衆議院

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第8号 平成23年4月22日(金曜日)

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平成二十三年四月二十二日(金曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 小平 忠正君

   理事 吉良 州司君 理事 首藤 信彦君

   理事 長島 昭久君 理事 西村智奈美君

   理事 山口  壯君 理事 秋葉 賢也君

   理事 小野寺五典君 理事 赤松 正雄君

      浅野 貴博君    石山 敬貴君

      今井 雅人君    打越あかし君

      大泉ひろこ君    菊田真紀子君

      熊谷 貞俊君    阪口 直人君

      高橋 英行君    中野  譲君

      中野渡詔子君    萩原  仁君

      浜本  宏君    早川久美子君

      伴野  豊君    山尾志桜里君

      山花 郁夫君    河井 克行君

      高村 正彦君    平沢 勝栄君

      松野 博一君    笠井  亮君

      服部 良一君

    …………………………………

   外務大臣         松本 剛明君

   外務副大臣        伴野  豊君

   外務大臣政務官      菊田真紀子君

   外務大臣政務官      山花 郁夫君

   政府参考人

   (宮内庁書陵部長)    岡  弘文君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    金高 雅仁君

   政府参考人

   (総務省情報流通行政局郵政行政部長)       福岡  徹君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)            杉山 晋輔君

   政府参考人

   (文化庁次長)      吉田 大輔君

   外務委員会専門員     細矢 隆義君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十二日

 辞任         補欠選任

  勝又恒一郎君     高橋 英行君

  道休誠一郎君     石山 敬貴君

  中津川博郷君     中野渡詔子君

  萩原  仁君     熊谷 貞俊君

  松野 博一君     平沢 勝栄君

同日

 辞任         補欠選任

  石山 敬貴君     打越あかし君

  熊谷 貞俊君     萩原  仁君

  高橋 英行君     今井 雅人君

  中野渡詔子君     中津川博郷君

  平沢 勝栄君     松野 博一君

同日

 辞任         補欠選任

  今井 雅人君     勝又恒一郎君

  打越あかし君     道休誠一郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 図書に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

 (第百七十六回国会条約第五号)


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     ――――◇―――――

小平委員長 これより会議を開きます。

 第百七十六回国会提出、図書に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として外務省アジア大洋州局長杉山晋輔君、宮内庁書陵部長岡弘文君、警察庁刑事局長金高雅仁君、総務省郵政行政部長福岡徹君、文化庁次長吉田大輔君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小平委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西村智奈美君。

西村(智)委員 おはようございます。西村智奈美です。

 いわゆる日韓図書協定、ようやくきょうから審議ということになりまして、私たちとしても、この協定について、しっかりと審議はさせていただきながら、早期にこれは何とか承認をさせたいというふうに考えております。賛否いろいろな声があるというふうには聞いておりますけれども、これから、大臣また副大臣からの答弁の中で、そうしたいろいろな声にこたえていただければというふうに思っております。

 最近、世界は大変急激に目まぐるしく変化をしているということ、これは私が申し上げるまでもありません。長く続いた冷戦構造が崩壊して以降、世界は多極化の方向に入り、そして最近は、新興国の台頭など含めて、極がなくなる無極化になっているのではないかというふうにも言われる中で、この東アジア地域を見ましても、大変目まぐるしい変化があると思っております。

 日本がこの中でどういうふうに外交の方向性を定めていくか、これは大変難しいところだと思っておりますけれども、私は、いろいろな周りの状況を見ますと、日韓関係というのはこの中でもやはり重要だというふうに思うんです。よく言われるように、政治体制が近いということ、同じということ、また、いろいろ会合などをやったりしますと、ビジネスの習慣とでも申しましょうか、人間関係の感触が、時間に対する感覚も含めて考えると、なかなか近いなというふうに思いまして、そういう意味では、やはりパートナーとして日本はこれからやっていけるんだろうというふうに思っております。

 北朝鮮などを含めての安全保障環境もありますし、これから経済社会面での地域統合もあり得る、こういう流れの中で、今後、大臣はこの日韓関係をどういうふうにお考えになっていられるか、そこを伺いたいと思います。

松本(剛)国務大臣 おっしゃったように、この協定の議論に当たりましても、日韓関係の重要性というのが大きな前提としてあるという御指摘であったかと思いますが、そのとおりではないかというふうに思っております。

 今も御指摘ありましたように、多様で大変流動的な国際情勢の中であるからこそ、日韓両国はいわば、人に例えていけば、近くて近い国であり続けるというふうに私どもも努力をしていきたいというふうに思っております。民主主義や自由、市場経済という価値観が共有をされているということ、また、幅広く地域と世界の平和と安定のために協力をする、そういうパートナーとしての関係にもあるということが大変大きなポイントであろうというふうに思います。

 とりわけ、東アジアの安全保障環境、北朝鮮の拉致、核、ミサイルの問題を含めて厳しい状況にあります。また、東アジアでは経済統合というテーマもある中で、日韓両国においては重層的な協力、連携ということを一層強化することが大事だというふうに思っています。

 このような中で、未来志向の日韓関係を構築するということが大きな課題となっておりまして、経済の面ではEPAの締結を含む経済関係、また人的交流の一層の促進、さらにはアジア地域の平和、安定の確保や世界経済の成長、発展、核軍縮、気候変動などのグローバルなテーマ、もちろん貧困や平和構築といったものも含めて、こういったものにも積極的にパートナーとして取り組んでいく、そういう関係をつくっていきたい、こういうふうに考えております。

 既に御案内のとおり、アフガンやハイチなどでも協力が行われているところでもありますし、さまざまな場面での協力する場面というのも安全保障でもふえてまいりました。経済の面でもさらに深めていくようにしていきたい、このように考えているところであり、また、このような基本的な考え方が、今回の協定にも関連をする昨年八月の総理談話にも反映されているというふうに考えているところでございます。

西村(智)委員 ありがとうございます。

 非常に近くて近い国という大臣のお言葉、そのとおりだと私も思います。

 話はかわりますけれども、日本が今回被災した東日本大震災で、本当にたくさんの国や地域や国際機関からお見舞いをいただいているというふうに伺っております。国会に対してもいろいろなお見舞いもいただいている、外務委員長にもお見舞いが届いているというふうに聞いておりますけれども、本当に今回は多くの国から支援をいただいた。

 その中でも、やはり韓国からも支援をいただいているというふうに私は承知しております。例えば緊急援助隊ですね。今回は、初めて新興国が緊急援助隊を日本に対して送ったという国が幾つかあると聞いています。また、近いだけに、例えば韓国とかシンガポールなどからの緊急援助隊は比較的早く日本国内に到着していて、遠くから来られる国はやはり少し時間がかかっているというふうに思うんですけれども、そういった支援、これは大変ありがたい、感謝すべきことだと思っております。

 今回の大震災に当たって、隣国である韓国からはどういう支援をいただいているか、そこを伺いたいと思います。

伴野副大臣 西村委員にお答えいたします。

 韓国の皆様方からは、とりわけ被災をいたしました翌日に、他国に先駆けてまず救助犬のチームの派遣がされまして、続きまして十四日に百二名の第二次救助隊が派遣され、主に宮城県で救助活動をいたしました。伺うところによりますと、帰国途中の新潟でも西村智奈美議員の方からもお礼を言っていただいた由というふうに伺っております。

 また、韓国政府を通じまして、水や食料、毛布など多岐にわたる、非常に被災地が必要としているものが届けられました。また、このほか、政府を通じた支援にとどまらず、ソウルなど主要都市で日本を応援する横断幕が掲げられるなど、多くの韓国人の方々から募金活動に参加していただくなど、韓国全土、国内を挙げて日本を支援しようという動きが見られました。

 このように韓国政府のみならず多くの韓国国民の方々から多大な御支援をいただくことにつきまして、我が国の国民の皆さん方も、韓国の皆様方は本当に困ったときに駆けつけてくれる真の友人と感じられた方も多いのではないか、そのように感じております。

 政府といたしましても、日本国民を代表して御礼を申し上げたいところでございますが、松本大臣からも金星煥通商長官や駐日大使に機会をとらえて、その節に当たり御礼を申し上げている次第でございます。

西村(智)委員 ありがとうございます。

 副大臣おっしゃったように、私ちょうど新潟で、福島などからの避難の方を受け入れている地域があるんですけれども、ちょうどDMATが展開しているところに行きましたら、そこに韓国の緊急援助隊の方がちょうど帰国途中で待機しておられるところでした。差し出がましいんですけれども、団長にお会いしてお礼を申し上げましたら、自分たちが来て本当に役に立ったかどうかわからないけれども、また呼んでもらえればいつでも来るというふうにおっしゃってくださって、大変胸を熱くしました。

 そういった支援、協力、これは大変ありがたい。しかし、そういった韓国との関係でいいますと、やはり近いだけにいろいろな問題も生じます。例えば竹島の問題でありますけれども、最近、韓国側から竹島に関してさまざまな動きが見られるということ、率直に申し上げまして懸念しております。

 これについて、私はやはり、竹島は紛れもなく日本の領土でありますし、ここは政府としては毅然とした態度で臨むべきであるというふうに考えておりますけれども、いかがでしょうか。

松本(剛)国務大臣 御指摘ありましたように、竹島の問題というのはしっかり取り組まなければいけない大変重要な問題である、このように思っております。

 今お話がありました韓国側の竹島に係る一連の措置については、我が国としては受け入れられないものであり、我が国の立場は一貫をしております。これまで私どもとしても、累次の機会に韓国側に強く申し入れをしてまいりました。私自身も日韓の外相でお会いする際には申し上げてまいりましたし、直近では、五日の日に、当省の佐々江次官から権哲賢駐日韓国大使に対して抗議をいたしているところであります。

 領土問題は、申し上げるまでもなく、我が国の主権にかかわる極めて重要な問題でありまして、国を挙げてあらゆる情報や知恵を集めて、そして問題解決に当たっていくという姿勢で臨んでまいりたいと思っております。

 政府としては、真剣な懸念を韓国政府に伝えるべくあらゆる手だてをとってまいります。この問題の平和的な解決を図るために粘り強く外交交渉を行っていきたいと思っておりまして、どのような方法をとっていくのか、引き続きしっかり検討して取り組んでまいりたい、このように思っております。

西村(智)委員 ありがとうございます。

 次に、日韓図書協定でありますけれども、これは確認だけさせていただきたいと思いますが、韓国では、この日韓図書協定で引き渡しをされる合計で千二百五冊ですか、この図書以外でも、さらにその他の文化財の引き渡しを希望する声があるというふうに聞いております。

 今回の協定は、昨年八月に発出されました総理大臣談話、これに基づいて幾つかの項目といいますか条件、これによって精査した結果、この千二百五冊が引き渡されることになったというふうに承知しておりますけれども、今後も図書引き渡しの希望の声があった場合、このほかにも引き渡しをするということになるのでしょうか。私はならないのではないかというふうに思うんですけれども、確認したいと思います。

松本(剛)国務大臣 既に御理解をいただいていますように、今回の図書の引き渡しは、日本政府として、日韓間の歴史を踏まえて、未来志向の日韓関係を構築するという観点から、日韓関係のさらなる強化に資するものとして、日本側の自発的措置として行うというものであります。

 その内容は、お話がありましたように、総理談話の考え方に示されているところでありますが、二〇一〇年八月十日の談話の考え方に合致する図書については、今回すべて韓国側に引き渡すことになります。ということで、現時点でそれ以上のことは考えていないと御答弁したいと思います。

西村(智)委員 ありがとうございました。

 そこで、今回引き渡されることになった千二百五冊の図書でありますけれども、この協定の附属書にもその具体的な図書名というんでしょうか、それが一覧で示されております。これはどういった図書であるのか、ちょっとこの委員会の中で大臣の方から御説明をいただきたいと思います。

 実は、一昨日、外務委員長のもとで、委員会の理事メンバーと一緒に宮内庁の書陵部に参りまして見させていただきました。大臣は、この図書をごらんになられたでしょうか。

松本(剛)国務大臣 私自身も、この協定の署名をされたことを受けて、昨年の十一月十八日の日に宮内庁の書陵部を訪問して、朝鮮王朝儀軌など、協定の附属書に掲げられている図書の代表的なものを拝見してまいりました。

 図書の内容は、大別して、朝鮮王朝儀軌百六十七冊、そのほか千三十八冊というふうに私どもとしては分類をしております。

 内容については、よく御案内だと思いますが、簡単に申し上げれば、朝鮮王朝儀軌は、朝鮮王朝時代に挙行された主要行事を文章と絵で記録した冊子の総称であります。また、その他の図書千三十八冊は、内容別に区分をすると、詩文集等文学関係の図書、政治、法律、制度関係の図書などがその中に含まれているというふうに承知をいたしております。

西村(智)委員 ごらんになられたということでありまして、きっと同じ感想を持っておられるというふうに思いますけれども、非常にきれいなといいますか、儀式の模様なども非常に繊細な線遣いと色遣いでかかれているもの、また活字の技術を使って印刷されているものがありましたり、非常に文化的価値また学術的価値の高いものであるというふうに思いました。

 しかし、これは、韓国の方々に見ていただくことの方がより価値が高まるのではないかなというふうに思っておりますけれども、一方で、日本側でも研究しておられる方々がいらっしゃるのではないかというふうにも思うのであります。

 今回、これらの図書を韓国側に引き渡すに当たって、日本側の研究者の方々にはどういう手当てとでも申しましょうか、今後研究していく上でのサポートを考えていらっしゃるのか、伺いたいと思います。

伴野副大臣 西村委員にお答えいたします。

 三月中旬に、私が複数の専門家の方々と意見交換を行わせていただきました。そうした中で、三点の御指摘、御提案をいただきました。一つ目が、対象図書は日本国内よりも韓国国内で学術的に高く評価されている。二つ目としまして、二〇一〇年に決定された本件引き渡しには、日韓間の歴史及び文化交流の一層の促進という観点から象徴的な意味があるという御意見をいただきました。三点目といたしまして、韓国国内では引き渡しが肯定的に評価されている等の理由を挙げ、本協定に基づく引き渡しを肯定的に評価する意見が多く出されたということでございます。

 また、専門家の方々からは、引き渡しの後、日本国内の研究者等のアクセスのために、引き渡しに先立ち、対象図書のマイクロフィルム化及びデジタル化、最低限の書誌学的データの整理を実施してほしいとの要請が出されました。

 専門家の方々のこれらの意見を踏まえまして、政府といたしましては、引き渡しに先立ち、日本側において、対象図書のマイクロフィルム化、デジタル化及び最低限の書誌学的データの整理を行うとともに、韓国側に対しまして、引き渡し後に日本国内の研究者等に対しまして良好なアクセスが確保されるよう要請していく所存でございます。

西村(智)委員 ありがとうございます。

 アクセスを可能にするということを伺いまして、大変望ましいことだと思っております。文化とか文化財といいますと、どちらかというと所有することに重きが置かれて、みんなで共有してそれを活用するとか、ともに研究の対象にするというようなことが今まで余り世界の中ではできてこなかった一時期があるのではないかなと思っています。

 この協定とは少し話は外れますけれども、大英博物館などを見ますとたくさんの返還要求のされているような文化財も見られますし、また、私が時々訪ねていた東南アジアの国では、非常に織物がきれいで有名なところがあるんですけれども、海外の愛好家が古くてよいものを安く買い求めて、そして、そういった伝統的な染めの技術や織りの技術、こういったものがもう流出してしまってなかなかもとに戻せないというようなこともありました。

 こういったことをいろいろ考えていったときに、やはり文化という窓口を使って、いろいろな交流とか協力、これが今回の日韓図書協定の発効とそして図書の引き渡しをもとに進んでいければいいなというふうに思っているんですけれども、その点については、大臣、どうお考えになりますか。

松本(剛)国務大臣 おっしゃったように、文化財というのはそれそのものに価値がありますので、財としての部分をとらえられるところももちろんあると思いますけれども、文化という観点からいけば、これはやはり人の営みの積み重ねの中からはぐくまれたものだというふうに思いますので、まさに文化財においても、これが人の営み、人の交流につながるものであってほしいと思いますし、またそうなり得るものだというふうに私自身も思っております。

 今回の図書協定も、その趣旨として、協定の中にも、相互の理解に基づく文化交流及び文化協力が、両国及び両国民間の友好関係の発展に資することを希望するというようなことが書いてありますし、また、あわせて両国間、両国政府はそのように努めるという趣旨も記載をさせていただいております。

 実際に、今お話がありましたように、今回の図書協定を通じて、交流そして協力がさらに深まるということを期待しておりますし、その契機となるものだと思っていますし、私どもとしても、またそれをしっかり進めるいわば努力をしなければいけないという責務を負っている、こう考えております。

西村(智)委員 ありがとうございます。

 さて、今回の東日本大震災の関係で大臣にあと一点だけ伺いたいと思います。

 今回の大震災で、本当にたくさんのお見舞いとお悔やみ、そして、私たちの気持ちは日本とともにある、日本の復興と復旧を確信しているというお言葉、本当にたくさんの外交官や政治家の方々からいただいております。本当に胸が熱くなる、涙が出そうになる思いで伺っております。

 さて、こういった中で、しかし、やはり復旧や復興に向けて財源の捻出というのは避けられないことだと思っております。けさの閣議で第一次補正予算の概算が決定されたと思いますけれども、そこをまず確認させていただきたいのと、その中に我が国のODAの予算が五百億円削減されているということも含まれていると思います。その内容について伺いたいと思います。

松本(剛)国務大臣 御指摘のとおり、けさの閣議で第一次補正予算の概算ということが決定をいたしました。この中で、ODA関連予算の削減額は五百一億円でございます。外務省所管分が二百七十六億円、二百二十五億円が財務省所管のJICA有償資金協力部門出資金という構成になっております。

 今回のODA関連の予算の削減に当たっては、二国間援助が各国との関係に与える影響に最大限配慮をしたい、こういうふうに考えて行ってまいりました。また、いわばODAの現場への影響というのも極力避けたいという思いもございました。同時に、これまでの我が国の信頼に直結をする我が国の国際的なコミットメントへの影響というのも極力避けたい、こういう考え方で行ってまいりまして、今回は、JICAの有償資金協力というのも、外務省ももちろん深くかかわってくる案件でありますが、これも出資金であります。また、二百七十六億円の外務省の所管予算分も、基金などの拠出金を中心に削減を、今検討を行っているところでございます。

 その趣旨は、いずれも出資金、拠出金といったいわば現場とはワンクッションある性格のお金でありまして、当然、基金なり有償資金協力部門のいわば資金繰りにかかわってくることでありますけれども、その辺はよく見ながら、ワンクッションあるところで削減をするところで今回の東日本大震災の対応を進めていきたい、このように考えております。また、あわせて、国際的なコミットメントについては引き続き誠実に実行していく、そういう決意で臨んでまいりたい、このように思っております。

 今回、ODA予算、昨年度、昨年中に今年度予算ということでいろいろ御検討いただいた上で戦略的に組んでいただいた本予算であるだけに、私どもも、わずかでも削減をすること自身には率直に申し上げて大変残念な思いがあるわけでありますが、未曾有の大震災の発災ということで、ぎりぎりの決断として、繰り返しになりますけれども、現場からはワンクッションある範囲で何とかとどめる、そして、国際的なコミットについては誠実に実行していくということを国際社会にもしっかり伝えるようにメッセージを出していきたい、このように考えております。

西村(智)委員 海外からの多くのお見舞いをいただく中で、やはりこういうふうに言われることが多いんですね。つまり、日本は自分たちの国が困っているときに助けてくれたんだ、だから日本が困っているときに自分たちが助けないでどうするんだ、こういうような言葉をかけていただくことは大変多いわけであります。

 いみじくもというか、くしくも総理が先般各国の新聞に掲載されたお見舞いあるいは支援に対する謝意広告、この冒頭は「絆」という言葉で始まり、そしてそのお見舞いの最後には、ア・フレンド・イン・ニード・イズ・ア・フレンド・インディード、まさかの友は真の友というふうに結ばれておりまして、これこそが、私は、今回日本がこの未曾有の災害にあっても世界に示していくべきメッセージだろうと思っております。

 ことしは二〇一一年。二〇一五年にはMDGs、国連ミレニアム開発目標の達成年度を迎えます。MDGsでいいますと、ゴールの三とか四とか五とか、このあたりを中心にまだまだ達成が大きくおくれておりますし、日本がやはりこの分野に貢献していくということは世界からも求められている、そして、この時期にあって、日本がどういうふうに行動するかということを恐らく世界は注視していると思います。

 そこで、適切なメッセージを、ぜひ大臣からは適切に発していただきたい、そのことを最後にお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

小平委員長 次に、平沢勝栄君。

平沢委員 自民党の平沢勝栄でございます。

 日韓図書協定について御質問をさせていただきたいと思いますけれども、その前に、竹島の問題について、大臣の見解をお聞きしたいと思います。

 竹島で韓国の国会が特別委員会の全体会議を開催する予定だ、同委員会の所属の国会議員十八人全員が竹島に行って、それで開くと。実は、きょう開かれる予定だったんですけれども、天候の悪化を理由に、来月の十日ごろ開かれるということなんです。

 日本の領土である竹島で韓国が委員会を開こうとしている、そして竹島を、日本の領土を韓国の領土として既成化しようとしている。私、この話を聞いたのは、おとといの夕方、韓国在住の方から電話で聞いたわけです。恐らく外務省も当然聞いていたでしょう。

 それで、きょうはたまたま行かなくなりましたけれども、こういった話を当然大臣は聞いておられたと思いますけれども、どういうアクションをとられたか、ちょっと教えてください。

松本(剛)国務大臣 御指摘のとおり、既に報道をされておりますし、二十二日、きょうの予定が延期になったというふうに私どもも承知をしております。また、延期については外交ルートを通じて確認をしているところでございます。

 これについては、既に韓国側に対しては、外交ルートを通じて中止をするように申し入れを行ってきているところであります。竹島に対する私どもの立場というのは、先ほどの質疑でも申し上げさせていただきましたけれども、一貫しておりまして、この姿勢で臨んできているところでございます。

平沢委員 外交ルートというのは、だれからだれに、どういう形で申し入れしたのでしょうか。韓国は、竹島について、大規模建築物の発注も既にしているんです。どんどん既成事実化を進めているんです。大臣が動かなきゃおかしいでしょう。

 私が聞いているのは、外交ルートをだれがやったかも聞きたいんですけれども、大臣はどういうアクションをとられたんですか。こういう竹島で韓国の委員会を開くというのは、これはもうまさに暴挙としか言いようがないんです。それをやろうとしているんです。大臣はどういう対応をとられたんですか。

松本(剛)国務大臣 これについては、今お話がありましたように、私どもとしては、ぜひ中止をするように申し入れを行っているというふうに申し上げさせていただきましたが、中止をさせるように最も適切な方法として何がいいのかということを慎重に検討しながら、適切な形で、私どもが最もいい形だと思う形で申し入れをさせていただきました。具体的には、ソウルそして東京の両方で、外交ルートで申し入れをさせていただいているところでございます。

平沢委員 ちょっと大臣、問題意識を持ってもらいたいなと思います。やはり大臣が直接動くべき案件じゃないですか。委員会を開くというんですよ、竹島で、日本の領土で。ですから、そこは大臣、下に任せるんじゃなくて、大臣みずからが、これは極めて遺憾である、許せない、こういったメッセージを韓国側に伝えるべきだと思いますけれども、どうですか。

松本(剛)国務大臣 竹島は我が国の領土であって、法的根拠のない形で占拠をされているという私どもの立場は一貫をしております。

 その上で、今お話がありましたように、今回の韓国国会の委員会が二十二日に会議を開催するということ自身は、私ども、先ほど申し上げたように、中止をされるべきものだということで行っておりまして、私自身もこれについては指揮をとってやらせていただいておりますが、だれが、どの段階で、どのような形で申し入れをするかということは、最も適切な方法と考えられるものを逐次進めているというふうに御理解をいただきたいというふうに思っております。

平沢委員 これ以上聞きませんけれども、最も適切なのは、大臣から直接向こうの長官にメッセージを伝えることだと思います。やはり日本としてはそのくらいこの問題を重視している、その姿勢をぜひ大臣には示してもらいたいなと思います。

 そこで、日韓図書協定に入らせていただきます。

 一九六五年に日韓の国交が正常化して、日韓基本条約が締結されたわけでございますけれども、そのときに同時に日韓の請求権並びに経済協力協定が結ばれまして、財産権とか権利利益、こういった問題について一切解決されたわけでございます。そして、この協定とあわせまして、文化財及び文化協力に関する協定、こういうのも締結されて、すべてこれらの問題については解決済みのわけでございますけれども、今回、新たにこの日韓図書協定がいわば一九六五年のときの協定をやや空洞化する形で結ばれるのはどういう理由なんでしょうか、教えてください。

松本(剛)国務大臣 今回の図書協定については、先ほども御答弁を申し上げたとおり、未来志向の日韓関係という観点から、これに資するものとして、我が国の自発的措置として図書を引き渡すということを談話において表明し、決定したものだというふうに理解をいたしております。ということでよろしいですか。

平沢委員 ちょっとよくわからないんですけれども、自発的ということは、これからもどんどんやるということなんですか。

 そもそも、韓国側が要求していたのは何なんですか。韓国側が日本に引き渡しを求めていたのは何なんですか、大臣。

松本(剛)国務大臣 韓国で、いわば国会、政界であるとか各地でさまざまな声がこれまでも図書に関しては上がっていることは私どもも情報を収集しているところでありますが、今回は、これは、私どもの自発的措置として、未来志向の日韓関係に資するものとして行うものでありまして、韓国側の要求云々というような、交渉によって行うというものではないというふうに理解をいたしております。

平沢委員 さっぱりわかりませんね。

 韓国は、国会決議が二回ありました。大臣、韓国の国会決議で、二回にわたる国会決議で、日本から、韓国は返還と言っていますけれども、じゃ、韓国が返還と言っているのは何の書物ですか。

松本(剛)国務大臣 韓国側の意図について私がここで申し上げる立場にはありませんが、私どもは、今回、図書を引き渡すという協定を策定させていただいております。

平沢委員 話にならないですよ、これじゃ。そうじゃなくて、韓国の国会では、図書について何を日本側に返してくれと言っているんですかと聞いているんですよ。全然答えになっていないんです。これじゃ、質問を続けられませんよ。

松本(剛)国務大臣 韓国の返還の要望という意味では、今おっしゃったのは二〇〇六年十二月の決議……(平沢委員「あと、二〇一〇年もあります。二回あります」と呼ぶ)はい。

 二〇〇六年の十二月の方は、韓国の国会の本会議で、日本所蔵朝鮮王朝儀軌の返還を求める決議案というのを採択いたしております。これは何点かありますけれども、直接、図書という意味では、日本政府の宮内庁書陵部に所蔵されている朝鮮王朝儀軌の返還を希望するという趣旨が含まれているというふうに理解をいたしております。

 それから、もう一つおっしゃったのは二〇一〇年の二月でよろしいんでしょうか。二〇一〇年二月、これも韓国国会の本会議で、日本所蔵の朝鮮王朝儀軌の返還を促す決議案というのを採択しておりまして、これは決議文では、東京大学の朝鮮王朝実録返還を評価し、日韓併合百年の節目の年に朝鮮王朝儀軌の返還を促すとともに、韓国政府に対して日本政府との積極的な交渉に乗り出すことを要求する、こういう趣旨の決議だと理解をしております。

平沢委員 韓国の国会は朝鮮儀軌を渡してくれと言っている。きょう韓国の民間団体の方が来られていますけれども、民間団体の方も、朝鮮王室儀軌還収委員会の方々も私のところに来られたことがありますけれども、韓国からすれば朝鮮儀軌の書物を返してくれと言っている。

 朝鮮儀軌と言っているんです。朝鮮儀軌が何で膨らんだんですか。これが膨らんだのは、だれが、どういう形で膨らんだんですか。韓国が言っているのは、今大臣言われたとおり朝鮮儀軌ですよ。朝鮮儀軌を韓国は返せと言った。朝鮮儀軌というのはトータル百六十七冊。それに千三十八冊というのが加わっている。この千三十八冊というのは、だれが、どういう基準で選んで、そしてどうやって入れたんですか。

松本(剛)国務大臣 引き渡す図書の範囲については、総理談話の趣旨、そして両国の文化協力関係を増進するという目的に基づいて検討をいたしまして、談話は既に御案内だと思いますが、「日本が統治していた期間に朝鮮総督府を経由してもたらされ、日本政府が保管している朝鮮王朝儀軌等の朝鮮半島由来の貴重な図書について、」所要の手続を経て引き渡しを行いたい、こういう考え方に至ったというふうに理解をいたしております。

平沢委員 韓国側から国会決議で返してくれと言ったものはわからないでもない。韓国が全然言っていないものは、まだほかにも日本にいっぱいあるんですよ。それを日本側が渡すんですか。それを渡すということはだれが決めたんですか、そしてその残りはだれが選んだんですか。

 だから、韓国が言っているものはわかります、朝鮮儀軌。それ以外のものは、だれが、どういうことで決めたのかと聞いているんです。

松本(剛)国務大臣 もちろん、総理談話そのものは閣議決定が行われているものであります。

 先ほど申し上げましたように、この総理談話の趣旨、そして両国の文化協力関係を増進するということで、先ほど申し上げたような談話の内容が発表されております。日本が統治していた期間、朝鮮総督府を経由、日本政府が保管をしている朝鮮半島由来の貴重な図書ということで、これについて、いわばこのような定義に基づいて、政府内で、日本政府が保管をしているということになりますので、調査を行いまして、該当するものがいわばリストアップをされて引き渡されるべき図書になったというふうに理解をいたしております。

平沢委員 内閣総理大臣談話に該当するものは全部引き渡すと。

 では、今回のものが全部なんですか、ほかにもあるんですか。ほかのものが、もしこれに該当するものが出てきたら、今の大臣の答弁は、これもどんどん返すということですか。

松本(剛)国務大臣 先ほど申し上げましたように、日本が統治していた期間に朝鮮総督府を経由して、日本政府が保管しているということでございまして、政府内の調査はすべて行ったと理解をいたしておりますので、この談話の趣旨に基づいて引き渡すものについては、すべて今回お引き渡しをさせていただく。これ以上の引き渡しを現時点で考えているということはありません。

平沢委員 現時点というのはよくわかりませんけれども、この百六十七冊、千三十八冊、これは韓国側は、日本が無理やり韓国から、一言で言えば奪い取ったという言い方をしているんです。これは本当にそのとおりなんですか。

 では、宮内庁に聞きましょう。百六十七冊、これは全部韓国から日本が奪い取ったものなんですか、宮内庁。

岡政府参考人 お尋ねの儀軌等につきましては、大正年間に朝鮮総督府から日本に、宮内省の方へもたらされたものでありまして、奪い取ったとかそういうものではない。執務資料として総督府から宮内省に移されたものというふうに理解いたしております。

平沢委員 奪い取ったものじゃないのは当たり前だけれども、朝鮮総督府が持っていたものもそうですけれども、日本が購入したものはないんですか。

岡政府参考人 王朝儀軌百六十七冊が協定の附属書に記載されておりますけれども、そのうち四冊につきましては、宮内庁が日本において古書店から購入したもの四冊が含まれております。

平沢委員 千三十八冊、結局、総理談話に基づいて宮内庁は選んだということなんですけれども、この千三十八冊について、いつ、だれから、どういう指示が来て、どういう基準で選んで、そしてそれを連絡したんですか。

岡政府参考人 昨年の八月に総理談話が出されました後、外務省と随時協議をいたしまして、その過程で、まず朝鮮王朝儀軌、これにつきましては先ほど申し上げました購入した四冊も含めて百六十七冊、これに加えて、儀軌以外のものでも、総督府から当時の宮内省にもたらされたものという基準が示されましたので、私どもにおきましては、それに該当する図書は宮内庁としてどの程度持っておるかということを調査いたしました結果、王朝儀軌は百六十七冊、それ以外のものについては千三十八冊というものが確認できましたので、それを外務省に連絡申し上げました。

 具体的な時期は、随時協議をやっておりますのでちょっと特定はしかねますけれども、十一月の協定の附属書が完成するまでには、そういうことで外務省の方に御連絡申し上げております。

平沢委員 この百六十七冊、千三十八冊というのを宮内庁が外務省に連絡したのはいつですか。

岡政府参考人 随時連絡をとり合っておりましたので、最終的には協定の附属書ができ上がる直前だったと思います。(平沢委員「それはいつですか」と呼ぶ)十月から十一月ごろじゃなかったかと思います、最終的にこれに当たりますと申し上げたのは。

平沢委員 協定に署名するのは十一月十四日なんです。外務省からもらった資料によると、九月三日に政府内で附属書の範囲が確定と書いてあるんです。いいですか。それで、その後、それを受けた形で、九月三十日から日韓間で協議している、それで最終的に十一月十四日に至ると。これは、外務省、間違いないでしょうね。

松本(剛)国務大臣 引き渡す図書の対象範囲の確定ということで申しますと、今お話がありましたように、談話が八月に発表をされておりまして、官邸とも御相談をして、外務省から全省庁に対して調査の依頼を行った旨は既に御報告を申し上げているところだというふうに思っております。

 お返事は、ないといったような簡単なものも含めて、電話などでいただいたものもあるというふうに承知をしておりますけれども、今御指摘がありましたように、九月三日までに回答は御連絡をいただいているというふうに思っております。

 今、宮内庁からもお話がありましたのは、結論から申し上げれば、あるというお返事をいただいたのは宮内庁だけということになりますので、リストをいただいた後も、具体的な中身であるとか、その持つ意味であるとか、外務省との間で随時連絡はとらせていただいていたのではないかというふうに承知をいたしております。

平沢委員 今、九月三日までに附属書の範囲が確定というお話がありました。佐藤正久参議院議員が質問主意書を出しまして、それに対する政府の答弁は十一月二日付なんです。何て書いてあるかというと、政府としては、八月十日の内閣総理大臣談話に基づいて対応していく考えであるが、十一月二日現時点では、具体的な対象範囲や態様は決まっていないと言っているんです。十一月二日ですよ。十一月二日に対象範囲は決まっていないと言っている。十一月十四日に署名しているんです。

 そうすると、この政府答弁書、これはうそですか。

松本(剛)国務大臣 確定をするという意味の、先生もよく御案内のとおり、質問主意書で、内閣として最終的に確認をして決定をするという手続をどの段階でとるかということから申し上げれば、いわば協定の閣議に上げるという趣旨がありますので、私自身も、ちょっと、その答弁書自身を作成したわけではありませんけれども、そのような趣旨で御回答をさせていただいていると思っております。

 事務的には既に作業が進んでいるということで、この委員会からの御要請もありましたので、御報告をさせていただいたというふうに理解をしております。

平沢委員 そうじゃなくて、これは十一月十四日に、まさに泥縄式に、間に合わせるためにやったんでしょう。今回だって、いずれ李明博大統領が来られる、それに合わせて急いでやっているんじゃないんですか。そういうことでしょう。これは問題はいっぱいありますよ。やはりいろいろ詰めなきゃならないですよ。だけれども、昨年も、十一月二日の時点でまだ全然決まっていないという答弁をしておきながら、十一月十四日に署名している。そういうことじゃないんですか。

 要するに、何とか大統領の訪日に間に合わせよう、そういうことで、もう泥縄式で必死にやっているんじゃないですか。そういうことでしょう。違いますか。

松本(剛)国務大臣 附属書そのものを政府として最終的に決定をいたしましたのが、いわば協定の閣議で定めるのに伴ってということの位置づけになるということで先ほどそのように御答弁をいたしましたが、委員会の方からは、これまでの議論の経緯などについて提出をせよ、こういう御指示でありましたので、事務上の実質的なところをお話しさせていただいたのが、先ほどの各省庁に調査依頼をしてそのお返事が来たと。お返事が来た時点で実質的には確定をするという趣旨でそのように書かせていただいたというふうに理解をしております。

 この間、結果としては十四日、李明博大統領が来日をしている際に署名をさせていただいたことになるというふうに思っておりますが、談話を決めて、また、その手続を進めるに当たっては、事務としてはしっかりと慎重に行われてきたというふうに私自身は思っております。

平沢委員 今回のこの千二百五冊について、引き渡しと日本側は言っていますけれども、韓国側は、いろいろな資料を見ても、返還、リターンと言っているんです。

 大臣に確認します。

 これは、引き渡すというのはちょっとよくわかりませんけれども、先ほど来、日本が自主的に決めたと言うから、これは相手方に対する贈与ですね。韓国は返還と言っていますけれども、返還じゃなくて贈与ということでいいですね、引き渡しという言葉を使っていますけれども。

松本(剛)国務大臣 私の立場からは、やはり協定に基づいた用語でお答えをするのが適切ではないかというふうに思っております。

 先ほど申し上げたように、第一条で引き渡すということで協定に定められておりまして、これは、韓国語文でも引き渡すという文言、韓国語ではインドというふうに言うようでありますが、その言葉が使用されているというふうに承知をいたしております。

平沢委員 しかし、日本側が自主的に渡すんだったら、これは別に返還でも何でもないでしょう。韓国は報道官も含めて、みんな返還、返還と言っているんですよ。だって、大臣はさっきから、日本側が自主的に返すんだ、こう言っているんだ。そうしたら、返還であるはずないじゃないですか。そうでしょう。

 では、それはわかりました。大臣、返還ではないということだけ言ってください。韓国側が返還と言っているけれども、返還ということはあり得ないということだけ言ってください。

松本(剛)国務大臣 この協定は日本語と韓国語とともに正文ということになっておりまして、韓国語文においても、返還ではなくて引き渡すという文言が使用されているというふうに申し上げます。

平沢委員 いや、そうじゃなくて、韓国の報道官とか、いろいろな韓国のホームページ、政府機関のホームページを見ると、リターン、返還となっているんですよ。だけれども、大臣はさっきから自主的にと言っているんだから、返還じゃないでしょう。それだけ言ってください。返還ではないでしょう、これは。だって、自主的に渡すんだから。自主的に渡すものに返還なんてあるはずないじゃないですか。

松本(剛)国務大臣 まさに今申し上げたように、この条約では、日本語、韓国語の正文で、返還ではなくて引き渡すという文言が使われているということでございます。

平沢委員 返還ではないということですね。

 そこで、まだ聞きたいことがいっぱいありますので、次に進ませていただきますけれども、今回は日本にあるものを韓国側に渡すということになっているんですけれども、では逆に、日本のものが韓国にある、これはどういうものがあるんですか。日本の貴重な図書で韓国にあるものにはどういうものがあるんですか。それをちょっと答えてください。

松本(剛)国務大臣 我が国と韓国との間は、交流ということからすれば千年を超える歴史がありますので、双方の国に双方の文物が存在をしており、その中には貴重なものも多数あるというふうに承知をしております。その意味では、私どもが把握をしたもの、できているものもありますし、すべてが今ここで把握をできているわけではありませんが、双方に貴重なものも含めてさまざま文物があるというふうに理解をいたしております。

平沢委員 具体的に聞いているんです。

 外務省からもらった資料には、例えば、国史編纂委員会に二万八千冊の対馬宗家文書がある、大変貴重なものである。これは外務省の資料なんです。大臣、こういうものについて、韓国側に日本に引き渡せと要求するおつもりはありますか。

松本(剛)国務大臣 既に御議論もいただいているというふうになりますが、御指摘のありました対馬宗家文書というのは、国史編纂委員会、これは韓国の教育科学技術部に所属をしていると承知をしておりますが、ここに二万八千冊所蔵されているというふうなことは、私どもも、御議論もいただきまして、調査をしまして確認をいたしているところでございます。

 今のお話でございますが、今回のこの協定では、対象となっている文書は、日本が統治していた期間に朝鮮総督府を経由してもたらされ、現在日本政府が保管をしているものに限定をしておりまして、今お話がありました韓国政府保有の日本由来の図書というのは、置かれた状況が異なるというふうに理解をいたしているところでございます。

平沢委員 この宗家文書だけじゃなくて、ほかにもいっぱいあるんです、外務省の資料にありますように。ですから、これらについては、日本にある韓国のものについて、向こうからいろいろ返還要求、向こうは返還と言っている、これを引き渡してくれと来ている。だったら日本も、韓国にある貴重な日本の文書については引き渡してくれと言ったっておかしくないんじゃないですか。大臣、もう一回。

松本(剛)国務大臣 御指摘の韓国政府保有の日本由来の図書というのは、今申し上げましたように、経緯、背景が異なるもので、同列に論じるべきものではない、このように考えているところでございます。

平沢委員 だって、日本が購入したものまで今度渡すんですよ。大臣、朝鮮儀軌の中には日本が購入したもの、こんなものは、普通だったら、何で引き渡す必要があるんですか。今回、そういうものも入っているんですよ。それだったら、同じように言ったっておかしくないじゃないですか。もう一回。

松本(剛)国務大臣 平沢委員も朝鮮王朝儀軌についてはわかると先ほどおっしゃったかと理解をしておりますが、朝鮮王朝儀軌、そして……(平沢委員「その中に四冊購入したものが入っていると言っているんです」と呼ぶ)それは先ほど宮内庁からも答弁を申し上げたところでありますが、もちろん私どもとしてもそのように理解をしておりますが、基本的に、日本が統治をしていた期間に総督府を経由して日本政府にもたらされて、現在日本政府が保管しているもの、こういうことで限定をいたしておりまして、本協定と同列に論じるべきものとして今の御指摘いただいたような図書があるとは考えていないというふうに申し上げたいと思います。

平沢委員 きょうは時間がありませんから、この点については、またこれから時間をかけてじっくりやります。

 では、別な問題をやりますけれども、関西の寺院から日本の重要文化財が盗難に遭って韓国に渡ったもの、これはどんなものがありますか。文化庁。

吉田政府参考人 関西ということになりますと、鶴林寺というお寺から絹本著色弥陀三尊像というものが盗難に遭いまして、それが韓国で発見をされ、一部は返ってきたのでございますけれども、その残りはいまだ所在が不明という状況がございます。

平沢委員 壱岐の安国寺で盗まれたものはどうなっているんですか。

吉田政府参考人 壱岐の安国寺、これは高麗版大般若経というものでございますけれども、これにつきましては、平成六年の七月にこの安国寺から盗難されたということが発覚をいたしました。その後、平成七年三月に、韓国政府が初彫本大般若波羅蜜多経三巻という形で国宝に指定をされたところでございます。その後、文化庁におきましてその写真を確認いたしましたところ、先ほど申し上げました盗難に遭いました高麗版大般若経と大変よく似ているということが判明いたしましたので、そういったことを受けまして、平成九年十一月に文化庁では、警察庁とともに、外務省に対しまして、専門家を韓国に派遣して現物の確認を行うよう韓国政府に対する協力要請を申し入れたところでございます。

平沢委員 きょうは警察庁も来ていますから、警察庁、この問題でどういう対応をしたのか。たしか協議もしたはずですから、その協議の内容も含めて教えてください。

金高政府参考人 この事件につきましては、平成九年十一月に文化庁、外務省、そして私ども警察庁で会議を実施いたしまして、その結果、韓国が国宝として指定した経典三巻が本事件の盗難被害品であるか否かを確認すること、それから本事件の盗難被害品であることが判明した場合、返還の可能性について打診すること、協力が得られることになった場合、所有者と返還、買い取りの協議を行うこと、この手続については外務省が在韓日本大使館を通じるなどして韓国政府と協議し、韓国が同意すれば、文化庁から専門家を韓国に派遣して確認作業を行うこと、また、文化庁の専門家において被害品であることが確認されれば捜査共助手続等を行うということについて合意したものというふうに承知しております。

平沢委員 要するに、壱岐の安国寺にあった日本の重要文化財が盗まれて、韓国に全く同じようなものがあるということがわかった、そこで警察と文化庁と外務省で協議した、それでそのときに決めたのは、韓国に専門家を派遣して確認作業を行おう、それを外務省を通じて韓国側に申し入れようということを決めたはずですね。これは間違いないですね。

 では、外務省、申し入れしたのかどうか。そして、したその結果はどうだったんですか。

松本(剛)国務大臣 今既に御指摘ありましたので、事案については繰り返しません。

 政府といたしまして、韓国政府に対して調査協力を依頼いたしました。韓国政府からは、確証がなく、調査が困難であるという旨の回答があったところでございます。

平沢委員 調査が困難という、こんなふざけた話はないでしょう。だって、調査は、韓国でわかるはずないじゃないですか。持っていたのは日本なんだから、日本から盗まれたものなんだから、日本の専門家が行かない限り、日本から盗まれたものと同じかどうかというのはわかるはずないじゃないですか。韓国が何で調査できるんですか。日本にあったものがそのまま韓国に行って国宝に指定されたかどうかというのを調べるんだったら、日本の専門家が行かなきゃわからないじゃないですか。

 もう一度答えてください。韓国は、調査が困難と。韓国で調査なんかできるはずないでしょう。ふざけるのもいいかげんにしなさいよ。こんないいかげんな答弁はないでしょう。これだけふざけた答弁はないでしょう。ちょっともう一回答えてください。

松本(剛)国務大臣 どのようにしてどのような韓国側の反応があったかということでございましたので、記録を確認して、事実を御報告いたしました。

 その上で、私としては、本件については、これは日本の重要な文化財にかかわることでありますので、韓国政府から協力を得るべく、改めて照会することを検討いたしたい、このように思っております。

平沢委員 今回、この日韓図書協定を結ぶのであれば、もう一回言いますよ。日本の重要文化財がお寺から盗まれた、それが韓国に渡った、それで、韓国では直ちにそれを国宝に指定してしまった。どう見たってこれは日本のものだと文化庁が言っている。文化庁、間違いないでしょう、非常に似ているということは。間違いないですね。(吉田政府参考人「似ている」と呼ぶ)似ている、そう言っているわけですよ。だから、日本から盗まれたものか、調査させてくれと言ったら、韓国は調査を拒否しているんです。おかしくないですか。

 ですから、大臣、この話も、今回、図書協定をやるんだったら、あわせて言わなきゃおかしくないですか。だって、日本の重要文化財ですよ。盗んでいったものが向こうで国宝に指定されている、それについてはこっちは何も言わないで、そして、何か知らないけれども、自主的に返す返すと。こんなことばかりやっていたら、どう考えたって独立国家じゃないでしょう。もう一回、大臣。

小平委員長 その前に、文化庁吉田次長、この件についてどうなんですか。ちょっと答弁してください。

吉田政府参考人 それでは、事実経過も含めましてもう一度申し上げますと、この安国寺の所蔵します高麗版大般若経は、昭和五十年に重要文化財として指定をしたものでございます。平成六年の七月にこの盗難が判明いたしまして、その後、平成七年の三月に、韓国政府がこれを初彫本大般若波羅蜜多経という形で国宝に指定をしたということでございます。

 写真などでそのことが報道されましたので、私どもの専門家の方でその写真を分析したところ、日本として重文指定をしておりましたものと非常に酷似をしているということはございますので、その点を踏まえて、先ほど申し上げました形で協力要請をしておったということでございます。(発言する者あり)

 先ほど、平成九年の十一月に、私ども、警察庁とともに、外務省に対しまして韓国政府に対する協力要請を申し出るようにお願いをいたしまして、その後、平成十年の一月に、外務省の方から協力要請をしていただいたものと承知しております。

小平委員長 どうですか、杉山アジア大洋州局長、これについて、その後、どういうようなことがされているのか。

 ちょっと確認しましょう、その後の経緯。

杉山政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御答弁がありましたとおり、先ほど大臣からも申し上げました、日本政府の中で極めて酷似しているという状況がございましたので、これを受けて、依頼を受けまして、日本政府は韓国政府に対して調査の協力を依頼した。しかしながら、先ほど大臣から御答弁いたしましたように、韓国政府からは、確かに酷似しているということがあるかもしれないけれども、必ずしも確証がない、したがって調査は困難であるという回答があったところでございます。

 しかしながら、先ほど大臣がその後でお答えいたしましたように、本件については、日本の極めて重要な文化財にかかわり得ることだというふうに考えておりますので、今後、韓国政府から何らかの協力を得るべく、改めて照会あるいは調査の依頼をすることを検討してまいりたいというふうに外務省としても考えているところでございます。

平沢委員 改めてなんて言っていないで、今度の図書協定をやるんだったら、何でこの機会に言わないんですか。

 もう一回言いますよ。日本から盗まれたものですよ。重要文化財が盗まれて、それを韓国が直ちに国宝に指定しているんですよ。先ほど文化庁が言ったように、折り目だとか、いろいろなかすれとか何か、これを全部照合したら間違いないと。韓国は、調査しても不可能とかとばかなことを言っていますけれども、韓国が調査できるはずがないじゃないですか、持っていたのは日本なんだから、日本の専門家が行かない限り。そんなできもしないことを韓国が言ったということは、韓国はやる気がないんです。一切やる気がないんです。そんなふざけた対応をしているのにもかかわらず、この図書協定を結ぶんですか。少なくとも、日本から盗まれたものくらいはきちんと調査させろ、このくらいのことは言うべきじゃないですか。これは今まで断られてきたんです。

 日本から盗まれたんですよ、大臣。盗まれたものに対して、日本から文化庁の専門家が行って調査するというのも断っているんですよ。韓国政府の対応、余りにも対応としておかしいと思いませんか。だから、図書協定をやるなら、そのくらいのことを言うのは当たり前じゃないですか。どうですか、大臣。

松本(剛)国務大臣 長崎県壱岐島の安国寺の件で今御指摘をいただきました。そして、過去の経緯を確認いたしましたら、今御報告を申し上げたようなことでありました。

 それで、私としては、日本の重要な文化財にかかわり得ることであるからということで、先ほど、改めて照会すること、調査協力することを検討したいと申し上げましたが、改めてと申し上げましたのは、既に一往復をした上でということで申し上げさせていただきました。

 また、別途、文化庁から鶴林寺の件についても御報告がありましたけれども、これについても、引き続きしかるべく協力を求めていきたい、このように思っております。

 御指摘の事案は、鶴林寺の事案は、私どもが承知をする限り、この事件については、韓国の窃盗グループが逮捕されて犯行を自供したというふうにも聞いております。安国寺の件については、安国寺から盗まれたものということは私どももお聞きをしているところでありますが、捜査、調査協力が必要となってくる案件については、図書協定といったことにかかわらず、いつのときでもしっかり行われなければいけない、こういう趣旨で私どもとしては進めてまいりたい、このように思っております。

平沢委員 大臣、はっきり言ってください。

 要するに、平成九年に警察、外務省、文化庁で係官を派遣しようということを決めたんです。そして、外務省が申し入れしたんです。平成十年に、韓国政府は、そんな調査の必要はない、調査は失礼だということも言って、断ってきたんです。失礼でも何でもないですよ、日本から盗まれた文化財が向こうで国宝に指定されたんだから、これが盗まれたものかどうかをチェックするのに。

 今回の図書協定をやるなら、これを調査させろくらいのことを言ったらどうですか。今回言ったらどうですか。改めてなんてわけのわからないことを言わないで、今回言ったらどうですか。

松本(剛)国務大臣 改めてと申し上げたのは、これからという意味で申し上げたわけで、先生もよく御案内のとおり、捜査、調査協力などというのは、しっかり行われなければいけないわけでありまして、この図書協定の議論とはかかわりなく、しっかりこういった捜査、調査協力については進めるように、私どもとしても努力をしたい、このように思っております。

平沢委員 よくわかりませんけれども、ぜひやるように、この図書協定を、私は中身的には非常におかしいと思いますよ。朝鮮儀軌はともかくとして、ほかのところは、何でこんなのが加わったのか、さっぱりわからない。選んだのも、普通、専門家とか何かがみんな集まって議論するのが当たり前じゃないですか。これは宮内庁が選んだだけでしょう。それがそのままいくわけでしょう。審議会とかなんとか、専門家がチェックして、その上でやるのが普通なのに、そういったことを全く経ないでやっている。これもおかしいと思いますよ。

 それから、これからいろいろな返還のものが来るでしょう、また来るでしょう。ちなみに、韓国の中央日報に何て書いてあるかというと、日本は自主的な返還を待っていてはだめだ、金を払って買い戻すのはだめだ、これは絵のことですよ、絵画のことを言っているんです。日本にとって上策は世論を動かすことだ、世論を動かすには絶えず要求して働きかけをしなければならないと。これは去年の八月十一日の韓国の中央日報の記事なんです。

 これからもこういう形でどんどんやろう、もう実際そういう動きがありますけれども、来るんですよ。しっかりしなかったら、どんどんまた来ますよ。だから、こっちも要求することは要求する。当たり前じゃないですか。

 今私が申し上げましたように、日本から盗まれた文化財についてはきちんと調査をさせろ、そして、個人の所有になっているかどうか知らないけれども、それは返還してくれと。当たり前じゃないですか。そのくらいのことを今回、図書協定をやるならば、同時に要求してくださいよ。

 大臣、もう一回決意のほどをお願いします。

松本(剛)国務大臣 捜査、調査協力などについては、しっかり取り組んでまいりたいと思っております。

平沢委員 時間が来たから終わりますけれども、極めていろいろな問題を含んだ図書協定ですので、じっくり時間をかけて審議していただきますようお願いしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

小平委員長 次に、服部良一君。

服部委員 社会民主党の服部良一です。

 ちょっと早い時間に質疑に立たせていただきまして、委員長以下、理事、委員の御配慮に感謝をいたします。

 外務大臣にお聞きいたしますけれども、この協定で対象となっている朝鮮王朝儀軌等の図書は、日本による植民地支配のもとで日本の手に渡ったものであり、当然、その事実認識に立ち、反省とともに韓国側にお返しすべきものであるというふうに私は思っておりますが、菅総理談話では「お渡し」、あるいは本協定では「引き渡す」というふうにされております。どうして返還ではだめなのでしょうか。

松本(剛)国務大臣 今回、これは日韓間の歴史を踏まえということは御指摘のとおりであります。そして同時に、未来志向の日韓関係を構築していく関係から、義務に基づくものとしてではなく、あくまでも日本側の自発的措置として行うものということで、この本件図書の引き渡しを行うものでありますし、また、この協定が策定されたものである、こういうふうに考えております。

 こういった趣旨を踏まえて、韓国政府との協議も経て、引き渡すという文言を用いるということにしたと御理解をいただけたらと思っております。

服部委員 義務という言い方じゃなくて、やはり道義的責任という問題だというふうに私は思うんですね。菅談話の中にも、歴史に対して誠実に向き合い、歴史の事実を直視する勇気とそれを受ける謙虚さを持ち、みずからの過ちを省みることに率直でありたいというふうに、去年八月、菅総理自身も申されています。

 実は、私のおやじが朝鮮総督府におりまして、小さいときからやはりその意味をずっと考え続けてきた者の一人として、条約上はそれは返還ということになっていない、外務大臣の立場としてそうおっしゃることはよくわかるのですけれども、しかし、一政治家としてこういう日本の歴史を振り返ってみたときに、これはやはり本来的には返還とすべきじゃないかという政治家としての御意見を再度お聞きしたいんですが、いかがでしょうか。

松本(剛)国務大臣 今、私は外務大臣の職を担って、日本国の外務大臣としてお話をさせていただく立場からは、日本政府として自発的な措置を行うということを判断しまして、協定については韓国側とも、協定でありますから協議をして、引き渡すという表現でこのような措置をとることにいたしましたものですから、引き渡すというふうに表現をさせていただきたい、このように思います。

服部委員 これ以上はもう申し上げませんけれども、私はそういう歴史認識を持っておるということを申し上げておきたいと思います。

 それから、民間所有の文化財についても、これまで返還運動なり返還の要請というものがあるわけですけれども、具体的には、大倉財団の、いわゆる大倉集古館所蔵の利川五重石塔の返還の問題があります。

 二〇〇八年八月に返還運動推進委員会が結成をされまして、韓国の報道によりますと、大倉集古館を管理し、石塔を所有する大倉文化財団は、昨年十月二十九日に行われた返還運動推進委員会との話し合いの中で、日本政府の許可があれば返還するというふうに回答した旨の報道がされております。

 この石塔は重要美術品に指定されているために、返還をするためには文化審議会が可否を判断する手続が必要となるというふうに理解しているわけですけれども、実際に所有している大倉文化財団から文化庁に申し入れがあった場合に、文化審議会で審議する場合に、ここから先は一般論としてお聞きするんですけれども、一般論として、返還を阻害する理由というのは何かあるんでしょうか。要するに、所有者が返還したいということを申し出た場合に、その可否の判断基準というのはどういうふうにお考えでしょうか、文科省。

吉田政府参考人 御指摘の、大倉文化財団所有の五重石塔につきましては、「重要美術品等ノ保存ニ関スル法律」という昭和八年につくられました法律によりまして、「歴史上又ハ美術上特ニ重要ナル価値アリト認メラル物件」ということで、昭和八年七月二十五日付で重要美術品に認定をされております。これは、現在の文化財保護法にいいます重要文化財とはまた異なる種類のものでございます。

 このような重要美術品を海外へ輸出するということにつきましては文化庁長官の許可が必要ということになっておりまして、その際、文化庁長官は、その重要美術品の認定を取り消すかどうかという判断を行うことになりますので、その点について文化審議会に諮問をするということで、そこで文化審議会がかかわってくるわけでございます。

 その際の判断基準でございますけれども、これは個々具体の案件に即して行わなければいけないということでございますけれども、一般論として申し上げれば、当該美術品の文化財としての価値いかんというところで判断をさせていただくということになろうかと思います。

服部委員 大臣、このように、両国の民間同士で、もともと韓国のここにあった、それが今たまたま日本の民間が所有している、それが話し合いによって合意が得られるという場合に、政府としても、その返還に理解があってもしかるべきだというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょう。

松本(剛)国務大臣 一般論としての問いの部分もあったかと思います。

 先ほど申し上げましたように、日韓関係というのは重層的にこれから深めていくことが大変重要であって、文化交流もその一面であるということから、民間レベルでも文化の交流が活発に行われることは大変歓迎をすべきことではないかというふうに考えているところでございますが、民間で保有をされている文化財の扱いについて私どもとしてお答えをする立場にありませんし、先ほどお話がありましたような政府としての手続が必要なことについては既に基準が定められておりますので、それにのっとって行われるというふうに理解をいたしております。

服部委員 大臣、非常に慎重な答弁が目立つような感じがするんですが、実は調査室の資料の十七ページにもあるんですけれども、二〇〇五年の五月に日韓外相会談で、韓国側から日本側の積極的対応を期待すると表明をされまして、そして、我が国側も誠意を持って仲介したい旨を述べたということになっているわけですよね。

 だから大臣、ぜひ、これは自民党時代ですよ、自民党時代に負けないように、きちっとこういう誠意ある対応をとられたらどうですか。そういう、ちょっとよく理解できないような答弁じゃなくて。もう一回お聞きします。

松本(剛)国務大臣 これまでの日韓でのさまざまなやりとりについては、私も、さかのぼれる限り確認をしていきながら、今後も日韓のやりとりについて臨んでいきたいと思っておりますし、今御指摘いただいた件もまた念頭に入れて今後取り組んでいきたいと思いますが、先ほど申し上げたように、日韓の関係が重層的に深まっていくことは大変望ましいというふうに思っておりますが、今、きょう、この段階で私が民間レベルの文化財についてコメントをするのは、申しわけありませんけれども、差し控えさせていただきたいと思います。

服部委員 ぜひ国としても前向きに理解をいただきたいなということを申し上げておきたいと思います。

 続きまして、外務大臣、昨年の菅総理談話のフォローアップが重要であるということを日韓両国政府間でも確認をされ、松本大臣自身も三月十九日の日韓外相会談で、総理談話のフォローアップを引き続き真摯に行っていくというふうに挙げられております。そのフォローアップの一つが、遺骨返還支援があると思うんですね。

 きょう、お手元に資料を配付させていただきました。「民間徴用の朝鮮人遺骨 進まぬ返還」ということで、仏教界が、いろいろ今まで遺骨調査に協力をしていたけれども一向に遺骨の返還が進まない、一体政府はどうなっておるんだと怒っているという記事なんですね。全日本仏教会の総務部長が、遺骨が返還できないのは死者への冒涜だ、仏教者として看過できないということも述べたというふうにこの記事の中にはございます。

 今、八百十七名分の朝鮮半島出身と見られる遺骨が判明をし、その中で四十二名分については韓国側に問い合わせをして遺族も確認をされているということなんですけれども、この返還がいまだに実現しない理由というのは何なんでしょう。

伴野副大臣 服部委員にお答えさせていただきたいと思います。

 まず、政府といたしましては、人道的観点から、朝鮮半島出身の方々の御遺骨の返還に可能な限り真摯に取り組ませていただき、対応させていただいているところでございますが、これまでも、委員も御案内だと思いますが、祐天寺に預託されております旧軍人軍属の方々の御遺骨を返還してきたところでございます。

 今、委員御指摘の、旧民間徴用等の御遺族の遺骨の返還につきましては、韓国政府からの協力要請があったことを受けまして、宗教団体の方々を初め、国内関係機関から幅広い協力をいただきまして、実態調査や実地調査を実施いたしまして、御遺骨の所在の把握に務めてきたところでございます。

 また、早期返還を目指しまして、韓国政府とさまざまな機会を通じて、この件につきましても話し合いを行っているところでございますが、残念ながら、いまだ調整が進んでおらず、返還が実現していないのも事実でございます。

 いずれにしましても、政府といたしましては、八月の総理談話で明らかにいたしましたように、未来志向の日韓関係を構築いたしていきまして、その上で、今後ともこのような取り組みにも誠意を持って対応していきたいと考えているところでございます。

服部委員 一般論としての答弁としてはそれで結構なんですけれども、私がお聞きしているのは、韓国側でもう遺族もはっきりしている、そういった遺骨すらが、昨年の夏の時点で四十二人分の遺骨を確認したというふうにあるわけですけれども、これがいまだに返還されていない理由というのは何なんですか。

伴野副大臣 委員にお答えさせていただきたいと思います。

 委員御指摘のように、四十二人の遺族の方々の確認を初め、日本政府が実施してきております実態調査及び実地調査で得られた情報につきましては随時韓国側に伝達いたしまして、韓国側でも御遺族の特定を行っており、その結果についても韓国から随時報告を受けているところでございます。

 このような実態調査、実地調査の努力を無駄にすることなく、一日も早く返還できるよう努めさせていただいているところでございますが、現在、韓国側とまだ十分な協議、協力を要請しているところでございまして、調整を進めている段階でございます。

服部委員 私、その調整の中身がどうなっているかということを実はお聞きしたいんですけれども、ちなみに、この新聞記事を見ますと、韓国政府側は日本側に政府主催の追悼会開催を求めている、しかし、徴用したのは民間企業との理由で拒まれている、責任や歴史認識の問題が協議の壁というふうに書いているんですけれども、この記事は事実なんでしょうか。

伴野副大臣 今、委員御指摘の報道は承知しておりますけれども、旧民間徴用等の御遺族の御遺骨の返還につきましては、早期返還を目指して、さまざまな点で韓国政府と機会を通じまして協議をしているところでございますが、委員からの再三の御指摘ではございますが、そういった相手国のあるお話でございますので、詳細につきましては差し控えさせていただきたいと思います。

服部委員 やはり、こういうことを一つ一つ積み重ねていくことが日韓関係の進展と信頼ということになると思うんですね。ほったらかしているということでは、ほったらかしているという表現がいいかどうかはわかりませんけれども、やはりもっと迅速に、もう戦後六十五年過ぎているわけですよね。そういう意味で、ぜひ対応をお願いしたいということを申し上げておきます。

 資料を配付しているわけですが、二枚目、三枚目、朝鮮半島や台湾など旧植民地の郵便局に現地の住民や軍人が貯金を預け、そしてその払い戻しがないまま残されている口座が約一千九百万口、残高は利子を含めて四十三億円、こういう記事がございます。

 それから、菅総理の昨年のフォローアップの中にサハリン問題があるわけですけれども、このサハリンで預けられた貯金の場合は、利子を含めた残高というのは五十九万件、一億八千七百万円あるというふうに新聞で報道されているわけです。

 総務省にお聞きしますけれども、こういった、払い戻されないまま郵便貯金等に保管されている軍事郵便貯金、外地郵便貯金の口座数、残高にかかわる最新の数字というのはどうなっているんでしょうか。

福岡政府参考人 お答えをいたします。

 委員御指摘の軍事郵便貯金、外地郵便貯金でございますが、現在、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構というところが管理をしてございます。

 直近で確知しております平成二十二年三月末現在で申し上げます。軍事郵便貯金につきましては、口座数が約七十万口座、残高が約二十一億五千三百万円でございます。同じく、外地郵便貯金につきましては、口座数が約一千八百六十六万口座、残高が約二十二億六千六百万円でございます。

服部委員 私は、これはいろいろな、いわゆる徴用もあれば、そういったところで、朝鮮半島とか植民地時代に来られた方の財産なわけですよね。これがいまだに返還されていないという理由にはいろいろあると思います。原票がないとか、そういったものがいろいろあると思うんですけれども、やはりこれを一体どうしていくのか。今、戦後補償の問題、いろいろ議論されているわけですけれども、私は、こういう貯金を戦後補償のための財源として活用する道を考えてみたらどうかというふうに思っているわけなんですね。

 実は、直接戦後補償の財源ということではないんですけれども、ことしの一月二十七日の衆議院で田中康夫さんの方から、こういったいわゆる休眠口座の活用について菅総理とのやりとりがございます。それで、菅総理は、この休眠口座の活用について、制約を打ち破って活用できる道はないか、内閣として、民主党として、あるいは他党の皆さんとも検討いただきたいという答弁をされておるんですね。実際にされておるんですよね。

 ですから、やはりこれをいかに活用するかということも考えて、それをまたこういった戦後補償で苦しんでおられる方々に活用するということもぜひ考えていただきたいということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

小平委員長 次に、赤松正雄君。

赤松(正)委員 おはようございます。公明党の赤松正雄でございます。

 日韓図書協定の問題に入るに当たりまして、ちょっと前段階の話として外務大臣にお聞きしたいんですが、外務大臣は、韓国にはどれぐらい今まで過去に行かれたことがありますか。

松本(剛)国務大臣 ええと……(赤松(正)委員「数え切れない」と呼ぶ)数え切れないほど多くはありませんが、議員になってからは二回だと思います。

赤松(正)委員 スタート時点でなぜそういうことを聞いたかといいますと、松本外務大臣は震災外交をやらなくちゃいけない、そういう使命があるということを申し上げましたが、国際関係の中でさまざまな国との交渉をされる外務大臣として、恐らくは、松本さんは韓国には特別な思いがおありだろうと。

 だから、日韓関係という非常に、恐らくお生まれになってからこの方、韓国には強い思いがあった。そういう思いを持って政治家になって、誕生のいきさつは別にして、ついに外務大臣になられた。そういう背景の中で、自分が任期中に、対韓関係、対韓国との関係の中でこれだけはやりたい、そんなに大げさに自分は思っていませんというふうに言われるかもしれませんが、ここは気楽に、自分が任期中、どれぐらいになられるかは知りませんが、対韓国との関係の中で、自分としてはこういうこだわりを持っている、あるいはこういうことをしてみたい、そういうことが多分おありだろうと私はにらんでいるんです。事前にそういうことを聞くとは言っていませんが、幅広い観点で日韓のことを聞くと言ってありますので、その辺の思いをお聞かせ願いたいと思います。

松本(剛)国務大臣 先生御指摘のとおり、御案内のとおり、私自身は、個人的なことを申し上げれば、大変韓国の歴史とかかわりのある人間の血を引いているところがあります。このこと自身は、おっしゃったように、私自身もずっと頭から離れたことはありませんので、国会議員になりましてからも、日韓関係の深化に資するようなことに関与していきたいという思いはあって、実際に向こうへ行く機会は必ずしも実は多くありませんでした。また、実際に向こうへ行った際に、向こうの博物館であるとか、また向こうの方々と接したときに、私自身の祖先のことを申し上げたときの向こうの方々の受けとめであるとかいうことも実際に体験をいたしてまいりました。

 そういうことも踏まえながら、しかし、冒頭の西村理事との審議の際にも申し上げました、最も近い国であります。そして、我が国が置かれた政治経済情勢を考えても近い国で、それは地理的ということのみならず、内容の面でも近い国であるべきだという確信は深めている思いであります。

 その意味では、先ほど申し上げたように、政治、経済、あらゆる面で日韓関係が深まることを望み、また、そういったことの議論にも参画をいたしてまいりましたけれども、さきに理事からお話がありましたが、私自身、副大臣をお引き受けして以降は、いわばそういう個人的な思いというものの出し方ということについては、よく考えてまた取り組まなければいけないなと思っておりますが、私自身であることには変わりはありませんので、その思いはしっかり私の中にあるというふうには申し上げられると思います。

赤松(正)委員 こういう、とっさに聞かれたときというのは、日ごろの思っておられる部分が出てくるはずなんですが、余り出てこなかったということは、余り深く思っておられないんじゃないかなというふうに思いました。

 私は、実は韓国には行ったことがありません。正直、行けない。それについては、まさにいろいろな思いがあるわけですけれども。

 今、例えば御厨貴さんが、震災後、戦後ではなくて、これからは日本は災後、震災後だ、そういう言い回しというか言葉遣いということがこれから使われるだろうという意味合いのことを言っていますよね。つまり、戦後は終わった。日本発の物の考え方という場合において、ここから先は震災後だというふうな、震災にかなり思いを注入した上での発言だろうと思うんです。

 私は、これも先般来言っておりますように、対ロシアとの関係においても、この震災というものをてこにして日ロ関係をよくしていくという側面があるのと、一方で北方領土という、昭和二十年八月十五日から九月二日までの間になされたことというものも絶対忘れちゃいけないという部分で、多重的な外交なんですけれども、最小必要限二面性というものは必要だということを申し上げてきました。韓国を初めとする近隣の国々、中国等においても同じことは言えるだろうと思うんですね。

 つまり、日本は震災後、国内政治的に見ればそういう側面が非常に強くなってきますが、対外的な側面では、ますますというか、戦後というものは全然終わっていない。常にそういう意識を持っていかなくちゃいけない。戦後六十五年ですが、私は、少なくとも百年は、さきの大戦以降のものというのは引きずらなくちゃいけないというふうに思っているんです。

 そういう観点で、私の個人的な観点から言えば、対朝鮮半島の問題についてはやはり贖罪意識というものがかなり、個人的にはですよ、あって、元気いっぱい韓国に行くことはできないというのが個人的な思いであります。

 そういうことを冒頭で少し申し上げさせていただいて、この日韓図書協定の問題に入るわけですが、ちょっと先ほど来の、私までの同僚委員との質問のやりとりを聞いていまして、少し私が考えていたことと違うのかなという印象を受けたのは、大臣が、未来志向、そして自発的措置と。この日韓図書協定を結んだその背景として、未来志向の日韓関係、そしてこれは自発的措置なんだ、こういうふうに言われたんです。こういう側面ももちろんあるんだろうと思うんですが、ちょっと私が違和感を持ったということを、今からやりとりの中で明らかにしていきたいと思うんです。

 その前に、昭和四十年、日韓の間に基本条約というのが結ばれた。一九六五年。この日韓基本条約で、今日まで日本政府、政権は交代しましたけれども、私が沖縄の問題で、要するに、沖縄の問題で地位協定をめぐって、政権政党の思いは変わったけれども、外務省は変わっていないという話をしました。

 同じように、日韓図書協定という問題についても、基本的には昭和四十年の日韓基本条約で、日韓におけるそういう図書をめぐるやりとりというものについては決着済みだという観点で、過去の自民党政権、あるいは自民党と公明党の政権の間についてはすべて決着済みだとしていたのに、なぜ今回は、決着済みを改めて、引き渡しという観点に変わったのか。

 引き渡しをする、従来の日韓基本条約で決着済みとしてきた物の考え方を今回変えたということについて、なぜ変えたのかの理由として、未来志向、自発的措置だけでは十分でないように思うんですけれども、いかがでしょうか。

松本(剛)国務大臣 御指摘の、一九六五年、昭和四十年には、基本条約と日韓の請求権、財産協定が締結をされていることは、先生もよく御案内のとおりであります。

 私どもとしては、日韓両国、また両国民の財産、請求権に関する問題は、先ほど申し上げた協定により完全かつ最終的に解決済みである、この考え方は変わっておりません。今回の引き渡しは、請求権に関する問題とは関係のない位置づけだというふうに理解をいたしております。

赤松(正)委員 今、私どもは変わっていないと言われましたね。変わっていないというのは、それは外務省の考え方が変わっていないんだと私は理解しています。外務省の考え方は変わっていないんだけれども政権政党の考え方が変わったんだ、私はそういう思いです。なぜか。それは、つまり、自公政権時代には今回のような決断はしなかった。先ほどあったように、二〇〇六年にも韓国からそういう要請があった。二〇一〇年、今回あって、この二〇〇六年と二〇一〇年の違いは、政権の変化という違いがあるわけですね。今、外務大臣は、恐らく外務省の役人がつくった答弁をベースにして答弁されたと思うんですけれども、要するに、外務省、役人の考え方では変わっていない。

 ただし、それを総理大臣が、二〇一〇年、昨年の談話という格好で、朝鮮儀軌を中心とする日韓における図書協定、返す、こういう決断を総理大臣がされた。これは、今外務大臣の答弁の中で、基本的には変わっていないと。しかし、今回のこの部分が違う。

 これは、何で違うのかということについて、さらに補足をしてください。要するに、なぜ、基本的には変わっていないのに、今回の日韓図書協定、朝鮮儀軌を中心としたものを引き渡すというふうな決断を総理大臣はしたんでしょうか。

松本(剛)国務大臣 確かに、私どもも、事務方とは相談をして答弁も用意させていただいておりますが、財産、請求権に関する問題は完全かつ最終的に解決済みであるという立場は私自身も十分理解をした上でお話をさせていただいているということを、まず確認させていただきたいと思っております。

 また、この点も既に御議論をいただいてきたところでありますけれども、確かに、二〇〇六年、二〇一〇年と韓国の国会でも決議がありましたから、韓国の国会としての期待があるということは私どもも承知をしているわけでありますけれども、私どもとして、請求を受けて行うという位置づけではないということは、既に申し上げてきたとおりであります。

 その上で、私も未来志向という言葉を言いましたが、政府として、また総理として、百年という昨年の節目の年ということを念頭に置いた上で、日本の国として、今後の韓国との未来志向の中で、資すること、どのようにすることが望ましいかということを考えて談話を発表され、また談話のフォローアップとしての行動を行っているというふうに私は理解をいたしております。

赤松(正)委員 先ほど冒頭で、未来志向と自発的措置、この二つについて私がなぜ若干の違和感を持ったかということは、実はこの場に挑む前に、私自身のキーワードは、いわゆる日韓併合から百年、この百年という節目、それからもう一つは、皇室由来のもの、いわゆる皇室というか朝鮮王朝にかかわるもの、この二つ。

 この二つがあるがゆえに、要するに、昭和四十年、一九六五年、日韓基本条約で決着がついているんだけれども、特別例外として、この百年という節目が一つ。それからもう一つは、朝鮮王朝にまつわるものであるということからこういう決断をしたんだ、こういう理解で私はこの場に挑んだんですが、今私が言うまでの松本外務大臣の今までの発言は、余り、そういう発言は一切なかったということはちょっとどういうことなのかなと思ったから、先ほど来の質問をしたわけです。

松本(剛)国務大臣 百年という節目が大変大きな節目であることは、もう御指摘のとおりであります。

 また、日本が統治していた時代に朝鮮総督府を経由してもたらされたということそのものが歴史を踏まえたものであるというふうに私も理解をしておりますし、今回対象となる図書そのものについては、日本政府が保有をしているものということで、既に先ほどの御議論でありましたように、全省庁に調査を依頼いたしましたが、結果としては、宮内庁が所有をしているものが対象となったということであります。

 その中で、百年前の当時の政治情勢にかんがみれば、やはり朝鮮王朝というのがその時点では大変大きな存在であったということは、もちろん間違いない事実であるというふうに思っております。

赤松(正)委員 未来志向ということは、逆に言えば、過去へのこだわり、過去に拘泥するということの反対語としての未来志向ということだろうと思うんですね。

 それから、自発的措置の反対語というのは、他から言われた、他発的というんでしょうか、自発的の反対。余り自分としては望まないんだけれども言われるからやるということではなくて、これからの関係を重視し、そしてみずからそういう発出をする、こういうことなんでしょうけれども、それはやはり、それだけでは少し弱いという側面があって、私ども公明党は、うちの代表が韓国に行ったときに、韓国の大統領との間で、早急にこの朝鮮儀軌については引き渡すべきであるという情報発信をいたしました。

 やはりこういうことは、何というか、決めたからには気持ちよくやることが大事だろう、ああだこうだ言わない方がいいというふうに私は思っておるんですが、今申し上げたような、そういう百年という節目、そして、朝鮮の民族にとって、一番、ある意味でシンボルというか大事な側面である、そういう王朝にまつわる儀式に関するものである。先ほど同僚委員から、その他の図書についてはどうなのかということがありましたけれども、その他の図書についても、やはり王朝にまつわる、そういうさまざまな重要な文書であるということで、私は、朝鮮儀軌プラスその他のもの、そのものを一緒にするということにはこだわらないという思いであります。

 改めてお聞きしたいんですが、決着済みのことに、今回百年、そして、私の質問に答える格好で、王朝との関係というものもあるというような意味の答弁をされましたけれども、では、ここから先、例えば百十年とか百二十年とかあるいは百五十年という節目のときに、またこういうことを、未来志向で、そうして自発的に、まだ日本の中に残っているもので韓国に引き渡すというケースが出てくるということでしょうか。

松本(剛)国務大臣 先生が御指摘になりましたように、王朝由来という意味でいけば、朝鮮王朝儀軌というのは一つ大変大きなものだろうというふうに思っております。

 また、これも繰り返し申し上げてきたところでありますが、日本が統治をしていた時代に総督府を経由して、そして現在、私どもとして自発的に引き渡すことが可能となるものということで、日本政府が所有をするものということで限定をさせていただいたわけでありますが、これについては、全政府内すべて調査をいたしまして、すべて出しておりますので、現時点でこれ以上お引き渡しをするというものがあるというふうには考えておりません。

 また、先生御指摘のように、未来志向の裏返しは過去を振り返る、また、自発的の裏返しは受動的なこと、こういうお話であったわけでありますけれども、やはり菅総理の談話においても、もちろん過去を振り返っている部分もあるわけですが、それを踏まえて、適切な定義として今のような限定、定義が出てきたものと考えており、この定義に対してこたえられるものは今回これですべてであるというのが現在の私どもの考え方でございます。

赤松(正)委員 先方の朝鮮の王朝にかかわるものという部分では、一九九一年の四月に、リ・マサコとお読みするんでしょうか、李方子女史に由来する服飾等の譲渡に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定、一九九一年四月の時点で、日韓間の主な文化財の引き渡しの例としては、今回以前にこのケースがあるわけですね。そして、今回のケース。

 つまり、私が先ほど来言っておりますように、日韓基本条約で決着済みというこの文化財をめぐる日韓間におけるその引き渡しのケースとしては、ある意味、図書ではありませんけれども、そういう服飾に関する譲渡に続いて今回が二回目ということで、今大臣は、ここから先はもうこれでない、そういうふうに言われたんですが、現時点ではこれ以外には出てこない、したがって、未来志向とかあるいは自発的措置という言葉をもってしてでも、ここから先はそういうケースはない、このように決めていいんですね。

松本(剛)国務大臣 日韓の関係での文化財が移動したという意味では、そもそも、おっしゃっていただいた昭和四十年、一九六五年に文化財及び文化協力に関する協定で、国交正常化に際して、やはり協定附属書に掲げる文化財、これを「両国の文化における歴史的な関係にかんがみ、両国の学術及び文化の発展並びに研究に寄与することを希望して、」ということで引き渡しているところでございます。

 その後、一九九一年は、今先生御指摘のとおり、イ・パンジャと読むそうでありますけれども、これは故人の遺志を受けて、両国間の友好関係及び諸分野における協力関係の発展に資するための特別措置として引き渡しを行ったというふうに承知をしております。

 今回は百年という節目で、日韓関係のまさに未来を志向する形で、考え方を総理談話という形で発表させていただきました。そういった趣旨にかなったものとしては、先ほどお話をさせていただいたような限定もしくは定義が行われると思いますが、その定義にかなったものはすべて今回お渡しをすることになっているということを申し上げた、このように御理解をいただけたらと思います。

赤松(正)委員 先ほども話が出ておりましたけれども、かの国の、韓国における国会決議で二〇〇六年にも、朝鮮儀軌についての返還を希望する、そういう国会決議があった。今回、二〇一〇年に、昨年もあった。

 我が方の変化は、政権がこの間に交代しているということで、前回のときには、日本政府はいかなる反応をこの二〇〇六年の国会決議にはしたというふうに、前政権のことではありますけれども、外務大臣は二〇〇六年の時点ではどうであったというふうに理解をしておられますでしょうか。

伴野副大臣 赤松委員にお答えさせていただきたいと思います。

 委員御指摘のように、二〇〇六年に、十二月であったと思いますが、韓国の国会にてそのような決議がなされたものと承知をしております。また、二〇〇六年当時、政府としてもそのことを承知し、理解していたものと承知しております。

赤松(正)委員 要するに、二〇〇六年の韓国における国会決議のときには、日本は今回のような反応をしなかったわけですけれども、それは、百年に少し満たないからそういう反応をしなかったということでしょうか。

松本(剛)国務大臣 期待の表明があるということは、当時、政府としても承知をしていたというふうに御答弁は申し上げたとおりでありますけれども、具体的にその際に記録に残らない形でどのような検討がされたかまでは、私どもも承知をするところではありません。

 今お話がありましたように、反応して今回行ったかどうかということは、私どもは自発的な措置として申し上げておりますが、結果として、こういう図書を引き渡すということがその時点では全く行われていないことは事実だというふうに思います。

赤松(正)委員 要するに、私が言いたいのは、今の民主党政権として、きちっとしたルール、きちっとした基本的姿勢というものを決めて対応をしてほしいということであります。

 前政権がやらなかったことをやりたいという思いが非常に強い政権であったというふうに、発足当初からのさまざまなケースを通じて、私は強いそういう疑念を持っておりますので、前政権がやらなかったことだからこの際やろうとかいうふうなあいまいな形でやるということは、たまさか今回のケースはいいですよ、私どもは、この朝鮮儀軌について引き渡しをするということに、先ほども言いましたように、気持ちよく引き渡し、返還、こういったことをすべきであるというふうに思っておるんです。しかし、形態としては同じであっても、その背景の物の考え方というものが非常にきちっとした原理原則に基づいていない、そういうものではいけない、そういうふうに思うということを述べておきたいと思います。

 続いて、フランスの対応ですけれども、フランスは、日本における朝鮮儀軌と基本的には同じもの、ただ、厳密に言うと少し、フランス国立図書館に所蔵されているものは、国王が閲覧する御覧用というんですか、日本のものは分上用、こういうふうな言い方がされている。つまり、ありていに言うと、よりオリジナルなものと、それから、そこから派生してきたものというふうな受けとめ方かなという気がするんです。

 フランスが、今回の日本と同様に韓国からの要望というものを踏まえて返還を決めた。返還あるいは引き渡し、そういう言葉に私は余りこだわりませんけれども、そういうふうに決めたと聞きますけれども、日本のケースとどのように違うのかということについてお聞かせ願いたいと思います。

伴野副大臣 赤松委員にお答えいたします。

 今、委員御指摘の件は、韓国大統領府の発表等によりますと、韓仏両政府におきましては、二〇一〇年十一月十二日の韓仏首脳会談におきまして、現在フランスが保有している外奎章閣図書二百九十七冊だと思われますが、フランス国内法に従いまして、五年ごとに更新する貸与方式で韓国側に引き渡すことに合意し、二〇一一年二月七日に韓仏間で政府間協定に署名したと承知をしております。報道によるところでございますけれども、今月十四日にその外奎章閣図書の一部、七十四冊と思われますが、韓国に運ばれたと承知をしております。

 そして、違いということでございますけれども、私ども、日韓図書協定に基づく図書の引き渡しということにつきましては、日本側の自発的措置として無償で引き渡すということを決定したものでございます。

赤松(正)委員 フランスは、いかにもフランスらしいというか、では何がフランスらしいものかというと一概には言えませんが、際立って独自性を重んじるというか気位が高いというか、そう簡単にはいかないところが今回のフランスのやり方を見て感じるんですけれども、日本は日本独自のやり方があっていいと思うんです。

 私が一つ気になるのは、先ほども申し上げたような、余りこういったことはそのときの気分でやってほしくない、それなりにきちっとしたルールを確立してそれに従ってやる。したがって、私は、百年の節目に、朝鮮王朝に由来するこの重要な、朝鮮民族にとって、韓国の人々にとって非常に思いの深いものであるということから、これを引き渡すということについては大いにあっていい、こう思うわけですけれども、そういう物の考え方が、するっとスライドさせて、いろいろなところにノンルールでいくということが若干の懸念をもたらすということを指摘したいと思うんですね。

 そこで、少し性格は違いますし、先ほども外務大臣が物の考え方を述べられましたけれども、文化財全般、そういう政府に関連するものが所有しているのではなくて、民間所有のものの文化財、これをめぐって先ほども若干のやりとりがありましたけれども、そういう民間所有の文化財についても返してほしいという要望が、この近過去、私の手元にある調査室からいただいた資料によりますと、一九九六年一月、山口女子大学の寺内文庫のケースとか、あるいは靖国神社にまつわるものだとか、東京大学のものであるとか等々、一九九六年から二〇〇五年、二〇〇六年、二〇〇八年、そして今は、二〇〇九年のものについてはまだ決着がついておりませんけれども、要請が強く寄せられている。

 そういう民間所有の文化財の返還というものについて、政府は、そういうものに対しての返還要求に対する考え方の基準、そういうものをお持ちでしょうか。

松本(剛)国務大臣 先ほど、服部委員との質疑でもお話をさせていただいたところでありますけれども、先生からも御指摘がありましたように、日本と韓国の関係が重層的に深まることそのものを是とする中で、文化交流についても、これが深まることは当然是とされるというのが基本的な考え方であります。

 その上で、民間の間での文物の移動については、先ほどもお話がありましたけれども、手続が必要なものについては、国としては、しかるべき基準でしっかり手続をとらせていただくということになっておるというふうに承知をいたしております。

 また、今回の協定でも、今後の文化交流を深めることというのは私どもも努めなければいけないというふうに考えておりますので、そういう視点から政府としても努力をしてまいりたいと思いますが、民間の文物を引き渡す、もしくは、先生自身は返還をするという言葉にこだわらない、こうおっしゃいましたけれども、移動させることについては、私ども、今の段階で直接にコメントをする立場にはないということで考えているところでございます。

赤松(正)委員 いずれにしても、余り無限定に、基準を持たないでそういうさまざまな要望についてこたえるということだけでいくと、非常にいろいろな形で不都合なことが起こってくると思います。

 今、日韓の間におけるさまざまな、いわゆる観光という側面でも、日本から韓国へ、韓国から日本へというのはいろいろあって、何でもかんでもそちらの国へ戻す、そちらのものをこっちへ持ってくるというようなことだけではなくて、狭い地球という言い方もできるわけで、同じ地球上に生息する人類というか私たちが、お互い、余り狭い了見にとらわれないでいく観点も大事である。

 そういう点で、今、政府の物の考え方とはおっしゃいませんでしたけれども、やはり一つのルール、基本的な物の考え方というものを決めて、こういう民間のものに対しても対応していくことが大事ではないかということを申し上げさせていただいて、質問を終わります。

小平委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 まず、松本外務大臣に伺います。

 韓国併合から百年の節目の年となった昨年、二〇一〇年八月十日に、先ほどありましたが、菅総理談話が発表された。

 この談話では、植民地支配がもたらした多大な損害と苦痛に対して痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明するとともに、三十六年に及ぶ植民地支配について、当時の韓国の人々の意に反して行われたとの見解を示して、みずからの過ちを省みることに率直でありたいと述べております。また、在サハリン韓国人支援、朝鮮半島出身者の遺骨返還支援といった人道的な協力を今後とも誠実に実施することを表明して、これからの百年を見据え、未来志向の日韓関係を構築していくということを明らかにいたしました。

 この総理談話を松本大臣はどう受けとめたか、所見を伺っておきたいと思います。

松本(剛)国務大臣 総理談話発出時は、私自身は、当時は衆議院の議院運営委員長を仰せつかっておりました。その意味では、政策については一党員として議論をする立場であったわけでありますが、現在は、図らずもと申し上げるのは適当でないので申し上げないことにしたいと思いますが、外務大臣の職責をお受けすることになりました。先ほど赤松理事からもありましたけれども、やはり考え方には原理原則をしっかり持つということ、同時に、外交の責任をお預かりした中では、継続性というのも大変重要なことだというふうに思っているところでございます。

 その上で、私自身も、外務大臣をお受けして仕事する立場からは、この内閣総理大臣談話、これを踏まえてこれからも考え方を整理していきたいと思っていますし、総理談話は、日本政府として過去の歴史から目を背けることなく、反省すべきは反省をする、そして、これから百年を見据えて未来志向の日韓関係を構築する、こういうことに努力をするという趣旨で書いてある、決意をあらわしたというふうに理解をしておりますし、そのように努めてまいりたいというふうに考えております。

笠井委員 日韓関係の未来志向的な発展の上で、日本政府の誠意ある対応が求められていたことの一つが、今回の朝鮮王朝儀軌など文化財の問題でありました。総理談話は、「日本が統治していた期間に朝鮮総督府を経由してもたらされ、日本政府が保管している朝鮮王朝儀軌等の朝鮮半島由来の貴重な図書について、韓国の人々の期待に応えて近くこれらをお渡ししたい」と表明していました。

 大臣、今回の日韓図書協定は、この総理大臣談話を受けて作成をされて結ばれたものであるということでありますが、我が党は、韓国併合の百年という歴史の節目を経て、これからの二十一世紀の未来に向けて、日韓両国民が真の親愛の情で結ばれた友好関係を打ち立てるために、この協定が一日も早く承認をされて、韓国側に朝鮮王朝儀軌等が引き渡されることを願うものでありますけれども、大臣の思いはいかがでしょうか。

松本(剛)国務大臣 この協定そのものは、既に昨年、国会に提出をさせていただいたところでありまして、談話にも、「近くこれらをお渡ししたい」、こう表明をさせていただいた。このことを、やはり既に「近く」という表現が当たるかどうかというのはそれぞれの感覚にゆだねられるところではありますけれども、できるだけ早くお渡しをしなければいけない時期であるということは私も強く認識をしております。

 先ほど赤松理事が質問で、こういうものは渡すときはすっぱりとお渡しした方がいい、こうおっしゃったことに私も同感であります。

    〔委員長退席、長島(昭)委員長代理着席〕

笠井委員 具体的に外務省に伺いますが、伴野副大臣。菅総理談話では、朝鮮王朝儀軌などの引き渡しは韓国の人々の期待にこたえたものだというふうに述べておりますが、実際、韓国国内では、以前から朝鮮王朝儀軌の韓国側への返還を求める取り組みが粘り強く続けられて、世論が広がってまいりました。

 二〇〇六年九月には、仏教界を中心にして朝鮮王室儀軌還収委員会が設立をされて、日本外務省に繰り返し要請するとともに、歴代の総理あてにも陳情書を提出するなどの活動が行われてきました。韓国国会においても、先ほど来ありましたが、二〇〇六年の十二月と、昨年、二〇一〇年の二月の二度にわたって、朝鮮王朝儀軌の返還を求める決議が採択をされております。

 そこで、事実確認なんですけれども、朝鮮王朝儀軌の問題について、外務省は今日までに韓国側から、広い意味での韓国側からどのような働きかけを受けてきたでしょうか。

伴野副大臣 笠井委員にお答えいたします。

 笠井委員、今お申し越しいただいたように、この朝鮮王朝儀軌につきましては、韓国国会におきまして、二〇〇六年十二月及び二〇一〇年二月に、我が国に対し、引き渡しを求める内容の国会決議が採択されているほか、国会議員の方々、民間団体の方々から、累次にわたり引き渡しの要請を受けてきた経緯がございます。

 また、内外の国会議員の先生方からも、例えば平成十九年七月につきましては緒方先生、十月には笠井先生、四月にはこれも笠井先生からいただいておりますが、韓国の皆さん方とともに外務省を初め政府に来訪していただき、働きかけをしていただいたというふうに承知をしております。

笠井委員 この朝鮮王朝儀軌は、韓国の国会決議にも示されておりますが、韓国側にとっては、朝鮮王朝の正統性を受け継いだ韓国と韓国民族のアイデンティティーに深くかかわる記録遺産であり、大事な文化遺産だと。

 本日の委員会には、朝鮮王室儀軌還収委員会の事務局長の慧門僧侶を初めとして、韓国からも四名が傍聴に来られておりますけれども、私はこの問題で、日本側でも立場、党派を超えて、他党の方々と一緒にいろいろな交流や取り組みをする機会がありました。私自身も還収委員会の皆さんとともに、今答弁ありましたが、これまで何度か外務省に足を運んだことがあります。二〇〇七年十一月二十一日には、自公政権当時の木村仁外務副大臣と面談した際に、木村副大臣は、未来志向で一緒に考えて努力してまいりましょう、こういうふうに表明されたことが非常に印象的でありました。

 そこで、この朝鮮王朝儀軌をめぐっては、二〇〇六年十二月の韓国国会決議を契機にして、二〇〇七年五月二十四日の参議院外交防衛委員会での質疑が行われております。当時の麻生外務大臣が出席する中で、我が党の緒方靖夫議員が日本政府の誠意ある対応を求めたのに対して、外務省は、「個別の事例に応じて対応していきたい」というふうに答弁いたしましたが、そういう立場をとってきたということでよろしいでしょうか。

伴野副大臣 笠井委員にお答えさせていただきたいと思います。

 その件につきましては、二〇〇七年五月の委員会におけるやりとりではないかと思われますが、正確には麻生外務大臣ではなく政府側から、我が国が韓国に対し文化財を引き渡す法的義務は何ら負っていないということを大前提とし、個別の事例に応じて対応していきたい旨、当時の政府の考えとして述べているものと承知しております。

笠井委員 大臣がいた中で、政府側からということで答弁があったと。つまり、ケース・バイ・ケースということであります。

 松本大臣、その後、自公政権から交代した民主党政権になってから、この儀軌等の問題をめぐってどういう検討を行って、韓国側とどのような対応をして、韓国側に引き渡すという結論になったのか。それはいかがでしょうか。

松本(剛)国務大臣 御案内のとおり、正式に図書の引き渡しの方針を決定したのは、総理談話、八月ということになります。その際に、両国の文化協力関係を増進することを目的に、日本が統治していた、日本が朝鮮総督府を経由した、日本政府が保管していた朝鮮王朝儀軌等の朝鮮半島由来の貴重な図書、この定義についてはもう既に申し上げたとおりであります。

 委員、御指摘なのはそこまでですか。(笠井委員「政権がかわってからどういう検討をされて、どのような対応の中でこういう結論になったのか」と呼ぶ)私が今承知をしている中では、やはり、昨年、百年という節目を超えて、新たな百年に向けて日韓関係をどう構築するかということがさまざま議論をされてきた中で、そしてその百年という節目の中でも八月というのがやはりとりわけ特別なときであるということで、八月に向けてさまざまな議論がなされてきたというふうに聞いております。

 そういう意味では、政権交代が、その前年の二〇〇九年の九月に鳩山内閣が成立したわけでありますから、その時点から議論があったものというふうには考えますけれども、具体的にはやはり八月を前にして議論が深められたのではないかというふうに私どもは聞いております。

笠井委員 八月を前にして昨年議論が深められて、韓国側とも外交的なやりとりがあって、こういう結論になって協定になったということだと思います。

 伴野副大臣、この朝鮮王朝儀軌について、今回の日韓図書協定は、韓国側と二国間条約を締結することによって引き渡すというものでありますけれども、これ以外にも、先ほど来ありましたが、改めてちょっと確認しておきたいんですが、日本政府が過去において韓国との間で文化財の引き渡しに関する条約を締結したということがある、二回ということだと思うんですが、改めてその二つというのと、それから、二番目の、李方子、イ・パンジャさんの話、これはどういう協定の中身であったか。その二点を伺いたいんですが。

伴野副大臣 笠井委員にお答えいたします。

 まさに御指摘のあった一点目というのは、一九六五年に締結された日韓文化財・文化協定がございます。そしてまた、いま一つは、これも御指摘があったとおりでございますが、一九九一年に締結されました李方子元妃殿下服飾等譲渡協定がございます。この協定は、かつて朝鮮王朝皇太子の地位にあった李垠殿下と結婚されました、ソウルで逝去された李方子女史の御遺志を踏まえ締結されたものと承知をしております。

    〔長島(昭)委員長代理退席、委員長着席〕

笠井委員 今回の日韓図書協定を作成するに当たっては、今御答弁ありましたけれども、特に故李方子、イ・パンジャ女史の服飾等の譲渡協定を前例として参考にしたということであります。

 そこで、伴野副大臣に伺いますけれども、この協定、一九九一年ですね。当時の総理大臣と外務大臣はどなただったでしょうか。

伴野副大臣 笠井委員にお答えいたします。

 一九六五年、文化財及び文化協力に関する日本国と大韓民国との間の協定を締結されましたのは、当時、昭和四十年十二月十八日と記憶しておりますが、内閣総理大臣及び外務大臣におかれましては、佐藤栄作内閣総理大臣と椎名悦三郎外務大臣でいらっしゃいます。

 また、いま一つの、一九九一年、故李方子女史云々という協定を締結されました当時の内閣総理大臣、これは平成三年五月二十四日と記憶しておりますが、内閣総理大臣は海部俊樹内閣総理大臣であり、外務大臣は中山太郎外務大臣であったと承知しております。

笠井委員 これまで、今回の協定をつくるに当たって参考にした韓国側との二国間条約による文化財の引き渡しの前例というのは、どちらも自民党政権時代ということがあります。

 そこで、そのことも踏まえて、大臣に、この間の議論を若干整理して確認なんですけれども、要は、今伺っていて、きょうの議論もそうですが、韓国側からはさまざまな働きかけがあった、儀軌について返還とかいう形であって、そういう求める動きもあった。それを踏まえながらも、そういうことがあったという事実を踏まえながらも、請求権に基づく議論ではなくて、日本側が、百年の節目ということだったので、自発的に、この儀軌を出発点にして、日本が統治していた期間に朝鮮総督府を経由してもたらされ、日本政府が保管している朝鮮半島由来の貴重な図書というのを洗い出した。洗い出した結果が、儀軌は百六十七冊で、そしてその他の図書が千三十八冊、合計千二百五冊になった。そのことについて、韓国の人々の期待にこたえる形でお渡しするということにした。その結果がこの協定だという整理でよろしいのかどうか。

松本(剛)国務大臣 今、注意深く聞かせていただいていたつもりでありますが、おっしゃったとおりであろうと思います。

 我が国としては、御指摘がありましたように、請求権という問題とは関係なく、まさにこれからの百年の未来志向の日韓関係を見据えて、自発的な措置として、今御案内がありましたように、我が国が統治をしていた時代に朝鮮総督府を経由してもたらされた、日本政府が保管をする朝鮮王朝儀軌など朝鮮半島由来の貴重な図書を引き渡す、そして、その手続を進めていく中で、国会の御承認をいただく協定を結ぶ必要があるということで、今お諮りをさせていただいているというふうに理解をしております。

笠井委員 私の手元に、宮内庁が提出をされました、朝鮮王朝儀軌の収蔵年とそれから旧蔵、つまり、もとあった場所について書かれた一覧表のリストがございます。これを見ますと、そのほとんどが、大正十一年、一九二二年に、朝鮮総督府から当時の宮内省に移管されたものであることがわかります。実際、一昨日の委員会視察でも、我々は行って確認をしたんですけれども、最後のページに、大正十一年五月、朝鮮総督府寄贈という赤い印が押されているというのもみんなで確認したところであります。

 そこで、宮内庁に伺います。

 書陵部長、視察の際はありがとうございました。朝鮮王朝儀軌の旧蔵元、つまり、もと所蔵されていた場所で最も多いのはどこでしょうか。

岡政府参考人 現在、宮内庁で保有しております朝鮮王朝儀軌の多くには保管場所と思われる記載がなされておりますけれども、その中で最も多いのは、五台山と書いてあるものが一番多うございます。

笠井委員 リストには、一八九五年に日本の軍人らに暗殺された明成皇后、閔妃の国葬を記録した明成皇后国葬都監儀軌、四冊も含まれております。一昨日の視察でも、先ほど西村委員からもありましたが、色彩豊かに儀式の模様が描かれていてとても印象的だったというふうに語り合ったものでありますが、これも五台山史庫にあったものであるかどうか。いかがですか。

岡政府参考人 御指摘の四冊にも五台山との記載がございます。

笠井委員 二〇〇七年の八月に、私は、朝鮮王朝儀軌が保管されていた韓国の江原道平昌郡に所在する五台山史庫を朝鮮王室儀軌還収委員会の方々と訪ねて、この史庫のある月精寺というお寺の御住職や地元の皆さんとも交流したことがございます。その際に、韓国の与党議員がこう言っておりました。葬儀を重んじる韓国国民にとって、明成皇后の国葬を記録した儀軌がどれほど愛着のあるものかを理解してほしいと語っていたわけでありますが、私はとても重い言葉だと思います。

 宮内庁で閲覧した明成皇后の国葬都監儀軌の表紙には開国五〇四年というふうに書いてありますが、還収委員会の話によれば、国葬は、大韓帝国の創立、すなわち清、中国からの独立宣言に合わせて行われて、それまでは中国式の年号を使っていたことを考えると、この儀軌が韓国側に渡されることは象徴的な意味があるということであります。

 そこで、最後に外務大臣に伺っておきますけれども、日韓図書協定の第二条では、今回の引き渡しの措置によって日韓両国の文化交流と文化協力が一層発展するように努めるというふうに定めております。我が党は、今回の協定が日韓両国の友好にとって象徴的なものになっていくこと、そして、それが本当に生きていくことになることを本当に心から願うものであります。

 改めて伺っておきたいんですけれども、本協定によって日韓関係にどのような発展が開けるというふうにお考えになっているか。

 今、グローバルの中でのアジアの問題、そしてアジアの中での日韓関係ということで、きょうもさまざま議論がございました。そういう中で、韓国併合百年に当たって、総理が談話でああいうことも述べられた。それを踏まえて、こうした儀軌等の引き渡しという協定ができて、今、審議が行われているわけでありますけれども、この協定が今後の日韓関係にとってどんな意味を持っていくだろうか、そして日韓関係にどのような発展が開けていけるというふうにお考えか。率直なところでお考えを伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。

松本(剛)国務大臣 御指摘のとおり、協定には、両国間の未来へ向けてということで、前文また二条だったと思いますが、条文内にも記載があります。

 これは図書協定でありますので、まずはこの図書協定をきっかけに、さまざまな文化的な側面、これは人の交流も伴うものであってほしいと期待をしております。こういったものが深まることというのが大いに期待をされるところでありますが、同時に、談話でもお話をさせていただいたように、韓国の方々の期待にこたえる部分もあるわけでありますから、この協定の実現、そして図書の引き渡しを通して、両国のいわば国民の気持ち、感情というのが一層よくなってくるということが期待をされます。

 そういったもとで、政治、経済、二国間関係はもとより、今、先生からもお話がありましたけれども、アジアの場面において、さらには、現在も実際にハイチなどでも協力を行ったところでありますので、世界においても、人道的な面、平和、安定などの面、また、経済的な面でも協力をするという側面が開けるということが期待をしたいところだというふうに思っております。

笠井委員 これから日韓の間で、首脳間でも、さらには外務大臣間でも、近くそういう機会があるんじゃないかというふうに思うんですけれども、直接お会いして話し合うということで、お互いにあると思うんです。そういう機会に、例えば、今後の文化的交流が深まっていくことを期待している、あるいは、さまざまな協力が発展することを期待しているというふうにおっしゃったんですが、今後の日韓の間での交流あるいは協力関係をさらに進めていく上で課題になっている具体的な問題とか、こういう取り組みを今準備中あるいは協議をしているというふうなことで、今この時点でお答えできるところがあれば、具体的に何かあれば伺いたいんですが、いかがでしょうか。

松本(剛)国務大臣 きょうの議論の流れでいけば、談話でお話をさせていただいているように、何点かの人道的な観点からのフォローアップというのも一つの大きな課題だろうというふうに考えております。

 あわせて、私どもとしては、この東アジアのまさに厳しい安全保障環境、そして北朝鮮の拉致、核、ミサイルという問題を解決すべき課題として抱える我が国として、これまでも日米韓の協力というのを深めてきたところでありますけれども、私どものどちらも民主主義の国でありますから、やはり、国民の後押しが深まればその力も強まってくるというふうに思っております。

 また、経済の面では、御案内のとおり、日韓EPAの交渉というものが進められなければいけない課題として、これも両国の政府の認識が共有されているというふうに思いますけれども、国民の理解も得ながらまた進める、大きな推進力となるという意味でも、今回のことが一つの契機となることを期待したいというふうに思っております。

笠井委員 経済交流でいえば、それぞれの国民あるいは国の立場というのがあると思うので、そこも踏まえながらでありますけれども、しかし、やはり、今おっしゃったみたいに、日韓の関係というのは、これからのアジア全体あるいは世界にとっても非常に大事な関係でありまして、隣国ということもありますので、これまでの経過も踏まえながら、あるいは歴史も踏まえながら、さらに一層の発展を図る、そういう上で、今回の図書協定が大いに生かされていく、あるいはそれが契機となっていくということが大事じゃないかというふうに思います。

 私、そのことを強調しながら、質問を終わります。

小平委員長 次に、小野寺五典君。

小野寺委員 自由民主党の小野寺五典です。きょうは質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。

 まず初めに、外務大臣にお伺いしますが、今回のこの協定の審議の中で、実は、韓国側に日本の貴重な図書、資料が多数存在するということがわかりました。例えば、韓国の国史編纂委員会が所有をしております約二万八千冊の対馬宗家文書、これは一九二六年と一九三八年に日本の朝鮮総督府が対馬宗家より購入したということでありますが、これは研究者によっても大変な文化財的な価値があると伺っております。

 この文書の価値について、外務大臣の評価をお伺いします。

松本(剛)国務大臣 今お話がありましたが、御指摘の図書に関しては実態調査を行いました。そして、日韓両国間の文化交流促進という観点も含めて、日本国内の複数の専門家の方々の協力を得て、現地調査も含めて可能な範囲で実施をしたところであります。

 今御指摘がありましたように、国史編纂委員会にある対馬宗家文書二万八千冊、国立中央図書館に一般書籍また朝鮮総督府刊行物などが数十万冊、また、国家記録院に一般書籍が五千冊、韓国学中央研究院に一般書籍が一万三千冊あるというふうな報告とともに、専門家の方々からは、国史編纂委員会が所有する対馬宗家文書には原本や唯一である本が多く含まれる可能性があって、文化財としても学術的にも重要なものが含まれる、こういう報告をいただいたというふうに理解をしております。

小野寺委員 そうなんです。実は、これらの膨大な文書には、日本において存在する文書ですら既に重要文化財の指定を受けている、そして、例えば対馬文書の中には、日本では重要文化財になっているものの原本や清書版が多数あるということであります。

 このような、日本の研究者、そしてある意味では日本にとって貴重な資料、この韓国に現在ある資料について、やはりこれを日本側が研究あるいは所有するということが必要であるかどうか、大臣にお伺いします。

松本(剛)国務大臣 研究の対象という意味では、私どもとしても、繰り返しになりますけれども、原本、唯一である本である可能性が多く含まれているので、文化財、学術的にも重要なものが含まれる、こう書いてありますから、その研究に資するような状況が整うことが望ましいということは申し上げるまでもないというふうに思います。

小野寺委員 これは、韓国の方が今回この儀軌の問題についてさまざまな御主張をするのは当然だと思います。それぞれの国であれば、それぞれの国の文化財をもとあったところに持ってきて、そして同国民がそれをいつでも研究できるようにするという思いは、私どももわかります。

 であれば、外務大臣に再度お伺いしたいんですが、この宗家文書は、日本が所有をしていて、それで朝鮮総督府が購入したということで韓国に今存在するということですが、やはり、日本にとって重要文化財、もしかしたら国宝級もあるかもしれない、このような貴重な文化財に対して、大臣として、当然この文化財については日本が所有をするべきだというふうに思うのが当然であると思うんですが、大臣の所見をもう一度お伺いします。

松本(剛)国務大臣 現在韓国政府が保管をしている、国史編纂委員会が所蔵されている文書ということで、そこに至った経緯、法的評価などは、条約その他についてもいろいろ申し上げなければいけないこともあるかもしれませんが、その点は省略をさせていただいて申し上げれば、おっしゃったように、それぞれの国に由来のものについてはそれぞれの国民の方々が愛着を持たれるという気持ちは、私も十分理解をいたすところであります。

 その上で申し上げれば、日本と韓国との間には長い交流の歴史がございます。全体としては、日本にも、今回の協定の対象以外にも韓国由来のさまざまな文物がございます。また、それと同様に韓国にも、今お話がありましたように日本に由来するさまざまな文物が存在しており、御指摘の図書もその一つだろうというふうに思っているところでありますが、現段階で外務大臣として、この図書の対象の文書以外について私からコメントをさせていただくのは差し控えさせていただきたいと思います。

小野寺委員 立場上、恐らくコメントができないということだと思いますが、きょうここに委員がいらっしゃいます、また、きょうは韓国からこの委員会を傍聴されている方もいらっしゃると思います。世界じゅうどの国の方でも、自分の国にもともとあった貴重な文化財が、例えば、さまざまな理由で他国に今現存するということであっても、時間はかかっても、本来、このような文化財を自分の国に戻して、そして、私どもの伝統文化、先祖から受け継いだものについてしっかりと守っていくという気持ちを持つのは当然だと思います。

 ですから、今回の図書協定の問題、内容についても、韓国の方が長年このことについてはさまざまな意見を言って日本政府に要求をされたという気持ちも、私はわかります。だからこそ今回、韓国に、たまたまこの協定の審議の最中に見つかった日本の貴重な文書について、同様な考えで、当然韓国側に、日本の政府はこういうものがありますよ、あるいは、私ども議会人でありますので、議会としてこのような重要な文化財についてはぜひ日本に引き渡していただくということを決議する必要があるのではないですか、そういうさまざまな動きがあってこそ初めて、私どもは文化交流だと思っております。

 きょうは杉山局長がいらっしゃいますので一つお伺いしたいのですが、今回のこの協定を結ぶ以前に、これだけの貴重な文書が韓国側に残っていた、日本の貴重な文書が韓国側に残っていたということを知っていたか知っていないか、お伺いします。

杉山政府参考人 委員の御質問にお答えいたします。

 恐らく、一般的な話として、そういう資料が韓国側に存在するという考え方はあったろうとは思いますが、他方で、今委員が御指摘されたような、正確な形でこういうものが確実にあるということが判明したのは、今回、この図書協定との関連で我々が調査した結果判明したというのが事実だろうというふうに思います。

小野寺委員 外務省が確認した結果わかったんじゃないんです。これは、自民党の外交部会の中で新藤委員を初めさまざまな意見、指摘があって、その場で外務省に確認したら、外務省は、知りませんでしたと明確に答弁をされておりました。

 ですから、これは、言ってみれば他からの指摘で、なるほど、ひょっとしたらこういうのがあるかもしれない、この協定の締結後に外務省は調べて確認をした。そして研究者にこの評価を聞いてみたら、重要文化財以上のものが多数あるということがこの協定の後にわかったということだと思います。

 ですから、私ども、この協定の審議の中で、ぜひ外務省を含め政府にお願いをしたいのは、この協定の後にわかったというさまざまな文化財についてさまざまな働きかけをこれから韓国側に行う、ただ、一九六五年の基本条約の締結がありますので、もし政府がそういう方向で難しければ、私どもはいつでも国会決議をさせていただいて、韓国の国会が行ったように、私ども日本の国会においても、それぞれの文化財はしかるべきそのルーツのところに戻すべきだという中で返還の要求をするということが大切だと思っております。

 そういうことを主張した中で、今回のこの協定の条文の中を見ますと、目的というのは、日本国政府及び大韓民国政府は、相互理解に基づく文化交流及び文化協力が両国及び両国民の友好の発展に資するということが目的になっています。

 この文化交流、文化協力、これはどういう意味を持つのか、外務大臣にお伺いします。

松本(剛)国務大臣 これまでも御答弁をさせていただきましたように、文化交流に努めるということは、さまざまな学術的な研究であり、また相互の文化の理解でありといったようなことが人の交流も含めて深まることを指しているというふうに理解をいたしております。

小野寺委員 今、大臣の御答弁で、相互の交流、相互という言葉がございました。相互というのはお互いということです。ですから、本来、私どもが、この図書、朝鮮儀軌の問題について審議をするということ、そしてこれを韓国にお引き渡しをするという内容の協定だと思っています。相互というからには、韓国側にある日本の貴重な文書についても、例えばこの協定で間に合わないのであれば、直ちに日本政府として、あるいは議会として、このようなものが韓国側にありますね、ぜひそれを今度は日本側に引き渡していただけないか、そういう相互ということがあって初めて私は外交関係が成り立つのではないか、あるいは交流というのは相互という立場があって成り立つのではないか、そのように思っております。

 さて、この協定を今回審議するに当たりまして、新しく日本由来の貴重な文書が韓国側にあるということが判明いたしましたが、この日本への引き渡しについて外務大臣はどのようなお考えを持っているか、お伺いしたいと思います。

松本(剛)国務大臣 二つ申し上げたいと思いますが、一つは、今回の図書の引き渡しは、そもそも政府として、総理談話に基づいて、未来志向の日韓関係を構築していくという観点から、定義については繰り返しませんけれども、対象となる図書を引き渡すという方針を決めたものでありまして、自発的な措置として決めたものであります。

 また、対象となる図書については、日本が統治していた期間、朝鮮総督府を経由してもたらされた、現在日本政府が保管をしているもの、こういう形で定めたところでありますが、韓国国内に存在をする、また今御指摘があった図書というのは、これと同列に論じられるものではないというふうに考えているということでございます。

 また、先ほど私自身、やはり我が国由来のものについては当然国民として愛着があるということをお話をさせていただいたわけでありますが、長い歴史の中で、双方の中ではたくさんの文物が行き来をいたしております。それが今どこにそれぞれあるかということ、今回御指摘をいただいた個別のことについてコメントを申し上げるという立場にはありませんけれども、一般的には、長い交流の中での歴史の文物は、我が方由来のものが他国にあることもあれば、他国由来のものが我が国にあることもあると思いますが、それが我が国にあることもしくは他国にあることそのものが長い交流の歴史そのものをあらわしているというふうな受けとめ方もできるのではないかというふうに思っております。

小野寺委員 端的にお伺いします。

 今韓国にあるとわかった宗家文書を初め、日本の重要文化財、あるいはそれ以上の価値がある文化財について、外務大臣として引き渡しの要求をするのかしないのか、そのことについて再度お伺いします。

松本(剛)国務大臣 今御指摘の文書は、今回の図書の協定とは同列に論ずるべきものではないということは既に申し上げたとおりでありまして、別途検討されるべきものというふうに思っておりますが、現段階でその検討の結論が出ているわけではありませんので、具体的な行動について私からここで御答弁させていただけるものはまだないというふうに申し上げたいと思います。

小野寺委員 これは大変重要なことでお話をさせていただいております。

 私どもとしては、もし、それぞれの国に由来のものが明確にわかって、それぞれ返してほしいという要求があれば、それは真摯にお互いの国が受けとめる、それが初めて相互の交流ということだと思っております。

 今回、この協定というのは、日本に存在した、宮内庁の書陵部にありました朝鮮儀軌を含むとする韓国由来の文書を引き渡しをする、そういう協定だと思っております。交流ということであれば、二国間が対等な関係であるとすれば、韓国にある日本の宗家文書初めこのような貴重なものに関して、日本としてもその引き渡しを要求あるいはお願いするということが正しいことではないか。今回のこの協定の採決の判断にも、実は外務省の対応、政府の対応ということが大きくかかわる。ですから、私どもはこのようなことを何度もお伺いしております。

 改めてお伺いをします。

 今回、宗家文書を初め日本由来の、重要文化財、国宝に値するものもあると聞いている貴重な文化財について、日本政府は韓国側にこの引き渡しについてお願いなりをする、そのような予定はございますでしょうか。

松本(剛)国務大臣 繰り返しになる部分もあるかと思いますが、この協定の中に、おっしゃったように、「相互理解に基づく文化交流及び文化協力が、両国及び両国民間の友好関係の発展に資することを希望して、 次のとおり協定した。」とありますし、第二条に、「両国政府は、前条に規定する措置により両国間の文化交流及び文化協力が一層発展するよう努める。」このように書いておるわけであります。日本と韓国の未来志向の関係を構築するということの趣旨は談話に記したとおりでありますけれども、第一条においては日本政府が引き渡すことを定めており、日本政府の自発的措置を定めたものであるというふうに考えております。

 現在、この自発的措置について御審議を賜っていると理解しておりまして、御指摘のありました文書の取り扱いについては、今、専門家によって、その所蔵されている実態、御指摘を受けてと申し上げるのが正確だと思いますが、御指摘を受けて調査を行い、所蔵の実態またその価値などについての御意見をいただいたところでありまして、今お話がありましたような引き渡しの要求もしくはお願いをすべきだという御意見を既に表明されているところ、方々がいらっしゃるということは承知をしておりますけれども、外務省として、現段階でこれについて何らかの検討の結論、予定、行動というのを、結論が出ているわけではありませんので、予定をしているところではございません。

小野寺委員 今回の協定は、これは既に結ばれたものということで、それは重いものだと思っております。例えば、この協定の国会での批准が終わった後、その後直ちに、今言った、日本側の貴重な文化財が韓国側にある、宗家文書を初め重要なものがある、このことについて日本側から今度は引き渡しについてお願いをする、そのお考えはありますか。

松本(剛)国務大臣 先ほども申し上げましたように、この宗家文書の評価については既に専門家の方々から一つの知見をいただいたところでありますけれども、これについて、我が国由来の文書として、先ほど私は愛着を感じるものがあるということを申し上げさせていただきましたが、これについての取り扱いを政府としてどうすべきかということは、今の段階で私から申し上げられるところはありません。別途検討されるべきというふうに先ほど答弁をさせていただいたところでありますけれども、今の段階で何らかの結論が出ているわけではありませんので、御答弁として申し上げられるものは今のところ持ち合わせていないというふうに申し上げさせていただきたいと思います。

小野寺委員 ということは、日本側からこのような日本の貴重な文化財、韓国に置いてあるものに関して、宗家文書について要求することは、あるいはお願いすることはないというふうに今受けとめました。

 さて、言ってみれば、今回、私ども、不平等な協定ということになるんでしょうか、もしこのままでいけばその感がぬぐえないと思っておりますが、もう一つ、日韓関係で心配なことがございます。

 実は、韓国の国会、これは領土守護対策特別委員会ということらしいんですが、きょう竹島を訪問して、竹島でこの特別委員会の全体会議を開催し、そこに韓国の国土海洋部長官とか警察庁長官が来て説明を受ける。何と、日本の領土で韓国が国会を開くという大変なニュースが入ってまいりました。

 そして、実はこの続報ですが、きょうの竹島ですが、曇り、雨、そして風力が、現在は約六メートルですが、午後に従って九メートル、十四メートルということで、天候が悪いということで今回はこれを見送るということになったそうです。ですが、また天候が回復次第、竹島でこの委員会を開きたいということ、日本の領土で韓国政府が国会の委員会を開くということ、このことに関して、大臣はどのようなお考えがあるか、お聞かせください。

松本(剛)国務大臣 今御指摘ありましたように、本日予定であった韓国国会の委員会、これは天候の事情というふうに伝えられていると聞いておりますが、延期になったと承知をしておりますし、延期については外交ルートを通じて確認もいたしているところでございます。

 既に、この委員会の開催については、韓国側について、私どもは外交ルートで中止するように申し入れを行っております。

 竹島は、我が国の固有の領土であり、法的根拠のない形で占拠をされているわけでありますから、私どもとして、受け入れられないものについてはしっかり申し入れを行っていきたい、このように考えております。

小野寺委員 日本の領土で韓国の国会が開かれるという極めてあり得ないこと、このことに対して、外務大臣あるいは外務省の政務三役が直接韓国側に抗議をされましたか。

松本(剛)国務大臣 これについては、まさに、お話をさせていただいたように、中止をするように申し入れを行ったところでありまして、中止をするような申し入れが実るのに最もふさわしい方法という形を考えて申し入れを行ったというふうに考えております。

 これは、私自身にも報告を受けて、私自身からも指示をさせていただいたところでありますが、本件については、ソウル及び東京の両方で外交ルートを通じて行っております。

小野寺委員 外務大臣が、直接、韓国のしかるべき大使なりあるいは政府に対してこのことに対しての抗議をしたことはないと理解してよろしいんでしょうか。

松本(剛)国務大臣 私自身が指示をして、最も適切な方法で申し入れを行っておりますが、私自身が、例えばこの間に大使とお会いをして、このことについて申し入れを行ったかというお問いであれば、今、行ったという事実はまだありません。

小野寺委員 この協定の審議の中で、日本にある、宮内庁の書陵部にあるこの韓国由来の文書について、これを引き渡しするという内容で私どもは審議をしております。それと同時に、実は日韓関係の中でさまざまな問題が起きております。

 特にこの竹島の問題、これは大変重要な課題、領土にかかわる問題だと思います。そして、事もあろうに、我が国の領土の竹島で韓国を代表する国会議員が国会の委員会を開く、このような状況がもし行われたときに、この図書協定の審議に影響があるかないか、外務大臣にお伺いします。

松本(剛)国務大臣 竹島については、私どもの立場は今申し上げたとおりであります。一貫した立場でありまして、当然貫かれなければならない立場であります。同時に、日韓関係は、本日の審議でもお話しさせていただいたように、隣国であり、大変重要な関係であり、深めていかなければいけない関係であり、重層的な関係をこれから深めていくという中でこの図書協定は位置づけられているものというふうに考えております。

 なお、国会審議への影響ということでございましたが、国会審議の運びについて私がコメントをするということは差し控えさせていただきたいというふうに思います。

小野寺委員 今回、竹島で韓国が国会を開くその理由というのは、日本の竹島をめぐる教科書の歪曲に対抗しということで行うんだ、これは日本の教科書に対する報復だということで明確に表明をされております。

 このような韓国側の議会を含めた対応について、こういう問題があるにもかかわらず、日本の政府に関しては、日本の領土で韓国が国会を開くということを明確に今進められている中でも、この図書協定は大事だから、それとこれとは別だということで政府は進めたいとお考えでしょうか、お伺いします。

松本(剛)国務大臣 竹島に関しては、受け入れられないものについてはしっかりとそのことを実現できるように、受け入れられないということを伝えると同時に、粘り強く対応していく、そして毅然として対応していくことが必要だ、これは委員も御指摘をいただいている趣旨そのとおりだというふうに考えております。

 同時に、重層的な日韓関係という意味で、図書協定については今、国会での御審議にゆだねているもの、このように私どもは承知をしております。

小野寺委員 最後になります。

 我が党の領土特命委員会の石破委員長が、四月十二日よりこの竹島の問題で外務大臣に何度も面会をお願いしております。日程の協議を含めて、国会議員からの面会、しかも我が党政調会長からの面会ということで、ぜひ重く受けとめていただきたい、そう思っています。

 そして、私が一番懸念すること、委員の皆様にぜひ知っていただきたい。今回のこの図書協定の条文は大変短い条文です。本当に、条文の本体は二枚の短い条文です。そして、私ども、今の日本政府のどちらかといえば控え目な、悪い言葉で言えば逃げ腰の外交ということになると、この図書に関する協定、これが例えば、竹島に関する協定、もしここを入れかえたら、全く同じようなことが起こったらどうなるんだろう。今回の一つ一つの不平等と言えるような協定を唯々諾々と進めていくような政府が今後この国のかじ取りをするのであれば、領土の問題は一体どうなるんだろう、そういう強い危機感を持ってきょうは質問をさせていただきました。

 ぜひ、お互いの文化交流のためには相互の関係ということをしっかり主張していただくことをお願いしまして、質問とさせていただきます。

 終わります。

    ―――――――――――――

小平委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本件審査のため、来る二十七日水曜日午前九時、参考人として慶應義塾大学名誉教授田代和生君、拓殖大学教授下條正男君及び茨城大学名誉教授荒井信一君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る二十七日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二分散会


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