衆議院

メインへスキップ



第15号 平成21年6月12日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十一年六月十二日(金曜日)

    午前九時三十四分開議

 出席委員

   委員長 河野 太郎君

   理事 小野寺五典君 理事 松島みどり君

   理事 松浪健四郎君 理事 三原 朝彦君

   理事 山中あき子君 理事 近藤 昭一君

   理事 武正 公一君 理事 伊藤  渉君

      猪口 邦子君    小野 次郎君

      川条 志嘉君    木原  稔君

      佐藤ゆかり君    柴山 昌彦君

      鈴木 馨祐君    中山 泰秀君

      西村 康稔君    山内 康一君

      山口 泰明君    池田 元久君

      逢坂 誠二君    篠原  孝君

      松原  仁君    丸谷 佳織君

      笠井  亮君    辻元 清美君

    …………………………………

   外務大臣         中曽根弘文君

   内閣官房副長官      松本  純君

   総務副大臣        倉田 雅年君

   外務副大臣        伊藤信太郎君

   防衛副大臣        北村 誠吾君

   外務大臣政務官      柴山 昌彦君

   外務大臣政務官      西村 康稔君

   環境大臣政務官      古川 禎久君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  鎌形 浩史君

   政府参考人

   (内閣官房拉致問題対策本部事務局総合調整室長)

   (内閣府大臣官房拉致被害者等支援担当室長)    山口 英樹君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 石井 隆之君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 高宅  茂君

   政府参考人

   (外務省大臣官房地球規模課題審議官)       杉山 晋輔君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中島 明彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 北野  充君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 小原 雅博君

   政府参考人

   (海上保安庁交通部長)  米岡 修一君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  高見澤將林君

   参考人

   (独立行政法人国際協力機構理事)         永塚 誠一君

   外務委員会専門員     清野 裕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十二日

 辞任         補欠選任

  西村 康稔君     川条 志嘉君

  御法川信英君     佐藤ゆかり君

  鉢呂 吉雄君     逢坂 誠二君

同日

 辞任         補欠選任

  川条 志嘉君     西村 康稔君

  佐藤ゆかり君     御法川信英君

  逢坂 誠二君     鉢呂 吉雄君

    ―――――――――――――

六月十一日

 社会保障に関する日本国とスペインとの間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 社会保障に関する日本国とイタリア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

 投資の促進、保護及び自由化に関する日本国とペルー共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とウズベキスタン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(第百七十回国会条約第二号)

 投資の促進、保護及び自由化に関する日本国とペルー共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

 社会保障に関する日本国とスペインとの間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 社会保障に関する日本国とイタリア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

 国際情勢に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

河野委員長 これより会議を開きます。

 この際、御報告いたします。

 昨十一日の理事懇談会において、「外務省の支出に関する行政文書の保存期間の見直し」について、外務省から報告を聴取いたしましたので、委員各位の参考に供するため、お手元に資料を配付いたしております。

 この資料につきましては、本日の委員会議録に参照掲載いたします。

    ―――――――――――――

    〔資料は本号末尾に掲載〕

     ――――◇―――――

河野委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として独立行政法人国際協力機構理事永塚誠一君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として外務省大臣官房地球規模課題審議官杉山晋輔君、大臣官房審議官中島明彦君、大臣官房審議官北野充君、大臣官房参事官小原雅博君、内閣官房内閣参事官鎌形浩史君、内閣官房拉致問題対策本部事務局総合調整室長兼内閣府大臣官房拉致被害者等支援担当室長山口英樹君、警察庁長官官房審議官石井隆之君、法務省大臣官房審議官高宅茂君、海上保安庁交通部長米岡修一君、防衛省防衛政策局長高見澤將林君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近藤昭一君。

近藤(昭)委員 民主党の近藤昭一でございます。

 幾つか質問させていただきたいと思います。

 この委員会でも何回も、日本は平和の部分でしっかりと貢献をし、世界をリードしていくべきだ、そういうお話をさせていただいてまいりました。そういう中で、私は、平和的な国際貢献、その中には先般のクラスター爆弾の禁止条約、こうした軍縮にかかわる問題と、また、やはり国際的な人権の問題というのがあると思うんです。そういう観点から、難民問題について質問をさせていただきたいと思います。

 難民認定申請した外国人が日本において生活をする、その生活費を支給する保護費についてでありますけれども、外務省がこの五月から支給対象の要件を厳格化した、こういうふうに聞いております。

 二〇〇八年の難民申請数は千五百九十九人、二〇〇七年に比べますと倍になっている、こういうことであります。そして、その中で難民として認定されたのは五十七人、わずか五十七人であります。また、難民と認定されなかったものの人道的な配慮により在留が認められた者は三百六十人だ、こういうふうに聞いております。倍にふえたとはいえ、フランス、三万人と聞いております、また、ヨーロッパの中でも少し少ないと言われておりますが、イギリス、それでも五千人、これに比べて非常に少ないというふうに思っております。

 にもかかわらず外務省は、先ほどの話、先月より、日本で難民認定申請した外国人に国が生活費を支給する保護費、その支給対象を厳格化する、こういう決定をした。報道によりますと、難民が急増したため予算が足りない、従来の生活困窮だけでなく、重い病気、妊婦や十二歳未満、観光ビザなどを持ち合法的に滞在しているが就労許可がない、いずれかに当てはまることとし、非常に絞り込むというふうに聞いているんですが、全国で百人以上が支給対象から外れると聞いています。この厳格化をされた経緯について御説明を願いたいと思います。

中島政府参考人 委員から御紹介をいただきましたとおり、外務省は、我が国におきまして難民認定を申請中の方々で生活に困窮している方々に対しまして生活費、住居費などを支援する保護措置を、財団法人アジア福祉教育財団難民事業本部に委託して行ってきているところでございます。

 先ほどお触れになりましたように、昨年度来、一昨年八百十六名から千五百九十九名ということで、申請者の数が急増しております。これに伴いまして生活保護措置を要請する難民認定申請者の方々が急増しておりまして、年間の実人員で、一昨年が二百五名、昨年が四百四名、月平均に直しますと、一昨年が九十五名、昨年が二百十一名、こういう状況でございます。

 こういう状況の中で、保護費の予算の効率的な執行を図るという観点から、真に保護を必要とする方を保護できるようにという観点で、本年四月より、審査の優先順位を定めて支給を行ってきておるところでございます。

 具体的には、新規に四月から保護を希望される方々、また四月からこれまでの保護措置の延長を希望される方々には四月から、また、四月が経過期間である方々につきましては五月からということで、重篤な病気の方、子供、それから妊娠されている方、高齢者、合法的に滞在する方々のうち就労許可を有しておられない方々等を優先して審査するということにしておるところでございます。

近藤(昭)委員 大変に申請がふえているということであります。

 お聞きしますと、難民支援策としての保護費、外務省の外郭団体のアジア福祉教育財団難民事業本部が窓口となって支給をしている。そして、今御説明をいただいたように、基本的には、一日千五百円、それに住居費が加えられて大体月々八万五千円、その予算は昨年度が六千五百万円だと。そして、聞くところによりますと、途中で足りなくなって支給が滞る、こういうことになった。お聞きしますところによると、先ほどの外郭団体の中でも、本来予定をしていた予算の中で足りなくなってきた。大分やりくりをして、必要な方にということで御努力はいただいているようであります。ただ、昨年が六千五百万、そして足りなくなった。

 私は、六千五百万という金額が、状況に応じて今までもやってきていらっしゃるのではありますが、非常に少ない額ではないかと思うんです。そして、今御答弁がありました、優先順位の高い方からやっているんだと。

 ただ、そうしますと、来年度はどれぐらいの予算を計上しておられるのか。そして、優先順位、しかし、必要な方からまず審査をし、そして支給をしているということであります。考え方としては、とにかく、申請を受けた、優先順位はあるけれども、その審査をしていった結果、やはり必要な方にはきちっと保護費として支給すべきだと私は思うんですけれども、来年の予算の状況、そして基本的な考え方、足りなくなった場合でも必要な方にはきちっと給付をする、そういう手だてを考えられるのかどうか。今年度、そして、これからについてお話を聞きたいと思います。

中島政府参考人 委員御指摘のとおり、平成二十年度における難民認定申請者への保護費の予算額は約六千五百万でございました。今年度予算につきましては、国から公益法人への支出が非常に抑制されている中、財政当局にも御理解いただきまして、二十一年度予算といたしましては、前年度比六七%増の一億九百万円を計上しているところでございます。

 おっしゃるとおり、基本的には、優先順位をつけるよりも対象者全員に支給するということを、物の考え方としてはそういうことでございますけれども、いかんせん、予算の制約というのがある中、いろいろ努力をしているところでございます。

 例えば、先ほど先生が難民事業本部での事業の効率化ということを挙げていただきましたけれども、そのほかに、関連のNGOの方々にも非常に協力していただいておりまして、例えば、就労許可を持っていてもなかなか実際に就労できないということがございますので、難民事業本部の職員がハローワークに付き添う、ないしは関係のNGOの方々に依頼して就職情報をお届けいただくとか、ないしは、住居に関しまして申し上げますと、関係のNGOの方々に依頼いたしまして、より廉価な施設の情報を収集する等、さまざまな努力を積み重ねているところでございます。

 いずれにいたしましても、対象者の方々には必要な保護が行われるように努めてまいりたいというふうに考えております。

近藤(昭)委員 予算の制約があるということでありますが、本来はそういうものではないと思うんですね。我が国のUNHCRへの拠出金は今年度で五十七億円、昨年末には、難民の第三国定住パイロットケースを実施する閣議決定を行って、難民支援の充実を図っている、こういうふうに聞いております。しかしながら、今のお話でいうと、大変に予算の制約がある。もちろん、予算でいろいろ執行されているわけですから、予算の枠があるというのは理解をしないわけではありません。しかし、本来ですと、やはり必要な方に対してはきちっと支援をするということが必要だと思いますし、それが基本的な考え方だと思うんです。

 そして、その予算の枠を見ると、先ほどのお話も聞きました、昨年六千五百万円だ、ことしは倍ぐらいにふえた、さらに来年はふやすということであります。今指摘をさせていただきましたが、UNHCR、難民支援については五十七億円を計上している、そして、定住パイロットケースとしての努力もこれからやっていく。しかしながら、国内の申請者に対しては基本的な権利すら保障できていないということは、日本は本当に難民に対して支援をしていくんだろうか、難民を外国に押しつけているのではないか、こういうそしりは免れないのではないかと思うんです。

 また、難民申請をされている方のほとんども申請期間が非常に長い。その間働くことも、今はNGOの皆さんとも協力をしてさまざま支援をしているんです、こういうこともあった。でも、これは、場当たり的と申し上げるのは失礼だと思いますが、必ずしも成功するわけではないところがあると思うんです、就労支援等々。特にこの昨今の経済の状況でありますから、非常に厳しい。うまくいけば、こういうことではなくて、支援はきちっとする、こういうことだと思うんです。

 そういう中では、本当にこの生活支援というのは非常に重要であり、これがある意味では唯一の基本的な救いであると思っているんです。ところが、それが、先ほどの話で申し上げて、申請されている方全部に行き渡るわけではない、また、申請期間が非常に長い中で、その申請期間中ずっと支給されるわけではない。これは、基本的な人権を守っていく、日本が人権政策でも人権外交でもリードをしていくということでは、非常に問題があると思っております。

 大臣、いかがでありましょうか。外務大臣として、この現状に対して、やはり、自由と民主主義を守っていく上でも、平和的な国際貢献を人道的な部分できちっとするという観点から、私は非常に大きな課題としてあると思うんですが、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 難民認定申請者に対します保護というものは、国際的にもこれは道義的な責任がある、委員も御指摘のとおりであります。

 そういうふうに認識をしているところでありますし、また、この保護が必要な方々には生活的な支援を行いたい、そういう立場でございますが、先ほどからお話がありますが、やはり何といいましても、財政状況も厳しい中で、今までもさまざまな可能性を模索しながら、委員からやりくりというお言葉があったかと思いますが、外務省としても、そういうものを模索しながら適切な予算措置を行ってやってまいりました。

 今後も、この保護事業が円滑に、一人でも多くの方に行き渡るように最大限の努力をしていきたい、そういうふうに考えております。

    〔委員長退席、松浪(健四郎)委員長代理着席〕

近藤(昭)委員 大臣、最大限の努力というところでありますが、先ほど申し上げました、UNHCRへの拠出金が五十七億、またパイロットケースとして第三国定住、こういうところ、ある意味では、ある意味と言うと失礼かもしれませんが、そして、難民の人たちに対する支援、何とかしようという努力をしていただいている部分と、ただ、これは第三国定住ということでありまして、やはり国内の足元が今のやり方でいうと非常に脆弱な部分があると私は思うんです。

 それで、もう少し現況もお聞きしたいと思います。先ほど私も指摘させていただきましたが、難民認定に非常に時間がかかると聞いています。一体どれぐらい難民認定に時間がかかっているのか、お知らせいただきたいと思います。

高宅政府参考人 お答えいたします。

 難民認定に対する処分としましては、一次処分と異議申し立てに関する処分と二つございますが、まず、平成二十年中に行いました難民認定申請に対する一次審査に係る処分、これは八百三十一件しておりますが、その平均審査時間は四百七十二日となっております。それから、一次審査の処分について異議申し立てがなされた場合の審査期間でございますが、平成二十年中、異議申し立てに対して決定を三百十七件やっております。この三百十七件について、難民認定申請から異議申し立ての決定までの平均審査期間は七百六十六日となってございます。

近藤(昭)委員 そういう中で、保護費の支給はどれぐらいの期間でありましょうか。

中島政府参考人 保護費の支給期間は、原則四カ月でございます。ただ、保護対象者の生活の困窮状況などによりましては、延長することが可能となっております。

 平成二十年度の保護費支給対象者に対します平均支給期間は、結果として約十カ月になっておるところでございます。

近藤(昭)委員 大臣、今の数値を聞いていて、どのようにお考えになられるのか。

 第一次の審査がある、そこで認定される場合と認定されない場合、その場合はまた二次審査に向けて、そうすると二次審査まで七百六十日、そこで結論が出る。大体二年かかるわけですね、長いと。非常に不安定な、難民というもともと不安定な状況、そういう中で長い期間を過ごさなくてはならない。

 そして、その保護費も一〇〇%支給されているわけではない。一〇〇%というのは、保護費を受けられる方と受けられない方がいらっしゃるということ。そしてまた、受けられる方も、その期間の、十カ月ぐらい、つまり半分以下であります。それだけしか受けられない。

 これでは非常に不安定な状況で、ある意味、日本は平和な国であり、日本は人道的にもすぐれた国であると期待して来た人に対して、非常にある種の裏切りのようなものになっている、期待に外れていると思うんです。やはりここはきっちりと、難民条約というのもあるわけでありますから、その義務を果たさなくてはいけないわけでありますから、どうですか、大臣。大臣の所見をお聞かせいただきたいと思います。

 世界の期待に反している、また条約の義務も果たしていない。日本がせっかく、経済は厳しい状況ではありますが、世界的な中でいうと経済の大きな国であります。そこがこうしたことをきちっとしていないというのは大変に残念なわけでありますが、大臣、いかがお考えでしょうか。

中曽根国務大臣 今政府参考人から御答弁申し上げましたように、保護費の支給期間というのは、原則が四カ月でありますけれども、保護対象者の生活の困窮状況によりまして、随時延長も行って対応しておるところでございます。保護期間につきましては約十カ月、そういう現在の状況でありますけれども、十九年度は約九カ月で、二十年度が十カ月ということになっております。人数もふえておりますし、今委員がいろいろおっしゃいましたような状況というものも私も理解しますし、できるだけのことはしてさしあげなければと思っておるところではございます。

 この保護費は、難民認定申請中で生活に困窮している方に支給するということで、もう委員が御承知のとおりのものでありますが、難民認定申請中でありましても、就労許可が与えられるなど、自活が可能になった方には保護を終了しているところでございます。

 なお、難民認定申請者に対します保護は、難民条約上に明記されている締約国の義務ではございませんけれども、先ほど申し上げましたとおり、国際的にも道義的な責任がありますので、我々としては、これは非常に重要な業務、そういうふうに認識をしているところでございます。

 今後も、今の委員のいろいろなお話なども参考にさせていただきながら、適正な保護業務ができるように最大限の努力を続けていきたいと思っています。

近藤(昭)委員 大臣、ありがとうございます。

 大臣もよくおわかりいただいていて、この間も、決して中曽根大臣になってからこういう状況ではなくて、これまでもなかなか厳しい保護費の支給のあり方もあったわけでありますから、中曽根大臣ばかりを責めるわけではありませんが、私は、今の状況というのは、難民条約の中の義務事項ではないということよりも、難民条約の考え方ということで申し上げますと、やはりきちっとした保護が必要だということだと思いますし、全体でいうと、やはり日本は、外国、先ほどもちょっとフランスの例を挙げさせていただきましたけれども、難民の認定の数が非常に少ないと思うんですね。

 私は、そういう意味では、もちろん真の難民かどうかということを判定していかなくてはならないわけでありますが、きちっと難民を受け入れる、難民を支援していく、そういうことを日本がやはり形として見せていくことが、まあパフォーマンスではありませんが、そういうことをやっているんだ、支援をしているんだということを理解していってもらうことが非常に重要だと思うんです。

 ですから、今の御答弁の中にも、就労支援もしていくんだというようなお話もあった、先ほど政府参考人の方からも、NGO等々と協力してやっているんだというお話もありましたが、大臣、もう一言だけお答えをいただきたいと思います。

 難民条約の基本的な精神にかかわる、難民を広く支援していくという観点から考えると、今の保護費の問題だけではなくて、難民認定、今の認定の申請の時間も長いんです。何でもかんでも早くどちらかに決めてしまえという意味ではありませんけれども、不安定な状況が長いというのはやはりつらいと思うんです。そうした認定をきちっと的確に効率よくやっていくという部分と、難民を支援していく、大きな意味でのきちっとした先進国としての義務を果たしていくということでの、もう一度御決意をいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 難民認定に時間がかかるというようなお話もありました。これは法律にのっとって適正に行っていくということでありますが、やはり、少しでも早くこういうものの結論が出るようにしてあげるということは大事だと思っておりますし、保護費、この問題につきましても、先ほどから申し上げておりますとおり、一人でも多くの方に、また長い期間に支給できるよう、外務省といたしましては、財政的な面もありますけれども、今後努力をしていきたい、そういうふうに思っています。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 大臣、早く認定をしていただくということは、日本がきちっと難民を支援していくという観点からでございますので、よろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、もう一件、人権についての関連で質問をしたいと思います。

 国際人権規約、我が国は一九七九年に批准をしております。ただ、一部まだ留保をしている点があります。その一つが、A規約第十三条の中高等教育の段階的な無償化。この十三条の(b)項を読み上げますと、「種々の形態の中等教育(技術的及び職業的中等教育を含む。)は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、一般的に利用可能であり、かつ、すべての者に対して機会が与えられるものとする」とあるわけであります。また、同(c)項は高等教育の無償化をうたっているということであります。

 これらについては、我が国は留保をしているということであります。条約加盟国百五十七カ国、留保をしているのは、先日ルワンダも留保を解きましたので、日本とマダガスカルの二カ国だけ。回答期限の二〇〇六年を経て、今日まで留保を続けているということであります。

 私どもの民主党は、さきに参議院で、後期中等教育の実質的無償化を行う法案を提出しまして、四月二十四日には参議院で可決をされております。現在、衆議院で審議中ということであります。

 それを踏まえた上、質問したいと思いますけれども、二〇〇一年に開かれた、国連の社会権委員会に設置された、経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会の最終見解において、拘束されない権利の留保の撤回を検討することを要求すると決議をしました。そして、日本政府に対しては、先ほどもちょっと触れました、二〇〇六年までにこの勧告を実施するためにとった手段についての詳細な情報を含めることを報告しなさいという要請をしている。その中にはその要請も含まれているわけであります。

 その報告を行われたのかどうか、また、行っていないとすれば、現状はどうなっているのか、今後も留保し続ける意向なのか、お尋ねをしたいと思います。

中島政府参考人 事実関係が若干ございますので、事務方の方から先に答弁させていただきたいと思います。

 今委員が御指摘いただきました経済的、社会的及び文化的権利に関する条約でございますけれども、これに基づきまして設置された委員会、この委員会が、我が国が提出いたしました実施状況に関します第二回政府報告を二〇〇一年に審査しております。その中で、御指摘のように、条約に付している留保、ほかに二つありまして、合計三つございますけれども、この留保の撤回を検討することを含みます最終見解を採択いたしました。と同時に、次回政府報告を二〇〇六年六月までに提出することを要請しているところでございます。

 この政府報告に関しまして、委員会が出しました最終見解、全部で六十三個のパラグラフがあるわけでございますけれども、最後のパラグラフに、今委員が御指摘のような、詳細な措置を含めることを要請するというのがあるわけでございます。提言及び勧告、これは大体約三十項目ございます。その中に、家庭内暴力、DVの問題でございますとか、ILO諸条約、原子力施設の安全性、被災者に対する財政支援と、極めて関係省庁が多岐にわたる項目が含まれているところでございまして、現在、鋭意作業を進めているところでございますけれども、作業も膨大でありますことから、作成に時間を要しているものでございます。

 十三条二項の規定の適用に当たる留保でございますけれども、「特に、無償教育の漸進的な導入により、」に拘束されない権利を留保しているところでございます。この留保の撤回につきましては、文教政策のあり方との関係も踏まえまして判断する必要があるものと考えております。

近藤(昭)委員 いろいろと今御説明もいただきました。いまだに報告を行っていないということは、非常に問題だというふうに思います。

 大臣にちょっとお伺いをしたいと思います。

 いまだにその期限を過ぎて報告をしていないということでありますし、今お伺いをした理由というのは非常に残念なんですね。作業が膨大だとか、この条約の中でも主体的な判断ということが認められているんだからと。

 ただ、先ほども触れさせていただいたように、百五十七カ国で、留保しているのは三カ国だけだった、ところが、ルワンダも留保を解いた、二カ国だけなんですね。

 そしてまた、この規約の批准当時の外務大臣も、「この人権規約というものは、留保条項なしに批准をするのが望ましい姿ではありますけれども、残念ながら、時間その他の関係で政府部内の意見が統一をできなかったということを恥じておるわけであります。」、こういうふうに発言をされておる。当時から時間がかかっているんです。でも、その状況は恥ずるべき問題である、こういうふうに答弁なさっている。しかしながら、もうそれから三十年も経過しているわけであります。

 国際的な信義から、また先ほど申し上げました、私は、やはり日本がそうした人権の問題にもしっかりと世界の中で貢献をしていくという観点から考えると、これは非常に恥ずかしい問題だと思います。そして、もう引き延ばし、引き延ばしという言葉がふさわしくないほど長いわけでありますが、こうした状況に、海外からも、日本は何をやっているんだ、こういう状況が出てきていると私は思うんです。

 大臣の見解をお伺いしたいと思います、これだけ引き延ばされておるということ。

中曽根国務大臣 今御指摘の留保を撤回するか否か、そういうことにつきましては、先ほど参考人の方から御説明いたしましたけれども、留保を付す理由となりました事由が、その後ちゃんと解消されているのか、あるいは解除されているのか、そういう点を踏まえて判断をしなければならないと思います。

 いずれにいたしましても、私も文部大臣をやらせていただきましたけれども、我が国の文教政策のあり方とも深くかかわっているものでもありますし、そういう点も考えながら判断する必要もあろうかと思っております。

 関係省庁と一致協力して、適切に対処していきたい、そういうふうに思っております。

近藤(昭)委員 大臣、もう少し具体的というか、かたい決意をお伺いしたいと思うんです。つまり、あれからもう三十年たっているということであります。

 もう時間もなくなってまいりますので、最後に、少し具体的な質問と今後について、もう一度大臣にお聞かせをいただければと思うんです。

 先ほどちょっと触れさせていただきました、私どもの民主党では、高校教育無償化法案、これを出させていただいた。参議院では通過をした。これが衆議院でも通過をして成立した場合、少なくとも十三条の(b)項を留保する必然性がなくなると思うんです。その場合は留保を取りやめるのかどうかということ。

 また、これは、これからの大臣に対する質問にもちょっと関連するんですが、今大臣も御答弁されました、文部科学大臣もやられた、そういう中で、協力をしながら、関係省庁と連絡をとり合いながらというお話もされました。

 実は、批准当時の大臣だけではなくて、一九七九年の三月十六日の衆議院外務委員会で、当時の社会党の土井たか子議員の質問に対して、当時外務大臣の園田直議員が以下のような答弁をされております。「この人権規約については、留保した事項は、残念ながら留保したわけでありますから、これは当然、将来、法的な解釈その他は別として、解除する方向に努力をし、また、そういう責任があるということで、とりあえずこのような姿で批准、審査をお願いしておるということを明瞭にいたしておきます。」、つまり、こういう姿でやっているけれども将来は違うんだということを明瞭にいたしておきます、こういうふうにもおっしゃっているわけであります。

 もう一度、今私が指摘をさせていただきました高校教育無償化法案、これが成立した場合にどうなるかということと関連をさせて、大臣の御決意というか考えをお聞かせいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 まず、御指摘の高校教育の無償化法案、これが成立した場合、そういうお話がありました。

 今、国会で御審議が行われているわけでありますけれども、仮にこの法案が成立いたしました場合には、この法案と、それから我が国が社会権規約の十三条(b)の規定により負います義務、これとの関係について精査を行った上、留保の撤回の可否について判断することになるもの、そういうふうに考えているところでございます。

 また、元大臣の御発言についてお述べになられましたけれども、先ほど申し上げましたけれども、留保を撤回する、そういうような、どうするかということにつきましては、やはりその事由について、その後解消されているのか、あるいは解除されているのか、そういう点を踏まえて判断されるべきことであるわけでございまして、そういう点で、関係省庁とも今後も協力をしながら、適切に判断をし、適切に対処していきたいと思っております。

    〔松浪(健四郎)委員長代理退席、委員長着席〕

近藤(昭)委員 質問時間が来ましたので、これで終わりますけれども、大臣、とにかく長い時間がかかり過ぎているということ、ぜひきちっと受けとめていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

河野委員長 次に、松原仁君。

松原委員 それでは、北朝鮮問題を中心に、あと前回の委員会でも積み残した質疑も時間があれば続けていきたいと思っております。

 今回、北朝鮮の核実験、さらには北朝鮮のショートレンジミサイルというものが発射をされたということで、このミサイル発射に関しては、ほとんどこの外務委員会では議論らしい議論ができない状況で来ておりますが、どちらにしても、この北朝鮮の暴挙に対して安保理決議が上げられる、こういった状況になっているわけであります。

 報道ベースによりますと、この安保理決議に関しては、日本側は非常に評価をしているというふうなことが言われておりまして、高須国連大使もこれを評価していると、制裁案は納得がいく、日本の高須国連大使は十日、そのように評価をした、こう言っているわけでありますが、今回の安保理決議に関して、大臣の評価、御所見をお伺いいたします。

中曽根国務大臣 北朝鮮の先般の核実験に関します安保理の理事国間の協議、これは今大変大詰めを迎えておりまして、たしか、日本時間の今晩、夜中の午前零時といいますか、明日の午前零時になるんでしょうけれども、またそこで安保理の会合が開かれまして採択に向かうもの、そういうふうに聞いております。

 我が国と常任理事国五カ国が韓国とともに合意をいたしました決議案に基づきましては、やはりできるだけ早く採択を行うべく努力をしてまいりました。現在、安保理で議論されております決議案には、決議第一七一八号で定められました北朝鮮に対する制裁措置の強化に加えまして、委員も御承知と思いますが、武器の禁輸とか、貨物の検査とか、あるいは金融面での措置などにおいて強い内容が含まれておりますけれども、現時点でまだ採択されておりません。これ以上の内容の詳細を申し上げることは差し控えさせていただきます。

 ただ、このように強い内容の決議案が中国、ロシアも含めて主要関係国間で今回合意に至ったということは、私は、これは、国際社会全体が北朝鮮の今回の核実験を断じて容認しない、またさらに、核とかミサイル、また大量破壊兵器の拡散を強く懸念している、そういうことのまさに明確な意思を表示したものだ、そういうふうに思っておりまして、今回の決議案というものがまとまりますれば、その対応についてもしっかりとやっていきたいと思っております。

松原委員 この決議案、内容的には、今、金融の問題、さらに船舶その他の問題をおっしゃったわけでありますが、実効性の担保というのは、既にマスメディアでは、どうなんだという議論がなされているわけであります、報道でありますが。これに関しては大臣はどのような御所見を持っておられるか、お伺いいたします。

中曽根国務大臣 今お話ありましたように、決議文が大変強いメッセージを含むものとなりましても、これが実行されなければ効力を発しませんし、意味のないことであります。そういう意味では、これが非常に大事であります。

 私どもといたしましては、実効性のある措置を着実に実施していかなければならないと思っておりまして、そのためには、これが採択され次第、また関係国と緊密に連携をとりながら、この決議を実効あらしめるように適切な対応を早急にとっていきたいと思っています。

松原委員 こうした中で、私は、この決議案に関し、さまざまな関係の方からいろいろなことを議論として聞いているわけであります。

 一つは、御案内だと思うんですが、北朝鮮の弾道ミサイル発射事件に対する家族会・救う会・拉致議連緊急声明というものが、私も拉致議連のメンバーでありますが、ことしの四月五日に上げられております。これはいろいろと文章が書いてあるわけでありますが、その中で、具体的に二つのことを政府に強く要望したわけであります。

 一つは、追加制裁実施の際、拉致問題での不誠実な対応が制裁発動の理由の一つであることを内外に明確に示していただきたい。もう一つは、国連安保理での議論においても拉致問題での不誠実な対応を糾弾する毅然たる外交を展開し、対北朝鮮決議に、拉致問題を含む国際社会の人道上の懸念の文言が入るように御配慮いただきたい。

 こういう、家族会、救う会、議連からの要望が政府に対して上げられていたわけでありますが、この要望に関しては、どんな扱いというか、どんな所見を持って臨まれたのかをお伺いいたしたいと思います。

中島政府参考人 拉致問題につきまして、前回の北朝鮮の核実験発表を受けまして全会一致で採択されました一七一八号でございますけれども、北朝鮮が国際社会の人道上の懸念に対応することの重要性が明記されたところでございます。今回の安保理決議に関する協議におきまして、こうした経緯を踏まえつつ交渉に臨んでいるところでございます。しかしながら、協議は非公開でございまして、具体的なやりとりの中身につきまして申し上げることは御容赦いただきたく存じます。

 いずれにいたしましても、我が国としては、引き続き、拉致問題を含みます人道上の懸念について北朝鮮がこたえることの重要性につきまして、国際社会の理解を得るべく努めてまいる所存でございます。

松原委員 この問題で、前回の一七一八ですか、これにおいても、私は、日本側は、人道問題というふうなくくりではなくて、あえてそこに拉致問題を含むということを強く主張したというふうに聞いているわけでありますが、もちろん、当然、まさに日本の問題でもある拉致問題というものに関しては、拉致も含む人道問題というふうなことは主張してきたという理解でよろしゅうございますでしょうか。

中島政府参考人 大変恐縮でございますけれども、安保理での協議が具体的にどういうものであったか、その経過がどういうものであったかということにつきまして、交渉当事国との関係もございますので、これを明らかにすることにつきましては御容赦いただきたく存じます。

松原委員 それはそうですが、交渉当事国との関係があると言うんだけれども、これは日本側は当然主張したと。していなければおかしいんですよ、したはずなんですよ。そういうふうな情報も、私は側面から、前回のときも聞いております。

 今回、私が聞いた部分では、日米でつくった素案には、人道云々の前に、拉致問題を含む国際社会の人道上の問題というふうなことで日米の素案がつくられたというふうに、私は極めて確度の高いところから聞いております。外務省の関係者からの話を間接的に聞いているわけでありますが、しかしながら、今の状況だと、この素案の項目は、これも伝聞でありますが、中国、ロシアという、この辺の反発で今回はやはり拉致という文言が切り落とされたというふうに聞いているわけであります。

 これは御担当の方もなかなかコメントがしづらい部分だと思いますから、余り聞いてもしようがないかもしれませんが、私は、日本の立場からいけば、拉致という文言を入れるというのは、これは極めて重要だと思うんです。

 私は、今から随分前に、小泉さんが北朝鮮・平壌を訪問したときのことで、この外務委員会、拉致特かな、どちらかで質問したときに、拉致という文言が日朝の声明の中に入っていないということに対して極めて問題であると、これは私は予算委員会でやっているのかもしれませんね、極めて遺憾であるということを申し上げたわけでありますが、やはり、日本の外務省当局としては、この文言を国連の決議に入れる努力を当然するべきだったと思うので、今回は、どういう文言が出てくるかは別にして、その努力をする思いはあったんだろうということで、その部分に関して、中曽根外務大臣に、決意というか今の思いを聞かせてもらいたいと思います。

中曽根国務大臣 北朝鮮との間では、拉致の問題というものは、核やミサイルとともに我が国にとっての最重要な課題でありまして、一日も早い解決をしなければならないところであります。

 今回の北朝鮮の一連の行動に対します安保理での決議案の作成に当たりましても、私たちは、そういう点を踏まえまして、各国に主張すべき点は主張し、交渉を行ってきたということを申し上げたいと思います。

松原委員 結論は、日本時間であれば今晩夜遅くか、出てくるわけで、日米の素案の拉致を含むの文言は、これはこの協議の中でそぎ落とされたというふうに私は既に聞いております。大変残念である。やはり日本は、この部分はできる限り主張するべきだと。前回の一七一八に続いて今回もまたこの部分が欠落をしたということは、私は、日本の人権上の立場からして大変に遺憾であるということをまず申し上げたいわけであります。

 次に、これは共同通信のデータであります。二十一年五月三十日、北朝鮮金融制裁の強化策提案、安保理協議で日米素案、こう書いてあります。今回、既に金融制裁に関してはさまざまなことが言われておりまして、バンコ・デルタ・アジア以来、これはやはり北朝鮮の制裁としては一番有効だろうという話であります。

 この共同通信の記事によりますと、ニューヨークの三十日の共同通信ですが、北朝鮮の二回目の核実験をめぐる国連安全保障理事会での協議で、新決議案に盛り込む制裁として、日本、米国が、北朝鮮の貿易決済銀行、朝鮮貿易銀行と、これがちょっと読みづらいのでありますが朝鮮大聖銀行、この二つに関して、これを金融の全面取引禁止を日米の素案の中に盛り込んだ、こういうふうなことが書かれているわけであります。

 これは、素案の段階に盛り込んだことを言えますか。ちょっと確認したい。

中島政府参考人 同じ答弁の繰り返しで大変恐縮でございますけれども、現在安保理で議論されている決議案、これは、我が国と常任理事国五カ国、それと韓国の間の交渉で合意されたものでございます。

 この交渉の経緯、先生の御指摘の点等々いろいろございますけれども、その交渉経緯、内容につきまして、交渉当事国との関係もありまして、差し控えさせていただきたいと思います。

松原委員 さっきの話も外務省のある程度の立場の方からの話でありましたが、を含めての議論でありますが、今回のこれは共同通信に載っているわけですよ。マスメディアに載っているわけですから、もうちょっと前向きの答弁もいただきたいわけであります。

 この大聖銀行というのは、御案内のとおり金正日の個人資産を管理する金融機関である、俗に言う労働党の三十九号室が所管している、こういうふうに我々も認識をしております。表の方の貿易に関してやるのがこちらの朝鮮貿易銀行、こういうことであります。

 日米の間で、少なくともこの二つの金融機関に対しては全面取引禁止をしようという議論が上がっていたと共同通信が報道していますから、私は別に外務省の関係の方から伝聞の形で、私も一人中に置いて聞いておりますが、この記事もあるということを含めると、私はやはり日米の素案の中でこれは合意されていたんだろうというふうに思っております。

 こういうふうな合意事項も、これはどうなんですか、この辺、大臣は聞いていますか。大臣の立場からある程度踏み込んだ発言をしてもらえるとありがたいんですけれども。

中島政府参考人 同じことで大変恐縮でございますけれども、交渉経緯、内容を明らかにすることにつきましては、御容赦いただきたく存じます。

松原委員 交渉経緯はわかるんだけれども、インテリジェンスだと言うんだけれども、共同通信が記事にしているから、大臣、やはりこれぐらいの具体的な銀行名を挙げた制裁というのが私は効果があったと思うし、これは日米の素案にあったと思うんですが、大臣はどんなふうにお考えですか。

中曽根国務大臣 今委員がおっしゃっております報道について、私、大変申しわけないことながらそれを見ておりませんので的確な答えができないかもしれませんが、制裁を行う上では、それはきちっと効果が上がるように、そういう意味では、効果が上がるにはどうしたらいいかということを考えれば、具体的な銀行名等が出てくるというのはその一つの方法ではないかと思っております。

松原委員 大変に重要な発言であります。具体的な銀行名を挙げた方がいいと外務大臣は思っていると。私は正しいと思うんですよ。この二つの金融機関を挙げたことによって、当然、共同通信だって報道しているぐらいですから、北朝鮮には行っていますよ。大変に彼らはこのことで、これに対しての反応も強烈だったのではないかと私は思っております。

 しかし、恐らくきょうの、これも私は別の筋から聞いているのは、二つの金融機関の名前は決議案からは当然欠落をしていると。さっき言った拉致という文言も日米素案の段階で、その素案には韓国がどうも入っていなかったようでありますが、これは欠落をしたし、大聖銀行やこの貿易銀行もその素案には入っていたけれども、決議案からはそぎ落とされた。大変にそれに対して反発をした国があったということであります。

 実効性をさっき聞いたのは、さっきの拉致の問題というのも、我々は拉致に関して、拉致と核を一体でやるというのは日本の政府の見解ですから、その実効性を担保するには最低文言ぐらいは入れましょうよと。日本は、国連に世界で二番目か何か、物すごいお金を拠出しているんですから、それぐらいのことはやはりやるべきですよ。それと同時に、こういった部分で具体的な金融機関名を挙げた方がそれはよりできると今大臣がおっしゃったとおりで、それが実効性の担保なんですよ。

 だから、そういうところで実効性が、それは、外務省を含めて、前よりは進んだと。それは進んで当たり前ですよ、核をやり、ショートレンジミサイルをぶっ放し、今も威嚇をしているんだから。しかしながら、こういうことで実効性はどこまで担保できるんですかということを、私は、大臣を含め、日本の立場から、日本の国益から皆様に聞いていきたいわけであります。

 さて、そうした中において、この金融制裁に関しては、アメリカは独自にやろうという議論も既に出ているわけであります。「米、独自の金融制裁検討」、こう書いてある。これは、アメリカ国務省のクローリー次官補は記者会見で、過去に金融制裁でとった措置は有効だった、今回も方法が見つかれば実施する、こういうふうに言っている。

 この金融制裁に関して、しかしアメリカの期待はこの記事だと日米韓の連携だということでありますが、大臣、国連安保理決議は安保理決議、しかし日本は、国連安保理決議は安保理決議としても、前のときも安保理決議が出る前に万景峰の入港を禁止した国であります。核による影響が一番大きい、そして拉致の問題を一番抱えている、その日本は、当然、この金融制裁に対してアメリカと組んでやる可能性は私は必要だと思うんですが、そのときに、素案の段階であったと言われる、共同通信が言っているところのこの二つの金融機関に対する全面取引禁止というものは当然検討に値すると思いますが、大臣の所見をお伺いしたい。

中曽根国務大臣 まさに今、安保理で大詰めの協議が行われておりまして、私どもとしてはできるだけ早く採決をと願っておりますが、まさに交渉中でございますので、やりとりやあるいは詳細について申し上げるのは適当ではないかと思いますが、これが採択されました後には、この決議文というものをしっかりと精査しながら、我が国としてとるべき対応というものを決定し、そして実行に移していくということになると思います。

 そういう中で、我が国の対北朝鮮措置、こういうものにつきましては、あるいはこれのあり方につきましては不断に検討を行っているところでありますけれども、しかし、実際の対応につきましては、今申し上げましたように、国連の決議がどういう形になるか、まずそういうものを見た上で総合的に判断することが必要ではないか、そういうふうに思っております。

 先ほどからのお話、ちょっと戻りますが、拉致等の問題につきましても、もう再三申し上げておりますように、我が国といたしましては拉致問題の解決が最重要課題でございますから、北朝鮮への決議文、こういうものの作成に当たりましても、我が国の主張というものは一貫して訴えている、そういうところでございます。そういう点は御理解いただきたいと思います。

松原委員 先ほど大臣は率直にお話しをいただいて、具体名を挙げた方が効果があると。そのとおりです、実効性の担保が必要です。

 アメリカと日本の素案で入っていたと、それはなかなか担当の方は言いませんが、共同通信ですら報道されています、この二つの金融機関の名前が挙がって。安保理の決議は安保理の決議、しかし、日米韓はそれより踏み込んで行動することは当然あり得るし、アメリカは具体的な、「米、独自の金融制裁検討」と、これは記事に載っているわけでありますが、これは外務省がきょう配ってくれた記事ですよ。だから、当然、こういった二つの金融機関に対する全面取引禁止というようなことも含んで、二つの金融機関の名前を大臣の口からあえて言わせようとは思いませんよ、こういったことも含んだ日米韓の金融制裁、取引停止はあり得るということを、大臣、言ってください。大事なことです。

中曽根国務大臣 対北朝鮮措置については、いろいろなことも考えられると思いますし、いろいろな方々が議論を既にされているところでございます。

 そういう意味で、我々といたしましては、どのような点についてどういうやり方が適当か、効果的であるかということは今後検討していきたいと思っております。

松原委員 どうも、この決議案の中にはこういうふうな文言が書かれているわけでありますが、これは全部本当は出ているんだから、出ていてインテリジェンスと言われても困っちゃうんだけれども、出ている。全加盟国に、国際的な金融信用機関に援助や金融支援、無利子融資の新規契約をしないよう要請、ただし人道、開発目的は除くと、決議案の内容がマスメディアに出ているわけです。ここじゃ議論できませんと言うんだけれども、一般の国民は知っているんですよ。

 この内容で、人道、開発目的は除くと。人道はわかるんだけれども、開発目的を除くと書いてあるのはどういうことかなと思うんですよ。そういうものが出てくるだろうとマスコミに書いてあるんだから。開発目的を除くというのはどういうことだと思いますか、大臣。

中島政府参考人 たびたび同じ答弁で恐縮でございますけれども、現在の協議が大詰めを迎えておる段階でございまして、現時点で、開発目的といった、お尋ねのような決議の具体的内容について確定的なことを申し上げることは御容赦いただきたく存じます。

松原委員 こういうのを裸の王様というんですよ。全部マスコミが報道していて、北朝鮮も韓国も、まあ北朝鮮のマスコミはどこまで報道しているかわからないけれども、すべてのマスコミが報道している。ここでは、その議論は封印ですというんじゃ、ある程度は、このインテリジェンスの問題というのは一回議論しなきゃいけないですね。ショートレンジミサイル五発も、その具体的な内容を言えませんとか、これでは話が進まないです。いいです、時間がない。大臣、答えたい。はい、どうぞ。

中曽根国務大臣 これは、インテリジェンスというよりか、交渉中のものでありますので、委員が十分御承知のことであると思いますが、報道は報道で私たちも承知しておりますし、そういうものも我々もまたもちろん当然見ておるわけでありますが、インテリジェンスというものとちょっと違いまして、違うというか、交渉中のものでありますので、相手国との関係もありまして、詳細とかそういうことはお答えできない、そういう点はぜひ御理解いただきたいと思います。

松原委員 交渉は大事なんですよ。しかし、日本の国は遵法精神でそういうのをやっているけれども、ほかの国は必ずしもそうじゃないし、国際社会の中において、どうやって国益を主張し、したたかにやっていくかということを考えれば、私は一定の議論は必要だと思っております。これはいろいろな見解があるでしょう。

 要するに、開発目的を除くというのは、この文言がそのとおりであるならば、中国が北朝鮮には今後も経済投資をしますよという意味だと私は思うんですよ。中国はやりますよと。これでは実効性が担保されますかということになるんです。きょうの夜になれば具体的にわかりますが、中国が、北朝鮮の鉱山とか、あそこは資源があるから、その資源に対して開発する金を人道目的以外に出したいからこの文言が入ったんでしょう。だから、私は冒頭、実効性はどこまで担保できますかということを聞いているんです。逆に言えば、具体的な金融機関名を挙げてやるという素案、これも恐らく中ロの反対かなんかでつぶされたんでしょうが、そういったものに関しても日米韓の有志連合でやるべきだと私は申し上げているんです。

 時間がありませんが、次に参ります。

 アメリカで、今、上院議員等によるテロ支援国家再指定の動きがあると聞いておりますが、これはどういう具体的な内容か、もしわかれば教えていただきたいと思います。

中曽根国務大臣 今月の二日に、これは米国時間でございますが、米国におきまして、上院の共和党の議員の方々がクリントン国務長官に対しまして北朝鮮のテロ支援国家への再指定を求める書簡を発出したもの、そういうふうに承知をしております。

 今月の七日に、クリントン国務長官はアメリカのテレビのインタビューにおきましてこの書簡について問われ、そこで、テロ支援国家再指定について検討すると述べる一方で、再指定のためには手続がある、北朝鮮の国際テロに対する支援の最近の証拠に接する必要がある、また、検討を開始したばかりであり現時点で答えを持ち合わせていない旨述べたものと承知をいたしております。

 北朝鮮をテロ支援国家として再指定するためには、委員御承知のとおり、米国内法上の要件を満たすこと、具体的には国際的なテロ活動を支援しているかどうか、そういう証拠が必要と理解しておりますが、こういう検討というのは常に行われているのではないかと思っております。

 いずれにいたしましても、クリントン長官も、北朝鮮に対しましては強い対応が必要である、そういう考えであると承知しておりまして、日米間で緊密に連携して今後もやっていきたいと思っております。

松原委員 テロ支援国家再指定は、実はことしの四月二十八日から平沼赳夫さんや自民党の古屋圭司さん、私も行きまして、救う会も参加をしました。被害者家族会は飯塚さんや増元さんも参加して、アメリカで会ったすべての人に、テロ支援国家再指定をお願いしますと我々も主張してきたわけであります。その意味においては、我々の立場からするとこれは非常に歓迎するべき動きだと思っておりますが、ここでお伺いしたい。

 かつて、テロ支援国家指定解除をしないようにと政府はアメリカに対して要望したことはありますか。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 米国政府は二〇〇七年二月以降、北朝鮮のテロ支援国家指定解除の可能性を示しつつ、北朝鮮との交渉を進めてまいりました。我が国としては、この指定解除を効果的に利用することが肝要と考えて、米国との間で相当緊密にこの点について協議をしてきたわけでございます。米国が、そのような日米間の協議も踏まえながら、昨年十月十一日に、停滞していた六者会合プロセス、これを再度動かすことが重要であるとの判断から指定解除を行ったものと理解しております。

 そもそも、米国によるテロ支援国家の指定及び解除については米国内の法令の解釈適用の面がありまして、最終的には米国政府が判断する事項でございますけれども、我が国としては、当時の米国政府の判断は一つの判断であったと考えております。

 そして、昨年の指定解除に際し、米国に対して解除しないように要請したか否か、その御質問といいますか、日米間のやりとりの詳細について、相手方もありますので御説明することは差し控えますが、いずれにしても、政府としては、拉致、核、ミサイルといった北朝鮮の諸懸案の解決に向けた具体的行動を北朝鮮から引き出すため、対話と圧力のバランスに意を用いながら日米間で緊密に連携して取り組んでいくということであります。

 長々としゃべりましたけれども、要約すれば、米国政府は、テロ支援国家指定解除の効果は基本的に象徴的なものであるとして、北朝鮮に対して引き続き極めて厳しい制裁を続けていくと認識しております。

松原委員 アメリカの国内法には半年というのがあって、クリントンさんもそれを言っているんです。

 私もこの問題で過去三回ワシントンを訪問しております。一回目、二回目、クリストファー・ヒル氏と話をしたときに、この半年というものに関して、アーミテージさんが日本に言ったのは、拉致問題が解決をされない限り横田めぐみさんは毎日被害に遭っている、そして拉致というものを項目に入れてある以上、彼の発想は、彼は国務省の元高官だった人でありますが、拉致問題が解決しない限り、テロ支援国家の要件であるテロをし続けているという認識を自分は持っている、こう言っていました。これに対して、私はクリストファー・ヒルさんに、そういうふうにアーミテージさんは言っているけれども、あなたはいつ国務省として見解を変えたんだと言ったら、彼は答えられなかった。彼はこれに答えられなかった。それは高度な政治的判断でブッシュさんがやることだと言って、私との議論で逃げたんです。

 つまり、これはアメリカの国内法の問題がありますが、彼らは、我々議連とか被害者家族会が行ったときに、そう釈明をしていたのであります。当然、そうした中において見解の相違があるわけであります。国務省の中だって、アーミテージが言っていた問題とヒルが言っている内容と違う。また、クリントンは今違う発想を持っているかもしれないけれども、そういったものをある程度ただす必要もあるかと私は思っております。

 質問の趣旨である、日本側からアメリカに対して指定解除しないようにというのは、当時の日本の新聞にも載っていますし、両国間の交渉だから言わないというけれども、これは間違いなく言っているんですよ。それを言っている。言っているんですよ。言っているんだけれども、ここでは都合が悪いからあえて言わない、両国間の交渉と言いながら。では、逆に言えば、論理的に言わせてもらうけれども、再指定を要請することはできるということですね。隠密裏に要請することはできるということですね。公に要請することもできるけれども、隠密裏に要請することもできるということですね。大臣、答えてください。

中曽根国務大臣 テロ支援国家指定につきましては、とにかくこれは米国の国内法の問題でありますから米国が判断することでありますけれども、我が国の立場とか日ごろからの主張とか要請とか、そういうものも十分踏まえて判断をされていくもの、そういうふうに思っております。

松原委員 同僚議員の時間を余りとっちゃいけないのでこれで終わりますが、いいですか、大臣、今、伊藤副大臣は、日本からその要請をしたかどうかは両国間の交渉にかかわる問題だから言えませんと言ったんです。要請というのは、テロ支援国家指定を解除するなという要請を恐らくしているんですよ。するべきなんですよ。もしそれを公にしたのなら、ここで公にすると言ってほしいし、そして、それを公ではなくてインフォーマルにしているならば、この委員会に黙ってやってもらって結構ですよ。

 ぜひ、アメリカに対して、テロ支援国家再指定をしていただきたい、そのために、被害者家族会も救う会も我々議連も、そして多くの日本の国民の皆さんもそのことに対する期待を持っていますから、同盟国アメリカに対してはそれをぜひ強く主張していただきたい。もう一回、えんきょくでもいいから、やりますという趣旨のことを言ってください、大臣。答えてください。

中曽根国務大臣 テロ支援国家指定、この問題につきましては、もう再三御答弁申し上げておりますが、これは委員が今おっしゃいましたように、表で、それから、裏という言葉がいいかどうかわかりませんけれども、そういう形でというお話でありますが、大変申しわけないんですが、表にしても裏にしても、我が国政府として、米国とこの問題についてどういうやりとりをした、あるいは、どういうやりとりをするということは、ここで申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、拉致問題の一日も早い解決という、この最終的な解決方法に向かって、我々としては、いろいろな、あらゆる可能な手続、手段というものをとっていきたい、そういうふうに考えております。

松原委員 以上で終わります。

河野委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正でございます。

 それでは、質疑を行わせていただきます。

 内閣官房副長官、それから総務副大臣、環境大臣政務官にも御出席をいただき、また海保並びにJICAさんからもおいでをいただいておりますが、まず、尖閣諸島上陸調査要請につきまして質疑を行わせていただきます。

 お手元の資料一ページ目にありますように、去る三月三十一日に、石垣市長から、これは河野太郎外務委員長あての「石垣市による尖閣諸島への上陸実地調査について」という文書でございますが、同様の文書も外務大臣に出されたということであります。

 それから、それを受けまして、去る四月二十一日、決算行政監視委員会第一分科会で、私から河村官房長官の方に、こうした要請が出て、政府とすれば要請が出れば政府内で検討するということだったんだけれども、どうでしょうかということに対しまして、現時点で関係省庁と連携して対応を検討している、こういうことである、こういう要望が出ておりますので、早期に結論を出すように、この努力を今求めている段階でありますと官房長官からお答えがあったんですけれども、現時点、どのような政府部内の検討をされているのか。官房副長官、お答えをいただきたいと思います。

松本内閣官房副長官 尖閣諸島三島については、もともと私有地でありますが、平成十四年四月から政府が、尖閣諸島の平穏かつ安定的な維持管理を図ることを目的といたしまして、賃借を開始しております。この賃借の目的に照らして、原則として何人も尖閣諸島への上陸を認めないとの方針をとっているところでございます。

 このような中で、石垣市長から、三月三十一日付の書簡におきまして、固定資産税課税のための実地調査を行うために尖閣諸島に上陸することを要請されました。

 政府といたしましては、今般の要請について検討を行った結果、五月二十二日、石垣市長に対し、平成十四年四月から政府が尖閣諸島の平穏かつ安定的な維持を図ることを目的として尖閣諸島三島の賃借を開始している、政府としては上陸実地調査がこれまで行われていないと承知しており、石垣市として、その必要性、上記目的、尖閣諸島をめぐる状況も総合的に勘案して適切に対応されるよう望む旨、回答をさせていただきました。

 以上です。

武正委員 今のことは、上陸実地調査については認められないという趣旨なんでしょうか。適正にというのがちょっとよくわからないんですが。

松本内閣官房副長官 上陸を認めないという回答ではなくて、適切に対応していただきたいという旨の回答をさせていただきました。

武正委員 これまで内閣官房などに石垣市から上陸要請をしたけれども、上陸は困るんだ、こういうようなことを言われていたということを聞きまして、三年前、ちょうど外務委員会が視察をした折に口頭で石垣市長から要請を受け、この間、四回、五回と国会でこうして取り上げさせていただいたわけでありまして、改めてこうした文書も「上陸実地調査について」ということで出ておるんですけれども、それについての回答は、適正に判断してくれということでは要を得ないんですが、いかがですか。もう一度、政府としてはどのように考えておられるんですか。

松本内閣官房副長官 このやりとりに関してでありますが、石垣市長が別件で外務省を来訪された際に外務省幹部から回答させていただいたものでございまして、石垣市長からは、先ほど御答弁申し上げました回答の内容につきまして了解をしていただいたと聞いているところでございます。

武正委員 それは伝聞でありますので、やはり文書には文書でということでありますので、その回答文書をぜひ御提出いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

松本内閣官房副長官 石垣市長に対して政府としての回答を直接伝えるため、別途文書で回答することについては予定をしてございません。

武正委員 とすると、今のは口頭ということですか。

松本内閣官房副長官 そのとおりでございます。

武正委員 これは要請文が出ているわけですから、これだけ国会で取り上げているわけですから、やはり政府としての回答を文書として出すべきだというふうに思うんですが、いかがでしょうか。そしてまた、それをぜひ当外務委員会に御提出いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

松本内閣官房副長官 ただいまも御答弁させていただきましたように、現在のところ、別途文書での回答は予定をしてございません。

 御本人も、石垣市長そのものも、外務省幹部からの回答に対して御了解をいただいたと承知をしているところです。

武正委員 外務委員長、これは外務委員長あてに送られている文書でありますが、ぜひ理事会で御協議をお願いして、外務委員長あてにもこうした要請が出ているわけですので、やはり政府としての回答は、当外務委員会に対してもきちっと見せていただきたいと思いますので、文書として御提出をいただけるよう、理事会での協議をお願いしたいと思います。

河野委員長 政府が文書を発出すれば外務委員会あてに提案をいただきますが、政府が文書で出すかどうかは政府がお決めになることですので、それは政府において御判断をいただき、文書で発出される場合は、外務委員会に御連絡をいただくようお願いをいたしたいと思います。

武正委員 それでは、総務副大臣がお見えですのでお答えをいただきたいと思うんですが、この間、総務省としては、「地方税法に基づきまして、実地調査を行うということは同法にのっとった行為であるというふうに総務省としては考えている」と、これまで山崎副大臣、秋葉政務官に当委員会でお答えをいただいたんですが、この見解は、石垣市長の尖閣諸島への上陸実地調査、固定資産税評価、年に一回、地方税法四百八条にのっとってということに対しての見解としては同様ということでよろしいでしょうか。

倉田副大臣 お答えいたします。

 従前同様、地方税法の四百八条というのがございますので、固定資産税の課税に当たって、地方税法に基づいて、実地調査を行うということは同法にのっとった行為であると考えております。

武正委員 それで、関係省庁との検討というものはこの間ずっと行われていなかったと承知をしておるんですけれども、今回、この石垣市長からの要請を受けて、関係省庁との検討をどのように行って、どのような結論に至ったのか、総務省としての今の御所見を伺いたいと思います。

倉田副大臣 国内でも一般的にそうでありますけれども、尖閣列島、これは原野であります。御承知のとおり、総務省が固定資産評価基準というものを出しておりまして、状況が類似する他の原野の単価を用いて評価すればそれでよろしいということにもなっております。

 今のところ、特段の現地調査というものが必要か否かということについては、いまだ結論を出しておりません。

武正委員 関係省庁との協議は行ったんでしょうか。行ったとすれば、どちらと、いつ行われたのか。これは、河村官房長官がたしか四月の上旬に記者会見で述べて、そして私の質疑は四月の下旬だったと思うんです。いかがでしょうか。

倉田副大臣 総務省と内閣官房とそれから外務省とですか、やったと聞いております。

武正委員 その中で協議をして、先ほどのような、総務省とすれば類似の地点をもって判断ができる、ですから、この地方税法四百八条、もう一度読み上げますが、「市町村長は、固定資産評価員又は固定資産評価補助員に当該市町村所在の固定資産の状況を毎年少くとも一回実地に調査させなければならない。」、国内法のこの施行についてはする必要がないという結論を総務省として得たということでよろしいですか。

倉田副大臣 先ほど言いましたように、課税標準によっても出ます。したがって、実地調査をすることは法にのっとったものではありますけれども、特段の必要性まではあるのか否かということについては、いまだ結論を私ども出しておりません。

武正委員 特段の必要があるかどうかは結論を出していないということですか、総務省。結論が出ていないということですか。もう一度お答えいただきたい。

倉田副大臣 現段階ではそのように考えております。

武正委員 ということは、総務省としては、まだやはりこの四百八条、年に一回実地に調査させなければならないというこの法律を課税権者である市町村長がきちっと履行することについて、今回のこの要請について、これについての判断というものはまだしていないということだと理解してよろしいでしょうか。

倉田副大臣 先ほど言いましたように、固定資産税課税標準によって従前行ってこられており、いまだ、特別これから現地調査を云々ということまでの必要性を、今のところ、あるのか否か、その判断はまだしておりません。

武正委員 判断をしていないということですか。もう一度、最後のところ、ちょっと聞き取りづらかったので。

倉田副大臣 特段の調査をすべきというところまでの必要性について認識していないということです。

武正委員 地方税法は総務省の所管の法律ですよね。地方の首長が固定資産税を評価する地方税法四百八条にのっとって上陸をしたいと。しかも、この要請を出しておきながら、その必要がないというのを、所管省庁がなぜそういうふうに判断するんですか。国内法にのっとって履行したいという要請じゃないですか。

倉田副大臣 四百八条の規定に関しますけれども、実地調査というのは、全部の資産について細部にわたって行われなくても、固定資産税の状況を知り得る程度に行われていれば結構である、このように解釈しておりますから。

武正委員 例えば、この要請を見ていただきますと、きょうは環境省の政務官もおいでなんですが、「当該調査を実施することについては、地方税法上の問題のみならず、過去に日本国民である住民が経済活動を行い、生活を営んできた歴史的文化財の保存とセンカクモグラをはじめとする希少な動植物保護のための調査研究にも大きく貢献するものと考えます。」ということでありまして、資料の二ページにセンカクモグラについての実態、それから三ページ目には「我が国における絶滅のおそれのある野生生物の種数」ということで出ておりますけれども、センカクモグラを初め尖閣諸島におけるこうした絶滅危惧種、動物、植物等、実態について、環境省からお答えをいただきたいと思います。

古川大臣政務官 センカクモグラあるいはセンカクツツジ等希少な野生の動植物が尖閣諸島にはございます。その生育、生息状況について、これまでも情報を収集し、現状把握について努めているところでございます。

武正委員 資料をごらんいただきたいと思うんですけれども、センカクモグラのところですね、二ページ目一番下のところ、「生息地の現況とその動向」ということで、見てまいりますと、ちょうど二行目からでしょうか、「一九九一年船上から行われた島の片側の簡単な目視調査だけで三百頭以上が目撃されている。」ヤギですね。「陸上調査によれば、ヤギは標高三百六十メートル余の山頂まで分布し、多数のヤギ道を作っており、海岸域の一部では草原の拡大が始まっている。全島は森林に覆われていることから、カウント数は生息数の一部にすぎない可能性が高く、今後一層急速な大増殖と激しい植生破壊、裸地化、土壌流亡などが進行する可能性がある。」ということで、これまでも日本哺乳類学会から二〇〇二年十二月、ヤギの根絶を求める要望書が環境省に出されているということでありますが、こうした事実を把握されておられるかどうか。また、これに対して環境省としてどのような取り組みをされているのか。

 また、横畑泰志富山大学の准教授によりますと、センカクサワガニなど、やはり固有種、これも絶滅危惧種でありますが、固有種に悪影響を与えるので、早急にヤギの駆除が必要ということで、野生化したヤギが増殖し、植物を食い荒らし、島のがけ崩れが深刻化していると。二〇〇〇年の状況調査では、衛星写真を見れば、一三%が裸地になっているというようなことであり、繁殖し過ぎたヤギが地表を固定している植物を食い荒らしていることががけ崩れの原因、緑地がなくなり川が枯渇するため絶滅危惧種のセンカクサワガニなど島の固有種がすみかを奪われている、こういったことも横畑准教授は指摘をしているんですが、この点の認識について、また、環境省に日本哺乳類学会からヤギの根絶を求める要望書が出されたことについて、環境省としてどのような対応をされたのか、お答えをいただければと思います。

古川大臣政務官 尖閣諸島の魚釣島の状況につきましては、野ヤギの生息状況等について状況の把握に努めておりまして、平成二十年度には、航空写真及び衛星画像を解析して植生図を作成するなどしております。その結果、この野ヤギの生息によりまして植生に影響が生じているということについては承知をいたしております。

 ただ、では、即座にそれを駆除する段階、その必要性があるかどうかということについては、全国的な種の保存の観点から、優先度が必ずしも高いとは言えないというふうに考えておりまして、環境省としましては、現時点で野ヤギの駆除ということを考えていないという状況でございます。

武正委員 二〇〇三年に、保護団体の求めによりまして、小笠原諸島の、鳥島で、今度はアホウドリの繁殖地ということでやはり保護活動を行っているわけなんですけれども、この尖閣諸島では南小島がアホウドリの繁殖地というふうに聞いているんですけれども、この点は把握をされていますでしょうか。

古川大臣政務官 委員御指摘のアホウドリの件について、状況の認識はしております。承知いたしております。ただ、対策を打つべしという喫緊の緊急性といいますか、必要性を感じているというところには至っておりません。

武正委員 聞くところでは、この南小島では三百羽のアホウドリが生育をしているということでありまして、こうした絶滅の危惧があるアホウドリについては、資料の三ページ目の、絶滅危惧で第2類になるわけなんですけれども、こうしたものについての保護ということが、鳥島では進められているけれども、南小島では進められていないということかと思います。

 ちなみに、この三ページ目で、尖閣諸島にいる絶滅のおそれのある種は、絶滅危惧種、1Aが先ほどのセンカクモグラを含めた十三種、そして1Bが三種、そして1類が一種ということで十七種、そして、絶滅危惧第2類がアホウドリを含めて七種、準絶滅危惧が三種の、計二十七種ということだそうであります。そして、二十七種中、尖閣諸島の固有種がうち十種ということであります。

 こうした絶滅危惧種に対する対応、先ほど環境政務官からヤギの駆除は必要ないというお話がありましたけれども、こうした点も、石垣市長からも、やはり動植物の保護のための調査研究も必要なんだという要請文が出ております。

 先ほど官房副長官は、いや、石垣市長は納得したんだというお話でありますが、私はやはり、国と地方自治体との今の関係の中で、完全に地方分権がまだなされていない中で、こうした要請というものを重く受けとめて政府としても取り組みを行っていただきたい。ましてや、それを文書で回答を出せないというのはいかがなものかというふうに思うわけであります。

 加えて、総務省におかれましては、地方税法の担当省庁でありながら、他の類似のものを類推して、それでいいんだというようなことを言われてしまいますと、これだけ尖閣諸島、実態も大変な変化をしている、激変をしている状況でありますので、やはり上陸をして調査をしていくというのは至極もっともなことだ、ましてや所管省庁でありますので、やはり地方税法にのっとった履行を認めていくべきだというふうに思います。

 また、きょうは海保さんがおいででございますが、海上保安庁がこの間も灯台の維持、補修のために上陸をしているわけでありますので、政府が何人たりとも原則認めないということがここでもう崩れているわけでありますので、これら固定資産税の評価、調査、並びにまた絶滅危惧種の調査等も含めて、やはり日本の法律にのっとった履行を当然認めていくべきだというふうに思っております。

 最後に海保さんに伺いますけれども、実際、海保さんが飛行機で例えばアホウドリの生息状況とか島の状況などを写真撮影しているということを聞いているんですけれども、例えばそうしたものを地元の石垣市などに提供することは可能なのかどうか伺いたいと思いますし、最近灯台の補修のために上陸をしたとすれば、それがいつなのか、この一年以内の上陸の日時がわかれば教えていただきたいと思います。

米岡政府参考人 お答え申し上げます。

 いつ灯台の点検を行ったかにつきましては、昨年、平成二十年四月十一日に実施したところでございます。

 また、尖閣に関しましては、航空機等で、飛んでいる写真が提出できないかにつきましては、これは、大変申しわけございませんが、私の方は交通部というところで、警備等のための航空機の運用等というのは私と違う部署で担当しておりますので、これについてはちょっと回答を差し控えさせていただきたいと思います。

武正委員 官房副長官、最後にもう一度お答えをいただきたいんですが、我が国固有の領土である尖閣諸島に対して、国内法にのっとった履行がなぜ阻まれるのか。それから、こうした絶滅危惧種が存在する貴重な島でありますので、そこが今、ヤギが三百頭もふえて、そうした絶滅危惧種がなくなってしまうおそれもあるといったところに対して、なぜ必要がないというふうに断じることができるのか。

 やはり国内法にのっとった当然の履行を進めていくべきだと思いますので、ぜひ政府として前向きな検討を求めたいと思いますが、最後に官房副長官に御回答をお願いしたいと思います。

松本内閣官房副長官 内閣官房、外務省及び総務省を中心といたしまして、尖閣諸島の平穏かつ安定的な維持管理の必要性を踏まえつつ、地方税法に関する固定資産税の実地調査の性格や尖閣諸島をめぐる状況等を総合的に勘案しながら、環境省、文化庁とも連携をして検討させていただいたところでございまして、今般の要望に係る検討結果について、今、各御担当から御説明をさせていただいたところであります。

 基本的には、石垣市長にもお答えをしたところでございまして、私どもは適切な判断を期待しているところでございます。

武正委員 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

河野委員長 海上保安庁におかれましては、担当部から、先ほどの武正公一君の質問の答えをお寄せいただきたいと思います。理事会までお寄せください。

 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 去る六月五日に続いて、地球温暖化問題について質問いたします。

 一昨日、麻生総理が、二〇二〇年までの日本の温室効果ガス削減中期目標について発表いたしました。

 そこで、まず外務省に伺います。現在、ドイツのボンで国連の特別作業部会が開会中でありますが、総理が発表したこの中期目標に対する国際的な反応はいかがでしょうか。

杉山政府参考人 委員の御質問にお答えいたします。

 御指摘のように、六月十日の総理のスピーチ、発表を受けて、ドイツのボンで行われている国連交渉の場において我が国の代表団長古屋大使から特に発言をして、温室効果ガスの削減に関する我が国の中期目標について紹介、説明をいたしました。これに対して、我が国の中期目標発表に対する各国の反応、まだ発表が行われた直後でございますので確定的なことをなかなか申し上げづらいんですが、とりあえず好意的な反応をするものからかなり批判的なもの、あるいはさらなる説明を聞きたいというもの、さまざまな反応があるようでございます。

 いずれにいたしましても、外務省といたしましては、今回の発表を受けて、国際的に日本の考え方を引き続きしっかり説明して交渉に臨んでいきたいというふうに思っているところでございます。

笠井委員 各国からかなり厳しい声、それから厳しい目が寄せられていると。低過ぎる、野心的でない、落第だという声もある。国際社会の期待と落差がある、先進国の歴史的責任から見て不十分だ、科学の要請にどのようにこたえるかはっきりしていない、不完全、リーダーシップを発揮する意欲がないと、政府やNGOから厳しい声が上がっている。

 なぜか。まず、目標数値自体の問題でありますが、改めて確認します。京都議定書に基づく第一約束期間である二〇〇八年から二〇一二年までの日本の削減目標は幾らでしょうか。端的に数字だけ。

杉山政府参考人 京都議定書の附属書で規定されているものは、実質的にマイナス六%の削減義務でございます。

笠井委員 今度の中期目標は二〇〇五年比で一五%減ということでありますが、これは、京都議定書の基準年である九〇年比ではわずか八%の減であります。つまり、この目標は京都議定書で日本が約束した六%削減を二%上回るだけの、同じような水準だということであります。

 先進国に九〇年比二五から四〇%削減を求めたIPCC、気候変動に関する政府間パネル報告にこたえた科学的で野心的な削減目標とは、到底これは言えないんじゃないでしょうか。いかがですか。

杉山政府参考人 ただいまの委員の御指摘については、若干説明を要する点があるというふうに我々としては考えております。

 と申しますのも、確かに、京都議定書で我が国が課せられた温室効果ガスの削減義務、これは六%マイナスということでございます。御指摘のとおり、今回総理が発表になられた二〇〇五年比でマイナス一五%というのを一九九〇年比に直すと、約八%ぐらいになるということだろうとは思います。

 ただ、総理が発表の中で非常に明確におっしゃられたように、今回のマイナス一五%、あるいは、あえて九〇年比に直せばマイナス八%程度というものは、総理御自身の御発言の中にあるように、いわゆる真水というものでございまして、つまり、海外のオフセットクレジットであるとか森林吸収源であるとか、そういった部分を含まない数字であるのに対して、京都議定書のこの六%というのは、総理御自身が発表で明らかに指摘をされているとおり、五・四%がいわゆる海外のオフセットクレジットで購入する分であるとか森林吸収分を換算した分ということでございますので、そういう単純な比較がいいかどうかということはわかりませんが、あえて今の数字から申し上げれば、京都議定書のときはマイナス〇・六%であったのに対して、今回は約八%ぐらいになっている。

 政府としてそういう説明を公式に行ってきているわけではございません。なぜかといえば、基準年を二〇〇五年ということで政府としては発表しておりますが、あえて九〇年比ということで申し上げれば、そういうことになろうかというふうに思います。

笠井委員 今、真水という話がありましたが、実際にこの数字を提起した中でも、ボンの反応の中で、要するに、真水ということで出せばほかと比較できないじゃないか、地球全体での排出削減を促していくような排出枠の取引を否定するのかと、実際に外務省の説明に対してそういう反応が返ってきているということであります。しかも、国際交渉の議論の中心に据えられているのがIPCCの数値でありまして、政府はあれこれ数値について理屈を今言われるわけですけれども、そういう議論が国際的に通用するのかと。しないというふうに私は思います。

 地球温暖化の被害を最小限に抑えるには、産業革命による工業化以前に比べて世界の平均気温の上昇を二度以内に抑える必要がある、だから、先進国が二〇二〇年までに二五から四〇%削減ということを求められているということが出たわけです。ボン会議に提出された合意文書のたたき台でも、そういう立場での目標、長期ビジョンが議論されております。ところが、政府の中期目標の検討ではそういう議論がほとんどない。世界の議論と大きくかけ離れているということを指摘したいと思います。

 今、基準年について言われましたけれども、それでは伺いますが、そもそも、日本が議長国である京都議定書はなぜ基準年を一九九〇年としたのですか。

杉山政府参考人 今委員御指摘の京都議定書の際の締結の経緯、まことに申しわけありません、この場で非常に正確につまびらかに申し上げる用意ができてございません。

 ただ、京都議定書が成立した、京都で合意ができた年というのは一九九七年でございます。一九九七年の段階で一九九〇年のベースをその基準の数字にしようということで合意をされた、その間の経緯、どういう議論があったかということは、ちょっと調べてからでないとお答えできません。

笠井委員 基準年ということを言われるんだったら、調べてからではなくて、基本的な話なんですよ。

 これは、一九九二年に採択された枠組み条約の中で第四条があります。先進国は、温室効果ガスの人為的な排出の量を一九九〇年の水準に戻すと合意したことに基づいて、日本もその提案国の一つだったわけですが、それが京都会議、京都議定書に継承されて、二〇二〇年までの中期目標でも多くの国がやはり九〇年を基準にして立てているわけです。総理が決めるに当たって、この間の経過からいったって、日本の中期目標もそうするのが当然だったんじゃないんですか。

鎌形政府参考人 総理がスピーチの中で二〇〇五年比ということで言及してございますけれども、その際の記者会見でのやりとりで総理がこのように申し上げております。

 基準年の最大の役割は、各国が同じ目標に向けて、これから共通の努力をするためのスタートラインの設定だ、こういう認識を示されております。したがって、過去のどの時点が有利かを論ずるよりも、今の基準とすることが適切、そういうふうに考えて二〇〇五年を基準年にした、こういうふうに御説明になっております。

笠井委員 総理の記者会見の中で、今同じスタートラインと言われた中で、九〇年はEUぐらいだ、アメリカ、カナダ、オーストラリアはそうなっていないという話を言われていますが、それでは聞きますけれども、九〇年比で中期目標を立てている国というのは何カ国ありますか。国の数。九〇年以外を基準年として中期目標を立てている国は何カ国でしょうか。

鎌形政府参考人 先進国すべての国についてのデータを今持ち合わせてございませんけれども、EUにつきまして、基準年が一九九〇年。それから、EUの中でも英国、ドイツ、フランス、それぞれ一九九〇年を基準年として削減率を言っておられると認識してございます。

 あと、その他の国としては、アメリカ、カナダ、豪州は、それぞれ二〇〇五年、二〇〇六年、二〇〇〇年という基準を言っておられる、こういうふうに認識してございます。

笠井委員 EUというのは二十七カ国あります。それ以外にも九〇年ということで、私も事前にレクで聞きました、ベラルーシ、クロアチア、アイスランド、ノルウェー、スイス、ウクライナということで六カ国ある。それに対して、それ以外ということで二〇〇五年とかそういう形で言っているのは、言われたとおり、アメリカ、カナダ、オーストラリアであります。

 要するに、それ以外というところは、京都議定書を離脱したり、それじゃできないと宣言して抜けてまた戻るとか、そういう国ばかりでありまして、九〇年以降も排出量をふやしてきた日本などの削減目標というのは、基準年を現在に近づければ近づけるほど見かけ上は高い目標になります。

 それに対して、九〇年比で誠実に削減を実行してきた、それこそ京都議定書をそのとおりやってきた国々は、二〇〇五年を基準にすれば、それまでの削減努力というのはチャラになるということにされてしまうということで、そういう基準年の変更が国際社会で受け入れられると思いますか。いかがですか。

鎌形政府参考人 我が国は今回の交渉におきましてサブミッションを提出しておりますけれども、その中では、目標の考え方といたしまして、削減の絶対量、そして直近年を含む複数の基準年ということを主張してございます。そういう意味で、削減の絶対量というものを非常に重要視しているということでございます。

笠井委員 今、日本は省エネが進んでいるとか、いろいろ言ったりするんです。今、絶対量という話もありましたけれども。でも、排出量を世界で見ると第四位ですよ。そういう中で、日本の目標値や基準年の設定というのは、到底これは国際社会から受け入れられないものだと思います。

 この目標は、いろいろ調べてみますと、産業界が会長を務める総合資源エネルギー調査会がまとめた長期エネルギー需給見通しの最大導入をベースにして、生産の調整や省エネで削減できる産業界の実現可能な数値に、それにプラス太陽光発電一%分を加えたものだ。いわば、産業界に言われて、そのとおりの削減目標になっているにすぎない。こうしたコストの公平性に固執した中期目標では、先進国としてさんざん出してきたわけですから、まさに言われてきた歴史的責任を果たせないばかりか、途上国への指導性も発揮できない。国際的な合意の障害ともなる目標というのは、世界の笑い物として早急に見直しが迫られると思います。

 京都議定書の議長国として日本がリーダーシップを果たすと言うんだったらば、やはり九〇年基準ということでこれを堅持しながら、それ以外の基準年の国々を、むしろ九〇年比で目標を立てようじゃないかと説得する側に立つべきだと私は思います。

 もう一つだけ伺っておきますが、麻生総理は国民への負担ということを記者会見でも強調されましたが、総排出量に占める家庭関連というのは約二割にすぎません。中期目標決定に当たって、八割を占める産業、業務部門、とりわけ七割を占める大規模事業所などに対して、政府として、具体的な削減の努力、あるいはこういう目標でやってくれということを求めたんでしょうか。いかがですか。

鎌形政府参考人 まず、今回の目標設定に当たりましては、中期目標検討委員会におきましてモデル分析を行いまして、各界からのヒアリングを行いながら、御指摘の産業部門、それから業務、家庭、運輸の各分野ごとに新エネルギーや省エネルギーなどさまざまな対策技術の導入量を積み上げて削減量を見込んで、それをベースとして設定しているということでございます。産業部門におきましては、鉄鋼、化学などのエネルギー多消費産業を中心とした各業種での取り組みというものを削減量に見込んでいるところでございます。

 なお、目標の決定に当たりまして、総理御自身も、地球温暖化問題に関する懇談会に産業界を初めとする各界の代表を招いて意見を聞くとか、あるいは、決定の直前にも産業界の方をお呼びになりまして、温暖化対策の重要性を訴えた上で判断しているというところでございます。

笠井委員 そのお呼びになったのは結構なんですが、今、分析と言われました。今、モデルの中でいえば、一%ふやしましたけれども、マイナス一四%、九〇年比七%というこのモデル、これに基づいて最終判断したと思うんですが、ここに、産業はその際には二〇〇五年比マイナス一〇%、九〇年比一五%、業務部門でいうとマイナス二一とかプラス一四と書いてあります。

 では、呼んだ際にこういう数字も示して、これは最低限やるんですねとか、ちゃんと確認をとったんですか。

鎌形政府参考人 今回の中期目標の決定に至るプロセスにおきましては、今御指摘のありましたような数字を産業界のみならず国民全体にお示しした上で、さまざまな御意見を伺って総理が御判断されたということでございます。

笠井委員 だから、この数字に基づいて、裏づけになるんだから、最低これはやってくださいね、やりますよというふうなことをやったんですかと聞いているんです。端的にお願いします。

鎌形政府参考人 このような数字を示して御意見をお聞きする中で、総理が産業界の方々に地球温暖化問題の重要性を訴えかけ、そしてそうした上で判断したというものでございます。

河野委員長 質問に的確に答えてください。

鎌形政府参考人 総理が直接お会いしたところには私もおりませんでしたので、つまびらかに承知しておりません。

笠井委員 確認していないということでしょう。ちょっとそれはちゃんと確かめてください。

河野委員長 内閣官房におかれましては、御確認の上、理事会にただいまの質問の御返事をいただきたいと思います。

笠井委員 欧州でいきますと、私も調査へ行きましたが、政府が経済界と交渉して協定を結んだりしている。経済界自身も、イギリスのCBIとか、積極的に行動する動きがあるわけですが、日本では財界が後ろ向きで、それに引きずられていると言わざるを得ません。

 最後に、大臣、十二月のコペンハーゲンでのCOP15に向けて、一体日本がリーダーシップを発揮できるのか。もう期限まで半年を切ったわけですけれども、今後どんな見通しを持っておられるか。国際的な交渉の中で、今回の中期目標についても、交渉事ですから、場合によっては今後見直す、変える、変わるという可能性があるのか。今後の見通しと、この目標についても変わる可能性があるのかどうか、この二点、お答えいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 先ほどから御議論が続いておりますけれども、私自身は、今回の総理が表明されました中期目標、これはかなり野心的なもので、達成するのはなかなか厳しいものである、そういうふうに思っておりまして、そういう意味では、国民の皆さんの御理解と御協力もいただきながら、みんなで協力して達成しなければならないと思っております。

 御質問からちょっとずれるかもしれませんけれども、ヨーロッパは二〇〇五年比でいきますと一三%、それからアメリカが一四%、そして我が国が一五%ということでありまして、数字的にも決してこれは甘いといいますか楽なものではありませんけれども、国際的に見ても欧米の中期目標を上回るものでございます。

 今お話ありました十二月のコペンハーゲンでの会議における我が国の役割といいますかリーダーシップについてでありますけれども、ここで一番大切なのは、もう委員が十分御承知のとおり、今回は主要排出国であります米国や中国やインド、こういう国々が責任ある形で参加をする。そして、公平で実効性のある、そういう国際的枠組みづくりが不可欠なわけでございます。そのためには、米国を含む先進国全体がやはり率先して削減を約束すべきであるとともに、特に排出量の大きい主要途上国も削減のために行動をとる、そういう義務を負うという必要があると考えております。

 もとより、こうした新しい枠組みづくりは各国の利害が複雑に絡んでいるものでございまして、年末までに合意をまとめるということは決して容易なことではない、そういうふうに思いますけれども、しかし、今現在生きている私たちとしては、やはり未来の世代、子や孫の世代、そういう世代のためにも、この地球を守って引き継いでいくということが一番大切なことであり、そういう責任が重い、そういうふうに思っております。

 我が国といたしましては、そういうような認識を踏まえまして、今回総理が発表されました中期目標を受けて、第十五回の締約国会議におきまして、ただいま申し上げましたような次期枠組みの構築に合意できるように、国際的な場面におきましてリーダーシップをとりながら、各国の理解をいただきながらやっていきたい、そういうふうに思っております。

笠井委員 もう一つ質問したんですが。

 まず目標を出しましたが、これは交渉事ですので、その中でもう絶対これは変わらないんだということなのか、それとも、その中で場合によってはいろいろ検討して見直す、変わる可能性はあるのかどうか、一言だけそれをお願いします。

中曽根国務大臣 我が国といたしましては、これはまだ表明したばかりでありますし、先ほど委員からも各国のいろいろな反応といいますか、そういうものもおありということ、そういうことも承知しておりますが、これから年末に向けて各国の理解を得るべく努力をしていきたい、そういうふうに思っております。

 交渉事でありますから、最終的にどういうふうにまとまるかわかりませんが、今私申し上げましたように、大切なことは、これからの未来のために我々はしっかりとした結論を出していく、そういうことだと思います。

笠井委員 交渉事ですが、場合によっては、だから、もう不動のものであるということじゃないんだということは、それはそうなんですね。だって、目指すのは国際合意ですから。それを一言。

中曽根国務大臣 我が国といたしましては、一五%、これを達成するということを表明しているわけですから、それに向かって努力もし、国際交渉の場でそういう点をまた主張していくわけであります。

 ただ、これは各国と協議をすることでありますから、最終的にどういうふうにまとまるかということは、今の時点で私が予断することはできないところです。

笠井委員 京都議定書の議長国としては、私、情けない話かなと思いますが、急速な温暖化に対する被害の増大を直視すれば、国際的に通用しない九〇年比八%削減というのを抜本的に見直して、自然エネルギーへの転換などをやりながら、先進国日本の歴史的責任としての九〇年比三〇%削減を掲げて対策に取り組むことを強く求めて、質問を終わります。

河野委員長 次に、辻元清美君。

辻元委員 社民党の辻元清美です。

 私は、本日、国連安保理事会の常任理事国と日韓の七カ国が、北朝鮮の二回目の核実験に対する追加制裁決議案で最終合意をしたことにつきまして、質問をしたいと思います。

 まず、この最終合意の中身を外務大臣にお伺いしたいと思います。

伊藤副大臣 まだ交渉中でありますので、最終合意ということでは必ずしもないと思いますけれども、北朝鮮の核実験に関する安保理決議案は、現在、関係国間で協議が大詰めを迎えております。できる限り早期に採択すべく、すべての関係国がこの努力を続けているということだと思います。

 そういうわけでございまして、現時点で交渉の結果を一〇〇%予断するということは差し控えさせていただきますけれども、現在安保理で議論されている決議案には、決議第一七一八号で定められた北朝鮮に対する制裁措置の強化に加えて、武器禁輸、貨物検査、金融面での措置などについて強い内容が含まれていると認識しております。

辻元委員 私は、すべての七カ国が、対立せずにといいますか、中国も含めまして、一つの方向に結束してまとまっていくことが大事であると考えておりましたので、七カ国での共同作業がさらに大詰めを迎えるということで、日本もしっかり結束を保っていくということをぜひ認識していただきたい、そして臨んでいただきたいと思います。

 しかし、国内を見ますと、先回の本委員会でも指摘したんですけれども、日本も核保有をした方がいいんじゃないかというような議論を始めるべきだとか、それから敵基地攻撃能力を持つべきではないかというような声も出ております。勇ましいことを言うのは簡単なんですけれども、国際交渉の場で日本がどういう役割を果たしていくかということに対して、そのような勇ましい議論というのは決してプラスにならないというふうに私は考えております。

 その視点から、敵基地攻撃能力の議論が自民党の国防部会の小委員会でも提言として出されて、年末の防衛計画の大綱に盛り込む提言をするというようなお話を聞きました。

 そこで、きょうは防衛副大臣にお越しいただいておりますけれども、敵基地攻撃能力とよく言われますが、具体的に、どういう装備を持って、どういうことをすることをいうのか、まずお示しいただきたいと思います。

北村副大臣 お答えいたします。

 御指摘いただいた提言につきましては、自民党国防部会防衛政策小委員会におきまして議論を積み重ねてこられ、内容が取りまとめられたとお聞きしております。

 敵基地攻撃以外にもさまざまな指摘事項が含まれていると承知をいたしておりますけれども、防衛省といたしましては、かかる提言を真摯に研究、検討させていただきながら、防衛省としての考え方をしっかりとつくり上げるということで、省内の検討作業をより充実、加速化してまいりたい、そう考えているところでございます。

河野委員長 副大臣、質問にまずお答えをいただきたいと思います。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 具体的な話でございますので、参考人の方から答弁させていただきます。

 一般論でございますけれども、敵基地攻撃のためにどういった装備品が必要かということでございますけれども、まず、敵の基地の正確な位置を把握するということが重要でございます。さらには、そういった地上のレーダーサイトというものもございますので、それを無力化するための作業も必要でございます。

 それから、例えばミサイルで攻撃をするということになりますと、精密に誘導されたミサイルによって攻撃をするというようなことが必要でございますので、こういったさまざまな装備を組み合わせた一連のオペレーションというものが必要になるというふうに考えております。

辻元委員 専門誌など、私も自分なりにいろいろ勉強をいたしました。そうしますと、相手国が出す地上からのレーダー波の感知をして、それを妨害して、まず防空システムを破壊しなければいけない。これを破壊したとしても、またミサイルが上がってくるかもしれないので、それを避けて飛ぶステルスとかを準備しなければいけない。さらに、その上で敵基地攻撃できるミサイルなどを持たなければいけない。よく言われるのは、巡航ミサイル・トマホークと言われます。

 しかし、これは、湾岸戦争のときも、イラクのスカッドミサイルに対して数多くのトマホークを撃ったわけなんですけれども、移動式のミサイルのために成果が上がっていません。実際はそういうことなんですね。

 さらに、これは北朝鮮対象にという議論が出てきているわけですけれども、ノドンが二百基、スカッドが六百基と言われていて、移動式の発射台であるとも言われております。そうしますと、イラクのときもそうだったように、幾らトマホークを購入して対応しようとしても、二百基、三百基あって、こっちから移動してあっちに移動してということで、机上の空論ではないかと。実際に議論はされているけれども、中身を検討していくと実現不可能なようなことを言っているんじゃないか。

 さらに、衛星を使った情報収集をしないと、どこからどうなるかわからない。これには膨大な予算と時間がかかると石破元防衛大臣も指摘をしております。さらに、周辺国も含めまして、過剰に反応する国々も出てくるだろう。そうすると軍拡競争にもつながっていくんじゃないか。

 さらには、条件としてどのような条件が整えば撃ってくることが明白な事態と言えるのか、それをどういう経路で判断していくのかなど、勇ましいことはおっしゃるんですけれども、その中身を見ていきますと、副大臣、これ、真摯に受けとめて全体的に検討なさるとおっしゃっているわけですが、浜田大臣は、そういうものを、そういうものというのはこの敵基地攻撃能力の保有について。私は、防衛のプロの皆さんであるならば、今の日本の現状で、そしてイラク戦争などの経験から見まして、物理的に、これを防衛省が取り上げて前向きに検討作業を始めるということにはならないと思うんですね。後で外務大臣にもお聞きしますけれども、そういうことに時間を費やすよりも、膨大な時間とお金もかかります、そして今までの、アメリカなど時々やっているようですけれども、そんなに成果が上がっておりません。そうなると、やはり外交努力というのが大事になってくると思います。

 そこで防衛副大臣にお聞きしたいんですが、浜田防衛大臣は、そういうものを直接年内の防衛計画大綱や中期防衛力整備計画で考えることになるかというのは極めて疑問だと、この間記者会見でおっしゃっております。そしてさらに、単なる議論なら国民の感情をあおるだけになると。自衛隊の幹部の方も、日本が攻撃能力を持てば、北朝鮮以上に大規模な軍備増強を進め不透明さに批判が集まる中国の軍拡を正当化するだけだと自衛隊幹部がおっしゃっているというような報道も、私は承知しているんです。

 自民党は自民党で、一つの党ですから、自由におやりになっているんだと思いますけれども、防衛省として、いわゆる敵基地攻撃能力を持つための検討を省が進んでしていく、または検討を開始しなければならないと考えていらっしゃるのか、今はそんなことは考えていないのか、まず防衛副大臣にお聞きします。

北村副大臣 お答えします。

 いわゆる敵基地攻撃と憲法との関係について、政府は従来から、法理上の問題としては、他に手段がないと認められるものに限り、敵の誘導弾等の基地をたたくことも憲法が認める自衛の範囲に含まれるという考え方を示してきておりますけれども、防衛省は、従来、現実の自衛隊の装備体系のあり方としては、敵基地攻撃を目的とした装備体系の保有は考えていない旨を述べてきております。

 その主な理由は、我が国に対して誘導弾等により攻撃が行われるような場合に、他に全く支援を受ける手だてがないような事態は現実の問題としては起こりがたいということ、また、我が国は、日米安保体制のもと、日米間の適切な役割分担により我が国の平和と安全を期するということとしておりますから、御指摘の、いわゆる敵基地攻撃をめぐる最近の議論にはさまざまなものがあるということは承知いたしております。

 敵基地攻撃を目的とする装備体系を我が国が保有するべきか否か、この問題につきましては、御承知のとおり、政治的判断が大変重要でございます、必要でありますから、国会等の場におきましてさらに幅広い議論が行われる、このことが重要であると認識をしております。

辻元委員 今の御答弁を理解するに、国会で自由に議論するのは結構だが防衛省としては今までどおりの方針と。今までどおりの方針といいますのは、これは、四年前の大臣、大野大臣の答弁も持っておりますけれども、「敵基地攻撃能力を持つ意思は、意図は全くない、」というように承知をいたしますので、確認をします。

 といいますのは、私、合理的に考えても、膨大なお金と時間を使ってやって、感情論とか、それから、そのときの激情に走って外交や安全保障を考えるべきではないと思いますので、今の御答弁、防衛省しっかり受けとめていただきたいと思います。

 さて、そうなってきますと外交が大事になってきます。もう一点防衛省に確認した上で外務大臣に外交努力をお伺いしたいんですが、今度、貨物検査を可能とするための国内法整備という話が出てきております。これも、先ほど、貨物検査ということが出ておりますけれども、今の国連のいわゆる制裁決議案の内容を見ますと、公海上の場合は、旗国、要するに、まずその国の同意を求める、同意が条件であるということになっております。そうすると、公海上での船舶検査については日本の場合は周辺事態認定の折のみということになっておりますけれども、防衛省として、こういう新法を検討するお考えがあるのか。

 といいますのは、どこの国も非常に船舶検査は慎重です。キューバ危機のときもそうですけれども、船舶検査、いわゆる臨検と言われていますけれども、そこから小競り合いになって大きな戦火を開いてしまうという可能性があるので、どこの国も非常に慎重に取り扱っております。

 そういう中で、今回、先ほどの御答弁では強化されたということなんですが、防衛省としてはいかがですか、防衛省がリーダーシップをとって、そういう新法を準備しようと考えているんですか。いかがですか。副大臣。

北村副大臣 お答えさせていただきます。

 現時点では、北朝鮮の核実験に関する安保理決議案は採択に至っておりませんから、決議を受けたその対応については具体的にお答えすることは差し控えさせていただきたいというふうに存じます。

 いずれにいたしましても、新たな決議が採択されれば、我が国としてしっかりと対応していくことが重要でございますし、防衛省としても、関係省庁と緊密に協力をしながら、政府全体としての対応に遺漏がないように努めてまいる、そういう姿勢であります。

辻元委員 最後に外務大臣に、今申し上げましたように、勇ましいことを言うのは自由ですけれども、外交はやはり冷静に、そして、こういうときであればあるほどちょっと重心を落としてリードしていくということが非常に大事だと思っております。

 そういう中で、外務大臣として、六者協議に向けて、やはりこれを、何とかこの枠をもう一回復活させたいというのは国際的にも大きな望みになっておると思いますので、日本としてどういうリーダーシップをとっていくのか、それと、中国に対しての働きかけが大事になってくると思いますので、中国に対してどのような働きかけをなさるおつもりなのかということをお聞きしたいと思います。

中曽根国務大臣 日ごろから我が国の安全保障のあり方、防衛のあり方、万が一のときのこと等を議論し研究していくということは大変重要なことであると思います。

 先ほど勇ましい考えというような表現がございましたけれども、敵基地攻撃能力保有の問題にいたしましても、一つの考え方として議論をするということは、私は、これは問題があるわけじゃなくて、重要なことだと思っております。

 現実に照らした議論を行っていくということが大事でありますが、同時に、今委員がおっしゃいましたように、外交努力によりまして、そのような事態が起こらないように、また、平和で安定した社会になるように、率先して努力していくということも大事なのはもう言うまでもございません。

 我が国といたしましては、一つは、国連の安保理の場などを通じまして、ことしから安保理の非常任理事国になりましたけれども、そのような場を通じまして、国際平和の問題に率先して取り組んでいくということ、あるいは、核の問題につきましては、世界で唯一の原爆による被爆国としてのそういう悲惨な経験をもとに、各国に平和を訴えていく、また、核の軍縮、不拡散を進めていく、推進していくということなど、その一環として、過日、私、核軍縮のための十一の指標というスピーチをさせていただきましたけれども、そのようなことで努力をしていくということも大事だと思っております。また同時に、日米安全保障条約があるわけでありますから、これをベースといたしまして、我が国周辺の、この地域における我が国の安全保障というものをしっかりとしたものにしていくということも大事だと思います。

 また、お尋ねのありました六者協議でございますが、これは、残念ながら、現在開催されておりません。六者協議の場では核、ミサイルの問題とともに拉致の問題も扱うということになっておりますが、今回のような北朝鮮のあのような行為によりまして、この再開というものがかなり私は難しくなってきたのではないかなと思っておりますが、この決議の中に、六者協議を再開して、六者協議でまたこの協議を行うということ、これはもう前からそのようなことに明記されておりますので、この決議がまとまりましたら、北朝鮮に対しまして、従来も行っておりますけれども、関係各国が協力して六者協議の再開に努力し、この場において、この地域の、特に北朝鮮の問題を話し合っていくということが大事だと思います。

 中国に対しましては、六者協議の関係では議長国ということもありますし、中国の指導力にも期待をしているところでございます。今回の国連の決議案をまとめるに当たりましては、中国も、北朝鮮の今回のような行動に対しては大変これはあってはならないことだとはっきりと明言をされており、また、決議の取りまとめに対しましても積極的に安保理の常任理事国として参画をしておるわけでありまして、そういう意味で、今後も、連携をとりながらこの問題に当たっていきたいと思っています。

辻元委員 終わります。

河野委員長 次に、小野次郎君。

小野(次)委員 自由民主党の議員の場合は朝一番に当たることが多いんですけれども、きょうは、委員長また理事の議員の方々、そしてまた同僚委員の御配慮をいただきまして、ちょっと私の時間の調整をしていただきましたことをお礼申し上げたいと思います。きょうはトリをとらせていただくということで、頑張ってまいりたいと思います。

 きょうは、大臣、拉致の問題についてお伺いしたいと思っています。

 私は、拉致には、この問題の解決に向けて自分なりにある種のこだわりを持ってきました。それは一つには、自分が公務員、警察にいたときに、鹿児島の県警本部長をやりました。そのときに、平成十年だったと思いますけれども、歴代、県警本部長に着任すると必ず現場にまず行くところというのがありまして、それは、吹上浜という、鹿児島のあれは日置郡というところだったと思いますが、増元るみ子さんと市川修一さんが拉致されたというところにまず行きました。しかしそこは、白砂青松、季節によってはウミガメが卵を産みに来る、大変きれいな海岸でございます。正直申し上げて、その時点では、その後の展開というのは知る由もない時期でございましたから、本当にこういうところで北朝鮮によって拉致というのがあったんだろうかと、私もそういう思いがあったということを、その後の展開の中で、自分自身も取り組みについてじくじたるものを感じているところがございました。

 その後、総理秘書官になって四年半務めている間に、皆さんも御存じのとおりの大きな展開が初めて見られたわけでございます。

 この北朝鮮による拉致の問題というのは、私の知るところでは、昭和六十三年に、当時の梶山国家公安委員長だと思いますが、国会で公式に北朝鮮による拉致ということを表明しましたけれども、実はその後も、政治のレベルにおいては、北朝鮮に対して真正面から向かい合うということが、少なくとも見えるものとしてはない状態が続いておりました。

 それが、平成十四年の九月十七日、小泉総理大臣による第一回の訪朝によりまして大きな展開が出たというふうに思っています。そういった問題について、キーパーソン、やはり田中均さんという方が大変大きな役割を果たしたと思っています。しかし、その方ももう政府を去られた。小泉総理も今期限りで引退されると言っておられる。

 その後、安倍内閣、福田内閣、麻生内閣、続いていますけれども、自民党の議員が言うのもおかしいですが、来る総選挙も間近になっていて、場合によっては、麻生内閣にとってもその後続けられるかどうかもその選挙の結果にかかっている、これが現実だと思います。

 そうなってきたときに、私自身はまさにかいま見た程度のものでございますけれども、だれか、きちんと、その時期時期における展開について、もう一度疑問やあるいは確認しておく点について協議をする、意見交換をするということがこの後のために大事なんじゃないかと思うわけでございます。

 相手が北朝鮮ですから、外交はいずれのものでも大変難しいですけれども、特に難しい課題でもあると思うんです。彼らが出してくるシグナル、彼らが行う行動について、それが何の意図で、どういう経緯でそうなっているのかというのを、私たちは、ガラス張りならわかりますけれども、端々で、あるいは時期がたってから後に振り返って判断しながら、さまざまなシナリオを考えて、そのシナリオを絞り込んでいき、さらには政治の意思によってそこに突破口を見出していくという、そういう手法しかないんだろうと思います。ある意味でいえば、難解な事件を解いていく探偵みたいな目で見ていかなきゃいけないというふうに私は思っています。

 その意味で、まず押さえておきたいと思いますのは、日本と北朝鮮の二国間の交渉で、この拉致の問題についての二国間交渉というのは最近進んでいないように思いますけれども、最近の状況についてまずお伺いしたいと思います。

伊藤副大臣 御質問の二国間の交渉状況でございますが、北朝鮮との間では、昨年六月及び八月に実務者協議が行われました。

 八月の日朝実務者協議においては、北朝鮮側による拉致問題に関する調査の目的や具体的な態様等につき、突っ込んだやりとりが行われたわけでございまして、その結果として、北朝鮮が、権限が与えられた調査委員会を立ち上げ、調査を開始すると同時に、我が方としても、人的往来及び航空チャーター便の規制解除を行うことを表明いたしました。

 しかしながら、昨年九月四日の夜、北朝鮮側より、新政権が実務者協議の合意事項にどう対応するかを見きわめるまで調査開始は見合わせるという旨の連絡がありました。

 麻生内閣においても、さまざまな場で明らかにしているとおり、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して日朝国交正常化を図るとの基本方針には変更はありません。また、昨年八月の日朝実務者協議の合意内容を実施する方針にも変わりはありません。このような考え方については、麻生内閣発足後、北京の大使館ルートを通じて北朝鮮側に対しても伝達し、権限が与えられた調査委員会の早期立ち上げ及び全面的な調査の開始を求めてきております。

 また、四月十日に対北朝鮮措置の延長を官房長官から発表した際にも、改めて、我が国の考えに変わりがないことを明らかにした上で、北朝鮮に対し具体的な行動をとることを求めております。

 いずれにいたしましても、我が国としては、北朝鮮による調査のやり直しが早期に開始され、拉致被害者の方々の一刻も早い帰国につながるような成果が早期に得られるよう、引き続き北朝鮮側に強く求めていく考えでございます。

小野(次)委員 きょう外務省の方にお願いしたいのは、質問が結構多いので、簡潔にお答えいただければと思います。

 要するに、私の聞き取ったところでは、こっちから発信しているのは、何回か副大臣がおっしゃられましたけれども、この一年間は、ボールのやりとりというか、本当にテーブルに着いての協議は進んでいないということじゃないですか。私はそう理解しています。

 これは一般新聞が書いていることですから、決してそれは事実ではないと私も思いますけれども、外務大臣が就任されたとき、日本でも一番大きい某新聞はこういうふうに書いているんです。「外交経験の少ない中曽根弘文を外相に起用する案を心配した森元首相に、麻生は「自分でカバーするから大丈夫です」と答えた」と。これは一般紙に載っているんですね。

 そういう、書かれてはならないことを書かれているわけですけれども、何か、この拉致の問題に関して言えば、一年間ほとんど日朝間の交流というのが聞こえてこないというのは、非常に私自身も不本意に感じているところでございます。外交の麻生ということで売り出された内閣でございますから、ぜひその具体的な進捗を図っていただきたいというのは国民すべての願いだろうと思うわけでございます。

 振り返ってみて、昭和六十三年に日本側が公式に拉致だと言ってからかなりの時間がたって、平成十四年、二〇〇二年に第一回の訪朝があって、その際に、金正日総書記から、拉致を認め、陳謝があった、大きな転換が見られたわけでございます。私は、ひいき目なしに見ても、その後の展開とそのときの展開とを比べてみれば、別に私は向こうの側に立つということは難しいですけれども、向こうの側からするならば、大きな転換の部分は、二〇〇二年に、ある意味で彼らは踏み出したんだろうと思います。それと比べると、その後の展開というのが、特に二〇〇四年以降が停滞しているような気がしてならないわけでございます。

 大臣に伺いますけれども、こういう外交的な大きな展開、これは北朝鮮側の方に見られたわけですけれども、第一回訪朝の際に拉致の事実を認めた北朝鮮側の思惑というのはどこにあったんだろうか。これだけ長い歴史があって、一切ないと言ったものを認めるに至った北朝鮮側の思惑というのはどういうところにあったと外務大臣としては御認識になっていますか。

中曽根国務大臣 今委員がお話しになりましたように、二〇〇二年に行われました第一回日朝首脳会談におきましては、北朝鮮の金正日国防委員長は、長い間否定をしておりました日本人の拉致を初めて認めて謝罪したわけでございます。その上で、関係者の処罰及び再発防止を約束いたしますと同時に、家族の面会、それから帰国への便宜を保証する、そういう約束をしたわけであります。

 我が国がそういう北朝鮮側の意図というものを推しはかって云々するのは適当でありませんし、あちらの意図はどういうものか、これもわかるものではございませんが、ただ、我が国の主権、それから国民の生命と安全にかかわる拉致、そういう国家的犯罪を犯しました北朝鮮がこの事実を認めるということは当然である、そういうふうに考えています。

 しかし、いまだ安否不明の十二名の拉致被害者の方々につきましては、まだ納得ができる説明がなされておりません。政府といたしましては、引き続きまして、北朝鮮に対して、昨年八月の日朝実務者協議で約束しました調査のやり直しを早期に開始するように、そして被害者の一日も早い帰国が実現するように、強く求めていく考えでございます。

小野(次)委員 この九月十七日の際には、今大臣もお話しになりましたけれども、先方、金正日委員長から、遺憾でおわびしたい、処罰した、それから、二度と起きないようにするということと、家族への面会、帰国の便宜を保証したいということをこちらの首脳の前で述べ、また、これは十日後ですけれども、九月中だったと思いますが、在日の朝鮮総連からも謝罪のコメントが出ているんですね。

 そういう意味で、私は、この際の北朝鮮側の踏み出した決断というのは、かなり、国としてというか政府としてというのか、思い切った決断をして、こういう形で、一国の首脳に対して一国の首脳が、国と言うかどうかは別として、首脳がおわびしたいということまで言ったというのは、やはり重く考えるべきだろうと私は思うわけでございます。

 それで、話があっちこっちしますが、この第一回の訪朝の前に、日朝間の、首脳が乗り込むまでの段取り、アレンジ、それなりに成果が期待できてアレンジしたと思うんですが、この進捗状況というのは、米国政府とは連携して行ったものなんでしょうか。そこをちょっとお伺いしたいと思います。

伊藤副大臣 ある意味で、連携して行ったものだと思います。

 日米間では、北朝鮮問題については、首脳レベルを初めさまざまなレベルで情報交換、意見交換をしております。第一回の日朝首脳会談の開催に際しても、日米間で緊密な情報、意見交換を行いました。

 例えば、訪朝前の平成十四年九月十二日には、小泉総理がブッシュ大統領と首脳会談を行い、翌十三日には、川口外務大臣がパウエル国務長官と会談を行いました。

 こういう日米の首脳会談あるいは外相会談で、まず首脳会談で、小泉総理から、日朝首脳会談に対する大統領の支持に謝意を表明し、日朝首脳会談は米韓ともよく調整して臨みたい、日朝間には拉致問題や日米が共有する安全保障上の懸念等の諸懸案が存在しますが、金正日国防委員長に対し、これらの懸念を提起して、誠意ある対応をとるように強く働きかける旨述べたわけであります。

 これに対してブッシュ大統領からは、総理の訪朝を心から歓迎する、訪朝までにいろいろな米側の情報も提供したい、米側は大量破壊兵器、ミサイル、通常兵力の問題に大きな関心を持っており、これは日米韓にとって懸念材料と考える、米国としても北朝鮮との対話の道は閉ざしていないと述べたと承知しております。

 こうした米側との情報、意見交換を踏まえて、日朝首脳会談においては、小泉総理から金正日委員長に対し、米側も北朝鮮との対話をする用意があり、ブッシュ大統領は、金委員長が、ミサイル拡散及び核開発疑惑等の安全保障上の問題について、国際社会の責任ある一員として行動することが重要であると考えている旨のブッシュ大統領のメッセージを伝達したところでございます。

 さらに、第一回日朝首脳会談の直後、平成十四年九月十九日、小泉総理はブッシュ大統領と電話会談を行い、ブッシュ大統領から、日朝首脳会談について、総理はよい進展を遂げられた、小泉総理の努力をこれからも支持するし、これからも緊密に連絡を取り合っていきたいとの評価があったところでございます。

小野(次)委員 私が聞いているのは、八月三十日に、訪朝すると記者会見で公表した後のことじゃないんですよ。それは、行くと公表した後にアメリカの大統領に連絡するのは当たり前だし、今、副大臣のおっしゃられた内容というのは、逆に言えば、くぎを刺されたというふうに私は受け取りますけれどもね。この問題だけで先行してはいけないよと言われたんじゃないかというふうにも受け取られるんじゃないかと思います。

 その証左ですけれども、この首脳会談の平壌宣言の中では、「双方は、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。」「双方は、核問題及びミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国間の対話を促進し、」云々と認めたのが十七日で、十月の十六日に米国国務省は、今月の三日、つまり十月の三日に平壌にケリー次官補が行って証拠を突きつけたところ、相手は、姜錫柱第一次官は、核開発をしていますということを認めたというのをわざわざ発表しているんですね。

 つまり、十七日に日朝がこの宣言をつくったその翌月、二週間後には、ケリー次官補が行ってそれを認めたと言っていて、それで、直ちにその後、国務省は、この旨を、ボルトンとケリーを日本と韓国に派遣することを明らかにしたというふうに発表しているんです。

 このボルトンさんというのは、実は直前に日本にいて、八月二十七日、二十八日は日本にいたんですね。そこのアメリカンクラブで講演したのがインターネットにも出てきます。そのときの担当は、あの人は大量破壊兵器担当でしたけれども、とうとうと述べて帰られたのは、イランとイラクの大量破壊兵器の話をして帰っているんですね。それで、八月三十日に電撃的な訪朝の発表があったんです。

 私がお伺いしたのは、田中均さんが、恐らく前年からだと思いますけれども、三十回以上お会いしたということを彼と田原総一朗さんのインタビューでつくった本に書いてありますけれども、長期間にわたるその状況について、米側と連携して行った行為ですかということをお伺いしたところです。もう一度、お答えいただきたいと思います。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 米側との北朝鮮問題に関します意見交換、情報交換、さらにはどういった対応をするかといったようなことについての協議等の中身につきましては、これはまさに外交上のやりとりでございますし、相手国政府との関係もございますので、この場での具体的な御説明を差し控えたいと思いますが、いずれにしましても、あの当時、外交的に米国との間でいろいろな協議を緊密にやっておったということは、これは事実でございます。

小野(次)委員 きょうは、私の方で自分の疑問点を進めさせていただきますので、続けて申し上げます。

 このころから、拉致、核、ミサイルという三点についての解決を図るというふうに我が国も言うようになって、私自身も、答弁を書くとき、もう決まったように三点を書いていましたけれども、これは今、私、数年たって振り返ってみれば、訪朝前にそういう思いがあったというよりは、訪朝後に、核とミサイルを抜きにして拉致だけ先行するということは、日朝間のバイでそこだけを進めるということについては、なかなか難しくなったということのようにも私は受け取っております。

 小泉訪朝は二度目がありました。二〇〇四年の二回目の訪朝、このときには、一回目をセットした同じルートじゃなかったんじゃないですか、アレンジしたのは。その点についてはお答えできるでしょうか。

伊藤副大臣 小野委員の方が詳しく御存じだと思いますけれども、これまで日朝間ではさまざまなやりとりが行われておりまして、過去の日朝首脳会談の準備を含め、北朝鮮との外交上のやりとりは、日本の外務省と北朝鮮の外務省が窓口となって行われております。

 また、過去二回の日朝首脳会談の実現に至る過程においていろいろなやりとりがあるわけでございますが、首脳会談の準備を含め、北朝鮮との外交上のやりとりは日朝の外務省が窓口となっていますけれども、外務省が直接関与していないやりとりについては、外務省としてはお答えする立場にありません。

小野(次)委員 実は、第一回の訪朝の前にも、これもインターネットでも探せることなんですけれども、二〇〇二年の三月ですけれども、訪朝の六カ月前になりますが、坂口厚生労働大臣と北朝鮮の金保健相、これがシンガポールで会談する、その際には拉致の問題についても議論するという予定だということまで一たん公表されたんですけれども、報道によれば、先方からドタキャンになって成立しなかったというのもありました。

 このドタキャンの理由というのは諸説あって、たびたび副大臣がおっしゃっているように、正規のルートのことはお答えできるけれども、そうでないことについてはお答えできないということが、逆に言うと、正規でないものについては容認しないという姿勢になったのかなというふうに私は思っているわけでございますけれども、そういうさまざまなルートを使ってこれはやはり進めていくべきなんだろう。

 この一回目と二回目でルートが違うという、二回目は、私の認識では、日本に住んでおられる朝鮮の関係の方がそれをアレンジしていただいたというふうに理解していますけれども、これも結局、正面の外交ルートというものがうまく機能しなくなったからほかのチャネルでアレンジしたということであって、いいとか悪いとかでなくて、そういう多様なアプローチというのが必要だということについてはどうお考えでしょうか。

伊藤副大臣 外交交渉をする上において、また日本の国益を守る上において、多様な、いろいろなやり方を考えている、委員の御指摘のとおりだと思います。

小野(次)委員 予定した問いの一に行きますけれども、施政方針演説、所信表明演説、毎年出ていて、そのときは関心を持ちますけれども、その後、余り読み返されることはないのかもしれませんが、不思議な点がございます。

 平成十八年の一月、小泉さんの最後の施政方針演説では、「平壌宣言を踏まえ、拉致、核、ミサイルの問題を包括的に解決するため、」云々となっていたのが、平成十九年一月、安倍総理の施政方針演説では、「拉致問題の解決なくして日朝国交正常化はあり得ません。拉致問題に対する国際社会の理解は進み、国際的な圧力が高まっています。」そういう書き方。

 ところが、平成二十年の一月、福田総理になると、「拉致被害者の一刻も早い帰国を実現し、不幸な過去を清算し日朝国交正常化を図るべく、」云々となっていて、ここに「不幸な過去を清算し」というのが、小泉内閣、安倍内閣と違って、福田内閣のときには入っているんですね。

 これは、福田総理が就任されてからの文章で初めて出てくるんですが、それは外務省としても当然、閣議決定した文章ですから、御認識はあると思いますが、小泉、安倍のころと福田のときで、この部分はどういう意図があって変更された表現なんでしょうか。

伊藤副大臣 御指摘のように、歴代総理の施政方針演説等については、そのときの状況に応じて表現が異なってきているわけであります。

 今御指摘の、いわゆる不幸な過去の清算が明記されるかどうかは、そのときの状況に応じて変わりますけれども、これが明記されたとしても、それが直ちに我が国の基本方針の変更を意味するものではございません。

 実際、小泉総理あるいは安倍総理も、施政方針演説では不幸な過去への言及はなかったわけでございますが、国会の答弁において不幸な過去の清算に言及しており、この点について政府の立場が一貫しているということであろうと思います。

小野(次)委員 僕が申し上げているのは、北朝鮮というのは、さっきの坂口さんの話もそうですけれども、御本人にも聞いてきましたけれども、在外被爆者について、北朝鮮に戻られた方にも配慮をしなきゃいけないということを報道してもらったら、そういう、コンタクトをとりたいというのが向こうから来たというふうに記憶しているというふうにおっしゃっていました。

 この施政方針演説というのは多分その日のうちか翌日にはあちらも読むわけであって、副大臣がおっしゃったみたいに、我が国の方針が変わったかどうかを聞いているんじゃなくて、そういうシグナルは何か意味があったんでしょうかということを申し上げているんですけれども、それについては御認識ありますか。

伊藤副大臣 私としては、そのときの状況によって表現が異なるという点に尽きるんだろうと思います。

小野(次)委員 この年の六月に日朝実務者協議で、北朝鮮側は、拉致問題は解決済みとの立場を改め、拉致問題に関する調査のやり直しなどを表明しているんですね。

 次に、福田改造内閣だったと思いますが、そのときに中山恭子さんを拉致問題担当大臣ということで、そういう見出しがついた大臣を初めてつくったわけでございます。

 その直後に、二〇〇八年八月の日朝実務者協議においては全面的な調査の具体的態様等について合意しているわけです。このときには中山大臣が、直接テーブルには着かなかったけれども、かなり陣頭指揮で取り組まれたというふうに私は事務方から聞きました。調査対象は政府認定の被害者だけではなくてその他行方不明者などにも及ぶ、権限が与えられた委員会をつくって、生存者が発見された場合には、その後の段取りについても協議、合意しましょうということを北朝鮮側が言ってきたという話になっています。

 ところが、九月一日に福田総理が退陣を表明されたら、九月四日に北朝鮮から、今触れた合意事項を履行するという立場なんだけれども、政権交代があったから、新政権がどういう対応をするか見きわめるまで調査は見合わせますというふうに一方的に言ってきた。

 それに対して日本政府はどういう対応をとったかというと、麻生内閣が発足すると同時に、このせっかくついていた拉致担当大臣というのをまた官房長官の兼務にしてしまった。これが、これは私の勝手な思惑かもしれませんけれども、北朝鮮からすれば、どういう対応をするか見きわめた対応が大臣なくなっちゃったというのが、向こうにしてみれば、そういう理解をしているんじゃないかなと思いますけれども、こういう認識についてはどうお考えでしょうか。

中曽根国務大臣 委員が御指摘のとおりに、中山総理補佐官は、二〇〇八年の八月に拉致問題担当大臣に任命をされまして、拉致問題の解決及び拉致被害者の支援等に尽力をされました後、引き続いて拉致問題の解決に向け総理大臣を支えておられるわけでございます。

 中山補佐官が拉致問題担当大臣に起用された際の意図につきましては、私自身任命権者ではございません、私が申し上げることは適切ではございません。また、個別の人事について北朝鮮がどのように受けとめるか、あるいは受けとめたかということについてもお答えする立場にはございません。

 いずれにいたしましても、拉致問題担当大臣やそれから拉致問題を担当する総理補佐官というものを設けて、そして政府が一体となってこの問題の解決に向けて最大限の努力を継続するということは、私は、北朝鮮に対しましても我が国のそういう強い意思というものを示すということにつながっているもの、そういうふうに考えています。

小野(次)委員 私も、きょう、別にだれが悪かった、よかったとか、どうだということを言っているんじゃなくて、私たちにとって北朝鮮が見えにくいのと同じように、北朝鮮の方も私たちのこういった表に見えることでシグナルだというふうに理解しながら進んできているのがこの数年の動きじゃないかなということをリマインドしているつもりでございます。

 ちょっと時間がなくなりましたので、横田めぐみさんの遺骨だと言われるものの鑑定のことについて質問させていただきます。

 たまたまコピーを持ってきました。これは、二〇〇四年十二月九日、十二月八日に官房長官から発表した、それを報道しているんですけれども、新聞社名を挙げては失礼ですから言いませんが、大新聞が、「最新の鑑定ウソ暴く」というのが一社、それからもう一社は「「調査虚偽」北に抗議」となっているんですね。

 では、この報道が行き過ぎた報道だったのかというと、そうではなくて、結構、このときは、いつもどっちかといえば外にもっと強く言ってほしいと思うのに十分に強く反応されないのが多い外務省が、あるいは内閣が、えらい強い調子で言っています。

 北朝鮮から、先般、これが横田めぐみさんの遺骨であるとして渡されました骨は、横田めぐみさんのものではないという結論が出ました、先方の調査が真実でなかったと断じざるを得ない、極めて遺憾でありますと言って、今度、外務省の発表の方でも、十二月八日、この鑑定結果を公表するとともに、直ちに北京の我が国大使館を通じて北朝鮮側に対する厳重な抗議を行った。北朝鮮がこのとき何と答えたかというと、鑑定結果は受け入れられないとし、鑑定書の提示を求めつつ、真相の究明が行われることを望むなどとしているが、今般の鑑定結果は全く客観的かつ科学的な検証によるものであって、北朝鮮側の主張には何の合理的根拠もないと言わざるを得ないということをわざわざ外務省が発表しているんですね。

 私は、これは記憶にあるのは、何かちょっと、もっと客観的な表明をすべきじゃないのかということを警察当局の方にリマインドした記憶があるんです。

 警察の方で残っている記録はどういうふうに言っているかというと、十二月十日、二日後に、当時の……

河野委員長 小野次郎君、質疑時間は終了しております。短くお願いします。

小野(次)委員 はい。ありがとうございます。

 村田国務大臣は、帝京大学と科警研に委託した、十二月七日、新潟県警は、帝京大学より、横田めぐみさんの遺骨とされる骨片五個のうち四個から同一のDNAが、また他の一個から別のDNAが検出されたが、いずれのDNAも横田めぐみさんのDNAと異なっているとの鑑定の状況を聴取したと言っているんですね。

 つまり、たくさんある骨片の中で何個か鑑定できたけれども、鑑定できたものの中には横田めぐみさんと同じものはなかったというふうに警察は言っているのに対して、このときの外務省の発表というのは、抗議したとか、合理的根拠も向こうの主張にはないとまで言ってしまっているんだけれども、それについては、ちょっと、それを受けてこの報道がそうなっていると私は理解していますが、それについて適切な広報の仕方であったのか、あるいは先方に対する対応の仕方であったのか、この点についてはどのように認識されていますか。

伊藤副大臣 この鑑定結果は、我が国の刑事訴訟法等の法令に基づく厳格な手続で、国内最高水準の研究機関等によって行われたものであり、十分客観性を有するものだとまず認識しております。

 外務省もこのことに強く抗議して、また、北朝鮮側は引き続き、納得ができるきちんとした説明を行う必要があり、昨年の八月の日朝実務者協議で約束した調査のやり直しが早期に開始され、生存者の帰国につながるように、そういう成果が得られるように、北朝鮮側に今後ともまた強く求めていくということでございます。

小野(次)委員 きょう申し上げたかったのは、多様なアプローチを常にクールな感覚で考えなきゃいけないんじゃないかということと、こちらがわかりにくいのと同じように、我々の広報、公表内容なり国会の場でのやりとりなどが先方にとっては大切なシグナルになっているんじゃないかということをこの数年間感じていたということを申し上げさせていただきます。

 最後に、今、話題はもう核やミサイルの方が大きな問題だということになっていますけれども、この拉致の問題というのは、国家として、自国民の生命や安全に関することですが、どんなことになっても、仮に政権がかわったとしても最大の責任として続けていく必要があるだろうと私は思います。

 その意味で、私の山梨県にも、警察の方の鑑定では、山本美保さんという失踪事件ですけれども、漂着した遺体がそうではないかというふうに言われているけれども、やはり家族とか関係者からは納得できないという声が上がっている。そういう方たちが全国にまだ四百数十名もおられるわけですから、私は、いろいろ……

河野委員長 質疑時間は終了しております。手短に終わってください。

小野(次)委員 愛国心とかそういう教育が必要だといいますが、一番大事なことは、国家が一人一人の国民を、どんなことがあっても、時代が変わっても最後まで大切に扱うということだと思いますので、政府におかれては、今後とも全力を挙げてこの拉致問題の解決のために、何か一本調子じゃなくていろいろな角度から取り組んでいただくようにお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

     ――――◇―――――

河野委員長 次に、第百七十回国会提出、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とウズベキスタン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件、今国会提出、投資の促進、保護及び自由化に関する日本国とペルー共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件、社会保障に関する日本国とスペインとの間の協定の締結について承認を求めるの件及び社会保障に関する日本国とイタリア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 政府から順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣中曽根弘文君。

    ―――――――――――――

 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とウズベキスタン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 投資の促進、保護及び自由化に関する日本国とペルー共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 社会保障に関する日本国とスペインとの間の協定の締結について承認を求めるの件

 社会保障に関する日本国とイタリア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

中曽根国務大臣 ただいま議題となりました投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とウズベキスタン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十年二月に、ウズベキスタンとの間でこの協定の交渉を開始いたしました。鋭意交渉を行った結果、平成二十年八月十五日に、タシケントにおいて、我が方平岡駐ウズベキスタン大使と先方ノロフ外務大臣との間でこの協定の署名が行われた次第であります。

 この協定は、投資の許可段階における内国民待遇及び最恵国待遇の原則供与、並びに技術移転要求を初めとする投資を阻害する効果を有する特定措置の履行要求の原則禁止を規定するとともに、収用等の措置がとられた場合の補償措置、支払い等の自由な移転、投資紛争の解決のための手続等について定めております。

 この協定の締結は、我が国とウズベキスタン共和国との間の投資の増大及び経済関係のさらなる緊密化に大いに資するものと期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、投資の促進、保護及び自由化に関する日本国とペルー共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十年五月に、ペルーとの間でこの協定の交渉を開始いたしました。鋭意交渉を行った結果、平成二十年十一月二十一日にリマにおいて、我が方麻生内閣総理大臣と先方ガルシア大統領との間でこの協定の署名が行われた次第であります。

 この協定は、投資の許可段階における内国民待遇及び最恵国待遇の原則供与、並びに現地調達要求を初めとする投資を阻害する効果を有する特定措置の履行要求の原則禁止を規定するとともに、収用等の措置がとられた場合の補償措置、支払い等の自由な移転、投資紛争の解決のための手続等を定めております。

 この協定の締結は、我が国とペルーとの間の投資の増大及び経済関係のさらなる緊密化に大いに資するものと期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、社会保障に関する日本国とスペインとの間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十年一月に、スペインとの間でこの協定の交渉を開始いたしました。鋭意交渉を行った結果、平成二十年十一月十二日に東京において、私とロサーダ外交長官との間でこの協定の署名が行われた次第であります。

 この協定は、日・スペイン間で、年金制度について、一方の締約国のみの制度に加入するように適用調整を行うこと及び保険期間の通算による年金の受給権を確立すること等を定めております。

 この協定の締結により、年金制度への二重加入等の問題の解決が図られ、保険料負担が軽減されること等により、両国間の人的交流が円滑化され、ひいては経済交流を含む両国間の関係がより一層緊密化されることが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 最後に、社会保障に関する日本国とイタリア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十年五月に、イタリアとの間でこの協定の交渉を開始いたしました。鋭意交渉を行った結果、平成二十一年二月六日にローマにおいて、我が方安藤駐イタリア大使と先方クラクシ外務政務次官との間でこの協定の署名が行われた次第であります。

 この協定は、日・イタリア間で、年金制度及び雇用保険制度について、一方の締約国のみの制度に加入するように適用調整を行うこと等を定めております。

 この協定の締結により、年金制度及び雇用保険制度への二重加入の問題の解決が図られ、保険料負担が軽減されること等により、両国間の人的交流が円滑化され、ひいては経済交流を含む両国間の関係がより一層緊密化されることが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 以上四件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

河野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十七日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会いたします。

 なお、質疑者におかれましては、質問通告を早く行うよう、また、質疑時間内に質問が終了するようお願いいたします。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十八分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.