問題に関する交渉は後日継続して行うことを条件とし、戦争状態の終了、大使館の相互設置、抑留者の即時送還、漁業条約の発効、日本の国連加盟に対するソ連邦の支持の五点の同意を得た上で、国交正常化交渉に入る用意がある、この旨の書簡でございまして、これは一九五六年九月十一日付の書簡として、ブルガーニン・ソ連邦閣僚会議議長に送られ、同意の返書を得ているのです。

 これに基づき、その年の十月二日の閣議で鳩山総理は訪ソを決定し、七日に日本を立ち、鳩山首相を首席とする日本全権団、ここには河野一郎大臣も参加されておりました。この全権団はソ連側と国交正常化交渉を行いまして、十九日に日ソ共同宣言が発出されたのでございます。この共同宣言は十二月十二日に東京で批准書を交換して発効となり、これにより、ソ連で拘束されていたすべての日本人は釈放され、いわゆる総ざらい引き揚げが実現したのでございます。

 私が申し上げたいのは、ここに戦後日本の人道重視の極めて大きな外交があり、まず、ロシアには、そのような新たな思想で再生しようとした戦後の日本の姿勢を受けとめていたということを想起してもらいたいのです。そして、人道を優先した我が国に、後日継続すべきとした領土交渉において不利益のない決着を容認することでこそ、ロシアとしての人道主義的な深い対応となることを理解してもらいたいと思うのであります。

 そう述べた上で、日本としても、半世紀余り前の我が国政府の人道主義を想起し、帰属交渉においても人道配慮は重要であると考えております。北方領土に在住する例えばロシア人島民が追い出されたりせず、安住できる場所について人道的配慮を示すという観点があれば、おのずと解決方法も見えてくるのではないかと思います。

 いずれにしても、日本は、国家としての究極の人道主義を実践したことを起点とした長い外交の、今、着地点を見きわめようとしているということでありまして、交渉において何らかの対ロ配慮の観点があるとすれば、それは人道という立論でこそ整理されるべきであり、そうしてこそ、この長期にわたる苦労は理論的にも整合性を獲得し、また、この西太平洋地域の未来について強い発信となると思いますので、私の考え方として伝えておきます。

 では次に、北朝鮮問題と日中関係についてでございます。

 北朝鮮の核問題を解決するためには、幾つかの点をとりわけ重視しなければならないと考えます。第一に、多大な外交努力で培ってきた六者協議の枠を重視すること。第二に、そのかなめとなってきた中国との協調を重視すること。第三に、日朝平壌宣言の立場を重視すること。そこでは、言うまでもなく、双方が国際法を遵守し、互いの安全を脅かす行動をとらないことや、朝鮮半島の核問題の包括的解決のために、関連するすべての国際的合意を遵守することが合意されているわけでございます。また、拉致問題は、人道問題として、誠実で解決力のある対応が必要であると考えます。

 さて、六者協議でございますけれども、二〇〇三年の八月に始まりまして、二〇〇五年九月に採択されました六者協議の共同声明には、北朝鮮によるすべての核兵器及び既存の核計画の放棄の実現への努力が明記されておりまして、米朝国交正常化を最終目的の一つに設定しています。しかし、二〇〇六年には北朝鮮は核実験実施を発表し、翌年には初期段階の措置や第二段階の措置などの議論や合意がありましたが、昨年十二月からは会合は開催されず、また、北朝鮮の軍事的エスカレーションが見られる現在、この状況を打開するために建設的な対応が必要である、そう考えます。

 その建設的対応のために、参加国それぞれが従来より柔軟性を発揮する決意が必要であります。例えば、米国には、米朝二者協議を排除しない姿勢が必要であるかもしれず、また、例えば中国に、それを仲介してもらいたいという要請があれば、その役割を演じてもらいたいと思っております。我が国も、そのような文脈においては、拉致問題を人道問題として重視しつつも、核拡散や核問題の解決に全力を挙げようとする関係国の機運と連動し、協働していく必要がある、そのように考えます。

 他方で、柔軟な発想で打開を目指すとしても、六者協議の傘下、アンブレラのもとにおいて各種の協議が行われるべきであり、日本外交としてこの点を確実に確保する必要があると考えます。

 日中外相電話会談等もとり行われたと伺っておりますけれども、このような点も含めてどうであったか、お伺いいたしたく思います。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 まず、委員がおっしゃるように、拉致問題が人道問題であるということは、私も常々内外で強く主張しているところでもございます。

 今、日中の電話会談の話でございますが、二日、中曽根大臣は、ヨウケツチ中国外交部長との間で日中外相電話会談を行いました。この会談におきまして、中曽根大臣より、まず、北朝鮮の核実験は明確な安保理決議違反であるとともに、核不拡散体制に対する重大な挑戦であり、断じて容認できない、そしてまた、日中は、強い安保理決議を迅速に採択することが重要との基本的な考えで一致していると理解している、さらに、追加制裁を含む強力な安保理決議の迅速な採択に向け、ニューヨークの代表部間でしっかり連携させることとしたいと述べたわけでございます。これに対しまして、中国のヨウケツチ外交部長より、中国側の立場は非常にはっきりしており、北朝鮮が再び核実験を行ったことに対して断固反対である、そして、当面の情勢のもとで、安保理が適度な反応をし、バランスのとれた決議を採択することに賛成する、そして、安保理決議と制裁だけでは問題は解決できず、圧力を加えるとともに、北朝鮮を交渉に引き戻す必要がある旨述べられたところでございます。

 このように、二日の電話会談では、現在焦点となっている安保理決議を中心に議論がとり行われましたが、中国政府も、五月二十五日に発出された外交部声明において、北朝鮮が六者会合に復帰するよう強く要求するとしており、六者会合共同声明の完全実施に向けて、六者会合の枠組みにおいてともに努力していることについては、これまで累次の機会に中国側との間で確認しているところでございます。

 政府といたしましては、北朝鮮の核問題を初めとする諸懸案を解決するための交渉の場として六者会合が最も現実的な枠組みであるとの考えに何ら変更はございません。引き続き、議長国中国とも連携して取り組んでいくという考えでございます。

猪口委員 今おっしゃってくださいましたとおり、六者会合を重視する、そして今後、二者会合、三者会合というのがあるかもしれないけれども、それは六者会合のアンブレラのもとにおいてであるということを日本外交としては確実に確保していただきたいと思っております。

 最近、私は、北京を訪問する機会がありまして、政党間協議の経緯の中での中国共産党との交流がございまして、中国側も、日朝平壌宣言、これを顧みれば、大変大きな外交的成果と認識されているということを知ったところでございます。

 この日朝平壌宣言はやはり大きな到達点でありまして、これは日朝のみならず、東アジアの安定の土台となるものである、そのように広く認識されるに至っていると思いますので、この点を日本外交としても、みずからの外交の到達点ですので、重視していただきたいと思います。

 それで、もう一つの観点をお伝えしたい、観点について関心を喚起申し上げたいと思います。

 実は、北朝鮮は、五月二十九日、まさに核実験の問題でニューヨーク国連本部で非常に大きな非難をされているさなか、ジュネーブの議場において非常に異なる行動をしております。ジュネーブの軍縮会議の議場にては、当日、カットオフ条約交渉開始のマンデートを盛り込んだアルジェリア議長提出の作業計画案の全会一致採択ができました。これは、北朝鮮も政府代表が参加しての全会一致採択でございます。

 北朝鮮は、その投票理由説明を行っております。このように述べています。建設的な精神及び核兵器の完全廃絶のために、北朝鮮は、ニューヨークにおいて否定的な議論が行われているにもかかわらず、遅滞なく実質作業を始めるために作業計画案を支持することを決定した、こう政府代表は本省からの訓令に基づいて発言しています。

 北朝鮮も含め全会一致合意が多国間議場で達成できたことにより、十年以上も不可能であったFMCTの交渉、カットオフ条約の交渉開始が先週可能となりました。実に歴史的なウイークであったわけです。

 北朝鮮外交はより注意深く見ていく必要がありまして、また、ジュネーブのような議場では、幾つかの国の外交について中国が重要な影響力を発揮していると感じられます。ニューヨークの外交、ジュネーブの外交、あるいは六者協議の行われていた北京での外交等々、総合的に見ながら、建設的な動きの萌芽を重視していく必要があると感じますが、また、中国がいろいろな面で熱心な取り組みをしているということも含めて、外務当局としてどのように感じているか、お考えをお伺いいたします。

伊藤副大臣 猪口委員の示唆に富んだ複眼的な発想また分析には、いつも敬意を表するところでございます。

 まず、平壌宣言の件でございますけれども、御指摘のとおり、日朝平壌宣言は、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して国交正常化を図ることが北東アジア地域の平和と安定にとって重要である、そういう基本原則に立って日朝両首脳が署名した、政治的に極めて重みのある文書であると考えております。

 我が国といたしましては、日朝平壌宣言を全体として履行することが、北朝鮮との間の諸懸案を解決し、日朝関係を前進させる上で最も効果的なやり方であるというふうに考えておりまして、日朝平壌宣言に従って国交正常化を図るとの考え方には変わりはございません。

 北朝鮮が拉致問題を初めとする諸懸案の解決に向けて日朝平壌宣言にのっとって具体的な行動をとるよう、引き続き、対話と圧力のバランスに意を用いながら取り組んでまいりたいと思います。

 それから、いわゆるカットオフ条約の絡みのことでございますが、北朝鮮の核問題については、もちろん安保理もそうですけれども、御指摘のように、さまざまな外交の場を活用すべきというふうに考えております。北朝鮮の核問題の解決のためには、国際連携というものが不可欠であり、重要である。北朝鮮との直接交渉をすることはもちろんですが、北朝鮮が参加しない協議であってもこの問題を取り上げ、国際社会の支持と協力を得ることが重要であると考えております。

 カットオフ条約と直接あれですけれども、五月二十五日に大臣も、ちょうどASEMの外相会議に出られておりましたので、間髪を入れず、各国に対して、今回の北朝鮮の行動に対して強いメッセージを出すべく働きかけを行いました。その結果、二十六日、アジア及び欧州の参加国が一致して、北朝鮮を非難し、安保理決議の遵守、六者会合への復帰、人道上の懸念への対処を求める強い内容の声明が採択、発出されたところでございます。

 そして今、国連の安保理では、追加制裁を含むできる限り強い内容の決議を目指して鋭意交渉を行っているところでございますし、そしてまたジュネーブの場においても、委員御指摘のようにしっかり交渉してまいりたいと思います。

 さっきの話に戻りますけれども、政府としては、引き続き、北朝鮮をめぐる諸懸案の解決に実質的な貢献を行うことができるすべての関係国が参加している六者会合は最も現実的な枠組みであるとの考えに変わりありません。さまざまな場を活用して、委員がおっしゃるように、複眼的に、戦略的に北朝鮮の諸問題、とりわけ今回の核問題の解決に向けた外交努力を最大限生かしていくということだと思います。いつもの委員の御指摘をよく踏まえて、外交当局としても努力を結集してまいりたいという覚悟でございます。

猪口委員 各方面でそのことについて非難をするということの重要性を政府として重視しているということはよくわかるのですが、同時に、私が指摘したことは、我が国が非常に重視する新たな多国間の核軍縮条約の開始でありますカットオフ条約開始について、全会一致の合意が必要なところ、北朝鮮はそのさなかにおいても賛成してくれたというような面もまた認識して、そのような、まさに伊藤副大臣がおっしゃった複眼的な観点から、その全体の分析を急いでいただきたいと思っております。

 それで、また私の意見なんですけれども、日中につきましては、これは戦略的互恵関係、ウイン・ウインについて合意しているわけですね。相互に建設的な調整の成果が上がることが私は重要だと思います。例えば、東シナ海における資源開発の合意については、国際約束の締結に向けた交渉、これは開始できる状態であると思いますので、開始すべきであると思います。そのような成果を一つ一つ重ねて自信をつけていく、これが戦略的互恵関係の精神であると思います。

 両国とも、そういう国家的対応能力あるいは問題解決能力について自信を深めていく必要がこの戦略的互恵関係の中で重要だということを指摘しておきます。そして、麻生政権と中国執行部は、実践的精神でこれを行う能力を有していますので、ぜひそのように努力してもらいたいと私は願っております。

 次に、最後の質問群で、カットオフ条約についてでございます。

 このカットオフ条約、これはつまり、核兵器の原料となる物質の生産そのものを禁止する兵器用核分裂性物質生産禁止条約、いわゆるFMCTと呼ばれるものですけれども、この交渉開始が可能になったということで、今お伝えしましたとおり、先週、歴史的なニュースがジュネーブの軍縮会議から届きました。このジュネーブの軍縮会議は常設の多国間軍縮交渉機関でありまして、現在議長を務めるアルジェリア政府代表が、カットオフ条約の交渉マンデートを含む軍縮会議の作業計画案を議長案として十九日に提出しましたところ、わずか十日後の現地時間二十九日に、全会一致で採択することに成功した。これは、一九九六年にCTBT交渉が行われて以来の本格的な核軍縮条約交渉が始まることを意味します。

 この背景にはさまざまな努力がありました。

 まず、アメリカのオバマ大統領が、四月五日、プラハで行った核なき世界演説においても、検証可能なカットオフ条約の交渉の早期開始を求める立場が表明され、米国の核兵器廃絶への外交のかじ取りがこの軍縮外交に前進への機運をもたらしたと言えると思います。

 また、中国など、非同盟諸国や途上国一般に多国間議場で影響力を有する幾つかの国が相当な努力を積み上げてきたと感じます。

 また、日本を初め核軍縮外交に専門的見地から貢献する決意をしている国が、早い時期から条約要素や構造を示唆する作業文書と呼ばれるたたき台を提出し、専門的観点からの議論を深めていくという機運を高めたと考えております。

 お手元に今配付いたしましたのは、二〇〇三年八月当時、私はジュネーブで日本の軍縮大使を務めておりまして、私が軍縮会議の議長に就任するに当たって、まさにカットオフ条約の要素や構造を示唆する作業文書を公式文書として提出したものでありまして、軍縮会議一七一四番公式文書のコピーでございます。末尾には日本語の概要も付しております。これがカットオフ条約についての最初の公式の作業文書であります。

 このほか、二〇〇六年には日本が再度、またカナダ、スイスなどが作業文書を提出し、また、現在の樽井大使は昨年、FMCT調整官を務め、方向性をつくるのに貢献したと考えております。

 このような数多くの努力の結果、この交渉開始が可能となったわけですけれども、実際の開始は数カ月先になるかもしれず、また、生産禁止される物質の範囲や検証方法など、複雑な交渉過程が予想されますが、ここをしっかりと政府として取り扱っていただきたいということを、もう時間もございませんので、お願いしておきます。

 もう一つ軍縮で、通常兵器部分では、クラスター爆弾の禁止の国内担保法について、経産省の事務方に来ていただいていますので、一言最後にお伺いいたします。

 言うまでもなく、クラスター爆弾禁止につきましては、外務大臣には昨年十二月の調印式に参加していただきました。改めて、軍縮へのその積極姿勢に感謝申し上げます。条約の締結に向け、当委員会においてはクラスター弾に関する条約を全会一致で承認し、参議院における審議も間もなく行われることと承知しておりますが、国内担保法の整備、これが重要でありますが、その進捗ぐあいについてお伺いいたします。

立岡政府参考人 お答えいたします。

 クラスター弾に関する条約の国内担保法に当たることになります法案、すなわち、クラスター弾等の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律案、これにつきましては、本年三月十日に閣議決定を行いまして、同日国会の方へ御提出しているところでございます。

 今後の手続といたしましては、まずは御審議いただくこととなる委員会への法律案の付託となるかと思いますけれども、私どもとしてはこれを今お待ちしている、こういう状況でございます。

猪口委員 では、もう終えたいと思いますけれども、言うまでもなく、このクラスター弾の禁止につきましては、超党派の議員連盟が結成されまして、河野議長が会長となって全力で合意形成をしてくださり、私も事務局長を務めるなど、各国の議員とも連帯して、議員外交の役割もあったと認識しております。ぜひ政府の方も、議員や政党の役割を、今後、軍縮交渉において重視していただきたいという希望を述べ、私の質問を終わらせていただきます。

 委員長、どうもありがとうございました。

河野委員長 大臣の到着がおくれておりますので、この際、暫時休憩いたします。

    午前九時三十一分休憩

     ――――◇―――――

    午前九時三十六分開議

河野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。川内博史君。

川内委員 川内です。おはようございます。

 早速、大臣がいらっしゃったので、質問を開始いたします。

 私の地元、鹿児島県鹿児島郡十島村トカラ列島に小宝島という大変ちっちゃな島がありまして、小学校もあるし病院もあるし、その小学校には七名の子供たちが学んでおります。その島を米軍の戦闘機がたびたび、低空での飛行訓練で小学校の真上を飛行しているという問題について質問いたします。

 この問題について、昨年の十一月十四日、国土交通委員会で一度取り上げさせていただいて、日米の合同委員会というところが出している文書では、在日米軍による低空飛行訓練については、「人口密集地域や公共の安全に係る他の建造物(学校、病院等)に妥当な考慮を払う。」というふうに合同委員会合意で合意しているわけでございますけれども、これに反するのではないかということを申し上げました。

 外務省の方から在日米軍に対して遺憾の意を伝えていただいて、今後はちゃんとするよという返事ももらっているということでございましたけれども、その後この飛行訓練についてどういう状況であるかということを、まず教えていただきたいと思います。

中曽根国務大臣 まず、委員会に遅参いたしましたことをおわび申し上げます。

 ただいまの件につきましては、委員からは累次にわたりまして御指摘をいただいてきたところでございますが、直近の例として委員から今御紹介のありました四月二十七日の飛行につきまして、米側に照会をいたしましたところ、米側からは、お尋ねの日時に小宝島の周辺上空は飛行したけれども、平成十一年の日米合同委員会合意で適用されております最低安全高度につきましては守っていた、そういう回答がございました。

 いずれにいたしましても、政府といたしましては、米側に対し、米軍機の飛行に当たりましては公共の安全に妥当な考慮を払うとともに、関連する日米合同委員会合意を引き続き遵守するよう申し入れをしているところでございます。

 実は、私の選挙区でも同じような低空飛行が問題になっておりまして、それも同様な案件でありますが、米側に対しては引き続いて遵守するよう申し入れをまたしていきたい、そういうふうに思っております。

川内委員 大臣、大臣の選挙区でも問題になっているということであればなおさらのことなんですけれども、実は、きのう私は小宝島の小学校の教頭先生に電話をしまして、四月二十七日以降どうですかと聞いたら、いや、五月三十日も低空飛行をしていた、米軍戦闘機二機が小学校の真上を飛んだのだということを教えていただいて、外務省の方から再三にわたって、合同委員会合意を遵守してくださいね、学校、病院に妥当な考慮を払ってくださいねということを申し入れをしていただいているにもかかわらず、このように飛行を繰り返す。ある意味、何かちょっとばかにされているような気がしまして、この挑発的な態度で。

 合同委員会合意には、五項目めに、在日米軍は、日本国民の騒音に対する懸念に敏感である、こう書いてあるわけですね。さらに、六項目めには、「米国政府は、低空飛行訓練によるものとされる被害に関する苦情を処理するための、現在の連絡メカニズムを更に改善するよう、日本政府と引き続き協力する。」とも書いてある。

 ところが、全然、いつ飛行訓練をしたかとか、どういう状況であったのかというのは、こっちからあんたたち飛んだのかと聞かないと教えてくれないという相変わらずの状況でありますし、さらに、この日米合同委員会合意の中には、在日米軍は訓練区域を見直しますよ、常に見直すように努力しますよ、「低空飛行訓練を実施する区域を継続的に見直す。」というふうなことも書いてあるわけで、学校や病院が、これはちっちゃな島なんですよ、大臣。ちっちゃな島で、人口が百人にも満たない島なんですよ。その島の上をもう飛ぶだけで学校の上を飛んでいるということになるわけですね。病院の上を飛んでいるということになる。

 今まで継続的にやられていたわけですけれども、どうせちっちゃな島だし、自分たちが文句を言ったってしようがないとみんなあきらめていたわけですね。私がたまたま、去年の十一月、その島の小学校に遊びに行っていたわけです。学校から出てきて、物すごい音がするわけですね。それはそれは恐ろしいですよ。離着陸のときのスピードではなくて、高度一万メートルぐらいを飛ぶときのスピードで、上空、それは低空飛行訓練の守るべき高度は守っていたといっても、百五十メートルですから、その約束というのは。百五十メートルで戦闘機が真上を高度一万メートルで飛ぶような速度で飛ばれたら、それはそれは物すごい恐ろしい気持ちがします。

 それで、こういうふうに外務省さんを通じて在日米軍にたびたび申し入れをしているわけでございますが、これは外務省としても、外務大臣の選挙区でもそういうことが問題になっているんだとおっしゃるのであれば、「在日米軍による低空飛行訓練について」というこの合同委員会合意の文書そのものを見直さなきゃいかぬと思うんですよ。

 二十一世紀のこの日本において、みんなが平和に生活しているときに、何で米軍の戦闘機が上空、それは飛行訓練の高度を守っているとはいっても、百五十メートル以上であれば守っていることになっちゃうわけですから、二百メートル、三百メートルでも物すごい騒音だし、物すごい恐ろしさだ。その中で、守っているからいいじゃないかと言われても、こちらは、はあ、そうですかというわけにはいかない。

 合同委員会合意そのものを見直すということで話し合いに入っていただきたいというふうに思いますが、外務大臣、ちょっと御所見を聞かせていただけますか。

羽田政府参考人 今委員の方から御指摘ございましたけれども、米軍機の飛行に際して、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきであるということは当然でございます。

 政府としては、昨年十二月に開催された日米合同委員会の場で、米側に対して、低空飛行訓練を行うに当たっては、公共の安全に妥当な考慮を払うとともに、関連する日米合同委員会合意を引き続き遵守するよう改めて申し入れておるわけです。

 今後とも、政府としては、必要に応じ、日米合同委員会等の場や、また、個別に米側に対して、米軍機の飛行に際しては安全面に最大限の考慮を払って、地元の住民に与える影響を最小限にとどめるよう申し入れていきたいと考えております。

川内委員 いや、それでは今までと一緒なんですよね。十一月の飛行のときも、ちゃんとやってね、守ってくださいねと言って申し入れたが、その後も再三にわたって飛行している。妥当な考慮が、向こうは払っているとおっしゃるかもしれないが、こちらは妥当な考慮が払われているとはとても思えないですよ。妥当な考慮とは何ぞやということになるわけですよね。審議官、そうじゃないですか。向こうは妥当な考慮を払っていると言うかもしれないが、こちらは、妥当な考慮とは、では一体何なんだ、言ってみろという話じゃないですか。

 審議官、お子さんいると思うけれども、御自分の子供が通っている学校を戦闘機が上空を物すごい勢いで一カ月に一回ぐらい飛んでいます、そういう状況だったら、あなた、どう思います。ああ、そうなの、いや、それは米軍もちゃんとやっているんでしょうね、まあいいんじゃないのと言うんですか。

羽田政府参考人 ひとつぜひ御理解いただきたいのは、米軍としては、日米安保条約の目的の達成のために我が国に駐留することを認められているわけですけれども、米軍が、飛行訓練を含め、軍隊としての機能に属する諸活動を一般的に行うことをこれは前提としているということがあります。

 他方、米軍が全く自由に飛行訓練を行っていいというものではなく、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきということは当然でございます。

 したがって、私どもとしては、米軍に対して、安全面に最大限の考慮を払うとともに、地元住民に与える影響を最小限にとどめるということから、合意をされている具体的な措置をぜひ遵守してほしいということをまた改めて申し入れていきたいというふうに考えております。

川内委員 大臣、このトカラ列島というのは十個の島があって、七つ人が住んでいるんです。三つは人は住んでいない。今は住んでいない。しかし、かつては住んでいた。だから、そういう目標物になるような無人島もあるわけですよね。日本は島国だから、そういう人が住んでいない島もたくさんあるわけじゃないですか、目標物になるような島も。

 だから、日米安全保障条約を否定するわけではないし、それは米軍も訓練もしなければならないでしょう。そんなことは否定していませんよ。しかし、わざわざ人が住んでいるところに、人が普通に生活の営みをしているところを邪魔するような訓練の仕方をすることが、現代におけるそれは軍隊の訓練のあり方なんですかということの問題提起をしているわけであって、訓練はできるところでやってちょうだいね、そういうふうにしてください、どうしても人の上を、人が住んでいるところを訓練しなければならないんだというのであれば、事前に教えてね、そうしておけば、みんな心構えをして、ああ、そろそろ飛んでくるね、ああ、音がしたね、大きな音だったねということも心構えができるわけじゃないですか。

 そういう、だれが考えても、ああ、そうですね、そういう合意だったらば納得できますねという合意を結ぶように変えたらどうですかという提起をしているわけで、大臣、この紙のままでは問題は発生し続けるわけですよ。なぜなら、向こうはこれを守っていると言うが、住民の皆様方にとってはもう本当に苦痛を感じている低空飛行訓練が、大臣の選挙区でも起きているし、私の地元でも起きているという実態があるわけでございます。

 大臣、この合同委員会合意について、妥当な考慮とは何なのか。あるいは、これはちゃんと書いてあるんですから、低空飛行訓練を実施する区域を継続的に在日米軍は見直します、こう書いてあるんですから。では、どういうふうに見直しましょうかね、どういうふうに妥当な考慮を払っていただくんでしょうかねということの話し合いはしなければ、私は、住民の皆様方の、あるいは低空飛行訓練で嫌な思いをしている日本国民の皆様方の思いにこたえる行政にはならないというふうに思います。ただ合同委員会合意を守ってねと言うだけではなくて、合同委員会合意の内容についてしっかり話し合いをするよということは、大臣の意思として御答弁をいただきたいというふうに思います。

中曽根国務大臣 先ほども政府参考人から御答弁申し上げましたけれども、政府としては、今までも累次の機会に米軍に対しまして、日米合同委員会合意を守るように、そういうふうに申し入れしておりますけれども、今委員がおっしゃいましたように、実際住民の立場になれば、生活面においてもいろいろと支障もあり、不安もあろうかと思いますので、安全面とともにそういう点について最大限の配慮をするように、また影響を最小限にするように、引き続いて私の方も働きかけ、また必要な指示を出していきたいと思っています。

川内委員 よろしくお願いします。

 それでは、次の論点に移ります。

 年次改革要望書、日米規制改革イニシアチブという文書が日米両国政府間で取り交わされるわけでございますが、一般的には何かアメリカから日本に言われているものだけがとんでもないみたいな感じで言われているわけですが、実は日本からもアメリカに規制改革要望というものを出しておりまして、その中に、米国産牛肉の問題について日本の政府から要望をしていただいておりました。これは、私と当時の中川農水大臣との間のやりとりを踏まえて、飼料規制の問題と米国内におけるBSE対策、検査の強化について、二項目申し入れをしていただいていたものでございますが、この点について、まず農水省にお伺いします。

 私が提案をさせていただいたことを受けて、当時の中川農水大臣のイニシアチブで、平成十八年と十九年、日本政府から年次改革要望書に、我が国の食品安全委員会の附帯意見で示されていた米国での飼料規制の強化とサーベイランスの維持拡大の二項目が記載をされました。しかし、平成二十年十月、麻生内閣が発足をする前後に年次改革要望書が取り交わされたわけでありますが、平成二十年からは抜け落ちてしまっておりました。しかも、これは石破農水大臣の承認を得ずに、これは委員会で確認しておりますが、後で知ったというふうに明確に大臣は御答弁をされております。

 農水省に事実確認をさせていただきたいと思いますが、平成二十年に日本からアメリカ政府へのBSE対策に関しての要望を記載しないということは、いつ、だれが、どういう手続でお決めになられたのかということを教えていただきたいと思います。

梅田政府参考人 当省より外務省へ要望文を出したのは、昨年九月二十二日でございます。ちょうどこの時期は大臣の交代期に当たっていたため、事実上事務方が判断することになった次第でございます。

 以上であります。

川内委員 事実上事務方が判断することになった次第ですって、事実上も何も、事務方だけで判断したんですよ。その事務方だけで判断したのを、いつ、だれが、どういう手続で決めたんですかということを聞いているんですけれども。

河野委員長 農林水産省梅田大臣官房審議官、質問に的確に答えてください。

梅田政府参考人 消費・安全局が大臣官房国際部と協議した上で外務省へ要望文を提出したものでございます。消費・安全局長が判断したものでございます。

川内委員 もう一つ、ことしの五月二十七日に、OIE、国際獣疫事務局から、我が国の牛肉がBSEステータスの準安全国、管理されたリスクの国に認定をされました。昨日の御説明では、OIEへの申請については、当初様子見をしていたけれども、昨年五月にEUがこのリスク認定を、BSEステータスをとったことから、申請の準備に入り、昨年十二月に消費・安全局長により申請書類の決裁が行われたということであります。

 では、申請する方針はいつ、だれが、どういう手続で決めたのか、事実関係を教えていただきたいと思います。

梅田政府参考人 我が国は、昨年十二月十五日に、国際獣疫事務局、OIEに対しまして、BSEステータス認定の申請を行い、本年五月二十四日からパリにて開催されましたOIE総会において、管理されたリスクの国と決定されたところでございます。

 昨年十二月の申請に当たりましては、石破大臣まで御説明を行った上で、我が国の首席獣医官からOIEのバラ事務局長に対して申請書を提出したところでございます。

川内委員 OIEへの申請について、厚生労働省と農水省が協議したのはいつごろですか。厚労省。

中尾政府参考人 厚生労働省に対しまして、農林水産省から平成二十年の一月に、屠畜場の検査データについて協力依頼がございました。その後、平成二十年の七月にOIEへの申請書の原案が農水省から厚生労働省に送付をされてきた、こういう経過でございます。

川内委員 厚労省、もう一問。

 今回のOIEでは、輸出入できる牛肉の月齢条件が、従来の三十カ月齢未満という制限が撤廃をされました。厚労省は、我が国の屠畜場での検査の現在の二十一カ月齢以上という基準の変更を食品安全委員会に諮問される予定がありますか。

中尾政府参考人 農林水産省がOIEに対して我が国のBSEリスクに関する評価を求めた趣旨は、我が国のBSE対策に関する国際的な専門家の評価を受けること、国産牛肉の輸出を促進することにあるものと承知をしております。

 したがいまして、OIEによる我が国のBSEステータスの認定が我が国の国内におけるBSE対策の見直しに直結するものではなく、厚生労働省といたしましては、食品安全委員会に対する諮問を検討しているという事実はございません。

川内委員 諮問を検討している事実はないということでございます。

 それでは、外務大臣にお伺いします。

 私は、農水省が確認も検証もせず、大臣の承認もなしに、米国への年次改革要望書からBSE項目を削除したことは、大変な間違いであるというふうに思います。

 農水省は米国における飼料規制が強化されたんだと言うでしょうが、大臣、これを覚えておいていただきたいんですけれども、米国における強化された飼料規制でも交差汚染のリスクは依然として残っておりますから、米国内においては。これだけは覚えておいてください。米国内において、BSEの交差汚染のリスクは残っている。

 したがって、二十一年版では、飼料規制の強化と検査のサーベイランスの維持拡大、これは復活をさせるべきであるというふうに考えております。

 検査についても、歩行困難牛、いわゆる神経症状を呈する牛がわざと検査から外されているのではないかというような指摘が、アメリカの会計検査院の報告書などに記載されております。サーベイランスも不十分だということは、米国の会計検査院自身が指摘をしていることです。それも覚えておいていただきたい。

 そこで伺わせていただきますが、OIEへの申請も、結果的に、米国が日本への二十カ月齢以下の輸出制限を撤廃させる行動のきっかけをわざわざ日本政府みずからつくったのではないか。要するに、OIEステータスでは米国も管理されたリスクの国だ、日本も管理されたリスクの国です、一緒ですね、一緒だから輸入、交易条件を一緒にしましょうねというふうに結びつけていくのではないかということが一般的に疑われているわけです。厚労省は諮問するということを検討している事実はまだないとおっしゃっていますが、しかし、米国産牛肉の月齢制限撤廃の要求を米国が今後強く打ち出してくるというふうに私は見ております。

 米国政府から強くこれらのことが要求されてきた場合に、外務大臣としてどのように対処をされるおつもりかということをお聞かせいただきたいというふうに思います。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 御指摘のように、オバマ政権のカーク通商代表が、代表就任について承認を得るプロセスである三月の米議会公聴会において、日本、中国だけでなく、ほかのすべての国に対しても、米国産の牛肉の貿易を正常化させるように働きかけを行うという旨発言していると承知しております。こうした点も踏まえまして、政府としては、本件をめぐる今後のオバマ政権の対応を注視しているところでございます。

 いずれにいたしましても、米国産牛肉輸入問題については、外務省としては、関係省庁と連携しつつ、国民の食の安全を大前提に科学的知見に基づいて対応していくという考えでございます。

 現在のところ、米国政府から具体的な要請はございません。

川内委員 国民の食の安全を大前提にという言葉がありました。

 安心も前提に入りますね。

伊藤副大臣 入ると承知しております。

川内委員 国民の食に対する安心、安全を前提とするということであります。

 次に、商品先物市場の透明性の向上について伺わせていただきます。

 昨年の十月初めに、私は、経済産業省に対して、いわゆる投資銀行あるいは投資ファンドなどの投機マネーが原油や食料、原材料などの商品先物市場に大量に投入されて、原油、食料、原材料が高騰し、実体経済や国民生活を苦況に陥れたということを踏まえて、商品先物市場での投機マネーの暴走をチェックする第一歩として、商品先物市場における東京市場のように、当業者、非当業者という区分けで、実需と投機の別を明らかにして、毎日毎日の市場参加者、プレーヤーの手口を公開するという透明性をニューヨークやロンドンの市場にも求めるべきであるということを申し上げました。このことは、洞爺湖サミットの議長声明にも書かれております。

 ついては、その第一歩として、米国政府に対する年次改革要望書に記載すべきであるということを経済産業省に対して提言をいたしました。

 この私の提言を踏まえて、実際に年次改革要望書に市場の透明性の向上ということを記載していただいたということでよろしいでしょうか。

大下政府参考人 先生御指摘のとおり、昨年七月の洞爺湖サミットにおきまして、商品市場の透明性の向上が重要な課題でありまして、関係当局間の協力を進めることがうたわれているところでございます。この点につきまして、先生からも御指摘をされているとおりでございます。

 こういう状況を踏まえまして、日本側から年次改革要望書の中で御指摘のような要望等を行ったところでございます。

川内委員 日本の商品先物市場の透明性は、もう持ち時間が終了したと今紙が来ました、非常に透明性が高いわけで、私は高く評価をしておりまして、この市場の透明性について具体的に御説明をいただき、さらにそれを今後アメリカやヨーロッパに対しても、日本はこうしているよというようなことまで含めてしっかりと要望していくべきであるというふうに考えますが、関係当局それぞれ御見解をお示しいただきたいというふうに思います。

河野委員長 経済産業省大下大臣官房審議官、短くお願いします。

大下政府参考人 御指摘のとおり、商品取引所における取引情報の開示の充実は大変重要な課題でございまして、本年五月から東京工業品取引所でも、当業者であるか否かなどの属性別の建て玉情報等を公表することにいたしているところでございます。

 このような市場の透明性の向上を、我が国だけではなく国際機関間で協力して進めていくことが大事であるというふうに思っておりまして、IOSCOの商品市場タスクフォースにおきましてもそのような必要性を訴えておりますし、二国間の取り組みとしても、日米、日英で国際的な協力の枠組みを結んだところでございます。

川内委員 終わらせていただきます。ちょっと質問が余ったので、またこの次によろしくお願いします。

 ありがとうございました。

河野委員長 次に、篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原です。

 四十分ほど時間をいただきまして、大事な外交問題について質問させていただきたいと思います。

 また例によって資料をお配りしておりますので、資料をゆっくり見ていただきたいと思います。それから、当然配られていると思ったので入れなかったのですが、入っていなかったので、調査室の方から配らせていただきましたけれども、六月一日の東京新聞、共同通信で配信された記事のようでございますけれども、これは「国際情勢の動き」の中に入っておりませんでしたので、追加で配らせていただいております。これをもとに質問をさせていただきたいと思います。

 きょうの質問のテーマは非常に大事なものですので、中曽根大臣にゆっくり丁寧に虚心坦懐にお答えいただきたいと思います。事務方の皆さんにお答えいただくところは余りないかと思います。

 資料が今配られていると思いますけれども、それの三ページを見てください。これは日米間の核兵器の持ち込みの事前協議に関してのクロニクルというか経緯でございまして、この三ページの一番下、二〇〇九年六月五日、中曽根外相と括弧書きになっておりますけれども、私のような国会議員がまた後々言うことを想定しまして、その人がちゃんと引用できるような立派な答弁をぜひしていただくことを冒頭お願いしておきます。

 資料が配られていると思いますので、資料の方は一ページをまずごらんいただきたいと思います。

 領海及び接続水域に関する法律というのがあります。これは非常に大事な法律でして、領土なり領海を決めるというのは国の主権の問題です。国の主権については質問のときだけ来られる松原さんがよくいろいろ言っておられますけれども、これは非常に根本の法律でございます。

 ただ、ここのところに非常に軟弱な態度が見られるんです。附則の第二項を見ていただきたいんです。海洋法条約では十二海里というのが世界の常識になってきた。ところが、二のところを見ていただきたい。当分の間、ここに書いてあります、宗谷、津軽、対馬海峡東水道、対馬海峡西水道、それから川内さんに深く関係するんだろうと思います大隅海峡、こういった海峡が、遠慮して三海里にしておく、こういうことをしているんです。

 次のページ、二ページの図を見てください、視覚に訴えなきゃわからないので。見ていただくとわかるんですが、まず宗谷海峡のところを見てください。ロシアは上からちょうど十二海里にしているんです。丸く、何かだんごみたいになったところ。中間線が真ん中のです。日本は遠慮して、そしてここに公海をわざとつくっているんです。これは対馬東、西水道でも同じなんです。

 そして、もっとひどいのは、津軽海峡、大隅海峡なんて、日本の何か領海というか、そのものなんです。それを遠慮して、十二海里にせずに三海里のままにしているんですけれども、こんなような、遠慮をしているというか、国はあるんでしょうか。遠慮を通り越して、卑屈な姿勢。これは、だけれども、いろいろ日本外交が考えた末なのはよくわかるんですが、こんな例はほかの国にあるんでしょうか。これだけは事務方の方からお答えいただきたいと思います。

鶴岡政府参考人 諸外国が定める領海に関して、領海の幅を十二海里未満に設定している国はあるかとの御照会かと思います。我が国が承知している例を以下のとおり御紹介申し上げます。

 韓国につきましては、領海幅を原則十二海里としておりますけれども、対馬海峡西水道におきましては領海幅を三海里にとどめております。

 二つ目、ドイツでございますが、同じく領海幅の原則は十二海里でありますけれども、バルト海のドイツ、デンマーク間の海峡においては、両国間の中間線から約一・五海里手前の線までにとどめております。

 スウェーデンも同様に、原則十二海里の領海幅でありますけれども、デンマークとの海峡におきましては、両国間の中間線から約三海里手前までにとどめております。

 フィンランドにつきましては、同じく領海幅は原則十二海里ですけれども、フィンランド湾におきましては、エストニアとの中間線よりも約三海里手前までにとどめております。

篠原委員 今、皆さんもおわかりいただいたと思いますけれども、大体二国間で、ややこしいのかどうかは知りませんけれども、そういう関係にあるところですよ。中間線で余りしゃしゃり出ないでおきましょうということなんじゃないかと思います。津軽海峡や大隅海峡に当たる例はないんじゃないかと思います。この前、島サミットというのが開かれていますけれども、海洋法条約では群島理論というのがあって、群島のあるところは全部領海だ、そういう考え方も認められているわけです。日本の場合はここまで譲る必要はないと私は思うんですけれども。

 古い、昔の話です。鳩山外務大臣や何かのころなんですよね。一九七七年、この特定海域についての規定は一体どういう目的、どういう趣旨でつくられたと外務大臣は認識されておられますでしょうか。外務大臣、お答えください。

中曽根国務大臣 従来から繰り返して申し上げているところでありますが、この領海法制定、昭和五十二年の当時に、我が国としては、海洋国家それから先進工業国家、そういう国家を目指して、まあ海洋国家であるのは前からですが、そういうところから、国際交通の要衝であります海峡における商船とかそれから大型タンカー、こういうような船の自由な航行を確保するということが総合的な国益という観点から非常に重要である、また不可欠である、そういうことも踏まえまして、我が国の特定海域であります五つの海峡につきましては、外国船舶の自由な航行を保障する、それが適当である、そういう判断から、この領海幅を現在まで三海里としているところでございます。

篠原委員 その答弁は、三十数年前の鳩山外務大臣の答弁と同じなんです。私は、おかしいとは思いません。実際にそういう考え方はあっていいんだろうと私は思います。自由通航が大事です、自由貿易を日本もちゃんとしていますし、その恩恵に一番浴している、ほかのいろいろな海峡も日本も自由に通らせてもらわなけりゃいけない、それはわかります。

 しかし、もう一つ、当時の外務大臣は違った答弁をされているんです。通過通航制度、海洋法条約に出てくるわけですけれども、これはルールが何だかよくわからないから、こういうものがもっと蓄積されてきて、どういうものかわかったら、三海里などにしておかないで十二海里にする用意があるというふうに言っておられるんです。

 しかし、私はそんなぎちぎち追及するつもりはありませんけれども、やはり日本の国是たる非核三原則に触れるから、さんざん考えたあげく、私は日本人の知恵だと思います。間違った判断では実はなかったと私は思っているんです、この当時は。十二海里にしてしまえば、津軽海峡も大隅海峡も領海になる。領海になると、潜水艦は浮上しなけりゃいけないんですよ。イノセントパッセージ、無害通航、そういったルールからして、潜水艦は黙って下を通るわけにはいかないんです。それじゃ軍事的な秘密や何かも守れないし、アメリカには悪いし、だから遠慮しているんですよ。僕はそういうのはあったっていいと思いますけれどもね。この点についてどう考えておられるか。

 私は、この海峡、通りゃんせ通りゃんせという歌がありますけれども、それをもじって言えば、通りゃんせ通りゃんせ、ここはどこの海峡だと。極端に言えば、核搭載船が通ってもいい海峡だ、日本の安全を守るため、いつでも自由にお通りくださいというのだったんだろうと私は思います。しかし、核兵器に対する情勢は変わってきたんです。このあたり、やはり日本の領海なんだ、だから、日本は唯一の被爆国だし、核搭載船は通れませんよというふうに変更していったっていいような気がするんですけれども。

 非核三原則についてとこの問題についての考え方は、今も変わりないんでしょうか、あるいはそれなりに考えていってもいいとお考えでしょうか。どちらでしょうか。

中曽根国務大臣 特定海域にしている理由につきましては先ほども申し上げましたし、これは大型タンカーや外国船舶、こういうものの自由な航行を保障するということで設定されたものでありますけれども、この決定というものは、五十二年の領海法が制定されました当時に、この五つの特定海域を選定するに当たりましては、我が国周辺の海峡について、外国船舶の通航状況やそれから国際航行のための主要なルートに当たっているかどうか、そういうことについて検討の上、まず判断されたところでございます。

 すなわち、国際交通上の重要性に着目をいたしまして、具体的には、外国と外国の間を結んで航行する際の重要なルート上にある、外国船舶の通航の頻度が比較的高い、そういうふうに考えられる海域をこれは選定したものでありまして、その事情は現在に至るまで変わっておりません。変化も見られないところでございます。

 以上申し上げましたように、この件をめぐります基本的な状況につきましては大きな変化は見られませんので、この特定海峡における領海の幅を三海里のまま維持をする、それが適切である、そういう政府の判断は現時点でも変わらないところでございます。

篠原委員 大臣、国際海峡で遠慮しなくちゃならないというのはよくわかりますよ。それは、ジブラルタル海峡とかホルムズ海峡とかマラッカ海峡には私はそういったことは当てはまって、今も変わらないと思います。しかし、日本国内の津軽海峡はそんな海峡でしょうか、大隅海峡はそんな海峡でしょうか。私は、状況が変わってきたんじゃないかと思います。外交も変わらなければいけないんじゃないかと思います。

 チェンジ、チェンジと言って大統領になられたオバマ大統領も、核兵器についてはなくしていくんだという大演説をぶっておられるわけです。ですから、唯一の被爆国としての日本の態度もそれに呼応して変えていくべきです。日米同盟関係が大事だ大事だといったら、こういうときこそシグナルを送るべきじゃないかと私は思いますが、余りにも逃げの姿勢があり過ぎるんじゃないかと思います。

 これは比べてみていただければわかるんですけれども、北朝鮮に対しては、核査察とかやたら厳しいんです、同盟関係にあるところとちょっと違う国ですけれども。それで、日本ではやたらそういう動きがあって、船舶検査をすべきだ、国内法を制定すべきだと言っているわけです。それを、核兵器を搭載しているかどうかチェックする権限も放棄しているんですね。こんな軟弱な態度はありますか。

 私は、私の民主党の同僚議員のそういうことを言っている人たちにもいつでも聞きたいわけですけれども、非常に矛盾しているんです。これは論理的な矛盾。それは、同盟国とそうじゃない国ということはあるかもしれませんけれども、幾ら同盟国だからといったって、そこまで譲る必要はないんじゃないかと私は思います。

 政府は、核については事前協議が必要だというので、資料を見ていただきたいんですが、これについての経緯、三ページ、四ページを見ていただきたいんです。

 四ページのところの岸・ハーター交換公文でもって、事前協議をすると。日本は唯一の被爆国と。四ページです。ここに端を発しているんです。そして、今まで一度も事前協議がされていない。事前協議がされていないということは何にもないということで、核は持ち込みもされていない、日本には存在しないんだというふうに言い切っているんです。

 しかし、政府はずっと受け身なわけです。常に受け身の姿勢。どういうときに事前協議をすべきだ、してほしいと思っておられるんでしょうか。全部アメリカ任せというのはちょっと人がよ過ぎるような気がしますけれども、事前協議をするのはどういうときかということについて御見解を伺いたいと思います。

中曽根国務大臣 日米安全保障条約そして関連の取り決め上、核兵器が持ち込まれる場合には、これはすべて事前協議の対象となるわけでございますが、委員御承知のとおり、過去に日米間でこの日米安全保障条約上の事前協議が行われたということはございません。

篠原委員 事前協議をどういうときにしてほしいというのも言わずに、あうんの呼吸でやっておられると言うんでしょうけれども、あうんの呼吸が通ずる国と通じない国があるんだろうと思います。先ほどの領海のだって、韓国と日本というのは同じ価値観というか儒教国、お互いに遠慮し合って、日本が三海里にしていたら韓国も三海里にしているんですよ。しかし、ロシアはしないんですよ。平気で十二海里にしている。日本が一方的に譲っているんです。

 アメリカはどっちに近い国でしょうか。圧倒的にロシアに近い国だと私は思います、国際的な主張をするときの態度ですけれども。ロシアに近いんです。大国の傲慢な態度をとるんです。しかし、日本は、核兵器に関することについては、幾ら核の抑止力があるからといって、日本のルールを曲げてはいけないんじゃないかと私は思います。

 そして、先ほどの一ページ目の「当分の間、」に戻ります。一九七七年から当分の間。先ほど大臣は答えられませんでした。どうして当分の間、特定五海域を除外したか。そのときに言いわけの一番に、三十数年前は、海洋法会議等での国際的な解決を待つといって答弁されているんです。

 三ページのこの経緯のところを見てください。十二海里にかかわるものは一段下げて書いてありますから、これはわかりやすく書いてありますので、そこを見ていただきたいんですけれども、海洋法条約の批准は一九九七年、十数年前に終わっています。領海法も改正されています。全部整ったんです。

 三十数年間、当分の間でしょうが、最近の当分の間では、暫定税率、三十四年間暫定暫定で来た、いいかげんにしろということで、道路特定財源は一般財源化されました。何も財政関係の方だけが変化をしているんじゃないんです。外交も変化しているんです。外交こそ柔軟に態度を変えていかなければいけないんじゃないかと私は思います。核兵器について、世界の目はもっともっと厳しくなっているんです。廃絶しようと。第一、北朝鮮に対してはこれだけ強い態度をとっているじゃないですか。

 ですから、この当分の間、三十年たっているんですけれども、これはいつまで続けるつもりなのか。私は変えていくべきだと思います。何かの機会、今すぐこの委員会の後やれとは言いませんよ。こんなときは大義名分が必要です。大義名分が必要ですけれども、私はもうやってもいいんじゃないか、こんな軟弱な態度、卑屈な態度をとる必要はないんじゃないかと思いますけれども、外務大臣、いかがでしょうか。

中曽根国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、昭和五十二年の領海法制定の当時はこの五つの特定海域を選定したわけでありますが、そのときは、外国船舶の通航状況、それから国際航行のための主要なルートにこの地域が当たっているかどうか、そういうものを検討した上でこれらの海峡がそういう形で判断されたところでございます。

 これは、国際交通上の重要性に着目をいたしまして、そして具体的には、外国と外国との間を結んで航行する、そういう際の重要なルート上にある、外国船舶の通航の頻度が比較的高い、そういうふうに考えられる地域としてこれらのところが選定されたわけでありまして、そういう事情は現在に至るまで変化が見られない、そういうふうに思っております。

 今申し上げましたように、この件をめぐります基本的状況に大きな変化はございませんので、我が国の特定海峡における領海の幅を三海里のまま維持することが適切である、そういう政府の判断、これは現時点でも変わりはないところでございます。

篠原委員 もっと頭をやわらかくしていただきたいと思います。時代は刻々変わっているんですよ。状況も変わっているんです。それにきちんとこたえていくべきだと私は思います。

 後で触れますけれども、非核三原則との関係で、通過とかそういうものは持ち込みに当たらないという密約があったと東京新聞が報じているのですけれども、これがあるんです。

 そうすると、どういうことかというと、よく考えてください。我々日本人は論理的な思考がなかなかできないので、私なんかもその一人なんですけれども、努力して一生懸命考えることにしているんです。通過というのは核兵器の持ち込みに当たらないというんだったら、領海にしておいたっていいんです。そういう密約があるんだ、そういう常識があるんだとしたら。そんなのだったら領海にしておいたって、何ら必要ないのに、こっちは領海にしておくと持ち込みになる、持ち込みになってしまうからよくないんだということを考えて、わざわざ領海の幅を小さくしている。

 排他的経済水域についての日本の態度と比べてみてください。非常に矛盾しているんです。太平洋の中の島、島とは言えないような島、それを基点として二百海里を設定しているといって、ほかの国からは文句を言われています。どこの国だって、自分の領海、排他的経済水域を広く広くしようとしています。領海、領土も同じです。それをみずから主権を放棄しているというのは、これは軟弱以外の何物でもないと私は思います。

 この点について、今度は新聞です、新聞をよく見ていただきたいんです。新聞報道について、これはなぜかしら日本の新聞もおかしいんですね。一つの新聞が書いたら、スクープみたいなのをしたら、次の日にほかの新聞も一斉に書くんですけれども、共同通信と関係ある地方紙しか書いてないんです。私の地元の信濃毎日新聞、六月一日、一面トップででかでかと書かれておりました。東京新聞よりずっと扱いが大きい。長野県人の方が感度がいいような気がしますけれども。

 それで、東京新聞の一枚の切り抜きを見ていただきたいんですが、核積載船の日本立ち寄りや通過について黙認する密約があったということで、歴代四人の次官が、A氏、B氏、C氏、D氏といて、語っている。

 外務大臣はこの件について聞いておられますでしょうか。これはどうしてかというと、政治家を、外務事務次官なり国際法局長、鶴岡局長の前々々々々々任ですか、そういった方々が判断されて、それを言う総理と言う外相をえり分けていた、そして、うその答弁を繰り返していた。この新聞のD氏のところなんか見ていただきたい。一番最後。「(国会で事実と違う答弁を続け)何か恥ずかしいなという思いがあった。」と。私は、正直だと思います。

 これについて、中曽根外務大臣は、今現在、外務省の事務次官、国際法局長からどのように聞いておられますでしょうか。

中曽根国務大臣 まず、委員が御指摘のこの件は、新聞記事に基づいて質問されておられるのじゃないかと思います。A氏、B氏、C氏、D氏という形で次官をあらわしておりますし、この記事そのもの、私は、この新聞はもちろん承知しておりますが、これらがどういう形で取材されて、どういう方なのか、そういうものは存じません。

 したがいまして、新聞記事をもとに、これの事実関係が本当に正しいのかどうかわからないままにこの委員会で今議論が行われているわけでありますが、私に対しましては、現次官からそのような密約があったというような話は当然ありませんし、従来から政府が申し上げておりますとおり、この密約は存在しないわけでありまして、これは歴代の総理大臣及び外務大臣がこのような密約の存在というものは明確に否定をしているわけで、委員が今お出しになられた資料にも書いてあるとおりでございます。

篠原委員 日本の二大通信社、それが全く根も葉もないことを書いたりすることはないんじゃないかと私は思います。C氏も正直な方ですね。伝えた総理と伝えない総理とあると。

 これは別に、僕は揚げ足をとるつもりはないんですけれども、ちょっと参考のために五ページを見てください。「関係する首相・外相・外務事務次官」、これを見ますと、総理は当然ですけれども、外務大臣というのもそうそうたるメンバーですね。ちょっと首をかしげる人も二、三人おられるかもしれませんけれども、それはおいておきまして、外務大臣になる方というのは後世に名を残す政治家の皆さんばかりです。しかし、私は、この人たちこそきちんとした核についての情報も持つべきだと思います。それは、オバマ大統領が、よく知りませんけれども、核発射ボタンとかアタッシュケースを持っておられるんだそうですよ。当然のことだと思います。

 きょう、我が党の菅直人代表代行は、イギリスの議院内閣制をちゃんと学んでくるというので、イギリスに行かれました。彼の言葉は、へんちくりんな言葉を使うので余り使いたくないんですが、官僚内閣制とか言っています、わけのわからない言葉ですけれども。これは今の、外務事務次官が言って、政治家には言わなかったと。総理や外務大臣に言わずに、外務事務次官や国際法局長だけが知っているというのは、こんなことはあってはいけないことだろうと私は思います。この情報公開の時代に、そんな秘密にしておくことがいいのかどうか。

 ですけれども、私は、今までの対応が間違っていたとはそんなに思わないんです。だって、それは考えたらわかりますよ。核を搭載していた潜水艦が日本に近づいてきた。日本には非核三原則で持ち込まずという原則がある。だからどこかの船に移して、日本に寄港する潜水艦からほかの潜水艦に移して、ほかの艦船に移して、それで寄港するなんて、そんな作業をしている間に不始末で変なことが起きたりしますよ。

 だから、日本国内のどこかの基地にずっと置いておくというのはよくない、しかし、二、三日停泊していくようなもの、そんなものは持ち込みに当たらないんだ、そういう考え方があっていいと僕は思います。これは方便でも何でもなくて、常識じゃないかと思います。私は、断言できると思います。知りませんよ、それは。知りませんけれども、日本に寄港する主要なアメリカの潜水艦あるいは艦船が核を持っていたって当然だと私は思います。それは、日本は、知ってか知らずか、知らないふりをしているしかなかった時代がずっと続いたんだと思います。

 持ち込みには、常識では、僕は調べましたが、通過や寄港や陸上への配備、貯蔵も意味すると書いてあるんです。しかし、私は、国会答弁を今回しつこく見てみました。そうしたら、やはり常識的な判断をされる政治家がいるんです。鈴木善幸さんが、農林水産大臣のときにこう答えておられるんです。よく聞いてください。持ち込みということと核積載船がただ通過するというのは違うのではないか、各政党の一致した意見になるか研究賜りたいと。鈴木善幸さんは、それはあんまりじゃないか、核を抑止してもらっているんだ、だからそのぐらいはいいんじゃないかということ。こういうふうに決めていけばそれでいいので、そういう考え方もあって、実はそうでしたと言ってもいい時期が来ているんじゃないかと僕は思います。

 なぜかというと、核兵器についても、学習効果が国民は進みました。唯一の被爆国、唯一の被爆国と言っているだけじゃなくて、北朝鮮の核開発問題もあるんです。世界の情勢も変化したんです。これも正確にはわかりません。しかし、かつてはいっぱい、そこらじゅうに核を積載した潜水艦や艦船がいたんですけれども、米ソの冷戦が終結したあたりから、軍事関係の本や何かによりますと、アメリカは本土にほとんどの核を持ち帰って、そこから撃てばいい、そこらじゅうに配備はしていないというふうになっているんです。そうすると、日本の周りにもなくなったんですよ。

 だから、このあたりで国民の前に真実を明らかにしていってもいいと思うんです。そういうターニングポイントに中曽根外務大臣はおられるんです。ですから、さっきの経緯の中に、一番下に空欄で、歴史に残る発言、答弁をしていただきたいと言っていたんです。いかがでしょうか。

中曽根国務大臣 今委員が鈴木元総理のお話もされましたけれども、この御発言は、事前協議の対象に領海の通過が含まれているという前提でお話しされているわけで、政府の答弁としてはこれは変わらないわけでございますが、事前協議の対象であります核持ち込みの中に核搭載艦の寄港、そして領海の通過、これが含まれているということにつきましては、これは合衆国軍隊の装備における重要な変更を事前協議の対象とするという、もう委員が一番、十分御承知の交換公文の規定、そしていわゆる藤山・マッカーサー口頭了解からして十分に明らかなところでございます。

 政府が従来から申し上げておりますように、御指摘のような密約は存在しないわけでありまして、この点につきましては、先ほども申し上げましたけれども、歴代の総理大臣及び外務大臣がこのような密約の存在を明確に否定しておりますし、私も否定をするところでございます。

篠原委員 私は、過去をあげつらうつもりはないんです。いろいろ仕方がなかったんでしょう。私にも触れられたくない過去はいっぱいありますし。そんな昔のことで、女房にはしょっちゅうそれで問い詰められていますけれども、ああいうのはやめてほしい。だから、私は、姿勢として、悪いことは悪いとすぐ謝って、悔い改めて、直すことにしています。だから朗らかに生きていられるんじゃないかと思います。外交政策もそうあってしかるべきだと私は思います。

 国家としての態様は違いますけれども、ニュージーランドは日本と同じように非核政策をずっととっておられる。一九八〇年代の前半、ロンギ首相のときに非核法ができて、アメリカの核積載船の寄港を禁止しました。それ以来、アメリカとニュージーランドの関係はぎすぎすしていましたけれども、十年後ぐらいからきちんとしてきた。そして、ニュージーランドは、CTBTについても、非核化について一番熱心に取り組んでいる。日本と似ているんですね。

 それは、あっちは小さな国だ、それから核とか、隣近所に北朝鮮のような国もない、安心していられるというのはあるかもしれませんけれども、私は、日本もニュージーランドと同じような態度をとっていいんじゃないかと思います。国民もそれを許すと思います。ニュージーランド国民が非核原則をちゃんと守れといって政府をバックアップしているんです。政権交代は、日本と違っていっぱい起きていますよ。何回も起きていますけれども、政府の方針、この非核というもの、これについては変わらないんです。私は、日本も見習うべきだと思います。

 それから、きょうは外務省の幹部の皆さん、そろって来ておられますけれども、皆さんもよく考えていただきたいと思います。大臣はそんな新聞報道で信用できないと言っておられますけれども、A氏、B氏、C氏、D氏、みんな、インタビューせずにそんなことを書くでしょうか。私は、さすが歴代次官は立派だと思います。悔い改めるべきときが来たと判断されて、こういう発言をされ始めたんだろうと思います。さすが事務次官にまでなられている方々だと思います。皆さん、みんなそういうふうになる可能性があられる方です。こういう先輩をぜひ見習っていただきたいと私は思います。

 この点についてはもうこれ以上申し上げません。同じような答弁になるので申し上げませんけれども、よくよく考えていただきたいと思います。

 次に、ちょっと時間があるようなので、もう一つだけやります。

 ニュージーランド方式というのは露骨過ぎますけれども、日本方式のアメリカにおんぶにだっこというのもおかしいと思います。ほかに、御存じかと思いますけれども、神戸方式というのがあるんです。おわかりになりますかね。プロの人は知っていますけれども。神戸市が自分で、核を持っていないですねといって、国の方針を地方自治体がかわりにやるというのがあるんです。それから、橋本大二郎さんが知事のとき、これはだめだったですけれども、橋本知事が、高知県が外務省に照会して、大丈夫なんでしょうねとげたを預けるのがあるんです。いろいろなやり方があるんですよ。そういう知恵を働かせて、時代に合った形にしていっていただきたいと私は思います。

 それから次、大事な問題です。この前、海賊処罰法のときは外務大臣にも座っていただきましたけれども、専ら金子海洋担当大臣と浜田防衛大臣にしか質問をしませんでした。私は、そこで、安全保障にかかわるのは、これはまたいつかきちんと議論をしたいと思いますけれども、資料を見ていただきたいんです。いかにまた非論理的なことをしているかということで、ちょっと疑問を提示したと思います。

 六ページを見ていただきたいんです。軍事安全保障、食料安全保障、運輸安全保障、これはいつか、この次の一般質疑の中でしたいと思いますけれども、一番右の運輸安全保障。大臣、覚えておられると思います、ちょっと直しましたけれども。日本の船を海賊から守るために行くんだけれども、その守ろうとしている船が、一番下、「自国一国では考えず何でも自由化」というところを見てください。日本船籍率が五%、日本人船員率が七%。食料自給率の四〇%よりずっと低い。守るべき日本船がなくなっている。日本がコントロールすればいいと言われますけれども、そうじゃないんです。いざ戦闘状態、危険な状態になったら、外国人船員はみんな逃げ出しますよ。何よりも大事な船舶航行技術が、三千九十二人では守れないんじゃないかと思います。

 今、日本の技術、日本の文化を守ろうというのでしつこくやっているものに捕鯨があります。私はこれはこだわり過ぎのような気がしますけれども、水産庁に三回勤務させていただいた身としては余り言いたくはありませんけれども、これが突出して、日本の文化を守ろう、日本の立場を守ろうとしている分野だと思います。領海に対する卑屈な態度と比べたら、これは突出して、日本、日本を前面に出している部分だと思います。

 そして、問題、海賊処罰法は、期限を限定せず、場所も限定せず、海賊行為があったらどこへでも出かけていくという勇ましい法律になっております。

 世界に名をはせているシーシェパード、環境団体、これが日本の調査捕鯨船を攻撃します。乗り込んだりします。化学品が入った瓶を投げ込んだりします。これは一体、海賊行為と言えないのか言えるのか。私は明らかな海賊行為だと思いますけれども、国土交通省から岡田政務官に来ていただいているので、この点についての見解をお聞かせいただきたいと思います。

岡田大臣政務官 先生御指摘のシーシェパード、この行為が非常に憎むべきものであるということについては先生と同感であります。

 合法的に、しかも非常につましく調査捕鯨をしている日本の捕鯨船に対して理不尽きわまる妨害を加えてきている、また環境保護の美名に隠れて寄附金を募ったりしている、このあたりは大変許しがたいことであると思いますけれども、いかに彼らが無法者であれ、我々は法治国家として、法にのっとって粛然と対応しなければならないと思っているところであります。

 それで、御指摘の妨害行為、これは、行為の具体的な内容が海賊対処法案の規定する海賊行為に該当する場合は、この法案に基づいて対処することができる、こういうふうに考えております。また、これが法案の二条で規定する海賊行為に該当しない場合であっても、関連の国内法、あるいはSUA条約というものがありまして、海洋航行の安全に対する不法行為の防止に関する条約、大変長い名前ですけれども、こういう条約に基づいて措置を講じる。一昨年の妨害行為の被疑者についても国際手配がなされているということであります。

 少し前置きが長くなりましたけれども、このシーシェパードの行為について、すべて海賊行為、こういうふうにみなすことはできない。これは、今までのところ、許しがたいことでありますけれども、捕鯨の妨害行為、今後、その態様によっては海賊対処法案の規定に基づいて対処、取り締まりすることもできる、このあたりがこの法案の趣旨であろうかと思っております。

篠原委員 今までの、過去のシーシェパードの振る舞いからして、どうなんですか。核や何かの敵地攻撃論じゃないですけれども、出航した時点で調査捕鯨船を目的にしているわけですから、邪魔するわけですから、これこそ先制攻撃を加えても別にどこの国からも文句は言われないという気がしますけれども。

 法律をよく読んでいただきたいんです。まさにこの行為に当たるんですよ。「船舶を航行させて、航行中の他の船舶に著しく接近し、若しくはつきまとい、又はその進行を妨げる行為」、海賊行為そのものです。私は、法案のときに、限定した方がいいんじゃないですか、場所も限定した方がいいんじゃないですか、期間も限定した方がいいと。

 今までの何かこういったのは、みんなそういうふうにしているんです。それを高飛車に出て、私からいうと図に乗って、すべてのところに出かけていく。世界の警察官じゃないんです。日本の調査捕鯨、日本の文化を守るため、日本の技術を守るためにやっている調査捕鯨です。これはこの対象に即刻していただかないとならないと思います。海賊行為というふうになるんだと私は思いますけれども、それはちゃんと派遣する用意はできておるんでしょう。

 これについてお伺いしまして、私の質問を終わらせていただきます。

岡田大臣政務官 つきまとい、あるいは進行を妨げる行為の目的が、実際に船を奪って運航支配をする、そういった目的になるときは、あるいはその可能性があるかもしれませんが、今までのところ、そうした態様の行為ではない、こういうふうに思うわけであります。

 また、策源地に赴いてこれを取り締まるという御指摘でありますけれども、こうしたことはこの法案においては想定をしておりません。

篠原委員 それは想定していないというのは問題です。私は、絶対こういうことがあり得るので、だから期間も場所も限定しろというのを、限定せずにやっているわけですから、その見返りとして、ぜひ、調査捕鯨船も守りに行っていただきたいということをお願いしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

河野委員長 次に、松原仁君。

松原委員 民主党の松原であります。

 まず冒頭、北方領土の問題をお伺いしたいわけでありますが、ロシアのメドベージェフ大統領が二十九日、クレムリンでの新任駐ロ大使の信任状奉呈式というんですか、ここで北方領土問題に言及したと。恐らく日本の大使に対するあいさつで言ったのかもしれません。北方四島のロシアの主権を疑問視する日本の試みは交渉継続を促すことにならないと批判したと。

 それは、麻生総理大臣が参議院予算委員会で、ロシアによる北方四島のこれは不法占拠である、こう言ったことに対して言ったということでありますが、このことは、そういう理解でよろしいでしょうか。

兼原政府参考人 お答えいたします。

 五月二十九日にモスクワで行われました河野駐ロ大使による信任状奉呈の際に、我が国との関係に関して、メドベージェフ大統領から概要以下の発言がございました。

 まず、ロシア側は、アジア太平洋地域における安定と安全の確保にとり重要な要因である日本との互恵的なパートナー関係を質的に新たにすることを志向している。それから、ロシア側は、今後とも、平和条約問題に関し、相互に受け入れ可能な解決を模索していくべく対話を行っていく。また、委員御指摘の北方領土問題の関連部分でございますけれども、メドベージェフ大統領からは、ロシア連邦の主権に疑問を抱かせようとする日本側の試みは平和条約交渉の継続に資するものではないというような発言がございました。

 この発言は、我が方の発言に対してロシア側が従来の立場で述べたものと理解をしております。

 この発言の後におきまして、我が方からは、北方領土問題に関する我が国の立場について、政府間交渉などのさまざまな場面においてロシア側に対して明確に主張してまいりました。

 いずれにいたしましても、北方四島の帰属の問題につきましては双方の立場は異なっておりますがゆえに、その最終的な解決に向けた交渉が日ロ政府間で行われているところでございますので、引き続き強い意思を持って交渉を進めてまいりたいと思います。

松原委員 疑問視する日本の試みはって、疑問だから、問題だから、北方四島の議論は一貫して戦後続いているわけであります。

 この報道によると、ロシア大統領府によると、電話協議で大統領は、日ロ関係のセンシティブな問題に関する公の発言を自制する必要性を指摘し、麻生総理は理解を示したと。ちょっと僕はわからないのは、日ロ関係のセンシティブな問題に関する公の発言を自制するったって、それは麻生さんも言っているとおり不法占拠であるというのはもう事実であって、終戦後、九月の三日、四日ぐらいまでかかって北方四島はロシアによって制圧をされたというこの事実はもうあるわけですから、これは明らかに不法占拠であります。

 この不法占拠に関して、センシティブな問題に関する公の発言を自制する必要性を首相にロシア大統領が指摘して、理解を表明したという、この報道はどういうことですか。

兼原政府参考人 委員御指摘のロシア大統領府のホームページは承知をしております。

 三十日の電話会談におきまして、首脳会談におきまして、日ロ関係についてのやりとりの中で、メドベージェフ大統領から御指摘のような趣旨の発言があったわけでございますけれども、これは、北方領土問題について双方が日ロ政府間でしっかりとした交渉を進めていくことが重要であるということを言ったということで、この点につきましては日ロ間で認識が一致をしているということでございます。

松原委員 いやいや、それは、だから、日ロ関係のセンシティブな問題に関する公の発言を自制する必要性を指摘し、日本側は理解を表明したと。こういうことがホームページに載っているわけですか。これは報道の記事ですけれども。

兼原政府参考人 先方のホームページに書いてございます記述でございますけれども、そのような趣旨の発言は先方からあったわけでございますが、これにつきまして、北方領土問題について双方が日ロ政府間でしっかりと交渉を進めていくことが大事だということで、日ロ間で一致をしたということでございます。

松原委員 僕は、インテリジェンスの問題というのを、この間も、後で質問しますが、ショートレンジミサイル五発というのに関して、極端なことを言えば、あったかなかったかわかりませんみたいな話があったわけですよね。なかなかそれは公式には発言できないみたいな。

 このインテリジェンスの発言というのが、これもそうなんですが、ロシアはこれを一方的に言っているわけですよ。ロシアの側はこう言っているのに対して日本側が、インテリジェンスの発言、インテリジェンスの問題があるといって、日本側から反対討論というのか、反対の発言を仮にしているならば、それを上げないでロシア側から一方的にこういうのがリークされると、何だか非常に日本国民としてはおかしなことになる。自制する必要性があるといって了解したって、何で日本側が了解する必要があるんだと。いや、恐らく了解していないんだと思うんだ。

 していないのであれば、これに対して日本側も、いや、了解はしていない、我々はこの問題に関してはきちっとやるというのをどこかで表明する必要があるんじゃないですか。一方的なリークだけで、日本側が黙ってしまったような印象自体が私は北方四島の交渉に差し支えると思うんですが、いかがですか。大臣どう思いますか。

中曽根国務大臣 この北方領土の問題につきましては、我が国の政府は、総理以下、また私も含めまして、また歴代の外交担当者も一貫して我が国の固有の領土であるということを発言しているわけでありまして、これについては全く変わらないわけであります。

 そして、このやりとりにつきましては、インテリジェンスというお言葉が今出ましたけれども、これはケース・バイ・ケース、また、相手との会談の内容、相手との合意、また、事のセンシティビティーとかそういうことによって、これを公にすべきものと、それはしたら外交関係上よくないとか、いろいろケースがあろうかと思います。

 ただ、今回のことにつきましては、今政府参考人から申し上げましたとおり、これは向こうの発言を認めるとかなんとかということではなく、やはり日ロ間でしっかりと政府間交渉をやっていきましょう、そういうことが重要であるということで認識が一致したということでありまして、我が国の主張というものは全く変わらないわけでございます。

松原委員 これを見ると、何か日本側がロシア側に押されて理解を示したような感じで受け取られる。

 問題は、前にプーチンさんが来たときに、メドベージェフ氏が、新しいアプローチでいくんだ、次に期待してくれ、請う御期待、こういう感じで会談が終わっているんですが、請う御期待のメドベージェフ大統領がこういうことを言っているんじゃ、これは何か全然、プーチン・麻生会談は、この間質疑いたしました、日本からギブ・アンド・テークでギブするものはあるけれども、テークがないまま、テークはどうなるんですか。

 メドベージェフは、日本のこういった北方四島に関して不法占拠したという発言に対して、日本の試みは交渉を促すことにならないとか、こんなことを言っていたら、じゃ、プーチン・麻生会談において次は進みますよというニュアンスを言った、初めからもうそんなことはありませんよということを言っているようなものじゃないですか。これはどういうふうな理解をしたらいいんですか、大臣。

中曽根国務大臣 それぞれの立場もありますし、主張もありまして、これは、麻生総理もそういうところから不法占拠されているということをお話しされたわけでありますし、メドベージェフもまたあちらの立場で発言したんだと思います。

 いずれにしましても、今後、サミットの機会などに会談が行われることになっておりますけれども、解決をしようという、そういう意思というものは両国とも変わらないわけでありまして、お互いに主張すべきことは今までも行ってまいりましたけれども、同時に解決をしようという気持ちを持って今後会談が行われるわけでありまして、そういう点はぜひまた御理解いただきたいと思います。

松原委員 解決しようとする意思がある人間がここまでの発言をしないと私は思うんだよね。不法占拠ですよ。

 ロシア側は、麻生さんの日本の委員会における発言に対してこういうふうに反応しているんですよ。我々が日本国内で議論をしている。日本の国内では、北方四島は不法占拠だ、当たり前ですよ、九月の二日、三日、四日までに来たんだから。それに対して、日本側が委員会で発言しているのを、遠くロシアのモスクワから、そんなことおまえら言っていたら交渉がおかしくなるぞと。

 つまり、相手から手を出してきたものに対して、そういう、恐縮ではありますがと言うかどうか別ですよ、メドベージェフさん、あんたの言っていることは遺憾だよと普通言うんじゃないですか。日本国内の委員会審議で議論になっている内容を、向こうはこういうふうに言ってきているんですよ。日本国内の委員会の議論に対して、外部から言えば、日本は何もそれに対して答えない、つまり、言い返さないというふうにばかにされちゃうんじゃないですか。何で遺憾であるぐらい言わないんですか。いや、麻生さんがメドベージェフさんとの間で議論があるというんだったら、今ここで外務大臣が遺憾だと言えばいいじゃないですか。お答えいただきたい。

中曽根国務大臣 先ほどから申し上げておりますとおり、日本政府の方針は全く変わらないわけでありまして、これは日ごろからいろいろな機会に表明しているところであります。

 これは、ロシアとの間に限りませんけれども、二国間において、このような問題がある、そういう場合に、お互いに自国の主張といいますか、そういうものを表明しているわけでありますけれども、それに対してそれぞれ、ああ言ったからこう言った、こう言ったからああやった、それも必要なものももちろんあります、重要な問題ですから。しかし、基本的には、解決に向けて今後の会談でやっていこうということで、メドベージェフ大統領のホームページによるものですか、発言というものも、これは次のところでしっかりやりましょう、そういう趣旨の発言だと私は理解しておりますし、また、総理もこれに理解を示すというふうなホームページになっておりますけれども、これもそこでしっかりやりましょう、そういうことだと思っております。

松原委員 メドベージェフの発言というのは、これは日本に対する非難ですよね、ある種。「批判した。」と書いてあるけれども、この新聞にも。ロシアの主権を疑問視する日本の試みは交渉継続を促すことにならないと述べて批判をしたと書いてありますよ。批判をしているんですよ。日本国内の委員会の質疑の総理大臣の発言に対して批判しているんですよ。

 いいですか。海外の第三国が見ていれば、日本国内における議論で、実際、それは九月の二、三、四で不法占拠ですよ、不法占拠だと言ったのに対して、遠くロシアのモスクワから、日本、ばかなことを言うな、こう言われたときに、それに対して言い返さない、いや、お互いにとにかく頑張りましょうという、こんなのは当たり前ですよ。それに対して、そんなこと言うなよ、おかしいじゃないかということをだれも言わないというのが問題。いいですよ、麻生さんが交渉をするから言わないというんだったら、中曽根大臣、あなたが言わなきゃだめなんですよ。

 それを言わないということは、ああ、これはロシアがやはり勢いを持ち、正義を持って、日本の北方四島というのは、ロシアから言われたら、それが不法占拠だという発言に対して言われたらば、言い返さないで、とにかく頑張ってお互い協議しましょうと、日本はその程度しか言わないんだなということになるんですよ。このことが問題なんですよ。

 何で遺憾だぐらい言わないんですか、外務大臣が。

中曽根国務大臣 これはもう再三申し上げておりますけれども、私も、委員会の場やいろいろな場で我が国の立場は述べておりますし……(松原委員「相手の発言に対して何で言わないのか」と呼ぶ)いや、ですから、相手の発言があったからということで、またそれに対して発言するというのはどうなのかと。

 だから、発言しなければならない場というのも当然ありますけれども、日ごろから、我が国の立場、主張というものははっきりともうこれは表明しているわけでございまして、そういうことから、今回、次に向けてやりましょうということでございます。

 私たちも、過去の経緯というものを踏まえてこの交渉にずっと当たってきているわけでありますけれども、両国の外交関係、どういうふうに解決のためにやっていくかという中でのやりとりでありますので、主張をすべきことはしっかりと主張しながらやってきているつもりでありますし、今後もやっていくつもりでございます。

 今回のことについて私が発言がないのはけしからぬとおっしゃっていますが、これはさっき申し上げましたように、従来からたびたび立場は表明しております。

松原委員 これは北朝鮮のところに行かないでここで終わっちゃうわけにもいかないんですが、あちらは批判しているんですよ、国内における委員会での議論に関して発言を。

 批判していることに関して何も言わないんですかと言っているんですよ。従来から我々は主張していると。主張していないじゃないですか。言われたときに、いや、これは不法占拠でしょうとそこまで明快に言わなくても、遺憾であるぐらい言ったらいいじゃないですか。何で言われっ放しなんですか。北方四島は日本の領土だと言っているんでしょう、自信を持って。それで、こういう発言があって、まあ一緒に頑張りましょうと。

 相手の発言に対してどう発言するかなんですよ。相手が言わなきゃいいですよ。メドベージェフさんが少なくとも、こんな、僕はわからないけれども、新しい駐ロ大使を集めたその式典で、日本に対してだけと私は聞いていますよ、これほど厳しい辛らつなことを言ったのは。失礼千万じゃないですか。日本の大使を、ほかの大使の前で赤っ恥かかせて、あんたらが言っている北方四島のことを言うなよ、麻生さんが言ったのはけしからぬと言っているんじゃないですか。批判しているんですよ。それに対して何で何も、遺憾だとも何とも言わないんですか。これではモスクワにいる日本大使がかわいそうじゃないですか。ちょっと答えてください。

中曽根国務大臣 個々のやりとりで、これを逐一明らかにすることがいいかどうかということもありますが、この問題については、やはり大事なことは、日ロ政府間でしっかりと交渉を進めていくということでありまして、公の場でやり合うと言うとちょっと言葉が行き過ぎかもしれませんが、論争を行うということはいかがなものかと。

 申し上げておりますように、我が国は、言われっ放しということじゃなくて、従来から我が国の主張はもうはっきりと言っているわけでありまして、そういうことで、今後の外交交渉、これをやはり我が国の国益を守れるようにやっていくということで、今後のことをメドベージェフとやりましょうということで、麻生総理もそうしましょうということになったんだということで、弱腰ということじゃないことは御理解いただきたい。

松原委員 公の席でやり合うのはいかがなものかと。相手がやってきているんですよ。

 では、相手の態度はいかがなものかと思うと今言ってくださいよ。公の席でやり合うのはいかがなことかと言うんだったら、相手は公の席で、駐ロ大使の目の前で、ほかの大使がいるところで言ったんだから、公のところでこういうことを言うのはいかがなものかと言ってくださいよ。

中曽根国務大臣 公のところでそれぞれが主張するということは、これはもう当然の、または権利でもありますし、それは必要なところもあるわけであります。しかし、これが論争になってしまうということが本当に解決に向けていいのかどうか、そういう点はやはり配慮しなければなりません。

松原委員 論争になってしまうのを配慮するって、相手が論争をするのはしようがない、こちらからは論争しない、こういうことですか。

中曽根国務大臣 我々も、今回ということではなくても、日ごろから、不法占拠であるとか固有の領土であるとか、きちっとしかるべきところで表明しているわけでありまして、それに対して先方が何も言わなかったということもあります。

 再三申し上げておりますけれども、今後もやはり交渉をしっかりとやっていくということが一番重要でありまして、今回のが、それは、委員がおっしゃるような指摘、これはどうでもいいということでは決してありませんけれども、公の場で、いわゆる論争ですね、やり合うというよりか、になってしまうということはどうなんだろうということもあるわけでございます。

松原委員 日本が、公の席で不法占拠であるとここ一、二年で、国内の議論じゃないですよ。ロシアは日本に言ってきたんですよ、これは。そして、大統領府は麻生さんに電話でこういうふうに言ったというんですよ。いいですか。日本国内での公じゃなくて、日本に向かって、日本の大使に対して言ったんですよ。日本が、例えばロシアの大使に対して不法占拠だと言った事実があるんですか、この数年間。教えてください。

 相手は、大統領が日本大使に対して言っているんですよ。おかしいじゃないですか。

兼原政府参考人 一九五五年以来の交渉でございまして、特に、冷戦が終わりましてから相当密度の濃い交渉をしてまいりました。一八五五年以来の歴史的な事実や、あるいは法的な論点をともに整理した文書をつくって出したこともございます。お互いの立場というものは、日ロ間で十分に理解し合っているものだろうと思っております。

 それから、河野大使における信任状の奉呈の際のメドベージェフ大統領の発言でございますけれども、委員御指摘のところに加えまして、先ほど申しましたけれども、我々は、アジア太平洋地域における安定と安全の確保にとって重要な要因である日本との互恵的パートナーシップと、それから日ロ間の建設的な協力を質的に新たにすることを志向している、我々は、今後とも平和条約問題に関して相互に受け入れ可能な解決を模索していく対話を行っていくということを一緒に言っているわけでございます。

松原委員 余計なことを答えなくていいんですよ。私は、相手が批判したことに対して言っているんですよ。そんな発想だからだめなんじゃないか。相手が批判したことに対して何で、日本の大使に対して言ったんですよ、これは。失礼千万じゃないですか。こういうところ一つ一つで反撃をしないということが、北方四島が戻ってこない最大の原因ですよ。

 大統領が言っているんですよ。もう何回答弁を聞いても本当にどうしようもないから、これはこれ以上この部分は続けないけれども、私は、こんな失礼千万なことを言われて、しかも大統領府から電話があって、公に国の大統領が日本の大使に言って、我々は恐らく、不法占拠したなんということを委員会では議論しても、ロシアの大使館の大使に、この一年、二年の間に、不法占拠だから返せよ、そこまで明快に言った事実がこういった表面に出てきている内容であるのか。僕はないと思う。あるんだったら後で教えてほしい。余計なことは言わなくていいですよ。

 私は、こういった体制、体質が、交渉において、この間三・五島の話もしましたよ、厳しさがないんですよ、厳しさが、と思います。

 さて、北朝鮮の問題に入りますが、北朝鮮においては、これは日本の報道でもありますが、韓国側は、かなり古い話で、第三男、これが金正日の後継者になっていることを把握していたということでありますが、日本政府はこれはいつごろから把握をしていたのか、それとも今把握をしていないのか、教えてください。

伊藤副大臣 第三男、正雲氏を指名したとされる報道が出ておりますけれども、政府としては、北朝鮮の内部情報を含め、さまざまな情報に接しております。ただ、政府が得ている情報の詳細について具体的に述べることは、政府の情報入手経路等が明らかになって、今後の情報収集活動に支障が及ぶおそれがあることから、差し控えさせていただきたいと思います。

 政府としては、引き続き、北朝鮮情勢について強い関心を持って、各種の情報収集、分析を行っていく考えでございます。

 それから、今の御質問の一部で、韓国との関係でございますけれども、これについても韓国として正式に、日本との関係において確認したという事実はないと思います。

河野委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

河野委員長 速記を起こしてください。

 伊藤副大臣。

伊藤副大臣 我が方から韓国側に対して事実関係を確認しましたが、昨夜、御指摘の報道について確認されていることは何もないという説明を韓国側から受けております。

 また、韓国側からどのような情報提供を受けたかについては、韓国側との関係もあり、お答えを差し控えさせていただきます。

松原委員 これは、韓国外交通商相が三日、韓国紙、毎日経済新聞とのインタビューで、北朝鮮の金正日総書記の後継者に三男の正雲氏が内定した、古い話だ、もう日本やアメリカも事実関係を把握していると語り、日米両政府もそのような情報があることを確認済みだという認識を示したと。これは新聞に載っているんですよ。共同通信か何かですよ、記事の配信元は。

 これに関してはどうなんですか。それを韓国は否定したんですか。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 そのような報道を私どもももちろん承知しておりまして、金正雲氏が後継者になるのかどうかということについては、多大の関心を持ってフォローしているところでございます。

 それから、そのような報道の中で韓国政府関係者がそのように述べたという点につきましては、今副大臣から御答弁申し上げましたとおり、私どもも非常に関心を持ちまして、昨日の時点で韓国政府に照会をしたところでございます。その答えとして、韓国政府としては、金正雲氏が後継者となるかどうかについて確認されていることは何もないという回答を受けているところでございます。

松原委員 そうすると、この韓国の外交通商相が新聞社とのインタビューで言ったのは、これはまあ韓国の中の話だけれども、それに対して日本が照会したら、韓国は、そんな事実は確認していない、こう言ったということですね。

 では、この外交通商相の柳さんという方の発言は根も葉もないと、こういうことですか。

石川政府参考人 私ども、その報道の中身について政府としてコメントをする立場にはないわけでございますが、繰り返しになりますが、非常に私ども関心を持って韓国政府に照会したところ、先ほど御答弁申し上げたような回答があったということでございます。

松原委員 前回の質問でもこのインテリジェンスの問題でなかなかお答えいただけなかった核実験後の五発から六発、ショートレンジミサイル、このことについて、その後どういう情報を確認したのか、どこまでこの委員会審議でしゃべれるのか、まず防衛省から答えていただきたい。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 五月二十五日の参議院の予算委員会でも同じような御質問があったかと思いますけれども、防衛省といたしましても、北朝鮮の核であれミサイルであれ、さまざまな軍事活動については非常に先生方や国民が高い関心を有しているということは十分認識をしております。

 その上で、防衛省として、あるいは政府として収集した分析情報を対外的に説明する場合には、一つは、発生した事象が我が国の安全保障にとって直接的にどのような重大性を持っているのか、あるいは、国民に対する説明責任というものをどういう形で果たしていくのがいいのか、それから、情報をいろいろなソースでとっておりますので、そういった情報能力をいかに保全するか、そしてまた、情報面での協力関係にある国との信頼関係をどういうふうに保つかというようなこと、それから、情報をどういう場で説明するかというようなことがございます。

 この情報の場というのは、この委員会というのはインターネットで世界じゅうが見ておりますので、そういう意味では完全に公開されている場だというふうに思いますけれども、そういう中ですべてつまびらかにすることはできないことを理解していただきたいと思いますけれども、現時点でその問題についてこういった場で御説明をすることは差し控えさせていただきたい。

 ただ、いずれにいたしましても、適切な形で御説明をさせていただくということは重要ではないかというふうに考えております。

松原委員 同じ質問、外務省、お願いします。

伊藤副大臣 北朝鮮のミサイル関連動向を含めて、北朝鮮情勢について平素よりさまざまな情報に接しておりますけれども、個々の具体的情報について明らかにすることにより、我が国の情報収集能力を明らかにすることにもつながりますし、そしてまた北朝鮮を利することになる可能性も排除できないわけであります。また、相手国との関係で、今後の情報共有に支障を起こすおそれもあることから、差し控えさせていただきたいと思います。

松原委員 先ほどの高見澤さんの話、日本の国民の生命財産に極めて緊迫したものを与える場合は別だと。前の、衛星と称した飛翔体というかミサイルでしょうね、これは言う。今回は言わない。

 しかし、高見澤さん、これだけマスメディアが報道しているんですよ、黒文字のゴシックで。わかりますか。関心がないことを報道しますか。なぜ日本国民が関心を持つんですか。それが日本の脅威になるからじゃないですか。それが日本の脅威と直結するからですよ。政府はどういうことであるかというのを説明する責任があると私は思いますよ。

 マスコミが、報道によりますとといって、朝日が、毎日が、産経が、読売が説明する。しかし、政府は一貫してインテリジェンスの問題がありますと黙っている。これは僕はちょっと違うんじゃないかと思うんだよね。

 それは、隠すべきものもあっていいでしょう。しかし、五発なのか六発なのか、撃たれたのか撃ったのか、何にも言えないって、それじゃ一体国民は何をもってどうすればいいんだ。一切教えない、ぎりぎりまで教えない、危機が来た瞬間教えましょう、それまで北朝鮮がミサイル技術をどんどん開発して小型化して、教えません、そんなばかな情報管理があるんですか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 二〇〇六年の核実験に先立ちまして、北朝鮮は、日本時間でいえば二〇〇六年の七月五日、アメリカ時間で七月四日に、ノドンとかスカッドと思われるミサイルを連続的に発射したというような事実がございました。

 その場合は、いわば、今までノドンですとかスカッドというのが存在していても、これだけ同時にいろいろな形で撃つ能力を持ったということで、私どもとしては、これは非常に重要な問題だというふうに考えまして、そういった情報を整理して明らかにしているところでございますし、白書においても、短射程から長射程まで、いろいろな北朝鮮のミサイルの活動でありますとか核関連の活動については、そういった形で整理をして御報告させていただいておりますので、引き続きそういった点については努力をしていきたいというふうに考えております。

松原委員 そうすると、この委員会での議論は、ショートレンジミサイルを撃った事実もわからない、北朝鮮が核実験をやったということもわからない、中曽根大臣、そういうことですか。ちょっと大臣が一番その辺、大臣として言ってください。

中曽根国務大臣 まず、今防衛省の方から御答弁いたしましたけれども、我々としては、インテリジェンス、インテリジェンスといつも言っているわけじゃありません。今申し上げましたように、二〇〇六年の場合には、これはやはり国民の安全に直接影響を与えるおそれがある、そういう観点から官房長官が発表したわけでありまして、そういう意味では、これはそのときそのときの状況によるものだと思います。

 それから、報道されているという内容でありましても、あるいは外国において政府関係者等がそのような発言をされたというような報道があった場合でも、これは二国間の外交の関係あるいは情報交換等の日ごろからの関係等であって、政府としてそのような報道があっても言えないということがあるということは委員も御理解いただけると思います。

 それから、今核実験のお話がありましたけれども、これにつきましては、政府としては、五月二十五日に北朝鮮が朝鮮中央通信を通じて、地下核実験を実施し成功させた、そういう旨を公表したということ、それから気象庁が通常の波形とは異なる北朝鮮の核実験による可能性のある地震波を探知した、こういうことから、北朝鮮が同日に核実験を行ったもの、そういうふうに考えているところでございます。

松原委員 核は北朝鮮が自分で言っているからそれは認めた、こういうことでしょうが、そうすると、ショートレンジミサイル五発、北朝鮮が発射した、これは日本の安全保障上全然危険ではない、危なくない、無関係だ、こういうことでいいんですね、大臣。五発発射したことは、日本の国民の生命財産とは全く無関係の、日本にとっては全く無関係なことだ、影響がない、したがって、このことについては一切報道しない、一切言わないと言ってください、それだったら。大問題ですよ。言ってください。

中曽根国務大臣 北朝鮮のそのようなミサイル関連の動向を含めまして、北朝鮮の情勢については日ごろからさまざまな情報に接しておりますけれども、今回の件につきましても、やはり先ほどから再三御答弁申し上げておりますように、我が国の情報収集能力というものを相手に明らかにするということになるわけでありまして、そういうことから今回は差し控えさせていただいているわけでありまして、ただ、ミサイルの発射というものが、全く関係がないとか全く危険性がないとか、そういうことからこのような対応をとっているということではございません。

松原委員 何かよくわからなくなってきたな。

 こういうものが直接国民の生命財産に影響を及ぼす事象であれば言いますと言っているんだよ。言わないんですよ。だから、そういった国民の生命財産に影響を与えないと大臣は認識しているわけですよ、論理的に。与えるんだったら、少なくとも厳密なことを言わなくてもある程度までマスコミで言っているぐらいのことを言えばいいじゃないですか、何キロ飛んだとか何基撃ったとか。それすら議論されないというのは、マスコミの言うことを信用しなさいと暗に言っているような話というか、ちょっとインテリジェンスの問題、今度また一回やらなきゃいかぬけど。

 さっきのメドベージェフの発言に対してもそうですよ。どうも言うべきことや言わなければいけないことを言わないということが、日本の言ってみれば自虐的な外交の基本にあるような気が私はしてならない、大変に残念であります。今の中曽根外務大臣の先ほどのメドベージェフの発言に対する反論を含めても、また、私は一人の日本国民としても極めて残念であるということを申し上げておきたい。

 そして、質問時間がもうほとんどなくなってしまったので次に参りますが、アメリカが大きな代表団を送ってまいりました。この意図に関して、もう時間がないので簡潔に外務省の分析を教えていただきたい。

羽田政府参考人 今週一日から、スタインバーグ国務副長官を初め、レビー財務次官、ボズワース北朝鮮政策担当代表ほかから構成された代表団と薮中次官を初めとする我が方政府の関係者が、北朝鮮に関する日米ハイレベル協議を実施いたしました。麻生総理、中曽根大臣も表敬を受け、意見交換を行いました。

 これらの協議では、北朝鮮の状況について全般的な角度から意見交換をしたということでございます。さらに、現状分析を行い、今後とも日米で緊密に協力していくことを確認いたしました。

 具体的な内容に関しましては、まずは北朝鮮による核保有は我が国に対する安全保障上の脅威であると同時に、地域及び国際社会の平和と安定を著しく害するものであり断じて容認できない、また完全な非核化が必要であるという点を確認いたしました。さらに、国連安保理での対応について、国際社会は一致して効果的な対応がとれるよう日米で協力していくこと、さらにさまざまな面で日米あるいは日米韓で協力していくことを確認いたしました。加えて、米国の日本に対する防衛のコミットメントは揺るぎのないものであるという点を確認しました。最後に、我々としては拉致問題が非常に重要であることを重ねて伝達し、米側から改めて理解が示されたところでございます。

松原委員 このメンバーの表をもらったんですが、スタインバーグ、ズムワルト、ボズワース、レビー、ベーダー、ウィンフェルド、グレッグソン、これ以外のメンバーというのはいたんですか、いないんですか、教えてください。時間がないので簡潔に。

羽田政府参考人 担当官はおりますけれども、主要なメンバーは以上のとおりでございます。

松原委員 時間がないので、最後にもう一問だけ質問して終わりますが……

河野委員長 松原仁君、質疑の時間は終了しております。

松原委員 アメリカでも上院議員を中心にしてテロ支援国家再指定を求める動きが出ておりますが、日本の政府としてこの動きに対して何か連動する思いがあるのか、方向があるのか、これを最後に質問いたします。

中曽根国務大臣 テロ支援国家の再指定の問題につきましては、これはアメリカの国内法の問題でありまして、これをどうするかということにつきましてはアメリカの判断ということになるわけでございます。

松原委員 終わりますが、日本もテロ支援国家再指定をしろと言っているんだから、何らかの連動をするべきだということを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

河野委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 今、地球温暖化対策をめぐって、六月の一日から十二日までドイツのボンで国連の作業部会が開かれております。この会議は、二〇一三年以降の温暖化対策の国際協定を年内に合意するための交渉の促進を目指すものであります。その中で日本が注目をされております。

 そこで、まず外務大臣、本日朝、この問題をめぐって日本の中期目標ということで政府の関係閣僚会議が開かれたと承知しておりますが、二〇二〇年までの温室効果ガス削減の中期目標というのはこの会議で確認、決めたんでしょうか。

中曽根国務大臣 けさ、閣議の前に、地球温暖化問題の国際戦略に関しまして、今委員もお話しされましたけれども、関係閣僚会合を行いました。これは総理にも御出席をいただきまして、環境大臣、官房長官、それから経済産業大臣、私、そして財務大臣でございましたけれども、具体的なやりとりにつきましてはコメントを差し控えさせていただきますけれども、地球温暖化の中期目標について意見交換を行いました。

 この場で我が国の中期目標等についての決定がなされた、そういうことはございません。引き続いて必要に応じて会合を行うということになっております。

笠井委員 日本はいまだに持っていない、もう時間がなくなってきているわけでありまして、これがおくれていることは重大だと思います。

 先進国として義務を果たすために、政府が六〇から八〇%減と決めたような長期削減目標とともに、それを今日の世代が責任を持って確実に達成するための中期の削減目標というのが重要であります。

 IPCC、国連の気候変動に関する政府間パネル第四次評価報告書は、二〇二〇年までに先進国に求められている温室効果ガスの削減幅を二五%から四〇%と示しております。世界を見ますと、日本を顕著な例外として、ほとんどすべての先進国、工業国は既に、二〇二〇年までの中期目標を公表して交渉を進めております。

 私自身、昨年三月に党の調査団長として訪れた欧州では、日本に対する期待とともに、一体いつ日本は中期目標を決めるのかと、もう既に一年前から、いら立ちにも似た話を政府関係者そしてEUの当事者からもこもごも聞いてきました。

 中曽根大臣は、「地球環境問題は喫緊の国際的な課題であり、地球環境の保全は未来に対する我が国の責任」と国会の本会議でも述べられているわけですが、国際交渉を進める立場の大臣として、この間、閣僚会議の中でどういう主張をされたのか。そして、きょう、どういう主張をされたのか。そして、引き続き協議するというんですが、一体いつ結論を出すというめどなんでしょうか。その点を伺いたいと思いますが。

中曽根国務大臣 まず、温室効果ガスの削減に関します我が国の中期目標は、基本的な考え方でありますけれども、地球全体の温暖化対策に貢献するということが一つ、それから、米国や中国などすべての主要排出国が参加をする、そういう公平で実効的な国際的な枠組みづくりに貢献をするということ、そしてさらに、裏打ちのない宣言ではなくて、経済面でも実行可能なものである必要がある、これが基本的な中期目標の考え方であります。

 政府といたしましては、このような考え方を踏まえまして、総理のもとに、委員御承知と思いますが、中期目標検討委員会を設置いたしまして、ずっとさまざまな観点から議論、分析を行ってきたところでございます。そして、六つの選択肢の提示を受けたわけでございます。さらに、この中期目標が国の経済活動や国民生活全般に大きな影響を与える、そういうものでございますので、パブリックコメントとかあるいは世論調査など、こういうものを実施して広く国民からの意見を求めてきたところでございます。

 このようなきちんとしたプロセスを経た上で、現在、私を含む関係閣僚の間で、けさの会合もそうですが、政府としての決定をいよいよ議論するという段階になっておりまして、今月半ばまでには総理から中期目標が発表されるということになります。

 私ども外務省といたしましては、その発表を受けまして、国際的に日本の考え方をしっかりと説明しながら交渉に臨んでいきたい、そういうふうに思っています。

笠井委員 ボンの会議は十二日までですが、半ばというのは、それを念頭に置いて、それに間に合うようにということで今やっているということでしょうか。

中曽根国務大臣 もう今月も半ばが近づいてまいりましたし、きょうの会議で、きょうはそういうような結論が出ていないわけで、総理が今後またお考えになられ、必要なら次の会合を経て総理から発表されるということですから、近々そのようなことになると思います。

笠井委員 今あれこれ立場を述べられたわけですが、現在に至るまで中期目標さえ明らかにしなかったことに、日本政府のこの問題に対する姿勢がはっきりとあらわれている。だから、COP15の議長国のデンマークからも、現在の日本政府は温暖化交渉に乗り気でなくて、その結果、国際交渉で日本は目に見える存在となっていないと言われている始末であります。各国のNGO等も、日本は高い数値目標を早く公表をという要求を出している。ここは本当に重く受けとめるべきだと思います。

 それでは伺いますが、大臣、中期目標検討委員会とおっしゃいましたが、そこで六つの選択肢と言われました。そのうち、日本経団連の御手洗会長は一九九〇年比で四%増が望ましいと主張している。斉藤環境大臣は、そのような目標を出したら世界の笑い物になってしまう、日本が後ろ向きな目標を出すことは世界における日本の立場をなくすものと反論しておりますけれども、中曽根大臣も当然、環境大臣と同じ認識でいらっしゃるんでしょうね。いかがですか。

中曽根国務大臣 近く我が国の政府として発表いたします中期目標については、海外から今お話がありましたような高い関心も寄せられているところでございますし、私自身もこれまで多くの国から期待感の表明も受けているところでございます。

 先ほど申し上げましたように、この中期目標は、まず経済的に実行可能なものであること、それから、各国の過去の努力とかあるいは産業構造の違い、そして削減コストなども考慮をして国際的公平性が確保されたものである必要がある、そういうふうに考えております。

 そして同時に、我が国が引き続いて国際交渉においてリーダーシップを発揮していくためには、やはり、目標が地球全体の温暖化対策に貢献するものであるとともに、日本の姿勢が後ろ向き、そういう印象を与えることのないものである必要がある、そういうふうに思っております。

 このようなことを踏まえまして、近く発表されます我が国の中期目標を受けまして、先ほど申し上げましたように、国際交渉の場で積極的に議論をリードしていきたいと思っております。

笠井委員 私の質問に答えてもらいたいんです。四%増という案に対しては斉藤大臣が厳しく批判されていますが、外務大臣としては同じような厳しい目をもって見られているのかどうか、そこの点を伺っているんです。端的に伺いたいんです。

中曽根国務大臣 具体的な数値等については現在申し上げられませんけれども、今私が申し上げましたような姿勢で外務省としては取り組んでいるところでございます。

笠井委員 四%ふえるということで国際交渉をやって、世界からどう見られるかということなんですよ。国際的に言えば、日本が間違ったメッセージをやはり出しているというか、そういう存在として見られるということでありまして、四%増という案は現在の日本の対策のままでいいというものであります。デンマークの気候・エネルギー大臣も、二十一世紀の世界の状況を考えると決してそういう議論は成り立つものではないと、経団連の姿勢を批判しております。

 大体、そういう数字が検討案として出てくること自体が世界の流れに逆行するのでありまして、そのほかにも一%増から五%減という、経済団体が推しているものもありますが、これも同様です。日本で温暖化対策がおくれているのは、温室効果ガスを大量に排出している産業界が激しく抵抗している、そこにきちっと政府が物を言えないということのあらわれじゃないか、こういう批判が出るのは当然だと思います。

 環境省に伺いますが、五月二十九日に、国立環境研究所、茨城大学など国内十四の研究機関が報告書を出しました。世界が温暖化対策をとらなかった場合に、今世紀末に日本ではどういう被害が起こり得ると指摘をしておりますでしょうか。相当大部ですが、端的にどういう被害ということでお答えいただきたいと思います。

小林政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいま先生御指摘の研究は、温暖化影響総合予測プロジェクトというものでございまして、この第二回目の報告書として、最近、五月二十九日に公表がございました。

 これは将来における地球温暖化の国内影響の可能性について扱ったものでございまして、その中で、我が国においても、今後、自然災害、森林、農業、健康など国民生活に関係あります広範な分野で一層大きな温暖化の影響が予想されるということ、また、洪水はんらん、あるいは海面上昇など幾つかの分野につきましては、温暖化の進行に伴う被害額の試算も行っております。

 例えば洪水はんらんにつきましては、今世紀末、最大ではんらん面積が千二百平方キロメートルに増加をし、それによりまして、年間ベースで八兆七千億の被害の増加があるというような指摘が各分野についてあるところでございます。

笠井委員 私も読ませていただきましたが、今、一部紹介ありました。少なくとも、私も計算してみますと、年間十七兆以上の被害、しかも極めて高い熱ストレス死亡リスクがあるということも触れられております。

 最近の、国連機関やIPCC、各国の研究機関などの関係者が参加して行っている研究でも、地球的規模で、排出責任のない貧しい国々を中心に毎年三十万人以上が死亡して、三億二千五百万人が深刻な被害を受けると見積もっております。

 そこで大臣に伺いたいんですが、基本的な問題ですが、まさに、この地球温暖化を抑止するということは、日本はもちろんですが、全人類と地球の存亡がかかった待ったなしの課題である、そのために何としてもこの温室効果ガスを減らさなければいけない、その点は間違いなくそうですね。いかがですか。

中曽根国務大臣 温暖化問題の解決というのは、これは今生きております我々の大きな責任でありまして、地球温暖化を防ぐためには、今委員おっしゃいましたように、温室効果ガスの排出削減、これが必要でございます。

 世界全体で排出削減を実現するには国際社会が一致団結してやらなければならないわけでありまして、先ほど調査の報告もありましたけれども、地球全体の温暖化対策に貢献する、これをしっかりと見据えた上で、我が国としても、先ほど申し上げました後ろ向きの印象を与えることのないような、そういうものが必要である、そういうふうに私は思っているところでございます。

笠井委員 そうしますと、今回の国際交渉に当たって、温室効果ガスを削減するという課題は、とにかくやれるところまでやればいいということなのか、あるいはやり切れなければ大変なことになるということなのか、その辺はどうでしょうか。

中曽根国務大臣 国際交渉でありますから、どういうような結論になるかわかりませんが、今申し上げましたように、各国の状況もありますけれども、やはり我々の今の責任であるということをしっかりと踏まえて、これは途上国、先進国等によって事情も違います、技術力の違いもあります、そういうことも踏まえた上で、トータルとして最大限の効果が上がるような、そういう目標というもの、結論を導く必要があろうと思っております。

笠井委員 最大限でやり切るということでやらなかったら大変なことになるという課題だと思うんですよ。

 昨年、私、欧州調査をやりながら非常に痛感したんですが、EUや欧州各国による取り組みというのが、法的拘束力のあるもの、そして野心的目標を持って真剣に取り組みをやっているというふうに感じました。そして、そのよりどころの一つが、「気候変動の経済学」と題する、スターン・レビューという、イギリス政府の求めで経済学者の英知を結集して二〇〇六年にまとめられた報告書でありまして、これはイギリスだけじゃなくて、ヨーロッパ各国へ行きますと、そこでも教科書のように扱われている。

 この中で、気候変動というのは、いまだかつて見られなかった非常に深刻で広範囲に及ぶ市場の失敗だというふうに明言して、環境破壊を顧みずに利潤追求第一主義に走ってきた巨大資本の活動を反省しております。そして、放置すれば経済損失は毎年GDPの五%にも上るものになって、混乱は二度の世界大戦や世界恐慌に匹敵する、こう述べる一方で、きちんと取り組めば、長期的に見ると経済成長をも促進し、早期に効果的な対策を実施するほど対策コストを低く抑えることができると明快に述べております。

 私は、日本もそういう立場に立って、足並みそろえて、ふさわしい目標を持って交渉に臨むべきじゃないかと思うんですが、大臣、この点どうお感じになりますでしょうか。

中曽根国務大臣 この原因というのは、今委員が幾つかおっしゃいましたけれども、これは特定の産業とか特定の企業とか特定の国だけのものでございません。やはり世界人類がともに責任を負わなければならないものであると思います。

 そういうことから、今回のこの交渉におきましては、先ほど申し上げましたけれども、やはり実行可能なものでなければなりませんし、そして産業構造の違いとかあるいは削減のコスト、こういうものも考慮しなければなりません。さらに、公平性というものも大事ですが。また、目標を実行可能な中で最大限のものにすることによって、今度は技術革新、今おっしゃったような経済的発展というものもあろうかと思います。そういうような、総合的に考えて今回の中期目標というものは策定されるべき、私はそういうふうに思っています。

笠井委員 全体としてという話でございましたけれども、それぞれの国が、共通だけれども差異ある責任を果たさなきゃいけないというテーマなんですよ。そうしないと全体いかないわけですから。

 しかも、実行可能性と言われますが、一方で日本は二〇五〇年までに六〇から八〇減らすと言っていて、可能性ということばかり言っていて、それじゃ一体どこまで達成するのかという問題が出てまいります。

 同じ資本主義でも、欧州では、長期的視野、利益を追求する立場で、資本主義のぎりぎりまで野心的な取り組みをやっている、挑戦している。目先の利益を追求するだけで、資本主義でのルールを持たないということじゃ日本はだめだと私は思うわけであります。いずれにしても、時間が限られている。

 ところが、今その中で、ボンで、十二月のCOP15に向けて、最終文書の原案に向かって各国がこぞって真剣に合意を目指しているわけですが、そういうときに、この間の日本政府の主張といえば、負担の公平、実行可能性とか言いながら、セクター別アプローチとか、基準年を九〇年じゃなくて別の年に変更するという議論をしてみたり、今度は限界削減費用という日本に都合のいいことを言い出すなど、国際的な合意に水を差す議論ばかり次々と持ち出してきている、こういう印象を世界が持っている。私もそう思っているんですが、一体日本はこの交渉をまとめるつもりがあるんでしょうか。大臣、いかがですか。

中曽根国務大臣 気候変動問題の解決は、もう言うまでもありません、先ほどからお話がありますように、世界全体としての排出削減を実現すべく、特に米国や中国そしてインドを含むすべての主要経済国が責任ある形で参加をする、公平でかつ実効性のある、そういう国際的な枠組みづくりが不可欠でございます。そのためには、米国を含めました先進国全体が率先して削減を約束すべきであるとともに、特に排出量の大きい主要途上国も削減のために行動をとる義務を負う必要がある、そういうふうに考えています。

 ドイツのボンで現在行われております交渉に向けまして、御案内のとおり、政府は四月の二十四日、次期枠組みにおいて我が国の考えが適切に反映されることを目指しまして、他国に先駆けて議定書の草案を提出しております。この議定書草案では、ただいま申し上げましたような点が盛り込まれているとともに、二〇五〇年までに世界全体の排出量を少なくとも五〇%削減するという長期目標を掲げているところでございます。

 我が国といたしましては、ことし末の国連気候変動枠組み条約第十五回締約国会議、いわゆるCOP15におきましてそのような次期枠組みに合意をできるように、今後ともあらゆる機会を通じて努力をしていく、そういう考えでございます。

笠井委員 結局、問題を広げて、世界全体がどうするかということはもちろんそれは大事な問題です。そういうときに日本がどういう責任を果たすか、日本としてどうするか、そういうときに中期目標もないわけです。世界全体が、国際社会が目指して努力している方向と、私ははっきり言って根本的なスタンスが違うと思います。

 京都議定書をチャラにするような議論を日本の中で財界中心になってやっている、そして議長国としてリーダーシップなんて言うのは恥ずかしい限りでありまして、私は、財界の危機感ばかりに耳を傾けずに、もっと世界と地球、日本の存続の危機にこそ目を向けるべきだと。一円でも今は多くもうけたいという目先のコスト削減にひた走っているのが財界でありますが、それに対して、今温暖化をとめなければ、そして今やった方が経済界でも長期的利益になるという立場で正面から言えるし、言わなければいけないのが政治の役割であります。この問題こそ政治主導が必要だと言いたいと思います。

 最後にもう一問、重ねて大臣に伺いますが、デビッド・ウォーレン駐日英国大使が、去る五月二十日に御自身のブログでこう述べております。今大臣が言った議論とかかわるわけですが、日本のマスコミの論調は公平さ並びに行動にかかるコストを日本が負担できるかという点に焦点が当てられています、しかし、行動がおくれればコストの問題はもっと悪化するでしょう、問題は公平さでなく、先進国がいかに国際的な責任を示して、途上国を交渉の場に連れてくるかという点なんですと。

 まさに、日本がリーダーシップをとるというなら、今こそ先進国にふさわしい野心的な中期目標を掲げて、その点でリードすべきだ。交渉に当たる責任を持っていらっしゃる外務大臣として、そういう目標を決めるように関係閣僚会議あるいは内閣の中で総理に対してきちっと努力して働きかけるべきじゃないかと思うんですが、どうでしょうか。

中曽根国務大臣 いろいろな御意見があるわけでありますけれども、我が国としては、先ほど私が申し上げましたような基本的な考えのもとに、近く中期目標を発表させていただいて、そして、これらが実現できるように国際社会と協力をしながら努力をしていきたい、そういうふうに思っています。

笠井委員 政府は負担は公平にと繰り返しますが、結局やれるだけやればいいというもので、やり切るというのがない。その点でいうと、財界に引っ張られているというのが率直なスタンスだと思います。それも、いかに減らすか、そういう国民に負担を転嫁するというところに来るわけでありまして。大体、京都議定書の六%減の目標に対して、九%もふやしているわけですから論外の話です。大量排出元の産業界を本気にさせないといけない。

 我が党は昨年六月に見解を発表しまして、三〇%削減という中期目標を掲げております。そのために、政府が産業界に削減目標を明示した公的協定を義務づけて、排出量に着目した環境税を導入する、自然エネルギー重視のエネルギー政策に抜本転換するという具体策も示しております。

 NGOでも今、メーク・ザ・ルールということで気候保護法を求める活動も活発に行われておりますが、こうした取り組みこそ必要だと思うんです。

 ところが、この間の政府の中期目標をめぐる議論では、これらの根本的対策の採用が最初から除外されている。それでは野心的目標を持てないのも当然でありまして、政府が温暖化問題についての立場を根本的に見直して野心的な中期目標を一刻も早く掲げるということを重ねて求めて、質問を終わりたいと思います。

河野委員長 次に、保坂展人君。

保坂委員 社民党の保坂展人です。

 このところ、四月、五月と、ソマリア沖の海賊問題、これを契機にして、たしか日本はそのソマリアの混乱状態に対して九〇年代に支援をしてきたな、こういう記憶をたどりまして、この外務委員会や他の委員会で外務省に、一体幾らソマリアに九〇年代使ってきたんですかと質問をしてきました。当初の答弁は、人道支援関係で二千七百万ドル、そして大きかったのがソマリア信託基金の一億ドル、こういう答弁でした。

 ところが、これは、私が調査をして、いろいろ決算書などを見ていったら、たまたま二十七億円、流用額があった。ソマリアPKO等分担金、あれ、ソマリアPKOと書いてあるじゃないかと。こういうふうに見ていって調べてみたら、九三年、平成五年だけで、予備費が百七十五億円、補正予算百七十億円、流用額三十億円で、計三百七十五億円ものソマリアPKO等、等が入っていますからソマリアすべてではないということですが、これを問題にしてきました。

 もう一度ちょっと再確認しますが、私、何度も外務省に対して、このソマリアに対して、国連、国際社会の活動に対して幾ら払ってきたんですかと聞いてきましたが、よろしいですか。外務省は、決算書もあるいは予算書も調べないで答弁に立ったんですか、あるいは知っていて知らぬふりをしたんでしょうか。

廣木政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御質問をいただきましたソマリアへの拠出でございますけれども、これはPKOの分担金という形で出している部分がございます。それから、今御指摘のございました一億ドルでございますけれども、これはソマリア信託基金ということで出しておるわけでございます。それ以外に、二国間、国際機関を通じたことも含めまして、日本のODAという形で協力をしている部分もあるわけでございます。

 御質問をいただきました時点で、当時の執行の記録が、外務省の場合は五年が保存期間になっていたものでございますから、必要な資料が十分見つかりませんで、そのとき、私どもが持ち合わせているもので、すべて知っている限りのことをお話ししたということでございます。

保坂委員 きょうちょっと資料にはとじ込むのが間に合わなかったんですが、これはおかしいぞということを言っていって、補正予算については、それぞれのPKOの、それぞれの場面ごとの明細というのが予算書に載っていたんですね。そうしましたら、外務省から、これは理事懇でも問題にしていただいたそうですが、平成五年の予備費の要求金額、こういう一枚の紙が出てまいりました。これを私はもらいました。一生懸命外務省を捜したらこれが出てきました、こういうことですね。

 しかし、これはだれが作成したのかもわからなければ、国会議員説明用のペーパーではなかったかというんですが、これは外務省のどこから出てきたんですか。だれのファイルから出てきたんですか。お答えください。

廣木政府参考人 ただいま御説明いたしましたように、当初、御質問をいただいたときに、私どもの方で執行の資料等々会計関係の資料を捜しておったわけでございますけれども、そのときには、今お手元のお示しいただいた資料については行き当たらなかったわけでございます。その後、さらに範囲を広げまして、関連の資料がないかということで調べた結果、私どものファイルの中にあったということ……(保坂委員「だから、どこですか。だれの」と呼ぶ)総合外交政策局の保管しているファイルでございます。

保坂委員 これは、本当ににわかには信じられないんですが、与野党の違いを超えて非常に不思議だと思いますよね。五年を経過したものは全部捨てるんだということですね。

 そうすると、六年前、七年前の、我が国が例えばPKOに、今日的な水準だと一千億円、あるいはその前だと六百億円とか五百億、これだけの金額を出している。総額はわかります。しかし、どれだけ出したのか、あちこちどういうふうに出していったのかについては全部わからないというのは本当ですか。五年を超えたものは全部わからないんですか、日本は。外務省というのは全部捨てているんですか。間違いないですか、これは。

廣木政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもの文書保存の指針で、五年以上の執行関係の記録については廃棄することにしてございます。それ以外にも、予算関係の、つまり予算請求した製本した部分とか、あるいは外交青書のようなものとか、それぞれの資料によって保存期間が異なってまいりますので、全部何も外務省に文書がなくなってしまうのかというと、そういうことではなくて、執行関係の資料が五年を経過すると廃棄されるということでございます。

保坂委員 そうすると、五年を経過するとなくなるわけですから、今二〇〇九年ですよね、例えば六年前の二〇〇三年のPKO、総額はわかるけれども明細は全く当方は把握しておりません、こういうことでよろしいんですね。はっきり答弁してください。

廣木政府参考人 ただいま申し上げましたように、五年間の保存ということでございますので、二〇〇三年の四月一日からのものについては当然保管されておるわけでございます。それ以外のものについて、今御指摘のございました……(保坂委員「では、二〇〇二年はどうですか」と呼ぶ)ですから、二〇〇二年、二〇〇一年、あるいはそれ以前の、こういった一九九〇年代の執行の資料については残っていないということで、たまたま国会の方から要請のあった資料が私どものファイルの中にございましたので、それを利用させていただいて、先日、お手元にお届けさせていただいたということでございます。

保坂委員 外務大臣にはたびたびこの問題についてお聞きをしていますけれども、今までの答弁を聞いていらっしゃって、これは、外交は継続ですよね。十年前にソマリア関係で幾ら出したのか、あるいは三十年前だって必要かもしれない。少なくとも、今、外務省の答弁だと、五年を超えちゃうとわからなくなる、国会で聞かれても、さあ、全部廃棄しましたと。これは、これから変えるというんじゃなくて、本当にわからないんですか。外務大臣が指示して、このPKO、何に使ったのか、全部一覧で出せと言ったら、これは普通は出てきますよ。いかがですか。

 国連の記録には確かにあります、日本から来たというのは。なぜ、外務大臣、こんなことで、五年たったらみんな捨てていますということで通るんですか。それで外交ができるんですか。

中曽根国務大臣 文書の保管につきましては、委員も御承知のとおり、全省的な一つのルールがあり、そしてさらに外務省の中で決めているわけでありまして、それもすべての文書ということではなくて、一部の文書については五年でという判断で今行っているわけであります。また、文書といっても、これは廃棄しても、あるいはそれに関連の資料とか、そういうものが別のところに残っているということもあろうかと思いまして、そういう意味では、今回、資料が後から見つかったということもありますけれども、基本的には、私は、このルールにのっとってやっていくということでいいのではないかと思っています。

保坂委員 やはりだめじゃないですか、この政権は。申しわけないけれども。(発言する者あり)だって、五年たったら捨てるんですか。五年たって捨てて、どうやって継続した外交ができるんですか。それで、これからもそういう方針を変えないというのはとんでもないことだと思いますよ。一千億円に余るPKOの分担金を出しておいて、五年たったらわからなくなる、そんな国ありますか、一体。

 これは、本来は与野党の違いを超えて追及すべきですよ。絶対ありますよ、外務省の中にそんなのは。これは、ないという答弁を一回してしまったので、そういうふうに言い続けているのか、極めておかしいということを指摘した上で、もう一点、ちょっと詳しくいきたいと思います。

 お配りをした資料の一番目が、ソマリア信託基金の内訳ですね。当初一億ドル、一億ドルは使いましたという内訳を出していただきました。この一に九千五百八万ドルというふうにありますが、この九千五百八万ドルというのはどうやって算出したんでしょうか。その根拠は示せますか。

廣木政府参考人 先ほど来申し上げていますように、外務省の支出関連文書につきましては五年間が保存期間ということでございますが、当然、私ども、国連と日常さまざまな連絡をとり合っております。特に国会等でいろいろな御質問をいただいたときには、国連にも照会しまして、できるだけ必要な情報を迅速に提供したいというふうなことで、対応してきております。

 今御指摘のございました五千七百万ドルでございますけれども、これは、一九九三年十一月の事務総長報告において五千七百万ドルという記述がございました。これは、その時点までのUNITAF参加途上国に対する支出額の合計を経過報告として報告したものである、その後も当然、途上国側からの請求があって、支払いが継続されたということで、私どもが拠出しました一億ドルのほとんどが、このUNITAF、統一タスクフォースのために使用されたというふうに私ども理解してございます。

 ですから、出典といいますか、どこからその数字が出てきているのかという御質問でございますけれども、これは国連側の資料によって私どもが承知した数字でございます。

保坂委員 一九九三年の事務総長の報告の数字を今言っていただきましたね。五千七百万ドルを使ったと。資料の2についていますけれども、二、三とありますけれども、下に棒グラフを書いておきました。ソマリア信託基金というのは全部で一億五百万ドルで、日本以外の国が出した金額は五百万ドルなんですね。日本がほぼ出した基金と言っていいんですが、実は追加分というのを呼びかけておりまして、これはなかなか集まらなかった。しかし、これは二千百六十万ドルが集まったということが、九五年の三月二十八日、安保理への報告で書かれています。その内訳は、ソマリア警察と司法制度再建用に使った、こういうことですから、今外務省がおっしゃっているこの支出は、ソマリア信託基金の一億ドルではなくて、この追加分から払われたものではありませんか。

廣木政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいま申し上げましたように、この一九九三年十一月の事務総長報告に五千七百万ドルとございますが、これが経過報告でございまして、結局、その後、UNITAF活動終了前に発生した費用、つまり、九三年十一月より前には発生していたけれども、途上国側からの請求に基づいて、その後、支払いを継続した結果、このソマリア信託基金、一億ドルを拠出していたわけでございますけれども、UNITAFに参加した途上国に対する支援として日本が拠出した一億ドルから支払われた額は九千五百八万ドルというふうに国連からは報告を受けてございます。ですから、一億ドルのほとんど、九千五百八万ドルがUNITAFに使われたという報告でございます。

保坂委員 質問の意味がよくわからなかったかもしれないんですが、要するに、警察と司法の費用については、日本が出した一億ドルとは別の二千百六十万ドルの中で賄われたのではないかという点、それから次に、年表をつけておきましたけれども、実は、九三年で統一タスクフォースというのは第二次国連ソマリア活動に転換されていますよね。転換されていて、なおかつソマリアPKOには、外務大臣に答弁いただきましたけれども、全体では二億ドル以上の支出がされている。そして、九四年には九千百八十二万ドル、九五年には四千五十九万ドルという大変大きな支出をソマリアPKOにはしているんですね。ですから、今の説明は直ちに納得できないんですが、なおしっかり私の方でも調査をしたいし、より明確に示していただきたいと思います。

 最後に、日ロ原子力協定について伺いたいんですが、先日、プーチン首相が日本に来て、日本政府との間で、日ロ原子力協定ということで署名をした。これは、日本の原発の一年分に相当するほどの核燃料をいわゆる濃縮、加工してもらおう、こういう内容である。IAEAの実際の査察は行われないし、監視カメラも入らないようだということで、民生用の転換が十分確認できるのかというような報道を受けて、私は、外務省に、ぜひこれを見せてほしいと聞きました。そうしたところ、これは見せてくれない。まだ国会にかけていないので、署名をしたときには閣議では見せたけれども、与党の国会議員の方にもこれは見せられないんだと、きのう外務省から聞きました。

 これは、報道によれば、「日本政府によると、協定全文は国会での批准まで公開しない方針。」とありますが、国会で批准するまで公開しなければ、外務委員会でも協定の内容は見られないというばかなことになりますけれども、これはこういう扱いをなぜしているのか。閣議で見せたけれども、本当に与党の国会議員にも、もちろん野党の国会議員にも見せないのか。見せないという内容にしては随分重大じゃないか。これらの点についてお答えをお願いしたい。

中島政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員の御指摘のございました日ロの原子力協定、この協定締結、発効のためには、今おっしゃいましたとおり、両国において、国会による承認等、締結のための手続を経る必要がありまして、当然国会に提出させていただくことになりますことから、今後、当然テキストを国会にお出しすることとなるわけでございます。

 ただ、ロシアとの間で、テキストを現段階で公表することについて確認を行う必要がありますけれども、現時点におきましては、まだその確認が得られていないとの事情がございます。

 どこに提出されているのかということ、今御指摘ありましたように、このテキスト自体は閣議に提出されたのみでありまして、その他には、その場所につきましては、協定の内容を示した資料をお持ちいたしまして、技術的性格が非常に強うございますので、室長の方から直接説明させていただいておるというふうな取り扱いになっております。

保坂委員 委員長にお願いしたいんですが、日本の原発一年分の濃縮ですから、これは協定の国会審議も次の国会あたりに予定されているんでしょうけれども、ぜひ提出をしていただくようにお諮り願いたいと思います。

河野委員長 その点につきましては、理事会で協議をいたします。

保坂委員 それでは、終わります。

     ――――◇―――――

河野委員長 次に、第百七十回国会提出、刑事に関する共助に関する日本国と中華人民共和国香港特別行政区との間の協定の締結について承認を求めるの件、今国会提出、領事関係に関する日本国と中華人民共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件、国際通貨基金における投票権及び参加を強化するための国際通貨基金協定の改正及び国際通貨基金の投資権限を拡大するための国際通貨基金協定の改正の受諾について承認を求めるの件及び国際復興開発銀行協定の改正の受諾について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 政府から順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣中曽根弘文君。

    ―――――――――――――

 刑事に関する共助に関する日本国と中華人民共和国香港特別行政区との間の協定の締結について承認を求めるの件

 領事関係に関する日本国と中華人民共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 国際通貨基金における投票権及び参加を強化するための国際通貨基金協定の改正及び国際通貨基金の投資権限を拡大するための国際通貨基金協定の改正の受諾について承認を求めるの件

 国際復興開発銀行協定の改正の受諾について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

中曽根国務大臣 ただいま議題となりました刑事に関する共助に関する日本国と中華人民共和国香港特別行政区との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成十八年九月に、香港との間でこの協定の交渉を開始いたしました。鋭意交渉を行いました結果、平成二十年五月二十三日に香港において、我が方佐藤在香港総領事と先方李少光保安局長官との間でこの協定の署名が行われた次第であります。

 この協定は、一方の締約者が他方の締約者の請求に基づき、捜査、訴追その他の刑事手続についてこの協定の規定に従って共助を実施すること、そのための枠組みとして中央当局を指定し、相互の連絡を直接行うこと等を定めております。

 この協定の締結によって、我が国及び香港の双方が刑事共助を一層確実に実施することができるとともに、中央当局間で直接連絡を行うことにより、共助の効率化、迅速化が期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、領事関係に関する日本国と中華人民共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成十五年四月に、中国との間でこの協定の交渉を開始いたしました。鋭意交渉を行いました結果、平成二十年十月二十四日に北京において、我が方宮本在中国大使と先方胡正躍外交部部長助理との間でこの協定の署名が行われた次第であります。

 この協定は、日中両国がともに締約国である領事関係ウィーン条約の規定を確認し、補足すること等を目的として、領事機関の公館の不可侵、派遣国の国民との通信及び接触等の領事に関する事項を定めております。

 この協定の締結によって、日中間の領事関係が一層円滑に処理され、ひいては日中両国間の友好関係及び協力が促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、国際通貨基金における投票権及び参加を強化するための国際通貨基金協定の改正及び国際通貨基金の投資権限を拡大するための国際通貨基金協定の改正の受諾について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 これらの改正は、それぞれ、平成二十年四月及び五月に、国際通貨基金の総務会において承認されたものであります。

 これらの改正は、国際通貨基金の機能を強化することを目的として、基本票の増加、理事代理の増員、基金の投資権限の拡大等を行うための改正について定めるものであります。

 我が国がこれらの改正を受諾し、その早期発効に寄与することは、国際通貨基金における我が国の国際協力を増進する見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、これらの改正の受諾について御承認を求める次第であります。

 最後に、国際復興開発銀行協定の改正の受諾について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 この改正は、平成二十一年一月に国際復興開発銀行の総務会において承認されたものであります。

 この改正は、国際復興開発銀行の機能を強化することを目的として、基本票の増加を行うための改正について定めるものであります。

 我が国がこの改正を受諾し、その早期発効に寄与することは、国際復興開発銀行における我が国の国際協力を増進する見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この改正の受諾について御承認を求める次第であります。

 以上四件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

河野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十五分散会


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