衆議院

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第4号 平成25年4月5日(金曜日)

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平成二十五年四月五日(金曜日)

    午前八時四十五分開議

 出席委員

   委員長 河井 克行君

   理事 岸  信夫君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 薗浦健太郎君 理事 土屋 品子君

   理事 原田 義昭君 理事 山口  壯君

   理事 小熊 慎司君 理事 佐藤 茂樹君

      あべ 俊子君    井上 貴博君

      城内  実君    黄川田仁志君

      小林 鷹之君    島田 佳和君

      東郷 哲也君    星野 剛士君

      牧島かれん君    松島みどり君

      三ッ矢憲生君    武藤 貴也君

      村井 英樹君    菊田真紀子君

      玄葉光一郎君    長島 昭久君

      岩永 裕貴君    村上 政俊君

      岡本 三成君    山内 康一君

      笠井  亮君    玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   外務副大臣        鈴木 俊一君

   外務大臣政務官      あべ 俊子君

   外務大臣政務官      城内  実君

   防衛大臣政務官      左藤  章君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房長)   阪本 和道君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 齋木 尚子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 五嶋 賢二君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 福島  章君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 金杉 憲治君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   北野  充君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        安藤 久佳君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 鈴木 敦夫君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 宮園 司史君

   外務委員会専門員     細矢 隆義君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月五日

 辞任         補欠選任

  河野 太郎君     牧島かれん君

  星野 剛士君     井上 貴博君

  牧原 秀樹君     村井 英樹君

  浦野 靖人君     岩永 裕貴君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 貴博君     星野 剛士君

  牧島かれん君     河野 太郎君

  村井 英樹君     牧原 秀樹君

  岩永 裕貴君     浦野 靖人君

    ―――――――――――――

四月四日

 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

三月二十九日

 米軍輸送機オスプレイの配備撤回・低空飛行訓練の中止に関する請願(玉城デニー君紹介)(第一八八号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第二一八号)

 同(笠井亮君紹介)(第二一九号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二二〇号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二二一号)

 同(志位和夫君紹介)(第二二二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二二三号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二二四号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二二五号)

 思いやり予算の削減・廃止を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二一六号)

 普天間基地の即時閉鎖・無条件撤去に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二一七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

河井委員長 これより会議を開きます。

 この際、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣岸田文雄君。

岸田国務大臣 昨日の衆議院本会議において、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約、ハーグ条約につき趣旨説明を申し上げたところでありますが、ハーグ条約につきましては、昭和五十五年十月に作成され、昭和五十八年に発効以来、三十年が経過し、八十九カ国が締約国となっている一方で、G8の中で我が国のみが未締結の状態です。

 ハーグ条約をめぐる国会の過去のいきさつについては、私どもも内心じくじたる思いがありますが、それらを乗り越えて、本条約が子の利益を最重要に考えるものであり、その締結は我が国の国益にとって非常に重要であることから、ぜひとも速やかな御審議をお願いしたく存じます。

     ――――◇―――――

河井委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官齋木尚子君、大臣官房審議官五嶋賢二君、大臣官房審議官福島章君、大臣官房参事官金杉憲治君、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長北野充君、内閣府大臣官房長阪本和道君、資源エネルギー庁資源・燃料部長安藤久佳君、防衛省大臣官房審議官鈴木敦夫君、大臣官房審議官宮園司史君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長島昭久君。

長島(昭)委員 おはようございます。民主党の長島昭久です。質疑の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 岸田大臣初め政府の皆さん、早朝からお疲れさまでございます。

 今、岸田大臣の御発言、多としたいというふうに思っております。もとより、私どもが政府におりましたときも、このハーグ条約、日米のみならず、日加、あらゆる外交局面でこの問題は俎上に上っておりました。私どもも、内心じくじたる思いで、これを何とか早く処理しなければならぬ、こういう思いでやっておりまして、過去のいきさつについて、ここで私も今さらぐだぐだ申し上げるつもりもありません。外交、安全保障は、与党も野党もないという、そういう国家的な課題でありますので、そういう観点で質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、本題に入る前に、河井委員長、今、岸田外務大臣からも昨日の本会議での御発言のお話がありましたけれども、昨日の本会議のハーグ条約の趣旨説明、その後の討論の中で、河井外務委員長のお名前が何度か出てまいりました。特に我が党の菊田議員からの質問の中で、河井委員長の言動について、きのう聞いておられたと思いますが、御感想などあれば一言賜りたいと思います。

河井委員長 委員会の議事の公正かつ円満な運営に努める、そして、議事の進行については、与党、野党の理事の先生方と十分に相談させていただいた上で進めていく、これが私に与えられた委員長としての役割でございますので、この職責をこれからもしっかりと果たしていく決意でございます。

長島(昭)委員 そうしますと、きのう菊田さんが触れた、去る二月、ルース駐日米国大使を委員長室に迎え、六月中旬の英国G8サミットまでにこのハーグ条約関連法案が国会承認されるよう全力を挙げると発言され、御自分のホームページにもそのようにアピールされておりますが、公平中立の立場で委員会を運営すべき委員長が独断で対外的に成立の時期まで述べられることは、国会の原則に照らして立場を逸脱しているように思いますがと、こういう発言がありました。

 今の委員長の御発言は、それを受けて、改めて公明正大な議事運営を、与野党の委員ともしっかりと議論をし、諮って、そういうことで進めていきたい、こういう御発言というふうに受けとめましたが、対外的に成立の時期まで言及したことについてはいささか反省をしておられるということでよろしいでしょうか。

河井委員長 外務委員長として公正円満な委員会運営に努めていく、これが私に与えられた役割ということでございますので、しっかりと、これまでも、そしてこれからも、公平中立な委員会の運営について、与党、野党の理事の先生方と相談をしながら進めていく決意でございます。

長島(昭)委員 済みません、本当に異例の質疑が続いておるわけでありますが。

 そこで、河井委員長、河井委員長の月刊河井克行二月号、「安倍総理の親書をNATO事務総長に手渡す」、これを読みますと、これは御自分が書いているんじゃないんでしょうね、何か編集委員でもいらっしゃるんでしょうかね、「河井克行衆議院外務委員長は一月十五日から十九日まで欧州各国を訪問しました。外交・安全保障の建て直しを新政権の最重要課題に掲げる安倍総理は、河井克行委員長にラスムセンNATO事務総長宛の親書を託し、自由・民主主義・法の支配・人権など価値観を共有する欧州を重視する姿勢を打ち出そうと派遣したものです。」

 つまり、総理大臣が立法府の外務委員長に親書を託し、事務総長と面談するように派遣をしたとこの月刊河井克行二月号に書かれているんですが、これは事実でしょうか。

河井委員長 長島昭久委員に申し上げます。

 きょうのこの外務委員会は、あくまでも、国際情勢に関する件を議題として、政府に対して質疑を行っていただく場でございまして、先ほど申し上げましたように、委員長は、その議事進行、議事整理が職責ということでありますので、きょうこの場で直接委員に対して私が答弁する立場にはございませんので、どうぞ、貴重な時間でありますので、政府に対して質疑を行っていただきたいと存じます。

長島(昭)委員 委員長、これが事実かどうかぐらいはここで答弁できるでしょう。議事が進まないですよ、こんなところで委員長が答えないと。

 それで、私は、このことだけをもって委員長を糾弾するつもりはないですし、別に党派的にここで委員長を問い詰めるつもりもないんですよ。ただ、やはり三権分立という観点から、委員長、これは普通の日刊の新聞にも報道されているんですよ、委員長のこの親書を手渡したという行動は。

 ですから、委員長はいろいろ活発に、外務委員会の委員長として沖縄に行かれたり、いろいろな行動をされることはすばらしいことだと思いますよ。いろいろな方にお会いになる、対外的な発信もする、いいことだと思いますが、やはり、行政と立法府の三権分立の観点から、こういう行動、言動は、私は、少しお考えになってやられた方がいいと思うんですが、最後に一言。

河井委員長 外務委員長として、より一層公正中立、円満な委員会運営をするべく、与党、野党の理事の先生方としっかり相談をさせていただいて進めていく決意でございます。

長島(昭)委員 このぐらいにしますけれども、その点は、外務委員長としての職責をわきまえて、しっかり全うしていただきたいというふうに思います。

 それでは、政府に対する質疑を行わせていただきます。

 けさの産経新聞にも、「挑発激化 発射強行も」と、北朝鮮の情勢が本当に緊迫化していることが書かれております。まさに開戦前夜のような、そんな報道ぶりがあるわけであります。

 少しおさらいをしておきたいと思いますが、北朝鮮をめぐる最近の動きとしては、昨年の十二月に、これは私どもがまだ政府におりましたときでありますが、事実上の長距離弾道ミサイルを発射した。そして、ことしの二月十二日には、三度目の核実験を行った。

 そして、三月に入りますと、これはかなり強硬になりますが、五日に、朝鮮戦争の休戦協定を十一日から白紙化すると表明、八日には南北間の不可侵合意を破棄、そして十一日には、板門店の南北直通電話を遮断、戦時状態にある、こう表明をいたしました。そして二十六日には、全ての野戦砲兵軍集団を一号戦闘勤務態勢に入らせる、こう宣言をし、三十一日には、横須賀、三沢、沖縄と日本の三つの地域の名前を挙げて、ミサイルの射程圏内にあるんだ、こういうことを表明。

 今月の二日には、一度稼働をとめました寧辺の核施設の再稼働を表明。昨日でありますけれども、けさのこの報道にも出ておりますが、新しい中距離ミサイル、KN08、ムスダンの改良型と言われておりますけれども、発射の兆候がある、日本海側にこれを輸送したという情報がある。そして、同じ四日でありますが、北朝鮮の軍の総参謀部報道官が、核攻撃による作戦が最終的に決定された状態にあることを米国に通告する、こういう発言をしております。

 これに対してアメリカは、三月十五日、ヘーゲル新国防長官が、迎撃ミサイルの追加配備、カリフォルニアとアラスカでありますが、二〇一七年までに追加配備をするという発表をいたしました。三月二十五日には、北朝鮮の通常兵器による挑発に備えて、米韓両国が、詳細な挑発対応共同計画、コンバインド・カウンタープロボケーション・プランというのに署名をし、三十日には、通常は行動が秘匿されるはずのB2爆撃機の行動をあえて公表。北朝鮮の長距離弾道ミサイルの射程圏外のミズーリの、アメリカの内陸部ですね、中西部のミズーリ州にある基地からこのB2爆撃機が離陸をして、一万キロ飛んで、朝鮮半島近傍で行われている米韓合同演習に参加をして、黄海上の無人島にある射撃場に訓練用の不活性弾を投下して帰還をしたと。本来であればこういうことは表に出さないことでありますが、あえてこの演習参加を公表する。

 そして、四月三日、一昨日でありますが、これもヘーゲル国防長官が、北朝鮮は米国にとっても現実の明白な危険、脅威に当たる、数週間以内にグアムに、今まではアラスカだったわけですけれども、グアムに最新鋭の迎撃ミサイル、THAADと言われている戦域の高高度の防衛ミサイルを配備する、こう発表した。

 北朝鮮もエスカレーションする、米側も、これを見る限りでは、かなり緊張感を高めていく、こういう状況にあるわけですけれども、三月二十八日の国会審議で安倍総理が、休戦協定を完全に白紙化するとの表現は初めて使われた、米韓と連携し、情報収集、分析をしている、こう発言されてもう一週間近くたつわけですけれども、外務大臣から、現状の認識、北朝鮮の動き、アメリカの動き、総合的に御判断をして、今、この間分析を続けてきた、そういう中で、この国会で、ぎりぎりおっしゃれる範囲で結構でございますから、現状認識を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 まず、北朝鮮のたび重なる挑発的な言動につきましては、我が国のみならず、東アジア、また国際社会全体の平和と安全に対する脅威であり、極めて遺憾だと思っています。

 こうした事態に対して、まず一つは、こうした北朝鮮の言動に振り回されることなく、こうした行為、言動が何らみずからの利益にならないことを北朝鮮に理解させることがまず重要であります。

 そのために、米国、韓国、中国、ロシアを初めとする関係各国との緊密な連携が大切になるわけですし、こうした連携を通じて一連の国連決議の完全実施を迫り、これ以上行為をエスカレートさせないように働きかけていかなければいけない、こうした外交努力がまず重要だと考えております。

 一方、こうした北朝鮮の動向については、さまざまな報道もあるわけですが、我が国として、しっかりとした情報収集、分析に努めなければならないと考えています。そして、それに基づいて、我が国としても、さまざまなケースを想定して、不測の事態にも対応できる万全の態勢をとっていかなければならないと考えております。

 情報収集の中身、そして具体的な対応、細かい対応につきましては明らかにすることは控えなければならないと思っていますが、このように、各国との連携、そして我が国のしっかりとした対応、この両面において、北朝鮮の動向を注視しながら、しっかりと対応していかなければいけない、このように認識をしております。

長島(昭)委員 防衛省の左藤政務官に伺いたいんですが、今、不測の事態に備えてという外務大臣の御発言がありました。

 防衛省として、通常、ミサイル発射が予測される場合には、あらかじめ破壊措置命令をかけておくとか、いろいろなことが考えられると思うんですが、もちろん、日本側の行動が火に油を注ぐというか、エスカレーションの一段目になってはいけないという、そういう冷静な対応も必要でありますが、必要な対応というのはきちっとやっておかなきゃならぬと思うんです。今、防衛省で考えている、あるいは進めている対応について御答弁いただきたいと思います。

左藤大臣政務官 今、長島先生、いろいろ報道等のことの御指摘がありました。全くそのとおりで、何とかしっかり対応しなきゃなりません。

 防衛省においては、弾道ミサイルに関する動向を含め、北朝鮮の動向に関して、これまでも、内閣官房を中心として、関係省庁の会議等に参加して情報の共有等を図るとともに、大臣や私どもを含む政務三役も随時報告を受けて、情報収集、分析や、関係省庁、また米国との連携に関して必要な対応を打っておるところでございます。

 引き続き、防衛省・自衛隊としては、警戒監視に万全を期するとともに、最近の北朝鮮の挑発的な言動も踏まえ、今後とも、米国と連携をしながら、関係する情報の収集及び分析に全力を挙げて、また、緊張感をしっかり持って、我が国の平和と安全のために頑張っていきたいと思っております。

長島(昭)委員 米国と連携をとることは大事だと思います。今のお話ですと、情報分析に努める、こういう話でしたが、さっき私が具体的に述べたように、米側はもうかなり動いているんですね。ミサイルディフェンスをグアムに持ってくる、あるいはB2を飛ばしたりとか、核搭載能力のあるB52も飛来しているわけですね。イージス艦を近傍に動かしている、こういう情報もあります。

 日本として、情報収集はもちろん大事だと思いますけれども、ミサイル発射の可能性がある中で、具体的な軍事的な対応措置というのはおとりになっていないんでしょうか。

左藤大臣政務官 先ほど申し上げたように、内閣官房を中心として、関係省庁で情報収集、分析を行っているのでございますけれども、今後の対応、今いろいろ、毎日毎日情報が変わります。そして、その対応をしっかりしておりますけれども、手のうちを明かすようなことになりますので、ちょっとお答えは差し控えさせていただきたいと思っております。

 ただ、弾道ミサイル等が我が国の領域に飛来した場合どうなるか、こういう事態に対しては、平素から不断に検討、検証をしているところでございます。絶対、日本の国民の生命財産を守るべく、万全の体制をとっていきたいと思っております。

長島(昭)委員 政務官、その万全な体制というのがどういうものであるのか、具体的におっしゃるのは微妙な問題だということはよくわかります。しかし、国民から見ると、政府が本当に具体的にしっかりやっているんだということを示してもらいたいということだと思うんですよね。

 きょうの産経新聞を見ますと、これはCNNの報道だということなんですが、北朝鮮の通信内容を傍受した結果、数日から数週間以内に中距離弾道ミサイルの発射を計画している可能性があると米政府高官が話していると。そして、関係各国は、関係各国はですよ、日本も含めた関係各国は、金日成主席の誕生百一年目に当たる今月の十五日、あるいは軍の創建記念日である二十五日などの重要な節目、もう本当にあと十日ぐらいのレンジなんですよ、そこでミサイル発射を強行する可能性があると見て警戒をしていると。

 もし仮に国民の生命財産に万全を尽くすということであれば、そろそろ破壊措置命令を出しておくタイミングになっているんじゃないかと思うんですが、そういうおつもりはないんでしょうか。

左藤大臣政務官 先生御指摘のことは懸念をされておりますけれども、先ほど申し上げたように、具体的な情報については、事柄の性格上、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、昨年、例の人工衛星と称されるミサイルを発射されたときには、一応対応として、先生御存じのとおり、イージス艦三隻、PAC3を七カ所において配備して対応させていただいた。これも踏まえながら、これから情勢が変わりますので、今はそれをはっきり言うことができませんけれども、対応はしっかりやっていきたいと重ねて思います。

長島(昭)委員 本当にしっかりやっていただきたいんですね。名指しで来ているわけですね、横須賀、三沢、沖縄と。PAC3も、移動するのに恐らく十日から二週間くらいかかるんだろうと思うんですね。そういうことも含めて、ぜひ万全を期してやっていただきたいと思います。

 今回の事態で、米側が、過剰と言うとちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、かなり過敏に行動していることについて、私なりの分析といいますか所感を述べますと、これまでは、アメリカというのは、北朝鮮の核、ミサイルについては、我が事、自分に対する直接の脅威というよりは、どちらかというと核不拡散の問題の方が深刻だという捉え方をしておりましたけれども、いよいよムスダンとかそういう新型のミサイルが米国を射程圏内におさめつつある、こういう事態で、日本、韓国の脅威感とアメリカの脅威感が、これまで多少ずれていましたけれども、ここである意味で頭がそろったというか平仄が合ってきたというのは、これは、我が国の安全保障、脅威認識からいっても、実はプラスの面もあるのではないかというふうに思っています。

 同時に、アメリカ側が直接脅威になるというと、自分たちの都市を犠牲にしてまで前方にある同盟国を守るのかという、いわゆるデカップリングの議論も実は出てくる可能性があるわけでありまして、ここに対しても、日本は、核抑止、つまりアメリカが提供している拡大抑止の実効性という観点から、アメリカとも緊密な連携をとっていかなきゃいかぬと思っている。日本や韓国に対するそういう不安を何とかミティゲートするために、彼らはB2なんかを飛ばして、何かあったときには必ず報復するんだ、そういう姿勢を恐らく示しているんだろうというふうに思います。

 外務大臣、来週ですか、ケリー国務長官が韓国、日本を初めアジアを訪問されるということで、また外相会談もセットされるんだろうと思います。そういう場面で、ぜひ、日米間の政策協調、戦略目標のすり合わせをしっかりやっていただきたいと思いますが、いかがでしょう。

岸田国務大臣 御指摘のように、今、ケリー国務長官が十四、十五日ごろ我が国を訪問することで調整が行われております。ぜひ、こうした機会を捉えて、日米間のしっかりとした意思疎通を図っていかなければならない、このように思っております。

 厳しさを増す安全保障環境の中で、我が国自身の防衛力を強化しながら、日米安保体制のもとで、核抑止力を含めた米国の抑止力を維持向上させていくこと、これは我が国の防衛にとっても現実的かつ適切な考え方だと思っております。

 ぜひ、こうした認識についても日米間でしっかりとすり合わせを行い、そして、さまざまな、不透明な安全保障環境に対峙していかなければいけない、このように考えます。

長島(昭)委員 ありがとうございます。

 それでは、次の課題、日中関係に移りたいと思います。

 日中関係は今、本当に厳しい情勢にあります。

 昨年の九月に、尖閣諸島のうちの三つの島を政府が購入いたしました。それは、きょうは当時の玄葉外務大臣もおられますし、日中間で本当に奔走された山口筆頭もおられますけれども、私も当時官邸におりまして、本当にぎりぎりの判断というか、四月に石原都知事が、東京都が購入する、そして購入した上で、船だまりやあるいは人の常駐も含めて、尖閣を空島にしてはいけないんだ、しっかり日本が実効支配を、まさに実効性あるものにしていかなきゃいけないんだ、こういうことで宣言をされて、中国側は物すごく反発をして、結局、外交問題に発展するということから、私どもとしては、平穏かつ安定的な維持管理をしようということで、民間人に委ねるのではなくて、政府が責任を持ってこれを維持管理していこうということで購入を決定いたしました。

 この購入をめぐっては、タイミングが悪いとかいろいろ御批判はありましたけれども、この手の問題で中国が納得できるようなタイミングというのは、私は、恐らく永遠にないんだろうというふうに思います。

 尖閣に対する中国側のプレッシャーというのも、何も去年に始まったことではない。遠くさかのぼりますと、一九七八年に、百隻からの武装した漁船団が押し寄せてきた、そういうこともありました。一九七八年四月、福田政権でありました。日中平和友好条約の締結交渉が行われている真っただ中でそういうことが起こっている。最近でも、二〇〇四年には、活動家が七人上陸をした、こういう事案もありました。二〇一〇年の九月には、例の漁船衝突事案がありました。二〇〇八年ごろから中国は、公船を尖閣の領海内に何度も何度も入れてきた。こういう一連の流れの中で、やむを得ず日本としては、政府がこの尖閣の購入、こういう決断をしたわけです。

 新しく外務大臣になられて、その政策を引き継いでおられ、今、日中交渉の最前線に立たれているわけですけれども、我が国固有の領土である尖閣諸島を、民間人に委ねるのではなくて、政府が購入し、きちっと平穏かつ安定的に維持管理をするという前政権の政策、今、外務大臣としてどうお考えになっているでしょうか。

岸田国務大臣 まず、尖閣諸島につきましては、歴史的に見ても、また国際法上も、我が国固有の領土であるということは疑いがないところであり、現に我が国は有効に支配しております。尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題はそもそも存在しないというのが我が国の基本的な立場です。

 昨年九月の日本政府による尖閣三島の取得、保有については、そもそも、我が国の基本的な立場からして、本来、中国との間で何ら問題を惹起すべきものではないというふうに考えております。ですから、にもかかわらず、公船によるたび重なる領海侵入を含め、中国が独自の主張に基づく言動を繰り返していることによって日中関係が厳しい局面に陥っていること、これはまことに遺憾だと考えています。

 中国側に、外交ルート等を通じて、これ以上エスカレートさせないようにしっかりと自制を求めていかなければならない、このように考えています。

長島(昭)委員 私も、あの判断は適切だったし、あのタイミングではあれしかなかったというふうに確信をしているところであります。

 この日中関係、何とかこれから、もとどおりというか、戦略的互恵関係を深めていくわけですけれども、尖閣の現状を何とか好転させるために、よく棚上げという議論があります。中国側が盛んに言ってきています。棚上げした合意があるのにもかかわらず、日本側が一方的にその棚上げをおろしたという言い方をしております。

 外務省として、外務大臣として、中国との間、これは、トウショウヘイさんが一九七〇年代に盛んにおっしゃっていたということは私たちも認識しておりますけれども、日中間に、棚上げをしよう、ひとまず脇に置いて日中友好を進めていこう、こういう合意がまずあったのかなかったのか、このことをお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 尖閣諸島をめぐる我が国の立場は先ほど答弁させていただいたとおりでありますが、尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題がそもそも存在しないという立場であります。こういった我が国の立場は一貫しております。

 ですから、今までの歴史の中で、中国側との間で、尖閣諸島について棚上げあるいは現状維持、こうした合意をしたということは全く事実ではありませんし、そもそも棚上げすべき問題が存在しないというのが認識であります。

長島(昭)委員 私の知る限り、中国側は執拗に、これからも、これまでも、これを棚上げしよう、まず紛争があることを認めろ、そしてそれを棚上げしよう、そして最後は共同管理、これは実は中国の常套手段でありまして、私は、この棚上げという提案というのは、結局は中国側の時間稼ぎに使われるだけだというふうに思いますので、そこはぜひ毅然とした対応を貫いていただきたい。

 実際、もし仮に中国側の認識として棚上げをしていたとしても、最初におろしたのは実は二十年前なんですね。一九九二年に領海法を彼らが勝手に制定して、公布して、施行しました。このときは、尖閣も台湾も、そして南シナ海のほぼ全域をみずからの領土に指定して、しかも、この領海法の十四条では、中国の法律に違反した外国船舶に対する緊急追跡権を規定して、その実施に当たっては軍用船舶や軍用航空機を使用することを明記している。

 こういうとんでもない法律を、彼らがまず二十年前に制定している。棚上げをおろしたと言うのだったら、実は彼らが先におろしているのでありまして、その点もぜひ外交交渉の中でしっかりお述べになっていただきたいと思います。

 例えば、フィリピンとの間で問題になっているミスチーフ環礁ですね、一九九一年にフィリピンから米軍基地が全部撤去されました。クラーク空軍基地を初めスービック海軍基地、これが全部撤去されたら、翌年にこの領海法をつくって、そして九五年にミスチーフを軍事占領していくわけですけれども、その前に、実はトウショウヘイ氏は、二度にわたってフィリピンに棚上げの提案をしているんですね。七四年、当時のマルコス大統領、八八年、当時のコラソン・アキノ大統領、今のアキノ大統領のお母さんですね、この二人に、ミスチーフ環礁については棚上げしようじゃないか、こういう提案をし、フィリピンをその周辺から排除しながら、九五年に、アメリカ軍がいなくなったところを、まさに力の空白を埋める形で出ていって、軍事占領している。

 こういう状況ですから、私は、尖閣周辺、今、本当に厳しい状況の中で海上保安庁の皆さんも頑張っていただいておりますが、ぜひ外務大臣も、まさに踏ん張っていただく、その先頭に立っていただきたい、このように思っています。

 この尖閣諸島をめぐる中国のチャレンジでありますが、一つは、日本の実効支配に対するチャレンジが続いているわけですけれども、安全保障の観点から、この尖閣に対するチャレンジを外務大臣としてどうごらんになっているか、御答弁いただきたいと思います。

岸田国務大臣 こうした中国の海洋進出につきましては、我が国のみならず、東シナ海、そしてASEAN諸国を初め多くの国々にとっても共通の懸念事項だと認識をしています。

 海洋というのは公共財であります。ぜひ、こうした海洋における平和と安定については、力ではなくして、法の支配によって安定を求めていかなければならない、こうした考えのもと、力による現状変更については、しっかりと各国が連携しながら、こうした動きをエスカレートさせないように働きかけていかなければならないと存じます。こうした力による現状変更、海洋進出というものは、地域の安全保障にとりましても大きな懸念事項になる、このように考えています。

長島(昭)委員 まさに地域秩序に対するチャレンジだというふうに私は思っています。それは、南シナ海で起こっていることをつぶさに見れば、七〇年代以降ずっと南シナ海で起こっている、ベトナムとぶつかり、フィリピンとぶつかり、マレーシアとぶつかり、ブルネイとぶつかり、こういうところを見れば、これはロシアの外交官から聞いた話でありますが、南シナ海で起こっていることは東シナ海で起こる、東シナ海で起こっていることはやがてオホーツク海でも起こる、オホーツク海で起こっていることはやがて北極海でも起こると。想像力がたくましいなと思いますけれども。しかし、海は区切りがありませんから、全部つながっているわけでありまして、私たちは、そういう観点からも、東シナ海で起こっていることを改めて見詰め直す必要がある。

 私が安全保障と申し上げたのは、第一列島線、第二列島線、そういう言葉がございます。これは中国側が認識をしている概念だというふうに思いますけれども、一つ注意しておかなきゃいけないのは、中国側の、尖閣を初め、あるいは南シナ海、東シナ海に対する海洋進出、攻勢ですね、これは何か漫然とやっているのではなくて、もう既に一九八〇年代の初め、劉華清という当時の海軍の提督が、近海防御戦略というのを、二〇四〇年までを見据えて、実に六十年越しの計画、戦略を立てているんです。

 この劉華清という人は、単なる海軍の軍人ではなくて、軍人では後にも先にもない、中国共産党中央政治局の常務委員の一人になった人物でありまして、その人物がつくった計画によれば、二〇一〇年までに第一列島線の内側からアメリカの制空権、制海権をそぎ落とす。二〇三〇年までに第二列島線、第二列島線というのは、小笠原諸島からテニアン、グアム、パプアニューギニアに至るラインですよ。このラインからアメリカの制空権、制海権をそぎ落とす。そういう遠大な計画に基づいて着々と軍備を整えてきている。この十年間だけでも四倍に膨れている、二十五年間で三十三倍にまで膨れ上がっている中国の軍事力というものを、まさに今、海に総がかりで投入してきている、そういう状況です。

 そういう中で、最新鋭の潜水艦、たかだか十五年前までは二、三隻しかなかった。今はもう四十隻になんなんとしている。ロシアから輸入したソブレメンヌイという最新鋭の駆逐艦、巡洋艦、これも十五年前は数隻しかなかった。今や四十隻になんなんとしている。第四世代の戦闘機も、それまでは百五十機ぐらいしかなかったけれども、今は五百機に迫るオーダーで整備してきている。それから、ミサイルの射程も延びてきている、あるいは精度も上がってきている。

 これを私どもは、接近拒否、アンチアクセス、A2AD能力、こう言っているんですね。何の接近かといえば、アメリカがこの海域、地域に入ってくる接近を阻止していく。第一列島線で阻止し、第二列島線でやがて阻止していこうということで、今、空母まで就役させてやってきている。こういう最前線に位置しているのが南西諸島であり、尖閣諸島であるわけですね。こういう認識をぜひ外務大臣も、また防衛政務官もお持ちいただきたいというふうに思うんです。

 一九九六年に台湾危機がありましたね。台湾で独立を提唱していた李登輝さんが総統選挙に出た。そのときに中国が、プレッシャーをかけるために、あの台湾海峡で何度もミサイル演習をした。そのときに、当時のアメリカのクリントン政権は、空母部隊を二つ台湾海峡に派遣して中国を引き下がらせた、こういうことがありました。たかだか十五年前の出来事であります。

 しかし、今やこのA2AD能力を中国が備えることによって、アメリカはそう簡単に、例えば台湾海峡で危機が起こった、空母部隊を入れようと思っても、どこから原子力潜水艦が狙っているかわからない、どこに巡洋艦がいて巡航ミサイルで狙ってくるかわからない、陸上から戦闘機が来るかわからない、ミサイルの攻撃があるかもわからない、こういう状況の中で、なかなか接近するのをためらうような状況ができつつあるわけです。まさにその第一列島線に日本は位置し、沖縄が位置しているわけであります。

 そういう認識に基づいて、日本独自の努力、これは防衛省にぜひ行っていただきたいと思いますけれども、日米の間の連携が必要だと思うんですけれども、外務大臣、もう一度、安全保障の観点でどうごらんになっているか、御答弁いただきたいと思います。

岸田国務大臣 安全保障の観点から、ただいま委員の方から、中国の長期的な戦略、また現状に対する対応のお話をいただきました。こうした認識については、基本的に認識を共有する部分が多いと感じながら聞かせていただきました。

 我々はこういった中にあって我が国自体の安全をどう守っていくのか、その際に、アメリカ、日米同盟についてどう考えるのか、今御指摘になったさまざまな歴史や中国の長期的な戦略、こういったものを念頭にしながら、しっかりとした体制をつくっていかなければいけない、改めて感じるところであります。

長島(昭)委員 そういう意味では、沖縄における米軍の存在というのは、私たち独自の努力がまず主体になければいけませんけれども、それをある意味でバックアップするという意味では、大変重要な一部である、戦力になるというふうに私は思っているんです。

 そこで、改めて、沖縄におけるアメリカの戦力、特に地上兵力、海兵隊、前方展開でアジア太平洋地域に万の単位で配備されている陸上兵力というのは、朝鮮半島に張りついている陸軍兵力と、この沖縄の海兵隊兵力だけなんですね。きょうまさに、午後になるんでしょうか、夕方になるんでしょうか、嘉手納以南の統合計画について日米の間で調印がなされるという予測報道が連日なされておりますけれども、私は二つの点を伺いたいんです。

 一つは、陸上兵力である海兵隊が沖縄に駐留し続けることの我が国にとっての安全保障上の意味、これをお伺いしたいのと、その駐留を安定化させるためにも、沖縄の皆さんに御理解をいただくためにも、嘉手納以南の基地の整理統合というのは、これは前の自民党政権下もそうでしたし、私たちの三年三カ月でも本当に苦労し、腐心をいたしましたけれども、それがいよいよ具体的な期日を付して米側から示される。これは、単に米側から示されるのを我々が受け取るというだけじゃなくて、これは相当、日米の間で共同作業をしながら、詰めて詰めて詰めてきた内容だというふうに思います。

 一つは、海兵隊の駐留の意義、そして、きょうにも調印が行われるとされる嘉手納以南の土地返還の内容といいますか意義づけ、ぜひ外務大臣から御答弁いただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず一点目につきましては、日米安全保障体制に基づく在日米軍の抑止力は、我が国の安全、ひいては地域の平和と安全の確保に不可欠であると考えております。

 そしてその中で、特に、東アジアの各地域に近く、迅速な展開が可能な沖縄に駐留する米国海兵隊は、その高い機動力、即応性を通じて、在日米軍の抑止力の重要な一翼を担っていると認識をしています。こうした沖縄の地理的な特性と海兵隊の特徴を踏まえて、一定の初動対処能力を有する海兵隊がこの部隊の一体性を確保した形で沖縄に維持されていることは、我が国の安全のみならず、地域の平和と安全の維持に寄与していると認識をしております。

 そして、これは二点目の質問にもかかわることですが、こうした認識には立ちますが、一方で、沖縄県内に全国の約七四%の米軍専用施設・区域が集中しているということ、これは、沖縄県民の皆様にとって大変大きな負担が生じているということも十分認識をしています。政府としては、沖縄の負担の軽減、これは最優先で取り組むべき課題だと考えております。

 そして、その中で、嘉手納以南の土地の返還計画でありますが、二月に行われた日米首脳会談の場で、普天間飛行場の移設と嘉手納以南の土地の返還計画、この二つを早期に進めていくということで、オバマ大統領と安倍総理の間で一致したということであります。

 こうした経緯を経て、嘉手納以南の土地の返還計画の具体化、策定を急がせているところですが、現状、この計画につきましては、日米間で最終的な調整を行っている、こういった段階にまで至っております。調整が整い次第、これを公表したいと考えております。

長島(昭)委員 これは、玄葉外務大臣のときに、なかなか進まない普天間の移設と切り離す形で、まず沖縄の皆さんに日米の誠意を示すということで、嘉手納以南の返還を先行させよう、そういう大きな決断をしたものでもありますので、ぜひこれは何としてもやり遂げていただきたい。

 もう一つ、最後に提案ですけれども、沖縄の皆さんが、先ほど外務大臣がおっしゃったように、基地が集中していると。私の感覚では、もう絶対反対という人たちはもちろんいらっしゃるんですけれども、沖縄のサイレントマジョリティーの方々は、私たちも政府のときに話をして、この日米安保というものも必要だ、米軍基地がこんなに集中していることはけしからぬけれども、何とかこういう問題も自分たちも前向きに考えていかなきゃいけないというふうな方々が結構おられるんです。

 ただし、なぜ沖縄に集中するのか、日本全国で考えてもらえないか、改めて日本全体で沖縄の基地の集中について考える、そういう場を設けてほしいというのは、特に、今回、琉球大学の教授から副知事になられた高良倉吉先生なんかが私におっしゃっていたことを今でも思い出します。

 私、副大臣時代に、山口外務副大臣と一緒になって、全国でこの日本の安全保障、基地の問題を考えるような、そういう仕組みをつくれないかと思ってかなり努力した経緯があるんですけれども、外務大臣、また左藤政務官、政府と、それから民間の有識者、あるいは地域の代表の皆さんも交えて、沖縄の皆さんの声も交えて、全国民でこの沖縄の基地の問題を考える、そういうフォーラムをぜひつくっていただきたい、このことを最後に要望して、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

河井委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 日本維新の会の小熊慎司です。

 長島議員のすばらしい質問の後にいささか緊張しておりますけれども、今の沖縄の基地も、沖縄の局地的な話ではなくて、これは全国民で考えるべきだという、すばらしい切り口だというふうに思います。

 まず初めに質問したいのは風評被害についてなんですけれども、私の地元の福島県は原発事故によって多くの課題を抱えて、その中に風評被害もありますけれども、これも国際的に見れば福島だけの問題ではなくて日本全体を覆う話になっておりますから、実は、この原発事故災害というのは、まさに全国民がこれを受けとめて考えていかなければならないところであります。

 前政権下の中で、やはり同じ福島県の玄葉大臣が外務大臣をされておりましたので、種々さまざまこの風評被害対策には御協力をいただいていたところでもありますし、私自身も外務省の地方の魅力発信プロジェクトとか、前政権下では被災三県に手厚く対策をとっていただいて、副大臣の岩手県も、宮城県も、海外での在外公館を利用した物産展の開催とかをされておりましたが、宮城も岩手も県でやったんですけれども、福島県は、私も所属しておりますけれども、商工会議所青年部の連合会がニューヨークに福島の展示会をやりに行ったんです。

 そのときに、いろいろ国内外から評価もいただいたんですが、商工会議所の青年部ですから、福島県の若手はニューヨークの在外公館を通じて毒をまき散らしに行っているのかといったネット上の批判もあったり、あと、飯倉公館でさまざまなレセプションをやるときも、被災地の食材を使って提供していただいていますけれども、そういうのも私がツイッターに上げて、すばらしいことだということを言っていると、外務省は毒をまき散らしているのかとか、批判を浴びるのもまた事実で、海外にそういった対策で行っても、国内でさえ風評被害があるというところであれば、やはりなかなか国際的にも理解を得られていない、誤解を生じたままになっているところがあります。

 これは、外務省としてもしっかり、日本全体に対する誤解が生じておりますので、大臣に、改めて、外務省として、日本に対する風評被害にどのように取り組むのか、まずお伺いいたします。

岸田国務大臣 まず、安倍政権においては、閣僚全員が復興大臣であるという認識を共有しろという総理の指示もあり、また、特に風評被害について万全を期していくということにつきましても、特に総理から指示が出されているところであります。

 風評被害につきましては、各国の食品等の輸入規制措置があります。こうしたことについて情報収集を行うとともに、逆に、我が国の措置について各国にしっかりと正確な情報を迅速に提供していかなければならない。こういったことでしっかりと努力をしていきたいと思いますし、また、日本製品の安全性をしっかりアピールする、こういった事業も進めていかなければならないと感じています。

 私も、各国の外務大臣等、外交関係者と会談を持つ機会が多いわけですが、そういった場を通じましても、風評被害について、まずはその相手国の現状をしっかり調べた上で、我々として要望すべきこと、そして言うべきこと、しっかりと発言をさせていただいている、こういったことを続けておりますが、政府全体として、今申し上げたような努力をしっかり続けていかなければいけない。風評被害というものへの取り組みの大切さ、改めて感じているところです。

小熊委員 今言ったことは前政権下でもやっていて、状況を把握するというのは、それはもう農水省でも、どういう規制がかかっているかなんてホームページで出しているぐらいですから。

 情報発信する、理解を求める、これはずっと今までやってきていて、でも、残っているわけですよ。科学的根拠のない輸入規制があったり、あと、これは民間レベルですけれども、海外の観光客が来ないとか、日本には来ても、やはり西日本に偏ってしまうとか。

 今大臣が言われたことは、それは別に間違ってはいないんですけれども、前政権下でもやっていて、では、輸入規制とかが定量的に変わったのかといえば、変わっていないんですね。

 今大臣おっしゃったとおり、総理は全員が復興大臣だと、心意気はいいですよ。これはやはり精神論じゃなくて、では、具体的にどうするかなんです。民主党政権下でもそれはやってきていて、効果が出ていないところがいっぱいあるわけですよ。

 では、前政権と違って、今の政権は、このことに関して、どう違いを見せて効果的にやっているのかというのは、あるのであればそれをお示しください。

岸田国務大臣 この風評被害、日本製品の輸入規制措置については、本年三月末の段階でまだ七十以上の国・地域が依然として何らかの規制措置をとっている、こういった現状にあります。中国等では依然として輸入禁止を含む厳しい措置が継続されています。

 こうした現状に対して、改めてこうした国々に対して働きかけを行っている、要は、今日までさまざまな対応を当然やってきたわけですが、その対応をしっかりと確認した上で、何が必要なのか、この具体的な検討を行って、それに上乗せする形で努力を続けていく、これは粘り強い対応が必要な課題だと思っております。

 こうした努力の必要性、関係者一同、しっかりと共有していきたいと思っています。

小熊委員 だから、前政権と今の政権と違った部分というのはどこですかということを聞いているんです。大臣じゃなくて、外務省、誰でもいいですから答えてください。

五嶋政府参考人 御説明させていただきます。

 復興庁が中心となってまとめてございますけれども、今週四月二日に、関係省庁一体となりまして風評被害対策に取り組んでいく、原子力災害による風評被害を含む影響への対策パッケージを作成し、公表させていただきました。

 この中で、本年度の関係省庁間の施策などを取りまとめておりまして、この中で、外務省の関係では、輸入規制緩和に向けたさらなる働きかけや被災地産品の魅力のPR、具体的には、在外公館におけるPR、在京外交団に対するさらなる情報発信などの取り組みが取り上げられているところでございます。

小熊委員 それは前政権でもやっているんですよ。

 だから、新しい政権のもとで、全員が復興大臣だという意識でやってくれと言っているんだったら、今までの努力で改善していればいいんですけれども、改善していないものがいっぱいあるわけですよ。であれば、やはり具体的に、さらなるではなくて、新しい取り組みとか、これは今までの政権と違いがないじゃないですか、今の説明を聞いても。新しい発想とか新しい取り組みはないということですか、ないということでいいんですか。

 だから、魅力発信プロジェクトも、前政権では何億円つけていたけれども、この政権ではそれは倍額にしていますよとか、前政権との違いを見せてください。その延長線上とか、同じことの説明は要らないです。違いが何ですか、そこを議論したいんです。

五嶋政府参考人 御説明させていただきます。

 前政権、昨年度までの間で、関係省庁連絡等ございましたが、今年度四月になって、これをさらに強化したということでございます。

 確かに、全く新しい対策がすぐにできているということでは必ずしもないかと思いますが、この風評被害対策、非常に時間がかかり、努力が必要なところかと存じます。引き続き、それをやらせていただければと考えております。

小熊委員 これは、まず、風評被害の原因は何なんだ、何で起きているんだということをしっかり見きわめないと、それは取ってつけたような、やっています、情報発信しています、イベントをやっていますで終わっちゃうんですよ。

 風評被害は何で起きますか、何で起きているんですか。それがわからなかったら風評被害対策なんて言えないんですよ。わかりますか。誰か答えられますか。

岸田国務大臣 まず、風評被害の原因としては、正確な情報が伝わっていないということ、また、情報の提供が不十分であるというようなこと、そして、そうした不十分な情報の中でさまざまな臆測が広がっていくということ、さまざまな要因が絡んでいると存じます。

 やはり、基本的に、正確な情報をしっかり提供し、説明能力をしっかり発揮する、そして国際的にもこの問題に対して意思を共有するということ、これが重要だと認識をしています。

小熊委員 半分ぐらいいいんですけれども、やはり最初の事故当時の初動、また情報の提供の仕方、エリートパニックも起こして情報を隠していたというのもありましたから、それで信頼を失ったというのもあります。

 あとは、これまでいろいろな委員会でさまざまな議員も言っていますけれども、安全基準と安心基準がやはり違うんですね。これは、科学的知見を持っている人は安全基準だけでオーケーなんですけれども、我々、別にそんなに知見が高いわけではないわけですから、一般の人も。それは安心基準が別個にあるわけです。今、正しい情報発信とかといっても、それは安全基準の部分でしかないんですよ。これは基準値内の、検査した、ちゃんとしたものですよと言っても、それは安心を醸成されないんですね。

 では、どうやって安心を醸成されるのかということをきちっと捉えて考えなければいけないんですけれども、それは、相手国のいろいろな文化とか背景もありますが、実は我々自身の心の中の問題でもあるんですよ、国内においても風評被害が起きていますから。

 これは、大臣初め皆さんだって家族がいて、福島のものは大丈夫だと言っても、東京にいる議員の皆さんのお子さんたちの学校で、今まで東北に修学旅行で行っていたけれども取りやめたところはいっぱいありますよ、この関東は。そういうところのPTAのお母さん方としゃべったことはありますか。保護者としゃべったことがありますか。

 被災地、現場に行くことだけが、これは大事なことですけれども、実は、我々の生活、日本じゅうどこに行っても、世界じゅうどこに行っても、この風評被害というものに関しては、そこが現場なんですよ。一人一人の心の中、家庭の中が現場なんですよ。

 私のさまざまな全国の知人、友人も、俺は福島を応援するよ、福島の米を食っているよ、ただ、子供はかみさんが食わせないんだよねと。私の地元の後援者の人々も、東京にいる子供に秋になったら新米を送ったけれども送り返してきた、そんなことも実はありますよ。大丈夫だと言っていたってだめなんですよね。

 だから、今言った情報提供だけじゃ、それは払拭されないんですよ。まさに安心基準、心理的なものに対してどう取り組むかということをやらなきゃいけないんですね。情報提供はもちろん当たり前なんですよ、安全ですと言っていかなきゃいけない。さまざまなイベントで来ていただいて、しっかりそれを伝えるきっかけをつくるということも数多くやらなきゃいけない。ただ、それでもやはりだめなんですね。

 では、それはどうすればいいのか。私は、この間の復興特別委員会の中で、これは地元の人とも二年間かけていろいろな話をしていたんですけれども、絶対的評価、つまり、原発被災地の福島県内の農産物が大丈夫だということをずっと言ってきても結局は改善していかないので、何でだろうということをずっと考えていたら、絶対的評価を発信することもいいんですが、一般の人はそれじゃわからないんです。何ベクレルだから大丈夫なんですと言っても、日本は今百以下にしていますけれども、では、五十ありますという数字があれば、これは安全ですよと言っても、やはり不安になっちゃうんですよね。片や、ほかの国においては、食品千ベクレル以下と言っている国だってあるじゃないですか。日本国内にしたって、いや、もう東日本のものはだめだとか、日本のものはだめだと言っているような人も日本人でいるわけです、海外のものを買っているんですよと。いや、海外の方が基準が甘いんだよと言っても、そうなんですかみたいなことがあるんです。

 この間、復興特別委員会で言ったのは、相対的評価を推し進めていくべきじゃないかという提案をしたんです。つまり、日本であれば、北海道から沖縄まで、福島県みたいに全袋検査とか全量検査をやるようなことはできませんから、サンプリングをとって同じ機械でやれば、どこどこの県も何ベクレルあった、どこどこも何ベクレルあった。海外も含めて、どこの国は、この輸入食品は何ベクレルありますよとか。根本復興大臣も、海外で空間線量が高い地域もありますとかと言っていますけれども、そういう相対評価、相対的な指標を出して、逆に、日本よりもあなたの国の方が実際高いでしょう、食品も高いじゃないですか、何で輸入してくれないんですかと。

 そういう相対評価ということの情報発信というのが必要だ、国内外でやっていくべきだ、それが風評被害の一つの解決策になるのではないかという提案を私はさせていただきましたけれども、大臣、そういう情報発信の仕方というのはどう思われますか。

岸田国務大臣 まず、食品に関して安全と安心は別だという御指摘、私も全くそのとおりだと思います。

 私も、かつて消費者行政担当大臣をやりましたときに、中国ギョーザ事件等、こうした事件の対応に当たったことがあります。また、かつて衆議院の遺伝子組み換え食品に関する小委員会という委員会の委員長を務めたことがあります。

 そうした経験の中で、食品に関して安心と安全は別だという事例に随分と直面をいたしました。さまざまな意見に接することがありました。この点につきまして、全く御指摘のとおりだと思います。

 よって、こうした食品に関する風評被害につきましては、まずは科学的な見地からしっかりとしたデータを出すこと、これはもちろん重要でありますが、それだけではこの問題は解決しない、おさまっていかない。安心の部分に届くようなきめ細かい対応が必要だということだと思います。

 そして、海外に対してそれをどう説得するかということについて、御指摘のような手法も一つ考えていかなければいけませんし、さまざまな、丁寧な対応が必要になってくると思います。

 この科学的な見地、まずはしっかりと確認し、これを示すことは重要でありますが、それだけではこの風評被害に対する対応は十分とは言えない、こういった指摘については重く受けとめて、しっかり考えていかなければいけない、そのように思います。

小熊委員 今大臣から中国のギョーザの事案も出ましたけれども、あのとき、中国の食品は売れなくなったんですけれども、震災以降、実は何倍も売れているんですよね。では、中国のあのギョーザ事件の後の検証を国民がしていたか、安全になったか確認して買っているのかといえば、違うわけですよ。つまり、科学的なエビデンスで反応していないという一つのあらわれなんですね。一般の人はそうですよ。何か科学的に選んでいるということではなくて、選んでいるようで、実は牧歌的に反応しちゃうんでしょうね。

 そういう意味では、今、科学的根拠によって避けているのではなくて、まさに誤解、事実とは違うところでの判断でなっているわけですから、それを解くためには、科学的なことを言ったって、科学的な判断ではないわけですから、科学的な知見を述べたって、それは理解につながっていかないんです。

 そうなると、やはり、これとこれとどこが違うの、そういう比べ方をしてやっていくということを、この間、消費者大臣にも言いましたので、これはぜひ関係省庁と、そういう情報発信の仕方をやっていくということで考えていただきたいというふうに思います。

 空間線量でいえば、世界平均二・四ですよ。福島の子供を、いろいろな支援で、夏休みに海外まで遊ばせに連れていってもらったような事例がありましたけれども、福島でも、広いですから、空間線量、私のところも一もないぐらいのところなんですけれども、フランスに行ってきました、ローマに行ってきましたと、いや、世界平均で二・四もあるんだけれども、何なのということを言ったら、そうなんですか、わからなかったと言うんですよ。

 そういう比べ方をしていくことで、やっと事実、実態というのを一般の人たちというのはわかると思いますから、これは海外においても同じだと思いますので、そういう切り口をぜひお願いしたい。では、どうぞ。

あべ大臣政務官 小熊委員のおっしゃること、本当に数字の問題ではない、風評被害が、本当に福島の方々、また福島だけではなく、ほかの周辺県の方々もお困りだ、これはやはり心の問題の部分も非常に大きい。

 新政権になって一体新しいことができるのか、私ども、今本当に省庁横断的に頑張っているところでございますが、やはり一つ一つ乗り越えていかなければいけないと思っております。

 今、私、外務省の大臣政務官として、在京の大使の方々と福島県に御一緒に行こうということを実は計画させていただいています。やはり、数字の問題ではなく、風評被害ではなく、頑張っているその福島の方々を応援するためには、福島の方々のその頑張りを実際に目で見ていく、話を聞いていく、そういうところから私は応援ができるのではないかと思っております。

 委員の御地元でもありますので、まだ日程もはっきりしておりませんが、また、会津若松まで入れるかどうか、できれば沿岸地区と思っておりますが、計画が立てられた段階で委員の方にまたお声をかけさせていただきたいと思いますので、御一緒にぜひとも心の壁の風評被害を取り除いていくように頑張ってまいりたいと思います。

小熊委員 ありがとうございます。

 事故を起こした原発の廃炉まで三十年、四十年かかるだろうですからね。実際は早く終わるかもしれないし、もっとかかるかもしれない。福島の事故の起きた原発がどうだということが、常々、ずっと何十年間も情報発信されちゃうわけです。

 そういう中で我々は頑張っていかなきゃいけないということであれば、先ほど外務省の答弁もありましたけれども、やはり息の長いことをやっていかなきゃいけないし、がむしゃらにやらなければいけないので、こういう魅力発信のプロジェクトなんかは、大臣が頑張って財務省と闘って、これは日本全体にかかわる問題ですから、予算をどんどんとってやっていただきたいと思います。

 今、あべ政務官の言葉で一番よかったのは、福島の人の頑張り、そうなんですよ。これはODAと同じで、支援は、何か物をくれたりすることじゃなくて、福島の人たちがどう頑張るかというステージを用意できるかどうかということなんです。

 昨年、ちょうど今ごろ、ワシントンの桜の百周年で、私も行って物産展をやってきたときに、福島県の川俣町の山木屋地区の、これは強制的に避難をしなきゃいけない地域ですけれども、中学生が招かれたんですね。それは招かれて観光したんじゃなくて、その桜祭りで、地元に太鼓がありますから、その太鼓をステージでやって、あとケネディ・ホールでやったわけですよ。

 我々は支援を受ける側じゃなくて、まさに福島県の人たちがどう頑張っていけるかということが欲しいわけで、我々はお客さんじゃないんです。我々はまさにステージに上がって発信をしていく、そういう機会をどんどんつくってもらいたいと思いますし、福島を支援するということは、アテンドをするということではないんです。我々が誰かに、この世の中に、どう働けるか。今それが風評被害とかで阻害されている部分もありますから、正々堂々、社会のために貢献できる福島県民でありたい、そういう思いをしっかり受けとめていただきたいというふうに思います。

 それで、次に移ります。

 これも風評被害の対策にもちょっとつなげていただきたいんですが、TICAD5でまさに野口英世アフリカ賞が決定をされて、表彰式も行われますけれども、これは私は、一分野の表彰ではありますが、ノーベル賞に匹敵する、すばらしい賞であるというふうに思いますけれども、残念ながら、世間的なプレゼンスはまだまだ国内においても高まっていないなというふうに思っています。

 これは、野口博士が地元だからということではありませんけれども、こういう賞があって、こういう分野に関して日本はしっかり支えているんだ、世界に貢献しているんだともっと堂々と言って、世界に情報発信していくということが重要だというふうに思うんですね。

 これをしっかりプレゼンスを上げていくということは、アフリカとか疫病に関する日本政府の貢献度を示す一つの指標になると思いますので、これは創設はされていますけれども、平たく言えば、日本はこうやってやっていますよともっと宣伝したらどうですか。

 それに対しては、どうですか。

岸田国務大臣 御指摘の野口英世賞につきましては、私自身も、五年前のTICAD4の際にこの存在を認識し、賞の重みを再発見させていただいた、こういった経験を持っております。

 アフリカへの支援、これはさまざまな切り口があります。その中にあって、やはり他の国との支援の質の違いをしっかり示す意味からも、この野口英世賞という賞の存在というのは大変重みがあるのではないかと存じます。

 御指摘の、これをしっかりと周知させる、PRすることについても重要性を感じるところですので、TICAD5は六月に向けてこれから準備も加速化させなければなりませんが、そのPRの手法についてもぜひ検討していきたい、このように思います。

小熊委員 外務省の方の答弁でいいんですけれども、これは基金で賄われているわけですけれども、どうですか、今集まりぐあいというのは。

阪本政府参考人 お答えいたします。

 野口英世アフリカ賞の賞金でございますけれども、医学研究分野、医療活動分野それぞれに一億円ずつということでございますが、国と募金それぞれ半々でお出しするということで、国から一億円、募金から一億円でございますが、第一回目で二億円を使いまして、現在、募金の残高としては四・一億円でございます。その中から、今回、第二回の野口英世アフリカ賞で、募金の方から基本的に半分出させていただく予定でございます。(小熊委員「今の集まりぐあいは」と呼ぶ)現状でございますか。四・一億円残っている状況でございます。

小熊委員 まだ募金しているわけですよね。その集まりぐあいというのは、一回目は盛り上がると思うんですけれども、だんだん下がってきていると思うんですが、その状況、推移をお伺いいたします。

阪本政府参考人 募金の窓口としては今開いておりますが、先生御指摘のように、最初の第一回目のときには相当集まりましたが、現状はそれほど集まっていないという状況でございます。少しずつは募金される方もおられるという状況でございます。

小熊委員 今のとおり、下がってきているということは、今大臣、PRと言ったんですけれども、これは募金の集まり、基金の集まりぐあいだけで全ては語れませんが、PRしているといっても、これは届いていないという一つの指標になりますよね。

 実際、私の地元においても第一回目のときはすごい盛り上がって、県も会津地域も何とか連携したりしようとかということもいろいろあったんですけれども、今、こういう被災の状況で、それどころではないというのが県庁の状況でもありますから、それも踏まえて、もっと国民が基金に寄附しようという効果が出ていなければ、PRした効果も出ていないというふうに私は思うんですけれども、もうちょっと基金が集まるようにやっていかなきゃいけないというふうには思いますが、具体的には今はないでしょうね。

 これは、大臣、ちょっと推移を今後も見て、PRしていくという、それは言葉は簡単なんですけれども、結果を出さなければいけませんから、その一つの指標ですから、ぜひこれはそこを注視してやっていただきたい。

 あと、この賞を創設して、受賞者を表彰するということの意義をもっとどんどん世界にPRをしていかなければならないというふうに思いますし、国際的には、こういう賞があると知る人ぞ知るどころではなくて、ほとんど知らないのかもしれないんです、はっきり言って。これをもっと世界的な著名な賞にしていくということが本来のPRということでもあります。

 縁あって、野口英世博士も福島県猪苗代町の出身でありますから、そうした野口英世博士を顕彰することによっても、さっきの福島の状況というのを世界に発信することにもつながってきますので、そういった観点からも、これはTICAD5の中の枝の部分かもしれませんけれども、実は、これをしっかり後押ししていくということは大きな効果があることでありますし、また、アフリカ外交においても一つの切り口になってくるわけですから、ぜひ、精神論ではなくて、具体的にしっかり取り組んでいくことを御要望して、次に移りたいというふうに思います。

 またこれは少し風評被害に関連しますが、いわゆる原子力協定についてです。

 これも私は、原子力事故の前は、まさに日本の国際的な経済的な発展のために、どんどん原発は輸出して、しっかり安全な原発を世界にやっていくことも世界の安定につながるということを発言していたこともありましたが、やはり、この原発事故を受けてからは、そうは言えなくなったわけでありますし、実は、これは原子力協定の国会にかかわったときもあるし、私はそのときは参議院でしたけれども、他党においても造反が出たりした協定でありました。

 これはやはり、事故以前、事故以後というのは、この協定の取り組みは本当は変わらなければいけないというふうに私は思っていますし、私としては大前提に、まだ福島県の東電の原発事故の検証がしっかりされていない中で輸出を促進するということは、ちょっといかがなものかなという立場に今は立っているわけであります。

 そうした意味で、改めて、今も協議中のところが現状としてあるわけでありますけれども、事故が起きたという前提において、この協定交渉のあり方というものはどうあるべきかというのをお伺いいたします。

岸田国務大臣 まず、私はあす、六日ですが、福島第一原発の現地を視察させていただこうと考えております。

 そして、この視察の目的は、一つは、先ほども議論になっておりました風評被害について、各国に説明をし、そして説得するに当たって、やはり原発、現地を見ておかなければならない、こういったことであります。

 もう一つは、やはり原発事故を経験した国として、この福島第一原発に関する知見と教訓を世界と共有する、あるいは世界の原子力安全の向上に貢献していく、こういったことは我が国の責務であるという認識を持ち、そういった認識を裏づけるためにも現地をしっかり見ておかなければいけない、こういった趣旨であります。

 こうした認識のもと、この原子力協定につきましては、しっかりと原子力の平和利用に関する協力を行うに当たって、核の不拡散の視点ですとか、相手の原子力政策、あるいは相手国の日本への信頼と期待、さらには日本の原子力の安全の技術をしっかり導入したいというような相手国の考え方、こういったものを総合的に勘案して個別に検討していく、こういった姿勢で当面臨んでいかなければならないと考えております。

小熊委員 事故検証がまだ終わっていないんですね。まさにこの衆議院でも原子力特委が設置をされて、これからやっていきますけれども、これまでの政府の事故調、国会の事故調、東電の事故調、あと民間の事故調とかもありましたけれども、これを見ていても、国会の事故調は、今回の事故は人災だということを報告書に載せているわけでありますし、私も二〇〇三年に福島県議会議員をさせていただいて、その前の年に東電のトラブル隠し事件というのがあったんですね。二〇〇三年から検証して、当時の勝俣社長、もう会長になって退任されてしまいましたけれども、社長を呼んで、あと保安院を呼んで検証した中で、あり得ないことが起きました、二度とこんなことは起きないように努力します、情報もしっかり隠さないで明らかにします、隠さないどころか、おくれることも罪という意識のもとで、体質改善してやっていきますと十年前に言っているんですよ、東電も保安院も。

 ところが、同じような言いわけを今回の事故でもまた聞いているわけですよ、私は、福島県民は。この間の配電盤のトラブルでのネズミのやつも、あり得ないことが起きました、情報も小出し、言われたら出す、こういう体質なんですよ。これは東電一社に限ったことなのかもしれませんけれども。

 あり得ないことが起きましたで済む話じゃないんですよね。これをしっかり検証していかないと、はっきり言えば、不良品を輸出するみたいなことにもなりかねないわけですよ。

 やはりこれは、今日本が不幸にして体験したこの原子力事故というものを踏まえれば、原子力の知識というのは、日本の中においても知見をしっかり高めていくということはありますけれども、また、先ほどの核の不拡散ということも取り組んでいかなければならないことでありますけれども、ドイツがやっているように、原子力の推進ということよりは、この事故を踏まえて、本来であれば、再生可能エネルギーで世界の最先端を走って、それを輸出していく、こういう国家戦略に変えていかなければいけないというふうに私は思いますよ。

 これはもう原子力協定は進んでいますし、民主党政権下でも脱原発というのはやっていたことですから、大きくは変わっていかないんでしょうけれども、私自身は、そういう努力をして、国際的に脱原発依存に変えていく、これは日本維新も現実的な対応でフェードアウトしていくということを言っていますから、こういうことを国際的にやっていくことが、不幸にしてこの事故が起きた日本の責務だというふうに思います。

 改めて、大臣、また皆さんにも言いますけれども、今に始まった話じゃないんです。十年前も、それはトラブル隠し、小さな事故ではありましたけれども、東電が今、こうします、ああしますと言っていることは、二番煎じなんですよ。やっていないんですよ。あの二〇〇三年、二〇〇四年に反省して、本当に言葉どおりに、あり得ないことが起きないようにする、情報も小出しにしない、おくれることも罪の意識でやっている、体質改善をするということであれば、もしかしたら電源喪失しなかった。自分自身も、県会のときに、安全を前提に原発を動かしてもいいですよと、二〇〇四年に県会議員の一人として賛成してしまったんですよ、大丈夫だろうと、安全神話に寄りかかって。

 今の日本全体、この国会だけではなくて、国民も含めて、我々福島県が歩んできた、大丈夫だろう、そういう安全神話に寄りかかっている雰囲気が蔓延しているなと自分自身で感じます。私はそれで間違えたという反省が今ありますよ。大丈夫だといったって、本来、みんなわからないんですよ。私も事故検証のときにこんなに資料を与えられて、シュラウドがどうだとか、何ミクロンだとひびは大丈夫ですとかと言われたって、大丈夫と言うのであれば大丈夫だろうなぐらいにしか判断できなかったですよ。抽象的に、安全が確保されるのであれば、これはエネルギー政策のためにも、また福島県の地域振興のためにも、オーケーでしょう、安全だろう。まさか、そのまさかが起きちゃったんですよ。

 原子力災害というのは一地域にとどまりませんから、ほかの国に輸出してそこに原発ができたとしても、広範囲な悪影響を及ぼすわけですから、これはしっかり本当に事故検証していくということと、一企業の話ですけれども、だから、東電というのはそういう会社です。今も言いわけの仕方は変わらないんですよ。何か起きたときには、マニュアル書をそのまま読んでいるのかなと思うぐらい言葉は一緒ですよ。今度はちゃんと反省しますと言って、やらなかったんですから。

 そういう状況が存在しているということで、大臣、これはしっかり皆さん受けとめて、実はそんな簡単な話じゃないんですよ、ぜひ今後の、これは外務委員会ではないですけれども、原発の事故調とか原発の特別委員会とかで、その議論の過程もしっかり見た上で、原子力を売り込んでいくということではなくて、改めて、少しでも選択肢の中に、再生可能エネルギーで逆に売り込んでいくということを第一にしなきゃいけない、そういう選択肢もぜひ検討いただきたいというふうに思います。それは、私自身の間違いの経験からお話をしていることでありますから、今度、福島県入りしたときに、そうした十年前の背景も含めて、大臣としてしっかり検証していただきたいと思います。

 次に移ります。

 先ほど、長島議員の、日中関係のこともありました。ことしは、平和友好条約三十五周年の年です。昨年は国交回復四十周年の年でありましたけれども、日本国内の政局や、また、さまざまな日中間で生じた事案によって、これは残念ながら、やはり両国挙げて国交回復四十周年というのを祝うことにはなっていなかったというのも事実でありますし、それは、お互いにイベントを開いたりした部分もありますけれども、国民を挙げてという雰囲気ではなかったわけであります。

 ことしは三十五周年という契機の中で、これは今、安倍政権下においても日中の関係改善に努めているところではありますけれども、改めて、三十五周年、この八月に迎えるわけでありますけれども、これに対する取り組みについてお伺いをいたします。

岸田国務大臣 御指摘のように、ことしは日中平和友好条約三十五周年でありますが、この節目の年を利用して、日中間の幅広い分野での具体的な協力を進め、戦略的互恵関係を深化させることができれば、これは有意義だと考えています。

 ただ、現在、日中関係は大変厳しい局面の中にあります。しかし、それでも日中関係は我が国にとって最も重要な二国間関係の一つでありますし、地域や国際社会の平和、発展に日中両国が大きな責任を有していると考えています。ぜひ、個別の問題を全体に影響させないようにコントロールしていく、大局的な見地から戦略的互恵関係を進めていく、こうした考え方で臨んでいきたいと考えております。

 その中で、ことし、日中平和友好条約三十五周年を迎えるわけですが、この節目の年、状況もしっかり見ながら、まずは意思疎通を図り、そして、この節目の年の取り組みについても、こうした意思疎通や状況をしっかりと見た上で適切に対応していきたいと考えています。

小熊委員 大臣初め皆さん御承知のとおり、平和条約には、互恵関係の推進とか、武力によって威嚇しない、覇権を求めない、そういうことが盛り込まれてはいるんですけれども、先ほどの長島議員の質疑の中でもありましたけれども、全てではないですけれども、一方で、この平和条約とはまた違う皮肉な局面も日中間で、とりわけ中国のさまざまな、尖閣諸島に対するところとか、また、日本だけではなくてアジアにおける台頭といったものを考えれば、この平和条約に盛り込まれた理念、考え方といったものを、中国がそれを実践しているとは思えない部分もあるわけであります。

 それは、現実世界ですし、これは国際社会ですから、さまざまなそういった負の部分、影の部分もあるわけでありますけれども、それを踏まえつつ、しっかり互恵関係推進、これは三十五周年を機にやっていかなければいけないんですけれども。

 これはちょっとACSAに移っていきますが、そういう中国の台頭、これは一対一でやっていく瀬戸際外交ではなくて、やはり、きのうも私、本会議でも質疑させていただいた中での言葉でも盛り込んだ価値観外交という意味で、価値を共有する国との連携をとりながら、国際主義において中国ときちっと対応していく。一対一の関係で解決しなきゃいけない問題もありますけれども、それでやっていても、ヒートアップしていく部分も過去にもありましたから、そういう外交の仕方ではなくて、国際社会の中でチームワークを組んでやっていくということも、やはり対中国に対してもいいことだと思うんですよ。中国の一国覇権主義みたいな側面もありますから、そうではなく、国際社会の中で、同じ価値観の中で、正々堂々、国家運営をしていったらいいんじゃないですかという意味においては、その国際的な連携の一つに、このアジア、そしてまたその先のオーストラリアとの連携というのが重要になってきます。

 これは、ACSAの深化をさせていくということ、また、日米豪の連携もしくは日韓豪との連携というのも、これはやっていかなければいけないというふうに思いますが、これをやることによって中国が過剰な反応をするということも、これは想像にかたくないわけでありますけれども、しかしながら、これはやっていった方が、東アジア、ひいては太平洋地域、世界の安定につながっていく。中国も、それは、いっときは過剰な反応を示すでしょうけれども、やはり国際協調していく、そういうテーブルに着かせるという意味では、私は、こういう日豪の関係というのはさらに深化をさせていく、発展をさせていくということが必要だというふうに思います。

 これは、ACSAがことし発効されましたので、これでゴールではなくて、まさにこれから深化をさせていくという、それは、日中の今のこのアジア地域での一つの緊張関係の側面を踏まえた上で、このACSAの深化についてお伺いをいたします。

鈴木副大臣 委員御指摘のとおりに、国際的に、今、日本も多国間の中での安全保障ということを考えていかなければいけない。そういう中で、日豪のACSAというのは大変重要な意味を持つものである、そういうふうに認識をいたしております。

 一月に発効をしたわけでありますけれども、日豪、これはもう経済面でも重要な関係にございますし、特にも、安全保障の中、ついてはアジア太平洋地域の戦略環境が大きく変わる中でありますので、安全保障協力の重要性というのは一層増していると思います。

 これをさらに深化させていくということでございますが、今後、どういう国とACSAの締結をさらに進めていくのかということも一つの考えであると思いますけれども、どのような国との間でACSAを締結するかということにつきましては、共同訓練あるいはPKO、災害救援等の現場での物品役務の提供に関する防衛当局のニーズを初めまして、二国間関係、条約締結の意義、必要性を考慮して、総合的に判断をしていきたいと思っております。

小熊委員 今副大臣が言われたことを進めていくための取り組まなければいけない課題の一つに、これは前政権下はいろいろありましたけれども、ここは私、評価したい点が、いわゆる武器輸出三原則の、原則は変えずに運用みたいなもので少し発展させていくという踏み込んだ取り組みを前政権下でもしましたから、その連携の中で、この武器輸出の三原則の部分が、やはりこれは、どう取り組んでいくかというのは避けられない課題であります。

 改めて、現政権下においては、この原則は守りつつも、運用の中において、原則を逸脱しない形でこれを運用していくという考え方であるという認識でいいかどうか、最後にお聞きします。

岸田国務大臣 現政権におきましても、我が国の安全保障を守るために最も適切な方策はどうあるべきなのか、しっかり検討していきたいと存じます。

 御指摘のように、基本的な考え方は変わっていないと考えています。

小熊委員 引き続き、こうした問題は取り組んでいきますので、またこれからもよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

河井委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 普天間基地の辺野古移設を前提とした陸上部の工事が先行的に進められている問題について、私は、この三年来、予算委員会で繰り返し指摘し、工事の中止を求めてまいりました。

 ここに、名護市が沖縄防衛施設局に問い合わせて判明した、キャンプ・シュワブ内建設工事状況という資料がございます。ことし三月一日現在のものであります。これによりますと、二〇一二年三月以降に発注したものは、五施設二十四件、金額で七十一億円に上っております。

 そこで、防衛省に伺いますけれども、この普天間基地の移設事業は、既に二〇〇六年度から開始をされています。そこで、改めて確認したいのは、そのうち、キャンプ・シュワブ陸上部における関連工事というのは、総額、直近まで合わせて何件で、幾ら発注してきているでしょうか。

左藤大臣政務官 お答え申し上げたいと思います。

 キャンプ・シュワブにおいては、普天間飛行場の移設に関して、普天間飛行場代替施設建設工事とは直接、工事を今しているところでございますけれども、先生おっしゃったように、これは実は平成十九年度から実施をしておりまして、二十五年度末現在では、総額百七十七億円、七十四件の契約をさせていただいております。

笠井委員 今、数字を言われましたけれども、その中に設計業務は入っていますか。

左藤大臣政務官 これらの工事に伴う設計等の業務については、正直言って現在精査中でございますので、まことに申しわけございませんが、後日、先生の方に御報告をさせていただきたいと思います。

笠井委員 この設計業務もカウントされなければ、当然、実態、全容が明らかにならないわけで、私が防衛省から二〇一二年にもらった資料を見ますと、二〇一一年度までの業務が百八十九件で、約二百十二億円になっております。そのうち、環境影響評価業務が三十四件ありましたから、陸上の建設に係る業務というのは百五十五件もあるわけです。設計分も入ってそのとき言っていたわけで、今、できるだけ件数、金額を少なくするようなことで言ってくる。私、きのう通告しているんですから、精査中じゃなくて、前に出していたんだから、これぐらい出せないとだめですよ、大臣。後日じゃなくて、きょう、委員会後、速やかに出していただきたい。よろしくお願いします。どうですか。

左藤大臣政務官 今御指導のとおり、後日、報告をさせていただきたいと思います。

笠井委員 後日じゃなくて、きょうじゅうに出してくださいよ。

左藤大臣政務官 きょうじゅうにさせていただきたいと思います。

笠井委員 きょうじゅうにできるなら、最初からそう言ってください。

 二〇一〇年二月の予算委員会で、私、正式にキャンプ・シュワブ沖と決まっていないのに、移設を前提に陸上工事をなぜ進めるのかということをただしました。当時、北澤防衛大臣は、前政権で契約したものだからと答弁していたんだけれども、その後も、民主党政権としても発注を続けて、自公政権になった今日も工事が進行中です。

 政府自身、沖縄の県民の理解も納得も得ていないというのに、なぜ辺野古移設を前提に陸上部の工事を先行させるんですか。

左藤大臣政務官 陸上工事は、普天間飛行場代替施設建設工事とは直接関係のない建築物等の整備を今やっております。同事業にかかわる飛行場区域を除いた区域において実施してございます。ですから、同事業とは目的も場所も異なることから、させていただいているということでございます。

笠井委員 これは、普天間飛行場移設に関する業務なんです、発注なんですよ。関係ないじゃなくて、その業務なんでしょう。

左藤大臣政務官 そうおっしゃればそうかもしれませんが、現実、私どもはそういうぐあいに理解をしておりません。

笠井委員 移設に係る業務といって資料を出しているじゃないですか。

左藤大臣政務官 ですから、直接関係のない建物等の整備、また同事業にかかわる飛行場区域を除いた区域においての実施でございますので、御理解をいただきたいと思います。

笠井委員 区域の問題じゃなくて、関係するものをつくっているんでしょう。

左藤大臣政務官 直接関係のない建物だ、こういうことです。

笠井委員 では、何で関連業務と言っているんですか。

左藤大臣政務官 確かに、関連業務と言われるかもしれませんけれども、これは関連の一部かもしれませんが、私どもは、全体として直接関係のないということで考えてございます。

笠井委員 ちょっと、関連業務といって発注して、予算を組んでいるんじゃないんですか。冗談じゃないよ、そんなもの。

左藤大臣政務官 埋め立てとは直接関係がないということでございます。

笠井委員 埋め立てと関係ないに決まっているじゃないですか、陸上部に建物を建てるんだもの。移設に係ってやるんでしょう。

左藤大臣政務官 もちろん、普天間飛行場の移設には関連しております。

笠井委員 関連するということは、前提でやっているんじゃないですか。最初からそう言ってくださいよ。

 大臣、政府は三月二十二日に埋立申請を提出したばかりでありますが、何かいろいろなことを言ってごまかそうとしているけれども、移設に関連して業務をやってきた。もう二〇〇六年からやっているんですよ。まだ沖縄県民の理解も納得も得られていない、得なきゃいけないと大臣も言われているわけだけれども、その段階で移設を前提とした工事が進められていることについて、これは県民の理解を得られると思いますか。

岸田国務大臣 普天間飛行場の移設を含む米軍再編につきましては、二月の日米首脳会談において、総理から、現行の日米合意に従って作業を進め、沖縄の負担軽減を実現していくということを述べた上で、この普天間飛行場の移設及び嘉手納以南の土地の返還計画を早期に進めていく、こういったことでオバマ大統領との間で意見の一致を見たところであります。

 普天間基地の固定化はあってはならないと考えています。私も、また総理も、沖縄を訪問させていただいた際には、仲井真知事を初めとする関係者の方々と率直な意見交換を行わせていただきました。これは、今後とも、沖縄の声にしっかり耳を傾け、信頼関係を構築して、沖縄の負担軽減、進めていかなければならない大切な課題だと思っています。

笠井委員 私の質問に答えていただいていないんですが、移設についてはまだ、そういう負担軽減も含めて理解を得てやっていこうと今努力と、政府の立場で言われましたけれども、そういう過程において既に、普天間を移設する、辺野古につくることを前提にした工事を陸上部では、陸上部ですよ、先行してもうやってきていることについて、これで県民の理解が得られるかということを伺っているんです。

岸田国務大臣 工事につきましては、先ほど防衛省からも説明がありましたように、施設を機能的かつ効率的に再配置するため、この区域外で行われていると認識をしております。

 いずれにせよ、この普天間飛行場の移設につきましては、これからも引き続き、県民の皆さんとの意思疎通を図りながら、丁寧に進めていかなければならないと考えています。

笠井委員 だったら、防衛省はこの資料を出していますけれども、普天間飛行場移設に関する業務といって発注して、予算を組んでやっているわけですから、これはインチキじゃないですか。うそをついて予算計上しているという話でしょう。関係ないなんて話を大臣も言われると、沖縄県民なんか納得しないですよ。これは防衛省の資料で、こうやって予算を組んで、金を使っているわけですよ。関係ないなんて話じゃないでしょう、普天間基地の移設に関する業務なんですから。それをシュワブでやっていて、陸上部でやっているわけですよ。

 関係ないなんて、防衛省も一生懸命ごまかそうとしたけれども、だったら、国会にうそをついて予算を組んでいるんじゃないですか、使っているんじゃないですか。こんなことがあっていいんですか。県民は絶対にそんなのは理解しませんよ。だって、やるかどうか、まだ納得していないのに、陸上部は移設に関する業務を発注し、どんどん進めているんだから。外務委員会でも、当時の外務委員長を先頭に私も現地へ行って見てきましたよ。建物を建てている。

 納得できると思いますか、県民にとって。

左藤大臣政務官 まことに恐縮です、何度も申し上げますけれども、飛行場移転に関連し、普天間飛行場代替施設建設事業とは直接関係のない建物を機能的かつ効率的に再配置するためにやっております。

笠井委員 そうしたら、この防衛省の資料は間違いですね、我々に出してきた資料というのは。「普天間飛行場移設に関する」、関係ないんじゃないですよ、「関する業務発注一覧表」、平成十八年度、二十一年度、こうやって出しているんですよ。これはうそをついているんですか、国会に。関係ないというのはどういうことですか。

河井委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

河井委員長 速記を起こしてください。

 左藤防衛大臣政務官。

左藤大臣政務官 今申し上げたように、関連しておりますけれども、建設事業とは直接関係のない建物なんですね。それをやっているわけであります。

笠井委員 今のをちょっと確認したいんですが、要するに、海上でつくろうとしている建設事業に使う建物ではない建物という意味ですか。

左藤大臣政務官 確かに、先生のおっしゃるように、広い意味では関連しているといったら関連しているかもしれませんが、この平成二十一年度の「普天間飛行場移設に関する業務発注一覧表」、この話ですね。申し上げたように、広い意味では関連しているといえば関連していますけれども、今、直接関係のない建物だということでございます。

笠井委員 では、具体的にどういう建物で、何のためのものですか。

河井委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

河井委員長 速記を起こしてください。

 左藤政務官。

左藤大臣政務官 先ほどもお答え申し上げたように、隊舎、管理棟及び倉庫棟の整備に関係する工事でございます。

笠井委員 では、それは何に使うということになりますか。

左藤大臣政務官 いずれ海兵隊等が利用するということになるかもしれません。

笠井委員 では、関するということじゃないですか。来るということでしょう。関するということはそういうことでしょう。

左藤大臣政務官 そうでございます。

笠井委員 だから、大臣、理解と納得を得る、負担軽減と。きょうも何か嘉手納以南の話をやるみたいですけれども、私は、あの嘉手納以南だって、無条件で返せなかったら解決しないと。四十年ずっとやってきて成らないんですから。条件つきでグアムと絡めたり、県外のほかにやったり、そんなことをやるというので解決しないんですよ。普天間だって、結局のところ辺野古につくるという話で、関連させてやっているということでしょう。

 それで、理解と納得を得るんですと言いながら、今、左藤防衛大臣政務官が認められたように、一方ではもう二〇〇六年からどんどん先行してやっているわけですよ。県民にしてみれば、何だ、納得していないのに何でどんどんつくっちゃうんだと。それができたら、今度は移転したときに使うんですよと。こんな話になったら、理解も納得もないじゃないですか。どうですか。

河井委員長 笠井亮君、そろそろ持ち時間が終わろうとしております。

笠井委員 さっきのちょっととめた時間があるでしょう。

河井委員長 ちゃんとロスタイムは見ていますから。

 岸田文雄外務大臣。

岸田国務大臣 嘉手納以南の土地の返還に関する統合計画につきましては、現在、日米間で最終的な調整を行っているところです。

 そして、これとともに、早期に進めるということで日米首脳会談で一致した普天間飛行場の移設につきましても、普天間飛行場の固定化は絶対あってはならないという認識のもとに、今、県民の皆様方の御理解をいただいているところです。

 今後とも、丁寧に、粘り強く、御理解をいただくべく努力をしていきたいと思っています。

笠井委員 最後に一言ですが、今大臣言われました、理解を得てということで、結局、辺野古につくろうというんだけれども、それが理解を得られなくてできなければ、移設のための、陸上部でそれを使うかもしれない、そのためにという、それを想定してやっているような施設というのは意味がなくなるわけですから、私は、少なくとも移設を前提とした工事を先行して進めることは県民に対する背信行為だ、こんな陸上部の工事は直ちに中止せよということを重ねて申し上げたいと思います。

 終わります。

河井委員長 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一です。

 最初に、外務大臣に御感想を聞きたいと思います。

 おととい外務省のプレスリリースで、OECD開発援助委員会による二〇一二年度のODA実績の発表がありました。それによると、日本は、二〇一二年度のODAの実績、世界で五番目でした。このことについて、大臣、どのようにお感じでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘のように、我が国のODA実績純額、ネットは、OECD開発援助委員会、DAC加盟国中第五位であります。しかしながら、円借款の回収額等を差し引かないODA実績総額、グロスで見ると、二位を維持しているという現状にあります。

 いずれにしましても、ODAは、我が国にとりまして最も重要な外交手段の一つであります。我が国の経済成長、ビジネス海外展開にも貢献するものであります。厳しい経済財政状況の中にありますが、引き続きまして、ODAにつきましては、戦略的そして効果的に活用していきたいと考えています。

山内委員 ネットとグロスという違いはありますが、やはり支出ベースで世界で五番目というのは少ないのかなと思います。

 同じOECDの中のDACの加盟国二十四カ国ですけれども、下から五番目です。一人当たりにするとですね。一人当たりの対GNI比でやると下から五番目、日本より下にいるのはギリシャ、スペイン、イタリア、韓国と、相当経済の悪い国と比べてちょっと多いという程度しかありません。

 イギリス、フランスは、人口は日本の大体半分、経済規模も大体半分。イギリス、フランスより人口も経済も二倍ぐらいある日本が、それより少ない額しかODAを投じていない。イギリス、フランスは、ODA以外にも、防衛費も日本の二倍以上出しています。

 イギリス、フランスは、いざとなれば武器も輸出するし、軍事援助もやるし、軍隊も出す。そういう意味で、外交ツールがいっぱいあるイギリス、フランスでさえ、日本よりもたくさんODAを使っている。だから日本も軍事援助をやれとは言いません。むしろ、軍事あるいは武器の輸出、そういうツールがない分、かえってODAをもっと重視しなくてはいけないのではないかなと思います。

 イギリスはキャメロン政権のときにほとんどの役所の予算をカットしましたが、ODAだけは手をつけなかった。そういったこともありますので、もう少しODAに対する配分、今、いろいろなところで日本は外交力が低下しているなどと言われていますが、そういった意味でも必要ではないかと思います。もう一度大臣の御感想をお聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘のように、我が国外交にとりまして、このODAというのは、外交手段としてまことに重要なものだと認識をしております。

 このODAを活用するために、もちろん、どのように活用するか、質の部分も重要だとは思いますが、量の部分についても、この厳しい経済財政状況の中ではありますが、ぜひ考えていきたいと思っております。

山内委員 次に、援助の中で、特に教育分野、その教育の中でも特に基礎教育分野の援助について聞きたいと思います。

 ユネスコやユニセフが中心になって二十年以上前からやっている、EFA、エデュケーション・フォー・オールというキャンペーンというか取り組みがあります。日本も国際約束をしております。特に、日本がイニシアチブをとって十年ぐらい前に始まった、BEGINというイニシアチブがあります。これは、成長のための基礎教育といって、特に初等教育を中心に援助に力を入れましょう、非識字者、非就学児をなくすために先進国としてもっと援助をふやしましょうという取り組みです。これは、日本が十数年前にかなり力を入れて始めたイニシアチブです。

 そんな日本の二国間援助に占める基礎教育分野の援助額はどれぐらいあるんでしょうか。そして、それはOECDのDACの平均と比べてどんなものなんでしょうか。

岸田国務大臣 我が国の二〇一一年の二国間ODA総額に占める基礎教育分野の割合は、〇・五二%です。DAC諸国全体においては二・一七%となっています。

山内委員 ODA全体、一〇〇%のうち、わずか〇・五二%しか小学校教育などの基礎教育にお金を使っていない。日本は教育が大事だ、大事だと言っている割に教育に冷たいということが言えると思いますが、これはもっと、教育援助、特に基礎教育の分野に日本は、ODA、力を入れるべきではないかと思うんですね。

 実は、岸田大臣の地元の広島大学というのは、途上国に対する国際協力の日本のセンターの一つ、というより、最も重要なセンターになっております。広島大学には、教育開発国際協力研究センターといって、途上国の教育援助専門のセンターを設けて、世界じゅうから留学生を受け入れて、特にアフリカ、アジア地域の教育援助の中心地として有名なんです。ぜひ、地元に帰られたときは、広島大学のこのセンターに行っていただいて、留学生、留学生といっても大体教職の人が多いと思うんですけれども、そういった人たちと会って、途上国の教育の現状をよく大臣にも知っていただきたいと思います。

 そんな中で、ユネスコがEFAグローバルモニタリングレポートというのを出しています。これは、エデュケーション・フォー・オールの取り組みに対して、各国政府に対して勧告をする、正式な勧告ではないんですけれども、レポートです。その中で、こういう記述があります。「二〇一〇年、日本による教育協力の四〇%近くが日本で学ぶ留学生への奨学金として使われた。一人のネパール人留学生が奨学金を得て日本に留学する費用は、二百二十九人の若者がネパール国内で中等教育へのアクセスを手に入れるために必要な費用にも相当する。」という記述があります。

 要するに、ユネスコが言っているのは、日本は留学生受け入れに余りにも多くの資源を割いていると。留学生受け入れを減らせとは言いませんが、留学生受け入れにかけている情熱と同じぐらい、途上国における教育開発にもっと力を入れるべきだというのがこの内容です。

 文部科学省留学生で日本に一人受け入れる経費があれば、二百二十九人に中等教育を受けさせることができる。一対二百二十九、同じ経費でそれだけの違いが出るんですけれども、これについて、大臣、どのように感じられますでしょうか。

岸田国務大臣 我が国は、ミレニアム開発目標、MDGsの達成に向けて、包括的な教育協力政策を策定し、教育分野の支援に取り組んでいるわけですが、その中で、日本への留学支援というのは、教育上の観点のみならず、二国間の友好親善ですとか相互理解を深めるという上でも有効な政策手段だと考えております。

 引き続き、ODAを活用して、初等教育そして中高等教育、あるいはさらには職業訓練など、これは総合的に取り組んで支援を実施していかなければいけないと考えております。ぜひ、こうしたさまざまな課題について、総合的な見地からバランスのよい支援を考えていくべきだと考えます。

山内委員 そのバランスのよい支援ということは重要だと思います。私は、そのバランスが今悪いんじゃないかと言っております。その悪いのは、ちょっと余りにも留学生とか高等教育に偏っているということが問題だと思います。もっと初等あるいは中等教育に援助を振り向けていくということ、教育援助自体のパイをふやしてほしいんですけれども、その中の割合も、もっと初等教育に力を入れていただきたいというふうに思いますし、それは、日本政府が十数年前からずっと言ってきたことであります。

 基礎教育に関して、毎年、「世界の子どもに教育を」というキャンペーンを世界じゅうのNGOがやっております。日本の教育NGOもたくさん参加しております。毎年恒例の、春ごろにやるんですけれども、「世界一大きな授業」といって、途上国の教育の重要性などを日本の子供たちにも知ってもらうというキャンペーンをやっております。

 毎年、そのNGOのネットワークと子供たちの代表が外務省に行って、要望書を手渡しております。過去には、麻生外務大臣が子供たちの代表と三十分ぐらい時間をとって懇談をしていただいたりとか、あるいは民主党政権のときにも、岡田外務大臣が会っていただいたりということがありました。最近はちょっと、政務官対応になっている年が多いようですので、もし可能であれば、ぜひ岸田大臣みずから、教育NGOの皆さんの要望を聞く、あるいはその教育NGOのやっている「世界一大きな授業」に参加した子供たちと対話をしていく、そういう機会を持っていただきたいと思います。

 それについて、大臣、もし一言いただければと思います。

岸田国務大臣 まず、教育支援におけるNGOの積極的な取り組みは高く評価しております。「世界一大きな授業」イベントについても、例えば国会議員のための「世界一大きな授業」イベントを二〇一〇年より毎年実施されているということ、こういったことも承知をしております。

 こうしたイベントへの参加につきましては、こうした取り組みを高く評価するとともに、参加することが日程等も含めて可能なのか、ぜひ調整をしたいと思います。

山内委員 ありがとうございます。ぜひ前向きにお願いをしたいと思います。

 やはり、ODAに対する世論の支持が余り高くないという現状は、恐らく、こういう小さいころからの教育の中できちんと現状を知らされていないということがあるのではないかと思いますので、前向きな対応をお願いしたいと思います。

 次に、日韓あるいは日中の歴史研究、歴史の共同研究について質問をしたいと思います。

 日中の歴史共同研究というのが、前の安倍政権のときに始まりました。それ以前から、日韓の歴史の共同研究というのはやってきました。今、日中、日韓、双方の国内の世論が、何というか、余りお互いに対していい感情を持っていないということがあると思います。こういう日中、日韓の関係が余りよくない時期だからこそ、歴史の共同研究といったことをやっていくことが必要だと思いますが、その後、あるいは現状どうなっているか、お尋ねをしたいと思います。

鈴木副大臣 御指摘の日韓、日中の歴史共同研究でありますけれども、それぞれの国の研究者が議論を重ねて、歴史に対する客観的認識を深めて相互理解を増進させる、そのことを目的とした事業でございます。

 韓国との間では、第一期は平成十七年六月に、そして第二期は平成二十二年三月に、三年間の研究を終了いたしまして、報告書を発表しているところでございます。

 今後の第三期につきましては、実施には合意をいたしておりますけれども、具体的な内容、構成、メンバー等についての検討、協議には至っていないという現状でございます。日韓双方で新政権が成立したことも踏まえまして、韓国側とも議論をしていきたいと思っております。

 それから、中国との間でございますが、これは、平成二十一年に第一期が終了いたしまして、平成二十二年に報告書が発表されたところでございます。

 今後とも共同研究を継続していくことについては、日中間で一致をしているところでございます。第二期の開始に向けて、現在、研究者の相互訪問、意見交換を行い、歴史分野における相互理解の促進を図っているというのが現状でございます。

山内委員 日韓はたしか小渕政権のときに、日中は第一次安倍政権のときに、かなりハイレベルで決まった重要な案件だと思うんです。しかしながら、その後、意外と知られておりません。

 そして、せっかく共同研究の成果がまとまっているにもかかわらず、これを読んだ人というのはほとんどいないんじゃないかと思います。私、外務省に行って問い合わせたら、重さ二キロぐらいのこんな分厚いものがありまして、これを読めと言ってもなかなか読んでくれる人はいないと思いますし、これだけ権威のある、両国のトップが主導してやった共同研究ですから、売れ筋の講談社とか、そういうちゃんとした民間企業に権利を渡して、ちゃんと書店に並べれば売れるものになると思うんですよ。きょうは理事会で提示していないので提示できないですけれども、私の机の上にあるこんな分厚い報告書、あれはまだ第一部です。もっとたくさんあります。

 こういったものを広く両国の国民に知ってもらう努力を外務省としてはやるべきだと思いますし、せっかく、いい、一流の学者が集まって議論したにもかかわらず、恐らく外務省の棚でほこりをかぶって寝ているというのは、余りにももったいないと思います。これをどうやって一般の人に広く知ってもらうか、もし外務省でお考えがあれば承りたいと思います。

鈴木副大臣 研究成果をまとめました報告書でございますが、日韓につきましては、共同研究委員会の事務局のホームページで、日本と韓国、両国の言語で掲載をしておりますし、大学を含む研究機関にも送付をしているところでございます。

 日中の報告書につきましても、外務省のホームページで、日本語、中国語の言語で掲載をしておりまして、要望があれば、それに応じて日中歴史共同研究日本側事務局から報告書を送付しているところでございます。

 いずれにしましても、委員の御指摘のとおり、周知徹底、周知を広める、これはもう大変重要なことだと思いますので、今後も広報に努力をしていきたいと思っています。

山内委員 私も、送料だけ払えば送ってもらえるというので、ちゃんと送料を払って送ってもらったんですけれども、そこまでやる人はなかなか多くないと思いますし、そもそも存在を知られておりません。

 それから、ホームページでダウンロードできるといっても、全三百ページのものをダウンロードしている人というのは余りいないと思いますので、やはり、縮刷版のもっとわかりやすくしたバージョンとか、例えば歴史を学ぶ大学生ぐらいでもわかる、あるいは、別に学生じゃなくても、一般の人たちが見てもある意味十分おもしろい内容だと思います。中国側の研究者は日中のこういう事件をこういう見方で見ていたんだと、なるほどと思う指摘が非常にたくさんあって、興味深い内容だと思いました。だけれども、余りにも読みにくい。まず、物理的に重くて、持ち運ぶ気にもならない。

 こういった意味では、外務省はもうちょっとマーケティングをちゃんとやって、日本側でも多くの人に知ってもらう、そして同時に、国際交流基金にはちゃんとそういう事業費がとってあると思いますので、これは別に、中国語にして中国国内でも多くの知識人に読んでもらうようにする、あるいは、英語なりフランス語なりスペイン語にして世界じゅうの人に読んでもらうように、何らかの方法をとって、せっかくの成果を広めていただきたいと思っております。これは要望ということで申し上げたいと思います。

 それからもう一つ、そういう歴史の共同研究を出版物の形でやるのもいいことだと思うんですけれども、シンポジウムとか、両国の専門家、歴史家であったり研究者同士で話し合う場をもっとたくさん設けることで信頼をゆっくり醸成していくということが必要だと思いますので、報告書をホームページにアップしてそれで終わりということではなくて、人的な交流を続けていただきたいと思いますが、今、質疑時間が終了の札が回ってきましたので、以上で終了したいと思います。

 もし一言あれば、大臣か副大臣、お願いできますか。

岸田国務大臣 先ほど副大臣から答弁させていただきましたように、今後とも広報に努めていきたいと思っておりますし、そしてその際に、どういった形でそれを進めていくのか、今委員からの御指摘も参考にさせていただきながら努力をしていきたいと考えます。

山内委員 ありがとうございました。

河井委員長 次に、鈴木馨祐君。

鈴木(馨)委員 自由民主党の鈴木馨祐でございます。

 この外務委員会で質問させていただくのは大体四年ぶりになりまして、久々の質問でございますので、しっかりやってまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。

 この四年間でいろいろ国際情勢も大きく変わりまして、恐らく、その一番の大きな変化は、北朝鮮情勢の深刻化、さらには中国の軍事情勢の緊迫化、この二つは大きな変化のうちのトップに来るようなものかなというふうに思っております。

 そうした中で、きょうは、北朝鮮問題と中国問題、この二点に絞って質疑をさせていただきたいと思っております。

 きょう最初のバッターの長島委員の質問の中でもございましたけれども、やはり今の北朝鮮情勢を見ていますと、非常に事態がエスカレートしているようにも見える中であります。そういった中で、確かに、不測の事態に備えての対応、この話も先ほどされていましたけれども、これは極めて重要なんだろうと思うんです。

 そして、恐らく、その不測の事態は、先ほどおっしゃっていたのは、実際何か起こったときに日本としてどう対応するのか、この備えをしっかりとしておかなくてはいけないということもおっしゃっていたと思います。しかし、私は、それに加えてもう一つ、ほかの不測の事態もきちんと想定をしておかなくてはいけないんだろうと思うんです。

 二月の二十八日のフィナンシャル・タイムズで、実は中国の共産党の中央学校の、恐らくこれは機関紙のことだと思いますけれども、副編集長の方がコラムを寄せていまして、その中身というのが、中国として、北朝鮮へのコミットメントは考え直して、ある程度、これは統一ということも含めて考えていかなくてはいけないのではないか、こういったことが書かれておりました。

 ロシアにおいてもそういった話が一部で出ているようでありますし、私、実はこれは非常に衝撃を受けまして、中国とロシアという、いわば北朝鮮をこれまでバックアップしてきた国の中でも、恐らくこれは観測気球だと思いますけれども、そうした議論が出てきている。私は、これは極めて大きな変化だろうと思うんです。

 そういった中で、もう一つの不測の事態というのは、やはりこれは崩壊のプロセスというものの可能性も一つ検討には入れておかなくてはいけないんだろうというふうに思うんです。

 アラブの春を見ても、非常に情報の伝達が速い時代ですから、一旦何かが起これば、恐らくその崩壊のスピードというものは極めて速いわけであります。そして、急速な崩壊が起こった場合に何が起こるのか。これは、これからの質問でも、きょうの北朝鮮問題の一番のテーマでありますけれども、北朝鮮が開発をしてきた、そして今保有をしていると言われる核弾頭、核兵器が朝鮮半島の中に残った状態で統一朝鮮へのプロセスを進め始めるということにもなりかねない。そして、そこの対応をきちんとしておかなければ、これは我が国にとっても極めて大きな、深刻な事態になると思うんです。

 仮定の話ですけれども、仮に統一朝鮮に核兵器が残ることになれば、この東アジアの地域で核を持たないのは日本と台湾だけということにもなりかねません。そういった意味で、私は極めて慎重にこの対応というものはしていかなくてはいけないんだろうと思うんです。

 そうした中で、やはり、こうした場合には過去の歴史を見ていかなくてはいけないんだろうと思います。

 同じように、図らずもというか、想定外の状況で核弾頭が国内に残ったケースというのが過去あったんだろうと思います。それは、一九九一年の十二月に旧ソ連邦が崩壊をして、その後、CISの国の一部には核弾頭が残った状態であったと思います。

 まず、そのときの状況から伺いたいのでありますけれども、これは事実関係として、旧ソ連邦が崩壊のときに、ロシアを除いて、どの国にどのぐらいの数の弾頭が残っていたのか、さらには、その当時の、恐らくこれは指揮系統というか、実際にボタンを押すことができたのはどこの人間だったのか、その点の御回答をいただきたいと思います。

北野政府参考人 御説明させていただきます。

 今委員から御指摘がございました旧ソ連の崩壊の時点、すなわち一九九一年の十二月の時点では、旧ソ連といたしまして二万七千発ぐらいの核兵器を保有していたというふうにされております。ロシア以外では、ウクライナ、カザフスタン、ベラルーシ、この三カ国に戦略核兵器が配備をされていたという状況でございます。

 また、これらの国に配備をされていた核兵器の発射のための指揮命令ということについてのお尋ねでございますけれども、これにつきましては、モスクワからの指揮命令が必要である。したがいまして、旧ソ連が崩壊した時点で、ゴルバチョフ・ソ連大統領からエリツィン・ロシア大統領に最高権限者が移ったということではございますけれども、それ以外に指揮命令系統には変化がなかったというふうにされているところでございます。

鈴木(馨)委員 今おっしゃっていただいたように、実は、ロシア以外の国でかなりの数の核弾頭が突然国内に存在をした、そういった状況になったのが一九九一年のことであります。実際、これはその後、それぞれの国から核弾頭は結果的にはなくなりまして、今その地域で核を保有しているのはロシアだけという状況になっています。

 しかし、私は、ポイントとしては、この廃棄のプロセスが、果たして、国際社会も関与する中で、きちんと強制的なプロセスというものをそこでつくることができていたのか。あるいは、そうではなくて、さまざまな経済的な情勢もあって、それぞれの国の自分の判断で、言ってみれば、幸運にも廃棄をすることができたということなのか。私はこれは極めて大きなポイントだろうと思うんです。

 そういった中で、この核廃棄の経緯、この枠組みは、CISの中の議定書とかそういったものもあったでしょうし、あるいはリスボン議定書のようにマルチのものもあったと思いますけれども、実際、強制力がある枠組みになっていたのか否か、あるいは、そこに他国の関与があって進んだのかどうか、その点の事実関係の確認をしたいと思います。

北野政府参考人 御説明させていただきます。

 今の三カ国、すなわちウクライナ、カザフスタン、ベラルーシが、図らずも核兵器を保有するという状況から核兵器を保有しない状況に至るまでのプロセスでございますけれども、今委員からも言及がございましたリスボン議定書というものが結ばれたことが非常に重要であったかというふうに考えております。

 これは、一九九二年の五月に、米国、それからロシア、それに加えまして、今申し上げました三カ国の間での議定書でございまして、どのような経緯かといいますと、先ほどの御説明をいたしましたソ連の崩壊の半年前に、米ロの間で戦略核兵器の削減条約、STARTというものが結ばれておりますので、これを一体、三カ国との間でどのように実施するのかということが問題となったために、米国、ロシア及びその三カ国との間で協議をし、その結果として、今のリスボン議定書というものができたという経緯でございます。

 したがいまして、これらの三カ国に配備をされておりました戦略核兵器というものがこれらの三カ国からなくなるプロセスにおきましては、先ほどのSTARTとこのリスボン議定書というものが大きな役割を果たしたということでございます。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 今、STARTの話をおっしゃいましたけれども、一つ幸運だったのは、旧ソ連の核兵器については、このSTARTという形で、削減の国際的な枠組みが既にかかっていたということなんです。それに引きかえ、北朝鮮の保有の状況ははっきりはしませんけれども、恐らくは、旧ソ連の核よりもはるかにその後のコントロールがしづらい状況にあるのではないかという懸念をやはり持たざるを得ないと思うんです。

 そうした中で、ちょっとここは事実関係だけ伺いたいんですが、この旧ソ連諸国における核廃棄のプロセスにおいて、これは実際、朝鮮半島の場合にはこれから検討課題になっていくと思いますけれども、そのときには、まず、誰が、どのタイミングで、そして、どこの場所で、さらには、どこの負担で、解体あるいは廃棄というものを行ったのか、その点の事実関係、確認をしたいと思います。

北野政府参考人 御説明させていただきます。

 今の廃棄に関します幾つかの点でございますけれども、まず、タイミングにつきましては、先ほどのリスボン議定書が結ばれた九二年から、実際にこれら三カ国からロシアに移送をいたしました。その移送のプロセスが九二年から九六年ぐらいまでに完了しておりますので、この移送終了後、廃棄につきましては逐次進められたということが第一点でございます。

 それから、誰の責任で、どこの場所においてということでございますけれども、廃棄につきましては、先ほどのSTART条約の規定に従って進められたわけでございますけれども、これは、場所的にはロシアにおきまして、ロシアの責任で行われたということでございます。

 これに関しましては、国際的にさまざまな支援がございまして、アメリカもナン・ルーガー計画ということによって非常に大きな支援をいたしました。また、我が国も、旧ソ連諸国の核兵器廃棄支援ということで、このプロセスに対して支援をしたというところでございます。

 以上でございます。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 今、一九九六年に移送が終了した、そういった点も御答弁いただきました。

 旧ソ連の崩壊が九一年の十二月ですから、そして、この場合にはSTARTという形で、そもそも核弾頭自体に国際的な規制も、ある意味でしっかりかかっていて、さらには、ロシアとほかの旧ソ連の諸国との力関係ということもあって、さらには、恐らく、旧ソ連崩壊後の経済的な情勢の中で、経済支援を国際社会から受け取るためにはどうしたらいいのか、そういった議論もあったと思うんです。

 そういった中で、非常にある意味で幸運なケースだったと思います。その幸運なケースですら、ここまできちんとした枠組みを、プロセスをそれまで練っていて、にもかかわらず、少なくとも移送まで六年はかかっている。そしてさらには、その途中でも、本当に廃棄ができるのか、こういった疑問が持たれた時期もあったと記憶しております。

 そうした意味で、私は、今回、朝鮮半島、どうなるかわかりませんけれども、万々が一これが崩壊をしたとき、そして、その後の統一がされた場合、これはもちろん仮定の状況なので、これはなかなか議論しづらいところでありますけれども、しかし、準備をしておかなければ、これはやはり我が国にとっての最悪のケースに流れる可能性もあると思うんです。

 そうした中で、まず一点、これは外務省にお伺いをしたいんですが、今、北朝鮮の核兵器の保有の状況、今の時点でどのように分析を、認識をされているのか、お答えいただきたいと思います。

鈴木副大臣 北朝鮮は、二月に、三回目となる核実験を強行したところでございます。

 その実験直後に、北朝鮮が、爆発力が大きいながらも、小型化、軽量化された原子爆弾を使ったという報道がなされたことを承知しております。

鈴木(馨)委員 少なくとも北朝鮮に核兵器はあるだろう、そして、これはもちろんオフィシャルなものではないでしょうけれども、少なくとも四、五発分の保有をしている可能性が高い、こういったことも多くのところで言われている状況であります。そうした中で、やはりこれをどうこれから扱っていくのか。これは無視をすることは私はできないと思うんです。

 そして、先ほどウクライナ、ベラルーシ、さらにはカザフスタンのケースを申し上げましたけれども、実は、CISの、ソ連からの移行をするに当たっては若干時間の前後もありまして、実際、ゴルバチョフ大統領が辞任をして、事実上ソ連の崩壊と言われているのは九一年の十二月の二十五日なんです。そして、実はCISの議定書があって、その中で、核兵器の管理についてのそういった文書が出たのは十二月の二十一日なんですよ。実は崩壊の前に、ある程度のそうした枠組みをつくられていた。これは、私は、準備という意味では、結果的には極めてうまくいったケースなんだろうと思うんです。

 恐らく、今、何もしないで放っておいて同じ状況をつくり出せるか、私はこれは難しいと思うんです。

 実際、今、北朝鮮の核兵器は、北朝鮮以外の国はその管理に全く関与できていない状態であります。そうした状況もありますので、これはどこまでお答えをいただけるかわかりませんけれども、今、外務大臣として、来週、ケリー国務長官ともバイの会談の可能性もあるという話を伺いました、そういった場でも議論もしていただく、問題提起をしていただく必要はあるかもしれませんけれども、そういった中で、北朝鮮が仮に統一をした場合に、半島全体の非核化のプロセスというもの、これをどのようにお考えなのか、その必要性、あるいはどういった関与が必要なのか、こういった点も含めて、お答えいただける範囲でお答えをいただければと思います。

岸田国務大臣 まず、先ほど御指摘になられました旧ソ連諸国における非核化プロセスですが、これは核廃棄を実現した成功例であるというふうに承知をしています。

 ただ、先ほどの議論の中にも出ておりましたように、さまざまな関係者、関係国がかかわり、さまざまな国際情勢のもとに結果が出たということであります。

 北朝鮮の場合に当てはまるかどうかについては、国際環境とか北朝鮮の意思など、さまざまな条件にもよりますので、ここで予断をすることはできないとは思います。

 考え方としましては、そもそも北朝鮮にみずからの核開発を放棄する国際的な義務があるというのが現状ですので、我が国としては、まずは米国、韓国、中国、ロシアを初めとする関係国と密接に関連し、北朝鮮が関連する国連安保理決議を履行していく、また六者会合の共同声明を完全に実施していく、こうした方向に向けて具体的な対応をとるよう求めていく、これがまず第一だと考えております。そして、そうした努力を行いながら、北朝鮮の具体的な対応を見きわめつつ、次の段階についても考えていく。

 こういった順番で、まずは、やるべきことをやりながら将来に向けての備えも用意しておく、こういったことで物事を考えていきたいと思っています。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 もちろん、今のアプローチは、北朝鮮にきちんと約束を遵守させて、そして、まずは北朝鮮に核関係のものの廃棄をみずからしてもらう、あるいは計画をストップしてもらう、それがもちろん一番の目標であろうと思います。

 しかし、こういった情勢というのはもちろん予断を許さないわけですし、国が形が変わるということが先に来るケースももちろんこれはあるわけでして、やはりそういったものに備えて、これは関係各国との間でのそうしたシナリオ、あるいはこうした工程で、きちんとそれを進めていけるような環境づくりというものを、これからさまざまな場所で外務大臣にはお取り組みをいただければと思っております。

 そして、次の論点に移らせていただきます。

 きょう、資料も配付をさせていただきましたけれども、若干ちょっと古い資料になるんですけれども、中国の関係の問題であります。

 先ほど、ほかの質問者の方の御質問の中でも、A2ADとか、そういった中国のこれからの海洋戦略あるいは軍事戦略、こういった話もありました。

 そうした中で、今、尖閣の問題、極めて注目をされていますけれども、やはり日中の中間線のEEZの境界の問題、これもいろいろな意味で戦略的にも極めて大事な重要な問題であろうと思います。

 そして、まさにその関係で非常に大きな問題となっているのが、この東シナ海におけるガス田の問題であります。若干時間も限られておりますけれども、この点についての質疑をこれから進めさせていただきたいと思います。

 まず、今、よく白樺のガス田についてはいろいろな報道もされておりますけれども、実はガス田はほかにも幾つかありまして、ほかのガス田について今の現状をどう認識されているのか、資源エネルギー庁から御回答いただきたいと思います。

安藤政府参考人 お答えさせていただきます。

 いわゆる平湖及び樫、それと八角亭というのがございます。これにつきましては、直近の状況も含めまして、いわゆるフレアという形で炎が確認をされております。これは生産されたガスの一部を燃焼させているものでございまして、さまざまな状況からして、この三つにつきましては生産の可能性が相当高い、かように考えております。

 また、今御指摘がございました白樺につきましては、掘削の可能性はあると見られております。しかしながら、現在、これを断定できる状況にはない、かように考えております。

 また、その他の、いわゆる構造と言っておりますけれども、油ガス田の可能性を持つ地下構造を有します、いわゆる翌檜、桔梗、それと楠、これにつきましては、生産のための採掘施設が確認をされておりません。したがいまして、生産活動には至っていない、かように考えております。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 今御回答もありましたけれども、きょうお配りをさせていただいた、この資料の、横紙の、地図の紙でありますけれども、確かに、中間線にかかっていると言われているこの白樺の問題については、かなりいろいろな抗議もされ、さまざまな形でのチェックもされている。

 しかし、例えばこの平湖のガス田、これはコピーの関係で色は消えちゃっていますけれども、中間線から割と中国側に入ったところのガス田であります。そこについては、実際、操業もされている可能性が高いという状況でありまして、しかし、余り国内では関心も持たれていない。さらには、こうした抗議であるとか、そういったこともそんなにされていないような印象を受けております。しかし、私の論点としては、本当にそれでいいのか、そのことをまず申し上げたいと思うんです。

 というのは、今、まだ東シナ海の境界というのは画定をしておりません。今の画定をしていない現状にあって、国際法上、我が国として権原を保有している海域というのは一体どこまでになるのか。今お配りをしたこの地図上の、私がいろいろな学説によったり、あるいはいろいろな専門家の方に伺った範囲では、日本から二百海里の線までは、少なくとも今の状況で、権原は放棄をしていない、日本としては権原を有している、そういった立場だということも伺っていますけれども、その点、どう認識をされているんでしょうか。

鈴木副大臣 御指摘のとおり、日中間におきまして、東シナ海の海洋の境界画定が行われておりません。その現状におきましては、我が国は、国連海洋法条約の関連規定に基づきまして、領海基線から二百海里までの排他的経済水域及び大陸棚の権原を有しております。

鈴木(馨)委員 今、鈴木副大臣にもお答えいただきましたけれども、この地図で見れば、日本から一番遠い、日本から二百海里と書いてある、そのラインまでの権原を、少なくとも今の合意がない段階では有している。それが法的な立場であります。そして、恐らく中国側の法的な立場もこれは同じ、逆に、中国からの二百海里というところになると思います。

 そういった中で、今、よく係争海域ということを言いますけれども、これは、日本と中国、それぞれ恐らく係争海域の考えというものは違うと思います。今、日中それぞれで、どこの地域を係争海域というふうに捉えているんでしょうか。

金杉政府参考人 お答えさせていただきます。

 地図をごらんになりながら見ていただくとわかりやすいかと思いますけれども、日中双方は、国連海洋法条約の関連規定に基づきまして、領海基線から二百海里までの排他的経済水域、そして大陸棚に関する権原を有しております。

 東シナ海を挟んで向かい合っている日中双方の領海基線の間は、距離としては四百海里未満でございます。したがって、我が国としては、双方の領海基線から二百海里までの排他的経済水域、そして大陸棚が重なり合う部分、いわゆるこの部分が係争海域であって、この海域で日中間の合意により境界を画定する必要があるというふうに考えております。

 なお、境界画定に当たっては、国連海洋法条約の関連規定、そして国際判例に照らせば、このような海域では、一般的に、中間線をもとに境界を画定することが衡平な解決になるというふうにされております。

 他方で、中国側でございますけれども、中間線による境界画定は認められないというふうにした上で、中国側が想定する具体的な境界を示すことなく、大陸棚について沖縄トラフまで自然延長しているという主張をしております。

 したがって、我が国としてこの点は受け入れられませんけれども、中国側の主張では、我が国が言う中間線から沖縄トラフまでがいわゆる係争海域であるという主張を中国側がしていると承知しております。

 以上でございます。

鈴木(馨)委員 今御回答いただいたとおりなんですね。日本は、日本からの二百海里の線と中国からの二百海里の線、この間全体を係争中の海域というふうに捉えている。しかし、中国側は、中間線から中国からの二百海里のところだけを係争海域と捉えていて、中間線から内側の部分については係争海域とは言っていないんです。

 実際、交渉の場で、中間線と、中間線から日本側の、中国からの二百海里のライン、ここの間での交渉をすることにも恐らくこれはなりかねないのだろうと思います。

 そうした中で、私は、中国と同じ立場で主張するということであれば、少なくとも、我が国のスタンスとして、中間線から日本側の部分を係争海域と認めるのはいかがなものかというふうに思うんです。というのは、すなわち、中間線から日本から二百海里の、この中間線から先の海域だけを係争海域として本来であれば認識をするべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

金杉政府参考人 お答えいたします。

 おっしゃるとおりでございまして、私どもとしましては、そういった立場に立って、二〇〇八年に日中間で合意をいたしました。その中では、北部海域における共同開発、それから、白樺への日本法人の参加、そして、合意された以外の海域では継続協議を行うという前提で合意をいたしました。

 この合意に基づきまして、日中間で国際約束を結ぶべく協定締結交渉というのを行いましたけれども、平成二十二年の九月、尖閣沖での中国漁船衝突事案を受けて、中国側が国際約束締結の交渉を一方的に延期をしているというのが現状でございます。

 以上でございます。

鈴木(馨)委員 この問題はじっくりきちんと質疑を進めていきたいんですけれども、ちょっと時間の関係もありますので、この関係の最後の質問にさせていただきたいと思うんです。

 まさに今ちょっと質疑の中でも明らかにさせていただいたように、恐らく、係争海域ということの捉え方、あるいは認識の仕方が中国側あるいは日本側でもずれていて、私は、極めてこれは国際交渉上の問題じゃないかと思うんです。

 そして、先ほど申しましたけれども、中間線から中国側に入っている海域だからといって、日本は権原を持っていないわけではないですね。今、日本としては、その海域についても権原を放棄していないんです。そして、そこの海域の中で、例えば平湖については掘削が行われ、しかも、事実上、営業ベースでもそうしたことが行われていると言われています。

 私は、若干、ここについての政府の認識がこれまでちょっと甘かったんじゃないか。これは、自民党時代も含めてでありますけれども、私はそうした疑念をずっと持っておりまして、ちょっとその点、大臣としてどういった御認識をされるのか、その点を最後に伺って、質問を終わりたいと思います。

岸田国務大臣 我が国としては、東シナ海の境界が未画定である中、日中双方の主張が重複する海域において、中国側が一方的に開発を進めることは認められないという立場であります。

 この立場については、申し入れを従来から中国側に対して行ってきているところですが、先ほど議論の中に出ておりました、二〇〇八年六月の日中合意、この合意に関する国際約束締結交渉というのが行われておりました。これをぜひ早期に再開して、その合意を実施することが重要であると考えております。

 政府としては、あらゆる機会を通じて交渉の早期再開を働きかけていくという方針で臨みたいと思っています。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 ぜひ、さまざまな場でそうした主張もしていっていただいて、国益を守っていく、そういった先頭に立っていただきたいと思います。

 一言だけ最後に。この地図で見ていただいてわかるように、この平湖の部分は、日本の、言ってみれば、まだ権原を有している地域にもかかわらず、ここ、日本名がないんですね。こういったことも含めて、私、若干の違和感を感じております。

 ぜひ御検討をいただきたいということを申し上げまして、時間となりましたので、質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

河井委員長 次に、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 政府から趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣岸田文雄君。

    ―――――――――――――

 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

岸田国務大臣 ただいま議題となりました国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 この条約は、昭和五十五年十月にハーグ国際私法会議において作成されたものであります。

 この条約は、監護の権利の侵害を伴う国境を越えた子の連れ去り等が生じた場合に原則として常居所を有していた国に子を迅速に返還するための国際協力の仕組み、国境を越えた親子の接触の実現のための協力等について定めるものであります。

 我が国がこの条約を締結することは、このような国際的な協力を通じ、不法な連れ去り等によって生ずる有害な影響から子を保護するとともに、親子の接触の機会を確保することにより子の利益に資するとの見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 何とぞ、御審議の上、本件につき速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

河井委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十九分散会


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