衆議院

メインへスキップ



第5号 平成23年4月13日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十三年四月十三日(水曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 小平 忠正君

   理事 吉良 州司君 理事 首藤 信彦君

   理事 長島 昭久君 理事 西村智奈美君

   理事 山口  壯君 理事 小野寺五典君

   理事 赤松 正雄君

      浅野 貴博君    大泉ひろこ君

      勝又恒一郎君    菊田真紀子君

      櫛渕 万里君    阪口 直人君

      道休誠一郎君    中津川博郷君

      中野  譲君    萩原  仁君

      浜本  宏君    早川久美子君

      伴野  豊君    森山 浩行君

      山尾志桜里君    河井 克行君

      河野 太郎君    高村 正彦君

      松野 博一君    笠井  亮君

      服部 良一君

    …………………………………

   外務大臣         松本 剛明君

   外務副大臣        伴野  豊君

   農林水産副大臣      篠原  孝君

   防衛副大臣        小川 勝也君

   外務大臣政務官      菊田真紀子君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         實重 重実君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房参事官)           藤本 一郎君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院原子力災害特別対策監)        深野 弘行君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院審議官)   中村幸一郎君

   外務委員会専門員     細矢 隆義君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十三日

 辞任         補欠選任

  大泉ひろこ君     森山 浩行君

  山花 郁夫君     櫛渕 万里君

同日

 辞任         補欠選任

  櫛渕 万里君     山花 郁夫君

  森山 浩行君     大泉ひろこ君

    ―――――――――――――

四月十二日

 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とヨルダン・ハシェミット王国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一四号)(参議院送付)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とスイスとの間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一五号)(参議院送付)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とオランダ王国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第一六号)(参議院送付)

 日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とオーストラリア政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一七号)(参議院送付)

 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一一号)

同月六日

 思いやり予算の削減・廃止を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第五〇七号)

 同(笠井亮君紹介)(第五〇八号)

 同(穀田恵二君紹介)(第五〇九号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第五一〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第五一一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第五一二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第五一三号)

 同(宮本岳志君紹介)(第五一四号)

 同(吉井英勝君紹介)(第五一五号)

 普天間基地の無条件撤去に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第五一六号)

 普天間基地の無条件返還を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第五一七号)

 同(笠井亮君紹介)(第五一八号)

 同(穀田恵二君紹介)(第五一九号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第五二〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第五二一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第五二二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第五二三号)

 同(宮本岳志君紹介)(第五二四号)

 同(吉井英勝君紹介)(第五二五号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第五三六号)

 同(笠井亮君紹介)(第五三七号)

 辺野古新基地建設計画の撤回、核密約の公表・廃棄と日米地位協定の抜本改定を求めることに関する請願(笠井亮君紹介)(第五二六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一一号)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とスイスとの間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一五号)(参議院送付)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とオランダ王国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第一六号)(参議院送付)

 日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とオーストラリア政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一七号)(参議院送付)

 国際情勢に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

小平委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 政府から趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣松本剛明君。

    ―――――――――――――

 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

松本(剛)国務大臣 ただいま議題となりました在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明いたします。

 改正の第一は、東南アジア諸国連合日本政府代表部の新設を行うことであります。

 改正の第二は、インドネシアにある在ジャカルタ日本国総領事館等五つの兼館総領事館の廃止を行うことであります。

 改正の第三は、在外公館に勤務する外務公務員の在勤基本手当の基準額を改定することであります。

 改正の第四は、在外公館に勤務する外務公務員の子女教育手当の支給に関する制度を改正することであります。

 以上の改正内容のうち、在勤基本手当の基準額の改定及び子女教育手当の支給に関する制度の改正については、平成二十三年度予算の適正な執行の観点から、できる限り速やかに実施する必要があります。

 以上が、この法律案の提案理由及びその概要であります。

 何とぞ、御審議の上、本件につき速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

小平委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

     ――――◇―――――

小平委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官實重重実君、大臣官房参事官藤本一郎君、資源エネルギー庁原子力安全・保安院審議官中村幸一郎君、原子力安全・保安院原子力災害特別対策監深野弘行君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小平委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。首藤信彦君。

首藤委員 民主党の首藤信彦でございます。

 まず最初に、冒頭、東日本大震災、津波そして原子力災害におきまして、未曾有のこの危機におきまして、一刻も早く状況を正されて、被災された皆さんには普通の生活に戻れるように、そしてまた原子力事故に関しましては、これを安定化の方向へ導くようにされている皆さんに心よりの感謝を申し上げます。また、お亡くなりになった方には心よりのお悔やみを、そしてまた多くの被災された皆さんにはお見舞いを申し上げたいと思います。

 さて、その東日本の大震災でございますけれども、これに対しては、外務省のホームページによりますと、百三十四カ国からさまざまな形で支援が行われ、その中には、日本と近隣のアジアの国、あるいは大国以外からも、本当に小さい国からも、早い時期からその国が持てる最善のものを送っていただけたということで、深く感謝しているわけでございます。

 それに対して、最近、菅総理から「絆」というメッセージが海外に、一般紙に新聞広告として出されているわけですが、それは本当にすばらしいことだと私は思っております。しかし、その内容を聞きますと、例えば一カ国一紙であるということでありまして、そこで述べられた、実際に具体的に選ばれた一般紙というのも、必ずしもその国を、私の管見でございますから限られた知識でございますけれども、本当にその国を代表しているのかなというのが疑わしい、疑わしいと言ったら語弊があるかもしれませんけれども、疑念がある、そういう状況がございます。

 例えば、アメリカではウォールストリート・ジャーナルになりますけれども、これはもう本当に日本もよく知っている、国際的なことを知っている、国際的なビジネスを知っているという人たちが見るわけで、多くのアメリカの皆さんが見るわけではない。また、アメリカは非常に広大な地域なので、例えばニューヨーク・タイムズとロサンゼルス・タイムズと、根本的に違うわけですね。それからまた、アメリカは世界の中心でもありますから、例えばワシントン・ポストに載れば、そこにいる各国の外交官がみんなそれを見ることができるということで、その意味で、例えばアメリカでの広報活動がウォールストリート・ジャーナルであるのは、余りにも偏った、狭い広報活動ではないかというふうに思わざるを得ないんですね。

 それから、お隣の韓国を見ても、これはもう皆さんも御存じのとおり、朝鮮日報があれば東亜日報があり、それぞれ論陣を張っているわけでございまして、最近では、韓国ではハンギョレ新聞とか、インターネット系統のいろいろなメディアも出ている。日本を支援したいという多くの皆さんの気持ちがあらわれているわけですから、そういうところにも出すとか、それから、例えば日本との外交関係が百五十周年だと言っていたドイツは抜けているとか、あるいはまたお隣の台湾が抜けているとか、いろいろな問題がある。

 何でこんな問題があるんだということを聞いたら、いや、それは内閣府の広報予算で三千五百万円しかなかったので、これしかありませんでしたと言うんですけれども、これはもう順逆が逆ではないか。やはり必要なやるべきことというのがあって、それに対して予算をつけるので、予算がこれですからこれで我慢してちょうだいというのは、広報の根幹が問われるような問題だと思うんですよね。

 ですから、確かに、内閣広報室の予算が三千五百万であっても、一定の価値、一定の効果を生むような予算にしていかなければいけない。それは、外務省のさまざまな予算や、あるいはかつて問題となりました機密費などという表現がありますけれども、そういうようないろいろな形での予算があるわけですから、やはり最低限、今の早い時期に、多少は、満遍なく、援助いただいた国にしっかりとメッセージがつながるようにしていただきたい。

 また、これは、ただ単にいただいたからやっただけではなくて、ある意味でのすばらしい外交の機会なわけですね。大変なピンチでありますけれども、同時に、日本の姿勢というものを世界につなげる大きなチャンスであります。

 ですから、例えばインドネシア語、バハサ・インドネシアといいますけれども、インドネシア語で出すとか、あるいはフィリピンであれば、フィリピン人は英語がわかるというんじゃなくて、タガログ語で出してもらう、タガログ語の大衆紙に出すとか、本当にこれは一つの日本の姿勢というものを世界の皆さんに知らせる、広報活動としては非常に効果を生むチャンスでございますから、もうちょっと、この三千五百万、内閣府の予算というだけじゃなくて、外務省の総力を挙げてこれをやっていただきたい。

 今は本当に日本の国力自体が非常に弱まっていますから、こういうときこそ外交は命なんですね。ですから、その思いでやっていただきたいと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

松本(剛)国務大臣 尊敬する首藤委員の、それはある意味ではおっしゃるとおりであろうというふうに思っております。私どもとしても、やはりまず、そもそも謝意を伝えるという意味でも、ぜひ広く伝えたいと思いましたし、日本からのメッセージという意味ではおっしゃるとおりだというふうに思っております。

 その上で、一つは、もちろん予算の制約ということそのものもありますけれども、広告そのものが有料であるということを考えますと、今全体として、もちろんこの広告の予算の金額とはけたの違う話ではありますけれども、復興等に少しのお金でも振り向けていくという中で、どのようにお金を使っていくかということで議論をいたしました結果、ぎりぎりこの範囲内であれば可能ではないかということで、予算の枠を設けた中でさせていただいたところであります。

 おっしゃったように、大変限られた新聞に広告を掲載したわけでありますが、とりわけ英字三紙に関しましては、効果的にということで、いわゆるワールドワイド版ということで、国際版のような形のものに掲載をさせていただくことで、少しでも広く伝わるようにということを努力させていただきました。

 また、ネットという意味では、ホームページの掲載を充実させるということで、今お話がありましたように、やはり幅広い言葉で伝えることが必要だということで、現在、現地語三十数カ国語に広がるように作業を行っているところであります。

 なお、私どもの努力という意味では、大使館等にも、現地のマスコミなどにも働きかけをいたしまして、このような広告を出すということで、対応などをいろいろ相談させていただいたところ、結果としては、無料でそれでは掲載をしましょうという国々が、新聞紙が多数出てまいりまして、四月十二日、昨晩の段階で確認をされたところでは、十五の国・地域、六十七紙に無料で掲載をしていただくという形で、言葉もそれぞれ現地の言葉などに訳したものも含めて広く伝えていただいていることになっていると思いますが、引き続き、さまざまな方策を考えて進めていきたいというふうに思っているところでございます。

首藤委員 松本大臣、就任間もないからしようがないのかもしれませんけれども、それは外務官僚の発言であって、大臣の発言ではないですよ。こういうときには、大きく、本当にどういう方向性を持って進むのかをやはり明確に示していただきたい。各国がどのように、無料で出してくれるとかいうのは、それはわかっております、説明も受けております。しかし、外務省としてどういう方向性を持って広報に取り組むか、その決意をぜひお伝え願いたいんですよ。

 それは、やり方は幾らでもあります。これを機会に、各国の商工会議所とか日本の在外のさまざまな会議所とかいろいろありますね、そういうところを、例えばマッチングファンドにするとか、いろいろな手段があると思うんですよ。ですから、それは現場でどんどん取り組んでいただきたい。

 しかし、松本大臣、やはり大臣として、いろいろ日本の状況は苦しいけれども、このときこそ外交で頑張る、この瞬間に日本の外交の質が劣化していくのではなくて、この瞬間にむしろ外交の質を高めていく、そういう意欲を持って取り組んでいただきたいと思うんですよ。

 その一つの手段が、やはり特使の派遣だと思うんですよ。もう百三十四カ国あるんですけれども、その国のすべてとは申しませんけれども、そのかなりにさまざまなチャネルを通して特使を送っていただきたいと思います。それは、外交官でなくても、それから政務三役でなくても、それから国会議員でなくても、国会議員であってもいいと思いますけれども、国会議員でなくても、その国と非常に、だれでも知っている民間人もたくさんおります。ですから、そういうような形で、また、自費で行ってもいいという人も中にはいるかもしれません。さまざまな形で現地社会にどんなに感謝しているかというのを話してもらう。

 それを、たった一枚のA4サイズの広告ではなくて、その人がいろいろなメディアに出ていろいろな話をしてもらったり、日本の被災している人たちの、でも頑張っている人たちの写真を見せたり、あるいは、小学校へ行って日本の小学生も頑張っていますよみたいな話をする。それが物すごい外交効果を生むわけですから、外務大臣、ぜひ特使をこの機会に大々的に派遣するということも考えていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

松本(剛)国務大臣 日本からぜひメッセージを伝えなければいけないという御趣旨はおっしゃるとおりだろうというふうに思いますし、また、ぜひその決意を持って臨んでいきたいと思います。

 特使の派遣というのは、一つのアイデアとして、今お話を伺って、私も、そういう御提案、考え方をいただいたということも踏まえて、今後のやり方を考えていきたいと思っております。

首藤委員 外務大臣、これはぜひ広報活動を、今、本当に外交がいろいろな、ある意味で手が縛られている状況の中で、広報というのは自由闊達にできるわけですから、外務省の総力を挙げて広報活動に取り組んでいただきたい。世界じゅうが見ておりますから、ほんのちょっとやっただけで物すごい効果を生むので、これは日ごろの広報に倍加してぜひ注力していただきたいと思います。

 こうした状況の中で、私は本当にショッキングな話を聞いたんですけれども、それは、私たちの、我が党とも関係があるのかもしれませんけれども、多くの政治家の中から、これは地域から選ばれている政治家としては当然の判断でございますけれども、被災した人、被災地の回復にこれだけのお金もかかる、原発の状況もよくわからない、こういうところで、例えば、不要不急のお金を使わずにそういうところへ回していくべきだ、予算も組み替えてやるべきだ、それはよくわかります。

 しかし、ある考え方の中には、例えばODA予算も減らそうとか、また、ODAの二割なんといって、もう数値まで入れて二割を出して、それで削れというような話も出ているわけですけれども、まあ、ただのお話だと思いますけれども、こんなことは絶対に許してはいけない。絶対に許してはいけないことでございます。

 外交というものは本当に継続性があり、しかもこのODAというのは本当に我が国の、平和国家日本の、軍事力を持たない、海外への軍事的派遣力を持たない日本の貴重なソフトパワーであるわけですね。ですから、言うなれば、これは日本の正面防御みたいなものでございますから、何が何でも守っていかなければいけないと私は思うんです。

 また、こういうときに、だれが考えたって日本は大変な苦労をしているだろう、恐らく国家予算の四分の一ぐらいはもうそれで使っているんだろう、そういうときにも日本が、しかし、我が国のような、小さいけれども、世界の片隅だけれども、苦しんでいるんだけれどもそこへきちっと援助してくれたということは、その国にとってどれだけのありがたみを持つかですよね。

 日ごろ何もないときに、私が子供のときお父さん、お母さんからお小遣いをもらって、お小遣いをもらったってそんなのすぐ使っちゃうんですけれども、本当に苦しいときに、お金がないときにもらったお小遣いというのは、ああ、お母さんにあのときにもらったなというのを今でも覚えているんですよ。

 ですから、やはり日本がそういうような状況にあるときにきちっと出してくれたというのはすごくいいと思うんです。言うなれば、日本の今だんだん少なくなっていくODAが二倍に評価される最高のチャンスなわけですよね。そのすばらしいチャンスをみずから放棄してちょっと削りますよなんと言ったら、せっかくのすばらしい効果がなくなってしまうんですよね。絶対にそれはやめていただきたいと思うんですよ。

 また、この問題に関しては私たちも反省するところはありますよ。ODAは何かということの国民的な議論がしっかりされていないですよね。ODAは金持ち国の道楽ではないんですよ。これは、だんだん苦しくなっていく、財政的にも苦しくなってくる、世界有数の借金を抱えてくる日本の中で、日本の経済を、産業を、日本の輸出を守ろう、そういうためにぎりぎりの選択で、削り、削りしてやっているわけなんですね。言うなれば、日本の生命線なんですよ、ODAというのは。

 余りこんな話をしたくありませんけれども、例えば、井戸に誘い水という言葉がございます。空井戸をポンプでやっても水が出ない。そこに水をつぎ込んで、その井戸の、ちっちゃなポンプなんですけれども、水を入れたことによって、下の水とつながり、それで水が出てくるわけですね。手こぎのポンプというのは皆さん知らない方もおられるかもしれないけれども、ポンプというのはそういうものなんですよ。最初に水をだれかが満たしてあげなきゃ、水を吸い上げられないわけですよね。

 ですから、まさにODAというのは、もちろん、あなたの国のためだと言っているところは本当にそうだし、また、人類のためにやっているのもそのとおりです。しかし、我が国のためにも大きくなっているんですよね。これは、情けは人のためならずという言葉がございますけれども、本当にそういうことは日本のためになっているから、これだけODAというのは発展し、維持されているわけなんですよ。ですから、今こういうときにそれをなくしていくのは本当に大きな問題があると思うんですね。

 例えば、日本で今、海洋汚染がある、あるいは大気汚染がある、そんな中で、なぜ、まだ一応、この段階で世界の批判が日本に向かっていないか。これは後で話しますけれども、海洋法条約からいっても、この行為はおかしいんですよ、違反なんですよ。しかし、世界からどうして、わあっと太平洋の諸国から日本に対する激しい突き上げが国連でも出ないかというと、それはやはり、日本の今までの長年の血のにじむような現場での、JICAの皆さんを含めての努力とか、そして、こういうときにも頑張っているという日本の姿勢があるから、みんなぐっと、のどまで出る日本への批判を抑えているわけですよ。それを解放するようなことは絶対あってはいけない。ですから、ぜひそれはしっかりと守っていきたいと思うわけでございます。本当に、ODAは日本の生命線だということをぜひ理解いただきたい。

 最後に、よく最近では、僕は余り好きな言葉じゃないですが、日本の矜持という言葉がありますね。襟を正してしっかりする。このことは、日本がこんなに苦しんで、こんなに予算がないときに、こんなに膨大な投資をしなきゃいけない、災害復興をしなきゃいけないときに、日本が一銭も削ることなくODAをやり、現場のエイズ対策をやっている医者にもしっかりと同じものが、同じ量の薬が行き、現場で日本語を教えている現地の人たちにもしっかりと給料が払われていくというのが、現場の皆さんにどんなに誇りを与えるか。

 私は、こういう現場によく行きましたけれども、もうそのシーンが目に浮かぶようですよ。注射を、ポリオの薬をやっているパキスタンの皆さん、バングラデシュの皆さんもアフリカの皆さんも、その医者の皆さんは、日本知ってるだろう、あの津波ひどいだろう、その日本の皆さんから皆さんにと思って送ってきたんだよと言って、必ず薬を分けてくれるんですよ。

 今、日本の外交官のスタッフが減っていると言われていますけれども、これはもう世界じゅうが日本の外交官になってくれるんですよ。ですから、これは絶対に維持しなきゃいけないと思います。これが、言うなれば日本の矜持なんです。これが、貿易国家日本の矜持なんですよ。世界の中では、このことが日本を守ってくれるんですよ。これはぜひ維持していただきたい。

 よくソフトパワーという言葉がございますよね。日本のソフトパワーというのは、研究会なんかでも、日本のお茶のセレモニーとかいうのをやろうと。そうじゃないんですよ。ソフトパワーというのはこれなんですよ。日本がこんな状況の中でも、世界の末端の最も深刻な、最も忘れられた人たちにもしっかりと日本が援助をやっている、このことが日本に対する膨大な支持になって、これは日本が常任安保理事国になるよりも、それ以上の日本への防御壁となるわけなんですね。ですから、これこそ日本の矜持である。

 これを、そうはいっても、そこのところはちょっと削れるものは削ってなんということがありますけれども、そうではなく、これは日本の矜持として、びた一円も、びた一銭もまけることなく、しっかりとこの時期に守っていただきたい、死守していただきたい、堅持していただきたい、切にお願いしますけれども、松本大臣の覚悟をお伝え願いたい。

松本(剛)国務大臣 もう私から申し上げることは何も残っていないと思うわけでありますが、今首藤委員お話しいただいたように、私自身も副大臣、大臣を経験して、各国の方とお会いをする中で、まさにおっしゃったように、いわば質を伴った日本のODAの量というのがいかに高く評価をされているか、効果があるかということは、そもそもODAの意義として、それぞれの国に対する有意義な支援になっていると同時に、まさにおっしゃったように、日本に対する評価、信頼というものにしてはね返ってきていることは全くおっしゃるとおりであろう、こういうふうに思っております。

 おっしゃったように、大変厳しい財政事情の中でいろいろな議論があるということは事実でありますけれども、私としては、ぜひとも、今お話がありましたように、現場に届くODAが途切れるようなことがあってはならない、また国際的なコミットメントを撤回するようなことになって信頼を失うようなことになってはならない、その思いでしっかりと申し上げるべきことを申し上げていかなければいけないと思っているところであります。

 大事な点は、これも今首藤委員からお話がありましたが、広報、国際的な広報も必要でありますが、ODAを含む外交についての国内の理解というのが大変重要だという点は御指摘のとおりでありまして、今回の議論の中でも、ODAについて御理解をいただいておるのではないかと思われるような方々からもODAの削減の意見が出てくるということは、私にとっても悲しいというか痛恨のきわみでありまして、しっかりとまた御理解を得られるように努力をしていきたいと思っております。

首藤委員 広報のことをまた引き継ぎたいんですけれども、やらなきゃいけないんですが、これは総力を挙げて外務省に取り組んでいただきたいんですよ。そして、多くの人材をつぎ込んで、この貴重な経験をまた外務省の資産としても生かしてほしいんですよ。

 というのは、英語で、ザ・ワースト・イズ・イエット・カム、要するに最悪の事態はまだ来ないという話がありますけれども、今回苦しんでいますけれども、まだこれから、こういうような状態の中では、火山噴火とか、もっと自然災害があるかもしれない、それからさまざまな問題もあるかもしれない、原子力災害もあるかもしれない。まだ日本はこんなに余裕があり、最悪の状態ではないんですよ。ですから、その意味で、今こそ、外務省の持てる外交、広報能力というのを高めるためにも、総力をかけてやっていただきたいんですね。

 しかし、現実はどうか。昨日も、事故の損害のレベル、危機のレベルがチェルノブイリクラスだ、レベル7だという話があり、さらに昨日はストロンチウムまであったと。こういうことが何でだらだらと、各国がいら立って反応しなきゃいけないような形で流れるのか。ストロンチウムに関しても、ヨードが出れば一定割合でストロンチウムは出てくるということがわかれば、ヨードが出て、ヨードに対する批判がある程度おさまったそのときに、もう既にどういうものが出て、どういうリスクがあるか、それに対してどういう対策があるか、どの程度の被害があるかというのがわかっていれば、それほどの激しい反応はないんです。

 しかし、もう常に後追い後追いで出ているために、またこんなことがあった、またこんなことがあったと。私もCNN、BBCを議員室でモニターしていますけれども、朝から晩までそれが出てくるじゃないですか。そのことがまさに日本の外交力、日本の地位を国際的に低めているわけでございますから、ぜひ外交能力をしっかり高めてもらいたい。

 これはリスクコミュニケーションなんですよ。外務省の皆さんもやっているやっていると言うんですけれども、それはコミュニケーションなんです。そうじゃなくて、リスクコミュニケーションというのは違うカテゴリーなんです。リスクコミュニケーションというのは、非常に危機的な状況において相手の対象となる人たちが正しい反応、正しい動きをするように、それをきちっと求める形でのコミュニケーションの流し方なんです。これは普通のコミュニケーション、普通の外交的な広報と違うんです。

 ですから、これは、専門家を入れて国際的なリスクコミュニケーションをどうやるかということを、日本には専門家はおりません、ですから海外のさまざまな機関をお使いになる、これはお金もかかりますけれども、そういうことにこそ外交機密費というのは使うべきであって、そうしたリスクコミュニケーションを特にやっていただきたいと思うんです。

 というのは、やはり今非常に問題になっているのは、海洋投棄の問題ですね。海洋に放水し、放出しているということでございます。これは外務省との関係で特に問題となるわけですけれども、海洋法条約、特に「第十二部 海洋環境の保護及び保全」、例えば「総則」の百九十二条「一般的義務」に「いずれの国も、海洋環境を保護し及び保全する義務を有する。」とありまして、それから百九十四条に「海洋環境の汚染を防止し、軽減し及び規制するための措置」とか、要するに、海国日本、海洋国家日本、貿易国家日本にとって、海洋法条約というのは物すごく貴重なわけで、これによって守られてきたわけですけれども、まさに、日本がそれに対して抵触するような行為なんですよ。

 ですから、これはもう本当に深刻に考えて、これにどういうふうにみんなが反応してくるか、これを察知し、例えば、国連の安保理でこれが議論されても実はおかしくない問題なんですよ。そういうことに関して、国連の事務総長を含め、ロビー活動も行って、このことが本当に日本にとってすさまじいリスクとなってはね返ってこないように事前に対応していただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

松本(剛)国務大臣 おっしゃったように、やはりこういったことについてはできる限りきちっとした対応をすることが必要だという御指摘は、しっかりと受けとめさせていただきたいというふうに思っております。

 今回のこの低レベルの汚染水の放出について、改めて振り返ってみてどういうことが、今後さまざまな原子力発電所の対応の中で引き続き幾つかの措置を恐らくとらなければいけなくなるだろうと思いますが、その際に、さらにどういうことをしていったらいいのかということを考える必要があるという意味では極めて重要だろうというふうに思っております。

 私どもが理解をする限り、今回は高い濃度の放射線がたまっているということが発見されて、これが著しく海に漏れ出すなどのことを防ぐためには、急いで低レベルの放射線を放出してそれを移す場所を確保しなければいけない、そういった事情の中から、方法としてこの方法しかないということが判断をされました後には、速やかに、時間との競争という面もあって実行に移されたものというふうに考えております。

 その意味では、望ましくない、おっしゃったように、海洋法条約の趣旨を引くまでもなく、海洋を保つという意味では、放出をせずに済むのであればそれが最も望ましいことは間違いないわけでありますけれども、総合的に判断をして、やむを得ないものとして、また急を要するものとして、時間に限りがある中で行われたものというふうに理解をしておりますけれども、その中でも、おっしゃったように、できる限りのあらかじめの説明、そして理解を得ることが必要だという点については、今後の対応でも努力をできるように改善点を積み重ねていきたいと思っております。

首藤委員 福島の原発それから東日本震災について、限られた時間の中で幾つかの点を述べさせていただきましたけれども、私は昔は危機管理の専門家で、危機管理でよく言うんですけれども、今起こっている危機に引きずられてはならないということは危機管理の鉄則なんですよ。

 ですから、私たちは、福島の原発を思い、そして被災した皆さんのことを思い、そして復興を考えると同時に、やはり世界で知らない、今気づかない、そして将来もっと大きなリスクになるかもしれない、日本の存亡にもかかわってくるかもしれない、そうした危機にも目を向けていかなきゃいけない。それが、やはり中東問題ですね。

 日本は、御存じのように、九九・九%の石油を輸入しているわけでございますし、シーレーンもこれあり、ある意味で日本の生命線のところでさまざまな問題が起こっているんですね。では、そこは、いや中東のことはわからないよとか、離れていて国民的な理解が得られないよとかいうのではなくて、今同時並行で起こっている、そして将来はもっと巨大なリスクになるかもしれない日本の問題に対して、ぜひ今の段階で手を打っていただきたいんですよ。

 大体、今、リビアに対してNATOを中心にして空爆が行われていますけれども、これは人道的介入と言っておりますけれども、私も、実はボスニア紛争、コソボ問題に関して、この問題をよく見ていました、ある部分では関係していたと言っても過言ではありません。しかし、このときの人道的介入と今の人道的介入というのはかなり違いますよ。これは後で必ず問題となる。本当にこれが人道的な介入か、本当に人道的な観点に基づいて行われているのか、あるいはそこにひょっとして石油とかエネルギーとかあるいは地政学的な意図とかが入り込んでいるのではないか、必ず問題になります。

 そのときに、日本が沈黙していたのではなくて、日本はやはり公正な見方でこの問題に立ち向かおうとしていたということで、ぜひ、リビアなんかに関しては、例えば日本からアジアのイスラム国などと協力して国際監視員、アジア監視員というのを送って、NATOの空爆にしても、それが本当にターゲットに対して行われているか、あるいは二次的な、副次的な被害を生み出していないか、あるいは、元カダフィ政権側の人に対して虐殺が行われているんじゃないかとか、そういうことも含めて、国際社会が、うん、あるいはアラブ連盟が、うん、なるほど、ジャパンだなという努力もしていただきたいんですよ。

 それからまた、エジプトやチュニジアのように、ある程度民主化の路線に動き出したところには、選挙支援、例えば、選挙のさまざまなグッズとか、あるいはファクスやインターネットを使って集計するシステムとか、日本が得意としている、JICAが得意としている分野がたくさんあるんです、ぜひそういう問題もやっていただきたい。

 それから、同じように、コートジボワールの問題に関しても、今コートジボワールに関与している国はみんな、こういう表現は外交的にはよくないかもしれませんが、ある意味で、血だらけの手を持った人たちが平和をつくろうとしているわけですよ。ですから、その意味で、日本はアフリカを植民地にしたこともないし、そういう日本が、やはりそこへ何らかの形で、監視員として入ったり、あるいはAUなどと連絡し合いながら状況を聞いたり、そうした努力をするというのははかり知れない外交価値となってくるわけです。

 ですから、ここはもう本当にプロフェッショナルしか送れませんけれども、政治家も含めて、ぜひ、ここの地域にも、日本ができることを、中立公正、平和国家としての日本の外交の価値が高まるような特使を派遣していただきたい、そういうふうに切にお願いするんですが、大臣の御意見はいかがでしょうか。

松本(剛)国務大臣 リビアについては、御承知のとおり、きょうカタールでいわゆるコンタクトグループの会合がありまして、私どもの方からも外務審議官を送っているところであります。

 おっしゃったように、中東というのは、大変、私どもにとっても、国としてもかかわりがありますし、また国際社会の平和と安定には重要な位置づけだということも御指摘のとおりだろうというふうに思います。

 私どもとして、首藤先生自身も選挙支援など直接参画をいただいているというふうに承知をしております。日本らしくできることをしっかりやっていくべきだということの幾つかの提案について、私どももまた、ぜひ、そういうことでどのようなことができるか、考えていきたいと考えております。

小平委員長 首藤信彦君、なるべく簡潔にお願いします。

首藤委員 時間が来ましたので終わりますが、ぜひ具体的に動き出していただきたい。

 それから、委員長、こういう機会には、もう与野党合同で、例えば事実確認ミッションみたいな、そういうものもぜひちょっと考えていただきたいと思います。

 以上で終わります。

小平委員長 次に、松野博一君。

松野(博)委員 おはようございます。自民党の松野博一でございます。

 私、外務委員会に初めて所属をいたしまして、初めて質問をさせていただきます。新参者でありますけれども、大臣は外交、安全保障の専門家でありますから、胸をおかりするつもりでお聞きをしたいと思いますが、既に委員会で御議論があって合意形成がされている事案や素朴な疑問もありますけれども、御容赦をいただきたいと思います。

 まず、今、首藤委員の方からも御指摘がありましたが、昨日、東京電力の福島第一原子力発電所の事故に関して、国際原子力事象評価尺度の暫定評価をレベル5から最悪の7に引き上げるということが発表をされました。国内でももちろんでありますけれども、海外でも相当の衝撃を持って受けとめられて、報道があるということであります。チェルノブイリ原発事故と同レベルというような報道をされていますが、外務省としても、既に各国に向けて説明、通知、さまざま対応をされているというふうに思います。

 今、首藤委員の方から、首藤委員のお考えを開陳をいただきましたが、外務省、外務大臣として、今回の尺度の引き上げ、レベル7に至る引き上げに関して、各国にどういった説明、通知をされているのか。もちろん、事実関係を丁寧に説明するのが第一でありますが、ある種、そこの中にメッセージ性が必要だというふうに思いますけれども、どういったメッセージを織り込みながら対応されたかについてお聞きをしたいと思います。

松本(剛)国務大臣 評価そのものは、ある種専門的な、数値に基づいたものでありますので、客観的な、専門家のそういったものを的確に伝えることが私どもの役目だろうというふうに思っています。

 今回は、御案内のとおり、発表が昨日の十一時に行われましたが、その少し前に、私どもとしては、こういう発表が行われるということを各国に文書でお伝えをさせていただきました。在京の外交団には、これから発表されるものを文書でお送りするのでしっかりと受け取ってほしいということをあらかじめ電話などで注意喚起をした上で、文書をお送りするという形をさせていただいております。その後に詳しい文書などを添付する説明会を開催いたしまして、各国には御説明をさせていただいたというところでございます。

 先ほど申し上げましたが、今回のはこれは評価でありますので、これをやらなければいけないというような措置とは違いますので、時間の制約は少し、先ほどの汚染水の放出とはまた必ずしも一致はしないところがありますけれども、一般的に、やはり決めたことは速やかに国民に公開をすべきであるというその情報公開の原則から、決めた後にどのぐらいの時間をとるのが適切かという議論があろうかというふうに思います。

 他方で、私どももそういう考え方で各国に説明をしていますが、各国であるとか、また、今回の事案であれば各地方自治体であるとか、そういったところ、発表されれば当然に問い合わせが行ったりするようなところには、ある程度あらかじめ、少なくともこういうことがあるということはお知らせをしておかないとまた混乱を招くのではないか、そういうことを総合的に考えて、発表に先立って、できる限り説明をしかるべきところにはしておこうということで今させていただいている体制であります。

 今回の事案については、おっしゃったように、レベル7というものそのものはチェルノブイリと同じということになってまいりますが、もう先生よく御承知のとおり、一定の水準を超えればすべてその評価になるという中で、今の状況、そしてこれまでの積み重ねてきた数値とどのような違いがあるのかということについても、伝えられる部分については伝える形で発出をさせていただいたというふうに承知をいたしております。

松野(博)委員 当然、危機感を持って対応しなければいけない問題でありますけれども、大臣お話をされたように、レベル7といっても相当のレンジの幅がありますので、日本の農産物の輸出等々にも大変な影響がある問題でありますから、その面もしっかりとお伝えをいただきたいというふうに思います。

 いささか感想めいた話で恐縮でありますが、外務委員会の議論をお聞きしていて、時々、一部非生産的なというか、もっと言ってしまえば不毛な議論を感じるときもあります。我が党の小野寺委員を初め、各党の論客の皆さんが的確な質問をされているというふうに思いますが、大臣の御答弁の論点が、ずれるというよりもずらすということだと思いますが、あいまいであったり、そういったことを感じます。

 大臣が頭脳明晰な方であるのは承知をしておりますから、大臣がそう答弁せざるを得ない理由が、外交の問題でありますから、これは相手国、第三国に対する配慮もあると思いますし、公開できない内容もあると思いますし、時にはこれはもう建前を通すしかないということもあると思います。

 そういった外交戦略上のことから時に大臣の答弁があいまいになるというのであれば、それは一つの手法であるかと思いますが、どうも聞いていると、その理由の最たるものが、過去の民主党が野党だったときの国会における発言、質疑、また国民に関するメッセージと、現状、政権を担当されて、やらなければいけないこと、現状において言わなければいけないことのギャップ、そご、矛盾とまで言っていいのかどうかわかりませんが、そういったことがあって、大臣が時としてあいまいな答弁になるのではないかなということを感じております。

 私たちは野党でありますから、これまでも、もちろんこれからも厳しく追及をしてまいりますけれども、外務委員会における大臣の御答弁というのは、これは各国が注目をしていることでありますし、民主党の野党時代の発言やさまざまな国民に関するメッセージとのそごがある中での大臣の答弁というのが、国際社会に誤ったメッセージを与える可能性がないのかなというふうに危惧をしております。特に通告をしている質問ではありませんけれども、この件に関して、大臣、御所見をお伺いしたいと思います。

松本(剛)国務大臣 申し上げてきたことに責任を持たなければいけないというのが、この政治の世界に限らず、我々のあり方であろうというふうに思っております。同時に、それにどのように進んでいくかというステップはいろいろな形があるのではないかというふうに思っておりますが、委員がおっしゃったように、誤ったメッセージを与えるということはないように、真摯にお答えをさせていただきたいというふうに思っております。

松野(博)委員 他党の政策の合意形成のプロセスに口を出す気は全くないのですが、ただ、外交案件に関しては、日本の国益にかかわる問題でありますから、ぜひ一度、総括をされたらどうかなというふうに思います。

 かつて社民党さんから総理が出たときに、村山総理が冒頭、日米安保の問題、堅持という表現をされましたけれども、また、自衛隊の存在に関して発言をされました。もちろん、民主党さんが野党のときと今と、今の社民党さんの転換ほどの大きな差があるとは思っておりませんが、しかし、それぞれの問題に関して、相当、過去の議事録を読ませていただくと、やはり現状の発言とのギャップというのは明らかにあるなというふうに思います。

 ぜひ、もうここは政権を担当されているんですから、過去、外交、安全保障に関する党の御議論、意見を総括して、是は是、非は非として、その整理を一度政府と民主党内でやられたらどうかというふうに思いますけれども、大臣、いかがですか。

松本(剛)国務大臣 私も決して完璧な人間ではありませんので、すべてが、私自身が何もかも正しい人生を歩んできたとまで言い切る自信はありませんけれども、できる限り、そのときそのときは皆真摯に考えて意見を申し上げ、質疑をしてきたんだろうというふうに思います。そのことを踏まえて、また今、我々は政権をお預かりするという、民主党としては初めての立場になっている中で、おっしゃったこともよく伺いながら、メッセージを発するようにしていきたいというふうに考えております。

松野(博)委員 ぜひ期待をさせていただきます。

 先般の委員会で民主党の道休委員が、ホスト・ネーション・サポートに関して、日米関係の重要性や国際環境の変化などを理解した上でも、どうして政策コンテストにかけたのかという質問をされました。

 このことに関しては臨時国会でも何回か取り上げられておりますが、先般の答えでは、松本大臣政務官が、在日米軍駐留経費負担については、我が国の安全保障にとって不可欠な日米安保体制の円滑かつ効果的な運用にとって重要な役割を果たしているということで、その意味から国民生活の安定、安全に資するという観点から、特別枠の趣旨に沿った事業であるとして計上したという答弁をされました。道休委員はわかりましたということでありますが、ちょっと私自身はわからないんですね、この答えが。

 そこで、改めてもう一度お聞きをしますが、ホスト・ネーション・サポートを政策コンテスト枠にかけた理由は、松本政務官が答弁をされたことでよろしいんでしょうか。

小川(勝)副大臣 お尋ねのホスト・ネーション・サポートに係る予算要求について答弁をさせていただきたいというふうに思います。

 過日松本政務官が答弁をしたとおりというふうに認識をいたしますけれども、概算要求段階から厳しい状況に置かれていたことは御承知をいただいていることと存じます。

 既存経費の一割削減という内閣の方針、その中で、防衛省といたしましては、基本的な経費が、人件費、装備、訓練あるいは燃料費、いわゆる固定経費が大変多いという財政事情がございます。そんな中で、省内でも検討いたした結果、本経費が極めて重要であると認識をするからこそ、広く国民にも御議論をいただいた上で所要額を確保していこう、国民生活の安定、安全に資する経費として、あえて特別枠として計上することといたしました。

 政策コンテストにおいては、パブリックコメントを通じて幅広く国民からも御意見をちょうだいし、そして、それを踏まえて、評価会議においても結果的にA評価をいただいたところでございます。

 このようなプロセスを経て、結果的に在日米軍駐留経費負担の所要額を確保したところでございます。

 なお、コンテスト枠に同経費を計上することに米国関係者からさまざまな懸念があったことは承知をいたしております。外務省にもお手伝いをいただいて、北澤防衛大臣を中心に、防衛省からも大使館や関係者にさまざまな趣旨を説明すると同時に、最終的には、手法、考え方、あるいは現状も御理解をいただいて、アメリカ側も完全に御理解をいただいたものと評価をしているところでございます。

松野(博)委員 予算編成のやり方は、政府、そしてかかわりがある与党の問題ですから、私たち野党は、理解してくれといっても理解できませんし、承知もしませんけれども、このホスト・ネーション・サポートはあえて特別枠、コンテスト枠に計上したという副大臣のお答えでした。

 しかし、我が党の参議院の川口委員が同種の質問を北澤大臣にしたときには、北澤大臣は、要は、この種の予算はコンテスト枠に計上するべき種のものではない、しかし、内閣が一律でやると言ったから、しようがないから出したんですよという趣旨の答弁をされているんですね。

 大臣は、いや、この種のものは計上すべきじゃないけれども、しようがないからやったんだとお答えになって、副大臣や政務官は、あえて計上したんだ、コンテスト枠にふさわしいものだと認識をしているというのは、これは政務三役の間で認識が違うんじゃないですか。

小川(勝)副大臣 お答えをいたします。

 予算編成というのはまさに政府の仕事でありますけれども、内閣の方針に従って予算を編成するということは大変な苦労だったろうというふうに考えます。そんな中で、最終的に予算をどうしても確保しなければならないこのホスト・ネーション・サポートの予算でございました。また、内閣一律の一割カットという方針に大臣としてどんな思いで取り組んだのかというのも容易に想像できるわけでございます。できるならばコンテストにかかることなくきっちり確保できればなおよかったのかなというふうに大臣がお考えになるのもうなずけることでございます。

 最終的には、大変厳しい道のりではありましたけれども、アメリカ側に御納得をいただけるような形で、また国民に広くこのホスト・ネーション・サポートの重要性を御理解いただいた上で所要額を確保できたことは喜ばしいことだというふうに思っておりますし、その考え方や評価につきましても、大臣、副大臣、政務官の間に、若干の表現の違いはありますけれども、そごがないものと考えております。

松野(博)委員 しようがないから出したという大臣と、あえてコンテスト枠に計上したというのは、若干の違いじゃなくて、相当な表現の違いがあるんだろうというふうに思います。

 なぜこの問題にこだわるかというと、北澤大臣は、このホスト・ネーション・サポートというのは、日本の外交の基軸である日米安全保障条約を効果的に運用するために必要、欠かざるものだという認識を示されています。松本大臣も同様の認識を委員会でお示しをいただいたというふうに思いますが、それだけ極めて重要な予算であり、また、概算要求をする時点で、ことしは、来年度、次年度ですね、この改定を審議しなければいけないということもわかっていたわけであります。

 防衛省としては、削れるものなら削ってみろというスタンスでお出しになったんだろうというふうに思いますが、しかし、これは、あくまで政策コンテスト枠でありますから、論理的には落とされる可能性もあるわけですね。日米関係において極めて重要だと認識をしている、こういった案件を、そういった不安定な計上の仕方をするというのは、アメリカからの理解は得られたというふうにおっしゃっていますが、私は果たしてそうだろうかというふうに考えざるを得ないと思います。

 他委員会のことで恐縮ですが、実は、文部科学委員会でも、義務教育の国庫負担をコンテスト枠に、一、二年生の分を入れたんですね、この審議で法案に入れないぐらい大もめになりました。義務教育費の国庫負担というのは、国の、憲法上の義務にもつながるものであるし、法律に基づいた地方との契約でもある、それを不安定な計上の仕方、政策コンテスト枠に出すとは何事かということで質問をしたところ、高木文部大臣は、大臣としてじくじたる思いだ、来年度に関してはこういったことがないように努めたいとまではっきりと発言をされていました。

 まして、このホスト・ネーション・サポートに関しては、国内だけではなしに、同盟国との、アメリカとの信用関係にかかわるものであります。そういった面からすると、この出し方に関しては極めて問題があるなというふうに認識をしております。松本大臣のこの件に関する御所見をお伺いしたいと思います。

松本(剛)国務大臣 ホスト・ネーション・サポートについての考え方は、先ほどお聞きをいただいたとおりでありますので、もう繰り返してお話を申し上げません。

 その上で、御案内のとおり、今我が国政府は巨額の財政赤字が積み上がった状況になっている中で、今後財政を健全化していくことが必要な方向性であることは、もうこれは論としてはまたないところでありますので、その中で、歳出を見直すのか、収入をどのように考えるのか、もしくは両方どうするのかという中で、昨年は、歳出を一度根本的に見直すあり方として、そのような置き方が行われたんだろうというふうに理解をしております。

 そういう枠を設けた中で、おっしゃったように、義務教育費の国庫負担であるとかホスト・ネーション・サポートとかいうものが政策コンテストにかけられるということ自身が大変不安定な状況になっているというふうにもし受けとめられたとすれば、そのことはやはり政府としても本意ではなかったというふうに思いますし、そう受けとめられたことをしっかり受けとめて我々としては今後対応しなければいけないというのは、おっしゃるとおりだろうというふうに思います。

 もし私が文科大臣であったり防衛大臣の立場であったときに、どういう状況で、最終的にやむを得ず、どういう判断になったのかわかりませんけれども、望ましいと思って行ったというふうには想像しにくいというふうには率直に言って思います。

松野(博)委員 財政論ではないんですね。これは防衛省の中における政策のプライオリティーの問題であります。ほかの質問もありますから、こればかりやっていられないのでこれで閉じますが、これは予算編成の手法上に問題もあったし、また、繰り返しになりますが、防衛省のプライオリティーのとり方にも問題があったのではないかと指摘をさせていただきたいというふうに思います。

 次の質問に移らせていただきますが、先ほどの大臣の過去の質疑、発言との整合性、これは別に大臣だけじゃありません、大臣が所属をされている民主党の全体の問題でありますが、そこにかかわりますけれども、大臣は、野党時代にホスト・ネーション・サポート協定に反対をしたのは、そのホスト・ネーション・サポート自体に反対をしたんじゃない、野党として、税金の使途についてチェック機能を果たすという視点からそういう判断に至ったんだというふうな御答弁をされました。

 この外務委員会の議論の中でも何度か指摘があったので、私も、ホスト・ネーション・サポートに民主党が反対されたときの議事録を読ませていただきました。

 一番意見が集約されているのは反対討論だというふうに思いますが、その反対討論の内容を見ると、税金の無駄遣いをチェックするということで反対した、そういう趣旨とは大分違うんですね。例えば辺野古の移設に関する問題、また、このホスト・ネーション・サポートに付随する問題として日米地位協定の改定が必要であるという意見、さらに、在日米軍基地の役割が、日本の防衛という所期の目的から、地球の半分近くに及ぶ米軍の世界戦略を担う目的へと大きく転換したんだ、こういうような討論をされて、反対をされているわけです。特に、最後の在日米軍基地の役割に関する認識というのは、日米安全保障上の基幹的な部分の認識だというふうに思います。

 改めて、大臣、当時のこれらの民主党の主張に対して、現在はどういう認識をお持ちなのかについて、お考えをお伺いしたいと思います。

松本(剛)国務大臣 お引きをいただいたのは、恐らく、衆議院の委員会での武正委員の討論ではないかというふうに理解をしておりますが、御案内のとおり、この件については、これが二〇〇八年だったと思いますが、二〇〇六年の時点では私どもは賛成をして、二〇〇八年でいわば反対に回ったということでございます。

 当時、委員会で非常に激しいやりとりがあったことは私も記憶をいたしておりますし、改めて確認もさせていただいておるところでありますけれども、党としては、賛成から反対ということで党内でも相当議論を行ったということもまた事実であります。

 その中で、討論にも書いてありますけれども、二〇〇六年の時点で指摘をした税金の使い方、こういったものの改善点というのがどういうふうに評価できるのかということがありまして、この点が、やはり改善をさらに求めるという意味では、今回は反対という形で姿勢を示すことが必要ではないかということが、党の考え方として反対に回った最大の理由であったというふうに理解をしておりますし、私も、その議論に加わる中で、そういった趣旨であれば、ホスト・ネーション・サポート協定そのものに反対をする立場ではないけれども、反対という意思表示の考え方も一つの考え方ではないかということで、党員の一人として反対をさせていただいたというふうに記憶をいたしております。

 この討論についても、もちろん、そういった内容の趣旨があると同時に、この特別協定は地位協定に基づくものでありますので、地位協定についての言及から米軍についての言及があるわけでありますけれども、反対の理由というのは、私はそのように理解をさせていただいているところでございます。

松野(博)委員 大臣が反対の理由として挙げられていることと、現実問題として討論の中で党の意思として示されたことに乖離があるというのは、これはもうだれが見ても、読めばすぐわかることであります。大臣も、結果として、この反対が引き起こした事態に関して遺憾だというような表現をとられておりましたが、これもまた冒頭の話に戻りますけれども、こういったこともよく党内で御議論をされて、統一的に、ここを変えるんだということがあれば、ぜひ、そういう建設的な議論をされたらどうかなというふうに思います。

 小川副大臣、お忙しいでしょうからどうぞ、結構でございます。

 あと幾つか、御党が一昨年の衆議院総選挙当時、またその前のインデックスの中で、外交、安全保障の条項の中で示されたもので、ちょっと私の基礎知識がないものですから確認をさせていただきたいことが何点かあるので、お聞きをしたいというふうに思います。

 この委員会の中でも、たびたび日米地位協定の改定に関しての現政権のスタンスに関する議論がありました。民主党のマニフェストの二〇〇九、二〇一〇の中でも、日米地位協定の改定を提起すると明確にうたっているわけでありますが、この日米地位協定のどの部分をどのように改定するように提起するのか。

 かつて民主党、社民党、国民新党の三党で合意をされた内容で提出もされていますが、そのことの内容を示すのか、この時点では新たに違うことを示しているのか、内容が、一体具体的には何をどういうふうに改定するというふうに提起をするのかについて教えていただきたいと思います。

松本(剛)国務大臣 おっしゃったように、三党で合意をしたわけでありますから、当然、すべてが我が党の主張ではないわけですけれども、合意をしたものそのものには、やはり合意者の一人として、党としての責任はあるんだろうというふうに考えております。

 また、国会でも御答弁申し上げましたけれども、提起をするということのマニフェストを国民の皆さんに出させていただいた一人として、その責任をどのように果たしていったらいいのかということを刻んでいかなければいけない、このように考えておるところでございます。

 具体的にどの条項をどう改定すべきだという意味では、先ほどおっしゃったものも議論の一つのテーマだろうというふうに思っておりますし、また地位協定もしくは在日米軍に関係して、例えば事件、事故、それに関連をすること、騒音の問題、環境などの問題というのがこれまでも課題として取り上げられてきているわけであります。

 この課題を解決していくために、今さまざまな議論を行っていく中で、地位協定の改定というものもそういう課題解決に必要なのではないかということで提起をするとさせていただいたことから、分野としてはそういったことが議論の対象にはなってくる、このように思いますけれども、まことに残念ながら、現在までのところ、具体的な協定の改正の申し入れを行えるところまでは至っておりませんので、日米の関係などのさまざまな事態を踏まえつつこれからどのように進めていくかを検討しているところですので、今どの分野からとか、具体的にどういった分野を俎上に、交渉にということを申し上げられる段階にはまだないということも申し上げなければいけないというふうに思っています。

松野(博)委員 これは御党の公約でありますから、ぜひ申し入れをしていただきたいと思いますが、申し入れをするに当たっては、一体政府としてどの部分をどういうふうに改定をするのかという内容に関して、しっかりとまずお示しをいただきたいと思います。お示しをいただかないと、この委員会でもその内容に関しての議論ができないわけでありますから、ぜひ具体的にお示しをいただきたいと思います。

 続いて、これもちょっとよくわからなかったものがあるので聞きたいんですが、民主党のインデックス二〇〇九の自衛権の行使という項目の中に、自衛権は、これまでの個別的、集団的といった概念上の議論に拘泥せず、専守防衛の原則に基づき、我が国の平和と安全を直接的に脅かす急迫不正の侵害に限って行使するというふうに書いてあるんですね。これを私のように外交知識がない人間がぱっと読むと、ああ、民主党さんは集団的自衛権を容認するということなんだなというふうに読めるのですけれども、これはそういう読み方でよろしいんですか。

松本(剛)国務大臣 これはもう概念上の議論に拘泥せずという以上に申し上げようがないというのが率直なところなのでありますが。

松野(博)委員 インデックスのことについて言及すると、現政府から、インデックスというのはあくまでインデックスで、私たちが示したのはマニフェストなんだ、インデックスはまだ約束として示したものではないという答弁がよくあるんです。しかし、公党が文書にして公に示した内容は、これは示したけれども私たちの考えとして確立したものではないという議論は通用しないんだろうというふうに思います。

 その媒体にこの書きぶりは、違った読み方があるのかもわかりませんが、拘泥せずといったら、集団的自衛権も含めて自衛権は行使する、できるんだと民主党は考えているというふうに読むのが普通ではないかと思うんですが、もう一度お伺いしたいと思います。

松本(剛)国務大臣 インデックス自身の位置づけについては、今委員がおっしゃったように、公党が公開したものにはそれなりの重みがあるというのはおっしゃるとおりだというふうに私は思っております。

 その上で、ここについては、「個別的・集団的といった概念上の議論に拘泥せず、専守防衛の原則に基づき、わが国の平和と安全を直接的に脅かす急迫不正の侵害を受けた場合に限って、憲法第九条にのっとって行使する」というふうに書かせていただいておるというのを全体として見ていただけたらというふうに思います。

松野(博)委員 全体として見たら、民主党は集団的自衛権を容認するということなんだなと読むのだろうというふうに思いますし、大多数の人はそう読まれるんじゃないかなというふうに思います。このことが、外交上、安全保障上極めてセンシティブな問題であることは理解をしておりますが、そういったセンシティブな問題であれば、その問題を軽々に、こういった表現、恐らく余り練られていない表現の中で、党の考え方として公開するということ自体に問題があるのではないかなということを指摘させていただきたいというふうに思います。

 同じインデックス二〇〇九の中の国連改革の項目で、膠着した国連改革を抜本的に立て直し、安保理の構成や拒否権の見直しを求めるというふうにありますが、ここで言うところの拒否権の見直しというのは、具体的にどういう制度改革を想定して書かれているのでしょうか。

松本(剛)国務大臣 この件も、お読みをいただいたように、この時点では、二〇〇五年に、国連改革、安保理改革についてはある意味で大きな挑戦をしましたけれども、残念ながら、結果として、その時点では結果が出なかった。

 しかし、我が国としては、やはり国際社会の現状に合った形での国連のあり方ということを模索すべきだということで、改革を志向している姿勢は、これは自民党、公明党さんの政府においても、また今の政府においても基本的に立場は変わらないものと考えております。その意味では、これはむしろ提言という意味で、安保理の構成や拒否権の見直しということに総合的に柔軟に対応することで改革を進めるべきではないかということを申し上げているというふうに私は理解をしております。

 ちなみに、二〇〇五年の段階でも、例えば拒否権について、改革から十五年後に新たな決定を行うまで拒否権を行使しないというような提案を行ったこともあるわけでありまして、改革の全体的なパッケージの中で一定の柔軟な議論も必要ではないかということで、拒否権についても表現をさせていただいたものというふうに理解をしております。

松野(博)委員 私がお伺いしているのは、ここで言うところの拒否権の見直しというのはどういう方向性を想定されてここに書かれているのかということです。

 例えば、民主党政権においても常任理事国入りは望んでいるわけですから、民主党政権が考える常任理事国入りは、常任理事国を目指すけれども、そのときに我が国は拒否権の行使はしないということを宣言してそれに臨むとか、ある程度ビジョンがありここに書いてあるんだと思いますが、そういった解釈でよろしいんですか。

松本(剛)国務大臣 二〇〇五年の段階でも、改革から十五年後に新たに決定を行うまでの拒否権を行使しないという提案を我が国を含むG4で行わせていただいておるわけでありますが、これはやはり、改革を前に進めるためのいろいろなものを総合的なパッケージで考えた中で、当然、拒否権というものも一つの重要な要素になってくるということで行われたものだというふうに思っておりますし、私どもとしても、この改革を進めるという視点から、拒否権というものも、当然、拒否権については全く、拒否権は持つしかないというような硬直的な態度で前へ進むということではないのではないかということから申し上げているというふうに考えています。

 しかし、当然、どういったものによって改革に進むかという全体のパッケージは、状況をしっかり見きわめながら、またどの時点でどう申し上げるかということも、一つの前へ進めるためのやり方だというふうに思っております。

松野(博)委員 ということは、国連改革の論点として拒否権の見直しということはあるけれども、その方向性に関して、現時点において具体的な考えを民主党の中で持っているわけではないということですか。

松本(剛)国務大臣 拒否権について申し上げれば、有無からいけばゼロから百まであるわけでありますけれども、あり、なしでいけばゼロか百しかありませんけれども、国連改革を進めるに当たっては、ゼロと百の間もあってもいいのではないかということで、これは、具体的には、二〇〇五年の例もありますし、さまざまな考え方、それは、時限で限るとか拒否権そのものにさまざまな制約を設けるとか、いろいろなことが論理的にはあり得ることは我々も議論をさせていただきましたけれども、まさにそのことを明示するということそのものが交渉の問題にもなってくると思いますので、拒否権の見直しという表現にさせていただいたのではないかと思っております。

松野(博)委員 先ほどの集団的自衛権のときの指摘と同じ指摘なんですが、公党が出す政策集、インデックスという媒体に、党としての方向性がまだ決定をしていない、練られていない案件に関して載せれば、当然国民はそれを見て民主党の外交政策を判断するわけでありますから、この問題に関しても、党内でさらに議論を詰めた、一定方向が出た時点でこういうものを書くというのが政党の政策の国民に対する告知の仕方としては必要なのではないかというふうに思います。

 ほかの質問もあるので次に行きますけれども、鳩山内閣が退陣された後、東アジア共同体という言葉を聞かなくなったんですね。鳩山政権時代には、一部、日米かアジアかといった、選択肢のように受けとめられたりするほど強調されたものでありますし、マニフェストの二〇〇九にも二〇一〇にも掲載をされているものです。

 過去、外務委員会の中において、この東アジア共同体というのはどういうイメージのものですかという質問を何回かしたんですが、正直、答えが漠とした内容しか返ってきていません。そのまま菅内閣になって、東アジア共同体という言葉自体も何となくフェードアウトしてしまったような感じがありますけれども、まず、この東アジア共同体というのは、概念、概要が固まっているものなのかどうかについて、大臣のお考えをお示しいただきたいと思います。

松本(剛)国務大臣 先ほどの国連改革についても、国連改革を進めて我が国の常任入りを目指しますと明確にインデックスに書かせていただいている中での文章だということで、いずれも議論をした上での文章だということはぜひ申し上げたいと思います。

 その上で、東アジア共同体については、私どもが持っている考え方は、これまでも東アジア地域については、広い意味では、アジア太平洋も含めた、APECであるとか東アジア首脳会議であるとかASEAN地域フォーラムであるとか、さまざまな地域的な枠組みというのが多層、重層的に重なってきております。こういった重層的な協力関係をしっかり強化していくという中で、東アジアに開かれた日本であると同時に東アジアの各国と協力をする日本であるという趣旨で、東アジア共同体ということを表現したというふうに私は理解をしております。

 他方で、まさに委員がおっしゃったように、東アジア共同体という言葉が、ある時期、米国との関係で、あたかも両立をするのかしないのかといった議論になってしまったかのような部分がありまして、米国との関係をうまく伝えられる言葉になっていたのかどうかという部分がありましたので、その言葉の使用には若干慎重になってきているということは、率直に申し上げて事実だというふうに思っておりますが、米国、日米同盟を基盤として、しかし、東アジアの各国と連携を深めていくという基本的な考え方は継承しているというふうにお考えをいただいていいというふうに思っております。

松野(博)委員 今の大臣の御答弁ですと、東アジア共同体という話がこのところ出てこないのは、かつて議論に上っていたときに、日米関係の中でこの東アジア共同体という考え方が固まっていないにもかかわらず、これが強調されて前に進むと議論が整理されないので、今の時点ではあえてこの東アジア共同体という言葉は使っていないんだというようなニュアンスに聞こえましたが、これは、では、東アジア共同体という話は、民主党のマニフェストの修正をされている、アナウンスはないんだけれども修正をされたというふうに理解してよろしいんですか。

松本(剛)国務大臣 先ほど私が申し上げたのは、東アジア共同体の考え方は、冒頭に申し上げたとおりで変わっていないというふうに申し上げたつもりでございます。

 その時点でも、マニフェストにも、民主党としては日米関係が基軸ということは記載をさせていただいているところでありますけれども、東アジア共同体という言葉があたかも米国は含まないんだというような言葉のイメージで統一をされかけているというか、そのように伝わってしまっているということであるとすれば、言葉というのはやはりある意味では注意して使わなければいけませんので、東アジア共同体という言葉を使うことが、我が国が米国を除く形でアジアの国々との関係を進めようとしているというふうにその一言で伝わってしまうんだとすれば、違う形で同じ趣旨を伝えることが大事で、考え方を変えたわけではないということでございます。

 マニフェストそのものには、東アジア共同体も、日米関係は基軸であるということも、両方書かせていただいていたわけでありますけれども、その後、東アジア共同体がクローズアップされる中で、言葉として、この言葉によって全体がうまく伝わらないとすれば、その言葉の使い方には慎重になったということを申し上げたということでございます。

松野(博)委員 そろそろ時間がなくなってきたので、通告した質問も全部こなせなくて申しわけないんですが、私たちは、外務委員会で別に学生のディベート大会をやっているわけではなくて、よりわかりやすい本質的な議論を、これはもう政府の立場も、私たち野党、委員としても進めるべきだというふうに思います。

 個々のワーディングに関して、これは私が個人的に知らないだけかもしれませんが、何か民主党政権の定義自体もそう確固たるものがないような気も、議論をしているとするんですね。ですから、これからお互いに生産的な議論をするに当たって、きちっとそれぞれの公約、政策に関する言葉の定義に関しては改めて確認をし合いながら、今後議論を進めていきたいというふうに思います。

 終わります。

小平委員長 次に、赤松正雄君。

赤松(正)委員 おはようございます。公明党の赤松正雄でございます。

 松本大臣、就任されて約一カ月、この震災の対応も一カ月、一カ月が長いか短いか、この問題に照らし合わせてみれば、極めて長い一カ月だったと思います。

 まず冒頭、ちょっと頭を柔軟にするために、本題と関係のない話でもないんですが、質問通告をしていない話から入りたいと思います。

 この間、統一地方選挙がございました。松本外務大臣と私は同じ選挙区に住んでおりますが、候補者の数を別にすれば、外務大臣所属の民主党の倍の票をうちの公明党はとりました。自由民主党はさらに私の党のほぼ倍ぐらいとっています。これは候補者の数ということにもよるのでしょうが。

 私は、この期間を通じて三つのことを強く訴えました。それは、菅総理大臣、この期間、一生懸命頑張っておられる、それはもう職を賭して頑張っておられるということはよくわかるんですが、残念ながら、指摘したい点は三つある。一つは、初動における対応の誤り。よく言われております、原発の現場に行って対応をおくらせてしまったこと。また、各国の原子力発電所の事故に対する援助、申し出を最初の時点で断った、その以後は違いますが、断った。それから三つ目は、いわゆる対応の逐次投入というんでしょうか、いわゆる戦争のときの戦力の逐次投入と同じように、小出しにしていって、最も大事で急ぐべきものを見据えた上でどんと対応するんじゃなくて、小出しにしていった。いわゆる水を放出して冷却をさせる、使用済みの原子力核燃料棒というものを冷やすという行為においてかなり逐次投入の誤りがあった。こんなふうなことを申し上げて、松本さん所属の民主党の倍の票をとったという自覚をしておるわけでございます。

 こういう一カ月間における対応、松本大臣、外務大臣として現場には、現場というのは、選挙の現場にはほとんど行かれなかったと思いますけれども、この一カ月間の外務大臣としての自分の仕事ぶりについて、どのように評価しておられるかというものをまず聞きたいと思います。

松本(剛)国務大臣 一度も帰っておりませんので現場の状況はよくわかりませんけれども、先ほど赤松先生がおっしゃった原子力発電所の対応については、私どもとしては、支援は断ったという認識はありませんし、また、米国もそのような認識であるというふうに承知をしておりますけれども、そのほかについても、初動そして対応の手順等についても、私が知る限り、現場も含めて、必死の思いでベストを尽くしているとは思いますが、結果としてどう評価されるべきかは検証されなければいけないことではないかなというふうに思っております。

 私自身の仕事については、先ほども少し申し上げましたけれども、私自身の能力であるとか、そういったものも、とても完璧、十分というのに足りているかというのは常に自問自答するような身でありますけれども、この一カ月間、とりわけ、就任をしたのが九日で、二日後にはこの大きな地震が発災をいたしましたので、その後の一カ月は、とにかく震災の対応でできる限りのことをする、同時に、日々起こる世界の動きであるし、これまで積み重ねてきた外交について、できる限り、おくれの出たり、抜けることのないようにということに目配りをして必死で走ってきた一カ月でありまして、今の段階でまだ振り返る余裕があるという状況ではありません。

赤松(正)委員 一番最初の所信表明に対する質問の中で、私は、松本さんの役割というのは、まず一つ言えることは防災外交、いわゆる震災外交、いろいろな言い方はできようかと思いますが、この未曾有の震災の直後、誕生した大臣として、震災というものに対する姿勢が大事だということを申し上げました。

 つまり、これは、我が方からの諸外国に対する発信、今の事態をどう正確に的確に伝えるか、そして、各国から受けたさまざまな支援、実際にやっていただいていること、こういうことに対して的確なる受け入れ、そしてそれへの感謝、こういったものが両方相まって、松本大臣の最初の一カ月というものが評価されると思うんです。

 残念ながら、今御自身は、そういう、まだ検証するだけの時間がないというような、一生懸命走ってきたということを申されたんですけれども、極めて厳しい評価が今内外から出ているというふうに指摘せざるを得ません。

 二つあります。

 一つは、まず救援物資の取り扱い。各国からの救援物資をどう外務省として受けとめて、それをしっかりと被災者のところに届けるかという点について、実は最初の段階で、私どもの代表山口那津男が公明党の会合で、要するに、外務省が各国の申し出に対して的確にそれをさばいていないというケースとして、具体の例としてシンガポールの例を挙げておりましたけれども、その後、さまざまな動きを見たり、いろいろ聞いたりするところによりますと、各国からの支援というのは、さまざまなもの、実質的にいろいろなものが届けられているけれども、しかし、現実にはそれがきちっとさばかれていない。あるいはまた、もう正直に言って、外務省は手いっぱいで、また、現実に欲しいというところのマッチングというものはなかなか難しいというようなことで、結局それがおざなりになっている、こういう指摘がありますけれども、大臣はどうこれに答えられるでしょうか。

松本(剛)国務大臣 御党からの御指摘は真摯に受けとめて対応をいたしたいと思っておるところでございます。

 おっしゃったように、支援の受け入れということについては、私どもとしては、外国から温かい支援の受け入れの話をいただくわけでありますので、できるだけ早く現地につなぎたい、このように考えていたところであります。当初の段階で幾つかいただいたもの、しかし、いただいたものをどこかに、あてなくいただいて、そのまま残すというわけにもいかないという思いがありましたものですから、やはりあてを確認してからということで進めさせていただきましたけれども、結果として、もし送ろうという気持ちを持っておられる方が幾つかそのように思われたのであるとすれば、その点は、我々としてはまた改善点としてしていかなければいけないと思っています。

 先ほど、振り返る余裕はないということを申し上げたのは、評価という意味で、私自身が自分を評価する段階ではないというふうに思っているという意味で申し上げましたが、仕事としては、この支援の受け入れなどについても日々改善できるところは改善をしていくように、マッチングなどについても被災者生活支援の特別対策本部と連携をとってまいってきたわけでありますが、非常時でありますので、支援本部の方が幾つかのことで忙しければ、外務省の中でやりくりをして、各自治体に直接連絡をして支援物資のニーズなどをお聞きし、もしくは、こちらで来ているものとのマッチングを行うなどの努力をしてきて、できる限り有効に、かつ気持ちをしっかり生かせるようにということで努めてきたというふうに考えております。

赤松(正)委員 今のお話を聞いていると、さしたる問題はないというふうに思っておられるように受けとめられるんですけれども、現実には、先ほどのシンガポール、私、具体の外交官と直接話を聞きましたけれども、あるいはまた、メディアの情報によりますと、中国からの支援のいわゆる対応として、国内、要するに、あなたのところで勝手に運んでというふうなことを言った、つまり、支援の国内運搬を他国に任せる、こういうことをしたという指摘がありますけれども、このあたりはいかがでしょうか。

松本(剛)国務大臣 いただいた支援を、ある時点で輸送が確保できないという状況があった場合には、そちらで直接運ぶことが可能であるかどうかということを、マッチングの一環としてお問い合わせをさせていただいたことはあるのではないかというふうに考えております。

赤松(正)委員 要するに、あったということですね。要するに、でき得ることであるならば、そちらでどうぞ運んでくださいということを言ったということを今言われたんでしょうか。

松本(剛)国務大臣 私どもも被災の支援をさせていただいたことがある中で、国内の輸送をどちらの負担で行うかというのは、さまざまなケースがあるだろうというふうに思っているわけでありますけれども、それぞれ協議をして行っていくものだというふうに考えている中で、中国からのお話、具体的にどれを指しておっしゃっているのかというのは、私どもは、報告を聞いている限り、先ほど申し上げたように、今こちらに輸送手段がないということをお伝えしたことはあるというふうに、すぐに使える輸送手段がないということをお伝えしたことがあるというふうには理解をしております。

赤松(正)委員 では、もどかしいので現実に言います。

 中国側に被災現場まで運ばせようとして、駐日中国大使を怒らせてしまったという事実はあるんでしょうか。それをまず聞きたいと思います。

松本(剛)国務大臣 大使が会見でそのようにおっしゃったという報道には接しております。

赤松(正)委員 そういうことを思わせたり、あるいはさっき言いましたシンガポールの例もあり、要するに、そこらあたりに、古今未曾有の災害、震災ということがあったにせよ、今二つの例を挙げましたけれども、さまざまな国にそういう思いを抱かせているケースがあまたあるというふうに指摘をしたいと思います。

 私、毎月一回、一緒に勉強会をやっている外交評論家の田久保忠衛氏が、外国からの支援の国内運搬を他国に任せようとするのは交通手段という国家の重要な主権の一部を放棄してしまうに等しい恥ずべき行為だ、こういう指摘をしたり、松本大臣に対する、震災対応における外務省、それを率いている大臣の姿勢というものが極めて存在感がないという手厳しい指摘があるということも、あわせて指摘をしておきたいと思います。

 二点目は医療の問題です。

 各国の医師、医師団の受け入れ、医療の対応という問題はどのようになっていますでしょうか。

伴野副大臣 赤松委員にお答えさせていただきます。

 海外からの医療支援のお申し出につきましては、現下の状況におきまして非常にありがたいものと思っておりまして、関係省庁ともに連携のもと、被災三県の自治体や各地の避難所等とも個別に連絡をとるなど、ホームページなども活用いたしまして、迅速かつ綿密に現場の医療ニーズ等について照会をかけているところでございます。

 しかしながら、物資以上にこのマッチングというのは非常に難しいものもございまして、医療チームを実際に受け入れる際には、受け入れ自治体、避難所等の負担が最小限になるよう調整をさせていただいているところでございます。

 調整の結果、三月二十七日から、自己完結型の態勢を整えていただいた、これは小野寺委員にも御尽力いただいたというふうに承知しておりますが、イスラエルからの医療支援チーム五十三名が宮城県南三陸町にて支援の活動を行ったということで、受け入れ側の態勢も整っていたということで入っていただいたと承知しております。

 現時点におきましては、各国政府から新たな医療チームの受け入れが、計画は具体化しておりませんけれども、被災地のニーズが被災直後から変化もしてきておりまして、慢性疾患への対応や心のケア等に移っている傾向も踏まえまして、現地の具体的な医療支援ニーズを把握次第、関係国との調整等を迅速に行い、受け入れに努めてまいりたいと思っております。

 以上です。

赤松(正)委員 今いろいろ言われましたけれども、多くの国から、約三十カ国でしょうか、そういう支援をしたいという申し出がありながら、現実には今言われたイスラエルのみということなんですね。

 まだこれからという話でございますが、私、このきょうの質問に当たって、外務省の緊急対策本部が出している昨日の資料、これをずっと、震災の現状と対応というところから始まっていろいろな資料があるわけですけれども、この中で、「各国・地域等からの緊急支援」という第四項目の五番目に海外医療支援のことが書いてあるんですが、これはどのように書いてあるか掌握しておられますか、松本大臣。

 これはこっちから言います。「海外医療支援チームが活動を開始している。」と書いてあるんですよ。ほかの項目はもっといろいろ詳細に書いてありますが、このくだりだけは「海外医療支援チームが活動を開始している。」とあっさり一行で片づけられている。

 現実に、先ほど言われたように、イスラエルが辛うじて現場の要請と合ったということで動いている。それを称しているのかもしれませんけれども、海外の医療支援チームの医療支援の全体の申し出、これに対する対応という観点から見れば、極めて現状はお寒い状態。

 これというのは、今、懸命に云々という話がありましたけれども、この結果だけ見ますと、海外からのこういう支援、先ほどの物資の問題も含めて、こうした一連の海外からの真心からの支援というものを結果的に拒否している。そういう現実というものが、これは意図してそういうことがされたとは到底思いませんけれども、この大変な震災に対する対応の、まさにてんてこ舞いの状況の中で、外務省の対応というのは非常に、結果的には功を奏していない、いい結果を出していない、こんなふうに思わざるを得ないということについて、外務大臣の見解を聞かせていただきたいと思います。

松本(剛)国務大臣 委員の評価は真摯に受けとめたいと思っております。

赤松(正)委員 今の二つに加えて、今度は、昨日レベル7という公表があった東京電力福島第一原発の問題について、大臣の考え方を聞かせていただきたいと思います。

 先ほど同僚委員の質問に対しまして、大臣は、各国への広報活動、それについて、発表前に各国の在京の大使館に対して、この事態に対する受けとめ方、全部書いたわけじゃありませんが、しっかり受けとめてほしい等々の電話をしたり、した後の文書での配付等をやったというお話がありましたが、形式ではなくてこの中身そのもの、今回の昨日のレベル7、チェルノブイリ事故と同じという、中身は、放射性物質の放射量は同じレベルのチェルノブイリ事故の一割程度、これはよく知っていますけれども、レベル7という暫定評価において同じだということについて、各国に中身はどのように伝えられたんでしょうか。

松本(剛)国務大臣 先ほど申し上げたように、第一報の後に説明会をさせていただいて、保安院のプレスリリースを参考として、これは対外向けの場合は英語で、保安院作成の英語の資料で行っているというふうに承知をしておりますけれども、御説明をさせていただいたというふうに理解をしております。委員もおっしゃったように、レベル7であるということ、それから、放射能の総量などについてお伝えをさせていただいたというふうに思っているところであります。

 報道等もこれからフォローしていかなければいけませんけれども、適切、正確に伝えさせていただいたものではないかというふうに思っているというのが今の率直なところであります。

赤松(正)委員 大臣、問題を整理しますと、要するにチェルノブイリ並み、レベル7という評価。このレベル7という規定がチェルノブイリのときと同じ、しかし放射性物質の放出量はチェルノブイリ事故の一割。この二つの、一見すると全く違う、しかし結果としてはチェルノブイリと同じというものが走る。このことを外国にどういうふうに説明されたのかということを聞いているわけです。

松本(剛)国務大臣 今委員が整理されたとおりでありまして、やはり国際的な基準でありますので、レベル7に上げるという事実をしっかり説明すると同時に、推定される大気中に放出された放射能の量はチェルノブイリの一割程度であるということ、まさにそのことをお伝えさせていただいたというふうに承知をしております。

赤松(正)委員 それは、では、大臣はわかっておっしゃっているんですね。私はわからないで聞いているんです。

 つまり、いわゆる国際基準において7だというのと、放出量において一割だというのは、要するに違うじゃないですか。どのように違うのかということをどのように説明したのかと聞いているわけです。これを、ただ国際基準でいうとチェルノブイリのときと同じ7だ、だけれども放出量は一割なんだ、だから、一割だから大丈夫だと言ったんですか。

 要するに、詳しい中身を的確に各国にどう伝えたのかということを聞いているわけです。形だけではなくて中身。どう理解をしたらいいのかということを聞いているわけです。

松本(剛)国務大臣 先生よく御承知のとおり、レベル7という基準は、一定の放射能の放出量以上のものすべてがレベル7になるということで、その基準は超えたということでレベル7として評価をすべきではないかという判断をしたので、レベル7に私どもとしての暫定評価を上げた。しかし、その基準以上の中の、実際の推定される大気中に放出された放射能の量としては、現段階ではチェルノブイリの一割ぐらいではないかという私どもの推定もあわせてお伝えをさせていただいたという伝え方になっていると理解をしております。

赤松(正)委員 ですから、それは、今は一割程度だけれども、やがては文字どおり総量としてもチェルノブイリの部分となり得る可能性があるということを、聞いた人間は思うということを、私は今のお話を聞いて思うわけです。そういう説明の仕方では極めて不十分だと私は思います。

 実は、昨日レベル7に評価が上がったということを受けて、改めて、私ども公明党の原子力事故に対する対策本部で、三月三十一日の時点で福島原発事故についての緊急建言というものを、これは、松浦祥次郎元原子力安全委員長を含む十数人の原子力に関する専門家が一様に名前を連ねた上での緊急建言を出された、それを踏まえて、昨日、党内でそういう会合を開いたわけですけれども、大臣はこの建言の中身をしっかり掌握されているでしょうか。

松本(剛)国務大臣 済みません、御党の建言ということですか。

赤松(正)委員 青木芳朗さんから始まって、元原子力安全委員、元原子力安全委員長、こういう学者が一緒になって福島原発事故についての緊急建言というのを発表しているわけです。御存じないと思っていいですか。

松本(剛)国務大臣 それについては、私自身は直接は承知をしておりません。

赤松(正)委員 実は昨日、この建言を私は、この三月三十一日というのは選挙の前の日なので、私も恥ずかしながら約十日間このことを知らないでいたんですが、まさに私は、この文書を読んで、私どもの原子力対策委員会の人間は一様に、背筋が凍る思いがしたという表現は非常に陳腐な表現の仕方ですけれども、大変に驚愕を持って受けとめました。

 要するに、部分的だけですけれども紹介しますと、「度重なる水素爆発、使用済燃料プールの水位低下、相次ぐ火災、作業者の被ばく事故、極めて高い放射能を含む冷却水の大量漏洩、放射能分析データの誤りなど、次々と様々な障害が起り、本格的な冷却システムの回復の見通しが立たない状況にある。」

 こういう認識を中心に、もう本当に、今挙げた、かつて伏見康治さん、日本学術会議の議長をされた彼が公明党から参議院議員に出たんですが、一期六年だけされた、日本の原子力の専門家でありますけれども、彼のお弟子さんの住田健二さんを初めとして、言ってみれば、原子力という問題に造詣の深いと思われた、それこそ、この事故の前にこの人たちの名前を見たら、名前を見るだけで原子力神話を信じてしまいそうな人たちばかりの名前のもとに書かれた、さっき、ほんの一部ですけれども、現状の掌握、現状の分析、その上で助けてくれという悲鳴を上げている建言です。

 日本が国家を挙げてこの対応に取り組まないと大変なことになる、「国家的な事件というべき事態に直面している。」「国を挙げた福島原発事故に対処する強力な体制を緊急に構築することを強く政府に求める」こういう言葉で結ばれている緊急建言書なんですね。これを本当に私たちは深く重く受けとめました。

 私は、その松浦元原子力安全委員長に、このことが菅直人総理大臣に正確に伝わっていますかということを申し上げました。松浦さんは、私ごときは総理大臣に直接物を言う立場にないので、そのことについては存じ上げません、こう言われました。

 ただ、そのときに、原子力安全・保安院の方は、こうした緊急事態、つまり、最悪になるとこれだけ恐ろしい事態になる、現状はそこまでは行っていない。さっき大臣が、いみじくもレベル7について非常に悠然と答えられた話と匹敵すると思うんですけれども、全体像を示した上で、今はこの辺だということをしっかり言う必要があるということを私どもはかねて言ってきた。それに比べて、政府当局の発表の仕方というのは、全然そういう危機感がない、情報の小出しであるということを思ってまいりました。

 そういうふうなことを思ってきた人間にとって、総理大臣がきちっとした認識を持っているかどうかは極めて重要なことだと私たちは思いました。そうしたら、原子力安全・保安院は、そのことを総理大臣に早い段階で伝えているということを聞いたわけです。ということは、私はそのことを聞いたときに、総理大臣が知っている情報を、外務大臣はこの建言さえ知らない、私たちが大変重要な文書だと。これは今直ちにそうだと言っているわけではないですよ。だけれども、さっき読み上げた厳しい現状のもとに、もう国家的破綻を迎える危機に行く流れの中にあるというふうに読める文書を発表しているわけです。

 松浦さんはそれを直接総理大臣には言わなかった。言える立場ではない、言っていない。だけれども、これは世の中に公表している話ですから、当然、三月三十一日の時点では入っている。だけれども、もっと前、三月十一日から近い段階で、原子力安全・保安院はこうした事態を、最悪こうなる事態の認識というものをとらえて総理大臣に言っている。

 こういう一連のいきさつ、この事態の深刻さというものを松本外務大臣は知らなかったんですね。

松本(剛)国務大臣 先ほど、悠然とというふうにおっしゃられましたけれども、私自身としては、レベル7という評価そのものも大変な事態であると思っていますし、そのこと以前に、この原子力発電所の事故の問題というのは、国を挙げて取り組まなければいけない大変な事態であるという認識、深刻な事態である、重大な取り組みが必要な事態であるという認識を欠かしたことは一度もないというふうに思っております。

赤松(正)委員 もう時間が来ました。それで、最後に一点だけ。

 いわゆる汚染水を放出したということについて、先ほど首藤さんから質問があった。その首藤さんの発言の中に、彼は明らかに国際法違反であるという表現をされた。そのことに全く答弁の中では答えられなくて、首藤さんの指摘はもうおっしゃるとおりだ、こう言われた。これは、今のその国際法違反であるという指摘のくだりも含めて、おっしゃるとおりと言われたんでしょうか。

松本(剛)国務大臣 国際法についての立場はこれまでも申し上げてきたというふうに思いますけれども、私、たしか先ほど、海洋法の趣旨からかんがみて、海洋を結果として汚染することになったことは望ましくないというふうに考えているというふうに申し上げたと理解をしております。

赤松(正)委員 終わります。

小平委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 議論もありましたが、福島原発事故、まさにこのことは各国からも深刻な憂慮が表明されているわけであります。

 四月四日からウィーンで行われた原子力安全条約の再検討会合でも、天野IAEA事務局長は冒頭発言で、もっと詳しく情報を提供してほしいという国際的意見が非常に強いというふうに述べておられます。松本大臣は、さきの日本・ASEAN特別外相会議でも、最大限の透明性を持って国際社会に対する情報提供を行っているというふうに述べられましたけれども、私は、肝心なのは中身だと思うんですね。

 正確な情報を速やかに内外に開示すべきは当然なんですけれども、レベル7という深刻な事故となって一カ月以上も危機的状況が続くという今世界でも経験のない事態になっているわけで、日本政府として、事故の現状がどうなっているのか、それから危機をどう収束して乗り切ろうとしているのか、その全体像と見通しを国際社会にもはっきりと語っていく、そして理解を得るという努力をやっているのかどうかが肝心なポイントだと思うんですが、今現状がどうなっているのか、それから、今後収束をしていくための全体像と見通しについて、どういうふうに語って理解を得られようとしているのか。その点はいかがですか。

松本(剛)国務大臣 率直に申し上げて、地震直後の時期など、すべての情報が、これは原子力発電所に限りませんけれども、そろっていない時期があったことも事実だろうというふうに思いますが、現在のところは、あらゆる情報、そして行っている措置、行う予定の措置など、私どもとして申し上げられるものはすべて申し上げているという意味で、最大限の答弁をもって迅速かつ正確な情報提供を行っていきたいというふうに申し上げていると思っております。

笠井委員 ですから、収束について、みんなどうなるか、世界も非常に憂慮しながら、いろいろなことで知恵も出そうという話もあるわけですよね。そのときに、今どういう現状にあって、これから全体像としてどんな見通しを今持っているのかということについて、ちゃんと語っているんですか。

松本(剛)国務大臣 まさにおっしゃったように、世界各国が知恵を出そう、こうおっしゃっていただいておりまして、各国の専門家の方々にも、日本までおいでいただける方にはおいでをいただいて意見交換をしていく中で、有意義な支援をいただいているというふうに理解をしております。

笠井委員 伺ってもなかなかお答えが出てこないんですけれども、依然として予断を許さない事態だけに、政府の責任で正確な情報をきちっとやっていくというのと、それから、どうなっていくのかというふうに見通して、今何をしているのかということもきちっと説明してこそ、これは本当にいろいろな知恵も出てくるんだと思うんです。国内外の専門家の知恵と能力を総結集して、危機収束への明確な見通しを持って、あらゆる事態を想定した総合的な取り組みをする上でも、そういうやはり国際社会に対する発信というのがなければだめだ、そこはきちっと持たないと、またそれが見えてこないというのが国内外にあるわけですから。

 では、伺いますけれども、今回の原発事故への対応で、どんな国からどのような協力支援を得ているのか。それからさらに、それにとどまらず、今後、国際社会にも危機収束のための協力支援を積極的に要請していくべきじゃないかと思うんですけれども、そういうおつもりがあるかどうか。いかがですか。

松本(剛)国務大臣 今、米国、フランスからは、原子力専門家などの派遣や物資の提供を受けてきているところであります。

 米国からは、原子力規制委員会、NRCなどから原子力の専門家の派遣を受けております。また、消防車やポンプ車、また防護服、そして硼素、さらには淡水を運んでいただくバージ船の提供なども受けたところであります。フランスからも、アレバ社の専門家の派遣を受けると同時に、防護服、測定器、ポンプなどの提供を受けているところでございます。

笠井委員 それ以外に、では、今後さらに、その二カ国にとどまらず、いろいろな知恵と力もお願いしたいというような、国際的な危機収束のための協力支援の要請をするつもりがあるのかどうか。

松本(剛)国務大臣 既に伝えられていると思いますが、昨日は韓国の専門家が来られて、有意義な意見交換をさせていただきましたし、ロシアからも専門家の方が、もう既にお戻りになられたと思いますけれども、来られたということでございますし、英国からも、また物資などの支援もいただいております。

 私どもとしては、今おっしゃったように、内外の知恵と力を結集してこれに対処しなければいけないという点については、そのとおりではないかというふうに思っております。

笠井委員 四月四日に実施した放射能汚染水の放出についての対応、議論もありましたけれども、改めて私からも、アメリカとは事前に協議し、内諾を得ていたと報じられる一方で、韓国、ロシア、中国などの周辺諸国から、事前通知がなかった、一方的で不透明という厳しい批判が寄せられているわけであります。大臣はそうした批判をどう受けとめているか、改めて伺いたい。そして、誠意を持って対応して理解と協力を得ることが必須じゃないかと思うんですが、その立場について伺いたいと思います。

松本(剛)国務大臣 低レベルの放射能汚染水の放出について、特定の国にあらかじめお知らせをするとか、そういったことをしたというふうには承知をしておりません。決定そのものは東京電力、もちろん政府もその決定をしっかりと責任を持たなければいけないわけだというふうに思っておりますけれども、決定について特定の国の内諾を得たとか、そういうプロセスがあったというふうには私どもは承知をいたしておりません。

 これは先ほど首藤委員の質問でも申し上げましたけれども、この低レベルの汚染水の放出については、その後の高レベルの放射能汚染水の移しかえなどの作業というものを急がなければいけないということで、限られた時間の中でできるだけ早く実施に移したいという、いわば対応チームの思いというか考え方があった。

 他方で、決めて速やかに実行に移す中で、今おっしゃったように、自治体ももちろんでありますけれども、関係の国々にはできる限り説明をすべきだという要請の中で、今回は非常に時間が限られている中でしたので、我々としては、率直に申し上げれば、たまたまでありますけれども、三時半に発表するという、直後の四時に在京各国大使館との説明会があらかじめセットされておりましたので、その機会を利用して、その時点でわかっていることについて説明させていただくと同時に、後から得られた追加の情報についてはファクスなどでお送りをさせていただいたという方策をとったわけでありますけれども、さらに丁寧に説明をしてほしいという趣旨の問題提起が韓国などからあったということを踏まえて、以後のことについてまた連携をさらによくして、そういった対応に努めるようにしていきたいというふうに思っているところでございます。

笠井委員 批判は率直に受けとめて、申しわけないということがあって当然だと思うんですよ。

 五日の会見のときに大臣が、国際法上の義務との関係では問題にならない、現段階では国境を越えて影響を与えるものではないというようなことで言われてしまうと、これは何なんだという話になるわけで、一層不信を与えるだけであります。周辺国や国際社会に対して、正確な情報の開示と、それから見通しについても丁寧に説明に徹するという立場でやらなければ、本当に理解や協力は得られないということを申し上げたいと思います。

 次に、東日本大震災による被害についてでありますが、農水省、お願いしています。

 現時点での農林水産関係の被害状況について、どれぐらいの額だと見積もっておられるか。また、今後どれぐらいになるか、いつごろまでに全容が判明するというふうに今考えていらっしゃるでしょうか。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 今回の過去にない大規模な地震と津波によりまして、東北地方の太平洋沿岸を中心といたしまして、広範な地域にわたって農林水産業に甚大な被害がもたらされたところでございます。その被害の全容につきましては、いまだ残念ながら明らかになっておりませんけれども、農水省で現在把握しております農水関係の被害額は一兆三千九百十七億円に上っております。

 今後の被害額の見通しでございますけれども、確たることは今の段階で申し上げられませんけれども、水産関係などで、今後の調査が進む結果、被害額がさらにふえることが考えられます。引き続き状況の把握に努めてまいりたいと思っております。

笠井委員 全体が判明するまでにはというか、明らかになるのはかなり時間がかかっていくということで、やはりそういうことになりますかね。

藤本政府参考人 現地の方でも壊滅状態の地域、漁村中心にございますので、ちょっとお時間をいただくような形になろうかと思います。

笠井委員 今回の大震災で、東北や関東地方などの農林水産業の生産基盤が大きな打撃を受けて、被災地の事業所が壊滅的打撃を受けながら雇用悪化も深刻という状況です。広範な地域での生活の見通しが立たないという状況にある。その上に、福島原発の事故による放射能拡散という被害も加わっているということであります。

 大臣、そういう深刻な被害が広がっている中で、震災前に政府が目指していたTPP交渉への参加についてなんですけれども、六月をめどに決めるという方針は、これはもう根本から見直して、やめていく、あるいは、まず、そういう点では被災地の復旧復興に最優先で全力を挙げる、当然そういう立場になっていくと思うんですけれども、それはいかがでしょうか。

松本(剛)国務大臣 現在のところ、震災の対応ということで対策を行うと同時に、生活の支援、そして経済活動の復旧に、早期に回復するように、全力を尽くすところで行っているということは事実であります。

 同時に、復興をこれから進めていくという中で、どういった復興、国のあり方というものを考えていくのかということが重要になってくると思いますが、そういう中で、国力を高めるという必要性は一層ふえてくると思っておりますし、国力を高めるものとして、経済外交の一環としての経済連携があるというふうに考えているところでございます。

 これから復興のあり方の青写真の議論が行われていきますし、その中で必要な政策のしっかりとした位置づけが行われていく、こう考えておりまして、その中で、TPP交渉参加を含めた経済連携についても議論をされて、方向を定めていくことになると考えております。

笠井委員 今、被害の全容がわかるのも時間がかかるという話もあって、そして、今後の復興の中でということでの国づくりのプランという話だったわけですから、そうなりますと、六月をめどにTPP交渉参加については決めると言ったことについては無理だ、これはもう当然そういうことになりますね。

松本(剛)国務大臣 復興の青写真づくりは急がなければいけないと思っております。

笠井委員 被害の全容がわかるのにまだ時間がかかると言っているのに、青写真もまだそんなにできないで六月という話になるのはおかしいんじゃないですか。六月というのにこだわる理由は何ですか。

松本(剛)国務大臣 復興の青写真というものは、当然、引き続きの捜索、救援、そして被災者の生活支援というのが必要だということは我々としても万全を期さなければいけないことは申し上げるまでもないことでありますが、同時に、経済活動の復旧から復興に向けても動き出していかなければいけない、まさに我々は立ち上がっていかなければいけないというふうに考えておりまして、その方向、青写真というのは議論を始める時期に来ているのではないかと思いますし、議論を速やかに、一つの方向性を出していくことというのは急いでいかなければ行動に移せない、こう考えております。

笠井委員 東北地方を初め、被災者の皆さんが聞いたら、もう本当に、こんなときにTPPという話になりますよ。

 大震災直後の参議院の予算委員会の公聴会で、藤井聡京大教授が日本のTPP参加についてこう述べられております。

 被災地に諸外国からの安い農産品という第二の津波が来襲すれば、ふるさとの再生どころか、ますます壊滅的な被害をこうむることは必定だ、せっかく農地を復旧しようとしても、TPPによってどうせ将来使えなくなるんだという気分が支配的になれば、復興に向けた士気ががた落ちになる、だからこそ、被災した農業地帯が復興に専心できるように、TPP交渉不参加の決定の明言が是が非でも必要だと国会で述べられているんですね。

 大臣、本当に気持ちがわかっているかという問題ですよ、被災地の皆さんの。

 農水省に伺いますけれども、東北、関東地方各県のうち、TPPに関して、参加すべきでない、あるいは慎重に検討すべきという意見書を決議した県議会は幾つで、どこでしょうか。

實重政府参考人 お答えいたします。

 TPPに関する都道府県議会からの意見書につきまして、これは震災前に集計したものでございますが、これまでに四十件提出されております。そのうち、TPPに参加すべきではないというものが十一件、慎重に検討すべきというものが二十三件、合わせて三十四件が全体としてはございます。

 このうち、委員御質問の東北、関東につきましては、全部で九県から意見書が提出されておりまして、参加すべきでないというのが青森、岩手、山形の三県、慎重に検討すべきというのが宮城、秋田、福島、神奈川の四県、合わせて七県でございます。七県が参加に反対または慎重となっております。

 なお、その他の二県は茨城と群馬でありますけれども、TPPについては国内対策が必要とするとともに、拙速に参加をしない、または拙速に参加の判断を行わないといった意見でございます。

笠井委員 もともと、農林水産業や地域経済にとって壊滅的な打撃を受けるということで、TPP参加には反対、慎重だった被災各県にとって、大震災、原発事故に加えてTPP交渉参加となれば、トリプルパンチになります。被害の全容と額がわかるまで相当時間がかかるとさっき農水省も言われたので、自給率確保という点でも、被災県以外が支えなきゃいけないというところでありまして、少なくとも、六月をめどに交渉参加を決定するという方針は明確に見直す。大臣、これぐらい言わないと、ちょっとこれは本当に被災地からも、今の政府は何なんだということになりますよ。

松本(剛)国務大臣 TPP参加と交渉参加と、私どもは、交渉参加について、今、情報収集の結果としてどうするかということを議論しているというふうに承知をしておりますし、また、TPPそのものがどういったTPPになるかということも含めて議論をしなければいけませんし、先ほど申し上げたように、我が国の国力、経済を高めるものとして、認められる段階で当然参加をするということになると思っておりますので、今の御議論、お話を承っておりますと、笠井委員とはTPPに関する基本的な認識というものを異にしているのではないか、このように思います。

笠井委員 では、東北各県に行って聞いてください。TPPをやります、交渉参加についてはやりますとやってくださいよ。どんなことになりますか。本当に考えられないですよ。大臣、基本認識を問われちゃいますよ。参加が議論になっているときに、こんなに決議が県議会から上がってきたんですよ。その上に、こんな被災を受けているんですよ。そんなときに、とんでもない話だと私は言いたいと思います。

 次に行きます。

 日豪のEPA交渉、これについても、米、牛肉、そして小麦、乳製品などの重要品目の農産物が含まれておりますが、これも当然のこと、私は見直しが必要だと思うんです。今回の大震災があったのがもとで、今月中に予定していた日豪EPA交渉の実務者会合を延期するというふうに報じてありますけれども、これは事実か。その理由は何でしょうか。

松本(剛)国務大臣 TPPについても、交渉参加するかしないかを決定するのが六月だということを繰り返し申し上げさせていただきたいと思います。

 その上で、日豪のEPAについては、この四月に予定をしていた交渉については、当初、オーストラリアで行うことが予定をされておりましたけれども、関係者全員の日程、事情などによって延期をしたものというふうに承知をしております。

笠井委員 大臣、そこで、日豪EPAの交渉に関する二〇〇六年の衆参農林水産委員会の国会決議でありますけれども、こうあります。交渉に当たっては交渉期限を定めないこと、日本の重要品目について十分な配慮が得られないときは、政府は交渉の継続について中断も含めて厳しい判断で臨むことというふうにあります。

 かつて民主党も野党時代に賛成をされましたこの国会決議を尊重してオーストラリアとの交渉に当たっているということで、これはよろしいですね。

松本(剛)国務大臣 国会でお決めになったことというのは、重く受けとめております。

笠井委員 農水省に確認しますが、日豪EPA交渉については、三月九日に篠原農林水産副大臣の答弁でも、昨年十一月九日の基本方針で、交渉の妥結に向けた取り組みを加速化するということと、センシティブ品目に十分配慮するという二つを定めて、そして、政府としては具体的な交渉期限を定めているわけではないということも述べられております。こういう答弁があったのは間違いないですね。

實重政府参考人 委員御指摘のとおり、センシティブ品目に配慮しながら交渉していく、また、交渉期限を定めていないということでございます。

笠井委員 私、ここに、ことし一月に行われた日米貿易フォーラムに関する日米貿易フォーラム政策対話部分、一月十三日、九時三十分から十二時、発言ポイント案という文書がございます。冒頭に、日米貿易フォーラムの政策対話部分においては以下の発言ポイントを踏まえて適宜対処するということが書かれておりまして、そして、議長、日本側、八木外務省経済局長、米国側、カトラー通商代表補というふうにあります。

 ことし二月、私の資料要求にこたえて外務省から送られてきたものであります。ファクスで送られてきました。この文書は外務省が作成したという文書で間違いないかどうか、確認をお願いします。

松本(剛)国務大臣 外務省がそれをファクスで送ったということですか。(笠井委員「はい、資料要求に対して送ってきました。こういう文書があるということは、外務省、確認できますか」と呼ぶ)

 今、あらかじめのあれがありませんでしたので、ちょっと今、手元にその文書そのものがありませんので、どの文書かというのをコメントをすることはできないかと思います。

笠井委員 いや、外務省がいらっしゃるから。こういう文書があったかどうか、私のところに外務省から送ってきましたから間違いないと思うんですけれども。二月二日に送ってきましたから。ちょっと確認してください。

松本(剛)国務大臣 あらかじめお知らせをいただければ、二月の二日にどこからどういう文書で送ったかというのは、私自身もできる限り目は通すようにしておりますが、外務省の文書をすべて承知しておるわけではありませんので。

笠井委員 外務省はたくさんいらっしゃるし、伴野副大臣もいらっしゃるから、ちょっとそこで確認してください。文書があるかどうか。

小平委員長 外務省、確認してください。

 続けて質問、その間にどうぞ。

 それでは、ちょっと速記をとめて。

    〔速記中止〕

小平委員長 速記を起こしてください。

 では、笠井委員、あとはいいですね。午後に時間はとりますから。四分ありますので。

笠井委員 では、引き続き午後にやらせていただきます。

小平委員長 次に、服部良一君。

服部委員 社民党の服部です。

 きょうは、先ほど松本大臣を横から見ていますと、目が充血して真っ赤っかですけれども、ちょっと健康に留意されて頑張っていただきますように申し上げておきます。

 四月四日、福島第一原子力発電所から低レベルの放射能汚染水が大量に海に放出をされました。先ほど来、何人かの委員の方からも指摘されているわけですけれども、海外からも厳しい声が出ております。私は、きょうはこの件に絞って事実関係等をお聞きしたいというふうに思います。

 事実関係ですので、端的に御回答いただきたいのですけれども、まず四月の四日、十五時五十分に東京電力が放出するという発表があったということなんですが、その三十分後に、外務省として定例で外交団にブリーフをされた、そこで説明をされたというふうなことなんですが、韓国側は、これは放出の検討であって放出するというふうな説明はなかったというようなこともちょっと記者会見で聞いておりますが、これは事実なんですか、大臣。

松本(剛)国務大臣 既にその時点で東京電力が発表されておりますけれども、具体的には、線量の低い水を海に排水して、二号機のたまり水を排水できるタンクを確保する、このたまり水というのは高レベルの分ですけれども、確保することを近く始めるという発表があったというふうに承知をしておりますが。

服部委員 海に放出するということは、その十六時のブリーフの時点では明確に言われたんですかということをお聞きしている。

松本(剛)国務大臣 発表があったのが十五時三十分で……(発言する者あり)十六時がブリーフですけれども、そのときに、線量の低い水を海に排水することを近く始めるという発表があったという申し上げをしたというふうに承知をしております。

服部委員 近く始めると。そうですか。いや、韓国側は、まだこれは検討段階だという受けとめだというふうに記者会見で言われていたわけです。

 それで、その後、外務省からファクスを海外に流したということなんですけれども、このファクスをちょっと私は見ていないんですけれども、どういう内容で出されたんでしょうか。

松本(剛)国務大臣 ファクス自身のポイントとしては、近く始めるというのが本日中だということが判明をいたしましたので、本日中に始める、開始されるということをファクスで説明させていただいたというふうに承知をしております。

服部委員 ロシアの旧チェルノブイリ原発事故の現場処理の責任者を務めた環境専門家たちが十一日に記者会見をモスクワでして、日本の措置を国際犯罪だという非常に厳しい指摘をしているわけですね。その中で、ロンドン条約、海洋汚染防止条約があるわけですが、日本は汚染水に含まれる物質を明らかにしていない、それから、その影響に関する科学的予測もなしに放出したというふうに指摘をしているわけですけれども、この時点でのファクスには、そういう汚染の影響であるとか、どういう物質がどう出るのかということに対する説明はされたんでしょうか。

松本(剛)国務大臣 今私どもが承知をしている限りは、先ほど話があったように、三時半に発表されるという情報を得て、その時点で我々が承知をしているものはすべてお出しをしたということでありますが、第一報をまずお知らせしたのが四時の段階だったというふうに承知をしておりますし、後刻のファクスについても、本日中に開始をされるということをポイントにお知らせをさせていただいたわけで、科学的なデータを全部付してそろえたかどうかということに関して申し上げれば、必ずしもそこは確認はできていないということでございます。

服部委員 極めて不十分であったということなんでしょう。

 IAEAの事務局長は、日本政府からの情報を把握していなくて、記者会見で非常に、ちょっとざっくばらんに言えば、恥をかいたような局面があったやに聞いておりますが、IAEAについては、どの段階で、どのような方法で、かつ、いかなる国際法上の根拠に基づいて通報されたんでしょうか。

伴野副大臣 服部委員にお答えさせていただきたいと思います。

 我が国といたしましては、かの福島第一原発において問題が発生した直後から、原子力事故早期通報条約に基づきまして、放射線の影響を最小のものにとどめるため、IAEAに対し、できる限りの情報を提供しているところでございます。

 先般、低レベル放射性核物質を含む汚水の放水に際しましては、かかる情報提供の一環といたしまして、原子力安全・保安院からIAEAに対して、放水前に情報提供を行ったと承知しております。

服部委員 東電が十五時三十分に発表されて、外務省が十六時にブリーフということなんですが、もう一回聞きますけれども、IAEAには、どの、何時の時点で、どういう方法で連絡されたんでしょうか。

伴野副大臣 お答えをさせていただきます。

 四月四日、十七時過ぎに原子力安全・保安院からIAEAに対して通報をしておるものと承知しております。

服部委員 国内でもいろいろ、漁協の皆さんとか、一体どうなっておるんだというような批判が上がりました。

 実は、数年前に、海洋政策担当大臣というのがつくられております。海洋環境の保全あるいは国際的な連携の確保及び国際協力の推進ということもその基本的な施策にありまして、今、大畠大臣が海洋政策担当大臣を兼ねるということなんですが、保安院にちょっとお聞きした方がいいのかな、大畠海洋政策担当大臣には事前通告はされたんでしょうか。

深野政府参考人 大臣には、直接は御連絡を申し上げていないと思います。

服部委員 農水大臣あるいは厚労大臣には事前に御連絡されたんでしょうか。

深野政府参考人 農水大臣、厚労大臣に対しても、直接の御連絡は事前には申し上げておりませんでした。

服部委員 漁協とか農業関係者には事前に御連絡されたんでしょうか。

深野政府参考人 福島県などの地元自治体には御連絡申し上げたんですが、漁協等には御連絡をしておりませんでした。

服部委員 福島県、茨城県には何時の時点で御連絡されたんでしょうか。

深野政府参考人 福島県には当日の三時半ごろに御連絡を申し上げたと思います。茨城県については事前に御連絡を申し上げることができませんでした。

服部委員 東電さんが記者会見された十五時三十分には福島県には連絡をされた、そして茨城県には連絡をされていない、こういうことなんですか。

深野政府参考人 三時半時点では、茨城県には連絡は行っておりませんでした。

服部委員 今回の意図的に放出された、海洋に出た放射線量物質の推計は何ベクレルと見たらいいんでしょうか。

深野政府参考人 全体で、一・五掛ける十の十一乗、千五百億ベクレル程度でございます。

服部委員 二号ピットから高濃度汚染水が流出したわけですけれども、この放射線量の推計はどれぐらいなんでしょうか。

深野政府参考人 二号機につきましては、どれほどの量が漏れたかというのはちょっとデータが不分明でございますので、幾ら出たかということについては、現時点ではわからないということでございます。

服部委員 そんなばかなことはないでしょう。だって、濃度とか、何万倍かはちょっと忘れましたけれども、大体一時間当たりこれぐらい流出しているだとか、いろいろ報告があったじゃないですか。こんな肝心なことを、そんな、答弁できないというのはおかしいですよ。

深野政府参考人 放射線量につきましては、千ミリシーベルトを超えるという大変高い線量のものでございました。四月二日の朝から漏出が発見されまして、これは流出経路等いろいろ調べて対応をとった結果、四月六日の朝に流出をとめたということでございます。ただ、何リッターぐらい出たかということにつきまして、ちょっとデータがございませんので、どのぐらいの放射性物質の漏出があったかということについてはデータがないという状況でございます。

服部委員 低レベルが約九千トン出た、そして高濃度のものが約二万トン出たという数字もあるわけですけれども、この高レベルの二万トンの放射性物質の排出量を保安院として把握されていないというのは非常に問題だと思うんですね。

 今回、レベル7という沃素の大気中への放出量の中には、海水への放出量は算定されていないというふうにきょう新聞報道でされていますけれども、それはそういうことなんでしょうか。

深野政府参考人 国際的な評価尺度の算定に当たりましては、大気中に放出された放射性物質の量と、それから人が直接被曝をするなりして人に直接影響のあった放射線、放射性物質の量、そういうものを基礎にして評価をいたしますので、水の中に出ているものについては評価尺度の評価の中には入っていないということでございます。

服部委員 日本は海洋法条約を締結しているわけですけれども、これは、人の健康だけじゃなくて、生物、自然、海洋生物に対する害、それから海洋活動、漁業とかに対する障害とか、海水の水質を利用に適さなくすること並びに快適性の減殺のような有害な結果等々も含めて、トータル的な環境保護を求めているわけですね。ですから、早急に保安院として、海への放出量、これを至急お出しいただきたいというふうに思います。

 大臣にお聞きしますけれども、今回の放出が人への健康への有意な影響はないと思うから国際法上の義務との関係で直ちに問題になるものではないというふうに記者会見で一度お話をされているわけですけれども、現段階で、この海洋への放出がどういう影響があるというふうに認識をされているんでしょうか。

松本(剛)国務大臣 記者会見でのやりとりは、通報などのことを含めてお話をさせていただいてきた内容でありまして、法解釈についてのお話もあったかに思いますのでそのようにお答えをさせていただきましたが、あくまで法解釈は事実認定と法の解釈ということで、例えば、低レベルの排水は、四月四日から実施した、排出基準を超える放射性物質濃度の海洋排出による人への影響については、全身実効線量として〇・六ミリシーベルトと評価されており、原子炉等規制法に基づく線量限度である年間一ミリシーベルトを下回っているというような事実などをもとにお話をさせていただいたものでありますけれども、今回、やむを得ない措置とはいいながら、低レベルとはいえ、放射性物質を含んだ水を放出せざるを得なかったことは大変残念でありますし、今お話がありましたように、海洋法など、海洋をいわば汚染から守るという趣旨から見ても望ましいものではないというのは、おっしゃるとおりだろうというふうに考えているというところでございます。

服部委員 海外も非常に不信感を持っている原因の一つに、こういった海洋汚染に対するシミュレーションといいますか、日本サイドから全然発表されていないわけですね。

 ちなみに、フランスはどういうことを言っているかといいますと、食物連鎖、濃縮の危険性であるとか、あるいは、例えば、数日中は水深二十から百メートルの海中に汚染物質が漂う、一部は海底に堆積する、それから数カ月後には千葉県以北の太平洋沖に達するとか、十―十五年後には赤道付近に到着する、こういうことを発表しているわけですね。

 それから、日本でも、原子力研究開発機構の方が、五年後には北米に到達する、十年後にはアジア東部に到達する、そして三十年後には太平洋全域に汚染が広まると。それは、その時点で薄まるということはもちろんあるにしても、あるいは、特に食物連鎖の関係でいくと、昆布とかそういったものに非常に濃縮される可能性があると。ですから、やはりこういったことをきちっと出す、シミュレーションして説明するということが非常に重要だというふうに思うわけです。

 そして、先ほど大臣は、緊急やむを得ない措置だというようなことをおっしゃるわけですけれども、ロンドン海洋投棄条約においても、緊急の投棄においても、影響を受けるおそれのあるすべての国及び機関と協議を事前になした上で、そして投棄をする特別許可を近隣諸国は与えることができるということで、裏を返せば、近隣諸国がその説明を受けた上で、これはやむなしというふうに許可をしたら投棄ができる、こういう規定になっているわけなんですよ。

 ですから、そういう意味で、私、こういうことを何でくどく言っているかというと、逆のことがあるわけですね。というのは、例えば日本でも、日本海にソ連が核廃棄物を投棄したということが問題になりました。このとき、これは一九九二年ですけれども、ロシア側から事前通告はなかったということで、当時の細川首相は甚だ遺憾なことだから抗議だ、江田科学技術庁長官は周辺諸国に配慮を欠き大変遺憾だ、即時停止を求めたい、それから、外務省は駐日ロシア大使を呼んで抗議しているわけですね。

 それで、このときの放射能の排出量は四百億ベクレルと言われているわけですが、今回の低レベルの放射能はもっといっぱい出しているわけなんですよ。だから、我が身をやはりきちっとしないと海外に文句も言えない。例えば、韓国で同じような事故があったときに一体どうするんですか。そういう意味で、日本としてきちっとやることはあるだろう、やはりその検証及び反省も含めてきちっとしていただきたいというふうに思っております。

 それで、今回の対応が、国際法上、本当に問題ないのか。国際法上、見てみますと、関連する条約が三件あるようです。一つは国連海洋法条約、二点目がロンドン海洋投棄条約、それから三点目が原子力事故の早期通報に関する条約なんですけれども、今振り返ってみて、今回の投棄が本当に国際条約に違反していないというふうに言えるのかどうか、その点に関してちょっと大臣の所感、所見をお聞きいたします。

松本(剛)国務大臣 我が国としては、国際的なこれまでの立場から考えても国際法は遵守しなければいけないということで、国際法上の義務、国際法が遵守された形でいかなければいけないということはこれまでも心がけてきたというふうに考えております。

 その上で、今、服部委員がおっしゃいましたし、私どもとしても、各条約の趣旨にかんがみても低レベルの放射性の汚染水を排出せざるを得なかったのはやむを得ない判断だったというふうに説明を受け、私どももそれを聞いたところでありますけれども、望ましくないということは事実でありますので、そのことをよく認識して各国に丁寧に説明をし、情報を提供することが必要だということは改めて肝に銘じておきたい、こう思っております。

服部委員 韓国が海域の共同調査、共同モニタリングを求めているというふうな報道がされているわけですけれども、これについては今どういうふうな対応をされるおつもりでしょうか。

松本(剛)国務大臣 その件については、私のところでは、現段階では報道として承知をしているという状況でございます。

 韓国側には、きのうは専門家も来日をしていただいて意見交換をしたところだというふうに承知をしております。

服部委員 時間が来ましたので終わりますけれども、ひとつしっかりとした対応を、こういったことの一つ一つの積み重ねが外交的信用と信頼ということにつながると思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 以上で終わります。

小平委員長 午後零時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時四十分休憩

     ――――◇―――――

    午後零時三十一分開議

小平委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とスイスとの間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とオランダ王国との間の条約の締結について承認を求めるの件及び日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とオーストラリア政府との間の協定の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 政府から順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣松本剛明君。

    ―――――――――――――

 所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とスイスとの間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とオランダ王国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とオーストラリア政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

松本(剛)国務大臣 ただいま議題となりました所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とスイスとの間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十年十一月以来、スイスとの間で現行の租税条約を改正する議定書の交渉を行いました。その結果、平成二十二年五月二十一日にベルンにおいて、我が方在スイス大使と先方財務大臣との間で、この議定書の署名を行った次第であります。

 この議定書は、現行の租税条約を部分的に改正するものであり、投資所得に対する源泉地国課税をさらに減免するとともに、条約の特典の濫用を防止するための規定、税務当局間の租税に関する情報交換のための規定等を設けることとしています。

 この議定書の締結により、我が国とスイスとの間での課税権の調整が一層効果的に行われるとともに、租税に関する情報交換が行われることになり、両国間の人的交流及び経済的交流の促進並びに国際的な脱税及び租税回避行為の防止に資することが期待されます。

 よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とオランダ王国との間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成十六年六月以来、オランダとの間で現行の租税条約にかわる新たな租税条約を締結するための交渉を行いました。その結果、平成二十二年八月二十五日に東京において、我が方外務副大臣と先方駐日大使との間で、この条約の署名を行った次第であります。

 この条約は、現行の租税条約を全面的に改正するものであり、投資所得に対する源泉地国課税をさらに減免するとともに、条約の特典の濫用を防止するための規定等を設けることとしています。

 この条約の締結により、脱税及び租税回避行為を防止しつつ、我が国とオランダとの間での課税権の調整が一層効果的に行われることになり、両国間の人的交流及び経済的交流が一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 最後に、日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とオーストラリア政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十二年三月以来、オーストラリアとの間でこの協定の交渉を行いました。その結果、同年五月十九日に東京において、我が方岡田外務大臣と先方国防大臣との間で、この協定の署名を行った次第であります。

 この協定は、我が国とオーストラリアとの間で、共同訓練、国際連合平和維持活動、人道的な国際救援活動、大規模災害への対処のための活動等のために必要な物品または役務を我が国自衛隊とオーストラリア国防軍との間において相互に提供することに関する基本的な条件を定めるものであります。

 この協定の締結により、我が国自衛隊とオーストラリア国防軍との間の緊密な協力を促進し、もって国際連合を中心とした国際平和のための努力を初めとする国際的な協力に寄与することが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 以上三件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

小平委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

     ――――◇―――――

小平委員長 次に、内閣提出、在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として資源エネルギー庁原子力安全・保安院原子力災害特別対策監深野弘行君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小平委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野寺五典君。

小野寺委員 自由民主党の小野寺五典です。

 きょう、まず冒頭に、本来、本日採決を予定しておりました日・ヨルダン原子力協定について、福島の原発の問題等がありまして、今、原子力の安全性の問題が問われているということで、本日の採決は行わず、改めて審議を行うという判断をしていただきました。この委員会の極めて良識ある判断だと思っております。しかるべきときに、原子力の安全についてしっかり議論をする中で、この協定の速やかな締結を進めていくことが大切かと思っております。

 さて、冒頭、今ちょうどお話ししましたが、原子力の問題について、外務省に一問お伺いをしたいと思っております。

 先ほど、午前中の質問でもさまざまな委員から御指摘がございましたが、福島第一原発の低濃度汚染水の排出ということ、この外務省の対応について少しお伺いをしたいと思っております。

 実は私は、この外務省の対応を、外務大臣の記者会見を聞いて、少し内容をまとめてみました。

 当日、四月四日月曜日午後三時半過ぎ、政府・東京電力統合本部に派遣されている外務省の職員から外務省の国際原子力協力室へファクスで通報があり、低レベルの汚染水の排出が行われる可能性があるということが通報され、そして四時に、先ほど来外務大臣お答えされておりますが、外務省内で外交団にブリーフをされて、この内容についてお伝えをした。そしてその後、ファクスに基づいて各国にお知らせをされたというふうに伺っておりますが、この四時に行われた外交団のブリーフでは、どのような内容について御説明をされたのでしょうか。

松本(剛)国務大臣 正確に申し上げれば、今お話がありましたように、私どもとして、東京電力が低レベルの放射線を排出するということを発表するという情報を得たということで、四時の段階では、ほぼ、三時半過ぎということでしたが、その時点で恐らく東京電力も発表途上ぐらいであったのではないかというふうに思いますが、低レベルの放射能汚染水が排出をされるということが東電において発表されるところである、このようにお伝えをしたというふうに承知をしております。

小野寺委員 実は、ちょっと外務省に確認をしましたら、少し大臣の御答弁とは違っていまして、そこで御報告をしたのは、今晩遅く低レベルの汚染水が排出される予定、そういう内容で外交団にお話をされたということを確認しております。

 そして、今手元に、その後、外務省が各国の外交団、日本の国内、在京にあります外交団に対して流したファクス、メールの内容というのを私は持っているんです。実は、在京には百四十九カ国、それからEU、三十五の国際機関がございます。そこに対して、この内容について、今晩遅く行われる予定というメールとこのファクスを送られたということなんですが、これは何時に送られたか、御存じですか。

松本(剛)国務大臣 私が聞いた報告では、四時の段階ではきょうじゅうということが正確にはお伝えできていなかったのではないかというふうにお聞きをいたしまして、しかし、きょうじゅうであるということがわかったということで、それは速やかにお知らせをしようということでお知らせをしたのがそのファクスだというふうに承知をしております。これは七時ぐらいだというふうに記憶をしております。

小野寺委員 確認をしましたら、正確には七時五分からファクスで、それからメールで逐次、この百四十九カ国、EU、三十五の国際機関にファクス、メールをされたということです。

 ところで、大臣にお伺いしますが、福島第一原発でこの低濃度汚染水が放出されたのは、四日の何時だと御記憶されていますか。

松本(剛)国務大臣 ほぼ十九時には放出をされたというふうに記憶をしております。

小野寺委員 正確には、これは経産省の資料にありますが、十九時三分。ですから、十九時三分に、実はもうこの低レベルの汚染水は放出をされております。そして、外務省が各国の大使館、国際機関に、この内容について、今晩遅く行われる予定という内容のメール、ファクスを送ったのは午後七時、十九時五分以降。

 ですから、実は、これを送っている最中にはこの低レベル排水は行われていた、もう既に汚染水は流されていた。流されていたのに、外務省はその後に、ここにあるように、今晩遅く行われる予定というファクスとメールを出している。恐らく大臣は御存じないんだと思うんですが、後なんです、通知をしたのは。

 そして、私、これをずっと見ていると、第二次世界大戦の例の宣戦布告をする電文を外務省が翻訳をし相手に渡す前に真珠湾攻撃が始まってしまった、何かそのことを今感じて、これは恐らく外務大臣の責任というよりは事務方の責任だと思うんです。もう既に排出が始まっているのに、その後に今晩遅く行われる予定という通報を在京の各国、国際機関にされている。これは大きな問題だと思います。

 もう一つお伺いします。

 きょうは保安院に来ていただいていますが、保安院は、同じくこの午後七時、十九時過ぎに、IAEAに同じような通報をしていると確認していますが、何時にIAEAに同じような通報をしていますか。

深野政府参考人 日本におりますIAEAのリエゾンに対しまして、五時四十六分に通報したというふうに承知をしております。

小野寺委員 五時四十六分というお話でした。ただ、外務大臣の記者会見では、十九時過ぎに保安院からIAEAに通報したと五日の記者会見の中でお話をされております。

 ぜひ、こういうもう放出がなされた後に通報が行われるということが行われないように、そして、外務大臣はたしか、ブリーフを四時半の段階でしているからそこで通報しているというお話をされていますが、実はそのブリーフにこの四日の日に来た国は何カ国か御存じでしょうか。

松本(剛)国務大臣 通常、ブリーフに来られているのは二けたの真ん中辺ぐらいの数字だったというふうに記憶をしております。百とかいう数字ではなくて、二けたの真ん中辺ぐらいだと認識をしております。

小野寺委員 この日に来られたのは五十一カ国、それから一の国際機関ということで、恐らく、在京にあります百四十九カ国、EU、三十五の国際機関全部の数字からすると三分の一ぐらい、それに満たない数の国しか実は来ていない。そこで近々行われるというお話をされて、でも、恐らくその三分の一にしか伝わっていない。

 そして、その日の夜七時五分以降にずっと外務省は各国にファクスとメールで送ったんだと思いますが、もうその時点では既に福島第一原発から汚染水は放出をされている、逆になってしまった、恐らくそういうことがあって、今回、韓国やロシアがさまざまな反応をしているのであると思っております。

 ぜひ、こういうことが今後ないように、これは恐らく、外務大臣というよりも、事務方が大臣にはきちっと私たちはこうやってやっていますよという報告をされたんだと思いますが、大臣までは恐らく、この細かい内容、もう既に放出し終わった後、実は各国の大使館に通報が行っているということは知らされていなかったのではないかと思います。

 この一連の通報のおくれについて、大臣の所信をお伺いしたいと思います。

松本(剛)国務大臣 今回の低レベルの放射線の汚染については、発表があったことに基づいて、私どもとしては、四時に行動を起こして、またその後、本日中だという情報を入手次第、本件については、原子力発電所の事故についてはかなり私自身にも細かく情報が入ってきておりましたので、きょうじゅうだということがわかりましたということをたしか聞いた記憶もあります。ではすぐ知らせなければいけないねということで行動に移してくれたものと思っておりますが、結果として、おっしゃったように、私どもが各国にファクスで全面的にお知らせをしたときには既に放射線の汚染水の排出が始まっていたということは御指摘のとおりの事実でありますので、改善点として、ただ、直していかなければいけないということはその直後からも認識をして、その後については連絡体制が改善をされてきているのではないかというふうに考えているところでございます。

小野寺委員 保安院にも一言お話をしておきたいんですが、幾ら何でも、今回のこの経緯から見ますと、三時半ぐらいに通報して、そしてその日の七時過ぎにはもう低レベルの汚染水を放出するというこの慌てた感じ。通常であれば、一日前とか、あるいはせめて、朝に通報して、きょうの夜になりますとか、そういう時間的猶予があってしかるべきだと思います。今回の外務省の通報のおくれ、逆というのは、むしろ、通報から放水、放出までの時間が余りに短いということ、慌てた状況としかとれませんが、一体どうしてこんなに短い時間で通報し、そしてまた放出をするということになったのか、その経緯を教えてください。

深野政府参考人 まず、こういう短期間にばたばたとやったということにつきまして、私どもの対応が至らなかったということについてのおわびを申し上げたいと思います。

 その上ででございますけれども、この排水の問題につきまして、高レベルの非常に汚染された水がございまして、それをどう処理するかということについて大変頭を痛めておったわけでございますが、そういった中でこういうものの一部漏出といった問題が出てきたということに加えまして、五、六号機のサブドレーン、これは地下水を排出する井戸でございますけれども、この水位が上昇してしまいまして、そのままおいておきますと重要な機器にいろいろな影響を与えかねない、そういうことがその日の午前中に出てまいりまして、こういった中で大変至らない対応になってしまった、そのように理解をしております。

小野寺委員 大変国民が不安に思っている中で、慌てた対応というのはさらにそれを増加させますので、ぜひしっかりした対応をお願いしたいと思っております。

 それでは、在外公館法に関して質問させていただきます。

 この在外公館法の問題、そしてまた在勤手当、子女教育手当、今回はさまざまな議論について国会、委員会で審議をするわけですが、御案内のとおり、我が国の外交というのは、これはもう大変重要な局面に来ております。特に、今回の東日本大震災は、世界各国から多くの支援の手、それから応援の声が寄せられております。こういう中で、ますます外交という問題は大変重要だと思っております。私どもとしましても、ぜひ、在外公館の役割を充実していきたい、そのように思っております。

 特に、従前、私ども、附帯決議をつけて、このような問題について、毎年承認をするだけではなくて、ぜひ、外交力強化の点から、今後とも大使館の実館化をさらに進めるということ、そしてまた大規模自然災害やテロ、犯罪の情報の収集、共有のためにも、日常しっかりと在外公館に働いていただき、そして、いざというときの危機管理にしっかり対応していただきたい。

 そしてまた、今回、在勤手当の問題が出ておりますが、これは、世の中から見ましたら、外務省の方は在勤手当をもらい、そして、本に書かれている、お一人で家を何軒も建てられるというような、そういう御指摘も過去ございました。そういう国民の疑念にしっかりこたえられるような今回の改定であってほしいと思っております。

 外交の強化、そして今回の在勤手当あるいは子女教育の問題について、今回改定されるその目的、そしてまた国民の期待にどうこたえるか、お伺いしたいと思っています。

松本(剛)国務大臣 今回の在勤法、在勤手当を改定するに当たっては、外務人事審議会というものがございまして、これは、民間の企業の経営トップにある方に座長も務めていただく中で、かなり詳細に外国で暮らすということについて調査をしていただきました。

 これまでも在勤手当については削減が続けられてきたところでありますけれども、民間などと比較してみて、また各国の生活の状況などを見て、必要な手当というのは何なのかということを、適正な水準というのを出していただくべく御議論をいただきまして、その答申に基づいて、私どもとして、予算の要求もさせていただき、また、その予算折衝の結果をこのような形で法案として提出をさせていただいたものであります。

 大変厳しい財政状況の中でありますが、今お話がありましたように、外交にしかるべく仕事ができるような体制に必要なものとして、今回の改定のお願いをさせていただいた位置づけと理解をしております。

小野寺委員 今回の改定で、例えば在勤手当は総額二%減というようなお話をいただいております。このような状況ですし、また、今円高が進んでいる中で、むしろもっと切り込んでいただきたい、そういう思いを強く持っておりますが、まずは今回のその審議会を含めた意見を尊重したい、私どももそう思っております。

 ただ、その中で一つ、今回違う要因が出てきたんだと思います。実は、今回の震災対策に対して、これは午前中も委員から御質問がありましたが、ODAの二割削減ということを与党内で今議論をしている、この震災対策予算のためにODAを二割削減するというお話が出ております。これは、大臣、考えは同じではないと思います、与党の考え方と。

 私は、世界の国を支援させていただく、そのための大切なODA、ここまで切り込む必要があるのであれば、むしろ身内であります外務省員の在勤手当、これをまず真っ先に、もっと努力してくれと切り込んで、そしてその上で、ODAの議論ということに当然なるべきだと思います。人様のために役立つためのお金は努力して捻出をする、だけれども、身内の人間の手当については本来であればもっと削減をする。ですから、このODAの削減ということは、これは日本の外交にとって大変なマイナスだと私は思っております。

 今与党はこのような案をつくられていると伺っておりますが、大臣として、外務省として、この二割削減について、どのようなお考え、あるいは御不都合があるか、教えていただければと思います。

松本(剛)国務大臣 ODAにつきましては、今、位置づけは、先ほどから当委員会で御議論があるとおりですし、委員がおっしゃったとおりでありまして、私どもにとりましては大変大切なものであるというふうに考えております。

 また、本年度、二十三年度の予算は、昨年、私の前の前の大臣のときに概算要求を提出していただいて、前の大臣の際に予算案として確定をしていただいた内容だというふうに思っておりますが、二十三年度行うべきものを積み上げて策定をされた予算だ、このように考えているところでありますので、ぜひODAについては実現をさせていただきたいと考えているのが私の思いでございます。

小野寺委員 再度端的に確認しますが、外務省として、あるいは松本外務大臣として、ODAの二割削減ということに関しては反対であると理解してよろしいんでしょうか。

松本(剛)国務大臣 外務省としては、ODAの削減ということに賛成ができるという立場にはありません。その上で、閣僚の一人として、全体のお金のやりくりをどうするかという議論の中には参画していかなければいけないというふうに考えているところでございます。

小野寺委員 私ども、今回の在勤法については賛成をする方向で今検討しておりますが、ただ、その前提として、もし、ODAを切り込む、この震災対策のためにODAを減らすということであれば、むしろ、今回私どもは賛成しますが、外務省には、この在勤手当の同じような切り込みあるいはそれ以上の切り込みを再度私どもに提案していただければ、委員長、ぜひ、そういう場合はこの委員会で再度受けていただきまして、人様に御支援をする予算を減らすところまで追い詰められた予算編成であれば、まず身内の手当からしっかり精査をする、その姿勢を貫いていただきたいと思いますが、大臣にはいかがお考えがありますでしょうか。

松本(剛)国務大臣 私ども議員の歳費についても、既に皆さんの御判断をいただいて、私も議員の一人として当然のことだというふうに思っておりますので、考え方としては委員のおっしゃったとおりだろう、こういうふうに思っております。

 その上で、在勤手当も含めて、公務員の給与そのものについてもいろいろな御議論があるだろうというふうに思いますが、制度上の仕組みの中で今後どのように定めていくかはしっかり考えていきたいと思っておりますし、また、ODAについては、先ほど首藤委員との議論で御回答申し上げたと思いますけれども、ぜひ、現場に届けられているODAが途切れたりすることのないように、また国際的なコミットというのがしっかり維持されるように、私どもとしては全力を尽くしたいというふうに思っております。

小野寺委員 ぜひ、閣僚のお一人でもありますので、与党が今後提出してくるであろうODAの削減については断固反対という姿勢、これは厚生労働大臣が、報道で知った限りでありますが、今回、年金の国庫の三分の一から二分の一への引き上げの財源、これを震災対策に向けるということは年金の将来への不安に拍車をかけるということで反対をされるということが報道されております。ぜひ、厚労大臣に負けず劣らず所掌事務をしっかりされている大臣でありますので、このODAの削減についてはしっかり反対ということ、それを貫いていただきたいと思っております。

 さて、私も実は今回の津波の被災地であります気仙沼市に住んでおりますので、少し津波の問題について触れさせていただきたいと思っております。

 今回大変大きな被害を受けているのは、実は漁業、農林水産の問題でございます。きょうは篠原副大臣においでいただきまして、ありがとうございます。

 今回の震災、特に津波ということで、沿岸の漁村が大変大きな被害を受けております。まず、この沿岸漁村への支援策、特に滅失してしまった漁船の購入、建造に対して、今、政府として、農林水産省としてどのような支援ができるのか。特には、今回、融資ということではなくて、補助あるいはさらなる支援という形で、ぜひ漁業が再建できるような、そのような支援をしていただきたいと思いますが、現在の支援の状況について教えていただきたいと思います。

篠原副大臣 漁船の建造につきましては、激甚災害法に基づきまして、五トン未満の小型漁船につきましては、共同であるならば、国が三分の一助成し、都道府県が三分の一以上助成するというスキームがございます。

 問題は五トン以上の大きな船でございますけれども、これも、例えば、私はこの間、日曜日に総理と一緒に石巻に参りました。女川町長さんから言われましたけれども、千隻以上あった船が、小さな船百六十隻しか残っていないと。私は、こういうのは、ゼロからのスタートとよく言われますけれども、マイナスからのスタートということではないかと思います。ですから、全く違ったスキームを考えていかなければならないんじゃないかと思っております。これにつきましては、初期投資、大変な額になります。漁業者に負担をかけずに、国が相当面倒を見てやるやり方というのも考えてまいりたいと思います。

 それから、漁業全体の再建でございますけれども、現場を見てみますと大変でした。よく、陸上の瓦れき、これが今大問題になっています。どうやって処理するか。ところが、漁港も瓦れきだらけなんですね。船が入れない。私はそこまでは承知していたんですが、現場に行って、見に行って聞くというのはいかに大事かというのを痛感いたしました。そうしたら、漁港の外、ここもほとんど瓦れきだらけで沿岸漁業が成り立たない。これも早く何とかしていただかなければならないという強い要請を受けました。

 ですから、まずは漁業者の皆さんに、海の部分の瓦れきの除去、これにしばらく携わっていただく、それで漁業に結びつけていくというようなことを考えなければいけないんじゃないかと思っております。

 それからもう一つですけれども、仮設住宅について非常に要望を受けました。これは農林水産省のやることではありません、ほかの省庁が中心になってやることでございますけれども、これも、私の考えでは、漁業者の皆さん、若手の漁業者の皆さん、やはり漁業で再建しなければいけないので、この人たちに優先的に入っていただくというようなことも考えていったらいいんじゃないかと思っております。当面は公共事業を漁業者の皆さんに携わっていただくことで仕事をしていただいて、一刻も早く漁業の再開に結びつけたいと思っております。

小野寺委員 今、瓦れきというお話がございました。確かに瓦れきと呼べるものが大半だと思いますが、その中にはまだ御遺体もございます。私も、基本的にはずっと地元を回っておりますので、今でも浜々を回りますと、ちょうど今上がった御遺体について回収の現場に当たることがございます。もう相当傷んでおりますし、海全体が、言い方は悪いんですが、ちょっと異臭を放つような状況にもなっております。

 また、実は同じく、漁船も沈んでいるんですが、多数の車が流されて沈んでおります。まだガソリンを積んだまま、オイルを積んだままの状況ですので、これから時間がたつと、恐らくそこからオイルやガソリンが漏れてくるんだと思います。これが漁場汚染につながる可能性もございます。ぜひこの撤去についても万全な態勢をとっていただきたい、そう思っています。

 今、避難所を回って一番感じますのは、皆さん、ある面では大変な脱力感になっています。それは、船も家も家族も失った状況で、とにかく避難生活。大切なのは、やはりあすを見出して働くことだと思います。

 農林水産省にお願いしたいのは、例えば漁業者の方が、今お話をされるような自分の浜々あるいは沿岸の沈んでいるような、重機を使わない、網とか人工物とか瓦れき、そういうものを撤去する、浜の掃除をする、漁場の環境保全をする、こういう作業にすぐに出ていただいて、そしてこの方々にしかるべく報酬を払って、自分たちの漁場回復のための仕事をまず一義的にしていただく、このような制度をぜひつくっていただきたい。そうすれば、皆さんは、自分の数カ月先の漁業の再興を実感して、そして今現在の仕事を得ることができます。

 漁業者に沿岸の漁場環境整備のための仕事、これを市になるのか漁協になるのか主体でしていただき、その費用について、事務費について国がしっかり対応するということ、このような政策についてお考えいただけるかどうか、お伺いしたいと思います。

篠原副大臣 今、小野寺委員御指摘の点につきましては、総理からも、非常に厳しいというか、指示を受けております。

 総理、十日の日曜日には石巻市長さん、東松島市長さん、それから女川町長さんと面と向かいまして話を聞かれました。それで、そこで一番先に出されたのは、まさに瓦れきの撤去でございます。

 ですから、今回の補正予算でも復旧に重点を置く、瓦れきの撤去ということでございまして、先ほど申し上げましたように、陸上の瓦れきばかりに重点が行っているということで、これじゃないんだ、石巻は漁業の町なんだ、それから気仙沼もとか、皆漁業を中心に立ち直ろうとしているところがあるわけですから、そちらの方について、今検討されているものよりもずっと倍加して予算をつけるようにという総理からの指示を受けておりまして、私も水産庁の中でそういったことを事務当局に指示しております。

 かつて、大洪水があったりしたときに、皆さん覚えておられると思いますが、救農土木事業、農民を救う土木事業ということで、農家の皆さん、作業もできないということで、田んぼが壊れちゃって田植えもできない、そういったときは、土木事業、回復しなくちゃいけないんですね。それで、農家の皆さんにそういった土木事業に携わっていただくことで収入の道を開くということをやっておりました。

 ですから、こういうことはなかったと思いますけれども、この際、救漁土木事業ですかね、こういった形で重点的に予算を配分していったらいいのではないかと思っておりますし、総理も全くそのとおりだということで、強い指示を受けております。

小野寺委員 例えば、通常の会社勤めの方が今回の震災に遭った場合には、雇用調整助成金において給料の八割、九割が支払われたり、あるいは失業保険が出たり、そういう支援があるんですが、漁業者の方というのは、ある意味で自営業ということになります。ですから、お金が出ないんです。仕事がなくなり、漁ができなくなってもお金が出ないんです。

 そして今、例えば宮城県では、二カ月、沿岸全域を漁業禁止ということで、船を持っている方も、実は休業、漁業ができない状況に海区調整委員会が指示をしてしまいました。ということは、皆さん、失業手当も休業手当も何もないんです。

 こういう、普通の雇用者が仕事を失ったのとまた違う状況があるということをぜひ考えていただいて、そんなに多くの給料でなくていいんです、一日働いて、そこでしかるべき日当と呼べるような金額が漁業者の皆さんの手に渡れば、自分たちの未来を再建する実感があり、そして日々の仕事の糧を得ることができる、私は、これが希望を与える大切な仕事だと思います。ずっととも言いません。漁場が回復し、漁船や漁具がそろうのは、恐らく半年とか一年以内にできるんだと思うんです。それまでの間、自分たちが自分たちのふるさと、海を取り戻すために、地元でそのための仕事をさせていただきたい。ぜひ、このような支援をしっかりしていただきたい、そう思っております。

 また、先ほど、漁船についても、五トン未満、五トン以上について、例えば組合がやる場合に対しての国、県の補助の問題がございました。組合がやるといっても、船を使うのは漁業者個々です。船というのは、自分の船であったからこそ、漁業も熟達した技術を発達することができる。みんな自分の船という思いでやっていきます。制度の全体の枠組みはどうあれ、個々の漁業者が満足して自分の漁船と漁具が使える、そのような仕組みをつくっていただけるか、この二点について、再度、篠原副大臣にお伺いします。

篠原副大臣 漁業者は、今、小野寺委員御指摘のとおり、非常に独立心が旺盛です。農家と比べまして、私、農業者の皆さんと漁業者の皆さん、何回もおつき合いしますが、結構差がございます。一人でやっていこうという気概というのは、漁業者の方がずっと多いと思います。

 今回行ってまいりまして、漁業者の皆さん、石巻の皆さんですけれども、お会いいたしました。その皆さんですら、個々の全く原状復帰というのは、一隻一隻の船でやるのは無理だろうと。ですけれども、いずれにしろ漁業でやっていきたい、だからこの際、先がわからないけれども、ここから立ち上がるには共同でそこそこの船を手当てしてほしい、そして、魚はいるんだから、すぐとれるからという要請を受けました。我々も、こういう要望がありましたので、とりあえずは共同でやっていただいて、前よりも少し大きな船でもって共同でやっていただいて、その後、順調にいったら個々の皆さんでやっていただくなりというふうに考えていただければいいんじゃないかと思います。

 とりあえずは、瓦れきの撤去が先でございます。それから、船も、西日本の方に、あるいは青森県の方でまだ余裕がある船とかいう話もあります。そういった中古船を持ってくるというのも一つだろうと思いますけれども、とりあえずは、皆さん団結してやっていただくということ、それから個々の漁業者に頑張っていただくということで考えていったらいいんじゃないかと思っております。

小野寺委員 漁業者の皆さんは、失業者ではありません。本来、仕事ができる、仕事がしたい、だけれども、仕事をする道具がない。ぜひこれをしっかりそろえていただく。

 実は、この夏にも、もう三陸沿岸ではウニやアワビの漁ができるんです。そして、秋にはワカメの養殖が始められるんです。カキの養殖も準備ができます。定置網をしっかり張れば、秋にはアキサケの漁獲もこれから予想されます。えさイワシが手に入れば、六月、七月には、カツオが漁場形成され、漁ができることになります。海は死んでいないんです。海がしっかりしているから、この方々には希望があります。ぜひ、その希望を実現できるためにも、農林水産省にはしっかり頑張っていただきたい、そう思っております。

 もう一点、酪農の問題です。

 実は、畜産、酪農にも、今回、大きな影響が出ました。例えば牛乳。委員の皆さんも御存じだと思うんですが、牛乳は毎日搾ることができます。そして、搾った牛乳を流通経路を通して製品にしていくのですが、実は、今回の震災で、この流通経路、特に冷蔵保存するところ、あるいは製品として紙パックで製造するところ、こういうところがみんな壊れてしまいました。ということで、毎日毎日牛乳を廃棄物と同じように捨てていたんです、約二十日間。ようやく今、何とか復活しました。この二十日間、ずっと搾り続けて捨ててきた、この方々は収入がないんです。

 こういう方々、これは原発とか津波とかの問題ではありません。ですが、実はさまざまな農漁業に影響がある。特に今回、この酪農の皆さんには大変な御負担があると思いますが、この支援について、現在のお考えを伺わせてください。

篠原副大臣 牛乳関係は、農産物をただ市場に持っていって出荷してということと比べまして、非常にシステムが確立しておりまして、複雑になっております。それで、そのシステムが壊れて、いろいろなところで困った人たちがいるというのを我々はよく承知しております。

 消費者サイドでも、皆さんお気づきだろうと思うんですが、紙パックをつくっている大きな工場が被災してなかなか紙パックができないので、牛乳はあるのに消費者の手元に渡らないというのがあります。それから、今、小野寺委員御指摘の、クーラー等の工場が場所によっては壊滅的な被害を受けて回らないということで、二十日間、先ほどの宮城県では二十日間ほとんど集荷できなかったということ、そういった状況が生じているというのは我々は承知しております。

 まことに申しわけないんですが、原発の関係のところについては出荷制限をいたしまして、この間、福島県と茨城県が次々解除されました。これについては、原子力損害賠償法でもって手当てすることが決まっております。しかし、今の東日本大震災におけることにつきましては、今まで、残念ながら、自然災害でそういったことがちょっと生じたことがあるわけですが、それについて国が援助した事例はございません。

 しかし、今回、同じように困っておられる方がありますので、経営再開されておるわけですが、非常に被害をこうむった方々がおられますので、今後どのような対策が講じられるかというのは検討してまいりたいと思っております。

小野寺委員 済みません、外務と離れて大変恐縮なんですが、もう少し述べさせていただきたいと思います。

 同じ地震、津波の被害が起きて、原発の影響がある地域とそうでない地域、そうでない地域には補償、保全がなされない。原発の影響がある地域は、これは地震、津波由来であってもそこには補償がされる。同じ東北の農家として、補償がされる農家と補償がされない農家が出てくる。これはおかしいのではないか。

 もっと大きな意味でいえば、例えば今回の津波、地震の被害において、三陸沿岸は壊滅的な被害を受けました。福島も今回、津波の大きな被害プラス、恐らく原発の被害も今後算定するんだと思います。原発の被災者には、さまざまな制度、支援、東電、国の支援で恐らく相当な支援が出るんだろう、私どもはそう感じております。ですが、同じく津波、地震で被害を受けた私どもの地元、この方々に今回義援金で出るのは、まず、お一人三十五万、一軒三十五万だけになります。同じく地震、津波で被害を受けているのに、大変お気の毒ではありますが、福島の原発の地域、そしてそれ以外の地域、ここに差があってはおかしいのではないか、私はそう思っております。

 今の酪農家の問題も含めて、今までにない制度だからもうこれ以上はできませんというのであれば、私は政権交代をした意味がないんだと思います。私どもの政権のときにそれをやれればよかったなと今大変自戒を持って思っています。せっかく政権がかわったんです。政治主導でやれるんです。ぜひ、こういうところを乗り越えていただいて、被災地の皆さんに安心の声を与えていただきたい。もう一度篠原副大臣にお伺いします。

篠原副大臣 我々はこういう状況を承知しておりましたので、途中でですけれども、ほかの地域に集荷する手当ても講じました。しかし、何人かの酪農家の皆さんはやむを得ず捨てなければならない状況になっていたと思います。

 今、小野寺委員は、同じ略農家との比較ということをおっしゃいました。その点ではそのとおりだと思います。しかし、比較の上で違うんじゃないかというのはありますけれども、我々、もう一つ考慮しなくちゃいけないのは他産業との比較でございまして、ほかの産業界も同じような打撃をこうむっているということがございます。

 ですけれども、小野寺委員御指摘のとおり、農業者、酪農家はちょっと違うんじゃないかというのがあります。例えば原発についても、酪農家の皆さんが一番直接的な打撃というか、出荷できないだけじゃなくて、えさをくれなくちゃならない、えさ代がかかる、それで収入の道がない、農家の場合はただ畑にほっとけばいいというだけなんですね、それは承知しております。そういった特殊事情がありますので、同じ酪農家同士の公平感、それから他産業との公平感を考慮いたしまして、何とか手当てできるように検討してまいりたいと思います。

小野寺委員 私は篠原農林水産副大臣に聞いておりますので、私も農林水産を積極的に支援していただきたいと思う立場ですので、他産業のことを気にすることは政治家として大事ですが、今所掌されているところのエリアの皆さんをまず優先に考えていただきたい、そのように思っております。

 それでは、最後に、少しまた外交の問題で大臣にお伺いをします。

 実は、こういう震災で日本はさまざまな世界の国から支援をいただき、また今、国内での震災対策に奔走しているところだと思うのですが、その中で懸案の外交案件、例えば領土の問題、特に日韓の竹島の問題、この問題は、実は報道が余り日本ではされておりませんが、韓国側では今大きな動きがございます。

 例えば、海洋科学基地の建設が、ここの報道によりますと四月十三日ですからきょうになるんでしょうか、工事の入札が行われ、四月に着工されるという、もう既にある海域のことを想定して、こういう予想図というのをつくっているんです。何と、竹島の近海、我が国の領土、領海の中に、韓国政府がこのような四、五階建ての海洋科学基地をつくって、ヘリポートをつくって、事実上、竹島をさらに実効支配していこうということだと思っております。また、この竹島には、さらなる宿泊施設の拡張ということが行われていますし、防波堤の建築、このようなことがどんどん進んでおります。

 こんな言い方は大変恐縮ですが、日本が今こういう国難とも言えるような災害で大変苦労している中で、このような竹島に対しての実効支配が強まるというのは、私は、人間としてどうなのかな、そのような印象を持つ場面がございます。このことに対して外務省がどのような対応をされてきているのか、お答え願いたいと思います。

松本(剛)国務大臣 今御指摘ありました総合海洋科学基地の入札というのは、三月二日付の韓国の調達庁による公告によって、四月の十日から十三日にかけて入札が行われるというふうにされておりますけれども、詳細については明らかになっていないものと承知をしております。

 おっしゃったように、今御指摘がありましたような竹島に係る一連の措置は、我が国として到底受け入れられるものでないことは申し上げるまでもないことでありまして、あらゆる機会に申し入れを行ってきております。

 私自身も、竹島に対する我が方の立場は、三月十九日に韓国の金星煥外交通商部長官にお会いをしたときに申し入れをさせていただきましたし、最近の一連の措置については、先週、我が方事務次官から在京の韓国大使に対して抗議をいたしたというところでございます。

小野寺委員 抗議をするというのは、再三再四ずっとされているんだと思います。ですが、それに対して効果が見えないので、私どもは何度もここで御指摘をさせていただいています。抗議をした結果、この基地の入札がとまったのかどうか、そのことについて確認をしたいと思います。

松本(剛)国務大臣 入札そのものについては、先ほど、私どもが今把握をしているのは、十日から十三日の間に入札が行われるという公告があったという状況まででございます。

 おっしゃったように、竹島についての一連の措置ということは私どもとしては受け入れられないものでありますので、粘り強く行っていきたい、こう考えております。

小野寺委員 東シナ海の中国によるガス田の開発にしても、あるいは尖閣の問題にしても、今回の竹島の問題にしても、私も経験はございますが、外務省は常にさまざま、いろいろなチャネルで抗議をしている、申し入れをしている、そういうことを繰り返しお話をしますし、恐らく大臣もそういう報告も受けているんだと思います。ですが、実態として、着実にこれらの我が国の領土に関して、さまざまな、言ってみれば、これらの国からの圧力が強まってくる、そういうことが現実にずっと起きております。

 ぜひここは政治主導でしっかりと、この竹島の問題を含めて、断固たる決意で臨むということが大切だと思いますが、最後に、大臣の断固たる決意をお伺いしたいと思います。

松本(剛)国務大臣 竹島については、我が方の固有の領土でありますので、その立場がしっかりと守られるように取り組まなければいけないという点については、私も、この職責を預かっている、しっかり果たせるように、全力を傾注したいと思っております。

小野寺委員 今回、一連の問題が発生しておりました。特に、低レベル汚染水の問題、あるいは今回レベル7に上がった福島原発の問題、さまざま大きな課題がありますし、諸外国に対して、さらなる支援、そしてまた説明が必要だ、これは日本の責務だと思っております。そのためにも在外公館の役割はますます重要になる。ぜひ在外公館に対してのさらなる外務省の支援、そして委員の皆様の支援を心からお願い申し上げまして、私の質問といたします。

 ありがとうございました。

小平委員長 次に、赤松正雄君。

赤松(正)委員 午前中に引き続いて、少し原子力発電所の問題に関して、この在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律案に絡める形で、いただいた時間、質問をしたいと思います。

 まず冒頭に、私は午前中、今回の原子力事故及び大地震、また大津波に対する外務省の各国に対する情報発信、これがいささかおざなりで結果として後手後手になっている、こういう観点から質問をしたつもりでありますが、改めて、外務省の世界に対する、各国に対する情報発信の仕組み、このありようについて、どういう形で、どういう原則を持って情報発信をしているのか、これについてお答えいただきたいと思います。

松本(剛)国務大臣 我が方の立場というのはさまざまな形で伝える方法があろうかというふうに思いますが、ただいま法案の御審議をいただいていることもあわせて申し上げれば、やはり各在外公館のネットワークというのは大変重要な資産でありますし、この在外公館からの発信というのを統一して、連携して行うというのは、一つの重要な発信ではないかというふうに思っております。

赤松(正)委員 事前に外務省に確認をしました。いわゆるブリーフィングという格好で記者会見を外務大臣がされる、そういう角度。それからもう一つは、日本にいる、在京というんでしょうか、大使館に対する連絡、ファクスとかメールを通じてのそういう説明。かてて加えて、今言われた、そういう在外公館を通じての情報発信。大きく言ってこういう三つかな、こういうふうに思います。

 それで、先ほど午前中の質問で一番最後に取り上げましたこの汚染、原子力発電所の今回の事故が原因になって、汚染された水を海に放出する、この事案をめぐって、私が接触した感じで言うと、韓国、ロシアから、情報が不十分であると。言ってみれば、通り一遍のごあいさつというか連絡はあったかもしれないけれども、それぞれこの両国が不満を持っているということに対して、大臣はどのように受けとめておられるでしょうか。

松本(剛)国務大臣 先ほど、小野寺委員との質疑でも、汚染水の排出決定、発表から連絡、実行という時間についてもお話をさせていただいたので、繰り返しをいたしませんけれども、結果として、例えば韓国からも、隣国としてもう少し丁寧でかつ事前の説明があってもよいのではないか、こういう問題提起を受けているということは真摯に受けとめて、以後、その点についてはしっかり改善をしていきたい、こう考えて進めてきているところでございます。

赤松(正)委員 今、事前の云々がありましたが、事後はどうなんでしょうか。

松本(剛)国務大臣 汚染水についても趣旨を説明するなどお話をさせていただく中で、今回、直接それと結びついているというふうに考えるべきかどうかというのはあれですけれども、韓国側からは専門家を派遣したいというお話があって、これを受け入れることで専門家レベルでの情報の共有というのも進んだのではないか、こういうふうに考えているところでございます。

赤松(正)委員 それは事前にきちっとした満足を相手に与えることができなかったということで、今回の事案に関して事後の対応は、今おっしゃったのは、韓国に対してはそういう角度でいわゆる連携をとっているということ。

 では、ロシアはどうなんでしょう。

松本(剛)国務大臣 今先生からも御指摘がありましたが、私どもとしては、そのときそのときではベストを尽くしているつもりではありますけれども、振り返ってみて、向こうから見て、やはり問題提起があったということを受けとめていくのがコミュニケーションだろうというふうに思っております。

 ロシアについても、その後も、まさに在外公館などを含めて、本件についての事後的な説明も、また、その後の原子力の対応の措置に関しての、できる限りあらかじめの御説明も重ねているというふうに理解をしております。

赤松(正)委員 松本外務大臣御自身は、ロシアに対してどのような行動を起こされたでしょうか。

松本(剛)国務大臣 私自身は、ロシアも含めて各国についてしっかり丁寧に説明をするようにということで指示をさせていただいた立場だと理解をしております。

赤松(正)委員 ということは、御自身はなさっていないということでいいですね、ロシアに対して。

松本(剛)国務大臣 私が先方外務大臣と話をしたとか、そういうことであるとすれば、この間はそういう会談の機会は持っておりません。

赤松(正)委員 実は私、先ほども引用させていただきましたけれども、外務省の緊急対策本部が出している資料で、外務大臣が各国の外相と直接会ったり、さっきは韓国の外務大臣と三月十九日に外相会議があったという話をされました。

 実は、これを調べてみて、ずっと見たら、なぜか、三月十二日にイギリス、アメリカ、オーストラリアと、こういう外相会談、電話でされているんですが、今日に至るまでロシアの外務大臣と松本外務大臣は電話会談すらされていない。なぜロシアとだけやっていないのかなという素朴な疑問を持ったんですが、今も、この間ロシアとはやらなかったと言われましたけれども、この一カ月間、ロシアの外務大臣との直接の電話とか何かあったのでしょうか。

松本(剛)国務大臣 失礼いたしました。この間というのは四月四日以降という意味で申し上げたつもりでございまして、三月の十四日の日に、パリのG8においてロシアのラブロフ外務大臣とは会談を行っております。

赤松(正)委員 そのときに会ったからロシアについては済んでいる、こういう理解でよろしいですね。

松本(剛)国務大臣 済んでいるとか済んでいないとかいうことではないと思いますし、四月四日以降の、先ほどの放射線汚染水のことに関して申し上げれば、私が直接外務大臣とお話をしているということはないということで、この間、お会いをしていません。

赤松(正)委員 要するに、ほかの国と、今、四月四日以降、それ以前でいえばG8の会合の中で会ったということで、この四月四日以降、つまり今回の海洋放出というこの事案に関して、直接、不満を言っている二つの国に対して事後フォローもしていない、こういうことだろうと思うんですね。

 要するに、私がきょう朝から、同僚委員の質問あるいはまた私自身の質問で思うことは、やはりこういうテーマというのはどこまでも誠実さ、誠意を持って対応するということが大事だろうと思うんですね。

 汚染された水を放出するというのは、私は、国際海洋法の精神に間違いなく違反していると思いますよ。ありていに言えば、海に接触した形でできた原子力発電所から、そういう今起こっているようなケースで水が出るなどということを想定していない。想定されない形で、今ある国際法、幾つかの法律というものはでき上がっているので、そういう意味では、国際海洋法の精神に違反し、そして具体に言えば、そういう取り決めが今存在していない、そういう状況の中で起こったことなんです。

 これは松本大臣にぜひ弁明を聞きたいんだけれども、一般的に受けとめる印象としては、非常に、別に海洋法に違反したわけじゃない、国際法の取り決めに真っ向から違反した、そういうテーマではないんだ、だから別に大きな問題ではないというふうに見えてしまう、聞こえてしまう。こういう発信が少なくとも日本の新聞ではなされている。こういうことで済まされてはいけない。

 特に、ロシアだとか韓国なんという、ある意味で地続きならぬ海続きというか、沿岸国というか、日本に近いそういう海洋国家については、きちっと連携をとるべきだ、外務大臣がぜひともそのフォローアップをして外相に電話をすべきだ、こういうことを思うんですけれども、いかがでしょうか。

松本(剛)国務大臣 おっしゃったように、本件については、先ほども申し上げましたけれども、海洋法の趣旨からかんがみても決して望ましいことではないということはまさにそのとおりであると思いますし、また、今回のこのようなことは、やむを得ぬ措置とはいいながらも、大変残念だということも申し上げてまいりました。

 そのような意味では、別に法律に違反をしていないからというような趣旨でもし伝わったとすれば、私の発信の力不足である、このように思っておりますし、その後のフォローとしてのあり方として、先輩議員としてサジェスチョンをいただいたことは受けとめて、また今後考えてみたい、このように思っております。

赤松(正)委員 力不足云々じゃなくて、新聞というのはそういうふうに書きたがる。私も新聞に関係していた職業をやっていましたから、それはそういうふうな意図を持ってやるというのは当然あるんですよ。

 だから、より大事なことは、外務大臣としては、直接的には今申し上げた韓国、ロシアに対するフォローアップというものをやり、そのやったことをきちっとまたメディアに報道してもらう、こういう姿勢が大事だ。そういうことを積み重ねていくことによって、外務大臣の姿勢というものも評価されていくことになる、そういうことを強く言っておきたいと思います。

 在外公館の役割、冒頭で、そういう海外に対する情報発信というのは在外公館の存在が大事だ、これを大臣は言われました。私もそのとおりだと思います。今、各国に駐在している大使を初めとしてさまざまな日本の人的資源、この人たちが総力を挙げて、日本の立場、日本の今、呻吟している状況というものを各国にしっかり伝えるということが何よりも私は大事だと思うんですね。

 さっき首藤さんがいい提案をされました、特別大使ということを考えてはどうなんだと。これはこれで大事なことですが、私に言わせると、それもそうだけれども、今いる大使、今いる公使、今いる各国における外務省の出先のそういう人たちをもっともっとしっかりと活用しているんだろうか。

 午前中にこだわりましたけれども、今置かれている日本の状況というのは本当に厳しい状況であるということについてのわかりやすい各国に対する説明の仕方というものを、中身をしっかりと外務大臣がその辺を練り上げて、それを逐一、各国の日本を代表する人たちに対して伝えて、そこからまた各国に伝わっていくという作業をしないと、これはもうさまざまな憶測が憶測を呼び、いろいろな誤解を呼んで、事態に対する認識が大きくずれてくる、そんなふうに思います。

 そういう点で、しっかりと、対外向け発信の最高指揮官として、そうした心構えをもう一度確認しておきたいと思います。

松本(剛)国務大臣 もちろん、これまでも原子力発電所の対応などについては、各国大使館に指示をいたしまして、各国での説明をするようにということで訓令を発しているところではありますけれども、きょう御提起もいただきましたので、改めて、在外公館のネットワークというものがしっかりと国のために有効に活用されるように、また、このことがメッセージとしてしっかり伝わるように努力をしたい、このように思っております。

赤松(正)委員 またあさって、一般質疑の機会があると思われますので、その際に、さらに対ロシアの問題についてはまた違う角度からしっかりとお話をさせていただきたいと思いますので、在外公館法改正案についての問題に移ります。

 まず一つは、従来というか、去年の八月に、外務省としては、今後五年程度の時間をかけて、他の主要国に遜色のない百五十公館というような体制の確立に向けて努力をする、こういうことを決めたという会見が副大臣の会見でありますけれども、そういう大枠としての百五十、これは今からどういうふうなスケジュールでこの実現に向けて取り組もうとしておられるのか。去年の八月からはもう既に約一年たっておりますが、その辺の基本的な物の考え方に変化はないのかどうか、お聞かせ願いたいと思います。

松本(剛)国務大臣 まさに委員おっしゃったように、百五十というのが一つ、他の主要国との外交実施体制と比較して遜色がない水準の目標として掲げられたものだというふうに承知をしておりますが、現段階では、毎年の交渉の中でできるだけ積み上げを図っていきたいということで今年度になっております。

 今後、今お話がありましたように、百五十に向けてどのような形で進めていかなければならないかということについて、さらに私どももしっかり議論してまいりたい、このように考えているところでございます。

赤松(正)委員 質、量ともの充実が大事で、別に数だけ決めた百五十に何が何でもということはいささか違うかもしれませんけれども、質、量ともに大事なので、決めた目標に向けて着実な前進をしていただきたいと思います。

 先ほどの問題とも絡むんですけれども、いわゆる風評被害というのは、今回の問題は国内だけではなくて、海外においても、先ほどの問題を含めていろいろあります。とりわけ、今回、東京から逃げろといったふうな報道、また日本に対して、もちろん多くの国の多くの皆さんが、心からの、真心からの義援もして、募金等、日本に対する金銭的な応援も含めてしていただいているのは重々わかっておりますけれども、一方で、さまざまなそういう、東京から逃げろとか、日本に寄附をするなといった報道も相次いだと聞いております。

 これに対して枝野官房長官が、しっかりと在外公館でモニタリングをして厳しく対応すべきだというふうな発言をしたというふうなことも報じられておりますけれども、先ほどにちょっと逆戻りするようでありますが、在外公館のこうした問題に対する対応をお聞かせ願いたいと思います。

伴野副大臣 赤松委員にお答えさせていただきたいと思います。

 外務省では、御案内のように、今回の震災発生以降、関連情報の対外発信に全力で取り組んでいるところでございます。今、委員御指摘のように、風評被害を防ぐ観点からも、事実に反する報道等に対しましては申し入れ、反論等を行っているところでございますが、先ほど委員のお話にもございましたように、官房長官の御発言を踏まえまして、改めて八日、在外公館に対し、対応を強化するように指示したところでございます。

 例えば、事実に反する報道への対応といたしまして、これはイギリスがその源であったと思われますが、シンガポール及びマレーシアにて同じような報道があったわけでございますが、福島第一原発の事故で作業員五名が死亡したという趣旨の報道がございました。これに対して、各国の日本大使館より、事実誤認ということで各紙に申し入れを行った事実がございます。

 以上です。

赤松(正)委員 この問題は、やはり当初から、この委員会でも私は言ったと思いますけれども、何か日本政府が隠しているという等の、さっき言った枝野さんの記者会見、あるいは総理大臣のあわせての会見等を含めて、重要な情報を隠している、こういう指摘があった。CNN等、日本における報道ぶり、これは記者会見を受けての報道ですけれども、この外国の、今CNNは代表として取り上げましたけれども、この辺の大きな報道ギャップというものがあって、海外の人からの指摘を聞くと、これはもう本当に驚かざるを得ない指摘だというわけですね。

 それは、とりもなおさず、今回またレベル7、レベル7の受けとめ方は、申しわけないけれども、先ほどの外務大臣の受けとめ方と私の受けとめ方はかなり違うように思うんですけれども、こういうことを通じて、やっぱりかと。やはりレベル7、チェルノブイリと同じじゃないかというふうなことを思っている人が内外には多いんですよ。

 だから、そういうことについて、的確に正しい説明の仕方、その中身、それを重々、あらゆる角度から検討して発信していかないと、さっき言ったようなことにつながっていくことになりかねない。そういう意味で、情報をしっかりと伝えていく責務があるということについて、改めて外務大臣にお聞かせ願いたいと思います。

松本(剛)国務大臣 今回のレベル7への引き上げについては、外国の政府、報道などでも、チェルノブイリとのけたの違いなどについて記していただいているものもあるやにお聞きをしますけれども、これからも、さらに正確に、的確に伝わるように、メッセージをしっかり発信していかなければいけないというのは、御指摘のとおりであろうというふうに思っております。

 そもそも、やはり、私自身もそうかもしれませんが、日本人というか、日本の国の政府の広報、そういったものについてのあり方ということが、積極的だという印象が、これまでの積み重ねも含めて、与えられていない。そのことが、こういうときには、必要なことが出ていないのではないかという印象にもつながってきていると思いますので、今般の対応、それから今後の対応も、改めて心がけなければいけないというような率直な思いを持っております。

赤松(正)委員 津波や原発の被災で日本が学んだ諸点、さまざまな点を包み隠すことなく、迅速に、かつ詳しく情報提供することが、支援してくれた国際社会に対する日本の責務だ、このように外務省出身の方がおっしゃっています。私もそのとおりだと思います。在外公館を通じた積極的な情報提供活動というものをお願いして、私の質問を終わります。

小平委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 午前中に残った部分から始めさせていただきます。

 午前中、最後に、ことし一月に行われた日米貿易フォーラムに関する日米貿易フォーラム政策対話部分発言ポイント案という文書、これは外務省が作成したものかどうかという確認を求めたんですが、間違いありませんか。

松本(剛)国務大臣 笠井委員から資料要求をいただいて、御要請をいただいた資料とあわせて、誤ってお送りをしましたものとお聞きをしましたが、外務省でつくっている文書だというふうに理解しております。

笠井委員 誤ってということですが、私、資料要求は、TPPに関する資料ということで求めて、国会の連絡室を通じて外務省にやって、それがまたきちっと組織的に来たわけですから、くれぐれも、大臣、担当された方が誤ってという個人の責任にするようなことは絶対しないようにしてくださいね。

 いずれにしても、こういう文書について、手にしたわけですので、私、ちょっとそれにかかわって質問したいと思います。

 この文書を見ますと、先ほど、日豪のEPAということでやりとりしたんですけれども、この文書の中に、こうあります。二国間EPAをめぐる現状、TPPとあわせてこんなことも出ているんですが、日豪については二〇〇七年四月に交渉を開始し、これまで十一回の交渉会合を開催している、次回会合は本年二月に行う予定、つまり、ことし二月ですね。さらに、その中で言われているのが、豪州側に対しては、本年末までに、可能な限り早期に交渉の大筋合意を図りたいとの意思を伝えており、豪州側も基本的にこの考え方に賛同しているという形で書いてあります。これが日本政府の立場として、日米貿易フォーラムに当たっての発言ポイントと方針書の中で書いてあるわけです。

 そうしますと、先ほど大臣にも確認しましたが、国会の決議では、交渉期限は定めないということをうたっている、大臣はそれを尊重するということで当たってきたと。

 さらに、農水省にも伺いまして、ことし三月、直近の答弁も確認しましたが、具体的な交渉期限を定めているわけではないということをはっきりと、国会に対してはそういう形で言われているわけですが、実際には先方との関係でいいますと、相手国には本年末までに大筋合意したいということを言って、先方も賛同していたということになります。

 そうしますと、これは国会と国民軽視ということになるんじゃないか。つまり、国会に対しては、期限を定めない、御決議もありますということで、前原前大臣も、早期とか、できるだけ早く合意とか言われたわけですが、実際には、相手との関係では、もう本年末ということまで具体的に言って、交渉でやっていて相手も賛同しているという関係になっているというのは、一体これはどういうふうに説明するんですか。

松本(剛)国務大臣 仕事でありますので、やはり目標を持ってやっていきたいということで、このような意思を持って仕事を進めているということでございます。

笠井委員 だって、これは、交渉は期限を定めないでやるということで言ったわけですよ、国会にもそう言ったわけですよ。大臣もそれを尊重すると言ったわけですよ。農水省も、副大臣がこの三月の答弁では、定めているんじゃないんだと言っているわけですよ。でも、今の大臣の話は、定めて、それで目標を持ってやっていたという話じゃないですか。違うんじゃないですか。

松本(剛)国務大臣 累次にわたって交渉を重ねてきておりますので、やはり仕事の目標としてスピード感を持ってやりたいということをあらわしているというふうに理解をしておりますが。

笠井委員 スピード感を持ってやるのはいいですけれども、ではそれを、国会に対しては期限を定めずやっていますと言いながら、相手に対しては本年末までにやりたいんですよと。相手もそれに賛同していますよと。それは相手も、日本がそう思っているということを前提にして交渉していると。

 なぜこれは期限を定めないかというと、さっきもあったように、なかなかセンシティブな問題もあるし、なかなか複雑だ、だから期限を定めずにきちっとよく交渉をするんだという話だったんじゃないんですか。

松本(剛)国務大臣 もちろん、ですから、内容が一番重要でありまして、内容によるわけでありますけれども、交渉をスピード感を持ってやるという意味でこのようにお話をさせていただいたということがここに記されているというふうに理解をしております。

笠井委員 だから、スピード感を持ってやるということと、具体的に本年末ということを言うことは別なんですよ。内容についても、だから、きちっと詰めていく必要があるから、これはきちっとお互いにやる中で議論をしなきゃいけない交渉だという話になっていたわけで、国会に対してだって、国会からの要求があって、そして農水省だって、そう言って国会に対して、つい直近まで答弁していた。ところが、その以前に、相手との関係では本年末ということまで言って交渉に臨んでやっているというのは、これはおかしいじゃないですか。

松本(剛)国務大臣 仕事のスピード感として本年末までにと申し上げたわけでありまして、内容をしっかりと議論するという私どもの立場に何ら変わりはないものと思っております。

笠井委員 では、本年末というのは、これは撤回して、相手についても、そういうつもりじゃなかったと言うんですか。

松本(剛)国務大臣 加速して交渉するという中でのスピード感の形として申し上げたわけでありまして、私どもの目標として申し上げたわけでありますから、何ら変わりはないと思っております。

笠井委員 スピード感を持ってやるというのはいいですけれども、ではいつまでにというのは、また別なんですよね。

 なぜこの問題が、わざわざ国会決議の中でも期限を定めずにということで言っていたのか。そして、農水省も政府もそういうことを受けながら、この問題の複雑さがあるから期限を定めずにやっている、定めているわけじゃないと言ってきたわけじゃないですか。スピード感という問題と、いつまでという目標の期限をはっきり言うこととは別で、それを言わないというふうに言ってきたのに、ちゃんと交渉するというふうに言ってきたのに、相手に対して言って合意していたと。これは松本大臣も、そういう本年末ということでの合意を目指してやるということについては了承されてやってきたと。

 では、この発言の案で言われているような記述については、どのレベルで、実際にそこで言っている本年末までにというようなことについては、決裁を得てやっていくという中身で相手とは交渉をやってきたんですか。

松本(剛)国務大臣 少なくとも、私は当時担当の副大臣でありましたし、こういった交渉、仕事をしていく中では、一番大切なことは中身である、同時にスピード感を持ってやるという意味で、大体いつまでぐらいにやるんだという議論はしてまいりましたので、私自身としては、むしろ、これまでも交渉を重ねてきましたので、あと何回だ、それならことしの前半か、そういうようなイメージの認識でおったというのが率直なところであります。

笠井委員 では、大臣、率直に伺いますけれども、国会決議とのかかわりで言われていることとの関係、これまで言ってきたこととの関係で、本年末ということについて、文書にも書かれて、そして日米でもしゃべっているわけですよね。そして、豪州、直接相手との関係でも述べて、相手も賛同しているということをやったことについては、国会決議ということに照らしていいことだと思いますか。民主党も賛成された国会決議でしょう。

松本(剛)国務大臣 期限を切らずに、拙速に期限を切ることによって我が国にとって問題のあるような交渉になったりすることのないように、またセンシティブ品目に配慮をするようにという趣旨の国会の決議だと理解をしておりまして、当然、交渉の中身が大変重要だということは申し上げるまでもないことだというふうに思っております。

 その上で、私どもとしては、指揮をする立場から申し上げれば、仕事というものでありますので、次はいつやる、次はいつやるという意味で、目標を定めて行っていきたいということを申し上げているというふうに考えております。

笠井委員 外務省の中で目標を持ってやるのは、それはあり得ることですよ。でも、相手側との関係ですよ。相手側にも本年末ということまで言って、相手側も賛同するということで交渉している。今、大臣言われたように、センシティブだからきちっとやっていくという話と、相手側には、いずれにしても今年末には日本はもうまとめる方向でいくんだなということで交渉するのとは別じゃないですか。

松本(剛)国務大臣 私どもとしては、まさに決議でもありましたように、センシティブ品目の交渉などについてしっかりやりたいということを申し上げておりますので、相手側がそのような理解をしているというふうには思っておりません。

笠井委員 では、本年末について、言ったことについては間違っていないということですか。よくなかったと思うんですか、ふさわしくなかったと。どっちですか。あるいは、相手に伝えて賛同を得たということについて。

松本(剛)国務大臣 加速をしてやるということにかなったものだと思っております。

笠井委員 だから、加速をしてやるということと、本年末ということを具体的に日本側から意思として伝えて向こうから賛同を得るということは別問題だと思うんですよ。別と思いませんか。加速とずっと言われますよ。あなたは、大臣、そこのところをごっちゃにして、とにかく、加速している意味として本年末と言っているんだ、目標を目指しているんだと言われるけれども、交渉で相手に対して本年末ということまでこっちから言っているということは、期限を設けずということと明らかに違うでしょう。

松本(剛)国務大臣 決議の趣旨は、期限を設けずにしっかり交渉せよということだと思っておりますので、そのことはしっかりと受けとめてやりたい、このように思っております。

笠井委員 期限を設けずにしっかりやるんだったら、期限を設けて相手に言う、目標としても言うということは、それと違うでしょう。

松本(剛)国務大臣 繰り返しになりますが、やはり仕事は加速をしていくということもありますし、スピード感を持って行うためには、必要な形で私自身も進めていると思っております。

笠井委員 お立場があるでしょうけれども、これはまずかった、相手に対してこういう期限を言ったけれども、それで間違って文書が出ちゃって共産党から言われたかもしれないけれども、だけれども、それはやはり国会決議の趣旨からしたらまずかった、少なくともそういうことをこちらから言って、相手の賛同を得るようなことをやっちゃったら、交渉で、もう日本はそう言ってやってきたでしょう、十二月になりましたよ、どうするんですかと言われたら、それはどうするんですか。

松本(剛)国務大臣 しっかりと交渉に臨みたいと思っておりますし、センシティブ品目の配慮も含めて、私どもとしては、私は日本国の外務大臣でありますから、責任を持って取り組みたいと思っております。

笠井委員 しっかり臨むためには期限を設けずにと、わざわざ国会も言って、政府も言ってきたんですから、期限を設けるようなことについて言及して相手に賛同を得たことについては、これはとりあえずチャラにするというのが本来の趣旨じゃないですか、しっかりやるんだったら。スピードアップしてやるというのと別問題ですよ。

小平委員長 松本大臣、ちょっと待って。国会決議を遵守して取り組む、そういう答弁をされたらどうですか。

松本(剛)国務大臣 国会でお決めをいただいたことというのは重いものだというふうに先ほども答弁を申し上げたとおりでございます。

小平委員長 どうですか、そういうことで。

笠井委員 そういう立場なら、期限については撤回すると言わなきゃいけないということと、まして私は、先ほどもTPPに絡めても質問をやりましたけれども、今回被災した自治体とか農業団体、消費者団体を含めて、そもそも日豪EPAについても、交渉促進についてはスピードアップと言われましたけれども、懸念を示していたわけですよ。そして大震災で、政府が推進の前提としたような地方経済を支える経済基盤が壊滅的に打撃を受けているわけでありまして、この国会決議を尊重すると委員長からも言っていただいて、大臣もそのことは言われたんですけれども、「政府は交渉の継続について中断も含め厳しい判断をもって臨む」、そこまで書いているんですね。まさに今はそのときだと思うんですよ。

 豪州側に、この間で、国会決議とのかかわりでも、今、この間言ってきたことについては、本年末と言ったけれども、それにこだわらずやらなきゃいけないのに加えて、まさに大震災で事情が変わったので、日豪EPAについては交渉をとりあえず中断して再考したいとか、私はやめるべきだと思うけれども、再考したいとか、少なくとも言わなきゃいけないんじゃないですか、これだけの大震災であるわけだから。

 これまでのことを続けてやるという話で、ただただスピードアップしてやればいいのかということは、国内の現実、被災地の現実を見たら、果たしてそれでいいのかということが問われませんか。

松本(剛)国務大臣 中断についても、しっかりと交渉せよということで、我が国の国益にかなったものでなければそれは認めてはいけないという趣旨で中断をせよといったような決議の趣旨であったように記憶をいたしておりますけれども、それについては、私も先ほど申し上げたように、しっかり我が国の国益を守る立場で努力をしたい、このように思っておりますが、外交の立場から申し上げれば、粘り強く交渉することというのは大切なことだと思っております。

笠井委員 まさに国益を守るということになれば、被災そして原発災害という問題がありますから、その点に照らしてが一番の最大の今の国益だということになってくると思うんです。

 そういう点では、これまでやってきたことについても、TPPもそうです、それからEPAもそうですけれども、ここでやはりこの事態に対して、立ちどまって考え直すべきだ。総理だって原発の問題でも、新増設の計画、エネルギー基本計画を、十四基ということで去年六月決められた、これについても白紙も含めて検討したいということを言われているわけですよね。

 だから、あらゆる問題、例えばTPPもEPAもそうですけれども、やはりそういう点に照らして、きちっとこの点、今の現時点に立って何が一番大事かという立場で洗い直してもらって、再検討も必要だということを思うんですが、いかがですか。

松本(剛)国務大臣 現時点に立って最も必要なことを全力で進めてまいりたいと思っております。

笠井委員 オーストラリアにしても、ほかの多くの国々と同じように、あるいはそれ以上にということも含めて、今回の大震災に対して非常に心を痛めながら支援をするという表明もされて、いろいろやってやろうというふうにやっていらっしゃるわけですから、わかってもらえる話だと思うんですよ。そこはやはりきちっと臨んでいただきたいと思います。

 最後に、在外公館の問題について関連して伺っておきますが、ASEANの日本代表部を新設するということでありますけれども、昨年十月には、ASEANプラス3の首脳会議を初めとして、日本・ASEANの首脳会議それから東アジア首脳会議が開催されて、一連の会議での合意を促進するために日本が積極的に貢献していくことが確認されております。

 さらに、今回の東日本大震災に対する支援を含めて、ASEAN諸国との協力関係の強化が一層重要になっているということでありますけれども、大臣、改めて今日における対ASEAN外交の基本姿勢、それから、新設するというASEANの日本代表部というのは、非常にやはり、アジアの平和の流れ、非核の流れ等も含めて、あるいは経済との関係も含めて大きな役割を担わなきゃいけないと思うんですが、どういう役割を果たすべきだというふうにお考えか、伺いたいと思います。

松本(剛)国務大臣 我が国とASEANとの長いきずなというのは先刻御承知のとおりでありまして、先般、私自身も特別外相会議へ伺わせていただきましたけれども、まさに我が国にとっても、またASEAN各国にとっても前へ進む内容であるからこそ長続きをしたんだというふうに思っております。

 ちなみに、経済連携その他も、押しつけられたものではなくて、我が国にとっても向こうにとってもと思うものを進めているつもりではありますけれども、これはASEANについても、さらに、今回、代表部を設けることがお認めをいただければ設置されることとなってくるわけでありますけれども、従来からの経済、安全保障面でのつながり、そういったものの中には防災、感染症対策などもありましたけれども、とりわけ、今回の震災を踏まえて防災、災害対策などの面での協力を深めていきたいという私の考え方を先般の特別外相会議でも伝えてまいりましたし、こういったものはやはりASEANの事務局との連携というのも重要になってくるという意味で、代表部の果たす役割はこれから大きく期待をされるものと思っております。

笠井委員 せっかく代表部も設けてということで活動を積極的にやろうということですから、今大臣が言われたんですけれども、経済連携の問題もそうですし、いろいろな協力もそうですが、やはりお互いにとって、あるいは国民にとっていいことでなければいけないわけで、そういう点で見ると、今の日本の現実というのは、本当に今深刻に、震災あるいは原発の事故があってというもとですので、そこは大いに、日本の事情や日本国民の立場から何が今一番ベストなのかということで、これまでやってきた交渉も含めて洗い直して再検討する。必要なら見直して、とりあえずはやめるとか、相手側にもそのことは率直に言って、やはりわかってもらうという関係が必要だと思います。

 その点、最後、一言、立場として伺っておきます。

松本(剛)国務大臣 もちろん、この震災というのは、今さらあれですけれども、夢であってほしいと思うぐらいのところがあるわけでありますけれども、本当に残念ながら、厳しい現実でありますので、もちろん、あらゆる面でそのこともしっかり念頭に置きながらやらなければいけないということは、私もそう考えております。

笠井委員 時間が来ましたので、終わります。

小平委員長 次に、服部良一君。

服部委員 皆さんもお疲れだと思いますけれども、最後の十分ですので、よろしくお願い申し上げます。

 きょう、ヨルダンの原子力協定の採決も延ばすということになったわけですが、何か採決を全部延ばすような話もあるみたいですが、この原子力協定を延ばすということについて、委員長以下、皆さんの判断に敬意を表したいというふうに思うわけです。

 私は、原子力発電所のプラントの海外輸出は余りにもリスクが大きい、放射能汚染を海外に輸出するようなことにもなりかねないということをずっと指摘してまいりました。今回、ヨルダンのをとりあえずちょっと延ばそうということなんですけれども、今、外務省が出されている原子力協定、これは一たん全部凍結すべきじゃないかというふうに私は思っているわけです。

 やはり今、今回の福島第一原子力発電所の事故を踏まえて、日本は原子力政策をこのまま本当に進めていっていいのかどうか、ここはじっくり踏みとどまって考える時期じゃないかなというふうに思っているわけです。先日、ソフトバンクの孫社長が百億円カンパをされましたけれども、この孫社長が、日本が本当に原子力政策を進めるかどうか国民投票をしたらどうだということも提案されています。

 それから、東芝とか、今までプラントの設計や施工で頑張って推進をされてこられた技術者の皆さんが、今まで推進をしてきて、じくじたる思いだと。今、現場では、放射線量が、例えば十五分ぐらいになるともう作業交代だとか、非常に厳しい環境の中で作業されているわけですけれども、我々はもう年もとっているから決死隊でいくぞと、おわびがてらにですね。プラントの工事というか、どういう最終的なことになるかよくわかりませんけれども、そういうことをうちの事務所にも言ってこられて、当時のプラント建設にかかわった技術屋を今集めておるんだと。十年、二十年後にがんになっても構わぬ、そういう、非常に、今まで推進してきたことに対するじくじたる思いというか反省の思いも含めて、そういうことをおっしゃる方々もいらっしゃるわけですね。

 そういう意味では、ここは本当にじっくり立ちどまって、このあり方、原子力政策を進めるのかどうか、これを立ちどまってやはり考えるときだというふうに私は思っております。

 そういう意味で、外務省として、一つは今、原子力の事故がまだ収束をしていない、それから、海外に売るということは、これは日本の技術と品質を売るわけです。しかし今、当然、原子力安全指針を見直すべきだとか、本当に今の安全基準あるいは設計基準で大丈夫かという議論は今から多分あると思うんですね。

 そういった議論が今からあるという局面の中で、原子力協定ばかりを先に進めていくというのは、いかにもおかしいんじゃないかというふうに私は思っておりまして、この際、外務省として、原子力協定を全部取り下げたらどうですか、大臣。

松本(剛)国務大臣 おっしゃったように、原子力の安全については、今回、結果としてこれだけ大きな事故が発生をしているわけでありますから、しっかりした検証と議論、そして今後の安全のあり方についての考え方というのをまとめて、私は、できればこれについても我が国が主導的な役割を果たせるぐらいの意気込みを持って取り組まなければいけない、こう考えておるわけであります。

 他方で、今、国会の方に提出をさせていただいている原子力協定につきましては、趣旨は、原子力の平和利用を確保するということが目的となったものでありまして、そういったものを趣旨とする法的な枠組みでありますので、その中で、資機材のお互いの行き来なのか、さまざまな内容が協定によってもありますけれども、そういうものについては、具体的な協力のあり方については、私どもの安全性の考え方なども含めて、しっかりと強化を、安全面での対応を強化した上で協力するという考え方については、一つのお考え方ではないかというふうに思っております。

服部委員 きょうの毎日で、今度、中国、韓国を大臣が五月に訪問されるというような報道が流れておりましたけれども、その中に、防災、原子力での協力を協議する、そういう報道もあるんです。

 この際、率直に、もう少し安全の基準がしっかりするまで、ちょっと延期しようやと。そういうことを韓国と協議し合ったらどうですかね。

松本(剛)国務大臣 恐らく、その報道を見て私もびっくりしましたし、中国、韓国もびっくりされたのではないかというふうに思っております。

 私自身は、就任した以降、近隣の国々、また日本と関係の深い国々というのはぜひ訪問したいということは申し上げてまいりました、一般的には。

 その上で、具体的にいつ行けるかとなれば、国会の日程もありますし、先方の都合もあるということで、今、具体的に決まったものが何かあるわけでは全くないわけでありまして、今回の報道も、どういう背景でどういうところから出てきたのか、私も全く承知をしておりません。

 他方で、韓国、中国とは、先月、三月十九日の日に日中韓の外相会談を日本で開催をいたした際に、今回の震災も踏まえて、今後の三カ国の協力のテーマとして、防災、災害対策と原子力安全分野、それから環境、グリーン成長なども重要なテーマになりますねと、こういった点で三カ国の外相会談の方向性が出たということは事実でございます。

服部委員 くどいですけれども、ぜひとも原子力発電所のプラントの輸出はやめていただきたい、こういうリスクの高いものを何も売らなくてもよろしいというふうに私は思いますし、そういう立場で、もし韓国でも行かれるのであれば、ぜひ協議をしていただきたいし、また、外務省におきましては、ぜひこの際、原子力協定については一たん凍結をしていただいて、国民的な議論がきちっとされるまで凍結をしていただきたいということを、ちょっとくどいですけれども申し上げておきます。

 前回の委員会で、今回の震災で在留外国人の被害の問題について議論になりましたけれども、ちょっと事実関係をお聞きしておきますけれども、先日、在日外国人の震災による死者が八カ国の十九人というふうに報ぜられておりました。一方で、研修生とか在日中国人が三万人ぐらい被災地にいるんじゃないかという報道も当時されていたわけですが、外務省としては、行方不明者についてはどのような把握をされているんでしょうか。

伴野副大臣 服部委員にお答えさせていただきたいと思います。

 各国在京大使館等より安否不明な在日外国人の情報を日々聴取しているところでございます。そして、それを外務省にて取りまとめ、関係省庁や地方自治体等に照会しているところでございます。

 数字につきましては日々変わっているところでございますが、かかる安否情報の把握作業の中で現在判明しております確からしい数字といたしましては、外国人の死亡者の方が二十三名であるというところでございます。

 以上です。

服部委員 行方不明は何人ですか。

伴野副大臣 具体的な数字は日々刻々と変わっておりまして、控えさせていただければと思います。

服部委員 日々刻々って、一回も聞いたことがないんですけれども。

松本(剛)国務大臣 行方不明については、現在、私どもの方で、さっき日々刻々と申しましたのは、各国の国別で、または外国人としてどの方が行方不明であるかということについては、それぞれ自国の国民について責任を持っておられる大使館からの届け出を集計させていただいて、大使館としてこれだけの方の安否を確認してほしいという要請がありましたら、私どもとしても支援をするなり、お手伝いをするという形をとっております。

 実際に、発災直後に私も総務大臣ともお話をしまして、自治体との連絡などで必要があれば、在京大使館と自治体との間に、私ども外務省も間に入らせていただいて協力をしたいというようなお話もさせていただきました。

 先ほど伴野副大臣からお話をさせていただきましたが、今私どものところでは、安否確認のお問い合わせをいただいている数は引き続き三けたありますけれども、これについても、実は、まだこれからリストを出すから、そのときには協力してくださいと言っている大使館もおありであったり、実は、確認をしてくださいということですけれども、全部見つかりましたといって、ごそっと抜けたりとかいうことなので、ちょっとこの数字そのものは、発表させていただくのと、行方不明ということの持つイメージの実態とは大分違うイメージになると思いますので、数字については具体的に申し上げていないというのが率直なところでございます。

服部委員 わかりました。引き続き把握をしていただきたいと思います。

 ちょっと時間がなくなってしまいました。外務省の情報収集ということについてお尋ねしたかったわけですけれども、特に日本の風評被害のことが言われますけれども、それだけじゃなくて、今、原子炉関係の事故は、フランスだとか海外が物すごい、日本以上にいろいろ分析して、我々はそれをインターネットを通じて見ているという状態なわけですね。

 そういう意味では、日本の状況を海外にどう伝えるかということと同時に、海外でのさまざまな分析だとか議論を正確に日本に伝えていただいて、そしてそれを官邸に伝えていただいて、外務省としての存在感というものをもっと示していただきたいということを最後に申し上げて、質問を終わります。

小平委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十二分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.