衆議院

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第18号 平成21年6月24日(水曜日)

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平成二十一年六月二十四日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 河野 太郎君

   理事 小野寺五典君 理事 松島みどり君

   理事 松浪健四郎君 理事 三原 朝彦君

   理事 山中あき子君 理事 近藤 昭一君

   理事 武正 公一君 理事 伊藤  渉君

      逢沢 一郎君    泉原 保二君

      猪口 邦子君    大塚  拓君

      木原  稔君    近藤三津枝君

      柴山 昌彦君    鈴木 馨祐君

      田中 良生君    中山 泰秀君

      西村 康稔君    葉梨 康弘君

      原田 義昭君    藤田 幹雄君

      盛山 正仁君    安井潤一郎君

      山内 康一君    山口 泰明君

      池田 元久君    石川 知裕君

      篠原  孝君    鉢呂 吉雄君

      松木 謙公君    松原  仁君

      丸谷 佳織君    笠井  亮君

      日森 文尋君

    …………………………………

   外務大臣         中曽根弘文君

   外務大臣政務官      柴山 昌彦君

   外務大臣政務官      西村 康稔君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 堀江 良一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 知原 信良君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 宮川眞喜雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 北野  充君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 石井 正文君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 小原 雅博君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 渡邉 正人君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 山本 栄二君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   佐野 利男君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    谷崎 泰明君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 古谷 一之君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           上田 隆之君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      西山 英彦君

   外務委員会専門員     清野 裕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月二十四日

 辞任         補欠選任

  小野 次郎君     安井潤一郎君

  篠田 陽介君     藤田 幹雄君

  中山 泰秀君     大塚  拓君

  西村 康稔君     泉原 保二君

  御法川信英君     近藤三津枝君

  篠原  孝君     石川 知裕君

  田中眞紀子君     松木 謙公君

  辻元 清美君     日森 文尋君

同日

 辞任         補欠選任

  泉原 保二君     西村 康稔君

  大塚  拓君     中山 泰秀君

  近藤三津枝君     葉梨 康弘君

  藤田 幹雄君     篠田 陽介君

  安井潤一郎君     盛山 正仁君

  石川 知裕君     篠原  孝君

  松木 謙公君     田中眞紀子君

  日森 文尋君     辻元 清美君

同日

 辞任         補欠選任

  葉梨 康弘君     御法川信英君

  盛山 正仁君     田中 良生君

同日

 辞任         補欠選任

  田中 良生君     小野 次郎君

    ―――――――――――――

六月二十二日

 中国及び中国周辺地域における人権弾圧問題等の解決に向けて、日本国政府からの働きかけを強化することに関する請願(西村真悟君紹介)(第三四四五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とブルネイ・ダルサラーム国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とカザフスタン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第六号)


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     ――――◇―――――

河野委員長 これより会議を開きます。

 この際、御報告いたします。

 去る十九日の理事懇談会において、「中国及び香港に対する捜査共助要請の状況」について、警察庁から報告を聴取いたしましたので、委員各位の参考に供するため、お手元に資料を配付いたしております。

 この資料につきましては、本日の委員会議録に参照掲載いたします。

    ―――――――――――――

    〔資料は本号末尾に掲載〕

     ――――◇―――――

河野委員長 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とブルネイ・ダルサラーム国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とカザフスタン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官堀江良一君、大臣官房審議官知原信良君、大臣官房審議官宮川眞喜雄君、大臣官房審議官北野充君、大臣官房参事官石井正文君、大臣官房参事官小原雅博君、大臣官房参事官渡邉正人君、大臣官房参事官山本栄二君、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長佐野利男君、欧州局長谷崎泰明君、財務省大臣官房審議官古谷一之君、経済産業省大臣官房審議官上田隆之君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長西山英彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河野委員長 これより質疑に入りますが、本日から質問者のお手元に、質疑終了時間五分前、質疑終了に加えて、質疑終了時間一分前のお知らせをいたします。質疑終了前一分のお知らせがお手元に届きましたら最後の質問に入っていただきたいと思います。前回同様、申し合わせにより、質疑時間終了の紙がお手元に届いた後の質問については答弁者の答弁を求めることはいたしませんので、よろしくお願い申し上げます。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近藤昭一君。

近藤(昭)委員 おはようございます。民主党の近藤昭一でございます。

 租税協定、租税条約について質問させていただきますが、その前に一つ大臣にお伺いをしたいと思います。

 御承知のとおり、昨日は沖縄全戦没者追悼式がございました。沖縄戦の多くの犠牲者のみたまを慰めるとともに世界の恒久平和を誓う、そういう式典であります。これは沖縄県の主催でございましたが、報道によりますと、糸満市の摩文仁の平和祈念公園、ここに約四千五百人の参列者が集まって、そして二十万余の犠牲者に祈りをささげ、非戦の誓いをした、こういうことであります。

 ところで、大臣に、沖縄をめぐる問題を考える上に、民意というものは何か、民意というものをどういうふうに受けとめていくかという観点からお伺いをしたいというふうに思います。

 ことしの四月の十日の外務委員会でありました。社民党の辻元清美議員のグアム移転協定に関連し県議会の声に耳を傾けるようにとの質問に対し、麻生総理は、「私どもは行政府を預かっておる立場でありますので、県を代表されるのは県知事というのが基本だと思っております。」と答弁されたわけであります。

 御承知のとおり、沖縄県議会、名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する意見書及び同内容の決議、これは二本が県議会では採択をされているわけであります。これらは、内閣総理大臣、外務大臣、防衛大臣、沖縄及び北方対策担当大臣に向けてのものでありました。

 また、こういう数値が出ております。沖縄タイムスと朝日新聞社が、ことしの五月の九日、十日と、両日実施した電話による世論調査、この調査の内容は、米軍再編によって沖縄の負担がどの程度減ると思うかという質問に対し、余り減らない、全く減らないが合わせて六四%、また、米軍普天間基地飛行場の県内移設についても反対が六八%で賛成の一八%を大きく上回っている、こういうわけであります。

 さらには、ことし三月には関東を中心とする三十七の市民団体が構成する辺野古への基地建設を許さない実行委員会から十四万九千九百筆に及ぶ国会への請願署名が出されているということであります。

 これはまさしく、普天間基地代替施設の辺野古地区への建設反対を唱える民意のあらわれと私は考えるわけであります。沖縄県知事の声のみに耳を傾けることではなくて、民意に目を向ける、耳を傾けるということできっちりと沖縄の問題には取り組んでいただきたいと思うわけでありますが、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 昨日二十三日は慰霊の日でございましたけれども、さきの大戦におきまして沖縄は国内最大の地上戦を経験し、そして、一般の住民を含む多くの方々、約二十万人とも言われておりますけれども、が亡くなられるなど、本当に多くの方が犠牲になりまして、筆舌に尽くしがたい苦難を経験された、そういうふうに承知をいたしております。私も、一月の三十一日でしたか、沖縄を訪問いたしまして、その際、摩文仁の戦没者墓苑そして平和の礎を訪問いたしまして、沖縄の歴史や平和への思いを新たにしたところでございます。

 現在の我が国を取り巻く状況、安全保障環境、委員が十分御承知のとおり、北朝鮮の核実験やそれからミサイル実験に見られますように、大変厳しいものがございます。こういうような中で、在沖縄米軍は抑止力の維持に大変重要な役割を果たしておるところでございますが、同時に、在日米軍の専用施設また区域が沖縄に集中しているということによりまして、沖縄の方々には長い間多大な御負担をおかけしているということも、私ども、十分認識をしており、一刻も早くこのような状況を改善するという努力をしているところでもございます。

 こういう認識のもと、政府といたしましては、今申し上げましたように沖縄の負担を早く軽減するには、やはりロードマップで決められたように、普天間飛行場の移設、返還、それから在沖縄海兵隊のグアム移転や、さらには嘉手納飛行場以南の施設・区域の土地の返還などの米軍再編を実施することが最も近道である、そういうふうに考えています。

 今後とも、在日米軍再編を着実に進めていくに当たりまして、沖縄を初めとする地元の方々の声によく耳を傾けつつ、地元の理解と協力が得られるように取り組んでいく考えでございます。

近藤(昭)委員 大臣、ありがとうございます。

 この委員会でも、移転協定にかかわる委員会が開催された時点のみだけではなく、別の時間のときの委員会においても、とにかく国際協調のもとで平和をつくっていくんだ、こういうことを訴えさせていただいてまいりました。もちろん、日米関係は重要であります。しかしながら、国際協調の中でしっかりと平和の世界を構築していくということ、そして、やはり長年、沖縄に大きな負担、沖縄に特に集中して負担がかかっているわけでありますし、多くの方がここで命を失われた。私は、もちろん、いわゆる平和の構築ということでは、日本の問題であり、アジアの問題であり、国際社会の問題であると思います。しかしながら、沖縄への負担が余りにも大きいということであります。ぜひ沖縄県民の皆さんの声にしっかりと耳を傾けていただきたいというふうに思うわけであります。

 また、私たち民主党では、普天間の基地県外移設を考えるべきだ、こういう観点でおりますし、私自身は、一刻も早く普天間の基地は閉鎖をすべきだ、こういうふうに考えております。この委員会でも写真を提示させていただきましてお話をさせていただきました。本当に危険な場所にある基地だというふうに考えるわけであります。

 それでは、まず、ブルネイとの租税協定について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 日本・ブルネイ租税協定において、両国の税務当局間の相互協議や情報交換には具体的にはどのような意義があるものなのか、このことについてお伺いをしたいと思います。

堀江政府参考人 お答え申し上げます。

 この協定、日本とブルネイとの租税協定でありますけれども、これまでに我が国が諸外国との間で締結してきました租税協定と同様に、経済的交流、人的交流等に伴って発生する国際的な二重課税を回避することを目的として、先生御指摘のような仕組みも含めまして規定をしております。我が国とブルネイとの間で課税権を調整するということを目的としているものでございます。

 ブルネイという国は、先生御承知のように、石油、天然ガスなどのエネルギー資源に大変恵まれた国であります。我が国の資源外交上重要な位置を占めております。この協定の締結によりまして、我が国とブルネイとの間の二重課税回避の制度が整備されるとともに、投資所得に対する源泉地国課税の軽減等が図られ、両国間の資本また人的資源等の交流が一層促進されることが期待されます。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 二重課税等々を防いでいく、そういう中で、我が国の民間企業等が投資をしていくことを促進していく、そういう中で、通商貿易国家としての我が国の発展を促していく、こういうことだと思います。

 そういう中で、今御答弁の中にも少し含まれていたのかもしれませんが、この間、財務当局内で、ブルネイとの租税に関しては、何らかの課題といいましょうか、議論すべきところがあったのか。あったとすれば、この協定締結を機に今後どのように変わっていくのか、より具体的にお話をいただければと思います。

古谷政府参考人 お答えをいたします。

 現在、ブルネイとの間で、課税当局間で具体的に懸案となるような事項があるというふうには私ども伺っていないところではございますけれども、今回の協定で、相互協議規定ですとか、情報交換規定ということが盛り込まれました。今回の協定のこれらの規定は、いわゆるOECD基準と申しまして、情報交換等に関します国際標準に適合した協定でございまして、こういった規定を活用させていただきまして、今後、租税当局間で協力をしながら、租税回避の防止等にも対応できるものということで評価をさせていただいております。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 この間も幾つか租税協定、条約について審議をさせていただいておりますけれども、昨年でしたでしょうか、この委員会でも私も質問させていただいた。たしか、フランス、イギリスが百カ国以上、中国は八十七カ国、韓国は六十五カ国と租税条約を締結している、日本はまだまだそういう意味では少ない、後塵を拝しているのではないかということを触れさせていただきましたが、これで日本は幾つになったのか。あるいは、今の、ちょっと触れさせていただきましたフランス、イギリス、あるいは中国、韓国、こちらの方の、他の国との租税条約の締結のぐあいはいかがか、お教えいただけると幸いであります。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国がこれまでに締結をいたしました租税条約は、四十五条約で、対象は五十六カ国でございます。

 条約の本数と対象の国の数が異なりますのは、国が継承される場合、ソ連の継承などがそのケースでございますけれども、一つの条約で複数の国について適用されるということがあり得ることによるものでございます。

 今回、ブルネイ、カザフスタンについてお諮りをしておりますけれども、これによりまして四十六本目、四十七本目ということに、御承認いただきまして締結をするということになりましたら、そのような状況になります。

 以上でございます。

近藤(昭)委員 海外の状況はいかがでありましょうか。質問通告をしていないのでありますが、おわかりになれば、フランス、イギリス、中国あるいは韓国、いかがでありましょうか。わかればで結構であります。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 主要な先進国等につきまして、我が国として把握している限りで各国の租税条約の締結状況について御報告をさせていただければと思いますが、米国につきましては五十三でございます。それから、英国が百九、フランスが百四、オーストラリアが四十四、中国が八十七、イタリアが八十四、ロシアが五十一、そのように承知をしております。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 今お答えいただいた国、大まかに言えば、日本の結んでいる条約の数としては随分と少ないんだと思います。それは、さまざまな背景といいましょうか、相手国との関係、また、それぞれ、国のシステムの違い等があると思うんですが、やはり租税条約、二重課税等々を防ぎ、日本の経済投資、経済活動の発展を促していくという観点からすると、もっともっとしっかりと協議をし、進めていくべきだと思うんです。

 そこで、大臣に御決意をお聞かせいただきたいと思います。租税条約に関し、今後、どのような思い、姿勢で取り組んでいかれるのか、お聞かせをいただければと思います。

中曽根国務大臣 先ほども政府参考人から御答弁申し上げましたけれども、この租税条約というのは、国境を越える経済活動に対する課税権を調整するということによりまして二重課税を回避するということ、それから、租税当局間の国際協力を推進して脱税を防止することなど、そういうことを主な目的としておりまして、今お話ありましたように、今、これまで四十五条約、五十六カ国との間で締結していますが、特に、近年では、国際的な投資交流を促進する、そういう観点から、投資所得に対する源泉地国課税を減免するとともに、それに伴います濫用防止措置を盛り込むことを基本方針としているところでございます。

 また、交渉相手国につきましては、委員からもお話ありました背景とか、いろいろあるとおっしゃいましたけれども、経済関係を中心といたします我が国との二国間の関係、また、相手国の税制、租税条約締結状況など、既に我が国が租税条約を締結済みの国につきましては、限度税率の高い条約かどうか、また、実際の課税上の問題が生じているか否か、そういった面も踏まえまして総合的に判断して決定している、そういうところでございます。

近藤(昭)委員 大臣、ありがとうございます。

 大臣にも御説明をいただきましたように、さまざまな背景、手続がある中ではありますが、ぜひ、しっかりと推進をしていっていただきたいというふうに思うわけであります。

 ところで、政府は、今月十二日、情報交換を主な目的とした租税条約を英領のバミューダ諸島と締結するための交渉を始める、こういう発表をされたわけであります。

 今回のバミューダとの交渉開始は、四月のG20首脳会合がタックスヘイブンの監視強化で合意したことによる、我が国のタックスヘイブンへの監視の強化の一環ともとれるわけでありますが、同じく租税回避地と言われる英領ケイマン諸島や香港島との租税条約交渉への弾みとなることが私は期待されておると思います。

 今回、バミューダ諸島との交渉に至った背景やねらいについて、具体的な説明をお聞かせいただければというふうに考えます。

柴山大臣政務官 お答えいたします。

 御指摘のとおり、租税に関する透明性の確保等に協力的でない国、地域を通じた国際的な脱税及び租税回避行為の防止に向けては、OECD、G8、そして今御指摘のあったG20といった多数国間の枠組みにおける取り組みが行われていますけれども、こうした国や地域との間で直接国際基準によった情報交換を実施する枠組みを構築することによりまして、国際的な情報交換ネットワークの整備及び拡充を図ることが重要だと考えております。

 このような観点から、我が国政府といたしましても、今お話があったように、本年六月にバミューダ政府を対象といたしまして、租税に関する情報交換を主体とした協定の締結に向けた交渉を開始したところです。このような協定を我が国がバミューダとの間で締結することは、現下の国際経済金融情勢のもとでタックスヘイブン問題への関心が高まっている中で、OECD等の場を通じた国際的な取り組みと相まって、我が国としても重要な役割を果たすことにつながると考えております。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 そうしますと、そういう中で六月の十七日に第一回の交渉が開かれた。交渉に当たっての政府の方針はどういうものか。今お伺いした中にもそれは含まれているのかもしれませんが、もう一度お聞かせをいただければと思います。

谷崎政府参考人 ただいま政務官の方から一般的な考え方について御答弁を申し上げたとおりでございますけれども、六月の十七日、十八日に行われましたバミューダとの交渉に当たりましては、我が国としましては、国際的な脱税及び租税回避行為の防止に向けて、国際基準にのっとった情報交換を行うことが可能になる、そのような内容の条約になるよう、また、できる限り早期に締結するという方針で交渉に臨んでおります。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 それでは、次の質問に移らせていただきたいというふうに思います。カザフスタンとの租税条約に関してであります。

 我が国は、カザフスタンに対して手厚い援助や多額の投資を行っている。油田の開発にも参加をしているというわけであります。それにもかかわらず、これまでカザフスタンの豊富な資源である石油や天然ガスの我が国への供給はない。これはどういう理由からなのか。

 また、本租税条約の締結は、カザフスタンから我が国への石油や天然ガス等、エネルギー資源の供給につながるのか。つまり、その条約の締結によって、我が国のエネルギーの安全保障問題でどういうふうな意義を持っていくのか、お聞かせをいただきたいと思います。

谷崎政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御質問がございましたカザフスタンでございますけれども、御指摘のとおり、カザフスタンは、石油、天然ガスなどのエネルギー資源、またウラン等の鉱物資源に非常に恵まれた資源大国でございます。我が国の資源外交上も極めて重要な位置を占めております。

 石油資源の方でございますけれども、我が国企業がカシャガン油田の開発に参画しております。二〇一二年末をめどに同油田から商業生産を開始するという計画でおります。

 他方、パイプライン、鉄道輸送等の輸送のコストという点からすると、直接日本に輸出するということは経済上の採算の問題もごさいますので、むしろ日本は代替原油を輸入するということで同等の原油が入ってくる、こういう計画をつくっておるところでございます。

 もう一点、ウラン等の方でございますけれども、これは我が国企業がカザフスタンの関連企業との間で、ウラン鉱山開発、また、燃料加工分野における協力等に関する契約覚書を交わしております。これを通じまして、中長期的には我が国のウラン総輸入量の約三割から四割をカザフスタンから輸入する、こういうことになるというふうに我々としては計画を立てておるわけでございます。

 その上でカザフスタンとの関係が、今回の租税条約との関係でございますけれども、基本的にこの租税条約を締結することによりまして、二重課税の回避、また投資所得に対する源泉地国課税の軽減というような法的枠組みができるわけでございます。この法的枠組みを通じまして、両国間の資本、人的資源の交流が一層促進するということを通じまして、我が国のエネルギー資源の安定確保ということに多大な影響を与える重要な意義を有するものというふうに考えております。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 租税条約を結んでいく中でさまざまな課題を克服する、経済交流がスムーズにいくというようなことだと思います。そういう観点から私も、よりスムーズに多くの国と結んでいくべきだ、こういうことをお話をさせていただいたわけであります。ただ、そういう中で、きちっと日本のエネルギーあるいはその他の部分での安全保障を高めていく上で少し懸念がございますので、お伺いをさせていただきたいと思うわけであります。

 つまり、旧ソ連の一員であったカザフスタンも、政治経済のあり方ではロシアに似ている側面があるというふうに思います。資源価格の高騰に伴って民間経済活動に対する国家の関与を強めつつある、過度の国家介入によって我が国企業の活動が阻害される可能性も全くゼロではないというふうに危惧、懸念をするわけであります。

 この点について、過度の国家介入を抑制するために、政府はカザフスタンとの間でどのような協議や取り組みを行っておられるのか、特にこの観点からお話をいただければと思います。

谷崎政府参考人 お答えいたします。

 カザフスタンとの経済関係の緊密化という点に関しましては御指摘のとおりでございます。同国における我が国の企業の自由な経済活動ということが保障されるということは極めて重要というふうに考えております。

 カザフスタンとの関係でございますけれども、カザフスタンは、自由民主主義、市場経済といった、我が国が基本的に持っておる基本的価値を共有するということで二国間外交を展開してきているわけでございますけれども、そういった外交が、このような日本企業の個々具体的な経済活動にも反映されるということを期待しておるわけです。

 他方、具体的に政府としてそうしたことを担保するというか、具体的に働きかけていくということが必要だというふうに考えております。その方法としましては、二国間の経済条約等に基づいた対話のメカニズムというのを活用していく、それから、本日御審議いただいているこの租税条約というのも、その枠組みをつくるという意味においては極めて重要だというふうに考えております。

 そのほか、両国間の経済委員会がございます。この経済委員会でいろいろな問題を解決していく、働きかけていくという点で、先ほど委員の方から御指摘のあった点も含めて、必要ならば相手側にこの枠組みを使って働きかけていくということを考えております。

 さらに、投資協定というのが将来の問題として非常に重要だというふうに考えておりますので、この投資協定の締結も視野に入れて、対カザフスタンとの関係を進めていきたいというふうに考えております。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 ぜひ、投資をする、進出する企業が安心して、しっかりと安全を確保されて進められるように、御努力をお願いしたいと思います。

 それでは、今回、この二つの租税条約に続き、我が国は一月にクウェートとの租税条約に向けて基本合意をした、また、我が国は石油を多量に輸入している中東の幾つかの国とも交渉を始めた、こういう報道がありました。オイルマネーを呼び込むために、政府は、クウェート等々の中東諸国のうち、租税条約を締結した国の政府系ファンドについて、国債や社債、預金、貸付金の利子を非課税にする、こういう考えで、基本合意済みのクウェートあるいは交渉中の幾つかの国を適用の第一陣とする、こういう見通しの新聞報道がありました。これらの中東諸国との租税条約が締結されれば、オイルマネーを日本に呼び込み、対日投資促進の観点から意義がある、こういうふうに思うわけであります。

 政府は、こうした報道が事実かどうかを含めて、今後、中東諸国との租税条約、具体的にどのように進めていかれるのか、見通しを持っておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

知原政府参考人 お答えいたします。

 我が国の租税条約の多くは、国際的に標準的な租税条約や最近我が国が締結いたしました多くの租税条約の規定に沿って作成されておりまして、中東諸国との間の租税条約交渉においても、おおむねこれらを踏襲することを基本的方針として対応しているところでございます。

 本年一月に基本合意に至りましたクウェートとの租税条約につきましては、これまでの多くの租税条約と同様に、政府、中央銀行及び一定の政府関係機関等が受け取る利子につきまして、源泉地国免税とすることで合意しているところでございます。政府系ファンドにつきましてはさまざまな形態をとっているものと承知しておりまして、この政府系ファンドが、政府、中央銀行及び一定の政府関係機関等に該当することになりますと、その受け取る利子につきましては源泉地国免税ということが適用されることになると思います。

 以上であります。

近藤(昭)委員 ありがとうございました。

 しっかりと海外投資を受け入れていく、こういう体制もつくっていただきたいと思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

河野委員長 次に、木原稔君。

木原(稔)委員 自由民主党の木原稔でございます。

 きょうは、二本の租税条約について質問の時間をいただきましてありがとうございます。早速ですが、質問に移らせていただきます。

 ブルネイ、カザフスタン両国とも、現在、日本は非常に友好な関係にあると言えるというふうに私は感じております。特にブルネイは、ボルキア国王も何度も日本に来られておりますし、また、我が国の皇太子殿下も、ブルネイのビラ皇太子の結婚式のために、二〇〇四年でしたでしょうか、ブルネイを訪問したり、そういった交流があったわけであります。

 また、カザフスタンにおいては、最近カザフスタンを訪ねた日本人の方にお聞きをすると、新アスタナ国際空港におり立った瞬間から、その空港自体が非常に和のテーストがあって、町並みも非常に親しみがわくといいますか、日本的なにおいがするというような話も聞きます。

 なぜかというと、一昨年亡くなられた建築家の黒川紀章さんが、アスタナに遷都される前、アルマティからアスタナに移ったのが一九九八年でしたけれども、その際に、新首都アスタナ計画というカザフスタンの政府からの依頼を受けて、町づくり、建築全般を中心になってやっていく、そういう特命を受けた黒川紀章さんが、このアスタナ新国際空港もそうですし、約三十年にわたる長い町づくり計画を手がけられたということもあり、カザフスタン、特にアスタナの町というのは、日本人にとって何となくどこか懐かしいというか、非常に親しみやすいものなんだろうと思います。

 しかしながら、そういった親日的な国にもかかわらず、経済交流でいうと、どうしてもロシアだとか中国におくれをとっている。特にカザフスタンなどはそれが顕著であろうかと思います。ロシアはもう天然ガスのパイプラインができております。中国も今建設中だというようなことを聞いております。

 日本は、これまで非常に多額のODA等によって国際貢献を各国に行っております。これの目的というのは一概には言えませんが、日本の高性能な工業製品と、また発展途上国の豊富な資源、これをお互いに輸出入によって相互補完できる関係になるための下地づくりという側面があると言えるでしょう。

 実際に我が国がこれまでに締結した租税条約というものは、四十五条約、五十六カ国に適用されているわけであります。先ほど近藤委員からも言われましたが、実際にこれは多いか少ないかというと、私は、これまで日本のODAの規模であるとか、また、ちょっと趣旨は違いますけれども、国連の負担金の総額なんかを振り返ったときには、やはり比較的、日本の租税条約ネットワークは数的におくれをとっているのではないかなというふうに言わざるを得ません。我が国の対外直接投資額の八〇%以上はカバーしております。

 諸外国の話は先ほども出ましたけれども、中国、カナダ、ドイツ、イタリアはもう八十カ国以上ですね。フランス、イギリスは百カ国以上との間で締結をしている、そういう状態です。

 世界同時不況とはいえ、今後も国際社会を舞台にしてグローバル競争が激化していくということは予想ができます。日本の民間企業が国際競争力を維持し、また他国企業に対する優位性を確保するためには、租税条約による税制のインフラ整備は今後も欠かすことはできないわけであります。我が国の民間企業が国際的な事業展開を今後ともしっかりと足元を固めてできるように、政府としてはその事業展開の後押しを今後もしなければいけないと思っております。

 未締結の国や地域に対して、条約締結に向けてこれまで以上に努力が求められていると思いますが、改めて大臣に今後の政府の方針というものをお伺いいたします。

中曽根国務大臣 先ほどからお話にありますように、我が国が締結をいたしました租税条約の数というのは、たしか一九五五年の米国との租税条約を皮切りにいたしまして、これまでに四十五に上ります。そして、五十六カ国に適用されているわけでありますが、これは二重課税の排除などを通じまして投資交流の促進に大変役立っているところでございます。

 確かに、御指摘の各国と比較をいたしました場合には、租税条約の数そのものはそんなに多くありませんけれども、投資促進のためには、この租税条約の数のみならず、経済対話とか、またODAを通じました環境整備、それから投資協定や社会保障協定などの二国間の法的枠組みを含めました多様な政策手段を活用していくことが大変重要でございます。また、委員もお話ありましたように、民間企業の進出に当たりましても、それらの事業展開の後押しということも必要である、そういうふうに思っております。

 我が国は世界第二の経済大国とも言われておるわけでございまして、その我が国の、経済大国にふさわしい、民間企業を初めとする企業などの海外展開を後押しする、そういう観点からも、引き続いて積極的に租税条約の交渉を推進してまいりますとともに、先ほど申し上げました、政策手段を組み合わせました取り組みを推進していく、そういう考えでございます。

木原(稔)委員 大臣の御決意をお伺いしました。

 それでは、日本とカザフスタンの租税条約の中身について少しお伺いをいたします。

 第五条の2というところでございますが、その中で、恒久的施設、パーマネントエスタブリッシュメントの定義というものが書かれてあります。この定義の中身ですけれども、「天然資源の探査若しくは採取のために使用する設備若しくは構築物又は天然資源の探査若しくは採取の場所」という文言があります。この定義の中に「探査」という部分が何度も出てくるわけであります。

 探査という文言は、一般的に租税条約のモデルとされているOECDモデル租税条約の本則の恒久的施設の定義というのには含まれないわけであります。

 では、探査というのは何だろうかということを考えたときに、天然資源の採掘場または採石場を本格的に稼働する前、人員を本格的に導入する前に、ボーリング調査であったり、または電波による探知機によって、本当に資源が質的にまた量的に作業に値するかどうかという確認をする一時的な施設だというふうに考えられます。パーマネントでなくてテンポラリーな施設が探査のための施設だというふうに私は思うわけであります。

 これは、一カ所一カ所、短期間に何十カ所、ひょっとしたら何百カ所というような探査を行う場合も考えられるわけであって、日本の民間企業にとってみれば、その都度、探査の施設、テンポラリーな施設に対しても自国の源泉地国課税がかかるということであれば、その進出、または企業の取り組みに若干萎縮的な悪い影響を与えてしまうのではないかというふうに私は考えるわけであります。つまり、従来のOECDモデルの租税条約以上の租税の負担があるのではないか、そういうふうに民間の企業が考えても、これはおかしくないわけであります。

 日本とカザフスタンの租税条約の規定の中に探査の部分が追加をされたということは、これはどういう意味であるのか。また、この条件というのは、実際カザフスタンから求められた条件であったのかどうか、その辺を確認させていただきます。

谷崎政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御質問にありました租税条約の第五条でございます。第一項の方に一般的な恒久的施設の定義が書かれてございます。「「恒久的施設」とは、事業を行う一定の場所であって企業がその事業の全部又は一部を行っているものをいう。」その後で、第二項で具体的に恒久的施設は何かということで例示を掲げております。「特に、次のものを含む。」という中に、今御指摘のございました天然資源の探査の話が(g)項として入っております。

 この探査につきましては、特にカザフスタンが天然資源が重要な経済活動だということに着目した中で、交渉の過程で探査ということを言及したということでございます。他方、これはあくまで例示としてありまして、カザフスタンの先ほど申し上げた経済活動というところを特に取り出して例示として表に出したということでございます。したがいまして、ほかの国と比較しまして恒久的施設の定義そのものが広がっているということではございません。他の租税条約に比べて特に例示として明示したということでございます。

 他方、これが日本企業との関係で不利になるかならないかという点、もう一つ御質問がございました。

 恒久的施設にこれが含まれる場合であっても事業利得が生じないときには課税されないというふうに私どもは理解しておりますので、したがいまして、そのことが、探査ということを入れる上での日本側の基本的な考え方としても、そういう理解のもとで締結をしたわけでございます。

木原(稔)委員 ありがとうございました。あくまでも例示であるということ、その定義の解釈が広がっているわけではないということをお伺いしました。

 また、確かに、これは探査の段階では、仮に探査をした結果、そこにある天然資源が質的、量的にこれは採掘また採石する価値がないと判断したときには利益も出ないわけでありますから、利益が出なければ当然租税の対象にもならないということであり、この部分は、若干民間企業が心配するところではありますけれども、今の答弁をもって、特に定義の広がりを見せているわけではないというような理解をしたいと思います。

 次の質問でございますけれども、これは今回の二本の条約ともに言えることでありますけれども、条約の濫用を防止する規定というものが盛り込まれてありません。

 二〇〇四年に発効した日米の新租税条約を初め、その後改正されたイギリス、フランス、オーストラリア、各租税条約には、その条約の特典、つまり投資所得の配当であるとか利子であるとか、また使用料に対する源泉地国での課税の軽減等、こういった条約の特典が本来条約の適用を受けるべきではない第三者に濫用されないようにするための、条約の濫用を防止するための規定というものが必ずと言っていいほど盛り込まれておりました。

 条約の特典を得るのは、企業の努力によって所要の要件を満たし、また、その第三国の居住者による濫用の防止というものは租税の確保という面でも非常に重要な規定だと思います。企業のせっかくの努力が報われないようなことがあってはならないということもあり、この二本の条約に、条約の濫用を防止する規定が盛り込まれなかったという理由はあるのかどうか、その辺をお伺いいたします。

堀江政府参考人 条約濫用防止規定に関するお尋ねでございます。

 我が国は、投資交流の促進を目的として、投資所得に対する源泉地国免税を導入した場合には、これに伴って第三国居住者によります条約濫用のおそれが増大することが予想されるため、委員御指摘の条約濫用防止、この規定を導入することを基本としております。

 この点は、本日御審議いただいております二カ国との租税条約では、投資所得に対する源泉地国の免税は導入されておりません。源泉地国課税の上限を設定するにとどまっております。このことから、今回の条約につきましては、濫用防止規定を設けないことにしたものでございます。

木原(稔)委員 今回は上限を設定したということであるので、条約の濫用の防止、濫用するような対象にはならないだろうというようなことでありましたので、理解はしたいと思いますが、いろいろな悪いことをしようとする人たちは、手をかえ品をかえ、または条約のすき間を縫ってさまざまなことをやろうということが考えられますので、ぜひともしっかりと監視をして、正直者がばかを見ないような、そういうことになるようにぜひお願いをしたいと思います。

 また次の質問でございますけれども、報道によれば、日本の企業は海外子会社を通じて稼いだ所得を日本に戻さない傾向があると言われております。海外子会社がためた資金の残高というものは十七兆円にも上るというような報道もありました。

 実際に、海外所得が日本国内に還流しにくいという理由は、これまでの税制では、海外子会社が日本の親会社に所得を移せば、その分も親会社の国内外の全世界所得として課税の対象になるということにあったんだと思います。このまま所得が還流されない状況を放置していたとすれば、日本国内における親会社の研究開発または設備投資に十分な資金が回らずに、我が国の国際成長力の促進に悪影響を及ぼしかねない状況にあったわけであります。

 今回のブルネイ、カザフスタンの租税条約、また基本合意が終わっているクウェート、交渉中のサウジアラビア、あとはアラブ首長国連邦、こういった租税条約が締結されることによって、投資所得の配当、利子、使用料に対する源泉地国の租税軽減、こういった特典によって海外子会社が上げる利益というのはますますふえるということが予想されます。

 今年度の税制改正によって、親会社が子会社から受け取った所得に対して日本の国内では課税しない制度、いわゆる国外所得免除制度について財務省から説明をいただきます。

古谷政府参考人 お答えをいたします。

 御指摘がございましたように、政府の経済対策におきまして、企業が海外子会社で得た収益を国内に還流しやすいように税制面でも環境の整備をすべしということが決まりまして、既に可決していただいておりますけれども、二十一年度の税制改正におきまして、国際的な二重課税の調整、海外子会社の配当に対します二重課税の調整の仕組みを、それまでの間接外国税額控除という仕組みから、海外子会社の配当を益金に算入しないという形の調整に変えさせていただきました。

 これによりまして、海外子会社が得た所得につきまして、国内に還流するのか、あるいは現地に留保、再投資するのか、企業の判断に対しまして税制が中立的な効果を持てるようになりましたので、企業の方で、税制のことを考えないで、必要な時期に必要な金額だけ国内に海外の利益を戻せるようになったものと考えます。

 さらに、これまでは税額控除制度を適用するために複雑な書類の準備なんかを企業は必要といたしましたが、それが必要でなくなりますので、そういった制度の簡素化にも今回の仕組みは資するというふうに考えておりまして、こうした仕組みを通じて企業が海外で得た利益を国内に還流することによりまして、設備投資や研究開発、雇用などにつながっていくことを期待しているところでございます。

木原(稔)委員 ありがとうございます。

 二十一年度の税制の改正ですから、もう四月から適用されているということだと思います。あくまでも企業側の判断ではありますけれども、企業がメリットを感じる、そして海外で得た利益が国内に還流する、そういう仕組みができたということは、しばらく私も様子を見守っていきますけれども、これはもっと早期にやればよかった制度でもあったし、しかしながら、今年度からできたということは非常によかったのではないかな、そういう評価をさせていただきます。

 今回の租税条約もそうですけれども、発展途上国、特に、今、資源に乏しい日本がこれからそういった石油や天然ガス等の天然資源の豊富な国々と今後ともいろいろな形でおつき合いをさせていただく、交流をさせていただく上で、ODAというものが非常に大きなツールであったわけでありますが、今の日本の財政難等を考えると、どうしてもODAの部分もいろいろな面で配慮しなきゃいけない、バランスを考えていかなきゃいけないというようなことになるかと思います。

 お金の比較的かからない国際貢献として、青年海外協力隊であるとかシニア海外ボランティア等がこれまでも実績を重ねて、そして今も世界各国で頑張っておられるわけでありますけれども、参考として、ブルネイ及びカザフスタンにおける青年海外協力隊並びにシニア海外ボランティアの実績、あとは、現在どれぐらいの人数が活動しているのかということを御教示願います。

渡邉政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、国民参加型の顔の見える援助といたしまして、JICAが中心となってやっております青年海外協力隊、シニアボランティア事業を、きらりと光る事業として大変重視しております。

 ブルネイ及びカザフスタンに対します青年海外協力隊及びシニアボランティア事業、現時点で、ともに派遣実績はございません。

 ちなみに、ブルネイに関しまして、かつて人材育成を中心に技術協力を実施してまいりましたけれども、経済発展を遂げましたことに伴いまして、一九九六年にブルネイがODA卒業国となりましたために、九八年度をもちましてODAの供与自体を終了しております。九八年度までの累計の供与実績額は、技術協力のみで約三十九億円でございました。

 カザフスタンに関しましては、人材育成、経済インフラ、冒頭先生から御紹介ございましたけれども、アスタナにおきます空港であるとか上下水道であるとか病院であるとか、協力をやっておりますけれども、保健医療等の分野で支援をしてきておりまして、二〇〇七年度までの累計の供与実績は約千五十七億円でございます。

 以上でございます。

木原(稔)委員 ありがとうございました。

 ブルネイの協力隊には私の友人も行っておりまして、もう既に今は卒業国となったということでありますが、実績はあるということでございました。カザフスタンは、実は実績がなかった、それ以外に、ODA、空港建設などでの貢献があったというわけであります。

 でも、やはりこれほどの天然資源の豊富な国でありますし、それ以外にもまだ、日本が協力隊を派遣していない国でも、こういった、やっておけばよかったとか、やるべきだったとかという国があるのかもしれません。しっかりとそのあたりも精査をして、積極的にまた展開をしていただくようにお願いを申し上げます。

 青年海外協力隊でありますけれども、昨今の応募の状況を聞いたところ、昨年秋の募集では何と千八百人にとどまっている。ピーク時が六千人でありましたから、それに比べると三分の一程度ということであります。

 私は、逆に、今の経済不況、景気が悪いわけですから、民間の雇用が非常に厳しい状況の中で、協力隊の応募はふえているんじゃないかなと思って聞いたところ、減っているというようなことで、どうしてだろうなと考えたときに、若者の内向きな志向であったり、あとは、帰ってきたときの職業に対する、再就職に対する不安とか、そういったものがあるのではないかなと考えました。

 もっと何かいいキャリアパス制度、協力隊に参加した人はそういった再就職にも何かメリットがある、そういったものを何かできればいいなとかというのは、これは以前から大きな課題ではあったと思いますし、また、会社を退職した人がそのまま隊員になれるような企業等への働きかけ、これも幾つかの企業ではもう既に行われておりますが、そういったお願い、また宣伝、告知などもまだまだ不十分のようにも感じます。

 そこで、一つ、京都市の教育委員会で行われている制度がございまして、それは、青年海外協力隊経験者特別選考枠というのがあるそうであります。これは、学校の教職員、協力隊に参加をした人は、そういった海外、当然語学力もたけているであろうし、コミュニケーション能力というのも非常にこれはすぐれているだろう、そういった人を、また、諸外国の子供たちとたくさん接しているという経験などに基づいて積極的に教職員として採用しよう、そういった取り組みもあるようであります。

 また、学校の教員、これは公立校だけに今限られておりますけれども、現職教員参加制度というのも、学校の学期に合わせた形で今、協力隊、教職員の方の参加も募っているわけでありますけれども、これは実はまだ私立学校には適用されていないという状況でもあります。

 こういったことも含めまして、今後の青年海外協力隊への応募がふえるような、そういう政策、または、シニア海外ボランティアに関しては、実はこれは協力隊とは違って、SVの方は応募が非常にふえているという状況でありますので、そういったこともますます促進するような政策、今何か考えておられるようなことがあれば、御教示をお願いします。

西村大臣政務官 お答え申し上げます。

 非常にいい御指摘をいただきまして、ありがとうございます。

 私も、海外、特に途上国へ出張する際には、できるだけ青年協力隊あるいはシニアボランティアの皆さんと意見交換をさせていただいて、大変厳しい環境で、特にアフリカなどでは月に一度か二度しか電気や水も通らない、そんな中で、若い人たちが大変な苦労をしながら、子供たちのために、あるいは地域の医療のために、あるいは農業支援のために、さまざまな分野で活動している姿は非常に感銘を受けますし、また、その人たちのその貴重な経験をぜひまた日本に戻って生かしてもらいたい、全く同感でありますので、御指摘いただいた京都の例なども参考にしながら、ぜひ、そうした貴重な経験を持った皆さん方が日本でまたさらに活躍していただけるように努力をしたいと思いますし、日本の顔の見える援助としてこれも高く評価をされておりますので、青年海外協力隊、この春にはまた二千三百名を超える二千四百名近い募集もありますので、ぜひ積極的に宣伝もしていきたいと思いますし、シニアボランティアの方々は貴重な日本での経験、識見を海外で生かしていただくということで、貴重な即戦力としてこの方々も非常に求められておりますので、ぜひ広げてまいりたいと思います。

 ちなみに先生の御出身の熊本からも、現在、三十五名の青年協力隊の皆さんと七名のシニアボランティアの皆様が全世界で活動を続けてくださっております。ぜひ、外務省としても、これから活躍していただける場をふやすべく、宣伝、そして途上国からの要請も積極的に開拓していくように努力をしていきたいというふうに思います。

木原(稔)委員 青年海外協力隊はもちろん、これから団塊の世代がどっと大量退職するわけでありまして、シニア海外ボランティアに対しても、ますますその促進に励んでいただきますようによろしくお願い申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

河野委員長 次に、丸谷佳織君。

丸谷委員 公明党の丸谷でございます。

 二つの協定、条約について質問をさせていただきます。

 まず、租税条約一般について質問させていただきたいんですけれども、現在我が国はこの租税条約について五十六カ国と締結をしておりますが、近年の傾向を見ていますと、この条約の改正、改正ということで、新規の締約国としましては、九七年の南アフリカ以降、実に、今回これが、本日審議をされています二条約が締結されますと約十二年ぶりの新規締結国ということになるわけでございます。

 一方、例えば中国と比べてみますと、中国では現在八十六カ国と租税条約を締結、我が国が、今申しました、十二年間新規締結国がない間に、中国では、原油や天然ガスといったエネルギー資源の豊富なベネズエラ、カザフスタン、オマーン、チュニジア、イラン、バーレーン、トリニダードトバゴ、ブルネイ、アゼルバイジャン、サウジアラビア、アルジェリア、南アフリカ、キルギスといった資源国を中心に締結を進めているという状況でございます。

 こういったところを見ますと、やはり我が国は、資源がもともとない国でありますので、こういったエネルギーの安全保障の観点から、特に資源国を中心とした租税条約の締結、一層推進を図っていくべき立場にあったのではないかなと思い、その結果が今回審議されています二条約にはつながっていると思いますけれども、特に、改正が続いていたこの状況についての政府の見解と、今後、資源国を中心に締結推進、エリアに余り縛られずに戦略的に締結を図っていくべきと考えますが、この点についての見解をお伺いいたします。

西村大臣政務官 お答え申し上げます。

 非常に貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。

 もう委員よく御存じのとおり、租税条約は、二重課税を回避すること、あるいは税務当局間の連携をして脱税を防止する、近年、特に、投資交流を促進するという観点から、投資所得に対する源泉地国課税を軽減するといったことを目的として結ぶわけであります。

 その相手国を考えるに当たって、御指摘のとおり、資源外交上の重要性も含めた経済関係を中心とする我が国との二国間関係、これは投資の状況なんかも含めてでありますけれども、それから相手国の税制の状況、課税上、実際、問題が生じているかどうか、こういったことも踏まえましてこれまで交渉国を決定してきているところでありますけれども、これまでの締結した国々を見てみますと、投資の多かった先進国を優先してきているのが現状だろうというふうに認識をしております。

 今般御審議をお願いしておりますブルネイ、カザフスタン、これはもう我が国の資源外交にとって非常に大事な国でありますので、引き続き、これまで締結の少ないアフリカとか中近東とかあるいは中南米とか、こうした資源国との間で、投資促進に資することも十分念頭に置きつつ、新規の締結、改正のための交渉を推進していきたいというふうに考えております。

丸谷委員 先週同じく審議をされました社会保障協定についてなんでございますけれども、審議の議論を聞いていても、どういう優先順位で、何を優先順位にしてどこの国と締結をしていくかということを考える際に、特に社会保障協定については、我が国の国益を守るという観点から、その国の在留邦人の数で判断されることが多く、これは当然の優先順位、上に上がっているものだと思いますけれども、同時に、我が国の人口構成を見ましても、今後、海外の移住者、あるいは外国の方が日本で働くケースというのは非常に多く、また、我が国にとっても必要な施策の方向性であると思います。

 その観点から、特に、例えばEPA、FTA等で人の移動が可能になっているアジアの国々があります。社会保障協定はアジアの国々とは協定している数がまだ少ないわけでございますけれども、聞いたところでは、インドネシアではこういった二重の負担になっていないということでございますが、フィリピンであったりとか、あるいは、今後、タイであったりとか、そういった国々から日本に来て働く方たちも視野に入れた社会保障協定の交渉というものも非常に重要ではないかと思いますが、この交渉のあり方についてお伺いをいたします。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘ありましたように、社会保障協定、基本的には保険料の二重払いの問題を解消することなどを目的とするものでございまして、外国で就労する我が国の国民に対して大きなメリットがあるということのみならず、我が国で就労する相手国の国民、企業の負担を軽減し得るということ、まさに今御指摘のあったとおりであるというふうに思っております。

 アジア諸国との関係について御指摘ございました。我が国はこれまで、平成十七年に韓国と協定を結んでおります。それから、フィリピンにつきましては、社会保障協定の締結の申し入れを受けておりまして、去る六月十八日の日・フィリピン首脳会談におきまして、まず両国がお互いの社会保障制度を十分に理解をするということを目的とした作業部会を設置するということで一致をしたところでございます。

 一般にアジア諸国につきましては、社会保障制度の整備が必ずしも十分整っていないというところもございます。そのような事情もありまして、例えば先ほど申しました韓国については十六カ国、それからフィリピンについては八カ国と同様の社会保障協定を締結しておりますけれども、それ以外の国につきましては、欧米諸国と社会保障協定を締結している国はまだそれほど多くないというふうに承知をしております。

 我が国といたしましては、今後、それぞれの国の社会保障制度のあり方、それから、先生から御指摘がありました相手国との人的交流といった視点も考慮に入れながら十分取り組んでいきたいというふうに考えております。

丸谷委員 経済的な効果の側面のみならず、やはり外交上から見ましても、人の往来が多くある国、また、特にアジアの中のリーダー国として日本は今、牽引力として頑張っていこうとしているときに、人の往来も含めた、また、その人を守るべく、社会保障制度も丁寧な制度づくりをしていっていただきたいというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 続きまして、日・ブルネイ租税協定について質問をさせていただきます。

 ブルネイについては、一九八四年に外交関係を樹立しまして、まさしく本年二〇〇九年が日・ブルネイ外交関係二十五周年ということで、この際に租税協定が結ばれる意味合いも大きくございます。また、ブルネイの輸出額全体の三四%は対日輸出でございます。そのうちの九九・九%が石油、天然ガスといったことを考えますと、今回の協定が締結されることでブルネイへの投資が進むということもありますし、我が国のエネルギーの安全保障の観点からも非常に重要な協定であるというふうに考えております。

 この協定が締結されることで我が国の投資が進んでいくことが期待をされるわけでございますけれども、エネルギー確保の面あるいはエネルギー安全保障面からはどのような意義を有していると考えているのか、改めて説明をしていただきたいと思います。

西村大臣政務官 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、ブルネイは日本のエネルギー供給にとって非常に大事な国でありまして、日本の消費するLNGの約一割をブルネイから輸入を安定的にしております。

 御指摘のとおり、日本としましては、例えばインドネシア等で今後LNGの輸入が減る可能性もあるという中で、安定的なエネルギー確保をできるという観点、そしてブルネイの側からすると、エネルギー産業だけに依存している産業構造を多角化したい、日本からの投資も促進したい、そんな思いで今回この租税条約を締結したわけでありまして、ぜひそういう意味で両国間の経済関係を一層強化したいということを期待したいと思います。

丸谷委員 続きまして、カザフスタンとの租税条約についてお伺いいたします。

 カザフスタンは石油、天然ガスなどエネルギー資源に恵まれている国であるということは、先ほど来議論になっております。また、カスピ海の周辺では、欧米の石油メジャーですとかあるいは日系の企業が参画し、大規模な油田の開発、探索を行っております。我が国のカザフスタンの油田開発等への直接投資は、二〇〇七年までの累計でございますけれども、十七億五千三百万ドルに達している。非常に重要な国であることは言うまでもございません。このカザフスタンとの締結によりまして、我が国への同国の石油あるいは天然ガス等のエネルギー資源の供給量の伸びを期待するところでございます。

 また、もう一つの面としまして、我が国企業の海外事業支援という面でも大変大きな意味を持っている協定でございます。

 報道によりますと、日系の海外子会社は現地生産する際に日本の親会社に特許の使用料を支払っておりますけれども、資源国ではその使用料に対して二〇%程度を課税するケースもあることから、そういった国との租税条約の締結で使用料に対する課税率の大幅な引き下げをすることによって、企業では年間十億円強の税負担の軽減にもつながるという報道がございました。

 そうしますと、今回のカザフスタンとの租税条約におきましては、投資所得に対する源泉地国での限度税率は、使用料について、議定書に書いておりますが、実質的に五%まで引き下げられております。この条約を締結することによって、日系の海外子会社は、使用料の場合に限定したとしても、これまでと比較し、かなりの額の税負担の軽減が見込まれるものと存じておりますが、大体で構いませんけれども、どのぐらいの税額が軽減されると期待をされるのか、この点についての御答弁をお願いいたします。

谷崎政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御質問の中にもございましたが、本件租税条約を締結することによりまして、投資所得に対する限度税率が規定されます。その中で、配当でございますけれども、持ち株割合が直接または間接一〇%以上の親子会社間では五%ということになります。これは、パーセンテージは軽減されるということでございます。

 その上で、具体的に日本の企業がカザフスタンで納める税額云々でございますけれども、これにつきましては、企業の今後の投資行動の動向というようなことも把握していく必要がございます。また、その時々の経済金融情勢、投資環境によっても大きく左右されるということがございますので、この租税条約締結によって具体的に税額がどの程度軽減されるかという効果について、この今の段階で具体的な数値を申し上げるということは非常に困難を伴うと思います。

 その上で申し上げますと、本条約の締結によって二重課税が回避されるという意味において、条約がなかったときに比較すれば当然、日本企業の全体としての税額負担というのは軽減される可能性が非常に高い、こういうことでございます。

丸谷委員 具体的にどの企業がどの額という計算は当然できないでしょうけれども、こういった租税条約ですとかあるいはEPA等の経済にかかわるような協定、条約の審議をする際に、どのぐらいの経済効果が期待されますかとそれぞれ質問が出るんですけれども、いつも具体的な額は申し上げられませんというか不明なままでの審議になっていて、ちょっとそこは不満が残る、常に不満が残っているということだけ申し上げさせていただいて、次の質問に入らせていただきたいと思います。

 日・カザフスタン関係では、特に原子力協定の議論がされております。先日は、日ロ原子力協定の締結につきまして、麻生総理とプーチン首相が合意に至ったところでございまして、今後ロシアとの間で原子力に関する協力が進んでいくことを期待しております。

 カザフスタンにおきましては、世界第二位のウラン埋蔵量を誇っておりますし、このカザフスタンに対しては、最近は、中国ですとかインドですとか、新興国を中心に資源開発に乗り出す国もふえているところ、ウラン資源供給の安定的な向上を目指して、カザフスタンとの協力というのは積極的に進めていかなければいけないものと考えております。

 二〇〇七年の四月には、当時でございますけれども、甘利経済産業大臣をトップとしまして官民の合同ミッションがカザフスタンを訪れました。その際に、原子力の平和的利用の分野における戦略的パートナーシップ強化に関する共同声明が署名されておりまして、その中では原子力協定締結交渉の開始が宣言をされておりますが、その後、交渉の状況はいかがか、お伺いをいたします。

西村大臣政務官 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおりでありまして、二〇〇六年八月に小泉総理がカザフスタンを訪問した際に覚書が作成されまして、交渉の準備が開始をされました。その後、カザフスタンによるIAEA追加議定書の締結手続の終了を受けまして、当時の麻生外務大臣が二〇〇七年四月末に日・カザフスタン原子力協定締結交渉の開始を決定いたしまして、同年六月、九月、そして本年の四月の計三回の交渉を実施いたしております。

 現在交渉中のこの日・カザフスタン原子力協定につきましては、カザフスタンにおける原子力の平和的利用及び核不拡散等を担保するのに十分な内容の協定を作成すべく交渉を行っているところでございます。

 協定の締結に向けた見通しを述べることは困難でありますけれども、日本といたしましては、我が国といたしましては、ぜひとも早く締結をしたい、御指摘のとおり、ウランの埋蔵量を含めて大変な資源大国でありますので、早期締結を目指して交渉を加速していきたいという考えでございます。

丸谷委員 この中央アジアというのは我が国の外交としても非常に重要視されておりまして、二〇〇四年には、当時の川口外務大臣がカザフスタンを含む中央アジア諸国を訪問しました。その際に、中央アジアプラス日本の対話が立ち上げられております。二〇〇六年には第二回目の外相会合がされておりまして、その中で枠組みをいろいろ、政治対話ですとかビジネス振興、知的対話等々をつくられまして、その枠組みのもとで、東京対話と名づけられました知的対話の会合を既に三回開催されていると存じております。

 最近ではことしの二月に行われているものと存じますが、外相会談自体は二〇〇六年から行われていない。非常に重要な地域でありますけれども、外相会談、あるいは、やりましょうと言われていました首脳会談というのがまだ行われていない状況にございますが、こういったことをやはり実現に移していくということが非常に重要だと思います。この見通し、進捗状況についてお伺いをいたします。

西村大臣政務官 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、二〇〇四年に中央アジア諸国との地域協力を進めるために中央アジアプラス日本の対話を立ち上げまして、二〇〇六年には御指摘の第二回外相会合を行いました。次回の第三回外相会合につきましては、関係国と調整を行っておりまして、早期開催の実現に向けて努力をしているところでございます。

 また、首脳会合につきましても、関係国と調整を行いつつ、日程の調整その他難しい面もあるんですけれども、その開催の可能性をぜひ追求していきたいというふうに考えております。

丸谷委員 ありがとうございます。

 厳しい委員長の時間の管理によりまして、私も早く質問が終わり、質問時間がまだ十分残っておりますので、条約に関係ないテーマでございますが、二点質問させていただくことをぜひお許し願いたいと思います。

 一点目でございますけれども、イラン情勢について政府の見解をお伺いしたいと思います。

 六月十三日にアフマディネジャド大統領が得票率六三%で圧勝をしたということを受けまして、今いろいろなところでデモ活動ですとか、不正が行われたという民衆の大きな声がうねりとなって、混乱をきわめております。

 この衝突を受けて、インターネット等では、その真偽のほどは私は確かめておりませんけれども、負傷者も出ているといったところを受けまして、この状況を日本としてどう考えて、これからどのようなことを期待していくのかということをお伺いしたいと思います。

 私も一度、外務政務官の際にイランを訪れさせていただきまして、非常にエネルギーあふれる若い国であり、中東の中では民主主義国家として非常に頑張っている国だなという強い印象を受けました。意見の違いということを暴力ではなく言論に変えるというのが選挙であって、民主主義の基本だと思うんですが、せっかく民主的な選挙が行われた、その結果を受けてまた暴力に戻っていってしまったというのは、双方にとって、デモをする側にとっても、また武力を使って鎮圧する側にとっても、非常に残念な結果であると思いながら私は見ているわけでございます。

 イギリス大使館の外交官、家族の方も退避されるというような状況に至っておりますけれども、現在、このイランの混乱を外務大臣はどのようにごらんになっているのか、この点についてお伺いをいたします。

中曽根国務大臣 我が国といたしましては、このイランの大統領選挙の結果をめぐる現在の対立は、基本的には、イラン政府とそれから国民の英知と努力によって解決されるべきものと考えておりまして、その取り組みの動向を注視してきているところでございます。

 この抗議行動が展開される中で、今お話ありましたけれども、死傷者が出ているということは大変残念なことでありますし、強く懸念をしております。また、メディア規制に関しましても、プレス関係者の国外退去や拘束といった事態が発生しておりますこと、これらにつきましても懸念しているところでございます。

 私どもといたしましては、イラン政府に対しましては、言論の自由を確保することと、それから、混乱の収拾に当たっては、平和的な手段によるとともに、強い自制を持って対処することを求めたい、そういうふうには思っております。

 イランの制度において、この事態がどのような形で適正に処理されるのか、引き続き多大な関心を持って事態を注視しておりますが、また、その過程で各般の意見や言論が適切に尊重されることも重要である、そういうふうに思っております。

丸谷委員 民主的な手段として各国で選挙が行われている。この選挙の結果についてほかの国がとやかくコメントをするというのは、その国の内政干渉に当たるということもあり、それぞれの国はいろいろな発言の仕方を今考えているところのようでございますけれども、さきには、アフリカにおける民主主義国家としてまたこれもリーダーシップをとってきたケニアにおける選挙において暴動が起こる等の、せっかく選挙という民主主義的な手段をとっても、その結果をもってまた暴力に戻ってしまうという、この非常に残念な事態を、我が国外交として、どういうメッセージを出して、どうやってその悪循環を断ち切っていくかというのが、やはり政治的なメッセージというのを出すときが必ず来るであろうと思います。

 また、外務大臣におきましては、あすからイタリアでG8外相会合に出席されるわけでございます。その際に、テーマとしては、アフガニスタン、パキスタンは当然でございますけれども、イラン情勢についてもいろいろな議論がなされるものと思います。そういったときに、どのようなスタンスで、どのようなメッセージを日本として出すのかということ、これも非常に重要かと思いますので、外相会談の結果を日本において期待をしながら待っていたいと思います。

 また、このG8の外相会談において一つ非常に重要なことが、G8が北朝鮮に対する一致したメッセージを出せるかどうかということにかかってくると思います。それをまた我が国としてリーダーシップを持って牽引していくということが重要だと思います。

 中曽根外務大臣の方からは、核実験に対する非難を改めて表明していただくとともに、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決するという我が国の方針を明確に主張していただいて、各国の外務大臣が一致して北朝鮮に強いメッセージを発出するように努力をしていただきたいと思いますが、G8外相会談に臨む外務大臣の御決意をお伺いいたします。

中曽根国務大臣 今月の二十五日から二十七日まで、イタリアのトリエステでG8外相会談が行われるわけでございますが、今お話ありましたけれども、北朝鮮が最近、ミサイルの発射、そして核実験を強行した、またさらに、大陸間弾道ミサイルを発射する、そういう可能性も否定できないという現在のこういう状況でございますので、私といたしましては、外相会談の会議の中で北朝鮮問題を取り上げまして、G8として、今委員からお話がありましたけれども、国際社会の断固たるメッセージを発出したい、そういうふうに考えております。

 六者会合に北朝鮮は速やかに復帰をして、そして安保理決議の一八七四号を履行することが北朝鮮自身の利益である、そういうことを指摘した上で、これを実現するためにも、G8を初めとする関係国が、この決議でいろいろ盛り込まれました武器禁輸あるいは貨物検査、そして金融面などの措置を着実に実施することが重要である、こういうことも指摘をしたいと思っております。

 また、拉致問題もございます。これも、国際会議のたびに我が国からはこの問題も述べておるわけでありますが、拉致問題につきましても、G8として、この状況を注視しながら、この具体的行動を北朝鮮に要請すべし、そういう点についても各国に対し働きかけをする考えでございます。

 また、イランの問題も、当然今回の会議の中でいろいろな議論がなされると思っておりまして、委員もイランにいらっしゃったということでありますが、我が国のイランとの関係、こういうものを踏まえながら、現在の混乱状態が一刻も早く改善できるように、各国と意見交換をしながら、我が国としての対応もしっかりとやっていきたいと思っております。

丸谷委員 以上で質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

河野委員長 次に、松原仁君。

松原委員 まず、今回の日本とブルネイの租税協定、日本とカザフスタンの租税条約締結による、両国が持つエネルギー資源等の輸出増の見込みに関してお伺いをいたしたいと思います。

西村大臣政務官 お答え申し上げます。

 両国との租税条約は、これまで我が国が諸外国との間で締結した租税条約と同様に、経済的交流、人的交流等に伴って発生する国際的な二重課税を回避するということ、そして両国間での投資交流を促進するというものでございます。

 本条約の締結によりまして、我が国と両国との二国間の二重課税の回避や投資所得への課税軽減の制度が整備される、そして資本、人的資源等の交流が一層促進される、結果として、エネルギー資源の確保につながることも期待されるわけであります。特に、先ほども答弁申し上げましたが、ブルネイからはLNGの安定的な供給が期待をされるということがございますし、カザフスタンとの間では新たに日本企業による石油の生産も始まりますし、ウランの輸入も拡大するということで、エネルギー資源の安定確保、増大につながることを期待するものであります。

 ただし、租税条約を締結することによりまして具体的にエネルギー資源輸出量にどういう影響を与えるのかということにつきましては、企業の投資行動やその時々の経済情勢を初め、貿易・投資環境にも大きく左右されますので、具体的に数字を挙げて予測することは非常に困難なことを御理解いただければというふうに思います。

松原委員 カザフスタンからの石油の生産というのは、そこにはカシャガン油田等があるわけでありますが、こういったものの今後の見通しはどんな感じになりますか。

西村大臣政務官 カシャガンの油田は、二〇一二年に生産開始を予定しておりまして、全生産量が百五十万バレル・パー・デーでありまして、日本の取り分が七%程度でありますので、安定的にその後生産されれば十万バレル・パー・デーが日本に輸出をされることが期待されます、確保できることが期待できます。

松原委員 大変遠方の国でありますので、ここで七%というと十万ぐらいですか、これは日本に実際にどういう形で到達するのか。聞くところによると、代理輸入ということも言われているようでありますが、この点についてお伺いしたいと思います。

谷崎政府参考人 ただいまの御質問の中にございましたとおり、カシャガン油田そのものの生産原油を日本に直接輸入するということになりますと、経済的に非常にコストがかかるということでございます。したがいまして、現在の企業の方の考え方は、この油田から出る同等の量を違った地域から日本に輸入するということで、いわゆる代替輸入という方式を考えているというふうに理解しております。

松原委員 いわゆる代理輸入、代替輸入ということでありますが、日本ではこういう形で石油を採掘しているという事例は今まであるんでしょうか。

谷崎政府参考人 ただいまの御質問について、具体的な資料は手元に持っておりませんが、一般的な形で原油が、既に約束されている日本に対する輸出が何らかの理由でできないという障害があった場合に、メジャーを通じまして他の地域から日本に代替して輸入するという方式は、極めて例外ではなくて、時々あるというふうに理解しております。

松原委員 カザフスタンに関して、日本はどれぐらいのODA、いわゆるさまざまな有償資金協力や技術協力、無償資金協力をしておりますでしょうか。

西村大臣政務官 対カザフスタンの経済協力ですけれども、円借款はこれまでの累計で八百八十七億円、無償資金協力は約五十九億円、技術協力は百十億円というふうになっております。

松原委員 私の手元にある資料は一億円ほど有償資金協力が多いわけでありますが、まあそういった数字であります。この数字でいく場合には、日本としてはかなりODAを出している国であるわけでありますが、そのカザフスタンとの関係において中国は今どのような状況になっているか、お伺いしたいと思います。

 中国に関しては、カザフスタンとの租税条約を二〇〇三年に発効させている、これは間違いありませんか。

谷崎政府参考人 御質問にありました中国とカザフの租税条約でございますけれども、日本よりも前に既に租税条約を締結し発効しているというふうに了解しております。

松原委員 ポイントは、中国が資源外交を激しくやっている。先般の委員会でもこの質疑はなされたわけでありますが、カザフスタンに関して、中国よりも日本の方がこういったさまざまなODA関係の資金は多額に拠出をされているだろうと言われております、はるかに多く拠出されているだろうと。にもかかわらず、中国は、地理的なメリットもあるわけでしょうが、日本よりも早い二〇〇三年に租税条約を発効させている。我が国はことし、二〇〇九年であります。

 なぜここまで日本がおくれてきたのか、その考え方、経緯をお伺いしたい。

谷崎政府参考人 お答えいたします。

 中国は、近隣の中央アジアとの関係ということにつきまして、既に早い段階で関係強化をやっていたということでございます。

 日本の租税条約そのものについては、できる限り多くの国と租税条約を締結していくということは御説明申し上げているとおりでございますが、カザフとの間で交渉を行ってきましたけれども、交渉に時間を要したということもあったというふうに理解しております。それで、今般、租税条約の締結ということに至ったのが具体的な経緯でございます。

松原委員 きょうは経済産業省の方もお越しいただいているわけでありますが、資源獲得という観点からいくと、どうも日本は中国よりもはるかにおくれをとっているというのが率直な現状であろうと思います。もちろん、ODA等のこういったものは資源確保のためにやっているわけではありませんが、国益を追求しないODAというものは基本的にあってはならないと私は思っております。平和が日本の国益であるという議論もありますから、平和もそれは大事でしょう。しかしながら、まさにこういった資源の獲得において、どうも後ろに回っているような気がしているわけであります。

 日本の資源獲得の競争原理からいって、例えばこのカザフスタンでも、中国は二〇〇三年に発効させている。ODAは日本が前から極めて多額を出しているにもかかわらず、我が国は二〇〇九年だ。この点に関して、経済産業省は何か御意見ありませんか。

上田政府参考人 先生おっしゃるとおり、確かに中国は、カザフスタンのみならず、さまざまな国に対して大変積極的な資源外交をしているわけでございます。

 私どもといたしましても、さまざまな形で資源外交を積極的に推進しているわけでありますが、今回、我が国とカザフスタンとの間におきまして二重課税防止条約の締結が行われるということは、両国企業が安心してそれぞれの国へ投資を行うことを可能にするということでございまして、この意味におきまして、大資源国たるカザフスタンとの間の二国間の経済関係の強化につながるものであり、我々としてもその締結というものを大変歓迎しているところでございます。

 また、私どもとしても、カザフスタンとの間の投資協定の締結というものに向けた交渉についても取り組んでいるところでございます。資源外交とあわせまして、こういった取り組みを進めてまいりたいと思います。

松原委員 租税条約一覧表というものがここにありますが、中国は、二〇〇八年一月一日段階で、香港、マカオを除いて八十六カ国と租税条約を結んでいるわけであります。

 外務省にお伺いします。日本は何カ国と結んでおりますか。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国につきましては、一九五五年の米国との租税条約を皮切りといたしまして、これまでのところ四十五条約、五十六カ国との間で締結をしております。条約数と締結国数が違いますのは、一条約によって、国家の承継などによって複数国について適用されているということがあるからでございます。

松原委員 中国が八十六カ国、日本が五十六カ国。中国と日本は、昔は日本の方が多かったんですか、いかがですか。そして、中国より日本の方が租税条約が先行していたとすれば、どの段階で抜かれたのか、それとも初めから中国が日本よりも先行していたのか、お伺いしたいと思います。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の場合には、租税条約の締結は一九五五年の米国とのものが最初でございます。一方、中国のものにつきましては、中国の国家税務総局が明らかにしている各国との締結状況を参照いたしますと、我が国と締結をいたしました一九八四年のものが最初であるというふうに承知をしております。したがいまして、スタートの時点におきましては我が国の方が早かったということだろうと思います。

 先ほどのお尋ねにありました、どの時点でこれが逆転をしたのかという点につきましては、中国の締結状況を見てまいりますと、九〇年代、特に九五年、九六年ごろに各国との間で非常に積極的に締結を進めたということがございまして、このあたりの時点で数の逆転というものが生じたのではないかというふうに理解をしております。

松原委員 一九五五年から日本はスタートしている。中国は、日本との間の締結条約が一九八三年、この辺からスタートですね。そうすると、三十年ぐらい日本が先行していて、今や日本の一・五倍、中国が行っている。

 大臣、これはやはり資源外交を計画的に推し進めている、いや、これは通告していなくても一般的な議論ですから。日本のような資源のない国において、中国は一九八三年からスタートして今や八十六カ国、日本は一九五五年からスタートしてまだ五十六カ国。これは、外務省は国益のために十分に努力をしていると言えるんでしょうか。締結は、今回、これできょう通って、幾つかまた出てくればそれはいいんですが、ちょっとおくれているんじゃないかと思うんですが、大臣、率直な御所感をお伺いしたい。

中曽根国務大臣 我が国が租税条約を結ぶ場合には、もう委員も十分御承知のとおりでありますが、相手国との状況、経済状況あるいは我が国の企業の進出状況等、いろいろな点を勘案しながら結んでいくわけでありますが、御指摘のように、中国は九〇年代に急速に多くの国と租税条約を結んでおります。

 我が国としては、資源外交というものも大変重要でありますし、またODAによる支援も行っている国も数多くありますので、国益というものをまず考えながら、またそれぞれの国との関係も十分配慮しながら、今後積極的に租税条約の締結を検討していきたい、そういうふうに思っております。

松原委員 私は、日本は、恐らくODAのレベルでは中国等よりもはるかに、このカザフスタンもそうでありますが、先行している。古くからやっている。にもかかわらず、租税条約においてはカザフスタンも中国におくれをとり、三十年早くスタートした日本が、今や三十カ国おくれている。

 これは、率直に言って、どうしてこういうふうになったんですか。それは、やはり外交というのは横にらみの部分があるので、中国が一気に、一九九〇年代に租税条約等を拡大したときに、外務省や日本の国は危機感を持たなかったんですか。お伺いしたい。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 今大臣からも御答弁申し上げましたように、租税条約の締結につきましては、さまざまな要素を勘案しながら進めていくということであろうかと思います。また、租税条約の締結につきましては、締結の数が多いということのみを追求するのではなくて、そのほかのさまざまなツール、投資協定であり、先ほど御審議にありましたような社会保障協定などの二国間の枠組み、それから、それ以外の方面での投資環境整備など、さまざまな手段を総合的に活用して投資の促進に取り組んでいくということが大事であろうと考えております。

 一方また、私どもとして、先ほど大臣の答弁にありましたように、各国との交渉を積極的に進めるということでやっておりまして、今回お諮りしております二条約のほかに、現在、我が国といたしましては、オランダそれからスイスとの間で既存の租税条約の改正交渉を行っているところでございます。さらに、アラブ首長国連邦、クウェート、サウジアラビア、バミューダとの間でも新規の締結交渉を行っているところでございまして、まとまりましたら、また速やかにお諮りをしたいというふうに考えております。

松原委員 経済産業省の方にお伺いしたいんですが、これは租税条約等があった方が経済産業省的にもそれぞれの国家との間にメリットがある、こういう理解でよろしいですか。

上田政府参考人 企業の円滑な活動を推進するという観点からは、必要な貿易関係等々がある国との間で租税条約があるということは、企業にとって大変重要なことだと考えております。

松原委員 今、非常に率直な経済産業省のお立場からの声だと思いました。受けて、外務省はどうなっているんだという話になるわけでありまして、じゃ、いいですよ、終わったことはいいとは言いたくないけれども、終わったものは時間は戻らないから。

 中国の八十八という数字は、今の予定だと、いつごろになったら到達できるんですか、ざくっと言ってください。それとも、そういう認識は持っていないのか。中国の八十八というのを、近未来における、それもこの数年、二年、三年の間における我々の租税条約の締結国の数としてそれぐらいを目指すというような目標を設定しているのか設定していないのか、可能性をお答えください。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども御答弁させていただきましたように、数の多さというものを追求するということが私どもとしてまずやるべきことであるかということについては、いろいろ考えるべき点があろうかと思います。今、経済産業省さんの方からも御答弁ございましたけれども、海外への投資を促進するということは、これは国全体として取り組むべき課題であるというふうに考えておりまして、我が省といたしましても、ほかの手段とあわせつつ、租税条約の締結ということについて前向きに取り組んでいくということをしていきたいと考えております。

 租税条約の締結を前向きに進めていくということにおきましては、恐らく二つ取り組むべきことがあるというふうに考えております。一つは、既存の租税条約につきまして、これをさらに質の高いものにしていくということでございます。もう一つは、新たな国と締結を、結んでいくということでございまして、先ほども御答弁させていただきましたように、我が国といたしましては、この二つの方向で進めているところでございまして、繰り返しになりますけれども、オランダ及びスイスとの間で既存の租税条約の改正交渉を行っており、新たなところといたしましては、アラブ首長国連邦、クウェート、サウジアラビア、バミューダとの間で新規締結交渉を行っており、クウェートにつきましては基本合意に達しているというところでございます。

松原委員 両方なんですよ。私は、バージョンアップすることは必要だと思いますよ。バージョンアップはバージョンアップでやるし、数は数でふやす。その両方をやってこそ意味があるので、数をふやすことが一概になんて、数をふやすことは、締結ができれば、それは意味があるに決まっているんですよ。よほど日本にとってマイナスな締結であれば別ですが。

 私は、そういった意味で、特に日本の国というのは輸出輸入でやっていく国ですからね。中国よりも資源がない国家で、中国よりも三十年前からこういったものを結んでおいて、なぜ現状において中国の七割か六割になっちゃったんだと。はっきり言って、これは外務省の怠慢ですよ、中曽根大臣。中曽根大臣がそのときから大臣だったわけじゃないから、おれはその責任の全般を負うわけじゃないよ、こう思っておられるかもしれないけれども、明らかにこれは、日本の製造業を含めさまざまな産業が中国よりもおくれをとりますよ。こういったことはきちっと認識をしてやってもらわないと、それは外務省の存在意義の、まさにこけんにかかわるというふうに私は申し上げたいわけであります。

 それで、租税条約を結ぶときに、他の国の租税条約とは、細かく私は見ておりませんが、劣後にならないことを旨としてやっているということでありますが、租税条約の中身ということを今おっしゃった。租税条約の中身に関して言えば、なかなか客観的なジャッジはできないだろうけれども、日本は、中国が他の国と結んでいる租税条約よりも、その国との関係の租税条約は優位に立っているかどうか。一般論の、率直な印象を、そこまでこちらも調べる時間はなかったですから、答えていただきたい。

谷崎政府参考人 ただいま御指摘のありました今般のカザフスタンとの租税条約でございますけれども、私ども、公開されている資料に基づきまして、中国とカザフとの間の租税条約の中身というのは、比較する資料はございます。

 全般として見ましたところ、限度税率という点につきましては、利子それから使用料につきましては、中国それから日本は同じパーセンテージで行っているということでございます。配当につきましては、日本、カザフの方が一五%。ただし、親子会社間というのは五%。それから、中国、カザフの方についてでございますけれども、配当については一〇%。限度税率だけに限ってみれば、そういう全体としての比較はできるかというふうに思います。

松原委員 これは、時間があるときにもう一回精査して、中国よりも劣後だったら話にならない、当たり前であります。やはり、やるからには、後から行った人間は先の者を追い越すという最低限の努力をしなければいけない。その辺は、数が少ないことだけで既に外務省は仕事をかなり放棄しているわけですから、この部分で、内容的なものできちっとしたものを持っていなかったら、これこそ話にならない。先ほどあなたがおっしゃったのは、いいものをバージョンアップしてつくっている、それぞれの個別の租税条約の中身で中国よりもはるかに優位に立っていると。ODAも出しているわけですから、当然それぐらいのことがなかったら、その論理構成も矛盾になってしまうということは指摘をしておきたいと思います。

 もう時間がありませんから、イランの問題をちょっと触れていきたいと思います。

 イランの騒乱というか、今の大統領選挙に伴う問題で、アメリカの上院議員、下院議員が決議を上げた、オバマ大統領が所見を述べられた。内容を簡単におっしゃっていただきたい。

中曽根国務大臣 このイランの大統領選挙の結果をめぐる各国の反応は、前回も御紹介させていただいたと思いますが、さまざまのものがあると承知をいたしております。

 各国の反応のうち、米国につきましては、米国のオバマ大統領は、二十三日の記者会見におきまして、米国と国際社会は、過去数日間の脅迫、暴行、勾留に驚愕し、憤激している、このように正当化できない行為を強く非難し、米国民とともに、失われた無辜の命を追悼すると述べたと承知をいたしております。

 議会につきましては、米国上下院の対イラン決議、これは六月十九日に行われたものを御紹介させていただきますと、米国上下院はそれぞれ、十二日に実施されましたイランの大統領選挙を受けた抗議活動につきまして、人権、市民的自由、法の支配などへのコミットメントを表明しつつ、デモに対する暴力を非難する内容の対イラン決議を採択した、そういうふうに承知をいたしております。

松原委員 ついにオバマさんもこういった、これは新聞の見出しですと、アメリカ、「介入へ一歩 大統領 暴力停止求め声明」と、かなり強いトーンで、上院、下院の決議を受けてやったのかもしれませんが、流れはなっているわけであります。

 他の欧米の指導者も、先般申し上げたように、さまざまな意見もあるし、また言動もなしているわけであります。六月の二十一日、ドイツの首相は、平和的なデモ活動を認めること、デモ参加者に暴力を振るわないこと、拘束された反対派勢力を釈放すること、報道機関の報道の自由を認めること、大統領選挙で投じられた票を再集計すること、人権、市民権は完全に尊重されなければならないことというのを強く申し入れをしているわけであります。考えようによっては内政干渉とも言えるかもしれないけれども、これは民主主義という原則の中で、民主主義という普遍的な概念の中における介入とも言えるかもしれないというふうに思っております。ここまでドイツも声明をしている。

 日本も、この間も申し上げたように、いやしくも国連安保理を目指そうという国家でありますから、先ほどの丸谷さんの話ではありませんが、何らかのメッセージを出すのは当たり前でありまして、現状の日本のメッセージは、談話というものをいただいておりますが、私は極めて中途半端というふうに思わざるを得ないわけであります。

 このオバマさんや、またドイツの見ようによっては内政干渉とも言えるぐらいの強いイランに対する声明に対して、外務大臣はどのような印象をお持ちですか。

中曽根国務大臣 各国とも基本的には共通の認識でもって声明等を出されていると思いますけれども、やはり、イランの政府に対しまして、このような混乱を一日も早く収拾するに当たりましては、言論の自由を確保し、また平和的な手段、今委員からおっしゃいましたような民主的な手段で事態の収拾に当たるように、そういうことであると思います。

松原委員 外務大臣も、近い間に一つの外交上の八カ国が集まる会議に行って発言をする。そのとき大臣はどういう発言をするつもりですか。

中曽根国務大臣 今おっしゃったのはG8の外相会談のことだと思いますけれども、会議ではこのイランの混乱状況が議題になろうかと思います。

 我が国といたしましては、談話を私も発出させていただいておりますけれども、イラン政府に対しましては、先ほど申し上げましたけれども、言論の自由を確保すること、そして、混乱の収拾に当たっては、平和的な手段によりますとともに、強い自制を持って対処することを求めたい、そういうふうに思っておりますが、このことにつきましては、会議での状況、またあるいは具体的な発言等につきましては、各国との間での会議の様子等を踏まえて適切に対応していきたいと思っております。

松原委員 何か煮え切らないわけでありますが、イラン大使館に対して、今回の暴動というか選挙後の騒乱の中で死者が出ていることに対して外交チャネルを通して何らかの意思表示をする予定はありますか。

西村大臣政務官 我が国は、このイラン大統領選挙後の結果をめぐる対立につきまして、先ほど来大臣より御答弁しているとおりでありますけれども、犠牲者が出る事態は回避されなくてはならないと、平和的解決を強く求めているところであります。二十二日の先ほどの談話の形でも明らかにしているところでありまして、在京イラン大使館も承知をしているというふうに認識をしております。

 この事態は今後どのような形で適正に処理されるのか、引き続き事態を注視しながら、イラン政府に対するより直接的な働きかけについても検討してまいりたいというふうに思います。

松原委員 私の質問の趣旨は、イラン大使館に対して外交チャネルを通して意思表示をするかどうか、こう聞いているわけであります。

 私は、今の日本のメッセージというのは極めて中途半端だと思っているんです。イランがいわゆるイスラム国家である、今イランの選挙後の騒乱を批判している勢力は基本的にキリスト教国家が多い、その中で、日本のスタンスはいわゆる中立的な立場にあるがゆえにあえて中立的な表現をするというなら、私はそれはそれでいいと思うんです。しかし、日本がそういうふうに、イランのそういった文化的なものを尊重し、親日的な国家であることを評価した上でこの立場をとっているんだということを私は明快に主張するべきだと思うんです。

 そのことに関してだけ、時間が来たようですから、最後、大臣、おっしゃっていただきたい。

中曽根国務大臣 常日ごろ、我が国としては、イランとの関係におきまして、今委員がおっしゃいましたような、イランの文化的な面や歴史的な面やいろいろなものも踏まえた上で発言もし、また交流も続けているわけでありますが、今回のことにつきましては、これは一般の民衆から死傷者が出たということでもありますし、先ほども申し上げましたけれども、強い自制を持って対処してほしい、そういう我が国の考え方をしっかりと先方に伝えてまいりたい、そういうふうに思っております。

松原委員 時間が来たから終わりますが、イランが親日的な国家であるという点をきちっとイランに伝わるように、黙っていては伝わりません、伝わるようにイラン大使館に伝えながら騒乱に対してのさまざまな懸念を表明する、そうしなかったら国益につながらないということを強く申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

河野委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正でございます。よろしくお願いいたします。

 二条約の質疑ということでございます。お手元の方に資料も配らせていただきました。ブルネイ、カザフスタン両租税協定ということでございますが、特にカザフスタンについてちょっと議論を進めさせていただきたいと思っております。

 お手元の方に、「日カザフスタン二国間関係」ということで、これは外務省ホームページをもとに衆議院外務調査室が作成した資料を配付させていただきました。

 特に、この中には直接は記載はしていないんですけれども、つい先日、これはNHKのBSでしょうかね、カナダが作成したセミパラチンスクの核実験場での核実験、あるいはそれを被曝した被曝者の実態が放映をされておりまして、私も見たわけでありますが、これを調べてみますと、カザフスタンには六つの核実験場があり、延べ五百回を超える核実験が行われた。ソ連では七百十五回行われておりまして、五百回超がカザフスタンで行われ、しかもこのセミパラチンスク核実験場では四百五十六回、一九四九年からの四十年間ということで、広島型の千百発分あるいは長崎型の七百五十発分の核実験が行われた。ほぼ月に一回の割合で核実験が行われ、地上で二十五回、空中で八十六回、地下で三百四十五回ということで、一九六三年の部分的核実験禁止条約調印後はすべて地下でということであります。

 四九年、五一年、五三年、この三回の核実験の影響というものが特に強かったとされておりまして、しかも三十メートルぐらいの高さで核実験を行ったものですから、地上の土壌や粉じんを巻き込んで、気流に乗って高く舞い上がり、要はそうした放射能に被曝をした土壌、粉じんが遠方まで飛んでいった、これによって数十キロあるいは百キロ先までそうした被曝の被害が広がったということが言われております。

 そういった意味で、特にカザフスタンの、ソ連の中で核実験場であったこと、セミパラチンスク核実験場ほか被曝者への日本政府の対応というものについてお答えをいただきたいと思います。

西村大臣政務官 委員御指摘のとおり、セミパラチンスク核実験場では旧ソ連時代に多くの核実験が行われまして、放射性降下物、汚染された空気や水、食物などにより住民の健康が深刻な影響を受けているわけであります。

 我が国は、カザフスタンに対する非核化協力の一環として、このセミパラチンスク核実験場の被曝者の救済等のため、九五年から九九年にかけて総額六億一千万円の医療支援を実施いたしました。具体的には、首都アルマティの病院にCTスキャナー及びエックス線診断装置等を供与したほか、セミパラチンスク医科大学附属病院及びセミパラチンスク放射線医学物理研究所に対しまして、超音波診断装置など医療機器を供与しております。

 また、九九年の九月には、我が国はセミパラチンスク支援東京国際会議を開催いたしまして、同会議における支援表明に基づいて、二〇〇一年、セミパラチンスク地域に対しまして六億四千八百万円の医療機材を無償資金協力で供与したほか、二〇〇〇年から二〇〇五年にかけまして、同地域の医療体制改善のため、精密診断、データの蓄積等にかかわる技術協力を行っております。

武正委員 あと、資料の一ページの一番下に、それこそ、きょう審議をしております日・カザフスタン租税条約署名という昨年十二月の日時が出ておりますけれども、その上に、二〇〇四年八月、日・カザフスタン技術協力協定署名、二〇〇五年六月発効。この中でも、これは外務省さんのホームページからですが、旧ソ連時代に四百六十回にわたる核実験が行われていたセミパラチンスク周辺地域住民への支援を、今言われたように実施しておりということで、今回の技術協力協定締結を機に、さらに対カザフスタン経済協力の取り組みが一層効果的、効率的に促進されということでありますが、この技術協力協定ではいかがなんでしょうか、そういった医療支援とかいった分野も含まれているのかどうか、おわかりになりますでしょうか。

西村大臣政務官 済みません、手元に技術協力協定をきょう持っていないものですから。

 概要は、一般的な技術協力に関する協定、協力関係を締結したものでございまして、個別の具体的な案件については協定上は明記をしていないというふうに認識をしております。

武正委員 先ほど、医療に関しての六億超のそうした支援ということでありますが、こうした技術協力協定も結んでいるわけですので、さらにカザフスタンに対する、日本が唯一の被爆国ゆえに、医療関係でもさまざまな技術あるいは取り組み、そうしたことが支援として可能であろうというふうに思いますので、そうした取り組みを求めたいというふうに思っております。

 また、本年六月十八日、ナザルバエフ大統領は、それまで行われていたソ連の核実験を当時禁止した、停止した、ちょうどそれから二十年に当たってのそうした演説の中で、北朝鮮の核開発も含めて生命に対する犯罪であるということで、核廃絶を求めるということを宣言されております。当時、ソ連からカザフスタンという移行期にあっては世界第四位の量の核兵器を引き継いだわけですが、それを放棄した、それがカザフスタンという国であるということも十分踏まえて我が国も対応していく必要があろうというふうに思うわけであります。

 そこで、核廃絶を唱えた大統領でありますが、ちょうど二〇〇六年九月でしょうかね、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの五カ国で中央アジア非核地帯条約というものを署名し、そしてちょうどことしの三月に発効しているというふうに聞いているんですけれども、このことについて外務省として承知をしているところをお答えいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 中央アジア非核兵器地帯条約、これは中央アジアの五カ国、今お話ありましたカザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、これにより条約が締結され、そして三月二十一日に発効した、そういうふうに承知をいたしております。

 我が国といたしましては、この条約は中央アジア五カ国のこの地域における平和と安定の強化に向けての努力のあらわれである、そういうふうに受けとめておりまして、このような趣旨から、本件条約発効は実効性のある非核兵器地帯に向けた第一歩として歓迎をするものでございます。

 このような条約が実効性を伴って機能するように、核兵器国との協議を含めまして、引き続き関連の動向を注視していきたい、そういうふうに考えております。

武正委員 二ページ目に、これはピースデポさんが作成された資料をお配りしておりますが、「いまこそ「東北アジア非核兵器地帯」を」というような見出しが出ておりますけれども、世界の非核兵器地帯ということで、この中に、一番左上でしょうか、中央アジア非核兵器地帯条約、セミパラチンスク条約、最近は名前がセメイという名前になったようですが、セメイ条約と言われているようでありますが、これが載っております。そのほか、各地域のそうした条約がここに一覧として載っております。そういった意味で、北半球では、地域的な連携、数カ国が加入をした非核兵器地帯条約とすれば初のものであるということがここからおわかりいただけるというふうに思います。

 きょうは租税協定の話ということでカザフスタンの話から入りましたけれども、租税協定については、私も同僚委員同様、その速やかなる締結を求めておきたいと思っておりますし、条約については賛成ということで臨みたいというふうに思っております。

 そこで、引き続き非核地帯のことについて議論を深めたいと思うんですが、この中に、東南アジア非核兵器地帯、通称バンコク条約というのが左下に出ておりますけれども、これについてもあわせて、どのようなものなのかお伺いしたいと思います。

中曽根国務大臣 東南アジア非核兵器地帯条約、バンコク条約とも呼ばれておりますけれども、これにつきましては、我が国は、東南アジア地域における平和と安定の強化に向けたASEAN諸国の努力のあらわれである、そういうふうに受けとめております。

 ただし、核兵器国が非核兵器国に対しまして核兵器の使用または使用の威嚇を行わないという、いわゆる消極的安全保障などを定めた議定書につきまして、すべての核兵器国が署名、批准を終えている状況にないわけでありまして、この条約が実効性を伴って機能するように引き続き関連の動向を注視していきたい、そういうふうに考えております。

武正委員 「核保有国の対応」ということが書いてありますので、ちょっと読みますと、五つの核兵器国に対し、条約締約国に対して、及び地域内で核兵器の使用または使用の威嚇をしないことを定めた議定書第二条への参加を求めている、米は、一方的に核使用を禁じていること、経済専管水域まで地帯に含まれていることから議定書への署名を拒否している、中国も難色を示しているということですが、ちなみに、今五カ国でしょうかね、いわゆる核保有国という、当初議定書が対象としたのは多分五カ国だと思うんですが、そのうち、今一部批准をしていないということでしたが、批准をしている国というのがもしわかればお答えをいただきたいと思いますが。

西村大臣政務官 御指摘のありましたように、いまだ五核兵器保有国による署名の見通しは立っていないというふうに認識をしております。

武正委員 これはほかの条約、こういった中でありますが、ラロトンガ条約、南太平洋非核地帯条約は、核兵器国の対応ということでは、第一議定書では英仏は批准済み、アメリカは署名のみ等、割に批准をしているところもあるということであります。それぞれ、条約によって対応が違うのかもしれませんが、やはり核保有国のそうした議定書への批准というものが実効あらしめるということだというふうに認識をいたします。

 ただ、東南アジア非核地帯条約、これは、御案内のように、七一年、ASEAN発足当初から非核化構想があり、そして具体的にそれが署名に至ったのが九五年、九七年発効、そして二〇〇一年、全十カ国が批准をしたということであります。

 ただ、当初、七一年からそうした話がありながら時間がかかったというのは、御案内のように、ベトナム戦争あるいはカンボジア問題あるいは中越紛争というような、そうした域内の状況の中で、実際に、ではそういう非核化構想が現実味を帯びるのかという議論があった中で、八三年にインドネシアが改めて提案をしたと聞いております。

 特に、米国の対応とすれば、当初消極的であった米国が、いわゆる核拡散防止という観点からは地域的な非核化構想というものを評価するようになった、こういうような報道がありまして、東南アジア非核兵器地帯条約が発効に至ったというふうに聞いているところでございます。

 ただ、しかし、先ほど言いましたように、核保有国の議定書への参加、批准、こうしたものがやはり実効性をあらしめるということだというふうに思います。

 そこで、前回、前々回と議論をさせていただきました拡大抑止について、今回もまた議論を進めさせていただきたいと思います。

 たしか前回、日米間の文書で、初めて拡大抑止が文書に盛り込まれたのがいつかということのやりとりをさせていただきました。お手元の資料、三ページ目にありますのがそれでございます。今から二年前、二〇〇七年五月一日、「共同発表 日米安全保障協議委員会 同盟の変革 日米の安全保障及び防衛協力の進展」ということで、両国の外務大臣、防衛大臣が2プラス2ということで交わした文書でございます。ちなみに、日本側は麻生外務大臣、久間防衛大臣でございます。

 この資料で一ページ目に当たるわけですけれども、ちょうど真ん中辺に出ておりますので、三段目ですかね、ここをちょっと読ませていただきます。「さらに、閣僚は、相互協力及び安全保障条約の伝統的な役割の重要性を強調した。同条約は、日本政府に対する米国の安全保障を確かなものとしつつ、同盟関係にとって死活的に重要な在日米軍のプレゼンスを可能としてきた。米国の拡大抑止は、日本の防衛及び地域の安全保障を支えるものである。米国は、あらゆる種類の米国の軍事力(核及び非核の双方の打撃力及び防衛能力を含む。)が、拡大抑止の中核を形成し、日本の防衛に対する米国のコミットメントを裏付けることを再確認した。」ということであります。

 改めて、日米間の文書で拡大抑止ということが記載をされた文書、並びに日本の防衛に対する米国のコミットメントの再確認ということが記載された文書は、これが初めてであるということでよろしいでしょうか。

中曽根国務大臣 いわゆる拡大抑止と申しますのは、これは英語ですとエクステンデッド・ディターレンスという、英語の政治、安全保障上の学術用語の訳ということでございますが、その意味するところは、抑止の提供でございます。

 そのような意味で米国が有します核抑止力が我が国の防衛また安全保障に対して提供されるとの趣旨を記したものとして、昭和五十年八月の三木・フォード共同新聞発表がございます。

 この発表では、「両者は、さらに、米国の核抑止力は、日本の安全に対し重要な寄与を行うものであることを認識した。」そして「これに関連して、大統領は、総理大臣に対し、核兵力であれ通常兵力であれ、日本への武力攻撃があつた場合、米国は日本を防衛するという相互協力及び安全保障条約に基づく誓約を引続き守る旨確言した。」旨記述をしておるところでございます。

 先ほどからお話あります二〇〇七年五月の2プラス2会合の際の共同発表、日米間の共同文書の中で初めて拡大抑止と表現を用いたのは、この2プラス2の会合の際の共同発表でございます。

武正委員 今昭和五十年の文書があるということでありますので、そういった意味で、ここで再確認という言葉も出てきたのかなというふうに思うわけであります。

 日米間での拡大抑止ということ、それから日本の防衛に対する米国のコミットメントを裏づけることの再確認ということでありますが、具体的に、再確認ということは、どのようなことを両政府間で、具体的な、例えば作業とか取り組みとか、そういったものがこれまでされてきたのか、あるいはしていこうとしているのか、具体的な内容があればお答えをいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 ちょっと繰り返しにもなりますけれども、核抑止力を含みます米国の抑止力というのは、もう言うまでもありませんが、我が国の安全を確保する上で極めて重要な役割を果たしております。先ほど委員が共同発表文での核抑止力に関して御紹介いただきましたけれども、これはまさに日本の防衛に対する米国のコミットメントを裏づけることを再確認しているものでございますが、二〇〇六年に北朝鮮がミサイル発射やまた核実験を行ったことを受けまして、これはその翌年に、米国が有する核抑止力が我が国に対して提供されることを日米間で改めて確認する観点から盛り込まれたもの、そういうふうに承知をしております。

 このように、我が国といたしまして、さまざまな機会に米国の核抑止に関するコミットメントを確認するということは、最近のこの北朝鮮情勢を初めといたしまして、アジア太平洋地域に大変不安定で、また不確実な状況が依然として存在する、そういう中で、我が国の安全保障に資するものでありまして、極めて有意義である、そういうふうに考えております。

武正委員 一方、我が国は、核廃絶ということを唯一の被爆国として求めている国であります。そうした中での整合性というものもやはり問われるわけでありますが、一昨年ですか、一月四日、ウォールストリート・ジャーナルにキッシンジャー、シュルツ、ペリー、サム・ナン、核兵器のない世界ということで発表があり、そして、ことし五月六日、アメリカの戦略体制ということで、ペリー、シュレジンジャー、超党派の諮問委員会が報告書をまとめております。

 この中で書かれている文章に、特に日本とは核問題でより幅広い協議の場を設ける必要がある、ただ、日本政府が求めた場合に限る、こういうような記載がその中にあります。

 ちょうど核戦略の体制見直し、いわゆるNPRが、九四年そして〇一年、二年に続いて本年の末につくられるというふうに聞いております。特に〇二年のときには核体制の見直しが、いわゆるブッシュ政権における先制行動論あるいはテーラーメード型の防衛というようなことが打ち出されたわけで、新たな脅威への核攻撃ということに核体制の見直しを〇二年に行ったわけですが、それが途中でやはり議会の反発もあって頓挫をし、そもそも、この新たな脅威への核攻撃が有効なのかどうか、これがアメリカ議会でも議論があり、そういったことも踏まえて、オバマ政権のいわゆる公約、そしてまた、ことしの一月の就任演説、そして四月五日のいわゆるプラハ演説へとつながっているというふうに承知をしております。

 ただ、九四年、〇二年、報道によりますと、アメリカからこの核体制見直しについて日本側に事前の協議、相談というものはなかった、あるいは日本側も公式にそうしたものを求めてこなかったというふうにされております。ただ、今大臣が言及したように、北朝鮮の拉致、核、ミサイルという問題、それが三年前に続いてまたことし起きた中で、アメリカの核抑止力を含んだ拡大抑止、その実態というものをやはり日本政府としても、あるいは議会としても明らかにしていく必要というのがあるんではないのかなというふうに思っております。

 一方、当然、核廃絶というものを掲げる日本のその主張、それとの整合性をどのようにとっていくのか。これはもう大臣も言及している点でありますので。

 ただ、やはり今回のNPRの見直しについて、そうしたやりとりを公式的にも非公式的にもこれまで進めておられるのか。進めているんではないのかという報道がありますが、いかがか、お答えをいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 米国防省が現在策定中の核体制見直し、NPR、これは今後五年から十年間にわたる米国の核政策戦略、核戦力体制、これを定めるものとされておりまして、委員もお話ありましたけれども、ことし末に米議会に提出される予定である、そういうふうに承知をいたしております。

 このNPRにおいて規定されます核戦力は、米国の抑止力を構成する根幹であります。前回二〇〇二年のNPRにおきましては、核体制の新しい三本柱を提示し、そして同盟国の安全保障上必要な最小限の核戦力を維持するとして、同盟国の安全保障に対するコミットメントを重視する姿勢が示されております。

 他方、オバマ政権におきましては、主に核政策やまた核戦力などを担当する国防省の陣容がようやく今固まってきたところでありまして、現在、まさにアメリカの政府部内において、このNPRの作業が始められたところである、そういうふうに理解をしております。そういう米側の現在の状況を踏まえまして、日米間の協議を最も適切な形で進めていきたい、そういうふうに考えております。

 いずれにいたしましても、同盟国であります我が国といたしましては、こうしたアメリカの新政権における見直しの機会もとらえまして、昨今の北東アジアの情勢などを踏まえつつ、日米安保体制のもとでの抑止力の維持強化の観点から、米側に対しまして、安全保障環境に係る日本の認識やまた関心を適宜伝えていくことが重要である、そういうふうに考えております。

武正委員 そうしますと、公式にもそうした協議の場を設けている、あるいはいくということでよろしいでしょうか。

中曽根国務大臣 さまざまな機会をとらえまして、今申し上げました我が国の考え方、日本の認識また関心、そういうものを伝えていくことが大事である、そういうふうに考えております。

武正委員 これまで非公式な場でしか米側に核抑止力の維持を求めていなかったとされる日本、また同盟国の核武装オプション懸念を取り上げることがなかった米国、そういった指摘がある中で、やはりブッシュ政権のときのNPRについては、非常にオープンでない、そうした取り組みだったわけでありますが、今度のオバマ政権でのNPRについては、それをできるだけオープンにしていこうという姿勢のようでありますので、ぜひ公式的な場でいわゆる核抑止力の議論というものをしていくべきだろうと思います。

 ただ、そのときに日本の核廃絶、またオバマ政権が取り上げている核の全廃論、大規模削減論、やはりこれとの整合性というものを踏まえていかないと、いわゆるスポイラー・ジャパンと、アメリカでCTBT、核実験禁止条約などを議会が批准することに対して、それを阻害する要因に日本がなってしまうということはあってはならないということも指摘をしつつ、最後、そうした矛盾をどのように乗り越えるのか。整合性ということは前回から大臣にも言っておりますが、お答えをいただきたい。

 そのときに、資料の二ページ目に戻ります。これは民主党が、また民主党の多くの議員が今そのことに関心を持っている東北アジア非核兵器地帯ということでありまして、世界のいろいろなところで結ばれているこうした非核地帯条約、こうしたことについて、日本がその選択肢の一つとして持ち得るのかどうか。これは今の北東アジアの実態からするとなかなか難しいということも承知をするところでもありますが、こうした核廃絶を掲げながら核抑止力を求めていく、これを進める日本として、やはりこうした非核兵器地帯ということも構想にあっていいんではないかと思いますが、このことも最後に指摘をして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

河野委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 日本・ブルネイ租税協定、日本・カザフスタン租税条約について質問いたします。

 この租税条約は、投資所得の支払いに対する源泉地国課税を阻止するものでありますが、そこで、まず基本的なことを改めて確認したいと思います。

 なぜ、できるだけ居住地国に課税を集約して、源泉地国課税を縮減、制約していくのか。その理由について端的に説明をお願いしたいと思います。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 各国では、一般に、居住地国の課税、それから源泉地国の課税ということの二つを、双方組み合わせた税制を採用しているところでございます。したがいまして、ある国の居住者が居住地国以外で行った投資から受け取る配当、利子、使用料などさまざまあるわけですけれども、そのような所得につきましては、居住地国において課税されることに加えまして、投資国においても源泉地国課税の対象とされるということになるわけでございます。

 租税協定につきましては、二重課税の排除それから両国間における課税関係の明確化、日本と両国との税務当局間の協力体制の整備というふうなことを通じまして、国境を越えて海外に展開する我が国の企業にいわば法的インフラを提供するという趣旨のものでございます。

 今お尋ねの点、源泉地国課税についてはどうしてこれを手当てするのかということでございますけれども、これは源泉地国側にとっては税収をもたらすというものでございますけれども、投資家の側の立場からしますと、この税率が高いというふうな状況であれば、海外へ投資を行うということについての投資意欲を損なうという効果も持ち得るということでございます。

 したがいまして、源泉地国課税につきましては、両国間の投資、経済交流の促進ということから一定の限度を設けるという考え方をとっているというところでございます。

笠井委員 日本からブルネイ、日本からカザフスタンには、主にどういう分野のどれぐらいの数の企業が進出しているでしょうか。

堀江政府参考人 お答えいたします。

 ブルネイにつきましては、エネルギー分野を中心といたしまして十社程度の企業が我が国から進出しております。

 また、カザフスタンにつきましては、大手の商社、製造業、また銀行等を含め、約三十社の企業が我が国から進出しております。

笠井委員 両条約案は、OECDモデルということで、二〇〇三年に締結された日米租税条約の規定がベースとなっていると思います。すなわち、海外投資先国における配当、利子の限度税率、親子会社間の配当の軽減税率の認定を受けるための持ち株比率要件、特許料、使用料等の一連の投資所得に対する源泉地国課税を、日本と他国間で改正された租税条約並みに低率で措置する、こういうことでやるという理解でよろしいでしょうか。

堀江政府参考人 お答えいたします。

 この日・ブルネイ租税協定またカザフスタンとの租税協定は、先生御指摘のように、これまで我が国が諸外国との間で締結あるいは改正してきました租税条約あるいは協定と同様に、国際的な経済活動に伴って発生する二重課税を回避するということを目的としております。また、我が国と相手国との間で課税権を調整するということでございます。

笠井委員 日本の多国籍企業は、投資先各国の外資優遇税制と、各国に展開している海外子会社の法人税などの源泉課税税率の違い及び関税率の違いを、事業収益拡大のてことして利用いたしております。また、日本の多国籍企業内部で取引する財・サービス、技術の価格、いわゆる移転価格は、多国籍企業グループの利潤が最大化するように一定程度操作しているということも知られております。近年、日本の多国籍企業の海外子会社の所得は、事業活動の拡大に伴って急激に増加をしているということであります。

 そこで、両租税協定、条約の内容についてでありますが、使用料について見ますと、先ほどありましたカザフスタンは五%、ブルネイは一〇%となっております。これは、日本が他国と締結する租税条約に沿ったものだということであります。

 経済産業省の第三十五回海外事業活動基本調査、この二〇〇四年度の実績で確認しますと、日本の大企業本社が海外から受け取る投資所得の内訳というのは、例えば非鉄金属部門全体では二十六社で二百十一億五千六百万円、うち配当金が百十三億二千七百万円、五三・五%、使用料が九十三億八千八百万円、四四・四%となっております。

 この源泉地国課税がカザフスタンの五%というふうに措置されるとどうなるか。この使用料は、現地子会社への技術移転が終了するまで支払いが継続的に発生し、さらにこの金額は技術移転の進展とともに増加をしていく。結局、使用料の低減税率が多国籍企業にもたらす恩恵というのは非常に大きい、そういうことになるんでしょうか。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 カザフスタンそれからブルネイについての使用料につきましては、実質的なところで申し上げますと、カザフスタンについては限度税率が五%、それからブルネイについては一〇%というふうな形になってございます。したがいまして、日本から投資が行われ、その結果としてカザフスタンあるいはブルネイで発生する所得というものについて、現地で取られる税率の上限というものが五%、一〇%というふうなことになるということでございます。

笠井委員 そういうことによって恩恵は非常に大きくなるということだと思うんです。

 非鉄金属、資源エネルギー産業の巨大固定資本というのはパテントの塊であって、特許料の低減税率が多国籍企業にもたらす恩恵は大きい。したがって、本条約の発効によって、日本の多国籍企業の現地子会社はさらなる収益強化につながるということになると思います。とりわけ、日本の大企業を見ますと、それでなくても政府の優遇税制措置の積み上げによって、法人課税の実効税率が三〇から三三%台までに既に引き下げられている実態があります。このもとで、日系多国籍企業に対する源泉地国における優遇措置をとるというふうになりますと、これは税の公平負担原則からして非常に問題があるということだと思います。

 次の問題ですが、二〇〇六年に日本とインドの租税条約の際に、インド側が、投資所得の限度税率の引き下げについて、自国の税収を確保する観点から応じられないという主張をして、やりとりがあったというふうに承知しております。

 そこで、中曽根大臣に伺いますが、途上国の源泉地国課税の縮減あるいは制約を図る際の問題がある意味明らかになったと思うわけですけれども、日本政府として、そうした経過も踏まえて、途上国と租税条約を締結する際には、どんな方針で臨んで、どういう点を考慮しているんでしょうか。伺いたいと思います。

中曽根国務大臣 租税条約の締結に当たりましての基本的な考え方を申し上げたいと思います。

 まず、これはやはり、相手国との関係におきましては、経済関係を中心とする二国間関係、それから、相手国の税制、また相手国が他国と締結しております租税条約の状況、また実際上の課税上の問題が生じているかどうか、そういったような点も踏まえまして総合的に考慮をした上で交渉相手国をまず決定していく、そういうことになります。

 一般論として申し上げれば、開発途上国の場合には、自国の税収を確保したい、そういう観点から、源泉地国課税の大幅な軽減には慎重である、そういう傾向が見られます。したがいまして、我が国としては、途上国との間でこういう租税条約を締結するに当たりましては、そういう事情にも配慮をしながら、お互いに受け入れ可能な範囲で租税条約の締結を進めていくということが必要になってくるわけでございます。

 同時に、この租税条約は、もう委員十分御承知のとおり、二重課税の排除を通じて投資交流の促進を図ることで、両国が中期的、長期的に経済を活性化させる、そういう効果も有するものでございますので、そうした租税条約の利点というものも相手国に理解をしてもらうようにできる限りの努力を行っていくということが重要である、そういうふうに考えております。

笠井委員 この際、伺っておきたい問題があるんですが、六月二十四日から三日間、ニューヨークの国連本部で、世界金融経済危機と開発への影響ということで、それをテーマにした国連の会議が開催されると承知しております。これは国連総会の決議に基づくもので、国連の全加盟国百九十二カ国が参加をして、世界金融経済危機を打開して、公正な世界経済秩序づくりの一歩にしようとするものであります。

 そこで、大臣、潘基文国連事務総長は、危機の原因、既存の政策対応や必要な改革を検討する有益な機会だとして、この会合の中では最終日に成果文書を採択するとされておりますけれども、日本政府は、この会議にどのような立場、考えを持って参加をするのでしょうか。いかがですか。

中曽根国務大臣 本日二十四日、きょうから、国連にて、今お話ありました世界経済金融危機と開発への影響に関するハイレベル会合が開催をされます。この会合では、経済金融危機の現状及びその開発への影響について分析を行い、開発への影響緩和のための適切な措置のあり方、そして、危機への対応における国連の貢献などについて議論が行われると承知をいたしております。

 この会合は、先進国のみならず、途上国が参加をいたします国連の場で、今申し上げております世界経済金融危機への対応について議論するものでありまして、途上国を含めた幅広い国々の声も集約される場として重視をされているものであります。

 我が国からは御法川外務大臣政務官が出席をいたしまして、今から申し上げます点を今回強調する考えでございます。

 一つは、世界経済金融危機が途上国の脆弱層に与える影響が大変深刻であり、それに対処するため、分野横断的な包括的取り組みを行う人間の安全保障の考え方が重要であるということ。それから二つ目は、世界経済の回復のためには、先進国と途上国とが一丸となって、あらゆる財政金融上の措置を講じていくということが必要であり、我が国といたしましても、財政措置、アジア支援策等を発表、実施を行います。それから三番目は、危機の状況にありましても、ドナー諸国の既存コミットメントの着実な実施、そして途上国のオーナーシップに基づく持続的経済成長の達成、また開発資金の効果的、効率的活用が重要である、こういう点につきまして強調をする予定でございます。

 今後とも、途上国の声にも耳を傾けつつ、国際社会と協調しながら世界経済の早期回復とその安定化に努めてまいりたい、全力を尽くしていきたい、そういうふうに考えております。

笠井委員 この会議について、デスコト国連総会議長はG192という形で位置づけております。国際経済の問題を主要八カ国、G8や、主要二十カ国・地域、G20だけで議論するんじゃなくて、途上国の声も広く取り入れた国連の場での議論こそ実りがある、そういう考えに基づくものだと言われております。

 そこで、今、中曽根大臣も若干触れられたんですが、先進国などからは、ある意味、今、危機はもう底を打ったとかというふうなことが言われ出したりしております。それ自体、深刻な現実からまだかけ離れているというふうに思うんですが、それだけじゃなくて、途上国にとっては、さらにこれからが金融経済危機の影響が大変なんだという危機感が強いということであります。だからこそ、百九十二カ国、世界全体の持続可能な発展を保障して、貧困国も発展が可能な新しい国際経済秩序を目指そうとしている。先進国が大きな影響力を持つIMFなどの国際金融・通貨の機構や体制の改革も、この議論のテーマの中に含まれております。

 そこで、大臣、先進国の視点が優先される議論の場だけじゃなくて、こういった途上国の国民の苦しみにも正面から光を当てようという考え方について、どのように評価されているでしょうか。

中曽根国務大臣 我々は、自国のことのみならず、世界全体の平和、安定、そして特に現在の状況におきましては、経済危機、金融危機の一刻も早い解決というものに努力をしておるわけでありますし、そうでなければならないわけでありますが、途上国についても常日ごろから支援を行っていることは委員も御承知のとおりであります。

 昨年、横浜におきましてTICAD4を開催し、また、私もボツワナで開催されましたTICAD4のフォローアップ閣僚会議に出席いたしまして、このTICAD4、横浜で開催されたときに約束をいたしましたアフリカへのODAを倍増ということにつきましても、改めてその会議の場で、日本はしっかりと約束を守りますということを表明し、このアフリカでの会議のアフリカ諸国の声というものを、ロンドンにおいて開催されます、今から申し上げると開催されましたですが、G20の会合でもこれを表明しますということをアフリカの会議でも私は述べたところでありまして、途上国のこういう経済的な発展また危機状況の回復のために各国が一致協力して努力していくということは、我々も大変重要なことだと思っております。

笠井委員 今日の金融経済危機というのは、米国で蓄積されてきた生産と消費の矛盾、過剰生産恐慌によって引き起こされたものであります。その影響を世界各国が受けているわけですが、経済力の小さい途上国にとっては対応策も一層厳しいものとなります。今回の会議で採択を目指す成果文書案というのは、四月のG20ロンドン・サミットが取り決めた一兆一千億ドルの危機対応措置のうち、貧しい国に向けられたものは二百億ドルにも満たないと指摘しております。危機を緩和するための短期的措置として、何より最貧国の保護に焦点を当てるように求めております。

 こういう問題も含めて、先進国日本が文字どおりふさわしい役割を果たすべきだということを強調して、質問を終わります。

河野委員長 次に、日森文尋君。

日森委員 社民党の日森文尋でございます。

 きょう、ちょっと風邪を引いておりまして、お聞き苦しいところもあるかもしれませんが、豚、鳥、そのいずれをかけ合わせたものでもございませんので、ぜひ御心配なさらないでいただきたいと思います。(発言する者あり)ありがとうございます。やはり同郷は大変うれしいと思います。

 カザフスタンとブルネイ、いずれも石油や天然ガス、これらが豊富な資源国というふうに言われております。租税条約というのはお互いの投資の促進を目的にする条約だ、こう理解をしております。したがって、カザフスタンとブルネイ、この条約を結ぶに当たっては、エネルギー資源開発への日本からの投資を促進するということが主要な目的になっている、こう理解してよろしいかどうか、まずお聞きをしておきたいと思います。

中曽根国務大臣 本日の委員会で今まで議論されてきましたけれども、我が国が諸外国との間で締結をしてまいりました租税条約と同様に、国際的な経済活動に伴って発生いたします国際的な二重課税を回避するとともに、両国間での投資交流を促進するために投資所得に対する源泉地国課税を軽減する、これが目的でございます。

 御指摘のとおり、カザフスタンは、石油それから天然ガスなどのエネルギー資源、またさらにウランなどの鉱物資源に恵まれた資源大国でございます。また、我が国は、海外から輸入する天然ガスの約一割をブルネイから輸入しているところでございまして、今回の条約の締結によりまして、我が国とカザフスタン及びブルネイとの間の二重課税回避や、また投資所得への源泉地国における課税軽減の制度が整備をされることによりまして、両国との間の投資、経済の交流が一層促進され、その結果、エネルギー資源分野を含む我が国とカザフスタン及びブルネイとの経済関係全体が一層強化される、そういうことが期待されているところでございます。

日森委員 経済力の関係からいえば、恐らく日本からの投資ということが主要な目的になるのではないかというふうに思いますが。

 そうすると、エネルギーの資源が大変豊富だという国々との租税条約を結ぶということになります。こうすると、日本のエネルギー戦略とのかかわり、とりわけ、特に地球温暖化戦略と言っていいと思うんですが、との関係でどういう位置づけがされているのか、これについてお聞きをしたいと思います。

谷崎政府参考人 先ほど大臣の方から御答弁ございましたとおりでございますが、この租税条約の締結によりまして、日本それからカザフ、ブルネイとの間で資本、人的資源等の交流が一層促進する、その結果、二国間の経済関係はさらに強化されるということが期待されております。

 その中で、特に豊富なエネルギー資源を有するカザフスタン及びブルネイとの経済関係でございますけれども、我が国は、御案内のとおり、原油輸入の九割を中東から輸入しているという現状の中で、我が国のエネルギー供給を多様化することができるということでございます。したがいまして、この租税条約はそういう観点からも非常に重要だというふうに考えております。

 第二点目の地球温暖化との関連でございますけれども、カザフスタンに豊富に埋蔵されておりますウラン、また我が国のブルネイからの輸入の大宗を占めております天然ガス、この両者とも我が国が温暖化ガス削減を進める上で極めて重要な産品というふうに考えております。そういう観点からも重要ということでございます。

日森委員 一九九五年にカザフスタン政府が日ソ租税条約の適用を終了させたというふうに聞いておりますが、そのときの理由と、今回の日本・カザフスタンの条約を締結するに至るまでの経緯について、改めてお聞きをしたいと思います。

谷崎政府参考人 今御質問にありましたとおり、日ソ租税条約が存在していたわけでございますけれども、これにつきまして、カザフスタンの方が、カザフスタンの事情により終了したいということがございました。したがいまして、我が国としては、その詳細な理由というのを把握しているわけではございませんが、基本的に、日ソ租税条約とそのときのカザフスタンの国内税制との関係を調和あるものにする必要があるということ、それから、我が国以外の先進国が同じようにソ連と締結していた租税条約についてもカザフスタンは終了通告を行ったということがございます。以上を踏まえた上で、日本としても終了の意思を示したということでございます。

 また、今般の日本・カザフスタンの租税条約の交渉経緯でございますけれども、これにつきましては、二年前の平成十九年十二月以来、カザフスタン政府と交渉を行ってまいりました。条約案文につきましては基本合意をし、昨年の十二月十九日でございますけれども、東京において、中曽根外務大臣と駐日大使との間で条約の署名を行うということに至った次第でございます。

日森委員 先ほど、カザフスタンの経済が我が国の経済の理念と一致をしているんだということで、一定の発展があったということで恐らく新たに租税条約を結ぶということもあるのではないかというふうに思います。

 それで、先ほど若干触れられておりましたが、〇六年の八月に、小泉当時の総理大臣が「日本国とカザフスタン共和国との間の友好、パートナーシップと協力の一層の発展に関する共同声明」というのを発表いたしまして、カザフスタンのウラン鉱山開発、ウラン製品及び核燃料加工役務の日本市場への提供を含む原子力分野における協力ということを強調されました。

 今回のカザフスタンとの租税条約は、こうした協力関係にとってどのような具体的な効果をもたらしていくのかということについてお聞きをしたいと思います。

中曽根国務大臣 カザフスタンは、石油、天然ガスなどのエネルギー資源それからウランなどの鉱物資源に恵まれた資源大国でありまして、我が国資源外交上、大変重要な位置を占めておるわけでございますが、今御指摘の共同声明、これもそのような両国間のパートナーシップの重要性を踏まえたものでございます。

 日本企業の現地進出も進んでおりまして、この条約の締結によりまして、我が国とカザフスタンとの間の二重課税回避の制度が整備をされるとともに、お話ありました原子力分野も含めまして、両国間の資本それから人的資源の交流が一層促進されることが期待をされているところでございます。

日森委員 特にウラン鉱山ということが大変焦点になっていると思うんですが、これまでオーストラリアとかカナダとかいうところから中心に輸入をされてきたんですが、カザフスタンとの協力関係、これが一層強化をされるという御答弁がございました。そうすると、特に、恐らく焦点の一つであるウラン資源をどのように日本側で利用していくのか、その計画について、できる限り具体的にお示しいただきたいと思います。

柴山大臣政務官 委員御承知のように、我が国は、平和的目的に限って利用するために、主に原子力発電所等の燃料として、カナダ、豪州等の諸外国のウランを輸入しております。

 それと同様に、二〇〇七年六月、カザフスタンとの原子力協定締結交渉を開始する中で、原子力の平和的利用及び核不拡散等を担保するのに十分な内容の協定を作成すべく、現在、鋭意交渉を行っているところであります。

日森委員 先ほども出ましたが、オバマ大統領のプラハ演説というのがございました。核の廃絶に向けて我が国も努力を行うというふうに中曽根外務大臣もおっしゃっておりまして、「ゼロへの条件 世界的核軍縮のための「十一の指標」」というのを発表されました。核不拡散はそのための重要な要素だというふうに私どもは理解しています。

 先ほどと同じ答弁かもしれませんが、カザフスタンと原子力協力を進めるという中にあって、どのような努力が進められているのか、もうちょっと具体的にお示しいただきたいと思います。

柴山大臣政務官 委員の御質問ですけれども、個別具体的な計画については、商業上の考慮も必要であることもありますので、ちょっとこちらでの説明を差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、カザフスタンは、ウラン資源の供給国として大きな可能性を有しているわけですから、ここからウランを輸入できれば、将来、我が国の原子力発電の安定的な運転にとって有益であるというように考えておりますので、そういう方向で交渉を進めております。

日森委員 中央アジアプラス日本、これも先ほどどなたか御質問がありましたが、ちょっと違う角度で御質問したいと思うんです。

 当時外務大臣だった麻生総理が、中央アジア非核地帯条約案起草のために資金を拠出して非核兵器地帯創設を支援する意向というのを示しておるわけです。中央アジア諸国は、先ほど武正委員の御質問にございましたけれども、五カ国が非核地帯を宣言している。中央アジア諸国もその早期署名に向けて核兵器国を含む関係国間の協議を実施するということになっているんですが、この点について、カザフスタンとの確認は既に行ったのかどうなのかということについてお聞きをしたいと思います。

柴山大臣政務官 お答えいたします。

 御指摘の条約は、中央アジア五カ国の批准を得まして本年三月二十一日に発効しておりますけれども、本件条約が実効性を伴って機能するには、核兵器国の義務を定めた議定書、これが発効することが望ましいわけで、我が国としては、核兵器国との協議の現状を含め、カザフスタンを含む中央アジア五カ国に対して確認を行うなど、関連の動向を注視してきました。しかし、現時点でそのような協議が行われたとは承知をしておりません。

日森委員 ぜひ努力を一層されるようにお願いをして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

河野委員長 これにて両件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

河野委員長 これより両件に対する討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。笠井亮君。

笠井委員 私は、日本共産党を代表して、日本・ブルネイ租税協定及び日本・カザフスタン租税条約の締結承認に反対の討論を行います。

 本協定及び条約案は、二〇〇三年に締結された日米租税条約の規定がベースとなっています。すなわち、海外投資先国における配当、利子の限度税率、親子会社間配当の軽減税率の認定を受けるための持ち株比率要件、特許料、使用料等の一連の投資所得に対する源泉地国課税を、日本と他国間の改正済みの租税条約並みに低率で措置することがその主な内容であります。

 日本の多国籍企業は、投資先各国の外資優遇税制と、各国に展開している海外子会社の法人税などの源泉課税税率の相違及び関税率の相違を、事業収益拡大のてことして利用しています。また、日本の多国籍企業内部で取引する財・サービス、技術の価格、いわゆる移転価格は、多国籍企業グループの利潤が最大化するように一定程度操作していることも知られています。こうして日本の多国籍企業の海外子会社の所得は、事業活動の拡大に伴い、近年急激に増加しているのであります。他方、日本国内においては、我が国政府が優遇税制措置を重ねてきたことにより、法人課税の実効税率が既に三〇から三三%台にまで引き下げられているという恩恵を受けています。

 こうしたもとで、本協定及び条約が締結されれば、現地子会社を持つ日本の多国籍企業にさらなる優遇税制を積み上げることになり、これは税の公平負担原則の観点から見て容認できません。

 以上をもって、討論といたします。

河野委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

河野委員長 これより採決に入ります。

 まず、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とブルネイ・ダルサラーム国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河野委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とカザフスタン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河野委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

河野委員長 次回は、来る七月一日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時一分散会


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