衆議院

メインへスキップ



第14号 平成21年6月10日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十一年六月十日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 河野 太郎君

   理事 小野寺五典君 理事 松島みどり君

   理事 松浪健四郎君 理事 三原 朝彦君

   理事 山中あき子君 理事 近藤 昭一君

   理事 武正 公一君 理事 伊藤  渉君

      飯島 夕雁君    泉原 保二君

      猪口 邦子君    小野 次郎君

      木原  稔君    篠田 陽介君

      柴山 昌彦君    鈴木 馨祐君

      高鳥 修一君    中山 泰秀君

      永岡 桂子君    原田 令嗣君

      原田 義昭君    馬渡 龍治君

      宮下 一郎君    山内 康一君

      山口 泰明君    池田 元久君

      篠原  孝君    田中眞紀子君

      鉢呂 吉雄君    松原  仁君

      丸谷 佳織君    赤嶺 政賢君

      笠井  亮君    辻元 清美君

    …………………………………

   外務大臣         中曽根弘文君

   外務副大臣        橋本 聖子君

   財務副大臣        石田 真敏君

   財務副大臣        竹下  亘君

   外務大臣政務官      柴山 昌彦君

   財務大臣政務官      三ッ矢憲生君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 西村 泰彦君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         宮本 和夫君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 甲斐 行夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 廣木 重之君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石川 和秀君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 知原 信良君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 北野  充君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 小原 雅博君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 高岡 正人君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    梅本 和義君

   政府参考人

   (外務省国際協力局長)  木寺 昌人君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 門間 大吉君

   政府参考人

   (財務省国際局次長)   中尾 武彦君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 伊藤 哲夫君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 松本隆太郎君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  井上 源三君

   外務委員会専門員     清野 裕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十日

 辞任         補欠選任

  逢沢 一郎君     原田 令嗣君

  中山 泰秀君     泉原 保二君

  西村 康稔君     高鳥 修一君

  御法川信英君     飯島 夕雁君

  山口 泰明君     馬渡 龍治君

  笠井  亮君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     永岡 桂子君

  泉原 保二君     中山 泰秀君

  高鳥 修一君     西村 康稔君

  原田 令嗣君     逢沢 一郎君

  馬渡 龍治君     山口 泰明君

  赤嶺 政賢君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  永岡 桂子君     宮下 一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  宮下 一郎君     御法川信英君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑事に関する共助に関する日本国と中華人民共和国香港特別行政区との間の協定の締結について承認を求めるの件(第百七十回国会条約第一号)

 領事関係に関する日本国と中華人民共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第二号)

 国際通貨基金における投票権及び参加を強化するための国際通貨基金協定の改正及び国際通貨基金の投資権限を拡大するための国際通貨基金協定の改正の受諾について承認を求めるの件(条約第九号)

 国際復興開発銀行協定の改正の受諾について承認を求めるの件(条約第一四号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

河野委員長 これより会議を開きます。

 この際、御報告いたします。

 日ロ原子力協定のテキストにつきましては、先ほどの理事会に提出されました。

     ――――◇―――――

河野委員長 第百七十回国会提出、刑事に関する共助に関する日本国と中華人民共和国香港特別行政区との間の協定の締結について承認を求めるの件、今国会提出、領事関係に関する日本国と中華人民共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件、国際通貨基金における投票権及び参加を強化するための国際通貨基金協定の改正及び国際通貨基金の投資権限を拡大するための国際通貨基金協定の改正の受諾について承認を求めるの件及び国際復興開発銀行協定の改正の受諾について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長河相周夫君、大臣官房審議官廣木重之君、大臣官房審議官石川和秀君、大臣官房審議官知原信良君、大臣官房審議官北野充君、大臣官房参事官小原雅博君、大臣官房参事官高岡正人君、北米局長梅本和義君、国際協力局長木寺昌人君、警察庁長官官房審議官西村泰彦君、刑事局組織犯罪対策部長宮本和夫君、法務省大臣官房審議官甲斐行夫君、財務省大臣官房審議官門間大吉君、国際局次長中尾武彦君、環境省大臣官房審議官伊藤哲夫君、防衛省防衛政策局次長松本隆太郎君、地方協力局長井上源三君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河野委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。池田元久君。

池田委員 おはようございます。民主党の池田元久でございます。

 周りがだんだんと騒がしくなっておりますが、外務委員会としては、しっかり審議をしていくことが大事かと思います。

 早速質問をしたいと思いますが、IMFの協定の改正、世銀、国際復興開発銀行の協定の改正についてお尋ねしますが、これらの協定を改正する意味について端的にお答えをいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 委員がお尋ねの、まずIMF協定の改正の方でありますけれども、これの主な目的といたしましては、基本票の増加、それから理事代理の増員、また基金の投資権限の拡大などがあるわけでありますが、基本票の増加などは、途上国の投票権及び参加の強化に資するものでございます。金融・世界経済サミットにおきましてもその早期実現が強く求められているところでありまして、我が国が今回の改正を早期に受諾をし、そしてその早期発効に貢献することは、全加盟国中第二位の投票権シェアを有する我が国の責務であると考えております。また、協定の改正によりまして、IMFの投資権限を拡大し、それによって収入源の多様化を行うということは、安定的な歳入基盤の確立にとりまして、中長期的な観点から有意義なことでございます。

 IBRDの方でございますけれども、これは基本票の増加を行うための改正でございますが、開発途上国の貧困削減に向けました努力を支援するため、融資等をIBRDが行っておりますが、この支援を受ける側の途上国の意見も世銀の政策とかまた事業に適切に反映をされるということが重要でございます。基本票の増加を行うことを目的としております今回のIBRDの改正は、そのような見地から意義を有するものと考えております。

池田委員 両協定の改正の意義は、この経過を見れば、やはり両協定とも、融資条件の緩和のために投票権を拡大したい、そういう要求が途上国から寄せられたもの、それが主とした動機といいますか動きになってきたわけであります。

 しからば、これら二つの協定の改正は我が国の国益にどうつながるか、端的に外務大臣に聞きたいと思います。

中曽根国務大臣 ことし四月にロンドンで行われましたサミットにおきましてもIMF協定改正の早期実現が強く求められたところでありまして、我が国がこの改正に積極的な姿勢を見せるということは、IMF改革に積極的な姿勢を示すとともに、我が国の立場を高めるということにつながると考えます。

 また、この改正の発効条件といたしまして、IMFの増資が発効することが合意をされておりますが、その増資の結果、IMFにおける我が国の出資比率が六・一二%から今後六・五六%に上昇することになります。

 我が国は、これまで、世銀経由での途上国支援を行うに当たりまして、支援を現地のニーズに即した効果的また効率的なものとするよう世銀の理事会等を通じて働きかけをしてきております。世銀の政策及び事業の決定に途上国の声をより反映させることを目的としておりますこの改正は、このような我が国の基本的立場を反映したものであると考えております。

池田委員 国益にどうつながるかということをお聞きしているわけですから、その点に絞ってお答えをいただきたかったと思います。

 世界的な金融システムの安定、融資先の国の経済発展を通じた我が国の市場の拡大、我が国の存在感といいますか、やはりそういうものを当然我々としては考えているということだろうと思います。

 では、世銀の融資案件について若干触れたいと思うんですが、中国、ロシアのエネルギー生産施設、発電、石油精製、パイプラインなどに世銀が融資を行った事例をどのようにつかんでいるか、お尋ねをしたいと思います。

石田(真)副大臣 理事会等で融資案件については決定されまして、我が国からも理事を派遣しておりますので、把握をしているということでございます。

池田委員 何と心もとないお答えなんでしょうね。これは、きのうからうちの事務所で求めていて、議論もしたわけですから。

 この世銀のプロジェクト、中国のエネルギー関係、ロシアはないようですが、ここに財務省国際局開発機関課がまとめた資料がございます。全部で九つ。最近のものは五つ。後から出てきたのは、油田の関係プロジェクト、大慶油田、中原、カラマイ、遼東湾等々でございます。こういうことを、まず基本的なデータということがすぐ答えられないようでは、私は大変困ると思います。

 それから、世銀とは別に、次に、中国、ロシアから北朝鮮への石油、電力、ガスなどのエネルギー物資の供給、輸出をどのように把握しているか、お尋ねをしたいと思います。

中曽根国務大臣 中国、ロシアから北朝鮮への石油あるいは電力、ガスなどの供給ということでございますが、韓国の大韓貿易投資振興公社が作成いたしました資料によりますと、二〇〇七年の中国から北朝鮮への原油の輸出量は五十二・三万トンと計上されておりまして、ここ五年間を見てみましても、大体毎年約五十万トン程度輸出をしております。

 他方、その他の北朝鮮の電力またガス等のエネルギーの輸入状況につきましては、詳細は必ずしも明らかになっていないところでございます。

池田委員 それ以外には、御存じのように、六者会合の結果、百万トン相当の重油を支援するとなっており、現時点では約七十五万トンの重油相当の支援が実施されているものと外務省も見ているということでございます。

 では、世銀の融資案件から北朝鮮へエネルギー物資が流れているのではないか、どのように把握しているか、答えられますか。

石田(真)副大臣 世銀設立協定では、銀行の資金及び便益は専ら加盟国の利益のために使用しなければならないと規定されておりまして、加盟国に対する融資であっても、非加盟国である北朝鮮が直接裨益する案件はそもそも実施できないということになっております。

 また、今現在経済が破綻していると思われる北朝鮮を取引相手とすることによりましてプロジェクト自体の便益を小さくしてしまうというようなことは、世銀の業務規則上認められておりませんで、そういう意味からいいましても、北朝鮮を取引相手に含む案件を組成することは困難であると考えております。

池田委員 実態は全部は把握されていないようですが、そういう世銀の中の話であります。

 戦略的な融資政策という観点からは、融資した施設から北朝鮮へ物資が流れていないか確認するとか、テロ支援国家に資するプロジェクトには融資しない、そういうはっきりしたガイドラインを世銀がつくるように日本政府としても働きかけるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

石田(真)副大臣 この問題につきましては、世銀の業務規則に、世銀による融資は供与された目的のためのみに用いられるように世銀及び受益国により監視をされるということになっております。このために、当初の目的を逸脱して北朝鮮が裨益していないかどうかというような問題については、世銀が監視することになっております。

池田委員 だから、世銀が当然管理するわけですよ、世銀が金を貸すわけですからね。ですから、そこで、やはり日本政府としては、現在の北東アジアの、北朝鮮の動きなどを見れば、明確なガイドラインをつくってこれに対処する。日本がそれのイニシアチブをとって、世銀のボードがあるわけですから、高い給与をもらって行っているわけですから、ぜひそれをやるべきだと私は言っているわけです。いいですか、もう一度。

石田(真)副大臣 国際市場等さまざまなルートを通じた場合というのは把握ということが非常に難しくなってくるわけでございます。

 いずれにいたしましても、今後、世銀の融資がその本来の目的を逸脱して使用されないように注視をしてまいりたいというふうに思っております。

池田委員 今注目されている安保理事会においての北朝鮮に対する制裁決議について中国が消極姿勢と聞くが、状況はどうなっているか、端的に聞きたいと思います。

中曽根国務大臣 北朝鮮の核実験は、これはもう何と申しましても安保理決議違反でありますし、また、核不拡散体制に対する重大な挑戦でありまして、これは断じて容認することができないわけであります。現在、ニューヨークにおきまして、できる限り強い内容の安保理決議を迅速に採択すべく、米国、我が国を初めとして関係国が協議を行っているところでございます。

 特に日中間ではさまざまなレベルで緊密な協議を継続してきておりまして、私自身も去る七日の日中外相会談におきまして、安保理は北朝鮮に対し核実験は容認できないことをしっかりと理解させる強い内容の決議を速やかに採択しなければならない、これができなければ安保理の権威は傷がつきますし、また、北朝鮮に対して誤ったメッセージを送ることになる、またさらに、安保理決議を無視した北朝鮮のこのような挑発行為を今ここでやめさせることが一番大事であり、必要であり、そういう意味では、地域の大国であって北朝鮮と政治経済面の関係が非常に強い中国の果たす役割は大きいとヨウケツチ外相に指摘をしたところでございます。

 その協議の具体的な内容、今大詰めに来ておりますが、これに触れることは交渉当事国との関係もありまして差し控えさせていただきますが、我が国といたしましては、今申し上げましたような関係国と緊密な連携をとりながら、できるだけ強い決議ができるだけ早く採択されるよう努力をしているところでございます。

池田委員 今少し触れられましたが、近々策定される制裁決議は前回より強い決議になるべきだと思いますが、なるのかどうか。それから、いつまでに採択できるか。その二点についてお答えをいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 先ほども申し上げましたが、四月には長距離弾道ミサイルを発射し、また五月に核実験を行ったということで、各国の再三の自制にもかかわらずこのような行為を行ったわけでありまして、これは、制裁措置を含む強い決議を出す必要があると思います。

 時期につきましては、先ほど私は大詰めと申し上げましたが、まさに今そのような段階であろうと思いますし、もうきょうあしたにでもまとまることを期待いたしております。

池田委員 強い態度で臨むのはいいんですけれども、やはりちょっと飽き足らないといいますか、前回以上の強い決議にするんだ、そういうことを日本の外務大臣がアナウンスすべきだと私は思います。何かそういう感じには今受け取れませんでした。残念であります。

 きょうの報道によりますと、米韓の首脳がアメリカの核の傘を確認するとの報道がありますが、これの事実の確認と、日本は核の傘にあるのかどうか、お尋ねをしたいと思います。

中曽根国務大臣 ただいま委員が述べられました報道につきましては承知しておるところでございますが、日本は、米国との間では、そのようなきちっとした、明確な、核抑止力を含む日本の防衛というものが、これが明確になっておるところでございます。(池田委員「え、明確に」と呼ぶ)はい、明確にされているところであります。

池田委員 これは、朝鮮半島をめぐる、特に北朝鮮の今度の一連の動きに対して、最近の言葉で、拡大抑止力の強化と言っているようでありますが、改めてといいますか、核の傘で韓国を守る、そういう米国の意思が表明されるということでありますので、同様である日本も、そのようなアメリカの対応があるのかどうか、アメリカ側にその確認を求めるのか、あるいはアメリカから既にこういう強い意思を表明するんだということが伝えられているのかどうか、その二点をお聞きしたいと思います。

中曽根国務大臣 核抑止力を含みます我が国の防衛につきましては、これは二月のヒラリー・クリントン国務長官と私との会談の間でも、ヒラリー長官から明確にそのような表明がありました。また、麻生総理とオバマ大統領との会談でも同様のことが確認されているということでございます。

池田委員 同じことを言っても文脈によって違いますので、この時点でやはりこういうニュースが出るのは当然の成り行きかなという感じがいたします。

 そこで、尖閣諸島の領有権問題、先日の委員会で、私取り上げましたが、尖閣諸島についてアメリカと結んだ日米安保条約の適用対象になる、そこはいいんですが、しからばアメリカは領土と認めているかどうか、それに対して答弁がほとんどいただけなかったので、理事会の協議にゆだね、何かペーパーが出ました。私のところへはすぐ来なかったんですけれども、この辺のちょっとやり方も余りよくないんじゃないかと思うんですが。

 もう一度お聞きします。尖閣諸島についてアメリカが日本の領土と認めているかどうか、そういう考えを表明することを日本が求める、そういうことも含めてお聞きしたいと思います。

中曽根国務大臣 前回の委員会でも答弁申し上げましたけれども、我が国固有の領土でありますこの尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題というものはそもそも存在をしておりません。このことは、他の国の立場によっていささかも影響を受けるものではございません。また、その上で申し上げれば、米国は、これまでのやりとりを通じまして、尖閣諸島に関する我が国の一貫した立場を十分承知しているものと考えております。

 いずれにいたしましても、そういう我が国の立場が正しく理解されるよう、引き続き適切に対応していきたいと思っております。

池田委員 我が国の立場はアメリカが理解、承知している、それはそうでしょう、同盟国ですからね。私が聞いているのはそういう問題ではなくて、アメリカが尖閣諸島を日本の領土と認めているかどうか聞いているわけですよ。

 そこで、北方領土についてはアメリカは我が国の主権を認めている。アメリカ国務省の広報資料でもそうなっております。一方、尖閣については、認めている、そういう認識の表明はなされていない。ですから、北方領土についてはやはり外国の理解が必要だというふうに外務大臣も言っているわけですから、この尖閣についても外国の理解を促すべきだと私は思いますが、北方領土との対比についてどうですか。

中曽根国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、また従来から申し上げておりますけれども、尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題というのはそもそも存在していない、そういう、これは我が国の立場でありますので、今委員がおっしゃいましたようなことも存在していないというところで、私どもは、これははっきりしている、そういうふうに思います。

 また、北方領土につきましては、委員もお話ありましたけれども、米国は我が国の立場に対する支持を、これは明示的に表明をしているところでございます。

池田委員 北方領土との対比についても、論理的にも私はおかしいと思いますが、ここは、我が国の国益、大変重要ですから、この前、北方領土について、私は、戦争で手に入れた領土というのは認められない、そういう新しいといいますか、新しいというよりも本来のそういうルールといいますか国際社会のあり方からいって、北方領土、今の四島に限るのではなくて、日露戦争以前に返すのが本来の筋である、このように申し上げましたけれども、こういう領有権の問題も、立場を理解していると言ったりそういうことではなくて、もっと端的にわかりやすくアナウンスすべきだと私は思います。

 ちょっと時間がなくなりましたので少しだけお尋ねをしたいと思いますが、グアム協定のフォローアップというか、その後ですが、六月四日の米国連邦上院で海兵隊の司令官が証言をした、これがちょっと波紋を呼んでいるようでありますが、その趣旨と目的は何でしょうか。

中曽根国務大臣 海兵隊の司令官が発言されたというのは、コンウェー・アメリカ海兵隊司令官の発言だと思いますけれども、六月四日、アメリカの上院の軍事委員会におきます公聴会で、米軍関係者として上院議員からのさまざまな質問に答えるということで発言がございましたと承知をしております。

 政府といたしましては、このコンウェー司令官の発言の逐一について、その意図等について私どもが説明する立場にはございませんし、またコメントは差し控えたいと思いますが、この在日米軍再編に関しましては、日米両政府は、これは二〇〇六年五月の2プラス2、これにおいて合意をされましたロードマップに基づいて着実に実施していくという考えで、これはもう変わらないところでございます。

 こういう考え方は、日米の首脳また閣僚レベルで繰り返し確認をしてきているところでございますが、政府といたしましては、今申し上げましたロードマップに従いまして、在沖縄海兵隊のグアム移転、それから普天間飛行場の移設、返還を初めとする米軍再編を米国政府とともに着実に実施をしていく考えでございます。

池田委員 この司令官の発言は、普天間移設案の修正、さらに訓練の維持に懸念を表明するなど、その中身を見れば、まさに大変核心的な問題に触れている。こういう雰囲気だと、アメリカ側がロードマップや協定の変更を求めてくる可能性はないのかどうか、お尋ねをしたいと思います。

中曽根国務大臣 先ほど申し上げましたけれども、日米両政府は、ロードマップにおきまして、二〇一四年までに在沖縄海兵隊のグアム移転を実現することとしておりまして、これも、首脳を含むさまざまなレベルで再三確認をしているところでございます。

 御案内のとおり、米国におきましては、米国における関連予算の計上の件に関しまして、五月に米国防省が公表いたしました二〇一〇米会計年度国防予算に関する資料におきまして、在沖縄海兵隊のグアム移転に関する措置の開始といたしまして三・七八億ドルの予算を米国も計上する旨が明記されているところでございまして、これらのことからも、米国政府がロードマップやまた本件のグアム移転協定を着実に実施していく考えであることは明らかであると考えております。

 政府といたしましては、米国政府とともに、引き続いて、ロードマップに従って在沖縄海兵隊のグアム移転を着実に実施していきたいと考えております。

池田委員 当事者からこういう発言が出るわけですね。

 だから、さきのグアム協定で論議をされましたが、二〇一四年までに時限を切ってアメリカ海兵隊がグアムへ移転するというアメリカの義務が規定されなかった。そういうのもやはりこのような内情が反映されたものではないか、そういう見方もできると私は思います。

 いずれにしても、日本の国会がグアム協定を承認し、そして、今外務大臣がおっしゃったように、アメリカ議会が予算の一部を決定した。そういうやさきに、当の責任者、海兵隊の最高指揮官がこうした発言をするということ、これは、正しい外交であれば、アメリカ側にしかるべく発言の真意を確認し、遺憾の意を表明するのが主権国家として当然のことではないか、主権国家とそんな大上段に言わなくても、普通のことではないか、このように考えますが、外務大臣はどうでしょうか。

中曽根国務大臣 まず最初、先ほども申し上げましたけれども、政府といたしましては、このコンウェー司令官の発言の真意についてコメントすることは差し控えたいと思いますし、また、そういう立場にもないわけであります。

 この在日米軍再編に関しましては、再三申し上げておりますように、ロードマップに基づいてこれを着実に実施していく、こういう考え方は、日米首脳会談でも、また閣僚レベルの会談でも繰り返し確認をされているわけでございまして、私どもといたしましては、米国政府に対し、今回の司令官の発言を受けて改めて確認する必要はないと思っております。

池田委員 そういう外交でいいんでしょうか。かつて、皆さんの先輩で、折り目正しい外交、これを提唱して外務大臣を務めた方がいらっしゃいました。外交は折り目正しくやっていただきたいと思います。そのことを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございます。

河野委員長 次に、三原朝彦君。

三原委員 きょうは、四つ条約がこの委員会に上程されてありまして、それで、私は、そのうちの二つについてちょっと質問したいと思います。

 最初は、日本・香港の刑事共助協定についてなんですけれども、その中で、同じような事件があれば、双罰性といいますか、あればスムーズにいくんですけれども、今、日米、日韓、それと日中かな、刑事共助の協定があるようですけれども、アメリカの場合には、A国では犯罪でもB国では該当しない、双罰性の欠如が起こったときに、日米は、双罰性は時に不要とするような場合もありますよということになっているらしいんですけれども、この点に関して、むしろ中国の方が、印象として、刑事罰あたりは強かったり、罪の問題あたりにもいろいろなものがあったりするんじゃないかという気もするんだけれども、そういう中国のテリトリーの中の香港での双罰性というものに関しての議論が何か行われていたんだろうかということをちょっとまず質問したいと思います。

中曽根国務大臣 日米の刑事共助条約におきましては、条約上、別段の定めがない限りは、双罰性の有無にかかわらず共助を実施する旨定められておるところでございます。双罰性の欠如を理由に共助を拒否できるのは、共助の実施に当たり強制措置が必要であると認められるときに限定をされております。

 これに対しまして、今御審議をいただいております日本・香港刑事共助協定におきましては、共助の実施のために強制措置が必要であるか否かにかかわらず、双罰性の欠如を理由に共助を拒否することができる旨規定されているところでございます。これは、日韓刑事共助条約及び日中刑事共助条約と同様の規定ぶりでございます。

 香港との間でこの協定の交渉を行いました際には、香港の刑事共助条例において双罰性の欠如を拒否事由としていること、さらに日韓刑事共助条約の先例があることなどから、この双罰性に関する規定ぶりにつきましては、日本、香港間で意見の相違はございませんでした。

三原委員 意見の相違はなかったということですけれども、でも、具体的なところで、日本では違法性があるけれども香港では違法性に該当しない、香港では違法性があるけれども日本では該当しないというような、そういう違法性に関しての明らかな差異みたいなのがあるようなものはあったんですか。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 条文のみを形式的に比較いたしますと、例えば児童ポルノ単純所持罪でありますとか無許可動物実験等罪は、香港において犯罪とされておりますが、我が国の刑法にはこれらに対応する犯罪はございませんで、双罰性が成立しない可能性があると考えております。

 他方、双罰性が成立するか否かにつきましては、罪名や条文のみを形式的に比較して判断するのではなくて、事案の社会的事実関係に着目して、その事実関係の中に我が国の法令のもとで犯罪行為と評価されるような行為が含まれているか否かを検討することによって判断すべきものとされております。したがいまして、事実関係によっては、ただいま申し上げましたような香港で犯罪に問われる行為につきましても双罰性を肯定し得る場合があると考えられます。

 したがいまして、そうした犯罪が存在することによって我が国にとって重大な問題が生じるということは必ずしも想定されないと考えられております。

三原委員 今、小原さんが言われた、重大な問題が生ずるとは考えていない、そこが大切なんですね。明らかに差異があったときには、例えば、向こうから何か頼まれた、こっちからも頼まれても、いや、それは我が国の社会通念上余り問題がないからなんというのじゃやはり困るけれども、今はっきり言われたように、我が国の社会上、これは明らかに社会の安定した安全な運営をするのにはおかしいぞというときには話もできると言われた。その点は十二分に留保してやっていかなきゃいけない。そういうことであります。

 特に今、例として児童ポルノの話なんか出ましたけれども、日本はかなりよその国から批判されていますよね。けしからぬね。(発言する者あり)そうだ、そのとおりだ。いやいや、笑い事じゃないんだね。品格がないね、それは。その点でもやはり、今、一生懸命に我々も超党派でいろいろ議論しているようですから、こういう面ではそれこそ我々も早くリーダーになれるようにしなきゃいけないなと思っています。

 次の質問になりますけれども、香港というと、シンガポール、香港というのはアジアの金融センターですよね。いろいろな意味で自由が与えられているからというんですけれども、自由が与えられていれば、金融センターで、お金に色がついているわけじゃないから、そのお金の中には怪しいお金があってみたり、においのするようなお金があってみたりするんじゃないかな。

 そういうときにどうするんだろうと思って、私はちょっと協定のところを読んでいましたら、協定の一条に書いてあることは、「共助には、次の措置をとることを含む。」と書いてありまして、その中で、一条の4に「租税に関する法律に違反する犯罪に関連する共助の請求は、その主たる目的が租税の賦課又は徴収であってはならない。」と書いてあるんだけれども、明らかに怪しいなというものがあって、それがうまくマネーロンダリングしていたり脱税していたりというようなことも考えられる場面でも、例えば今言ったような一条の4で逃れることができるようなことがあっては大変だと思うんだけれども。

 まず聞きたいことは、今、日中、日米、日韓での共助条約があるけれども、その国でも、この条約はこういう条項を入れてあるんだろうかどうか。それがわかりますか、今、三つやっている国々で。これは今回の香港にだけ特有なものなんだろうか。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘のございました日米あるいは日中の協定の中には、かかる規定はございません。

三原委員 やはりそうなんだろうなと思ったわけです。やはり、書いてあるということは、つまりはそれがかなり香港にとっては重要だ、ボディーブローになるかもわからぬということなのかなと思ったのでお聞きしたんです。

 そうなったとしたら、例えば、あなたたち御存じのように、日本の所得税と香港の所得税はかなり違うんだ。香港は一割五分かな、日本の場合には段階的に五段階になっていますから、高いところでは最終的には住民税まで入れると五割取られちゃうよね、高額納税者というのは。そういうのをうまく、何とかかんとか隘路を縫って香港に逃げていって、ぎりぎりの線、不正蓄財とは言わないけれども、法律に触れるか触れないかというような、法律に触れたら明らかにそれはおかしなことなんだけれども、触れないかというようなところまでもそういうことをやっているようなときに、それが脱税だけではなくて、何か違法なことから起こしたお金、詐欺で起こしたとか、今言ったポルノの関係のビジネスでもうけたお金がちゃんと向こうに行っているかどうか調べているとか、そういうたぐいになったとしたときに、それがまた税を逃れるために行っているなんということになったときに、では、今回の協定の今言った一条の4というのは、僕から見るとどういう悪影響を及ぼすことになるんだろうか。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 本協定の第一条4でございますが、この規定は、租税法違反の犯罪に関連する共助の請求につきましては、租税の賦課または徴収といった行政手続ではなく、当該犯罪に関する捜査、訴追等の刑事手続を行うことを主たる目的としてなされる必要があるという点を確認的に規定したものでございます。

 したがいまして、本協定の一般的な解釈といたしまして、御質問のございましたように、詐欺等の犯罪、こうした刑法に触れる犯罪の疑いがある場合でございますが、刑事手続を行うことを目的とするのであれば、租税法違反の犯罪につきましても、本協定に従って共助を要請することが可能であると考えております。

三原委員 では、もともとのメーンの問題が刑法に触れることであれば、それが関連して、租税、今の一条の四項に関係するような問題が起こったとしても、それは堂々と向こうに協力をお願いできるということなんですね。わかりました。

 ただただ全くもってメーンが税の問題に関してだったら、それは入り口から門前払いになるのかな。では、結果としてそれをやっていったらこれはやはり刑法に触れるような問題も起こったなんという逆のケースだったらどうするんだろう。刑法の問題から入っていって、それが租税に触れておけばいいとあなたは言ったけれども。租税の問題からは一切入り口から入れないのか、どうなんだろうね。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど答弁をさせていただいた点と若干重なる点もございますけれども、二つのことを区別するのは、要請の対象となるものが犯罪の捜査、訴追の刑事手続であるか、それとも租税の賦課徴収であるかというところでございます。

 この協定に基づきまして共助を行うときには、一体それがどのような内容について共助を要請するのかということを明示して行いますので、それが犯罪に関する捜査、訴追の刑事手続であれば、税に関することであっても対象となるということでございます。

三原委員 では、北野さん、それは逆に、租税だけ、まず租税から入っていこうとしたら無理だということだよね。租税のことを何かお願いしたいということは、もうこれは一条の4からできない、そういうことですね。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 もし、要請する側の、要請国の方でその要請することの目的が租税の賦課徴収のためということであれば、この協定の対象にならないということでございます。

三原委員 例えば、あれは一年のうち半分海外に住んでいたら自分で選んで所得税を納めるところを決めることができるから、そうしたら、香港に私は半分以上住んでいますというようなことで、所得税を向こうに納めているというようなことになる人もいるだろうと思って、そういうことなんかがもめたときにはどうするかなと思ったものだから。わかりました。

 では、今、四つのうち一つ目の香港と日本の刑事共助の話をちょっと聞きましたけれども、次は、もう一つの日本と中国の領事関係に関する協定について、ちょっと質問をさせていただこうと思います。

 我が国としてはおもしろくない事件でしたよね、二〇〇二年の、テレビでも出ていた場面もあったけれども、明らかに領事館の中に入り込んでいって、そして、逃げ込んだ人のことを引っ張り出してやっていることがありまして、そのときに、不幸にも、瀋陽のリーダーである総領事がちょうど帰国か何かしていてというようなことで、いろいろ不都合なことが重なっちゃって、かなり批判された場面がありました。それを一つの奇貨としたんですか、日中の領事関係の協定を結ぶようになったようですけれども、今回の理由というのは、つまり、やはりああいうことを二度と起こさないということをお互いに確認し合うということなのかな。

 だって、ウィーン条約は日本も中国も効力を発効させているでしょう。それで、それがあれば一応のことはできると思うんだけれども、これは対象のところを見せてもらうと、ウィーン条約の三十六条とこの協定の八条というのは少しだけ違うようなところは確かにありますけれども、しかし、ほとんどのところで類似のものなんだけれども、これをしなきゃいけないと思った理由は、やはりもう一遍再確認しようということなのかな。

橋本副大臣 本協定は、日中両国間の領事関係の実態及び必要性に即した形で領事関係ウィーン条約の規定を確認、補足等するものであります。日中間の領事関係の一層の円滑化、ひいては日中両国の友好関係及び協力が促進されることを期待しております。

 本協定を締結する利点といたしましては、より具体的には以下の点を挙げさせていただきたいというふうに思います。

 領事通報について、領事関係ウィーン条約では、被拘禁者の要請がある場合に行われてきましたけれども、本協定では、被拘禁者の要請があるか否かにかかわらず、全件行うこととすることといたしまして、第八条にありますけれども、通報は拘禁の日から四日以内に行うというような明確な期限を設けております。

 これによりまして、我が方が、領事機関が日本人の被拘禁者例を確実に、そして迅速に把握いたしまして、より適切な邦人保護業務の遂行が可能になるということが考えられております。

 また、領事機関の公館の不可侵につきましては、領事関係ウィーン条約では、接受国の当局は、火災その他迅速な保護措置を必要とする災害の場合には、領事機関の長の同意があったとみなして領事機関の公館に立ち入ることができるというふうにされておりましたけれども、本協定では、接受国の当局が領事機関の公館に立ち入るためには、すべからく、すべて領事機関の長などの同意が必要であることを明確化することとともに、領事官の住居を含めた領事関係施設の保護を強化しております。これが第六条であります。

 これにより、在瀋陽日本国総領事事件のような事案の再発を防止し、領事任務のより円滑な遂行に万全を期すことができるというふうに考えられております。

 さらに、自国民の安全に関する情報の提供や緊急事態への対応のために、接受国の、他方、当局と領事機関との間で緊密な関係を維持することを十条に明確化しておりますけれども、自国民保護のための体制強化というのが期待をされているというふうに思っております。

三原委員 今橋本副大臣が言われた公館の不可侵という問題は、やはり二〇〇二年のああいう事件を教訓にして起こされたことだと思うんですね。確かに、あの二〇〇二年のときでも、いろいろその後の状況を聞いてみたら、三十一条の二項というのでただし書きで、火災等があったときには入りますよと書いてあるんだよね。等とかと書いてあると、法律でよく等と書いてあると一番怪しいんだよね、何でもできちゃうんだけれども、それを中国もやったといえばやったんだろうかね。

 それで、大胆不敵というか蛮行というか、そういうことをやったんですけれども、今副大臣が言われた六条の領事機関の公館を不可侵とするという、許可なく立ち入るべからずということが、例外規定じゃないけれども、ただし書きに書いてあるウィーン条約とちょっとだけやはり厳しさが違うところかな、こう思うけれども、そういうふうに理解していいんですか。どうですか、そういうふうに理解していいの、政府方は。六条と三十一条の二項ただし書きの違いで、ちゃんと不可侵と言ったのは。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 公館への立ち入りにつきましては、ウィーン条約におきましては、今委員より御指摘がありましたただし書きの規定があったわけでございます。

 このただし書きにつきましては、これの運用の次第によっては相手国との間で行き違いということが生じないでもないということでございまして、そのようなことが起こらないようにということで、今回の日中領事協定におきましては、このただし書きの部分を取って、公館長あるいはその指定する者等の同意が必要であるということを徹底化したということでございます。

三原委員 同じ失敗を繰り返さないためにちゃんとやった、この点は大いに評価しますよ。それがやはり実行されなきゃ、実行するためにはどうするか、こういうことですね。

 例えば、六本木のところにある中国の大使館、あそこには入り口にちゃんと我が国の警察官がいますし、中にはやはり、アメ大あたりに行くと中に海兵隊がちゃんといるよね。中国の場合はどうだったかな、あそこの六本木の大使館の中、ちょっと記憶にないが、我が国の警察は、大きな大使館はみんな警備をしてくれておりますけれども、そういうところで万々が一あのような、瀋陽の領事館で起こったような事件が起こったときに、靴の一歩たりとも入れちゃいけないというように、ちゃんとそういう教育はしてあるのかな。

 それとも、いや、少しだけならいい、悪いようなやつだったら捕まえちゃおうなんという、その後に、あの中国の弁解じゃないけれども、何か日本の副領事か何かがありがとうと言いましたなんということまで言っているようなことがあるけれども。

 こういうウィーン条約とか領事関係条約あたりのことを、今度は外務省じゃなくて、国内で日本の警察の方は、もちろん教育はしているんだけれども、徹底して、ちゃんとああいうふざけたことが起こらないようにすることをやっているんでしょうね。

宮本政府参考人 警察といたしましては、こうした問題につきまして、条約を遵守して対応するよう指示、徹底をしているところでございます。

三原委員 それで、ちょっとこれは質問にはなかったけれども、例えば大きな国は、海外の自分のところの大使館や領事館には必ず軍隊を置いたり、もしかしたら警察官の人も置いているのかな、置いたりしているけれども、中国には、中国の北京の我が国の大使館や、今この瀋陽の領事館、上海だ、広州だとありますけれども、そういうところには、内側、中にそういう警備のための人材というものはちゃんと配置してあるんだろうか。どういうふうに我が国はしておるわけですか。外側はもちろん中国の警察が守っているでしょうけれども、内側の方はどういうことになっているんだろう。ちょっとこれは質問していなかったけれども、わかれば。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 日本の中国におきます在外公館におきましては、館内、中におきまして、入り口のそばにしっかりとそうしたスタッフを置いて、適切な警備あるいは態勢がとれるようになっております。

三原委員 起こらない方がいいんだけれども、ああやって実際に二〇〇二年にはああいうことが起こって、もちろん、入っていった警察官、そしてなおかつ、警察官に領事館とか大使館の治外法権というか、そういうことを認識しておったかどうか知らぬが、教育をしていなかったかもしらぬが、そんなことないと思うけれども、そういうたぐいのことを起こしたような接受国そのものの遵法精神みたいのをやはり批判せにゃいかぬけれども、同時に、やはり今度は我が国、行った方もそういうことが起こらぬようにするための最低限のことはやらないとね。

 中国だけじゃない。私はよくアフリカに行くんだけれども、アフリカあたりでも、何かちょっと暴動、動乱なんかあると、もう収拾がつかないようになる。そのときに、トラブったら、昔のことだけれども、コンゴあたりでは、キンシャサでトラブルがあったときには、最後は日本国はフランス大使館か何かに逃げ込んでいって、助けを求めて、川向こうのブラザビルに逃げた話なんかを読んだことがあるけれども、そういうことまでは対応できないだろうが、少なくとも同じようなこと、わずか四、五人の人が領事館に入り込んできたときにぶざまなことを二度と再び起こさないということは、やはりこういうことから学ばないかぬと思うんですね。そのためにこそ不可侵だということを六条に書いてあるんだからね。

 最後に、そういう点での外務省の、この領事協定をつくったんだけれども、それ以外に何か自分たちがこれから先やっていこうとか、やらなきゃいけないと思っているようなことがあるかどうか、そういうことを最後に聞いて、質問を終わりたいと思います。

橋本副大臣 平成十四年の五月に発生をいたしました在瀋陽日本国領事事件を踏まえまして、外務省としては、省員の危機意識の徹底といった意識改革をすること、そして在外公館における緊急時の指揮命令系統の徹底といった危機管理体制の整備、現地警備体制の点検等の措置をとってきております。また、本件の背景の一つといたしまして、中国との間で領事協定の作成を行うこととしまして、累次交渉を重ねてまいりました。

 今回お諮りをさせていただいております日中領事協定では、本件との関係で問題となった領事機関の公館の不可侵について、接受国の当局が領事機関の公館に立ち入るためには、すべて領事機関の長の同意が必要であることを明確化しております。先ほどと同じことでありますけれども、領事官の住居を含めた領事関係施設の保護も強化をしてまいっております。

 本協定は御指摘のような事案の再発防止に資するものでありまして、本協定を早期に締結することは有意義であるというふうに考えております。

三原委員 終わります。ありがとうございました。

河野委員長 次に、丸谷佳織君。

丸谷委員 公明党の丸谷でございます。

 本日、審議をされています四条約について、それぞれ質問をさせていただきたいと思いますので、橋本副大臣、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず最初に、国際復興開発銀行協定について、この改正でございますけれども、目的を、世銀の機能の強化及び途上国の発言力の強化というところが主な目的であると存じておりますし、これは平成二十年に、世銀とIMFの合同開発委員会で、基本票の倍増、これは基本票を倍増して全体の投票権の五・五五%にするというところが採択をされている。このことから、本協定の改正が今国会で審議をされているものでございますけれども、そもそも、途上国の発言力の強化を目的としなければいけなかったその背景、改正の必要性について、例えば改正をしなければどのような不都合があるのか、今まであったのか、この点を具体的に背景を説明していただきたいと思います。

橋本副大臣 今御指摘いただきましたIBRD、国際復興開発銀行ですけれども、開発途上国の貧困削減に向けた努力を支援するために、融資や政策の助言等の業務を行っております。

 したがいまして、その政策及び事業の形成に、ドナー国である先進国のみならず、支援を受ける途上国の意見が適切に反映されるべきということで、重要だというふうに考えております。

 とりわけ、昨今の世界金融危機により大きな影響を受けた発展途上国に対しましては、現地のニーズに即して効果的かつ効率的な支援を実施していくためには、途上国の意見を踏まえることは一層重要なことだというふうに考えております。

 実際、昨年の十一月、そしてことしの四月に開催をされました金融・世界経済に関する首脳会合でも、IBRDを含む国際金融機関の意思決定におきまして、開発途上国の意見をより一層反映するべきという議論がやはり行われましたので、その早期実現が慫慂されているところであります。

 本改正によりまして、世銀が行う支援というものが、より現地のニーズに即しており、そしてまた効率的で、また効果的に実施されるようになることが期待をされております。

丸谷委員 ということは、察するところ、今までの例えば開発援助に関して、現地のニーズに即さない、あるいはそのような案件があったのであろうというふうに推察をするところでありますけれども、ちょっと重ねての質問で大変恐縮でございますけれども、その改正の必要性、例えば具体的に挙げていただくことは、これは可能ですかね。ちょっとその点について、背景だけもうちょっと具体的に説明をしていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

木寺政府参考人 お答え申し上げます。

 先生の御質問ですけれども、これまでIBRDで案件を選定する、それぞれの手続が踏まれて決まっておったわけですけれども、昨今、IBRDで増資が行われている。そうすると、途上国の持っている部分がどんどんどんどん目減りしてくる、そういう経緯がございまして、それで、やはり最近は途上国の意見がいろいろなところに反映されるべきだ、そういう潮流もございまして、二〇〇二年ですか、こういう途上国の基本票をふやすべきだという議論が持ち上がって、今回の改正に至ったというふうに理解しております。

丸谷委員 具体的な、例えばどういった不都合があったのかとか、どのような途上国の声が反映されなかったのかとか、援助する側とされる側の意見の対立があったのかどうか等の具体的な御答弁というのはなかったわけでございますけれども、実際にはTICAD4も、我が国、先刻開催をいたしましたし、アフリカ支援というのは非常に一生懸命やっているところでございますし、途上国の声を至るところで大きく反映していかなければいけないという世界の潮流がある中での改正であるのであれば、本当に本協定の改正によって実効的にこれが反映されるのかという次の質問にさせていただきたいと思うんです。

 今回、基本票を上げて、基本票を全体の五・五五%に上げたということでございますけれども、結果的に、例えばソマリアであれば、従来は〇・〇五%という割合が〇・〇六%、あるいはキリバス〇・〇四%が〇・〇五%、アフガニスタン、コスタリカ、ラオスにおいては、〇・〇三%の割合が今回の改正で〇・〇四%に上がるということで、非常に微増、〇・〇一ポイントぐらいの微増にしかすぎません。

 また、米国、日本などは、ドナー国というか、最大の出資国でありますけれども、構成比で見てみますと、米国、一六・三八%が一五・九%、日本は七・八六%が七・六五%と、影響力についてもほとんど変わらないのではないかと数字上見えるわけでございますけれども、これがどのようにその目的に資するものなのか、これについてはいかがでしょうか。

    〔委員長退席、三原委員長代理着席〕

木寺政府参考人 お答え申し上げます。

 丸谷委員御指摘のとおり、個々の国に着目しますと、途上国に着目しますと、その票の伸び、基本票の伸びというのはわずかかもしれません。

 ただ、多くの加盟国のうち、例えば上から順番に並べてまいりますと、九十番目ぐらいがトリニダードトバゴになると思うんですけれども、その辺で日本のGDPの一日分という大きさでございます。いかに世界に経済規模の小さい国が多いかということでございます。

 今回の改正は、投票数というよりかは出資比率ということで変わっていく、これは五・五%で基本票は動かさない、以前のように目減りさせることはないということで、下支えをしながら途上国の意見を反映させていく、そういうふうに御理解いただければと思います。

丸谷委員 この世銀の機能の強化あるいは途上国の発言力の強化というのは非常に重要なことでございます。そのために、本協定の改正のみならず、もっともっと前のめりになって我が国も取り組んでいく必要があるのではないかと私は考えます。

 実際に二〇〇七年には、人材育成、教育、職員配置などの多様性包含五カ年戦略が採択をされておりますけれども、さらなる、例えば役員選出の透明化であったり組織そのものの改革について、もっともっと我が国は意見を言っていく必要性があるのではないか、世銀の改革、もっと必要があるのではないかと私は考えますけれども、財務省はどのように考えているのか。財務省から、その世銀の改革についての考え方をお伺いいたします。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 今外務省の方からも答弁がございましたように、世界銀行は、貧困削減、もともと世界銀行そのものがそういう目的でできておるわけですけれども、借入国の市民社会を含めたいろいろな意見を反映していく、そのためには、貸し付けの資本を出している先進国の役割も非常に重要ですけれども、やはり途上国の意見をきちっと反映させていかなきゃいけないというのが我々の方針であり、同時に、日本もTICADを含めたいろいろな貢献をしておりますので、そういうこともきちっと反映するように、今回、投票権では少し下がっておりますけれども、あらゆる機会を通じて世界銀行に対して日本の考え方も伝えていくように努力しておるところでございます。

丸谷委員 今の御答弁では、役員選出の透明化とあるいは職員の給与見直しそのもの、組織そのものの改革というのは今のところ全く念頭にないといった日本政府の答弁だったと思うんですけれども、その点についてはいかがですか。確認をさせていただきます。

中尾政府参考人 失礼しました。今そこの部分を十分お伝えできなかったかもしれませんけれども、もちろん、ガバナンスの面、特に総裁の選出に当たっての考え方、今までずっとアメリカ人がなっておりますけれども、今後それを透明にして実力本位でやっていこうということは、例えば先日のロンドンにおける金融サミットでも合意されておりますし、できるだけそういう方向に行くということです。それから幹部職員についても、できるだけ世界の各地域の人材というものを活用していくということを強く主張しております。

 給料についても、これについては過大な給料にならないように、各国の公務員とかそういうところと比較して過大なものにならないように理事会でもよくチェックしておりますし、実際、その給料の体系については年次報告なんかでも透明に、明らかにするようにしておるところでございます。

丸谷委員 世銀のみならず、次もIMF協定について質問をさせていただくわけですが、今トップ人事等についての御答弁もありましたので、ちょっとそちらの方に質問を移らせていただきたいと思うんですけれども、日本が考えるあるべき国際機関のあり方であったりとか金融機関のあり方について、日本が声を大きく、意見を大きくしていくためには、やはり邦人職員をふやすということと、あるいはIMFにおいても世銀においてもトップ人事に日本が席をとっていくということが必要なんだと思います。

 世銀においては、おっしゃいましたように、アメリカがずっとそのトップ人事を占めている。一方、IMFにおいては、我が国というのは出資額第二位であるにもかかわらず、二〇〇八年の四月三十日現在では、IMFの職員数千九百五十名のうち邦人職員は三十四名で、わずか約一・七%にとどまっておりますし、世銀、IBRDとIDA、四千四百四十人の職員のうち邦人職員は九十六人で、わずか二%にすぎないんですね。トップ人事においては言うまでもなく、IMFはいつもトップが欧州から出て、セカンドの地位には米国出身者でございます。

 これは当然のことながら、地理的な条件というのはこのトップ人事あるいは職員の配置に条件としてはないわけですけれども、実際、IMFも世銀もこのような欧米で常にトップが占められているというこの現状について、純粋にどのような感想を持っていらっしゃるか、外務省からお伺いをさせていただきたいと思います。

橋本副大臣 先ほど財務省の方からも話がありました国際機関、特に今委員の方からも御指摘がありましたIMF等の人事ですけれども、こういった選出方法も含めたIMFのガバナンス向上に関する作業が行われるということもこの中に含まれておりまして、本件については関心を持ってしっかりとやっていかなければいけないというふうに思っているところであります。

 また、やはり邦人の職員の数が少ないんではないかという御指摘ですけれども、外務省としましては、国連を初めとする国際機関の意思決定に我が国の立場や考え方が適切に反映されるためには、この国際機関に幹部職員を含む邦人を輩出することがやはり重要だというふうには考えております。

 このため、国際機関への就職にかかわる各種支援にも取り組んできております。例えば、これまで累次の会談の機会に、総理や外務大臣からも国際機関の長また幹部などに対して直接邦人職員の採用を働きかけてきております。このような努力もありまして、松浦ユネスコ事務局長といった国際機関の長ですとか、川上東ティモール統合ミッションの副特別代表、そして中満平和維持局政策部長が就任をして、活躍をされております。また、今月、この五日には、宇宙飛行士の土井隆雄さんの国連宇宙部宇宙応用課長への採用が国連側より発表されたところであります。

 さらに、外務省では、将来国際機関で勤務を希望する三十五歳以下の若手邦人を対象に、我が国の費用負担で国際機関に派遣をしまして、国際機関への就職に必要な経験を積んでもらうジュニア・プロフェッショナル・オフィサー、JPOですけれども、こういったものなどに派遣制度を実施してきております。本制度による国際機関への邦人職員の派遣数は、昨年度まで累計で千二百五十九名、今年度の新規派遣予定数は三十七名となっているところであります。JPO経験者のうち約六割はその後国際機関に採用されているという実績を持っております。

 このような取り組みの結果、国連関係機関で働く専門職以上の邦人職員は平成二十一年の一月の時点で七百八人となっておりまして、過去十年で五割以上増加をしております。

 今後も、こうした取り組みを初め国際機関への就職にかかわる各種情報の周知あるいは広報や選考状況のフォローアップ、国際機関人事担当への働きかけ、こういった必要な支援措置を積極的に行っていく所存であります。

 こういった幹部の増員をしても、中身がやはり問題だというふうに思います。そこも含めまして、スキルの問題もしっかりと充実をしていかなければいけないということを思っています。

丸谷委員 では、重ねて一つ財務省にお伺いしますけれども、日本の財務省、官僚の皆さん、非常に優秀でいらっしゃいます。そのスキルとかクオリティーを生かして次の職業を日本で得ようとしますと、今、すぐ天下りだということで非常に批判も強い中、本当に十二分にこのスキルを生かすために、例えばIMFとか世銀のトップに入っていくという、言葉は悪いんですけれども、えげつなさがもうちょっと私はあっていい、本当にこういうところで十二分にその力を生かしていただきたい。我が国は出資率第二位なわけですから、もっとトップ人事に食い込んでいこう、外務省としての後押しも必要ですけれども、財務省としてももっと積極的な姿勢で入っていっていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 先生おっしゃるとおりでございまして、トップ人事それから幹部職員に対して、日本が出資率に比較して相当低い代表しか出していないというのは、これは世銀についてもIMFにとっても非常に重要な問題でして、私どももあらゆる機会を通じてそういうことをやっております。

 例えば、大臣が向こうのトップと会うとき、あるいは我々や幹部職員が向こうと会うときにもそういうことを言っていますし、我々も、政府職員を含めて、例えば内閣府の人、エコノミストをIMFに持っていくとかそういうことを含めて、それから、IMFや世銀の人が就職活動を日本でやってもらう、今まで実績のあるような大学に回ってもらって、ぜひこういうところに来てくださいと。

 ただ、IMF、世銀等も博士課程をとっている人を中心的な職員にしておりますので、日本の職員の中で、英語ができて、例えば経済学とか環境経済学とかそういうことの博士号を持っている人がまず少ないというところですね。そういう方の志向性が教職の方に、アカデミックな仕事の方にあるというふうなことも含めて、ぜひ理解を広めて、こういう仕事も本当にいい勉強になるということを広めていきたい。

 それから、財務省の職員に関して言えば、ポストがあればできるだけ我々も行って貢献するとともに勉強させていただく。かつて榊原元財務官の専務理事への候補を擁立してやったこともありますけれども、なかなか今までのヨーロッパの壁とかアメリカの壁も厚くて、我々がやろうとしてもなかなかうまくいかない面もありますけれども、今後ともそういう努力をぜひ続けていきたいと思っております。

丸谷委員 邦人職員につきましては、世銀等に関してドクター課程の修了者がほとんどだという今の御発言もありましたけれども、実際に今非常に、ドクター難民と言うと失礼なんですけれども、ドクターを持っていても仕事がないという人も非常に多くいらっしゃいます。海外に行って留学をしてドクターを取って日本に帰ってきたんだけれども、就職する先がないという人もたくさんいますし、また、そういった方プラス、JICA等で派遣をされて途上国で経験を積んできた若い人が日本に帰ってきたら職業がないとか、そういった方も多くいらっしゃいますので、本当に非常に、人材育成と、またどのような人材を日本が持っているのかというところも、いろいろな省庁と連携をしながら、ぜひ邦人職員の増加を目指して、省庁の壁を乗り越えて頑張っていただきたいと思いますし、また、トップ人事にもどんどんどんどんつけるように、厚い壁を破っていっていただきたいと思います。

 続いて、IMF協定についてですが、実際には我が国の経済力とそれから出資率というのが、私はこれは合っていないのではないかというふうに思います。今回の改正によって、新たなクオータ算定方式になりました。GDP、開放性、可変性、外貨準備の変数によって単純化し透明化するということになっているわけですけれども、日本が、この計算でありますと出資率八・〇%なはずなんですが、実際には六・五六%に抑えられております。IMFにおきましては出資率イコール発言力につながっているということを考えますと、我が国の出資率、もっと多くていいのではないかと思いますが、どうしてこういった差異が出てくるのか。また、今後どのように出資率、配分を見直ししていくべきだと我が国は考えているのか。この二点についてお伺いいたします。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 先生おっしゃいましたように、我が国の計算上のクオータ、出資率は、GDPとかいろいろ要素がありますけれども、八・〇%ということですけれども、今回増資をいたしましても六・五六%ということで、若干開きがございます。

 ただ、戦後ずっと、一九五〇年代、五二年に加盟いたしましてからずっと、経済力の状況に応じていろいろな努力をして修正してきた。ただ、増資の機会がないと、IMFの新たな資金が必要なときでないと増資が行われない。増資が行われる規模が小さければ、余分に出す国があったとしても、日本なんか余分に出すんですけれども、調整がどうしてもおくれがちだということがあって、相当長い時間、日本がIMFに参加いたしましたときは、クオータのシェアは二・八六%でした、それからいろいろな努力を重ねて交渉をしてここまで引き上げてきたわけですけれども、今でも開きはございますので、調整に努力していく所存でございます。

 一方で、新興国の方はもっと差があるところもありまして、日本の相対的な経済力は世界の中で非常に大きいですけれども、ほかにももっと伸びている国もあるので、今後、そういう経済力をきちっと反映させていくという意味では、新興国あるいは我が国、両方について努力していきたいと思います。

 ただ、増資の規模が小さいときには、一回での増資ではなかなか調整されないという点があるということでございます。

丸谷委員 ありがとうございます。

 では、時間がなくなってきておりますので、あと、最後、二つの協定について質問をします。

 日・香港刑事共助協定についてでございますけれども、これは先ほど三原先生も質問をされていました。話を聞いていてまだちょっとわからないんですが、協定第一条の4の趣旨、これは、香港がアジア地域において世界の金融センターであるということ、あるいはマネーロンダリング等の犯罪が非常に多いと想定をされていることでこの第一条の4というのは制定されているものと思います。そうであれば、逆に、脱税案件において、その租税を徴収するということが例えば我が国にとっては非常に重要になってくるはずですが、それは結局徴収に至らないような捜査共助になってしまうのではないかという懸念がまだぬぐい切れないのですけれども、もう一度説明していただけますか。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどの御説明と若干重複するかもしれませんが、この協定に基づいて行われる共助というのは、あくまでも刑事上の手続について犯罪に対処をするということがこの協定の目的となっているということでございます。

 租税に関する問題といたしましては、租税の賦課徴収ということももう一つの問題としてあるわけでございますけれども、租税の賦課徴収ということと、租税に関連する犯罪への対処ということは、これは法的な手続、法的な意味づけにおきましても、またそれにかかわる手続、それからどのような機関が関連をするかという点についても違っているということでございますので、香港側においては、この二つのことをきちっと峻別をして、この協定については本来の目的であるところの犯罪に対する対処を行うということが目的であるということを徹底するためにこの規定が置かれている。その意味で、先ほどの御説明の中でも、これは確認的に置かれているというふうな御説明をさせていただいたのはそのようなことでございますので、租税の賦課徴収ということと犯罪に対する対処ということ、それぞれの目的というものを区別して対処をするという考え方でございます。

丸谷委員 そうしましたら、例えば日本人の脱税犯がいます。我が国としては、これを摘発して、本来支払ってもらうべき税金と罰金と追徴金を徴収しなければならないような場合があります。この場合に、香港は、犯罪事実に関する部分でしか刑事共助はしてくれない、税金の徴収等については資料提供等を拒むことができるというのが理論上なされるわけですね。この確認と、今後こういった金融センターを抱えているような国と刑事共助を締結していく場合は同様にこういった規定が想定されるのか。この二点についてお伺いします。

北野政府参考人 今の御質問の、二点内容があったかと存じます、前者の方について申し上げますならば、この協定に基づいて共助を要請する側は、どのような犯罪について共助を求めるのかということを示した上で相手側に対して共助を求めるということでございますので、それが租税に関連することであっても、犯罪がそこにあるということであれば対象になりますし、それを求める動機というものが租税の徴収ということであれば、これは少なくともこの協定の対象ということにはならないということでございます。

 二点目の、ほかの国との関係ではどうかということでございますけれども、先ほど別の者からも御説明をさせていただきましたけれども、この規定につきましては、これまで我が国が締結をしている日米、それから日韓、日中でこのような規定というのは置いてございません。香港の側として、先ほどから御説明をしております二つの点、一つは租税の賦課の問題、もう一つは犯罪への対処の問題というものを厳格に対応するということで、彼らの方からこの点について提起があり、議論したものでございますので、必ずしも今後同様の規定が入るということにはならないのではないかというふうに考えております。

丸谷委員 では最後に、日中領事協定について一つだけ質問をさせていただきます。

 先ほども三原先生が御質問されていましたけれども、これは通報の義務化及び迅速化というのがあります。一方で、非常に懸念される方においては、これは人道的にいかがなものかと。ウィーン条約ではこれは義務ではないんですね。本人から要請があったときにその人の国に知らせるという仕組みになっているわけです。

 日中領事協定においては、これは義務ということで、例えば、知らせてほしくない人がいる、あるいは、日中において政治犯の扱いとか概念が違うということを考えたときに、これは人道上懸念されるものはないのかどうか、この点についてどういった議論がなされたのかということと、この必要性について最後に質問をさせていただきます。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員が御指摘ございましたように、この領事通報の義務化につきましては、やはり自国民の保護、日本の場合には邦人保護と、それから本人の意思を含めた人道的配慮、この二つをどうバランスしていくかということが非常にポイントであろうかと思います。

 そうした観点から我々は交渉を行ったわけでございますが、最終的には、やはり今、日中間で人の移動が大変ふえている、その中で邦人保護業務も大変ふえております。そういった中で、邦人の保護という観点から、この協定で、要請があるか否かにかかわらず拘禁の日から四日以内にはきちんと報告をしてくださいということを先方の政府に約束させた上で、他方で、別の規定で設けておりますが、本人の意思ということでございますけれども、もし御本人が文書をもってそれは嫌だということを明示的に表明する場合には、我々は、面談、文通等の行動は差し控えるといったような規定でもって御本人の意思が尊重されているということでバランスをとったわけでございます。

丸谷委員 以上で質問を終わります。

 ありがとうございました。

三原委員長代理 次に、鉢呂吉雄君。

鉢呂委員 民主党の鉢呂吉雄です。

 きょうは、中曽根外務大臣に考え方を聞かせていただきたいと思います。

 今回は、四本の協定という中で一番大きな問題はやはり日中の領事関係に関する協定ではないか、こういうふうに私は思います。

 そこで、大臣も御案内のとおり、二〇〇二年から七年たつわけでございますが、中国との関係で、領事館にかかわる問題で、不幸というか決着のつかない問題が三つほどある。瀋陽の領事館の五人の駆け込みに関する中国側の対応、あるいはまた在上海総領事館等の暴行襲撃事件、そしてまた上海の日本館員の自殺事件、この問題があるわけであります。

 私ども民主党の部門会議でも、この協定自体について真っ向から反対という形の意見は出ませんでしたが、どうも皆さん腑に落ちない。この問題は本当にきちんと決着がついた上で、あるいはきちんとこの問題についての考えを入れ込んだ中での協定であるのかどうか。確かに、瀋陽の問題については、領事館の不可侵という形の入れ込みはあります。二〇〇二年にああいう事件が起きてから、川口外務大臣の当時から、この問題で五年越しのこの協定の交渉をやってきたというふうに私どもは受けとめております。

 しかし、ウィーン領事関係条約がある中で、日本としては三番目の中国と。ウィーン条約以前に二カ国、アメリカ等あったわけですが、それ以降では初めてというふうにお聞きをしておるだけに、この協定の持つ意味はどういうところにあるのか。

 まず、経過等について細かいことは私の方からしゃべりますから、このような状況で、三つの事件、問題について、きちんと決着したというふうに大臣としてとらえておるのかどうか。まず、この辺からお考えを聞かせていただきたいと思います。

中曽根国務大臣 今お話がありましたけれども、二〇〇二年五月の在瀋陽日本国総領事館の事件につきましては、中国側に抗議、申し入れを行いましたほか、日中領事協定の締結を含めまして、再発防止のための協議を行っていくことで一致をいたしました。その後、再発防止のための協議の結果を踏まえまして、平成十五年四月に本協定締結交渉を開始したところでございます。

 また、二〇〇五年四月に中国の国内で生じましたデモ活動に伴う我が国の公館等に対する暴力的行為につきましては、累次にわたり、陳謝、それから原状の回復等を含めた中国側の責任ある対応を求めたわけでございますが、これに対し中国側は、国際慣例及び国際法の関連する原則に従って適切に処理する旨述べています。

 また、原状回復につきましては、在中国日本国大使館、それから同大使公邸、また在上海日本国総領事館のいずれにつきましても、中国側の費用負担によって既に修復をされています。さらに、お見舞いと遺憾の意が表明されているところでございます。

 また、二〇〇四年五月の在上海日本国総領事館の館員の死亡事案につきましては、中国政府に対しまして厳重な抗議を行いますとともに、事実関係の究明を累次にわたり求めました。

 いずれにいたしましても、政府といたしましては、中国側との間で、委員御指摘のこれらの事案の再発防止を十分念頭に置きつつ、日中領事協定締結交渉を鋭意進めてまいりました結果、昨年の十月に署名に至ったというところでございます。

鉢呂委員 この間の国会での外務委員会等での議事録を見せていただきました。

 例えば、三年前になりますが、平成十八年の六月の衆議院の外務委員会、麻生外務大臣の答弁で、この瀋陽問題については、それぞれ今協定の協議をしておるということでありますが、公館の暴力行為については、陳謝を求めているが、その回答、表明はいまだないということで、信頼醸成の上からもこの陳謝というのは非常に大事だ、こういうふうに当時の麻生外務大臣は答弁をされています。

 それから、上海の自殺問題については、ウィーン条約上の明確な義務違反ということで、厳重な抗議と、そして真相の究明、事実関係の究明ということを求めておる、しかし、放置しておるわけではなく、その後も引き続きやらせておるけれども現状はそういう状態だ、こういうふうに麻生外務大臣は述べています。

 それから、去年の四月十八日、これも当外務委員会の小野寺副大臣の御答弁ですが、いろいろ述べておりますが、継続してやっておるとか、陳謝に至っていない、あるいは事実関係の究明も累次にわたり求めているがそのさなかである、こういう答弁で終わっておるわけであります。

 きのう、事務レベルで外務省の中国・モンゴル課の課員にペーパーを求めましてお聞きした段階でも、小野寺副大臣以上のことはこの一年間でもほとんどないという形でございます。

 こういう形で、外務大臣が直接かかわってお話をした経過が歴代あるのかどうかというふうに私は思うのであります。

 実は、大臣が中国の楊外務大臣とこの六月七日に、一時間弱の、五十五分間の外相会談を行ったということで、外務省のペーパーによりますと、日中関係、総論としては、麻生総理の訪中が多くの成果を上げたことを評価しているし、本年後半も引き続き、このよい関係を保ち、ハイレベルでの信頼関係を国民レベルに拡大していくことが必要であるという点で一致した、こういうふうに述べておるわけであります。

 私は、例えば陳謝とかいう問題であれば、やはり外務大臣が政治家として、中国側に、これら二つの問題について、修復だとかそういうことはやっておるけれども、やはりここは、こういう過去の不幸な問題については謝るところは謝ってほしいというようなそういった問題がなくして、このままいつまでも、外務大臣、きょうもこの問題は出てくると思います、こういう問題をいつまでも引きずることは私はならぬのではないかなと。

 ですから、こういう総論としてのハイレベルの信頼関係があるというのに、いささか私は、日本の国民として、時間がたったからもう忘れたというような問題ではないと私は思いますから、やはりこういう問題は政治決着をつけるということが必要ではないか、こういうふうに思います。その陳謝の部分について、大臣として、外交というのは相手側との話ですから、事務レベルでいつまでも引きずっている、また、国会でもこういう形でいつまでも問題先送りという状況であってはならない、私はこう思うので、大臣の決意を、ここで幾らしゃべってもそれは何もなりませんけれども、相手国とこの問題について終止符を打つという点の決意を聞かせていただきたいと思います。

中曽根国務大臣 先ほどからお話にありますこの三つの事案というものは、大変重要な事案でありますし、また、死亡事件にも至っているものでございますので、きちっとした決着といいますか、そういうものをやはり行うことが大事だと思っております。

 先ほど経緯等につきましては御説明いたしましたけれども、やはりまだ最終的なといいますか、委員がおっしゃいますような形になっていないところもあるわけでありまして、私どもといたしましては、引き続いてこれらの問題については中国側に対してしっかりと対応を求めていきたい、そういうふうに思っているところでございます。

鉢呂委員 いろいろなレベルの話はあると思いますが、この外相会談で、このような形で中曽根外務大臣も、双方からというふうな書き方をしておりますが、よい信頼関係を拡大していくというふうに言うのであれば、のどに刺さったとげは、やはり外務大臣の段階できちんと終止符を打つということが必要ではないでしょうか。一般的な答弁ではなくて大臣の、私はそんな難しいことを聞くものではありませんから、どういった終止符の打ち方を考えているんですか。単に一般的に事務レベルで。もうほとんどこの二、三年ずっと、この問題について何か具体的に話をしたということはないように私は大体きのう受けとめましたけれども、やはり大臣として、陳謝という部分ですよ、もう一つ言いますけれども、その前にもう一度その部分について答えていただければと思います。

中曽根国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、これらの事案につきましては、陳謝を含めまして、それぞれの事案に対しましての適切な対応というものを私どもとしては求めているわけでありますが、中国政府からは陳謝の意はまだ表明されていないところでございます。

 したがいまして、私も外務大臣といたしまして、今委員がおっしゃいましたように、この件についてはしっかりと中国側に対して適切な対応を、また陳謝を含めて求めていきたい、そういうふうに思っております。

鉢呂委員 そのようにお願いをいたしたい。ここにも書いてありますように、ハイレベルの意思疎通が不断に行われておる、こういうふうに言っているんですが、それだけの関係に楊外務大臣とはなっておるのではないか、私はこう思いますので、少し厳しかったんですけれども、ぜひ大臣として、機会を見てお願いをいたしたい。

 その中で、特に上海の自殺事件については、真相の究明というものが、こちらは求めておりながら決着がついておらないという問題がございます。そこで、具体的に、真相究明するに当たってどういうふうな形でいこうとしているのか。

 私は、きのう、事務段階でありますけれども、この協定の十四条に、何か事があったときには、両国の代表者は、「共通の関心事である領事に関する事項について相互に協議するために随時会合する。」、そういうふうに十四条に書いてあります。これを使ってこの真相究明、この種の問題が起きたときに、こういった問題で会合するんですか、あるいは、この上海の自殺事件についてこの十四条を使ってやるんですかというふうに言ったら、そうでもないかのような、課長よりもまださらに下の形でありましたから、そこまで私厳しくは聞かなかったんですが。もしくは、去年の十月に署名したというのであれば、この十四条を使って上海事件の真相究明の両国での会合を持つとか、そういう提案があってしかるべきではないか。建設的に言えば、私はこのように思うわけですが、大臣としてのお考えを聞かせてください。

中曽根国務大臣 在上海総領事館の館員の死亡につきましては、我が国は、この事案の背景には、現地中国側の公安当局関係者によります、領事関連に関するウィーン条約上の接受国の義務に反する遺憾な行為があったと考えているわけでありますが、このような点も踏まえまして、この協定の第六条3におきましては、接受国は、領事機関の公館を侵入または損壊から保護するため及び領事機関の安寧の妨害または領事機関の威厳の侵害を防止するためのすべての適当な措置をとる特別な責務を有するとの領事関係ウィーン条約第三十一条3の規定を改めて明示的に確認をしているところでございます。

 詳しいことは申し上げませんけれども、今委員がおっしゃいましたような第十四条、これに基づいてこの究明を求めていったらどうか、また会合を開催したらどうかというお話でありますが、この協定は現段階ではまだ未発効でございます。具体的なことをそういうところからお答えすることは差し控えたいと思いますが、このような会合においては、日中間の重要な領事関係の議題につきまして、適切な形で取り上げていくことになると思います。

鉢呂委員 六条はそういうことで、今後の安寧の妨害、威厳の侵害等を防止するというための条項で、これは非常によろしいと思いますが、これまで起きてきた問題について、両国で真相を解明するなり、また、共通の認識に至る会合を持つという条項が十四条にあるわけですから、やはり積極的にこれを使っていく。もちろん、共通の関心事であるということがありますから、向こう側が拒否をすればなかなかこの会合になり得ないということがあるんですが、こういう条項をきちっと使うんだということの意味合いがなければ、この協定化をする、中国を三番目の国として、こういったいろいろな問題を解決するものとしてこの協定をつくったんだろうと想像しますから、ぜひそういう形で、大臣から御指示をいただいて指導性を発揮していただきたい、こういうふうに思います。

 もう一つの課題は、先ほど委員からの御質問がございましたけれども、六条では公館の不可侵という条項がございます。四人の部署の同意がなければ接受国の当局が領事館に立ち入ってはならない、立ち入りを禁止するという条項で、ウィーン条約に比べますと非常に厳しい、先ほどお話があったように、等々という抜け道がないだけに非常に厳しいわけであります。

 瀋陽事件に絡んでこういったふうな形をつくったという意味合いはわかるんですが、ただし、不測の事態、例えば火災ですとか災害といったときに、本当にこれが現実的に機能するのか、一秒一分を争う段階で、火災なんかが出て、大使あるいは大使の代理、領事官あるいは領事官の代理、四つの部署の同意というものを仮に得られないといった場合に、みすみす大災害になるということも想定されるわけでございまして、この点については、大臣として、どのようにこれを考えてこういう条項にしたのか、お答えをいただければありがたいと思います。

    〔三原委員長代理退席、委員長着席〕

中曽根国務大臣 領事関係に関しますウィーン条約の第三十一条の2では、接受国の当局は、火災その他迅速な保護措置を必要とする災害の場合には、領事機関の長の同意があったものとみなして領事機関の公館に立ち入ることができる旨を規定しています。一方、この協定の第六条の2では、このようなみなし規定を置かずに、領事機関の長等の同意がある場合を除くほか公館には立ち入ってはならない、そういう旨規定しているところでございます。

 このように、この協定は、領事機関の公館の保護を強化する一方で、接受国の当局に対しまして立ち入りの同意を与える者として、領事関係に関するウィーン条約第三十一条の2にはない外交使節団の長の指名した者を追加しているところでございます。これによりまして、外交関係に関しますウィーン条約が接受国の官吏の公館への立ち入りについての同意を与える者を使節団の長のみに限定しているのに比べまして、よりこれは現実的でかつ適切な対応がとれるよう配慮したものとなっていると考えているところでございます。

鉢呂委員 その点はそういうことなんですが、むしろ不測の事態、これはもう政治的な何か公館を侵害するというようなことでなくて、火災、地震、災害、こういったときに、こういう同意なくして一切これはまかりならぬ、消防署ですとか警察が立ち入ることはできないというようなことに対して、本当に対応できるんでしょうか。

中曽根国務大臣 この当該領事機関の長またはその指名した者または派遣国の外交使節団の長もしくはその指名した者が立ち入りの同意を与えるに当たっては、これらの者が必ずしも現場にいる必要はないわけであります。今後、この当該領事機関の長もしくはその指名した者または派遣国の外交使節団の長もしくはその指名した者との間での連絡体制を中国との間で確認していく考えであります。

鉢呂委員 私は、かたいことを言う必要はないんですが、そういった場合に、大臣、例えば先ほど言ったような、第十四条を使って別途の、別途といいますか、そういった事態に対応する協議を経て取り決めをするというようなことがあり得るのかどうか、あるいは、そういうものは一切ないということなのかどうか。その点、確認をしておきたいんです。火災とか不測の事態ですね。

中曽根国務大臣 先ほどからお話ありますけれども、そういうような緊急の事態に対応できるように一人追加して指名しているところでございまして、運用上問題は起きないもの、そういうふうに考えております。

鉢呂委員 それでは、ちょっと質問の順番を変えますが、日米安保条約の核持ち込みの密約問題について若干聞かせていただきたいと思います。

 これは過日の報道でありますけれども、一九六〇年の日米安保条約改定時に、核兵器を積んだ米軍の艦船あるいは飛行機が日本に立ち寄るという場合には事前協議の対象にならないといった観点で、文書で秘密合意をしておるという報道がありまして、四人の事務次官経験者にそれぞれインタビューをして、この問題について報道をしておるわけでございます。

 中曽根外務大臣はこの報道を承知しておると思いますけれども、まずそれについてお聞かせをいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 報道については承知をいたしております。

鉢呂委員 この中で、外務省はそういった密約はないんだ、この報道後にもそういったペーパーを出しておるわけでございますが、外務大臣として薮中現事務次官にこういった密約があるかどうか確認したことがあるかどうか、まずそこからお聞きをさせていただきます。

中曽根国務大臣 政府の立場というものは、もう従来から申し上げているとおり、御指摘のような密約は存在しない、そういうことでございまして、この点につきましては、当委員会でも再三申し上げておりますけれども、歴代の総理大臣及び外務大臣がこのような密約の存在を明確に否定しているところでございます。

 私自身は、次官との間でこの問題について話をしたことはございません。

鉢呂委員 この報道によれば、四人の事務次官経験者はすべての外務大臣、総理大臣にこの密約といいますか、アメリカとの秘密の合意について伝えてはおらないと。当時の橋本総理大臣と当時の小渕外務大臣、そして総理大臣になったということで、このお二方に伝えたというような報道をされておるわけでございます。

 中曽根外務大臣は、この密約について、秘密合意については、事務次官なり北米局長から、こういう約束はありますというお伝えはあったでしょうか。

中曽根国務大臣 先ほど申し上げましたように、事務次官との間でこの件について、今のいわゆる密約等についての話をしたことはございません。

鉢呂委員 私どもは野党でありますから、本当の意味で私どもが政権を担うといったときには、国家秘密といいますか、こういった秘密事項というものについての伝達というものは、やはりきちんとしていかなければならない。

 私ども、野党にいれば、外務省のお役人さんからは、もうすべて秘密のような形でなかなか答えていただけないことが多いんですが、中曽根外務大臣として、これは国家秘密ですよといったことで、外相就任時に伝えられた秘密の事項というのは何本ぐらいあるものでしょうか、あるいはないものでしょうか。中身を聞くわけじゃないですから、何本ぐらいあるかどうかぐらいまでは答えられると思いますので、お答え願いたいと思います。

中曽根国務大臣 非常に珍しい御質問でありますけれども、秘密というものは、秘密ですから、あるかないかわからないのが秘密でありまして、そのような、先ほど申し上げましたけれども、先ほどの安保条約に関することも含めまして、事務次官あるいはその他の外務省の者と、いわゆる密約とか秘密とかいうことについて私は話をしてはおりません。

 繰り返し申し上げておりますとおり、安保条約のこの核持ち込み密約と言われるものにつきましては、そのような密約は存在しないわけでありまして、したがいまして、そもそも、御指摘のように、先ほどおっしゃっていましたような、政権がかわったりとかあるいは大臣がかわったり、そういうときの引き継ぎ云々といったような、そういう必要はあるとは全く思っておりません。

鉢呂委員 非常に重要なことでありますから、あるかどうか、個別のことはまた別として、今申し上げましたように、国家秘密に類することは私はあると思います。しかし、それがきちんと最高責任者の外務大臣なり副大臣に、レベルがありますから、外務大臣だけかもわかりません、総理大臣だけかもわかりません、そういったレベルできちっと伝えられているかどうか、この点はやはり私は大きく問題であると。

 ここに述べていますように、ライシャワー駐日大使、当時のアメリカ大使、一九六三年、大平外務大臣、この立ち寄りについては核の持ち込みではないという確認をして、日本語で内部文書で明記されて、北米局と条約局で管理されてきた、こういうふうに具体的に述べております。そして、これは次官から次官に、次の次官に確実に引き継ぎをされてきたということでございます。

 しかし同時に、先ほど言ったように、これは報道ですけれども、別の事務次官の経験者は、信用した政治家だけ密約内容を知らせていた、その密約内容を話していいかどうかの選別は役人が行ってきた、ここまで述べておるわけでございます。

 私は、密約があるかどうか、個別のことについていけば、それは言えないという場合もあると思いますが、こういった形で日本の国家秘密といったようなものが行政府の最高の責任者に伝えられないとすれば、これはゆゆしき事態であって、外務大臣も、単にそのように言われておるから私は聞かないんだ、こういったレベルの話ではない。本当に自分がその責任者に立った場合に、いや、過去からそういうふうに言われているからというだけでは済まないのではないか、私はこういうふうに思うんです。どうですか。

中曽根国務大臣 先ほどの御質問にも関係することでありますけれども、外交ですから、いわゆる秘密的なものはいろいろございます。それも、大変重いものからいわゆる一般的な情報に近いものまであるわけで、私のところにはいろいろな情報が上がってまいりますし、その中にはいわゆる秘密的なものもあるわけでございまして、大臣が何も秘密的なもの、秘密というとちょっとあれですが、外交上支障があるということで秘密にしているようなことを私自身が全く知らないということではございません。

 それから、今お話ありました、新聞報道によります過去の次官の発言等につきましては、これはまさに新聞報道でありますし、私自身も、この中で記事として書かれていることが本当に事実なのかどうか、これは報道を通じてということでありますし、この取材がどういう形で行われたかとか、そういうことも全く存じておりません。

 ただ、この新聞記事をもとにいろいろ御質問がなされているわけでありますが、私といたしましては、先ほどから申し上げておりますとおり、安保の件に関しましては、安全保障条約の核持ち込みのことにつきましては、いわゆるこの交換公文において事前協議の対象となっておりますけれども、我が国政府に対してそのような、米国政府から事前協議の申し入れが行われたことはないわけでありますから、密約もない、そして、核の持ち込みも行われていない、そういうふうに判断をしているところでございます。

鉢呂委員 これは報道ではありますけれども、極めて重要な形でございます。

 河野委員長に私はお願いがありますが、この橋本、小渕両総理大臣にだけ述べたというふうに、当事者でなければわからない形で言っています。橋本総理大臣当時の事務次官は柳井俊二さん、それから、小渕総理大臣の当時の事務次官は川島裕さん、このお二人でありまして、ぜひ当委員会に参考人として招致を願いたい。特段の御指導を発揮して呼んでいただきたいと思います。

河野委員長 この密約問題は非常に重要な問題でございますので、この外務委員会でもこの問題をきちんと取り上げて議論をする必要があると思います。

 詳細につきましては、理事会で議論させていただきたいと思います。

鉢呂委員 ありがとうございます。

 私ども民主党も、政権交代、政権交代と言っておれば済む時代ではなくなりました。本当に政権を担ったときに、外交関係、最高レベルの問題も含めて、これはまだとらぬタヌキの皮算用でありますけれども、中曽根外務大臣からきちんと機密レベルの問題等も含めて伝達をしていただいて、誤りのない外交というものを継承していく必要があると私は思っておるところでありまして、例えば鳩山代表と麻生総理の間に、やはり外交は継続であると同時に、ある面では共有した具体的なものを持って当たっていく必要がある、私はこういうふうに思っています。

 私どもも、やはりそういう面で、政権交代をした際にどういった形でそれらを継承してやっていくのか。同じ政党で外務大臣がかわって、それを単に引き継げばいいという形でないだけに、とる前からの話であっては困りますが、やはりそれなりの政権の引き継ぎ、また、内閣とはいいながら、このような問題が官僚の一存で最高レベルに伝わっておらないというようなことが事実であるとすれば、これは大変ゆゆしい問題でございますから、そういった問題も含めて、やはりある面では共有を持ちながら政権移譲をきちんとしていくということが今必要になってきておるんだろう、こういうふうに私は思いますので、この問題、委員会でも御議論をいただければありがたいな、こういうふうに思います。

 順番が逆になっておりますけれども、次は、国連安保理の北朝鮮制裁決議案の合意についてですが、きょう現在、まだついておらないようでありますので、一つは、北朝鮮の政治情勢、これについて大臣の御見解をお伺いいたしたい、こういうふうに思います。

 四月五日にミサイル発射、また、五月二十五日に核実験の実施、そしてまたさらにミサイルを発射するかというようなことが言われておるわけでございます。非常に北朝鮮の強硬といいますか挑発的な路線があらわになっておるわけでありまして、国際社会一致して、これらの行為に対して断固たる非難の声を上げておるにもかかわらず、しゃにむにこういう形になっておるわけであります。一方で、アメリカと直接交渉をするためにこういった外交カード、危機カードを切っておるのではないかというような見方もあります。

 外務大臣にお聞きいたしたいんですが、昨年のテロ国家指定解除、あるいはまた、この一連の六者協議で、いわゆる核の無能力化についてのもっと詳細な文書化のところで協議が停滞しておったことは事実でありますけれども、こういった北朝鮮から見て対外的な問題が引き金になって、このような非常に瀬戸際的な、挑発的な行為に及んでおるのかどうか、大臣としての御見解をお聞きいたしたいなと思っています。

中曽根国務大臣 北朝鮮は、四月に長距離弾道ミサイルを発射いたしまして、また、五月には核実験を行ったわけでありますが、これらの行為というものは国連の安保理決議違反でありますし、断じてこれは容認することができないことであるわけでございます。またさらに、いろいろな今後の状況についても報道等もあるところでございます。

 北朝鮮のそういう強硬的な路線といいますか、そういうことの意図、こういうものを私どもが理解する、あるいは推測するということは困難であるわけでありますが、また適当でもないと思いますが、いずれにいたしましても、やはり今回、安保理におきまして、この核実験は明確に安保理決議違反である、そして、今後もこのような行為を行わないように、そういう強い反対と非難を表明し、そして、北朝鮮に対しての、決議を守るような、そういう決議をつくるということが最も大事である、そういうふうに考えております。

 北朝鮮は、こうした国際社会、また関係国の声にもやはり真摯に耳を傾けて、さらなるいわゆる挑発行為、そういうものを控えて、そして六者協議に復帰をして、また共同声明を完全に実施する、それが北朝鮮自身の利益でもあるということをやはり理解すべきである、そういうふうに思っております。

 我が国といたしましては、引き続いて、北朝鮮の動向を注視しながら、米国とか韓国などと緊密に連携をしまして、北朝鮮をめぐる諸懸案の解決に最大限努力をしていきたい、そういうふうに思っております。

鉢呂委員 北朝鮮の路線の意図について、外務大臣は表明することに非常に消極的でありますけれども、情勢分析、情報収集による分析というのは非常に重要である、どういった意図かというものを見間違ったときの打撃はやはり大きいものがあるのではないか、私はこういうふうに思います。こういった公式的な場で表明するかどうかということはいろいろあろうかと思いますけれども、情報分析というものはやはり十分やっておく必要があるのではないかな、こういうふうに思います。

 そういう中で、報道もいろいろありますけれども、北朝鮮内部のいわゆる後継者問題等が非常に具体的に出てきておるのではないかなと。私も余りテレビは見ないんですが、いろいろ報道していますね。きのうきょうは、金正日総書記の健康が一段と悪化したのではないかというような言われ方もしていますし、後継者が三男の正雲氏で、いろいろなところに金総書記に随行しておるというような報道もあるようでございます。

 この北朝鮮の内部固めといいますか、後継問題も含めて、内部固めの形でミサイル、核、こういったものを使いながらやっておるのではないかというような見方もあるんですが、外務大臣としての御所見をお伺いいたしたいと思います。

中曽根国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、最近の北朝鮮のミサイルや核の実験などを行う行動というものについては、マスコミなどでいろいろな報道がされたり、またいろいろな見解というものも出されているようでございますけれども、私はやはり、北朝鮮の本当に意図するところというものは、理解するというのは非常に困難でありますし、また、これを推しはかるということも適当ではないのではないかと思います。

 ただ、大事なことは、やはり、引き続いて北朝鮮情勢については強い関心を持って各種情報の収集を行っていく、また分析を行っていくということであろう、そういうふうに思います。

 以上でございます。

鉢呂委員 国連安保理の制裁決議について、現状どういう形になっておるのか。まとまっておらない、特に貨物検査についての、義務づけにするかどうかであともう一歩のところでというところにあるわけで、時間もなくなったんですが、大臣から、今どういった局面にあるのか、お伝えを願いたいと思います。

中曽根国務大臣 安保理における決議の協議につきましては、いろいろ報道もされておりますし、現在いわゆる大詰めのところに来ている、そういうふうに思っておりますが、今、大変精力的な協議を行っているところでございます。

 具体的な交渉の内容につきましては触れることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、私どもは中国との間で、もう委員も御承知かと思いますけれども、楊外交部長との間で意見交換を行いまして、その場合も、中国からも、北朝鮮による核実験やまた核保有には断固反対する、そして、できるだけ早期に適度でバランスのとれた決議を採択することに同意する、賛同する、そういう立場が表明されているところでありまして、安保理理事国が一致結束して強い決議を迅速に出すということが一番大事だ、そういうふうに思っているところでございます。

鉢呂委員 もう時間がなくなりましたが、最後に一点だけ、先ほどと重なるんですが、大臣。

 与野党の外交問題のトップにおける情報の共有というのは非常に私は大事ではないかと。我が党も、例えばプーチンさんとかクリントン国務長官とかが小沢代表に会うとか、こういう形になってきております。私なんかも本当のぺいぺいの次の内閣の外交担当ですが、最近では、ニュージーランドの現職の外務大臣とかカナダの外務大臣とかが来る形でございます。

 与野党で対立するものは対立するということはこの国会でやるべきだと思いますが、ある面で、先ほどの国家機密に関することはこれは政権移譲時だと思いますが、やはり外交に関しては国益に沿って、そんなに与野党が対立をして、従来は野党が一番責任があったんですが、政権をとるまでに至らないという時代が長く続いて、チェック機能ということに終始をしたときもあったわけでありますが、やはり外交に関しては情報の共有というものがあってしかるべきではないか、こういうふうに思いますが、大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。

中曽根国務大臣 委員も今お話しされましたけれども、外交はやはり国益また国家主権を守るということがまず大前提であります。そして、そのことにつきましては与党も野党もなく、これは同じような考え方で、どうあるべきかということを議論しながらやっていくということは私は大変大事なことだと思っております。

 しかしながら、現実問題といたしましては、例えば、ソマリアの海賊に対する対応の問題、アフガニスタンでの問題、給油の問題、あるいは沖縄を中心とする安全保障の問題等、意見の違うところもございます。そういうものはありますけれども、長期的に、また国家的立場で議論をしながら、そして一番いい方法を選択していくということが大事ではないかと思っています。

鉢呂委員 終わります。

河野委員長 次に、近藤昭一君。

近藤(昭)委員 民主党の近藤昭一でございます。

 幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、日本・香港刑事共助協定について質問をしたいと思います。

 昨年四月にこの委員会で審議をされました日中刑事共助条約、昨年の十一月に発効されたと思いますけれども、その後の日中間の刑事共助の状況はどのようになっているか、お聞かせをいただきたいと思います。

小原政府参考人 日中刑事共助条約、御審議をいただきまして、日本側での手続が終わりまして、その後、この刑事共助条約のもとで、日中間では直接、外交ルートを通じなくても、双方の刑事当局同士が情報を交換したり協力ができるということで、現在、そうした体制のもと、日中間の刑事共助の協力を強化しているところでございます。

近藤(昭)委員 例えば、この刑事共助条約を通じてというか、発効した後のそうした具体的な共助状況、件数等はいかがでありましょうか。

甲斐政府参考人 日中刑事共助条約発効後、平成二十年末までの日中間の刑事共助の実績につきましては、受託事件はまだございませんで、また、法務省を通じた嘱託もゼロ件でございます。

近藤(昭)委員 今まで、この条約がなかったときは、外務省を通じていろいろと捜査の協力をしてきたんだと思います。あるいは、国際警察機構ですか、ICPOを通じてもさまざまな情報提供等々の協力を行ってきたんだと思います。

 この条約ができたことによってどういうふうに変わったのか、あるいは、今もICPOを通じての協力要請がいろいろとあると思うんですが、ICPOを通じての協力要請とこの条約があることによって出てくる協力要請とどのように違うのか、お教えいただきたいと思います。

宮本政府参考人 日中刑事共助条約、これが平成二十年十一月二十三日に発効いたしました。この条約に基づきまして警察で現在まで二件の捜査共助を行っているところでございます。

 もちろん、並行してICPOルートでの情報、資料の交換協力も行っているところでございますが、この条約の発効によりまして、日中間の刑事共助について直接中央当局間でやりとりが可能となったものでありまして、相手国との連絡が一層緊密となり、手続面においての効率化、迅速化が期待できるところと考えております。

近藤(昭)委員 外交ルートを通じるよりも迅速にまた強力にということだと思うんですが、ただ、今も随分とICPOを通じての捜査協力は実際あると思うんですね、多いと思うんですね。

 そうすると、通常とというか、ICPOを通じてでも済むと言うとちょっと語弊があるのかもしれませんけれども、ICPOではできなかった、なかなかやりにくかったというようなものはどういうような案件であるとか、今もICPOを通じての案件が多いと思うんですが、ICPOでいろいろと行われていることはどんなものなのか、お教えをいただきたいと思います。

宮本政府参考人 ICPOルートを通じて行いますものは情報や資料の交換ということでございまして、証拠資料ということになりますとやはり外交ルート、これが今回条約を通じて直接できるようになったということでございます。

近藤(昭)委員 犯罪も国際化をし、また件数としても多く、かなりの多数の案件が出ているということだと思うんです。そういう中で、より密度の高い捜査が必要、より密度の高い資料が必要だという中で、この条約が結ばれ、そしてこれからより機能していくんだと思います。

 ところで、昨年の日中刑事共助条約に続いて香港との刑事共助協定ということになるわけですが、当該の条約と本協定の相違点がどこにあるのか、先ほども少し出ておりましたけれども、お聞かせをいただきたいと思います。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 本協定と日中刑事共助条約とは、その構成や内容におきましてはほぼ同様のものでございますが、主な相違点といたしましては、例えば中国と香港、これは一国二制度ということで、香港には外交、防衛を除きます高度な自治が認められておりますが、そうした香港特有の事情がございます。そうした観点から新たな規定を設けたという点がございます。

 例えば、第十九条の3でございますが、我が国と中国との外交上の経路を通じた紛争の解決といったようなことが入っております。それから、送達される文書の範囲を例えば刑事手続に関する文書ではなく裁判上の文書としたり、あるいは、共助の拒否事由につきまして、請求された共助が当該共助に係る犯罪について被請求締約者の管轄内において確定判決を受けたことのある者の訴追に関連する場合といったのを認めたといったようなことが相違点でございます。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 特異性がある中で香港とも改めて結んだということであります。

 さて、この委員会でも私自身も幾つか刑事共助条約の質問をさせていただいたわけでありますが、刑事共助条約を締結する優先順位といいましょうか、今後の見通しということであります。

 過去の捜査共助請求の実績で多いというのは、例えば香港を上回っているようなところはどんな国がありますでしょうか。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 各国との捜査共助の実績でございますけれども、私が今から申し上げるのは我が国からの要請それから我が国への要請の両方を足し合わせた数ということでございますけれども、上位の国を幾つか御披露いたしますと、米国、韓国、中国、タイ、フィリピン、香港といった国々が挙げられるというところでございます。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 そうした実績がある中で、既に多いところと結んでいるわけであります。ただ、タイとかフィリピン、この辺なども早急に締結すべきだと思いますけれども、そうした今後締結をしていく順番といいましょうか優先順位といいましょうか、その辺はどのようにお考えになっていらっしゃるのか。

 あるいは、その点について例えば警察庁あるいは法務省等々と協議をどのようにされているのか、お知らせをいただきたいと思います。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘ありましたように、近年国際犯罪の増加という状況にございまして、刑事共助条約というものはますます重要になっているというふうな認識でございます。私どもとしては、この刑事共助条約の締結を積極的に推進していくということでやっていきたいというふうに考えております。

 それでは、今後どのような国についてやっていくか、何を念頭に置いて考えるかということでございますけれども、委員から先ほども御指摘ありました各国、地域との共助の実績、それからそれらの国々などとの経済的、社会的な結びつき、それから二国間関係といったものを総合的に勘案するということでございますけれども、このようなものの中でも、先ほどの委員からの御指摘にありましたように、共助の実績というものは非常に重要であるというふうに考えております。

 したがいまして、先ほどの御指摘にもありましたタイ、フィリピン、それから多い国といたしましてはブラジルそれからオーストラリアなども挙げられるかと思いますけれども、このような国につきましても、過去の共助実績というものを踏まえて検討していきたいというふうに考えております。

 このうち、既にブラジルとの間では、司法分野作業部会ということを相手側との間でやる中で予備的な協議を行っているということでございます。それから、現在香港の協定について御審議をいただいておりますけれども、そのほかの刑事共助条約の現状ということについて申し上げますと、ロシアとの間で五月の十二日に条約の署名を行いました。それから、EUそれからスイスとの間でも予備的な協議を実施しているという状況にございます。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 大体そういうような方向性でやっているということでありますが、例えば具体的に、先ほどちょっと申し上げました警察庁あるいは法務省等々との協議、あるいは、そこにかかわるような団体はほかにどういう団体があるのかわかりませんけれども、そういったところとの協議の場みたいなものはあるんでしょうか。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 失礼いたしました。先ほどの御質問にもあった点だと思います。

 この刑事共助条約、今後どのような国とやっていくかということにつきましては、まさに御指摘いただいたように、外務省それから警察庁それから法務省、三省庁で定期的に会合をいたしまして、現状を分析しつつ、今後どのような国とやっていくかということをお互いに討議しながら進めているというところでございます。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 ぜひ、実態に沿いながら、早急にそれぞれ条約締結を進めていっていただきたいと思います。

 さて、そうしますと、こうした刑事共助協定あるいは条約が結ばれているわけでありますが、台湾との関係についてお聞きをしたいと思います。

 日台間の刑事共助に相当する協力関係の実情について説明をいただきたいと思います。

宮本政府参考人 日本警察におきまして、台湾との捜査協力を行う必要がある場合には、ICPOルートにより台湾当局との間で情報や資料の交換を行っているところであります。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 それでは、刑事協定についてはこれぐらいにして、日中の領事協定について幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 先ほどにも出ていたんですけれども、領事関係に関するウィーン条約があるにもかかわらず、今回、二国間協定を締結するに至った経緯と意義はということであります。先ほどからも質問が出ていたわけでありますが、二〇〇二年の在瀋陽日本領事館への脱北者駆け込み事件なども本協定締結の契機にはなっていると思いますが、日中関係の現状や問題点という観点からお知らせをいただきたいと思います。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 中国でございますが、一九七九年にウィーン条約を締結しておりまして、それ以降、二国間の領事関係に関します国際約束の締結に取り組んできておりました。その中で、一九九一年以降、日本に対しましても、同様の約束の締結につきまして要請がありました。

 これに対しまして、我が国といたしましては、一九八三年にこの領事関係ウィーン条約を締結して以降、日中間の領事関係を規律する二国間の国際約束は存在しないことによる特段の不都合が生じていなかったということから、当初、中国からの要請につきましては慎重に対応しておったわけでございますが、先生まさに今御指摘のとおり、その後、日中間の人的往来が飛躍的に拡大しておりまして、例えば邦人保護件数につきましては、一九九一年に百七十二件であったものが、二〇〇七年には二千五百八十件に増大しております。こうした邦人保護を初めといたします領事業務を一層効果的、迅速に遂行する必要性が高まったといったような要因がございまして、そうした背景のもとで、我々としまして、領事関連事案を適切に処理する方策を講じる必要性が生じたわけでございます。

 二〇〇三年四月に、このウィーン条約の規定を確認、補足する等の目的で、日中間の国際約束の作成に向けて交渉を開始いたしました。累次の交渉を重ねた結果、これが昨年三月に実質的な合意に達しまして、今般、国会で御審議いただいているということでございます。

 本協定の締結によりまして、日中間で領事通報の全件義務化あるいは領事機関の不可侵の強化等が定められることになりますので、こうしたことから、両国間の人的往来の拡大に伴う領事業務の効率化、こうした観点から、この協定が非常に意義深いというふうに我々考えております。

 御指摘の二〇〇二年の五月の瀋陽事件でございますが、こうしたことも踏まえまして、その再発防止のためにもこの協定が必要であると考えまして交渉を開始した経緯もございます。こうしたことで、我々、この協定をお諮りしているということでございます。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 二〇〇二年の事件があったということ、また背景には、駐在をするあるいは訪問をする邦人がふえているということがあるんだと思います。

 さて、そういう中で、本協定の第十条で、領事機関の要請により、接受国の地方当局は、領事機関に公共の安全にかかわる情報を提供することを規定し、また、領事機関とその地方当局は、緊急事態に備えて、相互間の連絡経路を維持することと規定をしている。これにより、我が国の在中国領事機関が管轄区域内の中国の地方当局とお互いに常時連絡をとれる体制を整える必要があるということであります。

 大地震等災害発生時や新型インフルエンザ流行における我が国の在中国領事機関の対応や、管轄区域内の中国の地方当局との間の連絡対応体制についてはどのようになっているのか、お知らせをいただきたいと思います。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 我が方の在中国在外公館でございますが、平素から、領事任務の一環といたしまして、邦人の安全確保及び不測の事態の予防等のため、各地の治安状況、邦人を取り巻く安全環境、邦人の事故、トラブル等に関しまして、中央政府渉外担当部門あるいは地方公安部門等から種々の情報収集を行っております。ただいまの御指摘ございました大地震等災害発生や新型インフルエンザ流行などの緊急事案に関しましても、在中国の在外公館は即時に対応すべく館内体制を整える準備をしております。また、平素から、中国の現地関係部門を通じ情報収集を行っておりまして、最新の関連情報を得るべく連絡体制も維持してきております。

 今後、この協定が締結されることになれば、本協定の十条にも基づき、邦人保護の観点から、各在外公館の体制強化及び管轄区域内の中国地方当局との関係強化に一層努めてまいりたいと考えております。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 それで、平素からの情報収集、あるいは緊急時、今も御指摘というかお話がありました、災害等々の発生のときの緊急の情報収集ということについて体制を強化していくということであります。

 ただ、もう少し具体的にお話をいただけませんでしょうか。平素の情報収集に体制はこういうふうにしている、中国側の現地の地方当局とこんなような体制をとっているんだ、あるいは、そういった体制について、例えば、領事館も中国国内に何カ所かあるわけでありますけれども、それぞれの大使館でこういう体制をとりなさいというマニュアルのようなものがあるのかどうか、また、それについて、本国外務省としてどんなふうに確認をしておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

小原政府参考人 領事館の管轄区域、この管轄区域のいわゆる警察あるいは治安当局、こういったところとの間で、我々、常日ごろから緊密な関係を持っておりまして、例えば携帯電話のいわゆるコンタクトポイントということで、そうした緊急時に直ちに連絡をできるような体制を整えておりますし、また、定期的にこうした部門との会合も開いて情報の交換等々をやっておって、万が一のときに備えた怠りない体制というのを日ごろから強化しているということでございます。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 情報を収集していくわけですから、体制が必要であるわけですが、日本の国内でも、災害が発生した等々のそういう情報体制というのはなかなか期待どおりにいかないという場合もあると思うんですが、そういう意味では、かなりきっちりとした体制をつくっていかないといけないと思うんです。

 ただ、今お聞きした限りでいいますと、日ごろからそういった中国側の当局の関係者と密に連絡をとり合っているとか、いざというときには携帯でやるんだということでありますが、そうすると、日本でも、震災等が発生したときにはなかなか携帯が通じなくなったりする場合もあるわけでありますし、いささか心もとない感じがいたしますが、私は、もっとしっかりとした、中国国内でも、いわゆるその中央当局自身も情報収集に困る部分もあるのではないかなと思うんです。

 例えば、それは、中国国内のことをこちらから、日本がどうだこうだと言うことはなかなか難しいんだとは思いますが、ただ、やはり体制を確認しておくという意味では、どうなんでしょうか。中国側の体制の確認あるいは中国側から情報を受け取る、携帯電話だけというシステムではいささか心もとないと思いますが、いかがでありましょうか。

小原政府参考人 こうした相互の情報共有、瞬時の情報共有につきましては、これは中国の公館、日本にあります公館にとりましても同じ問題がございます。

 これにつきましては、まさに本当に相互にしっかりとやろうということで、これはウイン・ウインの関係になっておりますので、我々、中国におきましては、まさに大使館のみならず領事館、領事館の管轄する地域の関係機関と緊密な連携体制をとるようにということで、これは指示を徹底しておりまして、その意味では、例えば連絡先のリストですとかコンタクトポイントでありますとか、ある担当者に連絡したときに連絡がつかないときに次の人にというような形で、これは本当に瞬時に怠りなく連絡がとれる体制というのをとっております。

 それから、中国側の方からも、例えば病院とかいろいろな緊急時のリスト、このリストについては我々入手しておりますので、そういう意味で邦人にもそういったことを、いろいろな、インターネットも通じまして、あるいは定期的な邦人との会合、あるいは連絡ルートを通じまして、そういうことの周知徹底ということを図っておるところでございます。

近藤(昭)委員 おっしゃったように、逆に言うと、日本国内における中国の大使館、領事館、総領事館、領事機関にとっても非常に重要な問題で、直接来る情報よりもテレビから見る情報が早いなんということがないように、ぜひしっかりと邦人保護、また相互の関係という中で体制をきちっとつくっていただきたいわけであります。

 そういう中で、中曽根大臣、どうでしょうか。こうした邦人保護の観点から、こうした現地の対応体制についてしっかりとしていくという決意というかお話をいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 先ほど政府参考人の方から御答弁いたしましたけれども、火災とか災害とか緊急時はもちろんでありますが、また接受国の国内における邦人のいろいろな事態が発生した場合にも的確な対応がとれるように、在外公館の体制をしっかりとしたものにするということは大事でありまして、今後そのような点を心がけていきたいと思っております。

近藤(昭)委員 ぜひ大臣、しっかりとした体制づくりをお願いしたいと思います。

 さて、次に参りますが、今回の協定によって、派遣国の国民が逮捕等拘禁された場合、接受国の当局は当該国民の要請がなくても、遅くとも四日以内に領事機関に通報することと規定している。

 これは既に質問もありますが、中国における在留邦人及び訪中日本人の増加に伴い邦人援護件数も増加している。今回の協定の締結により、中国の当局から在中国日本領事館への通報量が増加することになると思いますが、どのように対応されるのか。また、逆に、日本国内において中国人が犯罪の容疑で逮捕された場合の通報の件数はふえるのか。また、広い中国で、かなり交通の不便な地方等で日本人が拘禁されて援護を求められた場合等の領事機関の対応はどのようになるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども紹介いたしましたが、邦人保護件数、これは急速にふえておりまして、これはもう日中間の人の往来の現状を、このトレンドを考えますれば当然のことだと思います。二〇〇七年には二千五百八十件の邦人保護件数がございます。

 したがいまして、今回の協定によって通報が義務化されました。これによって、邦人から直接大使館あるいは総領事館の方に援護を求めてくるということのほかに、中国の関係当局、地方の当局からも瞬時にこうした報告が入ってくるということになるわけでございますので、そういう意味では、今後こうした業務がふえてくるということは我々としても想定しておりまして、そういった観点から、今体制強化に努めているところでございます。

 例えば、これは総領事館、日本の場合には大使館以外に総領事館が中国に六つございますが、これは二〇〇四年に重慶に開設をいたしまして、二〇〇八年、昨年には青島にも開設をいたしました。

 こうしたように、総領事館を増設するといったようなことも、こうした流れの中で我々として体制を整備していくという観点からは重要であろうと思っておりまして、引き続き、本協定の規定も踏まえつつ、在留邦人保護の観点から万全の体制で努めるべく臨んでいきたいと考えております。

近藤(昭)委員 さて、本協定により、領事機関の長とその指名した者及び大使とその指名した者の四者のいずれかの同意なしには、たとえ火災や犯罪が発生しても地元警察、消防が立ち入れないということになるわけでありますが、実際に大きな火災が起きたときにその権限のある四者が現場にいなければ、連絡がつかなければ、消火活動等が手おくれになりはしないかという危惧を抱くわけでありますが、いかがでありましょうか。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 ウィーン条約の三十一条の2でございますが、これによりますれば、接受国の当局は、火災その他迅速な保護措置を必要とする災害の場合には、領事機関の長の同意があったものとみなして領事機関の公館に立ち入ることができるという規定がございます。

 他方で、本協定では、こうしたみなし規定というものを置いてございません。ただいま委員がおっしゃられたとおり、領事機関の長等の同意がある場合を除くほか、公館に立ち入ってはならないという規定を置いてございます。

 こうした規定は領事機関の公館の保護を強化するという目的で入れているわけでございますが、その際に、同時に接受国の当局に対して立ち入りの同意を与える者として、新たにウィーン条約に追加をして、外交使節団の長の指名した者、ただいま委員から四者というようなことがございましたが、この四番目に外交使節団の長の指名した者を追加してございます。

 したがいまして、例えば、いろいろな、大きな火災があるとかいったようなときにも、こういった追加の者も含めてその判断ができる体制というのを強化して、現場にいなくても、例えば現場といいますと総領事館、これには二十四時間警備官がいるわけでございますから、そういった者とも瞬時に連絡をとって状況を把握して、それに同意を与えるかどうかという判断がここでできるということでございますので、今回の規定によりまして、より現実的かつ適切な対応がとれるような配慮ができているというふうに考えております。

近藤(昭)委員 ちょっと細かいことですが、その指名された方が例えば一時帰国をされているときには、やはり代理の方を指名していくというようなことなんでしょうね。

小原政府参考人 おっしゃられるとおりでございます。これは、そういったときに手抜かりのないように万全の体制を整えていきたいと思っております。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 では、引き続き、国際復興開発銀行協定の改正に関連するといいますか、国際復興に関連することで質問させていただきたいと思います。アフリカの支援についてであります。

 昨年、政府は、国連及び世界銀行と共同で、アフリカ開発会議、TICAD4を横浜で開催されました。昨年五月の本委員会で私も質問させていただきまして、当時、高村大臣から、国連ミレニアム目標の達成に向けて、その実現に向けて頑張る、横浜宣言の中でもしっかりと宣言をするという答弁をいただいたわけであります。

 その後、このアフリカ支援について現状はどのようになっているのか、お聞かせをいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 昨年の五月に横浜で開催をいたしました第四回アフリカ開発会議、いわゆるTICAD4でございますが、ここでは横浜宣言及びその具体的な支援策を示す横浜行動計画が発出をされたわけでございます。

 これらの中におきまして、MDGsの達成、これは成長の加速化、そして平和の定着とグッドガバナンス、また環境・気候変動問題への対応などと並ぶ柱として取り組みを強化していくということがうたわれております。

 我が国は、アフリカにおけるこのMDGs達成に向けました貢献も念頭に置いて、アフリカ向けODAを二〇一二年までに倍増するということを表明しております。

 TICAD4の数カ月後、世界がこの金融経済危機に見舞われてきたわけでございますけれども、ことしの三月にアフリカのボツワナで開催をいたしましたTICADの閣僚級フォローアップ会合、この会合では、この経済金融危機によって、アフリカにおけるMDGs達成の後退が懸念をされてきたわけでありますが、私は、この会議に参加、出席をいたしまして、我が国としては、このTICAD4の約束を必ず実行するということを改めてその会合の場で各国に表明をいたしました。

 また、他のドナー国、機関に対しましても、我が国と同じような決意を持って積極的にアフリカ支援に取り組むよう働きかけを行ったところでございます。

 また、多くの調査ミッションを集中的にアフリカ各国に派遣しておりまして、昨年の秋から現在までに百件近くのミッションが訪問していると思いますけれども、教育とか保健とか医療、環境など、このMDGsにおいて重視をされております分野を含めまして、具体的なプロジェクトの形成、実施に現在努めているところであります。

 政府といたしましては、アフリカにおけるこのMDGs達成に向けまして、引き続いてTICAD4の約束を着実に実行いたしますとともに、アフリカ支援強化の重要性を積極的に国際社会に訴えていく、そういう考えでございます。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 さまざまなミッションをお送りいただいて、また、ODAについても目標に向けて行動していただいているということであります。

 それで、ただ、ミッションについて、当時私も委員会で質問させていただいたんですが、民主化推進についてのミッションとか、あるいは、今大臣も幾つかテーマとしてお挙げになられましたが、農業支援とか、そういったことについてはいかがでありましょうか。

木寺政府参考人 昨年のTICADにおきまして、特に農業分野では米生産の倍増というのを打ち出しまして、現在そのフォローアップとして、アフリカの国、十数カ国でございますが、それに、国を決めてそこでの米生産倍増を推進しているところでございます。これには、アフリカのグリーン革命財団というのがございまして、アナン前国連事務総長が会長をしておりますけれども、先週参りまして、そういった協力も進んでいるところでございます。(近藤(昭)委員「民主化についてはどうでしょうか」と呼ぶ)

 民主化も、我々のプロジェクトでガバナンス系のプロジェクトもございますけれども、アフリカの民主化の問題につきましては、大使館等を通じていろいろな協力を進めるという視点で対話をしております。

近藤(昭)委員 どうもありがとうございました。

河野委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正でございます。

 四条約について質問させていただきます。

 まずは、日・香港刑事共助条約に関してでありますが、これは既に日中の刑事共助条約が、本委員会でも審議をし、承認、批准ということになったわけでありますので、それに関連してということで、まず中国製のギョーザ事件について、その後の展開、ことしの日中首脳会談でも総理から触れておられますし、その後どのようになっているのか。

 特に、ことしの四月には、これは報道ベースでありますが、北京の政府研究所で殺虫剤混入の裏づけ実験が行われたという報道があり、北京大使館を通じて中国政府に公式に照会をしたということもあるんですが、今の現状、そしてまたこの報道についての事実関係もあわせてお答えをいただきたいと思います。

橋本副大臣 今御指摘がありました中国のギョーザの事件でありますけれども、中国側は今まだ捜査を継続していると承知しておりますが、いまだ本件の真相というのは究明をされていない状況にあります。

 日本側からは、本件の早期究明に向けた中国側の努力を累次、一貫して要請しておりまして、これに対して中国側からは、日中間の協力を強化し、一日も早く決着させたいという旨が表明されております。

 六月七日の第二回の日中ハイレベル経済対話の場におきましては中曽根外務大臣から、また八日には麻生総理から、それぞれ王岐山副総理に対して本件の早期解決を求めてきております。

 また、日中両国の担当部局間の連携を密にすることというのも大変大切なことだと位置づけしておりまして、在中日本大使館に食品安全担当官を配置しております。これは、各国の、日本と食の輸出入にかかわる深い関係の国の在外の大使館には担当官を置くようにしておりますけれども、中国に関しましては、大変重要であるということで、今六名を配置させていただいております。

 省内におきましても、食の安全問題に関する会合というのを累次開催して中国側との連携を密にとるように努力をしておりますし、また、関係省庁とも国内で連携をとるためにこの会合を累次開催させていただいております。

 また、今後とも、機会をとらえて、中国側に対し真相究明のための努力を求めて、本件の解決に努力を、全力を尽くしていきたいと思います。

 また、先ほど御指摘のありました混入事件、これにつきましては、今まだ捜査を求めているところであります。

武正委員 最後の、報道にある、ことし四月二日、北京大使館を通じて中国政府に公式に照会をしたということの事実はあるんでしょうか。

橋本副大臣 これにつきましては、またしっかりと捜査といいますか確認をいたしましてから御報告を申し上げたいというふうに思います。

武正委員 この件できょうは質疑ということでありますし、もうこれだけ報じられているんですからきちっと答えていただきたいと思うんですが、警察庁もおいででございますので、警察庁はこの件について御承知をされておりますかどうか、御確認をしたいと思います。

西村政府参考人 お答え申し上げます。

 今、殺虫剤の件でお尋ねと思いますが、この件、個別の情報については、当方、受けておりません。

武正委員 昨年の十一月十二日に、当外務委員会で、外務大臣に対して、刑事共助条約は遡及適用がないので、もちろん公安当局、公安部、それぞれバイで情報交換ぐらいはしているけれども、これまでの国際令状に基づいた外交当局が窓口に立ってという枠組みでこの中国製のギョーザ事件については引き続き行うということですので、外務大臣には特にその後押しを、警察当局は多分昨年の四月九日以降、情報交換の会議は行っていないと承知をしておりますので、こういった面をやはりバックアップしてほしいとお願いをして、外務大臣からは、今の委員の御指摘も踏まえて、今後の両国の会談等で強く要請していきたいということだったんです。

 今、この事実については承知していないという警察当局なんですが、この件が一年たっても進展していないということで、外務大臣からも引き続き要請をされているように、私はやはり、公安当局のそうした会議あるいは情報交換、これをもっと外務省として後押しすべきだと思うんです。この半年間ほど、そうした要請を外務大臣としてやるというふうにお答えになったんですが、してきていただいているのかどうか、外務大臣からお答えをいただきたいと思います。(橋本副大臣「先によろしいですか。先ほどの件について」と呼ぶ)では、先ほどの。

橋本副大臣 先ほどの件についてでありますけれども、中国側に問い合わせをしたところ、そういった事実はないという返答が来ておりました。

中曽根国務大臣 日中の会談があるたびに、外相会談等があるたびにこの件は取り上げて、強く早期の解決を求めているところでありますが、先ほど副大臣からも話がありましたように、さきの六月七日の日中ハイレベル協議におきましても、私の方から、一年経過しているにもかかわらず解決をしていない、そして、この一年間で中国からの食品輸入量は、ちょっと正確でないかもしれません、間違っていたら訂正いたしますが、二〇%以上、中国から日本への輸出、日本の輸入量が減少している、そういう事態をしっかりと踏まえていただきたい、日本の国民は食の安全というものに対して大変強い関心を持っているということを私は申し上げまして、この問題についてのさらなる捜査の促進というものを要請したところでございます。

 このように、ハイレベルの協議においても首脳同士でこの問題について協議をしておりますが、委員からもお話ありますように、警察関係、いろいろなところにおいてしっかりとした対応ができるように外務省としても役割を果たしていきたいと思っています。

武正委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 それでは、日中ガス田協議について伺いますが、六月七日の外相会談でも、東シナ海資源開発、一年が経過するが進展得られておらずというふうに外相からも指摘をしております。しかしながら、いわゆる樫という油田の周辺での変色それから単独開発、これについて抗議をしましたら、いわゆる昨年六月十八日の合意事項の対象のエリアではないというような回答が返ってくることが報じられておりますが、こういった事実があるのか、そしてまた日本側としてどのように考えておられるのか。

 また、白樺についても、報道では、出資が三三%以下というふうに報じられ、また、中国の法律にのっとるべしということで、日本もこの三三%以下はのんでいるんだ、こういうような報道もあるんです。

 この一年間、経過が進展得られておらずという外相会談での指摘、その間に樫とか白樺についてこのような報道があるんですが、その事実関係、そして日本側としての考え方、お答えをいただければと思います。

中曽根国務大臣 東シナ海における日中間の協力に関する昨年の六月の合意というものは、これは日中双方にとりまして、両方にとって利益となるものである、そういう互恵的なものでございますが、まさにいわゆる戦略的互恵関係、これの大きな成果の一つであると私たちは考えております。

 この点につきましては、中国側の認識も一致しているところでありまして、中国側からは、この合意というものを大事にしていきたい、そういう表明はなされているところでございます。これは、胡錦濤国家主席また温家宝国務総理もそのような御発言をされておられます。

 重要なことは、この合意を実施に移すための国際約束、これの締結交渉を早期に開始することであると考えておりますが、今までも中国側との間で随時実務的な協議というものは行ってきておりますが、正式な交渉の開始についてヨウケツチ外交部長に私の方からは強く求めているところでございます。

 先週の日中外相会談におきましても、さっきも申し上げましたけれども、ギョーザと同じように、こちらも昨年の合意から、案件は違いますけれども、一年が経過する、しかし進展が得られていないということで、早期に国際約束、これの締結交渉を開始することが重要である、そういう旨を指摘したところでございます。

 個々の、今委員がお話しになられました点につきましては、質問通告もございませんでしたので、今細かいことをちょっと御答弁できませんが、よろしければ、後ほどまた参考人から答弁いたさせたいと思います。

武正委員 午前中はこれで終わりますので、ぜひ午後の一番のところで外務大臣からお答えいただければと思います。

 終わらせていただきます。

河野委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三分開議

河野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。武正公一君。

武正委員 武正でございます。

 午前に引き続き質疑を行わせていただきますが、外務大臣でよろしいでしょうか、午前中の樫と白樺の件、お答えいただけますでしょうか。

中曽根国務大臣 白樺や樫での中国側による資源開発の動きについてのお尋ねだったと思いますが、昨年六月の合意の対象であります白樺におきましては、現在、中国側による資源開発に関する動向は確認はされておりません。

 また、同じく昨年六月にこの共同開発について合意いたしました以外の海域の扱いにつきましては、日中双方の立場が収れんしておらず、継続して協議を行うことになっておりまして、御指摘の樫につきましても、中国側が一方的に資源開発を進めている、そういうふうに疑われる場合には、中国側に対しまして、一方的な開発は認められない旨の抗議の申し入れを行っておるところでございます。

武正委員 白樺の出資が日本が三三%以下であるという報道、それについては日本がそれを認めているという報道、また中国の法律にのっとってという、そうした運営条件等、この報道についての事実確認をお願いしたいと思います。

中曽根国務大臣 白樺油ガス田開発に参加いたします日本法人及びその出資比率につきましては、今後の協議により決定していく事項でございまして、現段階ではまだ確定はしておりません。

 また、政治的合意があるわけでございますけれども、これは中間線の中国側における開発のみを対象といたしておりまして、また、日中間の海洋境界画定が実現するまでの過渡的期間において双方の法的立場を損なわないことを前提にしたものでありますので、我が国がこの白樺油ガス田に関する中国側の立場を認めたことにはならないところでございます。

武正委員 五月十一日、国連大陸棚限界委員会に境界線を沖縄トラフということも中国側は提出しているというふうに報じられておりますので、引き続き、この中間線の画定の協議、また、今の双方の見解が異なる共同開発の件等、日本側の主張をきちっと主張していただきたいということを求めたいと思います。

 それでは、財務政務官もお見えでございますので、IMFの改正について伺いたいと思います。

 今回、IMFの増資に伴うアジア金融市場への影響というものをどのように見ておられるのか。ASEANプラス3でも、この間もお話し申し上げましたようなチェンマイ・イニシアチブのマルチ化とか、それからアジア債券市場構想を進めていくことなども合意されておりますし、また、総理からは二兆円のODA拠出、金融サミットでされていますので、そういった中でどのように見ておられるのか。また、中国の周中国人民銀行総裁でしょうか、IMFの準備資産である特別引き出し権、SDRを基軸通貨に育てるべきというような発言もあり、いわゆる人民元の国際化ということを中国が今求めようとしている。こういうような状況の中での本協定の持つ意味をどのように理解されているか、お答えをいただきたいと思います。

三ッ矢大臣政務官 お答えを申し上げます。

 今回のIMFの増資につきまして、アジア通貨危機を受けて、世界経済の実態をよりよくIMFに反映させるという趣旨で行ったものでございます。特にアジア諸国の発言権を拡大するために、日本が主導して昨年の四月に加盟国間で合意が得られたものだということでございます。

 今回の増資は、実は九・五五%という比較的小規模なものだったものですから、一定の限界はございますけれども、我々としては、アジアを含む新興市場国等の経済実態をIMFの出資比率によりよく反映させるということについて一定の成果があったというふうに考えておるところでございます。

 また、四月二日のロンドン・サミットでは、さらなるIMFの資金基盤強化について合意がされたところでございまして、今後、アジア諸国を含めた新興市場国で金融支援が必要となった場合に、IMFに十分な財源があるという信頼感を高めることが大事だと思っておりまして、これを通じてこうした国々の金融市場の安定化に向けた効果が期待されるものと考えておるところでございます。

 元のお話がございましたが、ここは関係国とも十分協議をしながら、慎重にというと言葉が適切ではないかもしれませんが、適切に対応するべき問題ではないかなというふうに思っております。

 また、先生の方からお話ございましたチェンマイ・イニシアチブのマルチ化等、さらなるアジアの金融市場の安定化に向けて我々としてもさらに努力を続けてまいりたい、このように考えておる次第でございます。

武正委員 アジア通貨危機のときに、IMFの対応については、アジア各国でそれについて、いささか厳し過ぎるのではないのか等の、そういったことがIMFに対して寄せられております中で、やはりアジアの各国の声を日本がしっかりと代弁していくということも必要でありますので、さらなる取り組みを、今進めておられますが、チェンマイ・イニシアチブ、アジア債券市場構想等、精力的に進めていただきたいと思います。

 そこで、アジア各国への、今金融危機の中で、今回これが提案をされているということなんですが、JICAによる出融資の再開についてということでお伺いしたいと思います。

 第二十二回の海外経済協力会議で、「JICAの投融資機能については、民間との意見交換を踏まえ、また、開発効果の高い新しい需要に対応するため、再開に向けて検討する。そのために、関係省にて、新しい制度・チェック体制を構築すべく、過去の実施案件の成功例・失敗例や問題点を十分研究・評価する。」ということで、お手元には、JICAさんのペーパーで、海外投融資機能についてというペーパー、二枚目には、特に今回の海外経済協力会議の背景となった二点、一つが、これは外務省でしょうかね、国際協力に関する有識者会議においてのこうした提案、そして日本経団連の四月における提案、これがその背景にあるというような御説明を受けたわけです。

 ただしかし、これまでJICAによる海外投融資機能をストップした、そういう経緯がある中で、ここでこれを検討していく、しかも、報道によると、骨太方針にも入れ込んでいくんだということでありますが、こうしたことについて、外務省としてどのように考えておられるか、お答えをいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 開発途上国の経済発展には、公的なセクターのみならず、民間セクターの果たす役割が極めて多いということは、もう委員も御承知のことでございますが、この開発課題の重点も、インフラ整備それから民間活動の促進による成長が貧困削減には重要である、そういう認識が高まっているところでございます。

 現下の金融経済危機における経済界からの再開の要望というものもございまして、そういうものも踏まえながら、開発途上国の開発効果を高めるために、政府といたしまして、民間セクターにおける開発に寄与する活動と協働していくということが極めて重要と考えているところでございます。

 このような認識のもとで、開発効果の高い新しい需要に対応するため、関係省庁にて、過去の実施案件の成功例それから失敗例などを十分研究し、また評価し、新たな制度、チェック体制を確立した上でJICAの投融資業務を実施していきたい、そういうふうに考えておるところでございます。

武正委員 この海外経済協力会議には財務大臣も入っておられますが、これは財務大臣も同意をされたことだと思うんですが、ただ、ここには、過去の成功例、失敗例、問題点を十分研究、評価ということも書いてあります。

 財務省として、今回のこのJICAの投融資再開、もうJBICは投融資を既に行っているわけですから、報道でもやはりJBICとJICAのすみ分け等を懸念する声もありますし、いわゆる官製金融温存の懸念ということで、今外務大臣の言われたような効果とともに、懸念もやはり言われているわけですが、財務省としてはどのように認識をされていますでしょうか。

三ッ矢大臣政務官 基本的には外務大臣のお答えになったとおりでございますが、確かに過去におきまして、先生御承知のとおり、ウナギの案件とか、あるいはホテルの案件とか、必ずしもうまくいかなかった案件がございまして、今回は、もちろんその反省の上に立って、例えば個別の案件ごとに専門家から成る投資委員会、名前は決まっているわけではございませんけれども、きちんとしたチェック体制、こういうものをつくって、過去の実施案件の問題点等も十分研究、評価する必要があるというふうに思っております。

 財務省としては、財政資金の有効かつ効率的な利用の観点から議論に貢献してまいりたいというふうに思っております。また、政策金融改革の趣旨に反することのないように、民業補完の観点や開発の観点等を踏まえて、行革推進本部とも調整しながら、関係省庁間で検討が進められるというふうに考えております。

武正委員 今、専門家というようなお話がありましたし、JICAさんに聞くと、目ききのできる人を新たに採用をというようなお話もあるんです。ただ、過去の失敗例ということで、お手元の方に、三ページ目をごらんいただきたいんですが、国際協力プロジェクト推進機構。JAIDO、これが設立をされ、日本の黒字等の資金管理ということで、過去、経団連を中心に、そしてそこにOECFから出資もしてということで対応をしてきたわけでございます。

 四ページ目にそのJAIDOの経緯が出ておりまして、一九八九年に設立をされ、二〇〇二年に解散ということであります。特に、三番に書いてありますように、今回再開をすると言われておりますJICA海外投融資による出資は、累計六十三億、出資比率が約四割、そして二〇〇七年に清算が完了し、六十三億円の出資金のうち四十六億円が償却された、いわゆる処分されたということであります。

 その財務諸表が五ページに出ておりまして、ここに出資金処分損ということで米印になっておりますが、損失処理が行われ、四十六億円が計上されているわけでございます。

 これの総括というものがどのように行われ、どのような処分が行われたのか、財務省として、わかる範囲、お答えをいただきたいと思います。

三ッ矢大臣政務官 お答え申し上げます。

 JAIDOについてはいろいろ問題があったんだと思います、正直申し上げまして。OECFも出資しておりますし、経団連が主体でこの組織を立ち上げられた。いろいろな企業の方が参加されて、出資され、そういういろいろな企業の方がまたいろいろな案件をこの組織に持ち込まれて、正直申し上げまして、責任体制といいますか、この部分が必ずしも明確ではなかった。

 それから、もう一つ申し上げますと、政府の関与が、これは個別案件ごとに関与するというようなシステムになっておりませんで、政府としての責任というのも不明確といいますか、関与の度合いが少なかったということが言えようかと思っております。

 その結果、先生おっしゃったように、四十六億円というような債務を処理することになったわけでございます。

 その点については、我々もやはり十分に反省する必要があるというふうに思っておりまして、この点も含めて、今度のJICAの投融資機能の再構築に当たっては十分な検討を行っていく必要があると思っておりますし、今回は政府が関与するわけでございますので、個別案件ごとに、財務省、外務省、また経産省、三省できちんとしたチェック体制を組み込んでまいりたいというふうに考えておる次第でございます。

武正委員 外務大臣、後でお配りしたのが、これがそのJAIDOの出資案件すべてでありまして、この合計額が四十六億ほどになっているんでしょうかね、今回の損失ということであります。開発ということで、なかなか民間が乗りにくいところに、政府資金を入れた会社が出融資をしていくということですから。

 今回JICAが示しております現地事業会社への直接の出資、融資と、一方、右側に書いてあります本邦企業への出融資というようなことも既に過去行われておりまして、こういうような失敗例ということで、今指摘がございました。このJAIDOができるときも、プロを入れるんだ、目ききのできる方を入れるんだというようなことがうたわれていたんですが、こういったことが行われ、結局解散をしております。ですから、今回JICAの出融資を再開するに当たっては、この会議でうたわれているような、成功例、失敗例、問題点を十分研究、評価ということがやはり大変大事だと思うんですが、この点について、JICAの所管省庁は、財務、会計に関する事項については、外務大臣、財務大臣、両省庁ということになっておりますので、今、財務省からは両省庁の連携というお話もありましたが、外務省としてどのようにお考えなのか。それから、JAIDOについてきちっと検証をされるお考えがあるのか。お答えをいただきたいと思います。

橋本副大臣 先ほど中曽根大臣の方からもお話がありましたけれども、このJICAの投融資業務につきましては、やはり、成功例または失敗例というものを十分に研究し、また評価をしながら、新たな制度、チェック体制を確立した上で実施することが必要だというふうに改めて考えております。

 日本国際協力機構、JAIDOは、民間の主体的な活動によりまして、開発途上国への経済協力を行うことを目的として、平成元年に経団連主導で設立された株式会社でありまして、開発途上国への投資を促進するため種々の活動を行ってまいりました。

 しかしながら、JAIDOは多額の累積損失を抱え、確固たる収益源の確保を期待できない状況であったために、平成十四年に臨時総会にて解散が決議をされたというふうに承知をしております。

 政府といたしましては、JAIDOは民間の出融資の先導的役割を果たすなど一定の成果は上げたと評価はしておりますけれども、結果として旧JBICによる出資金の多くが毀損する事態に至ったということは残念で、遺憾であると考えております。

 このJAIDOへの出資の問題点としては、JAIDOにおける体制、また旧JBICの不十分な管理体制にあると考えておりますので、今後、そういったことも踏まえ、新たな制度、チェック体制を構築するに当たっては、こうした反省点も十分に踏まえ、また、財務省とも連携をとりながらやっていきたい、検討していきたいと考えております。

武正委員 資料をお願いしたんですが、例えば、その当時の役員の一覧表なども、わかりません、出せませんというような答え。これは参議院の決算委員会でも民主党の榛葉参議院議員が取り上げて、財務諸表を出してくださいと言ってもそれも出てこなかったというやりとりもありまして、組織がOECFからJBIC、そしてまたJICAというような形で変わっている中かもしれませんけれども、それこそ、やはり過去の事例というものの検証が実はきちっとできていない、それから総括もできていない。

 財務省政務官はきちっとお答えいただいておりますが、今回のやりとりの中でも、外務省さんと財務省さんと経産省さんで何となく責任のなすり合いみたいなところがかいま見られておりますので、ここで、もし骨太方針にも入れていくとすれば、やはりこのJICAの海外投融資の再開については、私は慎重を期していくべきだろうと思いますし、きちっとした検証を進めていただきたいということをお願い申し上げまして、質問にかえさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

河野委員長 次に、松原仁君。

松原委員 今回、幾つかの議論があるわけでありますが、グローバリズムの時代というのはある意味で大変に便利な時代であると同時に、非常に、国内で責任を持ち安全を持つ側からすれば、国外に関してはどこまでそういったことができるのかということになってきて、国際化というのはその部分で、世界が同じ法律で統べられているわけでありませんから、これは議論、疑問になるわけであります。

 まず冒頭お話をお伺いしたいと思いますのは、いわゆる日本と香港の間の刑事共助条約というものが行われるわけでありますが、これは警察庁の方にお伺いしたいわけでありますが、日本と香港、日本と中国、この辺で、あと日本と台湾までありましたかね、我が方から共助条約というか、刑事事案でお願いをしている案件の数がどれぐらいあるのか。そして、相手側から日本に対してそういった案件で要請があるのはどれぐらいあるのか。そして、その中身ということに関しましてどういったものがあるのかということを、まず冒頭お伺いいたしたいと思います。

宮本政府参考人 警察庁からは、捜査共助を要請した件数、こちらからの方の数字の方について御答弁申し上げます。

 平成十一年から平成二十年までの間におきまして、我が国警察から中国へ捜査共助を要請した件数は十七件となっております。また、香港へ捜査共助を要請した件数は四件となっております。

 事件の個別具体的内容につきましては、相手国との信頼関係上の観点から御答弁を差し控えさせていただきたいと思います。

松原委員 十七件、四件、こういうことでありますが、中国との間が十七件、こういう理解になるわけでありますが、この中身ですね、具体的に言うのは差し支えるということでありますが、どんな内容のものが多いのか、その辺の事例を御紹介いただければと思います。

宮本政府参考人 一般的な内容ということでございますけれども、殺人罪とか強盗罪、詐欺罪などにおきまして、証言の取得、書類の鑑定、捜査記録の提供、こういった要請を行っているところであります。

松原委員 そういった要請に対して中国側からはきちっとした反応があるとかないとか、なかなか価値判断を含んでは言えないと思いますが、中国側からのレスポンスはどんなふうになっているか、お伺いしたいと思います。

宮本政府参考人 それぞれの事案に応じて返答いただいているところでございますけれども、捜査の進展状況とか、それから向こうでのまた手続状況とかいうこともございまして、十七件、四件についてそれぞれどう返ってきたかというのは、ちょっと現在把握をいたしておりません。

松原委員 中国、これは香港のことで今回は共助条約を我々は議論しているのでありますが、この共助条約の実効性を私は議論していきたいと思っているわけであります。

 中国産の冷凍ギョーザ、先ほども我が党の同僚議員からも質問がされましたが、このいわゆるギョーザ毒物混入事件については刑事共助は依頼をしているのかどうか、お伺いしたいと思います。

西村政府参考人 警察では、事案認知以降、資料の鑑定や経路の解明など所要の捜査を行うとともに、中国捜査当局と連携を図ってまいりました。

 当該事件の真相解明のためには、日中捜査当局間の協力が必要不可欠と考えております。このため、日本警察としましては、中国側が捜査を進めていく中で必要があれば、日中刑事共助条約を利用して証拠品の提供を行うなど、事案の早期解明に努めてまいりたいと考えております。

松原委員 ということは、まだ、必要があれば共助条約に基づいてということですから、このことに関しては共助条約に基づいたアクションはまだとっていない、こういう理解でよろしゅうございますでしょうか。

西村政府参考人 そのとおりでございます。

松原委員 私は、中国との間にはもう既に条約が批准されているわけですから、その共助条約の枠の中で既に依頼をしているという前提できょうの質問を組み立てたものですから、大変恐縮なんですが、なぜこれを依頼していないのか、その理由というものをお伺いできますでしょうか。

西村政府参考人 刑事共助条約につきましては、共助の実施が条約上の義務となるとともに、外交ルートを経由せずに両国の中央当局、すなわち治安機関同士が直接に相互連絡することとなり、その結果、共助が一層迅速かつ確実に実施されることになると承知しております。

 本件事案につきましては、日本における捜査はほぼ終了しておりまして、現時点で中国側に共助を求める内容はないと考えております。

松原委員 日本における捜査はほぼ終了している、こういうことであります。

 実務的な話をお伺いしてまいりますが、そうしますと、中国側における捜査はほぼ終了したという報告は中国から来ているんでしょうか。

西村政府参考人 お答え申し上げます。

 日本警察としましては、中国公安当局と所要の情報交換を行っているところでありますが、他国における捜査の状況につきまして申し述べることは差し控えたいと考えております。

河野委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

河野委員長 速記を起こして。

西村政府参考人 しかしながら、現時点まで、中国側で真相の解明に至ったとの状況は承知しておりません。

松原委員 日本側としては真相の解明に至ったという認識はお持ちかどうか、お伺いいたします。

西村政府参考人 真相の解明に至っているという認識は持っておりません。

松原委員 日本国内においては捜査はほぼ終了と私も聞いております。中国側では捜査はまだ終了していないという認識であります。

 これ、実は、先ほど話を聞いていて、中国側に刑事共助を依頼していないということであって、その理由が、日本における捜査がほぼ終了しているがゆえに中国側に刑事共助を依頼していないというふうな答弁と受け取れましたが、答弁の内容はそれでよろしゅうございますか。確認です。

西村政府参考人 共助条約に基づきます共助依頼はしておりませんが、中国側の捜査状況については適時その状況について説明を求めているところでございます。

松原委員 私が今聞いたのはそういうことではなくて、なぜこの刑事共助が、遡及してできるにもかかわらず、この案件でやっていないのかというふうにお伺いしたところ、先ほどの御答弁では、日本側の捜査はほぼ終了しているがゆえにというふうなお話でした。その御答弁を確認してよろしいですか、こう私はお伺いをしたところであります。よろしくお願いします。

河野委員長 西村長官官房審議官、的確に答えてください。

西村政府参考人 日本側における捜査はほぼ終了したと考えております。

松原委員 であるがゆえに、共助条約に基づいて中国には要請をしないということでよろしいんですか。

西村政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどもお答え申し上げましたが、今後、必要があれば日中刑事共助条約を利用して、証拠品のやりとりなどを行い、事案の早期解明に努めてまいりたいと考えております。

河野委員長 質問にまず答えてください。

西村政府参考人 現時点では、先ほど申し上げましたが、日本における捜査はほぼ終了しまして、現在、中国側における捜査の進展を我々としては見守っているところでございます。

松原委員 私の質問の趣旨は、時間がどんどん過ぎていって困るわけでありますが、日本における捜査が終了したがゆえに中国に対する刑事共助、捜査共助を要請しないと先ほどおっしゃったんですよ。であれば、そのことの確認を私はしているんです。そうおっしゃったことで、つまり因果関係が、日本における捜査がほぼ終了しているがゆえに現段階で中国側に刑事共助を依頼していないとおっしゃったから、その答弁でよろしいんですかと私は聞いているわけであります。お答えいただきたい。

西村政府参考人 私としてはそういう認識でおります。

松原委員 ここで、私は日本における捜査が終了したというこの概念を中曽根外務大臣にも、これはやはりキャビネットの一員ですから、お伺いしたい。

 犯人が捕まらなくて、犯人が明らかにならない状況で、捜査というのは終了するというふうに大臣はお考えですか。

中曽根国務大臣 ただいまの政府参考人の答弁が、日本における捜査の終了というのが実際どういうものなのか、私自身は詳細には承知はしておりませんけれども、中国側におきまして引き続いて捜査が行われているわけでありますから、日本側の部分は終了はしたといっても、全容が解明され、また中国側ともその点について一致した結論が出たものではない、そういうことを言っているのではないか、そういうふうに思います。

松原委員 大臣、ここはさあっといくところなんですよ、私の質疑では。一々とめるようなことを、私が委員会をとめるんじゃなくて、大臣が委員会をとめようとしているようにしか見受けられない。

 いいですか。私が言っているのは、こういうものは実効性があるかどうかを確認しなければいけませんよと言っているんですよ。その実効性の前に、実効性があるかどうかの前に、あるにもかかわらず、日本の一億国民が一番関心を持っている毒入りギョーザ事件で、中国側からはなかなかその後はかばかしい情報は上がってこないわけですよ。日本側の捜査はほぼ終了している。であるがゆえに、中国に対して共助条約に基づく捜査共助を依頼していないと言っているんですよ。

 私は、おかしいじゃないかと言っているんですよ。本当に日本の国の国民の食の安全を維持するならば、大臣、食の安全を維持するならば、日本における捜査の終了というのは、その安全が担保されて終了しましたよという話なんですよ。全然何が何だかわからない。中国側に犯人がいるのか、日本に犯人がいるのかわからない。この案件は、普通は刑事共助をするべき案件でしょう。何でこれは共助しないのか不思議だ。

 それで、私は御専門の方にお伺いをしたらば、いやいや、日本側の捜査はほぼ終了しているがゆえに共助の依頼をしていませんと。中国側に依頼していない。何で依頼していないのか。捜査の終了という概念がちょっと違うんじゃないですか。犯人が全然わからない。それから一年以上たっている。後でこの段落で僕は質問しようと思っていたけれども、食品による薬物中毒事案に関する関係省庁連絡会議の報告だって十月三十一日ですよ、こういったもの。いいですか。

 こういう状況の中で、国民は、どうなっておるんだと。のど元過ぎれば熱さを忘れるで、それは政府はいけばいいと思っているんだったら、それはそうおっしゃっていただいて結構ですよ。そういう不見識なことを思っているのなら。(中曽根国務大臣「思っていません」と呼ぶ)思っていないでしょう。

 だから、私が申し上げたいのは、そうであるならば、この問題に関して、日本側の捜査が終了したという御認識を専門家が持っていること自体、国民としてはなかなか了解できない。つまり、捜査というのは全体を見ての判断ですよ。真犯人がわかっていないんだから。

 大臣、これは大臣の個人的な率直な外務大臣としての思いとして、この日中の共助条約も、この外務委員会で批准したものを承認して、普通だったら、毒入りギョーザの問題は中国に依頼していると思いませんか。ちょっと答えていただきたい。

中曽根国務大臣 委員のおっしゃることは私もよくわかります。

 ただ、捜査は終了したということにつきましては、警察の方の捜査は終了した、実際、それがどういう形で終了して、どういう結論になっているかということは私自身承知しておりません。したがいまして、中国側に対して共助を求めるといいますか、要求するといいますか、それをするしないにつきましては、その必要性につきましては私自身は判断できないところであります。

 私としては、中国側に対して、とにかく捜査を進展させて、そして、これを真相究明するように、解明するようにということを私の立場では再三要請をしているところでございます。

松原委員 麻生総理大臣も中国側との交渉で、ここに書いてある。ペーパーが書いてある。麻生総理より、日中間の問題として、これは六月八日ですよ、東シナ海資源開発問題とギョーザ問題、やってくれと言っているんですよ。これらの問題が前進するように協力を要請しているんですよ、麻生総理は。

 麻生総理が協力を要請しているのに、何で日本の担当の御専門の部署におかれては、このことに関して共助の依頼をしないんですか。ちょっと理解に苦しむ。いつになったらするんですか。なぜ、この状況でずっと解決が先延ばしになっているのに、私はここは依頼をしていますという答弁があって先に進むつもりだったんですよ。依頼していないというから、あっと驚いてしまったわけですよ、これはどういうことだろうと。お伺いしたい。

西村政府参考人 先ほどもお答え申し上げましたが、中国側に捜査状況あるいは捜査に関する情報の提供は求めておりますが、現時点におきまして、捜査共助条約に基づいて、例えば証言の取得でありますとかあるいは書類の鑑定でありますとかあるいは捜査記録の提供などの要請は行っていないということでございます。

松原委員 それは、要請をして中国側から出てくる材料が、もしかしたら極めていろいろと問題があると思って依頼していないんですか。

 例えば、私、あえて敷衍させてもらえば、中国側は昨年の二月の段階では、中国じゃない、この毒入りギョーザは日本でやったんだろうと言って、あのときの警察庁長官、吉村さんは非常に怒ったわけですよね。日本側に対して日本で毒入りギョーザをやったようなことを言うなと。中国側は非常にそういったことを、普通は、礼儀正しい国家だったらそこまで言わない。中国じゃなくて日本でやったでしょう、こう言ったんですよ。日本人に犯人がいるんです、日本でやったんですと中国が言ったんですよ、このギョーザの問題で。さすがに今言った吉村長官も、冗談じゃない、そういう表現を使ったかどうかわからないけれども、言ったわけですね。

 私が申し上げたいのは、そういう状況で、中国は六月に中国国内でこのギョーザの問題が起こって、それで言わなくなったんですね。それまで言っていたんですよ。言っていたという事実は、どういうふうに彼らは言っていますか。ちょっとわかる人、答えてくださいよ。去年の二月に、中国側は日本に真犯人がいるというのをどういうふうに言っていたんですか、彼らは。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 私の手元にある資料によりますと、昨年の二月二十八日、国家検検総局と公安部の共同記者会見で公安部の刑事偵査局の副局長が、中国国内で混入された可能性は極めて低いといった発言をしたと承知しております。

松原委員 日本側は、逆に、日本側で混入された可能性は極めて低いという発言はしているんですか、していないんですか。

西村政府参考人 警察庁におきましては、日本警察として、日本国内で薬物が混入された可能性は極めて低いと、先ほど委員御指摘の長官会見の席上で明らかにしております。

松原委員 当然であります。

 そして、中国側は、聞くところによりますと、公安の方の実験で、あのビニールか何かの袋の外からメタミドホスを垂らすと中に入って浸透するという実験をしたというようなことを一時言っていたような報道がありますが、このことに関してお答えいただきたい。

 中国側は、袋の上からメタミドホスをそうやって、どこかの魔術じゃなくて、手品じゃあるまいし、しかしながら、そのビニール袋の中にメタミドホスが入る、こういうことを言っていたわけですね。その実験のときの彼らの、どういう証言だったのか。その実験に対して信憑性があると考えているかどうか。お答えいただきたい。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 中国産冷凍ギョーザ事件につきましては、中国の公安当局が段ボール箱の外から毒物注入の可能性を視野に実験等を行っているといった報道がございました。これにつきまして、外務省の方で確認をいたしました。中国側にその事実関係について照会を行いました。中国側からは、そのような事実がないといった回答を得ております。

松原委員 そういう事実はないと。では、その報道も、どこがどう報道したかわからぬけれども、でたらめだった、こういうことですね。

 ギョーザに混入していたメタミドホスは、日本国産の純度の高いものではないと言われておりますが、このことも答弁をいただきたい。

西村政府参考人 御質問のギョーザから検出されましたメタミドホスには不純物が混在しておりまして、日本国内で入手できる純粋なメタミドホスとは異なるものでございます。

松原委員 この答弁できるかどうかですが、純度の低いメタミドホスというのは、世界の国でどういう国がつくっておりますか。

西村政府参考人 現在、そのようなデータは持ち合わせておりません。

松原委員 まあ、いいですよ。

 結論的には、捜査共助を出したときに向こう側の捜査当局がこたえられないがゆえにそれを要請しないんじゃないかと私は思うんですよ。中国側の公安当局がどういうデータを出してくるかわからないけれども、しかし、中国のことをおもんぱかって共助の依頼をしないというのではおかしいんですよ。向こうからは出てこないんですから、なかなか真相が。

 日本側は依頼をするべきだと思うんですよ。いつになったらこれを依頼するんですか。今依頼しないで、いつ依頼するんですか、共助条約でこの案件を依頼しないんだったら。共助条約、香港の共助条約も含めて。だから、最初、二十九件と言った中身が僕はわからない。殺人事案だけが二十九件あるのかどうかわからない。でも、このていのものは極めて重要で、これこそ国民の食の安全、命の安全に直結する問題で、この部分で共助条約が機能しないならば、いや、機能しても意味がないと思っているのか。意味がないと思っているなら、意味がないと言っていただいて結構ですよ。こういう問題では意味がないんですと言っていただいて結構ですよ。共助条約が意味があるならば、ここで使わなくて一体どこで使うんですか。いつこの共助条約についての依頼をするんですか。どのタイミングでするんですか。何が起こったらそれをするんですか。お答えいただきたい。

西村政府参考人 共助条約に基づきます共助依頼は、先ほどもお答え申し上げましたが、証拠品の提供を求めるものでございまして、今後証拠品の提供を求めることが必要となった場合には、この条約に基づいて要求を出してまいりたいと考えております。

松原委員 これは、捜査の部分というのは私はよくわかりませんが、例えば、中国側は六月までは、中国ではなくて日本で混入された可能性があると日本を非難していた。それが、六月に中国国内でも毒ギョーザ事件が出てきて、ぱたっとそれを言うのをやめた、こういうことですね。

 だから、そうしたら、その相関性で、当然警察は中国国内に流通した毒ギョーザも関心を持っているわけなので、それを入手しようとは思わないんですか。答えてください。

西村政府参考人 お尋ねの事案につきましても、中国当局から、ギョーザで四人の方が中毒になったということを聞いておりますが、それ以上の情報あるいは証拠については入手しておりません。

松原委員 それを入手するための共助条約ではないんですか。答えていただきたい。

西村政府参考人 何度も繰り返して恐縮でございますが、現在のところ、共助条約に基づいて求めるべき内容はないと考えております。

松原委員 いや、非常にこの議論はおかしいですよ。この議論は本当におかしいですよ。(発言する者あり)おかしいじゃない。(発言する者あり)疑いをかけているって、中国産の毒入りギョーザの問題で、まあ、こっちとやり合ってもしようがないんだけれども。そういうやじを言う人がいるからだめなんですよ。

 こういうことを言っていたら、いや、それ、公に言ってもらえばいいですよ。こういった共助条約があるけれども、毒入りギョーザ事件ではその要請はしていない、中国側からは昨年来情報がなかなか出てこないけれども、中国側の毒入りギョーザの実態もその証拠品を見せてくれと言う必要はないと。つまり、今この委員会の外野の方が言うには、中国側を疑うからそういうことになるんだと。

 では、中国側を疑うからって、日本の国内で捜査はほぼ終了していると言うんですよ。じゃ、宇宙人かだれかが来て毒入りギョーザをつくったのか、そういう話ですよ、それじゃ。そういうことを言うということが、僕は、まあ、外野と議論してもしようがないけれども、そんなばかなことを言っていたら……(発言する者あり)いやいや、そんなこと、そういう発想でやっていたの、今まで、物の考え方。ちょっと非常におかしいと私は思う。

 私は、そういった意味で、だから、やはりこれは共助条約の実効性の問題なんだよね、中曽根大臣。事件が、例えば、中国の方でいわゆる犯罪を犯した人間が見つかったとか、そこまで一件落着すればいいですよ。共助条約を機能させなくてもいいですよ。案件が昨年の十月から動いていないんですよ。

 では、ちょっとこれをお伺いしたい。十月三十一日以降は、例えば関係省庁連絡会議のこういった報告というのはなされているんですか。

西村政府参考人 お尋ねの連絡会議でございますが、この会議の十月三十一日と申しますのは、この日に会議が開催されたものではないものと承知しております。これは、この時点で内閣府において情報を取りまとめた上で公表しているものであると認識しております。

松原委員 その後こういった情報が出てこないとするならば、その後このギョーザの案件に関しては進捗されていないんじゃないですか、具体的な新しい情報が出てきたり。であるがゆえに、麻生さんがああいうことを言っているんじゃないですか。

 私は、事件自体が風化をするとは思わないけれども、少なくともここまで膠着しているものに関して、なぜできた法律を使わないのかということを非常に疑問に思うんですね。なぜなのかということは、今の議論を通しても全く私は理解できない。

 大臣、外務大臣として、今の質疑を聞いていて、この問題は共助条約で中国側に要望するべきだというふうに私は思いますが、大臣としては、こういうふうな案件で国民の、まさに大臣はキャビネットの一員でありますから、その立場からして、これは共助条約の要望をするべき案件だと思わないんですか、ちょっとお伺いしたい。

中曽根国務大臣 捜査の手法とかそれから方向性とか、そういうものについて私が述べたり感想を言う立場ではないと思います。

 それで、先ほど警察の方で御答弁しておりますように、この共助条約を使わないということではなくて、必要があれば証拠品の提供などを求める、そういうふうに答弁しているわけですから、そういう形で、今、証拠品の提供は必要ないというふうに判断されているのではないかと私は思っております。

 しかし、こういうような条約があるわけですから、こういうものも必要ならば、これに基づいて捜査が進展するようにやるのは当然のことだと思っています。

松原委員 普通であれば、中国側が毒入りギョーザのことで日本に対して日本側で混入されたと言わなくなったのが六月の中国での毒入りギョーザの発生以来であるならば、そのギョーザぐらいはやはりちょっと示してもらえないかぐらいのことを共助条約の枠内でやるのは、これは一般論的に当然の話ですよ。大臣に言っているのは、それは大臣が全体を統括する立場の一人だから言っているんですよ。ちょっとほかの質問の時間が短くなってきました。

 それで、日中領事協定というのがありますね。日中領事協定に関してでありますが、この日中領事協定をつくる経緯で中国側から提案されたと。私はしばしば三点セットと言ってまいりまして、三点セットというのは何かというと、それは、瀋陽のハンミちゃんの家族が逃げようとして引っ張り出された、それからもう一つは、いわゆる上海における日本の大使館員の自殺問題、三番目が、北京大使館や上海における日本の公館に対する破壊活動、これに関しての謝罪がどうなんだという議論をしました。

 きょうは時間もなくなったので、大使館のところからまずちょっと行きたいと思いますが、大使館の破壊活動に関して、先般小野寺副大臣がいたときに、彼が中国側から謝罪、遺憾の意の表明があったと言うんですが、具体的に、だれが、いつ、そういう遺憾の表明を正式にしたのか、お伺いしたい。

小原政府参考人 平成十七年四月に、喬宗淮中国外交部副部長から阿南在中国大使に対しまして、多数の民衆が在中国大使館等に投石等の行動を行ったことは、中国政府として決して容認できることではなく、政府を代表してお見舞いと遺憾の意を表明するという発言がございました。

松原委員 このときの日本大使館は中国側が費用を出して直したというふうになっておりますが、直した会社というのは中国の企業なのか日本の企業なのか、どういう形で大使館の修復が行われたのか、お伺いしたい。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 在中国大使館等の修復作業は日中双方の業者によって行われました。

松原委員 日中双方の業者によって行われた。これは、現場にいないからイメージをつかむのはなかなか難しいんだけれども。

 そうすると、例えば、やはりどこでもそうですが、機密性というのは大変重要で、この外務委員会の質問でも、それは極めて重要な情報であるがゆえに言えませんと。さっきのお話でも、十七件か、日本側から中国側に刑事共助をしてもらった案件に関して、依頼した案件も中身は言えません、こういうふうな話になってくる。

 当然、大使館を直す場合に、国際社会というのは日本が考えているよりよっぽど物騒な社会でありますから、中国側の業者を入れる場合には、そこに何らかのハードルというか規定というか、何かあったんですか、設けたんですか、それとも普通に、では頼むよ、こういう話だったんでしょうか。

小原政府参考人 在外公館の警備あるいは安全確保に関します設備、こうしたものの交換等の作業につきましては日本企業がやったというふうに私は承知しております。

松原委員 これはまた後で資料をいただきたいと思いますが、警備、安全保障というよりは情報管理ですね、情報管理に関してどういうふうな話だったのかということになろうかと思います。

 そして、ちょっと飛び飛びになってしまいましたが、瀋陽のハンミちゃん事件もちょっとお伺いしたいわけであります。

 この瀋陽のハンミちゃん事件において、中国側は、日本の領事からこの人間たちを出してくれというふうに言われたと言っております。日本側の態度は間違いである、こういうふうに言っているわけであります。これでよろしゅうございますか、事実確認として。

小原政府参考人 この事件につきましては、日本側でもしっかり調査をいたしまして、報告書も発表しておりますが、その中でも書かれておりますが、総領事館入り口内で女性二名、幼児一名が取り押さえられた際の状況、あるいは、総領事館査証待合室に入り込んだ男性二名が取り押さえられた際の状況、関係者五名が連行された際の状況等につきまして、その調査をした結果は、日本側が同意を与えたという事実はないということでございます。

松原委員 時間がほぼ来ておりますから、次の篠原委員に御迷惑をかけてはいけないので早目に終了いたしますが、中国側はその後、日本のこの領事ですか、感謝をしたというふうに言っているんですが、この事実はないわけですよね。お伺いします。

小原政府参考人 委員おっしゃられるとおりでございまして、感謝の意を表明した事実もございません。

松原委員 時間がないので、また次の機会に譲りますが、私は、それが一体だれなのか、中国側は個名を挙げてだれと言っているのかということも含め、やはり事実確認が違う。中国という国は、情報もかなりいろいろと、そのまま真実が出てきているかどうかというのには疑念がある国家でありますけれども、そういう国家との間の刑事共助も含め、そして、例えば今回のいわゆる領事協定に関しても、実効性の部分でどうなのかということに関してはさらに議論を深めていきたいと思います。

 きょうは、とりあえず、ここまでで私の議論は終了いたしたいと思います。いろいろと問題がありますが、中曽根大臣、さっきのところで、あそこで時間がかからなければずっと全部質問が行ったんですけれども、あそこで、私は当然依頼していると言うと思ったら、依頼していないという私にとっては衝撃的な発言があったものだから、本当かなということでとまったわけでありましたが、くどいようですが、これはおかしいですよ。共助のこれでなぜ依頼をしないのか、どう考えても理解できない。御検討いただきたいと思います。

 以上であります。ありがとうございました。

河野委員長 次に、篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原でございます。

 朝は委員長の大きな声で目が覚めておられると思いますが、午後、ちょっと眠りかけたころだったんですけれども、松原さんの大きな声で皆さん、ぱっと目が覚められているんじゃないかと思います。引き続きよく聞いていただきたいと思います。

 それでは、民主党として最後の質問になりますので、今まで触れられなかった部分等を中心に質問させていただきます。四時間ほどたっております。皆さんお疲れだろうと思いますけれども、もうしばらくおつき合いいただきたいと思います。

 ギョーザ問題は私の追ってきている問題でもありますし、その続きもしたいんですけれども、松原さんの続きをちょっと言わせていただきます。

 やはり、条約をきちんと結んだら、それをちゃんと履行していくのが大事だと思います。それは二国間の領事条約についても言えるんじゃないかと思いますけれども、今度結んだのに、本当に実効性があるのかというのを、いろいろな経緯があってできたんだろうと思います。中国との刑事共助条約も、ちょうどギョーザ事件が起きているころに起きたので、ああ、こういうのに使われるんだなというふうにみんな思っていたはずです。去年の十一月二十三日に発効しているわけですね。それと同じです。

 そうすると、いろいろ象徴的な事件が起きた、それでこの二国間の領事条約というのが結ばれたわけですけれども、この二つの事件を踏まえて、反省に立って、こういった事件を改善していくんだということを二国間の交渉のプロセスなんかでもちゃんと確認できたのでしょうか。結構時間がかかっているんですね。五年間ぐらいかかってやっているんですね。最後を中曽根大臣のときに迎えたわけですけれども、この五年間の間、あからさまに、僕なんかは、悪いことをするとすぐ済みませんでしたと謝るんですけれども、そういう国はなかなかないようですし、中国は特にそういうことを余りしたがらない国のようなんですけれども、交渉する過程や最後の段階とかいうので、済まなかった、この二国間の領事条約ができるので、これからはきちんとしていくんですよというようなシグナルというのはちゃんと見受けられたんでしょうか。大臣、お答えください。

中曽根国務大臣 実際の交渉のときに私自身がそれにかかわっておりませんので、個人的に、そういうようなシグナルがあったかないかとか、そういうことについては私自身承知をしておりません。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、いろいろな事件を契機としてこういった協定の必要性に対する認識が高まったという側面もあろうかと思いますけれども、まず、この日中領事協定につきましては、基本的に、日中間の人的往来が非常に飛躍的に拡大をした、それから、邦人保護を初めとする領事任務を効果的、迅速に遂行する必要があるという認識が両者の間で高まったというところが一番のポイントかと思っております。

篠原委員 日中関係はますます緊密になってきているんですね、もともと緊密だったのかもしれませんけれども。

 それで、資料をお配りいただいておりますけれども、ちょっと見ていただきたいんです。

 アメリカと中国とをちょっと比べてみました。領事関係でどっちと密接な関係があるかというのを、それに関係するような数字だけを選び出しました。面積とか人口、人口は当然中国の方が多いです。

 中国のものでもってアメリカの分を割ってみました。そうすると、輸入についてはアメリカとの方が関係が深いですけれども、輸出については中国の方が日本から見たら輸出額が多くなっているんですね。

 交流について見ると、これは、この数字が本当にこんなに多いかなと私も見てびっくりしましたけれども、日本からアメリカへは三百二十五万人しか行っていないのに、中国には五百十四万人も行っている。これもこの七年ぐらいで、二〇〇〇年から七年間で一・三倍になっている。七年前はアメリカと同じぐらいだったんですね。それから、日本へ来る人は、アメリカ人は七十六万八千人ぐらいなんですが、中国人は百五十五万人も来ている。これも七年前と比べると二・六倍になっている。

 さすがに在留邦人数はアメリカの方がずっと多いですね、ビジネスの関係が深かったので。ですけれども、この数も十二万七千人になっている。これは七年前と比べると三倍近くになっている。

 援護件数、これは人ですけれども、これでやると、ちょっとこの数字は間違っているんですが、九一%、大体同じぐらいになっている。これだけ中国との関係が急速に深まりつつあるんです。

 それで次、領事館数。領事関係、条約のことは皆さんもう聞かれたので、細かいことは聞きません。領事館数は十四館に対して七館、館員数は二百九十一人に対して百二十三人。このパーセントを見てください。

 それから、1種の語学研修者、アメリカ十人、イギリス四人。ドイツ、フランス、スペインとかあるんでしょうけれども、韓国も、それからアラビア語もあるんだろうと思いますけれども、中国語の研修者は二人。チャイナスクールと言われている二人です。

 こういうのに合わせて何か変えているのかどうかというのが私は疑問なんですね。これだけ急速に日中が接近してきたら、二国間領事条約というのももちろんですけれども、トラブルを防ぐための条約も必要ですけれども、体制の整備をきちんと図っていくべきだと思います。これは外務大臣、いかがでしょうか。

 中国との関係、もっともっとふやしていくべきだと私は思いますし、こんな二人しか中国に派遣するんじゃなくて、アメリカは十人、英語なんて相当やっているはずです。大体、できて当然なんですよ。私なんかはさんざんやりましたけれどもよくできませんけれども、普通はできるわけですよ。だから、中国語の要員をもっともっとふやしたりするということを前広にするべきだと思いますけれども、そのように改善されておられますでしょうか。

橋本副大臣 先生御指摘のとおり、昨今、中国語を解する職員の存在というのが大変重要になってきているというふうに思っております。

 この観点から、中国語研修者の数は、1種職員については、過去五年間、通常二名。この通常二名であったというところは、二十一年度は三名になりました。これは、通常二名というのは、平成十九年度は1種職員の採用数が一名ふえたために、中国語研修者を三名割り当てられたということであります。そしてまた、専門職員につきましても、過去五年間、十五年から平成十九年までは三名であったところを、二十年度から四名としております。また、3種の官房要員につきましても、毎年五名程度の職員に本省において中国語を研修させているほか、一名から二名程度の職員を中国において在外研修に従事させております。

 職員の数にも限りがありまして、また、各国の振り分け等もありますので、そういったことも含めると、中国語を解する研修者をふやすことによってほかの国とのバランスをとらなければいけないということがありますけれども、いずれにしても、昨今の問題につきましては、中国語要員というのを拡充していくべきだというふうには思います。

篠原委員 一名ずつというのでしたが、ずっと同じよりはいいですね。ぜひこれはもっともっと早くふやしていかなくちゃいけないんじゃないかと思います。

 私は、アメリカを偏重し過ぎていると思います。次のページを見てください。これは、一年ちょっと前の外務委員会、在外公館法のときに提出したペーパーです。ですから、中曽根外務大臣は見ておられないと思いますので、よく見ていただきたいんです。

 見てください、これは領事館、大使館の比較。これは、日本とイギリス、フランス、韓国がどうやってやっているかというので、日本は異様に多いんですね。イギリス、フランスは、七プラス三、総領事館になっているのと事務所みたいなのとを分けているそうですから、それを正確に書いたわけですけれども、日本が突出しているんです。十四もあるんです。国内で行革、行革と言われているんですよ。私が三十年いました農林水産省なんて、行革ばかりで、それを何回担当したかわかりません。交通網が発達した、農業が産業としての地位が低くなっているからというので、統計情報事務所、食糧事務所、営林署、統合、統合というのを相当してきました。しかし、よく見ていますと、どうも外務省の地方支分部局というかそれに当たる領事館などは余り見直されていないんじゃないかと思うんです。

 これを見てください。これだけあって、私が外から見て、これはいいんじゃないかと思うものです。例えばデトロイト、かわいそうですけれども、追い打ちをかけるみたいですけれども、デンバー、デンバーはもう三角になっていますね。それから、ヒューストン、ポートランド、これはシアトルがありますから、いいんじゃないか。オレゴン州にもちゃんと敬意を表さなきゃいけませんけれども、車で三時間ぐらいですよ。四つぐらい少なくして、その分を中国に持っていく。

 拡大しているところがあるんですよ。このときは私は、下を見ていただきたいんですけれども、アフリカを拡充しなくちゃいけないんじゃないか、アフリカの方へ持っていったりしたらいいんじゃないかということで指摘しました。

 これは今、アメリカと中国を比べたんです。すぐこういうことをしていってもいいんじゃないかと私は思います。中国は物すごく交流がふえている、アメリカはそんなに問題は起きていないということを考えたら、こういったことを考えていってもいいんじゃないか。今、数だって七つしかないわけですよ。しかし、いろいろな案件がどんどんふえている。

 ほかの省庁は、こういうのを二、三年でぎゃっとやらされているんです。外務省にはそういう外からの圧力がないんですね。内部改革しなくちゃいけない。それはやはり大臣なりが見て言っていただかなければ動いていかないんじゃないかと私は思いますけれども、私は、外務省の外交の前線基地を減らせと言っているんじゃないんです。効率的な配置をすべきではないかと。

 例えば通商問題なんかだって、アメリカとは物すごく少なくなったんです、前と比べたら。では、そういう人の人数は減っているか。減っていないんだろうと思います。それで、中国が逆にふえている。そうしたら、中国側にシフトすべきなんです。例えば、食の安全とかいうのだって、アメリカとすったもんだして、アメリカではBSEの問題がありますけれども、食の安全問題でいったら圧倒的に中国ですよ。中国から野菜がどんどん来ていますし、加工食品もいっぱい来ています。

 これはもとから見直すべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

中曽根国務大臣 委員おっしゃいますように、総領事館の配置等につきましては、その役割をしっかりと果たしているかどうか等、常にそういうものは検証して、そして、重要でないと言うとなんですが、余り必要性のない、少なくなったものについてはそれを必要なところへ回すというのは当然のことだ、そういうふうに思っております。

 ただ、総領事館の果たしている役割というのは、やはり現地における我が国の企業あるいは国民、そういう人たちの、また企業の利益を保護したりまた増進していく、そういう意味にも大変大きな役割を果たしているのも事実でございまして、そういう意味では、各地域の状況の変化によりまして、そういうものを見ながらこの新設とか廃止につきましては検討しなければなりませんし、今までもそのような方針で行ってきたところでございます。

 平成十六年度以降、アメリカにおきましては、三つの在米総領事館、カンザス、アンカレジ、ニューオーリンズ、これを廃止いたしました。そして逆に、一つの、今度は必要性からナッシュビル、これを創設しているわけでございますが、ここにはナッシュビルは書いていないですね。(篠原委員「一年前ですよ」と呼ぶ)そうですね。

 中国におきまして、今度は二総領事館、これは重慶とか青島でありますが、これを新設いたしました。

 米国における総領事館数が比較的多くなっているというのは、中国もそうですが、日米関係というのは、やはり政治経済を初めとして非常に多くの分野で重層的な、また緊密な、そういう関係を維持しているということのあらわれであると思っております。

 しかしながら、最初に申し上げましたように、その必要性等、これはふだんから検証しながら効率のよい配置に努めていくべきだと思っております。

 なお、中国に限らず、世界のそのほかの地域でも必要なところもあろうかと思いますが、大臣がとおっしゃいましたが、私自身がそういう点もしっかりと気をつけてやっていきたいと思っています。

    〔委員長退席、三原委員長代理着席〕

篠原委員 大臣のイニシアチブでぱっぱと変えていっていただきたいと思います。

 それから、刑事共助条約についてですけれども、私は資料を見て感心したことがあります。香港が刑事条約を非常に多くの国と結んでいるんですね。十九カ国と結んでいるんです。さすが、犯罪が多いことを意識してやっているんじゃないか。国策としてやっているということが私はよくわかりました。

 例えば、比較してちょっと嫌みになって済みませんけれども、EPA、FTAはどことでも、何か結んでくれるというか、みんな手を出してというか、結んでいる。そういうのと比べたら、香港は自分の国に何が必要かというのをよくわかっているんじゃないかと思います。それで、この刑事共助条約も香港の方から申し出があってと。

 中国も、自分のところの皆さんがいろいろ悪さをしているというのもあるのかもしれませんけれども、余りそういうこともないかと思ったら、二十二カ国とやっているんですね。私は、非常にここはきちんとしているなと思って感心しました。見たら、みんな理屈のある、つき合いをしている国とやっています。

 そういうことを考えたら、日本がアメリカと韓国と中国と結んだだけで、今香港とやり、それからロシア、あとEU、しかし忘れている国があるんじゃないかなとつくづく思います。タイやフィリピンやインドネシア、そちらの方からいっぱい来たりしている。この国とちゃんとつき合いもあるんですし、きちんとしていない国でもあるでしょうし、日本国として方針を立ててこういった国々に重点的に働きかけていくべきだと思いますけれども、そういう点はどうなっておりますでしょうか。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 午前中の質疑の中でも討議が行われたところでございますけれども、我が国といたしましては、犯罪の国際化という傾向の中で刑事共助条約の締結というのをさらに積極的にやっていきたいというふうに考えております。

 何を踏まえてやっていくかといいますと、やはり現在において、現時点において共助の実績が多いところというのは非常に重要であるというふうに考えておりまして、御指摘のタイそれからフィリピンといったところも重要な国ということで、その点も十分に踏まえて今後も検討していきたい、そういうふうな考えでございます。

篠原委員 次に、世銀とIMFの関係です。

 三ページを見てください。これは丸谷さんが優しく聞いておられましたので私がしつこく聞く必要はないのかもしれませんけれども、私も資料をそろえてきましたので、ちょっと見てください。これもやはり前にお出しした資料ですけれども、そこに世銀とIMFのが入っていなかったので、つけ加えたんです。よく見ていただきたいんですが、三ページですね。済みません、細かいの、ちょっと目がかすんできた人は見えにくいと思いますけれども。

 これは、どこの国も拠出金に対してパラレルな割合、同じ割合で採用すべきだという数字を出して、ではどのぐらい下回るかというのを計算すると、世銀グループをみんなやると、五百三人も下回っている。IMFも八十五人と。

 それから、次の四ページは、世銀とIMFだけのも数字をちょっと比べてみたんです。これは出資割合と職員割合を比較して何%分少ないかというのをやるんです。

 何をやったって日本は一番びりなんですね。もうこれは僕は考え直さなくちゃいけないんじゃないかと思うんです。この数字、二つを見比べてみて、どういうふうに思われるかということなんですけれども、私はこういうのを本当に直していかなくちゃいけないと思うんです。

 IMFと世銀のトップなんかどうなっているかというと、皆さん、財務省や関係者の方はおわかりだと思いますけれども、変わった人というか、レディーズマンとか言われていますけれども、女性スキャンダルを起こして世銀総裁はやめましたね。それでゼーリックになった。ストロスカーンも就任早々そういう問題を起こした。そんな人がなっているわけです。そして、アメリカとEUで手を握って、国際的な利権が、インターナショナルに認められた利権ができてしまっていて、世銀総裁はアメリカ、IMFの専務理事はヨーロッパと、全然それが崩されていないんですね。国際的な既得権です。やはりこういうのは打破していかなければ。日本はどこでも二番目の拠出ですよね。

 それは毎度そんなぎゃあぎゃあ言う必要はないかと思いますけれども、私は、不祥事があったりしたら、それはちゃんとつっつく、何てだらしない総裁か、何とだらしない専務理事かということを言って。日本にはちゃんとした人がいる、少なくともそういう不始末をしでかすような人は、日本人は少ないですよね。だから、そういうことも売りにして、しつこく言っていくべきだと思います。

 これについては財務省と外務省の両方セットで頑張っておられると思いますけれども、どのような努力をされてきておるんでしょうか。

門間政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、我が国の政府機関、出資に見合った日本人職員の採用を実現することは大変大事な問題だと思っておりまして、さまざまな機会をとらえて働きかけております。

 具体的には、大臣あるいは幹部が世銀の幹部に会いましたときに必ず日本人職員の採用及び幹部の採用を要請するなど、いろいろな機会に働きかけております。また、若手職員の採用に向けましても、やはりどうしても世銀などで経験を積んでいた方が採用に有利なような面もございますので、例えばジュニア・プロフェッショナル・オフィサーというような仕組みもつくりまして、少しでも多くの日本人職員が採用されるよう努力しているところでございます。

篠原委員 みんな努力している、努力していると言うけれども、努力が足りない部分があるんですよね。しかし、前、せっかく褒めたのになかなかトップになれていませんけれども、天野さんのはいい例だったと思います。

 僕は、財務省でいい例は、この間退官されて母校の慶応大学の商学研究科の大学院の教授になられた柏木茂雄さんだと思います。僕は、彼の人事配置も見ていて、なかなかやるなと思いました。今、加藤隆俊さんが副専務理事でおられますけれども、柏木さんの方がふさわしい経歴ですね。見たら、彼は三回行っているんですね。一回目はエコノミストで若いときに行き、二回目に政策企画審査局次長というので、二〇〇〇年ですが。七三年、私と同じ入省年次ですよ。だから、入省して二十七年たって行くわけですね。そしてまた最後、IMFの日本理事になっておられるんですよね。これは鮮やかですよ。

 外務省の皆さんにもそういう人事をやってほしい。一つの国際機関に決め打ちで一回、二回とやって、最後はあわよくばトップにならせてもらう、こういう人事をすべきだと思うんです。こういうのをちゃんとほかにやっておられるのかどうか。柏木さんは偶然の産物なのか、あるいは第二、第三の柏木茂雄をつくっておられるのかどうか。私は絶対やってほしいと思うんです。

 そして、先ほどの議論を聞いていますと、日本人は、大学を卒業してすぐ採用して、それで、それぞれの役所で、オン・ザ・ジョブ・トレーニングでその省の型にはまった人材を育成する。企業と同じことをしている。これだったら、国際的には修士号を持っていたり博士号を持っていたりした方がいいというんだったら、私は、日本の制度というのは、やはり役所が見本を示すべきだと思います。積極的に修士課程卒業者や博士課程を卒業した人を採って、それをそのように処遇して、そういう人たちが受け入れられやすいんですから、国際機関にさっさと出して、もちろん国内の立派な要職につけてもいいんですよ。そういうふうにしていくべきだと思います。

 財務省は日本の役所の中の役所ですよ。財務省が率先垂範して、ことしから国際機関への要員も確保しなくちゃいけない、どうも理屈では負けてしまう、理屈をちゃんと言える人、資格もちゃんと必要だ、そのために修士課程卒業者を二人採る、博士課程卒業者を二人採るというように採用して、そしてその人たちをちゃんと処遇して、そうするとその後輩たちはその処遇をちゃんと見ていますよ。そういうことをぜひやっていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。第二、第三の柏木さんをぜひつくっていただきたいんです。

    〔三原委員長代理退席、委員長着席〕

門間政府参考人 お答えいたします。

 財務省としましても、御指摘のとおり、世界に通用するような人材を育成していくことが大事だと思っております。

 入省四年か六年あたりに、まず、できるだけ留学をさせて、修士あるいは可能であればドクターまで取れるように支援をしております。また、最近、採用の中には、修士を取得した者も最初から入れている場合もございます。それから、その後、管理職になる前、なるべく国際機関あるいは在外公館といったところにも派遣をして、さらに、適性があれば複数回国際機関に行っていただきたいと思っております。

 具体的には、柏木氏のほかに、例えば現在IMFのアジア太平洋事務所長をしております有吉という者は、かつてアドバイザーでIMFへ行きまして、また現在も所長をやっておるとか、御指摘のとおり、第二、第三の柏木氏に続くような人材を財務省としてもぜひつくっていきたいと思っております。

篠原委員 有吉章さんですけれども、私も見て知っていますけれども、そういうのをちゃんと、ぜひやっていただきたいと思います。やればできるんじゃないかと私は思います。

 それから、この続きですけれども、やはり、さっき、お金を出すけれども、人も出さない、口も出さないと。口も出すべきなんです。去年じゃなくことしですか、麻生さんがIMFに対して一千億ドルと過去に例のない融資をすると言っておられる。それで、ストロスカーンは大喜びで、過去にこんな例はないと喜んでいる。喜ばれているだけじゃだめですよ。

 同じように、例えば金の売却をしたりするというようなときに、では認めるよといったときに、ブッシュ政権というか、ブッシュはどう言ったかというと、そのときにちゃんと、きちんと赤字体質を直せ、人員整理をしろという注文をつけているわけです。日本は、お金を出すときにはちゃんと注文をつけたらいいんですよ。

 そういったときに、もう一つ資料を見ていただきたいんですが、五ページのところを見ていただきたいんです。ここのところには、何倍というふうにはなっていませんけれども、やはり世銀は給与が高いんです。倍数をちょっと入れ忘れちゃったんですけれども、国連と世銀と、僕はちょっとどことどこを比べたらいいのかわからなかったんですけれども、私なりに判断して、外務省の方、財務省の方にも手伝っていただきまして数字を出しましたよ。こういうポジションの人、どうやって訳したらいいのかわからないので、英語で書いてあります。見てください。

 何か、最低給与額と最高給与額、年齢や経験からしていろいろあるんだそうですけれども、違うんですよ。世銀は、ASGというので見れば、二倍から、ひどいときは二・五倍なんです。給与が高いんです。

 サブプライムローン問題なんかに端を発して世界じゅうが経済危機に陥っているのも、彼らにも責任はあるわけです。我々だってボーナスは二割カットされているんです。日本の国家公務員もみんな人事院勧告で減らされている。民間の銀行は、首になっている人もいっぱいいる。私は世銀や何かの方はどうなっているのかと思うんですけれども、こういうことについて日本は何か注文はつけたことがあるんでしょうか。

門間政府参考人 お答え申し上げます。

 世銀の職員の給与といった点について御指摘があったと思います。

 世銀の役割からいたしまして、途上国の開発、貧困削減、また気候変動対策等、地球規模の課題に大きな影響を与える機関でございまして、国際的に競争力のある有能な人材を確保する必要があると考えてございます。

 こうした点を踏まえまして、世銀職員の給与水準は、アメリカの公的部門や金融機関等の民間セクターの給与水準と同程度となるよう毎年見直しが行われております。例えば、二〇〇九年、今年度でございますけれども、世銀グループにおきましては、市場の状況に応じて支給額を変えられる報酬部分につきまして支給を停止するというような、経済情勢の変化に応じましてさまざまな対応をしているところでございます。

篠原委員 時間が参りましたので、最後に六ページをちょっと見てください。これは日曜日の日本農業新聞の三面に大きく出ていた記事です。これは棒線を引っ張ったところに世銀が出てくるんです。日本の国際協力におけるプレゼンス、これはODAの額が減って五位か六位だとか、金額だけでやっていたってしようがないですよ。重点的にやって、ここは役立ててもらっているということで皆さんに感謝される、そういうことをやっていただきたいと思うんですね。飢餓、貧困を救えというのがあります。国連のミレニアム目標があって、飢え、貧困を撲滅すると言いつつ、それになかなか達していないんです。ですから、こういったところに重点を絞ってやっていくようにしていただくことをお願いいたしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

河野委員長 次に、辻元清美君。

辻元委員 社民党の辻元清美です。

 本日は、国際通貨基金協定の改正及び国際復興開発銀行協定の改正、そして日本・香港刑事共助協定、日本・中国領事協定と、四本の案件が取り扱われておりますけれども、私はその中で、金融危機と言われる昨今の状況をかんがみまして、国際通貨基金、IMF、これを中心としたIMF体制のあり方、そしてさらに刑事共助協定などについて中心に質問をしたいと思っております。

 まず最初にお伺いしたいんですけれども、金融危機でサミットが二回開かれました。その中で私、大事なことは、やはり何が間違っていたのかと。経済体制がここまで来たのにはやはり原因があるわけですね。そこの分析をしつつ、例えば国際的な機関としてIMFがさまざまな課題に新たにどのような改革を進めながら取り組んでいくのかということが大事だと思うんですね。

 といいますのも、例えばヘッジファンドの暴走とか、それからアメリカの行き過ぎたいわゆる新自由主義的な流れとか、いろいろ言われておりますけれども、IMF体制というのは少なくともこの金融のど真ん中にいたわけですね。ですから、世界の金融市場の番人と言う人もおりますし、役割としましては、経済的な安定、危機の予防、それから危機が発生したときにはその解決のための活動、そしてさらには貧困の緩和という、非常に重要な位置にいたわけです。しかし、現在のような金融危機に至ってしまったというのは、やはりその中心にいたIMF体制そのものの見直しもこの際しっかり議論しなければならないと思うんです。

 そういう中で、未然に危機の予防というのがIMFにとっても非常に重要な役割であったはずなんですけれども、今回は防げませんでした。そういう中で、今までのIMF体制のあり方について、日本政府としてはどういう点が問題だったという認識でいらっしゃるんでしょうか。

中曽根国務大臣 IMFにおきましては、今回の世界金融経済危機、これにつきまして十分に事前の警戒機能を発揮できなかった、そういう反省も踏まえまして、IMFが金融安定理事会、いわゆるFSBですけれども、これとも協力をいたしまして、早期警戒の実施に向けた取り組みが進められているところでございます。

 今回の金融経済危機に対しましては、IMFが加盟国の危機対処への支援や、それから将来の危機予防に積極的に役割を果たすということが強く求められているわけでございまして、我が国といたしましても、引き続いてIMFの資金基盤の強化とか、またサーベイランス機能の強化などの改革に積極的に取り組んでいく考えでございます。

辻元委員 今の大臣の御答弁の中で、事前の予防が十分今回はできなかったという、その理由をどう考えるか、分析するかということなんですね。そこの部分は政府としては議論をされているんでしょうか。後でちょっと聞きたいと思いますけれども、事前の予防ができなかったから、これから早期に予防、警戒するような体制をつくると言われているんですが、では、なぜ、どういうことが問題で事前にいろいろな危機を察知できなかったのか、この点についての分析をやはりしないとだめだと思うんです。

 政府として、そこは分析をしているのかどうか。そして、その主たる理由を例えば一つ二つ挙げるとこういう点が問題だったなという点を、どのようにお考えでしょうか。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 大変難しい質問ですけれども、先生おっしゃいますように、IMFは、国際的な通貨システム、金融システムの中心的な部分でありながら、十分な役割が果たせなかったんじゃないかと言われておりまして、その一つは、アジア通貨危機のときもそうでしたけれども、金融危機に直接関係があることに本来絞ってアドバイスをし、資金を貸していくべきなのに、いろいろな周辺的な構造問題にまで踏み込んでアジア各国なんかを離反させてしまったような面もございます。

 それから、アジアの国を含めて、新興市場国の出資額が少ない、それに見合った資金のアクセスというか借入額も限られているということで、十分な資金が供与される仕組みになっていなかった。

 それから三つ目は、非常に問題が起こってから出て行くものですから、IMFからお金を借りたということ自身が既にスティグマというか汚名につながってしまって、必ずしも予防的な役割を十分果たせなかった。

 それから、サーベイランスというか、各国の経済問題を監視していくということがございますけれども、アメリカを含めた先進国を含めて、十分な問題点の指摘が行われたのかどうかということも問題になっている。

 それから、その問題点の指摘になる背景としてのマクロ経済政策についての考え方も、物価が安定し、成長率が高く、金利も低いような状況が続いていた中で、実はいろいろな矛盾が、資産価格が上がっていったり、それから非常に過剰な貸し付けが行われた、後になってみるとこれは明白なんですけれども。そういうことについても、インフレが安定して、成長率も高いということの中で、十分な注目がなされなかった。

 いろいろな問題点が指摘されておりまして、そういうことについては我が国も含めて国際的な議論をして、反省に立ってやっていこうということに。それから、IMFの融資制度それからサーベイランスのあり方などについても、日本の主張なんかも含めて議論している。特に日本は、九〇年代にいろいろIMFのアドバイスを受けた、それからアジア通貨危機の中でも中心的な救済の役割を果たしたということで強い関心を持っておりますので、積極的に関与しているということでございます。

辻元委員 今の幾つかの点、非常に重要な点の御指摘だったと思います。

 その中で、やはり一番最初に御指摘された点、アジアの危機があったときに、これは九〇年代後半ですけれども、このときのIMFのあえて介入という言葉を使えば、そういうふうに見られている国々もありますので、このときのいわゆる構造調整プログラムなどについて、一つのモデルを押しつけていくというようなやり方がかなりなされた。これに対してのIMFに対する信頼性だけではなくて、私は、IMFの基本にあるその考え方といいますか、そこがやはり、多様な世界に対して一つの価値観の物差しで、行き過ぎたところがあるんじゃないか。

 この点について、次はちょっと、過去のアジアの通貨危機のときの事例で検証を幾つかしてみたいと思うんですね。それがない限り、やはり次に進めないと思うからなんです。

 きょう、竹下副大臣にお越しいただいているんですが、竹下副大臣は以前、財金の委員会で三月にこういうように答弁されているんですね。「IMFの課したコンディショナリティー、」、要するに、アジア諸国を中心にいろいろな国に、条件が余りにきつ過ぎるんじゃないかという不満が残っていて、「本当にIMFによる解決が一番の正解だったのかねという思いがアジアの国々の中にはまだ残っていることは紛れもない事実でございます。」とお答えになっているんですね。

 財務省としても、やはり今もここの点は、アジアの国の一つですから、これからのIMFの改革の中身を提案していくに当たって、この視点は非常に大事だと思うんですが、財務省としては、この点を踏まえて、どのように今後の改革に取り組んでいこうとされているんでしょうか。

竹下副大臣 先般そのようにお答えをしたことはもちろん事実でございますし、韓国とかタイとか、幾つかの国の財務当局者あるいは政府の関係者と話しておりまして、例えば韓国の場合ですと、そのコンディショナリティーといいますか条件を比較的守って、だけれども苦しかったということをおっしゃっております。タイでも似たようなお話をお伺いいたしました。その当時と今回の金融危機では、短期資金が大量に引いたという部分と今回みたいにすべてが引いちゃったという部分、いろいろな違いはあるんですけれども、IMFが出てくることに対するある種の抵抗感というのが残念ながらまだ残っているな、こう感じております。

 ただ、では、ほかにIMFにかわる有力な、そうした国際金融の舞台での世界で通用する機関があるかとなると、なかなかこれは難しい。では、日本一国でそれを引き受けられるか。これはもっと難しい。やはり我々は、いろいろな問題はあるけれども、IMFを中心にした国際金融体制というのをしっかり維持していかなければならない、こう考えておりますし、そこに向けて改革、辻元委員がお話しになりましたように、IMFはすべて一〇〇%正しいわけでもありませんので、それぞれの地域に合った、あるいは貧困の度合いに合った、あるいはもしかしたら文化の度合いに合った金融支援、そんなものがあるのかどうか私は知りませんが、そんなことまで、アジアとヨーロッパ、アメリカの物の考え方の違いみたいなものを一つ痛感させたのがアジア危機であったのかな、こう感じております。

辻元委員 今の御発言の中で、文化に合ったという御発言もございまして、それから韓国やタイの事例ということで御紹介いただいたんですが、インドネシアもそうですね。

 結局、私は、今回の金融危機と、九〇年代、これぐらいから、経済のグローバリゼーションが八〇年代後半から進んでいきます。経済のグローバリゼーションというのは、やはりアメリカが先導しましたと思います。

 八九年にベルリンの壁が崩壊して、その後、東側諸国がなくなった中で、アメリカ一極みたいな形にやはりどうしても世界がなりました。その中で、アメリカが、アメリカ型のとあえて申し上げれば、資本主義のやり方、金融を自由化していくということを先導して、東側がなくなったものですから、言ったら、ほら、社会主義がなくなったやろう、アメリカ型でいくでということで、アメリカ型の金融優先のいわゆる規制緩和と市場開放、市場の原理という一つの物差しで世界じゅうのあちこちにその構造改革を迫ったというのが、やはり私は九〇年代のアジア危機を、てこにしてと言ったら変なんですけれども、識者によっては利用してという言葉を使う識者もいるわけですね、そういう一つのやり方、その中にIMFも組み込まれて、先ほどからIMFなどの国際機関の人事も欧米型と言われておりますけれども、その一つのアメリカのスタンダードを、先兵としてと言ったらちょっと言い過ぎなので、あえて申し上げると、その思いも私はありますので、IMFが先導していったんじゃないかというように私なんかは考えるわけなんですね。そこの部分、今の金融危機と切っても切れない、むしろ、金融危機みたいなことが起こる世界の経済システムをつくる一つの役割を果たしてしまったんじゃないか。

 ですから、そこをどう考えるかということを抜きに、幾ら増資しても、それからこれから規制をするといっても、その根本のところの議論を、これは何も別に私はアメリカを攻撃しているとかというわけではなくて、アメリカの中の議論も起こっていると思うんですね。

 当時を見ますと、韓国の経済学者のキム・デファンさんという、一九九八年にお書きになったものの中にも、私は、経済学者として、外国資本の誘致を同時に求めるIMFの融資条件に疑問を持つ、さらにこの条件ではインフレになるんじゃないかとか、それから、金融の過度な自由化をアメリカ型のやり方で求めてきているとか。

 それから、インドネシアについても、ある経済学者が、「IMFはアジア経済の台風の目となっている。IMFの要求は、経済危機を長引かせ、デフレ的な、かつインフレ的な影響を地域経済に与えている。」ということで、その中で、外国資本への過度な依存をもたらしているのではないか、それから、グローバル市場というものを急にアジアに押しつけてきているんじゃないかと。これによって、今起こっているような問題、労働者の格差が広がるとか貧困層がふえるというような指摘をもう既に、これは両方とも九八年です、していたんですね。

 私は、やはり今の経済危機というのは、このときの危機と切っても切れない。そして、このときの危機の対応の仕方がいわゆるそういう形での、IMFなどを中心にしていた一つの方法に頼っていたために、さらに危うい構造のグローバル経済というものができてしまったんじゃないかというように考えているんですけれども、竹下副大臣、いかがでしょうかね、いろいろ現場でもお話しされていると思いますけれども。ここは、これからIMFをどうしていくか。私は否定しているんじゃないんですよ。ですから、きょうの協定の改正に賛成なんですね。少しでもよくなる。しかし、その根本を今私たちはしっかり考えないといけない時期じゃないかなと思うんです。

 今、アジアの国々と話し合っていて、やはりアメリカのやり方というか、グローバルスタンダードという名でいきなりやってきたというようなやり方。それから、ワシントン・コンセンサスという言葉を御存じだと思うんですよ。結局、IMFとか世銀とアメリカの財務省が一緒になって一つの経済戦略をつくっているんじゃないかと。これは九〇年代後半からずっと言われてきていたわけです。それで世界がうまくいったのならいいんですけれども、かえって脆弱な経済構造をつくってしまった、その中にIMFもあったのではないかと私は思っているんですが、いかがでしょうか。

竹下副大臣 辻元委員のおっしゃることを全面的に否定するつもりはございませんが、例えば日本を念頭に置いても、IMF、世銀というものの後押しを受けながら経済復興してきた、高度成長をなし遂げてきたという背景がありますし、アジアの国々がこれだけ今、世界の中で一番経済の勢いがいい、今は苦しいですけれども、苦しい中でも勢いがいい、こう言われておる背景の一つは、すべてがIMF、世銀ではないんですが、そういった国際金融体制の中でアジアという国が、あるいは自由貿易体制、あるいは市場競争原理と言い直してもいいかもしれませんが、そういったものの恩恵をしっかり受けていることもこれまた事実なんです。悪い面ばかりではないんです。

 ただ、今回こうやって経済危機が起きてきますと、なかなかいい面ばかりの評価をするわけにもいかない。というより、私は、アメリカが例えば時価会計をあれだけ世界にやれ、やれと言っていた。今回の危機を迎えてアメリカが何をやったか。時価会計を見直してもいいよということを突然言い出した。これはあるコラムニストの言でありますが、日本はルールを守る国、アメリカはルールを変える国、こういう表現をした人がいるんですが、アメリカというのは時にそういうことがあります。

 ただ、だからといって、IMFそのもののルールをアメリカの意思だけで変えられるか。あれは出資比率にほぼ応じた発言権が確保されておりますので、なかなか、おっしゃるように、アメリカとIMFが完全に一体である、ワシントン・コンセンサスというのが世界を覆っておるというのは、ちょっと見過ぎじゃないかな、こう思います。

辻元委員 私もそれだけと申し上げているわけではないんです。

 経済のグローバル化というのは、もう避けて通れないと思うんですよ。しかし、偏り過ぎると、それともう一つは、一つに基準をそろえ過ぎると、多極化していないと危機が一遍に、一つのルールと言ったら変なんですけれども、単純化されていくと全部に行き渡っちゃうわけですよ。

 例えば、今アメリカは、GMも国有化、それから銀行ナンバーワンのシティも、それから保険のナンバーワンも、皆国有化という事態になっているわけですね。これも、どんどん買収して大きくなったら安全なんじゃなくて、一つが倒れたら全部倒れていく。今までは違ったわけですね、いろいろな形があったわけですよ、経済のルールにしても。そうすると、こっちが倒れてもこっちは元気であるといえば、こっちが助けることもできる。

 私は、グローバル化というのは避けて通れないんですけれども、これから私たちが考えるに当たって、この前、チェンマイ・イニシアチブのこともちょっと外務大臣には質問したんですけれども、あのときにアジア通貨基金の議論も出てまいりました。一つはグローバル化は進めるんですけれども、やはり地域地域の一つの防波堤と言ったら変なんですけれども、防波堤になるかどうか、これもわかりません、今みたいな時代になってきますと。

 しかし、アジアの今までのそういうIMF的なやり方の反省も踏まえて、やはりアジアでまず協議を、これは外務大臣もなんですけれども、どうだったのか、一体何が問題だったのかということをアジアとして考え、一つのEUというブロックはございますので、アジア通貨基金、あのときも何かやはりIMFとアメリカが、日本がそんなことをするのはちょっと待ってくれというような意見もあったと当時聞いております。ですから、やはりアジアの経済圏をどういうふうに強くしていくか、その上で、IMFももちろん大事ですし、つき合っていくという視点を持たなきゃいけないなと。

 日本の国内の内政を見ても、結局、市場の原理、規制緩和、民営化、自由貿易というのを進めていったわけですよ、IMFも、それを基軸にして。今、これは日本も議論されているわけですね。規制緩和は、全部反対じゃなくて、バランスですよね、緩和していいものと、やはりここは規制しておかなきゃいけないというもの。

 ですから、私は、今、このアジアの経験も踏まえた上で、外務大臣に、これからIMF改革を進めるに当たりまして、日本はお金を出すと約束しましたけれども、その中身の理念であったり、それから、アジアの通貨危機などの経験を踏まえてという中身は、むしろIMFのあり方が今の金融危機を加速させる面があったのではないかという観点からも、しっかりアジアの国々と議論してリーダーシップをとっていただきたいんですよ。外務大臣、いかがでしょうか。

中曽根国務大臣 IMFのアジアにおける過去に行ったことに対する反省や、また、ワシントン・コンセンサスという言葉が出ましたけれども、そういうものに対していろいろな意見があり、また改革も行われているところでありますけれども、東南アジアにおきましては、特にインドネシアや韓国におきましては、融資条件として課された政策などは非常に広範にわたっていたり、あるいは国営企業民営化とか、そういうようなマクロ経済の安定には必要不可欠とは言えないようなものも含まれていた結果、なかなか反発も招いた、そういうようなことが言われているわけであります。

 今回、この経済危機に対しましては、IMFがやはりしっかりとした役割を果たすことが重要でありまして、そういう意味では、IMFがガイドラインを策定しておりますけれども、IMFの資金支援等につきましては、我が国としてはこの機能が十分果たせるようにしっかりと対応していかなければならないと思っております。

辻元委員 七月にはサミットもございます。そこまで政権がどうなっているか、ちょっとよくわかりませんけれども、だれが行かれるのか。しかし、その中で、今、竹下副大臣の御答弁で文化とかいろいろな御発言をされておりましたので、本当にアジアの国々とよくそのときの議論を深めていただきたいというように思っております。でないと、今回も、よくなるんですけれども、しかし、根本のところをしっかり、これは今、日本を含めて世界がすごい大事な局面に来ると思います。ますますひどい方向に行くのか、何とか人類の英知で言うたら大げさですけれども、今の状況を脱することができる方向を探れるのかということになりますので、御議論をお願いしたいと思います。

 それで、もう一点、きょうは刑事共助協定のこともございますので、そちらに質問を移したいと思います。

 まず、今回は香港との間ですけれども、日米、日韓、日中と今まで結んでまいりました。私がちょっと疑問に思っている点がありまして、日米と結んでいる、これと地位協定の関係がどうなるのかということを常日ごろから疑問に思っておりました。

 といいますのも、例えば凶悪犯で、殺人とか強盗をもしも国内ですると、アメリカに逃げ帰ったら、これは凶悪犯ですから日本としてはけしからぬということになって、もちろんそういう凶悪犯の場合は、日本政府としてはアメリカ政府への捜査の協力要請などすると思うんですね。しかし、これは一たび地位協定が絡んでくると、今までの戦後の中でもそういう事件が、いや、アメリカ本国に帰りましたからということで、なかなか被害者が納得するような形で解決しないという事例がたくさんありました。

 そうしますと、この両者の関係は何ができて何ができないのか、まず御説明をいただきたいと思います。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 日米刑事共助条約は、捜査、訴追その他の刑事手続に関する日米間の共助の範囲、事件、手続等につき定めたものでございますが、これは在日米軍人軍属等へも適用し得るものでございます。

 他方、在日米軍軍属等に関係する事件につきましては日米地位協定があるということでございまして、日米地位協定の例えば第十七条6は、「日本国の当局及び合衆国の軍当局は、犯罪についてのすべての必要な捜査の実施並びに証拠の収集及び提出(犯罪に関連する物件の押収及び相当な場合にはその引渡しを含む。)について、相互に援助しなければならない。」旨の規定がございます。そういうことで、我が国の捜査当局及び米軍当局は、我が国における米軍人等の犯罪につきまして、この規定に基づいて供述の取得や物件の提供等の捜査協力を相互に求めることができるわけでございます。

 このような捜査協力について、日米刑事共助条約に定める手続を通じてこれを求めるということが禁止されているわけではございません。しかしながら、地位協定の場合には、基本的には同協定に従って実施するのが筋ではないかというふうに考えております。

 また、地位協定に基づけば、我が国の捜査当局と在日米軍の当局が相互に直接連絡をし援助を行うという、迅速かつ簡素なルートで行い得るわけでございますが、日米刑事共助条約に基づけば、同条約上の我が国の中央当局それから米国の中央当局たる司法省あるいは米国国防省というものが介在することになりますので、一般にそういうようなルートによって行うメリットというのはないのではないかということでございますので、地位協定のもとで協力を行い得るケースについてこの刑事共助条約に基づいていろいろ行うということは、なかなか想定されないのではないかということでございます。

辻元委員 関係は、今整理してお話しいただきましたので、理解をいたしました。

 さて、その上でなんですけれども、犯罪件数を見てみますと、これは、きょう警察庁の方に来ていただいていると思うんですけれども、例えば米国人、来日米国人ですね、一般に観光とかお仕事で来られる米国人の犯罪件数と、それから米軍の関係者の犯罪件数は、これは別々に統計をとっていらっしゃると聞くんですが、どれぐらいなんでしょうか。

宮本政府参考人 お答えいたします。

 平成二十年中の米国人の刑法犯の検挙件数でございますが、これは四百五十二件でございます。いわゆる来日の米国人ということでございまして、統計上、これに含めておりませんが、外数になりますが、平成二十年中の米軍人及び軍属の刑法犯検挙件数は九十一件となっております。

辻元委員 今、全体、これは軍人軍属を除く場合が四百五十二件、軍人軍属が九十一件なんですね。そうすると、四分の一、何分の一と言ったらいいのかな、割合、私は、軍人軍属の比率は高いと。年間九十一件となると、毎月何件か起こっているわけですから。特にこの軍人軍属の場合に、沖縄なんかではきちんと捜査がされないんじゃないかというような被害者からの訴えなんかもあるわけですけれども、それぐらいの数です。

 さて、その中で、ちょっとこういう事例があるので聞いていただきたいんですけれども、先ほど、この刑事共助協定、これは米国の軍人軍属も含めて適用されるという明快な御答弁だった。しかし、地位協定でやった方が、いろいろ事の特殊性からかんがみて、なじむのではないかという御答弁だったと思うんですね。

 例えば、これも御存じの方は多いと思いますけれども、横須賀の米空母のキティーホークの乗務員の人に、これは二〇〇二年の四月ですが、ある女性が強姦されたんですね。この案件で、不起訴になりましたので、まずここで刑事共助協定の範囲ではない。しかし、不起訴になったのは不服だし、どうも取り調べがおかしいということで、この女性が民事裁判を起こしたんですね。そうしたら、民事裁判で、〇四年の十一月、東京地裁は強姦の事実認定をして、そして相手の米兵に慰謝料三百万円の賠償の判決を下したわけです。ところが、この米兵は、結局、審理中に除隊してアメリカに逃げ帰っちゃったんですよね。それで、うやむやになっておるわけですね。

 こういうケースというのは、この人の例だけではなくて、割合あちこちから指摘されているのは、皆さん御承知のとおりです。結果、どうなったかというと、判決が出て、強姦の事実認定をされたけれども、この米兵が帰っちゃった、それで、アメリカの方も知りませんになっておるわけですね。結局どうしたかというと、防衛省にお聞きしますが、防衛省がこの賠償金を肩がわりして三百万円を払ったんですか。

井上政府参考人 お答えを申し上げます。

 今お尋ねの事案でございますけれども、結論的に申し上げますと、防衛省といたしまして、昭和三十九年の閣議決定でございます「合衆国軍隊等により損害を受けた者に対する賠償金及び見舞金の支給について」という閣議決定がございます。それに基づきまして見舞金を支給しております。

辻元委員 三百万円と聞いたんですけれども、これはこの女性が強姦の事実認定を裁判でされたということを根拠にした見舞金ということで、政府としても、米兵が強姦をしたという事実を認定したから払ったわけですね。

井上政府参考人 見舞金を支給いたしました経緯でございますけれども、先ほど委員から御指摘の裁判の手続等の事実関係は御指摘のとおりだろうというふうに考えております。

 民事訴訟におきまして、東京地裁におきまして不法行為が認められたわけでございますけれども、控訴をいたしまして、原告が控訴を取り下げて、一審判決が確定をしております。他方、被害者は、地位協定の十八条六項によります損害賠償請求を防衛省に対して提出いたしましたけれども、加害者が既に合衆国軍隊を除隊いたしまして米本国に帰国をしており、その所在を確認できない、賠償金の請求が困難になったというようなことがございまして、提出をしているというわけでございます。

 ただ、それを受けまして、米側でございますけれども、合衆国法典の外国人請求法という法律がございまして、その規定によりまして、請求権発生後二年を経過していない事案につきましては請求権は効力がございますけれども、本件の場合、三年を要しておりますので、既に失効をいたしましたので、慰謝料の支払いを拒否している。

 したがいまして、日本国政府といたしましては、十八条六項によります処理が困難になったのは被害者の事情によるものではない、また、これを放置することは社会通念上妥当ではないというふうに考えられますことから、閣議決定によりまして見舞金を支給したという経緯でございます。

辻元委員 裁判の事実認定を日本政府も認識しての行動だという御答弁だったと思うんですね。ところが、この米兵は、除隊して、審理中からもういなくなっちゃった。そして、強姦されたという事実は残っているわけなんです。これは、一般人が強姦していて、日本政府としてはほっておけないはずなんですよね。

 実は、この女性は、日本に住んでいるオーストラリア人なんですね。それで、彼女は、ホームページなどを使って自分の訴えをして、だれか自分の加害者を知りませんかということを世界じゅうに訴えたんです。そうしたら、この人じゃないかという情報がアメリカから寄せられたんですね。これはかなり確証がある情報らしいんですよ。それで、日本政府に対してもアメリカ政府に対しても、強姦した事実は事実ですから、それも今から五年ぐらい前の話ですね、協力要請を求めても協力をしていただけない。そうすると、オーストラリア政府に駆け込んだわけです。オーストラリアの首相にお手紙を書いた。そうしたら、オーストラリア政府からは返事が来て、アメリカ政府に協力要請をしましょうということになっておるわけです。

 確かに刑事共助協定というのは刑事事件で起訴されたということが基本になっておりますので、そこは理解しておるんですけれども、このような案件というのは、私は、すごく谷間に落ちていると思うんですね。

 例えば、強姦するとか殺人するとかひき逃げするという事件、事故の数を申し上げますと、例えば先ほどの来日アメリカ人、犯罪件数はお聞きしましたが、昨年強姦は一件なんです。しかし、米軍人による強姦は八件なんです、昨年は。そして、凶悪犯と言われるのは、殺人、強盗、放火、強姦をいうらしいんですが、日本に来たアメリカ国籍の方の凶悪犯は全部で九件なんです。しかし、米軍人による凶悪犯は十一件なんですよ。

 私は、外務大臣に以前から、この地位協定の見直しというのは、何も無理なことを言うんじゃなくて、この女性の件、突き詰めていけば、今、二年だ何だというのは、地位協定、日米の取り組みでいっぱいあるわけですよ。被害に遭ってから二年たったらもう言えない。そうしたら、強姦されたとか殺人、ひき逃げ。ひき逃げの案件も、私、被害者の会の方からお話を聞きましたよ。お父さん、沖縄で息子さんが大学を受けられて、そして、もう間もなく入学式というときに米兵にひき逃げに遭った。しかし、この加害者は、では実際に何か罪を償ったかというと、償っていないんですよね。

 こういうことを放置しておいていいのか。刑事共助協定を結ぶのはいいんですよ。しかし、何か米軍関係は、普通の一般通念から考えて別扱いになっているんじゃないか。私は、日米地位協定を、それはいろいろなしがらみもあるでしょう、しかし、やはり見直す時期だと思うんですね。

 もう一つ、最後に外務大臣にお聞きしたいんです。

 これは日本の、本当に国家としてどうあるかということと同時に、経済も、それから安全保障もやはりアメリカ主導だったんですよ、日本に対しては。先ほどIMF体制の話もしました。やはり日本も一緒にその流れをつくって、そこに乗っていました。しかし、私は、やはりこういう時代というのはすべて、別に何か急にこうしろああしろと言っているわけじゃないんですよ、いろいろなことを検討してもいいんじゃないかというように思うんですね。外務大臣の率直な御意見を伺いたいと思います。

 これは普通の強姦された女性の話だと、やはり私は、強姦とか殺人、ひき逃げというのは、どこかに逃げちゃったら、これは当たり前ですよね、警察がアメリカ政府に言えとか、こうなりますでしょう。いかがでしょうか。

中曽根国務大臣 ただいまお話しになりましたこの事件につきましては、被害者の方には本当にお気の毒なことでございますし、また、加害者が米国に帰国してしまったということで、その後、防衛省なり政府がそういう見舞金を支払ったという形になったわけでありまして、米国のどこにいるかというようなことが不明であるということからそのようなことになったんだと思います。

 地位協定につきましては、この委員会でも再三御答弁申し上げておりますし、特に沖縄等におきましてもいろいろな事案が過去にあったわけでありますが、運用の改善、見直し等で大体そのような事態に対応して、そしてまた成果を上げているものもあるわけでありまして、現在のところ、政府としては、地位協定を見直す、そういうような考えはございません。

辻元委員 引き続きまたこの問題は取り上げたいと思います。経済危機の問題もまたお聞きしたいと思いますので、本委員会に竹下副大臣もまたお越しいただきたいと思いますが、これで時間になりましたので、終わります。

 ありがとうございました。

河野委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 最初に、国際通貨基金協定及び国際復興開発銀行協定の改正の関連について質問をいたします。

 今回のIMF協定、国際通貨基金協定の改正は、基金の投資権限を拡大するとともに、これまで課題だった新興市場国や途上国の発言権をわずかに高めることになりますが、アメリカを中心とする先進国主導の意思決定や人事運営を変えるものでなく、途上国に対し、融資と引きかえに、米英流の市場経済化、規制緩和、社会保障予算の削減を押しつけるIMFのこれまでのあり方を改めるものではありません。

 また、IBRD協定改正も、途上国の発言権をわずかに高めるものになっておりますが、IMF協定同様、米国の事実上の拒否権ともいうべき一五%以上の投票権を握るなど、先進国中心の運営を変えるものでなく、途上国側からも発言権の拡大が不十分と指摘をされております。

 両機関とも抜本的な改善が求められていることを踏まえ、我が党は協定承認には反対であります。

 以上の立場を踏まえて、政府の見解を確認しておきたいのですが、世界的な金融経済危機が深刻化し、その影響が、先進国のみならず、新興国、途上国まで広がりを見せている中で、特に、新興国、途上国などに十分な支援、融資が行えるようIMFの資金基盤を拡充することや、危機に有効に対処できるような融資手法の改善を図ることが必要とされております。

 この間の金融サミットでは、世界経済における経済的な比重の変化をより適切に反映するため、最貧国を含め、新興市場国及び途上国がより大きな発言権及び代表権を持つべきで、危機対応において重要な役割を担うよう行動すべきとする声明を採択しておりますが、この新興市場国や途上国の発言権の拡大について、今どのような進捗状況にあり、政府はどのように対応していくつもりですか。

中尾政府参考人 お答えを申し上げます。

 今委員から御指摘ありましたように、四月二日のロンドンにおけるサミットの宣言の中にも、新興市場国の代表権を高めていくというような文言が入っておりまして、二〇一一年の一月までに次の見直しを行うということになっておりますので、そうした中で、世界の各国の経済的な力というものに応じたIMFの出資を決めていくということを日本としても目指していきたい、その中で、もちろん日本の発言権の向上も図っていきたいというふうに考えております。

赤嶺委員 それでは次に、領事協定及び刑事共助協定に関してでありますが、この二つの条約には私たちは賛成の立場であります。

 この際ですから、日中関係に関連して外務大臣に伺いたいと思いますが、外務大臣は、今月の七日、第二回日中ハイレベル経済対話のために来日した中国の楊外相と会談をされましたが、日中関係や北朝鮮問題でどのような意見交換が行われたのか、簡潔に説明していただけますか。

中曽根国務大臣 七日の日に私と中国のヨウケツチ外交部長との間で会談を行いまして、双方から、ことしもハイレベルでの意思疎通が不断に行われて、そして特に麻生総理の訪中も多くの成果を上げたということを評価いたしまして、ことしも引き続いて、このよい関係を保ち、そして信頼関係をさらに政府レベルのみならず国民レベルにまで広げていこう、そういうことが大事であるということで一致をしたところでございます。

 日中間では、戦略的互恵関係ということで、この構築を目指しているわけでありますけれども、その基礎となるのが国民間の交流であると考えておりまして、外相との間で、そういう意味で相互信頼、また相互理解を深めていこうということが一致をしたところでございます。

 また、北朝鮮問題につきましても意見交換が行われたわけでありますけれども、七日の日の会談では、安保理は北朝鮮に対しましては、核実験は容認できないということをしっかりと北朝鮮に理解させるということが大切である、そのためには強い内容の決議をできるだけ速やかに採択しなければならないということで、私からそのようなことを楊外交部長にお伝えいたしました。

 楊外交部長からは、北朝鮮による核実験やそれから核保有には断固反対するとの中国の立場を改めて述べられた上で、できるだけ早期に適度でバランスのとれた決議を採択することに賛同する、そういう表明がございまして、引き続いて、ニューヨークにおいて安保理決議の採択に向けた協議を協力しながらやっていこうということで一致をしたところでございます。

 ちょうど現在、この数日間、関係国による精力的な協議が行われているわけでありますが、できるだけ早い時期にこれが採択されるよう期待をしておるところでございますし、ニューヨークに対してもそのような努力をするようにこちらからも伝えているところでございます。

赤嶺委員 北朝鮮による核実験の強行は、国連安保理決議や、あるいは北朝鮮みずからも合意をしました六カ国協議の共同声明に明白に違反する暴挙であり、そして、今世界の中で起こりつつある核兵器廃絶の流れにも乱暴な挑戦だと考えます。

 この問題の対応として何より重要なことは、北朝鮮に、核兵器及び核兵器開発計画を放棄すること、六カ国協議に無条件に復帰することを求めて、国際社会が一致結束した行動をとることが大切だと思いますが、外務大臣の見解を伺います。

中曽根国務大臣 まさに今委員がおっしゃいましたとおりでありまして、さきの弾道ミサイルの発射、また核実験、これらは安保理決議の明確な違反でありますので、このような行為を二度と行わないように、そしてさらに、六者会合、これの再開を目指して北朝鮮も六者会合で関係国とともに協議を行うように、そういうような内容の決議を今協議中ということでございます。

赤嶺委員 この際ですから、私たちの立場を手短に申し上げますと、北朝鮮が六カ国協議からの脱退を宣言しているもとで六者協議の無用論、無力論が出ておりますが、六者協議は、北東アジアの平和と安定に直接かかわる関係者が一堂に会する場として引き続き最良の交渉の枠組みだと考えます。困難はあっても、国際社会はこの枠組みに北朝鮮を引き戻し、再開させるためにあらゆる努力を尽くすべきだということを申し上げておきたいと思います。

 それで、きょうは、先ほども共助協定にかかわりまして、辻元委員からも米軍犯罪などについてるる質問がありましたが、かかわって質問をしていきたいと思います。

 まず最初に、外務大臣に所見を伺いたいんですが、去る五月二十日に、横須賀のキティーホークの乗組員に殺害をされました佐藤好重さんの夫、山崎正則さんら遺族がアメリカ兵と国に損害賠償を求めた訴訟の判決が実は横浜地裁で言い渡されております。

 原告と弁護団は、判決の内容について、米兵犯罪の特殊性を考慮した高額賠償を認める勝訴判決という評価を行って、しかも、一般論としては公務外の事件であってもアメリカや国の監督責任はあるとしたことを、この判決の中身を評価しながら、今回の事件においては国と米軍の責任を認めなかったことについて直ちに控訴をしております。

 実は、その裁判の中で、裁判長が判決要旨の言い渡しの後にこういう発言をしていらっしゃるんですよ。判決に込めた思いを関係諸機関が酌み取ってほしい、本件のような悲惨な事件が繰り返されないように祈っています。異例の所見をつけ加えているわけですが、私は、このことを政府が重く受け取るべきだと思いますけれども、外務大臣の認識を伺いたいと思います。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもも、米軍人軍属等による事件というものはあってはならないというふうに考えておりまして、これはいろいろな機会に、大臣から先方の司令官、あるいは私どもからも私どもの相手方に言っているところでございます。

 そういう、いろいろ米側においても努力をしているわけでございますが、にもかかわらず、こういう事件が起きてしまったということで、私どもとしては、さらにいろいろな機会を通じて、米側にこういう事件の再発を何としても防いでもらいたいということを強く働きかけていきたいというふうに思っております。

赤嶺委員 再発防止を求める日本政府の立場、姿勢にかかわって、日米関係、この問題について聞いていきたいんですが、法務省の刑事局が一九七二年に「合衆国軍隊構成員等に対する刑事裁判権関係実務資料」を発行しております。

 きょうはその資料を持ってまいりました。外務大臣、かなり分厚いものでありますが、私は、二〇〇五年の五月十八日の当外務委員会で、この資料に基づいて沖縄国際大学のヘリ墜落事故の問題を質問いたしましたが、当時は町村外務大臣でした。そして、河相当時は北米局長でありましたが、この資料の性格がわからない、これ以上コメントできないと言って、まともに答弁を行わずに取り合ってもらえなかったんですね。

 ところが、この間のこの資料の公開をめぐって法務省と国会図書館との間でやりとりがありました。どういうやりとりがあったんでしょうか。法務省、説明していただけますか。

甲斐政府参考人 御指摘の資料でございますが、平成二十年五月に、国立国会図書館においてこの資料が所蔵されて、一般の閲覧に供されているということがわかりました。

 この資料は、御指摘のとおり、法務省刑事局において作成をいたしたものでございますが、米国との間の協議の内容でございますとか、刑事裁判権の行使に関する記載というものがございまして、これを公にすることによって、米国との信頼関係が損なわれるおそれがある、また、捜査、公判の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるということから、秘密文書に指定されていたところでございます。

 他方で、国立国会図書館の資料利用規則によりますと、「館長は、人権の侵害等により利用に供することが不適当と認められる資料の利用の制限をすることができる。」という規定がございます。また、内規によりますと、このような利用の制限は資料の著作者の申し出により行うという規定もございました。

 そこで、法務省刑事局におきましては、二十年の五月に、国立国会図書館に対して、この規則等に従いまして利用制限の措置をお願いしたということでございます。そうしましたところ、六月中旬になりまして、同図書館におきまして本件資料につき閲覧禁止の措置がとられたものと承知しております。

 ただ、その後、法務省におきましては、関係機関との間で協議をした結果、公開が可能と判断された部分については、さらに公開していただくように国立国会図書館の方にもまた申し出まして、同じ年の十一月に、同図書館において公開可能な部分について一般の閲覧に供されることになったものというふうに承知しております。

赤嶺委員 この資料は国会図書館が法務省から手に入れた資料ではないんですよね。国会図書館がみずからの努力で入手した、そして購入した資料で、しかも、これまでだれでも利用できるようになっていた資料であります。私は、二〇〇五年にもこの資料を使って外務委員会で質問をいたしました。そのときは、この資料の性格がわからないと言って、そういう答弁を繰り返しながら、今度は法務省が、国会図書館にこの資料があるということで横やりを入れて、閲覧制限を加えさせているわけです。

 今、国会図書館に行きますと、一般の利用者にはこの資料は黒塗りされたものが閲覧をされております。法務省、なぜこのような要請をしたのか。一体何を契機にこういう要請をすることになったんですか。

甲斐政府参考人 この資料の存在につきましては、先ほども申し上げましたけれども、私どもも、国会図書館にこういう資料があるというのを存じ上げませんで、たまたまそういうものがあるということがわかりました。

 これにつきましては秘密文書に指定されておりまして、捜査、公判への影響でありますとか米国との信頼関係の問題等々を考慮しますと、このまま一般の閲覧に供するというのは相当ではないのではないかというふうに考えて、国会図書館に利用制限の措置をお願いしたというところでございます。

赤嶺委員 はっきりしないんですが、確かにこの本の表紙には秘という字が四角で囲まれているわけですが、今回の国会図書館とやりとりする上で、法務省はほかの関係省庁と協議したんですか。

甲斐政府参考人 利用制限のお願いをするに当たっては、特段、協議等はしておらないと思います。

赤嶺委員 利用制限は、あなた方が最初に国会図書館に申し入れたと。この利用制限を一部、ちょっとずつ解除していくわけですね。それでもまだ黒塗りが残っている。そういう過程の中で関連省庁と協議はしたんですね。

甲斐政府参考人 御指摘のとおりでございます。

赤嶺委員 どういう省庁ですか。

甲斐政府参考人 外務省でございます。

赤嶺委員 外務省と相談をしながら黒塗りの部分を決めていったということなんですが、外務省はどういうスタンスでこの問題の協議を行ったんでしょうか。

梅本政府参考人 私ども、法務省の方から、このただいま御議論になっております実務資料の公開、国会図書館における閲覧について協議がございました。

 その際、これは実務資料の公開が可能かどうかということでございますけれども、実務資料の中には、米国との間の協議というようなもので、米国政府との申し合わせによりまして不公表とするというようなものも入っているということもございますので、そういう意味で、何が公表可能か不可能かという観点から私どもも御相談を受けたということでございます。

赤嶺委員 私たちも、持っている資料に基づいて、どこが黒塗りになっているかということを丹念に確かめてみました。黒塗りにされているのは、そのページは日米関係にかかわるものばかりで、しかも、黒塗りの中身を読んでいきますと、非常に屈辱的な日米関係を示すものばかりであります。

 要するに、そうした日米関係を国民に知られないように隠した黒塗りをしているということではありませんか。

梅本政府参考人 私ども、いろいろな協議というものあるいは会議をやる場合に、これはあくまでも不公表を前提として行っている場合がございます。そういう場合、先方との信頼関係ということもございますので、他国との信頼関係が損なわれるおそれのあるような場合等、公にすると支障があるものについては、私どもとしては、これは公表は差し控えることが適当であろうというふうに考えております。

赤嶺委員 法務省に伺いますが、この資料は一九七二年に作成されたということになっています。米兵の事件処理について、一九五三年以降に法務省の刑事局や最高検察庁が作成した通達なども掲載、解説しております。

 これは、一九七二年という年は沖縄が復帰したときでありまして、米軍基地が集中している沖縄が返還されてくる、その際に、米軍基地が引き起こす米軍犯罪にどう対処するか、そういう必要に迫られて作成したものなんでしょうか。いかがですか。

甲斐政府参考人 この資料は、アメリカ合衆国軍隊の構成員等の犯した罪に対する刑事裁判権の行使に関しまして、これらの犯罪の捜査、公判を担当する検察官の執務の参考に供するために作成したものでございます。

 日米地位協定の関係規定の内容でございますとかその運用上の留意事項について解説を加えるとともに、関係通達、かなり古いものも先生御承知かと思いますが、含めて、参考資料を収録しているというものでございます。

赤嶺委員 先ほどの御議論にもありましたけれども、日米地位協定に、私たち沖縄県民あるいは神奈川県の基地の被害者の皆さん、大変不平等だ、日米関係は不平等じゃないかという考えを強く抱いております。だれが見ても不平等だと。そういう中で、日米関係にとって、しかも日本にとって屈辱的な中身が隠されて秘密にして、国民の前に明らかにすることを政府が一体となって防ぐために躍起になっている姿というのは、いよいよ日米関係は不平等だという認識を強めさせるものであります。

 この資料の中身に、先ほども法務省ありましたけれども、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基づく行政協定十七条の改正についてとする刑事局長発、検事長、検事正あての昭和二十八年、一九五三年の通達が掲載をされております。ちょうど日米行政協定の見直しが終わった直後の通達でありますが、この内容は今でも有効ですか。

甲斐政府参考人 現在も有効でございます。

赤嶺委員 そうしますと、この中に、こういう部分があるんですよね。第一次裁判権、日本政府がいよいよ手に入れた、公務外の事件については日本の政府が行使できるというくだりの中で、「合衆国軍隊の構成員、軍属又は合衆国の軍法に服するそれらの家族の犯した犯罪に係る事件につき起訴又は起訴猶予の処分をする場合には、原則として法務大臣の指揮を受けることとしたのであるが、さしあたり、日本側において諸般の事情を勘案し実質的に重要であると認める事件についてのみ右の第一次の裁判権を行使するのが適当である。」こう書いてあります。

 私たちは、普通、米軍犯罪は、公務の場合の第一次裁判権は米側に、公務外は日本側ということで、そういう裁判権を分けていることにも非常に批判的であるわけですが、この通達は、公務外の事件であっても、さらに実質的に重要であると認める事件に限定されているわけです。これはなぜですか。

甲斐政府参考人 御指摘の昭和二十八年の刑事局長通達でございますが、これは先生も御指摘ありましたけれども、今はもう公開になっているものでございます。

 ここに書かれてありますように、日本側において諸般の事情を勘案し実質的に重要であると認める事件についてのみ第一次裁判権を行使するのが適当であるという記載がございますが、さらにその内容を解説しておりまして、同通達で、我が国にとって実質的に重要でないと考えて差し支えないものとして、一つは、一般の基準に従い起訴猶予の処分を相当とするような事案、それから、合衆国の軍法に服する家族が犯した犯罪で、その被害法益が全く日本国または日本国民に関係のない事案など、実質的に見て、日本側において起訴を必要とする程度に重要であると認められない具体的な事例を示しております。

 また一方で、形式犯であっても、犯情の重い犯罪は起訴すべきであるというような指示をしておりまして、起訴、不起訴について検察官が適切に訴追裁量権を行使するための指針を示したというものと認識をしております。

赤嶺委員 いや、ですから、実質的に重要であると認める事件、これはどういうことですか。

甲斐政府参考人 今申し上げましたが、この資料自体に、実質的に重要であるかどうかの認定基準をどう考えるのかということの記載がなされておりまして、今申し上げましたような一般の標準に従い起訴猶予の処分を相当とするような事案でございますとか、合衆国の軍法に服する家族が犯した犯罪で、その被害法益が全く日本国あるいは日本国民に関係のない事案等々の事案は実質的に重要でない、それ以外は重要というふうな区分けをしているものと承知しております。

赤嶺委員 実質的に重要でないというところから説明が入るものですから、じゃ、実質的に重要であるというのはどういう事件で、どんな場合に第一次裁判権を行使することになるのかと。私たち、公務外の事件は専ら第一次裁判権を行使するものと考えていたものですから、実質的に重要であるとかないとかということで分けて行使するものなのかという疑問が出てくるわけです。

 資料の中に、先ほど法務省が答弁されたように、実質的に重要ではないと考えて差し支えないものと思料するという説明の中にこういうくだりがあるんですね。日本国の当局において処罰するよりも、合衆国の軍当局においてその者を処罰することの方がより一層刑罰の目的を達し得ると認められる事情があれば、第一次裁判権を行使しなくてもいいということになるわけですが、これは何を意味しておりますか。

甲斐政府参考人 この部分はまさしく記載のとおりでございまして、日本国の当局において処罰するよりも合衆国の軍当局においてその者を処罰する、実際にも合衆国の軍当局において刑罰あるいは懲戒処分等が行われる場合もしばしばございますので、そういったこととも踏まえまして、より一層刑罰の目的を達し得ると認められる事情があるようなことも考慮するということになっております。

赤嶺委員 私、実際に今日の日本で起こっている事柄と重ねて考えますと、例えば、岩国で日本人女性に対する集団暴行事件がありました。被害者は警察の取り調べの中でるる訴えたわけですが、不起訴処分になりました。しかし、同様の事件で、今度は米軍が軍事裁判で犯人を裁いているわけですよ。刑罰は非常に軽い刑罰になっている。沖縄でフィリピン人女性の暴行事件、これも日本側の検察では不起訴になった。米側で裁かれている。どうなったかわからない。

 こういうようなものが現に出ているときに、日本側の当局において処罰するよりも合衆国の軍当局においてその者を処罰することの方がより一層刑罰の目的を達し得ると認められるとなったら、全部何でも、いやそれは米軍で裁いた方が、処罰した方がいいんだということで、日本側が第一次裁判権を持っていても、米軍へ米軍へということになってしまうのではないかという危惧を持つわけですよ。

 これまで日本の警察は第一次裁判権を、あるけれども行使してこなかった、こういう事例はありますか。どんな場合ですか。

甲斐政府参考人 先ほども申しましたように、実質的に重要でない、その被害が米軍側等の方に専らあるというような場合等が考えられます。

 それから、強姦等の例を挙げておっしゃられたわけでございますが、同じ案件でも、証拠関係によっては、日本ではなかなかうまく処分できないというような場合もあり得るわけです。そうではなくて、米軍側の規律によればきちんと処分がなされるという場合も考えられるのではないかというふうに思っております。

赤嶺委員 ですから、どんな場合かと聞いているんです。

甲斐政府参考人 不行使とちょっと今離れて申しますが、先ほどの証拠関係の話でいえば、例えば強姦事件については、和姦でなかったことの立証がなかなか難しいというような場合もあり得るわけでございまして、そういった場合に不起訴とせざるを得ないということも考えられるところでございます。

赤嶺委員 今、第一次裁判権の不行使という発言もありましたが、皆さんの統計資料の中にも、第一次裁判権の不行使という欄があって、何件という数字が出ているんですが、どんな場合が不行使に当たるんですか。

甲斐政府参考人 一つの例で申し上げますと、少年事件ということが考えられます。これは、日本で少年事件としての処分をいたしましても、保護観察等になることが多いわけでございますが、他方で、そういった継続的な処分をしたとしても、米軍側で軍上の命令でほかの国に移動するというようなこともありまして、日本の保護処分になじみにくい面があるということから、こういった場合に、刑事処分を求める場合は別でございますが、少年事件について、家庭裁判所に送致しないで、第一次裁判権不行使とする例があるものと承知しております。

赤嶺委員 少年といっても米軍人であるわけですね。若い米軍の兵士がいきなり遠い外国に連れてこられて事情もわからずに犯罪に走ると。しかしそれは、米軍の軍規もあり、移動するという軍事上の任務、役割もあるから、日本は第一次裁判権の不行使として扱っている、こういうことになってくると、つまり、軍隊の構成員であるからそれは不行使ということになるということですね。

甲斐政府参考人 軍隊の構成員であるからというよりも、日本の少年事件に対する処分、保護処分の一番典型は保護観察でございます。保護観察処分にした場合に、一定期間継続して保護司さんなり保護観察官が監督をしていく、こういうことになるわけでございますが、それが軍の関係者であった場合は、すぐにどこか別のところに行ってしまうということがしばしば予想されるわけで、そうしますと、そういった継続的な監督が期待しにくいということでなじみにくい、こういう意味でございます。

赤嶺委員 日本で犯罪を犯したわけですから、すぐにどこかに行ってしまうなんて、遠慮しないできちんと処分した方が犯罪の抑止につながっていくと思いますよ。

 この中で、実務資料の中に、「身柄拘束中の処遇」という項目があります。これも公開されている部分ですね。公開されているというよりは、皆さんが最近公開したというところですが、この中に、米軍人は「自己の意思で日本国に入国したのでないという点は考慮すべき」だという表現があります。これはどのように理解すればよろしいでしょうか。

甲斐政府参考人 申しわけありません、全部を詳細に把握しておるわけでもございませんので、今御指摘を受けた部分は、ちょっと今すぐお答えできませんので、また改めて御返事させていただきたいと思います。

赤嶺委員 そういう表現があるんですよ。あなた方はそれを指針にして今現に捜査をやるわけですよね。

 それでは、ちょっとわかりやすいところで、地位協定の十七条五項(c)についても書いているくだりがあります。「日本国が裁判権を行使すべき合衆国軍隊の構成員又は軍属たる被疑者の拘禁は、その者の身柄が合衆国の手中にあるときは、日本国により公訴が提起されるまでの間、合衆国が引き続き行なうものとする。」という、これは何度も当委員会で議論になった項目でありますが、私はその中で、常に「手中にあるとき」とは一体何なんだということを繰り返し聞いてまいりました。

 この資料の中には、「手中にあるとき」というのは、身柄が拘禁されている意味というぐあいにしているわけですが、私たちがよく聞くのは、被疑者の米兵は、本来身柄は日本側の警察になければいけないのに、基地の中にあって、その基地の中を自由に動き回っているという声をよく聞きます。ところが、地位協定上は、手中にあるとは拘禁なりと言っている。何でそんなことが起こるんですか。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 この地位協定第十七条五項の「その者の身柄が合衆国の手中にあるときは、」ということで、これは英語では、「イフ ヒー イズ イン ザ ハンズ オブ ザ ユナイテッド ステーツ」ということでございます。

 これは、まさにアメリカ側が管理をしている、アメリカ側の管理のもとにあるというふうなことだというふうに私ども理解しておりますが、ちょっとこの御質問、端的にこのことについて、厳密な解釈につきましては、事前に通報いただいておりませんでしたので、不正確なことを申し上げてもいけませんので、改めて調べた上で御答弁いたしたいと思います。

赤嶺委員 ですから、本来身柄は日本側の警察にあるべきだのに、身柄は米軍が、今の北米局長の言葉をかりたら管理しているとおっしゃるわけですね。日本側が公訴するまでの間身柄は米側が管理していることを「手中にある」と言っている。この法務省の資料の中には、それは拘禁していることだと書いているんですよ。そして、しかし、軍属について「十分な拘禁措置をとりえない状況にあるので、「手中にあるとき」に該当しない場合が多いと思われる。」という文章もあるんですね。

 ですから、実際には、十七条五項(c)では米軍側が管理していると言いながら、米軍は、公訴までの間その被疑者を基地の中で自由に動き回らせている、そういう結果になっているんじゃないですか。これは法務省、いかがですか。

甲斐政府参考人 先ほど「手中にある」という意味について、拘禁されているという御指摘がございまして、確かに資料にはそのように書いております。

 ただ、それに引き続いて、「もっとも、この「拘禁」には、」「禁足等の措置も含まれている。」というふうになっておりますので、必ず非常に狭いところに入っていなきゃいけない、入っていないとこれに当たらないというところまでは言っていないんじゃないかなというふうに思っております。

赤嶺委員 ですから、今まで「手中にある」とはどういうことかというときに、今のような答弁は一切なかったんですよ。あたかも何か米軍側が拘禁している、どこかに閉じ込めているような答弁を言って、はっきりさせなかったものですから、きょうは具体的に聞いたわけであります。

 今度は、皆さんがまだ黒で伏せている部分について伺いたいと思います。

 これはもうよく御承知の上で黒塗りにしたと思いますが、「合衆国軍隊の構成員又は軍属の公務の範囲について」、これは酒気運転にかかわるわけですが、軍人軍属が宿舎または住居からその勤務場所への往復の途中に起こした飲酒事故を公務とするか公務外とするか、詳細なやりとりが一問一答で記録されております。

 この部分は今でも黒塗りで閲覧が制限されているわけですが、これはなぜですか。そして、何で酒気運転が公務に当たるのか当たらないのかという議論が日米間で起きたんですか。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、今回開示の対象とされなかった部分の具体的内容については、これはお答えを差し控えたいと思います。

 その上で申し上げますと、一般的に、勤務場所と住居との間の通勤については公務として取り扱われているというようなことで、日米間においても原則として同様であるというふうに承知をしております。また、個別の事案につき公務に該当するか否かが問題となる場合は、地位協定の枠組みを通じ米側と協議の上、適切に対処をするということでございます。

 なお、米軍は、米軍人等による飲酒運転については、刑事罰及び行政処分を含め、厳格な取り締まりを行っているものと承知をしております。

河野委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

河野委員長 速記を起こしてください。

梅本政府参考人 まさに何が公務かということで、今申し上げましたように、例えば勤務場所と住居の間の通勤については公務として取り扱われているということもございます。

 また、これは昭和二十年代、三十年代当時の社会通念からいって、例えば、公式の催し事なんかで少量のお酒を飲むというようなこともあったやに聞いておりますが、そういうものを公務とするかどうかというようなことも当時議論されているという記録がございます。

赤嶺委員 私、それを全部読んでみたんですよ。皆さんが黒塗りにしているものですから、余計関心を持って読んでみたんですね。そうなりますよね、だれだって。そうしたら、やはり大変なことがわかったんですね。

 当時、この合意に至る背景があるんですね。つまり、一九五四年から五五年にアメリカ兵が通勤途中で引き起こした四件の交通事故があるわけですが、それらは四人が死傷した、当時悲惨な事故で、二件は米兵が催事、催し事で酒を飲んだ上での事故でありました。日本政府も、さすがにこれを公務とすることには異議を唱えているんですね。議論となったけれども、結局米側に押し切られ、この事件では裁判権を放棄し、これらの米兵は、さっき厳格にやっていると言ったけれども、お手盛りの処分で終わっているわけですよ。

 ですから、この合意の黒塗りの最初のところで、日米間で、催し事で酒を飲んで運転することについて、それを公務とするかどうか、いろいろな食い違いがあったけれども、合意に達した。やはり、催し事で酒を飲んで運転して、通勤途中運転するのは、これは通勤途中の往復行為に当たるので公務だといって、もう時間がありませんので文書を読み上げますけれども、この中では、勤務している日に単に飲酒しただけでは公務の性格を失わない、公の催事で、催し事で飲酒は公務である、催し事以外に勤務中で飲酒した場合も、勤務地と住宅地の往復の場合は、自動車を運転する判断力を損なわない程度であれば、公務としての性格を失わないこととしている、こうなっているんですね。べろんべろんに酔っぱらっていなければ、それは公務中の酔っぱらい運転であり、裁判権は米側が持つというぐあいに書いてあるんですね。

 それで、これは黒塗りにしているということは、皆さん方は今でもそういう理解で米軍の酒気運転に臨んでいるということなんですか。いかがですか。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 何が公務に当たるのか、特に、公の催し事における飲酒の場合、その結果としての往復の行為が公務たるの性格を失うかどうかということについては合同委員会合意がございまして、これは公表版もあるわけでございます。

 ただ、その飲酒については、社会通念、いろいろなことが変わっております。これは当時の、五〇年代のものでございますので、現在はより厳しくこういうことについても対応してもらうということで、そもそもそういうことが起きないようにしてもらわないといかぬということでございまして、飲酒運転等、そういうことが起きないように厳しく指導してもらうということではないかというふうに考えております。

河野委員長 答えはどうなんですか。現在もそのように取り扱っているかどうかということはどうなんですか。

梅本政府参考人 合意そのもの、この合同委員会合意そのものは変わっておりません。

河野委員長 変わっていないというのは、黒塗りのとおりだということですね。

梅本政府参考人 合同委員会の合意は変わっておりません。

河野委員長 変わっていないというのは、内容は何なんですか。質問にちゃんと的確に答えてください。

梅本政府参考人 そこは、申しわけございませんけれども、アメリカ側との申し合わせにより公表できないということで、今私が申し上げました……

河野委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

河野委員長 速記を起こしてください。

梅本政府参考人 この合同委員会合意については仮訳がございます。そこの、「「公務」とは、合衆国軍隊の構成員又は軍属が、その認められた宿舎又は住居から、直接、勤務の場所に至り、また、勤務の場所から、直接、その認められた宿舎又は住居に至る往復の行為を含むものと解釈される。ただし、合衆国軍隊の構成員又は軍属が、その出席を要求されている公の催事における場合を除き、飲酒したときは、その往復の行為は、公務たるの性格を失うものとする。」

 以上でございます。

赤嶺委員 三原筆頭も御心配なさって、絶対今そんなことないよとおっしゃっていましたけれども、北米局長は期待に反して、今でもその合意は生きているという黒塗りのままで、しかも、当たりさわりのないところを読み上げられたんですけれども、非常に詳細に一問一答で、こんな場合どうなるか、こんな場合どうなるかと書かれております。

 ちなみに、国会議員は、その黒塗りのところも、国会図書館に行けば国会議員に限って閲覧できる。国民には閲覧されない。その中には、判断力を失わない程度であれば、公務としての性格を失わない、つまり、それが公式の行事であれば酒気運転してもいいんだよと、そういうぐあいに認めようなということで、第一次裁判権について皆さんは合意しているわけですよ。こんなことで米軍の犯罪が抑止できるんですか。

 これは、皆さんが、日米地位協定の合同委員会の合意、もちろんこの黒塗りを含めてですが、そのすべてを国民の前に明らかにするということを強く求めて、質問を終わります。

河野委員長 それでは、外務省は、黒塗りを外したものを理事会に提出してください。

 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

河野委員長 これより各件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、刑事に関する共助に関する日本国と中華人民共和国香港特別行政区との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河野委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、領事関係に関する日本国と中華人民共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河野委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、国際通貨基金における投票権及び参加を強化するための国際通貨基金協定の改正及び国際通貨基金の投資権限を拡大するための国際通貨基金協定の改正の受諾について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河野委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、国際復興開発銀行協定の改正の受諾について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河野委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

河野委員長 次回は、来る十二日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.