衆議院

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第6号 平成24年8月31日(金曜日)

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平成二十四年八月三十一日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 田中眞紀子君

   理事 菊田真紀子君 理事 長安  豊君

   理事 村越 祐民君 理事 山尾志桜里君

      市村浩一郎君    小川 淳也君

      大泉ひろこ君    勝又恒一郎君

      近藤 和也君    阪口 直人君

      花咲 宏基君    浜本  宏君

      早川久美子君    松本 剛明君

      三浦のぼる君    矢崎 公二君

      浅野 貴博君

    …………………………………

   外務大臣         玄葉光一郎君

   外務副大臣        山根 隆治君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 佐藤  地君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    八木  毅君

   政府参考人

   (財務省関税局長)    稲垣 光隆君

   外務委員会専門員     細矢 隆義君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月三十一日

 辞任         補欠選任

  首藤 信彦君     松本 剛明君

  中野  譲君     花咲 宏基君

  山口  壯君     近藤 和也君

同日

 辞任         補欠選任

  近藤 和也君     山口  壯君

  花咲 宏基君     矢崎 公二君

  松本 剛明君     首藤 信彦君

同日

 辞任         補欠選任

  矢崎 公二君     中野  譲君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 欧州復興開発銀行を設立する協定の改正の受諾について承認を求めるの件(条約第八号)(参議院送付)

 偽造品の取引の防止に関する協定の締結について承認を求めるの件(条約第九号)(参議院送付)

 二千六年の海上の労働に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)(参議院送付)

 千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定の譲許表第三十八表(日本国の譲許表)の修正及び訂正に関する確認書の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)(参議院送付)

 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第七号)


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 開会に先立ちまして、自由民主党・無所属の会、国民の生活が第一・きづな、公明党、日本共産党及び社会民主党・市民連合所属委員に対し、御出席を要請いたしましたが、御出席が得られません。

 再度理事をして御出席を要請いたさせますので、しばらくお待ちください。

 この際、暫時休憩といたします。

    午前九時一分休憩

     ――――◇―――――

    午前九時十五分開議

田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 三人の理事をして再度御出席を要請いたしましたが、自由民主党・無所属の会、国民の生活が第一・きづな、公明党、日本共産党及び社会民主党・市民連合所属委員の御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 欧州復興開発銀行を設立する協定の改正の受諾について承認を求めるの件、偽造品の取引の防止に関する協定の締結について承認を求めるの件、二千六年の海上の労働に関する条約の締結について承認を求めるの件及び千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定の譲許表第三十八表(日本国の譲許表)の修正及び訂正に関する確認書の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官佐藤地君、経済局長八木毅君及び財務省関税局長稲垣光隆君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大泉ひろこさん。

大泉委員 おはようございます。民主党、大泉ひろこでございます。

 一昨日に引き続きまして質問の機会をいただきましたことを感謝申し上げたいと思います。また、政局と思われる中で日本の外交をおくらせてはいけないという気持ちで質問をさせていただきたいと思います。

 本日の質問は、偽造品の取引防止に関する協定、ACTAについてさせていただきます。私ども外務委員の部屋には、このACTAに対するたくさんの御意見がファクスで入ってきております。したがいまして、本日は、その御意見に応えていただくような御答弁を求めたいというふうに思っております。

 まず、知的財産の侵害の保護については、既に、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定、TRIPsと申しますものが一九九五年に発効してございます。今般改めてACTAを採択した背景と、もう一つ、ACTAによって今回改善される状況についてお聞きしたいと思います。

玄葉国務大臣 おはようございます。

 ただいま大泉委員が、この知的財産権保護に関してはTRIPs協定というのがあるではないか、こういう御指摘でございます。

 九五年に既に発効しているわけでありますけれども、この発効以降、デジタル技術の発展、また知的財産権侵害の新たな手法といったものが出現をしてきております。そういった中で、今、偽造品等の知的財産権を侵害する物品が拡散をし被害が増大しているという状況であります。

 偽造品の被害というのは、甚大な経済的な損失をもたらすのみならず、消費者の安全の観点からも、やはり取り締まらなければならないというふうに思います。

 そういう中で、十数年たつ中で、ACTAは、こうした状況に対応しなければならないということで、我が国がその必要性を提起して交渉をしてきたところであります。

 知的財産権に関する執行のための法的な枠組み、具体的には、民事上の執行、国境措置、刑事上の執行及びデジタル環境における知的財産権に関する執行を効果的に実施するための締約国間の国際協力の推進等について定めるところでございます。TRIPs協定では課されていない義務及び執行に関した、より詳細な手続をこのACTAで定めるということになります。

 例えば、TRIPs協定の内容をさらに発展させた規定として、国境における取り締まりを強化するために、今までは輸入品だけでありましたけれども、輸入品に加えて輸出品についても、職権、または権利者の申し立てによって差し押さえる手続を定める、また、商業上の違法なラベル等の取引について刑事上の手続及び刑罰を定めるなどなど、いわばTRIPs協定プラスということで、今回のACTA、偽造品取引防止協定ということになったということでございます。

大泉委員 大臣、どうもありがとうございました。

 今回のACTAの締結に当たりまして、日本は、この関係、ほとんど法整備ができているそうでございますけれども、今回必要な国内法の改正についてお伺いしたいと思います。

八木政府参考人 御説明申し上げます。

 本協定を我が国国内で実施するために必要となる国内法令の改正は、暗号やスクランブリングといった技術的手段を回避する装置等の製造規制を導入することのみでございまして、これにつきましては、去る六月二十日に今国会で成立いたしました著作権法の一部を改正する法律の中で既に手当てされているところでございます。

大泉委員 ありがとうございます。

 今のお話を伺っておりますと、インターネットの関係ということで、インターネット通信というのは今、スピーディーに発展をしていっている、日進月歩の世界でございますけれども、模倣品とか海賊版対策のために、新たな国内法の改正がこれからも、もしかしたらたびたび必要になるかもしれないと思われます。今のACTAで対応できますでしょうか。

山根副大臣 今ほど局長の方からも御答弁ございましたように、六月に成立をさせていただきました著作権法の一部改正によって、現時点の本協定締結の国内整備は終わったということでございます。

 しかしながら、今先生御指摘いただきましたように、海賊版であるとか模倣品、そういったもののこれからのいろいろな想定される出現、こういうことにどう対応するかということが、とても今大切な喫緊の課題になってくるんだろうというふうに思っております。

 したがいまして、ACTAにおける義務を履行するということではなくて、より一般的に、知的財産権侵害へのさらなる対策として、必要があれば、将来、各締約国が追加的な国内措置を講ずることはあり得るものと考えております。

 この点、ACTAも第二条において、この協定に反しないことを条件として、ACTAは、自国の法令において広範な執行を行うことも許容されている、こういうことでございます。

 他方、そうした場合にも、ACTAの前文に規定される、サービスプロバイダー等、権利者、利用者の権利や利益の均衡の精神のもと、各締約国の執行手続につきましては、例えば第二十七条に規定されております、電子商取引を含む正当な活動の新たな障害となることを回避して、かつ、表現の自由、公正な手続、プライバシーそのほかの基本原則が各締約国の法令に従って維持されるような態様で実施される等の義務が適用されると考えるところでございます。

大泉委員 ありがとうございました。大変よく理解いたしました。

 先ほど、ファクスがたくさん入ってきたというお話を申し上げましたけれども、そのきっかけとなりましたのが、欧州議会がACTAの批准を否決したことでございます。それによって非常に日本に波紋を起こしているわけでございます。

 この欧州議会がACTAの批准を否決した背景をどう分析していらっしゃるか、それをお聞きしたいと思います。

山根副大臣 特に、本年の一月にEU及び二十二カ国の加盟国がACTAに署名したころから、東欧、バルト諸国等において、ACTAがインターネットの自由や基本的人権を侵害するといった批判が広がりまして、その後、欧州の中にも伝播してきたというふうに承知をいたしております。

 その具体的な内容でありますけれども、一つといたしましては、ACTAによってインターネットアクセスが制限をされ、ウエブサイトが検閲されるのではないか、ACTAによってジェネリック医薬品の流通が阻害されるのではないか、ACTA交渉は秘密裏に行われたのではないかといったものが挙げられるわけであります。

 しかしながら、ACTAは正当なインターネット使用を規制したり、ウエブサイトの検閲を義務づけるものではございません。また、真正な商標を付して輸出入されるジェネリック医薬品の流通を妨げるものでもございません。さらに、交渉過程においても、可能な範囲での説明をこれまで行ってきているところでございます。

 欧州委員会は、ACTA締結に際してEUの域内法令を変更する必要はないとする点を含めまして、協定の内容について域内や欧州議会関係者に対して説明を行い、さらに、ACTAとEU法令上の基本的権利、自由との抵触の有無について欧州司法裁判所に見解を求めるなど、鋭意努力をしてきたと承知をいたしております。

 以上のような欧州委員会の取り組みにもかかわらず、欧州議会は、欧州司法裁判所の見解を待たずにACTA批准否決に至ったと承知をいたしております。

 欧州議会によるEUのACTA批准否決に至った理由といたしましては、米国におけるネット上の海賊版対策強化への反対運動を契機としたインターネット規制に関する世界的な関心の高まりが素地としてあったこと、一部EU諸国においてACTAに反対する政党や団体が政府に対して積極的に働きかけを行ったことなどが指摘されていると承知をいたしております。

大泉委員 ありがとうございます。

 大変よくわかりましたが、今の御答弁を伺っておりますと、アメリカとかヨーロッパの特殊性も関係しているのかなというふうに思えたところでございます。

 そこで、副大臣も何点かお触れになりましたけれども、欧州議会批准の否決の関連で、懸念されている問題点、それを幾つか伺っていきたいと思います。

 まず一番の問題でございますけれども、デジタル環境の知的財産権を規定した二十七条四項、副大臣も既にお触れになっていらっしゃいますけれども、権利侵害者の情報がプロバイダーから権利者に直接開示されてしまうところがあるということを懸念されている方がいらっしゃるんですけれども、それはあり得るのでしょうかということと、ちょっと重ねてでございますが、もしあり得るとすると、ネット利用の監視につながらないでしょうか。この二点をあわせてお伺いしたいと思います。

八木政府参考人 御指摘の第二十七条の四でございますが、これは、商標権、著作権等が侵害されていることにつきまして、権利者が法的に十分な主張を提起し、かつ、それらの権利の保護または行使のために必要である場合に限って、権利侵害に使用されたアカウントの保有者を特定できる情報を権利者に対して開示するようインターネットサービスプロバイダーに命ずる権限を自国の当局に付与できる旨、規定しているということでございます。

 それからまた、この第二十七条四は、あわせて、この手続に関しまして、電子商取引を含む正当な活動の新たな障害とならないよう、また、表現の自由、公正な手続、プライバシーその他の基本原則が維持されるよう実施される旨規定しておりまして、ACTAを根拠として、インターネットサービスプロバイダーが顧客の利用を常時監視するということを義務づけるものではございません。

 なお、我が国におきましては、ACTA締結に当たりまして、個人のインターネット利用者に関する国内法令に何ら変更はございません。

大泉委員 私は理解いたしましたけれども、ちょっとPRが十分されていないところがあるかなというふうに感想は持ちました。

 もう一つ、二十三条の刑事罰の規定でございますが、ここには、少なくとも故意により商業的規模で行われる云々という規定がございます。商業的規模、英文ではコマーシャルスケールということでございますけれども、この定義が不明ではないかという御指摘があるわけでございます。

 例えば、著作物を個人的に楽しむための場合が除外されているかどうかよくわからないという指摘があるわけでございますが、これについてはいかがでございましょうか。

八木政府参考人 ACTAの第二十三条は、御指摘のとおり、著作権を侵害する複製等であって故意により商業的規模で行われるものについて適用される刑事上の手続及び罰則を定めることを規定しておりますが、商業的規模については、その具体的かつ詳細の内容までは定義されておりません。したがいまして、実際にいかなる規模の行為が刑事罰の対象となるかについては、各締約国の国内法によるものと考えられるところでございます。

 一般的には、商業的規模とは、商業的という質的な要件と規模という量的な要件の両方を指すというふうに解されるところでございます。御指摘のような、単に著作物を個人的に楽しむ場合、これは商業的規模には当たらないというふうに考えているところでございます。

 なお、我が国の著作権法第三十条では、私的使用目的であれば、基本的に、一定の場合を除き、複製できるとされているところでございます。

大泉委員 大変御丁寧な御説明で、非常に理解できましたが、ここもまた、一般わかりをしていただくためのPRがもうちょっと必要かなというふうに私は感じたところでございます。

 もう一つ、ファクスで来る中で多いのが、これは私は余り理解ができないのでお聞きしたいのでございますが、ジェネリック医薬品が流通できなくなるおそれがある。私は、このACTAを見る限り、それは考えられないわけなんですけれども、そう主張する人の根拠というのはあるのでございましょうか。

八木政府参考人 ACTAの中に国境措置の規定がございまして、交渉の過程におきましては、医薬品がこの国境措置の関連の規定によって流通を妨げられるのではないか、そういう点が指摘されたという経緯はございます。

 他方で、そういった議論を踏まえまして、ACTAでは特許権を国境措置の対象とはしておりません。これは第十三条の注にそういうことが明記してございます。

 したがいまして、ACTAはジェネリック医薬品の流通と特許権の問題には何ら関係していないというふうに考えてございます。

 なお、ACTAは商標権侵害物品等への対応について規定しておりますけれども、認可されたジェネリック医薬品が正規の登録商標を付して販売、輸出入される場合には、かかるジェネリック医薬品は商標権侵害物品には該当いたしませんので、ACTAとは何ら関係はないということでございます。したがいまして、正規のジェネリック医薬品の流通が、ACTAを根拠として阻害されることもないということでございます。

 いずれにいたしましても、ACTA締結に当たりまして、ジェネリック医薬品に関する我が国の国内法令に変更はございません。

大泉委員 ありがとうございます。

 御説明を伺えば、大変理解できるところでございます。これもまた、もうちょっとPRしていく必要があるんじゃないかと重ねて私は思います。

 今、何点かでございますけれども、ACTAの懸念事項について、非常にわかりやすい答弁というか、バックグラウンドを持っていればわかりやすい御答弁というんでしょうか、それをいただいたというふうに思います。

 そこで、実際に知的財産侵害の物品というのは中国からの輸入が多いというふうに聞いているわけでございますけれども、その実態について教えていただけますでしょうか。

稲垣政府参考人 にせブランド品等の知的財産侵害物品についてのお尋ねでございますけれども、本年の三月に私ども財務省の方から発表いたしました、平成二十三年の税関における知的財産侵害物品の差しとめ状況というのがございますが、これによりますと、中国から参りました知的財産侵害物品の輸入差しとめ件数でございますが、総体として二万一千二百三十五件ということでございます。この全体に占める割合でございますが、九一・二%と九割を超える水準となっているところでございます。

大泉委員 ありがとうございます。

 九一・二%が中国からということでございますが、一昨日のこの委員会で、玄葉大臣は、中国に対して御説明をなさっているという答弁をされました。ACTAは、途上国が、特に中国が参加しなければ意味がないというふうに思われますので、再度、この点を御答弁いただきたいと思います。

玄葉国務大臣 大泉さんがおっしゃるとおりであります。本協定はその性質上、交渉の原参加国のみならず、より多くの国が参加し、強化された知的財産権の執行が普及することにより、より高い効果を発揮することが期待されるわけであります。

 特に大切なのは、九割以上を占めていると言われている中国だということでございます。先般も私から答弁をいたしましたけれども、中国に対して、対話をこちらから求め、説明をし、同時に、中国としても関心を有して、共同で研究する場というものを設けています。

 特に、中国の国内法との整合性というものを今整理しておりまして、中国の国内法は、一部ACTAの規定に対応している一方で、未対応の部分もある。例えば、未対応の項目というのは、商標侵害事案への刑事罰の適用が、状況が深刻である場合に限定されているとか、これだとACTAに未対応なので、そういったことを日本側から説明して、中国は関心を有して、今研究をしていますので、引き続き、中国に対して強く働きかけをしていきたいというふうに考えております。

大泉委員 大臣、大変ありがとうございました。

 尖閣列島や何かで中国といろいろな対話がおありになる中で、こういう技術的なお話についても意欲的に対話をなさっているということでございますので、ぜひそこはよろしくお願い申し上げたいと思います。

 主な懸念事項については御答弁で明らかになってきたわけでございますけれども、最後にもう一つ、もう二つでございますか、御質問をさせていただきたいのでございます。

 これはちょっと仄聞なので確かめたいという意味なんですけれども、メキシコがTPPに参加するときに、まあTPP局長がいらっしゃいますけれども、参加するときに、アメリカからACTAの署名も求められたということを聞いているわけでございます。これは事実かどうか、おわかりになりますでしょうか。

八木政府参考人 御質問の件でございますけれども、報道等によりますと、アメリカとの二国間の協議の中で、メキシコはACTAの署名を含めて知的財産権保護等について議論した模様でございますけれども、これは、メキシコと米国とのやりとりにつきまして、第三者たる我が国政府がこれ以上コメントする立場にはないということをぜひ御理解いただきたいと思います。

 そこで、事実関係のみを申し上げますと、六月十八日、G20ロスカボス・サミットの際に行われましたアメリカとメキシコの首脳会談の後、アメリカ政府はメキシコのTPP交渉参加を認める旨を発表いたしました。ただ、その際の発表文の中には、ACTAへの言及はございません。それから、その後、七月十二日、メキシコ政府は東京においてACTAに署名を行った、こういう一連の経緯でございます。

大泉委員 実際、アメリカとメキシコの間でどういうコミュニケーションが行われたかわからないんですけれども、一般的にはこのことが、私も仄聞したわけでございますし、ファクスの中にも入ってきているので、このことによって、TPPに反対する方はこの国でも多いわけでございますから、反対者からは、このACTAというのはTPP参加へのステップじゃないかというふうにとらえている方が、ファクスの中にも多いわけでございます。

 この点ですけれども、ACTAとTPPは本来関係ないと見てよいのかどうか、それをお聞きしたいと思います。

玄葉国務大臣 これはもう結論から申し上げると、両者は別個のものでありまして、現に交渉参加に向けて関係国との協議を行っておりますけれども、日本に対して、このACTAを交渉参加と結びつけて話をする、そういうことは一切ございません。

大泉委員 ありがとうございました。

 ちょっと時間が早いのでございますけれども、これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

田中委員長 次に、村越祐民さん。

村越委員 おはようございます。民主党の村越でございます。

 まず、ちょっと冒頭申し上げておきたいのは、一昨日、問責決議案が参議院で可決をされました。これはこれで大変重たいことだというふうに、私も与党議員の一人として重く受けとめております。

 ただ、すごく残念なのが、問責が決議されて以降、国会が空転をしてしまって、あたかも与野党が代表選や総裁選のことばかり考えていて、何も仕事をしていないんじゃないかみたいな報道が散見されます。ですが、実態はそんなことはなくて、我々こうやって、残された会期の少ない時間の中で懸命に議論をしているわけであります。

 とりわけ、きょう議題になっています偽造品取引防止協定、ACTAに関して、委員長の特段の御采配で、一昨日これは採決をしようというお話を我々もしていたわけですけれども、国民の皆さんのいろいろな声があるということで、あえて切り分けて、きょうこうして別途議論をする。十分でないかもしれませんけれども、国民の皆さんにわかりやすい形でこうやって審議をしようと我々努力しているわけでございまして、そのことをちょっと最初に申し上げておきたいなというふうに思っている次第です。

 そして、きょう残念ながら、野党の皆さんは出席をされていません。共産党の方は理事会に出席をされて、しっかり共産党さんのお立場を申し上げておられましたけれども、ほかの野党の皆さんは理事会にすら出席をされていない。そういう中で、与党はこの四協定を強行採決しようとしているんじゃないか、あるいは審議時間が不十分じゃないかというような御批判もたくさんいただいています。

 ですけれども、委員長、それから長安筆頭を初め、我々、この間、何とか十分な審議時間を担保できるように、本当に心を砕いてまいりました。けさも我々分担して走り回って、何とか野党の皆さんに出席をいただいて、その中で議論をして、なるべく国民の皆さんの前でオープンな形でこういうことを決めていきたいというふうに努力をしてきたわけでございまして、それぞれ、与党の立場、野党の立場、違うんでしょうけれども、やはり出席をしていただいて、その中で議論をして立場を表明していただいて、そういう形でやるのが本来の姿なんでしょうけれども、我々は努力をしたけれども、それがかなわなかったということは、ちょっとどうしても申し上げておきたいなというふうに思っております。

 さて、本題に入りますけれども、このACTAのことに関して専ら、きょうはお時間をいただきましたので、質問させていただきたいと思います。

 政府から、さまざまな広報資料、説明のポンチ絵みたいなもの、あるいはいわゆる白表紙というものでしょうか、いろんな説明資料をいただいておりますけれども、なかなかこれは、私の頭が悪いのか、ポンチ絵というのは、常に、政府からいただいても、なかなか一べつして私には理解できないものが多くございます。わざわざお忙しい役所の皆さんに出張していただいて面前で御説明いただけると、なるほど、ちょっとわかってくるなというところがあるんですけれども、なかなかこれは、国民の皆さんからすると、そもそも、どういう経緯で、どういう目的でこの協定が我々のイニシアチブでつくられようとしているのか、なかなか理解しにくいところがあるんじゃないか、つまり、誤解されているところがいっぱいあるんじゃないかなというふうに思っております。

 まず冒頭、お聞きしたいのは、どういう経緯で、あるいは、具体的にどういう偽造品が横行していて、我が国経済あるいは消費者が困っていて、新たな取り締まりの必要が生じていてこの協定をつくるに至ったのか。あるいは、なぜこれまでの、TRIPsというお話がありましたけれども、そういった過去の協定で不十分なのか。なかなかわかりにくいところがあると思いますので、できれば具体例を挙げて、大臣からお話をいただきたいなというふうに思います。

玄葉国務大臣 村越委員から、具体例を示しながら説明をしてもらいたいという御指摘でありました。

 先ほど、大泉さんの質問に対して、経緯については申し上げたわけでありますけれども、では、デジタル技術の発展及び知的財産権侵害の新たな手法の出現とは例えば一体何なのかということでありますけれども、近年、商標が付されていない商品、例えば家電製品があったとしますけれども、それと、違法な模倣の商標ラベルなどを別々に製造して流通させる、そして最終販売地でラベルを張りつけるなどによって、国境及び国内における取り締まりを免れようとするケースが発生をしています。この協定では、違法なラベル自体の製造、輸入、販売等の行為を刑罰の対象とすることを規定している。

 さらに例示をいたしますと、最近のデジタル技術の発展の中で、DVDやデジタルコンテンツ等の違法なコピーやアクセスを防止する技術的保護手段を回避するための製品、例えば暗号を解除するようなソフトウエアなどが出てきているわけですね。そうすると、今の状況では対応できないということで、ACTAでは、こういったソフトウエアを含むこうした製品の製造とか輸入等の行為の規制についても規定をしているということで、確かに、先ほど大泉さんからもあったんですけれども、日進月歩でどんどん進んでいくんですけれども、我々としては、このACTA、国際社会に対して、我が国を初め他の先進諸国が既に行っている偽造品対策の取り組みの一端を行うように、時代に適応させながら提案をしているということで、今後、より多くの国が参加して、強化された知的財産権の保護の執行、そういったものが普及することによって、より高い効果が発揮できるものというふうに期待をしています。

村越委員 ありがとうございます。

 ですから、例えば、こういうものがあったとして、こういう機械を偽造、にせものをつくっている人と、こういうロゴが、別のところでにせものをつくっている人たちがいて、今までは、これをつくっている人とラベルをつくっている人、ラベルを例えばどこかから偽造して持ち込んでも、その単体だけで取り締まりが難しかったものを、こういう知的財産、先端技術を守るために、我々の生命線でありますから、何とかそういうものを規制していこう、そういうことなんだろうというふうに理解をいたしました。

 しかし、けさなんかも、私、ちょっと早目に事務所に入りましたけれども、先ほども大泉先生からありましたけれども、ファクスがもうこんなに来ているわけです。苦情というか、やめてくれというファクスですね。委員長も、先日、紙を入れかえなきゃもうやっていられないんだというお話をされていましたけれども、本当に、ファクスが機能停止しちゃっていて、紙が足りなくなってしまっていて、おかしくなってしまっています。やめてくれという留守電がたくさん入っていますし、メールもたくさん来ています。

 全部ちゃんと目を通していますけれども、中には、何か、セブンイレブン何とか店から送っていますというものがあったり、あるいは山尾志桜里先生なんていうファクスが私の事務所へ届いていたりしまして、有能な同僚議員の、しかも、女性議員と間違えられて私も悪い気はしませんけれども。キャンペーンというか、非常に心配をされている方々がそれだけ多いということなんでしょうけれども、そういった感じで、我々に対する苦情が非常に多いわけです。

 聞くところによると、きょう、集会というかデモみたいなものも呼びかけられているというふうに聞いていますけれども、何でここまでこのACTAに関する評判が悪いのか、非常に私は理解できない。というか、ここまで国民の皆さんが非常に心配をされておられる経緯というのがよくわからないところがありまして、とはいえ、こうやって別途、そういう国民の皆さんの声を重く受けとめて、委員長があえてきょう別建てでこの審議をしようという采配をされたわけですから、それはそれで重く受けとめているわけですけれども、何でここまでACTAの評判が悪いんでしょうか。

 どのように捉えておられるのか、お答えをいただければというふうに思います。

山根副大臣 いろいろ、閣法であったり条約であったり、国民の皆さんのいろいろな御批判があるとき、今までですと、本当に、文章の内容も同じようなものが、ファクスやメールで抗議の内容のものが届くということはありましたけれども、この問題につきましては、そうしたものより、むしろ個人個人のいろいろな思い、心配、そういったもので寄せられているということで、国民的な関心も非常に高いものだろうというふうに思っているところでございます。

 先ほど、大泉議員の御質疑にもお答えさせていただきましたけれども、ことしの一月ころから、東欧、バルト諸国等において、ACTAがインターネットの自由や基本的人権を侵害する、こういった批判が広がりまして、その後、欧州内のほかの地域にも伝播をしてきた、こういうことでございます。

 そこで、批判の原因というのは、想定するところはありますけれども、必ずしも定かではございません。例えば、七月四日、欧州議会におきまして、EUのACTA批准に関する動議が、反対多数で、可決されましたことや、その背景として、ACTAがインターネットの自由や基本的人権を侵害するといった批判が広がったことなどが影響しているというふうに考えられるわけであります。

 こうした批判に対しまして、さらに個別に申し上げますならば、ACTAは、表現の自由、公正な手続、プライバシーそのほかの基本原則を、各国がそれぞれの法令に従って維持することを繰り返し規定いたしております。また、正当なインターネット利用を制限したり、インターネットアクセスを遮断したり、インターネットサービスプロバイダーによる監視を義務づけるような規定は含まれておりません。

 ACTAは、著作権の非親告罪化を義務づけるものではございませんで、また、いわゆる違法ダウンロードの刑事罰化はACTAに規定されているものではございません。

 ACTAは、商標権を侵害する物品については国境措置の対象としているものの、ACTAのために、真正の商標を付して輸出入される正規のジェネリック医薬品の国際的流通が妨げられることはございません。また、ACTAは特許権を国境措置の対象から除外いたしております。

 ACTAを締結するために必要な我が国国内法の変更は、技術的保護手段の範囲の拡大のみでございまして、この点については、先ほど来御答弁を申し上げておりますけれども、著作権法の一部を改正する法律案において、既に法律において手当てをされているところでございます。

 いずれにいたしましても、政府としては、引き続き、本協定について正確な理解が得られるよう取り組んでまいりたいと存じます。

村越委員 ありがとうございます。

 役所のお仕事としては、やはり余計なことを言ってはいけない、誤解を受けるようなことを言ってはいけないという配慮に基づいて、説明の資料ですとかいろいろなものをおつくりになられているというところはあるんでしょうけれども、やはり、誤解を受ける一つの原因というのは説明不足というところももしかしたらあるのかなというふうに思いますし、我々としても、よくそしゃくをして有権者の皆さんにお伝えをする努力を一段としなければいけないんじゃないのかなというふうに私も思った次第です。

 ただ、先ほど私ちょっと申し上げましたけれども、もちろん御批判の声というのは真摯に受けとめなければいけないんだと思いますが、余りに、ファクスの上に表示されている送信者名と署名の名字が違っていたり、どこの誰べえか、そもそもはっきりしないものであったり、全く使い回しの文面が何百通も送られてくるというのは、やはりちょっとおかしいんじゃないかなというふうに私はどうしても思ってしまいます。

 中でも、くだんの、先ほど来議論をされている、欧州議会で非常に大差で否決されたというお話ですけれども、欧州議会の議員の皆さんは、ある種、ネットのそういうキャンペーンに非常に乗っかったというか、そういう人たちの声を全面に受けとめて議会で採決の行動をとった。したがって、その人たちがつくっているキャンペーンの器材みたいなものを議会で掲げて反対の行動をとった。インターネットとか放送でわかるように、そういうことをやったというふうにお聞きしました。

 やはり我々は、ほかの議会のことを言っても仕方がないですけれども、きちんとやはり中身を精査して、国民の御批判は、それはそれとしてちゃんと受けとめなければいけないですけれども、中には、仮にきょうACTAを採決したら、あんた落選させるぞ、もう絶対おまえら投票しないぞなんていう穏やかでないファクスも多数ありましたけれども、そんなものにびくついていたら我々仕事はできないわけでありまして、ちゃんと中身を見据えて、真剣な議論をいま一度しなきゃいけないんじゃないかなというふうに非常に思った次第です。

 今、副大臣から御答弁がありましたけれども、このファクスの御心配、御批判の主たる中身というのは、インターネットにおける言論空間というものが、政府がこのACTAによってさらに何か追加規制をして、脅かされるんじゃないか、インターネットにおける表現の自由がまさに規制されるんじゃないか、人権侵害だと。中には、放射能瓦れきが反対だとか、TPP反対だとか、政治家は余分な給料ばっかり取ってどうだとか、全く文脈が意味不明なものもありましたけれども、そういうふうに、何か非常に危機感に捉えられて反対をされている方々が多いように受けとめました。

 先ほど副大臣、お話がちょっとあったかもしれませんけれども、このACTAが、インターネットにおける個人使用の制限であるとか、あるいはプロバイダーに何か政府が入っていって、常時監視みたいなものを義務づける中身なんじゃないかというような心配をされている方々がたくさんおられます。こういう御心配と協定の中身について、いま一度、そうじゃないんだということを、できればわかりやすく御答弁をいただければ、心配をされている方々も安心するんじゃないかなというふうに思います。

 というのは、やはりインターネットにおける自由な言論空間というのは、私も国会議員である以前に一インターネットユーザーとして、必ずその言論空間というのは担保されなきゃいかぬものだというふうに思っています。恐らく大臣、副大臣も、政府の皆さんも、そこを踏まえてこのことを進めておられるでしょうから、そうじゃないんだということを簡潔に御答弁いただければありがたいと思います。

八木政府参考人 ACTAにおきますインターネットに関する規定としては第二十七条が挙げられますけれども、結論から先に申し上げますと、この条項が個人によるインターネットの正当な利用を制限するものではなく、また、インターネットサービスプロバイダーに対して利用者の監視を何ら義務づけるものでもございません。

 いずれにいたしましても、我が国がACTAを締結するに当たり、個人のインターネット利用等に関する現行国内法上の措置に何ら変更はございません。

 より具体的に御説明申し上げます。

 例えば、インターネットの個人利用の点につきまして、同条の一は、デジタル環境において生ずる知的財産権の侵害行為に対する効果的な措置について定めておりますが、ここで言う知的財産権の侵害行為とは、例えば、第一に、電子掲示板、動画投稿サイト等における著作物の無断の複製及び公衆送信、それから第二に、DVDディスク等に記録された映画の無許諾の複製及び譲渡、第三に、インターネットオークションサイトにおける不正な商標商品の売買等を指してございます。

 したがいまして、この第二十七条一の対象となりますのは、著作権や商標権等といった権利を侵害する違法行為でありまして、この規定を根拠として個人の正当なインターネット利用が制限されることはございません。

 また、プロバイダーによる監視の点でございますけれども、第二十七条四におきまして、商標権または著作権等が侵害されていることについて権利者が法的に十分な主張を提起し、かつ、それらの権利の保護または行使のために必要である場合にのみ、インターネットサービスプロバイダーに対して、権利侵害に使用されたアカウントの保有者を特定できる情報を権利者に対して開示するよう命ずる権限を自国当局に付与できる旨、規定しているところでございます。

 さらに、この規定の実施に当たりましては、電子商取引を含む正当な活動の新たな障害とならないようにすること、また、表現の自由、公正な手続、プライバシーその他の基本原則が維持されるようにすることが必要とされておりまして、ACTAによってインターネットサービスプロバイダーが常時顧客の利用を監視することが義務づけられるわけではございません。

村越委員 それで、このACTAは、そもそも偽造品の取り締まりをするための目的のものでありますから、そういう著作権保護のことを主眼に置かれてつくられたものだというふうに理解をしていますけれども、今たくさん御心配いただいている方々からすれば、この協定は、著作権の保護ばかり考えられていて、片方でネットユーザーの権利の保護という観点が余りにも欠けていて、バランスを失しているんじゃないかというような御批判、御心配がございます。この点に関してどういうふうにお考えになっておられるか、御答弁をいただきたいと思います。

八木政府参考人 ACTAは、その前文におきまして、特に著作権または関連する権利については、関係する権利者、サービスプロバイダー及び利用者の権利及び利益を均衡させるような態様で当該問題に対処することを希望する旨、明示的に表明しているところでございます。

 さらに、デジタル環境における知的財産権の執行に関しましては、先ほども申し上げましたとおり、第二十七条におきまして、表現の自由、公正な手続、プライバシーその他の基本原則が各締約国の法令に従って維持されるような態様で実施される旨、繰り返し規定しているところでございまして、ネットユーザーの権利等にも配慮した規定ぶりとなっております。ですから、バランスを失している等の御指摘というものは当たらないというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、ACTA締結に際しまして、インターネット利用に関する我が国の国内法令の改正は必要ございません。ネットユーザーの権利と著作権法の関係について、何ら変更は生じないということでございます。

村越委員 ありがとうございます。

 残りの時間で、少し、条文に関してちょっとお尋ねをしたいと思います。

 先ほどから盛んに出てきます第二十七条に、「デジタル環境における執行」という項目があります。その一、「各締約国は、第二節及び前節に定める範囲内の執行の手続によりデジタル環境において生ずる知的財産権の侵害行為に対し効果的な措置(侵害を防止するための迅速な救済措置及び追加の侵害を抑止するための救済措置を含む。)がとられることを可能にするため、当該手続を自国の法令において確保する。」二、「一の規定を適用するほか、各締約国の執行の手続は、デジタル通信網における著作権又は関連する権利の侵害(侵害の目的のため広範な頒布の手段を不法に使用することを含むことができる。)について適用する。このような手続は、電子商取引を含む正当な活動の新たな障害となることを回避し、かつ、表現の自由、公正な手続、プライバシーその他の基本原則が当該各締約国の法令に従って維持されるような態様で実施される。」と書いてあります。

 この「表現の自由、公正な手続、プライバシーその他の基本原則」というところの「基本原則」というものが非常に意味深で、大事なことなんだろうというふうに思われますけれども、その中身は一体どのようなものなのか、御説明をいただきたいと思います。

八木政府参考人 お尋ねの基本原則でございますけれども、これは第二十七条二等に明示されております表現の自由、公正な手続、プライバシーのような基本的な人権や自由をその主たる内容としつつ、さらに、これに基づく権利等も含むものと解されております。

 具体的には、例えばデジタル環境における著作権侵害の疑いのあるものに関する情報を収集分析するに当たりましては、個人のプライバシーあるいは個人情報に配慮し、これを不当に侵害しないことを確保するために、各締約国の法令の定める公正な手続により、これを適正に行うことが求められる、こういうふうなことが含まれているかというふうに考えております。

村越委員 いずれにせよ、やはり表現の自由というのは基本的人権の中でも最も重要なものでありますので、これは当然、インターネットの空間においてもそのことが言えるわけでありますから、やはりそこのところをぜひ、十分に御留意いただいているというふうに思いますけれども、特段の注意を払って、ぜひ、仮にこの協定が実施されることがあれば、そういう運用がなされるように御配慮をいただきたいなというふうに思っています。

 先ほど来、基本的にこのACTAに際して、追加的な国内法の整備というものはなくて、既に済んでいるんだ、国内法の手当てはもう既に済んでいるんだという説明がいろいろなところでなされておりますけれども、これもインターネットユーザーの皆さんが大変心配しておられるところでありまして、例えば、税関でパソコンを取り上げられて中身をチェックされるようなことが出てくるんじゃないかとか、あるいは、さらに新しい刑事罰が、厳罰化がなされるんじゃないかとか、いろいろこのACTAに際してさらに法律ができて、インターネットユーザーがより窮屈な、ある種の監視社会に追いやられてしまうんじゃないか、そんなような御心配をされている方が、どうもたくさんいらっしゃるようでございます。

 ですので、最後にあえてお聞きをしたいんですけれども、今後、このACTAに基づくさらなる規制の強化、あるいは、さらなるそういう刑事罰といった立法措置を当座考えておられるのかどうか、最後にお聞きをしたいというふうに思います。

玄葉国務大臣 結論だけ申し上げれば、本協定を締結するために、これ以上の国内法令の改正を行う必要は全くございません。

 なお、先ほど村越委員の話を聞いていて私が思い出したのは、衆議院の青少年の特別委員会の委員長を私、十年くらい前にしていたことがございました。そのときに、インターネットの有害情報から子供たちをどう守るかという議論になりまして、各省庁が縦割りなので、なかなか横の調整ができずに、政府は手を打てずにいたという状況の中で、議員立法で各党に呼びかけて、いわゆるフィルタリングを義務づける、そういう法律をつくったんですね。

 その過程では、大変な数のファクスが同じように参りました。でも、やはり必要なことは必要なので、子供たちを有害情報から守って、その上でインターネットを正当に利用する。あるいは、今回でいえば、ISPに対して利用者の監視を何か義務づけるとか、そういうことではありませんので、誤解などが蔓延している部分が私はかなりあるなというふうに今回のことについても思います。

 ですから、これからさらに丁寧な説明を心がけていきたいというふうに思いますし、そのことがいわば浸透したら、そういった反対論というのは全くなくなっていくだろうというふうに思います。

 ありがとうございます。

村越委員 ありがとうございます。

 最後にちょっと一言申し上げたいんですが、今、主権の問題、領土問題、非常にたくさん外交問題、懸案を抱えている状況であります。主要国の指導者も秋に交代するようなこともあります。玄葉大臣におかれましては、ぜひともぶれずに、国民の国益のために、しっかりと引き続き活動をしていただきたいなとエールを一言申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

玄葉国務大臣 済みません、先ほど事実関係だけ間違えて、有害情報から子供たちを守るためのフィルタリングの議員立法は、十年前ではなくて四年前であったということでございます。

村越委員 終わります。

田中委員長 次に、自由民主党・無所属の会、国民の生活が第一・きづな、公明党、日本共産党、社会民主党・市民連合所属委員の質疑に順次入ることといたしておりますが、質疑者の通告が得られません。

 何とか丁寧な審議を進めるために、再度理事をして御出席及び質疑者の通告を要請いたさせますので、しばらくお待ちください。

 この際、暫時休憩いたします。

    午前十時十四分休憩

     ――――◇―――――

    午前十時三十二分開議

田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 理事をして御出席及び質疑者の通告を要請いたさせましたが、自由民主党・無所属の会、国民の生活が第一・きづな、公明党、日本共産党、社会民主党・市民連合所属委員の御出席及び質疑者の通告が得られませんでした。やむを得ず議事を進めます。

 山尾志桜里さん。

山尾委員 動議を提出いたします。

 これにて各件の質疑を終局し、討論を省略し、直ちに採決されることを望みます。

田中委員長 ただいまの山尾志桜里さんの動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田中委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 まず、欧州復興開発銀行を設立する協定の改正の受諾について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田中委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、偽造品の取引の防止に関する協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田中委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、二千六年の海上の労働に関する条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田中委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定の譲許表第三十八表(日本国の譲許表)の修正及び訂正に関する確認書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田中委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田中委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

田中委員長 次に、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 政府から趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣玄葉光一郎君。

    ―――――――――――――

 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

玄葉国務大臣 ただいま議題となりました国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の締結について承認を求める件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 この条約は、昭和五十五年十月にハーグ国際私法会議において作成されたものであります。

 この条約は、監護の権利の侵害を伴う国境を越えた子の連れ去り等が生じた場合に原則として常居所を有していた国に子を迅速に返還するための国際協力の仕組み、国境を越えた親子の接触の実現のための協力等について定めるものであります。

 我が国がこの条約を締結することは、このような国際的な協力を通じ、不法な連れ去り等によって生ずる有害な影響から子を保護するとともに、親子の接触の機会を確保することにより子の利益に資するとの見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この条約について御承認を求める次第であります。

 何とぞ、御審議の上、本件につき速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

 以上です。

田中委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十時三十七分散会


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